◆出勤前 自分磨き
都心のど真ん中・丸の内のオフィス街で、早朝から、スーツ姿の30代会社員らが
農業を学んでいる。出勤前に自分磨きの時間を提案する市民講座「丸の内朝大学」の
一コマ「農業クラス」だ。金融やIT企業、広告会社などに勤める彼らが、いまなぜ、
農業なのか。
4月下旬の午前7時半。東京駅前にそびえる新丸の内ビルに20〜40代の男女33人
が集まった。
講師は、ハンチング帽にジャケットをはおった宮治勇輔さん(30)。養豚業を営む。
「若い農家のリアルな話を聞いてほしい」。パワーポイントを駆使したスマートな
プレゼンテーションに、参加者は身を乗り出した。
宮治さんは慶応大卒業後、サラリーマン生活を経て、神奈川県藤沢市で実家の養豚業
を継いだ。「一次産業を、かっこよくて、感動があって、稼げる『3K』にしたい」
と「農家のこせがれネットワーク」を昨年立ち上げた。活動が伝わり、今回声がかかった。
参加者の職業はさまざま。実家が青森のにんにく農家という港区・広尾の会社員男性。
墨田区で大豆の卸問屋を営む男性、金融機関で農業への融資をしている女性もいた。
「農業って地に足がついた感じがして……」というのは、港区・新橋で映画やドラマ
などエンターテインメントの仕事に携わる女性。IT企業でプログラミングをしていた
女性は「自然に触れたい」と会社を辞め、いまは練馬区で農業体験をしているという。
食の安全への疑問から参加したという港区・新橋の貿易会社に勤める女性(31)は、
金沢市出身。東京で一人暮らしをしてスーパーで野菜や食料品を選ぶとき、どのように
作られ運ばれてきたかが気になり始めたという。汐留の広告会社に勤める女性は
「子どもが生まれて食に興味を持った。足元を見直したい」。
「去年会社をやめるまで12年間、経理の仕事をしてきた」と話す主婦は、「実家が
農家。これから農業を本業にしたい。ビジネスにつなげるための勉強に来たんです」。
クラスは6月までの3カ月間で、基本的に毎週火曜午前7時半〜8時半の全8回。
受講料3万8千円。宮治さんを中心に、有機野菜や米、きのこを栽培する若手農家が
語る。週末には千葉県での田植え実習や、宮治さんが経営する農園の豚を味わう農園
バーベキューもある。
宮治さんは「ここから、東京で農業を盛り上げる人や動きが生まれたらうれしい」と
期待する。
予想を上回る盛況ぶりに、驚くのは、今回の市民講座を仕掛けた三菱地所などでつくる
実行委員会。06年秋から、この地区で朝型生活を提案するイベント「朝エキスポ」を
開催してきた。「朝大学」は「もっと本格的に学びたい」とのニーズに応えて今年から
発足。農業クラスは、定員30人が2週間で満杯になったという。
実行委は「都心で働きながら、地に足をつけた農業を学ぶことでバランスを取っている
のでしょうか。都市で『農』を考えて農地で『脳』を鍛え、作り手と消費者の両方に
プラスになれば」と話す。
●和やかに話を聴く参加者ら。きれいに磨かれた靴を履いている人が多かった
http://mytown.asahi.com/tokyo/k_img_render.php?k_id=13000000905140001&o_id=3598&type=kiji ◎丸の内朝大学
http://www.asa-univ.jp/ ◎ソース
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000905140001