【書評】東京は“新名所”ほどつまらない〜『新・都市論TOKYO』 [著]隈研吾・清野由美 [4/16]

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★東京は“新名所”ほどつまらない〜『新・都市論TOKYO』 隈研吾・清野由美著(評:近藤正高)

去る3月20日、赤坂のTBS本社を中心とした再開発地区「akasaka Sacas」がオープンした。
ほぼ一年前にオープンした六本木の東京ミッドタウンに続き、これで東京都心の再開発は
一段落ついたという印象がある。

それにしても、東京における再開発とはいったいなんだったのだろうか? 本書ではまさに
そんな疑問に答えるべく、建築家の隈研吾とジャーナリストの清野由美が、汐留、丸の内、
六本木ヒルズ、代官山、町田といった東京の街を実際に歩いてまわりながら、都市計画について
考察する。

本書の各章は、隈による基調レポートと現地での清野との対話によって構成されている。
両者の対話は、しばしば独善的に持論を展開する隈に対して、清野がうまいぐあいに反論や
疑問をぶつけたりしており、なかなかスリリングである。

たとえば隈は、六本木ヒルズを、真の意味での「都市計画」が実現した稀有な例だと評価する。

六本木ヒルズの開発では、森ビル社長の森稔による徹底した指導のもと、周辺の小区画の
地主たちを長時間かけて説得して土地が買い集められ、超高層ビル(六本木ヒルズ森タワー)を
中心に円環構造を描いた街がつくられた。そこでは、ほかの東京都心の再開発には見られない
多角的な機能の複合が実現され、とりわけ住居の融合は特筆に値する、というのが隈の講評である。

自身も森タワー内の文化施設「アカデミーヒルズ」のデザインを手がけ、森の手腕を目のあたりにした
経験もあってか、ややひいき目の隈に対して、清野は安易に同調はせず、「そうはいっても、ヒルズは
庶民には住めない家賃です」と、おそらく多くの人たちが思っているであろうことを代弁する。
また、超高層居住についても、家賃との折り合いがつけば一度は経験したいといいつつ、だがやはり
人間の生理に反していると思うと、率直に意見を述べている。

そんなふうに二人が議論を重ねながら各所を歩いてまわるなかで、個人的にもっとも面白かったのは
町田編である。町田は、本書でとりあげられているほかの街とは違い、東京の都心ではなく郊外に
位置する街だ。その町田を隈と清野はなぜとりあげたのか?

実は当初、隈は町田に対してあまり気乗りしない様子だった。それが、大型商業施設の建ちならぶ
駅前の再開発地域から、チェーン店と老舗商店が同居するメインストリートの商店街を通り、
さらには川沿いに建ち並ぶラブホテル、結婚式場、新築のマンション群といったディープな光景を、
清野に案内されながら見て歩くうちにこの街に強く惹かれるようになる。

■町田こそ都市、と隈研吾が気づく
さらには、街中で風俗系と思われる女性がたむろする脇を、普通に住民が歩いている様子を目にして、
「この混在性こそ都市性であり、それがある町田は正しく都市といっていい」という結論に達するのだが、
その過程はドラマチックですらある。

隈が町田という街に見出したのは、リアリティとヴァーチャリティとの接合だ。ちなみにヴァーチャルな
都市とはITの産物ではなく、20世紀に登場した「郊外」という形式こそその先駆だという。隈は郊外を
次のように定義している。
>>2に続く

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080415/153050/