1 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :
ここでは年回何回の展示会が行われるのだろうか?私はそんなことを
考えながら、夕暮れを待つ幕張メッセにたたずんでいた。
景気のいい頃(最近ではバブルと言う言葉すら死語になりつつあるが)
はこの場所も連日にぎわいを見せ、特に宝飾品関係の展示会では即売会
と称したブースで一日に何千万もの金が動いたと言う。
今ではそんな話を微塵にも感じさせないような簡素な雰囲気をかもし
だしている。ある意味、近未来的なスペースで今後のトレンドを見定める
と言うニュアンスが当てはまっているかもしれない。
私はまだ少しだけフィルターまで距離のある煙草をゆっくり消す。
禁煙が当たり前になったこの国で、愛煙家が和める場所はそう多くない。
一息つき、席を立とうすると、私のそばに近づいてくる男がいた。
取り立てて気にとめることもないが、私の興味を引いたのは彼の頭髪が
金色であったことだ。今時のフレームが小さな眼鏡をかけ、丁寧な口調で
私に言う。
「すみません、宜しかったら火をいただけますか?」
関西人が東京で使う典型的な口調だ。思ったほど若くはないらしい。
その印象からは遠く感じるほど彼の背中は疲れ切っていた。
「ええ、これでよければ」
背広の内ポケットからジッポーを彼に差し出す。軽い会釈。
口元のラークからゆっくりと煙が上がり、やがてそれは大きく彼の肺の中に
吸い込まれていく。吐き出すのと同時に私へとジッポーを差し出す。
普段ならそのままきびすを返すのだが、なぜか私はその場に留まりたい衝動に
駆られ、もう一本火をつけてしまった。後にそんな気持ちが彼のカリスマ由縁
であり、それが災いの根元であると知るのだが。
彼は火を借りたことが私にもう一本火を着けさせたことであると思ったらしく、
「すみません」と言った。
「いえ、私ももう一本吸いたいところでしたし。それに正直雑踏は疲れますし。」
「そうですね。僕もあまり得意ではありません。」
「失礼ですが・・・西の方ですよね?」
いぶかしげな顔をするが、その間は一瞬であり、すぐに返答が返る。
「ええ。まあ、関東にいるときは何かと気を遣いますから、どうしても標準語に
なってしまいます。でも、分かりますか?そんなに。」
「不自然ではないですが、私も関西にいたことがあるので、何となく気になって
しまうので。」
お互いが微笑をし、大きく吸い込むと火を消す。
「お仕事ですか?」
彼の問いに私は「はい」答えた。何を思ったのか、彼はシャツのポケットから
名刺を取り出し、私に差し出す。
「今江、克隆さん?」
初めて聞く名前であるが、差し出した本人はなぜだか威風堂々としている。
私も名刺を探したのだが、あいにく私はまだ持っていない。その無礼を詫び、
事情を説明すると彼(今江さん)は笑顔で受け答えた。
たった3分弱の時間を煙運と言うのだろうか、そのまま私と彼は喫煙スペース
を立ち去り、展示会場へと向かった。
そこでは釣り博と言う名の一大イベントが行われている。
ここでの仕事は主に接客である。
イベントと言うだけあって開催中は連日大勢の人で賑わう。少なくとも私には
そう見えるのだが、毎年このイベントに参加している他の業者仲間たちの口
からは「風前の灯火」と言う言葉が絶えない。確かに接客と言う私の仕事も
商談スペースと書かれた半畳程の空間に腰を掛け、取引業者との打ち合わせだが、
開催2日目でもそれほどの数はこなしていない(初日は業者のみの時間もあったことからそれがコアになっていたことは確かだが)。
「おい、駆け出し。」
私はこの会社では「駆け出し」と呼ばれている。もともとは半導体ベンチャー
企業の営業をしていたが、設備投資費のカットと受注見込みが大幅に崩れたことを
端に発し、会社は解体。転職先を探していたところ、取引業者の重役紹介という
ことで私は釣り糸メーカーに再就職ができた。しかし初めての業界で、しかも私は
釣りなど一度もやったことがない。全くの公私ともに素人な私を社内では「駆け出し」
と呼んでいる。まあ、そんな呼び名も慣れれば心地よいもので、良い意味で初心を
思い出させる。
声の主は私の上司である。彼は私よりも年下だが、社歴は15年のベテラン。
もちろん私は新入社員であるのだから、大先輩に当たる。
「今日はもう商談はないから。彼女と一緒にパンフくばりでもしておいてくれ。」
紹介された女性は社内では見かけない顔だった。しかし私の疑問に答えることなく、
上司は消えていく。場所は幕張だが、都心へは電車で近い。
夜は接待と言う訳だ。
まだ夕暮れには早いが、連れ添った人数からすると銀座コースかもしれない。
取りあえず、今の私には関係のないことだ。
ご一読頂けました皆様へ
大分ご無沙汰をしてしまいました。
初代様のトラブルが落ち着く間、私の駄作でもお読みになって頂ければ
幸いです。
本来ならば個人のHPにて公開する内容をこのような公な掲示板でさらして
おりますこと、深くお詫び申し上げます。
文才無きおり、さほどご迷惑をお掛けすることなく退出させて頂きますので、
しばしお付き合いを宜しくお願いいたします。
ではまたうpさせて頂きます。
二代目、乙!!!!
仕事おくれる!夜ゆっくり読みます。
新作お疲れ様です
これからも期待してます
今週末にはOS再インストールして復活の予定です
ひとまず1番乗り記念パピコ!
>二代目
オヒサーオヒサー。
また、読めるのか!!
ウレシー♪楽しみにしてます!
ガンガレー
1番乗りだと思ってたのに・・・
鬱
さぁ、お昼のうpはあるのかな?
10 :
名無しバサー:03/10/10 21:30
>>1よ
クソスレたてんじゃネーヨ
文才ないのにまだ気づいてねーのかこの凡人が!
腹切って詫びれ
>10
君は文才あるの?
祝 新連載!!!
素直にうれしいです。
二代目がんがれよ〜
>二代目
もうあれから半年くらいたちますか…
楽しみに待っていた甲斐がありました、今回は必ず1000取ってもらうんで、あまり早く終わらそうなんて思わないでくださいね。
>11
そんな奴は相手にするなよ。
>初代さん
スンマソン、出勤前にPC立ち上げたらイキナリこのスレ立ってたんで
あやうく>1と>2の間にレスぶち込むとこでしたわw
キタ━─━─━(・∀・)━─━─━!!!!!
初代様復帰記念保守!
おはようございます皆様。
不定期なうpを深くお詫びいたします。
しばらくの間は火曜日と金曜日の定期うpにさせて頂きたく、宜しくお願い
申し上げます。
コメントを頂きました方々には大変感謝しております。
駄作ですがお楽しみ頂けますと幸いです。
「宜しくお願いします。」
「こちらこそ。私はほとんど分からないが、君と同じ様にやればいい
のかい?」
「同じ様にって言っても、笑顔で配るだけですよ、パンフなんて。」
「でも、私が笑顔で配っても誰も喜ばんだろう。」
そう言うと彼女の顔からは笑みがこぼれた。
しばらくは彼女がパンフを配り、その後ろで私も差し出すと言うこと
をやっていたが、私が思っていた以上にパンフのなくなりは早い。と
言うよりはむしろ、彼女目当てで我が社のブースに詰め寄る輩が多い
ことに気が付いた。
握手を求められ、サインを求められ、写真撮影まで行う。その間、私
はパンフを配る。
彼女は何者なのだ?
閉場の時間が近づいたようだ。ブース内も静かになり、パンフを配り
きった私と彼女は貴名受けボックスのアームチェアーに腰を下ろした。
「お疲れさまでした。大変でしたね。」
「ああ、どうなるかと思いましたよ。」
私はまじまじと彼女を見つめる。彼女も私の視線がおかしいことに気
付き、一瞬たじろぐ。
「失礼ですが・・・同じ社ではないですよね?だって社内でお見かけ
したことありませんし。」
ああ、私のこと、と彼女は説明をしてくれた。どうやら彼女は社員で
はなく我が社がスポンサードしているバスプロだった。バスプロと言
われても私にはさっぱり分からないのだが、彼女の話ではバス釣りの
大きなトーナメントがあり、それは誰もが参加できるのものではなく、
限定されたメンバーのみのトーナメントらしい。もちろん彼女もその
トーナメントメンバーであるが、契約上は嘱託社員として採用をされ
ているらしい。
「いしいその、って言います。もちろん芸名ですけど。」
「芸名?」
「ええ。私、元はタレントだったんですよ。」
ブースに立つ彼女の異常なまでの人気がそのことであったのかと、私
は理解した。
「元って言うことは、今は活動を?」
「はい。あんまり仕事はないんです。って言うか、釣りに専念したい
から。そう自分では言ってますけど。」
年の頃では20代の後半だろうが、笑顔から見せるあどけない表情は
子供を感じさせる(失礼な表現だが)。
「でも一応嘱託ってことなんで、社長からは特命をもらってるんで
す。」
「特命?何ですか、それは??」
口元がゆがむ。間接照明の柔らかな光に反射するウォータープルーフ
のマスカラ。
「駆け出しさん、あなたの教育です。」
「私の教育・・・社内ではそれなりの教育は終わっているはずですが?」
「ええ、それは聞いています。でも私が任されたのは駆け出しさんの
もう一つの仕事です。」
その時、歓声が展示ホール内を走り抜けた。私の立つ位置からそう遠
くない場所から残響が聞こえる。
話の途中に気を散らした私の様子を察してか、彼女(「いしいその」
とは芸名らしいが?)も発信地を見て、私に言う。
「毎年凄いですよね、エバグリって。」
「エバ・・・」
「ああ、駆け出しさんには分かりませんよね。エバグリって言っても。」
頼りない返事をする私に彼女は「行って見ませんか?」の合図を送っ
ている。
自社のブースを離れることに気が引けたが、それよりも一際熱気を発
するその場所へ私の興味は向いていた。
「EGって言っていますけど、関西の大手メーカーです。バスタック
ル以外も少しは上市しているみたいですけど、ほとんどはルアーとロ
ッドですね。」
「それだけでこんなに人を集められるんですか?」
「アハハ、そう思いますか、カタギの人には?」
「ええ。この業界のことは未だよく理解していませんが、購買者に対
してこれほど影響を与えるメーカーがあるなんて。」
歩きながらの会話は、私たちがステージに到着した時点で終わった。
おおよそ20mだろうか。私からステージまではぎっしりと人で埋め
尽くすされており、これでも抽選での人数らしい。ステージでは司会
者兼コンパニオンの女性が会場の熱気に負けじと興奮した様子で簡単
な製品紹介をしている。モーターショーさながらの人数であるが、お
目当ては司会の女性ではないようだ。
「もうすぐセミナーが始まりますね。」
「セミナーと言いますと?」
「まあ大体は自社製品のプロモーションで雑誌とかに書いてあるイン
プレッションをお話するだけです。でもファンにとっては生でお目当
てのバスプロが話をするってことに異常なまでの価値観を持っている
んですよ。」
圧倒される人数と彼女の話す内容に私は首を傾げた。景気が悪く、入
りも悪いと嘆いていた業者が多い中、この好景気は何を意味するのだ
ろうか?
「あ、始まりますよ。」
彼女の背丈では十分にステージまで視線を届かせることができないた
めか、時折揺れながらつま先立ちを繰り返す。心なしか嬉しげな彼女
の顔。彼女も人気のあるプロなのだろうが、この場の誰一人も彼女の
存在に気付いていない。司会の女性が会場を盛り上げる。セミナー講
師の入場を促すコール。
「それでは今江克隆プロにお願いしましょう。」
割れんばかりの拍手とともに先ほど私が火を貸した男が袖裏から入場
してきた。
21 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/14 06:25
本日もご一読ありがとうございました。
次回のうpもよろしくお願いいたします。
>二代目氏
お疲れ様です
末永く頑張って下さい
駆け出し君第4章って凄いですよね
俺もうれしいです
マスターも宜しく言ってましたよ(w
このスレの存在に数分前に気付いた俺・・・; ̄Д ̄)
・・・読みますた!
これはまた・・・気を引くところを付いてくるねえw
ここまででオモロかったのは確かだけど、それ以前に期待を持たせるという意味でも良かったです。
がんがれー(´▽`)ノ
>二代目
乙!
今回のうpは火曜と金曜でつか。。。。
楽しみに待ってますよ〜。
小説スレをいくつ立てれば気が済みますか?
>>25 おまいはだまっちょれ!
うんうん。イイね(・∀・)
ショウの熱気が伝わってくるようだよ。
27 :
名無しバサー:03/10/15 03:07
糞コテウゼーーーーーーーーーーーーーー
どうやら新しい作品のようだな。
俺も応援しているぞ。
ご一読頂いております皆様へ
少し早いですが今回の分をうpさせて頂きます。
私的な文章ですが、多くの方々に声援を送って頂けましたこと、深く感謝
申し上げます。
初代様の作品と並行でいささかお恥ずかしいのですが、こちらの駆け出し君も
ご愛読頂けますと幸いです。
では、今回もよろしくお願い申し上げます。
しかし彼の顔は、私が司会者のコールを聞かなければ分からない程で
あった。トランス状態と言う訳ではいないだろうが、私の目の前にい
る彼の顔は自信に満ち、さながら会場の誰一人とも自分は認めないと
言う程の態度をしていた。見下ろすことが可能な唯一の存在。まさに
自分がその頂上人であることを分からせるためにこの場に現れたのご
とくであった。しばらくして完全な沈黙。会場は他のブースでの雑踏
のみが耳に入り、それ以外は静まり返った状態で彼の声だけが響く。
観客は彼の一挙手一投足も見逃さず、彼の一言一言も聞き逃さず、そ
んな状態であった。私には到底理解不可能な世界が繰り広げられてい
る。
(行きましょうか?)
彼女が目で合図を送る。私は頷くと静かに会場を後にした。
「凄かったと思いませんか?」
彼の声を背に受けながら彼女が話す。
「そうですね・・・でも何て言いましょうか、私には・・・」
「理解できない。そんな感じでしたよ。」
「はあ。正直言いまして、今江プロがどれほどの人なのか私には分か
りません。
分からなくても良いと思っていました。」
「で、今はどうですか?」
自社ブースに戻った私たちは本日の撤収を始めなければならない。
その作業の一部を既にスタッフが始めていたので、私たちの会話はそ
こで途切れ、私は本日分の貴名受けにある名刺の整理をしていた。
(今江克隆・・・)
私は彼からもらった名刺を思い出した。疲れ切った表情の彼はステー
ジの上にはいなかった。私は分からなかった。どちらが本当の彼なの
か?
「お疲れさまです。」
ノートPCの前で名刺管理をしている私の前にいしいさんが立っていた。
「・・・すみません、ぼーっとしていて。」
「謝らなくてもいいですよ。だって私はここの社員ではないから。」
慌ててソフトを閉じ、私は大きく伸びをした。ブースに戻ってきてか
ら1時間近く経ってしまったようだ。周りは静まり返り、ブース内に
残っているのは数社だけだった。
「考え事をしながらの仕事は時間の無駄ですね。大分時間が経ってし
まった・・・。それよりも、いしいさんは帰らなくていいんですか?」
「ええ、用事もあるし、それに・・・さっきの話ですけど・・・」
「さっきの話?・・・ああ、教育とか別の仕事とか。
「そうです、その話をしようと思って残ってました。」
「それは済みませんでした。先にお聞きしておけば良かったですね。」
商談ブース内のテーブルを挟んで私たちは向き合った。
「実は・・・社長さんから頼まれました、今回の教育は。」
「そもそも教育って何の話ですか?仕事ですか、それとも釣り関係の
ことですか?」
「どっちもって感じですね、駆け出しさんの場合。」
彼女は手持ちの荷物から小さな手帳を取り出し、あるページを開いた。
「これは今月のスケジュール表です。もちろん駆け出しさんの。」
中は細かな時が所狭しと走り回っている。しかしそのほとんどが見慣
れない言葉ばかりだった。
「私に何をしろと?だってウチにはいしいさんの様な専属プロもいて、
それなのに・・・。単刀直入に言っていただけませんか?」
手帳を私の方に向け、彼女はきりっとした表情で話し出した。
「私はこう言われました。彼にバス釣りを教えてやって欲しい。」
私は半ば拍子抜けをした感が否めなかった。確かに仕事は釣り具の、
それもバスフィッシング用のラインを製造販売しているメーカーであ
る。しかしその社員の一人にバス釣りを強制する会社があるだろう
か?実際に私が思っていたものは辞令に近いもので、かなり責任を求
められるプロジェクトか何かの類である。
「それは本当ですか?」
「ええ、それだけです。私が適任かどうかは分かりません。駆け出し
さんのところでプロ契約を結んでいるバスプロは私以外にも多く、私
よりも釣りが上手い人もばかりです。でもなぜか私にその役目が回っ
てきた。」
「バス釣りですか・・・。」
「バス釣り、変ですか?」
「いえ、そうではなくて・・・。」
口ごもる私。しかしいしいさんの顔つきは厳しかった。
「バス釣りなんか、って思いませんでしたか?」
一瞬私は心を見透かされた気がした。転職してこれまで少ないながら
も過去の経験を生かして仕事をしてきた。決して平坦な道のりではな
かったが、フィールドが変わっても気持ちは変わらず誠意を示してき
たつもりだ。しかしその私がバス釣りをしなければならない。それも
会社命令で。嫌悪感はある。しかしその程度の感情なら心の中で飼い
慣らすことは難しくない。しかし私の中では釣りと言うものは遊びで
ある気持ちが強いせいか、どうしてもその話が不思議でならなかった。
その気持ちが顔に出た。彼女はそれを見過ごさなかった。
「失礼な言い方かもしれませんが・・・。駆け出しさん、バス釣りを
見下していませんか?」
私は返答に困った。
「・・・」
「細かい事情は知りません。私は頼まれただけですから。でも、私も
プロです。
契約を頂いている会社からの命令はできる限り答える。私はずっとそ
うやってきました。」
「いや、違うんだ。違うんです、いしいさん・・・」
言い訳。心の中を見透かされて慌てて取り繕う。
「バス釣りはとっても奥が深いんです。いえ、釣りって凄く奥が深い。
だから私は釣りをやっているんです。」
彼女の真剣な視線に私は陳謝し、黙って彼女の話を聞くことにした。
「先ほども言いましたが、私が言われたのは駆け出しさんにバス釣り
を教えるだけです。それ以上でもなし、それ以下でもありません。」
横一文字に結ばれた口元に私は覚悟を決めた。理由は後からでもいい
だろう。それに釣りを始めると言っても明日からすぐにと言うわけで
はないだろう。
「分かりました。その代わり、一つだけお願いをしてもいいですか?」
安堵の表情の彼女は快い返事をくれた。
「私の先生なんですから、そんなに丁寧な言葉使いはやめて下さい。」
「じゃあ私からもお願い。いしいさんはやめて下さい。」
言い終わると浮かび上がる満面の笑顔。それは私がバス釣りをする理
由の一つになる笑顔だった。
今回はここまでとさせて頂きます。
>かつたか
少量のうpで大変申し訳ありません。
ご期待をしていただけることが何よりも励みになっております。
>初代様
お恥ずかしながら再会をさせて頂いております。
初代様の作品を汚さないよう、精進して参ります。
>ま@様
大変ご無沙汰をしております。
ま@様は私にとって先生と呼ばせていただける人物です。
お身体をご自愛下さい。
ちなみに先生が愚痴湖にいらっしゃるとき、私も浮いていました。
>おかりな様
毎度ありがとうございます。
煽りへのフォローが身に染みました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
>ロードランナー様
お久しぶりです。
ご期待に恥じないよう一所懸命に執筆させて頂きます。
>リヴァイアサン様
かねてよりお名前は伺っておりました。
よろしくお願いいたします。
35 :
名無しバサー:03/10/16 21:22
アゲワスレ。
ガンガレ
これから駆出しさんが怒涛の渦に巻き込まれて逝くわけだな(・∀・)
なんか選ばれた人って感じだな。
まだ話しの動きの予想ができひんな〜、初代さんとこの
えげつないソノさんとの対比がおもしろいですね。
昨日の夜にうpがあったんだ。。
火曜日が楽しみだ。。
出だしから楽しませていただきました。
以前の作品のリンクを貼っていただけると有り難いです。
こんばんは、皆様。
明日出張になってしまいましたので、勝手ながら二回連続で不定期うpに
させて頂きます。
今回もどうぞよろしくお願いいたします。
無事に釣り博は終了した。予想来場数よりを遙かにしのぐ程の盛況ぶ
りに関係者もほっと胸をなで下ろした感じだった。我が社もその一つ
で、良い関係を持てる期待を幾つか収集することができた。社内では
私がバス釣りを社命で行うことなど誰も知らなかった。どうせ土日を
釣りに当てろ程度の話かと思ったが、実際には実務を釣りに置き換え
ろとのことである。事情はよく説明されなかったが、将来的には私は
社内テスターになるらしい。
テスターと言っても事情をよく知らされていない身のため、何をする
のか皆目検討が付かない。それを教育してくれるために彼女(そのさ
んと呼んでいいものなのか・・・)がいるのだろうが。
彼女のことで幾つか分かったことがある。私自身全くの素人であった
が、彼女は元タレント(今では活動自粛と言うところだろうか?)で
深夜番組の釣りリポート等で名を馳せていた。また釣りのビデオにも
多数出演しており、業界ではかなりの有名人である。彼女の逸話とし
て、バス釣りを始めた当時、彼女は七色ダムと言う場所で修行をして
いたらしい。七色ダムとはどこだろう。私はその程度なのである。
その日の夕方、私は上司に呼ばれた。深夜近い時間であると言うこと
もあり、社内にはほとんど人影は見られない。たまたま残業で残って
いた私に、「メシでも食うか」の誘い一合、私は上司と一緒に恵比寿
ガーデンプレイスのライオンに同行した。たまたまだったのかもしれ
ない。ライオンに到着した私たちは偶然そのさんと出会った。上司は
軽く挨拶をしただけであったが、そのさんと同席している数人は丁寧
に挨拶をしていた。
席は離れて座った。取りあえずの生をあおると、お互いに沈黙のまま、
料理に箸を付ける。
最初に口を開いたのは上司の方だった。
「お前、いや、駆け出しさん。」
「何ですか、改まって。」
年下の上司と言うものは何ともやりづらいが、一番不得意にしている
のはむしろ相手の方かもしれない。言葉を選ぶように、上司は静かに
話し始めた。
「釣りってやったことないですよね、今までに。」
「ええ、まったく。それよりも・・・よしませんか、そんな口調は。」
「いや、社外では駆け出しさんの方が先輩だ。それにあなたを今回の
移動に推薦したのは俺だし・・・。」
私はぼんやりとジョッキの縁に広がる泡の輪郭を眺めていた。
「別にただ釣りを覚えればいいんですよね?それに会社の命令で趣味
を一つ頂けたと思えばむしろラッキーだったのかもしれませんし。私
はそれほど大げさに考えていませんよ。」
シーザーサラダをゆっくりと口にほおばる。クルトンとシーザードレ
ッシングの調和を楽しみながら。
「そう言ってくれると嬉しいよ。実は・・・本当は私が、って話だっ
たんだ。でもそれを駆け出しさんに振ってしまった。」
「大げさですね。たかが釣りじゃないですか。」
「あのう・・・」
気が付くと私たちのテーブル近くにそのさんが立っていた。どうやら
釣り仲間と一緒に飲んでいたらしい。詳細は分からないが、スポンサ
ードされているメーカーが同じで、今日はその更新と簡単な面接(成
績報告)のために都心の会議室で拘束されていたらしい。
そのさんが振り返るテーブルには男3人がこちらに会釈をする。なか
でも無精ひげおぼしき風貌の男は上司に向かって丁寧な挨拶をしてい
た。せっかくだから、と言う理由で同じ杯を重ねることに。私は彼ら
に自己紹介をし、そのさんからはことの経緯を説明してもらった。髭
の男は河辺と名乗った。その横の二枚目は成田と名乗り、残りの1人
は名乗るよりも先にそのさんに言う。
「へぇ。このオジサンをそのちゃんがお守りをするんだ。」
一瞬の感情起伏。私はその男を無意識に正視していたらしい。
「まあ、手取り足取り教えてもらいなよ。なんなら俺が指導しましょ
うか?」
ラフな格好の2人とは対照的にスウェードの靴とキャメルカラーの上
下。私がいた業界ではやり手のSE等が好む服装であった。仕立ての
良さから、かなり高額であることが伺える。バスプロとはそれほど高
収入なのだろうか?
「やめろ、新吾。」
「新吾さん、初対面なのに失礼ですよ。」
彼の名は新吾と言うらしい。酒の席であることからある程度の励行は
我慢できる。しかし彼の口調はあまりに敵対心を表面に出した、威嚇
そのものである。
「俺さぁ、昔から大嫌いなもんがあるんだよ、オジサン。」
私に集まる全員の視線。
「何が、ですか?」
「フフフ、教えてやるよ。勘違いしてるスポンサー。」
立ち上がった彼。思ったより背は高い。対峙する。目が赤く潤んでい
る。
「よしなよ新吾ちゃん。あんまり飲めないのに無理するから。」
そのさんが割ってはいるが彼は笑顔で押し返す。
「俺たちを養ってるなんて勘違いするから、のうのうと釣りを教えて
くれなんて言う奴。俺たちはね、慈善事業で釣りしてんじゃないの。
俺たちはプロなの。」
私の肩に手が掛かる。勢いよく肩を叩かれ、それが二度三度と続く。
「そこんとこ分かってるかなあ、スポンサーさんよぉ。」
四度目。自然と身体が動く。右手。掴んだのは彼の手首だった。その
まま膠着する。
「やめろ、新吾。やめろってば。」
河辺と名乗った男は彼を羽交い締めにし、そのまま店外へと進んだ。
もちろん成田と名乗った男もその後に続く。のこったそのさん、上司、
私はその場に立ちすくんだ。
「大丈夫でしたか、駆け出しさん。」
大事には至らなかった。特に痛い思いをした訳ではないので私は微笑
し、上司を安心させた。一番動揺していたのはそのさんである。彼の
成績のことや今のバス釣り環境などを理由に、彼女なりに彼を庇護し
ていたが、取り立て私は立腹している訳ではない。しかし場が白けて
しまったことは確かので、この場は退散させていただく旨を話し、上
司と店を後にした。勘定をしている上司(今日はご馳走になってしま
った)から離れた私はウィンドー越しに新吾と呼ばれた彼と残りの2
人が噴水前のベンチでうなだれている模様を発見した。遠目から見て
彼が慰めを貰っている状態である。成績、環境、そしてプロとしての
プライド。
(たかが釣りではないか?)
私にはそう思えて仕方がなかった。しかしそれ程までに夢中になれる
ことが今まで私の人生にあったかどうか。そう思うと、彼の言いがか
りもそうなのかと思えてくる。しかしそれがもっと切実に彼の心の声
として聞こえるようになったのは、もう少し先の、彼の心の私が踏み
込むことができてからであった。
46 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/20 20:01
今回もお読みいただけましたこと、深く感謝申し上げます。
>40殿からのご質問ですが、私は2ch初心者ですので、html化準備中の
ことについてはほとんど知見がありません。
申し訳ありませんが、どなたかお知恵を拝借させて頂けますと幸いです。
ではまた次回もよろしくお願いいたします。
>二代目
乙!
一日早く読めて得した気分!
うぉ〜〜!
今回は人間関係のディティールから、みっちり書き込んではりますな〜。
ひょっとしてサスペンス方向に振っていかはるんやろか?
なんか凄い事になっていきそうな悪寒。
「駆け出し!殴れ!!」と叫んだのは俺だけではないだろう・・・
50 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :03/10/21 00:29
SHINGOちゃん(;´。`)
酒癖悪いだけさ。たぶん───。
駆け出し君をテスターにしたのは理由がありそうだな───。
>>二代目氏
我が儘なお願い言ってすいませんでした。今回も楽しませていただきました。
>>初代氏
どうも有り難うございます。html待ちでしたか・・・。
今までスレ立て気づかなかったっす。
どんな緊迫シーンも小ネタを忘れない舞台的な初代に
重厚な緊張感みなぎる映画的な二代目と、
以前の競演以上に個性出てるようで。
次も楽しみにしてます。
54 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/25 08:23
夕べはうpできずに済みませんでした。
早速今回の分をうpさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
55 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/25 08:25
辞令として正式に私が言い渡されたのは次の日の昼過ぎだった。
特別社長から言われたと言うことではなく、ちょっとした会議の席で
上司からの発言がそれの代替えとなった。もちろん同席している同僚
たちは初耳のものも多く、驚愕と激励の声に私は包まれた。辞令が出
てからの私の行動は目まぐるしかった。一応私も会社からスポンサー
ドを受けて行動することから、プロ契約を結ぶことになる。形式上で
あるが、書面にサインと捺印をし、正式にプロとなった(後で聞いた
話であるが、プロになると会社のワッペンをもらいそれを付けること
が義務らしいが、私はもらえなかった)。その後デスクに戻り、身辺
整理を済ますと挨拶周りを行った。会社を辞める訳ではないことから、
非常に不思議な感じであったが、転職前の会社は事実上自然消滅だっ
たことから、挨拶周りは初めてとなる。全て終わるのに小一時間程度
要しただろうか。最後に社長に挨拶をし、私は会社入り口で待つその
さんと合流をした。
「もう全部済みました?」
そのさんは先日逢ったときよりもラフな様相でだった。これから私た
ちは会社が用意した合宿所に向かう。場所は知らされていないが、富
士山の麓らしい。一度自宅に戻って荷物の用意をしなければならない
ので、再度合流をする場所を打ち合わせ、その場を別れた。自宅は会
社から近場に借りていた。1Kのアパート。持っている荷物などわず
かである。家族はいない、今は。妻とのすれ違いが目に見えだしたと
き、お互いがお互いの道を進むことを決めていたのかもしれない。手
短に支度を済ます。取り立てて支度らしい支度などないままに私はそ
のさんの待つ中央道・石川パーキングエリアに向かった。
56 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/25 08:26
雑踏としたパーキングでもそのさんはすぐに分かった。会社から支給
された(レンタカーであるが)ランクルの前に立つそのさんを見つけ
ると、私はリュック一つで駆け寄った。
「お待たせしました。」
「ううん、そんなに待ってないから。・・・それより、駆け出しさん。」
いぶかしげな顔つき。
「何ですか?」
「って言うか、荷物。」
私は手持ちのリュックに視線を落とし、そのまま彼女へと目を移す。
あきれ顔なのか、あきらめ顔なのか。
「ま、仕方ないか。」
「少なすぎますか?」
「それもあるけど、釣りって二泊三日の旅行じゃないのよ。」
「分かってます。私なりに合宿を考えて装備しましたが?」
「ま、近くのスーパーで着替えくらい売ってるし。それとね、タック
ルは全部私の方で用意したから。」
「タックル、って何ですか?」
今度こそ間違いなくあきらめ顔だった。
「ま、それも仕方ないか。どうします?運転お任せしてもいい?」
「ええ、ナビをお願いすることになりますが。」
「大丈夫。この道をまっすぐ河口湖に向かえばいいんだから。」
合宿場所がやっと分かった。河口湖と言えば学生時代に来たのが最後
だった。半ばその時の想い出を頭に描きながら、私はパーキングを出
発した。
途中で一度休憩を挟みながら、河口湖出口までは一時間程度のクルー
ジングだった。思ったほどランクルは運転しやすい。出口を出た私た
ちはそのまま河口湖大橋を渡り、湖畔から少しだけ奥に入ったペンシ
ョン村と呼ばれる観光施設内に乗り込んだ。森に囲まれたその場所に
は大小10棟ものペンションが建ち並ぶ。その中で一件のコテージ風
建物にそのさんは指示した。降りた私たちはその玄関前に立つ。見回
した限り、建物自体はきちんと手入れをされている。しかし、かつて
庭と呼ばれていたであろう場所には草木が生い茂っており、この部分
はお世辞にも整っているとは言えなかった。
「ここが私たちの合宿場所だから。」
彼女はカーゴスペースから大きめのトランクを2つ取り出した。
「持ちます。」
「ううん、いいの。だってこれくらい一人で運べないとバッテリーな
んて何発も運べないわよ?」
「バッテリー?」
「ま、仕方ないか。それよりもこの鍵で玄関開けて下さらない?」
左手から投げ出された鍵は放物線を描き、私の右手へと吸い込まれた。
「目はいいみたいね。よかよか。」
薄く緑青がかった銅製の鍵。鍵穴に押し込み、左に回す。
カチャリ。
ノブに手を掛けドアを開く。新たなる一歩への入り口。誰もいないコ
テージで、ドアだけが一時の主を歓迎してくれた。
本日もご一読頂けましたことお礼申し上げます。
>初代様
フォローをありがとうございました。
お恥ずかしながら、html化をずっと待っているのですが...。
>おかりな様
今回の展開は駆け出し君がテスターと言うバスプロではない目で
バス業界を見ると言うことをテーマとしました。
今後も宜しくお願いいたします。
>奇数さま
お久しぶりでこざいます。
初代様のPC復活までのつなぎとしてうpさせて頂きましたが、欲が出て
しまい、継続をさせて頂いておる次第です。
お恥ずかしながら、今後も宜しくお願い申し上げます。
>strikeking様
毎度のご一読、感謝いたします。
精進しますので宜しくお願いいたします。
ではまた次回まで。
>二代目
モツカレー。
今回はドキドキしないで読めました。
来週からの展開が楽しみ。
初代さんとこの、そのさんのイメージがちょっとひっかかって
なんか企んでるんでは? と疑ってしまいますな。
それでひとつ屋根の下で合宿ですか?ホッホ〜ォ、それはまた、ムフフフ。
こんばんは皆様。
明日から出張に行くことになりましたので、再度の変則うpをさせて
いただきます。このところ駆け出し君のうp前日になると出張が入る
生活です(上司が知っていたらと思うこのごろ)。
では宜しくお願いいたします。
話はそれから一週間後まで進展する。全くバス釣りを知らない私のシフトは
朝3時〜夕方6時までだった。途中休憩を何回か挟むが、大体は湖上の上で
過ごした。私は初めてバスボートと呼ばれる乗り物を知った。最初の2日目
まではそのボートをそのさんが運転し、河口湖のポイントと呼ばれる場所を
案内してくれた。私は湖面図と湖底図と睨み合いながら、自分がどの位置に
立っているのかを把握することが仕事だった。時には同じ場所に3時間近く
停泊することもある。そのさん曰く、回遊しているバスの行動を見るために
通り道と思しき場所で「張っている」とのことだった。私にはその行動が
全く理解できなかったが、同時に水中の映像も記録していた。
コテージに帰ってから夕食後はその日に回った場所を湖底映像と地図とを
比較してバスの行動パターンを学んだ。ある日のことであるが、私は湖底に
沈む沢山の有機物を指さし、そのさんに「これは何だ?」と聞いてみた。
そのさんは「これはワームよ。」と言い(その時点でワームと言うものが
ルアーの一種であることを知らなかった訳だが)、この様な光景が日本中の
湖に見られており、生態系を崩している原因の一つであることを説明して
貰った。しかし今ではその様なことも減りつつあり、これは過去の悪しき
遺産であると力説をしていたのが印象的だった。私的にはバブルによって
堆積された不良債権と余剰雇用をイメージしたのだが・・・。
次にレクチャーを受けたのは魚群探知機の映像と実際の水中映像との比較である。
なかなかイメージを掴むことは、中年域に達している私には困難であったが、
沈んだ木々の水中映像にバスが着いている様子が魚探の映像とシンクロしていた
ときには大きな興奮を感じた。合宿と称する私の教育も今日で丸一週間が過ぎた。
今日も夕食後にそのさんからレクチャーを受け、話が終わったのは日付変更線を
少し回ってからだった。
「取りあえず駆け足だったけど、これで理論的なことは理解してもらえたと思う
わ。」
「はい。道具のことはまだ分かりませんが、生体については私なりに理解をでき
ました。」
「よかった。じゃ、今日は一週間経過ってこともあるんで、ガス抜きでもしま
しょうか!」
そのさんは笑顔でキッチンに消えた。私は待つ振りでもなく、ビデオやホワイト
バードなどを片づけていた。
「お待たせ。」
現れたそのさんの手にはワインボトルとにんじんスティック、アボカドカクテルが。
「夜も遅いけど、このくらいならカロリー高くないしね。」
乾杯。
ほのかに甘い後味。「ハラモワイン」と言う名前の白ワインだった。
ボトルを手に取りラベルを眺める。遠慮がちに差し出される空のグラス。
少し琥珀かかった液体がグラスの縁から流れ込み、ゆっくりと涙を流す。
「お酒、強いんですか?」
グラスに口を付けている途中だったので、そのまま首を横に振る。
「私もそれほど・・・。」
言いかけて反芻された恵比寿での出来事。彼女をそれを察したのか、グラスを
置くと黙り込んでしまった。
64 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/10/29 22:45
今日もご一読頂きましてありがとうございました。
なかなか展開の遅い今回の作品をご愛顧頂けておりますこと、深く感謝
申し上げます。
では次回まで、さようさら。
うPしてた〜
相変わらず小物に凝ってますね〜
折れの場合は小ネタですが
あの駆け出し君とはまた違う話ですよね?うーん世界が広がるな〜
出張乙です。折れも来週は調査で移動しまくりです
うp乙です(・∀・)
日本シリーズで騒いでた間、全然来ませんでしたが───。
そのタンに手取り足取り(;´Д`)ハァハァ
そのタンと1週間もコテージに2人きりで・・・。(;´Д`)ハァハァ
シャワーも浴びたやろう、アルコールも廻ってきたやろう、
黙ってうつむくそのさんの横顔ときたら・・・。
「やぁ〜!やっと着きましたわ〜」とか言って例の人が来ませんように。
二代目お疲れ様です。
なかなか展開が読めませんが、今後もガンガッテ下さい。
お疲れ様です、皆様。
本日の分、うpさせて頂きます。
こんばんは皆様。
不定期うpが続きましたが、今回は公約通りにうpさせて頂きます。
不定期ならびに展開のもどかしさ、お許しください。
では、今回も宜しくお願いいたします。
「あのぉ・・・」
「あの・・・」
ふいのユニゾン。
「どうぞ。」
「ううん、駆け出しさんから。」
ワインを一口。喉を通る甘美な液体を堪能するまもなく話を始めた。
「恵比寿での一件、私なりに理解はしました。もちろん彼、渡辺さん
でしたっけ?」
「うん、新吾ちゃんって言われているけど・・・」
「その彼の気持ちは何となくですが・・・。私が気になっているのは
彼のことではなく、彼の境遇です。」
「境遇って言うと・・・」
「プロって言う言葉の意味。」
そのさんはグラスを手に取ると模写のごとくワインを一口飲み干し、
口を開いた。
「難しいわね、その意味って。私にも当てはまるけど。」
「一つ聞いていいですか?」
酔っているのか、少し赤みかかった微笑。
「一つは前にもあったわね。でも今回は特別よ。」
フフと私は笑う。その笑いに反応した様にそのさんの微笑は続く。
「そのさんは、プロについてどう考えていますか。」
微笑が引きこもる瞬間。目を閉じ、言葉を探す様子が私には待ち遠し
かった。
「正直、私もよくは分からない。このままずっとプロとしてやってい
けるって思う時もあるし、もう駄目かなって思うときもあるし。言い
方はよくないけど、女の場合は逃げ道が沢山あると思う。だって結婚
して、趣味の延長線上でバス釣りをすることもできるし、そのまま数
少ない女性ってことで業界に留まることもできるし。」
最後の一杯をグラスに注ぐと、彼女はまだ揺れている液面を凝視して
いた。
一瞬のまどろみ。飲み込んだ息が静寂の中で揺れる。その揺れは彼女
の気持ちなのか?
「こんなんじゃなかった。こんなんじゃ。」
揺れが止まる。
「もっと情熱があったの、昔は。今でもあるって言えばあるかもしれ
ない。でも何となく惰性でやっている気もするんだ、この頃は。」
「いいですか、話しても。」
独り言のように続いたそのさんの語りに水を差した訳ではないが、私
の一声で現実に戻 ったような様子だった。
「ええ、もちろん。」
「今江さんに逢ったとき、私は感じました。この人には二面性がある
って。深く知らない私が言うのも何ですが、彼は今江克隆と言う人間
を演じている役者の様な気がしました。渡辺さんについても同じ様に
感じました。彼の場合は演じているって言うよりも、バスプロとして
虚勢を張っている感じがしましたが。」
「絡まれたからそう感じるの?」
「いえ、あんな感じの若者は何人も見て来ました。負けず嫌いの勝ち
知らず。でもそれがいい意味でハングリーさに結びついて、大きく飛
ぶことができる。」
「新吾ちゃんは大きくなれるのかしら?」
いつの間にか私の話が中心になっていた。そのさんも興味津々と聞い
ている。
「それは分かりません。それよりも、そのさんは私の質問に答えてな
いですよ。」
「あ、そうね。ごめんなさい。」
最後の一口を飲み干し、大きくため息を付く。胸の中で飼い慣らして
いるものを放つようなため息。
「プロなんていらない、そう思う。」
残ったワインが彼女のグラスに注がれると同時に私は口を開いた。
「そのさん。」
「なに?」
酔っているのだろうか、両肘を付いた彼女の顔は赤らんでいる。
「上手く言えませんが・・・一生懸命にやった。そう言うものが自分
の中にあればそれでいいのではないですか?」
フフフと微笑し、肘を付いたままグラスを口に運ぶ。不器用な呑み方
に気をもますが、それが大人の女なのだろうか。
「優等生だね、そんな言い方。」
彼女は無言のまま席を立つと静かに片付け始めた。私もそれ以上何も
言わず、片付けの手伝いを始めた。
76 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/04 21:43
本日もご一読頂けましたこと、感謝申し上げます。
>おかりな様
大変ご無沙汰をしております。今後とも宜しくお願いいたします。
それにしても小久保の件、どうなんでしょうか?
>かつたか様
ご想像の通りにならず、済みませんでした。
例の人の乱入も今回はありませんでした(w
>初代様
小技は初代様譲りです。
今回の駆け出し君は初代様が培ってきましたものとは少し異なるキャラに
しようと考えております。
>橋本人様
初めましてなのですが、河口湖スレで何度かお名前を拝見しておりました。
催促でしょうか?(w
今後とも宜しくお願いいたします。
定期うpキター!!
今後の進展が楽しみだぁ〜♪
ガンガレ
このヤラウ(`∀´#)!
そのタンに手取り足取りの次は酒を交わし、
次はベットシーンか!? (w
そのタンの言動はあまりに大人(;´Д`)ハァハァ
>>小久保
なぜ優勝球団から次々と選手が流出するのだ(`Д´#)!?
よりによって巨人とは。
吉永の二の舞になるんじゃないか?
井口は仕方ないとして、小久保は予想だにしなかったし、
栄光の背番号23・音速の核弾頭こと村松選手がFAとは(;´Д`)
ダイエーは親会社が糞なんだよ!!
普通、優勝した球団に見売り話なんか持ち上がるか!?
そのタンだけでなく
大人な視線でバス界を見る主人公というのもイイね。新鮮。
>おかりな
因果関係が逆じゃない?
身売り話があるよな球団の選手が、フロントに向けるべき怒りを
闘争心に昇華して優勝を勝ち取ったのではないかと。
野茂石井時代の近鉄、古くは江夏時代の強い阪神(優勝してないが)と似てる気がする。
素敵な雰囲気ですね。
俺はレオファンですが・・・
稼頭央<巨人だけには行かないで〜。
>>81 天敵ハケーン(・∀・)!
───来シリーズも、レヲと鷹の一騎打ちですね。
プレーオフとかいう糞な制度が出来ますが...。
いやいや、かたづけのさなか触れ合う手と手、見つめ合う目と目・・・
もうええか?
しかしこのまま地味ぃ〜に、ひとりのオッサンがバサーとして成長する
姿を描きつづけるはずもなく・・・・、先の展開はさっぱり読めず。
ま、まさか「蝕」・・・w
来シーズンのパリーグは「うし」も黙ってまへんでぇー!
こんばんは皆様。
遅くなりましたが、今回の分をうpさせて頂きます。
もうしばらく地味な展開が続きましが、どうぞご了承ください。
翌朝からは主にルアーの使い方についての学習だった。私は水中カメ
ラの映像で、そのさんが操るあらゆるルアーの動きを観察した。同時
にそのさんのロッドワークやリーリングについても自分の目で確かめ、
水中映像と一致させた。特に驚いたのはラバージグと言われるルアー
だった。これのどこがエサなのか分からない程の形状をしているルア
ーで、初めはからかわれているものと思っていた。しかし、水中の映
像を見た途端、私の思いはどこかに行ってしまった。なまめかしく動
くトレーラーワーム(そのさんはグラブと言うワームを使っていたが)
と着底後ゆっくりと開くラバースカート。驚くのはその動きだけでな
くそのルアーに興味を持つバスはこぞって大物ばかりであった。小物
も近づき、興味を持つのだが、着底したラバージグを見つめる子バス
の奥から大物が顔を覗かせる。テリトリー侵害とばかりにラバージグ
に近寄った小物はイソイソと退散していき、ゆっくりとラバージグに
近づいたバスは首をひねるようにしてラバージグを飲み込んだ。
その瞬間!
私の頭の中にはラバージグを飲み込んだバスが泳ぎ去る軌道が見えて
いたが、それは水中で身をひねると、今吸い込んだラバージグを吐き
出そうとする。しかし完全には吐き出せず、口元にぶら下がったまま
だった。
私は何が起こっているのか分からないまま、水中映像を片眼で見なが
らそのさんの姿を追うと・・・。
そのさんのロッドが弓なりに曲がっている。竿先は大きく絞り込まれ、
その先から伸びたラインが左右前後へと走っている。そのたびにその
さんは竿を送りながらラインに緩急を付けている。
「そのさん!」
「これがラバージグよ。分かったならネットを持って待っててちょう
だい。」
それ以上の会話はなく、私はそのさんとバスのやり取りを見守ってい
た。
やがて竿のしなりが緩やかになり、水面からバスの姿が観察できた。
「でかい!」
「やった!大きい!!」
ゆっくりと竿先を私の方へ向け、バスを誘導してくる。ネットを構え
た私。水面にぼんやりとバスの姿が見え、頭が水面から出た瞬間、私
はネットをバス目がけて差し出した。
バシャ!
ふいにロッドから力が抜けた。躊躇する私のネットを避けるようにバ
スは再度大きくエラ洗いをすると、湖底へと消えていった。
「あああああ!」
沈黙するそのさん。何が起こったのか分からないまま私は「済みませ
ん」としか言えなかった。
「大きかったのに、大きかったのにぃ・・・」
ボートの上で座り込む彼女。私も黙ったままネットを置くと。その場
に座った。
目が合う。怒られるか?一瞬そう思った。
「・・・わ、分かった?これがラバージグのアクションね。」
逃した魚は大きい。私はこの言葉の真の意味を初めて目の当たりにし
たのだった。
87 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/07 19:47
本日もご一読頂きまして誠にありがとうございました。
今回の駆け出し君は非常にゆっくりと進みます。
初代様の作品の様なアップテンポでないこと、深くお詫びいたします。
ではまた次回を宜しくお願いいたします。
>二代目 ◆XPmQ5mHBTk
もつかれ〜!
オイラも水中カメラで見てみたいなぁ。。。。
>二代目
二代目の駆け出し君はハードボイルド系ですね
初代は痛快時代劇って感じ
共通して言えることはどちらも面白いし、うPが待ち遠しい
>二代目=ハードボイルド説
ハードボイルドとはチョト違う気もしますが、言いたいことなんとなく伝わるよ。
練りに練った大人の青春小説(甘さ控えめ)・直木賞的、というか。
一文一文の緊張感が前作より格段に高まってて、
随分と念入りに準備してるのがよくわかります。
今後、駆け出し君が上達して行く過程の描写で俺達は何度も膝を打つんだろうね。
急かしてるのと違いまっせ、駆け出し氏(君とは呼びにくい)
の人物を、しっかり書き込んではる事で
読み手の感情移入もしっかりできますから、後々の感動も大きいと
期待してまんねん。
がんばっておくれやす。
そのタンラバジ使えたのか(;´Д`)ハァハァ
ご一読を頂いております皆様へ
こんばんは。
勝手ながら長期出張のため、少し早めのうpにさせて頂きます。
再開は来週の火曜日になりますので、宜しくお願いいたします。
>ロードるんるん様
いつもありがとうございます。
水中カメラネタは千夜釣行をイメージしていただければ幸いです。
あの番組、千夜行ったので終わったのでしょうか?
>89様
奇数様の言うとおり、ハードボイルドとは違うと思います。
視点(人称)が初代殿と少し違うだけだと思うのですが。
お気に召していただけますと嬉しいです。
>奇数様
毎度のお褒めの言葉、恐縮です。
誤字に気をつけているのですでが、前回同様まだまだです(w
もう少しで物語の機転になります。
実はこの物語の本当の主人公は...。
>かつたか様
お気を悪くなされないことを祈ります。
私も気にしているのですが、どうも描写のテンポが悪いみたいで、
なかなか初代様の様にメリハリがつきません。
こんなときはま@先生のご意見でもお聞きしたいのですが。
>おかりな様
毎度のコメント、ありがたく思っております。
そのさんがラバジを使うシーンを昔のバスワールドで見たことがあるの
ですが。
水中映像を交えたレクチャーは私にとって効果的だったと言える。
全くの素人が地形と季節を読みとってルアーの選択を容易に行える。
一瞬バス釣りとはこんなものか?と錯覚をしてしまうくらいのものだ
ったが、私に唯一足りないもの、実経験がその行為をよりマニュアル
的に写した。
そのさんからはいつも湖上で問題をだす。それは季節を想定し、この
場所では何を投げるのかと言う類のものである。コツを飲み込んでい
る私はすぐにその答えを導き出せる。しかしそれは正解であって正解
ではなく、まさに模範解答の域を脱していない。そのさんは言う。
「結局釣りは自然が相手だから。」と。
今の私ではその意味は半分も分かっていないだろう。そのさんは私に
未だルアーを投げさせてくれない。来る日も来る日もボートに乗って
河口湖をひたすら
走り回り、私はそのさんからの質問に答える。正直、いい加減飽きて
きた。私の気持ちを察したか、その日の夜にそのさんから一つの提案
があった。
「駆け出しさん、話があるんだけど。」
寝る支度を整え、私が自室に入ろうとした時に呼ばれた。
「何ですか、あらたまって。」
そのさんも寝る間際だったのか、ラフなスウェット姿で私に声を掛ける。
「実はね、明日は一日オフにしようかなぁって。」
「オフですか?いいですけど、もしかして私が不機嫌を顔に出してし
まったからでしょうか・・・。」
「そうじゃないわ。・・・私も色々したいこともあるし・・・そう
、わんちゃんにも逢いに行きたいから。」
やはり私が原因だった。彼女なりに気を遣ってくれているのだろう。
ならばその言葉に甘えることとするか。
「そうですか。私の態度が度を過ぎていたのでしたら謝ります。でも
正直言いまして、少し息抜きをしたい気もありました。」
「そうでしょ!そう思ったんだ。」
どうやら彼女の好意を無にせず事を穏便に済ますことができたらしい。
「釣りを軽く見ていたことをとても反省しています。これほど大変だ
とは思わなかった。」
「そうね。やっぱり普通の人、特に釣りが趣味な人には好きなことを
やれて羨ましいって思われがちだけど、実は好きなことをずっとやり
続けなきゃいけないことって案外大変だって気付かないものよね。」
「はい。だから嬉しいですよ、普通に戻れることが。」
「それなら決まりね。私は朝早くから出ちゃうから。駆け出しさんは
ゆっくり寝ててね。」
「はい。適当にさせてもらいます。」
「結構よ。大事なオフを満喫してね。終わったらまた厳しいからね。」
彼女は笑顔になると目が無なくなってしまうほどのいい顔をする。こ
の笑顔が私にとって何よりのオフなのだが。
「はいはい。分かりました。」
「返事は一度。」
「はい。じゃ、おやすみなさい。」
「おやすみ、駆け出しさん。」
きびすを返した彼女が部屋へと消えていく。私は天井のガラス窓から
見える星空を眺め、明日を楽しみにしていた。
目覚めるとそのさんは既に出掛けていた。置き手紙が一通。今夜はそ
のさんのもう一つのスポンサーであるゲーリージャパンの会合らしい。
会合と行っても夕方集まってから河口湖湖畔で懇親会を行うことが主
な目的である。そのさんは私にもその会に出席をして欲しい旨を受け
ていた。時間は午後6時から。その時間なら少し遠くに行っても十分
間に合うだろう。私は身支度を済ませると、河口湖駅まで歩いた。
駅までは約30分ほどかかった。私は隣駅まで切符を買うと、ローカ
ルな5両編成の電車に乗り込んだ。
目的地には電車を降りてからすぐだった。古ぼけたバイクショップ。
ネットで調べたのだが、河口湖周辺ではここが一番近場のバイクショ
ップとなる。私は中に入るとめぼしい中古車を探した。もともとバイ
クが好きで、学生時代は自動車よりもバイクが主な移動手段だった。
会社に入るとそれは趣味となり、個人的な景気が好調だった頃は、外
車も併せて7台のバイクを所有していた(今の手持ちは原付のみだが)。
愛想のない老人が一人。私の来店など気に止めることもなく、旋盤の
前でバルブを削りだしている。狭い店内に響く金属音と古びたオイル
ミスト。立ち止まりぐるりと店内を見渡す。うずくまるSRX6。近
づいた私はシートをなでる。シングルはシートからへたるから。そん
なことを昔聞いたことがあり、なんとなくだが敬遠していた。旋盤の
モーターが止まる。エアーブロー。切り出しに満足したのか、老人は
軽くウエスで拭くと、それを作業台に起き、一息付く。
「10万でいいよ。」
それが私への言葉だと気付くまでに時間がかかった。
ハンドルに手を掛ける。ブレーキを引く。跨るとギアを確かめる。
軽い金属音。
足下にSRX6の鍵。老人が投げてよこした。鍵を拾う。店前まで押
して出し、鍵を差す。
キック。二度、三度。四度目はなく、シングル独特のエンジン音。
ゆっくりとアクセルを開くと、まるで生きていたことを証明するかの
ように咆吼する。アイドリング状態を確認し、私はエンジンを止めた。
老人は何事もなかったように店奥で茶を飲んでいる。私は鍵を差した
まま店に入り、老人の前に立った。
「メンテは十分してある。ワンオーナーじゃねえが、大事に乗る奴ば
かりを渡ってきてる。もっともあんたが大事にするかどうかは俺の知
ったこっちゃねえがな。」
私はポケットから財布を取り出すと、一万円札を十枚数え、老人の渡
した。老人はそれを確かめることなく受け取る。保険等の手続きは会
社に電話をしればいい。私は何も言わずその場を立ち去ろうとした。
「あんた、何でこいつにした?他のバイクにゃ目もくれず。」
「・・・理由はありません。ただ・・・何となくですが、似てるん
ですよ、自分に。」
老人はそれ以上何も聞かなかった。ただ一つだけ、立ち去る私にメッ
トをよこした。
「忘れもんだ。だからくれてやる。」
新しいメット。忘れ物にしては程度が良い。
礼を言い、私はバイクにまたがった。
「あいつはな、そのメットでそのバイクに乗りたかったんだよ。」
誰のことなのか、私には関係ない。老人の声が私の背中から聞こえた。
ただそれだけのことだった。
98 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/10 22:44
今回もお付き合いを頂きました誠にありがとうございました。
ではまた来週、宜しくお願いいたします。
SRX6....
なんだかなつかしい。。。
ジーンズと白いTシャツが似合う単車だよね。
SRX6? 知りまへん・・・、イメージとしてはYAMAHASR400の
スポーツタイプなんでしょか?
ツレがクラブマンと悩んでこっちの方を買いよったんで、イメージできます。
気ぃなんかぜんぜん悪くなんか・・・、こっちこそ・・・です。
にしても、本当の主人公はて、また意味深なw
しもた!キリ番100いただいてスマソ
バイク全然わかんない(;´Д`)
ってか十万常備とは────。
俺もバイク全然わからん・・・
このオヤジがホムペ作ろうとしてhtmlに苦労してるの想像してワラタ
俺の作品と言えばおこがましいが
俺のは読み物というより4コマ漫画です
やはり理系には限界を感じます
あ・ツッコミは要らないです(w
さてと俺もネタを考えなくちゃ
ほほほしゅ!
皆様こんばんは。
夕べうpしようと試みたのですが、アクセス制限がかかっており、思うように
うpすることができませんでした。深くお詫び申し上げます。
またバイクの件もバス板には関係のないネタを出しましたこと、あわせて
お詫びいたします。自重しますのでお許しください。
では本日の分、よろしくお願いいたします。
・お恥ずかしながら私も理科系です(化学系企業の研究者です)。
会合(懇親会)の場所は割と簡単に見つかった。湖上から見る景色と
国道沿いの景色は全くの別物であるが、山立ての訓練成果がここで発
揮された。私が到着したときには会合は終了しており、懇親会も盛り
上がりつつある時間帯だった。バイクで現れた私を見て、そのさんは
驚いていた。
「どうしたの、そのバイク?」
「今日買いました。一目惚れです。」
「駆け出しさんはつくづく普通の人なのね。」
「いけませんか?」
「いえ、そうじゃなくて・・・。だっておかしいでしょ、そんな普通
の人がバスだルアーだなんて。生活には関係のない知識だし。」
「じゃあ、バス釣りは私的なトリビアと言うことにしましょう。」
「ま、それもそうね。」
程なくそのさんが呼ばれる。懇親会は恵比寿であった河辺さん宅の庭
先で行われていた。メンツのほとんどは初対面ばかりで、大多数がバ
スプロだった。
「先日はご迷惑おかけしました。」
真っ先に河辺さんが私に謝罪をした。私も大人げなかったことを反省
し、お互いに遺恨なしと言うことで話は終わった。その後私は河辺さ
んに付いて周り、様々なバスプロたちと面通しを行った。彼らは一様
に私の経緯について興味を持ち、いつの間にか話の中心が私になって
いた。さして社交性のない私はこんなときどの様な話をすればいいの
か分からず、そわそわしているとそのさんが合いの手を入れてくれる。
大した先生であり、出来の悪い生徒であることがより一層明確になっ
た。
「駆け出しさんは何だか新鮮なんですよね、俺らの中では。」
川口と名乗った男はそう言う。彼は一見強面であるが、非常に紳士的
な面を持ち合わせている。しばらく彼とたわいもない話をしていると
突然そのさんが私を呼びだした。私は川口さんとの話を中座し、その
さんが呼ぶ方へと足を向けた。
「どうかしましたか?」
「ううん。何だか新吾ちゃんが駆け出しさんと話がしたいって言うか
ら。」
語尾が聞こえないくらいトーンが下がる。さすがの私でも二度目はな
い。しかしこの場で一触即発と言うことにはならないだろう。それに
河辺さんの話では当の本人は反省をしてるらしい。
そのさんと立ちすくんでいると、彼(渡辺さん)の方から私たちを見
つけた。
「あのう・・・先日は失礼しました。俺、酔っていたのもあって・・・」。
「まあ酒の席ですから。それにあなたの言ってたこと、まんざらじゃ
ないなって思いますよ、最近は。」
「ちなみに俺、結構ひどいこと言いましたか?」
どうやら覚えていないらしい。本当かどうかは定かではないが、ひと
まずこの場はそう言うことにしておいた方が無難であると判断した。
彼の名前は渡辺新吾。歳は私よりも5つ下になるが、普通にしいてい
れば大層品のいい青年に見える。彼はバスプロなのだが、プロとして
の活動とは別に職を持っている。つまりパートタイムプロであって、
生活の基盤は会社員としての収入で成り立っている。
「大変ですね、働きながらのバスプロって。」
「そうですね。初めは結構しんどかったですが、今はどうでもいいか
なぁなんて。」
「どうでもいい?」
「どっちの自分が自分何だか。仕事と趣味。会社が趣味でバスが仕事。
そんなことを感じることもあるし、その逆もある。難しいんですよ、
渡辺新吾って言う人間を演じるのは。」
私は瞬間的に彼を別の人間に見立ててしまった。今江克隆。彼もそん
な一人なのではないだろうか?
夜も遅くなり、集まったメンバーも三々五々と切り上げている。私も
そろそろと思い、そのさんを探した。
「駆け出しさん。」
河辺さんだった。
「なんですか?何かお手伝いできることがあったら言って下さい。」
まあまあと言う仕草で話を始める。
「新吾のこと、許してやって下さい。」
「ええ、もちろん。それはさっき遺恨なしってことで手打ちにしまし
たよね?」
彼はよく似合うアロハのポケットからマルボロを取り出し、一本くわ
えるとそのまま私に差し出す。遠慮なく、と目線でくわえると、ジッ
ポーの火が二人の顔を照らす。揺らぎながら昇る2本の煙。
「あいつ、無理してるんですよ。」
「ええ、印象的にはそう感じます。」
「駆け出しさん、バスバブルってご存じですか?」
「さあ?本物の好景気状態ではいないですよね?」
「うん、違います。今から7年前位ですかね、バスバブルが到来した
のは。バスブームなんて言われて、釣り業界は急に活気づきました。
もちろんバス釣りができる人間はどこに行ってもヒーロー。テレビ、
ビデオなんかに引っ張りだこで、さながらアイドルでしたよ。」
「河辺さんも?」
照れ笑い。サンダルの底で火を消し、ポケット灰皿に吸い殻を入れる。
「お恥ずかしながら、僕もヒーローなんて言われて浮かれてました。
でもね、誰もがこれがブームじゃなくて、やっと来たって思ったんで
すよ。やっと自分の信じているものが認知されたって。嬉しかったで
すよ、誰もがルアーを投げる姿は。その中でね、出て来ちゃうんです
よ、キャラクターを売る人間が。」
「キャラクターって言うのは?」
「今までただのバス釣り好きが一晩でアイドルになってします。そう
なったとき、急に作れますか?自分を。僕は慣れなかった。普段から
馴れ合いな性格なんでテレビ写りはよかったですが、中にはアイドル
扱いされたことに楽しみを求めちゃう人間も出てくる。」
「それが渡辺さんということですか?」
「うん、そうなんだなぁ。本人はナチュラルって言っていますが、で
も今は違う。アイドルまがいなキャラクターだけで人気が出る業界じ
ゃないんですよね、ここは。やっぱりプロとして結果を出さなければ。
そのあたりは消費者の方がシビアですよ。例えば新吾のファンが10
00人いたとしますよね?じゃあその1000人が新吾の使う道具を
使うか?トーナメントで新吾が2位になったとします。1位に今江プ
ロ。消費者は今江プロが開発したタックルをこぞって買う。それが現
実なんですよ。」
今江さんに感じたもの。渡辺さんに感じたもの。それはとっくに河辺
さんが感じていたことだが、彼はその警鐘を自分自身にしか鳴らすこ
とができない。余裕のなさ、プロとしての自覚、バス釣り業界の衰退。
幾つもの理由はあるだろうが、素人の私でも分かるエマージェンシー
コールを一体どれだけのバスプロが聞いているのだろうか?
夜の河口湖大橋。渡りきると見える美術館通りのカーブ。私は河辺さ
んの最後の言葉に後押しをされたように、ノンブレーキで大きく車体
を倒した。
「そのも同じです、新吾と。同じ悩みを持っていると思う。少なくと
もそう感じるんです。」
カーブを抜けてからの直線。SRX6の心臓が震えている。
「助けてやって下さい、駆け出しさん。」
頬を抜ける風が涼しい。今はそれだけしか考えられなかった。
113 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/19 21:09
本日もご一読ありがとうございました。
特に毎度コメントを頂けます、ロードランナーさま、奇数さま
おかりなさま、かつたかさま。
心よりお礼を申し上げます。
前作と比較して盛り上がりに欠けます分、あまりROMして下さっている
方が少ないと感じ、内容に反省をしております。
初代さまの場つなぎと言うことで掲載をさせて頂いておりますが、かえって
初代さまにご迷惑をおかけしている気がしております。
ガンガレ
二代目、考え過ぎっすよ。
また比較するようで恐縮だけど、連載作品的に毎回インパクトを狙う初代と
登場人物が背負ってる物を丹念に書き込んで最後の見せ場(あると勝手に決めてるけどw)の
大爆発を目指す書き下ろし作品的な二代目は、現時点の派手さが違って当たり前。
今回みたいな閉塞感イパイな重いシーンが後のカタルシスを大きくしてくれるんでしょうし。
バイクの件も、知識なくてもなんとなく雰囲気は伝わってるんで
角を矯めずに存分に書いてくれた方が嬉しいっす。長文失礼。
な、なんか超シリアスドラマだ───。
まるで芸能人の「表の顔と裏の顔」みたいな。
―――バスは猫。
バス業界の衰退、人気のかげり。
以前、TVチャンピオン(テレビ東京系列)で
「釣りバカ親子対決」というのがあって、
初代チャンプは徳永親子、二代目は河辺親子。
でもそれっきりだった───。
それはそうと、二代目殿は化学者!?
研究者という事は、博士様でいらっしゃいますか!?
理学?工学?
専門有機?無機?生体?分析?
え?なに?
来年のノーベル化学賞はほぼ確実って!?
毎回楽しみにしてるんで、これからもヨロシコ!
>キスウサンに同意。
あんまし反省とかせんといてくださいよ〜、せっかくの二代目氏の
持ち味が萎縮したら、僕らもつらいですし。
バイクもどんどん出さはったらよろしいです。
登場人物に感情移入するのに、スポーツ系のバイクで峠攻めが好きな人か?
とか、アメリカン系でロングツーリング好き?トラディショナルバイクで
気楽に風と戯れるのが好き?とかの人物像が知りたいと思うただけですから
ほんまに気にせんといてください。
これからも楽しみにしてまっせ〜。
皆様こんにちは。
夕べは久しぶりに外で飲んでしまい、うpできませんでした。
定期うpのお約束を守れずに、済みませんでした。
>奇数さま
どうもありがとうございます。毎度毎度勇気付けていただき、感謝して
おります。
>おかりなさま
専門は高分子化学で、お恥ずかしながら博士です。
>ロードランナーさま
なるべく毎週うpできるようにガンガリます。
>かつたかさま
どうもありがとうございました。そろそろ第一回目の山場にかかります。
今しばらくお待ちください。
河口湖に来てから季節の変化を感じるようになった。もともと富士山
麓に位置する場所なだけに草木は豊富である。泊まり込んでいるコテ
ージも木々に囲まれていることから、葉の色づきや朝夕に往来する鳥
たちの声に変化を感じるのはいたって自然のことだろう。そのさんは
トーナメントに出場するため昨日から不在である。船舶免許を持って
いない私は、そのさんがいない時間のほとんどを試験勉強として費や
している。陸から釣りができないこともないが、そのさん曰く「今は
余計なことをしないで欲しい」とのことだ。勉強と言われても最後に
教科書らしいものを開いたことに記憶がない。時間ばかりが過ぎ、気
まぐれに湖底映像をビデオで見たりと、我ながら集中力に欠ける。
そんなときである。もともとコテージには呼び鈴の類は存在していな
いので、来訪者が来ても気が付かない。とは言うもの、これまでにこ
のコテージに誰かが来たことなど皆無ではあるが。
その男は突然現れた。玄関先で在宅者を呼び出す声が聞こえたことか
ら私が出迎えた。黄色のポロシャツ。彼の第一印象だった。
「駆け出しさん、ですね?」
そう言うと彼は私に名刺を差し出した。
プロフェッショナルアングラー・児玉一樹。玄関先では失礼と思い、
私は快く招き入れた。彼は失礼しますと言い、程度のいいモカシンを
そろえて上がった。
奥に通った彼を私はダイニングテーブルに導いた。「おかまいなく」
と彼は言う。お茶くらいは出さないと。割と涼しい陽気だったので、
私はフォーションの515を少し濃いめに入れて出した。
「すみません、おくつろぎのところを。」
「いえ、ちょうど退屈していたところですし・・・。」
私に用事なのだろうか?名刺から察するにそのさんへの面会が目的で
あると思われるのだが。いただきますと一言、彼は香りを楽しみかの
ようにゆっくりと口に入れる。話し始めは彼からだった。
「初対面で失礼なんですが、一言お話をしようと思って。」
「何ですか?何か私のせいで悪いことでも??」
「いえ、そうではありません。正確に言うと、これから悪いことが起
こるかもしれません。」
「・・・どう言うことでしょうか?私は何も・・・。」
「もちろん、駆け出しさんが何かをしたと言う訳じゃない。僕が言い
たいのは、駆け出しさんを利用することで利益を得ようとするヤカラが
いると言うことです。」
失礼と言い、私は煙草に火を付けた。天井へゆっくりと昇る煙を見上
げる。
「私は最近この業界を知った人間です。多かれ少なかれ、利害関係で
メシを食っている人間がいることはよく理解しているつもりです。で
もなぜ私なのですか?それがどうもしっくりこなくて・・・。」
児玉と名乗った彼は自分のことを話し始めた。彼もバスプロとして名
を馳せていた時期があり、その頃に彼が直面した利害関係が私には興
味深かったが、何よりも気になったのは「日本バスクラブ(NBC)」
と言う団体の存在である。
「ではそのNBCと言う団体に属さないとプロにはなれないんです
か。」
「おおよそは当たっていますが、あくまでトーナメントプロと言える
存在についてです。そのもNBCの一員ですし。ですからトーナメン
トに出ないプロと言う形では属さないといけないと言うルールはない
ですよ。でも・・・。」
「でも?」
「どんな形になるか分かりませんが、必ずコンタクトは取って来ると
思います。必ずね。」
そう言うと彼は冷めてしまった紅茶を飲み干した。
123 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/22 10:56
では来週もよろしくお願いいたします。
・最近バス関係の情報にうといです。
児玉キタ━─━─━(・∀・)━─━─━◊◊
───高分子化学と言う事は工学博士様ですね!?
恐れ入りました。
ちなみに2ch化学板にも逝ったりしますですか?
クサイ下痢すんな
ねーちゃんポコチンあせってしゃぶってビックリ
オナーニするぜと手にポルノ
ふっくらブラジャー私に合ってる
変なねーちゃんアレにクルってセクース乱発
・・・俺の周期表の知識って偏ってるな・・・
SRX6解った!ギンギンの走り屋バイクですがな、サーキットの
草レースにそのまま出てくるような、スポーツ系のヤツですな。
短気筒600ccか・・・、本格的にレースに出るには
フレームとサスの強化がいるてツレがウンチクたれてますた。
二代目氏は仕事で何開発してはるの?マジで釣り糸とか?
>二代目氏
ヽ⌒ノ(´Д`)全然迷惑じゃ無いですよ
寧ろ二代目氏の駆け出し君シリーズには感謝してます
博士ですか〜(涙目
ちなみに俺は電気の設計者です
お疲れ様です。
不定期うpですみませんが、今回もよろしくお願いいたします。
今回は物語のターニングポイントなので、少し短めです。
>おかりな様
児玉さんは私の会社によく出入りしていました。
何度か呑んだことがあるのですが、雑誌で見るよりも感じのいい方でした。
>奇数様
周期表の覚え方にそんなのがあるんですね。
個人的にはあまり覚えていないのですが...。
>かつたか様
SRX6は昔とっても欲しかったバイクです。
でも中型免許は持っていません(涙
>初代様
いぜんISOのお話が出ていましたが、技術系の方なんですね。
ちなみに私はなんちゃって博士です(w
「駆け出しさん、あなたがどういうつもりでバス釣りを始めたかは問
題ではないんです。失礼ですが、あなたのことは少しですがそのから
聞いています。噂も聞いています、僕も釣り関係でメシを食ってます
から。あなたをみているとふと懐かしい感じがする。昔逢った誰かの
ような、そんな感じを。」
彼は私が煙草を吸い終わるまで無言で待つと、席を立った。
「それだけです、僕がお伝えしたかったことは。」
玄関まで見送ると彼は突然の訪問を詫びた。私も一緒に玄関の扉をく
ぐると彼のBMWまで歩いた。
「では。またお逢いできるかもしれませんから。」
重い扉が開く。
「待って下さい。」
児玉さんが振り向く。
「これ、よかったらと思って・・・。」
私は彼がおいしそうに飲んでいた紅茶の葉を少しだけジップロックに
入れて渡した。彼が笑う。我ながら不細工な仕草だが、自分の入れた
紅茶を気に入ってくれたことが嬉しかった。彼はそれを受け取るとキ
ャメル色のジャケットに押し込んだ。
「昔ですが釣りとは全く縁のない青年が沢山のバスプロと出逢い、そ
して成長していきました。」
突然児玉さんは語りだした。
「彼は釣りにはうとかったですが、何か引きつける魅力を持ってまし
た。ちょうど天草四郎みたいな感じかな?」
笑みの奥にある過去を懐かしむ感覚。
「彼は今どこに?」
「色々な人間が彼に期待しました。何かを変えてくれるんじゃないか
って。でも何も変わらなかった。いや、誰もが土壇場で変えることに
恐怖を感じてしまった。ある日、彼は自分が人間関係の狭間に押しや
られていることに気が付き、悩みました。今は・・・病院にいます。」
「病院!?」
「彼をこの世界に導いてしまったのは僕なんです。それが今でも心残
りで。」
BMWのドアが閉まる。乾いたエンジン音。小枝を踏みつぶすパキパ
キと言う音を残しながらバックする。夕暮れのコテージにバックライ
ト。車が止まる。ウィンドーが開く。
「彼の名前は?」
「駆け出し君。」
少しだけ風が冷たい。くわえた煙草をジッポーの揺れる炎が不器用に
火を灯した。
131 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/11/26 22:03
なかなか進展しないストーリーにもかかわらず、ご一読を頂けていますこと
深く感謝しております。
ここからです。
やっと導入部分が終わりました。
駆け出し君・・・、初代さんとことのリンクではなく
この言い回しでは、心の痛手での入院なんでしょうか?
今江さんと熾烈な戦いを繰り広げた、あの感動の河口湖が思い出される
駆け出し君が?
悲しすぎますや〜〜ん!
別の話やと考えてええんでしょうか?
>二代目
もつかれさまでし。
なにやらここから新展開ですか!
期待してます!!
前作をまったく知らない者です。
前作が保管されてる所があれば教えて頂きたいのですが。
よろしくお願い致します。
>134
>>50見ると、未HTML化だね
2chビューア買うしかないみたい
ガンガレ
>>135 あ゛〜、すいません見逃してました。
ありがとう御座いました。
>実はこの物語の本当の主人公は...
って書いてたのは彼だったのか!?
あの見事に完結した物語にどう関わってくるんでしょうね。
期待と緊張でこちらまで引き締まる感じっす。
こんばんは皆様。
不定期連載が続いてしまい、本当に済みませんです。
このまま開き直って不定期にさせていただこうかと(w
では今回のうpも宜しくお願いいたします。
>かつたかさま
いつもありがとうございます。この物語は前作の続きです。
ちょっと影のある駆け出し君を目指しております。
>ロード卵さま
新展開と言えるほどのものではありませんが、もうすぐ真の主人公が出て
きます(実はまだ登場していません)。
>奇数さま
いつもいつも暖かいレスをありがとうございます。
前作と大分雰囲気が違いますが、前作で書かせていただきました
今江さんと藤木さんの「心の中の殴り合い」の様な展開を書きたく
思っております。
では、宜しくの程を。
そのさんが帰ってきたのは翌日の夕方だった。トーナメントは霞ヶ浦
で開催されており、終了後すぐに戻ってきたと言う。私は不在中の行
動を簡単に話したが、児玉さんの件は伏せていた。
そのさんも「あ、そう」程度の返事しかなく、取り立ててトーナメン
トの報告などなかった。
その夜は遅くまで電話をしていた。なかなか寝付けなかった私は夜風
に当たろうと、コテージのベランダでまどろんでいた。リビングには
煌々と明かりがともり、時折泣き声も混じった声が聞こえる。私が関
与する範疇の話ではない。吸いかけの煙草をもみ消すと、肺の中の煙
を絞り出すように吐き出した。
翌朝、そのさんはいつもより早めに起きてきた。今日の予定はまだ聞
いていない。私はそのさんからの指示を待ちつつ、試験勉強をしてい
た。
「駆け出しさん、ちょっと。」
そのさんから呼ばれたのは昼ちょっと前だった。今から湖に出るから
支度をして欲しいとのことだった。私は手短に準備をすますと、ラン
クルにてそのさんを待った。奥河口湖に駐艇してあるボートまで約1
5分程度の道のり。車の中で二人の会話はなかった。
それから2時間後。私たちは河口湖の通称「ラジコン岬」と呼ばれる
場所に浮いていた。幾つかルアーの使い方を教わっていた私は岬周辺
を丹念にクランクヘベイトで探った。ブルブルと手先に来る振動を感
じながら、ゆっくりと引いてくる。そのさんは黙って見ているだけだ。
私はそのさんの様子を探った。これでは教師の顔色をうかがう生徒で
はないかと自笑していた。
引き重み。型は小さそうだが、何とかフッキングはしたらしい。
そのさんは黙ったままランディングネットを構える。
「急いで巻いて!魚が小さいからってなめてかかると痛い目に会うわ
よ。」
厳しい表情は初めてかもしれない。私は懸命にリーリングを続け、小
さなバスを抜き挙げた。ネットはいらなかったが、ボート際で突然暴
れ出したバスに私は躊躇してしまった。そのさんが慌てずランディン
グをする。
「言ったでしょ、気を抜かないって!」
たかが30cm程度の魚であるが、そのさんの執拗は激しかった。
「すみません、嬉しくてつい・・・。」
私はフックを外すとバスをそっと湖面に放した。少し冷たくなった湖
水で手を洗う。
「はい、これ」
そのさんがハンドタオルを差し出す。私はそれを掴むとそのさんに礼
を言った。
「ありがとう、助かりました。」
彼女の視線。その先には私はいない。岬を背に、鵜の島を見つめてい
る。ジーンズのポケットからヴァージニアスリムを取り出すと一本く
わえる。彼女が私の前で煙草を吸うのは初めてかもしれない。
着火とむせ返る咳。
「禁煙してたのにね・・・。」
右手の煙草を見つめるとそれを缶コーヒーの空き缶に入れる。
大きなため息。私から躊躇していた言葉。
「そのさん・・・」
「なに?」
「上手く言えませんが・・・負けない気持ちと負けないってことは別
だと思います。」
まなざしがきつく届く。沈黙。
先に眼をそらしたのはそのさんの方だった。
143 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/01 21:16
「勝ちましょう、次は。そう言う気持ちが自分を盛り上げる。その気
持ちが萎えないように努力する。とっても難しいですがそれが勝負の
世界ではないんですか?」
冷たい風が西から吹いた。そのさんの後れ髪が風に揺れている。
対峙した時間はどれほどだろうか。
「・・・なんだかシラケちゃうわね、そんな言い方。」
「私はそんな意味で言ったんじゃ・・・」
「ううん、気にしないで。悪い気持ちはしていないから。ただね、二
回目だなって。そんな言葉を聞くのは。」
そのまま会話は続かず、エレキを引き上げたそのさんはコックピット
に腰を下ろした。
「行きましょうか。この風は強くなるだけだから。」
エンジンキーが回る。この方が気持ちいいから。そう言った彼女は後
ろでまとめた髪をほどいた。加速とともになびく髪の毛。顔に降りかかる
髪をうっとうしく思う顔は彼女の気持ちそのものなのかもしれない。
・・・駆け出し君。
聞き取りにくい言葉だった。聞き返す前にそのさんから提案があった。
「明日は出掛けましょう。逢わせたい人がいるから。」
白波立つ湖面にはプリズムのような夕日が映っていた。
駆け出し君は精神を病んで(((( ;゜Д゜))))
───そのタン、ヴァージニア吸ってたのか(;´Д`)ハァハァ
そのタンはヘラヘラしてるだけじゃないんだね。
戦ってるんだね(・ー・)
>>博士
児玉タンにお会いでたんでつか!?
なんか問題起して追放されたとか聞きましたが───。
> 「上手く言えませんが・・・負けない気持ちと負けないってことは別
> だと思います。」
> 「勝ちましょう、次は。そう言う気持ちが自分を盛り上げる。その気
> 持ちが萎えないように努力する。とっても難しいですがそれが勝負の
> 世界ではないんですか?」
初バス直後に、こんなにクールに、こんなに熱く語って
しかもワザトラシサが無いとは!(美味しんぼみたいだな>俺w)
このオトナな魅力あるキャラ生み出しただけでも今作の存在価値あるかと。
強気な口調に隠れたそのタンの弱さとの対比が怖いくらいっす。
あと、お礼言うのはコッチの方ですぜ。改めて毎回イイもの感謝です。
駆け出し君はやっぱり・・・、鬱病かなんかで?
水と親しみ、魚戯れて心を解放してくれる釣りで。
人間関係とか、仕事の憂さとかをその瞬間すべて忘れて
一本のラインと竿先が自分の世界にかわる楽しさが、プロともなると
後悔や苦悩がつきまとうんでしょうなぁ・・・。
ぜひ駆け出し君は、団体とか人間関係に煩わされへんとこで
一般バサーとして復活させてやってほしいんですが、物語は
そうはいかんような悪寒・・・・。
お疲れ様です。
遅くなりましたが、今回の分をうpさせて頂きます。
>おかりなさま
児玉さんとは逢った回数は少ないですが、保険の仕事でうちの会社に
良く来ていました。何度か呑みに行ったこともあり、いい人だと私は
感じております。しかし残念ながら彼のJB時代の話は良く知らないので、
なぜJBを去ったのかは分かりません。お答えになっていないですみません。
>奇数さま
励ましのお言葉、とても嬉しく感じております。
確かに初めてバスを釣ったときの言葉ではありませんが、今回のテーマの
ひとつに「バスプロの気持ち」と言うのがあります。もちろん私の勝手な
話なので、そんなことを思っているかは別ですが、彼らを一人の人間として
表現をしたかったのです。それが私の仕事ではないですが、あくまで一つの
読み物として感じていただけると幸いです。
>かつたかさま
先ほど児玉さんの話が出てきましたが、彼からは業界の裏話よりも苦労話の
方をよく聞かせていただきました。駆け出し君と言う一人の青年が人間関係の
中で葛藤し、それがどの様に人々への影響になったのか?と言うことも私が
書きたいことなのですが、実は物語りはこの先ダーティーになります。
えは今回も宜しくお願い致します。
白い建物にはあまり縁がない。特に病院と言う名の場所には。よく晴
れた日だった。私はそのさんとこの場所で待ち合わせをすることにな
っている。河口湖ICから名古屋方面に向かって約1時間。小淵沢と
呼ばれるICで降りた私はそこが清里に近いことを知った。病院は丘
の上にあり、なだらかな何も言わずにロビーで待つ。大きな病院だか
らなのか、受付で呼び止められることはなかった。ロビーのソファー
に腰掛ける。ロビーからは外の庭が見渡せるように一枚ガラスで仕
切られていた。天気がいいせいか、庭には数人の患者らしき人々が各々
の時間を過ごしている。話し込む人、本を読む人、編み物をする人。
ベンチにたたずむ青年と眼があった。微笑。気のせいかもしれないが
彼は私に微笑んだ。眼をそらすと丘から見下ろせる盆地に顔を向ける。
普段なら気にとめることもなく、あるいは気色悪い気持ちになるかも
しれない彼の行動に私は何かを感じた。気まぐれか、好奇心か。隔て
られたガラス壁の角に出入り口を見つけた。私は腰を上げると
出入り口から外に出た。思ったより暖かい。バイクで冷やされた身体
が暖められる。彼は私に無関心の様子で丘の向こうの景色を見ている。
レンガ路のテラスを歩き、彼の近くに寄る。隣。私の気配に気付いて
いるのか?しかし私の興味はそれほど長くは続かなかった。無言の相
席に飽きた私は彼の微笑が単なる気まぐれ(私の行動の方がよっぽど
気まぐれなのだが)であると完結し、そのさんを待つべくベンチを立
った。
「駆け出しさん!なんでここに?」
後ろに立つ陰。毎度余裕を感じさせるコーディネートがこの人からバ
ス釣りの臭いを消している。
「渡辺さん。どうして?」
ベンチの彼が私と渡辺さんの会話を見上げる。彼は何を思っているの
か、次第にその顔つきが険しくなる。
「と、取りあえずここは・・・。」
そう言うと彼は私の背中を押す。何となくであるが私はその場にいて
はいけないのだと察し、彼に頷くとベンチを後にした。ふいに右腕の
袖が捕まれた。視線で手の出先をたどる。そこには険しさがやや消え
た彼の右腕があった。渡辺さんが再び頷く。私も頷くと、再びもとの
位置に座った。ふいに現れた渡辺さんは彼と話する。会話の内容はた
わいのないものばかりだが、時折耳に残る人名。私の知っている限り、
そのほとんどがバス釣り関係者の固有名詞だった。じっと一点を
見つめる彼を渡辺さんがおどけた顔で談笑に誘っている。不思議だが、
この光景が奇妙に見えない。そのさんは渡辺さんがここにいることを
知っているのだろうか?私はそのさんが見えた時に居場所が分かるよ
うにと、心なし視線をガラス越しのロビーに移していた。会話は続く。
話の前後は分からないが、突然私の耳にあるフレーズが入り込んだ。
「勝ちましょうよ、次こそ。そんな言う気持ちが自分を盛り上げるし。
その気持ちが萎えないように努力すっるて難しいけど勝負の世界なん
だから。」
風の中の声。
・・・ただね、二回目だなって。そんな言葉を聞くのは。
・・・彼をこの世界に導いてしまったのは僕なんです。それが今でも
心残りで。武者震いとはこんな気持ちなのだろう。私は眼の前の青年
に息を飲む。かつて駆け出し君と呼ばれていた青年は今度ははっきり
と私に向かって微笑んでいた。
150 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/06 17:48
今回もご一読いただきましたこと、感謝申上げます。
次回も宜しくお願い致します。
>初代さま
レスが遅くなりましたが、電気関係のお仕事なんですね。
設計者と言う言葉に「すごい」と思いました。
駆け出し君がどんな状態、症状なんかはまだ伝わってきませんが
物語はダーティーな・・・、まだこれから彼には悲惨な運命が?
もうすでにウルウルしそうになります。
どうか駆け出し君にはささやかでもハッピーエンドを・・・・。
寒くても、風は穏やかで日差しがやわらかい日なんでしょね。
この先読むのが怖いよ。
いやいや、バッドエンドには気が高ぶるねぇ。漏れは―――。
ピアノの静かなBGMが流れるようなシリアスシーンですな。
大変お待たせをしました。
遅くなりましたが、今回の分をうpさせて頂きます。
保守をして頂けましたこと、深く感謝申上げます。
>かつたかさま
初代様の所とは本当に違う物語になってしまいましたが、毎度のご声援
ありがとうございます。今後駆け出し君は少しだけ登場します。
マニアックな話になりますが、ちょうどZZガンダムに登場するカミーユの印象で
書いております。
>奇数さま
静かにやさしい笑顔。今の駆け出し君はそんな感じです。
その静けさが必ず爆発します。
>おかりなさま
毎度のご一読、深く感謝申上げます。
バッドエンドにはなりません。しかし全編を通じて思い雰囲気にはしようと
思っております。その中でほんの少しだけ見え隠れする希望が次の物語を
つないでいく。そんな感じで書かせていただいております。
かなりマニアックな作品になってしまい、それでもお読み頂いております
ことに深い喜びを持っております。どうもありがとうございます。
うつろな目をした青年だった。私の袖に手を掛けたまま黙り続ける彼。
渡辺さんからの言葉がなければずっとそのままだったかもしれなし。
「風が出てきたから中に入りませんか?駆け出し君も、ほら。」
渡辺さんに手を誘導されながら彼(駆け出し君とよばれた青年)はゆ
っくりと立ち上がった。袖をつかまれている私もちょうど渡辺さんと
は反対側の腕を誘導する格好になり、そのままゆっくりとガラス戸へ
と向かった。
彼は怯えている様子もなく、普通見には寡黙な青年だろう。もちろん
私は彼がどんな人間で、渡辺さんとの関係など全く知らない。そのさ
んが逢わせたかった人物。それが彼であることは間違いないだろう。
しかし、彼女は私に何を感じて欲しいのだろうか?光の関係で遠目か
らは反射しているガラスも近づくにつれて徐々に中の様子が見えてき
た。先程まで私が腰掛けていたソファーの近く、そのさんは立ってい
た。私は視線をそのさんに送る。そのさんは何かを理解したかのよう
に頷いた。
扉を開け、中に入った。ゆるめの暖房が身体を包み込む。彼はそのさ
んの姿を見つけると、「やあ、そのさん」とはっきりとした口調で挨
拶をした。
「そのさん・・・」
私もこのシチュエーションに対する説明が欲しい。その気持ちを口に
出したが、私と渡辺さんの腕をふりほどいた彼はそのさんへと向かっ
ていった。彼女の笑顔が彼を出迎える。ソファーに腰をおろした二人
はまるで私たちのことなど気にすることもなく談笑にふける。軽くた
たかれる背中。その光景を見ていた私を渡辺さんが「ちょっと」と言
い、その場を去った。
渡辺さんが立ち止まったのは彼がいるロビーから少し離れた場所にあ
る、一見幼稚園のような場所だった。大小さまざまな玩具と少し破れ
かかった絵本がきれいに整理されていた。
「すみません、席を外させてしまって。お気持ちは分かります。多分
何のことだか理解できていない、そんな感じじゃないですか?」
「ええ、全く。私はそのさんと待ち合わせをしているところでした。
でも何でここに来たのかは知りません。それと、こんなところで渡辺
さんにお逢いできたのも予想外ですが。」
微笑。今日は眼鏡を掛けていないせいか、笑顔が柔らかい気がする。
たばこを一本くわえ、そこが病室であることを想い出した私は苦笑し
ながら戻す。
「じゃあ、順をおってお話をしましょうか、彼のこと、僕がここにい
ること、そのが駆け出しさんをここに呼んだことを。」
私たちは部屋に立てかけてあったパイプ椅子を取り出すと、向き合う
形で椅子を広げた。
「彼は駆け出し君と呼ばれていたバサーでした。たまたまなんでしょ
うが、彼の周りには沢山のバスプロたちが集まるようになった。彼に
引きつける何かがあったのでしょうが、どうでしょうか、実際に僕が
初めて逢ったときに感じたのは安心感かもしれません。なんて言うか、
気兼ねなしに話せる相手、心を開ける友人って感じかもしれない。
僕が彼に逢ったのはちょっと複雑な経路でした。僕がプロ契約をして
いる釣り竿メーカーに僕の師匠に当たる人がいて、その人の行きつけ
の居酒屋に行ったとき、そこのマスターが駆け出しマスターって呼ば
れていて、そう言えば駆け出し君に逢ったことあるか?って話しにな
りました。もちろん僕は全く知らない。でも話しを聞いているうちに
だんだんと惹かれてくるんですよ、彼の存在に。」
「偶然って重なるもんで、そのが駆け出し君のところに泊まったこと
があるって言う話しを聞いて、彼の家を訪ねました。普通のアパート
でした。でも一歩部屋の中に入ると何だか実家に帰って来たような錯
覚になるんです。くつろげるって言うのかなぁ。彼は突然の僕の来訪
に何も言わず、10分もすればうち解けていました。彼との付き合い
はそこからです。それから彼は色々なバスプロに大きな影響を与えて
きました。例えば・・・、失礼ですが、駆け出しさんは今江さんをご
存じですか?」
「ええ、一度だけですが釣り博でお逢いしたことがありますが、その
程度です。もちろん、EGのことはそのさんから聞いていますが。」
「そうですか。それなら固有名詞を出してもいいですよね?その今江
さんと彼は壮絶なデッドヒートを繰り広げました。もちろんトーナメ
ントでの争いですから、今江さんも彼には一目置いていますし、何よ
りも山下会長が彼のカリスマ性を欲しがっていたことも事実です。山
下会長のことはご存じですか?」
「・・・いいえ、と言った方が正解かもしれません。JB関係の話です
よね?」
「そうです。山下さんはJBとNBCの大綱を引く方です。」
「でも何でその山下なる人物が彼を欲しがるのでしょうか?オーナー
だったら発言一つで自分の思い通りになるのではないでしょうか?」
「確かにそう言う部分もありますが、手に入るモノと入らないモノが
あるとしたら、彼自身がその後者に当たります。彼はその話には乗ら
なかった。でもそのことが彼の心を傷つけてしまったんです。」
「彼の人となりは何となくですが分かりました。でもそんなカリスマ
性の高い青年がなんでこんな病院に?」
「彼は僕たちバスプロの中で特別だって言いましたよね?その特別っ
て言う言葉が彼をいいように扱ってしまうことになってしまったんで
す。誰もが彼を担ぎ出す。実は最近では落ち着きましたが、バスフィ
ッシング自体の存在が危ぶむ話しが多々ありました。」
「琵琶湖問題とかの害魚論ですか?」
「はい。琵琶湖がリリース禁止になってから各地方自治体はその地域
にある湖の清浄化を目的でバスの駆除に努めようとしました。そんな
中で僕らバスプロは何もできなかった。と言うか、僕らはそう言う矢
面に出てバスフィッシングの楽しさを市民レベルで広告するスピーカ
ーとして彼を利用してしまったんです。」
「え?ってことはバスプロは誰も彼の支援をしなかったと・・・。」
「ええ、お恥ずかしながら。一部のプロは彼と共に行動を起こしまし
たが、表に出るなと圧力がかかりました。そう言うことは彼にやらせ
ておけばいい。彼を表に出す準備さえしておけばほとぼりが冷めるま
では安心してトーナメントを続けられるから。誰の圧力とは言えませ
ん、僕の口からは。」
ここまで話し、渡辺さんは一息ついた。
「彼は拒みませんでした。自分が広告塔になり、駆除派からの必要以
上の攻撃にも耐えました。それにはある目的があったからだと後にな
って彼から聞かされました。彼への中傷は度を超しました。マスコミ
からの弾圧、市民団体による反対運動は一部の過激な人達の行動も産
みました。彼は悩みました。自分のやっていることは本当に正しいの
か、と。」
「すみません、渡辺さん。」
話しを中断させてしまったが、確認したいことがある。
「その目的とは何ですか?もちろん彼のプライベートなことでしたら
聞かなかったことにしますが・・・。」
「いえ、構わないでしょう。結果的にはそれが僕自身の持つ目的でも
あるから。」
私は手のひらの汗を握りしめた。
「彼が公の場に出るにあたってそれを止めた人がいます。でも彼は笑
いながら言ったそうです。あなたはバスプロでいて欲しい。僕にでき
ることはそんな大好きなバスプロたちが余計なことを考えずに活躍で
きるような場所を整備しておくこと、だと。そのために僕が出なけれ
ばいけないところには出る、と。その人は約束をしました。少しだけ
でいい、少しだけでいいから耐えてくれ。効力のある発言をするには
効力のある実績が必要だから。そこにもう少しで手が届くから、それ
を手に入れたら君のもとに帰ってくる。そして一緒に活動をしたい。
彼は待ちました。その約束をきっとその人は叶えてくれると信じて
。しかしその人は帰ってこなかった。むしろ彼の行動を非難するコメ
ントを執筆することもあった。でも彼が信じたんです。その人を。そ
うするうちにだんだんと駆除に関する活動が活発化して、ついに彼は
対面することになりました、その人と。」
160 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/15 21:29
では今日はここまでにさせて頂きます。
どうぞ次回も宜しくお願い致します。
>二代目様
すんません・・・泣いていいですか?なんか泣けてくるな〜
それからマスターが感謝してましたよ
今特急の中です。忘年会や年末だのでなかなか物語が進みません
見習いたいです・・・
ううっ、相変わらずイイ所で切るなぁ―――。
回想シーンの駆出し殿に(つд`;
―――初代殿が連載中の「その」と、ここに出てくる「その」のギャップにw
も り あ が っ て ま い り ま し た
複雑な人間模様が激しくそそる。
二代目ガンガレ。
トテーモおもろいです。できれば過去の駆け出し君の話を教えて下さい。
(スンマセン、2chビューアー持ってません)
こんにちは、皆様。
今回の分、うpさせていただきます。間延びしてる感がありますが、今回も宜しく
お願いいたします。
>初代様
年末行事、お疲れさまです。
私も飲み会が重なってしまい、かなり気怠い毎日を送っております。
特急とはどの沿線でしょうか?最近特急よりも「特別快速」と言う名前の方が
多い気がしますが...。
>おかりなさま
初代様の前作があってこその「駆け出し君ワールド」なので、回想シーンは
書き手の方もググっとくることがあります(手前みそで恐縮です)。
>ロード卵さま
実はこの作品、二部構成で考えています。
もうすぐ第一部は終わります。
当初は初代様アク禁中の場つなぎで第一部のみを書こうと思ったのですが、
風呂敷を広げすぎてしまいました。
ご一読頂けるようでしたらこのまま続けさせていただきます。
>164さま
はじめまして。私もビューアー持っていないので読めないんですよ(涙)。
今後もよろしくお願いいたします。
「もちろん非公式の場ですが、雑誌の対談と言うことで害魚論について語り
合いました。その時です。彼は気付いたんじゃないかと思うんですよ。
その人の気持ちが。自分が信じたことが実は本当ではなく、バス業界の
広告塔ではなく、彼の広告塔だったと言うことに。その瞬間です、彼が
倒れたのは。取材の記者は知り合いだったんですが、彼の言葉では倒れた
駆け出し君はとっても気持ちよさそうだった、と。疲れて、疲れ果てて、
泥のように眠っている感じだったらしいです。そのまま病院に運ばれました。
病名なんてありません。過労だとは思うんですが、それをきっかけに彼は
自分の心を閉ざしてしまった。その後大勢のバスプロたちが彼を見舞いに
来ました。でも彼らの顔を見るなり、駆け出し君は暴れ出すんです。
それも凶暴なくらいに。そんな噂を聞いてから見舞いに来た僕は、正直ビビリ
ました。でもなぜか僕には何もしないんです。僕だけでなく、そのにも。
今バスプロで彼に逢えるのは僕とそのだけなんです。」
突然ドアが開いた。そのさんがゆっくりと姿を表す。
「ここだったんだ、二人して。」
途切れた緊張感。そのさんの登場で渡辺さんはもう話しを続ける気がなくなった
ように見えた。私もそれ以上は何も聞かず、立ち上がった。
「駆け出し君、寝たわ。」
「そうか。」
二人の会話はそれだけだった。それ以上続かない会話。
先に部屋を出たのは渡辺さんだった。残された私とそのさん。
「ごめんなさいね、こんな所に呼び出して。」
「いえ、いいんです。バイクで遠出もしたかったし、それに・・・。」
「・・・逢えたんですね、彼に。」
「ええ。逢えました、駆け出し君に。」
ぼんやりと部屋の中に目の焦点を合わせる。
大人の男女にはあまりに似つかわない部屋。床に転がっているおもちゃの電車が
妙に滑稽だった。
「新吾ちゃんにはいつ?」
「先に着きました。そのときテラスで彼と一緒のところを。」
そのさんは「そう」とだけ言うと、また黙り込んだ。
「出ましょうか、ここ。」
まるで後味の悪い別れ話のようだった。
部屋を出た私を渡辺さんはが待っていた。明らかに話の続きをしたそうな感じ
だったが、そのさんは話の前後を知らないため、私を駆け出し君と呼ばれた青年の
部屋へと案内すると言った。
「いいんですか、彼。寝てるって言ってませんでしたか?」
「うん。そっとしてくれれば。それと彼に逢っても彼は何も言わないわ。私が見て
欲しいのは彼の部屋なの。」
そう言うと私に背を向けてエレベーター口へと向かう。私は渡辺さんに眼で合図を
送ると、彼は理解したかのように、何も言わずそのさんとは反対側へと歩いて行った。
エレベーターは5階で止まった。そこはとても静かな場所で、エレベーターホールに
集まっている面々は扉が開くと一斉に顔をこちらに向けた(正直驚いたが)。
彼の部屋は廊下の一番奥だった。軽くノックをする。ノブに手を掛けるとそのさんは
ゆっくりと戸を開いた。
中は静かだった。廊下の雰囲気とは異なり、ここでは流れる空気すらその動きを
止めてしまっているようだった。
部屋に入ると真っ先に私の目に飛び込んできたのは数々の色紙である。
「驚くでしょ。これ、みんなバスプロたちから送られてきた励ましの色紙なのよ」
私にはよく分からないが、サインの横に一言添えられているものが多い。
「鬼手仏心、Go for it!、モリゾーも頑張るで、ワシを笑わせてみぃ、君の魚が
見たい!・・・なんですか、これは?」
「彼にゆかりのある面々が彼の好きな言葉をつづったのよ。」
「大じゃないけど好きよ・・・これはそのさんですね」
「恥ずかしいわ、こんなところで」
微笑をするが、そのさんはすぐにもとの顔つきに戻った。
仕切られたカーテンを開けると、そこには沢山の竿に囲まれた彼が静かに寝ていた。
置かれている竿はグリップ部に先の色紙同様、沢山のサインが書かれている。これも
彼へのプレゼントだろうか?
「彼はね、本当に凄かったの。」
ベッドの脇に立ったそのさんがつぶやいた。
「彼がいなかったらバス業界はどうなっていたか分からない程なの。みんな彼に
感謝しているわ。とってもね。」
傾きかけた太陽が西日となって病室に差し込む。私は余計なことと感じながらも、
窓のカーテンを閉じるため、そのさんの反対側に回った。
「・・・そのさん。」
彼女が泣いている。
私はカーテンを閉めると彼女の顔を見ないように、部屋のドアへと向かった。
「待って、駆け出しさん。ちゃんと話を、私の話を聞いて下さい。」
ノブに掛けた手を止める。
「分かりました。さっきの子供部屋で、渡辺さんから詳しい話は聞きました。」
「そう・・・。なら話の続きかしら。」
向き直り、私と向き合う。
「ここには日本中のバスプロからの激励が集まっているわ。でも1人だけいないの。
1人だけ、彼に無関心な人がいるの。私はそれが許せなくて。許せなくて、許せなくて。
でもね、それは私の責任でもあるの。だからここに来る。せめてもの償いだから。
それしか私にはできないから。」
彼の寝息。カーテン越しの日差しはさっきまでとは変わってよりオレンジ色になっていた。
「そのさん」
私は再びノブに手を掛けた。
「同情はしません。本当にそれがあなたのせいなら、あなたが解決をすればいい。私は
初めて彼に逢いました。渡辺さんからも話を聞きました。私を駆け出しと呼ぶ。会社では
いいでしょう。でも、それが単に名前だけでなく、彼と同じものを求めているのなら
それはやめて欲しい。私は仕事で釣りをしているだけです。彼の代替えではない。」
「駆け出しさん・・・」
最後は聞き取れない。閉じるドアに書かき消された声は、結末を見ずに席を立つ映画のようだった。
170 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/17 16:42
本日もご一読ありがとうございました。
初代様の「そのさん」と大分イメージが違いますが、お許し下さい。
(決して美化しているのではないのですが...)
ライブで読んだYO〜。
二代目、乙です。応援してますからガンガッテ下さい。
沢山の人がROMってますよ。
>二代目
乙!
初代は初代風味、二代目は二代目風味やね。
勿論2部も楽しみにしてますよー。
連日の書き込み・・・、油断してました・・・。
つらいです、苦しいです、けど読まずにはいられません。
ボクなら一気に暴力で解決、というか心を閉ざさないかんような
ストレスは、その怒りが産み出す欲望に身を任すでしょう。
もう、ささやかなハッピ^エンドなんていりません!
カタルシスを・・・、前作を上回る感動を期待してます。
まったく今江のヤラウヽ(`Д´)ノ プソプソ
思えば、今江って鍋常と同じなんだよね。
読売新聞社グループ社長で読売巨人軍オーナー。
莫大な財力にものを言わせ、他球団から四番打者を次々引き抜いていく―――。
鍋常(;´Д`) ハァハァ
「Keep Casting Norio Tanabe
for Kakedashi」
皆様、お疲れさまです。
今回もうpをさせて頂きます。今回のうp分で取りあえず一段落となります。
では本日もよろしくお願いいたします。
>171さま
はじめまして、でしょうか?
お読み頂けておりますこと、非常に嬉しく思っております。
今後とも駆け出し君をよろしくお願いいたします。また初代様の連載分もお読み
いただければ駆け出しワールドがより鮮明になると思います。
ttp://sports.2ch.net/test/read.cgi/bass/1049030373/l50 >ロード卵さま
お返事ありがとうございます。喜んで第二部へ進めさせていただきます。
第二部は少しだけダーティーです。
>かつたかさま
個人的には私も欲望に身を任せるという感じなので、不適切な発言での
トラブルが多いです(w
困ったモンです...。
>おかりなさま
...ネタをばらされてしまいました(w
今回のうp分をお読み下さい。ちなみに鍋常との比較、私も同感です。
野球にはうといのですが、鍋常は横綱審議会の理事でもありますよね?
相撲関係で「えぇ!」って思ったことがありました。
バイクを止めていた駐輪場に渡辺さんは立っていた。
私はすっかり興味がなくなっていた。バス釣りにも、バスプロにも、目の前の
彼にも。
目が合う。2秒間。視線をそらした私はバイクにまたがった。
2度目。彼に肩を掴まれるのは慣れていない。
「まだお話をしていないことがあります。」
「ならば肩の手をどけてもらおう。私には関係のないことだ。」
「いやです。離せば二度とあなたは僕の話を聞いてくれない。」
「聞く気などない、と言ったらどうするのかね?」
軽い挑発。乗ってくるのか?
「彼に逢った。それだけでも聞く義務はあります。」
私はメットをかぶり、セルを回す。彼の手の力が強まる。
「振りほどけばいいでしょ、できるなら。僕はあなたに言っておきたいことが
あります。」
アクセルを回す。乾いたエンジン音が駐輪場に鳴り響く。
「あなたには関係のないことだ。それは分かっています。だからこそお願いが
あります。」
スタンドを上げ、ブレーキを握る。バイザー越しに彼を見る。私は思いっきり
アクセルを開いた。スライドする後輪。
煙を上げながら泣く後輪の振りに彼は手を離さなかった。
私はアクセルを戻し、エンジンを切った。メットを取る。少し汗ばんだ彼の顔。
「駆け出し君が最後まで信じ、今でも信じている人。僕はその人を倒したい。
僕の手で、倒したい。そして彼に謝罪してもらうんです。駆け出し君の前で。
そのために力を貸して欲しいんです。僕にも、そのにも。」
「その人の名は?」
「今江克隆。」
私はエンジンを掛けた。メットを彼に貸す。黙って彼は後ろに乗る。
病院を出た私は下りのワインディングを攻めた。
「僕には夢があります。」
大きな右カーブ。彼は必死に私の腰にしがみつく。
「今江克隆に勝ちたい。今までは夢でした。でもその夢にも目的ができた。」
連続した左右。夕暮れの山間。ちょうど夕日が山陰に隠れた左だった。
飛び出し。ブレーキ。車体が大きく倒れる。ハンドル。胸に押しつけバイクが滑る。
彼。頭を抱えながらガードレールに。
しばらくして私は立ち上がった。渡辺さんに怪我はなかったようだ。
メットを取るといつもの笑顔があった。私は何も言わなかった。
でもその気持ちは彼に届いたのかもしれない。
夕暮れの坂道で、私と渡辺さんを見つめる一匹の猫だけが無言の約束を見守っていた。
178 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/18 09:28
ではまた次回を宜しくお願いいたします。
ガッ、ガンガレ
毎度楽しませて頂いてます
飛び出した猫はマグナムですよね!?
え?違う?そりゃそうですな(w
連日のうp、もつかれー!!
2部も楽しみに読ませていただきますよー。
まったく―――
宅間ちゃんは飼い主としてちゃんとマグナムを監理しとかなきゃ! (w
ナベちゃんを無視して逝っちゃう事も出来たのに
それが出来ない―――
憎い━─━─━(・∀・)━─━─━!!
そのタンはともかく、何故にSHINGO君には心を閉ざさないんでしょね?
後々カギになってくる気が・・・
5番保守・吉永
こんにちは皆様。
大分間が開いてしまい、大変恐縮です(おかりなさま、保守感謝いたします)。
では今回の分、うpさせて頂きますのでよろしくお願いいたします。
>179さま
声援、ありがとうございます。
駆け出し君は初代様のものとは大分様相が異なっておりますが、お読みになって
頂けるだけで本望です。
>初代様
飛び出しはマグナムです(w
初代様の作品も毎回熟成度が上がっておりますね。楽しみに読ませて頂いて
おります。
>ロード卵さま
毎度ありがとうございます。今回から二部に入ります。予定では三部まであるの
ですが、宜しいでしょうか?なかなかバスプロが出てこないので、面白みに
欠けますが、今後ともよろしくお願いいたします。
>おかりな様
保守をありがとうございます。私的に見て、SINGOプロはキャラ的にはいい方
なのでしょうが、ヒーローとの掛け合いはどうも見ているこちらが恥ずかしくなる
かぎりです。本当はもっと熱い人なのでは?そう思って登場させました。
>奇数さま
おっしゃるとおりです。SINGOプロに心を開くのは今後の鍵になります。
実はまだ登場していませんが、その反対に大きく心を閉ざし、その人の顔を
見るだけで錯乱する人がいます。その人の名は...。
ではよろしくお願いいたします。
それから3ヶ月。私はそのさんと日本中の湖を廻った。もちろん会社からの命令で、現地
でのデモンストレーションも欠かさなかった。バス釣りを初めて約8ヶ月。テクニック等
はまだまだだが、一通りのことはできるようになったし、いっぱしのバス論も吐けるよう
になった。最近の私の仕事は業務であるラインのテスターだった。開発品を湖で酷使し、
その情報をデータ化して本社へフィードバックする。データ収集にはそのさんや河辺さん
の意見も採り入れ、最大公約数的な部分を報告することもある。河口湖の山荘は今では私
が一人で住んでいる。そのさんが山荘を出ていくのは自然だった。ある日何も言わずに部
屋がきれいになっていた。しかし着替えや身の回りのものを少しだけおいていったところ
を見ると、また戻ってくるのかもしれない。今の私には関係のないことだが。
どうして病院で冷たくしたのか分からない。今江克隆と言う名前に反応した理由もだ。駆
け出し君と呼ばれた青年に何も感じなかった。同情と言うほど面識はない。しかし、今江
さんがこれらの全てに絡んでいることが分かったとき、私はなぜか身体を動かしていた。
今江克隆に勝ちたい。新吾はそう言っていた(あの一件から新吾と呼んでいるが・・・)。
策はない。策があったところで何ができるのだろうか?もともとスタート地点が違いすぎ
る。戦略がないところでの戦術は何も意味がない。しかし、前には進んでいる。そんな気
になっていた。
テスターとしての生活は何もかもが新鮮だった。
「駆け出しさん、今日もお疲れさまでした。」
柳栄二と名乗る男と今日は一緒だった。明るい性格からは想像ができないほど人に気を遣
う。
「こちらこそ。先週、宮本さんと一緒だったんですよ。話にいつも柳さんのことが出て。」
「そうっすか。アニキには最近めっきりご無沙汰で。」
ランチまでボートを押す。一緒にシートをかけながら雑談をする。その中で彼の口から興
味深い言葉が聞けた。
「そうそう、駆け出しさんの会社、ラインの分野を買収するって話、ホントですか?」
「何となく。噂では聞いてましたが、私もはっきりとは・・・。でもなんで知っているん
ですか?」
「う〜ん、ボクも噂だからなあ。社員さんよりも先に知ってるっつ〜のが怪しいっすけど。
この前北浦でガイドしたお客さん、関西方面の人だったんですよ。商社関係なんっすけど、
昼メシの時に釣り具の話になって、ルアーとかを扱ってる商社って言うんっすよ、その人。
それで、今度関東の大手メーカーのライン部門が関西のメーカーに買収されるって言う話
聞いて、ボク、ピントきちゃって。それで、すかさずそれってEGですか?って聞いたらそ
うだって。今日、駆け出しさんに逢えるって言うから、ちょっと駆け出しさんの会社のこ
と調べたら、おんなじなんっすよ、その人が言っていたメーカーと。」
私は黙り込んだ。その雰囲気を柳さんは感じ取ったらしい。
「あ、すんません。ボクって本当に気が利かないから、調子乗っていらんことしゃべって
しまって。すんませんでした。」
柳さんはそそくさと車に戻る。今江克隆。どうやら彼とは縁があるらしい。ならばその縁、
見届けてみよう。
翌日、私の携帯に元上司から伝言が入っていた。会社に来て欲しい。それだけだったが、
私には会社に行かなければならない理由がある。ことの真相を確かめるため。社命であろ
うと私は会社契約のプロである。オーナーが変わることは当然私の耳にも入ってしかるべ
きだ。しかし私へその情報を教えてくれたのは柳栄二と言うバスプロだった。
久しぶりに帰った会社で私を出迎えたのは元上司だった。実際には今も上司なのだが、私
はフリーの社員というあつかいなので、評価や査定は自己活動がそのまま結果になる。よ
って上司は存在しない。
「駆け出しさん、お久しぶりです。」
「・・・私がどうしてここに来たのかお分かりですか?」
元上司は口をつぐんだ。答えの代わりと言うべきか、彼はそのまま私に背を向けてエレベ
ーターへと向かっていった。追いつく。滑り込んだエレベーターの中は無言だった。11
階。大会議室のある階だった。そのまま上司の後を追い、会議室に入る。
中には社長と取締役などが既に集まっており、私の所属するライン部門の上役たちも集ま
っていた。私は来るべき日に来たようだ。
私の登場に取締役たちは不思議そうな顔をしていた。なぜここにいる。そんな顔つきであ
った。
「ゲストがいるみたいだな、今日の会議は。」
社長の一言で私の存在は認可されたらしい。私は大きな会議机から少し離れた場所で腰を
下ろした。そして会議が始まる。議題はもちろん「ライン部門の売却」だった。
幾つかの素案が持ち挙がっていたが、結局は売却という方法を取るのが一番だという結論
を延々聞かされた。発言の中に聞き慣れた釣り具メーカーの名前も多数挙げられていたが、
ひときわ私の興味を引きつけたのはEGと言う名前だった。
「関西の大手メーカー」として紹介されており、その業績をまとめた資料が配付された。
その中には今江さんの名前ももちろんあった。
「・・・ところで、本日は急な会議にも関わらず、EG代表の方が弊社へお見えになってお
ります。」
突然の発言とともに、元上司に案内されてきたのは紛れもなく今江克隆本人であった。
紺のダブルに身を包んだ今江さんは丁寧に挨拶をするとEGの社是とバスフィッシング界
におけるビジョンをこくこくと語り始めた。その姿からはバスフィッシングの面影は感じ
させず、立派なネゴシエーターであった。
この人が駆け出し君を・・・。
私は彼の話をじっと聞いていた。こうやって彼の話を聞くのは釣博以来であるが、私には
流暢に主張する彼と病院で私の袖を掴んだ駆け出し君の姿が重ならない。
「・・・以上です。」
一通りプレゼンを終えた彼は、一礼をすると元上司に連れられて退出して行った。めでた
く調印と言うのだろう。その後、私の処遇が決まった(つくづく同席してよかったと感じ
たが)。私は退職という形でEGへ再就職するらしい。待遇は同じくテスター。しかしEG
には既存のバスプロがいると言うことから、あくまでそのサポート兼データ収集役が私の
仕事だった。退職届は既にできていた。提出をしていないのは私だけらしい。
「ここでサインをしてもいいですか?」
私はその場でサインをすると、静かに会議室を出た。
出来レースだったのだろう。私をここに呼んだのは。エレベーターに乗り込む。1階を押
したのだが、4階で止まった。金髪とダブル。閉じた空間の中で、私はじっと彼の顔を見
た。眼鏡の奥にある優しい目が印象的だった。
「よろしく、駆け出しさん。」
今江さんは私にそう言うと頷いた。
190 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/24 12:32
では次回もよろしくお願いいたします。
(次回が今年最後のうpとなります)
>二代目
凄い展開ですな。
ちょっとびっくり。
三部まであるんだー。
めっちゃ楽しみにしてますよー。
ガンガレ!!
なるほど、今回の駆け出しさんは親今江派に・・・。
ダークサイドのフォースに囚われていくんですかな?
って、まぁ会社組織にいて、仕事でメシ喰っていくなら
ビジネスライクの視点で今江氏は、つきあいやすいと言うことですわな。
栄ちゃんキタ━─━─━(・∀・)━─━─━!!
ってか
駆ちゃんがEG社員に(((( ;゜Д゜))))ガクガクブルブル
あくまで今ちゃんと対立するものと思ってたのにこれじゃあ仲間!?
いったいどうなっちゃうんだろう―――。
こんばんは皆様。
いつもご一読頂きまして誠にありがとうございます。では今年最後のうpをさせて頂きます。
今年は何かとお世話になりました。来年も今年同様よろしくお願いいたします。
>ロード卵さま
これから急展開しますのでよろしくお願いいたします。
ちなみにロード卵さまはクリスマスはいいことありましたでしょうか?
>かつたかさま
こんばんは、です。ご察しの通り、今回は今江派の駆け出し君がメインストーリーと
なります。しかし、そのままでは終わりません。
今江さん、確かに社会人としてお会いしてみたいですねぇ。どのくらいプレゼンが
上手いのか見てみたいです(ちなみに私は親今江派ではありません)。
>おかりなさま
ギーヤナさんは今後キーパーソンになります。個人的には好きなのですが、この方も
様々な噂がありますね。ちなみに駆さんは今江さんの仲間にはなりません。
>初代さま
今年一年本当にお世話になりました。初代様の作品を読んでいて、いつの間にかアク
禁に便乗してしまった感じがしますが、お許しの程を。
河口湖の山荘を出たのはそれから1週間後だった。そのさんとは連絡が取れていない。
何度か柳さんから連絡があり、その都度そのさんへの伝言を頼んだが、何もなかった。
「そのとは店で逢いますから言っておきますよ。それよか、この前はすんませんでした、
余計なこと言って。」
電話越しの柳さんは妙に恐縮していた。
「いえ、いいんですよ。それに確認をしましたし。」
「確認?ってことは聞いたんですか、直接。」
「ええ。結果的にはEGの社員になりましたよ。」
「そうですかぁ・・・せっかく仲良くなれたのに、大阪行ってしまうんですね。」
しんみりとした会話だったが、せんべつを贈りますと言い、彼は私を元気に送り出してく
れたのだった。
山荘はそのままにしておいた。そのさんとの思い出は私にとってかけがえのないものだ。
もしも彼女が帰ってきた時のことを考え、私はそのさん宛の手紙を書き、それを彼女の部
屋に置いた。
バイクを廃車にした私の引っ越しは楽だった。もともと荷物が少ない私には宅配便サイズ
で十分だった。依頼した業者が山荘に着くまで私はテラスでたばこを吸っていた。
呼び鈴が鳴った。
来客などないはずなのに。私は火を付け初めのたばこを灰皿に置くと、玄関へと出向いた。
大きな男だった。背丈はそれほどではないが、恰幅がいいとはこの体型を指すのだろう。
「駆け出しさん。そうですね?」
「あなたは?」
笑顔がこぼれる。彼は窮屈そうな背広の内ポケットから名詞を取り出し、私に差し出す。
「山下茂」
そう名乗る男が接触をしてくる。そんな忠告があったことを私は思い出した。
「関西に行かれる前に一度お逢いしておこうと思いまして。」
玄関先ではと思い、私は彼を招き入れた。
「ご覧の通り引っ越しの準備が終わったところです。ですから何もおかまいできません。」
笑顔が続く。
「いえ、押しかけたのは私の方ですから。外でうちの若い者を待たせてありますから、長
居はいたしません。」
そのさんが置いていったソファーを進める。どっしりと腰を下ろすと咳払いを一つ。
「あなたの噂は聞いています。なんでもカリスマデモンストレーターとか。」
「そんな噂、どなたが流しているのか。私はただの会社員です。」
「まあ、そんなに卑下しなくても。あなたのことはうちのバスプロたちでも有名です。し
かし困ったことに誰もあなたの話を私にしてくれない。最近の若い者は有益な情報は人に
は漏らさない傾向にありますな。」
灰皿に残したたばこの煙がゆっくりと天井に届く。
「そんな話しはいいでしょう。ずばり申し上げますと、あなたにとってメリットの高いお
話を持ってきました。もちろんあなたのお考え一つではその話しが二倍にも三倍にもイン
センティブが付く。」
笑顔が獲顔になる。
「EGではなく、私のところに来ませんか。もちろんテスターとして、です。いずれEGも私
の参加に入ります。バス業界は一つにならなければならないんですよ、生き残りを賭けて。
そのためにもJB・NBCの看板が必要となる。それはプロでは駄目なのです。もっと釣り人
の視線と等身大の人でなければ。私はそれがあなただと思っています。」
「ちょっと待って下さい。話しがいきなりですし、それに私はただの会社員です。カリス
マでも何でもない。第一それにはそれにふさわしい人間がいるのではないですか?」
「それは誰ですか?誰もいない。つまりあなた以外には誰もいないから私はこうやってお
願いに来ているんです。」
徐々に見えてくる抑圧的な態度。
「取りあえず今は話しだけさせて下さい。返事をお待ちしています。EGに行ってからでも
かまいませんから。」
それだけ言うと山下と名乗る男は席を立った。玄関まで見送る。礼をし、背中を向けた彼
に私は問う。
「山下さん、一つだけいいですか?」
振り向いた顔は元の笑顔だった。
「昔、駆け出し君と言う青年がいました。彼の行ったことはご存じですか?」
一瞬だが山下さんの顔が変わった。とても冷たい表情を見せ、すぐに笑顔へと戻る。
「ああ、彼ですか。彼は残念なことをしました。一緒にバス業界の未来を語れる人物だと
思っていたのですが・・・。まさか彼が私たちに反旗をひるがえすとは。」
(そう言うことは彼にやらせておけばいい。)
(誰の圧力とは言えません、僕の口からは。)
「じゃあ、気持ちのいい返事を期待しております。」
山下さんが去った後、私は再びテラスに戻った。そこには火を付けただけのたばこが未だ
にくすぶっていた。たばこ一本分の話。私にはそれだけだった。
198 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :03/12/25 16:57
では皆様、よいお年を。
そして、メリークリスマス!
>二代目
連日のうpもつかれさま。
正に急展開ですね。御大が出てきましたからね。。。
オイラのクリスマスの出来事ですか?
何も無いですね。
彼女と遊んでる夢見たくらいです。w
ついでに200ゲトー。
おおっ!
>>201氏乙!
前作をざっと流し読みしてきたけど・・・、駆け出し君が・・・
あの駆け出し君がこの状況はやっぱりつらいなぁ。
何があったかは、おいおい解るんやろうけど
きっと今回登場のヤァマァシィタァ〜が濃厚に絡んでるんやろな〜。
そして今度は駆け出し氏にもちょっかい出すのか・・・。
釣り具に関するビジネスの中では無視しきれんやろな、山下・・・。
ガンガレ
うむむ―――。
いきなり山下監督・・・じゃなかった山下怪鳥がお出ましとは。
しかも妖しさ120%w
いったい何をたくらんでいるのか。
どうする駆けちゃん!?
っていうか、バイクもう歯医者かよ(`Д´#) !!
駆けちゃんは熱しやすく冷めやすいほうなのか?
という訳で、よいお年を(・∀・)
―――「あけましてオメデトウ」ってったって、暦のカウンターがリセットされるだけじゃん。
嘉門達夫も言ってるけど、「何がめでたいねん!!」ってねw
>二代目氏
今年一年お世話になりました
また来年も楽しませて下さい
それでは良いお年を!!
>たばこ一本分の話。私にはそれだけだった。
名セリフで2003年が幕を閉じましたね。今年も宜しく。
皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は駆け出し君で大変お世話になりました。今年も駆け出し君を続けさせて
頂きますが、今まで以上のご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
>ロード卵さま
あけましておめでとうございます。昨年の話しになりますが、私のクリスマスは
奥さんと普通の生活をしておりました。今年はお互いいい年になりますよう、
お祈りします。
>201さま
過去作品の閲覧援助、誠に感謝いたします。
過去の作品を読んで思ったことは、今回はあまりに駆け出し君(駆け出しさん)の
描写が多く、バスプロたちの話しが少ないなぁと言うことです。
非常に反省しており、今後とも精進をさせて頂くためのいいきっかけとなりました。
どうもありがとうございました。
>おかりなさま
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
怪鳥の登場はややお約束ですが、今回も最後まで駆け出しさんに絡んできます。
またバイクの件ですが、SRXが歯医者と言うことで、また登場をさせようと思って
おります。しかし先のコメントでも触れましたとおり、駆け出しと言うキャラに
バイクは必要ないかな?とも・・・。
>初代さま
あけましておめでとうございます。本年度ともよろしくお願いいたします。
初代様の作品も楽しみにさせて頂いておりますので、どうかガンガッテ下さい。
今年は駆け出し君offなるもの、できたらいいですね。
>奇数さま
あけましておめでとうございます。毎度のコメント、とても胸に響きます。
今年も宜しくお願いいたします。
新大阪に着いた私を待っていたのは菊本と名乗る男だった。風貌からして関西特有の雰囲
気を感じられたが、話し方から気遣いの上手い人だと察した。柳さんといい、菊本さんと
いい、バスプロは人に気を遣うのが上手い。
「一目でわかりましたわぁ。」
「お出迎え、大変恐縮です。」
「こちらこそ遠路はるばるお越しいただいて。ほんまはうちの社長はんが迎えに来るのが
礼儀やけど、すんませんなぁ、ボクで。」
「いえ、私の方こそ。連絡をすればよかったのですが、何分バタバタしてまして・・・。
失礼ですが、社長さんとは・・・今江さんのことですか?」
菊本さんは目を大きく見開き、しばらくすると大大声で笑い出した。
「今江が社長?そう思いはりましたか?」
「ええ、貫禄もありましたし、何よりもうちの会社でお逢いしたときはてっきりEGの代表
かと。」
「ある意味代表やなぁ。せやけど彼は社長と違いますわぁ。表の社長がおったとしたら今
江は陰の社長。そんな感じですかな。」
「・・・」
「ま、これから分かりますよって、彼のことは。いい意味でも悪い意味でも彼はEGの代表
です。ボクら、勝手気まま人間の集団やから、いちいち今江の行動気にしてたら損なんで
すわぁ。我が道を行く。これがEGの真骨頂です。」
事務所へはタクシーで行くと言うことで私たちは駅前でタクシーを拾った。
「取りあえず当分はマンション暮らしをして下さい。社員契約が済んで、一通りの研修が
済んだら今江から連絡ありますよって。」
それ以上仕事の話しは続かなかった。菊本と名乗った男はこれまでのバス業界に関する話
しをしてくれた。もちろんバスバブルの話しが中心だったが、彼の話にはなぜか悲しさが
見え隠れしていた。それが何に対するものなのかは分からないが、まだ彼が無名時代に活
躍した話しをするときは目が輝いていた。
その日は特に何もないとのことなので、私はチェックインをさせてもらった。
「今夜うちの社長さんがメシでも一緒に、って言ってますがどないしはりますか?」
「菊本さんも一緒でしたら・・・」
「いやぁ、ボクは野暮用があって出られへんのですわ。初対面の人間とメシ食うのはしん
どいかもしれへんけど、堪忍したって下さい。」
チェックインの手続きは彼がやってくれた。長期滞在と言うことで、ウィークリーマンシ
ョンであるが、門限があるらしい。それらのことを手短に説明する。
「まぁ大人やからね。悪い遊びせえへんかったら問題ない門限やし。ほな、ボクはこのへ
んで失礼させてもらいますわぁ。社長にはボクが話し通しときますから、電話でもしても
らいますから。」
「あの・・・」
「はぁ?まだ何かありますか??」
私は聞きたいことがあった。それは今江さんのことである。
大阪に来るまで私の胸の中では渡辺さんの言ったことが心に引っかかっていた。今江克隆
に勝ちたい。彼のその言葉には駆け出し君と呼ばれた青年のことがある。しかしそれほど
までに今江と言う人間は悪なのだろうか?ニヒルな顔つき、喝采願望に満ちた態度。それ
ら全ては彼の本当の姿ではない。私にはそう思えて仕方がなかった。しかし誰に聞いても
今江さんのことを良く言う人はいなかった(少なくともバスプロにはいなかった)。
「少し、少しだけお話をしませんか。・・・仕事のことと言えば仕事のことですが。もち
ろんこの後ご予定があるのでしたら次回でも構いませんが。」
菊本さんは一瞬考え、快く返事をしてくれた。マンションの1階がロビーになっている。
私たちは自販機で缶コーヒーを買うと、向き合ってソファーに座った。
「かまいませんが・・・なんですかぁ、改まって。」
「実は・・・」
私は大阪に来るまでに起こった出来事を菊本さんに話した。特に病院での出来事に菊本さ
んは大変驚いていた。
「そうですかぁ。駆け出し君、そんなことになってしまってましたかぁ・・・」
プルトップをひねるとコーヒーを一口飲む。ため息が流れる。
そのまま私はそのさんのこと、渡辺さんのことを順に話した。しかしなぜか渡辺さんの言
った一言は口に出なかった。
最後まで話し終えた私は自分が少し前屈みになっていることに気が付いた。興奮していた
のかもしれない。それとも駆け出し君の話をすることで、自分の中の何かが躍動するこ
とを抑えられなかったのかもしれない。心の中にいる生き物が落ち着かない。
「・・・どこまで話し、したらええんかなぁ。同じ駆け出しとは因果やのう。」
菊本さんの口火はその一言から始まった。
「駆け出し君が倒れたのは取材中ではないんですわぁ。正確に言うと取材が終わって彼が
会社に戻ってからやね。」
「会社?ってことは彼は職を持っていたんですか?」
「はい。彼は浜松にあるメガバスって言う、EGと同じようなバスギアメーカーですわぁ。
まあ何かと今江はあっこの社長さんを意識しとるけどね。」
「で、彼は東京での取材を終えた後に会社に戻って・・・。」
「そやそや。どうもボクは話しが脱線してしまう癖があって。会社に帰った彼は同僚の藤
木に話したんや。ちなみに藤木はもとボクの同僚でもあり、今江の盟友でもあるんやけど
ね。あ、その話はまた今後するよって、今は堪忍して下さい。駆け出し君は藤木に話した。
やっぱり今江さんは今江さんのままだったって。藤木にはその意味が分からへんかったの
かもしれん。おそらくな、駆け出し君はある程度今江の言動や行動を理解していたんやと
思う。せやから彼は表舞台で針に刺されたんや。彼の気持ち的にはまだ今江が決起するに
は早すぎると思ったんやろう。それは並の信頼関係やないと思うわぁ。他人は裏切り続け
てるって思っても、当人同士は第三者のちょっかいを気にせずにお互いを尊重しあってる
んやから。でもな、その気持ちは藤木には分からへんかったんや。今江と盟友とまで言わ
れた藤木が実は今江の心の真に気が付いていなかった。藤木はマジ切れしたんや、駆け出
し君の話を聞いたとたん。駆け出し君はそれが嫌だった。そやろ?今江と藤木の友情を取
り持ったのは駆け出し君なんやから。藤木の今江バッシングは凄かったでぇ。マスコミは
あおるあおる。結局、今江は選択をしなければいかなくなってしもうた。このまま害魚論
に対して知らぬ存ぜぬを通すか、それとも一気にバス容認派の急先鋒となるか。今江は迷
っとったわぁ。普段は相談なんてせえへんボクにも電話かけてきよったくらいやから。結
局はそのままの態度を押し通すことが誰も傷つかないって思ったんやろう。藤木のあおり
にも反応せず、駆け出し君の行動も完全に無視。そうこうするうちに駆け出し君は孤立し
てしまったんや。一番の原因は団体からの圧力やね。ボクの口からは言えへんけど、バス
釣りの団体が一気に駆け出し君を潰しにかかった。ボクは藤木が原因やとは思わんけど、
駆け出し君にはそうは写らんかった。今まで我慢していたもんが一気にはじけて・・・。
彼が倒れたんはそんなことが原因ですわぁ。」
「そうですか・・・。そんなことが。その後ですが、その藤木さんと言う方は?」
「さぁ。同僚だったんやけど、今は全く音沙汰なしですわぁ。どこで何をしているやら。
まぁ駆け出し君の前には表れられへんけど。」
「それはどう言う意味ですか?」
「SINGOちゃんに逢うたんですよね、駆け出しさん。駆け出し君がとても慕っていたバス
プロの一人がSINGOちゃんでした。渡辺新吾のことですよ。ある日、藤木はSINGOちゃんに
頼んで書けだし君のお見舞いに行った時ですわぁ。駆け出し君、藤木を見るなり突然飛び
かかって・・・。訳分からんうちに藤木は駆け出し君にボコられましたわぁ。せやけど藤
木は抵抗せえへんかった。止めるSINGOちゃんを反対に制して殴られるだけ。さらに悪い
ことに藤木はパイプ椅子で殴られた右目にハンデ背負ってまって。」
「右目にハンデ?失明ですか!」
「いや、そこまでには至らんかったけど、突然目がかすんで焦点が合わんことがあるらし
いと聞きました。競技プロとしては致命的ですわぁ、目が見えへんってことは。」
重苦しい空気が流れた。駆け出し君と言う青年を中心に回っている人間関係。その対極に
位置する今江克隆と言う人間。あまりに悲しく、あまりに切ないこの事実を今江さんはど
のように受け止めているのか。
「しゃべりすぎましたわぁ、この件は。」
菊本さんはそう言うと席を立った。後味が悪い。
「すみません、変な話しをさせてしまって。」
「かまへんですよ。こうやって想い出すことしかボクにはできませんから。」
後ろ姿がやけに小さく見えた。私は菊本さんを見送ると部屋へと向かった。
214 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/01/05 12:41
それでは皆様、今年も「駆け出しさん」を宜しくお願いいたします。
藤本め!
ホントにガタなかやっちゃ(`Д´#) !!!
でも目の障害はちょっと可愛そうかも(´・ω・`)
それはそうと、やっぱり出た出た菊木ちゃん(・∀・)
菊ちゃんいないと始まらないしねw
特別仲が良かったから今も駆け出し君はSingoを受け入れてるんだね。
>>二代目殿
あけましておめでとう御座います。
人生最後の年ですので、お互い杭の残らないよう一日一日を大切に過ごしましょう。
うそうそw
今年も
ガンガレ
トイレ逝ってる間にDAT落ちしたらどうしよう(((( ;゜Д゜))))
ハッ( ゚Д゚)!
保守しとけばイイ(・∀・)んだ。
師匠ともいうべきフジーを・・・・。
新年いっぱつ駆け出しさんには、ドド〜ンとロクマルでも
揚げてもろてスカッとカタルシスっちゅうのを味あわせてホスィ。
こんにちは皆様。
新年も大分経ち、七草がゆと成人式も終わりましたが如何でしょうか?
では今回の分、うpさせて頂きます。
>おかりな様
あけおめでございます。やっとやっと動き出しますので今後も宜しくお願い
いたします。
>216様
あけましておめでとうでございます。今年も宜しくお願いいたします。
>かつたか様
今年も宜しくお願いいたします。ところで、今年は福袋を購入されましたか?
何事もないと言うことはそれだけで不安である。EGに転職(その表現が的確だろ
う)した私の仕事は今江さんとの釣りであった。釣りと行っても2人でルアーを
投げるのではなく、以前河口湖でそのさんと合宿をした状況と全く一緒であった。
そのさんから教えてもらったことを初級編とするなら今江さんから教えてもらう
ことは上級編だ。季節とその湖の状況、またバスの活性と捕食ターゲットの変化
などをルアーの操作方法やルアーの形・色によって具体的に説明をしてくれた。
「まあそんなもんんで。ええか、駆け出しさん。この状況でミノーを投げ倒すの
ド素人の発想や。せやけど気持ちは分かる。三流プロはそんなもんや。」
先週から私たちは岡山のあるダム湖に来ている。増水しているためにいつもなら
水面に顔を出しているストラクチャーが完全に水面下に見える。私はその中にM-1
を投げ、軽くコンタクトさせては止めると言う動作を行っていた。30分ほどその
動作を繰り返していると、ポツポツと中程度のバスは釣れてくるのだが、その下
にいる大物は口を使おうとはしない。いい加減飽きてきた私は何かを求めて今江
さんの方に向く。しかし彼は何も言わない。
「ええか、一度だけしか言わへんから。コンタクトでデカバスはびびってしもう
てる。」
私は彼の言っていることを理解することができず、M-1を置き、ヤマセンコーをキ
ャストした。
「もうええ。」
そう言うと今江さんはエレキを踏み始めた。私は慌ててヤマセンコーをピックア
ップすると、遠ざかるポイントを見つめていた。
「何でいかんかったか、分かるか?それが分かるようにならへんかったらずっと
三流のままやで。それは困るんや、それでは。」
私はゆっくりと進むボートの上で少ない知恵を絞っていた。
「ま、ええわ。今のところは。せやけどな、駆け出しさん。駆け出しさんにはホ
ンマモンになって欲しいんや。でないとEGに来てもらった意味がない。」
背中から聞こえる今江さんの声。ゆっくりとダムの下流へと向かう途中で彼は私
に言う。今江さんから教わっているもの。それが何を意味するのlか。初めはデ
ータ収集のために釣りを教えてくれていると思っていた。少なくとも今江さんの
ほしがるデータを出すためにはそれなりの実力が必要であると思っていた。しか
し彼が私に教えてくれることは釣りのテクニックだけでなく、メンタル面での鍛
錬も怠っていなかった。では私が期待されていることは?
進行中、何人かが今江さんの姿を見かけ、声を掛けてくる。返事をしたり、無視
したり。
「一番大切にせないかんのは俺の周りに集まってくる連中や。」
「取り巻き、ってことですか?」
エレキから足を離す。振り返る偏光グラスに太陽が反射する。
「使いようによっては強力な武器や。せやけどな、気持ちのええもんやで、お山
の大将っつうのんわ。」
不適な笑い。
「大きく移動するか。」
私はボートの最後尾に座るとエンジンのスロットルを握る。今江さんはちょうど
デッキの端に腰を掛ける。
「心配か?駆け出しさん。」
「何がですか?」
「あんたも俺の取り巻きになってしまう。それが嫌な顔しとった。」
「・・・」
微笑から大笑いへ。今江さんは私の肩をポンと叩いた。
「あんたに期待してるのはそんなことやない。ホンマや。」
二度三度。私は今江さんの顔を凝視する。数秒間。私はエンジンを掛け、スロッ
トルを開いた。
その夜は今江さんと一緒だった。行きつけの焼き肉屋に通された私はビールを頼
む。彼は全くアルコールを嗜まない代わりにコーラをよく飲む。今江さんと初め
てあったときの印象は大阪に来てから変わった。紳士的である部分と計算高い部
分。そのどちらもが交互にのぞかせる彼の言動。今の私はサラリーマンであって
そうでない立場であるが、彼はサラリーマンであると言う自分を誇らしげに語る。
「大きなことやるのは簡単や。一番難しいのはそのままでいること。」
くすぶる煙の中で今江さんはそう語った。話の発端は私の質問である。
「今江さんにとってバス釣りとは?」
真剣な面もちで考える。結論に到達するための糸口。
「難しい質問やね。」
そう言うとラークに火を付け、煙を天井に向かって吐く。
「一番は自分。バス釣りと自分は一心同体やと思ってる。いや、そう思わんとや
って行けへんことばかりや。」
網の上にのった肉が油を落とす。そのたびにジュっと言う音を立て、煙を昇らせ
る。
「夢はあった。そう今でも思っとる。せやけどだんだんとその夢が自分一人のも
のやないしに、色んな人の夢に見えてきた。実際に俺の夢はエバグリっちゅう大
きな土台なしには語れんようになってきとるし。自分のことだけやっっとっても
それはそれでええと思う。バスプロっちゅう名前だけでメシを食っとる人間が何
人おるのか?俺が思うに釣り人工のほんの一握りや。ならどうするのか?バス釣
りだけでメシ食っていく方法。昔そんな本を書いたオッサンがおったなぁ。」
フィルター間近まで火がついた煙草をひと吹してもみ消す。
「大きくなりすぎたんやと思う。エバグリもバス業界も。マーケットは大きいに
越したことはない。せやけどあまりに大きすぎる場所には必ずその中でオイシイ
思いをしようと企む人間がぎょうさん集まって、自然と淘汰されていく。俺はエ
バグリを潰す訳にはいかんのんや。」
私はしばらく黙っていた。飲みかけのビールをあおる。続けざまに着けられる煙
草の火。
「勝つことが俺の使命。そんな大それたことは考えてへん。でもな、そうせんと
いかんのや。自分にそう言い聞かせてる。それが今江克隆であり、その舞台がバ
ス釣りと言うことや。」
言い終わった今江さんの表情は以前私が幕張メッセで見た彼の表情と全く同じで
あった。何かを求めている。そんな気がしてならない。それは彼が今以上のもの
を求めていると言うのではなく、自分を否定する材料を探している。私の気のせ
いかもしれないが。
「今江さん。」
突然私は彼に切り返した。どうしても聞いておきたいこと。今はまだ早いかもし
れないが、私には聞く義務がある。
「かつて私と同じニックネームで呼ばれていた青年。彼のことはどう思ってます
か。」
正視。凝視。沈思。重い口が開くにはあまり時間はかからなかった。
「気にしてへん。そう言う答えが俺らしいやろ?」
それ以上彼の口からは何も出なかった。
224 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/01/13 14:52
では次回も宜しくお願いいたします。
>二代目
もつかれー。
挨拶が遅れてましたなぁ。
あけましておめでとうございます。
今年もガンガッテくださいねー。
どんな食べ物にでもコーラを合わせる香具師・今江キタ━─━─━(・∀・)━─━─━!
>>昔そんな本を書いたオッサンがおったなぁ。
バス釣り界の長島茂男に何言うか!(`Д´#)
ちなみに王貞治は海苔Pねw
あけましておめでとうございます
今年も宜しくお願いします
今江め・・・ニヒルを徹底出来るとでも思ってるのか?
今度会ったら暗闇から野良犬に吠えさせてやる!
それはそうと駆け出しoffですか!いいですね〜幕張の釣り博は来ますか?
俺は毎年土曜日に行きます。会えるといいですね
捨てアドをどーぞ
OFF、イイっすね。釣り博は行けないけど、機会あれば俺も参加したいっす。
それはそうと、これ正にイマカツ過ぎるw
自分の在り方に自覚的なあたり、本当リアルっす。
>本物今江氏
こんなに上手く描かれるとパロディでもうれしいでしょ?
229 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/01/16 12:30
みなさまこんにちは。
今回の分、うpさせていただきます。今回は少し短いですが、よろしくお願いいたします。
>初代さま
読ませていただきました。リンクしていただけたこと嬉しかったです。
私も何か味のあること、しませんとねぇ。
さて釣博ですが、所要で行くことができません。オフ会やったらどのくらいの人数が
集まるのでしょうか?(みんな初代様のファンだと落ち込んでしまう...)。
>ロード卵さま
遅くなりましたが、あけおめでございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
今年の目標は「スピナベ」です。
>おかりなさま
>>ちなみに王貞治は海苔Pねw
そうなると怪鳥は...。
>奇数さま
個人的な意見ですが、最近のイマカツは以前よりも増して言動が「エゴイスト」に
感じられるのは私だけでしょうか?
それから数ヶ月。私はそのさんとの合宿以上に今江さんとの釣行を重ねた。ごく
たまにであるが、開発中のハードルアーをいくつか投げ、その感想と与えられた
データ収集を行うこともあったが、ほとんどは釣りのテクニックに関することば
かりであった。
「これで一通りや。よう頑張ったなぁ。」
池原ダムの帰り道、今江さんは缶コーヒーを投げつけそう言った。
「駆け出しさん、まだまだ荒いところもあるけど、あんたはプチイマカツや。こ
れでやっと俺のやりたいことができるで。」
ブラックの缶コーヒーはあまり好きではない。うまそうに飲む今江さんとは対照
的な顔をしていたのが気付かれたのか、今江さんは苦笑していた。
私たちの談笑の中、数人の青年が声を掛けてきた。話の内容は聞かないようにし
ていたが、ときおり手のひらに乗せている見たことのないルアーを見ると、それ
がデモンストレーションであることが分かる。一通り話を聞き終えた今江さんは
彼に例を言い、私も知っているプロトのルアーを彼に手渡していた。礼をし、嬉
しそうに立ち去る青年。私は何事もなかったようにコーヒーをあおると片づけの
準備を始めた。
アルミボートをカートップに乗せることを嫌う今江さんは牽引を好む。トレーラ
ーをセットしていたそのそばに人影。
「もうすぐ終わります。」
私は背中越しに話しかけた。しかし返事はない。
「あんたか、今江にくっついとる男は。」
振り返る。5m程の対峙。
「今江には気を付けろ。それが言いたくてここに来た。」
あっけない別れ。私は彼を引き留めた。
「ちょっと・・・なんですかあなたは。今江さんのことをどう思うとそれはあな
たの勝手だ。しかし私のやっていることにけちを付けるのなら話はまだ終わって
いない。」
砂利を踏みしめる音が止まる。振り向き、私を見つめる。不思議と敵意は感じら
れない。
「そんな言い方、あいつならしなかった。駆け出しって言うニックネームをあな
たが使うにはまだ早過ぎるな。」
それっきりだった。私も半ば興味を失っていたし、それに非難中傷を受ける筋合
いはない。からかわれただけ。そう思うことにして、私は今江さんの登場を待っ
た。
今江さんが現れたのはしばらくしてだった。一目で困惑しいている様子が取れる
顔つき。車に乗り込むと無言のまま山間の道を進みだした。
雰囲気を変えたい。いっそ私は先の取り巻きについて話しかけた。
「・・・。」
ステアリングを左右に切る。沈黙の時間。器用に煙草を取り出しくわえる。黙っ
て火を差し出すとジジっと言う枯れた葉の焼ける臭いが車内に充満する。
「藤木がおった・・・。」
次は私が黙る番だった。
では、また次回をよろしくお願いいたします。
ガンガレ
つたわってきますな、駆け出しさんと今江さんのみょ〜〜な緊迫感。
彼のカリスマに取り込まれれば、仕事面でも生活面でも楽なんやろけど
そうなるにはそれまでの出会った人間のインパクトが・・・。
反今江派の人間もコンタクトしてきそうやし、あの山下が現実でも
タダの芦屋雁ノ介モドキやなさそうやし・・・。
藤木(((( ;゜Д゜))))
イイ人そうな顔して―――。
「駆け出しを名乗るのは早すぎる」
いつから「駆け出し」が称号みたくなったんだw
こんにちは皆様。
毎度ながら遅くなって恐縮ですが、今回の分をうpさせて頂きます。
では宜しくお願い致します
>233、234さま
ご声援、大変恐縮です。
ご察しの通り、今後は反今江派の方々が駆け出しさんと絡んできます。
その中で駆け出しさんが見るものは...。
>おかりなさま
藤木さん、個人的には好きなのですが、どうも今江さんの「子分」と言う
イメージが抜けないのですが...。
「駆け出し」と言う固有名詞は藤木さんにとって特別なものなんです。
それは今後書いていきますが、これから登場する藤木さんの役割はその「特別」
と言うものが関係してきます。
藤木さんとの出逢い。短い時間であったが、彼が何を言おうとしているのか何となくでは
あるが分かる気がしている。今江克隆と言う人間の持つ雰囲気。私は数ヶ月しか彼との関
わりはないが、未だに彼が分からなくなるときがある。バス釣りに関して熱く語っている
と思うといつの間にか彼中心の話になってるときもある。本来カリスマとはそう言うもの
なのだろう。雄弁と詭弁。それらを交互に使い分けることでその人間を信じてしまう。で
は私は今江さんをどう思っているのだろうか?実のところ、私もあまりよく分かっていな
いと言うのが本音だ。唯一信じられること。それは今の私の上司が今江さんであるという
ことだけだ。
「おつかい、頼んでもええか?」
その日はEG本社で打ち合わせがあったため、私たちは大阪の事務所に来ていた。中には見
かけたことのない人も多かったが、後でそれらのほとんどがEG専属プロであることが分か
った。今江さんが私に話しかけたのは会議も終わって、それぞれが雑談をしている最中で
あった。
「ええ、かまいませんが。どこへ?」
「琵琶湖や。」
「琵琶湖、ですか?」
「うん。この時間からだと直帰やと思う。かまへんから、それでも。」
今江さんはプラダのポーチから封筒を取り出し、私に渡した。
「これを届けて欲しいんや。おっさんが一人おるから、その人に。今からだと到着するの
は7時頃やね。途中で食べ物でも買うて行ってくれるか?差し入れや。」
「分かりました。荷物はないですよね?」
「ないけど、なんでや?」
「いえ、移動手段がバイクなもんで・・・」
「そうか。それやったら俺の車使こうてもかまへんで。」
「いえ、久しぶりにバイクに乗りたかったので、ちょうどいい気晴らしです。」
「そか。ほな、頼むわ。」
私は封筒と届け先の地図をもらうと、未だ談笑している会議室を後にした。私は本社近く
のパーキングからバイクを出すと、一路琵琶湖へと向かった。
目的地に到着したのは7時を少し回った時間だった。途中のファミレスで買ったテイクア
ウトメニューをバイクのトランクから取り出すと、私はその場所を見上げた。
その場所は「ジャッカル研究所」と書いてあった。
そこで何の研究を行っているのか知らない私はおそるおそる建物の扉を押した。まず私の
耳に飛び込んできたのは何かを削る大きな音だった。この音は以前私が半導体メーカーに
勤めていた頃に、エンドユーザーの自動車メーカーでよく耳にしたものである。CADを
用いたPC制御の旋盤。眼の前にはひどく散らかった机。何台ものPCにはモデリングソ
フトが起動しており、中には複雑な計算をしている様子も伺えた。
「すみませんが、少し待っていただけますか?」
私は研磨音の間から聞こえた声の主を探した。旋盤の後ろ、削りかすまみれのPCのそば
から顔がのぞく。ゴーグルと作業帽。一見青年に見える男が私に声を掛けた。その後何度
か研磨ドリルが作業台を往復するまで私は入り口で立ったままだった。
「お待たせしました。」
作業が終わったらしい。男は立ち上がるとパンパンと飛び散った削りかすを手で払い、私
の方へ向かってきた。
「こちらこそ、突然お邪魔してしまって。」
「どちら様、でしょうか?」
「あ、そうですね。私から名乗るべきですね。」
私は懐から名刺を出そうとした。すると空腹に苦痛を示す胃の音。目の前の男は自分の異
音に顔を赤らめた。
「すみません。どうもその臭いが・・・。」
そう言うと私の持つ手提げ袋を指さす。私は苦笑しながら彼に差し入れだと言い、渡した。
男は礼を言うと袋からジャンバラヤンを取り出し、黙々と食べ始めた。
「いやぁ、今日はずっとここと琵琶湖の往復だったから・・・。削っては投げ、削っては
投げの繰り返しでしたよ。」
そのまま勢いよくジャンバラヤを平らげると一息着く。
「あ、お名前!それと用件。」
私は出し損ねた名刺を彼に手渡す。じっと見つめると名刺と私を見比べる。
「有限会社エバーグリーンインターナショナル。」
感心した様子で彼はその名刺を自分のデスクと思し召し引き出しに入れた。そのままデス
クのマグカップを一口あおる。私は未だそのままの体勢だった。
「小野俊郎です。さ、どうぞこちらへ。汚いところですが。」
童顔な紳士。
初めての印象はこんな感じだった。
240 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/01/21 12:46
では次回も宜しくお願いいたします。
おんちゃんキタ━─━─━(・∀・)━─━─━!!
という事は今江との間になんらかの関係が!?
漏れの藤木像は、
「実力では今江に抜かれてるものの、今江も一目置く存在」という感じかな。
ハンドメスレの住人としちゃ、丸一日削っちゃ投げできるのはうらやましいっす。
でも今の琵琶湖&オシゴトじゃ嫌だな。
保酒(・∀・)
244 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/01/27 08:02
みなさまお久しぶりです。
事故を起こしてしまい、その対応でバタバタしております。
落ち着くまで今しばらくお待ち頂けますよう宜しくお願いいたします。
すみませんです。
ガンガレ
怪我してないんですか?
大丈夫?
事故(((( ;゜Д゜))))
こんな時、どう言ったらいいのだろう――――。
ご愁傷さま?お気の毒に?
>二代目
ゆっくりして下さい。
再開を待っています。多分他の人も再開を望んでイマツ。
待ちますよ、待ちますとも。
大事に至らぬことを祈りますとも・・・。
おはようございます、皆様。
私事でうpが遅れましたこと、大変恐縮です。
事故の方は私の過失と言うことで、お縄にはなりませんでしたが、かなり神経的に
参りました。皆様も交差点での確認にはお気を付け下さい。
では今回の分、うpさせて頂きます。
>おかりなさま
事故の方はまだ余談が許せない状況ですが、保険屋さんにお任せしております。
反省する点が多々あり、大人げない自分に失望しております。
さて小野さんの登場ですが、小野さんがワールドチャンプになったときから今江氏
との間に何かがある気がしてなりません。しかし今江氏はクロシャがお好きだとか。
今後いろいろな絡みがでてきますので宜しくお願いします。
>奇数さま
確かに趣味が仕事になると言うことは思った以上に大変なことだと思います。
個人的な意見ですが、得な分野で仕事に就くと言うことは、それなりにプライドを
持ってのぞむわけですから、つぶされたときのへこみ様はホンマに辛いですわぁ。
>ロド卵さま
怪我はありませんでした(私も相手も)。しかし事故は被害者も加害者も心の傷として
残るものですので、深く反省しております。
>かつたかさま
お待たせしました。少しアクセルを踏んでいきます(それが事故のもと)。
そう言い、小野と名乗った男は私を部屋の奥にあるテーブルへと案内した。パイプ椅子に
腰かける。何となくであるが、机に放置してある工具や冶具からルアーの工房らしき場所
であることを想像していた。今江さんの用事。それが何であるのか予想も付かない。
「ここは・・・ルアーの研究をするところなのですか?」
私の開口に小野さんは一瞬不思議そうな顔をし、含み笑いをした。私の質問が滑稽だった
ようだ。
「EGに勤務する方が僕の会社を知らないなんて驚きましたよ。さすが、その名も通る駆け
出しぶりですね、駆け出しさん。」
次に不思議な顔をすのは私の番だった。小野さんは私の顔つきから事情を判断したらしい。
「失礼しました。駆け出しさん、あなたのことは知っています。もちろん人づてで聞いた
話ですが、これほどまで僕の予想通りだとは思いませんでしたよ。」
「私は・・・それよりも大事な用事を・・・。」
私は小野さんに今江さんから預かった封筒を手渡した。微笑しながらの開封。この人はい
普段の顔つきが微笑しているのだろう。今江さんとは正反対だ。しかしその顔は開封して
広げたA4の紙を見たとたんに消えていった。しばしの沈黙。ゆっくりと紙をテーブルの
上に置く。喉を唾が通過する。そのゴクリと言う音が耳につくほどの沈黙。いつのまにか
小野さんは眼を閉じてじっと考えふけっている。私はおとなしくその様子を見守った。開
眼。ため息。
「分かりました。レイクポリスは3人の代表がいます。残りの2人の意見を聞かないと何
も言えませんが、私個人の意見を持って帰って下さい。」
私はそっとテーブルの上にある今江さんからの手紙を覗いた。どうぞと言う手招き。私は
失礼と言い、その手紙に眼を通した。
〜株式会社レイクポリス 殿
貴社益々のご隆盛、お慶びをお伝え申し上げます。この度、私どもエバーグリーン(以
下EG)は出版会社・地球丸殿のご協力の下に、琵琶湖におきましてプロアマ合同で競うト
ーナメントを企画しております。つきましては御社にその参加者の選定および大会運営の
ご協力をお願いしたく思っております。これまでに幾多のトーナメントは聖湖・琵琶湖で
行われており、まさしくバスフィッシングの原点であると思われます。また本トーナメン
トは肥大化したバス業界への問いかけも意味しております。溢れかえったバスギアとバス
プロ。その中で唯一の存在を確立することは今後のトレンドリーダーたる役目を選出する
ために大切なことであると私どもは認識しております。御社はバスフィッシング界におき
まして独自の経営展開を行っており、また契約プロの方々のご成績も目を見張るものがあ
ります。それはひとえに御社の経営理念とバスフィッシングに対する思想が健全である証
拠であると、私どもEGも叱咤激励をされているものと受け止めております。何かと騒がし
い琵琶湖ですが、リリース禁止後の琵琶湖活性化にご協力を頂けますよう宜しくお願いい
たします。では取り急ぎ用件のみで失礼いたします。詳細は追ってご連絡いたします。季
節柄、お身体には十分お気をつけ下さい。
有限会社エバーグリンインターナショナル 今江克隆〜
読み終えた私は小野さんを見つめた。
「ご協力します。きっといいものになるでしょう。」
それ以上、小野さんの口からは何も発せられなかった。
私は潮時と思い、席を立とうとした。
「お帰りですか?」
「え、ええ。私にはピンときませんが、小野さんの表情をみているとこれが何か大きなう
ねりになるような気がしています。」
「確かに。でもあくまで僕個人の意見です。レイクポリスには僕以外に加藤、下野と言う
代表がいます。彼らの発言はレイクポリスの発言です。」
「CEO、そんなところですか?」
「ええ。ですからウチの最終決定は彼らの意見を持ってご報告させてもらいます。」
小野さんの顔。迷いは見えるが彼の声ははっきりとしていた。今江さんの考え。私にはそ
の親書が、ただの釣り大会にしか聞こえない。あるいは今江さんからの誘いの手紙としか
見えない。
「よかったら・・・」
「え?」
小野さんの顔は最初の印象に戻っていた。
「駆け出しさん、よかったらこれから呑みませんか?」
「え?いいですけど、私はバイクなんで。」
「この研究所、仮眠室があるんですよ。よかったら泊まっていきませんか?僕も今夜は帰
るつもりなかったし。そうそう、駆け出しさんに逢いたいって言うやつがいるんですよ。」
「私に、ですか?」
突然の申し入れに私は戸惑ったが、こう言うことのなるのを今江さんは知っていたのかも
しれない。
「それに・・・まだ余ってますよね、それ。」
小野さんの視線の先にはテイクアウトメニューが。私は笑いながら「ええ」と答えた。
「レンジで暖めましょう。酒、そんなに飲めませんが。そう言えば昔はよく呑みにつれて
行かれましたよ。サラリーマンって何かと呑む口実を作りたがりますよね。」
「え?小野さん、会社勤めの経験があるんですか?」
「ええ。その昔、ダイワ精巧って言う会社にいましたよ。」
「じゃあ・・・。」
「そう。僕も駆け出しさんと一緒ですよ。バスプロになる前はサラリーマン。あ!駆け出
しさんはまだプロじゃないですね。」
小野さんは笑いながらレンジでミックスグリルを温め出す。バスプロ。小野俊郎と今江克
隆。私には正反対の人物の様に見えるが内なる闘志は同じ温度なのだろう。今江さんから
の申し出。私は全く知らなかったが、EG内部ではすでに決まっていることなのだろう。さ
らに私が分からないのはEGとジャッカルと言うブランドの関係。今江さんは手紙一つ私に
持たせ、ここへ向かわせた。勝算あってのことなのか。それともバス業界にとって大きな
歯車が動き出す瞬間なのか?
「もしかして、駆け出しさん?」
眼鏡。最初の印象。私をのぞき込む男。
「おお、濱田。どこ行ってたの?」
「例のペンシル。投げながら削り入れてたら面白いことになっちゃって。」
彼の手には球形の物体が乗っていた。嬉しそうな顔。自慢げな子供が見せる顔。
「すみません、駆け出しさん。こいつが駆け出しさんに逢わせたかったやつ、濱田です。」
眼鏡の奥の目が細くなり、こぼれる笑顔が右手を差し出す。
「すんません・・・握手・・・なんてしてもらっていいッスか?」
私は何も分からないまま彼の手を握る。
珍客。それが私の方なのか、彼らなのか。今宵は楽しい夜になりそうだ。
255 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/02/02 09:09
では次回も宜しくお願いいたします。
良かった、いろいろとあるんでしょうけど取り敢えずは怪我無くて何よりっす。
ついに戦場の匂いがしてきましたね。
飲みに逝くって聞いて、てっきり「居酒屋霞」に逝くのかとw
おんちゃんはダイワ精工で、確かABSを開発した人じゃなかったっけ?
濱ちゃんキタ━─━─━(・∀・)━─━─━!!
まるで尊敬する人かのように駆けちゃんに握手を求める濱ちゃんw
飲酒運転イクナイ(・A・;)!!
いや、二代目殿に言ってるわけではないですが。
話しぶりからどうやらただの物損事故ではないようで・・・。
普通の社会人ならどっちの立場に立っても、ツライですので
あえてコメントはひかえますが、ぼくも免許取り立ての頃
追突事故を起こした事あります。
いわゆるオカマですが、ぬれた路面で回避しようと斜めにあたって
スピンしたのでひじょ〜〜に怖かったのを憶えてて、いまだに
夢に出てきたりします。
斜めがよかったのか、物損で済んでよかったんですが
若いときでしたので貧乏で、自分の車が修理できず廃車にしました。
かといって今は安全運転かっちゅうとそうでもないのが、アホですw
259 :
名無しバサー:04/02/04 12:09
怪我が無く無事でよかったです。
ちゃんとROMってますので、頑張ってくださいね。
ならE−mail欄に半角でsageと入れとけ
こんにちは皆様。
遅くなりましたが、本日の分をうpさせて頂きます。今回の宜しくお願いいたします。
事故の方は一応落ち着き、やっと普通の生活に戻っております。
>奇数さま
ご心配、大変感謝いたします。ご察しの通り、これから戦いが始まります。
しかし今回はトーナメント自体よりもその陰の話しを書かせて頂こうと考えております。
また最近めっきり登場しなくなったあの方...のお話しも。
>おかりなさま
その通りで、小野さんはその昔ダイワ精工にいました。アメリカでの経験を生かして
ワールドチャンプになったらしいです。最近自宅になりました昔のバスワールドに
小野さんが登場しており、キャロのお話しが書いてありました。
>かつたかさま
今回の事故、非常に反省しております。自爆でしたら過去に何回かあります。
その昔、とっても昔のお話しですが、マーチターボを言う車で痛い思いをしました。
>259さま
どうもありがとうございます。私共々、初代様の駆け出し君も宜しくお願いいたします。
>260さま
私も連載当初はage進行とsage進行が分からずに、荒らされたことがありました。
今を思えば非常に懐かしく、当時はま@先生とイマカツ氏に2chのルールを沢山教えて
頂きました。
では本日も宜しくのほどを。
本社に戻ったのは翌日の午後からだった。飲み過ぎたわけではないのだが、小野
さんと濱田さんとの会話が妙にはずんでしいまい、気が付いたときには朝日が昇
っていた。朝靄の琵琶湖は私が想像していた以上に絶景だった。その気持ちを察
したかのように携帯電話が鳴ったのは、時計の針が午前6時を指したところだっ
た。
「駆け出しさんか?」
「今江さん・・・。なんでまたこの時間に?」
「いや、夕べ遅くまで本社におったから、もしかしたら帰って来るかな?って思
ったんや。いや、帰って来いとは言ってへんから、ええんやけど。」
「そうですか・・・。それは済みませんでした。」
「かまへん、かまへん。俺が勝手に待っとった話や。そっちは天気ええか?」
「はい、とっても。朝焼けがきれいです。」
「そうやろう。琵琶湖は神聖な場所や。そこで暮らす人間にとっても、俺らバス
釣りする人間にとっても。」
「そうですね・・・」
私はその言葉に夕べの彼らの話を思い出した。酒がつき出し、そろそろと言うと
ころに一人の男が現れた。
「あ!下野さん。」
「おお、やっとるか。」
髭とポニーテール。どう考えてもありえない組み合わせであった。もちろん私が
これまで生活していた環境ではおおよそ見かけない格好であり、その風貌がいか
にもバス釣りが特別なものであることを感じる。個人的にはあまりいいファース
トインプレッションではなかった。
「下野さん。また雑誌関係ですか?」
下野と呼ばれた男は私に一瞬視線を向ける。興味なさそうな眼。そんな感じだっ
た。私は挨拶をしようかどうか考えた。それは下野と呼ばれる男がEGの専属プロ
であり、EG創立時代からのアドバイザーであったことを思い出したからだ。今の
私はEGの社員である。彼の名前くらいは菊元さんから聞いている。しかし下野さ
んは私の存在など興味ない感じで小野さん、濱田さんと談笑を始める。その仕草
に私の感情は決していい方向には向かなかった。
初めに気付いたのは小野さんである。こちらは・・・と言う感じで私を下野さん
に紹介する。眼鏡の奥から細い眼が私を覗く。我慢。
「あんたか、大先生のおもちゃは。大変やのう、大先生もでっかい超合金もろう
て。」
「超合金ってことは、駆け出しさんはロケットパンチとかできるんですか?」
濱田さんが合いの手を入れる。私以外の全員が笑い出す。
「まぁ、頑張ってや。大先生のことやから気まぐれやと思うけどな。ほな、飲も
か。」
下野さんは私の肩をポンと叩くとそのまま二人を従えてそのまま奥に進んだ。私
一人がそれまで談笑をしていた作業場に残された。小野さんが私を見ている。ど
うぞこちらへ。そう言う眼だった。バスプロに絡まれたのはこれで二度目だ。私
は渡辺さんの言葉を思い出した。
「今江克隆に勝ちたい」
眼を閉じ、日溜まりの中で私の袖を掴む青年が笑っている。
私の目的。
軽い中傷ごときで気分を害す程のプライドは持ち合わせていない。私は自分に頷
くと、小野さんの待つ奥へと向かった。
「なんや、まだおったのか。遅くまで油売っとると、大先生が心配するで。」
微笑。それが私の答えだ。
「よう分からんけど、自分けったいなやっちゃなぁ。俺の話が聞こえへんのか?」
「聞こえています。ですからここに立ってます。」
「俺はこの二人と飲むためにここに来たんや。自分関係ないやろ、この場には。
俺の酒を飲ませへんちゅうことやないで。飲みたかったら飲めばええ。せやけど、
なんで自分がここにおるんやっちゅうことや。」
「まあまあ、駆け出しさんは用事があってここに来たんだし、それに人数多い方
がいいじゃないですか。」
濱田さんが割って入る。
「邪魔やっちゅうことや。分かるか?自分。」
「ですから・・・」
下野さんの一括。私は微笑を崩さずに口を開く。
「下野さん。私はあなたの人生の中では存在しない人間です。ですからあなたの
これまでの人生で得てきた尺度で私を計らないで下さい。」
視線。
「どう言うこっちゃ?小野、こいつ頭おかしいんとちゃうか?」
「ではあなたでも分かる言葉で話しましょう。バスプロと言う肩書き。それはあ
なたが思っているほどフリーパスではない。自分を取り巻く環境が世界中どこで
も通用する環境であるとは思わないことだ。」
捕まれる胸。その左手を掴む私の右手。私より背が高い分、見下ろす視線を私は
凝視する。
「分かった口を聞くな。お前に何が分かる。俺は下野だ。」
「その傲慢さは自分の取り巻きだけに取っておけよ、下野さん。」
荒い息。胸を掴む力が強くなり、それに応じて私の手も汗ばんでくる。
二人は固唾を飲んでいる。しかし先に動いたのは濱田さんだった。
265 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/02/06 12:39
ではまた次回を宜しくお願いいたします。
・無知で恐縮ですが、メガのオカシラヘッドの取説に「類似品にご注意下さい」と書いて
あるのですが、類似品って本当にあるんですか?
済みません、関係ないお話しで。
266 :
名無しバサー:04/02/06 14:22
>265
上州屋にいけば見られるとおもわれ。
267 :
名無しバサー:04/02/06 15:13
お、初めて読んだがオモロイ!
268 :
名無しバサー:04/02/06 19:03
たしかにオモロイな!二代目頑張れー。
霜野のおさーんキタ━─━─━(・∀・)━─━─━!!
なんかすっごくイヤな香具師だ―――。
それにもストレートで反抗する駆けちゃんw
濱ちゃんがどう間に入るのか(((( ;゜Д゜))))
皆殺しで、完。
と思いきやそこに駆けつけるパーマとエリカであった。
次一言よろしく!↓
いや一言と言われても・・・先に動いた濱田さんの立場ってものが・・・
だいぶ前に二代目のはハードボイルドとは違うと思うと書いたけど、今回のは熱く煮えたぎってますね。
ヤタラメッタラに殴る蹴るタイプじゃなくて、抑制の効いたレイモンド・チャンドラーとか読んでます?
最初から読みたいんですが、前のスレが読めません。
どうすればいいんでしょうか?
まとめたサイトとかはないんでしょうか?
はぁー。
こんな面白ぇートコ見つけちゃった。
今夜も睡眠不足ダ。
きつい眠い死にた〜い(;´Д`) 保守
シモピーえらいキャラですな〜、琵琶湖大橋の西詰め、通称コメプラっていう
道の駅の近所に下野さん家があるんですが・・・。
こんど石でも投げてきますわw
大分間が開いてしまいました。みなさん、こんにちは。
今回の分をうpさせて頂きます。ようやく佳境にさしかかったところです。
>266さま
ご教授ありがとうございます。昔の話しで恐縮ですが、ダイワから似たようなジグが出ていた
気がするのですが...。
>268さま
ご声援どうもありがとうございます。このスレは皆様のご声援によって支えられております。
>おかりなさま
個人的には下野さんは好きではないキャラです。しかしどこかで計算をしてあのキャラを演じて
いる気もするのですが。「きつい」とはお仕事ですか??
>奇数さま
お恥ずかしながら、チャンドラーは全くの素人です。日本人専門で、昔はハラリョウが好きでした。
私のは「プチ・ハードボイルド」ってことで...。
>かつたかさま
投石はいけませんようぉw
何かの本で読んだのですが、別荘もかなり多く持っているんですよね?
では宜しくお願いいたします。
「止めて下さい、二人とも。何をいきがっているんですか。駆け出しさん、あん
た何しにきたんだ、ここへ。下野さんと喧嘩しに来たんじゃないだろう。」
「黙っとれ濱田。このガキ、なめたら承知せえへんで。」
「望むところだ。このくらいの挑発で乗ってくるあなたを羨ましく思うよ。」
「挑発?しばくぞ、このガキがぁ!!」
「結構。そう言うものが通じないと言う世界を私が教えてあげよう。」
額と額。相手の汗が感じられる距離での睨み合い。胸元がフッと軽くなる。先に
手をほどいたのは下野さんの方だった。
「おもろいヤツやのう、自分。」
下野さんはそう言うと、今までの喧噪からは考えられない笑みを浮かべた。その
光景を私は信じられなかったが。
最も驚いたのは小野さん、濱田さんだろう。何せ瞬間前までいきり立っていた人
間が急に友好的な笑顔を浮かべているのである。
「大先生が気に入るのもよく分かる。自分・・・駆け出しさんって言ったかのぅ。
よう似とるわ、昔の大先生に。」
場が変わってしまった。下野さんはコンビニ袋からバドを取り出すと私に差し出
す。うなずきプルトップを開ける。空中にかかげて杯を交わす。
「菊さんが言っとったわ。えらい丁寧な人やけど、どこかクールな部分があると。
人なつっこい眼をしたかと思うと挑発的なメンチを切ってくる。でも何とも言え
ん雰囲気を持っとって、いつの間にか気になっとる。昔の大先生がそうやった。
そんなこと聞いてな、ほな確かめんと、そう思って来たんや。」
「じゃあさっきのは芝居なんですか?」と濱田さんが聞く。
「そうや。いくら俺でも初対面に人間をパチかますようなことはせえへん。せや
けど先に笑ってしもうたのは俺の方やったなぁ。何だかな、初めて大先生と逢っ
た井筒を思い出してしもうたんや。あの頃の大先生はめっちゃくちゃ生意気なガ
キやったで。そのくせふてぶてしく丁寧な態度でな。」
下野さんは懐かしい顔つきで、一気にあおったバドの缶を右手で押しつぶすと煙
草をくわえた。
「下野さん、ここ禁煙ですよ。」と小野さん。
「かまへんがな、一本くらい。なぁ、駆け出しさん。」
私に向けられるラッキーストライク。私は小野さんの顔を見ることなく貰い煙草
をした。差し出すジッポー。大先生派ならターボライターやで、と笑いながら歯
の隙間から煙を流す。
「駆け出しさんの言うたことはあながち間違ってはおらへん。誰もが思っうてる
ことや。」
「何の話ですか?」と濱田さんが切り返す。
「お前でも分かってるやろう。俺が好き勝手にやってられるのは俺がバス釣りを
長くやっているだけだからだと。」
「そんな・・・下野さんは偉大な先輩で、僕なんか子供の頃は下野さんがアメリ
カで活躍する記事を見てワクワクしてましたから。」
「優しいのう濱田は。そう言ってくれるヤカラが多いから、俺は好きなことができる。
せやけどな、もしも俺がメディアで「サクマジグ最高」なんて言ったらサクマジグが
店頭から消えるか?反対に大先生が「この場合は電撃コナキーや」と言うたらどうなる?」
「無くなるでしょうね、それを見込んで在庫調整もするでしょうし。」
「そうや、小野の言うとおりや。メディアに出続けることとメディアを利用する
ことが一致せえへんとスポンサーの広告塔になっとる意味がないねん。大先生は
ようやっとる。俺も羨ましいくらいや。ならば俺はどうか?」
「下野さんのの影響力も多大ですよ。昔の話ですが、下野さんが「ステイシーは
そのために作ったんや」なんて言う記事をアメリカで読んで、ああ日本にもやっ
とシャッド・キル・ウェザーの意味を分かっている人が現れたなって思いました
から。」
「それは違うで、小野。最初にレーベルありきや。それにその怖さに初めて気が
ついたんわ俺ではなく泉だよ。大先生は泉の言う「ポンプリトリーブした後のイ
レギュラーなアクションを出すにはどうしたらいいのか?」ちゅう疑問を大先生
なりに解決したんがイーターや。俺のステイシーとは違う路線やし、それにイー
ターの方が売れたやろ?」
小野さん、濱田さん、私へと順に巡らす視線。口を開いたのは私だった。
「どちらが売れたかどうかは私には分かりませんが・・・。でもどうしてそこま
でご自身のことを卑下するのですか?正直に言いまして、私は下野さんがどれほ
どの人なのかはよく分かりません。ただ知っていることと言えば、古くからバス
釣り業界に貢献をしているが・・・、失礼な言い方になります・・・、もう一昔
前の人間であると。」
下野さんの大笑い。私の発言をおそるおそる聞いていた小野さんと濱田さんはホ
ッとしている。
「ホンマにえらい口のききようやのう。その大胆さが気に入ったわぁ。」
私は恐縮し、残りのバドを飲み干した。
「一昔前の人間っちゅう点では当たってるわな。それは俺自身がよう分かっとる。
例えばモリゾーがアメリカに行った。俺も行った。でもどうやろう?結果を見て
も分かるとおり、モリゾーの方が上やった。アメリカのトーナメントでは未だに
俺が若かった頃の人間が第一線で活躍をしとる。せやけど俺はあかんかった。そ
れをどう取るかや。己の限界と取るのか、己の引き際ととるか。人間下野として
の選択は前者や。せやからもっともっと釣りをしたい。限界が分かったのならそ
の限界点ちゅうもんを更に上に引き上げたい。じゃあバスプロ下野としては?も
うリタイヤや。釣りに専念したい。その気持ちで一杯や。そっとしておいて欲し
い。そう願っておってもそれは無理やで。アメリカのトーナメントトレイルを渡
る資金は?家族の保証は?これまでぎょうさん好き勝手してきた。それはみなス
ポンサーさんのおかげや。ジャッカルにもぎょうさん契約プロがおる。桐山君な
んかは俺の憧れや。サムライ魂を感じるんや、彼には。俺も昔はそれがあった。
でも今それ己に求めるのは酷やで。」
しんみりとした雰囲気。空けられたバドの缶が机の上で転がった。
「下野さん。」
「なんや?またお説教か。」
「違います。」
「分かってるがな。初対面っちゅうことを忘れさせる雰囲気は、そのストレート
さにあるんやな。」
「私は思うんです。今の下野さんと同じことを考えている人がいる。」
一同の眼が私に向く。
「誰ですか?」と濱田さん。
「上手く言えませんが・・・今江さんも思っているはずです、下野さんと同じこ
とを。」
282 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/02/13 12:37
であまたの機会を宜しくお願いいたします。
下野のオッサン、憎いキャラだぜ(・∀・)
今日は血便が出て大変です。
大腸癌かもしれないです。
あとどれくらい生きられるかなぁ(´・ω・`)
な〜んや、シモピーええ人やったんか・・・。
石投げに逝くのはやめときますわw
チンマン氏、検査結果しだいですが、ポリープがやぶれただけっちゅうの
も多いらしいですよ。
もし癌でも肝臓に転移してなければ、手術で完治するそうです。
転移があったとしても、治療が長引くだけで、けっこう長生きしてはる
人も多いです。
ポジティブに気楽にいけば人間簡単に氏にませんて。
デビュー5年目のB級アイドルあたり、下野さんと同じような悩みを抱えてそうな・・・
と、出口無し感イパイな展開の中でバカなこと考えてしまいました。申し訳ないっす。
和製チャンドラーこと原リョウがお好きというのは激しく納得です。
沢崎シリーズの紙飛行機なんて、この上なく美しかったですね。俺も大好き。
ttp://www.hayakawa-online.co.jp/top.asp >チンマン氏
「生物なんて、しょせんタンパク質の袋に水を詰め込んだ化学工場なんだから
普通に生きて動いてるだけで奇跡だ」というような医者の文章を何処かで読んだ覚えが。
俺たちは普段から奇跡を起こしてる!訳なんだから、医者様にオドされる前に考えすぎても
損なだけな可能性あるかと。無責任だが、気楽に気楽に。
こんにちは皆さん。それでは今回の分、行かせて頂きます。
>おかりなさま
お身体の方、大丈夫でしょうか?私事で恐縮ですが、過去に十二指腸潰瘍煩い、下血に
驚いたことがあります。医者の言葉は「忠告」程度に思った方がいいと、私も思います。
しかしそうなったからには何か原因があったのではと思いますので、まずはその探索と
治療に専念した方が宜しいかと。大きめな病院は待ち時間が長いばかりであまりいいこと
ないので、個人開業医がお勧めですが...。
>かつたかさま
下野プロを勝手に想像しただけなので、実のところは分かりませんが、本当に「井の中の蛙」
だとしたら、これほどまで息の長いアングラーではないと思います。
>奇数さま
ハラリョウがお好きな方は初めて知りましたw
紙飛行機、知りませんでしたので探してみます。そうそう、逢坂氏の「カディス」も結構
面白くて好きなのですが。
では宜しくお願いします。
暖かな日差しが私を包んだ。寒かった朝方とは違い、日が昇ると一枚余計に感じ
る季節になった。
「なんかあったか?」
昨晩の反すうをしている私の気持ちを察したのか、今江さんは聞く。
「・・・いえ、何も。」
「そか。ほな、午後までに戻って来てくれ。これから根回しで忙しいで。お前に
手渡した手紙とおんなじもんをぎょうさん送ったから、今日はその返事とお礼に
出掛けないかんし。午後に合流して駆け出しさんも一緒に廻ってもらわんとな。」
その話しぶりからかなりに業者に「今江式トーナメント」の手紙を送ったらしい。
昨晩もこのトーナメントの話になると下野さんは慎重な面もちで語りだしていた。
「大先生の考えとることはホンマに分からん。せやけどな、やろうっちゅう気持
ちは何となく分かるんや。」
「それってどう言う意味ですか?」
小型冷蔵庫からラムネを取り出すと、下野さんへ差し出す小野さんが聞く。おお
きに、とばかりにライターの底で上手に栓を抜く。
「大先生なりにきっちりと幕引きをしたいんとちゃうかなぁ。引退っちゅうこと
かどうかは分からんよ。つまりはな、これだけ乱脈化したバス業界に自分で線を
引きたいと。」
「でもそれってわがままですよね。自分が発祥主ならそう言う権利があるかもし
れないけど、バス釣りって今江さんだけのものではないし。」
「ホンマにそう思うか?大先生は濱田がまだ趣味でバス釣りをしていたときから
プロなんやで。まぁ俺もそうやけどなぁ。」
そう言って笑う下野さん。納得のいかない雰囲気の濱田さんはなにやら独り言を
言いながらビールをあおる。
「個人の考えは置いておき、僕は今江さんの考えに賛成ですね。」
「お!さすがは小野。なんか知らんが考えありやな?」
「考えって言うほどではないですけど・・・。ワールドとか言っても所詮はバス
釣りがちょっと人より上手いだけじゃないですか。正直、僕もワールドでメシ食
ってますなんて堂々と言えませんしね。本業はプロアングラーでも稼ぎの大半は
ジャッカルブランドですから。そう考えるとですね、釣りの腕もさることながら、
自分の哲学から生まれたものが実際はどの位置なのかを見てみたいですよね。」
「僕もそう思います!だって自分の設計したルアーって結局は自己満足の集大成
じゃないですか。趣味ならそれでいいですけど、エポックメイキング化したとた
んにそれは自分の分身であり、もっと言っちゃうと会社の顔だし。それがどの程
度のものなのか自分で確かめてみたいですよね。」
「よう言った、濱田。お前が本気でスパイダーの実力を世間に認めさせる気にな
ったっちゅうことは偉いことやで。」
「勘弁してくださいよぉ、下野さん。」
3人の笑顔。もちろん話の内容は私には分からないが、この3人の顔つきは誰か
に似ている気がした。そう、それは自分の夢を語ったSINGOさんと似ていた。
「確かに俺もぎょうさんルアーをプロデュースしたわ。せやけどそれを全てトー
ナメントで使っとるかっちゅうとそれは嘘や。未だにミートヘッドの常吉が好っ
きやもんなぁ。」
「そうですよね。公式のトーナメントだから守りに入ってしまう。でもルアーの
実力を見るって言うトーナメントなら負けた時点で言い訳がが利かない。」
「むごいで、その分。」
「でも限界を知るにはちょうど良い。」
突然口を挟んだ私に3人の視線が集まる。
「そうや。何も限界は己の限界だけやなしに、ルアー作りにもあるんや。」
「釣れなかったらまた作れば良いんですよ。広いものを見せて貰うってことは、
そう機会のあるものではないですから。」
「駆け出しさんの言うとおりだね。売るために作るんじゃなくて、釣るために作
る。この基本を忘れちゃうと結局は駄目なルアーの山ができてしまう。それこそ、
雑誌の取材で「今回はこれで釣りました」とか「この場面にはこれが一番」みた
いな提灯記事のオンパレードになってしまうし。」
「消費者もそろそろ気付いていますよ。」
「いや、もうとっくに気付いておると思うで。せやけどそれに飽きる前に新しい
もんをあてがってしのいどるのが現状や。」
「もしかすると今江さんもそのことに・・・。」
一番大きく首を振ったのは小野さんだった。
「それは違うよ、濱田。今江さんの考えていることはそれだけじゃないよ。」
「じゃあ・・・。」
「市場の独占。」
ぽつりと言った私の一言。答えは下野さんの揺れる煙だけだった。
「決まりやな。ジャッカルからは小野と加藤が出る。」
「ええ!じゃあ僕はどうなるんですか、それに下野さんも。」
「濱田はお留守番や。それに俺にはラッキーがある。ラッキー代表っちゅうこと
で出とかんとあかんやろ。もしも加藤がダイワから出るんやったら代わりに濱田
が出ればええやん。」
「そうか、その手があったか。」
にやけながら濱田さんは既に当選確実の様な振る舞いを見せている。あくまでサ
ブやで、と下野さんの一言が研究所内に響いていた・・・。
「それで・・・。」
切れそうな雰囲気であった電話を私は引き留めた。
「まだなんかあるんか?」
「ジャッカルですが、代表の加藤さんと小野さんが参加されるそうです。」
「ふうん・・・。」
さほど驚いた様子もなく、今江さんの返事の後には何も続かなかった。そろそろ
潮時だ。じゃあまた電話します、と私が言うと今江さんがつぶやいた。
「下野のおっさん、どうするって?」
顔が浮かんだ。思ったよりも角の丸い人。いつまでも挑戦者であり続けるために
わがままを通している人。
「参加されるとのお話でしたが、ジャッカルではなく・・・ラッキーとか言って
いましたが・・・。」
「そうか。おっさんが出るんやったらどこでもええわ。」
「何かあるんですか?」
フフフと言う軽い笑い。
「あると言えばあるわな。まあ、しいて言えばな・・・。」
風が吹く。耳元にボボボと言う風切り音が響いた。
「これで・・・潰す・・・やね。」
聞こえにくかったが聞き直す必要はないだろう。携帯をジャンパーのポケットに
しまうと私はセルを回した。
291 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/02/16 12:42
ではまた次回を宜しくお願いいたします。
おかりなさま、ガンガッテ下さい。人間悪いことばかりではないですから。
毎回楽しみにシテマツ。
う〜ん、今回も含みを持たせますなぁ。
293 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :04/02/16 23:49
戻します
毎回楽しみにしてます!が、この話しはフィクションですか?
食べ物の名前コテ=か@
老兵が有耶無耶に消え去るくらいなら、自分の手で引導渡そうという・・・
ま〜た意地と意地がバックラッシュしてきたことで。
>二代目
紙飛行機ってのは題名ではなく、ほら、沢崎シリーズの小道具の。
沢崎氏にとっての下野役の人が置いて行く奴、糞な現実から向こう側へ続く扉の象徴。
ネタバレに気を使いすぎて意味不明確だったようで失礼。
『赤い星』含め、逢坂剛は未読っす。今度探してみます。
>二代目以外の人
他作品のネタ続けて御免。以下自粛しますんで。
大分間があいてしまい、済みませんでした。
少しですがうpさせて頂きますので宜しくお願いいたします。
>初代様
お久しぶりです。サルベージ大変恐縮です。駆け出しオフの件ですが、行きたいデツ。
>油揚げさま
いつもお世話になっております。今後も宜しくお願いいたします。
>奇数様
紙飛行機はそのことだったんですね。僕はまたその手のシリーズがあるのかと思い、
ドキドキしてしまいました。原さん、好きなんですよね、そう言う小道具が。
逢坂さんは是非ともお勧めです(こちらこそ関係ない話し続きでスマソ)。
>おかりな様
思いっきり格好いいですねぇ。これって自作でしょうか?
TV東京系列って言うのが笑いました。多分深夜枠でしょうか...。
それと、あまり気を落とさずにガンガッテ下さい。
おかりな様とはこのスレだけのお付き合いですが、これでも小生、文体から人となりを
見ることが出来ると自負しております。貴殿ならこの逆境も跳ね返せますよ。
今江さんと合流したのは午後1時を回ってからだった。遅めの昼食を一緒に取ろ
うと言う提案で、今江さんごひいきのそば屋に入った。そこは大阪の守口市と言
うところにあり、そばに大きな松下電器の看板が見えた。
店に入るなり「肉そば大盛り」と言う。私もつられてそれを頼んだ。
「来たことあったか?」
「いえ。何でですか?」
「ここで肉そば頼むのは通やで。」
「真似ただけです。俺の真似してればええのんや。よく言われましたから。」
ターボライターの青い炎越しに見えるほのかな笑み。私も頬をゆるめ、煙草に火
を付ける。
「どうやった?、ジャッカルは。」
「そうですねぇ・・・一言では言えないくらいのことがありました。自分にとっ
ても、バス釣りと言うものにとっても。」
眼を細めて煙を漏らす。今江さんはネクタイをゆるめると、大きく息を吐いた。
「で、どっちが駆け出しさんにとって興味深かったか。」
「どちらでもなく。」
「ま、そうやろな。おっさんの他には小野君か?」
「はい。濱田と名乗る男のいました。」
「ほぉ、濱田か。懐かしいのう。彼とはよくウエスタンの頃に逢ったよ。ま、昔
話やけどな。それよりも下野のおっさんがいたのは予想外やったわ。」
「何かまずいのですか?」
今江さんが何かを言いかけたとき、ちょうど注文が届いた。そのまま何事もなく
そばをすする。つゆは関西独特の味付けだが、そば粉の割合が多いそばだったの
で口の中でぼそぼそとしていたが、牛筋とごぼうと甘辛く煮付けたトッピングが
具合良くそれぞれと調和している。これはうまい。
「俺の好きなものは焼き肉だけやないで。」
自慢げに話すが、私は途切れた話の続きの方が気になっていた。
「午前中やけどな、早速メールとファックスが届いておったわ。」
話が再開し出したのはしばらくそばを食べ続けてからだった。
「依頼状を送ったメーカーからですか?」
「そうや。さっきEGの若いモンにその抜粋を携帯メールしてもろうたわ。ほれ。」
背広の内ポケットから取り出した携帯を私に差し出す。
「失礼します。」
小さな液晶画面には箇条書きで業者名と人名が書かれていた。おもむろに私はそ
れを読み上げた。
「本日現在の参加希望者(敬称略、順不同)ジャッカル:加藤・小野、ラッキー
クラフト:下野・大塚、エバーグリーンインターナショナル:菊元・清水(コン
バット)、今江・江波戸(インスパイアー)、ジップベイツ:関和・神谷、マル
キュー(ノリーズ):田辺、ダイワ精工:泉・半田、ゲーリージャパン:河辺・
渡辺・成田・川口・星野、ネクストワン:関・小森、サワムラ:沢村・佐々木、
ケイテック:林・柳、ティムコ:庄司・相羽。本日は以上です。」
そこには自慢げな顔があった。
301 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/02/26 12:39
では次回も宜しくお願いいたします。
302 :
名無しバサー:04/02/26 12:47
お疲れ様です。いつも楽しく読ませてもらっています。
時代はシーバスとベラです。
うむ。うどん・そばのスープは関西風に限る!
漏れは福岡、豚骨ラーメンの聖地であって、美味いうどん屋はそうあるものではないし、
うどんやそばを食べる機会はラーメンほど多くない。
それでも、関東風の黒いうどんスープは許せないんだ(`Д´#) !
関東の人はマルっきり逆なのかなぁ?(´・ω・`)
それはそうと、
海苔さんファイッ(・∀・)!!!
>>二代目殿
この曲は自作です。
NHK大河ドラマ風にしようと思ったんだけど、上手くいかないものです(´・ω・`)
っていうか、力不足です―――。才能無いよ!(まあ作曲の知識もないけどねw)
ハンパな曲になっちゃったよぉヽ(`Д´)ノ
まあシロートが本格的に作ろうと思う方が無理あるのだろうし。
寝不足殿なら作れるだろうけど。依頼してみます?
名前の挙がっていないアノ人とアノ人と・・・は、どう絡んでくるんでしょうね。
>おかりな氏
誤認?逮捕は兎も角、現在健康が不自由な人と思ってたけど食欲あるようなんで無事かな?
俺の場合、うどんは関西、そばは関東、ラーメンはいろいろ食える関東がいいな。
博多とんこつ・東京あっさり醤油・台湾風タンメン・沖縄そばとローテできる幸せ!
しっかし、「作曲者 寝不足」のクレジットを想像してみるに、人名に見えなくて誤解されそうでw
琵琶湖の和邇ていうところと蓬莱との間に、湖に面して
JIMて大きく壁にペンキで書かれた、別荘風の建物が・・・。
あれはアノ人の・・・。
ま、どうでもええんですが。
うちは大阪でも京都よりで、最近トンコツ醤油で背油ギッチョリの
ラーメンが多くてうんざりです、東京醤油は昔、上野で食べましたが
ウマーでした。
307 :
名無しバサー:04/03/01 01:35
>チンマン
聞くにたえない下らん曲晒すな
お疲れ様です。遅くなりましたが、今回の分をうpさせて頂きます。
>303さま
シーバスとベラはやったことがないのですが、最近バスプロなる方々がこぞってその方面に
顔を出しているのを聞きますが...。私としましては海ルアーは村越大先生が好きかと。
>おかりなさま
私も麺系、特にラーメンは西に限ると思っております。博多駅近くのラーメン屋に以前入った
ことがあるのですが、あまりの美味しさとあまりに普通なお店だったことに驚きました。
こっちでも(関東でも)豚骨系が多いですが、やっぱり豚骨にはキクラゲではありませんか?
何となくですが、元気そうで安心しました。
>奇数さま
ラーメンの話の続きになりますが、釣りの帰りにラーメンをよく食べます。
ホームの愚痴湖近くにはあまり美味しいお店がないので、相模湖ICで降りてから、その近くに
あるラーメン屋に出没しております。ちなみに釣りの帰りには何を食べますか?
余談ですが、ボートの上で食べるラ王も好きですw
>かつたかさま
お久しぶりです。和歌山系のお店「ふくちゃん」のラーメンは油がきつくて食べられませんでした。
しかし梅田・お初天神通りにある「揚子江ラーメン」はあっさし塩味でとっても美味しく食べられ
ましたが、ご存じでしょうか?
「ここに書いてあるのが全部ではないで。DMやらファックスやらで希望者は多
くなっとる。例えばOSPの並木、シマノの村田さなんかも調整済みや。」
そば湯をすすりながら私は黙って聞いていた。現状を知らせるために私を呼んだ
のではない。そう思えたからだ。
「なんや、つまらん顔しとるのう。」
「いえ、そう言うことではなく・・・。」
ターボライターの炎。ゆらぎ。
「さすがやね。駆け出しさんには単刀直入がいちばんやわ。」
茶を一口すすると今江さんは話を続けた。
「そうや。あんたを呼んだのはこんなことを聞かせるためやない。あんたにはこ
の大会に出場してもらうVIPを探してきて欲しいんや。」
「VIP?誰です、その人は。」
「藤木と言う。」
一瞬私の脳裏にある言葉が浮かんだ。
(・・・駆け出しって言うニックネームをあなたが使うにはまだ早過ぎるな・・・)
私の顔を察したのか。不敵に笑う今江さんは藤木と言う名前を出すことで私の反
応を伺っている感じがした。
「詳しくは菊さんに聞けばええ。正直、俺もあいつが今どこで何をしとるのかは
分からへん。せやけどもな・・・。」
「でも・・・?」
「あいつがおらんと始まらないんや、このトーナメントは。」
(今江には気を付けろ・・・)
彼の言葉が蘇る。同時に彼の過去、特に駆け出し君と呼ばれた青年との経緯も興
味深い。
「分かりました。探すのは可能です。が、少しだけお時間を頂けますか?」
「時間?・・・そやな。ええで、時間ならまだあるよって。見つけだしたら今江
がこう言ってたと伝えて欲しい。」
口元から漏れる煙。それはゆっくりと流れだし、絞り出され切ったところで始ま
る言葉があった。
「勝負を付けよう。お前と、俺と・・・駆け出し君と。」
その時点で私にはその言葉の重みが分からなかった。
今江さんと別れた後、私はバイクを和歌山方面へと向けた。途中、岸和田ICで
小休止を取りながら一服付いた。携帯の伝言。再生するとそれは懐かしい声だっ
た。
「もしもし・・・私です。そのです。・・・駆け出しさん、今のあなたの状況は
よく聞いています。もちろん私もSINGOちゃんと今江さんのトーナメントにはエン
トリーします。でも・・・責めないで欲しいの、お願いだから。藤木さんは・・・。」
伝言はここで切れていた。私は菊元さんの教え通り、和歌山のとある工場へと向
かっている。今江さんと別れた後に菊元さんへ連絡を取った。ことの事情を説明
し、藤木さんのことを話した。もちろん、今江さん自身の口から出た「駆け出し
君」と言う固有名詞についてもだ。菊元さんは沈黙していた。「後でかけ直して
もええやろか?」それが彼の答えだった。和歌山に向かって行って欲しい。そう
言って電話は切れた。時間が必要である。そのことは今江さんも承知してくれた。
ならば待つしかないだろう、動きながら。
和歌山に入ったのは午後4時前だった。夕暮れ前に私は伊賀方面を走っていた。
携帯。減速し、路肩に駐車すると私は着信アリの番号へリダイヤルした。2回目
のコール。
「無事に着きましたか?」
名乗る前の安否。菊元さんからの連絡はタイミングがよかった。
「ええ、計ったように和歌山入りでお電話を頂いて。」
「そうですか。すんませんね、和歌山まだ足を伸ばしていただいて。」
「いいんです。今江さんにはお時間を頂いていますから。」
「そうですかぁ。おお、そうやそうや。藤木のこと話さんといけませんね。」
「いきなり本題ですか。」
「本題と言うよりも、すでに駆け出しさんは本題に踏み入ってますよ。」
「私が?ってことは藤木さんはここに??」
「はい。藤木は和歌山にいます。今はどこですか、駆け出しさん。」
「伊賀の・・・住所は分かりませんが、標識に伊賀と書いてあります。」
「それやったらあと1時間もすれば着きますわぁ。そこから国道沿いを東に走っ
ていくとダイコーって言う看板が見えます。分かり辛かったら近所で聞いてみて
下さい。中位の工場ですが、そこに藤木はいますよって。」
ダイコー。聞いたことがある名前だ。確か今江さんの口から「ダイコーがひっ
くり返ったから」と言う言葉を聞いた覚えがある。その時の今江さんは携帯電話
を耳に、かなり険しい顔つきをしていたのが印象的だった。
「EGも関係の深い会社だったんですが、先日ぽしゃりましてね。工場も従業員も
残ってますよって、誰もおらへんっちゅうことやないと思いますわぁ。」
「で、藤木さんはそこで何を?」
「そうやなぁ。言い方は難しいんやけど、アルバイトっちゅうことになるんやろ
うなぁ。」
藤木さんの話。駆け出し君と呼ばれる青年との経緯とその後の彼の運命を考える
と、決してそんなところでくすぶっている人間ではないと思う。しかし詳細が分
からない私には菊元さんからの情報にただ頷くだけだった。
「まあ行ってみて下さい。僕の持ってる情報はそこまでですわぁ。」
「ちょっっと待って下さい。」
切り掛けた電話を私は引き留めた。
「ん?まだ何かありますか??」
「伝言が入っていました。」
「誰からですか?僕は入れてへんと思うんやけど・・・。」
「いしいその。」
会話が止まる。菊元さんはなぜその名前が出るのか分からない状況なのであろう。
「そのが・・・。まだ渦中におるんか、彼女は。で、何を言ってましたか、彼女
は。」
「伝言は途中で切れました。ただ、心配をしていました。藤木さんのことを。」
「そうですかぁ・・・。なんや、ため息しか出えへんな。駆け出しさんはホンマ
に人を集める力があるんやね。・・・詳しい話は僕もよう知らんと言った方がえ
えでしょう。少なくとも駆け出しさんが藤木のところに向かっとる情報は今江、
僕、駆け出しさんの3人しか知らん情報やと思うんですわぁ。今江がリークした
と考えるのが妥当なんやけど、でも今江とそのはとっくの昔に関係が終わっとる
っちゅうことを聞いたことあるしなぁ・・・。」
私は初耳だった。今江さんとそのさんとの関係。そんな過去もあったのか。
「まぁ火遊びっちゅうことでその線はなしやけど。あ、すんませんねぇ、独り言
で。ま、そのの件は僕も当たってみますから、取りあえず駆け出しさんはダイコ
ーの和歌山工場へ向かって下さい。」
そこで電話は切れた。今夜も事務所には戻れそうもない。取りあえず私はバイク
を出すと、菊元さんから教えてもらった場所へと向かった。
313 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/03/02 15:05
ではまた次回をよろしくお願いします。
・オフ会、私も行きたいです・・・。
314 :
名無しバサー:04/03/02 15:24
カスデブ乙
藤木と今江の間にはどのようなエピソードが!?
しかし事務も出るのか―――。
なんかバス界の関ヶ原みたいな感じかな?
それとも最後の聖戦?
その戦いの後には何もなくなるような―――哀しい感じがします。
>>二代目殿
本当に美味い豚骨ラーメンは博多にあらず。
久留米!そう、久留米ラーメン。
大龍、大砲、大栄、満州屋が一番etc..
久留米は豚骨ラーメン発祥の地。(本当です。あまり知られていませんが―――。)
博多ラーメン:極細麺 あっさり 臭みは少ない。
久留米ラーメン:中太麺 超濃厚 臭い。
全国には、19種類のラーメンと、その亜流がありまして、19種類全て挙げますと、
旭川、札幌、函館、米沢、喜多方、白河、佐野、東京、横浜、高山、京都、和歌山
徳島、尾道、広島、博多、久留米、熊本、鹿児島
(以下は亜流)
北九州、酒田、藤岡、名古屋、大阪、宮崎、宇部、山形
通は久留米ラーメンを好んで食べるが、その臭いと超濃厚ギトギトスープは初心者にはお勧めできない―――。
>>315 二代目は霞お気に入りラーメンあります
中の人は代行者ですから
何か違う気がしつつ。
そういや土浦に「世界のインスタントラーメン」とかいう怪しい店があったけど、
あれは一体何だったのか・・・ あぼーん前に一度くらいは入ってみるべきだったかも。
それはそうと、今度はダイコーかぁ。
藤木は、深夜の作業場で無表情に何か削ってるのが
似合いそうっすね。髪が黒けりゃ、だけど。
いつも大変お世話になっております。遅くなりましたが、本日分をうpさせて頂きます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
>おかりな様
最後の聖戦て程ではありませんが、それなりの結末をご用意させて頂いております。
ラーメンの話ですが、九州地方だけでそれだけの味があるのですね。もう一度行ってみたい
衝動の駆られています。大砲のラーメンはその昔にカップであったような...。
どちらかと言いますと、久留米亜流の横浜、和歌山、京都あたりの醤油豚骨系のラーメンは
よく食べます。本場の人からすると超亜流なんでしょうねぇ...。
>316
?
>奇数さま
「世界のインスタントラーメン」とっても気になりますw
ちなみに「うまかっちゃん」なるインスタントラーメンは九州でしか販売していない
と言う話は本当なのでしょうか?
個人的にインスタントラーメンは「サッポロ一番塩ラーメン」デツガ。
藤木さんは黙々と何かをしている姿が好きです。しかし最近はめっきり陰が薄い感じが...。
思ったより分かりにくい場所だった。途中コンビニで数回所在地を聞き、何とか
たどり着いたのは夕方を過ぎていた。株式会社ダイコー和歌山工場。門柱に刻ま
れた社名を見て私は到着を知った。そこは中堅企業の工業の様な感じで、化学薬
品の臭いがする場所だった。守衛室は誰もいない。正面から入っていくこともで
きるが、先日のジャッカルとは異なり、ここは普通の会社である。アルバイトと
は言え、工員に逢うにもアポは取る必要があった。待つしかない。工場から漏れ
る明かりを見てもまだ作業を中断する様子は感じられなかった。守衛室の小さな
ガラス窓越しに見える代表番号と内線表をメモすると、私はいったんその場から
離れた。
午後8時。私は2時間ほどの時間を今日の宿泊所探しにあてた。もう一度工場前
に戻るり、先の守衛室からメモした番号に電話を掛けた。アルバイトと言うこと
はもしかすると既に帰宅している可能性もある。それならまた明日来ればいい。
私の仕事は藤木さんに今江さんからの伝言を伝えるだけだ。9回目のコール。
「もしもし。」
電話口の声は聞き取りにくい程の小さなものだった。しかしこの声には聞き覚え
がある。私は直球を投げ込んだ。
「駆け出しと呼ばれているものです。」
「ああ・・・。」
最初は見送りと言うことだろう。しかし私の投げた球は的外れではなかったようだ。
「藤木さん、ですね。」
「・・・なにぞ用か?俺に。」
「どうして・・・とは聞かないんですか?」
「そうやなぁ。普通はそう言うわな。来ると思っとった。それが本音かな。」
「私はまたお逢いできるとは思っていませんでした。」
「逢うとは言うとらんで。」
思ったより話しやすい。私は初めて逢った池原ダムのスロープでの印象を変えな
ければならない。
「そうですね。私もお逢いしなくても済む用事ですし。今、大丈夫ですか?お電話で。」
無言の回答。私はしばらくの沈黙の後に用件を伝えた。
「今江さんからの伝言をお伝えに参りました。」
「今江から?」
反応。懐疑心。
勝負を付けよう。お前と、俺と・・・駆け出し君と。」
今度の沈黙はそれほど長くなかった。と言うよりも予想に反して私の耳に届いた
のは藤木さんの大きな笑い声だった。
その笑い声はしばらく続いた。反対に私の方が不安になる。
「すまんのう、ホンマにすまん。」
そう言うが、その笑い声が落ち着くのにしばらくの時間がかかった。
「あんまり俺を笑わすな。久しぶりに大笑いしてしもうたやないか。」
「・・・何かおかしなことを言いましたか?」
「当たり前や。誰が聞いても笑い話にしか聞こえへんで。ま、おもろい話を聞か
せてもろうたってことで、ええか。おるんやろ、工場の前に。」
「ええ。」
「俺一人や。入ってくれ。」
電話は切れた。私はメットをシートの下にしまうと、工場の扉をくぐった。
工場の中は殺伐としていた。所狭しと並ぶ大型機械。減圧音と炉から漏れる熱。大手に吸
収されたとは言え、従業員は減っているらしい。その証拠にこの工場は藤木さん一人だけの
ものと言っても過言でないほど人の気配がなかった。声を掛けられたのは行程室奥の事務
所からだった。行程室と事務所を隔てるガラス板。そこには池原ダムで私に声を掛けた男が
小さなデスクに座ってこちらを見ていた。私は頷くと奥へと進んでいった。
中は思ったより広かった。しかし幾つかのデスクはすでに持ち主がいないことを物語っていた。
藤木さんの座っているデスクも藤木さんを中心としてきちんと整理されていた。
「そこでよかったら掛けてくれへんんか。」
隣デスクの椅子を引き出され、私はそこに腰掛けた。
「これ、差し入れです。」
私はホテルからの途中で買ったパンとお茶を渡した。
「お、焼きそばパンやないか。駆け出しさん、俺がこれ好きなの知っとったんか?」
「いえ、偶然でしょう。ちなみにもう一つ。これは私の分です。」
初対面よりも打ち解けた表情が気になるが、私の行動に顔を崩した。
「じゃ、いただくわ。」
そう言い、食べ始める。私もそれにつられて食べ始め、用件を話した。
無言のまま食べ終わり、藤木さんは何事もなかったかのようにお茶を飲み干した。聞こえてい
なかったのか?
再度私は話を始めようとすると、彼はデスクの引き出しから一通の手紙を取り出し、私に渡
した。それは私がジャッカル研究所へ持っていったものと同じ文面だった。しかし1ヶ所だけ違
う部分。それは宛先がメガバス株式会社と書いてあったことだった。
「これは・・・。」
「そうや。メガバスちゅうもんが何者で、何でそこの手紙を俺が持ってるっちゅうことは
この際はぶこ。」
「じゃあ藤木さんはこのトーナメントに・・・」
もう一度引き出しを開ける。ヴァージニアスリム。一本出すとそれをくわえた。
「癖になってしもうたわ。」
どかのスナックから貰ったライターだろうか。何度目かの着火で大きく吸い込む。
「今江に何を言われて来たかはおおかた想像つく。逃げるっちゅうのもありやと思うた。
だがな、そろそろ潮時やと思うんや、この件については。」
「じゃあ出場していただけると?」
「ああ、ただし俺が、だ。」
私はその次の言葉を続けることができなかった。夕暮れのベンチで私を見上げる弱々しい眼。
誰かの庇護がないと何もできない彼を引っぱり出すことは、私が考えても非常識な話である。
私はこれ以上のことを頼むのは難しいと判断し、今日のところは引き上げようと思い、椅子か
ら腰を上げようとした時である。
「昔な、焼きそばパンをよう作ってくれた青年がおってな。」
無言。話は続いた。
「その青年は・・・なんて言うか、誰もが昔に持っていたバス釣りの原型みたいなもんを沢山持
ってたんや。心が動く。それはその時期にバス釣りが大きな過渡期を迎えとって、バス釣りを
する子供もオッサンもみんなが決めかねていたことがあった。続けるか、辞めるか。人の心を
動かすのに言葉はいらん。俺は動いた。もちろん今江も動いた。誰もかも動いたんや、その青
年の旗のもとに。何かが変わりつつあった。せかして動かすと壊れる程の弱い動きだったん
や。でもな、心が動いたんやけど、誰もその後のことを考えておらんかった。気が付くと夢のよ
うな感じになり、結局は海の底にある小さな石が動いた程度になってしまった。問題は先送り
や。イベントくらいにし誰もが思っとらんで、特に会長はな。」
指先からくすぶる煙。灰がこぼれ落ちる。
「青年はシンボルだったんやろう、今考えると。でもな、少なくとも俺にとってはそうではないん
や。彼の仕事は終わった。次はそれを継承して次のベクトルを決めるのが俺らの仕事や。」
話し終わった藤木さんはもう一本煙草に火を着けた。私も自分の分を取り出し、火を付け
る。無言。二人の煙が交差し、ゆっくりと拡散していく。私は考えていた。今江克隆と言う男
がやろうとしていることを。菊元さんから聞いた話、たった今藤木さんから聞いた話。どれをと
ってもそれは今江さんの言動に当てはまるものではなかった。両者の話からは私利私欲のた
めに動いている印象が強い。私の立場を考えると否定することはできない。しかし自分個人
として考えるなら、納得できるものではないだろう。特に駆け出し君と言われる青年と逢ってい
ることからも。
「分かりました。その旨は今江さんにお伝えします。実はまだお話があったのですが、宜しけれ
ば次回またお願いに伺っても宜しいでしょうか?」
「かまわんが・・・俺からも一言だけいいだろうか?」
「ええ、どうぞ。」
正眼。今日初めての険しい顔だった。
「今江に伝えてくれ。駆け出し君を巻き込むのはもうやめよう。」
減圧音が耳に響いた。私が立ち上がると藤木さんに黙礼をし、そのまま彼に背を向けた。彼
はそのままデスクで膠着している。事務所を出掛けたときだった。私はきびすを返し、藤木さ
んに尋ねた。
「そのさん、来ましたね、ここに。それも何度か。」
おや?と言う表情。
「・・・そうや。でもなぜ?」
「もらい煙草。」
これ以上ここに留まる必要はない。私は大型機械の合間を縫った。
325 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/03/09 07:34
では次回もまたよろしくお願い申し上げます。
326 :
名無しバサー:04/03/09 09:10
乙!!!そして、
ローラー(あれば、だが)に巻き込まれて圧死。
なんか、革命?とそれを引っ張るカリスマみたいなものを感じます>駆けタン
それとはちょっと違うけど、関ヶ原の戦いを起こした張本人・石田三成。
西軍が勝利していたなら、本当に彼は豊臣を王にたてただろうか?
自分が王として君臨したのではなかろうか?
>>二代目殿
カップ麺として発売されていた大砲ラーメンは、ハッキリ言って、糞です。
全然大砲ラーメンの味じゃないヽ(`Д´)ノ
まあ店の味を再現できたら客来なくなるしね(´・ω・`)
横浜は詳しく知りませんが、京都は鶏がらという印象が強く、別物だと思います。
和歌山も、豚骨醤油ということで邪道だとは思いますが、亜流だとは思いません―――。
今じゃ和歌山ラーメンも列記としたご当地ラーメンの一種ですしね。
静かに着実に、戦が近づきつつある雰囲気。
入り組んだ思惑がクモの巣みたいっす。
「世界のインスタントラーメン」は・・・
ま、実情を知ったらと意外と期待外れなのかもね。謎だからこそ魅力的な事もある、と。
カップ麺ならチキンラーメンに一票。
あと、石田君の器では豊臣さんの御遺族は御しきれないような。
年度末で職場が殺気だってますわい。
よろしいなぁ〜藤木さんとこは暇そうで・・・。
有休7割がた捨てることになりました・・・鬱
揚子江ラーメン?知りませんでした、今度いってみます。
遅くなりましたが、今回の分をうpさせて頂きます。なかなか進展しない物語に
おつきあいをして下さっております皆様には大変感謝しております。
>おかりなさま
そうですかぁ。大砲ラーメンのカップはダメデツカ。確かに色々なお店のカップ麺が出回って
おりますが、本物とは似ても似つかないものばかりですなぁ。
ちなみにカップ麺はカップヌードルカレーが一番デツ。
>奇数さま
チキンラーメンは袋のものとカップのものがありますが、どちらがお好きですか?
ちなみに私は鍋で煮た袋のものが好きです。
それと、石田君の件ですが、私も同感です。特に茶々が納得しなかったかと。
>かつたかさま
お疲れ様です。年度末お忙しいとは役所関係でしょうか?それとも企業の経理関係とか。
私は研究職なので、年度末には縁がありませんが、現在クレームで首が回りません。
揚子江ラーメン、是非とも!
大分遅くなってしまった。ダイコーを出た私はホテルに電話を入れ、帰りが遅くなることを話た。
フロントに伝言があるらしい。誰だろう。そのまま電話を切ると、次は今江さんへ連絡を入れ
た。珍しくなかなか出ない。いつも私からの電話は短いコールで出るのだが。仕方なく報告は
後日とし、私はバイクをホテルへ向けた。
ホテルに着くとすでロビーの電灯は消され、フロントの小さな明かりだけが灯っていた。私は詫
びを入れ、裏口から入れて貰う。宿直らしいフロントが私に伝言を手渡し、そのま奥へと消え
た。伝言はわずか1行だった。
「ホテル近くのファミレスで待っています。」
差出人は書かれていない。行くか、無視するか。
私はフロントを呼び出すと、再度出掛けることを告げた。いい顔はしなかったが、引き留めら
れることにはならなかった。
近くと言えば一カ所しかない。取りあえず覚えのある場所へ私はハンドルを向けた。
24時間営業のファミレスだったが、思ったより客は多い。客層が若者中心であったことから、
この辺りのたまり場になっているのだろう。入るなり、ウエイターの対応もそれ相当だった。中
を見渡す。知った顔はいない。いたずら。初めに浮かんだ言葉だったが、私がここに来ている
ことを知っている人間に私を騙す趣味に人間に心当たりはない。
場所を間違えたのだろうと思い、厨房と談笑しているウエイターを後目に店を出ようとした時
だ。
私の目に留まる一人。おおよそこんなところにいるとは思えない。何かのいたずらか?
「・・・駆け出し君。」
彼も私に気が付いた様だった。実は彼は一人ではなかった。向き合うもう一人。
「駆け出しさん。来てくれたんですね。」
彼と向き合っていたのはそのさんだった。
私は歩くことさえ忘れてしまうほどの衝撃を受けた。何で、彼が。彼はここには来れないはず
なのでは。
「座って、とにかく。」
「・・・はい。」
座らなければ始まらない。そう思った私は彼の隣へ腰掛けた。彼を見る。駆け出し君と呼ば
れている青年は私を見ると微笑んだ。その微笑みは病院で会ったときと全く変わらなかった。
「どのくらいここに?」
「2時間くらいかしら。駆け出しさんが藤木さんのところに行くタッチの差でホテルに着いた
の。」
「でもどうして私があのホテルにいることを・・・。」
そのさんがガラス越しに外へ視線を移す。そこはフェミレスの駐車場で、見覚えのあるアルフ
ァが停まっていた。
「SINGOちゃんが・・・つけたの、駆け出しさんを。」
無言だった。幾つもの疑問が頭の中を駆けめぐる。
ちょうどその時、ウエイターが注文を取りに来た。コーヒーとだけ告げると、私は一つずつ話を
整理しだした。
「SINGOさんはどうして私が和歌山にいることを知っていたんですか?」
「菊元さんから、連絡があったの。駆け出しさんが和歌山に向かったって。」
「それであの伝言を・・・。」
「ううん、伝言を入れた時は違うの。あの時は違う人からの連絡で・・・。」
「違う人?菊元さんじゃないってことですか??」
頷くそのさん。駆け出し君はうつむいたままだった。
「今江さんですね、連絡をしたのは。」
無言の返事だった。コップの氷が溶け、崩れ転がる。
「お話を聞かせて下さい。尋問と言うことではなく、今回のことを。特に今江さんのことが私は
知りたい。」
落ち着かないのか、そのさんは煙草を取り出しても手のひらで遊んでいるばかりだった。私は
その光景を見ていた。
時間切れ。そのさんがやっと口を開いた。
「駆け出し君を連れ出してきたのは私たちの意志ではないの。もちろんSINGOちゃんの意志で
もないわ。信じられないかもしれないけど、彼が行きたいって言ったの。今江さんのところに。」
「彼が?だって彼は・・・」
「そのさんの言うとおりです。駆け出しさん。」
もう一度私は驚かなければならなかった。
「駆け出し君・・・君は・・・」
「ちゃんと話はできます。もう大分良くなりました。あの施設、とっても高いんですよ。」
笑顔。それも吸い込まれそうな笑顔。かつて数多くのバスプロたちが心を動かされた青年がこ
こにいる。
「そのさん、僕から話しますよ。」
「だって・・・」
「いいです、その方が近道だし。まずは駆け出しさん、初めまして。」
彼は私に向かって一礼をした。つられて私も礼を返す。
「何からお話をしたらいいですかねえ。僕自身のことをお話しします。僕が倒れた後・・・この話
が知ってますよね?」
私は頷き、そのさんから聞いたことを説明した。
「精神的な疲れだと思うんですが、しばらく昏睡状態が続いて、気が付くと錯乱を起こすよう
なことも多々ありました。・・・藤木さんには悪いことをしたと反省しています。でもそれでも藤木
さんは僕のところに通ってくれてた。」
「ちょっと待って。藤木さんが訪れると君は暴れるんじゃなかったのか?」
「違うの。そう言うことにして彼と藤木さんを隠していたのよ。」
「誰がそんなことを?」
話が途切れた。済みませんと彼が謝る。
「話の腰を折ってしまって済まなかった。」
「いえ、僕もこうやって人と話すのは久しぶりですから。僕のことを隠してくれて、それにあんな
高い施設に入れてくれたのはすべて僕をある人の眼から離すためです。」
「ちょっと待ってくれ。」
私はもう一度話を止めた。
「すまん、また話を止めてしまって。君の言う隠した人とは誰だ?それとある人と言うのは誰の
ことだ??」
「今江克隆」そのさんが、「山下会長」駆け出し君が、それぞれ答える。
「何だって!?今江さんは君を囲まっていたのか。」
「そうです。もう二度と誰にも邪魔をさせないと言い、僕を施設に隠しました。ある時期が来る
まで。」
「その時期が今と言うことなのか・・・。でも、どうしてそんな必要が・・・。」
私はそう言いかけてあることを思い出した。
(大先生なりにきっちりと幕引きをしたいんとちゃうかなぁ。)
そのためのトーナメントだったら。あくまで私の考えだが、これまでの今江さんと駆け出し君と
の関係を考えると彼が一番幕を引いて欲しい人間はこの青年しかいないのではないか。大
胆不敵な笑み。自己中心的な発言。恐れを知らない行動力。それら全てが自分という人間
にカーテンコールを行わせる人物を探すためのパフォーマンスであったら。己が潰されることを
己が全身全霊をかけて行い、それをしっかりと見届ける。
「今江さんのことをどう思っているのか分かりませんが、駆け出しさんが思っている程の人では
ないです。それは僕だけでなく、そのさんも、藤木さんもよく知っています。」
「今江さんは君にお願いをしていたよ。今江さんのトーナメントに出て欲しいと。」
私は彼に問う。彼はすがすがしい笑顔で言い放つ。
「そのために僕はここに来たんです。」
「君は今江さんを潰す手助けをすると言うことなのかい?」
「いえ、そうじゃないです。むしろ今江さんを助けたくてここまで来ました。」
「助けたい?」
「ええ、そうなの。このトーナメントを一番喜んでいる人。その人は今江さんのことが邪魔になっ
てしまったの。」
「つまり、これをきっかけに今江さんを押さえておこうと思っている人がいるんです。」
おおかた予想はついた。私はあえて口には出さなかったが、河口湖の合宿所に来た時の印
象はあまりいい思い出として残ってはいない。
「大体分かりました。で、今江さんを潰すために送られてくるメンバーは・・・。」
急にそのさんがうつむいた。駆け出し君も悲しい顔つきになる。私もそれ以上聞くのは止めて
しまい、残りのコーヒーを飲み干した。先に口を開いたのは駆け出し君だった。
「今江さんの仲間は・・・いません。参加者のほとんどが命令に近いもので参加しています。
勝ったらウイニングルアーを拡販してやる。それ以上の言葉はいらないでしょう。」
「じゃあそのさんも・・・それにSINGOさんも・・・」
無言の頷き。今江さんは誇らしげに語っていた。見てみい、ぎょうさん集まっとるで、と。その
裏にあるもの。自分をつぶしに来る刺客との真剣勝負。押しつぶされそうな重圧感。しかし彼
はその微塵も伺わせなかった。
「SINGOちゃんは悩んでいたわ。こんな形で今江さんと対峙したくないって。でも彼の出した結
論はこうなの。私もできれば彼を追い込むことはしたくない。でもね、私にはこれしかないの。こ
れしか。」
煙草が切れていた。ヴァージニアスリムが差し出された。私はそれに火を付ける。
「駆け出し君。」
私は彼を凝視した。
「君はそれでいいんだね?」
「はい。僕の中で決着を付けなければいけないんです。それが今江さんに対するお礼だと思っ
ています。」
迷いの無い答え。それは先ほど聞いた藤木さんと同じ口調だった。これが彼らが表現する最
高の友情なのかもしれない。少なくとも私にはそう思えた。
話は以上だった。私の中でくすぶっているものはあるが、しかしあまり深い話は必要ない。今
江さん、藤木さん、駆け出し君。彼らが彼らなりに決着を付ける刻。最高度の幕引きを用意
するために集まった3人の前に立ちはだかる猛者。席を立ち、私は彼らに礼を言った。それか
ら一言。
「藤木さん、煙草が癖になったみたいですよ。」
照れ笑いするそのさんを見たのは久しぶりだった。
337 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/03/16 15:40
では次回もよろしくお願いいたします。
だいたいそのタンには「わかば」が似合うんだよぉヽ(`Д´)ノ
しかし和歌山まで気づかれずにつけて来るなんてSタンもやるなぁ―――。
諧調をシャットダウンする為に今江が入院させてたのか。
―――しかしお客様に嫌な顔をするとはホテルマンとしてダメじゃないか!
やる気のないホテルマンだからこそ、藤木が居る所の暗さ&寂しさが表れてて
今の彼の立場がイメージ沸いてくると思うんだけどなぁ。
・・・って、なんか毎回突っ掛かってるみたいだけど偶然で他意は無いです>おかりな氏
チキンラーメンはどれでも来い!ですぜ。カップでもお湯かけも鍋でも。
毎回ではないけど、気がつくとラーメン10食の中に1食は自然に入ってる感じっす。
僕は製造業ですよ、けどいろいろ年度末になると
くだらん集計結果とか、なんだかんだの書類提出があったり
決算対応みたいな駆け込み増産があったりで、そりゃエゲツナ〜ですわ。
それにしても物語が一気に動き始めましたな、駆け出し君復活
待ってました!
歩朱
皆様、だいぶご無沙汰をしてしまいました。遅筆で申し訳ありません。
今回の分をうpさせて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
>おかりなさま
何かの雑誌でヴァージニアを吸っていると読んだことがあるのですが...。
でもわかばでしたらこの上なく萌ですw
ホテルマンのイメージは奇数さまのご指摘通り、陳腐な片田舎を想定しての対応です。
個人的な意見ですが、能登半島のホテルはこんな感じでした。
>奇数さま
チキンラーメンはやはり卵を落としますか?私はそのままお湯かけで食します。
たまにそのまま食べることもありますが、何かのHPでチキンラーメンピザなるものを
発見したことがありますが...。
>かつたかさま
お仕事お疲れ様です。
私は研究職なので、製造業の方には頭が下がりっぱなしです。年度末は色々と
ありますが、お互いに頑張りましょう。
駆け出し君と今江さんとの直接対決、お楽しみに。
>341さま
保守をありがとうございます。助かりました。
結局その晩はホテルには戻れなかった。藤木さんから連絡があったのは朝方で、もちろん私
がその時間まで起きていることを想定しての連絡だった。
「起きてはると思ってました」
「その自信はなんですか?」
「俺の動向を気にしている人間がいる。それがあなたの一番そばにいる」
「今江克隆」
藤木さんからの回答はなかった。私は藤木さんと別れた後に駆け出し君と逢ったことを話し
た。無論、藤木さんの反応は予想通りだった。
「で、彼は今江のトーナメントに参加すると?」
「ええ。その志は私も十分理解できました。あとは・・・」
「あとは?」
「それを藤木さんがどう感じるかです。彼とのこと、幾つかの話は伺っていますし、それに藤木
さんの眼のことも知ってます」
「そうか・・・さすがは駆け出しさんやな。私立探偵にでも転職しはったらどうですか?」
「それは後の参考にさせて頂きましょう。私が感じていることは、思った以上に今回のトーナメ
ントは奥が深い。目的の真の部分は今江さんの心中でしょうが、それを利用する者とそれを
チャンスだと思う者。それらが入り乱れる結果、最後に残るのは・・・」
「今江やない。そう考えておるんやな」
「そうです。今江さんが残ることも考えました。それはそれでいいでしょう。これで今江さんが残
ったからと言って、私が聞いている限りのこれまでの今江さんの行動になんら影響もないでし
ょうし」
藤木さんの笑い声。私はこの声が好きだ。
「ようそこまで言いはるなぁ、駆け出しさんは。そうや、その通りや。今江にとってどう転んでも
損はない。せやけどな、それが今江の本心やったら俺は出えへんで」
「と、言うと?」
短い沈黙。短いが、藤木さんの溜めには数々の思い出が詰まっているに違いない。
「今江は本気や」
携帯の奥からライターの石がこすれる音がする。ため息との取れる息づかい。ゆっくりと語り
出す低い声。
「終わらせよう。俺らはもう昔の人間や」
その後少しだけ会話が続き、私は携帯を切った。変わっていくものと変わらないもの。変わら
ないはずのものを時代の流れに乗せてしまい、それにトレンドと言う付加価値を付けてしまっ
た者たちの結末。複雑な人間関係など必要のないものをビジネスの土台に上げてしまったこ
とがそもそもの間違えではないだろうか?プロと言う言葉の意味。その言葉がもっとも不明確
な世界になぜ順位を着けたがるのか?
そのとき私の前を一台のアルファが通り過ぎた。テールランプ。朝焼けに似合わない低音。
降りてきたのはSINGOさんだった。彼はアルファを降りるなり、私に向かってきた。
「お久しぶりです」
彼はそう言うと再びアルファのドアを開け、中から長いものを取り出した。ロッドだった。それを
私へと差し出す。不思議に思う私に彼は再度差し出した。
「これは?」
「僕のロッドです。と言っても僕がスポンサードしてもらってるメーカーのものです」
そのロッドはベイトロッドで、グリップはセパレートタイプのものだった。Pro4。そう印刷されてい
る。メーカーの名前なのか?
「これを駆け出しさんに使ってもらいたい。もちろん駆け出しさんがEGのテスターだって分かっ
ています。でも、あなたにはこれを使ってほしい。それが僕から今江さんへの一太刀です」
そのロッドはとても軽く、長さは6.6ft程度であった。私は竿先をつまみ、しならせた。ティップか
らエンドまでストレスなく食いつく。ベイトロッドにしては柔らかい感じがするが、それでいてはじ
きは少なかった。
「でも私は今江さんのトーナメントに出ろと言われていませんが?」
「いえ、あなたは必ず出ます。僕の感ですが」
「SINGOさんは?」
「はい。そのと一緒に。でも目的を見失いました。駆け出し君が、駆け出し君が僕を引き留め
たんです」
「彼が?なんで??」
「僕にやらせて欲しい」
「そう言ったんですか、彼が。」
「ええ。それが彼の本心だったら僕は何も言いません。確かに僕は今江克隆に勝ちたい。で
もその目的がなんだったのか。名声だけか、単なる挑戦だったのか?つまりは駆け出し君を
思う気持ちが僕を動かしたんだと思うんです。でもその彼が動くと言う。ならば彼の好きなよう
にさせてあげたい。じゃあ僕はどうするのか?目標は変わりません。あくまで今江克隆に勝ち
たい。でもそれは僕の中で消化すればいいことで、誰かにすがることではない。そう思ったら、どうしてもそのロッドを駆け出しさんに渡したかった。」
私は彼の目を見つめた。そしてロッドを握り、大きくオーバーハンドキャストを繰り返した。
2度、3度。ロッドが空気を切る。ヒュンとなる甲高い音とアルファのアイドリングノイズが朝焼
けの国道に響いた。
「お別れです、駆け出しさん。僕は初めて夢を語った。もしかすると師匠の小山さんにも語った
ことがないかもしれない」
そう言い私に背を向けた。渡辺伸吾。その名を私は心の中で呟いたとき、それは言葉になっ
て彼を引き留めた。
振り向く渡辺さん。ロッドを地面に置いた私は、彼にファイティングポーズを取った。笑いなが
ら彼も構える。
ビュ。
互いの拳が頬で止まる。沈黙。拳を止めたまま、彼は笑っていた。
それから彼は泣いた。
347 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/03/24 12:39
ではまたの機会を宜しくお願い致します。
駆けタンの背中には渡辺タンの重みがかかっている。
その証としてこのロッドを使う―――。
くぅ〜、カッコいいじゃないか(・ー・)
小久保という絶対的リーダーが抜け、その期待を一身に背負う松中。
王貞治・秋山幸二という偉大なる先輩の背番号『1』を背負う柴原。
―――またダイエーネタスマソ(´・ω・`)
もうすぐ開幕!
3/27
>変わっていくものと変わらないもの。変わら
>ないはずのものを時代の流れに乗せてしまい、それにトレンドと言う付加価値を付けてしまっ
>た者たちの結末。複雑な人間関係など必要のないものをビジネスの土台に上げてしまったこ
>とがそもそもの間違えではないだろうか?プロと言う言葉の意味。その言葉がもっとも不明確
>な世界になぜ順位を着けたがるのか?
二代目駆け出し君の世界って、上の独白に集約されてますね。
2ちゃんで幾ら強気に吼えたって、人生流されたり押し返したりしてるうちに
シガラミに取られて型にはめられる事もあるわけで(全く無かったらそれはそれでツマラン)、
その中で何を認め何を認めないかが、人の個性であり魅力かと。
登場人物皆が魅力的にあがいてて、この重さが気持ちイイっす。
才能あふれる天才肌も素晴らしいけど、才能に欠点がありながらも化けた人って
野球にも多いよね。星野・小宮山どころか野茂さえも、見る人が見ると地肩が強くないとか。
彼らの魅力って、二代目駆け出し君世界に通じるような。
と、無駄に熱くなった後にナンですが・・・チキンラーメンは素に限る。ネギのみ許す。
補修
大分間を開けてしまい、大変申し訳ありませんでした。
やっと再開できますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
>おかりなさま
SINGOに関してはもう少し登場させたかったのですが、どうも最近若手の台頭に押されて
いる感じがして、書きづらかったです。もう一回登場しますので、宜しくの程を。
しかし本人はどんな感じの人なんでしょうか?(アルファには乗っていないような...)。
ダイエーネタ、大好きです。小久保は結果らしい結果を出していない気がしますが、彼の
本領はこれからだと。しかしやっぱり巨人は(略
>奇数さま
お褒めの言葉、大変嬉しゅうございます。大分前から感じていたのですが、バス業界、
びしっとした筋が通っていない気がしてしまい...。筋が通っていないのなら、そのまま
趣味の範疇で繁栄していけばいいんですがねぇ。
チキンラーメンはノーマルが一番だと言う意見が多数ありますが、私としましては少しだけ
ごま油を入れるのが、出前一丁ライクで好きなのですが(邪道スマソ)。
ではよろしくお願いいたします。
8月11日。朝靄の中、何台ものバスボートが今を待てずに湖面で揺れている。例年でも珍しいほどの
猛暑に霞ヶ浦はそのだるさを湖全体で表しているかのようであった。ギャラリーは朝早いというのに大
勢集まっていた。もちろんプレス関係者もこぞってバスプロを見つけるたびにコメントとフラッシュを突き
つけている。私は遠目でその光景を見ながら、改めて今江さんがやろうしていることの大きさを知った。
霞ヶ浦に到着したのは前日の夕方だった。今江さんは雑誌記者のインタビューと言うことで私とは別行
動である。ホテルも満室のため、別々となった。私は柳さんと連絡と連絡を取り、その夜は霞ヶ浦にあ
る焼鳥屋で前夜祭を行った。久しぶりに飲んだせいか酔いは早く、結局柳さんにホテルまで送ってもら
った。
「重いでしょう、すみませんね」
「いえ、いいんですよ。昔はよく酔っぱらったアニキに肩を貸したことあるっすよ」
「小山さんって酔うんですか?」
「たま〜にですけど。そう言えばバスプロの中で一緒に酒飲むの、アニキぐらいかなぁ」
「成田さんとか、関和さんとか、こっちにいるメンバーではないんですか?」
「う〜ん・・・昔あったような。でも結構バスプロって一緒に酒飲んだりはしないっすよ。特別仲の
いい友達みたいな関係もありなんだけど、結局釣りは自己完結できる趣味っすから」
ホテルの玄関前で私は肩を返した。丁重にお礼を言うと、柳さんは照れくさそうに笑った。
「プラがないトーナメントってあるんですか?」
「正確に言えばないかもしれないなぁ。クラッシックなんかだとあるかもしれないけど」
「そうですか・・・」
プラのないトーナメント。ロコとのコンタクトも一切禁止し、自分の経験と勘だけで進む。
これはトーナメントと言うよりはむしろ、立ち会いに近いと私は思った。
「本当に済みませんでした」
「気にしないで下さいよ。俺も楽しかったし」
「こちらこそ。それにあのお店、かわいい子がいましたね」
「おお、駆け出しさんもスルイドイ。あの子、昔バスプロ張ってたんですよ」
「彼女がバスプロ?」
「ええ。まぁ散布両論ありますが、彼女はいいところで引いたって感じっすよ」
私的には女性のバスプロと言えばそのさんくらいしか知らなかったが、店にいた彼女を思い浮かべると
不思議な気持ちになる。
「まぁ、駆け出しさんが思う気持ちも分かります。でもそう言うもんなんですよ、ある意味」
思い立った私は柳さんに聞いてみた。
「柳さん、今回のトーナメントについてどう思いますか?」
「難しいこと聞きますね、相変わらず」
笑みが深くなった柳さんは私に向かって言った。
「正直、これで今江さんがどうなるとは思っていません。でも今江さんがやろうとしていることって結局は
誰かがやらないといけなかった気がする。自然にそれが訪れるのを待ってもいいでしょうが。まぁ、僕も
1つメーカーを潰していますからねぇ。過当競争の怖さっていうもんは分かっているつもりっす」
「そんなことがあったんですか・・・」
「昔の話ですし。それよりも明日は頑張りますから、応援宜しく!」
大柄な身体が私に背を向けて歩き出した。道の途中でタクシーを拾うと言っていた。私は柳さんの背中
が見えなくなるまで見送ると、ホテルに入った。
久しぶりにそのさんからメールが来ていた。そのさんも今日から霞ヶ浦に入り、ゲーリーファミリーと飲
んでいるらしい。明日のこともあるので早めに切り上げているだろう。私はそのまま返信をし、明日の健
闘を伝えた。送信。意外なことに着信音が鳴った。そのさんからである。
「もしもし」
「あ、駆け出しさん?そのです。メールありがとうございました。特別な話があった訳じゃないんですけ
ど・・・」
「いえ、こちらこそ。それよりも盛り上がりましたか、今夜は?」
「ううん、そう言う感じじゃなかったの。ちょっと気分が重くて。相談ってほどじゃないけど、駆け出しさん
に伝えておきたかったことがあって」
「どうしたんですか?その会合になにかあったとか」
「何がって言うか、来たの。会長が」
「それはどう言うことなんですか?」
「初めから来るつもりでね、私が到着したときにはもういたから。とにかく今江さんを潰せって言ってた。
その口調に河辺さんもちょっと引いてたけど、最後には上手く丸め込まれたって感じだった」
「どうして山下さんが?それにこれは今江さんの主催じゃ・・・」
「私も詳しいことは分からないけど、駆け出しさんは肖像権って知ってる?」
「ええ。よく裁判とかになるもので、その程度くらいなら」
「JBには肖像権って言うのがあって、JBやNBCのワッペンを付けている人達の肖像権はすべてJBが
統括しているのよ。つまりプレスに写真が載ったときとかはその権利がJBにあるってことなの。つまり
会長の権利ってことなのね」
「でもそれで今江さんを潰すってこととは何も関係ないのでは?」
「うぅん、そうなんだけど。会長がこのトーナメントに顔を出す理由は肖像権の問題。今江さんを潰すっ
て言っているのは個人的なことなんじゃないかと思うわ」
「今江さんが嫌いということですか?」
「その反対。大好きよ、今江さんのことは。でも反対はどうかしら。今江さんもその辺はよく分かって付き
合っていると思うし、それにお互いはビジネスパートナーとしか考えていない感じもするし」
「飼い犬が飼い主の手を噛む」
「そんなところかな。でもこれは一度や二度じゃないわ。今回の今江さんは本気だと思う。だからこんな
に沢山の人達が集まったんだし、今江さんを倒すにはいいチャンスだし」
波線が波線を産む状態。今江克隆を頂点とした構図に山下さんが絡み、山下さんは覇権の邪魔として
今江さんを捉えている。一方で今江さんはある終止符を打つことに懸命になっている。トーナメンターと
しての今江克隆。それを違うベクトルに向けるべく儀式。力関係と売名の機会。これはまるで一つの企
業体そのものではないか!釣りとはこれほどまで金を生むものなのか?釣りとはこれほどまで人間関
係に関わるものなのか?
「・・・駆け出しさん?」
そのさんの声で私は気を取り戻した。取り急ぎと言うことで、そのさんとの会話は終わり、私は着信を切
った。後味が悪い。しかし同時に、こんなもんだろうと言う気持ちにもなれた。
EGのブースは慌ただしかった。初めて合うモリゾーこと清水さんは気さくな笑顔で私を受け入れてくれ
た。下野さんはジャッカルのブースにいるらしい。湖畔では各メーカーがそれぞれブーステントを張り、
トーナメント開始までの準備に取りかかっていた。一般者立ち入り禁止なだけあり、テントから少し離れ
たところにはギャラリーが集団でその様子を見ていた。まもなくEGブースで作戦会議が始まる。私は今
江さんの記録係と言うことで同船することとなった。じっとディレクターチェアに腰を下ろし、目を閉じて
いる今江さん。この瞬間の今江克隆は別人に見えた。いつもの態度は微塵も感じられない。周りの喧
噪とは無縁の孤高な存在。それはもしかすると虎考と言う字の方が的確なのだろう。私は邪魔をしない
よう、そばにあったパイプ椅子に腰を下ろして待った。
「駆け出しさんか」
今江さんが目を開けていた。そのまま天井を見上げ、大きなため息を漏らす。私はその様子をじっと見
ていた。
「どこに行くか、どうするか。そこにはいつ行くのか。そう考えとったんや」
「そうですか・・・」
「聞きたかったんやろ、俺が何を考えているか。俺は好きなんや、この瞬間が。あっという間やで、今日
1日は。それがあと2日続いて、最後に誰が笑うのか。この瞬間は明日も訪れるし、明後日も来る。でも
1日として同じ日はない。そう考えると震えるで、ホンマに」
ボートの燃料が並べられていることもあり、テント内は禁煙だった。今江さんは右指で外を示し、私もそ
の後を追った。
朝日が見えた。私はキャメルを差し出す。学生時代よう吸っとったわ、と言いそれを口に運ぶ。ターボラ
イターの炎。煙の陰から見える朝日が私には遠いものに感じられた。
357 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/04/06 08:55
やっとトーナメントが始まりました。
今江克隆の幕引きは果たして誰の手によるものなのか?
駆け出し君と藤木。
両者の複雑な関係に駆け出しさんはどう絡んでくるのか??
では、次回も宜しくお願いいたします。
>二代目
うp、もつかれー。
ワクワクしますね。
人々の思惑や策略とは関係無く、トーナメントの流れが気になる。w
もしや焼鳥屋って、居酒屋『霞』じゃないでしょうね!?
肖像権を会長が全て所有しているというのは、選手にとって面白くないでしょうね。
球界でも、プロ野球選手の名前を独占的に使用する権利を持っているコナミに対し、
選手代表の古田敦也(球界No.2捕手。もちろんNo.1はゴリね。)が異を唱えている。
しかし、ついにトーナメント開始!
頂点に立つのは――――山口徹w ←いたよねぇ(・ー・)
現在、ダイエー1点先制(・∀・)!
巨人は工藤好投中(・∀・)!
人事は尽くした天命を待つのみな雰囲気の心地よい緊張感には触れずに。
>クラッシック
英語を打ちなれてる人のミスタイプな予感。あら捜しのようですんませんが、
ステューデントと淀みなくローマ字入力できないです俺は。
それと、
>>296の誓いを破るけど、
逢坂剛『カディスの赤い星』、上下各100円で見つけて入手しましたぜ。
まだ読んだのは意味ありげなプロローグだけ。
361 :
名無しバサー:04/04/15 22:03
ほしゅ
>361
おいおい、保守ならsageろよ。
新作かとオモターヨ。
オイラも釣られた。。。
保守乙!
漏れも…乙!下げ推奨で
ホシュガンガレ
皆様、大分ご無沙汰をしてしまい、申し訳ありませんでした。
私事で大変恐縮ですが、子供ができましたことからなかなか時間を取ることが
できませんでした(と言いましてもまだ生まれていませんが...)。
では今回の分、うpさせて頂きますのでよろしくお願い申し上げます。
>ロード卵さま
お疲れ様です。やっとトーナメントが始まりました。前回の駆け出し君では奇をてらった
トーナメントにしてしまいましたので、今回はシンプルにしてみました。
>おかりなさま
お久しぶりです。ご察しの通り、「霞」で呑んでいた展開です。
そう言えばダイエー関係のことで某球団オーナーがなにやら発言をしていますねぇ。
>奇数さま
済みません、ご指摘の通りです。
どうも英語をカタカナで打つのが苦手で、間抜けな表現になりがちデツ。
「カディス」を見つけましたか!
個人的には好きな内容なのですが、上下巻にしなくても...と思います。
>361
保守、ありがとうございます。
ではよろしくお願い申し上げます。
午前4時30分。ミーティングが始まった。ミーティング中にもかかわらずプレスの容赦ない撮影は続く。
私はそれに軽い不快を感じながら、集団の後方で場を見守った。まもなくして今江さんが登場した。
一際多いフラッシュの数。珍しくトレードマークの偏光グラスはかけていなかった。周りのざわめきが一
斉に静まる。マイクを右手で軽くたたき、第一声となった。
「おはようございます、みなさん」
おのおのが声を出す。私も挨拶を返した。
「本日は朝早くから、また遠路からのご参加、誠にありがとうございます。先日はこちらからの一方的な
ご連絡で、このような場をご紹介させて頂きましたこと、深くお詫び申し上げます」
さすがサラリーマン時代が長かったようで、挨拶も手慣れている。
「今日からの3日間、ご案内にも書かせて頂きましたが、ここ霞ヶ浦で個々のプライドを掛けた戦いをさ
せて頂きたいと思います。私もバス釣り業界でメシを食っていますが、これ程まで急成長した業界はな
いと思っております。しかしその反面、何が必要で何が不必要なのかと言うガイドラインも不明確になっ
てきています。もともとは趣味の世界ですので、もの自体に正解不正解は存在しません。ですからここ
にお集まりの皆さんがスポンサードを受けておられるメーカーが発売するものに不必要なものはない
はずです。でもそれは本当でしょうか。私は常に考えていました。どれが一番なのだろうと。もしかした
ら私が所属するEGが最も必要のないメーカーなのかもしれません。でもそれを誰も教えてはくれない。
ですから今回この様な場を設けさせていただきました。皆さんの隣にいるプロ達は皆さんを蹴落とそう
としています。もちろん私もその一人です。メーカーのメンツにかけて、勝負しましょう。そして、どれが
一番なのかを決めましょう。」
そこで挨拶は終わった。
取り留めがないと言えばそう聞こえるが、挑発を目的とするならば十分である。いや、すでにこの場に
集まっていると言うことは十分に挑発されていることを意味する。簡単な挨拶でも熱くなってしまう。
その後、協賛スポンサーの地球丸社から挨拶とトーナメントルールが発表された。実はルールを発表
するのはこの場が始めてであり、かなり緊張した面持ちで皆聞いている。簡単に話すとこうである。
トーナメントは3日間行われ、1日ごとに順位を発表する。参加者の数は全部で51名。初日から2日目
に行けるのは上位40名。2日目から最終日まで行けるのが、2日目の順位で上位25名である。使用
できるルアーはスポンサードを受けているもののみで、複数社受けている場合は代表を1つにし、その
メーカーから発売されているものを使用する。ハード、ソフトの縛りはないが、ワームの場合はフックの
性能を公平にするため、がまかつと言うメーカーから支給されたもののみを使用する。フックの形状は
選択できるが、本トーナメントで使用できるフックは1人7本まで。これにはジグヘッドも入っており、フッ
クとジグヘッドを任意で7本選ぶことも可能である。つまりロストをしない自信があるならばワームのみ
で戦ってもいいことになる。またこれにはかなりの不平が飛び出たが、ラバージグは本数に入らないと
言う説明で不満も収まった。「ラバージグのラバー取ればいくらでもええんとちゃうか?」と言う菊本さん
の質問には今江さんが「お好きに」と言う言葉で収まった。後に聞いた話では、それをやったプロは誰も
いなかったと言うことだ。
競技開始まであと30分。今江さんは準備で忙しく、私はそばにいていいものかどうか考えあぐねてい
たが、取りあえずは席を外した。フライトは4番目。抽選後の今江さんは無表情だった。テント前で私が
たたずんでいると、記憶にある声で呼ばれた。
「探しましたよ」
山下さんは暑苦しそうな格好(ご丁寧にスーツ姿だった)で来ていた。関わりたくないと言う気持ちが強
かったが、それよりも彼の考えを聞きたかった。それが表情にでたのだろうか。山下さんは私を会場の
外へと誘った。
誘われた場所は本部テントで、スポンサーテントから少し離れたところに設営してあった。
テント内で椅子を勧められる。言われるがままに座ると、麦茶が出された。
「私もこれほどまで大きなものになるとは思っていませんでしたよ」
笑顔で語りかけられ、私は返答に困った。
「そうですね・・・でもこれは今江さんの意志なんですから、それに賛同した人達の人数を考えると、これ
でも少ないのかもしれませんが」
「今江克隆を倒したい」
「え?」
私は耳を疑った。この台詞は決して今私の目の前にいる人間から発せられるものではない。もしかす
るとそれは彼の本心なのだろうか?
「こんなこと言われませんでしたか、ある男に」
「・・・遠い昔の様な気がします。聞きましたよ、はっきりと」
「私はね、彼が次の世代だと思っていたんですよ。でも最近ではもっと下の世代が台頭を表している」
山下さんは麦茶をすすると話を続けた。
「バス釣り黎明期はプロが輝いていました。バスと言う魚をいとも簡単に釣ってしまう人間。釣りが上手
いだけでなくコマーシャルレベルでの説得力のある知識も持っている。そう言うプロに素人は尊敬のま
なざしを向ける。でも時代が変わり、誰もがある程度の知識を付け出すと、今度は等身大のプロを望む
ようになる。近い存在で、気さくにテクニックを教えてくれる兄貴の様なプロが必要なんです。それを私
は彼に求めました。でも彼は色気を出してしまったんですね、アスリートとしての欲を」
ぽつりぽつりと語る仕草は説得力がある。山下さんの言う「彼」とはSINGOさんのことだろう。しかしそ
れがどうしたと言うのだ?彼はバスプロと言うだけであって、それに属する団体の宣伝マンではないは
ずだ。
「時代が変わりました。数多くのプロ達が育ち、世代交代を余儀なくされている。その中でまだしがみつ
き、淘汰されてしまうことを恐れているプロ達がいる。どの世界でも引退と言う言葉があるのにも関わら
ず」
「でもその引導を渡すのはあなたの仕事ではない」
豹変。この感じは河口湖でも見たことがある。私の言葉に彼はあからさまに態度を変えた。
「もう一度言ってみたまえ」
「私物化はそれぐらいにしておけ」
「私のやることのどこが私物化なんだ」
「狭い業界をより狭くして、潤滑性を妨げているのは何よりもその発想でしょう」
短い時間の対面だった。私はこれ以上この場にいる必要がないと判断し、席を立った。
「今江君に言っておきたまえ」
振り向く必要などない。そのまま私は歩き出した。
「今ならまだ間に合うぞ、と」
もうすぐフライトが始まる。
少しの興味だったが、彼と話をした時間は無駄な時間だったようだ。
372 :
二代目 ◆XPmQ5mHBTk :04/04/20 16:40
では次回も宜しくお願いいたします。
しかしなんて大胆な競争だ―――。
「必要な」メーカーと「不要な」メーカー。
今江の独断でその選考会が開催されるとは(((( ;゜Д゜))))
>>ワームフックはがまかつ限定
デコイ愛用のプロはどうしましょw
>二代目
乙!
おー!もうすぐ試合がはじまる!!
毎回楽しみにしてます。
ガンガレ
ガンガレ
大分間を開けてしまい、大変恐縮です。
私事ですが、出産があり、時間を取ることが非常に難しくなっております。
もしもよろしければ一度このままこのスレを終了させて頂き、再度別スレにて
書かせて頂ければと思っております。
ご期待に添えず、大変恐縮です。
またこのスレをこのまま放置しておかせて頂けるのなら幸いなのですが。
このような形で中断させて頂くのは非常に申し訳ない区思っております。
特にうpを楽しみにして頂いた、初代さま、ロード卵様、かつたか様、オカリナ様、
奇数様、その他大勢の皆様にはお詫びのしようがありません。
どうか続きを読んで頂ける様でしたら、今しばらくのお時間を頂けますこと、深く
お願い申し上げます。
ではよろしくお願い申し上げます。
出産おめ!
めでたい!!
奥様やお子様は元気ですか?
二代目が帰って来るまでの間、保守しますよー。
育児ガンガレ
とりあえず一回ageとく。
381 :
名無しバサー:04/05/08 10:41
つまらんから、復活しなくていいよ。
特に実名をあげてフィクション語るのは
非常に不愉快です
384 :
名無しバサー:04/05/18 11:47
更新まだかなぁ〜
保守しておきます
386 :
名無しバサー:04/05/27 10:15
更新まだかなぁ〜?
がんばって〜〜〜
保守
保守
389 :
ロードランナー ◆HBSPxJNc.k :04/06/24 22:29
保守age
保守
391 :
名無しバサー:04/07/03 22:05
保守
保守
393 :
名無しバサー:04/07/22 17:35
ほしゅ
ほほほほほほほほしゅ
保守
396 :
名無しバサー:04/08/12 15:32
保守age
捕手
保守
399 :
名無しバサー:04/09/05 23:57
AGE
400 :
名無しバサー:04/09/06 00:01
補習
補修
402 :
名無しバサー:04/09/21 20:35:50
捕手
403 :
名無しバサー:04/09/21 21:22:43
いい加減もう諦めろよ
と言いつつあげる403w
ガンガレ
4番キャッチャー古田
よお!2ちゃんのおまえら元気か?。俺はバスフィッシング大好きな高校3年のアングラーだ!
俺の悩みを聞いてくれ。それはエボルジオンやメガバスルアーが
なかなか手に入らないことです。だから恥ずかしくてフィールドに行けないんだ。
おかげでまだ1匹もバスを釣ったことがないのです。パパはバトラーとかシャウラを
買って僕に使わせようとしたのですがその場で折ってやりました。
だってこんな妥協した量産品のクソみたいなロッドじゃ釣りになりませんよね?
最近のフィールドはバスがスレていて皆さん釣れないようですが、僕がエボルジオンと
メガバスルアー、i.t.oのサンバイザー、鬼手仏心Tシャツで完全武装したあかつきにはきっと爆釣間違いなしです。
この前友達に「まずは普通のタックルで練習した方がいいよ」と言われました。
何も判ってないですね。案の定バックラッシュしまくりでしたがエボルジオンなら
間違いなくキャストできます。彼らは妥協組ですから判らなくてもしょうがないですよね。
こんな有能な僕がこんな所で悩んでいるのはとても無駄です。
ですからどなたかエスパーダとディアブロ新品を定価で売って下さい。中古は嫌です。
自分の右腕となるロッドが中古なんてそんな汚らわしいことはイヤです。
もちろんプレミア価格なんてふざけてます。
出来れば高校生なので36回払いの分割にしてください。
お願いです。エボルジオンを持つにふさわしい僕にどうか売って下さい。
本当に困ってるんです。お願いします。
408 :
名無しバサー:04/10/29 23:16:42
揚げ
さげマ(ry
410 :
名無しバサー:04/11/20 14:55:35
ほげ!
411 :
名無しバサー:04/11/28 19:22:50
得ぼる字音
412 :
名無しバサー:04/12/08 00:43:44
挙げ
413 :
名無しバサー:04/12/16 12:44:41
up
414 :
名無しバサー:04/12/27 21:15:31
上昇
415 :
名無しバサー:04/12/29 00:59:24
下降
サスペンド
417 :
名無しバサー:05/01/13 22:11:49
猛ダメかも知れんな
418 :
名無しバサー:05/01/13 23:31:49
着陸かも?
再開を待ってるよ。
まだ大丈夫だとは思うけど、一応保守。スレ乱立中につき。
再開でなくても、たまにゃ顔出して下せぇよ。>2代目
定期保守
422 :
名無しバサー:05/02/08 01:45:20
保守上げ
423 :
名無しバサー:05/03/01 12:11:13
ホシュ
425 :
名無しバサー:05/03/17 09:17:18
hosyu
426 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :皇紀2665/04/01(金) 00:24:02
マスター編終了のため上げさせて頂きます
>二代目氏
お早いお帰りを心より望んでおります
干す
いつのまにかあちらは1000超えてました(w
_____
/(・д・`メ)/\ 1000・・・
/| ̄∪∪ ̄|\/
|____|/
保守
431 :
名無しバサー:2005/04/18(月) 11:06:06
ファーストフード店にて。
友達が便所に行くというので冷やかしてやろうとおもった。
手始めにノック10連弾、コココココココココンココンと連続でノックしまくりプレッシャーをかけてやった。
さらに便所のドアに耳をくっつけて中の音を聞いた。しばらくするとブリブリ...ブリッブリというサウンドが聞こえてきたので
おーっとただいまウンコ中であります、ブリブリっというサウンドが大音量で流れております。っと実況。
その後も「てめー便所でシコってんじゃねー」とか「おっと、今トイレットペーパーで尻を拭いております」とかいいまくった。
飽きたので席に戻るとまったく知らない女の子が泣きながらトイレから出てきた。
急いで店から出たよ。
もす
433 :
名無しバサー:2005/05/09(月) 10:27:56
うp
もす
435 :
代行者 ◆MAIUUfwy72 :2005/05/25(水) 09:19:59
あ、危なかった
ほす
437 :
名無しバサー:2005/06/13(月) 23:09:10
ほしゅあげ
保守
捕手
440 :
名無しバサー:2005/07/08(金) 19:23:51
age
441 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 15:05:58
クソスレage
うめうめ♪
442 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 15:29:31
ぬるぽ
443 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 16:16:36
_,,_
( ´∀`)
444 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 16:20:55
∧_∧
( ・∀・) | | ガッ
と ) | |
Y /ノ 人
/ ) < >_∧∩
_/し' //. V`Д´)/
(_フ彡 /
445 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 16:42:54
づれてるやんw
446 :
名無しバサー:2005/07/11(月) 18:24:43
ピョン( ゚д゚)ヤン
447 :
名無しバサー:2005/07/13(水) 21:46:00
つーか、俺、ラーメンマンなんですけど。
で、サクマジグとスヤマパドルは使えない!と。因みにレッドのクリンクルカッツは全然ダメ。実に全部が中途ハンパ。何が狙いなのかまったくわからん。
色々なフレンチフライ型ワームのイイとこを全部パクろうとしたら、結局なんにも特徴のない、ポパイが儲けるだけのワームになったというイイ見本。
フィッシングTOバッシングに高いカネ払うならヒロ内藤とか村上とか並木や奥村のビデオの方がずっとコストパフォーマンス高いし。
菊本に作らせてるプレゼンスに至っては比較対象がないくらい使いにくい。硬い。
北浦の布川に関しては、何であれがそっくりさんとしてしゃしゃり出てくるのか?マネか?まあ、そうなんだろう。
でも、はっきりいって、ポッと出の、設立当初に何も関わっていない、ブームに乗ってオイシイ汁だけ吸って、マナーを守れんヤツが主体で、しかも、バス釣り全体のマナー悪化に貢献したところが何でデカイ顔できるのか?
あのご意見番を気取る元ヘラ師(あんな風貌でバス釣りで飯を食ってるとは正義超人として認めない)よりも、貢献してきた人達はたくさんいるだろう。
あのトゥルーパー&ジグへッド大好き男の貢献と言ったら、救いようのないTTWルアーどもをワゴンにばら撒いたことくらいだ。
下野のガイド不買運動だ。
449 :
名無しバサー:2005/07/13(水) 22:23:02
■■■■■■■■■■■■■■■■
■ ■ 違う板にコピペすると、四角の枠の中に
■ ■ メッセージとURLが現れる不思議な絵。
■ ■
■ ■ (その仕組みがリンク先に書いてある)
■ ■
■ ■ この原理を応用すると、まったく新しい
■ ■ コピペが作れる予感。
■■■■■■■■■■■■■■■■
ガビー凹[◎凸◎]凹ーン!
450 :
名無しバサー:2005/07/14(木) 15:25:13
⊂(^ω^)⊃ぶーん
451 :
名無しバサー:2005/07/16(土) 08:31:58
爨爨 爨爨爨 爨爨爨 爨爨爨
*
爨爨 爨爨爨 爨爨 爨 爨爨爨 爨爨爨
爨爨 爨爨 爨 爨 爨 爨爨 爨爨 爨
爨 ×爨 爨 爨爨 爨 爨爨 爨爨 爨
*
* 爨爨 爨 爨 爨爨 爨
*
■■ ■■■ ■■■ ■■■ ■ ■
| ̄|
| ̄ ̄ ̄|
452 :
名無しバサー:2005/07/16(土) 20:02:54
__,, , , , _ 、 ,,, ... ,, _ ..,_
ー=、 、ー-、`ヽ、、ヽ`!i' , ,i",r'",-'"=ミ
`ヽ`ヾ`、 ! ヽ ! l! i! !_i_/_<'"``
`,ゝ、iliー'" "、,"、', i, リ
!/!,li ,;;-=o=-,ッィ=。ゥィ
__ i、`!', '; `ー /;;!i、''; ,!
ー''`ヽ`,ーi'`''"!、ヽ , `一'、 / __
`il `i ! ヽ、  ̄ ̄ / iヽ、/ ,.ヽ_
i! !` `ーァ、-ー' ! ノ!トi,!'",ノ-、
,..=、i! iヽ-、 rィ',;'!ヽー-、! `/_,i' _,.!'、
ーニー-、._ `ヽゞニ-、.;' i! ! , `ト_ノ`x-'" ノ
=ニヽ、 , `, /ヾ=ソ ノ !/ !、`ー`''イ、
-ー-、 `i, / / ヽ `イ_, i -'" ̄`! ! ヽ
ゝノ /-'" ` ' ! ヽ !
くにへ かえるんだな
453 :
名無しバサー:2005/07/18(月) 22:36:37
age
454 :
名無しバサー:2005/07/27(水) 12:14:04
ago
455 :
名無しバサー:2005/07/30(土) 21:17:51
キ // /::::://O/,| /
ュ / |'''' |::::://O//| /
.ッ \ |‐┐ |::://O/ ノ ヾ、/
: |__」 |/ヾ. / /
ヽ /\ ヽ___ノ / . へ、,/
/ × / { く /
く /_ \ !、.ノ `ー''"
/\ ''" //
| \/、/ ゙′
|\ /|\ ̄
\|
456 :
名無しバサー:2005/08/02(火) 13:29:43
歌いまーす!
お〜やま〜がひ〜〜と〜つ、あ〜りま〜した〜♪
チューリーープ さ〜かさ〜まに〜♪
ドーナ〜ツ ふ〜たつ〜と お〜まん〜じゅう〜♪
ひ〜げを〜つけ〜 も〜ぐら〜くん〜♪
__
/ \
│◎ ◎│ ダハー!
≡ ○ ≡
___(w)--(w)_
.
458 :
名無しバサー:2005/08/08(月) 16:18:03
,-ー──‐‐-、
,! || |
!‐---------‐
.|:::i ./´ ̄ ̄.ヽ.i
|::::i | |\∧/.|..||
|::::i | |__〔@〕__|.|| カワイソス
|::::i |.(´・ω・`) ||
|::::i | キング ||
|::::i | カワイソース.||
|::::i L___________」|
|::::i : : : : : : : : : |
`'''‐ー------ー゙
459 :
:2005/08/11(木) 13:18:16
うほっ いいアゲ
保守
461 :
名無しバサー:2005/08/24(水) 20:08:04
家庭教師つけてるんですけど、女性で22か23なんですけど無言でパンツ見せてきて
僕はどうしたらいいのかわからずに言われた問題をやっているとスカートを捲り上げたまま
どぅ?わかる?と言われて僕は「あの、パンツが見えてます」と言うと「ホントだね暑いから」と家庭教師の人が言って
そのまま30分どうしたらいいのかワカラナイまま部屋に戻ってきました
462 :
名無しバサー:2005/08/25(木) 09:24:08
λ...... ここ変だよ… λ...... λ......
λ...... λ...... どうしたんだろう…
λ...... λ......
λ...... λ...... 逃げていく…
λ...... λ......
λ......
λ...... λ...... λ...... 変だよ空気が…
λ...... 不思議な感じだよ… λ...... λ......
λ...... λ...... なんか怖いよ…
λ...... λ......
λ...... λ...... 音がしないよ…
λ...... λ......
λ......
λ...... λ...... λ...... みんな逃げていく…
463 :
名無しバサー:2005/09/01(木) 13:59:36
,.、,、,..,、、.,、,、、..,_ /i
;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
(゚Д゚,,),:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄
⌒
⌒
,::';`;~:`:`';
,:':.、.:':,.:.:、:,::`:、
,.、,,:':、:.:;:.;' ":.:、:`:、
;'`;、、::、;;.:` `,:.、:.:':,:,,, /i
(゚Д゚,,),:.' ゙::.、.:'':,'.´ -‐i ) )
 ̄  ̄
,.、,、,..,、、.,、,、、..,_ /i
;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
( ( (゚Д゚,,),:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄
>> 仕留めてみろゴラァ!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,.、,、,..,、、.,、,、、..,_ /i
;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
(,゚Д゚,),:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄
464 :
名無しバサー:2005/09/18(日) 23:02:04
466 :
名無しバサー:2005/10/09(日) 14:54:57
あげ
467 :
名無しバサー:2005/10/12(水) 17:11:14
ポテトチップスの美味しい食べ方を考えました(*^_^*)
袋の中で粉々につぶす
↓
お皿かボウルにうつす
↓
お湯を加えてふやかす
↓
萎びたらお湯を捨てる
↓
ぐちゃぐちゃになったものを平らに、そして円形にのばす(大きさは手の平大くらい)
↓
しばらくそのままにして乾かす
↓
乾いたらそれを高温の油で揚げる
↓
お好みの量の塩をまぶす
↓
ポテチみたいで(゚д゚)ウマー
h(ry
もす
「包茎ですけど脱ぐと凄いんです。
一皮剥けてみたいのです。
精液の量もハンパじゃありません。
実際、射精で家が吹き飛びました。
その威力は恐らくダイナマイトを越えているでしょう。
射精で家を吹き飛ばした際、母と父が巻き込まれて他界しました。
過疎な村出身ですが、 私はここまで来ました。
何故か?贖罪の道を歩むために。
そして――――貴方と出会うために。
あなたは覚えているでしょうか。前世で僕たちは、
そう、一つの受精卵だった。嘘です。
141kskという場所で悲劇は起こりました。
知っていますか?――-知らなくて当然ですよね、貴方にはあの時の記憶が無い。
もう多くは語りません。後は貴方自身の力で思い出すべき事です。しね。
失礼。取り乱しました。僕も必死なんです。
ところで、カツラずれてますよ。 ――――私達の思いもね。
この文章を読む時、貴方はすでにあの時の誓いを破っているでしょう。
でも…もういいんです。進んだ時計の針を戻す事は出来ないのだから。
あ、ごめんなさい。 それどうみても僕の精子ですね。
ご馳走様でした。 ヨロシコシコね。
チンコ!!!!クンニ!!!!おっぱい!!!!!
マンコ舐めさせろ!!!!!!!!
僕は処女膜を破った事があるから、同罪ですね。
申訳ありません、少々取り乱してしまいました。
さて、結局の所僕が言いたい事を要約しますと、
愛されるよりも、愛したい。マジで。」
471 :
名無しバサー:2005/11/05(土) 13:10:38
472 :
名無しバサー:2005/11/10(木) 03:15:31
まんまんみてちんちんおっきぷちゅ
473 :
名無しバサー:2005/11/10(木) 03:46:40
474 :
名無しバサー:2005/11/24(木) 11:23:33
475 :
名無しバサー:2005/11/24(木) 11:36:06
初代さん外伝マダーチンチン
476 :
名無しバサー:2005/11/30(水) 22:18:37
ある男の玉の中で精子たちが話をしていた。
「なぁ、もしも受精できたら何になりたい?」
「俺は医者にでもなって人々を救いたいな!」
「俺は歌手になって人々に夢を与えたいな〜」
「でも俺ら一人しか受精成功しないんだよな…
よーし、うらみっこなしだぜ!」
そしてついに旅立ちのときが来た。
「よしみんないこーーぜ!正々堂々と戦おう」
「おう GOGOGOGO!!!!!!」
一斉に前進する一同。我先へと突き進む精子達。
そんな中、先頭の精子が何かを悟った。
どう見てもオナニーです。本当にありがとうございました。
477 :
名無しバサー:2005/11/30(水) 22:35:22
それはシークレットや
478 :
名無しバサー:2005/12/14(水) 02:33:48
479 :
名無しバサー:2005/12/14(水) 09:18:09
、i`ヽ ,r‐'ァ
`ヽ:: ::´
ヽ ヽ , -‐--、 / /
ヽ \ I:::::::I_ _ / / ┌───────
ヽ ヽ i,(;;;ノI、;;;)l ,,/ , ' | フォーーーーーーッ!
ヽ ` ー 、.,,ゝ´ヮ`,ノュ_, - ' r' └───────
` 、_ /::: `山'::::: /
ヽ:::::::::::|::::::::"",r‐'
〉::::::::|::::::::::¨/
/;;;;;;;/;;;;;;;;;;/
/;;;;;;;/:::::::::::《
<;;;;;;;《:::::::::::::ヽ ))
/ ヽω'"""^~ヽ
/ ,/ ヽ ヽ
480 :
名無しバサー:2005/12/22(木) 16:47:16
>>初代
ブログ読みまつた。
今年中に続きうpはありますか?
481 :
名無しバサー:2006/01/01(日) 01:09:20
482 :
名無しバサー:2006/01/06(金) 23:13:21
続き書けばか
すんません。。。原稿会社に置いてきちゃいまして。。。
なんとか今月中を目指します。でも短編です。
そうね。。。10話くらいの話です。
保守
486 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/01/29(日) 22:46:13
このままこのスレを埋もれさす訳にはいかん!!
てな訳ですこーしだけ宜しいでしょうか。
タダの短編ですけど。。。
「『今江さん、魂の存在を信じますか』そう彼は言ってたな。その時正直答えられんかったわ」
エリート5を優勝で飾った彼はつぶやいた。「この優勝は彼にさせてもろうたようなもんやね」
彼、今江なる人物はサングラスを外して空を見上げていた。傍らには女性の姿が見える
「そのだ!」と言う言葉が聞き取れる。彼女はいしいそのと言い元女性プロ。「元」と言うのが彼女の存在を
周りに気付かせる要因になっているのは確かだ。「魂ですか?」そのさんも空を見上げていた
「私は優しさだけを信じたいです」「そのらしいわ」二人は笑っていた。そして険しい表情に戻る今江さん
「魂の存在を気付かせてくれたのが『駆出し君』やったね。彼は真直ぐ過ぎた。釣りに対して真面目過ぎた
熱過ぎた。そして消えるのが早過ぎた」
俺は雨貝健太郎、バス雑誌のルポライターだ。まがりなりにもこの業界で飯を食っている。自分でも業界の生え抜きとして
自負していた。前にも「駆出し君」の名前は聞いていた。そして茨城県にある「居酒屋 霞」でも吉田御大から
その存在を聞かされ、とある湖で本人らしき人物に会った。いや、それも本人かどうかは分からずじまいであった。
あまりにも短編なので1日1話です。
もし2代目氏が戻ってきた場合は早急に終了いたします。
あくまでもパラドックスを含めたお話しです
2代目氏待ってるよ〜
それではまた
489 :
名無しバサー:2006/02/02(木) 01:31:51
おお〜
初代さん、GJ!
どんな形でもストーリーが展開されるのはいいですな
「今江さん、駆出し君は今どこに居るのでしょうか?僕はいろんなバスプロから駆出し君の名前が出るたびに
興味が湧きました、でもその存在が確かめられない。もしかしたら存在しないのではないか。そう結論付けました」
今江さんは視線を優勝カップに戻すとこう呟いた「駆出し君は存在する。それは間違いやない。ただ神様やお化けと
違って出てきて欲しい時に出てくるようなものとちゃうわ。彼は自分の意思で姿を現す」と聞いてますます彼を
神々しく感じ、実は存在自体などせず、もはや亡くなってしまったのであろうか?そう感じずにはいられなかった
「ちょい待ってな」そういって携帯を取り出しどこかへ電話を始めた。「おうフージーか?今江や、どうやそっちは
フラットサイドジャバロン?あれはアカン、もうようせーへん」どうも藤木プロと電話しているようだ「駆出し君はおるか?」
何!?駆出し君!?駆出し君は藤木さんの下に居るのか?「おう駆出し君元気か?君のお陰で優勝してしまいましたわ」
どういう意味なのであろうか、今江さんは満面の笑顔を浮かべている。こんな笑顔を見たことがない。もしかして
プライベートでは良く笑うのだろうか?そのさんも今江さんの笑顔を眺めている。「その」と言ってそのさんに携帯を渡す今江さん
「駆出し君!?久しぶり!!元気してた?私?少し太ったわよ。エヘヘ」そのさんも昔のアイドル時代の顔をしている
この二人をここまで笑顔にする人物。駆出し君・・・あの時ほんの少しだけ言葉を交わした彼なのであろうか?
491 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/02/02(木) 22:30:29
>489氏
有難う御座います。お眼汚し程度ですから。たまーに覗いて下さい
なかなか遅々として進まないですがご勘弁を(w
それにしても二代目氏の書き手に近づきたいが無理でした(ww
やっぱ俺路線かな?と思うも今回は静かな展開です
それではまた
492 :
名無しバサー:2006/02/04(土) 20:58:50
新作期待あげ
週末保守
俺は衝動が抑えきれなかった。「今江さん、電話の向こうに駆出し君がいるんですか?」そんな言葉を言うのが
精一杯だった。俺は喘いでいた。「ん?そうやで。駆出し君は君のこと話してた時あったな」
俺のこと?あの時のことだろうか、やはりあれは駆出し君だったのだ。正直電話を代わって欲しかった
それを察知してくれたのか、おもむろに今江さんは電話をそのさんから代わって話し始める
「駆出し君な、君に逢いたい言う奴がおるんやけど。え?そうや、あの時のやつやろな」
「おう、分かった。んじゃ霞にしとこか。御大?そやなー君に任せるわ」と言って電話を切った
切った後も余韻に浸るかのように笑顔のままだ。そしてそのさんも笑顔だった。
「なんや元気そうやんけ」とそのさんに視線を投げかける。「そうね」と言わないが、目が語っていた。
「フージーと二人でまたえらいもん考えてるようだったわ。えらく早口でしゃべりおって」そしてタバコを取り出して
吸い始める。夜の空に染みるかのように銀色の煙は溶けていった。「アマケン、お前来たいんやろ?どうや」
図星であった。前回あのたった数分の会話だったが、今のバスプロを取り巻く事情を全て集約しているかのような
人物との会話。まるでタイムスリップしたかのよう、そうあれは初めて釣りをした感覚に似ていた
「俺行っていいんですか?」「駆出し君も望んでるようやった」「駆出し君がですか?何故・・・」
「何でやろうね?彼は最近じゃ滅多に人に会いたがらないからのぉ。魔が差したとちゃうか?」
今江さんなりの冗談であろう。3人は笑っていた。
495 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/02/12(日) 21:21:31
今年も釣博行ってまいりました。
なんかバス業界の裏と表がきっちり別れた感じがします
どういう意味か?すなわち勝ち組と負け組みです
メーカー以外で出展してる所は勝ち組と言っても過言じゃありません
ブースの中もそれを象徴しております
数年前、国際展示場で行った時は「なんのメーカー?」って
首をひねったり「何作ってんの?」なんてのが多かったです
それからたった数年でこの有様
これが淘汰ってことでしょうか?あの頃には戻れないにしても
もうちょっと活気が欲しいですね
週末保守
497 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/02/26(日) 22:45:08
俺は会社に電話した「ちょっと休みを下さい。」そう電話に告げた。お前は帰って来るなり休みか?と笑われたが
会社も俺が休むと言っても実際は取材をしていることを承知していた。「じっくり休んでとびっきりの土産話を持って来い」
それが会社からの答えであった「どこで暇を潰すんだ?」と聞かれる。俺は短く「霞」とだけ告げた
首都高から常磐道に入り桜土浦インターで下りて料金所を出た。そして国道6号に入り水戸方面へ
備前川とさらに桜川を渡って国道を下りて土浦の高架道に車を進める。久しぶりに見る桜川。オールスタークラシックでは
ウイニングパターンを掴んだ選手たちで狭い河川が溢れる時があった。今江さんは何故にかたくなに霞ヶ浦へ
足を向けないのだろうか?自問自答をするも答えは見つからない。俺には今江さんは霞ヶ浦を嫌っているのではなくて
もしかしたら霞ヶ浦に、何かトラウマというかつらい思い出でもあるのだろうかと感じずには居られなかった
後で聞いた話では、恋瀬川で駆出し君と口論になった挙句、駆出し君が落水して一時は重体にまでなった事故があったようだ
そのせいだろうか?まわりの話を聞くと今江さんと藤木さんは陰陽の趣きがあったが、そこに間を取り持つかのような
駆出し君の存在がある。でも俺には今江さんと駆出し君こそが陰陽に思えた。言い換えればバスプロとしての陰陽だ。
498 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/03/05(日) 22:19:05
土浦駅の東口を過ぎて桜川を渡って直ぐに「居酒屋 霞」がある。ここは前に一度吉田幸二さんに連れてこられた
ここにはあの「駆出しマスター(以下マスターと)」も存在している。このマスターも何故かバスプロと不思議な繋がりを秘めている
だが彼はバス釣りにはまるで興味がない。そしてここで働く宅間淳子さん。そう彼女も元バスプロである。京都出身の彼女が
何故にこの店で働いているのか謎でもある。
店の駐車場に着くとそこには吉田さんのチェロキーの姿は無かった。俺は店の前に立っている。そして扉を開ける手が震えていた
前に来たはずの場所。でもこの扉を開けてしまうと現実の世界に引き戻されてしまうのではないか、そう感じる。俺は怖いのだ
意を決して扉に開ると中から「今日は貸切なんですよ。すいません」と女性の声がする。恐らく宅間女史であろう
「俺です。雨貝です」「あ!雨貝さん!!大分ご無沙汰してますね。今江さんから電話もらってますから。どうぞ中の方へ」
宅間さんは小さい身体から似わない位大きな声で俺に声を掛けてくれた。あぁやっぱりこの場所は存在したのだ。
「失礼します」二歩・三歩と進む。カウンターの席に腰を下ろすと、何を言わないのに生ビールが運ばれてきた。
「今日は今江さんのおごりだそうですよ。なんか怖いですね」クスッと小さく彼女は笑っていた。マスターは「今江さんは
駆出し君を拾ってから来るそうですよ」「え!?そうなんですか!!」声が上ずっているのが自分でも分かる。
一ヶ月ぶり保守
500 :
は:2006/04/09(日) 11:36:29
500
501 :
名無しバサー:2006/04/19(水) 01:06:02
保守
補修
「マスター、俺は駆出し君は存在しないのだろうかと考えてます。前に会ったのも駆出し君じゃなくて
駆出し君の意思を継いだ人間と会話してんじゃないかなと。でも実際には存在するわけで」
「その疑問分かりますよ。この店に来るバスプロ達の方々からしつこい程『駆出し君に会わせてくれ』と言われるんです」
そうか、駆出し君とコンタクトを取れるのは限られた人達なのだ。「そうなると限られた人達としか会えない駆出し君との
連絡はどうやって?」「これは俺の口から言っていいのかな・・・」「もしかしてマスターが?」
「全然違いますよ」マスターは焼鳥を焼いていた。顔を炭火で照らされながら黙々と。「駆出し君は選ばれた人間でも無いです」
マスターは意味が分かっているようだが、俺には良く分からなかった。「じゃあ何でここまで駆出し君の名前が」と言い掛けた時
店の扉が開く音がする。「おこんばんわー」「菊元さん!!」「ありゃ?アマケンちゃんやないですか、君も今江君に?」
「そうなんでが・・・菊元さんは?」「僕は吉田さんに呼ばれました。今江君からはそのあと連絡がありましたわ」
「御大から?」「ええ、なんでも今江君から御大に連絡が入ったそうですわ。一応スジは通した訳やね」
そう考えると、今江さんはあながち霞ヶ浦が嫌いな訳じゃないようだ。現に吉田さんにスジを通している。
「あれ?ならば御大は?」「『俺の出番じゃないよな』って言ってましたわ。御大らしいです。ぶわはははは」
俺と菊元さんがカウンターで昔話に花を咲かせているところに「遅くなってすまんね」と今江さんが入ってきた
その後ろに駆出し君?が立ち、さらにそのさんが居た。「駆出し君元気してましたか!!」と菊元さんは
席を立ち、駆け寄って駆出し君の手を握り締めていた。「なんや?少し太ったか?フジにええもん食わせてもろうてるようやね
安心しました」
「藤木さんにじゃありませんよ。伊東さんにです」「こりゃ一本取られました。とにかく中へ入りいな」
あの駆出し君が目の前に居る。なんて声掛けたらいいんだ。
「雨貝さんでしたっけ?お久しぶりです」「え!覚えててくれたんですか?」
「正確には忘れてました、でも今江さんに言われて思い出しました」
「君は本当に駆出し君なのか?俺は夢の中なのか区別がつかなくなってきているんだ」
「アマケン、こいつは紛れも無く駆出し君や。本当はここにフージーが居れば間違いなく
駆出し君を巡る騒動の立役者が揃う訳や。騒動の物語については駆出し君に謝らなくちゃいけないことが沢山ある訳やしね」
「止めてくださいよ今江さん、らしくないでしょ。ここは『全てワシの思惑でしたわ』ぐらい言って欲しいですよ」
「相変わらずやね駆出し君は」と今江さんが笑う「最近フージーと一緒におるさかい口が悪うなったわ。昔の駆出し君はピュアやったな〜」
菊元さんの目がさらに下がっていた。
そのさんはこの雰囲気を楽しんでいるのか宅間さんと何か話しながらこっちを見ているのであった
夢のような時間が過ぎている。しかも目の前でだ。
あのスーパースターと言われている今江さんと菊元さんが同じテーブルで飲んでいる
ことも信じ難いが、さらにそこにいしいその・宅間淳子・そしてあの駆出し君である。
駆出し君といえば今江・菊元ペアとの伝説の試合が語り記憶い新しかった。
だが、もやは伝説の人だ。どうしても俺は聞きたいことがあった
「駆出し君、君は戻ってくるのかい?」全員の顔が引き締まった。一気に本丸に攻め手を向ける。
「戻る・・・僕は元々その業界人じゃ無いのです。ですから戻るってのは正解とは言えないと思います」
「じゃぁ質問を変えるよ。未練はないのかい?」
「未練・・・ですか?そうですね、折角覚えたバス釣りですからね。そして一時期でもあるけどこの業界へ」
「違う!!」俺は駆出し君をさえぎった「そうじゃない、そうじゃないだろ」
「なんですのアマケンちゃん。何ムキになっとんねん」
「駆出し君違うよ。今江さんに借りを返さないのかい?」
506 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/04/21(金) 09:50:09
「アマケン!!それは駆出し君にとって一番触れちゃいけない所や!!何さらしとんじゃ!!」
「ですから、尚更聞かせて下さい」
駆出し君は両肘を突いて手で顔を覆っていた。「いいんです今江さん。僕も、段々良くなってきてますら。もう大丈夫」
「でも酷い汗よ!アマケンさん酷いです。駆出し君は」
そのさんを手で制して駆出し君は俺に静かに語りかけてきた
「今江克隆を倒す、それは僕だけの問題じゃ無い。今江さんを倒すと言う事は、すなわち今のバストーナメント全てが
ひっくり返るだけの要素を含んでます。でも倒したい、いや倒しますよ。何故なら今、僕の存在理由かもしれないって
僕自身がそう感じてるんです」
「そう来たか!!」今江さんはうれしそうにコーラを飲み干した
「ワシにトドメ刺すのは君しかおらんわ」グラスから透けて見える照明を薄目で見ながら今江さん言った
「フージーじゃあかんのや」
「何故ですか?いわば盟友の藤木さんの方が適役だと思いますけど」
「そうかもしれん、でもあいつはワシのことようけ知っとる。いや、知りすぎている。そこに変な先入観で試合を申し込まれてもな
ワシとしてもフージーの出し抜くことは簡単や」
「でもそれを言うなら藤木さんも同じないですか?」
「そうや、だからワシとフージーじゃあかん」
正直最初は意味が良く分からなかった。結局はこうか?お互い一緒に居る時間が長すぎて、長所短所が分かりきっている
それならばお互いを出し抜くのは容易であるということだ。
「フージーには純粋さが無い」それが今江さんの答えだった
507 :
名無しバサー:2006/04/21(金) 10:44:02
乙
「でも僕に負けたからと言って引退はしませんよね」駆出し君は笑いながら言った。
「一度して知らん顔して復活するのがオチやね」菊元さんも言う
「ワシはするよ」
「しませんね」そのさんが答える。
「する訳がありません」マスターも口をそろえた。
駆出し君はマスターが焼いてくれたレバーの塩焼きを口にして「負けたまま消えるのは今江克隆の美学に反しますよ」
「駆出し君は今江君をよう分かっとるわ。ぶわはははは」
「そんなもんかいのぉ。したが負けてから復活したんであれば若手の成長にも支障をきたすのも事実や。
ならばワシはスポンサーに回ろうと思うんや。それは自然なことやろ?」
今江さんがスポンサー?確かに今IMAKATUでスポンサードされているプロが居るが、そうなるとエバーグリーンの立場がなくなる。
「最終的には駆出し君にエバーグリーンを継いで欲しかったんや。じゃが伊東さんとこに行くように
なってしまった訳やからそれもご破算。そうなると誰かっちゅうともう菊さんしかおらん」
「僕ですか?今江君!!モリゾーもおるやん」
「モリゾーか?あいつは経営とかには向かんわ。あいつは釣りしとるからモリゾーなんや」続けて今江さんは
「IMAKATUも暫定的なもんや。いつなくしても良いようになっとる。エバグリの受け皿にもなれるし、その反対もありや」
俺は疑問に思った。どうも今江さんは自分が引退するのを前提で話している。しかも引退した後のことまで考えて
確かに大事なことだが、まだ早すぎるだろう。
俺は「まだ日本ではバス釣りと言うジャンルは確立されていないと感じています
その段階で牽引している人間が居なくなるのは業界にとっても不本意です。日本じゃアメリカみたいにメジャーなスポーツじゃ
ありません。その為に最近エリート5の試合を考えた訳ですよね?」
「だがなアマケン、傀儡であるうちは何も出来ん。はっきり言うて疲れるっちゅうのが本音や
やりたいこと出来んならやはり新しい団体。ってことに落ち着くわけや」
「そうか、一回引退して別の団体を立ち上げて復活するってことですか?」
「まぁ、負けた場合の話やけど」今江さんは意味深な視線を駆出し君に投げていた
「駆出し君、ワシに引導渡す自信はあるか?」
「僕で良いのでしょうか?」
「質問に質問で返すな。どうなんや?」
「僕がその大役を引き受けると思って今江さんは言ってますね。でも今江さんの引導を渡すのは、僕じゃなくて
今江さん本人ですよ。今江さんが引退すると心に決める瞬間です。だけど、その気にさせることは僕に
出来ますよ。何故なら僕は多大なる恩を今江さんに受けてきました。多分ですが、僕が伊東社長に引き取られることも
何かしら今江さんが絡んでると思ってます」
「よう気が付くね」今江さんは笑っていた
「その恩を返すこと、すなわち今江克隆に『負けましたわ』と言わせることが、僕にとって恩返しなんです
逆に今江さんに聞きたいです」
「なんや?」今江さんの顔が引締まる
「今江さんはその準備が出来てますか?」
「準備をするしないやない、覚悟はいつも持っとる。それは駆出し君に限ってのことやない。その覚悟を持ってるか
持ってないかで、トッププロと言えるんや。昨日今日優勝したんやないでワシは。ずっとや、ずっとこのまま来てるんや」
「それならば言います、僕は今江克隆を倒します。そして僕も引退します」
「やっぱりそうか、ワシは駆出し君はそう言う思っとったわ」タバコに火を点けてゆっくりと吸い始めた。その煙の中に
昔の自分の姿が見えているのか、今江さんは
「ワシも歳取ったわけや。そやけどこのまま腐り果てる訳にはいかん」
タバコをもみ消すとおもむろに携帯で電話を始めた。みんな「いったい何処へ?」と言った面持ちで今江さんを見つめている
「おうフージーか?前の不完全燃焼試合な、完全決着したるわ。その為にはもっとドエライ物こさえとけや」
最初は怖い顔をしていたが、最後はニコニコと陽気な今江さんに戻っていた
「うちのファクトリーに遊びに来い」と言って電話を切った
「けじめか?・・・あとは誰にやろ?」菊元さんが切ない声で言うと
「ん?そうやな・・・」今江さんは眼を細めて天井を見つめていた
その後の会話は他愛も無い会話に終始没頭していた。
菊元さんはタクティクスシリーズを一段落させたら試合に復活すると言っていたが
「ボクが出たら1位かベベかどっちかやね」と笑っていた
「菊さんは試合となると怖いで〜あんなデッカいプラグ投げまくってる姿からは
想像出来んくらいちっさいワームを使ってた時があったわ」
「まだ根に持ってるらしいですわ」今江さんを見ながら笑う。
「そりゃそうやろ?2インチのチューブをマス針にちょん掛けで使ってたやんかアレは卑怯やったわ」
「でも実際あれしか食わん状況やったね」
「ワシにはとてもやないが真似出来へんわ」
「駆出し君は試合をどう思う?」グラスの底に沈む氷を眺めている駆出し君
「そうですね。試合って聞くだけで心の深淵が揺れ動きます。あの時結果的には負けていたわけですから」
そしてレモンハイを一口呑む
「僕はただの一般人でした。最初は菊元さんが僕の家で呑んだただそれだけでした
それからは毎日が加速度的勢いで進みましたよ」駆出し君は今江さんを見た
今江さんは「あれも運命やろか」
「運命だと信じたいです。だってみんなここにいるじゃないですか」
「そやね。運命やなかったら神様はお遊びが過ぎるっちゅーことやね」豪快に菊さんが笑っていた
「恋瀬川に落ちたのも運命、児玉さんに会ったのも運命。メガバスに行ったのも運命、そして藤木さんとも」
「なんか凄くもつれ合った運命よね」そのさんが言った。
「運命とはそういうもんや」今江さんは確信していた
「だから面白いってことさ」マスターが最後に締める
「ならばこの運命とやらに逆らえばもっと面白いわけやね」
「じゃからアマケンはワシらのことよう見とけ。もしかしたら海外行ってる場合とちゃうで」
俺も続きを見たい。誰だってそう思うのではないだろうか
俺は夢のような時間から脱却出来ていなかった。
昨日は土浦東口に新しく出来たビジネスホテルに泊まった俺
あんなに呑んだのに不思議と二日酔いになっていなかった。チェックアウトをしてホテルをあとにする
昨日呑んだ居酒屋「霞」を左手に見る。よかった、夢じゃなかったんだ。
「夢うつつ」うつつとは現世、つまり今の世だ。数奇な運命に彩られた若者達がより高みを望んでいるにしても
かたや意識不明の重体にまでなった駆出し君、加害者の今江さん。それを支える人々があの場所で酒を
酌み交わす。それは夢のような世界であった。
俺はこのことを記事にしてしまっていいのだろうか?
それともこのまま俺の胸の中に仕舞い込み、機会を待つべきか。判断は俺にしか出来ない。
「くそったれ!!」大声で叫んだ。俺にはその度胸も無い。あるのはライターだっていう事実のみだ。
しょうがない、上司に判断してもらおう
会社に着いてみると、上司が俺の顔を見るなり「休暇はどうだった?」と聞いた。
俺は神妙な顔をしているのであろうか?
「いいあんばいとは言えないようだな」と肩をすくめていた。
「いえ、その逆です」と俺は思い切って原稿を渡す
上司は読み終えるとしばらく考え込んでいるのか冷めたコーヒーを無造作に口にし「マズい」と無造作に言った
「お前はどうしたいんだ?」編集長は原稿と俺を交互に見ている
「正直迷ってます」
「なら答えは出てるな、こんなもん世間に出せるか」
しごく最もな意見だ。世間一般のアングラーがこれはみたら腰を抜かすであろう。
「こんな夢みたいな話は後で取っておいたほうがいいな。この原稿は時期が来れば宝になるだろう」
そうだな、そうかもしれない。夢は未来に取っておいた方が楽しそうだ。
それが俺の答えに替わっていた。
外伝:神々の黄昏編 完
512 :
初代 ◆7ULSY7KDNc :2006/04/21(金) 21:28:45
なんかダラダラしてて済みませんでした
本当はもっと早くうpしたかったのですが、ネタを考えていたら
今日になってしまいました。その割に出来はあんまり良くないですね。。。
2代目氏待ってますぞ!!ついに俺の子供も生まれそうです。
駆出しオフしたかったですねぇ。。。
それじゃまた!!
ガンガレ
514 :
名無しバサー:2006/04/24(月) 15:00:03
代行者だろ?
515 :
代行者 ◆MAIUUfwy72 :2006/05/07(日) 22:13:15
保守
516 :
名無しバサー:2006/05/14(日) 23:44:15
こっちもな
お!やっと気づいたよ
初代乙
子供の名前を駆け出しにしてください。
保守
519 :
名無しバサー:2006/06/13(火) 12:21:55
HOSYU
520 :
名無しバサー:2006/06/13(火) 14:08:17
age
521 :
名無しバサー:2006/06/21(水) 23:45:00
続きはまだかいな
522 :
名無しバサー:2006/07/03(月) 00:05:08
HOSYU
オッス!おら悟空!おめーら元気にバス釣ってっか?
おらは最近竿がバキバキに折れるんだ。フッキングしたらリールシート割れるしよ…なんでだ?
ティンバーフラッシュってのよく釣れるな!魚の上にバシバシ当てて釣るルアーっていいよなぁ。でもたまに魚の背中だけ針にくっついてっけどよ。
ラインはPEの80lbしか使わねぇ。あんまり切れたりしねぇからな。
そういやぁこの前ベジータと釣り行ったとき、あいつ下手糞でよぉ「俺にも釣らせろカカロット!」とか言って帰っちまったよ…
今年は地球の池狙って他のサイヤ人やらフリーザやら来たけどメガルアーやったら嬉しそうな顔して帰っていきやがったなw
あいつらの事をメガオタって言うんけ?馬鹿だなw
んじゃ、おらそろそろ釣具屋に行く時間だからちょっくら行ってくっか!
524 :
名無しバサー:2006/07/21(金) 12:17:06
某ブログでパート1ハッケソあげ
525 :
名無しバサー:2006/07/21(金) 12:20:45
代行自演おつ
代行者って自演ばっかやんw
まじキモスw
代行者 ブログ でグ(ry
529 :
名無しバサー:2006/08/07(月) 23:13:32
age
530 :
代行者 ◆MAIUUfwy72 :2006/08/26(土) 13:46:27
久々
531 :
名無しバサー:2006/09/05(火) 17:35:52
あげ
532 :
名無しバサー:2006/09/16(土) 22:21:03
あげピエロ
r' `-, l;;r'"`'"``;;;l
! i ,ゞ: ニ.. ..ニ .ソ ,---.,.--,,
l ,..,,..ソ,,ノ `l .・・ i / `.、
.!,!./ _,.. _,..l' ` .'~`/ ( |
/`、 ゝ/,.-'"┌. .∨ `--y,,..,,...,,,...,,..,ノ
/ l `ー-'ヽ. l。 i -' `- ..ソ ちょ、ちょ、ちょ、止めて下さい
/ l \l' y l。 / lヽ. '__ ./ `ヽ
r'─-、 ̄`ー` i .l。 / | \-' , ,,\
/ `l `l / l l。 .l ヽ i .ヽ ちょ、神輿(みこし)やないねんから
:==;i i/、 ∧. l。 i`, `i ,, /; `、
:三;_,,..-''"i_,,,/ i-=========-∧,..~`-' /_, `..、
.l i l _,,.-'" ,.-,', , / , i ちょっとー
.L____`、-' ヽ ノ ,.///ノ.く / \ ヽ `l
l:::::::::,.-'" l `、..__..,' `'`'`' .\/ ヾヽ / l
l::::r'" ,. /. \ ヽ /
l::::l ,..--'"~ヽ、 ./ヽ /\__,,...-,"
`:::l 「ヾヽll `、 / ll,ー /:::::∧::::::::::::/
:::l l`ll''''ll `..、/ lll/ l::::::r'/:::::::::::::l
`::l `ll ll :lll:: /:::::l l::::::::::::::/
/:::l ll :ll :lll l::::::::l':::::::::::::::l
l::::::L_,-'ll'`、 `============'i l:::::::i:::::::::::::::/
l:::::::::::::i/`========'`ヽ_,.l::::::l::::::::::::::l
534 :
名無しバサー:2006/09/30(土) 20:28:21
あげ
535 :
名無しバサー:2006/10/09(月) 21:14:10
あげーーーーーーーーーーーいぇい
536 :
名無しバサー:2006/10/16(月) 10:43:33
age
538 :
名無しバサー:2006/10/30(月) 12:08:05
あげ
539 :
名無しバサー:2006/11/11(土) 07:30:04
あげ
540 :
代行者 ◆MAIUUfwy72 :2006/11/29(水) 22:48:56
そろそろ師走
541 :
店長:2006/12/05(火) 00:42:39
捕手
542 :
代行者 ◆MAIUUfwy72 :2006/12/20(水) 23:30:42
そろそろ
543 :
名無しバサー:
もいっちょ。