阪神タイガースバトルロワイアル第十一章

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1代打名無し@実況は実況板で
2代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 19:52:17 ID:O9Mz5ZO70
ん?
3代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 19:59:06 ID:/oJtpKpZ0
保管庫
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
旧保管庫(若虎BR紅白戦進行中)
ttp://homepage2.nifty.com/sorasouyo/
4代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 19:59:53 ID:/oJtpKpZ0
他球団バトロワ保管庫

讀賣巨人軍バトルロワイアル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
ttp://doubleplay.hp.infoseek.co.jp/ybbr05/ (2005年版保管庫)
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
ttp://www6.atwiki.jp/moriizou/ (2005年版保管庫)
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://qdr.mydns.jp/drbr2004/(中日ドラゴンズバトルロワイアル2004保管庫)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://roo.to/fdh-br/
5代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:01:04 ID:/oJtpKpZ0
千葉マリーンズ・バトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/
鷲バト
ttp://www.geocities.jp/trgebr/
ビリオネア・バトルロワイヤル
ttp://tokyo.cool.ne.jp/birioneabr/index.html
西武ライオンズバトルロワイアル
ttp://web-box.jp/lions_br/
オリックスバファローズバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/bs/
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
ttp://athensbr.fc2web.com/
北海道日本ハムファイターズバトルロワイアル
ttp://fsbr.no.land.to/
2323バトルロワイアル
ttp://2323.hagewasi.com/
6代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:01:46 ID:/oJtpKpZ0
その他関連サイト
マーダー名鑑
ttp://www.geocities.jp/murder_file_3bbr/
2ch野球板 バトルロワイアル 参加者名簿
ttp://www4.atwiki.jp/basebr/
ネタバトまとめサイト
ttp://sports.geocities.jp/mimamoru_br/
7代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:03:05 ID:/oJtpKpZ0
現行バトロワスレ

一億円プレーヤーバトルロワイヤル第7章
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1187708395/
2323バトルロワイヤルルール 2本目
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1177781220/
オリックスバファローズバトルロワイアル第3章
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1176382428/

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ11
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1194538810/
8代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:04:15 ID:/oJtpKpZ0
バトロワSSリレーのガイドライン
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
9代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:05:01 ID:/oJtpKpZ0
リアルタイム書き投下のデメリット
1.推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)
2.複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)
3.バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)
4.上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
 文章を見直す(推敲)事は考える事につながる。過去の作品を読み込まず、自分が書ければ
 それでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
10代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 20:17:34 ID:RBV3uk+i0
おつです
11代打名無し@実況は実況板で:2007/11/13(火) 23:21:18 ID:4qw/XfIB0
>>1乙です

もう落とさないぞ!
12代打名無し@実況は実況板で:2007/11/14(水) 03:18:44 ID:aL5toEZNO
吉野を見守りながら乙!
もう立たないかと思って心配した
13代打名無し@実況は実況板で:2007/11/14(水) 23:13:21 ID:xkf4MxE00
>>1乙!
ジェフが気になってたんだ。
続きが見たいぞほしゅ。
141:2007/11/15(木) 02:26:30 ID:4Q4uyzgN0
即死回避

過去ログ持ってなかったから
テンプレ貼れずにすまんかった
15代打名無し@実況は実況板で:2007/11/15(木) 21:41:55 ID:FqzsbTzG0
まあええことよ
16代打名無し@実況は実況板で:2007/11/16(金) 12:56:32 ID:xmYjYCA6O
保守
17代打名無し@実況は実況板で:2007/11/16(金) 21:23:59 ID:CVwY5Ndp0
ほす
18代打名無し@実況は実況板で:2007/11/17(土) 11:47:05 ID:e/PbuSHi0
>>1おつです!
職人さんまた帰ってきてくれないかなぁ
19代打名無し@実況は実況板で:2007/11/18(日) 00:48:36 ID:kxfSp9pG0
>>1乙です。
もうこれからは絶対に落とさない。
20代打名無し@実況は実況板で:2007/11/18(日) 18:31:07 ID:yyK4WqYb0
絶対保守宣言
21174(1/8):2007/11/18(日) 21:01:28 ID:Bai1NsUv0
>>前スレ655
155.そして、静寂。

「やっと着いた……」
 田中秀太(背番号00)がそう息を漏らしたのは、校舎の正面玄関に立った時だった。
 両脇に昔懐かしい靴箱が均等に並んでいる空間に足を踏み入れ、秀太は無線で連絡
を入れた。
 なかなか相手からの応答がないまま、呼び出しを続ける。
 数十メートルおきに休憩という、実際首脳陣が見ていたら怒りを買いそうな怠慢
行動にも何も言ってこないあたりを見ると、忙しくて目を離しているのかもしれない。
『遅いぞ』
「すみません」
 ようやく出た相手は、自分を棚に上げて不機嫌にぼやいた。
 平塚は確か平田が対応する、と言っていたはずだが、出たのは岡田だった。
『お前がとろとろしとるから、もうひとつ仕事が増えたわ』
「はぁ?」
 あからさまに嫌な声を出してしまって自重する。
『秀太』
 こちらが用件は何だと聞く前に、相手は有無を言わさぬ口調で告げた。
『鼠が張り込んだ』
 それは、この上なく明瞭かつ明解な指令だった。
『殺せ』


 それは恐ろしく長い時間のように思えた。
 冷たい廊下を転びそうになりながら走り、中村豊(背番号0)は、ようやく靴箱
の並ぶスペースにまろび出た。
 スパイクを入れた靴箱に向かおうとして、来た時とは違う光景を目の辺りにする。
 正面玄関の入り口付近に、一人の男が横たわっていた。
22174(2/8):2007/11/18(日) 21:02:14 ID:Bai1NsUv0
「ジェフ……!?」
 駆け寄り、抱き起こす。間違いなく、先程田中秀太に捕らえられていた同僚だった。
 その脇に同じく秀太が抱えていたアタッシュケースも放置されていたが、こちら
はどうでもいい。
 死んだように動かないウィリアムスの首筋に手を当て、脈を取る。
 温かい皮膚が押し返してくる弾力と、規則正しい間隔で脈打つ指先の感触。
「良かった……生きてる……」
「お人好しだな。どう見ても罠だろ」
 胸を撫で下ろし、呟いた声を蔑むように、薄闇の声が耳を打った。
 呼び掛けたのは、立ち並ぶ長方形の箱の一つ。その影から、億劫な動作で現れた
男がいた。
 最初に目に入ったのは、見覚えのある銃口だった。
 一瞬感じた既視感は、記憶という形で鮮明に蘇った。
「あ……っ!」
 一瞬、目の前が赤く染まる。
 最初に自分に銃口を向けた男。その人物が、再び同じように目の前に立ち塞がっている。
 田中秀太は記憶と違わぬ姿勢で、まっすぐにこちらに照準を合わせていた。
「し……ッ」
 言いたいことが多すぎて言葉にならなかった。
 もしこんな風に再び相まみえることがあるなら、彼に叩き付けたい言葉が山ほど
あった。
 それら全てが混じり合い、中村の喉から迫り上がり、雄叫びとなって迸った。
「秀太あああああああああああああああ!!」
 人気のない校舎に絶叫がこだました。
23174(3/8):2007/11/18(日) 21:02:48 ID:Bai1NsUv0
 収音とともに、ゆっくりと頭頂に昇った血が降りていく。
 じわりと、全身にこそばゆいような痛覚が走った。
 忘れかけていた、打撲や切り傷が熱を持って記憶を疼かせる。
 同時に、鳥肌が立った。恐怖と言うよりは、怒りと緊張がない交ぜになったような
寒気だった。
 山道。探知機。銃。崖。田中秀太。細切れになった映像が、目の前の顔に重なって
フラッシュバックする。
「元気そうですね」
「おかげさまで、ピンピンしてるわ……!」
 限りなく直接的な皮肉を込めて呻く。
 口にしてから、気付く。実際、自分がこうやって生きているのは、彼が早計な判断
で深追いしてこなかったおかげだ。
(偶然――なのか? これは)
 崖から転げ落ちたとき、奇跡的に打ち身だけで済み、深刻な怪我を負わずに済んだ。
 地図を落とし、ゴレンジャーを探して彷徨う中、期せずして裏切りの園へと足を
踏み込む田中秀太を目撃した。
 それらの偶然は、こうやって夜の島を走り回り、もう一度彼と邂逅するためだった
のではないか。
 そうかもしれない。そんな気がする。
 偶然と奇跡が重なり合い、見ざる手によって引き寄せられたような、出来すぎた
シナリオ。
 そこまで考えて、中村豊はどこか運命めいたものを感じずにはいられなかった。
 ならば、この出会いには何か意味があるはずだ。
 彼に殺されかけたのが中村豊であり、彼の裏切りを知ったのが中村豊であり、再び、
この島の中心で彼と向かい合ってるのが中村豊である意味が。
(俺はここで死ぬかもしれない。それでも、俺は俺が出来ることをしたい。俺がいた
意味を残したい)
 自分に何が出来るのだろうか。
 意味を残すために、何かを変えるために、中村豊は叫んだ。
(俺が今出来ることは、こいつを変えようとすることや!)
「何でや! 何でや秀太!」
 秀太は応えない。Buck Mark.22の奧に潜む顔が、わずかに強ばった気がした。
24174(4/8):2007/11/18(日) 21:03:40 ID:Bai1NsUv0
「こんなんおかしいやろ!? 俺らが殺し合いせなあかんなんて、間違ってる!」
 主催者に跪く者に、こんなことを説くのは今更過ぎるだろう。案の定、秀太は
無反応だった。銃身が軽く持ち上げられ、指先に力がかかる。
 その事務的な動作に、ズシリと心臓が重くなる。
 かつては笑い合っていたはずの相手に、容赦なく銃口を向けられる悪夢。
(なんで……)
 なぜこんなことになってしまったのだろう。
 悲観しそうになったとき、握りしめた掌に眠る書類の存在を思い出す。
(全ての元凶は――)
 余りにも下らなく愚かな目的の為に、何十人もの選手の人生が狂わされている。
 自分も、ゴレンジャーも、そして田中秀太も。
(こんなやり方、許されるわけがない!)
 田中秀太は知っているのだろうか。知らないだろう。知れば、その罪の重さに
耐えられるわけがない。
(だったら……)
 真実を知らせることで、彼の心を動かすことが出来るだろうか。
「秀太、聞いてくれ!」
 それは、愚かな男の哀願に聞こえたかもしれない。
 それでもいい。一瞬でも彼を思い止まらせることが出来れば、可能性はあった。
それは、彼の良心に賭けたものだった。
(だってこいつは――)
 不器用で、要領が悪くて、試合だってロクに出れないくせに、休日も、遠征先の
ホテルでもバッドを振っている馬鹿な男。
 器用で、要領が良くて、例え試合に出ていなくても、ベンチにいるだけでムード
メーカーになると誰からも評価される世渡り上手な男。
 羨ましいと思ったこともある。
 人付き合いは上手い方ではなかった。彼の十分の一でも、気の利いたところが
あれば、もっと後悔をせずに生きられたのではないかとも思う。
25174(5/8):2007/11/18(日) 21:04:20 ID:Bai1NsUv0
『ユタカさんは真面目過ぎるんですよ』
 酒の席で、羨ましい、と口にしたとき、彼はそんな風に答えた。
『まあ、そこがいいところなんですけどね』
 俺と違って、と舌を出す秀太に、その場にいる全員から厳しい声が飛んだ。
『お前は不真面目過ぎるんだ』とか、『少しはユタカを見習え』とか、そんな言葉
に自虐を交えながらへらへらと返し、周囲に笑いを提供していた。
 そんな姿がやはりまた、羨ましい、と思ってしまうのだ。
(こいつは、ふざけてるけど)
 どんなに要領が良くても、彼は不器用な自分を決して本気で馬鹿にしたりしなかった。
(人に嫌われないのは、本当にこいつ自身が『イイヤツ』だからなんだ!)
「お前は、知ってるのか――!?」
 それは最後の賭けだった。この愚かなゲームの真実を、知らせることで、彼が改心
してくれるのではないかという、淡い、最後の賭け。
「がぁ……ッ」
 何を、という問いかけの代わりに、腹部に埋め込まれた鉛の弾は――そのまま、
田中秀太の拒絶の言葉だった。


 まんまと罠に引っかかり、飛び出してきた男に銃を向ける。
 そのまま引き金を引いてしまえば、彼の任務はそれで終わりだった。
(簡単すぎるな――鼠退治より)
 鼠の方が、ちょこまか逃げ回る分面倒くさいかもしれない。
 昏睡状態のウィリアムスを抱え、驚愕の表情を浮かべていた中村豊は、一瞬にして
その顔を赤く染めた。
 怒り。憎悪。これらの感情を、これほどまでにあからさまに向けられたのは初めて
かもしれない。
(当たり前か……俺はこの人を殺そうとした)
 そして、今もまた。
「何でや! 何でや秀太!」
 当たり前といえば当たり前の疑問を、中村は口にした。
26174(6/8):2007/11/18(日) 21:05:43 ID:Bai1NsUv0
「こんなんおかしいやろ!? 俺らが殺し合いせなあかんなんて、間違ってる!」
(そんなこと、知ってる)
 邂逅は一瞬だった。一瞬のはずだった。田中秀太が引き金を引こうとした瞬間、
中村豊が叫んだ。
「秀太、聞いてくれ!」
 それは、逃れられない死を前にした男の最後の命乞い――だと思った。
(――違う)
 気付く。
 命乞いをする人間は、こんな力強い目をしていない。
 一瞬、背筋に悪寒が走った。
 彼は諦めていない。死の淵で、自分を、田中秀太を説き伏せようとしている。
 彼の言葉は、今の自分を崩壊させようとしている。本能がそう叫んだ。
(やめろ――俺は、あんたの話を聞きたくない!)
 顔を見たくない。声を聞きたくない。本当は二度と会いたくなかった。
 会えば逃げ出したくなる。どうしようもない自己嫌悪に駆られ、自分の存在を
憎悪したくなる。
 彼の真摯な眼差しの向こうには、彼らがいる。
(俺は、あんたになりたかった!)
 真面目で、実直で、ピエロ役の白羽の矢が立つこともなく、人を殺そうとすること
もなく、ゴレンジャーに出会い、仲間として受け入れられ、なんの葛藤もなく彼らの
側に居ることを選べ、彼らと共に道を切り開こうと息を巻く男。
 単純で、純粋で、誠実な男。
(何で、俺はそれになれない!?)
 あまりにも眩しく、妬ましい存在。
「お前は、知ってるのか――!?」
(聞きたくない!)
 拒絶は、そのまま人差し指に伝わった。
27174(7/8):2007/11/18(日) 21:07:11 ID:Bai1NsUv0
「がぁ……ッ」
 一発。
 血の混じった悲鳴が吐き出される。
 腹部に空いた穴を、中村は信じられないような面持ちで撫でさすった。
 ブリキ仕掛けの骨董品のような動きで、中村豊が顔を上げる。
 憤怒と激痛。そして失望。どす黒く変色した顔が睨み付けてくる。震える唇から、
掠れた声が絞り出された。
「こんな……仲間を騙してまで……こんなやつらの手先になって……」
 ヒュゥ――と息を吸い込む音が聞こえた。 
「見損なったわ! お前は――お前らは最低や!!」
「知ってるよ」
 二発。
「あ……ぐ……っ」
 中村の身体が横倒しになった。自らの血の海で飛沫を飛ばし、尚も睨み付けて
くる彼の視線には、明らかな憎悪があった。
 信じようとして裏切られた憎しみ。信じた者を傷付けられた怒り。
 彼の場合は、後者の方が大きいのではないかと思った。笑えるほどお人好しで、
羨ましいほど仲間を大切にする男だ。
 それも、ただの想像の範疇を出ないが。
(それでいい……)
 どこか、ほっとする。呼吸が楽になった気がした。
 殺したいほど憎んでくれればいい。呪うほど恨んでくれればいい。
 今の自分にとっては、その方が何百倍も楽だった。
 信じられることは、焼きごてを当てられたような苦痛しか伴わない。
 秀太は銃を降ろした。
 これ以上の攻撃をする気はなかった。『鼠』は急所に二発も撃ち込まれ、ピクピク
と痙攣を続けながら血沼を広げている――死んでいるのと同義だ。
(いや、まだ死んでいない)
 彼は意識を手放してはいない、唇を震わせ、虫の息を吐きながら、まだ何かを
伝えようとしている。
28174(8/8):2007/11/18(日) 21:08:58 ID:Bai1NsUv0
 黙らせることは出来た。耳を塞ぐことも出来た。
 だがあえて、秀太は血の沼へ踏み込み、彼の側で膝をついた。
 この男の声を、呪詛を――最後まで聞き届けなければいけない。
 なぜかそんな気がした。
「俺は、お前を許さん――!」
 そして、静寂。
 動かない中村豊の左手には、赤く血に染まった紙が握られていた。


 死の間際まで固く握り締められた指先を、田中秀太は冷たく見下ろした。
「誰も許されようなんて思ってない」
 ただひと言、そう答える。
 彼がその答えに満足したかどうかは定かではない。
 物言わぬ抜け殻は、ただ絶望的な死を主張していた。

【残り33人】
29代打名無し@実況は実況板で:2007/11/18(日) 22:42:52 ID:1mk8DlyZ0
職人さま乙です。

ゆたかぁーーーーーー!
しうたーーーーー!
30代打名無し@実況は実況板で:2007/11/18(日) 23:11:01 ID:wofb3G5RO
職人さん乙です!
豊ぁぁぁぁっっっ!!!
31代打名無し@実況は実況板で:2007/11/19(月) 00:10:32 ID:MwcQaJUG0
職人様乙です!

豊ぁあああああああ!!!
秀太ぁああああああ!!!
32代打名無し@実況は実況板で:2007/11/19(月) 16:09:17 ID:wnHwWECB0
職人さま乙です!!

うぅ…豊さん…秀太さん……
33代打名無し@実況は実況板で:2007/11/20(火) 00:16:09 ID:UCyCzXJR0
うぉぉぉぉ、豊ぁぁぁぁ…秀太ぁ。

職人様乙です。
34代打名無し@実況は実況板で:2007/11/20(火) 16:12:08 ID:18rO7jyh0
ほす
35代打名無し@実況は実況板で:2007/11/21(水) 08:47:54 ID:/os4Ofl0O
豊さん…うわぁん!
36代打名無し@実況は実況板で:2007/11/22(木) 01:29:33 ID:K96WLCag0
豊・・・
37代打名無し@実況は実況板で:2007/11/22(木) 20:40:21 ID:fG9NNbVb0
保守
38代打名無し@実況は実況板で:2007/11/22(木) 20:43:40 ID:h5K0KAV/O
豊の心は秀太に通じなかったということか?……それとも。。。
39代打名無し@実況は実況板で:2007/11/23(金) 15:26:28 ID:i2YaJ5YWO
40代打名無し@実況は実況板で:2007/11/24(土) 11:11:19 ID:SBd/9cW+0
乙です!


豊あああああああああああああああああああああああああああ

秀太ああああああああああああああああああああああああああ
41代打名無し@実況は実況板で:2007/11/25(日) 03:24:35 ID:ZPyr15OrO
(´・ω・')
42174(1/7):2007/11/25(日) 12:08:48 ID:JHe317880
>>28
156.濃闇の悪夢

 通されたのは何の変哲もない教室の一つだった。
 ガランとした無人の教室。
 懐かしいようでどこか違う、人の温かみのない冷え冷えとしたそこに足を踏み込み、
田中秀太は一番後ろ、中央の席に座った。
 斜め後方、床に転がしたウィリアムスとアタッシュケースの存在はあえて目に入れ
ないようにして、人工の光に煌々と照らし出された教室を観察する。
 年期の入った黒板。その手前中央に古ぼけた教壇が佇んでいる。並ぶ机の数は、
部屋の大きさに比べて随分少なかった。記憶の中の自分が通っていた学校の、半分
ほどしかないように思えた。
「…………」
 真夜中の学校に一人。
 机につっぷし、秀太は堂々と授業中に居眠りをするなまくら生徒のように目を瞑った。
 ここで眠れるほど図太い神経はしていないが、いつまでも講義の始まらない教室
で教師を待っているような薄気味の悪い違和感から逃げ出せるだけ、まだマシだ。
「…………」
 結構な時間待たされた気がした。
 ガラリ
 全国共通の耳慣れた音を立てて、教壇側の引き戸が開いた。
「ご苦労だったな」
 先生は偉いと勘違いしている教師のような横柄さで教壇の横まで進み出る――岡田彰布。
 その後に影のように付き従う、中西清起と平田勝男。
 どうせならふんだんに粉を付けた黒板消しをドアに挟んでおけば良かった、と軽い後悔
が脳裏を過ぎる。
 音を立てて立ち上がり、秀太は床に転がるジェフ・ウィリアムスと、黒いアタッシュ
ケースの傍らに立った。
 机と机の間の通路を突き進んで近づいて来た岡田が、何かを見定めるように床に転がる
『回収品』を眺めた。
 やがて、ねっとりとした岡田の視線が、秀太に向く。
43174(2/7):2007/11/25(日) 12:09:51 ID:JHe317880
「これだけか?」
「ハイ」
 即答する。
「適当な参加者の身柄と、アタッシュケースの回収」
 あえて中村豊の殺害には触れず、秀太は事務的な口調で報告した。
「それ以上の命令は何も」
 沈黙が落ちた。まるで自分を試すような沈黙に感じて、秀太は目線を床に落とした。
 囚人を監視するような視線が突き刺さる。
「もう行っていいぞ」
「え?」
 拍子抜けして、顔を上げる。
「とっとと戻れ」
 追い立てる声に背中を押され、戸惑いながらも出入り口へと向かう。
 ドアに手をかけたところで、秀太は振り返り、土袋のように転がるウィリアムス
を見やった。
 もごもごと口を動かし、控えめに気になっていたことを質問する。
「その……彼を、どうするつもりなんですか?」
『彼が心配で』などと言えば、今更の偽善だろう。だが気になるのは本音だった。
 こんな場所に放り込んでおいて、気になるもなにもないのだが。
 ウィリアムス捕獲の簡単な目的は聞かされたが、いささか信じられないような内容
ではあった。
 だが、この首脳陣ならばやるのだろう。
 彼が具体的にどのような仕打ちを受けるのか、田中秀太には想像もつかなかった。
「お前が知る必要はない」
 きっぱりと、断固とした口調ではねつけられる。
「…………」
 踏み込めないことに失望したわけではない。初めから望んでなどいなかったはずだ。
 それでも確かな落胆を感じながら、秀太はドアの前で頭を下げた。
「失礼します」
44174(3/7):2007/11/25(日) 12:15:13 ID:JHe317880
「これが例のアレか」
 田中秀太が去った後、彼の足音が完全に遠ざかるのを待ってから、岡田が口を開いた。
「アレです」
「えーっと、パスワードはなんやったかな……」
 平田が勢いよく頷くのを、聞いているのかいないのか、ぶつぶつと独り言を呟き
ながらアタッシュケースを弄り出す岡田。
 その背中を眺めながら、中西清起は胸の内に広がる薄ら寒い不安を自覚せずには
いられなかった。


 あの爆発の後、岡田を起こしに行ったのは中西だ。
 突然近くで轟いた爆音に、何者かの襲撃を受けたのかと、その時一人で作業をして
いた中西がパニックを起こしたのは言うまでもない。
 状況を把握しようとあたふたと本部に向かう途中で、総司令官の岡田が仮眠中である
ことを思い出した。
 上長に事態を報告する方が先だろうか――そう思い立ち、方向転換しようとした
ところで、何やら慌ただしい様子の平塚と鉢合わせた。
『何をやっている』
『監督に報告しようと――今の爆発はいったい何なんですか?』
『それはしなくていい。問題ない。禁止エリアの外で馬鹿が悪足掻きをしただけだ。
それよりも、田中秀太が戻り次第プロジェクトDを開始する。今からその準備に取り
かかるから、手伝え』
 まくし立てるように言われた言葉の全てを理解するのに時間を要した。
『プ、プロジェクトDって、あれですか? 計画前に岡田監督が言ってた――』
 正気か、と言っているように聞こえたかもしれない。
 全くの岡田の気まぐれと思い付きで起案されたプロジェクトD。日程的な余裕も
なかったし、企画倒れになったものだと思っていた。
『俺も知らなかったが、何とか形になっていたらしい。岡田監督と平田ヘッドが中心
になって動いている。必要な物資の手配が間に合わなかったが、もうすぐ届くそうだ』
 何が? どこから?
 色々と腑に落ちない部分はあったが、平塚はあえて分かりづらくはしょって話して
いるように思えた。あるいは、彼自身も知らないことか。
45174(4/7):2007/11/25(日) 12:17:53 ID:JHe317880
 結局、監督に知らせなかった理由は、平塚に作業を手伝わされながらの会話の中
で知った。
 平田の監視不行き届きの揉み消しの片棒を担がされたというわけだ。
 監督に黙っておくには、やや大きすぎる事件な気がした。
 確かに、田中秀太が指令通り例のモノを運んでこれば隠し通すことは出来るかも
しれないが、どこかに穴がある気がした。あるだろう。なにせあの平田ヘッドコーチ
がやることだ。基本的に、中西は彼に信頼を置いていない。
(知らせといた方がいいだろう……これは)
 ばれた時は連帯責任だ。保身を考えるのなら、何の利もない揉み消し工作に付き合う
必要はない。
 適当に理由をつけて早々に平塚の元から離れ、中西は元の作業に戻るふりをして
岡田監督の仮眠室へと向かった。
 中西の判断は別の意味で正しかった。
 岡田と二人で本部へと向かった時、そこから飛び出していく背番号0を目撃した。
 侵入者だ。この混乱に乗じて、誰かが侵入することは確かに可能だった。
 だが、本部で監視をしている者がいる限り、それらは水際で止められる筈だ。
 岡田はあえて背番号0を追わなかった。彼の背中を悠然と見送り、司令室の引き戸
を乱暴に開けた。その音に、明らかに寝ていたであろうと思われる動きで、平田が
腰を浮かす。
『何をやっとるんだ』
 慌てふためきながら、何やら言い訳を連ねる平田に対する岡田の反応は冷たかった。
 だが、平田にとって幸運なのは、それ以上のお咎めを受ける前に、別の――もっと
優先すべき事柄が舞い込んだことだった。
 外部からの通信が入る。田中秀太の帰還だった。


「お、空いたわ」
 短い回想を打ち切ったのは、岡田彰布の間延びした関西弁だった。
 プレゼントを開けるのを家に帰るまで待ちきれなかった子供のように、その場で
ケースを開け中身を広げ出す。
46174(5/7):2007/11/25(日) 12:18:52 ID:JHe317880
 出てきたものは、一見、何に使うのかよく分からない『物資』だった。
 ヘッドフォンのようなものや、拘束具、ゴーグルのようなもの、何やらコードの
ついた機械などの奧から、岡田がつまみ出したのは何重にも封をされた小瓶だった。
 中に、色の付いたカプセルのようなものが入っている。
「それは……?」
 中西の問いに、岡田がこめかみに指をあて、何かを思い出すように瞑目した。
「えーと、エー、エル……ちゃうわ、エル……エルエスディーやったかな」
 LSD。
 岡田の発音からそのローマ字を繋ぎ合わせた瞬間、中西の背筋に冷たいものが走った。
 現存する最も強力なドラッグの内一つ。
 CIAの行った非道な洗脳実験『MK ウルトラ』でも使用され、自殺者や廃人をも
出し、物議を醸した。近くはあのオウムが用い信者を洗脳したとも言われている――
「昔あった人体実験によると、薬物洗脳と密室洗脳を同時にやると、人間は80%の
確率で洗脳されるそうや」
 中西の蒼白な顔に満足したのか、岡田が得意げに知識をひけらかしてくる。
「しかし、そんなに上手くいくものなんでしょうか。洗脳なんて……」
 半信半疑だった。
 洗脳や催眠が実際に存在する、といことは聞いたことがある。
 だが幾ら声高に叫ばれても、中西の洗脳のイメージは映画や漫画の世界の産物だ。
 そもそも人を殺せと言われてあっさり殺す人間が出来上がるのなら、もっと日本
の凶悪犯罪ニュースをそういった記事が賑わせてもよいものではないか。
 ……それは余りにも闇の部分過ぎて、中西のような健全な一般人『だった』人間
の耳に届くことはなかっただけなのかもしれないが。
「これは先生から聞きかじった受け売りだけど」
 前置きをしながら、平田はイマイチ納得のいっていない様子の中西に、授業でも
始めるように人差し指を振って解説を始めた。
「洗脳の成功効率や効果は、被験者の置かれた状況設定と心理状況に大きく左右
される。もちろんこの両者は密接に関係しているしね」
 例えばね――と、平田の口上は本格的に講義の様相を呈してくる。
47174(6/7):2007/11/25(日) 12:19:26 ID:JHe317880
「人の感情の動きや行動動機を、一本の川だとするよ。例えば流れ続けている川の
流れを堰き止め、逆流させるのはとても難しい。だが、その穏やかな流れを激流に
変え、川を奔流させ洪水を起こすことはさほど難しくはない。一気に大量の水を流し
込めばいい。あるいは、上流にダムがあるなら、そのダムを壊せばいい。――この
世界、この孤島の中で展開する、殺し合いの椅子取りゲームという状況設定において、
人を殺せと命令するのは、そういうことなんだよ」
「……よく分からなくなりました」
「分からないのか〜? まったく、だからお前はアホなんだよ」
「平田さんだって受け売りじゃないですか」
「いや、まあ、俺も理解するまでに先生の講義で何回も寝そうに……いやいや、
そんなことはいいんだよ。お前にも分かるように簡単に説明してやると、無理やり
食い物を詰め込まれて、今にも胃がパンクしそうなほど満腹状態の亀山にテーブル
に山盛りのごちそうを食わせるのと、飲まず食わずで餓死寸前の亀山に『この虫
は食べれるんだよ』って言って虫を食べることを説得するのと、どっちが容易いか
って話だよ」
「……何となく分かりました」
 つまりはこういうことだ。
 恐怖、憎悪、危機。蔓延する殺人者、増加する死者。絶海の孤島で繰り広げられる
絶望の宴。
 まさに最高の『状況設定』というわけだ。
 古びたダムを崩壊させるのは、ほんの一突き、急所に杭を打ち込めばいい。
「連れて行け」
 会話が収束したのを見て、岡田は平田に命令した。
 ずるずると引きずられていくジェフ・ウィリアムスを見送ると、教室には岡田と
中西だけが残った。
「秀太はさっさと帰しましたが良かったのですが」
「帰したんや」
 あえてさっさと帰したのだ、という意味だろう。この男の台詞は、自分の中で
理解している内容を省略しすぎて、他者にとって理解が困難なときがある。
 それを補完するのまでコーチの役目だとしたら、別途手当をもらいたいところだ。
48174(7/7):2007/11/25(日) 12:20:06 ID:JHe317880
「肝っ玉の小さい男や。ほんまのこと言ったらびびってケツまくって逃げだすかも
しれんやろ」
 一瞬自分のことを言われたのかと思い、ビクリとする。だがすぐに、先の秀太の
話題だと理解する。
「生き残り枠とは別に命を保障、か」
 独り言のように呟き、岡田がクッ……と喉で笑った。彼らしくない笑い方なよう
に思った。
「そんなもんあるわけないやろうが」
「…………」
 そこだけ灯りのついた教室で、岡田は窓の外を眺めた。
 暗かったはずの空は、いつの間にやら東の端に色づきを見せ始めていた。
 じきに朝が来る。殊更に濃い悪夢を乗せて。
「ルール決まってんのに、勝手にやったらこっちがどやされるわ」
「…………」
 今はまだ浅い眠りについている島を見下ろしながら、岡田は映えない笑みを浮かべた。
「駒は駒らしく動いてくれればええんや」
(この人は――)
 中西清起は悟った。改めて悟らずにはいられなかった。
(恐ろしい人だ)
 己が仕える男の得体の知れなさに、ざわめく胸の内を押し殺しながら。

【残り33人】
49代打名無し@実況は実況板で:2007/11/25(日) 20:43:47 ID:n6Moz/T0O
うおおー、もう続きが!職人様乙です!! 
ものすごくシリアスな展開なのに、亀山の名前が出てきた瞬間笑ってしまいました、すいません…
50代打名無し@実況は実況板で:2007/11/26(月) 20:25:29 ID:idOXnbVP0
職人様乙です。
策謀が張り巡らされた展開に何だかうずうずします。
51代打名無し@実況は実況板で:2007/11/26(月) 23:39:23 ID:CUYivM6+0
職人様乙です!

ジェフ…どうか無事で!
52代打名無し@実況は実況板で:2007/11/27(火) 00:46:45 ID:PDvoh+QPO
職人様ありがとう。
岡田、平田…何をやるつもり?
ジェフの今後が心配です…。

他にも、林や藤原や広大とか…浜中も…どうなって行くんやぁ!?
53代打名無し@実況は実況板で:2007/11/28(水) 02:28:05 ID:yJei/AXM0
ジェフ早く気がついて・・・
54代打名無し@実況は実況板で:2007/11/28(水) 19:33:38 ID:3FIBE1BVO
55代打名無し@実況は実況板で:2007/11/29(木) 17:53:52 ID:prN3ZEWeO
56代打名無し@実況は実況板で:2007/11/29(木) 22:19:27 ID:SmMceb8M0
57代打名無し@実況は実況板で:2007/11/29(木) 23:25:36 ID:pCSw6YOE0
甲子園のチンピラに、独占禁止法を適用しろ。
58代打名無し@実況は実況板で:2007/11/30(金) 08:30:26 ID:8z4HUIcsO
59代打名無し@実況は実況板で:2007/11/30(金) 21:26:48 ID:B4f9xylYO
60代打名無し@実況は実況板で:2007/12/01(土) 08:53:14 ID:ZxIHjGGdO
61代打名無し@実況は実況板で:2007/12/01(土) 12:56:51 ID:82PUh4uI0
62代打名無し@実況は実況板で:2007/12/01(土) 23:13:41 ID:03O1hNar0
63代打名無し@実況は実況板で:2007/12/02(日) 11:29:38 ID:ehwANYGuO
64代打名無し@実況は実況板で:2007/12/03(月) 00:50:42 ID:M2Sb3Y4VO
65代打名無し@実況は実況板で:2007/12/03(月) 21:05:25 ID:qA5q1utG0
しゅ
66代打名無し@実況は実況板で:2007/12/04(火) 06:34:26 ID:qbz2Ir7NO
67代打名無し@実況は実況板で:2007/12/05(水) 00:10:55 ID:NPlc/lR40
まってる〜
68代打名無し@実況は実況板で:2007/12/05(水) 03:33:09 ID:MGMypLf50
保守
69代打名無し@実況は実況板で:2007/12/05(水) 03:34:06 ID:MGMypLf50
保守
70代打名無し@実況は実況板で:2007/12/05(水) 17:55:59 ID:oN0nb9sIO
71代打名無し@実況は実況板で:2007/12/06(木) 18:12:52 ID:ih93L9H9O
72代打名無し@実況は実況板で:2007/12/06(木) 20:32:02 ID:ujxgNHTc0
吉野支援
73代打名無し@実況は実況板で:2007/12/07(金) 04:06:11 ID:TBekcGwA0
いやがる田淵を強行指名、挙句に石持てで追い出す
江川騒動の時は火事場泥棒振りを発揮して、濡れ手に粟で小林強奪
フィルダーに1年待たず愛想尽かされ逃げられる
20年連続巨人戦負け越し、長嶋の栄養ドリンク
村上ファンドに乗っ取られかけ、長年悪態つきまくった阪急に恥も外聞もなく吸収してもらう
最近では給料の安い某貧乏球団から集中的に選手強奪

毎年ヲタどもが暴行や器物損壊で逮捕
戦前の建物で、地震でガタガタになっていつ崩れてもおかしくない汚い球場を改築せず
いつまでも使い続けぼろ儲け
国交省の指導でようやく補強で茶を濁す

とにかく、
珍ファン   マジ死ね  キチガイ 人間まがい
在日コリアチョン奴隷  本国けーれ  糞が!

74代打名無し@実況は実況板で:2007/12/07(金) 06:26:15 ID:n5XGxUzPO
75代打名無し@実況は実況板で:2007/12/08(土) 01:02:45 ID:QmpLeTKB0
ほしゅ
76代打名無し@実況は実況板で:2007/12/08(土) 10:18:23 ID:Ysof5bjA0
hoshu
77代打名無し@実況は実況板で:2007/12/08(土) 13:30:36 ID:xlFpK5bSO
(>д<)∠ジェフ!!
78代打名無し@実況は実況板で:2007/12/09(日) 00:28:34 ID:pZOfXWP+0
ほしゅ
79代打名無し@実況は実況板で:2007/12/09(日) 15:36:29 ID:QqUzi8QGO
80代打名無し@実況は実況板で:2007/12/09(日) 22:20:12 ID:bMYrZzZE0
保守
81代打名無し@実況は実況板で:2007/12/11(火) 01:16:07 ID:UrBksafMO
捕手
82代打名無し@実況は実況板で:2007/12/12(水) 00:16:57 ID:MF9pubTJ0
83代打名無し@実況は実況板で:2007/12/12(水) 08:52:00 ID:g0qCL226O
84代打名無し@実況は実況板で:2007/12/13(木) 00:56:30 ID:eBMZHtWdO
保守
85代打名無し@実況は実況板で:2007/12/13(木) 19:10:35 ID:uox63LUp0
ほしゅ
86代打名無し@実況は実況板で:2007/12/14(金) 08:16:52 ID:tA1454FSO
87代打名無し@実況は実況板で:2007/12/14(金) 21:58:37 ID:E5D9ZsGgO
88代打名無し@実況は実況板で:2007/12/15(土) 12:46:27 ID:4PTYm91W0
89代打名無し@実況は実況板で:2007/12/15(土) 20:19:43 ID:pR78155oO
90代打名無し@実況は実況板で:2007/12/16(日) 19:14:51 ID:kfvSx8y1O
91代打名無し@実況は実況板で:2007/12/16(日) 21:59:00 ID:AiINpgFu0
捕手
92代打名無し@実況は実況板で:2007/12/17(月) 00:39:21 ID:8WPlQWPp0
93代打名無し@実況は実況板で:2007/12/17(月) 21:05:24 ID:RHtAVg74O
94代打名無し@実況は実況板で:2007/12/18(火) 00:16:25 ID:br8mHZ2B0
95代打名無し@実況は実況板で:2007/12/18(火) 19:05:48 ID:R6+UQGLyO
96代打名無し@実況は実況板で:2007/12/19(水) 12:20:21 ID:cN10QNNsO
97代打名無し@実況は実況板で:2007/12/19(水) 17:36:10 ID:mbIVYNYG0
98代打名無し@実況は実況板で:2007/12/20(木) 11:14:37 ID:2DsaU1s3O
99代打名無し@実況は実況板で:2007/12/20(木) 15:42:53 ID:5VFSNijA0
100代打名無し@実況は実況板で:2007/12/20(木) 19:18:47 ID:+Vzf4PJjO
101代打名無し@実況は実況板で:2007/12/21(金) 12:19:05 ID:MhFxuqms0
102代打名無し@実況は実況板で:2007/12/21(金) 15:33:29 ID:laNQsWkl0
103代打名無し@実況は実況板で:2007/12/22(土) 22:05:03 ID:+hrehk4wO
104代打名無し@実況は実況板で:2007/12/23(日) 00:33:19 ID:EUx/MFu0O
捕手
105代打名無し@実況は実況板で:2007/12/23(日) 13:44:05 ID:lkOOEX0eO
ほ!
106代打名無し@実況は実況板で:2007/12/24(月) 03:40:02 ID:XZdQvpUu0
107代打名無し@実況は実況板で:2007/12/24(月) 15:44:56 ID:ndlnSCTJO
ゅ!
108代打名無し@実況は実況板で:2007/12/25(火) 20:54:49 ID:+YUrURLN0
ほしゅほしゅほしゅほしゅ
109代打名無し@実況は実況板で:2007/12/26(水) 10:56:57 ID:pT+tnKt7O
ほしゅ
110代打名無し@実況は実況板で:2007/12/26(水) 16:07:20 ID:n7wJYIgaO
(oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 (oT∩To)怒 チャリ通は 口実 ただ 同棲 する為 酷いよ 信用 してたのに
111代打名無し@実況は実況板で:2007/12/26(水) 17:04:55 ID:BrEXZ0jIO
汚ティンポ!
112代打名無し@実況は実況板で:2007/12/27(木) 03:58:26 ID:nCh+da6g0
ほしゅー
113代打名無し@実況は実況板で:2007/12/28(金) 12:18:08 ID:L+zyu+AsO
ほしゅー
114代打名無し@実況は実況板で:2007/12/28(金) 18:20:00 ID:J9AGZIcRO
115代打名無し@実況は実況板で:2007/12/29(土) 23:00:17 ID:WrhKpj/90
ほしゅ
116代打名無し@実況は実況板で:2007/12/29(土) 23:24:06 ID:eqTfwp7aO
みんな頑張って保守してるのがケナゲ。
117代打名無し@実況は実況板で:2007/12/30(日) 00:25:14 ID:U2HLNH+m0
うむ
118代打名無し@実況は実況板で:2007/12/30(日) 06:50:31 ID:sclnQ8/J0
俺も保守しとこ
119代打名無し@実況は実況板で:2007/12/30(日) 14:28:16 ID:yd//knU+O
2007年 年の瀬保守
120代打名無し@実況は実況板で:2007/12/31(月) 01:43:13 ID:Dp4gWqO50
ho
121代打名無し@実況は実況板で:2007/12/31(月) 14:31:27 ID:v8tVipOT0
今年最後の捕手☆
122 【大吉】 【1905円】 :2008/01/01(火) 01:18:03 ID:CrCO2AE60
123代打名無し@実況は実況板で:2008/01/02(水) 20:24:42 ID:rfjjl8cy0

124代打名無し@実況は実況板で:2008/01/03(木) 13:42:54 ID:PkOWc/pJO
125代打名無し@実況は実況板で:2008/01/03(木) 22:36:36 ID:YHUOgWNH0
セッキー
126代打名無し@実況は実況板で:2008/01/04(金) 04:26:52 ID:4CcEim2+0
捕手捕手
127代打名無し@実況は実況板で:2008/01/04(金) 13:23:54 ID:g6FECI8G0
ほしゅ
128174(1/4):2008/01/04(金) 20:34:42 ID:xrGOMiSy0
157.夜明け前

 足が重い。 
 鉛のついた枷でも嵌められたかのように、恐ろしく足が重かった。
 遠目から見れば今にも倒れそうな様子で足を引きずり、田中秀太は往路より
遙かに遠い距離を、出口を目指して進み続けていた。
 左右を閉鎖された空間がようやく終わりを迎え、木造の棚が並んだ拓けた空間
に出る。
 校舎正面の玄関に足を踏み込んだ瞬間、思わず嘔吐感をもよおすほどの濃い
血臭が鼻孔を突いた。
 玄関中央に咲く大輪の血の華を迂回して、グラウンドへとまろび出る。
 ふらふらと、方向感覚も何もないまま土の地面を踏みしめて、前に進み出る。
 自らが出てきたばかりの建築物を背にすれば、遮るものなど何もない空間に
平坦な地面が広がっていた。 
 立ち止まり、田中秀太は空を見上げた。
 東の空に赤みが差している。
「朝……」
 己の耳にも届かないほどの呟き。
 奇妙に赤い空を見つめたまま、秀太は歩き出した。
 砂漠を彷徨う旅人のように、グラウンドを渡る。
 疲労感と喪失感。
 朝焼けが男を嘲笑っていた。
 涙は出なかった。
 どれだけ泣きたいと願っても、そよ風にすら砂埃の上がるこの土のように、
眼球はカラカラに渇いていた。
『背番号0――中村豊』
 耳に馴染む、低く落ち着いた声が蘇る。
『背番号00――田中秀太』
 名前を呼ばれて、立ち上がった時、その男は平田に荷物を受け取り、覚束ない
足取りで体育館を後にした。
 混乱し、憔悴しきったその背中を見送った時は、このような結末を迎えるなど
想像もしていなかった。
129174(1/4):2008/01/04(金) 20:35:55 ID:xrGOMiSy0
 そう、あの時は何も分かっていなかった。
 本当に人を殺すことになるなど――仲間を裏切ることになるなど――頭では
分かっていたつもりでも、それがどれほどの重みと痛みを伴うものなのか、何一つ
自覚することなど出来ていなかった。
「は……はは……」
 疲労だった。
 笑いですらない渇いた声。それが笑いだったとすれば、何を嗤っていたのだろう。
 否。それは嗚咽だった。心が渇いてしまうと、嗚咽すらこんな渇いた笑いになって
しまうのだと初めて知った。
(まだだ)
 夜はまだ明けていない。
 煌々と赤く燃え盛る始まりの空に反して、男の闇は、これから深まろうとしていた。


 オォォォォオォ……
 低音が脳の奧を抉るようなリズムを刻む。
 頭痛。嘔吐感。
 音が精神を傷付ける。
 そこは暗い密室だった。身体が動かない。天井がやけに低かった。饐えた臭いが
鼻孔を通り脳へと到達する。
 五感の全て、第六感までもを刺激する暗い闇が、ジェフ・ウィリアムスを襲って
いた。
 目の前が赤く染まった。
 炎だ。燃え上がる炎。
 気が狂いそうだ。
 声が聞こえた。先程から酷く追い立てるような、不安を掻き立てる声が神経を
震わせた。
 ジェフ・ウィリアムスは何者かに追われていた。
 追われ、追いつめられる。それは血に塗れた男だった。
 顔の半分は崩れ、脳漿がはみ出している。
 大釜を振り回す、人相すら分からないその男は、ユニフォームを着ていた。
 目に馴染んだはずのタイガースのチームロゴ。
130174(3/4):2008/01/04(金) 20:36:52 ID:xrGOMiSy0
 別の方向から、雄叫びを上げ同じユニフォームを来た男が飛び出してきた。
 今度は腕が片方千切れていた。
 腕だけではない。胸も、太腿も、脇も、大鉈を振るわれたかのように傷口を開いて
いる。
 切り裂かれた腹から腸がはみ出していた。グロテスクなベルトのように、鮮烈な
肉色で腰を彩っている。
 ウィリアムスは逃げ出していた。必死で逃げているはずなのに、手足の動きが
酷く緩慢だった。まるでその場から一歩も動いていないようなもどかしさと焦燥感
に追い立てられる。
 やがて背後から、地面から、天井から、ゾンビのように手が伸びてくる。全身
を這い上がり、顔を掴もうとしてくるそれらを大声を上げて振り切り、逃げ出す。
 追ってくる。逃げる。
 逃げる。
 そこにあるのは恐怖だった。
 その間にも、世界は高速で回転する万華鏡のように変化していた。鮮烈な色彩と、
異常な造形。
 全てが揺れ動く。視界が歪曲化される。
 右も左もない。天も地もない。
 ただひたすらに、逃げ続ける。
 ウィリアムスは立ち止まった。何かに躓きかけたのだ。
 妻が死んでいる。その傍ら、血の海に沈んでいる小さな塊は我が子ではないだろうか。
 妻の名を呼び、転がる死体を抱き起こした。振り乱された豊かな金の髪を掻き上げる。
 刹那。
 愛おしいはずの美しい妻の顔が、腐り落ちるように醜い魔女の顔に変貌した。
 ウィリアムスは絶叫した。
 恐怖。
 激情。
 憎悪。
 憤怒。
 絶望。
 脳に流れ込んでくる、強烈且つ劣悪なシグナル。脳を抉る低音のリズム。追い立てる
ような、掻き立てるような声が響き続ける。
131174(4/4):2008/01/04(金) 20:37:54 ID:xrGOMiSy0
『kill you! kill you!』
 コロス、コロス、コロス――
『KILL KILL KILL』
 コロセ、コロセ、コロセ――
(やめろ――っ!)
「Aaaaaaaaaeeeeeeaaaaaaggggh!!!!!」

【残り33人】
132174:2008/01/04(金) 20:39:48 ID:xrGOMiSy0
明けましておめでとうございます。

1レス目リンク張り忘れました。

>>48
157.夜明け前

です。新年から失礼しました。
133代打名無し@実況は実況板で:2008/01/05(土) 01:42:03 ID:rvPDwT4ZO
新作乙です!
職人様方、今年も頑張って下さい!

秀太…(ノД`)・°。
134代打名無し@実況は実況板で:2008/01/06(日) 08:39:29 ID:iKJ369O00
職人様乙です!
ジェフが心配だよう
135代打名無し@実況は実況板で:2008/01/06(日) 13:45:08 ID:C2/nh6IcO
職人様乙です☆

ジェフの初夢は悪夢!?
なんて思ってしまいました。
これからどうなってしまうんだろう!?
136代打名無し@実況は実況板で:2008/01/07(月) 18:30:53 ID:QDmm5/jj0
職人様乙!!!!!!!!
137代打名無し@実況は実況板で:2008/01/09(水) 00:58:50 ID:cqgCCrysO
捕手
138代打名無し@実況は実況板で:2008/01/09(水) 08:59:49 ID:arPXii0k0
ほしゅ
139代打名無し@実況は実況板で:2008/01/09(水) 14:11:35 ID:h/w6xgD30
乙です!
職人様方、今年もよろしくお願いします



ぎゃあぁジェフ洗脳されたの
140代打名無し@実況は実況板で:2008/01/11(金) 17:54:21 ID:JUBS3CBXO
141代打名無し@実況は実況板で:2008/01/11(金) 21:54:56 ID:0q5iGZco0
ほ、しゅ
142代打名無し@実況は実況板で:2008/01/12(土) 01:30:37 ID:fyizrCa70
hosyu
143代打名無し@実況は実況板で:2008/01/13(日) 23:15:43 ID:vwmXxFEsO
捕手!
144代打名無し@実況は実況板で:2008/01/14(月) 10:37:11 ID:b13TMiQv0
145代打名無し@実況は実況板で:2008/01/15(火) 08:40:54 ID:uEizkO7SO
146代打名無し@実況は実況板で:2008/01/15(火) 19:06:15 ID:/2plmzGhO
147代打名無し@実況は実況板で:2008/01/15(火) 20:52:59 ID:ULA6u5Z/0
!
148代打名無し@実況は実況板で:2008/01/16(水) 23:47:56 ID:SJcBgWHUO
捕手
149代打名無し@実況は実況板で:2008/01/17(木) 17:54:47 ID:eiYDJZgg0
150代打名無し@実況は実況板で:2008/01/18(金) 22:19:19 ID:iwFdCu5N0
クラウン雑談所より転載します。

18 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:08/01/18(金) 22:11 ID:psFaDvNo
虎バトの者ですが、規制を食らってしまいまして、
携帯と職場からは元々書き込めないため
こちらで失礼いたします。

現行本スレのテンプレからは漏れているのですが、
下記の暫定HTBR板の会議場に一話投下させて頂きました。
dat落ちしている話もここで読めます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/sports/20081/
151924氏代理投下(1/5):2008/01/18(金) 22:48:15 ID:tu7CVdi20
>>131
158.もう一人のユダ

音が立たないよう慎重に戸を開け、家の外に出た。周囲を気にしつつ、
イヤホンを耳に入れる。今度は応答があることを願う。
先ほど連絡を入れた時にも、確かに誰かが出た。だが、どういうわけか
いくら呼びかけても相手は無言のままだった。仕方なく、また後で連絡しますと
最後に言いおいて通信を打ち切った。あれはいったい何だったのか? 
不思議に思いながら手首に着けた時計型通信機のアンテナを立てると、
ほどなくして反応があった。安堵すると同時に全身に緊張が走る。気持ちを
落ち着けるために一度ごくりと唾液を飲みくだし、自分の名を告げた。
「的場です」


「ああ、お前か。なんの用や?」
岡田は面倒くさそうに答えながら相手の姿をモニターの中に探した。
『こんな時間に申し訳ありません』
的場は恐縮した声で切り出し、でもどうしても気になるので、と続けた。
『二人はあの山に行った後、結局どうなったんですか?』
「またその話か? えらい気にするんやな」
『それは、もちろん気になりますよ。あの二人が戻ってくるのかどうかによって、
こっちの出方も変わってきますから』
岡田はふっと鼻で笑った。それだけが質問の理由というわけではあるまい。
だが、知りたければ教えてやろう。
「ユタカはなあ、死んだわ。殺された」

的場は監視カメラの死角にいるらしく、モニターのどこにも姿がない。だが、
黙っているところをみると少なからず衝撃を受けているであろうことは容易に
推測できる。岡田は反応を待たずにさらなる情報をよこしてやった。
「殺したんは、秀太や」
今度は少しの間をおき、わずかに動揺のうかがえる声が聞こえてきた。
『本当に、秀太さんが?』
152924氏代理投下(2/5):2008/01/18(金) 22:48:57 ID:tu7CVdi20
「嘘言うてもしゃあないやろ。なんやったら、聴いてみるか?」
岡田はいったんヘッドフォンを外して立ち上がり、監視装置の前に移動した。
器用にボタンを操作して記録されたデータの一部を再生し、マイクを近づける。
『何でや! 何でや秀太!』
腹の底からしぼり出すような男の声が響き渡った。
『こんなんおかしいやろ!? 俺らが殺し合いせなあかんなんて、間違ってる!』
先ほど、この校舎で始末された哀れな鼠の最期の叫びだ。
『秀太、聞いてくれ! お前は、知ってるのか――!?』
そして無情に轟く一発の銃声。岡田はそこでストップボタンを押した。
「と、いうわけや」

少しの間をおき、意外と早く的場の声が返ってきた。
『……分かりました。その後、秀太さんはどこへ?』
「さあな。ただ、そっちへはもう戻らんやろ」
『なるほど、そういうわけでしたか。……ありがとうございました』
とってつけたような礼がなんとはなしに可笑しい。これで向こうの用件は済んだ
はずだが、通信を終える前に言ってやらねばならないことがあった。
「それはそうと、お前は一向に動かんな」

『はい。それは、申し訳ないと思ってます』
気を取り直すように少し声のトーンを上げ、的場はすぐに返事してきた。
「何をぐずぐずしとるんや?」
『ただ、向こうは三人で、かなり強力な武器も持ってます。ああ見えて隙が全然
ないんです。ヘタに動いたら、こっちがやられますから』
言いよどむことなく答えてくる言葉の端々からは、顔が見えないことを抜きに
しても、少し前とは打って変わって落ち着きが感じられた。
「言うてもこんだけ一緒におったらチャンスはあったやろ」
『本当は、今夜みんなが寝静まったらと思ってたんです。けど、中村さんたちを
捜しに行くことになって』
なるほど、もっともらしい理由ではある。しかし、はいそうですかと信じてやる
わけにはいかない。
153924氏代理投下(3/5):2008/01/18(金) 22:49:28 ID:tu7CVdi20
「俺には、お前が迷っとるようにしか見えんがなあ」
『僕も人間ですから、こんなことになれば迷いもします』
痛いところを突いたつもりだったが、相手はあっさりと肯定した。これは岡田に
とって思いがけない答えであると同時にたいへんおもしろくも感じられた。
『でも、自分が生き残るためには言われたとおりにやらなければならないと
思っています。……それは、よく分かっています』
「まあ、ええやろ。なんだかんだ言うてもお前には期待しとるからな」
変な考えは起こすもんやないぞ、とついでに釘を刺そうとしたが、やめにした。
この男について判断を下すのは、まだ先になりそうだ。
「ほな、こっちは忙しいんでな」
的場が再度礼を述べたが、岡田は最後まで聞かずに通信を切った。

ヘッドフォンを外すと同時に引き戸が開き、平田が部屋に入ってきた。
「ノックくらいせえ。何べん言わせるんや?」
軽くにらみつけると平田は肩をすくめて頭を下げた。
「あ、すみません、つい……。今のは、誰からですか?」
「的場や。あいつもなかなか動きよらんな」
「そうですか。やってくれると思ったんですが」
平田が大げさに首をひねる。岡田はヘッドフォンを置いて一つあくびをした。

「迷ってる、言うとったわ」
「はあ……迷ってる、ですか。なんか、見込み違いでしたかね」
「秀太もゲーム前から分かっとったくせにぐずぐずしとったからな。けど冷静な
フリしてもびびりまくってるのが丸分かりの秀太に比べたら、はっきり迷ってると
言える的場は逆に度胸がすわっとるのは間違いない」
「そんなもんですかね?」
「そうや。もっとも、野球でもこのゲームでも今のところ的場より秀太の方が
はるかに役に立っとるけどな」
「的場も役に立つといいんですけどねえ」
どこまでものん気な調子で平田が言った。
154924氏代理投下(4/5):2008/01/18(金) 22:50:11 ID:tu7CVdi20
「使えんかったら、切り捨てるまでや。いや、役に立ったところでどうせ最後は
同じやけどな」
岡田はクックと笑ったが、すぐに表情を引き締めた。
「ただ、あいつが一緒におるやつらは要注意やからな。ゴレンジャーとか、
名前はふざけとるけどな」

ゲーム開始の時から、他の選手をまとめて反旗をひるがえす可能性のある
選手の動向にはいちおう注意を払っていた。爆弾を仕込んだ首輪を取り付け
られ、常に監視されている選手たちがゲームを転覆させるなどということは
まずもってありえないが、可能性はゼロではないからだ。しかし、彼らの多くが
見せた行動は、念を入れて見張っていたこちらが馬鹿馬鹿しくなるほど、
ある意味で期待はずれのものだった。

選手会長の今岡はゲームが始まるや先頭を切って殺人を実行し、前会長の
桧山をも葬った。矢野は体調を崩し、片岡に至っては誰よりも忠実にゲームを
遂行せんとしている。投手陣に目をやれば、最年長である下柳と藪は、前者が
早々に死亡し、後者は精神を病むという悲惨な状態だ。何かと一筋縄では
行かないエース井川は藪のお守りに四苦八苦しているうえ、自身も負傷して
いる。危険なウィリアムスもこちらの手に落ちた。その他の選手でゲームに
反抗する考えを持つ者は、まず恐れるに足りない。あの連中を除いて。

選手たちの兄貴分であり、もはや崇拝に近いほどの敬意を集める金本と、
次期選手会長の座に就くことは間違いなく、副会長を務める今ですら事実上の
会長と言われる赤星。まだ反抗心を捨てていないこの二人が手を組んでいる
ことは、警戒しておかねばならない。
「大丈夫でしょう。いざとなればドカーン!がありますから」
平田が喉元で片手をひらひらと振った。首輪のことを言っているのだろう。
「それができたら苦労はせんのやけどな。それより、ウィリアムスはどうや?」
「平塚たちに任せてますが、順調です。あとは時間の問題かと」
岡田はにやりと笑みを浮かべた。このプロジェクトが成功すれば、ゲームは
飛躍的に進展するはずだ。
「楽しみやな」
155924氏代理投下(5/5):2008/01/18(金) 22:51:04 ID:tu7CVdi20
通信が終わり、イヤホンをしまった後も的場はしばらく屋内に戻れずにいた。
(秀太さんが、ユタカさんを――?)
最初は岡田が自分を煽るために嘘を言ったのではないかと思った。しかし、
通信機の向こうから聞こえてきたあの悲痛な叫びは確かに中村のものであり、
その相手は秀太だった。確かに、それなら二人が今に至るまで戻らない理由も
説明がつく。

だが、どう考えても分からない。なぜ秀太が仲間である中村を――それも
訴えかけてくる中村を手にかけたのか。はっきりしていることは、一つだけだ。
(秀太さんは、裏切ったのか)
――裏切った。
ふと浮かんだその言葉を的場は心の中で反芻した。秀太は裏切った。仲間を、
ゴレンジャーを、裏切った。では、自分は――?

めぐらされる思いを断ち切るかのように背後の戸が開け放たれる音がした。
ハッとして振り返ると、赤星が立っていた。
「なんだ、ここにいたのか。何やってるんだ?」
「……ちょっと、風に当たりたかったんです」
「気分でも悪いのか?」
赤星が心配そうに眉をひそめる。的場はいたたまれなくなり、まっすぐ自分に
向けられる視線から逃れようとわずかに目を伏せた。

「いえ、大丈夫です」
「そんならいいけど、お前が何も言わずに急にいなくなったから、金本さんも
藤本も心配してるぞ」
「すみません」
「なんともないなら、来てくれ。木戸さんがやっと目を覚ましたんだ」
赤星は素早く踵を返し、奥に向かって歩き出した。その小さな背中に向かって
的場はそっと頭を下げた。
(本当に、すみません)

【残り33人】
156代打名無し@実況は実況板で:2008/01/19(土) 12:51:16 ID:wPZmFCffO
代理投下乙です!

的場ーっ!
ヘリ墜落を見に行ったあたりの話で怪しいと思ったけどやはりか!
ユダ二人はお互いの立場知らないんだよね……。
157代打名無し@実況は実況板で:2008/01/20(日) 11:31:27 ID:oeN9cl0L0
お、新作来てた。
職人様、代理投下氏乙乙!!
的場ぁぁぁぁ!
ゴレンジャーは裏切り者を二人も抱えていたのか・・・
他のメンバーが疑ってもいないところが悲しいな
158代打名無し@実況は実況板で:2008/01/20(日) 15:30:45 ID:Ph3ZsR3N0
乙です!!
なんかまた盛り上がりそうだぜ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
159代打名無し@実況は実況板で:2008/01/21(月) 10:45:29 ID:6sSnyfRt0
職人様も代理投下様も乙です!
首謀者達の思惑にどう抗っていくのか、ゴレンジャー達の今後にも
期待しつつ捕手。
にしても的場がもう決意を固めているかのようにみえて、ちょい怖い。
160代打名無し@実況は実況板で:2008/01/22(火) 15:59:58 ID:afPuUZLZ0
保守
161代打名無し@実況は実況板で:2008/01/23(水) 07:43:39 ID:l8+7X1Ka0
hosyu
162代打名無し@実況は実況板で:2008/01/24(木) 06:25:51 ID:FV1Ic9Xs0
新作乙です!!
163代打名無し@実況は実況板で:2008/01/25(金) 07:51:15 ID:r0oM7NgAO
164代打名無し@実況は実況板で:2008/01/25(金) 09:34:58 ID:NYjKf+h20
シュ
165代打名無し@実況は実況板で:2008/01/25(金) 10:21:44 ID:xQWr3JkR0
この感じだとゴレンジャーは原作の灯台組みたいな末路をたどりそうだな。
ラストは、できれば「相討ちや大量殺戮が重なり、全員シボンヌ」もしくは
「最後の1人が生き残るものの主催者側の策謀に引っかかり、結果的に
全員シボンヌ」てなラストがいいかもw最後は岡田のほくそ笑みでEND、と。
166代打名無し@実況は実況板で:2008/01/25(金) 20:26:00 ID:zWPR6HTS0
展開予想は嫌われるぞ
167代打名無し@実況は実況板で:2008/01/26(土) 00:44:14 ID:z4N9dWtg0
新作超絶乙です!!!
続きが気になる・・・
168924氏代理投下(1/6):2008/01/26(土) 10:28:00 ID:0DN71SPZ0
>>155より
159.制御不能
「う、動くなよ? 武器を……捨てろ!」
銃を突きつけたまま相手は重ねて命令してきたが、声は明らかに上ずって
いる。それがなんとも滑稽に思え、今岡はつい指摘した。
「声、ふるえてるぞ?」
「なっ……!」
(あ、ヘタに刺激してしもたかな?)
さて、どうしたものかと考えかけた時、スイッチの音と共に廊下の灯りがついた。
「その声は、ひょっとして今岡か?」
左手の奥の方から別の声がした。今岡はそちらに顔を向けた。
「今岡! 無事だったんだな、お前!」
男がぱっと顔を輝かせた。そのあまりにも明るい笑顔に少々面食らいつつ、
今岡は相手の名を口にした。
「……久慈さん」
「浅井、それくらいでもういいよ」
「え? ……でも」
背後の男が戸惑った声を上げた。
「いいから、銃を下ろしてやってくれ」
背にあてがわれていた銃口の感触が消える。今岡は後ろを振り返り、今まで
自分に銃を突きつけていた男の顔を見た。浅井は目が合った瞬間びくっと大きく
肩を震わせ、拳銃を握り締めた両手および頭をすごすごと下げた。そして今岡
から逃げるように久慈の方へと駆け寄った。
「いやー、浅井にここまで度胸があるとは思わなかったな」
浅井の背中を軽く叩きつつ久慈が笑う。浅井はまるでランニングの後のように
肩で息をしながら両手で久慈に拳銃を差し出した。
「お、俺……、なんかもう、手が震えちゃって……。これ、やっぱり久慈さんに
持っててもらった方が……」
「そうか? だったらやっぱり俺が預かっとくかな」
169924氏代理投下(2/6):2008/01/26(土) 10:31:09 ID:0DN71SPZ0
今岡は二人の邪気のないやりとりをしばし眺めた後、久慈に対して尋ねてみた。
「いいんですか?」
「何が?」
久慈が軽く首をかしげた。童顔とあいまって、子どもの仕草のようだ。
「俺を簡単に解放して、いいんですか?」
「いいと思ったから、そうしたんじゃないか」
何を当たり前のことを、とでも言いたげな答えが返ってくる。
「もし俺があなたたちを殺そうとしたら、どうするんです?」
「殺すつもりなら、そんなこと聞かないでとっくにやってるだろ?」
あはは、と久慈は軽く笑いながら言ったが、次の瞬間には真顔になった。
「今岡、本当に無事で良かった。俺はお前に会いたかったんだ。」
年齢には似つかわしくない澄み切った瞳が今岡に向けられる。桧山の目も、
こんな風に透き通っていたことを思い出した。
「俺たちと一緒に来てくれ、今岡。そして一緒に考えてくれ。どうすればみんなが
このゲームから解放されるか。もう殺しあわずにすむか。」
桧山の瞳がどこまでも吸い込まれて行きそうな深い湖だったとすれば、久慈の
それはきらきらと光を反射する水面を連想させる。ただ、まぶしい。
「それは、できません」
目をそらし、今岡は静かに首を横に振った。久慈がまた首をかすかにひねる。
「どうして?」
「それは――」
会いたいと願う金本以外の人間に関わった時――今がまさにそうなのだが――
自分がどうなってしまうかが恐ろしい。この島に来てから出会った二人の
人間は、どちらも死に追いやった。だから、離れなければならない。無邪気で
善良な、この人のために。
「俺が、あなたたちと行けるような人間じゃないからです」
「どういう意味だ?」
久慈が眉を心もちひそめた。今岡は銃を持っていない方の左手をゆっくりと胸の
前に運び、大きく開いた手のひらに自らの視線を注いだ。
「俺は、この手で人を殺したんです」
170924氏代理投下(3/6):2008/01/26(土) 10:32:29 ID:0DN71SPZ0
ほんの一瞬だけ、久慈が目を見開いた。浅井は驚きと恐怖の混じった顔で何か
言いたそうに口を開いたが、もごもごと動くばかりで言葉にならなかった。
「だから、俺はあなたのような人たちと違うんです。一緒には、行けません」
今岡は左手をもとの位置に下ろし、久慈を見やった。彼は目が合うと同時に
わずかにうつむき、しばらく足元の古びた廊下の一点をじっと凝視していたが、
やがて何か意を決したかのように顔を上げた。
「お前も……新井と同じなのか?」
「新井?」
「少し前まで、一緒にいたんだ。だけどあいつは俺たちと会う前に自分の意思
とは関係なく人を殺してしまった。その罪の重さにずっと苦しんで、結局、俺たち
から離れて行ってしまったんだ」
今岡は久慈から一度視線をはずし、ふっとため息まじりの笑みを漏らした。
「じゃあ、全然ちがう。俺が人を殺したのは、完全に自分の意思からです」
そして再び久慈の目を見返した。先ほどまでの輝きは失せ、代わりに深い
悲しみの色を湛えているように見える。あるいは落胆か、失望か、その全てか。
「それも一人じゃありません。中村と桧山さんの二人を――いや、本当は三人
ですね。野口さんも結果は自殺だったけど、そうするように仕向けたのはこの
俺です。実質、殺したみたいなもんです」
淡々と語る今岡を久慈はじっと見つめ続けていたが、おもむろに口を開いた。
「……嘘には見えないな。どうして、殺したりしたんだ?」
「最初は、単なる好奇心からでした」
「い、今岡さん!」
我慢しきれなくなった、というより、やっと恐れに打ち勝ったのだろう。浅井が
突如として声を荒げたが、久慈は彼の身体の前に片手を伸ばして制した。
「中村を殺したのは、人殺しとそうでない者の違いはなんやろうとふと思った
からです。でも、誰も俺が見てる前で人を殺そうとはしませんでした。だから、
自分でやってみるのが一番いいと思った。それだけです」
今岡は自分自身をいぶかしんだ。なぜ、こんなことまで話してしまうのだろう。
久慈に自分をあきらめてもらいたいから? 本当に、それだけか?
171924氏代理投下(4/6):2008/01/26(土) 10:35:20 ID:0DN71SPZ0
「野口さんは、たまたま、あの人がカッターナイフで自殺しようとしてやめた
ところに会ったんです」
離れねばならないなら、逃げればいいだけだ。そうしない理由は、もしかすると、
この人に全てを打ち明けて楽になりたいからなのか? 
いや、違う。それだけは今岡にもはっきりと分かった。
「で、野口さんはもうそれ以上はやる気がなかったみたいなんですけど、俺は
続きが見たかったから、見せてくれはるようにうまく頼んだわけです」
正体が見えない何かにつき動かされながら、今岡はしゃべり続けていた。
「今岡さん!! あ、あなたって人は……!」
浅井が再び怒鳴ってきたが、やはり久慈に止められた。
「そして、桧山さんは――」
「もう、いい」
桧山の場合はなんと話せばいいかと考えかけた時、久慈がさえぎった。告白の
内容に彼自身が耐え切れなくなったというより、浅井を刺激しないためらしい。
「それで、今岡。お前は満足したのか? 後悔はしてないのか?」
――だけど今岡、後悔するなよ。
また、あの人に投げかけられた言葉がよみがえる。
「その時は、満足でした。後悔も、してません」
それは久慈に対してではなく、桧山への答えだったのかもしれない。
「でも、これで良かったのかどうかは――分かりません」
久慈は二、三度ゆっくりと、噛みしめるようにうなずいた。
「そうか……。それを聞いて、安心した」
静かにつむぎ出された言葉に今岡は耳を疑った。しかし、すぐに分かる。それが
嘘でも強がりでもなく、本心からのものであると。
「お前がこのゲームの目的どおりにみんなを殺して最後の一人になることを
目指してるんじゃないと分かって、ホッとした。少しでも迷ってるなら、今から
だって遅くない。俺たちと一緒に、来てくれ」
訴えてくる久慈の真摯な眼差しは、今は光を放っているように見えた。相手を
射抜く強い光ではなく、包み込もうとする柔らかな光だ。
172924氏代理投下(5/6):2008/01/26(土) 10:36:17 ID:0DN71SPZ0
桧山と対峙した時のごとき恐怖が生じる代わりに、せめぎあうものがある。
この光に捕らえられてしまいたいという思いと、抗いたいという反発。
同時に、先ほどから感じ取っていたものの正体がようやく見えてきた。
「久慈さんは、こんなことした俺を許せるんですか?」
「許せる? ばか言うな。許せるわけないじゃないか」
間髪を入れず答えが返ってくる。そうだろう、と今岡は心の中でつぶやく。
だが、続く言葉はまたしても予想外のものだった。
「お前を本当に許すことができるのは、お前が殺した人たちだけだ。俺なんかが
許したりできるわけがない。違うか?」
今岡は答えなかった。正しくは、答えられなかった。
「正直に言うと、残念だ。お前が人を殺したのは、ものすごく残念だ。でもな、
今岡。だからってお前を見る目が変わってしまうわけじゃない」
(もしかして、「あれ」か?)
「さっき言ったよな? 人殺しとそうでないものの違いを知りたかったって。俺も、
新井が行ってしまってからまったく同じことを考えてたんだ。そして自分なりの
結論にたどり着いた。違いなんて、本当はないんだって」
「そんなわけ……ないでしょう?」
いや、そのとおりなのだ。人殺しとそうでない者に違いなどない。人を殺したか、
今はまだ殺さずにいるか、ただそれだけのこと。中村を殺してみて得た確信に、
自分は至極満足したはずだった。それを自分自身で違うと言い張るとは、
我ながら実にばかげた話だ。自分にこんなことを言わせるものは――。
「普通の日常なら、そうだろう。でも、今は普通じゃない。この状況じゃ、何か
あったら俺だって人を殺してしまうかもしれない」
(ああ、やっぱり。また――なんや)
久慈が強く首を横に振るさまを見つめながら、今岡は半ば絶望していた。
「あれ」が頭をもたげ始めた。自分をどうしようもない方向へとあやつる、醜悪な
好奇心。中村を殺した時のように。野口を自殺せしめた時のように。
「じゃあ、久慈さんは俺を殺せますか?」
ほとんど無意識のうちに、今岡はその台詞を口にしていた。
173924氏代理投下(6/6):2008/01/26(土) 10:37:17 ID:0DN71SPZ0
人殺しとそうでない者の違いを知りたかった。人が自殺する様子を見たかった。
そして今もまた、見たい。
純粋で正義感に満ちたこの人が、自分の所業を知ってなお信じようとするこの
人が、自分に対して怒り、憎しみを露わにし、非難するさまを、単に見てみたい。
「……なんだって?」
久慈の顔がわずかにゆがんだ、瞬間、暗い喜びが心の中に沸き立った。それは
好奇心と手を携えあって、自分をむしばんで行く。
「違いなんかないって言わはるなら、あなたは人殺しになれますか?」
(やめろ)
だが、自分はそれに抗えない。ひたすら流され、止める術を持たない。
「ほら、できひんでしょう?」
「できないも何も、俺にはお前を殺す理由がない」
あくまできっぱりと久慈は言い切った。ゆるぎないその態度が、今岡の中の
魔物をさらに煽り立てる。
「俺があなたを殺そうとしても、ですか?」
(やめろと言うのに!)
悲鳴を上げる心とは裏腹に、この身はいつも欲求に忠実に動く。今岡は手に
していた銃をすっと構えた。
「く……久慈さん!」
浅井が引きつった顔で久慈と今岡を交互に見比べたが、今岡は彼には目も
くれず、まっすぐ久慈に向けていた。
(なんで、こうなる?)
分かっている。つかの間の充足を得ても、後に残るのは虚しさだけだと。
それでも、もう引き返せない。
「今岡……」
久慈がキッと唇を噛んだ。同時に、浅井から受け取っていた拳銃を握る手に
力が込められるのが見て取れた。
【残り33人】
174代打名無し@実況は実況板で:2008/01/26(土) 12:57:24 ID:PXN/xU1O0
職人様、代理さん乙!!

く、久慈どうする〜!?
175代打名無し@実況は実況板で:2008/01/26(土) 22:08:19 ID:gfDq4qYWO
代理投下ありがとうございます。
職人様乙です!
久慈さん…!
今岡…もう…何度同じ事繰り返すねん!(泣)
176代打名無し@実況は実況板で:2008/01/28(月) 00:25:05 ID:gkA5DD7i0
今岡ー!
177代打名無し@実況は実況板で:2008/01/28(月) 16:45:53 ID:bMpNAtAL0
職人サマ乙!!!!!!!!
久慈・・・
178代打名無し@実況は実況板で:2008/01/28(月) 20:46:00 ID:QNsgr7hq0
皆さん乙です!
今岡にとって、自分以外の存在というのは観察対象以上には成り得ないのか
と思うと切ない。
179代打名無し@実況は実況板で:2008/01/29(火) 23:27:58 ID:m0MaWPWv0
少なくとも桧山は観察対象ではなかったと思う
でも今岡と関わったらどのみち悲劇は避けられないのかなあ・・・
180代打名無し@実況は実況板で:2008/01/31(木) 22:47:11 ID:6SIZ+bAz0
久々に来たらなんか色々と凄いことに……
181代打名無し@実況は実況板で:2008/02/01(金) 21:39:11 ID:FkKDKCJIO
里崎は、里田まいの乳を揉みしだいていた
182代打名無し@実況は実況板で:2008/02/03(日) 21:29:36 ID:VBKhQG3Z0
hosyu
183代打名無し@実況は実況板で:2008/02/04(月) 08:28:00 ID:qX047Qk60
hosyu
184代打名無し@実況は実況板で:2008/02/06(水) 00:59:51 ID:lufpr1uK0
ho
185代打名無し@実況は実況板で:2008/02/06(水) 20:48:29 ID:4RjtxNR0O
広大の続きと藤原の続きが気になってます…。
186代打名無し@実況は実況板で:2008/02/07(木) 11:23:41 ID:DyAuJCc80
下半身タイガース 腰フレ〜フレフレフレ〜♪
187924(1/7):2008/02/07(木) 23:31:23 ID:sTvNlyPN0
>>173より
160.プレイボールのその後に

プレイボールとは球と遊ぶということだ、と和田豊コーチが言っていたのを
思い出した。ボールもないのに遊べない。こんなのはやはり違う。
的場は渡り廊下を駆け抜け、廃屋のような校舎の廊下の床板をきしませ
ながらなおも一直線に走った。
このすぐ先に、抗いがたい現実が転がっていることはまだ知らない。
                           ――第1章「プレイボール」より


「やれやれ、やーっと全員出て行ったな」
最後の的場が体育館から去り、校舎の方に消えていったのを見て、平田は
ホッと息を吐いた。その時、後ろから岡田に声をかけられた。
「おい、平田。これがそこに落ちとったぞ」
「え? あ、それは!」
岡田が手にしている小さな装置は選手の居場所を示す探知機だった。
支給品の中にも混ぜてあったが、別に秀太のために用意したものだった。
「す、すみません。後で呼び出して、渡してやります」
冷や汗をかきつつ、平田はぺこぺこと頭を下げた。岡田はしばらく何かを考えて
いたが、やがて意味ありげな笑みを浮かべ、
「いや、ええやろ」
と、傍らの台に置かれている無線機に手を伸ばした。

「おう、今どこにおる? ふんふん……的場がその辺におるやろ。捕まえろ。
ちょっと用があるんでな。ああ、武器に気ぃつけろ」
平田はわけが分からず、無線機の向こうの誰かに指示を出す岡田をぽかんと
見ていたが、選手の呼び出しの係を終えてこちらに戻ってきていた内野守備・
走塁コーチの福原峰夫(背番号85)はその意図を察したようだ。
「監督、もしかして……」
岡田は福原の方を向き、にやりと笑った。
「駒は何人おってもええのよ」
188924(2/7):2008/02/07(木) 23:34:29 ID:sTvNlyPN0
的場は自分の最も大きな背番号が恨めしかった。赤星以外にもゴレンジャーに
誘われた者がいるのかは不明だが、いずれにせよ金本と藤本の背番号は一桁
であり、彼らをかなり待たせてしまっている。その間に何かが起こっていないとも
限らない。一瞬、入団当初の若い背番号ならばという思いが浮かんだが、
振り払う。今はただ、急がねば。

一気に校舎の出口を駆け抜けようとした時、ふいに3名ばかりの銃で武装した
男たちが脇から現れ、行く手をふさがれた。驚いて立ち止まると、彼らの横から
さらに外野守備・走塁コーチの吉竹春樹(背番号76)が姿を現した。
「……なんですか?」
吉竹は答えず、的場の全身をさっと観察した後、急に背後に移動して背中の
デイパックに手をつっこんできた。相手の思惑が読めず、的場は顔をしかめた。
「なにするんです?」
なおも無言のまま的場から離れた吉竹の手には一本のパレットナイフが
握られていた。それが的場自身もまだ確認していなかった支給品だった。

吉竹は続いて小さな無線機を取り出してボタンを操作し、耳に当てた。
「監督、的場を捕まえました」
監督ということは、岡田の命令か。ますますもって、わけが分からない。
「来い」
戸惑っていると、有無を言わさず吉竹が先に立って歩き出した。同時に銃を
構えた男たちが一斉に的場の後ろに回った。仕方なくついて行くと、しばらくして
反対側の出入り口からもいくつかの人影がこちらへ歩いてくるのが見えた。

「おう、的場。お前にちょっと頼みたいことがあってな」
岡田がにやにやと笑いながら近付いてきた。後ろに平田と中西が従っている。
「武器は、これです」
吉竹が示したパレットナイフを岡田は面白そうに指差した。
「はずれやな」
「……頼みたいことというのは、何なんです?」
とてつもなく嫌な予感をおぼえつつ、的場は尋ねた。
189924(3/7):2008/02/07(木) 23:36:20 ID:sTvNlyPN0
「まあ、来いや」
のっそりと岡田は歩き出した。その緩慢な動作に、何をされるかという恐怖より
もいら立ちがつのる。こんな所で足止めを食っている場合ではないが、やむを
得ず後に続く。やがていくつかある教室の一つの前で岡田は立ち止まり、
武装した男たちを廊下に待機させ、的場とコーチ陣を中に通した。

入るなり、的場は思わず息を呑んだ。内部は無数のモニターで埋め尽くされて
おり、壁際には様々な装置が設置されている。その前の椅子に座る平塚が
振り返った。岡田は背中で両手を組みながら歩み寄り、尋ねた。
「どうや、始まっとるか?」
「はあ、ぼつぼつと」
「ちょっと再生してみろ」
平塚がボタンを叩きつつモニターの一つを指し示した。

画面内では男が一人、倒れた姿勢から起き上がろうとしている。中村泰広
だった。よく見ると左の太腿から血が流れている。彼がよろよろと立ち上がった
その時、今度は腰のあたり、続いて背中と、二箇所から血が噴出した。
(あ――)
中村は再び地面の上に倒れこみ、そのまま二度と身を起こすことはなかった。
「撃ったんは誰や?」
岡田が妙にウキウキした様子で問う。
「えーっと、違うモニターに映ってたんですけど、今岡ですね」
(今岡さん?)

「ふんふん、ええことよ。他には?」
衝撃をしずめる間もなく、別のモニターに目を向けさせられる。今度は、森の
中で向かい合って何か話している二人がいる。突如、一人が右手を大きく
動かした。同時にもう一人の首からおびただしい血が吹き上がる。
「こらまたハデやな。この二人が誰か分かるか?」
「死んだのは56番、田村です。殺した方はちょっと見づらいんですが、たぶん
桜井かと。あとは、結局死ななかったんですけど、これとか」
190924(4/7):2008/02/07(木) 23:37:41 ID:sTvNlyPN0
平塚が淡々と説明しながら、また違うモニターを指差す。映し出されるのは
座って荷物を確かめている一人の男。誰かはよく分からない。彼が何かに
気づいて後ろを振り返った。猛然と駆けてくる男が画面の端から現れる。座って
いた男は仰向けに地面に倒され、肩口に刃物を突き立てられた。上になった
襲撃者の背番号が月の光に照らし出された。37番――三東だ。

的場はモニターに両目の焦点を合わせたまま、いつの間にか左右の手をきつく
握り締めていた。爪が手のひらにきりきりと食い込む。だが、その痛みだけが
今の自分をかろうじて正気でいさせてくれている。映像とはいえ眼の前で
される凶行の連続に、打ちのめされる思いだった。先ほど佐藤コーチの遺体を
見せられた時と同じか、それ以上の衝撃かもしれない。
――24時間で死亡者が出なければ全員が死ぬと言うのなら、24時間のうちに
どうにかすればいいだけだ。
平田に名前を呼ばれていた時に抱いていた思いは、もろくも崩れ去った。
現実には24時間どころか、自分が順番を待っている間、先に体育館を発った
チームメートたちはすでに各所で殺し合いに突入していたのだ。

「ま、今のところはこんなもんですねえ」
片手で顎をさすりながら平塚が言った。
「なんや、まだこんだけか」
岡田は少し面白くなさそうに言ったが、的場の方に向き直ると両手を広げて
自慢げな顔で背後のモニター群を誇ってみせた。
「どや? すごいやろ。これでお前らの行動は全部お見通しや」
的場は我に返るとともに、楽しげな岡田やまったく表情を崩さないコーチたちの
姿に背筋が粟立つ心地がした。完全に狂っているとしか思えない。

だが、その一方で彼らに屈してはならないという反抗心もまた、身体の中で
ふつふつとわきつつあることも事実だった。絶対に、負けられない。
「――それで? 頼みというのは、何なんです?」
露骨に嫌な顔をしてみせたが、岡田はそんなこちらの態度を逆に楽しむかの
ごとく薄ら笑いを浮かべたまま、教室の隅に置かれていた机を平田と中西に
命じて一つ中央に運ばせ、それを挟んで椅子を二つ置かせた。
191924(5/7):2008/02/07(木) 23:40:00 ID:sTvNlyPN0
的場は岡田に促され、椅子に座った。この教室に元からあったものらしく、
かなり小さい。岡田も腰を下ろし、生徒を相手に面談を行う教師さながら机の
上で両手を組み、話を切り出した。
「無事にゲームは始まったが、この先なにが起こるか分からんからな。こっちの
言うとおりに動くもんが選手の中にも必要や、ちゅうことになってな」
そこからの説明は、任務の内容から見返りにいたるまで、昨夜、田中秀太が
持ちかけられた話とほぼ同じだった。もちろん、秀太もすでに同じ役目について
いることは伏せられている。

的場はつとめて感情を顔に出さぬよう聞いていたが、内心は怒りに満ちていた。
見返りや特権に心を動かされるよりも、選手の中に裏切り者を作ろうとする
卑劣なやり口に腹が立った。そして、なぜよりにもよって自分が目をつけられた
のか。皆をあざむけるような汚い人間に見えるのだろうか。
「どうして、僕に?」
話がひととおり終わった後、真っ先に聞いてみた。
「まあ、最後で捕まえやすかったのが一番の理由やが、それだけやない。
体育館から出て行く時の態度を見てな、お前ならやれると思った」

態度というのが意外に感じられ、的場はその時のことを思い出してみた。名前を
呼ばれるより早く立ち上がったせいか、平田に思いがけず「お、いいねー。やる
気だね」などと言われた。金本たちに声をかけられていたおかげで、少なくとも
他の選手たちよりは落ち着いて出発することができた。あれが、岡田たちには
そう見えたわけか。すると彼らの誤解がなんとはなしにおかしく思え、心に少し
余裕が生まれる気がした。勘違いもはなはだしい。自分があの時なにを胸に
秘めていたか。これから誰と行動を共にし、何をしようとしているか。

「もし、いやだと言ったらどうなるんです?」
しっかりと相手の眼を見すえ、的場は重ねて尋ねた。岡田はわずかに意外
そうな表情を見せたが、次の瞬間にはもとの薄い笑いが口の端に戻っていた。
「このまま普通の選手としてゲームに参加してもらう。それだけや」
至極あっさりとした答えだった。
192924(6/7):2008/02/07(木) 23:42:39 ID:sTvNlyPN0
的場はいささか拍子抜けした。断ればこの場で始末する、といった答えを予想
していたのだ。だが、それなら迷うことはない。とうてい受けられる話ではない。
「僕は――」
答えかけた時、脳裏にふとある考えが浮かんだ。
(待てよ、どうせなら)
うまく行くかは分からない。だが、いっそのこと――。
「……分かりました。引き受けます」
はっきりとした意志を持って的場は返事した。受けない手はない。
「よし、決まりやな」
岡田は満足そうににんまりと笑った。

続いて、通信機と探知機を渡され、使い方の説明を受けた。最後に、当初の
支給品であるパレットナイフに代わり、もっと役に立つ武器として一丁の拳銃が
与えられることになった。旧ソ連製で近年、日本でも大量に出回っている
マカロフだ。的場が受け取ろうすると、岡田はさっと手を引っ込めた。
「おっと、まだや」
パチンと岡田が指を鳴らして合図すると、中西が部屋の戸を開けた。先ほどの
武装した男たちがどやどやと入ってくるや、的場に銃を向ける。武器を受け
取って妙な真似をしようものなら、即座に蜂の巣ということらしい。
「30分は過ぎとるが、お前が離れ次第、ここは禁止エリアになる」
岡田は時計を見ながら言うと、ようやく的場に銃を渡した。
「行け」

廊下に出て教室の戸を閉め、的場はすぐに走り出した。何も考えずに廊下を
駆け抜け、グラウンドに出たところでいったん立ち止まった。身をかがめて
両膝に手をつき、呼吸と同時に気持ちを落ち着ける。
果たして、これで良かったのだろうか。もう、後戻りはできない。
「ほう。結局、裏切り者役を引き受けたってわけか」
ぎくりとして顔を上げる。にわかに耳に飛び込んできた声の主は、福原峰夫
だった。的場は上半身を起こすと、彼を無視して脇をすり抜けようとした。
「そんなことができるようなヤツには見えなかったがな」
その台詞に、的場は思わず立ち止まった。
193924(7/7):2008/02/07(木) 23:44:06 ID:sTvNlyPN0
「僕も、あなたがこんなことに加担するような人だとは思いませんでした」
それは福原への嫌味というよりは、本心だった。
「そりゃ、佐藤さんみたいに頑張ったところで殺されちまっては元も子もない
からな。お前もそうなんだろ?」
的場は思わず福原に強い眼差しを向けた。自分は、あなたとは違う。だが、
喉元まで出かかった本音を押しとどめ、顔をそらした。気づかれてはならない。
「……確かに、そのとおりですね。急いでるんで、失礼します」

「的場」
駆け出そうとした時、また声をかけられた。的場は足を止めて振り返った。
「お前も頑張れよ」
皮肉だろうか? 一瞬ムッとしかけたが、自分に向けられる福原の眼が真剣
であることに気づき、的場は彼を見つめ返した。だが、福原はすぐに片手を軽く
挙げ、じゃあな、の一言とともに背を向けて去って行った。的場はそのまま
しばらく彼を見送りそうになったが、自分を待つ者たちのことを思い出した。

いくら島中にカメラを設置して選手の動きを見張ったところで、人の心の中まで
監視することは不可能だ。首脳陣の手先という卑劣な役目を引き受けたのは、
あの連中に加担するためではない。表向きは彼らに従い、なにがしかの特権を
得ることがゲームを潰すためにプラスになると判断したからだ。
(今に見てろ)
探知機と拳銃をデイパックにしまい、今度こそ的場は仲間の待つ合流場所に
向かっていきおいよく地面を蹴った。


――あの時は、確かにそのように思っていたのだ。こんなゲームは絶対に
許さない。信頼できるゴレンジャーの仲間たちと共に何とかしてみせると。
だが、今ではその気持ちが揺らいでいる。
自分は、彼らを裏切ることになるかもしれない。

【残り33人】
194代打名無し@実況は実況板で:2008/02/08(金) 15:27:57 ID:vE4/3gfy0
職人様、乙です!!
ちょ、的場ぁ…。
頼む、裏切らないでくれ…(ノД`)゜。
195代打名無し@実況は実況板で:2008/02/08(金) 21:10:21 ID:uO9+smkoO
職人様ありがとうございます。
そして乙カレーです!
196代打名無し@実況は実況板で:2008/02/09(土) 00:27:20 ID:RleMYdlNO
職人様乙です!
的場……頼むから裏切らないでくれ。
197代打名無し@実況は実況板で:2008/02/12(火) 02:17:00 ID:peH2ElK/0
職人さん乙です
198代打名無し@実況は実況板で:2008/02/13(水) 22:26:32 ID:ihTBRrgI0
職人様乙です!!!
的場・・・
ドキドキしっぱなしです
199代打名無し@実況は実況板で:2008/02/15(金) 00:11:40 ID:5aJ/fxNZO
保守☆
200代打名無し@実況は実況板で:2008/02/16(土) 11:03:52 ID:DiCa2gWkO
☆保守
201代打名無し@実況は実況板で:2008/02/18(月) 00:48:02 ID:5Au9wZlWO
ほしゆ
202代打名無し@実況は実況板で:2008/02/18(月) 19:32:20 ID:DAfOdq8M0
ほしゅ
203代打名無し@実況は実況板で:2008/02/20(水) 04:02:04 ID:u/inMVIL0
hosyu
204代打名無し@実況は実況板で:2008/02/20(水) 23:59:19 ID:ABm8lYyL0
保守
205代打名無し@実況は実況板で:2008/02/22(金) 00:17:30 ID:Oz1ZrnO9O
保守
206代打名無し@実況は実況板で:2008/02/22(金) 19:09:56 ID:DhmTF2srO
ほしゅ
207代打名無し@実況は実況板で:2008/02/23(土) 04:15:28 ID:y4nXues6O
保☆守
208代打名無し@実況は実況板で:2008/02/25(月) 18:32:10 ID:uUKf5jE9O
☆保守☆
209代打名無し@実況は実況板で:2008/02/26(火) 12:57:43 ID:y8MOHG+30
ほしゅ
210924(1/7):2008/02/27(水) 00:41:11 ID:dqlug4Ad0
>>193より
161.殺させない

久慈は右手の中の拳銃をかたく握り締めていた。そのわずかな動作を見透かす
ように、軽やかな声が響く。
「そう、その銃を俺に向けて撃てばいい。簡単なことです」
今岡は銃を構える右手に添えていた左手を離し、自分自身を指差した。
「自分を殺そうとするやつやから、殺す。立派な理由です」
流れるような調子で言ってのけた口元には、明確な笑みが浮かんでいる。
久慈はぞくりと背に悪寒が走るのを感じた。

目の前にいる男は確かに今岡だ。自分のよく知っている今岡のはずだ。
にもかかわらず、得体の知れない何かを相手にしている心地がする。
(呑み込まれたら、だめだ)
冷静に、彼の本当の狙いが何なのかを見極めねばならない。
(死にたがってるのか?)
自分に撃たれ、命を絶たれたいのか。いや、そうではない。死ぬことなど何とも
思っていない風情ではあるが、積極的に死を望んでいるようには見えない。
(じゃあ、俺を責めてるのか?)
人を殺していない自分に対し、知った風な口をきくなという非難の現われか。
本当に人を殺した者にしか分からない何かがあると言いたいのだろうか。
だが、これも的外れのように思える。だとすると――。

「できませんか? そうでしょうね。あなたみたいな人には」
ふいに今岡が水平に伸ばしていた腕を曲げ、銃を顔の右横に引き寄せた。
久慈に狙いを定めていた銃口があさっての方を向く。だが、その動作に安堵
できたのはほんの数秒にすぎなかった。
「じゃあ、これならどうです?」
再び今岡の腕がまっすぐ伸びた。
「今岡!!」
久慈は無意識のうちに今岡に向けて両手で銃を構えていた。
211924(2/7):2008/02/27(水) 00:42:20 ID:dqlug4Ad0
浅井はぴたりと自分に照準の合った銃口を前にして完全に固まっていた。
口元だけが恐怖で小刻みにわなないている。無理もない。かわいそうに。
「やめろ、今岡」
久慈はいまだかつて見せたことがない険しい顔でこちらをにらみすえている。
突き刺すような視線を受け、今岡は身に覚えのある高揚感にぞくぞくと胸を
躍らせていた。期待はいやがうえにも高まる。

今岡は知っている。久慈に対して「殺してやる」などという脅しは無力だと。
いかなる状況においても、死を恐れて己の意思を曲げたりはしない男だ。
だから、浅井が銃を向けられるはめになる。
現在の久慈にとって唯一の仲間、というより守るべき存在であり、今岡との
対峙において完全に蚊帳の外に置かれていた浅井が標的にされる。しかも
彼は丸腰だ。これほど理不尽な話はない。なればこそ、今岡の好奇心が欲して
やまない久慈の感情を引きずり出す最も有効な手だてとなる。

もし久慈が浅井を守るために思い切って自分を殺すなら、それでも構わない。
むしろ、願ってもないことだ。人を殺したことのない者が人を殺す瞬間こそ、
ゲームが始まって真っ先に見たいと望みながらも、今にいたるまで見ることが
かなわなかったものだ。自分で人を殺すことはやってみた。人が自分で自分を
殺すさまも見ることができた。だから、「それ」も見たい。とりわけ、久慈のように
殺人を是としない男が人殺しになる瞬間には興味をそそられる。この命と
引換えにしても見る価値がある。もっとも、久慈が殺人者となる時は自分が死ぬ
時であるから、厳密にはその瞬間を見られないのだが、この際よしとしよう。

「今岡……」
久慈はいちど目を伏せ、再びこちらに視線を向けた。今岡は思わず息を
呑んだ。それもまた、今までに見たことがない久慈の表情だった。苦渋に満ちた
顔がまとう感情は、思い描いていたものには程遠かった。
「何がお前を……こんな風にしたんだ?」
絞り出すような声とともに、銃を握り締めていた久慈の両手がゆっくりと降りて
ゆく。怒りでもなければ憎しみでもない。混じり気の一切ない、ただ純粋な悲しみ
だけがそこにあった。
212924(3/7):2008/02/27(水) 00:43:10 ID:dqlug4Ad0
今度は今岡が目を閉じる番だった。
(本当に、あなたという人は……)
これほど気持ちを踏みにじられ、この期におよんでもなお、自分を責めようとは
しないのか。並みの人間には到底できない芸当だ。だが、それがまたいかにも
久慈らしい。この度量には、心の底から敬服する。
だからこそ、ますます見たくなる――。今岡は目を開けた。
この優しい人は、次の瞬間には自分に対して怒りを抱き、恨み、憎むだろう。
そして後悔するだろう。自分という男を信じようとしたことを。

張り詰めた空気を、唐突に短い音が破った。それが何によって発せられた
のか、久慈と浅井にはすぐには分からなかっただろう。
消音器つきの銃から放たれた音は、小さなものだった。
「え……」
戸惑ったような声を漏らしたのは、浅井だった。右胸にひとつ、穴があいている。
そこから目にも鮮やかな赤い血が流れ出している。彼は呆然とした表情で
傷口に手をやろうとしたが、ぐらりと大きく上半身を前に傾け、床に倒れた。
「浅井!!」
久慈の叫びが響き渡った。

今岡は血にまみれた浅井を無感動に眺め下ろした。銃弾を受けて死にゆく者の
姿はもはや珍しいものではなく、格別の興味を呼び起こされることはない。
だが、ひとつ思い出したことがある。体育館を出てすぐの茂みで人殺しと
そうでない者の違いについて考えていた時、目の前を通り過ぎて行った選手の
中に、浅井がいた。結局、続く中村泰広が犠牲となったわけだが、もう少し
決心が早ければ、自分の好奇心を満たしてくれたのはこの男だったろう。
その彼が、めぐりめぐって今ここで自分の手によって、やはりくだらない目的の
ために命を落とす。そのことについて因縁めいたものを感じなくもなかったが、
すぐに関心は失せた。今もっとも注目すべき対象は、もう一人の男の方だった。
その久慈は、今岡に一瞥もよこすことなく浅井の傍らに膝をついていた。
213924(4/7):2008/02/27(水) 00:43:53 ID:dqlug4Ad0
「浅井! しっかりしろ!!」
仰向けに横たわった浅井に久慈は懸命に呼びかけた。彼をこのような目に
遭わせた今岡のことはほとんど眼中になかった。今はただ、浅井の命を救う
ことが何よりも優先された。
「く……じ、さん」
浅井は弱々しくつぶやいた。その口元からも血がこぼれ出ていた。彼は何を
思ったか、急に右手を床板の上に伸ばし、少しずつ辺りを探りはじめた。

「どうした?」
力なく這う浅井の指が、久慈が投げ出していた拳銃に触れた。
「う……」
苦痛に顔をゆがめながらも、浅井は必死に銃を引き寄せ、持ち上げた。
「やめろ!」
久慈は浅井の意図を察し、止めようとした。だが、その必要もなく、銃は浅井の
手から滑り落ちた。それだけの余力は残っていなかった。

「馬鹿なこと考えるな!! 生きて帰るんだ!」
「久慈さ……。俺……もう……」
浅井はなおも拳銃に手を伸ばしてきたが、久慈はとっさに取り上げた。
「やめろ、浅井! やめろっ……」
そう言いつつも、久慈にも分かっていた。もはや浅井は助からないと。今すぐ
病院に運び込まれれば話は別だが、この状況でそんなことは望めない。

再び拳銃を手にした時、先ほどまで今岡と向き合っていた時間がよみがえって
きた。こうなったのは、すべて今岡に対する判断を誤った自分のせいだ。まさか
彼が、という気持ちが心のどこかにあったことは否めない。
「痛くて……くるしくて……」
咳き込んだ浅井の口から新たな血が噴き出した。適切な治療を受けられない以上、
このままでは浅井は苦しみ抜いて死んでゆき、今岡が殺したという事実が残る。
そして――自分の手は汚れることなく保たれる。だが、久慈にはそれが許し
がたく思われた。
214924(5/7):2008/02/27(水) 00:44:34 ID:dqlug4Ad0
「……わかった」
久慈は手の中の拳銃をかたく握り締めた。
「浅井、俺が――」
いっさいが自分のせいならば、その責めも自分が負うべきだ。眼の前で苦しむ
後輩の命を絶つ者は、今岡ではなく自分でなければならない。浅井の命を救う
ことがかなわないなら、せめて彼の最後の望みを聞き入れ、この手にしかと罪を
刻みつけねばならない。

「今、楽に……楽になれるように、するから」
銃口をちょうど心臓の位置にあてがうと、浅井はかすかに笑った。
「すまない、浅井……。俺のせいだ」
久慈の謝罪に対して浅井はぎこちなく首を横に振り、何か言おうとしたよう
だったが、代わりにまた口から血をあふれさせ、顔をしかめた。久慈が彼の
ためにできることは、一刻も早く苦しみから解放する、ただそれだけだった。

自分が手にかける者の顔をしっかりと見据え、久慈は引き金を引いた。衝撃が
手に伝わる。浅井は撃たれた瞬間、細い目を大きく見開き、そのまま事切れた。
驚いたようなその表情を眼に焼き付けた後、そっとまぶたを閉じさせた。
それから久慈はゆっくりと首をめぐらせ、今岡の方を見た。
彼はじっとこちらを見下ろしていた。銃を構えていた手は無造作に突っ立った
身体の横にだらりと下げられている。その眼はどこか恍惚としていた。


(これで満足したか?)
今岡はおのれに向かって問いかけた。まさか、いくら何でもここまで計算して
いたわけではない。久慈が自分を殺すことは思い描いていたが、浅井を手に
かけるとは完全に想定外だった。すばらしい収穫と言えよう。ずっと見たいと
願っていたものを、久慈は見せてくれた。しかも、最初に考えていたように
自分はこの命を代償とすることもなく、人を殺した後の久慈の姿もこうして目の
当たりにしているのだ。だが、久慈は当初こちらが求めていた感情をついに
露わにはしなかった。そのことにまだ自分の好奇心は不満を持っているらしい。
215924(6/7):2008/02/27(水) 00:45:06 ID:dqlug4Ad0
「……こうなったのは俺のせいだ」
久慈は静かに立ち上がった。まっすぐ視線が向けられる。
「だから、お前に浅井を殺させるわけにはいかない」
透き通った瞳には、何ら変わるところがなかった。人殺しとそうでない者に違い
などない。彼は自分自身の論を見事に実証してみせた。
(ほら……)
浅井にとどめを刺してやらないという選択が久慈にはあった。殺人を許さない
人間ならば、そちらを選ぶのが普通だろう。しかし、彼はあえてそうしなかった。
他人のためであれば、憎み嫌う殺人をみずから選び取って実行する覚悟をも
持つ。そういう男なのだ。

(そやから、こっちはあきらめろ。――な?)
気づかないうちに左手で胸を押さえていた。少しずつ、少しずつ、自分を支配
していた欲望が鎮まってゆく。今岡は安堵し、大きく一つ息を吐いた。後に残る
ものは、お決まりのむなしさだ。また一つ、胸にぽっかりと大きな穴が口を開け、
広がってゆく。決して塞がれることがない穴だ。同時に、今岡自身の心がまた
少し削り取られ、正体不明の何者かに侵される。これも最初から分かっていたと
いうのに。

「……負けましたよ、あなたには」
今岡はわずかに苦笑いを浮かべた。
「どういう意味だ?」
また、子どものような顔で問いかけてくる。だから、かなわないのだ。
「どうせ撃つなら、あなたは俺を撃つべきだったんです」
撃って、このどうしようもない男の命を終わらせてくれれば良かった。貪欲で
残酷な忌むべき好奇心もろとも葬り去ってくれれば良かった。そうすれば、
久慈は人殺しとなることはなく、浅井も死なずに済んだのだ。今度は自嘲気味に
笑い、今岡は荷物をかつぎ直した。
「待て、今岡」
久慈は止めようとしてきたが、今岡は玄関へと向かって廊下を歩き出した。
「このままだと俺はいつか、あなたまで殺してしまうかもしれません。
――さようなら、久慈さん」
216924(7/7):2008/02/27(水) 00:45:35 ID:dqlug4Ad0
「今岡!」
廊下の向こうへと遠ざかる背中に久慈は思わず声をかけた。もはや彼を
止められないとは分かっているが、何か言わずにはいられなかった。
「死ぬなよ!」
とっさに口をついて出た言葉はそれだけだった。今岡は振り返り、少し驚いた
ような表情を見せた。だが、すぐにまた歩き出し、外へと出て行った。

今岡が去ると、久慈は再び浅井のそばに膝をついた。
「浅井……本当に、すまない」
なんとかなると思ったのだ。自分なら今岡の苦しみを理解し、少しでも和らげる
ことができるかもしれないと。だがそれはたいへんな思い上がりであったらしい。
結果、浅井は命を落とし、今岡はあてもなくさまよい続ける。
いったいなぜ、今岡はあのような状態に陥ってしまったのか。

(桧山も――殺したって?)
ふと久慈は思い出し、絶望的な気持ちになった。今岡は確かにそう言った。
同級生であり同じ年に入団した桧山は、自分が他球団に移っていた数年間も
ずっと今岡のそばにあった。その桧山を、今岡は手にかけたというのか。
(どうして……)
その時の状況を語ろうとした今岡にやめさせたのは他ならぬ自分自身だが、
どのような理由があれ、今岡を止めることのできる可能性を持つ選手であった
はずの桧山さえも、彼によって命を奪われたのだ。

ならば、あの人しかいないのではないか。
久慈はある男の顔を思い浮かべていた。今岡を救うには、理論立てて説得に
かかってもおそらく無理だ。理屈抜きで他人を納得させることのできる信頼感と
大らかさを持ったあの人なら、あるいは――。
(金本さん……)
新井に去られ、今また自らの手で浅井を手にかけた自分自身の境遇に打ち
ひしがれるよりも、久慈は今岡のために祈るような気持ちだった。

【残り32人】
217代打名無し@実況は実況板で:2008/02/27(水) 03:24:49 ID:TdIol3iPO
職人様乙です!
浅井ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!。・゚・(´Д`)・゚・。
218代打名無し@実況は実況板で:2008/02/28(木) 11:00:01 ID:jHaJS9xn0
グッバイ浅井
今岡の旅はまだまだ続くなコリャ
219代打名無し@実況は実況板で:2008/02/29(金) 13:24:55 ID:ejAj96180
ほしゅ
220代打名無し@実況は実況板で:2008/03/01(土) 19:51:15 ID:Peqn6wPMO
浅井…。
哀しすぎ。。。
221代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 16:07:21 ID:q+C29zoU0
222代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 16:51:35 ID:LO2wYHQrO
続きまだ?
223174(1/6):2008/03/02(日) 22:43:52 ID:e7lGUCwq0
>>216
162.依存

 それは、深夜。

 チリンチリン……
『うおっ?』
 ガタン! ばたんっ、ビタッ。
「…………」
 微かな鈴の音。追うように聞こえた悲鳴と、何かがぶつかる音と、何かが倒れる音。
 静寂を打ち破ったそれに、杉山直久(背番号18)は緩やかな眠気から一気に覚醒した。
 寝袋から跳ね上がり、息を潜める。
 薄暗い室内は熱源を確保し、当初に比べれば大分過ごしやすい温度を居住者に提供
していた。薪ストーブの口からちろちろと揺れる炎の影が、向かいに寝転がる同居人
の顔を浮かび上がらせる。
 同じく目を覚ましたらしい江草仁貴(背番号26)が怯えた目をこちらに向けていた。
(俺にドアを開けろって?)
 緊張からか恐怖からか――毛布にくるまったまま身動き一つ取らない江草の視線の
意味を明確に受け取り、杉山は銃を手にそっと立ち上がった。
 彼に求められなくても、杉山は自ら行動を起こしていただろう。
 もし悪意ある訪問者だとしたら、対抗できるのは自分以外にいない、という責任感
からそうしたはずだ。
 だが結果は同じでも、当たり前のようにその立場を押しつけられるのはいささかの
反抗心が疼いた。
 そこまで考え、杉山は自分が随分と心の狭い人間になっていることに気付いた。
 きっと、精神的余裕のなさが苛立ちに繋がっているのだろう。
 それが良くない傾向だと分かってはいるが、苛立たせる相手の方にも若干の責任
はあるはずだ、と思わずにはいられなかった。
 自分の身は自分で守れる――そう言い切って、飛び出していった時の江草はその
行動力と意思において少なくとも自立していたし、杉山と対等であろうとしていた。
224174(2/6):2008/03/02(日) 22:44:32 ID:e7lGUCwq0
 それはそれで心配させられ、杉山は当時大反対したのだが、何か――彼らが共有し
得なかった時間に生じた江草にとっての不幸な出来事は、以来彼の精神の立ち位置を
少なからず変質させてしまったように思える。
 そのことを思うと、杉山は鉛を飲んだように胸が重くなった。明るくて前向きで、
鼻っ柱の強い江草を、変えてしまった出来事が悲しかった。辛かった。
 だがそれだけでは留まらず、彼の変質は、杉山から江草に向ける感情にすら化学
変化を起こしてしまったのかもしれない。不満という不穏分子が少しずつ気泡を立て、
水面下でふつふつとその勢力を広げているのだ。
「江草も、来いよ」
 小声で促すと、江草は不承不承立ち上がった。毛布を肩にかけたまま、杉山の肩
にぴったりと寄り添ってくる。左袖をしっかりと握られ、これではいきなり敵に襲い
かかられたら逃げようがないな、とあきらめにも似た感想が過ぎる。
 右手に握った銃の感触を確かめながら、杉山はそろりとドアに近づいた。
「関本さん……?」
 用心深くドアを開くと、杉山の施した子供だましなトラップに見事にひっかかり、
弁慶の泣き所と額をしたたかにステップに打ち付けて苦悶に呻いている関本健太郎
(背番号44)の姿があった。
「あいたたたた……何か引っかかったがな……って、えぐすぎ!!」
「略さんで下さい」
「おまえら相変わらずセットやなー。やっぱこんなとこでも一緒なんや」
 ステップの角でぶつけた額を撫でながら、小さな目に涙を溜めて真夜中の訪問者、
関本健太郎はそんな感想を漏らしたのだ。


「う〜さぶっ。へぐしっ、ぶしゅ!」
 汚いくしゃみをしながら、関本が薪ストーブの前で両手をこすり合わせる。
 その声に反応して、江草がびくりと身を震わせた。
 関本とストーブを挟んで真向かいにすわる杉山の後ろに隠れ、ひしと袖を掴んで
離さない。
 明らかに警戒している。
 そんな江草をどう思っているのか、少なくとも外面的には気にしたようすもなく、
関本はひょうきんな口調で事情を説明した。
225174(3/6):2008/03/02(日) 22:45:46 ID:e7lGUCwq0
「いやー、お前らがいてくれて良かったわ。雨止んだのはええけど、逃げ込んだ小屋
の近くでなんや凄い爆発起こるし。逃げ出したら逃げ出したで真っ暗な森の中で迷うし、
やっと見つけた泊まれそうな小屋に入ろうとしたら罠が張ってあって転ぶし」
「……すみません」
「いやいや! 用心してんのは当然やん。こうやって中に入れてもらえただけでも
ほんま有り難いし」
 両手を振って否定し、関本は大きな体全体を使って感謝の意を表した。
 狩野はまだ眠っている。いきなり倒れた時に比べれば顔色は大分マシになっている
とはいえ、まだ万全というにはほど遠い。
 このまま何事もなく、暖かい小屋で十分な睡眠をとること。それが杉山から狩野
に課せられた宿題だった。
 今のところは優等生な狩野から視線を外し、杉山は真夜中の訪問者を見た。
 同行者の狩野について、体調が優れないのだと説明すると、関本は痛ましげな表情
を見せて声をひそめて話すようになった。それらの全ての行動を考慮してみても、
彼に悪意らしい悪意は一片も感じられない。
「そんな……関本さん、ずっとその格好で歩き回ってたんでしょ? 暖めないと風邪
ひきますよ」
 関本は今、雨に濡れてからさらに半乾きになり、その上夜霧を十分に吸い込んだ
ユニフォームの上から毛布を一枚はおり、震えながら薪ストーブの正面を陣取っていた。
 本人にそのつもりはないのだろうが、あまりにも大げさに震え過ぎて、妙に愛嬌
のあるその姿につい笑みがこぼれる。
 杉山は久しぶりに、自分がいつもと同じ笑い方が出来ている気がした。
「杉山……ええヤツやなぁ、お前……」
 先ほどとは別の理由で小さな目に涙を溜めて、関本が感激する。
 その表情が面白くて――というのは失礼だが、さらに笑ってしまう杉山。
 なんだか妙にほっとする。こういう「お人好し」な自分こそが、本来の自分の姿
ではなかっただろうか。へらへら笑って、人畜無害な言動をして、先輩に「にやけ
すぎ」とか「人が良すぎ」とからかわれるのだ。
 武器を持って、表情を引き締めて、誰かを背中にかくまいながら先頭を陣取って
警戒を巡らせるなど、想像する分には確かに格好は良いが、実際のところ杉山直久
の柄ではない。分不相応。役者不足というものだ。
226174(4/6):2008/03/02(日) 22:46:13 ID:e7lGUCwq0
 だがそんな暖かい会話を聞いていた江草は、硬い表情で露骨な警戒心を露わにした。
「何……しに来たんですか?」
 睨み付けてくる江草に、返答に窮する関本。何しに来たと言われても、関本から
すれば夜風を凌げる場所を探し歩いて、たどり着いた小屋にたまたま杉山たちが
いただけのことだ。
「江草!」
 小さく、だが厳しめに叱責すると、江草は病人がいることも構わず大声でまくし
立てた。
「だって杉山! ここまで一人でうろついてた人が、こんな夜中に押しかけて来たん
だぞ!? そんなに簡単に信用していいのかよ!?」
「江草……」
 気持ちはわかるが、本人を目の前に言うことでもないだろう。
 勿論、彼の言い分にも一理ある。
 突然の来訪者。
 見た感じ、どうみても敵意はないが、だがそれがどこまで信用がおけるものかと
言われればこの状況下では判断材料としては薄い。
 杉山が知る限り、関本健太郎は気のいい男だ。人殺しなどとは無縁そうな、陽気
で実は生真面目な男。
 とはいえ、彼がこの過酷な数日間で変貌を遂げていたとしても誰が責められよう。
 気まずい雰囲気を感じ、杉山は焦って腰にさした銃を主張した。
「大丈夫やって、ほら、俺武器ちゃんと持ってるし」
 ちゃんと警戒してる、と口にして納得させ、杉山はストーブの向こうで眠りこける
後輩を指した。
「そっちで狩野見とってくれ」
 ストーブの灯が直接あたって熱いのか、眠っている狩野が苦しげに呻いてちょうど
寝返りを打ったところだった。
 江草は慌てて狩野の側に寄り、身体の位置を少しずらしてやって、もう一度彼が
健やかな寝息を立て出すのを見守った。
「あー……なんか悪いな」
「なんかすみません」
 立て直しようもない悪い空気の中、関本が申し訳なさそうに頭を掻く。その様子
に、杉山はさらに申し訳なくなった。
227174(5/6):2008/03/02(日) 22:46:41 ID:e7lGUCwq0
 江草はというと、狩野に寄り添って、毛布をかぶったまま警戒の目を光らせている。
 その幼さを残した頬が、揺らめく灯を反射してオレンジ色に染まる。
 そちらを一瞥してから、関本に視線を戻し、杉山は小声で伝えた。
「あいつも、色々あったみたいで……ここのとこ、凄く怯えてるんです」
 関本に対するフォローではあったが、それは事実だった。この小屋を探しに出て
行って、戻ってきてからの彼はどこかおかしい。
 藤田太陽。年も近い、同じポジションの先輩。信じられると思い、一歩を踏み出した
相手に殺されかけた。
 彼から断片的に伝え聞いた事実は十分に戦慄しうるもので、死と殺意に直面し、
ギリギリのラインで逃げ延びた江草が、自分たち以外の人間全てを敵視し、怯えよう
ともそれは無理もないことだ。
 殺された他人の死体を見るのとはまた違う。客観視に逃れようとするにはあまりにも
主観的な恐怖体験は、おそらくその一瞬でその人の人生観や価値観を百八十度変えて
しまえる程の衝撃を持っている。
 彼が受けた心の傷は視ることが出来ない。どれほど深いものか、その深さを推測す
ることも出来ない。だから、杉山も江草の自己中心的で配慮に欠けた言動が目立って
も、突き放すことができないでいた。
「すごく気持ちが優しいやつで……誰かと戦うなんて出来ないやつなんです」
 まるで保護者のようだ。同年齢の友人を庇うにはあまりにも幼子扱いしているよう
で違和感があったが、今の杉山と江草の関係はどちらかというと保護者と被保護者の
それに近い。
「狩野はあの通り、体調を崩してて寝てばっかりだし」
 そして、溜息。
「俺は、いざとなったら、戦う覚悟が出来てますから」
 自分しかいない。その決意を、口にすることで新たにする。
「俺が、守ってやらないと」
 強くそう言い切った杉山を、関本は何か言いたげに見つけていたが……やがて、
意を決したように口を開いた。
 ひどく、痛ましげに。
「お前、大丈夫か?」
「え?」
 予想外の気遣いに、杉山は心底意外そうな声を出した。
228174(6/6):2008/03/02(日) 22:47:04 ID:e7lGUCwq0
 その反応が意外だったのか、関本は戸惑ったように視線を泳がし、言葉を探す。
「いや、なんつーか。そんなにいろいろ背負い込んだら、しんどないか?」
「…………」
 しんどい。その言葉を反芻する。
「俺なんか自分一人の命守るだけで精一杯で……結局なにも出来んから頼れる人を
探してて……お前みたいに、誰かを守ろうなんて強い気持ち持てんかった。だから
お前、すごいよ」
 素直にそう賞賛してから、関本はやはり、愛嬌のある顔に真剣な労りを浮かべて
杉山に語りかけた。 
「でもな、疲れてる顔してるぞ。あんまり無理すんなや」
『無理すんな』
 その言葉の意味を、杉山はまるで生まれて初めて知ったような、奇妙に新鮮な
感覚に囚われた。
 当たり前のように抱え込んでいたプレッシャーが、過重な責務だったというの
だろうか。
 少なくとも、彼は――全くの第三者である関本健太郎はそう感じたらしい。
 ぽろりと自分の中の価値観の鱗が一枚はがれ落ち、同時に酷く晴れやかな気持ち
になった。
(俺は……誰かを守る必要なんてない?)
 苦しんで、悩んで、抱え込んでいた。
 その気持ちを、たまたま出会ったばかりの関本が自分の苦しみを分かってくれて、
気を遣ってくれる。
 突然の理解者の出現に対する驚きは、すぐに仲間への疑問に変わった。
 なのに、なぜ彼は自分に求めてばかりくるのだろう?
(ずっと一緒にいるのに)
 大切な友達だった。一番分かり合えていると思っていたのに。
 江草は、いつの間にか狩野の隣で目をつぶっていた。

【残り32人】
229代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 23:05:41 ID:FJqyJLRM0
新作乙です!
関本合流してほのぼのしたと思ったら、ちょっと最後が不穏な感じ…
230代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 23:17:37 ID:br1m6HxP0
職人様、乙です!

リアルでも一番好きなコンビだけに、
この流れが怖くて怖くてたまらない…
231代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 23:23:42 ID:ut5QZgkv0
乙です!
関本の描写ひとつひとつになごみました。
232代打名無し@実況は実況板で:2008/03/04(火) 08:02:35 ID:yi+Juxoy0
ho
233代打名無し@実況は実況板で:2008/03/04(火) 15:32:09 ID:O+UQpUGQO
桧山の前の24番ってだれですか?
234代打名無し@実況は実況板で:2008/03/06(木) 13:50:42 ID:POEAAJEfO
捕手!
235代打名無し@実況は実況板で:2008/03/07(金) 01:08:43 ID:6kgp7UBo0
新作乙です!
最後がちょっとひっかかるなぁ・・・
少し怖いな。
236代打名無し@実況は実況板で:2008/03/09(日) 08:44:48 ID:UafWXjbQO
ほしゅ
237代打名無し@実況は実況板で:2008/03/10(月) 10:55:20 ID:CnuiwzwV0
ほす

ゴレンジャーまだー
238代打名無し@実況は実況板で:2008/03/11(火) 20:47:57 ID:7nJkEpM7O
ほしゅ
239代打名無し@実況は実況板で:2008/03/13(木) 01:27:37 ID:tzQoupEu0
ほしゅ
240代打名無し@実況は実況板で:2008/03/14(金) 15:42:35 ID:h7qypB1i0
hosu
241代打名無し@実況は実況板で:2008/03/14(金) 20:37:02 ID:h7qypB1i0
おお、三東のブログなんかあるのか
知らなかった
242174(1/4):2008/03/15(土) 16:55:31 ID:jx74IzsK0
>>228
163.変質

「俺の目的はな、ある人を捜すことなんや」
 ぱちぱちと音を立てながら火の粉が薪ストーブの中で踊る。
 不穏な空気を携えて黙りこくってしまった杉山との間を保つように、関本は自分
自身について語り出した。
「探しながら……山の上の展望台に向かってる」
 ぱちんっ
 薪の一部が弾けた。
 埃を敷いた床を、ストーブの小窓から覗く焔がうっすらと照らす。橙色。
「ほんまはあの人が見つかって、一緒に迎えに行けたらええんやけど……そう贅沢
も言ってられへんかな。さっさと行かんと、すれ違ってまうかもしれんし」
 後半の関本の呟きは、半ば独語めいていて要領を得なかったが、彼が誰かを捜して
いて、さらに別の人間と展望台で落ち合う約束をしているらしい、ということは多少
想像力を膨らませれば推察できた。
 ごそごそと尻ポケットを探り、関本は地図を広げて杉山に現在地を尋ねた。
 分かる範囲でだいたいの位置を説明すると、関本は頷きながら現在地と展望台へ
の道筋を先の出ていないボールペンでなぞった。
 その確認作業を終了すると、ボールペンを床に置き、地図を丁寧に折りたたんで
ポケットに閉まった。
「杉山、頼みがあんねんけど」
「何ですか?」
 神妙な様子で切り出され、杉山はやや身構えて応えた。
「江草が起きたらさ、二時間だけ眠らせてくれへん?」
 その割には、提出された要求は非常にささやかなもので、こちらが拍子抜けする
ほど謙虚な願いだった。
「ほんまはすぐ動きたいところやけど、もう体力があかん。……二時間くらい寝てて
もあいつも待っててくれるやろ」
 関本はあくびをかみ殺し、肩を回して大きく息を吐いた。元気そうに見せているが、
目元に落ちた疲労の色は濃い。
243174(2/4):2008/03/15(土) 16:56:44 ID:jx74IzsK0
「狩野とも離れた、一番遠いところで眠るし、ちゃんと見張っといてくれてええから」
 江草の心境や杉山の立場を考えて、たった二時間の仮眠を取ることにすらこんなに
遠慮がちに頼んでくる。その心遣いが杉山には痛かった。
「……分かりました。二時間とは言わず、ゆっくり休んでください。俺は、あなたを
信じますから」
 少なくとも自分くらいはそう言ってやりたい。この親しみやすい訪問者に抱いた感情を、
杉山は可能な限りその一言に込めた。 


「あの人追い出してよ!」
 小声で、江草がそう嘆願したのは、江草と交代で関本が眠りについてから約三十分
程経ってからだった。
 身体が疲れているので、二時間だけでいいので仮眠させて欲しい、というのが関本
からの願いだった。
 彼にはこれから向かわなければいけない場所があるらしい。
 少し眠って体力を回復させたら、すぐにでも向かいたいとのことだった。
 杉山はそのことを端的に、かつ極力関本に好意的に伝えたのだが、案の定、江草から
物わかりの良い返答は望めなかった。小さな落胆と、大きな諦めと、中くらいの納得が
入り交じる。
 先を急いでいるというのはもちろん彼の本音だろうが、同時に、関本の存在を歓迎
しない相方への気遣いであることも伺えた。
 しかしそんな気遣いも、気遣われている当人にはまったく気付かれない、という
不条理が世の中にはままあることを杉山は目の前で認識させられていた。
「なんで……?」
 頭蓋骨の内側に蔓延する緩慢な疲れを吐き出しながら杉山が聞き返すと、江草は
衝撃を受けたように目を見開いた。
 あるいはその聞き返し方が、どこか冷めた色を含んでいたことに彼は気付いたの
かもしれない。猜疑心の強い人間というのは、自分に対して向けられるマイナス方向
の感情の動きには驚くほど敏感になっているものだ。
「俺を信用できないの?」
「そういう問題ちゃうやろ」
 なぜそういう発想になるのだろう。
244174(3/4):2008/03/15(土) 16:57:23 ID:jx74IzsK0
 彼の非難がましい声に言うべき言葉を見失いかけながら、杉山は苦労して虚空に
台詞を探した。
 関本が信用できるという保証はどこにもない。
 それでも、一連の会話の中で触れた関本の気遣いに――それはもしかしたら、彼で
なくとも、大抵の人間が持ち合わせている優しさなのかもしれないが――杉山の心は
大きく信用の方に傾いていた。
 裏返せば、それは今までずっと一緒にいた仲間への不信にも繋がるものかもしれない。
「杉山は……無理してるんやろ?」
 幾ら空気を睨み付けても一向に台詞が思い浮かばない間に、呟いた江草の問いに
ギクリとした。
 先ほどの会話を聞いていたのだ。
(ああ、無理してるともさ)
 声に出さずに同意する。
「俺といるのが、辛いんや」
 辛い? 考えたこともなかった。
(ああだけど――)
 確かに、辛いのかもしれない。
(心配して、守ろうと気を張って、無理矢理自分自身を鼓舞して)
 独りだったらどれだけ身軽だっただろう。あるいは、せめてフィフティーフィフティー
でお互い、己の身は己で守れるような相手なら。
 そこまで考え、自身の発見に驚きながら、杉山は親友の顔を見返した。
 拗ねたような口調。拗ねたような表情。
『違うに決まってる。そんなわけがない。馬鹿なことを言うな』 
 そう言わなければいけない。杉山はそういうつもりだったし、江草はそういう答えを
望んでいるはずだ。
 しかし、彼の顔を見た瞬間、杉山はなぜかその言葉を喉から食道に押し戻してしまった。
 当人の口から否定形を導き出したいがための子供じみた抗議。
 それは、皮肉にも杉山の中の、自身でも気付いていなかった心理を箪笥から引っ張り
だしてしまったのだ。
(俺はこいつらが、うとましいのか?)
 杉山直久はいざとなったら誰かを殺せる人間だ。自分自身が生き残る為に、誰かを
殺すことを厭わない人間だ。きっとそうだ。そうでなければ生き残れないのだ。
245174(4/4):2008/03/15(土) 16:59:43 ID:jx74IzsK0
 ならば、ここで彼らを殺してしまうことも出来るのではないか?
 彼らの存在が、自分の生き残る可能性を挙げるパーツになりうるとはとても思えない。
 敵に追われたとき、狩野を抱えて逃げることが出来るだろうか?
 情緒不安定な江草が、誰かに襲われて冷静な判断が下せなくなったとき、己も無傷で
彼を救うことが出来るのだろうか?
 彼らのせいで自分が死ぬことがあるとすれば、人を殺してでも生き残りたい自分が
彼らを守ろうとする理由は何なのだろうか。
 おかしい。おかしい。こんなのはおかしい。
(なんでこんな目に合わなくちゃいけないんだ!)
 今まで当たり前だと思っていて耐えていたことが、実は不条理なものであると気付いた
時に、急激に増長する怒りや不満というものは抗いがたい爆発力を持っているものだ。
 静かに沸騰していく感情に浸食されていく己を、杉山は明確に感じ取っていた。
「杉山は俺の味方なんでしょ!?」
 そして親友の内部で起こっている不穏な変化を察知しないまま、江草は自らの感情を
相手に主張していた。
「俺や、狩野があの人に殺されてもいいの?」
 杉山の目には、その時、江草が親鳥に餌を請う雛のように見えた。
 ただ一方的に求め、庇護を強要する雛。
 そのとき沸いたのは、確かな――微少の殺意にも似た怒りだった。
「……目が覚めたら、出て行くらしいから」
 怒りにまかせて怒鳴りつけるようなことを、杉山はしなかった。
 ただ静かに、全てを飲み込んでそう小さく告げた。

【残り32人】
246代打名無し@実況は実況板で:2008/03/15(土) 21:53:18 ID:9Uoeodyc0
職人さん乙です!
仲がいい2人がこれからどうなることやら・・・
247代打名無し@実況は実況板で:2008/03/17(月) 00:52:29 ID:DrDfPTt50
新作乙です

エグ目をさましてエグ・・・
248代打名無し@実況は実況板で:2008/03/18(火) 08:56:43 ID:WEKbzADfO
お杉の気持ちがよく解る…。
緊張してきた!
249代打名無し@実況は実況板で:2008/03/19(水) 07:08:57 ID:FDv0z7ca0
そっか、セッキーはチン様と待ち合わせしてたんだったな。

セッキーが出て行く前にエグスギどうかなっちゃうんじゃないか?
なんか心配だな。。。
250代打名無し@実況は実況板で:2008/03/20(木) 21:14:28 ID:U9NiIJEc0
ほす
251代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 03:01:34 ID:HtU9Tn9t0
ほしゅ
252代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 09:25:28 ID:SCoenw8Y0
バトルロイヤル
253代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 17:34:05 ID:t5qezdiO0
典型的なキチガイ珍

23 名前:代打名無し@実況は実況板で 投稿日:2008/03/22(土) 17:06:22 ID:0Lz7x8veO
不公平な審判のハンディとたまたまカラクリだったから入っただけのホームラン
実質は阪神の快勝だったはず
文句あったらいつでも甲子園でやったるからいつでもかかってこい
254代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 18:03:46 ID:KfrsTN+zO
里崎は、里田まいのおっぱいを揉んでいた
255代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 23:21:38 ID:TuszOJuQO
保守
256代打名無し@実況は実況板で:2008/03/24(月) 22:39:17 ID:Ly1T+QWj0
ほす
257代打名無し@実況は実況板で:2008/03/25(火) 16:52:02 ID:mzZOALHIO
☆ゅ
258代打名無し@実況は実況板で:2008/03/26(水) 08:25:36 ID:1gZhQPmFO
ほしゅ
259代打名無し@実況は実況板で:2008/03/28(金) 00:17:40 ID:rV38CO5j0
ほしゅ
260代打名無し@実況は実況板で:2008/03/28(金) 13:20:52 ID:H0GBAOfG0
ほす
261代打名無し@実況は実況板で:2008/03/29(土) 22:48:55 ID:nG7Si3So0
262代打名無し@実況は実況板で:2008/03/30(日) 10:59:55 ID:0bqjmhHn0
hosu
263代打名無し@実況は実況板で:2008/03/31(月) 01:15:07 ID:kUgPm2JL0
hosyu
264174(1/5):2008/04/01(火) 01:35:10 ID:P2JfKoNz0
>>245
164.崩壊

 イメージはゆっくりと沈んでいく小舟。

「ほなな」
 きっかり二時間、仮眠をした後、彼はデイバッグをかついで小屋の戸口に立って
いた。
「はい、お気をつけて……」
 関本健太郎の出立を見送りながら、杉山はざわり、と押し寄せる不安を胸の内に
抱えていた。
 早朝の明るい森を背景に、関本の木訥とした顔が対峙している。
 たった数時間を共にしただけだが、その数時間の間に、この島での何日分の笑顔
を彼は自分に提供してくれただろうか。
(この人がいなくなってしまったら――)
 喪失感とは違う、ひたひたとを忍び歩く暗い不安が影を落とす。
 その正体を、杉山は悟るべきではないと直感した。だが、その直感が答えを隠す
前に、杉山は解答を導き出してしまった。
(俺は、また独り……?)
 一人で、二人を背負わなければいけない。
 そう思ってしまった瞬間、杉山は自分が守るべき二人を重荷に感じていることを
自覚した。


 関本の姿が見えなくなった後、杉山は地面から三十センチほどの高さに鈴を通した
テグスを確認し、緩んでいるので張り直すことにした。効果の程は実証済みであるから
には、マメに仕掛けておかなければならない。
 外に出ると、すっかりと空は白んでいた。朝である。
 早朝の空気が頬を撫で、鼻口から入り込んで脳を冷気で満たす。徹夜明けで霞が
かった脳に若干の冴えが戻った。
265174(2/5):2008/04/01(火) 01:35:36 ID:P2JfKoNz0
 まったく夜らしい夜を過ごした気がしない。夜とは穏やかな眠りの為にある時間
だと思っていたが、この島では夜とは怯えと緊張と不安との決闘の時間であるらしい。
「やっといなくなった……」
 罠を張り終えて小屋に戻ると、江草が明らかに安堵したように肩を落として呟いた。
「俺、もう一回眠るね」
 毛布を羽織り、杉山の了承を取るよりも早くストーブの近くに座り込んであくびを
する江草。
「あの人がいると、緊張して全然眠れなかったから」
 狩野を見てろと言って目を離している間に一緒に寝こけていたような気もするが。
「おう」
 意味のない応答をして、杉山はつられて出たあくびをかみ殺した。
 杉山も眠かった。
 関本が仮眠している間、江草は杉山も寝ていいと言ってくれたが、自分の意識が
落ちている間に江草が関本相手におかしな気を起こさないかと気が気でなかったので、
起きて江草を監視していたのだ。
 つまり、昨夜はほぼ一睡もしていない。
 次の放送時間までもう間もないが、ほんのわずかな時間でも寝袋に潜り込み、深夜
から停滞していた眠りの世界に舞い戻る決心を杉山は固めた。


 決心は数十分後に打ち砕かれた。
(眠れない……)
 確実に脳は睡眠を求めているはずなのに、変に目が冴えて眠れないのだ。
 薪ストーブの暖かさが嫌に寝苦しい。
 思い通りにいかない身体に苛立ちながら、杉山は一時的に眠ることを諦めて周囲を
見渡した。
 緊張してあまり眠れなかったというのは本当なのだろう。小さく寝息を立て、江草
はすっかり寝入っていた。この辺りの切り替えの速さは、やはり杉山よりも江草が
勝っている点だろう。
266174(3/5):2008/04/01(火) 01:36:11 ID:P2JfKoNz0
 彼の寝顔を見ながら考えてしまうのは、後半刻もしないうちに定時放送が始まって、
また地獄のような一日がスタートするということだ。
 また増えたであろう死者の名を聞き、禁止エリアに怯え、恐慌する彼らを励まさ
なければいけない。
 想像するだになんと気が重い日々だろう。
 杉山の言いつけ通り、何も知らず眠り続ける狩野恵輔の顔を覗き込む。ストーブの
熱に照らされているせいもあるだろうが、顔色は比較的良く、表情も穏やかだった。
 これだけ眠っていれば、明日には大分体調は回復するだろう。精神的な部分の回復
度合いまでは分からないが。
 彼には、関本の訪問すら意識にないはずだ。江草とのぎこちない会話も。
 それが、酷く羨ましく感じた。
 杉山には死体を見て倒れることも、全てを仲間に任せて眠りにつくことも、誰かに 
守られることも許されないのだから。
 ふと、また同じ疑問が過ぎった。
 数刻前、たった一度過ぎった疑問は少しずつ肥大化していって、杉山の脳神経の
一部を静かに圧迫していた。
 なぜ自分は彼らを殺さないのだろう?
(殺してしまえば……)
 殺してしまえば、少しは楽になるだろうか。


 刺し殺すのと、絞め殺すのと、撃ち殺すのと、どれが一番苦しくないだろうか。
 前川の遺品である十徳ナイフを枕元において杉山は眠る後輩に馬乗りになった。
 十徳ナイフも銃も、ナックルも、武器は全て杉山の手中にあった。彼らが杉山に
刃向かおうとしたとき、抵抗する術はどこにもない。
 そう思うと、彼らの象っていた仲間という形が、あまりにもいびつで危うい物
であったことを実感する。
 これは信頼と言うよりは、依存ではないのだろうか。
 誰かに依存するということは楽だ。義務を放棄し、責任を押しつけることが出来る。
 だからこそ、依存した相手に裏切られても、そこには依存した側にも責任が存在
するのだ。
267174(4/5):2008/04/01(火) 01:36:38 ID:P2JfKoNz0
 迷った末、杉山は一度立ち上がり、狩野の荷物を探った。
 もう一つ、彼らに与えられた武器を思い出したのだ。
 探し当てた褐色の小瓶には白い粉末が詰まっていた。
 毒殺を選んだのは、その方法が最も「自分が殺した気にならない」からだろう。
 小瓶を目の高さまで上げて振りながら、その内容物を確認する。
『KCN』というラベル――かの有名なシアン化カリウム、青酸カリを示す記号なの
だが、杉山はその意味を知らない。
 その正体も、自分たちが置かれた状況の主旨からして、恐らく人を殺せる毒なので
あろう、という程度の認識しかない。
 まだ十分に残っている狩野のペットボトルの口に小瓶を宛がうと、砂時計の砂のよう
に滑らかに白い粉が水面に落ちていった。薄暗い空間できらきらと輝きながらそれは
あっさりと水に溶けて正体をなくした。
 約二分の一ほど入れたところで、小瓶を傾けていた手を止める。
(入れ過ぎか?)
 それとも少な過ぎだろうか。
 なにひとつ判断基準がないままでの毒殺計画は無謀に過ぎるかもしれない。
 致死量はどれくらいなのだろう。
 一口? 半分? 全部?
 可能性は低いが、これが実は毒ではなかった、という落ちならばかなり滑稽だなと
思った。
 同時に、それを望む気持ちも杉山にはあるような気がした。
 そうなれば、ろくでもない気を起こすなと誰かが――天とかいうろくでもない
傍観者が――止めてくれたのだと思える。
268174(5/5):2008/04/01(火) 01:37:16 ID:P2JfKoNz0
 コトン
 残り少なくなった小瓶の蓋を閉め、杉山は小さな音と共にそれを床に置いた。
 狩野の脇に据わり、震える手でペットボトルを後輩の口に宛がう。寝息を立てる
唇がわずかに開き、流れ込む死を待っているようだった。
(殺す――殺す……殺してしまえば……)
「何……してるの……?」
 声。
 極限の緊張の中、痙攣を起こした右手からペットボトルがこぼれ落ちた。鈍い音
を立て、床に跳ねたそれが狩野の寝袋と、杉山の膝を濡らす。
 透明の染みを床に広げるシアン化カリウム水溶液以外、時間の停止を錯覚するよう
な数瞬が流れる。
 動けない杉山は、同じく動かない江草の視線を受け止めていた。

【残り32人】
269代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 10:59:34 ID:C8Zir/5lO
職人さん乙です。
おすぎ・・・!
270代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 14:02:24 ID:AbEYDWVg0
職人さん乙です!
おすぎ・・・ガンガレ!
271代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 15:29:39 ID:uVMak5Vi0
うおおコエー!職人様おつです

>>270
いやがんばったらあかんやろw
272代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 15:47:29 ID:AbEYDWVg0
>>271
精神的に安定しろ!って感じで言ったんだがw
スマンw
273代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 23:52:40 ID:+/a9+v7m0
t
274代打名無し@実況は実況板で:2008/04/02(水) 04:58:21 ID:ygfBtzSw0
乙です!
うわぁ……これはどう転ぶか分からん展開だ…!
275代打名無し@実況は実況板で:2008/04/02(水) 15:39:20 ID:1YdesFWt0
うわあ
276代打名無し@実況は実況板で:2008/04/02(水) 21:07:06 ID:qt+8+CcI0
乙です!

エグはセッキーが入れ知恵したとか思っちゃうんだろうか…
277代打名無し@実況は実況板で:2008/04/04(金) 00:43:25 ID:CR0Csheu0
ほしゅ
278代打名無し@実況は実況板で:2008/04/05(土) 01:51:36 ID:7WJrNXrR0
279代打名無し@実況は実況板で:2008/04/06(日) 00:03:27 ID:/5gUaTXW0
捕手
280代打名無し@実況は実況板で:2008/04/06(日) 16:03:28 ID:71iWa3M90
保守
281代打名無し@実況は実況板で:2008/04/06(日) 21:39:33 ID:8gFE7Fpn0
    ,,-―――――-、
    ,r´          `\
    | ,.-''" ̄ ̄ ̄ `"''-,,  .ヽ
    |./           ',   ',
    /-      -     i   .| キム本兄さんも朴(新井)兄さんもキム村投手も
    /⌒ヽ    /⌒     .|   |
   ,'  _ `  ´  _     |  .| 金に目がくらんで阪神に来たんやないんや!
   |.ノ-・、.〉 ,  /-・ヽ    .|/,⌒i
   |  ̄./     ̄       .>ノ.|  ワイらの同胞やから阪神に来たんやで!
    .',  .|   -、       .、_ノ  
    ヽ  `¨i⌒´      / / .| 読売の汚い強奪とはちがうんや!!
    .|ヽ,ヽlエlエlアヽ /   /  |  
    .ヽ、 .ヾ二ノ    /   .|  来期はスンヨブ兄さんとビョン兄さん獲得で 
      i\  ‐    ./ /  |
      | ヽ___,/  ,'   .| 同胞打線完成するからお前ら覚悟しとけよ!!
       ,, -''"´ ̄ ̄`"''- 、
     /           \
    /   /レリ(( ̄ ̄ ̄\  \
    /   .|     ―   .\  ミ、
   ,'   ,'  ⌒ヽ     '⌒ヽ/
   |   / (       ,     ノ
   |  ,'  `ー・二ヽ. , 〈 r・二ー'ヽ
   i'^ヽ|     _ノ   '、ヽ_  〉 チョッパリはキム本兄さんを見習え(笑)
   ',( {|\      (c、,ィ)    /
    .`r‐|        ,.へへ、 .イ ホンマキム本兄さんは民族の誇りやで(笑)
    'リl\   、_∠ィ'lエlュ.レ /
     |  \   ヽ\ェェン/ /  
     |   \.  `ー‐'´/     
     .|\ '、 . \____/|
  _,, -く  `"''ー――――''|- ,,_
     \          ,ノ
282代打名無し@実況は実況板で:2008/04/07(月) 13:42:07 ID:EL/yfevs0
ほす
283代打名無し@実況は実況板で:2008/04/07(月) 13:45:14 ID:Gj9LdYOw0
捕手
284代打名無し@実況は実況板で:2008/04/08(火) 12:55:57 ID:urgaXqRSO
ほすほす!
285代打名無し@実況は実況板で:2008/04/09(水) 15:18:38 ID:KzJd3np90
ほす
286代打名無し@実況は実況板で:2008/04/09(水) 15:23:26 ID:KzJd3np90
ほしゅ
287代打名無し@実況は実況板で:2008/04/09(水) 15:25:47 ID:8lFMmsGO0
ほす
288代打名無し@実況は実況板で:2008/04/10(木) 22:58:55 ID:A1xF9phbO
あかぼし
289代打名無し@実況は実況板で:2008/04/12(土) 00:14:43 ID:+RjbdMUO0
ほしゅ
290代打名無し@実況は実況板で