【ローカルルール】
・sage進行、メール欄にsageと書くだけ
・むやみにスレをageないこと(保守ageを除く)
・投下前には本スレリロード、保管庫掲示板の避難所確認は必須
アテネでは避難所の投下も本投下と見なされる
・本スレと避難所で被った場合は基本的に投下時間の早いものを採用
・文末表記は統一しています
通常時【選手名フルネーム(背番号) 現在位置】
死亡時【選手名フルネーム(背番号)・死亡 残り○人】
死亡位置・移動先や目的地等は文末に表記しないでおくとリレーの幅が広がります
・書き手はトリップ推奨(荒れ、騙りを防ぐため)
現行の書き手は初出スレ番+トリップがコテハン
※トリップのつけ方:名前欄に #好きな半角英数文字(8文字)
例: #password → ◆ozOtJW9BFA
【バトロワSSリレーのガイドライン】
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
【リアルタイム書き投下のデメリット】
推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)
複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒リアルタイム投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)
バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)
上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
文章を見直す(推敲)事は考える事に繋がる。
過去の作品を読み込まず、
自分が書ければそれでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
以上でテンプレ終了かな?
なにか追加あったらお願いします。
>>1 スレ立て+テンプレ貼りマジ乙!!
自分もずっと立てれなかった。
ありがとう。
お!スレ立ったのね!乙!!
[うそつきの集まり]
減るどころか増えてる!?んなアホな!
藤本は頭を抱えた、そして首輪探知機の電源を切るとバックの中に投げ入れた。
「その反応だと変わらずか、他のエリアから入ってきてるか。だな。」
木の根を枕に寝転がっていた金子がポツリと呟く。
悔しいが、金子の予想は一致していた。
診療所と学校のあるエリアに計6つの赤い点があった。
数時間前に見たときはまだ2、3個しかなかったはず。誰の目から見ても明らかに増えている。
「ならまだ動けないな。」
「・・・・・・そうっすね。」
そう返答する他無かった。
それを聞くと金子は藤本に背を向けるように寝返りを打つ。藤本は溜息を一つつき空を見上げる。
見上げた空は雲に覆われているが、時折星や月がその姿を現す。
冬独特の澄んだ北風に思わず身を震わせる。
何でこないなことになったんやろ。
顎を空に向かって上げた状態のまま、藤本は考えた。
日本代表選出したん長嶋監督やん、何で俺らが命賭けなあかんねん。おかしいやん。
それに大体金とれんかったってだけでこんなことになるねん。マジふざけてるし、イカれてるやろ。
こんなん正気の沙汰ちゃうやん。しかもこんなことに乗っとる人間居るし。ほんとに人の命を何やと思うてんのや!?
あー段々腹立ってきた。
藤本が視線を地面に戻す。
その一連の流れによる藤本の表情の変化を見ながら、金子はパンをかじっていた。
―――百面相だな、まるで。
さっきは泣いたかと思えば、今は怒りに燃えているような表情。
羨ましい、金子はそう考えると同時に、面倒だとも思った。
内野の守備は一瞬が総てを制する、勝ちも負けも選手の一生も。
一瞬躊躇すれば何もかもが崩れ去るような世界に生きてきた。それは藤本だって一緒のはずだ、内野手なんだから。
だからその一瞬を掴む為に無駄なものは省かないといけないことぐらい分かってるはずだ。
無駄なもの。一歩多いステップ、イレギュラーバウンドへの対応の遅れ、上げればきりが無い。
でも一番無駄なものは『引きずる気持ち』だろうと金子は考えていた。
打席で打てなかった、エラーをした、いろんなものを引きずったまま守備につけば一瞬への対応が遅れる。
そしてまた対応が遅れ、エラーになり、悪循環。
『難しいな。』
藤本に聞こえないように心の中で呟く。
自分のように引きずる気持ちを無くそうとすれば藤本のような存在には、冷たいと言われる。
藤本のように感情を表に出そうとすれば自分のような考えの人間は、うっとうしいと思う。
同じ人間なのに何故こうまで違うんだろうな。
何も明かりのない暗闇の世界で金子は目を閉じた。
ガサガサッ
金子が目を閉じた数秒後、藤本が眠りに入りかけた数秒前に突然その音は耳に飛び込んだ。
風とは違う葉の擦れあう音が段々藤本と金子のいる茂みに近付いている。
「金子さん・・・・!?」
「しっ。」
金子は藤本に向かって人差し指を立てて、子供にするように目配せをした。
誰だ、敵か、味方か。
最早逃げ出すことも出来ず、金子と藤本はそれぞれ先のとがった細長い石と腕の骨ほどの太さの木の枝を持ち、音のする方を睨んでいた。
幸い二人とも夜の闇には目を慣らせていた、一瞬だけでも注意を他にひきつけられたら・・・・。
何でこないなとき来んねん!、藤本はそう思っていた。一瞬だ、金子は神経を尖らせていた。
ガサリと目の前の茂みが動く、と同時に金子と藤本は久々の光を目にし、人間としての反射で身をすくめてしまった。
しまった!、これだけは二人の考えが一致する。
「・・・・お前ら、何やってんの?」
そして何度か瞬きをして、金子が見たのは。
「あのさ、突然で悪いんだけど相川見てない?」
背番号17、三浦大輔の姿だった。
【金子誠(8) 藤本敦士(25) 三浦大輔(17) G−2】
「面倒嫌いは何思う」
月明の下、悠然と歩くのは城島であった。
「面倒だなぁ…」
もはやお決まり文句となった言葉をつぶやきながらただ歩く。
もう少しあの場所に居ても良かったのだが、自分が殺そうとした和田は
やはり生きており、お節介な二人組が助けただけでなく、
仲間にしたのを双眼鏡から一部始終眺めてしまったゆえ、動くしかなかった。
(あの二人が銃さえ持ってなきゃ、仕掛けてみても良かったんだけど…)
由伸と宮本は、既に自分が和田を殺そうとした事くらい知ってるだろう。
そしてあいつはとんでもない奴だ、と認識したであろう。
そういった者達の近くに潜伏するのは危険である。
「…どこ行こうかな。ここも直に禁止エリアになるし…ああ、ここもだ。
何だよ、のんびり潜伏できそうな場所ばっかだな…」
面倒くさい。誰を殺したいわけでもない。ただ自分の事しか考えないだけだ。
だが、自分の事のみを考えるという事は結果、面倒な事…誰かを殺すことだ。
「ったく…自分の事だけ考える事さえ、手間ひまかけなきゃならないのか?」
どのみち面倒くさい思いをしなくてはならない…城島はふいにニヤリと笑う。
「そろそろ…頃合いか?」
本当に面倒だ。だが、これからは面倒だ、面倒だと言いながらも
面倒くさい事をしなきゃならないだろう。
「…集落、か。」
そこならば何人か居るだろう。面倒くさい事はさっさと終わらせるに限る。
城島はハッキリと目的を定めるように、集落に向け足を進めた。
(集落の…どこにする?絶対に誰かしら居る場所は…)
無駄足を踏むのはごめんである。確実に成果というものを得たい。
だから絶対に誰かしら居そうな場所…城島は顔をあげる。
「…学校…だな。」
なじみのある場所…懐かしい光景のあの場所…グラウンド。
死ぬならグラウンドで死にたい、と思う選手はきっといる。
「ここに来る前の俺だったら…そう思っただろうからな。」
もう遠い昔の思い出としか思い出せないここへ来る前の自分。
誇りと責任感で胸を張って野球をやっていた自分。
だがもう既にそれは遠い昔の思い出でしかなかった。
(和田の奴、ああみえて結構運良い奴なんだな。)
あの時の双眼鏡の光景を思い出す。
膝に顔をうずめて泣きじゃくる和田。優しく声をかける由伸。
苦笑して見守る宮本…煌々と照らされた月明かりとはいえ
夜の森は見通しが悪く、クッキリと見えたわけでもないが
ある程度はどういう状況か把握できたし、想像もできる。
(武器も持ってない、死にかけた奴を仲間にできちまうんだから
あの二人はいいねぇ、余裕があって。)
半分本気で、半分馬鹿にするように城島は苦笑した。
「俺はこういう状況で余裕綽々になるほど馬鹿でもないし、
自信家でもないからなぁ…」
頭を掻きながら城島はつぶやく。
「だから面倒だけどま、ちっとは動かねぇとな。」
グラウンドには誰かしら居る。そういう確信があった。
そこで殺し合う事となったとしても、仕留められれば良し、
殺されたらそれまで。それだけの事であった。
「…グラウンド、か。」
グラウンドの上の自分は様々なものを味わってきた。
誇り、責任感、感動、怒り、屈辱、悲しみ…
だがそれも遠い昔の話。
こんなにも無感覚でグラウンドに向かうのは生まれて初めてだろう。
そんな自分にもはや何を思うこともなく、ただ歩く。
今の城島にとってそれはどうでもいい事でしかなかった。
【城島健司(9)H-4に向けて移動中】
「今更」
ロクな明りもない闇夜の中で、岩隈は必死で谷から逃げ続けていた。
金属バットを掲げて無表情で自分を追い回す谷は、岩隈にとっては鬼そのもの。
捕まれば絶対に殺される。混乱した思考の中で、それだけは確信していた。
「死にたくない…死にたくない…死にたくない!」
夢に逃げる呟きは、いつしか誰かに助けを求める叫びに変わっていた。
この島に来て何度そう叫んだだろう。そう思っても岩隈は叫ぶのをやめなかった。
「助けて…誰か、助けてください!!」
この島には今、二十人位の人間がいる。近くに自分達以外の誰かがいてもおかしくない。
その誰かが敵となるか味方となるかはわからない。それでも岩隈は叫んだ。
自分の命が途絶える前に、誰かの声が返ってくる事を願って叫び続けた。
だが助けの言葉は未だ無く、悲痛な叫びは岩隈の体力を消耗させるだけだった。
「諦めろ…誰もお前なんか助けに来ない。これが現実だ!」
谷は岩隈の叫びを哀れむ事もなくただ冷静に岩隈を追う。
(……現実?)
谷の言葉に岩隈は違和感を抱く。
さっきから僕が何度も言ってるじゃないか。これは夢だ。現実じゃない。
そうだよ。夢だ。これは、僕が見ている悪夢だ。今僕を殺そうとしている谷さんも悪夢の産物だ。
僕自身が谷さんに対して後ろめたい気持ちがあるから。
バファローズへの誘いを蹴った僕を谷さんは恨んでると思ってるから。
だからこの夢の中の谷さんは怖いんだ。そうだ。本当の谷さんはこんな人じゃないはずだ。
ああそうだ、夢だ。でも僕は、例え夢の中でも死ぬのは怖いから…
「すみません、谷さん…!!」
「今更、命乞いか…!?そんな物が通用すると…」
夢から目を覚ましたら谷さんには謝ろう。谷さんには何の事か分からないだろうけど。
「そっちが…そっちが死んでくださいっ!お願いしますっ!!」
岩隈はそう叫ぶなり素早く振り返り、持っていたウージーの引き金を引いた。
小気味良い発射音が暗闇の中に消える。
「うぁっ!」
発射音に紛れた谷の悲鳴を、岩隈の耳は確かに捉えた。
え?夢なのに痛いんですか?本当にごめんなさい。夢から覚めたら何か奢りますね。
バファローズに行かなかったお詫びも込めて。本当に、本当にごめんなさい。
だからもう二度と、僕の夢の中で僕を殺そうとしないでください。お願いします。
…でもこれは本当に夢なのか?岩隈の中で、僅かな疑念が渦巻く。
岩隈は慌ててその疑念を押さえつけるように否定する。
…現実じゃない。現実じゃないんだ。絶対に夢だ!もし現実だったら僕は…
僕は二度も谷さんに対して取り返しのつかない事をしでかした事になる。
夢だ。夢なんだ。夢でなければならないんだ。これだけは!!
ああ、どうして。どうしてまだ涙が止まらないんだろう?
どうして弾を放つのをやめてしまったんだろう。
今のうちに逃げればいいのに、どうして足が震えて動かないのだろう。
どうしてこんなに、心の中が不安で一杯なんだろう?
「おーい!大丈夫かー!?」
突如聞こえる他人の声が、岩隈を夢と現実の葛藤から引き戻す。
遅すぎる助けの声に岩隈の中で張詰めていた何かが切れた。
ウージーを地に落とし、岩隈自身もがっくりとその場に項垂れる。
「おい…どうしたんだ!?何があった!?」
汗だくで息を切らして駆けつけてきたのは、同じリーグの和田一浩。
もう少し早く助けに来てほしかった。岩隈の空しい笑い声が辺りに広がる。
今この状況で悪はどちらかと言われたら、谷を撃った自分だ。
本当に、何故今更。数秒前なら自分は間違いなく善だったのに。
「おい…岩隈…!?」
和田の問いかけに答える気力もなく、笑う気力も失せた岩隈は空を仰いだ。
あの時の黒田と同じ様に。あの時とは違う、黒い空を見上げた。
――…なぁ岩隈…今、お前何がしたい?―――
岩隈の頭の中に響く幻聴――その声の主がもうこの世にいない事を岩隈は知らない――。
(…黒田さん、僕は…僕は早くこの悪夢から目を覚ましたいです。)
早く目を覚まして、暖かい家族や優しい仲間の元に帰りたい。
あの時そう言っていれば、今頃もう少しまともな夢を見られただろうか?
だがもう、何もかもが今更。岩隈には地に落ちたウージーを拾う気力すら残っていなかった。
【岩隈久志(20) 谷佳知(10) 和田一浩(55) F−3】
[もうひとつのBR]
「今死ぬか、後で死ぬか。どちらにしますか?」
挑戦的な笑みを浮かべながら、男はそう告げた。
その男の目前にいるのは唖然とした表情の男と怒りに打ち震える男が一人ずつ。
煌びやかな豪華客船の一室でアテネ五輪野球日本代表コーチ陣―――中畑清、大野豊、そして高木豊は顔をつき合わせていた。
「・・・・・何だいきなり。」
「だから今死ぬか後で死ぬか聞いてるんですよ。」
何でもう一度聞くんですかと言わんばかりの高木の態度に中畑は丸くした目を細めずにはいられなかった。
しかし、大野は黙り込んだままじっと高木を見据えていた。
そんな大野に気付いたのか、高木はようやく本題に入ることにしたようだった。
高木は手元に椅子を引き寄せると、立ち上がっていた二人もそれぞれ元々腰掛けていたところに座った。
「まぁ最初からこれを話さなかった僕が悪いんですけどね。
船の中を色々見て回ってたら人が最初に比べて少なくなった気がするんですよ。」
「能書きはいいから早く話せ。」
それまで沈黙を保っていた大野が言葉の節々に怒りを込めながら口を開く。
せっかちですね、と呟きつつも高木は少し言葉を考えた後、こう二人に言い放った。
「星野さんと渡辺さんを潰せば、ゲームが立ち行かなくなると思うんです。
だから僕らで潰しませんか?」
中畑は再び唖然とした表情を浮かべ、大野はぴくりと眉を動かした。
その後も高木はなぜ自分がそう思うに至ったか、時折考えながら話し続けた。
高木の目の前に座っている二人の内、中畑は真剣な面持ちで聞いていたが大野は話半分に聞いていた。
―――信用ならない、高木だけは。
数時間前の、あのメインシアターでの出来事が大野の心には深く高木への不信感を根付かせていた。
どうせこの話だって、渡辺かもしくは星野の入れ知恵に過ぎない。高木は―――敵だ。
そして高木の話が終わり、黙り込んでいる大野とは対照的に中畑は嬉しそうに顔を緩ませた。
―――そうか、俺達が選手を助ければいいんだ!
数分前の落ち込んだ気持ちはどこへ飛んでいったやら、中畑は高木の話を聞いてにわかに明るくなった。
待っていてくれみんな、俺達が絶対に助けてやる。選手を守るのが―――コーチの仕事だ。
「で、何か質問とかありますか?」
二人の相反する表情を見つめながら、高木はそう尋ねた。
ないと首を横に振る中畑に対し、隣に座っている大野は腕を組んだまま動かない。
そしてしばらく経った後、大野が口を切った。
「・・・・お前は何を考えてる?」
「選手達を助けたいと・・・・」
「ならあの時何故あんな事を言った、選手達を侮辱するようなことを・・・・!」
右手を強く握り締め低く、しかし憤りを言葉に込め、大野は睨みつけるように高木を見る。
やっぱり信用されてないか、と思いつつ高木は続けた。
「だってしょうがないじゃないですか。見張りついてたんですし。」
「だからといって!」
「落ち着け大野!」
「・・・・・お前に選手達を侮辱できる権利などない!」
激昂し今にも高木に殴りかかりそうな大野を何とか中畑が押しとどめる。
相変わらずの無表情でそれを見つめた後、高木はスーツの懐に手を入れ、掴んだものを大野達の座っているベッドに投げた。
息巻く大野も焦る中畑もそれを見た瞬間、うっと呻いた。
シャンデリアの明かりによって照らされたそれは―――紛れもなく拳銃としか言いようのないものだった。
「そんなに僕が信じられないんだったらそれで撃ってください。僕を。」
僕だってそれなりの決意を持ってあなた方に話したつもりですよ、と高木が続ける。
「どうせこれが終わった後には僕らも口封じで殺されると思いますよ。
そんなことで死ぬぐらいなら少しぐらい足掻いてから死んだほうが僕はマシです。
だから最初に聞いたんですよ。今死ぬか、後で死ぬかって。」
「だからってそんな・・・。」
「選手達を救うぐらいなら、僕は自分の命だって軽い。だから中畑さん、大野さん、選んでください。」
今死ぬか、後で死ぬかを―――
中畑は口をつぐんだままうつむいた。
大野はベッドの上の拳銃を手に取るとグリップを左手で握り締めた。
『選手達を救うぐらいなら、僕は自分の命だって軽い。』
高木がさっき放った言葉は大野自身が決意していたことと一緒だった。
しかしどうだ?今ここまで何もやっていないじゃないか。
選手達を助けようと策を考えていても、それは机上の空論でしかない。
実際に行動に移さなければ、ただの傍観者でしかない。
行動に移そうと持ちかける高木はその点においては何もしていない自分よりもはるかに上だ。
しかし―――
「・・・・高木。」
「はい?」
名前を呼び、高木が大野の方へ向き直った瞬間、大野は高木の額に銃口を突きつけた。
「大野!」
中畑が左腕を引こうとするのを目で制すると、大野は大きく息を吸った。
生まれて初めて銃を持ったにも関わらず、体に震えを感じなかった。
「・・・・やっぱり信用なりませんか僕が。」
「そうだな。」
「結構人望あると思ったんですけどねー。」
険しい表情で銃口を突きつける大野と、それでもなおヘラヘラと笑っている高木。
この二者のコントラストの違いを見つめながら、中畑は黙り込むしか出来なかった。
さて、と大野が呟いた。
「最後に何か言うことは?」
「最後ねぇ・・・・ま、皮肉なものとだけ言っときましょうか。」
人を助けようとする人が、人を殺すなんてタチの悪いジョークですよね。ホント。
高木はそう言い切ると顔に薄く笑みを浮かべたまま、目を閉じた。
大野の人差し指が引き金にかかる、中畑は見ていられず強く瞼を閉じ耳を抑えた。
そして銃声が部屋の隅々に響いた。
中畑はそれから数秒後に恐る恐るながら目を開けた。
バタバタと廊下から慌しい足音が聞こえる。
突如部屋の中から銃声が聞こえ入ろうとしたが、三人が逃げないように部屋の鍵を閉めていたのが仇になっているようだ。
それを遠くで聞きながら、中畑は息を呑んだ。
「・・・・まだお前を信用した訳じゃない。」
「あなたはそれぐらいで上等ですよ。」
さっきと変わらぬ表情の二人が目の前にいた。
中畑は嬉しいやら何やら分からない表情を浮かべ、一言よかったと呟く。
そんな中畑を一瞥すると高木は『それじゃ武器を取りに行きましょうか。』と切り出した。
「武器なんかあるのか?」
「選手に一つずつ渡すぐらいですから余裕持たせてるに決まってるじゃないですか。」
ガチャガチャとせわしい音を立てる扉を見据えながら、大野から拳銃を受け取ると高木は椅子から立ち上がる。
もうすぐ始まる出来事について考えを巡らせながら、大野はもう一度あの言葉を心の中で繰り返した。
「じゃ、僕らなりに頑張りましょうか。」
二つ目の戦いの火蓋が落とされた瞬間だった。
「夢でも現実でも」
和田一浩は途方に暮れていた。
目の前には放心状態で座り込んだ岩隈がいる。何を問いかけても反応が無い。
ただ呆然と何処かを見つめ、時折掠れた笑い声を放つ。
その姿に船の中でパーティが始まるまで…ゲーム開始が告げられるまでの、
穏やかでしっかりとした信念を持った良き投手の面影は一切感じられなかった。
この若い青年はこの惨状に耐え切れず壊れてしまったのだと思わざるを得なかった。
しかし和田はそんな岩隈を放っておく事はできなかった。
岩隈はこの島の中で初めて会う事ができた、生きている人間だったのだから。
和田は数時間前まで集落の中で人を探し続けていた。だが誰にも会う事が出来なかった。
民家の中で既に事切れていた選手を一人見つけただけ。
シーツを被せてその体を隠す事しかできなかった和田は、己の無力感に泣いた。
目の前にいる岩隈は生きている。例え精神を病んでしまっているとしても。
少しでも救える可能性があるなら。それに賭ける事ができないようでは誰も助ける事などできない。
だが、和田には体を治療する道具はあっても、心を治療する道具など無い。技術も無い。
下手に何か言って状況を悪化させてしまう事が怖くて、差し障りの無い発言しか出来ない。
立たせようとしても頑として岩隈は動かない。足元に落ちている銃を拾えば錯乱するだろう。
(どうすればいいんだ…?)
和田が何度目かの溜息をつくと、岩隈が遠くを見ながら呟いた。
「…和田さんは、いい人ですか?」
「は?」
突然の質問に思わず間抜けな声が出る。その上、その質問は和田には理解できなかった。
だが、とりあえず自分の事は認識しているらしい。まだ会話は可能だ。その希望は和田を元気付ける。
「僕、和田さんに恨まれるような事した覚えは無いから多分良い人だと思うんですけど…。」
岩隈はまだ和田を見ようとしない。本当にその言葉は自分に向けて発せられているのだろうか?
この島にはもう一人、和田がいるはずだが、辺りにはもう一人の和田どころか誰の姿も見えない。
(俺に…聞いてるんだよな?)
少し悩んだ末に、とりあえず答えてみる事にした。とにかく何でもいいから、会話がしたい。
「自分で言うのも何だけど…良いか悪いかで言われたら、良い人だと思う。」
こんな状況で人を助けようとしている自分はどうしようもない位のお人好しだと思う。
「そうですか…。」
和田の返答に岩隈は重い溜息をついた。それは安堵の息か絶望の息か。考える間もなく岩隈が続けた。
「…他の選手はどうなんでしょう?特に恨まれる事をしたり仲の悪い選手もいなかったけど…。
人相怖い選手は悪役になってるかも…だって、僕がそう思い込んでるから…。」
(…ああ、やっぱり。今の岩隈は平常じゃない。異常なんだ。)
岩隈の不可思議な発言に、和田は岩隈の異常がどういったものであるかが理解できた。
現実逃避。今の状況を自分の作り出した空想の世界…夢だと思い込んでいる。
この惨劇を夢だと思い込んでいる岩隈に、どうすれば安全に現実を突きつけられるだろう?
会話が出来たと思えば、また新たな難題の出現に和田は頭を悩ませる。
こんなに悩んでたら育毛剤がいくつあっても足りない。そんな事も考えつつ、一つの結論を見出す。
「…そうか。お前も俺も同じ夢を見てるのか。」
下手に現実を突きつけてしまうよりは、夢だと思い込ませておいた方がお互いに安全だ。
実際夢でも現実でもどっちでもいい。この状況は多分死ぬか生き残るかでしか変わらない。
この中で死んだ後、目を覚ますか、永遠に目を覚まさないか。それだけの違いだ。
「和田さんも…同じ夢を…?」
岩隈がようやく和田に視線を向ける。関心を引けた事に和田は自分の判断は正しかった、と確信した。
「もしかしたら、この島にいる奴は皆同じ夢を見てるかもしれないな。」
「…じゃあ、夢から目を覚ましたら…谷さんは僕を恨んでるかもしれない…?」
「ん?」
「僕は…谷さんを撃ちました…谷さんが僕を殺そうとしたから…だから…。」
「そうか…。」
撃ったのか。と改めて聞くと岩隈は小さく頷いた後、頭を抱えて塞ぎこんでしまった。
駆けつける前に銃声が聞こえたから予感はしていた。誰かが撃たれたかも知れないと。
辺りに人の気配は一切無い。自分が駆けつける前に谷は何処かに逃げていったのだろう。
「夢だから撃ったのに…目が覚めても覚えてたら…僕は…ぼくは…。」
今にも泣き出しそうな声で呻く岩隈の体は、異常なまでに震えている。
「…今から、探そう。」
「……え?」
和田の言葉に、岩隈は思わず顔を上げる。
「まだ遠くには行ってないはずだ。谷を探して、助けよう。」
逃げられたなら命に関わるような負傷をしたとは考えづらい。治療すれば助けられる可能性がある。
「い、嫌です…あの人は、僕を憎んでる…。殺そうとする…!」
岩隈はまた塞ぎこむ。暴れたりしないのはもうそんな気力は無いからだろうか。
人としてはまだ完全に壊れてはいないのかもしれない。和田は岩隈の肩を軽く叩く。
「撃たれてるなら激しい行動はできないはずだし、いざって時は俺が全力で谷を止めるよ。
いいか、岩隈…夢に甘えちゃいけない。夢だからって何をしてもいい訳じゃない。」
「………。」
「大丈夫だ、心配するな。……行こう。」
和田が手を差し伸べる。だが、岩隈は防ぎこんだまま何も答えない。
差し伸べた手には気づいてすらいないだろう。和田は差し出した手をゆっくりと降ろした。
「……着いて来たくないなら、それでもいい。でも俺はお前に着いて来て欲しい。
悪い事したら謝らなきゃいけないんだ。それがたとえ、夢の中の事だとしても。」
和田は岩隈から背を向けて歩き出す。救える可能性がある人間を救う為に。
着いて来る足音が聞こえるのを願って、一歩一歩ゆっくりと歩き出した。
安藤は既に死んでいた。銃声や爆音に駆けつけても誰を見つける事もできなかった。
助けを求める人間の叫びを聞きつけてようやく見つけた人間は壊れていた。
(…それを治す事ができない自分に、誰を助ける事ができるだろう?)
自分のしている事は無意味な事かもしれない。歩く度に、和田に絶望が押し寄せてくる。
だが、数歩程歩いた所だろうか。微かに後ろの方で草が踏みつけられる音が聞こえた。
それに気づいて振り返ると、岩隈が立ち上がってぼうっと和田を見ていた。
「岩隈……。」
岩隈は無表情だった。何の感情も込められていないその眼は確かに和田の姿を捉えていた。
和田が左右に動くと岩隈の視線と懐中電灯の光がそれに合わせて動く。
岩隈が手に持っている懐中電灯は自分の顔、というよりは頭を照らしていた。
「…何処照らしてんだよ。」
笑う自分につられて、岩隈の表情は少しだけ穏やかになった。そんな気がした。
和田は帽子を深く被りなおして歩き出す。岩隈も、頼りない足取りでそれについていく。
岩隈が何を思って着いてきているのかは定かではない。
だが、最悪の状況からは脱したようだ、と和田は岩隈の足音を聞きながら思った。
しかし。すぐ近くにこれ以上の「最悪」が迫ってきている事など今の二人は知る由も無かった。
岩隈と和田。二人の様子を遠くから眺めていた影がゆらりと動く。
和田と同じ様に岩隈の叫びを聞きつけて。しかし和田とは真逆の意図を持って足を運んだ一人の影。
「…どっちか死ぬと思ったのになぁ…。」
つまらなそうに溜息をついた岩瀬が手に持っている抜き身の日本刀は妖しく月光に反射する。
「……まぁ、人を追い詰める楽しみが増えたと思えばいいか…。」
日本刀が反射した光は、薄気味悪く笑う岩瀬の顔を僅かに照らしていた。
【岩隈久志(20) 和田一浩(55) 岩瀬仁紀(13) F−3】
「さまよいの果て」
小笠原道大がその場所に足を踏み入れたことに理由はなかった。
黒田の死後、ただぼんやりと歩いてきて、行き当たった建物。
それが学校だったというだけで、彼自身はそこに用もなければ、これからどうしようという展望があったわけでもない。
しかし、彼は気づいてしまった。
何気なく懐中電灯で照らした廊下の床に、赤黒い水たまりがあることに。
そして、それが血痕であることに。
小笠原はしばらくの間、その点々と続く不吉な印を不思議な気持ちで見ていた。
この血痕の先にいる人物が傷を負っていることは間違いない。
けれど、それがゲームに乗っていない人間ではないという確証はどこにもない。
誰かを襲って返り討ちにされたとしても、血は流れるのだから。
「どっちでもいいか……」
小笠原は小さく呟いて、血の跡を追った。
負傷者に会って、どうしようかということすら決めていなかった。
小笠原は自分がこのゲームの中でどうすればいいのかすら決めかねているままなのだ。
黒田の潔すぎる死が、彼の心をますます混迷に導いていた。
自分にああも迷いなく命を手放すことができるかと言われれば、答えは否だ。
それは黒田の死を目の当たりにして痛感した。
しかし、では生きて何をするべきかと言われれば、その答えは見つからない。
誰かに会って、話してみれば答えは見つかるだろうか?
黒田が自分に会って、答えを見つけたように。
例えばそれが、他者の手による死だったとしても、ひとつの答えには違いない。
小笠原は判決を望む罪人にも似た気持ちで血の跡をたどる。
血痕は階上へと続き、やがて、ひとつの扉の前で途切れた。
この扉を開ければ、自分に待つものは死か。
あるいは別種の救いか。
やや重いその扉をゆっくりと開けて、懐中電灯で中を照らす。
そこにはまったくといって人の気配らしきものはなかった。
彼が、床に倒れた背番号27の血まみれの背中を見つけるまでは。
「木村さん!?」
チームメイトの――実際、彼はアテネに招集される遥か昔に小笠原のチームメイトであったのだが――凄惨な姿は一瞬にして小笠原を現実に引き戻した。
さきほどまでの厭世的な気分をどこかへ吹き飛ばし、倒れ臥す木村拓也に駆け寄る。
「木村さん!」
死体だ!!
一瞬そう思ったほど、全身を赤く染めたその体は力なく横たわっていた。
黒田のものとはまったく違う、人を恐怖させるほどに血に染まった姿。
それは船で見せられた中村の死体を否応なしに思い出させ、小笠原を動揺させるのに充分だった。
かろうじて息があることを確かめても、小笠原はその名を呼び続けることを辞められずに叫び続けた。
「木村さん、しっかりしてください! 木村さん!」
何度目かの呼びかけに応えて、木村の指がぴくりと動く。
「木村さん、俺がわかりますか!?」
小笠原です、と続ける前に、木村の唇が動いた。
慌てて耳を近づけると、苦しそうな息の果てに、木村は予想外の台詞を吐き出した。
「くろだ……?」
「え?」
自分とまったく似たところのない、そして自分が今しがたその死を看取ったばかりの男の名前を出されて小笠原は困惑する。
しかし、木村にとっては現在のチームメイトであり、おそらく最も信頼しているであろう男の名でもある。
否定していいものかどうか迷っていると、木村が更に言葉を続けた。
「俺を、探しにきてくれたのか……?」
先ほどよりはっきりと、おそらくは気力を振り絞った声で言われて、小笠原は目を閉じた。
いいえ、違います。俺は小笠原です。黒田はもう……。
そんなことが、どうして言えるだろうか。
黒田は自分の目の前で、自ら命を絶ったなどと。
心臓を突き刺すような痛みを覚えながら、小笠原は優しい嘘をつく。
「そうです。黒田です。木村さんを、探しに、来ました」
「ああ、やっぱり黒田か……俺さぁ、目が開かないんだよ……なんか体も動かなくて、どうしたのかなぁ……」
すでに木村の体は、素人目に見ても限界だった。
この部屋まで小笠原を案内した血。ユニフォームを染め上げる血。そして、体の下に染みのように広がる血。
血、血、血。
おそらくは致死量の出血だろう。
どうすることもできずに、小笠原は木村の手を握り締めた。
そして、それに勇気づけられたように、再び木村が言葉を紡ぐ。
「来てくれてよかった……俺な、お前にあやまりたかったんだ……」
ほんのわずかの力ながら、木村が手を握り返した。
「さっきはごめんな……本当にごめん。ずっと頭痛くて、混乱してて……怖くて、それで……」
「……木村さん」
名を呼ぶ以外、小笠原には、返すべき言葉が見つからない。
「馬鹿だよな……お前が俺の敵になるわけないのに……。悪かった……」
小笠原が黒田と出会う前に二人は出会っていたのだろう。そして、おそらく木村が黒田を襲った。
そう思いあたると、哀しくてたまらなかった。
もしかしたら黒田に自ら死を選ぶほどの絶望を与えたのは、木村なのかもしれない。
けれど、木村は今そのことを深く悔いている。
しゃべるのも苦しいであろう息の下で、懺悔の言葉を吐き続けている。
「俺が、馬鹿だったんだ……許してくれ、黒田」
その言葉を聴くたびに、小笠原の胸はどうしようもなく痛んだ。
黒田に聞かせてやりたかった。
自分なんかじゃなく、黒田に、ちゃんと。
そうしたら、黒田は死なずにすんだかもしれない。
「許してくれ、黒田……」
黒田の死に様を知る小笠原にはそれはあまりにも皮肉な願いだった。
木村よりも先に、黒田は死んだのだ。小笠原の目の前で誇り高く死んだのだ。
「木村さん、大丈夫ですよ。俺は気にしてない。だから、探しに来たんです」
「そっか……」
小笠原の言葉に、木村は安心したように息をついた。
「……死ぬ前に、あやまれて、よかった」
「な、何言ってるんですか!」
「いいんだ……わかってるから……自分で、わかるから。きっともう……俺のからだ、うごかないよな……」
「木村さん!」
「いいんだ……お前にあやまりたかった、の、果たせたから、……もういい」
「ダメですよ!」
叫んだ声が、むなしく闇に吸い込まれる。
うまく言葉が出てこない。自分の不器用さを、小笠原は呪った。
「でも……もう一度野球はしたかったな……せっかくユニフォーム着てるのにさ…。武器持って、仲間疑って……変だよな」
「俺たち、野球選手なのにな」
その言葉だけは、絶え絶えの息の中で、やけにはっきりと聞こえた気がした。
小笠原は嗚咽をこらえて、ポケットを探った。
「野球ならできますよ! ボールだってあるんだ、ほら!」
木村の手を包みようにして白球を握らせる。それは黒田が最後に投げた球だった。
「あぁ、本当だ、ボールだ……やっぱりいいな、この感触……なあ?」
木村はかすかに微笑んだ。
暗闇の中で、わずかに口許をひきつらせただけだったけれども、小笠原には木村が微笑んだことがはっきりわかった。
「おかしいよな。もうすぐ死ぬのに……こんな時でも、ボールを握ると嬉しいんだ……」
おかしくないですよ、俺もそうです。きっと、みんな、そうです。
その言葉は、喉の奥に詰まって出てこなかった。
「やっぱり……野球、大好きだなぁ……」
その一言で。
それで、もう満足だとでもいうように。
木村の呼吸は、いきなり止まった。
また、おいていかれた。
呆然と座りこむ小笠原の脳裏には、そんな言葉が浮かんでいた。
【小笠原道大(2)H−4】
【木村拓也(27)・死亡 残り19人】
[偶然の裏の可能性]
にしても凄い偶然っちゅうか何と言うか。
宮本は後ろについて歩く二人を見ながら、この島に入ってから更に広くなったであろう額を掻いた。
21番と24番、和田と高橋はのほほんと会話をしていた。
福岡ダイエー、違ったソフトバンクホークスの若き先発の柱、和田毅。
誰もが認める巧打堅守のチームの主砲、読売ジャイアンツ高橋由伸。
実力もさることながら、人気も高い二人に出会えたのは俺の運か人望か。・・・・・運やな。
「それにしても寒いですね。」
「冬だしなぁ・・・。」
頭の中で漫才を繰り広げつつ、まるで子供を見るような目つきで二人を見つめていると、それに気付いた高橋が不思議そうに小首をかしげていた。
別に何もないよ、と返し、宮本は再び地図とコンパスを見比べる。
一瞬沈黙が流れたが、高橋と和田はまたちょっとした話を始めていた。
地図とコンパスがその通りならもう少し歩けば灯台に繋がる道に出ることが分かり、宮本は地図をホルダーにしまった。
そして数歩歩いたところでふと思い出しポケットの中に手を突っ込む。取り出したのはあのカード。
スペードのエース―――すべてはこのカードを選んだ瞬間に始まった。
あの時はまだこんな事になるとは微塵とも思わず、ただ適当に24の封筒から一つを選んだに過ぎなかった。
その選択が適切なものだったのかどうかはまだ分からない。が、間違ってはいないはずだ。
未来の選手達のために戦う奴に出会えた、不器用でも人を信じようとする奴に出会えた。それが間違いではないことを証明している。
俺もなかなか詩人やなと半分笑いつつ、カードをポケットにしまいなおした。
「でも無人島なのに灯台あるんですね。てっきり人がいなくなったら取り壊すんだと思ってましたけど。」
「まぁ取り壊すにも費用が要るからな。しかも灯台って海のところにあるから取り壊しにくいじゃねぇの?」
「そうですよね。」
二人の会話が少し途切れたところで後ろを向きながら、「さてと」と切り出しす。
自分の行動に気付いた二人は、懐中電灯があるとはいえほの暗い闇の中で真っ直ぐ自分の顔を見る。その視線に宮本は改めて気持ちを入れ直した。
「もう少し歩いたら道出るから。寒さしのぐためにもとりあえず灯台に行こか。」
「分かりました。」
「あ、それと何やけどお前らカード何?」
高橋と和田が突然立ち止まり、それにつられて宮本も不思議に思いつつ立ち止まる。
宮本にとってはついでのようにした質問だったが二人には思いもしない質問だったのか、高橋と和田はきょとんとした表情になっていた。
その表情のまま、二人はそれぞれカードを取り出した。
一足早く取り出した高橋が見せたものに、今度は宮本が驚く番だった。
「俺はスペードの3っすけど。」
何やお前もスペードなんか、と宮本は返しながら仕舞いなおしたカードをもう一度取り出す。
すると和田は驚いた表情のまま、カードを高橋と宮本に差し出すように見せた。
そのカードはスペードの4。思わず三人で顔を見合わせる。
「・・・・もしかして俺らスペードで出来とん?」
「凄い偶然ですね。」
偶然。和田のふと一言が宮本の頭に貼り付いた。
偶然か、そういえば俺も高橋も和田も武器は銃だな。よほど運がいいんやな。
「これで2がいれば、ストレートなのになぁ。」
「アホ、5もおらなストレートにならんっちゅうの。あれ、フラッシュやったかな?」
「誰がスペードの2と5引いたんですかねぇ。」
和やかな雰囲気の中、再び歩き出す。
―――運がええな、ホンマ。おかしいぐらいに・・・・。
背後で交わされているトランプの話を聞きつつ、宮本は髪を切ったすぐ後のように微妙な違和感を感じていた。
微妙な違和感、それはスペードのエース・3・4の武器が銃である『偶然』。
この島に来るもっと前、鞄が渡されたのは確か―――星野によるくじ引き。
確かに偶然に偶然が重なって、銃の入った鞄がこんな順番で決められたのかも知れない。他にも銃の入った鞄があるとしたらその確率は高い。
しかし、何か出来過ぎてはいないか?
多分これにはまた名前も呼びたくない人が関わっている。あの人の自チームへのこだわりようは半端じゃない。
特にここにいる高橋由伸という選手にはもう格が違うというほどこだわっているのは噂で聞いた。
それに加え、和田毅には星野仙一がこだわるはずだ。和田の将来性を高く買っている話を解説で聞いたことがある。
宮本は頭痛持ちの人がそれをやるように軽くこめかみを押さえた。
もしかしたらではあるが、あくまで可能性の域から出ないが、仮説に過ぎない話だが、もしそうだとしたら―――
「・・・・・ようやるね、向こうさんも。」
思わず呟く。慌ててチラリと二人を見るが、和やかな雰囲気を保ったままなのを見て胸を撫で下ろす。
そんなことはないと、それよりむしろ今自分たちがいる状況こそあってはならないのだが、それでも宮本は考えた。
―――もし、命の順位付けがされてあったら?
最初から道筋が決めてられているのと一緒だというなら?
最初から、生き残れる選手が一人決められているとしたら―――?
(そんな権利、つか人の命を他人が司る権利なんてもん自体がそもそも誰にも無いっちゅうねん。)
ふつふつと宮本の中に怒りが生まれる。
こうなったら、意地でも生き残ってる全員を元の居場所に戻す。それが自分の『キャプテン』としての最後の仕事だと宮本は感づいた。
「あ、なんか道っぽいの見えてきましたね。」
和田がそう言うのが宮本の耳に入ると同じくして、懐中電灯の光が森の向こう側へと抜けた。
「灯台の中寒くないっすかねぇ。」
「まぁ海に居るよりかはマシやろ。」
「誰も居ないといいですね・・・・。」
そんな会話を交わしながら、宮本はカードがしまってあるのとは反対のポケットに入れてあった名簿を取り出した。
握り締めてくしゃくしゃになったそれには中村・安藤・村松の名前の上に棒線が引いてある。
その名簿の一番下に宮本は『みんなを生きて帰らせる』と書いて、再びポケットに戻した。
「じゃ、灯台に着いてちょっと休憩してからこれからについて話し合おな。」
「ラジャ。」
「分かりました。」
「・・・・・絶対に、生きてみんなで帰るんや。」
最後の台詞は自分だけに聞こえるように呟く。
絶対に、そう絶対に、負けられない。
21人の生命と将来の選手達の為にも、負けられない。
ふと見上げた夜空に雲の隙間から煌々と丸い月が輝いているのが見えた。
【宮本慎也(6) 和田毅(21) 高橋由伸(24) C−2】
「価値観が違う理由」
診察室で清水は一人遅めの夕食をとっていた。
頼りない懐中電灯の光に照らされる、夕食というにはあまりに簡素な食事。
ろくに味のしない固いパンと、ただ喉を潤すだけの飲料水。
(…災害にあったらこんな感じなんかな?)
何処からか吹く微かな隙間風が掠め取るように体温を奪っていく。
暗闇の中での食事は、一人ではとても耐え切れなかっただろう。
孤独でなかった事が何よりの救いだ。パンを口に運びながら清水は思った。
「…何や…やけに遅い夕食やん?」
診療室に聞き覚えのある声と共に新たな光が差し込む。
清水は眩しさに目を細めつつ、懐中電灯を手に取って光を照らし返す。
光の持ち主が判明すると清水は口元を緩めた。
「昨日の料理に比べてかなり味気ないけどな。」
「こんな時にあんな料理出てこられても味わえへん。」
寝ている間に二人の来客があった事は小林から聞いた。
上原と松坂。それぞれのリーグを支える投手の来訪は、とても心強かった。
上原は少し疲れているように見えるものの、怪我はなさそうだ。
「お前はもうメシ済ませたん?」
「ん?あー…ここに来る前に歩きながら。」
「行儀悪いな。」
清水は呆れたような笑みを浮かべる。笑ったのは久々な気がした。
(何か、上原と話すの久々な感じがするな。松坂とは雅やんと交代する時に会話したけど…。)
昨夜の宴会からそう時間は経っていないはずなのに、何ヶ月ぶりかの再会のような感覚。
この島に下りてから時が流れるのがとても遅く感じていた。
(…笑いあえるって、事はこんなに楽しい事やったんやな…。)
地獄に突き落とされてまだ1日も経っていないというのに、もう何もかもが懐かしく思う。
「そうや、ナオ…お前にちょっと聞きたい事あんねんけど…。
小林さん起こしたら悪いし、別のところで話そか?」
上原は先ほど清水が寝ていた診療台の上で寝ている小林に目を向けると小さな声で囁いた。
小林は余程疲れていたのだろう。寝て十数分も経たない頃から酷い鼾が室内に響き始めた。
いつも冷静で頼りがいのある守護神も、人間なのだ。これ以上気負わせてはいけない。
上原の提案に清水は何の疑問も持たずに頷き、部屋を出る上原の後に続いた。
診療室から少し離れた待合室の方に場所を移すと、上原は古びたソファに座った。
短い話なら座る必要も無い、と思った清水はソファの横に立ちながら上原の言葉を待つ。
「…なあナオ、お前の武器って何や?」
「俺の武器?…これ。ブローニング何たらって銃。」
何の警戒も無く武器を曝け出す。できる事なら最後まで使いたくない武器。
「…けったいなモン持っとるなぁ…暴発させんなや?」
清水が右手で銃をしまう動作を見ながら上原は怪訝そうに呟く。
「こんなもん暴発させられへんって。あ、お前の武器は?」
「俺は何の変哲も無い鎌や。…あ、小林さんの武器って何や?」
「…雅やん?…あれ?何持っとるんやったかな………?」
清水の答えに上原は驚きを隠せなかった。
「…お前のん気やなぁ。一緒におる奴の武器位気にしとけや。寝首かかれても知らんで?」
「仲間疑ったって、しょうがないやん。」
「…仲間て…仲のいい同僚に過ぎんやろ?」
そんな事ない、と言おうとする清水の言葉より先に上原は厳しい声で言い捨てた。
「……もう、3人も死んどんねんぞ。」
机の上に置いた懐中電灯をいじりながら吐いた言葉は清水の表情を一気に曇らせる。
「そうやな…。」
「誰が誰を殺したんやろな…?」
「自殺かもしれんやろ?人を疑うのは良くないと思うわ。」
殺人だと決め付けたような上原の言い方に、清水は思わず反論する。
小笠原のように自ら死へ向かおうとする人間もいるのだ。
数時間前に知った悲しい事実を思い出し、清水の心に再び暗い靄が漂う。
「俺はそんなん考えられへんなぁ…。俺、こんな所で死にたないもん。」
「仲間達が殺し合う方が考えられへんよ、俺は。」
「あ、そ…じゃあそう思っておけばええんとちゃう?」
上原は不機嫌そうに言いながらソファから立ち上がり、窓の方に足を向けた。
「…俺だって、死にたくない。生きて帰りたい。」
清水の言葉はきっとこの島にいる誰もが思っている事であろう。
もう死んでしまった選手達だって、そう思っていたに違いないのだ。
「生きて帰って…チームを優勝させたい…。」
「いつになんねん、それ。」
上原の笑いに嘲笑が込められているのを清水は感じ取った。
無理もない。ロッテはもう30年もの間、優勝から遠ざかっている。
30年。確立で考えてもそれは少々信じがたい数字である。
それでも清水は力の篭った目で上原を凝視する。その必死な形相に上原もたじろぐ。
「俺、今年は優勝できる気がするんや。そんな気がする。せやから…」
「……何処の選手も毎年同じ様な事言うとるけど。」
「毎年考えるんだよ。今年優勝したら何年ぶりの…って。」
「………ま、頑張っとればそのうち優勝できるやろ。」
楽しい夢を語るように表情を緩ませる清水に、上原は気の無い相槌を返す。
そのあまりにも無関心な反応に、清水は何故か見下されたような思いを感じた。
それは何故か直ぐに理解した清水の拳に、異常なまでに力が篭る。
(…日本一を2回も経験しとるお前には…興味無い話やよな。)
思い出したのだ。目の前の男は明らかに自分とは異質の存在であった事を。
同じ年に生まれて、同じ様にエースと呼ばれる右投手。
なのに何故自分は優勝できない?何故彼は2度も日本一に輝いているのだろう?
自分達を区別するものは何だろう?環境が最大の要因だと分かってはいるが。
その他にも…性格…才能…実力…要因が次から次へと痛々しい靄となり心に渦巻く。
総称するなら、それは劣等感。嫉妬。きっといつまでも晴れる事のない闇の感情。
(どうして俺らは優勝できへんのかなぁ…?俺らだって必死に頑張っとるのに…。)
一度も優勝経験の無いまま引退していく先輩達。徐々に短くなる自分の選手生命。
簡単に優勝できた人間が羨ましいと思う事は、けして卑しい事ではないだろう。
時が経つにつれて遠い夢の様に思える優勝の二文字。
足掻けば足掻くほど遠ざかっていく気がした。それでも足掻く事でしか優勝には近づけない。
「…お前には優勝した事ない奴の気持ちなんてわからへんよな。」
上原は震える小声で小さく呟いた清水に振り返る。だが特に気を悪くした様子はなかった。
聞こえてたのか聞こえてなかったのか。どちらにしろ何が変わるという訳でもないのだが。
「……俺、そろそろ戻るわ。」
何となく気まずい雰囲気に耐えられなくなった清水は診療室へ戻ろうと上原に背を向けて歩き出す。
「あ、そや。」
だがその途中で清水はある事を思い出した。振り返ろうと足を止める。
「上原、雅やんの武…」
話題を替えるきっかけにしようとした言葉は、最後まで紡がれなかった。
首に突き刺さった何かが、清水の言葉を強制的に止めたのだ。
「お前も…」
清水が手に持っていた懐中電灯が床に落ち、反動で跳ね返った光が一瞬だけ上原の顔を照らす。
誰も見た事が無い上原の表情が、そこにはあった。
「お前も、優勝した事ある奴の気持ちなんてわからへんやろ?」
首に突き刺さった何かが乱暴に引き抜かれ、清水の首から生温かい液状の何かが勢いよく吹き出す。
抑える手がどんどんその液体に塗れていくのを感じながら、清水はその場に膝を付いて倒れこんだ。
【清水直行(11) 上原浩治(19) G−4】
「シュミレーション」
「谷は多分あっちの方に逃げたと思う。」
無表情のまま付いてくる岩隈に、和田は集落とは反対方向を指さした。
「集落の方から来た俺とすれ違わなかったからな…」
「谷さんは…僕を許してくれるでしょうか…」
無表情のままではあるが、何とか会話が成立するだけでもありがたい。
和田は笑いながら岩隈の肩を叩く。
「…大丈夫だよ。…なあ、夢ってさ、目が覚めてみたらそりゃそんな事、
現実でありえないよなって思うものだろ?でも夢の中ではそれが気がつかない…」
本当にそうならばどれだけいいか。朝、目が覚めて、酷い夢をみたものだと
思うことができればどれだけいいか…
「そうですよね…朝、目が覚めたら酷い夢見たって驚くでしょうね。
僕、目を覚ましたら真っ先にまどか…うちの奥さんに話すんだ。
選手同士で殺し合いしたんだ、僕は谷さんを撃ってしまったんだって…
あ、和田さんは良い人だったって言いますよ。」
和田はただにこやかに頷くだけであった。たとえ岩隈が尋常でないとしても
きっと今は少しは心穏やかな筈だ。
「ついでに結構男前だったって美人のかみさんに言ってくれよ。」
「……」
「なんでそこで黙るんだよ!」
尋常ではないにも関わらず、そういう判断はつくものかと思うと
なにやら悲しくもあり、おかしくもある。
「さて、と……まずどこに行きゃいいかな。」
地図を懐中電灯で照らしながら、和田は唸る。
闇夜にまぎれてひっそりと尾行する「死神」に気がつく様子もなく。
(ありゃりゃ、岩隈の奴、本当にイカれちゃってんだ。)
足音立てずに後を追う岩瀬は、聞こえてくる会話に苦笑する。
(追いつめたら夢だ何だってもっとイカれるのかな?)
想像すると思わず吹き出してしまいそうになり、辛うじて堪えた。
(和田さんも岩隈に合わせて男前だったって言ってくれよって…
何を必死合わせて…ああ、駄目だ、笑っちゃいけない…)
岩隈に必死になって合わせるその気持ちを考えると面白かった。
(ヤベェ…何か別のこと考えないと…そうだな、和田さんは良い人だな。)
イカれた岩隈相手に気を使い、合わせる和田は間違いなく善人だろう。
その善人を追いつめる…岩瀬は頭の中でシュミレーションする。
(やめろ、目を覚ませって怒ったり、ショック受けたりするんだろうな…
ま、月並みな反応だけど、オーソドックスなのも抑えとかないとな。)
岩隈の方が面白いリアクションをしてくれるかもな…
二人はまだあれこれ愉快な会話をしているようだが、
吹き出してしまってはお終いなので、あえて聞かないように後を追う。
(狂人も善人も悪くないけど…やっぱ悪人もいいな。誰でも構わず容赦なく
殺そうとする奴とか。そういう奴って必死に殺意向けてくるか、
頭使って計算したりするんだろうな…)
そういう奴を追いつめ、この日本刀で叩き斬る…
一体どんな死闘を繰り広げる事となるのだろうか。
そう考えると、得もしれぬ高揚感が沸いてきて…思わず岩瀬は身震いした。
(あー、でも星野さんが言ってたっけ。メジャー行きたそうな奴や、
高額所得者を狙えって…岩隈や和田さんはどうなのかな?)
誰がメジャーに行きたいか、高額所得者かなどあまり興味無い事であり、
分からないゆえに誰を狙えばいいかなど分からなかった。
(そう、俺はそういうの分からないんだよね。)
岩瀬はニヤリと笑う。メジャー志望や高額所得者がどうのと考えるのはつまらない。
こいつは追いつめたらこういうリアクションするか?と考えるのが面白い。
前を歩く狂人と善人はどれだけ楽しませてくれるか…
または途中でもっと楽しませてくれそうな者が現れるか…
もう一度岩瀬はその身を高揚で震わせる。今すぐ行動に移してもいいが、
今はまだこの心躍るシュミレーションを楽しもう。
気がつかれてしまってはお終いだ。心持ち岩瀬は二人からさらに離れるように
速度を緩めて後を追うのであった。
【岩隈久志(20) 和田一浩(55) 岩瀬仁紀(13) E−3】
[犬]
「もうすぐ9時か・・・・。」
ポケットから取り出した腕時計を見つつ、福留孝介は呟いた。
少し歩みを止め、近くの木を背もたれにして座る。逆手に持った懐中電灯は地図と福留の険しい顔を照らし出した。
F−7がもうすぐ禁止区域になる。
地図から目を上げた福留は道の少し先を見つめた。見つめた先も道は続いている。
だが、後もう少しでその道は進めなくなる。
何のせいで?首輪のせいで。
―――まさに今の俺らそのもの、だな。
胸に溜まった息を吐きつつ、地図を畳んでポケットの中に入れた。
ふと福留は思い出し、首輪を軽く持ち上げた。
月光を反射して、鈍い銀色に染まったそれはプラスティックで出来ているようだった。
少し引っ張ってみればすぐに外れそうな感覚があるが、星野の言葉が本当であるなら外れる前に爆発する。
それは身に着けていることを忘れてしまいそうに軽い。しかしこの首輪の仕事を考えると福留には今まで背負った何よりも重く感じてしょうがない。
首輪から手を離すと頭を二、三度掻いた。
―――逃げたくても逃げられない飼い犬か、俺らは。
首に巻きついた軽いプラスティックの輪が自分の生命を左右している。それはまるで鎖に繋がれ、暑い夏も寒い冬も外に出されたままの犬のようで。
初めて犬の気持ちが分かった気がする、福留は何故かそこで笑った。
逃げない限りは生を約束されている、まぁ約束は3日間しかないのだけど。
逃げ出そうとすれば殺される、それは野良犬を捕まえて殺すのと変わらない。
そして、今俺はあの人が言った殺し合いを忠実に行っている。
「まさに犬だな・・・・。」
そう呟いたところで、福留は目の前の道を何かが横切っていることに気付いた。
目を凝らして見る。満月なのか10メートル先ぐらいは見えそうなほど明るい事も手伝い、横切っているものはすぐに分かった。
犬だ。こんな時に犬かよ。
福留は笑うしかなかった。自分が犬だと何だと考えていたところに、本物の犬が目の前に居たからだ。
何なんだろうなぁ俺も、と立ち上がり服のゴミを払うのもそこそこに本物の犬に近付いた。
懐中電灯に照らされた毛並みは薄い茶色、雑種だろうかと考えた。
人間慣れしているのかそれとも恐怖なのか、犬は止まったまま福留を見上げている。
「おーおー心配すんなー。」
福留は先ほどより柔らかい表情で犬の頭を撫でる。
一瞬びくっと身を震わせたが、次には気持ちよさそうに犬は目を細めた。
「お前も一人かー、んー?」
返事が返ってくる訳はないと思いながらも、福留は犬と視線を合わせつつ話しかけた。
考えた通り、返事は返ってこない。なら、と犬の頭を撫でつつ、話を続けることにした。
犬の目が真っ直ぐ福留を捕らえている。
「俺も一人だよ、今は。でさ。」
少し間を置く。犬は鼻を少し上げ、それからまた真っ直ぐ福留を見た。
「・・・・俺、岩瀬さん殺したいんだ。」
本当に中日ドラゴンズに必要なのはどちらなのか。本当にチームの力になるのはどちらなのか。
それを決めたい、ある意味純粋で本能的な願い。それも犬みたいだな、と福留は気付き自嘲する。
犬は聞いているのか聞いていないのか分からない。しかし福留の顔を真っ直ぐに見つめていた。
「じゃ、そろそろ行こうかな・・・。」
草だらけ木だらけの道の向こうを見つめる。時刻はもう9時を過ぎた。
「・・・あ、着いてくる?」
森に入ろうと立ち上がると、それにつられたかのように犬も少し動く。
ふっと笑みがこぼれる福留。しかしあることに気付き、少し顔を歪ませた。
「怪我してんじゃんお前・・・・・大丈夫?」
犬は左前足を上げて動いたのだ。懐中電灯で照らし、よくよく見てみると短く骨ばった足には似合わない色が広がっていた。
どこかで擦ったのだろうか、痛いだろうな。と思い巡らせたところで止めた。
―――あぁ、人が殺した俺が言える筋じゃねぇな。
矛盾に気付き、福留はもう一度自分で自分を嘲笑う。
「とりあえず・・・」
犬が見上げる。福留が目を見て続けた。
「後で手当てしてあげるね。」
後でとはいつだろうか、岩瀬さんを殺した後だろうか。
だとするなら狂ってんな、お前。
どこかで誰かが呟いた声が耳に届く。その声は自分の心が放ったのか、それとも頭からか。
まぁどっちでもいいな、と福留は返した。
狂っているの狂っていないのは分からない、それはあくまで他人が判断することだ。
俺としては、ただ単純にどっちが強くてどっちが必要なのか知りたいだけなのだから、狂っているのかいないのかは問題ではない。
問題なのは、岩瀬さんが死ぬのか俺が死ぬのかということだけだ。
その問題の答えは―――。
考えるのをやめて、福留は後ろの犬に話しかけた。
「じゃ、行こうか。」
懐中電灯で道の先に光を当てる。いつの間にか月は隠れおり、闇に光が吸い込まれていくだけになった。
福留は目を細める。闇の、その奥にある何かを見据えるように。
そして歩き始めた、ポケットの中のカードを握り締めながら。
【福留孝介(1) E−7】
「砕け散った誇り」
(俺は優勝もした…そうや、俺は選ばれし人間なんや。それなのに…)
上原は淡々とした瞳で倒れ込む清水を見下ろす。
(なんで優勝もしたこともないお前等と同じ土俵でこんな事せなあかんのや?)
そんなのおかしいやろ…上原は口元を歪める。
「…すまんな…直ぐに小林さんにも後追わせたるからな。」
「…!」
溢れる鮮血を抑えようと、両手で咽を押さえていた清水は
その言葉に目を見開くと、落ちている銃に覆いかぶさるようにうずくまる。
(往生際悪いな…友情ゴッコならあの世で存分にやれや。)
銃を奪われまいと必死の清水に、上原は再度鎌を振り上げる。
「ナオ?ここにいるのか?」
背後から聞こえる声に上原の手が止まった。寝ていた筈の小林の声であった。
たまたま目が覚めたのか、それとも懐中電灯が落ちた物音が微かに聞こえたのか、
とにかく小林は目を覚ましてしまった。これは大きな誤算であり、上原は舌打する。
「暗いな…なんだ、懐中電灯落ちて…」
待合室に数歩足を踏み入れるなり、小林は驚愕で目を見開く。
光に照らされた清水…咽を押さえる手元、ユニフォームを真っ赤に染め上げる姿に
暫し絶句するしかなかった。
「ナオ…?」
声を詰まらす小林に、上原は勢い良く突進した。隙をついて小林を仕留めるしかない。
どんな武器であっても今なら…上原は躊躇無くその鎌を1番狙いやすい胸部に突き刺す。
「…ぐっ!」
その衝撃に小林はたまらず息を詰まらせるが、上原は予想していた手ごたえと
違う事に戸惑うように鎌の先端を見るなり、絶句する。
小林の胸部からは血の一つもあふれず、鎌の先端はユニフォームに埋まったままであった。
「…!なっ…お、まえっ…!」
せき込む小林に上原は暫し絶句していたが、やがて慌てて鎌を引き抜こうとした。
(くそっ…防弾チョッキか!)
破けたユニフォームから見えた防弾チョッキに上原は舌打する。
小林の支給品は武器ではなく、防具だった…
上原は小林を思いきり突き飛ばすように、何とか鎌を引き抜いた。
(ちくしょうっ!このままじゃ俺一人で3人いっぺんは無理や…)
ならばどうするか…全神経を思考に集中させる上原。
(ええか、俺…よーく考えろ…)
神経を研ぎ澄まし、一息ついた上原は突然、恐怖で顔を引きつらせる。
「ナ、ナオッ…すまんっ…だ、だから、だから俺は嫌やったんや!」
小林と寝ている筈の松坂、どちらも始末するには…
最悪一人だけでも始末するには…上原は脅えた声を演じる。
「だ、大輔が小林さんが寝た隙にナオを殺せって俺に…ナオは負傷しとるから…
その後で小林さんを殺せばええ、そうすりゃ二人消せるってあいつが…」
今は退散するしかないが、このまま逃げるだけでは芸が無い。
どうせなら、上手く行けば自分にとって結果オーライな仕掛けをしよう。
松坂を主犯格に仕立てるべく上原は叫ぶ。
「俺は嫌やと言うたのにっ…従わんかったらあの手榴弾で木っ端みじんに
したるって脅すから…俺は、俺はっ…」
泣き叫ぶ上原は、それでも逃げ道を確保するように出入り口に向かう。
こうなれば一秒でも早く退散するに限る。
(あとは小林さんと大輔がやりおうてくれたら…上手くいきゃ二人とも…)
仲間を斬られた小林は、流石に尋常でいられないであろう。
松坂がどう弁明しようが、聞く耳も頭も無いはずだと上原は計算すると、
清水に小林が駆け寄る隙に一目散に逃げ出した。
「ナオッ…どうして…待ってろ!今、手当を…」
喉元からあふれる鮮血を押さえる清水は首を小さく振る。
既に気管は嫌な音をたて、喋る事さえままならなかった。
「ナオ!頼むから!頑張ってくれよっ!頼む…」
「…ょ…う…」
「ナオ?何て言って…」
言いかけた小林は言葉を止める。気管から空気が抜ける音、
血が溢れ、ゴボリと跳ねる音しか聞こえない清水の口元…
優勝――
確かに清水の口元はそう動いた。優勝…その聞こえはしないが
伝わった言葉に、小林は大きく頷く。
「ああ、ああ…優勝しような。30年が何だ…俺等ならできる。
お前が投げて、俺がビシッと抑えてさ…まあ、俺の事だから
大舞台でもいつも通りハラハラさせちまうだろうけどな…」
そんな小林の言葉に清水は小さく笑い、頷く。
「お前な、何頷いてんだよ。そんなこと無いって言えよな。
ったく、ビールかけの時、覚えてろよ。」
いつの間にかあふれていた涙を拭うことなく、小林はただ語り続ける。
清水は頷いたまま、己の血で濡れた指を小林に向けた。
「俺?俺がどうした?」
清水は小林の問いに頷くと、今度は己に指を差す。
「お前?俺はお前の…?」
さらに大きく頷く清水は、最後の気力を振り絞るように口を動かす。
『誇り』
聞こえない声が確かにそう言ったのを把握した小林は、何とか笑顔を作る。
「俺もだ…お前は俺の誇り…お前をそう信じる俺も誇れる…」
そんな小林の涙で擦れた声に清水は今一度笑い、何度も小さく頷くと、
俺も、俺もと言いたげに何度も己を指さした。
「だから…なあ、ナオ…頑張ってくれよ。頑張って…」
言いかけた小林の言葉が止まる。
清水の宙に上がった手がパタリと落ち…その瞳は既に硬く閉ざされていた。
「ナオ?…馬鹿!目を覚ませ!ナオ…お前…」
泣き叫び、清水を揺さぶるが、清水はただ静かに笑ったまま動かない。
動かない清水を抱きかかえ、小林が慟哭した時…
「雅さん!一体何が…」
騒ぎを聞きつけた松坂が、手榴弾を手に診察室に入ってきた。
「…ナオを…俺とナオを殺そうと…」
「え?な、何を…!ナオさんっ?」
血まみれの清水に驚愕する松坂であったが、ゆらりと立ち上がる小林の
尋常でない様子にさらに目を見開いた。
「待ってください!何言ってるんですか!俺にはさっぱり…」
何が何だか分からない…松坂は首を振るが、血まみれの清水のブローニングを
小林が攫んだのを確認すると、咄嗟に身を翻した。
同時に銃声が響き、弾丸はドアにめり込んだ。
「…!くそっ…何なんだよ!どうなってるんだ!」
意味が分からぬまま混乱を押さえるように松坂は逃げ出す。
憎悪に燃える目で松坂を追おうとする小林であったが、側で横たわる清水の
遺体を見ると、その身を震わせ、再び慟哭するように床を叩き付ける。
「…許さない…絶対に…絶対に殺してやる…」
冷たくなり始めた清水の手を握り、ただひたすら殺してやると呟く。
清水という仲間を、誇りを砕かれた小林はただ呟きつづけるのであった。
【小林雅英(30)G-4】【清水直行(11)・死亡 残り18人】
保管庫に収納されていた章(116章)の次から
保守代わりに投下しました。
本文そのままで、訂正はしていません。
乙であります!
何度読んでも泣けてくる…地味様…orz
雅はこのあとどうなっちゃうのかな…
新スレ&代理投下乙!
今度は落とさないようにしなきゃな
代理投下マジ乙。
地味様…あまりに上原が策士過ぎて涙が。
∧_∧
‐=yc(Θ щ Θ#) ナオノカタキ……!
ヽ と )
∧_∧ ('~) l
(●。∀゜●) ちょ…濡れ衣……アヒャー!
( つ / つ自
| (~~)
し'"``
コワス
ほしゅあいかわ
62 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/05(月) 13:00:44 ID:gwOnwnd7O
浮上
トナリドウシ イシイト
∧_∧ ∧_∧
( ,,`Д゚ )(^亮^ )
O^ソ⌒とO^ソ⌒とヽ
(_(_ノ、_(_(_ノ、_ソ
アイカーサクランボー
∧_∧ ∧_∧ ))
(゙゙ヽ,,`Д゚ )')('^亮^/゙゙) はなびってなんだろ〜
(( \ / ヽ /
((⌒) ( ) (⌒))
``ヽ_,) (,__,ノ゙
∧△∧
ヽ ̄ヘ ̄ノ
|U U …マサヤンヲ、マモラナキャ・・・。
| |
)/
ν
鴎ネタスレに↑こういうAAがあったのでつい貼ってしまった、今は反省している
この台詞でいやな予感はしてたんだよな…orz
地味様の分まで劇場王ガンガレ、超ガンガレ
復讐フラグで劇場王は当分生き延びるはず…
と自分を慰めてる俺ガイル
hosyu
69 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 01:48:00 ID:CM1MrdnnO
一旦age
70 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 01:49:17 ID:+Mo874E80
キモっ。同人誌か?ここは?
あいかわあいかわ
[最高と最低が同居する]
目の前の液晶ディスプレイを見つめていた。そして2、3度瞬きをして背伸びをする。
長い間画面を見るのは慣れていたつもりだが、と前置きしつつ眼鏡を外し、こめかみを押さえた。
腕時計を見るともうすでに10時を回っていた。
「こりゃあいけんな・・・。」
立ち上げていたソフトとOSを終了させ、椅子から立ち上がる。
首を回しつつ、短く息を吐いた。さざなみの音と合わせるように床が少しだけ揺れる。
ノートパソコンを畳んだ後、それを置いている机の右上に設置された四角く黒いインターフォンのボタンを押す。
3つある内の右から2番目のボタンを押すと少しの雑音のすぐ後に、聞きなれた声がする。
『何か御用でございましょうか。』
ホンマによぉやってくれるな、と思いながら続けた。
「ネズミについて何かあったか。」
『特に動きは。さしずめ最終回ランナー一塁でスリーバント失敗1アウト、といった様子だとの報告が上がってくる以外は何もありません。』
「そうか。おもろいこと言うな。」
―――こっちが大量得点しとるがな。
心の中で付け加えつつ、短く感謝とねぎらいの言葉をかけ、さっき押したボタンの右隣を押す。
するとインターフォンに静寂が戻った。その後、椅子にかけたスーツを腕にかけ、一枚の書類を持った。
深く呼吸をすると、部屋から出る。
部屋から出た先はきらびやかな割には気味が悪い廊下。その廊下にひかれた赤い絨毯の上を歩みつつ、上着を着込む。
適度な温度設定がなされているのか、冬真っ盛りというような寒さは見つからない。デッキに出れば話は別だろうが。
そして一つ目の曲がり角を直進しようとした際、左手側に人影が目に映り立ち止まる。
「おや、こんな時間に・・・・奇遇や。」
「ええ、僕もそう思ってましたよ。」
前髪に少し白が入った男はそう言い、曖昧な笑みをその口元にたたえた。
よく見れば、彼も同じような書類を同じように一枚、右手に持っている。
「あんさんも何か案でも?」
「いや、僕のは拙案で。ご覧になられるほどのものでもないですよ。」
「とかいうて。行く先どうせ一緒でしょう。」
最後の一言に反応したのが見えた。もっとも、わざとらしい反応ではあったが。
目の前の男―――燃える闘将こと星野仙一は試合中とは違い、柔和な表情を浮かべている。
そして右手に持った書類を軽く差し出すようにしてきた。
「・・・・ま、そうですし。」
どうも、と言いつつそれに目を通す。そしてふむ、とだけ呟いた。
―――中々面白い案やないか、実現できる可能性も高そうや。
「まぁ参考までに、という形で出しに行きますがね。」
「ほう。偶然やけどわしも案を出しに行こうと思うてんのや。」
ひらひらと紙を空中で揺らす。星野に書類を返すのと一緒に、この紙も一緒に渡した。
星野はしばらく紙を見て、黙り込んでいた。
表情は柔らかいまま、ただ目つきは明らかに変わっている。
「・・・・これはこれは。」
「まぁあんさんのには負けるけどな。」
「いえいえとんでもない。私も去年だけとは人数的にも寂しいと思っていましたから。」
「いや、これからの球界のこと考えたらあんさんの案がええと思いますよ。」
「恐れ入ります。」
書類が返ってくる。その眼差しはどこか違う場所、壁の向こうの島でも見ているようなものであったが。
その目を見つつ、とりあえず、と切り出しスイッチを入れなおす。
「私が先に行ってもよろしいかな?明日までには本土に帰らなくてはいけないのでね。」
「ええ、構いませんよ。好物は二つに分けた方がいいでしょうから。」
それでは先に。そう言って廊下を再び歩き始めた。
一歩、二歩と歩いたところで立ち止まった。振り返ると星野と目が合った。
思わず二人して苦笑いを浮かべる。
そして笑いが収まった後、この船に乗ってからどうしても言いたかった台詞が口をついた。
「君は」
「はい。」
何故こんなことをこの男相手に言いたかったのかは分からない。
ただしかし、どうしても言いたかったということははっきり分かっている。
「わしが野球を純粋に好きだと言ったら笑うか。」
星野は軽く肩をすくめた。
「僕は笑いませんね。あくまで僕は、ですが。」
奇妙な気分になった。違和感たっぷりの連帯感とでも言うべきものが一瞬垣間見えた気になった。
星野は口元だけで軽く笑うと踵を返して歩き出す。
その革靴を履いた足が少し遠ざかったところで半回転した。
そして手に持った提案書を見つめた。
これを今からあの人に差し出す。だとしたらあの人はきっと顔を歪めて笑うに違いない。
意識せずに溜息が出てしまった。やれやれ、歳だな。
「・・・・結局のところ、わしもあの人もそう違わんっちゅうことかの。」
あの人ようにはなりたくなかったはずだが。結局は似るんか。
再び歩き始め、自虐的に笑った。朱に交われば赤くなるとはこういうことを言うのだろうとの意味も込め。
「・・・・野球が好きなんやけどなぁ・・・・。」
2、3度声を立てて笑い、それ以降の笑い声は喉の奥に押し込む。
―――経営に余計な私情など挟んではならないのだ。それが私の信念なのだから。
私は確かに野球が好きだ。しかしそれはあくまで『私』の部分ではあるが、経営とは『公』である。球団経営だって例外な訳ではない。
例えファンから補強費がすくないと言われようがなんだろうが、結果的には利益を出さなければならない。
だとすれば真っ先にどこを削れば赤字が減るか?簡単なことだ、人件費を減らせばいい。
人件費を減らすためには、まず新しい選手をあまり雇わないことといい選手をなるべく安く雇うこと。そして少数にすることだ。
少数にするとは簡単に言えばリストラのことだ、しかしプロ野球球団というものはいらないからと30人40人減らせるものではない。
それはプロ野球球団が公共物であるからだ。公共物である以上いくらこちらの意見があるとは言え、そう30人もやめさせることは不可能だ。
世間体もあれば、新しく入団する選手がこちらのチームに持つイメージや印象というものがある。
もし30人減らせたとしても、他の球団いやむしろ選手にしてみれば、『あの球団はすぐに捨てる、思いやりのない球団だ』と言われることは間違いない。
大体、いらないものはすぐ捨てるのが経営のイロハのイである。それを分かっていないのが困る。
選手の無知とは嫌なものだ。少し活躍すれば大幅に年俸を上げろという。上げたら上げたで活躍しなくなったらあんまり減らすなという。
確かに体を酷使しているのは分かるが、ちゃんと年俸分働いている選手は全球団中何人いる?12球団合わせて、せいぜい4、5人だろう。
年俸分以上の成績を残せたと思ったら、それはきちんとした成果だから評価する。
だが多くの選手達は評価がないのに上げろという。言語道断極まりない。
健全な経営のために、必要のない選手は切るべきなのだ。そう、切るべきなのだ。
そしてこれは、健全な経営のための絶対にやらなければならないプロジェクトである。
「・・・・本心って何やろな。」
そう呟き、廊下の真ん中に位置する扉の前で立ち止まった。
―――オーナーの自分とただの野球愛好者の自分、どちらの本心が心に多く占めているのか。
少し考えて、やめた。
今はそんな事どうでもいい。これは一応れっきとした『プロジェクト』なのだから。
持っている球団、ひいてはそれに関連する全てのことに関わる重要な『プロジェクト』だ。
頭を振り、部屋番号を確かめると数回扉を握り拳で叩く。数秒遅れ、中から声がした。
「どちら様でございましょうか。」
静かで冷静な声、さっきインターフォン越しに聞いた声とよく発音が似ている。
だからどうだともいう話ではない。
舌で乾いた唇を湿らせると書類を持っていない手で握り拳を再び作った。そして、声を出した。
「私だ、宮内だ。」
ついに宮内がきたか…
職人様乙です!
やっぱり宮内きたか…
職人さん期待してます保守
81 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 22:41:50 ID:2E61ZJab0
まじめな話、選手に殺し合いをさせる[ネタ]とやらが不快でしょうがない。
なんで平気なんだ?ファンじゃないの?
宮内・・・
っていうか二人とも何の計画を交換し合ったんですかガクブル
保守
84 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:56:09 ID:U3nzaLyY0
保守
保守
86 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:57:02 ID:U3nzaLyY0
保守
87 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:57:27 ID:U3nzaLyY0
保守
88 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:57:53 ID:U3nzaLyY0
保守
89 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:58:18 ID:U3nzaLyY0
保守
90 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 10:58:43 ID:U3nzaLyY0
保守
キャッチャー
ほす
ジョージ・マッケンジー
94 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 22:32:37 ID:rGU8TkgsO
ほっしゃ
あいかわ
96 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/18(日) 03:16:11 ID:/5un41NT0
∧_∧
<`▲´> イキルベキカ…シヌベキカ…ソレガモンダイダ
(∪ ∪
と__)__)
シドニー組もそうだけど、アジア予選に参加した選手たちは出てこないのかな?
井端あたり出てこないかなぁ〜
>>97 井端は初期の段階でちょっとだけ出てるな。
けど、バトロワには巻き込まれずに済みましたみたいに読みとれるから難しいんじゃないかな?
いや分からんぞ。
相手は天下のナベツネだ。宮内もいるし星野もいる。
しかし竜は二人ともマーダーだぞw
井端が乱入しても高確率で可哀相な目に合いそうな罠
アテネの予選にいた面子って…
井端、谷繁、二岡、松井カズオだっけか?
誰か抜けてたらスマン。
102 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/19(月) 01:13:37 ID:8GhL7CCM0
アテネ保管庫さあ、まとめしたくないならはっきりそう言えよ
と思う
>>102 だまれ何様だお前は
保管庫に集録されてない分は避難所でもここでも読めるし不自由ないだろう
知らないだろうがアテネの保管庫さんは忙しくて更新できなくてすいませんてクラウンで謝ってたよ
保管庫さんも職人さんもボランティアなんだから相手の都合も少しは考えろよ
>>101 あまりに暇だったんで探してきた
G木佐貫・D谷繁・G二岡・D井端・L松井の5人。松井は当時ね
そういや木佐貫もいたなぁ・・・・何もかもが懐かしい・・・・・。
城島気分になってしまってどうするorz
CMで星野さんが出てて、『何であんたがそこにいる?!』と思った俺が保守orz
ジョーのメジャー行きが決定したとき「優勝お前かよ!」と思った俺も保守
地味様と上原が出てるラジオを聞いてて
「地味様ー!後ろ後ろ!!」と思った俺も保守
[高エンカウント区域]
城島は茂みの中を進んでいた。冬だと言うのに枯れもせず、足元にまとわりつく草木を踏みつけつつ。
時折辺りを見渡しながら、用心深く静かに進んでいた。
移動を開始してからどれほど経ったかは分からないが、結構時間は過ぎているだろう。
こうしてただ移動している間にも誰かと誰かが殺しあってればいい。無駄な労力を使わずに済む。
(なるべく体力は温存しとかねぇとな。)
そう思いながら、城島はベルトに挟んだニューナンブを手に取った。
総弾数5発。説明書に書いてあった通り、確かに使いやすい銃ではあるが銃撃戦ならかなり不利になるだろう。
ついさっき近くで発せられた銃声は明らかに連発式、しかもマシンガン系の銃声。
持ってるのが誰かは分からないが殺意や何やらを持たなきゃ、マシンガンなんてものそう簡単にぶっ放すことは無いはずだ。
それと結構近くで聞こえたということを合わせて考えてみると、その系統の銃を持ったそいつに出会う可能性がそれなりにあるという答えが出る。
全く面倒くせぇ奴だな、と頭を掻きつつ銃を再びベルトとユニフォームの間に入れる。
それから数歩歩いた時だった。城島はふと引きずるように歩く足音に気付き、立ち止まった。
そして息を潜めると、懐中電灯を切り、再び銃を手に取る。右手にあった大木に身を隠しながら、その向こう側にうごめく影を見つけた。
斜め4、5メートル後ろを自分の進行方向から移動する影は足を庇って歩いている。足音はこいつか。
懐中電灯を切ったせいでまだ目は慣れていなかったが、夜というにはやけに白んだ闇だったのが幸いし、おぼろげな姿はすぐに分かった。
鞄の中から双眼鏡を取り出し、目を当てる。
見えたのは地面と右足の大腿部辺りが変色している様と、杖代わりに使っているバットのようなもの。
自分がいることに気付いていないらしく、右足を引きずりながらではあるがただ真っ直ぐ前を見て歩いている。
そしてその人物の背番号は―――10。オリックスの谷。
念の為、双眼鏡を覗き確認する。間違いなく背ネームも『TANI』。
(へぇ、意外だな。結構温厚派かと思ってたけどな。)
そう考えているとふとホームランを打った時に見せたあの招き猫のような谷の笑顔が脳裏に浮かんでくる。
(ここじゃ何が起こるかわかんねーなー、あー怖い怖い。)
城島はにやりと笑うと右手に持った銃の撃鉄を引いた。
多分武器はあの杖にしているバットのようなもの。怪我もあるから反撃はまず無いだろう。
大木から少し身を出し、ずりずりと進む谷の背中に銃口を向ける。そしてトリガーを引いた。
「・・・・・・!?岩隈かっ・・・・!」
小気味よい破裂音がして、谷が真後ろを振り返る。銃弾はどうやら谷のすぐ横辺りの木にめり込んだらしい。
左手に持った双眼鏡でその光景を見つつ、不意に城島は谷のまとう雰囲気が尋常ではないことに気付いた。
たった一言ながらどこまでも憎しみを込めた呟きと、ギラギラとした目つき。
特に目つきは普段の打席で見せるそれよりもっと釣りあがり、もっと激しく醜い炎に包まれているように思えた。
(岩隈に相当恨みあるみたいだな。)
谷が近くの木にもたれ、バットのようなものを握り直したのを見て、城島は木の根に座り込む。
別に殺してもよかったが、岩隈を殺してから死んでもらった方が労力が少なくて済むと気付き、銃を元の場所に戻す。
そして谷の目が自分の今いる方向ではなく、来た道を向いているのを確認して、今得た情報を整理することにした。
「岩隈、ねぇ。」
自分でも聞こえない程度に呟きながら名簿を取り出す。呟いた名前の横には塗りつぶされた丸がついている。
頭の中で情報を箇条書きに直しつつ、城島は名簿を見た。谷の名前の横には何も書かれていない。
1つ目に、銃撃で反応したということは、岩隈が谷を撃ったらしい。
2つ目に、そのせいか知らないが、谷は岩隈を殺したがっている。
3つ目に、地面に血が落ちているということは、谷が怪我したのはそんなに前の話ではない。
4つ目に、今までのこととあの銃声を総合して考えると、岩隈はマシンガン系統の銃、谷はバットのようなものを支給された。
(よくやる・・・本当によ。)
まずその情報を名簿に記入する。空欄だった谷の名前の横に星印と、その横に『バット?』と書き込む。
岩隈の名前の横にあった黒丸の上からバツを付け、星印に書き直す。そして『マシンガン系銃』と追加した。
そしてついでに背番号6と24の名前の横にも黒丸を追加、後者にはもうひとつ『銃』と書いたところでペンを止める。
ふと谷の方を伺いみたが、もうすでにどこかへと行ってしまったようだ。
城島はようやく大きく息を吐くことが出来た。
「ったく・・・・・どいつもこいつも暇人だな・・・・」
ピンと名簿を指で弾き、もう一度息をついた。銃に銃弾を1発つめ直すと城島は立ち上がる。
(殺し合いなんて七面倒な真似よく出来るもんだ。)
そこら辺は尊敬する、再び歩き始めつつ、また頭を掻いた。
暗闇に結構目が慣れてきたので懐中電灯はつけずに谷が来た道を歩く。
そしてそれから間もなくぐらいだろうか、それとも何十分と歩いただろうか。
茂みの中を隠れるようにして歩いていた城島の耳にまた足音が届く。それと話し声。
足音は絶え間なく聞こえていたが、話し声はぽつぽつと随分な間を置いて聞こえた。
(あー、今度は誰だよ。)
茂みの中から道に顔を出してみると月が隠れておりよくは見えなかったが、2人ほど並んで歩いているのが見えた。
目を凝らして見ると特徴的な2人の髪型で背番号を見ずとも、城島はすぐに名前が分かった。
「・・・・和田さんと岩隈かよ。」
思わず呟いた。そしてあまりにも両極端すぎる髪型に苦笑いを浮かべる。
さらりとした長髪の岩隈に対し、例え帽子をかぶっていてもかぶっていなくてもさらりとなびくはずも無い和田。
(ありえねー、マジ面白い。)
妙な取り合わせだと考えつつ、双眼鏡で二人の様子を覗く。
どうやら話しているのは和田だけらしい。岩隈の表情はうかがい知れなかったが時々首を縦に降ったり横に振ったりしているぐらいだ。
ただ岩隈の歩き方にあまり生気が感じられないのが気になった。谷を撃ったぐらいだからもう少しやる気に満ちたオーラを漂わせているのかと思っていたのだが―――。
双眼鏡を持っていた左手を下ろす。あの2人は殺さないことにした。その理由は2人が向かっている方向には谷がいるということ。
(憎んでる谷さんが岩隈を殺す展開になれば、向こうにとっちゃ面白いだろうな。暇つぶしにはなる。)
無防備な55と20を見て、ふっと笑った。
どんな状況か知らないがわざわざ殺されそうな方向に向かって歩いていることはこちらにとってはありがたい。無駄な労力を使わずに済むのだから。
「結構人に会うもんだなぁ・・・・・。」
背伸びをして、一度欠伸が出る。そしてあぁあの時しっかり寝りゃあよかったと城島は苦笑した。
その瞬間だった。城島は気配を感じとり身を翻すと、近くの木の陰に隠れる。
それと共にコツンと小石が隣の木に当たる音がした。銃を手に取り、石が投げられてきた方向を確認する。
「誰だか知らないけど、結構出来そう・・・なのかな?」
「あんたですか・・・・」
城島はつい返事を返してしまった。足音高く隠れている木に近付いてくる人物に、呆れた声色で。
そういえばさっきの小石、最後曲がってたな。と思い出す。何回も見たあの小石の軌跡。
足音が止まり隠れたまま、目だけで相手が銃を持っていないことを確認する。
両手があるもので塞がっていることに気付き、木の陰から出た。
思った通り、この島に上陸してから一番会いたくなかった人物が目の前に立っていて城島は自分の不運を呪う。
その人物が右手に持った懐中電灯は地面を向き、うっすら笑みの浮かんだ顔に適度な影がかかっていた。
うんざりとした表情で城島は右手を上げ、銃口を目の前の人物に向ける。目の前の人間は驚くどころか、笑っていた。
「・・・・・なんだ城島か。向こうよりお前の方が面白いのかな?」
「さぁ?俺は向こうの方が面白いと思いますけどね。・・・・・岩瀬さん。」
【城島健司(2) 岩瀬仁紀(13) E−3】
ヒィィィィ…怖ぇ出会いキター!
死神と面倒くさがり…ど、どうなるんだろ…
岩瀬と城島遭遇キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
やばい、これはやばい。
でも何よりも途中の頭髪についての部分で吹き出してしまったw
新作キテタコレwwwwwww
早くも最強マーダー対決のヨカーン(・∀・)ワクテカ!
117 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/23(金) 18:53:30 ID:uyK1+lvh0
下がりすぎだったからあげとくよー。
118 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/25(日) 15:54:37 ID:mxj+sBxy0
保守
捕手
保守
職人さん楽しみにしてま。
121 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/27(火) 16:47:02 ID:Zfhv8fd5O
あげ
ワクテカしながら保守
123 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/12/29(木) 23:55:14 ID:GIiST16xO
ガンガレ北川
2005年も後1日保守
「言うか言わぬか」
「俺の銃は次元の銃だったからね。だからまぁルパンが必要だって思ったんだ。
そしたらお前と一悶着あった後、助けに来た宮本さんの銃見たらワルサーP38でさ…」
なぜ宮本と一緒に行動しようと決めたのか、という和田の質問に高橋は答えた。
三つの懐中電灯の光は、暗い灯台までの道を照らす。
「なるほど…宮本さんもそう思ったんですか?」
尋ねる和田に、宮本は軽く肩を竦める。
「俺はルパンはよう分からんしね。単純に由伸とならやってけると思ったまでや。」
「……」
先程から何となく上の空といった感じで、パラパラとワルサーP38ルパンモデルの
説明書を読んで歩く宮本に、高橋はじっと視線を送る。
「…俺はこの銃を手にした時から信じてたから。俺にとってのルパンと絶対に会えるって。
それが宮本さんだった時は嬉しかった…この人だったんだって嬉しかった。」
「由伸…」
顔をあげる宮本に、高橋は穏やかに、それでいて強い瞳でつぶやく。
「だから宮本さん、あんたが今、何を考えて、何を疑い悩んでも…俺はあんたの相棒です。」
「お前…」
宮本は驚愕で目を見開く。高橋は気がついていた…カードが示す偶然性による
己の考えたくもないような疑惑に、悩みに気がついていた。
「敵わんなぁ…お前、気がついてたんか。さすがは俺の相棒やな。」
バツが悪そうに、それでいて頼もしげに呟く宮本。
(カードの偶然性が俺の取り越し苦労でも、本当に仕組まれた事だったとしても…)
どちらでも共に戦えばいいだけの話だった。宮本は苦笑しながら銃の取説を閉じる。
高橋はそんな宮本に安堵するように笑い返した。
「そりゃどうも。へえ、この銃って本当にワルサーP38ルパン愛用モデルなんすね。」
これでもう大丈夫だろうという安心から、軽い口調に変わった高橋は、
宮本が閉じた取説を読み始める。和田も興味深げに覗き込んだ。
「…これからどないしようかね。俺は…皆を助けたい。皆で生きて帰るんや。」
このまま雑談していたいところだがそうもいかない。宮本は高橋と和田を交互に見遣る。
「…けど、どうやって助かるかなんですよ。」
忌忌しそうに首輪に触る高橋に、宮本は頷いた。
「そうやね…まずこの首輪をなんとかするとか…」
「電子式の首輪だからまぁ…どっかしらのPCで管理されてんでしょうけどね。」
唸る高橋の横、和田はため息をつく。
「宮本さんも、由伸さんもパソコンに詳しいんですか?俺はごく普通の知識しかないですよ。」
「ハードは結構詳しいけど、ハッキングとかそんな知識はまったく無いぜ。」
「…俺等は野球選手やで?そんなん無理に決まってるわ。」
「そんな事よりメールで助け求めた方が良くないですか?」
「ていうかどうやってメールやれっつーんだよ。助け待った方がいいんじゃね?
俺等が行方不明になってる事に疑問持つ奴等が出てくる事を願って生き延びる、と。
まあ希望的観測、他力本願も良いとこだけどね。」
高橋はため息をつく。
「そうですよねぇ…俺等が行方不明な事にいい加減、気がつく人も居ますよね。」
和田もそんな希望的観測をつぶやくが、ふいに遠くに見えた人影に足を止める。
灯台までの道と、集落からの道がぶつかりあう三路地から見える橋を渡りきった人影…
それは黒く映る二つの影から、何者かが二人、こちらに向かってきているのが分かる。
(誰だ…ここからじゃ良く分からないけど二人居る…)
敵か味方か何者か。宮本も高橋も数歩先に歩いているせいか気がついていない様子だ。
(ど、どうしよう…)
本当なら宮本と高橋に誰か近づいていると報告すればいいのだが、
それを躊躇する理由があった。
(誰か居る、と言ったら高橋さんも宮本さんも、近寄るに決まってる…)
あの二つの人影が善人ならばいいが、悪人だったら…
安藤や村松を殺した何者か、自分を殺そうとした城島のような者だったら
迂闊に近づいては危ない。
(二人共、俺を信じてくれたように信じきって近寄っちゃうかもしれない…)
そして危険な目に…下手すれば最悪の事態になるかもしれない。
(だって皆で生きて帰るなんて言ってるんだから…)
高橋は自分に殺されそうになったが、それでも信じようとする人であるし、
宮本は殺されそうになった経験が無いせいもあるが、度胸がある人だ。
(どうすればいいんだ…)
誰かが近づいてると報告し、人影二人が善人である事に賭けるか、
見てみぬフリをし、起こりえるかもしれない危険を回避すべきか。
高橋と宮本に言うべきか、言わないべきか。
和田は再び橋のふもとに見える人影に視線を送る。
時刻はもうすぐ午前0時になろうとしていた。
【宮本慎也(6) 和田毅(21) 高橋由伸(24) B-2】
新作キタコレ!職人様乙です!
B−2は・・・・・あのコンビかw
久々にあのコンビ!?
和田はミスター独り相撲再び、となるか?
130 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/06(金) 11:18:33 ID:JHJb4U/mO
保守
131 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/08(日) 00:08:50 ID:95y8JNJZO
☆
保守
「厄介者」
深夜の森の中、一層草や木が生い茂る場所に谷は身を潜めていた。
撃たれた右足を抱えるように座り込み、右足から流れる血が完全に止まるのをじっと待つつもりでいた。
この辺りなら明りを消せば誰かに見つかる事はないだろう―――音さえ出さなければ。
幸い、痛みは耐えられないものではない。右足は痛みこそすれど動かせない程ではない。
致命傷を避けたのは先程の岩隈同様、自身のアスリートとしての能力か。
もしくはその岩隈の射撃能力の低さか精神状態のお陰だろうか?
深く考えて結論を出すまでには至らなかった。脳がそれ以上考える事を拒否したのだ。
(……眠い…。)
岩隈と出会い、殺そうとして返り討ちにあい、つい数十分前にも何物かに狙われて。
思えばゲーム開始が告げられた時から今まで心休まる時など一時も無かったのだ。
血の気が引くと同時にこれまでの疲れが睡魔となって押し寄せてきた。
森の暗闇と静寂が心地良い。今までどれだけ音や視界に気を使い続けていたのかが分かる。
(…寝るか…?)
このまま眠気に身を任せて寝たとしても、この程度の寒さなら凍死する心配は無いだろう。
だが他の理由で死ぬかもしれない。生きていたとしても風邪を引いて今より不利な状況に陥るかもしれない。
しかし、起きていても今の腕は少し離れた所にある金属バットを引き寄せる事すら拒んでいる。
数歩歩いて手を伸ばせば届く位置にあるのに。体がもう動きたくないと悲鳴を上げる。
冬の冷たさに晒された重い武器を振り翳せるだけの力と気力が、今の谷には無かった。
(…こんな状態じゃ起きてても寝てても同じだな…。)
こうしている間にも体が眠れと脳に囁き続けている。寝るなら早い方がいい。朝はすぐにやってくる。
だが寝る前に12時の放送だけは聞いておかねばならない。禁止エリアを聞き逃す訳にはいかない。
(今、何時だろ…?)
谷はポケットから腕時計を取り出すと、木から漏れる月明かりに照らした。
はっきりとは見えないが長針は12時を指している。それを確認すると再び腕時計をポケットに戻した。
心配しなくても、深い眠りに入る前にあの耳障りな放送は聞こえてきそうだ。
今はもう目を開けている事すら辛い。谷が肩の力を抜いて、ゆっくりと目を閉じようとした――その時。
(……?)
何かが聞こえる。人の声だと確信するのに多少の時間を要した。
しかも今の疲れきった思考力では、その人間が何かを叫んでいるという事しか理解できなかった。
(誰かが誰かに殺されかけたのか…?)
それなら叫ばずに物陰にでも身を潜めればいいのに。自分のように。
そうしないのは馬鹿か、岩隈みたいな精神破綻者か。
(どっちにしろ関わりたく無いな…。)
だが。そう考える谷の望みとは裏腹に、声は徐々に大きさを増していく。
「誰かー!!」
はっきりと聞こえた人の声は、何処から放たれているものか完全には判断できない。
だが声が大きくなっているという事は、確実に自分がいる場所に近づいてきている事。
(何で…こっちに来るんだ……!?)
それを考えている間にも相手は何処かからか凄い勢いで草を踏みつけて走ってくる。
相手の声に敵意は感じられない。純粋に誰かに助けを求めている声。
今、自分に戦う力は無い。しかし厄介者を迎え入れるつもりも全く無い。
(…とにかく……バット!)
谷は咄嗟に金属バットの方に手を伸ばすが、人はその金属バットの向こうから姿を現した。
しまった―――そう思った瞬間、谷は己の耳を疑った。
「おあっ!?」
相手の驚愕の声と激しく転倒する音が耳を衝き、谷は思わずその光景を凝視した。
相手の足元には谷が手にしようとした金属バットが空しく転がっている。
(…こんな状況でもこんなヘマをやらかせる人間がいるのか…。)
月明かりに照らされる間抜けな人間の背中の番号は25―――藤本敦士。
それを確認すると谷はゆっくりと立ち上がり、重い足取りで金属バットを拾い上げる。
藤本は打ち所が悪かったのか、倒れこんだまま全く動く気配が無い。
(…今のうちに、殺しておくか…?)
藤本に敵意は無いかも知れない。だが力を合わせた所で足手纏いにしかなりそうにない。
だが放っておいても後々厄介な存在になりそうな気がする。つまり―――邪魔だ。
邪魔な奴は排除できるうちに排除しておけば後々楽だろう。谷はそう判断してバットを振り翳す。
簡単だ。これを藤本の頭に向かって何度か振り下ろすだけでいい。
目が、耳が、右足が、頭が。全てが疲れきった今の自分でもできる。何度か、振り下ろすだけで。
(そうするだけで、後はバットと重力が勝手にこいつを殺して…)
「もう嫌や…」
「は?」
突然放たれた藤本の言葉に谷が生返事を返すと、藤本は突如凄い勢いで起き上がり、再び叫びだした。
「痛い!痛い!もう嫌や!もうこんなん嫌や!家に帰……!!」
藤本の驚くほど幼稚な悲鳴は、午前零時を告げるあの曲に空しく掻き消された。
【谷佳知(10) 藤本敦士(25) F−2】
2氏お疲れ様です。
途中まで読んでてっきり松坂が走ってきたのかと思った自分orz
しかし何が起こったのか・・・一難去ってまた一難的な藤本頑張れ藤本
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
って自分も藤本とは思ってなかった…w
藤本も災難だなw
藤本、災難なのに何故か笑える。
番長は?金村は?…彼らも気になる。
スポフェスの金子のキリコにテラワロスw
[混迷]
『お前ら起きてるか?放送の時間やぞ。』
しばらく夜風に当たろうとぼんやりしている間に時間は早くも過ぎたらしい。
学校を背もたれに座っていた小笠原は空を見上げ、それから視線を手元の名簿に戻した。
『それじゃあ死亡者から行くぞ。15番黒田博樹、27番木村拓也、11番清水直行!
3人か、まぁまぁなペースで進んどるみたいやな。』
3人、か。小笠原はひとりごちる。
その内の2人、黒田と木村は自分が看取ったのだ。いや、看取ったと言うかは目の前で死んだと言うべきだろう。
黒田は自分が持っていた毒を飲んで、木村は異常なまでの出血量が原因で、どちらも小笠原の目の前で死の瞬間を迎えた。
そしてどちらとも、満足そうに笑って死んでいったのだ。
名簿をどことなく指でなぞり、小笠原は奥歯を噛み締める。
『じゃあ次。禁止エリア行くぞ。今回も2回言うからしっかり聞いとけや。』
眠いのか不機嫌そうな声で早足で放送が進む。
しかし小笠原は名簿を見つめたまま、地図と入れ替えようともペンを持とうともしなかった。
機嫌の悪い放送をただ漠然と右耳から左耳へと通過させているだけだった。
『1時間後にBの6、2時間後にCの1、3時間後にIの3、4時間後にCの7、5時間後にAの2、次の朝6時の放送ぴったりにDの2が禁止区域になるからな。
ええか?もう1回しか言わんぞ。1時間後にBの6・・・』
小笠原は目を伏せると、鞄の中から木箱を取り出した。
最初に比べると明らかに軽くなったそれの蓋を開く。4つあった瓶が3本しかない。
その3本の内、1本の薬瓶を手に取る。
さすがの満月の月光でも印刷された文字には及ばないのか、何が書いてあるかは読めない。
『さっきも言うたけど、次の放送は朝の6時や。睡眠取るのも戦いの1つやからな、ちゃんととっとけよ。』
語尾を短く切断するように鈍いノイズが入り、放送が終わった。
ノイズが入ったと同時に小笠原は薬瓶を木箱の中に戻す。そして蓋をして、元の通り鞄の中に収めた。
それから改めて座り直すと、小笠原は両膝を立て、その上に腕を置く。
そして、1つ意識して息を吐いた。
ふと見上げた空には、雲の隙間からちょうど満ちた月の姿がくっきりと映っている。
(俺は・・・・生きるべきなのか?それとも、死ぬべきなのか?)
目に突き刺さるような月光に目を細めながら、考える。
中村、安藤、村松、黒田、木村、清水。もう6人も死んだ。
最後に放送で名前を呼ばれた清水は、自分に『死ぬべき人間ではない』と言い、懸命に生きようとしていた。
なのに、死んだ。死を望んでいる己よりも早く、死んだ。
何故、生を望む清水には死が訪れたのか。
それだけではない、目と鼻の先にある野球場のマウンドで笑みを残し倒れている黒田。
『プロの投手』として、マウンドの上で死ぬことを望み、マウンドの上で死んだ男。
自分の誇りのために、自分のプライドのために、死を決意した。
何故、そんなにも誇りとプライドのために死ぬことができたのか。
そして、自分の両腕の中で静かに笑い、息を引き取った木村。
死の間際でも野球が好きだと言い、笑った。今でも指には木村にボールを握らせた時の感触がありありと残っている。
一度だけ起こした過ちを懺悔し、子供の頃に戻ったような純粋な笑顔を遺して、死んだ。
何故、死の間際だというのに笑えたのだろうか。
蟻地獄のように、もがけばもがくほど小笠原の心は暗闇に向かって速度を増す。
生きればいいのか、死ねばいいのか。選択したその先には一体、何があるというのか。
もがけばもがくほど、考えれば考えるほど、分からなくなっていく。
「何で・・・・」
小笠原は震えていた。寒さか、怒りか、悲しみかも分からない。
訳の分からない塊が体の中心から液体のように少しずつ、しかし段々と体の隅々まで根を張り巡らせているかのごとく、じんわりと吐き気がこみ上げてくる。
頭も痛くなってきた。小笠原は壁に手をつきながら、何とか立ち上がろうとする。
が、吐き気と頭痛はますます酷くなるばかりで再び座り込む。その拍子に学校の外壁に使われていた木の皮を爪で剥ぎ取ってしまった。
右中指の爪の痛みに気付き、手を見る。そこには木村を抱きかかえた時についた血がまだかすかに残っていた。
それを見た時、小笠原の頭の中が突如くらりと揺らぐ。
くらりくらりと振り子のように揺らぎは強さを増し、めまいがする。
小笠原は口元を右手で押さえると熱のこもった息を吐いた。そして、その息と同じように吐き出すかのごとく、呟く。
「・・・誰か、俺を殺してくれ。」
誰か、俺を殺してくれ。
もう限界だ、と続けた言葉は空気に振動せず、地面に落ちて消える。
その言葉と共にどさりと地面に手をつき、静かに横たわる。
疲労と迷いが更なる仲間を呼び続け、小笠原は心身のバランスを完全に崩してしまっていた。
もう限界だ。もう終わりにしてくれ。そう叫び続ける心は体と連携を取れず、一人でに歩き出す。
もう、何も考えたくない。考えれば考えるほど、ますます分からなくなって―――。
左腕を頭の下に通し、顔のかたわらに右腕を置く。
ふと、左目の端に映った満月はなおも丸かった。
しかし煌々と輝き続けるそれはバランスの崩れきった小笠原にとって、最早疲弊する対象でしかなかった。
見ているだけで目が光を浴びすぎると文句を言ってくる、ただそれだけの存在になっていた。
何もかもに疲れ果てた小笠原は月を見ることさえ辛く、目を閉じる。そして右手を握り締めると、ゆっくり息を吐いた。
考えたくない、誰か、誰か早く俺を―――。
「・・・・俺を、殺してくれ。」
遠い場所で、何かが割れた音がした。
【小笠原道大(2) H−4】
147 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/15(日) 12:23:02 ID:3x872ecd0
ど、どうなる??
落ちそうなのであげ。
ガッツ考えすぎだよガッツ…
ガッツしっかりしてくれーっ
そして誰?誰がきたの!?何が割れたの!?(゜Д゜;≡;゜д゜)
保守的
151 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 20:45:45 ID:Ll6vJ73l0
あげ
152 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/21(土) 14:26:13 ID:4o7GRhaJ0
ガッツしっかりしてくれよガッツ……
ちょっとあげとく
死神期待ホシュ
154 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/24(火) 01:37:09 ID:UuQOR50tO
自分は2323エンジェルに期待あげ。
ついでに保守あげ。
死神読みたいね〜。
ちょっと岩瀬の人復帰期待してたり…。
俺は東京学館待ち!
ここらで、いっぷく和ませてくれwwwwwww
雅はどうしたかなぁ…
158 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 04:55:52 ID:MaXelMobO
hosyu
160 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 02:49:52 ID:QZcd6I8OO
私も東京学館コンビに期待しつつage
捕手
162 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/01/30(月) 14:04:52 ID:/OQNybYwO
あげ
hosyu
164 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/02(木) 22:22:33 ID:XnxNpQ0/O
かつ上げ
そういやスンスケとかの本州シドニー組はどこまでいけたんだろう・・・・。
お久しぶりです。
久々に保管庫の方、更新しました。
132.混迷 まで保管済みです。
あと、見守るスレに投下してあった画像職人さんの画像も保管しました。
本当に御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした…。
職人様方も体調崩さぬように気を付けてください。
>>167 保管庫様乙です。
そろそろ東京学館コンビが気になるwww
>>167 保管庫さんお久しぶりです!
心配してましたよ〜無事更新なによりですw
自分は復讐鬼コバマサ待ちw
保守
「覚醒」
何かが割れた音…それは頭の中のほんの僅かに残る自我というものが
崩壊する音であり…小笠原は心地よさそうにため息をつく。
(もう…俺は…)
この蟻地獄から解放される。限界を越えた今、精神の終焉という形で、
このゲームを終える事ができる。
(これで、もう…)
誰かに殺されたいと願う必要もなく、もがく必要もない。
眠りに入る瞬間の、あの心地良い感覚に身を任せるように小さく笑う。
「……」
だが、虚無感に浸る間もなく、校門の方からばたばたと煩い足音が聞こえ、
小笠原は現実に引き戻されるように目を開いた。
「…っと、小笠原、さん…」
息を切らせてやって来たのは松坂であった。
そんな姿に小笠原は絶望に近いため息を漏らした。
(やっと…終わる事ができると思ったのに…)
あと少しで消える筈であった自我は、松坂という第三者の出現のせいで
こうして辛うじて残ってしまった。
「…あの…大丈夫ですか?」
どう見ても様子がおかしい小笠原に、松坂は声をかける。
「…お前のせいで終わる事ができなくなった。」
「は?」
何が何だかと首を傾げる松坂に、小笠原は小さく笑った。
「逆恨みというヤツだが…お詫びとして、俺を殺してくれ。」
「なっ…」
唐突な言葉に、松坂は絶句するが、やがて癇癪起こすように壁を叩き付ける。
「何だよ!みんなして!殺しただの、殺してくれだの!」
「ま、松坂…?」
突然キレ出す松坂に、今度は小笠原がポカンとした。
「俺は…俺は殺してない…」
「…何があった?」
つい先程まで、なにもかもが崩れ去る瞬間に立っていたというのに、
己の精神は思ったより図太いらしく、松坂の様子が気になった小笠原は、
ひっそりとそう尋ねた。
「…長くなるけどいいですか?俺と上原さんは診療所に行った。
そこには小林さんとナオさんが居た。睡眠をとりたい事もあって、
まず俺は別室、小林さんは診察台で眠った…」
「それで?」
「何かすげぇ物音が聞こえて、目が覚めた俺は、音がした部屋に飛び込んだ。
そしたらそこには…血を流して死んでいるナオさんが居て…」
「……」
小笠原は無言のまま身を乗り出す。
「ナオと俺を殺そうとしたって、雅さんにいきなり発砲されて、
何が何だか分からないまま逃げた…」
そこで一息つくと、憔悴しきった顔を上げ、松坂は小笠原を覗き込む。
「…この場合、誰がナオさんを殺した事になるんですかね?」
「…小林じゃない、お前でもないというなら…後は一人だろう。」
そんな小笠原の言葉に、松坂は絶望的な表情に変わる。
「やっぱり…そうなるんですよね。上原さんの姿は無かった…
それは診察室で寝ていた、とか、俺が置いていっただけ、とかじゃないですよね。」
「…残念ながらな。それよりも…小林は清水と自分を殺そうとしたと
お前に言ったんだろう?つまり…」
あまり考えたくない事だが、と小笠原は一息置いた。
「上原が清水を殺し、たぶんお前がやったと言ったのかは知らんが、
お前のせいにして逃げた。それを信じた小林は、お前に発砲したとなる。」
「やっぱり…そうなんですね。俺は…騙されていたというわけですか。」
唇を噛みしめ、松坂はつぶやく。
最初上原と出会った時の、嫌な予感というのは当たっていたのだ。
「上原さんも、こんなゲーム乗る気無いって言ってたから…
それを信じたかったから…でも…それも嘘だったんですかねぇ…」
「……」
いくら強心臓の怪物と言われてる松坂でも、まだ若い。
上原の裏切りは堪えたらしく、すっかり意気消沈して俯いた。
「小笠原さんは俺の話、信じてくれますか?俺はナオさんを殺してない、と…」
「…正直、俺からすればもう…誰が死んだ、殺したはもう沢山だ。
信じるも信じないも…それさえももう沢山だ。」
「……」
突き放す言葉に、松坂はさらに落ち込むように肩を落とす。
「…けど、俺がどうとかよりもだ。」
バランスを崩しきった筈の己の精神であったが、こうして裏切りに傷つく
若き投手を見ると、どうにも放っておけないのもまた自分らしい。
「小林はお前がやったと思ってるんだろう?なら、そっちの方が問題だろう。」
「俺、やってません!だから雅さんの誤解を解きたいんです!」
「…清水を失った小林が、冷静にお前の話を聞けるとは思えない。」
「でも…俺、雅さんと戦いたくない。」
小林だけではない。誰とも殺し合いなどしたくない。松坂は必死に叫ぶ。
「けど向こうは清水の仇を討つ事を望んでいる。死にたくないなら…応じるしかない。」
「死にたくないし、殺し合いもしたくない!」
それが通れば苦労はしない。この期に及んでもそんなことを言う松坂が
少し羨ましいと小笠原は笑う。
「…ある選手はな、自分の誇りのために自分の意志で死んだ。
殺人者にはなりたくない、醜い生き様を晒すくらいなら…格好良く死ぬと。」
「……」
「俺も同じ意志だった。でもこうして生きている。自分で自分を持て余し…
そのまま精神が奈落の底へ落ちそうな時…お前が現れた。」
小笠原は立ち上がり、砂を払う。
「これも何かの運命かもしれないな。お前が小林と戦いたくないし、
死にたくもないというなら…協力しよう。」
この命をかけよう。どうせ終わらせるつもりであったこの命が未だに存在し、
消えかかった精神がとどまったという事は、どうせなら誰かのために使えと、
散るなら誰かの為に散れということかもしれない。
もう精神が割れる事は無い。重い霧が晴れたような、晴れやかな表情で
小笠原は松坂に振り返る。
「じゃあ、俺を信じてくれるんですね!俺と一緒に…来てくれるんですね!」
「…信じよう。」
嬉しそうに身を乗り出す松坂に、一緒に行く事はできないとは言えず、
ただ信じるという事しか言えなかった。
パンッ…
空気を破るかのように響く銃声。壁にめり込む弾丸に、二人は目を見開いた。
「ま、雅さんっ…!」
暗闇でよく見えないが、表情が分からなくても、言い様の無い憎悪を漂わせ、
月光を背に立つ小林の姿に、松坂は悲鳴をあげる。
「……」
暗い影で読み取れない表情のまま、小林はさらに引き金を引く。
パンッ…
立て続けに放たれた一発は、松坂の二の腕を擦った。
「待ってください!俺はナオさんを殺してなんかっ…」
「松坂!校舎に入るぞ!校舎内なら障害物も沢山あるし、あいつの攻撃を
かわしながら、時間稼いで説得するしかない!」
「は、はいっ!」
転がり込むように校舎内に逃げる松坂と小笠原をじっと眺め、暫し立ち尽くす。
「…ナオ。」
あらゆる表情が削げ落ちたような、固く冷たい面にただ一つ浮かぶのは、
大事な仲間と誇りを失った事による憎悪…
小林はゆっくりと校舎の中へと姿を消した。
【小笠原道大(2)・松坂大輔(18)・小林雅英(30) H−4】
>>174 名前欄間違えましたorz
458◇EKBnf1A7Os氏代理投下です。
気を取り直して、職人様乙です。
学校に来たのは大輔でよかった・・・ガッツ頑張れガッツ。
っていうか雅やん怖eeeeeeeeee!!
職人さんも代理投下の方も乙です。
ガッツ立ち直ったっぽくて良かった(つД`)
でも復讐鬼なコバマサオソロシスorz
職人様&代理投下の方、本当に乙です。
会えたのがガッツで良かったな松坂
そしてコバマサキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
…なんか、ガッツがこうで雅がこうだと…23しく嫌な予感…
ヒィィィ…コバマサ怖っ!
松坂はどうなるんだ?ガッツはどうする気なんだ?
おぉ、新作来てた!職人様&代理投下の方乙です!
コバマサ怖いよコバマサ…
松坂&ガッツガンガレェ〜
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
コバマサがマーダーに目覚めた…((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
ガッツは太輔に振り回されそうだな。
職人さん&代理投下乙です!!
181 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/10(金) 19:51:20 ID:OfxP7v+20
トリノオリンピック開幕もうすぐ。記念あげ。
テレ朝実況でも初芝キターの嵐だw
183 :
182:2006/02/11(土) 01:15:17 ID:xRJhM1u70
すいません、誤爆しました
保守
「風のように」
耳に障る放送が終わると同時に、谷は地図を折り畳んで鞄にしまう。もう眠気は頂点に達していた。
だが後ろでは藤本が何事かを呟きながら禁止エリアを書き込んでいる。眠る前に相手にすべきか、否か。
答えは決まりきっていた。谷は辺りに注意を払いつつ藤本に出来る限り小さい声で声をかける。
「………おい。」
「あ、谷さん!?」
藤本が振り向くと、懐中電灯の眩しい光が谷の顔を襲う。
闇に慣れた目に突如降り注ぐ強い光を思わず片手で遮り、その腕の下から伺うように藤本の顔を見据える。
まだ落ち着かない様子の藤本は、谷を確認するやいなや鞄を持って猿のように素早く近づいてきた。
「あのですね!!!俺、ずっと金子さんと森の中にいたんですけど、三浦さんが来て、
相川さん探してたけどひとまず寝るって言い出してしょうがないから俺と金子さんが見張りしてて、
三浦さんが起きたら次どっち寝るかジャンケンして決めて俺がチョキ出して勝って、
そしたら三浦さん起きたから、俺寝る前に用足しとこうと思って念の為鞄持って立ち上がって、
それで、茂みの中に入ったら…何かきたんですよ!!」
マシンガンのように早口でまくし返してきた藤本に呆気に取られた谷は疲れた脳で必死に思案する。
ただでさえ出される単語を理解するのに時間がかかるというのに、この速さでは何一つ理解できない。
「…早すぎて何言ってるか全然分かんねーよ…。」
不機嫌を隠す事無く乱暴な返答をすると、藤本はビク、と肩を竦める。
「え!?いや、だから、何か、後ろから、バチッと…!俺、ビックリして慌てて逃げ出して…」
普段見ていた谷とあまりにも違う表情に戸惑っているのだろうか?
自分の反応を伺いつつ慎重に言葉を選ぶその仕草も煩わしく感じた谷は精一杯の作り笑いを浮かべる。
「…すまん、俺が悪かった。とにかくもう一度ゆっくり話してくれないか?」
「ですから…俺、森の中で人探してたら金子さんの作った落とし穴にはまって…
でも、落とし穴作るって悪趣味だと思いませんか!?あ、でも、もしかしたら実は武器が
シャベルってのは嘘で本当はもっと別の武器だったんじゃ…?うわ、鞄持ってきといて良かったー!」
(…駄目だ。何話しても理解できそうにない。余計混乱しそうだ。)
状況を把握するのを諦めた谷は強い語調で藤本の言葉を遮り、ゆっくりと木に寄りかかった。
「もういい、もう何も話さなくていい。俺もう眠いんだよ。寝たいんだよ。放っといてくれ。」
率直にこの場から黙って去れと言えないのが辛い。こんな時まで気を使う自分の性格に嫌気が差す。
さっさとこの場所から離れてしまえばいいのだろうが、今の自分の足は歩く事を強く拒否している。
「こんな所で寝てたら風邪引きますよ!」
「足、怪我してて動けないんだよ。」
「じゃあ危ないやないですか!!」
(…お前が更に危なくしてるんだよ…早く気づいてくれよ。)
叫ぶ訳にはいかなかった。叫べば自分の存在までバレてしまうし、何より怒鳴る気力が無かった。
溜息すら出ないままがっくりと肩を落とし、谷はもう一度藤本を見据えた。
「……要するに、誰かがお前を襲ったんだろ?」
「やっぱりそうですかね…。」
「やっぱりって…顔くらい見たんだろ?」
谷の言葉に藤本は激しく首を横に振る。
「いやもう怖くてすぐ逃げ出したんで…あー、何か、人間不信になりそうですわ…。」
はぁ、と深い溜息をつき藤本は静かにその場にへたり込む。
ここに居つかれてはたまらない。谷は冷ややかな表情を隠す事無く藤本を睨む。
「…お前、これからどうするつもりなんだ?…頼むから一緒に行動したいとか言わないでくれよ?」
先に予防線だけは張っておく。案の定藤本は谷と行動したかったようで目を丸くさせる。
…こんな奴と一緒に居たら危ない。谷の意見は先程より微妙に変わっていた。
藤本は谷のそんな意図を全く見抜けず、出そうと思っていた言葉を見事に封じられ考え込む。
どうせ逃げるとか、隠れるとか。そういった情けない事を考えているのだろう。谷はそう予測した。が、
「とりあえず、集落の方に行こうと…」
「………集落?何で?」
明確な目的地がある事に違和感を感じて呟くと、藤本は言葉を詰まらせる。
「…あ、いや、ほら、あそこなら家とかあって隠れやすいでしょ?」
結局それか。谷は内心落胆する。こいつも逃げる事しか頭に無いのかと。
岩隈のように夢に逃げない点ではまだ現実の中で逃げる藤本の方がまだマシだが。
「…隠れても無駄だろ。このゲームは一人になるまで続くんだぞ?」
「こんなゲーム、そのうち絶対に中断されるはずですよ。」
「誰が中断させられる?」
「え?それは…警察とか…。」
「向こうだって隠蔽工作位してるだろうさ。そう簡単に警察は来ないだろ。
普通に考えたら、助けが来る前に皆が死ぬ方が早いんじゃないか?」
「…じゃあ、どうすればいいんですか!俺、死にたくないんですよ!!」
死にたくない。数時間前にも聞いたはずのその言葉が無理矢理その時の記憶を呼び起こす。
―――死にたくない…死にたくない…死にたくない!―――
―――そっちが…そっちが死んでくださいっ!お願いしますっ!!―――
藤本の死に怯える姿が、先程の岩隈と重なる。谷は呆然とそんな藤本を見据えた。
なあ、お前ら端から見たらどれだけ情けなく見えるか分かってるか?誰だって死にたくないんだよ。
お前らは逃げるだけか?逃げる事しか出来ないのか?泣き叫ぶだけで、足掻く事すらしないのか?
俺は違う。俺は戦う。例え相手が誰だったとしても……自分が納得いかない理由で死んでたまるか!
「………俺が、止める。」
小さく呟いた言葉が静かに森の空気に溶け込む。
「…え?」
「俺が、このゲームを止めてやる。だからこれ以上俺の邪魔をしないでくれ。」
「誰も邪魔したりしませんって!」
「してるよ。大声出して走り回りやがって…せっかくいい寝場所見つけたのにさあ…。」
この足が満足に動けば、とっくにバットで殴り殺してる所だがそうもいかない。
邪魔者はとっとと去れと言わんばかりに睨みつけると、藤本の口からは意外な言葉が飛び出した。
「…じ、じゃあ役に立って見せますよ!それで許してください!」
「……どうやって?」
怪訝そうに睨む谷に身を竦ませながらも、藤本はゆっくりと鞄を担いで立ち上がる。
「た、谷さんはここで寝るつもりやったんですよね?それを俺が邪魔したんですよね?
じゃあ俺がまた叫びながら走れば、周りの注意はそっちの方にひきつけられるでしょ?」
「……できるのか?」
「何とかなります。いえ、何とかしてみせます。」
藤本の声は自信を帯びていた。その自信は何処から出てくるのか理解し難かったが、谷は小さく頷いた。
「…わかった。じゃあそれで許してやるよ。」
辺りには人の気配がない。今藤本に囮になってもらえれば自分が見つかる可能性は低い。
思いがけない幸運がようやく谷に安堵の溜息をもたらす。
藤本は辺りを見回して地面に落ちていた何かを見つけ拾い上げると、再び谷の方を向く。
「あの…谷さんは、本当にこのゲームを止めるつもりなんですよね?」
「ああ。」
「何か方法とか思いついてんですか?あの船に乗り込む方法とか。」
藤本に聞かれて初めて谷は自分がまだ具体的な破壊手段を手にしていない事に気づく。
ゲームを潰す。邪魔する奴は殺すと決めてるのに、肝心なゲームの潰し方をまだ見つけていない。
「…全然。起きたら考える…呆れたか?」
嘘でも思いついたと言えば良かったかもしれないが、追求されるのもしんどいと思った谷は素直に答える。
藤本は小さく首を横に振った。少しだけ微笑っているように見えたのは眠気による錯覚かも知れない。
「…じゃあ、また会いましょう!」
…また?谷は眉を潜めるが、藤本はそれよりも先に走り出していた。
再度、大きな叫び声が森に響く。先程とは逆にその声は谷からどんどん離れていく。
谷は力の無い笑みを浮かべた。その笑みは藤本が走り去って行った方に向けられている。
深夜の森の中で叫びまわる。それはどれほど危険で勇気の要る行為だろう?
誰がゲームに乗り、誰が追い詰められているのか分からないこの状況で、何故そんな事ができるのだろう?
自分が絶対にゲームを止められる保障は無いのに。具体的な案も無い上に、怪我までしているのに。
それでも藤本は危険を省みず飛び出していった。そして、その行為が自分を助ける事になるのは確かだ。
彼の言った通り彼ともう一度会う事が出来た時は、温かい言葉の一つでもかけてやるべきだろうか?
(…そういえばあいつの武器…何だったんだ?)
三浦や金子の武器もロクに聞いていない。彼らがどの辺りにいて何をしていたのかも。
藤本が自分の所に来れた理由も、自信有り気に囮役を買って出られた理由も知らない。
(あーあ…肝心な所聞き逃したな…。藤本ももっと手短に話せって…。)
次に会った時は温かい言葉をかけるより先に、分かりやすい話し方を伝授するべきかもしれない。
だが、それよりすべき事は多々ある。それを果たすためにも今は一刻も早く眠りにつかなければ。
徐々に藤本の叫び声が遠くなっていく中、谷は静かな眠りに入っていった。
【谷佳知(10) 藤本敦士(25) F−2】
職人様お疲れ様です。
谷やっぱお前は谷だよ・・・・(つ∀`)
つか金子はどうしたぁぁぁぁぁぁぁ!!??
職人さん乙です
ふじもんいくらなんでも迂闊すぎるよ(ノ∀`)
なんか藤本って、このメンツの中に居るのが本当に不思議だよなぁと改めて思った…(ノ∀`)フジモンがんがれ
職人様乙です。
職人様&代理投下の方乙です!
フジモ〜ン、生`よ〜
バレンタイン保守
[計画成功]
階段を上がりきり、完全に暗闇に包まれたフロアに着く。
本来は白で統一され、異国情緒がそこらかしこに溢れていたはずだが、懐中電灯の光だけではどうも見えないらしい。
辺りを探るように見渡しながら歩く。
しかし電気が完全に落ちているということは誰も居ない証拠であろう、少しだけ緊張感を解く。
紙袋を持ったまま、高木豊は中畑と大野を後ろに懐中電灯片手でフロアを進んでいた。
「気味が悪いな・・・。」
その時、誰かが呟く。気味が悪い、と。
よくよく考えてみれば当たり前だろう、と思い、首だけで後ろを振り返る。
高木の背後には、相変わらず厳しい表情の大野と眉をしかめた中畑が居た。
「気味が悪いって当たり前じゃないですか。人の居ないところ選んだんですから。」
まさか返事が返ってくるとは思わなかったのか、中畑が一瞬すくむ。
いや、もしかしたら自分が怒っているように聞こえたのかも知れないと高木は思った。
少し前の言葉を頭の中で再生すると、無駄に語尾を強調する地元の方言が少し出ていたように感じる。
別にそんなつもりなかったのに。高木は心の中で思う。
思っていると困ったように謝る中畑の声が聞こえた。
振り返る気力も出ず、声に背を向けたまま、怒っていないことを告げると再び前を向いた。
その間中、ずっと大野は黙っていた。高木にとってはそれの方がむしろ気味が悪い。
何せ相手は現役中でさえも本気で怒った姿を見たことがない人間、堪忍袋の緒がすぐに切れる自分とは全く話が違う。
今だって表面に出ないように必死に堪えているのだろうか。
だとすればこの船では一番まともな人間だろう。人の死に悲しみ、非道な行動に怒る点においては。
気付かれないように大野の表情を伺い見る。
大野は奥歯を噛み締め、じっと明後日の方向を見ていた。
右手をタキシードのポケットに入れ、手の感覚で鍵を取り出す。
そろそろ目指していた扉が見えてきた。重厚な扉の向こうにあるのは、ある意味この船らしい部屋であろうか。
古めかしいデザインの鍵は、小さい頃に見たグランドピアノのそれによく似ている気がした。
鍵を目の高さにまであげると懐中電灯が作り出す、それこそ不気味な不気味な影が鍵を染める。
「さ、そろそろですよ。」
誰ともなく声をかけ、扉に駆け寄る。続いて2人が駆ける足音を聞きつつ、一番右端の扉に懐中電灯の先を当てた。
その扉には昼の日差しであれば美しく見えるであろうつる草の装飾が扉の周りを囲っている。
意外と質素な感じを受けたが、よくよく見てみればドアノブの辺りがやはりとも言うべきか、豪華絢爛であった。
磨きぬかれた金色のドアノブ、それには懐中電灯の光で見る限りでも過多と思えるほど花々が咲き誇っていた。
美術的に見て美しいのかも知れないが、あいにくそういった知識をほとんど持ちあわせていない高木にとってはドアノブに装飾を施す辺りからして分からない。
2人が自分に追いついたのを確認し、高木は思考を打ち切った。
「・・・・いきなり走るなよー。」
「ああ、すいません。」
さっきの雰囲気から脱したいのか冗談めかして口を開いた中畑に素っ気無く返事を返し、手に持った鍵をドアノブの下に差し込む。
鍵の先で鍵穴を見つけ、深く差し込む。
差し込んだまま、左に回すと錠前が上がる音がした。
鍵を抜き、重い扉を開けると目の前が開ける。懐中電灯をそこらかしこに当てると様々な色が場所によって浮かんできた。
焦茶、黒、銀、緑、ある意味色鮮やかな部屋に足を踏み入れる。
時計を見ると11時45分になろうかという時間だ。元々であれば、この部屋は今が一番盛り上がっているはずである。
この部屋―――すなわち、カジノ場は人が居なくては盛り上がらない場所である。
そう考えれば盛り上がるどころか沈黙を続けている理由も、至極分かりやすい。
大野か中畑が後ろ手に扉を閉めるドンと鈍い音をきっかけに、近くにあった円状のテーブルに腰掛けた。
自分の後に続いて2人がそれぞれ右と左に分かれて革張りの椅子に座る。
手に持ったままの紙袋と懐中電灯をテーブルの上に置くと、高木はまた立ち上がる。
そして一番近くのゲームテーブルの、普段であればディーラーがトランプを入れているであろう引き出しを開けた。
引き出しの中に入っていた2つの物をしばし見つめた後に、取り出す。
光に近付くにつれ、その2つの輪郭がくっきりと鮮明に映し出されていく。
やがて輪郭がきちんとしたフォルムを持ったとき、中畑と大野が息を呑むのが分かった。
当たり前だろう。再び高木は心の中で呟く。
「はい、お2人ともどうぞ。」
「・・・・本当に、持ってきたのか?」
「えぇ。流石に武器が入ってそうな倉庫には見張りが居ましたから、行けないと思ってたんで。」
テーブルの上にそれを置く。
名前は忘れたがかなり有名だと思われる銃が2つ、テーブルの上に載った。
「見張りがって・・・・お前、ならどうしたんだよ。」
目を大きく見開き、コミカルとも思えるような目つきで銃を見る中畑。
実際は真面目に見ているのだろうが、高木にはどうもそう思えなかった。
印象というかイメージが固まって、今そこにある事実をはっきり見ることがよく出来ない。自分の短所らしい短所だ。
「ああ・・・拝借してきました。」
「拝借って・・・。」
「一応僕盗塁王でしたから、朝飯前です。」
銃に呆然としている中畑、銃を手に取り眉間に皺を寄せたままの大野を横目に、高木は紙袋の中に手を入れた。
紙袋の中身は山ほどある菓子と、ミネラルウォーターの入ったペットボトル3本。
とりあえずあるだけ取り出す。食べかけたするめも取り出す。
途端にテーブルに溢れかえる菓子に、ようやく中畑と大野が気付き、銃を持ち上げた。
「何だその菓子は」
驚いた中畑の声が右の耳に入り、謎の紙袋のいきさつについて簡単に話した。
とはいっても『メインシアターにあった』だけだが。
「誰のか分かんないですけど、非常事態ですから。お2人ともお腹減ってるでしょう?」
黙々と菓子とミネラルウォーターを取り出し、テーブルの上に並べる。
「食べましょうよ、『腹が減っては戦は出来ぬ』でしょう?」
「しかしだなぁ・・・。」
否定の言葉を告げると、中畑はちらりと大野に意味あり気な目配せをした。
別に食べないのなら僕全部食べますよ、と文章を口に出そうとした瞬間、気難しい顔のまま大野が口を開く。
「・・・・頂きましょう、中畑さん。」
「えっ?」
「高木の言うことにも一理ありますから。」
意外と穏やかな声が聞こえ、また中畑が驚いた。
高木はその光景を見つつ、ミネラルウォーターのペットボトルを1本手に取った。
底を確認して、蓋を開ける。そして一気にあおると、温まっている体が少し冷えたような気がした。
しばらく、黙りきったまま3人は菓子の袋を開け、食べていた。
中畑は不服そうな顔であったが、それでも空腹だったのだろう。一番多く食べているのではないだろうか。
大野はバランスよく、といっても所詮菓子なのだからバランスが悪いが、それでも律儀に食べているようだ。
全員のペットボトルと菓子全体が半分ほどが空になったところで、高木はさてとと話を始めることにした。
「ちょっといいですか。今からなんですけどー・・・・。」
懐に手を入れ、捜してきた船内の地図を取り出す。地図というか、パンフレットだ。
中畑と大野がそれに注視する。テーブルの上で広げ、懐中電灯の光を当てる。
もうすぐ12時だ、急がないと。
「今、ここなんですよ。」
ペンを取り出し、ノックした先でこのカジノ場を指し示す。
で、と続け2つ上のフロアの最前列、左側の部屋をペンで囲む。黒い丸が部屋を覆う。
「それでこの部屋が多分あの人。それでこの2つがー、星野さんと宮内さん。」
同じフロアで部屋番号で言えば700と701、エレベーターを挟んで向かい合っている部屋をそれぞれ軽く丸で囲む。
「・・・・確実な情報か?」
「ええ、暇だったんでちょこちょこ隠れつつ見てたらその3部屋だけ見張りがついてたんで。」
尋ねてきた大野の顔を見る。
さっきの少しだけ柔らかくなった表情から一転して、マウンド上で見たことのある恐ろしいほど集中した顔になっていた。
心の底から思ってはいなかったが、怖いなぁと呟く高木。
また時計を見ると、12時まであと5分をさしている。
パンフレットをまじまじと見つめる2人を見て、高木は目を細めた。
「まぁ、でも行くとすれば明日の昼ですかね。」
「・・・明日!?」
「明日ですよ明日。今日はもう遅いし、昼の方が・・・」
大野は2時間か1時間前ほどのリプレイのように激しく立ち上がる。
つい1分ほど前とはうってかわって、大野は体中から殺伐とした気配を発していた。
メインシアターで会ったぶりだろうか、大野が自分に対してこんなにも敵意を向けてきたのは。
「その間の選手たちの命はどうなる・・・・。」
低く大野が高木に尋ねる。
ああもう時間ないのにと苛立ちを隠せないまま、高木は答えた。
「殺しあってないことを祈るしかないですね。時を待つしかないんですよ。」
「何でそうお前は・・・!」
悲痛とも怒りともとれる声で大野は高木の胸倉を掴もうとする。
いや『する』というよりは、『したようだった』と言うべきか。
何故なら、大野の指先は高木の胸の1歩手前でぐらりと落ちたのだから。
そしてその振動が体全体に伝わったかのように大野の体が揺れ、揺れて、テーブルの上に上半身が揺らめきながら落ちていく。
多少、大野が呻いたようだったが、高木には聞こえなかった。
それからしばらくして、再び静寂が戻ったカジノ場。
静かになった2人をしばし眺めた後、高木は手首につけた時計を見る。
12時ジャスト3分前、息をつきながら高木は他の2人が飲んだペットボトルを手元に引き寄せた。
その内の1本を手に持ち、上から下に反転させると底に貼ってあった小さなセロハンテープが現れる。
「・・・・最近は蓋開けないでもドーピング出来るそうですよ。」
誰も聞くはずのない独り言を口に出すと高木は立ち上がり、1つ背伸びをした。
首を回しながら、規則正しい呼吸をしている大野と中畑がそれぞれ銃を持っていることを確認する。
確認が終わると高木は懐中電灯と、自分が飲んでいたペットボトルを持って踵を返した。
そしてシャツのポケットから、1つキャラメルを取り出して口の中に入れた。
牛乳の味がさほどせず、甘いカフェオレのような苦味が広がる。
高木は出口付近で一度だけ振り向くと、カジノ場から出て、鍵をかけた。
多分もう明日の、それこそ昼まで2人は目を覚まさないだろう。まぁ永遠に眠られても困るのできちんと量は調節したつもりだが。
愛想笑いのような表情を浮かべながら、高木はエリーゼのためにから始まる放送を聞いた。
読み上げられた名前に一瞬だけ、黙祷を捧げた。
もっとも、自分のような人間に黙祷を捧げられても選手たちは怒るだろうな。また高木は曖昧に笑う。
「良かったですね、大野さん・・・。」
高木は誰彼となくカジノ場に向かって呟くと、再び階段に向かった。
―――何はともあれ『計画』は成功。しかし、次なる手も打っておかなければ。
『計画』の精度を更に高めるためにも、また『計画』を進行させるためにも―――
暗闇を睨み、歩き続ける高木。
時を待つしかない。自ら言い放った言葉を不意に思い出す。
そしてまたもや高木は腕にはめた時計を見た。
時刻は12時過ぎ。まだまだ時は来ない。
もうひとつのバトロワキタ!
高木…真意がまったく読めないな。
204 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/15(水) 22:59:33 ID:qua52pTsO
新作ラッシュキタコレ!
高木何か怖いな……
保守
206 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 08:24:57 ID:4j3dR9AsO
あげ
そろそろ学館コンビでほっとさせて下さい。
208 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/21(火) 01:24:53 ID:SSHqkJMM0
捕手
保守
捕手
保守
捕手
213 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/02/26(日) 17:13:53 ID:rkaDa/kRO
あげ
開幕近付いてきたので小まめに保守。
保守
保守
保守
ほしゅ(^亮^)ノ
「最高の褒め言葉」
「向こうの方が面白い、か…そうかもしれないな。」
暫し城島と無言のまま見据えあった後、静かに岩瀬は口を開く。
「そうですよ。向こうは二人も居るんだから。」
平然とした様子で答えながらも、城島は注意深く岩瀬を探る。
岩瀬の持つその刀は暗闇に妖しく光り、見ているこちらが息が詰まりそうで、
思わず城島は視線を逸らした。
(俺は銃だ。どっちが有利かといえば俺かもしれないけど…)
目の前の岩瀬は当初の嫌な予感、会いたくないと願う予感を遥かに上回るほど、
恐ろしいものを感じ、やりあう事は徹底的に回避したい。
「…お前はつまらない。俺は生きている奴とやりあいたいんだ。」
首を傾げる城島に、岩瀬はうっすらと笑った。
「お前からは何も感じないんだよ。何が何でも生き残りたいとも、
恐怖も、誰かの力になりたいとも…」
「そうかもしれませんね。そんなの面倒なだけですから。」
生き残りたいが、死んだら終わりという単純なゲームと割り切っている。
恐怖も仲間意識も面倒なだけだ。
「お前みたいな奴を生きているとは言わない。死んでないだけだ。
そういう奴を斬ってもつまらないし…こいつが可哀想だ。」
愛おしそうに刃を見つめながら岩瀬はつぶやくと、不思議そうに城島に向き直す。
「お前はなんで死なないんだ?」
またも不可解そうな城島に、岩瀬もさらに不思議そうな顔をする。
「この状況で生きている事自体が面倒だろう?面倒なら死ねば済む話なのに。」
城島の瞳が微かに揺らぐ。考えてみれば尤もな素朴な疑問であろうと。
その動揺を知ってか知らずか、目の前の岩瀬はふいにひらめいたように、大きく頷いた。
「ああ…それとも面倒だって逃げる事がお前にとっての『生きる』なのかな?」
「…!」
血が逆流する感覚、というのをこの島に来て初めて味わった。
おそらく此処へ来て初めての激昂、という感情に、城島は自分でも気がつかないうちに
引き金を引いていた。
パンッ…と乾いた音が響き、弾丸は岩瀬の後ろの木にめり込む。
「へえ…少しはヤル気になったようだな。面白い。」
発砲されたというのに、少しも驚く様子無く、嬉しそうに笑う岩瀬に城島は舌打する。
(俺は…馬鹿か。せっかくこの人の興味が逸れてたのに…)
興味を引かんばかりに発砲してしまった。一瞬でも頭に血が上った事を後悔する。
「待ってください。俺はあんたとやりあうなんて面倒な事はしたくない。
それがあんたの言う面倒だって逃げる、という事でもね。」
岩瀬に言われた逃げる、という言葉は不快極まりないし、殺せるものなら殺したい。
それくらいに腹は立ったが、今はその時でもないし、それに飲まれる程愚かじゃない。
「あっそ。…時間の無駄だったな。あっちの二人の方が面白そうだ。」
ニヤリと笑うなり岩瀬は背を向け、もはや城島の事などその存在自体を
忘れたかのように軽やかに走り去って行ってしまった。
「…くそ。」
堂々と背を向ける岩瀬は、まさに撃てるものなら撃ってみろといった様子であるが、
あんな恐ろしいモノ相手に攻撃を仕掛けては面倒では済まない事になる。
(岩瀬さんはあの二人を追いかけて行った…)
つまり、和田と岩隈を含め、3人の大戦になる可能性は高い。
(全員相打ならラッキーだけど、そんな上手く行くわけねぇし…)
だが、3人の大混戦となれば誰かしら死ぬか、もしくは重傷を負う可能性も高い。
(3人で争いまくってもらった後に…)
その隙を突いて誰かしらを仕留める、あわよくば数人仕留める事ができるかもしれない。
(面倒だけど…これは最大のチャンスかもな。)
隙を突く隙自体が無いとしても、3人の戦いぶりを観察するのはためになる。
そう判断した城島は踵を返すと、急いで岩瀬を追いかける。
「…!っと…」
程なくして岩瀬の背中が見え始め、再び足を緩めた瞬間、目の前の死神のような男は
凄い勢いで走り出した。
(な、なんだぁ…?)
まるで茂みを風が吹き抜けるように素早く、その細身の体をくぐらせながら走る岩瀬を
追いかけるのは困難であったが、それでも何とか後を追う城島の視界が突然開ける。
「…!」
ザアッ、と茂みを揺らす音と同時に天上で輝く月のが見えた。
そして逆光でうごめく影が大きく伸び、手前の影を飲み込むように飛びかかった瞬間…
何かを断つような嫌な音と、叫び声が聞こえ、城島は思わず茂みに身を隠す。
「あああああっ!」
咽の奥から搾り出すような、鋭い悲鳴。それが和田の悲鳴だと分かった時には、
既に彼は月光の下、血しぶきをあげる左肩から背中を抑えながら地面に倒れていた。
「わ、和田…さん…」
突然の事態にただでさえあまり回転してくれない思考が、さらに鈍ったかのように
岩隈は呆然と和田を、そして血で濡れた刀にうっすらと笑いかける岩瀬を見ると、
ヘナヘナと腰を抜かすように膝をつく。
「い…わせ…お前…」
「…悪くないね。」
激痛と混乱で息も絶え絶えに見上げる和田の声などまるで聞こえず、
岩瀬は満足げに相変わらず刀に見ほれていた。
「良い音だった…けど、骨にぶつかった音はイマイチだったな。
やっぱ背中を斬るというのは、良い行為じゃないってことか。」
自ら反省するようにつぶやくと、岩瀬は和田を見下ろす。
「それに…思った以上に斬れなかったな。反省しますよ。」
「……」
この男は危険…いや、狂気であることは間違い無い。
突然の事であってもそれだけは十分すぎるほど分かる事だ。
和田は呻きながらも、何とか岩隈に振り返る。
「岩隈…にげ…ろ…早く…」
せめて岩隈だけでも…ここは自分一人でなんとか踏ん張り、岩隈だけでも。
和田は必死に声を出すが、岩隈はただガチガチと震え、目を見開くだけであった。
「こりゃまた想像通りのリアクションですね。なるほど…思ったより悪くない。」
善人の部類に入るであろう和田の言動は、岩瀬の想像通りであったが、
これが善人の言動と焦りかと考えると、想像よりも楽しめそうだ、と笑う。
「死ぬことより、死なせる事の方が怖いですか?さっきの面倒くさがり…
いや、怖がりよりも遥かに面白いですよ。」
自然と声が上ずるのが自分でも分かる。それほどに今、岩瀬は高揚しており、
それをさらに高めるかのように、今度は岩隈に刀を向ける。
「ヒッ…嫌だ…はやく、はやく…俺を起こしてくれよ…」
「…まだそれ?それ、つまらないよ。」
ガチガチ震えながら、頭を抱えて蹲る岩隈に、岩瀬は落胆のため息を漏らす。
そしてこういう自分の世界に入ってしまってる者を殺すのはつまらない、
それはよく分かったと、再度和田に意識を向けた。
「岩隈、助けたいですか?だったら必死になってくださいよ。」
左肩を抑え、唇を噛みしめる和田に笑いかける。
「俺もね、こんなつまらない奴をこの刀で斬りたくないんですよ。
だから必死になってください。俺を楽しませてくれたら、こいつは助けますよ。」
そんな岩瀬の言葉に、和田は憤怒とも悲哀ともとれる瞳で睨みつけながらも、
何とか立ち上がろうと、ぐっと右手に力を入れる。
「…良かった。あんたは楽しませてくれる人だった。こっち選んで正解でした。」
岩隈を助けようと、斬付けられた体を立ち上がらせようとする和田は、
岩瀬にとっておそらく、この島に来て始めて価値を見いだす事ができた人物であり、
そのことに心底から感謝するように声を震わせた。
「和田さん…あなたはこの刀に斬られる価値のある人だ。
これはね、最高の褒め言葉ですよ。」
【岩瀬仁紀(13)・岩隈久志(20)・和田一浩(55) D-3】
223 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/02(木) 10:35:04 ID:m8y+kIHxO
岩瀬怖すぎw
職人様乙です!
岩瀬こぇぇえぇ(((((゚Д゚;))))))
WBC壮行試合で東京学館バッテリー実現記念捕手あいかわ
新作乙です!
和田さん、あんたは生きてくれよ…
岩瀬はこえーな(;゜д゜)
城島はいったいどうするんだろ
わ、和田さん、和田さんがあぁぁぁ(つДT)
月下の死神キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
持ってる得物が妖刀っぽいな。しかも相当愛着入っているしw
かなりの(((((゚Д゚;)))))) ガクブル様相だけどこの先が楽しみ。
職人さん乙乙。
和田さん、死神に認められちゃったよ…
230 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/04(土) 14:46:25 ID:zBY5tluxO
ほす
岩瀬恐すぎヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ
岩瀬が怖いけどかっこいいな。
hosyu
岩瀬様とか東京学館コンビとか金子とか気になる選手がいっぱいなのでdat落ち阻止
保守
236 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/08(水) 00:15:28 ID:X6z4dB3CO
捕手
ほしゅ
238 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/10(金) 12:18:30 ID:xLOifPHKO
あげとく
hosyu
保守
あげ
保守
死神の続きを期待しつつ保守。
ほしゅ
保守
246 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/16(木) 15:47:42 ID:VXpZ7135O
あげ
40万部のベストセラー『嫌韓流』の第2弾
『嫌韓流2』発売中
意外とおもしれーぞ
248 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/17(金) 13:14:20 ID:dRl9q4I4O
あげ
249 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/18(土) 14:19:44 ID:H8cMQDPG0
ああああああああああああああああげ
ほおおおおおおおおおおおおしゅ
死守
捕手
253 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/20(月) 14:10:05 ID:JsdBB36gO
あげ
ほす
もっかいほす
おめでたい保守
257 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/22(水) 02:25:21 ID:m4LiEbmhO
ほしゅう
「脇役の逆襲」
今までこれ程までに緊張した事があるだろうか?大木を背に金子はじっと息を潜めながら思った。
息を吸って吐く、というのはこんなに疲れる事だっただろうか?
未だ緊張が解けない金子の視線の先には、三浦が銃を持って座り込んでいる。
数十分前。突然の藤本の叫びに反応し、金子は咄嗟に明かりを消してその身を茂みに隠した。
自分の俊敏さに感謝しつつ少し離れた場所に身を移すと、三浦が走ってきた。
三浦は辺りを見回して金子の名前を呼んだ。だが金子はその呼びかけに答えなかった。
藤本を襲ったのが三浦でないならば、叫びを聞いた時藤本の所へ行くはずだろう。
だが、三浦はこちらに来た。一人では怖くて行けず自分を探しにきたのか?
否、こんな状況で自ら声を出すのは自殺行為に等しい――自分の身の安全を確信してない限りは。
そう。呼びかけられた瞬間金子は確信したのだ。三浦が藤本を襲ったと。
あれからしばらく経つが、未だに自分と三浦以外の人の気配を感じないのが何よりの証拠だった。
金子は藤本を助けに向かおうともせず。何処か遠い場所へ避難しようともせず。
ただ三浦の姿が確認できるギリギリの距離で大木に身を隠し息を潜めたまま、今に至る。
12時を告げる放送は少し前に流れた。藤本の名前が呼ばれなかった事に僅かに安堵感が込み上げる。
叫びを聞いても助けようとは思わなかった。元々そのつもりだったのだから後悔もしていない。
だが呼ばれなかった事に安堵を抱いたのだから、もし呼ばれていたら多少罪悪感は感じただろう。
(それでも、俺の表情は変わらないんだろうな…。)
藤本に言われた事を気にしてはみるものの軽い嘲笑で済ませる。
そんな事より藤本に与えられた支給品の行方の方がずっと重要だった。
探知機。逃げる事を目的とする者には欠かせない最高の道具。
(三浦さんが俺に気づかない所をみると…まだ藤本が持っているのか?)
藤本が叫んだ拍子に落とした可能性もある。もしそうならあんな便利な物を捨て置くわけにはいかない。
だが闇夜の森の中では位置が全く分からない。うかつに動けば藤本が叫んだ場所も分からなくなる。
早く三浦が何処かに移動してくれればいい。そうすれば探知機を探す事が出来る。
しかし金子の意に反し三浦はその場に座りこみ、今も動く気配は無い。
このままでは埒が明かない。金子は何かに使えればと足元に広げた自分の武器を見た。
落とし穴を作ったセラミック製のシャベル。
(銃持ってる相手に接近戦できるはずねぇだろ…。)
殺虫スプレーは近距離から中距離の人間の顔に向ければ一応武器にはなるが、
(だから、三浦さんは銃持ってんだって。)
パンジーの種は市販の袋に入っていた。封を空けてみれば十数粒の種が掌になだれ込む。
(こんな物を投げつけても大して効果無いし…。)
プラスチックの植木鉢は小振りな物で、お世辞にも強力とは言えない。
(…これもなぁ…近づく事さえ出来ればなぁ…。)
デラックスと書かれてある割には小さい袋に入った白い粒状の肥料。一粒の重さはかなり軽い。
(くそっ…藤本や三浦さんみたいな便利で協力な武器はないのかよ…!)
金子が手に力を込めて握りつぶすと、肥料は音も立てずに粉々に崩れた。
不公平だ。何故自分がこんな支給品で藤本や三浦があんな有利な支給品なのだろう?
小笠原や城島、松坂や上原のような人気も力も兼ね備えた球界の至宝と差別されるならまだしも、
藤本や三浦は自分とそう大差無い。だが彼らは武器に恵まれている。その理由はすぐに見つかった。
(……リーグか…。)
彼らはセリーグ。自分はパリーグ。ああ、何て分かりやすい図式だろう。
命が関わったこのゲームにまでリーグの人気は関わってくるという事だろうか?
それは単なる偶然。だが金子はその偶然の先に先に見えない差別があるとしか思えなかった。
(…パリーグで存在感の無い俺は、生き残る価値無しって事か?)
そう思うと、足元の武器まで自分に向かって暗に「死ね」と囁やいている気さえする。
金子は苦虫を噛み潰したような顔で――何かを諦めたような眼差しで――己の掌を見据える。
粉々になった肥料が手の平に滲む汗を吸ってベタつき、更に苛立ちを煽られる中、
ふと。死ねと囁くその武器達が告げる一つの事実に金子は気づく。
植木鉢。肥料。スプレー。シャベル。種。足元に散らばる物言わぬ武器達。
自分に与えられた武器は「1つ」ではない。その事実は万が一の可能性を生み出す。
それは恐らく誰も期待していなければ望んでもいない可能性だろう。
何故なら自分は脇役だ。脇役は主役の引き立て役に過ぎない。主役にはなれない。
だから今まで主役の為に良き脇役になろうとした。
自分を犠牲にし他人を活かした事も多々ある。それを誇りに思い頑張ってきた。
しかし―――――それはあくまで野球選手としての話。
(俺は…こんな所で自分の命まで犠牲にするつもりか…?)
放送ではもう何名もの名が呼ばれている。このままでいたらいつか自分も名を呼ばれるだろう。
己の問いかけにしばらく考え込んだ後金子は首を小さく横に振る。それが答えだった。
ベタついた拳を握り締める金子の目に、どす黒い感情が宿る。
視線の先にはリーグに恵まれた幸運な男が強力な武器を片手に座り込んでいる。
シマウマが今、別の動物に変わろうとしていた。
【金子誠(8) 三浦大輔(17) G−2】
職人様お疲れ様です!
か、金子・・・・お前怖い・・・・
そう言えば藤本はどうなったんだ?死んではないようだが。
新作キテターーーーーーー!!
か、金子までそっちに行ってしまうのか……!?
金子っ…!とうとう来るか!?
ドキッ!マーダーだらけの殺し合いって展開キタ━(゚∀゚)━!!
金子がその武器で何をしてくれるか楽しみだ。
新作期待保守
267 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/25(土) 22:25:51 ID:U6lYoKZKO
開幕あげ
268 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/25(土) 22:33:47 ID:cqbsCYs1O
WBC優勝で良かったな。準決勝で韓国に負けてたらWBCバトルロワイヤル立てる奴とかいたと思う
>>268 雑談所でネタ出てたな
まぁアテネにビリバトと球団混合のは二つもあるから無理だろうって落ち着いてたけど……
>>268 イチローを背後から襲う上原(支給武器:毒霧シャンパン)とか?w
ほしゅ
保 守
保守
275 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/03/31(金) 02:45:24 ID:BdpQkygSO
あげよう
ほしゅ
保守
ほしゅあげ
[ビンタ2発]
定時放送が終わり、再び海の寄せて返す波音が島に響き始める。
それでもなお、少し道を外れた場所に座っていた相川と石井は黙り込んだままだった。
自分達が生きていた6時間の間に6人の仲間が死んだという事実が、しばらく受け入れられなかった。
「神宮に帰りたい・・・。」
慣れ親しんだマウンドで、仲が良すぎるとまで評されるチームメイト達と野球がしたい。
右を見ればプロレスラーのような内野手、左を見れば寒いギャグがブームな助っ人、前を見れば頼れるプロ野球界の生きる宝。
後ろを見れば、どんな打球も通さない球界最高の遊撃手。
自分の登板する9回前後の守備力は12球団でもトップクラスだと言える自信がある。
だからこそ安心して投げられる。もちろん出来れば三振を取りたいが、内野ゴロを打たせれば勝てると信じている。
目を閉じて、深呼吸して、再び瞳を開けば、もうそこは俺の仕事場。
神宮だけじゃない。
東京ドームだって横スタだって甲子園だってナゴヤドームだって市民球場だって、俺の仕事場だ。
あ、来年からはパの球場もだっけ。楽しみだよなぁ。
でも俺は一番神宮が好きだ。
デイゲームの終盤、登板すると目が痛いほどの夕日が神宮には降り注ぐ。
そのオレンジ色の光の中で三振を取って叫ぶ俺、うん超カッコイイ。
ホーム用のユニフォームには夕日が似合うね。近くの林の緑とあいまって、中々生み出せない色になってると思うよ。
それにホームグラウンドだし。ぐるっと一周したら大体うちのファンしか見えないし。
そう言えば最近空席多いんだよなぁ、ちょっとそれは選手としてモチベーションが下がる。
どこが悪いんだろうか。守備は巧いし、飯は旨いし、トイレは比較的に綺麗なのに。
もう少し来てもいいよなお客さん。俺らの試合ってそんなに面白くない訳じゃないのに。
まぁ強いて言えば俺ぐらいしかイケメン担当が居ないってことかな、ふふふふふふふ・・・・
「石井ー!!」
相川の叫び声と共に繰り出されたビンタをまともに食らった石井は、ようやく我に戻った。
「え?え?はい!?」
「神宮に帰りたいって言った後に黙り込むからなんだと思ったら笑いやがってこの野郎!びっくりしただろ!」
「おおおお俺何も言ってないですよ!」
「あ?なんだおまえ?俺に喧嘩売りたいのか!」
「ち、違いますよ!」
痛む両頬をさすりながら、呆れたように怒る相川相手にどうにか弁明をする。
相川は元々かなりの武闘派であることは、高校時代共にプレーした中で分かっている。
ビンタもその頃から変わらずほぼ全力。ただ当時と違うのはプロ野球の世界で鍛えた腕力、当然威力は物凄く上がっている。
何だか腫れ上がっていそうな左頬をさすりながら、石井はなおも謝る。
「ったく、しっかりしろよなー。」
人のこと言えないっすよ、とは口が裂けても言えず石井は無言で頭を縦に振る。
ようやく相川の重圧から開放された石井は、こみ上げてくる頬の痛みに耐えるべく、鞄の中からペットボトルを取り出そうとした。
しかしジッパーを下げた時、石井の手が止まる。
今相川と石井は地図で見るところの、灯台そして湖からの3つ又交差点の少し離れた場所に腰を下ろしていた。
そしてその交差点に背を向けるようにして相川、その向かい側に石井が座っていた。
交差点から石井達の場所までそんなに距離はないが、背の高い草がほどほどに生い茂っていた。
ということで交差点で何かがあれば多少見える位置に石井は座っていることになる。
では何故そんな石井が手を止めたのか。その答えは簡単だった。
「あれ・・・・・」
「ん?」
石井が驚きの表情で指し示した先は揺らめく光が3つ。
この時混乱している石井が導き出した答えは『人魂』だった。俗に言う、お化け。
「お化けですよ、ねぇお化けですよお化けですよ相川さんお化けですよ!?」
声を潜めながら石井が叫ぶ。
「俺はお化けじゃねぇぞ。っていうか落ち着けよ。」
「だってお化けですよお化け!本物ですよ俺呪われちゃったらどうするんですか!」
バシンと立ち上がりかけた石井の膝を手のひらで叩くと、相川はシッと口の前で人差し指を立てた。
黙れのサインに又仕方なく首を縦に振る石井。
しかしそれでもお化けを見てしまったショックで混乱は続く。
「呪われたらどうしようもう神宮で野球できない呪いかけられたら、いや野球が出来ない呪いかけられたら俺の家の家計簿どうなっちゃうんですか」
「金貯めてるだろ・・・・。」
「本当にどうしよう。あー俺除霊とかしたことないし、念仏唱えれば大丈夫かな」
「そもそもお化けじゃないだろ。つかお前さっきまで高いびきして寝てたくせに。」
「どうしようどうしよう俺呪われたらどうしよう」
「石井ー!!」
バシンとまた皮膚を高速で叩く音。今度はご丁寧に右頬だ。
「しっかりしろ!あれは懐中電灯、人が3人いるんだよ!」
「あえ?え、え、え、でも3人も?!」
「今は居なくなったみたいだけど、お前がいきなり叫ぶからびっくりしたじゃねぇかよ。」
バカ、と石井の後頭部に一撃。石井は練習でエラーした時のように渋い顔で患部を撫でる。
相川は溜息をつくと、出していたタオルと水入りのペットボトルを鞄の中に入れた。
石井もそれを見て慌てて周りを見渡す。
何も出していないことに気付いたところで相川が立ち上がった。
「さぁて、そろそろ行くぞ。」
「は、はい。」
「・・・・お前、こうちょっとさ、マウンドの時みたいにしっかりしろよ。」
相川が振り返り、手首をスナップさせて投げる仕草をする。
その表情は眉間に皺が寄っている、外野に鋭い打球が飛んだ時の相川そのまま。
「へ?」
しかし対する石井は練習後にいきなりカメラを向けられた時の間抜けな表情を浮かべていた。
「パソコン使えないからお前の洗剤だけが頼りなんだからよ。」
「悲しいっすよね・・・・。」
「うるせーな、行くぞ。」
自分に背を向け、ずんずんと進み始めた59番に遅れまいと石井は後を小走りで追いかける。
神宮でマウンドに向かう時のように。
ストッパー石井弘寿が小走りする場面。
それは大概、逆転のピンチの時なのだけど。
【相川亮二(59) 石井弘寿(61) B−2】
職人さま乙です!
東京学館コンビktkr
やはりこの2人は面白いなぁ…
乙であります。
このコンビいいな。
東京学館コンビキター!!!
やっぱりこのコンビ、和むなぁ…
新作キテタ━(゚∀゚)━!!
どんどん石井のキャラがおかしい方向にw
287 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/09(日) 12:23:53 ID:RJdZ18jZO
ほす
石井復帰記念捕手
ここの石井はある意味マイペース過ぎてワロスw
ほしゅ
290 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/13(木) 14:47:06 ID:XmTtlPuCO
あげ
291 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/16(日) 01:53:41 ID:Z+WqQYl20
あげる
292 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/17(月) 04:06:22 ID:5R2gbxKO0
ホシュー
ほすー
ほしゅ
保守
保守固守。
298 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/22(土) 01:06:56 ID:eLoGFLKb0
危ないので浮上
( ^亮^)(゚▽´ )
ほしゅあげ
捕手
302 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 03:07:36 ID:JlA8XIsXO
あげ
期待保守
捕手。
305 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/04/29(土) 18:22:39 ID:86KEBS0kO
ほしゅあげ
ほしゅ
捕手。
眼鏡捕手。
309 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/03(水) 21:36:24 ID:h+6hKXTt0
落ちそうなのであげ。
ほしゅあげ
ほっしゅ。
312 :
代打名無し@実況は実況板で:2006/05/06(土) 13:57:40 ID:zqt04mak0
捕手投手内野手外野手
捕手。