アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第二章

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1代打名無し@実況は実況板で
【前スレ】
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第一章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117769506/

詳細は>>2-10
2代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:18:41 ID:boqCGaNX0
【保管庫】
ttp://athensbr.fc2web.com/
【フラッシュマップ】
ttp://www.geocities.jp/aobrfl/
【職人用相談掲示板】
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/4657/
3代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:19:13 ID:boqCGaNX0
【過去スレ】
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第一章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117769506/
プロ野球バトルロワイアル
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1098685280/
4代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:19:53 ID:boqCGaNX0
【他球団現行スレ・関連スレ】
ソフトバンクホークスバトルロワイアル第4章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117464758/
阪神タイガースバトルロワイアル第六章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1118662966/
中日ドラゴンズバトルロワイアル第十三章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1122560513/
千葉マリーンズバトルロワイアル第10章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1122561045/
各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ5
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1122271761/
5代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:20:30 ID:boqCGaNX0
【まとめサイト】
讀賣巨人軍バトルロワイアル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/(中日ドラゴンズバトルロワイアル2004保管庫)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
阪神タイガースバトルロワイアル
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
千葉マリーンズ・バトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
ttp://athensbr.fc2web.com/
鷲バト
ttp://www.geocities.jp/trgebr/
6代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:21:26 ID:boqCGaNX0
【ローカルルール】
・sage進行、メール欄にsageと書くだけ
・むやみにスレをageないこと(保守ageを除く)
・投下前には本スレリロード、保管庫掲示板の避難所確認は必須
 アテネでは避難所の投下も本投下と見なされる
・本スレと避難所で被った場合は基本的に投下時間の早いものを採用
・書き手はトリップ推奨(荒れ、騙りを防ぐため)
 現行の書き手は初出スレ番+トリップがコテハン

※トリップのつけ方:名前欄に #好きな半角英数文字(8文字)
例: #password → ◆ozOtJW9BFA
7代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:23:07 ID:boqCGaNX0
【バトロワSSリレーのガイドライン】
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
8代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:23:53 ID:boqCGaNX0
【リアルタイム書き投下のデメリット】
推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)

複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒リアルタイム投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)

バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)

上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
 文章を見直す(推敲)事は考える事に繋がる。
 過去の作品を読み込まず、
 自分が書ければそれでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
9保管庫 ◆athensVWRU :2005/07/29(金) 23:27:11 ID:boqCGaNX0
スレ立てしました。
とりあえず文末表記だけ保留の形をとりました。
10代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:40:59 ID:Qm+9diB00
>>1-9
超乙!
テンプレスバラシス
保管庫さんいつもありがとうw
11代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:45:21 ID:uGUTXXCs0
>>1-9>>保管庫さん
スレ立て乙でございます!

さぁこれからどうなっていくのか楽しみだw
122氏代理投下 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 00:58:31 ID:rhTLl3hJ0
「悪魔との遭遇」


村松は冷たい風を一身に受けながら、殆ど整備されていない砂利混じりの山道を歩いていた。
(何故、誰とも会わない…?)
これまでずっと一本道を歩いてきたが、未だに人はおろか小動物すら見つける事は出来ない。
もしかしたら道から外れて潜伏している人間もいるかもしれないと思い、辺りを見回す。
道の右側はなだらかな傾斜になっている。木々が邪魔してその先はよく見えない。
左側は岩壁が続く。けして乗り上がれない高さではないが、上るには多少時間がかかるだろう。
ここまできても全く人の気配を感じない事を疑問に思う中、風は一層冷たさを増して吹き付ける。

(…寒さには慣れていたつもりだったんだが…冬だからな…流石に寒いな…。)
とうとうその寒さに耐え切れずに立ち止まり、鞄を地に降ろし中からコートを引っ張り出す。
無理矢理丸めて鞄に詰め込んだそのコートは、通りかかった小さな集落で見つけた。
ジャンパーも見つけたが、防寒具は二つもいらないと判断し、野宿を考えて丈の長いコートを選んだ。
(ジャンパーにしておけば良かったな……。)
山や森を歩く事を考えれば、ジャンパーの方が動きやすいのは分かっていたはずだった。
コートを着て、鞄を肩にかけて。そんな状態で山道を歩いている時に襲われたら、かなり不利だ。
だが、この寒さではそんな事は言っていられない。素早くコートを身に纏い、寒さを凌ぐ。
何故自分はあの時、野宿の事しか考えなかったのだろう。村松は苦笑する。

こういう時こそ、冷静であるべきなのに。いや、こんな状況で冷静でいられるはずが無い。
こんな状況だ。当然考える力は落ちる。それでなくてもミスはする。それが人間だ。
落ち着こう。狂ったら終わりだ。早く誰かと会おう。人間であれば、誰でもいい。
だが、目立つ道を歩いているはずなのに、人に会わないのは何故だ?
流石に、集落では誰かと会うだろうと考えていたが。結局ここまで誰とも会っていない。
もう既に誰か死んだだろうか?銃声だけは何発も聞いた。誰が死んでいてもおかしくはない。
自分も死ぬかも知れない。共に頂点を目指した仲間の手にかけられて。
自分が手にかけるかもしれない。共に頂点を目指した仲間を。
132氏代理投下 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 00:59:04 ID:rhTLl3hJ0

(…やめよう。こんな事ばかり考えていたら気が滅入る。落ち着け。とにかく、落ち着け。)

微かに震える手でコートのボタンをはめ終えると、もう一度辺りを見回す。
やはり、人の気配は無い。小動物の気配すらない。
(…空が少し…暗くなってきたな…。)
空が曇っているせいもあるが、今は冬。空はどんどんと暗くなっていくだろう。
村松は鞄から小型の懐中電灯ともう一つ、小さな四角形の機械を取り出す。
それは防寒具を選んでいた時に何気なく視界に入った、アナログ式の目覚まし時計。
時間は把握したいと思い鞄に放り込んだが、いちいち取り出すのが面倒臭い。
(……放送まで約2時間か…。)
時間を確認して早々と時計を鞄にしまう。腕時計を探せばよかったのでは?と今更ながら思う。
コートと目覚まし時計。ほぼ白紙のノートから破り取るように千切った一枚の紙。
ある事を書き記したその紙は、今や何よりも大切な物。それらを鞄に詰め込んで、集落を出た。
あえて武器は探さなかった。武器を持てば今より更に冷静でいられなくなる気がしたし、
自ら武器を探す事はゲームに乗ってしまう事になる気がした。自分は、ゲームに乗るつもりは無い。
今思えば、その固すぎる決意は自分が死ぬ可能性を高めただけなのではないかと思う。
何せ、自身に支給された武器は殺傷能力のあるものではなかったのだから。

『☆★シュアーファイアー最新型(防水・米海軍SEAL仕様!)★☆
 強力なライトです!これで相手の目を眩ませろ!便利なホルスター付き!』

ベルトに装着可能なナイロン製のホルスターの中に、その強力なライトは入っていた。
懐中電灯と同じ様な物を武器として支給されるなんて、何処まで運が悪いのだろう。
だが護身用としてはそれなりに使える物。すぐ取り出せるようにホルスターを左脇腹に装着していたが、
コートを着込んだ今、それを取り出すのにも少し手間がかかる事に気づいた村松は深いため息をつく。
(…運が悪ければ、手際も悪い、か…上手く、いかないものだな…。)
懐中電灯を地面に置き、先程はめたばかりのコートのボタンをはずし始めた。

(…皆、今、何をしているんだ…?)
142氏代理投下 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 01:00:02 ID:rhTLl3hJ0

ガサッ

草が踏みつけられる音に、ホルスターにかけた左手が一瞬硬直する。
咄嗟に右手で懐中電灯を掴み、スイッチを入れて音が発生した方向を照らす。

右側。緩やかな傾斜に生える木々の間に、何かがいる。音はハッキリと聞こえた。距離は遠くは無い。
人間だ。ゆっくり歩いている。アテネのユニフォーム。あの、いかつい顔は…

「福留…?」

呟いたと同時に互いの視線が合う。村松の持つ懐中電灯の光が、福留が右手に持っている金属に反射した。


【村松有人(A23)・福留孝介(A1) B−6】
1575 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 01:01:16 ID:rhTLl3hJ0
[建前と正気と誇り、その隣側]


この島に来てから何時間経ったのだろう、とポケットに入れておいた腕時計を見た。
見ると時計の短針は4を少し離れた場所にある。
もうそんな時間か、と小さく息を吐く音が風に紛れて消えた。
谷はかすかに見える空と海とを分ける水平線を眺めている。

ゲームを壊す、俺は確かにそう決めた。
空を見上げ、雲と雲の隙間を探す。

だが実際どうだ?この島に来てからやったことといえば、岩隈を追い詰めたことぐらいじゃないか。
頭では許そうと思ってたのに、心がそれを拒否した。
あぁそういえば心って頭にあるんだっけ。
それじゃあ俺の中の建前だけは許していて、残り全部ひっくるめて岩隈のことを許せてなかったのか。
・・・・『建前』。
宙を見つめていた谷の目が伏せられる。
そしてじっと手元の金属バットを見ると、もう一度溜息をついて目を閉じた。

『このメンバーでできたことは誇りに思いますし、金メダルを取れなかったことは残念に思いますけど、
また後半のシーズンもありますので、またしっかりとやりたいと思います。』

今でもはっきりと思い出せる。
まるで夜の井戸のようにに暗く冷たい空気の中で自らの口から出てきた言葉。

あれは――本心じゃなかった、本心な訳あるか。
悔しかった、自分が最後の打者であったことも銅メダルだったことも全て全て悔しかった。
ただ泣きたかった、ただ叫びたかった、ただひたすらに自分を責めていたかった。
しかしそれを表に出してしまえば、敗者というものがどれだけ惨めに見えるかが分かっていた。だから口には出さなかった。
そうして自分を押し殺して、喉の奥に沈めた言葉がいつの間にか形を変えていたことに気付かなかった。
――いや、気付いていた。それを見て見ぬ振りをしたのだ。
それは自分を守るため、それは自分が正気であることに浸っていたかったから。
1675 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 01:01:53 ID:rhTLl3hJ0

無意識のうちに谷は膝を抱え、爪を噛んでいた。
そうすることによって自分の中にある何かを理性によって留めようとするかのように。
正気?とふと自分が示した言葉に谷は疑問符をつけた。

正気なんて、どこにあるんだ?
もしかしたらみんな岩隈みたいになってるかも知れないって言うのに。
正気って何だろうな。きっとあの船に乗ってる誰かは知ってるはずだ。
正気とその隣側にある何かを知っててこんな事を始めたんだろうから。
・・・・やっぱり、このゲームを壊すしかない。

壊せばきっと『正気』が何か分かるはずだ、壊せば元の世界へ戻れるのだから。
妻とブルーウェーブが待つ元の世界・・・・
あぁ違ったもう『ブルーウェーブ』じゃないんだ、『バファローズ』か。
自分でも気付かないうちに谷は笑っていた、自らを嘲うかのように。

ブルーウェーブ、俺の『誇り』はあの日――9月23日を境に段々と消えていった。
例えチームメイトが残ろうとも、例え本拠地が残ろうとも、例えマスコットが残ろうとも、例え自分の居場所が残ろうとも関係無かった。
俺が愛していたのはオリックスブルーウェーブという一つの『チーム』だから。だから・・・・
1775 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 01:02:36 ID:rhTLl3hJ0
・・・・もう考えるのは止めよう。
爪から歯を離して立ち上がり、体についた砂を払って谷は来た道を再び歩き始める。
そして右手に持った金属バットを両手で握りなおした。


このゲームを壊して元の世界に戻ってやる。
だから。
邪魔する奴は、許さない。

今までとは明らかに違う眼差しの色が谷に宿った瞬間だった。


【谷佳知(10) T−5】
1875 ◆7581q1C1/U :2005/07/30(土) 01:12:24 ID:rhTLl3hJ0
2氏の代理投下完了しました。お疲れ様でした。
19代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 16:10:15 ID:AZx7ZD9k0
早速新作ラッシュキター!!!!

村松どうなる??ドメ、どうする??
谷もやる気満々になっちまったか?

今後の展開が楽しみです。
20代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 01:12:10 ID:49wXAeta0
スレフカーツ待ってました!
保管庫様・職人様いつも乙です!!
21代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 10:32:36 ID:v9jFF/ZOO
職人さん乙です!
ほす。
22458 ◆EKBnf1A7Os :2005/07/31(日) 12:47:35 ID:mM/Wb6iU0
「不機嫌な面倒嫌い」

城島は不機嫌そうに頭を掻く。立て続けに響く銃声音3発、そして
暫く経った後の一発…嫌でも目が覚めてしまったからである。
「あの馬鹿…うるせーんだよ…」
この森にいるのは由伸、宮本、和田の三人なのは双眼鏡で確認済みであり
考え無しに発砲する奴といえば、面子的に和田しかいない。
「暫く寝ようと思ってたけど…あいつ、合計5発発砲したわけだよな。」
今、和田は弾倉が空になった意味の無いミネベアM60を持っている。
そして今、自分の手元にあるのは補充用の銃弾。
これは今が行動する時ではないか…
銃を奪える最大のチャンスであり、一番簡単に奪えるチャンスでもあった。
「どうせ後々面倒の一つや二つしなきゃなんないしなぁ…」
なら、今行動をするべきかもしれない。弾丸の無い銃を持つ和田など
楽勝であり簡単にその銃を奪う事もでき、殺す事もできるかもしれない。
「ああでも面倒くせぇ…まぁ一度面倒な事をクリアしておくと、後々楽だしな…」
どうすべきか。ふらりと城島は立ち上がると、双眼鏡を構える。
「おいおい…こっちにやって来るかぁ?」
そこに映るのは混乱状態で走る和田の姿があった。
それは城島を目的とするというよりも、単に混乱により周りが見えぬまま、
思考も定まらないまま走っているようであった。
「…これは動けってことか?ま…いずれ殺し合いも騙しあいも
しなきゃなんねぇかもしれないんだし…」
思いきって動くべきかもしれない。面倒なのを堪え一度動けば
意外とアクティブになれるものかもな、と城島は肩を竦める。
「あーあ…面倒だな。」
和田が死んでくれりゃ手間省けるとは思っていたが、
和田を殺そうと考え始める自分もまたなんとも面倒な存在だろう。
「本当、どいつもこいつも何もかも…面倒くせぇ。」
ぼそりと呟き、城島は顔をあげる。もはやその瞳には何の色も映らなかった。
23458 ◆EKBnf1A7Os :2005/07/31(日) 12:53:42 ID:mM/Wb6iU0
現在地、記入漏れ…

【城島健司(9)D-2】
24代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 13:31:48 ID:tB8R66K4O
圧縮恐いので保守age。城島と和田毅、どうなる!?
25代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 15:13:04 ID:meHYy6q90
和田と城島の殺しあいだけはいくらバトとはいえ勘弁・・・。
二人の信頼関係は・・・。
26代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 15:51:32 ID:cvs8F0b10
しかしこれだけ人が死なないBRも珍しいような
27代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 16:55:23 ID:JVHlSh2H0
>>25
こらこら。それを決めるのは職人さんだ。
どんなことでも起こりうるのがバトの醍醐味。

>>26
まだ一回目の放送前だ。あわてないあわてない。
28代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 17:03:51 ID:W+SpF9Jv0
信頼関係も友情も、このゲームの中ではいとも簡単に壊れてしまう
それがバトロワ・クオリティ

>>22-23
城島もついに動きましたか!
続きにワクテカですよー
29代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 18:42:49 ID:bRPrkSF4O
ジョーがバトロワでこういうキャラになるのは初めてだよね。
敵に回すと怖い…
30代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 20:33:37 ID:ESbx1+b20
和田と城島のガチで対決期待age
31代打名無し@実況は実況板で:2005/08/01(月) 13:40:18 ID:Tpt53Eqh0
>>30
どう考えてもジョーが勝ちそうだなw
和田ファイト
32代打名無し@実況は実況板で:2005/08/01(月) 14:03:08 ID:SP7fdtfYO
ほす
33保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/01(月) 18:26:38 ID:hVvVFOj40
95.不機嫌な面倒嫌いまで保管しました。

色々と動き出してワクテカですw
職人さんファイトォ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
34代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 01:16:10 ID:qrgDwxD/O
和田って二人いるんだよな。保守age。
35代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 11:23:50 ID:yeKbHMUA0
ナースエンジェルとミスター一人相撲だね。保守。
36代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 19:17:59 ID:/BNqdoLT0
>>35
異名ワロスw保守。
37代打名無し@実況は実況板で:2005/08/03(水) 01:52:33 ID:YCpCrqyeO
保守
38代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 01:35:13 ID:IqA68MeXO
定期保守
39代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 21:58:24 ID:o7jVcnwaO
age。
投下いきなり減ったのはまだ問題が解決してなかったりするのからなのか…?
40代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 22:21:50 ID:ELbfXMms0
>>39
修正版も投下されてたし、
今までのスピードが異常だったんだと思われ。
41代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 01:36:21 ID:Cbc8BdIHO
夏場の忙しい時期だからじゃないかな?
と言ってみるテスツ。

+定期保守。
42代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 01:44:10 ID:hll3Foph0
ここは何となくだけど、投下される時はどかっとやってきて
後はまったり沈黙、という感じがするね。
4375 ◆7581q1C1/U :2005/08/05(金) 01:48:06 ID:sWDlZNzG0
[For Peace]


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
木村拓也は体全体を引きずるようにして移動していた。
その間半ば閉じかけていた傷口は開き、白いユニフォームを胸元を赤く染め上げている。
それでも木村は歩き続けていた、死への恐怖と仲間への裏切りの念から逃げる為。

俺は、黒田を裏切った。
同じチームで、同じユニフォームを着て、戦ってきた黒田を。
死にたくないから、殺されたくないから、俺は誰かの為に死ねないから。
でも、誰かがきっと俺を殺すんだ、24分の1の椅子取りゲームだから。
23人は死ぬんだ、その中に・・・・。
嫌だ嫌だ嫌だ俺だって生きたい死にたくない

近くの木にもたれ、木村は大きく息を吸おうとする。
その度に胸に痛みが走り、呼吸どころではなくなる。
その痛みと苦しみが更に木村の心を追い詰める。

4475 ◆7581q1C1/U :2005/08/05(金) 01:48:34 ID:sWDlZNzG0
怖い
怖い怖い
怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
死にたくない死にたくない俺は生きたいんだ
死ぬのが怖い、俺はまだ生きたい、死にたくない・・・・!!

胸を掻き毟りたい衝動を抑えながら、木村は再び歩き始める。
ふと目の前に焦茶色の建物があるのが見え、よろめきながらも一歩ずつ足を前に出す。
そして右手を伸ばして――とその瞬間、目の前の風景がガクンと下がった。

「うわっ!?」

そのまま伸ばした手を地面につけた瞬間、痛みが走った。
目の前の風景が建物と草の間を行き来している。
乾いた草がまとわりつく。
身長173cmのプロ野球選手としては小柄な体は、学校裏の小さな傾斜の上から転がり落ちていた。

叫ぶことも出来ず、木村はゴホッと鈍く一回咳をし、胸を押さえながら左肩にかけた鞄の持ち手を上げかけて手を止めた。
ずきずきと熱を持ち始めた右手首を反対側の手で押さえながら立ち上がる。
名前の消えかけた看板の横を通り、古びたガラスがはめてある木の引き戸を左手で開ける。
ガシャガシャと音がして、ゆっくり扉が開いた。
右手は胸の傷を押さえ、浅い呼吸を繰り返しながらスパイクを履いたまま学校内に入る。
すぐ右手側にあった階段の手すりにすがりながら、木村は一段一段上り始める。
4575 ◆7581q1C1/U :2005/08/05(金) 01:49:07 ID:sWDlZNzG0

階段を上りきり、近くの扉を開けて中に飛び込むように入る。
痛む右手を左手で抑えながら、すぐ横の壁にすがる。
木村は辺りを見回し、グランドピアノがあるのを見つけた。
その横の窓から見える景色を確認することもなく、鞄を肩から下ろす。

ここ、どこだ。
そう考えながら、目を閉じた。
聞こえるのは風が木を叩く音だけ。

もう、どこでも、いい。
鞄を下ろし、倒れこむように木の床に横になった。
ひんやりと冷たい床から傷を守るかのように右手を床と体の間に入れる。
あれほど辛かった胸の痛みが小さくなっていた。

もうつかれた・・・・もういやだ・・・・もう誰も裏切りたくない・・・・
俺は・・・・・・いきたい・・・

右手で胸を押さえたまま、木村はそのまま静かに眠り始めた。
その表情はこの島に似合わない無邪気なものだった。

【木村拓也(27) H−4】
46代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 04:06:55 ID:JNSCdnIA0
たっくん死なないでたっくん
47代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 09:25:21 ID:YI3+/77M0
職人様方、いつもお疲れ様です  拓也さんは

招待状がきた時は飄々と間延びしたような口調で、深刻になりそうな空気を
はぐらかしつつ冷静だった拓也さんが、ゲームが始まった途端に痛々しく、
本気で心配です
その人間臭いリアルさにガクブル
48代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 10:29:33 ID:7Y6A2kXO0
拓也あああああ!
寝ちゃダメだ
拓也ああああああああ!
49代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 01:53:11 ID:PFOisHYzO
拓也寝ちゃダメだ!。・゚・(ノД`)・゚・。
50代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 16:53:12 ID:J0XefXiwO
キムタク頑張れ。保守age。
512氏代理投下:2005/08/06(土) 21:46:37 ID:bCauSc4u0
「彼は彼なりに」


福留は、警戒している様子もなく村松がいる場所へと近づいてきた。
「村松さん…何してんですかー?そんな所で。」
声は思いのほか穏やかだった。それが返って不気味さを煽ったのだが。
村松は鞄を掴んで立ち上がり、福留の一挙一動をじっと見据える。
ゆっくりと傾斜を上がってくる福留。右手に持った包丁を隠そうともしない。
「……人を、探していた。」
あえて理由は言わず、福留との距離を測る。まだ。まだ距離は取れている。
福留が近づくにつれ、ゆっくりと後ずさり、一定の距離を保つ。まだ大丈夫だ。
「人を探さない事には、どうにもできないからな。」
「…ああ、そうですか。そうですよね。」
福留は納得したかのように微笑み、突如、包丁を持った右手を振りかざした。

「人を見つけて殺すのが、このゲームのルールですからね!」

突然走り出す福留にあわせるように、村松も元来た道を走り出した。


「うわ、何かこっち走ってくるぞ!逃げるぞ!!」
集落を出てからずっと尾行を続け、今も岩陰からこっそり様子を見守っていた相川が石井に振り返った。
「って、おい!?」
石井は既に走り出していた。その姿を眼で追い、何でこんな時だけ行動早いんだ、と慌てて追いかける。
「俺、尾行なんて絶対バレると思ったんですよ!」
不満げに叫ぶ石井の声は、涙声だった。
「いや、何かよく分からねぇけどあれは福留から逃げてんじゃね!?落ち着けよ!」
「じゃあ福留が危ないんですか!?どーすんすか!?村松さん見捨てるんすか!?このまま逃げるんですか!?」
「質問ばっかすんなよ!!どーするっつったって…逃げるしかねぇだろ!?」
涙声で涙目の石井に対して、相川は半ば投げやりに返した。
522氏代理投下:2005/08/06(土) 21:47:05 ID:bCauSc4u0
そうだ。村松さんを囮にするって決めて、バレない様に後を追って。
そのお陰で福留が危ないと分かって。逃げてる。何がおかしい? 何もおかしくなんかない!

「うわあっ!」

石井が小石に躓き、勢い余って地面に倒れこむ。

「痛ってぇ…。」
「アホっ!」
「こんな所に石があるから駄目なんですよ!ああもう、手が擦り剥けた!」
石井は痛そうに手を見つめている。微かに滲んだ血に文句を垂れている場合ではないのに。
混乱しているのか?混乱している人間は、ここまで愚かになれるものなのか?
「そんな事言ってる場合じゃ…!」
相川が石井に手を貸して立ち上がらせようとした時、走ってくる村松の姿を捉えた。
村松も、二人に気づいたように驚愕の表情を浮かべ、足が止まる。
だがその表情はすぐに真剣なものに変わり、二人に向かって、叫んだ。

「逃げろ!!」

叫ばれた言葉は、今まさに相川達がしようとしている事。
自分達が見捨てようとしている者から放たれた言葉は、あまりにも優しいものだった。

相川が言葉を返す前に、村松は岩陰に姿を消した。
石井が、不思議そうな眼差しでその岩陰を見据えていた。
532氏代理投下:2005/08/06(土) 21:47:36 ID:bCauSc4u0
村松が振り返ると、福留も立ち止まった。二人の距離は、5Mもない。
「どうしたんです?誰かいましたか?俺よりそっちを先に殺したらどうですか?」
突然立ち止まった事を警戒しているのだろう。早口でまくしたてる福留の眼はまだ殺気が失せていない。
「…勘違いするな。俺は誰も殺す気は無い…襲い掛かってこない限りはな。」
村松は鞄と懐中電灯を地面に落とし、ホルスターの中に納まっているライトに右手をかける。
幸い、ホルスターはコートの影に隠れている。福留は自分の武器が何であるか、まだ知らないだろう。
だが、それ――護身用の強力ライト――はお世辞にも包丁に立ち向かえるような代物とは言えない。
「へぇ…俺は、生き残りたいから誰でも殺しますけど。」
「…生き残って、メジャーにでも行く気か?」

薄暗くなってきたとはいえ、まだ明るい。この距離で使ってどれだけの効果がある?
ライトを使うなら、至近距離。だが、相手は包丁を持っている。包丁相手に接近戦を挑めるか?

「いえ。日本シリーズの打席に立って、今度こそチームを日本一に導くんです。俺の力で。」
「……若いな。自分一人の力で、チームを導けるとでも思ってるのか?
 選手一人の力でチームを日本一に導ける程、チームは軽くないぞ?」

包丁を避けれればいい。最初の一撃を避けれれば。相手に隙が出来れば。可能性はある。
それに、福留は今、左手が不自由だ。包丁さえ奪えば、後はどうにでもなる。

「そんな事、分かってますよ。」
「…岩瀬はどうする?岩瀬も殺すか?お前より遥かにチームに貢献した人間を殺せるのか?」

人間、激昂すれば隙が生じる。その隙を見計れば、いくらでも勝機はある。
幸い、人を傷つけ、怒らせる事は簡単だ。それが血気盛んな若者であれば尚更。
542氏代理投下:2005/08/06(土) 21:49:06 ID:bCauSc4u0
「…チームにしてみれば、お前が生き残るより岩瀬が生き残った方が嬉しいだろうな。」

人を傷つけるのは好まない。だが自分を殺すと言っている人間に対しては別だ。

「本当にチームを日本一にさせたければ、ここで死んだ方がいいんじゃないか?」
「………!!」

それは、禁句。怪我でチームに貢献できなかった福留に対して、あまりにも辛辣な言葉。

福留の眼に、激しい殺気が宿った。包丁を両手で握り、我を忘れて襲い掛かってくる。
(これなら、避けれる…!避けた後でライトで顔面を照らせば……)
福留の行動を予測し、ホルスターからライトを引き抜いた、その時。

「村松さん!!」
突然の自分を呼びかける声に、思わず振り返る。それは、一瞬の出来事だった。

振り返った瞬間に、福留が持った細身の包丁は、村松の腹に深々と突き刺さった。

(しまった……!!)
すぐ様、右手で掴んでいたライトを、福留の顔面に向かって照らす。
「うっ!」
完全に視界を奪われた福留は、力任せに包丁を引き抜いて、その場に座り込んだ。
「あああああああっ!!」
見えない事は余程の恐怖なのだろうか。福留は血塗れた包丁を異常なまでに振りまわす。攻撃されないように。

だが、村松からの反撃はそれ以上無かった。

刺された腹を左手で押さえ、数歩下がり、叫ぶ福留を冷めた目で見据える。
傷口から溢れ出る液体は、ユニフォームの腹の部分をじわじわと真っ赤に染め上げていく。
激痛。恐らく内臓の何かが貫かれた。体内からくる鋭い痛みは、福留を攻撃する事を許さなかった。
552氏代理投下:2005/08/06(土) 21:50:53 ID:ILN8jxFP0
(…ヤバい…か?)

体が痛みに耐え切れず、膝を付く。手に力が入らない。眼が霞む。
終わりだ。自分はここで終る。そんな気がした。

(……鞄……鞄を…。)

大事な鞄。大事な紙。万が一の事を恐れて書き記した、愛する家族宛ての、大事な手紙。
あれがあれば。誰かに託す事が出来れば。その誰かさえ生き残ってくれれば。
血塗れた左手で自分の鞄に手を伸ばした時、急激に鞄が遠のいた。

錯覚ではない。明らかに鞄が、いや、自分が鞄から遠のいていた。
後ろから凄い力でコートが引っ張られている。それに抗う体力もなく、なすがままに引き摺られる。

「すんません!!村松さん、すんません!!」
さっきの声。大声で叫んでいる。だがその大声すら、聞き取るのがやっとだった。
耳が遠くなっているのか、痛みに神経が集中しているのか。それは分からない。
「鞄……鞄を……。」
掠れた声は、言葉にならない。左手で必死で鞄を指差す。
「馬鹿です!俺ら、本当に馬鹿です!!」
違う声。その声の主は、どうも泣いているようで。
もはや何を言っても無駄だと悟り、鞄を指差し続ける気力もなく、ゆっくりと降ろす。
562氏代理投下:2005/08/06(土) 21:51:54 ID:ILN8jxFP0
誰も馬鹿って言ってないだろう。だが、逃げなかったんなら確かに馬鹿だ。
俺がせっかく、時間を稼いだのに。馬鹿だ。お前ら、逃げようとしていたじゃないか。
助けにきたにしても、人を引き摺るな。おぶるなり何なりしてくれ。腹も痛いが、砂利も痛い。
だが、命の危険を顧みずに助けてくれた人間に、そんな無粋な事言うつもりはない。

「……ありがとう…。」

引きずられる感覚とようやく得る事ができた安心感に身を委ね、村松は静かに眼を閉じた。


【村松有人(23)・ 相川亮二(59)・石井弘寿(61)・福留孝介(1)B−6】




以上です。レス数が多くなってしまい、すみません。
57代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 22:00:20 ID:X/bmiJW90
2氏乙です!代理投下の方も乙です!
村松さん男前だよ村松さん
ドメ・・・・orz
そして怪我人を引きずるなよ東京学館コンビよ・・・・_| ̄|○
58代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 22:11:43 ID:P23KkCmL0
おおっ!新作きたっ!
村松カコイイ!
59代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 23:49:42 ID:r3B3rBSj0
職人さん乙です!
村松VSドメの描写が緊迫してる分
相川&石井のへたれっぷりが際立ってしょうがない○| ̄|_ワロタケド・・・
60代打名無し@実況は実況板で:2005/08/07(日) 01:16:47 ID:zy1rgSlZ0
ワロスw
相川石井コンビへたれだ`,、('∀`)'`,、
61保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/07(日) 13:38:53 ID:hN6sDF3a0
97.彼は彼なりにまで保管しました。

続きが…気になるとこでどっちも終ってる…。
職人さんがんがれ!
62代打名無し@実況は実況板で:2005/08/08(月) 03:47:02 ID:KosuJ58m0
圧縮防止age
63代打名無し@実況は実況板で:2005/08/08(月) 06:52:32 ID:r6PW16xtO
安藤の死に方萌え
64代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 00:44:44 ID:YqL+4iO3O
定期保守
65代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 22:18:52 ID:kPEeansn0
保守age
66代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 00:43:43 ID:p2J7OMHmO
保守
67代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 13:28:32 ID:BeXNz8d50
2005年1月某日ハワイ

(,,・∀・)は〜れったそらぁ〜そ〜よぐかっぜ〜♪オフはワイハに限るね、坪田くん!
      
(θεθ;) 遊びに来たんじゃないんですよ、自主トレです自主トレ

(,,・∀・)わかってるよw でもなんでも楽しくやらなきゃね!
      そういやガッツ君とマック君は今頃豪華客船でクルージングしてるのかな?
      ボクも行きたかったなぁ

(θεθ;) 二人ともなんか行きたくなさそうでしたよ…アテネに関しては色々と思うこともあるんでしょう

(,,・∀・)そーなの?じゃあ、ますますボクが代わりに行ってあげればよかったなぁ

(θεθ;) そ、そーゆーわけにも…

(,,・∀・)船はどのへんを回ってるんだろうね?ボクらもいっちょクルーザー借りて参加しちゃう?
      ヘリで乗り付けるのもカッコいいよね。ハリウッドの友達に頼んでみようかな〜♪

(θεθ;) バカなこと言ってないで練習しましょうよ〜

(,,・∀・)あはっ♪イッツ・アメリカンジョークだよw




(θεθ;)ooO(関本…どうしてお前今年は来てくれなかったんだ…俺を一人にするなよ…)
68代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 13:34:50 ID:dsKekGFO0
>>67
無邪気な二人が知らないところでゲームは着実に進んでる訳ですが。
69調子に乗って67の続き:2005/08/10(水) 13:37:18 ID:BeXNz8d50
その頃の日本 神奈川県内東芝グラウンド


(・ e ・)あれ〜清水さんどこ行っちゃったんだろ?右投手克服に助言くれるって言ってたのに〜ピヨピヨ

(○ε○)五輪会に行くって行ってたぞ






参考記事
http://www.sanspo.com/tigers/top/tig200501/tig2005010802.html
この記事一番の注目は地味様を五輪エースと言ってるとこだと思う。そしてやっぱりお人よしw
70代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 14:50:28 ID:7NuKPMQ+0
>>67,68
ガッツの話思い出したorzイツモドオリ・・・
これからどうなるんだつД`)・゚・。・゚゚・*:.。
71代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 20:10:49 ID:4d9QA73gO
そういえば、三浦はなぜ吉見にだけ連絡したんだろう?川村も五輪経験者なのに
72代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 20:11:34 ID:jaVEjBcl0
>>67>>69
おまいらのんきだよ・・・・
73代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 18:11:38 ID:9uMQsDRi0
age
74代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 19:10:57 ID:vDlXTWi80
野球バトルロワイアルを見守るスレ出張所
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1121949460/
75代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 23:28:45 ID:qBhk3lqg0
ほしゅ
76代打名無し@実況は実況板で:2005/08/12(金) 13:46:41 ID:e0esur3a0
定期保守
77代打名無し@実況は実況板で:2005/08/12(金) 23:00:12 ID:e0esur3a0
もっかい保守
78代打名無し@実況は実況板で:2005/08/12(金) 23:39:45 ID:kjvduvNko
新作期待age
79鯉2 ◇xBoXfYng9M氏代理投下:2005/08/13(土) 14:41:26 ID:DXUoHn3o0
「花火を、あげれば。」


両手に鞄を持って辺りを慎重に見回しながら歩く相川の後を、村松を背負った石井が続く。
「…村松さん、生きてますか?」
それは何度目の呼びかけだろう。会話が途絶える度、十秒と立たずに相川か石井に呼びかけられる。
「……ああ…。」
呻くように答えた村松の額には、じっとりと汗が滲んでいる。もう、喋る事すら苦痛なのだ。
それでもしつこく呼びかけてくる相川や石井を不安にさせまいと、痛みを堪え声を絞り出す。

ひとまず安全な所まで避難した相川と石井は、村松に今までの経緯を話し、謝り倒した。
この状況の中、防寒具も何も探さず何時間も自分を尾行した阿呆が二人。村松は呆れて物も言えなかった。

しかし、二人の気持ちは分からないでもない。人間、そう簡単に信頼し合える訳がないのだから。
交流が無いから、とか顔が恐い、とか。自分が避けられた理由は多少ショックではあったが、
最終的に二人が自分を助けようとした事には変わり無い。
それが結果的に自分を死に至らしめられる行為になったとしても。責められるはずがなかった。

ただ一言。もういい、と短く答え、すぐに集落に戻って夜はそこで寒さを凌ぐ事を提案すると、
二人は即座に了承した。恐怖と不安に苛まれていたはずの二人の顔は、見違える程明るくなっていた。


そんな彼らに、彼らの声が原因で自分が致命傷を負った事など。言える筈が無かった。


802 ◇xBoXfYng9M氏代理投下:2005/08/13(土) 14:41:58 ID:DXUoHn3o0
「集落についたら、まず真っ先に救急箱探しましょう!」
「…そうだな……あると、いいな……。」
村松を背負う石井の明るい声に比べ、村松の返答は至極弱々しいものであった。
(…こいつら…俺を励ますつもりで言ってるのか?それとも本気で救急箱で間に合うと思ってるのか?)
その傷が救急箱では間に合わない物である事は、村松本人が一番よく分かっていた。
出血はまだ止まらない。鋭い痛みはじわじわと体力と気力を奪っていく。もう、歩く事すらままならない。

(…集落に着くまで、生きて、いられるだろうか?)
痛みに耐える中、ここから集落までの距離が果てしなく遠く感じる。
(……まだ。まだだ。まだ、死ねない。)
だが自分に残された時間は、恐らく、予想以上に、少ない。

「………鞄が、あれば、話は、早かったん、だが。」

村松は腹の痛みをこらえて、一言一言、吐き出すように声を出し始めた。
「お前ら、生きて帰ったら、家族に、伝えてくれ。」
その言葉の意図を、瞬時に理解した相川は、悲痛な形相で振り返る。
「何言ってんですか!村松さんも一緒に帰るんですよ!!」
怒ったように叫ぶその姿は、とても頼りなく見えた。石井の足も、止まる。
「心配、するな。もし、俺が死んだら、の話だ。一応、聞い、とけ。」
なだめるように相川を説き伏せる。正直、一応程度の心構えで聞かれたら困るのだが。
自分が今から言い残すことは、一般的に「遺言」と呼ばれるものなのだから。
相川も石井も黙り込むと、村松は言葉を続けた。
「…生きて、帰れなくて、すまない、と。お前達は、自由に、生きろ、と。」
「村松さん!」
それは、どっちの声だろうか。どっちでもいい。もう、呼びかけには応じられそうに無い。
(…後、何か、言いたい、事……)
急速に襲い来る眠気に必死に耐え、最後の一言を紡ぎ出す。

「……場に……花火を、あげれば、きっ…と……さ……んで……れ…」
812 ◇xBoXfYng9M氏代理投下:2005/08/13(土) 14:43:16 ID:DXUoHn3o0
球場に花火を上げたいんだ。一度だけでも。花火を上げれば、お客さんは喜んでくれる。
福岡ドームでホークスが勝利した時に打ち上げられる花火。あれ以上に綺麗な花火を。
費用は俺が全額負担してもいい。それで少しでもお客さんが喜んでくれるなら、安いもんだ。
それに、そうする事でバファローズの一員になれる気がするんだよ。

なあ――今、生きているのか、死んでいるのかすら分からない――佳知。
生え抜きであるお前に、外様である俺の気持ちは理解できないだろうな。

――外様も外様なりに、チームの力になろうと必死なんだよ――――


「村松さん…?」
村松の声が途絶えた事を不安に感じた相川が、また村松に呼びかける。が、反応は無い。
「…疲れて寝ちゃったんじゃないですか?休ませてあげましょうよ。」
反応が無いが、まだ息はある。ちゃんと生きてますよ、と石井が微笑む。
「怪我人には呼びかけが効果があるって言うだろ?お前も呼びかけてたくせに。」
「いくらなんでも呼びかけすぎです。だから不安になって遺言なんか言い出したんですよ。」
石井の言葉に、そうかな?と相川は反省する。言われてみれば、話しかけ過ぎたかもしれない。
とにかく、話しかけなければ死んでしまう。そんな気がして呼びかけ続けていた。
「…花火って、何の事だろうな?それも遺言なのか?」
村松が言いきったつもりの言葉は、完全には届いていなかった。
花火が上がれば、何だというのだろう?相川は首を傾げる。
「さあ?起きた時に聞きましょうよ。っていうか…相川さんそろそろ替わって下さいよ。」
よいしょ、と村松を背負い直す石井。村松を背負う事に疲れてきたらしい。
自分に比べ若干体格が劣るものの、ほぼ同体格。石井の額から滲んだ汗が何筋も頬を伝う。
「寝ちゃったんだろ?なら集落までお前が運ぶしかないだろ。」
自分よりも少し体格が勝る相川のとんでもない発言に、石井は目を丸くする。
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!村松さん、起きて!村松さん!!」
ゆさゆさと村松の体を揺らすも、村松が目を覚ます気配は無い。
「起こすなよ!せっかく穏やかな顔して寝てんだから!」
相川は笑いながら足早に先へと進んでいく。もう先程の悲痛な面影は、微塵も無い。
822 ◇xBoXfYng9M氏代理投下:2005/08/13(土) 14:43:48 ID:DXUoHn3o0
「…そんな事言って、本当は自分が背負いたくないだけだったりして…。」
「あ?何か言ったか?後輩!」
石井の小さな呟きに、相川は不機嫌そうに振り返る。
「いえ!何でもないっす!先輩!」
慌てて石井は気合の入った声を返す。相川は満足そうに頷いて、微笑む。

「…心配しなくても、ここのエリア抜けたら替わってやるよ。エリアごとに交代しよう。」
そう言って相川は再び石井に背を向けて歩き始める。石井はもう一度村松を背負い直して後に続いた。


二人が村松の静かな死に気づくのは、数十分後の事になる。

【相川亮二(59)・石井弘寿(61)A−5】
【村松有人(23)・死亡 残り21人】
83保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/13(土) 15:58:26 ID:E/g19oAY0
98.花火を、あげれば。まで保管しました。

>>67>>69
小ネタも素敵だったので保管しちゃいました。
迷惑だったら教えてください。

>>79-82
2氏も代理投下の方も乙です。
84代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 18:00:54 ID:Y3s6IZwwo
職人さん乙です!
村松……(つДT)
ヘタレコンビはどこまでも呑気だな…w
85代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 22:48:56 ID:E8iMWyMWO
職人さんも代理投下の人も乙です。
村松…カッコヨス。・゚・(ノД`)・゚・。
何だか死に方の表現がまた。・゚・(ノД`)・゚・。
86代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 23:21:05 ID:CDmpryXJ0
職人様乙です。代理投下の方も乙です。
村松・・・村松・・・・。・゚・(つД`)・゚・。ハナビアガッテルヨハナビ・・・
相川と石井は気付いた後どうなるんだ・・・谷はどう思うんだ・・・?
8775 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 02:59:33 ID:/9wB3lrO0
[見つめる先は]


『計画』は順調で?
高いとも低いとも言いがたい声が背後から聞こえ、星野仙一はデッキの手すりに腕を預け、島を見ていた。

「順調だな、高木よ。」

目を細めても白に二本の細いストライプが等間隔に入ったユニフォームは見えない。
薄暗いと言うには適さないほど日が落ちている中、白い砂浜を見つめる。
そして星野は手すりから腕を下ろすと、海に背を向け腕を組んだ。
思った通り、目の前にはアテネ五輪打撃コーチだった高木豊が立っていた。
人の良さそうな笑みを浮かべて。

「星野さんは誰が勝つと思いますか?」
「はっ、止せ。俺の考えが当たるようなゲームじゃない。」
「まぁ参考にでも聞かせてくださいよ、お菓子あげますから。」

お菓子?と高木の手元を見ると白い紙袋があった。
さっき見つけたんですよー、と言いながらごそごそと中を探る高木に思わず溜息が出る。
風に袋が揺れている。

「のんきな奴だなお前も・・・。」
「あ、何がいいですか?チョコ系ですか塩系ですか?」
「いい、菓子はあんまり食べない。」
「そうなんすか。いやぁ残念。」

笑ってそう言いながら胸ポケットからキャラメルの箱を取り出し、これ見よがしに食べる。
その一連の行動を見ながら星野はもう一度深く息を吐いた。
左手首にはめた時計を見るともうすぐ定刻放送だと告げていた。
くっと顔を上げ、島をもう一度見る。
8875 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:00:26 ID:/9wB3lrO0
灰色の雲が島の空を隠し、乗船しているプリンセス・ダイヤモンド・シーの上空をも覆いこんでいる。
ふっと口元だけで星野は笑った。

「なぁ高木。」

ひゃい?と間の抜けた返事をしたので、星野は半ばうんざりしながら振り返る。
高木がいつの間にやらスルメを食べている姿がそこにあった。
痛くなりそうなこめかみを押さえながらも口を開く。

「・・・・お前は一体何がしたい。」
「何が?ゲーム観戦して普通に家帰って普通の生活したいですね。」

必死にスルメを噛み切ろうとする高木が発した言葉をもう一度口の中で反復する。
ゲーム観戦して普通に家帰って普通の生活。

「笑わせるな高木。」

その言葉に高木の動きが止まる。
スーツの懐から星野はベレッタM92FSを取り出し、左目を閉じて高木の左胸に銃口を合わせた。
右手にスルメを持ったまま高木はただ星野の眼を見つめている。

「・・・・何か私が?」
「このゲームを知ったからにはただでは帰さん。・・・・・そのぐらい、お前でも分かる話だろう。」
「まぁそんなことだろうとは思ってましたけどねぇ。」

銃口を向けられてもなお、高木は普段通り少し間延びした声で話す。
バタバタと風にスーツが煽られ、叩きつけるような音が二人の間に響く。

「でも星野さん、今私を殺したって何のメリットも無いと思いますけどね。」

そういって高木は挑戦的な笑みを浮かべた。
8975 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:01:00 ID:/9wB3lrO0
それに答えるかのように、星野もくっと口を歪める。

「俺がいつお前を今殺すと言った?」

半ば楽しむような、半ば馬鹿にするような口調で星野は笑顔でそう答えた。
高木は星野の笑いに口を開きかけて閉じ、やがて怪訝そうな表情へと変化する。
小さく溜息をつき、やれやれといった様子で星野は懐に拳銃を戻した。
そしてもう一度腕を組み、視線を島に向ける。

「・・・・ずるくないですか星野さん。」
「何がだ。」
「なんかカマ掛けられみたいでショックですよ。」
「お前が早とちりしただけだ。」

何なんですかー、とさっきの表情を消し高木はまたスルメの頭を口の中に入れる。
その時吹いた強い突風が星野を一瞬だけ記憶の向こうに連れて行く。

「・・・・・・懐かしいねぇ。」
「は?」

星野は高木の疑問符に答えることなく、昔あった出来事を早送りで思い出していた。
強風は星野達以外にも襲い掛かっている。

―――『あの時』とよく似ている。
悪天候、無人島、そしてベレッタ。
そして・・・・

ここまで来ると運命を感じるな、と思いつつそっと微笑んだ。
9075 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:01:31 ID:/9wB3lrO0

「・・・・・高木、お前さっき誰が勝つか聞いたな。」

まだスルメ相手に格闘を続けている高木を見ずに星野は続けた。

「俺は岩瀬と上原だ。」
「岩瀬?また微妙なところ突きますね。」

上原は分かりますけどね、と言う高木をあざ笑う。
お前は分かっていない。

「・・・・高木、投手にとっての『エース』という称号はどのくらいの重さだと思う?」

せわしなく動いていた高木の口が止まった。
とんとんと手すりを指で叩きながら、星野は自慢するように話し続ける。
お前には分からんだろうな。野手には決して分からんもんだよ。

「そこまで前置きするんだったらよほど凄い重さなんでしょうね。」
「そうだな。ざっと37人だ。」

一瞬高木の目が見開かれる。
『エースになりたがった男』―――『あの男』を越せるものと言えば、今回はあの二人しか居るまい。
あの男と似た部分が多い岩瀬と、エースになりたがっている上原。
まぁ『あの男』は少々変わってはいたが・・・。
そんなぼんやりとした星野の考えを止めるがのごとく、高木がある名前を告げる。
それを聞いた星野は正解だ、と呟くように口にした。

「よく知っていたな。」

感心だ、といった様子で星野が高木を見る。
まぁ、と言い出し高木は何かを思い出しているのか少し沈黙した。
9175 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:02:37 ID:/9wB3lrO0
「・・・あの後不自然な点が多過ぎましたからね。」
「そうか。」

ざわめく波音と吹きすさぶ冬の風音は交じり合い、不協和音とも何とも言えぬ音を作り出している。
星野はその中で目を閉じ、首を曲げてうつむいた。

「高木。・・・・後二つ聞きたいことがある。」
「はい?」
「まず一つ目はお前の予想が聞きたい。」

瞼を開け顔を上げる。
相変わらず高木はスルメを口に入れたままだ。
うーと唸ると、口に入れたスルメが動く。

「さっきまでは城島、松坂、上原辺りだったんですけどねぇ。武器ファイル見て相川辺りもありかなと。」
「ほう。」
「けどやっぱり城島ですかねぇ。上原も捨てがたいですけど。」
「何故そう思う。」
「うー・・・・・・そうですね、総合的に見ていいですし、捕手ですから頭も回るでしょうし。敵にしたら一番恐ろしいタイプですからかね〜。」

だからこそゲームに乗ってると信じたいですけど。
高木はそこまで言うとスルメを諦めたのか白い紙袋の中にあるスルメの袋に戻した。
なるほど、と小さく呟き星野は天を仰いだ。
今にも雨粒が落ちてきそうな空だと、改めて感じながら自分に言い聞かせるように星野は二つの台詞を口にした。

「もし城島がゲームに乗らず俺達に反抗するならアイツは悪だ。
でも城島がもしゲームに乗っているなら俺達には正義だ。」

本当は正義など無い。
あるのは主観的でしかない『正義』と『悪』だ。
島をじっと見つめつつ、その二つの台詞は喉の奥にせき止めることにした。
9275 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:03:04 ID:/9wB3lrO0
そして納得したように縦に首を振る高木を見て、星野は手すりから体を離す。
時計を見ると後10数分しか無い。
ふぅと息をつき、船室に戻りかけて高木をもう一度見た。

「後一つ質問だ。」

キャラメルの包装紙を剥いでいた高木はその声に顔を上げた。


「お前はどこまで『計画』のことを知っている?」

冷たい北風が二人の体に叩きつけられる。
高木はいつもの通り、小さな笑みを浮かべていた。

9375 ◆7581q1C1/U :2005/08/14(日) 03:03:38 ID:/9wB3lrO0

最後まで確認しろ。印刷終わりました。データ全部移動させたか。
いつ来ても慌しそうだ、と考えながら床全体に広がるコードに足を引っ掛けないように歩く。

「星野様、死亡者リストと禁止エリアをまとめた紙でございます。こちらを見られながら定刻放送を・・・・」
「わざわざすまんな。」

黒服の男は一枚の紙を星野に渡した後、忙しそうに大スクリーンの前へ行った。
豪華絢爛なシャンデリアには光が灯っているのを見上げながらソファーに座る。
革張りのソファーは適度に体を埋めた。
ん、と思い出したように懐に手を入れていた星野が声を出す。

「しまった、海に銃を落としたんだった。」
「ではすぐに取りに行きましょう。」
「あ、いや。そうだな・・・ベレッタじゃない奴にしてくれ。」
「・・・・かしこまりました。」

遠くなる足音と混ざる低い機械音を聞きながら星野は目を閉じる。
そしてしばらく何事か考えた後、目を開けると紙の内容を確認した。
ゲーム開始から6時間が経とうとしている。
94458 ◇EKBnf1A7Os氏代理投下:2005/08/14(日) 09:52:18 ID:JB/hM9cz0
「変わらぬ信念」

「いかにも診療所って感じっすね。」
民家の中に紛れて佇むまさに町の小さな診療所といった建物の前、清水は言う。
「じゃ、早速中に入るか…」
中に誰かいるかも知れない。用心するようにつぶやく小林の肩を小笠原はぽんと叩いた。
「俺はここで…」
「え?ちょっと待ってくださいよ!本当に診療所でさよならする気だったんすか?」
そりゃないだろうと慌てる清水に、小笠原はただ苦笑するだけである。
「…小笠原さん。こうして偶然出会ったのも深い縁だと思うんですよ。
俺達とあなたはもう仲間だ。一緒に行動しましょう。それとも…」
言葉を続けようとする小林を小笠原はそっと手で制する。
「俺の手が仲間の血で汚れるような事だけはこの先、何があってもできない。
俺の血で他の誰かの手が汚れるぶんには一向に構わないけどな。」
「それって…あ、あかんて!」
小笠原の言葉の意味するもの…すなわち死に場所を求める事という意味を
くみ取った清水は、冗談じゃないと詰め寄る。
「あかん!あんたは死んだりしちゃいけない人や!せやからっ…」
「…ナオ。よすんだ。」
瞳を伏せたまま小林は低い声で制すると、悲しげに小笠原に向き直す。
「俺は自分から命を捨てる奴ほどの阿呆はいないと思ってます。
そんな阿呆を仲間にしても、この先良い事なんか何も無いですからね…
どうぞ好きにしてください。」
「雅やん!」
「お前は黙ってろ。…死にたい奴は死なせればいい。
生き残りたいと願う奴等が何人いると思ってるんだ。」
キツイ言葉を発しながらも、小林の瞳は悲痛そのものであり
それは彼なりの精一杯の気遣いだと悟った小笠原は、小さく笑う。
95458 ◇EKBnf1A7Os氏代理投下:2005/08/14(日) 09:53:22 ID:JB/hM9cz0
「…小林の言う通りだ。阿呆なんかに構ってる余裕もないだろう。」
「小笠原さん…あんたは誰かに殺されてもええと言うんですか?
んで、あんたを殺した誰かはますます加速付いて…それでもええって…」
「ナオ、よせ…」
縋る視線で訴えかける清水を制する小林は、小さくため息をつく。
「……」
そんな清水の言葉に小笠原は何とも言えない表情で無言になるが
すぐに元の無表情に戻ると、地面にある鞄を背負う。
「…じゃあな。お前らは…」
「生き残ってくれ、なんて死に行く人に言われたくないですよ。」
最後まで突っ慳貪な物言いの小林に、小笠原もまた苦笑したまま
背を向け、野球場目指しゆっくりと歩き出す。
「俺、やっぱり嫌や…雅やんは本当にええんか?このまま…」
「ナオ!よせと言ってんだろ!」
堪えきれず小笠原を追いかけようとする清水の腕を掴み、小林は怒号する。
「俺らが生き残りたいと願うように…小笠原さんは自分の命は自分でケリ付けたいって
願ってるんだ…俺らに止められて考え変えられるほど簡単な意志なわけないだろ。」
「せやかて…」
「…俺だって本当は…でも…」
自分たちのいざこざなどもはや眼中に無いように、振り返る事無く立ち去っていく
小笠原の背を見送りながら、小林は首を振る。
「生にしがみつく俺らは、小笠原さんを苦しめるだけだ…」
「……」
そんな小林の物言いに清水は何も言えぬまま、じっと俯くことしかできなかった。
96458 ◇EKBnf1A7Os氏代理投下:2005/08/14(日) 09:54:57 ID:JB/hM9cz0
今まであの世の事など考えた事もなかったが、今の自分の行き着く先は
最愛の娘達のような天使の居る天国か、
はたまた豪華客船の悪鬼達のような悪魔の居る地獄か…
どちらでもいいから、バッドとグローブを持っていけたらいいな。
そのような事を考えながらも小笠原はただ黙々と歩く。
(あの2人は…どうなるかな。)
互いを信じあう2人の姿に己の信念がぐらつきそうになった。
あの2人と行動を決めたのも、心のどこかで思いとどまりたかった
からかもしれない。誰かを信じ、そのためならば己の手を汚すような事が
あっても…そういった生の執着に目覚めたかったからかもしれない。
「…結局、考えは変わらなかったが…」
あの2人に出会えて本当に良かったと思えた。
こんな状況でも互いを信じ合うあの2人の姿を見て安堵した。
どのような時でも切れない情と絆というものは存在するのだ、
最愛の妻と娘達が生きていくこの世界は、人間はまだ大丈夫だ。
たとえ自分が居なくても…小笠原は小さく笑うと、再び歩き出す。
「野球場に…誰かいるかな。誰か来るかな…」
誰でもいい。たとえそれが仲間を殺す気でいる者でも構わない。
キャッチボールさえしてくれれば、野球人のまま終らせてくれるならば。
もう、少しだ。
もう少しで辿り着く。静かな光りを湛えた瞳を真っすぐに前方に向け、
ただひたすら野球場を目指し、小笠原は歩くのであった。

【清水直行(11)・小林雅英(30)・小笠原道大(2)G-4 】


97代打名無し@実況は実況板で:2005/08/14(日) 09:56:29 ID:JB/hM9cz0
掲示板にアップされていたので代理投下しました。
途中sage忘れてすみませんでした。
98代打名無し@実況は実況板で:2005/08/14(日) 23:57:27 ID:9pSxHHM50
職人の皆様乙です!
ガッツ切ないよガッツ……。・゚・(ノД`)・゚・。
99代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 17:09:26 ID:zMIvuVJN0
大量投下キテター!!
職人さん方乙です!
鴎コンビイイヨー
そのぶん余計にガッツ悲しいよガッツ…
100保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/15(月) 17:23:16 ID:/ZhELNWv0
99.変わらぬ信念・100.見つめる先はまで保管しました。
スレと保管の順番が逆ですが、
避難所投下の早かった方を先にしました。

ここ最近の展開が泣ける。つД`)・゚・。・゚゚・*:.。
101代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 21:12:20 ID:14aCdPwC0
ガッツage
102代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 21:42:49 ID:iZysVYGIO
…上がってないぞ。保守age。
103代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 23:05:55 ID:xECEspvg0
職人様方新作乙でございます!

アリーアリー・・・・orzハナビタノシイヨハナビ
相川&石井相変わらず過ぎorz
星野と高木KOEEEEEEEEEE!
ガッツー(つД`)ブジニキャッチボールデキルノカー?
地味様とコバマサはこれからどうなるんだ・・・。
104代打名無し@実況は実況板で:2005/08/16(火) 02:09:39 ID:Zr07bVU70
|つttp://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/26.jpg
|イツモイツモタノシミニシテマス
|ショクニンサマガタ、オカラダニオキヲツケテクダサイネ
105代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 10:27:01 ID:NiMeqp8SO
保守。
106107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/17(水) 15:48:44 ID:Al9j5kfa0
野球小僧とリアリスト

「あー、野球やりたいっ!」
松坂は肩をぐるぐる回して、上原を見た。
「こんなん、ホントやってらんないっすよねぇ!?」
「……そうやね」
上原は、あまりテンションが高いとはいえない声でぼそりと返す。
「どうしたんすか? 上原さん、元気ないすっよ」
「この状況で元気一杯なお前の方がどうか思うで。俺ら殺し合いに放りこまれてるんやで?」
「ネガティブだなぁ。殺し合いなんかそう簡単に起こりませんて! 俺が絶対阻止してみせます!」
拳を握りしめて力説する松坂に、上原は呆れた視線を向けた。
「せやかて、お前さっき銃声聞いたて言うてたやないか」
それに、さきほど聞いた話では、松坂は学校の放送機材を使ってゲーム阻止を呼びかけるつもりだったという。
アテが外れたばかりだというのに、何故かやる気満々でいる松坂のテンションは正直うっとおしい。

こいつ、アホなんとちゃうかな。

当の松坂は拾った棒切れでバッティングの真似をしながら道に続く垣根の葉を散らしたりしている。
手入れされないまま放置されたツバキの垣根は、枝が伸び放題で歩くのに邪魔なくらいだった。
しかし、いくら今は無人の集落とはいえ、近所のワルガキそのままの行動はプロ野球選手としては褒められたものではない。
「お前、ピッチャーのくせにほんまバッティング好きやね」
上原は内心の呆れ具合をオブラートに包んで発言したが、松坂にそのあたりの機微は通じない。
「好きっすよ。パは投手打てないから物足りないけど、今年は交流戦があるから楽しみです! 俺、絶対ホームラン打ちますよ!」
「ほー。打てるもんなら打ってみい。絶対無理やけどな。セリーグは甘かないで」
「あ、言いましたね。そんならおたくから打ちますよ!」
「あほ。ジャイアンツなめんなや。無理無理」
だいいちお前はここで死ぬんやから、と上原は心の中でつけ加えた。

残念やったな、お前は交流戦には出れへんよ。お前も由伸も出れへん。誰も出れへん。
皆ここで死ぬんやから。俺以外は全員死ぬんやから。
107107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/17(水) 15:51:25 ID:Al9j5kfa0
しかし、松坂はそんな上原の心も知らずに無邪気に憤慨している。
「うわー、アッタマきた。絶対上原さんから打ってみせますからね!」
「俺と当たるかわからんやん」
「うちは去年の日本一ですよ? エースぶつけてくるに決まってるじゃないすか」
「なんや、それ嫌味か? 過去の栄光にすがってると足元すくわれんで」
「すがってませんよ。今年も絶対日本一になりますから」
松坂はすまして言った。

それで? V2達成したらどうすんねん。
来年はメジャーか? ポスティングなんか簡単にできる思うてんのか?
そんなまわりくどいことせんでも、ここで他の奴ら皆殺しにすればメジャー行けるやん。
そっちの方が簡単で、確実やん。

上原には「ゲームを潰す」という松坂の思考が甘っちょろい能天気な考えにしか思えない。
本当に、全員で仲良くここを脱出などできるとでも思っているのだろうか。
すでに死人が出ているかもしれないのに?
すでに殺人者が出ているかもしれないのに?

だとしたら、やっぱり相当のアホやな。
俺の敵やない……。

上原がそこまで考えた時だった。
ふと、視界の隅でなにかが弾けた。ぱちっと小さな音がして、頬に何かが当たる。
「ん?」


上原は、何かが飛んできた方を見た。
安っぽい木でできた電信柱、ちょうど上原の目の高さに穴が開いていた。
そして、今その破片がとんで来たのだと知ると同時に、全身が泡立った。

「うわあ!」
108107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/17(水) 15:53:48 ID:Al9j5kfa0
上原は松坂を突き飛ばすようにして、垣根の影にすべり込む。
「った、なにすんで……!」
突き飛ばされた松坂が怒鳴りかけるのに、上原も怒鳴り返す。
「あほ! 狙撃や!」
言ってしまってから、しまったと思う。松坂を囮にすれば一石二鳥だったのに。

あー、くそ。チャンスやったのに。いきなりなんやもんな。

さすがの松坂も驚いて身を潜める。
その目の前、さっきまで自分達が歩いていた砂利敷きの道で、小石が小さく跳ね上がるのが見えた。
「うわ、マジかよ」
二人が垣根を突き破って逃げ込んだ先は、雑草が生え放題の広い庭だった。
建物の影に隠れるには、3メートルほど走らなければならない。
バリケードとしては頼りなさすぎる二人より背丈の低いツバキの植え込みだけが、今は彼らと狙撃者を隔てる唯一のものだった。
「早くあっちに隠れないとっ!」
「けど、どっから撃っとんかわからんし、背中見せたら狙い撃ちやで!」
言ってる間にも、もう一発。
上原の目の前でツバキの花の首が飛んだ。
「あかん、狙い正確になってきとるやん!」

そもそもなんで音がしないんだ!?
銃を撃ってるはずのに!!

しかし、焦る上原をよそに松坂が得意げに笑った。
「ダイジョーブ! 俺、手榴弾持ってます! これでそのへん吹っ飛ばして煙幕張りますからその間に逃げましょう!」
言うなりポケットから深緑の楕円形の物体を取り出し、腕を後ろに振りかぶる。
「いっすか!? いちにのさんで投げますからちゃんとスタート切ってくださいよ!」
「ちょ、待っ……」
しかし、松坂は上原の返事を待たずにカウントを始めた。
109107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/17(水) 15:58:36 ID:Al9j5kfa0

「いーち」

いきなり手榴弾て、なんやねん!

「にーい」

こいつそんな危ないモン持っとったんか!?

「さんっ!」

上原のとまどいにまったく構わず。
チンと澄んだ音を響かせて、松坂は手榴弾のピンを抜いた。


【松坂大輔(18)・上原浩治(19)G−4】
110代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 16:25:59 ID:G/D9U0gr0
職人様GJです!
って松坂ちょっと待てお前ー!!Σ(゚Д゚;)
111代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 00:03:01 ID:SDVevPhe0
何か松坂が大好きになってきたw
112代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 01:23:21 ID:S4A8EGD9O
太輔天然でステキスw
巻き込まれる上原も面白いw

画像職人さんも職人さんも乙です!
113代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 14:07:31 ID:J4UBOV9F0
松坂いいキャラしてるw
狙撃してんのはやっぱり…
114代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 17:38:58 ID:dLCRDP+N0
>>113
あの人だよね…
安藤から奪った武器がどう絡んでくるか個人的に楽しみだけど、
当分はスナイパーだよな
115代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 20:25:09 ID:qcb4K9Zco
あげとく
116代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:27:36 ID:fYHpBRUt0
職人さん乙です!
松坂いい味出してるなぁw
だましてる上原の方が振り回されててワロスwww
117代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:39:24 ID:xwNoPIWt0
野球バトルロワイアル総合雑談所
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1124368992/
118代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 06:51:24 ID:4WBGpYkP0
松坂激しすぎwwww
119代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 10:34:38 ID:22idW+eq0
マーダーじゃないのにやりたい放題だなw
大輔おもしろいよ大輔
120代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 11:45:56 ID:kb7SiXIW0
職人さんGJ!
悪の雑草魂も天然にはかなわないのか?w

この二人に笑かせられるとは思わなかった。
東京学館コンビに続くお笑い系として暴走してって欲しいw
121代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 22:25:53 ID:Z+wjLm3v0
ほす
122代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 12:09:13 ID:Cwwha57z0
捕手
1232 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:31:16 ID:Me2i8tpF0
「面倒嫌いを動かすもの」


すっかり暗くなった森の中、城島はしばらく森を彷徨う和田の様子を観察していた。
足早に歩いていたかと思えば、突然立ち止まったり。フラフラとした足取りになったり。
それの繰り返しで、何をどうする様子も無い。恐らく、これ以上の観察は時間の無駄だろう。
(…そろそろ接触するか。)
城島は鞄から懐中電灯を取り出し、和田が光に気づかないようにスイッチを入れる。
「…和田!」
呼びかけると同時に和田に光を向けると、和田は咄嗟に銃を構え、怯えた目で城島を凝視する。
焦燥に駆られた表情から、和田が平常心で無い事が容易に見て取れた。
「城島、さん…。」
銃を構える手も、足も、歯も。哀れな位に震えている。試し撃ち前の笑顔が、嘘のようだ。
(…もう弾はないはずだけどな…。)
だが、それはあくまで城島の憶測にしか過ぎない。万が一がある。事は慎重に進めなければ。
「…ケリは?つけれたのか?」
いつもと同じ声を心がけて呼びかけると、和田はしばらくの沈黙の後、首を小さく左右に振った。
(…やっぱりなぁ。いっつも詰めが甘いんだよ、お前は。)
城島は込み上げてくる嘲笑を抑え、まずは警戒を解こうと、持っていた鞄を開く。
「…お前、喉渇いてないか?」
「……喉…?」
1242 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:31:48 ID:Me2i8tpF0
訝しげに城島の態度を見据える和田の目にはまだ、疑いの感情が宿っている。
当然だろう。一度自分を突き放した人間が掌を変えた様に態度を変えれば、疑わない方がおかしい。
「そう。喉。ほら、お前、鞄忘れて行っただろ。」
そう言って水の入ったペットボトルを取り出し、和田の方に差し出す。
だが和田は城島に近づこうとしない。まだ警戒している。だが、明らかに戸惑っている。
「…どうして…?だって、城島さん、ゲームに…。」
戸惑いを隠そうともしない和田に、一段と明るく言い掛ける。
「お前が試し撃ちなんて馬鹿な真似するから、怒っただけだ。
 この状況でうかつな行動されたらこっちが困るんだ。
 一人になって、それがよく分かっただろ?じゃ、そろそろ移動するぞ。」
「…俺の事…待ってたんですか?」
和田は銃を降ろし、一歩、一歩、ゆっくり近づいてくる。
「当然だろ?捕手は投手を一人にするな、って教えられてんだよ。」
城島がそう言うと、和田はようやく笑顔を取り戻し、ボトルを受取ろうと手を伸ばすが――――


「…お前、本当に馬鹿だな。」

無防備にペットボトルを受取ろうとする和田の足を、城島は思い切り蹴りつけた。
和田が体勢を崩しそのまま地面に伏せるや否や、城島は和田に乗りかかり、首を締め付ける。

「………なぁ、どうしてこんな状況で人を頼ろうとするんだ?」
「ジョ……さ………」
必死でもがくも、息が出来ない。手に力が入らず、城島の手を引き離す事ができない。
城島は更に自分の体重をかけて、和田の喉を圧迫していく。
「俺はもう、自分の事しか考えてないんだよ。その位分かれよ。」
自分の事しか。城島の脳裏に様々な人間が浮かんでは消えていく。

(……あの人も。あの人も。あの人も。皆、自分の事しか考えてなかったな…。)
1252 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:32:25 ID:Me2i8tpF0
城島が尊敬し、憧れ、信頼した彼らは様々な理由をつけてチームを去っていった。
だが結局それは彼らがチームよりもファンよりも、自分自身を優先させた結果だった。
ファンの引きとめも、チームメイトの引きとめも無意味なのだ。結局は、自分自身なのだ。
自分は、自分。他人は、他人でしかないのだと。彼らが去っていく度に、思い知らされた。

「……和田、チームメイトのよしみで俺が引導渡してやるから、迷わず成仏……」
城島が言い切る前に、和田の抵抗が止んだ。同時に、城島の締め付けていた手も止まる。
和田は意識を失ったのは明らかだった。もしかしたら、死んだのかもしれない。
(…それでも、息を吹き返すかも知れない。確実に、殺す。)
城島は改めて両手に力を込めて、和田の喉を圧迫しようとした、その時――

「お前ら、何しとんねん!」

聞き覚えのある声と共に、懐中電灯の光が二人を照らした。
城島はすぐさま手を離して和田の銃を拾い、鞄を背負って森の奥へと走る。


1262 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:32:58 ID:Me2i8tpF0
森を抜け、砂浜に出る。相手が追ってきてはいない事を確認し、一息ついた。
(顔、見られたか…?)
光に照らされた時間は僅か。顔を見られていないにしても、背番号でバレた可能性もある。
(…和田も仕留めそこなったかもしれないな……俺も詰めが甘いな…。)
生きていようが死んでいようが、和田には恨まれるだろう。
もう二度とバッテリーも組む事も無いだろう。ここでも。あの世でも。
(殺したくて殺すんじゃねぇんだけどなぁ…。)
そんな言い訳、殺される側に通用するはずがないか、と城島は自嘲する。
(…人を殺すのってやっぱり、かなり面倒臭いんだな…。)
首を絞めた生々しい感触が、まだ手に残っている。どうしようもなく嫌な感覚。
それは恐らく、誰の首を絞めても感じる物だろう。人を殺す、感覚。
人はこの感覚から逃れようと、銃を発明したんじゃないか?と顔をしかめるが、
和田から奪った銃の残弾数を確認すると、それは苦笑いへと変わった。
鞄に入れておいた予備銃弾の箱から銃弾を5つ取り出し、銃に込める。

本当に殺したい相手など、この島にはいない。
海の向こうで華美にライトアップされた豪華客船の中にいる。
暗い海原の中で存在を強調しているその豪華客船に、激しい怒りが込み上げる。

(…うぜぇんだよ、あんた達。)

城島は豪華客船に向けて一発、届くはずのない弾を放った。


【城島健司(9)・和田毅(21) D−2】
127代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 12:33:36 ID:Me2i8tpF0
2 ◆xBoXfYng9M氏の代理投下でした。
乙です!
128保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/20(土) 13:21:13 ID:Me2i8tpF0
102.面倒嫌いを動かすものまで保管しました。
おまけに>>104氏の画像追加しました。

画像職人さんも職人さんもいつも乙です。
129107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/20(土) 20:31:43 ID:9E0JEkjR0
「狩りの鉄則」


最初に炸裂音。
それから爆風。降り注ぐ小石。もうもうたる砂煙。

それは三浦大輔の度肝を抜くのに充分だった。
今は冷酷な“狙撃者”に変貌を遂げた“ハマの番長”も、あまりのことに銃を取り落として尻餅をつく。

「なっ!?」

立ち込める砂煙の中、呆然と見つめる垣根の向こう。
建物の影へと消えてゆく背中が見えた。
その手前、砂利で舗装された道路にはぽっかり穴が開いて地面がむき出しになっている。

爆弾、か……?

ダイナマイトか手榴弾か。なんにせよ相手が投擲型の爆弾を持っている可能性は高い。
さいわい爆心地は三浦の潜む場所からは距離があったが、直撃を食らっていれば四肢が吹っ飛んでいただろう。
三浦ははじめて自分が狩られる側に回る可能性にぞくりとした。
しばらくして、それ以上の反撃の気配がないことに胸を撫で下ろす。
「ちっ……」
三浦は立ち上がって、袖で顔をぬぐった。いつの間にか、大量の汗をかいていた。
汗に貼りついた砂が顔をこする。砂塵で目が痛い。
顔を洗いたい、と思った。冷たい水で思いっきり顔を洗って、気分を入れ替えたい。

反撃してくるとは、うかつだったな……。
130107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/20(土) 20:33:45 ID:9E0JEkjR0
安藤をあっさり仕留めたことで、自分の武器の優位性を信じすぎていたかもしれない。
せっかくの獲物。それも大物ニ匹。どちらかだけでも仕留めたかったのに。
動いてる標的に当てることは想像以上に難しかった。
完全に立ち止まるまで撃つのを待つべきだったかもしれないが、陽が傾くにつれますます薄暗くなった空が彼の心を焦らせた。
暗くなるほど狙撃の精度は落ちるのだから。

けど、焦って仕損じたなら意味がない……。
俺もまだ未熟ってことか。

三浦は、深呼吸をひとつすると、爆発に驚いて放り出してしまった狙撃銃を拾う。
松坂と上原を追おうという気にはならなかった。
まだそう遠くには行っていないはずだが、無理に深追いすることはない。強敵ならなおさらだ。
狩りの鉄則は、弱いものから狙うこと。
三浦は気を取り直して次の獲物を探すことにした。
次はもっと慎重に、相手に隙ができるまでしっかり待とう。
ピッチングと同じだ。焦ってストライクを取りに行けば手痛い反撃に遭うこともある。

二人を逃がしたのは惜しかったが、教訓は次回に生かせばいい。
「粘り強さには自信があるんだからな」
三浦の顔は不敵な笑みを取り戻していた。
狙撃銃のスコープに亀裂が入っていることには、まだ気づいていなかった。


【三浦大輔(17) G−4】
131代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 22:09:56 ID:g8H+E7NT0
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
城、何だか哀しいよ城・・・・。
三浦、やばくないか三浦・・・。
132代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 23:29:05 ID:LgZF3xxUO
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
ジョーがヤル気になっとる!
ってか三浦のライフル…!
133代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 23:59:22 ID:6tBB3QYf0
初めてこのスレ知ったんだが職人さんすごいな
てかこれ本にしたら普通に売れそうだ
134代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 01:25:02 ID:8YkbYtLM0
新作沢山キター!!
ジョー、淡々としてるから余計にこえぇ…
三浦、不敵に笑ってる場合じゃないんだが…

深度ヤバそうなので一旦ageます。
135代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 02:03:01 ID:SNqv33RP0
城島&和田キター
凄い〜。豪華客船に発砲キター(w
136代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 15:41:05 ID:uPQIeHpE0
「何しとんねん!」って叫んだのはあの人だよな…
和田テラカワイソスw
137代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 19:05:34 ID:KS3Ohhig0
職人さん乙です!
和田はどうなった?!城がこういうキャラなのって初めてで新鮮だ。
138代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 00:52:43 ID:s/5ktOirO
最近動いてないが岩隈が気になっている。
139代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 11:09:08 ID:Fp1JnHns0
ちょっと不安な深さなので一応あげ。
140代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 00:51:27 ID:1isSEqCBO
保守
141458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:40:55 ID:YVEEymEi0
「解放」

「お前ら、何しとんねん!」
懐中電灯で照らした先に見えた光景に宮本は叫んだ。
追おうとするも一人はあっという間に退散し、一人はぐったりとしたままだ。
「…!和田!」
ぐったりと地面に倒れているのは和田であり、思わず由伸は駆け寄った。
「……」
首に残るくっきりとした鬱血の跡…青い顔で倒れている和田は気道閉鎖による
窒息状態であり、由伸はまず顎を掴み、口の中を調べる。
「血の固まりとかの異物は無いようだな…」
そうつぶやくと、空気を通す気道を確保すべく、和田の顎先を
持ち上げるようにして頭を後に逸らさせる。
「これで…大丈夫かな?」
微かに息をし始める和田を見ながら、由伸は安堵のため息をつく。
「…どんな馬鹿だって信用してない選手に首を絞められる程接近しませんよ。
…よっぽど信頼している相手だったんでしょうね。」
そんな相手に首を絞められ殺されそうになった…由伸は小さく首を振る。
「そらそうやろな。…捕手を信用せん投手なんてそうおらんやろ。」
ほんの一瞬、照らした背番号を思いだし、宮本は苦々しそうにつぶやいた。
「!それって…そんなことが…あっていいのかよ…」
やるせないように、由伸が悲痛なため息を漏らした時であった。
「…う…」
呻き声と共に和田の身体が微かに動いた。
「大丈夫か?」
「…!」
気がついた和田は、恐怖で目を見開くと思いきり暴れ、押しのけようとする。
「う、うわああっ…!」
「落ち着け!いてっ…暴れるなって!」
「く、来るなっ…助けっ…うっ…ごほっ…」
恐怖と絶望のため、半狂乱で叫ぶ和田であったが、息を吹き返した直後に
暴れたせいか、たまらずむせかえり、激しく咳き込む。
142458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:41:21 ID:YVEEymEi0
「…だから暴れるなって言ったのに。」
呆れた声を出す由伸であったが、それでもあやうく殺されそうになったのだ。
とても平常心など保てるわけがない、と瞳を曇らせる。
「ジョーさんがっ…ジョーさんが…嘘だ…ごほっ…うそ…だ…」
ヒューヒューと気管の音を立てながら、和田はかろうじてつぶやくと
再び激しく咳き込んだ。
「な…んで…俺はそんなに…悪い?ジョーさんに…」
やはり城島であったか…悲痛に眉をひそめる由伸の横で、和田は震える。
先ほどの城島の手の感覚…思いだしただけでも恐怖、絶望、悲痛が沸き上がり、
その顔を蒼白にさせるが、やがて全ての力が抜けきったようにため息をつく。
「俺は…ジョーさんに殺されそうになった俺は…
本当は凄い悪人なんでしょうね。自分じゃそう思わなかったけど…」
今までの混乱が嘘のように静かになり、和田は淡々とつぶやく。
城島に殺されそうになったという現実は、和田から混乱するという気力さえも
奪ってしまうほどであり、まさに無気力そのものの瞳であった。
「そんな俺は生きる資格も無いんでしょうね…だからもう…その銃で俺を…」
由伸の手に握られたS&WM19コンバットマグナム、ベルトに括り付けられた
頑丈な革袋に詰った補充用弾丸をただ和田はぼんやりと見つめる。
「なあ…」
言いかけた宮本であったが、由伸に手で制されると、口をつぐむ。
そしてここは由伸に任せよう、と傍観を決め込むように木にもたれる。
「きっと俺はどうしようもない悪人だから…ジョーさんに突き放されて…
ずっと一人で…怯え続けて、逃げて…ジョーさんに殺されそうになった…」
和田はただ虚ろな視線と声色で言葉を続ける。
「俺なんかもう…ここで…死ぬべきなんです。どうせ誰もいやしない。
もう…疲れました。」
自分自身に翻弄されることにもう疲れた…和田は静かに目を閉じる。
由伸は暫し悲痛な視線を送っていたが、やがて小さくため息をつく。
143458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:41:43 ID:YVEEymEi0
「…あのな、どんな奴にだって誰かしら側に居るもんなんだ。
それを見ようとしなきゃ…ずっと誰も居ないままだと思う。」
そんな由伸の言葉に和田は弾かれたように目をぱっと見開くが、大きく首を振る。
「だって…だって俺は…」
「俺は信じてた。必ず誰か居るって。だから宮本さんと会えたと思っている。」
「…じゃあ俺には誰がいるというんです?誰か居るんですか?」
ぶっきらぼうに、それでいて恐る恐る口にする和田に由伸は静かな視線を送る。
「それを決めるのはお前だ。お前が俺達をそう認識するなら…そうなる。」
「俺が…決める…?俺は…」
色々な感情があふれ出すのを抑えるように、和田は膝を抱えると、顔をうずめる。
「…俺、何の武器も無いし、すぐにパニくるし…何の役にもたちませんよ…」
「そんなの分かってる。」
膝に顔を埋めたままの和田は、小さく首を振る。
「いいんですか…?俺、あんたを殺そうとした…それでもいいんですか?」
「だから…俺らがどうとかじゃない。お前が決めるんだ。」
その言葉はボロボロにされた心に染み入るもので、和田は何度も頷く。
「俺は…もう一度…誰かを信じたい…誰かに受け入れてもらいたい…」
抑えていた感情はあふれ出し、嗚咽混じりに和田はつぶやく。
「決まりだな。」
安堵するように由伸は笑うと、その肩をぽんと叩いた。
「ありがとう…ございます…」
膝に顔を埋めたまま、嗚咽混じりに礼を言う和田は、
今、やっと救いようの無い絶望から解放されたのだろう。
「一件落着、か。」
木にもたれる宮本は、苦笑混じりにつぶやくと、
時が止まったかのように静かな森の中をゆっくりと見渡すのであった。

【宮本慎也(6)・和田毅(21)・高橋由伸(24) D-2】
144代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 20:49:12 ID:pXN1gbJ/0
職人様乙です!
ついに和田がルパンペアを信頼したー!
・・・・でもまだ不安だよ和田orz
145代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 23:36:43 ID:Dj9AT9JvO
職人様お疲れです!

この世界でのルパンとジゲンは眩しい、眩しいよ…


して、和田。
しっかりイキロ・゚・(ノД`)・゚・
146代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 23:55:58 ID:1kglNtFR0
乙です。
キャプだったのか…。何故か止めに入ったのが黒田かなぁと思って
やっぱり和田とルパン組は分かり合えないままなんかと考えてたから安心した…
147代打名無し@実況は実況版で:2005/08/24(水) 02:51:04 ID:SgXq6Rzm0
職人様お疲れ様です。
この章は、読んでて泣いてしまいました。
148代打名無し@実況は実況板で:2005/08/24(水) 22:10:45 ID:7UAlln0Z0
保守あげ。

ルパン組と和田…ちょっと感動しましたよ。
14975 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:40:00 ID:Nm2wsMbi0
[裏切り者は二度笑う]


薄気味悪いなぁ・・・ここ・・・。
もうすっかり日も暮れようかという時間帯にようやく岩瀬は目標であった灯台に辿りついた。

思い起こせば、鞄の中の武器を確認したあの時からもう随分経ってるんだな。
ここまで来る間に、誰かに見つかりかけて、逃げ込んだ森の中で誰かが凄い勢いで走る音が聞こえて。
ようやく安心できる場所に来れたよ、と岩瀬は白い灯台を見上げながら考えていた。

「さて、中に・・・・・」

入ろうかと一歩足を踏み出したその時だった。
突如キーンと耳をふさぎたくなるような不快で高い機械音が大音量で岩瀬の頭を貫く。
思わず顔をしかめ、両手で両耳を塞いでしゃがみこむ。
な、何なんだ一体。
ぱっと空を見上げると、今度は聞き覚えのあるような無いようなクラシック音楽が雑音と共に流れ出した。
岩瀬はしばらく考え、それが『エリーゼのために』だという事を思い出した。

『お前ら元気にしてるか?放送の時間や。』

その『エリーゼのために』が半分以上流れた後、音量が下がり、代わりに星野の声が顔を出した。
あ、もうそんな時間なんだ。と呟き、岩瀬は地面に座り込んだ。

『まずは死亡者からやな。死んだ順に行くぞー。』

もう死んだ奴がいるのか。
ごそごそとホルダーとボールペンと地図と名簿を鞄から出しながら、その言葉が頭に浮かんだ。
そして名簿をホルダーの上に乗せ、地面の上に置く。

『5番中村紀洋ー、16番安藤優也ー、いじょ・・・・』
15075 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:41:07 ID:Nm2wsMbi0
星野の言葉が妙な場所で途切れ、岩瀬は顔を上げた。
耳をすませてよく聞いてみると遠くに話し声がしている。
何か船の方であったのかー、とぼんやり思っていると再び声が聞こえ始めた。
潮の香りが鼻をくすぐる。

『・・えーっとどこまでか・・そうそう、16番安藤優也。それで今しがた村松・・・23番の村松有人が死んだ。
やからこの6時間で3人死んだ事になるな。人数少ない割にはようやっとるやないか。』

中村さんと、安藤と、村松さん・・・っと。
名簿のそれぞれの名前の上にバツ印をつける。
なーんかあれだなぁ、みんなやる気あるんだな。
もしかして俺の出る幕無くないか・・・・、そう考えながら名簿と地図を入れ替える。
すこし砂にまみれた地図は岩瀬の方向音痴さがよく分かる代物だった。

『それじゃあ次ー。禁止エリアの情報行くぞー。今から1時間後にEの4ー』

Eの・・・・・Eの・・・・4・・あった。
『1/19』と乱雑に大きく書き込んだ。
それを見た岩瀬は、湖行きにくくなるんだな・・・・、と今まで通りいささか的外れな思考を繰り広げていた。

『2時間後にHの1、3時間後にFの7。』

『1/20』『1/21』と各ブロックに数字が書き込まれていく。

『で4時間後にGの3、5時間後にBの4や。次の放送と同時にDの6が禁止エリアになるぞ。
禁止エリアは以上・・・・・まぁ、もう一回言ったるからちゃんと聞いとけやー。』
「Gの3と・・・Bの4、Dの6っと。」

最後にDの6ブロックの枠の中に『1/24』と書き込むとボールペンをノックして、ペン先を中に引っ込めた。
星野がもう一度禁止エリアを告げるのを聞きながら、指をさして確認する。
うん、間違え無いな。
15175 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:42:01 ID:Nm2wsMbi0
地図をホルダーの中に入れ、名簿を鞄の側面のポケットに入れる。
ボールペンはユニフォームのズボンのポケットに差し込んだ。

『残り21人やな。この調子やと・・・・単純計算で40時間後・・・3日目の朝の10時か!』

星野の楽しげな言葉に思わず苦笑いが顔中に広がった。
―――星野さんは楽しんでるんだなぁ。そんなに面白いならこっち来ればいいのに。
何の皮肉もなく、岩瀬はそう純粋に考えていた。

『まぁゆっくりじっくり殺しあっとけ。でも最後に死んだ奴から24時間以内に誰も死なんかったら全員バーンで死ぬからな。
それじゃあまた6時間後の真夜中12時に放送や。』

ぶつっと鈍い音がして、再び島に静寂が戻る。
さてとと立ち上がり、岩瀬は気を取り直して灯台内に入る事にした。
大きく息を吸い、大きく吐く。
そして勢いよく扉のノブを掴んで、右に回し引いて扉を開ける。
何年も使われていないのが分かるほど、扉は重く動きも悪かった。
ひょこっと顔を入れると少し埃の匂いが強いものの、それ以外には何てことないコンクリート打ちっぱなしの地面と冷たそうな鉄の螺旋階段が見える。
恐る恐る足を踏み入れ、ドアを静かに閉めると懐中電灯を鞄から取り出しスイッチを入れた。
暖かい黄色とオレンジ色のちょうど中間色ぐらいの光は周りの暗さを更に引き立てる。
しかし岩瀬はその暗さよりも螺旋階段の高さにげんなりしていた。
ぐるぐると頭の上を回る階段を見ながら、『登んなきゃいいけどな・・・・・』と考えている時だった。

『ゴラァ岩瀬ぇっ!』
「はははははいっ!?」

しまった無線!
岩瀬は他の誰も見ていないのにもかかわらず、扉から見えないよう自分の体で隠しながら無線を急いで取り出した。
無線を利き手の右手に、懐中電灯を利き腕の左手に持ち直す。
15275 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:42:34 ID:Nm2wsMbi0

「な、何ですか?」
『・・・・・お前、船の時の威勢はどこ行った。』
「イセイ?何ですかそれ。」
『・・・・・まぁいい。本題に入るぞ。』

イセイって何だ・・・・と岩瀬が正しい熟語を頭で探している間にも時は過ぎる。

『武器の隠し場所だがな、階段がそこにあるやろ。』
「・・・上るんですかぁ?」
『・・・・・やけに嫌そうやな。嫌やったら別にええんぞ。』

いえいえ滅相もない、と慌てて言う。
もう一度階段を見上げると岩瀬は深く溜息をついた。

『上りきったところに海照らす照明がある。それの土台に分かりにくいと思うが鍵穴がついとるんや。まずは上がれ。』
「はーい・・・・・。」

そこまで星野が告げると無線が再び沈黙を宿す。
溜息をつきながらも階段を上り始めた。
下見るな、下見るなよ俺。
自分にそう言い聞かせながら、一段一段重い足取りで上っている。

カンカンカンカン
規則正しいリズムで階段を上る。
手すりを持ち、滑り落ちないように転げ落ちないように細心の注意を払いながらリズムを重ねていく。

そして何とか上へ辿りつく。
何度かちらりと見たコンクリートの地面は黒く染め上がっていた。
あぁ怖かったと思いながらも、岩瀬の体は自然と照明へ向かう。
自分が昔見た灯台のそれとは違い、この島にぴったりとも言える小規模なものがそこにあった。
15375 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:43:14 ID:Nm2wsMbi0

「んで・・・・どうだっけ?」

かぎあなかぎあな〜とのんきに音程の外れた鼻歌を口ずさみながら、しゃがみこみ照明の土台に懐中電灯の光を当てる。
少し古びた横長なそれは静かに焦げ茶色をしていた。
ぐるりと周りを一周しかけて、目が階段から見て左側の土台の面にきらりと光を反射させるものを捕らえた。

ここか。
しゃがみこんだまま一歩前に出て、鍵穴らしきものを探す。
すると左上に職場にありそうな机の鍵のようなくすんだ銀色をした小さい鍵穴を見つけた。
あー、これが本当の灯台下暗し。と考えながら無線を床に置き、右のポケットに入れておいた鍵を取り出す。
こういう時両利きって便利だよな。
右手に懐中電灯、左手に小さな鍵を持ち鍵穴を照らしながら差し込む。
3回失敗して、ようやく入れるとがちゃりと右に回す。
手ごたえがあり、岩瀬は鍵を引き抜いた。

いよいよ武器とご対面か。
座り込み、ゆっくりと扉を引く。

「おぉ・・・・・。」

扉を開けきるとそこには黒い塊があった。
それを懐中電灯で照らす前にその塊の一番上を手に取る。
厚い雲に覆われていた月がひょこっと顔を出し、懐中電灯無しでも手元がよく見えた。
岩瀬の左手の中には一振りの日本刀。

「刀じゃん、うわー俺初めて持ったよー。」

子供のように声をあげながら、すっと鞘から刀身を抜き出す。
白い月光に反射して、その刀文が揺れているように感じた。
うっとりとした目つきで岩瀬は刀を右手に持ち直し、じっくりと上から下まで見つめている。
15475 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:43:56 ID:Nm2wsMbi0
感想を口に出す事でさえもためらわれるその威厳。
遠くに細波の寄せては帰す音を聞きながら、岩瀬は自分の体の底から噴き上げてくるような欲望にそっと手を触れた。


―――これで、人が殺したい。


しばらく岩瀬は白く鈍く輝く一振りの刀から目を離せられなかった。
そこから岩瀬の心を現実に戻らせたのは、他でもないこの刀を手に入れる原因となった星野の声だった。

『岩瀬。そろそろ武器を見たか?』

無言のまま左手に無線を握る。

「・・・・・凄いっすねぇ・・・・。」
『ん?・・・・あぁマシンガンに狙撃用の銃なんでも・・・・』
「凄い・・・・楽しそう・・・・・」
『・・・・・楽しそう?』

予想外の言葉に星野も思わず聞き返す。
しかし岩瀬はお構い無しに続けた。

「くじ運いいっすね・・・・綺麗だ・・・・」

思わず頬ずりしそうになって止める。
無線はノイズ以外何も伝えない。
やがて月は再び雲に隠れ、光を地上に届かせなくなった。
後ろ髪を引かれそうな思いながらも、鞘に刀を戻す。
たった数分の出来事であったが、それでも岩瀬の心奪うのには充分だった。
15575 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:44:40 ID:Nm2wsMbi0

「俺、決めましたよ。」
『・・・何をだ。』

適当に土台の中の袋に入っている武器を何個か鞄の中に無造作に入れると扉と鍵を閉め、岩瀬は刀を左手に握り立ち上がった。
そしてベルトとズボンの間に左手のそれを差し込み、鞘についた紐を適当に落ちないように巻きつけて固結びをする。
空いた左手に無線を、右手に懐中電灯を入れると随分と重くなった鞄を右肩にかけ、階段を降り始めた。

「このゲーム楽しみます。」
『また力強い言葉だな。』
「だって・・・・・。」

先ほどまでは恐怖の対象であった地上がやけに好ましく思える。
それもこれもこれのおかげかな、と岩瀬は左半身に身につけた刀を見た。

「だって、人殺しても罪にならないんでしょう?」

左手の中のそれは再びノイズだけを耳に伝える。
しかし岩瀬はうきうきとした口調で先ほどと同じように続けた。

「あ、人を殺したら自分が死ぬ覚悟しなきゃいけないのは分かってますよ?
でも何かこうドキドキしちゃって、やっぱり何かあれですよね、落ち着かないって言うか何と言うか、もう本当にね・・・・。
あ。星野さんにもありませんでした?思いっきり選手の頭にボール投げたいなーとか、そんな感じなんですよ。
普通そんなことしたら乱闘で真っ先に殴られるからやらないんですけどね、やっぱり死球でもちょっとスカってするじゃないですか、しま

せん?
とにかくとにかく、凄く今は今は・・・・・」
『落ち着かんか。』
「あ、すいません。」

カンカンカンカンカン
さっきと同じようなリズムで、しかしさっきとは違い軽快にで岩瀬は階段を降りる。
15675 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:45:15 ID:Nm2wsMbi0
もう少しだ、もう少しで・・・・。
岩瀬は口元にうっすらと笑みを浮かべていた。

『ところで岩瀬。』
「はい?」
『俺との約束を忘れた訳じゃないだろうな?』

二段飛ばしで階段を下りきる。
あぁその事ですか、と言いながら岩瀬は扉のノブを回し外に出た。
空を見上げれば、今にも強い雨が降ってきそうなほど大きな積乱雲が見えた。
降ったら移動辛いだろうなー、と考えながら灯台にもたれかかる。
星野は岩瀬の返答を待っていた。
無線を口元まで近づけ、岩瀬はその無言の催促に答える。


「・・・・・星野さんが俺を利用するなら、俺は星野さんを利用させてもらいますよ。」
『・・・・そうか。』
15775 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:45:41 ID:Nm2wsMbi0



その後、岩瀬は目標の選手を聞き出すと返事もそぞろに無線を鞄の奥底へ仕舞い込んだ。
今度は邪魔されないように、今度あの人と話す時はまず・・・・。
ゆっくり左手で刀柄をなぞる。

「・・・・・さーて、刀あんまうまく使えないからなぁ・・・・・先に殺しちゃった方が斬るのは楽だよなぁ・・・・・」

目指すはHの4、目標に向かってレッツゴーだ。
のんきに音程の取れていない鼻歌を歌いながら、岩瀬は歩き始めた。
自らの求めるものを探して。

「あー、楽しみだなぁ・・・・・。」

やっぱり勘って、当たるもんだ。
ふと岩瀬は白い招待状のことを思い出した。


【岩瀬仁紀(13) A−1】
158代打名無し@実況は実況板で
リアル死神キタコレ!