1 :
代打名無し@実況は実況板で:
【ローカルルール】
・sage進行、メール欄にsageと書くだけ
・むやみにスレをageないこと(保守ageを除く)
・投下前には本スレリロード、保管庫掲示板の避難所確認は必須
アテネでは避難所の投下も本投下と見なされる
・本スレと避難所で被った場合は基本的に投下時間の早いものを採用
・文末表記は統一しています
通常時【選手名フルネーム(背番号) 現在位置】
死亡時【選手名フルネーム(背番号)・死亡 残り○人】
死亡位置・移動先や目的地等は文末に表記しないでおくとリレーの幅が広がります
・書き手はトリップ推奨(荒れ、騙りを防ぐため)
現行の書き手は初出スレ番+トリップがコテハン
※トリップのつけ方:名前欄に #好きな半角英数文字(8文字)
例: #password → ◆ozOtJW9BFA
【バトロワSSリレーのガイドライン】
第1条/キャラの死、扱いは皆平等
第2条/リアルタイムで書きながら投下しない
第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く
第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。
第5条/前後と矛盾した話をかかない
第6条/他人の名を騙らない
第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など
第8条/総ツッコミには耳をかたむける。
第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。
第10条/ガイドラインを悪用しないこと。
(第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
【リアルタイム書き投下のデメリット】
推敲ができない
⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任)
⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任)
⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任)
複数レスの場合時間がかかる
⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任)
⇒リアルタイム投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任)
バックアップがない
⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任)
上記のデメリットに気づいていない
⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。
文章を見直す(推敲)事は考える事に繋がる。
過去の作品を読み込まず、
自分が書ければそれでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
>>1 乙!自分、立てれなかったから助かりました。
「猿とシマウマ」
藤本が落ちた――金子お手製の――落とし穴の近くの茂みで、二人はその放送を聞いた。
「安藤が…死んだ……?」
穏やかな音楽と共に流れてきた星野の言葉に、藤本はただ立ち尽くすしかなかった。
「村松さんも含めて、これで3人か……。」
金子は近くの木の下に座り込み、懐中電灯で照らした地図に書き込んだ禁止エリアを確認しながら呟く。
殺されるのも嫌だが、首輪が爆発して死ぬのも嫌だ。禁止エリアには用心せねばならない。
顔を上げてうっすらと滲む冷たい汗を拭うと、じっと自分を見る藤本と目が合った。
「…どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「…恐ろしく普通の顔してますね。この状況でそんな顔できるの、多分金子さん位やと思いますよ。」
藤本の言う恐ろしく普通の顔、とはどんな顔の事を言っているのか金子には分からなかった。
ただ、藤本が何を言いたいのかはわかった。
安藤や村松が死んだのに普通の顔をしている自分が気に入らないのだ。
だが普通を装っているつもりは全く無い。なのに何故そんな事を言われるのか。僅かに眉がつりあがる。
(…こう見えても、かなりショックなんだがな…それとも何か?俺に泣き崩れて欲しいのか?)
思わず聞き返したくなったが、面倒臭い事になりそうな気がしてやめた。
「…俺さ、あんまり感情と表情が一致しないんだよ。そのせいで誤解される事も多くてさ。
よく、やる気を出せ!ってファンから言われる。試合中はいつも真剣なんだけどな、俺。」
金子は乾いた笑みを浮かべる。だが藤本から言葉が返ってくる様子は無い。
「…ところで、今どんな状況なんだ?ちょっと探知機見せてくれ。」
藤本が無言で持っていた探知機を差し出すと、金子は短く礼を言って受取る。
赤い点は18個。大きな集落に半分ほど集中し、残りは各地に点在している。
数時間前から数発の発砲音が響いていた向こう側の森には2つ。近くの海岸に1つ。灯台に一つ。
右側の集落の近くに一つ。その近くには、61の数字。61…石井弘寿は誰かと組んでいる。
とりあえずこいつらに敵意は無さそうだ。会ってみる価値はある。情報収集位はできるだろう。
もしかしたら小笠原さんが何処にいるか分かるかも知れない。
金子の探知機を持つ手に力が篭る。今はとにかく、頼れる誰かを見つけたい。
藤本に相談してみるか、と顔を上げると藤本は今にも泣き出しそうな顔で俯いていた。
今の藤本はチームメイトの安藤が死んで感情の起伏が激しくなっているかもしれない。
今は言葉をかけない方がいいか、金子はそう判断して画面に視線を戻す。
(…俺もお前みたいになれたら、やる気出せ!とは言われないんだろうな…。)
仲間が死んだとはいえ他人の前でここまで表情を崩せる藤本が、少し羨ましく思えた。
藤本は立ち尽くしたまま、ただ草が茂っている地面を呆然と見据えていた。
それで何かが変わる訳でもなかったが、他に何を見る気にもなれなかった。
(……安藤、お前…マジで死んだんか?)
そういえば、数時間前に大きい方の集落の中で赤い点が一つ、消えたのを見た。
星野は今しがた村松が死んだと言った。だとしたら、あの時消えた点は村松ではない。
中村は船の中で死んでいた。とすれば、あの集落で消えた点の該当者は一人しかいない。
(何でや…?何でそんな、人が集まりそうな所に行ったんや…?)
喉が弱い安藤の事だ。野宿で喉を痛めるのが嫌で、真っ先に集落に向かったのかも知れない。
もしかしたら、加湿器を探していたのかも知れない。必需品だといつも言っていたから。
もしくは閉じ篭っていればそのうち誰かが助けに来てくれるかも知れないと思ったのかもしれない。
(…だとしたら、助けに行くべきだったのは、同じチームの俺やったんかな?)
メンバーは――言い方は悪いが――数ヶ月で作成した寄せ集めの即興チーム。
皆、仲が良い訳ではない。信頼できる人間は、それぞれ限られている。
安藤にとって同じチームである藤本は、その限られた数少ない人間だったのかも知れない。
(俺は…まず真っ先に安藤探すべきやったんかな……?)
島に着いた当初は、とにかく自分の事で精一杯で、安藤の事を考える余裕など無かった。
探せば、安藤は死ななかったのかもしれない。今となってはそれはもう分からない。
仲間を助ける事が出来なかった事に対する罪悪感と後悔の念が、藤本の目から涙を溢れさせる。
(…どうすれば良かったんやろ、俺…。)
このゲームは、セーブもロードもない。当然リセットもない。もう、取り返しはつかない。
「……ん?」
重い沈黙を破る金子の声が、藤本を現実に引き戻した。
「何か、画面の線がさっき見た時より薄いような…?」
「…あ…ずっと点けっぱなしやったんで、電池が切れてきたんかも…。」
少しでも意識を安藤の死から逸らそうと、金子の呟きに答える。
「…おいおい、少しは考えろよ?今は15分に一回見る位で十分だろ。」
「…あの、一応…」
藤本は、鞄に入れっぱなしだった予備電池の存在を思い出し、肩に掛けた鞄を開く。
「…ったく、使えねぇなぁ…。」
金子の小さな舌打ちに藤本の手が、止まる。
(何や?その言い方…。)
お互いゲームに乗る気が無くて、とにかく仲間がいた方が心強い。だから行動を共にしている。
仲間に対してその言い方はおかしい。使えないなんて、手駒や部下に対して言う言葉で――
そこまで考えると、藤本はある結論に辿り着いた。
(…ああ、そうや。この人、俺の事利用しとるつもりなんや。)
「…藤本、お前今何か言おうとしてなかったか?」
「……いえ。何も。」
俺が死んでも、この人は涙一つ流してくれんやろな。
まあ同じチームメイトの小笠原さんとかやったら別なんやろうけど。
でも俺は小笠原さん死んでも涙一つ流さへんやろうなぁ。
この人にとって安藤が他人であるように、俺にとってあの人は他人やもん。
そして俺もこの人も他人や。他人が一緒に行動する理由なんて、一つしかあらへん。
(利用価値があると判断したからや。)
藤本は取り出した予備電池を、金子に気づかれないように自分のポケットに滑り込ませた。
(…そうや。これは命がかかっとるんや。油断できへん。いつ裏切られるかも分からへん。)
信用はできても、信頼はできない。
いつ裏切られても逃げられるように用心しなくてはいけない。
いっそ、金子が眠りについた時を見計って逃げ出してしまおうか?藤本は考えた。
逃げ出した所で、何処に行くあても無く島中を逃げ惑うだけなのだろうが。
(いや、一応行くあてはある…数時間前に消えたあの点を確認せんと…
あれが安藤なら…遺体、そのまま放置されとるんやろうし…せめて、埋葬位は……。)
金子が探知機の電源を切る前に見えた島の全体図。大きな集落に集中した赤い点。
あの中に飛び込むのは自殺行為なるかもしれない。だが安藤の死体を放っては置けない。
(…猿かて馬鹿やない…仲間に対して結構情も持っとんねんぞ…!シマウマは知らんけど…。)
藤本は涙を拭うと、しっかりとした顔つきで金子を見据えた。
「金子さん…後で大きい集落の方に行ってみませんか?護身用に武器とかも見つけないと…。」
「お前、今あそこにどれだけ人が集まってると思って…」
金子の面倒臭そうな態度に、藤本はすぐ様フォローを入れる。
「もちろん、人が少なくなってからですよ。少なければ探知機で避ける事も簡単ですし。」
「……まあ、考えておく。」
数秒考えた金子はそれだけ言うと探知機を藤本に差し出し、鞄からペットボトルを取り出す。
藤本は探知機を受取ると、勢い良く水を飲む金子の姿をぼんやりと見据えた。
後で上手くはぐらかされるかもしれない。しかしこれはうやむやにされていい事ではない。
(…寝る前に結論出さないようなら、俺はあんたを置いて集落行きます。)
生きてる他人より死んだ仲間を優先させて、何が悪い。
藤本はポケットに滑り込ませた電池を力一杯握り締めた。
【金子誠(8)・藤本敦士(25) G−2】
避難所の2 ◆xBoXfYng9M氏作品、こちらへの投下はまだだったようなので。
職人様方、これからも楽しみにしています!
16 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 06:57:06 ID:/H0W3XCw0
17 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 16:59:19 ID:If2tMUfXO
期待の捕手
[カウントダウンは始まっている]
夜だ。
太陽は水平線の向こう側へ完全に姿を消した、月や星は見上げても厚い雲に覆われている。
夜だ、静かな夜だ。
懐中電灯を取り出す訳でもなく、ただその影は歩き続けていた。
背中を少し曲げ、ぼんやりと5m先を見つめながら歩いていた。
軽く息をつき、近くの木にもたれて座る。
ふと顔を上げると二つの道が一緒になっているのが見えた。
道があるってことは誰か来るかも知れない。
ぱたぱたとユニフォームについた土を払いながら立ち上がった。
もう少し先に行ってみようか。
目の前の闇を見つめ、歩き始めて5歩目ほどの時だった。
遠くに雑音が聞こえ、その内聞き馴染みのあるピアノの音色がその影の足を止めた。
「・・・・・音楽?」
もう一度さっきと同じような行動を取る。
風でざわめく木の葉の音に負けないぐらいの声が耳に届いた。
『お前ら元気にしてるか?放送の時間や。』
聞き覚えのある声、誰だったかな。
こめかみに親指を当て、頭の中をフル回転させようとしたところで止まった。
『まずは死亡者からやな。死んだ順に行くぞー。
5番中村紀洋ー、16番安藤優也ー、いじょ・・・・』
ばっと顔を上げる。
顔に枯れた葉が飛んでこようとも感覚が無かった。
そしてゆっくり顔を下げ、左手を口元に近付ける。
その顔は不自然なほどに青褪め、眼は遠くにあった。
「・・・・夢だ・・・夢だから・・・夢だ・・・」
何度も夢だと呟きながら足を抱え込む。
かきあげるように髪に指を絡ませ、呟き続ける。
夢だ夢だと自分に言い聞かせる言葉に隠れて、残りの放送は淡々と進んでいった。
ひょいと顔を出した月が照らし出した背番号21は、自分の頭の中から湧き出る記憶と声の渦に巻き込まれつつあった。
リターンアドレスの無い白い招待状
――まだ逃げるつもりか。
バックミラーにかけたイーグルスのキーホルダー
――逃げるしか無い。
「うるさい・・・」
真新しい船内案内用プレート
――まだ夢だと思ってるのか。
少し膨れた紙袋
――だって現に今・・・。
「うるさい!」
今までの記憶が岩隈の頭の中を早送りで進んでいく。
招待状を開いた瞬間から始まり、船の中での出来事が次々と浮かんでは消えていく。
その中で脳裏にこびりついて離れないのは中村の死体の記憶。
いくら頭を振ろうが消えない、今までそれを忘れる事で保ってきた岩隈のバランスがどんどん崩れていく。
嫌だイヤだいやだ僕が何したって言うんだ
「っく・・・・・」
吐き気がして思わず口を覆う。
しかし普段のこみ上げてくるような熱は無く、ただ気持ち悪さだけが岩隈の体中に広がる。
岩隈は左手で抑えた口から、『誰か』と小さく呟いた。
誰か早く起こして、目を覚まさせて。こんな現実ある訳ない。
足を抱え込んだまま、だらりと首を下げて岩隈は祈るように目を閉じる。
その時願うことに精一杯になるあまり、一つの足音が自分に近付いている事さえ気付くことは出来なかった。
月が再び姿を隠していた事にも、気付く事は無かった。
【岩隈久志(21) E−4】
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
久々にクマーの話キター!
動きなかったから心配してたらキタコレ。
ちょ、なにピンチなのか?誰か来てるし!
職人さん乙です。
けど、岩隈って20番じゃなかった?
フジモン、金子キター!!けど、微妙な空気。どうなっちゃうんだ?
クマもキター!! 誰かもキター!!
24 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/08(木) 21:04:01 ID:/pVv8f+9O
アゲ
保守!保守!
忍び寄るのは誰? クマはどうなる?!
27 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/10(土) 00:13:53 ID:HsrVLhZYO
城島
「消すべき存在」
目の前で何かが起こっている。
(俺は、殺ったのか…?)
真っ赤に染まった手は何よりの証。
福留は無意識のうちに村松の血を吸った包丁を手から滑り落とした。
(俺は、殺ったんだ…。)
血を見たショックなのか頭の中が真っ白になる。
そして福留は茫然と立ったまま事態を見届け、しばらくその場に立ち尽くしたままだった。
立ち尽くしたままでどのくらいの時間が経っただろうか、福留は妙に喧しい放送を耳にした。
空白の時間により落ち着きを取り戻したのかその場に腰を下ろし無言で地図に死亡者と禁止エリアをメモしていく。
放送により先程出会った村松の死も確認した。
「くそっ…」
福留はもどかしそうにぎゅっと唇を噛む。
自分は村松との殺し合いに勝った、倒すべき敵を一人減らした。
喜ぶべきことなのだが何かがひっかかっている。
そう、あの時の村松の言葉が忘れられない。
「俺より岩瀬さんがチームに必要とされているだと?」
そんなはずはない、なにより自分はチームのことを誰よりも考えている。
それなのに…。
あの男はこう言った。
「…チームにしてみれば、お前が生き残るより岩瀬が生き残った方が嬉しいだろうな。」
「本当にチームを日本一にさせたければ、ここで死んだ方がいいんじゃないか?」
福留はその事を否定するかのように頭を振る。
怪我などなければ絶対に自分が日本一へと導くことができたのだ。
悔しい、悔しい。
どうすればこの悔しさを消すことができる。
目の前に見える血だらけの包丁を見ながら考える。
そうだ…、これを使って。
「この殺し合いでどちらが必要な存在なのか決めればいいじゃないか。」
強いものこそチームにいるべき、弱者には 死 あるのみ。
福留はそうと決めると岩瀬が逃げていった道を見据え立ち上がる。
「岩瀬さんはどこにいる?」
ついでに殴られたお返しもしてやろう、そう思いながらただ待つだけの狩人はついに行動を始めた。
【福留孝介(1) B−6】
職人様乙です!
クマに危険が・・・・!?
ドメー!ドメー!岩瀬と対決する気かよー!!
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
って、ちょ、まっ!
ドメが死神狙うのかよ!!!
32 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:25:46 ID:+u1/PEbrO
捕手
「マウンドの上で」
小笠原が学校に辿り着いた時には既に、辺り一面が闇に包まれていた。
明かりと呼べるのは懐中電灯と、雲から気まぐれに姿を覗かせる月の淡い光のみ。
だが今、月は雲に隠れて地上まで光を届けてはくれない。空に輝く星も、明かりにはならない。
深い暗闇の中、小さな懐中電灯だけが辺りをぼんやりと照らす。
診療所からここまでくる時に一度、大きな爆音を聞いた。
あれは何だったのだろう?驚きはしたものの、深く考える気にはならなかった。
放送で安藤と村松さんが死んだのは聞いた。禁止エリアも一応チェックした。
だがもう心の何処かで、何もかもどうでもいいと思い始めている自分がいる。
いつ死んでもいい。誰かに殺される事はあっても、誰かを殺す事はない。それでいい。
愛する家族にもう会えない虚無感と、何もしてやれない無力感ばかりが前に出て
死そのものに対してあまり恐怖を感じないのは、幸運なのかもしれない。
落ち着いた足取りでグラウンドに向かうと、小笠原はすぐに先客がいる事に気づいた。
グラウンドの中央辺りで座り込む何か。人間である事は間違いないだろう。
ゆっくりと近づいていくうちに、座り込む先客が着込むユニフォームの数字を認識する。
「黒田…?」
小笠原は無意識の内に呼びかけていた。黒田はゆっくりと振り返る。生きていた。
「その声は…小笠原さん、すか…?」
黒田は立ち上がって小笠原の方に体を向けるなり、持っていた鞄を小笠原に向けて突き出す。
「…この鞄、必要ないんで貰ってくれませんか?武器はボウガンです。」
「必要ない…?どういう事だ?」
「俺は殺人者にはなりません。プロの投手です。死ぬならマウンドの上で死にたい。」
小笠原の問いに、黒田はきっぱりと答えた。
黒田が立っている場所はマウンド。
ドームや市民球場に比べればずっと小さい野球場の、平坦なマウンド。
「お前…死ぬ気か?」
「小笠原さんは生きる気ですか?なら…俺を殺してくれませんか?別に恨んだりはしないんで。」
「…黒田……。」
言葉が出なかった。出せなかった。何と言えばいいのか、分からなかった。
自分と同じ決意を持つ者に対して。生を諦めた者に対して。気の利いた言葉が思いつかない。
黙り込んだ小笠原にしびれを切らしたのか、黒田は小笠原に近づいて鞄を無理矢理押し付ける。
「生きるつもりなら俺を殺してください。お願いします。」
小笠原は無言で黒田の鞄を受取る。半開きの鞄の中からはボウガンの取っ手が姿を覗かせていた。
何気なくボウガンを手に取ると、黒田は小笠原の返答を待たずに言葉を続ける。
「それ使います?あ、俺がマウンドに立ってからですよ?忘れんといてくださいよ。
それと、撃つ時は何も言わんでください。俺もこっちの方見ませんから。
ああそうや、狙うなら胸でお願いできますか?じゃ、お願いします!」
早口でまくし立てる黒田は小笠原に反論する隙を与えなかった。
ひとしきり言い終えてマウンドの方に駆け足で戻る黒田の背中は、とても寂しいものに見えた。
残されたボウガンはズッシリと小笠原の手に圧し掛かる。
小型だが人を殺すだけの能力は十分にあるだろう。
黒田は死ぬ事を望んでいる。マウンド上で死ねれば本望だというのなら、そうしてやりたい。
黒田の死を引き止めるつもりはない。だが…殺人を押し付けられても困る。
どうしたものか、と思案に暮れる小笠原の視界に一つの建物が映った。
黒田はマウンド上に立つと、静かに目を閉じた。
小笠原にボウガンを託したのは、少々強引だったかもしれない。
最初は自ら命を絶つつもりだったのだが、ボウガンを見るとどうしてもそれができなかった。
失敗して恐ろしい死に様になるのが怖かった。死体は家族に見られるかもしれない。
胸ならまだしも、頭にでも刺さろうものなら。それは絶対に避けたかった。
何度も悩んだ結果、他の死に方をしようと考えていた所に小笠原が来たのでこれ幸いと押し付けた。
改めて思い返すと、かなり強引で情けない。だがこれで安心して死ねる。黒田は肩の力を抜いた。
(…妃奈月…パパはここで死ぬけど、強く生きなアカンで…。)
最後にもう一度抱き上げたい。可愛くて仕方がない幼い愛娘を想う。
(プロ野球選手と結婚したらアカンで…遠征中なんか寂しいやろうし…いっそのこと結婚なんて…
…ああ、そんな事言うとられへんな。俺もう死ぬんやから。雅代にも苦労させる事になる…。)
もう二度と生きて会う事は出来ないであろう愛しい妻を想う。
(…許してくれ。俺は、最後までお前らが誇れる人間でありたい。チームにとっても…。)
自らの意志で選んだチーム、広島東洋カープを。共に戦ったチームメイトを想う。
(…チームの若い奴らにも酷い悪戯してきたなぁ…。あ、そう言えば今年からボール犬とやらが…。)
どうでもよさそうな事まで考え始めて、黒田はある事に気づいた。
遅すぎる。一向に殺される気配がない――――――?
黒田はもしやと思い、恐る恐る後ろを振り返った。案の定、そこに小笠原の姿は無い。
代わりに視界に映る建物の窓に見える小さな明かりに気づき、黒田は一つ溜息をついた。
「確かに、殺してくれと言われて殺すと返せる人間なんて、そうはおらんでしょうけど…。
…無言で去らんでもええやないですか…何か一言位言ってっても…。」
黒田はブチブチと愚痴をこぼしながら、建物の方へと走った。
建物は体育倉庫だった。相当古いものらしく、中は埃にまみれ、カビ臭さが鼻を衝く。
小笠原はそんな中を懐中電灯で照らし、散乱している用具の中から一心不乱に何かを探していた。
「…小笠原さん、何してんすか?」
入り口から建物内を照らす黒田を、小笠原は横目で認識する。
「さっき…ある男に、自分から命を捨てる奴ほどの阿呆はいない、と言われた。」
何かを探しながら呟かれた言葉に、黒田は困ったように笑った。
「…小笠原さんのすぐ後ろにおりますよ。」
「奇遇だな。お前の目の前にもいる。」
その発言に黒田は驚愕の表情を見せ、小笠原の背中をマジマジと見やる。
「…小笠原さん…死ぬ気すか?」
「それがどうした?死ぬ気のお前が何で意外そうな顔をするのか分からないが…。」
黒田は複雑な表情を浮かべながら小笠原を見据えている。
小笠原はそんな黒田に苦笑しつつ、ようやく見つけた物を黒田に投げた。
黒田は突然自分に向けて投げられた物を反射的に受け止めた。それは、古びたグローブ。
呆気に取られている黒田に、小笠原は穏やかに言った。
「まあ、お互いそう死に急ぐ事もないだろう。最後にキャッチボールでもしないか?」
グローブをはめた小笠原は床に落ちているボールを拾い上げ、微かに笑ってみせた。
【小笠原道大(2) 黒田博樹(15) H−4】
以上です、2氏乙です!!
職人さん乙です!
黒田、ガッツ・・・キャッチボール・・・
40 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 22:20:02 ID:EAha9zO6O
保守ります
109.マウンドの上でまで保管しました。
職人の皆様いつも乙です!泣ける…
職人の皆様にお知らせがあるので、
保管庫掲示板・保管庫から職人さんへスレの66を見て下さい。
42 :
フラの人:2005/09/12(月) 21:24:39 ID:2D7CbYQm0
保守あげ
>>42 フラッシュキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!
フラの人もいつも本当に乙です!!!
46 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 02:33:27 ID:uGlTUFmgO
ほっしゃ
47 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 22:29:26 ID:1jV8JEOpO
ほっしゃん
今までこんなスレあるのしらなかった。今から読みます