アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第二章

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109107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/17(水) 15:58:36 ID:Al9j5kfa0

「いーち」

いきなり手榴弾て、なんやねん!

「にーい」

こいつそんな危ないモン持っとったんか!?

「さんっ!」

上原のとまどいにまったく構わず。
チンと澄んだ音を響かせて、松坂は手榴弾のピンを抜いた。


【松坂大輔(18)・上原浩治(19)G−4】
110代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 16:25:59 ID:G/D9U0gr0
職人様GJです!
って松坂ちょっと待てお前ー!!Σ(゚Д゚;)
111代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 00:03:01 ID:SDVevPhe0
何か松坂が大好きになってきたw
112代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 01:23:21 ID:S4A8EGD9O
太輔天然でステキスw
巻き込まれる上原も面白いw

画像職人さんも職人さんも乙です!
113代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 14:07:31 ID:J4UBOV9F0
松坂いいキャラしてるw
狙撃してんのはやっぱり…
114代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 17:38:58 ID:dLCRDP+N0
>>113
あの人だよね…
安藤から奪った武器がどう絡んでくるか個人的に楽しみだけど、
当分はスナイパーだよな
115代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 20:25:09 ID:qcb4K9Zco
あげとく
116代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:27:36 ID:fYHpBRUt0
職人さん乙です!
松坂いい味出してるなぁw
だましてる上原の方が振り回されててワロスwww
117代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:39:24 ID:xwNoPIWt0
野球バトルロワイアル総合雑談所
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1124368992/
118代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 06:51:24 ID:4WBGpYkP0
松坂激しすぎwwww
119代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 10:34:38 ID:22idW+eq0
マーダーじゃないのにやりたい放題だなw
大輔おもしろいよ大輔
120代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 11:45:56 ID:kb7SiXIW0
職人さんGJ!
悪の雑草魂も天然にはかなわないのか?w

この二人に笑かせられるとは思わなかった。
東京学館コンビに続くお笑い系として暴走してって欲しいw
121代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 22:25:53 ID:Z+wjLm3v0
ほす
122代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 12:09:13 ID:Cwwha57z0
捕手
1232 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:31:16 ID:Me2i8tpF0
「面倒嫌いを動かすもの」


すっかり暗くなった森の中、城島はしばらく森を彷徨う和田の様子を観察していた。
足早に歩いていたかと思えば、突然立ち止まったり。フラフラとした足取りになったり。
それの繰り返しで、何をどうする様子も無い。恐らく、これ以上の観察は時間の無駄だろう。
(…そろそろ接触するか。)
城島は鞄から懐中電灯を取り出し、和田が光に気づかないようにスイッチを入れる。
「…和田!」
呼びかけると同時に和田に光を向けると、和田は咄嗟に銃を構え、怯えた目で城島を凝視する。
焦燥に駆られた表情から、和田が平常心で無い事が容易に見て取れた。
「城島、さん…。」
銃を構える手も、足も、歯も。哀れな位に震えている。試し撃ち前の笑顔が、嘘のようだ。
(…もう弾はないはずだけどな…。)
だが、それはあくまで城島の憶測にしか過ぎない。万が一がある。事は慎重に進めなければ。
「…ケリは?つけれたのか?」
いつもと同じ声を心がけて呼びかけると、和田はしばらくの沈黙の後、首を小さく左右に振った。
(…やっぱりなぁ。いっつも詰めが甘いんだよ、お前は。)
城島は込み上げてくる嘲笑を抑え、まずは警戒を解こうと、持っていた鞄を開く。
「…お前、喉渇いてないか?」
「……喉…?」
1242 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:31:48 ID:Me2i8tpF0
訝しげに城島の態度を見据える和田の目にはまだ、疑いの感情が宿っている。
当然だろう。一度自分を突き放した人間が掌を変えた様に態度を変えれば、疑わない方がおかしい。
「そう。喉。ほら、お前、鞄忘れて行っただろ。」
そう言って水の入ったペットボトルを取り出し、和田の方に差し出す。
だが和田は城島に近づこうとしない。まだ警戒している。だが、明らかに戸惑っている。
「…どうして…?だって、城島さん、ゲームに…。」
戸惑いを隠そうともしない和田に、一段と明るく言い掛ける。
「お前が試し撃ちなんて馬鹿な真似するから、怒っただけだ。
 この状況でうかつな行動されたらこっちが困るんだ。
 一人になって、それがよく分かっただろ?じゃ、そろそろ移動するぞ。」
「…俺の事…待ってたんですか?」
和田は銃を降ろし、一歩、一歩、ゆっくり近づいてくる。
「当然だろ?捕手は投手を一人にするな、って教えられてんだよ。」
城島がそう言うと、和田はようやく笑顔を取り戻し、ボトルを受取ろうと手を伸ばすが――――


「…お前、本当に馬鹿だな。」

無防備にペットボトルを受取ろうとする和田の足を、城島は思い切り蹴りつけた。
和田が体勢を崩しそのまま地面に伏せるや否や、城島は和田に乗りかかり、首を締め付ける。

「………なぁ、どうしてこんな状況で人を頼ろうとするんだ?」
「ジョ……さ………」
必死でもがくも、息が出来ない。手に力が入らず、城島の手を引き離す事ができない。
城島は更に自分の体重をかけて、和田の喉を圧迫していく。
「俺はもう、自分の事しか考えてないんだよ。その位分かれよ。」
自分の事しか。城島の脳裏に様々な人間が浮かんでは消えていく。

(……あの人も。あの人も。あの人も。皆、自分の事しか考えてなかったな…。)
1252 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:32:25 ID:Me2i8tpF0
城島が尊敬し、憧れ、信頼した彼らは様々な理由をつけてチームを去っていった。
だが結局それは彼らがチームよりもファンよりも、自分自身を優先させた結果だった。
ファンの引きとめも、チームメイトの引きとめも無意味なのだ。結局は、自分自身なのだ。
自分は、自分。他人は、他人でしかないのだと。彼らが去っていく度に、思い知らされた。

「……和田、チームメイトのよしみで俺が引導渡してやるから、迷わず成仏……」
城島が言い切る前に、和田の抵抗が止んだ。同時に、城島の締め付けていた手も止まる。
和田は意識を失ったのは明らかだった。もしかしたら、死んだのかもしれない。
(…それでも、息を吹き返すかも知れない。確実に、殺す。)
城島は改めて両手に力を込めて、和田の喉を圧迫しようとした、その時――

「お前ら、何しとんねん!」

聞き覚えのある声と共に、懐中電灯の光が二人を照らした。
城島はすぐさま手を離して和田の銃を拾い、鞄を背負って森の奥へと走る。


1262 ◇xBoXfYng9M代理投下:2005/08/20(土) 12:32:58 ID:Me2i8tpF0
森を抜け、砂浜に出る。相手が追ってきてはいない事を確認し、一息ついた。
(顔、見られたか…?)
光に照らされた時間は僅か。顔を見られていないにしても、背番号でバレた可能性もある。
(…和田も仕留めそこなったかもしれないな……俺も詰めが甘いな…。)
生きていようが死んでいようが、和田には恨まれるだろう。
もう二度とバッテリーも組む事も無いだろう。ここでも。あの世でも。
(殺したくて殺すんじゃねぇんだけどなぁ…。)
そんな言い訳、殺される側に通用するはずがないか、と城島は自嘲する。
(…人を殺すのってやっぱり、かなり面倒臭いんだな…。)
首を絞めた生々しい感触が、まだ手に残っている。どうしようもなく嫌な感覚。
それは恐らく、誰の首を絞めても感じる物だろう。人を殺す、感覚。
人はこの感覚から逃れようと、銃を発明したんじゃないか?と顔をしかめるが、
和田から奪った銃の残弾数を確認すると、それは苦笑いへと変わった。
鞄に入れておいた予備銃弾の箱から銃弾を5つ取り出し、銃に込める。

本当に殺したい相手など、この島にはいない。
海の向こうで華美にライトアップされた豪華客船の中にいる。
暗い海原の中で存在を強調しているその豪華客船に、激しい怒りが込み上げる。

(…うぜぇんだよ、あんた達。)

城島は豪華客船に向けて一発、届くはずのない弾を放った。


【城島健司(9)・和田毅(21) D−2】
127代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 12:33:36 ID:Me2i8tpF0
2 ◆xBoXfYng9M氏の代理投下でした。
乙です!
128保管庫 ◆athensVWRU :2005/08/20(土) 13:21:13 ID:Me2i8tpF0
102.面倒嫌いを動かすものまで保管しました。
おまけに>>104氏の画像追加しました。

画像職人さんも職人さんもいつも乙です。
129107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/20(土) 20:31:43 ID:9E0JEkjR0
「狩りの鉄則」


最初に炸裂音。
それから爆風。降り注ぐ小石。もうもうたる砂煙。

それは三浦大輔の度肝を抜くのに充分だった。
今は冷酷な“狙撃者”に変貌を遂げた“ハマの番長”も、あまりのことに銃を取り落として尻餅をつく。

「なっ!?」

立ち込める砂煙の中、呆然と見つめる垣根の向こう。
建物の影へと消えてゆく背中が見えた。
その手前、砂利で舗装された道路にはぽっかり穴が開いて地面がむき出しになっている。

爆弾、か……?

ダイナマイトか手榴弾か。なんにせよ相手が投擲型の爆弾を持っている可能性は高い。
さいわい爆心地は三浦の潜む場所からは距離があったが、直撃を食らっていれば四肢が吹っ飛んでいただろう。
三浦ははじめて自分が狩られる側に回る可能性にぞくりとした。
しばらくして、それ以上の反撃の気配がないことに胸を撫で下ろす。
「ちっ……」
三浦は立ち上がって、袖で顔をぬぐった。いつの間にか、大量の汗をかいていた。
汗に貼りついた砂が顔をこする。砂塵で目が痛い。
顔を洗いたい、と思った。冷たい水で思いっきり顔を洗って、気分を入れ替えたい。

反撃してくるとは、うかつだったな……。
130107 ◆8xAz4zyPvo :2005/08/20(土) 20:33:45 ID:9E0JEkjR0
安藤をあっさり仕留めたことで、自分の武器の優位性を信じすぎていたかもしれない。
せっかくの獲物。それも大物ニ匹。どちらかだけでも仕留めたかったのに。
動いてる標的に当てることは想像以上に難しかった。
完全に立ち止まるまで撃つのを待つべきだったかもしれないが、陽が傾くにつれますます薄暗くなった空が彼の心を焦らせた。
暗くなるほど狙撃の精度は落ちるのだから。

けど、焦って仕損じたなら意味がない……。
俺もまだ未熟ってことか。

三浦は、深呼吸をひとつすると、爆発に驚いて放り出してしまった狙撃銃を拾う。
松坂と上原を追おうという気にはならなかった。
まだそう遠くには行っていないはずだが、無理に深追いすることはない。強敵ならなおさらだ。
狩りの鉄則は、弱いものから狙うこと。
三浦は気を取り直して次の獲物を探すことにした。
次はもっと慎重に、相手に隙ができるまでしっかり待とう。
ピッチングと同じだ。焦ってストライクを取りに行けば手痛い反撃に遭うこともある。

二人を逃がしたのは惜しかったが、教訓は次回に生かせばいい。
「粘り強さには自信があるんだからな」
三浦の顔は不敵な笑みを取り戻していた。
狙撃銃のスコープに亀裂が入っていることには、まだ気づいていなかった。


【三浦大輔(17) G−4】
131代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 22:09:56 ID:g8H+E7NT0
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
城、何だか哀しいよ城・・・・。
三浦、やばくないか三浦・・・。
132代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 23:29:05 ID:LgZF3xxUO
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
ジョーがヤル気になっとる!
ってか三浦のライフル…!
133代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 23:59:22 ID:6tBB3QYf0
初めてこのスレ知ったんだが職人さんすごいな
てかこれ本にしたら普通に売れそうだ
134代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 01:25:02 ID:8YkbYtLM0
新作沢山キター!!
ジョー、淡々としてるから余計にこえぇ…
三浦、不敵に笑ってる場合じゃないんだが…

深度ヤバそうなので一旦ageます。
135代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 02:03:01 ID:SNqv33RP0
城島&和田キター
凄い〜。豪華客船に発砲キター(w
136代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 15:41:05 ID:uPQIeHpE0
「何しとんねん!」って叫んだのはあの人だよな…
和田テラカワイソスw
137代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 19:05:34 ID:KS3Ohhig0
職人さん乙です!
和田はどうなった?!城がこういうキャラなのって初めてで新鮮だ。
138代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 00:52:43 ID:s/5ktOirO
最近動いてないが岩隈が気になっている。
139代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 11:09:08 ID:Fp1JnHns0
ちょっと不安な深さなので一応あげ。
140代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 00:51:27 ID:1isSEqCBO
保守
141458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:40:55 ID:YVEEymEi0
「解放」

「お前ら、何しとんねん!」
懐中電灯で照らした先に見えた光景に宮本は叫んだ。
追おうとするも一人はあっという間に退散し、一人はぐったりとしたままだ。
「…!和田!」
ぐったりと地面に倒れているのは和田であり、思わず由伸は駆け寄った。
「……」
首に残るくっきりとした鬱血の跡…青い顔で倒れている和田は気道閉鎖による
窒息状態であり、由伸はまず顎を掴み、口の中を調べる。
「血の固まりとかの異物は無いようだな…」
そうつぶやくと、空気を通す気道を確保すべく、和田の顎先を
持ち上げるようにして頭を後に逸らさせる。
「これで…大丈夫かな?」
微かに息をし始める和田を見ながら、由伸は安堵のため息をつく。
「…どんな馬鹿だって信用してない選手に首を絞められる程接近しませんよ。
…よっぽど信頼している相手だったんでしょうね。」
そんな相手に首を絞められ殺されそうになった…由伸は小さく首を振る。
「そらそうやろな。…捕手を信用せん投手なんてそうおらんやろ。」
ほんの一瞬、照らした背番号を思いだし、宮本は苦々しそうにつぶやいた。
「!それって…そんなことが…あっていいのかよ…」
やるせないように、由伸が悲痛なため息を漏らした時であった。
「…う…」
呻き声と共に和田の身体が微かに動いた。
「大丈夫か?」
「…!」
気がついた和田は、恐怖で目を見開くと思いきり暴れ、押しのけようとする。
「う、うわああっ…!」
「落ち着け!いてっ…暴れるなって!」
「く、来るなっ…助けっ…うっ…ごほっ…」
恐怖と絶望のため、半狂乱で叫ぶ和田であったが、息を吹き返した直後に
暴れたせいか、たまらずむせかえり、激しく咳き込む。
142458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:41:21 ID:YVEEymEi0
「…だから暴れるなって言ったのに。」
呆れた声を出す由伸であったが、それでもあやうく殺されそうになったのだ。
とても平常心など保てるわけがない、と瞳を曇らせる。
「ジョーさんがっ…ジョーさんが…嘘だ…ごほっ…うそ…だ…」
ヒューヒューと気管の音を立てながら、和田はかろうじてつぶやくと
再び激しく咳き込んだ。
「な…んで…俺はそんなに…悪い?ジョーさんに…」
やはり城島であったか…悲痛に眉をひそめる由伸の横で、和田は震える。
先ほどの城島の手の感覚…思いだしただけでも恐怖、絶望、悲痛が沸き上がり、
その顔を蒼白にさせるが、やがて全ての力が抜けきったようにため息をつく。
「俺は…ジョーさんに殺されそうになった俺は…
本当は凄い悪人なんでしょうね。自分じゃそう思わなかったけど…」
今までの混乱が嘘のように静かになり、和田は淡々とつぶやく。
城島に殺されそうになったという現実は、和田から混乱するという気力さえも
奪ってしまうほどであり、まさに無気力そのものの瞳であった。
「そんな俺は生きる資格も無いんでしょうね…だからもう…その銃で俺を…」
由伸の手に握られたS&WM19コンバットマグナム、ベルトに括り付けられた
頑丈な革袋に詰った補充用弾丸をただ和田はぼんやりと見つめる。
「なあ…」
言いかけた宮本であったが、由伸に手で制されると、口をつぐむ。
そしてここは由伸に任せよう、と傍観を決め込むように木にもたれる。
「きっと俺はどうしようもない悪人だから…ジョーさんに突き放されて…
ずっと一人で…怯え続けて、逃げて…ジョーさんに殺されそうになった…」
和田はただ虚ろな視線と声色で言葉を続ける。
「俺なんかもう…ここで…死ぬべきなんです。どうせ誰もいやしない。
もう…疲れました。」
自分自身に翻弄されることにもう疲れた…和田は静かに目を閉じる。
由伸は暫し悲痛な視線を送っていたが、やがて小さくため息をつく。
143458 ◆EKBnf1A7Os :2005/08/23(火) 03:41:43 ID:YVEEymEi0
「…あのな、どんな奴にだって誰かしら側に居るもんなんだ。
それを見ようとしなきゃ…ずっと誰も居ないままだと思う。」
そんな由伸の言葉に和田は弾かれたように目をぱっと見開くが、大きく首を振る。
「だって…だって俺は…」
「俺は信じてた。必ず誰か居るって。だから宮本さんと会えたと思っている。」
「…じゃあ俺には誰がいるというんです?誰か居るんですか?」
ぶっきらぼうに、それでいて恐る恐る口にする和田に由伸は静かな視線を送る。
「それを決めるのはお前だ。お前が俺達をそう認識するなら…そうなる。」
「俺が…決める…?俺は…」
色々な感情があふれ出すのを抑えるように、和田は膝を抱えると、顔をうずめる。
「…俺、何の武器も無いし、すぐにパニくるし…何の役にもたちませんよ…」
「そんなの分かってる。」
膝に顔を埋めたままの和田は、小さく首を振る。
「いいんですか…?俺、あんたを殺そうとした…それでもいいんですか?」
「だから…俺らがどうとかじゃない。お前が決めるんだ。」
その言葉はボロボロにされた心に染み入るもので、和田は何度も頷く。
「俺は…もう一度…誰かを信じたい…誰かに受け入れてもらいたい…」
抑えていた感情はあふれ出し、嗚咽混じりに和田はつぶやく。
「決まりだな。」
安堵するように由伸は笑うと、その肩をぽんと叩いた。
「ありがとう…ございます…」
膝に顔を埋めたまま、嗚咽混じりに礼を言う和田は、
今、やっと救いようの無い絶望から解放されたのだろう。
「一件落着、か。」
木にもたれる宮本は、苦笑混じりにつぶやくと、
時が止まったかのように静かな森の中をゆっくりと見渡すのであった。

【宮本慎也(6)・和田毅(21)・高橋由伸(24) D-2】
144代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 20:49:12 ID:pXN1gbJ/0
職人様乙です!
ついに和田がルパンペアを信頼したー!
・・・・でもまだ不安だよ和田orz
145代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 23:36:43 ID:Dj9AT9JvO
職人様お疲れです!

この世界でのルパンとジゲンは眩しい、眩しいよ…


して、和田。
しっかりイキロ・゚・(ノД`)・゚・
146代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 23:55:58 ID:1kglNtFR0
乙です。
キャプだったのか…。何故か止めに入ったのが黒田かなぁと思って
やっぱり和田とルパン組は分かり合えないままなんかと考えてたから安心した…
147代打名無し@実況は実況版で:2005/08/24(水) 02:51:04 ID:SgXq6Rzm0
職人様お疲れ様です。
この章は、読んでて泣いてしまいました。
148代打名無し@実況は実況板で:2005/08/24(水) 22:10:45 ID:7UAlln0Z0
保守あげ。

ルパン組と和田…ちょっと感動しましたよ。
14975 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:40:00 ID:Nm2wsMbi0
[裏切り者は二度笑う]


薄気味悪いなぁ・・・ここ・・・。
もうすっかり日も暮れようかという時間帯にようやく岩瀬は目標であった灯台に辿りついた。

思い起こせば、鞄の中の武器を確認したあの時からもう随分経ってるんだな。
ここまで来る間に、誰かに見つかりかけて、逃げ込んだ森の中で誰かが凄い勢いで走る音が聞こえて。
ようやく安心できる場所に来れたよ、と岩瀬は白い灯台を見上げながら考えていた。

「さて、中に・・・・・」

入ろうかと一歩足を踏み出したその時だった。
突如キーンと耳をふさぎたくなるような不快で高い機械音が大音量で岩瀬の頭を貫く。
思わず顔をしかめ、両手で両耳を塞いでしゃがみこむ。
な、何なんだ一体。
ぱっと空を見上げると、今度は聞き覚えのあるような無いようなクラシック音楽が雑音と共に流れ出した。
岩瀬はしばらく考え、それが『エリーゼのために』だという事を思い出した。

『お前ら元気にしてるか?放送の時間や。』

その『エリーゼのために』が半分以上流れた後、音量が下がり、代わりに星野の声が顔を出した。
あ、もうそんな時間なんだ。と呟き、岩瀬は地面に座り込んだ。

『まずは死亡者からやな。死んだ順に行くぞー。』

もう死んだ奴がいるのか。
ごそごそとホルダーとボールペンと地図と名簿を鞄から出しながら、その言葉が頭に浮かんだ。
そして名簿をホルダーの上に乗せ、地面の上に置く。

『5番中村紀洋ー、16番安藤優也ー、いじょ・・・・』
15075 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:41:07 ID:Nm2wsMbi0
星野の言葉が妙な場所で途切れ、岩瀬は顔を上げた。
耳をすませてよく聞いてみると遠くに話し声がしている。
何か船の方であったのかー、とぼんやり思っていると再び声が聞こえ始めた。
潮の香りが鼻をくすぐる。

『・・えーっとどこまでか・・そうそう、16番安藤優也。それで今しがた村松・・・23番の村松有人が死んだ。
やからこの6時間で3人死んだ事になるな。人数少ない割にはようやっとるやないか。』

中村さんと、安藤と、村松さん・・・っと。
名簿のそれぞれの名前の上にバツ印をつける。
なーんかあれだなぁ、みんなやる気あるんだな。
もしかして俺の出る幕無くないか・・・・、そう考えながら名簿と地図を入れ替える。
すこし砂にまみれた地図は岩瀬の方向音痴さがよく分かる代物だった。

『それじゃあ次ー。禁止エリアの情報行くぞー。今から1時間後にEの4ー』

Eの・・・・・Eの・・・・4・・あった。
『1/19』と乱雑に大きく書き込んだ。
それを見た岩瀬は、湖行きにくくなるんだな・・・・、と今まで通りいささか的外れな思考を繰り広げていた。

『2時間後にHの1、3時間後にFの7。』

『1/20』『1/21』と各ブロックに数字が書き込まれていく。

『で4時間後にGの3、5時間後にBの4や。次の放送と同時にDの6が禁止エリアになるぞ。
禁止エリアは以上・・・・・まぁ、もう一回言ったるからちゃんと聞いとけやー。』
「Gの3と・・・Bの4、Dの6っと。」

最後にDの6ブロックの枠の中に『1/24』と書き込むとボールペンをノックして、ペン先を中に引っ込めた。
星野がもう一度禁止エリアを告げるのを聞きながら、指をさして確認する。
うん、間違え無いな。
15175 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:42:01 ID:Nm2wsMbi0
地図をホルダーの中に入れ、名簿を鞄の側面のポケットに入れる。
ボールペンはユニフォームのズボンのポケットに差し込んだ。

『残り21人やな。この調子やと・・・・単純計算で40時間後・・・3日目の朝の10時か!』

星野の楽しげな言葉に思わず苦笑いが顔中に広がった。
―――星野さんは楽しんでるんだなぁ。そんなに面白いならこっち来ればいいのに。
何の皮肉もなく、岩瀬はそう純粋に考えていた。

『まぁゆっくりじっくり殺しあっとけ。でも最後に死んだ奴から24時間以内に誰も死なんかったら全員バーンで死ぬからな。
それじゃあまた6時間後の真夜中12時に放送や。』

ぶつっと鈍い音がして、再び島に静寂が戻る。
さてとと立ち上がり、岩瀬は気を取り直して灯台内に入る事にした。
大きく息を吸い、大きく吐く。
そして勢いよく扉のノブを掴んで、右に回し引いて扉を開ける。
何年も使われていないのが分かるほど、扉は重く動きも悪かった。
ひょこっと顔を入れると少し埃の匂いが強いものの、それ以外には何てことないコンクリート打ちっぱなしの地面と冷たそうな鉄の螺旋階段が見える。
恐る恐る足を踏み入れ、ドアを静かに閉めると懐中電灯を鞄から取り出しスイッチを入れた。
暖かい黄色とオレンジ色のちょうど中間色ぐらいの光は周りの暗さを更に引き立てる。
しかし岩瀬はその暗さよりも螺旋階段の高さにげんなりしていた。
ぐるぐると頭の上を回る階段を見ながら、『登んなきゃいいけどな・・・・・』と考えている時だった。

『ゴラァ岩瀬ぇっ!』
「はははははいっ!?」

しまった無線!
岩瀬は他の誰も見ていないのにもかかわらず、扉から見えないよう自分の体で隠しながら無線を急いで取り出した。
無線を利き手の右手に、懐中電灯を利き腕の左手に持ち直す。
15275 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:42:34 ID:Nm2wsMbi0

「な、何ですか?」
『・・・・・お前、船の時の威勢はどこ行った。』
「イセイ?何ですかそれ。」
『・・・・・まぁいい。本題に入るぞ。』

イセイって何だ・・・・と岩瀬が正しい熟語を頭で探している間にも時は過ぎる。

『武器の隠し場所だがな、階段がそこにあるやろ。』
「・・・上るんですかぁ?」
『・・・・・やけに嫌そうやな。嫌やったら別にええんぞ。』

いえいえ滅相もない、と慌てて言う。
もう一度階段を見上げると岩瀬は深く溜息をついた。

『上りきったところに海照らす照明がある。それの土台に分かりにくいと思うが鍵穴がついとるんや。まずは上がれ。』
「はーい・・・・・。」

そこまで星野が告げると無線が再び沈黙を宿す。
溜息をつきながらも階段を上り始めた。
下見るな、下見るなよ俺。
自分にそう言い聞かせながら、一段一段重い足取りで上っている。

カンカンカンカン
規則正しいリズムで階段を上る。
手すりを持ち、滑り落ちないように転げ落ちないように細心の注意を払いながらリズムを重ねていく。

そして何とか上へ辿りつく。
何度かちらりと見たコンクリートの地面は黒く染め上がっていた。
あぁ怖かったと思いながらも、岩瀬の体は自然と照明へ向かう。
自分が昔見た灯台のそれとは違い、この島にぴったりとも言える小規模なものがそこにあった。
15375 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:43:14 ID:Nm2wsMbi0

「んで・・・・どうだっけ?」

かぎあなかぎあな〜とのんきに音程の外れた鼻歌を口ずさみながら、しゃがみこみ照明の土台に懐中電灯の光を当てる。
少し古びた横長なそれは静かに焦げ茶色をしていた。
ぐるりと周りを一周しかけて、目が階段から見て左側の土台の面にきらりと光を反射させるものを捕らえた。

ここか。
しゃがみこんだまま一歩前に出て、鍵穴らしきものを探す。
すると左上に職場にありそうな机の鍵のようなくすんだ銀色をした小さい鍵穴を見つけた。
あー、これが本当の灯台下暗し。と考えながら無線を床に置き、右のポケットに入れておいた鍵を取り出す。
こういう時両利きって便利だよな。
右手に懐中電灯、左手に小さな鍵を持ち鍵穴を照らしながら差し込む。
3回失敗して、ようやく入れるとがちゃりと右に回す。
手ごたえがあり、岩瀬は鍵を引き抜いた。

いよいよ武器とご対面か。
座り込み、ゆっくりと扉を引く。

「おぉ・・・・・。」

扉を開けきるとそこには黒い塊があった。
それを懐中電灯で照らす前にその塊の一番上を手に取る。
厚い雲に覆われていた月がひょこっと顔を出し、懐中電灯無しでも手元がよく見えた。
岩瀬の左手の中には一振りの日本刀。

「刀じゃん、うわー俺初めて持ったよー。」

子供のように声をあげながら、すっと鞘から刀身を抜き出す。
白い月光に反射して、その刀文が揺れているように感じた。
うっとりとした目つきで岩瀬は刀を右手に持ち直し、じっくりと上から下まで見つめている。
15475 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:43:56 ID:Nm2wsMbi0
感想を口に出す事でさえもためらわれるその威厳。
遠くに細波の寄せては帰す音を聞きながら、岩瀬は自分の体の底から噴き上げてくるような欲望にそっと手を触れた。


―――これで、人が殺したい。


しばらく岩瀬は白く鈍く輝く一振りの刀から目を離せられなかった。
そこから岩瀬の心を現実に戻らせたのは、他でもないこの刀を手に入れる原因となった星野の声だった。

『岩瀬。そろそろ武器を見たか?』

無言のまま左手に無線を握る。

「・・・・・凄いっすねぇ・・・・。」
『ん?・・・・あぁマシンガンに狙撃用の銃なんでも・・・・』
「凄い・・・・楽しそう・・・・・」
『・・・・・楽しそう?』

予想外の言葉に星野も思わず聞き返す。
しかし岩瀬はお構い無しに続けた。

「くじ運いいっすね・・・・綺麗だ・・・・」

思わず頬ずりしそうになって止める。
無線はノイズ以外何も伝えない。
やがて月は再び雲に隠れ、光を地上に届かせなくなった。
後ろ髪を引かれそうな思いながらも、鞘に刀を戻す。
たった数分の出来事であったが、それでも岩瀬の心奪うのには充分だった。
15575 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:44:40 ID:Nm2wsMbi0

「俺、決めましたよ。」
『・・・何をだ。』

適当に土台の中の袋に入っている武器を何個か鞄の中に無造作に入れると扉と鍵を閉め、岩瀬は刀を左手に握り立ち上がった。
そしてベルトとズボンの間に左手のそれを差し込み、鞘についた紐を適当に落ちないように巻きつけて固結びをする。
空いた左手に無線を、右手に懐中電灯を入れると随分と重くなった鞄を右肩にかけ、階段を降り始めた。

「このゲーム楽しみます。」
『また力強い言葉だな。』
「だって・・・・・。」

先ほどまでは恐怖の対象であった地上がやけに好ましく思える。
それもこれもこれのおかげかな、と岩瀬は左半身に身につけた刀を見た。

「だって、人殺しても罪にならないんでしょう?」

左手の中のそれは再びノイズだけを耳に伝える。
しかし岩瀬はうきうきとした口調で先ほどと同じように続けた。

「あ、人を殺したら自分が死ぬ覚悟しなきゃいけないのは分かってますよ?
でも何かこうドキドキしちゃって、やっぱり何かあれですよね、落ち着かないって言うか何と言うか、もう本当にね・・・・。
あ。星野さんにもありませんでした?思いっきり選手の頭にボール投げたいなーとか、そんな感じなんですよ。
普通そんなことしたら乱闘で真っ先に殴られるからやらないんですけどね、やっぱり死球でもちょっとスカってするじゃないですか、しま

せん?
とにかくとにかく、凄く今は今は・・・・・」
『落ち着かんか。』
「あ、すいません。」

カンカンカンカンカン
さっきと同じようなリズムで、しかしさっきとは違い軽快にで岩瀬は階段を降りる。
15675 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:45:15 ID:Nm2wsMbi0
もう少しだ、もう少しで・・・・。
岩瀬は口元にうっすらと笑みを浮かべていた。

『ところで岩瀬。』
「はい?」
『俺との約束を忘れた訳じゃないだろうな?』

二段飛ばしで階段を下りきる。
あぁその事ですか、と言いながら岩瀬は扉のノブを回し外に出た。
空を見上げれば、今にも強い雨が降ってきそうなほど大きな積乱雲が見えた。
降ったら移動辛いだろうなー、と考えながら灯台にもたれかかる。
星野は岩瀬の返答を待っていた。
無線を口元まで近づけ、岩瀬はその無言の催促に答える。


「・・・・・星野さんが俺を利用するなら、俺は星野さんを利用させてもらいますよ。」
『・・・・そうか。』
15775 ◆7581q1C1/U :2005/08/25(木) 02:45:41 ID:Nm2wsMbi0



その後、岩瀬は目標の選手を聞き出すと返事もそぞろに無線を鞄の奥底へ仕舞い込んだ。
今度は邪魔されないように、今度あの人と話す時はまず・・・・。
ゆっくり左手で刀柄をなぞる。

「・・・・・さーて、刀あんまうまく使えないからなぁ・・・・・先に殺しちゃった方が斬るのは楽だよなぁ・・・・・」

目指すはHの4、目標に向かってレッツゴーだ。
のんきに音程の取れていない鼻歌を歌いながら、岩瀬は歩き始めた。
自らの求めるものを探して。

「あー、楽しみだなぁ・・・・・。」

やっぱり勘って、当たるもんだ。
ふと岩瀬は白い招待状のことを思い出した。


【岩瀬仁紀(13) A−1】
158代打名無し@実況は実況板で
リアル死神キタコレ!