乙です!
age
4 :
保守がてら:2005/07/29(金) 00:27:40 ID:mIg2TzYg0
「やっぱり、屋外にはいないな」
「…ですね」
薮田安彦と愛甲毅がグラウンドを歩いていく。
愛甲には初めての場所でも、薮田には2度目。
ここはこの忌まわしいゲームの幕開けとなった場所だ。
「一番ありえそうなのは監督室か。あとは放送機材の揃ってそうなアナウンス室だな。
あるいは、どこかに隠し部屋や地下室が……なんて可能性も」
「あっ…」
愛甲の話もよそに、薮田は何かを見つけて駆け寄った。
そこには地面に点々と黒っぽい染み広がっている。
それは昨日ついた血痕。明け方から降り続いていた雨でも、まだ洗い流せていない。
薮田はその場にしゃがみこむ。じっと地面に残る跡をみつめた。
忘れようとしても忘れられない、そして忘れてはいけない光景がよみがえる。
「澤井…」
もう帰ってこないチームメイトの名を呼ぶ。
恐れとも悲しさともつかない思いがこみ上げて、地につく手が震えた。
そう、すべてはここから始まった。そして今ここで終わらせる。
もうこれ以上、誰かを犠牲にするわけにはいかない。
「うぁっ!?」
突然、背後から聞こえた声にぎょっとして薮田は振り向く。
「ズボンに穴空けちまったよ…」
愛甲は破けたポケットの裏地を引っ張り出しながら言う。
他愛もない出来事に胸をなでおろした。
「あぁ…どこかで引っ掛けたんですかね」
「参ったなぁ。これも長い間着てたから仕方ないか…って、あ」
愛甲が何かに気づく。
「?」
「あれ落とした」
「あれって?」
「ほら、お前に人工呼吸したときに……」
船上での会話を思い出して、薮田の顔が引きつる。
「……もうその話は勘弁してください」
「まぁ、どうせ大したもんじゃないよな。…ん? どうした薮田? どこか気分でも悪いか?」
「……」
「なぁ、薮田??」
「……急ぎましょう」
薮田は言葉少なに立ち上がり、先を急いだ。
薮田キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!ワロタw
んでもって澤井(´・ω・`)
8 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 04:04:20 ID:+CUqHuGT0
保守あげ
保守
今度は落ちないようにがんばろう
落ちてたのか…
>1と職人さん乙です!
!
生きてるメンバーは何人だ?
スタッフも死んだりするようになるのか
!
読み直すと変な文だ。逝ってくる
【生存 21+1名】
3サブロー 5堀 6初芝 7西岡 9福浦
13浅間 14小宮山 20薮田 21内 22里崎
23大塚 24平下 25今江 29小野 30小林雅
38垣内 (※41小林宏) 51於保 54黒木 60成瀬
62金澤 67戸部
(※小林宏は発信器を吐き出したためセンサーに反応せず)
【死亡 33名】
0諸積 1小坂 10澤井 11神田 12藤田
17長崎 18清水直 19田中良 27清水将 28加藤
31渡辺俊 33橋本 34川井 35三島 37前田
39田中雅 40渡辺正 44喜多 45辻 46山崎健
47井上純 48高木 52塀内 53原井 55杉原
58青野 59富永 61寺本 64藤井 65曽我部
66ユウゴー 68早坂 93杉山
【管理】
山本功児 筒井良紀 佐々木信行 山下徳人 井上祐二 小野和幸(死亡)
【管理?】
園川一美 吉鶴憲治 荘勝雄 大谷幸弘 福澤洋一
【特別参加】
4フランコ 36李 42セラフィニ 50ベニー 愛甲猛
公式タソ マーくん リーンちゃん ズーちゃん C・フィルダー(死亡)
【?】
重光武雄 重光昭夫 瀬戸山隆三
【??】
2ボビー・バレンタイン
即死回避保守
即死回避保守
即死回避保守
現在のdat落ち条件は何?
22 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 08:14:40 ID:DwBKJGFY0
清原:へっ、このゲーム俺がもらったがな
もっ、元木!!! 元木氏ねえええええああああああああああああああ
この後、元木も結局殺され、優勝者は清水だったそうです
捕手橋崎
>>17 マリーンズ公式サイトで試合実況をしてくれる人
>>21 即死は20レスを96時間。
dat落ちは770スレ超えたところで700まで圧縮が行われる時くらい。
ちなみに下から順番にレスの古い順に圧縮されるらしい。
29 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 00:09:23 ID:f5lfrYPs0
試合では負けてしまったけども
ここのスレは負けないように頑張ろう
hosyu
ほす
大塚とか西岡のも続きが読みたい…
33 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 22:05:09 ID:mFA3RINcO
今江のと宏之のも気になります
近くの木に背を預けて佐々木信行が休んでいる。
腕にはめた時計を見ながら、すぐ横に大口を開けている洞窟の中を見やった。
ふと、何かに気づいたように中に向かって話しかける。
「おう、ご苦労」
ザクザクと石ころと砂利混じりの道を進んでくる音がする。
夜へ向けて少しずつ薄まり始めた光が届くギリギリのところ、地面には無数の大きな石が転がっている。
その上に踏み入るように、洞窟の奥の陰の中からスッと靴が現われた。
ゆっくりと、しかし確かな足取りで靴の主は全身を現す。
洞窟の中から現われた男が、目の前の男を一瞥する。
「佐々木さんか」
黒木知宏はそのまま彼の前まで歩いていき、数歩ほどの間を空けて立つ。
何も語ることなく、何の表情も浮かべることなく、目の前の男を見つめる。
佐々木は木から背中を離し歩き出した。片手で黒木を促す。
黒木はその後をついていく。
「あのランプは、佐々木さんが?」
「便利だったろう」
「まあ」
さほど感心もなさそうに黒木が相づちを打つ。
周囲を見回す。森の中のようだった。佐々木が口を開く。
「福浦は元気だったか?」
「ええ」
「それは何より」
見える限り、辺りは木々が密に生い茂っている。
足元、わずかに土の露出した小さな道を歩く。脇の草が覆いかぶさるようにその道を隠していた。
二人の男は足早にそれをかき分けて進んで行く。
「スタジアムへ行って今の運営者を倒す手伝いをしろという命令でしたが」
黒木が口を開いた。
「うむ、そうだ」
「具体的に何をするか、聞かされていません」
「ん? 後で言う」
「ちょっと」
後ろから聞こえた足音が止まったことに気づき、佐々木は振り返る。
黒木が佐々木の顔を見据えながら、わずかに眉をしかめていた。
「ちょっと待ってくださいよ。こっちだって危ない橋を渡ってきたんだ」
「そうか?」
少し笑いを含んで佐々木は言う。それを見て黒木は語気を荒げた。トランシーバーを袋から取り出し掲げる。
「俺にこれを持たせてあんたらは言ったな。
『福浦のそばにいて行動を観察しろ、ただし攻撃も協力もしてはいけない』って」
「ああ」
「もし福浦がやる気だったら、見ているだけなんて無理でしょう?
こんなモデルガン一つで」
「福浦はやる気じゃなかった。なんとも幸運なことだ。
そのモデルガン一つで巧みに仲間として取り入ったわけだし。さすがはジョニーだよ」
黒木が下唇を噛む。感情をなんとか抑えこもうとしているようで、一瞬言葉を詰まらせる。
「そんなことを聞いてるのとは違います。
こんな危険を冒してまで、なぜそんなことをさせるのか聞きたいんですよ」
「さあ? 俺に聞かれても知らない。あの人からの命令に従っているだけだし、お前もそうだろう?」
「生き残りが必要なのに、俺にはこんなことをさせる。運営側の山本さんを、あの人は殺すと言っている。
このゲームの主催者、一体何者で、何をさせたいのか分からない」
「詮索はその辺にしておけ。このゲームは奥が深いんだ。
どうせお前に命令に背くという選択肢などない。背けば、チームメイト全員の命はない。なぁ、ジョニー」
低くドスを聞かせた声が佐々木から発せられる。
黒木が大きく息を呑む。だが、その目に怯んだ様子はなかった。
「他のやつらがどうなっても知らんですよ」
佐々木がピクリと眉を動かし、目を大きく開ける。
黒木は少しうつむき加減で下を見ている。佐々木にその表情を読み取ることはできない。
更に黒木は吐き捨てた。
「俺まで巻き添えを食って死ぬのはゴメンだ。だから命令を聞いているんだ」
「ほう、ジョニーがそんなことを言うとはな」
黒木が自分の頭に手をやる。髪を後ろにかき上げると同時に、顔を上げた。
さめざめと空を見つめる。
一つ、ため息を小さくついた。
「あのマウンドへ帰る。それだけを考えてきたんですよ」
佐々木は黒木をじっと見つめ、その言葉を聞いていた。
「俺はエースだった。エースとしてあのマウンドの上にいた。
その記憶だけをずっと忘れずに生きてきたんだ。いくら後ろ指を差され、蔑まれても」
目に微かに別の風景を思い浮かべたように語る。そして再びその目は佐々木を向く。
「もう一度エースとしてマウンドに立つんだ。死ぬつもりはない」
「くくく」
佐々木が笑う。
「何がおかしいんです?」
「いや、これはお前を買いかぶっていた。
お前一人の命を盾にしても、こちらに協力するぐらいなら死を選ぶと思っていた」
「俺は俺の命だけが惜しい。何か笑うところがありますか?」
その言葉とは裏腹に、少しもその口調に怒りはない。
表情に変化はない。ただ淡々と言葉をつむぎ、悠然とそこに立っている。
「極めて正常だ。ただジョニーに関しては、全員を人質にした方がいいとな。
お前はそういう人間だと、あの人も俺も勘違いしていたようだ。それがおかしくてな」
「そうですね。全員を人質にするなんて無駄ですよ」
黒木がうっすらと笑いを浮かべ、視線を上や下にフラフラと向ける。もう佐々木を見ようとはしない。
佐々木が再び道を歩き出し、黒木に背中を向ける。
その背中を見て、黒木の表情が一変した。
堅く拳を握り締め、歯を食いしばり、体を震わせている。
何かを溜め込むようなその様子を佐々木が知ることはなかった。
「ま、誰が人質だろうと命令を聞くだけマシだがな。
あいつときたら……」
「あいつ?」
佐々木のつぶやきに思わず黒木が反応する。沸き起こった疑問に、体の震えがどこかへ抜けた。
「本当は合流するつもりだった、お前と同じ役割の人間、オブザーバーがいる。
もっとも観察する相手をまだ連れているから、会うわけには行かないが」
黒木は言葉が出ないようだった。
一人だけがその役割とは限らないという、当然の事に気づく。
だがそれは余計に、そのオブザーバーというものの意義に大きな疑問をなげかけた。
「それは誰です?」
「ん? それは――」
――ブチッ
「お? 壊れた?」
於保浩巳がトランシーバーを小突く。
スイッチを色々といじるが、トランシーバーからその会話が聞こえることは無かった。
「んー……ダメか」
内竜也は呆然とその様子を見つめていた。
ここで少し時間は戻る。
内に続いて於保も洞窟を出た。入ったときより薄暗い空。
足元には僅かに靴の跡が残っている。
「黒木さんは、確かにここを出たみたいですね」
「ああ、そうか」
あなたがそう言って案内したんじゃないか。そんな言葉を飲み込み内は獣道を進もうとした。
どのみち黒木に会わなくてはならない。会ってどうするつもりなのかは自分でも分かっていないのだが。
背後には於保がつっ立っている。と、顎をゆっくりとなでる。
バックに手を入れて何か取り出す。件のトランシーバーである。
「なんだこれは?」
於保が驚いたような声で言ってみせた。
内が振り向くと、落ちていたトランシーバーを拾い上げるようにする於保がいた。
「トランシーバー?」
「そうだな。なんでこんなところに落ちてるんだろう。全く不思議だ」
そう言って、於保はスイッチやつまみを適当に合わせ始めた。
間もなく、ノイズに混じって誰かの声が聞こえ始めた。どうやら2人が会話しているようである。
「チャンネルが合ってるんだな。筒抜けだ」
拾ったばかりにしては、妙に手馴れた手つきでそれを扱う於保が気になりもしたが、すぐにクリアな声が飛び込んできた。
『……ば、選手全員の命はない。なぁ、ジョニー』
「黒木さん!?」
聞き覚えのある声が、聞き覚えのある名を読んだ。そして聞こえたのは、彼の声。
『他のやつらがどうなっても知らんですよ』
「え……」
声にならない声が漏れた。
『俺まで巻き添えを食って死ぬのはゴメンだ』
その声は間違いなく黒木のものであり、だがその言葉が黒木のものであると認識できなかった。
ちぐはぐに思考が積まれる。状況を整理しようとするほど、脳は益々ぎこちなく動いていく。
『もう一度エースとしてマウンドに立つんだ』
この言葉が当てはまる人を、内は一人しか知らない。
だが、その声の主は確かにさっきの声の主と同じなのだ。
彼がそのようなことを言う、ということは、どういうことなのか分からない。
「黒木さんも乗っちゃったのかな」
於保がいとも簡単にその結論を口にする。
「違う」
反射的に口をついて出た。なぜ? 自分でも分からない。
自分は他人を押しのけようと決めたくせに、何故黒木がそうであることを否定しているのか。
「何でそう思う? 内よ」
分からない。何故、彼がそうすることを受け入れられないのか。
内はただ黙っていることしかできない。たどたどしく思考が動く。
「お? 壊れた?」
於保が自らスイッチを切り、そう言葉を発したことを内は知らない。
於保がそのトランシーバーを仕切りに直そうとするが、もはやそれは大きな問題ではなかった。
ふらふらと、細い道を内は歩き出す。
「内?」
於保の問いかけにも答えない。
ベルトに差し込んだ銃にそっと手を触れる。
ふと見上げると、木々の隙間に空とは違う色が見える。
大きな建物の壁、ほんの一日前に出て行ったあのスタジムがあった。
「黒木さんに会ったら、僕は」
その結論はまだ決まらない。
それ以前に彼に会いたいのかと、それすらも分からなかった。
ジョニー、踏ん張れ!
於保…冷静だ…
内がどう動くのか…?
職人さん、ほんとありがとう!いいもの読ませてもらってます!!
リアルで、投下の途中に遭遇したのが初めてで、ちょっと感動…
新作まってました!
於保は一体何がしたいんだろう・・・まったく先が読めないな
ジョニーも一瞬裏切りかとあせったけど、ただじゃ終わらないみたいだしガンガレジョニー
職人さんもガンガレ
どういう裏があるのかすごく気になる…
ジョニーの言葉は本心ではないのだろうか…
超おもしれぇぇぇぇぇ!
職人様相変わらずGJ!
43 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 01:28:28 ID:G5Q8g06g0
保守します
清水将捕手
45 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/03(水) 05:11:25 ID:zKgqC7Ts0
hosyu
定詰捕手
ほしゅ
「手を上げて。そのまま頭の後ろで組んでください」
背後から銃口を突きつけられ、井上祐二は小林宏之に言われるままに従う。
このまますんなりと宏之を案内して、制裁を受けて死ぬか。
それとも宏之に抵抗して、銃弾の雨を浴びて死ぬか。
いや、これだけ銃声が鳴り響いてるんだ。
きっと誰か異変に気づいて、駆けつけてくれるはずだ。
とにかくそれを待つしかない。井上は時間を稼ごうとして、ひたすら口を動かした。
「なぁ、お前…山本さんに会ってどうするつもりだ?
そんなことして、このゲームが止められるとでも思ってるのか?
このゲームはな、お前一人じゃどうにもならない程大きな力が働いてるんだよ。
悪あがきはやめとけ。無駄死にするだけだぞ。それに――」
――前にも同じようなことを言われた記憶がある。あれは確か、小野晋吾だ。
ぞれでも、もう後戻りは出来ない。今さら後に引けるか。
しがらみを打ち砕くように、宏之はマシンガンをぶっ放す。
「ひっ…」
井上の目線のすぐ横には煙立つ銃口があった。
硝煙の臭いが鼻につく。右耳は爆音のためにまだ聴覚が戻らず、耳鳴りが治まらない。
「井上さんがあんまりうるさいから、手が滑っちゃいましたよ。
無駄口たたかずに、さっさと歩いてもらえます?」
抑えながらも脅迫じみた口調。井上の顔から血の気がひいた。
(何で誰も来ないんだ!? 銃声なんて日常茶飯事だから、
いちいち反応してられないってか? それともまさか…)
考えたくない仮説がよぎる。
(分かっているのに、わざと来ない…? 俺は…見限られた?)
廊下を歩いていく筒井良紀の姿が思い浮かんだ。
あの人がまだこの廊下の先にいるとしたら、
銃声が聞こえてもおかしくないはず。なのに何故――
井上がまだ呆然と立ち尽くしていると、銃口がぺしぺしと横っ面をはたいてくる。
早く歩けと言う脅しだ。その感触ではっと現実に引き戻される。
「分かったよ、分かったから!」
返す声が裏返る。仕方なくとぼとぼと歩き出した。
足の向かう先は監督室。それでも頭の中では必死に抜け道を探して。
ゆっくりと歩みを進めながら、井上は宏之の様子にも考えを巡らす。
宏之を単身でここに乗り込ませたものは何なのだろうか。
単純に正義感だと言うには少し違う気がする。
宏之の言動には何かキレた迫力というか、凄みがある。
ただゲームをやめさせたいだけの平和主義者が、
こんなやたらめったらマシンガンを撃ちまくるだろうか。
「宏之、お前一体何がしたいんだ? ゲームの阻止だけじゃないよな…?」
井上の問いに宏之の眉がピクリと動く。
「……他に知りたいこともありますんでね」
何か含みを持った呟きが返ってくる。それ以上は答えない。
廊下を進んでいくと、ひとつのドアが目についた。
(あれだ…!)
ある考えがひらめく。賭けだった。
そのドアの前までたどり着くと、井上は足を止めた。
「手、下ろすぞ。いいか?」
宏之に確認してから、右手をノブにかけてドアを開ける。
すぐ脇の壁を探ってスイッチを付けると、明かりが点った。
目の前に現れたのは、細長い灰色のロッカーの群れ。
各ロッカーには二桁の番号が割り振られ、
部屋の奥へと向かって幾列の等差数列が続いている。
井上はすばやく目を動かして部屋全体を探った。
奥に野球用具が収納されていることを確認する。
「ここはロッカールームだ。このロッカーのひとつが、隠し通路の入り口になっている。
そこを通っていけば、お前の目的に適うはずだ」
口から出たでまかせだった。すべては宏之を陥れるため。
井上の意識は用具置き場に傾いている。狙いは金属バット。
頭の中で、自分がとるべき行動をさらう。
(まず宏之を部屋の奥まで誘い込む。バットを掴める位置まで来たら、
ロッカーを開けるふりをして襲い掛かる。宏之が撃つのが早いか、俺が殴るのが早いか…)
その先は分からない。うまくいったとしても、たぶん無傷ではすまないだろう。
それでも井上にとって、これが思いつく限り最善の策だった。一か八かだ。
立ち並ぶロッカーの間をぬって、そろそろと奥へ進んでいく。
「ああぁぁぁあああ!!!」
突然、叫び声と銃声を聞いて井上は振りかえる。
そこには半狂乱になって一台のロッカーを撃ち続ける宏之がいた。
弾が尽きてもなお、マシンガンを振りかざしてロッカーを叩きつける。
ガンガンと響く金属音。62番ロッカーがボコボコにへこんでいく。井上はそこに狂気の片鱗を見た。
これか、宏之を突き動かしていたものは。自分が感じた凄みの正体は、この狂気だったのか。
井上は宏之の豹変に恐れをなして後ずさる。
数歩下がると体が棚にぶつかった。そこにはボールやミットが仕舞われている。
はっと目線を下へやれば、足元にはバットケース。
井上はそこに立ててある金属バットを抜き出し、両手でしっかりと握った。
51 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 00:47:18 ID:iq7uVHvX0
乙ですー!!!
宏之こええええええええ((((゚д゚))))
職人様毎回乙です。
宏之怖いよ宏之
そういや戸田はどうしてるんだろう?
ほしゅ
今日は里崎捕手
56 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 03:01:14 ID:CIXNa9cSO
あげます
凄みがあるッ!
捕手
捕手
捕手杉山
61 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 10:41:17 ID:faFpbapR0
橋本hosyu
62 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 10:43:58 ID:RVbGgcx00
ドカベンの里中です!
橋崎
64 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 20:22:33 ID:MluxlYKS0
里崎
タスクチ
金澤
期待ほす
辻捕手
69 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/07(日) 22:44:41 ID:vbdx0UAD0
青松ほしゅ?
田中雅彦
ほしゅ
おいやんホシュ
保守
見守るスレ落ちた…
「……」
黙って後ろを振り返ること数秒、筒井良紀は再び歩き始めた。
ほどなく、廊下の向こうから兵士が一人駆けて来た。
筒井の姿を視界にとらえ一礼する。
「今、銃声らしき音が聞こえませんでしたか?」
彼が尋ねると、筒井は一呼吸間を置いて答える。
「ああ、聞こえた。スタジアムの外からな」
「外から? 侵入者ではないんですか?」
その兵士は少々の困惑を顔に浮かばせた。
「そうだ、正面玄関の警備が襲われたのは聞いているか?」
「はい。井上班長の指示で、負傷者の搬送と新たな人員の配置は完了しています」
「ふむ。実はその後分かったんだが……誰もスタジアム内には侵入していないのだ。
薮田が正面玄関の警備を襲った後、近くの森へ潜伏しているらしい」
「そうなんですか! 了解です。しかし、つい今も銃声が聞こえてきませんでしたか?
私はそれを聞いて慌てて来たのですが……」
「聞こえてきたのは窓の外からだ」
「窓?」
筒井が後ろの方に向かって手を持ち上げる。指し示した先には大きな窓があった。
窓は閉じており、厚いガラス越しに外の薄暗さが窺える。
「あの窓の外から銃声が聞こえてきたんだよ」
「はあ……」
そう言って兵士は窓の方へ近づいていった。と、不思議そうな顔をする。
「筒井班長、この窓……鍵がかかってますが」
ズダダ。
「え……?」
振り向いた兵士の顔は困惑で、体は赤い血で染まっていく。
拳銃を手に持った筒井が表情を変えず、彼の倒れる様を見守っている。
彼は床に倒れ、間もなく息を引き取った。
「うまい手だと思ったが、鍵がかかっているのを忘れていたとは」
そう言って、その窓の鍵を開ける。窓を開けると静かな森の風景が広がっていた。
「まぁ、この事態を利用すればな」
そうつぶやくと同時に、廊下の奥から兵士が数人駆けて来た。
「筒井班長! 今の銃声は!?」
先頭の兵士が叫ぶ。
「今、侵入者はこの窓から出て行った!
一人、コイツが撃たれちまった。もう息はない」
そう言って足元に倒れる兵士の亡骸を指差す。
「追うぞ、ついてこい!」
「イエッサー!」
筒井が窓から飛び出すのに続き、兵士達が外に飛び出して行く。
「相手は玄関の警備も一網打尽にしたやつだ。かなりの手練れだから心してかかれ」
走りながら兵士達に叫ぶと、それを聞き彼らは気勢を揚げた。
(ひぃ、ふぅ、みぃ……)
その様子を見ながら、彼に付き従ってきた兵士の数をかぞえる。
(5人か、正面玄関でやられたのが4人、俺がさっきやったのが1人。
10人がこれで消えることになるか)
もう一度人員の配置を思い出す。正面玄関含めた複数の出入り口の警備に割かれる人員は10名以上。
当初いた兵士の数は20人強だったはずだ。と、いうことは。
「今、スタジアム内を巡回しているのは一人二人もいないことになるか。
薮田と宏之め、感謝しろよ。これだけお膳立てしてやったんだからな」
「……zzz……バカヤロー、二日も休んでむにゃ……」
監督室に安らかな寝息が響く。
山本功児の眠りを妨げるものはいない。少なくとも今は。
監督室の前の廊下、その先すらも人っ子一人歩いていなかった。
彼を守るべき者はいない、ただそれを知らずに眠るだけであった。
新作キタ━━(゚∀゚)━━!!
エカピンチだな
職人さま乙です
乙です〜
エカワロスw
不覚にもエカに萌えてしまったw
職人さんGJ!
職人さんGJ
satozaki
84 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 16:04:55 ID:gyL/J2H/O
hatushiba
86 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 23:05:58 ID:HH48RvC1O
ロッテ
垣内哲也はふらふらと森の中をさまよい歩いていた。
誰かに会いたいのか、誰にも会いたくないのか、それすら自分でもわからない。
放って置いて欲しい。見捨てないで欲しい。
そんな相反する感情が同時に渦巻いて、押しつぶされそうだった。
それでも体を動かしていれば、少しはそんな苦しさも紛れる気がしたのだ。
生い茂る草を踏み分けようとしたとき、垣内は視界に入ったものに驚愕した。
垣内の足元には一升瓶を抱えた男が座り込んでいたのだった。
耳まで赤くなった顔。一目で素面ではないとわかる。
(何でこんなところに酔っ払いがいるんだ…?)
呆気に取られていると、酔っ払いがこちらの方に気づいた。
「お、垣内じゃねぇか! テメェ、しけた面してんじゃねーぞ、コラ」
大声で話しかけられたが、明らかに呂律が回っていない。
(…か、かきうちぃ? おいおい、こんなヤツに呼び捨てされる筋合いないぞ。てか、こいつ誰だ?)
確か浦和でよく見かけたような気がするが、名前が思い出せない。
素面ならすぐにわかったのだろうが、こんな泥酔した様子では判別がつかない。
「ま、おまえも飲め。飲んで、吐け!」
酔っ払いが一升瓶を差し出す。
「いいよ、俺は…」
「何だとぉ!? てめぇ、俺の酒が飲めねぇってのか? あぁん?」
そういいながら今度は、垣内の右足にしがみついてくる。
吐く言葉がすでに典型的な酔っ払いのセリフだ。
「何で俺がお前の酒を飲まなきゃならないんだよ!?」
しがみつく酔っ払いを振り払う。酔っ払いはそのまま地面にうつ伏せで倒れた。
そのとき見えた背番号と名前で、垣内はようやくその酔っ払いの名を思い出した。
(…戸部か!)
ふらつきながら戸部浩が起き上がる。
「垣内、貴様ロッテに来て何年だ?」
「は…? えーっと、2年…か?」
「だろぉ? 貴様、たかが2年ごときでガタガタ騒ぐんじゃねぇ。俺なんかなぁ、5年だぞ、5年。
先輩の盃は受けるのが筋ってもんだろ。とにかく飲め! 飲めったら飲め。飲め、飲め、今ここで」
言ってることが無茶苦茶だ。この球団での在籍年数はどうであれ、
年齢もプロとしての経歴も、戸部より垣内の方がはるかに上なのだ。
酔っ払いに道理は通用しない。よくわからないが、どうあっても飲ませたいらしい。
「飲めば気がすむのか…?」
垣内は戸惑いながらも差し出された瓶を受け取り、地面に腰を下ろした。
瓶には三分の一ほどの液体が入っている。夕暮れの空の下、目を凝らしてラベルを見た。
(何だこれ? 日本酒…? いや、泡盛か。沖縄の酒だな)
そうだ、本来なら今頃秋季キャンプで沖縄にいるはずだったのに、
何でこんな所でこんな目に、しかも酔っ払いの相手までしなけりゃならないのだろうか。
垣内自身、酒は嫌いではない。いや、むしろ好きだ。強い方だと自分でも思う。
西武にいたころには清原や鈴木健と一緒によく飲み歩いたものだった。
だが、今は別だ。練習後に労をねぎらって仲間と飲む酒ならばうまいだろうが、
とてもそんな気分ではなかった。瓶を受け取ってしまったものの、気が進まない。
どうしてもこれを飲まなければならないのだろうか。
垣内は請うように戸部の顔を見た。
「飲め! 飲め! 今ここで! かきうちてーつーやー かきうちてーつー……」
「ああ、もうわかったよ! 飲めばいいんだろっ! わかったから歌うな、バカ!」
フリまでつけて歌い出す戸部を制して、一気に酒をあおった。
瓶の口から生ぬるい液体をそのまま喉に押し流す。
数口飲んだところで、地面に瓶を置いた。
「…気がすんだか」
戸部はその様子を食い入るように見た後、手を叩いた。
「さっすが、おいやん! やっぱり、飲みっぷりが違うっ! じゃ、後は頼んだ」
そう言って垣内の背中をばしんと叩くと、戸部は地面に倒れ込む。
「おい、ちょっと…? 頼むって何がだよ!? おい、起きろ! なぁ、戸部?」
体を揺するが起きようとしない。完全に酔いつぶれてしまってる。
すぐにいびきまで聞こえ始め、垣内は起こすのを諦めた。
「何なんだ、一体? 飲まなきゃやってられなかったのか…?」
垣内は目の前で眠りこける酔っ払いをただ呆然と見つめていた。
職人さんGJ!
戸辺酔いすぎだよ戸辺w
絡むは歌うわいきなり寝るわってただの酔っ払いじゃんww
砥部は「飲み過ぎて嘔吐して発信機を吐き出す」ことが
目的で飲み始めたんだから・・・。寝たらダメじゃん、もっと飲まなきゃ。
全く。さすが酔っ払い、行動が完全に意味わかんなくなってるな。
何やっとんじゃw
うつキャラの垣内が完全にネタ要員でクソワロタ
戸部テラワロスwww
垣内が絡まれてカワイソスw
本当に、戸部には癒される。
発信器、吐いたかどうかも覚えてなかったりしてw
>飲め! 飲め! 今ここで!
泣くほどワロタw
一回あげます
96 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 10:21:06 ID:nJF2YGZ40
「飲め!飲め!今ここで!」
思わず歌ってしまったジャマイカwテラワロスw
里崎
〔丶`J´〕ノ◆<オッス、ケンニップ(えごまの葉のつけ物)!李承■デス
小さなビルの裏口に入ると、そこには地下へ続く階段がありまシタ。
1階分降りると、踊り場にドアが一つ、そしてまた下へ続く階段。
小さな蛍光灯一つでは薄暗くて、コンクリートの壁がより黒ずんで見えまシタ。
そしてその女性に導かれ、私と同士達は地下へと降りていくのでしタ。
「どこまで降りる?」
「ここまで、ですよ」
そう言って彼女は踊り場のドアの前で立ち止まりましタ。
ノブを回すと、キィとさび付いた音を立ててドアがゆっくり開きましタ。
「これは……」
私達の前には長い長い廊下がありましタ。そこは何の案内もなく、ただただ壁が続いていまシタ。
「オー、ヤリチン……」(訳:都心の地下にこれだけの通路があるとは、これはもしや……)
「そうです。この通路はロッテ本社の地下まで、いえ、この一帯の地下に張り巡らされた秘密の施設につながっています」
「秘密の施設?」
「大企業らしく、色々と表に出せないことをするための施設のようです。
私がこれからご案内するのはCMBRの中心と思われる所ですね」
彼女は廊下を歩き出しまシタ。
廊下はところどころ分かれ道になっており、ときたま何かのドアが現われマス。
「社員に見つからないような道を進んでいます。勝手な行動は取らないでくださいね」
そう言って、彼女は私達の行く手と違う方の道をのぞき見るベニーをたしなめましタ。
「オー、ヤリチン?」
フランコがそう尋ねました。彼女は一旦足を止め、フランコを向き直りまス。
「そういえば、まだ私についてお話していませんでしたね。お分かりになりませんか?
ま、無理もありませんね。裏方ですから」
「やはり、あなたはマリーンズと関係のある方なんですね?
そうなんです。覚えがないわけではないんですよ」
私もその会話に割って入り、先刻からの疑念を問いただしマス。
「ええ、私は……あれ? ベニーさんは?」
周囲を見渡すとベニーがいなくなっていましタ。
「誰だ!」
そして後方の曲がり角の先から、そんな叫び声が聞こえてきたのデス。
「千葉マリーンズ・バトルロワイアル、早く、止めろ! 今すぐだ!」
「ぐああ……、侵入者だ! 侵入者だー!」
私達が駆けつけると、見知らぬ男の胸倉を掴んで持ち上げるベニーの姿がありまシタ。
男は既に泡を吹いて気を失っているようでス。
「ベニーさん、なんてことを!」
彼女が叫び、ベニーへを激しく責め立てまス。
「せっかく遠回りでも安全な道を進んでいたのに。すぐに警備が来てしまいますよ!」
「遠回り? しない! みんな、きっと苦しんでる。だから助ける、早く!
ゼッタイ、遠回りなんて、しない!」
ベニーが大声で言い返しまシタ。私も驚くほどの大声デ。怒りで体を震わせながら、しかし目に涙がありまシタ。
「しかし……」
彼女はその後に続ける言葉が見つからないようでしシタ。
「オー、ヤリチン!?」(訳:おいでなすったぜ。さあ、どうする!?)
廊下の置くから大勢が駆け寄ってくる足音が響いてきましタ。
彼女の表情が険しくなりまス。
「警備が来たようです。ここは一旦逃げま……」
振り返る彼女を大きな腕が制止しまス。ベニーが仁王立ちしていましタ。
「バトルロワイアルの中心、どこだ? それ、教えろ」
「何言ってるの? あなたが騒ぎを起こしたせいで、その方向から警備が来てるのよ!
どうやって行くって言うのかしら!?」
彼女も焦っているようでしタ。さっきまでの冷静な姿が嘘のようでス。
「わかった、アリガトウ」
そう言ってベニーが走り出しまシタ。向かう先は、まさにその中心へと向かう方向デシタ。
「オー、ヤリチン!」
「そうだ、フランコの言うとおり無茶だ! 止めろ!」
フランコと私の制止も聞かず、ベニーは全速力で走って行きまス。
「いたぞー!」
廊下の向こうから大勢の人間の影が現われましタ。
「な、あれは……!?」
彼らは手に手に銃を持っていまス。ここは日本のはずで、日本は一般人には銃を持つことはできないはずナノニ!
「オー、ヤリチン!」
「今さら驚くことではありません。これがロッテ本社の裏の顔です。早く逃げましょう!」
彼女が訴えまス。
しかしベニーは、ベニーの足は止まることはありまセン。
それどころか加速がどんどん強まっていきマス。
「撃てえぇ!」
「ベニー、引き返せ! 危ない!」
「うおおおお!」
私は思わず目を閉じましタ。
ガガガガガ。ドン。
幾つもの銃声のあと、大きな衝突音が響きましタ。
「……?」
私は恐る恐る目を開けまス。
そこにはベニーが立っていましタ。その横には何人もの警備達が倒れていまス。
「オー、ヤリチン!?」
「大丈夫、俺、痛くない。こんな弾、効かない! 当たらない!」
さすがはベニーでス。彼はその屈強な体で、銃すらものともしなかったようデス。
「なんて人……」
彼女はただ驚いているようでしタ。
「さぁ、行こうぜ!」
ベニーが再び走り出しまス。誰も遮ることのない廊下を、私達も後に続きましタ。
「地下連絡通路で侵入者が確認されました。現在、本社の最下層部へと向かっているようです」
「よし、すぐに捕えろ!」
瀬戸山の指示を聞き、部下の一人が足早に部屋を出た。残った部下は更に報告を続ける。
「監視カメラで確認できました。外国人たちを手引きしているのはこの女です」
「んむ、これは!? なるほど……道理で内情に詳しいと思ったら」
「ご存知で?」
「ん? まぁな、よしこの女も一緒に捕らえろ。確か暴動鎮圧用のアレがあったろう。
余興の演出にピッタリな人材まで来るとはなんとも都合がいい。私には運があるぞぉ……ふふふ」
「一体、この女は誰なのですか?」
「この女はな、株式会社千葉ロッテマリーンズの人間であり、私の部下だ」
ベニーが先頭に立って廊下をぐんぐんと走って行きマス。
「そこ、右です……はあはあ」
「わかった!」
「オー、ヤリチン?」
「えぇ、急ぐのは結構ですが私にはこのペースは早すぎま……」
「オー、ヤリチン」
「え? あら、まあ」
ひょいとフランコが彼女を担いで肩に乗せましタ。
「すいません、フランコさん」
フランコが手を横に振って気にするなと合図しまシタ。私達はなおも走りまス。
「とにかく、もはや一刻も早くこのゲームを止めるしかありません。
マリーンズが無くならないために。私の夢がなくならないために」
「貴女の夢?」
「オリオンズの時代から。このチームの誇りを声に乗せて球場に響かせるのが夢だった、そんな女です。
千葉マリンでずっと貴方たちの名前を呼んでいた、それだけの女ですけど」
「オー、ヤリチン!」
「では、あなたは」
「谷保恵美、ただのウグイス嬢です。
マリーンズの選手達は私の誇り、彼らの名前を呼ぶのが私の夢。だから絶対に壊させません」
そのとき、前を走っていたベニーが叫びましタ。
【同士4名 ※■は火へんに華】
「Lの13隔壁、降下開始」
その合図と共に、ベニーの前に突然壁が降りてきた。
ベニーがそこに到着する頃には完全に通路を塞いでしまう。
慌てるベニーだが、じっとその壁を睨むと力いっぱいに拳を叩きつける。
わずかに壁から破片がこぼれ落ちたが、厚い壁にその小さな亀裂が広がることは無かった。
腕を抑える。武装した警備たちに体当たりし、多数の打撲を負った両腕。
後ろにいる仲間達にさとられてはいないが、負傷で弱まった力まではごまかせなかった。
駆けつけてきたフランコが立ち止まる。
振り向いた瞬間、ベニーがゆっくりと崩れ落ちる。フランコがハッとして上を見る。
「オー、ヤリチン!!」
天井の小さな穴から少し白く曇った気体がゆっくりと降りてきている。
まともにそれを吸ったベニーは既に深い眠りに落ちていた。
催眠ガス。フランコが後ろを見ると、後方でも通路を塞ぐように壁がゆっくりと降りてくるのが見えた。
既に彼の体にしなだれかかった谷保が彼の動きを鈍らせる。
後ろにいた李がベニーを助け起こそうと近づいてくるのを見て、フランコは渾身の力を込め彼の体を蹴り飛ばした。
地面を転げながら李の体は下りてくる壁をくぐり、その向こうまで達する。
「何てことをするんだ! フランコ、オイ、オイ!」
頭を抱えながら起き上がり、李が悲壮な面持ちで叫ぶ。
そこでフランコの膝がガクリと落ちる。クッと一息吐いて、もう一度立ち直す。
ニヤっと笑って右手の親指を上げると、全身から抜けていく力を振り絞って李に言い放った。
「オー、ヤリチン」
そして壁が完全に李と3人を分ける。
李は地面を拳で激しく叩き付けると、歯を食いしばってその場から逃げ去って行った。
【同士4名 ※■は火へんに華】
谷保さんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
薄々感づいてはいたけど、やっぱり貴女でしたか!
スンちゃん、どうなるんだスンちゃん…
gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
久々のスンヨプ!
こっちも大詰めになってきましたね
職人さん乙です。
マティ、かっこいいよマティ
スンちゃん一人でどうすんだ…?
マティ・紅・谷保さん達は…?
続き読みてぇ!!職人さん、待ってます!
谷保さん、どうなっちゃうの?
コワイヨォ
hoshu
橋崎将也捕手
111 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 21:47:43 ID:iZysVYGIO
ウグイス嬢期待。保守age。
辻捕手
hosyu
定詰捕手
捕手
吉鶴捕手
117 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 17:02:46 ID:7jnGL/4O0
圧縮回避age
捕手ディアズ
119 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:39:16 ID:xwNoPIWt0
園川捕手
ヽ ̄ヘ ̄ノ<捕手
ディアズ
123 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 18:17:07 ID:SHqjIEQr0
hosyu
124 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 12:00:23 ID:8IonHoqKO
ほ
田中雅捕手
「マー君、大丈夫かしら…」
リーンちゃんはマリンスタジアムの外でひたすらマー君とズーちゃんを待っていた。
ズーちゃんが「何とかしてくる」と言い残してスタジアムに消えてから数時間。
もうすっかり日も傾いて、暗くなりかけていた。
「ごめん。リーンちゃん、お待たせ!」
ようやくズーちゃんがマー君を引き連れて現れた。
「マー君!?」
リーンちゃんはその姿に驚いた。
ズーちゃんの横にいたのは確かにマー君ではあった。
が、それはマー君はマー君でも3代目マー君だった。
今のマー君は2002年にリニューアルされた4代目マー君である。
3代目マー君はしっぽや目など現マー君とは微妙に雰囲気が違っている。
そんな3代目マー君と今のズーちゃんが並んでいる光景は異様としか言えなかった。
「うわぁ、懐かしい…よく見つけてきたわねぇ」
「ほら、今の兄ちゃんは切っちゃったおでこの修理…じゃなくて治療に時間かかりそうだったし、
治るまでの応急処置ってことで、ね。(それに、首の補強もしなきゃならないしさ…)
中の人…じゃない、内面は変わってないから問題ないよ。なんか埃っぽいけど」
「…そうなの? よかったぁ」
ズーちゃんのたどたどしい説明にはかなり無理があったが、
リーンちゃんはそんなことを気にすることもなく、ただただ安堵した。
「…で、マー君。首は大丈夫なの?」
「へっ? 首?」
(うわあぁぁぁあああ! リーンちゃん、それ言っちゃダメだってば!!)
きょとんとしているマー君の横で、ズーちゃんがものすごくうろたえている。
リーンちゃんはそれに気づいて、慌てて両手で口を押さえた。
「首が…どうかした?」
「なんでもない、なんでもないっ! あー、ほら、追突した衝撃で
ムチ打ち症になってたりしないかなー、なーんてね。ア、アハハハ…」
ズーちゃんはとにかく笑ってごまかす。
気絶してる間に首ポロリ、なんて本人に言えるはずがなかった。
リーンちゃんも内心苦笑いしながら、ハッとあることに気づく。
「ねぇ、ズーちゃん。これってまさか、マー君がまた怪我したら
今度は2代目や初代のマー君が出てくるの…?」
「そだよ」
ズーちゃんはあっさりと答える。
リーンちゃんは頭の中で歴代のマー君の姿を思い浮かべた。
今でこそ12球団のマスコットの中でも有数の可愛らしさを誇るマー君だが、
初期のマー君といったらそれはもう、今の面影など微塵もなく、
どこがカモメなのかと問い詰めたくなるほどの出来であった。
「マー君、もう絶対に怪我しちゃダメだからね! 絶対だからねっ!!」
リーンちゃんはマー君に強く念を押した。
新作キテタ━━(゚∀゚)━━!!
職人様いつも乙です!
マー君たちはほのぼのしてて面白いな
初代マーくんの画像が貼られる悪寒w
ヽ`↓´/
∩
( ゜∀゜)彡 よしこ!よしこ!
⊂彡
ふと思ったが・・・24日以降は「愉快なカモメたち」にイワトビペンギンの
○ールくんも出演するのだろうか・・・?あと、「よしこ」も・・・?
「アカン、これも違うわ」
今開けたばかりの部屋のドアをバタンと閉めて薮田安彦は横を見る。
そこには同じようにドアを開けて中を窺う愛甲猛の姿があった。
「そっちはどないですか?」
尋ねられ、愛甲が無言でドアをゆっくりと元に戻す。
「……山本さんがいっぱい、いる」
「は?」
薮田が慌てて駆け寄りその部屋の中を見ると、六畳ほどの小さな部屋の壁一面に山本功児の写真パネルが飾られていた。
その壁の中央にはサインの入ったバットやボールと共に「山本功児博物館」と書かれた板が掲げられている。
現役時代からつい最近と思われる各種の顔写真が、一様にこちらを見てニヤニヤと笑っている。
「……行きましょう、早く監督室を探さな」
「ああ、そうだな……」
片っ端から目に付いたドアを開けていく。
会議室や倉庫に博物館、しかし目当ての部屋は見つからなかった。
このスタジアムの中で迷っている時間などないと、焦りだけが二人の心に募っていく。
廊下を小走りに駆け、曲がり角で一旦止まると薮田がその先をチラリと見やる。
「よし、誰もいないですわ。行きましょ」
「妙だな」
飛び出そうとした薮田の出鼻をくじくように、愛甲がつぶやく。
「何がですか?」
振り返って薮田が問う。
愛甲はしばらく黙ると、おもむろに口を開いた。
「おかしいと思わんか? スタジアムに入ってから、兵士と思しき奴に遭遇しない。
一人もだぞ? お前の話だとかなりの数の兵士がいるんだろう?」
「そういえば」
ハッとしたような表情の後、薮田は再び角の先を窺ってみる。やはり誰もいなかった。
「確かに、静か過ぎですね」
「何かの罠か、あるいは何かアクシデントでも起きているのか……」
「しかし、ワイらはいずれにしろ」
「行くしかない、な」
互いの眼を見て頷き合うと、二人は再び廊下を駆け出した。
またいくつかのドアを開いてはため息をつく。
「やはり、表立ったところには無いのか」
愛甲の心に徒労感が浮かんだそのとき、すぐ向こうの薮田が叫んだ。
「ここや!」
そこにはマイクを始め放送機材らしきものが並んでいた。
そろそろと中に入り、大型の機器の上に乗ったマイクの所へ近づいていく。
「ん、これは?」
マイクの近くに散らばっていた小さな紙の一つを取る。
「12時放送分。11番藤田、31番渡辺俊……」
「定時放送のメモか! 決まりだな、ここがアナウンス室ってわけだ」
愛甲の瞳に再び活力が戻る。いよいよ来るべきその時を見据えた瞳だった。
パシンと右拳で左の掌を叩く。
「よーし、ここで待ち伏せすれば山本さんが直に来るってわけだ。
そこをひっ捕まえて……ん? おい、薮田、聞いてるか?」
薮田の背中が静かに震えている。
一枚、一枚、そこに置いてあったメモに目を落とす。じっくりと目を通して、静かにそれらを元の場所に置く。
「薮田……」
静かに漏れている声は、何かを押し殺しているようにも聞こえた。
悲しみ、怒り、あるいは別の何かなのか。強い感情が彼の背中にみなぎるのが愛甲には見えた。
何の感情なのかそれは薮田本人にすらわからないのかも知れないが。
「そこに大きいロッカーがある、中に隠れて山本さんを待とう」
「……分かりました」
そう言って薮田はロッカーに向かう。
「飛び出すタイミングはどうする? 俺が行くか?」
2・3度、薮田は胸に手を当て深呼吸をした。
「お気遣いありがとうございます。でもワイが行きます。行かせてください」
弱々しさや焦りは含まぬ、逞しさと優しさを併せたような声で薮田は言った。
愛甲は安堵のため息をつく。ポンと薮田の肩を叩き、頼むぞと言ってやった。
キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!!
職人さんいつも乙です!
こんなに早く見れたの初めてだw
薮田超がんがれ薮田(つД`)
エカ博物館テラワロスw
[っ゚┏┓゚]つ<捕手
138 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/25(木) 16:48:06 ID:DiE+/63I0
ほしゅ
辻捕手
ほしゅ
141 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 21:23:04 ID:3yrPf4Pu0
これはGJ!
乙です
>142
頂きました!(*'∀')b グッジョブゥ
>>142 西武には負けられない 魂をこめて闘え!
もすかうキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
やべ。脳内でエンドレス('A`*)
hoshu
ほしゅ
151 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/08/28(日) 20:38:29 ID:kvgeHJ8h0
ほしゅ
エースは勝たなければいけない。だけど勝つだけではエースになれない。
あのマウンドに立つ。それは今の自分には届かない最低限の夢なだけで。
エースとしてあの場所に還る時、自分の左足が大地に刻み込むのはスパイクの跡だけではないのだ。
だからこそ自分はそうすべきなのだ。エースとしてあのマウンドに還るために。
黒木知宏は森の中をかき分けて進んでいた。スタジアムはもうすぐそこにそびえ立っている。
それを囲う森の向こうに太陽が沈み、空は深い紅色から橙や紫を経て深い紺色に変わっていく。
もう日が暮れる。逸る気持ちを抑えて、一歩また一歩と黒木は進む。
前を行く佐々木信行の足取りは余裕すら見え、それが余計に黒木を苛立たせた。
焦るな。自分自身はいつでも味方であり、ときに最大の敵になるのだと心の中で言い聞かせた。
グッと右拳を強く握る。すぐに開くと手の平からじわっと痺れが広がった。
間もなく森を抜けてスタジアムの前へと出る。
「ジョニー、ここで待ってろ。色々と手続きが複雑でな」
「構いませんけど、スタジアムには入れるわけですよね?」
一刻も早く、それが本音だ。が、今はこの男についていくしかない。
口を突いて出そうな不平は全て飲み込んだ。
佐々木は彼の問いに頷くと、一人森を抜けていった。
「おーい、様子はどうだ」
「佐々木班長! どちらに居らしたんですか?」
スタジアムの裏口には2人の兵士が立っており、佐々木の姿を見てまず驚いたようだった。
適当に理由をつけて外出をごまかすと、正面入り口の襲撃を聞き佐々木はわざとらしく驚いた。
更に2人の兵士に伝令を頼む。少しいぶかしげな2人に適当にその理由を話す。もちろん嘘だ。
森の中から隠れて黒木がその様子を窺っていた。
じりじりと過ぎる時間をただひたすら待つ。
佐々木と兵士達のやり取りをただ見つめている。
そこから少し離れ、彼の様子を無言で見つめている影があることを知らずに。
2人の兵士がスタジアムの中へ消えていった。しばらくして佐々木が合図をする。
それを見て黒木が小走りにスタジアムの裏口へ向かう。
佐々木と合流すると、二言三言会話を交わしてスタジアムの中へ入っていった。
その一部始終を見届けてから追いかける様に走ってきた人影が、がら空きになった裏口を通っていく。
「そういえば佐々木さんの声だったのな、さっきの通信」
「……」
「なんで運営側の人とつるんでるんだろうか? 黒木さんは」
「……」
「内?」
「少し、静かにしてください」
影は二つ、内竜也と於保浩巳である。
「どこへ行くんですか?」
佐々木の後に続き、黒木が廊下を歩いていく。
「時期が来るまでどこかで待機してもらうことになる」
「時期?」
「あの人が着くまで、ということになるな」
「いつ到着するんですかね?」
「そろそろ着いてもいい頃だが、まだ連絡はないな」
佐々木の背中の向こうで黒木が下唇を噛む。一つ、心を落ち着けるように息を吐いた。
「そんなズサンなことでいいんですか?」
「知らんよ。俺に聞かれても」
「俺は誰かに見つかったら危ないんですよ、ここにいると」
「俺だって立場が危ういよ。お前と一緒にいたら」
進渉のない会話。辟易したように黒木は周りを見渡した。
殺風景なコンクリートの壁、時折大きな窓が現われ外の様子が見える。
「?」
ふと後ろを振り返る。滑らかな曲線状の廊下は数十mほどで先が見えなくなる。
その見える限りで誰もいない。だた殺風景な廊下が伸びていく。
誰かいるような気配を感じたのは気のせいだったのかと、黒木は前に向き直った。
「この部屋で待機してもらう。ここなら間違いなく誰も入って来ないはずだ」
佐々木が足を止め、廊下に面した一室のドアを開けた。
「何です、その部屋は?」
「山本功児博物館」
部屋の中を見て黒木が後ずさった。
「ここなら絶対に、絶っ対に誰も寄りつかないから安心だ。
あ、山本さんは来るかも知れないが、そのときは丁度いいだろう。
さあ、さあさあ」
黒木が入るのを必死でためらう。それを佐々木は無理矢理押し込める。
やることがあるからと逃げるように佐々木はそこを去っていった。
一人になると、ため息をついて黒木はそこにあった椅子に腰掛けた。
背負っていた袋を開ける。
あるのはトランシーバーとモデルガン。
「やはり、武器が要るかも知れないな。
投下場所で手に入れておくべきだったか」
つぶやく。手元のそれらの道具を見つめたまま、自らの決意を反芻する。
「いや、あそこにあった武器じゃ使えなかった」
道具をそそくさと袋にしまいこむ。
モデルガンはいつでも取り出せるように、持ち手だけ外に出して。
「本当に誰かを殺めかねない武器じゃないと。何の意味もない。
そのために、俺は」
右ヒジ、そして右肩に手を当てる。何かを聞くように、二度相づちを打った。
左足の踵で床を二度叩く。スパイクは履いていないが、マウンドをならす時を思い出して。
投げた数だけ踏み込んだスパイクが刻んできたそれは、何度大地をならしても残っていたっけ。
「あのマウンドへ還んだ、もう一度エースとして。それだけを思ってきたんだ」
故郷の訛りの消えない声。自分に聞かせる。
いつまでたっても消えないなと、思わず小さく笑う。
うん、これが最後と頷いた。そして顔を上げる。真っすぐに前を、ドアの方を見据えた。
ガチャリ。その瞬間、突然ドアが開いた。
虚を突かれ、黒木は入ってくる人間をただ見つめるだけしかできない。
「え?」
そこにいたのは佐々木でも、見回りの兵士の姿でも、山本功児でもなかった。
「黒木さん……そのまま動かないで、僕の質問に答えてください」
手に持った銃を黒木の額に向け、ひどく冷めた表情の内竜也がそこに立っていた。
新作、お疲れ様です。
なんてタイムリーな…
職人さん乙です
ほんとタイムリーですな。エカ博物館に引く黒木ワロスw
内とも会っちゃったし続きがフクーラしく楽しみです
職人様乙です!
ジョニーどうなってしまうんだ…
こっちのジョニーも華々しく復活してほしい。・゚・(ノД`)・゚・。
ジョニー…死んじゃやだ
hoshu
うっちー怖い… でも気になって眠れなさそう
ほしゅ
捕手
ほしゅ
早く続きが読みたい・・・。
「暇だ・・・」
吉鶴は暇を持てあましていた。
今後のことは決まったものの、福澤が帰ってこないことには動きようがない。
「福澤さん、どこまで追いかけていったんだよ・・・。」
吉鶴は時計を見た。
荘が電話をしてからせいぜい10分程度しか経っていないだろう。
しかし、福澤を待つ以外、他にすることがないのである。
「あ〜っ、もう!!」
吉鶴は大きく伸びをして、ごろんとソファで横になった。
「ねえねえ、吉鶴くん」
「はい?」
横になってすぐ起き上がるのも億劫だったが、吉鶴はとりあえず半身を起こして声のしたほうを向いた。
荘がうきうきした表情で話しかけてきた。
「お腹すいてない、お腹?」
「そういえば・・・」
思い出してみれば、プレナで昼食をとった後、これといった食事はとっていない。
それにたった3人でグラウンド整備をしたりと、それなりに体を動かしている。
「そりゃあ、そこそこ空きましたけど・・・。」
吉鶴はそこで言葉を切り、改めて時計を見た。
「あと1時間もすれば夕食の時間じゃないですか。」
もうすぐ夕食なのに、わざわざ何かを食べるというほど、吉鶴の食欲はなかった。
「そっか・・・。」
荘は少し表情を暗くした。
が、すぐに向き直り、
「まあ、良いや。おやつ食べようよ、おやつ!」
「はあ・・・。」
「よーし、おやつ無いかな、おやつ!」
うきうきしながら荘は食堂へ向かっていった。
そんなにお菓子が食べたいものなのかと少し呆れながら荘を見やり、また吉鶴はソファで横になった。
あ、あれ?トリップ間違えたorz
おぉっ、久々の園様編キタコレ!
やっぱ壮さんはおもしろいなぁw
そこに
―ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
(福澤さん、やっと帰ってきたよ・・・)
そんなことを考えながら、吉鶴は身体を起こした。
「はいはい、今あけますよ〜。」
独り言をしながら、吉鶴はドアノブに手をかけた。
「うわあああっ!?」
突然バランスを崩してつんのめってしまった。
「な・・・なんだよ一体?」
一瞬のことで何がなんだか分からなかったが、
どうやら手をかけた瞬間に、扉の向こう側からもドアを開けようとしたらしい。
そのため、扉の外側から引っ張られるような形となってしまい、バランスを崩してしまったようだ。
「まったく・・・。福澤さん、ちょっとくらい待っても・・・あれ?」
吉鶴は扉の前に立っていた人物に声をかけたが、それは吉鶴が想像していたのとはまったく異なっていた。
170 :
167:2005/09/02(金) 01:36:01 ID:qTmt1jRP0
うわ、割り込んでしまいました。すいません。
しかも荘さんの漢字間違えた…
とにかく職人さん、乙です。
職人様乙です!
荘さんかわいいなw
172 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/02(金) 18:53:23 ID:ch1aGHTu0
age
丸一日書き込みがないじゃん。落ちちゃうぞ。
捕手
ほしゅ
捕手
177 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 01:28:26 ID:rsBq3q2eO
橋崎
辻捕手
「またお前かぁぁあああっ! 62こいつ! いつもいつも!!」
小林宏之は叫びながら、ロッカーに向かってマシンガンを叩きつける。
激情のままに発する言葉は、もはや意味をなさない奇声と同じだったかもしれない。
宏之の思考をかき乱すのは62という数字。
一度ならず二度までも姿を現し、攻撃してきた輩を連想させる忌まわしい記号だ。
宏之にとってそれはただの数字ではなく、山崎を殺した人物そのものだった。
その数字を見るだけで神経が高ぶり、頭に血がのぼる。
もうその数字しか見えない。その数字があの後ろ姿に重なる。
自分のすぐ近くにいる人物のことなど、すっかり脳内から吹き飛んでいた。
マシンガンを振り下ろす腕は止まらない。その数字を破壊せずにはいられない。
こいつが殺したんだ。こいつが、62が、あの人を――
ガンッ。
突然、襲い掛かるブラックアウト。頭に強い衝撃が走る。
とっさに両手で頭を押さえた。持っていたマシンガンを取り落とす。
何が起きたのかわからない。足元がふらつく。立っていられない。
何かに掴まろうと伸ばした手は宙を掴む。
宏之の体はバランスを失い、床に崩れ落ちた。
「…悪いな、宏之。こっちも命がけなんでな」
倒れている宏之のそばには、金属バットを持った井上祐二がいた。
横たわる宏之を見下ろす。肩が動いているから息はあるのだろう。
これで逃げられる。あとは何もなかったフリをすればいい。
井上はバットを置いて、部屋を出て行こうとした。
ドアの前に立ったとき、はっとあることを思い出して振り返る。
山本功児が薮田に怪我はさせるなと言ったのだ。
その理由は当然薮田がリストに挙がっているからだ。
それは宏之においても同じこと。もう死んだことになっているとはいえ、
リストにあがっていた選手を傷つけたと知れれば、何らかの制裁は免れないだろう。
このまま宏之を生かしておくのは危険だ。
本人の口から、自分のしたことがバレてしまうかもしれない。
ならば宏之の口を封じるにはどうするべきか。宏之から完全に逃げきるためには。
しばらくの沈黙のあと、井上は再び金属バットを握り直した。
宏之は床に伏して目を閉じ、じっと衝撃に耐えている。
揺らぐ意識。うねる思考。動けない。
自分は何故ここにいるのだろう。何をしていたのだろう。
わからない。頭が働いてくれない。
目を開ければ、ぼんやりとした視界が広がる。
宏之はその中に、ポケットからこぼれ落ちた携帯電話をとらえた。
回転の鈍る頭に思い浮かんだのは、待ち受け画面に見た彼女の笑顔。
会いたい。彼女に会いたい。せめて写真だけでも。
重い腕を持ち上げ、携帯電話に向かってゆっくりと伸ばす。
「佳…世……」
おぼろげに口をつく彼女の名。すぐそこに彼女がいる。
思うように動かない体がもどかしい。もう少し、もう少しで手が届くのに――
ガンッ。
再び襲い掛かるブラックアウト。宏之の腕が床に落ちる。
今度は明けることのない永遠の闇へ引きずり込まれる。
頭部から額へと赤い筋が流れ出た。
その様子を見届けると、井上は金属バットを床に置く。
しゃがみこんで宏之の首筋に手を当てる。脈はない。
この悪巧みに参加させられたときから覚悟はしていたが、とうとう一線を越えてしまった。
これまでも自分が間接的に皆を殺してきたも同然だったが、
直接手を下すのはもちろんこれが初めてだ。
ここまで来たらもう腹をくくるしかない。
まずは証拠隠滅だ。自分がやったとさえわからなければいい。
もともとこいつは死んだことになっているんだ。
とにかくしばらくの間、時間を稼げれば。
短い時間で頭の中を整理すると、井上はすぐそばのロッカーを開けた。
宏之の体を抱き起こし、無理やりロッカーの中へ押し込めて扉を閉める。
床にはわずかばかりの血痕が残っていた。部屋の中を見回す。
棚の中に雑巾が置いてあるのを見つけた。それを手に取り、床を拭く。
血痕を拭いていると、2時間ドラマの主人公にでもなったような気味の悪さを感じた。
拭き終えるとまた別のロッカーを開け、雑巾を中に放り込む。
金属バットとマシンガンもその中に投げ入れて、扉を閉める。
ロッカーを背にして、井上は気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いた。
これでしばらくは隠し通せるだろう。
たとえ見つかったとしても、自分がやったとはわからない。
あとはここから出て行くのを誰にも見られなければいい。
ドアに耳を当て外に物音が聞こえないのを確認し、明かりを消して部屋を出る。
暗くなった部屋には携帯電話がひとつ、ぽつんと取り残されていた。
【41小林宏之× 残り21名】
あ゙ぁ゙ぁぁ…・゚・(ノД`)・゚・
乙です…
え?コバヒロこれで終わり?
なんかなぁ・・・
宏之・・・
職人さん乙です。
保守
折角の、探知機に反応しないという特性を生かしきれずに終わっちゃいましたね。
hoshu
190 :
意識朦朧。:2005/09/08(木) 03:58:13 ID:jxFJxX3OO
何も見えない…ここはどこだ…?
俺は…俺は死んだのか…?
何があったか思い出せない…いきなり衝撃がきて…それで…
衝撃…?
衝撃…62…62!
またあいつだ…いつも俺の周りにチラつきやがる…!
まだだ…俺はまだあいつを殺していない!!俺にはやらなきゃならないことが残ってるんだ!
畜生…こんなところで死んでたまるか…こんなところで…!!!!!
『殺してやる…ろくじゅうにぃぃ!!!!!』
>>188 ただのいちゃもんとは思わないけどな。俺も少し惜しいなと思ったし
『ほしゅ、捕手』ばっかで埋まってくより、感想があったほうが良いんじゃない?
荒れそうな話題なら見守るスレに書くほうがいいだろうけど
>>191 仮に言ってることは正しいとしても(反論したい点はあるが)言い方が嫌味だ
だいたいこういうのは議論勃発⇒スレ荒れを狙ってる気がする
感想というより嫌味だな
話の展開に支障があるわけでもないから、どうでもいい
こういう話題は見守る使おうよ
言い方が悪かったね。
俺も勿体無いとは思うけど。
バトロワなら死ぬのは当たり前だし予想を裏切る展開もいいんじゃない?
ジリリリリン!
「もう、わけわかんなむにゃ……うお、おお!?」
山本功児の太平の眠りを覚ましたのは傍らに置かれた電話のベルだった。
昔ながらの黒電話に模しただけの電子音がけたたましく鳴り響く。山本を責め立てるように。
「ふあ……もう、6時前、か?」
目をぱちぱちさせながら壁にかけた時計に目を凝らす。
次の瞬間気がついた。背筋がピッと伸びる。何度か深呼吸をすると受話器を取った。
「もしもし。はい、山本です!」
意気揚々と山本が受け答えする。電話の向こうはあの男の声が聞こえた。
『なんだ、まだいたのか』
「え? ああ、すいません。今すぐ放送室へ参る所存でございます。
ところで死亡者はご覧になりましたか?」
『ん? 全員は把握していないが』
「市街地に武器を投下してリスト外のやつを10人以上死亡させることに成功いたしました。
全て私の考案した作戦の成果です」
『……ああ』
おや?と山本は思った。リストの人間が死んだ時はあれほど自分を責め立てた電話口の男。
リスト以外の人間が死んだのなら評価されて然るべきと確信していたのだが。
『市街地に武器を投下して人を集め、殺し合いを促すか』
「ええ! ですから大量に、素晴らしいペースで死亡者を出すことに」
『……素晴らしいことだと思っているのか』
「え?」
『参加者の戦力の均衡、そして過剰なペースでの死亡者。
それは即ち"偏り"を平坦にならし、次の"偏り"の起こる暇を与えないということ、だそうだ』
「は? え? "偏り"とは何ですか? 今の言葉はどういう意図で仰ったのですか?」
『お前が知る必要はない。次の禁止エリアは送られているな?』
「な……。いや、はい、今端末に表示されております」
『ならば早く放送をしろ。まだお前の仕事だろう』
プツッ。ツー、ツー。
「もしもし? 何なんだ、全くわけがわからん」
その男の真意など皆目見当がつかず。山本は小首をかしげる。
一つ唸ると、仕方なくアナウンス室に向かう準備を始めた。
筒井の置いていった死亡者の書かれたメモ用紙に、画面に表示されている禁止エリアを書き留める。
さて行くか、と監督室のドアノブに手をかけたとき、ふと彼の言葉が思い出された。
――まだお前の仕事だろう
「……まだ?」
更に首をひねって、しかし何も確信の持てないままに山本は廊下へ出た。
そして三歩も歩くとそんなことは忘れてしまった。
アナウンス室のドアを開ける。
室内はもう薄暗くなっていた。山本はドア横のスイッチを点ける。
「そういえば、なんで俺一人しかいないんだ」
ぶつぶつと愚痴をのたまいながら、放送機材のマニュアルを取り出しにらめっこする。
「こういうのは苦手なんだ、ったく」
四苦八苦しながらボタンを押し、つまみを捻ったり押し上げたり。
最後に「ON AIR」と書かれた赤いランプが点った。
(これでいいはずだ、と)
時刻は丁度6時を指していた。
「グッド・イーブニンッ! 元気かー! それとも死んでるかー!
6時間に一度のお楽しみ、山本功児監督の島内放送だぞー!!」
至福の時間であった。山本はまさに今、自身が一番の権力者であると自覚できると感じていた。
自分こそが舞台の中央に立って、それを選手達は固唾を飲んで眺めているのだと。
「それではお前らがよく頑張った死亡者の発表から。
諸積0番、小坂1番、田中良平19番、橋本33番、川井34番、辻45番、
山崎46番、原井53番、青野58番、曽我部65番、ユウゴー66番、杉山93番!
以上12名だ。俺は大変満足しているぞー!
では続いて禁止エリアの、あ、おっとっと」
照明と一緒にスイッチオンになった空調の風が、不意に山本の手からメモを奪う。
ひらひらとメモが宙を舞い、音も無く床に軟着陸した。
慌ててそれを拾おうとする。そうして焦って踏み出した足がものの見事に絡まった。
「うおう、おう!?」
バランスを崩し前につんのめりながらメモ紙を飛び越える。
どこでもいいからとジタバタ振った手が、何かの引っかかりを掴んだ。
備え付けの大きなロッカーの開け口、手をかけるところである。
ほっと息をついたのも束の間、掴んだ拍子にロッカーがゆっくりと開かれた。
ギィィ。
何気なく中身を見ると、目が合った。
それは動物の習性で、前に両眼のある生物がいれば自然とそうなるものである。
目が合ったのだ。いつの間に入ったのか、ロッカーの中に潜んでいた人間がいた。
「……お久しぶりです、山本さん」
目の前に居る人間に見覚えはある。ただこの場所に全く居るはずのない人間である。
そのために情報が山本の脳内で連結できないのか、名前が出てこない。
「お、おま、おまお前は」
「僭越ながら、俺はミスターロッテこと」
「ミスターロッテ? あ、あああ、ありと」
混乱の中浮かんだ単語はそのまま口をついで出る。突然、視界が揺れた。
山本の首根っこに後ろから手が回っていた。
「そこまでです、山本さん。ワイは薮田です。大人しくしていただけますか」
小さな声で薮田安彦が山本の耳に語りかける。
「ふがああっ!?」
首を後ろに回そうにも、回らない。
後ろにいるのが本当に薮田なのかわからない。
そして前の人間が誰かまだ浮かばない。前の男はロッカーを出て山本に銃を向ける。
「愛甲猛です。山本先輩、見損なったわ」
己に向けられた銃口を見るやいなや、山本の目が泳ぐ。
逃げたい。だが首はガッチリと固定されている。
暴れれば逃げられるか。目の前に銃がある。
「ふぐうううう!」
汗が一気に噴出し、ガタガタと全身が震え止められなくなった。
腰が抜けかける。それが愛甲には逃げ出そうとしているように見えたようだ。
愛甲が引き金を引くと、甲高い衝撃音が室内に響いた。
その声と共に、山本と薮田の後ろにあったマイクの先が無くなっていた。
コロコロと後から遅れて、飛んでいったそれが床を転がる音が聞こえる。
「脅しじゃありませんので」
愛甲がドスを聞かせた声で言う。
一瞬にして涙が滲む、溜まる間もなく頬を伝う。顔がひきつって呼吸が上手く行えない。
体は硬直したまま、ただ震えが止まらなかった。
声にならない声を上げて、山本功児の脳裏に死とか絶望とか言う文字が浮かんでいた。
「これか」
茂みの間に銀色に輝く金属の塊を見つけると、筒井良紀はこっそりそれをポケットに隠す。
周りでは引き連れてきた兵士達が、居るはずのない敵を警戒し捜索している。
「筒井班長。もう一度探知機を見せていただけますか」
兵士の一人が筒井に話しかけてきた。
「おう」
そう言って探知機を取り出す。
自分のいる中央の点とピッタリ重なるように、20という数字と赤い光が点滅している。
「かなり近くに潜んでいるようですね」
「そうだな、我々がいるから動けないでいるんだろう。油断するなよ」
兵士が了解の合図をした瞬間、少し離れたところに立つスピーカーから高音が響いた。
『グッド・イーブニンッ!』
(6時か。やはり間に合わなかったな)
耳障りな声が大音量で聞こえる。これに耐えるのはなかなか難儀だなと筒井は思った。
放送は続く。
『では続いて禁止エリアの、あ、おっとっと……
………………、………………』
「ん? なんだ?」
スピーカーの向こうから、微かに何かの物音が聞こえてくる。筒井は耳を澄ます。
『……ふがああっ!?』
山本らしき男の叫び声。その場にいた兵士達の手が止まり、揃ってスピーカーの方を見た。
「……」
困惑したまま、筒井は黙っていることしかできなかった。
なおもスピーカーからは何かの物音、そしてもう一度、今度はくぐもったような叫び声。
もっと良く聞こうと耳を傾ける。
キーーーーン!
その瞬間、尖った何かが耳を貫いた。
「ぐわ!」
耳に激痛が走る。超音波のような高音が大音量でスピーカーから放たれたのだ。
反射的に耳を塞いだが既に遅い。目まいを覚える。耳がキンキンと鳴り続け何も聞こえなくなった。
しばらく時間が経つと、ようやく聴覚が取り戻され始める。
兵士達も同じように、徐々に目に光を取り戻し始めた。
同時に彼らは揃って筒井の方を見た。
次に来るだろう命令を確かめるような目線。
(薮田か? 宏之か? 雑な手を使いやがって)
イライラが募る。しかし彼の取らなければならない自然な行動は一つしかない。
「ここは後回しだ。すぐにスタジアムに帰投する」
そう叫ぶと兵士達は一目散に走り出す。
その後に続いて、最後尾で走りながら筒井は舌打ちをした。
筒井、何したいんだ…
職人さん、乙です!そして、いつもありがとう!
一本の木に寄りかかり座っている彼は、もう死んでいるように見えただろう。
瞳はうつろにあらぬ方向を見つめたまま、瞬きもせずピクリとも動かない。
だらりと力なく伸ばされた手足にこびりついた赤黒い血は
彼のものなのかそれとも手にかけた誰かのものなのか
すっかり区別はつかなくなっていた。
それでも、彼は生きていた。
それを証明するように、瞳がなにかを捜し求めるようにぐるりと動く。
頭は一切動かさず、眼球だけが這うように落ち着きなく左右に揺れた。
サブローはまだゲームから降りてはいない。
輝きのない瞳だが、奥では血に飢えた炎を燃やし続けている。
しかし、それとは裏腹に身体は限界に近づきつつあった。
本来の致命傷、宏之に撃たれた銃痕は簡単に縫合されていたが
それはもうほどけて無意味なものとなり、たえまなく血が白のユニフォームを染めていく。
何気なくサブローはその傷口に手をやる。
少し凝固した自分の血は粘液のようにどろりと澱みきっていた。
それでも、動け、動けと自分に指示するものがある。
動け、動け。こめかみのあたり、金属片が埋められた部分が刺すように痛む。
促されるようにまずは頭を動かす。次に腕をもちあげ、幹を掴んで支えにする。
それからようやく膝が動き、腰を上げ、サブローはその場に立ち尽くした。
一度バランスを欠いてがくんと崩れ落ちそうになったが、まだ二本の足は
身体を支える力を失ってはいないようだった。
あれ以来、新たな命令は何もなかった。それでも金属片はサブローを駆り立てる。
お前のするべきことはひとつだとサブローに頭の鈍痛でそれを知らせる。
わかっている、自分がすべきことはわかっている。簡単なこと。
おそらく大半が自分のものであろう、血で汚れた手をぼんやり見つめ
与えられた命令を順に思い出していく。
リスト。リスト外の人間を。リスト外の人間たちを。
それから、それからあいつ、小坂を、小坂を優先的に、いや、これは先程終わった、
(ゴメンヨ、キミ・・・)
ばちん、と大きな電流にはじかれたように、サブローの身体が大きく跳ね上がった。
ちがう、これは命令では、
(ゴメンヨ、キミ・・・)
(キミ・・・)
サブローの思考をふさぐように小坂の声が響く。
「リスト、リスト以外の・・・」
打ち消すために、声を出すが、
(ゴメンヨ)
それは耳から入ってくるものではなく、脳内に直接響いていくので全く意味をなさない。
自分の中から聞こえる小坂の声。
「グアア・・・アア、ニンゲン、を・・・」
(ゴメンヨ)
意味が無いとわかっていても、汚れたままの手で耳をふさぐ。
自らの手でその器官を握りつぶすような勢いで爪をたて、かきむしる。
もともと赤く汚れた手がさらに赤く染まった。
「ミ・・・チヨ・・・」
しぼりだしたようなかすかな声。それだけを呟くと、なにかをおさえつけるかのように
ぐっと唇を噛んだ。強く強く噛み締め、こちらもまた唇の端から新たな血が流れていく。
「ミ・・・チ・・・」
脳の金属片が熱くなる。自分の中の何かがそれに歯向かおうとしている。
命令が薄れていく。先程までそれだけが自分の頭を支配していたのに
たった一つの愛しい名前がサブローの頭を新たに占拠しようとしている。
もう一度、その名を口にしようとした瞬間、
頭から射抜かれたように電流が一気に足先まで駆け巡り、サブローの身体がびくんと伸び上がった。
金属片がそれを許さない。それは生き物のように怒りの感情でもあるのか
明らかに先程より熱を持っていて、頭から自分の神経をじりじり燃やしていっているように思えた。
そうじゃないだろう?
金属片はそういいたいのか、今度は軽い電気をサブローに与える。
おまえのすべきことはひとつだろう?
ぱちん、もう一度。
そう、おまえのすべきことはたった、ひとつ。
ばちん。
最後に、強く。サブローの頭ががくん、と後ろにたれる。
そのままの姿勢でサブローは身体の奥から全てをしぼりだすように、吼えた。
長く、大きく、なにもかもをそこから放出するかのように、息の続く限り、吼える。
咆哮は獣のそれに近かった。
充血し、濁った眼が前を見据える。
新たな命令はない。それでも、やるべきことはただひとつ。
(・・・ゴメンヨ・・・キミ・・・)
またかすかに声がしたような気がする。これは小坂の声なんだろうか。
それとも、別の誰かの声なのか?
自分で多数の引っかき傷をつけた耳を、忌々しそうに握る。
もう一方の手にはゲーム開始当初からずっと持っている剃刀の刃。
「じゃまを・・・するな・・・」
やりやすいように耳を思い切り外に引っ張る。
そしてサブローは剃刀の刃を耳に押し当て、ぎりりとのこぎりを使うように動かした。
「ジャマ・・・スルナ・・・」
何度も、何度も剃刀を押し当てる。
ぼとん、と肉片がサブローの足元に落ちた。
耳からはおびただしい量の血があふれたが、そのどくどくという脈の振動が
邪魔な声を完全にかき消してくれそうで、サブローの口の端には少し笑みが浮かんだほどだった。
やるべきことはわかっている。ただひとつ。それ以外のことは必要ない。
定時放送のようなものが聞こえたが、それもサブローにとってはどうでもいいことで
音声は限りなく遠くで聞こえ、風のように自分の脇を通り過ぎていった。
ぐっと足を一歩踏み出す。
「・・・コロス」
サブローが、呟いた。
投下キテタ━━(゚∀゚)━━!!
職人様毎度乙です!
エカワロスwサブロー怖いな…
職人さん乙です
保守age
208 :
もう決めてしまった(1/5):2005/09/11(日) 17:59:15 ID:xwuLLw1M0
本部を混乱に陥れるための作戦として、火事を起こすことを考えていた小宮山は、
そのための道具などを手に入れようと、禁止エリア以外のポイントにある民家を探すことにした。
歩きながらも、杉山のことが頭から離れなかった。
先ほど出会った、命の無いチームメイト。
この『試合』序盤に民家で高木の死体を見たときよりも、とても重い気持ちになってしまっていた。
理由は解っていた。
(俺が殺したからだ…)
高木の場合は、自分以外の何者かに殺されたことが解っていた。
しかし、杉山の場合は―――。
小宮山は自分を責めていた。
先ほどその感情を捨てた筈なのに、また湧き上がってくる。泉のように。
「それでも、生きなくちゃいけない」
「それでも…進まなきゃいけない」
信じ込ませるように、小宮山は自分に話しかける。
『グッド・イーブニンッ! 元気かー! それとも死んでるかー!
6時間に一度のお楽しみ、山本功児監督の島内放送だぞー!!』
今となっては忌々しい感情の対象でしかない山本の声が聞こえてくる。
(6時か…)
一度足を止め、辺りを警戒しつつ近くの木に凭れかかる。
放送によって物音が遮断され、動くのは危険だと判断したからだ。
木に凭れかかるときに、一瞬体全体から力が抜けた気がして小宮山は驚いた。
自分が思っている以上に、肉体が悲鳴を上げている。それを感じたからだ。
(オッサンになったな、俺も)
自嘲気味な考えが頭をよぎった。
『それではお前らがよく頑張った死亡者の発表から。
諸積0番、小坂1番、田中良平19番、橋本33番、川井34番、辻45番、
山崎46番、原井53番、青野58番、曽我部65番、ユウゴー66番、杉山93番!
以上12名だ。俺は大変満足しているぞー!
では続いて禁止エリアの、あ、おっとっと』
『……ふがああっ!?』
(何だ?!)
異常を感じて、小宮山は反射的に立ち上がった。
何かの物音がしたが、それが何なのかは解らなかった。
(まさか誰かが…?)
さまざまな思考が頭をよぎる。
自分と同じ考えの者が、既に本部へ突入しているのか。
それとも、内部で反乱が起きたのか。
(ともかく、今なら隙があるかもしれない…!)
どんな理由にせよ、山本に何らかの以上事態が起きたことは確かだ。
小宮山はそう判断し、ついにコルトガバメントに銃弾をこめた。
―これで、誰かを傷つけてしまうかもしれない―
一瞬、そんな考えが浮かぶが、慌てて取り消した。
(もう俺は杉山を追い詰めて、死なせてしまっている。もう汚れてしまったた俺の手を、
チームメイトのためにならもっと汚しても構わない)
小宮山はスタジアムへ向かって走り出した。
その瞬間、
キ――――ン!!
超音波のような高音が大音量でスピーカーから放たれた。
「ウッ…!」
弾かれたように、小宮山はその場に倒れた。
眩暈のような感触。
先ほどの雨でできたであろう水溜りの中に、顔が突っ込んでしまった。
バシャリ、と派手な音が立ち、水飛沫が少しあがった。
反射的に目を瞑っていたので顔は少し打っただけで済んだが、口に多少の泥水を
含んでしまった。
小宮山はすぐに起きあがり、まだ抜けぬ眩暈のような感触と戦いながらも、咳き込んで
水を吐き出した。
袖で顔を拭うと、小宮山は力をこめて立ちあがった。もう、そうでもしないと立ちあがれなかった。
「どんなに汚れても…。他のやつだけは…」
力を振り絞って、走り始めた。
212 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 18:03:20 ID:dbxLkEg6O
ワラタ
走りながら、先ほどの放送を思い出した。
山本は死亡者を12名だと言った。
諸積、小坂、田中良平、橋本、川井、辻、山崎、原井、青野、曽我部、ユウゴー、杉山。
(お前ら…、俺より若いのに…)
彼らとの思い出が、小宮山の頭の中に甦る。
この状況でそんなことを―そんなセンチメンタルなことを―考えている猶予は無いのに、
それでも小宮山は彼らのことを思い出していた。意識的にではなく、それはもう勝手に頭の中に
涌いてきたのだ。
もう彼らは戻ってこない。
それは解りすぎるほど解っていた。
(お前らの分まで生きると、俺は約束できない。でも…)
脳裏の中に、生存しているチームメイトのことが浮かんだ。
(他のやつらに、そう約束させられるように力を尽くす。それだけは、約束する)
息が切れる。
鼓動が激しい。
それでも、小宮山はスタジアムに向かって走り続けた。
彼は贖罪のために差し出すものを、自分のいちばん大事なものに決めていた。
いや、もしかしたら最初からそう決めていたのかもしれなかった。
久々投下でageてしまった…。ホントにすみません…。
そりゃ笑われますよね…_| ̄|○
目の前に現れた人物を見て、吉鶴は一人考え込んだ。
(ちょっと待てよ、昨日園川さんと電話したのに誰も出なかったよな・・・。)
「・・・おい。」
(昨日誰も出なかったのに、福沢さんといい、荘さんといい・・・。)
「・・・おーい。」
(次から次へと出てくるって事は、・・・ひょっとして新手のイジメ?)
「おーい、吉鶴、聞いてるか!?」
「はっ!?あっ、高沢さん!」
肩を揺さぶられて、吉鶴は我に帰った。
目の前にいたのは、高沢秀昭二軍打撃兼外野守備走塁コーチ(75)だった。
「す、すいません。」
吉鶴は思わず頭を下げた。
「まったく・・・。ところで福澤見なかったか?」
「福沢さん、ですか?」
なぜここで福澤の名が出てくるのか、と吉鶴は首を傾げた。
しかし、あまり深く考えずに思ったままを話した。
「さあ・・・。そのうち戻ってくるんじゃないですか?」
「つまり、ここにはいないのか?」
「ええ。」
「そうか・・・。ったく・・・!」
「ていうか、なんで高沢さごふうっ!?」
言うが早いか、高沢は乱暴に扉を閉めて、駆け出していった。
そのため、少し外に出ていた吉鶴の顔面と扉が激突してしまった。
「ううう・・・。」
吉鶴はその場にうずくまっていた。
「あっ、こいつはおいしそうだ!!」
痛がっている吉鶴の向こうで、荘ののんきな声が聞こえた。
「吉鶴くん、もなか見つけたから食べようよ、もなか」
「あ、あの荘さふぎゃあっ!?」
「おい、忘れてたけど荘さん見なかったか!」
吉鶴は何かを言いかけた刹那、再びずかずかと入り込んできた高沢に踏み潰されてしまった。
(ああ・・・、今日はこんなんばかりだ・・・)
薄れ行く意識の中で、荘ののんきな声が頭に響いた。
「まあまあ落ち着いて高沢さん。とりあえずもなかでもどう?」
荘さん相変わらずだなw
職人様乙です!
218 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/13(火) 04:51:21 ID:nyDNZt980
職人さん乙です!
小宮山ガンバレ
保守。
初芝はどうなったのか・・・。
堀さんが本格的に大ピンチなんだがどうなるんだろう。
こういちさんよ、どうかごぶじで・・
ほしゅあげ
職人さん乙
保守
224 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 18:43:39 ID:7ebEf++c0
HOTUSIBA#6
捕手あげ
ほしゅ
保管庫さん一ヶ月近く更新ないけど大丈夫ですか?保守
潜水艦スレにはいたけどねえ
229 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 23:59:48 ID:s60cimdr0
ほしゅはげ
「質問は許さない。嘘をつくのも許さない。
ただ、僕の言った事に答えてください」
右手に持った銃の引き金に手をかけ、銃口を真っすぐに黒木知宏に向けている。
内竜也は少しも表情を変えない。
どちらかというと細めの目が完全に据わって更に細くなっていた。
その瞼の奥の黒い瞳は微動だにせず、ただ黒木に焦点を合わせていた。
盛んに動いていたのはその唇ばかりである。
銃口を向けられた黒木もまた微動だにしない。
椅子に座って両膝の上にそれぞれ肘を置いたままで、少し顔を見上げるような姿勢。
内の様子を窺っているのか、端から見た様子では彼の心中を知ることはできない。
壁一面に飾られた山本功児の写真が彼らを静かに見つめていた。
黒木はじっと内の目を見据えていた。内は次の言葉を迷っているのか何も話さない。
内の構えた銃口だけが目に入るような、内の全身以上の視界の全ての範囲が見渡せるような。
そんな不思議な感覚を黒木が覚えた頃、何かが視界に入り、ふと目線だけを天井に移す。
「っ!?」
山本功児の巨大な顔があった。
天井いっぱいいっぱいに貼られた特大の写真が2人を生暖かい目で見守っていたのだ。
一瞬その顔に動揺を浮かばせた黒木を見て、ピクリと内の手が動いた。
「おっと、変なことは考えないでくださいよ」
「……別に、今のはそういうわけじゃないさ」
黒木が再び内の目を見た。
強い目だ、と内は感じた。
怯えや畏れといった弱々しさも、疑いや迷いといった後ろ暗さも無い目だと。
この男が自分に向けている目は、自分の思っていたその男のするべき目線だ。
むしろ内自身が何かに射すくめられるような感覚さえ覚えた。
だから内は聞かねばならないことがあった。
「何故、ここにいるんですか?」
「山本さんを、現運営を倒すために」
黒木の目に少し影がさした。それを内は見逃さなかった。
「そのために、何故ここに座っているんですか? 山本さんの写真しかない」
「それは……ここなら山本さんが来るかと思ってさ」
「悠長ですね、こんな危ないところに入ってきたくせに」
「……」
黒木の強い目に影が一層濃くさしていくのが見えた。
何故こうも弱々しくなって、この質問に対して彼の目は雄弁に答えるのか。
銃身を握る内の手に力がこもった。
「誰かに会いましたか?」
「福浦、大塚、それに垣内とは少し一緒に行動してた」
「ふーん。それで、もう別れたんですか?」
「そうだ」
「殺したりはしてないんですか?」
キッと黒木が内を睨んだ。
「俺は、誰も殺しちゃないよ。あいつらも……そうだ」
目に失われかけていた強さが再び戻った。
同時に悲しさも浮かんでいた。まるで泣き顔を隠していた誰かを思い浮かべるように。
「でも別行動を取ったんでしょう? 見捨てたんですか?」
「見捨てちゃないさ。誰も見捨てない、絶対に」
より強い目をして。さっきまで浮かんでいた影は消えていた。
内はそれを見て静かに、大きく息を吐いた。
「他のやつらがどうなっても知らんですよ」
内の口から、そのセリフが棒読みで述べられた。
「な……っ!」
黒木の表情が一変した。浮かべていた強さは一瞬で跡形もなく消し飛ぶ。
変わりにその目に浮かんだのは大きな困惑だった。
「な……、なんだ……それは?」
明らかに狼狽している。どう取り繕うかばかりを思案するような表情。
内はそれを目前にしてまた一つ息を吐いた。今度のそれはため息だった。
「嘘はつかないでください」
「嘘って……嘘じゃないさ」
「では、何故ここにきたんです。わざわざ別行動を取って」
「それは、みんなを巻き込みたくないから」
焦りの色を隠せない黒木だったが、それでもなんとか言い分を通そうとする。
と、内の後ろからもう一人の男が入ってくる。
「お前は……!」
内の後ろで、於保浩巳がこれ見よがしにトランシーバーを掲げていた。
空いた手はトランシーバーを指差している。含み笑いでもしたげな表情で。
「誰かから命令でも受けましたか? 武器の投下場所に行けと」
部屋に入ってきた於保に気づいたか、気づいても無視しているのか。内は意に介さない様子だ。
黒木が唇を震わせていた。もはや視線は内ではなく、床の辺りに向いていた。
内は畳み掛けるように言葉をぶつける。
「誰か運営側の人間と会いましたか?」
「その人に案内されて、安全にここまで侵入できましたか?」
「そして言ったんだ。他のやつらがどうなっても知らない
巻き添えは食いたくないんでしょう?」
立て続けにされる内の質問に黒木は答えられない。
「どうしました? 質問が多すぎて答えられないんですか?
なんならもう一度言いましょうか? 一つずつ答えてくださいよ!」
内の手がカタカタと震えていた。
かたくなだった表情は眉間にしわが寄り、全体が紅潮し始めていた。
「……言えない。それは言えないんだ、俺の口からは」
黒木が於保の方を見る。内の背後で於保は両の眉毛を上げて、おどけた表情を返して見せた。
更に於保を睨む。ニコリと笑って於保は部屋を出て行った。
内の怒りはなおも続いていた。
「黒木さん。黒木さんは嘘をついている。
あなたはみんなを見捨てた。みんなを裏切った。そうでしょう?」
「それは違う」
「なら、本当のことを話してくださいよ」
「それは……言えない」
「信じられると? それだけで信じられると思ってるんですか?」
「殺してくれてもいい。そのときはそれまでだ」
そう言って黒木は押し黙った。ただ下を向いて。
内の体がわなわなと震えている。間違えて銃の引き金を引きかねないぐらいに。
しばらく時間が経ちその震えが収まった頃、内はゆっくりと口を開いた。
「……黒木さん、エースって何ですか?」
その言葉に黒木の肩がピクリと反応する。
「僕はいつでもあなたを殺せる。だからその前に聞いておきます。
エースってチームで一番実力のある投手でしょう?
チームを勝ちに、優勝に導く投手がエースですか?」
黒木が顔を見上げた。おや?と、違和感を覚えた。
眉間にしわを寄せた内の表情が怒りでなく、ひどく哀しげに見える気がしたからだ。
「答えてください。もし今言った事が正解なら、僕は」
内の言葉が一瞬詰まった。
「僕は心置きなく、引き金を引ける。
あなたに会ってから迷ってきたことの全部がムダだって分かって。
僕の記憶の中で引っかかってることも全て気のせいだって分かって」
黒木には不思議でならなかった。内の顔がなぜか泣きそうに見えるからだ。
何か、本当に尋ねたいことを隠している。ふと黒木の心にそんなことが浮かんだ。
「あなたを殺すことで、僕はまたエースに近付けるんだ」
そう言って内は、もう何度目だろう、照準を黒木の顔へと合わせ直すのだった。
黒木は迷った。
ここで延命のために『違う』と言うのは簡単だ。彼がそれをどう受け取るのか知らないが。
だが、どのみち黒木知宏の答えは一つしかない。
「不正解だ。エースはそれだけじゃなれない」
ハッと目が覚めたように内の表情が緩む。荒くなっていた息が静かなものに変わって行った。
それは端から見れば、安堵という言葉が当てはまりそうな様子で。
黒木が彼の真意をはかれず困惑しているのをよそに、内はまだ銃口を向けていた。
「じゃぁ、答えてくださいよ。エースって」
プツン。スピーカーからスイッチの入った音がした。
『グッド・イーブニンッ! 元気かー! それとも死んでるかー!』
大音量に声はかき消され、2人はしばし何も言葉を発さなかった。
内はまんじりともせず放送を聴いていた。
放送が終わるのをやり過ごせば、答えが聞ける。
自分の心が分からない。分かっているのは、もしも黒木が正解と言ったときのこと。
自分はためらうことなく引き金を引いたはずだと。
しかしそれは、その仮定を自分は想像していたのだろうか?
なかったことの決意表明など、何の意味も持たないのだと自分に問いかける。
目の前の黒木は自分に視線を合わせようとしない。
この放送が終わったら、そしたら答えを聞こう。
あの日、自分が見たものは。川崎球場で見たものはなんだったのか。
自分の人生にとって大事だったはずの何か。
黒木の答えを聞けば、堰が切られるように詰まっている記憶が流れ出す気がするのだ。
今の自分をここまでちぐはぐに動かしているのは、間違いなくその何かのはずだ。
『……ふがああっ!?』
突如スピーカーから奇妙な音が流れる。内が思わずスピーカーの方を向いた。
その隙を見逃さず黒木が椅子から跳ぶ。
内の横をすり抜けるのと一緒に銃身を掴んだ。
ハッと内が気づいたときには、腕の揺さぶりと共に銃がなくなっていた。
「ああ!」
振り向くと同時に黒木が部屋を抜け出していくのが見えた。
腕を伸ばしたが捕まえることは出来ない。ユニフォームをかすめただけだった。
黒木が外に出ると、そこには於保が立っている。
全く身構える様子もなく、見下ろすような視線で於保は黒木を眺めていた。
一瞥してその脇をすり抜ける。そのまま黒木は廊下を駆けていく。
(今の放送は……チャンスが来たのかもしれない)
後を追うように内が部屋を出た瞬間、大きな高音が耳を貫いた。
ぐあっと身を一瞬ひるませる。頭を振りながら辺りを見回す。
54と書かれた背中が廊下の向こうへ消えていこうとしている。
「まだだ。まだ答えを聞いてないのに!」
追いすがる内の足音が、静けさを取り戻した廊下にこだました。
新作キタ━━(゚∀゚)━━!!職人様乙です!
ジョニーどうなるんだ!?すごく気になる
職人さん乙です。
ジョニーもエカのとこに突撃ですか!?
於保は相変わらず怖いな・・・(((( ゚Д゚)))ガクブル
237 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 10:46:32 ID:WE9FBrGxO
ほ
捕手
頼りない先輩だと自嘲気味に笑っていた。その時に気付こうと思えば気付けたのに。どんな人かも知っていたのに。
今江があらかた、今までのことを話したときも、福浦は小さくうなずいただけだった。
それは見ようによっては落ち着きすぎていた。全く公平な運命でないことだけでも、普通なら我慢できないはずだ。
「…リストとか、裏切ってる人とか…俺、そういうの、ホンマムカつくんです」
「…だな」
きつく荒布を巻いた指を組んで、彼はまた頷いた。でも声も優しかった。
いつもの福浦だ。
「福浦さん?」
「どうした?」
「…どうしたらいいんでしょう。俺ら」
「そうだな」
「何とかしたくても、何したらええんか、俺…」
もう一度退却して、先ほどの廃屋(民家なのか)の薄暗がりの中で、今江は唇をかみ締めていた。
福浦はたまに息を乱しながらも、それを堪えるようにしながら指を、首をかばっている。裂いた布が何度も巻かれていた。
思ったよりも手こずった。背中はもう、シャツと皮膚がただれて一つになって、何度か触れた今江に福浦は黙って首を振っていた。
痛みは、相当なもののはずだ。治ってもこれは、ただではすまない。
ひとつ触れるのに、どれだけ慎重になったかわからない。
「…ごめんな」
なのに今江が差し出した布を受け取りながら、福浦は少ししゃがれた声で言った。爆風のあおりかもしれなかった。
「え」
「俺たちのせいだな」
「…そんな、さっき、福浦さん俺を庇って」
「…そうじゃない。こんなことに、お前達が巻き込まれたのも、元はといえば」
俺たちのせいだと、福浦は言って少しうつむいた。しゃがみ込んだまま、浅い息の気配だけは続いた。
痛みの背をあまり動かしたくないはずだ。
ここに来るのにも、一つ歩くごとに彼の額に脂汗が浮くから、今江の歩みも自然と遅くなった。
今は何時くらいになっただろうか。夕方にはまだ遠いはずだが。
「俺らが、不甲斐なかったから。もっとちゃんと、俺らのチームが強かったら、こんなことならなかった」
「福浦さんやめて下さいよ!そんなんで…俺…」
「すまん。お前ら何も悪くないのに、未来もあるのに、こんなことさせられてる。何て言っていいのか…」
今江だって、そんな風に言われたらどうしたらいいのかわからない。
「でもわかってくれ」
ぐっとさらにこもった声で、顔を上げて福浦は言う。
「あの人もきっと、理由がある。何も無しに、こんなめちゃくちゃする人じゃない、そんな人じゃ」
その人、が小林のことだと気付くのに少しかかった。西岡がその場にいれば、きっと甘いと即切って捨てただろう。
元はもっと艶やかであったはずの畳は湿気て、音も声もこもらせていた。闇と相俟って鈍らせているようだった。
こじ開けた雨戸から、隙を見るように白い筋がたださっと射している。まだ昼と夕の間だと、また思った。
「雅さんだって、わかってる。こんなことありえないって」
「福浦さん…でも」
福浦には自分の知っている全てを話した。火傷の手当てをしてから、少しずつ、必死に。
元来喋りは達者な方ではなかったから、こんがらがって自分でも何を言っているのかわからなくなったこともある。
直行と正人のこと。西岡のこと。川井のこと。
モニタのこと。リストのこと。それからその、小林雅英だと、西岡が言ったから、そこから導き出せることも。
「福浦さん、でも、やっぱりヤバイと思います、その…雅英さんは」
「それもわかる。けど…俺はまだ、信じられないよ。お前を信用してないんじゃなくて」
「俺も、福浦さん、信じてないんじゃないですけど」
信じるとか信用とか、何回か繰り返したら穢れるような気がして黙る。そんな言葉でなくても、何となくわかる気がするからだ。
そう言えば、福浦も苦笑いしながら、さっき俺も思ったよと言った。
そんな笑みでも、ほっとした。そんな人だ。
限りなく福浦らしいと思う。考えれば考えるほど、この状況で、そんな言葉が出てくること自体。
誰かを恨んだり、誰かを憎んだり、何とか現状を打破しようとしたり。それ以上に、この運命に対し後輩に謝るような人だ。
福浦なりの前進の仕方は、やもすれば女々しい。けれどそんな人だから、一も二もなく、信じられる。
西岡がいれば、また甘いよアンタとつっこまれるかもしれんなと思った。
「どうしようか、だな。今江」
壁に背を預けたくてもそこが痛むので、福浦は半分寄りかかったようにしながら額を壁にあてている。土壁の冷たさは心地良さそうだった。
「…どうやったら、見つけられるかな」
福浦がポツリと、また言った。姿勢は変えないまま。
ペットボトルの口を切って、ぐっと飲みかけていた今江は目だけで応える。
「雅さん」
荒い包帯の指が膝の上で組まれていた。
「…って、え。ええ?どうして…」
「聞きたいよ。逢って話したい」
「ちょ、待ってくださいよ福浦さん!そんな、ヤバイですよそんなん!?」
説得とかするつもりですか、と問えば、福浦は眼を細めた。それは否定ではなく肯定でもなかった。
「俺は頑固だよ」
今江が呆気に取られている気配を察してか先を読んでか、福浦はまたポツリと付け足した。
「無理です。無茶ですよ」
言いながら、どこかの誰かさんがそういえば同じようなことを言っていたなと思い出した。アイツの心境もわかる。
「福浦さん、だって…殺し合いって、本気な人は本気やねん。俺、ホンマに…」
「それは俺もわかってる。だから」
「止めたいんですか?」
今江の問いにはっきりは答えられず、少し首を傾がせた。我ながら情けない先輩だ。
頼りない。一人じゃ俺は、何も動かなかった。今まで何も動いてこなかった。
「…考えても、俺に出来るのはそれくらいだったよ」
殺すなと、攻撃すらするなよと大塚に釘を刺された。だけどそれを免罪符にしていたわけではない。
ただ読まれていたなと、今になって思う。俺は誰も殺したくなんかない。例えそれが、こんなことに俺たちを追い込んだ誰かだとしても。
「いや、それでも、…でも、無理ですよ、別の意味で。だって俺ら、わかんないじゃないですか」
「…ああ、そうか」
「西岡はほら、その機械持ってますけど、もしかしたら雅さんも、…持ってはるかもしれませんけど」
もし雅英が持っているなら、西岡の言葉はビンゴになる。彼は裏切っている。認めたくないしフラットな言い方にしたかった。
「やから俺らは、探そうと思っても難しいですよ」
「そうだな。…ホントだ。無理な話なんだな」
福浦が苦笑いを、ほんの少し復活させた。
また今江がほっとしたのを福浦は知っていたのだろうか。
だったら西岡を探さなきゃと福浦が言って、それからのことに異論はあったが、まずそこには賛成だったから今江は頷いた。
もし西岡に相談したとしても、きっと彼は一刀両断に「無茶や」と言い放つであろうと思ったから、あえて反対しなかったとも言える。
「今江…悪い。俺の頼みきいてもらえるか?」
「頼み?」
「正直、キツイ。俺…動くの、結構…」
片眼をひねるように閉じて、福浦が言う。汗が止まっていない。壁にあてた額からも。
ああ、と合点して今江は頷く。
「福浦さん、ここに居てください。多分動かん方が安全やと思うし」
「悪い、な…」
「俺、戻ってきますから。死なんと帰ってきますからね」
「頼んだ」
福浦が何度目かの苦笑いをした。いなしていることに今江は気付かなかった。
ごめんな、俺は本当に頑固なんだ。
福浦は重い身体を引きずる。壁に手を当て、ずるずる進む。
彼が居なくなったら途端に静かになった。風の音も、軋む床や雨戸の音も感じる。
台所らしきところの、これも微妙によどんだ空気の中に入る。ぐぃ、きしむ椅子を引く。
そろそろと痛む背を預けた。いてて、と目を閉じたまま、すうっと息をした。
どれくらいそうしていただろうか。
時計の音が欲しかった。コチコチいう秒針の音が聞こえれば、きっと待っている実感があったはずだ。
今江の話が本当に100パーセントだとしたら、きっとそれは叶う。
流れ星に願いを三回繰り返すよりももっと確実に、それは叶う。
がたん、と雨戸から音がした。風でもよかった。動物でもよかった。
福浦はすうっと息を呑む。
「…待ってましたよ」
腕組みをしたまま、目も閉じたまま呼んだ。見えない。
「雅さん」
眼を開けた。
小林は相変わらず半眼のまま、暗がりのそこに立っていた。
福浦キタ━━(゚∀゚)━━!!
職人さん乙です!
乙です!
コバマサ・・・どうなるんだ?
初芝・・・
247 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/19(月) 20:32:44 ID:WnAEZM4C0
マサ・・・・・
福浦死なないで
248 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/19(月) 20:33:23 ID:PlqasyOf0
名古屋人は陰湿・根暗
自慢したがる ケチ
自分のこしか考えない 人の悪口をすぐ言う
不細工
hoshu
保守
ほしゅ
252 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/21(水) 23:50:33 ID:Tj+Gd0Ft0
堀いきてるのか〜age
(捕)