広島家の人々3

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1代打名無し
2001年元旦の中国新聞記事五人の誓いhttp://eekotoyo.s9.xrea.com/gonin.htmから
生まれた物語「広島家の人々」2002年バージョン続編(完結編)です。
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       | (    ))         | 082-039-25 |    .| : 灸 |
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【過去スレ】
2001年後半型ビッグレッドマシン
http://mimizun.mine.nu:81/2chlog/base/kaba.2ch.net/base/kako/995/995963952.html
広島家の人々2
http://pekko.fc2web.com/kako/hiroshimeke2.htm
広島家の人々2.5http://sports.2ch.net/base/kako/1006/10068/1006825663.html
【過去ログ倉庫】
http://eekotoyo.s9.xrea.com/iriguchi.htm
2登場人物その1:02/10/30 03:05 ID:YnT3LL/Q
97年バージョンの番外編も始動。それに合わせて設定も少し変化が
起きている香具師がいます。今のところこんな形で再登場だず。

00:子犬のシマ
0:鯉城駅駅員木村
1:広島家用心棒前田
2:五男・輝裕
4:輝裕の親友兵動
5:漁師の町田
6:漁師の浅井
7:陸軍将校野村
8:父・浩二
9:刑事の緒方
10:知憲住職
11:竜士の一番弟子の子分・横松
12:河豚
13:キムチ、中学時代の博樹の親友
14:博樹の親友澤崎
15:長男・博樹
16:備前亭泰山、UFO仮面
18:佐々岡の爺
19:料亭長谷川の若旦那
21:銭湯の番頭 名古屋コーチン鶴田
22:甲斐の父   
23:次男・竜士
24:四男・貴哉
25:三男・貴浩
3登場人物その2:02/10/30 03:06 ID:YnT3LL/Q
26:“赤貧新聞”記者廣瀬
27:料亭長谷川奉公人・ピン
29:小林青年
30:マスター玉木
32:西山堂
33:鶏のロペ
34:UFO仮面の中の登場人物ヨシキ君
35:新米臨時教師松本
36:駐在所警官佐竹
37:高等学校の輝裕の友人岡上
38:前田の子分・朝山
39:“赤貧新聞”記者【・┏┓・】
40:料亭長谷川奉公人・倉
41:絵師森笠
44:郵便配達員福地
45:金本寺の仏像
47:エンドウ豆
49:ピエロのエディ
50:竜士の子分・栗原 、ウチの小学校の友人
51:前田の子分・末永
52:ベチの弟分・健太
53:車掌の林
54:テキ屋の兄ちゃん・ベチ、ウチの小学校の友人
57:建の息子甲斐
58:竜士の子分・長崎、ウチの小学校の友人
63:料亭長谷川奉公人・鈴衛
64:竜士の子分・井生
65:知憲住職の酒の番人・石橋
66:お地蔵矢野
67:浅井の息子大輔
68:広池
4代打名無し:02/10/30 03:07 ID:/HKJavfW
こんな糞スレ立てんなよボケが
ガチャーーン
威勢のいい陶器の割れる音がする。
「はい、これはまた輝裕くんの給金から天引きね。」
マスターの玉木は、手馴れたしぐさで流しの横に張られた紙に正の字の一画を加えた。
しまった・・・。輝裕はくやしそうに顔をしかめて割れたコーヒーカップを見下ろしてうなだれた。
「なんだ輝裕、またやったのかよ。」
半分からかい気味の笑いをこらえた表情で、店のテーブルを吹いていた岡上が輝裕のもとに
駆けよる。
「岡上くん、きみも人のことをいえない。」
玉木は、わざと抑揚のない口調で、持っていた鉛筆を輝裕の下に書かれた岡上の記録に
ポンポンとあてた。
「はい・・・。」
岡上もシュンと申し訳なさそうに下にうつむいた。
輝裕がマスターの玉木の店に住み込みで働くようになって、二年目の夏が過ぎようとしていた。
今こうして「広島輝裕」と一緒に仕事をしながら、同じ高等学校に通うようになった縁を、岡上は
しみじみ不思議なこともあるもんだと感じていた。思えば、金に困って橋の上でバイオリン弾きを
していたとき、玉木と出会った。このときから今に続く不思議な縁は始まっていたのかもしれない。
行方不明の父を探して店にやってきた少年甲斐とともに岡上は緋鯉村を訪ね、そこで同じく姿を
消した広島輝裕の名を何度も聞いた。その輝裕が今、目の前にいる。
「また兄ちゃんに質流れでいいコーヒーカップがないか、聞きにいかなくちゃ・・・。」
大通りを二人並んで歩きながら、輝裕は手のひらにのせた小銭を数え、肩を落とした。
「輝裕のおかげでモナの猛虎屋も大繁盛だな〜。」
岡上の言葉に、輝裕はそのままプクーと頬をふくらませた。クスクスと岡上は苦笑した。
隙だらけである。まさか、こうも子供っぽいしぐさもする奴だったとは身近につきあう
ようになるまで想像もしなかった。偶像が一人歩きしていただけだったのか。輝裕が
高等学校に入学したばかりの頃、出席日数が足りず留年してムキになって対抗しようと
した自分が何だか馬鹿らしくなった。
「岡上はこれから授業に?」
「ん、今日は教授の都合で片っ端に休講の張り紙が貼ってあったからさ、いいよ。一緒に
猛虎屋に俺も行くよ。」
輝裕は、「ありがと」と小声でいうと、急にスタスタと早足で歩きはじめた。
きたきた!これだよ、これ!
岡上はフフンと笑うと、眉をひそめて周りを見回すとそそくさと輝裕の後ろについた。
「相変わらず味方も多いが敵も多いな。今日は・・・あれか、あのアカか?」
ひそひそと輝裕に声をかけた岡上に、輝裕は苦虫をつぶしたような顔でコクンとうなづく。
もう一度岡上は、ぐるりと周りを見回した。その時
「あれ、広島くんと岡上くんじゃないか!」
緊迫した雰囲気を一変させる声が、通りの向こうから聞こえた。反射的に二人は
声の主に振り向いた。
「建さん!」
買い物帰りなのか紙袋を持った建が、ニッコリ笑って二人に手を振っていた。
輝裕と岡上は笑顔で手招きをする建のもとに、そわそわしながら駆け寄った。
建はそんな二人の態度にまったくかまわず、紙袋から真っ赤なトマトを取り出すとハンカチで
軽く拭いて、二人に一個ずつ手渡した。
「あ、あの・・・建さん。」
建の行動の意味がわからず、とまどいながら岡上は建の顔を見上げた。だが建は、
笑顔のままでコクンとうなづくと、岡上と輝裕にこういった。
「まだ甲斐は中学校から帰ってきてないけどね。岡上くん、きみもボクの店に一緒に来ないか。
それと輝裕くん、きみに渡そうと思っていたものが昨日ちょうどできあがったんだ。」
それだけで輝裕には意味がわかったらしい。顔を引き締めて丁寧に頭をさげると、そのまま
ゆっくりと歩きはじめた建の後をついていった。
岡上がその場に一人取り残された。四方から感じる見えない不気味な視線と、遠ざかっていく
二人の姿をキョロキョロと何度も振り返りながら、岡上の顔から冷や汗が流れはじめた。
「お、おい。二人とも待ってくれよ!」
先を歩いていた二人のうち、建が悠然とふりかえって意味ありげな笑みをこぼした。
二年前の建がどういう立場にいた人間だったか。建の息子甲斐と一緒に緋鯉村で建を探して
いた岡上は知っている。そして、その時同じく緋鯉村で行方不明だった人間が輝裕だった。
あの時の岡上は、建と輝裕には何かつながりがあるのかもしれないと仮定をたててみたが、
しかし、それはまったく偶然だった。だが、その二人が今、意味ありげに何か行動をおこそうと
している。二人をつなぐものは緋鯉村・・・広島家・・・そして・・・
「俺、また緋鯉村の変な騒動に巻き込まれるのかな・・・。」
まだ後ろからねっとりとした視線のようなものを感じる。何やら自分が想像していたものより
大きな勢力が裏に隠されているのではないか。
「岡上くん、遠慮しないでそのトマト食べていいよ。」
「は、は、はい。」
不意うちに突然建に声をかけられて、岡上の声が裏返った。輝裕はさっきより落ち着いた表情で
相槌をうつように建の言葉にうなづく。思わずトマトを片手に握ったまま、岡上は固まった。
トマトが指の圧力で汁がこぼれそうになった。
「さあ、着いた。」
建はカーテンのしまった店の玄関の引き戸を開けると、輝裕を店の中に入れた。
「岡上くん?」
身動きせずトマトを握ったまま呆然としている岡上に、建は苦笑して声をかけた。
「は、ははははははは、はい!」
あわてて返事をした勢いで、トマトがグシャッとつぶれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
白いシャツや制服に真っ赤なトマトが容赦なく飛び散る。建はクスクス笑って、頭がパニック
状態になっている岡上の腕をひいて、店に入っていった。
輝裕はグルッと店のまわりを見回した。高級そうな布地がいたるところの壁に飾られている。
そして支柱には何十着もの既製品のスーツが所狭しとかけられていた。
「うまく商売は繁盛しているようだね、建さん。」
はじめて輝裕は茶目っ気たっぷりに笑った。
「ああ。」
建は奥の部屋から和紙にくるまれた包みを持ってくると、店の大きな机の上で開いた。
輝裕は息をのんだ。真新しい高等学校の制服がそこにある。
「今年も広島家はやり繰りが大変そうだからね。輝裕くんの夏の制服をもう一着作っておいたよ。
輝裕くん、きみの制服は今着ているその一着だけなんだろう、だからね。」
輝裕は建の仕立てた制服を手にとった。
「やっぱり達川さんたちには、うちの状況なんかまるまるバレてるんだ。」
寂しげに輝裕は笑った。そして制服をもう一度和紙に包むと建に頭を下げた。
「これからもお世話になります。今度はボクが建さんや博樹兄ちゃんに続いて“担保”になる番
なんですよね。やります。きっと達川さんや緒方さんたちの力になれるようになります。」
“担保”と聞いて、店の中でもトマトだらけで固まっていた岡上は目をひんむいてクルッと
振り向いた。
「た、担保って・・・。そ、それはあの二年前の・・・!」
と、叫んでいるうちに、やっと建の店の意味に岡上は気がついた。
「そういうこと。岡上くんもここまで事情を知っているんだから、どう?協力してくれたら、
岡上くんの制服も作ってあげるよ。」
建は邪気のない笑顔でニッコリと顔をくずした。
10代打名無し:02/10/30 03:13 ID:/HKJavfW
つーかよ野球板の現状を少しは考慮しろや。
こういう駄スレのせいでいくつもの良スレが逝った事か・・・・・
悪貨は良貨を駆逐するってか。
だんだん岡上の頭の中でもつじつまがあってきた。だいたいこんな殿様商売のような雰囲気の
店で、一度商売に失敗して借金まみれ、担保の身の上にまでなった建がうまく経営などできる
わけがない。建の性格ならきっと、正規の商売では大きく儲けの出た取引もあった代わりに、
それを差し引く以上の大損もたんまりこさえたはずに違いない。なのに店が順調に維持されて
いるということは、経営が成り立つだけの裏取引がやっているということだ。その相手はあの
邪毘屋徴兵詐欺事件の捜査にあたった刑事の達川と緒方たち。そして今度狙う獲物は・・・
「だから、輝裕にあのアカたちが寄ってくるのか・・・。」
現在の社会体制を打倒し、共産主義を打ちたてようとする活動家を完全につぶすことが、
今の警察にとって一番の至上命令だ。で、それらのネズミをおびきよせる囮が輝裕、そして
建の店・・・
「プッ」
突然、輝裕が腹をかかえて笑いだした。
「かなりマジに受け取ったんだ、岡上!」
そしてプププッと何度も笑いをこらえようとしながら吹きだして、岡上を指さす。岡上の目が
点になった。建が苦笑いしながら、甲斐の服を持ってきて岡上に手渡した。
「だ、だって今度は輝裕が“担保”になるってさっきいったじゃないか!それは・・・」
「うん、なるよ。」
輝裕はケロっと答えた。
「でもさ、こっちだって今までアイツらにいいたい放題やられてきたんだから、キッチリ復讐しなきゃ
気が済まないよ。アイツらをおびきよせたら、こうして援助してくれるって達川さんたちはいうし、
それで博樹兄ちゃんの負担が減ったら願ったりかなったりじゃないか。利用できるものは利用
しなくっちゃ。」
唖然と岡上はあっけらかんとしゃべり続ける輝裕を見つめた。
「最近ね、この街で不穏な結社の動きが何度も緒方さんたちに報告されているんだ。」
水のつかった桶に岡上の服を入れて、建は落ち着いた声で説明をはじめた。岡上は
甲斐の服をすばやく着込むと、真顔で岡上の服の洗濯をはじめた建に視線を向けた。
「昔はこの辺りの危険分子といえば、輝裕くんを誹謗したりして緋鯉村をのっとろうとした青野や
毛上のような左翼のグループが中心だったけど、今はそればかりじゃなくてね。陸軍の派閥
争いの飛び火やら、革命を起こすと暗躍する“妖怪”と名乗る組織やら・・・」
「治安維持法・・・違反・・・特高ですか。」
岡上の言葉に、わざと無表情なそぶりで輝裕が振り向いた。建は静かに首を横にふる。
「そことは組織も違うし、あそこまで恣意的に人間を釣るつもりはないよ。ただ、このまま
ほおっておくわけにもいかなくなってね。」
外で突然慌しい乱闘のざわめきが起こったかと思うと、あっという間に警察の怒号と警笛の
音とともにそれらは消え去っていった。建はふうっとため息をついた。
「あいつらだけなら、別にどうってことはないんだよ・・・。でも、もうあの頃とは時代が変わっている。」
まだ岡上には事情がつかめない。
「軍部によるテロが一触即発の状態なんだ。この国を大きく変えるほどの。そうなったら完全に
ボクたちは国が滅びるまで戦争に突き進む。」
抑揚のない口調で輝裕はサラリといった。
「一度つかんだと思った夢や希望を見失ったとき、事態を打破しようと今まで存在していたものを
やみくもに否定するのは世の常だよ。だけど・・・。」
建は洗い終えた岡上の服を物干し竿に軽くひっかけた。
「ああ岡上くん、そこの袋にまだたくさんトマトがあるから遠慮しないで食べてくれよ。」
また元の笑顔で建が声をかける。どう反応すればいいのか、どよ〜んと暗い気持ちに襲われ
ながら、岡上はゆっくりと紙袋の中からトマトを取り出した。
まだ空の色はうす暗い紫色にくすんでいた。博樹は、周りの人間に気づかれないように
音を立てず布団から抜け出すと、壁に立てかけてある置き時計に目をやった。
「朝4時30分か・・・。」
これならゆっくり畑でナスの選定をしていても、朝一番の汽車に充分間に合う。博樹は小躍り
するように土間に駆け下りると、壁にかけてあった鎌と籠を手にとり、外に飛び出した。
と、その時、離れの建物からスッと引き戸が開き、一人の人間が静かに庭先に現れる。
「爺・・・。」
そのまま博樹は次の言葉をうしなった。佐々岡の爺は心配そうにじっと博樹を見ている。
「爺、そんなにオーバーに考えなくてもいいって。これは俺が好きでやっていることだし、
もう親父のことも全然こだわっていないからさ。」
あわてて、その場をつくろうように博樹はおどけてみせたが、佐々岡の表情は変わらない。
「本当に無理してらっしゃってないんですね、博樹坊ちゃん、本当に! もう私はこれ以上
広島家の人間が無理をしてすべてを失う姿を見たくないんですよ。」
半分怒りをためた表情が爺に加わる。ハッと博樹の顔色が変わった。
「・・・うん、わかってる。」
うなだれる佐々岡の爺に、やさしく博樹は肩に手を置いた。
「わかっている・・・。」

佐々岡の爺をなんとかなだめて畑に向かい、ナスを収穫して鯉城駅に辿り着いた博樹に
思いがけない人物がおどけた様子で出迎えた。
「よっ!もっと気楽に連絡をよこしてくれてもいいじゃないか、博樹兄ちゃん!」
「貴浩!」
知憲住職から譲り受けた黒い法衣を身にまとった弟の貴浩が、そこにいた。
あっけに取られてただ呆然と貴浩を見つめる博樹に、貴浩はニッコリと笑って法衣の
襟元から一枚のハガキを取り出して博樹に渡した。
「輝裕!」
「チビからこれが届いてさぁ、今日なんだろう?邪毘屋の野菜品評会。」
貴浩は博樹の様子にまったく構わず、博樹が背中に背負っている籠から取れたてのナスを
取り出しながら、間のびした声で返事をする。ハガキには、真っ赤なトマトの絵とともに
邪毘屋の野菜品評会の詳細が几帳面に書かれていた。
「よし、これならいけるっ!」
朝露に濡れて瑞々しく黒く光るナスを手にとって、貴浩は大きな声で満面の笑みをこぼした。
「貴浩・・・。」
ハガキを手にしたまま、博樹はどう反応すればいいかうかない表情で振り向いた。
「ん?」
博樹の表情を見て、貴浩はナスを持ったままわざと大げさにおどけてみせた。
「大丈夫だって!博樹兄ちゃんのやりたいようにやっていけばいいんだよ。大した力になれない
かもしれないけどさ、俺もチビも応援してるからさ。」
無理に明るく振舞っているように見える貴浩に、博樹は、住職は・・・?と小さく声を洩らした。
貴浩の身体がピタッと止まった。博樹はじっと貴浩の様子を見守る。
「へへへへへっ」
しんみりと笑ってごまかしながら、貴浩は鼻をすすった。
「福永先生に来て診てもらったんだけどさ、“眠り病”に感染したかもしれないっていうんだ。」
「眠り病ってあの眠り病のことか。」
「うん、今流行りのあの眠り病。治療方法もまだ見つからない、完治する可能性も30%あるか
ないか。もう元のあの住職に戻る可能性はほとんどないと思った方がいいと宣告された。」
そういった後、貴浩はまた無理にちゃかすようにして笑った。
博樹は顔がくずれてくるのを抑えきれなくなってきた。
「だーかーら!」
すぐに博樹の気持ちを察して、貴浩は力強く両手で博樹の肩をつかんだ。
「博樹兄ちゃん、俺たち兄弟5人あの時海岸で誓ったよな。これからまた新しい広島家を俺たち
みんなで築き上げるんだって。今はこんな状態になってしまったかもしれないけど、このままで
俺はあきらめるつもりはない。竜士兄ちゃんだって、貴哉だって同じ気持ちのはずだよ。」
「・・・・・・。」
「だから、俺は住職のこともあきらめない。まだ眠り病と決まった訳じゃないんだ。住職は絶対
元の住職に戻ってくれると俺は信じている。だから・・・」
「・・・・・・。」
「博樹兄ちゃんも俺たちに遠慮するなよ。ためこむなよ。博樹兄ちゃんのやりたいようにやって
いけばいいんだ。」
「あれ?」
始発の汽車に合わせて駅に出勤した駅員の木村が、二人の姿を見てすっとんきょうな声をあげた。
「拓也さん!!」
貴浩がニカッと笑って木村に手を振った。木村は博樹のために行先の切符を発行して、博樹に
手渡す。
「このナスが、緋鯉村や広島家にとって希望の一歩になるといいですね。」
驚いた表情で木村を見る博樹に、木村は笑顔で「赤貧新聞」といった。
汽車がホームに滑り込む。木村のはからいでプラットホームまで入ることが出来た貴浩は木村と
一緒に、汽車に乗り込んだ博樹に両手で大きく手を振った。博樹は窓の手すりから身体を乗り出して、
貴浩と木村が見えなくなるまで、じっとその姿を目で追っていた。
汽車の中で待ち合わせていた小山田は、博樹の身体が震えていることに気がついた。
「いえ・・・。」
小山田の反応に、博樹はかすれがちな声で返事をかえした。
「昔、こんなことがあったなあって。おんなじことを何度経験して、もがいてあがいて束の間の
喜びに一瞬でも苦しみを忘れて・・・。そしてどこへたどり着こうとしているのか。いろいろな
ことがありすぎて、最近自分が見えなくなっていました。でも俺たち兄弟、頑なに求めていたものは
同じものだった・・」
その後の言葉は続かず、そのまま小山田から顔をそらして博樹は乗り出すように外の風景を見ていた。
とっくに姿が消えた汽車を、貴浩もまた遠い目で万感の思いで見つめていた。改札口に戻ろうと
ゆっくりときびすを返す木村に、拓也さん・・・と一点を見つめたまま貴浩は小さな声をかけた。
「ん?」
おだやかな笑みで木村は振り返った。
「俺・・・やりますよ。住職がどんなことになっても・・。俺が・・・やる。」
「ん。」
木村は静かにうなずいた。
海沿いの鯉城駅をはるかかなたに見下ろす金本寺では、知憲住職が廊下で一人思いつめた表情で
緋鯉村の全景を見据えていた。だが、その視線はどこか定まっていなかった。

バタン

そのうち住職は力なく座り込み、身動きひとつとらなくなる。シーンと周りは元の静寂な空間に
戻った。忘れかけた頃に空でトンビがひゅるるるるるとのどかな鳴き声をあげた。
汽車は邪毘屋にある街の駅に辿り着いた。ナスの入った籠を背負って、大きく深呼吸をしてから
博樹はホームにおりた。小山田が地図を見ながら博樹を会場まで案内していく。
「建さんが一度、邪毘屋の野菜品評会を訪ねたらしいんだ。おたくの赤貧新聞を見て。」
輝裕から届いたハガキの内容を、博樹は小山田に告げた。
「ほぉ。それはそれは!」
小山田はまんざらでもないというようにニンマリと笑った。
「で、ある農家が作ったトマトを買ってきたらしいんだが、輝裕がいうには今まで食べたことも
ない絶品のトマトだったとか・・・」
フフンと意味ありげに小山田は片頬をあげる。
「だとしたら、そのトマトはあの御仁が作ったものですよ。」
派手派手しい巨大なテント小屋に博樹は連れていかれた。会場の至るところに見たこともない
新種の野菜が山のように積まれている。呆然と博樹は邪毘屋の元組員が作った野菜の数々を
見まわした。
「!」
後ろからまるで覆い被さるような威圧感のある視線を感じる。恐る恐る構えるように博樹は
視線の主に振り向いた。男は泰然自若にどっしりと座り、静かに見すえるように博樹を見ている。
男から醸し出される風格は、怪物のようなその容貌ゆえか。いや違う。男と場違いな対比で
瑞々しく前を陣取る野菜を目にしたと同時に、博樹は男に向かって駆け出していった。
「ああ、これは赤貧新聞さん。約束通り広島家の主人を連れてきてくださったんですか。」
野菜品評会主催である邪毘屋新主人の原が、おっとりした笑顔で事務室から姿を現した。
小山田は大きくうなずく。博樹は、籠からあわててナスを取り出して男に突き出した。
「俺の作ったナスを是非見てください!」
男はニッコリと微笑んで博樹に目の前に出されたナスを手に取る。胸の動悸が止まらない。
今まで考えていたいろいろなことが頭の中から消え去っている。博樹は真剣なまなざしで、
じっくりとナスを検分する男の動きを見つめた。
18代打名無し:02/10/30 03:27 ID:YnT3LL/Q
今までずっと捕手してもらっていたんすが、今日とうとう一旦dat逝きしまいますて、
改めて同じスレタイで作りなおしました。
コスモスも終了して、これで今度こそテンポよく続きが書けるはずっすが。

なお「桃源郷」はいったんこの時点で中断して、これからは過去バージョン
番外編をうぷする予定っす。
19代打名無し:02/10/30 03:27 ID:/HKJavfW
すんな馬鹿
20代打名無し:02/10/30 07:21 ID:UtNgjayM
もうやらなくていいだろ
21代打名無し:02/10/30 08:32 ID:Lr+GfVlm
出かける前に捕手
22代打名無し:02/10/30 11:46 ID:wzUE+fWX
捕手しておこう。
23代打名無し:02/10/30 12:06 ID:cIB4DR5g
ああああああああああ・・・・・・・・・・・・・
http://www.nikkansports.com/news/flash/f-bb-tp0-021030-23.html
24代打名無し:02/10/30 15:39 ID:Ym8TJAnA
出かける前捕手。
ウヒョスレはもう祭りになりかかってるか。
決めるのは金本本人、どういう結果になろうと受けとめる覚悟はできているが
今は固唾を飲んで見守りやす。。

今夜過去ログ倉庫更新開始予定。
25代打名無し:02/10/30 16:56 ID:Lr+GfVlm
帰ってきて捕手
26代打名無し:02/10/30 18:40 ID:19cX40Ss
ほしゅ
27代打名無し:02/10/30 20:40 ID:IYdti0OR
28代打名無し:02/10/30 21:43 ID:Lr+GfVlm
レポートを書きつつ捕手
29代打名無し:02/10/30 22:43 ID:R7zvgSqo
sage
30代打名無し:02/10/30 23:45 ID:d1MLsta2
保守
31代打名無し:02/10/31 01:24 ID:hFo0/pZY
jane試しsage
32代打名無し:02/10/31 02:22 ID:mhE0Hupu
寝る前捕手
33代打名無し:02/10/31 03:46 ID:/HzmBnj3

           ⊥
    .∧_∧  んヘゝ  
__ [・ ε ・]  /  .! ナスドゾー
|爻爻[|||   ||つ ゙:_ノ
|爻爻| | |  
` ̄ (__)_)

スレ立て&新作乙です。これからも楽しみにしてまつ。
>>1に前作ったAA使って頂いてうれすぃ・・。
34代打名無し:02/10/31 08:04 ID:FEeULVj7
ほしゅ
35代打名無し:02/10/31 15:56 ID:EaxW0MNo
金本FAケテーイか。
36代打名無し:02/10/31 17:43 ID:Mc3amAVJ
37代打名無し:02/10/31 17:52 ID:qnNYCgCK
>>16を読み返して涙がでますた・゚・(ノД`)・゚・
38代打名無し:02/10/31 19:25 ID:tyi4IwzN
前スレdat落ちして(´・ω・`)ショボーンだったよ。
捕手!捕手!
39代打名無し:02/10/31 22:28 ID:uUxdrLfe
ほしゅ
40代打名無し:02/10/31 23:27 ID:mhE0Hupu
かぷバトロワの作者さんの選択(川田役)が、今日のこの日を・・・。
41代打名無し:02/11/01 02:22 ID:BWSYBsyg
金本FAしましたか。9月は複雑な気持ちで神宮で金本を見ていたりしていたんすが、
10月に入ってから、こうなったら悔いが残らないよう自分の決めた道を信じて進んで
いって欲しいっす。
マンネリ打破にはいい刺激であると前向きに考えることもできるし、金本本人を思う
気持ちとかぷというチームを思う自分の意見はまた全然違う。それを割り切らせる期間
もあったFA宣言だったなと思いますた。

>>33
いえいえ、いつか復活させたいと思うておったんすよ。あのAA(w もう一個も下に
貼っておきますの。ナスの[・ ε ・]AAもありがとうございやす。
今日のクロダインデックスどんな内容になるのやら・・・。

>>37
これからちょうど住職が金本寺の住職になり貴浩を連れ去るシーンを書きはじめる
んすが・・・(丶`_ゝ´)もメリハリのある選手経歴を踏んだヒトだったなあと
しみじみと思い出しますた。

>>38
まだしばらくの間はプロ野球板も祭り状態なんでしょな・・・。

>>40
さあ、それはどうっすかね(w 
あ、それとかぷバトロワの作者の64さんと「広島家」の矢野の設定の件で
詰め合わせをしますた。これで97年バージョンの番外編に突入しようか思うて
ますたが、町田・浅井のシーンを書き終えてから中断の形をとります。
次回登場予定の人物は、町田・浅井・酒井・矢野の4人っす。
今日中にはうぷできるっしょ。
42代打名無し:02/11/01 02:25 ID:BWSYBsyg


  \             |
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     .|  |\      |
     .|  |  \.    .|  ____.
_ ____ .| ∧_∧ .|    .| .|     .|
     | (´鶴`)    .| .|      |_____
     |(  つ ̄ ̄ ̄|. |    _||l ̄ ̄/.||  ∧_∧
     | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |    |o|||| -- //|| (* ̄粗 ̄)_ プハァ
     |         .| |     ̄|||_//__|| く    ,[()
     |         :| |      || .鯉印.. | | | |
   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ .| .牛乳.. | (__)_)
  /                    ̄ ̄ ̄
43代打名無し:02/11/01 02:27 ID:BWSYBsyg
>>41
「10月に入ってから」消し忘れ(鬱
44代打名無し:02/11/01 08:11 ID:I64xt+7A
ほしゅ
45代打名無し:02/11/01 08:30 ID:cc1/GJI0
ほしゃーーーーーーー!
46代打名無し:02/11/01 11:53 ID:6JXfKgJr
ほしゅしゅ
47代打名無し:02/11/01 16:07 ID:cnrqfjyf
黒田vsまつい
48代打名無し:02/11/01 16:08 ID:cnrqfjyf
↑ごめん。誤爆の上に途中で送信しちゃった。(・ ε ・)
49代打名無し:02/11/01 17:07 ID:WWIidS24
保守保守
50代打名無し:02/11/01 18:34 ID:cc1/GJI0
祭りが終わるまではこまめに保守。
51代打名無し:02/11/01 19:56 ID:llnGCCFC
ageといてみる
52代打名無し:02/11/01 20:25 ID:w+pgTLFb
保守捕手ほしゅってこのスレは保守する存在意義あんの?
俺のレスも保守になってしまうのは痛いが。
ポチャン・・・
港の岸壁からまた一本の釣り竿が下ろされる。竿を持った町田はニコニコほんわかした笑みを
浮かべながらも心ここにあらず、ぼんやりとただその場に所在なく座っていた。
浅井の息子の大輔と浅井親子と一緒に暮らしている同い年の友人矢野が、底曳き網を小型漁船
の中に入れる。その視界の先に町田の姿がうつる。二人は心配そうに町田の様子を見やった。
「おい町田!もうそろそろ漁に出かける時間だぞ。いつまでそこでぼんやりしているつもりだ!」
いらだちもあらわに浅井は袖をまくりあげながらズカズカ町田に突進していった。
「ん・・・。」
だが、町田はそんな浅井に構わず釣り竿の先を例の笑顔を浮かべたまま見つめている。針に魚が
ひっかかった。町田は驚きの表情も見せず、そのまま釣り竿を上げた。

ボチャ

痩せこけた河豚が岸壁に打ち上げられる。思わず浅井は頭を抱えた。町田は何事もなかったように
また釣り針に餌を取りつけようとする。
「いい加減にしろ!お前がいなければうちの漁は近場の漁すら成り立たない状態なんだ。大輔も
修平もまだ未熟者で、二人で一人前の働きすらあてにならない。そんな時にお前がこんな状態で
どうするんだよ!」
無理矢理に浅井は町田の腕を引っ張って、港にある小型漁船まで引きずっていた。しかし町田は
「ふーん・・・。」
と笑顔で遠くを見つめるばかりで何の反応もしようとしない。
「なあ、“眠り病”って伝染するのか?」
町田の様子にほとほと手を焼いて、愚痴をこぼすように浅井の行動を手助けしようとする大輔に
声をかけた。大輔は困ったように矢野の方に振り向いた。矢野もためらいがちにうつむく。
「・・・金本寺の貴浩さんが聞いた話じゃ、伝染するっていった・・・。」
やっとのことで返事をした大輔の言葉に、浅井はふうっと大きく肩を落とした。
54代打名無し:02/11/02 00:57 ID:NenHHqVB
痩せこけた河豚・・・むしろ太り過(ry
春までは町田はこんな感じではなかった。むしろ大黒柱として一番頼りになる緋鯉村きっての職人
漁師だった。それがある時を境にまるで別人のように町田は腑抜けてしまった。
「あれは3月だったな・・・。」
あの時は町田の操る網に面白いように次から次へとヒラメやカニがひっかかり、いつもおっとりした
町田がめずらしく興奮気味に歓声をあげ、意気揚揚と上機嫌で緋鯉村の港に凱旋してきたのだった。
だが町田の歓喜もそこで終わった。町田の獲った魚のほとんどが正規の値段で取引されなかったので
ある。高級魚であるヒラメにそうそう卸業者も金を出すことができない。今後一切取引をしないと
脅しをかければ、実際に漁に出ている末端の漁師など反論することもできない。ただ魚だけを奪われた
町田が呆然と立ち尽くしているのを、浅井もなんとか声をかけて励まそうとしたが、町田はすべてを
拒絶していた。ちょうど行方不明から戻ってきたばかりの息子の大輔と矢野を学校に通わせるかどうか
の問題もあった。その日は教師の松本から浅井への呼び出しもあった。町田の様子が気になりながらも
浅井は大輔と矢野を連れて緋鯉村の中学校に向かった。それがまともな町田を見る最後の機会だった。
最初はまだ、一見して町田がこのような状態に陥ったことは見抜けなかった。それがまた病気を悪化
させる結果になるとも知らずに。浅井親子が気づいた時は既に今のような半分手のつけられない半病人
へと町田は完全に変わってしまっていたのだ。
「あの時は金本寺の知憲住職ももうどこか変だったね・・・。」
力なく船が揺れるがままに身を任せている町田に、思わず矢野は駆け寄って介添えをする。
「伝染元は知憲住職か。いや、そもそもその“眠り病”っていうのは何なんだ・・・。」
船を巧みに操りながら、浅井はボソボソと小さく呟いた。大輔は複雑な表情をあらわに父に振り向く。
息子と視線があった浅井はフッとやさしく顔をほころばせた。
「とにかく、この漁が終わったら一度3人で金本寺を訪ねに行ってみよう。広島家の三男にくわしい
事情を聞くことで、今の問題も簡単に解決の道筋が見えるかもしれん。」
56代打名無し:02/11/02 02:47 ID:Gyv0gAEs
圧縮も終了。じゃがまだ板の祭状態は続きそうな様子だで
ここで一旦うぷ終了します。また今日中に続きはうぷします。

町田の幻のHRは3月3日ですたのぅ。あの時はあれからこうも
長いスランプに陥るとは思いもよらんで。。金本も痛かったが
町田もキツかったっす 今年のペナントレース。
57代打名無し:02/11/02 11:27 ID:NenHHqVB
まともなら独走してた気もする春先。
58代打名無し:02/11/02 18:32 ID:86E+7aFc
59代打名無し:02/11/02 20:17 ID:lnG/tW+3
60代打名無し:02/11/02 21:24 ID:NenHHqVB
61広島魂:02/11/02 21:51 ID:5vxPztIX
来年の捕手は石原で行こうか!
なんといっても全日本では
阿倍を押しのけて正捕手だった時もあるしね!
62代打名無し:02/11/02 22:07 ID:QIy4NMV3
この分だと、ポロリの船頭も眠り病?
そして来年は駅員も?
・・・・鬱だ
63代打名無し:02/11/03 00:16 ID:XyDsVZk4
>>47->>48
誤爆にマジレスもなんなんだが、
黒田と松井の対決ももう見られないんだな。
寂しくなるが松井にも夢をかなえて欲しい。スレ違いでスマソ
64代打名無し:02/11/03 02:06 ID:HyV0Svju
うっ・・今日中うpは無理だったか(鬱
65代打名無し:02/11/03 02:48 ID:xiZUXMEH
>>55
続きがキテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
矢野と酒井は本編では初登場ですね。浅井も(・∀・)イイ!

どさくさにまぎれて本編未登場の鶴田んも出してほしいなとリクエストしてみるテスト。
・・今年の場合だと眠り病なのかも?
66代打名無し:02/11/03 10:44 ID:TTAh5ppw
レポート書き直しつつ保守(鬱
67代打名無し:02/11/03 14:04 ID:wOms02rF
(丶つ栗 ̄)「おらも眠り病だべ・・・なんがうどんと炒飯とおひたすとふうき豆とらふらんすば
         食っだら眠ぐで・・・・・」ファゴゴゴオ
68代打名無し:02/11/03 16:54 ID:tcKbsx+o
(@ω@)ノホシュ
69代打名無し:02/11/03 22:21 ID:TTAh5ppw
全然進まないのに保守
70代打名無し:02/11/04 01:06 ID:rdhVg0et
( ̄粗 ̄)保守ですよ〜・・・兄貴ぃ・・・
(つ粗T)
大輔は大きなかぶりで「うん」とうなずいた。
船は沖へと出で、緋鯉村の景色も海岸線から消えた。矢野は町田が船酔いしないように足場の定まった
場所に座らせると、大輔と一緒にぎこちなく底曳き網を海に沈ませた。網の重さに思わず足元が
ふらついて膝をついてしまう。それと同時になおりきっていない右肩に痛みが走った。
「つっ・・・」
肩を押さえて苦痛に矢野は顔をゆがませる。
「ほらほら・・・。」
船を止めて浅井は矢野をかばって甲板の中央まで連れていった。
「まだ怪我もなおりきらんうちに無理をするな、修平。」
そして矢野に代わり、大輔と一緒に漁の仕事にとりかかる。ぼーっと浅井親子の仕事を見ていた
矢野の表情が泣きそうになってきた。
「ごめん・・な・・さい・・・。一人前に働けるどころか、かえって足手まといになっ・・・。」
そのまましゃくり上げて泣き出してしまった矢野にゆっくり歩み寄って、浅井はポンポンと暖かく
頭を叩いてやった。
「いつ俺が修平をよその子扱いにした?大輔がうちに戻れるようになったのも、お前が大輔と一緒に
うちに帰ってきたのも皆これ地蔵さまのお導きじゃ。修平も大事な俺の息子だ。何度こういってる?
だからもう、そう萎縮するな。」
矢野が落ち着くまで浅井はやさしく背中を叩いてなだめてやった。もう既にこの世にいないものだと
思っていた息子の大輔。嵐の中、船から振り落とされて海に落ちていった幼い大輔を、あの時声を
かぎりに叫んで浅井は姿を追った。だが荒れ狂う波に翻弄され、ついに大輔を見つけることはでき
なかった。その時から半分大輔のことは諦めていた。だが、どこかで大輔の面影を求めている自分が
いた。広島家の四男貴哉がバケツをもって港で浅井たちの帰りを待っている姿を見つけると、大輔も
生きていたら同じくらいの年頃だったなとしんみりとした気持ちになり、人なつこく駆け寄ってくる
貴哉に、つい釣りの極意を教えたりもした。それが今は夢だと思っていた息子が自分のそばにいる。
裏の気持ちなどまったくなかった。浅井にとって矢野も息子同然の存在だった。
「おいっ修平!漁での失敗だったら俺の方が断然数が多いじゃんか!」
大輔が茶化すように鼻をシュシュッとすすった。はじめて矢野ははにかむようにニコッと笑った。
72代打名無し:02/11/04 03:40 ID:ubZnZAEM
>>71
乙です!

矢野可愛い・・・(w
浅井は二人の様子に胸を撫でおろして網のそばに戻っていった。しかしこんなことならやはり教師の
松本が言う通り、二人を中学校に通わせたほうがいいのだろうか。まず学校に通わせるより一生食えるか
どうか仕事を一人前に覚えることが本人たちにとって一番の幸せだと思っていたが、怪我がなおりきって
ない身体に無理に仕事を覚えこませて取り返しのつかないことになるより、松本が薦める進路に二人を
すすませた方が良い結果につながるのだろうか。浅井はぼんやりとただ海を見つめる町田に視線を移した。
「これから生産に従事する方たちも学を身につけたほうが良い時代です。これ以上生産者がつらい思い
をせず、相手の横暴に対抗できるように。いえ、学費の心配は入りません。今年から大輔くんたちの
年齢の子供も義務教育で学校で勉強するよう国から通達が来たんですよ。お国の思惑がどういうつもりか
知りませんが、私は逆にこの機会を利用して緋鯉村の子供たちに可能性のある将来をもっと選択できる
ようにしてやりたいと思ってます。」
自身も貧乏な境遇から苦難の末やっと教師という職についた過去を話し、松本は緋鯉村の人々の暮らし
ぶりに親身になって浅井たち父兄に説得を続けた。
「父さん、まだ何か考えこむことでも?」
網を持ったままじっと動かない浅井に、大輔が心配そうに顔をのぞきこんだ。
「ん。やっぱりお前たちをこうやって働かせるより中学校に行かせた方がいいかもしれんと思ってな。
なあ、大輔。他に松本先生にすすめられて中学校に通うことになりそうな子はいるのか?」
エッと大輔は目を大きく丸くした。矢野もあわてて大輔のもとに駆け寄る。浅井の言葉をどう受け取れば
いいのか、二人はしばらくの間、顔を見合わせて答えを探しあぐねていたが、大輔がコクンとうなずいて
浅井に振り向いた。
「栗原くんと井生くんと・・・」
次から次へと出てくる緋鯉村の青年たちの名前を聞きながら、浅井の視線はまた町田へと移っていった。
─── これ以上生産者がつらい思いをしないようにか・・・
浅井は心の中で小さく呟いた。
74代打名無し:02/11/04 04:55 ID:FI3kgLOp
町田浅井パート終了。本編で予定より出番が少なかった救済措置のように、あの時とは
違う人物ばかりが目立つ展開となっております。とくに松本は本編でもっと出番がある
ように準備してたんすが、ラストの展開で再登場が完全に不可能となってしまいますて。
(輝裕の猛虎屋での台詞で最終回まで動かしようがなくなってしもた。)
あの時書けなかった分ここで出番を増やしてやろと、いろいろ場面を用意してまする。
しかし本当に当初の予定とは別物じゃ。もともと黒田と松井の対決を半分ギャグを交え
描きたいと思っていた構想が、結局いろんな登場人物入り混じりのシリアステイストもん。
これが「広島家」の運命ですかのぅ・・(´Д`)

ここで今度こそ「桃源郷」は一旦中断。97広島家過去ストーリーに移ります。あくまでこれを
書くのは完結編が無理なく読めるようフォローするためのもので、話は先に進みます。
パズルを埋め込むように何がどうなっていくのか変遷を楽しんでくらさい。
75代打名無し:02/11/04 04:58 ID:dXy+nOpn
乙彼〜!楽しみでつ。がんがってくださいな。
76代打名無し:02/11/04 05:15 ID:FI3kgLOp
>>57
あの頃は夢がいっぱいですた。今度こそ春の椿事でないことを祈ってたんすがね(つД`)
>>62
駅員は大丈夫だよ。「遊」を一番安心して任せられるのは駅員しかいないと個人的に思うて
おりますけぇ。船頭は・・・続編で再登場するよ。
>>63
あの対決は感動で身体の震えが止まらなかったっす。平成で漢と漢の対決が見れるとは。。
あともう1年見てみたかったけど、松井の夢も是非応援したい。記者会見はなんともいえない
複雑な気分に襲われますた。
>>65
(´鶴`)ですか(w 鶴田も続編で登場予定です。桃源郷(完結編)では登場させられるかな。
今のところ未定れす。
>>66、69
忙しい中保守あんがと。がんがれレポ。
>>67
次回とうとう初登場すっからの。
>>68
おお(・∀・)!! チワワがいる!
>>70
ィ`!
>>72
矢野だからまだ描けたようなシーンだったっす。未だ矢野はバスの中の両手で手を振っていた
バイバーイが忘れられない・・。あれは強烈だった。
77代打名無し:02/11/04 13:01 ID:gmDU52ZN
保守
78代打名無し:02/11/04 14:41 ID:7iFGXxdC
みんな西山のことが大好き
79代打名無し:02/11/04 19:17 ID:RWKlgRWK
俺は・・・。
80代打名無し:02/11/04 19:18 ID:g+Z3m52S
>>79
せっかくdat落ちしそうだったのに保守すんなボケが
81代打名無し:02/11/04 21:51 ID:7iFGXxdC
レポートまた書き直し保守
82代打名無し:02/11/05 00:30 ID:aezg76GO
自治スレ見ると圧縮の規制が緩くなったみたいっすね。祭りもそろそろ終了かな。
明日(もう今日か)の準備が終って時間が取れたら続きがうpします。
83代打名無し:02/11/05 00:54 ID:1GNbk48a
いいよしなくて
84代打名無し:02/11/05 01:27 ID:L2Qpy66l
>>83
避難所で個人情報ばらされた可哀想な荒らしちゃんかな。チマチマご苦労さん。
85代打名無し:02/11/05 01:33 ID:1GNbk48a
>>84
近日中にこのスレ潰してやろうか?
潰れたらお前が俺を挑発したせいだよ(藁
86代打名無し:02/11/05 02:07 ID:L2Qpy66l
>>85
はあ。勝手に頑張ってください。挑発したつもりなど毛頭ありませんので。
せめて人様の迷惑にならないようにね。一人で生きてるわけじゃないんだから。
87代打名無し:02/11/05 02:35 ID:+eLvPPw/
これこれ、放っておいてやんなさいな。
88代打名無し:02/11/05 14:17 ID:UBycxfLB
ほしゅ
89代打名無し:02/11/05 15:04 ID:qLWZ08mq
続きたのしみ保守
90代打名無し:02/11/05 16:03 ID:tACu5E93
過去ログ倉庫更新しますた。
91代打名無し:02/11/05 21:38 ID:AgkOAjaU
氏にそうだ
92代打名無し:02/11/05 23:38 ID:RpRsfRvh
かぷがすきほしゅ
93代打名無し:02/11/06 00:49 ID:rglljseK
レポート終わったので保守
9464 ◆iDCARP8KOI :02/11/06 01:11 ID:PzA7Wlfm
保守ついでに。昔のトリップは8桁だから違うトリップになってるんだろう。

>>40
前田=川田にしたのはある意味正解だったのかも、と思います。
あの時はFAするとは夢にも思いませんでした。
そして、まさか1年たっても書き終わらないとは思いませんでしたw
95代打名無し:02/11/06 08:26 ID:rglljseK
(゚)ε(゚)「超捕手
96代打名無し:02/11/06 14:22 ID:sgVn/gIL
( ̄粗 ̄)
97代打名無し:02/11/06 14:56 ID:IDUAbEhU
(´ー`)
98代打名無し:02/11/06 22:05 ID:rglljseK
(゚)ε(゚)「永川のフォークを3回に一回は止めるぞぅ
99代打名無し:02/11/07 00:35 ID:TkRP97ET
寝る前捕手
100代打名無し:02/11/07 00:59 ID:hpSj9Woq
HDあぼーん。データ復帰まで待ってくらさい・・。
ウヒョスレ関連全部やられた・・・・゚・(ノД`)・゚・
101代打名無し:02/11/07 01:00 ID:OupjnNix
>>100
いいよ復帰しなくて。
102代打名無し:02/11/07 08:22 ID:TkRP97ET
>>100
ありゃありゃありゃありゃ
103代打名無し:02/11/07 16:36 ID:WXnuxDtw
がんがれ!
104代打名無し:02/11/07 21:29 ID:TkRP97ET
必要なdatファイルはありまつか?
105代打名無し:02/11/08 00:16 ID:c5vEFLAw
かぷには良い捕手がいる
106代打名無し:02/11/08 08:20 ID:c5vEFLAw
hoshu
107代打名無し:02/11/08 12:51 ID:+MsbiYFD
外付けHD8割方復帰しますた。最後まで修復できなかったのは
実況板の過去ログだったんすが、これは既に鯖にうpしてあるんで
なんとか被害はないところまで持ってこれたかなと。
んな訳で、今夜から再開できる予定でつ。
108代打名無し:02/11/08 13:31 ID:weci6dqc
109代打名無し:02/11/08 13:35 ID:a4zHuZfG
110代打名無し:02/11/08 16:36 ID:2q/eiPyY
ホモかよっ!
111代打名無し:02/11/09 00:00 ID:Wzjj4nXQ
>>107
わーい
112代打名無し:02/11/09 00:15 ID:qxWZhVVD
(* ̄∀ ̄) 
113広島家の人々 三本の矢1:02/11/09 03:23 ID:ZA1DvL5g
なつかしい石段が自分を迎えていた。これから自分はこの階段を駆け上がってどこに辿りつこうと
するのか。胸に激しく湧きおこる鼓動に修行僧知憲を身をまかせ、うひょーーー!と大きな歓声を
あげ、金本寺への階段を三段飛びで上っていった。
御山の修行で緋鯉村を離れて2年。待ちに待っていたこの時だった。山門を力まかせにこじ開けて、
知憲は本堂に駆け込む。
「・・・・・・。」
中に誰もいなかった。シーンと静まりかえった畳の堂内はキレイに片付けられ、本尊の前には
整然と木魚と数珠と護摩が置かれている。知憲は大きく息を吐いた。そしてまた深呼吸をする。
数珠が置かれた机の上に一枚の手紙が残されていた。知憲は手にとって、ゆっくり中を開いた。
「・・・そうか。音さん、元の寺に帰ってしまったんか・・・。」
立つ鳥跡を濁さず。知憲が帰ってきてすぐに住職の任を果たせるよう、すべてのことを済まして
前住職 音は去っていった。もとから知憲の御山の修行が終わるまで金本寺や緋鯉村を護るのが
俺の役目といっていた音である。これも最初から予想された行動であった。
くぐもったお香の匂いがだんだん鼻についてきた。知憲住職は顔をしかめた。
「おりゃーーーーっ!」
ドタドタ駆け足で、知憲住職は寺中の扉という扉、襖という襖をケリを入れながら開けていった。
さあ、これから一人で住職暮らしだ。だが、たった一人で寺住まいか。ふと立ち止まって住職は
ぼんやりと寺を見まわした。
114広島家の人々 三本の矢2:02/11/09 03:24 ID:ZA1DvL5g
「あるとき毛利元就はその子の隆元、元春、隆景の三人に一つの書きものを渡し・・・」
ニコニコと笑顔をふりまいて滔々と毛利元就の三矢の訓を語りだす教師の三村を、後ろの席に
座っている博樹はうんざりした表情で見つめた。だいたい中学四年も最後の授業に、なんで尋常
小学校の修身教科書なんぞ持ち出してくるのか。隣の席に座っていた菊地原が肩をすくませ、
博樹に目くばせした。
「・・・兄は弟を愛し弟らはよく兄につかえよ。と、それはありました。そこで兄弟は・・・」
苦虫をつぶした顔で博樹も「そろそろくるな」とうなずいた。三村の語りは絶好調だ。
「「三人が共同して御いましめを守ります」と誓いました。その後・・・」
二人は身をかまえた。そろそろ物語が終わる。問題はその後だ。
「はーい、これは皆さんが小さい頃教わった三本の矢の訓話ですが、・・・」
キターーー!二人は頭を抱えた。用意周到に三村はちゃんと三本の矢を用意していた。
「こうして一本の矢だと簡単に折れてしまいますが、三本だと折れない。」
三本くらい訳ないだろ。ボキッとやっちまえ・・。うらめしそうに博樹は毒づいた。
「つまり一つずつなら弱いものでも一緒ににすると強い。お前たち兄弟も互いに仲良くし、
力を合わせれば困難を勝ち抜いて家を盛んにすることができる。そういう教えなんですね。」
博樹は机に突っ伏した。やってられない。そんな博樹の気持ちを知ってか知らずか、教師の
三村はそのまま笑顔で博樹の席に近づくと、一本の矢を博樹の目前に置いた。何かの気配に顔を
ゆっくりとあげた博樹は、急に間近に現れた一本の矢に目を大きく丸くした。
「キミもその中の一本の矢だ。」
そのまま何事もなかったように、ひょうひょうと三村は教室を去っていく。しばらくの間固まった
まま、博樹は一本の矢とにらめっこをしていた。そして手に取る。急にわけのわからない怒りに
襲われた。
「フン!」
ヤツ当たり気味に博樹はボキッとその矢を真っ二つにへし折った。
115代打名無し:02/11/09 03:40 ID:ZA1DvL5g
結局サブタイトルはもろストレートなものになりますた(´Д`)
97年の広島といえば、大河ドラマ一色だったからのぅ。
広島アジア大会の時といい、この大河ドラマの時といい、盛り上がるときの
広島のはじけっぷりはいつも唖然とするばかりで、何故そこまでできるんだ広島!
と今更ながら広島人の熱しやすさに脱帽した思い出が。あの年の故事好き三村の
コメントも「元就にあやかってカープも盛り上がりたい」だったヨナ。
でも三本の矢というと一番思い出すのが大野。。。なんす(´Д` )

週末じゃけ、もう少し続き書いておきやす。
116広島家の人々 三本の矢3:02/11/09 05:24 ID:ZA1DvL5g
菊地原はそんな博樹を黙って見ていたが、フッと自分の机に顔を戻して教科書をカバンに入れ始めた。
怒りにまかせたままの博樹は、一瞬菊地原が何をいったのか頭の中に入らなかった。
その後無言で菊地原は荷物をまとめている。
「なあ、もう一度いってくれ菊地原。」
菊地原の手がとまった。だが、またすぐに元の動作に戻る。今度はしっかり博樹の顔を見て菊地原は
いった。
「この授業で俺、ここをやめるんだ。」
思わず口をあんぐり開けたまま、博樹は呆けた顔で菊地原を見るほかなかった。どう切り出せばいいか
とまどいながら重々しく口を開いた菊地原は、相手の表情にブッと吹き出して腹を抱えて笑い出した。
「お、おいっ、笑いごとやないわ。一体いきなりどういうつもりや。俺、5年になったら一人っきり
なんか?」
慌てふためく博樹になおさら弾けたように笑いつづけていた菊地原だったが、やっと落ち着くと
笑顔で博樹にこういった。
「お前なら一人でもやっていけるよ。今までだってそうだったじゃんか。農家の長男が進学を選ぶ
なんてキチガイ沙汰だ。そういわれ続けてもここまで来た。あと1年、俺がいなくたってお前なら
やれる。」
振り上げようとした拳が、だらんと力なくおりた。無言で博樹は菊地原を見つめた。
「俺の家もそろそろ金がヤバいんだ。もう俺がのんびり学校に通っている場合じゃない。」
「これから・・・働くのか?」
菊地原はうなずき、このまま緋鯉村を離れて都会で住み込みで働くことを告げた。
117広島家の人々 三本の矢4:02/11/09 05:25 ID:ZA1DvL5g
同じ構内に隣接する小学校から、幼い子供たちの声が飛び出した。教室に一人っきり取り残された
博樹はぼんやりした表情で窓から子供たちの声が聞こえる校庭を覗いた。末の弟の輝裕が
友人の兵動と一緒にキャッチボールをして遊んでいる。博樹は壁にかけられた時計を見ると、
荒々しくカバンを肩にかけて校庭に向かって駆け出した。
「あっ、博樹兄ちゃん!」
兄の姿を見つけるやいなや、輝裕はキャッチボールもそこそこに博樹のもとに駆け寄る。
「もう時間も遅い。いつまでも遊んでないで一緒に家に帰るぞっ。」
「う、うん。」
いつもと様子の違う兄に首を少しかしげて、とまどいながらも輝裕はうなずいた。
「もう一人、貴哉は?」
「貴哉兄ちゃんなら、先に家に帰ったよ。」
これまた、いつもと違う行動をする兄弟がいる。兵動が輝裕の荷物を持ってきて輝裕に手渡した。
「ありがとう。じゃーねー。」
無邪気に兵動に大きく手を振って、輝裕は博樹に手をひかれていった。博樹は輝裕のカバンに
見覚えのあるものを見つけた。博樹の視線に気づいて、輝裕はニッコリと笑った。
「中学の三村先生にもらったんだよ。」
例の三本の矢のうちの一本だった。

そんでは。
118代打名無し:02/11/09 13:09 ID:Wzjj4nXQ
お気に入りがあらかたdat・・・。
119代打名無し:02/11/09 16:26 ID:Wzjj4nXQ
(‘Å’)ノ ホシュモヤリマース
120代打名無し:02/11/09 17:44 ID:OBp9mez4
保守
121代打名無し:02/11/09 20:25 ID:Wzjj4nXQ
危険水域ぽ
122代打名無し:02/11/09 21:26 ID:iDv7/7mj
音さんなつかすぃ
123代打名無し:02/11/09 23:41 ID:Wzjj4nXQ
( ̄瀬 ̄)
124代打名無し:02/11/10 01:30 ID:R+cu9Mqo
ウマー
125代打名無し:02/11/10 04:49 ID:b4GfNx97
ほιゅ
126代打名無し:02/11/10 10:08 ID:9iE6OzQV
127代打名無し:02/11/10 11:11 ID:ul1jxl2o
128代打名無し:02/11/10 12:53 ID:9iE6OzQV
129代打名無し:02/11/10 15:46 ID:9iE6OzQV
130代打名無し:02/11/10 19:58 ID:9iE6OzQV
131代打名無し:02/11/10 22:45 ID:9iE6OzQV
132代打名無し:02/11/11 00:40 ID:S425KGvF
133代打名無し:02/11/11 01:36 ID:HR2DvFKv
134代打名無し:02/11/11 08:30 ID:au4QJ4sz
135代打名無し:02/11/11 10:18 ID:Xe2NRFmk
136代打名無し:02/11/11 16:47 ID:au4QJ4sz
137代打名無し:02/11/11 19:03 ID:0FIYYNF9
ほしゅ
138代打名無し:02/11/11 22:06 ID:DxY9eJUr
hoshu
139代打名無し:02/11/12 00:22 ID:JIc2Ni/L
結構落ちないもんだね
140代打名無し:02/11/12 01:19 ID:RHGFiv41
落とさないよー。
141広島家の人々 三本の矢5:02/11/12 01:47 ID:br1lC+Ln
広島家を囲む垣根のそばにある御影石に腰をおろして、竜士は兄弟たちが学校から帰ってくるのを、ずっと
待っていた。今、広島家の兄弟で学校に通っていないのは竜士ただ一人である。すぐ下の弟の貴浩は今日で
高等小学校を卒業して竜士と同じ立場になる。だが、これからあいつ、何をするつもりなんだろ?竜士も去年
高等小学校を卒業したものの、ただ何をするわけでもなく広島家にいる。小さい頃から何か行動を起こしたく
ても、身体が弱く無理がきかなかった。そんな自分を不甲斐なく思いながら、深く考えないように自分を茶化
してのほほんとここまで来た。しかし、さすがに今年、兄弟の中で自分一人学校に通っていないこの状態は
キツかった。俺、一体何やっているんだろう・・・。勉強など真っ平ゴメンで、高等小学校すら父の浩二に泣き
つかれて何とか通いきった竜士だったが、何だか一人取り残されたような鬱屈した気持ちが何度もこみあげては
抑えるのが大変になっていた。かといって、家業の農家を継ぐつもりは毛頭なかったが。
「竜士坊ちゃん。」
玄関の戸がガラッと開き、エンドウ豆の入ったザルをもった佐々岡の爺がゆっくりとこちらにやってきた。
「ん・・・。」
めんどくさそうに竜士は佐々岡の方へ顔を向けた。その目の前へ爺はザルを突きだす。
「やることがなくて暇なら、そこでエンドウ豆のヘタ取りでも手伝ってくれませんかね。」
「げぇっ!なんだよ、それ!」
露骨に嫌そうな顔で竜士は首をブルンブルン横に振った。その時、甲高い澄んだ声で童謡を唄う輝裕の声が
通りの向こうから聞こえてくる。パッと顔を輝かせて、竜士はザルを地面に投げ捨て立ちあがった。
「あっ、竜士兄ちゃん!」
博樹に手を引かれていた輝裕は、竜士の姿を見つけると博樹のもとを離れてトテトテと例の矢を持って
駆け寄った。
142代打名無し:02/11/12 01:51 ID:br1lC+Ln
今日はまだ続きを書きます。、
で、保守はスレ数が600近くになるまではdat落ちの心配はしなくても大丈夫かと(・∀・)
いつもありがとうございやすm(_ _)m

保守党の・・とくるから次は扇とくるかと思ったら、フェイントだった。
143広島家の人々 三本の矢6:02/11/12 02:50 ID:br1lC+Ln
「これねえ〜、中学〜校の、三村センセ〜からね〜〜!」
と同時に、反対側から全速力で馬鹿でかい図体の青年が悲鳴をあげて竜士めがけて駆け込んでくる。
佐々岡の爺がふうっと溜息をついて、ザルを取り上げた時だった。
「竜士!貴浩!あ、危ないっ!!」
博樹の声も無駄だった。爺が手にしたザルも巻き込んで、貴浩は小石につまずいてエンドウ豆ごと竜士の
上に震動を立てて倒れこんだ。両手に矢を持って呆然と立っている輝裕の前には、手加減もなく顔から
地面にめり込んで倒れた竜士と、その上に折り重なって目を回している貴浩が。地面のまわりには、二人を
彩るように青いエンドウ豆が鮮やかに一帯にちらばっていた。
「・・・・・・貴浩兄ちゃんのバカ。」
ぼそっと輝裕が呟いた。ハッと我にかえった貴浩が、あわてて下でつぶれている竜士を起こして肩をガクガク
揺らした。
「てめぇぇぇぇぇぇぇええええ!」
意識の戻った竜士から容赦なく拳が貴浩の顔面に繰り出された。ひぃひぃ泣く真似をして貴浩はペコペコ
何度も謝る。はあ・・・。無意識のうちに博樹の口から溜息に近い声が漏れた。
「そういえば貴哉兄ちゃんは?先に家に帰ったはずだけど・・・?」
家のまわりを見回して、輝裕はとまどいながら佐々岡の爺に質問した。
「えっ?貴哉坊ちゃんでしたら、まだ家にお戻りになっておられませんよ。」
「えっ、ウソだ!」
思わず輝裕は大きな声で返事をした。
「いや、真っ先に家に帰ってきたのはお前と博樹兄ちゃんで、貴哉は俺も見てないぜ。」
土だらけの顔面をいまいましげに手で払いのけながら、竜士も返事をかえした。
「だって・・・。」
そういった後、輝裕は顔を曇らせて下にうつむいた。
「だって、貴哉兄ちゃんが学校を出たの午後2時だったんだよ。」
144広島家の人々 三本の矢7:02/11/12 04:03 ID:br1lC+Ln
もう4時間も前の話だ。博樹は佐々岡の爺に視線を向けた。
「いいよ。貴哉を探しにいくなら俺が一番いいって。博樹兄ちゃんはこれから勉強があるだろ。
どうせこれから俺ヒマだしさ。雑用なら俺がみんな代わりにやるよ。このくらいしか俺のできることって
ねえしさ。」
明るくきりだす貴浩の言葉に、ほてった頬をおさえていた竜士の胸のどこかがチクリと痛んだ。
「失態ばっかやらかすお前がちゃんと一人前のことをこなせんのか?」
軽口でからかう博樹に、ぁああ、博樹兄ちゃんひでぇぇ!と大袈裟に嘆いてみせる貴浩。二人の姿を正視
できず、ポツンと困ったように両手で一本の矢を持ったまま佇んでいる輝裕に竜士は声をかけた。
「あ・・・。」
ニッコリ笑って、輝裕は竜士の前に両手を差し出した。
「これ、あげるよ。竜士兄ちゃん!」


あてどもない、けもの道のような小道を貴哉は山奥に向かって歩いていった。左手には同級生の友人
栗原に書いてもらったベチの家への地図がある。親友だといいながら、貴哉はベチの家に向かうのは
初めてだった。ベチが決して貴哉を自分の家に遊びにこさせなかったからだ。だが、今日は事情が違う。
─── 自分の顔を見たら、ベチは嫌がるだろうか・・・。
そんな危惧もなくはなかったが、だが自然足がそちらに向かう。
「なあ、ウチは当然このまま中学に進学するんだろう? ウチはクラスでも頭いいし、お前ん家は
緋鯉村でも一の家柄、名主の庄屋の広島家。俺ん家と違って金もいっぱいあるお坊ちゃんだもんなあ。」
尋常小学校卒業が近づくにつれ、ベチは何度も隣の席の貴哉にうらやましそうに貴哉の進路について
話題を持ちかけた。別に妬みとかそういうものは一切なく、ただ純粋に貴哉の境遇を羨ましがっている
だけらしい。しかし、こういう時どういう返事をすればいいのかわからず、貴哉は無言で申し訳なさそう
にシュンと縮こまるしか方法がなかった。それを見てまたベチが気の強そうなあの態度でケラケラ笑う。
「だからさ、ウチはウチなんだって。ウチがやりたいようにウチの行きたいところへ行けばいいんだよ。」

ちと中途半端なところで申し訳ないが、今日のところは。
145代打名無し:02/11/12 08:24 ID:JIc2Ni/L
146代打名無し:02/11/12 17:27 ID:JIc2Ni/L
147代打名無し:02/11/12 19:07 ID:MXu4bcD7
エンドウ豆、何気に重要キャラじゃね?(w
148代打名無し:02/11/12 22:01 ID:JIc2Ni/L
輝裕はめんこいのぅ
149代打名無し:02/11/12 22:20 ID:d8DkoHnQ
陰の主役=えんどう豆
150代打名無し:02/11/13 00:26 ID:kv3wOO3y
(・ ε ・*)
151代打名無し:02/11/13 01:23 ID:CPvUoWHY
ここまで沈みきるのもまたええもんだわ(w
そろそろ一旦浮上するかな?
152代打名無し:02/11/13 03:37 ID:e58OAONT
いやこのまま保守しておく
153代打名無し:02/11/13 03:42 ID:kv3wOO3y
age禁
154代打名無し:02/11/13 08:25 ID:GphTJYLn
朝イチで保守
155代打名無し:02/11/13 14:19 ID:tIuRN2sI
圧縮あったの?
156代打名無し:02/11/13 21:33 ID:bWgtqkGu
ホシュ
157代打名無し:02/11/13 22:27 ID:tIuRN2sI
テストを兼ねて捕手
158代打名無し:02/11/14 01:03 ID:QzM1E+69
159代打名無し:02/11/14 01:51 ID:t5cICmK5
次回うぷは土曜日の予定れすm(_ _)m
160代打名無し:02/11/14 08:27 ID:0mW6f2Yy
161代打名無し:02/11/14 13:04 ID:rLi/r4Is
162代打名無し:02/11/14 15:35 ID:pNJfKrYX
163代打名無し:02/11/14 16:08 ID:fFVFO8VK
 
164代打名無し:02/11/14 16:17 ID:OxPj/JFb
(丶´_ゝ`)「緋鯉村のみなさんさようなら。」
165代打名無し:02/11/14 21:42 ID:0mW6f2Yy
輝裕はめんこいのぅ
166代打名無し:02/11/14 22:14 ID:VPPId/+N
輝裕はめんこいのぅ
167代打名無し:02/11/15 05:49 ID:dWJPTyl1
輝裕はめんたいのぅ
168代打名無し:02/11/15 08:30 ID:wzHz6tjF
めんたいかよっ!
169代打名無し:02/11/15 17:01 ID:YSjDTcXC
輝裕はめんたいのぅ
170代打名無し:02/11/15 20:46 ID:U8GbRZof
輝裕はめんたいのぅ
171代打名無し:02/11/15 22:20 ID:8yp7WZge
輝裕はめんたゐのゥ
172代打名無し:02/11/15 23:24 ID:48x1MZp0
輝裕はあんたゐのゥ
173代打名無し:02/11/16 00:31 ID:FFuU4xss
584まで来たのでこまめに行きましょう
174代打名無し:02/11/16 02:34 ID:d+VF+d8y
    /~ ̄~~ヽ      
   _i___⊂______|            
    |━__━ ┃     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    d. レ   iP   < お前に言われんでもわかっとるワイ!
    ヽ´ ̄` /       \_______________
       ̄
175代打名無し:02/11/16 03:12 ID:/2IR38tm
>>173
いい具合に沈んでるのに圧縮があったね
176代打名無し:02/11/16 10:24 ID:LbUUkVEN
カープだめぽ
177代打名無し:02/11/16 17:27 ID:af/92jSH
保守
178代打名無し:02/11/16 21:27 ID:FFuU4xss
ホッシュホッシュ
179代打名無し:02/11/17 01:06 ID:G0tS5P3S
広島家に負けじとかぷも激動ですな。
180広島家の人々 三本の矢8:02/11/17 02:16 ID:PA4WVPxA
貴哉はそんなベチをただボーッと見つめるしかなかった。あの時自分に何ができたんだろう。なんて
答えたらよかったんだろう。ある日を境にベチはまったく学校に来なくなった。そして卒業の前日の今日も。
「んだー、ベチんとこさ、金がなぐなっだべ、今度別の土地さ行ぐと聞いたべさ。」
一人だけ事情を知っていた栗原が、何度も心配そうにベチの席を見やる貴哉を見るに見かねて、ベチの行方を
教えてくれた。
「・・・・・・。」
絶句して貴哉は、その場から身動き一つ取れなかった。
「・・・・どうして。」
やっとのことで洩れでた言葉にも、栗原はフゴーとただ貴哉の顔を見るばかりで返事をしてくれなかった。
また貴哉はシュンと小さくなり下にうつむく。
けもの道を越え、辺りに急に田畑が広がった。その先に今にも崩れ落ちそうな藁葺き屋根の家屋が一軒、
風に揺られている。
「ベチ!」
ためらいもせず、貴哉はその襤褸家に駆け込んだ。
「・・・・・・。」
家の中には誰もいなかった。そして辺りに瓦礫のように散乱する生活道具や茶碗のカケラ。ついこの間まで
そこには人が住んでいた。家族のぬくもりがあった。貴哉は床に打ち捨てられていたベチが使っていただろう
藁半紙のノートを手にとった。
「・・・・・ボクに何か出来なかったかな・・。」
ノートを胸に抱きしめたまま、貴哉は床にガタンとひざまづいた。風がカタカタと家屋を鳴らす。時間が
経つのも忘れ、貴哉はノートを抱きしめていた。



「なあ、博樹兄ちゃん?」
受験勉強用に2階に用意された部屋で一心不乱に勉強をしている博樹に、竜士はふすまを恐る恐る開け、
甘えるように声をかけた。
「ん?」
竜士の声に博樹はノートにペンを走らせる手を止めて、振り向いた。
「あっ、いや・・・、別になんでもないんだっ。」
あわてて竜士は手を振った。だが何か思うことがあるのだろう、溜息をついてそのままそこに座り込んだ。
181広島家の人々 三本の矢9:02/11/17 03:37 ID:PA4WVPxA
「いいたいことがあるなら、ここでズバッといっちまった方がすっきりするぞ。」
苦笑して博樹は、もじもじしながらたまに上目遣いでチラッと博樹を見る竜士に声をかけた。
「ん・・・。」
博樹に声をかけられてもまだしばらくもそもそしていた竜士だったが、覚悟を決めたのか急にフンと気合を
入れてあぐらをかくと、博樹と真正面に向き合った。
「俺、これから何をしたらいいんだろう。」
博樹は一瞬、竜士のいおうとしている意味がつかめなかった。
「博樹兄ちゃんは、野村さんに続いて緋鯉村で2番目の中学卒業者になって高校に進学して、緋鯉村を
大きく変える人物になって親父の跡を継ぐっていう目標があるだろ。でさぁ、俺はどうしようかなって。
何かやりたいってことが見つからないんだ。小さい頃から何かやろうとしても、いつも身体のどっかに
ガタがきて半病人みたいなもんだったし、かといって勉強なんか俺、大っ嫌ぇだし、農家を継ぐって
柄でもねぇしさ・・・。」
ああ・・・。やっと博樹も竜士がいおうしていることが理解出来た。全部いってしまった後、
気恥ずかしさが勝ってきたのか、また竜士は所在なさげにもじもじし始める。
「貴浩・・・。あいつはどうすんだろな!」
「貴浩・・・、あいつはなぁ・・・。」
そういうと、博樹は机を叩いてププッと笑いをかみしめた。半分うらめしそうな顔で竜士は博樹を見た。
博樹の笑いはとまらない。
「竜士、俺の意見があっているかどうかわからないが、ここでウジウジ考えても仕方ないだろ。何が
お前に合うのかいろいろなことを試してみたらどうだ。身体のことさえなければ、お前ならそこそこ
何でもこなせるんじゃないか?」
「・・・いろいろ試してみる・・。」
「ああ。」
ニッコリ博樹は笑った。
「博樹兄ちゃん、晩御飯ができたよ〜!あれ、竜士兄ちゃんもここにいる!」
パタパタと階段を上がってきた輝裕が、竜士の姿を見て目を丸くした。
竜士に早くご飯を食べようと目くばせをして、博樹は輝裕に貴哉が家に帰ってきたか尋ねた。
輝裕は少し悲しそうな表情で首を横に振った。
182広島家の人々 三本の矢10:02/11/17 04:16 ID:PA4WVPxA
「貴浩兄ちゃんが探しにいったけど、貴浩兄ちゃんもまだ帰ってきてないんだ。それと・・・。」
「それと?」
「父さんもまだ家に帰ってきてない。」
「親父まで・・・。めずらしいな、こんな時間まで留守にするなんて。」
竜士は眉をひそめた。



金本寺に恰幅のいい大人然とした中年の男が、ゆっくりと山門を抜けてやってきた。
知憲住職は本堂に座布団とお茶と西山堂の菓子を準備して、客人が来るのを待っていた。
「おお、随分と立派な体格になって帰ってきたな、カネ!」
相手の男 ── 広島家の主人浩二は目を細めて知憲住職を屋号からくるあだ名で呼んだ。
「はい。」
知憲住職もニヤリと笑って客人を出迎えた。

「で、カネは予定通り音の跡を継いで金本寺の住職におさまってくれると考えてええんか。」
「はい。一時期はこのまま金本寺の跡を継ぐ形でいいか迷った時期もありましたがね、ワシも
緋鯉村の出身ですけぇ、やっぱ一度は故郷に帰って錦を飾れと恩師の言葉もありましたし、ここ、
ワシの実家みたいなもんですけんのぅ。」
ニコニコ、笑顔で知憲住職は西山堂の黒ゴマ団子とお茶を浩二に差し出した。浩二はうんうんと
うなずきながら、いつもの口癖「まあ、ええことよ」をつぶやく。
「じゃあカネが金本寺の住職に決まったんなら、次は緋鯉村の村民や周辺の檀家回りからやって
もらおうかのぅ。」
「それについて親父さんに一つお願いしたいことがありまして。」
知憲住職は不気味なほど例の笑顔を崩さない。
「ほう、なんじゃ?」
だが、浩二はそれにまったく気づいていないようだ。知憲住職は笑顔のまま用件を切り出した。

んぐぐっ!!

浩二は西山堂の黒ゴマ団子を喉につまらせた。
183広島家の人々 三本の矢11:02/11/17 05:05 ID:PA4WVPxA
「親父さん、大丈夫ですか!!」
知憲住職はあわてて浩二の肩を揺すって、異物を取り出そうとした。だが西山堂の餅はガンコなのか
まったくビクともしない。今度は後ろから背中を叩いて何とか餅を吐き出させようとしたが、それでも
事態が変わらない。
「親父さん!」
あせった知憲住職はやおら立ち上がると、浩二の背中に足をのせて何度も勢いをつけて踏みつけた。
今度は何とかなりそうだ。ホッと胸を撫でおろした知憲住職はその瞬間、勢いあまって浩二を遠くまで
蹴り飛ばしてしまった。浩二の身体は本堂を越え、庭まで飛ばされた。

ドッシーン

本堂まで響き渡る地響きとともに浩二は地面に横たわった。冷や汗をかきながら、知憲住職は浩二の
もとに駆け寄った。良かった・・・餅も吐き出してちゃんと息をしている。大きく知憲住職は息を吐いた。
「しっかし、いきなり団子をつまらせるようなことを要求したかぃ、ワシは・・・。」
本堂の座布団の上で介抱されていた浩二は、しばらくして意識を戻した。
「いや、いきなりすまんかったなのぅ、カネ。」
「いえいえ。」
コロッとまた態度を元に戻して、知憲住職はお茶を浩二に差し出した。ゴクッと気つけのために浩二は
それを飲んだ。
「じゃが、ここの寺の下働きにワシの子供が一人欲しい?」
「はい、将来はここの坊さんになってもらうということで。緋鯉村の将来を考えたら、広島家の人間が
村のまとめ役の一人になるこの寺の坊さんになるのは悪くない話じゃないっしょ。親父さんのとこ、
男ばかり5人も子供がいるじゃないっすか。5人も育てきれるんすか?一人ワシに預けてくれたら、
責任をもってワシはそいつを一人前の坊さんに育ててみせますわ。ワシ、そう無茶な要望を親父さんに
出しているつもりはないんじゃが・・・。」
浩二は腕を組んで考えこんだ。
184代打名無し:02/11/17 05:23 ID:PA4WVPxA
なるべく時間が取れるときに続きを書けるようにと思ってるんすが、これがなかなか
大変で、今日日曜も朝から大学、月曜も同じく・・・。うまくいったら次は水曜日の
夜うp予定・・・スローテンポでホンマにすんまへん。

エンドウ豆が影の主役でないか、そうっすね、マジで影の主役かもしれない。。(汗
輝裕はめんこいめんたいは、まあ本編で輝裕は悩みはじめる設定になっているので、
バランス上、今の話はその前の段階になりますて。ルーキー時代の資料ひっぱりだして
どっかでネタに使えたらと考えてるんすが。これも前回のリクエストでこたえることが
できなかった前田とのエピソードが入る予定です。

何だか忙しくてなかなかウヒョスレものぞけないでいるうちにエディ、シュール退団とか
まだこれでもかといろんな出来事が起きますて。。昔と違って随分と頭が麻痺してしまった
のか、あんまり動揺しなくなってしまった自分もいますて。。どんなことになろうと、
その事態を挽回するのは選手であるので、こっちはもう見守るしかないなと。
98年にイヤというほど一度勉強させられたしのぅ。。。(’。’)エーンエーン
185代打名無し:02/11/17 13:05 ID:XiNNi73H
今朝、スケさんがこのスレでマジ切れしてる夢を見たw
186代打名無し:02/11/17 13:42 ID:lkB3hy2p
栗原おもしゃい。
187代打名無し:02/11/17 20:17 ID:PWYeF0zR
ほしゅ〜
188代打名無し:02/11/18 00:11 ID:BDcQOmlE
深度569
189代打名無し:02/11/18 00:25 ID:SMqwu4ap
190代打名無し:02/11/18 00:36 ID:HkEoUtdM
まあ、ええことよ。
191代打名無し:02/11/18 16:47 ID:zoPrKvPO
ほしゅほしゅ
192代打名無し:02/11/18 23:11 ID:h8iV1s10
フゴー
193代打名無し:02/11/19 08:18 ID:iKgIsIGB
  
194代打名無し:02/11/19 16:34 ID:TGFpfiZR
195代打名無し:02/11/19 17:31 ID:OHE/AL3h
196代打名無し:02/11/19 20:41 ID:s1UexLnJ
 
197代打名無し:02/11/19 23:11 ID:OHE/AL3h
フラレチャッタヨ エーン
198代打名無し:02/11/20 00:17 ID:CSu5+hh3
ホシャシャー
199代打名無し:02/11/20 00:27 ID:0Y4fvBlP
(ヽ ̄栗 ̄)のフゴーにワラタ(w
200代打名無し:02/11/20 16:08 ID:Wdcrlq65
(丶´_ゝ`)
201代打名無し:02/11/20 20:31 ID:CSu5+hh3
(・ ε ・)
202代打名無し:02/11/20 21:08 ID:jFO+vqBk
ホシュせねば。
203代打名無し:02/11/21 00:26 ID:rLwcvTKF
(’。’) フゴーフゴー
204代打名無し:02/11/21 08:08 ID:Pure8Sj5
け、建タン?!(゚∀゚;)
205代打名無し:02/11/21 15:34 ID:jwcDB1gf
へへへっ、やっぱ時間取れないか(´・ω・`)
過去ログ倉庫登場人物設定コンテンツの方が新規うpできそうかと。
明日の朝チラッとのぞいてくらさい。

206代打名無し:02/11/21 17:31 ID:rLwcvTKF
ブラチラ
207代打名無し:02/11/21 22:36 ID:rwk79wis
(ヽ ̄栗 ̄)
208代打名無し:02/11/22 00:12 ID:5mx+/VfZ
(゚)ε(゚)「来季も正ホシュ
209代打名無し:02/11/22 04:51 ID:hJWvRFSU
ほしゅ
210代打名無し:02/11/22 08:21 ID:5mx+/VfZ
深度563
211代打名無し:02/11/22 13:21 ID:qBsPTrrc
明日うぷ予定・・・。
212代打名無し:02/11/22 21:08 ID:C9VqW4HX
ホシュだ
213代打名無し:02/11/22 21:11 ID:C9VqW4HX
ホシュ
214代打名無し:02/11/23 00:38 ID:wSCp63Wi
(゚)ε(゚)「余を正捕手と人は言ふなり
215代打名無し:02/11/23 03:27 ID:r69Xw45E
妃奈月タンハァハァ
216代打名無し:02/11/23 14:17 ID:wSCp63Wi
217代打名無し:02/11/23 16:51 ID:kImbSsvU
218代打名無し:02/11/24 00:12 ID:E2jweAGc
219代打名無し:02/11/24 06:05 ID:xFdlO8iE
220代打名無し:02/11/24 13:05 ID:tQj+9PgN
ホッシュホッシュ
221代打名無し:02/11/24 13:47 ID:JI29rPbu
なんだ?このスレさむー
222広島家の人々 三本の矢12:02/11/24 20:04 ID:w55hcdXk
「・・・博樹はダメじゃ。」
ようやく浩二がボソッと一言呟いた。知憲住職は大きくうなずいた。
「そりゃあ、長男は野村に次いで中学校を卒業してもらわにゃいけんしのぅ、親父さんの言うことを
もっともじゃ。あと残るは次男の竜士と三男の貴浩・・・」
知憲住職の指がとまった。
「貴浩・・・。あのヴァカ、少しはまともに人並みのことが出来るようになったんかいのぅ。」


貴哉は暗くなったけもの道を手探りで戻っていった。こんなことなら懐中電灯を用意してから行くべき
だったと後悔してもあとの祭りである。まだ、この頃の緋鯉村に街灯は存在しない。貴哉は月の光を
頼りに木に目印をつけながら、恐る恐るしのび足で歩いていった。
ふと、貴哉は顔をあげた。暗闇の向こうから何やら二つの光が、けたたましい奇声をあげながら左右に
激しく揺れ、こちらに勢いよく近づいてくる。
「な、なんだろう・・・。」
あわてて貴哉は近くの樹木の裏に隠れ、震えて近づいてくる二つの光の玉を凝視した。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィーッ!!!」
懐中電灯を二つ、頭につけた僧服姿の男が全速力でけもの道を駆け抜けていく。
「・・・・・・。」
目が点になったままバタンと膝をつき、貴哉はそこから一歩も動けなくなった。
「お〜い!貴哉〜〜〜っ!!」
穏やかな提灯の灯りとともに、今度は兄貴浩が自分を探す声がする。
「あ・・・。」
すぐに貴哉は貴浩の元に駆け寄ろうと声を出そうとした。が、腰がヌケて、声がガクガク震えて声に
ならない。
「貴哉〜〜!」
貴浩が駆け足で貴哉の名前を呼びながら、こちらに近づいてくる。
223広島家の人々 三本の矢13:02/11/24 22:22 ID:w55hcdXk
「貴・・・浩兄・・さ・ん・・。」
四つんばいでおろおろ歩み寄りながら何とか自分を見つけてもらおうと、必死に貴哉はかすれた声で
貴浩の名を呼んだ。
ピタッと貴浩は立ち止まった。そしてキョロキョロ辺りを見回す。
「貴哉!」
あたふたと貴浩は雑木林の中に入ろうとした。その時である。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィーッ!!!」
声にならない悲鳴が貴哉の口からあがった。貴哉を起こそうと手を伸ばす貴浩に、後ろから全速力で
例の懐中電灯坊主が覆い被さるように襲ってくる。貴浩が後ろに振り向く暇もなかった。僧侶はひょいと
大柄の貴浩の身体を肩に担ぎ上げると、懐中電灯を顔の真下から照らしてニッコリと笑顔で貴哉に宣告した。
「こやつはワシの身のまわりの世話をさせるために連れていく。お前はそこで大人しく他の広島家の人間
が迎えに来るのを待っておれ!」
当て身をくらわされたのか、貴浩は僧侶の肩の上で完全に気を失っている。知憲住職はもう一度懐中電灯を
頭につけなおすと、豪快な笑い声とともにあっという間にその場から立ち去っていった。
雑木林に元の静けさが戻った。四つんばいのまま呆然とした貴哉の頭の中に、今目の前で起きた出来事が
何度も何度も映画フィルムのようにリプレイされた。
「ぎゃああああああああああああ!!」
忘れかけた頃に、雑木林を揺るがすような貴哉の悲鳴が村中に響き渡った。



「中学五年か・・・。」
いよいよ自分の最終目標が見えてきた。博樹は壁に貼られたカレンダーに今年一年の予定を書き込んでいった。
今まで緋鯉村で中学五年間を無事終了し、卒業した人間は、陸軍士官学校に進んだ野村のみである。普通農家
の子で士官生まで出世することはまずありえない。ただし、中学を卒業すると士官学校進学で幹部候補になる
道が開いていた。野村の才能を見込んで、父の浩二は野村の進学の金を工面した。人材を育てあげてこそ緋鯉村
の生きる道と、鄙びた田舎村にかなり強引な陳情で中学校誘致に成功させたのが浩二と今年中学校の教頭に
なった大下だった。
224広島家の人々 三本の矢14:02/11/25 02:55 ID:usdOCcVq
しかし、所詮先立つものがなければわざわざ上の学校まで通わそうと思う農家が現れるわけがなかった。
浩二や大下の熱意も空しく、緋鯉村の中学校に通う生徒のほとんどは村以外の少年たちであり、緋鯉村出身の
子供たちは、皆良くて高等小学校に進めればいい方だった。結局、野村に続く者がいない。村を束ねる村長
広島家の人間として、浩二そして長男博樹は、意地でも中学を首席で卒業して高等学校進学への道筋をつけ
なければならなかった。
ぼんやりと博樹は部屋の隅に置かれた行李に目をとめた。中には貴浩の着物や生活道具が一緒くたに詰め
込まれている。
「貴浩がいなくなるのか・・・。」
まさか父が村の坊さんにするために貴浩を手放すとは思わなかった。まだ貴浩は高等小学校を卒業した
ばかりである。広島家のような名主の家ならもう少し貴浩に農家の手伝いをさせながら、先のことを考える
時間の余裕を与えられるはずである。げんに今の竜士がそんな状態だ。
── 俺の家もそろそろ金がヤバいんだ。もう俺がのんびり学校に通っている場合じゃない
菊地原の言葉が蘇った。金か・・・。ふうっと博樹は溜息をついた。そういえば最近、次から次へと
広島家の使用人が暇を出されている。今までは使用人任せで坊ちゃん気質でいられた広島家の兄弟たちも
だんだん自分のことで自分で片付けなればならなくなっている。だからといって、それと貴浩の金本寺行きを
同じ意味に受け取っていいのだろうか。
「考えすぎ・・・だよな。」
フッと笑って、博樹は教科書をカバンにつめこんだ。


「貴哉。」
庭で鶏のロペに餌をあげていた貴哉は、縁側に不意に現れた父の浩二に声をかけられた。小首をかしげて
貴哉はロペの餌が入ったザルをニワトリ小屋の上に置くと、スタスタと浩二のもとに駆け寄っていった。
何やら父は深刻そうな表情で自分を見つめる。一体何がおこるんだろうか。ビクッと不安で身体が震えたが、
表面上は父に迷惑をかけないよう、なるべく平静な表情で貴哉は浩二にすすめられるままに奥の部屋に入って
いった。
「貴哉、実はお前の中学校進学の話なんじゃが・・・」
いきなり父は本題に入っていった。
「すまん、進学はあきらめてくれ。」
225代打名無し:02/11/25 03:06 ID:usdOCcVq
結局週一ペースじゃないと、続きが書けない予感の広島家(つД`)
だったら書ける日はなるべく逝けるところまで逝ってみようと。
やっと話も出だしから本題に入ってきたような。

どこが何の元ネタでやっているのかわかる方がいらっさるのか(汗
あ、今日書いた(丶´_ゝ`)住職の懐中電灯はわかる人はわかるっしょ。
これはかぷと関係なく、八つ墓村といえばいいのか津山三十二人殺しといえば
いいのか、岡山が舞台の有名な昭和前期の事件が元ネタれす(w

しかし(丶 ̄栗 ̄)の山形弁は難しい・・・
226広島家の人々 三本の矢15:02/11/25 03:56 ID:usdOCcVq
貴哉は、ただじっと父の顔を見つめていた。
「何とかお前を中学校まで通わせてあげたかったんじゃが、家も子供たち3人まで中学校に通わす資金繰りが
なくのうてしもうてな・・・。」
キセルに浩二は火をともした。3人・・・。その言葉が貴哉の耳に強く残った。3人は無理な話だ。だが2人
までは何とかなる。一人はすでに長男の博樹が中学校に通っている。もう一人の枠を父は自分と弟の輝裕を
天秤にかけたのだ。そして父は弟の輝裕を選んだ。
「高等小学校まではちゃんと通わせるからのぅ。」
浩二の声がだんだん遠い絵空事のように聞こえてきた。貴哉は無表情で小さく口を開けて父を見つめるばかり
だった。
「貴哉?」
手持ち無沙汰で2階からノロノロと階段を降りていった竜士は、いつもと様子の違う貴哉に思わず2段飛びで
貴哉のもとに駆け下りていった。
「・・・・・・。」
貴哉は何もいわなかった。そのまま無表情で竜士の横を通り過ぎていく。
「わぁああ!」
外で興奮した輝裕の歓声が突然、家の中に響いた。前から約束していた中古の自転車を佐々岡の爺が買ってきて
くれたのだ。
「ねぇ貴哉兄ちゃん!見てよ、自転車だよ自転車!爺が街で買ってきてくれたんだよ!」
うれしそうに、輝裕が縁側で立ちどまった貴哉に駆け寄って自転車を指さす。
ボーッと貴哉は自転車を見つめた。
「ねぇ、今度一緒に自転車に乗ってどっか遊びに行こうよ!ねぇ、貴哉兄ちゃん!」
無邪気に輝裕は貴哉の腕をひっぱって何度もおねだりをした。竜士はそんな二人の様子を少し離れたところ
から見ていた。
「・・・・・うん。」
貴哉は小さくうなずいた。輝裕は両手をあげて喜んで、庭の中を飛び回った。

それでは!
227代打名無し:02/11/25 08:29 ID:Da3x7E0y
キィィィィィィィィィィィィィィィィーッ!!!
ワロタ
228代打名無し:02/11/25 09:34 ID:+OdNGMfC
(丶 ̄栗 ̄)の山形弁はコンバータ使ったり、あとなりきり板の栗原を
参考にするといいんではないかと。
229代打名無し:02/11/25 21:49 ID:x2cMwEiL
輝裕はめんこいのぅ
230代打名無し:02/11/26 00:43 ID:l182EG58
231代打名無し:02/11/26 00:53 ID:r1DOxLIg
べち家あぼーん??
232代打名無し:02/11/26 01:58 ID:AUGDgKeq
・・ウン       
  ∧_∧    ネェ、タカヤニイチャン!           .∧_∧
 |`_ゝ´|  .∧_∧     __ __            ( ̄∀ ̄ )
 (    ) (・ ε ・*)  |_|/_             (    )
 | | |>⊂    つ )) ./  //__           | | |
 (__).__) (_)__) (◎) ̄ ̄(◎) .          (__).__)


輝裕はめんこいのぅ。お目汚しスマソ
233代打名無し:02/11/26 08:36 ID:l182EG58
深度500
234代打名無し:02/11/26 11:35 ID:sw46fxH4
235代打名無し:02/11/26 17:59 ID:l182EG58
深度514
236代打名無し:02/11/26 23:08 ID:ofPE5wr0
輝裕はめんこいのぅ。で1000目指すスレ?
237代打名無し:02/11/27 08:57 ID:FqW0GUxD
輝裕はめんこいのぅ。
238代打名無し:02/11/27 12:57 ID:3saUpOrA
貴哉かわいそうじゃ・゚・(ノД`)・゚・
キレて輝裕をいぢめるのかと思ったが違った。ためこんでしまうのが貴哉、か。

それにしても、輝裕はめんこいのぅ。
239代打名無し:02/11/27 18:03 ID:o+5w1wzo
浩二もめんこいのぅ。
240代打名無し:02/11/27 22:04 ID:o+5w1wzo
564まで来てるのでそろそろこまめに。
241代打名無し:02/11/27 23:11 ID:k3Y5zZG/
ほしゅ
242代打名無し:02/11/28 00:05 ID:uAU32BVv
>>232
めんこいのぅ。
243代打名無し:02/11/28 12:32 ID:4YC20ydO
>>239
ひょっとしたら輝裕よりめんこいかもしれんな。
244代打名無し:02/11/28 23:25 ID:Xzf+Wc+2
輝裕のめんこいのぅ。
245代打名無し:02/11/29 13:19 ID:7aKHayX/
明日うぷ予定
246代打名無し:02/11/29 17:26 ID:a6Jp5lQJ
スケさんはめんこいのぅ。
247代打名無し:02/11/30 00:59 ID:ZFYq6cvk
めんこ
248代打名無し:02/11/30 01:30 ID:WbfQ/2rt
まん(ry
249代打名無し:02/11/30 10:25 ID:LqwOkpW9
>248
(丶゜_ゝ゜) キィィィィィィィィィィィィィィィィーッ!!!
250代打名無し:02/11/30 16:51 ID:3ZEB5YXC
続き期待ほしゅ。
251代打名無し:02/11/30 17:14 ID:AKLlpBNp
ffffffffffeeeeeeeeeeeegeeeeeeeeeeeeeee
252 :02/11/30 17:22 ID:PbDX7qVX
ピーコとコバが
福屋で大ゲンカ
253代打名無し:02/11/30 21:00 ID:8Q41hV6C
前回datになってからこのスレどうしたんだろうと思っていたら
立ってたんですな

一ヶ月気付かなかった俺って一体…
254代打名無し:02/12/01 01:02 ID:kXcT14gJ
あっちの閉鎖準備がまだありやして、こっちの今夜更新は無理になりますた(´Д`)
日曜には長めに何とか・・・。そろそろ澤崎登場かなと予告しておきやす。

255代打名無し:02/12/01 10:35 ID:1HaPWQp9
>スケさん
がんがれー
256代打名無し:02/12/01 22:27 ID:8jLwSXvi
実況板が無事閉鎖したようですね。スケさんお疲れ様、さようならgi-ga。
503ばかりで使えなかったけど君のことは忘れないよ。
257代打名無し:02/12/02 04:30 ID:C+dt95bI
過去ログ倉庫の入り口部分しか更新できんかった・・・。スンマヘン。
だけど少し長編のネタ入れといたんで、よかったら楽しんでくだされ。
258代打名無し:02/12/02 23:41 ID:XE6gYUIQ
ホシャシャシャシャシャー
259代打名無し:02/12/03 14:44 ID:3xYD0B5b
260代打名無し:02/12/03 18:18 ID:wXR4YW9r
261代打名無し:02/12/03 20:23 ID:TXMsFXkm
262代打名無し:02/12/03 20:25 ID:QqritktQ
263代打名無し:02/12/03 23:25 ID:wXR4YW9r
264代打名無し:02/12/04 00:46 ID:6GaB31n1
265代打名無し:02/12/04 17:47 ID:D15tmWgI
266代打名無し:02/12/04 21:04 ID:6GaB31n1
267代打名無し:02/12/05 00:24 ID:xND4Qd5C
ホシュ
268代打名無し:02/12/05 05:49 ID:UIW2DhRL
三本の矢1〜13まで過去ログに収録しますた。
269代打名無し:02/12/05 17:49 ID:/XjSVF+f
hoshu
270代打名無し:02/12/05 23:00 ID:i3i7q41M
(・ ε ・)
271代打名無し:02/12/06 00:28 ID:AwjWkfN1
(・ ε ・)
272代打名無し:02/12/06 15:54 ID:MopOy/y2
hoshu
273代打名無し:02/12/06 16:36 ID:POv5yVh2
menkoi nou!
274代打名無し:02/12/07 00:44 ID:MVTpkrY4
めんこいの ぅ
275代打名無し:02/12/07 12:56 ID:Wx+FpT/b
めんたいの ぅ
276代打名無し:02/12/07 14:58 ID:MVTpkrY4
(’)。(’)
277代打名無し:02/12/07 16:08 ID:H5QgqwSZ
>>276
(‘ ε ’)「誰だモナ!」
278代打名無し:02/12/07 21:58 ID:0m2uaWpP
/ ̄⌒⌒ヽ
| / ̄ ̄ ̄ヽ  
| |   /  \|  
| |    ´ ` |  
(6    つ /  
|   / /⌒⌒ヽ<
|    \  ̄ ノ 
|     / ̄ 
279代打名無し:02/12/07 23:54 ID:7ToUQlxv
日曜にうぷすんべ
280代打名無し:02/12/08 00:13 ID:HrBP3w65
日曜だー
281代打名無し:02/12/08 07:39 ID:ZH5ry225
sage・・・でいいんだよな?

保守
282代打名無し:02/12/08 14:49 ID:D1JIXe/a
ほしゅ
283代打名無し:02/12/08 18:00 ID:1pLHqL6I
284代打名無し:02/12/08 22:09 ID:HrBP3w65
(・ ε ・)
285広島家の人々 三本の矢16:02/12/08 23:10 ID:M9ocJkh9
校舎のまわりを彩る桜並木が一斉に満開に咲き乱れる。
「博樹兄ちゃん、早く行こうよ〜!」
教科書が入った小さな黒いカバンを背負った輝裕が、コロコロはねっかえるように何度も振り向いては
博樹に手を振る。
「うん。」
博樹は学生帽をしっかりかぶり直し、大きく深呼吸をして校門をくぐり抜けた。
「三村先生〜!おはよ〜ございます〜!」
回廊の廊下から笑顔で兄弟を見ていた三村を見つけた輝裕は、ピョコンと頭を下げると、そのまま
尋常小学校の校舎に駆け込んでいった。
「・・・・・・。」
声をかける暇もない。半分苦笑まじりで溜息をつくと、博樹は中学校の校舎の方に足を向けた。
三村と何の違和感もなく目があってしまった。
「三村先生、何か?」
怪訝そうに首をかしげる博樹に、三村は笑顔のまま「いや、別に」と軽く受け流すと
「そうそう、広島くん。キミにあげたあの三本の矢の内の一本はちゃんと今も持っているか。」
と尋ねてきた。
「はぁ・・・・・。」
まさか、ボキンと腹立ちまぎれに真っ二つに折ってしまいました、ともいえない。博樹は軽く一礼すると
きびすを返して教室に一目散に駆けていった。
─── 今日から中学5年生だ。
いつもと変わらない教室がある。いや、隣には今までそこにいて当たり前だった菊地原の姿がない。
「農家出身も俺一人っきりか・・・。」
軽くけとばすように木製の椅子を後ろに引いて、ドシンと博樹は座って、前方にある黒板を睨みつけた。
「俺がやらなきゃな・・・。」


「輝裕〜!」
尋常小学校の教室では、友人の兵動が輝裕がいつ来るか窓からのりだして待ち構えていた。
「兵動!」
輝裕はニッコリ笑って自分の机にカバンを置くと、すぐに窓のそばの兵動のもとに駆け寄っていった。
286広島家の人々 三本の矢17:02/12/08 23:44 ID:doiqCs4A
「輝裕、お前・・・。」
「ん、なに?」
「もう一人が来ていない。」
「あっ、貴哉兄ちゃんのこと?」
「うん。この前といい、どうしたんだ、お前の兄ちゃん?今度、一番上の兄さんと同じ中学校に
行くはずだったんだろ?」
「うーん。」
輝裕は困ったように首をかしげた。
「それがね、ボクと博樹兄ちゃんに先にいってくれっていって、のんびりとうちのロペに餌をやって
いたんだ。博樹兄ちゃんは何もいわないし、竜士兄ちゃんも貴哉兄ちゃんの好きなようにさせろって
いうから、二人だけで先に学校に来た。」
「だって、今日中学校の入学式じゃんか。式はもう始まるぜ。」
「うーん。」
兵動の質問に輝裕も理由がわからず、首を横に振りながら顔をうつむかせていった。

貴哉はゆっくりと自分の教科書が入った布のカバンを手にした。
「本当にお前にはスマンことをした、貴哉。」
土間で草履をはく貴哉に、後ろから沈鬱そうな表情で父の浩二が声をかけた。
「ううん、もういいよ、父さん。ボクはもうそんなに気にしていないから。父さんこそあまり気に
しないで。」
浩二がこれ以上心配しないように、笑顔で貴哉は佐々岡の爺や使用人たちに挨拶をすると颯爽と
駆け足で家を飛び出した。貴哉の姿が消えてなくなろうとする寸前に、広島家を囲む垣根から
貴哉を見送る竜士の姿がのろのろと現れた。
ここからだと広島家から自分の姿は見えない・・・かな。恐る恐る振り向いて広島家が見えない
ことを確認すると、貴哉は笑顔を消してトボトボと、ホッと胸をなでおろして学校に向かって歩いて
いった。
287広島家の人々 三本の矢18:02/12/09 00:39 ID:VKTOV4hx
「貴哉兄ちゃん、まだ来ないね・・・。」
「このままだと、中学校の入学式終わっちまうぞ。」
授業の合間にちらちらと校庭を盗み見しながら、輝裕と兵動はひそひそと会話を交わした。
「でも博樹兄ちゃんも竜士兄ちゃんも何もいわなかったし・・・。」
その博樹のいる教室は、それどころの場合ではなかった。例の笑顔で三村がゆったりと教室に入っていく。
その後を一人の学生がついてきた。博樹は目を疑った。
「5年にもなって転入生というのもめずらしいですが、関東は去年は大震災があったりといろいろ
ありまして、我が校も関東から疎開の形で一人、学生を迎えいれることになりました。」
三村の隣の、見るからに帝都の山の手のボンボンといった端整な顔立ちの青年は、礼儀正しく
頭を下げると、自分の名前を澤崎と名乗った。
「えーと、席は・・・。あっ、広島くんの隣があいているからそこに座ってくれ。」
澤崎はハイと返事をすると、飄々と歩いて博樹の隣の机に座った。自分と違う威圧感が博樹を襲った。
カァーッと血が逆流した。着ている格好からして澤崎と自分では違う。恥じているわけじゃないが、
自分は農家出身の田舎ものである。その現実を目の前でまじまじ見せつけられている。菊地原の
代わりに隣に座る奴がまさかこんな奴だったとは・・・。
敵意丸出しの博樹の態度に、澤崎は鷹揚に首をかしげてニッコリ笑った。クスッと笑われている
ような気がした。博樹はカッとなってそっぽを向いて、投げやりに机の中から教科書を取り出した。
二人の様子を黒板に板書しながら、教師の三村はニンマリと笑ってうなずいていた。


「貴様ぁー! あれほど仏の供え物のつまみ食いは法にも劣る行為じゃというたのを忘れたかぁ!
ったくお前はどーしようもない下司の煩悩の塊そのものじゃ!」
一切の遠慮もなく、知憲住職は貴浩の尻めがけて渾身の蹴りを加えた。
「じゅ、住職〜!ゆ、ゆ、ゆる、許してくださ〜い〜〜!!」
涙目で必死に両手を合わせて、貴浩は住職の慈悲を請おうとペコペコ謝りながら本堂の中を逃げ回った。
288広島家の人々 三本の矢19:02/12/09 01:21 ID:VKTOV4hx
一瞬の休み時間すら許されないほど厳しい修行という名の雑用のコキ使われ方に、貴浩はひぃひぃ
涙を流しながら、必死に後をくらいついていった。だが、まず一通りの食事を作れるように
ならなければ、必要最低限の食べ物も食べさせてもらえない。一つ一つのことが無理矢理身体に
覚えこまされていく。なんで自分はここにいるんだろう。そんな疑問も頭の中に何度も反芻する
のだが、その度住職の荒技によってぶちのめされていた。
「どうじゃ!これで反省したか、貴浩!」
やっと住職の気もおさまったのだろう。ピタッと知憲住職の暴走がとまった。おろおろと貴浩は
痣だらけの身体をさすりながら、本堂に正座した。
「あ、あの・・・。住職・・・。」
今日の住職はやたら機嫌が良さそうだ。今まで思っていた疑問を聞くには今しかチャンスがない。
「なんで俺、ここにいるんでしょうか。」
「なんだ、そんなこともお前、今までわからなかったのか。」
呆れたような声を出して、フンと知憲住職は腕組みをした。
「お前は貴哉がどうなったか知っているか?」
「貴哉・・・。貴哉って、それは住職が俺が迎えに行った時、無理やり俺をさらっていったからっ!」
「バッーカモーン!」
貴浩の頬に張り手がくらわされた。頬をおさえながら、貴浩は逃げ腰の体勢になった。
「その後の配慮も考えずにお前をさらっていくようなワシか!少しは人を見る目を鍛えよ!」
「じゃ、じゃあ、な、なんで、た、貴哉の名前が・・・。」
学校の始業を告げる鐘の音が金本寺の境内にも聞こえてきた。
「ふん、そうそうおめでたい奴じゃのう、お前は。理由がわからなかったらワシが許す。
一度この山を降りて貴哉に会ってこい。もう一度ここに戻るか広島家に帰るか、それはお前の判断に
任す。」
しばらく貴浩は言葉を出せなかった。
「だがお前はここに戻ってくる。お前はそういう奴じゃ。」
知憲住職はニヤッと笑った。貴浩の身体が震えた。
「わかりました。じゃあ俺、貴哉に会ってきます・・・。」
289広島家の人々 三本の矢20:02/12/09 01:55 ID:VKTOV4hx
傷だらけの身体もものともせず、貴浩は本堂から飛び降りると、金本寺の階段をせわしく
駆け下りていった。

貴哉はあっけなく見つかった。学校の鐘の音が鳴った。ならば貴哉は中学校にいるはず、
と思って辿っていた道の途中で、トボトボと肩を落として歩いている貴哉の姿があったからだ。
大きな声で貴哉の名を呼ぶ貴浩の声に、貴哉はビクンと反応して、一瞬おどおどした泣きそうな
顔で振り向いたが、すぐ満面の笑顔で「貴浩兄さん!」と呼んで貴浩の元に駆け寄っていった。
「お前、中学校ならもうとっくに入学式をやってるんじゃないか。いいのか、こんなところで
のんびりしていて。」
ギクッと貴哉は身体を震わせたが、無言であわてて何度も首を横に振った。知憲住職は貴哉に
会ってこいといった。確かに貴哉の様子はおかしい。だいたいこんな笑みを浮かべているときは
隠し事をしている時だ。
「大丈夫だよ、ちゃんと学校には行くから。貴浩兄さん。」
「学校に行くから・・・。」
その言葉がひっかかった。
「すまん貴哉、そのカバンの中を見せてくれ!」
無理矢理貴浩は、貴哉のカバンをひったくって中を開いた。
「これ、俺が使っていた教科書じゃないか。なんで?お前は中学進学だろ。これは高等小学校の
教科書・・・」
貴浩の言葉がとまった。
「なんでお前が中学校に行けないんだ。俺や竜士兄ちゃんと違って、お前なら中学に行ける頭を
持っているじゃないか。それが高等小学校だなんて、第一親父がそんなことを許すわけが・・・」
貴哉は何もいわずうつむいていた。
「親父・・・からか。」
やっと貴浩の頭の中でもつじつまがあってきた。
290広島家の人々 三本の矢21:02/12/09 03:24 ID:VKTOV4hx
「いいんだ貴浩兄さん、ボクまで中学校に行かなくても、博樹兄さんと輝裕の二人が上に進んで
くれればそれで・・・。だいたい3人も上の学校に行くなんて贅沢な話だもん。家は農家なのに・・。」
「それは違うだろ。農家でもこれからは学問を身につける時代だと何度もいっていたのは親父の方だ。
よっぽどのことじゃないと、親父がこんなことをするはずがない。」
「・・・・・・。」
「・・・俺が金本寺に連れていかれた理由もわかったよ。」
貴浩はペタンと地面に座りこんだ。
「俺まで広島家でのんびりしている余裕がないんだ・・・。」
貴哉は小さくうなずいた。


「とうとう来なかったなぁ。」
「うん・・・。」
授業が終わって、窓から何度もキョロキョロ校門を覗いていた輝裕も、あきらめて窓のそばから離れた。
担任の高橋が自分を呼んでいる。輝裕はハイと返事して廊下に向かった。それと入れ違いで布のカバンを
肩にかけた貴哉が校門をくぐり抜けていく。もう一度窓から校門を見ていた兵動はアッと小さく声を
あげて、あわてて玄関に向かった。
貴哉は兵動の姿に気づかなかったらしい。下駄箱に草履を入れるとそのまま職員室に向かって歩いていった。
「・・・・・・。」
貴哉から醸し出す雰囲気に言葉をかけることも出来ず、兵動はただ貴哉の後ろ姿を見送っていたが、
ハッと我にかえり、貴哉に気づかれないように後をついていった。最初は職員室に入っていったが、
それほど時間も経たずにその場所を去り、今度は階段をあがっていく。
「ここを上がった部屋っていったら、大下のところじゃないか・・・。」
思わず兵動は顔をしかめた。
貴哉が部屋をノックをして中に入っていく。兵動は大下の部屋の戸口に耳をつけた。
「・・・・・・。」
声が洩れそうになるのを必死で兵動はおさえた。中で交わされる言葉に、兵動はただ呆然と聞き入る
ばかりだった。
291代打名無し:02/12/09 03:32 ID:VKTOV4hx
これで少しはストーリーが先に進んだだろうか。この話の準主役ともいうべき竜士が
まだほとんど動いてないから、まだ承の部分に入ったばかりのところかもしれんすが。

前回書いた内容で、貴哉が可哀想とベチあぼーん?のレスがあったんすが、この二人に
関しちゃ、本編で再会してああいうラストになっているので、ここで書いてるのは
そうなる前の前章部分といった方がいいんすかね。何の説明もなしであの時書いて
しまったので、これはフォロー編です。最初は完結編桃源郷でベチは出る予定が
なかったんすが、今年後半活躍しますたし、貴哉的ラストはこういう感じが一番
いいだろと思いますて、ベチは桃源郷再登場ケテーイっす。

さて今回もめんこいのぅレスが返ってくるんだろうな、(・ ε ・)は。
292代打名無し:02/12/09 08:16 ID:1Ga+pt6F
輝裕はめんこいのぅ。
293代打名無し:02/12/09 16:23 ID:z5HMImxe
>292
さっそくめんこいキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
294代打名無し:02/12/09 17:09 ID:U9WPMSM3
輝裕はめんるいのぅ
295代打名無し:02/12/09 19:47 ID:1Dy6N2J6
何気にゥが重要人物なヨカーン。がんがれゥ。
296代打名無し:02/12/09 21:38 ID:xChzXRQ3
‖栗 ̄)「おらもさわざぎさんみでえに都会風になっでえんだげんど・・・」スケサンヤ・・・
297代打名無し:02/12/09 23:59 ID:NDgLH6Pn
貴浩はめんたいこ
298広島家の人々 三本の矢22:02/12/10 01:20 ID:QyxiTums
博樹が貴哉の高等小学校進学を知らされたのは、中学校から家に帰ったときだった。
「な、なんだよ。親父、それは・・・。」
中学での出来事もあった。いつもに比べて博樹は、短気に怒りを爆発させて父の浩二にくってかかった。
「人に期待させといて、いきなり橋の架けを外すような行為はやめろよ。貴哉がかわいそうじゃないか!」
だが、浩二は動じず、
「だから、その分お前が頑張らなきゃいかん。それがお前に課せられた役割じゃ。」
と軽く博樹の攻撃をいなしただけだった。
その淡々とした抑揚のない言い方にムカっときた博樹は、思わず父に一発ぶちまかそうと拳をあげたが、
その腕がピタッととまった。
「・・・親父、一つ確認したいことがあるんだ。」
低く恫喝した博樹の声が部屋に響き渡る。
「家、もう金がなくなっているんだろう?」
腕組みをしてじっと博樹を見据えていた浩二は、重々しくコクリとうなずいた。
「・・・わかった。」
クルッときびすを返して、博樹は振り向きもせずそのまま2階にあがっていった。
── 俺の家もそろそろ金がヤバいんだ。もう俺がのんびり学校に通っている場合じゃない
菊地原の言葉がまたよみがえる。広島家ももはや例外ではなかった。
階段を上がる音を耳にして、竜士は上がってくる人物を出迎えようとふすまを開けた。
「博樹兄ちゃん!」
だが博樹は一切竜士と目をあわせず、そのまま隣の部屋に入るとバタンと荒々しく音をたててふすまを
閉めた。
「・・・・・・。」
何もいうタイミングがつかめなかった。竜士は閉めきられたふすまを伏せ気味にしばらく見つめていたが、
仕方なく元の部屋に戻ろうと、その部屋のふすまに手をかけた。そこが博樹の部屋だったのだが・・・。
299広島家の人々 三本の矢23:02/12/10 02:33 ID:QyxiTums
「あれ?」
部屋の隅に真っ二つに折れた一本の矢がある。
「俺、真っ二つに折ったっけ・・・。」
前に輝裕からもらった矢はそのまま部屋の押し入れにしまったはずである。じゃあこれは・・・。
「博樹兄ちゃんのか?」
縁起でもない。今年は高等学校を受験して進学するつもりだろ。竜士は丁寧に和紙と糊を矢に巻きつけて
博樹の矢を元の姿に戻してやった。
「これは三本の矢のつもりなのかな・・・。」
竜士も尋常小学校の授業で三本の矢の故事は教わっている。あれは兄弟の結束とみんなで力を合わせれば
どんな困難でも切り抜けていけることを諭したものだ。
「・・・・・・。」
また竜士の胸がチクリと痛んだ。
「・・・俺、何もやっていない。何もできていない・・・。」
修理した矢を机の上に置くと、竜士は全速力で階段を駆けおりて、土間にある草履に手をかけた。
その時、仏頂面で腕を組み、なにやら考え事をしている父の浩二と目があう。父は何もいわなかった。
ぷいっと視線をそらして、竜士は手早く草履をはくとそのまま外に飛び出していった。佐々岡の爺は、
まだ畑仕事におわれて家に戻ってきていないのだろう。誰も竜士に声をかける者がいなかった。
叫びたい衝動に襲われて、ただ外に向かって竜士は駆け抜けていった。
夕焼けの中、竜士が走る道から田んぼ二つ離れた小道を、貴哉と輝裕が手をつないで広島家に帰っていく。
輝裕は心配そうな表情で貴哉を見上げて何か話している。貴哉は笑顔でやさしく首を横に振って返事を
かえしている。
「今度の日曜日に、一緒に自転車でどっかに遊びに行こう。」
パッと笑顔に輝いて輝裕は「うん!」とうなずく。竜士は首を振ってそれらを視界から外そうと、ただ
ひたすら走り抜けていった。
「竜士兄ちゃん・・・?」
兄の姿に気がついて、年下二人の兄弟は後ろに振り向く。その時に竜士の姿は二人の視界から消えて
なくなっていた。
300代打名無し:02/12/10 03:37 ID:QyxiTums
フォッフォッフォッフォッ 昨日の大雪で突然時間が取れてたので連日うぷをやってみますた。
これで竜士の出番のお膳立てができた。これから本題に入ってきやす。

>>295
ゥはどうかな〜。でもゥは結構おいしい役かもの。それだけは確かっす。

>>296
あははははは。すまんのぅ、そろそろ再登場するけど、また山形弁丸出しだべさ(w
でも輝裕とは違った、いい意味で癒しどころの役柄だよ。
301代打名無し:02/12/10 19:29 ID:FZ6GZHY/
輝裕はめんこいのぅ。
302平野謙 背番号3:02/12/10 22:17 ID:wG2wHbT0
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Piano/4969/nomura.gif

ロードンって人気キャラですか?銀行員
303代打名無し:02/12/10 22:51 ID:Kay3FAfn
ageおったな、こやつ…
304代打名無し:02/12/11 03:43 ID:qvHh5Ou+
輝裕の担任の高橋って(’。’)タン?・・
305代打名無し:02/12/11 17:37 ID:smuqStJL
(丶´)_ゝ(`)
306代打名無し:02/12/12 00:18 ID:0bUjpKsC
>>304
喜界島の桃太郎侍っす(・∀・)
307代打名無し:02/12/12 00:19 ID:WljuOea8
>>305
ちょっと見ない内に随分・・・
308代打名無し:02/12/12 22:44 ID:b5+uk1J6
309代打名無し:02/12/13 08:27 ID:87wcepff
310代打名無し:02/12/13 18:06 ID:BiMws1/j
311代打名無し:02/12/14 00:21 ID:FF9HNVxl
寝る前のホシュ
312広島家の人々 三本の矢24:02/12/14 00:51 ID:hdrNbrwT
二ヶ月が過ぎた。
田植えの季節もとっくに過ぎて、緋鯉村の田んぼの稲は、空の青と相舞って、みずみずしい風を
自転車をこぐ輝裕に送りこんでいた。佐々岡の爺が買ってくれた自転車は、輝裕の身長で乗るには
まだ大きい。輝裕はたまに地面に降りて自転車を引いたりしながら、何とか一人で乗りこなせる
ようになろうと、汗をかきかき奮闘していた。
広島家の事情もいよいよ圧迫感が生まれてきていた。また使用人に暇を出され、だいたいの雑用を
佐々岡の爺一人が片づけるような状態になっている。そんな事態に、すぐ上の兄の貴哉が手伝いを
申し出て、高等小学校から帰るとすぐ爺と一緒に田んぼや畑仕事をするようになっていた。
輝裕も一緒に手伝うと爺にいったのだが、「輝裕坊ちゃんはまだ気にしないで、お勉強を頑張り
なさい。」といわれて、相手にしてもらえなかった。
一番上の兄の博樹は、高等学校受験も目の前に迫ってきたからであろう。以前に比べていよいよ
勉強に専念するようになって、あまり兄弟たちの相手をすることはなくなっていた。いや、受験より
あの関東からやってきた澤崎という転校生の存在が、博樹を頑なな態度を取らせる原因になっている
のかもしれない。農家出身、加えて長男で中学そして高等学校進学を目指すという世間から見たら
キチガイ沙汰といわれることをやり遂げようとしている兄にとって、学校で一番の成績を取ることが
外野の人間を押し黙らせる唯一の手段だった。だが、中学4年の時点でやっとその目標に辿り着いた
その次の年に、新しくやってきた転校生にあっけなくその座を奪われてしまったのだから。
「でも・・・。」
次の兄の竜士が家にあまり帰ってこなくなってきた。何やらよくない噂も、まだ子供の自分のところ
にまで流れてくる。長兄の博樹が、こんなとき兄として竜士の相談相手になってくれたら、少しは
竜士の暴走もとまってくれるかもしれない。だが博樹は自分自身のことで精一杯で、竜士のことまで
気にかける余裕もないようだった。
延々と続いたあぜ道を通り抜けて、輝裕の視界の先にこんもりとした鎮守の森が見えてきた。そして
手前の真っ赤な鳥居で、小さなブリキのバケツを持った兵動が、キョロキョロといつ輝裕が来るか
何度も辺りを見まわして待ちかまえている。
「兵動!」
313広島家の人々 三本の矢25:02/12/14 02:39 ID:hdrNbrwT
輝裕は自転車をとめて、笑顔で手を振った。
兵動は自転車と輝裕の身長を比べると、プッと声を殺して笑いだした。プップクプーと輝裕の頬が
ふくらんだ。
「お前、これじゃまともに乗りこなせないだろ?」
兵動はブリキのバケツをハンドルに引っ掛けると、輝裕に「後ろに乗れ」とうながしてサドルを
跨いだ。
「どこに行くの?」
「ん、それはついてからのお楽しみ。」
後ろから必死にシャツにしがみついて声をかける輝裕に、兵動は軽快にペダルをこぎながら、
答えをちゃかした。
「輝裕、お前メダカ取ったことがあるかぁ?」
「メダカ?」
「うん。それとか沢ガニやザリガニとかタニシとかぁ。」
「ちっちゃいカニなら取ったことあるよ。貴浩兄ちゃんが捕まえてくれたんだ。」
「そっかあ。」
自転車のスピードがあがると同時に、輝裕の両手が兵動の腹の前にまわされた。一瞬視界に入った
輝裕の着ている服の裾に兵動はハッと息をのんだが、何事もなかったようにますますスピードを
上げて、目的地の村のはずれの小川まで一足飛びにこいでいった。

輝裕は歓声をあげて、一目散に小川に向かって駆け出していった。
「すごいっ!こんなにいっぱいメダカがいるの、はじめてみた!」
兵動は道祖神の祠の裏に隠しておいた網を取り出して、ブリキのバケツを片手に小川に近づいた。
「すげぇいっぱいいるだろ。絶対内緒だぞ、輝裕!こんなにいっぱいいる場所なんか他にぜってぇ
ないんだからな!」
「うん!」
輝裕はニコニコ歌を唄いながら、興味しんしんに小川をのぞきこんだ。
314代打名無し:02/12/14 02:49 ID:hdrNbrwT
本当はキリのいいところまで書くべきなんすが、今日も補講で午前中から
学校に行かなければならず、睡眠時間をとるため一旦ここで中断しやす(´Д`;)

ひじょーにのどかなシーンが続きやすが、このシーンは本編のあるシーンと
リンクしていきやす。既にらしき場面はチラッと書きやしたが、気づいた方
いますかのぅ(・∀・)
体力に余力があったら、連日うぷできるようがんがってみます。
そろそろ横松を初登場させたい。ゲーマーになっちまったか、親分は。。(つД`)
315代打名無し:02/12/14 11:53 ID:2C3Unt5p
(・ ε ・)ぷっぷくぷー
316代打名無し:02/12/14 14:02 ID:e9XxM0fy
なんだこのスレ・・・
317代打名無し:02/12/15 00:35 ID:bu+10S7v
450で圧縮に変更らすぃ
318代打名無し:02/12/15 00:55 ID:0yYr168f
そりゃ大変だ
319代打名無し:02/12/15 10:48 ID:Gg4hfcYc
親分登場たのしみ。
320代打名無し:02/12/15 14:56 ID:0yYr168f
321代打名無し:02/12/15 20:59 ID:0yYr168f
322代打名無し:02/12/15 22:40 ID:MJZpBhwt



323代打名無し:02/12/16 00:04 ID:oc046h1b
324代打名無し:02/12/16 04:36 ID:SpvBbtAa
age
325代打名無し:02/12/16 08:24 ID:RV3xCGl0
hosyu
326代打名無し:02/12/16 18:17 ID:hdmv69uf
ほしゅ
327代打名無し:02/12/16 23:31 ID:oc046h1b
試験前保守
328代打名無し:02/12/17 12:16 ID:bQ3bpOSl
329代打名無し:02/12/17 13:35 ID:Z2xYjvxp
あげちゃうもんね〜
330代打名無し:02/12/18 01:01 ID:0u2F+fp9
(・ ε ・)プップクプー
331代打名無し:02/12/18 04:47 ID:+KHCs6Qr
過去ログ倉庫を更新しました。登場人物紹介3名分追加してありやす。
332代打名無し:02/12/18 07:10 ID:KBCQiX0X
彰啓はめんこいのぅ
333代打名無し:02/12/18 16:51 ID:8wJoBUIT
小林サッカー
334代打名無し:02/12/19 00:55 ID:7Ld7dHyc
335代打名無し:02/12/19 13:53 ID:wXEVuYj6
ホッシャー
336代打名無し:02/12/19 16:35 ID:P0GldFwF
po
337代打名無し:02/12/19 19:44 ID:0TfL8WlY
age
338代打名無し:02/12/20 01:52 ID:wLc34nDl
捕手
339代打名無し:02/12/20 15:29 ID:fpsO4TuL
340代打名無し:02/12/20 22:56 ID:wpHPB9jM
ホッシャホッシャ
341代打名無し:02/12/21 00:40 ID:Z/E/m0NX
ホシャシャシャシャー
342代打名無し:02/12/21 14:12 ID:7cr1NWWq
ほしゅほしゅ
343代打名無し:02/12/21 15:16 ID:wV6Y3zcd
ほっしー
344代打名無し:02/12/22 05:00 ID:OlexsEVU
ほしゅ
345代打名無し:02/12/22 14:23 ID:bZLz6zym
捕手
只今底から2番目
346代打名無し:02/12/22 23:47 ID:xZLClUFP
ホッシャホッシャ
347代打名無し:02/12/23 00:16 ID:tcz3bX45
348代打名無し:02/12/23 00:30 ID:NvSMmWAL
ほっしーぱんち
349代打名無し:02/12/23 00:50 ID:b1Gmybtq
月曜日の夜何とか・・・
350代打名無し:02/12/23 11:33 ID:lc6mXHdk
(・ ε ・)
351代打名無し:02/12/23 17:14 ID:8Ifu9Bcj
(・ ε ・)
352代打名無し:02/12/23 17:15 ID:X23Y+Qty
キモイ
353代打名無し:02/12/23 22:30 ID:LpUeA87h
354代打名無し:02/12/24 02:31 ID:l6f9elCC
355代打名無し:02/12/24 03:25 ID:IDhE8kRE
すんまへん。今夜は無理だった。
しかし凄い一字言葉だのぅ・・・
356代打名無し:02/12/24 16:09 ID:G5DHA2zD
357代打名無し:02/12/24 20:05 ID:l6f9elCC
358代打名無し:02/12/24 21:47 ID:yPu6iRSe
また「も」の字が入っているよ・・・アヒャ
359代打名無し:02/12/25 00:59 ID:mqSLQCfv
360代打名無し:02/12/25 02:40 ID:Me/6HJbc
過去ログ倉庫入り口部分のみ更新。
これから続きを書きます。
361代打名無し:02/12/25 14:49 ID:wbu6ZlQy
溺れる魚
362代打名無し:02/12/25 16:12 ID:rrf25ikF
ageとく
363代打名無し:02/12/25 21:48 ID:4kcfJKox
hoshu
364代打名無し:02/12/26 01:43 ID:85o94+BP
365代打名無し:02/12/26 01:50 ID:36jUTYaD
366代打名無し:02/12/26 15:05 ID:ODAlmZY/
367代打名無し:02/12/26 17:04 ID:wQlW7k4q
368代打名無し:02/12/26 20:29 ID:IwZqLZV1
369代打名無し:02/12/27 08:51 ID:foInUwNb
370代打名無し:02/12/27 11:07 ID:/6r6vosH
371代打名無し:02/12/27 11:08 ID:mwZxQKBf
広島球場壊して ドーム作らないの?
372代打名無し:02/12/28 02:06 ID:oMOj/zQ0
373代打名無し:02/12/28 15:58 ID:q+x5ibA4
374代打名無し:02/12/28 17:18 ID:Al9IZIFC
375代打名無し:02/12/28 22:53 ID:2stlLh6D
376代打名無し:02/12/29 11:07 ID:NJDZN2AQ
377代打名無し:02/12/29 21:57 ID:I435c7Ni
hoshu
378代打名無し:02/12/30 01:06 ID:tlSscw0/
フォ
379広島家の人々 三本の矢26:02/12/30 02:06 ID:gGGRyDbv
メダカはあっちに群れて集まったと思えば、こっちにひとかたまりに集合したりと、何かあるたびに
右往左往せわしなく動き回っている。
「・・・・・・みんなでお遊戯しているよ〜♪」
歌を唄う輝裕の横で、兵動はタイミングをはかってメダカをすくおうと、両膝をついて網をかかげた。
おどかさないように、輝裕は目だけでメダカの動きを追いかけた。と、その時サッと網をおろした
兵動の動きで、あっという間に一つのメダカの群れが小川の中から消えた。輝裕は両手を叩いて歓声を
あげ、あわててバケツに水を汲んで兵動の前に差し出した。
網の中のメダカは、すぐバケツに入れられた。そしてその中でまた規則正しい動きをする。
「あっ・・・。」
一匹だけ網から逃れることができたメダカがいたらしい。そのメダカはひとり寂しく、とまどいながら
仲間を探して、あっちの群れこっちの群れとさまよっている。二人はしばらくの間黙って、そのメダカ
の動きを見ていた。
「ねぇ兵動、あのメダカもこっちに一緒にしてやろうよ。」
新しい群れになじめず、未だそのメダカは一匹だけ変わった動きをして孤立していく。無言で兵動は
もう一度網を手にとって、そのメダカ目指して網を振りおろした。
「ああ!それじゃダメだよっ!あっ、また外れた!うわぁっ、メダカに当たった!」
何度かの格闘の末、やっとのことで同じ群れのいるバケツの中に入れられたとき、メダカはすっかり
弱って瀕死の状態だった。それでも渾身の力で仲間と呼吸をあわせようと身体を動かそうとする。
いきなり兵動はバケツを手にとって、中身をすべて小川の中にぶちまけた。
「兵動!」
「いいよ。みんな元の川に戻してやろう。」
小川の中で、メダカたちは何事もなかったようにまた群れをなして泳ぎまわっている。その中で例の
メダカだけが一緒に行動を共にしようとしながら力尽き、白い腹を浮かせて下流に流されていった。
「輝裕。メダカじゃなくて、代わりにザリガニとタニシを取ってやるからさ。」
「う、うん・・・。」
突然、兵動の様子が変わった。理由をきくこともできず、輝裕は黙ってうなずくしかなかった。
380代打名無し:02/12/30 02:24 ID:gGGRyDbv
うぷが遅れてほんまにスンマヘン。まずは今夜はここまでm(_ _;)m
今夜から連日うぷができると思いやすで、のぞきにきてくんさい。


それとゥの背番号58変更、今日知りやした・゚・(ノД`)・゚・
何故、今オフに? コスモスでやっと一人前になりつつあるゥを見て
本人の非常に前向きな態度を見て、これでやっと来年背番号4の重圧が
軽くなるかもしれないと期待していた矢先にこれかい・・・。
それにせめて40番代の背番号ならまだしも58とはのぅ。
秋期キャンプの出来がそんなに悪かったんだろか。なんと残酷な。。。
ェの背番号変更より悲惨に見えるのは気のせいだろうか・゚・(ノД`)・゚・
381代打名無し:02/12/30 15:49 ID:cCVcczTj
いや、だからそれは来季ゥが58本のホームラn(略
382代打名無し:02/12/30 22:15 ID:gOwj30pv
age
383代打名無し:02/12/31 12:05 ID:h2qrtd0J
大晦日捕手
384代打名無し:02/12/31 12:48 ID:7UMy9Qe3
うp乙です。
歌う(・ ε ・)萌え。
お兄さんぽいゥにも萌え。

背番号ですべてが決まるわけじゃない。
これからの頑張り次第で取り返すことだってできる。
そう思って応援していこうではないか。
385代打名無し:03/01/01 10:24 ID:v8XZFTva
386代打名無し:03/01/01 18:01 ID:lSLquKdF
387代打名無し:03/01/02 01:57 ID:5ET6vz//
388代打名無し:03/01/02 10:20 ID:A71kx62J
389代打名無し:03/01/02 12:06 ID:zwtEz3tO
390代打名無し:03/01/02 12:35 ID:4FrEiRxG
391代打名無し:03/01/02 14:26 ID:/L2A7JbC
392代打名無し:03/01/03 00:19 ID:2gtRa2aI
393代打名無し:03/01/03 12:51 ID:VZDH9ZBa
394代打名無し:03/01/03 17:06 ID:tAcAe8V4
395代打名無し:03/01/04 10:06 ID:SW1kgU8F
396代打名無し:03/01/04 15:33 ID:MezOMBOa
397代打名無し:03/01/04 22:47 ID:0iL2C+o0
398代打名無し:03/01/05 01:03 ID:tQM4FQ10
399代打名無し:03/01/05 02:36 ID:3C5WV5rF
予定は未定をまたやってしもた(鬱
5日中にはうぷできると思いやすがm(_ _;)m
400代打名無し:03/01/05 12:37 ID:3kNQLK9J
4000
401代打名無し:03/01/05 18:05 ID:RORwevwM
おだえあdjkふぁjfkdさjfkdsjfklsだjfksldfjklさdjflksjfkldsjflkdsjfklじゃsfklさfjかjsdkfljdさklfjkぁsjfkldさfjksldfjksdljfklsdjfklsdj
jfklsdjfklsdjfklsjdfkjsklfjkldsfsdflksdfkljskldfksdljfklsdjfklsdjfksdfkdsklfじsfじえjふぃれいうえいおtjsklだfじsづいfsd
fdsklfjすちういれjrksだjふぃsjdfklsjぢfjsdkfjsぢfjsdfj;しおふぇs
402代打名無し:03/01/06 07:16 ID:qQ8Bt+uL
このスレは楽しみにしているんだけど、正直、もうきつくないですか?
みんなが(必死に)保守して守っているわけだけども、
dat落ちの激しくなった現状で、これまでどおりの更新頻度(週1?)じゃ
ちょっとなぁ……。たわごとですまんが素直な感想を。
403代打名無し:03/01/06 09:14 ID:r5L73mQj
>>402
ここでなくても個人HPでまったりやっていったほうがいいと思われ・・・
404代打名無し:03/01/06 10:38 ID:/Hwdq5eP
書いてはいるんです。が、もう一つのここに関する作業、実況板兼過去ログ倉庫の
引継ぎのこともやっておりまして・・・。
(他にも年末年始書けなかった事情は過去ログ倉庫に書きます)
まだ完全に形になるまで表沙汰にしてませんが、去年はここを書くだけで良かった
今年はその他もろもろと加わっている事情でもう少し待ってもらえませんか。
あともう少しでそれ以外のことも落ち着いてきますのでm(_ _)m
405代打名無し:03/01/06 18:09 ID:JqG2Ycnv
hoshu
406代打名無し:03/01/06 21:51 ID:e7PZ4EQt
不眠城やネタスレンジャーはスローペースだけど、名無しさん同士でネタ出し合ったりもしてるからなあ・・
一緒にするのもなんかどうかと思われ。

とりあえずがんがってください。
407代打名無し:03/01/06 22:49 ID:1C3A0yOf
気長に待っとるよ〜
408広島家の人々 三本の矢27:03/01/07 00:15 ID:G3SrU+NB
兵動は小川から田んぼにゆるやかに流れる水路へ輝裕を連れていくと、泥と石垣の間にへばりついている
タニシをバケツいっぱいにとってくれた。
「家に帰ったら、佐々岡の爺に料理してもらいな。」
「これ、食べられるの?」
「ああ。」
目をまん丸くして、輝裕はバケツの中身を見た。
その後たいした会話をかわすこともなく、兵動は自転車を取り寄せると輝裕を後ろに乗せて元の道を
走っていった。ハンドルに引っ掛けたバケツがカタカタと音を立てて揺れる。ちらっとバケツを覗き
みることはあっても、兵動はただひたすら前を向いて無言で自転車をこいでいた。
手持ち無沙汰で、輝裕は後ろの席からまわりの風景をグルリと見回した。
「あっ!」
いきなり大きな声をあげたと同時に、輝裕は自転車から無理矢理飛び降りて、あらぬ方向へ走りだして
いってしまった。
「お、おい、輝裕!」
あわてて自転車をとめて、兵動も輝裕の後を追いかけていった。
どこからか兵動の耳にもの悲しいクラリネットの音色が聞こえてくる。輝裕はクラリネットを吹く
サーカスの一団のもとに、わき目をふらず駆け寄っていった。
「輝裕!」
輝裕はサーカスの一団の色とりどりの風船を持った青年に、人なつっこく近づいて両手を差し出す。
「はい。」
青年はその中の赤い風船を輝裕に渡した。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
輝裕は無邪気にニッコリ笑った。
409広島家の人々 三本の矢28:03/01/07 01:09 ID:G3SrU+NB
「ぁああ!またお前一人調子こいて!」
兵動は頬をふくらませて、自分も青年のもとに駆け寄ると憮然とした表情で両手を青年の前に突き出した。
青年はひどく蒼ざめた表情でマジマジ兵動を見つめると、震える手で兵動に風船を渡した。兵動は青年の
様子に気づかなかった。輝裕と同じ赤い色の風船を受け取るとニコッと笑った。
隣の輝裕は空に揺れる赤い風船を不思議そうに見上げ、たわむれている。ところどころほつれた輝裕の服が
いやがおうもなく兵動の視界に入った。カッとなって兵動は口をとがらせて、こう口走っていた。
「なぁ輝裕、お前はぜーったい中学校に行くよな!」
輝裕はびっくりした表情で隣の兵動に振りかえった。兵動はこっちを見ず、少し見上げてそっぽを向いている。
「うん!絶対に行くよ!」
輝裕はニッコリ笑って返事をした。
「本当だな!絶対に本当だな!」
兵動はチラッと輝裕の服装を見ながら、何度も確認した。
「うん!絶対に!」
輝裕は元気よく答える。
震えて二人の様子を見ていた青年が、おろおろと後ろに下がっていった。両手で顔を覆いながら、声にならない
悲鳴をあげ、地面にうずくまる。
「お兄ちゃん?」
ただならぬ青年の様子に、輝裕は顔を雲らせ視線を向けた。だが、その時青年の姿は輝裕の視界から消えていた。
派手なメイクをしたピエロがおどけて、輝裕たちのまわりをグルリとまわって団員らと共に芸を見せてくれた。
そして一枚の公演を知らせるチラシ。ピエロの右手には色とりどりの風船が握られていた。
「このピエロの名前、エディっていうんだ・・・。」
小さな声で呟いた兵動に、ピエロのエディは大仰に頭を下げると、クラリネットの音と共に遠くかなたの地へ
去っていった。二人の手にエディのマークがついた赤い風船が残された。
410代打名無し:03/01/07 01:37 ID:G3SrU+NB
続きは明日に。
411代打名無し:03/01/07 19:01 ID:y1iNHVhy
めんこいのぅ
412代打名無し:03/01/07 22:19 ID:Uy3xbC85
エディはめんこいのぅ。
413代打名無し:03/01/08 05:15 ID:eEHfGN9U
エディ……
414代打名無し:03/01/08 12:57 ID:cGoiPydV
ココには反転石はおらんのかいな
415代打名無し:03/01/08 23:52 ID:6F+XMnHI
416広島家の人々 三本の矢29:03/01/09 02:05 ID:cyUTuZ1x
「あっ・・・。」
指先をつい緩めた反動で、輝裕の手元にあった風船が空に舞い上がってしまった。
「バカ!」
風船を捕まえようと何度も飛び上がった兵動の風船も、ふとしたことから指先からくぐり抜けてしまった。
あっという間に二つの赤い風船が空高く二人の視界から消えていく。二人は肩を落として遠く去っていく風船を
見上げるばかりだった。


今日も金本寺からふもとの小道まで響く盛大な貴浩の悲鳴が聞こえる。竜士は足をとめて、寺まで続く
参道の階段を見上げた。
結局、貴浩は金本寺で修行する道を選んだ。馬鹿でドジなおっちょこちょいの年子の弟は、なんだかんだ
いって要領よく自分の道を見つけ進んでいく。知憲住職が希望した広島家の兄弟は最初から貴浩だった。
それが口減らしのためだったとしても構わない。誰かに必要とされ、それに応えることができる貴浩が
うらやましくあり、どこか妬ましくも竜士は感じていた。
貴哉も貴哉で、高等小学校に通いながら今は佐々岡の爺から田畑の仕事を教わっている。なるほど、
やたら高学歴になる兄の博樹は、農家ではなく緋鯉村を引っ張っていくリーダーを求められ、実質おこなう
農作業を引き継ぐのは貴哉である。父の浩二が考えていた構想がうすうす竜士にもわかってきた。実際の
作業を行う中心人物の肩書きがおエライさんじゃ、ムラの和が乱れるのみである。早くその場に慣れて、皆と
同じに苦労をわかちあう。農家の長男が中学校に行くことは正気の沙汰でない・・・さかんにいわれたこの
言葉の意味もだんだんわかってきた。一人飛びぬけた行動を起こすことをムラというところは決して許さない。
あくまでも求めるものは“和”であり、それを乱したものは“和”を守るためには容赦なく抹殺するのだ。そして
見事、広島家の兄弟は親父の適材適所の構想にこたえようとしている。竜士をぬかして・・・。
「ぶっ壊してぇ・・・。なにもかもみんな壊しちまいたい。」
また金本寺から貴浩の悲鳴と住職のけたたましい笑い声が聞こえる。竜士はチッと舌打ちすると、金本寺を
睨みあげ、スタスタ広島家とは逆の方向に早足で去っていった。
417広島家の人々 三本の矢30:03/01/09 02:42 ID:cyUTuZ1x
入れ替わるように、金本寺に新たな客人がやってきた。兵動はハンドルについたベルを鳴らしてから
自転車をとめた。ぴょこんと輝裕は自転車からおりると、タニシの入ったバケツを両手で持って金本寺に
続く階段を登っていった。
「貴浩兄ちゃ〜ん!」
「おお、チビか!」
境内で出迎えたのは、不気味なほどご機嫌良好な知憲住職だった。貴浩の姿は見当たらない。
「あれ、さっき貴浩兄ちゃんの悲鳴が聞こえたような気がしたけど。」
「ああ、貴浩ならそこの草叢で目をまわして倒れとるわ。」
「・・・・・・。」
遅れて境内に入った兵動が貴浩の姿を見つけた。絶句して、その場で立ち尽くしている。
「んもう、いつものことなんだから。」
輝裕はバケツを本堂の階段に置くと、桶を持って井戸から水を汲み、貴浩の真上から勢いよくぶちまけた。
「毎日毎日、進歩がないね。貴浩兄ちゃん。」
パチッと目を開けた貴浩は、輝裕の姿を見つけると大声をあげて飛びついた。
兵動はだんだん後ろにずり下がっていった。

「ほぉ、今日はタニシを取ってきたのか、チビ。」
「うん。兵動が採り方を教えてくれたんだ。でね、住職や貴浩兄ちゃんにもおすそ分け。
これ、食べられるんだって。ろくろく食事もできないんでしょ?貴浩兄ちゃん。」
「輝裕・・・。」
貴浩は目に涙をためて、大仰にその場で泣いた。
(マジかよ、こいつら・・・。)
さすがにこのノリに兵動もついていけず、半分白けて二人を見ていた。
418広島家の人々 三本の矢31:03/01/09 03:15 ID:cyUTuZ1x
「ふぅーむ。じゃがのぅ、チビ。これはすぐにゃあ食べられんぞ。」
バケツの中からタニシを2,3個つまみあげて、知憲住職がボソッといった。
「そうなの?」
「なんじゃチビ、お前はタニシの食べ方も知らなかったのか。タニシはのぅ、最低3日はきれいな清水に
入れて泥をはかせんことには食べれた代物じゃないわぃ。やはりお前ら広島家の兄弟は皆、お坊ちゃん
育ちの世間知らずで困ったもんよ。」
「お坊ちゃん育ち・・・。」
その後、輝裕は言葉を続けることができなかった。
「まあ、まだお前は幼い。これからいろんなことを覚えていけばそれでええんじゃ。こいつと違ってな。」
だが、その言葉は輝裕の耳に入ってこなかった。
「タニシの水抜きなら俺がやっとくよ。どのくらい金本寺に渡すつもりなんだ、輝裕。」
兵動の言葉にハッとして、輝裕はバケツの中から半分ほど取り出して兵動に渡した。その場からサッと
離れて兵動は井戸に向かった。知憲住職も鷹揚にうなずくと、その場を静かに去っていく。
輝裕は無言で兵動の後ろ姿を見送った。
「なんだよ。住職にお坊ちゃん育ちの世間知らずといわれたのがショックだったのか?」
「・・・・・・うん。」
「んなこといったって、お前はまだまだ子供だろ。なんにも知らなくったって別に気にするこたぁないぜ。」
「・・・・・・うん。ただ・・・。」
「ただ?」
「・・・・・・ボクだけじゃなくて、兄ちゃんたちのことも考えた。とくに竜士兄ちゃん。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・最近、家に帰ってきてくれないんだ。博樹兄ちゃんは勉強が忙しくて、それどころじゃないし、
父さんも竜士兄ちゃんには何もいわないし、でも・・・。」
そのまま輝裕は下にうつむいてしまった。
419代打名無し:03/01/09 03:23 ID:cyUTuZ1x
前回うぷした分の文章のテンポがあんまよくない。読みづらかったらスマソっす。
エディは役柄にネタを含ませていますだ。一時期は神と呼ばれていたのになぁ。
420代打名無し:03/01/09 19:25 ID:b1IACH93
おぉ、うp乙っす。
421代打名無し:03/01/09 19:28 ID:b1IACH93
途中で送ってしまった。
前回のは本編とつながっている場面ですか?なんか見覚えがあったのでl。
青年とやら、気になるのぅ。

めんこい輝裕に言いたい放題言われる貴浩兄ちゃんがんがれ。
422代打名無し:03/01/09 23:47 ID:jLEyOD0w
>>421
そうだず。こことつながっておりやす。と、青年が誰かわかりますの。
それとエディにどんな意味がこめられているか。
http://eekotoyo.s9.xrea.com/kako117.htm
423代打名無し:03/01/10 08:21 ID:WayvXS4O
424代打名無し:03/01/10 15:23 ID:+z+XWFB1
スケさんがんがれ〜
425代打名無し:03/01/11 00:17 ID:3SmYq7MM
西山もがんがれ
426代打名無し:03/01/11 09:29 ID:0rwmDrGu
ほっほっほ
427代打名無し:03/01/11 21:23 ID:KOSZlasl
428代打名無し:03/01/12 00:04 ID:Ov9H0THO
429代打名無し:03/01/12 13:48 ID:/sRwjG3I
430代打名無し:03/01/12 19:46 ID:bMifkdp6
431代打名無し:03/01/13 10:29 ID:xr2jYV2a
432代打名無し:03/01/14 00:12 ID:4gHRdMTp
433代打名無し:03/01/14 08:22 ID:oQ9kWo4z
434代打名無し:03/01/14 23:51 ID:H2I2Gg+l
次回17日うぷ予定。
435代打名無し:03/01/15 08:21 ID:+ml5tUxB
わーい
436代打名無し:03/01/15 16:57 ID:5zFa9piU
437代打名無し:03/01/15 22:54 ID:+ml5tUxB
438代打名無し:03/01/16 09:42 ID:E9ZGuzoZ
あぶねー
439代打名無し:03/01/16 17:24 ID:ghLdn1Ft
440代打名無し:03/01/17 08:16 ID:vZL+Y4A6
441代打名無し:03/01/17 16:56 ID:ZvPYLP/7
442代打名無し:03/01/18 00:30 ID:cy51SKCx
443代打名無し:03/01/18 03:04 ID:W9cFwR2S
まず過去ログ倉庫更新は終了しますた。
444代打名無し:03/01/19 01:13 ID:CliC1z7R
ほっほっほ
445広島家の人々 三本の矢32:03/01/19 02:08 ID:cE2Q2Ixo
職員室に最近新たな常連の客人が現れるようになった。教師の三村は一日の講義が終わるとそそくさと
湯沸室まで西山堂の和菓子を取りに行き、目当ての客人がやってくるのを今か今かと待ち構えている。
「三村先生。」
客人は現れた。
「やあ、澤崎くん。」
三村はニッコリ笑って「今日は西山堂のドラ焼きだよ」と澤崎の目の前に和菓子の盆を掲げると、
用意した椅子に澤崎を座らせた。
「毎日毎日・・・先生はよほど西山堂の和菓子が大好きなんですね。」
「なにいっているんだ澤崎くん。緋鯉村に暮らす者なら我が身の如く深く愛し、日々きってもきれぬ
密着した存在、それが西山堂の和菓子なのだよ。」
「はぁ・・・。」
澤崎は笑ってごまかすしかなかった。
「キミも緋鯉村に住むことになるなら、いつしか西山堂の虜になり離れられなくなる。いつかわかる。
そしてそれがキミに定められた宿命というものなのさ。」
このまま西山堂のドラ焼きを三村の顔面に投げつけて逃げ出したくなった。
「まあ、前置きはこのくらいにして・・・」
澤崎の雰囲気を読み取ったのであろう。三村は急に真顔になって、湯のみ茶碗にお茶を入れて
澤崎に差し出した。
「どうだ、広島博樹の様子は?少しはお前に対しての態度が変わってきたか?」
「いえ・・・。」
澤崎は首を横に振った。
「今日も一人教室に残って、がむしゃらになって勉強していますよ。」
「そうか・・・。」
「先生。ボクはいまいちよくわからないんです。先生が何をたくらんでいるのか?この学校に誘って
もらったことはありがたく思っています。が・・・」
446広島家の人々 三本の矢33:03/01/19 02:49 ID:cE2Q2Ixo
「・・・・・・。」
「せっかくお誘いいただいたのなら、ボクも出来る限り大下教頭や三村先生の要望に応えたいと
思っています。ですがボクに判断をまかせる材料が何もない。一体ボクはどうすればいいんです?」
三村はふうっと息を吐いて、お茶を飲みほした。
「キミはどうして緋鯉村にきてくれたんだ?」
澤崎はムッとした。
「熱心にボクのところまで何度もやってきたのは三村先生だったじゃないですか?それから大下教頭、
あと緋鯉村の村長の広島さん・・・」
澤崎の言葉がとまった。
「広島さん・・・広島博樹・・・」
三村は澤崎の湯のみ茶碗に新しくお茶を注いだ。
「広島家・・・。ボクをここに熱心に誘ったのは広島家なんですか?」
「どうしてそう思う?」
「広島家の村長さん、そして広島博樹のあの態度。なぜわざわざボクをこの学校に誘ったのか・・・
それはすべて広島のためじゃないですか。広島を高等学校に進学させるため、ボクの存在は起爆剤
として必要だった。」
三村はコクンとうなずいた。
「だが、半分は当たっているが半分は真意をついてないな。」
「・・・・・・。」
「夢じゃよ。一度でいいからワシらも夢を見てみたかったんじゃ。そのために少々無理をいってキミを
緋鯉村に連れてきたかもしれない。しかしキミは来てくれた。半分は夢がかなえられたといってもいい。
どれだけワシらがうれしかったか・・。」
「・・・・・・。」
澤崎はこれ以上詳細を聞くことができなくなった。
447広島家の人々 三本の矢34:03/01/19 03:31 ID:cE2Q2Ixo
6月とはいえ、6時を過ぎると急に空は赤く染まり、影は長く地平線まで伸びていく。
少し職員室に長居しすぎてしまったかもしれない。あわてて澤崎はカバンを小脇に抱えると、
校舎と校舎の間の渡り廊下を駆け抜けていった。
「あれ?」
教室にまだ誰か一人残っている。まさか広島博樹?澤崎は廊下の窓から教室の中を覗いた。
やっぱりそうだ。ブツブツ呟きながら外国語のテキストとにらめっこしているのは間違いなく博樹だ。
「あまり一気に根をつめても、後でバテるよ。」
不意に現れた澤崎の存在に博樹はアッと小さな声をあげたが、すぐに辞書に目をやって澤崎を
意識の外にはずしてしまった。
澤崎はカバンを抱えたまま博樹のもとに近づくと、隣の自分の席に座った。
「・・・・・・。」
博樹は何の反応も示さない。しばらくの間、黙って澤崎は博樹の様子を見ていた。
(単なる起爆剤の存在でもないのか・・・。)
じゃあ、なんのために?
「ねえ?」
初めてまともに声をかけられて、驚いて博樹は隣の澤崎に振りかえった。
澤崎は半分困ったような顔をしている。
「一つ聞きたいことがあるんだ。」
「何だよ。」
「何で広島はそんなに勉強するんだ?」
目が点になって、博樹はマジマジと澤崎を見た。
「そっくりそのまま同じ言葉を返してやるよ。じゃあどうしてお前はそんなに勉強するんだ?」
「えっ?」
今度は澤崎が答えに窮した。
「ボクは高等学校に進学するために・・・」
「まったく同じだよ。俺も高等学校に進学するためにやってんだ。」
「・・・・・・。」
448広島家の人々 三本の矢35:03/01/19 04:27 ID:cE2Q2Ixo
「それとも何か、農家の小倅がわざわざ何のために酔狂なことをやらかすか聞き出してみたいとか。」
「いや、そういうわけじゃなくて。別にそういう意味じゃなくて。ただ・・・」
「ただ?」
「そうまでしてやる理由がわからない。」
一瞬の間もなく博樹の拳が澤崎にくりだされた。すんでの差で澤崎はそれを交わした。
「いいたいことはそれだけか!」
博樹の様子は手のつけられない状態になっていた。あわてて澤崎は壁まで避難した。
「違う!そうじゃなくて、農家とかそういう意味じゃなくて!」
博樹はどんどん間合いをつめていく。怒りにまかせた今の状態で下手なことを口走れば逆上して
何をしでかすかわからない。だが、
「広島はそれで何がしたいんだよ。」
勢いがまさった。これで一発ぶたれることも覚悟の上だった。が、博樹の身体の動きがとまった。
「俺・・・?」
半分呆けた表情で博樹はその場に立っていた。澤崎はコクンとうなずいた。
「農家を卑下することはないよ。それに東京だって田舎のひとが思っているほど良いところじゃない。
この前の大震災と不況で一気にウミが吐きだされてさ。いっぱい人が死んだ。天災じゃなく人災でね。
互いが互いを憎しみ、妬み、陥れて崩壊していった。」
「・・・・・・。」
「そんな世の中で広島は何をがむしゃらになっているのか不思議だった。そしてボクをここに誘った
三村先生や大下教頭の考え方も・・・。」
「誘った?誘ったって澤崎お前、自分からこの中学校にやってきたわけじゃないのか?」
澤崎はうなずいた。博樹は頭の中が混乱してきた。どうも今まで自分が思っていた構図と実際の
出来事の間に大きな隔たりがあるらしい。
「ぁああ!」
気がつけば外はだいぶ暗くなり、うっすらと月が天上から顔を出しはじめている。
「澤崎、お前の家はどこだ?」
澤崎は絶望的な表情で外を見上げていた。
「峠を越えた先の街・・・」
「はぁあああああああ?」
博樹は頭を抱えた。
449代打名無し:03/01/19 04:34 ID:cE2Q2Ixo
行数制限がゆるくなったか。35が規定量以上いれられたぞ。
もう早く起承転結の転部分に移行できるよう、なるべくテンポを速めにしなければ
とがんがってみますた。
さて三村がいっていた夢とは何でしょか。この年だけ実現したその後のかぷでは
ほぼ達成不可能なあることでございやす。とヒント。

あと次回は23日の予定れす。うまくいけば21日うぷできるかも。
450山崎渉:03/01/19 13:04 ID:9lPidWiY
(^^)
451代打名無し:03/01/19 23:40 ID:Cc/amOs1
452代打名無し:03/01/20 05:46 ID:JAkLbcoq
過去ログ倉庫コンテンツ一つ増やしますた。
453代打名無し:03/01/20 19:02 ID:IzeBukJ1
454代打名無し:03/01/21 08:20 ID:/Ol7ddgB
455代打名無し:03/01/21 12:01 ID:Zgh2fYIa
スケさんは心配性だのうと保存サイト見て思ったべ。
がんばってけれ。あと栗よろすく
456代打名無し:03/01/21 17:19 ID:iHRvuZ2p
ほしゅ
457代打名無し:03/01/22 08:19 ID:yjqWdFMt
458代打名無し:03/01/22 15:42 ID:ZCYI0zFM
459代打名無し:03/01/22 18:09 ID:Hv1pHFnN
460代打名無し:03/01/23 08:19 ID:WaHAowgP
461代打名無し:03/01/23 20:53 ID:WaHAowgP
462代打名無し:03/01/23 23:05 ID:wBHJHHkg
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 33からペース配分を間違えて展開が滅茶苦茶だ(鬱
とうとうやりたくなかった改定版の登場か・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
変な文章を読ませる形になってスンマヘン・・・m(_ _;)m
今夜は33からうぷしなおし。40まで進む予定っす。
「・・・・・・。」
「せっかくお誘いいただいたのなら、ボクも出来る限り大下教頭や三村先生の要望に応えたいと
思っています。ですがボクに判断をまかせる材料が何もない。一体ボクはどうすればいいんです?」
三村はふうっと息を吐いて、お茶を飲みほした。
「キミはどうして緋鯉村にきてくれたんだ?」
澤崎はムッとした。
「熱心にボクのところまで何度もやってきたのは三村先生だったじゃないですか?それから大下教頭、
あと緋鯉村の村長の広島さん・・・」
澤崎の言葉がとまった。
「ん、どうした?」
三村はニヤリと笑った。
「広島さん・・・広島博樹・・・」
しかし澤崎は立ち尽くしたまま、三村の言葉に反応しようともしない。
三村は澤崎の湯のみ茶碗に新しくお茶を注いだ
「三村先生・・・。」
「ん?」
うわごとのように澤崎が呟いた。
「やっとわかりました。先生がボクに執拗に広島博樹のことを尋ねてくるのは・・・。」
「尋ねてくるのは・・・」
「広島家・・・広島家が理由なんでしょう!」
キッと澤崎は三村を見下ろした。
「ほぉ、どうしてそう思う?」
「それは広島家が・・・ボクをここに熱心に誘ったのは広島家だから」
三村は足組みをして、余裕の笑みで澤崎を見据えた。
「そして広島博樹のあの態度。なぜわざわざボクをこの学校に誘ったのか・・・
それはすべて広島のためじゃないですか。広島を高等学校に進学させるため、
ボクの存在は起爆剤として必要だった。」
「ちゃんと理解しているじゃないか。」
三村はコクンとうなずいた。
「だが、半分は当たっているが半分は真意をついてないな。」
「・・・・・・。」
「夢じゃよ。一度でいいからワシらも夢を見てみたかったんじゃ。そのために少々無理をいってキミを
緋鯉村に連れてきたかもしれない。しかしキミは来てくれた。半分は夢がかなえられたといってもいい。
どれだけワシらがうれしかったか・・。」
「・・・・・・。」
澤崎はこれ以上くわしく聞くことができなくなった。


6月とはいえ、6時を過ぎると急に空は赤く染まり、影は長く地平線まで伸びていく。
少し職員室に長居しすぎてしまったかもしれない。あわてて澤崎はカバンを小脇に抱えると、
校舎と校舎の間の渡り廊下を駆け抜けていった。
「あれ?」
教室にまだ誰か一人残っている。まさか広島博樹?澤崎は廊下の窓から教室の中を覗いた。
やっぱりそうだ。ブツブツ呟きながら外国語のテキストとにらめっこしているのは間違いなく博樹だ。
「あまり一気に根をつめても、後でバテるよ。」
不意に現れた澤崎の存在に博樹はアッと小さな声をあげたが、すぐに辞書に目をやって澤崎を
意識の外にはずしてしまった。
澤崎はカバンを抱えたまま博樹のもとに近づくと、隣の自分の席に座った。
「・・・・・・。」
博樹は何の反応も示さない。しばらくの間、黙って澤崎は博樹の様子を見ていた。
(単なる起爆剤の存在でもないのか・・・。)
じゃあ、なんのために?
「ねえ?」
初めてまともに声をかけられて、驚いて博樹は隣の澤崎に振りかえった。
澤崎は半分困ったような顔をしている。
「一つ聞きたいことがあるんだ。」
「何だよ。」
「何で広島はそんなに勉強するんだ?」
目が点になって、博樹はマジマジと澤崎を見た。
「そっくりそのまま同じ言葉を返してやるよ。じゃあどうしてお前はそんなに勉強するんだ?」
「えっ?」
今度は澤崎が答えに窮した。
「ボクは高等学校に進学するために・・・」
「同じだよ。俺も高等学校に進学するためにやってんだ。」
「・・・・・・。」
「それとも何か、農家の小倅がわざわざ何のために酔狂なことをやらかすか聞き出してみたいとか。」
「いや、そういうわけじゃなくて。別にそういう意味じゃなくて。ただ・・・」
「ただ?」
「そうまでしてやる理由がわからない。」
瞬間に博樹の拳が澤崎にくりだされた。すんでの差で澤崎はそれを交わした。
「いいたいことはそれだけか!」
博樹は手のつけられない状態になっていた。あわてて澤崎は壁まで避難した。
「違う!そうじゃなくて、農家とかそういう意味じゃなくて!」
博樹はどんどん間合いをつめていく。怒りにまかせた今の状態で下手なことを口走れば逆上して
何をしでかすかわからない。だが、
「広島はそれで何がしたいんだよ。」
勢いがまさった。
これで一発ぶたれることも覚悟の上だった。が、博樹の身体の動きがとまった。
「俺・・・?」
半分呆けた表情で博樹はその場に立っていた。澤崎はコクンとうなずいた。
「農家を卑下することはないよ。それに東京だって田舎のひとが思っているほど良いところじゃない。
この前の大震災と不況で一気にウミが吐きだされてさ。いっぱい人が死んだ。天災じゃなく人災でね。
お互いが互いを憎んで妬んで陥れてつぶしていったんだ。」
「・・・・・・。」
「そんな世の中で広島は何をがむしゃらになっているのか不思議だった。そしてボクをここに誘った
三村先生や大下教頭の考え方も・・・。」
「誘った?誘ったって澤崎お前、自分からこの中学校にやってきたわけじゃないのか?」
澤崎はうなずいた。博樹は頭の中が混乱してきた。どうも今まで自分が思っていた構図と実際の
出来事の間に大きな隔たりがあるらしい。
466広島家の人々 三本の矢36:03/01/24 03:55 ID:1mnTy2BL
「ぁああ!」
気がつけば外はだいぶ暗くなり、うっすらと月が天上から顔を出しはじめている。
「澤崎、お前の家はどこだ?」
澤崎は絶望的な表情で外を見上げていた。
「峠を越えた先の街・・・」
「はぁあああああああ?」
博樹は頭を抱えた。


輝裕はバケツの中に入ったタニシをのぞいた。
そろそろ食べられるかな? 裏庭で一人頬づえをついてしゃがんで、輝裕はニコニコ笑いながら
タニシとにらめっこしていた。
「博樹坊ちゃん!」
玄関から佐々岡の爺の驚愕した声が聞こえてきた。
「博樹兄ちゃんが帰ってきたんだ!」
輝裕はパッと立ち上がって、裏口から玄関に向かって駆けだした。
「あれ・・・?」
博樹以外に一人客人がいる。それも相手は博樹がムキになって対抗していたあの転入生の澤崎である。
キョトンとした目でただ二人を見つめる輝裕の視線に気づいて、澤崎はニッコリ笑って頭を下げた。
「博樹兄ちゃん、一体どうしたの?」
輝裕の質問に博樹はバツが悪そうな表情で、学校から帰るのが遅くなって家に帰るのに澤崎が峠越え
できなくなったことを告げた。
「ぇええ!いっつも峠越えをして学校を通っていたの!」
輝裕のすっとんきょうな大声に、何事かと貴哉も玄関に顔を出す。貴哉の口からも小さな声が漏れた。
467広島家の人々 三本の矢37:03/01/24 04:58 ID:1mnTy2BL
弟たちの執拗な視線を感じて、頭をかいて博樹はごまかした。今までの経緯を考えれば貴哉や輝裕が
不思議そうに自分たちを見つめるのは当然である。
澤崎は澤崎で、三村との会話で浮上した問題の広島家を自分が訪ねたことに半分感動して好奇心旺盛に
広島家の家屋をぐるっと見回している。
広島家の主浩二が玄関に現れた。ハッと我にかえって澤崎は浩二に深々と礼儀正しく頭を下げた。
「これはこれは・・・。」
浩二はニコニコ笑って、自分も軽く会釈し会話を交わした。が、澤崎を熱心に緋鯉村の中学校に誘った
経緯は一切ふれようとしない。
「こいつ、外が暗くなるまで気づかなくって家に帰るタイミングを外しちまってさ、うちんとこの村
宿屋なんてもんもないけ、家に連れてきた。」
博樹も事情を知らないようで、無邪気にこうなった経緯を父の浩二に語っている。
これは浩二のことは博樹にふれないほうがいい。浩二の態度で澤崎はだいたいの事情を理解した。
「ねぇ。」
後ろからいつの間にか裾を輝裕にひっぱられていた。
「うちに泊まっていくなら、タニシを食べていってよ。」
「タニシ?」
「うん!お兄ちゃんは食べたことがある?」
輝裕はニッと笑った。

さすが元庄屋の旧家というべきか。広島家は部屋数だけはやたらあり、澤崎のためにポンと八畳の
畳部屋を用意してくれた。
浩二は笑顔で鷹揚に「まあええことよ」とうなずくとそのまま自分の部屋に戻っていってしまった。
とまどい気味に澤崎は後ろ姿を見送るほかなかった。
468代打名無し:03/01/24 05:03 ID:1mnTy2BL
タイムオーバー。途中ニュー速+で長居したのがまずかった(´Д`;)
まあ、26日まで連日うぷ可能そうなんで、ここで一挙にストーリーを
進められたらばと。

メール他連絡事項をこの時期に一挙にやります。なかなか連絡できなかった方々
ホンマすんまへんです。
469代打名無し:03/01/24 08:07 ID:55T7Ca5K
めんこいのぅ。
470広島家の人々 三本の矢38:03/01/24 14:01 ID:bZKFH0ps
博樹は澤崎が学校で語った緋鯉村の中学校に来た経緯にまだひっかかりがあるようで、
しばらくして2階の自室に澤崎を誘った。
隣の部屋では年下の兄弟がキャッキャと騒ぐ声が聞こえる。
「兄弟ってのもいいもんだね。」
「澤崎はいないのか、兄弟。」
「男の兄弟はいない。だからこの家で見るものみんな新鮮に見えるよ。」
部屋の片隅に飾られている一本の矢が澤崎の視界に入った。なにげに手を伸ばして、
それを澤崎は手にした。矢は一度真っ二つに折られて丁寧に和紙で修復されている。
「これは・・・。」
「ああ、それは三村先生が俺にくれたもんだ。」
「三村先生が・・・。」
澤崎が緋鯉村の中学に通うきっかけになった、そして意味深な言葉を投げかけた三村である。
しかしこの和紙の修復は・・・?
「三本の矢・・・。」
「えっ?」
「三村先生は三本の矢のつもりで広島に矢を渡したんじゃないか?ほらっ、広島家の兄弟は
広島の他に貴哉くんと輝裕くんの三兄弟だから・・・」
「いや、だったら意味が違うな。」
即座に博樹は否定した。
「他に貴哉との間に弟が二人いる。一つ年が離れて竜士っていうのと、それのすぐ下で金本寺の
住職に引き取られた貴浩ってヤツが。俺ん家は男ばっかの5人兄弟なんや。でも。」
「でも?」
「俺にその矢を渡した時、確かにいったな。「キミもその中の一本の矢だ。」と。」
「その中の一本の矢・・・。」
博樹は澤崎から矢を受け取ってはじめてマジマジと修復された矢を見つめた。
471代打名無し:03/01/25 00:38 ID:eI1brjNN
キャッキャ騒いでるアキヒロはめんこいのぅ。
そんな(・ ε ・)と一緒に騒ぐ|`_ゝ´|って・・想像がつかない(w
472代打名無し:03/01/25 13:48 ID:SfqfjHij
473代打名無し:03/01/26 00:43 ID:uUjTdCIo
474広島家の人々 三本の矢39:03/01/26 01:04 ID:uN08FPQw
4年の最後の授業の時、わざわざ三村は尋常小学校の教科書をとりだして「三本の矢」の講義を
はじめた。あのときすでに、今こうして澤崎が緋鯉村にいることが三村の頭の中で折込済だった。
ならば三村が「三本の矢」を持ち出したのはどういう意味なんだろうか。
高等学校に進学しようとする博樹と澤崎にハッパをかけるため。しかしそれでは一人足りない。
故事好きの三村なら他にもっと適当な訓話を持ち出して叱咤激励するはずだ。
「わからんな・・・。」
博樹は首をかしげた。
「三村の考えていることがさーっぱりわからん・・。」
スーッとその時ふすまが開いた。
「博樹兄さん?」
隣の部屋にいたはずの貴哉が、教科書を両手に抱いて申し訳なさそうに小さくなって
戸口に座っていた。そして後ろから貴哉の袖を掴んで隠れている輝裕の片手が・・・。
博樹はフッと笑って、手招きで二人の弟を自分の部屋に入れた。
貴哉と輝裕はパッと顔を輝かせて、バタバタと部屋の中に駆け込んだ。
「あっ!」
めざとく輝裕は博樹が手にしていた矢に目をむけた。
「竜士兄ちゃんの部屋にね、ボクがもらった矢が置いてあるよ!」
そしてすぐに部屋を飛び出すと、竜士の部屋の押し入れから問題の矢を持ってきた。
「輝裕くんがもらった矢が三本の矢の2本目の矢?」
「そういえば・・・。」
やはり三本の矢は広島家の兄弟を意味するのか。しかし博樹と輝裕でも二人まで。
決して3人にはならず他に該当しそうな兄弟が見当たらない。
「いったい何たくらんでいるんだ、三村はーっ!」
博樹は頭をくしゃくしゃとかきむしってバタンと畳の上に寝転がった。
475広島家の人々 三本の矢40:03/01/26 02:49 ID:uN08FPQw
佐々岡の爺は土間でお茶を入れると、浩二の部屋にむかい襖を軽く叩いた。
のんびりした声で浩二が中に入るようにうながす。
佐々岡は襖をスーッと開けると、くつろいでタバコを吸っている浩二に
西山堂のあんこ餅とお茶を差し出した。
「坊ちゃんたちにも西山堂の和菓子をお渡ししていきましょうか。」
「そうじゃのう。」
浩二はおっとりと答えた。
佐々岡の爺は丁寧に頭を下げたが、ふとあることに思い当たり身体がとまった。
「旦那さま。今日博樹坊ちゃんが連れてこられたあの青年ですが・・・。」
「・・・。」
「あれは“まれびと”ですね。」
浩二はニッコリ笑った。
「そうじゃ!」
佐々岡の爺も笑顔でうなずいた。
「ならば、私も世話のしようがあるというもの。わかりました、旦那さま。
あとはすべて私におまかせください。」

結局澤崎と二人で年下二人の勉強を見る羽目になって、博樹は澤崎になぜこの村に
来たのか聞くタイミングをはずした。
だが何ヶ月ぶりだろう。こうして弟たちの面倒を見るのは。5年になって澤崎に
対抗することにムキになって、いつの間にか自分のことしか見えてなかった。
弟たちの満足そうな笑みを見て、なんだか忘れかけていたあたたかい気持ちに
博樹は襲われた。
手元には例の修復された矢が置いてある。そういえば・・・。あらためて博樹は
矢を手にとった。この矢を修復したのは一体誰なんだろう。
「竜士兄ちゃんだよ。」
博樹の気持ちを察したように輝裕が声をあげた。
476代打名無し:03/01/26 03:22 ID:uN08FPQw
もう少し書けているのだが、頭がまわってないので少しねかせてから
うぷしやす。
あぅぅ、この話の全体的なストーリーを話したら、今の時点ではまだ全然
想像つかないらしいっす(´Д`) まだこれからのようです。
大正時代に起きたある事件が間接的に非常に参考になるんですが、まあ
そんなとこまでいってないか。ただそろそろ竜士メインになることは確かだ。
栗も再登場するでよ。

>>471
いやぁ玉山と一緒のときの|`_ゝ´|はキャッキャだよ。あれはスゴい。
マジで目が点になりやした。大島が会話に参加しようとして二人の雰囲気に
入ってこれず、すごすごと後ろで小さくなっていたのが印象的ですた。
477代打名無し:03/01/26 12:29 ID:8pX/nRfp
age
478代打名無し:03/01/27 00:51 ID:KtlAy6y+
過去ログ倉庫、現在のところ入り口部分のみ更新してありやす。
今夜中に3人追加予定です。
479代打名無し:03/01/27 16:53 ID:qyx/Aqeq
おつかれさまです
無理せん程度でがんがってください
480代打名無し:03/01/28 08:15 ID:6K50DZQH
481代打名無し:03/01/28 16:55 ID:szxBmf1S
482代打名無し:03/01/28 23:22 ID:6K50DZQH
483代打名無し:03/01/29 20:28 ID:DeC8zaBB
484代打名無し:03/01/30 03:42 ID:d4HjJ3/8
485代打名無し:03/01/30 08:17 ID:wAckkvQg
486代打名無し:03/01/30 22:29 ID:MTDaJyme
487代打名無し:03/01/31 01:51 ID:n3j0S9w2
ちょと私用でまだこちらにこれません・・・(つД`)
日曜日にケリがついたら何とか
488代打名無し:03/01/31 03:46 ID:xb882dLv
489代打名無し:03/01/31 08:19 ID:ISh5jwW2
490代打名無し:03/01/31 16:54 ID:TomzcjlX
491代打名無し:03/01/31 23:50 ID:ISh5jwW2
492代打名無し:03/02/01 10:55 ID:/cMTrWXI
493代打名無し:03/02/01 16:34 ID:2LdrKRrt
494代打名無し:03/02/01 17:41 ID:4DcF1VD6
ベチの子分の健太って、ずっと(丶 ̄栗 ̄)だと思ってた・・・・アヒャ
495代打名無し:03/02/02 04:56 ID:GZElcewU
貴浩坊主が現実になっちゃうとはねぇ…w
496代打名無し:03/02/02 16:51 ID:/hbESDTK
補習
497代打名無し:03/02/03 02:00 ID:gvia/hBd
いかれパソの対応に追われ大変失礼しやしたm(_ _)m
明日の夜にはうぷできそうなんで、のぞいてみてくんさい。

>>494
玉山だったんだな、これが(・∀・)
最初「広島家」を書いていた頃はまだ(丶 ̄栗 ̄)のキャラが立ってなかったから
書きようがなかったんよ。でも本編でほとんど出番がなくて助かった。
まっさらな状態で(丶 ̄栗 ̄)を描けるけぇのぅ〜

>>495
いや、ああも完璧な坊さんになるとは想像もつかなんだ(´Д`;)
ハマっていたんだなぁ坊さん役・・(汗
498代打名無し:03/02/03 08:33 ID:wRUXa1LL
海辺の西山のように爽やかに保守
499代打名無し:03/02/03 18:12 ID:wRUXa1LL
高原の西山のように爽やかに保守
500代打名無し:03/02/03 19:41 ID:LZxljsWy
(‘Å’)ノ 500デース ワタシモ ダシテクダサーイ
501代打名無し:03/02/04 05:14 ID:ChJCEf5k
スマソ・・。今れぽが終わったところで(泣

今日の夜から急に予定がなくなりますたので、その時に急いで挽回しますだ。
もう少し待って・・・くんさいm(_ _)m
502代打名無し:03/02/04 17:02 ID:KHm1WnHv
123456789101112131415
503代打名無し:03/02/04 23:10 ID:UrYwnjsq
波止場の西山のようにダンディに保守
504代打名無し:03/02/04 23:37 ID:CwKD02nL
(‘ ε ’)「モナも出してモナ」
( ‘ 〜‘)「ナリ」
(`・Å・´)「だっぺ」
505代打名無し:03/02/05 18:18 ID:9XiBsMn6
走る西山のように軽やかに保守
506広島家の人々 三本の矢41:03/02/06 01:35 ID:0eZajatZ
「竜士・・・。」
「ねぇ博樹兄ちゃん。もっと竜士兄ちゃんの相談にのってあげてよ。最近全然竜士
兄ちゃんが家に帰ってきてくれないんだ。ボクや貴哉兄ちゃんじゃ子供で相手して
あげられないし、こういう時はやっぱり博樹兄ちゃんじゃないとダメなんだよ。」
貴哉も小さくうなずく。
博樹は和紙の部分をじっと見つめた。

─── 博樹兄ちゃんは、野村さんに続いて緋鯉村で2番目の中学卒業者になって
   高校に進学して緋鯉村を大きく変える人物になって親父の跡を継ぐっていう
   目標があるだろ。でさぁ、俺はどうしようかなって。何かやりたいってことが
   見つからないんだ。小さい頃から何かやろうとしても、いつも身体のどっかに
   ガタがきて半病人みたいなもんだったし、かといって勉強なんか俺、大っ嫌ぇだし、
   農家を継ぐって柄でもねぇしさ・・・。 

いつも竜士は博樹が家に帰ってくるのを部屋の隅で待っていた。そして襖が開くと同時に
飛び出して、甘えるように自分の悩みを博樹にぶつけた。
それがいつからだろう。確かに竜士の姿がこの家からいなくなっていた。そして自分自身の
ことに夢中で博樹はそんな竜士の変化に今まで気づくことはなかったのだ。
「そうだな・・・。」
博樹は小さく呟いた。
「俺は少し自分自身のことにかまけすぎていたかもしれんな・・・。」


佐々岡の爺の朝食を呼ぶ声に喜んで階段を駆けおりた輝裕は、茶の間に用意された
豪華な食事の数々にアッケに取られて立ちつくした。後からおりてきた博樹や貴哉も
何事かと目を丸くしてそのまま部屋に入ることができない。
507広島家の人々 三本の矢42:03/02/06 03:20 ID:ZulUOu91
「どうかしたの?」
何も知らない澤崎が奥の8畳間から茶の間にやってきて歓声をあげた。
「すごい!広島家っていつもこんな豪華な食事をしているんだ!」
あわてて兄弟たち3人は首をブルブル横に振った。佐々岡の爺は笑顔で会釈して
澤崎を席に案内する。
「ほら、坊ちゃんたちも早くに席について。せっかくの味噌汁が冷めてしまいますよ。」
兄弟たちは困惑した表情で顔を見合わせたが、再び佐々岡の爺にうながされて、
とりあえずは席につくことにした。
「おお、みな揃うたか。」
ゆったりとした腹を揺らしながら、浩二が茶の間に現れる。浩二は目の前の食事に
驚きもせず、当たり前のように席につくと、皆に食事をするようにうながした。
「親父、この食事は一体なんなんだよ。」
早速博樹がつっかかった。
「ん、今日はお客さんを迎えておるんじゃ。こんくらいのおもてなしは当たり前
じゃろうが。」
ヌカに釘。まともに受けとってもらえない。
「あの・・・そのお客さんってボクのことなんでしょうか?」
澤崎が話の間に入っていった。
「そうじゃ。」
浩二はニッコリ笑って顔を澤崎に向けた。
「・・・・・・。」
澤崎は御膳に箸をおいた。
「いろいろお世話をしていただくのは非常にありがたいのですが、たかが学生の
ボクにここまで接待してくださる理由がわかりません。広島さん、その理由を
教えてもらえますか?」
博樹も半分睨みつけるように浩二に視線を向け、浩二の次の言葉を待った。
508広島家の人々 三本の矢43:03/02/06 04:48 ID:LgUJh4RZ
「・・・・・峠の向こうの街から緋鯉村の中学に毎日通うのはちと遠かろう。
どうじゃ。これからはここから中学に通うというのは? 見ての通りウチは部屋だけは
たんとあってのぅ。キミに部屋の一つや二つ貸すのはどうってことないけぇ。
同級生に息子の博樹もおるし、お互い競い合って高等学校に進学するためには
ええ環境じゃ。キミにとっては悪い話じゃないじゃろう。」
返事になっていない。しかも唐突に広島家に下宿の話まで持ちかけてきた。
澤崎は戸惑いの表情を見せたまま、押し黙ってしまった。
「ささっ、坊ちゃんたちは今日も学校があるのですから、早くご飯を食べて。」
あわてて佐々岡の爺が場をとりなして、一旦その場は収拾した。
兄弟たちはすぐに自分の部屋に戻ってカバンを取り出し、玄関に向かった。
まんじりしない表情で澤崎が兄弟たちを待っている。佐々岡の爺は深々と頭を下げて
見送った。浩二もわざわざ玄関まで出て笑顔で兄弟と澤崎の後ろ姿を見つめていた。
「何だ、ありゃあ。」
佐々岡の爺の姿が米粒ぐらいになってから、博樹は舌打ち混じりにあきれた声をあげた。
「父さんもどこか変だった・・・。」
一度後ろを振り向いてから、浮かない表情で貴哉もつぶやく。
「やっぱり変だったよね!」
輝裕はうんと力強くうなずいた。
澤崎は無言でその横を歩いていた。
「お兄ちゃん?」
心配そうに輝裕が澤崎の袖をひっぱる。澤崎は笑顔で返事した。
「・・・ウチに下宿する話だけどなぁ。」
突然、博樹が話をもちかけた。
「別に俺は構わないぜ。」
「・・・・広島。」
「ただし、一つ条件がある!」
博樹はニンマリと笑った。
「お前がこのムラにやって来た理由を教えろ!」
509代打名無し:03/02/06 05:01 ID:LgUJh4RZ
もう、あと一行か二行で( ̄∀ ̄)にバトンタッチじゃいうに、なかなかメインで
登場できまへんなぁ(´Д`)

この前の澤ザクのスポルトもなかなか衝撃的だったっす。97年の印象が強いあまりに
まさかそのまったく逆パターンを見ることになるとは。それがライバルってもんすかね。

>>500
シュルは金本寺の本尊だべさ。金本寺のシーンが出たら登場させてみるだよ。

>>504
すまんのぅ、今の「三本の矢」は出しようがないんよ。でも続編じゃ登場予定だず。
そういや、イガーは今まで一度も描いたことなかったなあ。モナはほとんどのネタに
うねりは「いざ鳴尾浜!」にちょこっと登場させたことはあるんだけどのぅ。
510代打名無し:03/02/06 11:17 ID:QGyPtal4
(- 鏡 -)「バイオリンが弾けないかも・・・」ウツダ
511代打名無し:03/02/06 14:17 ID:jQ42pwch
kakakak
512代打名無し:03/02/07 08:24 ID:iNTOSjhT
513代打名無し:03/02/07 18:26 ID:5hcIC2pE
514代打名無し:03/02/07 18:41 ID:evkkcpt7
(@ω@)「この話に酔っ払いの押しかけのおねえちゃんは出てくるんか?」
515代打名無し:03/02/08 10:27 ID:TyGE3nJV
60本打った時の西山のようにパワフルに保守
516代打名無し:03/02/09 00:21 ID:5HfH2ijU
517代打名無し:03/02/09 17:24 ID:5HfH2ijU
518代打名無し:03/02/09 23:02 ID:5HfH2ijU
519代打名無し:03/02/10 08:21 ID:eX0rNuoI
520代打名無し:03/02/10 17:25 ID:TFbzlv8Z
(´ゥ`)
521広島家の人々 南の島の竜宮城1:03/02/11 00:54 ID:rNwvTVIq
これは夢だ・・・ 夢であるに違いない・・・!

東京湾某波止場。
ここに一日の学校と仕事を終えた広島家の四男の貴哉が、今日もまた一本の釣り竿を持ってやってきていた。
緋鯉村で知り合った広池のおかげで技術学校に通うことになり、東京に上京して2年。
しかし広島家の財政の状況は相変わらず厳しく、最初は一人で下宿暮らしをしていた貴哉も、結局は広池の
家を間借りして住まわせてもらうようになっていた。
だが緋鯉村で出会ったとき独身だった広池も今は結婚している。新婚の奥さんが作ってくれる食事に手を
つけるたび、貴哉は申し訳なさで頭がいっぱいになった。だったらせめて食事のおかずくらい自分が調達
してこようと、こうしてやることを終えると波止場に向かって釣り竿を垂らしていたのだが、相変わらず
貴哉の腕前はほどほどで良いか悪いのかさっぱりわからないのだった。
「・・・でも、夜釣りもいいもんだよね・・・。」
どこかから流れ着いた流木を腰掛け代わりにして、貴哉はコオロギの音色をBGMに一人静寂の間を
楽しんでいた。

ポチャッ

竿が上下に揺れた。貴哉はあわてて釣り竿をあげた。
「・・・・・なんだ。またお前か・・・。」
少し肌が傷つき、むくんだふくらみかたをした河豚だった。
「今日はお前ばっかしか釣れないなあ。」
まるで緋鯉村の時代に戻ったような錯覚に貴哉は襲われた。それもなぜか同じ河豚ばかり貴哉の竿に吸い
寄せられるように食らいつく。
河豚の口から釣り針をはずし、貴哉は河豚のしっぽをつまみあげて、おどおどしながらビチビチ揺れる
河豚をジーッと見た。
522広島家の人々 南の島の竜宮城2:03/02/11 01:34 ID:rNwvTVIq
これも縁なんだろうか。こうも何度もボクの釣り竿に引っかかるなら、お前は広池さんの食卓の上に
のって食べられたいんだな。
貴哉はニッコリ笑って河豚を桶の中に入れた。
昔の貴哉だったら河豚を釣っても肩を落として海に戻しただろう。だが今の貴哉は河豚の味を知って
しまった。あれは大人の味だった。一度知ってしまったら病みつきになってしまう味だった。
あの味を是非広池さんにも体験させてあげたい。
貴哉は上機嫌で竿を片づけると、河豚の入った桶を両手に抱えて波止場を後にした。
こうして桶を持って歩いていると、河豚と一心同体で行動していた緋鯉村のときの自分がまた鮮明に
なってよみがえる。
「そうだ!」
貴哉はふところから昔浅井からもらったエサの瓶を取り出すと、指で中身をすくって桶の中の口元に
持っていってやった。豪州産の一口でも食べるとブクブク太る秘蔵のエサである。
「・・・・・おかしいな。」
河豚はおびえて、必死になって貴哉の指先から逃げようとする。
「これはお前の好物じゃないのか?」
だが河豚は桶の中を逃げ回って決して口をつけようとしない。
どうも勝手が違う。貴哉は首をかしげて、仕方なくエサをひっこめた。
「そういえば・・・。」
ここは緋鯉村ではなかった。いつも河豚をさばいてくれる兄の竜士や浅井、町田がいない。
「!」
そうだ、一人心当たりのある人物がいた。この前貴哉にハガキをくれた料亭長谷川の若旦那なら
絶対河豚をさばくことができるはずだ。
「よし!善は急げだ!」
貴哉は釣り竿を背中に背負ったまま、長谷川の滞在する宿舎に向かって駆け出していった。
523広島家の人々 南の島の竜宮城3:03/02/11 02:26 ID:rNwvTVIq
「もしもし、そこな青年。」
突然、通り沿いに店を開く老女の占い師に貴哉は声をかけられた。
「はい」
なにやら異様な雰囲気で老女は貴哉を見つめる。どんよりしたその場の空気に思わず貴哉が
ジリジリと後ずさったとき
「女には気をつけなされ!そなたに女難の相がでておるぞ!」
しわがれた声と共にものすごい勢いで貴哉は胸元を指差された。桶の中の河豚は猛スピードで
あたふたと旋回する。
「女 難 の 相 ?」
「ああ。あとは水にもなるべく近づかぬことじゃ。お主は相当強い邪気におかされているようじゃ。」
プッと貴哉は吹きだした。
「おばあさん、いくらなんでもそれはあんまりですよ。」
しかし老女は深刻そうな表情でマジマジと貴哉を見つめ説教をはじめる。
つきあいきれなくなって貴哉はまだ説得を続けようとする占い師をおいて長谷川の宿舎に
向かって走りだした。
「こらっ、待ちなされや。せめてこのお札をお守り代わりに持って・・・」
しかし老女の声はもはや貴哉の耳に入っていなかった。

突然目の前に現れた客人に料亭長谷川の若旦那は目を丸くして、しかし支店を任せたライバル
竜士の弟に敬意を表して、暖かく貴哉を宿舎の中に招き入れた。
世の中の不景気と裏腹に料亭長谷川は順調に経営が上昇し、今度東京出店も視野に入れて
長谷川は下見と称してしばらくの間東京に滞在していたのだ。だが挨拶状代わりに送ったハガキで
まさか当の本人が訪ねてくるとは。しかも
「なぜ河豚・・・?」
524広島家の人々 南の島の竜宮城4:03/02/11 03:04 ID:rNwvTVIq
他においしい魚もいっぱいあるのになぜわざわざ河豚を食べたがるのか。不思議そうに長谷川は
貴哉と桶の中の河豚を見比べて首をかしげた。
「いつもボクがお世話になっている広池さんに是非一度河豚を食べてもらいたいんです。
でも東京で河豚をさばいてくれる知人といったら、長谷川さんくらいしか思いつかなくて。
お願いします。この河豚をさばいて刺身にしてもらえますか?」
ようやく納得して長谷川はポンと手を叩いた。
「だが、ここは宿舎で道具の一式はみな仕事場に置いといたままなんだ。今すぐさばいて
欲しいのなら一度仕事場に道具を取りにいかなきゃならないが、それまでここで待っていて
くれるか。」
貴哉はコクンとうなずいた。
長谷川は笑って部屋の隅に置いてある小振りの壺を持ってくると貴哉の目の前に置いた。
「これは。」
「日本酒。酒は全然問題ないんだろう?」
喜んで貴哉は盃に入れてゆっくりと味わいはじめた。
「よかったら、その酒も持ち帰っていいよ。」
太っ腹な長谷川の声が心地よく聞こえる。
「そういえば、さっき途中で変なおばあさんに会ったんですよ。」
「ほぉ。」
「ボクに女難の相があると真剣な表情で説教をはじめるんですよね。あと水にも近づくなとかいって。」
長谷川はクスクス笑いをこらえていた。
「長谷川さん!」
貴哉は大声をあげてぷくぅと頬をふくらませた。笑いながら長谷川は貴哉をなだめる。
目をすわらせて貴哉はもう一度ふところから豪州産のエサを取り出すと桶の中に指を突っ込んだ。
525広島家の人々 南の島の竜宮城5:03/02/11 03:46 ID:rNwvTVIq
河豚はぐるぐる貴哉の指から逃れようと必死になって右往左往する。
「ゴラァ!食べろっていってんだよ!なんで逃げんだよ!」
やっきになって桶の中で指をかき回していた貴哉は、とうとう河豚のしっぽをつかみ、
桶からつまみあげてしまった。
「随分と傷ついた河豚だな。肌がボロボロじゃないか。」
長谷川の言葉に貴哉はコクンと頭をさげる。
「これはよっぽど海でひどい目にあったのかもしれないな。」
「こいつばかりボクの釣り針に何度も引っかかったんですよ。」
長谷川は顎に右手をおいてじっくりとビチビチ揺れる河豚を見た。
「貴哉くん、さっきの女難の相の話だがあれはもしかしてこの河豚に関わりのあることかもしれないな。」
「へっ?」
貴哉もマジマジと問題の河豚を見た。
「女難の相に水に釣りだろ。水は女性の意味もあるってことを貴哉くんは知っているか?
あと釣りが関わるなら昔から竜宮城の話がある。」
「竜宮城・・・。」
「貴哉くんも浦島太郎の話や海幸山幸の話は知っているだろう。あそこで浦島太郎は最後にどうなった?」
「玉手箱をあけておじいさんになってしまった。」
「あれは竜宮城の乙姫に精気を抜き取られたんだよ。海幸山幸の話も似たようなものだ。
釣り針を探しにいった山幸が海の娘に惚れられて海中で結婚することになる。男が海の中に
ひきずりこまれたと解釈しても問題ない。」
「じゃあボクも海の中にひきずりこまれるかもしれないからおばあさんが注意した・・・」
「さあ。それがあてはまるのかどうかは知らないが、この河豚を見てみろよ。このボロボロの肌。
こいつっこそ竜宮城で何かいい思いをしてきたんじゃないか。」
「・・・・・・。」
526代打名無し:03/02/11 04:59 ID:rNwvTVIq
514のチワワにこたえて唐突に別物の番外編。
「三本の矢」から8年後。「桃源郷」と同じ時間設定。
メインででてくる予定のなかった貴哉と河豚の物語。
ついでにハセガーも登場させたで〜。
これは今日中に完結予定。すぐに「三本の矢」に戻ります。

ではタイムオーバーですで、まずはこの辺で・・・
岡上の病気が心配じゃ(つД`)
527代打名無し:03/02/11 05:28 ID:vWCkKi79
半リアルで見てました。とりあえず

「何 故 河 豚 ?」

タイムリーネタどうもです。笑いました。
528代打名無し:03/02/11 08:55 ID:TshJgC2F
(*@ω@)「ウマー」
(@ω@)「ていうことは俺もそのうちに(略」
529代打名無し:03/02/11 16:37 ID:uyf9BkS9
「東京出店」が「東出店」に見えた(鬱
530広島家の人々 南の島の竜宮城6:03/02/12 01:58 ID:xeaoPMzx
「それに河豚って東京湾で釣れたか・・・?」
「・・・・・・。」
貴哉は河豚を元の桶の中に入れた。
「じゃあ長谷川さんはこの河豚は南の竜宮城から帰って東京湾に流れ着いたと・・・。
でも・・・竜宮城って一体どんなところなんだろう?」
「そりゃあ豪華な食事と綺麗なフリフリの服を着たお姉さんたちが列になって踊って媚を売って
いたせり尽くせり酒池肉林の世界なんだろうな。」
「フリフリ・・・松竹レビューガール!」
長谷川は頭を抱えた。
「お客さん、もう時間も時間ですからね、ええ、まあなんていうんですか、そろそろ布団を敷きたいと
思いまして・・・と、あらぁ!」
襖を開けて用件を繰り出そうとした宿屋の主人は、部屋の一角で盃を放さず始終飲み続けている
貴哉の姿に驚きの声をあげた。
「なんだ。そちらの部屋でお泊りの客は2名様だったのか。」
そして浴衣を2着取り出すと貴哉に手渡す。
「あ、あの別にボクはここに泊まるつもりは・・・。」
しかし宿屋の主人は「まあまあ」と強引に貴哉に受け取らせると、押し入れに向かって布団を
敷きはじめようとした。そこで貴哉が片手にもっている日本酒の壺に目がとまる。
「長谷川く〜ん、また玄関で無理矢理貢物を受け取らされたのか。そういうときは
「いいかげんにしてくれよ。僕にもデモクラシーがあるんだ」ということも必要なんだぞ。
それにボクがそんな子が宿の入り口にいるのを見つけたらグワーッとパワーでピシッと
追い返してやるから。ちゃんと一言いいなさい。」
何いってるんだ、このおっさん? 貴哉は酒で朦朧となった頭でペラペラしゃべりまくる
宿屋の主人を見た。それにこの宿屋の主人どこかで見たことがあるような気がする。
着ているハッピもどっかでさんざん見たことあるような・・・。
それに長谷川さん。仕事道具を取りにいくといっていつまでここにいるつもりなんだ?
531広島家の人々 南の島の竜宮城7:03/02/12 02:39 ID:xeaoPMzx
「!」
いつの間にか部屋から長谷川の姿が消えている。
「あれ? 長谷川さん!長谷川さん!」
あわててよろめきながら長谷川を探す貴哉の姿に目もくれず、宿屋の主人は布団を2組
敷き終えると笑顔で一礼して部屋から去っていった。
「あ、あのですね〜!」
宿屋の主人の後を追いかけようとした貴哉はつまずいて宿屋の主人が閉めたばかりの襖に
顔面から勢いよくぶつかった。相当アルコールの強い酒を長谷川は貴哉に渡したらしい。
しばらくの間貴哉は床に突っ伏したまま身動き一つとれなかった。
「プップクプー!」
部屋のどこかから声変わり前の少年の声が突然聞こえてきた。
「プップクプー・・・?」
どこかで聞いたことがある言葉だ。貴哉は頭痛のとまらない頭を左手で抱えてなんとか起きあがった。
と、目の前に腰蓑を巻いた土人の格好をした小人がいる。
「プップクプー!」
貴哉は目を疑った。輝裕の姿かたちをした小人である。それも今の輝裕でなく子供時代の輝裕なのである。
「プップクプー(・ε・)!」 
小人の輝裕は右腕を掲げて貴哉にむかって口を尖らせてみせた。そのうち小人の輝裕は一人だけなく
二人三人と増殖して腰蓑を揺らしながら土人のダンスをはじめる。
「プップクプー(・ε・)!プップクプー(・ε・)!プップクプー(・ε・)!プップクプー(・ε・)!」 
「フゴー フゴー 泣ぐ子はいねがぁ〜」
いつの間にか輝裕ばかりでなく尋常小学校で一緒だった栗原まで小人の土人ダンスに加わっていた。
「な、なんで栗原まで・・・」
貴哉は何がなんだかわからなくなっていった。
532広島家の人々 南の島の竜宮城8:03/02/12 04:04 ID:V0s2cxIX
ビチャッ
桶の中の河豚が小人の輝裕たちの土人ダンスにあわせて尻尾を振りはじめた。
「まさか・・・!」
貴哉は桶の河豚にむかって突進した。
長谷川はこの河豚は南の竜宮城から帰ってきたのかもしれないといった。そして今、目の前で小人の
輝裕たちが土人ダンスを繰り広げている。そして喜んで尻尾を振る河豚。
輝裕たちは一斉にストローを持ちしゃぼん玉を吹きはじめた。部屋中あふれんばかりにしゃぼん玉が
乱れ飛ぶ。
これが南の島なのか・・・。これが竜宮城なのか・・・。
「お、同じ竜宮城なら土人ダンスより松竹レビューガールにしてくれぇぇぇぇ━━━━━━!!」
悲鳴のような声で貴哉は絶叫した。
ビクッと河豚の身体が固まった。貴哉はそのまま倒れピクリとも動かない。
しばらくして規則正しい寝息が部屋に響きわたった。完全に貴哉は酔いつぶれていた。
だがすっかり貴哉はある言葉を忘れていた。老女からいわれた「女難の相」というあの言葉を・・・。


「ん?口に何か入ってきた・・・?」
妙な感触と味に、貴哉はうっすらと目を開けて周りを確かめようとした。
「!」
誰かとキスをしている。しかも相手は口うつしで強引に何かを貴哉に入れようとしている。
この味どっかで味わったことがあるな・・・。えーっと、これは・・・これは・・・。
─── 浅井さんからもらった豪州産の秘蔵のエサ・・・
あわてて相手を押しのけて貴哉は起き上がろうとした。しかしものすごい力で貴哉はもう一度
身体を床に押しつけられた。息もできぬほどに部屋は酒の匂いが充満している。そして土人ダンスの
ときと変わらずシャボン玉があたり一面に飛んでいる。そして・・・
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ━━━━━━!!」
泣き声に近い貴哉の悲鳴があがった。
533広島家の人々 南の島の竜宮城9:03/02/12 04:50 ID:V0s2cxIX
トドのように巨体の女がピンクのラメとフリルのついたレオタードを着て、今にもこっちに
飛びかからんばかりに目をうるませて腰を揺らしている。それも一人ではない。二人いる。
「しょ、松竹・・・レ、レビュー・・・ガールが・・・。」
貴哉は必死になってその場から逃げようともがいた。しかし縛りつけられているのかなかなか
床から身体がはなれてくれない。それも床だと思っていた木目の肌さわりは実はまな板らしい。
トドピンクたちが包丁を手に持った。
「い、命だけは・・た、たすけて・・・。」
なまめかしく腰を振りながらトドピンクたちはにんまりと笑った。そして部屋の隅にある
酒の壺を手にすると全部貴哉の身体にぶちまける。
貴哉の目が点になった。トドピンクが壺の底を見せる。

“ワタシを全部飲んで・・・”

─── は、長谷川さん・・・。
「そ、それは長谷川さんが飲むものだったんでしょう。ボクじゃありません。人違いです。
あなたたちのお目当ては長谷川さんなんでしょう?じゃあ長谷川さんのところにいってくださいよ〜!」
泣いて貴哉は頭を下げて懇願した。だが相手はまったく聞く耳を持とうともしない。
申し訳程度に着ていたフリフリの衣装を脱ぎだして、肉にまみれた身体をあらわにし、
媚を振りまきながら貴哉に近づいてくる。さながら地獄絵図だった。貴哉はまな板の上の河豚だった。
貴哉は声を出して泣いた。
「ごめん・・・ごめんね河豚。お前もこんなつらい思いをしてきたんだね。」
トドピンクがまな板の貴哉の上にのしかかる。
「ワタシと寝て!」
ブルブル貴哉は首を横に振った。いつの間にか着ていた浴衣を横いっぱいにはだけさせられる。
「じゃあワタシが食べてあげる!」
トドピンクは頭上にかかげた包丁を力まかせに振りおろした。
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
534広島家の人々 南の島の竜宮城10:03/02/12 05:23 ID:V0s2cxIX
「・・・・・・お、おい、貴哉くん!貴哉くん!」
「ん・・・。」
誰かにゆすられているような感覚にハッと我にかえり、貴哉はおそるおそる目をあけてみた。
長谷川が心配そうに肩をつかんで揺らしている。
「は、長谷川さん・・・。」
ホッと胸を撫でおろしたと同時に安心感から貴哉はポロポロと涙を流して長谷川に抱きついていた。
「お、おい。一体何があったっていうんだ?」
事情がさっぱりわからず、首をかしげて長谷川は貴哉の気がおさまるのをじっと待っていた。
「あれ?布団がひいてない・・・。」
「布団。なんだそりゃ?」
「長谷川く〜ん、また玄関で無理矢理貢物を受け取らされたのか。そういうときは
「いいかげんにしてくれよ。僕にもデモクラシーがあるんだ」ということも必要なんだぞ。
とかいっていた宿屋の主人がボクの分まで布団をひいて浴衣を渡してきたんだ。」
「はあ・・・。」
長谷川はまったく心当たりがないようだった。
「じゃああれも夢・・・。」
「そうそう。貴哉くんから頼まれた河豚の刺身。どうだ?これなら見栄えもよくて食べやすいだろう。」
透き通るように薄く切られた河豚の刺身が花びら状に小皿に飾りつけられている。
長谷川は鼻高々に貴哉の目の前に小皿を見せつけた。だが貴哉の身体が真っ白に固まる。
「貴哉くん?」
取るものもとりあえず貴哉は部屋から猛ダッシュで飛び出していった。
「お〜い!これはどうするんだよ!」
長谷川の声も貴哉の耳には届かなかった。貴哉は胸の動悸と震えを必死に抑えながら広池の家へと
全速力で駆けていった。
535広島家の人々 南の島の竜宮城11:03/02/12 06:03 ID:V0s2cxIX

あれからしばらくの間貴哉は寝込むようになり一週間たっても布団をかぶってプルプル震えていた。
「貴哉くん・・・?」
広池が心配そうに貴哉の部屋にやってきた。
「長谷川の若旦那さんがこの前ウチにやってきてね、貴哉くんから頼まれて河豚をさばいたから
是非広池さんが食べてください。と小皿に綺麗にのせられた河豚の刺身をおいていったよ。」
「・・・・・食べたの?その河豚。」
「ああ。とても美味しかった。ありがとう。ごちそうさま。」
「・・・・・・。」
布団の中からグスッと鼻をすする音が聞こえた。
「さあ、いつまでも昼間から布団にもぐっているわけにもいかないだろう?せっかくの天気だ。
一緒に近くの通りまで散歩に行かないか?」
まだ布団の中で貴哉はもぞもぞしていたが、ポンと軽く広池に布団を叩かれてやっと「うん」と
小さな声で返事をした。
536広島家の人々 南の島の竜宮城12:03/02/12 06:04 ID:V0s2cxIX
「でも本当にあの河豚は美味しかったの?変なお酒のような味がしなかった?」
「酒?ああ、そういえば長谷川の若旦那が河豚の刺身のほかに酒が入った壺も置いていったな。
貴哉くんの飲みかけだとかいって。」
「え゛?」
広池はクスクス笑っていた。
「随分強い酒を飲まされたもんだな。あれは泡盛だよ。」
「泡盛・・・。」
沖縄・・・。イヤな予感がした。
「ねえ、広池さんは竜宮城と聞くとどんなイメージを思い浮かぶ?」
「竜宮城?唐突に一体どうしたんだ? うーん、そうだな。竜宮城と聞くと優しそうな乙姫を
まず思い浮かぶかな。」
「それだけ?」
「それだけって。ああ、これかぁ!」
広池はニッコリ笑って一枚の切符を貴哉に手渡した。
「河豚をごちそうになった御礼に。前から一度見てみたいといっていたんだよね。
松竹レビューガール。貴哉くんのいう竜宮城ってこれだろう?」
「sfヴぉいp@うdjgtrぃけうjvwcgsljgbvcljsgcbxlsb!!」
貴哉の口から声にならない悲鳴があがった。
「お、おい?」
広池の制止をふりきって脱兎のごとく貴哉はその場から逃げ去っていった。

以後二度と貴哉が河豚を口にすることはなかったという・・・
                    
                                 ── おわり ──
537代打名無し:03/02/12 06:13 ID:V0s2cxIX
何とか2日間で完結できた。短編もまだ書けたことにホッ。
しかもギャグネタも久しぶりでござんすわいな。
ここでは河豚はあくまで魚だから、貴哉に河豚の身代わりをさせてみますた。
しかし貴哉中心になるとほのぼのになるのは何故だろう何故だろう。
少々ヤバめに見える部分もあるんすがまあ大目にみてくりゃれ。

>>527
その台詞を生かすために設定にちと苦労しますた(~_~;)

>>528
まさかのぅ〜(w

>>529
東出店はございませぬが、プップクプー土人ダンスで(・ε・)を
登場させてみますた。
538代打名無し:03/02/12 20:15 ID:s3tm4hEs
ワロタ
539代打名無し:03/02/13 01:51 ID:W6tfV//4
h
540代打名無し:03/02/13 01:52 ID:W6tfV//4
541代打名無し:03/02/13 01:52 ID:W6tfV//4
ghh
542代打名無し:03/02/13 08:20 ID:JkUo4/Zp
543代打名無し:03/02/13 09:44 ID:vts+Vu/o
(@ω@)「河内は思い込みが激しい悩める青年って感じやね」

(@ω@)ノ「という訳で次は団栗菓子屋の人々など」

・・・嘘ですスイマセン
544代打名無し:03/02/14 04:46 ID:DZei25F5
545代打名無し:03/02/14 08:18 ID:t8d31h4C
546代打名無し:03/02/14 16:03 ID:/4bArTmu
547代打名無し:03/02/14 20:02 ID:r8dKyNeK
548代打名無し:03/02/14 20:46 ID:GQr/d05L
549代打名無し:03/02/15 17:40 ID:j6IZKiGH
ぱそこん移転作業でご無沙汰しておりやす。
目処がついたら、過去ログ倉庫うぷと続きをここに連絡しますだ。
550末永オタ:03/02/16 10:49 ID:eLRU88C9
紅白戦実況スレのお知らせ
http://jbbs.shitaraba.com/anime/105/seijyou.html
↑これはTOP
http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=105&KEY=1045359965
↑今日の実況はこちらでお願いします。
551代打名無し:03/02/16 20:14 ID:xrN9XGbP
捕手しておこうと。
552代打名無し:03/02/16 23:26 ID:70GA+/hg
ホシャシャシャシャー
553代打名無し:03/02/17 06:00 ID:JSMtR6M3
554代打名無し:03/02/17 17:11 ID:u4NUXwrY
555代打名無し:03/02/17 23:41 ID:0nIzCZgC
556代打名無し:03/02/18 05:12 ID:7bqvE3O2
過去ログ倉庫入り口のページの更新をしますた。
「南の島の竜宮城」のフォローエピソードを入れてありやす。

続きは今日の夜うぷ予定。
557代打名無し:03/02/18 09:24 ID:Dkew8u3I
(★_★)「またあぶないシーンって一体・・・・・」
(@ω@)「栗坊が渋皮煮されるんか?」
(θ⊇θ)「皮をむかれる、と」
(@ω@*)「いやらしわ〜」

(丶# ̄栗 ̄)
558代打名無し:03/02/18 21:32 ID:2KNqRG3/
559広島家の人々 三本の矢44:03/02/19 04:36 ID:684ZVVdT
ハッと澤崎は息をのんだ。
「言っていたな、東京だってそんなに良いところじゃない。東京で何かあったのか?
それでここに来たのか?」
ジーッとしばらくの間博樹の顔を見つめていた澤崎はクスッと笑うとコクンとうなずいた。
「・・・・・・?」
ますます意味がわからなくなった。博樹は首をかしげて笑って先に駆け出していった澤崎の
後をあわてて追いかけていった。

「俺の居場所・・・・・・。」
通りの石垣の陰からずっと一部始終を見ていた人間がいた。
竜士は自分の目の前を右から左へ駆け去っていく澤崎と博樹の姿を朦朧とした目で見つめて
いた。続いて弟の貴哉と輝裕が二人に追いつこうとテケテケと走りすぎていく。
輝裕たちの姿が見えなくなってから、竜士は道に降りたった。
父の浩二と佐々岡の爺が見送っていた方向をじっと見る。そこには・・・誰もいなかった。
泣きそうな表情で遠くかすんで見える広島家を睨みつけると、竜士は大声をあげてまた
別方向の小道に消えていった。



ギィー バッタン  ギィー バッタン
ここちよい水流の流れと共に水車の輪が回転する。それに合わせて車輪の軸と連動した
石臼が穀物の粉をゆっくりとひいていく。
佐々岡の爺は、広島家から持ってきたざるに入った皮をむきたてのエンドウ豆を、
石臼の中に入れた。
「・・・・・・ゴクッ」
水車小屋の天井から小さく生唾を飲む音がした。
だが佐々岡の爺はそれに気づくことはなかったらしい。
鍵を取り出して水車小屋の戸を閉めると、そのままふもとに降りていった。
560広島家の人々 三本の矢45:03/02/19 05:45 ID:WB0LKfo8
佐々岡の姿が消えたと同時に天井がガタガタと揺れ、一人の少年が床にストンと身軽に
飛び降りた。
「うわぁ、エンドウ豆だぁ!」
少年はすぐさま石臼の中からまともな形のエンドウ豆を取り出すと、ムシャムシャ片っ端から
腹の中にかきいれていった。
「おっと、全部食べちゃ明日のおまんまがなくなる。」
少年は大切にボロボロの巾着袋にエンドウ豆を入れると、天井の梁によじ登って簡単に
水車小屋の崩れかけた土壁の穴から外に抜け出した。
「これで3日間は腹の足しになるかな・・・。」
少年は何度も何度も巾着袋をのぞきながら、安堵の笑みをもらした。
「強い子さなるんだべ〜」
前に注意も払わずエンドウ豆ばかり見ていたせいか、いきなり少年は目の前の訛りだらけの
大柄な少年に真正面からぶつかった。一方的に少年だけが地面にひっくりかえる。
巾着袋に入れられたエンドウ豆が一斉に地面に散らばった。
「!!」
あわてて少年はエンドウを拾い集め、もともとキツイ眼光をもっと鋭くして栗原を睨みつけた。
「エンドウ・・・」
「こ、これは俺のもんだぞ。絶対お前になんかやらないからな!」
少年は一粒も栗原に取られないよう猛スピードで飛び散ったエンドウ豆を巾着袋の中に入れて
いく。
「フゴー・・・」
栗原は自分の足元に転がったエンドウ豆を拾って、少年に差し出した。
「まんずええエンドウ豆だべ。」
予想もしない栗原の行動に少年は目を点にして、しばらくの間固まっていた。
「おめさの名は・・・?」
いかつい顔なのか人なつこい顔なのか、ゴリラのようにも見える栗原にまだ警戒感を
抱きながらも少年は自分の名前を名乗っていた。
「横松」
561代打名無し:03/02/19 05:47 ID:WB0LKfo8
やっとこさ横松登場。(丶 ̄栗 ̄)もいよいよメインになっていく。
本編で二人の役どころが何だったか。これで先の展開も見えてくるっしょ。

>>557
エロイのぅ・・・。
562代打名無し:03/02/19 09:04 ID:rw8lZp24
(*‘ 沖‘)「マロンちゃんだー」ワーイ

横松は覚えてるけど、栗が本編のどこに出てるのか忘れたので
読み直してみます。
563代打名無し:03/02/19 12:31 ID:/Y5fyJuP
捕手
564代打名無し:03/02/19 21:52 ID:7oh4DY0K
565代打名無し:03/02/20 00:00 ID:HcVO49cq
566代打名無し:03/02/20 12:23 ID:az/UiBn9
567代打名無し:03/02/21 00:00 ID:W/YpXl8+
568代打名無し:03/02/21 09:06 ID:yiQ9OtXw
569代打名無し:03/02/21 15:06 ID:tsbSn/sA
570代打名無し:03/02/21 21:40 ID:W/YpXl8+
571代打名無し:03/02/21 23:53 ID:1XCD+3S8
572代打名無し:03/02/22 09:05 ID:vTR3SLS9
573代打名無し:03/02/22 18:53 ID:QVzByavL
574代打名無し:03/02/23 08:53 ID:92KKKcYe
575代打名無し:03/02/23 11:29 ID:feBxpG7i
今日続き更新予定。
過去ログ倉庫は事情によりしばらく更新できんかもです・・
576代打名無し:03/02/23 19:59 ID:7OJCMcEn
577代打名無し:03/02/24 00:29 ID:fC11lL0f
|ε(゚)ノ アンコロモチ クエ ミ●
578代打名無し:03/02/24 15:56 ID:NMEHXDKa
期待sage
579代打名無し:03/02/24 17:25 ID:CQY8dDbO
捕手
580代打名無し:03/02/24 20:10 ID:o4mfyfof
(丶 ̄栗 ̄)「おめの名前は?」
( ̄△ ̄)「・・じゅりあ・ろばーつ」
(丶 ̄栗 ̄)
( ̄△ ̄)「お前は?」
(丶 ̄栗 ̄)「さかぐづけんず・・・」
( ̄△ ̄)
581代打名無し:03/02/25 00:24 ID:e3dYGuvq
ホシュ
582代打名無し:03/02/25 00:41 ID:1JcNYE7b
すんまへん。うぷ予定を今日中に変更させていただきやす。
もちっと待ってくらさいm(_ _)m

>>580
あはははははははは(藁
583代打名無し:03/02/25 16:12 ID:r9LDM36H
(・ ε ・)「わたし待〜つ〜わ〜♪」プップクプー
584代打名無し:03/02/26 00:34 ID:ifCARPip
とりあえずsage
585代打名無し:03/02/26 00:38 ID:7lTgZ3e5
>>584
煤i;シ中シ)ノ「そこのお兄さん!IDが!IDがカープ!」スゲー
586広島家の人々 三本の矢46:03/02/26 01:58 ID:ViTkYw+l
栗原は鷹揚にうなずくと手のひらにあるエンドウ豆を指さした。
「おめはメンズルの法則ば知りねえがらなか?}
「め ん ず る ?」
頭の中を?マークいっぱいにして横松は首をかしげた。しかし栗原はそこでニッコリ笑うと
意気揚揚とエンドウ豆片手にメンデルの法則について説明しはじめた。
とんでもない奴につかまってしまったかもしれない。横松は心の中で舌打ちしたが、
好奇心にもまけて、訛りで半分何をいっているかわからない栗原の講義をいつのまにか
熱心に聞き入っていた。
「んだば、こんエンドウで“えでんす”のすぐみがわがんべ。ええエンドウ豆と悪いエンドウ豆。」
「だったら良いエンドウ豆がいいよ。良いエンドウ豆を食べるとどうなんの。」
「ええエンドウのえでんすがよごまづの中に入るんだす。」
「良いエンドウのえでんす・・・。」
さっぱり意味がわからなかったが、それでも良いエンドウ豆を食べる効能はうすうす横松にも
理解できた。どうやら良いエンドウ豆は自分に新しい能力をわけてくれるらしい。
「ありがと!」
横松は栗原からエンドウ豆を受け取ると、ニッと笑ってその場から駆け去っていった。
栗原も満足そうに横松の後姿を見送っている。
「栗〜〜!」
後方から切羽つまった様子で自分を呼ぶ貴哉の声が聞こえた。
「ウヂ!」
栗原は笑顔で後ろを振り返った。
「ウヂがおずえでぐれた勉強が役にたっだべさ。」
「それどころじゃなくて!」
栗原のもとに駆け込んだ貴哉は深刻な表情で栗原の両腕をゆすった。
「栗のところへ渡すつもりだったエンドウ豆のほとんどが盗まれちゃったんだ!」
「・・・・・・。」
「あれは栗の家が出稼ぎで売りに行く大事なエンドウだったんだろう?」
「・・・・・・・・。フゴー」
ぼんやりと栗原は横松が去っていった方角をもう一度見つめた。
587代打名無し:03/02/26 02:02 ID:ViTkYw+l
(ヽ ̄栗 ̄)の方言に思ったより手間取った(汗
やっぱむずいなあ。続きは起きたらすぐにまた書きます。

今夜は一旦ここでm(_ _)m
588代打名無し:03/02/26 08:56 ID:4AhLFdPs
(★_★;)「おいおい、じゅりあ・ろばーつって子最悪じゃねえか」
(@ω@)「栗坊どないすんねん」
589広島家の人々 三本の矢47:03/02/26 15:57 ID:jpCbLkAm
「えでんす、えでんす、えでんす♪」
実態のさっぱりわからない言葉を口ずさみながら、横松は雑木林を通り抜けて村のはずれの
今にも崩れ落ちそうなあばら家にもぐりこんだ。
緋鯉村に流れついて数ヶ月。やっとのことで見つけた大切な寝ぐらである。横松はエンドウ豆が
入った巾着袋を天井の梁の上に隠すと、ある農家からくすねてきた藁束を抱きしめてゴロンと
横になった。
「村上のおっちゃん、元気かなぁ。」
飢饉で横松が生まれた村全体が飢え死にしそうな状況の中やってきた人買いの村上は、
米一表で幼い横松を村から買い上げた。こんな村にいて一緒に餓死するくらいならと、
村の人々は一縷の希望をたくして横松を人買いの村上に渡した。
村上は気のいい老人で、横松を我が子のようにかわいがってほうぼうの村々に連れていって
くれた。
「おっちゃんは俺をどっかに売らないのか?そうしないとおっちゃんも金に困るんだろう?」
心配になって横松が尋ねても、村上は屈託のない笑顔で無言で首をふるばかりだ。
そのうち二人は緋鯉村に足を踏み入れた。そこではじめて村上は横松をここに置いて、
一人違う場所へ別の用事で出かけることをつげた。
「ここで・・・俺一人で?」
「大丈夫だ。お前ならちゃんと一人で生き抜いていける。」
「なあ、村上のおっちゃん。いつか必ず俺を迎えにきてくれるよな。俺ずっと待っているからさ。
なあ、おっちゃん!」
村上は横松の頭をやさしくポンポンと叩いた。
「ワシが迎えにくる頃には、お前はもう緋鯉村にすっかり馴染んでおるじゃろうて。」
「・・・・・・。」
横松は床に無造作に散らばっている藁半紙に手を伸ばした。
「めんずるの法則・・・か。」
なにやら手習いの字を書き並べた紙のようだった。さっき自慢げにメンデルの法則を教えた
栗原はきっと毎日ちゃんと学校に通っているんだろう。
「・・・・・・俺も学校に行ってみたいな。」
横松は小さな声で呟いた。
590代打名無し:03/02/26 19:50 ID:a9u4SX5v
------ --------------------- -- ------ -------
591広島家の人々 三本の矢48:03/02/26 19:56 ID:TjROVFV4
ガタッ

突然、あばら家の入り口がガタガタ音を立てて激しく揺れた。あわてて横松は藁を頭からかぶって
小屋の隅っこに隠れた。
「・・・エンドウ豆がバレたか・・・。」
しかし中には意外な人物が入ってきた。
─── 女・・・・・。
続いて若い男があばら家の中に入ってくる。女はまだ少女のような幼い顔立ちで、しかし非常に
思いつめた様子で着物を一枚一枚脱ぎだしていく。
横松は大きく目を見開いて、目の前で繰り広げられる光景を信じられないものを見るように
震えて凝視した。その時思わず小さな声が漏れてしまった。
「誰だ!」
男がスクッと立ち上がって、すぐさま藁の中に隠れていた横松を見つけるとズカズカ歩み寄って
いった。横松は藁を握りしめながら必死に相手の男を睨みつけていた。
「ガキがこんなところにいるもんじゃねぇよ。」
キッとキツい眼光で睨み上げて、ここは俺の家だと反論しようとした横松の胸元に冷たく硬いものが
突きつけられた。
─── 銃だ!
サーッと冷や汗が流れた横松を鼻で笑って、男は猫のように横松の襟首を掴み上げると
入り口まで引きずり、ポーンと外へほおり投げてしまった。
容赦なく横松は上半身から地面に叩きつけられた。
「だ、だから、そこは・・・」
クルッとすぐに振り返って、俺の家だと抗議しようとした横松の声がとまった。
相手の男は銃を持っていた。これ以上反抗したら何をされるかわかったもんではない。
でも他に行くところがない。やっと見つけた寝床、中には大切なエンドウ豆も隠してある。
横松は少し離れた大木からおずおずとあばら家の様子をうかがったり、おそるおそる家に近づいて
中をのぞくと同時に猛ダッシュでその場を離れたり、何とか事態を回収しようと一人右往左往して
いた。
592広島家の人々 三本の矢49:03/02/26 23:42 ID:uKNhU//M
横松は少し離れた大木からおずおずとあばら家の様子をうかがったり、おそるおそる
家に近づいて中をのぞくと同時に猛ダッシュでその場を離れたり、何とか事態を収拾できないか
一人右往左往していた。

「爺ーー!」
栗原を連れて全速力で広島家に舞い戻った貴哉は、裏の土間で餅をついている佐々岡の爺を
見つけると、あわてて栗原の腕を引っ張って佐々岡の爺の前につきだした。
栗原はショボンと大きな身体をうつむかせてそのままデクの棒のように突っ立っている。
佐々岡の爺はすぐに事態を把握した。
「爺、家に少しエンドウ豆があまっていたら、栗に分けてやってもいい?このままじゃ栗の家も
一家離散になってしまうよ。」
佐々岡の爺は無言でうなづくと、物置の奥の棚からザルを取り出してきた。
「大した足しにならないかもしれませんが・・・。貴哉坊ちゃん、そこの柱の釘に水車小屋の鍵が
かけてあります。今なら誰も使ってないでしょう。二人で行って粉にしてきなさい。」
貴哉の表情がパッと笑顔にかわった。
「ありがどさまッス」
栗原は涙ぐみそうになりながら丁寧に頭を下げた。
「さ、栗。日が暮れる前にさっさと粉にしてこようよ。」
貴哉はザルを持って一足先に駆け出していく。栗原は深々と佐々岡の爺に一礼してから
急いで貴哉の後を追いかけていった。

ギィー バッタン  ギィー バッタン
水車小屋の鍵を壁にかけると、貴哉は早速ザルの中のエンドウ豆を石臼の中に一挙に入れた。
「でもどうしてだろう。ちゃんと水車小屋に鍵もかけているのに、最近ここで作物が盗まれる
事件が頻発しているんだ。どこかこの小屋を出入りできる抜け道でもあるのかな。
でも、せっかく一生懸命作った作物を最後の最後で掠め取るなんて許せないな・・・。」
栗原は黙って石臼の中のエンドウ豆を見つめていた。
「栗?」
気になって貴哉はボーッと固まったままの栗原に声をかけた。
593代打名無し:03/02/26 23:48 ID:uKNhU//M
実家のパソコンじゃあ目が疲れて文章を書くのに集中できん・・・(泣
完結に向けてのキーワードがやっとちらほらと登場しはじめますたが
さて。

じゅりあ・ろばーつはこれからしばらくの間大活躍っす。
594代打名無し:03/02/27 00:22 ID:66VJGYKg
(丶T栗T)「さがぐつけんずはすんげえうれすいべ・・・・・・・・・」
595代打名無し:03/02/27 10:31 ID:QMjDBbPV
(・ ε ・)
596代打名無し:03/02/27 22:53 ID:UeHWA1v5
597代打名無し:03/02/28 00:14 ID:Ng1m+UCC
598代打名無し:03/02/28 12:20 ID:DeqHmsGC
599代打名無し:03/03/01 00:33 ID:CE110cHz
600代打名無し:03/03/01 01:12 ID:fk8Oj5GF
600ゲット!
601代打名無し:03/03/01 15:36 ID:y7thm9ag
602代打名無し:03/03/02 00:03 ID:gOAazipO
603代打名無し:03/03/02 12:04 ID:gOAazipO
ホス
604代打名無し:03/03/02 21:41 ID:u5/9mdHI
605代打名無し:03/03/03 00:29 ID:AWfmkYao
606代打名無し:03/03/03 15:58 ID:Iy47buUc
607代打名無し:03/03/03 21:44 ID:gtrsEtnt
過去ログ更新しますた。
608広島家の人々 三本の矢50:03/03/04 02:11 ID:tPqNN554
「ん」
貴哉の呼びかけに反応して栗原はニッコリ笑ってみせた。
「ウツのおかげで盆の支払いが無事に済みそうだず。」
貴哉はホッと胸をなでおろした。
「良かった。ベチだけじゃなく栗まで緋鯉村からいなくなっちゃったらどうしようかと思った。」
「・・・・・・。」
栗原ははにかみながら、また石臼に視線を戻した。
「今年もしこたま小作農が離散するでねか?」
「うん・・・。」
貴哉は顔を曇らせた。
「栗の出身の東北に比べたらまだマシらしいけど、緋鯉村も決してゆとりのある状態じゃない。
今年も娘を売る小作農が続出しているよ。弟の輝裕が通う尋常小学校からも女生徒が
どんどん消えている。ボクが通う高等小学校からもね・・・。」
「せっがぐ高等小学校さ通いながらいだますぃ。」
貴哉は無言で石臼から引き出されたエンドウの粉を布の袋に入れていった。
「んだども、生ぎていげっだけまだ幸せだべ。」
「栗・・・。」
「緋鯉村はええ村だず。おらとおっかあは緋鯉村で生かすてもらたんべさ。」
「・・・・・東北の飢饉、相当深刻な状態なんだってね。新聞で読んだよ。」
栗原は静かにうなずくと、貴哉から布の袋を受け取った。
「んだば、こでえに暮らすていげてウツに勉強さ見でもろて、これ以上望んだらバツが当たるべ。」
栗原の頭の中に、あの時メンデルの法則を教えた横松の姿が浮かび上がった。
「勉強・・・か・・・。」
「んだ。ウツはおらだちの学年の一番の希望だべ。遠ぐさ行っでしまっだベツもおんなじ気持ぢ
だべ。」
「ベチ・・・。」
その名前を口に出したまま、貴哉は固まってしまった。
609広島家の人々 三本の矢51:03/03/04 02:59 ID:tPqNN554
栗原はフフンと笑って布の袋を貴哉の目の前に掲げた。
「ウツは、なしてエンドウ豆ばわざわざ粉さするが知りねえがらなか?」
貴哉は首を横に振った。
「これは飢饉のときの最後の非常食だず。」
「・・・・・・!」
「こうすてとうほぐの人だちは生きのびていったのす。」
「栗・・・。」
栗原はニコッと笑ってエンドウの粉が入った袋をふところに入れた。
「さっ、家に帰るべ。」
水車小屋の入り口に栗原が手をかけたとき
「栗!」
糾弾するような貴哉のキツい声があがった。
「フゴー・・・。」
栗原はぼんやりと振り返った。ハッと我にかえって、あわてて貴哉はアタフタとうろたえた。
「い、いや・・・あ、あの・・・、く、栗が な、何か隠し事をしてないかと思って・・・。」
ボーッとしばらくの間貴哉の表情を見ていた栗原は、明るく
「んね」
と答えた。
610代打名無し:03/03/04 03:10 ID:tPqNN554
相変わらず(丶 ̄栗 ̄)の山形弁に苦しむ。
「ち」はだいたい「つ」に変換した方がよい。
となると、ウチベチがウツベツになる。で、いいんだろか(´Д`;)
どうも九州弁に比べてニュアンスがわかりづらい・・・。
次回ゥが再登場。そしてィが初登場。横松の行動もわかってきて
漠然としていた物語の包囲網が少しは狭まってくるはずやが・・・。



板違いの話題じゃが・・・
ここ以外に常駐している時代劇板で大友宗麟のドラマ化を知る。
だったらさがぐつけんずに立花宗茂を演じて欲しいと書いたら
見た目は賛同してもろた(つД`) 見 た 目 を の ぅ。

ちなみに立花宗茂とは九州の伊達政宗みたいな人でおじゃります。
611代打名無し:03/03/04 16:11 ID:PEl2r6z9
612代打名無し:03/03/04 19:31 ID:/it4BNK0
(丶 ̄憲 ̄)(丶 ̄栗 ̄)

(@ω@;)「どっち?」
613代打名無し:03/03/05 01:19 ID:Z6SLrmE4
614代打名無し:03/03/05 15:24 ID:CaEz8a5y
615代打名無し:03/03/05 16:26 ID:lTUCEs7A
616代打名無し:03/03/05 17:19 ID:l76lrHKG
ん 肝炎
617代打名無し:03/03/05 23:11 ID:ko1s0NEQ
618広島家の人々 三本の矢52:03/03/05 23:17 ID:TURqX9RW
女が戸口に手をかけ、音も立てず閉めると人目を避けるようにそそくさと小走りに去っていく。
「やっと帰ってくれた・・・。」
横松は木陰でホッと胸をなでおろして、男もいつあばら家から去ってくれるか、今か今かとじっと
ひざまづいて待っていた。だが、いつまでたっても戸口が動く気配がない。
だんだん泣きそうな表情になって、それでも横松は同じ場所から男が去ってくれるのを待っていた。
いつしか空は暗くなり、横松の周りでコオロギが涼しげな鳴き声をあげ、ホタルがぼんやり光を
灯しながら飛び交うようになる。男はまったく動く様子がなかった。そのうちあばら家の中から
小さな明かりが洩れるようになる。
「このまま居座るつもりだ!」
カァッとなって横松は木陰から飛び出し、あばら家に向かって突進した。相手が銃を持っていても
構わない。なんとしても自分の居場所とエンドウ豆を取り返さなくては。
正面きって入り口の戸から入るのは怖い。どこか抜け穴があったら、そこから中に入って男に
威嚇する。
横松は無我夢中であばら家の周りをぐるぐる回って、適当な壁穴を見つけるとそこからスルリと
中にもぐりこんだ。
男は横松から奪い取った藁束を枕にフテ寝していた。横松は天井の梁の上に置いた巾着袋を
ふところに入れると、おそるおそるしのび足で男のもとに近づいていった。
あと5歩で男にたどり着こうとしたときだった。
「!」
いきなり男が飛び起きて横松の胸元を強くつかみあげた。反動でエンドウ豆が床に一面に
散らばる。
「なんだ、またお前かぁ!」
男は舌打ちするようにツバを横に吐いて、横松を突き飛ばした。
もんどりうって横松は床に倒れた。周りに埃でくすんだ床の色と場違いなエンドウ豆が転がって
いる。ハッと我にかえってすぐに横松はエンドウ豆を拾い集めようとした。その腕を間髪おかず
男はつかみ、逆の字にねじあげる。
「このエンドウ豆・・・お前が盗んだものだろ。」
「・・・!」
「それも、これは広島家が育てたエンドウ豆だ。」
619広島家の人々 三本の矢53:03/03/05 23:58 ID:TURqX9RW
横松は力いっぱい腕を振り下ろして男の手から逃れた。
「だったら何だってんだよ。ここは俺の家だ。これは俺のエンドウ豆だ。絶対他のヤツになんか
渡さないからな!」
「へぇ・・・」
男は片頬を上げて笑った。
「それは初耳だ。そういや最近この村でやたら農作物が盗まれているんだよな。
あれ、全部お前か?」
「えっ?」
「それで引導渡された小作農が続出しているんだよなぁ。稼ぎを失って一家離散に
追い込まれた家がな。」
「・・・・・・お、俺、そ、そんなに盗んでいないよ・・・。」
「そうだろうなあ。でも俺がお前を警察につきだせば一件落着。」
「・・・・・・!」
「だってよ、その農作物盗んだのほとんど俺だもん。」
男はニッコリ笑った。
「さ、今なら見逃してやっからさっさとここから出ていけ。二度と戻ってくるな。」
男はエンドウ豆を拾って、横松の手をつかむと無理矢理それを握らせた。
横松は巾着袋にエンドウ豆を入れると、ジリジリと後ろにさがっていった。
しかし突然その足がピタッととまった。男は眉をひそめた。
「・・・・・・行くところなんかないよ。」
「?」
「ここは俺がやっと見つけた居場所だ。他に行くところなんかないよ。俺、他に頼れる人なんか
いないもん。村上のおっちゃんが帰ってくるまで俺一人で生きていかなきゃいけないんだもん。」
「・・・・・・。」
男から殺気立った空気が消えた。
「ま、座れ。」
620広島家の人々 三本の矢54:03/03/06 02:07 ID:VdeGUCBe
おずおずと半信半疑で上目遣いに横松は男を見た。
男はまた元のように藁束を枕に投げやりに寝転がってしまった。
「あ、あの・・・。」
男はまったく返事をかえさず、頭を両腕で覆って横になっている。そのうちポンと藁束が
横松に投げ与えられた。
「・・・・・・。」
藁束を抱きしめながら、横松はストンとその場に座った。男はそのまま寝てしまったらしい。
─── このままここにいて大丈夫なんだろうか。
もう一度横松は男に呼びかけてみた。やっぱり反応がない。
「・・・・・・。」
藁束を抱えたまま、横松はゴロンと横になった。
「・・・・・・明日、警察につきだすの?俺を・・・。」
やはり返事がない。不安がムクムクと頭の中にもたげてきたが、今のところすぐに
追い出されるということはなくなったらしい。一応このまま寝てしまおうと目をつむったとき
「・・・・・・出さねぇよ。」
ぶっきらぼうな男の声が聞こえた。ぴょこんと横松は飛び起きた。
「本当!」
あわてて藁束を持ったまま横松は男のもとに駆け寄った。
「ああ。」
男は起きていた。けだるそうに起きて横松にうなずく。
横松は歓声をあげて男にとびついた。男は面食らって無邪気に抱きついてきた横松を
見ていたが、やがて苦笑して横松の背中をポンポンと叩いてやった。
「俺、横松っていうんだ!」
パッと身体をはなして、満面の笑顔で横松は自分の名前を名乗った。
男は竜士と名乗った。
「俺、子分になるよ。竜士の親分。これから親分って呼んでいい?ねっ、竜士の親分!」
最初はアッケにとられて竜士は横松を見ていたが、そのうちクスクスと笑いがこぼれ、
腹を抱えて笑い出すようになっていた。
621広島家の人々 三本の矢55:03/03/06 02:12 ID:VdeGUCBe
「なんだ輝裕。まだそんなところにいたのか。さっさと家に帰らなねぇとお前の家の爺とかが
また騒ぎだすんじゃないか。」
カバンを取りに教室に戻った兵動はからかうように軽く言葉をかけた。
「うん・・・。」
物憂げに窓を見ていた輝裕は振り返ってコクンとうなずいた。
「あ・・・。」
教室にもう一人人間がいる。
「井生、お前まで残っていたんかよ。お前ん家のところ、今それどころじゃないんだろ?
大丈夫なのか。こんなところでのんびりしていて・・・」
あわてて輝裕は兵動の口をふさいで廊下まで引きずっていった。
「な、なな、なんだよ。俺、なんかまずいことでもいったか。」
「いったよ。」
口をとがらして輝裕はプイッと横をむいた。
「井生、もしかして学校をやめなきゃならないんだってさ。」
兵動はしばし呆然と輝裕の顔を見つめたあと、ドタバタ一回コケながらもあわてて教室に
戻っていった。
井生は兵動の姿に気づかず、ぼんやりとした表情で手すりに寄りかかって外の風景を見ている。
「・・・・・・。」
いい言葉が見つからず、兵動は黙ってその姿を見つめるほかなかった。後ろからこっそりと
輝裕が袖をひっぱる。うながされるまま兵動はその場を離れていった。
「つーことはあれか、井生のところもいよいよコレなんか。」
兵動は右手で首を切る真似をした。
「・・・うん。」
「あと半年で卒業だってぇのにな。なんとかなんねぇかよ。結果はともなってないが、
あいつほど熱心に勉強しているヤツはいねえぜ。」
輝裕は無言で井生の後ろ姿を見つめていた。
「・・・ねえ兵動。」
しばらくして、独り言のように輝裕は声をかけた。
「ん?」
「もう8月なんだよね・・・。」
「あ、ああ・・・。」
「これでみんなバラバラになっちゃうかもしれないんだよね。」
622代打名無し:03/03/06 02:20 ID:VdeGUCBe
あと一行で次の場面というとこで、行数制限にひっかかってしもた。

東出のことは本スレに意見を書いたんで、ここでは保留しやすが
しかし、いつでも結果を求められるものほど大変なものはないぜよ。
自分の性格とは共存せにゃならんからのぅ。一番はあまり思いつめずに。
といってそれができたら苦労はしないだよなぁ、これが(´Д`;)

( ̄∀ ̄)がやっと動き始めた。よし、これで転の部分突入か。
今月はほぼ毎日更新を狙ってみやす。

>>612
(丶 ̄憲 ̄)
いや、忘れてください。あっちでもマイナーみたいでレスがのびんのよ(つД`)
623代打名無し:03/03/06 09:06 ID:QDyZsGeZ

    ∧_∧        .∧_∧
  煤i丶 ̄栗 ̄)  煤i ̄憲 ̄ヽ)
   (      )    .(     )
   | |  |     | |  |
   (__) _)    (_ (__)
624代打名無し:03/03/06 20:00 ID:QwcqP2MQ
625代打名無し:03/03/06 20:00 ID:p+FzfLKd
 ( 八  )
 にっこり
  ヽ二/
                

  ↑
10秒以上見つめていると松井秀喜に見えてきます。


626代打名無し:03/03/06 21:49 ID:a2iDhh1B
627代打名無し:03/03/06 21:51 ID:6yyQ1jgt
628代打名無し:03/03/06 22:49 ID:1Sqiy0cD
629代打名無し:03/03/06 23:15 ID:XtVRSsYK
630代打名無し:03/03/07 15:29 ID:4CVqfwMV
 
631代打名無し:03/03/07 15:51 ID:7T/jThz+
sage
632広島家の人々 三本の矢56:03/03/07 22:30 ID:zXTTJ3il
これ以上兵動は返事をかえすことができなかった。



また、女があばら家にやってきた。戸口が開き、女が姿を現わすと、竜士は横松の襟首を
つまみ上げポーンと外に放り投げる。
同じことが何度も続いて、さすがに横松も慣れた。だが気になることもあった。
あばら家に現れる女が一人として同じ人間でない。必ず一回、それも皆一様に同じ表情で
現れ、あばら家の中に入っていく。
それは恋だの愛だのといった甘い関係とはまったく無縁の雰囲気だった。
たまに女が勝ち誇った笑みを浮かべてあばら家を後にすることがある。そんなときは竜士も
ニヤリと笑っていて機嫌よく自分が調達してきた食べ物を多めに横松に分けてくれたりする
のだった。
─── 一体どういう関係なんだろうか?
意を決して横松は竜士と女の関係について尋ねてみた。
竜士はクククッと喉の奥で笑いをこぼした。
「さあ、これからどうなるだろうなあ。」
「これからどうなる?」
竜士はケラケラ大声で笑いだした。
「横松、お前は俺がどこの人間か知っているか?」
竜士の真意がわからない。横松は困ったように首を横にかしげた。
「広島家といえばわかるか?」
わざと声をひそめて、からかうように告げる竜士に横松は腰を抜かして絶句した。
広島家といえば、緋鯉村きっての名家そして村長の家ではないか。
なんといえばいいのかわからず、横松はただ首を横にブルブル振っていた。
633広島家の人々 三本の矢57:03/03/07 23:07 ID:zXTTJ3il
「そ、俺はその広島家の落ちこぼれといったところだ。」
「その広島家の御曹司が緋鯉村の農作物を盗んじゃったの?」
「そうだよ。お前、なかなか頭の回転が速いじゃないか。」
竜士は指先でツンと横松の額をつついた。
「だって、それで一家離散に追い込まれた小作農が続出しているんでしょう?」
「そうだよ。」
相変わらず竜士はケラケラ乾いた笑いを浮かべる。
そして女が竜士の前に現れる。次から次へと違う女が・・・。
「ぁあああ!!」
横松の大声で柱がガタガタ揺れた。
「売られちゃうんだ。あの女の人たちはみんな売られちゃうんだ。」
「ご名答!」
竜士はニッコリと笑った。
「でもどうして? どうして売られちゃうから竜士の親分のところに来るの?
だって竜士の親分のことが好きで来ているわけじゃないんでしょ?
じゃあなんで・・・。」
竜士は笑いをおさめた。
「本音とタテマエさ・・・。」
「?」
「誰もが綺麗事ばかりで生きていけるわけじゃない。タテマエばかりで繕われた世間に
少しはあらがって復讐したくなる。俺はただその手伝いをしているだけさ・・・。」
「・・・・・・。」
「あいつらはわざわざここで金になる実を落としていくんだよ。」
634広島家の人々 三本の矢58:03/03/07 23:42 ID:zXTTJ3il
「あっ、サワ兄ちゃんだ!」
渡り廊下で兵動と会話を交わしていたところに、中学校の校舎から澤崎が現れた。
輝裕はパッと駆け出して澤崎に飛びついた。
「博樹兄ちゃんは?」
「大下先生に呼ばれて、今、教頭室にいる。」
澤崎はやさしく輝裕を受けとめた。
「大下先生?」
唐突な名前が出た。輝裕は首をかしげて、後ろの兵動に振り向いた。
しばらくして博樹が校舎から現れた。満面の笑みでVサインをしている。
「博樹兄ちゃん!」
博樹は輝裕のもとに駆け寄ると空高く輝裕の身体を掲げた。
「兄ちゃんな、来月高等学校に進学できるかもしれんぞ!」
「ホント? 博樹兄ちゃん!」
輝裕は笑顔で博樹に飛びついた。
「じゃあ、さっきの大下先生の話は・・・」
「ああ。飛び級の話だった。今の成績を維持できるなら半年早く高等学校を受験できると
大下から推薦を持ち込まれた。」
澤崎の表情がパッと明るくなった。
「お前の存在のおかげだよ。ムキになってお前に対抗しているうちに、いつの間にか外野を
無視して俺の成績は相当あがっていた。これが一人だったら悶々してジリ貧になっていたかも
しれない。」
澤崎は笑顔で首を横に振った。
「高等学校か・・・。」
ポツリと兵動がつぶやいた。
「お前たちもいつかは一緒に行くつもりなんだろう?」
「うん。兵動と約束したんだ。絶対一緒に中学校に行くんだって。」
輝裕はさとすように博樹に向かって口を強めた。
635広島家の人々 三本の矢59:03/03/08 00:44 ID:6aOH1NHm
コクンと兵動もうなずく。
「そうだな・・・。」
博樹は輝裕を床に下ろした。
「お前たち二人ならやっていけるかもな。ライバルがいるってのはいいもんだぞ。」
輝裕はしばらくの間ジーッと博樹の顔を見つめていたが、「うん」と笑顔で大きくうなずいた。
そこへ担任の三村が現れた。
「三村先生・・・。」
ニコニコ笑顔でやってくる三村に最初はただ見つめていた博樹だったが、あることに気がついて
力強い声で呼びかけた。
「先生が以前くださった三本の矢。あの矢の三本目の相手は澤崎でしょう。」
三村は目を大きく見開いた。
「ほぉ、どうしてそう思う。」
「澤崎がうちに下宿するようになった。下宿するようになったとすれば広島家の人間と数えても
いい。先生は最初に俺に矢をくれましたよね。そして弟の輝裕。広島家からもう一人高等学校に
いく人間はあと下宿している澤崎しかいない。この三本の矢は広島家から高等学校に進もうとして
いる人間を対象にしたものだった。そして澤崎が広島家で暮らすことになるのも先生の中では
最初から折り込み済みだった。どうですか。違いありませんか。」
三村はうんうんと満足そうにうなずいた。
「確かに三本目の矢は澤崎くんのものだ。広島の推理もなかなかいいところをついている。」
ホッと博樹は息をついた。
「だが、今のままではワシは三本目の矢を渡すつもりはないよ。」
「そ、それは!」
澤崎が甲高い声をあげた。
「それはボクを熱心に緋鯉村に誘ったのが広島家だから。それが理由じゃありませんか。」
驚愕して博樹は澤崎の方に振り返った。
636広島家の人々 三本の矢59.5:03/03/08 01:58 ID:6aOH1NHm
「確かに三本目の矢は澤崎くんのものだ。広島の推理もなかなかいいところをついている。」
ホッと博樹は息をついた。
「だが、今のままではワシは三本目の矢を渡すつもりはないよ。」
「!」
「そ、それは!」
澤崎が甲高い声をあげた。
「それはボクを熱心に緋鯉村に誘ったのが広島家だから。それが理由じゃありませんか。」
「!!」
驚愕して博樹は澤崎の方に振り返った。
「広島家って・・・。お前、広島家の誘いでここに来たのか?」
澤崎は無言でうなずく。いわれてみれば思い当たる部分がたくさんある。父浩二の度を越えた
上にもおかぬ澤崎へのもてなしぶり。佐々岡の爺の態度。それもこれも皆、父浩二が熱心に
澤崎を緋鯉村、広島家へ誘い出そうとした結果なのだとしたら納得がいく。
「俺を高等学校に行かせるためにここまでするか・・・。親父のヤツ・・・。」
「うぬぼれるな、広島博樹」
博樹の脳裏に冷や水が投げかけられた。冷たい視線で三村は博樹を見下ろす。
「お前一人のために緋鯉村全体が動くか。お前の父はお前の父親である以前に
緋鯉村のムラ長だ。」
その場で博樹は固まった。
637広島家の人々 三本の矢60:03/03/08 01:59 ID:6aOH1NHm
「さて澤崎くん、キミはなぜ緋鯉村にやってきたのか。なぜ広島家に滞在しているのか。
もう一度考えてみるがいい。キミは何を求めてここにやってきたのか。そして我々はキミに
何を望んでいるか。」
澤崎は静かに三村を見据えた。
「・・・・・・先生が前におっしゃっていた夢は叶えられましたか?」
「ああ。キミがいてくれたおかげで半分は実現できた。そして次はキミの番じゃ。」
「それが叶えられたときに・・・」
「三本目の矢をキミに渡そうじゃないか。」
呆然と博樹は二人を見つめた。
しばらくの間澤崎は考え事をするように下をうつむいていたが、クッと顔をあげると
落ち着いた声で「はい」と返事をした。
三村は笑顔でうなずいた。
「広島」
三村は博樹の方に顔を向けた。
「もう一度三本の矢の意味を考えてみるといい。お前も広島家の長男ならわかるはずだ。」
絶句したまま博樹は三村の後ろ姿を見送った。
638代打名無し:03/03/08 02:05 ID:6aOH1NHm
また後半でテンポ配分を間違えたようで少々修正しますた。でも自信がないっす。
包囲網は狭まりつつあり、やっぱり( ̄∀ ̄)が動くとテーマが
見えやすくなって書きやすいなと・・・。
しかし、そろそろ( ̄粗 ̄)も再登場させないことにはこれじゃ四兄弟だす(汗
639代打名無し:03/03/08 07:59 ID:sHf3qnbq
(@ω@)「オパーイ兄ちゃんの行動が謎だな」
(@ω@)「じゅりあ・ろばーつと複数の女・・・・・・・」
(*@ω@)「乱れとるわ〜」

(# ̄∀ ̄)つ<<<<<<;@ω@)
640代打名無し:03/03/08 21:09 ID:y7Np6w0D
641代打名無し:03/03/08 23:00 ID:o5x8xOrI
642代打名無し:03/03/09 12:01 ID:4ImH2THl
http://www.nikkansports.com/news/entert/p-et-tp0-030309-09.html
(丶 ̄栗 ̄)「すんさいんなする前に演技力ばつけらんなねべしたー」
643代打名無し:03/03/10 02:19 ID:jTTU4c0d
過去ログ倉庫更新しますた。
登場人物紹介も早くなんとかせんと・・・

>>639
オパーイ兄ちゃんの真意は次回わかる・・・予定。

>>642
月9でもはじめて見てみますだ。そんなに下手なんすか・・(汗
そういや(丶 ̄栗 ̄)もオフ番組はまだギコチなかったのぅ。
644代打名無し:03/03/10 08:39 ID:WlWKmVBo
(シ中シ)「要潤よりはましかと・・・・・・・・」サカグチノコトネ

(@ω@)「なんとなーくオパーイ兄ちゃんの真意が分かったような気がするで」
(@ω@*)「んでもやっぱいやらしわ〜」

=======(# ̄∀ ̄)つ〓●=======(ノ;@ω@)ノ
645代打名無し:03/03/10 17:16 ID:xGRv3jQX
646代打名無し:03/03/11 00:52 ID:6PbNyypc
(@ω@)「今日は行進するかしら」ドキドキ
647代打名無し:03/03/11 12:00 ID:rlmWNzOa
(@ω@)「気をつけ!」
648代打名無し:03/03/11 13:36 ID:AmvRgd8J
(@ω@)ビシッ
649ノムケン:03/03/11 14:55 ID:bxv0O/xH
?
650おお、チワワがいっぱいじゃあ!:03/03/12 03:31 ID:ESr8UcFM
過去ログ倉庫更新。スマソ・・・今日はこれで限界やった。
水曜の夜はなんとしても続きを(´Д`;)

651代打名無し:03/03/12 08:51 ID:3JlOXa8S
(・ 鏡 ・)「時代劇ハアハアのスケさん、来年の大河ドラマのキャスティングについて一言おながいします」
652ノムケン:03/03/12 09:41 ID:yAY209kB
お好み焼き
653代打名無し:03/03/13 00:48 ID:VlLZoUzh
654代打名無し:03/03/13 12:15 ID:8qB1Vb0B
655代打名無し:03/03/13 20:18 ID:VlLZoUzh
656代打名無し:03/03/14 00:49 ID:ZNnwALvZ
(‘ε’)「きょうはあたらしいおはなしあるかなあ」
(‘ 沖‘)「マロンちゃんが楽しみ」
从丶`_ゝ´)「粗いマダー?」
657広島家の人々 三本の矢61:03/03/14 01:03 ID:O/a2gruU
帰り道、博樹はもう一つの現実とぶつかる羽目に陥った。
見覚えのある小作農たちが博樹たちの行き先をふさぐように待ち構えている。
輝裕はブルッと震えて博樹と澤崎の後ろに隠れた。
「あ、あの・・・みなさん、どうかしたんですか?」
事情がまったくつかめず、とまどいながら博樹は小作農たちに声をかけた。
「どうしたじゃねぇよ!」
一人の中年の小作農が怒りもあらわに博樹の胸倉をつかんで強く揺さぶった。
「あんたの弟の竜士のせいで、ワシらが最後に手にするなけなしの銭すら
奪われちまったんだ!一体どうしてくれる。広島家が責任もって代わりに払ってくれるのか!」
「!」
澤崎があわてて両者の間に入ってその場を収めようとした。
「・・・広島家の旦那さまが何も対応してくれねぇんだ。」
別の小作農がポツリと呟いた。
「ワシらが何度お願いしても大らかに「まあ、ええことよ」。ついカァッとなって竜士がやった行状を
ぶちまけても、「考えられん!」とその場でただ怒ってみせるだけ・・・。」
「一体、その竜士くんが何をやったというんですか?」
小作農たちが告げる内容に、博樹の顔色が真っ青になった。
「広島家の旦那さまも罪つくりなお人じゃ。ワシらの息子や娘っ子に「これからは学問の時代じゃ」
と半ば強引に学校に通わせて、その結果がこれじゃ。ワシらは娘らを学校なんぞというもんに
通わせて、広島家の息子に生活のための金を奪われて・・・なんじゃ、ワシらは広島家にいいように
弄ばれているだけやないか。」
輝裕は身体を震わせて澤崎の後ろにしがみついていた。
「な、あと話をわかってくれそうなんは博樹坊ちゃん、あんたしかおらんのよ。学問も結構じゃ。
じゃが緋鯉村のことも少しは気にかけてくれ。旦那さまがアテにならんのなら、せめてあんたが
あの竜士をとめてくれんじゃろか。」
最後は元庄屋と小作農の関係。小作農たちも一歩引いて最後の望みのように手をすり合わせて
博樹に頼み込んでその場を去っていった。
「・・・・・・。」
博樹の拳が怒りでつぶれんばかりになっていた。
658広島家の人々 三本の矢62:03/03/14 01:27 ID:O/a2gruU
「・・・・・・。」
博樹の拳が怒りでつぶれんばかりになっていた。
「ぁあああああああああああ!!」
叩きつけるように博樹はカバンを地面に投げ捨てた。
「竜士兄ちゃん・・・。」
澤崎は黙って荒れる博樹と泣きそうな輝裕を見つめていた。



「ただいま、爺・・・。」
空のザルを抱えた貴哉が物置の戸を力なくあけた。
夕食用の野菜を見繕っていた佐々岡の爺は「おや、貴哉坊ちゃん」と明るい声で出迎えると、
そのまま首をかしげた。
「どうかしましたか? 貴哉坊ちゃん。」
「うん・・・。」
貴哉は米俵の上に遠慮がちに座った。
「爺に前から聞いてみたかったことがあるんだ・・・」
「おや、私に・・・?」
佐々岡の爺はニッコリ笑って、貴哉の向い側に座った。
「さて、何でしょう?」
「うん。あのね・・・」
おずおずと緊張しながら貴哉は質問を切り出した。
「まれびとって何?」
佐々岡の身体の動きが止まった。すぐ貴哉はそれに反応した。
「あ、あの・・・澤崎さんが来てから父さんや爺がたまに“まれびと”っていう言葉を澤崎さんに使って
いるでしょう? で、でもそのまれびとっていう意味が全然わからなくて・・・」
「・・・・・・。」
659広島家の人々 三本の矢63:03/03/14 02:45 ID:O/a2gruU
「澤崎さんが東京から来た人だから父さんや爺はあんな接待をしているの?
それを“まれびと”っていうの? 最近父さんや爺がやろうとしていることがわからないんだ。
だって澤崎さんにかけているお金をもっと他の人に・・・」
「お友達の栗に・・・」
「う、うん。みんなすごく困ってる。今年のお盆を乗りきれるかどうかわからないっていってる家も
たくさんある。盆に税金とか一年の現金の支払いがしなければならないんでしょう? お金を作る
ために自分は売られるっていいにきた女生徒もいた。みんな妙にさっぱりした表情をしていたけど
あれは・・・」
そのとき、玄関から激昂した博樹の怒鳴り声が納戸の中まで響き渡った。
「博樹兄さん!」
すかさず貴哉は立ち上がって玄関に向かった。
博樹は手のつけられない状態で浩二の名前を呼んでいた。
「なんじゃ・・・」
父の浩二は悠然と玄関に現れた。
「説明しろよ・・・。」
低く押し殺した声で博樹はじわじわとつめよった。
「何をじゃ。」
「今まで親父がやろうとしていたこと全部だよ。竜士のこと。澤崎のこと。なんでこうなるまで竜士の
ことをほおっておいたんだ。澤崎のことにしてもそうだ。なんだよ、あの仰々しい接待は!何の思惑
があってやっているのか知らんが、一言俺たちに話があってもいいだろ!」
浩二はウンウンと深くうなずいた。
「そうじゃのう。良かれと思うてこうしておったが、お前に何の説明もしなかったのはちとまずかった
かもしれんのぅ。」
その言い方が少しカチンときた。
「じゃあいえよ。一体あれは何なんだ・・・。」
「“まれびと”だからじゃ。」
660広島家の人々 三本の矢64:03/03/14 04:03 ID:O/a2gruU
貴哉がパッと外に飛び出していった。
「貴哉兄ちゃん!」
あわてて輝裕が後を追いかけて貴哉の服のすそをつかんだ。
「どこに行くの?」
「竜士兄さんを・・・探してくる。」
「!」
輝裕は「待って!」と大きな声をあげると、2階の部屋に駆け上って押し入れから“三本の矢”を
取り出すと自転車にまたがった貴哉の元に戻っていった。
貴哉は後ろにまたがる輝裕の手助けをするとペダルに力をこめた。
「貴哉兄ちゃんは竜士兄ちゃんがどこにいるか知っているの?」
「知らない・・・。でもこのままじゃいけないよ・・・。」
「・・・うん!」
輝裕は片手でしっかり握り締めていた矢をじっと見つめて、力強くうなずいた。



自室に戻った澤崎は改めて広島家から与えられた8畳の部屋の見回した。
「“まれびと”か・・・。」
今までちらほらと広島家で聞こえていた言葉だ。しかし今日面と向かって広島家の主の浩二に
告げられて、さすがに自分の気持ちの中で動揺が起こっていた。一般に書物で知られている
“まれびと”の言葉の意味で間違いないのなら、浩二は桁外れなことを自分に求めていることに
なる。そんなに自分は大した人間ではない。東京というキーワードがそれほど田舎では重大な
意味をもつのか。自分はその東京から半分逃げ出してここに来たといってもいい人間なのに。
661広島家の人々 三本の矢65:03/03/14 04:03 ID:O/a2gruU
あの震災が今まで頑なに信じていた価値観をぐらつかせた。そして目の前で見たあの事件が、
一体何を信じればいいのか何もかもわからなくさせた。それからよくいえば淡々と生きてきた。
それでも結果がついてきた。何の執着をしなくても毎日が続いていた。
なのに、なぜ今ここにいるんだろう・・・。何事にも悲壮感が漂うほど一生懸命になる緋鯉村の
何に惹かれて自分は迷い込んできたのだろう。旅人・・・。“まれびと”をこう呼ぶ場合もある。
だが浩二そして学校の大下教頭や担任の三村の目的は、とてもその程度とは思えなかった。
そしてもう一人・・・
「広島・・・竜士か。」
まだ出会ったことのない広島家の兄弟である。他の広島家の兄弟や小作農たちの話を総合して
澤崎はある種の不安に襲われた。その竜士と出会うことで無理矢理自分の気持ちに向き合う
ことになるのでないか。
銃を持った一人の青年が群衆の中を突き抜けていく。男は救いを求めていた。誰かに手を
さしのべてもらうことを懇望して悲鳴をあげた。しかしその声は雑然とした街の中であっという
間にかき消されていった。
追いつめられた男の眼の光がよみがえる。澤崎はゆっくりと目を伏せた。
662代打名無し:03/03/14 04:18 ID:O/a2gruU
ありゃあ、( ̄∀ ̄)の真意まで話がいってくれんかった(泣
なかなか粗い再登場にもなりませぬなぁ(´Д`;)
ピーコの采配うんぬんにこだわりを持ちつつある内容になりにけり・・・

次回すぐに(丶 ̄栗 ̄)登場。粗いも次回登場できるんでなかろうか。
ちょと某事件もふれてきますた。これで何の事件がわかった人、
かなりの近代史好きだす。

>>651
近藤勇が香取慎吾は別にかまへんよ。香取はさっさと役者に専念しろと思うていたから。
沖田=藤原竜也も許容範囲としよう。が土方はダメだね。軽すぎる。
去年の「壬生義士伝」で新撰組はもう満足じゃよ。今更新撰組・・・と思いながら、
いつの間にかハマらせてもろたのは脚本もさることながらキャスティングもピッタリ
あっていたと思うから。(永倉が魚(ヽ`・・´)に見えたのは気のせいか。)
と語りだすとあつくなってしまうので、この辺でm(_ _;)mスンマヘン

>>656
もうちっと待ってくらさい。ゴメソな。
663代打名無し:03/03/14 20:38 ID:d4h5rccu
664代打名無し:03/03/14 23:47 ID:9eIsK3f6
(@ω@)「メイクアップシャドウはやっぱり陽水がええのう」
(@ω@)「・・・大正の歴史、あんま覚えてないぞ、俺」マズー
665代打名無し:03/03/15 01:32 ID:0wLoTVOi
(´鶴`)「・・澤崎が回想してるのは虎ノ門事件ですか?」チガッテルトオモウケド・・
(´鶴`)「でもスケさんのいう某事件が分からない罠・・」
666代打名無し:03/03/15 08:29 ID:RLSb7/hb
(シ中シ)「226事件って・・・・昭和だっけ」
667代打名無し:03/03/15 12:00 ID:YkxjaLdO
668代打名無し:03/03/15 17:00 ID:g3d4iZV5
669代打名無し:03/03/15 19:37 ID:WAm/j3cl
670代打名無し:03/03/15 19:57 ID:EGk2i9w1
671代打名無し:03/03/16 00:31 ID:gJ5UvoOo
672広島家の人々 三本の矢66:03/03/16 01:18 ID:nJE1zsE6
周りを赤く染めて、夕日が山の稜線に消え去ろうとしている。
横松は藁葺き屋根のあばら家に申し訳程度に備えつけられた3畳ほどの天井部屋に横になって
隙間から夕焼けを飽きもせずじっと眺めていた。
「竜士の親分・・・・・・まだかな。」
いつもはだいたいお供を許してもらえるのだが、今日は絶対ここを動くなと強くいいきかせて
竜士はけわしい表情であばら家を後にした。こんな時は銃のことが絡んでいる。新しい弾を
譲ってもらうために街に竜士は出かけていったんだろう。そしてそういう時に限って身体に
どこか殴られたようなアザを作って帰ってくる。
「竜士の親分、もう銃なんていいよ。銃がなくても大丈夫だよ。」
横松が心配して説得しても、竜士を聞く耳を持たない。
天井部屋にはいつの間にか数枚の毛布が置かれてあった。そして一階の炊事場には釜と
その日まかなうための薪が・・・。みな、竜士がこのあばら家に住むようになってから揃えた
ものだった。
無邪気になついて頼ってきた横松を、竜士は本当にうれしそうにみずから世話をした。
そしてこのときが一番竜士はいい表情をする。緋鯉村に来てここまで親切にしてもらったのは
初めてだ。最初はうれしくて横松も何も考えず甘えていたが、そのうち疑問が生まれた。
なぜ竜士はここまでしてくれるんだろう。広島家には他に兄弟がいたはずだ。だったら自分だけ
じゃなく兄弟たちにも同じことをしてやればいいのに・・・。
竜士は自分を広島家の落ちこぼれだともいった。
「広島家の兄弟と仲が悪いのかな・・・。」
寂しいのだろうか。だからこうして緋鯉村や広島家に逆らう真似をしているのだろうか。
でもそれだけじゃないような気がする。ともかく竜士が求めているものに無意識のうちに自分は
応えていたらしい。それが何なのか。横松にはまったく想像がつかなかった。
ガタガタッと突然激しい音を立ててあばら家の戸が開いた。ハッと息をのんで横松は天井部屋から
床に飛び降りた。
傷だらけの身体を戸口に寄りかからせ、竜士がニヤリと笑っていた。
673広島家の人々 三本の矢67:03/03/16 02:25 ID:nJE1zsE6
「竜士の親分!」
横松はあわてて竜士のもとに駆け寄った。弾薬が竜士の手のひらからバラバラと床に落ちる。
いつもより身体の傷が多い。
「もういいよ!竜士の親分の身体の方が心配だよ!そんなに身体が丈夫じゃないって、親分
いっていたじゃないか。なのにどうして?なんで無理してこんなことをするんだよ!自分で勝手に
自滅しようとしているじゃないか!俺、親分の考えていることがわからないよ!」
竜士は黙って戸口に寄りかかったまま横松を見下ろしていた。そこで竜士を呼ぶ声がした。
「えっ?」
横松は反射的に声のする方へ振り向いた。女だ。よりによってこんな時に女が現れた。
シュンと肩を落として横松はあばら家を後にしようとした。が、ハッと思い当たってもう一度女の方へ
顔を向けた。間違いない。この女は前に一度竜士のもとを訪れている。
竜士も事態を把握したのだろう。遠く見つめるような視線で無言で女に顔を向けると静かに
うなずいた。
「横松、お前はこれを持っていけ。」
竜士は手に入れたばかりの弾薬を銃につめて手渡した。
「お、俺、銃の使い方なんか知らないよ・・・。」
「大丈夫だ。こうして銃を握った右手を左手で握りこむように包んでな、人差し指で一定の速度で
引き金を引く・・・」
ガクガク震えて横松は銃を手にした。
女と入れ替わるように横松はあばら家を離れていく。何か変化が起きていた。震える足を必死に
なだめて、横松はどこか安全に身体を隠せる場所がないか周りを見回した。
「!」
雑木林の向こうから人影が見える。まだ他に人間が・・・。バタバタと慌ただしく横松は繁みの中に
転げ落ちた。
674広島家の人々 三本の矢68:03/03/16 04:07 ID:nJE1zsE6
「フゴー・・・」
エンドウ豆の粉が入った袋を片手に持って、栗原は細くあてどもない小道を山奥に向かって歩いていった。
無事エンドウ豆の粉は街で高い値段で売れた。最初広島家に特別にエンドウ豆を譲ってもらった
時は、これでもお盆を乗り越えられるか微妙なところもあったが、予想以上にエンドウ豆の粉は
街でもてはやされ、儲け以外にまだ自分たちが食べる粉が手元に残った。
「ありがどさまッス」
栗原はエンドウ豆の粉と広島家に手を合せた。
そんな訳でもないが、行商の帰り道、ふとベチの家を訪ねてみようと足が自然いつもと別方向に
向かった。水車小屋で貴哉と交わした会話が頭の中に残っていたのも原因だったかもしれない。
「そでえにきにすことねぇべさ・・・」
栗原の様子を気にしながら貴哉は一つ一つ言葉を選んでいた。
─── だからさ、ウチはウチなんだって。ウチがやりたいようにウチの行きたいところへ
    行けばいいんだよ。
尋常小学校で一緒だった頃、悩みがちな貴哉に口癖に近いようにベチが励ましていた言葉が
よみがえる。
「んだども、でぎだら3人一緒に上の学校さ上がりだかったべ。」
最初から無理な相談だったが、それでも栗原は今はそれほど悲観していなかった。性急に
すべてを達成させようとしても出来ることと出来ないことがある。所詮自分は自分である。
だったらこうなった現実は受けとめて、自分のペースで自分の道を進んでいけばいい。
貴哉は気づいているだろうか。そしてこのムラからいなくなったベチは今頃どうしているだろうか。
「あんれまあー。」
ベチの家に灯りがついている。いつの間に新しい住人が住み着いたのだろうか。栗原は
目をパチクリさせて、まずはベチの家を覗いてみようと足を進めた。と、その時だった。
「!」
不意うちに真横から小さな物体が栗原に向かって突進してきた。
「あんぎゃああ」
栗原はもんどりうって地面に倒れた。間髪おかず相手は栗原の上にのしかかって、冷たい金属物
を栗原の額に押し当てた。
675代打名無し:03/03/16 04:27 ID:nJE1zsE6
(丶 ̄栗 ̄)再登場までは何としても今回あげなくちゃと思うて書きやしたが、
う〜ん、当初ギャグの予定だったこのシーン。話の流れで半分シリアスに
なっておりやす(汗
明らかに転の部分に入っていることはわかってきた。ちとホッとしますた。

>>(@ω@)
いや、知らなくても話はわかるように書きますけ、大丈夫っすよ。

>>(´鶴`)
おおあたり〜〜! 大正末期と銃でわかりますたか。
つまり某事件=虎ノ門事件だず。虎ノ門を知っていると話の展開(ネタ)が
もっとわかりやすくなると思いやす。犯人の親父さんとピーコ采配の
DQNぶりに何か通じるものを感じますてのぅ(´Д`;)

>>(シ中シ)
2.26事件は昭和11年。これが「桃源郷」の出だし部分の(’。’)さんと
輝裕の会話でらしき部分が登場しておりやす。

厳密じゃねぇが、一応実在の歴史年数とあわせて作っておりますのだ(汗
676代打名無し:03/03/16 11:14 ID:DR6MpmVA
ホシュ
677代打名無し:03/03/16 14:37 ID:nNx7dKM1
保守
678代打名無し:03/03/16 21:32 ID:cZRZlqAE
(@ω@)「んまっ!じゅりあ・ろばーつったら栗にセクハ(略」

(# ̄△ ̄)つ<;@ω@)
679代打名無し:03/03/17 11:30 ID:WcSJk9ar
ホシューリ
680代打名無し:03/03/17 20:32 ID:KtUGzk6q
ホシュール
681代打名無し:03/03/18 01:07 ID:sXo3bL7/
ホシューレ
682代打名無し:03/03/18 17:08 ID:knZvM62x
ホシューロ
683代打名無し:03/03/18 21:39 ID:sXo3bL7/
|ε(゚)「ホシュとは何なのか、開幕ホシュには誰がふさわしいのか。
    賢明な読者諸君は分かってくれたと思う。

|) ミ  サッ!
684代打名無し:03/03/19 09:34 ID:PFw9lU4l
ホシューラ
685代打名無し:03/03/19 22:30 ID:p1RY9MB8
(シ中シ)「ハセガー君大変ですねえ・・・」
(@ω@)「栗坊も調子上がらんし、じゅりあ・ろばーつはいつ上に来るんや?」
686代打名無し:03/03/19 23:01 ID:czZ8DYVS
(・ ε ・)「西山さん、はみ出てますよ
687代打名無し:03/03/20 00:26 ID:cxYLJV4V
スンマヘン(´Д`)
続き&過去ログ倉庫更新は3月20日(今日でんがな)の昼間の予定でごさいやす。
はぁ
688代打名無し:03/03/20 11:35 ID:domVY8Xa
ぽと
689代打名無し:03/03/20 20:07 ID:BKk3wkT7
りす
690広島家の人々 三本の矢69:03/03/21 02:03 ID:0BjdGCUg
「手をあげろ・・・。」
少年は押し殺した声で震えながら栗原に命令した。
「あ、ああああああ・・・」
無抵抗で両腕をあげて恐る恐る目を開けた栗原は、銃を持った少年と視線があった時、
思わず大音響のような声をあげてしまった。
「めんずるの兄ちゃん・・・」
横松も目を丸くしてアッケにとられて栗原を見つめる。
「おっと!めんずるの兄ちゃんはエンドウ豆を盗んで俺を捕まえにここに来たのか!」
横松はもう一度栗原の額に銃を突きつけた。栗原はあわてて首を横に振る。
「じゃあなんであの家を覗こうとするんだよ!」
横松のいおうとしている意味がわからない。栗原は困ったようにポツリと呟いた。
「・・・あれはベツの家だべさ。」
「ベツ?」
また、このめんずるの兄ちゃんは訳のわからないことをいう。横松も困ったように首をかしげた。
しかしとにかく竜士とこのめんずるの兄ちゃんとはまったく関係がないらしい。横松は銃を持つ
手に力を入れた。
「わかったよ、めんずるの兄ちゃん。めんずるの兄ちゃんのいうことを信じるよ。だけどこのまま
見逃して欲しかったからな・・・」
横松は言葉に力をこめた。
「俺の子分になれ!」
栗原は呆然と横松を見つめていた。横松は震える手で頑なに銃を栗原に突きつけている。
しばらくして栗原は小さくうなずいた。横松はホッとして銃を少しずつ栗原から離していった。
まだ手がぶるぶる震えている。銃を持った感覚がしない。と思ったとき、自然横松の右の
人差し指が引き金を引いていた。
「ぎゃぁああああああああ!!」
691広島家の人々 三本の矢70:03/03/21 03:20 ID:0BjdGCUg
派手派手しい銃声の音に
「横松!」
上着を肩にかけただけの竜士が血相を変えて家を飛び出した。
「ははははははははははははは・・・」
半分放心状態で笑いながら横松は涙を流していた。下敷きになった栗原はそのまま
目をむいて気絶している。栗原の頭が横たわったすぐ上の地面を弾丸がかすっていた。
「お、親分〜。銃が手から離れないよ〜。」
ペタンと栗原の身体の上に座り込んだまま、横松は腰が抜けていた。


栗原はベチの家の床に寝かされていた。上にはちゃんと毛布がかけられている。
やわらかいその感触に思わず力いっぱい抱きしめて、ハッと我にかえって栗原はうっすらと
目を開けた。
「あっ、目が覚めた。」
うれしそうな横松の表情が視界に入る。
「竜士の親分、めんずるの兄ちゃんが目を覚ましたよ!」
「そうかぁ。」
形ばかりの芋汁を作っていた竜士は、お椀に軽く注ぐと土間から床の上にあがった。
「フゴー・・・」
事情がよくわからず、ぐるりとゆっくり周りを見回してした栗原は、芋汁を差し出した竜士と
視線があうと、絶句してしばらくの間身動き一つとることができなかった。
「まぁんず、あんだぁウツの兄ちゃんじゃねべか!」
竜士は片頬をあげて笑った。
「ウツの兄ちゃん?」
横松は首をかしげた。さっきはベツの家といった。今度はウツの兄ちゃん?
「ウチっていうのは俺の弟の貴哉のあだ名だ。な、栗原。」
ドギマギしながら栗原はコクリとうなずいた。
692代打名無し:03/03/21 03:25 ID:0BjdGCUg
体調がいまいち良くなく、少し予定より遅くなってしまいやした(つД`)
こりで一眠りして完治するとええのぅ。
イヤーブックと黒田限定ユニが届いたのす。限定ユニは黒田のみもう売り切れ
だったすな。予想通りだった。

さて澤崎サイドに早めにストーリーの軸を戻さんといけん。それと粗い再登場。
693代打名無し:03/03/21 08:07 ID:KNo5RchH
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
乙です。
694代打名無し:03/03/21 08:19 ID:UAOta1ZI
(@ω@)「栗はなんだか運が悪いんやな」
695代打名無し:03/03/21 17:45 ID:bKULQN63
agen
696代打名無し:03/03/22 11:09 ID:LBUJLxGs
697代打名無し:03/03/22 19:11 ID:SVkx1tqZ
698広島家の人々 三本の矢71:03/03/23 02:05 ID:TgKNweZD
「んだども、なしてウツの兄ちゃんがこだなとこに?ここはベツの家だべさ。」
竜士は半分驚いた表情で目を大きくした。
「・・・そうか。ここが貴哉の友達のベチの家だったのか。」
「んだ」
今度は栗原は力強くうなずいた。
「ウツとベツがウチとベチ、めんずるの兄ちゃんはすっごく訛っているんだね。」
「そだなごというんでね!」
ムキになって栗原は横松に反論した。
「ということは、さっきのあいつとお前はまったくの無関係だったかもしれないってことか。」
「そういえば、さっきの女の人はどうしたの? いつもと違ってあの人、ここに来たの
2度目だったよね。」
「女の人?」
栗原は首をかしげた。
「ああ、あれは貴哉やお前と同級生だったな。ほれっ、やけにここがぼぉんと大きい娘っ子が
同じ教室にいただろう。栗原、お前覚えているだろう?」
「ぼぉん・・・」
思わず横松は小声でつぶやいた。カァッと栗原の顔が赤くなった。
フフフフフフッと竜士は含み笑いをした。
「だ〜いたいわかっちゃっただろ。そうだよ。アレをやっていたのが広島家やムラにバレたのさ。
さっきあいつがここに来たのはそれを俺に知らせるため。そして今、貴哉と輝裕が俺を探して
いるということもな。」
栗原は拳を強く握りしめたまま、床の上に正座していた。
「教えて欲しいだなっす。」
「ん?」
「なしてウツの兄ちゃんはこんげなことをすんべ。」
699代打名無し:03/03/23 09:11 ID:ZIncmNFr
(丶# ̄栗 ̄)「おらそだいなまっでねべ!むがすよりなまっでねべ!」
700代打名無し:03/03/23 22:22 ID:IN2kdz0j
701広島家の人々 三本の矢72:03/03/23 23:40 ID:K3hXuEt6
「・・・・・・。」
竜士の顔から笑みが消えた。
「ウツはまんず兄ちゃんのこどさ心配しただなっす。んだ、他の兄弟たちだで同じだなっす。
なのになんしてこんげなことをすんべ。」
竜士はその場にずっと突っ立っていた。
「・・・・・・竜士の親分。」
おずおずと横松が声をかけた。
「竜士の親分は前に誰もが綺麗事ばかりで生きていけるわけじゃない。あいつらはわざわざ
ここで金になる実を落としていくんだ。俺はただその手伝いをしているだけだっていっていたよね。」
「・・・・・・。」
「あの人たちはみんな売られていった。竜士の親分は他に復讐といっていた。あの女の人たちも
復讐のためにここに来た。じゃないとあんな表情はできないよ・・・。」
「・・・・・・。」
「それって竜士の親分の実家の広島家が絡んでいるの?広島家に反抗して竜士の親分はこういうことをしているの?」
栗原も険しい表情で竜士を見上げた。フッと竜士の口からため息が洩れた。
「栗原、お前の家は無事に盆は乗り越えられそうか?」
一瞬予想外の質問に栗原は面食らったが、すぐに真顔に戻って静かにうなずいた。
「そうか、それは良かった・・・。」
竜士はおだやかに笑った。
「・・・あいつらがなぜこんな行動をとったか。あいつらが売られる先がどこか栗原ならわかっているだろう。」
「・・・・・・・遊郭。」
「そうだよ。他に奉公先があるにも関わらず、あいつらの親は金銭に目がくらんで自分の娘をモノ
同然で女郎に売り飛ばしたんだ。それも時代が代わって新たな価値観が広まるにつれて、また
それが金の元になる。」
702広島家の人々 三本の矢73:03/03/24 01:47 ID:5fE9CwGk
「・・・・・・。」
「処女信仰ってヤツがな。」
アッ・・・と小さく横松は声を漏らした。
「ところが俺の親父が率先して緋鯉村の子供らをみな学校に通わせただろう。さあ、学校で女は
どうあるべきかと教わったか。結婚するまで清く慎ましく綺麗な身体でいるように。女郎になるなら
知らなくてもいいことを教わってしまった訳だ。売られるツラさは倍増する。たいがい娘を女郎に
売るような親は子供をたかりの対象にしか見ていない。売った後も何かと理由をいって遊郭から
金を借りては娘の借金の額を増やしていく。親のために金を稼いでやろうなんて献身的親孝行の
娘なんてお上が作った幻想だ。あいつらはみな親を憎んで憎みきっている。だが売られる事実は
変わらない。」
「だから竜士の親分のところへ・・・」
「どうせなら緋鯉村の名主のボンボンの方がいいってさ。俺で役に立つなら別に構わないといった
らさ、口コミで次から次へと。親父がぶちまけた壮大な妄想に巻き込まれたヤツを広島家の不肖
の息子がちゃんと尻拭いしてやってんだぜ。まあ結局は広島家の自作自演ということになるん
だろうがな・・・。」
竜士はまた渇いた笑いを浮かべ、ケラケラと笑いはじめた。
栗原はだんだんとうなだれてその場から動かなくなった。竜士は腰をかがめて栗原の顔を覗いて
みた。栗原はシクシク泣いていた。

疲れきった表情で貴哉は自転車をひいていた。後ろからトボトボと矢を両腕にもった輝裕が。
二人とも無言だった。風に揺られて稲がざわざわと音をたてる。
通りの向こうから栗原がやってきた。
「栗!」
貴哉がすぐにその姿を見つけて声をかけた。ハッと貴哉の声に気づいて栗原は顔をあげた。
「栗、どこかで竜士兄さんの姿を見なかったか?」
輝裕も駆け寄って心配そうに栗原を見上げる。栗原はじっと貴哉そして輝裕を見た。
「・・・わがんね。」
力なく栗原は首を横に振った。その表情はどこか虚ろだった。貴哉は目を伏せる。
そのまま栗原はその場を後にした。これ以上声をかけることもなく貴哉と輝裕もその場に立ち
止まっていた。
703広島家の人々 三本の矢74:03/03/24 04:49 ID:37Vn9v/h
真夏の日差しが容赦なく校舎の中を照りつける。
午前の授業が終わると、博樹はすぐに教室を飛び出して渡り廊下を駆け去っていった。
最近これが毎日の日課になっている。黙って博樹を見送った後、澤崎は博樹の分の弁当を持って
ゆっくりと席から立ち上がった。
だんだんわかってきた。何のために自分がここに呼ばれてきたのか。
─── どうしようか・・・。
逃げようと思えば逃げられる。だがこのまま緋鯉村と心中していいような不思議な気持ちに
澤崎は襲われていた。じわじわと見えない緋鯉村の毒に侵されていったのかもしれない。
「澤崎くん。」
渡り廊下で後ろから担任の三村に声をかけられた。
「三村先生・・・。」
三村は笑顔で西山堂の饅頭を差し出した。澤崎もニッコリ笑ってそれを受け取った。
「もうすっかり西山堂の和菓子の虜ですよ。」
「そうかそうか。」
三村は快活に笑った。
「ところでさっき広島博樹が大下教頭のところにやって来てのぅ、来月飛び級で高等学校に
進学することを辞退したわ。」
澤崎は驚きもしなかった。
「でしょうね。」
「で、キミはどうする?」
一瞬のためらいもなかった。
「ボクも辞退します。」
三村も当たり前に受け取った。
「だんだんわかってきたんですよ。ボクの役割というのがどんなものか。三村先生や広島家の
ご主人がボクに何を求めているのか。それにうまく応えられるかわかりませんが・・・。」
満足そうに三村はうんうんとうなずいた。
「だが一つ大切なことを忘れちゃいかんよ。ワシらは何もキミ一人を犠牲にするつもりはない。
キミの将来のことも十分に考えてやっているつもりじゃ。3人が3人とも希望をもてる先へすすめる
よう・・・」
「わかっています。」
704広島家の人々 三本の矢75:03/03/24 05:22 ID:37Vn9v/h
澤崎は声を荒げた。
「先生。この辺でハッキリさせましょう。三本の矢の3人目の人間は輝裕くんじゃない。最初から
先生が渡そうとしていた人物は広島竜士。そしてボクが会わなければならない人間も広島竜士。
強いていえば広島博樹ではなかった。違いませんか?」
三村は表情も変えなかった。
「ボクも含めて広島家の兄弟はみな大人たちの手のひらの上で転がされているだけかも
しれません。でもそれでもいいです。それでみんなが救われるなら。」
じっと三村は澤崎を見つめていた。
「澤崎くん、今日の授業が終わったら職員室に来なさい。」
「・・・・・はい?」
三村の口調が重々しいものに変わっていた。
「後で渡すものがある。」
「三本の・・・矢ですか・・・?」
三村はゆっくりとうなずいた。


校舎のはずれの書庫では、博樹が一人山積みになった和綴じの冊子と文書相手に格闘していた。
澤崎が扉を開けると、そのまま埃がものすごい勢いで廊下まで散らばっていく。
あきれ顔で澤崎は部屋を見回すと、一冊一冊本をどかしながら中に入っていった。
「どう?何か手がかりになるものは見つかった?」
「ああ、ぼちぼちな。」
博樹は満足そうに笑って、半紙にメモをしながら本の中身にあたっていった。
「さんざん親父たちがいっていた“まれびと”な、あれを最後にやったのは俺が物心つくかどうかの
頃でな、だから俺も一体どんなものか見当もつかなかったんだが・・・。」
博樹はページを一枚めくった。
705代打名無し:03/03/24 05:30 ID:37Vn9v/h
鯖移動で行数制限がゆるくなっとりましたなぁ(´Д`)
これなら一回ごと入れられる内容も増やせそうだべ。
次回粗いさん&住職登場。さ、これで5人兄弟になっていくなと。

他にも登場人物入れたいのはやまやまなれど、入れると収拾
つかなくなるで本流のみの進行で進んどりやす「三本の矢」。
対決軸もぼちぼち見えてきますた。テーマもじき見えてくるやろ。
706代打名無し:03/03/24 08:26 ID:lqGabs25
・゚・(丶つ栗⊂)・゚・ シクシクフゴフゴ
707代打名無し:03/03/24 23:53 ID:QE+DXE4f
708代打名無し:03/03/25 00:27 ID:tD6mbPo4
709代打名無し:03/03/25 00:36 ID:F7c5QLt3
710代打名無し:03/03/25 08:55 ID:5vkZpL+Y
711代打名無し:03/03/25 09:41 ID:pFeWyHPn
712代打名無し:03/03/25 21:05 ID:deNp8d9u
713代打名無し:03/03/25 22:12 ID:pFeWyHPn
714代打名無し:03/03/25 22:46 ID:tMfvTINO
715代打名無し:03/03/25 22:49 ID:pFeWyHPn
やっておしまいなさい
716広島家の人々 三本の矢76:03/03/26 02:45 ID:sVzFf5k9
「ま、いうてみれば新しい血を入れるといったところか。」
「新しい血・・・」
澤崎は埃で視界が曇った窓のそばの机の上に座った。
「ウチのような外の交流の少ない閉鎖的なムラがジリ貧になった時、起死回生でやる神頼み
みたいなもんだ。ムラに刺激を与える起爆剤を外界からわざわざ招き入れて歓待する。」
「・・・・・・。」
「俺が5年になった時、澤崎がこの中学校にやってきた。確かにお前の存在で俺はここまでこれた。
親父や大下教頭、三村が目論んでいたように起爆剤としてのお前の役割は半分は達成された
んだ。でも、それだけじゃわざわざ“まれびと”を招き入れた意味がない。」
博樹は静かに本を閉じた。
「さっき、渡り廊下で三村先生に会ったよ。今日の授業が終わった後、渡すものがあるって。」
博樹の身体の動きがとまった。
「・・・・・・三本の・・・矢か。」
「・・・うん。」
机に向かったまま、その後博樹は何の反応をしめそうともしなかった。澤崎も独り言をいうように
言葉を続けた。
「それでこの際ハッキリさせようと思って三村先生にきいてみたんだ。三本の矢の3人目の人間は
輝裕くんではなく、最初から広島竜士だったんじゃないかって。」
「・・・・・・。」
「三村先生は否定しようともしなかった・・・。」
博樹は黙ってじっと前を見つめていた。机の上に座ったまま、澤崎はそんな博樹の後ろ姿を見て
いた。ふぅーっと大きなため息が博樹の口から洩れた。
「・・・やっぱりそうか。」
澤崎は目を細めた。
「あの時、竜士が頻繁に俺のところに相談にきた時もっと親身になって相手になってやれば
よかったんだ。いや、そうしていたら今度は今の俺がいたかどうかわからない・・・」
「・・・・・・。」
「竜士がこうなることを周りでお膳立てしてやったのか。そしてそれを煽ったのは親父と・・・俺だ。」
717代打名無し:03/03/26 12:02 ID:aBN+B989
718代打名無し:03/03/26 20:58 ID:1VnAMF7n
test
719代打名無し:03/03/27 01:33 ID:lEkpu8zT
720代打名無し:03/03/27 09:48 ID:9xYhUW3r
721代打名無し:03/03/27 14:43 ID:8c0boaln
722代打名無し:03/03/27 14:45 ID:8c0boaln
723代打名無し:03/03/28 11:01 ID:STkmVcgA
724隠れ(´ゥ`)ヲタ:03/03/28 14:08 ID:/Ip9eAxW
今夜なんとか続きをうぷできればええかなと・・・。
しかしその前に神宮に応援いってきますm(_ _)m

先発はササでも[・ ε ・]でもどっちでもええよ。
しかし勝ってくれ〜
 ♪    ∧_∧     ♪
      (   )¶                  ♪
   ¶<Т  |>  宮島さんの神主が
    ⊂/ Σ|            おみくじ引いて申すには
       ̄ し   ♪
  ♪

      ∧ ∧                 ♪
     ( ゚Д゚) ¶    今日もカープは
  ¶< ‖y‖つ         勝ち 勝ち 勝っち勝ち
   Σ0. ||                 ♪
      ∪                 ♪
       ♪


    ¶ ∧ ∧ ¶
    0(゚Д゚ )0 バザーイ!! 
    (‖y‖)     ∧ ∧ バザーイ!! ハ,,ハ バジャーイ!!
     ||  ||Z    ¶(・∀・,,¶      (゚д゚)ノ 
     ∪ ∪      (__Z      (_..Z  
726代打名無し:03/03/29 11:38 ID:A5GVr5x9
ほす
727代打名無し:03/03/29 17:17 ID:5LDnaK++
てす
728代打名無し:03/03/30 09:58 ID:FhVnIsPg
ほす
729代打名無し:03/03/30 09:59 ID:OHw57R3I
ぽす
730代打名無し:03/03/31 11:51 ID:rlVsBdwp
ぼす
731代打名無し:03/03/31 21:49 ID:GLL7V1R8
今夜うぷ予定
732代打名無し:03/04/01 05:09 ID:BX2Ovcia
m(_ _;)m
733代打名無し:03/04/01 13:57 ID:v53jOnip
うす
734代打名無し:03/04/01 15:53 ID:XDjXG74X
むす
735代打名無し:03/04/02 11:30 ID:VC2StLK2
もす
736代打名無し:03/04/02 15:15 ID:QK7jPyoU
737代打名無し:03/04/02 18:03 ID:N34bHQuc
過去ログ倉庫更新。
おっ、試合やるのか(・∀・)!!
738代打名無し:03/04/03 10:47 ID:UoFdlrqQ
へす
739代打名無し:03/04/03 17:03 ID:p1Z45kLe
あす
740代打名無し:03/04/04 02:21 ID:imnATsKZ
やす
741代打名無し:03/04/04 14:23 ID:NgQ9t28O
ぼす
742代打名無し:03/04/04 16:26 ID:OJNb1mfE
むす
743代打名無し:03/04/05 00:21 ID:ODbvgFiL
とす
744代打名無し:03/04/05 11:10 ID:yiFUmmYM
遅れてすんまへん。今日中に
745代打名無し:03/04/06 02:09 ID:nNp5ncXo
もう一回過去ログ倉庫更新。
「三本の矢」全体を推敲しました。
これで本編なみに文章が読みやすくなったはずやが・・・(´Д`;)
746代打名無し:03/04/06 07:00 ID:TscdE4nq
スケさんご苦労様です
747代打名無し:03/04/06 18:11 ID:W2oCdQs2
カクさんやっておしまいなさい
748代打名無し:03/04/07 03:18 ID:wxzYTTPh
この紋所が目に入らぬか
749代打名無し:03/04/07 09:03 ID:vLdGgJaZ
入らぬ
750代打名無し:03/04/07 19:31 ID:pLyiHfps
751代打名無し:03/04/08 08:19 ID:XonobV4K
752代打名無し:03/04/08 19:13 ID:HEiJEFVz
753代打名無し:03/04/09 08:17 ID:9JVbWhg9
754代打名無し:03/04/09 13:58 ID:nx2ZXAsT
755代打名無し:03/04/10 08:29 ID:qxR+zwYl
756代打名無し:03/04/10 15:47 ID:WApx+k3u
757代打名無し:03/04/11 08:34 ID:wCtTiZvT
別の用事が一息つきますた。今夜うぷしまする。
相当遅れてスンマヘンですた。
758代打名無し:03/04/12 01:33 ID:k+tB/qtC
壁|ε(゚)
759代打名無し:03/04/12 08:31 ID:t++nSoAb
760代打名無し:03/04/12 17:42 ID:MEtG1B9f
p
761代打名無し:03/04/13 01:49 ID:0Dif0H/4
毎晩毎晩スケさんに夜更かしを強いるのぅ・・・。
762代打名無し:03/04/13 01:58 ID:Utu5uV/Y
test
763広島家の人々 三本の矢77:03/04/13 01:59 ID:9AsXXAEv
前回>>716

しかしそれが緋鯉村のなんのためになるのだろうか。浩二や三村たち大人は竜士に何を
させようと、こんな仕打ちをしたのだろうか。
「普通は“まれびと”って、ある共同体に迎える客人のことを意味すると、どこかの本で
読んだことがある。」
ポツリと呟くように澤崎が口を開いた。
「つまり遣わされる異邦人だって。でもその共同体の規模が限られたものなら、
遣わされる者の代わりに必ず阻害され追い出される者もいる。そのバランスによって
共同体は維持される。」
博樹の声がかすれた。
「まさか・・・。」
澤崎は表情を固くしてうなずいた。
「多分、その阻害され追い出される者の対象に広島家の旦那さんは自分の息子を選んだんだ。」
「・・・・・・。」
「そして、その竜士くんは見事に父親の想いにこたえている。」
博樹はバンと澤崎の言葉をかき消すように机を両手で叩いて強くにらみつけた。
「じゃあ、お前がここに来たから竜士はああなってしまったのか!お前さえ来なかったら
竜士はああならずに済んだのか!」
ハッと気づいて、博樹はうろたえた。
「違う・・・。お前のせいじゃない・・・。自分からお前はここに来たわけじゃない・・・。あれは親父や
三村が強引に・・・。それにお前がここにいなかったら、俺は・・・」
自分でも何をいっているのかわからなくなってきた。だんだん博樹は放心状態になってガクッと
床にひざまづいた。
764広島家の人々 三本の矢78:03/04/13 02:57 ID:9AsXXAEv
職員室を軽くノックする音がする。三村はスクッと立ち上がって、扉の向こうからやってくる
客人を待ち構えた。
「三村先生・・・」
澤崎は静かに扉を開けた。
三村はいつものようにニコリとも笑顔を見せなかった。澤崎も小さくうなずくと、そのまま
三村の前に進み出た。机の上に一本の矢が置いてある。三村はうやうやしくそれを両手で
掴むと、澤崎に手渡した。
「澤崎くん、キミは“三本の矢”の意味は知っているね。」
「・・・・・三本の矢は、兄弟の結束と、力を合わせればどんな困難も切り抜けていかれることを
うたった故事です。」
三村は大きくうなずいた。
「ワシの想いもそれだ。」
澤崎は目を大きく見開いた。
「何も一つの考えがその事柄のすべてをあらわしているわけではない。いろいろな想いがあって
一つの出来事が成り立つ。それが相乗効果で成り立つこともあろう。妥協で成り立つこともあろう。
しかし方法は違えども、世の中とはそういうものだ。」
澤崎は渡された矢をじっと見つめた。
「・・・・・先生の想いはこの三本の矢にこめられているのですね。」
そして今いった三村の言葉の意味。
「ボクはてっきり三村先生も広島家のご主人とまったく考えが一緒なのかと思っていました。」
三村は目を細めた。
「先生のもう一つの夢がわかりました。」
澤崎はニッコリと笑った。
「先生の希望にこたえられるように、出来る限り努力をしてみます。」
はじめて三村もいつもの笑顔に戻った。
「で、これからどうするんだ。」
澤崎は廊下を指差した。
「広島と一緒にこれから金本寺に。ボクのまれびとの予測が正しかったら、もう一人
確かめなければならない人間がいると。あと知憲住職に尋ねたいことがあるといっていました。」
「知憲か・・・。」
三村は顎に軽く手をやった。
「今なら一番いい選択かもしれんな。」
765広島家の人々 三本の矢79:03/04/13 03:52 ID:9AsXXAEv
学校から金本寺までは思ったより距離があった。
博樹は輝裕に貴哉と一緒に早く家に帰るように言い含めると、澤崎が職員室から戻るまで
校庭の鉄棒にぶら下がって、ボーッと玄関を見つめていた。
鐘が午後5時を知らせる。あわてて玄関から片手に矢を持って澤崎が飛び出してきた。
「あんま遅くなると、住職のご機嫌を損ねちまう。少し遠いが走っていくぞ。」
鉄棒から飛び降りて、少し怒ったような声で博樹は澤崎に命令した。
うんと返事をして、澤崎は博樹の視線が自分の持っている矢に向けられていることに気づいて
そのまま博樹の目の前に問題の矢を差し出した。博樹は無言でそれを受け取った。
「怒りにまかせてボキっと折るなよ。」
「なっ・・・!」
ムキになって博樹は澤崎をにらみつけた。

「で、三村は三本の矢について何ていっていたんだ。」
金本寺に向かって走る途中、博樹は息をきらしながら澤崎に声をかけた。
「ん・・・・・。」
しばらく澤崎は返事をためらったが、結局三村の言葉そのままに博樹に内容を告げた。
「三本の矢の故事の意味が先生の想いそのものだって。」
「はぁ・・・?」
博樹には何がなんだかわからなかった。
「・・・意味が・・わからない?」
「ああ。」
ふてくされたように博樹は返事をする。
「お前はわかったのか?」
そして少し感情的に攻撃してきた。
「これが正しいのかわからないけど、多分間違っていないと思う。」
澤崎は自分に納得するように何度も確認をしながら返事をした。
いつの間にか目の前に金本寺の御山と建物がせまってきていた。博樹の顔がパッと明るく
なった。山門に向かう石段をやけにバカでかい青年が竹箒で大雑把に掃いている。
「貴浩!」
博樹の声に青年はビクッと反応して、目を大きく丸くした。
「博樹兄ちゃん!」
766代打名無し:03/04/13 03:57 ID:9AsXXAEv
( ̄粗 ̄)再登場までなんとか行きますた。
そして最終回までの構成はしっかり固まった。

一人一人の登場人物の意味の確認もしますたし、
これで後は怒涛のごとくのはずっす(´Д`)

>>761
いやいや、おらも好きでやっているから気にせんでください。
でもなんだかゴールが見えてきたようでホッとしとりやす。
767えむら:03/04/13 05:53 ID:kXbrKBkJ
えむら名人
768代打名無し:03/04/13 12:30 ID:Ydlhi4ZJ
オツ
769代打名無し:03/04/14 01:24 ID:7Y3/7cXz
過去ログ倉庫も追加予定っす。
770代打名無し:03/04/14 10:44 ID:fhLYcWQa
プップクプー
771広島家の人々 三本の矢80:03/04/14 22:59 ID:fn5jMnXq
澤崎も表情を引き締めて、石段の貴浩を見上げた。
── これが4人目の広島家の兄弟・・・。
貴浩も澤崎の姿を見て一瞬で事情をさとったらしい。こちらへと山門を案内すると、
「住職!」と大声をあげて、本堂の奥の間に駆け込んでいった。


知憲住職は悠然と腕組みをしながら本堂の廊下に現れた。存在するだけで
圧倒的に威圧感ある知憲住職の迫力におされて、澤崎はゴクッと息をのんだ。
「ほぉ、これが噂の“まれびと”か。」
住職は澤崎を軽く一瞥しただけで、厨から西山堂のドラ焼きとお茶を持ってきた貴浩に
悪たれをついてドシンと胡坐をかいた。
「住職!」
博樹はなんとかうまく用件を切り出せないか、半分苛立ちながら住職に詰め寄ろうとした。
「ぁぁああ、お前がいちいちいわんでもわかっとる。竜士のことじゃろう。この間も同じような
ことでチビと貴哉がここに顔面真っ青でわんわん泣きついてきおったわぃ。」
「輝裕と貴哉が?」
「ああ、そこの“まれびと”が持っている矢を両手で大事に持ってな。」
「・・・・・・。」
そのまま立ち止まってしまった博樹に、住職はニヤリと笑って貴浩にもそこに座るように
廊下を指差した。
「えっ、俺もいいんすか?」
「あったりまえじゃ!お前の兄弟じゃろうが。お前も一緒に聞かんでどうする。」
上から思いっきり貴浩の頭をはたき倒して、知憲住職は無理矢理貴浩を隣に座らせた。
貴浩は頭を両手で抱えながらも、うれしそうにその場に正座した。
「さあ、お前たちが聞きたいのはチビたちと同じ“まれびと”の意味じゃな。どうじゃ、そこの客人。」
澤崎は静かにうなずいて、両手で持っていた矢を知憲住職に差し出した。
「このムラのまれびとの意味を教えてください。」
772広島家の人々 三本の矢81:03/04/15 02:11 ID:LPDA8aCO
住職はクスクスと笑いはじめた。
「“このムラ”のときたか。どこのムラでも“まれびと”なんぞそう変わらんがな。まれびとはどこでも
よそ者じゃ。よそ者からもらう刺激をうけてムラは活性化する。」
「いちいち活性化させるために広島家あげて豪勢に歓待するのかよ。」
「それは広島家が緋鯉村のムラ長だからじゃろう。ムラを守るために広島家は何事も先頭きって
突っ走らねばならん。責任も負わねばならん。場合によってはみずから犠牲をおわねばならん
こともある。」
住職の語る内容に貴浩はオロオロしはじめた。だが住職はどんどん調子にのっていく。
「まだ事情がつかめんか。じゃあ最初からお前のうすらぼけた頭にもわかるように一つ一つ
説明してやろうじゃないか。まず、ここにいる貴浩じゃ。博樹、お前はなぜ貴浩がここに連れ
こまれたのかわかっとんのか。いや、もっと簡単な質問にしてやるか。お前はいきなりワシの
ところへ連れていかれた貴浩についてどう思った。」
「・・・・・広島家から離れさせるには早すぎると思いました。まだあの時の貴浩は高等小学校を
卒業したばかりだった。将来金本寺の坊さんにするにしても、せめてあと1年は家族と一緒に
いるべきだと思いました。」
住職の挑発的な態度に、博樹はキツく見据えるように住職を睨みつけて声を押し殺して答えた。
「さあ、兄の意見はこうじゃ。貴浩、お前はそれに対してどう答える。お前が何故いまここに
いるのか、ちゃんと兄に説明しておかんとのぅ。」
半分からかい気味に知憲住職は貴浩の方へ振り向いた。深刻そうな表情にも見える博樹と
まるでこの状態を面白がっている住職の落差に、貴浩は両者を見比べながらどう答えれば
いいのか迷っていたが、知憲住職に強く背中を押され、あの時思っていたことをそのまま博樹に
伝えた。
「もう広島家に俺がのんびりできる金の余裕がなくなっていたんだ。貴哉も広島家の金に余裕が
ないことが理由で中学に進学できなかった。何もしていない俺があそこでぐうたらなんかしてられ
ないよ。住職はここで頑張れば将来は約束してくれるっていうし、俺一人がいなくなって少しは
広島家がラクになるなら、口べらしになっても別に構わねぇって思ってさ・・・」
773代打名無し:03/04/15 02:12 ID:LPDA8aCO
住職による現状説明前半部分までだったか。
今日はスクリプト変更がでけただけでもよしとすて。。
774代打名無し:03/04/15 11:17 ID:tRYXX6hl
775代打名無し:03/04/15 21:54 ID:uG1k35OX
776代打名無し:03/04/16 08:28 ID:oj6Dz3u1
777代打名無し:03/04/16 17:11 ID:6zkmBR/2
778代打名無し:03/04/17 11:30 ID:SNZqPoQJ
779代打名無し:03/04/18 01:25 ID:SXNKt0wW
明日更新予定
780代打名無し:03/04/18 15:00 ID:IPNrZkQN
スケさんがんがれ
781代打名無し:03/04/19 12:03 ID:M/Lnva5d
シガシデもがんがれ
782山崎渉:03/04/20 00:14 ID:UR+T6/ZU
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
783山崎渉:03/04/20 01:23 ID:Et6j6eDf
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
784広島家の人々 三本の矢82:03/04/20 02:24 ID:4HqKupeC
呆然と貴浩を見つめる博樹をよそに、ますます知憲住職は調子にのって声をはずませた。
「さぁて、次は貴哉の番じゃ!」
住職は貴浩に適当な細長い棒を持ってくるようにいいつけると、博樹に視線を戻した。
「さっき貴浩がいうたな。貴哉は中学に進学することができなかった。それは広島家に金の
余裕がなくなったからじゃ。それはお前は知っておったんか。」
苦衷をにじませて博樹は小さくうなずいた。
「それはいつじゃった。」
「3月・・・。」
口に出してから、博樹はハッとした。
「三本の矢・・・。」
三村が中学4年の最後の授業で三本の矢を持ちだした頃とほぼ同時期である。
「“まれびと”さまを広島家にお迎えするために、事前に親父さんはすでに2人の息子に犠牲を
強いたわけじゃよ。まっ、広島家の兄弟のうち誰か一人ここの坊さんにすることを言い出したのは
ワシ。竜士か貴浩のどちらか選ぶことになって貴浩を選んだのもワシじゃがのぅ。」
貴浩が知憲住職の部屋から孫の手を見つけだしてきた。なんつーもんをと、住職は小声でぶつくさ
いいながら肩をポンポンと叩くと、博樹と澤崎のいる地面にゆっくり階段を下りていった。
「じゃが貴浩を選んで正解じゃったわ。あ〜んな役どころはとてもじゃないが貴浩にはこなすのは
無理じゃ。あれをできるのは広島家の兄弟では竜士しかおらんかったということじゃな。」
知憲住職は地面に大きな円を描き始めた。貴浩はムッと口をとがらせたが、そのうち半分すねた
表情で、廊下にのの字を書いていた。
澤崎は静かに住職の動作を見つめていた。住職はニヤッと笑った。
「もう半分わかっているような表情だな、そこの“まれびと”さまは。お前の気持ちも確認せんと
いかんな。今の話でだいたい事情はわかっただろう。」
予想通りの住職の言葉に、澤崎は強くうなずいた。
「やっぱり今の話は半分はボクを対象に話していたんですね。」
785代打名無し:03/04/20 02:42 ID:4HqKupeC
こんなことなら朝早くから仕事を入れるんじゃなかった(´Д`;)
今夜はここまでしか書けなかった・・・
連夜で次の日も書けると思いますので、すんごく少なくてすんまへんが
今日はここで。

そういえば数日前にウヒョスレに貼ってあった記事を見て、今リアルで
ここの澤崎がやっている“まれびと”を金本が演っているなぁと、そして
つくづくこの方は「広島」なんだなとあらためて強く実感しますた。
その記事を見たウヒョスレの反応とともに。
悲しいくらい「広島」の個性ってこういうことなのかと再確認したといいますか。。。

このところなかなかプロ野球をしっかり見る状況じゃないんで、他球団の事情に
関しては前より自信がないのですが、多分、ここの竜士にあたる役どころを
阪神では桧山がやったんじゃないかなと。阪神は広島ほど露骨にこの体質は
ないと思うので、金本がよっぽど浮いたことをしなければ、そんなに問題になること
でもないですが(江藤の方がキツかったはず) あの記事はいろいろと考えさせられる
ことが多かったです。
786代打名無し:03/04/21 10:45 ID:LFzidlGR
787代打名無し:03/04/21 18:13 ID:Wpf1DXy6
788代打名無し:03/04/22 11:39 ID:YdCbSJWb
789代打名無し:03/04/22 17:07 ID:03WFDtAF
790代打名無し:03/04/22 17:37 ID:bQg1UMon
791代打名無し:03/04/22 23:35 ID:l4Q0mGjo
792代打名無し:03/04/22 23:40 ID:m7xBaKY0
ハァハァ
793代打名無し:03/04/23 15:31 ID:cUkXja1b
期待sage
794代打名無し:03/04/24 00:25 ID:Lrop8wUh
まれびとsage
795代打名無し:03/04/24 01:25 ID:t5mG5D40
今日の昼頃うぷ予定(つД`)
796広島家の人々 三本の矢83:03/04/24 16:02 ID:X42u0akH
知憲住職は含み笑いをもらすと、円に入っていく矢印を書き加えていった。
「この円が緋鯉村であり、その中心の芯ともいうべき存在が広島家であり村長である親父さん
じゃ。ワシも含めた村人は、みなこの円の中で生きていき、この円の中の常識と決まりに守られて
暮らしておる。時には足かせにもなる一つの世界観じゃ。そして外界を知らなければそれはそれで
幸せな空間でもある。現にワシらは今までこうしてここで暮らしておったんじゃ。なぁ、博樹。」
挑発的に住職は博樹に声をかけた。じーっと地面の円を博樹は見つめていたが、貴浩に自分にも
適当な棒があったら持ってくるように声をかけると、住職の隣に近づいていった。
「住職、この状態を別の言葉でひとこと表現されることもありますよね。」
「ほぉ、なんていう。」
「閉鎖的。」
知憲住職は満足そうにうなずいた。
「だんだんわかってきたじゃないか!」
貴浩があわてて布団叩き棒を持って駆け戻ってきた。
「博樹兄ちゃ〜ん!」
「お前・・・・・・どうやったらこんなものを・・・。」
しばらく絶句して博樹は布団叩き棒を見つめていた。
「貴浩、お前ももう一度しっかりワシの説明を聞いておけ。」
博樹の表情に恐る恐る後ろに引き下がる貴浩の首根っこを知憲住職はしっかりとつかんだ。
「この際、孫の手でも布団叩きでもどうでもええわぃ!」
無理矢理自分の前に貴浩を引き摺り下ろすと、知憲住職は孫の手でもう一度地面の大きな円を
澤崎と博樹に示した。
「今の博樹の答えで半分わかっちゃおるだろうが、この円はこの円だけで生きていけるなら
万々歳なんじゃがのぅ、なんせ限られた空間の限られた人間で生きていく。長期的にみれば
新しく生みだされるものをみずから排除する原理にもなる。一人一人の持っている素質や知識は
限られておる。その限られたパターンを消費しつくした時、果たして新しいものを生み出せるか。」
「・・・それは、例えるならあのエンドウ豆のメンデルの法則ですか?」
「エンドウ豆・・・。そうじゃ、むかし学校でエンドウ豆でやったあの法則じゃ!」

続きは夜遅く・・・
797代打名無し:03/04/25 14:20 ID:7j4TSUtP
スケさんおつです。
貴浩・・・(w
798代打名無し:03/04/26 16:53 ID:R4GNT4Kp
[・ ε ・]ホシュヤデ
799代打名無し:03/04/26 23:53 ID:Hn2626S5
流石に今日は続きうpは無しっすか…

スケさん、確か黒田ファンだったよね
・(ノД`)・゚・
800代打名無し:03/04/27 00:49 ID:ItG2IP/2
。・゚・(ノД`)・゚・。勝てないのぅ・・・。
2001年より切ないのぅ・・・。
ゴメソ、明日はうぷできるようにしやすm(_ _)m
801代打名無し:03/04/27 21:25 ID:9lu+FaVm
802代打名無し:03/04/27 23:58 ID:7livmq55
803広島家の人々 三本の矢84:03/04/28 14:37 ID:bM5NrLWj
知憲住職はポンと手を叩いた。
「限られた中の交配で、この円はどうなっていくか。エンドウ豆の法則で示されたものと同じじゃ。
近親交配は円の弱体化を生んでいく。つまりは・・・」
「それが今の緋鯉村の窮乏につながっている・・・。」
「ということじゃ。今の緋鯉村の困窮はみずからが生み出した自業自得の結果じゃ。」
博樹は地面に描かれた円を見つめ続けていた。事実、それが今まで緋鯉村がたどってきた道
だった。小手先でごまかして、それでも立ちゆかずアタフタし始めたのはここ最近の話である。
そして極めつけが“まれびと”だった。
「そこで“まれびと”の出番になる。」
住職の話も本題に入ってきた。
「この円は、できることならこの円のままで生きていきたいんじゃよ。じゃが、このままではただ
衰退するほか、円の生きる道はない。そこで新しい血を入れる。」
住職は円に向かって突き刺さる矢印を棒で示した。
「これが“まれびと”じゃ。」
博樹の隣で円を見つめていた澤崎がコクンとうなずいた。
「まれびとは今まで円が持っていないものを中にもたらしてくる存在じゃ。わざわざ円の中に入って
くれるありがたい神のような存在じゃ。円が存続するために円を守るために、円の中心は誠心誠意
身銭をきってでもまれびとを盛大に歓待する。まれびとさまがもたらす効果を期待してのぅ。」
住職は円の中心に小さな円を描いた。
「これが広島家であり、博樹、お前自身じゃ。お前ら二人の図式はこうなる。どうじゃ、すでに
心当たりがあるじゃろ。」
今まで高等学校進学のためにガムシャラになっていた頃の構図だった。
「じゃが新しい血を入れるということは、当然至るところで摩擦が起きる。決して円にとって良いこと
ばかりとは限らん。まして、すでに弱体していたならば、今まで知らずにいた不満も、まれびとに
よって思い知らされることになる。」
知憲住職は孫の手を貴浩に渡した。
「もうお前はわかっておるじゃろうが、お前の位置をここに書いてみろ。貴哉の分もな。」
804代打名無し:03/04/28 22:28 ID:vkK98W1d
キター!(AA見つからず
805代打名無し:03/04/28 22:54 ID:9pBYgxsx
>>804
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_)゚∋゚)´Д`)゚ー゚)━━━!!!!
806代打名無し:03/04/29 10:37 ID:B95PJXaR
ドキドキ
807代打名無し:03/04/30 01:03 ID:hTW3Uyt7
(゚)ε(゚)「スケさんは俺にホの字
808代打名無し:03/04/30 14:27 ID:60GOO7+b
早く続きを書きたいんやが・・・。次回5月1日です(つД`)
8094:03/04/30 15:43 ID:co0J5WTk
810代打名無し:03/05/01 00:06 ID:cWP0SB49
811代打名無し:03/05/01 16:07 ID:vTrPeOtp
812代打名無し:03/05/02 00:11 ID:97UppYYn
813代打名無し:03/05/02 00:20 ID:lXTYzJVO
814代打名無し:03/05/02 14:37 ID:rhfHpZJI
815代打名無し:03/05/02 17:52 ID:wyHxG7vi
816代打名無し:03/05/02 19:58 ID:dLTjCIfT
817代打名無し:03/05/03 16:47 ID:i7uITk1f
818代打名無し:03/05/03 17:19 ID:d4ZcQ2Sy
819代打名無し:03/05/03 23:26 ID:v7/wd4wT
820代打名無し:03/05/04 05:19 ID:vcbWglZq
過去ログ倉庫の入り口のみ更新しますた。
今日は必ず続きを・・・m(_ _;)m
821代打名無し:03/05/04 20:30 ID:v+NkhzKe
(シ中シ)「スケさんは学生だったのか・・・」
てっきり転職したばかりの社会人かと思ってた
822代打名無し:03/05/04 23:57 ID:6aw2WZ5/
その他にもまだスケさんには107の秘密があるんだよ。
823広島家の人々 三本の矢85:03/05/05 01:36 ID:vwqVIUYO
貴浩はゴクッと息を飲み込み、住職を見上げた。知憲住職は無表情のままだ。戸惑いの表情を
浮かべて、貴浩は博樹そして澤崎の方へと顔を向けた。だが二人とも無言で貴浩を見下ろす
だけだ。ふうっと力なくため息をついて、貴浩はもう一度孫の手を握りなおした。
「円の中・・・。」
貴浩は緋鯉村を意味する円の適当な場所に、2ヶ所印を入れた。それは広島家や博樹を
意味する円の中心から少し外れていた。
「もう一人、竜士もそこに書きこむのじゃ。」
ギクッと貴浩の身体が揺れた。孫の手を両手で持ちながら、震えてそこから動こうとしない。」
「ほれっ、お前の兄弟のことじゃないか。このくらいでおじけづいてどうする!」
後ろから住職に足でどつかれ、貴浩は覚悟を決めて地面の竜士の印を書き込んだ。
「これがまれびとの真実じゃ!」
博樹は絶句して、まばたきもせず地面を見つめた。貴浩は矢印を地面に書いた。それは円から
一直線に外に飛び出していた。“まれびと”の澤崎の矢印と平行に、まったく正反対の方向で
円から遠く離れていった。
「円の中にたまっていた不平や不満、穢れともいう憎しみを一手に引き受けて追われていく者。
“まれびと”を迎えることによって、倍増した摩擦という新しい穢れも背負って、それは円を浄化
し、ムラを去っていく。衰退そして滅亡していくということは、互いが互いを食いつぶし自滅に
むかっていくということじゃ。それを一人に罪をなすりつけることによってムラの結束は保たれる。
そのスケープゴートに選ばれたのが、竜士ということじゃ。」
博樹はペタンと座り込んだ。
「そして、この矢印はこうなることも可能じゃ。」
知憲住職は、澤崎の矢印と竜士の矢印を正反対に書き直した。
「“まれびと”さまが来たせいでこうなったと罪をすべて“まれびと”になすりつけることもできる。
その時はじめて、ムラから追い出したスケープゴートをムラのために尽力をつくした神に祭りあげる
こともできる。自分らの罪から逃れるためにのぅ。それに、なんせ二人とも円の外に飛び出た
よそ者じゃ。」
知憲住職はニヤリと笑った。
824広島家の人々 三本の矢86:03/05/05 02:35 ID:vwqVIUYO
「円を守る・・・ムラを守り、成長していくためなら、円の外がどうなろうと構わんのよ。極端なことを
いえばな。」
住職は、二人の矢印に大きく×印を加えた。
「二人が死んでしまおうがな。そして新しい力をもらい、穢れを排出した円は生きのびる。
三本の矢で示されたお前ら3人の意味はそういうことじゃ。」
博樹は拳を強く地面に叩きつぶした。
「お前はそれを見届ける役割じゃ・・・。」
これですべて合点がいった。今までの浩二の発言には、まったくブレがなかった。貴哉が中学に
進学できないと知って、食ってかかったあの時、浩二はこういった。
── だから、その分お前が頑張らなきゃいかん。それがお前に課せられた役割じゃ。
それが広島家を継ぐ、そして緋鯉村をまとめる者の役目として、すでに浩二は自覚を博樹に
求めていた。だが・・・
「弟を見捨ててまで、友人に見殺しにしてまで何が広島家の当主だ、何が緋鯉村だ・・・。」
博樹はすがるように知憲住職につめよった。
「俺は一体どうすればいいんですか!どうすれば竜士を救えるんですか!澤崎に犠牲を
払わずに済ませられるんですか!」
「博樹兄ちゃん!」
後ろからなだめるように貴浩が博樹の身体を抱きとめた。
「俺だって、なんとかならないか住職に頼みこんだよ。これじゃ竜士兄ちゃんがかわいそう
すぎるって。俺で代わりができないかって。でも・・・。」
「こうなったら、後はもう竜士兄ちゃん次第なんだって。もう竜士兄ちゃんは先に走り出して
しまったんだ。俺がとめたくても、竜士兄ちゃん自身がなんとかしなくちゃ、もうどうしようも
ない状態なんだよ。」
「・・・・・・。」
ガクッと博樹の身体の力が抜けていった。
澤崎は手にしていた矢を、静かに地面に書かれた矢印の上に置いた。矢の先はまっすぐ
自分に向けられている。
「東京で、竜士くんと似たような立場に置かれた青年を見ました。」
825代打名無し:03/05/05 15:35 ID:VKipUAWx
やばい、泣きそうだ・・・
826広島家の人々 三本の矢87:03/05/06 03:49 ID:h/aNzVlr
澤崎は淡々と抑揚のない声で語りはじめた。
「同じように家族から共同体から追い出され、鬱屈した気持ちをもてあまして、その人は
東京に流れつきました。そして震災が起こって、秩序も崩れ去り暴徒と化した混乱の東京で
何かがはじけたのかもしれません。偶然、ボクが通りがかった目の前で、その人は銃を持って
ある人物を殺そうとしました。」
澤崎は一呼吸置いた。
「今の天皇陛下です。」
一瞬、その場の空気がシーンと静まりかえった。
「・・・・・虎ノ門事件か・・・。」
うめくように知憲住職は小さな声で呟いた。澤崎はかすかにコクンとうなずいた。
「その人は憲兵や警官の間をくぐり抜け、ステッキ銃を持って自動車の窓ガラス越しに映った
陛下の真横めがけて発砲しました。『革命万歳!革命万歳!』そう叫んで・・・」
「・・・・・・。」
「もちろん、青年はその場ですぐに取り押さえられ、郡衆に殴る蹴るの暴行を加えられ、連行された
のは新聞などの報道の通りです。そしてボクがこうして緋鯉村にくる直前に、彼は処刑されました。
ですが、そこに至るまでどうなったか、くわしい事情を知る者はごく限られています。」
視線を落として澤崎は滔々と語り続けた。
「政府は、いえ世間は彼をキチガイ扱いにして、すべて何もなかったことにして済まそうとしました。
普通の人間ならば、皇太子を暗殺しようなどと不届きなことを考える輩がいる訳がないと。
青年・・・難波大助は、自分は正気だと、どんな拷問や誘導尋問にも最後まで抗い続けて死んで
いったと聞きます。彼が何より抹殺し、崩壊させたいと思っていたのは天皇ではない。
それは自分を認めてくれようとしなかった父親であり、劣等感を抱く兄弟だった。自分というものを
確かめる機会を与えず、貶めていった家族と共同体への復讐だった・・・。」
「・・・・・・。」
827広島家の人々 三本の矢88:03/05/06 05:15 ID:h/aNzVlr
「それにボクは気づくことができなかった。難波大助の家と広島家がそっくりだったことで、やっと
わかりました。難波大助の家もムラの中心を束ねる旧家だった。そして長兄は順調に上に進学して
東京帝国大学に進み、弟たちも高い学歴を身に着け自立していった。彼だけ中途半端に見捨て
られていった。何度父親に訴えようとも、父親は彼の気持ちを汲み取ろうともしなかった。ムラでの
居場所も失い、矛先をどこに向けたらいいのか暗中模索の中で、社会のせいで自分はこんな目にあったと、怒りが体制の中心である皇室に向かったのだと・・・。」
矢は澤崎に向けられている。
「・・・・・親父さんは、虎ノ門の事件の目撃者であることを知って、お前さんを迎え入れたという
ことか。」
知憲住職は、ため息とともに呟いた。
「多分・・・そうだと思います。震災でまざまざと人間の醜い本性を見せつけられて、そしてあの
事件を目撃して、ボクはどうして自分はこうしているのか、何がなんだかわからなくなっていました。
そんなボクの目の前に現れたのが大下教頭や三村先生、そして広島家のご主人でした。
何度も何度もやってきては、逼迫した表情で緋鯉村へ疎開してくれるようで頭を下げる。
何故、そうも一つのことに精魂を傾けられるのか不思議に思って、半分東京から逃げるような
気持ちで緋鯉村にやってきましたが・・・。」
「・・・・・・。」
「結局は、自分の気持ちと向き合うためにボクは緋鯉村にやってきたんですね。そして、ボクは
言葉通り“まれびと”そのものです。」
澤崎の言葉に、どこか覚悟の響きがこめられていた。博樹は、顔をゆがめて澤崎を見上げた。
澤崎はさっぱりした笑みを博樹に向けた。
828代打名無し:03/05/06 05:39 ID:h/aNzVlr
やっと次から場面が変わりそうだ(´Д`;) これで前提条件さえ書き終えたら
あとはラストシーンに向かうのみやのぅ・・・。
虎ノ門事件も語りで登場してきますたし、ここまで来ると、ああ何とかなるか・・・という気分にも
なってきます。
みてわかると思いやすが、三本の矢の竜士のモデルは、虎ノ門事件の犯人:難波大助でした。
最初に用意された「手に負えないほどのワルだった竜士」という設定を、どうこなせばいいか、
その時に頭に思い浮かんだのが虎ノ門事件で、これならなんとか遣り繰りですると、最大限
利用させていただきますた。ラストへの展開もこの虎ノ門事件がかなり参考になります。
あと、円を例えに住職が話した排除と共同体の関係も、集団心理におかされている限り、
今でも十分日本で適用される法則です。民俗学の本など読むとよく話題にのぼっているかな。 
イヤになるほど、この法則があてはまる球団なんだよなぁ、かぷは・・・(´Д`;)

TVで中継を見てしまうと、それが尾を引いて、なかなか続きを書けなくなってしまうので
なるべく遠慮しようと思うていたんすが、建さんで勝てそうだと知った途端、誘惑にまけて
TV観戦をしてしまいますた。いや、これで頭の切り替えにかなりの時間を費やしてしもうた。。

ネタはネタ。とくに今のかぷの状態だと、広島家の兄弟誰一人として絶不調ですけぇ(つД`)
かろうじて復活の目がみえてきた横山が一番マシか。
その現実をうけとめて、それでネタを書く。やりにくいったらねぇっす。
黒田も、まあ腰痛との付き合いをマスターするまで、こんな感じじゃないすかの。
建さんという投手の核ができていて助かりますた。今は間違いなくエースは建さん。
今日は惚れ惚れしますた(*´д`*)
粗いさんも今が試練の時。これを乗り越えたら、あとはと思うているんで、今年は心中する
気分で応援しとります。
829代打名無し:03/05/06 08:48 ID:+5FscvOV
(゚)ε(゚)小津!
830代打名無し:03/05/06 10:15 ID:X+nxVD8h
(丶 ̄栗 ̄)「おらもあれいさんが4番でいいど思うべー」
で、粗いさんと心中するのはいいんだけど、中継ぎなんとかなりませんかね(ノД`)・゚・ タリネーヨ
831代打名無し:03/05/06 17:10 ID:TDO0lm/f
おつかれさまです
今更だけど、すごいな!スケさんは。
良く思いつくなぁ・・・。尊敬
832代打名無し:03/05/07 12:52 ID:ICmjRS6d
833代打名無し:03/05/08 00:34 ID:nx3iWmI/
834代打名無し:03/05/08 07:38 ID:azIxOkSq
835代打名無し:03/05/08 15:55 ID:ohP4kSIA
836代打名無し:03/05/08 19:03 ID:mcBOzJQM
837代打名無し:03/05/08 23:09 ID:+PMixI3E
838代打名無し:03/05/08 23:18 ID:2VTDBcA7
839代打名無し:03/05/08 23:33 ID:3JQXA07N
840代打名無し:03/05/09 00:36 ID:HGu713c2
841代打名無し:03/05/09 22:23 ID:Olb1uWdk
842代打名無し:03/05/10 12:42 ID:KOVg14mZ
今夜うぷ予定。
843代打名無し:03/05/10 18:09 ID:mSQlwWs7
(丶´_ゝ`)「いそがしかったら むりしないでね」
844代打名無し:03/05/10 21:12 ID:mSQlwWs7
ウヒョ
845代打名無し:03/05/11 11:59 ID:GaZalBPP
846代打名無し:03/05/11 12:09 ID:BBYWbYcW
>>843
お前に言わ(ry
847代打名無し:03/05/11 23:58 ID:2jh5I6OA
ry)れんでもわかっ(ry
848代打名無し:03/05/12 01:26 ID:0S8FKUNF
うっ、まだダメか・・・。すんまへん、明日には<m(_ _)m>
849代打名無し:03/05/12 14:52 ID:mwbszPxZ
(Y8K)「まぁ、ええことよ」
850代打名無し:03/05/12 19:50 ID:bfRjI+FV
岡上応援スレオチチャタ?
851代打名無し:03/05/12 21:57 ID:NID17bTQ
>>850
(・ 鏡 ・)ノ「復活してるよ〜ドゾー」ホケー
http://ex3.2ch.net/test/read.cgi/base/1052738114/
852代打名無し:03/05/13 02:33 ID:0gupvhXR
・・・(つД`)
853代打名無し:03/05/13 06:18 ID:M51Le7tZ
854代打名無し:03/05/13 08:16 ID:TlVHUjvf
下がり過ぎ、
age
855代打名無し:03/05/13 17:48 ID:nl+Tna59
がんがれ〜
856代打名無し:03/05/14 00:14 ID:ed7zgyO4
圧縮400?
857代打名無し:03/05/14 13:33 ID:bzAakwP9
ふう
858広島家の人々 三本の矢89:03/05/14 16:52 ID:c6pmjD8J
光が見える。竜士は目を疑った。遠く離れた先から、うっすらとかすかな光が、やさしく竜士を己の
行くべきところへ指し示している。
ずっと探していたものだった。これが自分の求めていたことだった。言葉にならない感動に竜士は
身体を震わせて、光のもとへ駆けだそうとした。
ガシッ
足元から何者かに絡みつかれて、竜士は肩から勢いよく地面に転がり落ちた。
それと同時に刺すように身体の節々が痛む。竜士は痛みをこらえながら半身を起こすと、足元を
睨みつけた。
「鎖・・・。」
膝の近くまで片足に鎖が複雑に絡みあっている。鎖はどこから現れたのか。暗闇から急に竜士の
足にしがみつき、どう動かそうとしてもビクともしない。
光はだんだんと遠ざかっていく。
「ま、待ってくれ・・・。」
かすれた声で竜士は必死に光のもとへにじり寄るように這っていった。だが、鎖が竜士を一歩の
先へ進ませようとしない。
泣きたい、苛立たしい気持ちで竜士は鎖の足元へ振りかえった。鎖はビクともしない。
竜士の表情がだんだんと変わっていった。まるで愛しいものを見るように鎖をさすり、足元を
頬ずりする。これも自分の求めていたことだった・・・。この鎖を解くことができなければ、自分は
先に進むことはない。そしてこれは鎖じゃなくて本当は・・・。
「何かいってくれよ。一言・・・ホントに一言だけでいいんだ。それさえ言ってもらえたら、俺はもう・・」
傷だらけの身体を小さく抱きしめて、竜士は嗚咽を漏らした。
いつの間にか竜士のそばに一丁の銃が置かれていた。身体をうずくませて泣いていた竜士は、
おもむろに銃を手にとると自分の足元の鎖を向けた。
泣いているのか、笑っているのか、顔をゆがませて竜士は引き金をひいた。
いまだ光は前方からおだやかに竜士を照らしている。突き刺すような銃音と鈍い衝動が辺りに
響き渡った。まわりに浮かび上がるように鮮やかな赤い血が飛び散っていた。
859広島家の人々 三本の矢90:03/05/14 17:57 ID:c6pmjD8J
「・・・・・・分、竜士の親分?」
誰かにゆすぶられている。竜士は両腕で顔をふさいで2,3回寝返りすると、ゆっくりとまぶたを
開いていった。
「・・・・・・井生?」
輝裕の同級生の井生が心配そうに竜士を見つめていた。
「えっ、今、一体何時なんだ!」
竜士は勢いよく飛び起きると、まわりを見回した。
「あっ、竜士の親分が起きた!」
栗原に勉強を教えてもらっていた横松が、ぴょんっと顔をあげた。
竜士はまだ夢と今の境界の区別がついておらず、まんじりともせずその場に座っている。
「井生・・・、俺、なんか変なこと口走っていたか?」
唐突に尋ねられて、思わず井生は「えっ?」と声をあげたが、すぐに無言で首を横に振った。
「そうか・・・。」
竜士は小さくホッとため息をついて下を向いた。
ある意味生々しい夢だった。そこでは自分が望んでいたことをダイレクトに突きつけられていた。
竜士が寝ていた布団の枕元に銃が置かれている。竜士はそれを手にとった。
これさえあれば何だって実現できる。自分の欲しかったものを手にするために竜士は銃を
手に入れた。でも本当に欲しかったものはまだ手にしていない。
夢の中で自分は足元の鎖に向けて自身と共に撃った。これが望んだ先の結末なのか。
「・・・・・・。」
横松はご機嫌でエンドウ豆を持って竜士の前にやってきた。
「メンズルの兄ちゃんに教わって、エンドウ豆のメンデルの法則をちゃんと覚えたよ!」
横松は得意げに竜士の前にエンドウ豆を並べて、栗原から教わったことを説明していった。
「良いエンドウ豆と悪いエンドウ豆か・・・。」
悪いエンドウ豆と名づけられたエンドウ豆を竜士はつまみあげた。
「じゃあ悪いという烙印を押されたエンドウ豆はどうすればいいんだろな。」
860広島家の人々 三本の矢91:03/05/14 18:53 ID:c6pmjD8J
ポツリと竜士は呟いた。
「あっ・・・。」
ハッと気がついて横松はシュンと小さくなった。竜士は優しく横松の頭を撫でてやった。
「ところで、お前たちもいつまでもここにいて、家の者たちが心配すんじゃねぇか。」
竜士の言葉を受けた栗原と井生は思わず顔を見合わせ、ププッと笑った。
「ほだらなこと、ウツの兄ちゃんらしくもねべ。」
「自分の家族はどうでもいいのに、他人の家族は心配してるなんて、やっぱ、さっき
寝ている時、頭でも打ちました?」
いわれて、竜士もアッと口をおさえた。
横松が無理矢理子分にした経緯のある栗原はともかく、井生は自分からすすんで栗原に
誘われて仲間に入ってきた。それからも続けて緋鯉村の少年たちが竜士の仲間に入っていった。
元ベチの家屋は今では少年たちの格好のたまり場になっていた。そしてとくに熱心に家に
やってくるのが栗原と井生の二人だった。竜士は一度それとなく理由を聞いてみたことがある。
二人とも答えは同じだった。今まで常識といわれていた価値観がわからなくなってしまった。
そしてここに来ると気持ちが落ち着くと。
「世間から逃げているつもりはないけれど、でも何がなんだかわからなくなって・・・。
生活が厳しい。だからもう学校に通うこともできない。すぐに家族を助けて仕事を手伝わなくちゃ
家もどうなるかわからない。わかっているんだけど、どこか気持ちがかき乱されて・・・。」
古い倫理と浩二らによって示された新しい価値観。自分でも気づいていなかったその狭間に
揺れ動いていた気持ちを、竜士の行動によってあらわにされ、道を示された。
「何が正しいというより、自分が一番やりたいことは何か。それをボクは竜士の親分に示された
ような気がする。」
予想もしなかったことを井生から告げられて竜士は面食らったが、自分もそれにどこか救われて
いることも自覚していた。
861代打名無し:03/05/14 18:56 ID:c6pmjD8J
タイムオーバー。次回は金曜の夜にうまくいったら(´Д`;)

竜士サイドに話が移ってきた。あとは栗原と井生にケリがついたら
ラストに向かっていくでしょ。
GW以降も書くことになってしもた(つД`)

早く終わらせたい・・・。
862代打名無し:03/05/14 19:21 ID:uNL/hJ0k
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
863代打名無し:03/05/14 22:30 ID:uNL/hJ0k
ホシュ
864代打名無し:03/05/15 03:59 ID:DTMVosPA
age
865代打名無し:03/05/15 15:52 ID:1YinBd8w
ほしゅ
866代打名無し:03/05/15 23:05 ID:qKebb20O
(゚)ε(゚)ホシュ
867代打名無し:03/05/16 00:33 ID:DhJI+8Dr
( ̄木 ̄)「ホシュ?
868代打名無し:03/05/16 11:22 ID:D/YD6od2
悪いエンドウ豆はゲーム禁止です
869代打名無し:03/05/16 16:46 ID:ppRCnOoF
ぽん
870代打名無し:03/05/16 18:28 ID:c4x7it9a
>>868Σ(;´Д`)
871代打名無し:03/05/17 01:12 ID:66RQ4xJe
土曜日うぷしやす。
872代打名無し:03/05/17 12:23 ID:MKVZCNPT
よん
873代打名無し:03/05/17 15:31 ID:PItK8Rcs
874代打名無し:03/05/17 23:23 ID:3hFGTzYv
ろく
875代打名無し:03/05/18 11:55 ID:GhRB5oqT
なな
876代打名無し:03/05/18 16:08 ID:NwdQDsY0
はち
877代打名無し
きゅー