Kapriolen aus Sunderland (サンダーランド製気まぐれカー )
日本の四輪ブランド 日産の整備再建はセンセーショナルに行われたが、
ドイツ市場ではその影響は全く感じられない。
お客が離れ、品質は地に落ちている。
ゴーン氏はいずれにせよ産業界の英雄だ。日産を救ったからだ。これは人類に対する恵みではないが、
ルノーにとっては恩恵である。というのも、ルノーは1999年、日産の没落が避けられないと思えた時に、
このメーカーを(大部分)吸収したからだ。これは大きなリスクだった。年間生産台数360万台の日産は
ルノーより大きな企業だからだ。
この巨大企業の整備再建は最もセンセーショナルなグローバルプレーの一つに数えられている。
21000人を解雇し、5つの工場を閉鎖した後、ゴーン氏は「コストキラー」の名誉称号を貰い、ルノー社長になった。
ルノーで同氏は「無限の権力」を掌握していると新聞は報道している。
ヨーロッパ消費者の目から見ると、理解しがたい成功ストーリーである。
日産はアジア、アメリカでは立ち直ったが、西欧ではコストキラーの名声はどこにも反映されていないからだ。
特にドイツにおける販売台数が劇的に低減している。
かつてのダットサンから転じたこのブランドはドイツではどんなに贔屓目に見ても全く特徴のないブランドで、
《Er kann, sie kann, Nissan》(He can, she can, Nissan)という宣伝文句もこの車には手を出すなという
永遠の警告のように響く。この企業が他の大陸で再び成功した理由は何なのか?
アメリカではオフロードカー及びピックアップカー市場の売上増大が健全化をもたらし、アジアでは
ヨーロッパ人にとり永遠に理解不可能なお客の趣向(にあった)モデルが再建の原動力となった。ゴーン氏は
ヨーロッパ向けデザイン戦略も実施したが、これは全く失敗に終わった。
スモールカー Micraの最新モデルは陰険な目つきの蛙のようなフェースと《Do you speak Micra?》いった
訳の分からない宣伝文句でお客にショックを与えている。固定顧客は(あきれて)言葉を失い、買う気も
なくしている。「転換が多少唐突過ぎた感じはある」とドイツ=日産の広報も認めている。
日産が果敢に横道にそれて迷路を歩んでいるのに反し、仇敵トヨタはオーソドックスな処方を堅持している:
すなわち非難もなければ、特徴もない車を生産するという路線である。非常に保守的なデザインと妥協の
余地のない品質管理によりトヨタは世界で最も成功を収めているメーカーとなっている。
日産も堅実な車づくりで知られていたが、それは過去のことである。現在ではADACの(エンコして
動けなくなった車の)故障統計で日産モデルに軒並み赤印がつけられている。日産Primeraを買った
ユーザーの1000人のうち15人が―――車がエンコして動けなくなったため―――ADACに救助を求めている。
これは最近の統計での最低記録で、アルファ=ロメオやルノーといった古典的問題ブランドすら、ずっと良い
成績をあげている。
何が起きたのか?
コストキラーが品質保障部門も節約してしまったためか?
日産はヨーロッパ向け車両を主に英国及びスペインで生産している。Sunderland工場(Newcastle近郊)生産責任者
Dodge氏の言い分は全く異なり、
「ゴーン氏が社長になってから品質スタンダードは向上した」。
「品質を犠牲にした節約措置はやっていない。現実には故障の半数は製品の欠陥に起因したものではなく、
お客の誤操作に起因している。大抵の場合、バッテリーの(水が)空になり、車がエンコしたものだ。」
同時にゴーン氏の社長就任以来、日産は連邦自動車庁から10回も十分に根拠のあるリコールキャンペーンの
実施を強要されている。目下、Pathfinder 及びNavaraの両モデルがカルダンシャフトの固定ミスのため
ワークショップ行きを義務付けられている。今度はバッテリーが空になったのではなく、ネジがゆるんでいるためだ。
ゴーン社長はドイツにおける日産の惨状を厳しく監視し、来年には全モデルをADAC評価でグリーンゾーンに
引き上げることを目標に掲げている。サンダーランド工場のベルトコンベアにはドイツの尺度にそって
品質を正常化するというスローガンの赤枠のついた看板が立てられている。
(Shift quality − Germany)。
日産及びゴーン氏に対する敬意がドイツではそれほど高くないことを日産ドイツ(ケルン近郊ブリュール市)は
最近認めざるを得なかった。ゴーン社長がレセプションに招待され、同氏はそうした機会には警察のエスコートを
重視しているため、日産ドイツはケルン警察にその旨要請したが、警察側はそれをすげなく断った。
(クリスチャン=ヴュスト)