>>26つづき
一方、県は入植者に対して、営農開始後5年以内をめどに、化学肥料や農薬使用の半減を求める。
環境保全型の「諫干ブランド」として、農産物に付加価値を生み出す計画だ。だが、農業用水として使用する調整池の水質が課題となっている。
1997年の湾閉め切り以降、調整池の水質(化学的酸素要求量)は県の環境基準をクリアしたことは1度もなく、その改善見通しも立っていない。
県は「作物の成長や品質に問題はない」とするが、上流域の下水道整備などを余儀なくされている。
長期間、多額の財政負担が見込まれる上に、「環境保全型農業」に環境基準をクリアできない水を使う自己矛盾は、ブランド化の足かせにもなりかねない。
長崎県の農地耕作放棄地率は全国1位。放棄地面積は約1万3000ヘクタール(2005年度)で、諫干農地の19倍もある。
一方、諫干への入植には県内外の62個人・法人から応募があり、希望面積は造成農地の約1、5倍で、最終的には50個人・法人程度に絞られる見通しだ。
県諫早湾干拓室は「入植者が限られるからこそ失敗は許されない。最初から満点とはいかないだろうが、試行錯誤しながら、5年後を試金石としたい」と言う。
有明海異変との関係を主張する漁業者らの不信がなお根強い中、無駄な公共事業とのそしりを免れるか、行政と入植者に課せられる責任は重い。 (長崎総局・前田英男)
=2007/11/21付 西日本新聞朝刊= 最終更新:11月21日10時9分