リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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501宮大工
私も銃後を書いてみますー。個人的に興味のある事柄なのでー
一応戦時の広報というテーマでいってみます。
うまいこと自衛隊などの記者会見を描写して各話をまとめられる
といいなとおもいつつ・・・


---------東京築地

「なんかすごいことになってますよね。この国」
隅田川の川縁にある日本最大手の広告代理店、電通の第九営業局に勤める若
手営業マン長谷川はCMモニター用のTVでニュースを眺めながら声をあげた。
「そうだな。戦争だからな・・・」
その第九営業局を統括する局長である神保は長谷川の問いに答えた。
戦争がはじまってから経済は大混乱に陥った。シーレーンの混乱により石油や穀
物を始めとする戦略物資の統制、銀行はパニック、おまけに国内で無差別テロが
おき、政府は「混乱を防ぐ」しの名目でだされた通達によつて東京株式市場をはじ
めとする各種取引所は閉鎖。もし仮にいまこの瞬間戦争が終
わったとしても、戦前の経済レベルを回復するのにどれくらいかかるのか見当もつ
かなかった。
「この調子じゃ当然ながら、来年の株式公開の件のパーですね。しかし俺たちど
うなるんですかねぇ」

 広告代理店という会社はその字面どおり各種企業の「広告」を総合して扱う会社だ。
クライアントと媒体(新聞・雑誌・TV・ラジオ)の間に立って、広告戦略から広告プラン
ニング、実際の露出までの一切を仕切る。
 ところがこの広告というもはその性質上、クライアントが不景気に陥ったりすると真
っ先に予算を減らされる対象だ。ましてや、この戦時下で経済が大混乱に陥ってい
る時に暢気に雑誌やTVで広告をするおめでたい企業など一切見当たらなかった。
また、各種媒体の方も企業のCMどころではなく、雑誌はほとんど休刊、TVはほとん
どニュースの流しっぱなし。新聞も広告にスペースを割く余裕などもない。
結局どちらからもニーズがまったくない以上、代理店としてまったく出番はなく平時の
目のまわるような忙しさはまったく消えうせ、会社全体が開店休業状態だった。
 そんなこんなで普段ならば絶対世間話などする関係にない局長と入社数年目の若
手営業マンが首をそろえてテレビの前にいる訳だった。
「さぁな、でもこんなに仕事がないと会社の人間全員が銃でももたされて兵士として北
海道にでも送り込まれるかもしれんな」
「そんな、冗談にも程がありますよ。そういえば俺の同期で福岡の支店に行った奴、ま
だ連絡ないんですよ」
福岡にある支店とは、戦争がはじまって以来一切の連絡が途絶えていた。何人かは
命からがら脱出してきたがまだ行方不明者が大半で、運良く逃げられた者の中にも
あの新幹線のテロに遭い命を落とした者もいた。
「そうか、おれも同期やかつての部下で連絡がない奴がかなりいる。無事でいてくれる
といいんだが・・・」
神保がそう言った時に、パーテーションの向こう側から声がした
「局長、社長がおよびです。至急社長室にきてくれと」
「おう!わかった。すぐ行くって伝えてくれ」
大声をあげて神保は答えた。
「なんなんでしょうかまさかホントに北海道に・・・」
長谷川が不安の色をうかべながら言った。
「んな訳ないだろう。でもなんの用だろうなレイオフでもするのか」

(続く)
502宮大工:2001/07/04(水) 18:08
>>501(お、501大隊)続き

「社長。本気ですか」
神保は社長の机の前で直立不動の姿勢を保ったまま口を開いた。
「本気もなにも政府からの要請でね・・・私にもどうにもならんのだよ」
社長は、机の上で両手をくみながら神保の問いに答えた。顔には疲労の色が濃く滲み
でていた。
「公官庁は他の専門の部隊がいるじゃないですか、そこの担当では・・・」
「公共は他の件で手がまわらない」
「しかしなぜうちの局なんです、他にも優秀な局がゴマンとありますよ」
神保は自分の心情に耐え切れなくなって、社長の机に両手をついた。
「君は総研に出向中にドイツにおける第二次大戦時の広報の研究調査をしていたね」
「確かにしました、でもあれは・・・」
神保は電通の研究部門である電通総研に一時期出向していた。その時に研究していた
のがあのナチスドイツの広報体制や戦略だったのだ。しかしそれは自分で決めたもので
はなく社の命令によって決められた研究テーマだった。
「会社とはあらゆる状態にそなえるものだ。神保君、社長命令だ。本日をもって営業第九
局は戦時広報統合局へと改変、あらゆるメディアに対して国民の戦意高揚をはかるもの
とする。戦時広報統合局は各媒体部を強化、あと去年誕生したリスクコントロールチーム
もつけてやる以上だ。」
社長は神の信託を告げる神父のように静かに言った。顔に表情はなかった。
「・・・わかりました、社命である以上はやります。ただ私の遣り方でやらせていただきます。」
「君がゲッペルスになることを期待しているよ、行ってよし」
神保はなにも言わずに社長室を去った。くそ、俺がゲッペルスだと。冗談じゃない、あの大
嘘つきの野郎といっしょにするな。おれは広告において嘘なんかついたことはないぞ。だが、
国民の世論が自分の意図した方向に進む。なかなか愉快な仕事かもしれない、よし決めた。
俺が向けてやる、どんな方向かはわからんがな。

(続く)