http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1181167154/757-758 の続き
これまでのあらすじ
異世界へと移転してしまった196X年の日本は資源確保のために異世界の戦争へと入り込む
そんなさなか、消息不明となる船が相次ぎ、それは海の怪物クラーケンの仕業とわかる
海上自衛隊はその討伐のたまに出動するが…
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<ゆきかぜ>から戻り、艦橋に入った吉沢を副長が出迎えた。
「どうでしたか?艦長」
「別になにも無いさ。艦の方は?」
「問題はありません。全力でいけます」
副長の報告を聞きつつ、吉沢は甲板上で作業をする乗組員たちを眺めていた。先ほどの<ゆきかぜ>の海士のように
談笑するものはいない。皆、必要最低限のことしか口に出さず黙々と目の前の作業に傾注している。
「これが敵を見た者と見ない者の差か」
ここまで差がでるものなのか、と吉沢は思った。彼らは敵の恐ろしさを知っているのだ。
海上自衛隊の作戦海域より南、大陸に近い霧に包まれた海域を進み1隻の帆船があった。マストには中立国の旗が掲
げられていたが、その実態は大国が日本の補給線を断つ目的で東シナ海(と日本が呼称している海域)に放った私掠船
であった。
「なぜ逃げ出した?」
帆船の薄暗い船倉の奥、黒い服の女は水晶の前に座っていた。突然怒鳴り込んできた男に対してもなにも言わず、
ただ水晶を覗き込むだけだった。
「とにかく戦果をあげろ!」
男はそう言い残すと船倉から出て行った。