【中】J10や87式や98式等の眷属について語る【国】

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73名無し三等兵
スレが寂しいので、あまり需要の有る話ではないでしょうが、
中国空軍の次期超音速高等練習機の競争試作について書き込みます。

超音速練習機といえば、米国のT-38、日本のT-2、最近では韓国のT-50
や共同開発機のMAKOなどがありますが、中等練習機の高性能化や練習内
容の合理化、費用対効果の問題等もあり、多くの国では複座戦闘機で代
用しており専用の超音速練習機はあまり多くないのが現状です。
そのような中で、現在中国では次世代の超音速練習機の競争試作が行わ
れております。候補は、強5攻撃機やK-8練習機を製作する江西洪都航空
工業集団(以下「洪都」)の製作するL-15「飛獅」と、殲教-7(殲-7の複座
型)を生産する貴州航空工業集団(以下「貴航」)が製作する教練/高練-9(
FTC-2000)「山鷹」の2つです。
中国はなぜ超音速練習機を採用しようとするのか?競争試作に応じた両社
の思惑とは?
これらについて以下で書き込まさせていただきます。
(参照)
江西洪都航空工業集団のWebページ
ttp://www.hongdu-aviation.com/
L-15の説明
ttp://www.sinodefence.com/airforce/trainer/l15.asp
貴州航空工業集団Webページにおける「山鷹」の説明
ttp://www.gaic.com.cn/eBusiness/GB/product_detail.asp?catalogid=1&productid=5
74名無し三等兵:2005/07/10(日) 20:34:46 ID:???
L-15、YAK-130にそっくりだなー
75名無し三等兵:2005/07/10(日) 21:53:09 ID:???
競争試作の話の前に、中国空軍の搭乗員養成の流れをみておくことにします。

航空学院に入学した空軍および海軍航空隊の搭乗員候補生は、2年間の理論学
習の後初教-6による初等訓練(飛行時間115時間)、4年目には殲教-5かK-8に
よる中等訓練(飛行時間130時間)を行います。1990年代後半以降、候補生は学
院卒業後、部隊に配属される前に各地の訓練基地で1年間の高等訓練を受ける
様になりました。主な進路は戦闘機、攻撃機、爆撃/輸送機、ヘリの4つです。
戦闘機訓練では殲教-7、攻撃機は殲教-6、爆撃/輸送機では轟教-5と運-7、ヘ
リは直-11により訓練が行われます。訓練終了後彼らは実戦部隊に配属され、
部隊で訓練を受けながら一人前のパイロットになることになります。

76名無し三等兵:2005/07/10(日) 21:54:29 ID:???
1990年代後半からのSu-27購入は上記訓練体系に見直しを迫ることになります。
空軍ではSu-27導入に際して、シミュレータを導入しない、充分な複座型の購
入をしない等機種転換訓練のための充分な投資を行いませんでした。しかし殲
教-7ではSu-27との技術的格差が大きく、Su-27に対応し得る訓練は充分に行う
ことが出来ず、Su-27導入直後の事故の多発を招くことになります。これにより
従来の訓練体系では、第三世代戦闘機に対処できる搭乗員の養成が困難なことが
明らかになりました。そのため部隊配属後も複座機(Su-27UBK、Su-30)による習熟
訓練が不可欠になりました。さらに2000年代の最初の10年で、従来の空軍の中心
であった第二世代戦闘機(殲-6、殲-7、強-5の初期型等)の多くが退役、世代交
代せざるを得ない状況であることも認識されておりました。
 この状況に対して、空軍は2003年に新訓練大綱を発表し、実戦部隊での訓練は戦
術訓練を中心とし、基本的な航空技能の訓練は航空学院や訓練基地での初等中等訓
練で行うことを決定しました。空軍は部隊で戦闘機を訓練に使用せざるを得ない状
況を改めるため、第三世代戦闘機の操縦訓練や電子機器の訓練を行う能力を有する
高性能練習機を必要とするようになりました。
この要求に応じたのが上記の洪都のL-15「飛獅」と貴航の教練練-9「山鷹」です。
77名無し三等兵:2005/07/10(日) 23:06:15 ID:???
貴航 教練-9「山鷹」/FTC-2000
ttp://tuku.military.china.com/military/html/2005-06-27/15590.htm
貴航はこれまで殲教-7、殲教-7 Pといった殲-7複座型を開発生産してきました。また
殲-7、殲-8のエンジンであるWP-13の製造にも携わっております。教練-9は殲教-7生
産の経験を踏まえそれを発展させる形で開発され、この点では殲-7とFC-1との関係
にも類似してます。
貴航の開発コンセプトはコストを抑えつつ新世代練習機として必要な性能を得るこ
とにありました。インテークを胴体側面に持ってくることにより、燃料や電子装備
設置の空間を作るという強-5、FC-1での手法がここでも登場します。この空間には
空中給油装置、ヘッドアップディスプレイ、パルスドップラーレーダー、慣性航法
装置やGPS、電子戦装備等が設置されました。操縦席はHOTAS系統が採用されており
ます。ただしFBWは採用されておりません。また試作機では計器の配置などに若干
問題があったそうです。設計時より整備の容易性に配慮しているとのことです。
後部座席の位置は殲教-7より高くなり、視界の向上に成功しております。主翼はダ
ブルデルタですが、殲-7Eのそれとは異なる形式だそうです。これは高度な運動性を
発揮するための設計です。
固定武装としては23mm機銃、ほか五つのハードポイントがあります。
エンジンはWP-13の最新型であるWP-13F(C)(ターボジェット 最大出力:4500kg(A/B
使用時6699kg)エンジン総寿命900時間、最初の修理まで300時間)を搭載。最高速度
はマッハ1.6
無理をしない設計により開発も順調に進み、2003年12月には初号機が初飛行、2005
年中に開発計画は全て終了し2006年には空軍への初期配備が可能になる予定です。

教練-9は殲教-7を母体にすることで、開発・配備費用を節約し機種転換を容易にする。
その上で新世代練習機に求められる性能(第三世代戦闘機の模擬機動、電子装備訓練、
空中給油など)は充分に備えることに成功した(まだ確実ではありませんが)機体と
いえるでしょう。
78名無し三等兵:2005/07/10(日) 23:35:48 ID:???
洪都 L-15「飛獅」
ttp://tuku.military.china.com/military/html/2005-02-23/480.htm (金属模型)
洪都は強-5で有名な企業ですが、練習機の分野でも初教-6、K-8、強-5複座型
(2003年初飛行)等多くの機体を生産しております。この洪都が提案した機体
が、このL-15「飛獅」です。

教練-9が自前の技術で早期に製作することを目指したのに対して、L-15を開発
する洪都は別のコンセプトを選択することになります。
>>74でYAK-130との類似をご指摘いただきましたが、それもそのはずでL-15は洪
都とヤコブレフの共同開発なのです。成都航空工業公司とミグ・瀋陽航空工業公
司とスホーイの様なロシア航空企業との協力関係がここでも見受けられます。
機名の「飛獅」は同音の「飛師」(空の老師=先生)の意味を兼ねております。


風呂に入ってきますので、続きは後ほど。
79名無し三等兵:2005/07/11(月) 01:57:26 ID:???
K-8ってカラコルムだっけ?
80名無し三等兵:2005/07/11(月) 04:19:51 ID:???
>>79
K-8ってカラコルムだっけ?
その通りです。K-8は共同開発名であり、中国では教練-8(JL-8)の名称も使われます。

ヤコブレフ設計局によりますと、関与したのは基本設計段階でその後の設計では中国
側が中心となり、それにヤコブレフ側が意見を加える形で行われたとのことです。ヤ
コブレフはL-15について、YAK-130よりハイエンドな機体であり(T-50やMAKOと同等)市
場では競合しないとコメント。洪都側のコメントでは機体の操縦系統、統合化、電子化
の方面でヤコブレフとの合弁の効果があったととのことです。
L-15の設計案では1 双尾翼機、2 単尾翼機、3国際共同開発機の3つの案があり、最終的
にヤコブレフとの共同開発案が選択されました。2000年に開発開始、2004年9月には原寸
大金属模型が公開、今年の年末には初飛行の予定で2008年には初期生産に入る予定です。

開発コンセプトとしては、教練-9とは対照的に完全新規設計で、高度な装備を施し第三、
四世代戦闘機の機動や電子装備の訓練を完全にこなし得る機体が目指されました。
設計上の特徴としては、ブレンディッドボディ、大迎角でも支障を来すさないインテーク
により高機動を可能とする設計の採用。機体制御は四重FBWを採用、電子装備の統合的設計、
デジタルデータバス(GBJ289)により集中的に表示しコントロールを行う。機体の強度は30
年/10,000飛行時間を基準とする。グラスコクピットの採用。信頼性、修理性を重視した設計
が挙げられております。
エンジンはウクライナ製AL-222-25Fターボファンエンジン(4200Kg×2)、最高速度はマッハ1.4
作戦行動半径は1200Km。全長は12.27m、全幅9.48m離陸重量 6300Kg、最大離陸重量、9800Kg、
最大搭載量3800kg、離陸距離200mとなっております。
コクピットの前席は殲-10後部座席はk-8をモデルにした設計だとの事です。
この操縦席はYAK-130のそれとは異ります
(比較)
L-15
ttp://jczs.news.sina.com.cn/2004-11-03/0020239593.html
YAK/AEM-130
ttp://www.studenten.net/customasp/axl/picture.asp?cat_id=11&ple_id=728&page=0&pte_id=12234 

81名無し三等兵:2005/07/11(月) 04:33:14 ID:???
装備されたレーダーは空対空、空対地モードを有しそれぞれの訓練を行うことが可能です。
そして機体の電子制御によりSu-27などの機体特性の再現が可能であり、実機への転換をより
容易に行いうるようになっております。
機体の大きさ、エンジン出力、充実した電子装備などL-15は、練習機に留まらず戦闘機、攻撃
機としての任務も最初から視野に入った設計になっております。スペックを比較すると「経国」
とほぼ同様の性能を有することにに驚かされます。
むろんこのような高性能機は価格の高騰を免れられません。しかし洪都は、L-15の性能は今後の
空軍近代化にとって不可欠なものであり、初期費用は高くても総合的なライフサイクルコストで
は教練-9を大きく上回ると主張しております。
そしてこの高性能には、もう1つのわけがあると言われております。

明日に差し支えるので今日はここまでです。完結できず申し訳ございません

82名無し三等兵:2005/07/12(火) 08:25:18 ID:???
洪都の主力機種である強-5も初飛行から40年が経ち、2010年頃には大量に退役が始まる
のが予想されます。現状の所、空軍は強-5の後継機については明言しておりませんが、
一説によると戦闘/攻撃機を以て代替するとの可能性が囁かれております。L-15の性能は
現状でも強-5を大きく上回るものであり充分にその任務を代替し得るものです。「強撃機
の洪都」の看板を維持するためにも、L-15は強-5の後継機足り得る高性能が求められたの
です。
そして洪都は、L-15の輸出も積極的に行うことを明言しております。既に同社のK-8はパキ
スタンやエジプト等8カ国に輸出され、90年代以降の中国製軍用機では最も売れた機体にな
っております。
洪都はL-15の投入で、高等練習機/戦闘攻撃機市場も手に入れることを狙っているのです。
洪都の試算では、今後20年間の高等練習機/軽攻撃機市場は3200機の需要があるとしており
L-15はその性能と低価格(1200万ドルよりかなり安くなる計画)でT-50、MAKOなどのライ
バル機よりも優位に立つことが出来るとしております。
超音速練習機のニーズがどれだけ在るのか、洪都の目算通りにことが進むのかは色々と疑
問の有る所ですが、洪都にとってL-15は今後の会社の命運をかけた機体であることは間違
いないものと思われます。

83名無し三等兵:2005/07/12(火) 08:27:52 ID:???
超音速練習機から戦闘/攻撃機を開発するのは、本邦のT-2/F-1、米国T-38/F-5、韓国T-50/A-50
等航空史ではよく見られるパターンの1つです。
貴航の教練-9もこの例に違わず北京超翼技術研究所(有)と組んで、教練-9を発展させたCY-1(超
翼1型)、LFC-16という軽戦闘機を提案しております。これらの機体は超高機動性を追及するため
に、カナードのあとに尾翼まで伸びた特殊な形式の補助翼を採用したのが特徴です。この補助翼は
横から見ると複葉機のように見える形をしており離陸、旋回性能の大幅な向上に資することが期待
されております。
北京超翼技術研究所(有)Webページ
ttp://www.cyairtech.com/
CY-1模型
ttp://www.cyairtech.com/air/view.asp?id=188
ttp://www.cyairtech.com/air/view.asp?id=189
LFC-16模型
ttp://www.cyairtech.com/air/view.asp?id=187
ttp://www.cyairtech.com/air/view.asp?id=186
この提案が採用されるのかは全く未知数ですが、貴航も国内外の軽戦闘機市場を視野に入れた開発計画
を取っていることが分かります。LFC-16は「F-16を超える中国軽戦闘機」の願いを込めた命名です。ち
なみに設計者のジョークではLFCとは「来発財」(お金が儲かりますように)の頭文字だそうです。
84名無し三等兵:2005/07/13(水) 00:20:26 ID:???
超音速練習機を運用することのメリットについて
T-4中等練習機を語るスレ
ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1098143295/l50
にてTFR師がコメントされておりますので以下で引用させていただきます。

155 名前: TFR ◆ItgMVQehA6 [sage] 投稿日: 05/01/12 21:01:12 ID:???
さて、適当なスレッドも見当たらない(私が知らないだけかもしれないが)のでAT/LIFTのネタでも投下してみるとしましょうか。

MT過程を卒業したパイロットがORレベルのパイロットに仕上がるまで、おおよそ180時間程度の飛行訓練を受けます。
F−15DJを使う場合(つまり、今の航空自衛隊FIパイロット)、この180時間をDJで飛びますので経費は9億円ほど掛かります。

なんらかのAT/LIFT、たとえばアエルマッキM346
ttp://www.aermacchi.it/index.htm
なりロッキードT−50なりを使う場合にはAT/LIFTで150時間、DJで30時間てな配分になります。
この場合、経費は4〜5億円程度。
この差額に、AT/LIFTの導入から用途廃止になるまでの養成パイロット数を乗じれば「AT/LIFT導入の経済効果」が大雑把に求められます。
パイロット数の多い空軍ほど、専用の高等練習機を導入する意義が大きくなるとも言えます。

同時に次のことも言えます。「高等練習機の市場」とは、この差額分でしかないと。
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中国空軍の2003年新訓練大綱は、正に上記の説明を裏打ちする実例となるものと言えるでし
ょう。
85名無し三等兵:2005/07/13(水) 00:43:19 ID:???
中国空軍が教練-9とL-15のどちらを採用するのか、現時点では全くの未知数です。
一説では両機とも採用し、高性能のL-15はSu-30等の新世代機パイロット養成用に
低コストの教練-9は大量配備し在来機の訓練に充てるのではないかとの憶測もあり
ます。この説は、これまでの中国空軍の状況から見ても有り得ないとはと言い切れ
ない気がします。

しかし成都のFC-1/JF-17、F-7MF、洪都のL-15、貴航/超翼のLFC-16と同規模の軽戦
闘機計画の乱立は、WW2の頃のドイツ空軍を髣髴とさせるものがあります。
リソースの一元化に成功した宇宙開発と異なり、各社が計画を乱立させている状態は
中国の航空行政の問題点を表しているような気がします。

超音速練習機開発の件は以上です