http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1076157892/722-723の続き 蒼穹にただよう二酸化ケイ素の白煙。あの下に仲間がいる。
視力が戻っていない乗騎を誘導し高度を上げると、開けた視界に密集する町並みがとびこんできた。
かなりの規模だ。
故国、判定者同盟の首都フタンほどではないが、辺境にある彼女の一族所領などとは比較にならない。
たいていの建物はドラゴンの翼を広げたほどの大きさもないが、白亜の壁にガラスをはめ込んだ巨大建築もちらほらある。
よく整備された道には行き交う人間。
彼女と相棒が姿を見せるたびに、みな足を止めてこちらを見上げる。
車輪のついた色とりどりな箱が走っている。人間たちが使っている箱馬車にも似ているが、牛も馬も繋げられてはいない。
目的地はすぐに知れた。濃い黒煙が立ちのぼっていたからだ。
詳しく観察しようと高度を下げて、そこら中に打たれた石柱から、黒いロープが張り巡らされていることに気づく。
歴史で習った、かつて人間が使ったという竜阻止柵に似ている。
安全な高度にとどまり、旋回しつつ黒煙の下を観察する。
広い十字路の中、石柱から引きちぎれたロープにからまってもだえるドラゴンがいるが、乗り手の姿はない。
周囲には炎と黒煙を吹く箱が転がり、この高度でも感じるほどの熱を放っている。
そのドラゴンはプロトプテルス種、彼女のポリプテルス種よりも滑らかな体表を持ち、わずかだが優速である。
プロトプテルス種は希少なので保有している者は少ない。先行偵察の8騎の中でも1騎だけ。
持ち主の名はカンマ・プテロ・ラクトン。
首都プタンへの水運を独占して莫大な富を得たカンマ家の総領息子。
別にカンマ家の者が水運業務に携わっているのではなく、そのノウハウとインフラを持つ人間を傘下に独占しているのだ。