ACキャラバトルロワイアル

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691Hush-a-bye, baby:04/11/29 10:44:53 ID:???
最上階は8階。一番奥の部屋に入り、ヴィレンはベッドに倒れこんだ。
肉体的にも、精神的にも限界だった。これからのことを考える前に、少しでも休みたい。
頭を何かが撫でる感触。リリスだ。
「ボク、疲れてたもんね。ちょっと寝た方がいいよ」
「…寝れるわけねえだろ…何があるかわかんねえのに」
「じゃあ眠れるように、リリスが添い寝してあげる!」
「寝言は寝て言え」
「はじめてでしょ?優しくするから」
「死ね」
リリスはまだ頭を撫でている。すでにそれを振り払う気力も無い。
「………」
そういえば頭を撫でられたことなど、初めてのような気がする。
物心付いたころにはすでに両親はなく。
与えられるものなど何もなかった。欲しいものは奪うだけ。奪ったものにこそ価値がある。
なのに、この小さな手が与える感触を…心地良いと思うのは何故だろう?

Hush-a-bye, baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock;

歌声が聞こえる…子守唄?馬鹿にしやがって。
大体寝るつもりはねえっつってんだろが。

When the bough breaks the cradle will fall,
Down will come baby, cradle, and all.

…クソガキ…俺は寝たくねえんだ…よ…………
692Hush-a-bye, baby:04/11/29 10:45:52 ID:???
「お休みなさい」
眠ってしまったヴィレンにリリスはシーツをかける。
「心も体もぼろぼろな人って、リリス大好きよ…もっといじめたくなるから」
目覚めれば、惨劇の続きが始まる。この子はこの後、どれだけ傷ついてしまうのだろう?
少女に浮かぶ笑顔は無垢。残酷なまでに。
「大丈夫。リリスが守ってあげるから、ね」

【ヴィレン(左脚骨折) 所持品:チェーン・パチンコ玉・鉄釘など暗器 目的:ゲーム参加・負傷回復】
【リリス 所持品:? 目的:ヴィレンを守る】
(現在位置・2区東側ホテル内)
※ヴィレン、疲労回復。ただし怪我は治っていません。
693FMJ ◆R0aSYZxqgE :04/11/29 14:49:04 ID:???
「って…しまった寝過ごしたぁぁぁぁぁ!!」
「なにやってんのよぉぉぉぉぉ!!」
ギースタワー一室、響く三人の声。時計は八時を指している。
そう、二人はギースタワーの一室で睡眠を取り、放送を聞き流してしまったのだ。

話は夜にさかのぼる。
ニーギはギースタワーの内部のある部屋で休むというアルフレッドの意見でギースタワーを目指して歩いていたのだ。
道中でマシンガン…いやウージーを見つけた二人、それが此処を立ち去った溝口のものだということは知らない。
「これって…アレじゃん、ほら。戦場は地獄だぜ!とか言いながら撃つ奴」
ニーギが拾い上げ、フゥハハハハ等と笑いながら冗談半分で海に銃口を向ける。
すこし戸惑っていたアルフレッドがニーギを止める。
「ちょ、大丈夫?…機関銃と破壊力はほぼ同じなんだよ?」
「大丈夫だって!向けてる方向は海だし、誰も居るわけ無いし」
ニーギが遊び半分でトリガーを引く、ドパパパパッ!と威勢のいい音がし………。
二人は知るわけが無かっただろう、銃弾の行く先に人体があり、その銃弾が確実に胸を、頭を貫いていたことを。

「さぁ、そのギースタワーって所に行くんでしょう?」
ウージーを袋に押し込め、ニーギがアルフレッドに何事も無かったことのように振舞う。
やれやれ、と小さく声を漏らすアルフレッド。肘打ちが彼の腰を襲ったのは言うまでもないかもしれない。

「やっぱり、そのまま…か」
過去にサウスタウンに来た記憶を巡り、嘗てビリーに礼として一度だけ招いてもらったギースタワーの内部をアルフレッドはしっかりと記憶していた。
なぜか布団しかないのだがその理由はビリーのみが知るであろう。
多少不満げなニーギをよそに、早々と眠りについた。
694ゲームセンター名無し:04/11/29 14:50:38 ID:???
そして、朝になった。余裕で寝過ごした二人は前回と今回と放送を聞き流してしまった。
さて、どうする?

【アルフレッド 
 第一行動方針:ギースタワーで雨をやり過ごす?
 所持品:チェーンソー
 位置:11区ギースタワー内部】
【ニーギ
 第一行動方針:ギースタワーで雨をやり過ごす?
 所持品:ゼロキャノンコントローラー ウージー
 位置:11区ギースタワー内部】

#上記二人は放送を聞いていません。

【溝口
 第一行動方針:ウージーを放棄後、????(生き残る?)
 所持品:なし
 位置:11区>どこかへ移動】

【かすみ 死亡?】
695FMJ ◆R0aSYZxqgE :04/11/29 14:52:11 ID:???
なんか ? ついてるよ俺orz
【かすみ 死亡】です、申し訳ない。
696ゲームセンター名無し:04/11/29 15:25:56 ID:???
>>FMJ様
感想スレにてあなたの作品が議論されておりますので、
お越しいただけないでしょうか?
697サイキョーの伝説(前):04/11/29 21:42:08 ID:???
2日目 AM7:08

「なんで・・・なんでぇっええええ!!!」
朝の静けさを引き裂くような慟哭。
「落ち着け!真吾!」
「草薙さんが!ウソだ!草薙さんが死ぬわけない!!ウソだうそだ嘘だあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「バカヤロウ!」
ダンの拳が真吾の頬にめり込んだ。
防御することもなかった真吾は軽くふっとび、それでもなお、中空に視線を漂わせて草薙の名前を呼び続けた。
そんな真吾の姿をダンはしばらく見つめ、歯を食い縛り拳を固め、一度辛そうに目を閉じた後駆け寄った。

「しっかりしろ真吾!なに呆けてやがんだ!」
襟首を掴んで引き起こし怒鳴りつけた。
「だって、草薙さんが・・・草薙さんが死んだって・・・」
「んなもんウソかもしれねえだろ!それに・・・」
一度言葉を切る。言葉を選ぶ。今はなにを言っても彼には辛辣になるだろう。
だからあえて優しい言葉は使わなかった。
「それに本当に死んでたらなんだってんだ!後を追って死ぬか?ここで誰かに襲われるまで泣き続けるか?」
「ダンさんは大切な人を失ってないから・・・!」
激昂しかける真吾。
「うちはな、オヤジが殺されてるんだ」
「え・・・」
いつになく神妙な面持ちで語るダン。
「この街にゃいねえけどよ、ムエタイの帝王ってやつに殺された。
 俺はな、オヤジの敵討ちのために格闘家になったんだ」
「敵討ち・・・」
真吾もある程度おちついたのか沈んだ瞳でダンを見据え話を聞いた。
「敵討ちが正しいとかいうつもりはねえ。でもよ、生きてる人間が死んだ人間にできることなんてそうねえんだ。
 俺はその中からオヤジを継ぐ、つまり格闘家としてアイツをぶっ飛ばすことを手向けに選んだんだ」
「俺に、できること・・・」
「そう、お前に出来ることだ。おまえはどうしたい?」
「俺も・・・草薙さんの仇を・・・」
そこで一度考え込む。
「いえ、俺、草薙さんを継ぎます。炎も出せない半人前だけど、あの人が誇れるような弟子になります!
 それに、草薙さんのことです、そんな簡単に死なないッスよ!きっと生きてるはずッス、そのときのためにも!」
そこまで聞いてダンは、よしっと言ってパーンと真吾の背中を叩く。真吾はいてっ、と小さく言ったがすぐにダンに向き直り
「ありがとうございますダンさん!あと、酷いこといってごめんなさいッス!」
いつもの、しかし一回り成長した、その笑顔で言った。

「まぁまぁ、そういうのはムズがゆいからよ!気にすんな!大事なのはこれからだ。な?」
「はい!草薙さんなら絶対、ゲームを止めてルガールをぶっ倒します!だからやるッス!」
目は真っ赤に腫れているが、もはやそれが瞳に映る炎に見えるくらいの闘志を込めて真吾は言った。


PM0:35
「そう言えば、雨、いつから降るんスかね?」
パンをかじりながら真吾が尋ねる。
「ん、まあまだ降りそうじゃねえよな」
同じくパンを手に空を見上げて答える。
「とりあえず降ってきたらどっかにはいらねえと傘なんてねえしなぁ」
二人であたりを見回す。ここは大きな公園らしい。
日本で公園というならば遊具やトイレがあるこぢんまりとしたイメージだがここはアメリカ。
公園といっても建物もあれば噴水もあってやたら広い。
雨宿りの場所には困らないがその分敵の隠れる場所もあるということであり、安易に建物に入るのは気が進まなかった。
「まあ、2.3箇所目星つけといて降りそうだったら近いとこに入るか」
「そうですね」
そして話はお互いの流派のことになった。真吾は草薙流古武術だと言った後
「まぁ、火が出ないうちは未完成なんですけど」
と言って笑った。それに対しダンが
「真吾、俺のサイキョー流を教えてやろうか」
といったが真吾は丁重に断った上で問い返した。
「そういえばダンさんの気弾系の技って飛ばないスけどわざとなんすか?」
「んー・・・お前だから言うけどよ、飛ばねえんだわ」
「あー、やっぱり」
「なぁにがやっぱりだこの野郎!」
言って真吾にヘッドロックをかける。
「ギブギブ!ギブっす!ダンさんそれ飛ばせますよ!」
「なぬ?」
技をはずしてきょとんとするダンに真吾は草薙京の父、紫舟からの受け売りを話した。

「気の使い方は2種類。纏うか放つか。あとはイメージ次第じゃ」
ある日の草薙家の庭で真吾はメモをとりながら真剣に話を聞いていた。
「草薙の家系はその血に炎の気を秘めておる、だからまあそれを基本としてどっちもできるんだが、
 普通の人間はそうはいかん。相当の鍛錬を積んでなお両方を使いこなす者は少ない」
「紅丸さんみたいな人ですね?」
「そうじゃな、あやつは才能もあるが、気を雷のイメージでもって扱っておる。でも思い出してみよ。
 俗に飛び道具なんて言われるものはあやつほどのものでも撃てていないじゃろ。雷光拳あたりは手に纏った気を
 爆発的に大きくして範囲を広げてこそいるが放ってはおらん。彼なりに纏う方向で極めておるのじゃろう」
「ふむふむ」
真吾のメモをとる速度が上がる。紫舟は不真面目な息子に話すよりずっといい気分で続けていた。
「そうじゃな、お前の知っている人間で出来るのはテリー君あたりか。彼はいいセンスじゃ」
「で、ええと、おやっさん。そのお話の真意はなんなんスか?」
「んむ、まあお主のことなんじゃが。気は大分練れて来ておるが、まだどちらにも達していない、と。
 現状ではお前が練った気はほんのちょっと纏ってあとは防御とかにまわっとるんじゃよ。
 まあワシの教えを受けているんじゃから、出来るようになれば気は炎となろう」
目をキラキラさせて真吾はいい返事をした。紫舟は遠まわしにまだまだ炎はでないぞ、と言っているのだが、
ポジティブシンキングな真吾は最後の炎が出せる、という部分だけで浮かれていた
「はい!おやっさん!真吾やります!!」

PM1:03
「と言うわけッス」
「というわけじゃねえよ!肝心の飛ばす方法が出てこねえじゃねえか!」
「痛い痛い!ギブギブ!ええとですね。ダンさんの我道拳、ですか?あれは飛んでるんスよ」
今度は絞めている。襟首をつかんでギュウギュウ絞めている。
「飛んでないだろ!」
「ノォォォ!あ、あれは距離がないだけッス!手から放れてるけど気の量が足りないんです!」
真吾はもはや真っ赤だ。
「まだ言うか!」
「ダンさんは・・・メチャクチャタフ・・・ッス・・・それは・・・無意識に防御に気をまわしてるからです・・・。だから」
「マジか!」
ダンはぱっと手を放し真吾は目をチカチカさせながら道にしゃがみこんだ。
「おっしゃあ!そんじゃダン様の新技披露と行こうじゃねえか!はぁぁぁぁぁ!」
ダンは路地裏に詰まれたダンボールやゴミに向けて両腕を広げ、いつものように気を練った。
そして集中する。自分を無意識に包んでいるという防御の気を手に集中するイメージで高め、放った。
ズオォォォ!という音と共に気の塊が目の前のゴミの山を粉砕した。
ぽかーんと口をあけるダンとやっと元気になった真吾が一拍間を置いて同時に叫ぶ
「すげぇ!!」「すごいッス!!!」
「よし!この技を我道翔吼拳と名づける!!」
「ダンさん、それいろいろとヤバいっすy・・・あ!?」
「どうした真吾!すっとんきょうな声だしてんじゃ・・・ん?!」
二人の目線の先、ダンが今吹き飛ばしたばかりの路地の向こう側の通りに見えたのは
血と泥で薄汚れた胴着と焼けつきそうな殺意に身を包んだ鉢巻の男と、
それに対峙する、白い巫女にも似た衣装を着た長い黒髪の女だった。
ダンと真吾は同時に叫んだ。

「リュウ!」
「神楽さん!」

【矢吹真吾 所持品:釣竿 目的:1.仲間集め 2.本部の場所探し 3.(草薙さんの代わりに)ルガールぶっ飛ばす!】
【火引弾 所持品:ホアジャイ特製スペシャルドリンク(残り5本) 目的:真吾と同じ】
【隆 所持品:全て放棄 目的:死合い】
【神楽ちずる 所持品:竹槍、草薙京のグローブ 目的:仲間を集めゲームを止める】
【現在位置:6区公園最東部】
702残り火 ◆AX90vj3jog :04/11/30 00:24:08 ID:???
 命がけの鬼ごっこを始めて、既に何時間も経つ。
 路地裏に逃げ込み、相手をやりすごして体力の回復を図ろうとする霧島だが、K'は執念深く探し回り、追い詰めてくる。
 走り、逃げ込み、見つかり、また走る。
 もうこれを何度繰り返したか。霧島の体力は限界だった。
 脇腹の傷もまた出血しだしている。いい加減眠いし休みたい……だが気を抜く事すらできない。
「化けモンかアイツは……」
 いつまでも自分を追ってくるK'、そしてその暗く燃えたぎる瞳に、改めてゾッとする。
 
 空は厚い雲に覆われてはいるが、太陽はとうに昇っていた。
「っきしょオ!」
 パンッ、と両頬を叩いて無理やり喝を入れ、立ち上がる。
 フィオとも約束したし、何としても逃げ切らねえと……!
 足元をフラつかせながらも、路地裏から通りに向かう。
 角からそっと頭を出して周囲をうかがい、K'がいない事を確認すると、霧島は通りを南下しだして。

 ざり、と、背後で足音が鳴るのを、聞いた。

 脂汗が噴きだす。振り返ると、別の路地からK'が、いた。
「くそったれ……」
 自分の間の悪さに毒づき、霧島はなけなしの体力をかき集め炎の力を呼び起こす。
 もう走って逃げるだけの体力は無さそうだ。
 幸い、K'の方もやけに消耗しているらしい……目つきばかりはギラついているが、荒い息をつき、肩が下がっている。
 走ってバイクを追い、リオンと戦い、そして霧島を延々追い続けているのだから、いくら改造人間といえども限度がくる。
 何より、精神的なストレスがK'を追い詰めていた。
 無論、それは霧島の知らぬところだが、互いに極限状態であるらしいという事実は彼にわずかながら希望をもたらした。
 状況は五分、ならまだチャンスはあるかもしれねぇ!
703残り火 ◆AX90vj3jog :04/11/30 00:25:30 ID:???

「…が…ぁぁ……ああああああああああ!!」
 獣のような咆哮と共に、K'が駆ける。
 炎を纏った拳が霧島の顔面を狙う……が、やはりその動きは鈍い。
「っのぉっ!」
 霧島は必死に身体をひねってかわす。足がもつれそうになるが、何とか踏みとどまる。
「っりゃあ!」
 右腕に炎を噴出させ、K'目がけてフックを繰り出す。
 炎はK'のジャケットをわずかに焦がしただけだったが、拳は突っ込んだ前傾姿勢のままだった彼の背中に、まともに命中した。
 自分の突進と霧島のパンチ両方の勢いで、K'はもろに顔面から地面に突っ込み、倒れふす。
 だが、霧島もがくりとその場に崩れ落ちた。
 やばい、本当の本当に限界が―――
 もぞもぞと、緩慢な動きながらもK'が起き上がろうとしている。
 霧島は、絶望が胸のうちに広がっていくのを感じた。

 サウスタウン全体に響き渡る声が、二人の戦いを遮るかのように聞こえてきたのはその時。

「こんな時に……」
 今ちょうど死んだら、今からの放送で俺呼ばれるのかな……。
 霧島はそんな事を考える自分に軽く呆れた。K'は、ルガールが前置きを始めても、意に介さない様子でゆっくりと立ち上がった。
 続いて死者の名が告げられようとする。
 それでもK'は動きを止めず、霧島の頭を掴んで地面へと投げ捨てるように叩きつけ、さらにその頭を踏みつけようと足を持ち上げ―――

「ウィップ」

 動きが、止まった。
「……?」
 目を固く閉じていた霧島は、そろそろと瞼を開いた。
 K'は持ち上げた足を下ろして、空を仰いでいた。
 注意がそれているらしい、霧島は転がり、這ってK'から離れる。
 そして。
704残り火 ◆AX90vj3jog :04/11/30 00:26:18 ID:???

「草薙京」
 
「な……嘘だっ、草薙……?」
 読み上げられた、意外すぎる名に霧島は驚愕した。
 そして、それ以上にK'は驚愕に目を見開き……困惑した。
「く……さ……な……ぎ……?」
 どこかぎこちない動きで、K'は霧島を見下ろす。
「なん……で……お前……草薙じゃない……のか?」
 声が震えている。
「俺は霧島だ……草薙は……死んじまった……っ!」
 K'は放心したような表情でそれを聞き……糸が切れた人形のように、どさりと座り込んだ。
 驚いた霧島は、ついK'の顔を覗き込むが、K'は何の反応も返そうとしない。
 何となく、泣き出しそうな顔をしていた。
 どうやらK'は動く気はなさそうだと判断して、霧島は悲鳴をあげる身体に鞭打ち、立ち上がってその場から離れた。

 足を引きずるように歩きながら、霧島はこらえきれずに泣いた。
「草薙……何でだよ……」
 拳で涙をぐいぐいとぬぐう。
 大きく息をつき、その場に立ちすくむ。もう足が言う事を聞かない。
 せめて建物の中に隠れたい。
 近くのビルの入り口まで何とか歩き、ガラスの扉を体で押し開ける。
 幸い鍵はかかっていなかった。
 適当な部屋に転がりこんで、置いてあったソファーの上に倒れこんだ。
 どういうわけだか、あの放送のおかげで死なずにすんだ。そういえば、八神の時ももう駄目だと思ったけど、ラジカセに助けられたっけ。
「へへ……俺、めちゃくちゃ悪運強ぇらしいな……」
 ぎゅうっ、と拳を握りしめて。
「草薙……お前の分まで生きろって事かな。……絶対生きて帰るよ」
 固く誓う。
「フィオ、お前も生きていてくれよ」
 満身創痍だが、霧島の命、生きる意志の炎は未だ強く燃えていた。
705残り火 ◆AX90vj3jog :04/11/30 00:28:25 ID:???

 K'は力なく道端に座り込み、立てた膝に顔をうずめていた。
 憎むべき対象も、共に戦える仲間も、もういない。
 炎は燃やす物がなければ存在できず、後には灰が残るのみ。
 もう動く気力もK'には無かった。
 クーラ……ウィップ……二人の顔が、K'の脳裏に浮かぶ。
 その目は、どこか自分を責めているようで。

 ああ、そうだな。俺、お前を守ってやれなかったな。
 そうだな。アンタ、いっつも「人に迷惑かけちゃ駄目」って口うるさく言ってたな。

 今さら、クーラの名が放送で告げられた時に、身を焦がすような激情に襲われた理由が、何となくわかってきた。
 失ってようやく気付くなんて、間抜けな話だ……
 燃え尽きた心を抱えてうずくまるK'に、どっと疲労がのしかかってきた。
 意識がもぎ取られていきそうになる。
 このまま眠って、目が覚めた時に全てが夢だったらどんなに―――

 眠りに落ちる直前、この悪夢を生み出した張本人……ルガール・バーンシュタインの姿を思い出した。
 すっかり忘れていたが、ポケットの中には手榴弾があった。
 コイツで、あの男は殺せるかな……なあマキシマ。せめてあの男を……
 ぼんやりと考えたのを最後に、K'の意識は深い闇に堕ちていった。
 
 灰の中で、わずかに残った火種がくすぶりだしていた。

【霧島翔 目的:フィオと再会し首輪の解除法を探る 所持品:ハーピーの歌声入りラジカセ 位置:三区・四区間ビル内 現在大幅に体力消耗・睡眠中】
【K' 目的:漠然ながらルガールの殺害? 所持品:手榴弾 位置:四区道端 現在心身ともに消耗・睡眠中】
706 ◆AX90vj3jog :04/11/30 00:41:18 ID:???
何てこった…修正。
>>702
×「脂汗が噴きだす。振り返ると、別の路地からK'が、いた。」
○「脂汗が噴きだす。振り返ると、別の路地からちょうど出てきたらしいK'が、いた。
707ゲームセンター名無し:04/11/30 02:07:55 ID:???
708ゲームセンター名無し:04/11/30 03:16:41 ID:???
以降作品を投下される方は、次スレの方にお願いいたします。
709ゲームセンター名無し:04/11/30 21:06:06 ID:???
何かいろいろと再利用できないかな・・・?
710故リオン:04/12/01 03:31:19 ID:???
・・・そろそろ、こっちに来ますかね・・・?
711ゲームセンター名無し:04/12/03 00:39:41 ID:???
まだ多少あまってるんだよな・・・保守
712ゲームセンター名無し:04/12/03 02:03:47 ID:???
うんこ
713ゲームセンター名無し:04/12/03 03:06:54 ID:???
確か512KBを超えると書き込めなくなるので、
もうそんなに書けないかな。
没になったネタを披露してみるとか。
714ゲームセンター名無し:04/12/03 07:52:00 ID:???
没ネタ告白大会!
実はクリスに社とシェルミーをヌッ頃してもらおうかと思ってました。
「二人のことが大好きだから、他の誰にも殺させたくなかったんだ」とかほざかせて。
715ゲームセンター名無し:04/12/04 02:50:13 ID:???
もしもの為に、まとめサイトの人がログをまとめ損なわない為に保守
716ゲームセンター名無し:04/12/05 04:33:14 ID:???
再利用


夢を────見ていたんだ───

夢の中の僕はもう一人の僕と対面していた。金色の髪を持つ、もう一人の僕と。

僕は聞いた

何故、僕は僕を制御できないでいるんだ?

もう一人の僕は答えた。

この時代には俺は本来居ない存在だ、この時代の俺はまだ眠っているべき存在なんだよ。

再び僕は聞いた。

それと僕が僕を制御できないのと何の関係があるんだ!?

再びもう一人の僕は答えた。

お前という器が来てしまったから、無理やり起こされた状態なんだよ、俺は、だから暴走している、俺にもどうしたら良いかわかんねえよ。

もう一人の僕はそう言って無理やり僕の中に入っていった───
───俺は目を覚ます。もう朝だ。
そして俺はふと気付く、覚醒しているままだ。覚醒を解こうにも解く事が出来ない。
昨日の事を思い出す。確か俺は昨日、二人の女性を殺した。
俺は何故そこまでしたんだ?あの女性達は殺す必要があったのか?
答えは出ない、ただ一つだけ分かる事がある。
今の俺は・・・・青龍の力を制御しきれて居ない・・・
それしか、分かる事は無かった───

【楓 支給品:レイピア 現在位置:二区中央 目的:特になし(出来る事ならば覚醒の制御) 備考:覚醒中
備考その2 第二放送前】


719Living Dead:04/12/05 22:26:41 ID:???
かすみはぷかぷかと波間に漂うまま、流されていた
流れこそ緩やかだったが、もう陸地は見えなくなってしまってた
どうやら海流に乗ってしまったらしい。
(どうしよう…)
彼女も過酷なまでの忍術の訓練を生き抜いた者、これくらいならまだ何とかなるものの
このまま陸にたどり着けなければやはり最後は溺れるか、凍えるか、鮫の餌だろう。

そんな中、前方に明かりが見える…。
「船?」
霧がやや立ち込めてはいるものの、朝日に照らされややこじんまりとした船が
かすみの前方に停泊している。
「た、助かる…これで」
ばしゃばしゃと波しぶきを上げて船に近寄るかすみだったが、船の手前で動きを止めてしまう。
なぜならその船の船体には、あの忌まわしきRのマークが刻まれていたからだった。

一方、船の中では、
「なぜこんなことをしなきゃならないんだか」
スーツを着用した技術者風の男が、同僚にぼやく
「単純に衛星を使うと傍受されてしまうからな…こうやって海上で一旦中継する方が安全なんだ」
「傍受ったって、社長に逆らえる連中がいるのか?」
「いるらしい…なんでも個人所有で軍事衛星を持っているとか」
「ま、余計なことは考えず仕事するこった」
スーツの男はそれでも何か落ち着かないようだった。
「ば…ばけてでないかな…あいつら…」
「でるかもしれねーな」
同僚がそれを聞いてからかう。
「勘弁してくれよぉ、いくらリモートで動いてるとはいえ、この船4人しか乗っていないんだぜぇ」
720Living Dead:04/12/05 22:28:22 ID:???
それから数分後
「お…お前死んだはず…ぐわぁ!」
船尾から進入したかすみと鉢合わせした警備員が、何の抵抗も出来ず海に放り出される。
ここらから海流が激しくなってるのだろう、みるみる間に遠くへ流されていく。
さらにもう一人警備員が現れたが、彼もまた
「で!でたぁあ〜〜〜」
攻撃すらせず、両手を合わせるとそのまま自分から海に飛び込んでしまった。
「人を幽霊みたいに言って…失礼しちゃうな」
そう言うかすみの風体は、潮に濡れてびしょびしょな上に、髪も解けてだらしなく
でろんと頭から垂れ下がっている。
事情を知らないもの、いや知っているからこそ彼らにとって彼女はまさに幽霊そのものだった。

「…ま、いいか」
それ以上は深く考えることなく彼女は船の内部に入っていく。
船はやはり狭く、階段を降りればすぐの場所に扉があり
扉を開くとそこは所狭しと電子機器が立ち並んでいた、そしてその中で、
「ほんとにほんとに大丈夫かな…」
「心配症だな」
かすみは男たちと鉢合わせしたのだった。

男は警備員よりは職務に忠実だったらしい。
「う、動くな撃つぞ!!」
がくがくと震えながら懐から取り出した拳銃をかすみに構える。
「まって!こんな狭い場所で射ったりなんかしたら!!」
「うるさい!」
テンパッた男はかすみの忠告に耳を貸さず引き金を引く
あわててかすみは身を伏せる、数回の金属音とくぐもった音
起き上がったかすみの足元に男の同僚ががくりと倒れる。
跳弾のとばっちりを受けたのだ。
721Living Dead:04/12/05 22:29:16 ID:???
「だから言ったのに…」
あわわと混乱する男の銃をつかみ、かすみはあくまでもやさしく話しかける。
「ここはどこ?あなたたち何してたの?」
もう男に抵抗する気力はなかった。
「データ収集だ…社長、いやルガール様の命令で」
「どうやったら出られるの?」
いきなり確信をつくかすみの質問。

「そ、そこのノートパソコンの中に脱出方法が書いてある…自分でみろ!」
かすみは自分の背後のロッカーにおいてあるノートパソコンに手を伸ばそうとした。
そのときだった、自分の背後で撃鉄を起こす音。
「何度も言うようだけど撃たない方がいいよ」
「やかましい!背中を向けたのがお前の油断だ!なめやがって!!」
男は容赦なくかすみに向けてトリガーを引いた、だが…
くぐもった音と同時に倒れたのは男の方だった。
暴発した弾丸が男の頭を吹き飛ばしている、銃をつかんだときにかすみは銃口を塞いでいたのだ。
「だから言ったのに…」

かすみはとりあえずノートパソコンを起動してみるが、
機械オンチの彼女にはあたりまえだがさっぱりわからない。
そもそもあの脱出方法云々の言葉自体本当かどうか…

そしてこれからどうする、彼らの口ぶりからいって自分は脱出に成功しているらしい
このまま逃げるか?だが…眼前に広がるのは果てしない大海原…
しかもまだ遥か彼方だが黒雲が立ち込め始めている。 
残念だが戻るしかなさそうだ、少なくとも鮫の餌にはならないですむだろうし。
それに。
「火月さんが心配してるかも」
粗野でぶっきらぼうだが心優しいあの男をかすみは決して嫌いではなかった。
今ごろ自分のことを探しているに違いない、早く安心させてやらないと。
722Living Dead:04/12/05 22:31:51 ID:???
かすみは男が持っていたノートパソコンと拳銃を防水ケースに入れ
さらに着替えのシャツ等もバッグに放り込む。
そして船尾に備え付けられていた救命ボートのエンジンをかけると
かすみはまたサウスタウンへと向かうのだった。

【かすみ 所持品:ノートパソコン 拳銃 衣類等 第一目的:サウスタウンに戻る】
(最短でも上陸できるのは12時間後、上陸地点は2区最西部とします)
723Witch Blade:04/12/05 22:33:18 ID:???
かすみはぷかぷかと波間に漂うまま、流されていた
流れこそ緩やかだったが、もう陸地は見えなくなってしまってた
どうやら海流に乗ってしまったらしい。
(どうしよう…)
彼女も過酷なまでの忍術の訓練を生き抜いた者、これくらいならまだ何とかなるものの
このまま陸にたどり着けなければやはり最後は溺れるか、凍えるか、鮫の餌だろう。

とその眼前に何の前触れもなく霧が立ち込め始める。
「あれ?」
あまりにも急な気象の変化に戸惑いを隠せないかすみ、そうこうしている間にも
霧はますます濃くなっていく。
そして自分の手足もわからなくなるほどのもやが立ちこめたその刹那
「!?」
いきなり視界が開け、そこはまた青空が広がる大海原だった。

ぷかぷかと浮かんだまま空を見上げるかすみの視界に海鳥が入る。
海鳥もかすみに気がついたらしく、その高度をぐんぐんと下げていく。
が、かすみはそれをぼんやりと眺めながら、あることに気がつく、
鳥にしては大き過ぎるような…いや、鳥じゃない…あれは。
かすみの目に映ったもの、それは箒にまたがった魔女の姿だった。

「あら…こんなところで珍しい」
魔女はかすみの頭上で停止し、珍し気にじろじろと観察をしている。
まけじとかすみも魔女を観察してみる。
魔女は長髪をゆったりと三つ編みにしており、豪奢なドレスを纏っている。
しかしかすみが気になったのは、髑髏が絡みついた十字の腕章を身につけているということだった。
(何だろ?)

「その…」
機先を制してメガネの奥底の魔女の瞳が鋭く光る。
724Witch Blade:04/12/05 22:34:11 ID:???
「ねぇ?あなたどうやって逃げたの?」
いきなりの質問に口をつぐんでしまうかすみ、逃げたという感触はない
ただ海に落とされて気がついたらここにいた、そういえば…
「大変!!」
ようやく事情を察したらしい、ばしゃばしゃと水面を叩き、引き返そうとするかすみ。
だがその身体が急に軽くなる…魔女が箒の先でかすみの身体を吊り上げたのだ。
「落ちつきなさい、というか…」
魔女は手もとのノートパソコンをぱちぱちと叩く、答えはすぐに出たようだ。
「あなた死んだことになってるわね…」
「ええ!!」

かすみは確認するかのように自分の身体を撫で回す、この感触は幽霊のものではない。
「安心なさいな…あくまでもこれはデータ上のことよ、で、あなたは死んだから逃げることができたわけね」
そこで魔女は言葉を切る。
「あの街で何が起こってるのか聞かせてもらえるかしら?」

魔女はかすみの話を聞き終え、静かに息を吐く。
「なるほど…まだ組織的な反撃とかそういう話は伝わってないわけね」
「はい…みんな自分のことだけで精一杯って感じで」

「でも私にとっては好都合な話でもあるわ、下手に動かれたら水の泡だもの」
魔女はかすみの首輪を指差す。
「例えるならあなたたちは手足を縛られたまま浮き輪をつけられて、深いプールの中に漂っているようなものよ」
 もしその状態で浮き輪をとったらどうなると思う?
 
「溺れちゃう…」
「ならどうすればいいと思う?」
魔女の問いにかすみは自信なさげに答える。
「プールの水を先に抜いたらいいのかも…」
「正解よ…だからこうやって外から何とかできないかって動いているんだけど」
魔女は苛立ちを隠せないかのように指を噛む。
「中で何とかしてくれないことには…ねぇ」
725Witch Blade:04/12/05 22:35:46 ID:???
「外からは入れないんですか?」
「無理ね…その首輪は鍵でもあるのよ」
「なら私の首輪を使えば入れるんじゃ?」
かすみのアイデアに魔女は首を振る。
「それも無理ね…鍵の形は1人1人違うのよ、おそらく」

そこで魔女はがらりと話題を変える。
「ところであなた…これからどうするの?」
「望むのなら無事に陸まで届けてあげてもいいわ…でもそこから先は保証できないわよ」
その言葉の裏はかすみにも理解できた、生ける死人であるかすみを主催側が許すはずが無い、
今のままでは世界に自分の居場所は無いも同然だった。
少しこの人ずるい…と思いながらかすみは、はっきりと答えを口にした。
「戻ります、自分1人だけ助かっても意味は無いし」
「そう…」
自分でもずるいと思っているのだろう、魔女はかすみに視線を合わさないように頷いた。

「ならこれを託するわ」
魔女は銃のような物をかすみに手渡す。
「レプリカで一回しか使えないけど、結界を破るには十分だと思うわ」
「使い方はどうするんですか?」
「それを持つべき者が持てばそれで何を成すべきかは自然に理解できるわ」
魔女は指先で紋様を宙に描く、とそこからゴムボートが出現し、ぼちゃんと海面に落ちる。
「逆を言えば資格がない者には、無用の長物ね…あちらにどれだけの人材がいるのかはわからないけど」
魔女はかすみをボートに乗せてやると、その頭上を旋回しながら話を続ける。
726Witch Blade:04/12/05 22:37:27 ID:???
「もし脱出するために動いている人がいたら伝えて、首輪は決して取ってはいけないと」
ここで初めて魔女は時計を見る、どうやら時間がないらしい。
魔女が指を鳴らすと、かすみのボートがひとりでにぷかぷかと動き出す。
「他にも言わなきゃいけないことがたくさんあるんだけど、もうこれ以上はとどまれないわ…
 あとはあなたたちで頑張るのよ」
「最後に、ニーギ・ゴージャスブルーって子に出会えたら伝えてくれるかしら?この程度の障害につまづくようでは、 青を名乗る資格はないと」

それを最後にまた霧の中へとかすみは沈んでいった、霧の中でかすみは思った。
名前を聞くの忘れた…と。

【かすみ 所持品:N・E・P(レプリカ、使用回数1回のみ) 第一目的:サウスタウンに戻る】
(最短でも上陸できるのは12時間後、上陸地点は2区最西部とします)
727ゲームセンター名無し:04/12/07 12:27:50 ID:???
あかりとクーラ大活躍編書きたかったあげ
728ゲームセンター名無し:04/12/07 14:31:57 ID:???
腐女子の妄想が渦巻くスレはここですか?
729ゲームセンター名無し:04/12/08 01:17:38 ID:???
パクリ
730ゲームセンター名無し:04/12/08 01:21:23 ID:???
フレオニール→草糞京
マリア→麻宮アテナ
ティアマト→2人の女
銀髪の男→金髪の男

名前を変えただけなんですね!!!!
731ゲームセンター名無し:04/12/10 06:35:37 ID:???
ほしゅ
732ゲームセンター名無し:04/12/13 21:08:24 ID:???
まとまるまでほしゅ
733ゲームセンター名無し:04/12/17 01:09:42 ID:???
ほあー
734ゲームセンター名無し:04/12/18 02:21:04 ID:???
保守!!
735ゲームセンター名無し:04/12/18 21:01:47 ID:???
まとめサイトの人が更新するまで保守
736ゲームセンター名無し:04/12/20 20:43:10 ID:???
今日も保守・・・明日も保守・・・
737ゲームセンター名無し:04/12/21 05:50:28 ID:???
そして教もまた保守
目を覚ます。
そこは漆黒の闇だった。

男、草薙京は周囲を伺った。
何も見えない。いやしかしまったくの漆黒ではない。ほんの少し扉らしきところから光が差し込んでいた。徐々に目を慣らす。
あたりが視認出来るようになったとき、彼が見たのは不思議な光景だった。
「また、さらわれたのかと思ったけど、こりゃどうにもおかしいな」

彼が見たのは同じように目を覚ましあたりを伺う数人の人間と、
依然目を覚まさず地面に伏している100人に達するかと思われる老若男女だった。
近くに見慣れた顔を見つける。弟子兼パシリの学生服の男の襟をつかんで引き起こし、軽くパンパーンと頬を張る。
「むにゃ・・・やったぁ・・・火が出たぁ」
寝ぼけている、再度頬を張る。今度はさらに軽快な音が響いた。
「いたっ!うえぇっ!?はっ!?」
授業中の居眠りを起こされた生徒のように、実際いつもそうなのかもしれないが、
彼はビクッとして首をぶんぶん振って周りを見回し、尊敬する師匠に気づいた。
「草薙さん!って、あれ?なんスかここは?暗いっスね」
「わかってりゃいちいち起こさねえよ。周りをよく見ろ真吾」
真吾がしばらくじーっと闇を見つめる。目が慣れたのか、突然素っ頓狂な声を出した。
「わわっ、人がいっぱい倒れてる!!あ、テリーさん、アテナさん、八神さんまでいるじゃないですか!」
「知らねえヤツのほうが多いけどな、しかしこりゃいったい」
京は腕を組んで考えるポーズをとった。しかしどうにもいい推理もなにも浮かんでは来なかった。
ふぅ、とひとつ息を吐いて真吾の方を向く、そしてまだ困ったような顔で言った。
「ワケわかんねえけど、まともな状況じゃねえな。とりあえずみんな起こすか。ああ、八神はうるせえからほっとけ」
「ラジャーっス!みな・・・」
京の言葉を理解していないわけではない、単に起こすという行為がほかに思いつかなかったらしい真吾が
全力で起床の大声をあげかけた時、微かな光が差し込んでいた扉が轟音と共に開け放たれた。

「それには及ばんよ、草薙京」
「テメェは・・・」
目を覚ます。
そこは光にあふれる部屋だった。

女、ナコルルは目を覆った。
よく見えない。
開け放たれた扉から強烈な光が差し込んでいる。
しばらく目を慣らす。
今気づいた彼女にこの光は目に刺さったが、程なくして見たのは不思議な光景だった。
「また『たいむすりっぷ』かと思いましたけど、それだけじゃないみたいですね」

初めてではなかった。以前に同じような目にあったときは、ギースという男に保護され、格闘技大会への参加を勧められた。
「大会の主催者の中にお前たちサムライを呼んだものがいるようだ。私には願ってもないが、お前たちには迷惑な話だな
 なぁに、終わったら帰れるはずだ。さもなくばこちらから圧力をかけてもいい」
自分は巫女であると告げた後でもギースはよくしてくれた。サムライが好きなのではなく日本が好きなのさ、と彼は言っていた。

改めてみるとすごい人数だ。
広い部屋ではあったが、国籍を問わず老若男女入り混じった人々がいる。そのほとんどが光の方を見ていた。
「おはよう!諸君!」
部屋のあちこちから大音量で声が響いた。先ほどの扉が開いた音と合わせて、ほとんどの人間がこれで目を覚ましたはずだ。
知り合いを探す、まずガルフォードを見つけた、以前に出会ったあの風間の兄弟もいた。
やっと起きた弟を兄がなにやら問い詰めている。遠くてよく聞こえないがおそらく抜け忍としての自覚を問うているのだろう。
「ギースさんはいらっしゃらないようですね」
つぶやいた時に彼女の目に留まった男、まだ少年の面影を残す金髪の男。
「・・・似てる」
ひとつ頷いて彼に声をかけようとしたとき、再び部屋中から声が響いた。
「改めてご挨拶させていただこう、今回のゲームに選ばれた幸多き諸君、私が主催者のルガール・バーンシュタインだ」
げぇむ?たしか遊戯のこと、ガルフォードに聞いたような覚えがある。また格闘技の大会か?
そう思った時ルガールが発した言葉は予想外のものだった。
「さて、これから君たちには殺し合いをしていただく」
このおそらく未来の世界に似つかわしくない言葉に声をあげようとしたとき、別の方向からずっと大きな声が聞こえてきた。
「何考えてるの!KOFとは違うのね?殺し合い?ふざけないで!私たちがなんで・・・!」
目を開く。
そこにあるのは女の死体だった。

男、リュウはまた目を閉じた。
見てはいけない。それは理性の警告だった。
しばらく天を仰ぐ。
天井からは今や強いライトの光が降り注いでいた。
「・・・・・・・・・・」

少し離れたところにある死体。それは麻宮アテナという女。大会で見たことがある。
あの男、ルガールと名乗っていた。ヤツも見たことがある。あの豪鬼と渡り合っていた男。あの豪鬼、思い出して頭がズキンとする。

「何考えてるの!KOFとは違うのね?殺し合い?ふざけないで!私たちがなんで・・・!」
彼女はあの声の主だった。ルガールは一瞥しただけで話を続けた。
「さて、君たちの首についている首輪。これだが・・・」
半数が自分の首のそれを触り、もう半数は駆け出したアテナを見た。
「冗談じゃないわ!みんなを解放してもらいます!サイコボール!!」
彼女の手から気弾が撃ち出される。そしてアテナはそれを追いかける形でルガールに仕掛けた。はずだった。
攻撃は成功することなく終焉した。発射したサイコボールはルガールの眼前で留まり、膨れ上がり、跳ね返った。
モロにそれをくらったアテナは、ついに自分の体をルガールの手が貫いていることを知ることなく・・・

死んだ・・・死んだ。思い返してまた頭がズキンと痛む。死、殺、滅・・・頭の中をぐるぐると回る言葉を振り払うように首を振った。
「さて、以上でルールの説明は終了だ。質問は認めん」
ルール?ルールってなんだ?ほとんど聞こえていなかった言葉を必死に思い出す。
一人しか生き残れないとか言っていた。生き残るには?殺す?滅す?頭を襲う鈍痛は徐々に頻繁に、そして鋭くなってゆく。
「おっと、首輪の威力だけ見せておかねばならんな。ハッタリだと思い私に襲い掛かる輩がいるやもしれん」
そう言ってルガールは手元のリモコンをアテナの死体の首輪に向けた。
ピ・ピピ・ピピピピピピ
警告音らしい音が、段々速く大きくなる。そして
ボンッ
アテナの頭が、軽く吹き飛んだ。いつの間にか彼女の体を抱いていた男が顔面蒼白になり。号泣し、彼女の頭を腕に抱いた。
もはやリュウは頭痛を感じなかった。理性と殺意の葛藤に、一方が圧倒的に勝った瞬間だった。