HDが壊れた時でも、専門のデータサルベージ会社に頼めば復旧してくれるぞ。
もっとも、完全にデータが戻ってくる保証はないけどな。
いや、それより恐ろしいのは。
HDの中のフォルダやファイル名を羅列された紙を出されて。
「この中で重要なデータはありますか?」とかやられること。
迂闊なフォルダ名を付けてると、修理に出すに出せなくなる。
「1月23日は、「電子メールの日」だぞ、ハルヒ」
「ふーん、そう。でもあたしは面と向かってじゃないと受け入れないからね!」
「……何の話だ」
ファミレスで集合にマンネリ化を感じ
和風に趣を変えて団子屋でダベるSOS団
長門がPCに触れて一言
「動いた」
「すごーい、有希!さすがあたしの見込んだ団員のことだけあるわ!!ほら、キョンも見習いなさい」
「いつお前が見込んだというんだ。お前が最初に目を付けたのは長門ではなくて文芸部室の方だったろうが」
「ああもう、うるさいわね。どのみち有希と文芸部室はセットなんだから同じじゃないの」
以下ぎゃーぎゃーわーわー
というショートショートが脳内再生された。
今日も日本は平和だ。
ハ「ちょっとキョン、このPC動かないのよ」
キ「動かん? ……どっこいしょっ!」
ハ「ちがうっ! おかしいな、昨日ちゃんと落としたはずなのに」
キ「落としたんだったら、壊れたんだろ」
ハ「いいから、立ち上げて」
キ「どっこいしょ(窓辺で本を読んでた長門を抱え)」
ハ「有希にへんなことしないのっ」
キ「とりあえず、コンセントさしたらどうだ」
目に見えるものが全てではない、だとかいう小難しい論を唱えるつもりは毛頭ないのだが、幻とか蜃気楼の類のように、そこにありもしないものが見えるのならまだしも、そこにあって然るべきものが見えないのであれば、そこには何も存在しないのだろう。
ああ、のっけから申し訳ないが、ただの独り言なので大した意味はない。あまり気にしないでくれ。
しかし、普段はその場にいるというだけで強烈な存在感を放っている人物がいないってのは、こうまでも違和感を覚えるということなのだとはね。
というわけで、もうみなさんもお気付きのことと思うのだが――ハルヒがいない。
本日の教室の俺の後ろは空席、とはいっても、いつぞやのようにハルヒの存在そのものが消えてしまったということではなさそうだ。
ホームルームでも岡部教師が「涼宮は欠席か? おかしいな」なんてことを言っていたのだが、どうもハルヒは学校に何も連絡してこなかったらしい。ってことは単にサボりってことなのだろうか?
全く、一体どこで何してやがるんだよ?
「おいキョン、どーしたんだ、そんなに不景気そうな面して? そういえば涼宮が休みなのって何か関係あるのか? まあ、夫婦喧嘩もほどほどにしておけ」
おい谷口、何でハルヒの欠席に俺が関係あるんだ? つーか、何だよそのフウフゲンカってのは? 意味が解らん。
「まあ、谷口もそのぐらいにしておきなよ。涼宮さんがお休みでしょんぼりしてるキョンをからかうのもなんだか可哀想じゃないか」
いや、だから、誰がしょんぼりしてて可哀想なんだって?
「いやいや、悪かったキョン。国木田の言う通りだ。最愛の嫁が傍にいなくてがっかりしているお前をからかったりしたら罰が当たるに違えねーな」
なんつーか、どいつもこいつもバカばっかりだ。相手しているだけで憂鬱の度合いが増して疲れるばかりだし、放っておくに限るな。ふう、やれやれ。
「これまた盛大な溜息だな」
「ほんと、かなり重症だよね」
知らん、無視だ無視!
その日の放課後、どうせハルヒはいないんだし、部室に行かなくても文句言われないだろうが、さてどうしたものか、と鞄を担いで廊下に出たところ、
「おや、丁度よいタイミングでしたね」
ああ、妙にタイミングだけはバッチリだな、古泉。ハルヒなら今日は来てないぞ。
「ええ、そのことに関して、少々お話があるものでして」
相変わらず顔面に貼り付けているニコニコ笑顔は普段と変わりなさそうなのだが、その態度に俺は何か引っかかりを覚えた。
「ここで立ち話というのもなんですから、とりあえず部室まで、よろしいでしょうか?」
とか言いながら、俺の返事も聞かずに歩き始めた。正直、この場で俺が異を唱えて帰るとか言ってみたら、果たしてコイツはどんな反応を見せるであろうか?
なんてことをほんの一瞬だけ考えてみたりもしたのだが、結局俺はそのまま古泉の後に続いた。まあ退屈しのぎにすらなりゃしないだろう下らんことにわざわざエネルギーを使うこともないだろう。
「既に機関からも報告が届いているのですが、本日に入ってから涼宮さんの所在が確認できなくなっているのですよ」
な、何だって?
「行方不明――いえ、そもそも存在しなくなってている、と言った方が正確なのでしょうか。実際、僕自身、自分の感覚で涼宮さんのことが捉えられなくなっているのです」
いや、でも、担任もクラスの連中もみんなハルヒの存在自体は認識してるみたいだったぞ。どういうことだ?
「失礼。彼女の存在の痕跡が消失しているというわけではありません。そうですね……涼宮さんの『実体』そのものがこの世界から切り離されている状態、と言ってもいいかもしれません」
何だかますます解らんぞ。俺も自分の頭のバカさ加減には我ながら呆れているところだが、もう少し理解可能な言い方はできないのか?
「申し訳ありません。僕も事態の全容を把握していると言うわけでもありませんですので……」
丁度その時点で俺たち二人は文芸部室に辿り着き、ドアを開けたその向こうには、
「あ、キョンくん、それに古泉くんも……。あ、あの、涼宮さんの身に、なにかあったんですか?」
既に涙目で俺たちに声をかけてきたマイスィートエンジェル朝比奈さんと、
「…………」
例によって無言のまま視線だけを真っ直ぐこちらに返してきた長門が待機状態であった。
「では、僕の方から、現状で確認出来ていることを報告させてもらいます」
そう切り出した古泉は、先程道すがら俺に話した内容の繰り返しを説明し、
「……と、以上なのですが、長門さんの方では何か解っていることはありませんか?」
と、長門に促した。長門は俺の方にチラッと目線を遣したので、俺も反射的に頷きを返す。って、この反応は一々俺に許可を得ているというよりは、俺がちゃんと話について来れているか確認しようとしただけなのだろうな。
「本日未明、正確な時刻は四時八分二十九秒の時点より、涼宮ハルヒはわたしたちの存在するこの三次元空間から別次元に写像された」
はっ?
「写像先は二次元。つまり平面」
そういって長門は背後に振り返ると、部室の壁に貼られている一枚の写真――いつだったか撮影したSOS団五名の集合写真――って、
「あれ? 涼宮さん、どうして写ってないんですかぁ?」
朝比奈さんの言う通り、真ん中に写っていたはずのハルヒの姿が消えているではないか!
「まさか、涼宮さんの存在が切り離されたことで、写真画像からも失われてしまったと言うことですか?」
「そうではない。……しばらく待って」
長門の言葉に従い、固唾を呑んで壁面の写真を注視する朝比奈さんと古泉と俺。沈黙が部室内を満たし、素潜りの世界記録保持者でもそろそろ窒息してしまうのではなかろうかといった時間が経過した後、
「うん?」
「おや」
「あれっ、今……なにか動いたような」
朝比奈さんの呟きの通り、写真の奥で何者かの影が横切ったような……と、その影は唐突に画像内の朝比奈さんの胸部を背後から鷲掴みにした!
「なっ?」
「ふえぇっ!」
「は、ハルヒ?」
なんてこった! 信じられないことだが、写真の中をが動き回っていた影の正体はハルヒだったのだ。
って、こいつ画像の中で朝比奈さんが逃げられないのをいいことに、色々な部位にタッチしまくったり、スカートを捲りあげてみたりと、イタズラのし放題である。何て羨まし……いや間違い、何考えてやがるんだ、おい!
「は、恥ずかしいですよぅ……見ないでぇ」
朝比奈さんは顔を真っ赤に染めて、両手で自分の目を覆って叫んでいた。って、それ、自分が見えないだけであまり意味ないのでは?
「ふーむ、これは一体どういったことなのでしょう?」
真面目なこと言いながら、お前も何ジロジロ見てるんだよ、古泉?
「ああ、失敬。ところで長門さん……涼宮さんが平面に写像されたと先程は仰ってましたが」
「涼宮ハルヒは、自身を変面に写像しただけではなく、この写真画像を基に擬似的な空間を構築している。自身の情報が三次元の物であるため、必要に迫られての措置と推測」
長門はそのように俺にとってはクエスチョンマークだらけな説明すると、一台のコンパクトデジタルカメラを手にしていた。ってそれはハルヒが写真部からガメてそのままになってるやつだっけ?
「このカメラは、現在撮影画像の中央に位置する人物を二次元に写像する機構が付加されている。その効力があの写真撮影の時点にまで干渉したものと判断できる」
おいおい、それじゃ、そのカメラであの集合写真を撮ったから、ハルヒはあの写真の中に入り込んじまったってことなのか?
「そう」
やれやれ、全く何事につけても人騒がせなことこの上ないやつだな、アイツは。
「ふふふ、まあそれが涼宮さんの涼宮さんらしさであることにあなたも気づいておられると思いますが」
おい、何ニヤニヤ笑ってやがるんだ、気色悪い。
「いえ、なんだかあなたも涼宮さんの姿を目にして安心されているように見えたものですから」
放っとけ! って、そもそもハルヒは、どうしてそんなことしでかしちまったんだ?
「あっ、そういえば涼宮さん……」
「なるほど、確かにそうでしたね。あなたも思い出したのではありませんか、昨日のここでの一件を」
古泉の言葉で俺も思い出しちまった。それは昨日の放課後のこの部室内でのこと。
………
……
…
「すみませーん、すっかり遅くなっちゃいましたぁ。はふぅ」
放課後の文芸部室にしてSOS団のアジトに、我らのおしゃまなキューピッドである朝比奈さんが息を切らせて入ってきたときには、既に俺を含めた残りのメンバーは勢ぞろいしていた。
といっても、ハルヒはネットサーフィン中、長門は読書、俺は古泉がとある筋から仕入れてきた、統合でなくなってしまうファミレスチェーンを題材にした特製カードゲームに興じていただけのことである。
まあ、朝比奈さんが最後に現れるってのもあまりなかったような気がするな、そういえば……覚えているだけでも……そうそう、喜緑さんをここに連れてきたときぐらいしか思い当たらんね。
しかし、部室内で制服姿の朝比奈さんのお姿を拝見するのも中々新鮮味があってよろしい。って古泉、お着替えタイムだから外に出るぞ。
「ああ、そうですね。気がつきませんでした」
と、外に出ようとした俺と古泉の二人を制して朝比奈さんは告げた。
「あ、あの、すみません。今日はこの後、また行かないといけないところがあって……」
「あら、みくるちゃん。なんだか妙に忙しそうね。どうしたの?」
ハルヒの問いに、朝比奈さんはどこか申し訳なさそうな表情で、
「じ、実は……書道部の方に呼び出されてるんです」
なんでも、書道部にどこからか取材があったらしく、頭数揃えのために、以前在籍していた朝比奈さんにまでお声がかかったとのことである。
「なんでよ? みくるちゃんはあたしの、SOS団の大切な団員なのよ! 何で書道部から今更呼び出されなくちゃいけないわけ?」
こらハルヒ、元はと言えば、お前が朝比奈さんの身柄を書道部から強制的に引っ張ってきただけのことだろうが。感謝こそすれ、ちょっと協力するのぐらい嫌がることはないだろ?
「もう、仕方ないわねぇ……まあいいわ、みくるちゃん、行ってらっしゃい。でもちゃっちゃと用事済ませて、一刻も早く戻ってきなさいよねっ!」
「は、はいぃ! い、行ってきまーしゅ」
ハルヒの許可を無事得ることの出来た朝比奈さんは、慌ててドアから飛び出して行った。って、そんなに焦ると危な……、
「わぴぃ!」
と、その瞬間、悲鳴と同時に派手な転倒音が聞こえてきた。
「ふえぇ……痛いですぅ」
はあ、やれやれ。怪我とかされていないか心配ですよ。
「うんうん、さすがはみくるちゃん、ナイスよ! ちゃんと萌えのツボってものを把握してなきゃ出来る芸当じゃないわ」
ってハルヒ。お前も妙なところで感心してるんじゃありません。
そして、しばらくの時間の経過の後、我らがミラクルハニーな可愛らしい先輩は、少々緊張の抜けきらない面持ちでご帰還あそばされた。
「ほへぇ〜、何だか肩が凝っちゃいました。いっぱい写真撮られちゃったし、知らない内に集合写真まで撮影しますよって聞いて、ビックリしちゃいました」
なるほど、ハルヒの発想ではないが、写真撮影があると言うのなら、それに対してまさにベストな人選だったと言わざるを得ないね。
「むう……今度からちゃんとレンタル料貰わないと損よね。一分百円ぐらいが妥当なところかしら?」
一体何考えてやがるこのアマ。
「つーかハルヒ、お前仮にも団長なんだろ。人の上に立とうって者が、そんなセコイこと言っててどうするんだ?」
「なによ偉そうに。第一みくるちゃんはうちの映画の主演女優でもあるのよ。そのぐらい吹っ掛けても罰は当たらないわ」
とか何とか言いながら、いつの間にかハルヒはパイプ椅子に座った朝比奈さんの背後に回りこんで、その肩を揉んでいた。何だろう、アイツなりの労いの意思なんだろうかね? ついでにいつものお礼にお茶でも淹れて差し上げたらいいんじゃないか?
「ところで、書道部の方が仰っていたんですけど……」
と、マッサージされながらの朝比奈さんが尋ねてきた。
「あの、例えば三人並んで写真に撮られたりすると、真ん中の人の縁起が悪いとか、不幸があったりするとか聞いたんですけど、どうしてなんですか?」
すかさず、こういう薀蓄なら自分の出番だ、とばかりに古泉が、
「そういえば写真撮影が日本に伝わってしばらくの間は、写真を撮ると魂を吸い取られるという迷信があったようですけどね」
などと話に加わってきた。
「でも古泉、それだけだと真ん中の人が、ってのの説明にはなってないんじゃないか?」
「ふむ、そういえばその通りです。なるほど、何故真ん中の人が対象なのですかね?」
と、それまで沈黙を貫き通してきていた長門がその口を開いた。
「当初の写真撮影を行う場合は、その技術的限界により露光時間を比較的か長く確保する必要があった。そのため撮影に際して長時間同一姿勢をとる必要があり、それが被写体人物の不安を煽ったものと思われる」
「ああ、そういえば当時のダゲレオタイプは確か露光時間が日中で十分から二十分程かかるのでしたね」
「後には二分程度で露光時間が済むように感光剤やレンズの改良が行われたが、少しでも光量を稼ぐために絞り設定は開放ぎみにすることが行われていたと推測」
絞りって、それがなにか関係あるのか?
「絞りが開放されることによって被写界深度、即ちピントの合っているように見える領域は狭くなる。このために撮像の中央部分以外はいわゆるピンボケ状態になりがちであった」
「ふむ、大体話は見えてきましたね」
って、何一人で納得してるんだ、古泉?
「すみません、つまり、これは僕の推測なんですが、長門さんの仰りたいのは当時の写真は中央の人物にピントが合っていたため、その分、例の迷信の『魂を吸われる』効果が集中すると考えた人が多かったのでは、ということではありませんか?」
「概ね。それ以外の要因としては、当時の世相柄、中央に位置する人物は被写体集合の中でもリーダー的人物であることが多く、その場合は他のメンバーよりも年長であるために、寿命の観点から不利であったことも考慮されるべき事項だと思われる」
まあなんだ、真ん中に写ってる人はお偉いさんで、その分年取ってるから先にお亡くなりになる確率が高いってことか?
「そう」
「あ、あのぅ、何だか難しくて全然よく解らないんですけど、別に写真の真ん中に写っても大丈夫なんですよね?」
どこかとぼけた様子でありつつも、なんとなく不安そうに質問する朝比奈さんを安心させるべく俺はフォローした。
「まあ迷信ですからね。もしそうでないなら、ハルヒみたいにいつでも真ん中に写りたがってるような奴は真っ先に不幸が訪れるでしょうから」
「ってなによキョン、団長のこのあたしに対するその口の利き方は? まあでも……そうね、もしも本当に、魂を吸い取って記録しちゃうカメラがあったら面白いかもね。気に入らない奴がいたら、あたしがそいつをそのカメラでバシバシ撮ってやるんだから」
さりげなく物騒なことを言うなよ、こら。
…
……
………
っていうと、なんだ? まさかハルヒはこのデジカメを自分で言い出した魂を吸い取るカメラにしちまったようじゃないか?
「そう」
って、何を暢気に構えているんだ、長門?
「これは一時的な事象。涼宮ハルヒがこの状態を維持したいと望んでいるから、擬似空間も構成され続けているものと考えられる」
「要するに、涼宮さんがこの『写真の内部世界』に飽きると、自然にこちらに帰ってこられると言う目算なわけですね」
飽きたら、ね。まあ確かにハルヒは飽きっぽい性格だともいえる。
「って、何しやがるんだ!」
「おや、どうかしましたか?」
つい大声を上げてしまった俺につられて、一同件の写真に注目する。
その中では暴走状態のハルヒがどこに持っていたのか知らんが、サインペンらしきもので俺の顔にラクガキを施している姿が観測できたのだ。
「うぷっ……ご、ごめんなさい、キョンく……ぷふぅ」
「すみません、笑ったり……するのは……失礼だと……くくっ」
「……実にユニーク」
なあ、俺……泣いてもいい?
と、しばらくして気づくと、写真の中のハルヒの姿が見えなくなっている!
「おい、ハルヒ! チクショウ、一体どこに隠れちまったんだ?」
つい壁の写真に向かって俺は怒鳴りつけてしまった。
「こちらから叫んでも無駄。わたしたちの声は擬似空間には伝達不能。それよりも問題がある」
えっ? 何だ長門、その問題ってのは?
「擬似空間の縮退が観測された。このままの状態だと、やがて体積はゼロに収束し、涼宮ハルヒの存在は平面内に定着することになる」
な、何だって?
「ふむ、もしかしたら涼宮さん自身、元の世界に戻るための方法が解らないために困っておいでなのかも知れません」
だが古泉、長門の言う通りだとこっちからもハルヒには伝えられないんだろ? 第一、どうやったらアイツをこっちに連れ戻すことが出来るんだ?
「落ち着いてください。僕たちが動揺して焦ったところで、事態に何の進展もないことには変わりありません」
でも……くそっ、本当に打つ手は何もないのかよ?
「あ、あの、わたし考えたんですけど」
と、そのとき朝比奈さんがおずおずと発言した。
「さっき長門さんが、そのデジカメで撮影した画像の中央の人を……しゃぞう、でしたっけ? つまりこの写真の中に送っちゃうんですよね? だったら、三人とか並んで写真を撮ったら、真ん中の人は涼宮さんのところにいけるんじゃないですか?」
ええっ?
「なるほど、それには気がつきませんでした」
「うかつ」
というわけで、ハルヒの作った擬似空間とやらには俺が行くことになった。何故そう決まったかは……特に理由なんかない。なんとなくだ。何か文句でもあるか?
「では撮りますよ。準備はいいですか? ……ああ、もう少し真ん中に詰めてください」
カメラマン古泉が例のデジカメを構える。
俺の右手側には長門が、反対側には朝比奈さんが……って、なんで二人とも俺の腕にしがみ付いているんだ?
「えっ、で、でも、古泉君はもう少し詰めてっていってるし、長門さんがそうやってくっついてるし、バランス的にわたしもそうした方がいいのかな、って」
でも朝比奈さん、どうしてついでにピースサインのポーズまで取っているんですか?
「あっ――!」
「……カラダは正直」
「おやおや……さて、一足す一は?」
「「「二!」」」
パシャ!
一瞬、世界が暗転したかと思いきや、あたりは真っ白な光に包まれて、俺はまぶしくて目も開けられない状況に陥ってしまった。
しばらくして、瞼を開いた俺の前には、朝比奈さんに長門、そして古泉が微動だにせず突っ立っている前に引っ繰り返っていることに気づいたのだった。
って、写真内だと俺の姿も……ってなるほどね。写像だか何だか知らんが、俺の存在は写真内部の自分自身に上書きされるってことのようだ。
さてと、起き上がって俺はあたりを見渡す。
「全くハルヒめ、一体どこで何してやがる……」
と、視線の先にハルヒがいた。
その方向に向かって、つい俺は駆け出してしまう。
「おいハルヒ、お前……こんなところで膝抱えて座り込んで何してるんだよ?」
ハルヒは顔も上げずに俺に返事した。
「だって……あたしがなにしても、みんなピクリとも動かないんだもん。つまんない」
ボソボソと呟いたその口調から、ハルヒの口元が例の形になっているであろうことは見なくても解るってもんだ。
と、そこでハルヒは急に顔を上げて俺の方に向き直った。
「って……キョン?」
なんだろう、目が点とでもいうのか、こんな表情のハルヒは俺も初めて見たようなきがする。だが、コイツにはもっと似合う表情ってものがあるじゃないか?
「やれやれ……ほらハルヒ、元の世界に帰るぞ。みんなも心配してるし、第一、団長のお前がいないんじゃ、SOS団の活動も始まらんだろ?」
何故かハルヒは表情を変えずに俺の方をじっと見つめ返してきた。
「……キョン」
「……ハルヒ」
「…………」
「…………」
って、何だ一体この沈黙は?
「……ぷっ」
「?」
「……くっくっく……」
「……な」
「……あーっはっはっは!」
何だ何だ、一体どうしちまったんだハルヒ?
「あー、おっかしいの、キョンったら。そんな顔して、真面目そうなセリフ吐いちゃって……ぶはははっ……ふ、腹筋痛いじゃないのっ……どーしてくれんのよ、もう!」
そう言って、ハルヒは大爆笑しながら、どこからか取り出した鏡を俺の前に差し出してきた。そこには、先程ハルヒの施した芸術作品的なイタズラ描きが……。
「あー、コンチクショウ! ふざけんなよ、おい!」
さすがにペンはカラフルな割に油性ではなかったのが幸いし、俺はハルヒがやはりどこからか取り出したウェットティッシュでもって、何とか顔をスッピンの状態に復帰させることが出来たのであった。
さて、これからのことだが……そういえばどうすれば元の世界に帰ることが出来るのか、長門に教えてもらってなかったじゃないか。おい、どうするんだ。
『アダムとイヴですよ。産めや増やせばいいじゃないですか』
『白雪姫って、知ってます?』
YUKI.N>sleeping beauty
待て待て、何だ何だ今のフラッシュバックは? って、まさか……またハルヒに俺はあんなことしなけりゃならんとでもいうことなのか? 一体誰の仕組んだ陰謀なんだよ?
ゴクリ、と唾を飲み込む音が響く。ああ、くそう、もうどうにでもなりやがれ!
「ん、ちょっとキョン……どしたの、変な顔しちゃって?」
「い、いや、その……なあハルヒ、そろそろ元の場所に帰らなきゃならんのだが……」
「ああ、そういえばそうよね……はい、キョン」
って、またまたハルヒはどこから取り出したのか、デジカメと三脚を俺の方に寄越した。
「へっ?」
「これであたしとあんたを撮影すれば元通りよ。うん、何だかわかんないけど、なんとなくそんな気がしたのよねぇ」
なんとなく、って、本当かそれ?
まあしかし、何故かほっとしながらも、どうして俺はどこか残念だ、なんてことを感じているんだろうか? 全くわけが解らん!
「なにしてんのよ、キョン。ほら、さっさとセルフタイマー、仕掛けなさいよね」
へいへいっと。
「じゃあ準備するわよ。ほらほら、キョンも笑いなさい!」
はあ? 笑えだって?
「せっかくあたしと一緒に写るんだから、あんたも精一杯の笑顔じゃないと許さないわよ!」
ああ、そうだな。今のお前の笑顔を見ているだけで、なんとなく俺もそんな気分になっちまったよ。
ぱしゃっ!
シャッター音の後、しばしのブラックアウト状態から解放された俺は、何故か自室のベッドの上に転がっていた。
まさか……さっきのはひょっとして、全部夢だったのか? ううむ……。
思わず時計を見る……時刻は……三時まで後数分ってところだ。中途半端な時間だな、おい。
仕方なく寝直した俺なのであったが、先程までハルヒがすぐ傍にいたような感覚がずっと残ってしまっていたため、なんとなく眠れないまま時間だけが過ぎていくこととなったのだ。
翌朝の教室、俺の後ろの座席には何故か難しい顔をして頬杖をついたハルヒがいた。
「よう、どうした? また変な夢でも見たのか?」
「べ、別にあんたには関係ないでしょ!」
「そうかい」
結局その日の間中、俺の後ろで不機嫌そうに延々唸り続けていたハルヒであったが、放課後の部室で、
「ねえキョン、ちょっと来なさい」
と呼びつけられる始末だ。やれやれ、今度は一体何の用事を言いつけるつもりだ?
「あんた、この写真っていつ誰が撮ったか知ってる?」
「いいや」
「……まあいいわ」
って、ハルヒはさっさとその画像をゴミ箱に捨てて、念の入ったことに空にしちまった。
「お、おい? 何で消しちまうんだ?」
「もういいから、ほら、あんたはあっちに行ってなさいっ!」
と、憤慨した調子でハルヒは、無理矢理俺をPCの前から遠ざけるように押し戻してしまった。
だが俺は離れ際に気付いてしまったのだ。ハルヒが自分の携帯電話をPCに接続していたということにな。
何だよハルヒめ、あの画像は自分で独り占めでもする気なのかよ、チクショウ!
ちなみにその日の晩の内に、ハルヒから『待ち受けにするのは絶対に禁止!』という文面のメールに、例の画像が添付されて送られてきたのは、ここだけの秘密ということにしておいてくれ。
>>957-962 以上です。この前の写真の流れとか色々な電波増幅に時間かかりすぎて
既に話題を見失ってる感が。申し訳ない。
しかし、このスレになんとか久々なSSの投下間に合った!
てなわけで、もうちょっとしたら次スレ建ててくるわ。 ノシ
GJ&乙!
いいねーwGJ そして 乙!
乙乙。
さてハルヒと風呂入ってくるかな
爪には気をつけてな
>>971 SS、イラストともにGJ!
写真からこういうネタが出るのが素晴らしい。
スレ立ても乙でした!
ハルヒの『待ち受けにするのは絶対に禁止!』
このセリフいいっスねww
SS乙でした〜^^
SOS団の集合写真の出来上がりを見て自分とキョン以外の3人が映ってないのを不思議がるハルヒ
低血圧な振りをして寝起きの時にキョンに甘えまくるハルヒ
キョンに貰ったプレゼント。
わくわくそしてどきどきしながら開けるハルヒ。
しかし中身がビックリ箱でビックリしてこけてしまうハルヒ
その後血祭りにされるキョン
キョンの家に行く言い訳を710個程考えるハルヒ
ハルヒのくだらない妄想で創造妊娠してしまう…谷口
533 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2009/01/23(金) 18:55:44 ID:19Fq4pV3
少し考えた
ハルヒ厨が最近毎日のように喚く
・キョンは中学を卒業してから佐々木と会うどころか連絡しようともしなかった
・佐々木はキョンにとって親友ですらない
・既に佐々木と二人で塾に通っているのに憂鬱で「異性と肩を並べて歩くのを夢見たり〜」と述べている
だから佐々木はキョンに異性として見られていない
だから佐々木は単なるハルヒの噛ませ犬ww
変な女好きのキョンが好きなのはハルヒに決まってんだろwwww
というお話。
確かに、お世辞にもどう考えても佐々木が異性として見られていないと言わざるを得ないだろう
つまり、
ハルヒ厨が喚くように「キョンはキョン自身も主張するように変な女が好きじゃない」ということだ
佐々木は国木田や中河が口を揃えて言うように変な女
だから、佐々木以上に変人(DQNってレベル)のハルヒは佐々木以上にキョンに異性として見られてないんだわ
そう。キョンが好きなのは普通の女の子なんなんだよ
みくるのような何も知らない人が見たら普通人と変わらない子が好きなんだよ。
佐々木を叩くつもりで色々言ってたら自滅してたというオチ
ハルヒ厨終了のお知らせ
お前らこれよく読め
風邪の上にスランプや〜
『ドラゴンキョンとハルヒの物語』が書けね〜
PCに向かってもうまく纏まらない〜
次スレに持ち越して良いかな〜ダメだよな〜
>>981 風邪ひいてるなら無理すんなw
気長に待つから治ってから投下してくれよ。お大事に
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... || ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(~Д)∩,l| |::::| 喫茶 |:::::| ナンナイノヨ?
... || .人 人 人 丿 ノ || |::::| B. l:::: | アンタ イッタイ ナニシタノ!?
:.. ||∧∧. \./∧∧Y⌒Y⌒.〜 .つ l| |::::|_FLAT|:::::|
._||~∀~)つ ヽ(`Д´)ノ / し~/ || |◎ :::∧∧:::..! , -‐―- 、ー-.、 ハァ?
; )| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| (⌒;;)  ̄| ̄ ||:::::::::(#゚Д゚): |. /r#/ニニヽ#ヽヾ オレノ セイカヨ
;;⌒;;)| ̄ ̄| ̄/⌒Y⌒ヽ  ̄| ̄ ̄| ̄(⌒;;;;;; ;;) ̄ |:::::::::(| 介 |):| ハ芥.lノメ从从iバハ>
:,.,;;;;,) | ̄. { } ̄| ̄(⌒;;`;´,/⌒V⌒∧∧|:::::::::::|iiiTii|::: | i l (| | ┃ ┃i! ─|i
:三三三 ∧∧\ ,/  ̄ ̄|三三三{ (~ )  ̄ し U  ̄ ̄.i从リ、''' (7 ノロ ノ’  ̄ ̄
⊂(Д~⊂⌒`つ \ と ,/ Dミミゞ三<彡イ〉
`と__./〜 iメJ_i_l_l,ゞ.T`'i`
(__ハ_,>_,ハ_,>
ある日の朝、教室に辿り着いた俺の目に入ってきたのは、一回り大きなハルヒだった!
と言っても比喩表現じゃなくて、その、実際にでかくなってやがるぞコイツ。というか、気のせいか頭身が微妙に違っているような感じもするし……。
「あらキョン、あんたって背が縮んだわけ? ……なんてことはないわよね。きっとあたしの背が伸びたのよ、ねっ『ちびキョン』!」
おいコラ、人に向かってチビなんて言うなよ。
しかし、現時点でのハルヒの身長はどう見ても百八十センチはあるぞ、これ。背丈からするとまるでトップモデル並みだな。第一コイツはスタイルもいやになるぐらい良すぎるし、って何を言ってるんだ俺は?
で、背が俺より高くなったのをいいことに、ハルヒはまるで猫を捕まえるように俺の首根っこを掴んで持ち上げたり、何故か俺のことを逆お姫様抱っこしてみたりと、傍若無人の限りを尽くしやがったのだ。つーか、恥ずかしいからやめれ!
「なによキョン、あたしの背が伸びたのがそんなに面白くないわけ?」
ああ、面白くないね。大体ハルヒは元々俺より頭一つ分ぐらい背が小っこいからこそ、どんな無茶苦茶をしでかしても、まあ可愛いから許してやるか、ってな気にもなるわけで……。
「へっ?」
って、どうしたんだハルヒ? 何でお前、そんなに顔を真っ赤にしてるんだ?
「か、可愛いって……バカぁ!」
そう叫んだかと思うと、何故かハルヒはまるで逃げ出すかのように俺の目の前から姿を消したのだった。
その後、俺の目の前に戻ってきたハルヒの背丈は、以前の大きさに無事戻っていたようだ。
やれやれ、しかしハルヒが急にでかくなったのは何だったのか? またどうして急に元に戻っちまったのか? 俺にはわからないことだらけだぜ、本当にな。
>>983 ハート巻き散らかすなwww
>>984 リボとフィグマ比べると大きいよなw
フィグマはアニメ絵で、リボはイラスト絵って感じ?
>>983 出て行ってもなお残るくらいなんですねww
>>984 トップモデルなハルヒ……想像するとカッコイイなw GJ!
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すっかり遅くなってしまった帰路を急いではいるのだが、途中で少し寄り道をしたのは訳がある。
今日という日を忘れていたらあいつは怒るのは考えるまでもないし、俺にとっても大切な日であることは間違いない。
「ただいま」
「おかえり!」
必ず鍵を開ける音を聞きつけて玄関まで迎えに出てくれるハルヒは、俺に高校時代から変わらない笑顔を見せてくれた。
「……で、それは?」
俺が手にしている柄にもないものを目にして、ハルヒはきょとんとしている。おい、まさかお前忘れてるのか?
「在り来たりで悪いが、お前にだ。……一年間ありがとう、これからもよろしくな」
そう言いながら調達してきた花束を渡すと、ハルヒは目を丸くして驚いていた。本当に忘れていたのか。
今日はお前と結婚してちょうど一年だったよな。
「覚えてたの?」
って、驚く場所はそっちかよ!
「ああ、本当は外食でも誘おうと思ってたんだが、ここんとこ早く帰れない日が続いてたからな。
せめて何かと思ってたんだが、結局思いつかなかった」
「忙しいから忘れてるかと思ってたわ。覚えてくれてただけでもいいってことにしておいてあげる」
ハルヒはまた花束に負けないような笑顔になると、
「あたしもキョンを待ってたらお腹空いたわ。ご飯にしましょう」
と台所へと戻っていった。
「なあ、一つ聞きたいんだが」
「なによ」
「なんで食器が紙なんだ?」
ハルヒはやはり結婚記念日を祝いたかったんだろう、かなり気合いの入った料理が並んでいたのだが、
その料理はなぜか紙皿に並べられている。晩酌も紙コップでするのか?
「うーん、あたしも考えたんだけどさ。結婚一年目は『紙婚式』って言うから、それにちなんでみたんだけど」
紙婚式? 金婚式とかなら聞いたことあるが、一年目からそんな名前がついてんのか。
イベントごとに何かをしようとするのはハルヒらしいな。
「そうよ。二年目は藁婚式、三年目は革婚式って言うらしいわ。これは毎年祝わないとダメってことじゃない?」
まあ、名称はともかく、俺にとっても大切な日だってことには違いないさ。
「そうよ、ダイヤモンド婚式までちゃんと祝ってやるんだから!」
「それって結婚何周年なんだ?」
「七十五周年よ!」
ななじゅうごしゅうねん? おい、てことは俺は何歳まで生きなきゃならないんだ!?
「絶対に全部祝うわよ! ダイヤモンド婚式だから、ダイヤで何かお祝いしなきゃダメよね」
おい、この年金制度も怪しい時代に、仕事で収入を得る手段なんかとっくになさそうな年になってダイヤかよ!
……まあ、ダイヤはともかく、せいぜい長生きして七十五周年を迎えようじゃないか。それまでよろしく頼むぜ、ハルヒ。
「当たり前でしょ! ……それから、あたしも一年間ありがとう、キョン。これからもずっと、よろしくね」
中途半端でおしまい。
さて風邪の不快な症状も一段落した俺なのだが、
それ以上の懸念事項を抱えていた。
…それは
【キョン君その問題間違ってるわよ】
聞こえん!俺は何にも聞こえんぞ!!
【あら?無視するき?でもこうやってまた5組の教室で授業受けられるのも何か新鮮ね】
くっ!一瞬その健康的でちょっとエロティックな太ももに視線が行きそうになったが。
いかん、いかん。無心だ!無心になるんだ俺!
「…ン」
無心!無心!
【あら?ちょっとキョン君】
えーーい!聞こえんぞ!!
「キョ…」
【ねぇキョン君】
だから聞こえんと言っている!!
「ちょっと!いい加減に気付きなさいよ!アホキョン!!」
「誰がアホだ!大体聞こえんとさっきから言っているだろうが!!」
「はぁ?何言ってんのよ!大体聞こえないって何?あんたまさかあたしの声無視してたんじゃないでしょうね!!」
「無視も何も俺には"スタンド"が見えるような特殊能力は持ち合わせてないんだ!そんなに話たいなら長門か喜緑さん、或いは九曜の所にでも行け!!」
「何であたしがあんたと話すのに有希の所まで行かないといけないのよ!大体アノ生徒会長の手先に会え何て何考えてんのよ!
後、九曜って誰?またあんた、あたしに隠れてどっかの女引っ掛けてたわね!」
「……あ〜、もしかしてハルヒか?」
「あたし以外の誰に見えるのかしら?」
「……いや〜さっき迄カナダに逝った筈の委員長が居た様な気がしたんだが…(汗)」
「へ〜。あんた、カナダに行った女にまでちょっかいだしてるんだ。
よ〜く分かったわ!この際ハッキリさせましょっ!誰が誰のモノなのか!!」
「…ハルヒさん?ちょっと待った!!」
あぁしかし世は無常なり。谷口や国木田更に元東中や俺と同じ出身中学の連中とかにばれると
色々面倒な俺とハルヒの関係を包み隠さずばらしやがった。
待て国木田に阪中、その『結婚式には必ず呼んでね』って表情は止めろ!谷口…お前はいいや。
後クラス中の女子よ『キョンはあたしのモノ宣言キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゚ω゚)ノヨォ━━━!!!! 』
って何小躍りしてんだ!!
【う〜ん、ヤッパリあの時貴方を殺さないでいた方が良かったんだ。あ〜あ連結解除されて損した】
おい朝倉!いいからこのカオスと化した教室を元の状態に再構成しろ!
【それ無理。だって今涼宮さんから出ている情報フレアは情報統合思念体にとってとても凄い情報だモノ】
「さ!キョン?もう一度あんたの彼女は誰か確りと教えてあげるわ!覚悟しなさい!」
あ〜もう如何にでもしてくれ!!
「…………眠れ……ないのか」
「…………あ。ごめん……起しちゃった?」
「……いや、起きてた」
「……そう」
なんてな。本当はお前がもぞもぞ動くから目ぇ醒めちまったんだ。
「手、繋いでよ。キョン……」
いつになく素直なハルヒの手を握りしめてやる。
そういえば、手を繋ぐなんて何ヶ月してないだろう。それこそキスは毎朝毎晩しているし、毎晩別れ際には数時間の別れを惜しむように、抱きしめたりなんだりしているというのに…………。
「…………寒いな」
「………………そうね」
「…………」
「…………」
何かが足りない気がして、それを埋めるように求め合い、抱き合い、唇を重ね、夜が更けてゆき────結局翌朝は寝坊する。
あぁこんなんじゃ二人で暮らすことになったらどうすりゃいいんだ?
「知らないわよ、そんなの! 埋めりゃいいってもんじゃないわよ!」
埋まれ。
この埋めのときのカオスさが好きだw
いつの間にか団活のあと、団長様を家まで送り届けるようになり、その別れ際に白雪姫とか眠り姫の目を覚まさせるようなことをしてみたりとか、そういう関係になった俺たち。
いつものようにハルヒを家まで送り届け、いつものように唇を寄せ────ようとしたところで制される。刺すような風に靡く黄色いリボンが視界から消えて胸が刺さるように痛い。
「わかってくれないならいいわよ、もう! こんなこともうしないで!」
「こんなことって……何だよ」
しかも「もう」を2度も使ってるぞ。
「もういいって言ってるでしょ!」
わけわかんねぇよ。
わけのわからんまま、駆け出そうとするハルヒの腕を掴む。
「離してよ!」
わけがわからん。
「だからもう、いいの!」
よくねぇよ。
両腕をぶんぶん横に振りるハルヒの表情は見えない。その両手首を掴む俺がどんな表情をしているのかもこいつには見えていないはずだ。
「離してよっ!」
嫌だ。
今まで俺たちがしていたことは、お前が望んでいたことじゃないのか?
お前も俺と同じ気持ちじゃなかったのか?
「同じ気持ちって何よ!」
何って決まってるだろ────と、言いかけて気付く。
「……すまん」
45度の角度で頭を下げる。こんなんで許してもらえるとは思っていないが。
「何謝ってんのよ!」
ハルヒの顔を盗み見る。あぁ、怒って……泣いてるのか。
「……すまん」
泣き顔を見ずに済むように、ハルヒの頭ごと俺の胸に押し付ける。
「謝るより先にすることあるでしょ……バカキョン」
……もっともだ。
埋まれ
「好きだ!」
「もう1回!」
「好きだ!」
「もう1回!」
「……なぁハルヒ」
「なによ」
かれこれ2時間……延々と「好きだ!」言いっぱなしだぞ。いい加減に許し……
「へーえ。これっぽっちで許して貰おうだなんて、あんたも偉くなったもんだわねぇ。あたしがどんだけ待ち望んだと思ってるの?」
「…………すまん」
「謝るなー! 謝るくらいならあんたのあたしに対する感情を言いなさい!」
「好きだ!」
「もう1回!」
やれやれ。いい加減許してくれないかね……
「ダメよ! 埋まるまで言ってくれなきゃ許さないんだからね!」
……埋まれ
994 :
埋め:2009/01/24(土) 02:35:19 ID:J4TdfOV3
「湯につかっているキョン。濡れたやわらかな黒髪の上に、無造作にタオルをのせ、気分よさげに顔を
緩めている。ほてった肌はつややかに輝き、しずくは瑞々しい果実を想起させる。十代特有の華奢な
首筋がくっきりとした鎖骨と肩の上にはまって好ましい調和を見せる。細身の健やかな体躯は湯船に
潜ってその屈折した影がゆらいだ。」
「ふっふっふ」指が自動筆記してくわ。キーをたたくのももどかしい。
「ハルヒ・・・・・なぁにを書いている。PCに何を・・・」
「ひっ!あたたあたあたしの背後に立つなー!!」
たぶん俺たちが勝手に出て行ったことは、全員気づいているのだろう……朝比奈さんはあやしいが。
合宿初日の夜、到着したとたんに時間を無駄にしないとばかりに遊び倒したおかげで少々疲れてはいるが、
それでも俺はハルヒに、外を少しぶらつかないかと提案した。
去年ならまず考えもしなかったことだが、今はまあ、二人の時間が少しは欲しいなんて思ってしまう間柄になったってことだ。
外に出た俺たちを待ちかまえていたのは、開発された町では絶対に見ることの出来ない、降るような星空だった。
まるでプラネタリウムみたいだな、いや、プラネタリウムがこの星空を真似しているのか、なんて考えながら夜空を見上げる。
ハルヒも俺と同じようにその空を眺めていた。
「キョン」
俺を呼ぶハルヒの声が震えていることに気が付いた。
なぜハルヒが泣き声になったのか、とっさに俺には理解できなかった。
「どうした?」
ハルヒは声だけではなく身体もわずかに震わせている。
「わかんない」
「わかんない?」
「うん、この空を見ていたら、なんか胸がいっぱいになって……勝手に涙が……なんで……?」
「ああ」
俺はハルヒの手を握って、もう一度空を見上げた。
胸を打つような星空は、どこか感動的で、それでいて少し怖いような気もする。
そんな感動と畏怖の感情が涙となってあふれてしまったハルヒを、俺はどうしようもなく愛おしく感じた。
その気持ちを込めるように、ハルヒの手の中にしっかり握りしめた。
夏の夜風がハルヒと俺を撫でていく。
少し遠い波の音が聞こえてくる。
他には何もないような、錯覚。
ハルヒがそこにいるのを確かめるように全身で抱きしめると、ハルヒはまだ瞳に涙を溜めたまま微笑んだ。
その微笑みに俺は唇を落とした。
この世界には俺とハルヒの二人だけ、今だけはそれでもいいと思った。
おしまい。
何がなんだか、とにかくすんませんorz
さて俺とハルヒの関係が所謂『彼氏と彼女』というのがクラス所か全校に知れ渡って暫く経った。
その間も当然の如く『宇宙人・未来人・超能力』による摩訶不思議アドベンチャーは繰り広げられていたのだが
…まさかデートの合間、俺がハルヒの側を離れた隙に言い寄って来たナンパの鬱陶しさで
『閉鎖空間』を作るとは。…落ち着くどころか更に酷くなってないか?
【でも観察する側としては今の涼宮さんの状態は大歓迎なんだけど】
…先ほど『宇宙人・未来人・以下略(ふもっふ)』の摩訶不思議に加え更に"スタンド"まで関わる様になっちまった。
何?ソレって所謂『幽霊』じゃないかって?良いか?阪中のルソーの一件もあったが幽霊の実在は証明されていないのだ。
よって俺に付き纏っているのは"スタンド"なんだよ!!!←結論
「…キョン、さっきから苦虫を噛んだような顔してるけど…さては朝倉!あんたまた憑いてるわね!!」
【あ〜ら涼宮さん、何を根拠にそんな事言ってるのかしら?】
まぁハルヒの力を隠すのは意外に簡単に行っていたのに朝倉の存在を誤魔化す事は出来ず
って言うかこのアホ"スタンド"野郎!ちゃっかり俺達の写真に写りやがった。しかも俺にしな垂れかかったポーズで
すったもんだの末、長門の小難しい説明に加えて生来のペテン師古泉の口八丁にと
朝比奈さんの天然ボケにより、写真に写ってるのは朝倉の『生霊』とか言うのに落ち着いてしまった。
まぁハルヒの浮気の疑惑を持たれてしまっていたので逆にそっちに持って行って
離れてる俺の所に時折魂だけ合いに来ていると携帯小説にソレっぽく書けばうけそうなネタになってしまった。
イや実際の携帯小説がどんなのかは知らんぞ。試しに長門に尋ねたら『まるで汚物を見る様に、その液体ヘリウムの様な目は濁っていた』
さて話を現実に戻すぞ
「いい?キョンは優しいから困った人がいたら誰にでも手を差し伸べるけど勘違いしなでね。
飽く迄『困った人を助ける無償の善意』であって、アンタに気がある訳じゃないのよ!!」
【あら、でも私がこうやって曲りなりにも思念体としてこの世に留まっていられるのは彼の周辺だけよ?
ヤッパリ私と彼は相性が良いのよ。現にこうやって何時も憑いていられるもの】
「馬鹿言ってんじゃないの!冗談も休み休み言い無さいよね!あたしとキョン意外に相性が良いカップルは世界中
いいえ宇宙中探しても存在しないわ。キョンが素敵なのは認めるけど、いい加減諦めて他の男捜したら?」
【そう言う涼宮さんこそ、本当に彼と相性がバッチリって思ってるの?ソレって自惚れじゃないかしら?
そもそも、入学した暫くは歯牙にもかけていなかったじゃない。本当に相性バッチリなら出会ったその日の感じるはずよ?】
「感じたわよ、こうビビっと!」
【その割にはてんで素っ気無かったじゃない。】
「あの頃は『恋愛は精神病』何て幼稚な考えをしてたからよ」
【今わは違うの?】
「違うわ」
【へ〜】
「何よ」
【人間変われば変わるものね】
「当然よ!コレがあたしとキョンの愛のパワーよ!」
【…本当。恋愛は精神病ね。あの"ツン"を此処まで"デレ"に変えちゃうんだもの。あ〜あ何だか疲れちゃった
今日はコレで帰るけど。次こそは覚悟しなさい!】
「ふん!次ぎ合ったらあたしとキョンの『愛のパワー』で成仏させてあげるわ!」
【精々期待してるわ。じゃぁまたね】
「二度と来るなーーーーー!!!!!」
…さて本来俺としか話せないはずの朝倉と何故かハルヒも話せいるようになってるのもハルヒの力の性なんだろうか。
はぁ〜。さっきから嫌に携帯がなってるがどうせ古泉からだな。
知るか!あの伝説の巨神か或いは汎用人型決戦兵器か知らんが勝手に戦ってろコッチの問題が拠り深刻だ。
「いいことキョン!あんな生霊が取り憑くなんてアンタのあたしへの気持ちが
あたしのアンタへの気持ちに負けてるからよ!罰として此処でキスしなさい!」
「なんだって!!」
「さ!早くしなさい!5秒以内!!」
「まて!こんな往来で出来るか!!」
「5…省略、0!じゃキスするわね!」
「ちょ待て!」
「問答無用!!」
アッーーーーーー!!!!
翌日学校で更にうわさになったのは言う間でもない
はやく埋まれ
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,.- ' ´ ,.__...二.ヽ、// / ヽ_, - '’/
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// r_/ ノ | |レhュ、´'/' レィ' |
' | / /く/ | | ' {::. ::|` f::}l リ
| , ー'´ lヽ| | ー‐' ,. ー1/ _...,..、 このスレッドは1000となりました。
ヘ ハト jハ `l、N r ¬-、 .ノ/7 ̄l-' ´ / l もう書けないので、新しいスレッドへ移動してくださいっ!
ヽ ゙ ヽリ_ゝ-ヘト.`ーr-=ニオノヽ「<ニ. l | 【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その104
/ l、 ヽ´l l.| l`7ヽ-ィヽ、 | /
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1232712797/ / __..,ヽ l. | j.ト .」__ / ` ゙-' …………。ねえ、キョン。何でこんなこと言わないと
,.、,! / / \._ リノ|  ̄ いけないのよ 。あたりまえじゃないの。
. K `ュー' 、 ___└ォト┘!
Y ヽ ,r´ 7/7「`{
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V Y 、 ヽ ヽ
`ー、一…、ー,-‐ ´
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