346 :
一尉:2011/06/07(火) 19:38:12.05 ID:UnPL4+Ow
支援
予約が無ければ01:00分頃から「魔法少女なのは☆マギカ 第4話」の投下を開始しようと思います。
見上げれば、透き通るような青空は何処までも拡がっていた。
太陽の光に照らされた小鳥達は気持ちよさそうに空を飛んでいて、それをぼんやりと眺
める高町なのはは、この青空と同じくらいに広大で、尚且つ漠然としているのであろう疑
問の答えを探して、思慮に耽っていた。
なのはは昨日、巴マミの家で魔法少女の説明を聞いた上で、キュゥべえから「魔法少女
にならないか」という誘いを受けたのだが、結局の所、なのははその誘いにすぐに乗る事
は出来なかった。
何故なのか、と問われた所で、ただ漠然とした不安があるからとしか答えようがなかっ
たし、何よりも「たったひとつ叶えられる願い」が何であるか、などといきなり訊かれて
すぐに答えられる訳もなかった。
聞けば巴マミは、家族全員でドライブに出掛けた際に大規模な交通事故に遭い、マミ自
身も瀕死の重傷を負った際、キュゥべえから何を望むかと問われたらしい。そんな状況で
願い事は何かと問われれば、誰だって「生きたい」と願うしかないに決まっている。
そんな状況で決断を迫ったキュゥべえの事を、なのはは卑怯だと思うし、その事実は余
計に魔法少女への決意を鈍らせる由縁となった。
巴マミにも昨日言われた。「願いを叶えるチャンス」が残っているなのはらには、一刻
を争う状況であった自分とは違い、沢山の可能性があるのだ。もしも魔法少女になるのだ
としても、良く考えて、後悔をしないようにして欲しいと。
「願い事かぁ……突然訊かれても、すぐには思い付かないよね」
「あたしも全然だわー。命掛けてまで叶えたい願いかって聞かれるとねぇ」
美樹さやかが、紙パックのジュース片手に言った。
この時間は、学校でのお昼休みだった。昼食を食べる為になのはと共に屋上に上がった
さやかもまどかも、きっと今、なのはと同じ事を考えているのだろうと思う。
さやかだってまどかだって、皆普通の家庭で普通に暮らして来た普通の女の子なのだ。
命を掛けて戦う代償、なんて言われても、まだ現実味が湧かないし、威勢の良い返事を返
せる訳もないのは当然の事だ。
ぼんやりと考えていると、黙々とお弁当を食べていたまどかが、不意に口を開いた。
「……ねえ、ほむらちゃんは一体、何を願って魔法少女になったのかな」
「何だっていいじゃん。何にせよ、昨日あいつがやった事を考えれば、あいつが碌な人間
じゃないのはもう確定。魔法少女になった理由も、どうせ自分本位な目的の為なんでしょ」
「本当にそうなのかなぁ……」
お弁当を食べる箸を進めながら、まどかはうーんと小さく唸って、視線を落とす。
「ほむらちゃんとは、前に何処かで会った気がするんだよね……」
「何、実は覚えてないだけで知り合いだったってパターン?」
「ううん、そこまではわかんないけど……」
考えと言葉が上手く纏まらないのか、まどかは困り顔のまま何も言わなくなった。
「ま、何にせよ、マミさんやキュゥべえもそう言ってんだから、あいつは敵で確定でしょ」
少なくとも、マミとキュゥべえはそう言っていた。
暁美ほむらも魔法少女である事はまず間違いないが、その目的―キュゥべえを追い立て
た理由―は、十中八九この管轄での魔女退治における手柄を一人占めする事にあるのだと、
マミ達はそう語った。
そうやって自分の為だけに戦うような奴の思い通りにはさせられないというさやかの気
持ちは解るし、それが本当なのだとしたら、なのはもほむらと友達になりたいなどとは言
わなかった。彼女が自分本位の目的の為に戦い、誰かを傷つけると言うのであれば、なの
ははそれを見過ごす事は出来ないし、何とかして食い止めたいとも思う。
だけれど、なのははどうしてもほむらがその為だけに戦っているとは思えなかった。
何故なら。
「でも、ほむらちゃん……凄く悲しい目をしてたんだよね」
「あー、なるほど、大体わかった。優しいなのはは悲しい瞳をした孤独な美少女転校生を
助けてあげたい……! なーんて殊勝な事考えちゃってるわけねー」
「ま、まあ……そこまで上から目線で助けてあげたい、なんて考えてる訳ではないけど、
やっぱりああいう目をした子、放っておけないっていうか……」
「あたしは逆。あいつの目、何か、嫌いなんだよね」
「……どうして?」
「いや、どうしてって言われてもなー」
眉を顰め、右手で髪の毛を掻きながら唸った。
嫌いな相手の事を何故嫌いか、と問われても具体的に答えるのは難しいのだろうか。数
十秒ほど悩んださやかは、ようやっと考えを纏めたのか、視線を遠くに向けながら言う。
「すっごく辛い事があった時、たまーにだけど、妙に乾いちゃう奴っているのよね」
「乾いちゃう奴……? ほむらちゃんがそうだって言いたいの?」
「そそ。怒ったり、じめじめ腐ったり……それこそ人によって千差万別だけど、あたしは、
ああやって乾き切って、何もかもを諦めたような眼をしてる奴は好きになれないんだよね」
さやかが握る紙パックのジュースに力が込められて、突き刺したストローから、僅かに
オレンジ色の中身が噴き出した。おっとっと、なんて言いながら、すぐにいつもの調子に
戻ったさやかは、ポケットから取り出したハンカチで零れたジュースを拭きとり始めた。
なのははそれ以上、何も言おうとは思わなかった。さやかの言う事は解るし、否定をす
る要素もなかった。何よりも、それを言うさやか自身も何処か思う所があったらしく、今
はそれについて触れるのは得策ではないと感じたからだ。
返す言葉を失ったなのはは、空を見上げてぼんやりと呟いた。
「……なんで、私達なんだろうね」
まどかとさやかが、ぴくりと反応して、視線だけをなのはへ向ける。
「どうしても叶えたい願いがある人って、世の中もっと沢山いる筈なのに」
「あー、それあたしも不公平だなあって思ってた。命に変えても叶えたい願いがある人、
探せば幾らでも居る筈なのにさ」
「うん……生きたいって願ってるのに生きれない人や、救われて然るべきなのに、救われ
ない人。私はそんな人を見る度に、この手で救いたいって思って来た……願いを叶える力
があるのなら、私はそんな人達にこそ相応しいって思うんだけど」
「って、それは流石に言い過ぎだって! 戦場カメラマンかお前は!」
さやかの軽妙なツッコミに、なのはは「ちょっと言い過ぎたかな」なんて軽い冗談気味
に笑って見せた。
そもそもなのはが魔道師として幾つもの任務をこなし、戦地へ行く度に人を救ったり、
救えなかったりを繰り返しているのは、彼女ら一般人は誰も知らない事だ。
世界の壁を越えて、傷つく人や、救われなかった人々を数え切れない程見て来たなのは
は、それこそさやか達とは違ったスケールで物事を考えていた。この力は、自分には勿体
ないとすら思う。自分に願える事があるとすれば、そんな人達を一人でも多く救う事だが、
それはキュゥべえの魔法の力に頼らずとも、自分の力で成し遂げようと思っている。
だけど、もしもキュゥべえの力を借りる事で、この手の魔法が更なる力を手に入れる事
で、より多くの命を救う事が出来るのであれば、それも悪くはないのかも知れない。
「ちょっといいかしら」
抑揚のない声で、暁美ほむらが彼女ら三人の目の前に現れたのは、丁度そんな事を考え
た時だった。相変わらずの無表情でそこに突っ立っている暁美ほむらに、なのはとまどか
は驚いた顔をして、さやかはあからさまに嫌そうな顔をした。
「あんた……何の用だよ。昨日の続きか?」
「そのつもりはないわ。もう手遅れだし」
少しだけ沈黙したほむらは、しかしすぐにまどかに向き直った。
「あなた」
「えっ」
「昨日私が言った事は覚えてる?」
「う、うん……」
「そう……なら忘れないで居て。奴の甘事に惑わされて、後悔する事がないようにね」
奴、というのはキュゥべえの事なのだろう。顔色一つ変えずに淡々と告げるほむらの声
を聞いていると、なのははどうにも不安に駆られる。魔法少女になると言う事は、魔女と
戦う運命を架されるという事は、そんなにも厳しい事なのだろうか。
暁美ほむらは、本当に邪魔者を増やしたくない為だけに、こんな忠告をするのだろうか。
色々な疑問を考えて、我慢が出来なくなったなのはは、その場で立ち上がった。
「ねえ、ほむらちゃん」
「……何かしら」
「教えて欲しいの。魔法少女になったら、一体どうなるの?」
「全てを失うわ」
「それじゃわからないよ。具体的にどうなるのか、教えて欲しいんだけど」
「言った筈よ。それを話した所で、あなた達には理解出来ないと」
「……なら、これだけ教えてくれるかな」
なのはの瞳は、真っ直ぐにほむらを捉えていた。相対するほむらも視線を逸らす事なく、
なのはの瞳を……というよりも、まるでその奥を見通しているかのように、ただ無感動に
視線を向けていた。
なるほど確かに、さやかが「乾き切った目」と揶揄するのも解るくらい、ほむらの瞳に
は「表情」が無い。喜びもなければ悲しみもなく、さやかの言葉を借りるのであれば、そ
れは確かに「何もかもを諦めたような目」と言える。
しかし、そんな瞳をしてはいても、ほむらは苦しんでいるのだと思う。かつての親友も、
今のほむらと近い、よく似た瞳をしていたから、何となくそう思えてしまうのだった。
だからこそ、なのははどうしても気になっていた事を、尋ねようと思った。
「ほむらちゃんは、何―だれ―の為に戦っているの?」
それはつまり、暁美ほむらが戦う、その理由だった。
彼女は一体、何を願って魔法少女になり、何の為に命を賭して、また、何の為にその力
を使うのか。それがどうしても気になったのだ。回答次第では、なのはもほむらに対する
対応を変えねばならないかも知れないが、この質問だけは避けて通りたくなかった。
問われたほむらは緩く歯噛みをして、視線を逸らした。答えられない質問であるのか、
ほむらの表情は涼しげであったが、しかし何処か気まずそうであった。この場の空気がど
んよりと重くなって、遂に我慢の限界を迎えたさやかが突き刺すような視線をほむらに向
けた。
「なに? こっちの質問には答えられないってワケ?」
「ごめん、さやかちゃんは少しだけ黙っててくれないかな」
「……ッ、でもなのは、こいつは!」
「いいから、ね?」
別に意図してそうしようとした訳ではないが、なのはの声には、目には見えない重圧が
含まれていた。その青の瞳には、確固たる信念を持たぬ者が自分の前に立つ事を許さぬだ
けの、確かな威厳が満ち満ちていて。
何も言わずに、というよりも何も言えず、黙って引き下がるさやかの表情を形容するな
ら、「苦虫を噛み潰したような表情」とでも例えるのが相応しいのだろう。
さやかが身を引くと、無言になったこの場に緊迫した空気が流れて、三人を包む空気が、
まるでピリピリと肌を刺す微電流のようにすら感じられた。慌てふためいてほむらとなの
はの表情を矯めつ眇めつしているまどかなどは、まだ可愛らしい方だった。
そんな緊迫した空気の中であるが、当のほむらは何も答えはしないが、しかし一歩たり
とて引き下がりはしなくて、それが余計にこの場の空気を重たくさせる。そこに何らかの
強い意思を感じ取ったなのはは、ならばとばかりに質問を変えた。
彼女らは皆、自分の胸中に宿る信念を貫く為に戦った。フェイトはそれを、少なくとも
自分の中の『正義』だと信じなければやってられなかっただろうし、守護騎士などは、自
分が『悪』だと知りながらも、救いたい人への想いを力に変えて、戦い続けていた。
人は想い詰めれば思い詰める程、誰かを護りたいと言う気持ちや、自分の正義を守りた
いという気持ちがどんどんエスカレートして、最後には自分自身では止められなくなって
しまうのだ。
皆、そんな譲れない想いがあったからこそ、お互いの道がぶつかり合って、最終的には
互いに戦い合うしかなくなってしまった。だけれども、なのははそんな強い想いを持った
人間の事は、嫌いではない。
そういった強い想いを持った人間はきっと、悪い人間ではないし、例え戦う事になった
としても、最後にはいつだって分かり合えて来た。もっと言えば、そう言った強い意志を
持った人間同士でなければ、真に分かり合う事など出来はしないのだ。
ならば、暁美ほむらはどうなのだろう。そこに譲れない想いはあるのだろうか。そして、
それはなのはの往く道とぶつかり合う事になるのか否か、それを見極めたかった。
しかし、答えに詰まったほむらから返って来たのは、僅かに論点からズレた回答で。
「……少なくとも、あなたの言うそれは『正義』とは言い難いんじゃないかしら。そもそ
も確信した『正義』なんてものは存在しないから」
「どういう、意味かな……?」
「人が自分の『正義』を確信する為には、自分以外の何物かを、自分以上の『悪』と錯覚
する他ないわ。そういう人間が一番厄介だって事くらい、あなたならわかるでしょう?」
なるほど確かに、ほむらの言う通りだと思った。
出来る事なら人間の綺麗な面ばかりを見ていたいと思うのは、なのはだけでなく、誰だ
ってそうだろうとは思う。けど、それでも人は醜いものだ。結局の所、人が掲げる『正義』
は人によって違うのだから、その気持ちだけが暴走してしまった者は最早『正しい』とは
言えない。
そうやって戦争が起こって行くのだという世界の仕組みも、なのはは理解しているつも
りだったし、それは先程なのはがほむらに言った言葉とも、捉え方が違うだけでほぼ同義
であった事にも気付く。そういう意味では人はすべからく『悪』だと言えるし、ともすれ
ば、言葉遊びとも取れるほむらの言葉にも、返す言葉を失ってしまうのだった。
同時に、上手い返しだと思う。なのはの問いを上手くはぐらかした上で、僅かに論点を
逸らして、今度はなのはに答え辛い質問を投げかけて来るあたり、彼女は只者ではない。
沈黙を引き裂いて、次に饒舌になったのはほむらだった。
「……結局の所、『正義』が『正義』たり得る為には、常に自らの『正義』を疑い続けな
ければならないのよ。少なくとも私は自分を『正義』だなんて思っていないし、目的の為
に必要であれば、あなた達の敵になる可能性だってある……あなた達はそんな私を『悪』
と呼ぶのでしょうけど」
「それは……」
「でも安心して。あなた達が邪魔をしない限り、私はあなた達の味方よ」
何処をどう安心すればいいのか、とても難しい案件である。けれども、少なくともほむ
らを突き動かすのは、何処ぞの国の強硬派テロリストの如き盲信ではないらしい。自分自
信を正義と信じて疑わず、他者を悪と決め付けて排除に掛かるつもりでないなら、やはり
その目的が知りたい所ではあるが、恐らく今はこれ以上訊いた所で答えはしないのだろう。
今はまだパズルのピースが揃っていないのだと諦めて、なのはは再び微笑みを浮かべた。
「少なくとも、今は私達の敵ではないって事で、いいんだね」
「そういう事になるわね」
「そっか、なら安心したよ」
「ってなのは、それでいいの!?」
「うん、今はそれで十分だよ」
慌てた様子でさやかが言った。今までずっと言いたい事はあったのだろうが、なのはに
免じて暫くは黙って居たのだろう。なのはとしても、とりあえずの話は終わったので、こ
れ以上黙って居て欲しいなどと言うつもりも無かった。
先程までの緊迫した空気とは打って変わって、ぎゃあぎゃあと騒ぐさやかと、それを宥
めるなのはという構図に落ち着いた所で、それを静観していたほむらも踵を返した。
長く艶やかな黒の髪は、ほむらのターンに合わせて、さらりと風に舞う。
そんなほむらを黙って見送るなのは達に、彼女はぽつりと一言告げた。
「私の忠告が無駄にならない事を祈って居るわ」
* * *
高町なのはを始めとする魔法少女見習いの三人はその日、巴マミから「魔女と魔法少女
の戦い」について、一部始終の説明を受けた。
魔女は狙ったターゲットに「口づけ」をし、狙われた者は、どういう訳か自殺をしたり
交通事故を起こしたり、自己を滅ぼす行動に出るらしい。
それは一種の呪いのようなもので、口づけをされた人間を魔女の呪縛から解放するには、
魔女を倒すしかない。それが魔法少女の役割で、巴マミはそうやって魔女から人々を救う
為に日夜戦っているらしい。
魔女が造り出した空間を、奥へ奥へと進みながら、マミはなのは達にそう説明してくれ
た。マミは解り易く説明してくれたつもりなのだろうが、やはりなのはの知り得る常識で
は理解し難い内容で、すぐに全てを飲み込めというのは、些か難題であった。
周囲に無数に沸いているのは、昨日マミが戦った異形とよく似た奴らで、時たま魔女を
討伐しようと進むなのは達へと襲い掛かってくるが、戦力としては大したことは無い。
こいつらは使い魔で、使い魔も人を喰い続ければいずれは魔女になるそうなので、一応
は明確な敵という事になる。が、こいつらが魔女に成長するのだとしたら、次に生まれる
疑問は、魔女とは果たして如何なる生物であるのかだ。
初めて魔女と聞いた時、なのはは大魔道師プレシア・テスタロッサのような人間を想像
したし、恐らくはさやかやまどかだって、俗に言う所の「悪い魔法使い」を想像したのだ
ろう。
だが、こいつら使い魔はどう考えたって、そう言った「人類」の類ではない。人類では
ないと言うか、それ以前に人型すらしていない。もっと言えば、地球上に存在し得る生物
の常識からも外れている。異形としか表現出来ぬ存在を、我々と同じ種族だなどと思えよ
う筈もなかった。
「マミさん、一つ訊きたいんですけど、魔女っていうのは、生物じゃないんですか?」
「……そうね、高町さんには、こいつらが何に見える?」
マスケット銃からの砲撃で、浮遊する使い魔を撃墜しながら、マミは問い返す。
生物らしい内臓器官や体液などは皆無であるらしく、撃ち抜かれた使い魔は跡形も無く
消滅するが、他の使い魔はそれに大した反応も見せずに、機械的に襲い掛かって来るばか
りだった。
「少なくとも、とても生物だとは思えなくって……正直、気味が悪い、です」
「そう、それが普通の反応よね。……こいつらは実際、人の呪いや悪意の塊みたいなもの
なの……まあ、端的に言うと『お化け』みたいなものかしら。人にとっては明確な害でし
かないんだから、遠慮する必要なんかないのよ」
マミの表情には、変化一つ感じられなかった。ただ淡々と、簡単なゲームを進めて行く
ような感覚で、次々と使い魔を葬って行く。マミの射撃の包囲網を抜けて突貫して来た敵
は、マミのリボンに絡め捕られたり、マミが直接銃で殴り飛ばしたりして、その進行を確
実に阻害する。なのは達に及ぶ実害は、完全なるゼロだった。
際限なく沸いて、意思も無く襲い掛かり、言葉も無く潰されてゆく使い魔を見ていると、
いかになのはが心優しい人間と言えども、それに同情する気などは起きなかった。
人を刺したり、感染症をもたらしたりする虫や小動物は、心は持たないが、それでも生
きる為に行動し、その結果人に害を及ぼすものだ。だけれどもそれは、別に人間への意図
的な害意や悪意がある訳ではないし、人にとっては害でも、他の生き物にとっては益であ
る場合だってある。
だが、魔女たちはそういう動物的な例には当て嵌まらない。ここまでの話を聞く限り、
奴らは明確な悪意の塊となって、人の命を食い散らかすだけだと言う。
悪意だけしかない生物ほど、恐ろしいものはない。悪意は人を傷つける事しか出来ない
し、そこに優しさなどといったあたたかい感情が何一つないのであれば、奴らと人間の共
存などは絶対に不可能な話だ。
「いやー、やっぱマミさんはかっこいいなー! 使い魔どもが一撃だぜ!」
「もう、見世物じゃないのよ? 危ない事してるって意識は、忘れないで欲しいわ」
「イエース! 分かってますって!」
言いながら遅い来る使い魔を叩き落して、そいつが消滅するかどうかなどは確認すらせ
ずに、次の使い魔に弾丸を撃ち込んで消滅させてゆくマミの表情は、真剣そのものだった。
まどかとさやかは瞳を輝かせてそれを見るが、命を賭けて戦う事を少しでも知っている
なのはには、マミの言葉が軽い言葉だとはとても思えなくて、つい黙り込んでしまう。
戦う事の意味。命を賭してでも、誰かを守る事の意味。身を危険に晒して、化け物に立
ち向かってゆく事の意味。そういったものを、真の意味で理解しなければ、魔法少女にな
るのは危険なのだ。
興味本位程度ならやまておけと、きっとマミは、そう伝えたいのだろうと思う。
そんなマミの事を、素直な気持ちで優しくて立派な先輩なのだとなのはは思った。
幾つもの扉を抜けて、最後の扉をも超えた先に待っていたのは、大広間だった。広さで
表すなら、一般的な体育館くらいで、壁や天井は円形に弧を描いた、ドーム状。
空に地にと、使い魔は溢れ返る程に駆け回り飛び回り、その数だけでもうんざりする程
だった。しかし、一番に目を引くのは使い魔どもなどではなく、広間の中央の巨大な椅子
に鎮座している、何か。
何に見えるか、と問われても形容するのは非常に難しかった。頭はヘドロみたいにドロ
ドロしていて、そこから幾つもの薔薇の花が咲き誇って居る。何の動物に似ているとも思
えない身体からは、巨大で不気味な蝶の羽根が生えていた。そいつに脚という概念がある
のかは解らないが、一応脚と思しき部位も、身体の下部に幾つか見受けられた。
「見て。あれが魔女よ」
「うわ……グロい」
「あんなのと、戦うんですか……」
さやかとまどかが、口々にぼやく。なのははと言うと、困惑はするが、適切な反応が思
い浮かばなくて、ただ冷や汗を流すくらいしか出来なかった。
なのはと彼女らの違いは、戦闘経験や、非日常経験の有無についてだ。まどかにもさや
かにも、こんな化け物と戦った経験も無ければ、目撃した経験すらもないのだろう。それ
故に彼女らは、恐らく本当の意味では目の前の化け物の本質を解って居ないのだと思う。
だが、なのはそうではなかった。背筋がぞくりと戦慄して、気味の悪いプレッシャーが、
なのはを押し潰そうと迫る。まるでリンカーコアに直接干渉された時の様な嫌な感覚が、
この身体全体を駆け巡って、なのはに言い知れぬ危機感を知らせるのだ。
別に怖いと言う訳ではない。なのはが戦えば、如何に魔女と言えどもそれ程苦労もせず
に倒す事は出来るだろう。そう、問題は何もないのだ。
それなのに、なのはは言い知れぬ不快感を感じて、目の前の化け物をただ眺めるしか出
来なかった。
「何、これ……魔女って、何なの……?」
ただ、気持ちが悪いのだ。
恐怖でも何でもない、ただの不快感。それが、なのはの肌を粟立たせて、この心を押し
潰そうと、言うなれば「悪意」を放っているように見えた。近い感覚を上げるなら、凄く
嫌いな人間が居たとして、そんな相手に、凄く嫌な事をされた時、また、言われた時に感
じる感覚。それを極限まで高めたような、至って人間臭い感覚。
元より感受性が強いからか、それとも度重なる戦闘で、相手の殺気を計り知るだけの能
力を自然と養ってしまったからか、本当の所は分からない。だけれど、これが悪意の塊や、
呪いの塊と表現されるのであれば、その言葉はまさしく正しいものであるのだと、なのは
は思わざるを得なかった。
「大丈夫、安心して。私は負けないわ」
なのは達三人の反応を脅えているのだと解釈したのだろう。マミは柔らかな笑みを向け
ると、一瞬ののちには、なのは達三人の周囲を金色の光の壁が覆い尽くしていた。それが
なのはの知る防御魔法―プロテクション―に近いものだと判断した時には、マミは既に広
場へと飛び出していった後だった。
戦場へと躍り出たマミが、使い魔の一匹を踏み潰すと同時に、翻ったスカートから何丁
ものマスケット銃が出て来て、マミはそれを両手で構える。
マミの存在に気付いた魔女は、宙へと舞い上がり、つい今し方まで自分が座って居た巨
大な椅子をマミへと投げ飛ばした。構わずマミは横へ跳び、二丁のマスケットでそれを的
確に撃ち抜く。ほんの一瞬の出来事で、投げ込まれた椅子は爆音を響かせて爆発した。
どうやら反射神経と判断能力は相当に高いらしい。マミの動きには淀み一つなくて、次
に着地する時には、自分の周囲に数えるのも億劫になる程のマスケット銃が出現していて、
なのはは思わず感嘆に息を吐く。
宙を泳ぐ魔女の速度よりも、マミの速度の方が圧倒的に上回っているのだ。
一発放てば、その銃は投げ捨てて、次の銃を手に取り発射する。一発ごとに銃を取り変
えるなんて面倒臭い戦い方をしている割には、マミの速度は、なのはが知る限り、通常の
銃型デバイスから魔力弾を連続で発射するのと何ら変わらぬ速度であった。
しかし、それでも安心は出来ない。マミが放った弾丸はそのほとんどが外れ、魔女を通
り越して壁や床に穴を穿つだけだった。
「ちょっ、ちょっと……当たって無いじゃないですかぁ、マミさん!」
慌ててさやかが叫ぶ。
さやかの不安は尤もだ。如何にマミの攻撃と、その弾丸の速度が敵を上回っていると言
えども、それが命中しなければ意味などは皆無なのだ。
一体彼女は何を考えているのか、或いは何も考えず、ただ外しているだけなのか。なの
はの中で不安が芽生え始めて、いざとなれば自分がレイジングハートで魔女と戦う事も視
野に入れ始めた、その時だった。
「これが私の戦い方よ」
マミがくすりと微笑んだ。外れ弾に穿たれた無数の穴から、金色の帯が飛び出して、魔
女の身体に纏わりついてゆく。あちらこちらから伸びた魔力の帯は、幾重にもなって魔女
を絡め取り、上下左右、あらゆる方向への移動と、一切の行動を封じ込めた。
全て、計算に入って居た攻撃だったのだ。それを理解した時、マミの技量は当初なのは
が思っていたよりもずっと上なのだという事実にも気付く。今回は自分の助けは必要ない
なと判断したなのはは、自ずと握り締めていた胸元の宝玉から、手を離した。
なのはが安堵にほっと息を吐いた頃には、既にマミは巨大な大砲を構えていた。デリン
ジャーと呼ばれる拳銃を、そのまま自分の体よりも大きくしたような形状の大砲だった。
「ティロ……ッ、フィナーレッ!!!」
収束された金色の魔力は、大砲の撃鉄が降りると同時に、一気に放たれた。
マミの身体も反動で後方へと飛ぶが、それだけに威力は凄まじいものだった。放たれた
金の魔力は、エネルギーの奔流となって魔女の身体を飲み込み、金色の魔力は灼熱の業火
となって、魔女の身体を焼き払った。
* * *
窓から差し込む夕焼けに照らされて、ワックスで磨かれたばかりの床は茜色に煌めいて
いた。次第に沈んで行く夕日は今日も美しくて、全てが終わった今となっては、先程まで
この場所で魔女との戦闘が繰り広げられていたなどとは、まるで嘘のようであった。
広大過ぎる程の規模で展開されていた魔女空間がぐにゃりと歪曲した後で、それが元の
世界へと変わってゆく―戻ってゆく―風景は、やはりどう考えても物理法則では考えられ
ない。まだそれに慣れていないなのはは、今回も呆気に取られた様に眼前のマミを見詰め
るしか出来なかった。
そんななのは達に、マミは黒い球体に一本の針が刺さったような形の何かを差し出した。
「これがグリーフシード。魔女の卵よ」
「えぇっ!?」
「た、卵ぉ!?」
これには流石の三人も、短い絶叫を上げずには居られなかった。
卵という事は、ここから魔女が生まれるという事か。だとすれば、それは一刻も早く破
壊してしまった方がいいのではないか。
訝るなのはを安心させようと、マミは柔和な微笑みを向け、グリーフシード自体は危険
ではないのだと教えてくれた。
どうやらこの黒い球体は、魔女がたまに持っているもので、魔女の撃破時、稀に落とす
事があるらしい。今回は、マミが倒した魔女がこのグリーフシードを持っていたそうで、
その報酬代わりにこれを獲得したそうだ。
「でも、グリーフシードなんか持ってて、何になるんですか?」
「いい質問ね。これを見て?」
マミは自分のソウルジェムを差し出した。黄色のソウルジェムは、昨日見た通り美しい
輝きを放って居て、どんな宝石よりも煌めいて見える。しかし、綺麗な輝きを放つ一方で、
覗き込んで良く見てみれば、少しだけ昨日とは違って見えた気がした。
「あれ……昨日よりも、ちょっとだけ濁ってる……?」
「そう。魔法少女は、魔力を消耗すればする程、グリーフシードが黒く濁って行くの。そ
こで、このグリーフシードを使うと……」
僅かに濁ったソウルジェムとグリーフシードを、こつんと当てる。そうすれば、ソウル
ジェムに溜まった濁りが、見る間にグリーフシードに吸い込まれてゆき、一瞬ののちには、
ソウルジェムは昨日なのはが見たままの透明度と輝きを取り戻していた。
「ご覧の通りよ。濁りが吸収されて、私の魔力は元通り」
「なるほど、それが魔女退治の見返りって事なんですね」
「そういうこと」
出来の良い生徒を褒める様にくすりと笑って、マミは機嫌良さそうに視線を上に向けた。
「あと一回くらいは使えそうだし、このグリーフシード、あなたにも分けてあげるわ――」
誰に対して言っているのだろう。なのは達三人が不思議そうにマミを見ると、マミは三
人の謎に応えるかのように、少し遠くの物陰へと視線を移した。こつり、と靴音をならし
て、物陰から出て来たのは、黒装束に黒髪の魔法少女だった。
マミはちらと視線を向けると、挑発的とも取れる口調で、その名を呼んだ。
「――暁美ほむらさん?」
またしても、なのは達三人の前に現れたのは、暁美ほむらだった。ほむらは特に面白く
もなさそうな表情でマミを見ると、次にその後方に控えたなのはら三人へと視線を向ける。
さやかは相変わらず好戦的な態度で構え、まどかはどうしていいのかも解らずにあたふ
たする。なのははと言うと、特に変わった反応を示す事もなく、ただほむらの怪しげな言
動から、何が目的なのかを考えて佇むくらいしか出来なかった。
何となく気まずい空気が流れるが、マミはそれを意にも介さず続ける。
「それとも、人と分け合うのは癪かしら? 丸ごと自分のものにしたかった?」
「……いらないわ。それはあなたの獲物よ。自分だけのものにすればいい」
交わされた言葉は、たったそれだけだった。
もうそれ以上の興味はない、話す気すらもないとでも言わんばかりの涼しげな対応で、
ほむらは踵を返す。そのまま何をするでもなく、ほむらは立ち去って行った。
そんなほむらの様子がやはり気に入らなかったようで、さやかはいつも通り、敵意剥き
出しにほむらの後ろ姿を睨み付ける。
「相変わらず感じ悪い奴……何しに来たんだよ」
「ほむらちゃんも、もっと仲良く出来ればいいのに……」
さやかに続いたまどかの言葉は、尤もだと思う。
本当は、なのはだって彼女ともっと仲良くしたいと思ってはいるのに、自分達と彼女の
間を塞ぐ見えない壁は、あまりにも分厚過ぎる。目的も何も見えないのでは、戦いようも
ないのだ。
今回ばかりは、かつての親友達の時のように、分かりやすい―全力全開で想いをぶつけ
合う事が肝要だった―案件ではないのだとすれば、なのはも今後の身の振り方は良く考え
ねばならない。
「お互いに、そう思えればいいんだけどね……」
ほむらの後ろ姿を眺めながら、マミはぽつりとそう言った。
やがてほむらの姿が見えなくなって、ここに居るのは、本当に四人だけになった。魔女
と戦った直後だから、という理由もあるのだろうが、何処か落ち着かない気持ちで、なの
ははほむらが消えて行った廊下を見詰め続けていた。
天井から送り込まれる緩やかな風が、なのは達の髪の毛を僅かに揺らす。彼女らの耳朶
に触れるのは、無機質で無感動な空調の風音だけだった。
今回はここまでです。
書いてみて思いましたが、爽快感やカタルシス溢れる戦闘描写というのはやはり難しいものですね。
戦闘描写になると筆が重たくなって、想像以上に時間が掛かり、まだまだ不慣れなのだと実感させられました。
さて、長々と4話までほぼ原作通りの展開で来ましたが、俗に言う説明回は今回までです。
まどか側となのは側の設定の擦り合わせも大方済んだと思いますので、次回以降は二次展開になっていく予定です。
次回以降は多分、なのはも戦闘に絡んでくるのではないかと思いますので、こんな作品でも楽しみにしてくれる方がいれば幸いです。
それでは、長々とお目汚し失礼致しました。
>>356 投下乙!
次回からなのはも参戦ですか!楽しみにしてます!!
>>356 待ってました&GJでした!
管理局の体制からすればQBの目的はやり方を除き否定出来そうにないのがアレですね。
いずれ真実を知った時なのははきちんと道を選べるんでしょうか?
まあまずは目先のマミ死亡フラグをへし折るのが先か。
それ以前になのはの非殺傷設定付魔法が魔女に通じるのかが激しく疑問な訳だが。
職人の皆様、投下乙です!
>リリカルTRIGUN氏
禁書とのクロスですか……上条さんが鬱展開をどうぶち殺してくれるのか
期待してます!
>マスカレード氏
五代さんは果たしてミックを救う事が出来るのか、とても気になりますね!
あと、氷川さん達アギトの警察もどう動くのかも気になりますね。
完結まで頑張ってください!
>◆bv/kHkVDA2氏
戦闘描写は難しいでしょうが、経験を積む内に書けると思いますよ。
ちなみに氏の描写は、結構丁寧で迫力があると感じましたね。
そして、次回以降から氏のオリジナルになると聞いて
一体どうなるのか、とても楽しみですね!
なのはとまどか、二つの魔法少女がどう関わっていくのか……
>>マスカレード氏
>>◆bv/kHkVDA2氏
どちらもGJです!
現在の容量464KB
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
職人の皆ッッ!!
GJ!!!!!!
どーもです
一応今回の投下分を書き上げたのですが
確認したところ約13キロバイトあるようです
タイミング的に微妙ですがどうしましょうかのー
今の忍法Lvだとスレ立てたしかできないはず(汗)
フムン、
避難所スレで緊急避難もできますよ?
13kbなら問題ないと思う
どうもです
投下中に475キロバイトを超えてしまうのでどうかと思ってましたが
んでは22時ころから行きますー
今回どうしても車関係の専門用語が増えてしまってますが
グレアムさんが語ってるということでひとつ(;つ )つ
◆ SERIES 4. 幻の最高速ランナー
クライド・ハラオウンがジャパニーズ・スポーツカーに出会ったのは、1970年代のカリフォルニアだった。
当時、日産(ダットサン)が発売した初代フェアレディZ、アメリカ名「240Z」が、
爆発的なヒットを飛ばし、世界中の車が集まる米国市場で急速にその地位を拡大してきていた。
すでに高性能スポーツカーとしてレースシーンを席巻していたポルシェ911ターボに迫る性能を持ち、さらに価格はその半分。
現代にいたるまでの、「安価かつ高性能」という、日本製工業製品のアイデンティティを決定づけた車だった。
その当時から、日米問わず、走り屋たちにとってのZはポルシェのライバル、ポルシェターボ撃墜を最終目標とされたマシンだった。
フェアレディZは、製造コストを引き下げるため、エンジンや足回りなどの主要コンポーネントを他の車種から流用した。
搭載されるL型エンジンは、もともとは高級セダン用のもので、パワー志向の性格ではなかった。
だが、高級車ゆえの静粛性重視の設計のため、エンジンブロックは相当分厚くつくられていた。
部品としてのエンジンブロックは鉄の塊であるため、厚みを増すことは重量増に直結し、
運動性能を重視するスポーツカーではマイナス要因になりうる。
だが、重量が大きいということはそれだけエンジンブロックが頑丈ということだ。
つまり、チューニングによってパワーを上げても、エンジンが出力に耐えるということである。
エンジンパワーは、「出せる」ものではない。
出したパワーにエンジン自身が「耐えられる」ことが肝要なのだ。
エンジンが壊れるというのは、エンジンが自らの発揮するパワーに耐えられなかったことを意味する。
その点で、日産L型エンジンは比類なきパワーを秘めていた。
それは、時代が下り、Zがモデルチェンジし、エンジンがVG型に切り替わっていっても、なお不変の魂だった。
クライドが当時暮らしていた、アメリカ合衆国はユタ州、ソルトレイクシティ。
初代S30Zのデビューから数えること22年、S30型から3代数えたZ32型フェアレディZが、
世界中のスポーツカーの頂点に立つことをめざし、アメリカに乗り込んできた。
戦う舞台は、ユタ州グレートソルト湖・ボンネビルスピードウェイ。
塩湖が干上がった広大な平原に設置された最高速ステージに、その日本製スポーツカーは現れた。
JUNオートメカニックの手によってチューンされたZ32フェアレディZは、エンジン出力1000馬力オーバー、
速度にして実に424.74km/hという前人未到の記録を打ち立てた。
若き日のクライドに、その印象は強く焼き付いたものだった。
チューニングカーの世界。
単にストック状態でスピードを出すだけならば、アメリカのシェルビー・SSC、ドイツの
ブガッティ・ヴェイロン、イギリスのマクラーレン・F1などがある。
だが、これらの超高価格車たちをもってしても、Zの記録を打ち破ることはできなかった。
伝説の最高速マシン。
そんな、街場の走り屋たちの心をとらえたのがZ、そして日本製チューンドだった。
クライドもまた、そのひとりだった。
ハラオウン家は優秀な軍人を多数輩出しているアメリカ海軍の名門である。
横須賀基地に駐留する第7艦隊所属として日本への赴任が決まった時、クライドは内心小躍りしたものだった。
現代でこそ、アメリカでもスポコンブームをはじめとした日本製チューンドカーが広まっているが、
クライドが現役の頃はまだまだ少数派だった。カミナリなどのアメリカ独自ブランドもあるにはあったが、
車両はディーラーで購入できても日本の最新チューニングパーツを入手するには煩雑な輸入手続きもあり、
なかなかおいそれと手の出せるものではなかった。
本場のチューニングカーに触れたい。
その思いを胸に秘め、クライドは日本に、そして首都高にやってきた。
速ければ、それが日本人だろうとアメリカ人だろうと受け入れる下地はあった。
多忙を極める軍務の合間を縫って、走りに出たりショップを訪ねたり、クライドはすぐに首都高の走り屋たちに馴染んだ。
そして、クライドと同じように日本での走りを嗜んでいたもう一人の軍人に、出会うのはある意味必然ともいえた。
「提督も走りをされてらしたんですか……?」
「ふふ、お付きの運転手を雇って、メルセデスの後席に座っているだけだと思っていたかね?」
クロノは恐る恐る尋ねた。
グレアムほどの人間ともなれば、立場上、危ういことが表に出るのは絶対に避けなければならない。
それでも、とりつかれてしまう魅力がある。
スピードの魔力とはそれほど強いものなのだ、と、グレアムは静かに語る。
グレアムもクライドも、軍務という仕事の性質上走る日自体がそれほど多くないため、
湾岸でも見かける者はまれだった。
2台でつるんで走る、おそろいの銀色に全塗装されたダブルエックス2.8とコルベットZR-1は、
当時の最高速ランナーたちにとってはひとつの伝説だった。
幻の最高速ランナー。
そうあだ名されたクライドは、80年代末の時点でも既に旧型モデルとなっていたダブルエックスを、
当時最新の1JZ-GTEエンジンに載せ換えて500馬力以上にチューンし、
大台(300km/h)を出す走り屋として知られていた。
彼ならば、あの悪魔のZやブラックバードにも勝てるだろう。
そういわれていた。
だが、その勝負はついに実現することはなかった。
クロノは黙ってグレアムの話に聞き入っていた。
アリアもロッテも固唾をのんで二人を見守り、二人のティーカップはいつしかすっかりぬるくなっていた。
確かに、つまらないこだわり、思い出に浸っているだけ、そう思われても致し方のないことかもしれない。
だが、グレアムはクロノが日本に来ると知った時、どうしても放っておけないと思った。
クロノが本当はどちらへ進もうとしているのか。
ただ単に過去を振り返り、父の面影だけを探そうとしているのか、それとも、父の想いの真実を知り、
その上で自分を前に進めようとしているのか。
車は楽しいだけのものではない。
それを実現するための生活基盤を含めて、人生の過ごし方の大きなウェイトを占めるものだ。
給料のいい仕事をして、その稼ぎを全部車につぎ込むのもいいだろう。だが本当にそれでいいのか。
仕事をしている時間は、ただ金を稼ぐためだけに、無為に費やされる時間なのか。
車だけを、いや、車だけにのめりこむからこそ、それ以外の生活をおろそかにしてはいけない。
グレアムはまず、クロノにそれを教えるつもりだった。
クロノは思い切って口に出した。
「提督、実はオレ、一度ブラックバードに会っているんです」
グレアムはかすかに目を上げた。
老巧な表情の陰に見え隠れする闘志はまだ衰えていないのだ。
「ロッテと一緒に乗っていた時です。あの911ターボは本当に速い車でした──
──まだまだ、速くなっていく気がします」
「ブラックバード、という二つ名は、実は私とクライドが言い始めたものなのだよ」
「そうなんですか?」
「SR-71という超音速偵察機は知っているだろう。我が空軍が開発した、世界最速のジェット戦闘機──
──その愛称になぞらえて、あの黒いポルシェターボを“ブラックバード”と呼んだのだ。
ドイツ本国でのRUFイエローバード(ポルシェ911ターボをベースにしたチューンドカー)にもちなんでいる。
この愛称は向こうも気に入ったようでね、それ以降、自分でもブラックバードと名乗るようになったのだ」
ブラックバード。それはグレアムにとっても、またクライドにとっても、
日本で走り始めてからの永遠のライバルのような存在だった。
日本のストリートレースにおいてどこか敬遠されがちな欧州車を乗りながら、
有無を言わさぬ速さを備えた実力派の走り屋。
金持ちのお嬢だの、所詮車がいいだけだの、陰口は少なくなかったが、その速さは誰もが認めていた。
1989年、R32型GT-Rのデビューを皮切りに、トヨタ・A80型スープラ、マツダ・FD型RX-7、ホンダ・NSXなど、
日本の自動車メーカーは続々とハイパフォーマンス志向の車種を投入していった。
R32GT-Rの登場によって、ようやく日本車はポルシェと対等に戦えるようになったのだ。
堰を切ったようにチューニングもエスカレートしていく中で、安かろう悪かろうと言われた旧時代の日本車を
300km/hオーバーの速度域へもってゆくクライドの走りは、ある意味皮肉なものでもあった。
「GT-Rより前の車は古い……父さんの乗っていた車もそうなんですか?」
「うむ。スープラでいえばA70系以前か。クライドのスープラはA60系だ。これらの世代の車たちは、
一般向けの大衆グレードがあってその上にスポーツグレードが置かれる……つまり、もともとただの
乗用車だったものをチューンして上位車種のように仕立てていたんだ」
「つまり基本設計として古い──と」
「GT-Rが日本のツーリングカーレースを軒並み制覇したのは知っているだろう。
レーシングカー、たとえばラリー車などでもそうなのだが、まずレースに参戦するための車があり、
そしてそれは市販車両をベースにしているというレギュレーションがあるために、
外観や構造を似せた車を作って市販する──
そういう作り方を、その頃まで日本のメーカーはやったことがなかったんだ。
レースに出るにも、市販車両をチューンしたものを使っていた」
「われわれアメリカやヨーロッパの車は違うんですか」
「少なくともモータースポーツというジャンルとしては日本より古くからあったわけだからね──
たとえば、バックヤードビルダーという業種がきちんと成り立っているということもある。
市販のスポーツ系車種を、きちんとレーシングカーに仕立て上げる、それがビジネスとして成り立っている。
またそういうコトが社会的にも認められている。日本のカスタムカー事情はこれとは全く環境が違う──」
だが、それゆえにクライドも引き込まれた部分があった。
アメリカは広大な大地を自分一人だけで、自分の車で移動する必要があるという背景から、
オーナーが自身の車を自ら整備するという習慣が強い。
日本のチューニング業界──違法改造車、などという呼ばれ方をされていた頃から、
性格としてはそういったアメリカン車に近いものがあった。
車検にも通らない、街を走れば後ろ指をさされる違法改造など誰にも頼めない。
だから、自分で改造技術を身につけるしかない。
そうやって自分で車を整備する技術を身につけた者が、
金をもらって他の同じような境遇の者のチューンを請け負う。
そんな個人ガレージから大きなショップになった例が日本にもいくつもあった。
もっとも、日本の自動車メーカーたちが目指していたのはあくまでもヨーロッパ的な、
悪く言えば昔ながらの舶来賛美的な、“礼儀のいい”ものだった。
だからこそ、それに反発したチューニング業界はアンダーグラウンドに潜っていったのかもしれない。
丸裸にされたパイプフレームシャーシに、巨大な水平対向12気筒エンジンが鎮座している。
左右の各バンクにそれぞれ独立したインジェクションシステムを取り付け、構造としては
2.7リッターの直列6気筒エンジンを横倒しに2基積んでいるようなものだ。
それによって駆動されるリヤ2輪はさらにインチアップし、タイヤサイズは実に355/30ZR18となる。
「ECU(エンジン制御コンピュータ)のプログラムも自分で書くんですね」
背後からかけられた声に振り向かず、スカリエッティは笑いながら答えた。
「まあー、このマレリは本国でさんざんイジったからね。それであれかね、君が最初に持ち込んできた
NOSはそのまま付けるとゆうことでいいのかね」
「お願いします」
「くくく、ドライブシャフトがちぎれ飛んでも知らないぞ。この排気量にNOSを打ち込む──
NOSにより増量される酸素量は約50パーセント増し、単純計算でも8リッター級のエンジンに相当する。
パワーは1000馬力を軽く超えてしまう、2輪駆動のMRレイアウトで制御できる自信は正直ないよ」
「制御します、私が」
「いーねぇ、やはり私の車を乗る人間はそれくらいの意気込みでなければ」
テスタの隣に置かれている黒いポルシェターボを、フェイトはちらりと横目に見た。
知識としてならともかく、ポルシェ自体にはさほど興味をひかれなかったが、
それでも、現代となってはもはや型遅れである2輪駆動の964を、
桁外れのスピードで走らせていたあのドライバーには、意識を向けざるを得なかった。
悪魔のZに挑むということは、そのとき必ず、近くにこのブラックバードもいる。
穢れを知らないような純白を纏ったZとは対照的に、すべてを飲み込んでいくような闇の色をしたポルシェ。
この車にもまた、魔力がある。
エンジンクレーンのチェーン音が、スクライア商会のガレージに響く。
L28改ツインターボエンジンは、1か月以上かけてようやく、Zのボディに再び収められた。
すべての補機類を新たに接続し直し、燃料、冷却水、オイル、電力などがすべて
問題なく供給されていることを確認したうえで、はじめてエンジンをかける。
バッテリーも設置位置を変更して軽量タイプに交換した。
メーターパネルには新たに電圧計と電流計を取り付け、エンジンの点火状態を監視できるようにしている。
L28のような古いキャブレター式エンジンでは、点火制御の正確さだけではなく力強さもより要求される。
とにかく強い火花を飛ばせなければガソリンを燃やせない。
アナログな機械制御であっても、拾えるデータはすべて拾いたい。
それはなのはとユーノの考えでもあった。
通常、エンジンキーのポジションはOFF-ACC-ON-STARTの4つがある。
OFFは完全に動力が切られている。ACCはアクセサリーの略、室内灯やオーディオなどに電力が供給される。
ONは通常走行の状態、すべての機器が作動する。STARTではそれに加えてセルモーターが回る。
ゆっくりとキーを差し込み、いつもそうしていたようにONのポジションで数秒間待つ。燃料ポンプが作動してから
キャブレターにガソリンが溜められるまで、高度な電子制御がある現代の普通乗用車ならまったく必要のない操作だ。
だけど、それはひとつひとつ、この車と向き合う儀式をこなしていくようなものだ。
「風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に──不屈の心はこの胸に!」
キーを始動位置へ回す。全電力が一気にエンジンに流れ込み、セルモーターが回り、燃料が噴射され始める。
風──、空気の流れがターボチャージャーを経てインマニからエンジンへ、
星──、6個のシリンダーに埋め込まれた12個の点火プラグがきらめく星のような火花を散らし、
光──、メーターパネルに闇夜に浮かぶ光が灯る。
絶対に挫けることのない、この鼓動。L28改、ツインターボ。
「レイジングハート、セットアップ。油圧、油温、水温、OK──アイドル、OK。──OK、Z!」
Zのコクピットで声に出しながら、なのはは再び、この車が自分の手足のようになじんでいくのを感じ取っていた。
長かった。元に戻るまでの1か月、本当に長かった。
けしてあきらめることなく、前を目指し続けた。そして、Zはそれにこたえてくれた。
機械は嘘をつかない。機械に見放されるのは、いつだってそれを操作する人間──乗り手の問題だ。
再び、このZで走り出す。なのはは走り出す。純粋な白の魔力を纏って、悪魔のZが再び走り出す。
今日はここまでです
クライドさんが現役のころはちょうど90年代初頭
280馬力規制ができていろんなスポーツカーがデビューしたてで活躍していたあたりですねー
そういえば劇場版湾岸ミッドナイトTHE MOVIEの主人公
朝倉アキオ役の中村優一は仮面ライダーゼロノス役
島達也役の加藤和樹は仮面ライダードレイク役と
二人ともライダーつながりなんですねー
なんともw
ではー
GJ!
投下乙です!
そろそろ次スレだろうけど、どうなるだろう
既に代理投下スレの方に次スレ投下のストックも貯まってるから、もうスレ作れる人に任せて次スレ移行でいいんでないかな?
自分は立てようと思ったけど、作れませんでした……
じゃあ行ってみようかな
駄目だった・・・
Lv見たらわかるんだった
試しに立ててくる
ダメでした…申し訳ない
>>382 すみません、投下時にこちらのミスで数行抜けていたようです。
一応まとめに掲載した方ではその部分も補完されていますので、お手数ですがそちらを確認して頂けると幸いです。
該当箇所をスレに貼ろうかとも考えましたが、その数行の為に残り少ない容量を埋めるのもどうかと思いましたので……。
最近投下ラッシュが続いてるのに……タイミングが悪いなぁ
俺も昨日スレを立てようとしたけど、無理だったし
レベル10の人いないかなぁ?
じゃあ立ててみます。
スレ立て乙!
乙!
こっちは埋めるか?
本当は埋めなくてもいいんだけどね。放っておいても誰か埋めるだろうけど
よおし!この際だ、まったり1レス妄想クロスSS祭りと行こう!!
まずは俺からイクゾーーー!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
・マブラヴクロス 【リリカルBETA大戦】
「ひどい……」
ブリッジに居る誰かがポツリとそう言った。
次元航行艦の艦橋の大型モニターに映るのは……『地獄』だった……。
「ハラオウン提督!直に次元航行艦隊による、可能なあらゆる支援を行う事を提案します!!」
「ダメだ……。非加盟管理外世界への『紛争介入』は原則として認められない」
クロノは冷酷に遮断する。が、彼は官僚であり、また官僚の抜け穴を知悉していた。
僅か数分の沈黙。しかしそれは通信員からの声で掻き消された。
「管理局艦隊総司令部から入電!『当該世界を世界レベルの危機に晒されているものと、艦隊総司令部は判断した。
以後は特殊事態対応法に基き適切な行動を行う事を許可する』とのこと!」
「よし!艦隊全兵装使用自由!ただし、惑星環境に致命的なダメージは与えず、かつ現地市民が巻き込まれないよう、最大の注意を払うこととする。以上!
第一目標、敵対存在の『巣』の殲滅!!第二目標、基礎土壌改善システムの設計データを地球の電子機器に送信!!」
「了解!!」
1983年。東ドイツを蹂躙していたBETAの動きが止まった。
こうして第666中隊は、東ドイツは、欧州は、人類は救われたのであった!!
ならば二番槍はいただきだ!
・バオー来訪者【Lyrical visiter BAOH】
ミッドチルダの山中を黒い列車が走っていた……
列車には行き先も認識ナンバーもついていなかった……
「『聖王』が逃げたぞ!捕まえろ!」
その列車はある組織のものだった!その組織は、ベルカ大戦時、管理局の前身となった組織の秘密部隊に由来する!
彼らが行っていた殺人兵器の研究は、管理局の質量兵器規制によって禁止された!
だが管理外世界にわたり、密かに活動していた彼らは、現地の軍需産業と手を結び、特殊兵器開発のための研究機関を作った!
それがこの組織!その名を即ち『ドレス』という!
「さあ、お部屋に帰ってサンドイッチでも食べましょうネ」
今、この列車には2人の人物が囚われている。1人はこの少女、『聖王』
そしてもう1人は!
ウォオオオオム!バルバルッ
ある管理外世界から引き上げられた『水の中の少年』……即ち、『バオー』!
今この時から、バオー=橋沢育郎と『聖王』、ドレス、管理局の三つ巴の戦いが始まる!
じゃあ便乗させてもらう!
今、小ネタで話を練ってる物だけど。
・史上最強の弟子 ケンイチ 【史上最強の弟子 ヴィヴィオ】
これはまだヴィヴィオがアインハルトと出会ってすぐの話。
専用デバイスを貰い、アインハルトとも出会って、自分のストライクアーツにも何か進化が必要だと考えたヴィヴィオ。
ちょうど長期休暇で海鳴に単身遊びに行ったヴィヴィオは、士郎に相談を持ちかける。
「じゃあ、ここに行くといい。本気で武術を志す者なら必ず学ぶものがあるはずだ。ヴィヴィオにも、きっといい刺激になるだろう」
「おじいちゃん、これは何て読むの?」
「ああ、これはね……」
場所を聞いたヴィヴィオは「一人で行けるもん」と胸を張り、電車に乗る。
しかしヴィヴィオは、指定の駅では降りたものの迷子になり、地図を見ながら当てもなくさ迷っていると、不良にぶつかってしまった。
厳つい目つきで不良たちは道を教えようとしたのだが、たじろぐヴィヴィオを見て勘違いしたのか、乱入してきた女子高生が不良を伸してしまう。
激昂した不良達を難なく制した二人組は、優雅に宙を舞う金髪の美少女と、優しげではあるが何の変哲もなさそうな普通の男子高校生だった。
名を風林寺美羽と白浜兼一。ヴィヴィオはその時、一目で美羽に憧れを覚えたのだった。
ヴィヴィオが相談すると、二人は快諾し、案内までしてくれると言う。そこでヴィヴィオを待ち受けていた人々とは――
『ケンカ百段』、逆鬼至緒
『哲学する柔術家』、岬越寺秋雨
『あらゆる中国拳法の達人』、馬剣星
『裏ムエタイ界の死神』、アパチャイ・ホパチャイ
『剣と兵器の申し子』、香坂しぐれ
士郎に紹介された場所。そこは武術を極めた達人が集う道場、『梁山泊』であった。
そして始まる、史上最強の弟子こと白浜兼一と、ヴィヴィオの鮮烈(ヴィヴィッド)な物語。
ヴィヴィオが梁山泊の面々と交流を深めていくと同時に、己の拳の意味に迷う少女アインハルトは、
殺人拳こそが武術の真髄と掲げる組織『闇』に誘われていく……。
ごめん、ちょっと長くなった。美羽さんの中の人追悼。
こんなんどーかな!
・LIVE A LIVE【LIVE A LIVE Lyrical after】
[シナリオ選択]
『原始編After』
機動6課解散後、自然保護隊に復帰したキャロ。
エリオと共に野を駆け、空を翔け、貴重な動物を守る日々。
そんな中、キャロのもとに一報が舞い込む。
それは、キャロの生まれた地、アルザスの民「ル・ルシエ」の危機。
アルザスの守護竜であるヴォルテールも召喚に応じず、
事態を重く見たキャロとエリオは急遽、第6管理世界へと向かう。
そこで彼女達が見たのは、己の物でない憎しみに囚われた、悲しき人喰い恐竜の姿だった……
『SF編After』
電脳世界。
あらゆるヒト、あるゆる場所を結びつけるもう一つの世界。
それは時として、世界すらも越えて、何かを結びつけあう。
無限書庫のシステムの定期検査。
その最終チェックで、ユーノは正体不明のプログラムが、紛れ込んでいるのを発見する。
あちこちが破損した、『OD-10』という名前のそのプログラムに興味をもったユーノは、
『彼』を私物のデバイスに隔離して修復してみようと試みる。
会話能力を復活させた『彼』はやがて、ユーノにかつての故郷について語る。
かくして、プログラムとヒトの奇妙な対話の日々が始まる……