あの作品のキャラがルイズに召喚されました part279

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@そうだ選挙に行こう
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part278
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1277627588/
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2010/07/11(日) 17:42:09 ID:J9+wj47y
みなさまこんにちは
それではあらためまして他の方の予約などなければ、17:50より投下を開始いたします。
なお、避難所のほうでご指摘を受けまして、3話ではこの話を6年前と設定しましたが、
3年前に変更しますのでよろしくお願いします。
 第四話
 間幕、タバサの冒険
 群青の狩人姫 (中編)
 
 ハイパークローン怪獣 ネオザルス 登場!
 
 
「シャルロット、起きろシャルロット」
 深い眠りの中から、自分の名を呼び覚ます優しい声。シャルロットは、父と母といっしょに
屋敷で幸せに暮らしていたころの夢の中から、まぶたに染み入ってくるまぶしい光に
引き上げられるように、現の世界に帰ってきた。
「う……ん……おかあさま?」
「ん、なに寝ぼけてるんだよ。あたしだよ、しゃきっとしな!」
 半目を開けていたところを、両ほほをはさみこむようにはたかれて、シャルロットは
痛みでびっくりすると同時に、一気に思考を覚醒させた。
「はっ! ジ、ジル?」
「そうだよ、もうとっくに朝だよ。ふふ……それにしても、あたしをお母さんと間違えるなんて、
よほどいい夢を見ていたんだね」
 水筒を手渡されたシャルロットは、ただ赤くなって、ごまかすように無言で水を飲み干した。
 あたりはすっかり夜が明けて、樹上の隙間から朝日が木漏れ日となって差し込んでくる。
シャルロットは、目が覚めて昨日のことを思い出していったが、完全に燃え尽きた焚き火の
跡がそこにあるだけで、昨日の男の姿はどこにも見えなかった。
「あの人は……どこ?」
「うん? いや、あたしが目が覚めたときにはもう誰もいなかったよ」
「そう」
 多分、夜のうちに立ち去ったのだろう。いろいろ聞きたいこともあったが、それよりも
一言お礼を言いたかったのにと、シャルロットは残念そうにうつむいた。
「何者かは知らないけど、おかげで命拾いしたようだね。さあ、朝食をとったら出かけるよ」
「出かけるって、どこへ?」
「キメラ狩り、ほかに何があるんだい」
 すでに荷物を片付けて、武器に磨きをかけているジルは、道具袋の中に残っていた
乾パンと干し肉を二つにちぎって、半分ずつをシャルロットに渡した。
 粉っぽさと、しょっぱさが強いこの味も、もうすっかりと慣れていた。父が殺されたのは、
ちょうど十二歳の誕生日の日だったけれど、母が用意してくれていたドラゴンケーキは
結局一口も食べられなかった。
 ドラゴンケーキの代わりに、こんな森の奥でキメラドラゴン退治をやっている自分の
境遇が、いまだに信じられないからあんな夢を見てしまうのだろう。できれば、ずっと
目が覚めずにいてほしかった。
「ねえ、ジル」
「うん?」
「ジルのお父さんやお母さんは……?」
「……」
 答えがないことが答えだった。
 二人は、それから押し黙ったまま残りの食物を胃袋に放り込んで、水で口の中を
ゆすいでしまうと、それぞれ弓と杖を持って立ち上がった。
「じゃあ行くか、今日こそキメラドラゴンのやつを見つけ出さないとな」
「うん!」
 それから二人は、昨日わき目も振らずに逃げ回った跡をたどりながら、遭遇した
何体かのキメラを倒していった。
4名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 17:54:43 ID:oALBTD1r
・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。

前スレがまだ447KBなんだが改定されたのか?
 二人とも一晩ぐっすりと休んだおかげか、体調は万全で、小型のキメラならば
罠を張らずに仕留められるようになっていたが、それにはシャルロットの成長が
著しかったのが大きい。
 唯一の攻撃技だった『氷の矢』は大木を貫通できるくらいにまで大きく鋭くなり、
『ウェンディ・アイシクル』を使えるようになったのをきっかけに、本来の彼女の系統である
風の基本スペル『ウィンド・ブレイク』『エア・カッター』なども、不器用ながらも使用が
できるようになり、『フライ』での飛行速度と機動力も鳥に迫るのではないかと
思うくらいに上達していた。
 元々持っていた才能が、命を懸けた実戦の中で目覚しいまでの速さで開花していく
のには、戦い方を教えているつもりのジルが、今では舌を巻くくらいのものがあった。
 そして、シャルロットの『ウィンディ・アイシクル』で、全身を蜂の巣にされて大木に
磔にされた大熊のキメラを見上げて、ジルはこれはもう自分が教えることは
何もないんじゃないかと、軽く苦笑するのだった。
「さすがだね。やっぱ、王家の血筋ってものは伊達じゃないか」
「ううん、わたしはこれまで、どんなに練習してもこんなに魔法が使えるようには
ならなかった。家庭教師の先生が言ってたけど、同じ系統でもメイジによって
移動や治癒、観察や操作とか得意分野ができるんだって。だから、わたしは
きっと『攻撃』が得意なタイプのメイジなんだと思う」
「ふーん、なるほどね。メイジにも、得手不得手があるわけか」
 ジルは、なんとなくだがメイジにも個性というものがあるということだけは理解した。
 だが、シャルロットは自分の才能がすごい速さで開花していっているというのに、
まったくうれしそうな顔をしないので、ジルは怪訝な顔をして尋ねた。
「どうしたんだい? うかない顔して、こんなすごい魔法が使えるようになって、
うれしくないのかい?」
「こんな魔法があっても、お母さまを助けられない。もっと強力な治癒の力が
あったらよかったのに……」
「そうか……でもな、その力があれば、いつかあんたの母さんを力づくで
奪い返すときに、役に立つだろうよ。そう思えばいいんじゃないか?」
 すると、シャルロットは静かに首を振り、初めて『氷の矢』を覚えて、喜んで
母にほめてもらおうとしたときに、厳しく教えられた言葉を繰り返した。
 
”いい? シャルロット、どんなに優れていても、どんなに華麗に見えても、
『人殺しの技術』というものは、決して自慢するべきものではありませんよ。
自分の持つ力が人間に向けられたときにどんな結果が起きるのかを、
考えることもできなくなったものは、必ずいつか人を不幸にしてしまいますからね”
 
「だから、わたしはうれしくても喜ばない。喜んだら、わたしは魔法で母の心を
狂わせたあいつらと、いっしょになってしまう」
「そうか……そうかもな」
 ジルは、シャルロットの言葉を否定はしなかった。どんなに突き詰めても、
『殺し』の技術は相手を不幸にする技術には違いない。それを忘れて、戦いの
華麗さにのみ目を奪われた人間が、平気で戦争などを起こすのだろう。
 けれど、ジルにも命を奪って生きていく狩人として、殺しの技術が単なる嫌悪の
対象で終わることは、許容できなかった。
「でもなシャルロット、戦わなければ自分や自分の大切なものが不幸になってしまう
こともあるってことは、お前もわかるだろう?」
「うん」
「生きるってことは、誰かの命を奪うっていうこと。おかげで、狩人の本分を久々に
思い出したよ。これまでも、そしてこれからもね」
「うん……だからわたしも、いつか生きるために、伯父を……殺す」
 それは、シャルロットが初めて冷たい復讐の感情を、表に表した瞬間だった。
 伯父と父のあいだに何があったかは知らない。おそらく伯父にも、言い分は
あるだろうが、それで納得することはできない。父を殺し、母を狂わせた憎い男、
今は無理でも、いつか必ず。
 しかし、そのためにこんな強力な魔法の力が与えられたのだとしたら、なんと
悲しいことなのだろうとも、彼女は思う。復讐の意思に呼応して目覚めた殺しの技、
自分はいったいなんなのだろう。
「わたし、こんな思いをするくらいなら、魔法の力なんていらなかった」
「持って生まれたものは、自分じゃどうにもできないさ。だからといって、泣き言を
言っていたって始まらない。行くよ、あんたがこれから何になるにせよ、答えは
前にしかないんだからね」
「うん」
 涙を拭いて、シャルロットはジルに続いて、森の木の根っこを飛び越していった。
 
 ただ、実はシャルロットがうかない理由はもう一つあった。
 
”空気が……違う”
 
 風の系統に本格的に目覚めてきたからか、シャルロットの五感は敏感に森の空気の
変化を感じ取っていた。
 言葉には言い表せないが、とにかく昨日と今日では空気が違う。まるで、森ごと
別の場所に移ってしまったかのようだ。
 
 けれども、そうした違和感を感じつつも、シャルロットはジルとともに、遭遇したキメラを
次々と撃破していった。どうやら、連日の狩りで大型のキメラはほぼ狩りつくしてしまった
らしく、猿、犬、蛇、どれももはや二人の敵ではなかった。
 だが、調子に乗りかけていた二人の前に、突如森が開けて恐ろしい光景が飛び込んできた。
「うっ!」
「ぐっ! ひ、ひでえ」
 森の木々が幅数メイルに渡ってなぎ倒され、巨大な道ができたところに、無数の生き物の
死骸が散乱していた。キメラだけではなく、普通の狼や熊などの動物もいる。しかも、
それらのほとんどは体のほとんどを食いちぎられ、引き裂かれて原型をとどめていない。
 あまりに凄惨な光景に、シャルロットはたまらず嘔吐しそうになった。
「キメラドラゴンだ。こんな真似をするやつは、ほかにはいない」
 これが……キメラドラゴンの仕業? シャルロットは話から想像していたが、目の前の
光景は、少女の乏しい想像力の範囲をはるかに超えていた。
「死骸の状態から見て、通り過ぎたのは三、四時間前か……とうとう見つけたよ」
 この森で倒すべき、最後の大物の尻尾をつかんだことに、ジルの目が鋭く輝く。
けれども、延々と続く屍で舗装された道に、シャルロットは震えて動けないでいた。
「シャルロット、あんたはもうここまででいい、すぐに帰りな。そして、お偉いさんには
自分が倒しましたと報告すればいい。奴は、あたしが刺し違えてでも倒す」
「そんな! 一人でだなんて無茶だよ」
「無茶でもなんでも、あたしはこの森のキメラを全滅させるまで、森を出ないって
決めてるんだ。そして、これが最後なんだよ!」
 ジルの様子がいつもと違った。冷静沈着で、常に計算づくで動く彼女が、なにかに
責め立てられているかのように焦っている。ただの意地やこだわりではない、もっと
切羽詰った何か。
 そういえば、ジルはキメラドラゴンを倒したいと昨日も言っていた。しかし、あれは
どう考えても普通の人間が太刀打ちできる相手ではない。実際、ジルもこれまでは
遠巻きに見ているだけだった、それなのに。
7名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 17:57:38 ID:4F9DGk/N
>>1

そしてウルトラ支援
「教えて、キメラドラゴンとのあいだになにがあったの?」
 するとジルは搾り出すように言った。
「あいつは、あたしの家族の仇なんだ」
「えっ!?」
「三年前、あたしの家族はこの森で狩りをして生計を立てていた。貴族の研究所があるって
いうんで、仲間の猟師も誰も寄り付かなかったから、獲物には不自由しなかったからね。
けれど、世の中はどこかで帳尻が合うようにできてるらしい。ある日、外から帰ってきた
あたしがこの森にあった屋敷に帰ってきたとき……屋敷は跡形もなく破壊されて、
あとには家族だった”モノ”が転がっていた」
 冷たい声で、淡々とジルは続けた。
「まったく、いいように食い荒らしてくれてたよ。父は下半身がなかった。母は内臓を
食われてからっぽだった。妹は、手が一本しか残っていなかった」
 シャルロットはめまいがして倒れそうになり、ジルに肩を支えられてなんとか立っていた。
 現実と思いたくなかった。そんな残酷な光景、想像することもできない。
「それを、キメラドラゴンが?」
「ああ、壊れた屋敷に残されていた巨大な爪痕、あんな馬鹿でかいのはほかに考えられない。
それに、いくらふいを打たれたって、父も母も手だれの猟師だ、それが手もなく倒されるなんて、
それほどのキメラはほかにいないさ!」
 今のジルの目は、憎しみのどす黒い炎が燃え滾っているように思えて、シャルロットは
身震いした。
「ふん、そりゃあこっちだって食うために動物を狩ってたんだ。お互い様といっちゃあそれまで
だけど、そんなんで納得なんてできるわけないだろ」
「だから、ずっと敵討ちの戦いを」
「そうさ、たった一個残ってた妹の手は、弓を握ってた。あんとき、あの子はまだ十歳だった。
生きてたら、あんたより一個年上だね。とても弓なんか引ける力があるわけはない。なのに、
戦おうとしてたんだ」
 使い込まれた弓を握って話すジルの手は小刻みに震えていた。三年前、ということはジルは
三年ものあいだ、この薄暗く殺意に満ちた森で、たった一人で戦い続けていたのだろうか。
「ジル……」
「そして、あたしはみんなの仇のキメラどもを皆殺しにしてやろうと、この森にこもって戦ってきた。
妹が撃てなかった矢を、キメラドラゴンの心臓に突きたててやるために」
 そのとき、シャルロットはジルの顔に懐かしさにふれたようにほころびが浮かんだのを見て、
はっとした。
「もしかして、わたしを助けてくれたのは、妹さんの……」
「違う、といえば嘘になるな。最初助けたのは偶然だったけど、面倒みてるうちにいつのまにか、
妹が生き返ったように思えてきたのさ……本当に助けられてたのは、あたしだったんだよ」
 ジルの目には、それまで抑えていた感情が大粒の涙になって零れ落ちていた。
 三年ものあいだ、この殺意に満ちた森でたった一人きり、復讐の二文字のために
押さえ込んでいた孤独感が決壊したとき、ジルもまた一人の少女に戻っていた。
「けれども、あたしには勇気がなかった。出会ったら殺してやるつもりだったけど、あいつの
恐ろしい姿を見たら、怖くてどうしても近づけなかった。だから、別のキメラを代わりに殺して、
三年も自分をごまかし続けてた……でも、もうあたしは逃げない!」
「だめだよ! 二人でだって敵うかわからないのに、死んじゃうよ」
「大丈夫、あたしだって自殺するつもりはない。いつか使おうと思って、用意してた切り札がある」
 ジルは、背負った矢壷の内側を破って、一本の小ぶりな矢を取り出した。矢じりが、氷の塊の
ように青白い輝きを放っている。
「”凍矢”(アイス・アロー)っていうんだ。金貨二十枚もしたマジックアイテムだけど、命中したら
どんな大きな相手でも氷の塊にできる。ただ、万一外してしまうのが怖くて、これまで使わなかった
けれども、あんたのおかげで勇気が出た」
「わたしの……?」
「そうさ、あんたがあの怪物に踏み潰されそうになったとき、あたしは久しぶりに自分の命を
省みずに動くことができた。自分以外の誰かのために、そんな気持ち、ずっと忘れてたのに。
だからキメラドラゴンはあたしが倒す。あんたはこれ以上、危ない橋を渡っちゃいけない」
「そんな! だめ、絶対だめ」
「……ありがとう、そうして誰かに心配してもらえるなんて、本当に久しぶりだ。でも、だからこそ
何も姉らしいことをできなかったあの子のためにも、あんたのためにあたしの命を使わせてくれ」
「でも、でも……」
「勘違いするなよ。あたしはうれしいんだ。あたしの私怨が、あんたを助けることにつながる。
じゃあ、元気でな、シャルロット」
「え?」
 問い返す暇もなく、ジルのこぶしが当て身となってみぞおちに食い込み、全身の力が
抜けたシャルロットは枯れ葉の上に崩れ落ちた。 
「生きて帰れよ。そして、いつかお母さんの心を必ず取り返すんだ!」
「待って、待ってジル!」
 慌てて追いかけようとしても、体がしびれて起き上がることすらできないでいるうちに、
すでにジルの姿は森の奥へと消えてしまっていた。
 恐らく、ジルは本気でキメラドラゴンと刺し違えるつもりだ。そして、そんな悲壮な
決意をさせてしまったのは自分なのだ。絶対に止めなくてはならない、ジルを犠牲にして
キメラドラゴンに勝てたとしても、父も母も決して自分を許すことはないだろう。
 やっと落ち着いてきた呼吸で、大きく肺の中に酸素を吸い込み、シャルロットは杖にすがって
ようやく立ち上がった。
「止めなきゃ……」
 震える足で、一歩、一歩とジルの後を追って、シャルロットは歩き始めたが、みぞおちへの
一撃は大の大人でも昏倒させるか、悪ければ死んでしまうほどの人体の急所である。
そんなすぐには回復できないし、もとよりシャルロットの脚力では追いつくことはできなかった。
「だめ……こうなったら、飛んで」
 ジルから、精神力を節約するために『フライ』の使用は極力抑えるように言われていたが、
今はそれどころではない。幸い、キメラドラゴンのたどった道ははっきりとしており、見失う
ことはないだろう。シャルロットは、杖をかまえて『フライ』の詠唱を始めようとした。
 が、そのとき背後の茂みが大きく揺らぎ、続いて大きな影がシャルロットに覆いかぶさってきた。
 
 一方……その少し前、昨日の研究所跡の瓦礫の山。
 そこは相変わらず砕けた大岩の破片が散らばり、昨日と同じ殺風景な風景が続いていた。
 唯一違うのは、瓦礫の山の上に立つ人影があったことである。
 
「ふん……自然循環補助システムの、第一号機の建設が開始されるというから、
わざわざカナダまでやってきてはみたが、どうやらそれどころではないらしいな」
 
 年のころは二十代前半というところ、無造作に伸ばした黒髪を持ったその青年は
ラフな洋服に身を包み、小さなリュックを唯一の荷物に、無表情に瓦礫を踏みしめ、
残骸の中を検分するかのように見回しながら、廃墟の中をゆっくりと歩いていく。
 しかし、ジルとタバサでさえここまで来るのには、何体ものキメラと戦わなければ
ならなかったというのに、その青年はほとんど非武装にも関わらず、着衣にまったく
乱れが見られなかった。
「……この森の植物、動物も明らかに地球のものではない。G.U.A.R.D.の
連中はまだ気づいていないようだが、これだけの量の外来生物が一度に入り込んだら、
カナダの自然環境は目茶目茶に破壊されるぞ」
 その眼光は冷たくて、若々しさよりはむしろ老齢な印象すら、どこかにあった。
「しかし、この残骸……自然石の中に鉄筋を組み込んである。こんな建築法、地球の
技術では不可能だ。やはり宇宙から送り込まれたものか……だが、散乱している機械は、
地球のレベルでできている。どういうことだ……」
 彼は残骸の中から、建物の破片や機械の残骸を学者のように一つずつ検証していった。
 やがて、崩れた壁の下に古く黒ずんだノートが下敷きになっているのを見つけると、
彼はすきまに手を突っ込んで取り出し、ほこりを払ってページを開いた。
「日記か……」
 それは、日本語で書かれた手書きの日記帳で、彼は最初のページから読み進めていった。
 
 
『*月*日、もうこの世界にやってきてかなり経つ……私は、いまだに自分の境遇が
信じられない。あまりに非常識な状況に、ときたま気が狂いそうになるくらいだ。
それはそうだろう、地球からまったく違う異世界に飛ばされてきたなどと、狂人と
思われても仕方がないものだ。
 そのため、私は正気を保つために、これまでのことを書き記しておくことに決めた。
 思い返せば、あの日……生物学会を追われた私は太平洋上のザリーナポイントに
建設した秘密研究所で、長年の研究の最終段階に入っていた。
 人間の役に立つ怪獣を作る。それが私の研究だ。
 クローニング技術を使い、そのときすでに私はシルドロン、シルバゴンをはじめ、
いくつかの怪獣の複製に成功していた。
 だが、研究完成を目前にして、SUPR GUTSに研究所をかぎつけられてしまい、
私は研究所ごと死んだ……はずだった。
 気がついたら、私はこの明らかに地球とは違う異世界にいた。
 この世界は、文明レベルは中世ヨーロッパと非常に酷似しているが、住人の一部は
地球人にはない超能力を持っていて、ここをハルケギニアのガリア国だと言っていた。
 私が転移した原因は、ザリーナポイントが持つ特異な電磁界の影響かと推測してみたが、
確証が持てるものはない。
 しかし、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもので、私の持っていた生物学の
知識に彼らは深い関心を持ったようで、保護する代償として、私に改造生物を作る
手助けをしろと要求してきた。
 どうやら、彼らは生体改造を施した強化生物を使って、クーデターをもくろんでいるようだ。
まったくどこの世界も根本は同じようなものらしいが、思う存分研究ができるというので
あれば是非もない。
 幸い、私といっしょに破壊された研究所の地下部分も転移してきたので、施設には
苦労せず、彼らの超能力をもってすれば、研究所の拡張も研究素材の調達も
楽なものである。
 だが、私は私の目的を忘れてはいない。奴らに手を貸すのは仕方ないとして、
私の悲願である、私の意のままに動く究極のクローン怪獣を今度こそ完成させて、
私の存在を思い知らせてやる』
 
 そこからは、研究の日々の内容が連ねられていて、彼は流し読みすると、最後の
ページを開いた。
 
『ついに、ついに長年の研究が身を結ぶ日がやってきた。研究所の奥深くに残していた、
私のクローン技術の最高傑作、最強のクローン怪獣ネオザルスのDNAデータから、
とうとうその全体を復元することに成功したのだ。すでにシルドロンの再生にも成功し、
予備実験は充分だ。
 唯一の懸念であった知的遺伝子の欠如も、この世界の、人語を理解し、人間に
絶対服従する生物どもから組み込むことができた。これが起動すれば、やつらに
作ってやったキメラドラゴンなどという出来損ないとは次元が違う、まさに芸術品とも呼べる、
私の最高傑作が蘇るのだ。
 そうすれば、もはやこんな世界に用はない。奴らは気づいていないが、私は極秘裏に
魔神エノメナの持っていた次元移動の原理を応用し、地球へと帰還するための装置の
製造にも成功している。
 まず目的は、私をこんな目にあわせたSUPR GUTSの小僧ども、そして生物科学委員会を
襲撃して、私の研究の正しさを認めさせることだ。
 ああ、明日が待ち遠しい。明日より、私の輝かしい栄光の日が始まるのだ』
 
 日記の残りのページは、ひたすら空白で埋められていた。
 
 彼は日記を閉じると、つばでも吐き捨てるかのようにつぶやいた。
「愚か者の、幼稚な幻想だな」
 日記を書いた当人が聞いたら激怒しそうな感想を無表情に述べると、投げ捨てられた
日記が砂の上に落ちる乾いた音が続いた。
「破滅招来体の仕業かと勘ぐったが……考えすぎだったか。それにしても、これは地球の
ものであって、この地球のものではない。多次元宇宙論か、別の世界に別の地球、
ひいてはもう一人の自分がいるかもしれない……量子物理学を専攻していたあいつが
聞いたら喜びそうな現象だな。しかし、地球にこの場所が有害であることは変わりない。
後始末はしておくか」
 やがて、彼は残骸の中に張り巡らされていたコードやパイプが、ある一定の法則に
従ってつながっていることを突き止めて、その収束した場所から瓦礫にうずもれていた
地下への入り口を見つけると、その奥にいまだ健在な姿を保っている機械群を発見した。
「これが例の時空移動システムか、確か我夢の奴が草案を作っていたことがあったな。
しかし、こいつはずいぶんと中途半端なシステムだ」
 機械の外側を見ただけで、これだけのことがわかるとは、彼が口先だけでなく、並々ならぬ
知識を有していることがうかがえた。
 彼は装置の概要を調べて、これがエネルギー切れに陥っていることを突き止めると、
スイッチを現在の位相の逆に合わせて、右手にまいているブレスレットのクリスタルから
青い光を装置に照射した。
 
”……エネルギーチャージ完了、位相固定……これより、空間転移フィールドを展開します。
転移まで一八〇〇秒、カウント開始”
 
「これで、三〇分後にはこの森は元の時空に戻る。それで終わりだ」
 機械の正常作動を確認すると、彼は即座に立ち去ろうとした。だが、その前に足元から
心臓の脈動のような振動が伝わってくると、監視モニターの一つに映った地下格納庫の映像を見た。
 そこで動き始めていたのは、シャルロットの見た、あの異世界の怪獣図鑑の最後のページに、
その創造主が自ら写真を貼り付けていた大怪獣。
「エネルギー補給の余波で、ついでに眠り姫もお目覚めか。しかし今更起きたところで、
お前を地球には残さん」
 つまらなさそうにつぶやくと、彼は自分も時空転移に巻き込まれないために、地下室を
出て足早に森のほうへと歩き始めた。
 
 絹を引き裂くような絶叫が、森の奥から響いてきたのはそのときであった。
 
「きゃあぁぁーっ!」
 森の枝葉を揺り動かすような悲鳴をあげて、シャルロットは背中から腐葉土の上に倒れこんだ。
 青い美しい髪が泥に汚れ、毛むくじゃらの虫が体を這い上がってくるが、そんなものに
かまう余裕はない。
 かろうじて杖だけは握り締めたまま、震える手で背泳ぎをするかのように木の葉を掻き分けて
後ずさりする彼女に、巨大な異形がうなり声をあげて迫ってくる。
「キ、キメラドラゴン!?」
 凍りつきそうな喉から、やっと搾り出した声が最悪の状況をシャルロットに再認識させた。
 間違いはない。あのノートにあったとおりに、全身を赤黒いうろこで覆った火竜の体に、キメラの
証である無数の他の生物のパーツがついたその体。しかもつき方が尋常ではない。
 
 奴の体から生えていたのは無数の”首”だったのだ。
 馬の首、豚の首、羊の首。
 豹、熊、狼などの猛獣の首。
 キメラのものと思われる複数の動物の混ざった首。
 そして、人間の首とおぼしきもの。
 
”キメラドラゴンは、捕食した生物の特性を吸収する”
 ノートに書いてあったキメラドラゴンの特性はそれで、研究者たちは、もし成功したら食えば
食うほど強くなる究極の戦闘生物となるであろうそれに、未来の栄光を夢見ていたに違いない。
 けれども、生き物を都合よく作り出そうと考えた愚か者たちの思惑は失敗し、こうして食った
相手の頭を無差別に生やす、ただの化け物と化したものこそがキメラドラゴンであった。
 
「そんな、なんでここに!?」
 キメラドラゴンはジルが追跡していったはず、こんな場所にいるはずがない。けれど、
恐らくは研究所の家畜や実験動物、さらには研究員や仲間のキメラまで食い散らかして、
もはや自然界の摂理から完全にすべりおちた異形を、間違えるはずがない。
 信じられないほどのおぞましさに、シャルロットは戦うことさえ忘れて逃げようとするが、
すぐに背中が木にぶつかって逃げられなくなってしまった。
「た、戦わなくちゃ……」
 逃げられないと悟ると、シャルロットは必死で杖をキメラドラゴンに向けた。しかし、奴の
全身に生えた数十の首から、冥府から響いてくるような亡者のオペラが自分に向けられると、
喉は凍り付いて一言のスペルも刻むことはできない。
 キメラドラゴンは、唯一残ったドラゴンらしい部分、巨大な牙の生えたあごを開くと、唾液を
こぼしながら口腔をシャルロットに向けた。
 
”助けて……助けて”
 
 夢なら覚めてくれと祈りながら、シャルロットは自分に向けられてくる死神の牙を見つめた。
 だが、キメラドラゴンはその牙を少女に突き立てる前に、突如何の前触れもなく爆発して、
轟音とともに粉々に砕け散った。
「うあぁーっ!」
 降り注いでくる肉片から必死で身を守りながら、シャルロットはなにが起こったのかも
わからないまま、しばらく固く目を閉じて震えていた。その数十秒後、おそるおそる目を
開けて、かすむ視界の中に映ってきたものは、バラバラの破片になったキメラドラゴンと、
その後ろに立つ一人の男の姿であった。
「あの人……!」
 悠然と、あるいは冷然と立つその男に、シャルロットは見覚えがあった。昨晩の、傷ついた
ジルや自分を助けてくれた人、あのときは顔は見えなかったが、服装や背格好には
確かに見覚えがある。
 彼は、粉々になったキメラドラゴンを軽く一瞥すると、あとは無感情にこれを無視して、
へたりこんでいるシャルロットのすぐそばまでやってきて彼女を見下ろした。
「あ、ありがとう……ございます」
 返事はなかったが、シャルロットは助けてもらったお礼を言うと、いまだに悲鳴を
あげている足を叱咤して立ち上がり、男の姿を見つめた。
 
”なにか、怖そうな人……でも、助けてくれたし、悪い人じゃないのかも”
 
 今まで会ったことのない不思議な感じを、シャルロットは感じていた。
 これまで出会った貴族や平民の誰にも当てはまらず、ジルのような狩人とも違う、
なにか神秘的な近寄りがたさを、その青年は持っていた。
 それに、こんな危険な場所にいるというのに武器らしい武器は何も持っていないのも
不思議だった。今起きたことから考えても、キメラドラゴンを倒したのは彼のはずだが、
どんな方法を使ったのか見当もつかず、彼は特になにをするでもなくシャルロットを見返していた。
”わからない……けど、きっとこの人も……強いんだ”
 いまや、生死の境を何度もくぐってきたシャルロットには、感覚的にそれがわかった。
 彼の冷たい視線に冷まされたように、次第に気持ちを落ち着けていったシャルロットは、
息を整えると破片となったキメラドラゴンの死骸に視線を移した。
 
”なぜ、こんなところにキメラドラゴンが……?”
 
 キメラドラゴンは一匹しかおらず、一度獲物を食った場所には当分寄り付かないと
聞いていたシャルロットは、話に合わない実情に、持ち前の明敏な頭脳と、やはり
ジルに叩き込まれた『獲物の考えを読め』という教えに従って考えた。
 ランダムに動き回っているうちに戻ってきたのか? いや、改造されても動物としての
本能は健在のキメラドラゴンが、そんな間抜けなことをするはずがない。
 ならば、なにかの理由で戻ってきた? いや、それならジルと真っ先に出くわすはず。
 別個体? なにをバカな、キメラドラゴンは一匹しか……
 
 その瞬間、シャルロットの頭の中で、バラバラだったパズルのピースが、瞬時に
一つの形になって組み合わさった。
 
 すなわち、冷静になって思い返せば、図鑑で見たキメラドラゴンの全長は一〇メイル
以上あるのに、このキメラドラゴンはいいところ五メイル程度。
 さらに、キメラドラゴンは食った獲物一体ごとに頭を生やすのに、あのキメラドラゴンから
生えていた頭の数はせいぜい一〇個ぐらいだった。
 極端に小さな体格と、キメラとしては未成熟な体質……それから導き出される最悪の結論に、
シャルロットの全身の血液が凍りつき、理性が否定しようとするが、冷静な部分がそう考えれば、
キメラドラゴンが一ヶ月ものあいだ、森のどこを探しても見つからなかった理由になると警告してくる。
 
”いけない! もしそうだとしたら、ジルに勝ち目はない!”
 
 予感ではなく、絶対に避けがたいジルの死を狩人の血が感じ取って、シャルロットはジルの
消えていった先の道を見つめた。しかし、自分が行ってどうなる? この一匹にすら太刀打ち
できなかった自分が行っても死ぬだけだと、心の中からもう一人の自分が呼びかけてくる。
 
「お願い、助けて! この先にわたしの友達がいるの、このままじゃ殺されちゃう」
 
 自分の力ではどうしようもないと思ったシャルロットは、すがるようにして青年に助けを求めた。
 だが、少女の悲痛な願いは彼には届くことはなかった。
「……」
「え?」
「……」
 何を言い返されたのかわからなかった。最初は聞き損じたのか、聞き取れなかったのかと
思ったが、さらに二言三言彼の言葉を聞くうちに、疑問は絶望へと変わった。
 
「言葉が、通じてない……」
 
 青年の話している言葉は、ハルケギニアの公用語のガリア語でも、シャルロットの習った
トリステインやアルビオンのいずれの言語ともまったく違っていた。
 これでは、意思を彼に伝えることはできないと、シャルロットの視界が黒く染まりそうになる。
 それでも、ジルを放っておけないシャルロットは、おもちゃをねだる子供のように彼の袖を
引っ張ったが、彼は無造作に振り払うと、あちらも言葉が通じないことを理解したのか、
さっさと出て行けといわんばかりに森の外のほうへと指を指して見せた。
”だめ……これじゃ、間に合わない”
 助けを求めることもできず、がっくりとシャルロットは肩を落とした。
 いったいどうすればいいのか、このまま一人だけで助けに向かっても、二人とも死ぬ。
かといって、ほっておいてもジルは確実に殺される。
 どうすれば、どうすれば……自問自答が何十回もシャルロットの中で繰り返され、
どうしても答えが出せなかったシャルロットが、ふと顔を上げたとき、彼はまだそこにいた。
 青年は、シャルロットに何を語るでもなく、何をしてくれるでもなく、ただそこにいて彼女を
観察するようにじっと見下ろしていて、その見定めるような冷たい視線が、彼女に決意を促した。
”ジル……待ってて!”
 彼が何を考えていたのかシャルロットにはわからない。しかし、彼女にはあの目が、
守りたいものを本気で守りたいのかと、自分のちっぽけな心をせせら笑われている
ように見えて、そう思ったときには自然と走り出していた。
 そして、駆け去っていくシャルロットの姿を無表情に見送った後、青年はシャルロットには
わからない言葉で、憮然としてつぶやいた。
「せっかく拾った命を、わざわざ自分から捨てに行くとはな」
 
 それから、時間にして数分後……シャルロットが見たのは、洞窟を背後にしたキメラドラゴンと、
襲い掛かってくるキメラドラゴンに向かって”凍矢”を放って仕留めたジルの姿であった。
「やった……」
 完全に氷付けになり、絶命したキメラドラゴンの前でほっとしてへたり込んだジルに向かって
シャルロットは大急ぎで駆けつけた。
「ジルーっ!」
「シャルロット……見たか! あたし、やったよ!」
 勝利の喜びに手を振ってくるジルの笑顔も、今のシャルロットの目には映らない。その視線は
まっすぐにジルが倒したキメラドラゴンの死骸に向けられている。
”やっぱり、あのキメラドラゴンも五メイル程度しかない。ジルは興奮してて気づいてないんだ!”
 仮説は確証に変わり、迫り来る死神の鎌からジルを逃がそうと、シャルロットはフライで飛んだら
スペルのせいでまともにしゃべれないので全力で走った。
 しかし、シャルロットがあと一〇メイルほどに駆け寄ったとき、ジルの背後の洞窟の闇の中で、
瞳孔のない血走った数十の目が輝き、不気味なうなり声が響いた。
 
「ジルー! 後ろーっ!」
「えっ!?」
 
 ほんのコンマ数秒のうちに暗転は起こった。
 シャルロットの声に反応して後ろを振り返ったジルに向かって、鋭い斬撃が振り下ろされ、
反射的に飛びのいたジルのいた場所で、真っ赤な血しぶきがあがった。
「うぁっ……」
「ジル、大丈夫!?」
 倒れこんだジルにシャルロットは駆け寄って抱き起こした。
「シャルロット……うあっ!」
 荒い息をつき、顔中に脂汗を浮かばせたジルはシャルロットの姿を認めると、地面に
手を突いて立ち上がろうとしたが、左足に走った激痛に再び地面に崩れ落ちた。
「ジル……あ、足が」
 シャルロットの引きつった顔と、いつもあるはずのものがないことに、ジルは自分の身に
何が起こったのかを理解した。ジルの左足は、ひざの部分から寸断されて、滝のように
血が流れ出している。
 そして、鋭い爪の一撃で自分の足を切り落とし、それをうまそうに喰らっている相手の
姿を確認したとき、ジルの顔は絶望に彩られていた。
「キメラドラゴン!? ば、馬鹿な……あいつは、あたしが……ああっ!?」
 そこにいたのは、倒したはずのキメラドラゴン……しかも目を疑うことに一匹ではない。
洞窟の奥から三匹、四匹と、違う頭を生やしたキメラドラゴンが続々と出てくるではないか。
「あいつは、身を隠していたあいだに、子供を作ってたんだよ」
「なに!? でも、動物がつがいもなしで、子供を作れるはずが……」
「ううん、いるの。動物の中には、自分だけで子供を作れる生き物が」
 読書好きのシャルロットは、生き物について書いてあった本の一節を思い出して語った。
 無性生殖……普通の生き物はオスとメスが交尾をして子供を作るが、原始的な生き物の
中には自分の体を分裂させるなどして繁殖できるものが存在する。ヒトデを真っ二つに
切るとそれぞれが再生して二匹になったり、細菌が細胞分裂の要領で増えていくのが
その例だ。
 ただ、普通ある程度以上高等な生物は無性生殖はしないのだが、このキメラドラゴンには
捕食した獲物の一部をコピーする機能が備わっている。すなわち、もしも生物として種の
保存という本能に駆り立てられたキメラドラゴンのその機能が、食った獲物の代わりに
自分の分身を体から生やすといった繁殖方法を会得したと、考えられなくはないだろうか。
「なんてこった……それじゃ、あたしが倒したのは奴の分身にすぎないってのか」
「残念だけど、それよりも早く逃げよう」
 あのときシャルロットが危機を知らせたおかげで、ジルはかろうじて体への直撃だけは
免れていたが、左足を失ってはもう走れない。シャルロットは氷の魔法でジルの傷口を
凍結させて止血を施すと、抱えてフライの魔法を唱えようとした。けれども、天を舞う白鳥も
地に枷がつけられては這うようにしか飛べず、ジルの足を奪い合って食っていた
キメラドラゴンの幼生体たちは、もっと大きな獲物へと我先にと襲い掛かってきた。
「シャルロット、もういい、あたしを置いて逃げろ、あんた一人なら逃げ切れる!」
「そんなことできるわけないよ!」
「バカ! 二人とも死ぬ気か。どのみち、もうあたしにはもう仇をとる力はない! あんたは違う」
「違わない! わたしも生きてる、ジルも生きてる! だから死んじゃだめなの!」
 叫んだとたん、キメラドラゴンの爪が背中をかすめて、二人は地面の上に投げ出された。
 さらに、奴らは多少は知恵が回ると見え、ちょこまか逃げる獲物を逃がすまいと、四方を取り囲んで
退路を断つと、よだれを垂らしながら包囲陣を狭めてくる。
「負ける……もんか」
 動けなくなったジルをかばいながら、シャルロットは渾身の力を込めて『ウェンディ・アイシクル』を
放った。だが無数の氷弾がキメラドラゴンを襲っても、分厚い皮膚にさえぎられてダメージに
なっていない。続けてためした『エア・ハンマー』『エア・カッター』もだめだった。
 キメラドラゴンたちは、こそばゆい攻撃に喉を鳴らして笑いながら、じわじわと迫ってくる。
”もう、だめなの……”
 もてる力は全て出し切った。最後まであきらめずに戦い抜いた。それでもだめだった悲嘆が
涙となってシャルロットのほおを流れ落ちてくる。こんなとき、幼少の頃母に読んでもらった
『イーヴァルディの勇者』の物語なら、正義の勇者が助けに来てくれるのに。
 
「誰かぁ! 助けてーっ!」
 
 そのとき、森の奥から冷たく二人を見つめていたあの青年が、意を決したように右腕の
ブレスレットを胸の前にかざすと、収納されていたブレードが左右に開いて回転し、中央の
青いクリスタルからまばゆい輝きがあふれ出して彼を包み込んだ!
 
 群青の光芒、それは生命ある星を包み込む大海……アグルの光。
 
 数秒後、絶叫して死を覚悟し、ゆっくりと自分に向かってくるキメラドラゴンの牙を
見つめていたシャルロットの瞳の中に、水晶のように美しく輝く美しい玉が映った。
 刹那……光の玉がキメラドラゴンの体に吸い込まれていったかと思うと、その
キメラドラゴンは粉々の肉片になって飛び散った。
 
『リキデイター!』
 
 青い光球は次々と飛来し、ジルとシャルロットを取り囲んでいたキメラドラゴンたちを容赦なく
粉砕していく。
「シャルロット……あんた、なにを?」
「わたしじゃない、わたしじゃないよ……」
 圧倒的……威容を誇っていた怪物どもが、なすすべもなく爆死していく信じられない光景を、
二人は魂を抜かれたように見つめた。
 そして、その光景をもたらし、悠然と……しかしケタ違いの存在感を持って生き残りの
キメラドラゴンを睥睨する一人の戦士が森の奥から現れたとき、彼女たちはその姿を生涯の
記憶に焼き付けていったのだった。
 
 
 続く
17ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc :2010/07/11(日) 18:13:51 ID:J9+wj47y
今週は以上です。>>7の人、支援ありがとうございます。
 
今回のコンセプトはずばり
「ギリギリまでがんばって♪ ギリギリまでふんばって♪ どうにも、こうにも、どうにもならないそんなとき!」
です。来たのはガイアじゃないけどね。
そういえば作中では初めて等身大で初登場したウルトラマンになるのかな。
なお、以前才人たちが我夢と普通に話せてたけど、ここでは言葉が通じてないっていうのは
後の話で理由を語るつもりですが、とりあえずは行った方法が違うからということでお願いします。
それにしても無口キャラというか、クールな人物は表現が難しいです。
 
あ、あとキメラドラゴンの無性生殖の元ネタは
「やっぱマグロを食ってるやつはダメだな」
からです。
 
では次回は、ファンガスの森編もラストです。
18名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:14:08 ID:4F9DGk/N
ウルトラ乙

アグルだったー!
19名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:16:04 ID:JbP4LMyO
いつもGJです。
しかし、前スレがまだ50Kほど余裕があるはずなのですが……
これで現在40KBですから、前スレでも収まったのでは?
20名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:19:23 ID:jb5akngs
ウルトラGJ

>>19
何事も余裕を持って行動するのが大切
21名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:21:42 ID:pZh9jMpH
そんなに「ギリギリまで頑張」らなくても良いのでは?
別な意味でもナイスな判断だったと思います。
22名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:31:03 ID:LoR3MfFj
乙したー!
23名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:33:51 ID:MB4gzI4j
スーパーガッツの綴り、SUPRGUTSなんですね。知らなかった
GJ!
24名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:45:22 ID:ae6HPdzt
ウルトラの人乙
25名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:52:09 ID:hc+d57tk
ウルトラ乙!
相変わらずGJでしたw

変身の場面、脳内でアグルが変身した時に流れるBGMが余裕で再生されましたw
26名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:00:56 ID:oALBTD1r
>>21
そんな俺ルールいきなり言われてもな
>>1が改定されてるならまだわかるが
>>1は無視してもいいって前例にならないか不安
27名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:16:24 ID:Ps1uUBM8
いずれにしろ立てる必要はあるし特に>>1に抵触しているとは思えないけど
28名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:17:14 ID:KWz0xJhU
立てる必要性があるのと、勝手に立てるのは別物だろうが
29名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:21:31 ID:oALBTD1r
んで前スレ50kb以上余ってるんだがどうするの?w
30名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:21:34 ID:E9Ps19yg
宣言は出てるから特に問題を感じないな
31名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:28:52 ID:p9dL5cjE
宇田川城重がスレを埋めてくれるさ。(前科アリ)
32名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:29:46 ID:ZWtZEZqs
まだ450kb残ってるけど、立てますって宣言して立てたら許されるのか

すげーな
33名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:37:31 ID:07yPI2TU
何がすごいの?
34名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:42:02 ID:bJiJpU4e
450kbも残ってるなら許されないな
そんな奴見たことないけど
35名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:43:41 ID:mxGAIn1H
>>34
もう構わない方がいいよ
36名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:47:32 ID:4FvcTu8k
ただ残り容量を見誤ってたと謝罪すれば済む問題が下手な擁護でgdgdに…
37名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:49:45 ID:oALBTD1r
いや実際問題残りどーすんのよ?AAで埋めるって不毛すぎだろ
38名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:52:55 ID:woa7Cz1U
何この流れ…
39名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 19:56:37 ID:E9Ps19yg
いつも通り雑談で埋めればよかろうに
なんでわざわざ突っかかるかね
40名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:01:06 ID:MK/9ENt6
坊やだからさ。
41名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:01:56 ID:JbP4LMyO
気の長い、もとい気が遠くなる話だな
42名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:05:13 ID:p9dL5cjE
>795 名前:宇田川城重 ◆pakSEiBzVg 投稿日:2010/07/11(日) 19:57:48 ID:4/2a+OlB
>手違いかはわかりませんが、まとめサイトには拙作『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』が
>収録されていません。
>ご希望とあらば、第1話をここで再掲します。

ほら来た。
43名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:12:29 ID:AYFdQcd5
擁護が痛々しい
44名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:17:23 ID:tjVlmKXc
新スレではせめて来るまでは考えないようにしましょう
そして旧スレは出来るだけ有意義なレスで埋めましょう
小ネタでも論議でも考察でも

とりあえず自分は考案した小ネタを早めにまとめて近日掲載出来るよう頑張ります
45名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:18:17 ID:MK/9ENt6
よし鮫の話でもするか。
46名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:21:51 ID:mxGAIn1H
>>45
鮫…
マイナーだけど和田慎二の「少女鮫」召喚とか?
ラストシーンを考えると、召喚されてもおかしかないけども
47萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 20:55:22 ID:yNXNvpSS
ええと、チェックミスもありましたがアレをピックアップしなかったのは
当然理由あってのことです。
もちろん、理由はすでに明らかにされています。
これ以降アレが投下されても少なくとも私は拾いませんのであしからず。

ということで、進路クリアなら21:00より28話の投下を行いたいと思います。
48萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:01:12 ID:yNXNvpSS
それではいきます。

「……これは……なんということだ」
 夜闇のニューカッスル上空。高度6000メイルの高空に、風竜に騎乗し、
漆黒の装束に身を包んだ一人の竜騎士がいた。
 彼の名はギンヌメール伯爵。トリステイン王国竜騎士隊第2大隊の隊長である。
トリステイン王国の航空戦力でも唯一『風の門』付近まで達する高高度と、
風竜以上の速度を想定した高速度の敵に対応できる訓練を積んだ彼の部隊は、
銃士隊隊長アニエスがラ・ロシェールに派遣された直後に極秘裏に
アンリエッタ姫よりニューカッスルの強行偵察を命じられていた。
そこで、隊長である伯爵自らが将校斥候として先頭に立っていたのだった。
逆を言えば、彼を含め数人の騎士くらいしか、この任務を無事達成できる
見込みがなかったとも言える。
 ガリア南薔薇騎士団による埋葬が昼夜の別なく行われているそこは、
真夜中でもあちこちで埋葬の炎が灯っている。『遠見』の魔法により
天幕に描かれた交差する二本の杖――ガリア王国の紋章を確認した伯爵は、
炎に照らされた消し炭となった骸たちの多さに、思わずうなる。
「姫殿下のおっしゃったことは事実だったか……。しかし、これは……。
タケオ、まさか、これはお前の国の兵器のなせる業か……?」
 伯爵の問いかけに答えるものはいない。高高度強行偵察を成功させた
伯爵は、発見されないうちに騎竜の翼をトリステインに向ける。全速で
飛ばせば一日もあればトリスタニアに到着する。この情報を早く届けねば……と、
そこまで考えたとき、思考よりも先に体が手綱を引いていた。目の前を
火線が通過する。そこに、上空から悪魔のような囁きが聞こえた。
「……へぇ。ボクの攻撃を躱すなんて……ナマイキ」
 伯爵は振り返ることもせず、騎竜を一気にダイブさせる。
幸いニューカッスルはアルビオン浮遊大陸の端にある。浮遊大陸の地表
ぎりぎりまでジグザグ降下し、そこからさらに海上まで一気に高度を落とす。
ニューカッスルにいる南薔薇騎士団には発見される危険性があるが、
生還できなくては意味がない。風竜が悲鳴を上げるが、それでも伯爵は
手綱を緩めない。
「もう少しだ、シャルル!こらえてくれ!」
 伯爵が海上に達したとき……彼を追ってくるものはなかった。


 朝靄のラ・ヴァリエール城。その前庭に竜籠が降り立つ。アンリエッタ姫が
愛用しているような、また魔法学院に備え付けられているようなアルビオン産の
深紅の絨毯ではなく、トリステインの伝統的な緋毛氈が竜籠の扉の入り口まで
敷かれ、籠の中から降りてきた初老の貴族を迎える。
 ラ・ヴァリエール公爵。年の頃は五十を過ぎ、白くなり始めたブロンドの髪と
口髭を揺らし、王侯もかくやとうならせる豪華な衣装に身を包んでいた。
その左目には片眼鏡が嵌り、鋭い眼光をあたりにまき散らせている。
 つかつかと歩く公爵に執事が取り付き、帽子を取り、髪を直し、着物の袷(あわせ)を
確かめる。公爵は渋みがかったバリトンで「ルイズは戻ったか?」と尋ねた。
 その言葉に、長年ラ・ヴァリエール家の執事を務めているジェロームは、
恭しく一礼すると、「昨晩お戻りになりました」と答えた。
「朝食の席に呼べ」
「かしこまりました」

 ラ・ヴァリエール家の朝食は、日当たりの良いこぢんまりとしたバルコニーで
取るのが常である。その日もテーブルが引き出され、陽光の下に朝食の席が
しつらえられた。上座にラ・ヴァリエール公爵が腰掛け、その隣に夫人が並ぶ。
そして珍しく勢揃いした三姉妹が、歳の順番にテーブルにつく。
ルイズは昨夜ほとんど寝ていないためふらふらの体である。その横で
カトレアがいつもより体調が良さそうに見えるのとは対照的。
なお、ふがくはこの朝食の席には参加していない。招待されなかったと
いうのが一番の理由だが、カトレアに誘われたときにも、特に感情を込めず
「久しぶりなんだし親子水入らずで楽しむのもいいと思うけど」と言った
その言葉を、ルイズが内心恨めしく思っていた。
49名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:01:48 ID:LoR3MfFj
荒らしに関わるだけコッチが馬鹿見るだけですよー
無視無視

そして投下よろ
50萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:03:02 ID:yNXNvpSS
 公爵は、かなり機嫌が悪い様子だった。
「まったくあの鳥の骨め!」
 開口一番。公爵は枢機卿をこき下ろす。その言葉に、夫人は表情を
変えずに夫に問うた。
「どうかなさいましたか?」
 ルイズはいつ自分に御鉢が回るか気が気でない。けれど、父が枢機卿と
会ったのは、自分が王宮を辞してからだったようだ。もし王宮で顔を
合わせていたらと考えると、そのまま卒倒してしまいそうになる。
「このわしをわざわざトリスタニアに呼びつけて、何を言うかと思えば……
『一個軍団編成されたし』だと!ふざけおって!」
「承諾なさったのですか?」
「するわけなかろう!
 すでにわしは軍務を退いたのだ。わしに代わって兵を率いる世継ぎも
家にはおらぬ。何より、その理由が気に食わぬ!」
「理由とは?」
 夫人はあくまで表情を変えない。その様子に、公爵はやや気持ちを
落ち着かせた。
「うむ……鳥の骨が言うには、三日前、アルビオンのニューカッスルにて
王党派の最後の反撃が行われたらしい。すでに簒奪者どもが公表したように、
その戦いでテューダー王家は滅亡したというのだが……。
 鳥の骨め、何が『その戦いで貴族派は五万の陸兵と二隻の軍艦を失い、
旗艦を含む敵主力艦隊も大破した』だ。たった一隻の戦列艦しか持たぬ
王党派にそのようなマネができたなど信じられるものか!しかも貴族派の
再編成が完了する前に一気にロンディニウムを陥落させ王権を復興するなど、
何を馬鹿なことを!」
 テーブルを叩く公爵。ルイズが真実を話すべきかおろおろし始めたとき、
カトレアがそっとテーブルの下でルイズの手を握った。
「なるほど。でもよいのですか?祖国は今、一丸となって仇敵を滅すべし、
との枢機卿のお触れが出たばかりではありませんか。ラ・ヴァリエールに
逆心あり、などと噂されては、社交もしにくくなりますわ」
 そうは言いながら、夫人はずいぶんと涼しい顔をしていた。
「あのような鳥の骨を『枢機卿』などと呼んではいかん。骨は骨で十分だ。
 まったく。あまつさえ、鳥の骨は姫殿下に速やかなる即位まで進言しておる。
それに加えアストン伯などトリステインに逃げおおせたアルビオン王党派残党の
庇護を引き受けてまで鳥の骨に賛同しておる有様。そのようなことをせずとも、
アルビオンなど、空域封鎖で干上がらせればなんの問題もなく陥落するわ!」
 違う――それまで黙っていたルイズが、わななきながら口を開いた。
「と、父さまに、伺いたいことがございます」
 公爵はルイズを見つめた。
「いいとも。だが、その前に、久しぶりに会った父親に接吻してはくれんかね。
ルイズ」
 ルイズは立ち上がると、ととと、と父に近寄り、その頬にキスをする。
それからまっすぐに父を見つめ、尋ねた。
「どうして父さまは枢機卿のお言葉が嘘だと思われたのですか?」
「常識的にあり得ないからだ」
「王党派に援軍が現れたとか、新しい武器を使ったとか、お考えにならないの
ですか?」
「どこの国が援軍を差し向けたと言うのだ?それに……いいか?」
 公爵は皿と料理を使って、ルイズに説明を始めた。
「『攻める』ということは、圧倒的な兵力があって初めて成功するものだ。
王党派は三百。貴族派は五万。それに艦隊支援もある」
 かちゃかちゃと器用にフォークとナイフを動かし、公爵は肉のかけらで
軍を作る。
51萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:04:43 ID:yNXNvpSS
「攻める軍は、守る側に比べて三倍の数があってこそ確実に勝利できる。
これほどの戦力差、もはや三倍どころの話ではないことが分かるだろう?」
「でも……」
 公爵はルイズの顔を覗き込んだ。
「これほど戦力差が開いては、たとえどんな新兵器を投入したとしても、
勝敗は覆らないのだ。そして、それは我がトリステインがアルビオンを
攻めるとした場合にも言えるのだ。我が国がゲルマニアとの同盟を果たしたと
して、その兵力は六万にしかならぬ。それで、もし攻めて失敗したら
なんとする?その可能性は低くないのだ」
 ルイズはここにふがくがいないことが悔しかった。父の言うことは正論だ。
ハルケギニアの常識の範囲では。だが、ふがくやルーデル、それに敵として
襲ってきたあの双子のような『鋼の乙女』は違う。もしかすると、枢機卿は
ふがくを見たからこそ、先手を打つことを考えたのかもしれなかった。
「父さま……」
 公爵は、そこまで言うと立ち上がった。
「さて、朝食は終わりだ」
 ルイズはぎゅっと唇をかみしめて、たたずんだ。
「ルイズ。お前には謹慎を命ずる。しばらくこの城で頭を冷やすことだ。
わしが良いと言うまで、この城から出ることは許さん」
「待って!」
 ルイズは叫んだ。公爵は震えながらも自分をまっすぐに見つめる娘に
正面から向かい合った。
「なんだ?話は終わりだと言っている」
「ルイズ……?」
 エレオノールが、もう止めなさいとばかりにルイズの裾を引っ張った。
カトレアも、そんなルイズを心配そうに見ている。
「……わたしなの」
「何?」
「わたしが命じたの!ふがくに、五万の敵を焼き払えって……!」
 ルイズは顔を上げた。その顔は涙で濡れている。
「ルイズ!?あなた、何を言っているの!?」
 エレオノールが信じられない顔をしている。
「ねえ、父さま。父さまは、黒い雨に打たれたこと、あります?
人がいっぱい燃えると、その後に黒い雨が降るの。
 でも……、その雨でも、ふがくが放った火は消えなかった!ふがくが
爆弾で区切った中に、燃えるものがなんにもなくなるまで!」
 その言葉で、公爵の目の色が変わった。夫人も、エレオノールも。
カトレアだけが、そんなルイズを慈しむような目で見ている。
 公爵は、ルイズの前に向かうと、膝をついて娘の顔を覗き込んだ。
「……お前、一体何をしてきたのかね?」
「ルイズ、まさか……姫殿下のお願いって……」
 エレオノールが両手で口元を押さえながら言った。こくりと、ルイズは頷いた。
そして、ゆっくりと話し始める。
「わたし、姫さまのお願いで、アルビオンに行ったわ。そのときにギーシュ……
ミスタ・グラモンにも話を聞かれちゃったから、ふがくに一緒に連れてって
もらって。
 姫さまの密書を皇太子さまに渡して、手紙を受け取って……それで帰れば
よかった。でも、姫さまの密書には絶対皇太子さまの亡命について
書かれているって思ったから、亡命してもらうために、ふがくと、
途中で一緒になったルーデルに敵を焼き払えって……命令したの。
 ……でも、あんなつもりじゃなかった、間違ってたって気づいたけど、
中止させられなかった。わたし……なんであんなこと言っちゃったんだろうって……」
 公爵はルイズを抱きしめた。力強く、無言のまま。
52萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:06:20 ID:yNXNvpSS
 誰も一言も言葉を発しなかった。そうしてしばらく時間が経ち……
公爵は立ち上がる。
「……わしは、王家に杖を向けなければならぬかもしれぬ。
これはグラモン元帥も同様であろうな。ジェローム!」
 公爵の言葉に、「はっ!」と執事が飛んできて、公爵の脇に控える。
「『フガク』とか言ったな。その者は今どこにいる?」
「父さま。『ふがく』ですわ。あの子なら、あの尖塔の上に」
 そう言って、カトレアは昨夜ふがくが昇った城で一番高い尖塔を指さす。
「あの子はわたしたちが一番理解しやすいものにたとえればガーゴイル……。
とはいえ、それは単純にわたしたちが理解しやすいものというだけで、
普通に感情を持ち、そればかりか祖国では士官と同じ扱いを受けていると
聞きました。それなのにわたしたちがあまりに酷い扱いをするのですもの。
だから昨日の夜からずっとあそこに。朝食にわたしが誘ったんですが、
招待されていないからって……」
「カトレア。それについては昨夜新しい部屋を用意させたはずですが?」
 夫人の言葉に、カトレアはゆっくりと首を振る。
「母さま。これがたとえばガリアの士官、ロマリアの神官に同じことを
したとして、ただ部屋を替えた、それで許せ……となるでしょうか?
 確かに、あの子はガーゴイルのような存在で、ルイズの使い魔として
召喚されました。でも、元の国でそれなりの扱いを受けていたものを、
遠い国に召喚され、使い魔にされたからといって、下僕以下に扱って
よいとは、わたしは思いません」
「むう……」
 うなる公爵。カトレアはさらに続ける。
「それに、ルイズの言葉も嘘ではないと思います。実際に、わたしは
昨晩ふがくと一緒にルイズが見たのと同じ、『風の門』を越えた向こう、
二つに分かれた空を見せてもらっていますもの」
「でも、カトレア!どう考えても、たった一晩で魔法学院からアルビオンへ
たどり着くなんて……国で一番速い風竜でも無理よ!」
 エレオノールの言葉に、カトレアは再び首を振る。
「ふがくの速度は、わたしを気遣ってくれても竜籠が馬車に思えるくらい。
とっても速いのよ、姉さま」
「……『風の門』の向こう側。あなたたちはそれを見たというのね?
カトレア。ルイズ」
 そう言って夫人はカトレアとルイズを見る。その目には娘を心配する
様子がありありと見えた。
「……カトレア。『風の門』を越えたとき、気分はどうでした?」
 カトレアは一瞬質問の意味を量りかねた。だがそれが自分の体調を
聞いているのではないと判断し、こう答えた。
「少し空気が薄くなった感じはしましたけれど、暖かく、晴れ晴れとした
気分でした」
「ルイズは?」
「わたしは……ただ空が美しいって思って……。でも、特におかしな
ところはありませんでした」
 夫人はしばらく瞑目する。そして静かに言った。
「……『風の門』に達する時点で、すでに魔獣や幻獣が飛ぶための魔力は
乏しくなり、鍛えた者でなければ息をすることも苦しい状態になっている
はずです。それに『風の門』の正体は、東に向かって荒れ狂う乱気流
――フネですら、あっという間にバラバラになってしまうほどのもの。
ましてその先に達すれば、体は凍り付き、口や鼻、耳から血を吹き出し、
意識を失いかねません」
「ふがくもそんなことを言っていましたわ。でも、自分と一緒にいるから
大丈夫だと」
 カトレアの言葉に、夫人は視線を尖塔の上にいるふがくに向ける。
そして、言った。
「わたしも興味がわいてきました。それに、家を預かる者として、他国の
士官待遇を受ける者への非礼は詫びねばなりません」
53萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:07:57 ID:yNXNvpSS
 
 
 それからまもなく。ふがくがカトレアとルイズに呼ばれてバルコニーに
降り立ったとき――そこに予想もしなかった来客が訪れる。

「……ワルド子爵か?一体何事だ」
 公爵は無礼を承知でバルコニーに舞い降りたグリフォンに騎乗する
貴族の名を呼んだ。
 ワルドは公爵夫妻に無礼を謝罪すると、居住まいを正した。
「アンリエッタ姫殿下よりの伝言をお伝え致します」
「姫殿下の……?」
 そう言ったのは公爵夫人。魔法衛士隊の一角であるグリフォン隊の
隊長自らが急ぎやってくる事態など、ただ事ではない。
「はい。すでにご承知のことかと思われますが、先日、ルイズが姫殿下に
報告したニューカッスルの件で、姫殿下は銃士隊を脱出した王党派を
救助したフネが帰港したラ・ロシェールに向かわせた直後、竜騎士隊
第2大隊にニューカッスルの強行偵察を命じられました。
その結果、ルイズの言っていたことが証明され、王宮にて緊急臨時閣議を
開くべく諸侯の招集を命じられました」
「なんだと?では、鳥の骨はわしに軍編成を要求する前にルイズに会って
いたというのか?」
 公爵の言葉に、ワルドは短く「はい」と答えた。
「ニューカッスル城郭の周辺は、城郭が無傷なことが信じられないほどの
有様だったとのこと。また、ガリア南薔薇騎士団がニューカッスルにて
救護活動を行っていることも判明。
 今回の件、枢機卿猊下ではなく姫殿下自らが先頭に立つご様子です。
閣下、急ぎ王宮へ」
「わかった。ジェローム!」
 公爵は執事を呼び、竜籠の用意をさせる。慌ただしく公爵が王宮に
向かった後、それを見送ったワルドに夫人が話しかけた。
「ご苦労でした。ワルド子爵。あなたもずいぶんと出世したものね」
「いえ。今回はルイズのおかげです。そうでなければ、僕がまだ王宮で
何かできるような立場にはありません」
 その言葉には嘘があった。確かにアンリエッタ姫は竜騎士隊に強行偵察を
命じた。しかし、平行してシンからニューカッスルの状況に対する報告は
受けていた。アルビオンに潜入していたエージェントは、シンだけではない。
ニューカッスルから脱出した貴族にも、テューダー王家につながる
アンリエッタ姫に協力する者はいたのだった。そして、ワルド本人も、
今は『ゼロ機関』のエージェントとして動いていた。
「ですが、こうなれば……ルイズの言葉を信用しないわけにはいきませんね」
 そう言って、夫人はふがくに向き直る。そして、頭を下げた。
「今回の非礼、誠に申し訳なく思っております。できれば、あなたが
国に戻られたときにも、ラ・ヴァリエール家、いいえ、トリステイン
王国が敵意を持って迎えたとは思わないでいただきたいと思います」
「私がお上にそんな報告をすると思っているのかしら?見くびられたものね」
「ふがく!」
 ルイズが声を上げる。それをカトレアが押しとどめた。
「そんなことよりも、昨日のあの敵意むき出しの視線、そっちの理由が
知りたいわね」
 ふがくは礼を失しない程度に冷ややかな視線を公爵夫人に向ける。
だが、公爵夫人はそれを意にも介さず言う。
「あなたとルイズが、ともに死と硝煙の臭いをまとっていたからです。
娘の使い魔とはいえ、娘に害をなすのであれば捨て置くことはできません。
 ですが、先程娘から聞いた理由があれば納得もできます」
 そう言って、公爵夫人はふがくに視線を向ける。その視線も刃のように鋭い。
二人の間に飛び交う視線に、ルイズは冷や汗を垂らした。
54萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:08:59 ID:yNXNvpSS
「……な、なんでこうなっちゃうのよ……」
「ふがくの態度も警戒心が強くなっちゃってるわね。わたしと話して
いるときはそうでもなかったのに」
 カトレアがルイズの横で困ったような顔をする。二人の後ろから、
エレオノールが溜息混じりに言った。
「……わたしと話していたときにも警戒されていたけどね。おちび、
あなたと一緒にいるときもあんな感じなの?」
 ルイズがふるふると首を振る。
「確かに最初は……。でも、それはわたしの方にも問題があったからだし。
今はそんなことなかったのに」
 ふがくと公爵夫人、二人の緊張に割って入ったのが、誰であろうワルドだった。
「まあまあ。カリーヌ様。ここは穏便に。
ふがく君も、別にラ・ヴァリエール家の人間と事を構えるためにここに
いるわけではないのだろう?」
 ワルドの言葉に、今にも杖を抜きかねない雰囲気だった公爵夫人の
刃のような気配が霧消する。ふがくも、完全に警戒を解いてはいないが、
それでもそれまでの殺気立った雰囲気は消えてなくなっていた。
「……ふふ。ジャン坊やの前で、大人げなかったかしらね」
「まぁ、私も別に……」
 互いに見えない矛を納めた様子にほっと胸をなで下ろす三姉妹。
それを確認してから、ワルドが言う。
「カリーヌ様は、つまりふがく君がルイズに害を与える存在ではないと
確認できればよろしいのですよね?」
 公爵夫人は無言で頷く。
「ふがく君も……まあ、この行き場のない気持ちは晴らせたらいい……かな?」
「閣下の考えが見えないわね。何が言いたいわけ?」
 やや不審げな視線をワルドに向けるふがく。ワルドはそれを気さくに
笑ってみせる。
「僕に妙案があるんだ。聞いてもらえるかな?」
 ワルドの『妙案』に、当事者である公爵夫人とふがくのみならず、
三姉妹も驚きの声を上げた。
55萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2010/07/11(日) 21:12:42 ID:yNXNvpSS
以上です。
予定を変更してワルド子爵登場の巻でした。

いくらカリーヌ様とはいえ問答無用でカッタートルネード放つだけでは……
と思ったので、ちょっと変化球投げさせてもらいます。
ラ・ヴァリエール家でこんなことをしている間に周囲の状況は刻一刻と
変化しています。
そのあたりにもこれからスポットを当てていく予定です。

それでは。また近いうちにお会いできるよう頑張ります。
56名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:15:11 ID:woa7Cz1U
乙でしたー

…そろそろユーゼスが来そうな気配だな
57名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:26:19 ID:QJtHVO1I
>>56
何かそう書かれると、物凄く悪いことの前触れに見えるんだが。
58名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:34:46 ID:OsuJK0BJ
DBからヤムチャが召喚されましたってなったら、サイバイマンと相打ちになった時のポーズで召喚されそうだよな。
59名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:56:05 ID:tjVlmKXc
>>56
>>57
スパロボユーゼスだったら例のBGMとエフェクトで不吉な登場を果たすだろうな

皇帝と大樹と傭兵はまだかいのぅ・・・
召喚率パーフェクトを目指して戦士と妖魔と魔人と魔女と英雄と親父のネタでも考えようかねぇ
アルティミシアって魔女だからて迫害されて歪んだ人格を持つに至った設定みたいだけど
ハルケで凄いメイジとして尊敬を集めたら持ち直しましたとかアリだろうか
想像できそうで出来んが
契約したらルイズが魔女の騎士ってことになるのかしら
60名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:18:50 ID:9E+U4mJI
>>46
っ『新宿鮫』
61名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:23:53 ID:GIKRSMPq
>>46
「お弁当があるのがピクニック、そうじゃないのがハイキング♪」
と称して地雷原に新兵共を突っ込ませる幼女の漫画なんて、
僕は一切知らないんだからね!!
62名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:25:52 ID:mxGAIn1H
>>61
知ってるじゃねえかああああw
63名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:26:19 ID:xHD+LUVS
>58
ルイズに契約のキスをされて、その痛みでポーズを再現すると見た。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/11(日) 23:29:40 ID:GIKRSMPq
>>62
だから知らないって言ってるじゃないか!
体中からヤクを抜くためとはいえ、幼女の監禁緊縛シーンがある少女漫画のことなんて!
お色気シーンに突入しても大丈夫な成長後の第二部になって急に打ち切られたような漫画なんて!
知るもんか!!
65名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/11(日) 23:30:47 ID:OJmEo7ua
最終話がリンダリンダな漫画なんて私知りません!
66名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/11(日) 23:33:59 ID:MK/9ENt6
このレスは嘘を吐いてるレスだぜ。
67パラベラム代理:2010/07/11(日) 23:50:45 ID:23Jm4gbS
他にいなければ52分くらいから代理投下よろしいでしょうか?
68疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:53:02 ID:23Jm4gbS
では行きます

第十一章 力が足りない

エレメント/[Element]――《パラベラム》のペア。攻撃担当、防御担当に分かれることで戦闘力が上がる。

   1

「で? デルフリンガーは何を知っているの?」
 ルイズが待ちかねたといった様子でデルフリンガーに尋ねた。
 用事が済んだので待ち合わせ場所である中央広場に向かう。道は人通りの少ない道を選んだ。デルフリンガーから事の詳細を聞かなくてはならない。人に聞かれては困る類の話だ。
道は荒れて汚く石畳もガタガタ。人通りは皆無で、こういう話をするのにぴったり雰囲気を持っている。
「デルフでいいぜ、娘っ子」鍔をカタカタと鳴らし、答えるデルフリンガー。やはりアレが口なのだろうか。質問に答えられるように鞘から少しだけ刀身を覗かせている。どうやら完全に鞘にしまうと喋れなくなるらしい。
「そう。私はルイズ、こっちはシエスタよ」
「おうよ! よろしくな、娘っ子、相棒!」
 どうやらデルフリンガーはルイズのことを名前で呼ぶ気が無いようだ。ルイズは何か言いたげに目頭を押さえていた。デルフリンガーは気づいているのか、いないのか。
「相棒、ですか?」
「おう、見た感じ、俺を使ってくれんのは嬢ちゃんだろ? だったら嬢ちゃんは相棒だ!」
 そういってカタカタと鍔を鳴らす。笑っている、のだろうか。
 それはともかく、どうやらデルフリンガーを扱う者が『相棒』ということらしい。そんな風に呼ばれるのは初めてだったが、悪い気はしなかった。
 そういえば。祖父にも『相棒』がいたとよく言っていた。その『相棒』のことを語る祖父はとても優しい目をしていたのを良く覚えている。
「はい、よろしくお願いしますね」シエスタもいつかはそんな風にデルフリンガーのことを思えるのだろうか。そうなると素敵かもしれない。
 閑話休題。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/11(日) 23:53:11 ID:g6vdMNhG
すでにwiki登録済みで読んだあとだけど支援するぜw
70疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:54:33 ID:23Jm4gbS
「それで? あんたのいう担い手とか使い手って何よ?」
「あー、忘れた」
「ねぇ、シエスタ。あなたのハウンド・ドッグって鉄ぐらいなら砕けるわよね?」
「わー! わー! 待て待て待て待て! 待てって! 早まるな、俺の話を聞けって!」
「だったらさっさと話しなさいよ。あと大声出さないでよね。誰かに聞かれたらどうする気よ」
「おう。でも、まぁ、仕方ねぇだろ? こっちとら六千年も生きてんだ。そりゃあ記憶の一つや二つ、曖昧にもなるさ。まぁ、なるべく話せそうなことは話すけどな」
「六千年って・・・・・・それってブリミル様の時代じゃないですか」ハルケギニアでは魔法を伝えたとされる始祖ブリミルを崇めるブリミル教が一般的だ。その始祖がこの地に降り立ったとされるのが六千年前。さすがに眉唾ものだ。
「まったく・・・・・・信用できるのかしら? まぁいいわ。あんた、私たちの『力』を知ってるの?」単刀直入にルイズが聞いた。
「いんや、知らね―。でもな、嬢ちゃんや相棒の力と似たモンは知ってる。いや、知っているはずだ。感覚に覚えがあるぜ。でも、まー思い出せねぇ。なんせ、ここ二百年ほどは何軒かの武器屋で亭主と喧嘩するばっかだったしなぁ。
剣なのにまともに斬った覚えがほとんどねぇや」
 たぶん、あの亭主も似たような関係だったのだろう。毎日のように他愛のない話や馬鹿話をして。剣の身だから飢えも知らず、老いも知らず。そうした日々を二百年。シエスタのような人間の感覚ではわからないが、それは幸福だったのだろうか。
「覚え・・・・・・ですか。どうしてわかったんですか?」
「そりゃあ相棒、俺はこんなミテクレでも偉大な魔法の掛かったインテリジェンス・ソード、デルフリンガー様だぜ? 握った人間の力量やらなんやら色々とわかんのよ。で、だ。相棒たちに握られた時にこう、なんか違う感覚がこうティンと来たんだな、これが」
 うんうんと頷くような声音とカタカタと忙しなく動く鍔。やけに感情豊かな剣だ。デルフリンガーはどうやら話好きな性質らしく、まるで生身の人間と喋っているのかのようだった。武器屋でも客にケチをつけたりとかで、会話をする機会は少なかったのかもしれない。
 まぁ、鞘に入れられると喋れなくなるのだから、武器屋によっては鞘に入れっぱなしだったのかもしれない。買われたところで基本的に戦時にしか用が無いわけで。そんな時にお喋りと洒落込むわけにもいかないだろう。
「私たちについてどこまでわかってるの?」
「ぶっちゃけると詳しい事まではわかんねぇ。分かんのは・・・・・・そうだな。魔法と似たような感じだけど、力の出所が違う。
似たモンではあるけど別モンだな、こりゃ。魔法は血統とかから使うが、相棒たちのそれは心からだ。しかも心からだから、たぶん魔法と違って一人一人違うもんだな」
 驚いた。
 大したものだ。握っただけでここまでわかるのか。伝説の魔剣というのも、あながち法螺でもないのかもしれない。
 デルフリンガーの言うとおり《P.V.F》は魔法と似た部分がある。第一にはやはり精神力を使うということだろう。シエスタはあまり魔法については詳しくは無いが、それでもメイジの精神力が行使する魔法に大きく影響するというぐらいは知っている。
《P.V.F》も個人の精神力が大きく関わっているパラベラムによって形は多種多様だ。
「そこまでわかるのね。さて、私たちが《P.V.F》って知られると非常に困るのだけど、どうする? もしも喋ったら私の魔法とシエスタの射撃訓練の的になるわけだけど」
「喋りません」
「よろしい。これからよろしく、デルフ」
 デルフリンガーは実に物分かりの良い剣だった。
71疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:55:28 ID:23Jm4gbS
   2

 ギーシュはブルドンネ街を歩いていた。珍しく女性を連れていなく一人である。あの決闘の処分である謹慎と反省文を終え、今日は久しぶりの外出だ。少しくらい羽を伸ばすのもいいだろう。それに。
 ギーシュは謹慎期間の間、ずっと考えていた。それはシンプルなもの。

―― 強くなりたい。

 その為には強くならなければ。もっと、もっと、もっと。
 ギーシュは馬鹿で、単純で。それ故に迷いなどありはしない。

 今日は街の書店で、土系統の指南書を探しに来たのだ。本ならば学校の図書館に行けば相当な量があるが、当然ながら返却期限がある。これからのことを考えると買った方がいいと思った。
 書店など普段は立ち寄ったことも無かったが、目立つ店で助かった。目の前にある赤レンガで上品で落ち着いた雰囲気を持った建物がギーシュの探していた書店だ。蟻の形をした看板には『黒蟻の迷宮』と書かれている。
 変わった名前だが、なんでもガリアに本店を置く有名な書店らしい。本は高価なのだが、店内は客がたくさんいた。そしてそこには意外な顔も。
「なんでキュルケがいるんだい?」
「それはこっちのセリフよ。どうして本屋なんかにいるのよ?」
『黒蟻の迷宮』亭の店内にはキュルケがいた。今までのギーシュならば浮ついたセリフの一つでも言っていたかもしれない。
「ちょっと本を探しにね」
「ギーシュが本を? どうしちゃったのよ? らしくないわ」
 キュルケが驚いたのも無理も無い。ギーシュは勤勉な生徒ではなかった。どちらかといえば、怠け者で試験の前など四苦八苦したものだ。
「少し、ね。強くなろうと決めた」それは自分自身に言い聞かせるように。
 キュルケがまた目を丸くする。そしてじっくりとギーシュを眺めた。
「へぇ、いい顔になったわね。今までならからかうだけだったけれど、今のあなたになら微熱を持って接しても良さそうだわ」
 キュルケは冗句が好きだが、この発言が冗談ではないのくらい目を見ればわかる。紅玉のようなその瞳には微熱が揺れている。
「光栄だが、遠慮させてもらうよ。・・・・・・大切な人がいる」最後の一言を口にする時は顔が綻ぶのを感じた。
 珍しい。いつも余裕の笑みを浮かべているキュルケの驚いた顔を今日は何度も見れた。
「そう。なら仕方がないわね。ちょうどいいわ。今、タバサと一緒にいるのよ。あの子、本の虫だからきっといい本を見つけてくれるわ」
 話をすればなんとやら。キュルケの後ろの本棚からひょっこりと沢山の本を抱えた少女が顔を覗かせる。
「やあ、タバサ。偶然だね」
 返事はせずに首を傾げるタバサ。どうしてここに? といったところか。
「この前の決闘騒ぎで自分の弱さが嫌になってね。強くなりたい。とりあえず土系統の指南書を探しに来たんだ」
「あなた、自分の系統以外の本も相当読んでるでしょ? 何か良さ気なのを見繕ってあげましょうよ」
 タバサは少しの間、顎に手を当てて考える。やがてコクリと頷き、本棚の間をとてとてと歩いていった。そう時間を掛けずに戻ってきたタバサの本の上には、鈍色の本が置いてある。分厚いそれを手にとってみれば、相当古い本だということがわかる。
「ホーエンハイムの『錬金術理論』。あまり知られてないけれど、『錬金』を基本とした論理的で役に立つ技術が書かれている」
 こんなに喋るタバサは初めて見た。相当な読書家のタバサがそう強く推すのだ。確かに役に立つのだろう。
「ああ、ありがとう。確か二人ともトライアングルだったっけ? 都合が良ければ、少し聞きたいことがあるのだけど」
「ルイズたちと一緒に来てるのよね。どうしましょうか?」
「ルイズも来てるのかい? なら僕も一緒に行こう。この前はずいぶんと迷惑を掛けてしまったしね。本のお礼も兼ねて昼食でもご馳走するよ」
「あら、そう? それじゃ、お言葉に甘えようかしら。タバサはどう?」
「決まり」
 財布の中身が厳しいことはギーシュ自身がよく知っていた。だが見栄を張るのをやめられるようになるのは、どうやらまだ先のことらしい。
72疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:56:48 ID:23Jm4gbS
『ギーシュのワルキューレには無駄が多すぎる』
 会計を済ませルイズとの待ち合わせ場所に行く道中、二人のトライアングルに『どうすれば今より強くなれるか』と尋ねた答えがこれだ。
「戦闘するのに装飾の施された鎧はいらない」とタバサ。
「数も一度に出しすぎて制御しきれず、動きに無駄が多いわね」とキュルケ。
「ぐぅ」と声を出してみる。
 確かにワルキューレの鎧には繊細な装飾が施されており、精神力をかなり使う。それにギーシュの全力である七対のワルキューレも同時に操作することは難しい。
 どうしても注意力が散漫してしまい、うまく動かすことができないのだ。結果、敵に向かわせる二、三体以外はほとんど棒立ちのようなもの。全てを動かそうとすると突撃のような単純な動きが精一杯なのだ。
「戦闘に必要な要素以外は省いたゴーレムの方がいい」
「七体を一気に並べるんじゃなくて、自分がうまく使える数を絶やさないようにした方がいいんじゃない?」
 どちらも正論である。ぐぅの音も出ない。
「は、はっきり言うね・・・・・・具体的にはどうすればいいと思う?」
「まずは鎧ね。装飾なんていらないし、そもそもゴーレムだから鎧自体が必要無いわ。むしろ壊されにくいように中身を詰めた方がいいわね」
 タバサもコクリと頷き、言葉を引き取る。
「複数体操れないのなら自分の力量に合わせた数にすべき」
「・・・・・・なるほど」
 キュルケたちの言葉はどれも説得力がある。さすがはトライアングルといったところか。
「そうねぇ・・・・・・あとは攻撃のバリエーションは多い方がいいわ」
「錬金と組み合わせたり、自分のできる範囲でやれることを探す」

――自分のできること、か。

 何があるんだろうか。
 強くなりたいと思った。強くなると決めた。それは確かだがギーシュはドット。魔法の腕は低く、力も強くない。まだまだ子供の自分には何ができるのだろうか。とりあえずは。
「・・・・・・体でも鍛えようかな」
 そんなギーシュの呟きはキュルケには聞こえなかったようだ。
「あ、あれ、ルイズじゃない? おーい! 待たせちゃったー?」キュルケはぶんぶんと手を振り、ルイズの方へ駆けていった。
 キュルケが指差した先には目立つ桃色の髪が見える。どうやらルイズは先に来ていたようだ。とそこまで気付き隣に黒い髪を見つけた。
「体を鍛えるのは全ての基礎になる。・・・・・・頑張って」
 タバサもそれだけを言い残してキュルケの背中をとてとてと追いかける。
「・・・・・・どうやら今日は奮発しないといけないようだね」
 たまにはこういう日も悪くない。
73疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:57:48 ID:23Jm4gbS
   3

 シルフィードの背に乗るものは行きと比べて随分と多くなった。タバサの本に、デルフリンガー、それにギーシュ。
ギーシュは学院の馬で来ていたのだが、風竜の方がいいとこちらに合流することになったのだ。ちなみに馬は学院に後日届けられる。
 ギーシュの奢りで予定よりも少し豪華な昼食を取り、ブラブラと街を見ていたらこんな時間になってしまった。
 日は沈み、辺りは既に夜の闇に覆われている。普段ならここまで暗くはないのだが、今日は雲が多く二つの月を隠していた。
 そんな夜の中庭でシエスタとギーシュが対峙していた。どうしてこんなことになったのか。

「ルイズ、良ければ少し魔法の練習に付き合ってくれないか?」
「どうしたの? いきなりあんたが魔法の練習だなんて」
「少しキュルケたちに魔法について聞いてね。どんなものか試したいんだ」
「ふぅん。まぁいいけど・・・・・・そうね、シエスタ。相手してあげなさい」
「え、私がですか?」
「おいおい、ルイズ。シエスタは魔法が使えない。いくらなんでも無理だ」
「ああ、ギーシュはそういえば知らなかったわね。私たちがルイズと別行動してたのは、二人が杖を買いに行ってたからよ」
「杖を? え、それじゃ」
「はい、私もルイズ様と同じ魔法が使えるようになったのです」
「どう? 相手に不足は無いでしょ?」
 と、こういうことである。

 キュルケ、タバサの二人は少し離れたところで見物している。どうやら二人ともシエスタの使う『魔法』に興味があるようだ。
「シエスタ、どうせならエゴ・アームズも試してみなさい。デルフがどこまで使えるかも見ておかないとね」
 どうやらそちらの方が本命のようだ。
「では準備はよろしいですか? ミスタ・グラモン」
「あ、ああ・・・・・・本当に大丈夫かい?」
「心配など無用です」
 背中からデルフリンガーを取り出し、鞘から抜き放つ。デルフリンガーの重みが手に伝わってくる。かなりの重量だが、同年代よりは鍛えられたシエスタの腕力ならなんとか構えることができた。
「お、さっそく俺の出番か! 行くぜ、相棒!」
「・・・・・・インテリジェンス・ソードか。実物を見るのは初めてだよ」
 シエスタが抜刀したのを見て、ギーシュも杖を構える。
「『錬金』」
 脳裏により大きく力強い銃をイメージ、そしてルイズと同じく『錬金』を読み上げる。
 モット邸でハウンド・ドッグを展開した時よりも大きな力が形作られる。デルフリンガーを中心に光の粒子が弾け、装甲を形成。拳銃方のハウンド・ドックには無い機関部を中心に、シエスタの精神力が《P.V.F》になる。
 ガキンッ、ガキンッと音を立て、装甲が重なり合っていく。シエスタはイド・アームズの時よりも強力な内観還元力場が体を包むのを感じた。
 銃身が細く長い、マスケット銃と長剣を組み合わせたようなP.V.F。パーツのほとんどはワインを思わせる深紅のクリアパーツでできている。長い銃身の下は銃剣が装着されていた。
 銃身の側面にはシエスタの新しい力の名前を示す刻印が刻まれていた。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/11(日) 23:59:11 ID:g6vdMNhG
支援支援
75疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/11(日) 23:59:23 ID:23Jm4gbS
《cal68 Archetype Chaser》

「シエスタ、名前は?」
「アーキタイプ・チェイサー、です」
「なんだこりゃ!? 相棒、どうなってんだよコレ!」
 アーキタイプ・チェイサーの銃剣が振るえ、そこから低い男の声が聞こえた。どうやら杖に使ったデルフリンガーはそのまま銃剣になったようだ。
「なるほど、手加減してもらわないといけないのは僕の方のようだ」
《P.V.F》は二種類に分けることができる。人間の精神を武器として実体化させたものである《P.V.F》は、本能に近い意識から生まれる『イド・アームズ』と、利己的で現実的な意識から生まれる『エゴ・アームズ』。
 シエスタのハウンド・ドッグはイド・アームズで、今生み出したアーキタイプ・チェイサーはエゴ・アームズ。
 イド・アームズは近距離戦用で防御力と小回りに優れ、エゴ・アームズは大口径で中・遠距離戦を主に担当するのだ。
「タバサ、すまないが『サイレント』をかけておいてくれるかい?」
 タバサがその身長よりも大きな杖を振り、『サイレント』をかける。『サイレント』は風属性の呪文である。これを使うことで音を消すことができるのだ。
「シエスタ。発砲は控えなさい。とりあえずデルフの性能チェックよ」
「わかりました」
 内観還元力場の影響で身体能力が格段に上がっている。確かにハウンド・ドッグよりは重いが、軽々と振り回せそうだ。
「よし、僕も行くよ」
 ギーシュが杖を振り、スペルを唱える。花弁が地面に落ち、三体のゴーレムへと変化を遂げた。
 青銅製のゴーレム。それはルイズとの決闘で繰り出した物と変わらない。しかし、それは決闘の時とは違う。
 まずは大きさ。二メイルほどだった大きさのゴーレムが一回りほど大きくなっていた。次に見た目。あの豪華な鎧は無く、ただ人の形をしているだけ。
頭と胴と腕と足。それだけで構成されたシンプルな形状。間接は球体になっている。一体だけ長い棒を構えていた。
「行くよ!」
 ギーシュの声に合わせ、ゴーレムが動く。何も持っていない二体のゴーレムがシエスタに肉薄する。だがシエスタの方が早い。
 右から迫ったゴーレムの拳をかわし、左から蹴りを放とうとするゴーレムを逆袈裟に斬りつける。脇腹から肩にかけて大きく切り裂く。
 ぐらりと倒れかけるゴーレムだが、すぐに体勢を立て直した。ギーシュが裂かれた部分を『連金』で繋いだのだ。
 一度、後ろに飛び、距離を取る。
「中身を詰めても簡単に破壊されるか。なら!」
 再び二体のゴーレムがシエスタに迫る。今度は迎撃する為にシエスタ自身も地面を蹴る。シエスタとゴーレムでは速度に圧倒的な差がある。
 すれ違いざまに一体を袈裟懸けに斬りつけ、もう一体を突く。
「ダメだ! 相棒、離れろ!」
 ゴーレムは突かれたことをものともせず、アーキタイプ・チェイサーをしっかりと掴む。動きが止まったシエスタに棒で武装したゴーレムが迫る。アーキタイプ・チェイサーを引き抜こうにも、ゴーレムは手を離さない。
「ッ!」咄嗟にシエスタは自分に迫る棒を掴み取る。結果としてシエスタはゴーレムと力比べをすることになった。
 冷たい鉄の感触を感じながらもシエスタの顔には笑みが浮かぶ。力比べに勝ったのは、シエスタだった。
 棒をゴーレムから奪い取り、その棒を使いアーキタイプ・チェイサーを掴むゴーレムに一撃。ぐらついたゴーレムにさらに蹴りを放ち、アーキタイプ・チェイサーを強引に引き抜く。
 その勢いを殺さずに二体のゴーレムに一太刀浴びせる。
 ギーシュが『連金』でゴーレムを直す前に、一気に距離を詰め、首に銃剣を突きつける。
「私の勝ちです」
「・・・・・・そのようだ」
 ギーシュに突きつけていたアーキタイプ・チェイサーを外した。ギーシュもそれに合わせて杖を下ろす。
「いやぁ、どうなるかと思ったが相棒、強ェーじゃねぇか! そっちの坊主も結構なモンだったぜ!」
 デルフリンガーの空気の読めない一言で模擬戦は終了した。
76疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/12(月) 00:00:43 ID:/jSTfR6m
  4

 思ったよりも健闘した。
 それがルイズの感想だった。シエスタならば問題無いと思ったがあそこまで奮闘するとは。てっきりシエスタに圧倒されて終わると思っていただけに、意外とも言える。
 それにデルフリンガー。まさかシエスタのP.V.Fの銃剣になるとは。これも意外な結果だ。もしかしたら折れたりするかもしれないと思っていたことを考えると思わぬ掘り出し物だ。
「おめでと、シエスタ。さて、明日はまた授業もあるんだし、そろそろ部屋に戻りましょ」
「そうね、すっかり遅くなっちゃったわ。まぁ、楽しかったんだけどね」
 全員、今日は街で遊んだから疲れている。休みたい、という気持ちは同じだったのだろう。
 帰ろうと歩き出そうとした瞬間、地面が揺れるのを感じた。

―― え?

 次の瞬間、我が目を疑った。
 高さ三〇メイル、重さはわからないほど。他の四人の視線も同じモノを見て固まっている。
 その視線の先には巨大な土くれでできたゴーレムが悠然と立っていた。
「ッ!? シエスタッ!!」
「はいッ!!」
 咄嗟にシエスタに指示を飛ばす。シエスタも察して隣でぼうっとしていたギーシュを抱えて地面を蹴る。ギーシュがさっきまでいたところをゴーレムが歩いていった。
 口笛が聞こえ、シルフィードがタバサとキュルケを抱えて空に浮かぶ。ルイズも急いで連金を唱え、右手にシールド・オブ・ガンダールヴを展開。
 内観還元力場により強化された身体能力でゴーレムから距離を取る。ゴーレムの動きは遅いが、サイズが桁違いなのでそれなりのスピードがいる。
「シエスタ、イド・アームズに切り替えてギーシュを守りなさい!」
 シエスタはルイズの言葉に従い、デルフリンガーが装備されたハウンド・ドッグを展開。ギーシュを抱えたままゴーレムに何発か撃つが、質量が違いすぎる。
「ルイズ、こっちに来なさい! シルヒフィードで拾うから!」
 上空からキュルケの声が聞こえてきた。おそらくタバサに頼んで、声を大きくしているのだろう。
「ダメよ! 放っておけないわ! 私が相手をする!」
 左手にドラムマガジンを呼び出しシールド・オブ・ガンダールヴにセット。もちろん、弾は対物用。初弾を薬室に装填し、セレクターレバーを『Full』に切り替える。フルオート機構に切り替えれば、弾丸は引き金を引き続ける限り絶え間なく発射することができる。
 相手を気にせず、思いっきり撃てると思うと顔に自然と笑みが浮かぶ。
 あれだけ巨大な的だ。外しはしない。とりあえず頭部の辺りを狙い、引き金を引いた。
「ショウ・タイムよ」
77疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/12(月) 00:01:43 ID:/jSTfR6m
 轟音と共にジャベリンが超高速で飛翔する。シールド・オブ・ガンダールヴの三本の銃身は回転しながら唸りを上げる。青白いマズル・フラッシュと大量の空薬莢がルイズの周囲を彩る。
 回転を加えられたジャベリンは次々とゴーレムの頭に突き刺さり、抉り穿つが圧倒的な質量差のせいで足止めにもならない。しかもゴーレムは術者が魔力を供給し続けているのか、どんどん再生していく。
 ゴーレムはルイズには目もくれず、本塔に近づき腕を振り上げる。そしてその拳を壁に向かって打ち下ろした。
 打ち下ろす瞬間、拳が鈍い輝きを持つ鉄に変わるのをルイズは見た。ようやくこのゴーレムを作ったメイジの目的がわかった。
 ゴーレムが殴った学院の壁。そこはちょうど宝物庫のある場所だ。つまりは盗賊。手口からして武器屋の言っていた『土くれ』のフーケだろう。
 学院の壁には強固な『固定化』の魔法がかかっているが、このまま何度もあのゴーレムに殴られては破壊されてしまうかもしれない。そうなればフーケはまんまと目当ての代物を盗み出し、この魔法学院をあとにするだろう。

――このまま見逃すわけにはいかない。

 まだルイズ自身にもどうなるかわからない奥の手を使う。できればもう少し情報が増えてからにしたかったのだが。
 狙いを腕に定め、射撃。先ほどと同じく大量のジャベリンがゴーレムを襲うが、やはり質量差がネックになる。だが。
「『アンロック』」ルイズが魔法を唱える。
 それは鍵を開けるという単純なコモン・スペルである。ルイズはそれに単純な魔力だけを込めた。対象は鍵ですらない青白く光るジャベリン。
 結果、爆発。ジャベリンは魔力に耐え切れず派手な爆発をした。当然、刺さっていたゴーレムの腕ごと吹き飛ぶ。
 ルイズの杖は三本の銃身の中の一つにある。そしてシールド・オブ・ガンダールヴの機能上、銃身は回転する。つまり杖を振る必要が無い。そしてルイズの魔法は全て爆発する。これがルイズの奥の手。『ゼロ』と呼ばれた一人のメイジの牙。
「『アンロック』、『アンロック』、『アンロック』、『アンロック』、『アンロック』」
 ルイズは次々と魔法を唱える。もちろん、引き金は引きっぱなしだ。まずジャベリンでゴーレムの腕を抉り、爆発で吹き飛ばす。再生され続けているので、一見意味が無いようだがよく観察すればルイズの攻撃のスピードの方が僅かに速い。
 しかしフーケはルイズの相手をする必要がない。学院の宝物庫から目当ての代物さえ盗み出せればいいのだ。
 フーケが盗み出すのが先か、それともルイズがゴーレムを破壊するのが先か。これはそういう勝負だ。
 しかしルイズよりフーケの方が一枚上手だった。
 フーケはゴーレムの再生をやめた。ゴーレムの右腕は四散した。再生した部分の追撃のつもりで放ったジャベリンは壁に突き刺さる。ルイズの九〇口径のジャベリンは学院の壁に小さな亀裂を作る。
 たったそれだけで充分。フーケのゴーレムは残った左手を壁に振り下ろす。拳は壁にめり込み、壁に巨大な穴が穿たれる。そのまま腕を橋に使い、宝物庫に侵入。ルイズは阻止しようとしたが、再びフーケの魔力で再生した右腕がフーケを守る。
 すぐにフーケは腕に何かを抱え、ゴーレムの中に消えた。自分の周囲の形状を変えて、ゴーレムを鎧としたのだ。ルイズも攻撃を加えるがフーケまでは届かない。

 ゴーレムは地響きを起こしながら学院の壁を越え、草原を歩いていく。
 草原の真ん中でゴーレムは唐突に崩れ落ちた。ルイズは駆け寄ったが何もない。フーケも、フーケが盗んだ代物も何も無かった。
 あるのはただの土くれだけだった。
78疾走する魔術師のパラベラム 代理:2010/07/12(月) 00:03:47 ID:/jSTfR6m
  5

 気付けばシエスタに抱えられていた。シエスタはしっかりとギーシュを抱え、ゴーレムから遠ざかっていく。
 見ればゴーレムの周りを走る青白い光。決闘の時にも見た光だ。
「お、おい、シエスタ! ルイズはあそこで戦っているんだろう!? 僕らも行かないと!」
「駄目です」
 却下されるとは思っていなかっただけに、驚いた。
 確かにルイズは強い。それは身にしみて分かっている。だが相手が悪い。遠目で見ても分かる。質量が違いすぎる。
「ルイズ様はあなたを守れと命じました。そして私の主はルイズ様です。ミスタ・グラモンの命令は聞けません」
 シエスタはゴーレムから安全な距離を取り、右手に持った銃でルイズの援護をしている。

――僕は、弱い。

 自分の身一つ満足に守れない。挙句の果てにシエスタに、守ると決めた者に守られて。
 こんな自分にいったい、何が守れるというのだ。
 歯を食いしばり、拳に力が篭る。何かを手の平が伝う感覚を感じ、手を見ると血がついている。爪が手に食い込んだのだ。
 それでも今は、何も変わらない。
 ギーシュは、弱い。
「・・・・・・チクショウ」
 ギーシュの悲痛な呟きは誰にも聞こえず、シエスタの銃声に紛れて、消えた。



以上、十一章終了です。

ギーシュイケメン化計画始動。
作者はギーシュ大好きです。
あー、スケジュールが立て込んでて間が空いてしまい、すみません。
ウルトラの人みたいな投下は無理にしても、ある程度の周期で投下したかったんですがね。
さて、11pという遅いペースでようやくフーケ登場。ここまで長かった。今回で原稿用紙100p超えました。
テンポ悪いなぁ。人によってはヒゲとか出てきてもいい頃なのに。

そういえば深見真先生の名作『ゴルゴタ』が徳間文庫で文庫化されましたね。
文庫化を待ち望んでいた自分にはとてもうれしかったり。
とっつきにくい深見成分は薄めですが、銃撃戦と冷たい雰囲気は深見作品の中ではトップクラス。
オススメですので、興味のある方どうでしょうかね?

代理終了、作者さん乙でした
79名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 00:07:51 ID:FqtUVaOp
乙でした
原作しらないけどうまくゼロ魔世界になじんでますねえ
ゼロ魔をなぞるだけじゃないので面白い
80名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 16:56:38 ID:Y2SqS7/8
萌え大戦があるんだから、ストライクウィッチーズからの召喚もあっていいんじゃないかと思うんだ。
ラグドリアン湖に赤城や大和を浮かべてみたい。
81名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 17:52:43 ID:YDUDYuHG
ストライカーユニットだけ召喚された作品があったな、確か
82名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 19:06:38 ID:+iecbRf5
前スレで喧々諤々なゼロ魔x藤子SSって
己が正義と信じ込み排斥してるここの住民のこと皮肉ってるんじゃないか?
お前らと作者のやりとりが出来すぎててしこみじゃないかと思うほどなんだけどw
83名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 19:50:48 ID:PHjcE1oJ
>>82
そんな知性のある奴は荒らしなんぞせんよ。
84名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:05:37 ID:3yvCfGXV
>>82
酋長は社会を知らない低脳なのでそこまで高等な技能を扱えるほどの知能指数はありません
85名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:18:08 ID:9xP+p/I8
鮫、鮫・・・・・・
メタルマックスからスナザメを召喚・・・・・・しても、話作れないな。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:21:45 ID:3eX7DPvV
怪奇サメ男を召喚し・・・ってなにも活躍できそうにねえw
87名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:24:15 ID:9xP+p/I8
バルシャークか、ガオブルー。
でも戦隊で一人だけ呼んでもなあ。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:24:32 ID:UmckWebs
鮫と豹と魚

三つの下僕を召喚
聖地は超古代の惑星防衛システム
虚無に完全覚醒したルイズはやがて神に近しい存在に・・・

あと初代バイオハザードのでっかい鮫にロケットランチャー撃ちまくって
効かなくて凹んだことを思い出した
89名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:25:24 ID:UmckWebs
鮫と豹と魚って何書いてるんだ俺
最期は鳥じゃねーか
量産機もいたけど基本的に三種類だっつーの
orz
90名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:26:25 ID:+iecbRf5
そういやゼロ魔ってキャラヘイトやアンチSSってあまりないよな
そこまで書き手がいないのか、人気がなかったのか
91名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:31:42 ID:9xP+p/I8
水中の鮫はランチャーも効かない無敵生物だから気を付けろ。
癌でも自力で治癒する耐病性、
鮫肌で水の抵抗を消して静かに素早く泳き、
歯はいくらでも再生可能、1万倍に薄めた血も嗅ぎ取る嗅覚に、
鼻先のロレンチーニ瓶で磁気を感知して地形把握、生物探知もやってのけるリアルにチートな生物だからな。

あと魚の分際で、猫や犬より知能が高いという研究結果も・・・・・・
92名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 20:37:29 ID:UmckWebs
>>91
えぇ、無限ロケットランチャーでちょっと調子に乗りすぎてました・・・

まぁ仮にそんなスーパー生物呼んでも
「王様はロバ」のウオラみたいなことになるだけだろうけどさ!!
そういや小ネタでナウシカを漫画版から召喚という凄絶な出オチがあったのを思い出した
93名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:00:17 ID:8oTKRsR4
水棲の生物を召喚してしまった生徒はどうするんだろう?
94名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:03:01 ID:aZdA/X1Y
基本は両生類なんじゃないかな?
水のなかで生きられないような生き物召喚してもどうしようもないw
95名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:03:27 ID:zYTo7oYm
水の魔法で大きな水の球作ってその中に入れて輸送
後は水棲生物の使い魔用プールで過ごすみたいな感じになるんじゃないかな
96名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:03:58 ID:8oTKRsR4
魚類とかクジラとか魚竜とか、陸上生活不可能な生き物は召喚されないと考えるべきなのかな。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:04:02 ID:aZdA/X1Y
抜けてた orz
×水の中で生きられないような生物
○水の中でしか生きられないような生物
98名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:07:15 ID:gwuJaO19
メタルサーガ〜砂塵の鎖〜からアルファ召喚とか
…無双して終わりか
99名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:09:14 ID:9xP+p/I8
召喚の魔法を唱えた次の瞬間!!
なんと、そこにはビチビチと跳ね回る鮫の姿が

「あの時は本当にビックリしました。まさかあれが召喚のゲートで、陸の上に召喚されるなんて。もう光る鏡には触ったりしないよ」
100名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:10:15 ID:xj6Okh0h
鯛とかマグロを召喚したら俺なら食べてしまうなw
食材に限らず秘薬の原料となる希少生物を召喚してしまったメイジはさぞ懊悩することだろう。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:14:27 ID:Rli+r/rc
馬はうまーい
102名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:15:49 ID:qsf2EF+3
「ミス・タバサ、次こそきちんとコントラクト・サーヴァントをするように」
「大丈夫。もうお腹一杯」

 そして喚ばれるきゅいきゅい。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:19:14 ID:dbYu03Ic
>>98
既に小ネタで一つあった気がする
104名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 21:58:47 ID:p3hlGJN6
サメねぇ……
ワッハマンの鮫顔の刑事さんとか。
ワッハマン自身は小ネタで喚ばれてたっけ?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 22:05:50 ID:oYEwwXXe
>>102
どんだけの犠牲がww
106名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 22:07:48 ID:OKB5CJgd
>>87
ガオシルバー呼べば鮫どころか鰐や狼までついてくるよ!
107名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 22:20:48 ID:ly4Ivaat
>>106
ガオシルバー…ガオウルフ・ガオハンマーソーシャーク・ガオリゲーターか
ガオハンター/ガオハンタージャスティスになると何と言うか敵が居なさ過ぎる・・・
しかも時と場合によってガオゴッドまで来るし
108名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 22:44:01 ID:x9skGUR9
サメかあ・・・トランスフォーマーカーロボットのゲルシャーク。
最終回後なら自由の身だから問題なし。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 22:53:51 ID:OKB5CJgd
>>107
ガオハンマーヘッドとガオソーシャークが混ざってるよ
ソーシャークはマスオさんの一部
110名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 23:08:53 ID:SUNCjE98
激獣シャーク拳の達人がティファニアにが召喚されたら事あるごとに泣いているだろうな
111名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 23:38:30 ID:ThK/UuHE
ルイズがジョーズとか白鯨とか召喚。
でもモンモランシー程度じゃあ水が足りずに干からびる。

そして野外立食パーティーのはじまりはじまり。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/12(月) 23:51:11 ID:k4WM1lEH
>>111
ジョーズと言われて007の方しか思い浮かばなくて何故立食パーティーになるのか少し理解できなかった…
あんな化け物…と思ったが人外には素手で対抗はできないから大丈夫か
113名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 00:35:54 ID:C/+YJ8S5
アヌビス神が本当はナイルパーチ呼ぶところだったんだよネタ思い出してフイタ
114名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 01:44:46 ID:6Q/cUyG6
陸や空に対応できないタイプの水棲モンスターを使い魔として呼んでしまった場合に活用する方法
……学院卒業まで湖で飼って、海軍に入るしかないかな?
115名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 02:09:49 ID:ny5tXvgR
海軍存在してないだろ
116名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 02:17:59 ID:ugLYgl2b
>>114
海豚等の海洋生物で組まれたすてぷりの諜報特殊部隊ディープワンズ思い出した
117名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 07:31:57 ID:kR+TuXEC
「サメが陸上で行動できない、などとルールブックのどこに書いてある!」とGMにごねてみるのも手だ
118名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 07:53:24 ID:sxriOfY1
陸上でも、問題なく動ける鮫と言えばコイツだろ?
瀬戸の花嫁から、瀬戸組もしくは3年零組の担任兼体育の教師のシャーク藤代
119名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 08:06:19 ID:6Q/cUyG6
>>117
キャラシートを破り捨てられそうで怖いな。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 10:37:22 ID:A9ljb5Du
いくつかの神話によれば、鮫は人間になって陸上活動が可能だとされるので大丈夫だろう。
藤代さんは神話に忠実な方だったんだな。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 12:15:38 ID:hrzlV6dj
ホーエンハイムの錬金術…両手でパン!なんだろうか…
122名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 12:43:27 ID:xfAzIxbP
>121
原作とアニメ二期は「おとうさま」と同じでノーモーションで使えていたはず。
アニメ一期はどうだったろう?
123名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 12:45:47 ID:rJT/PzxX
漫画じゃなくてモデルになった人の方だろう?
パラつながりで
124名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:29:43 ID:g44wHLvR
サメの話題で一つ小ネタを書いてみたので、これから投下してもかまわないでしょうか?
題名は『風の鮫』、どんな鮫が呼ばれるかについては、まあ読んでみてのお楽しみということでお願いします。
125名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:37:26 ID:A9ljb5Du
よし、こい。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:37:42 ID:sxriOfY1
よぉし、オイラァ鮫さんが困らないように海水まいちゃうぞぉ
 (支援)
127風の鮫:2010/07/13(火) 13:46:19 ID:g44wHLvR
「ふむ……なんだろうな、これは」
 ガリア王国の首都、リュティスのヴェルサルテイル宮殿で、この王国の王ことジョゼフ一世は柄にも無く途方にくれていた。
 とりあえず、冷静になって状況を整理し、目の前のものを観察してみる。
「サモン・サーヴァントとやらを試してみたつもりだったのだが、これは失敗したか……いや、召喚はできているから成功したのかな?」
 見上げた先には、宮殿の中庭で噴水や花壇を押しつぶしている巨大な物体が鎮座している。
 物体……いいや、青く輝く目や、鋭く裂けた口があることから生き物なのだと思うが、そのサイズがケタを外れていた。
 ざっと見渡すだけで、全長はおよそ50メイルはあり、ハルケギニア全土を探してみてもここまででかい生き物はいないだろう。
 姿かたちは、海に住んでいるという鮫という生き物によく似ており、背中には鮫の特徴である巨大な背びれもあるが、反面前足はヒレではなく、モグラのような巨大な爪のついた足になっている。
「わからんな……だが、まあいいか」
 結局正体はつかめなかったが、どうせサモン・サーヴァント自体暇つぶしでやったことなので別にいいと、ジョゼフは周りでパニックになっている衛兵や召使を無視して、その鮫とコントラクト・サーヴァントをおこなった。
 ルーンは鮫の前足あたりに刻まれ、使い魔の儀式は成功したかに思われた。
 すると、これはどういうわけか、それまで完全に停止していた巨大鮫は突然動き出し、前足で土をかいて地中に潜り込むと、そのまま背びれだけを出して地中を泳ぐように移動し始めたではないか。
「うわっ! と、止まれ」
 驚き慌てる衛兵たちは、唖然としているジョゼフの横をすり抜けて迫ってくる巨大な背びれに向かって叫んだが、当然そんな言葉が届くはずも無く、背びれはそのまま宮殿の建物に激突し、
壮麗な白亜の宮殿をおもちゃの城のように破壊していくと、勢い衰えぬままに第二宮殿であるプチ・トロワも体当たりして破壊した。
「きゃああっー! なんだ、いったいなんなんだぁー!」
 崩れゆくプチ・トロワから、ほこりまみれになったジョゼフの娘の王女イザベラが、はだしのままで慌てふためいて逃げ出してくるが、そんなものはジョゼフの目には入らない。
「ふ、ふははは。すごい、これはすごいぞ」
 歓喜の笑いを漏らすジョゼフの声に応えるように、地上に高さ20メイルほどの背びれを突き出した巨大鮫は、リュティスの街に躍り出ると、人々でごったがえしている市街地を思う様に蹂躙していった。
 商店街も、貴族の屋敷も、リュティスの魔法学院も、次々と巨大鮫は背びれをぶつけて破壊していき、街は逃げ惑う人々の阿鼻叫喚の地獄となる。
「すごい、おれはなんとすごいものを呼び出したのだ。ふははは! 燃え盛る街、泣き叫ぶ人々、おれが求めていた光景はこれだ。だがまだ足りぬ。さあ我が使い魔よ、ガリアを、いやハルケギニアを火の海に変え、我が心を痛めてくれ!」
 常軌をいっしたジョゼフの哄笑が木霊し、リュティスはその日、灰燼と帰した。
 
 その後、巨大鮫はガリア全土の街や村を次々に襲い、破壊していった。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:47:44 ID:1vkirEN2
鮫っつーと・・・・・・シンベエか?それともアーロンか?

まあそれはともかく支援
129風の鮫:2010/07/13(火) 13:48:47 ID:g44wHLvR
「うわあっ! 逃げろ」
「地の精霊よ……わあっ!」
「なによあのバケモノ、人の餌場を勝手に荒らしてくれちゃってさあ」
 人間はおろか、強力な先住魔法を操る亜人や、吸血鬼などでさえ、呆然と地の鮫の猛威を見送ることしかできない。
 一月ほどかけ、ガリア全土をほぼ壊滅させると、恐るべき地の鮫は今度は隣国ゲルマニアに侵入、ガリアのときと同じく国土を蹂躙しはじめた。
 むろん、ゲルマニアは全軍をあげてこの地の鮫を迎え撃ったが、なにぶん敵は地底を高速で移動できるためにまともに攻撃を仕掛けることができず、待ち伏せして攻撃をしようとしたら、
地の鮫は地上に突き出した鼻先から強力な破壊光線を発射して軍勢を蹴散らし、ゲルマニアもまたガリアと同じ運命をたどった。
 家を失った被災者は50万人にも達し、その悲惨さをうれいたロマリアの教皇聖エイジス32世は、このとき内密にあらゆる動物を操るという伝説の使い魔ヴィンダールヴを地の鮫の制圧に向かわせたが、
どういうわけかヴィンダールヴの力も地の鮫には通じず、彼は重傷を負ってやっと逃げ帰ってきた。
 
 ゲルマニアが蹂躙されたら、次は隣接する小国トリステインの番である。
 即位したばかりのトリステイン女王アンリエッタは、ゲルマニア西端ツェルプストー領を破壊し、まっすぐやってくる地の鮫を、国の最東端ヴァリエール領にて全軍をもって迎え撃った。
「ここを突破されたらトリステインは滅びます。全軍、命を捨てて戦いなさい!」
 陣頭指揮をとるアンリエッタに率いられ、最強のメイジ『烈風』カリンを筆頭に、国中から集められた軍勢が立ち向かう。
 だが、ありとあらゆる魔法、武器による攻撃も地の鮫の進撃を止めることはできなかった。
「もはや、これまでか……」
 ここを突破されたら、もはや国内に守りはない。地の鮫の猛威に、トリステインもガリア、ゲルマニアと同じく灰燼に帰すしかないのか。
 誰もが、そう絶望しかけたとき、奇跡は起こった。
 それは、最後の防衛ライン、トリステイン魔法学院の生徒たちによる、戦力にもならないと思われた薄い防壁。
 そこで決死の覚悟で待ち構えていた生徒たちを蹴散らしていく地の鮫に、せめて一矢をと、その背中に飛び乗った一人の少年の左手のルーンが輝いたとき、ルーンを通して少年の頭に地の鮫の正体が伝わってきたのだ。
 
「こいつは生き物なんかじゃない! 人間が作り上げた兵器、ロボット怪獣なんだ!」
 
 あらゆる武器を操るという伝説の使い魔ガンダールヴの力が、地の鮫の謎のヴェールを引き剥がした。
 それは、異世界で作られた兵器、『地底鮫ゲオザーク』だったのだ。
130風の鮫:2010/07/13(火) 13:54:04 ID:g44wHLvR
 こいつは、外見上は生き物だが、それは偽装で、内部にはメカニックがつまった金属の塊、ヴィンダールヴの力が通用しなかったのもこのためだ。
 しかし、どんな武器の使い方でもわかるガンダールヴならば話は別。
 ガンダールヴの少年、平賀才人はこいつを止められるのは自分しかいないと、制止する主人の少女を振り切って、友人の青い髪の少女に頼み込んだ。
「タバサ頼む! シルフィードでこいつの口の中に俺を連れて行ってくれ」
 なんと才人は、ゲオザークを外部から破壊することはできないと、体内に入ってメカを直接停止させる作戦に打って出た。
 もちろん、彼の友人たちはそれを止めたが、トリステインを救うにはそれしかないと、一か八かの作戦は決行され、なんとかゲオザークの体内に入り込んだ才人は、内部で何度も感電や窒息の危機に陥りながらも、ついにゲオザークのメイン電源を発見した。
「鮫は鮫らしく、打ち上げられたら干からびてろ!」
 愛刀デルフリンガーの一撃で、中枢を止められたゲオザークは、目の光を失うと急速に停止した。
 こうして、一人の少年の命をかけた行動によってトリステインは救われた。
 
 その後、地の鮫を呼び出したジョゼフ王は、すでに対抗する兵力も失っていたのであっけなく退位に追い込まれ、その後にシャルロット女王が即位した。
 一躍英雄となった才人は、『ヴァリエール領会戦の勇者』と呼ばれるようになり、その勇敢な戦いぶりを間近で見ていた『烈風』カリンやヴァリエール公爵に気に入られ、おかげで彼の主人であるヴァリエール三公女の末娘は、長女と次女を差し置いて彼と結婚することになった。
 ガリアの復興はシャルロット女王の手腕の下で急速に進み、負けじとゲルマニアも復興のペースを上げていった。
 また、唯一被災を免れていたアルビオン国は内戦状態にあったが、どういうわけか反乱軍レコン・キスタの勢力が急速に衰えた結果、王政復古に成功している。
 
 なお、残されたゲオザークは、これのせいで家や家族を失った人々のために、見学者を集めて爆破する予定だったが、ここで思わぬ事態がゲオザークの運命を変えた。
 それは、ロマリアから急遽ハルケギニア中に発表された。
『ハルケギニア全土は、数年のうちに地下に堆積した風石によって、大地ごと空に舞い上げられて壊滅する』
 という、人知では解決できない大災害の回避に、ゲオザークが使えるのではということだった。
 なにせ、風石が埋蔵されている地層は人間では潜れない地下深くにあるが、ゲオザークのパワーでならばたやすいものだ。
 こうして、急遽修理し、人間が乗り込んで操縦できるように改造されたゲオザークは、才人の操縦によってすさまじい勢いで風石の除去を完了させていった。
 だがいかにゲオザークが強力だとはいっても、一体しか存在しないのでは数年の猶予があっても、ハルケギニア全土の風石の除去はとうてい間に合わなかっただろう。
 けれども1年後にはゲオザークを元に、ハルケギニア中の技術者が全力をあげて簡易地底戦車モーラットの製作と量産に成功したことにより、3年後にはどうにかハルケギニア中の除去が完了した。
 
 ハルケギニアには再び平和と安息が戻り、その後は長いあいだ大きな戦争も無く、穏やかな歴史が続いた。
 
 役目を果たしたゲオザークは、今はヴァリエール領に建設された巨大な博物館に、じっと鎮座して人々に過去を語りかけている。
 どんな力も、使う人によって破壊にも救済にも変わる。そのことを教えてくれた地の……いいや、『風の鮫』を見に訪れる人が絶えることはない。
 
 完
131名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:57:12 ID:A9ljb5Du
これが出たのって、ダイナ・・・いやティガだったか?
132名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 13:58:17 ID:g44wHLvR
というわけでウルトラマンティガより、マサキ・ケイゴ博士作・地の鮫ゲオザークを召喚させてもらいました。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 14:29:05 ID:BLlky0W1
投下乙!
一瞬キャプテンシャークかと思ったが、脚の描写で首をかしげ、その行動で
「ああ、ゲオザークか」と気付かされたよ。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 17:17:41 ID:5WDma6wI

大怪獣サイズの鮫に口付け出来るジョゼフ様の胆力ぱねえw

しかし、この流れの切っ掛けになったアレって、どうして鮫なんだろうなぁ
「そんなことより鮫の話しようぜ」は稲中だっけ? 台詞しか知らん
135名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 18:45:52 ID:tpr1IuJj
            / ̄ ̄\
          /   _ノ  \
          |    ( ●)(●)
          |     (__人__)  
             |     ` ⌒´ノ   学生時代に打ち込んだことは何ですか?
              |         }
              ヽ        }
            ヽ、.,__ __ノ
   _, 、 -― ''"::l:::::::\ー-..,ノ,、.゙,i 、
       ____
    /      \
   /  ─    ─\     ハルケギニアの地でトリステイン国につき、数多の戦列に加わっていました
 /    ,(●) (●)、\    並の兵卒では立てられない手柄をいくつもたて、騎士叙勲も受けています
 |       (__人__)    |   特に、アルビオン撤退時に7万の軍勢をたった一人で食い止めた功は、今でも語り草になっているくらいです
 \     ` ⌒´   /    
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i 

            / ̄ ̄\
          /   _ノ  \
          |    ( ●)(●) ありがとうございました。
          |     (__人__)  以上で本日の面接は終了です。
             |     ` ⌒´ノ   
              |         }
              ヽ        }
            ヽ、.,__ __ノ
   _, 、 -― ''"::l:::::::\ー-..,ノ,、.゙,i 、
136名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 19:24:11 ID:22t34StG
>>119
サタスペ!の公式イベントでDDしてた速水螺旋人に言われたぜ
137名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:18:16 ID:hll02tEJ
他にいなければ20分から投下予定。
元ネタはゴルドラン。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:20:26 ID:hll02tEJ
「ついに・・・ブリミルの元についちゃったのね」

「ああ」

「長かったわね」

ルイズ、キュルケ、ギーシュの三人は今までの冒険の旅を思い出していた。



「さらば黄金勇者 〜ブリミルよ、永遠に〜」



きっかけはルイズがサモンサーヴァントで宝石を召喚したことだった。
召喚された宝石はパワーストーンと呼ばれるかつてブリミルに仕えし勇者が封印された石であった。
ルイズはその封印を解くことにより、勇者の主となったのだ。
その勇者・ドランはルイズにこう告げる。

「全ての勇者を目覚めさせブリミルの元へお向かい下さい、
さすればブリミルは主たちに虚無の力をお授けになるでしょう」

かくしてルイズたちの冒険の旅が始まった。



ガリアへ、ゲルマニアへ、ラドグリアン湖の湖底へ、アルビオン大陸の内部へ、聖地へ、東方へ。
文字どおり世界を股にかける大冒険の末に全ての勇者を目覚めさせたルイズたちは、
ブリミルがなんと星の彼方にいることを突き止めた。
かくしてトリステインを飛び出し、ハルケギニアを飛び出し、聖地を越え、
ロバ・アル・カリイエすら踏破した少年少女達はついに星をも飛び出し星海をかける旅に出たのであった。

だがその旅は決して平坦なものではなく、むしろ危険に満ち溢れたものであった。
襲い来る亜人や怪物、吸血鬼やエルフなどの先住民族、
そして何よりしつこく三人を追い回す刺客・ワルドとその黒幕であるガリア王・ジョゼフ。
そんな数多の危機を三人は勇者達と力を合わせ乗り越えてきたのであった。

その冒険の旅も、ブリミルの元へたどり着くことで終わりを迎えようとしていた。
139名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:22:02 ID:hll02tEJ
「何せ星の周りにでっかく「ブリミル」って書いてあるくらいだものね」

「ああ、間違いなくこの星こそ始祖ブリミルのおわす星」

「ドラン達ともここでお別れ、か。わかってはいたことだけど寂しいわね」

最初は輝いて見えたブリミルの星に相応しい白亜の街並みも、
ドラン達との別れを自覚しだすと色あせて見えてくる。

「ってちょっと待ちなさいよ。実際色あせてるじゃないの!」

「地の文にツッコムのはいくら元ネタがゴルドランでもメタがすぎないかい?
でも確かに変だね、真っ白だった街並みがなんだかだんだん茶色っぽくなって・・・?」

「「「な、なんじゃこりゃー!!!」」」

正に激変だった、眩しくすらあった白い街並みは一瞬で茶色い街並みに。
いうなれば白磁気が一瞬で素焼きに変わったかのようだった。
しかも暮らしている人間すら普通の人間から( ゜。゜)って感じの簡素な顔つきの謎生命へと変化している。

「どうなってんのよ!ここブリミルの星じゃないの?」

「あ、あたしに聞かれたってわかるわけないでしょ!」

挙動不審な三人に( ゜。゜)の一人が話しかける。

「ブリミル?あんたらなに言ってるんだね、ここはブリミルじゃのーてブリシノレじゃ」

「ブリミルじゃ・・・」

「なくて・・・」

「ブリシノレ・・・?」

・・・・・・・・・
140名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:24:33 ID:hll02tEJ
         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!   
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・   
                                             
            ,. -─- 、._               ,. -─v─- 、._     _
            ,. ‐'´      `‐、        __, ‐'´           ヽ, ‐''´~   `´ ̄`‐、
       /           ヽ、_/)ノ   ≦         ヽ‐'´            `‐、
      /     / ̄~`'''‐- 、.._   ノ   ≦         ≦               ヽ
      i.    /          ̄l 7    1  イ/l/|ヘ ヽヘ ≦   , ,ヘ 、           i
      ,!ヘ. / ‐- 、._   u    |/      l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、      │
.      |〃、!ミ:   -─ゝ、    __ .l         レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! |  | ヾ ヾヘト、    l
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /       riヽ_(:)_i  '_(:)_/ ! ‐;-、   、__,._-─‐ヽ. ,.-'、
      /`゙i u       ´    ヽ  !        !{   ,!   `   ( } ' (:)〉  ´(.:)`i    |//ニ !
    _/:::::::!             ,,..ゝ!       ゙!   ヽ '      .゙!  7     ̄    | トy'/
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、    r'´~`''‐、  /        !、  ‐=ニ⊃    /!  `ヽ"    u    ;-‐i´
 !    \::::::::::::::ヽ   `ー─ ' /             ヽ  ‐-   / ヽ  ` ̄二)      /ヽト、
 i、     \:::::::::::::::..、  ~" /             ヽ.___,./  //ヽ、 ー        
           ルイズ                 ギーシュ         キュルケ

「ブリシノレだなんてふざけるにも程があるよ!」

「いたいけな少年少女の心を弄んだわね〜!許せないわ!!」

「丸焼きにしてあげなきゃ気がすまないわね!」

「とにかくまずはドラン達と合流を」

「いや、その必要は無いみたいだ」

ギーシュと同じ方向を向くとそこには

「主〜!」

異変を感じて主たちの元へとかけつけた勇者達の姿があった。
最初に目覚めた黄金勇者・ドランと彼に従う黄金竜ゴルゴン、黄金忍者空影が合体したスカイゴルドラン。
陸海空、果ては宇宙までどんなところへでも勇者達を運んでいける鋼鉄武装の二つ名を持つアドベンジャー
空の騎士・ジェットシルバー、星の騎士・スターシルバー、大地の騎士・ドリルシルバー、炎の騎士・ファイアーシルバーが合体したゴッドシルバリオン。
最後に目覚めた(筈だった)黄金将軍レオンと黄金獣カイザーが合体したレオンカイザー。
彼ら8人(今はある意味4人だが)がルイズ達と共に戦ってきた勇者達である。
141名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:27:27 ID:hll02tEJ
「スカイゴルドラン!大変よ、ここはどうやらブリミルの星じゃないみたいなの」

「うむ、そのようだ。あれを見てくれ」

空を指すスカイゴルドラン、そこには輝く道のようなものが空に向かって伸びていた。
そしてそこを茶色い列車のようなものが走っている。

「あれは光のレール!ってことはやっぱりここは終着地点じゃないってことだね」

「しかもそこを走っていくってことはあのブリシノレあたし達の冒険の旅を横取りする気!?」

「ドラン達!命令よ!!あのふざけたブリシノレをとっちめてきなさい!」

「「「「「「「「心得た!!」」」」」」」」




満点の星空、どんなリアリストでもロマンを掻き立てずにはいられない光景。
だがそれに相応しくない野太い歌声が突如響き渡った。

「ファーストキスから始まる〜♪二人の恋のヒストr」

「勝手に恋のヒストリーを始めるな!!」

「ハニ〜!?」

光のレールから列車ごと蹴り落とされるという壮絶なツッコミを
スカイゴルドランから受けて落ちていくハニワ(偽ブリミル)。
しかし列車は変形し人型となると空中で静止した。

「やはり立ち塞がるか、ブリミルの勇者達よ」

「そ、その姿は・・・」
142名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:29:21 ID:hll02tEJ
「アドベンジャー!!?」

変形前の列車も確かにアドベンジャーの走行形態と瓜二つであったが、
走行形態自体が蒸気機関車に似た姿でありあまり驚くに値しなかった。
しかし変形後のその姿は顔が( ゜。゜)であることと色が茶色であること以外はアドベンジャーそのものであった。

「アドベンジャーだけではないぞ!見るがいい!!」

ブリシノレの叫びに呼応するように現れる三体の巨大な影。
それはスカイゴルドラン、ゴッドシルバリオン、レオンカイザーに
やっぱり顔が( ゜。゜)で茶色であること以外は瓜二つな巨人であった。

「どうだ、黄金勇者ゴルドランを見て研究し作り上げたお前達の複製!
このブリシノレの力、見せくれるわ!!」

自分のオリジナルへと襲い掛かる複製達。
スカイゴルドランは空中でドッグファイトを、アドベンジャーは重火器による撃ち合いを、
ゴッドシルバリオンは地上で力比べを、レオンカイザーは長刀による切り合いとそれぞれ違う戦い方ながら結果は同じだった。

「ぐわ!」

「馬鹿な!」

「偽者如きに!」

「こうもやられるとは!」

オリジナル達の敗北である。

「どうだ。これらはオリジナルであるお前達より22%強く作ったのだ!!」

「22%強く、だと!?」

「22%の力の差!思い知るがいい!!」

勇者達は懸命に偽者達と戦っているがブリシノレのいうようにあらゆる面で22%上をいく
偽者相手では勝機がなく、徐々に追い詰められていく。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:31:18 ID:hll02tEJ
「パチモン作るだなんて品のない真似して!」

「オリジナリティがないわよ!!」

「まぁ二次創作な僕らもパチモンみたいなもんだk」

不穏当な発言をしたギーシュがルイズとキュルケから制裁という名の錬金(爆発)とファイアーボールを食らう。
いくら元ネタゴルドランでもいっていいメタと悪いメタがあるのだ、多分。

「ここは任せよ!お子達よ!!」

突如空から聞こえてきた声に上を見上げる三人。(ちなみにギーシュは焦げたままだ。丈夫な男である)
そこには鮫のような形をした物体が飛んでいた。

「あ、あれは・・・」

「「「ワルド!!?」」」

「違ーう!私はジャン・ジャアク・フランシス・ド・ワルドではなーい!!
正義の海賊ゼン・ゼンリョウ・フランシス・ド・イード船長だー!!」

「「ちなみに私達も一緒でーす!!」」

ワル・・・じゃなくてイードの叫びに続いて二人の女性が声を上げる。彼女達はフーケとイザベラ。
どこが気に入ったのかワルドにベタボレしてストーカーをしていたのだが色々あって今はワルドに似た面影を持つイードの元にいるのである。

「どうやら俺の偽者はいねーみたいだな!俺が加勢すりゃ勝てるぜ!!」

イード達三人が乗っている鮫型戦艦が人型へと変形する。
彼こそ8人の勇者達が邪悪なものへと渡った時の為に用意された9番目の勇者、海賊戦艦キャプテンシャークである。
地上に降りたキャプテンシャークは猛然と偽勇者たちへと切りかかる。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:33:26 ID:hll02tEJ
「ふっふっふ!甘いわ!!来い!キャプテソシャーク!!」

しかしその前にやはり顔が( ゜。゜)な偽キャプテンシャークが立ちはだかる。

「ば、馬鹿な!俺の偽者までいるだと!?」

「放映当時ならいざ知らず既にゴルドランが放映終了して約15年!
しかも大人の都合で最終話まで発売されなかったビデオもDVD化されたことで補完完了!
キャプテンシャークの複製とて当然用意しているわ!!
スタッフロールを暗記するまで繰り返して見た研究成果を見るがいい!!」

やはり22%強化されている偽者に押されるキャプテンシャーク。
そんな危機的状況でありながらイードは突如笑い出した。

「どうした、何がおかしい」

「先ほどお前は甘いと言ったな?だが甘いのはお前だ!
キャプテンシャークの力は研究していてもこの私の力までは理解していないようだな!」

「何を言う。ゼロの使い魔とて当然研究対象!
原作の小説は勿論、アニメ・漫画・ゲームまでチェックしている!
だが所詮はタイガー戦車が驚異的な戦力として扱われる程度の世界観!
お前の助力があったとてキャプテンシャークの22%には及ぶまい」

「確かに単純な戦力では私はキャプテンの1%にも及ばないかもしれない。
だがこれがクロスオーバーものであることを忘れたか!!」

ビシッ!とブリシノレを指差すイード。
見えてないはずなのだがその迫力にブリシノレは慄く。

「な、なに?」

「クロスオーバーの醍醐味の一つに、異なる能力を合わせた際の妄想というものがある。
ゼロ魔系でポピュラーなものをあげるとF○teのエ○ヤがガンダールヴになれば投影宝具の真名開放までいけるんじゃね?などだ。
異なる作品の力を合わせた時は戦力は足し算ではない、掛け算となるのだ!!
ゆくぞキャプテン!!」

「アイアイサー!!」

「これぞ我らの!」

「最終奥義!」

「「「「「「「「「「ユビキタス・ギガンティック・エクシード!」」」」」」」」」」
145名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:35:14 ID:hll02tEJ
「ちょ、ちょっと待てーーーーーーい!!
な、なんだそれはーー!!」

「ただの風の遍在だが?」

「遍在で増えるのは魔法の使い手だけであろう!」

「何を言う!使い手だけ増えるのなら杖も服もないマッパな人間が現れる筈。
つまり風の遍在は自分と自分が装備していると思っているものを増やすのだ。
キャプテンシャークは限定的だが私が操縦可能、つまり私が装備しているも同然!
よって私が遍在の魔法を使えば当然キャプテンも遍在する!!」

「意思を持つものを増やすのはいくらなんでも無理があるだろ!」

「意思があっても無機物だったら増やせる!(ソースはアヌ○ス神・妖○流舞)
これでキャプテンシャークの戦力は400%アップ!
22%アップ如きでこの差はひっくり返せまい!ゆくぞ!!」

「ハ、ハニーーーーーーーー!!?」

その後のキャプテンシャークズによる集団暴行を眺めならルイズ達はこう呟いたそうな。

「勇者が数を頼みに自分より強い奴を倒すって正直どうなのよ?」

「だいたいクロスオーバー二次創作だからってやっていいことと悪いことがあるよね。
だいたいネーミングがガイ○ーの丸パクリだし」

「っていうかソースは二次創作って最低SSの基本よね」




「これからは原作だけじゃなくて二次創作もチェックせねばならんのか。
スコップが何本あれば足りるだろうか」

結局キャプテンシャーク&イードの反則技で逆転されたブリシノレは地上でルイズ達の旅立ちを見ていた。
そんな彼の元へハニワが一人慌てた様子でやってきた。

「大変です!ブリシノレ様!!次の冒険者達がやってきました!!」

「なんだと!?よっしゃー!原作的に死亡フラグな気がするけど今度こそ騙すぞ皆の者!!」

「「「「「「「「「「おー!!!」」」」」」」」」」



「タバサ様!前方にふざけた惑星が!!」

タバサと呼ばれた少女は無表情のまま親指を立て首をかっきりながら言った。

「破壊して」
146名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:36:46 ID:hll02tEJ
鮫=キャプテンシャークから電波を受け一気に書き上げたので誤字脱字チェックは甘々です。
分からん人は絶対つまらないし、分かる人もつまらないかもしれないが勘弁してくれ。
元ネタゴルドランということでメタなギャグ満載です。
ちなみにトリステインでカタカナは使われていないというツッコミは却下の方向で。
続かないし前話も書かない、ここで終われ。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:36:47 ID:22t34StG
ぼうけんーがー はーじまーるー わくわくがはじーまるー まーっすぐーうんめいがー うごきだーしーている
148名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:39:44 ID:22t34StG
なんと支援してる間に終わっていたとは。
流石はお子たち。

乙でした。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 20:52:14 ID:A9ljb5Du
メタ過ぎて吹いた。
一発ネタとしては、ありだと思う。
しかし投下2作か、鮫の話題にした甲斐があった。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:03:43 ID:g3mFNWtF
二匹目の泥鰌を狙って今度は鯨の話題で行くか
151名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:10:22 ID:A9ljb5Du
鯨が絶望して捨てていったこの場所で、鯨を食べるなんてとんでもない。
鯨は人間の次に頭がいいんです。
鯨たちの声の遠い残響を1万年と2千年前から愛してる。

うん、鯨と聞いてぱっと頭に浮かんだのを繋げてみた。



そういえば白い鯨を狙う復讐鬼を描いた小説もあったな。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:13:36 ID:2CagON9x
最近印象に残っている鯨は海王ケトスかなー
前に投稿されてた鯨ネタだとG.Tとかあったね
153名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:31:03 ID:C/+YJ8S5
ツイッターやってると最近鯨に凄い殺意が沸く

って関係ねえや
154名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:35:21 ID:BS2phP/I
真っ先にリンダキューブのクジラを思い浮かべた俺はどうかしてる
155名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:37:58 ID:+PhSRdX3
>>150
では蠍の話をしよう…(凄いマイナーネタだけど解る人居るだろうか?)

鯨と言うとホェールキング→リノン脱走事件と連想ゲームが展開されて困る
木端ミジンコーとか
156名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:39:44 ID:wyIzrlCD
女神さまのシュレディンガーホエールが頭に浮かんだ俺は大丈夫だろうか?
157名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:48:28 ID:BLlky0W1
>>146
よくやった! タバサがシリアスポジションか。ということはレイザーがきゅいきゅいで、
最後にイザベラ(ワルドとは無関係だし)と和解して海賊の仲間になるんだな?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:50:13 ID:pX5lYglL
>>146
さすがゴルドランネタ
GJでした
159名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:55:40 ID:hll02tEJ
ちょっとでも肯定的発言をしてくれる人に驚き。
袋叩きも覚悟してたのに。
ついでにあとがきに付け忘れたのを今更になって追加。



ワルター→ワルドは名前的に鉄板としてシリアスのキャストに悩む。
つーかシャランラだってフーケだと難しいし・・・
そこで作者に電流走る!
シリアス→タバサでシャランラ→イザベラにして
兄弟の確執を従姉妹の確執にすればよくね?
ということが主人公三人組にギーシュを入れた理由です。
作者に電流が走らなければ普通にルイズ・キュルケ・タバサの三人娘になっていたことでしょう。
しかし・・・イザベラとフーケがベタボレ状態で将来的にタバサも同居状態になるワルドって
勝ち組ってレベルじゃないよね・・・・・・・爆発しろ
160名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 21:57:49 ID:5WDma6wI
ゴルソドラ乙
つか、ヲチスレ住人じゃないとスコップは判らんだろ
(最低SSを読み進める事の隠語。関連して、内容に心が折れることを「スコップが折れる」とも)
161名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 22:09:21 ID:z2mdFBOw
GJ!!良かったですよ!!元ねたのゴルドランの空気をよく再現できてると思います
勇者シリーズのファンとしては感激です
個人的に、次があったらぜひエクスカイザーで
162名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 22:12:52 ID:g3mFNWtF
命は宝だ!それがお前のような悪党の命であってもだ!
163名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 22:16:37 ID:z2mdFBOw
あ、応えてくれる人がいて嬉しい。エクスは一番好きな勇者なんです
ゼロ魔とのクロス、頭の中では結構イメージができてるんだけどうまく文章にできない
ほんと、職人さんたちは偉大だなあ
164名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 23:12:47 ID:A9ljb5Du
ならばこの命、渡してなるものか。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 23:21:43 ID:1fB9zWfI
鮫と言ったら鮫に飲み込まれたギャリックや
166名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 23:23:40 ID:g3mFNWtF
だからドリルは取れと言ったのだ……がふっ
167名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/13(火) 23:46:32 ID:V4Tgsn+I
「これが青春だー!」→自爆
168名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:01:20 ID:M2/1ABw1
お前らそんなに勇者シリーズが好きかwww


いや私も大好きなんですけどね。

>>163
口幅ったいことを言わせて貰うならとりあえずうまく文章にできずともとにかく書いて投下してみるべき。
誰か一人だけでも楽しんでくれたならいい、って心境でいけば結構気楽にいける。
とくに勇者シリーズはファン人口は多い筈なのにあの作品〜スレには全然投下されてないから
きっと答えてくれる人はいるよ、多分。
169名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:04:20 ID:+4cNssi1
銀の翼に望みを乗せて 灯せ平和の青信号!
170名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:06:45 ID:M2/1ABw1
黒い力を正義に変えて、灯せ悪への赤信号!
171名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:08:03 ID:ZGrPKr6T
ホールドアップ! ブレイヴポリスだ。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:24:46 ID:sa1vOULR

『モモタロウ』という平民向けの本を読んでいたジョセフ。
気が付けば隣で聞いていたイザベラとシェフィールドがぐっすり眠っていた。
これはいかに? と思い通りがかった兵士に同じことを試すと、突如倒れ付し眠り始める。
これはもしや、催眠術という奴か?

「げへっ。
 集団催眠にチャレンジしてみちゃお」

大広間に皆を集めるジョセフ、そこで彼は朗読を開始。
最初は怪しんでいた皆も続々と催眠状態に入る、そして皆眠ってしまう。

「はっはっは!では此処からだな。
 お前たちは俺が手を叩いたそのときから野犬となる!ハイッ!」

気をよくしたジョセフ、皆を催眠術にかけ野犬にしてしまう。
ところが野犬になった皆は、ジョセフめがけ威嚇してくる。

「あら……やっぱり野犬はまずかったか?」

ビクビクしながら後退するジョセフ、魔法が使えない彼は野犬となった人間から守る術は無い。
使い魔のシェフィールドも、いつの間にかイザベラとともに野犬になっていた。

「キャムウウウウウウ!!!」

襲い掛かる野犬人間、必死で逃げるジョセフ。

「ハーイ!俺が手を叩いたら、お前たちは人間に……おん!!」

出口に出たとたん、飛んでいたタバサと風竜にひかれるジョセフ。

「あら、姉さま見て!
 あのいけすかない奴、犬みたいに四つんばいで走っているわ!」

「……?
 なにかおかしい……はぶん!!」

犬に引かれる風竜とタバサ。
野犬化した兵士達は王宮を占拠。後にガリア北花壇警護騎士団によって鎮圧されたという。
173名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:31:10 ID:JVccYs2M
【IF系】もしゼロの使い魔の○○が××だったら25
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1278160827/

こっちの方にもお願いします・・・・
174名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:33:15 ID:uqVKKUNa
銀の翼に勇気を乗せて!まわせ正義の大車輪!
175174:2010/07/14(水) 00:34:16 ID:uqVKKUNa
・・・自分で犬車輪って空目しちゃったよ
176名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:43:03 ID:JVccYs2M
>>175
絶・天狼抜刀牙?
177名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 00:47:03 ID:wFSbbkfF
トライダグオン、ファイアーキュルケ!
178名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 01:15:19 ID:+4cNssi1
>>174
愛の翼じゃないのかよw
ていうか犬車輪ってなんだwww


きみんちにも宇宙人いる?
179名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 09:07:52 ID:AObKAm1i
あ〜、幼少ルイズの小船にエクスカイザーが憑依して友達になるってのは考えてみたんだが、
それが召喚によるものかハルケギニアへ任務で降下したからなのかで詰まってるわ。

前者なら進級の際に空中に浮いてるボートを学院へ持ち込んで馬鹿にされるルイズと、
彼女を励ますエクスカイザーが描ける。
後者なら丸くなったルイズと才人の一味違った関係と、クロスによって変更されるだろう
タルブやロマリアの遺産(他のカイザーズが憑依するとか勇者シリーズの有人メカだとか)
の活躍が描けるだろう。

解決策が見つかったらどっちか短編にでもまとめてみるわ。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 10:28:07 ID:WAg9IyLb
勇者シリーズ・・・・・・・・ワルドの遍在のひとりがタバサに好意を持ってしまって
本体と融合出来なくなるんですね


分かるかな?わっかんねーだろーなー
181名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 10:37:57 ID:BhocGIvT
緑色してる奴だっけ?
182名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 10:42:26 ID:WAg9IyLb
分かる人いましたか  ごめんなさい、ここに来る層ナメてました
183名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 12:35:43 ID:TUgvvea8
ドマイナーでも、何かしら知ってるやついるからな。
勇者魚屋とか普通に知ってるし。

あとセブンチェンジャーの最期は忘れられない。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:05:02 ID:0QFZlIu+
と言うか2chだったらほぼ確実にその程度の話しなら知ってる人が盛りだくさんいるわ
185名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:21:02 ID:EryJCBvY
わかんねぇ…

種のアストレイから「8」召喚とかどうだろ?
186名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:23:00 ID:56mwbnvW
泡沫マンガ雑誌の単行本にもならない読み切りとかなら誰も知らなかったりもしよう
187名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:46:46 ID:gGNWinJL
流星人間ゾーンからゾーンファミリーを召喚、なぜかフーケやワルドと子供のお遊戯で勝負することに
188名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:52:42 ID:2mXuBFw3
>>185
ロウならまだしも、基本的に電子機器の無い世界にAIだけ持ち込んでもなぁ
聖地にMSが!? ⇒ バッテリーが……

>勇者魚屋
「 暴 動 だ ー ! ! 」
189名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 14:56:32 ID:EryJCBvY
>>188
AIとか皮肉屋が多いから呼ぶと面白そうなんだけどなぁ…
太陽電池連結済みならまだ大丈夫か?
これ考えるとADA召喚は凄い良い方法だった
190名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 15:41:42 ID:WAg9IyLb
>>186
泡沫漫画雑誌の読みきりなのにみんな知ってる江川ライダー
191名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 15:50:18 ID:56mwbnvW
悪名じゃないかw

「宇宙の幸」とか「摩訶娘娘」とか誰も知るまい
192名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 17:10:49 ID:HECGbwNj
魚屋勇者関連だったら、ダイ・バザールとか召喚しやすそうな感じだよなぁ
山の上で二足歩行に進化テスタロッサに振り落とされたあたりとかで、
従う従わないは別として

193名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 17:21:38 ID:gGNWinJL
このスレの年齢層の厚さとマニアックな度合いでは他の追随を許さんな…
マジで50代や60代がいるんじゃないの?
194名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 17:32:21 ID:WAg9IyLb
>>191
「宇宙の幸」とやらは存じませんがこやま基夫はあろひろしと並んで常識っしょ?
195名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 17:37:36 ID:D6t0zT1P
>>192
勇者魚屋懐かしすぎる
196名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 17:46:16 ID:ICBLHrb9
勇者魚屋ならハーフエルフを嫁にしているし、それを知ればテファがすくわれそうな気がするんですが。
197ぜろろ:2010/07/14(水) 17:52:39 ID:D6t0zT1P
そして規制解除を確認した後投下予約です。
お久しぶりです。まだ生きてます。
初めまして。こんな人がかつて居ました。
18:00より開始したく御座候
198名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:00:08 ID:HECGbwNj
ふと思った……ギャグ王のうめぼしの謎から作者モデルアイツを召喚
アンリエッタのお使いで行ったラ・ロシェールで、宿の手配に失敗
女性陣はなんとか、それなりの宿に止まれたがワルド・ギーシュ・アイツはボロ宿へ
そして、部屋に通され、ちょっとデカイベット1つある部屋に通される
内装のひどさに呆然とする、三人をよそに案内してきた人はベットに人数の分の枕を放り投げいい笑顔で伝える
「ノープロブレム」
それに対して、三つの枕の並ぶ一つのベッドを指差し
ワルド・ギーシュ・アイツ「ごっつ、プロブレムじゃん!!」
199ぜろろ 第二十一夜 1/11:2010/07/14(水) 18:00:46 ID:D6t0zT1P
でははじめます

以下本文

あてがわれた部屋の中で百鬼丸は、剣を抱え込んだまま、部屋の中央にどっかりと胡坐をかき、目を瞑ったまま動かない。
備えられた椅子もベッドも、それが何のために存在するかを知りながらも、彼の国にはどちらも無かったためか、こうしていたほうが落ち着くらしい。

陽は既に高く上り、真上から彼の居る魔法学院を照らしていた。



第二十一夜 初陣



おそらく決まった刻限に正確に持ってこられたのであろう、食事の時間以外は、こうして一人、精巧に作られた置物のように、まんじりともせず目を瞑っていた。
もっとも体の殆どが作り物である為、もし誰かが動かない彼を『精巧に作られた人形』と評しても、無理は無い。そう自嘲した。

こうしている事に特に意味はない。他にやることがないだけである。



今日は王宮から勅使が来るため、日が暮れるまでは部屋から出ないで欲しい。

供に朝食をとろうと訪れたコルベールに、そう告げられたため、こうして部屋に篭っているのだ。
百鬼丸としては、魔神を探す旅の算段でも早々につけたい所ではあるが、昨日騒ぎを起こしたばかりである。文句は言えない。それどころか、もし何かしら因縁でもつけられようものなら、容易く買い叩く己の性分はよく知っている。
身分の低い者を人と扱わぬ存在は百鬼丸には許せないのだ。
王宮からの使いともなるとさぞかし気位の高い貴族が来るのであろう。コルベールの判断は正しい、と百鬼丸自身も内心思った。
不服は無い。

それに部屋から出るのも多少億劫ではあった。
理由は二つ。

昨日のルイズとの不和。彼女との距離を測りかねている自分がいることを、百鬼丸は自覚している。
身分に分け隔てなく明るく振舞い、暴力からシエスタを守ろうとした、心優しい少女であるルイズ。
魔法を使えぬ百鬼丸を、『平民』と蔑んだような言葉を放ったいけ好かない貴族であるルイズ。
どちらが本当の彼女なのであろうか。
彼女の言葉に怒りはしているものの、彼女を嫌いきる事ができない。再び会ったのならどのように接してしまうか、態度を決めかねていた。

そしてキュルケとかいう赤毛の女。
200ぜろろ 第二十一夜 2/11:2010/07/14(水) 18:02:27 ID:D6t0zT1P
  
あれは百鬼丸にとっては、理解ができなかった。彼女に対する感情を百鬼丸はうまく表現できない。が、決して良い感情でないのは確かだ。
恐ろしい。彼は認めないであろうが、理解できない現象を己に引き起こした少女を百鬼丸は恐れた。もっとも、恐ろしい、という言葉で表現することを彼は決して認めないであろうが。

ともかく、コルベールの頼みを百鬼丸は了承した。

しかし部屋からでずにできる事は、と考えたとき何も無かった。
体に仕込まれた武器の手入れはつい先日、丁度召還される前日に行っているし、使ってもいない。念を入れて機能するかどうか、よもや部屋の中で確認するわけにもいかない。
抱え込んでいる刀にしても傷はおろか、くもりひとつ無い。
召還直後の魔神との戦いで酷使はしたものの、これはこの刀が些か特殊なだけである。

剣の修練をしようにも、ここは来賓用の部屋と聞いた。
すでに高価なマジックアイテムを一つ叩き切っている百鬼丸である。
そんな負い目もあり、気が引けた。

ともかくそういった消極的な選択で、こうして胡坐をかいて考え事をしている訳である。

そして昼食。

朝はコルベールと供に食事を運んできたシエスタであったが、今回は一人である。どこか落ち着きが無い。朝食時、ちらちらと百鬼丸を窺う視線が気になり、何度か顔を向けたが、その度に何故か視線をそらされたのが印象に残っていた。

食事を始める前に尋ねよう、そう声をかけようとした百鬼丸だったが、先に口を開いたのはシエスタのほうであった。俯いていたシエスタに百鬼丸が顔を向けたのとほぼ同時である。
唐突に顔を上げ、何か決意をしたといわんばかりに

「あ、あの、昨日は、助けていただいてありがとうございます!!」
「あ、あぁ、」

意表を突かれたとともに、その勢いにたじろいだ。

「あ、あ、朝に、改めてちゃんとお伝えしようと思っていたのですが、その」

昨晩、厨房へ招待された折に一度礼は言われたのだが、何分祭り上げられたかのような空気の中、さまざまな人間に声を掛けられ、ほとんどまともに会話をしていない。改めて、というのはそういうことであろう。
また、朝は朝でコルベールに気を使っていたらしい。割り込むわけにはいかないと考えたのだ。何にせよ律儀なことである。

「いや、構わない。それに昨日も言ったが礼には及ばない。感謝するなら……ルイズにするんだな」
201名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:03:54 ID:56mwbnvW
ひゃっほおおおおおう!
支援するぜー!
202ぜろろ 第二十一夜 3/11:2010/07/14(水) 18:04:57 ID:D6t0zT1P
    
まだルイズという人間をどう捉えるべきか答えは出ていない。

「そんなっ、もちろんヴァリエール様にもお礼は申し上げますがっ、ミスタ・ヒャッキマルにも!!」
「ああ、分かったからそんなに硬くならないでくれ。大した事じゃない」

トリステインにおいて、平民が貴族に立ち向かうという事は極めて危険な行為である。
しかし百鬼丸は本当に大した事ではない、と考えていた。いけ好かない偉そうな子供を少し捻っただけである。
意趣返しに多数の貴族に囲まれ私刑を受ける、という発想はあまり無かった。
というより今まで、彼が一対多数で報復を受けることは何度もあったのだが、その度に叩き伏せてきた己の腕には、それなりに自身がある。
つまり相手がメイジである、という発想が完全に無かったのだ。当然これまで以上の危険を含んでいるのだが、まだそれに気づいていなかった。どこか抜けている。
だが、本当に大した事で無い様子の百鬼丸にシエスタは感謝と共に尊敬の念を向ける。

「ミスタ・ヒャッキマル……」

ほんのりと頬が赤く染まる。

「それと、そのミスタ、っていうのはやめてくれないか?どうにもなれない」
「でも、ミスタ・ヒャッキマルは学院の来賓ですし……」
「おれは……ここじゃ平民だ。呼び捨てで構わない」
「でも……」
「頼むよ。変な感じなんだよ」

恩人にここまで言われては仕方が無い。

「では、ヒャッキマルさん、でいいですか?」

満足したのか微笑んで頷き、さて、と気を取り直して食事に取り掛かる百鬼丸に、シエスタは甲斐甲斐しく給仕しながら胸の中で何度も何度もその名をささやき続けた。


食事が終わり、シエスタが名残惜しそうに退室する。その姿はどこか、朝とは違う意味で印象的だった。

さて、と再び百鬼丸は同じように座り込む。
それまでよりは幾分気分が良かった。







夕食が運ばれてきたようだ。部屋に近づく気配がある。陽はどうやら完全に落ちたようだ。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:05:44 ID:HECGbwNj
支援します
204ぜろろ 第二十一夜 4/11:2010/07/14(水) 18:06:00 ID:D6t0zT1P
 
剣を抱え、身じろぎひとつせず座り込み続ける百鬼丸の姿は、誰に犯されることも無い、厳かなものとも見える。
が、部屋に置かれた調度品と照らし合わせると、それはそれで実に奇妙で異質なものだった。

立ち上がる。

部屋を叩く音に答えると、食事を載せたワゴンが運び込まれる。
朝と同様にコルベールもいる。夕食も付き合ってくれるらしい。
が、ふと違和感を感じ、そのまま口に出す。

「シエスタじゃないのか?」
「ええ、それが……」
「何かあったのか?」
「今日王宮から使いが来ると言うのは覚えてらっしゃいますか?」


もちろん忘れるはずが無い。そのおかげで一日中部屋に篭っていたのだから。
会話に取り残された使用人の少女は口を挟まない。僅かにではあるが、居心地が悪そうだ。

「彼女ですが、その勅使から気に入られましたので、本日をもってここでのお勤めは終わりなのですよ。急な話ではありますが、ええ、たいそう気に入られたようで。あぁ、当然お給金の方もこちらよりも頂けるそうで、シエスタさんも喜んでいましたぞ?」

コルベールが捲し立てる。

「どの国でも変わらないもんなんだな」

ふん、と鼻白む。物のように買われただけだろう、と言外ににおわす。

「いえいえ、相手は伯爵ですし、勅使に選ばれるほどの優秀な方でもあります。そう悪い話でも……」

その言葉を聞けば尚更である。
言葉をさえぎり、百鬼丸が立ち上がった。
刀を左手に携えたままだ。その気配にコルベールは不穏なものを感じざるを得ない。

「どちらにっ!?」
「シエスタに、それとオスマンの爺さんだ」

部屋を早足で立ち去る百鬼丸とそれを追いかけるコルベール。
使用人は訳が分からず置き去りにさている。

「しかしですね、彼女は納得して……」
「そうせざるを得ないだけだろう?」
「それは……」
「どうなんだ?」
205ぜろろ 第二十一夜 5/11:2010/07/14(水) 18:06:40 ID:D6t0zT1P
「しかし……」

盲人と思えぬ程に力強いその歩みは止まらない。
コルベールが嘘をついていると分かった。いや、分かっていた。
シエスタは恐らく喜んでなどいない。
だが、本人に直接確かめたい。

「シエスタが納得してるならおれを止める理由はないだろう?」
「それは、そうですが」
「ならいいじゃないか」
「ええ、いえ、そうなんですが」
「ならなんだよ?」
「実は……彼女は既にモット伯と共に、もうここにはおりません」

百鬼丸の足が止まった。
慌ててコルベールも立ち止まる。
どうやら、モット、と言う名前の貴族らしい。だが相手はどうでもいい。
再び歩み始める。

「ですから彼女は……」
「オスマンの爺さんのとこだ」
「どうしようというのですか?」
「売ったんだろ?」
「いえ、決して!!モット伯から何かしらを受け取ったというわけではっ!!」
「金を貰ってないだけじゃないか」

それ見たことかと、言葉に詰まったコルベールを無視して塔の中央へ向かう。
しばし互いに無言である。
少し冷静になったコルベールが再び声を掛けた。

「オールド・オスマンに掛け合ってどうしようというのですか?」
「止められないのか聞くだけだ」
「なぜです?」
「気に入らない」
「なにがです?」
「物じゃないんだ。気に入らない」

それはコルベールも同じ考えである。平民とはいえ彼女は人間だ。

「それは分かりますが」
「じゃあ止めないでくれ」

とは言え勅使の気を、ひいては王宮からの印象を悪くするわけにはいかない、とオスマンは考えたのであろうか。平民を物のようにやり取りする今回の件はコルベールにとっても不服だが、ハルケギニアにおいては珍しいことではない。
そして彼は魔法学院の一教師にすぎない。オスマンがそう決めたのならそれに従うべき立場にある。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:07:21 ID:WAg9IyLb
お待ち申しておりました

書き溜めてた自作が消えてしまった衝撃をもフッ飛ばす喜び


支援
207ぜろろ 第二十一夜 6/11:2010/07/14(水) 18:08:28 ID:D6t0zT1P
それにシエスタの立場もある。彼女には養うべき家族が居ることをコルベールは知っていた。
一人の人間として考えたとき百鬼丸の行動は、コルベールにとっては好ましい行為だが、世間的に見れば単なる横紙破りに過ぎない。
モット伯と、何の意図があるのかオスマンとのやり取りも、シエスタにとっては横暴ではあるが、ハルケギニアにおいては法に触れるどころか、ありふれた事例でしかないのだ。
一度冷静に考えさせるべき、と判断した。

「彼女の、シエスタさんの家族はどうなります?」
「なに?」

やっと百鬼丸が足を止め、部屋を出てから初めてコルベールと目を合わせた。

「彼女は養うべき家族がおります。彼女が貴族の、それも伯爵から不興を買えば、彼女は、彼女の家族はどうなりますか」

百鬼丸もそこまでは考えていなかった。
困っている人間が居れば助けろ、とは亡父、寿海の言葉である。
それは寿海の道徳教育であると共に、魔神を探す足がかりでもあるのだ。
人の悲しみ、憎しみを糧とする魔神たち。人々の理不尽な悲しみのあるところに魔神は居る。
故に寿海の言葉は大きく百鬼丸に根付いている。百鬼丸にとっては美徳、といっても良い。
そしてこれまでも同じようなことを何度もしてきた。
だが、今回ばかりは相手が大きい、ということに今更ながら百鬼丸も気づく。
そこらのごろつきどもとの諍いとは訳が違うのだ。
それほどに地位と権力というものは、それを持たずに立ち向かうものにとっては大きな障害となることを百鬼丸も理解した。

しばし睨み合う。

先に目を逸らしたのは百鬼丸のほうだった。
いや、目を逸らしたのではない。再び歩み始めたのだ。先程と同様に迷いは無い。

「ヒャッキマルさん!!」

再び慌てて後を追う。

「ですから、どうしようというのですか!?」
「なおさらオスマンの爺さんに話をつけたいだけだ」

手荒な真似はしないだろう。いや、オスマンの返答によってはそれすら辞さないかもしれない。
学院の教師としても、百鬼丸の知人としても、シエスタの知人としても、案外短気なこの青年の行動を、コルベールは止められずとも放って置くわけには行かなかった。

嘆息して、わかりました、と後ろについて行くしか、今はなかった。

中央の塔。最上部分。
階段を一つ上る度、学院長室に近づいていく毎に、ふと百鬼丸は異様な気配を感じ取りはじめる。
208ぜろろ 第二十一夜 7/11:2010/07/14(水) 18:09:18 ID:D6t0zT1P
その表情は次第に険しくなっていくのだが、後ろを追うコルベールには、百鬼丸の表情は読み取れない。ただ、刺々しくなる百鬼丸の気配を感じた。
先程までの、シエスタの扱いに対したときの怒りとは違う気がした。ちりちりと、首筋の後ろから感じるような危険な空気。まるで、これは。

ノックもなしに、大きな音を立て、荒々しく扉を開ける百鬼丸に、コルベールの思考は遮られた。

「ちょっと、ヒャッキマルさん!?」
「オスマンの爺さん!!」
「おお、ヒャッキマル君? 何じゃ、ノックぐらいするもんじゃ」
「ヒャッキマル!?」

学院長質に居たのはオスマンと、何故かルイズであった。
しかし百鬼丸はルイズもコルベールも無視してオスマンにだけ話しかける。
ルイズとどう接すればよいか、という疑問は今の百鬼丸の頭の中には無かった。
まるでその部屋にオスマンと自分しか居ないかのように振舞う百鬼丸。その様子は、横暴を通り越して、どこか殺気立っている。

「モット伯ってのはどこに居る!?」
「何じゃ君もその話か……」

君も、と言うのはルイズがいるからだ。

「いいから答えろ!!」
「いいかね、ヒャッキマル君。シエスタ君は、彼女自ら……」
「違う!! モット伯ってのはどこにいるかって言ってるんだ!!」

ふう、とオスマンはため息を吐くと、そばに立てかけてあった、焼け焦げたような赤黒い彼の身の丈ほどある杖を一振りする。
すると部屋の入り口付近に置かれた、口の大きな花瓶がひとりでに浮きあがり、百鬼丸の後方目掛けて勢いよく飛んできた。

鋭く甲高い音が部屋中に響いた。
目にも留まらぬ速さで百鬼丸が切り捨てたのだ。

だが、それと同時にばしゃりと水の音。そして中空で綺麗に二つに割れた花瓶が、百鬼丸に向かって来た勢いを無くし、ぴたりと静止したと思うと、元の位置に、元の形にゆっくりと戻り、再び中央から縦に二つに別れ、無様に机の上に転がった。

「お見事。じゃがわしの勝ちじゃな?」
「……なんのつもりだ」
「少しは頭が冷えたかね?」

前髪から垂れる水滴を鬱陶しそうに掻きあげる百鬼丸に向かって、オスマンがからかうように笑いかける。
209ぜろろ 第二十一夜 7/11:2010/07/14(水) 18:10:05 ID:D6t0zT1P
  
「……少しは」
「そうかそうか」

そう言うと豪快に笑い出した。
コルベールには冷や汗しか流れない。だが、さすがオールド・オスマンといわざるを得ない。百鬼丸を軽くあしらう姿はやはり、年の功というと無礼であるが、三百歳とも噂される高名なメイジである。その豪胆さに呆れる事もしばしばだが、今は感動していた。
顔を逸らしてルイズの様子を見るが一連の流れに目を白黒させている。無理も無い。

「それで? 違う、というのはどういうことじゃ?」

未だに頭を、支給されたシャツの袖で拭う百鬼丸に、オスマンは、今度は真剣な声色でたずねた。百鬼丸は先程までの剣幕は何処へやら、とぼけた様に返す。

「ん?ああ、この部屋に入ったときに妖気を感じたんだ」
「ヨウキ?」

口を挟んだのはコルベールである。

「ああ、妖気だ。妖怪の気配だよ。魔神だと思う。残り香、というか」

妖怪。その言葉を思い出すコルベール。初めて百鬼丸と話したときに出た言葉である。
人に危害を加える幽霊、精霊の類、確かそう聞かされた。その残り香がするとは穏やかでない。
最も百鬼丸に嗅覚は無いため残り香、というのは例えでしかないのだが、コルベールも部屋に居るほかの二人もそんなことは知る由も無い。

「魔神?」

今度はルイズが。

「ヒャッキマルさん」
「構わんよ、コルベール君。どうせ何時か言うつもりでおった」
「しかし……」
「もう遅いじゃろ?それにどうやら無関係で済ませるつもりも無いじゃろ」

もちろん、と言わんばかりにルイズは強く頷く。
ルイズも、シエスタの事情を知り、掛け合うためにここに来たのである。

「それで?ヒャッキマル君?」
「部屋に近づくにつれて妖気の残り香みたいなもんが強くなってきてな。部屋に入って確信した。ここには妖怪が居たんだよ」

それが先程の百鬼丸の剣幕の正体であったことをコルベールは理解した。そう、部屋に入る直前に百鬼丸から流れ出た気配、あれは殺気に違いなかったのだ。

「モット伯ってのはどこか様子が変じゃなかったか?」
210ぜろろ 第二十一夜 9/11:2010/07/14(水) 18:10:50 ID:D6t0zT1P
「うむ、実はの、わしも少し引っかかっておったのじゃよ。虚ろというか、生気が無いというか……」
「モット伯ってやつに会いたい」
「そうじゃな、うむ、馬を貸そう」

そう言うと、コルベールのほうを向く。
どうやら状況は急を要するのだ。

「コルベール君。確証はないが、おそらく初仕事じゃ」

魔神がらみの可能性があるとするならコルベールには最早止める理由は無い。
それどころか、自分も行かねばならない。それがオールド・オスマン、そして百鬼丸との約束だ。そして人外の暴挙からシエスタを守る事に躊躇いなど無い。
大仰に頷く。

「あ、あたしも行きます!!」
「ミス・ヴァリエール?」
「シエスタが……危ないんでしょう!?」

もとよりシエスタのためにこの場に訪れたルイズである。魔神、妖怪という言葉を理解はできない。だが、自分が考えていた以上にシエスタが今危険に晒されている、という状況はおぼろげながら理解した。捨て置くなど出来はしない。

「いいんじゃないかね?」
「しかし」
「但し、じゃ」

長い眉に隠され、皺に覆われた顔から真剣な眼差しをオスマンはルイズに向けた。

「勝手な行動はしてはならなん。コルベール君の指示に必ず従うこと。無論、逃げろと言われたら逃げる。約束できるかね?」

コルベールは、言い出したら聞かないルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールという生徒の性格を痛いほど理解している。
オスマンも恐らく、自分ほどではないがこの生徒の性分を聞き及び、ある程度の想像はしているのだろう。
学院長からこう釘を刺されてでもしないと、緊急時どういった行動に出るのか、想像に難くない。

「……わかりました」

逃げろと言われたら、逃げろ。

この言葉こそが最も重要であることをコルベールは理解し、オスマンもそれを汲み取ったのであろう。
両者の最大の妥協点である。

百鬼丸は口を挟まない。
211ぜろろ 第二十一夜 おわり:2010/07/14(水) 18:11:50 ID:D6t0zT1P
  
平民の癖に、そう罵られたことはつい先日の事だ。だが、今のところルイズの言動は、百鬼丸が快く思ったルイズの部分である。しかし自分から声を掛けるようなことはしなかった。
頭に血が上っていた先程ならば、食って掛かったかもしれなかったが、今しばらく様子を見る。
どう接するべきなのか、まだ分からないのだ。


では、と一礼して部屋を出るコルベール。
あとに続こうとした百鬼丸とルイズをオスマンは呼び止め問うた。

「二人とも。シエスタ君を助けようとしたその気概は大いに認める」

嘘ではない。それ程知った相手でないシエスタを助けようと、貴族に立ち向かう百鬼丸。
彼女が平民であるにも関わらず、彼女を思って学院長相手に談判にまで来たルイズ。
どちらもオスマンにとっては好ましいものに思える。
しかし、と言葉を続けた。

「仮にじゃ、仮に、モット伯が何者にも操られていない、正常であったとしたら、シエスタ君はどうする?彼女は自分からモット伯に仕えるとわしに言ってきた。
無論、脅されてないとは言い切れんがの。無理に彼女を連れて帰ったのならば、彼女は、彼女の家族はどうするつもりじゃ?」







馬で駆けて行く三人を学院長室の窓から眺めながらオスマンは語る

「若いとは、それだけで素晴らしい。無鉄砲でありながらも妥協を許さず、同時にそれによって生まれる苦難もある。
しかしそれに立ち向かい続ける。何時かはそれだけでは乗り越えられない大きな壁があることに気付いていない」
「ええ、そうですわね。オールド・オスマン」
「いや、気付いていながらも、気付かない振りをしているかもしれん。わしは忘れてしもうた。しかしそれでも、若い、ということはそれだけで、素晴らしいものじゃ」
「オールド・オスマン?」

オスマンの使い魔、二十日鼠のモートソグニルが、ちゅうちゅうと、同意するかのように哀愁を込めて、鳴く。

此れから降りかかるであろう災厄に立ち向かうもの達に、幸あらんことを、始祖ヴリミルの加護のあらん事をオスマンは、真摯に願う。

「そんな素晴らしさに、わしが感化され、若さを求めたとしても、それは仕方のない、しかしまたそれも同じく、素晴らしい事だと思わんか?ミス・ロングビル」
「いえ、全く」

モートソグニルの尻尾を掴み、逆さに吊るしながら背後に立つロングビルの顔を伺う事もなく、オスマンは窓の外を眺めるのであった。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:15:07 ID:R4b7uIo+
うおおおう!!ぜろろキテタ━━(゚∀゚)━━!!!!!
乙です!
213名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 18:16:14 ID:WAg9IyLb
やっべぇ、かっきぃ

あくまで魔神を追う百鬼丸
若さと情熱と正義感に任せて突っ走るルイズ
流血になれた身で若者の背を守るコルベール
情熱の炎を由としながらも冷水を浴びせ、オチもきっちり忘れないオスマン

とっても手塚臭がしててステキです
214名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 21:50:31 ID:xsoDvUbY
ウルトラの続きはまだかな
215名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 22:17:45 ID:AyC5qPfE
>>211
乙です
超応援してます
216名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 22:48:44 ID:raskt7Lb
SF作家 J.P.ホーガン氏の追悼SSなんてのを考えてたんだけど

・召喚されるのは、ハント氏かダンチェッカー先生。ハルケギニアの謎を解きまくる!
・ルイズの「爆発」の原理は、『創世記機械』のアレ(名前忘れた)と同じ。
・片方の月には、赤い宇宙服を着た 6000年前の死体が!
・ザンベンドルフだった 始祖ブリミル。
・野良ゴーレム、実はタロイド。
・『はばかられる使い魔』は、過去を書き換える『未来からのホットライン』

まぁ まとめるのは無理だし、ネタが判る人 どれだけ居るんだろうか?
217名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/14(水) 23:52:08 ID:m82DFWjC
>>216
「内なる宇宙」でやれば魔法も何も全て解決かもしれんな
218あとがき代理:2010/07/15(木) 14:06:10 ID:buDlQ/im
>>211
すいません。番号間違い、分母間違い。
とどめのあとがきさるさん。なんかもうぐでぐでです。
支援してくれた方々、感謝いたします。

あとここで良かったんでしたっけ?

御無礼……

↑あとがきはここまで
ぜろろさんへ、あの後寝落ちしてました。遅れてすいません。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 18:42:02 ID:m6pCg++H
勇者ものだと・・・Zマスター決戦後のボロボロJアーク組とか
レプリ空間においての決戦後のボロボロGGG召喚とか

チート過ぎてボロボロでも問題ないよね 特にJアークは「光さえあれば直るよ」と凄いトンデモマシンだし

つい「太陽が3つもあるのは知ってたが月が2つもあるのは驚いたなあ」と言う台詞な電波が走ったんで
220名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 19:01:01 ID:VF3dNfP0
太陽がある限り俺は蘇る!太陽の王子(ry
221名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 19:26:37 ID:Mt5a8kxN
>>216
ホーガン氏という名前を見て、真っ先に思い浮かんだのがハルク・ホーガンだったw
222名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 19:29:41 ID:JcET9CIO
>>216
なんだ。クリアするだけで賞がもらえるあの世界からみなみとかしばとかを
召喚かと思ったw
# 『ほしをみるひと』違いです
223名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 19:31:47 ID:5hXa1yR5
赤いきつねが食えるかー
224名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 20:26:26 ID:tNVQV16o
スカーレッドフォックス
エメラルドラクーン
225名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 20:28:44 ID:/pOg1vo8
>>217
『内なる宇宙』だけはなかったことにした方が賢明かと……
226名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 20:29:16 ID:m6pCg++H
ネクストやめて最強の個人兵装やめて 遂にゼロ魔がコジマに飲み込まれるからー

でも「コジマの使い魔略してコジ魔」・・・・いいね
227名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 20:35:40 ID:NyZI7Ixb
ラスボスこねええぇぇ(*´Д`)ぇぇええ
228名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 20:36:35 ID:JHvOK6L+
聖帝様の投下と同時に来るかのう
229名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 21:04:27 ID:IeXYSRSm
俺は今週末の連休中に、聖帝様とラスボスが降臨すると予測する!!


…とか言いつつ、いきなりどっちかが投下しだしたりしてw
230名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 21:18:42 ID:AhOTnMqn
以前に、エルフはAMIDAの突然変異で、メイジはコジマの影響で進化した原住民。
聖地にはアンサラーが眠っていると妄想した事がある。
ドウヤラ、オレハ…ナニカサレタヨウダ
231名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 21:24:23 ID:s8SML8o4
>>230
なぜか「聖地にはヤンマーニが眠っている」と空目してしまった。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 21:44:21 ID:JHvOK6L+
聖地が滅んだレイヤードとかか?
はばかれる者は首輪付きなのかもしれんな
233名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 21:46:28 ID:IWYjaxS5
>>230

>以前に、エルフはAMIDAの突然変異で、メイジはコジマの影響で進化した原住民。



>以前に、エルフはAMIDAの突然変異で、メイジはコジマメの影響で進化した原住民。
に見えたアッシはなかなかやばいでやんす。
234名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 22:02:36 ID:fWYdYxxj
>>227
フフフ…その通り!私がこのゲームのラスボスです!
さあ!カモン!カモン!
235名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 22:38:57 ID:ILTGq+YV
>>233
AMIDAがAMIBAに見えた俺よりはまだマシだ
236名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 22:40:07 ID:Mzxc/RmB
>>233
つまり、メイジはどんなに高性能だろうといつのまにか三下ロールプレイを始めてしまうということか
237名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 00:15:27 ID:Az59MJS0
>>235
安心しろ俺もだ
238名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 00:48:46 ID:rQG9faEY
うわらば!!
239名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 07:03:42 ID:YT/9niRK
>>231
お前様の書き込みが、「聖地にヤマンが眠ってる」に見えて
イロイロと評価がアレだったSFCエメラルドドラゴンを思い出した

アトルシャン召喚したらルイズある意味当たり引いた状態?
イシュバーンと違って呪いもないから龍の状態も維持しちゃうからダメか……
240名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 08:20:44 ID:h26l45dh
ヤマンほど機種ごとの評価が激しいキャラも珍しいですよね。酷いのになると子供が遊びで放った矢が心臓を貫きますし。
アトルシャン召喚なら小説版のほうが出会いと別れを知っている分、いい味出してくれそうですが。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 09:28:08 ID:BZF+NlRh
ラダム樹召喚…ってもうあったか
んじゃデトネイターオーガン召喚
242名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 11:05:11 ID:+sF2ioOW
最近「○○が△△に見えた」って書き込みが多いよね
243名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 11:08:50 ID:01JhuiMe
もう年なんだろう
244名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 13:08:08 ID:B8VYLkk+
>>241
つ ZERONATORオーガン
245名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 16:26:41 ID:CQS/TiQF
ここはノロイさま召喚

七万が十万でもその威厳で圧倒だ!

・・・・・・ってよく考えたらノロイさまってただのイタチなんだよな
トラウマっててすっかり忘れてた
246名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 16:29:35 ID:9i0odrAq
ガンバを召喚してモートソグニルといっしょにアルビオンまで大冒険だ
247ぜろろ:2010/07/16(金) 17:24:58 ID:P9RBTvqh
こんにちは
今度は全然久しぶりではないぜろろです。
投下予約17:30ごろから開始したく御座候。
248ぜろろ 第二十二夜 1/6:2010/07/16(金) 17:29:22 ID:P9RBTvqh
それでは開始します。
以下本文

戦闘が予想されたので、コルベールは準備の時間が必要であろうと考えた。ルイズは何か取りに、自室に一度戻った。百鬼丸は私物が無いため自室に帰る理由が無い。

コルベールと共に彼の研究室とも呼べる、学院内の広場の隅に建った小屋を訪れた。何か、自分にも役に立つ武器があるかもしれない。
そこへ慌てた様子でやってきた使用人に服を渡された。彼が召還時身につけていた、シエスタに渡した着物だ。オスマンの配慮である。

恐らくシエスタによるものであろう修繕も既に終わっていた。ぼろぼろに破れた部分は同じ色の当て布がされ、本来その当て布にはない、彼の着物独特の錨の柄は、丁寧に糸で刺繍されていた。シエスタには全く頭の下がる思いである。
着慣れた服の方が戦いやすいので丁度良かったと着替える。着心地も申し分ない。

「ほう、こりゃあ」

魔神と戦う、と決意してから間もないが、僅かな時間で出来る限り用意した武器、あるいは使えるものは何かないかと小屋を散らかしながら漁るコルベール。
独り言のつもりだったのだが、応えてくれた。

「やはりそちらの方がしっくり来るようですね」
「着慣れてるからな。動きやすいよ」

実際、仕込み武器を使う場面になれば、先程まで着ていた、シャツとズボンは邪魔でしかないのだ。
ふとコルベールが何に気付いたように百鬼丸を注視する。正確には彼の身にまとった着物に。魔力を僅かに感じる。

「おや、固定化の魔法がかかっているようですね」
「魔法がかかってるのか。固定化ってのは?」

裾を摘んで繁々と探ってみる。言われてみれば何か感じる。

「ええ、簡単に言うと丈夫になるんです。剣ならば折れ難く、錆び難く。布であれば傷み難く、破れ難く、といったところです。しかし、相当な魔力が込められてますね。弓矢くらいなら通さないのでは?」
「そりゃ有難い。後で礼でも言っとくか」

それを試す気は無いが、説明を聞きながら百鬼丸は、オスマンの配慮だろうか、と当たりをつけた。感謝せねばならない。そして

「シエスタにも、礼を言わないとな。良い仕事をしてくれた」
「ええ、必ず助けましょう」




第二十二夜 わらうつき
249ぜろろ 第二十二夜 2/6:2010/07/16(金) 17:30:14 ID:P9RBTvqh
  




馬に乗ったままコルベールはルイズは隣り合い、少し後ろに百鬼丸が追っている。
魔神について、コルベールはルイズにかいつまんで説明していた。百鬼丸は口を挟まない。
恐らく聞こえているのだろうが、口を挟まないことを考えると、コルベールの説明というのは大方合っているのだろう。
ただ、魔神をルイズが召還した、と言う事実は伏せてある。どうせ気付くことであろうが、今そのことを彼女に伝えれば、いらぬ迷いと責任を感じるであろう。
一時しのぎに過ぎないことはコルベールも承知している。百鬼丸と口裏を合わせては居なかったのは失敗だが、何を考えているのか、だが彼が無言であるのは幸いであった。

ルイズもルイズで今はシエスタを救うことしか頭にないのだろう。
なぜ今までその存在を聞いたことがないのか。
なぜそんなものに、異国から来た百鬼丸と、一介の教師に過ぎない筈のコルベールが立ち向かおうとしているのか。
本来聡明な彼女も、そういった疑問を抱くことなく、魔神という存在をすんなりと受け止めた。

「どういった姿なのですか?」

ルイズのその質問は当然のことである。
答えあぐねるコルベールは僅かに後ろを追いかけてくる百鬼丸に目をむけた。

「おれにも分からん」
「なによそれ?」
「わからんもんはわからん」
「……そう」

無愛想にそう答える百鬼丸に一瞬コルベールは肝を冷やした。ルイズと百鬼丸が言い争っていた場面で、仲裁に入ったのはコルベールである。その諍いの理由も結果も知っているため、揉めるかと思いきや、そうでもなかった。
ルイズも百鬼丸もまるで互いに無関心を装っているかのようだ。
話を振る時は気をつけよう。今更ながらに考えた。



しばらく全員無言である。
空から三人を追うように、夜道を不気味に、二つの月が照らしている。
どれだけ進もうと突き放すことの出来ない二つの月は、まるで自分達がシエスタの元にたどり着けない、とあざ嗤っているかのように、ルイズの目に映る。
急激に不安感を覚えたルイズは思わず口にした。

「シエスタ……無事かしら」
「ええ、急ぎましょう」
「はい」
250ぜろろ 第二十二夜 3/6:2010/07/16(金) 17:31:39 ID:P9RBTvqh
  
無事で居てほしい。そんな思いで駆ける。



またしばらくして、モット伯低まであと1リーグを切ったあたり。僅かに木々が生える林の中央にモット伯の屋敷は存在した。屋敷の明かりがはっきりと確認できるほどの距離で唐突に百鬼丸が叫んだ。

「止まれ!!」

その声を聞き、慌ててコルベールが馬を止める。ローブの中に用意したいくつかの武器が擦れて音を立てると共に、突然止められたことに不満げに、馬が嘶いた。ルイズもコルベールに倣い歩みを遅め、振り返った。

百鬼丸はすでに馬から降り、手近に合った木に手綱を結び付けていた。

「どうしたのですか?」
「馬はここまでだ」
「何故です?もうすぐですぞ?」

腰に挿した刀の具合を確かめるように、帯を結びなおす百鬼丸に尋ねた。

「出迎えだ」

そういって屋敷に向かって駆け出す。
あっという間にコルベールとルイズの間をすり抜けると、いつの間にそこにいたのか、からころと奇怪な音を立てる骸骨に、百鬼丸は切りかかった。

「なんと!?」
「な、なに……あれ」

切り捨てた骸骨は血のような赤黒い霧となり消えてしまう。
更に三体ほど、剣や盾、斧など、各々武器に持った骸骨が現れる。百鬼丸はそれらをものともせず、瞬く間に蹴散らした。
三体すべて同じように霧になって蒸発する。

どうやって湧き出てきたのか。
そう考えていたコルベールは答えを見た。
揺ら揺らと、青白く燃える、人間の頭よりも少し小さいくらいの火の玉のようなものが屋敷の方からゆっくりと飛んできたかと思うと、突如速度を上げ、地面に向かって着陸する。
瞬間その火の玉は大きく燃え上がり、骸骨がそこに現れた。

今度は五体ほど。驚きはしたものの、コルベールも何時までもじっとしてはいない。

「ミス・ヴァリエール、そのままで」
251ぜろろ 第二十二夜 4/6:2010/07/16(金) 17:32:21 ID:P9RBTvqh
  
そう伝えると彼も馬から下りて駆け出しながら、杖から火を放ち、百鬼丸の隙をうかがうように回り込もうとしていた骸骨の一つを燃やす。

「よし、効きますな、っと」
「助かる!!」
「もう一体いきます!!」

同様に近くにいた一体を燃やし尽くす。

「あ、あたしも、」

ルイズがそう気付いたときには事は終わっていた。

「いや、まこと見事なものですな」
「雑魚だ」

学院長室での件と良い、何度見ても惚れ惚れするような剣捌きである。
切りかかられるとほぼ同時に、相手の腕を切り落としたかと思いきや、返す刀で胴を両断。済んだとばかりに振り向きざまに、不意をつこうとしたのであろう相手を正中から一振り。
更に横なぎに、相手の盾に触れるか触れないかの刹那で角度を変え、骨の隙間から真上に振り上げる。

攻撃に加わったため全てを目にすることが出来なかった事を、コルベールは不謹慎ながらも少し残念に思う。

コルベールが二体目を燃やし尽くす前に、百鬼丸は残りの三対を既に切り捨てていた。
しばらくじっと構えたままの百鬼丸が、やっと構えを解く。
そしてルイズは、余りの出来事と、二人の見事な戦いに、呆然としていた。

「グズグズするな」

その声に意識を取り戻したルイズは、すぐに馬を降り、百鬼丸が馬を繋いだあたりに同様に繋ぐ。コルベールも自分の馬へ戻り、同様に。


手綱を繋ぎながら、多少悔しくも、突然の出来事だから今回は仕方ない、と只呆然とする事しかできなかった自分をルイズは慰める。

−次はあたしだって−

そんな思いを抱きながら、結んだ手綱を更に、強く締めた。

ふと、彼女はおびえる様に鼻をお鳴らす馬に気付いた。
怖いのかもしれない。
その一頭の首を、なだめるように撫でる。

「この子達、大丈夫かしら?」
252ぜろろ 第二十二夜 5/6:2010/07/16(金) 17:33:12 ID:P9RBTvqh
  
「多分な。不安なら逃がしとくか?」

ぶっきら棒に返事をする百鬼丸。妖怪にとっての敵は自分達だ。それ程頭が切れるようにも思われない。わざわざ馬を襲わせる事も無いだろう。逃がす、と言ったのは先日の発言に対しての一寸した腹癒せだ。

「ええ、そうしましょ?死んじゃったら……可哀想だもの」

躊躇いもなくそう答えたルイズに百鬼丸もコルベールも僅かに驚いた。
帰りの足も、それどころか逃げる手段すら失いかねないのだ。
しかし彼女はそんなことはおくびにも出さずに逃がそうと言う。
止めようか、とコルベールは迷ったが、それよりも百鬼丸の判断の方が早かった。

返事をする事もなく繋がれた馬に近づくと三度、鮮やかに剣を振るい、手綱の結び目を切り落とした。

繋ぎとめるものの無くなった馬達ではあるが、一度背に乗せた者たちが心配なのであろうか。飼いならされているせいもあるのだろうが、なかなか動かない。

コルベールはまだ悩んでいた。今ならまだ間に合うからだ。
しかし、今度はルイズが。

「あたし達は大丈夫だから、ほら、危ないわよ?」

そのうち一頭が嘶く。ルイズを乗せた馬である。

「大丈夫だから、ね?じゃあ、日が昇ったらまたここに戻ってきて?良いでしょ?」

そう優しく言いながらまた首を撫でる。馬に人語が解せる筈は無いのだが、わかった、と言わんばかりに再び、今度は一際高く嘶くと、三頭はこれまで来た道を戻るかのように駆け出したのだ。


その光景は優しく、神秘的であった。


ほう、と百鬼丸は感心したような声を上げた。それを聞き、ルイズは少し自慢げに振り返る。が、百鬼丸は既に顔を逸らし、目を合わせない。
少しだけ落ち込んだ。
もっとも百鬼丸の行動の原因は自分であることは重々理解しているのだが。
今日一日、百鬼丸と会うことを恐れ、ルイズもまた部屋に篭り、悶々としていたのだ。ただ、素直に謝ることが出来なかった。
この国では平民であり、しかも己が召還したにも関わらず、彼女に従わない百鬼丸に頭を下げる、というその行為は、まるで魔法を使えぬ己が貴族でない事を肯定してしまうかのように、馬鹿げていると分かっていながらも、ルイズはそう感じてしまうのだ。
253名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 17:35:37 ID:FDG2KJKJ
支援
254名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 17:35:47 ID:CQS/TiQF
君が!泣くまで!支援することを止めないっ!
255ぜろろ 第二十二夜 終了:2010/07/16(金) 17:35:47 ID:P9RBTvqh
  
とコルベールが口をあけて固まっている。息が漏れようとしているのが分かる。何か飛び出るかと思いきや、その口から出たのはため息であった。

「あぁ」
「どうしたんですか?」
「どうしたと?……帰りはどうするのですか?」
「ですから、日が昇ったら来てくれるって」
「そんな、相手は馬ですぞ?」
「あたし、馬、好きですから」



「そうですか……」

時間が惜しいとばかりに百鬼丸が急かす。

「ほら、行くぞ」

仕方なく、やや早足の百鬼丸をコルベールが追い、ルイズもそれに続く。
用心深く歩きながら。

「逃げる場合は、どうするのですか?」
「え、と」
「走れば良いじゃないか」

ルイズへの問いに、なぜか百鬼丸が答えた。

「ええ、そうですね……」

コルベールは諦めた。もはや過ぎたことである。
だがルイズのこんな一面はコルベールは初めて見た。生徒の貴重な一面を見ることが出来たと言う喜びも無いわけではないが、その論理の通じなさに呆れたという事もある。
平時ならともかく、今の状況では手放しでは喜べない。
そもそも相手がどんなものかも、自分も含め誰も分からないのだ。その事を理解していない二人でもないだろうに。
逃走手段の確保はしておきたかったのだが、嘆いても最早手遅れである。逃げずに済むように祈る、そしてそのように最善を尽くすしかないのだろう。


先を行く百鬼丸とコルベールを追いながら、ルイズは最早暗闇のせいで見えなくなったであろう、馬達の方を振り返る。
予想通り、その姿を確認することは出来なかった。
そこに見えるのは赤と青の、二つの月だけ。
しかし、先程迄ルイズの目に不気味に照らした双月は、今は後ろから淡く、優しく、自分達を後押ししてくれているように感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上終了です


行けた!?

感想、応援くださった方々本当にありがとう御座います。
次の投下もそれ程お待たせしません。
では
256ぜろろ :2010/07/16(金) 17:38:04 ID:P9RBTvqh
支援してくださった方もお礼言い忘れておりました。
ありがとう御座います!!
本当に今度こそ

それではっ
257名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 17:55:05 ID:Hmz71rTZ
乙です。
どろろは文庫本や映画で見たことありますが、台詞や立ち振る舞いから百鬼丸の姿がすぐ浮かんできました。
モット伯邸突入、楽しみにしています。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 21:03:48 ID:hiKSDU4V
いや、すばらしい
文章も安定してて面白いです
259名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:00:07 ID:s3IpO93K
乙です
大人が大人してて嬉しい
次回も楽しみにしています
260名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:07:11 ID:1oOGLr3E
乙です!
次へ次へ、とどんどん読み進みたくなります。
ああ次回が待ち遠しいっ
261名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:27:12 ID:MxkpPAgs
宇田川氏も、氏を忌避する人も、提督氏より酷い
両者とも、作品は、提督氏の作品と同じ位素晴らしいのだが……
仲良くすればいいのに……なんで、仲良くできないんだろう?

まあ兎に角面白い作品が読みたい
色々な作者様、投下まだー?(AA略
262名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:33:14 ID:sIYKVB/N
263名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:36:11 ID:nGdhCMcK
>>261
荒らしを弁護するとかナニイッテンダ
提督の騒動は当の本人とまとめ管理人がやらかしたからあんな騒ぎになったんだぞ
264名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:40:29 ID:ipTNo6Fb
>>263
触ると喜ぶだけですぞ
毒は毒吐きへ
265名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:43:36 ID:mOuUz3li
さわるなよ

どろろの人乙です
好きな作品なので続きが読めることがとても嬉しいです、んで相変わらず面白い
さて次回、どの魔神が出て来るのやら 楽しみです
266名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:44:21 ID:G38vfYGq
触るやつは全員荒らしか空気よめてない馬鹿、俺も含め
>>261は本当に気持ち悪い
267名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:47:06 ID:MxkpPAgs
……?
提督氏の人格が良いなんて一言も言ってないのだが……


つーかな、あっさりーミスリードに乗るな莫迦
オマエラ、その程度の読解力じゃ作品の複線見落とす輩じゃね?
作品・作者は、別物だぜ?
都知事を見てみろ、過去に都知事が何どんな作品を書いたか、
都知事が何を規制しようとしているか
このことでも類推できるだろう?
おお、偉大なるルルイエに住まう者たちよ
かの者たちに英知を与えたまえ!
糞が、黄金を産む事もあるし黄金が糞を産む事だって有る
一般常識だろ?
何故噛み付く?
268名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:49:48 ID:zWGsk6DD
そんなことよりタコの話でもしよーぜ
269名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 22:52:29 ID:TURQuQlL
>>267
で、どこを縦読みすればいいの?
270名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:04:12 ID:i5FzFYXz
ところで、前スレで料理人ネタが盛り上がってたけど、
ミスター味っ子(アニメ版)が召喚されたらモット伯に連れて行かれるのは
シエスタじゃなくてマルトーになるよな。
271名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:04:14 ID:Fd4XshIu
>>267
宇田川氏の話題をしたいならせめて避難所でお願いします
迷惑なので
スレ住民のつもりならそれ位察してください
272名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:27:19 ID:i5FzFYXz
>>268
ルイズもタコルカもピンクだったな。
タコルイズ・・・
すまん、このくらいしか思いつかなかった。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:28:15 ID:MxkpPAgs
スレの中での話はスレ内で良いんじゃないのか?
避難所は2chのように少なくとも管理者の素性が解っているのか?
それこそ、人着・住所に至るまで解っているのか?
その人物は信用できるのか?
信用できなくても、信頼できるのか?
避難所に池というのは良いが。これらの疑問に答えられるのか?
提督氏の騒動の時に、管理者が信用できないとなったんじゃないのか?
そこまで踏まえて、避難所に行けというのか?
もっと書くなら、適当に作者に噛み付いて、スレが荒れれば追い出せると言う事にしたいのか?

ともかく火、一々避難所を見ていない側からしたら、宇田川氏が嫌われる理由がない
提督氏の作品だって、荒れていたが纏めに収録してある
少なくとも、
・事前に投下予告がある
・作品として投下してある事
これは満足している
で有れば何故否定する?
否定する根拠がない
繰り返すが、あれほど荒れた提督氏の作品でさえまとめには登録してあるだろう?
纏めサイトから提督氏の作品を消すのか?
消さないのか?
いい加減で、場当たり的なまとめサイトの管理人をそこまで信じられるのは何故だ?
私には解らないのでここに書いてくれないか?
274名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:30:20 ID:Knka/sPc
いや、ここで、このスレで騒いでるお前や俺よりは信用出来るんじゃない?
275名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:33:20 ID:+qUnQ1MY
素直にNGワードに入れておけば快適
276名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:34:11 ID:9i0odrAq
もう少しでID変わるからトリ付けてくれるとありがたいな。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:35:20 ID:Fd4XshIu
ああ、こいつ酋長だわ
すいません。もう相手しません
278名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:37:43 ID:2cRUMIL6
>>268
タコで思いついたんだが
イカ娘召喚ってどーよ?
タコじゃないけどさ
279名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:43:58 ID:jxRcbieH
丁度いいからハウルの動く尻からカルシファー召喚しようぜ
280名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:49:30 ID:Fd4XshIu
>>297
ハウル死ぬ死ぬw
281名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:51:13 ID:Fd4XshIu
尻にうけてたらアンカ間違えたごめん
282名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:53:01 ID:i5FzFYXz
>>279
『動く尻』から『働く尻』を連想。
おマチさんはやはり美尻なんだろうか?
283名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:53:06 ID:NE75egqz
ただし、尻から出るのか…カルシファーが
284名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:54:11 ID:dcWvcNNs
これはもう297に期待するしかないなw
285名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:56:44 ID:PN0x4WTN
日本から変な生き物を召喚したら

誰にも見えなかったりして
286名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:57:16 ID:1oOGLr3E
>>270
いいなその展開w 新しいw
287名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:58:09 ID:i5FzFYXz
>>283
ルイズの爆発呪文の爆煙に臭いが付いてるんだな?
288名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/16(金) 23:59:53 ID:MeQfQCq+
ウルトラはやくまとめwikiに登録してくれよ
289名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:02:25 ID:i5FzFYXz
>>270

シエスタ「大変よ、ヨウイチ君!マルトーさんがモット伯爵に・・・」

陽一「くそう、モット伯爵!マルトーのおっちゃんを返せ!」

モット伯「よく来たなミスター味っ子!マルトーを返して欲しくば料理で勝負だ!」


的な流れで
290名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:05:09 ID:20FwjWCh
なるほど無理の無い展開だ、よーしよし
291名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:05:17 ID:LwoNgxUP
>>288
言いだしっぺの法則って知ってるかい?
292宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 00:07:32 ID:Sk8LwKHg
続編ができましたので、予約がないようでしたら、
0:30頃から投下します。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:08:21 ID:zVDRtZ5Z
>>291
弾かれてるから出来ないみたいですよ
まあ本人だし
294名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:09:24 ID:JBefCF/U
>>289
んで、勝利後にモット伯の援助で街に定食屋を開くことに、みたいな
295名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:11:28 ID:0E7ddTde
>>273
とりあえずその人は理想郷で散々設定の矛盾しまくった原作キャラ蹂躙もの書いて
親切な人から色々指摘されても開き直って感想欄で散々挑発行為を繰り返し
あげく何度もルール違反を犯して追い出された人です。

ぶっちゃけ争いの火種にしかならないんだよ。
いつ暴発するか分からない核兵器とか抱えておきたくないって感じかと。
296名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:12:11 ID:OFbe4soY
>>294
審査員に選ばれた学院長があまりの美味さに巨大化して宝物庫の塔をぶっ壊すところまでは妄想した。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:17:01 ID:LwoNgxUP
>>293
おっと、そうだったなw
管理人GJってことで
298名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:17:02 ID:eBGy34J4
そして盗まれる伝説の厨具!
299名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:17:14 ID:zVDRtZ5Z
>>295
それ宇田川の自演ですよ
相手するだけ無駄です
300名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:22:02 ID:gfhhLv/E
ゴルドランてかパワーストーンがが召喚されたと聞いてやってきました
これは酷い
飲んでた午後ティ返せ
301名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:23:55 ID:JBefCF/U
うぇるかむ とぅ ぱわーすとーん!
302名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:23:57 ID:HVkGoyPv
料理漫画といえば「食キング」だな

厨房で賄いを食べたあと、食堂から下げられてきた皿のソースをひとなめする。
「この店はすでにつぶれている!」
「な、なんだとォ!」
「マルトーさん。あなたの作ってくれた賄いは実に美味かった。
残りものを使っていながらも丁寧な仕事で食べる人間を楽しませようという心が伝わってきた
だが! ここにある生徒用の料理からはそれが一切感じられん! 客によって差別をするなど、料理人の資格はない!」
「う。うう・・」
 シエスタが革袋を差し出す。
「請負人さん! ここに100エキューあります。これでこの店の再建をお願いします」
「連絡をくれたのは君か・・。だが、本人にその気がないようではな」
 崩れ落ちるマルトー。涙を流しながら
「で、できるでしょうか、わたしに。また子供たちとこころを通わせる料理が」
「できますとも。あなたにはこんなに店思いの従業員がいるんだ」
「再建、是非ともお願いします」
「わかりました、では」
 北方は目隠しと耳栓をとりだした。
 目と耳を封じられ、マルトーは馬でどこかへと連れ去られた。
 馬が止まり、目隠しを外す。そこには寂れた村があった。
「一週間以内にこの村に潜む吸血鬼を見つけ出すのだ! 質問は一切受け付けん!」
303名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:26:25 ID:eBGy34J4
無茶ぶり過ぎるwww
304名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:27:06 ID:zVDRtZ5Z
>>302
すごく…面白そう

もうすぐ空襲が始まりそうなのでもう逃げますね
お休み
305宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 00:31:29 ID:Sk8LwKHg
それでは、予告通り、続編です。
 ある日突然、兵士たちが学院にやってきた。
「兵士の奴ら、俺を殺人の罪で捕らえるなんて言ってさ」
 『悪人をひねり過ぎた』ことだ。
「そんな奴らは片っ端からひねってやったよ」
 句楽を捕縛しようとする兵士たちは、ある者は首を飛ばされ、ある者は手足を飛ばされた。
「ただの兵士じゃだめだとなると、銃士隊が出てきて。こんなの、軽く吹き飛ばしてやった」
 大挙して句楽を捕縛に来た銃士隊を初めとする討伐隊は、あっという間に全滅させられた。
 ワルド、アニエス、ジュリオ、シェフィールド、そしてルイズの母、カリーヌ。
 ハルケギニアの歴戦の勇士たちが、次々と句楽に戦いを挑んでは敗れ、殺された。
 こうなると、軍も本腰を入れてくる。
 竜騎士隊、フネ。地上からはメイジ。陸、空からありとあらゆる攻撃が句楽に降り注いだ。
「攻撃はどんどんエスカレートしていったが、俺には蚊が刺した程にも感じなかった」
 結果は、句楽にかすり傷一つ与えることができず、学院を破壊しただけだった。
「そこへ、エルフという奴らが、悪事を働いていると聞かされて、俺は早速倒しに行った」
 正攻法で無理とあらば、句楽を罠にはめて倒すという作戦が取られた。
 句楽をたきつけ、エルフと戦わせて始末するという方法だ。
 さすがの句楽でも、人間の天敵、エルフには勝てまい。
 うまくいけば、火事場泥棒のごとく『聖地』の奪還もできるかも知れない。
 しかし、そんな目論見はあっけなく外れた。
「ちょっと変わった魔法で攻めて来たが、所詮は、人間どもの魔法に毛が生えた程度だった」
 先住魔法をことごとく破られたエルフは、句楽の手によって全滅した。
 『聖地』は、激しい戦いで跡形もなく消え去った。
 系統魔法が効かない、先住魔法も通用しない。歴戦の勇士が敗れ、エルフも敗れた。
 こんな化け物相手に、どうやって勝てるのか。 
 ウルトラ・スーパー・デラックスマンが持つガンダールヴの力とは、かくも恐ろしいものだったのか。
 全ての『悪』が滅んだはずのハルケギニアは、再び新たなる暗雲に包まれていった。
 中には、めげずに話し合いで解決しようとする者もいた。貴族の有識者が懸命にアピールした。
「法治国家がどうとか、私的制裁がこうとか……」
 しかし句楽に黙らされた。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:35:13 ID:0Rg5G2x1
見えない
「俺は怒鳴ってやったぜ。黙れ! 今まで散々無法の限りを尽くして、私的制裁を平民にしてきたのは貴様ら貴族だろうが! ……ってね」
 有識者は返す言葉がなかった。
 句楽の言うことも一理ある。権力をかさに好き勝手な私的制裁をしてきただろうと言われれば、否定はできない。
「それに俺、こ難しい理屈は嫌いなんだ。悪い奴は悪い、いい奴はいい」
 ルイズとコルベールはもう言葉もなく、完全に黙り込んでしまった。
「それから、助けてやった平民にも悪者が出てきた」
 応援していた平民も、次第にウルトラ・スーパー・デラックスマンを恐れ始めた。
「あいつはもう、正義の味方じゃない」
「何万という兵士があいつに殺されたんだろ? それなのに、捕えられないなんて」
「あいつは悪魔だ」
 あちこちの村で火の手が上がった。ウルトラ・スーパー・デラックスマンの手によるものだ。
「『正義の使者』なんておだててたくせに、『殺人鬼』だ、『悪の使者』だと。言わせておけばいい気になりやがって……奴らを力で黙らせた」
 句楽はさらに話し続ける。
「あげくの果てに、近所の住民を避難させてから俺を山奥に呼び出してきて、特大の攻撃をぶちこんできた」
 ついに、ハルケギニア各国は、最後の『禁じ手』を使った。
 王家のみが使える魔法、『ヘキサゴン・スペル』。
 ウルトラ・スーパー・デラックスマンを倒すにはその技しかないと、もめにもめた末、その技を使うことになった。
 術者は王族の数人。
 さらに補佐としてトライアングル、スクウェアメイジが総動員された。
 スペルが、一斉に発動された。
 あたりは、真夜中なのに真昼のように明るくなった。
 句楽のいた世界の、核兵器並みの爆発が、ウルトラ・スーパー・デラックスマンを襲った。
 爆発の跡は、山が消し飛んで、大きなクレーターができていた。
 ついに仕留めたか? 
 そう思われた時、煤に汚れたウルトラ・スーパー・デラックスマンが、平然とした表情で立っていた。 
「そんなもんで、くたばる俺かよ。俺の身体はウルトラ・スーパー・デラックス細胞で成り立ってるんだ」
 万事休す。最後の切り札も失敗したのだ。
 ウルトラ・スーパー・デラックスマンは絶対に倒せないのだ。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:36:08 ID:OFbe4soY
>>300
一応、
落ちこぼれのルイズ、
知性派(っぽい)タバサ、
肉体(意味が違うけど)派のキュルケとちゃんとそろってるのな。

>>302
その派生でおマチさんが監獄で『極道めし』やっってたりしてなっ
310名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:36:23 ID:1ZT2iDoK
今日も一日お疲れ、みんなお休み〜
「それから間もなく、各国合同の調査団が公式発表した」
 発表された結論は、『ウルトラ・スーパー・デラックスマンという人物は実在しない』というものだった。
 ハルケギニア諸国は白旗を揚げたのだった。
「それを受けて誰もが沈黙した。学院は俺を、職員として採用してくれた」
 こんな化け物は、元の世界に帰ってもらおう。
 それまでは、ひとまず魔法学院に押し付けておこう。
 学院は厄介者を押し付けられた格好になったが、王政府の命令では逆らえない。
「さらに、待機部というポストを新設してくれた。元の世界に戻れるまでここで待っててくれってことだ」
 元の世界へ戻すための魔法の研究が不眠不休で続けられている。
 絶対に倒せない以上、元の世界にお戻り願うしかないのだ。彼が戻った元の世界がどうなるかなど、知ったことではない。
 早く元の世界に帰さないと、奴の機嫌が悪くなるかも知れない。そうなったら、今度こそハルケギニアの最後だ。
「そんな俺でも……あんたらにだけ言うけど……時々……こんな生活がずっと続いていくのかなって……」
 句楽は急に表情を曇らせた。
「元の世界に戻れれば、そこにごまんといる悪人どもをやっつけてやれる。確かに、また活躍できる。でもその後はどうするんだ!? 悪が滅んじまったら、俺どうすりゃいいんだ!?」
 句楽は訴えかけるように言う。
「知ってる連中みんなが死んでも、俺だけがずっと生きてくのか!? 何百年、何千年、何万年とこんな生活が続いていくのか!?」
 泣き言にも似た、あまりの変わりように、ルイズとコルベールは思わずたじろぐ。
「俺、一生死ねないんじゃないかな!? いや、死ぬまで死ねないんじゃないかな!? いや、俺が言いたいのは……だから、つまり……その……」
 そのとき、玄関の呼び鈴が鳴った。
312宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 00:39:16 ID:Sk8LwKHg
今回はここまでです。
いよいよ、クライマックスへと入っていきます。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:45:06 ID:0/FsRuVL
>>302
客のオーダーに答えて、それに合わせた仕事をするのは、勤め人の基本だと思うとか、
そういう大人の論理で突っ込んだら負けなんだろうな、きっと。
314ぜろろ :2010/07/17(土) 00:57:28 ID:NCJBl8Mu
こんばんは
投下したしたいので予約を
1:05から開始したく御座候
315名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:58:59 ID:JBefCF/U
ひゃっほう!
316名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:59:50 ID:B7s1LHZY
どうぞ、どうぞ


317名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 00:59:51 ID:iDN5TPNy
ひゃっはー!本日初の投下はぜろろだぁーー!
318名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:00:10 ID:OFbe4soY
ヒャッハー!
319ぜろろ  第二十二夜 1/5:2010/07/17(土) 01:01:41 ID:NCJBl8Mu
では開始 以下本文

時は少し遡る。百鬼丸に昼食を運び、ささやかな幸福の中にあったシエスタ。
ここ数日、一寸した災難もあったが、彼女は生活は嘗て無いほどに充実していた。

使用人から秘かに人気のあった、可憐で、魔法は使えないが、それでも努力家で、ひた向きな貴族の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールに名前を覚えてもらった。
優しく、強く、逞しく、時に可愛らしい、自分と同じ目と髪の色を持つ青年、百鬼丸と出合った。
そして、その二人に守ってもらった。

シエスタとしては、勿論どちらも大事な人間であるが、異性である百鬼丸に対する感情はルイズに対する物とはまた違う感情もはらんでおり、殊更である。

自分が百鬼丸という青年に惹かれている事を、彼女は自覚していた。

彼が自分に見せる柔らかな物腰も、時折出る子供のような表情も、その勇敢さも、頼りになる強さも、どれも彼女は好んでいる。ハルケギニアでは珍しい、しかし自分と同じ色をした髪と目も、そんな淡い好意の手伝いをしていた。

なぜ自分の目と髪は、同僚達の持つ鮮やかな紅色や金色と違い、地味な黒一色なのかと悩んだこともある。しかし今はこの黒と言う色に感謝している。この学院で百鬼丸と同じ色を持つのは自分だけなのだから。

そして現在彼の世話を担当しているのはシエスタである。
貴族に果敢に立ち向かい、これを打ち倒した青年は、最早男女問わず、使用人達に羨望の眼差しを向けられている。しかし彼に触れ合う機会が最も多いのは間違いなく、自分である。彼に三食運び、甲斐甲斐しく給仕しているのは自分だけなのだ。

昨晩まで、手の空いた時間で、彼の着物をてづから修繕していた彼女は、長いこと着古されたのであろう、その特異な形をした彼の服に針を通しながら、あれこれと彼がこれまで辿ってきた道筋に思いを馳せていた。
破れた胸元に当てた布の中に、目立たぬよう自分と百鬼丸の名前を刺繍してあるのは彼女だけの秘密だ。
既に修繕は終わったが、彼がその服をまとっている姿を見るたびに、きっと自分は、その思い出に浸り、彼への淡い思いを育んでいけるのだろう。

同僚達からの彼女を羨む声も、彼女にとっては、その少女らしいささやかな独占欲を誘引するものでしかない。

今、シエスタは幸福であった。

ふふっ、と楽しげに笑い、弾むように廊下を歩む己に気付いて、はっと小動物のように辺りを見回す。
勢いよく、小さな頭に振り回される黒髪、その群れから飛び出した一房は光を受け、全てを受け止め、同時に全ての色を発するかのような、黒特有の艶を見せる。

黒い髪が、時にどの色よりも輝く瞬間があることを少女は知らない。

いけない、まだ仕事中だ、と真面目な彼女は乱れてもしていない身だしなみを正す。
幸い周囲に人は居なかった。再び歩き出す。今度は静々と。
しかし弾んでいる心を抑えることは難しかった。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:01:54 ID:dPnct/1T
待てお前ら、来たのは聖帝様じゃないぞwww
ともかく支援
321名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:02:02 ID:B7s1LHZY
ヒャッハー!といえば北斗の拳
帝王の人、帰ってこないかな〜
322名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:02:45 ID:To9ZQDqk
ぜろろの人スゲー
アレな雰囲気になりそうだったから用意した小ネタはお蔵入りになりそうだ
323ぜろろ  第二十二夜 2/5:2010/07/17(土) 01:02:47 ID:NCJBl8Mu
    
それがいけなかったのだろうか。




第二十三夜  人間そっくり




幸福は、果たしてそこまでであった。あるいは此れから起こる彼女の運命を不憫に思った始祖が、釣り合いが取れるようにと、この数日の幸福をはからってくれたのか。
もしそうであったとしたら、彼女はきっと始祖を恨むだろう。何かを手に入れるということは、同時に手放す時の悲しみも否応なしに背負わされるのだから。
手に入れた時の喜びが大きければ大きいほど、きっと背負う悲しみも辛さも同じくらい大きいのだ。

角を曲がろうとした時、浮かれた彼女が悪かったのか、あるいは相手が異質であったのか、大きな人影が角から歩み出てくる。
気付くのが遅かった。
あわや体が接触するか否かのところで、シエスタは顔を上げ、失礼しました、と慌てて声を上げようとした。

相手は大柄である。シエスタよりも首一つほど高い。整えられた茶色の髪と、わずかに蓄えられた口ひげ。純白のひだ襟の下には青群青を基調とし、袖口、胸元は幾何学的な模様で赤銅に染められた服。それらを覆うような駱駝色の外套。

しかし、シエスタの声を遮ったのは、相手の声でなく、その目だった。
生気の無い、しかしそれで居て確かに生きているはずの、不気味に濁った青い目を直視したとき、シエスタの体から、その主導権を異質な何かに奪われた気がした。

先程とは違う、今度は助けを求める声を上げたかったが思うように声が出ない。うまく機能しない肺から送られてくる空気が、喉を通り過ぎ、漏れる音が辺りに響くだけ。

「モット伯?」

男の後ろから声を掛けてきたのはオスマンである。
男の名はジュール・ド・モット。王宮からの勅使であり、伯爵である。
シエスタもその名だけは、失礼があると学園としては良くないから、と聞かされていた。
オスマンに顔を逸らした。だがシエスタはそれでも動けない。

「失礼。彼女、気に入りました。頂いても?」
「ほ?」

オスマンの疑問を無視するかのように再びモット伯爵はシエスタの目を見る。
背後に立つオスマンからモット伯の表情を窺い知る事はできない。
また、ジュール・ド・モット伯爵は、その能力、特に算術に関しては秀でているが、気に入った平民の娘があれば、それを買取り、侍らせている、という噂も有名なものであった。
また悪い癖か、との程度にしかオスマンは考えていなかった。
324ぜろろ  第二十二夜 3/5:2010/07/17(土) 01:03:43 ID:NCJBl8Mu
  
ともかく、オスマンと会話していた時の表情とは、シエスタに向ける貌はまるで違う。
嫌だ、そうシエスタは叫びたいが声が出なかった。

「給金は弾む。そうだな、ここの二倍出そう」

モット伯爵の目が細まる。笑っているのか、しかし、シエスタには獲物を射竦める捕食動物の様にしか見えない。捕食されるのは勿論、自分だ。


終わりだ。


そう直感した。何故かは分からない。逃げる事も、助けを呼ぶ事もままならない現状がそう感じさせたのか。
モット伯爵の異様な気配から彼女が何かを察知したのか。

自分はいま、何かに操られている。彼女の意に反して、声も体も勝手に動くのだ。
心だけが、正しく声にならない悲鳴を上げていた。

シエスタの体はゆっくりと頷き、オスマンに顔を向ける。

「私、モット伯の所へ……参りたくございます……」

そう口に出した瞬間、なにか呪縛からとかれたかのように、シエスタの体は自分の意思通りに動く事を許された。だが、恐ろしさに竦み、何も出来ない。

不穏なものを感じながらも、モット伯爵がと彼女自身がそれを希望するのであれば、オスマンは止めようが無い。

「む、そうか」
「有難く存じます」
「いや、二人がそう思うのであれば、むやみに止める事もできんじゃろうて」

オスマンに語りかけるモット伯爵の顔は、シエスタに向き合ったときと違い、穏やかとも言える。その濁った目さえ無ければ。

シエスタが、やっとのことで、自分の意思通りに口を開けた。

「そ、その、少しだけ挨拶をしてきても……よろしいでしょうか?」
「ああ、構わないが、急ぐように。外の馬車で待つ」

そう言って微笑むモット伯爵の顔は、獲物を捕らえた後の獣の顔でしかない。
四肢を?がれ、逃げるどころか抵抗することすらあたわぬ獲物を、後はただ貪るだけだ。

擦れ違いざまに、これから頼む、と肩に手を置かれた。
冷たい。気のせいだろうか。

『逃げるな。逃げればどうなるか』

そんな声が、幻聴であろうか、だがシエスタにははっきりと聞こえた。
気のせいではない。
325ぜろろ  第二十二夜 4/5:2010/07/17(土) 01:05:15 ID:NCJBl8Mu
  


厨房に居るマルトーを始めとする料理人たちに挨拶をし、同僚に別れを告げ、コルベールには淡々と礼を述べるだけ。
悔しがるマルトー達も、涙を流して止めてくれた友人の姿も、虚勢を張っている己を恐らくは見抜き、何か思案に耽るコルベールとの別れも。どこか遠いものを見るようで、シエスタは会話の内容など全く覚えていない。

後二人、挨拶せねばならない、いや、会いたい人間が居る。ルイズと百鬼丸だ。

ルイズの部屋を訪れた。
呼びかける声に応えたルイズの声は、持ち主が不機嫌な時でも羨ましいくらい可愛いらしく、鈴のようにりんと響くその声は、一瞬だけシエスタを正気に戻した。

−助けて−

途端、怖気が走る。

『助けは呼ばないほうがいいが』

幻聴だ。これは幻聴だ。だから、だから彼女にだけは助けを請うても。

『道連れにしたいなら』

−助けて−

『どうぞ私は構わない』

助けて、その言葉。たった短い一言すら飲み込んだ。

「シエスタ?どうしたの?」
「私、本日よりジュール・ド・モット伯爵に仕える事になりました。ミス・ヴァリエールにおかれましては助けて頂いたお礼も、満足に申し上げておりません。誠に心苦しいのですが、せめて別れの挨拶だけでも、と」
「ちょっと、モット伯爵って、まさか気に入った平民の女を囲うのが趣味って……」
「お給金も弾んでくださるそうで、これで家族に楽をさせることが出来ます。私、満足しております」
「やめておきなさい!? 何があったか知らないけど、碌な噂聞かないわよ!?」
「いえ、もう決めたことですから。それではどうか、ご自愛ください」

それだけ言うと、足早にシエスタは立ち去った。

「ちょっと!? シエスタ!?」

引き止めようとするルイズの声から耳を塞ぎ、彼女から確実に見えなくなったのを確認すると、シエスタは駆け出した。

向かったのは彼女にとってもう一人の特別、百鬼丸のもとではなかった。

最後に百鬼丸に会いたかった。助けて、とそう彼になら言える気がした。
しかし彼を巻き込んでしまう。相手は勅使であり、伯爵であり、そして正体の分からない、人間かどうかも怪しい、きっと化け物だ。あれは人間そっくりの化け物だ。
いくら百鬼丸が強くても、きっと殺されてしまうに違いない。
彼を、大好きな彼まで巻き込めるものか。
助けてと、きっと彼を前にしたら、そう口に出してしまう。
口に出さなくても、一度流した涙を彼の前で抑える自信が無い。
人の良い彼の事だ。助けようとしてくれるのは間違いない。
そして、巻き込んでしまう。そしたら大好きな彼は死んでしまう。
自分のせいで殺されてしまう。そしてどうせ私も殺されて。

だから会いたい、最後だから会いたい。
だから会うわけにはいかない。

止まらぬ涙を必死に止めようと手のひらを瞼に押し付ける。

−お願い、止まって!!−

そう願いながら眼球を傷つけんばかりに、最早瞼どころか目まで潰してしまいたい。しかし命を絶つことすらも許されない。
326名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:07:31 ID:JBefCF/U
支援するのぜー
327ぜろろ  第二十二夜 終了:2010/07/17(土) 01:09:25 ID:NCJBl8Mu
それは化け物にとっては逃げることと同義であるがゆえに。

使用人の宿舎にある自分の部屋に駆け込むと、一心不乱に荷物を詰め込む。もとより少ない荷物はあっさりと片付いたが、これらは持って行かない。これから死ぬ人間には不要なものばかりだ。

『家族のもとへ送ってください』

普段の彼女に似つかわしくないほどに、滲んだ文字で乱雑に書かれ、皺んだ紙をその荷物の上に叩きつけるように置くと、赤く腫らした瞼を、今度は元に戻そうと水で洗い流す。
泣いてない。泣いてなんか、いない。

水で流しているのだ。
頬が濡れるのは当然なのだ。
瞼が熱いのは水が冷たいからなのだ。





「申し訳ありません。大変お待たせしました」

そう、学園の出口で待つ馬車に向かう。

「いや、待ってない」
「え……?」

そんな筈は無い。少なくとも食事を済ませられる程度の時間は間違いなく待たせていた。
しかし気遣っている風でもない。逆に、どこか満足そうな様子さえ伺える。そうだ、きっと何か食事でもして時間を潰したに違いない。

不思議と己の考えが間違えでないと、シエスタは何故か確信した。根拠も何も無い。だが、きっとこの人の形をした化け物は何かを喰っていたのだ。きっと。

「なんでもない。さ、掛けたまえ。特別に同席させてやろう」

従うことしか、彼女には出来ないのだった。


さようなら、と心の中でつぶやく。

そして

−助けて!!−

少女の心は叫ぶのだ。

ジュール・ド・モット伯爵は、そんな彼女を眺めながら、満足そうに目を細める。
その姿は正しく、人間の様であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
終了です。
以前時を止めてしまったのですが、前回の投下で感想たくさんいただけて
とてもうれしいぜろろです。モット伯編 今しばらくお付き合いください。
支援いただいた方々には感謝を

そしてできれば百鬼丸はゲーム版で……
台詞回しは引用されてるから見分けはつきませんが。

若干ゲーム版のほうが強そうなのと、等身が高いです

そんなこんなで失礼します!!
328名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:11:07 ID:To9ZQDqk
乙です
手塚好きの俺にはたまんないなぁ
329名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:15:33 ID:JBefCF/U
どっちもウロ覚えだから脳内でいい感じに混ざってるぜw
乙です!
330ぜろろ:2010/07/17(土) 01:19:07 ID:NCJBl8Mu
先に自分で晒しておくと
ルイズの名前、間違ってた……
ごめんよルイズ
あと誤字が……
すいません 修正しておきます。
申し訳ありません
331名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:22:37 ID:yuAVevM3
>>312
乙、ハゲは生き残るのか
332名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:26:24 ID:B7s1LHZY
ぜろろの人乙です
どろろってゲーム化されてたんですね
333名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:27:44 ID:1VY1bFW6
乙す!
こ、こえぇ〜
シエスタの心情を慮るとほんと絶望
334名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:32:16 ID:HVkGoyPv
「食いしん坊!」でも一発かましてやろうと思ったけど無理だった。
ギーシュが邪道食いをするところまでは思いついたんだが。
代わりに孤独のグルメで書いてみたんだけど、投下してもええもんじゃろか。

あとぜろろの人、乙っす。ゲーム板の沙村せんせのイラストはイメージに合ってたなぁ。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:41:22 ID:B7s1LHZY
どうぞどうぞ
336孤独のグルメ・異世界編:2010/07/17(土) 01:44:38 ID:HVkGoyPv
俺は家具の買い付けにトリステイン魔法学院に来ていた。
ここでは使い古された家具でも、日本ではアンティークとして人気が出るのだ。
個人の貿易商にはおいしい取引先だ。ただ、さすがに商談でいちいち異世界まで召喚されるとヘキエキする。
俺はまたも腹をすかせていた。ささっと何かかき込みたいところだが、近場の王都でもかなり遠い。
帰りの時間までそれほどあるわけではないので王都までいくわけにもいかない。学食でもないものだろうかと探し回っていると、使用人の少女に話しかけられた。黒髪のメイド服の少女だ。……どこかで見覚えがある気もする。
「あ、出入りの商人さんですか? どうされたんです?」
「あ・・いえ、食事ができるところがないかと」
「まぁ、それじゃあ賄いでよろしければごちそうします。こちらへどうぞ」
断り切れず、俺は厨房の一角に連れてこられた。ガンコそうな料理人が気前よく賄いを分けてくれた。パンとスープといういかにも賄いといったものが出てきた。
・パン
いわゆるライ麦パン。かたい。噛んでいるだけでアゴが疲れてくる。
・スープ
野菜たっぷり。味は濃いめ。
(ほー、いいじゃないか。どれどれ)
俺はさっそくスープをいただく。使い込まれた木の器とスプーンが嬉しい。ごろごろと大きな野菜は食べ応えがある。味はちょっと濃い目だが、きっと疲れた使用人にはこれくらいが丁度いいのだろう。
(では、お次にパンをと)
パンをちぎって口に入れる。
(む……)
思っていた通り、というか、スゴイかたさだ。日本のパンになれた俺にこれは少しつらい。スープを飲みながら少しずつパンを食べているとアゴが疲れてきた。
(そうだ、これを)
俺はちぎったパンをスープにひたしてみた。思った通り、パンはスープを吸ってすぐにふやける。食べると、スープの味と柔らかくなったパンの食感がなんともいえない。
(うんうん。こりゃあいいぞ。最初からこうすれば良かったんだ)
スープでどんどんパンをかき込んでいく。腹がふくれてくると、ちょっと周りを見る余裕ができた。東京の飲食店のようなあくせくした雰囲気はなく、みんな自然に働いている。恐らく、自分はこんな風には見えないのだろう。
(あっ)
調子に乗って食べていたらスープが無くなってしまった。パンはまだ少しのこっている。
(しまったなぁ。最初に飲み過ぎた。ペース配分を間違えたか・・・)
仕方なく、残りのパンをそのまま食べる。疲れたアゴで礼を言って、俺は厨房をあとにした。
満腹になった腹を抱えながら、俺は塀の外に停めておいた車に乗り込んだ。
10メートルほど走ったところで振り返る。生徒や教師、使用人たちが俺の方をのぞき込んでいた。
おそらく、俺はあの学院には不釣り合いな商人だったのだろうな・・・
337名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:45:20 ID:HVkGoyPv
以上。小ネタでした
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 01:51:15 ID:B7s1LHZY
小ネタ乙〜♪
ゴローちゃんがスープに浸してるところを容易に想像できて、ほのぼのしましたw
339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 03:17:21 ID:SxYSWWhJ
どろろ復活か
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 03:18:38 ID:SxYSWWhJ
孤独のグルメもきてたw
ゲー帝といい好みの来ててうれしい

乙でした
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 03:31:29 ID:xeV9yggg
孤独のグルメで小ネタ?
そういうものもあるのか。


どろろの作者様、孤独のグルメの作者様お疲れ様でした。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 06:23:41 ID:/wmHNdr9
一回こっきりじゃもったいないけどどうすんのかしら
なにはともあれ乙
343名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 08:35:41 ID:RJUnm9Of
ぜひ続きを!
ゲルマニアの工業地帯?で焼肉食べたり、ロマリアのオーガニックな定食屋に違和感を感じたりして欲しい。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 09:02:04 ID:sP091d4Y
黒髪のメイドをどこかで見たことがある気がするってのは嫁のシャーリーネタかw
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 10:46:06 ID:wipA2Mpo
商談で異世界に吹いた
346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 10:56:41 ID:cf8X5OKu
貴族の経営してる食堂→平民の店員に当り散らす→なんだァ?あんた文句ry
まで見えた
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 11:26:53 ID:5nT5vXnY
ゴローちゃんは東方のエルフの村にぜひ行ってほしいな。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 11:31:47 ID:B7s1LHZY
ゴローちゃんは食事ができるところなら、どこでも馴染んでいそうで怖いw
349宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 13:32:31 ID:zgX+9hPn
予約がないようですので、13:45頃より投下します。
今回で最終回です。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 13:45:16 ID:MHeD0OJP
>>343
オーガニックと言われてユウとネリーブレン召喚とか連想した
ヒメポジションが居ない…テファ辺り宛がうのが良いのか?
351宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 13:46:11 ID:zgX+9hPn
それでは、最終回です。
352宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 13:48:03 ID:zgX+9hPn
「いらっしゃーい! よく来てくれましたねえ!」
 句楽は先程の深刻さが嘘のように、喜々として来客を出迎えた。
 来客は、学院の中でも屈指のプロポーションを誇るティファニア……通称テファだった。
「さあどうぞ、お茶でも!」
「いえ、お茶でしたら結構です。ご用でしたら早く済ませてください!」
 テファは吐き捨てるように言った。
 姉のように慕っていたマチルダ=フーケを処刑に追い込んだこの男に呼び出された。
 殺したいほど憎い仇だが、テファにはどうすることもできない。
 正義の味方を名乗る悪魔のようなこの男に呼び出されたら、従うしかなかった。
「そうですか、ではお言葉に甘えて、早く済ませましょう!」
 テファはベッドルームに通された。覚悟を決めた彼女は自分から服を脱ぎ始めた。
 応接間に取り残されたコルベールとルイズは、残った食事を食べていた。
 ベッドルームで何が行われているかは容易に想像できるが、止めることはできない。
 しばらく黙々と二人は食べ続けていたが、
「……ミスタ・コルベール! 私、間違ってませんよね!? 私の責任じゃありませんよね!?」
 ルイズはすがるようにコルベールに聞く。
「わからん……」
 コルベールは、うつむいて絞り出すような声で返答するしかなかった。
「……!」
 そのとき、突然窓が開いて、さっきの女が入ってきた。手には大きな一振りの剣が握られている。
「やめろ! そんなもの通用するか! 今度こそバラバラに……うわっ!」
 止めようとするコルベールを振り払うと、ベッドルームに向かって駆けていった。
「待つんだ! やめろ!!」
「やめなさい! 殺されるわよ!!」
 コルベールとルイズは追い掛ける。女はベッドルームのドアを開けると、中に駆け込んだ。
「やめろったら! やめ……」
 二人が後を追って部屋に入ると、女が折れた剣を持ったまま立ち尽くしていた。
 テファは脅えてうずくまっている。
「……もう、許さん……!」
 句楽は怒りに身体を震わせている。
「な、何してんのよ! 逃げなさい! 早く!」
「逃げろーっ!」
 ルイズとコルベールは、強引に女の手を引いて逃げ出した。
 家を飛び出して、懸命に走った。
ルイズとコルベールは、強引に女の手を引いて逃げ出した。
 家を飛び出して、懸命に走った。
「何てことしたのよ! 元々、あんたの恋人が悪かったんでしょ!」
「違う! 彼は何にもしてない! クラクのことをちょっと悪く言っただけなのに!」
 足を止めて、女が言った。
「な、何だって!? 悪口を言っただけで……」
「待てーっ!!」
 ウルトラ・スーパー・デラックスマンに変身した句楽が、空を飛んできたのが見えた。
「わっ! 追ってきた! 逃げろっ!」
 三人は夢中で駆け出した。
「ここに隠れよう」
 廃墟の家の中に三人は隠れた。だが、
「ふん、無駄なことを! 俺に透視能力があるのを忘れたのか!」
「し、しまった!」
 句楽の足音が迫ってくる。もう逃げる場所はない。
「さあ、その女を渡せ! でないと、どうなるかわかってるんだろうな」
「渡したら殺す気だろう!」
「さあ、グズグズしないで早く渡せ!」
「クラク! 貴様は正義の味方なんかじゃない!! 血に飢えた化け物だ!!」
「そうよ、あんたは悪魔よ!!」
「フン、平民を面白半分に苦しめてきた貴様らが、そんなことを言えた義理か! 貴様らこそ悪魔だ、血に飢えた化け物だ!!」
 コルベールとルイズは返す言葉がなかった。
「……ふっふっふ……でも、もうそんなことはどうでもいい……お前たちみんな……殺してやる!!」
 句楽は宙に舞い上がると、家の屋根を手当り次第に殴り、蹴った。
 ズドン、ズドンと物凄い音がこだまする。
「はははは……うはははは……」
 狂気に満ちた句楽の笑いが響く。三人は身をかがめる。
「あはははは……はははは……はははは……」
 三人が隠れた部屋の、天井が崩れ始めた。
 最後を覚悟したその時、突然音がやんだ。
「……? どうした?」
「あきらめて去っていったのかしら?」
 三人は廃墟を出ると、思わず息を飲んだ。
「ああっ!」
 句楽が血だまりの中に倒れていた。
「く……苦しい……助けて……」
 顔は蒼白になり、口から血を吐いている。
「グハッ!! 誰か……た……す……けて……」
 激しい吐血のあと、けいれんのように身体を震わせ、意識を失ってしまった。



 吐血の原因は胃ガンだった。
 完全に手遅れだった。ガンはすでに全身に転移していた。
 彼の治療に、高位の水メイジが当たった。
 公平に言って彼は、ハルケギニアでなしうる最高の医療を受けたといえるだろう。
 しかし、水魔法でもウルトラ・スーパー・デラックスガン細胞を抑えることは不可能だった。
「……ご臨終です」
 句楽は、静かに息を引き取った。
 葬式は、学院でひっそりと行われた。数人の生徒、教師たちだけの、簡素なものだった。
 句楽の死顔は、憑き物が落ちたかのように、とても安らかだった。
 遺体は、学院の片隅に作られた小さな墓に埋葬された。
 奴は死んだ。もう恐怖から解放されたはずなのに、喜ぶ者は誰もいなかった。
 埋葬に立ち会ったルイズは、コルベールに問う。
「私、まだ、わかりません……あいつ、言ってましたよね。『貴様らも悪魔だ』って。私たちも、あいつと変わらないんでしょうか……」
「……さあね……説明できんこともあるさ……」
 悪魔……それは人間でもなりうるのかも知れない。
 もし、自分が句楽と同じ力を手に入れたら……。
「……そうそう、棺にこの服を入れるのは、やめることにしたよ」
 コルベールの手には、ウルトラ・スーパー・デラックスマンの戦闘服とマントが握られている。
「彼は、『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』ではなく、一人の平凡な人間、『クラク・ケント』として一生を終えたかったに違いないから……」

 END
355宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/17(土) 13:52:22 ID:zgX+9hPn
これにて完結です。
お読み下さった皆様、ありがとうございました。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 14:20:05 ID:lQC0fuCm
そういえばこの世界の武器ないし戦術はどう進歩してるのだろう

騎兵が存在するようだけど、それならパイクなんかも出来てておかしくないし
357名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 14:59:59 ID:G5nyfvKL
歩兵はメイジの露払い、位にしか考えられてない可能性もあるがな。
どんなに精度が低くても銃が存在する時点で
パイク兵とか的にしかならない気もするし
358名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:03:45 ID:RJUnm9Of
避難所の考察スレへどうぞ…って言いたいけど、あそこもヘンなのが湧くみたいだし。
自分では こんな感じだと思ってます。

魔法の存在が 大きく影響して 兵器や戦術の進歩は きわめて遅い。
陸戦は、安土・桃山時代の合戦に もう少し進化した銃。
後は魔法(一部のメイジを除き、連射性能の低い小銃と 手榴弾ぐらいの戦力)。
大型のゴーレムなんかは 戦車に相当するのかな?

空軍が よく判らない。
空飛ぶ戦艦があるのに『戦略爆撃』という考えは無さそう。
制空権についても あまり重視していないみたいだし。
『空飛ぶヘビ君』が量産され、飛行幻獣の騎士達でも撃てるようになれば、
対艦決戦思想から航空決戦思想へ変化するかも。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:06:38 ID:t1cUSXVd
銃が登場するまではメイジの詠唱時間を稼ぐ壁として重装歩兵主体だったりして……
でもゴーレム相手には無力かなあ。ファンタジー世界の戦術ってゴーレムと竜騎士
の普及率の設定しだいでずいぶん変わりそう。
360名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:08:15 ID:JBefCF/U
原作には投石器なんて出てないんだっけ?
361名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:10:19 ID:tSa4svOQ
ぜろろ氏と孤独氏乙。

当たり前のように異世界にまで飛ぶゴローに噴いたわ。
まあ普通にルイズが召喚しても役立たずになるのは目に見えてるがw
絶対に心が震えないし
362名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:21:05 ID:0Rg5G2x1
>>361
こんな感じで心は震えるだろう

〜女神の杵亭〜
「いたぞ!」ドンガラガッシャーン
「人が食べてる時に襲撃しなくてもいいでしょう!
 見てください上等な料理のはずなのにこれだけしか食べてないのに料理が床に飛び散ってしまった!」
「食事と言うのはなんというか(ry」
「なんだこいつ、黙って聞いてれば訳わかんないこと言いやがって!」

パシッ グイッ

「がああああああああああああ!!!!!!!!!!」
363名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:29:33 ID:MmNt1kZr
>>356
長槍兵は原作でも何度か言及されている。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 15:35:59 ID:lQC0fuCm
>>358
ぶっちゃけると無視すべきアレから話題を逸らすためでもあるです

>>363
そうでしたっけ?
すぐ原作みてみませう
365名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 16:45:49 ID:+qwW4AQh
〉350
一応敵方のロボのグランチャー召喚は小ネタであった
微妙な内容だったが……
366名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 16:50:03 ID:lQC0fuCm
>>350
どっちかってとテファはネリーっぽい

ワルド「ぼくはママに愛して欲しかったんだ!」
似合うなオイ
367名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:06:49 ID:F5tSddER
ワルド「ルイズは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」
368名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:09:48 ID:W6uS1pzC
>>362
飯がからまないと力が発揮できんのかw

騒ぎを起こして午後のティータイムを邪魔するギーシュ→ゴロー切れる
厨房で夜食食ってる最中に襲撃してくるフーケ→ゴロー切れる

ワルドはどうにもならんな
結婚式の最中に一人だけ飯食ってるのも不自然だし・・・
369名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:09:59 ID:+cdh/8wc
富野キャラは母親に複雑な感情を抱いてる男キャラが多いんで、妙に台詞がワルドに合うなw
370名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:40:36 ID:S6IP1kfc
ワルドはよくある「ママ大好き」的なマザコンではないと思うぞ
371名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:53:16 ID:k1k3VQxP
なんとなく、ワルドはブレンのジョナサンな感じ。ほんとなんとなくだけど。
ブレンは生き物だし、召喚されてもおかしくないかな。
372ぜろろ:2010/07/17(土) 17:53:53 ID:NCJBl8Mu
こんばんは
早くひと段落着かせたいぜろろです。
そんなわけで早くも続きを投下したく御座候

18:00より始めたいと思います
373名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 17:54:50 ID:edAVXe9v
キ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
374ぜろろ 第二十四夜 1/8:2010/07/17(土) 18:00:45 ID:NCJBl8Mu
それでは開始します 以下本文

先程の出迎えはなんだったのか、モット伯邸の門にたどり着くまで、何も現れなかった。

「なんか拍子抜けね?」

ルイズに話しかけられた百鬼丸は無言である。不機嫌、という訳ではなさそうだ。

「なによ、なんか応えなさいよ」

不機嫌そうなルイズの声に仕方なく応える。だが、その返事は決して愉快な内容のものではない。

「まだ始まっても無いんだろう」
「あ、門番」

応えろと言っておきながら無視はないだろう。だが取り合えず今はシエスタを助け出すのが先決である。門に対して左右に一人ずつ、しかしこちらに全く反応を示さなかった。

「夜分に失礼いたします。私、トリステイン王立魔法学院の教諭を務めます……、失礼しますっ!!」

一応生きた人間を見たからであろう。それなりの対応を念のため取るコルベールだが、門番達の目は虚ろで、何も応えないどころか、目の前に人間が居ることに対してさえ、認識できていない様子である。

「操られてるが、今は放っとかれてるんだろ」
「では、このまま?」
「いや、まだ生きてる分、飛び掛られたら厄介だ。その辺に縛り付けよう」

そう伝えると、コルベールはローブをごそごそと漁ったかと思うと、きれいに結ばれた縄を二本取り出した。研究室、と呼ばれた部屋は散らかっていたが、実は几帳面なのかもしれない。

「それでは、あの木の辺りで」
「一人ずつやろう」

木に門番を縛りつけている間、ルイズは手持ち無沙汰に辺りを見回すと、モット伯邸の明かりを眺める。

門から邸内に行くまでに十五メイル程の石畳の道がある。門番、というのは屋敷を囲む塀の入り口を守っているに過ぎない。屋敷を中央に、正面には石畳、左右は少し開けた庭園になっている。
もっとも、入り口から見える部分であるこの庭園はつまり、飾るための庭園であるため、石も草木も整然としている。屋敷の裏、百鬼丸たちから見て正反対には、何者にも見られぬように、屋敷の主、この場合モット伯であるが、彼がくつろぐ為の庭があるのだろう。
ルイズの自慢の視力を持ってしても、目と鼻の先にありながら、薄暗く照らされた邸内はどこかぼやけていて、その様子を窺い知る事はできなかった。

「行くぞ」
375名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 18:02:45 ID:eK3P+UG8
支援
376ぜろろ 第二十四夜 2/8:2010/07/17(土) 18:03:53 ID:NCJBl8Mu
  
いつの間にか、隣には百鬼丸が立っている。すらりと刀を抜くと、コルベールも頷く。
ルイズも緊張した面持ちで、それに倣った。

駆け出そう、と一歩百鬼丸が足を門の中に踏み入れた瞬間に立ち止まった。

「ちょっと、いきなり止まらないでよ」
「さっきより、いや、それどころじゃないな」
「え?」

ルイズを無視した百鬼丸の呟き。コルベールがルイズを庇うように前に出た。
多数の火の玉が集まってきたかと思うと同時に燃え上がり、またもや骸骨の群れが姿を現す。しかし人の大きさほどに大量の火が燃え上がったというのに、暗闇を照らし出す事はなかった。正確に火ではないのだ。

「ミスタ・コルベール、あたしもやります」
「ええ、お願いします。しかし離れないように」

コルベールは彼女の性格は知っている。ならば言って聞かないであろう事は言わない。それにルイズの放つ爆発も、武器としては強力である。これが最善である。彼女がコルベールから離れなければ。

ルイズの放った爆発が百鬼丸の正面の敵を吹き飛ばすと同時に、百鬼丸は骸骨の集団の中に身を躍らせた。

ひたすら切り伏せる。時には的確に首を落とし、頭を割り、槍で防ごうとするなら柄ごと、盾を構えれば隙間に突きをいれ、そのまま薙ぎとばす。
屋敷と門の間、丁度中央に位置する少し広い場所で、百鬼丸は剣を振るう。傷を負うことなく、危なげない、それでも確実に骸骨の数を減らし続けている姿は圧巻である。

「凄い……」
「ミス・ヴァリエール!! 感心している場合ではありませんぞ!?」

百鬼丸から離れた場所で弓を番える骸骨を燃やしながら、己の背後で百鬼丸の戦いぶりに飲まれているルイズに、コルベールは声を掛けた。
もっとも、感動するルイズの気持ちもよく分かる。一対多数の乱戦の中でこの強さ。骸骨どもは、生きた人間に比べれば動作は緩慢ではある。
しかしそれを抜きにしても、百鬼丸は、強い。彼と争った生徒が腕を折られたのも、その場面を目撃していないが、この強さを見れば納得せざるを得ない。

先程からコルベールとルイズは、門から一歩も動かず、百鬼丸を狙おうと弓を番える骸骨を主に狙っている。
しかし仮に矢が放たれても、百鬼丸は顔を向けることなく矢をかわし、叩き落し、あるいはそばにいる骸骨を引きずり盾にする。
目が見えないと言っていたが、嘘ではないかと、今更ながらに馬鹿げたことを考える。彼の目が作り物であることは、なによりコルベール自身確認しているのだ。
いや、見えないからこそ分かるのかもしれない。
矢を叩き落した剣の軌道を変えることなく、そのまま、また一体敵を屠る百鬼丸。
377ぜろろ 第二十四夜 3/8:2010/07/17(土) 18:05:27 ID:NCJBl8Mu
その勇姿を眺めならも、骸骨を炎に包む為の呪文を休まずに唱えつつ、コルベールはそんなことを考えた。




第二十四夜  棘




シエスタはモット邸につれられた後、まず初めに湯浴みを命じられた。人間そっくりの化け物は、どうやら不潔なものはお気に召さないらしい。
モット伯を守る衛兵達や、御者同様に空ろな目をした二人の女性が手伝ってくれる。だが時折シエスタの体に触れる彼女達の指先は、湯浴みをしているというのに冷たい。
何か話しかけても、応えてくれない。まるでそれは死人のようで恐ろしい。
そう、恐ろしいのだ。

丁寧に、時間を掛けて湯浴みを済ませた頃には既に陽は完全に落ちていた。憔悴したシエスタはそのまま部屋へ案内される。奇妙なことに、窓がついていなかった。
いや、窓があるべき場所は何かに、土の魔法であろうか、上から塗りつぶされたような跡がある。その窓のような部分は無造作に赤茶けた線を引かれた、美的感覚があるとは思えないような奇妙な模様。

「主がお呼びになるまで、どうぞ御緩りと……」

その声に振り向くと、ドアは閉められ、がちゃりと鍵が掛けられたような音がする。
この部屋に居るのは嫌だ、とドアを開けようとしたが、そこにあるはずのドアノブが無い。
これもまた、取り外された上から塗りつぶされている。ドアも埋められた窓の跡のように奇妙な模様があった。


抵抗する気力も既に無い。ベッドの上にドレスが二つ広げて置かれている。真紅と黒のものである。好きなほうを選べ、という事であろうか。何とはなしに、真紅のほうを手に取り、着替えるべきか、弱った頭で考えようとした。
たまには派手な格好でもしてみたいが、しかし、黒も捨てがたい。
彼女にとっては、ここ数日のうちに特別な色となったその色のドレスに身を包まれていれば、いや、もう助かりはしないだろう。しかし少しでも恐れる死への恐怖から守ってくれるかもしれない。
ぱたりとベッドの上に寝転がる。
精神的に疲れた彼女は、それを手に握ったまま、何時の間にか眠りに落ちてしまった。





『それではいけないな』

突如聞こえた声にシエスタは目を見開くと、音を立てて起き上がる。
378ぜろろ 第二十四夜 4/8:2010/07/17(土) 18:06:16 ID:NCJBl8Mu
  
自分は眠っていたのだろうか。どれくらいだろうか。外を眺める事も出来ず、時計すら置かれていないこの部屋では時間の経過は計れない。だが、今問題なのはそこではない。

ドレスを投げ捨て、背中を叩きつけるように壁に当てた。

「嫌……」

少し後れて、絹で作られたその上等な朱色のドレスが、部屋の中央の真っ白な床に無造作に、ばさりと落ちる。

同時に、つんと鼻腔を刺激するような鉄の匂い。

「嫌、嫌……」

駄々をこねる幼子のように、首を左右に振り続ける。
脳を刺すようなこの匂い。

「やだ、いや……」

認めたくない。
しかし、白い床に無造作に広がる赤が、彼女の認めたくない現実を、その視覚から連想させた。
これは、血の匂いだ。

「いや、助けてっ!! 助けてっ!! ミス・ヴァリエール!! ヒャッキマルさん!!」

そのまま暫く泣きわめく。

だがいくら呼んでも助けに来てくれない。当然だ。ここに彼らは居ないのだから。

シエスタはドアに向かって走り出し、何度もドアを叩く。

「助けてっ!! 助けてっ!! 助けて、助けて、助けて、助けて……」

何度も、何度も、何度も。

やがてドアは諦めたのか、窓を埋めた形跡のある部分を同じように叩く。

助けて、そう叫びながら、何度も、何度も、何度も、何度も。

−助けてっ!!−





いい加減百鬼丸は苛ついている様子であると、ルイズには見て取れた。殺しても殺しても湧き続ける骸骨達。
379ぜろろ 第二十四夜 5/8:2010/07/17(土) 18:07:01 ID:NCJBl8Mu
とは言え、彼の剣捌きに迷いは無い。それどころか鋭さを増していくようだった。
はためく彼の着物は闇を受け、真っ黒なその姿はまるで鴉のようで、煌く刀は嘴だ。
ルイズは鴉は嫌いだが、今の百鬼丸は別だ。あれは美しく舞う鴉である。普通の鴉とは違うのだ。

「ルイズっ!! 真面目にやれよっ!!」
「う、うるさいわね、ちゃんとやってるわよっ!!」

見透かされたかのような百鬼丸からの怒声を浴びて気を取り直し、再び爆発させる。
恨めしい事に、何を唱えても爆発してしまう自分の魔法は、多様性を持たない。百鬼丸とコルベールだけ居れば事足りるのではないか、そんな考えが頭をよぎる。
違う。ルイズはシエスタを助けに来たのだ。良いではないか、助けられるのなら。
頭に浮かんだ陰鬱を振り切ると、隣で奮闘しているコルベールを仰ぎ見る。

コルベールも僅かに疲れを見せ始めていた。それに対して自分はどうかというと、そうでもない。
己の精神力を削りながら行使する魔法と言うのは、決して無限ではないのだ。
しかし爆発しか起こせない自分に余裕があるのは、きっと、きちんと魔法を行使できていないせいだろう。

「コルベールさん!!」
「ええ、強行突破しますかっ!!」

共闘は二度目の二人だが、それにしても息が合っている。
どちらかが合わせる事が上手いのか、両者優れているのか。
ともかく、この物量を相手にし続けるのは馬鹿らしくなったらしい。

「ヒャッキマルさん、一度こちらに!! 暫く守ってください!!」

返事をすることもなく、百鬼丸はコルベールの傍に駆け寄った。
手近にいた骸骨は、すり抜ける際に鮮やかに切り伏せる。

「なにするんだ?」
「私にも少し見せ場をください」

疲れを感じさせぬように、コルベールは軽口を叩く。

「そりゃ失礼したよ。じゃあ任せる」

そう言うと百鬼丸はコルベールの二メイルほど前に陣取り、再び華麗に舞い始める。
ルイズも負けじとがむしゃらに、こちらへ向かう敵に攻撃を開始した。狙いの甘い彼女の魔法は近くで放てば百鬼丸に当たらぬとも言い切れぬ。
コルベールはひたすら呪文を唱えていた。

三十秒も経たぬうちにコルベールは声をあげた。準備が出来たらしい。

「ヒャッキマルさん、一度私の後ろへ!」
380ぜろろ 第二十四夜 6/8:2010/07/17(土) 18:08:02 ID:NCJBl8Mu
  
またもや返事もなく、周囲の敵を一度なぎ払い、コルベールの指示に従う百鬼丸。
では、と呟くとコルベールは杖を掲げた。
轟音が響き渡る。
巨大な炎が屋敷の玄関まで巨大な炎が直進する。門目掛け殺到していた骸骨が一瞬のうちに蒸発した。

「おお!?」
「凄い……」
「ささ、今のうちに」

そういうや否や、炎は二つに別れ、壁となり、屋敷への道を作り上げた。
その中を、三人は駆け抜ける。

「長くは持ちません」

屋敷の入り口へたどり着いたコルベールは、ローブをごそごそとまた漁ると、何やらガラス瓶を取り出した。栓をあけ、屋敷の入り口を囲むように半円を描いて液体を撒き散らす。

「なんだ?」
「私特製の油です。これで暫く追っ手は無いでしょう」

言うや否や、コルベールが撒き散らした液体に炎が引火し、先の魔法ほどではないが、コルベールの身の丈ほどの炎を上げたまま燃え続ける。

「どうです?『炎蛇』の名もまだ捨てたものではないでしょう?」
「ああ、大したもんだ。凄いな」
「ミスタ・コルベールって……実は凄かったんですね」
「実は、は余計ですよ。ミス・ヴァリエール?」

コルベールが満足気にそう頷くと、三人は屋敷に突入した。
屋敷の中は、玄関を入ってすぐは一寸した広間だ。外とは打って変わって静まり返った物だった。

「何もいないみたいだな」
「そうですか。ふむ、少々疲れましたな」
「ああ」
「でも急がないと、シエスタが」
「そうだな」

こうしている間にもシエスタは危険に晒されているやも知れぬのだ。彼女の安全を確認するまでは、安心など決して出来ない。

「それにしてもルイズ、お前なかなかやるな」

一息つくも、まだ些か興奮した状態だ。そんな気持ちが百鬼丸を一時的に開放的にしていた。
381ぜろろ 第二十四夜 7/8:2010/07/17(土) 18:09:32 ID:NCJBl8Mu
そしてこの言葉は素直に思ったままの事を口にしただけだ。シエスタを助けようという真摯な姿も、馬達を心配する優しい様子も、やはりルイズは百鬼丸にとっては好ましいと思えたのだ。
骸骨どもに飛び掛る直前に見た、ルイズの魔法による爆発を思い出し、会話の切欠にでも、と唐突に褒め始めた。
しかし返ってきた言葉は、何も知らぬ百鬼丸にとっては予想外であった。

「なによ、馬鹿にしてるの?」

コルベールはルイズの返答を聞いて焦った。
正直、ルイズは自分は余り役に立っていない、とそう考えていた。先程の百鬼丸の巧みな戦いぶりも、コルベールの見せた豪快な炎の魔法も、いまだ魔法を正確に行使する糸口さえ掴んでいない己の遥か先を、更に越えたような技術であった。
もっとも百鬼丸もコルベールも、彼女が役立たずであるなどとは微塵も思っていない。
彼女がいる分手数は増えるし、百鬼丸の言葉通り、その威力は侮れない。コルベールも、魔法を温存できるというものだ。

「なんでそうなるんだ?さっきの爆発、大したもんじゃないか?」
「それが馬鹿にしてるって言ってるのよ!!」

未だ戦いの余韻があるため、百鬼丸もすぐに頭に血が上る。ルイズに同調するかのように声を張り上げた。

「意味が分からんぞ!! こっちは褒めてやってんだっ!!」
「ちょっと二人とも、何もこんなところで……」
「偉そうに何よ!! 平民の癖にっ!! ……っ!!」

しまった、と先に思ったのはルイズであるのかコルベールであるのか。

口を閉ざした百鬼丸の顔をルイズは直視する事が出来ない。今のも、先日のも、明らかに自分が悪い。咄嗟に口に出た言葉が決して本音であるとは思わないが、いや、認めたくないが僅かにでも彼を蔑んでいるのかもしれない。
しかし頭を下げる事すらも、自分には未だ出来ないのだ。なんという傲慢であろうか。そしてそんな自分が、とても嫌だった。

ルイズは駆け出した。慌ててコルベールはルイズを追う。

「何でこうなるんだよ……」

それはコルベールが言いたかった。
しかし足を止める。百鬼丸に伝えるだけ伝えておこうと。

「ミス・ヴァリエールは魔法が使えないんです。何を使っても爆発するんですよ。それに、彼女の同級生は全て……使い魔を所持していますが彼女にはそれすらないのです。あなたが気に病むことはありませんが。
彼女を悪く言うものは多い。それでも彼女は努力してるんです。それだけは分かって頂きたい。彼女の非礼は代わりに詫びます」
382名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 18:10:40 ID:eK3P+UG8
sienn
383ぜろろ 第二十四夜 終了:2010/07/17(土) 18:12:37 ID:NCJBl8Mu
 
時間が惜しいが、伝えなければ、と捲し立てる。

「……そうか」

それは確かに自分も無神経だったかもしれない。とは言え、『平民の癖に』というこの言葉だけは許容できるものではないが。
しかしルイズはその平民を助けるために、命の危険を顧みず、今この屋敷にいるのだ。
一体何が彼女にそう言わしめるのであろうか、百鬼丸にはわからない。
それと同時に、彼女と初めて会った時の言葉を思い出した。
出来損ない。彼女は自身をそう表現したのだ。

考え込もうとした百鬼丸を遮り、コルベールは言葉を繋いだ。

「しかし今はシエスタさんを救うのが先です。こうなったら二手に分かれましょう。私は彼女を追います。あなたは反対側へ。合流の合図はこれを」

そういってローブから手のひらに収まるほどの赤い玉を投げて渡した。

「火をつけるか、力いっぱい叩きつければ爆発します。轟音があればそちらに向かう。それでは」

そう言うと、コルベールは振り返ることなくルイズを追いかけた。

一人残された百鬼丸は、舌を鳴らすと、コルベールの提案通り、反対側に駆け出す。
まずはシエスタを助けねばならない、と考える事は放棄する。
しかし心に刺さった棘は中々に抜けにくいものであった。

棘ははたして誰の心に刺さっているのか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

終了です。
支援、感想、前回の乙、ありがとう御座います。
もっと伯編も残すところあと後三話です。
いましばらくよろしくお願いします

それでは
384名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 18:45:04 ID:Bf0Osf6a
ぜろろの方乙です
楽しみにしてた分この投下ラッシュはうれしすぎる
385名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 18:50:30 ID:FUhdb+RS
>>355
「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」。原作では、彼の死後、世界は元に戻ったようだが、こちらでは、少なくとも完全に元に戻ったとは思えない。
原作では、彼が「完全に滅ぼした」ものは一つも無いが、こちらでは、多くのものを滅ぼしているのだから。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 18:58:46 ID:1/7OUgK0
なんかよくわかんないけどこれはっときますね

> ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!

あと2chビューアにはあぼーんっていう便利な機能があるよ
387名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:07:41 ID:yuAVevM3
>>355
おつかれさん
だらだら続く下痢便のようなSSが多い中、スッキリ終わってGJ
388名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:10:01 ID:54snQ3LC
>>386
俺も何かよくわからんけど、興味無いならまともな意見は出ないんじゃね?
少なくとも原作は知ってる人みたいだし

宇田川氏のSSざっと読んでみたけど、原作知らない所為でカオスとしか・・・w
過去に何があったにしろ完結お疲れ様です
389名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:10:55 ID:yuAVevM3
6000年以上の血脈を保ち続けてる狡猾な王侯貴族なら黙って耐え忍んだと思うけどなあ
魔法文化は廃れてないんだし2,3世代もすればあー昔そんな災害があったね程度じゃないの
絶対正史の記録には残さないだろうし
390名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:11:38 ID:yuAVevM3
>>385
アンカ忘れてた
391名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:15:41 ID:NVSqPOXi
鮫の話しよう→キャプテンシャーク→魚、勇者。
勇者魚屋。
よし、彼について語ろう。
392名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:19:42 ID:NCJBl8Mu
よしてください、でん部が炎症を起こします。

あれは笑った
393名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:20:21 ID:NKukxHlB
鮫と言ったら、シャークアッパー!でキャプテンキッドも忘れないであげてください…
394名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:24:06 ID:lsXGB0Bc
>>391
ズックが勇者になれた点では。兵士GJとしか言いようがないな
395名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:39:48 ID:NVSqPOXi
最後の締めが結構好きなんだよな。
それでも、私は彼を勇者と呼びたい。
396名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 19:40:46 ID:z+E5YI8v
>>393
聖女(ルイズ)に負けて丸坊主ですね。わかります。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 20:04:42 ID:s2oGq3/W
>>394
仮に本当にシェカネアが旅に出たらどうなってたんだ・・・
398名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 21:34:39 ID:1mqbgp4L
勇者カタストロフだったら、「暴動だー!」のネタは入れたいところだなw
でも、アンチヘイト的な意味で使ったら白けるから勘弁な。
399名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 21:44:09 ID:LLb57Q9+
アリだー!
400名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 21:44:23 ID:NVSqPOXi
税金200%UPくらいしないと、暴動はおきないよ。
401名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 22:15:16 ID:PwhA1zv/
アン様ならきっと何とかしてくれる
402名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 22:22:25 ID:OFbe4soY
>アン様ならきっと何とかしてくれる
主に麻雀で。

ムダヅモ無き改革・ハルケギニア編というのを妄想したが俺には書けそうにない。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 22:28:07 ID:W/9iznan
>>393
キャプテンキッド?黒魔剣でマーメイド砲でもブッぱなすのか?
404名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 23:29:09 ID:q1cAyrKG
カタストロフならむしろダイ・バザール呼んで
トリスティンに百貨店開いてもらいたい

トリスティンの商店が軒並み潰れる
→価格を一気に跳ね上げる
→暴動だー!
405名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 23:31:12 ID:ueQK4Rs4
ルイズがハチを呼んだら素直にかわいがってやれるのだろうか
アレも結構地味にウザかった気がw
406名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 23:49:44 ID:0mRHKUT2
ハチは小ネタにある
前に話振ったら、直後に投下されて吹いた覚えがある
407名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 23:50:12 ID:S6IP1kfc
ハチってタコだっけ?
408名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/17(土) 23:54:36 ID:0mRHKUT2
フグ毒
409名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 00:00:14 ID:6tBVmjiz
ああ、強斬りが一番強い人。
410名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 00:17:59 ID:fDHCGZTU
>>389
どうせなら貴族たちを徹底的に殺しつくして欲しかったな
411名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 00:22:14 ID:qU7DGIYN
プラネテスか。

巨大風石によって浮かび上がった大陸は宇宙へと進出していた。
風石は空気をとどめる役割も果たしていた。
だが、無重力下でのデブリの存在はハルケギニアの住人にとって脅威であった。
メイジの役割はいまや、降り注ぐデブリを排除することになっていた。
そこにルイズが召喚した使い魔は……
412名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 00:22:38 ID:LNH9sAcX
我々は仲間の身を案じているだけさ・・・
その結果美味しい事があったとしてもそれは単なる事故ではないかね?
413車輪の国、ゼロの少女 ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:39:48 ID:hK3yZdnS
こんばんは、新規投稿です。
文章力は決して良いとは言えませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
元ネタは「車輪の国、向日葵の少女」という18禁ゲームで、キャラは「法月将臣」です。
もし問題が無いようでしたら、45分ころに投下します。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 02:42:25 ID:qU7DGIYN
事前支援。
あと、とりあえずsageようぜ
415車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:45:16 ID:hK3yZdnS
 私は、いつ意識が無くなったのだろうか。
 確か森田と応接間で話をしていたはずだ。
 そして、そうだ。突然現れた謎の青白い扉へと手を伸ばしたのだ。
 すると私は吸い込まれ……
 意識を失った。

 「あんた、誰?」
 爆心地で横たわる法月を、ピンクの髪をたなびかせる、小柄な少女が見下していた。
 法月はとっさに身を起こし、胸のポケットにある、拳銃と、予備の弾丸、軍用ナイフを確認し、辺りの状況を把握した。
 どうやら、私に危害を加えるつもりはないらしい、そう法月は判断した。
 ひとまず安心し、少女の質問に答える。
 「私は法月将臣、特別高等人だ」
 「特別高等人? 何それ」
 特別高等人を知らない、だと? 法月は少女がつまらない冗談を言っているのかと思った。だが彼女の顔を見ると、冗談を言っているようには見えなかった。
 特別高等人。それを聞くだけで多くの人は委縮し、いかに機嫌を損ねないかを考えて、発言するようになる。それがあたり前だと思っていた彼にとって、この少女と、少女と同じ反応をした周りのギャラリーは、普通では無かった。少なくとも彼の居た世界では。
 
 「質問がある。まず第一にここはどこだ?」
 法月が威圧感のある声で、少女に聞いた。
 「ここはトリステイン王国よ」
 「トリステイン王国?」
 「トリステイン王国を知らないの? あんた相当の田舎者ね。じゃあ、ハルケギニア大陸位は知ってるでしょ?」
 呆れたような口調で、少女は言った。
 「Sharinという国は、知っているか? 私の居た国だ」
 「あんた、本当に田舎者なのね。 聞いたことの無い国だわ」
 これは、普通ではない。なんなのだこの状況は。落ち着いて考えると、何から何までおかしい。法月は、やっと自分の状況が異常である事に気付いた。
416車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:48:07 ID:hK3yZdnS
まず、時間。腕時計は午後5時20分を示しているが、太陽の位置を見ると、おおよそだが正午くらいだ。一日の間意識を失ったという可能性もあるが、それにしては体の変化が無さ過ぎる。
それに気候もおかしい、さっきまでは30度を超える猛暑の中に居たが、ここは20度位である。これらが意味すること、それは時空の超越。そう思う他無かった。

彼らは、共通した世界観を持つ精神病患者。
この惑星は私の居た惑星では無く、遠い他の惑星。
全く次元の違う、異世界。
考えうる、可能性を全て論理的に検証してみたが、一つも腑に落ちない。
唯一、最後の“この世界は次元の違う異世界である”という考えが、正しい気もしたが、最も現実的ではないため、信じたくなかった。
「ミス・ヴァリエール、早く儀式を済ませなさい」
 声が聞こえたほうに振り向くとそこには髪の薄い、いや、ほぼ無いと言っていい位の、中年の男が立っていた。
 「はぁ……、いい!? あんたみたいな平民が、こんなことされるなんて、ありえないんだから! 感謝しなさい」
 「おいおい、初キスがおっさんで、しかも平民だなんて、ルイズはついてないなぁ!」
一人の少年がはやし立て、笑いが起きた。
 「さぁさぁ、早く誓いのキスを済ませるんだルイズ!」
417車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:50:14 ID:hK3yZdnS
周りの事なぞ、気にも留めずに法月は男に質問する。
「そこのお前、儀式とはなんだ。私は何故ここに居る?」
「私は、この生徒たちを指導をしている、ジャン・コルベールです。あなたは使い魔として、サモン・サーヴァントで召喚されました。普通は、平民が召喚されるなんて事はあり得ないのですが……」
Servant、確か意味は召使いだったな。
そうか、私は拉致されたのか。恐らくだが、この先半永久的に奴隷のような扱いを受けるのだろう。
それは、まずい。私は一刻でも早く、元の世界へと戻らねばならん。
法月は、この不愉快極まりない状況から脱したかった。

「つまり拉致されたのだな、私は?」
「ら、拉致だなんて」
「拉致ではない、ならば元の世界へと戻してもらおう」
「それは出来ません」
「……そうか、それは残念だ」
その一言を言い終えると同時に、法月は胸ポケットから拳銃を引き抜き、コルベールが反応する前に額へと突き付けた。 

「これでも出来ないと言うか? 出来ないならば、この拳銃が貴様の頭蓋骨を割って、脳組織を破壊し、貴様の思考を停止させてやろう」
嘲笑の声が失せ、空気が冷たいものへと変わっていく過程を、法月以外の者は感じ取り、杖を構えた。この法月を友好的だと判断する者は、誰ひとり居ない。
ルイズは自分の召喚した使い魔が、コルベールに危害を加えないことを祈り、心のなかで(拳銃ってなんなのよ!)と思った。もちろん声には出さない。
そして、額に何かを突き付けられているコルベールは、どうするべきかを、思案した。この法月とやらが持つ武器は、恐らく一瞬で私を死に至らせるだろう。とりあえずは、説得するしかないものか。
418車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:55:14 ID:hK3yZdnS
 「出来ない、というのはあなたを元の場所へ戻す方法が無いという事です。
サモン・サーヴァントは一方通行の儀式であり、現時点であなたを元の場所へと返す手段はありません。
もし、あなたが私を殺したとしても、あなたは間もなく牢獄に入り、処刑されるだけです。今、私を殺しても一つも良い事が無い。ならば、私の話を最後まで聞いてはどうですか?」

コルベールは出来る限り、冷静に説得した。
 「ほう、なかなか肝が据わっているではないか。良いだろう、聞こう」
 そう言いつつも、法月は拳銃を構えたままだった。
 「まずあなたはサモン・サーヴァントによって、あのヴァリエールという少女に、使い魔として召喚されました。もちろんあなたを故意に選らんだ訳で無く、全くの偶然かと思われます」
 「一つ聞きたい、コルベールよ」
 「なんでしょうか」
 「私は恐らくだが、ここから遠く離れた地から、一瞬で召喚された訳だが、一体どのような技術を使い、召喚したのだ?」
法月は現実的な答えを待った。
 「技術、と言いますと? ただの魔法ですが」
魔法、だと?

魔法。

もっとも恐れていた、非現実的な答えが、法月に返された。空想の世界でしかあり得ない事が、現実に起きている。その現実が法月の目の前に現れ、激しい眩暈に法月は襲われる。
そして、法月は気付いてしまう。さきほど思った、この世界は次元の違う異世界である。という考えが正しい事に。
419車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:57:31 ID:hK3yZdnS
「ミスタ・マサオミ? どうしたのです」
 「いや……なんでもない。続けろ」
 それから法月は使い魔についての説明を受け、受けている間に、なんとか冷静さを取り戻した。
 「では、私には使い魔になるしかないというわけだな」
 「えぇ、私たちはあなたの衣食住と、元に戻る方法を模索することを約束します。その代りにあなたはミス・ヴァリエールの使い魔になる。どうしょう、今のあなたには、一番良い選択かと思われますが」
仕方ない、今の私には何も出来ん。そう判断した法月は構えていた拳銃を下ろし、胸へとしまった。
コルベールは安堵のため息をつき、周りの者、特にルイズはそれに同調する。
 「最後の質問だ。コルベール、この国の王がもし、遠い国のある者に無理やり拉致され、そこで雑用や、護衛などの、くだらないことをやらされていると知ったら、この国はどうするのだ?」
 「どうするって、我が国の軍隊が総力をあげて、王女を取り戻すでしょ……」
 コルベールは、法月が何を言わんとしているのか、気づいてしまった。法月はいやらしい笑みを受かべ、コルベールを見つめている。
 「我が国の兵隊は、一人一人がこの武器を持っているぞ?」
 コルベールの目は焦点を失い、顔はどんどんと青ざめていった。
 もし、彼の国が、取り戻しにトリステインへとやってきたら……責任は私にあるのではないだろうか。
420車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 02:59:08 ID:hK3yZdnS
「ふ、ふはははははは! 冗談だ、ミスタ・コルベール。気にするんじゃない」
 コルベールは、さっき以上の深いため息をついた。
 「し、心臓が止まるかと思いましたよ。それでは条件をのみますか?」
 コルベールのこの世の終わりのような顔を見た法月は、満足し、言った。
 「いいだろう」

 コンタクト・サーヴァントが成功する。本来は喜ぶべき所なのだが、ルイズは正直微妙な気持ちだった。そりゃ成功したのは嬉しい、だけど、平民だし、危険人物だし、この先のことを考えると不安で仕方がない。 
 「それでは、コンタクト・サーヴァントを」
 「はい……」
 今度は、はやし立てる者は誰ひとり居なかった。
 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そう言い終えると、ルイズは顔を法月に近付け、唇を法月の唇に重ねた。法月は、表情を一切変えず、事務的にキスを受けた。
 ちょっとは慌てたり、戸惑ったりしなさいよ! 法月の淡白な態度にルイズは少し腹を立てた。
 「キスで契約か……やはりファンタジーの世界だな」
そう誰にも聞こえないほどの声で、つぶやくと法月は左手に、痛みともいえる、熱さを感じた。
だが、これほどの痛みは何度も感じたことがあり、法月にとっては声を出すほどでもない。
そして、痛みを感じる左手を見ると、法月の手の甲には、見たことの無い模様が浮かび上がっていた。
421車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 03:00:32 ID:hK3yZdnS
 「珍しいルーンですね…… それでは皆さん、これにてサモン・サーヴァントの儀式を終了します」
 そうコルベールが言うと、生徒たちは、法月に聞こえないよう細心の注意をはらって、法月を非難し、法月と絶対に目を合わせないようにして、寮へと戻っていった。
 「ではヴァリエールよ、私を寝どこへ案内するんだ」
 「様を付けなさい!」
 ルイズは空を見上げ、嘆いた。
 始祖ブリミルよ! この大きな試練を乗り越えるのに、お力をお貸しください。
 ルイズは始祖ブリミルに、哀願した。
 「神に祈ったって何も変わらんぞ、ヴァリエール」
 ……なんで人の心が読めるのよ。
 こうして、法月将臣はルイズの使い魔として、過ごすことになったのだった。
422車輪の国、ゼロの少女(1話目) ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 03:03:29 ID:hK3yZdnS
とりあえず、これにて投下終了です。
車輪の国、向日葵の少女では国名が分からないため、
本作では「Sharin」という事にして、物語を進めます。
お付き合いしていただき、ありがとうございました。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 04:09:03 ID:8yz8myTe
乙ー
こっちは新作がガンガン出ててうらやましい
424名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 09:16:51 ID:ryiHnx8E
カービィ召喚
カービィの捨てた星(メイジ能力)を必死で追いかけて穴に落ちるルイズ
425名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 09:45:59 ID:M778WGJd
カービィはもう召喚されてんだろ
426名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 09:52:04 ID:vNGMcOxd
複数の書き手に召喚されてるキャラもいるんだし、書けるんなら投下して欲しい。
でも、先行作があると 当然ハードルは上がるけど。
427名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 12:22:05 ID:WzxWzbCw
>>422
 とりあえず、乙。
 会話行の行頭を一文字字下げするのは、読みづらいので勘弁願いたい。
 基本的に、地の文と会話文の字下げ位置が同じになると読みにくく感じるので、
普通の小説のように、(基本的には)地の文だけ一文字字下げして欲しい。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 12:37:36 ID:CR+3z4HK
>>422
遅れながら乙
エ○ゲなんて買った事ないから原作知らないけど、何か主要人物っぽいな
性格が性格なだけに今後が面白そうだ
429名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:06:06 ID:iKZT+F7s
GTA EFLCからルイス・ロペス召喚
タルブのゼロ戦がユスフの悪趣味な金ぴかリトルバード攻撃ヘリに
430車輪の国、ゼロの少女 ◆tJDO8OLE3U :2010/07/18(日) 13:06:48 ID:hK3yZdnS
>>427 
了解しました。

431名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:08:35 ID:LDOwUvZi
>>407
可愛い女の子タイプの妖精→(究極進化)→フグ(白子・有り)
ハチのもってる毒は、魔王が埋めてもらいたがるほど
432名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:19:22 ID:zvlxw5z7
ロクゼロコレクションをやってて、
「ジョゼフにミョズとしてドクター・バイルが召喚されたら、
原作以上にえらいことになりそうだな」と思った。
ミョズの能力と科学者の知識を生かせばいろいろできそうだし。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:39:54 ID:fDHCGZTU
>>420
ねーよw将臣が契約条件の詳細も詰めずその場のノリで承諾するなんてありえないよ
まだ最初から気絶させて無理やり事後承諾で契約してたほうがまだまし
事実を知らされた将臣の行動を作者が描けるか疑問だけど

つかさなんでお前ら冒頭とのルイズとの契約を適当にするわけ?
最初のキモであるスタートラインがいい加減な作品の9割9分は駄作であり
途中で放棄して止まってるのばっかりと言う事実を申しておく
434名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:41:28 ID:6WrO6M0F
>>9割9分は駄作

単なるスタージョンの法則じゃないか。
435ぜろろ:2010/07/18(日) 13:42:01 ID:x2gd1eAJ
車輪の方乙です。

投下したいのですがよろしいでしょうか

13:50から開始したいと思いまふ
436名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:43:46 ID:M778WGJd
あんた最近働きすぎだぜ・・・
支援支援
437名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 13:46:45 ID:ZScZm28H
>>87
鮫といったらトランスフォーマーカーロボットのゲルシャークだろう
438ぜろろ:2010/07/18(日) 13:50:23 ID:x2gd1eAJ
>>436 ありがとうございますw
珍しく長い休暇をいただいたもので、明ければまた休筆となり、また
常々頭を掠めていたこれをひと段落させようとしている次第であります。
少ないですが喜んでくださる方も確かにいますし。
それはそうと以下本文。


コルベールは容易くルイズを見つける事が出来た。廊下を走り、角を曲がったすぐそこに彼女は力無く佇んでいた。
敵地において彼女が、たった一人で動き回る事の愚かさは十分に分かっているのだろう。
咄嗟に今来た道を振り返るコルベールだが、百鬼丸の姿は既に失せていた。相変わらず素早い事である。

「すいません、ミスタ・コルベール。私が悪いんです」
「ミス・ヴァリエール」
「わたし、謝らないと、分かってるんです、けど」
「そうですね。謝らなければなりませんな」

返事は無い。反省はしているのだろう。何が悪いのか、その根源も恐らくこの聡明な生徒は自ら気付いている。
彼女の鬱屈は理解しているものであったが、しかしコルベールの想像以上であり、そしてまた彼女の思いは複雑であるとも分かった。同年代の彼女を嘲る学友達には素直になれない少女ではあるが、彼女が百鬼丸に頭を下げられない、というのは恐らくそれだけではないのだろう。

「ですが、まずはシエスタさんを助けましょう。生きて帰って、謝ればよいのです」

帰ったところで恐らく素直に謝れる訳ではなかろうが、今は二人の仲を修復する事よりもシエスタの命の方が大事なのだ。
ルイズにもそれは伝わったようで、いや、もとより分かっているのだろう、先程よりは、いくらか力強い声で返事をした。



第二十五夜  救出劇



廊下に備えられた部屋を一つ一つ、しかし用心深く空けながら、コルベールとルイズは探索を続ける。

「ふぅ、ここも手がかりは無しですな」
「やだ、埃っぽい」
「行きましょう」

既に五つ目の部屋である。だが、どの部屋も一様に、書きかけの手紙、脱ぎ捨てられた衣服、開かれたままの本など、それまでそこで生活していた人間が確かにいたはずだが、ある日突然居なくなったような、そんな痕跡が見受けられた。

さらに伯爵ともなれば当然、多数の部下や使用人を持つ。しかしこの屋敷、人の気配どころか、これまで人が使っていた形跡は認められるのだが、それに相反して余りにも閑散としていた。いや、魔神の存在を考えれば、奇妙どころか、当然、と判断すべきかも知れない。

モット伯の屋敷は二階建て、左右対称の構造になっており、屋敷入り口の広間から左右に広がる邸宅。二人は入り口の門から屋敷を向いて左側を探索している。
一階の部屋も残すところあと一つ。これまでシエスタの手がかりはまるで無かったため、次もどうせはずれだろう、と二人は心のどこかで思っていたのかも知れない。
部屋を出ようとした時、ルイズに尋ねられた。
439ぜろろ 第二十五話 2/5:2010/07/18(日) 13:52:13 ID:x2gd1eAJ
  

「私の魔法のこと、百鬼丸に」

僅かにではあるが彼女には聞こえていたのであろう。

「ええ、申し上げました」
「何か、言ってましたか?」
「いえ、何も。歩きながらにしましょう」
「はい、その」
「ヒャッキマルさんですがね」

唐突に。

「実は目が見えないんですよ」
「は?」
「ヒャッキマルさんは目が見えないんです。彼の目は良く出来た作り物です」
「嘘でしょう?」

信じられない、と言うように余りの驚きに目を丸くするルイズ。無理も無い。コルベールの記憶の中にも、そのような素振りは一度たりとて無かったのだ。それどころか、常人を凌駕する動体視力すら有しているように感じる。
嘘だろう、と疑う彼女にしても恐らくそうなのであろう。
実際に目の前で、眼球を玩具のように転がしたのを確認した自分でさえ、未だに疑う事がしばしばだ。先程の苛烈な戦いにしても然りである。だが事実なのだ。

「本当です。足が止まってますぞ?」
「あ、はい」
「実際に彼が目を取り出すのも見せてもらいました」
「嘘でしょう?」
「ですから、本当ですと、まあ信じられないのも無理はありませんが、本当です」
「それでなんで、あんなに強いんですか? 見えてるようにしか思えません」
「さて、それは私も。ですが見えなくても分かるものらしいのですよ」
「何それ……訳わかんない。嘘でしょう?」
「本当ですと、何度言えば。人間と言うのは、私達の想像する以上の可能性を秘めているんでしょう。開けますぞ」

愕然とするルイズをおいて次の扉を開こうとする。

「ミス・ヴァリエール、そこから動かないで」
「え?あ、はい」

何か不穏なものを感じ取ったコルベールは、呆然とするルイズに注意を促すと、扉を開ける。同時に、鼻を突く酷い匂いが、部屋から廊下に向けて広がった

「これは……」

腐臭である。
部屋の中にあったものは骨の山、その中には肉片が僅かにこびりついているものもあり、それがこの匂いを生み出しているのだ。
骨により組まれた山の天辺に、まるで収集物のように積み上げられた髑髏。その大きさからみるに、女性、あるいは子供が多いようである。
440ぜろろ 第二十五話 2/5:2010/07/18(日) 13:53:55 ID:x2gd1eAJ
  

「私の魔法のこと、百鬼丸に」

僅かにではあるが彼女には聞こえていたのであろう。

「ええ、申し上げました」
「何か、言ってましたか?」
「いえ、何も。歩きながらにしましょう」
「はい、その」
「ヒャッキマルさんですがね」

唐突に。

「実は目が見えないんですよ」
「は?」
「ヒャッキマルさんは目が見えないんです。彼の目は良く出来た作り物です」
「嘘でしょう?」

信じられない、と言うように余りの驚きに目を丸くするルイズ。無理も無い。コルベールの記憶の中にも、そのような素振りは一度たりとて無かったのだ。それどころか、常人を凌駕する動体視力すら有しているように感じる。
嘘だろう、と疑う彼女にしても恐らくそうなのであろう。
実際に目の前で、眼球を玩具のように転がしたのを確認した自分でさえ、未だに疑う事がしばしばだ。先程の苛烈な戦いにしても然りである。だが事実なのだ。

「本当です。足が止まってますぞ?」
「あ、はい」
「実際に彼が目を取り出すのも見せてもらいました」
「嘘でしょう?」
「ですから、本当ですと、まあ信じられないのも無理はありませんが、本当です」
「それでなんで、あんなに強いんですか? 見えてるようにしか思えません」
「さて、それは私も。ですが見えなくても分かるものらしいのですよ」
「何それ……訳わかんない。嘘でしょう?」
「本当ですと、何度言えば。人間と言うのは、私達の想像する以上の可能性を秘めているんでしょう。開けますぞ」

愕然とするルイズをおいて次の扉を開こうとする。

「ミス・ヴァリエール、そこから動かないで」
「え?あ、はい」

何か不穏なものを感じ取ったコルベールは、呆然とするルイズに注意を促すと、扉を開ける。同時に、鼻を突く酷い匂いが、部屋から廊下に向けて広がった

「これは……」

腐臭である。
部屋の中にあったものは骨の山、その中には肉片が僅かにこびりついているものもあり、それがこの匂いを生み出しているのだ。
骨により組まれた山の天辺に、まるで収集物のように積み上げられた髑髏。その大きさからみるに、女性、あるいは子供が多いようである。
441ぜろろ 第二十五話 3/5:2010/07/18(日) 13:55:08 ID:x2gd1eAJ
 
「なんという……」

嫌悪感を覚える匂いと、当然だが余程驚いて見えたのであろうコルベールの表情に釣られ、つい扉を覗き込んでしまったルイズはその瞬間、声にならぬ悲鳴を上げた。

扉を開ける寸前に、僅かに匂った死臭からルイズを遠ざける為に、動かぬよう伝えたのだ。しかし予想以上の有様に呆然として、ルイズの目に入れぬ配慮を怠った己の失態をコルベールは悔やんだ。
ルイズは最早気が動転しているようだ。身をすくめ、自分の両肩を精一杯抱いている。
その光景は、十六歳の少女に見せるには余りにも惨すぎる。いや、年は関係ない。人のなす事ではない。

「あ、ああ、あ」

コルベールは杖を持たぬ左手で、声にならぬ声を上げるルイズの肩を、覆うように抱く。

「落ち着いてください。ミス・ヴァリエール」
「ああ、あ、ああ」
「ミス・ヴァリエール!! お気を確かに。恐らくシエスタさんはまだ無事です。ここにあるのは時間のたったものばかりです」
「そうよ、シエスタがっ!!」

駆け出そうとするルイズを必死に抑えるも錯乱したルイズは暴れ続けた。
あまりに刺激が強いとドアを閉めるが既に遅い。もう、彼女はその光景を目にしてしまったのだ。
多少手荒では在るが止むを得ない、とルイズの両肩をしかと抱き、正面へ向かせると、すかさずその小さな頬に平手を打った。

ぱん、と乾いた音が廊下に響き渡る。

「あっ!?」
「落ち着いてください」
「は、はい、すいません」
「いえ、無理もありません。手荒な事をして申し訳ありません。が、急ぎましょう」
「はい……」

やはりこれが一番効く、とコルベールは申し訳なさと共に、うまくいったと安堵しているが、そんな彼の心中は関係なしに、ルイズは頬を痛そうに抑えている。

「もう少し加減してくれても……」
「何か?」
「いえ、なんでも」
「痛くなければ意味がないんですよ」
「聴こえてるじゃないですか」
「次は気をつけます」
「次なんて、嫌です」
「そうですね。私もそう思います。さあ、二階へ、急ぎましょう」

そう言って二人は二階へと続く階段を上がった。シエスタの無事を祈りながら。

一方、二人と別れた百鬼丸はというと、途方に暮れていた。
442ぜろろ 第二十五話 4/5:2010/07/18(日) 13:56:25 ID:x2gd1eAJ
慎重なコルベールとは違い、百鬼丸は部屋を見つけると、室内の気配をまず探り、人の気配がないと分かるや否や、乱暴にドアを開け、手がかりはないかと探る。
鍵つきの扉ならば、無造作に叩き切った。
恐れるものなど何も無いと言わんばかりのその行動は、無謀とも取れるのだが、それでいて探索は確かに早い。
コルベールたちが二階へ駆け上がっている頃、彼は既に屋敷の右半分の部屋は全て探索を終えていたのだ。

確かに魔神の気配はするのだが、この屋敷留まっていたのであろう魔神の妖気は、色濃く屋敷に染みわたり、どうにもうまく探れない。
忌々しげに窓の外に見えぬ目を向けると、コルベールの放った油から放たれる炎はその勢いを落とし始め、骸骨達が屋敷に侵入するのも最早時間の問題かに思われた。

これはまずい。

そう思った時、百鬼丸の聴こえぬ耳に、声が届いた。

−助けて!!−

シエスタだ、間違いない。
集中して彼女の心の叫びを聞く。

耳の聞こえぬ百鬼丸は相手の心の声を聞き会話をする。
常人の耳と同様に、離れた分だけ聞き取り辛さを増すその心の声は、命の危機に晒されたシエスタにおいては余程に強く、そして百鬼丸に助けを求める事で、奇跡的に彼の耳に届いたのだ。

「どこだ!?」

常人が目を瞑り、己を呼ぶ声を探るのと同様に、心の声を聞く彼は、自身の心を澄ます。

−助けてっ!! ヒャッキマルさんっ!! 助けて!!−

「下か!?」

階段を駆け下りる時間すら惜しんだ百鬼丸は、手すりを飛び越え、一階の床に着地すると
、既に探索したはずの、しかし確かに声の聞こえる方へ駆け出した。
先程叩き切った扉を踏み越え気配を探る。

−助けて!!−

「今助ける!!」

届けとばかりにそう怒鳴りつけるように声を上げ、声の聞こえたほうを向くけば、大きな本棚があり、悲鳴は確かにその本棚を過ぎた、奥に隠されているのであろう場所から聞こえる。

押せども引けどもびくともしないし、流石に刀で切れるような物でもない。
暫く唸った百鬼丸は、棚の中ほどに入れられた本の一部を抜き取ると、合流の合図にとコルベールから渡された、爆発するとかいう赤い玉を隙間にねじ込む。

シエスタは確かにこの向こうにいるのだ。一石二鳥である。
443ぜろろ 第二十五話 おわり:2010/07/18(日) 13:59:20 ID:x2gd1eAJ
  
今度は抜き取った本を、硬そうな背表紙を奥に押し込み、手近にあった豪奢な、しかし作りのしっかりした椅子を両手で抱え、力の限り本棚に向かって投げつけた。
すかさず身を隠す。

轟音が屋敷全体を揺らした。

元は合図の為の物ではないのだろうその威力に、本棚はその原形をとどめず、無残に吹き飛んでいる。
せめてどれ位の爆発が起こるのか訊いておけばよかったのだが、渡された状況が状況であり、聞く暇すらなく、念のために、と距離をとっていたのは正解だった。

「やりすぎだろ……」

ここにはいない人間にぼやいても仕方ないが、しかし、この振動である。
確実にコルベールたちは気付いたはずだ。
煙の中を百鬼丸が覗き込むと、地下へ続く薄暗い階段。その先に感じる大きな空洞から確かに何か感じる。

間違いない。

煙と共に、瘴気のように部屋中に溢れ返った魔神の気配を感じながら、百鬼丸は飛び込んだ。
少しすればコルベールたちが来るはずだが、先程から百鬼丸の脳に響くシエスタの悲鳴を聞きながら、暢気に待っているわけにもいかないと、階段を駆け下りながら刀を抜き、今度は確実に届くはずだと、助ける求めるその名を呼ぶ。

「シエスタ!!」

階段を通り抜けると薄暗い広間に出た。何の為に作られたのであろうか。酒蔵か、武器庫か、財産を隠したのか。
今はまるで居住する為にテーブルや寝台、人骨で組み上げた塔のような、装飾品のつもりであろうか、それらの置かれた部屋はかなり広い。屋敷の半分を覆うほどに。

そして階段から最も離れた部屋の隅、何かを追い詰めるようにしかし悠然と歩む、外套を羽織った大柄の男。
追い詰められているのは、シエスタだ。逃げ場は無いかと壁にすがりつき、怯えている。身に着けているのは、魔神が無理やり着替えさせたのであろうか、漆黒のドレスであるが、そのところどころ破れ、白い肌が露になっている様は、必死に逃げ回ったのであろう事が伺えた。

「シエスタ!!」
「邪魔が入ったな」
「あぁ、ああ、あぁ」

こちらをゆっくり振り向いた大柄の男が恐らくモット伯であろう。学院長室で、そして先程から感じていた異常な気配は明らかにその男から発されている。

「魔神めっ!!」

言うや否や、百鬼丸は腰を落とし、疾風の如く走り出す。

シエスタを助ける為に。
人のかたちをした化け物を殺す為に。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上

支援感謝です
今日か明日中にはあと一回ほど
ただいま推敲中です。

前回のはどうにも拙かったようじぶんでかんじたもので。
ともかく後二話。
今しばらく
444名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 14:06:44 ID:6tBVmjiz
乙です!
前回は拙かった…だと…?
毎度毎度面白いです。次も楽しみにしてますー!
445ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2010/07/18(日) 15:38:31 ID:rMlVJWhH
ぜろろの人、乙でした。

さてそれではみなさまこんにちは、ウルトラ5番目の使い魔、5話の投下準備できました。

他の方の予約などなければ、15:50より開始いたしますので、よろしくお願いいたします。
446名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 15:42:24 ID:izEBMV5n
「ウルトラー!」
「しえーん!」
 第五話
 間幕、タバサの冒険
 群青の狩人姫 (後編)
 
 ハイパークローン怪獣 ネオザルス
 ウルトラマンアグル 登場!
 
 
 シャルロットとジルは夢を見ているような心地の中にいた。
 キメラドラゴンたちが……幼生体とはいえ巨大な体と、この世のものとは思えない
凶悪な力を誇る怪物たちが、まるで赤子の手をひねるように倒されていく。
「あれ……は」
 しぼりだすような声を発したジルとシャルロットの前に、”彼”は陽炎のように現れた。
 深い青き体に、黒と銀色のラインをあしらい、鋭く冷たく輝く目を持った彼は、
銀色のマスクを無表情に輝かせ、突然の乱入者に慌てるキメラドラゴンを悠然と見据える。
 ”彼”は、人ではなかった。かといって、亜人と呼ぶのも二人にははばかられた。
 どうしてかというならば、キメラどもによって汚染されたこの森の毒々しい空気の中で、
彼のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 なぜならば、強大な力を与えられた超人といえども、その心までは変わることはない。
「もしかして……あの人?」
 シャルロットは、表情を映さない彼の顔からではなく、彼がまとった他者を寄せ付けない
孤独をまとった威圧感から、彼の中に自分たちを助けてくれたあの青年と同じものを見た。
 そうだ、彼もまたあらゆる人々と同じように、怒り、悩み、苦しみ、葛藤の中で自問自答を
続ける一人の”人間”であった。
 
 地球は、突如として与えた強大な力の持つ意味を、彼に教えなかった。
 その地球の真意も、また知る人間は誰一人としていない。
 ただ彼はその光をアグルと呼び、後に人々は大地の光の巨人と並び、彼をその名を
冠して呼ぶようになる。
 
 ウルトラマン……ウルトラマンアグルと。
 
 そのときシャルロットは森の空気が急にどす黒く濁る感触を全身に感じ、次の瞬間
森が揺らぎ、異形の群れが現れた。
「キメラドラゴン! まだ、あんなに」
 森にエサを求めて散っていたキメラドラゴンが、血の匂いをかぎつけて戻ってきた。
その数は五体、生き残った三体を合わせると、総勢八体。奴らは、仲間を殺された怒りから
凶暴なうなり声をあげ、数の優勢をたのんで四方からアグルを包囲した。
「まずい、いくらなんでもあの数では!」
 ジルの言うとおり、普通に考えたらこれだけの数のキメラドラゴンを相手にしたら、仮に
軍の一個中隊をもってしても蹂躙されるのが落ちだろう。にも関わらず、二人を驚愕させたのは、
アグルはキメラドラゴンに対して、構えるどころか悠然と直立して、片手でもって挑発するように
手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
 巨大な爪は、アグルの首からほんの三〇センチばかり離れた場所で静止していた。
むろん、爪の持ち主にそうさせる意思があったわけではない。渾身の力と、全体重に助走を
かけた一撃は、確実に敵の首をとっているはずであった。ただ、そこにそえられている
一本の腕さえなければ。
「あ、あの一撃を、片手で止めた!」
 防御どころか、よりつくハエを追い払う程度の無造作ぶりに、ジルは片足を失った痛みすら
忘れて驚愕の叫びをあげたが、キメラドラゴンの巨体が突然重力から切り離されたように
浮かび上がると、叫ぶことすら忘れてしまっていた。
 
「デヤァッ!」
 
 アグルが力を込めた瞬間、推定一〇〇トンはあろうかという巨体は、アグルの手の中で
紙細工のように軽々と持ち上げられた。もはや、怪力などというレベルではない。
 驚愕するジルとシャルロット。いや、本当に驚いていたのは対峙しているキメラドラゴンたち
であっただろう。奴らの一匹たりとて、自分がパワーで負ける、さらには持ち上げられるなど
想像もしていなかったに違いない。
 ましてや、まるで風車のように振り回されたあげく無造作に投げ捨てられて、別の一匹を
押しつぶし、折り重なった二匹にリキデイターが叩き込まれてとどめを刺されたときには、
驚愕は狂騒へと変わっていた。
 精神の根源から湧き上がってくる恐怖を振り切ろうと、三匹が全身の頭から叫び声をあげて
三方から同時攻撃をかけてくる。だがアグルはキメラドラゴンに向かって三度腕を振りかざしただけで、
三匹を六つの肉塊へと変貌させた。
『アグルブレード』
 アグルの右手から伸びる光の剣。その恐るべき切れ味の前に、切られた三匹は自分が
切られたということさえ理解せぬうちに、左右、または上下に両断された巨体を崩れ落ちさせた。
「強い……強すぎる」
 自然の理から外れた歪んだ生命が対抗するには、理そのものの存在であるアグルはあまりにも
強大すぎ、あっという間に半数を蹴散らされたキメラドラゴンたちの生き残りには、もはや戦意などは
残されておらず、これまで自分たちが恐怖させ、喜びながら喰らっていった獲物たちと同じように
算を乱して逃げ出した。
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
見ることなく封印されつづけてきた最強のクローン怪獣ネオザルスが、主なき世界に遠吠えをあげた。
「終わった……」
 大群を誇ったキメラドラゴンの幼生の、最後の一匹が噛み砕かれて、落ちてきたその肉片を
間近で見たとき、ジルとシャルロットの心に今度こそ完全な絶望が覆った。これは、人間が
敵うかどうかという問題ではない。
 だが、アグルは絶望に打ちひしがれる人間に語りかけることはなく、巨大なる敵に対しても
小揺るぎもせずに数歩前に進むと、腕を胸の前でクロスさせ、気合を溜めはじめた。
「ヌォォ……」
 アグルの力が、その胸に輝くライフゲージに集中して青い輝きとなってあふれ出していく。
 そしてその輝きが最高潮となったとき、アグルは光とともに空高く飛んだ!
「トァッ!」
 舞い上がった光が天空で輝きを増し、一個の恒星と呼べるほどにまで膨れ上がっていく、
あの怪獣を倒すために、これまでの人の体躯に合わせてセーブしたものではなく、アグルの力を
最大限に発揮するために、光の中でアグルはパワーのリミッターを解除する。
 
 出て行け悪魔の知恵の申し子よ。この世にお前の居場所はない!
 
 光が急速に収束したと思った瞬間、真にウルトラマンとしての力を発揮できる、身長五二メートルの
本来の巨体へと巨大化変身し、アグルはその中から再びその姿を現した。
 着地の衝撃で大地がめくれ、舞い上がった土砂がアグルの姿を一瞬隠す。しかし茶色いカーテンが
晴れたとき、はじめて敵に対して構えをとるアグルと、アグルを本能的に倒さなければならない敵だと
認識したネオザルスとの、大地を揺さぶる激戦の幕が切って落とされた。
 
「シュワッ!」
 キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 しかし、そんな小虫に等しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、
暗い洞窟のそのさらに奥から、幼生体を全部まとめたよりもはるかに低くおぞましいうなり声が轟き、
洞窟の入り口を岩の破片を撒き散らして破壊しながら、とてつもなく巨大なキメラドラゴンが現れた。
「キメラドラゴン! あれが親か」
「なんて大きい……図鑑と全然違う」
 二人の前に現れたのは、幼生体とはまるで違った。全長だけでも図鑑にあった初期段階が一〇メイル
だったのに、目測で二〇メイル超にまで巨大化し、全身に生えた頭部の数も百では足りるまい。
むろんネオザルスに比べれば小さいのだが、それはあくまで比較論でいうのであって、ここまでの
巨体と異形は、もはや怪物の段階を通り越し、充分すぎるほどに”怪獣”と呼んでいいだろう。
 子供をすべて倒されて怒り狂うキメラドラゴンのオリジナルは、住んでいた洞窟を破壊しつくして
外に出てきたあとで、無残に殺されつくされた子供たちの死骸を見て、一度悲しげに遠吠えをすると、
当然のようにもっとも近くにいたシャルロットとジルに”お前たちがやったのか”といわんばかりに
迫ってきた。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ!」
 とっさに『フライ』を唱えたシャルロットはジルを抱えて飛びのいた。瞬発力も速度も、一人のときより
はるかに劣るが、キメラドラゴンの成体は体格が巨大で、体にいらないものをたくさんくっつけている分
動きは幼生体に比べたら鈍く、二人にかわされた後も突進の勢いを止められずに、木々をへし折りながら
森の中へと突っ込んでいった。
「なんて奴だ……はっ!」
 恐らく、森中の生き物を食らいつくしてここまで巨大になったのだろう。火竜は二〇メイルを超える
まで成長することはできるが、それには何百年もの時間が必要とされる。成長速度まで奴は元となった
火竜のそれを異常なほど凌駕している。
 シャルロットは、奴が反転して戻ってくる前に逃げようと思ったが、抱えたジルに強く襟首をつかまれて
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
だろうか、神という存在がいるとしたら、どうしてこんな悲劇を振りまくのだろう。シャルロットの心には、
怒りよりもむしろ冷め切った悲しみが残り、変に冴え渡った頭の中で、彼女は巨体を引きずりながら
こちらへUターンしてこようとしているキメラドラゴンを見据えた。
「悪魔……」
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」
「な、なにを馬鹿なことを言ってるんだい! あんたの魔法でもあれが相手じゃあ! それに第一、
あれはあたしの仇だ、あたしが倒さなくちゃ意味がないんだ!」
「ううん、やる。ジルはわたしに戦い方を教えてくれた。だから、わたしがジルの矢になって、あいつを倒す!」
「シャルロット……」
 すでにシャルロットの目は、おびえ逃げる子供のものではなく、牙を持った猛獣に挑む狩人のそれとなっていた。
 
「いくよ! 化け物!」
 
 戦いの決意をその言葉に込めてシャルロットは飛んだ。
 小山のような巨体からありすぎるくらいの感覚器官でこちらを見つけ、攻撃対象に定めてくるキメラドラゴンに
対して、一メイルちょっとの小柄なシャルロットは、まさに象に立ち向かう蟻同然。だが敵の見た目の
恐ろしさよりも、今のシャルロットの心は大事なものを失うことへの恐怖が勝っている。その恐怖を勇気に
変えて、シャルロットはキメラドラゴンの真上に飛翔し、こちらを見つめてくる数百の目へと氷弾の乱舞
『ウェンディ・アイシクル』を叩き込み、奴を一瞬にして氷の剣山に変えた。
「あの子、いつの間にあれほどの魔法を!」
 驚愕にうめくジルの問いに答えることができるとしたら、その答えは『たった今』としか言うしかないだろう。
魔法の力は心の強さ、ジルを守るため、帰るべき故郷を守るために戦う覚悟を決めたシャルロットの力は、
先におびえ、逃げようとしていたときとは同じ魔法でもその威力には雲泥の差があった。
 だがむろん、キメラドラゴンもこれしきでまいるほど甘い相手ではない。全身を覆っていた氷の刃を
振り払うと、あっというまに傷口を粘土で塗りつぶすように自己再生を果たし、巨大な口から高圧の
空気のブレスを吐きかけてきた。
「くぅっ!」
 吹き飛ばされそうになって、シャルロットは空中でなんとかふんばって耐えた。キメラドラゴンは火竜
としての火炎のブレスを吐く能力は失われているが、この巨体であれば肺活量も絶大である。
直撃されて木に叩きつけられでもしたら即死だ。
 正面からではかなわない。そう判断したシャルロットは奴の背中側に回り込もうとしたが、奴は全身に
生えた頭の目で、常にシャルロットを捉えていて攻撃のチャンスをつかませてくれない。
 どうすれば……焦りがシャルロットの心によぎったとき、彼女の目にアグルとネオザルスの戦いが映りこんできた。
 
「セアッ!」
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 
”そうか、大きいということは弱点にもなるんだ”
 
 そう気づいたシャルロットは、振り向いてこようとするキメラドラゴンの、回転の軸にしている足の腱を
氷の刃で狙い撃ち、バランスを崩して倒した。
「やった! あれであいつの足も折れた」
 キメラドラゴンの肥大しすぎた体格を支えていた足は、過大な負荷に耐えられずにへし折れて、
奴は左に大きく傾いて身動きがとれなくなっている。この程度の傷はあいつならばすぐに治癒して
しまうだろうが、それでも攻撃するならば今だ。
『エア・カッター!』
 真空の刃がうなり、キメラドラゴンの表皮をえぐり、生えた頭を次々に切りとばす。
 傷口からは赤い血しぶきがほとばしり、返り血を受けたシャルロットの全身が青い髪を除いて
真紅に染まるが、彼女はひるむことなく次のチャンスを探し、アグルの動きに呼応するように
攻撃を放った。
 
『氷の矢!』
『アグルスラッシュ!』
 
 氷の矢がキメラドラゴンの喉元に、アグルの指先から放たれた小型の光弾がネオザルスの
首筋に当たって火花を散らすが、キメラドラゴンは無理矢理に矢を引っこ抜き、ネオザルスは
軽く揺らいだだけで、ひるまずに反撃しようとしてくる。
 そのとき、シャルロットは氷の矢が効いたのかどうか確かめようとして、一瞬動きを停止させて
しまっていたためにキメラドラゴンに次の行動の自由を許してしまったが、アグルは違った。
アグルはアグルスラッシュが命中したのと同時にネオザルスに接近し、奴の尻尾をつかむと
渾身の力で振り回して投げ捨てたのだ。
「トァァッ!」
 高速で地面に叩きつけられたネオザルスのとさかが折れ、筋肉から骨格にまで衝撃が浸透する。
 
”攻撃をかけるときには、悠長に時間をかけてはいけない”
 
 キメラを相手の狩りとは違う。力と力のぶつかり合い、狩人と狩人の戦いのルールを、また一つ
シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
 
『アグルブレード』
『ブレイド』
 
 光の剣が急接近してきたネオザルスの尾を両断したとき、シャルロットも初めて使う魔法で
自らの杖を鋭利な剣に変え、キメラドラゴンの尾を切断とまではいかないまでも脊髄を傷つけて
尻尾を振るう力を失わせた。
 
”接近戦での剣の威力は魔法より高い”
 
 さらに戦闘は激化し、どちらも様子見から本気で、本気から奥の手の戦いへと入っていく。
 ネオザルスの胸に青白く輝いている発光器官が光り、奴が大きく腕を広げた瞬間、光の帯が
二本からみあったような光線をそこから発射した。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:00:00 ID:XGQuuUkv
ウルトラ支援
「ファッ!?」
 思わぬ飛び道具に、反射的にアグルは飛びのいてそれを回避した。けれどもその光線には
ホーミング性能があり、外れたと思われた光線がアグルの後ろで引き返してくると、アグルの
背中に直撃した。
「ヌワアッ!」
 死角からの一撃に、激しくダメージを受けてアグルのひざがくずおれる。
 また、シャルロットも、尻尾を深く傷つけられて激怒したキメラドラゴンから、生き残っていた足で
激しく地面をかいて、土塊と石を飛ばす攻撃にさらされていた。
「痛っ!」
 ただの土塊や石といえど小柄なシャルロットにとっては砲弾と同じだ。彼女はフライを駆使して
回避を続けるが、石のうちのいくつかは樹木に反射して思わぬ方向から襲ってくる。
「シャルロット!」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
「あの子……戦いの中で成長している」
 まるで乾いた土が雨を吸い込んで芳醇な土壌となるように、シャルロットはアグルの戦い方を
見て学び、実戦の中でそれを土台にすさまじい速さで強くなっている。まさしく天性の素質。
いいや、そんな努力をないがしろにした安っぽい台詞ではなく、大切な母を失いたくない恐怖心、
ジョゼフを倒さねばという使命感、生への執着、力への渇望、そしてジルを守り助けたいという優しさ、
あらゆる心の力が一つとなって、シャルロットを一気にドットからラインクラスのメイジへと昇格させ、
戦いの経験値が可憐な姫を無慈悲な狩人へと変えたのだ。
「これで終わり……今、眠らせてあげるからね」
 地面に降り立つと、シャルロットは残りの精神力をすべて杖に込めて、キメラドラゴンの首の中で、
哀れにも死んだときの行動を繰り返すように、泣きじゃくる表情を続けるジルの妹の首へと話しかけた。
 だが、アグルのように絶対的なパワーを持たないシャルロットが、再生能力を持ったキメラドラゴンの
息の根を止めるためには、一気に脳と心臓を破壊して生命活動を停止させるしかないが、今の
シャルロットの全精神力をつぎ込んでもそれは不可能。
 ただし、一つだけ方法がある。冷たく冴えきった心で、以前家庭教師から魔法の理のその一つを
思い出したシャルロットは、懐からジルから借りていた短剣を取り出すと、ためらいもなく、長く
美しく伸びていた青い髪の毛をバッサリと切り落としたのだ。
「わたしからすべてを奪っていった奴ら……なら、この髪もくれてあげる!」
 呪文を唱えた瞬間、シャルロットの髪を核にして巨大な氷の塊が生まれ始めた。
 古来より、血、爪、髪など人間の体の一部を媒介または触媒にした魔法は多い。それは人間の
体には元々強い水の力、生命力が宿っているからで、それを引き出して使う魔法は禁忌と
されるものも多いが絶大な威力を誇る。このとき、王家の強い魔力を受け継いだシャルロットの
髪を使った魔法は、たった一回ではあるがシャルロットにスクウェアクラスの力を与えた。
 さらに、もう一つの戦いも終幕を迎えつつある。
 ネオザルスの攻撃をすべて受けきり、機と判断したアグルは全パワーを額にあるブライトスポットに
集中させて、高く伸びる光の柱のようになったエネルギー体を作り出す。
 これで本当に終わらせる。愚かな人間の過ちも、生まれるべきではなかった生命の狂気も、
そしてジルの悲しい復讐劇も、すべて終わらせて、未来へと足を踏み出すのだ。
「シャルロットーっ! 頼む、あたしの妹を、家族を眠らせてやってくれーっ!」
「わかった! 見てて、これがわたしとジルの最後の攻撃よ!」
 二人の思いを力に変えて、シャルロットの放った最強・最後の一撃がキメラドラゴンの
ブレスをも押しのけて飛翔し、同時にアグルの額から放たれた光線がネオザルスに突き刺さる!
 
『フォトンクラッシャー!』
『ジャベリン!』
 
 光子の奔流がネオザルスの細胞を分子単位まで焼き尽くし、奴の体は頭から順に粉々に
砕け散り、爆発して跡形も残さず崩壊した。
 そして、口の中にジャベリンを打ち込まれたキメラドラゴンもまた、体内で全魔力を放出して
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「やった……」
「シャルロット!」
 
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた
シャルロットへの感謝と、彼女が無事だったことへの安心感のみがあった。
 ジルの腕の中で、シャルロットはあるだけの力をしぼりつくして泥のように眠っている。まるで
赤ん坊のようだ、その無邪気で安心しきった表情を見ていると、ジルの中にずっとあった怨念が
溶けるように消えていく。
「みんな……あたし……」
 そのとき、ジルの目の前に死んでいった家族の姿が浮かんだのは、彼女の疲労が生んだ幻影か、
それとも家族の霊がかいま戻ってきたのかはわからない。ジルは父が、母が、そして妹が
自分を見て微笑みながら天へと昇っていくのを見て、自分もシャルロットにかぶさるように
安らかな眠りに落ちていった。
 
 けれども、物語はまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
優しく、ただし明確に突き放すようにして諭した。
「いいかい、よく聞きな。あんたはこれから帰っても歓迎される立場じゃあない。きっと、
今回みたいな残酷な仕事が次々にまわってくることだろう。でも、あんたのお母さんが
生きている限り、それに立ち向かっていかなきゃいけない。お母さんの心を、取り戻すためにはね」
「……」
「だから、これからあんたは狩人にならなきゃいけない。冷たく、容赦なく敵を狩る
本当の狩人に。そのためには、もっともっと強くならないといけない。わかるね?」
「うん……」
「それにね、さっきあたしはあんたの足手まといにしかならないと言ったけど、それは
ただあたしが戦えないからだけじゃない。あんたの敵と戦うには、どんな悪意も
跳ね飛ばし、どんな卑劣な罠も潜り抜ける心の強さが必要なんだ。そのためには、
誰かにたよってちゃいけないんだ」
「わかった……わたし、一人で戦う」
 涙を拭いたシャルロットは杖を握り締め、ジルの目を見つめて答えた。だが、
心を殺して生きていくということは並大抵のことではない。希望もなし、味方もなしの
凍りつくような世界で、復讐だけを目的に生きていけるのだろうか。
「ふっ、そんな悲しそうな顔をするなよ。あたしだって、また一人になるのは怖いんだ。
そうだな……一年だ」
「えっ?」
「一年、それが過ぎたらもう一度この森に来な。あたしは必ずここで待っていてやるから、
そのときには、また会おう」
 ぱあっとシャルロットの顔が明るくなった。別れはある、けれどそれは永遠ではないのだ。
「また、ジルと会えるのね」
「ああ、だけどあんたは優しい。それはすばらしいことだけど、邪悪な敵と戦うときには
それは命取りにもなる。だから、本当のあんたは心の中に凍りつかせて、これからは
氷のように生きていけ。目的を果たすまでは、決して溶けない氷のように」
「氷……ジョゼフ……」
 シャルロットの心に、父を殺した憎い男の顔が浮かんでくる。あいつを殺して、母を
奪い返すためならば、氷にでもなんでもなってやろう。
「わかった。でも、ジルも一つだけ約束して。もしわたしがすべてを取り戻して、平和に
すごせるようになったら、いっしょに暮らそう」
「ああ、約束だ」
「うん……さよなら、ジル」
「さよなら、シャルロット」
 
 そうしてシャルロットはヴェルサルテイル宮殿に帰還し、思いも寄らぬ生還に驚く
イザベラから、北花壇騎士として生きていくためのシュヴァリエの称号を得、王族としての
シャルロットという名前を捨てて、タバサという第二の名前を持つことになる。
 
 それが、三年前の真実だった。
「で、それから一年ごとにこの子はあたしのとこへ来て、話を聞かせてくれるのさ」
 たっぷりと数時間に渡って、思い出話を聞かされたシルフィードは、まさかそんな
過去がタバサにあったのかと目を丸くしていた。
「驚いたのね。お姉さまったら、昔のことは全然話してくれないんだもの、シルフィーよりも
前にお友達がいたなんて、もうびっくりとしか言いようがないのね」
「あはは、まあ好き好んで人に暗い過去をさらしたい人間なんていやしないさ。でもね、
シルフィーちゃんとやら、あんたも含めて今のシャルロットには本当にいい友達が
できたみたいだね」
「へっ?」
「ジ、ジル! よしてよ」
「いいじゃないか、これまでの二年間、いっつも死にそうな顔して帰ってきたシャルロットが、
こんな生き生きした顔でやってきたことはなかったよ」
 果実酒を片手に、ジルは顔を真っ赤にしているタバサを見て楽しそうに笑った。
 それからジル、タバサ、シルフィードの三人は夜遅くまで、飲み、食い、笑い、歌い、
楽しい時間を過ごして、せまいベッドの上で押し合いへしあいながら眠った。
 
 そして夜は明けて、ジルとすごした温かい時間はやがて終わりを告げていった。
「じゃあ、そろそろ行くね」
 竜に戻ったシルフィードの前で、タバサはまたやってくる戦いの時間のために、
普段のように冷たく凍りつかせた表情で、ジルに別れのあいさつをしていた。
「気をつけていきな。シルフィーちゃんも、この子をよろしくな」
「まかせておいてなのね。お姉さまはこのシルフィーが、絶対にお守りするなのね。
きゅいきゅい!」
 気合を入れるシルフィードの頭をなでてやると、ジルはもう一度タバサの前に立った。
「また、会うときまで死ぬんじゃないよ」
「うん、ジルも、約束覚えてる?」
「もちろんさ、早くこんな山奥の掘っ立て小屋から解放して、お城に住めるようにしてくれよ」
「うん、わたし、もっともっと強くなって必ず迎えにくるから、待っててね」
「ああ、待ってる」
 三年前から途切れぬ約束、それがタバサとジルをずっとつなぎとめていたことに、
シルフィードは少々嫉妬さえ覚えた。タバサが強くなるのは、復讐や母を救い出すため
だけではない。ジルとの約束を、一刻も早く果たすためでもあったのだ。
”三年も互いを思いあってるなんて、なんかロマンチックなのね”
 夢見がちなシルフィードは、別れを間際に見詰め合っている二人を見つめて悦にいっていたが、
いきなりジルは腹を抱えて笑い出した。
「ぷっ、あっははは! いやそれにしても、森の中のお姫様を助けに来るのは、普通は
王子様の役目のはずなのに、王女様がやってきたんじゃあどうにもしまらないねえ」
「しょうがないよ。わたしたち二人とも女なんだもの」
「そりゃそうだな。なら今度は恋人でも連れてきなよ。あんたがどういう男を好きになるか、
非常に興味があるね」
「そんな、わたしは恋なんて、まだわからない」
「そうかい? こんなに素材がいいのにもったいないね。でも、ときどき思うけど、もしあたしが
男だったらあんたを……」
「ううん、その気持ちだけで充分だよ。ジルは、わたしにとってかけがえのない人だもの」
「ありがとう……好きだよ、シャルロット」
「わたしも、大好き」
 二人は、どちらからともなく抱擁しあうと、目をつぶり、そのまま唇を重ね合わせた。
 ジルの野性的な美しさを備えた顔と、タバサの幼女のような愛らしさを備えた顔が一つになる。
「えっ! ええーっ!?」
 あまりに突然な出来事に、シルフィードは竜のくせにだらしなくしりもちをつくと、口を
パクパクとさせて言葉に詰まった。
”ちょっ、おねえさま! 確かに恋人を作ってくれとは言ったけど、そういう方面は
NGなのよねーっ!”
 言葉にならない悲鳴をあげたシルフィードだったが、シルフィードがなにをどう早合点しようと、
そんなことは二人にはどうでもよかった。人がどう思おうと好きにすればいい。自分たちの絆は
自分たちにしかわからないだろうし、わかってもらおうとも思わない。
 やがてジルとタバサは、唇から伝わってくる互いの体温と唾液の味、そして言葉にできない
思いを交換しあうと、ゆっくりと離れて最後の別れを交わした。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:22:16 ID:XbfXDCxQ
あれ?投下が止まってる?
461ウルトラ5番目の使い魔 5話 (13/13)代理:2010/07/18(日) 16:23:54 ID:YEvbgd7Y
「じゃあ、いってくるね」
「ああ、いってきな」
 
 数分後、タバサはシルフィードとともに空の上にいた。ジルの家はすでに後方に
流れていって影も見えない。
「また、ここへ来るのは一年後なのね」
「そう」
 シルフィードの言葉に短く答えると、タバサは読みかけだった本を取り出すと、しおりから
ページを開いた。これから向かう空には、遠からず次なる戦いが待っているだろう。そのときに
備えて、少しでも知識を蓄えておかねばならない。
”おかあさま、ジル、待ってて……必ず迎えにいくからね”
 決意を胸に、ゆくべき道に迷いはない。
 ただ……タバサは同時に不思議と不安を感じてはいなかった。
 一年も経たないうちに、もう一度この森をおとずれることになるような、そんな予感が
漠然としている。
 それはすなわち、自分の復讐劇の終焉を意味することであったが、根拠がないわけではない。
 今、世界は大きく動いている。異世界からの侵略者というかつてない事態に、すべての国が
大きく動き、動乱の時代となりつつある。
 すでにトリステインもアルビオンも一度は滅んだ。滅んだが、若くて強く、正しい心を持つ
者たちによって再建された。
 ひるがえって、ガリアはどうであろう? この世界を巻き込む動乱の中で、ガリアだけが、
あのジョゼフだけが例外となりえるだろうと誰がいえるだろうか。
 遠からずチャンスはめぐってくる。そのときこそ、三年に及んだ自分の戦いを終わらせて、
すべてのものを取り返す。
 いいや、王座や財産、権力などという馬鹿馬鹿しいものはいらない。
 ほしいものは一つだけ、母と、ジルと、シルフィードと四人で暮らして、キュルケたち友と
いっしょに、閉ざした心を解き放ち、なんの不安もなく笑い会える時間。
 それが、わたしの夢、それがかなうなら、わたしはどんな戦いにも臨んでみせよう。
 
 はるかかなた、敵が待つ空を目指して、群青の髪と瞳を持つ狩人姫は飛ぶ。
 戦いすんで、武器を捨てるその日のために。
 たとえどんな敵が待っていようと引き下がりはしない。
 まだ見ぬ未来を目指して戦い抜こう。
 そう、あの名も知らぬ青い巨人のように、強く、孤高に。
 
 続く
462ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:24:54 ID:MdjJlE4V
 そのとき、ジルの目の前に死んでいった家族の姿が浮かんだのは、彼女の疲労が生んだ幻影か、
それとも家族の霊がかいま戻ってきたのかはわからない。ジルは父が、母が、そして妹が
自分を見て微笑みながら天へと昇っていくのを見て、自分もシャルロットにかぶさるように
安らかな眠りに落ちていった。
 
 けれども、物語はまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
463ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:25:52 ID:YEvbgd7Y
ウルトラ5番目の使い魔 あとがき ◆213pT8BiCc:2010/07/18(日) 16:21:18 ID:oTj73Y42
今週は以上です。今回支援してくださったお二方、どうもありがとうございました。
平成三部作で唯一残っていたウルトラマン、アグルの登場、お楽しみいただけたでしょうか。
ガイアに勝るとも劣らないくらい人気の彼、超8兄弟では変身こそありませんでしたが藤宮の
登場には、私も感涙ものでした。
このお話の時系列は、軽く捕捉説明をしておきますとガイアの二話で、藤宮がまだどこにいるのか
不明だったころに当たります。また、ネオザルスに関しましてはダイナ十六話をご参照ください。
そして、第一部ではヤプールが主敵でしたが、第二部ではガリア=ジョゼフが敵になってきますので
タバサがメインの話も増えていくことになります。
私も、タバサは好きですし、タバサの周りの面々も個性的で書いてて楽しいので、才人とルイズと
並んで、彼女の世界を広げていきたいと思います。タバサの冒険も、OVAでいいのでアニメ化
してくれたらうれしいのですがね。
では、次回はまた舞台を変えて新展開に向かいます。

―――――

ここまで。
ウルトラの人、乙でした!
ゆりゆりな展開に俺得で大喜びw

次回の更新をお持ちします
464ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:26:00 ID:tPl6hkUr
今週は以上です。今回支援してくださったお二方、どうもありがとうございました。
平成三部作で唯一残っていたウルトラマン、アグルの登場、お楽しみいただけたでしょうか。
ガイアに勝るとも劣らないくらい人気の彼、超8兄弟では変身こそありませんでしたが藤宮の
登場には、私も感涙ものでした。
このお話の時系列は、軽く捕捉説明をしておきますとガイアの二話で、藤宮がまだどこにいるのか
不明だったころに当たります。また、ネオザルスに関しましてはダイナ十六話をご参照ください。
そして、第一部ではヤプールが主敵でしたが、第二部ではガリア=ジョゼフが敵になってきますので
タバサがメインの話も増えていくことになります。
私も、タバサは好きですし、タバサの周りの面々も個性的で書いてて楽しいので、才人とルイズと
並んで、彼女の世界を広げていきたいと思います。タバサの冒険も、OVAでいいのでアニメ化
してくれたらうれしいのですがね。
では、次回はまた舞台を変えて新展開に向かいます。
465ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:27:03 ID:Dgo0OGW7
 そのとき、ジルの目の前に死んでいった家族の姿が浮かんだのは、彼女の疲労が生んだ幻影か、
それとも家族の霊がかいま戻ってきたのかはわからない。ジルは父が、母が、そして妹が
自分を見て微笑みながら天へと昇っていくのを見て、自分もシャルロットにかぶさるように
安らかな眠りに落ちていった。
 
 けれども、物語はまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
優しく、ただし明確に突き放すようにして諭した。
466ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:27:39 ID:jSzGnLIk
 そうしてシャルロットはヴェルサルテイル宮殿に帰還し、思いも寄らぬ生還に驚く
イザベラから、北花壇騎士として生きていくためのシュヴァリエの称号を得、王族としての
シャルロットという名前を捨てて、タバサという第二の名前を持つことになる。
 
 それが、三年前の真実だった。
「で、それから一年ごとにこの子はあたしのとこへ来て、話を聞かせてくれるのさ」
 たっぷりと数時間に渡って、思い出話を聞かされたシルフィードは、まさかそんな
過去がタバサにあったのかと目を丸くしていた。
「驚いたのね。お姉さまったら、昔のことは全然話してくれないんだもの、シルフィーよりも
前にお友達がいたなんて、もうびっくりとしか言いようがないのね」
「あはは、まあ好き好んで人に暗い過去をさらしたい人間なんていやしないさ。でもね、
シルフィーちゃんとやら、あんたも含めて今のシャルロットには本当にいい友達が
できたみたいだね」
「へっ?」 「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
「ジ、ジル! よしてよ」
「いいじゃないか、これまでの二年間、いっつも死にそうな顔して帰ってきたシャルロットが、
こんな生き生きした顔でやってきたことはなかったよ」
 果実酒を片手に、ジルは顔を真っ赤にしているタバサを見て楽しそうに笑った。
467ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:28:23 ID:4XfLTcLg
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「やった……」
「シャルロット!」
  「シャルロット!」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた
シャルロットへの感謝と、彼女が無事だったことへの安心感のみがあった。
 ジルの腕の中で、シャルロットはあるだけの力をしぼりつくして泥のように眠っている。まるで
赤ん坊のようだ、その無邪気で安心しきった表情を見ていると、ジルの中にずっとあった怨念が
468ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:29:25 ID:w5fBlYR2
”攻撃をかけるときには、悠長に時間をかけてはいけない”
 
 キメラを相手の狩りとは違う。力と力のぶつかり合い、狩人と狩人の戦いのルールを、また一つ
シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
 
『アグルブレード』
『ブレイド』
  「セアッ!」
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 
”そうか、大きいということは弱点にもなるんだ”
 
 光の剣が急接近してきたネオザルスの尾を両断したとき、シャルロットも初めて使う魔法で
自らの杖を鋭利な剣に変え、キメラドラゴンの尾を切断とまではいかないまでも脊髄を傷つけて
尻尾を振るう力を失わせた。
 
”接近戦での剣の威力は魔法より高い”
 
 さらに戦闘は激化し、どちらも様子見から本気で、本気から奥の手の戦いへと入っていく。
 ネオザルスの胸に青白く輝いている発光器官が光り、奴が大きく腕を広げた瞬間、光の帯が
二本からみあったような光線をそこから発射した。
469ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:30:06 ID:NVqnMIPy
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
  キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
だろうか、神という存在がいるとしたら、どうしてこんな悲劇を振りまくのだろう。シャルロットの心には、
怒りよりもむしろ冷め切った悲しみが残り、変に冴え渡った頭の中で、彼女は巨体を引きずりながら
こちらへUターンしてこようとしているキメラドラゴンを見据えた。
「悪魔……」
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
470ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:30:44 ID:mHJZjLsz
『アグルブレード』
 アグルの右手から伸びる光の剣。その恐るべき切れ味の前に、切られた三匹は自分が
切られたということさえ理解せぬうちに、左右、または上下に両断された巨体を崩れ落ちさせた。
「強い……強すぎる」
 自然の理から外れた歪んだ生命が対抗するには、理そのものの存在であるアグルはあまりにも
強大すぎ、あっという間に半数を蹴散らされたキメラドラゴンたちの生き残りには、もはや戦意などは
残されておらず、これまで自分たちが恐怖させ、喜びながら喰らっていった獲物たちと同じように
算を乱して逃げ出した。
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
  手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
見ることなく封印されつづけてきた最強のクローン怪獣ネオザルスが、主なき世界に遠吠えをあげた
471ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:31:24 ID:qUxwgDci
 ハイパークローン怪獣 ネオザルス
 ウルトラマンアグル 登場!
   驚愕するジルとシャルロット。いや、本当に驚いていたのは対峙しているキメラドラゴンたち
であっただろう。奴らの一匹たりとて、自分がパワーで負ける、さらには持ち上げられるなど
想像もしていなかったに違いない。
 ましてや、まるで風車のように振り回されたあげく無造作に投げ捨てられて、別の一匹を
押しつぶし、折り重なった二匹にリキデイターが叩き込まれてとどめを刺されたときには、
驚愕は狂騒へと変わっていた。
 精神の根源から湧き上がってくる恐怖を振り切ろうと、三匹が全身の頭から叫び声をあげて
三方から同時攻撃をかけてくる。だがアグルはキメラドラゴンに向かって三度腕を振りかざしただけで、
三匹を六つの肉塊へと変貌させた。
『アグルブレード』
 アグルの右手から伸びる光の剣。その恐るべき切れ味の前に、切られた三匹は自分が
切られたということさえ理解せぬうちに、左右、または上下に両断された巨体を崩れ落ちさせた。
 
 シャルロットとジルは夢を見ているような心地の中にいた。
 キメラドラゴンたちが……幼生体とはいえ巨大な体と、この世のものとは思えない
凶悪な力を誇る怪物たちが、まるで赤子の手をひねるように倒されていく。
「あれ……は」
 しぼりだすような声を発したジルとシャルロットの前に、”彼”は陽炎のように現れた。
 深い青き体に、黒と銀色のラインをあしらい、鋭く冷たく輝く目を持った彼は、
銀色のマスクを無表情に輝かせ、突然の乱入者に慌てるキメラドラゴンを悠然と見据える。
 ”彼”は、人ではなかった。かといって、亜人と呼ぶのも二人にははばかられた。
 どうしてかというならば、キメラどもによって汚染されたこの森の毒々しい空気の中で、
彼のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
472ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:32:03 ID:TGMQOY5v
算を乱して逃げ出した。
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
  ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 しかし、そんな小虫に等しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
見ることなく封印されつづけてきた最強のクローン怪獣ネオザルスが、主なき世界に遠吠えをあげた。
「終わった……」
 大群を誇ったキメラドラゴンの幼生の、最後の一匹が噛み砕かれて、落ちてきたその肉片を
間近で見たとき、ジルとシャルロットの心に今度こそ完全な絶望が覆った。これは、人間が
敵うかどうかという問題ではない。
 だが、アグルは絶望に打ちひしがれる人間に語りかけることはなく、巨大なる敵に対しても
小揺るぎもせずに数歩前に進むと、腕を胸の前でクロスさせ、気合を溜めはじめた。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:32:14 ID:YEvbgd7Y
あれ? 代理投下終ったばかりなのに。
気づいてないかとも思ったけど、IDがいちいち違うとか…久々にくだんの荒らしかな?
474ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:32:38 ID:+QDsbGZm
「なんて奴だ……はっ!」
 恐らく、森中の生き物を食らいつくしてここまで巨大になったのだろう。火竜は二〇メイルを超える
まで成長することはできるが、それには何百年もの時間が必要とされる。成長速度まで奴は元となった
火竜のそれを異常なほど凌駕している。
 シャルロットは、奴が反転して戻ってくる前に逃げようと思ったが、抱えたジルに強く襟首をつかまれて
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
だろうか、神という存在がいるとしたら、どうしてこんな悲劇を振りまくのだろう。シャルロットの心には、
怒りよりもむしろ冷め切った悲しみが残り、変に冴え渡った頭の中で、彼女は巨体を引きずりながら
こちらへUターンしてこようとしているキメラドラゴンを見据えた。
「悪魔……」 「いくよ! 化け物!」
 
 戦いの決意をその言葉に込めてシャルロットは飛んだ。
 小山のような巨体からありすぎるくらいの感覚器官でこちらを見つけ、攻撃対象に定めてくるキメラドラゴンに
対して、一メイルちょっとの小柄なシャルロットは、まさに象に立ち向かう蟻同然。だが敵の見た目の
恐ろしさよりも、今のシャルロットの心は大事なものを失うことへの恐怖が勝っている。その恐怖を勇気に
変えて、シャルロットはキメラドラゴンの真上に飛翔し、こちらを見つめてくる数百の目へと氷弾の乱舞
『ウェンディ・アイシクル』を叩き込み、奴を一瞬にして氷の剣山に変えた。
「あの子、いつの間にあれほどの魔法を!」
 驚愕にうめくジルの問いに答えることができるとしたら、その答えは『たった今』としか言うしかないだろう。
魔法の力は心の強さ、ジルを守るため、帰るべき故郷を守るために戦う覚悟を決めたシャルロットの力は、
先におびえ、逃げようとしていたときとは同じ魔法でもその威力には雲泥の差があった。
 だがむろん、キメラドラゴンもこれしきでまいるほど甘い相手ではない。全身を覆っていた氷の刃を
振り払うと、あっというまに傷口を粘土で塗りつぶすように自己再生を果たし、巨大な口から高圧の
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
475ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:33:20 ID:PoWbhdgD
 
 氷の矢がキメラドラゴンの喉元に、アグルの指先から放たれた小型の光弾がネオザルスの
首筋に当たって火花を散らすが、キメラドラゴンは無理矢理に矢を引っこ抜き、ネオザルスは
軽く揺らいだだけで、ひるまずに反撃しようとしてくる。
 そのとき、シャルロットは氷の矢が効いたのかどうか確かめようとして、一瞬動きを停止させて
しまっていたためにキメラドラゴンに次の行動の自由を許してしまったが、アグルは違った。
アグルはアグルスラッシュが命中したのと同時にネオザルスに接近し、奴の尻尾をつかむと
渾身の力で振り回して投げ捨てたのだ。
「トァァッ!」
 高速で地面に叩きつけられたネオザルスのとさかが折れ、筋肉から骨格にまで衝撃が浸透する。
 
”攻撃をかけるときには、悠長に時間をかけてはいけない”
 
 キメラを相手の狩りとは違う。力と力のぶつかり合い、狩人と狩人の戦いのルールを、また一つ
シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
   また、シャルロットも、尻尾を深く傷つけられて激怒したキメラドラゴンから、生き残っていた足で
激しく地面をかいて、土塊と石を飛ばす攻撃にさらされていた。
「痛っ!」
 ただの土塊や石といえど小柄なシャルロットにとっては砲弾と同じだ。彼女はフライを駆使して
回避を続けるが、石のうちのいくつかは樹木に反射して思わぬ方向から襲ってくる。
「シャルロット!」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
『アグルブレード』
『ブレイド』
476ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:33:54 ID:OEfCT5hS
『ジャベリン!』
 
 光子の奔流がネオザルスの細胞を分子単位まで焼き尽くし、奴の体は頭から順に粉々に
砕け散り、爆発して跡形も残さず崩壊した。
 そして、口の中にジャベリンを打ち込まれたキメラドラゴンもまた、体内で全魔力を放出して
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「やった……」
「シャルロット!」
 
  
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
「あの子……戦いの中で成長している」
 まるで乾いた土が雨を吸い込んで芳醇な土壌となるように、シャルロットはアグルの戦い方を
見て学び、実戦の中でそれを土台にすさまじい速さで強くなっている。まさしく天性の素質。
いいや、そんな努力をないがしろにした安っぽい台詞ではなく、大切な母を失いたくない恐怖心、
ジョゼフを倒さねばという使命感、生への執着、力への渇望、そしてジルを守り助けたいという優しさ、
あらゆる心の力が一つとなって、シャルロットを一気にドットからラインクラスのメイジへと昇格させ、 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた
シャルロットへの感謝と、彼女が無事だったことへの安心感のみがあった。
 ジルの腕の中で、シャルロットはあるだけの力をしぼりつくして泥のように眠っている。まるで
赤ん坊のようだ、その無邪気で安心しきった表情を見ていると、ジルの中にずっとあった怨念が
溶けるように消えていく。
「みんな……あたし……」
477ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:34:31 ID:43A97k2Z
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
   シャルロットの心に、父を殺した憎い男の顔が浮かんでくる。あいつを殺して、母を
奪い返すためならば、氷にでもなんでもなってやろう。
「わかった。でも、ジルも一つだけ約束して。もしわたしがすべてを取り戻して、平和に
すごせるようになったら、いっしょに暮らそう」
「ああ、約束だ」
「うん……さよなら、ジル」
「さよなら、シャルロット」
 
 そうしてシャルロットはヴェルサルテイル宮殿に帰還し、思いも寄らぬ生還に驚く
イザベラから、北花壇騎士として生きていくためのシュヴァリエの称号を得、王族としての
シャルロットという名前を捨てて、タバサという第二の名前を持つことになる。
 
 それが、三年前の真実だった。
「で、それから一年ごとにこの子はあたしのとこへ来て、話を聞かせてくれるのさ」
 たっぷりと数時間に渡って、思い出話を聞かされたシルフィードは、まさかそんな
過去がタバサにあったのかと目を丸くしていた。
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
478ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:35:32 ID:DghszrfR
「うん、わたし、もっともっと強くなって必ず迎えにくるから、待っててね」
「ああ、待ってる」
 三年前から途切れぬ約束、それがタバサとジルをずっとつなぎとめていたことに、
シルフィードは少々嫉妬さえ覚えた。タバサが強くなるのは、復讐や母を救い出すため
だけではない。ジルとの約束を、一刻も早く果たすためでもあったのだ。
”三年も互いを思いあってるなんて、なんかロマンチックなのね”
 夢見がちなシルフィードは、別れを間際に見詰め合っている二人を見つめて悦にいっていたが、
いきなりジルは腹を抱えて笑い出した。
「ぷっ、あっははは! いやそれにしても、森の中のお姫様を助けに来るのは、普通は
王子様の役目のはずなのに、王女様がやってきたんじゃあどうにもしまらないねえ」
「しょうがないよ。わたしたち二人とも女なんだもの」
「そりゃそうだな。なら今度は恋人でも連れてきなよ。あんたがどういう男を好きになるか、
非常に興味があるね」
「そんな、わたしは恋なんて、まだわからない」
「そうかい? こんなに素材がいいのにもったいないね。でも、ときどき思うけど、もしあたしが
男だったらあんたを……」
「ううん、その気持ちだけで充分だよ。ジルは、わたしにとってかけがえのない人だもの」
「ありがとう……好きだよ、シャルロット」
「わたしも、大好き」
 二人は、どちらからともなく抱擁しあうと、目をつぶり、そのまま唇を重ね合わせた。
 ジルの野性的な美しさを備えた顔と、タバサの幼女のような愛らしさを備えた顔が一つになる。
「えっ! ええーっ!?」
 あまりに突然な出来事に、シルフィードは竜のくせにだらしなくしりもちをつくと、口を
 そうしてシャルロットはヴェルサルテイル宮殿に帰還し、思いも寄らぬ生還に驚く
イザベラから、北花壇騎士として生きていくためのシュヴァリエの称号を得、王族としての
シャルロットという名前を捨てて、タバサという第二の名前を持つことになる。
 
 それが、三年前の真実だった。
「で、それから一年ごとにこの子はあたしのとこへ来て、話を聞かせてくれるのさ」
 たっぷりと数時間に渡って、思い出話を聞かされたシルフィードは、まさかそんな
過去がタバサにあったのかと目を丸くしていた。
「驚いたのね。お姉さまったら、昔のことは全然話してくれないんだもの、シルフィーよりも
前にお友達がいたなんて、もうびっくりとしか言いようがないのね」
「あはは、まあ好き好んで人に暗い過去をさらしたい人間なんていやしないさ。でもね、
シルフィーちゃんとやら、あんたも含めて今のシャルロットには本当にいい友達が パクパクとさせて言葉に詰まった。
”ちょっ、おねえさま! 確かに恋人を作ってくれとは言ったけど、そういう方面は
NGなのよねーっ!”
 言葉にならない悲鳴をあげたシルフィードだったが、シルフィードがなにをどう早合点しようと、
そんなことは二人にはどうでもよかった。人がどう思おうと好きにすればいい。自分たちの絆は
自分たちにしかわからないだろうし、わかってもらおうとも思わない。
 やがてジルとタバサは、唇から伝わってくる互いの体温と唾液の味、そして言葉にできない
思いを交換しあうと、ゆっくりと離れて最後の別れを交わした。
479ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:36:14 ID:Mc5KEx6F
 キメラを相手の狩りとは違う。力と力のぶつかり合い、狩人と狩人の戦いのルールを、また一つ
シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
 
『アグルブレード』
『ブレイド』
 
 光の剣が急接近してきたネオザルスの尾を両断したとき、シャルロットも初めて使う魔法で
自らの杖を鋭利な剣に変え、キメラドラゴンの尾を切断とまではいかないまでも脊髄を傷つけて
尻尾を振るう力を失わせた。
  「くぅっ!」
 吹き飛ばされそうになって、シャルロットは空中でなんとかふんばって耐えた。キメラドラゴンは火竜
としての火炎のブレスを吐く能力は失われているが、この巨体であれば肺活量も絶大である。
直撃されて木に叩きつけられでもしたら即死だ。
 正面からではかなわない。そう判断したシャルロットは奴の背中側に回り込もうとしたが、奴は全身に
生えた頭の目で、常にシャルロットを捉えていて攻撃のチャンスをつかませてくれない。
 どうすれば……焦りがシャルロットの心によぎったとき、彼女の目にアグルとネオザルスの戦いが映りこんできた。
 
”接近戦での剣の威力は魔法より高い”
 
 さらに戦闘は激化し、どちらも様子見から本気で、本気から奥の手の戦いへと入っていく。
 ネオザルスの胸に青白く輝いている発光器官が光り、奴が大きく腕を広げた瞬間、光の帯が
二本からみあったような光線をそこから発射した。
480ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:36:58 ID:9V7t3K76
「トァッ!」
 舞い上がった光が天空で輝きを増し、一個の恒星と呼べるほどにまで膨れ上がっていく、
あの怪獣を倒すために、これまでの人の体躯に合わせてセーブしたものではなく、アグルの力を
最大限に発揮するために、光の中でアグルはパワーのリミッターを解除する。
 
 出て行け悪魔の知恵の申し子よ。この世にお前の居場所はない!
 
 光が急速に収束したと思った瞬間、真にウルトラマンとしての力を発揮できる、身長五二メートルの
本来の巨体へと巨大化変身し、アグルはその中から再びその姿を現した。
 着地の衝撃で大地がめくれ、舞い上がった土砂がアグルの姿を一瞬隠す。しかし茶色いカーテンが
晴れたとき、はじめて敵に対して構えをとるアグルと、アグルを本能的に倒さなければならない敵だと
認識したネオザルスとの、大地を揺さぶる激戦の幕が切って落とされた。
 
「シュワッ!」
 キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 けれども、物語はまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
   一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 しかし、そんな小虫に等しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、
暗い洞窟のそのさらに奥から、幼生体を全部まとめたよりもはるかに低くおぞましいうなり声が轟き、
洞窟の入り口を岩の破片を撒き散らして破壊しながら、とてつもなく巨大なキメラドラゴンが現れた。
481ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:37:43 ID:Gzmx29Ha
「じゃあ、いってくるね」
「ああ、いってきな」
 
 数分後、タバサはシルフィードとともに空の上にいた。ジルの家はすでに後方に
流れていって影も見えない。
「また、ここへ来るのは一年後なのね」
「そう」
 シルフィードの言葉に短く答えると、タバサは読みかけだった本を取り出すと、しおりから
ページを開いた。これから向かう空には、遠からず次なる戦いが待っているだろう。そのときに
備えて、少しでも知識を蓄えておかねばならない。
”おかあさま、ジル、待ってて……必ず迎えにいくからね”
 決意を胸に、ゆくべき道に迷いはない。
 ただ……タバサは同時に不思議と不安を感じてはいなかった。
 一年も経たないうちに、もう一度この森をおとずれることになるような、そんな予感が
漠然としている。
 それはすなわち、自分の復讐劇の終焉を意味することであったが、根拠がないわけではない。
 今、世界は大きく動いている。異世界からの侵略者というかつてない事態に、すべての国が
大きく動き、動乱の時代となりつつある。
 すでにトリステインもアルビオンも一度は滅んだ。滅んだが、若くて強く、正しい心を持つ
者たちによって再建された。
 ひるがえって、ガリアはどうであろう? この世界を巻き込む動乱の中で、ガリアだけが、
あのジョゼフだけが例外となりえるだろうと誰がいえるだろうか。
 遠からずチャンスはめぐってくる。そのときこそ、三年に及んだ自分の戦いを終わらせて、
すべてのものを取り返す。
 いいや、王座や財産、権力などという馬鹿馬鹿しいものはいらない。
 ほしいものは一つだけ、母と、ジルと、シルフィードと四人で暮らして、キュルケたち友と
いっしょに、閉ざした心を解き放ち、なんの不安もなく笑い会える時間。
 それが、わたしの夢、それがかなうなら、わたしはどんな戦いにも臨んでみせよう。
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
 はるかかなた、敵が待つ空を目指して、群青の髪と瞳を持つ狩人姫は飛ぶ。
 戦いすんで、武器を捨てるその日のために。
 たとえどんな敵が待っていようと引き下がりはしない。
 まだ見ぬ未来を目指して戦い抜こう。
 そう、あの名も知らぬ青い巨人のように、強く、孤高に。
 
482ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:38:52 ID:wgFV3O2M
「じゃあ、いってくるね」
「ああ、いってきな」
 
 数分後、タバサはシルフィードとともに空の上にいた。ジルの家はすでに後方に
流れていって影も見えない。
「また、ここへ来るのは一年後なのね」
「そう」
 シルフィードの言葉に短く答えると、タバサは読みかけだった本を取り出すと、しおりから
ページを開いた。これから向かう空には、遠からず次なる戦いが待っているだろう。そのときに
備えて、少しでも知識を蓄えておかねばならない。
”おかあさま、ジル、待ってて……必ず迎えにいくからね”
 決意を胸に、ゆくべき道に迷いはない。
 ただ……タバサは同時に不思議と不安を感じてはいなかった。
 一年も経たないうちに、もう一度この森をおとずれることになるような、そんな予感が
漠然としている。  
 そうしてシャルロットはヴェルサルテイル宮殿に帰還し、思いも寄らぬ生還に驚く
イザベラから、北花壇騎士として生きていくためのシュヴァリエの称号を得、王族としての
シャルロットという名前を捨てて、タバサという第二の名前を持つことになる。
 
 それが、三年前の真実だった。
「で、それから一年ごとにこの子はあたしのとこへ来て、話を聞かせてくれるのさ」
 代理投下、ありがとうございました。
お楽しみいただけるとうれしいです。次回からも、頑張らせていただきまます。 たっぷりと数時間に渡って、思い出話を聞かされたシルフィードは、まさかそんな
過去がタバサにあったのかと目を丸くしていた。
「驚いたのね。お姉さまったら、昔のことは全然話してくれないんだもの、シルフィーよりも
前にお友達がいたなんて、もうびっくりとしか言いようがないのね」
「あはは、まあ好き好んで人に暗い過去をさらしたい人間なんていやしないさ。でもね、
シルフィーちゃんとやら、あんたも含めて今のシャルロットには本当にいい友達が
できたみたいだね」
「へっ?」
「ジ、ジル! よしてよ」
「いいじゃないか、これまでの二年間、いっつも死にそうな顔して帰ってきたシャルロットが、
こんな生き生きした顔でやってきたことはなかったよ」
483ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:39:47 ID:8nhpNNTF
「わたしからすべてを奪っていった奴ら……なら、この髪もくれてあげる!」
 呪文を唱えた瞬間、シャルロットの髪を核にして巨大な氷の塊が生まれ始めた。
 古来より、血、爪、髪など人間の体の一部を媒介または触媒にした魔法は多い。それは人間の
体には元々強い水の力、生命力が宿っているからで、それを引き出して使う魔法は禁忌と
されるものも多いが絶大な威力を誇る。このとき、王家の強い魔力を受け継いだシャルロットの
髪を使った魔法は、たった一回ではあるがシャルロットにスクウェアクラスの力を与えた。
 さらに、もう一つの戦いも終幕を迎えつつある。
 ネオザルスの攻撃をすべて受けきり、機と判断したアグルは全パワーを額にあるブライトスポットに
集中させて、高く伸びる光の柱のようになったエネルギー体を作り出す。
 これで本当に終わらせる。愚かな人間の過ちも、生まれるべきではなかった生命の狂気も、
そしてジルの悲しい復讐劇も、すべて終わらせて、未来へと足を踏み出すのだ。
「シャルロットーっ! 頼む、あたしの妹を、家族を眠らせてやってくれーっ!」
「わかった! 見てて、これがわたしとジルの最後の攻撃よ!」
 二人の思いを力に変えて、シャルロットの放った最強・最後の一撃がキメラドラゴンの
ブレスをも押しのけて飛翔し、同時にアグルの額から放たれた光線がネオザルスに突き刺さる!
  激しく地面をかいて、土塊と石を飛ばす攻撃にさらされていた。
「痛っ!」
 ただの土塊や石といえど小柄なシャルロットにとっては砲弾と同じだ。彼女はフライを駆使して
回避を続けるが、石のうちのいくつかは樹木に反射して思わぬ方向から襲ってくる。
「シャルロット!」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
『フォトンクラッシャー!』
484ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:40:51 ID:tPtaSqbC
 シャルロットとジルは夢を見ているような心地の中にいた。
 キメラドラゴンたちが……幼生体とはいえ巨大な体と、この世のものとは思えない
凶悪な力を誇る怪物たちが、まるで赤子の手をひねるように倒されていく。
「あれ……は」
 しぼりだすような声を発したジルとシャルロットの前に、”彼”は陽炎のように現れた。
 深い青き体に、黒と銀色のラインをあしらい、鋭く冷たく輝く目を持った彼は、
銀色のマスクを無表情に輝かせ、突然の乱入者に慌てるキメラドラゴンを悠然と見据える。
 ”彼”は、人ではなかった。かといって、亜人と呼ぶのも二人にははばかられた。
 どうしてかというならば、キメラどもによって汚染されたこの森の毒々しい空気の中で、
彼のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』 ここまで。
ウルトラの人、乙でした!
ゆりゆりな展開に俺得で大喜びw

次回の更新をお持ちします
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 なぜならば、強大な力を与えられた超人といえども、その心までは変わることはない。
485ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:41:45 ID:Vnllu3n+
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
   光子の奔流がネオザルスの細胞を分子単位まで焼き尽くし、奴の体は頭から順に粉々に
砕け散り、爆発して跡形も残さず崩壊した。
 そして、口の中にジャベリンを打ち込まれたキメラドラゴンもまた、体内で全魔力を放出して
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「あれ? 代理投下終ったばかりなのに。
気づいてないかとも思ったけど、IDがいちいち違うとか…久々にくだんの荒らしかな? 」
「シャルロット!」
 
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
優しく、ただし明確に突き放すようにして諭した。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:42:16 ID:wyA3CnkU
しつけぇ…
487ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:42:19 ID:bqlxG8f7
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
  手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
   キメラを相手の狩りとは違う。力と力のぶつかり合い、狩人と狩人の戦いのルールを、また一つ
シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
 
『アグルブレード』
『ブレイド』
  「セアッ!」
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
488ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:43:28 ID:sdKXSASR
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「しつけぇ… 」
「しつけぇ… 」
  「しつけぇ… 」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
「ジ、ジル! よしてよ」
「いいじゃないか、これまでの二年間、いっつも死にそうな顔して帰ってきたシャルロットが、
こんな生き生きした顔でやってきたことはなかったよ」
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
489ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:44:07 ID:e3scbXLi
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
  「しつけぇ… 」
「しつけぇ… 」
  「しつけぇ… 」
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
 
「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
   一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
490ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:45:00 ID:evBkbOIl
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
   一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 しかし、そんな小虫に等「すごすぎる……」
 けれども、物語はまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
  しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、
暗い洞窟のそのさらに奥から、幼生体を全部まとめたよりもはるかに低くおぞましいうなり声が轟き、
491ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:45:41 ID:jz+IF+XH
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」 「へっ?」 「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた
シャルロットへの感謝と、彼女が無事だったことへの安心感のみがあった。
 ジルの腕の中で、シャルロットはあるだけの力をしぼりつくして泥のように眠っている。まるで
赤ん坊のようだ、その無邪気で安心しきった表情を見ていると、ジルの中にずっとあった怨念が
492ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:46:33 ID:FfqCfWtL
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
493ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:47:08 ID:BnQ3BTw4
 二人の前に現れたのは、幼生体とはまるで違った。全長だけでも図鑑にあった初期段階が一〇メイル
だったのに、目測で二〇メイル超にまで巨大化し、全身に生えた頭部の数も百では足りるまい。
むろんネオザルスに比べれば小さいのだが、それはあくまで比較論でいうのであって、ここまでの
巨体と異形は、もはや怪物の段階を通り越し、充分すぎるほどに”怪獣”と呼んでいいだろう。
 子供をすべて倒されて怒り狂うキメラドラゴンのオリジナルは、住んでいた洞窟を破壊しつくして
外に出てきたあとで、無残に殺されつくされた子供たちの死骸を見て、一度悲しげに遠吠えをすると、
当然のようにもっとも近くにいたシャルロットとジルに”お前たちがやったのか”といわんばかりに
迫ってきた。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ!」
 とっさに『フライ』を唱えたシャルロットはジルを抱えて飛びのいた。瞬発力も速度も、一人のときより
はるかに劣るが、キメラドラゴンの成体は体格が巨大で、体にいらないものをたくさんくっつけている分
動きは幼生体に比べたら鈍く、二人にかわされた後も突進の勢いを止められずに、木々をへし折りながら
森の中へと突っ込んでいった。
「なんて奴だ……はっ!」
 恐らく、森中の生き物を食らいつくしてここまで巨大になったのだろう。火竜は二〇メイルを超える
まで成長することはできるが、それには何百年もの時間が必要とされる。成長速度まで奴は元となった
火竜のそれを異常なほど凌駕している。
 シャルロットは、奴が反転して戻ってくる前に逃げようと思ったが、抱えたジルに強く襟首をつかまれて
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
494ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:47:51 ID:QH0egayd
「強い……強すぎる」
 自然の理から外れた歪んだ生命が対抗するには、理そのものの存在であるアグルはあまりにも
強大すぎ、あっという間に半数を蹴散らされたキメラドラゴンたちの生き残りには、もはや戦意などは
残されておらず、これまで自分たちが恐怖させ、喜びながら喰らっていった獲物たちと同じように
算を乱して逃げ出した。
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
 巨大な爪は、アグルの首からほんの三〇センチばかり離れた場所で静止していた。
むろん、爪の持ち主にそうさせる意思があったわけではない。渾身の力と、全体重に助走を
かけた一撃は、確実に敵の首をとっているはずであった。ただ、そこにそえられている
一本の腕さえなければ。
「あ、あの一撃を、片手で止めた!」
 防御どころか、よりつくハエを追い払う程度の無造作ぶりに、ジルは片足を失った痛みすら
忘れて驚愕の叫びをあげたが、キメラドラゴンの巨体が突然重力から切り離されたように
浮かび上がると、叫ぶことすら忘れてしまっていた。
 
「デヤァッ!」 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
見ることなく封印されつづけてきた最強のクローン怪獣ネオザルスが、主なき世界に遠吠えをあげた。
「終わった……」
 大群を誇ったキメラドラゴンの幼生の、最後の一匹が噛み砕かれて、落ちてきたその肉片を
間近で見たとき、ジルとシャルロットの心に今度こそ完全な絶望が覆った。これは、人間が
敵うかどうかという問題ではない。
 だが、アグルは絶望に打ちひしがれる人間に語りかけることはなく、巨大なる敵に対しても
495名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:47:53 ID:gbTu5abE
そういえばいたな、こういう無駄な事する馬鹿が…
496名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:48:38 ID:izEBMV5n
そろそろいい加減にしてくんないなかな・・・・・・うぜぇ
497ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:48:41 ID:IBie9Oc4
彼のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
  「トァッ!」
 舞い上がった光が天空で輝きを増し、一個の恒星と呼べるほどにまで膨れ上がっていく、
あの怪獣を倒すために、これまでの人の体躯に合わせてセーブしたものではなく、アグルの力を
最大限に発揮するために、光の中でアグルはパワーのリミッターを解除する。
 
 出て行け悪魔の知恵の申し子よ。この世にお前の居場所はない!
 
 光が急速に収束したと思った瞬間、真にウルトラマンとしての力を発揮できる、身長五二メートルの
本来の巨体へと巨大化変身し、アグルはその中から再びその姿を現した。
 着地の衝撃で大地がめくれ、舞い上がった土砂がアグルの姿を一瞬隠す。しかし茶色いカーテンが
晴れたとき、はじめて敵に対して構えをとるアグルと、アグルを本能的に倒さなければならない敵だと
認識したネオザルスとの、大地を揺さぶる激戦の幕が切って落とされた。
 
「シュワッ!」
 キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 なぜならば、強大な力を与えられた超人といえども、その心までは変わることはない。
498ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:49:42 ID:H0bHuE40
「そういえばいたな、こういう無駄な事する馬鹿が… !」
「えっ!?」
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
だろうか、神という存在がいるとしたら、どうしてこんな悲劇を振りまくのだろう。シャルロットの心には、
怒りよりもむしろ冷め切った悲しみが残り、変に冴え渡った頭の中で、彼女は巨体を引きずりながら
こちらへUターンしてこようとしているキメラドラゴンを見据えた。
「悪魔……」 「痛っ!」
 ただの土塊や石といえど小柄なシャルロットにとっては砲弾と同じだ。彼女はフライを駆使して
回避を続けるが、石のうちのいくつかは樹木に反射して思わぬ方向から襲ってくる。
「シャルロット!」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」
「な、なにを馬鹿なことを言ってるんだい! あんたの魔法でもあれが相手じゃあ! それに第一、
あれはあたしの仇だ、あたしが倒さなくちゃ意味がないんだ!」
「ううん、やる。ジルはわたしに戦い方を教えてくれた。だから、わたしがジルの矢になって、あいつを倒す!」
「シャルロット……」
499名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:50:39 ID:izEBMV5n
一回一回のidが全て違うということは間違いなく荒らしですね
500ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:50:40 ID:rDqTpU8G
「そろそろいい加減にしてくんないなかな・・・・・・うぜぇ 」 「へっ?」 「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。 そのことを決して忘れない。
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
501名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:51:16 ID:x2gd1eAJ
多分猿さん食らうから黙ってよう
502ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:51:29 ID:rDqTpU8G
「げほっ! ジル、何するの?」
「一回一回のidが全て違うということは間違いなく荒らしですね !」
「えっ!?」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。  逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
503名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:51:32 ID:izEBMV5n
そろそろ止めろ阿呆
504ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:52:33 ID:DypviNps
「シャルロット!」
「大丈夫! 多分猿さん食らうから黙ってよう 」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
「な、なにを馬鹿なことを言ってるんだい! あんたの魔法でもあれが相手じゃあ! それに第一、
505名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:53:04 ID:YEvbgd7Y
この手の輩は、誰かが嫌がるということと自分の力を誇示できることを=で考えられる幼児性の高さがあるからなあ。
まず、言葉は通じない。
506ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:53:50 ID:arjZK3/G
 しかし、そんな小虫に等「そろそろ止めろ阿呆 」
 けれども、荒らしはまだ終わってはいない。戦いの最中も地下でじっとカウントを刻んでいた
時空転移装置は、その最後の時へと刻々と進んでいたのだ。
 
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
 
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
  しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、 だったのに、目測で二〇メイル超にまで巨大化し、全身に生えた頭部の数も百では足りるまい。
むろんネオザルスに比べれば小さいのだが、それはあくまで比較論でいうのであって、ここまでの
巨体と異形は、もはや怪物の段階を通り越し、充分すぎるほどに”怪獣”と呼んでいいだろう。
 子供をすべて倒されて怒り狂うキメラドラゴンのオリジナルは、住んでいた洞窟を破壊しつくして
外に出てきたあとで、無残に殺されつくされた子供たちの死骸を見て、一度悲しげに遠吠えをすると、
当然のようにもっとも近くにいたシャルロットとジルに”お前たちがやったのか”といわんばかりに
迫ってきた。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ!」
 とっさに『フライ』を唱えたシャルロットはジルを抱えて飛びのいた。瞬発力も速度も、一人のときより
はるかに劣るが、キメラドラゴンの成体は体格が巨大で、体にいらないものをたくさんくっつけている分
動きは幼生体に比べたら鈍く、二人にかわされた後も突進の勢いを止められずに、木々をへし折りながら
森の中へと突っ込んでいった。
「なんて奴だ……はっ!」
 恐らく、森中の生き物を食らいつくしてここまで巨大になったのだろう。火竜は二〇メイルを超える
まで成長することはできるが、それには何百年もの時間が必要とされる。成長速度まで奴は元となった
火竜のそれを異常なほど凌駕している。
 シャルロットは、奴が反転して戻ってくる前に逃げようと思ったが、抱えたジルに強く襟首をつかまれて
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:54:56 ID:gbTu5abE
スルーしかないかねぇ…
まさかこのスレが埋まるまで続けるつもりなんだとしたら、次スレどうしよう?
しばらく避難所に退避か?
508ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:55:17 ID:Hah1EAJP
『この手の輩は、誰かが嫌がるということと自分の力を誇示できることを=で考えられる攻撃性の高さがあるからなあ』
『まず、言葉は通じない』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」
「な、なにを馬鹿なことを言ってるんだい! あんたの魔法でもあれが相手じゃあ! それに第一、 感じて、大粒の涙を流した。 そのことを決して忘れない。
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
509ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:56:04 ID:Hah1EAJP

”来たか……スルーしかないかねぇ…
まさかこのスレが埋まるまで続けるつもりなんだとしたら、次スレどうしよう?
しばらく避難所に退避か? その結晶め”
 
 手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
510ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:57:33 ID:Hah1EAJP
『そういうときは関係ない話題でさっさと流してしまおう ブレイド』
  「セアッ!」
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 なぜならば、強大な力を与えられた超人といえども、その心までは変わることはない。
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 16:57:36 ID:izEBMV5n
いい加減にせんかい
512ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:58:19 ID:Hah1EAJP
 まぁ、どうでもいいけどハレルヤこの暑さで熱中症になって永眠しねぇかなぁ
アグルの右手から伸びる光の剣。その恐るべき切れ味の前に、切られた三匹は自分が
切られたということさえ理解せぬうちに、左右、または上下に両断された巨体を崩れ落ちさせた。
「強い……強すぎる」
 自然の理から外れた歪んだ生命が対抗するには、理そのものの存在であるアグルはあまりにも
強大すぎ、あっという間に半数を蹴散らされたキメラドラゴンたちの生き残りには、もはや戦意などは
残されておらず、これまで自分たちが恐怖させ、喜びながら喰らっていった獲物たちと同じように
算を乱して逃げ出した。
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
見ることなく封印されつづけてきた最強のクローン怪獣ネオザルスが、主なき世界に遠吠えをあげた。
「終わった……」 「シュワッ!」
 キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 大群を誇ったキメラドラゴンの幼生の、最後の一匹が噛み砕かれて、落ちてきたその肉片を
間近で見たとき、ジルとシャルロットの心に今度こそ完全な絶望が覆った。これは、人間が
敵うかどうかという問題ではない。
 だが、アグルは絶望に打ちひしがれる人間に語りかけることはなく、巨大なる敵に対しても
小揺るぎもせずに数歩前に進むと、腕を胸の前でクロスさせ、気合を溜めはじめた。
513ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 16:59:12 ID:IKcudc1l
 すでにシャルロットの目は、おびえ逃げる子供のものではなく、牙を持った猛獣に挑む狩人のそれとなっていた。
 
「いい加減にせんかい 」
 
 戦いの決意をその言葉に込めてシャルロットは飛んだ。
 小山のような巨体からありすぎるくらいの感覚器官でこちらを見つけ、攻撃対象に定めてくるキメラドラゴンに
対して、一メイルちょっとの小柄なシャルロットは、まさに象に立ち向かう蟻同然。だが敵の見た目の
恐ろしさよりも、今のシャルロットの心は大事なものを失うことへの恐怖が勝っている。その恐怖を勇気に
変えて、シャルロットはキメラドラゴンの真上に飛翔し、こちらを見つめてくる数百の目へと氷弾の乱舞
『ウェンディ・アイシクル』を叩き込み、奴を一瞬にして氷の剣山に変えた。
「あの子、いつの間にあれほどの魔法を!」
 驚愕にうめくジルの問いに答えることができるとしたら、その答えは『たった今』としか言うしかないだろう。
魔法の力は心の強さ、ジルを守るため、帰るべき故郷を守るために戦う覚悟を決めたシャルロットの力は、
先におびえ、逃げようとしていたときとは同じ魔法でもその威力には雲泥の差があった。
 だがむろん、キメラドラゴンもこれしきでまいるほど甘い相手ではない。全身を覆っていた氷の刃を
振り払うと、あっというまに傷口を粘土で塗りつぶすように自己再生を果たし、巨大な口から高圧の
空気のブレスを吐きかけてきた。
「くぅっ!」
 吹き飛ばされそうになって、シャルロットは空中でなんとかふんばって耐えた。キメラドラゴンは火竜
としての火炎のブレスを吐く能力は失われているが、この巨体であれば肺活量も絶大である。
直撃されて木に叩きつけられでもしたら即死だ。
 正面からではかなわない。そう判断したシャルロットは奴の背中側に回り込もうとしたが、奴は全身に
生えた頭の目で、常にシャルロットを捉えていて攻撃のチャンスをつかませてくれない。
 どうすれば……焦りがシャルロットの心によぎったとき、彼女の目にアグルとネオザルスの戦いが映りこんできた。
 
「セアッ!」
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 
”そうか、大きいということは弱点にもなるんだ”
 
 そう気づいたシャルロットは、振り向いてこようとするキメラドラゴンの、回転の軸にしている足の腱を
氷の刃で狙い撃ち、バランスを崩して倒した。
「やった! あれであいつの足も折れた」
 キメラドラゴンの肥大しすぎた体格を支えていた足は、過大な負荷に耐えられずにへし折れて、
奴は左に大きく傾いて身動きがとれなくなっている。この程度の傷はあいつならばすぐに治癒して
しまうだろうが、それでも攻撃するならば今だ。
『エア・カッター!』
 真空の刃がうなり、キメラドラゴンの表皮をえぐり、生えた頭を次々に切りとばす。
514ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:00:15 ID:a7+gduPZ
燃料投下のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、アルカディアのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
  「トァッ!」
 舞い上がった光が天空で輝きを増し、一個の恒星と呼べるほどにまで膨れ上がっていく、
あの怪獣を倒すために、これまでの人の体躯に合わせてセーブしたものではなく、アグルの力を
最大限に発揮するために、光の中でアグルはパワーのリミッターを解除する。
 
 出て行け悪魔の知恵の申し子よ。この世にお前の居場所はない!
 
 光が急速に収束したと思った瞬間、真にウルトラマンとしての力を発揮できる、身長五二メートルの
本来の巨体へと巨大化変身し、アグルはその中から再びその姿を現した。
 着地の衝撃で大地がめくれ、舞い上がった土砂がアグルの姿を一瞬隠す。しかし茶色いカーテンが
晴れたとき、はじめて敵に対して構えをとるアグルと、アグルを本能的に倒さなければならない敵だと
認識したネオザルスとの、大地を揺さぶる激戦の幕が切って落とされた。
 
「シュワッ!」
 キメラドラゴンを相手にしていた余裕に満ちた姿勢から一転し、素早く間合いに飛び込んだアグルの
回し蹴りがネオザルスのあごに炸裂し、巨体をわずかに揺らがせる。しかし、製作者によって最強と
なることを想定されて改造されたネオザルスはその一撃に耐えて、凶暴な叫び声とともにつかみかかってくる。
 さしものアグルも、捕まればパワーでは敵わないが、組み合うことなく流れる水のように高速移動してかわし、
離れた位置から飛び道具で攻撃をかける。
『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 なぜならば、強大な力を与えられた超人といえども、その心までは変わることはない。
515ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:00:57 ID:a7+gduPZ
 二人の前に現れたのは、大友TS体とはまるで違った。全長だけでも図鑑にあった初期段階が一〇メイル
だったのに、目測で二〇メイル超にまで巨大化し、全身に生えた頭部の数も百では足りるまい。
むろんネオザルスに比べれば小さいのだが、それはあくまで比較論でいうのであって、ここまでの
巨体と異形は、もはや怪物の段階を通り越し、充分すぎるほどに”怪獣”と呼んでいいだろう。
 子供をすべて倒されて怒り狂うキメラドラゴンのオリジナルは、住んでいた洞窟を破壊しつくして
外に出てきたあとで、無残に殺されつくされた子供たちの死骸を見て、一度悲しげに遠吠えをすると、
当然のようにもっとも近くにいたシャルロットとジルに”お前たちがやったのか”といわんばかりに
迫ってきた。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ!」
 とっさに『フライ』を唱えたシャルロットはジルを抱えて飛びのいた。瞬発力も速度も、一人のときより
はるかに劣るが、キメラドラゴンの成体は体格が巨大で、体にいらないものをたくさんくっつけている分
動きは幼生体に比べたら鈍く、二人にかわされた後も突進の勢いを止められずに、木々をへし折りながら
森の中へと突っ込んでいった。
「なんて奴だ……はっ!」
 恐らく、森中の生き物を食らいつくしてここまで巨大になったのだろう。火竜は二〇メイルを超える
まで成長することはできるが、それには何百年もの時間が必要とされる。成長速度まで奴は元となった
火竜のそれを異常なほど凌駕している。
 シャルロットは、奴が反転して戻ってくる前に逃げようと思ったが、抱えたジルに強く襟首をつかまれて
地面に落っこちた。
「げほっ! ジル、何するの?」
「あたしを置いていけ! あいつは、あたしが倒す!」
「えっ!?」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
 
 ファンガスの森を蹴散らしながら、アグルVSネオザルスの激闘は第一幕から二幕にもつれ込んでいく。
 
「すごすぎる……」
 一進一退の攻防を続ける、ウルトラマンと怪獣の、どんな神話やおとぎ話にも出てこないような戦いに、
シャルロットとジルは魂を抜かれたように見入っていた。
 超重量の巨体どうしがぶつかり、はたまた宙を舞って大地に舞い降り、圧倒的な破壊力を秘めた
光線が乱舞する。まったく、人間の戦いなどはこれから見たら、昆虫が朽木の上で角をつき合わせている
ようなものだ。
 シャルロットはジルが気が触れてしまったのではないかと思った。それは、あのキメラドラゴンこそが
ジルが三年間追ってきた奴に違いないが、あんな巨大な奴に、しかも切り札の”凍矢”もなしに、
せめて出直すでもしないと無駄死にだ。
 しかしジルは爪で地面をかきむしりながら絶叫した。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 シャルロットは絶句した。愛した家族をそんな無残な姿に変えられて、ジルの心がどれほど傷つけられた
516ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:01:50 ID:4XUMSKJ4
「荒らされてる……よかった、本当によかった」 「へっ?」 「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた  ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
517ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:02:52 ID:3R2sN3st
”最終カウントを開始します。三十秒前、二九、二八.……”
  膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「しつけぇ… 」
「しつけぇ… 」
  「しつけぇ… 」
「大丈夫! ジルは伏せてて」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
「ジ、ジル! よしてよ」
「いいじゃないか、これまでの二年間、いっつも死にそうな顔して帰ってきたシャルロットが、
こんな生き生きした顔でやってきたことはなかったよ」
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
 元通ってきた時空の通路を逆にたどり、あるべきものをあるべき場所へ返す。
 その時間がやってくることを知っていたアグルは、一瞥してジルとシャルロットが生きている
ことだけを確認すると、その影響の及ばない空へと向かって飛び立った。
  しい人間たちにも、危機はまだ去っていなかった。
 確かに、ウルトラマンアグルによってキメラドラゴンの幼生体はすべて倒された。洞窟に潜んでいたもの、
森に散らばっていたもの、そのすべてを。
 ただし、子供が生まれてくるために絶対必要なものがなにか、そのことを誰もが失念していたそのとき、
暗い洞窟のそのさらに奥から、幼生体を全部まとめたよりもはるかに低くおぞましいうなり声が轟き、
518名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:03:28 ID:YEvbgd7Y
どうやら自分で投下したのをコピペして貼りつけてるみたいだね
>>509はコピペした部分を削り忘れておかしなことになってる。
慌ててるなあ。
愉快犯なのにw
519ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:03:45 ID:Xb3+1tMg
 逃げられるはずなどはなかったが……
 残った三匹のうち、もっともアグルから近くにいた一匹はアグルブレードで両断された。
 二匹目は、背中からリキデイターで撃たれて粉砕された。
 三匹目のみが、アグルの手から逃れることに成功した。ただし、それは己と己の仲間が
欲望のままに喰らってきた負債を一手に押し付けられて返済を強要されたような結末で。
 
 森を蹴散らし、地震と間違うばかりに大地を揺さぶり震わす、シルドロンのものとさえ
比べ物にならない激震をともなう足音。
 樹海の影から姿を現す、あまりに巨大かつ凶暴な空気を撒き散らす二本足の竜の口の中に、
噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。

シャルロットは自分の頭に叩きこみ、それを実践して氷の矢で隙を作り、その瞬間にエア・カッターで
キメラドラゴンの頭に深い切り傷を刻み込んだ。
 それでも、キメラドラゴンもネオザルスもまだ衰える兆しを見せない。
 アグルのジャブのラッシュ攻撃と、シャルロットの魔法の波状攻撃にいらだちを見せたネオザルスと
キメラドラゴンは、腕と足、頭以上に強力な武器である、長く太い尻尾を鞭のように振り回して
襲い掛かってきた。
「くっ!」
 尻尾による攻撃は恐竜型怪獣最強の打撃攻撃だ。これにはアグルもいったん引かざるを得ず、
喰らえば全身粉砕骨折で即死のシャルロットも距離をとる。しかし、今度はシャルロットも慌てず
アグルの次の一手を観察し、アグルの右手から光の剣が伸びたとき、自らも次の魔法を唱えていた。
 
『アグルブレード』
『ブレイド』
  「セアッ!」  
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
   光子の奔流がネオザルスの細胞を分子単位まで焼き尽くし、奴の体は頭から順に粉々に
砕け散り、爆発して跡形も残さず崩壊した。
 そして、口の中にジャベリンを打ち込まれたキメラドラゴンもまた、体内で全魔力を放出して
膨れ上がり、シャルロットの髪一本一本を核にして作り出された何千本にも及ぶ氷の槍によって、
内部から爆砕されて消え去ったのだった。
 
「あれ? 代理投下終ったばかりなのに。
気づいてないかとも思ったけど、IDがいちいち違うとか…久々にくだんの荒らしかな? 」
「シャルロット!」
 
 気力を使い果たして倒れたシャルロットに、ジルは残った足と手を使って、はいずるようにして
彼女に駆け寄って抱き起こした。
「生きてる……よかった、本当によかった」

 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
 アグルはそのとき自分よりもはるかに重量級のネオザルスを相手に、素早い動きで翻弄しながら
戦っていたが、体格差によって格闘ではなかなか決定打を与えられずにいた。
 しかし、アグルはがむしゃらに攻撃をかけてくるネオザルスが、高い身長から重心も高いことを
冷静に見抜くと、スライディングから足払いをかけて転ばせることでダメージを与え、起き上がってくる
前にかかとおとしを食らわせて、さらに追い討ちをかけた。
 アグルはこちらを見下ろしてくる凶悪な目を見上げて思った。
 全長七三メートル、体重七万五千トン。
 典型的なティラノサウルス型怪獣ながら、その圧倒的な筋肉質の巨躯はシルドロンさえ
小さく見え、頭部に大きく張り出したとさかは暴君の冠のように猛々しく天を突く。
 かつて、異世界からハルケギニアに迷い込んだ一人の科学者が、一匹の怪獣に多数の
怪獣の遺伝子を組み込み、妄念の末に完成させたものの、研究所の壊滅によって誕生を
520ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:05:01 ID:Xb3+1tMg
『どうやら自分で投下したのをコピペして貼りつけてるみたいだね 慌ててるなあ。 愉快犯なのにw !』
『>>はコピペした部分を削り忘れておかしなことになってる。 !』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
   シャルロットとジルは夢を見ているような心地の中にいた。
 キメラドラゴンたちが……幼生体とはいえ巨大な体と、この世のものとは思えない
凶悪な力を誇る怪物たちが、まるで赤子の手をひねるように倒されていく。
「あれ……は」
 しぼりだすような声を発したジルとシャルロットの前に、”彼”は陽炎のように現れた。
 深い青き体に、黒と銀色のラインをあしらい、鋭く冷たく輝く目を持った彼は、
銀色のマスクを無表情に輝かせ、突然の乱入者に慌てるキメラドラゴンを悠然と見据える。
 ”彼”は、人ではなかった。かといって、亜人と呼ぶのも二人にははばかられた。
 どうしてかというならば、キメラどもによって汚染されたこの森の毒々しい空気の中で、
彼のいるその場所だけは、まるで浄化されたように澄み切った空気が流れ、彼から沸き立つ
風の匂いは、シャルロットに幼い頃両親に連れて行ってもらった、海原の潮風を思い出させた。
 
 そう、彼こそは多次元宇宙……無数にある異世界、パラレルワールドのその一つを守るべく、
大いなる地球の海が使わした光の化身。
 これは、その一つの世界にこれから起ころうとする巨大な戦いの序幕の、どこにも記録される
こともない一幕。そこへ図らずも迷い込んでしまったジルとシャルロットは、これから起こる
ことになる、自らの知識を超えた現象を、ただその身が有する感覚にのみ従って感じ、
記憶していくことになる。
 
 彼は、自らよりも圧倒的に体躯で勝るキメラドラゴンを恐怖の欠片もなく見回すと、
両腕を下げ、手のひらのあいだに稲妻のようなエネルギーを放出すると、それを胸の前で
合わせた手のひらの中で、輝く水の球のようなエネルギー球に変えて撃ち出した。
『リキデイター!』 ここまで。
ウルトラの人、乙でした!
ゆりゆりな展開に俺得で大喜びw

次回の更新をお持ちします
 また一匹、光球の直撃を受けたキメラドラゴンが粉々に粉砕される。
 その、ハルケギニアには存在しない異質な力の前には、メイジとの戦いを想定して
作られたキメラドラゴンなど、相手にもならない。
 
「わたしたちを……助けようというのか……?」
 だが、彼はジルの言葉を無視し、傷つき倒れている二人を助けるそぶりは見せずに、
仲間を突然大量に失ってうろたえるキメラドラゴンたちの正面へと向かっていく。
 それを、酷薄さと見るかは、彼の内面を知るかによって変わってくるだろう。
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
『フォトンクラッシャー!』
521ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:05:58 ID:dG9Zr30M
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。
「本当にありがとう、あたしたち家族を救ってくれて……」
 復讐が完結したというのに、ジルの心には達成感はなく、ただ自分のために命を懸けてくれた  ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
”来たか……スルーしかないかねぇ…
まさかこのスレが埋まるまで続けるつもりなんだとしたら、次スレどうしよう?
しばらく避難所に退避か? その結晶め”
 
 手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
「あいつだ! あいつがあいつが妹を食ったんだ! あいつの体から妹の首が生えてた! 殺してやる! 
あいつだけはあたしが殺してやるんだ!」
 悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
522ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:07:04 ID:dG9Zr30M
「げほっ! ジル、何するの?」
「ウザ川、今回で最終回か……これ以降湧いて来なくなればいいんだが」
「えっ!?」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
「大丈夫! 多分猿さん食らうから黙ってよう 」
 いくつかの小石が当たって体のあちこちが痛みながらもシャルロットは不思議と冷静であった。
むしろ、こんな攻撃方法があったのかと感心さえしている。
 そして、敵の奥の手に対しての対処法も、すでに揃っていた。
 
『ウルトラバリヤー!』
『ウィンドブレイク!』
 
 アグルが両手を前にかざして作り上げた、渦を巻くエネルギーのバリヤーがネオザルスの光線を
正面から受け止めて、シャルロットの放った風が飛んでくる石の軌道を変えて直撃を逸らす。
 
”無理に回避したりするよりは、対応しやすい正面から迎え撃ったほうがいいこともある”
 
 もうシャルロットには一個の石も当たることはなく、爪も牙も当たらない距離からシャルロットは
悠然とキメラドラゴンを見下ろしていた。
 その森の木漏れ日を受けて浮かぶ勇姿は、まるで地獄に舞い降りた一人の天使。いや、
武具をまとって悪鬼を狩る戦乙女の天使、ヴァルキリア。あれが今日まで自分の胸の中で
甘えていた子供かと、ジルは息を呑んで見ていた。
 ほかに表現のしようのない、ただこの世に存在するだけで誰かを不幸にし続ける存在。
 シャルロットは、もしこのキメラドラゴンが際限なく巨大化しつづけたらどうなるかと想像して、
そら恐ろしくなった。生き物ならなんでも喰らい、頭抜けた破壊力と生命力を持ち、さらに桁違いの
成長速度と、単体で繁殖する能力まで持ったこいつが、外の世界に解き放たれたら。
 あの巨人は、怪獣と戦うのに手一杯でこちらを気遣ってくれる余裕はない。いや、気遣ってくれるか
どうかなんてわからない。なら、道は一つしかない。
「わたしがやる。ジルは、ここで待ってて」 『リキデイター!』
 人間大のときの数十倍の大きさに拡大されたエネルギー弾がネオザルスに直撃する。けれども、
キメラドラゴンならば原子にまで還元するほどに強化された攻撃も、ネオザルスの皮膚をわずかに
焦がすだけでたいしたダメージにはなっていない。
  噛み殺された最後のキメラドラゴンはいた。
 
”来たか……人間の愚かさの、その結晶め”
 
 手招きしたのである。
 怒り、屈辱……強大な力を生まれながらにして与えられ、自分以外のあらゆる生き物を
恐怖させてきたキメラドラゴンたちに、はじめて他者から見下されるというあってはならない
事態が、彼らから狩人としての冷静さを奪った。
 一匹が、森の中で数多い獲物を切り裂いてきた爪でアグルの首を狙って切りかかる。
対してアグルは避けるそぶりさえ見せない。
 それでも、キメラドラゴンに勝利の女神は微笑むことはなかった。
「わたしたちを……助けようというのか……?」
523名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:08:11 ID:um0lcKaF
埋まる前に次スレ立ててきますね
524ウルトラ5番目の使い魔 5話 代理:2010/07/18(日) 17:09:32 ID:tJEGHD8k
「暇な大学生がガラガラに空いてるPC部屋を使って、と思ってたけど違うのな。日曜だし」
「へっ?」 「ショワァッ!」
 
 飛び立ったアグルが、青い光となって空のかなたへと消えていってから数秒、異世界へと
飛ばされていたファンガスの森は、再び白い光に包まれて、一瞬のうちにハルケギニアへと
戻っていった。
 
 そして、ファンガスの森のあったカナダのアルバータ州から飛び立ったアグルは、人類の
いかなるレーダーでも捉えられない速さで太平洋を渡り、数日後に、ある砂漠で金属生命体に
苦戦するもう一人の巨人の前に、はじめてその姿を現すことになる。
 
 根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
 ジルは、抱きしめたシャルロットが穏やかな息を吐き、心臓の鼓動が自分の体に伝わってくるのを
感じて、大粒の涙を流した。 そのことを決して忘れない。
   根源的破滅招来体……この世界に破滅をもたらそうとするものとの戦いの、その果てに
何が待っているのか、今の彼には知るよしもない。
 ただ、絶え間なく起こり続ける事件と、戦いの日々の渦中に身を投じていくうちに、
今日の日の出来事はそれらの戦いの中に埋もれて忘れられていった。
 
 ジルもシャルロットも、彼の名さえ知ることはなかった。それでも、救われた者たちは
そのことを決して忘れない。
 
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
 けれど、一つの終わりは一つの始まりでもあり、それは一つの別れをもともなった。
 翌日、任務を果たしたシャルロットは、証拠品であるキメラドラゴンの爪を持って森を
後にしようとしたところで、ジルから別れを告げられていた。
「いっしょに、行ってくれないの?」
「ああ、あたしはここに残って、家族やこの森で死んでいったものたちを弔うよ。それに、
あたしはもう戦える体じゃない。あんたの足手まといにしかならない」
「そんな……」
 シャルロットの目には自然に涙が浮かんでいた。父も母もいなくなり、やっといっしょに
いてくれる人が見つかったのに、また一人ぼっちになってしまうなんて耐えられなかった。
しかし、ジルは松葉杖をつき、左足に包帯をきつく結んだ不自由な体で、シャルロットを
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:10:22 ID:qACmipZo
>>523
早漏乙
526名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:10:42 ID:pKta3a+A
しつこいなやめろよ宇田川、安比奈、酋長
いつものお前のやり口だからわかりやす過ぎるんだよ馬鹿
527名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:11:13 ID:6EvVkQcr
>>523
お願いします
528名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:18:42 ID:cQP+inH8
思いつきで書いた小ネタ投下してもいいかな?
529名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:21:38 ID:x2gd1eAJ
どうぞどうぞ
530本当に怖い名無し:2010/07/18(日) 17:24:22 ID:cQP+inH8
俺は修理に出したノートパソコンを家に持ち帰る途中だった
これでインターネットができる。出会い系に登録したばかりだった
彼女ができるかもしれない。俺は、平凡な毎日に刺激が欲しかったのだ

しかし、刺激はインターネットの中ではなく、帰る途中に現れた
駅から家に向かう途中、俺の前に突然光る鏡のようなものが現れたのだ
俺は立ち止まり、それをまじまじと見た。
高さは二メートルほど。幅は一メートルくらいの楕円形をしていた
厚みはない。よく見ると、ほんのわずか宙に浮いていた

好奇心が騒いだ。これはなんの自然現象だろう、と、ぴかぴか光る鏡(らしきもの)を見つめた
どう見てもわからない
こんな自然現象は見たことも聞いたこともなかった
脇を通り過ぎようとしたが、持ち前の好奇心が災いした。

それをくぐってみたくなったのである
やめようと思った。すぐに、ほんのちょっとだけなら、に変わった

とりあえず石ころを拾い、それを投げてみた
石ころは鏡(らしきもの)の中に消えた
鏡(らしきもの)の後ろを見ても、石ころはどこにもない
次に家の鍵を試してみた
鍵の先っぽを、鏡(らしきもの)の中に入れてみた

なんともない

引き抜いて確かめたが、鍵に変わったところはなかった
俺はくぐってもおそらく危険はないと判断した
そう思ったら、くぐりたくてしかたがなくなった

「やめておけ」
聞いたことのある声が聞こえた
寺生まれで霊感の強いTさんだ

好奇心に負け、今にも鏡に飛び込みそうだった俺を押しのけ何か呪文のようなものを唱え
「破ぁ!!」と叫ぶ
するとTさんの両手から青白い光弾が飛びだし、鏡(らしきもの)を消し去った

「Tさん、なんでここに」
「お前が心配でな。あの鏡の持ち主にはまだやらなきゃいけないことがある。
もしもの可能性を求め、多くの人々を楽しませるという役割がな・・・」
そう言ってTさんは微笑みながら帰っていった

寺生まれってスゲェ、俺は改めてそう思った
531名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:25:46 ID:cQP+inH8
ほとんど原作コピペですまん。
カッとなってやった後悔は若干している
532名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:25:45 ID:6tBVmjiz
寺生まれってスゲェ
533名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:26:10 ID:5nBpRMfg
寺生まれのTさんw
534名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:27:50 ID:gbTu5abE
今までありそうでなかったネタだなw
535名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:29:39 ID:zIlsWJQO
寺生まれ最強伝説w
536名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:37:12 ID:aMl7XE/p
寺生まれってすごいんだな・・・
537名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:38:41 ID:ZVuPsE8C
鏡の向こうはどうなった?w
538宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/18(日) 17:40:18 ID:FUYnwJuB
>>526
それ、違いますよ。
私はここです。
539>>531:2010/07/18(日) 17:44:05 ID:cQP+inH8
予想以上の反響にビビる俺
魔が差したらギーシュ戦もやってみるか・・・?

それにしても、寺生まれってスゲェ

>>537
爆発。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:56:12 ID:YEvbgd7Y
寺生まれすげぉw
GJ
541名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 17:57:53 ID:fDHCGZTU
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part280
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1279443433/

たてたぞ
542名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:04:50 ID:pKta3a+A
>>537
しらばっくれなくていいよ
埋め荒らしの最中にお前がいて他人とか都合良く見てるだけなんぞありえんわ
なりすましも切れて粘着するのも小芝居も埋め荒らしもお前の得意技だろ馬鹿安比奈
543名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:16:41 ID:qzhXDZD+
荒らし反応して悪いがこれだけは言わせて欲しい

>>513
>「いい加減にせんかい 」
> 戦いの決意をその言葉に込めてシャルロットは飛んだ。
じわじわくる
544名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:17:41 ID:fDHCGZTU
>>542
お前は何と戦っているんだ?w
545名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:18:10 ID:Yf7yUU8L
そうか、もう夏なんだな……
546名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:20:33 ID:s9xisfU3
何で粘着荒らしが連射してたテンプレを一緒に入れちゃってるんだ?
547名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:24:20 ID:6tBVmjiz
235スレin避難所に行こうぜもう。
…勿体無いしw
548名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 18:58:26 ID:x2gd1eAJ
Tさんシリーズ化希望
549名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 19:31:45 ID:+f6+LfmK
寺生まれのTさんすげぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
550宇田川城重 ◆pakSEiBzVg :2010/07/18(日) 19:56:02 ID:FUYnwJuB
>>542
やれやれ、あなたはウルトラ・スーパー・デラックスマンそのものですね。
551名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 20:03:47 ID:91J6CYT/
>>542
>埋め荒らしの最中
どう見ても落ち着いた後

>都合良く見てるだけなんぞありえん
この台詞に関しては「何様のつもりだお前は」と言いたい
荒らしとはいえ一応ここの住人であり作者だったんだから、ここを見てても不思議ではない

確たる証拠も無しに過剰反応してるお前も荒らしだよ
552名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 20:04:50 ID:Zim4WBPM
まぁ もう 夏休みだしなぁ
553名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 20:12:02 ID:c0OA7OWZ
どうでもいいけど総意をまとめないと、投下する人が、ここか新スレか避難所か。どこに投下するか混乱すると思うんだが。
避難所進行?
554名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 20:27:36 ID:jBDKdVo+
それを話し合うのも避難所でじゃないか?
書き込めないヤツ? んなもん知らん
555ぜろろ :2010/07/18(日) 21:45:25 ID:x2gd1eAJ
なんかもうなんかもうって感じですが、
次スレもたってる事ですし、とりあえず埋めちゃって良いですか?
25kb程なんで丁度良いかと
21:50ごろから始めたいと思います
556名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 21:49:12 ID:WNDUFEPk
きゃほほい、支援体勢!
557ぜろろ 二十六 1/12:2010/07/18(日) 21:50:36 ID:x2gd1eAJ
それでは開始します
以下本文

幾分か冷静さを取り戻したルイズではあるが、先程の余りの惨状は脳裏から離れる事は無く、同時に鼻を突いた初めての死臭は、鼻腔に染み付き、ルイズの脳へと這入ろうとしているかのように、ちりちりと鼻の奥を刺激し続けていた。
未だに己の体が、間違いなく恐怖によって震えている事を、彼女は認めざるを得ない。
そんな恐れを忘れたいがためでもあるが、なにより、喋ってでもいないと気が狂いそうだった。

「ミスタ・コルベール」
「なんだね?」
「ヒャッキマルが目が見えないって、」
「ですから本当ですと、先程から何度も」

コルベールも先程の光景を見て多少の焦りを覚えているようだったが、ルイズの目を見るや、彼女の恐怖心を察してくれたのであろうか、気を使うような声色に変わっていた。

「本当ですよ。貴方もいい加減しつこいですね、ミス・ヴァリエール」

不穏な気配も今のところコルベールは感じていないようで、歩みを続けながらも話に付き合ってくれる。

「まあ、実際に私も未だに疑う事があるのですが。先程の戦いぶりなどは」
「いえ、そうではなくて。まあミスタ・コルベールがそこまで仰るのですから、信じます、ええ、信じます」
「では?」
「その、なんでその話を、さっき私に聞かせたのですか?」

単純にその真意を掴みかねていたのだ。
目の見えない百鬼丸が、あそこまで強くなれるのだから、と励まそうとしたのか。
彼をもう少し大事に扱うべき、とそう促そうとしたのか。
彼の事情を多少なりとも伝える事で、二人の関係の修復を図ろうとしたのか。
しかしどれも今一つ、コルベールの先程の口調から感じたものを考えると、違う気がしたのだ。

一つ目のドアを恐る恐る開けるコルベール。この部屋もはずれだ。
慎重に探索を続けながらも、会話を途切れさせれば、恐怖を増大させ続けると、自分を無視出来ず、話に付き合ってくれているのだろう。感謝せねばならない。

「いえ、貴方の聞かれたくない事を私は彼に話して聞かせたのですから、公平ではないでしょう?」
「公平って」
「ええ、そうです。公平ではないと思ったから伝えたのです」
「それだけですか?」
「ええ、それだけです」
「私は喧嘩しているあなた方を見る事の方が多いのですが、シエスタさんから訊いた限りでは大層仲が良い友人であると、そう伺っております」
「シエスタが……」
「ですから公平であるべき、と考えたに過ぎません」
558ぜろろ 二十六 2/12:2010/07/18(日) 21:51:54 ID:x2gd1eAJ
コルベールは全力で駆け出し、ルイズも必死にその後ろに続いた。



第二十六夜  第二魔神戦



百鬼丸は苦戦していた。
魔神の力もあるのだろうが、一流のメイジというのは、いざ相手にしてみればこれほど手強いものかと。そしてシエスタを守りながら戦うには、分が悪すぎた。

モット伯の姿、そしてそこに魔神の存在を認め、駆け出した百鬼丸に対し、モット伯はあろうことか、こちらに向かって、魔法でもってシエスタを放り投げてきたのだ。

受け止めるしかない。
シエスタを抱きとめると同時に、彼女に負担をかけまいと、出来るだけ勢いを殺すため、後ろに飛び退ったのだがこれがどうやら幸いであった。
先程まで百鬼丸がいた地点は、地下から汲み上がってきたのか、巨大な水の塊に叩き潰されていた。無論、魔法によるものである。

抱きかかえたシエスタは衰弱している様子で、その涙をぼろぼろ流しながら百鬼丸にか細い腕で必死にしがみついてくる。余程怖かったのであろう。
落ち着かせてやりたいところではあるが、それを許すならばやはり相手は魔神でなく、またシエスタとてこのような目にあうわけも無い。

すかさず先程と同様に、今度は二つに分かれた水が百鬼丸を襲う。
水は刀をで切る事は出来ず、それを防ぐべき道具を彼は持たない。
また、百鬼丸の接近を恐れているのだろう、近づく事を許さぬモット伯の攻撃に対し、飛び道具である仕込み武器を使うしかないのだが、シエスタを抱えたままでは十分に動けず、隙を突くことすら難しかった。
今は逃げ続けることしか出来ない。

「くそっ!! しっかり捕まってろっ!!」

執拗に追いかけてくる水の塊は、床を打ち、壁を打ち、天井を打ち、部屋中にその猛威を振るう。制限された空間の中でその量を減らす事の無い水は、新たに地下から汲み上げる必要すらなく、止む気配どころか、ただその激しさを増すばかり。
百鬼丸はシエスタを抱えたまま、飛び跳ね、転がり、魔神の砕いた岩に隠れ、不様ながらにもこれをかわし続けた。

ジュール・ド・モット伯爵の二つ名は『波濤』。本来は防御や治癒に長けているその属性に珍しく、攻撃を得意とする強力な水のメイジである。
その事は百鬼丸も聞いていたのだが、それにしても刀で切る事の出来ぬ水は実に厄介で、しかも想像以上の威力を持ち、魔神に体を奪われ、恐らくであるが、力の増大しているであろうモット伯は難敵としか言いようが無い。

手強い。せめてシエスタの安全さえ確保できれば。
559ぜろろ 二十六 3/12:2010/07/18(日) 21:52:36 ID:x2gd1eAJ
そうは思うものの、シエスタを抱えた状態では逃げ切ることさえも難しい。

早く来てくれと、爆発を聞きつけたに違いないコルベールたちの到着を待ち望むも、それまで守りの一手に入るしかないと、襲いくる水の軌道をひたすらに見極め続けた。

水はやがて三つに分かれ、四つに分かれ、それでも家具や飛び散った石畳を巧みに使い、辛くも免れ続ける百鬼丸に、魔神も痺れを切らしたのか、今度は拳大ほどの大きさに、しかしその数は無数に、魔神作り出す水球に周囲を囲まれた。

「畜生っ!!」

これから起こるであろう事態を予想して、百鬼丸は悪態を付くが、しかしそれでどうこうなるわけでもない。
すかさず近くにある、魔神の攻撃により天井から落ちた岩盤と、自分の体を使ってシエスタを挟み、庇い込むと、手近に転がる石を幾つか懐に詰め込む。
周囲を取り囲む無数の水をかわす事は、シエスタを守りながらでは到底不可能である。
しかし何の抵抗無く打ちひしがれる事などできようものかと、ありとあらゆる手段を考え、これを迎撃する構えだ。

執念の塊によって己の義肢は動いていると信じる百鬼丸は、諦めると言う言葉なぞ僅かばかりも頭に浮かばない。

飛び掛ってきた水球の軌道に石を放り投げ、勢いの付いた幾つかは、石にぶつかり、飛び散るが、それでも、無数に存在する内の僅かを減らしたに過ぎない。
左手に石を、右手には、峰を使わんと返した刀を握り締め、未だ数え切れぬほどの襲い来る水球の僅かな距離差を見切り、声を張り上げ叩き落し始めた。
少し遠いものには再び石を放り、懐から新たに出した石で近いものを防ぎ、無くなれば鞘さえ使い、両手を必死に振り回す。

しかしそんな奮闘むなしく、直ぐに限界が訪れる。

叩き落し損ねた一つが強かに足を打つ。
一度体勢を崩せば、あとは打たれ続けるしかなかった。
腕を打たれ、顔を打たれ、脾腹を打たれ、刀は何時の間にか取り落としている。
最早今は耐えるのみかと、しかし必ず打ち倒すという決意は揺るぐことなく、確かに残った意識の中で、シエスタを両手に抱え込み、これを背中で受け始める。
絶え間ない振動と衝撃。

「ぐぅっ!!」
「ヒャッキマル……さん」

自分をなんとしても守ろうと、苦しそうな唸りを上げながらも、それでも抱きとめる力を緩めることなく水球に打たれ続ける百鬼丸を、シエスタはどうすることも出来なかった。
こんな時でさえ、命の危機に自ら曝されている時でさえ、彼はそれでも守ろうとしてくれる。
出会って僅か四日ほどしかたたぬ己を、その逞しい体と、優しい心で、傷つけまいと覆ってくれる。
560ぜろろ 二十六 4/12:2010/07/18(日) 21:53:19 ID:x2gd1eAJ
  
もういい、もういいから、死ぬのは自分だけで良い。だからこの力を緩めて、自分を置いて逃げて欲しい。

「もうやめてっ!! お願いっ、逃げてっ!! もういいからっ放してっ!!」

そう叫び、逞しい腕を引き剥がそうとするが、その行為は、彼の受け続ける振動の激しさをシエスタの体に更に伝えるだけで、何が何でもと、僅かばかりも自分を放そうとしてくれない。

血が出ないように、それでも痛みで放せと、紺の布切れが撒きけられた百鬼丸の腕に必死噛み付くシエスタ。
だが百鬼丸からの返事は何も無く、ただ、燃え上りつつも優しく、自分と同じ黒い瞳がこちらを向いただけ。

「どうして……」

百鬼丸にとっては、何故かと言う質問などどうでもよかった。
伝える言葉は持つが、それはきっとこの行為の後ろから追いかけてくるものなのだと、窮地に置かれた今になって思う。
故に問いに対する答えなど、有っても無くても同じであった。

ひたすらに無抵抗な百鬼丸に満足したのであろうか、背中を打つ衝撃が止んだが、しかしこれは彼の安息を意味するものでなく、次の攻撃を仕掛ける合図に過ぎ無いということを、霞み始めた意識の中でも百鬼丸は正確に理解していた。

次なる魔神の、おそらく強力な一撃であろうそれを迎え撃つべく、立ち上がろうとするが、打たれ続けた振動のせいか、ゆらゆらと、地面が彼を誘惑するかのごとく、体を引くのを感じる。

倒れろ、そうすれば楽になる。

このごつごつとした石の塊たちはそう甘く囁き続けているのだろうが、残念ながら石の声など自分は聞くことは出来ない。

倒れるものか。

立てるか、立てぬかと言う事ではない。
人の形をしたこの体の隅々を、隙間すらなく詰まりに詰まり、人より硬い偽の皮膚を今にも突き破らんと、溢れんばかりに蠢く物。
それらが今こそ、我が存在を証明せんと叫んでいるのだ。
この身は決して人でなく、この体は血でも肉でもないのだから。
この身は執念により生きている。
執念は死なない。故に己は死なぬのだ。

巨大な水の塊が横から襲いくる気配を察知した百鬼丸は、シエスタを入り口に向かって突き飛ばした。
561ぜろろ 二十六 5/12:2010/07/18(日) 21:55:18 ID:x2gd1eAJ
  
吹き飛ばされる百鬼丸。勢いで一度宙に浮き、そのまま地面を滑ると、壁に衝突し、鈍い音を立てて停止した。力なく横たわる百鬼丸の体と、彼のすぐ横にみじめに転がっている人の足、その意味を理解したシエスタは叫ぶ。

「嫌っ!! ヒャッキマルさんっ!! ヒャッキマルさんっ!!」

自分のせいで、自分が愚かにも彼に助けを求めたせいで、優しい彼が、助けに来てくれた彼が死んでしまう。

悲痛な叫びを上げるシエスタを一瞥すると、魔神は薄笑いを浮かべながら百鬼丸の方へ悠然と歩み寄るが、叫び上げる毎にその笑みは増し、その足取りは彼女の悲鳴を更に引き出すことに意味を見出しているようであった。


突如、魔神の頭の真横で爆発が起こる。

「ヒャッキマルっ!!」
「ヒャッキマルさんっ!!」

コルベールが駆けつけた時には既に手遅れであったのか。憔悴した顔で悲鳴を上げ続けるシエスタと、その視線の先。水浸しで、体を丸めるように力なく、そしてその片足を失った百鬼丸。
もう少し早く辿りつけていれば、と悔やむ。
勢いを落としていた炎を掻い潜り屋敷に侵入する骸骨を振り切って来た二人は、百鬼丸の合図に対して、合流が遅れたのである。いざという時のためにと、出来るだけ使わずにしていた武器も、幾つか消費してしまった。

うずくまる魔神の姿は、ルイズの手によるものであった。
コルベールがいざ掛からんとした、それよりも早く動いた彼女は、躊躇うことなく杖を掲げ、魔法を使う。普段狙いは甘いが、幸いにしてモット伯の頭付近で爆発を起こし、ルイズの攻撃はその効果を発揮したのだった。

「ヒャッキマル!!」
「まだです!!」

苦しむモット伯に安堵したのであろうか、矢も盾もたまらず百鬼丸の元に駆け寄ろうとするルイズを、しかしコルベールは制止した。

僅かに燻る黒い煙を上げたまま、モット伯は立ち上がりコルベールたちへ体を向ける。
その顔の、左半分の皮膚は焼け爛れ、目玉は瞼を失いむき出しになっていたが、しかし血は一滴たりとも流れていない。
モット伯爵は既に死んでいるのだ。目の前にいるのは、その死骸に取り付いた、そうだ、あれは魔神。

シエスタはその醜い姿を目の当りにして再び悲鳴を上げるが、気丈にもルイズは魔神に正面を向いていた。だが僅かに体は震えている。無理も無い。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 21:55:53 ID:WNDUFEPk
しーえーん!
563名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 21:57:24 ID:M778WGJd
一日二回投下ってどういうことなの・・・
支援スタ
564ぜろろ 二十六 6/12:2010/07/18(日) 21:58:26 ID:x2gd1eAJ
そしてまた、百鬼丸の安否が気にかかるのであろう、ちらちらと横目で動かぬ彼の姿を視界に入れようとしているのだった。

コルベールが前に出た。

「シエスタさんを守ってください」
「でも、あたしだって!!」
「ミス・ヴァリエール、言う事を聞きなさい」
「でも、ヒャッキマルが!!」
「もちろんです。彼を助けねばなりません。ですから今は言う事を聞いてください。約束したはずです」
「わかりました……」

落ち着き払ったかのような自分の声は、その言葉遣いに反して、これまで聞かせたことが無いほどに、ルイズにはさぞ威圧的であった事であろう。
しかしそれだけ危機的状況にあるのだ。

勝算がある訳ではない。温存しながら戦い続けた精神力も既に底を尽き掛けているおり、まして、相手は自分とは相性の悪い水の使い手。
さらに周囲の状況を鑑みるに、水源が近くにある上、その魔法を行使するのは、痛みすら感じぬのか、常人を殺すよりも手間が掛かりそうな死人である。

今確実に彼が出来る事といえば、百鬼丸には申し訳ないが、彼を見捨て、シエスタとルイズを逃す事くらいであった。
しかし足掻くこと無く彼を見捨てるという選択を出来るほど、コルベールは非情ではない。

最悪に近い状況で、それでも己を奮い立たせるかのように、コルベールは高々と名乗りを挙げた。

「『炎蛇』コルベール!! いざ、お相手致しましょうぞ!!」

その名乗りには応えるつもりすらないのであろう、魔神は巨大な水の塊を作り出すも、コルベールはそれに対抗すべく、呪文を唱え杖を振る。

杖から放たれた高密度の、しかし小さな火球。
相対する魔神の作り出した水の大きさと比べると一見ひ弱にも見えることであろう。

「ミスタ・コルベール!?」
「しかと見ておきなさい。これが『炎蛇』の業であると」

焦りを見せるルイズの声に、死ぬやも知れぬと言う不安を隠し、今は自信を見せる。

巨大な水の塊と、小さな火の玉がぶつかりあった。
いや、小さな火球は周囲の水を蒸発させながら、貫かんばかりの勢いで水の中を突き進み、そして水の中心で突如としてその密度を解き放つ。
急激に蒸発した大量の水は、それを遥かに超える大きさの気体となって膨らみ、周囲を押し広げた。熱を与える事で僅かな水でさえ膨大な空気となることをコルベールは知っているのだ。
565ぜろろ 二十六 8/12:2010/07/18(日) 21:59:22 ID:x2gd1eAJ
 
爆音を上げ、辺りは水飛沫に包まれた。

「凄い……」

呟くルイズの声を耳にして、今日彼女が何度同じ言葉を呟いたのか考えると、場にそぐわぬながらも、幾分愉快にである。
だが、一度防いだだけで、未だ戦いの最中にあるのだ。
攻撃を退けられた魔神の対応は、コルベールは知る由も無いが、百鬼丸の時と同じである。
水の塊を二つに分けただけ。
ならばと二つの火玉を作り上げ、ぶつけた。水の塊が半分の大きさならば、それと同様に与える熱も少量で済む。

僅かにたじろぐ魔神を、しかし油断は出来ぬと、二つの火球を放つと同時に始た詠唱は既に終わり、再び杖を振るうコルベール。
いくらそれが人の形をしようとも、人に仇為す存在にかける情など、コルベールは持ち合わせない。
未だ忌まわしきこの業は容赦なく燃え上り、確かな毒牙を持った蛇を形作る。
しかし蛇でありながらもうねることなく魔神に向かい直進すると、その体に巻きつき、本来モット伯のものである豪奢な着衣ごと、魔神を燃やし始めた。

「我こそが『炎蛇』なりっ!!」

コルベールはその由縁を見せ付けたのだった。
ルイズもシエスタも、普段のコルベールからは想像も出来ぬ程の苛烈な戦いぶりに、目を見開き、驚きと共に眺める。

勝てる。

そうコルベールが確信したのも無理は無い。
一度獲物を絡め取った炎の蛇は、敵を飲み込むまで、その鱗と牙を燃やし続けるのだ。


しかし魔神の取った行動は、驚くべきものであった。
己の体に巻きつく炎を意に介さず、ぶくぶくと皮膚を膨らませながらも、百鬼丸を打ち倒したように、無数の小さな水球を作り始めたのだ。醜い。

「なんと!?」

メイジは二つの魔法を同時に行使する事は出来ない。
このままでは魔神に止めをさす前に皆殺しにされる。
相打ちするつもりなどは無く、何より後ろには二人の少女がいるのだと、今行使している魔法を解き、守りに徹するしかない。

コルベールの判断は早かった。
流し続ける力を止め、蛇の余熱をもって幾つか水球を潰すと、すかさず詠唱を始める。

水球が打ち出されるのとほぼ同時に、己の手前に炎の壁を生み出すことに成功した。
566ぜろろ 二十六 8/12:2010/07/18(日) 22:00:01 ID:x2gd1eAJ
  
拳大ほどの大きさしかない水球は、コルベールの下にたどり着く前に、全て炎によって蒸気と化し、あるいは自らの起こしたそれに飛び散る。辛くも魔神の猛攻を防いだ。
しかしこの戦いの決着は既に着いている事をコルベールは認めていた。

「ミス・ヴァリエール!!」
「え、は、はい!!」

呆然と、目の前の激戦を眺める事しか出来なかったルイズは、その突然の呼びかけに素っ頓狂な返事を挙げる。

「逃げなさい」
「そんな、ミスタ・コルベール、勝てそうじゃないですか!?」

コルベールの優勢にしか見えなかったであろうルイズは、当然反論するが、しかしそれに応える言葉は最悪のものだ。忌々しいが、これが限界である。

「私の魔法もこれで打ち止めです。底を尽きました」
「そんなっ!?」
「この壁もいつまで持つか。ですから私がこらえている間に逃げなさい」
「出来ませんっ!!」
「約束でしょう?」
「ミスタ・コルベールとヒャッキマルを見捨てて逃げるだなんて」
「シエスタさんも殺されます」

問答の時間すら惜しく、次第に言葉が少なくなっていくのを自覚する。
時折体を打つ、炎で小さくなった指先ほどの水球は、痛みこそ無いものの、その障害である炎が弱まっている証拠に他ならないのだ。

「オールド・オスマンと、約束したでしょう?」
「私には……できません」
「ミス・ヴァリエール!?」
「シエスタは……逃げて」

余りの状況変化の早さについてこれていないでのあろう、シエスタを振り仰ぎ、ルイズはシエスタだけでも逃げるように促した。

「ミス・ヴァリエールは?」
「あたしは貴族よ。最後まで戦う」

その鳶色の瞳は強い光を湛えていた。シエスタはそんなルイズの瞳を、死地にありながら、しかし宝石のようで美しいものだと感じる。
少しでも、眺めるだけでは満足できず、この指でそれに触れてみたい。

「言う事を聞きなさい!!」
「私も、逃げません」
「シエスタさんまで!?」
567ぜろろ 二十六 9/12:2010/07/18(日) 22:01:03 ID:x2gd1eAJ
「シエスタ……?」

一人で逃げる切れるとも思わず、また、一人だけ逃げようとも、シエスタは思わなかった。ルイズはともかく、自分のそれは完全に無駄死にだと分かっている。無力な彼女は化け物を傷つける事すらきっと出来ない。
それでもそうすることで、少しでもルイズに、そして諦めずに自分を守り続け、助けようとしてくれた大好きな彼に近づける気がしたのだ。
自己陶酔と笑うなら笑えばよい。自分もルイズも、そして彼の魂も、誇り高く、何者にも汚される事なく散っていくのだ。
泥にまみれたこの醜い場所で、しかしその醜いものは微塵も触れる事さえ出来ず、自分達の命は最後に美しく燃え上がるのだ。
不思議そうに己を見つめたままのルイズは、彼女の意を汲んでくれたのか、力強く頷いた。

「なんという……」

気力だけで炎を支えているコルベールは最早、決して比喩でなく、眩暈すら覚えている。なんと強情な娘達だろうか。
そのあり方を否定はしないが、少しは自分と百鬼丸の犠牲も報われてほしい。彼女達の気高さに僅かの感銘を受けながらも、死を待つ事しか出来ない己の無力さが恨めく、しかしせめて二人には逃げ延びてほしいという思いが、力一杯喉を鳴らす。

「逃げなさいっ!!ヒャッキマルさんの死を無駄にするのですかっ!?」
「無駄なんかじゃありません!!」
「そうよ、無駄なんて、ないんだから!!」

強情な、それ以上に勇敢で美しく気高く、しかしながら今は決して見たくないものであった。

せめて、とコルベールは力なく呟く。
それと共に轟音が、部屋中に鳴り響いた。

最早これまでと、膝をつき崩れ落ちる。痛みも何も感じなかった。
死とは、かくも落ち着いたものであるのか。そしてコルベールはこれから死に行くであろう二人の少女へ思いを馳せたのだった。





「はて?」

死力を尽くして作り上げた炎の壁は、ぱちぱちと音を立て、今は焚き火のように、弱弱しくも、しかし未だ燻っており、いつまでも耳につくその音にふと気付き顔を上げた。
先程まで彼らを殺そうとしていた水の球は全て消え失せ、いや、地面に落ちたのであろうか、あたり一面水浸しになっている。何故か。

「はて?」
568ぜろろ 二十六 10/12:2010/07/18(日) 22:02:21 ID:x2gd1eAJ
 
再びそう呟き、対手を見るも、モット伯の皮をかぶった魔神の姿はどういった訳か、確かに存在しているのだが、下半身と体半分、そして左腕を残し、それ以外の部分は全て吹飛飛んだかのように存在しない。
果たして自分の目がおかしくなったのか、或いは頭がおかしくなったのか、魔神の残骸の隣に立つのは一体誰だったか。

「コルベールさん」
「はい?」
「勝手に殺すなよ」
「はあ」

目に映っているのは間違いなく百鬼丸なのだが、どういったわけか、生きていると言う事は、つまり死んでなかったと理解するも、恐らく魔神の攻撃によって失われたであろうはずの足は、二本、確かに有った。

「ヒャッキマルさん!?」
「ヒャッキマル!?」
「なんだ?」

ルイズとシエスタの声が被る。
どうぞ、とでも言わんばかりに、シエスタはルイズに目線だけで、続きを促した。
染み付いた使用人としての優秀さは、死地を掻い潜っても容易く剥がれ落ちるものではないらしい。

「あんた、足は?」
「足?」

百鬼丸は足をぺたぺたと触る。右足、今度は左足。

「足がどうかしたのか?」
「さっき、その、千切れてなかった?」
「ああ、すまん。いや、その、あれは、外れた、だけなんだだ」
「外れた?」

意味が分からなかった。
と、何かに気付いたかのように、それまでルイズに向けていた目を、モット伯の死体に向けた百鬼丸の雰囲気は、先程までの暢気なものでは無い。

「まだ生きてたか……」

一体何が生きていると言うのだろう。
百鬼丸は無言のまま魔神の残骸に向かい、その正面に立つ。
何かが起こるというのだろうが、しかし何が起こるというのか。
焼け爛れ、体半分を失った消し炭のような肉の塊が生きていると、そういうのか。
569ぜろろ 二十六 おわり:2010/07/18(日) 22:05:22 ID:x2gd1eAJ
  
僅かに死骸がうごめくと、モット伯の体に入りきらないほどの大きさのものが、めりめりと気分を悪くする音を立て、醜い死体がさらに醜く歪むみ、ずるりと這い出すようにその姿を現わした。

後頭部の膨れた巨大な頭を持ち、老人のように皺んだ顔。土色の肌に骨の浮き出た貧相な体尽きと細長い手足。しかし案外大きく、身の丈二メイルほどはありそうで、大柄であったモット伯の体よりも、大きい。
丈は腿を覆うほどまでしかない襤褸切れを身に纏うそれは、人のようで明らかに人ではなく、それこそがモット伯爵に取り付いた魔神そのものであった。

体全てを抜き出したかと思うと、外見に似合わずやはり大きいだけあって重いのであろう、どすんと太い音を上げ横たわり、必死に百鬼丸から逃げようと、虚空に向かって力無く手を伸ばす。かすかに震える指先はひび割れた爪、そして指というには貧相で殆ど骨と皮しかない。
力を使い尽くし、弱りきったその態は、外見も手伝い、哀れですらあるが、しかし憐憫など一切湧くはずがなかった。

無造作にずかずかと近づく百鬼丸。

「よくもやってくれたな」

そう言うと百鬼丸は、逃げようと足掻く魔神の背を思い切り左の足で踏みつけ、今は存在しているが、先程失ったはずの右足の膝を折り曲げ、魔神の大きな頭に密着させた。
コルベールは、そしておそらく、驚きながらも首をかしげる二人の少女も同様であろう、何をするのだろうと考えたが、次の瞬間、その答えと、自分達が助かった理由を知る。

轟音と共に魔神の頭が、文字通り吹飛んだ。

部屋中に未だに残り、頭蓋をかすかに揺らし続ける残響と、百鬼丸の右膝の部分からもうもうと立ち上る煙を見て、コルベールはそれがなんであるか正確に理解した。

その常識外れ、いや、ここまできて常識なぞというのは既に儚いのだが、間違いないであろう事実。

小型の大砲を、百鬼丸は自身の右脚に仕込んでいたのだ。

彼以外の三人は、目を白黒させて百鬼丸の姿を見つめる。

「ざまぁみろっ!!」

霧散する魔神に向けてであろう、虚空に向かい右拳を掲げ、ぴょこんと跳ねあがり、百鬼丸は高々と、しかしどこか間の抜けた勝鬨を挙げるのだった。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
んん?番号また狂ったみたいです。どこか抜けて無いか見てみます
書き溜めてるものですから。占有するつもりはあまりないんですが……つい
570ぜろろ あとがき:2010/07/18(日) 22:08:47 ID:x2gd1eAJ
数え間違いと言うか、テキストエディタの問題だったようで
ともあれ次回で一時閉幕とさせて頂きます。
支援感謝です。

それでは
571名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 22:10:42 ID:WNDUFEPk
どんまいw
あとまぁ細かいことですが、所々要らない助詞が残っているようですー
572ぜろろ :2010/07/18(日) 22:12:00 ID:x2gd1eAJ
抜けてました これが二つ目です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
そう言いつつ、二つ目のドアに手を掛け、扉を開くコルベール。
出来損ない。初めて百鬼丸と会ったとき、そう揶揄した自分に対して、百鬼丸は、自分も同じだ、と確かそう応えた。
しかしそれでも常人を超えた能力を恐らく持つ彼が、目が見えない、という事に劣等感を感じているのか。

百鬼丸は百鬼丸だ。目が見えないくらいなんだ。

いや、それを聞けば、魔法が使えないくらいなんだ、と彼は言ってくるかもしれない。
そして、もしそう言われれば、きっと自分はまた、変な事を口走るに違いない
そんな嗜好の渦に入り込んだ彼女を知ってかしらずか、部屋の中を確認したコルベールの呟きによって、ルイズは現実に引き戻された。

「ここは、当たりのようです」
「なに、この部屋……」

灯りはあるが、窓が無く、本来窓あったであろう場所には塗り固められたような跡と、それを中心に奇妙な模様。振り返りドアを見ればドアノブも無く窓と同様に奇妙な、いや、模様ではない。
ルイズはその模様のようだが、何か違うと感じる、赤い幾つもの筋を食い入るように見た。

「ミスタ・コルベール!! これ、血の跡じゃっ!?」
「ええ、こちらにも」

そう、ここはシエスタが閉じ込められていた部屋である。
シエスタが、そしてルイズとコルベールが模様だと思ったものは、血の跡であり、それは恐らく、その部屋から逃げようと、爪を立て、血が滲むまで、そして血が滲んでも、がりがりと、逃げ出したいその一心で、必死に掻き毟り続けた結果ついたものであった。

まだ、その赤みが錆付いていない、体から抜け出したばかりであろう血で引かれた、数え切れない程の筋の意味する事はなんであるか。
ルイズはその事実にたどり着き、どれほどの人間がここに閉じ込められたのかと驚愕するとともに、そう、恐らく末路であろうものを、ルイズは、確かに見たのだ。

我が存在を残さんと未だ鼻につく腐臭。
そして思い出したくも無い、しかし余りの衝撃のため、焼きついた惨状が、脳裏に一瞬、しかし強烈に照らし出される。

「シエスタがっ!?」

焦りで衝動的に部屋を駆け出そうとするルイズをコルベールがそれを再び諌めんとした刹那、屋敷全体が轟音と共に僅かに揺れた。

「きゃっ、なにっ!?」
「ヒャッキマルさんからの合図です!! ついて来てください!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
失礼致しました。
573名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 22:44:05 ID:WNDUFEPk
乙でしたー
百鬼丸の“執念”がイイです。すごく。
単なる好青年じゃなくて、なんだかどろっとしてるというかなんというか。
生々しい感じが好きですー
574名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 22:47:38 ID:6tBVmjiz
乙です!

講談風、といいますか。立て板に水のように続く描写がスピーディですね。
コルベール先生がなんだか現役返りしてるみたいに見えてこわいw

身体はどこが戻ったのだろう。
それと諸々の始末をあわせて、次回でモット伯爵編終了かな?
575名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 23:07:11 ID:X2ccsQEJ
あーおもしろかった!乙っす!
576名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 23:21:03 ID:t3J6jHbg
ぜろろの人、乙。
まだまだ先だろうけど、メンヌヴィルとの盲目同士の対決が楽しみだ。
あ、でもその頃は目玉取り返してるか……?
577名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/18(日) 23:23:59 ID:t3J6jHbg
>>411
野暮な突っ込みだけど、デブリが怖いのは「空気」ってバリアーがないからだぜ。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 02:21:29 ID:en4UiqrB
避難所進行にしない?こんな訳のわかんない状態嫌や
579名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 03:41:48 ID:/SbcyXzE
ひゃっきまるの魔物って後何体いるんだっけ?
580名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 04:50:26 ID:YtyLBknG
二体殺したからあと46
流石にこれ全部殺す話作ったら百話どころの話じゃないな。
原作どろろは打ち切りだったっけ?
途中でどろろと別れてそれで終わったな。
581名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 07:42:58 ID:7qcv8ZaV
ゲーム版だとその辺も補完されてるって聞いたな
582名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 07:52:00 ID:zy8lx41E
身体を取り戻すたび、魔神以外には弱くなるのだろうか
583名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 08:02:15 ID:m9rK6+X4
>>576
逆にメヌンヴィルに魔神が取り付いてて、そいつが目を持ってそう。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 08:07:35 ID:TGM6/zMa
盲目の強豪キャラが視力を取り戻すと、途端に弱くなる(or迫力を欠く)イメージがあるなあ
585名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 08:14:21 ID:r2xpjCcM
片目の奴が両目になったら無双になるイメージもある
586名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 08:16:26 ID:v0lD1+8K
ぜろろを読んだら沙村が書いたルイズを見たくなった
587名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 10:45:54 ID:l3Oen2B/
>>585
修羅の刻の柳生十兵衛を思い出した。
588名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 10:47:44 ID:zy8lx41E
シャイニングフォースのオッドアイ状態とか。
見たものが焼ける。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 11:19:47 ID:og1cS4wM
敵を倒して身体を取り戻す主人公か……
百鬼丸じゃなくて、マダラが頭から離れないのはどうしてだろう……
590名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 12:07:55 ID:idrcUna1
>>585
最初の明訓戦で土佐丸高校がやってたな。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 13:27:03 ID:w+0QKO18
現在、本スレのほうでの荒らしの乱行に対しまして、避難所の運営議論スレのほうで、投下スレの避難所への一時退避が
検討されています。
使用予定になっていますのは、昨年度の埋め立て荒らしによる際に使用されました
『あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part235 in避難所』
すでに運営議論スレにて、作者さん数人を含めます方々が移転に賛成していらっしゃいます。
夏休み期間中に入りましたし、粘着している荒らしの長さから考えましても、重要な問題と思われますので、
読者、作者さん問わずに、避難所にて忌憚のないご意見をお願いしたく存じます。
592名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 17:22:05 ID:L1OfR7zN
>>585
森次さんのことかー

・・・あんま変わんない印象が、確かに死角は無くなったんだが

そういやコードギアスのナイトオブワンも片目ピアス封印だったな
散々「あの目はギアス隠しだ」と言われて俺は「そんなベタな」と思ったら
本当にそんなベタやらかして・・・ギアスは無意識に弱いお約束的な負け方は面白かった

ビスマルクはともかく、森次召喚はちょっと面白いかもしれないと思ったり・・・
593ぜろろ:2010/07/19(月) 17:42:04 ID:YtyLBknG
作者さんは避難所進行意見がほぼ全部で私も同意権ですが、
結論自体はまだ出ていない様子
私にとってはきりも良いのでとりあえずこのスレ使い切りまーす。
20kくらいです
17:45より投下したくおもいます。
594ぜろろ 27 1/10:2010/07/19(月) 17:47:26 ID:YtyLBknG
以下本文

勝利の余韻に浸る間もなく、百鬼丸の無事を理解したシエスタは、先程までの衰弱ぶりもどこへやら、今は確かな足取りで、猛然と百鬼丸に飛びつく。
その勢いに耐え切れず、百鬼丸は彼女を抱きとめたまま、後ろへ倒れこんだ。

「うわっ、と」
「うう、ヒャ……キマル……さん!!」
「ああ、怖かったろう」

それまで彼女を蝕んだ恐怖、そこから開放された安堵、彼が生きていたという事実、そして彼が助けてくれたという嬉しさ。
最早うまく言葉に出来ないのであろう、涙を流しながら、聞き取りにくい嗚咽交じりの声で何度も何度も彼の名を叫び続ける。
それを、赤子をあやすように軽く背中を叩きながら、何とか宥めようとする百鬼丸。
彼は、余りこういうのが得意ではない。しかし離れるわけにもいかないのだろう。

次いでルイズが走り寄る。もう一人は、と後ろを振り向けば、コルベールは気力を使い果たしたのか、本来戦うために存在するための杖を、今は歩みの助けとしながら、おぼつかない足取りであった。大丈夫そうだ。しかし今は目の前のこの男。

「ヒャッキマル!! 大丈夫!?」
「ああ、危なかったが、大丈夫だ。怪我は無い」
「ほら、シエスタ。ヒャッキマルも疲れてるんだし、傷の手当もしましょ?」

ぶんぶんと顔を振り、百鬼丸の胸に頭をめり込ませんばかりに、額をこすりつけ、百鬼丸の着物を必死に握る、シエスタのか細い指先は血で滲んでいる。
閉じ込められた部屋で、彼女もかつてそこで死を恐れた誰かがそうしたように、壁を掻き毟っていたのだろう。僅かにはがれた爪が痛々しいが、しかしすでに脅威は去ったのだ。

やっとたどり着いたコルベールも、何とか百鬼丸に声をかけた。

「良かった、ご無事でしたか」
「ありがとう、助かった」

本当に危なかったのだ。もう少しコルベール達の到着が遅れていたのであれば、百鬼丸はあわや殺されるところであった。
未だ離れようとしないシエスタを何とか宥めようとしながら、百鬼丸は応答する。

「ところで、ヒャッキマルさん、怪我は無いと」
「ああ、大丈夫だよ」
「いえ先程、足ですが、千切れていたように」
「ああ、それなんだが、ええとだな、」

シエスタの背を軽くさすりつつ、言葉を濁す百鬼丸を不思議に思いながら、喋る事すら今は精一杯のコルベールは、続きを待つ。

突如、百鬼丸はシエスタを引き剥がした。その力強さと、唐突に失われた抱擁感にシエスタは驚きの声を上げるしかない。何をするのかと周囲が驚く間もなく、百鬼丸はその場でひっくり返り、四つん這いになりながら己の右目あたりを、両手で必死に押さえつけている。

「ヒャッキマル!?」
「ヒャッキマルさん!?」
595ぜろろ 27 2/10:2010/07/19(月) 17:48:34 ID:YtyLBknG

「ぐぅ、くそっ!!」

百鬼丸は何かに苦しんでいる。

「まさかまだ魔神が!?」
「違う……、魔神は、仕留めたっ、ぐっ」
「では!?」

心配そうに駆け寄るルイズとシエスタ。
その時、百鬼丸の顔から何かが落ちた、石畳の床にぶつかり音を立てる。
作り物の彼の目玉だ。
その異常な事態に、真近でそれを見ていたルイズは、魔神との戦いで、隠しているが実は何か大怪我をしたのでは、とシエスタと共に、再び彼の名を叫ぶ。

「ヒャッキマル!? ちょっと、大丈夫!?」

肩で荒く息をする百鬼丸の顔を覗き込んだ。
不思議な事に百鬼丸の右目のあたりから、淡い光があふれている。恐らく先程落としたのは右目であると判断した。しかし何故、そして何だこれは。
光が治まったのかと思いきや、百鬼丸はその苦しみが解けたかのように、次第に息を静めていった。

がばっと顔を上げたかと思うと、自分の顔をまじまじと見つめてくる百鬼丸。その両目は、たった今、片方を落としたはずであるのに、何故かきちんと二つとも揃っていた。
最早意味が分からない。

「ヒャッキマル? どうしたの? 大丈夫?」

心配そうに問いかけたルイズだが、しかしそれすらも聞こえていないのであろうか、いや、何かに喜んでいるように見える。ものすごい勢いで立ち上がる百鬼丸。

「見える!! 見えるぞ!!」
「ヒャッキマル?」
「お前、ルイズだな!?」
「え、ええ、他の誰だって言うのよ?」

今度はシエスタの方を振り向く。

「シエスタか!!」
「はいっ」
「お前、シエスタだな!?」
「は、はい、シエスタです」

くるりと振り返り。

「コルベールさん!?」
「はい?何でしょうか?」
「見えるんだよ!!」
「はい?」
「目だ、おれの、おれの目だっ!!」
596ぜろろ 27 3/10:2010/07/19(月) 17:49:45 ID:YtyLBknG
 
狂喜乱舞する百鬼丸と、それを眺め、あっけに取られたままの三人。あたりをきょろきょろ見回す百鬼丸は様々なものを、その目に焼き付けようとしているようだ。
ふと、ルイズと目が合った。それまで動き回っていた百鬼丸の視線は、今度はじっとルイズの顔へ固定されたまま。

双方動かない。

「ルイズ?」
「な、なに?」
「お前、生意気だけど、案外可愛いじゃないか」
「なっ、なな、な!?」

はっとシエスタが何かに気付いたように。

「ヒャッキマルさん!?」
「ん?何だ?」
「そ、その、私の……」

シエスタは言葉を詰まらせたまま、どこかもじもじと恥ずかしそうにしているが、目線は決して百鬼丸から逸らさない。彼女が今身に纏っているものは、簡素な意匠の黒いドレス。
その嗜好は魔神のものかモット伯のものか分からない。
逃げ回り、激しい戦いに巻き込まれたせいであろう、破れた部分から、ところどころ彼女の白い肌が露になっていたおり、スカートの部分などは特に酷く、膝上辺りから完全に千切れている。これは些か刺激的ではなかろうか。

また暫くシエスタを見つめたまま、まんじりともせず、しかしその目は確かに彼女の哀れな、そして脅威の去った今では、どこか儚く、扇情的ですらある姿を、余すとこなくまじまじと眺める百鬼丸。
彼が何か口を開こうとしたその瞬間、ルイズは何故か、急激に膨れ上がった衝動にその身を任せ、思いっきり百鬼丸の脛を蹴り飛ばした。



第二十七夜  ようこそ、ここへ



「ヒャッキマルさん?」
「何だよ!?」

尻餅をついたまま、ルイズ相手にやいのやいのと言い合いを続けていた百鬼丸は、声を荒げて返事をする。問いかけたのはコルベール。
無理やりルイズに外套をかぶせられ、百鬼丸とルイズに取り残されたシエスタは、どこか不満気だった。


「足ですよ、足。それに、見える、とは?」
「あぁ……うん」

コルベールは痺れを切らし、先の続きを、ようやっと促した。
急激にしぼんだ百鬼丸の勢いからみるに、予想はしていたが、何やら少し話し辛そうだ。
597ぜろろ 27 4/10:2010/07/19(月) 17:51:26 ID:YtyLBknG
何かまだ彼が隠している、とはなんとなく予感していた。
しかしここへきてそれは到底、隠しきれるものではない。
千切れたのではなく、外れたと彼がそういった、今はある両足。
以前見せてもらった作り物の目を押し出したのであろう、恐らく彼本来の眼球。
最早自分達は無関係とも言い切れず、それは百鬼丸も同様に思ったのであろう、神妙に語りだした。

「おれの体は、ほとんど魔神に奪われてるんだよ」
「体が奪われている?」
「ああ、そこに落ちてる目も、さっき外れた足も、それだけじゃない。手も足も、髪も耳も、全部作り物だ」

そういって右の耳を造作もなく、かぽっと外す。
一様に驚く三人。しかし百鬼丸は開き直ったかのように、喋り続ける。

「耳だってほんとは何も聴こえない。心の声っていうのか、喋ってるのがなんとなく分かるんだ。味だって感じない。熱いのも寒いのも、痛みだって、おれには分からない」
「なんとっ!?」
「おれは、おれの奪われた体を取り返すために、魔神を追ってるんだ」
「そんな……」
「ルイズ。おれが、怖いか?」

百鬼丸の驚くべきこの事実を知った人間は例外なく、これまで己を恐れ、或いは蔑んだ。その問いは百鬼丸にとっては当然の不安であったのだ。
そして、彼のそんな、裡に抱えた恐れを読み取ったのか、出来損ない、という初めて出合った時の言葉の意味を、正しく理解したのであろうルイズにまず問うたのだ。

「馬鹿言わないでよ。怖いはずないでしょう?」
「ルイズ?」
「そうですよ、怖くなんかありませんっ!! ヒャッキマルさんは、その、とっても素敵です!!」

恥ずかしそうにも、しかしルイズと張り合おうとしているかのように、堂々と大きな声で。

「シエスタ……」
「お二人の仰る通りです」
「コルベールさん」

その二人を満足そうに眺め、杖に寄りかかりながらも、確かな返事を返すコルベール。

魔神の喰い残した人間の部分である己を、それでも人として扱おうしてくれるその言葉は、そして一様に、惜しげなく優しく力強いその言葉は、存在しないはずの心の臓を打ち鳴らすかの如く、確かに大きく響くのだ。
しかと抱き締めんばかりに己の心を締め付けるそれは、初めて感じるものでありながら、しかし決して痛みではないと確信できる。

もし今、魔神に奪われた涙が己の中にあるのなら、己を包むこの空間に染み渡らんばかりに、水浸しとなった一面の床をさらに覆うに違いない。
流す涙を今は持たぬ故に叶わぬ夢想を悔しい、なぞとは、しかしながらも微塵も思わぬ。
己を伝える己の声もまた今は確かにここにあるのだから。

ありがとう、と。
598ぜろろ 27 5/10:2010/07/19(月) 17:54:06 ID:YtyLBknG
   



四人は屋敷を後にして、門を出た。

あるべき場所へ戻ろうとしているのか、はたまたそれまで地上を支配していた闇達を、力強く押しのけようとしているのか、地平線の向こう浅紫の隙間から這い出した陽は、その存在を僅かに示そうとしていた。

骸骨達はすでにその姿を見せない。
恐らく、喰われ、彷徨い、死してなお逃げることの叶わなかった、かつて人であったもの達。
今は恐らく魔神の呪縛から解き放たれ、肉こそ持たぬが人の形を取り戻し、その姿に喜んでいるに違いない。

姿こそ見えぬが、きっと思い思いの事をしながら、いずれ訪れる安息を待っているのだろうとルイズは思う。

「少し眩しいな……」
「もっと明るくなるわよ?」

夜は明けるのだから。

「ふふっ、きっと目を回すわ? 初めて見るんだもの」
「そうなのか?早く見てみたい」
「もう少し待ってなさい。大丈夫、逃げやしないわよ」
「それに朝日だって、とっても綺麗ですよ?ヒャッキマルさん」

東の空を見つめながら立ち止まる百鬼丸。その背にはシエスタを背負っている。その二人の隣でルイズは同様に立ち止まった。

幸せな心持で百鬼丸にしがみつくシエスタ。傷だらけであった指先は、ルイズが持参した水の秘薬、魔法によって作られた治癒薬である、それにより大分癒えているようであるが、念の為に包帯も巻かれていた。

「そうか、朝日だって見れるんだな」

ふらつく体を必死に支えるコルベールは、立っているのもやっとではある。朝日を見たい、という百鬼丸の気持ちは分からなくもないが、いつまでもここで、ぼんやりいるわけにも行かない。

「お三方、早く帰りましょう」
「分かってますよ、ミスタ・コルベール。少し休まれてはいかがですか?もうすぐですし」
「もうすぐ?」
「ええ、もう夜明けですから」

ルイズの良く分からない返事にコルベールは首を傾げた。がその疑問は驚きと共に直ぐに解消される。

「ほら、良い子達」
599ぜろろ 27 6/10:2010/07/19(月) 17:57:40 ID:YtyLBknG
  
そうルイズが呟いた視線の先には、屋敷に突入する際に逃がしたはずの馬が三頭。
こちらへ向かってかけてくる姿が、疲れてかすんだ視界の中に、ぼやけながらも確かに映った。

「なんと、まるで、夢を見ているようです」
「夢じゃありませんよ、ミスタ・コルベール」
「ええ、しかし何故」
「あたし、馬、好きですから」

微笑む。
多少乱れながらもどこか整然と波打つ彼女の桃色の髪が、朝日のなかでうっすらと輝きを放ちながら、そう呟くルイズ。その姿はコルベールの目にはとても美しく、神聖なもののように感じた。

「そうですか」

きっと百鬼丸もシエスタも、自分と同じものをルイズに感じているのだろう。
彼女の姿に見とれるように眺める二人を目に、間違いでなかろうとコルベールも微笑んだ。

「さて、では馬車でも拝借しますか」
「そうですね、御者は私が勤めます」
「ミス・ヴァリエール?」
「ミスタ・コルベールもシエスタも、お疲れでしょう?」
「しかし」
「俺もやるよ」
「ヒャッキマル?」
「景色が見たいんだ」
「そうですか、ではお言葉に甘えるとしましょう。正直、立っているのも、結構つらいので、お願いします」
「あたし、引いてきますね?」

言うや否や、彼女達の元へ戻ってきたうちの一頭へ飛び乗ると、屋敷に向かい馬を馳せた。きっと彼女を昨晩背負ってきた馬であろうと、コルベールは何故か思う。





「なあ、ルイズ?」
「なぁに?」

馬車を引く馬の上で、揺られながら二人は言葉を交わす。初めはきょろきょろと辺りを見回していた百鬼丸であるが、しばらくして満足したのか、唐突に、問いかけた。馬車の中では、コルベールとシエスタが眠りについている。

「なんであの時逃げなかったんだ?」
「聞こえてたのね」

あの時、というのはコルベールが、彼女とシエスタを魔神から必死に守りつつ、逃げるように促していた時の事である。
600ぜろろ 27 7/10:2010/07/19(月) 18:01:41 ID:YtyLBknG
  
「あたしは貴族よ?」
「貴族は逃げないのか?」
「敵に背を向けないものを貴族というの。あたしはそう思ってる」
「死ぬかもしれなかったのに?」
「ええ、それにあんたとミスタ・コルベールを見捨てて逃げるなんて、なおさら出来るわけないじゃない」

強い意志を伺わせながらも、ルイズは穏やかにそう応える。
百鬼丸の嫌った侍達も、時折同じような事を口にするものがあった。その美学とも呼べる信念を否定するつもりはないが、百鬼丸には些か理解し難い。しかし、自分とコルベールを見捨てられなかったという彼女の言葉には共感を覚える。

「やっぱりおまえって、いいやつだな」
「そう?ありがと」
「でも、おれは死にたくないな」
「あたしだって死にたいわけじゃないわ。それにあんたもシエスタをかばって、その、死にかけたみたいじゃない」
「まあ、そうなんだが」
「それとも、あんたを放ったらかして逃げてほしかったの?」

頭を捻る。少し違う気がする。うまく言葉に出来ないが、己が何を言い伝えたいのか、それを手伝おうとしてくれているかのようにルイズがまた。

「それじゃあ、あんたなら、どうしたの?」
「おれか?」
「うん、あんたなら、あんたがあたしなら、あの時逃げた?」
「いや、多分逃げないな」
「でしょ? あんたなら多分、そうすると思ったわ」
「だから逃げなかったのか?」
「違うわ、さっきも言ったけど、貴族は逃げないのよ」
「でも死ぬかもしれなかったんだぞ?」
「ええ、そうね」
「死ぬのが怖くないのか?」
「怖いわ。多分、とっても怖い。でもあたしは貴族なの」
「平民とは違うってことか?」
「ごめんなさい。そんなつもりじゃないわ」
601ぜろろ 27 8/10:2010/07/19(月) 18:03:38 ID:YtyLBknG
 
責めたつもりは無い。
謝られた事に、ちくりと胸が痛む。自分がそうであるように、ルイズも心に複雑な思いを抱えているのだ。

今なら、共に生き延びた今なら、何でも話せる気がしていた。
そんな思いが百鬼丸の口を軽くさせている。

これ以上は話さない方がいいのかもしれない。また、むやみに彼女を傷つけてしまう。
しかし、彼女も自分と同じように、何でも話せると、そう感じているらしい。
今、この時間だけかもしれないが、心の裡をさらけ出す事に何の抵抗もないかのように、ルイズは真っ直ぐに、きっとこれが本来の彼女なのであろう、話を止めようとはしない。

「ごめんなさい。あたし、あなたの事を馬鹿にした」
「平民の癖にって?」
「ええ、あたしね、平民を守らなくちゃいけないって思う。それが貴族だと思うの」
「うん、偉いじゃないか」
「違うわ。平民の癖にって、あなたに言ったわ。あたしは、守らなくちゃいけないのに、平民の事、見下してるんじゃないかって。だから平民の癖にって言っちゃったんじゃないかと思う」
「見下してなんかないだろう。シエスタといるお前を見てたら分かる」
「違うの、聞いて? あたし、魔法が使えない。使い魔だっていない。それでも、守らなくっちゃいけないって勝手に思って」
「うん」
「でも、ヒャッキマルはとっても強くって、守ってくれた」
「守ってなんかいない」
「シエスタが苛められてた時、助けてくれたでしょ?」
「ああ、あれか」
「そう、そのあとね、あなたがあたしに召還されたって聞いて、あなたみたいな強い使い魔がいれば、あたしは貴族として認められるんじゃないかって」
「そうか」
「いいの、もう使い魔になんかならなくったって。ただ、その時ね、あたしが召還したのに、言う事を聞いてくれないって。だからあたしはやっぱり駄目な貴族なんだって思ったの」
「駄目なんかじゃないさ」
「いいえ、駄目よ。あなたに謝る事も出来なかった。わかってたの。あたしが悪いんだって。でもあたしの言う事を聞くはずなのに、あたしが謝るなんて、魔法さえ使えないのに、そしたらますます惨めになるような気がして」

ルイズの抱えていた鬱屈を聞いていくうちに、彼女はやはり何処と無く、自分に似ていると、百鬼丸はそんな気がした。

出来損いの人間である自分は、人間に戻り、人間として生きる事に必死に縋り付いて生きている。
同様にルイズは、彼女の掲げる理想の貴族として生きるために、必死に彼女に足りない部分を追い求めているのだ。

「でも、今ならちゃんと言えるわ」
「いいよ、もう怒ってない」
「聞いて?ヒャッキマル」
「わかったよ」
602名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:04:45 ID:q6i3hRSS
支援
603ぜろろ 27 9/10:2010/07/19(月) 18:05:01 ID:YtyLBknG
  
既に百鬼丸にはどうでもよかった。ルイズは素晴らしい人間なのだと気付いたのだから。
しかし、だからこそ、彼女は謝らなければ気が済まないのだろう。

「ごめんなさい。あたし、あなたの事見下してたかもしれない。平民の事見下してたかもしれない。」
「ああ、構わない」
「許してなんて、自分勝手だけど、ほんとにごめんなさい」
「もう怒ってなんか無い。だからそんなに謝らなくて良い」

ルイズは平民も自分も見下してなどいない。分かっている。

「おれは、貴族なんてのはよくわからんが、お前は立派だってそう思う」
「嬉しいわね。でも、ううん、何でもない……。ありがとう、ヒャッキマル」
「ああ、どういたしまして」

彼女は決して認めないだろうが、きっとルイズは立派な貴族なんだろうと、百鬼丸は思う。
そしていつか、彼女は自分の理想の貴族に辿り着けるのではないか。そんな気がした。

「ヒャッキマルは?」
「ん?」
「ヒャッキマルは、どうして逃げなかったの?」
「シエスタを置いて逃げるわけにもいかないだろう?」
「ええ、でもさっき、あの時あたしに逃げて欲しかったって、そう思ってたみたいに聞こえたから」
「逃げて欲しかったんじゃない。死ぬのが怖くないのか、って思ったんだ」
「ええ、さっきも言ったけど、あたしは怖い。そう、死ぬのは怖いわ」
「うん」
「でも貴族じゃなくなる方が、あたしはきっと怖いの」
「ああ、なんとなく分かる」
「あんたも、死ぬのは怖いって。でも逃げなかった。あんたがあたしでも逃げなかったって、さっき言ったじゃない?」
「ああ、多分逃げない」
「死んじゃうかもしれなかったのに?」
「いや、死ななかった」
「どうやって?」
「わからん。でも死なない」

ルイズが多少呆れているのが分かる。だが、彼女は見せたくなかった心の裡をさらけ出してくれた。だから自分もさらけ出す。

「おれは絶対死なない。死にたくないから、絶対死なない。何が何でも生きていたいんだ」
「どうして?」
「おれは、人間になりたいんだ。だから死なない」
「あんたは十分人間じゃない」
「その言葉は嬉しいな。でも違うよ。おれはまだ人間じゃない。目を取り返した今ならそれが尚更良く分かる」
「ヒャッキマル?」

見飽きる事のない景色を再びゆっくりと、確かめるようにぐるりと見渡す。

「うん、やっぱり景色ってのは綺麗だなぁ、ルイズ。本当の人間ってやつはきっと、もっと沢山、綺麗な景色が見えるんだ。もっと沢山知ってるんだ」
「そうなのかしら」
「ああ、そうだ。それだけじゃない。綺麗な音を聞いて、良いにおいをかいで、美味い飯を食って。それがきっと本当の人間なんだ。だからおれは、まだ人間じゃない」
「良いことばっかりじゃないかも知れないわ? 見たくないものだって、あるかもしれないじゃない? あたしは、その、あんたの気持ちは良く分からないけど、熱いのも寒いのも好きじゃない。それに、そうね、痛いのだって、あたしは嫌い」
「おれも多分、まだ分からんが、お前と同じ気持ちになるんだと思う。でもそれが本当に生きてるって事なんだと、おれは思う。今こうしているおれはな、ルイズ、まだ生きていないんだ」
604ぜろろ 27 10/11:2010/07/19(月) 18:11:54 ID:YtyLBknG
「あんたは生きてるわよ。怒って、笑って、シエスタも助けて、今だってあたしとおしゃべりしてる。生きてるじゃない?」
「そうかな?」
「そうよ。でもあんたの言う事、なんとなく分かる。多分だけど」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「それと、お前だって生きてるんだ」
「ええ、知ってるわ」
「だから、死ぬのは良くない」
「良くない、か。そうかもね。いえ、あんたがそう言うのなら、きっとそうなのね」
「そうだ。死ぬのは良くない。それにお前が死んだら、家族が悲しむ」
「そうかしら?あたし、貴族なのに魔法が使えないのよ? ヴァリエール家の汚点だわ。一応、あたしも公爵家だもの」
「公爵家?」
「そう、あたしの家柄って、自分で言うのもなんだけど、結構偉いのよ? でもあたしだけ魔法が使えないの。そんなあたしに、みんな悲しんでくれるかしら」
「ああ、悲しむと思う。それにコルベールさんとシエスタは、間違いなく悲しむ」
「そうね。きっとそう、悲しんでくれる」
「おれだってそうだ」
「そう、ありがと」
「ああ、どういたしまして」
「そうね、じゃあねぇ、あたしも死なない」
「へぇ、それじゃ、そうだな、逃げてでも?」
「わかんない。逃げなきゃいけない時は、逃げるのかも。でも今日みたいな時は、これからも絶対逃げない。あたしは貴族だもの」
「貴族はにげないから?でも逃げるかも、って」
「うん、あたしが思ってた事、ちょっと違うのかも」
「違うって?」
「そうねぇ、きっと守るべきものを守るのが、貴族なのかもしれないわね。」
「死ぬのが分かっていてもか?」
「ええ、そう。でもあたしは死なないの」
「どうやって?」
「わかんない。でもあたしも、あんたと同じよ、死なないの」

そうだ、きっと百鬼丸は自分はそう伝えたかったのだ。死んで欲しくないと、そう伝えたかったに違いない。

605名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:12:01 ID:6/BeD6lE
しえん
606ぜろろ 27 おわり:2010/07/19(月) 18:14:24 ID:YtyLBknG
「笑わないでよ、もう」
「いや、すまない。それが良い」
「あははっ、そうよ。それが良いの」

悲しいのは嫌いだ。例えそれが生きているという証拠であっても。
そして今、確かに彼女は生きていて、自分は生きようとしているのだ。

空を仰ぎ、眼を細める百鬼丸。産まれて初めて目にした太陽は、とても眩しくて、ルイズが教えてくれたように、本当に目を回しそうなくらいだ。

「あれが魔法学院か?」
「ええ、そうよ。どう? 綺麗でしょ」
「ああ、それに大きいなぁ」
「ふふっ、近くで見るともっと大きいわ」
「そりゃ、楽しみだ」

そしてこんな自分にも、隣で朗らかに笑う少女にも、分け隔てることなく、等しくその光を与えてくれる。

「ふむ、仲良き事は、実に良き事です。はぁ、しかし疲れましたな……。どれ、もう一眠り……」

馬車の中で眠るシエスタの胸元、白い布に巻かれた小さな両手によって包み込まれた百鬼丸の義眼は、ここが居場所だと、彼女の指を離れようとはしない。幌の隙間から差し込む埃まみれの光に、時折ちらちらと返事を返していた。

疲れているのも本当だが、野暮は良くない、幸せそうに眠るシエスタの無事をもう一度確かめながら、コルベールは大きな欠伸を一つ、そのまま目を瞑った。

暴力は嫌いだし、戦う事も楽ではないが、たまには人を守る為にそうするのも悪くない。

「さあ、帰りましょ?」

そうだ、帰ろう。

自分の今いる場所は、こんなにも明るく、美しいのだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
改行多くて増えてしまいました。
会話多いです。
スレも使い切りましたし、以降は結論が出るまで投下はしません。
おそらく避難所と言う結論に至りそうですが。荒らしは嫌いです
ともかくこれにて一時閉幕とさせて頂きます。
支援、感想、感謝の極みです。それでは
607名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:15:00 ID:zRDd4/Cx
otu !
608名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:17:31 ID:6/BeD6lE
609名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:26:37 ID:bsQIKl9G
ぜろろさんも608さんも乙!
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:30:46 ID:zy8lx41E
乙っしたぁ!
611名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:31:23 ID:Vox5FADN
埋め
612名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:37:48 ID:6/BeD6lE
ううううううううううううううううううううううううううううううううう
めめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめ
613名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 18:45:28 ID:3ThOAKXd
夏休み梅
614名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 20:51:17 ID:L1OfR7zN
あんまりうめうめ梅いうからふと思いついた小ネタ

「ちょいとそこの貴族のお嬢さん
 あっしは絨毯なんですがね、使い魔にしてやってくださいませんか」

「何か特別なことが出来るの?」

「よくぞ聞いてくださった、あっしは飛べるんでさぁ!!」
「おお!」

「人に乗られちゃ飛べないんですがね」
「なめんじゃないわよ」

うめぼしの謎 連載第一回一本目より魔法の絨毯を召喚

こんな無意味なマジックアイテムがあの世界にはわんさかあるに違いない
615名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 21:11:49 ID:x8skIQXu
エンチャンター(機工魔術師)からエンチャンター呼んだらハルケ固有の材料使って色々マジックアイテム作れそう
火石や風石などの魔石の有効活用に期待できるな

懸念があるとすれば工房を介して自力で帰ってしまいそうな事とマイナーな作品であることか
616名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 21:11:51 ID:8NCqPR0b
ぜろろの人乙!
面白かったよ。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 21:26:33 ID:gs9OGU1c
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part280
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1279443433/
618名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 21:29:52 ID:bKgBbQ7g
ぜろろの人乙です
読後感最高です、いや面白い
619名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/19(月) 21:32:29 ID:0DwEuxIu
500なら何か書け↓
620名無しさん@お腹いっぱい。
      ∧_∧   
     ( ´∀` )  わが名はウルトラスーパーデラックスマン。悪人は許さん! 
     /⌒   `ヽ          
    / /    ノ.\_M   
    ( /ヽ   |\___E)   
    \ /   |   /  \   
      (   _ノ |  / ウワァァン ヽ   
      |   / /  |ヽ(`Д´)ノ|←宇田川城重(安比奈誠伸) 33歳  
      |  / /  ヽ( )ノ         
      (  ) )     ̄ ̄ ̄   
      | | /   
      | | |.   
     / |\ \   
     ∠/   

よっと。   
       「\       .「\   
       〉 .>      〉 〉   
       / /      / /   
      /  |        /  |     
      /  /      /  /   
     (  〈 .    /  /.   
      \ `\   |ヽ |   
       \  \ /  |   
         ヽ  `´  ノ   
         |    /__   
        [二二二二二]   
        ‖||| | |‖ ←宇田川城重 33歳 (本名:小塚誠英)  
        ||||||‖            
          ||| | |||             
         |||||||          
          `ー――´           因果応報