あの作品のキャラがルイズに召喚されました part272
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part271
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1269253502/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>1
乙でした。
>>1乙
そう言えばスパロボ系は召喚あるけど
無限のフロンティアキャラ召喚はまだ無いよな・・・ガンダールブ無くても強いキャラばかりだけど
とりあえずルイズはハーケンに「ボンバー・・・はもういたからエクスプロージョンガール」とか呼ばれそう
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 07:46:14 ID:OYBWVSkz
赤松板
改造人間にされたくない (憑依物)
憑依勘違いもの、完結済み
ぶっちゃけ赤松板はそんなに掘ってないからわからんが
一番おもしろかったし、とりあえず完結してるのが個人的に良
ネギま!! 元一般人の生き方
オリ主、完結済み
理想郷でもトップの感想数とPV数なんだってさ
色んな意味で一回読んでみるといい
ちなみにお勧めはしない
基本的に赤松板のは何を読んでも同じ感じ
1話だけ読んで主人公と文体が気に入ったの掘ればおk
ゼロ魔板
【ゼロ魔】レイナール一夜城【転生もの?】
一応原作キャラに憑依だけどほとんどオリ主もの
多分、今一番人気があるんだと思う
内政ものだけどアプローチが多彩なのが受けたかどうかはわからない
Revolution of the zero 〜トリステイン革命記〜
原作再構成で内政ものってか革命もの
とりあえず目新しかった、あと最近大暴れしたアンチ貴族ものの原典っぽい
Servant of Moonlight [月姫×ゼロの使い魔]
召還クロスもの、月姫のメイン2人
型付好きなら楽しめる、てかあんまゼロ魔じゃない
型付設定がゼロ魔の日常生活の合間に延々続く感じ
これしか最近は読んでない
ゼロ魔だと「ゼロのレイヴン (ゼロ魔)」とか「ゼロの最強の使い魔(Servant Of TheZERO)」とかも
古典として読んでみてもいいかもしれない
7 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/01(木) 07:47:17 ID:OYBWVSkz
とある派遣魔導師の一日
sts後、オリキャラ局員中心、ギャグ
ゼロ魔
ゼロの死人占い師
ディアブロクロス、オリジナル展開、ルイズ魔改造物、完成度高くて面白い
大魚と令嬢
怪作、文章力高いけど雰囲気がゼロ魔と全然違う、ハードボイルドというかなんというか
イ吏い魔
最初から物すごい展開、エピソードもほぼ全部オリジナル、笑える
天使を憐れむ歌
EVAクロス、異色の設定、登場人物が皆真面目な感じにの性格になってる
レイナール一夜城
転生ほぼオリキャラ原作知識有り、これから原作ルートを大きく外れそうな感じなので期待
わたしのかんがえたかっこいいるいずさま
祝更新再開、タイトルのとおりルイズ魔改造物
優しい霧雨。ところにより暴雨。
ルイズっぽい人に憑依してルイズに召喚される、再構成
歩く道先は
ルイズ憑依物、シリアス、サイトを元の世界に返そうとする、精神不安定な主人公
ゼロとせんせいと
ルイズ設定変更再構成、オリジナル路線
運命の使い魔と大人達
完結済み、なのはクロス、年を取って性格が暗くて黒すぎるリリカル勢が召喚される、貴重な完結作品
XXX板
才人君とルイズさんを逆行させてみる
各キャラがいい意味で馬鹿で魅力的、キャラ描写は随一
なんだこの馬鹿は
なんかデビルマンのやつ消えてるな
自主削除か?
>>5 EXCEEDからアグラッドヘイム御一行もなかなか面白そうだなw
/´ ̄` ヽー八
/__ ヽ ヽー'人
∠二二、、 ' , ト、
、 _, '  ̄`ヽ、 ヽ\、__ ノ) ノ厂 `ヽ
〉′ )l `二´彳 / -┬- )l
八_ ,.=ニ二≦==  ̄ __, ´, -、 l /ノ
リ´ ̄ ̄ ,> '´ ̄ 儿_ノ八/ /
-彳 / , イ⌒lヽ ト ̄´ ∨
,ノ /イ l >‐'´ ' ′ l <勇次郎が炊飯するってマジ?
l| 〈_八 , =ゝ /
ヾ、__,≧、ヽ、 ´ ,イ 人_ノ|
` ̄ ̄ ヽ\ ヘ ‐ -- -‐' ヽ〜⌒′ |l
l厂ヽ \ ヾ、
、_八__〉 __ ノヽ ヽ
_ノ  ̄ ̄`ヽ、人__ 丶 〉、 ',
厂 \ ヽ l l 丶 l
/ ̄`ヽ ) 八 ヽ 人 |
感想が残るってのは理想郷の強みだよな
ここ出身の提督のように批判も残るけどな
代理の方、こっちでお願いしますぜ
申し訳ない
容量ギリで新スレ立ってんの気付きませんでした
改めて最初から代理しなおします
世界樹3が発売されたんで記念にブシドー召喚の小ネタ投下します。
・・・・・・嘘です。パラベラムの作者です。 せっかくのエイプリルフールですし。
また規制のようなのでどなたか代理お願いいたします。
第五章 それが恋だと気づくのに
0
ガンダールヴ/ [Gandalfr]――勇猛果敢な神の盾と伝えられる始祖ブリミルの使い魔。詠唱の時間、主人を守るために特化したとされる。あらゆる武器を扱ったと謳われ、左手に大剣を、右手に長槍を掴み戦ったという。
1
片付いた教室を後にして、食堂に向かう。昼食には間に合うだろう。
シエスタも給仕の仕事があるため、ルイズと一緒に向かう。
シエスタもルイズに椅子を引いてもらう。
「それでは私は失礼します」
「ええ、助かったわ」
シエスタがぺこりと頭を下げ、厨房へと消えていった。
ルイズは少し寂しく感じたが、食欲を満たすことに専念し始める。
久しぶりに体を使ったので、お腹が減ったのだ。
今朝とは違い、料理人たちが技の限りを尽くした豪華絢爛な食事をルイズは楽しむことにした。
「ミス・ヴァリエール、デザートにケーキはいかがですか? ガリアの新鮮なフルーツで、マルトーさんが腕によりをかけて作ったものですよ」
ほどよくお腹がいっぱいになってきたところで、シエスタが声を聞いた。
振り向けばシエスタが大きな銀のトレイを持って微笑みかけていた。
トレイの上には真っ白な雪のようなクリームに色とりどりのフルーツを盛り付けたケーキがいくつも乗っている。
――甘いものは別腹ね。
「ベリーは入っているかしら?」ルイズが気取った態度で問いかけて。
「ええ、甘くて大きなのが」シエスタがそれに合わせて、伏せ目で答える。
視線が交差して、二人とも思わず小さく笑った。
シエスタは、一番大きなベリーの乗ったケーキをルイズに配る。赤色や緋色の果物で上品に飾られたケーキを、銀のフォークで口へ運ぶ。
口に入れると、上品な甘さと酸味が口の中に広がった。
白くふんわりとしたクリームは舌触りも完璧で、それにフルーツの酸味がクリームの甘さに変化を与える。それは心地の良い刺激を舌に届けてくれる。爽やかな酸味が次の一口を誘うようだ。
大粒で張りのあるベリーを噛めば、甘酸っぱい果汁が飛び出し、スポンジに挟まれた色鮮やかな果物は目にも楽しい。
トリステイン魔法学院の料理人は、実に有能だ。
「美味しい! 甘くて酸っぱくて絶品ね」
思わず笑みが浮かんでしまう。それほど美味しいのだ。
「まぁ、コック長が聞けば喜びますわ」
ニコニコしたシエスタとフォークで一口大にしたケーキを見て、ふと思いつく。
「シエスタ」
不思議そうな顔をしながらルイズの手招きに応じて、顔を近づけるシエスタ。意地の悪い笑顔が顔に浮かぶのを感じながら、ケーキの乗ったフォークをシエスタの口元に運ぶ。
「はい、あーん」
「ふぇ!?」
予想通り、シエスタは顔を真っ赤にして、可愛らしい反応を見せてくれた。慌てて体を引きそうになるが、手に持つトレイのせいで急な動きはできない。
「み、ミミ、ミス・ヴァリエール?」
「シエスタも甘いものは好きでしょう? 今日、手伝ってくれたお礼に、ね」
傍から見ていて面白いくらいに顔を真っ赤にさせるシエスタ。耳まで真っ赤にして、目を白黒させている。
だがここまで、可愛らしい反応をされるとこちらまで恥ずかしくなってきた。
もしかして、いや、もしかしなくてもこれは恋人同士がやるような仕草ではないのか。
「は、早くしなさいよ! わ、私だって、その、恥ずかしいんだから・・・・・・」
なんだかシエスタの顔を見れずに俯いてしまう。上目遣いでシエスタの方を見ると、真っ赤な顔になんだか泣きそうな表情を浮かべていた。
「で、では! ・・・・・・あ、あーん」
何か決心したような声を上げ、口を開けるシエスタ。なぜか目まで閉じている。
「あ、あーん」
震える手でシエスタに、ケーキを運ぶ。なんだかドキドキしてしまう。
今、シエスタの口にケーキが入った。
フォークを咥えながら、もぐもぐと口を動かしてケーキを味わうシエスタ。顔は真っ赤で、目尻には涙が滲んでいる。体は小刻みに震えていて、銀のトレイがそれに合わせキラキラと光を反射する。
そんなシエスタの様子がなんだか官能的に映ってしまうのは、何故なんだろうか。
というか、その、これは・・・・・・。
――間接キス、よね。いやいやでもシエスタは女だし私も女だしそもそもシエスタはメイドでこのケーキは今日のお礼なんだし深い意味はその無いんだし――
意識しだすと、もう止まらない。
「・・・・・・お、美味しかった、です」
「そ、それは良かったワ!」
シエスタの声で我に返った。思わず声も裏返った。
支援
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人とも顔を赤くし、俯いてしまう。両者の間に、なんだか気まずい沈黙が流れる。
「み、ミス・ヴァリエール、私、仕事が残ってますので・・・・・・」
「え、ええ、そうね、引き止めて悪かったわ。頑張ってね、シエスタ」
そういえばシエスタはまだ給仕の途中だ。これ以上、手を止めると怒れてしまうのかもしれない。
「いえ、すごく美味しかったです、ありがとうございました!」
ようやく落ち着いたのか、シエスタは仕事に戻っていった。
――私、どうしてあんなことしたんだろう?
確かに『力』を手に入れて、ルイズは少し『余裕』を手に入れた。
物事を前よりも冷静に考えられるようになり、視界が開けたようだ。シエスタとも貴族とメイドでありながら、親しい関係になりつつある。
失敗魔法も前向きに捉えて、自分の持てる『力』として認識ができるようになった。
どれも以前のルイズでは考えられないことだ。
使い魔を召喚し、『力』を手に入れてルイズは変わった。それが良い事なのかはルイズ自身にはわからないが、少なくても悪くは無い、と思う。
だが、しかし。
――さっきのやり取りはやり過ぎじゃないかしら。
ルイズは頭を抱えた。思い出すだけで顔に朱に染まるのがわかる。
シエスタに『例の行為』をしたフォークで、食べるケーキは相変わらず美味しい。甘酸っぱくて、まるで本に出てくる初恋の味のようだ。
そもそも、シエスタは――
パンッ! と。ルイズがそこまで考えた時、食堂に乾いた音が響いた。
2
シエスタは胸の高まりを未だに抑えられずにいた。あのルイズと間接キスをしたのだ。
ドキドキと早鐘のようなリズムを鼓動が刻む。顔はまだ赤いだろう。風邪を引いた時のように、体が熱くて仕方が無い。
「あら?」
足元に何かが当たった。屈んで手に持ってみると、綺麗なガラス瓶だった。
細かな細工が施されたそれには、紫色の液体で満たされていた。花弁が浮かんだ半透明な液体は、見ようによっては桃色にも見える。
――微かに甘い、花の匂いがしますね。この匂いは薔薇でしょうか?
おそらく香水だろう。平民には高価で手に入り難いものだ。このガラス瓶でさえ買うのは難しい。
誰か学院の生徒の落し物だろう。
周りを見渡せば目立つ集団が一つ。友人らしき男子生徒に囲まれた金髪の生徒がいた。
細い金色の巻き毛とフリルのついた派手なシャツに身に纏った生徒。
ギーシュ・ド・グラモン。女性のような整った顔立ちと、軍人の家系という恵まれた血筋を持つ少年。ギーシュの薔薇を模した杖はよく目立つ。
かなりの女好きで、様々な女生徒と関係を噂されている。顔は良いのだが、その浮気性からメイドたちの人気はいまひとつだ。
おそらくこの香水はギーシュのものだろう。辺りに女生徒は見当たらないし、集団の中で香水を使いそうな男性はギーシュぐらいだ。
瓶の装飾は繊細で、女性が喜びそうなものだった。これから誰かに渡すか、誰かから受け取ったプレゼントなのだろう。
「なぁ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合っているんだよ!」
「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」
「付き合う? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
気取った動きですっと唇に指を当てる仕草は、なるほど、さまになっている。ご丁寧にウィンクまでしてるのだから、たいしたものだ。
しかし、シエスタの好みではない。シエスタの好みはルイズのような気高く強い人だ。
――っと、そんなことを考えている場合ではありませんね。ケーキも早く配らないと乾いてしまいますし。
ルイズと『色々』としていたために、仕事は遅れている。急がないと貴族にどんな文句をつけられるかわかったものでは無い。
平民であるシエスタは、貴族のきまぐれでどうなるかわからないのだ。
シエスタに何かあれば、故郷にいる多くの妹や弟が飢えて苦しむ。
シエスタの従姉妹もトリステインで働いている。シエスタも働かなければいけない。働かざる者食うべからず、祖父の言葉は正しい。
「ミスタ・グラモン、小瓶を落とされませんでしたか?」
拾った小瓶を、音を立てぬようにギーシュのテーブルの端に置く。
なぜかギーシュの顔が苦虫を噛み潰したようになった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
――ミスタ・グラモンの物では無いのかしら? でも、じゃあこれは・・・・・・・?
「失礼致しました」と謝り、香水の持ち主を探そうと香水を手に取ろうとすると、横から伸びた手が香水を裂きに手に取った。
「おお? この香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」
香水を手に取った小太りの生徒が興奮気味に騒ぎ始めた。
「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分の為だけに調合している香水だぞ!」
「ギーシュ! お前がそれを落としたってことは、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている! そうだな?」
「ち、違う! いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが――
ギーシュがそこまで言った時、後ろのテーブルに座っていた少女が立ち上がり、コツコツとギーシュに歩み寄った。
茶色のマント、一年生だろう。栗色の髪をした愛嬌のある顔をした少女だ。だが今は、その鳥の雛を思わせる大きく可愛らしい瞳に涙が溜まっている。今にも零れてしまいそうだ。
「ギーシュ様・・・・・・」
とうとう少女の瞳からボロボロと、大粒の涙が零れ始める。
気付けばいつの間にか生徒は皆、こちらに注目している。自分たちの雑談もやめて、突然の演劇を見物しようと身を乗り出す生徒までいる。
「や、やはり、ミス・モンモランシ、と・・・・・・」嗚咽交じりに訴える少女は見るもの心を締め付ける。
「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ――
支援
またギーシュの言葉は最後まで言うことができなかった。ケティと呼ばれた生徒が、思いっきりギーシュの頬に平手打ちを食らわせたのだ。
「その香水をあなたが持っていたのが何よりの証拠ですわ!」
涙を零しながらではあるが、先ほどとは違い一息で言い切った。
「さようなら!」
それだけを短く言い切るとケティは走り去ってしまった。慌ててその後をケティの友人らしき少女が追いかける。
ギーシュは頬をさすりながら、走り去るケティの背中に手を伸ばしかけてやめた。
ギーシュの背後でバンッという大きな音が聞こえたからだ。
シエスタがそちらを見ればそこには、肩を怒らせた見事な金色の巻き毛を持った少女が立ち上がる様子がよく見えた。どうやら先ほどの音は、彼女が怒りから机を叩いた音らしい。
カツカツと聞こえる足音に怯えた様子で、振り向くギーシュ。
「モ、モンモランシー。誤解だ、彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで――
やはり、ギーシュは最後まで言うことができなかった。
モンモランシーが遮るように問いただす。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
ケティとは対照的に落ち着いた穏やかな声音だった。しかし、言葉、表情、態度、全てから怒りが滲んでいるように感じる。
ギーシュは冷や汗を掻きながら、必死に舌を回す。
「お願いだよ、『香水』のモンモランシー。誤解しないでくれ、咲き誇る薔薇のような君の笑顔が、まるで造花の様じゃないか! この僕まで悲しくなってしまう!」
モンモランシーは静かに目を閉じ、息を吐いた。そしてテーブルに持ったワインの瓶を掴み、ギーシュの頭にたっぷりと浴びせた。
シャツは薔薇のような赤に染まった。正しくは葡萄だが。
そして。
「嘘吐き!」
そう一言だけ言い放ち、モンモランシーは走り去った。最後のその一言だけは震えていた。
食堂に沈黙が流れた。
ギーシュはハンカチを取り出し、葡萄酒で赤くなった顔をゆっくりと拭き、それから芝居がかった仕草で呟いた。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解できていないようだ」
食堂にいくつもの呆れのため息が漏れた。
3
「そこのメイド」
目の前で行われた色恋騒動を目の当たりにして呆然としていたシエスタは、ギーシュのその声で我に返った。
「君が軽率に香水の瓶を拾い上げたせいで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「そ、そんな私はただ瓶を拾っただけで・・・・・・」
椅子に座り、足を組んだギーシュの顔は引きつっている。
ようやくシエスタは混乱から抜け出し、事の重大さに気付いた。
間接的とはいえ、ギーシュの色恋を邪魔した。それは平民であるシエスタにとって致命的ともいえるようなことだ。
シエスタは魔法学院に奉公するメイドだが、学院長や国家によって保護されることはない。建前としてはそういった『綺麗事』も存在するが、所詮は平民。
貴族にとっては目障りならば叩き潰せばいい、虫けらのような存在なのだ。
不幸中の幸いかここには人目があるし、このような事態になったことを知る人間も大勢いる。命は助かるだろうが、どれだけ痛めつけられるか、あるいは。
あるいは、自分の肉体か。女好きで有名なギーシュだ。そういう事もありえるだろう。
しかし、それだけは。それだけは嫌だ。
俯いて床しか見えない視界の端にあるギーシュの靴が近づいてくるのが見えて、シエスタはぎゅっと目を瞑った。
――怖い!
体が小刻みに震えるのが止まらない。涙が滲むのがはっきりとわかる。
ギーシュがルーンを唱え、杖を振ればシエスタは簡単に死ぬだろう。火に焼かれるか、水で溺れるか、石の槍で貫かれるか、風で切り刻まれるか。
「止まりなさい」
凛とした声が食堂に響いた。静かではあったが、その裏には怒りが感じられる。そして、それはシエスタが心の何処かで待ち望んでいた声だった。
ハッと顔を上げれば、そこには小さな背中があった。流れるように揺れる艶やかな髪は、ほんの少し桃色が混じっている。
シエスタがあの夜、心に刻んだ理想。何からも逃げない、そんな最高の女性が今、目の前にいる。
「・・・・・・ミス・ヴァリエール」
ルイズがギーシュからシエスタを守るように立っていた。
「ルイズ、邪魔をするな。僕は、これからそこのメイドに『教育』をしなければならない」
ふぅとルイズがため息をつくのが聞こえた。シエスタからギーシュの姿はもう、見えない。
「ギーシュ、あんた最低よ」
「なんだと?」
今まで、形だけは装っていたギーシュの仮面が剥がれ始めた。シエスタ相手に浮かべていたサディスティックな薄笑いは消え、怒りだけが残った。
「二股かけてた挙句に、バレればメイドに責任転嫁? それも自分の面子を保つためだけに?」
「違う。僕は彼女たちの名誉を守ろうとしている。そこのメイドがほんの少しでも、機転を利かせることができたならばケティもモンモランシーも傷つかずにすんだのだよ」
ルイズの顔をちらり、と窺った。こめかみに、太い血管が浮かんでいる。
――怒っている。
「・・・・・・何が名誉よ。あんたが本当に大切なのは自分の身でしょう? 本当に愛しているなら、どうしてすぐに追いかけないの? あんたに貴族を名乗る資格は無いわ。平民にも劣る誇りしか持ち合わせていない男にはね。もう一度、言うわ」
ルイズはそこで一度、言葉を区切って最後の一言を突きつけた。
「最低よ、ギーシュ・ド・グラモン」
食堂がまた静かになった。誰も口を開かない。シエスタも、ルイズも、そしてギーシュも。
沈黙を破ったのはギーシュだった。
「・・・・・・魔法すら使えない『ゼロ』に、貴族の誇りについて説教されるとはね。少々、気が動転していたようだ。このような事態になったことを恥ずかしく思うよ。
貴族のような機転を、そこのメイドに求めた僕が馬鹿だった。ルイズの侮辱も許そうじゃないか。魔法の使えないそこの『二人』の平民は下がっていいよ」
やれやれ、と肩をすくめてギーシュはそんなことを言った。
自分の体が震えるのをシエスタは感じた。今度は恐怖ではない、怒りだ。ギーシュはルイズのことを平民と呼んだ。シエスタにはそれが許せない。
「待ちなさい」
立ち去ろうとしたギーシュをルイズが呼び止めた。振り向いたギーシュの胸に手袋が当たり、床に落ちた。
「何の真似だい? ミス・ヴァリエール」
先ほどとは変わって、丁寧な口調でルイズにギーシュは問いかける。
「貴方のお好きな騎士の真似事ですわ、ミスタ・グラモン」
からかうような、面白がるような声音でルイズはギーシュに応じた。
ルイズはくるりとギーシュから目線を外して、シエスタの方を向く。
呆気にとられたシエスタの前に、手が差し伸べられた。目の前の小さな少女が差し出す、小さく力強い手。
考えるより先に体が動いて。シエスタはその手を掴んで立ち上がっていた。あんなに震えていた体が、今はもう震えていない。
「決闘よ」
振り向いてルイズはそう、静かに宣言した。
振り向く時に一瞬だけ目線が交差した。ルイズの目には強い輝きが見えていた。そしてルイズは笑っていた。
その笑顔を見た瞬間、何もかもがどうでも良くなった。ギーシュも周りの貴族の視線も、何もかもが色褪せた。
どうなってもいい。どうなってもいいから、この人の側にいたい、と思った。
結局、『一目惚れ』だったのだろう。あの夜、あの力強い誇りを見た時から。
――私はそれを貴族だとか、平民だからとか誤魔化しておさえつけていたが、もう誤魔化せない。
シエスタはルイズに恋をしていたのだ。
これで五章は終わりです。
ああ、ようやくギーシュが出てきた。シエスタも百合フラグがようやく立ったし。
次でようやくルイズのP.V.Fが出せる。やっとです。
ギーシュはかませですが、なんとか見せ場を作ってやりたい。
はたして前半のシエスタとルイズのシーンは必要だったのだろうか・・・・・・?
つい変なテンションで書いてしまいましたが、さて?
深見成分の百合としては弱すぎるし、かといってアレをこちらで書くのも憚れるという。
あれ、これって「あの作品のキャラがルイズに召喚されました」にあった作品だよね?
作者本人が投下してるの?それとも転載?
乙
こりゃシエスタも惚れるわwwwww
同性同士の行為は18禁にはならないんだぜ?
以上、代理終了
>>29のラストのギーシュの台詞が長すぎて弾かれましたので改行入れました
>>22、
>>26のお二方、支援感謝です
続きがなかなかこないなと思っていたら
こっちで読めるとはw
私もこれ好きでしたから、こっちに来てくれて
うれしいです。
うおおおお! 出遅れたー!
作者殿、転載を心よりお喜び申し上げます。
どうぞ、がんばってください。
漫画版は5巻くらいまでしかないのにこれでもかというほどの濃い内容でしたね
そんなデビルマンがどう暴れるのか楽しみです
削除されたと思ったら転載でしたか。
続きを楽しみにしています。
原作版のデビルマンが見られるだなんてっ!なんて素晴らしい…
引き込まれそうな地文、いいですね。更新を期待しています。
代理の人、パラベラムの人、乙でした。
あと、いうまでもないんだが、デビルマンの感想をコピペしているのがいるけど、スルーね。
深見って誰じゃろない、って思って検索してみたら
武林の人かwwwwwwwww
あとヤングガンカルナバルとかなー。
作品の八割以上でゲーム大好きなやつとか漫画大好きなやつとか、あとレズが出るという。
読んできたが気持ち悪かった
他人のSSの主人公をよくまあ、あんな風に出来るよな・・・
>if/ラルフが高二病をこじらせたまま入学したら
>
> 絶望のラリカは大好きです。
> バトルを書いてみよう、と書きかけていたものに惨殺を盛り込んでみたらほんとに意味のないものに……。
> でも超遅筆の自分がかつてないほどに筆が進んだのでもったいなくてうp。
> 誰得。一日で消します。
あとがきでらりか好きとか言ってるけど絶対嘘だろ
特に問題なければ、二分後くらいから投下始めます。
ゼロと電流第五話です。
ルイズがザボーガーに乗って出かけた日。ギーシュとケティに出会った日。
その様子を空から見ている者がいた。
タバサとシルフィードである。
「きゅい。あのゴーレムとっても早いのね、お姉さま」
「貴女より?」
「お空は邪魔なものがないからまっすぐ飛べるのね。だからシルフィは負けないのね」
裏を返せば、単純な直線距離での勝負では勝ち目がないということ。
地上を走る限り、何処までも一直線に走り続けるには限界がある。
さらにもう一つ、乗り手の問題だ。
乗り手がタバサならば、シルフィードが多少無茶な飛び方をしても平然と乗り続けるだろう。巡航速度程度なら本を読んでいる余裕があるのだから。
同じ真似は、多少鍛えているとはいえルイズには無理だ。シルフィードでなく、ザボーガーが高速を出してもあっさりと振り落とされるだろう。
もっとも、ヘルメットを被りガンダールヴの能力を得ている彼女ならばこの限りではないのだが、これはタバサもシルフィードも知らないことである。
自分なら、ザボーガーの地上での機動力を最大限に生かすことができる、とタバサは考えていた。
くわえて、自分にはそれが必要なのだ。
空のシルフィード、地のザボーガー。二つを手にすればどれほど戦術の幅が広がるか。
だから、ザボーガーが単なるアイテムであればいい、とタバサは思った。
自我を持たない単なるアイテムであれば、譲ってもらう、あるいは奪うことが可能だからだ。
タバサは、今のところルイズが苦手だ。
キュルケはルイズをかなり買っているようだが、タバサは違う。
確かに努力家だろう。それは認める。
良い意味での貴族たらんとしている。それも認める。
しかしタバサにとっての
「魔法が使えない貴族」
「魔法を使える者が貴族と呼ばれる国の、魔法が使えない貴族」
それが何を意味するか。
ルイズを見ていると嫌でもある男を思い出してしまう。
魔法が使える者に囲まれた、魔法が使えない者。
高貴の出に生まれ、魔法が使えない者。
それでも、ルイズは貴族として気高く生きようとする。それは、あの男にはできなかったこと。
だからタバサは考えてしまう。
あの男が彼女のようであれば、と考えてしまう。
夢を見てしまう。
魔法を使えなくても気高く生きようとする兄と、その兄の持つ魔法以外の才を尊敬する弟。そんな兄弟を夢見てしまう。
兄弟が力を合わせて、王国を盛りたてる姿を夢見てしまう。
兄弟それぞれの娘が、仲良く笑い合っているところを夢見てしまう。
だから、タバサはルイズが苦手だ。
いつか、彼女もそうなるのかもしれない。いずれ、醜く捻れてしまうのかもしれない。
ヴァリエールの家系が、血塗られるのかも知れない。
決してそれを望んでいるわけではない。
しかしそれは、タバサの「悪夢」だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マシンザボーガーを停めると、ルイズはひらりと飛び降りた。
キュルケは呆然と辺りを見回している。
「これ……本気で凄いわ」
一言ぽつり、とキュルケは呟いた。
ルイズはふふん、と唇を釣り上げている。
「どう? わかった?」
「確かに早いわ」
学院から城下町まで、こんな短時間で到着できるなんて。
キュルケはマシンザボーガーのスピードに心底驚いていた。
早い早いとは思っていたが、実際自分が乗ってみるとそのスピード感は半端ではない。正直、タバサのシルフィードに初めて乗ったときよりも怖かった。
ちなみに、途中で食料などを積んで学園へ向かう荷馬車と正面衝突しそうになったのはご愛敬というものだ。
「ま、メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言うけれど」
「でも、フレイムは火を吐くわよ?」
キュルケの言葉でルイズは止まる。
「言うことも聞くし、何より可愛いわ。きっと冬はベッドに入れると暖かいと思うのよ」
ザボーガーはさすがにベッドに入らない。そもそも手触りは金属っぽい。
温かくはないだろう。どちらかというと冷たそうだ。
ザボーガー超ひんやり。
「使い魔は湯たんぽじゃないんだから」
「そうね、寒い夜はやっぱり人肌よね」
「あ、あんたねぇ」
「あら。お子様ルイズには刺激が強すぎたかしら?」
「ふしだらキュルケには言われたくないのだけど」
突然キュルケの足が止まり、後ろについて来る形のルイズに呼びかける。どうやら話している内に二人は教えられた道を行きすぎてしまったらしい。
あらかじめ、学園の門番衛兵に場所を聞いておいたのだ。
「剣が欲しいんでしょう? だったら一本こっちの路地よ」
「そうだったかしら」
慌てて戻り、小汚い路地を抜けて二人は武器屋へ向かう。
ルイズを呼び止めて振り向いた瞬間、キュルケは見覚えのある青い髪を見たような気がしたが、さすがに見間違いだと判断する。彼女の知る青髪娘は、虚無曜日は読書三昧で町に出てくることなどないのだから。
二人が店に入ると、店の主人は貴族の世間知らずお嬢さま相手の商売を始めようとした。つまりは、ぼったくりである。
キュルケが冷たく言うと、単なる貴族相手に。
ルイズが一言付け加えて、ようやく普通の商売になる。
「それじゃあ、こいつなんてどうです」
と言われても、剣の質などルイズにはわからない。キュルケも似たようなものだ。もっとも、キュルケは装飾品としての剣ならある程度はわかるのだが。
店主の並べたいくつかの剣は実用品ではなく装飾品だと見抜いて、キュルケは脇に寄せる。
そしてルイズが注文を出す。
「華美なものはいらないわ。多少見た目が悪くてもまともな剣が欲しいの。それからナイフと」
「ナイフですか?」
「ええ、こんなやつよ」
ルイズはタバサから借りたまま持っている、ワルキューレと戦ってダメにしてしまったナイフを取り出した。
「ああ、もうがたがたじゃありませんか。こりゃ研いでも無駄ですよ。いったい何をお斬りになったんで?」
「青銅」
「はい?」
「だから、青銅の鎧を力任せに斬ったの」
「このナイフでですかい?」
「馬鹿じゃねえか。そんなナイフで」
馬鹿、その言葉にルイズはキッと店主を睨みつける。
慌てて首を振る店主。
違うわよ、と言うようにルイズの肩を叩くキュルケが、周りを見回した。
「今の誰よ。失礼ね」
「馬鹿は馬鹿じゃねえか。そんなちんけなナイフで青銅の鎧だぁ? 嘘も大概にしろや、嬢ちゃん」
「おい、デル公! いい加減にしやがれ! 貴族のお嬢さまがた相手に何てぇ口利きやがる! しまいにゃあ、川ン中投げこんじまうぞ!」
「誰と話してるの? 貴方。デルコーって?」
キュルケが尋ねると、さらに大きな声。
「ここだよ、ここ!」
「あ」
話に参加せずに声の主を捜していたルイズが、一山いくらの剣が差し込まれた樽の中から一本の剣を取り出す。
「貴方ね」
「よぉ、嬢ちゃん。よくわかってんじゃねえか」
「ふぅん。喋る剣か」
「インテリジェンスソード、いや、デルフリンガーと呼んでくれ」
確かに面白そうではあるけれど、剣としては正直どうなのだろう。
そこでルイズは気付く。
ワルキューレとの戦いでメットを被ったときに、ナイフの使い道が突然わかったこと。
あのヘルメットには何かがあるのだ。
ルイズはデルフリンガーを一旦戻すと、ヘルメットを被ってからもう一度握りしめる。
握った剣から、驚いたような気配をルイズは感じた。
「こりゃあ、おどれーた。嬢ちゃん、『使い手』かよ」
「『使い手』って何よ」
「いや、『使い手』とはちょっと違う? 『主』で……『使い手』? はて?」
「どうしたの?」
「あ、いや、なんか、変だぞ」
「何が変なのよ」
「……嬢ちゃん、『使い手』だよな?」
『使い手』が何のことかはわからない。しかし、ヘルメットを被るとなにやら妙な感覚が生じることは経験でわかっている。
「よくわからないけど、何かがあるみたいよ?」
「……ま、いいか、どうせここにいたってしょうがねえんだ。嬢ちゃん、俺を買いな」
「なにそれ。もしかして今のやりとりって、買わせるための口八丁じゃないでしょうね?」
「だったらもっと上手くやるだろさ。『使い手』なんて意味不明なこと言わずに」
それもそうだ、とルイズは思う。
「だけど貴方、剣としてはどうなの? 別におしゃべり相手を捜しに来た訳じゃないわよ? そういうのは間に合ってるから」
「そりゃ嬢ちゃん次第だろ。俺ぁ喋れたって所詮剣だ。使うのは嬢ちゃんの腕だ」
ほう、とルイズは息を吐いた。
これもやっぱり、その通り。いくら剣自体がいいものであっても、使う側がへっぽこならそれなりの成果しか上げられない。剣がなまくらでも、一流の剣士ならばそれなりの戦果を上げるだろう。
「私たち、気が合いそうね」
「そりゃあ、結構。というわけで、とっとと身請けの代金よろしく」
「身請けって」
キュルケが呟いたが、ルイズは気にせず店主に向き直る。
「さっきのナイフとこれ。それから、もう少し軽いナイフがあったら何本かいただくわ」
「軽いというと、投げナイフで?」
「そう、それ」
一つ、思いついたことがあるのだ。
自分の唯一使える魔法、爆発。そして不思議なヘルメットの力。
後者で投げナイフを扱えるなら、そして、投げナイフに爆発を仕込むことができるなら。
ルイズ垂涎の、魔法の遠距離発動の誕生である。
代金を払ったルイズは、足取りも軽やかに店を出る。
そこでキュルケが、ザボーガーに乗せてもらった礼にお茶を奢ると言い始めた。
ルイズとしても断る必要はない、というか、乗せた礼なのでもらう気満々である。
話がまとまり、キュルケはルイズを先導する。と、そこでキュルケは何かを見つけて突然駆け寄った。
「なんだ、やっぱり来てたのね」
振り向いたのは見慣れた青髪。
本を小脇に抱えたタバサだった。
「珍しく出てきてると思ったら本の買い出し? あら、新しく出たやつ。それは学園の図書室にもないわねぇ」
ルイズも追いつき、タバサを確認する。
「タバサ、帰ったらこの前のナイフちゃんと弁償するから」
「ナイフはいい。お願いがある」
ルイズとキュルケは顔を見合わせた。
「ザボーガーに乗ってみたい」
「いいわよ」
「キュルケ、どうして貴女が決めるのよ」
「別にいいじゃない。減るものじゃなし」
「勝手に決めないで。ザボーガーは私の使い魔なのよ」
「じゃあ、お返しにフレイムに乗っても良いわよ」
「別に乗りたくないわよ、第一、それはタバサのお返しにならないでしょう?」
「シルフィード」
タバサが前に進む。
その言葉の意味を理解したルイズは少し考えた。
風竜シルフィードは、確かに魅力だ。なんと言っても竜なのだ。世界でも一二を争う高位の存在、竜なのだ。
が、しかし。
空にいる自分を想像する。……ちょっとルイズの膝が笑った。
今朝の経験が未だに尾を引いている。高いところがほんの少し怖くなっているのだ。
だからルイズは首を振った。
「い、いらない。空いらない。シルフィードいらない」
キュルケが呆れたような目で見ている。
タバサは困ったように首を傾げていた。
ルイズは視線を辺りに迷わせている。
「仕方ないわね。ルイズ、私は帰りも乗せてくれるんでしょう?」
ここで置いて行かれては帰る方法に困る。つまり、連れてきたと言うことは帰りも責任を負うと言うことだ。
常識に近いことだが、それでもキュルケは確認した。
「勿論」
「私の代わりにタバサを乗せてあげて」
「貴女はどうするの?」
「私がシルフィードに乗るわ。それで良いでしょう、タバサ?」
タバサは頷き、町の外へと歩き始める。
「ちょっと待ちなさい」
キュルケに呼ばれて立ち止まり、振り返るとタバサはまた首を傾げた。
「折角ここまで来たんだから、お茶ぐらいはしていきましょうよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
馬鹿馬鹿しい。
ロングビルは宝物庫のある塔を見上げ、心の中で大きな溜息をついた。
どう見ても、個人で何とかできるようなレベルではない。
これほどの強力な固定化……それも多重がけなど、それこそ王室宝物庫にでも行かなければ見ることなどないのではないだろうか。
塔の五階、宝物庫のある位置を見上げ、ロングビルはもう一度大きな溜息。
学院長の秘書である“ロングビル”としてなら、中を覗くことはできるだろう。ただし、欠片一つとして持ち出すことはできまい。
持ち出すことができるのはロングビルではなく、“土くれのフーケ”のみ。
しかし、フーケでは中に入ることはできない。
「なんとか……ならないものかねぇ」
時間さえかければ何とかできる。誰にも見られず数日間、練金をかけ続けることができるなら。
つまり、無理だ。学院でそんな条件が満たせるわけもない。
世を騒がせている、貴族相手専門の泥棒“土くれのフーケ”、それがロングビルのもう一つの名。
これまでにも貴族の屋敷を襲っては金品を強奪している。そして今回標的にするつもりだったのがトリステイン魔法学院の宝物庫である。
学院長オールド・オスマンは王室とのコネを持ち、本人は300歳すら超えるのではないかと言われている大メイジである。
さすがに300歳は眉唾だとフーケは思っているが、そう言わせるだけの実力を持っているのは間違いないだろうとも思っている。
その宝物庫であり、これだけの固定化が厳重にかけられているのだ。その中身が一体どれほどのものなのか。
「破壊の杖」
それこそが、フーケが一番に狙っている宝の名前だった。
大きさや形は、それを見たことのある教師陣から既に聞き出している。宝物庫の掃除の時にチラッとだが、現物も見たことがある。
名前から考えるに、魔法に関連した何らかの武器なのだろう。
武器は、相手さえ間違えなければ宝石以上に高く売れる。もっとも、フーケは武器を使う相手に売るつもりはない。どちらかと言えば売る相手はコレクターだ。
奪った物自体がどうなろうと知ったことではないが、それによって平民が傷つけられるのは避けたい。貴族相手ならば同じく知ったことではないのだが。
とりあえず、今はチャンスを待つだけである。
狙うとすれば宝物庫の扉しかない。壁とは違い開閉の必要があるので、多少は脆いはずだろう。
幸いなことに、ロングビルとしての学院長秘書の報酬は決して悪いものではない。充分ではないがそこそこの稼ぎはあるのだ。金に困って急ぐ必要はない。今回は、ある程度腰をすえてじっくりと取りかかることができる仕事だ。
「ま、気長にやろうかね」
フーケはもう一度宝物庫を見上げると、ロングビルの仮面を被りなおした。
以上お粗末様でした。
ようやくデルフとフーケ出ました。
次回はゴーレム戦?
おまけ
♪赤いシグナル非常のサイン♪
(中略)
♪盗みの事件はフーケの仕業♪
♪魔法を悪に使う者♪
♪探せ許すなザボーガー♪
(後略)
乙。
しかし、もしジョゼフが
「俺って魔法が使えないし、他にもいろんな面でシャルルに負けてるから、王様なんてならなくていいや。気楽にやーろうっと」
的な性格だったら、シャルルってむしろ病みまくってたような気がするのは俺だけか。
>>53 結局、何らかの形で頭角を出してきたと思いますよ。
共存できるあり方もあったはず。
この辺は、むしろ父王が上手く割り振りをするべきなんだがなぁ。
予備であるがゆえに同じ方向の能力を持ちつつ、
宮廷抗争を防止するために、その能力を生かしつつも、王や王太子とは重複しえない役職につける。
リアルだと、よく教会に飛ばされるのはちゃんと合理的な理由があるのだよ。
デビルマン…だと?
これは期待せざるをえないッ!
…でもちょっと文章が横に長いかな?
個人的にはもうちょっと改行を入れていただけると読みやすいと感じました。
続きを心待ちにしておりますヾ(´▽`)ノ
あちらでは、wikiでの更新速度とタイムラグがありますからね。
こちらに掲載していただいて感激の限りですわ。
作者様の文才に嫉妬……
これからも期待しています
ギトーのくだりを読み終え思わず出た言葉は
「この作者、やりおるわ!」でした。
まさかSSで永井豪の画風で、
情景を思い浮かべさせる事が出来るなんて!
色々と勉強になります。
ぜひこの後も続けてください
なんと、デビルマンか
とても好きな作品ということもあり目を通しました
凄く面白い。構成力やオリジナリティもいいし
永井テイストとの合わせ方も抜群です
デルフリンガーが特にいい
デビルマンのことは知らなかったのですが、とても面白かったです!
次の話も楽しみに待ってます!
デビルマン、懐かしい! 永井版デビルマンを初めて読んだ小学生当時、ずいぶん衝撃を受けたものでした。
まさかゼロ魔とのクロスオーバーとは度肝を抜かれました。エロスとホラーの風味漂う作風も永井作品の味わいを感じさせ、今後の展開が非常に楽しみです。
魔王サタンとガチで戦ったこともある魔人アモンが使い魔か……
強すぎるやつを召喚すると、実質すぐ話が終わるパターンだけが怖いかな。
でも勢いと迫力があって凄く面白いです。続き超期待。
場面が転換するときの改行を、もう少し大きく入れたほうが良い。
いきなり別のシーンになったことにちょっとついていきにくい所が。
けいおん!のメンバーが召喚。
なぜか楽器は無事だった。キーボードは使えないが、ピアノを代用。
たちまち、ハルケギニアの国民的アイドルとなる。
まさに、ハルケギニアのビートルズ。
レパートリー曲は無尽蔵にある。日本だけでも無数にある歌、曲を演奏すればいい。
毎日、新曲発表になる。盗作だとは絶対にバレない。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを召喚
↓
登校地獄のせいでトリステイン魔法学院から離れられなくなったエヴァ。
↓
電力を使った結界が無いため、登校地獄の強制力はあるものの魔力は復活。
↓
ルイズを下僕化
↓
学院生徒&教師をフルボッコ。影を使った転移ゲートに手も足も出ずマンティコア隊が撃退される。
↓
アンリエッタを下僕化
↓
アルビオンに興味を持ち、オスマンをハンコ地獄漬けにして観光に。
↓
ウェールズ下僕化。ワルド死亡。
↓
宝物庫の中身を全てせしめて影の中に。
↓
学院期間後、検品の際に音の鳴らないオルゴールをルイズに。
↓
レコン・キスタ襲撃。
↓
ルイズ覚醒。レコン・キスタ撃退。
↓
ディスペル習得。登校地獄解除。
↓
エリアル(原作終了後)を召喚。
研究所内の全ての第六世代コンピューターをリンクして エリアルのメンテ中だったため、SCEBEYごと召喚される。
岸田博士 天本教授 所員A・Bに警備主任も!
パイロット三人娘は不在だったため、ルイズ・キュルケ・タバサを無理矢理パイロットに任命。
エリアルで無双するのは簡単だが、問題は その後。
エリアルには、まだ正式に地球に技術供与されていない慣性制御装置が積みっぱなし。
銀河帝国による追跡調査→ハルケギニア発見→異世界への侵略開始 が予想される。
それまでに『降伏を表明できる統一政府』と『異種文明を受け入れる事の出来る社会』を作らねばならない。
一計を案じた岸田博士は、単身 ガリア王ジョゼフとの会談に向かう。
「お前さんは この世界の破滅を望んでいるそうじゃが?」
「滅ぶも良し 滅びぬも良し。このような世界に価値など無い。
我にとっては『玩具』に過ぎぬ。」
「なるほど 玩具か。
ならば こんなオモチャはいかがかな。」
博士、魔法を凌ぐ『科学技術』を披露。
「ワシは、このオモチャ箱を ハルケギニア全土にブチ撒けてみようと思う。
さぞかし面白い事になるじゃろうなぁ。」
「キシダとやら…
おぬし 何を考えておる。」
「実はな、ワシらの星は戦に破れた。この地に招かれる少し前、銀河帝国の たった一隻の戦舟に。」
「なんと!」
「ワシらを追って そやつらもやがて現れるじゃろう。
先に言っておくが、勝ち目は無いぞ。」
「フフフ…我が手を下さずとも、既に世界の命運は尽きていると言うことか。」
「そう悲観したモンでもないぞ。
別に、『奴隷として、肉体労働をさせられる』などということは無い。
銀河を自由に飛び回るような文明が、そんな低レベルのことはせんよ。
むしろ 征服者から この地にもたらされる事の方が 遥かに多いじゃろう。」
「ならば、我は 堂々と負けようではないか。」
「じゃが そうもいかん。
ハルケギニアは『負ける為の条件』が、整っておらぬ!
この星には 敗北を受け入れるべき『統一政府』が存在しないではないか。
銀河帝国の尖兵が到着するまでの限られた時間内で、この世界を統一し、敗北を宣言する。
ジョゼフ王よ、これほど面白いゲームは 他に無いのではないか?」
ラストシーンは、戦艦ルキフェラスの到着と 地表に輝く『歓迎 銀河帝国』の巨大電光文字!
>>65 なんか凄い面白そう!
「より良い負け」って、なんだか紺碧の艦隊みたいやね
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part235 in避難所
>>541 まとめwiki更新報告スレ 4
>>391 雑談スレ Part6
>>6 【代理用】投下スレ【練習用】5
>>467 避難所用SS投下スレ9冊目
>>726 全力でSS職人を応援するスレ2
>>902 設定・考察スレ Part13
>>161 業者の宣伝書き込みにつき消去願います
雑談スレ Part6
>>17 また業者なので滅却願います。
ミョズニルキ〜支援
あいや、ミョズニトニルキ〜かな
ミョズミルキーーーーーーー!!
ザボーガーの人、乙
そのオープニングテーマは私の着うたの一つです。
そうそうおマチさん、泥棒はお給料日の後でしないとタダ働きですからね。
できれば、またどこかでミス・メイルスティアの登場をお願いします。
そーいや、一巻でルイズが「メイジは国民の1割居ない」とか言っていたが、いわゆる国に認められた貴族はその3分の1ぐらいかな?
国民33人で一人の貴族を養っている計算。
詳しい人、解説よろ
キュルケが活躍するシーンを想像しようとすると
どうしても味方を救うために勇者的な玉砕をかます絵が浮かんでしまう
ギーシュが活躍する場面を想像してもそうなってしまう
敵「お前は手持ちの駒、七体を失い追いつめられた。降伏をしろ」
ギーシュ「ワルキューレを失うところまでは予定通り、さ」
敵「なんだと…?」
ギーシュ「ここアルビオンの崖にお前たちおびき寄せることが本当の目的だ!崩れる地面と共に散れ、『練金』!」
こんな感じ。でもメイジって飛べるからダメか
ラスボスの人、乙
スパロボやったことないから知らなかったけど、各作品ごとにあんなに動力炉があったんですね。
しかしなぜかどれもこれもいわくつきの代物ばかり、波動エンジンみたいに安定して強力な機関はないものか。
それにしてもユーゼスは、ほぼ半世紀ぶりに青春を取り戻しつつあるな。見ててニヤニヤが止まらないw
ここを撤退した作品で、今でも元気に更新中な物ってあるんだろうか?
そういえば爆熱も引っ越したらしいが、元気でやってるかな。
あと不敗の使い魔の続き待ってます。
「はわわ〜。なんや?こんなところでなんで重爆撃機のエンジン音が
聞こえるんや〜?」
港町ラ・ロシェールにある貴族向け最上級の宿『女神の杵』。そこで
料理人として働いていたベローチェがここで聞くはずもない音に飛び起きる。
音は星空を東から西へと飛び去る。ベローチェは鋼の乙女としての並外れた
目でその姿を追うが……残念ながらこの世界のフネよりも高い高度を
両脇に人を抱えて飛ぶその乙女の後ろ姿は、彼女の記憶になかった。
「結構高う飛んどるな〜。鋼の乙女……誰やろ?うちが知らん乙女や……」
ベローチェだけではない。その夜。トリステイン王国の空の玄関口である
港町ラ・ロシェール上空に、今まで誰も見たことがないものが現れたのを
多くの人が目撃した。それは低くくぐもった音を伴った、赤青白の三つの
輝きを放つ流れ星――真夜中に突如として現れ、西の方角に飛び去った
それを人々は畏れ、何かの予兆ではないかと囁き合う、が……得てして
真相とは想像の埒外にあり、至極単純であるものなのだった。
トリステイン魔法学院を飛び立ったふがくは、馬で2日の行程をわずか
1時間で航過する。現在高度4500メイル。戦時下ではないため灯火管制などは
しかれていないが、それでも真夜中の町の灯は大日本帝国のそれと比べれば
そう目立つものではない。最初は不安定な空の旅に悲鳴を上げていた
ルイズとギーシュも、この状況に慣れたのか、諦めたのか、それとも
物珍しさが勝ったのか、静かになっていた。
「……そ、それにしても……まさかアルビオンよりずっと高い位置から
ラ・ロシェールを眺めるなんて……空海軍の戦列艦でもやったことは
ないんじゃないかな……
ははっ。雲に見え隠れする世界樹の桟橋なんて、生まれて初めて見たよ……
意外と暗いものなんだね……」
ギーシュが心底感心したような言葉を口にする。
「そうね。さっき見えたタルブの村の方がまだ明るいわね」
ふがくは思う。ラ・ロシェール上空に到達する前に左手に見えた
タルブの村――それはある種奇妙な光景だった。距離的にそれなりに
離れていたため細部までは確認できなかったが、広大な草原の真ん中に
ある村全体を囲む一段と暗い堀のようなものがあり、ワインが特産と
いうだけあっての草原を囲む近隣の山裾から続く麓にある醸造所とは
明らかに異なった、村外れの巨大な水車小屋のような煉瓦の施設だけが
真夜中にもかかわらず皓々とした明かりに照らされていた。そして施設の
そばには例の堀らしきものを挟んでまるで滑走路にも見える何かで
敷き固められた1リーグはある直線道路のようなもの。施設の煙突からは
薄く煙が立ち上り、そこがこの時間も稼働中であることを示していた。
(シエスタにもらったガソリン……合成石油の製造施設にしては規模が
小さすぎるけど、ギーシュの言っていた『ミジュアメ』製造所というのも
眉唾ね。
それにあの滑走路みたいなもの……『竜の羽衣』が飛行機だとすれば
納得できないこともないけど……)
ふがくはこれまで入手した断片的な情報と、自分が確認した状況から、
タルブにある、この世界には似つかわしくない施設の正体を想像しようとした。
ところが……
「……ところでふがく。君は前にもっと高く飛べると言っていたような
気がするけれど……どうかな?滅多にない機会だし、一度どこまで高く
飛べるか体験してみたいんだけど」
唐突にギーシュがこんなことを言い出した。これにはずっと静かだった
ルイズがげっそりとしたような声を上げる。静かだった理由は、どうやら
しばらく気を失っていたらしい。
「……ギーシュ……アンタねぇ……」
「まぁ、私の巡航高度……簡単に言えば一番飛ぶのに疲れない高度は
こっちの単位に直せば9000メイルだし。飛んでもいいけど」
「そんなところ飛んで、何か見た日にはわたしたちが異端審問にかけられるわよ……」
「そうなの?」
「そうよ。天空は始祖がこのハルケギニアに降臨する前に住まわれていた
場所。そんな高さまで上がった人間なんていないし、行っちゃいけない
場所なの!始祖の怒りに触れて罰せられるって言われてるんだから!」
「へえー。それは知らなかったわぁ」
「まったく……って、ええっ!?」
ルイズは唐突に真横から聞こえた声に驚く。ルイズだけではない。
ふがくもその唐突に現れた翼に驚いた。
「はぁい。ルーデルお姉さんでーす!元気にしてた?ルイズちゃん、
ふがくちゃん」
「ル、ルーデル!何でここに?」
いつの間にか真横を飛んでいたカーキグリーンの翼――ルーデルは
そう言ってにっこりと微笑んだ。
「え……?よく見えないけれど……知り合いかい?」
「うわ……よく見ると男もいたのね……」
ちょうど反対側、ふがくとルイズの体、それにふがくの翼が邪魔をして
相手がよく見えないギーシュが声を上げると、ルーデルはギーシュには
見えないのを幸い顔をしかめる。
「別にたいしたことないわ。私の故郷の同盟国の鋼の乙女よ。ギーシュ。
……で、どうしてアンタがここにいるわけ?」
ふがくの言葉にはややトゲがある。極秘任務の途中ということもあるが、
これ以上厄介事を背負い込みたくないというのが正直な理由だ。
しかし、ルーデルはそんなふがくの思惑など気にしていないかのように
意味深な笑みを浮かべた。
「つれないわねぇ。ラ・ロシェールの夜を満喫していたら貴女たちが
真上を飛んだから、どこへ行くのかなーって気になったのよ」
「それはどうも。でも、悪いけど、今ルーデルにつきあってる暇はないの。
ルイズ、ギーシュ、高度を上げるわよ」
そう言ってふがくはルーデルを振り切って一直線に高度を上げた。
ルーデルは急降下爆撃機型の鋼の乙女、超重爆撃機型の自分と違って
高高度までは上がれないはず――高高度に達するまでに時間がかかるけど、
もうこれ以上の厄介事はまっぴらよ、と。
「あらん。本当につれないわねぇ……でも、おもしろそうなことになって
きたじゃない」
ふがくに振り切られたルーデルはそう言って微笑み、高度はそのままに
飛び始める。その笑みの妖しさを、ふがくは知るよしもなかった――
「ねぇふがく!ルーデル振り切っちゃったけど、本当に良かったの?」
8本の飛行機雲を引きつつ雲海を突き抜けさらに上昇するふがく。
ルイズは思わず下を見て――後悔した。ただでさえ速度を犠牲にして
急角度で上昇しているのだ。夜の海はただ双月に照らされた幻想的な
雲海の隙間から見える程度。ふがくに抱かれているせいか航空病に罹ることは
なかったが、それでも風の音や翼などの振動はルイズたちにも伝わってくる。
慣れていない二人は思わず本当に大丈夫なのかと心配したが、そんなことは
お構いなしにふがくは上昇を続けた。
「……こんなところでルーデルにかまっていられないでしょ?あっちは
急降下爆撃機型だからここまでは上がってこられないはず……ついでだから
見せてあげる。高度15000メイルの世界を」
現在高度は7500メイル。すでに高積雲は越え、上空には満天の星空と、
薄い絹雲が見えるのみ。そのまま上昇を続け――唐突にそれは襲ってきた。
――ゴアッ!
「な、何っ!?これっ!?」
「……これは……風?強烈な西風だ!」
「乱気流……じゃない!これは……偏西風?」
高度8000メイルに達しようとしたとき。ふがくたちは強烈な西風に
翻弄された。かろうじて吹き飛ばされずにはすんだものの、ルイズと
ギーシュを抱えたままふがくは翼だけではなく全身がきしむのを感じながら
全力で上昇を続ける。大日本帝国の鋼の乙女でも唯一ふがくのみが装備した
排気タービン式過給器の力強い鼓動が風を切り裂き、この強烈な風が
凪いだのは、高度13000メイルを超えたあたりだった。
「……っはぁ……はぁ……やっと抜けた……。ああっもう!髪がぐしゃぐしゃよ」
さらに上昇しつつふがくは体勢を立て直す。ふがくが水平飛行に遷ったとき、
そこは上空に雲一つない、黒いほどに青い空だった。
「……ついたわよ。高度15000メイル。さっきの偏西風を抜けたときに
機位を失ってるから、アルビオンがどっちにあるのか確認しないと
いけないけど……って?」
「……す、すごい……きれい……」
「うん。すごい……空がこんなに青くて……それに二つに分かれているなんて……
まるで夢みたいだ」
ルイズとギーシュは目の前に広がる、地上とは別世界の光景に目を
奪われていた。遙か彼方から太陽が昇り始めているのか、遠景がうっすらと
明るくなっている。ふがくはそんな二人を横に、目印になるようなものを
探し始めた。
(太陽が右手の方角から昇り始めている……ってことは、西に向かっていたのが
途中で北に向いた、ってことね。急角度で上昇したから距離的にはそんなに
逸れてないとは思うけど……)
あんまり時間をかけすぎて叛乱軍に見つかりたくはないし、ね――
ふがくがその両目をこらして何か目標になるものを探すと、ほどなくして
空に浮かぶ2隻のフネが見つかった。
「……軍艦?それに商船?それにしても……」
それは3本マストの帆船然としたフネと、ある意味ふがくには見慣れた、
全長150メイルほどの軍艦然としたフネ――しかし、それはここハルケギニアに
おいては異質なものであることに、ふがくは気づいていない。それ以前に
『船が空を飛んでいる』という事実については……まぁ、浮遊大陸に
行くんだから船が浮かんでいても不思議はない、とふがくは理解していた。
「どうしたの?」
「……フネよ。それも2隻。私がハルケギニアのフネをあんまり知らないから
どこのフネかは分からないけど……軍艦と商船……っぽいわね」
「軍艦、だって?」
ギーシュはそう言って下を見る――そして後悔した。あまりにも高すぎるのだ。
そして、フネらしきものなんて小さな点にしか見えない。
「ええ。2本煙突に三連装砲塔と連装砲塔が前部に1基ずつ集中配置されている
黒い艦ね。あと、両舷に3枚ずつ翼があって、艦尾にプロペラがあるわ。
そんな艦が3本マストの帆船と接舷してるわね」
「何それ?翼だけで帆がないの?そんなフネって……」
ルイズが驚く。ハルケギニアのフネは風石の力を借りて浮き上がり、
風を得て走る帆走だ。翼はあくまで行き足を制御する舵の代わりでしかない。
それに、煙突があるフネなんて聞いたこともない。
「……いや、父上と兄上から以前聞いたことがある。アルビオン空軍で
建造された新型戦列艦の噂を。今までのフネと違って艦体に装甲を
張り巡らせてあるし、風石で浮き上がって、コークスを燃やして
動く……らしいんだ。でも重くて船足も遅いし、大砲も全部で9門しか
積んでないって聞いたよ」
「そんなに少ないの?昔アルビオンに旅行したときに見た軍艦は、
もったたくさん大砲を積んでいた記憶があるわよ?」
ギーシュの言葉にルイズが反応する。それを聞いたふがくは……
「なるほど。砲身はまだ短いけど、こっちでもやっぱりこの国が
こういうことするのね」
アルビオン王国は、地球の地図に当てはめると大英帝国に相当する国。
それならば――向こうで『ドレッドノート』を生み出した智慧と気慨を、
こっちでも持ち合わせているようだと、ふがくは思った。
「何の話?」
「別に。こっちのことよ。とにかく、あのフネがアルビオンのフネだと
いうなら、そんなに離れていないわね。移動するわよ」
二人にそう告げると、ふがくは高度を維持したまま移動を開始した。
その少し前――浮遊大陸アルビオン北部、ニューカッスルから
100リーグほど離れた東の空では……
「それでは殿下、今回の積み荷の硫黄、確かにお渡ししましたよ」
「感謝する。君たちのおかげで、我々は持ちこたえられている。
……あのフネでは、空賊に偽装して私掠行為をすることもできないからね」
夜明け前の暗い空。密輸船『マリー・ガラント』の甲板上でそう言って
笑うのは、金色の髪の精悍な青年――アルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダー。
アルビオン王国王立空軍本国艦隊司令長官でもある彼は、その麾下にある
唯一の艦船である新型戦列艦『イーグル』にて、彼らを支援する者たちからの
援助物資を受け取るべく、通常の航路から外れたこの場所に赴いていた。
「ははっ。確かに、ここまで立派だと誰も商船とは見てくれませんよね」
ウェールズ皇太子の言葉を受けるようにそう笑うのは、金色の髪を
ショートカットにした、まだ少女の域を抜けきらない平民の女性。
いつも右腕に包帯が巻かれ、右眉の上にある小さな×印のような古傷が
目立つ、ウェールズ皇太子にはシンと名乗っているその女性が、
アルビオン王国における貴族派の蜂起以来劣勢の王党派を支える者たちの
エージェントとしてウェールズ皇太子に接触していた。その正体は
ウェールズ皇太子も知らないが、アルビオン訛りのあるシンを表に出し、
表だった見返りも要求せずに物資を援助し続ける者たちについては、
薄々ながら気づき始めてはいた。
「そういうことだ。それに、叛乱軍は2日後に総攻撃を行うと通告してきた。
シン、君にこうして会うのも、これが最後かな?
君の主に、今までの助力にアルビオン王家を代表して感謝する、と
伝えてほしい」
「…………。それでは、ボクたちは明後日、この空域でお待ちしていますね」
平然と言うシンに、ウェールズ皇太子は色をなした。
「な……馬鹿なことを!
すでに我々は3万もの敵兵に包囲されている。しかも敵にはかつての
本国艦隊旗艦である巨大戦艦『ロイヤル・ソヴリン』……いや、今は
奴らが我々から初めて勝利をもぎ取った戦地の名『レキシントン』に
名を変えているが、それを含めた艦隊までいる。そんな場所に……」
「……殿下、聞こえませんか?あの音が……」
「……音?」
シンの言葉にウェールズ皇太子が空を見上げる。その耳には、低く
くぐもった、今まで聞いたことのない音が届いている。
「……あれは!?」
音の方角に目を向けると、遙か高みを赤青白の三つ星が瞬き8本の尾を
引きながらアルビオンの方角へ飛んでいく。それが頭上を過ぎ
ニューカッスルの方角へ飛び去るのを、ウェールズ皇太子は
ただ見ていることしかできなかった。
「……なんと……あのような流星は今まで見たことがない。あれはいったい……」
「吉兆だと思いますよ、殿下。まだアルビオン王家を始祖はお見捨てに
なってはいない証かと」
「分かった。我々は城に戻る。君たちもすぐにここから離れてくれ。
まもなく夜が明ける」
「了解しました。殿下。良き航海を」
そう言ってシンは自分に背を向けイーグル号に戻るウェールズ皇太子を
見送る。イーグル号がマリー・ガラント号から離れてから、シンは先ほど
流星が飛び去った空を見上げてぽつりと漏らした。
「……うちの姫様から副司令が直々に向かう、って聞いてはいたけれど……
こりゃまたすごい。こうくるとはボクも思ってなかったよ」
シンの正体はトリステイン王国の秘密組織、通称『ゼロ機関』のエージェント。
『ゼロ機関』とは王室直属の秘密組織で、王立魔法研究所――俗に言う
アカデミー――の研究とは比べものにならない魔法や飛行機械を極秘裏に
実戦投入するために設立されたとその存在が公になった後に言われることに
なるが、それはルイズが虚無に目覚めた後の後付けの理由であり、実際には
アンリエッタ姫が独自に情報収集や秘密工作を行うために設立した、
銃士隊の影となる存在だ。その構成員はシンのようにエージェントとして
活動しつつ銃士隊隊員として表の顔も持つ者もいれば、このマリー・ガラント号のように
表向きは商船として活動し、その乗組員が全員『ゼロ機関』の存在を知らないまま
協力者として任務に就いていることもある。伝統にこだわり情報戦に
後れを取っていたトリステイン王国も、この『ゼロ機関』の設立により
ようやくガリア王国やロマリア連合皇国に比肩しうる情報機関を手に
入れていたのだった――
「……見えた。私の電探も、まだまだ大丈夫ね」
背中から陽が差すのを感じながら、ふがくが眼下に広がる巨大な浮遊
大陸の縁に安堵の溜息を漏らす。雲と霧に包まれた浮遊大陸は、ルイズに
よればトリステインと同程度の面積があるらしい。
「ニューカッスルはアルビオン北部にある大きな都市よ。とりあえず
下に降りて、どこかで場所を確認しましょ」
「そうだね。もうじき夜が明けそうだし。それに、ずっとこうしてると
疲れたよ……」
ルイズとギーシュも陸地が見えたことでこれまでの疲れが一気に
吹き出した格好だ。アンリエッタ姫の話によれば、ニューカッスルでの
戦いは王党派が不利なまま追い詰められているという。だとすれば、
部隊が展開している場所を探せばそこがニューカッスル城だということ。
そしてそれは程なくして見つかった。
いくつもの橋が架かる大きな河の北側にある城郭。それを包囲するように
万単位の兵がいることがこの高度からも判る。陸兵の後方には200メイルは
ある巨大な木造帆船を中心に5隻の中型帆船が城郭を望み、すべての艦は
舷側を城郭に向けいつでも砲撃できる体勢にあった。
「そろそろ夜明けね。ここから一気に城に舞い降りるわよ!」
ふがくはそう言ってやや距離を取り、急降下を始める。高度15000メイルから
7000メイルまで急降下し、そこから降下角度を緩めて城郭に取り付く――
本来ならば一気に急降下したいところだが、それには自分の体が、なにより
ルイズたちが耐えられないこと、そして敵が城郭を包囲している以上、
あまり目立つことはしたくないというのがふがくの考えだった。
しかし、そこでふがくは致命的なミスを犯す。ここまで翼端灯を
点灯したままだったのだ。それはふがくが自分を撃墜できるような存在が
ここハルケギニアには存在しないと考えていたためだったが……それが
甘い考えだったと思い知らされることになる。
――ガガガッ!
「……くっ!銃撃?この高度で?
大丈夫?二人とも!」
「わたしは大丈夫……今のは!?」
「分からない!けど、このまま降下を続けるわよ!」
高度13000メイルを過ぎたとき、ふがくは突然付近の雲の合間から
銃撃を受けた。かろうじて攻撃を躱しそのまま降下を続けるが――
「……あーあ。外しちゃった♪」
「今のはわざとよ、姉さん。だって、私たちに全然気づかないんだもの。
ただのご挨拶。くすくす♪」
「そうだね、アリス。
でも驚きだね。フガクはあっちでクレアたちがぶっ壊したと思ってたよ。
詰めが甘いねーあいつら♪」
「でも、これで楽しくなるわ、姉さん。退屈ともおさらば。だって、
フガクだったらいっぱい殺してくれるもの♪」
「そうだね、アリス。楽しくなるよ、これから。くすくす♪」
その後ろ姿を上空から眺める二つの影に、ふがくは気づくことは
なかった。
以上です。
イーグル号が妙な具合に進化してますが、これ、コミック版第1部20話にのみ
登場するイーグル号だったりします。
# 21話では平然と普通の帆船になっていました。
# ちなみに初登場時のシルエットはネルソン級w
これを出したかったがためにプロットを練っていると初っぱなから
かなり設定付け加えないとどうしようもならなくなったのですが、
オリキャラは最小限度にしたかったので萌え戦からゲストが増える
結果に...
次回は同時刻の魔法学園の話を予定しています。
それでは、また近いうちにお目にかかれるよう頑張ります。
萌え萌えゼロ大戦(略)乙!
こういう兵器擬人化な話は大好きですw
そろそろかな?
ウルトラの人はそろそろかな?
そうやってプレッシャーをかけて何人のSS書きがリタイアしたと思ってるんだ
毎週日曜にきっちり投下してる人間にこれくらいでプレッシャーもないだろw
いちいち急かすような真似すんな、とは思うけどさ
ウルトラの人に限ってそれはない
必ず最後までやり通してくれるって信じてるよ
皆さんこんにちは、規制がさらに厳しくなっているようですが、幸いここはなんとか
免れられたようです。正直いつ食らうかと毎週戦々恐々ですが、ともかく投下準備できました。
問題なければ14:50より開始いたしますのでよろしくお願いいたします。
第94話
防人の魂
ウルトラマンヒカリ
マケット怪獣 ウィンダム
えんま怪獣 エンマーゴ 登場!
かつて、光の国の優秀な科学者であったウルトラマンヒカリは、心から愛した
惑星アーブの生命体をボガールから守れなかったことをきっかけに、アーブの
知性体の怨念のこもった鎧を身にまとい、復讐の戦士、ハンターナイトツルギとして
宇宙をさすらっていた。
気が遠くなるような長い旅の果てに、彼はボガールが次の餌場として選んだ星、
地球へとたどり着くが、憎しみのあまりにウルトラの心を失っていた彼は、地球での
活動のために、ディノゾール戦で戦死した旧GUYS隊長、セリザワ・カズヤの体を
乗っ取って、ボガールを倒すためなら手段を選ばない非情な戦いを繰り広げた。
しかし、地球で出会ったメビウスや地球人たちとのふれあいで徐々に心を
取り戻していった彼は、彼らと力を合わせて苦闘の末についにボガールを打ち倒した。
そして、ウルトラの母の力で復讐の鎧から解き放たれて、ウルトラの心を取り戻した
彼は、なおも怪獣の出現の続く地球を守るために、彼とともに戦うことを選択した
セリザワと本当の意味で一心同体となり、真の光の戦士・ウルトラマンヒカリに
生まれ変わったのだ。
「この星を、お前の好きにはさせん!」
ウルトラマンとして、心ある人々を守るヒカリの意思と、かつての部下であった
佐々木隊員の愛したものを守ろうとするセリザワの、二人の意思をその身に宿し、
タルブ村を荒らしまわり、人々を苦しめる怪獣エンマーゴの前に、群青の輝きを
まとってウルトラマンヒカリが立ち上がる。
「セリザワ隊長! そうか、メビウスにメビウスブレスがあるように、ヒカリには
ナイトブレスがあったんだ」
このハルケギニアでは、M78星雲出身のウルトラマンは、この星の人間と
一体化しない限り、行動を著しく制限される。しかし、メビウスブレスと同系統の
アイテムであるナイトブレスを持つヒカリならば、この星でも問題なく戦うことが
可能だった。
しかし、どす黒い破壊の喜びを満たすのを、あと一歩で邪魔されたエンマーゴは
怒り狂い、鋭い牙を生やした口から凶悪な雄叫びをあげて、真っ赤な目に
次なる獲物を映して剣を振り上げる。もはや、人間の心の闇が生んだ妖怪と、
人間の光を守ろうとする光の戦士の激突は不可避、ヒカリは、彼の信じた
仲間たちの意志を受けて敵に挑む。
「セアッ!」
ウルトラマンヒカリのナイトビームブレードと、怪獣エンマーゴの剣がぶつかり合って
激しく火花を散らす。エンマーゴの剣は、地球上のあらゆる物質を切り裂くと
言われているが、ウルトラマンキングから授かった神秘のアイテム、ナイトブレスから
生まれるナイトビームブレードが折れることはない。
「こいつは俺が食い止める。今のうちに、その人たちを頼む!」
はっとして才人たちはヒカリのすぐ後ろを視線をやると、そこには気を失った
シエスタを抱いて守っているレリアの姿があった。なぜ逃げないのかと思ったが、
うずくまっているところを見ると、とっさにシエスタをかばったときに足を痛めた
のかもしれない。
「まじい、あのままじゃつぶされちまうぞ!」
「サイト、ぼさっとしてないで行くわよ!」
ヒカリが直接助け出そうとすれば、手を下ろした瞬間に斬られてしまうのは
明白なので、今助けに行くことができるのは自分たちだけだと、ルイズは才人の
手を引いてカモシカのようにスカートからすらりと伸びた足を俊敏に動かして、
雌鹿のように駆け出し、才人も慌ててデルフリンガーを抜くと、ルイズの後を
韋駄天のように追っていく。
「間に合ってくれ!」
友達を死なせてなるかと、二人とも怪獣の暴れ狂う死地へと、恐怖心にも勝る
熱い心を持って全力で駆けていき、ヒカリも才人たちがたどりつくまで、なんと
してでも時間を稼ごうと、命を懸けて剣を振るう。
「この人たちには、指一本触れさせん!」
自分に傷をつけようとした人間を決して許すまいと、憎悪を込めた剣を振り下ろす
エンマーゴに対して、ヒカリは邪悪の白刃の眼前に自らの命をさらし、真っ向から
ナイトビームブレードを唯一の盾に、全身の筋肉とばねを使って受け止めた。
「止めた!」
人間でいえば、身長三メイルにも及ぶ人獣ミノタウロスの斧を受け止めたにも
等しい荒業に、さしものタバサなどからも驚嘆のうめきが漏れた。確かに、
あの大刀の重量とエンマーゴのパワーが加われば、瞬間的な圧力は何万トン
にも相当するだろう。だが、ヒカリの足が大地にめり込み、さしものナイトビーム
ブレードもきしんだようにさえ錯覚したが、それでもナイトビームブレードの上で
大刀は確かに止まっており、そして、間違いなく誕生してから初めて自分の剣を
耐えしのがれたことに驚くエンマーゴの隙を逃さず、ヒカリは一瞬のつばぜり合いを
経て、全力を込めて弾き飛ばした。
「ファッ!」
ヒカリの力にも増して、その裂ぱくの気合に押されたかのように、それまで無敵の
勢いで驀進してきたエンマーゴが、はじめてよろめいて後ずさった。確かに、
その場から動くことが許されず、エンマーゴの比類ない剛剣を受け続けなければ
ならないそれは、剣道で足の運びが勝敗を大きく分ける要素として重視され、
基礎訓練として徹底的に叩き込まれるのに反する、圧倒的なディスアドバンテージで
あったが、その昔、かの武蔵坊弁慶が主君たる源義経を守るために、その身を
不動の壁と化させて、立ったまま息絶えるまで矢玉にさらし続けた豪勇無双ぶりが
迫り来る幾千の軍勢をおびえたじろがせたように、破邪の威光は圧倒的優位に
あるはずのエンマーゴをたじろがせ、絶望の思いで破壊されていく村を見つめていた
村人たちからも、ヒカリの勇姿に希望の声が次々とあがり始めた。
「おおっ! ウルトラマンだ、ウルトラマンが来てくれたぞ!」
「これでわしらの村も助かるかもしれん。頼むぞ」
「ウルトラマーン! がんばれーっ!」
「がんばれー!」
村人たちが、逃げるのをやめて口々に青いウルトラマンを応援し始めるのに、
ヒカリは胸が熱くなる思いを感じていた。
かつて地球では、青いウルトラマンは本当にウルトラマンの仲間なのかと
疑われ、ババルウ星人の策略によって侵略者ではないかと恐れられたが、
そんな先入観のないハルケギニアの人々は、素直にヒカリを受け入れてくれた。
また、村人たちを空の上から護衛していたキュルケとタバサも、ヒカリの
登場に驚きをあらわにしていた。
「すごい! また新しいウルトラマンよ! タバサ、今度はあなたの髪の色
みたいに真っ青なウルトラマンよ」
「……」
「タバサ、どうしたの? タバサ」
呼びかけても、タバサはじっと青い巨人を見つめているだけで、いっこうに
返事をしてくれようとしない。
「……あの青い巨人……いえ、似ているけど、違う」
「タバサったら!」
「あ……なに?」
「なに? じゃないわよ、どうしたの急に何かに取り付かれたみたいに?」
「ごめん……ちょっと考え事してた。けど、思い違いだったみたい」
「はぁ……まあ、あんたの考えることの大半はわたしにはわかんないから
いいけど、あんまり心配かけないでよ」
優しく頭をなでてくれるキュルケは、そのときタバサにとってほんの少しだが
母親の記憶を思い出させた。だが、友の温かさにひたる暇も無く、空気を
揺るがす激震をもって、ウルトラマンヒカリとエンマーゴの戦いは激しさを
増していく。
「トアッ!」
ナイトビームブレードとエンマーゴの大刀による激突は、大気を揺るがして
一太刀がぶつかり合うごとに、遠く離れているはずの村人たちにさえしびれる
ような衝撃が襲い掛かった。
「た、たっぷり二リーグは離れてるはずなのに……」
「まるで、この世の戦いとは思えねえ」
ハルケギニアではメイジの魔法の威力が強大なために、剣は平民の武器、
弱者の武器というイメージが濃いが、眼前の戦いを見てそんなことを思える者は、
ただの一人たりとて存在しなかった。
しかし、一見互角の勝負に見えた戦いであったが、やはり、すぐ後ろで
逃げられないでいるシエスタたち親子を守りながらでは、ヒカリは得意の
フットワークを活かすことができずに、エンマーゴの剛剣の乱打に対して
防戦一方とならざるを得なかった。
「強い……だが、俺はもう二度と悲劇を繰り返させはしない!」
それは、惑星アーブをボガールから守れなかったヒカリ、ディノゾール戦で
部下を全滅させてしまったセリザワの二人分の決意だった。そして彼はその決意を
剣に込めてエンマーゴを押し返すと、ナイトビームブレードにエネルギーを込めて、
矢じり型の光弾にして発射した。
『ブレードスラッシュ!』
かつてババルウ星人の変身を強制解除させた一撃が、炎の矢のようにエンマーゴに
突き刺さろうと向かう。しかし、奴は自慢の盾を構えるとそれさえもはじき返してしまった。
身動きができないのに加えて、あの鎧と盾というアドバンテージは、メビウスに勝るとも
劣らない力を持つヒカリといえどもきつい。
しかし、戦闘を時とともにうつろいゆく川の流れのようなものだとすれば、その勢いに
一時は押し流されてしまいそうになったとしても、流れが変わるときは必ずやってくる。
「ヒカリ! こっちはもう大丈夫だ! あとは思う存分戦ってくれ」
「よし!」
驚くほど圧縮された時間の中で才人の声を聞いたヒカリは、一瞬だけ振り返って、
レリアとシエスタのところに、才人とルイズが駆けつけたのを見て取ると、
枷から解き放たれた猛獣のように、これまで受けるだけだった剣撃をはじき返し、
今度はこちらから反撃の斬撃を送り込む。
「テヤァッ!」
ナイトビームブレードがエンマーゴの剣と何度もぶつかり合って押し返し始めた。
かつてウルトラマンタロウは素手であったために、大苦戦を強いられたが、
今度はウルトラマンも同じ武器を持った以上、あとは力と技の勝負だ。
ただ残念ながら、力任せに大刀を振り回すエンマーゴの圧倒的なパワーには
さしものヒカリも抗し得ないが、技ならば別。
「デヤァッ!」
子供が棒切れを乱暴に振り回すようなエンマーゴに対して、ヒカリは剣閃に無駄な
動きをつけずに、スピードと軽快なフットワークで攻撃をかわしながら奴の隙をついて
斬りつけていく。それは、ガンダールヴを発動させた才人や、剛剣を持ち味とする
アニエスやミシェルとは違うが、我流を実戦の中で進化させていった戦場の剣技、
ハンターナイト・ツルギとして宇宙をさすらっているときに磨いた腕は、確かに
血となり肉となって、今では正義のために閃く。
その勇姿を間近で目の当たりにして、才人は興奮を最高潮にして叫んでいた。
「ウルトラマンヒカリ、がんばれーっ!」
「ヒカリ、それがあのウルトラマンの名前なんですか……」
才人の背におぶさられながら、レリアがぽつりとつぶやいた。
「ええ、エースと同じ光の国の戦士です。すげえ、ヒカリも来てくれたならもう大丈夫だぜ」
レリアを安心させようと、才人はわざと大げさに喜んで見せたが、彼女はずっと
握り締めていた祖父の形見のトライガーショットを見つめると、悲しそうにつぶやいた。
「二十年前と同じで、私は結局助けられてばかりですね。おじいさんの残した
武器で少しは村のために戦えると思っても、やっぱり何の役にも立てなかったばかりか、
娘まで死なせてしまうところでした。それに、今だって私のせいでウルトラマンは
自由に戦えない……」
「そんなことはないですよ!」
気落ちしているレリアに向かって、才人はぴしゃりと言ってのけた。
「ウルトラマンは、人間が精一杯戦いぬいたときにだけ力を貸してくれるんです。
今だって、おばさんが力いっぱい頑張ったから、ヒカリは来てくれたんですよ。
な、ルイズ?」
「知らないわよ。けど、少なくとも何もしないで助けを待ってるだけの奴なんか、
ウルトラマンだって助けたくないんじゃない。あたしだったら、見捨ててるわ」
才人の思いやりと、ルイズのぶっきらぼうな優しさは、傷ついたレリアの心に
染み入り、懐かしい記憶を呼び起こした。そう、あの二十年前の祖父やアスカ、
カリーヌやティリーも、それぞれ励ましあい、支えあって人知を超えた怪物に
憶さずに立ち向かっていた。
ただ、このままだとずっと見物していそうだった才人を、幸いにも抜いたままに
してもらっていたデルフが注意した。
「おい相棒、見とれてるのもけっこうだけどよ。あのウルトラマンが、お前さんを
信じてまかせた仕事をほっぽっといていいのかね」
「あっ! そ、そうだった」
親子を逃がしてくれというヒカリからの指示を、才人ははっとなって思い出した。
デルフは声を荒げて人を叱ったりはしないが、本人いわく何千年も生きてきたと
言うだけはあって、人の気持ちをよく知っており、どう言えばその人がよく動くのかと
いうことを知っている。
「ルイズ、行くぞ」
「ええ、でもちょっと……そんな簡単に言わないでよ……ガンダールヴ全開の
あんたに走ってついてくの、けっこう大変なんだからね」
才人がレリアをかつぐ以上、シエスタはルイズが背負わなければならないのは
明白だったが、いくら人並み以上の体力を持つルイズといっても、全力疾走の
あとに人一人かついで走るのは、体格が小さいこともあってやはりかなりの
難題だったようだ。
「ええーっ! おいこの大事なときに……おいデルフ、どうしよう」
「全力で走ったら馬並の相棒についていけるだけ娘っこの脚力もすげえもんだが、
さすがに限界か……しゃあねえな、あの手でいけよ」
「あの手?」
「そう、あの手だよ」
だが、デルフから『あの手』とやらを聞かされた二人は思わず赤面した。
「お、お前、こんな公衆の面前で!」
「そ、そうよ、そんな破廉恥なこと、ラ・ヴァリエールの三女のこのわたしができる
わけないじゃない」
「心配しなくても誰もというか、お前さんの一番気になるメイドは見てねえよ。
てか、前は相棒が自分からやったことだろうに、てか、危ねえぞ」
「へ?」
思わず振り向くと、すぐ目の前には塔のような太いエンマーゴの足、さらに
いきなり影に隠されたと思って上を向くと、そこには垂直に落ちてくる巨大な
足の裏があった。
「んだーっ!」
「きゃーっ!」
踏み潰される寸前、才人は背中にレリアを背負ってデルフを握ったまま、
右腕にルイズ、左腕にシエスタを抱えて駆け出した。それはまさしく、以前
トリスタニアでスリを追っかけたときにやったやつのパワーアップバージョン、
しかしあのときは追い詰められてて半分やけくそだったが、人からやれと
言われたらやっぱり恥ずかしい。とはいえ間一髪、わずか一メートル後ろに
エンマーゴの足が着地して、彼の体は衝撃で宙に舞い上がるが、かまわず
そのまま全力ダッシュで逃げていく。いくらガンダールヴの力を発揮している
とはいえ、人三人抱えて走るなど完璧に火事場の馬鹿力、特に気を失ったままの
シエスタはいいとして、ぶんまわされるルイズは体にしがみつくものだから、
走りにくいことこの上ない。
「きゃーっ! きゃーっ、ぎゃーっ!!」
「あ、暴れるな! 爪を立てるな! 落としちまうぞ!」
「バカーっ! 落としたら殺す! 置いていったら殺す、だから走りなさいよ!」
理不尽な怒りを受けながらも、才人は戦いの巻き添えで飛んでくる樹木や
家屋の残骸も超人的な身体能力で回避して、とにかく少しでも遠ざかろうとするが
五十メートル以上の大きさの相手から、安全圏に逃げるとなったら容易ではない。
むろん、ガンフェニックスも巻き添えを恐れて攻撃はできないし、ヒカリも刃物を
振り回す相手をこれ以上刺激するわけにはいかないと手が出せない。
「さ、さっさと逃げておくべきだったぁーっ!」
後悔先に立たず、悲鳴をあげたところでもう遅い。エンマーゴの歩く振動で
走りにくい中を、才人はそれでもフルパワーで走った。しかし。
「サイト、後ろ後ろぉーっ!」
「え? うわぁーっ!」
ルイズの絶叫で、ふと後ろを振り返ったとき、そこにはエンマーゴが蹴り飛ばした
一抱えほどもある巨大な庭石が迫ってきていた。軽く見積もっても一トンはある、
エンマーゴにとっては小石ほどだろうが、こんなものが直撃したら人間なんか
ひとたまりもない。ルイズが慌てて懐をまさぐっているが、とても杖を取り出して
失敗魔法を使う暇もない。天は我を見放したか! 才人の脳裏に古い映画で
見た台詞が浮かび上がった。その瞬間。
『レビテーション!』
突然、才人の体がはじかれるように宙に浮き上がると、ほんの半瞬前まで
彼のいた場所に巨石が落下して、そこにあった古い切り株をグシャグシャに
つぶしてしまった。そして、巨人につまみ上げられたように、訳もわからないままに
空中散歩をした才人たちの下ろされたところは。
「はあい、あんたたちってほんとあたしたちがいないとだめねえ」
「キュルケ!」「タバサ!」
シルフィードの背中の上に下ろされた才人とルイズは、間一髪のところで
駆けつけてきたこの二人によって助け出されたことを知って、ほっと胸をなでおろした。
「まったく……あんたたちの向こう見ずと考えなしは、何回見てもひやひやするわ、
ねえタバサ?」
「もう少し、早く逃げてればよかったのに」
「め、面目ない」
今回はタバサにも呆れられたように言われ、反論の余地のない才人は頭を
掻きながら、自分の比を恥じたが、ルイズはふてくされたようにそっぽを向いて。
「ふん、あんたたちこそ、もっと早く助けにくればよかったのに」
「あら? わたしに借りができちゃった負け惜しみ? けーど、誇り高い
ラ・ヴァリエール様は、まさか助けられてそのまま、はい知りませんよ、なーんて
言いはしないわよねえ?」
「ぐ、ぐぐぐ……」
普通なら、最初の一言で激昂しそうなものだが、ルイズの扱いに慣れたキュルケは
その上を行ってしまった。どうやら、身長やスタイルのよさ、恋の駆け引き以前の
段階でルイズはキュルケに、まだ遠く及ばないらしい。
だが、キュルケはルイズで遊ぶのはそこそこで中断すると、足を捻挫していた
レリアに治癒の魔法をかけていたタバサに声をかけた。
しえん〜
「どう、傷の具合は?」
「問題ない。ちょっとひねっただけ、安静にしてれば一週間くらいで歩けるようになる」
タバサの治癒は炎症を止めるくらいで決して強くないが、サバイバル的な医療知識の
ある彼女の診断を聞いて、キュルケはほっとしたように微笑んだ。
「よかった。もう歩けないなんて言われたら、シエスタになんて言おうかと思ったわ。
それにしても、無茶もいいところよ。あんなことをして無駄死にになるとは思わなかったの?」
「返す言葉もありません。ですが、ここは私の故郷なんです。私が生まれ、育ち、
そして私の子供たちが生きていくための、かけがえのない場所なんです。そこを
守って次の世代に託すのが、母親である私の務め……あなたも、いつか母親に
なったらわかる日が来ますよ。どんなに大きくなったって、自分が腹を痛めて生んだ
子供ほど、かわいいものはないんですから」
「……」
まだ気を失ったままのシエスタを優しく抱きかかえるレリアの言葉を聞いて、
自分が母親になることなど考えたこともなかったキュルケは、久しぶりに故郷に
残してきた両親のことを思い出し、ルイズやタバサも、幼いころの家族の思い出に
心を寄せた。
けれど、レリアのそんな姿にもっとも強いショックを受けたのは、ほかならぬ
才人だった。もちろん、才人の母とレリアは顔は全然似ていない。それでも、
かもしだす優しい雰囲気は、昔母から与えてもらったものと変わりなかった。
そう、たまたまテストの点がよかったとき、食器洗いを手伝ったとき、そんな
なんでもないことでも母は大げさに、なんの他意もなく褒めてくれた。
もしも、シエスタが突然行方不明になったらレリアはどんなに嘆き悲しむだろう。
見れば見るほど、それが痛いほどわかるだけに、才人はレリアに自分の母を
重ねて見てしまい、耐え切れなくなった彼は、心の中のそんな罪悪感にも似た
もやもやを吹き飛ばすかのように、無理に大声を出して叫んだ。
「ウルトラマンヒカリ、がんばれーっ!」
しかし、ハンディがなくなって自由に戦えるようになっても、ヒカリを追い詰める
エンマーゴの猛攻は止まるどころか、無限のスタミナを持っているかのように
斬撃の威力を次第に増していった。
「ヒカリと互角に渡り合うなんて、なんてすごい奴なんだ」
見守るミライからも、信じられないといった声が漏れる。いまや宇宙広しといえども、
ヒカリと互角に切り結ぶことのできるのは、ミライに思いつく中では、かつて戦った
宇宙剣豪ザムシャーくらいしか存在しないのに、疲労がたまっていくヒカリとは
反対に、エンマーゴの剣に衰えは見えない。そして、とうとうエンマーゴの剣が
ナイトビームブレードをはじき、剣の先がヒカリの喉元をかすめた。
「ヒカリ!」
「危ない!」
「サイト!」
ミライの左腕にメビウスブレスが現れ、才人とルイズのウルトラリングに光が灯る。
だが、加勢に駆けつけようとしたミライや才人たちの頭の中に、ヒカリからの
声がテレパシーで響いた。
「待て! この戦いは、俺にやらせてくれ」
「ヒカリ!? しかし、君だけでは」
「そうですよ、エンマーゴはウルトラマンタロウも負けかけたほどの強敵なんですよ」
「意地張ってるんじゃないわよ! あんたやられかけてるじゃないの」
手助けを拒もうとするヒカリに、三者からそれぞれテレパシーで抗議がかかるが、
ヒカリの意思は固かった。
「すまない。しかし、俺の部下が人生を懸けて守りぬいたここは、あいつが信じた
俺とGUYSの力で守りたいんだ」
「ヒカリ……」
それは、かつてGUYSを率いながら、使命を果たせなかったセリザワの無念を
込めた頼みだった。つまらない意地と笑うなら笑えばいい。しかし、平和を
守るものとしての誇りは、効率という言葉で切っていいものなのか。
すると、沈黙したミライや才人たちに代わって、GUYSの面々が次々とヒカリの
意思に応えて叫んだ。
「セリザワ隊長の言うとおりだぜ。あんな怪獣の一匹や二匹にてこずってるようじゃ、
佐々木先輩にどやされるぜ」
「アミーゴ、悪いが今回はお前たちの出番はなしだ。後輩の実力、天国のOBに
しっかりとおがませてやるぜ」
「ミライくん、僕たちはまだ力を出し尽くしちゃいない。大丈夫、勝算はあるさ」
「みんな……はいっ! ですが、僕だってCREW GUYSの一員です。僕も、
みんなといっしょに精一杯戦います」
「ああ、GUYSの誇りをみんなで見せてやろうぜ。ようし、ウルトラマンヒカリを
援護する。いくぞみんな!」
「G・I・G!」
翼をひるがえし、急角度からの攻撃を加えるガンフェニックスと、地上からの
銃撃がエンマーゴに隙を作り、そこを狙ってヒカリが剣を振り下ろす。確かに
奴は強い、しかし心を一つにして立ち向かえば、たとえ相手がどんなに強大
だろうと切り開けない道は無い。
「あれが、ウルトラマンといっしょに戦い抜いた人たち……」
才人は、GUYSがメテオールを持っているから強いと思っていたが、メテオールの
効かない敵を目の当たりにして、なぜGUYSが一年ものあいだ戦い抜いて
こられたのか、その秘密がわかったような気がした。
「戦う、誇り……」
また、ルイズもGUYSの闘志に、本当の戦う誇りというものを見た気がした。
以前自分は、敵に背を向けないものを貴族というのよと言ったが、今なら
あのときの自分と彼らとの違いが何かというのがわかる。
それでも、GUYSの総力をあげてもなおエンマーゴは強かった。攻撃を鎧と盾で
強引に受けきって、小手先の技を力でねじふせようと大剣を振り回してくる
攻撃を続けられ、さしものヒカリも攻撃をさばききれなくなってきた。
「ヌゥッ!」
戦国時代の剣豪は、全身を分厚い鉄の鎧で覆って、防御を完全に無視した
現代の剣道では考えられない荒々しい攻撃一点張りの剣術を使った猛者が
いたと言われるが、エンマーゴの戦い方はまさにそれを彷彿とさせた。
このままでは、疲労したヒカリはいずれ直撃を受ける。戦いに慣れたタバサや
キュルケだけでなく、才人たちもそう感じたとき、奴は突然口からあの黒煙を
ヒカリに向かって吹き付けてきた。
>……あの青い巨人……いえ、似ているけど、違う
そういや、イザベラさんは今も恋煩いの最中なんだろうかw
「グワァァッ!」
至近距離からの噴霧だったので裂けられず、ヒカリはもろに黒煙を全身に
浴びてしまった。さらに、あらゆる樹木を腐らせる黒煙は、ウルトラマンに対しても
強力な毒ガスとして作用し、視界を奪って全身をしびれさせる。
「卑怯な手を!」
ルイズは怒ったが、怪獣や宇宙人に卑怯もラッキョウもない。体の自由を
奪われてひざを突いたヒカリをエンマーゴは鉄柱のような足で蹴り上げて、
わざと剣を使わずに剣のつかや盾でなぶるように殴りつけてくる。おまけに、
防戦が続いてエネルギーを消費し続けていたために、カラータイマーも点滅を
始めて、警報音が村に響き渡り始めた。
「なんで反撃しないのよ!」
「毒が、体にまわってる。彼もわたしたちと同じ、生き物」
タバサの言うとおり、ウルトラマンも生命体である以上、毒は人間と同じように
効いてしまうのだ。エネルギーの欠乏に加えて、体を麻痺させられたヒカリは
反撃もままならず、エンマーゴは肉食獣が倒した獲物を誇るときのように足蹴にして
愉快そうに喉を鳴らして笑った。しかも、足の下に敷いたヒカリにとどめを刺そうと、
エンマーゴの剣はさらに無慈悲に高く振り上げられる。
「あいつ、首を刈る気よ!」
キュルケが思わず口を押さえて悲鳴をあげた。エンマーゴの剣は、かつて
ウルトラマンタロウの首を切り落としたほどの切れ味を誇る。そのときは
タロウの持つ強力なウルトラ心臓のおかげで奇跡的に再生に成功したが、
ヒカリにはそんなことは不可能だ。
だがそのときだった!
「リュウさん、ウィンダムの使用許可を!」
「ようし、メテオール解禁!」
「G・I・G!」
許可を受けて、テッペイはノートパソコン型のGUYSタフブックから緑色の卵ほどの
大きさのカプセルを取り出し、自分のGUYSメモリーディスプレイに接続すると、
ディスプレイにメテオール使用可能のシグナルが浮き上がった。そう、GUYS
メモリーディスプレイは、各隊員の身分証や通信機、さらに過去に出現した怪獣の
簡易データが収録されている万能ツールとしての機能のほかに、ガンクルセイダーや
ガンフェニックスと同じく、いくつかのメテオールアイテムの作動キーとしての役割も
持っているのだ。
そして、メテオールはキャプチャーキューブやスペシウム弾頭弾だけではない。
それと並び、CREW GUYSを象徴するとっておきの目玉、分子ミストの送り込みが
成功し、リムエレキングがこっちの世界で出現できたことから、使用可能が
確実となった奥の手がまだある。
テッペイはスタンバイOKを確認するとエンマーゴからやや離れた村の広場へと、
拳銃のようにメモリーディスプレイを向けてスイッチを押した。
”リアライズ(顕現)”
メテオール作動の電子音が鳴り、それに続いて広場に緑色の粒子が渦を
巻いて現れ、その中から西洋の甲冑を身にまとったような銀色の怪獣が現れる。
そしてテッペイは、その怪獣に向けて大きな声で命令した。
支援いたしまするー
「頼むぞ、ウィンダム!」
機械の駆動音のような鳴き声を上げて、銀色の怪獣は力強く両腕を上げて、
エンマーゴに存在をアピールし、新たな敵の出現にヒカリへのとどめを
いったん中断してこちらに剣を振り上げてくるエンマーゴを睨みつける。
これこそ、ミクラスと並んでCREW GUYSの誇る頼もしい仲間、
マケット怪獣ウィンダムだ!
「ウィンダム、攻撃開始だ!」
剣を振りかざして威嚇してくるエンマーゴに、ウィンダムはその場から
動かずに両腕を上げると、額のランプからビームを発射した。その前触れのない
一撃に、さしものエンマーゴも驚いて鎧に喰らって後ずさる。
また、ルイズたちも突然現れた銀色のゴーレムのような怪獣に驚いていたが、
才人は驚く彼女たちに愉快そうに説明した。
「サイト、もう一匹怪獣が現れたわよ!」
「いや、あれは味方だ」
「えっ? あの、ゴーレム、みたいなのが味方?」
「ゴーレムか、確かに似たようなもんだけど、中身は全然違うぜ、見てろ」
ウィンダムは皆が見守る中で、ヒカリを助けようとビーム攻撃を続けた。しかし、
エンマーゴは一時は驚いたものの、すぐにビームを盾で防御し、この攻撃を
ものともしていない。あざ笑うエンマーゴ、ただしウィンダムの力は才人の
言うとおりこれだけではない。
「負けるな、ファイヤーウィンダム!」
そう、このウィンダムはウルトラセブンが使役していたカプセル怪獣の
ウィンダムをモデルに作られているが、オリジナルにないGUYS独自の
改良も施されている。元々遠距離攻撃が得意で、クール星人の戦闘円盤を
撃ち落したこともあるウィンダムの左腕には、大きなカノン砲が装備されており、
そこから強力な火炎弾をピストルのように連射して放つことができるのだ。
「いいぞ、攻撃を緩めるな!」
これには、さしものエンマーゴも盾の陰に隠れてうかつには動けない。
おまけに、ロボット怪獣であるウィンダムにはあの黒煙も効果がありはしないだろう。
その勇姿に元気付けられた才人たちの前で、ファイヤーウィンダムの猛攻は続く。
「よし、これならいけるぜ。頑張れ! ウィンダム」
「あれほどのゴーレムを自在に召喚して操るなんて、あんたのところって、
ほんと便利なものがあるのね」
「ああ、すげえだろ。これがGUYSの実力さ!」
ウィンダムを間近で見て鼻高々な才人だったが、実は彼はメテオールが
一分間しか使えないということまでは知らなかった。とはいえ、メテオールは以前
トリヤマ補佐官が、うっかり記者会見でしゃべってしまいそうになったとき、厳しく
けん責処分になったほどにGUYSも機密保持に神経質であり、一般情報しか
知りようのない彼が知らなかったのはやむをえないところではある。
しかし、ウィンダムはメテオールが生み出すただの幻影や、ましてや言いなりの
ロボットなどではない。
「ウィンダム、頑張れ!」
テッペイの声に勇気づけられたかのように、ウィンダムはダイヤモンドをも切断
できるという剣を、自分に向かって振りかざしてくるエンマーゴにひるまずに、
ヒカリを助けようと銃撃を続けて援護する。仲間たちの思いを一つに、それは彼らも
同じ、マケット怪獣たちは心を持つ立派なGUYSの仲間たちなのだ。
さらにその隙をついてガンフェニックスが側面や背後から攻撃をかけていく。
「がんばれセリザワ隊長! あんたの力は、こんなものじゃねえだろ」
「立ち上がれ、あんただって、おれたちGUYSの仲間だろ」
リュウやジョージの声が、苦しむヒカリの耳に届く。
そして、その仲間の声をウルトラマンは裏切らない。
「ヌゥゥ……ッ、ダアッ!」
全身にこびりついていた黒煙を振り払って、ヒカリは残り少ないエネルギーを
振り絞ってエンマーゴに斬りかかり、下段から打ち上げたナイトビームブレードで
エンマーゴの剣を手元から弾き飛ばした。
「やった!」
その瞬間、タイムリミットを過ぎたウィンダムは再び緑色の分子ミストになって
消え去ったが、ウィンダムの奮闘とヒカリの渾身の力でエンマーゴの手から
はじかれた剣は、回転しながら空中を舞い、三〇〇メートルほど離れた場所に
突き刺さった。
「セリザワ隊長、今だ!」
メテオールを使い切ったガンフェニックスではエンマーゴにとどめを刺す手段はない。
しかし、リュウの叫びが響いても、カラータイマーの明滅がすでに限界点に近づいて
きているヒカリの体には力が入らない。
「隊長ぉ! 立ってくれ」
「畜生、剣に近づかせるか!」
ヒカリが動けない今、剣を取り戻されては勝ち目がない。ガンフェニックスは
バリアントスマッシャーで足止めを図るが、最大の武器を取り戻そうと焦る奴の
足取りは止まらない。これまでか! ミライや才人たちの手がメビウスブレスと
ウルトラリングにかかりかけた。だが、地面に突き刺さった剣に、今まさに
エンマーゴの手がかかろうとした瞬間、突然エンマーゴの体が光るオーラに
包まれたかと思うと、その動きが凍りついたように止まった。
「なんだっ!?」
あのエンマーゴが、指一本動かせないほどに動きを止められている。
ミライは直感的に、これが念動力により封印だと直感したが、これほどの
パワーはウルトラ兄弟でも、レッドギラス、ブラックギラスの双子怪獣や
ガロン、リットルの兄弟怪獣を撃退したほどの力を持つほど、特に念力に
優れたウルトラセブンくらいしかまず発揮することできないはずだ。ならば、
いったい誰がこれほどの念力を、もしかして!
”愚か者め、四百年前に貴様を封印したこの景竜を忘れたか? 剣を失い、
慌てて心を乱したのが、ぬしの運の尽きよ”
それはミライによって、タルブ村の小高い丘の上に置かれた地蔵に宿った
古代の妖怪退治屋・錦田小十郎景竜の念力による金縛りの技だった。
”これがわしに残された最後の力じゃ。どうじゃ、動けまいが”
残留思念となった景竜には、もはや生前のような神通力はない。しかし、彼は
万一のときに備えて、この地蔵にその力を思念とともに一度限りの切り札として
封印していた。しかしそれも、まともに使っては強力なマイナスエネルギーに
跳ね返されかねないので、彼は残った力を本当の最後の攻撃の、今このときのために
温存していたのだ。
”今じゃ、とどめを刺せ!”
動きの止まったエンマーゴを指して、景竜の声がヒカリに届く。今を逃せば剣を
取り戻したエンマーゴを倒す術はない。
「立ってくれセリザワ隊長!」
「ヒカリ! 頑張って」
「負けるな! ウルトラマンヒカリ!」
「立て! 立つのよ! そのくらいでへたばるんじゃないわよ!」
「いっけーっ! 勝つのよーっ!」
「お願い、あのときのように、立って、ウルトラマン」
「立ってくれ! 俺たちの村を、救ってくれーっ!」
「ウルトラマーン!」
リュウやミライたちGUYSの面々、才人たちやレリアたち村人たちの心からの
エールが、ヒカリの消えかけた光に新たな灯を灯していく。
「そうだ……俺は、ウルトラマンなんだ……!」
蘇ったウルトラの心に奮い立たされ、ヒカリはついに苦しみを振り切って二本の
足で大地に立ち上がった。
「デャァァッ!」
そう、ウルトラマンであるということは、常に人々の希望であり続けるのと同時に、
決して彼らの期待を裏切らないこと。ヒカリは空に向かってかかげたナイトブレスに
残った全てのエネルギーを込めて、青い雷のようにスパークしたその光のパワーを
十字に組んだ手から解き放った!
『ナイトシュート!』
青い正義の光芒が、エンマーゴに突き刺さり、マイナスのエネルギーと相反する
パワーが怒涛のように、その強固な鎧をも貫きとおす勢いで吸い込まれていく。
「いけーっ!」
「ダァァーッ!」
人々の声援と、ヒカリの正義の意思が最高潮にまで高まったとき、その奔流の
力にとうとう耐え切れなくなった地獄の妖魔は、闇の鎧に無数の亀裂を生じさせた
次の瞬間、天界の浄火をつかさどって悪鬼羅刹を焼き尽くすという不動明王の
裁きを受けたかのように、真っ赤な炎に包まれて粉々の塵となって消し飛んだ!
「やった!」
「うぉっしゃあーっ!」
「すごいっ!」
「わーい! ウルトラマンが勝ったあー!」
ヒカリの勝利に、GUYSや才人たちだけでなく、村人たちのあいだからも
老若男女問わない歓声があがって、喜びの声が平和の歌声となって山々と
村の空にこだましていった。
だがそのとき、ヒカリやミライたちウルトラマンの力を持つ者たちは、砕け散った
エンマーゴの炎の中から、どす黒いもやのような塊が抜け出ていくのを見た。
「あれは! エンマーゴの亡霊体か!?」
そう、エンマーゴが人間の邪悪な思念から生まれた怪獣ならば、実体である
肉体を破壊しても、その邪悪な精神はマイナスエネルギーの集合体となって
残る可能性がある。となれば、あれを逃せばまたエンマーゴがいつかどこかで
復活する可能性がある。ウルトラマンたちの背筋を冷たいものが走った。
しかし、実体のない霊魂のような相手をどうやって止めればいいのかと
焦りかけたとき、エンマーゴの亡霊体は突然底の抜けた池の水のように
お地蔵様の小さな体の中に吸い込まれていって、景竜の言葉が彼らの心に
最後に響いた。
”実体を失った影の状態ならば、今のわしでも封じることができる。さらばじゃ、
光の人たちよ”
それが本当に最後の力だったのか、景竜の言葉はそれっきり二度と聞こえる
ことはなかった。そういえば、かつて地球でもエンマーゴの前に絶体絶命に陥った
ウルトラマンタロウを助けてくれたのは、土地に埋められていたお地蔵様だという。
この世界では、ちょっとひねくれていたが、ハルケギニアでもやっぱりお地蔵様は
正しい者の味方だった。
「こちらこそ、感謝する。あなたの力や、そして仲間たちや村人たちの思いが
なければ、奴には勝てなかった」
光は闇を照らすことはできるが、闇はたやすく光を侵食する。しかし夜空を無数の
星々が輝かすように、小さな光でも集まれば闇を打ち負かすことができる。そして、
エンマーゴの邪念が完全に封じ込められたことを確認したヒカリは、人々の歓声を
その背に受けながら青空へと飛び立った。
「ショワッ!」
戦いは終わり、村に平和が蘇った。
避難していた村人たちは続々と村へ帰還していき、勝利に沸いて精気あふれる
男たちによって、壊された家々の修復がさっそく始められた。
景竜のお地蔵様は、今度こそエンマーゴが復活しないようにガンフェニックスで
地球に持ち帰ったあとで、メビウスによってグレイブゲートという、怪獣墓場に通じると
いわれる宇宙の果てに運ばれることになった。
そうして、平穏を取り戻した村の中で、GUYSのクルーたちが熱烈な歓迎を
受けたのはいうまでもない。派手なパーティは勘弁してくれということで、シエスタの
家で昼食会が開かれただけでお開きとなったが、ヨシュナヴェはあっという間に
平らげられてしまい、フェニックスネストに残ったコノミやマリナをうらやましがらせた。
なお、今頃になってこの地方の領主の竜騎士が数騎駆けつけてきて、
ガンフェニックスが疑われそうになったが、トリステイン最大勢力のヴァリエール家の
三女であるルイズに脅されると、小心さを自ら証明するようにさっさと引き返していった。
だが、明るい光に包まれた村の中で、ふと才人に呼び出されてガンクルセイダーの
納められている寺院で、二人きりになったルイズは、心臓が止まりそうな衝撃を
彼から受けて、冷たい床に崩れそうになった。
「ルイズ……おれ、地球に帰るよ」
続く
今週は以上です。規制が厳しい中での支援、どうもありがとうございました。
時期が時期だけに毎日突然やることが湧いてきたりして時間が削られがちですが、
どうにかウルトラやゼロ魔のCDや、ほかの方々の面白いSSにモチベーションを
支えられつつ今週も来ることができました。
ウルトラ銀河伝説ではウィンダム強かったですねえ、まさかサラマンドラをガチで
やっつけてしまうとは思いもしていませんでした。UGMやGUYSの苦労はいったい……
まあカプセル怪獣も時を経て強くなっているということでしょうか。
では、次回からはいよいよ大詰めに入ります。
よし次回からルイズ一人で変身だなw
第94話
防人の魂
ウルトラマンヒカリ
マケット怪獣 ウィンダム
えんま怪獣 エンマーゴ 登場!
かつて、光の国の優秀な科学者であったウルトラマンヒカリは、心から愛した
惑星アーブの生命体をボガールから守れなかったことをきっかけに、アーブの
知性体の怨念のこもった鎧を身にまとい、復讐の戦士、ハンターナイトツルギとして
宇宙をさすらっていた。
気が遠くなるような長い旅の果てに、彼はボガールが次の餌場として選んだ星、
地球へとたどり着くが、憎しみのあまりにウルトラの心を失っていた彼は、地球での
活動のために、ディノゾール戦で戦死した旧GUYS隊長、セリザワ・カズヤの体を
乗っ取って、ボガールを倒すためなら手段を選ばない非情な戦いを繰り広げた。
しかし、地球で出会ったメビウスや地球人たちとのふれあいで徐々に心を
取り戻していった彼は、彼らと力を合わせて苦闘の末についにボガールを打ち倒した。
そして、ウルトラの母の力で復讐の鎧から解き放たれて、ウルトラの心を取り戻した
彼は、なおも怪獣の出現の続く地球を守るために、彼とともに戦うことを選択した
セリザワと本当の意味で一心同体となり、真の光の戦士・ウルトラマンヒカリに
生まれ変わったのだ。
「この星を、お前の好きにはさせん!」
ウルトラマンとして、心ある人々を守るヒカリの意思と、かつての部下であった
佐々木隊員の愛したものを守ろうとするセリザワの、二人の意思をその身に宿し、
タルブ村を荒らしまわり、人々を苦しめる怪獣エンマーゴの前に、群青の輝きを
まとってウルトラマンヒカリが立ち上がる。
「セリザワ隊長! そうか、メビウスにメビウスブレスがあるように、ヒカリには
ナイトブレスがあったんだ」
このハルケギニアでは、M78星雲出身のウルトラマンは、この星の人間と
一体化しない限り、行動を著しく制限される。しかし、メビウスブレスと同系統の
アイテムであるナイトブレスを持つヒカリならば、この星でも問題なく戦うことが
可能だった。
しかし、どす黒い破壊の喜びを満たすのを、あと一歩で邪魔されたエンマーゴは
怒り狂い、鋭い牙を生やした口から凶悪な雄叫びをあげて、真っ赤な目に
次なる獲物を映して剣を振り上げる。もはや、人間の心の闇が生んだ妖怪と、
人間の光を守ろうとする光の戦士の激突は不可避、ヒカリは、彼の信じた
仲間たちの意志を受けて敵に挑む。
「セアッ!」
ウルトラマンヒカリのナイトビームブレードと、怪獣エンマーゴの剣がぶつかり合って
激しく火花を散らす。エンマーゴの剣は、地球上のあらゆる物質を切り裂くと
言われているが、ウルトラマンキングから授かった神秘のアイテム、ナイトブレスから
生まれるナイトビームブレードが折れることはない。
「こいつは俺が食い止める。今のうちに、その人たちを頼む!」
はっとして才人たちはヒカリのすぐ後ろを視線をやると、そこには気を失った
シエスタを抱いて守っているレリアの姿があった。なぜ逃げないのかと思ったが、
うずくまっているところを見ると、とっさにシエスタをかばったときに足を痛めた
のかもしれない。
「まじい、あのままじゃつぶされちまうぞ!」
「サイト、ぼさっとしてないで行くわよ!」
ヒカリが直接助け出そうとすれば、手を下ろした瞬間に斬られてしまうのは
明白なので、今助けに行くことができるのは自分たちだけだと、ルイズは才人の
手を引いてカモシカのようにスカートからすらりと伸びた足を俊敏に動かして、
雌鹿のように駆け出し、才人も慌ててデルフリンガーを抜くと、ルイズの後を
韋駄天のように追っていく。
「間に合ってくれ!」
友達を死なせてなるかと、二人とも怪獣の暴れ狂う死地へと、恐怖心にも勝る
熱い心を持って全力で駆けていき、ヒカリも才人たちがたどりつくまで、なんと
してでも時間を稼ごうと、命を懸けて剣を振るう。
「この人たちには、指一本触れさせん!」
自分に傷をつけようとした人間を決して許すまいと、憎悪を込めた剣を振り下ろす
エンマーゴに対して、ヒカリは邪悪の白刃の眼前に自らの命をさらし、真っ向から
ナイトビームブレードを唯一の盾に、全身の筋肉とばねを使って受け止めた。
「止めた!」
人間でいえば、身長三メイルにも及ぶ人獣ミノタウロスの斧を受け止めたにも
等しい荒業に、さしものタバサなどからも驚嘆のうめきが漏れた。確かに、
あの大刀の重量とエンマーゴのパワーが加われば、瞬間的な圧力は何万トン
にも相当するだろう。だが、ヒカリの足が大地にめり込み、さしものナイトビーム
ブレードもきしんだようにさえ錯覚したが、それでもナイトビームブレードの上で
大刀は確かに止まっており、そして、間違いなく誕生してから初めて自分の剣を
耐えしのがれたことに驚くエンマーゴの隙を逃さず、ヒカリは一瞬のつばぜり合いを
経て、全力を込めて弾き飛ばした。
「ファッ!」
ヒカリの力にも増して、その裂ぱくの気合に押されたかのように、それまで無敵の
勢いで驀進してきたエンマーゴが、はじめてよろめいて後ずさった。確かに、
その場から動くことが許されず、エンマーゴの比類ない剛剣を受け続けなければ
ならないそれは、剣道で足の運びが勝敗を大きく分ける要素として重視され、
基礎訓練として徹底的に叩き込まれるのに反する、圧倒的なディスアドバンテージで
あったが、その昔、かの武蔵坊弁慶が主君たる源義経を守るために、その身を
不動の壁と化させて、立ったまま息絶えるまで矢玉にさらし続けた豪勇無双ぶりが
迫り来る幾千の軍勢をおびえたじろがせたように、破邪の威光は圧倒的優位に
あるはずのエンマーゴをたじろがせ、絶望の思いで破壊されていく村を見つめていた
村人たちからも、ヒカリの勇姿に希望の声が次々とあがり始めた。
「おおっ! ウルトラマンだ、ウルトラマンが来てくれたぞ!」
「これでわしらの村も助かるかもしれん。頼むぞ」
「ウルトラマーン! がんばれーっ!」
「がんばれー!」
村人たちが、逃げるのをやめて口々に青いウルトラマンを応援し始めるのに、
ヒカリは胸が熱くなる思いを感じていた。
かつて地球では、青いウルトラマンは本当にウルトラマンの仲間なのかと
疑われ、ババルウ星人の策略によって侵略者ではないかと恐れられたが、
そんな先入観のないハルケギニアの人々は、素直にヒカリを受け入れてくれた。
また、村人たちを空の上から護衛していたキュルケとタバサも、ヒカリの
登場に驚きをあらわにしていた。
「すごい! また新しいウルトラマンよ! タバサ、今度はあなたの髪の色
みたいに真っ青なウルトラマンよ」
「……」
「タバサ、どうしたの? タバサ」
呼びかけても、タバサはじっと青い巨人を見つめているだけで、いっこうに
返事をしてくれようとしない。
「……あの青い巨人……いえ、似ているけど、違う」
「タバサったら!」
「あ……なに?」
「なに? じゃないわよ、どうしたの急に何かに取り付かれたみたいに?」
「ごめん……ちょっと考え事してた。けど、思い違いだったみたい」
「はぁ……まあ、あんたの考えることの大半はわたしにはわかんないから
いいけど、あんまり心配かけないでよ」
優しく頭をなでてくれるキュルケは、そのときタバサにとってほんの少しだが
母親の記憶を思い出させた。だが、友の温かさにひたる暇も無く、空気を
揺るがす激震をもって、ウルトラマンヒカリとエンマーゴの戦いは激しさを
増していく。
「トアッ!」
ナイトビームブレードとエンマーゴの大刀による激突は、大気を揺るがして
一太刀がぶつかり合うごとに、遠く離れているはずの村人たちにさえしびれる
ような衝撃が襲い掛かった。
「た、たっぷり二リーグは離れてるはずなのに……」
「まるで、この世の戦いとは思えねえ」
ハルケギニアではメイジの魔法の威力が強大なために、剣は平民の武器、
弱者の武器というイメージが濃いが、眼前の戦いを見てそんなことを思える者は、
ただの一人たりとて存在しなかった。
しかし、一見互角の勝負に見えた戦いであったが、やはり、すぐ後ろで
逃げられないでいるシエスタたち親子を守りながらでは、ヒカリは得意の
フットワークを活かすことができずに、エンマーゴの剛剣の乱打に対して
防戦一方とならざるを得なかった。
「強い……だが、俺はもう二度と悲劇を繰り返させはしない!」
それは、惑星アーブをボガールから守れなかったヒカリ、ディノゾール戦で
部下を全滅させてしまったセリザワの二人分の決意だった。そして彼はその決意を
剣に込めてエンマーゴを押し返すと、ナイトビームブレードにエネルギーを込めて、
矢じり型の光弾にして発射した。
『ブレードスラッシュ!』
かつてババルウ星人の変身を強制解除させた一撃が、炎の矢のようにエンマーゴに
突き刺さろうと向かう。しかし、奴は自慢の盾を構えるとそれさえもはじき返してしまった。
身動きができないのに加えて、あの鎧と盾というアドバンテージは、メビウスに勝るとも
劣らない力を持つヒカリといえどもきつい。
しかし、戦闘を時とともにうつろいゆく川の流れのようなものだとすれば、その勢いに
一時は押し流されてしまいそうになったとしても、流れが変わるときは必ずやってくる。
「ヒカリ! こっちはもう大丈夫だ! あとは思う存分戦ってくれ」
「よし!」
驚くほど圧縮された時間の中で才人の声を聞いたヒカリは、一瞬だけ振り返って、
レリアとシエスタのところに、才人とルイズが駆けつけたのを見て取ると、
枷から解き放たれた猛獣のように、これまで受けるだけだった剣撃をはじき返し、
今度はこちらから反撃の斬撃を送り込む。
「テヤァッ!」
ナイトビームブレードがエンマーゴの剣と何度もぶつかり合って押し返し始めた。
かつてウルトラマンタロウは素手であったために、大苦戦を強いられたが、
今度はウルトラマンも同じ武器を持った以上、あとは力と技の勝負だ。
ただ残念ながら、力任せに大刀を振り回すエンマーゴの圧倒的なパワーには
さしものヒカリも抗し得ないが、技ならば別。
「デヤァッ!」
子供が棒切れを乱暴に振り回すようなエンマーゴに対して、ヒカリは剣閃に無駄な
動きをつけずに、スピードと軽快なフットワークで攻撃をかわしながら奴の隙をついて
斬りつけていく。それは、ガンダールヴを発動させた才人や、剛剣を持ち味とする
アニエスやミシェルとは違うが、我流を実戦の中で進化させていった戦場の剣技、
ハンターナイト・ツルギとして宇宙をさすらっているときに磨いた腕は、確かに
血となり肉となって、今では正義のために閃く。
その勇姿を間近で目の当たりにして、才人は興奮を最高潮にして叫んでいた。
「ウルトラマンヒカリ、がんばれーっ!」
「ヒカリ、それがあのウルトラマンの名前なんですか……」
才人の背におぶさられながら、レリアがぽつりとつぶやいた。
「ええ、エースと同じ光の国の戦士です。すげえ、ヒカリも来てくれたならもう大丈夫だぜ」
レリアを安心させようと、才人はわざと大げさに喜んで見せたが、彼女はずっと
握り締めていた祖父の形見のトライガーショットを見つめると、悲しそうにつぶやいた。
「二十年前と同じで、私は結局助けられてばかりですね。おじいさんの残した
武器で少しは村のために戦えると思っても、やっぱり何の役にも立てなかったばかりか、
娘まで死なせてしまうところでした。それに、今だって私のせいでウルトラマンは
自由に戦えない……」
「そんなことはないですよ!」
気落ちしているレリアに向かって、才人はぴしゃりと言ってのけた。
「ウルトラマンは、人間が精一杯戦いぬいたときにだけ力を貸してくれるんです。
今だって、おばさんが力いっぱい頑張ったから、ヒカリは来てくれたんですよ。
な、ルイズ?」
「知らないわよ。けど、少なくとも何もしないで助けを待ってるだけの奴なんか、
ウルトラマンだって助けたくないんじゃない。あたしだったら、見捨ててるわ」
才人の思いやりと、ルイズのぶっきらぼうな優しさは、傷ついたレリアの心に
染み入り、懐かしい記憶を呼び起こした。そう、あの二十年前の祖父やアスカ、
カリーヌやティリーも、それぞれ励ましあい、支えあって人知を超えた怪物に
憶さずに立ち向かっていた。
ただ、このままだとずっと見物していそうだった才人を、幸いにも抜いたままに
してもらっていたデルフが注意した。
「おい相棒、見とれてるのもけっこうだけどよ。あのウルトラマンが、お前さんを
信じてまかせた仕事をほっぽっといていいのかね」
「あっ! そ、そうだった」
親子を逃がしてくれというヒカリからの指示を、才人ははっとなって思い出した。
デルフは声を荒げて人を叱ったりはしないが、本人いわく何千年も生きてきたと
言うだけはあって、人の気持ちをよく知っており、どう言えばその人がよく動くのかと
いうことを知っている。
「ルイズ、行くぞ」
「ええ、でもちょっと……そんな簡単に言わないでよ……ガンダールヴ全開の
あんたに走ってついてくの、けっこう大変なんだからね」
才人がレリアをかつぐ以上、シエスタはルイズが背負わなければならないのは
明白だったが、いくら人並み以上の体力を持つルイズといっても、全力疾走の
あとに人一人かついで走るのは、体格が小さいこともあってやはりかなりの
難題だったようだ。
「ええーっ! おいこの大事なときに……おいデルフ、どうしよう」
「全力で走ったら馬並の相棒についていけるだけ娘っこの脚力もすげえもんだが、
さすがに限界か……しゃあねえな、あの手でいけよ」
「あの手?」
「そう、あの手だよ」
だが、デルフから『あの手』とやらを聞かされた二人は思わず赤面した。
「お、お前、こんな公衆の面前で!」
「そ、そうよ、そんな破廉恥なこと、ラ・ヴァリエールの三女のこのわたしができる
わけないじゃない」
「心配しなくても誰もというか、お前さんの一番気になるメイドは見てねえよ。
てか、前は相棒が自分からやったことだろうに、てか、危ねえぞ」
「へ?」
思わず振り向くと、すぐ目の前には塔のような太いエンマーゴの足、さらに
いきなり影に隠されたと思って上を向くと、そこには垂直に落ちてくる巨大な
足の裏があった。
「んだーっ!」
「きゃーっ!」
踏み潰される寸前、才人は背中にレリアを背負ってデルフを握ったまま、
右腕にルイズ、左腕にシエスタを抱えて駆け出した。それはまさしく、以前
トリスタニアでスリを追っかけたときにやったやつのパワーアップバージョン、
しかしあのときは追い詰められてて半分やけくそだったが、人からやれと
言われたらやっぱり恥ずかしい。とはいえ間一髪、わずか一メートル後ろに
エンマーゴの足が着地して、彼の体は衝撃で宙に舞い上がるが、かまわず
そのまま全力ダッシュで逃げていく。いくらガンダールヴの力を発揮している
とはいえ、人三人抱えて走るなど完璧に火事場の馬鹿力、特に気を失ったままの
シエスタはいいとして、ぶんまわされるルイズは体にしがみつくものだから、
走りにくいことこの上ない。
「きゃーっ! きゃーっ、ぎゃーっ!!」
「あ、暴れるな! 爪を立てるな! 落としちまうぞ!」
「バカーっ! 落としたら殺す! 置いていったら殺す、だから走りなさいよ!」
理不尽な怒りを受けながらも、才人は戦いの巻き添えで飛んでくる樹木や
家屋の残骸も超人的な身体能力で回避して、とにかく少しでも遠ざかろうとするが
五十メートル以上の大きさの相手から、安全圏に逃げるとなったら容易ではない。
むろん、ガンフェニックスも巻き添えを恐れて攻撃はできないし、ヒカリも刃物を
振り回す相手をこれ以上刺激するわけにはいかないと手が出せない。
「さ、さっさと逃げておくべきだったぁーっ!」
後悔先に立たず、悲鳴をあげたところでもう遅い。エンマーゴの歩く振動で
走りにくい中を、才人はそれでもフルパワーで走った。しかし。
「サイト、後ろ後ろぉーっ!」
「え? うわぁーっ!」
ルイズの絶叫で、ふと後ろを振り返ったとき、そこにはエンマーゴが蹴り飛ばした
一抱えほどもある巨大な庭石が迫ってきていた。軽く見積もっても一トンはある、
エンマーゴにとっては小石ほどだろうが、こんなものが直撃したら人間なんか
ひとたまりもない。ルイズが慌てて懐をまさぐっているが、とても杖を取り出して
失敗魔法を使う暇もない。天は我を見放したか! 才人の脳裏に古い映画で
見た台詞が浮かび上がった。その瞬間。
『レビテーション!』
突然、才人の体がはじかれるように宙に浮き上がると、ほんの半瞬前まで
彼のいた場所に巨石が落下して、そこにあった古い切り株をグシャグシャに
つぶしてしまった。そして、巨人につまみ上げられたように、訳もわからないままに
空中散歩をした才人たちの下ろされたところは。
「はあい、あんたたちってほんとあたしたちがいないとだめねえ」
「キュルケ!」「タバサ!」
シルフィードの背中の上に下ろされた才人とルイズは、間一髪のところで
駆けつけてきたこの二人によって助け出されたことを知って、ほっと胸をなでおろした。
「まったく……あんたたちの向こう見ずと考えなしは、何回見てもひやひやするわ、
ねえタバサ?」
「もう少し、早く逃げてればよかったのに」
「め、面目ない」
今回はタバサにも呆れられたように言われ、反論の余地のない才人は頭を
掻きながら、自分の比を恥じたが、ルイズはふてくされたようにそっぽを向いて。
「ふん、あんたたちこそ、もっと早く助けにくればよかったのに」
「あら? わたしに借りができちゃった負け惜しみ? けーど、誇り高い
ラ・ヴァリエール様は、まさか助けられてそのまま、はい知りませんよ、なーんて
言いはしないわよねえ?」
「ぐ、ぐぐぐ……」
普通なら、最初の一言で激昂しそうなものだが、ルイズの扱いに慣れたキュルケは
その上を行ってしまった。どうやら、身長やスタイルのよさ、恋の駆け引き以前の
段階でルイズはキュルケに、まだ遠く及ばないらしい。
だが、キュルケはルイズで遊ぶのはそこそこで中断すると、足を捻挫していた
レリアに治癒の魔法をかけていたタバサに声をかけた。
「どう、傷の具合は?」
「問題ない。ちょっとひねっただけ、安静にしてれば一週間くらいで歩けるようになる」
タバサの治癒は炎症を止めるくらいで決して強くないが、サバイバル的な医療知識の
ある彼女の診断を聞いて、キュルケはほっとしたように微笑んだ。
「よかった。もう歩けないなんて言われたら、シエスタになんて言おうかと思ったわ。
それにしても、無茶もいいところよ。あんなことをして無駄死にになるとは思わなかったの?」
「返す言葉もありません。ですが、ここは私の故郷なんです。私が生まれ、育ち、
そして私の子供たちが生きていくための、かけがえのない場所なんです。そこを
守って次の世代に託すのが、母親である私の務め……あなたも、いつか母親に
なったらわかる日が来ますよ。どんなに大きくなったって、自分が腹を痛めて生んだ
子供ほど、かわいいものはないんですから」
「……」
まだ気を失ったままのシエスタを優しく抱きかかえるレリアの言葉を聞いて、
自分が母親になることなど考えたこともなかったキュルケは、久しぶりに故郷に
残してきた両親のことを思い出し、ルイズやタバサも、幼いころの家族の思い出に
心を寄せた。
けれど、レリアのそんな姿にもっとも強いショックを受けたのは、ほかならぬ
才人だった。もちろん、才人の母とレリアは顔は全然似ていない。それでも、
かもしだす優しい雰囲気は、昔母から与えてもらったものと変わりなかった。
そう、たまたまテストの点がよかったとき、食器洗いを手伝ったとき、そんな
なんでもないことでも母は大げさに、なんの他意もなく褒めてくれた。
もしも、シエスタが突然行方不明になったらレリアはどんなに嘆き悲しむだろう。
見れば見るほど、それが痛いほどわかるだけに、才人はレリアに自分の母を
重ねて見てしまい、耐え切れなくなった彼は、心の中のそんな罪悪感にも似た
もやもやを吹き飛ばすかのように、無理に大声を出して叫んだ。
「ウルトラマンヒカリ、がんばれーっ!」
しかし、ハンディがなくなって自由に戦えるようになっても、ヒカリを追い詰める
エンマーゴの猛攻は止まるどころか、無限のスタミナを持っているかのように
斬撃の威力を次第に増していった。
「ヒカリと互角に渡り合うなんて、なんてすごい奴なんだ」
見守るミライからも、信じられないといった声が漏れる。いまや宇宙広しといえども、
ヒカリと互角に切り結ぶことのできるのは、ミライに思いつく中では、かつて戦った
宇宙剣豪ザムシャーくらいしか存在しないのに、疲労がたまっていくヒカリとは
反対に、エンマーゴの剣に衰えは見えない。そして、とうとうエンマーゴの剣が
ナイトビームブレードをはじき、剣の先がヒカリの喉元をかすめた。
「ヒカリ!」
「危ない!」
「サイト!」
ミライの左腕にメビウスブレスが現れ、才人とルイズのウルトラリングに光が灯る。
だが、加勢に駆けつけようとしたミライや才人たちの頭の中に、ヒカリからの
声がテレパシーで響いた。
「待て! この戦いは、俺にやらせてくれ」
「ヒカリ!? しかし、君だけでは」
「そうですよ、エンマーゴはウルトラマンタロウも負けかけたほどの強敵なんですよ」
「意地張ってるんじゃないわよ! あんたやられかけてるじゃないの」
手助けを拒もうとするヒカリに、三者からそれぞれテレパシーで抗議がかかるが、
ヒカリの意思は固かった。
「すまない。しかし、俺の部下が人生を懸けて守りぬいたここは、あいつが信じた
俺とGUYSの力で守りたいんだ」
「ヒカリ……」
それは、かつてGUYSを率いながら、使命を果たせなかったセリザワの無念を
込めた頼みだった。つまらない意地と笑うなら笑えばいい。しかし、平和を
守るものとしての誇りは、効率という言葉で切っていいものなのか。
すると、沈黙したミライや才人たちに代わって、GUYSの面々が次々とヒカリの
意思に応えて叫んだ。
「セリザワ隊長の言うとおりだぜ。あんな怪獣の一匹や二匹にてこずってるようじゃ、
佐々木先輩にどやされるぜ」
「アミーゴ、悪いが今回はお前たちの出番はなしだ。後輩の実力、天国のOBに
しっかりとおがませてやるぜ」
「ミライくん、僕たちはまだ力を出し尽くしちゃいない。大丈夫、勝算はあるさ」
「みんな……はいっ! ですが、僕だってCREW GUYSの一員です。僕も、
みんなといっしょに精一杯戦います」
「ああ、GUYSの誇りをみんなで見せてやろうぜ。ようし、ウルトラマンヒカリを
援護する。いくぞみんな!」
「G・I・G!」
翼をひるがえし、急角度からの攻撃を加えるガンフェニックスと、地上からの
銃撃がエンマーゴに隙を作り、そこを狙ってヒカリが剣を振り下ろす。確かに
奴は強い、しかし心を一つにして立ち向かえば、たとえ相手がどんなに強大
だろうと切り開けない道は無い。
「あれが、ウルトラマンといっしょに戦い抜いた人たち……」
才人は、GUYSがメテオールを持っているから強いと思っていたが、メテオールの
効かない敵を目の当たりにして、なぜGUYSが一年ものあいだ戦い抜いて
こられたのか、その秘密がわかったような気がした。
「戦う、誇り……」
また、ルイズもGUYSの闘志に、本当の戦う誇りというものを見た気がした。
以前自分は、敵に背を向けないものを貴族というのよと言ったが、今なら
あのときの自分と彼らとの違いが何かというのがわかる。
それでも、GUYSの総力をあげてもなおエンマーゴは強かった。攻撃を鎧と盾で
強引に受けきって、小手先の技を力でねじふせようと大剣を振り回してくる
攻撃を続けられ、さしものヒカリも攻撃をさばききれなくなってきた。
「ヌゥッ!」
戦国時代の剣豪は、全身を分厚い鉄の鎧で覆って、防御を完全に無視した
現代の剣道では考えられない荒々しい攻撃一点張りの剣術を使った猛者が
いたと言われるが、エンマーゴの戦い方はまさにそれを彷彿とさせた。
このままでは、疲労したヒカリはいずれ直撃を受ける。戦いに慣れたタバサや
キュルケだけでなく、才人たちもそう感じたとき、奴は突然口からあの黒煙を
ヒカリに向かって吹き付けてきた。
「グワァァッ!」
至近距離からの噴霧だったので裂けられず、ヒカリはもろに黒煙を全身に
浴びてしまった。さらに、あらゆる樹木を腐らせる黒煙は、ウルトラマンに対しても
強力な毒ガスとして作用し、視界を奪って全身をしびれさせる。
「卑怯な手を!」
ルイズは怒ったが、怪獣や宇宙人に卑怯もラッキョウもない。体の自由を
奪われてひざを突いたヒカリをエンマーゴは鉄柱のような足で蹴り上げて、
わざと剣を使わずに剣のつかや盾でなぶるように殴りつけてくる。おまけに、
防戦が続いてエネルギーを消費し続けていたために、カラータイマーも点滅を
始めて、警報音が村に響き渡り始めた。
「なんで反撃しないのよ!」
「毒が、体にまわってる。彼もわたしたちと同じ、生き物」
タバサの言うとおり、ウルトラマンも生命体である以上、毒は人間と同じように
効いてしまうのだ。エネルギーの欠乏に加えて、体を麻痺させられたヒカリは
反撃もままならず、エンマーゴは肉食獣が倒した獲物を誇るときのように足蹴にして
愉快そうに喉を鳴らして笑った。しかも、足の下に敷いたヒカリにとどめを刺そうと、
エンマーゴの剣はさらに無慈悲に高く振り上げられる。
「あいつ、首を刈る気よ!」
キュルケが思わず口を押さえて悲鳴をあげた。エンマーゴの剣は、かつて
ウルトラマンタロウの首を切り落としたほどの切れ味を誇る。そのときは
タロウの持つ強力なウルトラ心臓のおかげで奇跡的に再生に成功したが、
ヒカリにはそんなことは不可能だ。
だがそのときだった!
「リュウさん、ウィンダムの使用許可を!」
「ようし、メテオール解禁!」
「G・I・G!」
許可を受けて、テッペイはノートパソコン型のGUYSタフブックから緑色の卵ほどの
大きさのカプセルを取り出し、自分のGUYSメモリーディスプレイに接続すると、
ディスプレイにメテオール使用可能のシグナルが浮き上がった。そう、GUYS
メモリーディスプレイは、各隊員の身分証や通信機、さらに過去に出現した怪獣の
簡易データが収録されている万能ツールとしての機能のほかに、ガンクルセイダーや
ガンフェニックスと同じく、いくつかのメテオールアイテムの作動キーとしての役割も
持っているのだ。
そして、メテオールはキャプチャーキューブやスペシウム弾頭弾だけではない。
それと並び、CREW GUYSを象徴するとっておきの目玉、分子ミストの送り込みが
成功し、リムエレキングがこっちの世界で出現できたことから、使用可能が
確実となった奥の手がまだある。
テッペイはスタンバイOKを確認するとエンマーゴからやや離れた村の広場へと、
拳銃のようにメモリーディスプレイを向けてスイッチを押した。
”リアライズ(顕現)”
メテオール作動の電子音が鳴り、それに続いて広場に緑色の粒子が渦を
巻いて現れ、その中から西洋の甲冑を身にまとったような銀色の怪獣が現れる。
そしてテッペイは、その怪獣に向けて大きな声で命令した。
「頼むぞ、ウィンダム!」
機械の駆動音のような鳴き声を上げて、銀色の怪獣は力強く両腕を上げて、
エンマーゴに存在をアピールし、新たな敵の出現にヒカリへのとどめを
いったん中断してこちらに剣を振り上げてくるエンマーゴを睨みつける。
これこそ、ミクラスと並んでCREW GUYSの誇る頼もしい仲間、
マケット怪獣ウィンダムだ!
「ウィンダム、攻撃開始だ!」
剣を振りかざして威嚇してくるエンマーゴに、ウィンダムはその場から
動かずに両腕を上げると、額のランプからビームを発射した。その前触れのない
一撃に、さしものエンマーゴも驚いて鎧に喰らって後ずさる。
また、ルイズたちも突然現れた銀色のゴーレムのような怪獣に驚いていたが、
才人は驚く彼女たちに愉快そうに説明した。
「サイト、もう一匹怪獣が現れたわよ!」
「いや、あれは味方だ」
「えっ? あの、ゴーレム、みたいなのが味方?」
「ゴーレムか、確かに似たようなもんだけど、中身は全然違うぜ、見てろ」
ウィンダムは皆が見守る中で、ヒカリを助けようとビーム攻撃を続けた。しかし、
エンマーゴは一時は驚いたものの、すぐにビームを盾で防御し、この攻撃を
ものともしていない。あざ笑うエンマーゴ、ただしウィンダムの力は才人の
言うとおりこれだけではない。
「負けるな、ファイヤーウィンダム!」
そう、このウィンダムはウルトラセブンが使役していたカプセル怪獣の
ウィンダムをモデルに作られているが、オリジナルにないGUYS独自の
改良も施されている。元々遠距離攻撃が得意で、クール星人の戦闘円盤を
撃ち落したこともあるウィンダムの左腕には、大きなカノン砲が装備されており、
そこから強力な火炎弾をピストルのように連射して放つことができるのだ。
「いいぞ、攻撃を緩めるな!」
これには、さしものエンマーゴも盾の陰に隠れてうかつには動けない。
おまけに、ロボット怪獣であるウィンダムにはあの黒煙も効果がありはしないだろう。
その勇姿に元気付けられた才人たちの前で、ファイヤーウィンダムの猛攻は続く。
「よし、これならいけるぜ。頑張れ! ウィンダム」
「あれほどのゴーレムを自在に召喚して操るなんて、あんたのところって、
ほんと便利なものがあるのね」
「ああ、すげえだろ。これがGUYSの実力さ!」
ウィンダムを間近で見て鼻高々な才人だったが、実は彼はメテオールが
一分間しか使えないということまでは知らなかった。とはいえ、メテオールは以前
トリヤマ補佐官が、うっかり記者会見でしゃべってしまいそうになったとき、厳しく
けん責処分になったほどにGUYSも機密保持に神経質であり、一般情報しか
知りようのない彼が知らなかったのはやむをえないところではある。
しかし、ウィンダムはメテオールが生み出すただの幻影や、ましてや言いなりの
ロボットなどではない。
「ウィンダム、頑張れ!」
テッペイの声に勇気づけられたかのように、ウィンダムはダイヤモンドをも切断
できるという剣を、自分に向かって振りかざしてくるエンマーゴにひるまずに、
ヒカリを助けようと銃撃を続けて援護する。仲間たちの思いを一つに、それは彼らも
同じ、マケット怪獣たちは心を持つ立派なGUYSの仲間たちなのだ。
さらにその隙をついてガンフェニックスが側面や背後から攻撃をかけていく。
「がんばれセリザワ隊長! あんたの力は、こんなものじゃねえだろ」
「立ち上がれ、あんただって、おれたちGUYSの仲間だろ」
リュウやジョージの声が、苦しむヒカリの耳に届く。
そして、その仲間の声をウルトラマンは裏切らない。
「ヌゥゥ……ッ、ダアッ!」
全身にこびりついていた黒煙を振り払って、ヒカリは残り少ないエネルギーを
振り絞ってエンマーゴに斬りかかり、下段から打ち上げたナイトビームブレードで
エンマーゴの剣を手元から弾き飛ばした。
「やった!」
その瞬間、タイムリミットを過ぎたウィンダムは再び緑色の分子ミストになって
消え去ったが、ウィンダムの奮闘とヒカリの渾身の力でエンマーゴの手から
はじかれた剣は、回転しながら空中を舞い、三〇〇メートルほど離れた場所に
突き刺さった。
「セリザワ隊長、今だ!」
メテオールを使い切ったガンフェニックスではエンマーゴにとどめを刺す手段はない。
しかし、リュウの叫びが響いても、カラータイマーの明滅がすでに限界点に近づいて
きているヒカリの体には力が入らない。
「隊長ぉ! 立ってくれ」
「畜生、剣に近づかせるか!」
ヒカリが動けない今、剣を取り戻されては勝ち目がない。ガンフェニックスは
バリアントスマッシャーで足止めを図るが、最大の武器を取り戻そうと焦る奴の
足取りは止まらない。これまでか! ミライや才人たちの手がメビウスブレスと
ウルトラリングにかかりかけた。だが、地面に突き刺さった剣に、今まさに
エンマーゴの手がかかろうとした瞬間、突然エンマーゴの体が光るオーラに
包まれたかと思うと、その動きが凍りついたように止まった。
「なんだっ!?」
あのエンマーゴが、指一本動かせないほどに動きを止められている。
ミライは直感的に、これが念動力により封印だと直感したが、これほどの
パワーはウルトラ兄弟でも、レッドギラス、ブラックギラスの双子怪獣や
ガロン、リットルの兄弟怪獣を撃退したほどの力を持つほど、特に念力に
優れたウルトラセブンくらいしかまず発揮することできないはずだ。ならば、
いったい誰がこれほどの念力を、もしかして!
”愚か者め、四百年前に貴様を封印したこの景竜を忘れたか? 剣を失い、
慌てて心を乱したのが、ぬしの運の尽きよ”
それはミライによって、タルブ村の小高い丘の上に置かれた地蔵に宿った
古代の妖怪退治屋・錦田小十郎景竜の念力による金縛りの技だった。
”これがわしに残された最後の力じゃ。どうじゃ、動けまいが”
残留思念となった景竜には、もはや生前のような神通力はない。しかし、彼は
万一のときに備えて、この地蔵にその力を思念とともに一度限りの切り札として
封印していた。しかしそれも、まともに使っては強力なマイナスエネルギーに
跳ね返されかねないので、彼は残った力を本当の最後の攻撃の、今このときのために
温存していたのだ。
”今じゃ、とどめを刺せ!”
動きの止まったエンマーゴを指して、景竜の声がヒカリに届く。今を逃せば剣を
取り戻したエンマーゴを倒す術はない。
「立ってくれセリザワ隊長!」
「ヒカリ! 頑張って」
「負けるな! ウルトラマンヒカリ!」
「立て! 立つのよ! そのくらいでへたばるんじゃないわよ!」
「いっけーっ! 勝つのよーっ!」
「お願い、あのときのように、立って、ウルトラマン」
「立ってくれ! 俺たちの村を、救ってくれーっ!」
「ウルトラマーン!」
リュウやミライたちGUYSの面々、才人たちやレリアたち村人たちの心からの
エールが、ヒカリの消えかけた光に新たな灯を灯していく。
「そうだ……俺は、ウルトラマンなんだ……!」
蘇ったウルトラの心に奮い立たされ、ヒカリはついに苦しみを振り切って二本の
足で大地に立ち上がった。
「デャァァッ!」
そう、ウルトラマンであるということは、常に人々の希望であり続けるのと同時に、
決して彼らの期待を裏切らないこと。ヒカリは空に向かってかかげたナイトブレスに
残った全てのエネルギーを込めて、青い雷のようにスパークしたその光のパワーを
十字に組んだ手から解き放った!
『ナイトシュート!』
青い正義の光芒が、エンマーゴに突き刺さり、マイナスのエネルギーと相反する
パワーが怒涛のように、その強固な鎧をも貫きとおす勢いで吸い込まれていく。
「いけーっ!」
「ダァァーッ!」
人々の声援と、ヒカリの正義の意思が最高潮にまで高まったとき、その奔流の
力にとうとう耐え切れなくなった地獄の妖魔は、闇の鎧に無数の亀裂を生じさせた
次の瞬間、天界の浄火をつかさどって悪鬼羅刹を焼き尽くすという不動明王の
裁きを受けたかのように、真っ赤な炎に包まれて粉々の塵となって消し飛んだ!
「やった!」
「うぉっしゃあーっ!」
「すごいっ!」
「わーい! ウルトラマンが勝ったあー!」
ヒカリの勝利に、GUYSや才人たちだけでなく、村人たちのあいだからも
老若男女問わない歓声があがって、喜びの声が平和の歌声となって山々と
村の空にこだましていった。
だがそのとき、ヒカリやミライたちウルトラマンの力を持つ者たちは、砕け散った
エンマーゴの炎の中から、どす黒いもやのような塊が抜け出ていくのを見た。
「あれは! エンマーゴの亡霊体か!?」
そう、エンマーゴが人間の邪悪な思念から生まれた怪獣ならば、実体である
肉体を破壊しても、その邪悪な精神はマイナスエネルギーの集合体となって
残る可能性がある。となれば、あれを逃せばまたエンマーゴがいつかどこかで
復活する可能性がある。ウルトラマンたちの背筋を冷たいものが走った。
しかし、実体のない霊魂のような相手をどうやって止めればいいのかと
焦りかけたとき、エンマーゴの亡霊体は突然底の抜けた池の水のように
お地蔵様の小さな体の中に吸い込まれていって、景竜の言葉が彼らの心に
最後に響いた。
”実体を失った影の状態ならば、今のわしでも封じることができる。さらばじゃ、
光の人たちよ”
それが本当に最後の力だったのか、景竜の言葉はそれっきり二度と聞こえる
ことはなかった。そういえば、かつて地球でもエンマーゴの前に絶体絶命に陥った
ウルトラマンタロウを助けてくれたのは、土地に埋められていたお地蔵様だという。
この世界では、ちょっとひねくれていたが、ハルケギニアでもやっぱりお地蔵様は
正しい者の味方だった。
「こちらこそ、感謝する。あなたの力や、そして仲間たちや村人たちの思いが
なければ、奴には勝てなかった」
光は闇を照らすことはできるが、闇はたやすく光を侵食する。しかし夜空を無数の
星々が輝かすように、小さな光でも集まれば闇を打ち負かすことができる。そして、
エンマーゴの邪念が完全に封じ込められたことを確認したヒカリは、人々の歓声を
その背に受けながら青空へと飛び立った。
「ショワッ!」
戦いは終わり、村に平和が蘇った。
避難していた村人たちは続々と村へ帰還していき、勝利に沸いて精気あふれる
男たちによって、壊された家々の修復がさっそく始められた。
景竜のお地蔵様は、今度こそエンマーゴが復活しないようにガンフェニックスで
地球に持ち帰ったあとで、メビウスによってグレイブゲートという、怪獣墓場に通じると
いわれる宇宙の果てに運ばれることになった。
そうして、平穏を取り戻した村の中で、GUYSのクルーたちが熱烈な歓迎を
受けたのはいうまでもない。派手なパーティは勘弁してくれということで、シエスタの
家で昼食会が開かれただけでお開きとなったが、ヨシュナヴェはあっという間に
平らげられてしまい、フェニックスネストに残ったコノミやマリナをうらやましがらせた。
なお、今頃になってこの地方の領主の竜騎士が数騎駆けつけてきて、
ガンフェニックスが疑われそうになったが、トリステイン最大勢力のヴァリエール家の
三女であるルイズに脅されると、小心さを自ら証明するようにさっさと引き返していった。
だが、明るい光に包まれた村の中で、ふと才人に呼び出されてガンクルセイダーの
納められている寺院で、二人きりになったルイズは、心臓が止まりそうな衝撃を
彼から受けて、冷たい床に崩れそうになった。
「ルイズ……おれ、地球に帰るよ」
続く
今週は以上です。規制が厳しい中での支援、どうもありがとうございました。
時期が時期だけに毎日突然やることが湧いてきたりして時間が削られがちですが、
どうにかウルトラやゼロ魔のCDや、ほかの方々の面白いSSにモチベーションを
支えられつつ今週も来ることができました。
ウルトラ銀河伝説ではウィンダム強かったですねえ、まさかサラマンドラをガチで
やっつけてしまうとは思いもしていませんでした。UGMやGUYSの苦労はいったい……
まあカプセル怪獣も時を経て強くなっているということでしょうか。
では、次回からはいよいよ大詰めに入ります。
萌え萌えゼロ大戦(略)、情報機関とか設立しているアンアンマジ優秀!
とか思ったんだが、そんなの作ってんなら、そいつらに回収とか頼むというのはナシなんだろうかw
いや、今後の展開をかなり左右しそうなんで楽しみでGJ。
複数回線を利用した単独犯だと白状する程度の能力
いやまぁこんなんなくったって明らかだったとは思うけどさ
才人が別世界いって、それからルイズに召喚って意外と少ないな・・・
さすがにクロスと再構成の境界があれだからかな
今なにがあるんだったっけ?
幸福な結末を求めて ゼロ魔転生?モノ(オリ主)
の主人公
原作ゼロ魔モブ♀
↓
白炎に殺される
↓
現実に転生♂
↓
転生トラック
↓
ゼロ魔世界に転生♀
↓
死にたくないでござる!
一度、現実世界?に転生して男として生きるが、死亡?する
再び、ゼロ魔世界に転生する
そのとき転生したのは過去の自分?
現実世界にゼロ魔の原作があって、その知識と経験でサイトやルイズ、主人公達とコネクションを得ようとする
基本、ラリカの一人称で物語は進む、時々、サイトやモンモランシーの視点になる
女版オリ主と考えれば正解
絵師に慕われている、何人かの絵師に何枚かの絵をかいてもらってる
最初に転生した男と夢の中で記憶を共有できるらしい
ただし、共有できてるのは男のほうだけで、ラリカは悪夢として認識している
あとは読んでみw
ラリ厨乙
トリップを外してID変えてまた投稿するのは何故だ?
トリップ無いのは荒らしです。無視しましょう。
おい、お前らsmoopyって使ってるか? 青空文庫の.txt読むためのソフトなんだけどさ。
SS的な文書にも向いてるよなあ……とか思ってたんだが、今まで気付かなかったのが不思議だがURLを与えることでWebページも青空文庫ライクに表示できるんよ。
アプリケーションの引数にURL文字列を渡すこともできるから、ブラウザの右クリックメニューをいじって
「リンクをsmoopyで開く」ってのを追加したらArcadiaが文庫本みたいに表示できるようになった。
改行が少なめのSSにはかなりおすすめだぞ。目から鱗落ちた。
オーベルシュタインについて検索して偶然ここを知った(ポルナレフのAA略)
クロスSS書いてみたいけどツンデレ属性がないから原作を読むのがつらい…
文才云々以前の問題だなこりゃ
原作しか読んでないんだけど、結局ハルケギニアの月って何色なんだろうか?
大きい方が青っていうのは共通してるんだけど、
原作では最初小さい方を白って言ってて、その後それが赤って変わったような……
クロス小説読んでても、作者によって白だったり赤だったりするし。
結局アニメでは何色だったの?
そういえば、よく
「蒼い使い魔」「ラスボスだった使い魔」「毒の爪の使い魔」
がこのスレのベスト3ってよく聞くけど。
完結作品とか、感動部門とか、小ネタとかで
あなたが選んだベスト3なんてのができそうだな。
むしろ初めて聞いたわ
ないないw
地球の月だって赤かったり黄ばんでたりするから月齢によるでいいんじゃないか?
ラスボスがベスト作品なのは確定
>>137 アレはペースは遅いけど続いてるって点だけは評価できるが、文章力その他はそんなに大したことはない。
ラスボスは結婚適齢期が過ぎたヒロインと朴念仁の主人公がラブでコメするだけで評価できる
>>138 コルベールの扱いは原作より良かったと思うよ
ルイズを切って身の丈にあったエレオノールを相方にしたセンスも評価できる
>>138 そもそも原作が・・・
まあそういう作品は多いけどなw
>>138 文章力か…毎度思うけど、それ罵倒語に近い風にしか使用しにくいよね。
元々、ほとんど意味のない言葉だし。
しかし、この規制はなんとかして欲しいもんだ。
そのせいで好きな作品が投下されないのではないかと思ってしまう。
避難所に投下すればいいんだからそんなはずはないとわかるんだけどさ。
ゼロの魔砲使いとか、そろそろ続き読みたいんだぜ。
応援スレとかでガソリンをプレゼントする作業に移るんだ!
>>136 色の変化の理由を考えると、青く輝くのはとっても難しいんだ。
月からチェレンコフ光
イーヴァルディの勇者がおかしくなって暴れ出します
カリンちゃん(若)を召喚するのもクロスオーバーでいいのか?IFスレ?
タバサの冒険からタバサを召喚するのもクロスオーバーでいいのか?IFスレ?
かつて小ネタでアンリエッタ召喚とか、並行世界?のルイズ召喚というのはあったが。
小ネタは緩いみたいね、PARとかびっくりしたw
まあ、微妙なのは避難所に投下とか、他の投稿サイトもあるしなー。
選択肢は色々とあると思う。
過去にはその当時スレが存在してた板を一瞬落としたような人気作品もあってだな
そういうのがここから消えた後残ってる目ぼしい現在連載中ベストとか絞らないと誰も賛同してくれないだろうさ
>>152 お前がラスボス嫌いだということはわかった
えー?
ラス厨乙
各人が心の中で思ってればいいだけなのに、いちいち押し付けようなんてただのキチガイ儲だな
こういう阿呆な奴がいるから撤退した作者もいたってのに
そんな人いたっけ?
期待が重過ぎるという風なことをいって更新止めた人はいたような気がするけど。
しかし、今回の規制は長いなあ。
撤退の大半は件の騒動だしな
>144
青い方は、なんか青い鉱物が多いでいいんじゃね?赤い方はてきとうにw
正確に言えばマンセーのされ方だったがな
自分の好きな作品は最高だが他のはクズ
みたいな言い方を繰り返されたのが嫌だったって撤退してった書き手はいる
てめぇら紳士ならそんな陰気くさい話題をしてないで、乳尻太股ヘソについて語らんかーい!
>>159 青い光は、空気中で拡散しやすいんだよ。
だから空は青いんだし、ハルケギニアも空が青い以上、同じだろう。
月だけが青く輝くなんてそんな器用な状況は、月の性質だけでどうこうなるもんじゃない。
ちなみに、月が赤くなるのは、空気中で拡散しにくいのが赤い光だからだ。
だから、夕日は赤いんだよ。
同じ大気を貫いて光が届いている以上、片方だけ赤いというのはとっても異常なんだ。
きっと月にも人類がいるんだよ
そっちは科学が発達しまくりな奴ら
光学を無視して青く見える魔法的物質で出来ているんですよ
ファンタジーにリアルを持ち込まないでください
>>163 だから、ハルケギニアの大気の問題で、
空が青くて、夕焼けが赤い以上、月がどんな性質でも結果はかわらないんだよ。
大気中に、変な魔法物質でも混ざっているのかなぁ。
そうなると、太陽と、一つ目の月、二つ目の月をそれぞれ区別して、
光の拡散や解析をコントロールするという、かなり高度で恣意的な現象を引き起こす事に。
月や太陽から届くものに、光以外の何らかの信号が混じっているんだろうが、そうすると?
妄想は止まらない。
>>164 ゼロ魔の基本がファンタジーにリアルを持ち込むだと思うが……
光学を無視するとなると、幻覚作用のある光か。
幻覚は虚無……なんか関係あるのかなぁ、興味深い。
創作としてのリアルと現実としてのリアル混同しちゃイカンだろ
まあ、それで妄想が高まり、何か書きたくなるというのなら、それはそれでいいけどさー。
すいません。
別に、批判しているわけでも押し付けているわけでもないんで、勘弁してください。
まぁ、なんかのキャラを召喚するときに、疑問を感じたり、
何らかの超常的な力のある世界なんだな、と納得する小ネタの材料になってくれれば。
うむ。まあ、あとはスレちというのはあるか。考察スレ向けの話題だしなー。
けんぷファーの最終巻が出てたので読んだが、ここら絡められんかなーとか思ったりした。
アニメは未視聴なんだが。
規制解除きた!
ラスボスの人、乙でした。
スパロボやったことないから知らなかったけど、各作品ごとにあんなに動力炉があったんですね。
どれもこれもいわくつきの代物ばかり。波動エンジンみたいに安定して強力な機関はないものかw
ユーゼスが青春を取り戻しつつあるのを見ててニヤニヤが止まらないw
更新が止まってますが、ゼロの視線の方
応援しております。
どっかからのコピペだらけで、もはやどれがまともなレスか分からない
174 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 03:24:12 ID:YOS5qcD7
餓狼伝説の山崎竜二が召喚される妄想を書いていいでしょうか…?
175 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 05:01:40 ID:YOS5qcD7
いいんでしょうか…
>>174 いいんじゃね?
KOFじゃなくて餓狼伝説のってのがよさげ。
倍返しがあの世界じゃ大活躍しそうなんだがw
ゼロの戦乙女の人
面白いのでこれからも更新待ってます。
>>176 いきなり自分が放った魔法投げ返されたワルドは一体どんな顔するんだろうか・・・・
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 16:43:56 ID:s14eO32a
まとめサイトでアルガス騎士団が召喚される話を読んだけど超面白かった。
著者方はSDガンダムによほど詳しいと見える。
ニューやダブルゼータ達の会話が全く違和感なくOVAそのままで脳内再生されて心地よく読めた。
スダドアカワールドのみならず武者の世界も関係しているようで先が非常に気になるのだが・・・しばらく投下されてないようで。
SDガンダム世代には超オススメ。著者の方続きお待ちしております!
ありゃ!? いつの間にか規制解除されてたからカキコ
>>179 「覚えておくのだな、これがマホカンタだ」
某ゴム人間を召喚してワルドが必殺のライトニングクラウドした後のリアクションが見たいわ
兄ちゃんが死んだ時まで顔芸なのはどうかと思う
数カ月ぶりです。
予約なさそうなので、10分後くらいに投下しますね。
第一章〜旅立ち〜
その3 魔法学院の朝
「……あ〜〜〜〜〜〜っ!よく寝たぜ……」
寝袋から這い出て、見慣れない部屋だなとあたりを見回す。
そうか、召喚されたんだったなと思い直し目をパッチリとさせる。
召喚主であるルイズはまだぐうぐうと寝こけていた。ムサシは早起きである。
「おーい、ルイズ。朝だゼ」
「んんぅ〜……」
ねぼすけのご主人に起きる兆しは見られない。
持ち物の中にあるすっきりミントSでも使えばたちどころに目覚めるだろう。
だがこの世界では手に入らない品だろうし、第一もったいない。よって却下。
かつてヒゲじいとレバンからもらったムサシの腕時計を見てみる。
たしか、起こせと言われた時間にはまだ早い。
それにムサシのそばには昨晩脱ぎ捨てたルイズの下着を含めた衣服類が。
「やれやれ、村長の仕事だってこんなに退屈じゃなかったぜ……しょーがねえ、さっさとすませるぜ」
かつてのオサメル村長代理を務めたムサシでも、洗濯をやることになるとは考えていなかった。
溜息まじりに衣類を持って部屋のドアを開ける。
「って言っても……、おいらこの建物のことなーんも知らねえしなぁ」
だだっ広い廊下を行くムサシには生徒や教師の姿は見えない。
まだ早朝なのだ、無理もなかった。
どうしたものかと歩いていると、目前によたよたとなにやら大きなカゴを持った人が歩いているのが見えた。
所謂お手伝いさんであろうか、そういえばヤクイニックにいたときには見かけなかったなと思い出す。
「おうい、おはよう!」
「きゃっ!」
後ろから声をかけたものだから、びっくりしたのか持っていた洗濯カゴを取り落としそうになる。
すんでのところでムサシが支えて落下を免れた。
「おっと、すまねえ!びっくりさせちまったみたいだな」
「あ、いえ…あれ、子供……?」
きょとんとしたどんぐり眼でメイドはムサシを見つめた。
わずかにそばかすが散ってはいるが、人当たりの良さそうな顔立ちをしている。
奉公人の服がよく似合い、ルイズとはまた違った健康的な体形。
座り込んだまま、やがて合点が行ったようにああ、と頷いた。
支援!
「あなたが、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう坊や?」
「へえ、もうおいらのこと知ってんのかい」
「噂になってたわ、召喚の魔法で人間の子供を喚んだって……」
「子供じゃねえぜ。おいらはムサシ!よろしくな!」
「ムサシくん、なんだか不思議な名前。私はシエスタっていうの、よろしくね」
ムサシは歳の割にゴツゴツした手を差出し、にっと白い歯を見せて笑う。
シエスタはその邪気の無い笑顔に同じく笑顔と握手で答えた。
「シエスタ、悪いけど洗濯はどこでやればいいのか教えてくれないかい?」
「あら、どうしたの?」
「ルイズの服を洗うのも、使い魔の仕事として当たり前なんだとよ」
「まあ」
シエスタがくすくす笑って、ムサシ制服を持つ手に手を重ねた。
ムサシは怪訝そうな顔で見上げる。
「使い魔が洗濯するなんて、普通ないことなのよ?」
「そうなのか?」
「ええ、それは私たちの仕事だもの……」
「なんだいルイズのやつ、適当言いやがったな」
ぶつくさ文句を垂れて、洗濯物をシエスタに委ねる。
受け取った制服を大きなカゴの上に積みながら、シエスタはムサシの頭に手を置いた。
「だめよ、貴族様にそんな事を言ったら鞭で打たれちゃうわ」
「はン、ワケもなく威張るヤツに頭下げるなんておいら好かないぜ」
「うふふ、ムサシくんマルトーさんみたい」
「うん?誰だいそりゃあ」
「料理長さんよ、私たちには優しいんだけどね……」
話ながら洗濯カゴをよいしょと持ち上げようとしたシエスタの腕から、不意に重みが消えた。
ムサシが自分の身体ほどもあるそれを、軽々と持ち上げている。
「おっと、力仕事ならおいらの出番だぜ」
「わ、力持ちなのねムサシくん。じゃあ、洗濯は私がやってあげるから、お願いできるかな」
「おう、任せときな!それでマルトーさんってのはどういう人なんだい?」
ひとしきり話し込みながら、洗濯場まで案内してもらう。
ついでに、この学院の地理をある程度まで教えてもらった。
おかげで真っ直ぐルイズの部屋に帰れそうである。
「手伝ってくれてありがとう、洗濯物は私がミス・ヴァリエールの部屋に返しておくから」
「何から何まですまねえ、ありがとうな!」
手を振って駆けて行くムサシを見て、シエスタは微笑んだ。
故郷に残した幼い兄弟たちをどこか思い出させるその溌剌さが、シエスタにはうれしかった。
にこやかに手を振り返し、さあ洗濯を頑張ろうと気合を入れなおした。
「お、ここだここ。ルイズー……なんだ、まだ寝てらあ」
ムサシは、かつてヒゲじい達からもらった腕時計を見る。
そろそろ朝食の時間が差し迫っていた。
「まったくしょうがねえ」
水の巻でもあれば水をぶっかてやれたのだが、生憎ここにレイガンドは無い。
ムサシはルイズの眠るベッドの縁に手をかけた。
「ぇいやっ!」
ムサシはその剛力を以てルイズの眠るベッドを持ち上げた。
さらに真上にポーンと投げる、まるでお手玉だ。
当然ベッドの上のルイズは落下の浮遊感を味わうこととなる。
「ふにゃっ!」
「おう、起きたかい?」
「なななな、ななな」
「なんだい、まだ寝ぼけてんのか?」
「起きた!起きたからやめて!降ろせーーーーっ!」
ひいはあと荒い呼吸をしつつ地面に降り立ったベッドから転げ落ちるように退く。
キッ、と睨みつけるが涼しい顔で「おはよう」とムサシは言った。
睨みつけようとしたが時間を確認すると確かに朝食の時間がそろそろ近い。
朝っぱらからスリリングな体験をしたルイズは遅れたらどうするの、と怒鳴りかける。
しかしそんな時間も惜しい、慌てて身支度を始めた。
「ああもう急がなきゃ、ほら制服を出して」
「こいつか?」
「ほら着せて。モタモタしないの」
「おいおい、おいら女の服なんか着せたこと無いぜ」
「ああもう自分で着る!役立たずー!」
「朝っぱらからうるせえなあ」
まったく何よこの使い魔は、生意気ばっかりで何も役に立ちゃしない。
使い魔になってくれるって言ったときは少しは嬉しかったけど、役に立たないんだったら意味が無い。
やっぱりこいつを使い魔にしたのは失敗だったかしら。
「はぁ……」
「溜息なんて景気が悪いぜ」
「うるさいわよ」
支度を済ませたルイズは文句を垂れつつムサシを連れて廊下に出た。
そこで、同じく隣室から出てきた赤毛の女性と鉢合わせになる。
しえん
「おはよう、ルイズ」
「……おはよう、キュルケ」
「で、でけぇ」
でっかいふたご山がちょうど頭の上くらいの高さにそびえていた。
ムサシはキュルケの顔を確認するために2、3歩下がらざるを得なかった。
無論この"でけぇ"には身長、体格その他諸々を含めて言った言葉だったのだが、キュルケはどこか勝ち誇った笑いを浮かべる。
「それ、あなたの使い魔?」
「そうよ」
どこか敵意の篭もったやり取りにムサシはなんとなく察する。
この2人はコジローにとっての自分みたいなものなのだろう、と。
ちなみに、敵対心が一方だけひどく強いというのも合致してある意味的を射ている。
やがてルイズとムサシを見比べたキュルケが笑い出した。
「あっはは、使い魔に子供を召喚するなんて。あなたらしいわルイズ」
「うるさいわね」
「私はね、すっごいのを喚んだのよ。もちろん、誰かさんと違って一発で成功したわ」
「あらそう」
嫌悪感を隠しもしない表情で存在な返答を返すルイズに構わずキュルケは一方的に話し続ける。
手招きをすると、部屋から大きなトカゲが現れた。
「使い魔にするならやっぱりこういうのがいいわよねーフレイムー」
大きな身体に真っ赤な皮膚、そして燃え盛る尾の先端。
ムサシは火トカゲを始めて見るが、大きさと火以外は案外普通だ。
王国でおかしな生き物や兵器とチャンバラした歴戦の勇士には動じるほどのことでもなかった。
「これ、サラマンダー?」
「そうよー、火竜山脈のね。好事家に見せたら値段なんかつけらんないわよー」
暑そうにも関わらず頬ずりするキュルケをルイズはひどくうらやましがった。
唇をぎゅっと噛み締めるご主人に対しムサシはしげしげとフレイムを眺めている。
「ずいぶん人懐っこいなあ」
「あら、よく見たらけっこうカワイイじゃない、もみ上げが男前よ坊や」
流し目を送り、自分の魅力を最大限に研ぎ澄ませて色香を放つ。
酒場のママと呼ばれていたタンブラーさんを思い出した。
ムサシにじり寄ってくるキュルケに対し、ルイズは目の前に立ちふさがって胸を張る。
キッと睨みつけるも胸を張り返されてルイズは少なくない精神的ダメージを受けた。
「ひ、人の使い魔に色目使わないでよ!ツェルプストー家の人間はやっぱり浅ましいったら!」
「おおこわいこわい」
ウフフと笑って軽くいなすその様子は、やっぱりからかわれてるんだなとムサシは思う。
自分もコジローに対してこういう風に振舞っているフシがあるのでルイズの援護にも回れずムサシは苦笑する。
それを自分に対する蔑みと取ったかルイズはムサシの頭に平手を叩きつけるのだった。
「ずいぶんとでっけえ食堂だなあ。ナメクジ岩だって収まっちまいそうだ」
「食事がまずくなるようなこと言わないでよ……」
長テーブルごとにマントの違う学生が、ずらりと並んで食事を待っているようだ。
ルイズは真ん中のテーブルについた、学年ごとに分かれているらしい。
学問に励んだ記憶がないムサシには、たくさんの生徒が生活している様はやはり新鮮に見えた。
「おいらの席はあるのか?」
「あんたはそこよ」
ルイズが床を示すと、そこには皿に載せられた黒パンとスープがあるだけ。
これではまるで犬か何かの食事だ。
ムッとしつつもあぐらをかき、パンを一かじりして、思わず口からこぼれ落とす。
今まで村のベーカリーで食べていた美味しいパンに慣れ親しんで忘れていた。
ムサシは、ナメクジ、風呂、そしてこのパンとかいう食べ物が大嫌いだったのだ。
だがしかし、ヨーグルトになった牛乳すらおいしくいただくムサシは食べ物を粗末にするのは嫌いなタチだ。
なので、スープでボソボソのパンを流しこんで食事とした。
だがこんなもので満たされるムサシのお腹ではない。
ムサシは何も言わずに視線と溜息を残して、のそのそと食堂を出て行った。
「……な、なによ。私が悪いみたいな顔して……生意気なのよ、あいつ」
口を厳しくしていても、ムサシの反応が薄いことに少々焦っていた。
キュルケ以外とはまともに会話したのも久しいルイズにとってムサシは唐突に得たとはいえパートナーである。
ムサシは、出来る範囲で使い魔の仕事をする、と言っていた。
元の世界に戻りたい、とは何度も口にしていたものの、それは今すぐどうこうできなさそうだったし。
ルイズの頭が冷えたころ、急に彼がこのまま戻ってこなくなったりするのでは、と思い始めた。
朝食を夢中で食べ、デザートもそこそこに食堂を後にした。
「どうすっかなあ……」
ムサシは中庭の使い魔が集まる広場の近くで、自分の荷物を開いていた。
なにやら白い塊を見つめて思案している。
「腐らしちまってももったいねえや。いただきます!」
ばくっと噛み付いて咀嚼する。
なんとも美味そうな顔でさんざん噛み締め、やがて喉を鳴らした。
「食った食った、やっぱり食うなら握り飯に限るぜ」
中に牛肉の入った、お城の料理長特製『ワギュウおにぎり』を存分に味わったムサシ。
ムサシの道具袋に入ってる食料の中で、彼の好物である『おにぎり』はこれ一つだった。
この世界にもお米があるとは限らない、おにぎりとは今生の別れかもなとムサシはしみじみ思うのであった。
そんな寂しさを背中に漂わせ、ルイズはまだ食堂にいるだろうかと廊下をとぼとぼ歩く。
すると向かいから、つい今朝方知り合った顔が歩いてきた。
「ああ、シエスタ」
「こんにちはムサシくん、顔にお米が……」
「!?今『お米』って言ったよな?」
「え、ええ」
「あるのか!?」
数分後、厨房に招かれたムサシはホカホカのおにぎりに齧りついていた。
それはシエスタの故郷、タルブで栽培されている珍味『オコメ』を蒸して丸めた、半ば餅団子のようなものであった。
だがムサシのしかるべき飯炊き指導により、これからはおいしいご飯にありつけそうだ。
マルトーともウマが合うのか、出会ってすぐに意気投合。
「腹が減ったらいつでも来い!」とまで言われて、ムサシのお腹は安泰になりそうである。
「あれ?ルイズ、もう飯食ったのか?」
「……」
ルイズと合流したとたん、なんかモジモジしたと思ったら引っぱたかれたが。
「いきなりなんだよ、ルイズ!」
「うるさい!さ、探したでしょ!授業に行くわよ!」
半ば引きずるようにして、教室へと急ぐ二人。
小さな歩み寄りは、ルイズの小さな心の揺れから、始まりを告げるのであった。
投下終了しました。
長い間間が開いてしまいました。モタモタペースになるかもしれませんが、出来る限り頑張ります。
PS3アーカイブでの武蔵伝もよろしくね!
乙でした。
ムサシのマイペースなキャラがいいですね。
1年くらい前だけど海馬召喚ものは好きだった
社長の人も戻ってこないんだろうか
乙!
米は良い……ほんと美味しそうな描写ですな
EMAGEルイズ伝氏、乙です
なにこの大人びた子供ww
まるでカルチャーショックとか感じてねぇww
しんのすけとは対極の意味で最強だなww
乙
これだけハルゲキニアに適応しているキャラも珍しいのではないかな
205 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/06(火) 23:23:26 ID:LVATuhk/
「チキチキ美少女神仙伝」の劉京龍を召喚。準レギュラーだった彼が、本のタイトルが変更した途端に一切登場しなくなったのはこちらの世界に来ていたからだった!──とかいうネタで誰か書いてくれないだろうか(笑)
作者キター!!
投稿乙です
このルイズはかわいい!!
新作乙
子供の指導で食文化に革命が!
でも日本風の炊き方があっちの人間に受け入れられるかな?
ムサシがパンをまずく感じたように、ご飯に抵抗のある人間もいそうだ。
キュルケがショタコンになっちゃう?
新作投下乙でした!
米そのものはヨーロッパでも食われてはいたんだけどね
まあ食い方は日本とは違ってたみたいだけど。
炊きたての米の匂いは文化圏が違う人には良い匂いには感じないだろうな。
日本人でも苦手って人けっこういるし
オーストラリアではご飯を洗って食べていたな
パスタ的な感覚らしい
ちなみに超ぱさぱさで味はないw
そもそも米の種類からして違うからな。
もう一度くらいタイ米食べたい気がする
五斗米道
誰もいないような気もするけれど、確認します。
ゼロと電流 第六話 問題なければ投下します。
マシンザボーガーのスピードに驚いた三人目はタバサだった。
学院に着くとタバサは、やや固まった、それでもいつも通りの無表情で、ザボーガーから降りる。
足下が少しふらついているのは、調子に乗ったルイズが左右に揺れながら走ったためだ。
「凄い」
「凄いでしょう」
キュルケに続いて二人目。学園では希少なトライアングルメイジである、タバサの度肝を抜いたのだ。ルイズの機嫌が悪いわけがない。
タバサは少し俯くようにして体制を整えると、姿勢を正してまっすぐルイズに向き直る。
「できれば、被らせて欲しい」
ルイズは、タバサが自分を指さしているのかと思って驚くが、よく見るとその示す先は自分の頭、すなわちヘルメット。
タバサは、ヘルメットを被りたいと言っているのだ。
「これ?」
ルイズは自分の頭を指さす。
被らせること自体に否はない。ただ、自分にも少し大きいような気がするヘルメットである。タバサだとぶかぶかではないだろうか。
「別にいいけど、前が見えないかも」
「構わない」
ルイズの差し出したヘルメットを受け取るタバサ。
一瞬タバサは、「本当にいいのか?」とでも言いたげに首を傾げた。
それでもルイズは素直にヘルメットを差し出しているので、タバサも素直に受け取る。
そして、被る。
そして、インカムを下げた。
「ザボーガー、来て」
ザボーガーは動かない。
「ザボーガー、来なさい」
やっぱり、動かない。
タバサはルイズを見上げた。
ルイズはタバサからヘルメットを脱がせると、自分で被り治し、インカムをキュピンと下げる。
「来なさい、ザボーガー」
自走して、ルイズの横に止まるザボーガー。
「面白そうなことしてるわね、私もいいかしら?」
シルフィードからフライで飛び降りてきたキュルケも参加する。
「はぁい、ザボーガー。こっちに来て」
来ない。
何度か試した後、ルイズの部屋で話し合って出した結論は、ルイズがヘルメットを被っているときだけ、命令に従う、と言うものだった。
ルイズの命令でも、ヘルメットがなければザボーガーは動かない。
「もしかしてルイズの使い魔って、ザボーガーじゃなくて、このヘルメットとかいう兜のほうじゃないの?」
「ヘルメットがないとザボーガーは動かないんだから、似たようなものじゃない」
「それともあれかしら、ほら、なんだっけ」
「“怒りの電流”?」
「そう、それ。その正体がわかれば何か変わるのかしら」
正直、ルイズもそれを期待している。
確かにザボーガーは面白い使い魔だが、それだけなのだ。
地上を走る速さ、ヘリキャット、マウスカー、シーシャーク。それだけだ。特殊ではあるが、非常に際だった、と言うレベルでもない。
そもそも、現状では人型に変形する意味がない。実際には意味があるのだが、人型を動かすには“怒りの電流”が必要なのだ。
因みに、試しにとデルフリンガーに話を振ってみたところ、あっさりと「電流? なんだそりゃ」と返される始末。
これらのことはタバサにとって、今のままではザボーガーが殆ど使えないことを意味している。
個人での戦闘能力を持ったメイジがザボーガーを駆るのは恐ろしい。高速移動に策敵、それらを魔法の助け無しでこなすのだ。しかし、ザボーガーを使いこなすことができるのは主であるルイズだけ。それも技量の問題ではないので訓練も意味がない。
だからタバサはその場を静かに去ろうとした。
しかし、
「タバサがザボーガーに乗れたら凄いわね」
キュルケが余計なことを言うのだ。
「シルフィードにザボーガー。空の機動力と地の機動力、両方を兼ね備えたトライアングルメイジよ」
自分はフレイムを手放すつもりはない。そしてフレイムだと機動力は望めない。
自分は相手を燃やし尽くす炎であり、敏捷さは必要でも機動力はさほどいらない、とキュルケは言う。
ルイズは逆らった。
「だったら、タバサがザボーガーじゃなくて、私がシルフィードに乗っても良いんじゃない?」
「ゼロとトライアングルは比べられないと思うけど」
「……爆発は使えるわよ」
「だからゼロ」
ルイズはキュルケを睨みつけた。
「なによ。どうせ爆発は失敗魔法だけど」
「あ」
キュルケはいきなり頷いた。
「そうか、まだ知らなかったのね」
「何をよ」
「貴女、ゼロのルイズじゃない」
今更何を言うのだ、とルイズの目はさらにキュルケを睨みつける。
「やっぱり知らなかったのね」
「だから何をよ」
「成功確率ゼロじゃないのよ?」
「は?」
「ゼロ距離魔法、ゼロ距離攻撃のゼロよ」
「何それ」
「ギーシュが名付け親よ」
「確かに失敗は失敗だが、あの破壊力は戦闘という一面に置いては捨てがたいと思う」と、ギーシュはある日、雑談の中でそう言ったのだ。
雑談相手のマリコルヌたちは笑っていたが、考え込んだのがキュルケ、タバサ、モンモランシーである。
キュルケは実用本位のゲルマニア貴族として、タバサはその年齢とは不釣り合いなほどの戦闘を経験した者として。
そしてモンモランシーの場合は、「他のことならいざ知らず、ギーシュが戦闘に関して言ったのだから」という理由で。
それ以来、少なくとも四人にとっては「ゼロのルイズ」は「魔法成功確率ゼロのルイズ」ではなく、「ゼロ距離攻撃のルイズ」なのである。
ルイズ本人にとっては文字通り「いつの間に」なのだが。
「だから、近づかないと何もできない貴女と、魔法で攻撃できるタバサ。どちらが有利かは言うまでもないでしょう?」
「できるわよ」
ルイズは投げナイフを取りだした。
「少なくとも、もうすぐできるようになるわよ」
確かにルイズの爆発は強力だが、命中率は悪い。遠くの標的に狙って当てるなどまず無理だ。
だから、ナイフに呪文をかける。そして、投げる。うまくいけば爆発魔法で遠距離攻撃となる。
「じゃあやってみる?」
売り言葉に買い言葉でルイズは承諾し、夕食後に三人は再び集まることになる。
場所は本塔裏。三人は知らないがそこは、ロングビルが“土くれのフーケ”として宝物庫を観察している場所であった。
「で、どうしようって言うの?」
フライで飛び上がったキュルケとタバサは、本塔の天辺に木製の的をぶら下げていた。
これを、ルイズに狙わせるのだと。
当然、投げナイフの届く範囲ではない。
だから、ルイズはシルフィードに乗ってもいい、とキュルケは言い、タバサも頷いた。
しかし、ルイズは断った。シルフィードは自分の使い魔ではない、と。
自分にはザボーガーがある、と。
「飛べる?」
ルイズの言に首を傾げるタバサに、
「見てなさい」
ナイフを差し込んだベルトを巻き、ザボーガーに跨ってヘルメットをしっかりと被る。
そしてルイズは高さを確認すると、ハンドルを握る。
「行くわよ! ザボーガー!」
充分な距離を離れ、マシンザボーガーが飛ぶ。
ルイズはスペックを受け取っている。出てくる数値はよくわからないが、ルイズの中に流れ込むイメージが可能だと告げていた。
充分な加速と助走距離、そして適切な角度。それらが重なった大ジャンプ。その頂点からナイフを放てば……
「行っけぇっ!!」
ナイフに呪文を流し込むイメージ。そして、素早く投げる。
一瞬、ナイフと自分、そしてザボーガーが繋がったようなイメージがルイズの中に生まれた。
当たる、と確信する。
落下するザボーガーを操りながら、しかしルイズは見た。的に投げナイフの柄の部分が当たるのを。
そういえば、投げナイフの練習なんてやってない。それに、どうせ爆発させるのだったら、ナイフの必要はあったんだろうか?
無いような気がする。
結果として、ナイフは的に当たったが刺さらず、爆発もしてない。
してない?
うつむきかけたルイズは慌てて空を見る。
少し遅れて、爆発。
このタイムラグは一体。これも、ヘルメットの力だろうか。
「あ」
キュルケが爆発した場所に驚いていた。
地面に無事着地して、爆発した場所を振り仰ぎ再確認したルイズも気付く。
宝物庫の壁に爆発をぶつけてしまったのだ。しかも、あろう事が壁にビビが入っている。
「あそこって宝物庫よね」
「固定化が多重にかけられているはず」
タバサの言葉に、キュルケはこの出来事の無茶さを確認する。。
「あの子の爆発ってどんだけ凄いのよ……固定化の魔法がかかった壁に一撃でヒビなんて……」
ザボーガーを停めたルイズは、惚けたようにヒビの入った箇所を見上げていた。
「……ねえ、キュルケ、タバサ」
「……なに?」
「私たちは、今夜は部屋でおとなしくしてた」
「え?」
「宝物庫のヒビなんて知らない。そうよね」
「ちょっと、ルイズ?」
「知らない」
「タバサまで!?」
しかし、そうは言ってもキュルケにも良いアイデアはない。
結局三人は、こっそりとルイズの部屋まで戻っていく。
部屋で待っていたデルフリンガーにも良いアイデアはない。
こうなったら、もう黙っておくか。幸い、先ほどの光景に目撃者はいない。
でも、とルイズが言う。
「ごめん。やっぱり正直に言うわ。嘘つきたくないし」
それでペナルティがあるというのなら素直に受け入れるだけの話だ。
キュルケとタバサはそこにいただけ、爆発の責任は自分だけが負うべきだと。
「はあ?」
そのルイズの言葉に、キュルケは真っ向から異を唱える。
「何言ってんのよ。こんなくだらないことでヴァリエールに借りなんて作ったら、実家に二度と顔が出せないわよ。今回は私も同罪、いいわね」
「私も。同席は同罪」
「何言ってんのよ、二人とも。爆発させたのは私の魔法よ。貴方達の魔法じゃ、あんな凄い爆発は無理なんだから」
「ほら、そうやって」
キュルケはニヤリと笑う。
「固定化のかかった宝物庫の壁にヒビを入れた、なんてある意味凄い成果を独り占めする気ね」
「ずるい」
「まったく、さすがはヴァリエール、油断も隙もないわね」
「やらずぶったくり」
さすがにここまで言われるとルイズも黙ってはいられない。
「な、な、な、何言ってんのよっ! そんなわけないでしょう!」
「じゃあ同罪ね、三人とも……えーと、タバサは抜けても良いのよ?」
「仲間外れは嫌」
「ん、御免。可愛い事言うんだから」
タバサを抱きしめて、キュルケは謝った。
こうなると、キュルケを翻意させるのは難しいことをルイズはこれまでの経験から知っていた。せめてタバサがこちら側に賛成していれば何とかなるのだが、今回はキュルケ側だ。
とりあえず三人は、再び犯行現場に戻ることにした。
どちらにしろ、的や爆発の破片は片付けなければならない。
「嬢ちゃんの力、見せてくんな。何かわかるかもよ」と言ったデルフリンガーを、鞘に半分だけ入れた状態でザボーガーにくくりつけ、三人は本塔裏へと向かう。
道すがら、
「なあ、この妙なゴーレムって何だ?」
「ルイズの使い魔よ。名前はザボーガー。仲良くしなさいよ、デルフ」
「おでれーた。使い魔がゴーレムかい。しかしなんか、他人って気がしねえなぁ」
「もしかして、ザボーガーのこと知ってるの?」
「いや、全然覚えてねぇ。多分、知らねえとは思うんだが……なんか引っかかるんだよなぁ」
「あら、大きな口を叩いた割には記憶力は大したこと無いのね」
「いや、でっかい嬢ちゃん。俺が幾つだと思ってんだ。百や二百、それどころか千どころの騒ぎじゃねえんだぞ。多少は物忘れもするわさ」
「老人ボケ?」
「……ちっこい嬢ちゃんは口数少ねえ癖に、きついこと言うね。まさに寸鉄だねぇ」
「嫌よ? ボケたインテリジェンスソードなんて」
「嬢ちゃんも酷いね、年寄りは労りなよ?」
だったら、鞘の中にいれば? と答えかけたルイズの身体が揺れる。
否。ルイズだけではない。全員の身体が、地面が揺れたのだ。
その原因は探すまでもない。
二つの月の光を遮るような巨大な人影が塔を殴りつけている。
キュルケが呟く。「ゴーレム」と。
宝物庫の壁を殴りつける巨大なゴーレム。
タバサはすぐに思い当たる。
貴族専門の盗賊。巨大なゴーレムを操る盗賊。
「フーケ」
「え? フーケ? ……って、土くれのフーケ!?」
「二人とも、知ってるの?」
「知ってるも何も、貴族専門の盗賊って有名じゃない。トリステインの貴族なら知らないわけないでしょう? 家は警戒してないの?」
「……ウチに入る気なら、必要なのは盗賊というより傭兵部隊だけどね」
「どんな家よ」
「知ってるでしょう? ツェルプストー家と長年争える家よ?」
キュルケは少しだけ考えて、納得した。
それくらいの家でないと困る。争っている我が家にも格があるのだ。
「それで、どうするんだい。嬢ちゃんがた」
デルフリンガーが問うた。
その言葉を待っていたかのように砕ける塔の壁。ルイズの爆発による劣化によって、フーケのゴーレムの拳撃に耐えられなくなっていたのだ。
ゴーレムの肩に乗った人影が塔の中へと入っていくのが見える。
タバサが口笛を吹いた。
「シルフィードを呼んだ。キュルケは炎で援護して、ルイズはザボーガーで気を惹いて」
「わかった」
「ちょっと待って!」
キュルケが悲鳴のように鋭い声で制止する。
その示す先に、二人は見た。
塔の中に差し込まれたゴーレムの腕が戻されたところ。
その腕の先に握られた人影。
そして、いつの間にかゴーレムの肩の上に戻っている術者。
「すぐに、学院長に連絡を! ぐっ……」
聞き覚えのある声はゴーレムに握られた身体から。力が強まったのか、声はすぐに途切れる。
三人は顔を見合わせた。
今の声は紛れもなく、学院長の秘書であるミス・ロングビルのものだ。
ゴーレムは、ぐったりとしたロングビルの身体を三人に見せつけるように腕を伸ばし、歩き始める。
三人は動けない。どう見ても、ロングビルは人質だ。
ルイズはキュルケとタバサを見、頷く。頷き返す二人。
そのまま、三人は動かない。
やがて、ゴーレムの姿が見えなくなったとき、初めてルイズが口を開いた。
「ヘリキャット、マウスカーを追って」
ザボーガーの頭部が開き、小型偵察ヘリコプター・ヘリキャットが離陸した。
ヘリキャットはフーケに見咎められる危険がある。そこで密かにマウスカーを向かわせ、それを探す形でヘリキャットを送る。
これなら、フーケにヘリキャットが視認される危険は少ない。そして、地中に潜ることすらできるマウスカーならば姿を隠すのは容易だ。
「追うわよ」
「先生には知らせないの?」
「そんなにことしてる間にフーケは離れていくのよ? 今はゴーレムのスピードだからギリギリ追えているけれど、馬でも使われたら追えなくなる。それに、ミス・ロングビルのこともあるわ。早く助けないと」
「シルフィードとザボーガーなら追える」
「シルフィードは駄目。空からは向こうも警戒しているはずよ。速度は出しにくくなるけれど、ザボーガーに三人乗るわよ」
言いながらヘルメットを被り、三人で乗るためにくくりつけたデルフリンガーを外そうと、柄に手をかけるルイズ。
次の瞬間、デルフリンガーを握った手に高熱を感じたルイズは慌てて手を引っ込める。
「なに? 今の」
「思い出した……。今のが使い手の証だ。嬢ちゃん、結構怒ってんな」
「どういう意味?」
「実際に熱かった訳じゃないってわかってるよな? 今のは、俺と嬢ちゃんの心の震えが繋がったんだよ……そうだ、思い出したぜ、ガンダールヴ」
「ガンタールヴ?」
タバサが思わず身を乗り出し、キュルケは絶句していた。
「いいか、ガンダールヴってのは、手にした武器を何でもつかいこなしちまう、始祖を護るための力だ。そして、その心が震えれば震えるほど、その力は強くなる」
「震えるって言われても」
「普通は主の危機に対して震えるんだが、嬢ちゃんの場合特例で主とガンダールヴが同じ人間だ。つまり、嬢ちゃんの気持ち次第でどうにでもなるってこった。嬢ちゃんの気持ちがそのまま力になるんだよ」
「私の気持ち……」
「フーケを捕まえたいか? あの姉ちゃんを助けたいか?」
「……捕まえたい。助けたい!」
「本当にそう思ってんなら、ガンダールヴのルーンが力を与えてくれる。俺を正しく使うこともできるはずだ」
それから、とデルフリンガーは続ける。
「このザボーガーとやらも関係あるはずだが、これはよくわかんねぇ」
「それだけ聞けば充分よ。行きましょう」
しえん
ルイズとキュルケがタンデムで。さらに、その間に挟まれるようにタバサ。
三人は出発する。
フーケは何故か止まっていた。
待ち受けているのだろうか、あるいは隠れ場所か。
森の中では見通しが悪く、さらに月明かりの下ではヘリキャットと視覚を共有したルイズでもフーケの確認はできない。それでも、さすがにあれほどの大きさのゴーレムを見失うことはなかった。
灯りのついた小屋の横で、ゴーレムは止まる。そして、ロングビルと何かの木箱を下ろした。
縛られている状態のロングビルは転がされたまま、木箱がその横に置かれる。
そして、ゴーレムは消えた。
周囲を哨戒するヘリキャットとマウスカー。しかしフーケらしき姿はなく、ルイズは二機を小屋と自分たちの周囲に展開させる。これで、誰かが近づけばすぐにわかるはずだ。
フーケがいなくなった理由はわからないが、ロングビルをそのままにしておく訳にはいかない。罠を仕掛ける暇があったとは思えない。
躊躇いながらも、三人は小屋に近づいた。
「ミス・タバサ、ミス・ツェルプストー、ミス・ヴァリエール!」
小屋の中からロングビルの声。
「縛られて動けないんです、罠の気配はないようですけれど」
良かった、と呟いて歩き始めるルイズとキュルケをタバサは止めた。
「駄目、逃げ……」
皆まで言う前に、小屋の戸が開いた。そこには、破壊の杖を三人に向けるロングビルの姿が。
「ミス・ロングビル!?」
「残念、あたしゃあ、フーケって名前でね!」
くぐもった音、直後に爆発音、そして衝撃。
先頭にいたキュルケは爆風をもろに受けて失神。その背後のタバサもキュルケの身体をぶつけられて倒れ込む。唯一、ルイズだけがザボーガーが楯となって無事だった。
しかし、もうもうと上がる煙が晴れたとき、ルイズが見たのはキュルケとタバサの喉元にナイフを突きつけるフーケだった。
二人の杖は取り上げられ、遠くに放り投げられている。そして、タバサは足元を土の魔法で固められていた。
ルイズを牽制しながら、フーケはタバサの足をさらに頑丈に縛り上げ、魔法を解除した。
「さて、お友達が無事でいて欲しかったら杖を捨てるんだね」
「ミス・ロングビル……」
「なんだい、魔法がゼロかと思ったらおつむもゼロなのかい? あたしはフーケだって言ってるだろ?」
「なんで……」
「ん? 破壊の杖を売りさばこうと思ったら、ついてくる馬鹿がいてねぇ。ツェルプストー家とヴァリエール家から身代金をふんだくる方が割が良いだろ?」
SIEN
破壊の杖の使い方は知っていた。かつて杖の使い方を見たオスマン。彼の話を聞いたコルベールから、フーケは聞き出していたのだ。
そして話しながらもさらに、タバサとキュルケを雁字搦めに縛り上げている。
「その子は実力本位のゲルマニア出身よ? 盗賊に捕まるなんて馬鹿な子、見捨てるんじゃない?」
ルイズの言葉にフーケは笑った。
「人質の価値があるのは自分だけだから、他の子は離せってかい? 感心はするけど賛成はできないねぇ」
「おとなしく捕まるつもりはないわよ」
「別に暴れてもいいさ、トライアングル二人がこの有様で、ドットでもないアンタがどうするつもりだい?」
フーケが杖を振るうと、ルイズの背後にゴーレムが生成される。
「そんなデカ物に殴られたら、アンタ死ぬよ?」
「早いか遅いかの違いでしょ?」
「おや」
「身代金だけ奪って返すつもりなら、正体なんて見せないわよね」
「あは、やっぱり頭は良いんだねぇ。残念、もう少し頭が良かったら追いかけてなんて来なかったろうに」
「人殺しに褒められても嬉しくないの」
「そりゃ誤解だね」
フーケは冷たい目でルイズを見据えていた。
「あたしが殺すのは“人”じゃない。“人でなし”の貴族どもだけさ」
「嬢ちゃん! 逃げろ!」
背中に背負っていたデルフリンガーが叫ぶ。
ルイスが咄嗟に身を捻ると、昨期まで立っていた場所をゴーレムの足が踏みしだく。
踏まれれば、確実に死ぬ。そう考えると奇妙に気持ちが涼しくなる。
「逃げたきゃ逃げな。お友達二人とはお別れだからね」
「二人を放して! 私の身代金なら、二人の分なんて目じゃないわよ! ヴァリエール家よ! 公爵なのよ!」
「嬉しいねぇ、さらに上乗せかい。お礼に、最後に殺してあげようか」
タバサの頬に触れるナイフ。
「駄目!」
ルイズは叫ぶ。このうえなく、みっともなく叫んだ。
「殺すなら、私を最初にしなさい!」
「いいねぇ。貴族にしとくにゃ勿体ないよ」
「嬢ちゃん!」
デルフリンガーが再び叫ぶ。
「俺を持て! 構えろ! 心を震わせろ! 助けたいんだろ! 死にたいわけじゃねえだろ! 嬢ちゃん! 俺を、いや、自分を信じろっ!」
フーケは笑みを消さず、一歩前に出る。背後には身動き一つとれないタバサとキュルケ。
相手がただのメイジなら、ルイズにも勝ち目はある。ルイズのゼロ距離爆発を当てれば勝てる。
しかし、相手は百戦錬磨の盗賊なのだ。そのうえ、ルイズの爆発のことを知っている。簡単に近づけはしないだろう。第一、ルイズと直接戦うのはゴーレムだ。
それでも、ルイズは負けられない。
自分のため、キュルケのため、タバサのため。
二人を巻き込んだのは自分。それなら、二人を助けるのも自分。
助けなければならない。フーケを倒さなければならない。ゴーレムを倒さなければならない。
ルイズは怒っていた。フーケに、そして自分に。弱い自分に、その弱さをフォローできない自分の愚かさに。
共に戦おう。ルイズは、デルフリンガーを握った。
これでお別れかも知れない。余った手で、ザボーガーに触れる。
「おどれーた! 嬢ちゃん! これだっ!」
デルフリンガーが叫ぶ。理解したのだ。ルイズと自分、そしてザボーガーを繋ぐものを。
ルイズは知らない、かつてザボーガーのいた世界を。秘密刑事大門豊と共に悪の宮博士率いるΣ団、魔神三ツ首率いる恐竜軍団に挑んだ戦いを。
ザボーガーの起動に必要なのは“怒りの電流”だが、動力源はダイモニウムと呼ばれる物質のエネルギーである。
ダイモニウムが尽きたザボーガーは最大の宿敵魔神三ツ首の前に為す術なく破れようとしていた。しかし、大門豊の“怒りの電流”によって再起動、ダイモニウムのないザボーガーは“怒りの電流”を動力源として最終決戦に勝利したのだ。
その後、最終決戦での過負荷により爆発したと思われたザボーガーは、ハルケギニアに召喚されたのである。
つまり、ザボーガーの動力源は二つ。
ダイモニウム、あるいは“怒りの電流”
“怒りの電流”とは、大門豊の胸に埋め込まれた特殊電極回路により発生するものである。
それは、怒りの感情を力に換えるもの。
それは、正しき怒りによって生まれる力。
“怒りの電流”
それは、ハルケギニアではこう呼ばれている。
虚無 と。
そしてルイズも理解した。
ルイズは、知ったのだ。
「電人ザボーガー、GO!」
以上お粗末様でした
ちょっと、必要以上にマチルダ姐さんが怖くなったような。
次回、ザボーガーVSゴーレム。やっと出せるぞ電人形態
投下乙でした!
なるほど。
こうきたかって感じです。
おマチさん、ちょっと恐いかな。
次回も楽しみに待ってまーす。
そろそろ一カ月経つか
赤目の人来ないかなぁ
前回乙り忘れたから全力で乙したいんだがなぁ
規制が多くて乙もできんな
ザボーガー、GO!キタコレ!!
いよいよザボーガーの本領発揮ですな〜。
>>232 そういうときのために避難所があるんでしょう。
というわけで、感想スレのほうで乙してきました。
代理投下予告します
5分後に始めます
第8夜
銀の竪琴
マルモがフーケのゴーレムを倒した後。
「ルイズ」
ぼけーっと立っていたルイズにマルモは呼びかける。その声に気付いたルイズは、マルモの身体を掴んだ。
「大丈夫、マルモ?! 怪我してない?!」
「ルイズこそ……」
念のため、マルモは回復呪文ホイミをルイズにかける。淡い光がルイズを包み、疲れた身体を癒した。
「盗賊捕まえられなくて、ごめんなさい」
「もう! マルモの無事が一番よ。ほら、先生も来たんだから説明しないとね」
タバサとキュルケに連れられたコルベールが、ちょうど今駆けてきた。
「ミス・ヴァリエール! ミス・マルモ! 怪我はありませんか!」
「大丈夫です、ミスタ・コルベール」
ルイズが毅然として答えた。
「それなら幸いです。ここは他の先生に任せますので、あなたたちは学院長室まで来るように。事件の始終を説明してもらいます」
そう言ってコルベールが火の塔の方に目配せすると、何人か教師の姿が見えた。
「わかりました」
「私も後から行きますので、先に行っておいてください」
言い終わると、コルベールは急いで新たに来た教師たちに宝物庫の襲撃を伝えにいった。
ルイズたち四人が学院長室に入ると、中にはオスマン学院長一人だけだった。
「まったく、すごい衝撃じゃったの。おかげで目が覚めてしもうたわい」
宝物庫は学院長室の一階下である。当然、壁が殴られたときの揺れが学院長室にも伝わっていた。
「さて、事の次第を話してもらおうかの」
ルイズが代表してあらましを語った。中庭で涼んでいると唐突にゴーレムが現れたこと。ゴーレムが壁に穴を開けたこと。
マルモがゴーレムを倒したこと。賊がおそらくは『フライ』で逃走したこと。
もちろん、ルイズの失敗魔法で壁にヒビが入ったことは伏せた。
「ほお……ミス・マルモの魔法で巨大なゴーレムを退けたとは……」
巨大なゴーレムは、その質量から単独での対処が難しい。巨大ゴーレムを破壊するときは数人で行うのが通常である。
ルイズは、マルモが感心を受けているので薄すぎる胸を張っていた。
そのとき、ミスタ・コルベールが扉を素早くノックして入ってきた。
「オールド・オスマン! 宝物庫に賊が侵入しましたぞ!! 至急現場にいらしてください!!」
「もう聞いたわい。さて、ワシも行かねばならんからの。君らは今日は部屋に戻って休みなさい。
明日の朝食後にまた来てもらわにゃならんがのう」
「わかりました」
ルイズたちは一礼すると部屋を出ていった。
オスマンとコルベールは一階下の宝物庫へと向かう。鍵はオスマンが持っているからだ。
二人とも、この時は事件に囚われていてミス・ロングビルの姿が見えないことに気付かなかった。
さて、女子寮に戻ったルイズ、マルモ、キュルケ、タバサの四人はというと。
一同はルイズの部屋にいた。ルイズはキュルケを部屋に上げたくはなかったが、「すぐに出ていく」とのことで押し切られた。
話題はもちろん今夜の事件についてである。もっとも、この部屋の四人の少女はあの程度で傷心になる繊細な心の乙女でもなく、
むしろ胆力が普通の少女よりも備わっているので、今夜のことでお互い慰めるとかそんな類の話ではない。
「あの魔法はなに」
口火を切ったのは、珍しくもタバサである。普段の彼女を知る者ならば、積極的に話をしようとする姿に驚くであろう。
「なにって、マルモの魔法のこと?」
ルイズの問いかけに、タバサは小さく頷く。
巨大なゴーレムが出現したことを教師に伝えに走ったタバサであったが、使い魔の風竜シルフィードの目を通してその後のことも
知っていた。当然、マルモが土ゴーレムを粉々にしたことも。
あんな威力の魔法は、トライアングルである自分の全精神力をもってしても不可能だろう。スクウェアメイジだとしても、
かなりの精神力を消費するに違いない。
それをマルモという少女は事もなげにやってのけた。見たところ、精神力の消費による疲れもなさそうである。
今のタバサは、マルモに対して興味よりも警戒が先にあった。
「……あれは氷系呪文の最上級呪文、マヒャド」
マルモはタバサの警戒心に感づきながらも、素直に答えた。
「マヒャド?」
「ああ、マルモは東方から来たメイジなのよ。だから、ハルケギニアの魔法とは違うの」
前もって用意していた嘘をルイズは口にした。異世界だの何だの言うよりは、比較的信じられることである。
もっとも、タバサは昼間『異世界』に行っているので『異世界から来ました』と言ってもよかったが、わざわざ言う必要もないと
ルイズは判断した。嘘を突き通してもしなくてもこの状況は変わらないのである。
「あの移動呪文も、東方の魔法?」
マルモはコクリと頷いた。
タバサはこの場で知っておけるものは知っておこうと、矢継ぎ早に質問する。
マルモの使う魔法の体系、分類、種類、用法などなど。それらにマルモは簡単に答えていく。
そしてタバサが特に関心を示したのが回復系の呪文についてである。上級回復呪文ベホマは、対象者が生きている限り
どんな傷でも瞬時に癒すという。その効果は系統魔法の『ヒーリング』を遥かに超えている。
また、解毒呪文キアリーや麻痺治療呪文キアリク、そして破邪呪文シャナクについても同様だ。タバサの個人的な事情から、
この手の魔法について並々ならぬ関心を抱いている。破邪呪文というのはよくわからないが、系統魔法での『水』による束縛から
解放するようなものだとマルモは説明した。
今、タバサの心は揺れ動いている。即ち自分の境遇を告白してマルモの力を乞うか否か。
もしかしたら、マルモの魔法ならば現在の状況を打開してくれるかもしれない。しかしそれはルイズとマルモをあらぬ危険に
巻き込む恐れがある。また、たとえ懇願したとしても請け負う可能性はかなり低い。たかが同級生の厄介事、
しかも国家レベルの事を助けようとする人間はまずいない。
それでもタバサは、一条の望みの光から目が離せずにいた。
「……あなたにお願いがある」
「お願い?」
「そう。今はまだ……言えないけれど。その時が来たら力を貸してほしい。私にできることならなんでもするから」
タバサの出した結論、それは保留。本来のタバサなら、こんな曖昧な言葉で他人に頼んだりはしない。悩んだ末の答えである。
だが、マルモは。
「わかった」
タバサの気持ちが、心の震えが、痛すぎる程に伝わってきた。誰かを助けたい、だが自分の力ではどうしようもない、
それ故の苦しみ。似たような感情をマルモもかつて味わっていた。だからこそ、である。
キュルケは今まで見たことのないタバサの様子に面食らっていたが、黙って見守ることに決めた。
「……ありがとう」
タバサは小さく頭を下げ、部屋を出ていこうとしたので、キュルケも後に続いて出ていった。
そしてルイズはというと。
マルモがギーシュに構ったときに発生した感情が、ぶり返してきた。
わたし以外に、優しすぎるんじゃない? メイドにしても。ギーシュにしても。タバサにしても。
「マルモ」
どうしてわたし以外にも優しくするの?
「なに、ルイズ?」
マルモのエメラルドグリーンの瞳が、ルイズの目を覗き込む。
「…………」
その目は、わたしだけのもの。
「ルイズ?」
その声も、わたしだけのもの。
「ねえ、マルモ」
マルモは、わたしだけのもの。
「今日はもう寝ましょう、ね?」
マルモは、誰にも渡さない。
「明日も早いし、ね」
鳶色の瞳が、輝いていた。
「わかった」
今のルイズには『魔神』デスタムーアの如き邪気が宿っているのだが、それに気付いているのかいないのか、
マルモはあっさりとルイズと共にベッドに入った。
「おやすみなさい、マルモ」
「おやすみ、ルイズ」
二人はすぐに夢の世界へと旅立った。
ルイズの夢は、マルモといえども知ってはならぬ。知ればどうなるかは誰にもわからぬが、間違いなく今のままではいられない。
二人の安全はルイズの胸三寸なのだ。
翌朝。
トリステイン魔法学院では昨夜から蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
突如として現れた巨大なゴーレムが宝物庫の壁を破壊して秘宝『銀の竪琴』を盗んだことは一晩で学院中の知るところとなり、
貴族も平民も教師も生徒も口にする話は一つである。
生徒は朝食の席で口々に噂しあい、食堂はいつもより騒がしくなっていた。
教師はもう食堂にはいない。軽い朝食を済ませたらすぐに宝物庫に集まることになっていたのである。
宝物庫の壁には、『土くれ』のフーケのお馴染みの犯行声明が刻まれていた。
『銀の竪琴、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
教師たちは土くれのフーケを罵り、衛兵を蔑んで、とうとう昨晩の当直だったミセス・シュヴルーズに言が及んだ。
「ミセス・シュヴルーズ! 当直はあなたなのではありませんか!」
ミセス・シュヴルーズは蒼白となり、震え上がった。本来なら夜通し門の詰め所に待機しておかなければならないものを、
自室で眠り込んでいたのである。
「も、申し訳ありません……」
泣き崩れるミセス・シュヴルーズに更なる追及が迫ろうとしたとき、オスマン氏が現れた。
「これこれ。女性をいじめるものではない」
「しかしですな!」
と、ミセス・シュヴルーズを問い詰めていた教師が、オスマン氏にミセス・シュヴルーズの非を訴えた。
オスマン氏は長い口ひげをこすりながら、口から唾を飛ばして興奮するその教師を見つめた。
「ミスタ……、なんだっけ?」
「ギトーです! お忘れですか?」
「そうそう。ギトー君。そんな名前じゃったな。君は怒りっぽくていかん。さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は
何人おられるかな?」
オスマン氏が辺りを見回すと、教師たちはお互いに顔を見合わせ、恥ずかしそうに顔を伏せた。名乗り出る者はいなかった。
「さて、これが現実じゃ。責任があるとするなら、我々全員じゃ。この中の誰もが……、もちろん私を含めてじゃが……、
まさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っていなかった。なにせ、ここにいるのはほとんどがメイジじゃからな。
誰が好き好んで、虎穴に入るかっちゅうわけじゃ。しかし、それは間違いじゃった」
オスマン氏は、壁にぽっかり開いた穴を見つめた。
「この通り、賊は大胆にも忍び込み、『銀の竪琴』を奪っていきおった。つまり、我々は油断していたのじゃ。
責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい」
その後感動した面持ちのミセス・シュヴルーズがオスマンに抱きついたので、場を和ませるためにオスマンは尻を撫でたのだが、
誰も突っ込んでくれなかったのでこほんと咳払いをした。
皆一様に真剣な目でオスマン氏の言葉を待っていた。
「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この三人と、使い魔の少女です」
オスマン氏の声にコルベールが前に進み出て、後ろに控えていたルイズ、マルモ、キュルケ、タバサを示した。
「ふむ。では皆に詳しく説明したまえ」
ルイズが少し前に出て昨日オスマン氏に説明したのと同じ内容を語った。
「ふむ……後を追おうにも、手がかりはなしというわけか……」
それからオスマン氏は、気付いたようにコルベールに尋ねた。
「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」
「それがその……朝から姿が見えませんで」
「この非常時に、どこに行ったのじゃ」
「どこなんでしょう?」
そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! ……ミス・ロングビル、大丈夫ですか?!」
見ると、ミス・ロングビルの服は所々破れ、そこから血のにじんだ傷痕が覗いている。
「もうしわけ、ありません。昨日から急いで、調査を、しておりました、の」
喘ぎながらミス・ロングビルは答えた。身体は壁に寄りかかっている。
「誰か治療を!」
急いで水メイジの教師たちが『ヒーリング』をミス・ロングビルにかけ、傷を癒していく。いつしか傷痕も目立たなくなった。
「ありがとう、ございます」
呼吸を整えながらミス・ロングビルは謝礼を述べた。
「それでミス・ロングビル、調査というのは?」
「はい。昨晩、寝ていたら強い衝撃で目覚めまして。部屋を出たら騒ぎがするのでそちらに行くと、宝物庫の壁にフーケのサインを
見つけました。そこですぐに調査をしたのですが……」
「休みますか? ミス・ロングビル」
言い澱んだミス・ロングビルをコルベールが心配して声をかけた。
「大丈夫ですわ、ミスタ・コルベール」
ミス・ロングビルは気丈に答えた。
「それで私は近くの森を捜索していたところ、途中でコボルドや狼の群れに襲われました。おかげで調査の甲斐なく、
学院まで戻ってきたのです」
ミス・ロングビルは言い切ると、目を潤わせ身体を震わせた。
「ようやってくれたの、ミス・ロングビル。後は我々に任せて、ゆっくり休むんじゃ。誰か彼女のベッドまで運んでやりなさい」
三人程の女教師が『レビテーション』を唱えてミス・ロングビルを運搬していった。
「さて、困りましたな。未だ手がかりはゼロ。ここは早急に王室に報告し、王室衛士隊に頼んで……」
「それには及ばんよ、ミスタ・コルベール」
オスマン氏が、コルベールの言葉を制した。
「なぜです? オールド・オスマン。犯行の現場からは追跡の手がかりもなく。ミス・ロングビルの追跡も芳しい結果は……」
「そのミス・ロングビルの追跡のおかげで手がかりが掴めたんじゃよ。これからワシは『遠見の鏡』で『銀の竪琴』の在り処を
探すので、ワシが戻ってくるまで皆ここで待機しておるように。生徒たちはワシが送っていこう」
オスマン氏は言い終えるとルイズたちを押しやるように宝物庫を出た。
「すまんが事件を最後まで目撃したミス・ヴァリエールとミス・マルモはワシに付いてきてほしい。
ミス・ツェルプストーとミス・タバサは戻ってよろしい」
キュルケは不満を言い表そうとしたが、タバサがキュルケを引っ張っていったのでそれはなかった。
ルイズたちが学院長室に入ると、マルモを含めた三人は壁にかかった大きな鏡の前に立った。『遠見の鏡』である。
「さて、君ら二人を残した理由じゃが……、ミス・マルモ。君は『銀の竪琴』が何か知っておるね?」
大した感慨もなくマルモが頷いたので、ルイズは驚いた。
「ど、どういうことですか、オールド・オスマン」
「なに、ミス・マルモが『銀の竪琴』という言葉に反応したのを憶えていただけじゃよ」
オスマン氏が『銀の竪琴』という言葉を使ったのは二回。一回目は教師たちの騒ぎを収めたときに用いたのであるが、
そのときマルモがわずかに反応したのをオスマン氏は見逃さなかった。
マルモたちは注意を払わねば表情もわからぬ位置にいたのだが、それをさり気なく用意もなしに看破したのは年の功というべきか。
「ねえマルモ、『銀の竪琴』ってどういう効果があるの? 見たことはあるんだけど……」
ルイズが宝物庫を見学したとき、『銀の竪琴』はガラスでできた箱の中にあったので悪戯好きの生徒も触れなかったのである。
「モンスターを呼び寄せる効果がある」
「ええっ?!」
マルモの簡潔な答えに、ルイズは仰天した。
「だから、悪用されては困るんじゃ。人のいる村や町では効果がないようじゃが、街道なんぞで使われたら末恐ろしいわい」
「……それで、どうしてマルモがここに? 『銀の竪琴』を知っているからだけではないのではありませんか?」
「もちろんじゃ。恥ずかしながら、今回の事件はミス・マルモの力を借りなければ解決できん」
「マルモの力?」
「そうじゃ。『銀の竪琴』を探すためには『遠見の鏡』を使わねばならん。じゃが、この『遠見の鏡』は……」
と、オスマン氏はちらっと鏡に目をやった。
「普段は学院内までしか映すことはない。もっと遠くのことまで見られるかもしれんが、そのように使ったことはないのでな」
ルイズはハッとした。
「それでマルモの力……『ミョズニトニルン』が必要なんですね!」
「その通りじゃ。あらゆるマジックアイテムを使いこなしたというミョズニトニルン……ミス・マルモならばこの鏡を十二分に
使えるじゃろうて。ミス・マルモ、お願いできるかの?」
マルモは頷くと、鏡に手を触れた。すると、以前に魔法小人形やオスマンの指輪を触れたときのように額のルーンが輝きだす。
普通『遠見の鏡』は特定の空間を映し出すために使われる魔道具であり、探索には向いていないのだが、
神の頭脳ミョズニトニルンならばそれを難なく可能にする。
数秒もすると、鏡面には学院長室の様子ではなく、違う場所の光景が映っていた。そこに広がる映像とは……。
「きゃっ!」
ルイズは悲鳴を上げた。オスマンも息を呑む。マルモだけが変わらずにいた。
それは、森の中に広がる死骸。コボルドらしきもの、狼らしきもの、熊らしきものなど、部分部分で判断できるものだった。
その死の領域の中に君臨していたのは、灰色の巨大なワイバーン。通常のワイバーンはドラゴンよりも一回り小さいが、
その巨体は優に二十メイルはあろうかという、規格外のものだった。
そのワイバーンの口元には血がべったりと付いており、何が起こったのかを物語っていた。
「まさか……ここまでとは…………」
オスマン氏は唸った。おそらくは森の動物が『銀の竪琴』を鳴らし、次々と集まってくるのだろうとは思ってはいたが……。
ワイバーンは、ドラゴンまでとはいかないが恐ろしい幻獣である。一流のメイジでも正面から倒すのは困難であり、
ましてやあれ程の大きさとなると、スクウェアメイジでも太刀打ちできるかどうか。
「……これは、マジで王室に報告せねばならんのう。口惜しいが、学院では解決できまい」
魔法学院に勤める教師はメイジとしては優秀だが、実戦で活躍できるかと問われれば、否である。
しかも、あのワイバーンを相手するとなると、絶対に複数で戦わなければならない。連携するどころか、
互いの邪魔になることは簡単に想像できる。
オスマン氏とて命は惜しい。殺されるとわかって教師を差し向けるわけもない。
王室に干渉されたくなかったが、これしか解決の手段はなかった。
「ミス・マルモ。『銀の竪琴』はどこに?」
オスマン氏の問いかけに、マルモは淡々と答える。
「ふむ、そこなら徒歩で二時間程か……」
これは早期に解決しなければならない問題だ。もしワイバーンが学院にでも飛んできたら、何人かは犠牲になる。
「手間をかけさせてすまんかったの、ミス・マルモ、ミス・ヴァリエール。もう戻ってくれい」
マルモは『遠見の鏡』から手を離し、帰ろうとしたが、ルイズは動かなかった。
「ルイズ?」
マルモが心配して声をかけると、ルイズは口を開いた。
「だ、大丈夫よ、マルモ」
ルイズは動けないでいた。
あの凄惨な光景を目にしてルイズは失神しそうになり、持ち前の意地でなんとか堪えたが、足がすくんでしまった。
マルモがルイズの肩を軽く叩くと、ルイズは動いた。
「あ、ありがとう。……あの、学院長はどうなさるおつもりですか?」
「今からはワシは王都に使いを出し、魔法衛士隊にあのワイバーンの討伐を依頼せねばならんのでな。
ワイバーンがこの学院に来ないともかぎらんから屋外の授業はしばらく中止になろう」
「王都に使いを? あ、それでしたら……マルモ!」
「なに?」
「ほら、あなたの魔法で、すぐにトリスタニアに行けない?」
「トリスタニア?」
「ええ、トリステインの王都なんだけど……」
「ちょ、ちょっと待てミス・ヴァリエール。ミス・マルモの魔法とは?」
ルイズが勝手に話を進める中、オスマン氏が割り込んだ。
「あ、その、マルモは遠く離れたところに一瞬で移動できるんです。それで昨日は異世界に行ってきました」
照れくさそうにルイズは身をよじらせた。
「なんと、そんな魔法もあるのか……。ふむ、それなら連れて行ってもらえるかの?」
オスマン氏が頼むと、マルモは首肯した。
「おおっと、その前に下の者どもに説明しておかんとな」
オスマン氏が階下に向かうと、ルイズは力が抜けて崩れそうになる。だが、床に着く前にマルモがルイズを手で支えた。
「ごめんね、マルモ……もう少し、こうさせて」
そう言うとルイズはマルモに身体を預けた。マルモに触れると、沈んだ気持ちも高揚してくる。
オスマン氏が戻ってくる前にルイズは復活した。
「さて、それでは行こうかの。頼ってばかりですまんが、ミス・マルモ、お願い申す」
「その前に。私はトリスタニアを知らないから……、二人がトリスタニアのことを思い浮かべてほしい」
マルモは瞬間移動呪文ルーラを使うつもりである。ルーラは術者が行ったことのある場所でなくとも、
パーティの誰かが経験しているならばそこに移動できるのだ。
二人がトリスタニアの情景を頭に浮かべたのを確認したマルモは窓を開け放ち、素早くルーラを唱える。
途端に三人は青い流星となり、瞬く間に王都トリスタニアの入り口に着いた。
「旅の扉以外でも、こんな魔法があるんだ……」
「いやはやたまげたわい。まさかこの年でこんな体験ができるとはのう」
驚く二人であったが、目的を思い出し、三人で魔法衛士隊本部に急いだ。魔法衛士隊の本分は王族の護衛であるから、
必然的に向かう先は王城となる。
ルイズは城下を走る中、魔法衛士隊に勤める婚約者のことを思い出していた。
ひょっとしたら会えるのだろうか。それとも自分の名を出せば、案外顔を出してくれるかもしれない。
逸る気持ちを抑えつつ、ルイズは王都を行く。
以上です。ワイバーンの強さってどれくらいだろ。オスマンが殺されかけたぐらいだから強いのかな?
マルモがいい子ちゃんすぎるなあ……、原作でもマルモのパーティは孤児だったり捨てられた存在だったけど。
ルイズは危ない子への兆し。こんなルイズに誰がした。
ちなみに『魔神』デスタムーアは原作での元凶です。レベル1でジャミラス、ゴールデンゴーレム、わたぼうを圧倒しました。
オスマン昨夜には竪琴が盗まれたのに朝を待つとか危機意識が低いけど、朝の方が捜索しやすいからと言い張ってみる。
早くガリア勢出したいよ。戦わせたいよ。現状だとマルモが強すぎるよ。原作も続刊出てほしいよ。規制解除してほしいよ。
次回こそはデルフと脇役を!
と思ったけど、出れるかな…………
乙です
ドラクエ呪文の汎用性パネェっすねw
243 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 18:55:01 ID:whof1Sz+
乙
ゼロ魔とドラクエはなんとなく相性良いな
百合ルイズたまらん
ああん! バーン様怖い
ザボーガーの人乙
これはひどいおマチさん。だがそれがいい。ザボーガーの活躍に蝶期待。
マルモの人乙
ルイズには是非百合の道を突き進(ry
マルモ氏乙
いやに人が少ないな
みんな規制されちまったのさ・・・・・・
テステス、あーテステス
管制塔管制塔、こちら「ゼロの女帝」二十五話
久方ぶりに投下せんとしております
滑走路はクリアか?
クリアなれば13:35頃より投下いたします、オーバー
250 :
ゼロの女帝:2010/04/08(木) 13:36:44 ID:7j3dBUiE
投下いっきまーす
ゼロの女帝 第二十五話
とりゃあああああ!」
サイトは相手を・・・・・・・・敵を逆さまな肩車に背負うとジャンプする。
「食らえ!48の殺人技がひとつ!使い魔バスター!」 ごきゃり
首折りと背骨折りと股裂きを同時にかます強烈な必殺技に、黒尽くめの衣装を着込んだ相手は泡を吹いて昏倒する。
「ぐううう、み、見事だ」
周囲で倒れている大勢の黒ずくめのうちの一人がサイトに語りかける。
「魔法を用いずその戦闘力、ワルドさまを退けただけのことはある」
「いや、それ俺じゃないから」
「だが烈風三兄弟に始まり四方天、五獣炎、六牙衆、七聖剣、(中略)そして我等天昇107人衆を破ろうとも
108頭竜(ハンドレットエイトネックドラゴンズ)が必ずや」
「はいはい、おつかれさん」「ぐえっ」
「まったく『その他大勢』の分際で・・・・・・まあ殺しゃしねーよ。もう殺すの飽きたし、
死ぬよりヒドいめにあわせてやっから。
みなさーん、おねがいしまーす」
「「「「「「「はーい」」」」」」
その声とともに夜の茂みの中から沢山の人達が現れ、倒された天昇107人衆とやらの装備から服からヒン剥いていく。
「おらぁ、男は下着まで剥いていいが女はオメーら手ェ出すんじゃねぇぞ。メイドに任せろ。
サイフもきっちり没収しとけよ」
「親方」
「なんだ」呼びかけに答えるマルトー。
「こいつら身包み剥ぐのはいいんですが、なんで売っ払った金の1/4しか俺らに入らないんです?」
「最初の取り決めだろ。半分は学園に、半分の半分はこいつら倒したサイトの主人なヴァリエールの嬢ちゃんに
残りを俺らで公平にってな」
「半分の半分しか入らないってのが納得いかねぇんですよ」
「そいつぁあのセトが決めた事だ。それともおめぇセトに文句いえるのか?」
ぶるぶるぶる あわてて首を振る男。
「まあそれはともかく、こいつぁ俺らを守るためだ」
「俺らを?」
「ああ、売り上げの半分を学園が、半分の半分をヴァリエールの嬢ちゃんが手に入れてる以上
このくそったれどものご主人様とやらが文句つけてきてもまず学園、オスマンじいさんが相手だ。
万が一オスマンじいさんをなんとかしたとしても次はヴァリエール公爵サマが敵になろうってんだぜ。
普通に考えて文句なんざつけられねぇよ」
251 :
ゼロの女帝:2010/04/08(木) 13:41:29 ID:7j3dBUiE
次の日、裏庭で日向ぼっこをするルイズにキュルケにモンモランシー。
サイトとギーシュは剣の稽古をしておりフレイムはお昼寝。
絵に描いたような平和な昼下がりだった。
「そういえばタバサはどうしたのかしら?」
「ちょっと帰省だって」
「なんかイヤな予感するなぁ。昔から嫌な予感ってのは外れた事ないんだ。
イヤな予感したら100%必ず悪い事が起きるんだ。
どこぞのテロリストが自爆テロ起こしたって理由でお気に入りのアニメが中止になったり
戦争に負けて逃亡中の某国の大統領が捕まったからって理由で深夜アニメの放送時間がずれたり」
「阿呆」
等とやっていると……
「あら、シルフィード」
「あ、ホント」
「でもタバサ乗ってねーぞ?……イヤな予感がひしひしと押し寄せてくるなぁ」
一目散にこちらに向けて飛んできたシルフィードは、そのまま一同に体当たりをかます。
「うぎゃあ!」
「あいたたた」
「何すんのよシルフィード」
「助けて!お姉さまを助けてなのねサイト!」
「り・・・・りりりりりりりりりり竜がしゃべったぁ!!!???」
「なるほど、シルフィードは韻竜だったのね。クソ使い魔なサイトが隠し事してたのは許せないけど内緒にしてたのは
賢明だった、と言わざるを得ないわ」
「まさかタバサがガリアの王族ってのはなんとなく判ってたけど『あの』シャルル公の娘だったなんて」
「よくわからんが、とにかくタバサが浚われたんだな?」
「そうなのねそうなのね、あのスカしたエルフってばお姉さまを守ろうとしたシルフィをフッ飛ばして
お姉さまとお姉さまのママをさらってどっかいったのね。
お願いなのねサイト、お姉さまを助けて!」
シルフィードの懇願に、顔をしかめるルイズとギーシュ。キュルケすらも少なからず腰が引けている。
しかし、それでも立ち上がる馬鹿がいる。
敵がどれほど恐ろしいのか、どれほど強大なのかを理解していない阿呆がここにいる。
252 :
ゼロの女帝:2010/04/08(木) 13:42:48 ID:7j3dBUiE
「よし、シルフィ案内しろ。ルイズ、しばらく留守にするからその間コルベール先生かオスマン校長の所にいるんだ」
「ちょっとサイト!あんたエルフに喧嘩うるつもり?」
「エルフだろうがミゼットだろうがムーヴだろうが、タバサとシルフィの敵だ。なら俺の敵だよ。
お前の敵が俺の敵であるのと同じくな」
「まったくだわ。あたしとしたことがタバサのピンチだってのに……
ヴァリエールは安全なところに隠れてなさいな」
「ツェルプストーがウチの駄犬と一緒に行く以上放って置けるワケないでしょ!アタシもいくわよ!」
「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼ僕だってミセス・セトに鍛えられた技の冴えをみみみみみみせるちゃんすだ!」
「ビビってんの?ギーシュ」
「正直ビビらない訳ないだろ?でもそれでも戦いたいと、知人を救いたいと思ってるから」
「みんな待った。すぐに出かけたいところだけどまず準備をしようか」
「準備?」「あらダーリンってばけっこ冷静なのね」
「その辺瀬戸様に仕込まれたからな。皆は最低限の荷物を用意してくれ。
俺はその間校長と瀬戸様に相談してえくる。
正直今すぐ出かけたいんだが、焦ってもロクなことにならねぇ。
シルフィもそのくらい待てるな?っていうか待ってくれ、頼む」
「きゅ・・・・・・・きゅい」
拳を握り天を仰ぐサイト。
「待ってろタバサ。相手がマツダだろうがスバルだろうが必ずお前を助け出す。仲間、だからな」
253 :
ゼロの女帝:2010/04/08(木) 13:46:50 ID:7j3dBUiE
おまけ
「それで前任をあれほど馬鹿にしていたお前はルイズを私の元へつれてくることに失敗したのだな」
「申し訳ありません、ワルドさま。この責は如何様な罰でもお受け致します」
「では本屋に行って『ロリータ王国』と『ラブラブポエム』五月号を買って来い。
レジで本のタイトルを読み上げ『これは自分の趣味です』と大声で言うんだ。
領収書も許さん」
「ワルドさま、ワルドさまどうかどうかお許しくださいいいいいいい!」
はい、以上です
前回投下したのはいつだったかな・・・・・・一人もいないかもしれませんがもし居てくださったら
楽しみにしててくれた方、申し訳ありませんでした
乙!
待ってたぜ!!
女帝キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
樹雷の皇族とその関係者に喧嘩売ることになったエルフが哀れでならないw
これ、ハルケギニアに来ていたのが鷲羽だったら、サイトやギーシュが知らない間に生体強化されていたんだろうな。
そう考えると、瀬戸様にまともに鍛えてもらったサイトたちはまだ幸福なのかも。
それにその場合、エルフの言う「大いなる意思」も鷲羽の前じゃ霞んじゃうよなあ。
あと、本編とは直接関係ないけど、何故か今まで「女帝」を「エンプレス」と読んでいた。
この作品は普通に女帝(じょてい)でいいんだよね?
多分、他の作品のタイトルと混同しているんだと思うけど、ジョジョ魔スレあたりの作品かな。
乙です!!
>「では本屋に行って『ロリータ王国』と『ラブラブポエム』五月号を買って来い。
そうか、ハルケギニアには児童うんたら法なんてアホ法律はないんだな。うらやましい。
むしろ、若い女の子を囲うのは、軍人貴族のたしなみだったりしても驚かんぞ?
で、若いころに年上に色々仕込まれた女の子が年を取ると、
若い燕を囲って、いろいろと仕込んで、その男が年を取ると……という無限ループは、
貴族社会にはなくてはならないものだったりするし。
他の国のことまでは知らんが、日本だと若い男の子を囲うのもありだったそうな。
>>256 どこぞの世界には宇宙児ポ〜とやらがあるとかないとか。
「魔法ア○ネス」とか「宇宙アグネ○」とかがいたりして
そういえば異世界が信じられていないってことは召喚術師が本業の人はハルケギニアにはいないのね
モンティパイソンネタって常識なの?
>>262 常識かどうかはわからんが、宇宙児ポ法という法律が出てくるラノベでは使われてたな。
フルメタルパニックでもネタにされていたし、知っている人は知っている程度には有名?
ネタとして通じなくても疑問を感じさせない程度のネタというのは、いろいろと使いやすいし。
>>259 まあ一番(元ネタに対して)冒涜的なのは、それが出てきた作品そのものだけどな。
でも最近発売されたエロゲーの設定の方が、さらに冒涜的だった。
>>264 クトゥルフネタに、敬虔さを求められても仕方あるまいな。
大本からして、嫌悪感が題材なんだから。
ううむ、規制が酷い
携帯規制は解除されたからだいぶ楽になったけどね
マジで?
本当だw
女帝グッジョブ!
瀬戸様は本気出せば悟空より強いからなw
エルフ哀れw
イギリス…
「OK、パパ」
の国だな。
イギリスといえば国際救助隊だろう。
でも、あいつら喚んでも私的には動いてくれないなぁ。
イギリス?
ジェレミー・クラークソンがルイズに召喚されました
>>274 理想郷の話題出せば住人共がムキムキ来て俺様の優越感が!
とかいうのはどうだ?
イギリスって言うと、真っ先に思い浮かぶのが飯が不味い国なんだよな。
他にも色々あるのは知ってるんだが。
>>276 車がないからなにもできないじゃないかw
>>278 勘違いするなよ。
我が国の飯が不味いんじゃない。
お前の国が恵まれ過ぎなんだよ(´・ω・`)
ふざけるなよファッキンジャップが。
俺だってミソスープ大好きだよ。
メンタイコゥ食いてーよ(´・ω・`)
お前等は卑怯だ。
ずるい。
同じ島国でこの差はなんだよ糞が。
ファック、ファッキンジャップ、シット、ファック(´;ω;`)
そう言えばアルビオンもトリステインの人間にとっては食い物が不味いらしいな。
酒も麦酒ばっかりでワインを飲む習慣がないとか。
>>279 既にギーシュ戦の構想は出来ている
ワルキューレの上にピアノが落ちてくる『事故』が発生して終了だ
>>284 クソ、スレ違いだが和むじゃねえかこら。
ちょっと前にクトゥルフの話題出てたけどLord of MonstersやMaill de Questなんかを知っている人はいるのだろうか
外なるもの、異相世界、召喚、魔法、SFとかなり手広くカバーできる作品なんだけどさ
誰かボンガロテリーを召喚・・・いや何でもない。
あれは棒使いが半端なかった記憶が・・・・・・
後で読み直したらテリーも相当半端ないことに気付いたが。
秘術――鋼霊身!
>>287 両方ともやってたオレ参上!
どっちも面白いよね〜、ロドモンはPS版しかやってないけどな
>>291 MdQなんかはあの文章形でSS書いたら面白そうだよね
なんとか主役の名前が必要ないようにはできるし
PS版LMからの召喚ならどの主役呼んでもキャラが立ってるから良さそうだし
クトゥルフ物読んでると思うんだが、召喚魔法ってめっちゃ危険だよな。
民俗学とかオカルト好きだからそういった文献読むんだけど、召喚の魔法陣ってのは元々召喚したモノに対する防御目的の意味合いが強かったみたいだし。
>>293 MdQで呼び出す相手の名前間違って専用の魔法陣が微塵も効果がなかったの思い出したw
そういえばルイズは小ネタでエイリアンとか随分マズいもの呼び出してるな
本来はハルケギニア限定召喚なんだろうけどそれでも無差別召喚は怖いな
ハルケ世界にもVSシリーズみたいなプレデターの遺跡があるんだよ
ビル・ライザーを召喚して襲来するエイリアンをお出迎え
>>294 召喚の際に鏡みたいなもののが出るわけだが、ある意味破風の窓みたいなことになりかねないよな。
何が出てくるか分からない上に、途中で止められないからもっとやばいけど。
>>297 大ムカデとか出てきたらビビるだろうな。しかしバグベアとかスキュラとか出てきた生徒は驚かなかったのだろうか。
まあ、エッグマンが出てきたときのがっかりを思い出したら、いくぶんか理解できるな。
299 :
ゼロの女帝:2010/04/09(金) 17:36:00 ID:OkqZjpAz
さて不都合な真実が無ければ四十五分頃から投下したいと思うておりまする
よろしかな?
300 :
ゼロの女帝:2010/04/09(金) 17:45:26 ID:OkqZjpAz
ではまいりまするー
ゼロの女帝 第二十六話
ふむ、と」
まもなく日が落ちようか、という時間。
サイトにルイズにキュルケにギーシュ、あとシルフィ(人間モード)にモンモランシーという一行は
タバサの母の面倒を見ていた執事より聞いた情報で、彼女らが連れて行かれたであろう地の
近く(と思われる)の街の酒場で一休みしていた。
「しかし、この街の近くとしか分から無いのはこまったモンねぇ」
「夜が明けてからシルフィードで周囲を捜索するしかないのかしら」
「あの状況でそれだけの情報が入ったのは僥倖だろうぜ。それより……」
突然立ち上がったサイトは、支払いを終えると酒場の外に出て行く。
「どうしたのよダーリン」
「勝手な真似は控えてくれないかね」
「みんな落ち着いて、すまねぇがちっと来てくれ」
皆納得できないままぞろぞろと歩いていく。
どうやらサイトは一人の騎士を追って歩いているようだ。
薄汚い裏道に入ったところでサイトは声をかける。
「この辺でいいだろうおっさん。さっきから俺らに気を叩き付けてたようだけど何か用かい」
「お、おっさ・・・・・・それはともかく、さっきから君たちが口にしていた『タバサ』という名前はひょっとしてシャルロット姫様のことではないか」
「きゅい!お姉さまいっつもあのデコ姫から『しゃるろっと』って呼ばれてたのね。あと『がーごいる』とも」
「やはりそうか」
「おっさん!あんたタバサの事を知っているのか!」
「二十代でおっさん呼ばわりって」
「十分おっさんだね」
「………キミらもすぐそんな年齢になるんだよ……その時自分が口にした言葉を後悔したまえ」
「ンなことどうでもいいから、タバサの事知っているのなら教えてくれ」
「それは出来ん」
「何故!もうすぐタバサは酷い目に合わされちまうんだぞ!」
「……だとしても、だ少年。
私の名はバッソ・カステルモール。騎士としてガリア王家に忠誠を誓った身だ。
給料も貰っている以上たとえ間違っていようとも王の行いを邪魔しようとする者を放ってはおけん。成敗させてもらう」
「おっさん!」
「頼むから私をおっさんと呼ばないでくれ。君たちへの殺意が増してしまう」
すらりと剣を抜くカステルモール。
「君達が何者で、シャルロットさまをどうしようというのかはもう聞かない」
「おっさん!タバサはどこにいるんだ!」
「今から君達は私に斬られるのだよ。
シャルロットさまはここから西に3キロメイルほどいった地にある城に幽閉されている、などと知る必要は無い」
「えっ?」
「その城には約100人ほどの兵士が居るが全員平民出でメイジは一人もいないなどという事を知るのも無意味だ」
「おっさん……」
「と、いうわけでこれが私のガリア王家に対する忠義だ!行くぞ少年!」
「おうっ!」
びしっ どさっ
一合も剣を合わせる事なくサイトのデルフリンガーに打たれて倒れるカステルモール。当然峰打ちだ。
「おっさんには『不本意』だろうけどタバサは俺らが助け出す。ガリアもハルケギニアも知ったことか」
301 :
ゼロの女帝:2010/04/09(金) 17:47:24 ID:OkqZjpAz
そのまま立ち去る一行。
カステルモールは地に伏したままため息をつく。
「シャルロットさまの事を頼んだぞ少年。
・・・・・しかし留学など、シャルロットさまにとって追放に等しい行いだと思っていたが
命がけで助けてくれる友を得る事が出来たとは、なにが幸いするか分からぬものよな。
あと出来れば放置しないでどっか安全な所に連れていってくれるとうれしかったなー」
「きゅい、あの城なのね」
「カステルモールとやらが本当の事を言っていれば、の話だがね」
「いい男が嘘言う訳無いじゃない」
「「いや、それはどうだろう」」
サイトとギーシュのツッコミにキュルケは動じることなく
「男どもだって見栄えのいい美人の言う言葉はまったく疑うことなく信じるでしょ?それとおんなじよ」
「まあ正直疑ってる時間はないな」
「で、どうすんのよ。正面から切り込むの?瀬戸なら出来るだろうけど」
「いや、へたに騒ぎ起こすとタバサが場所移される恐れがある。
切り込むのは避けられないだろうけどそれも最小限におさえたい」
「そのためにこの樽を買い込んだのかい?あとモンモランシーに何つくらせてるのかね君は」
「見てなって。文字を読めない平民が殆どいない地で大量のミステリーを読み漁ったこの俺に任せておけ」
「ふあーあ」
「たるんでるぞ」
門番をしている兵士があくびをして、同僚にたしなめられる。
「緊張しろってのが無理だぜ。
こんな辺境のボロ城の門番!何がおきるって言うんだ」
「先日妙な母娘が連れてこられただろう。何かイヤな事が起きるかもしれん」
「だとしても、俺ら下っ端にゃ関係無ェだろ。
第一王様が手懐けたっていうエルフが番してるんだ。
事ありゃアイツにおしつけてトンズラするのが賢いやり方だぜ」
「まあ・・・・・・・な」
そんな所に小さなボロ馬車がやってくる。
「止まれ!」「何者だ!」
「すみませーん、ちょっと道聞きたいんですけど」御者席には黒髪の少年が座っている。
門番達に、近くの町までの道を問うてくる。
「いえね、兄貴が親の財産使い込んじまったモンではした金渡されて追いだされちまったんですよ。
で、商売始めようとトリステインで酒を買い込んで売ろうと思って」
「ほう、酒かい」
ろくに楽しみの無い辺境の城勤めで退屈しきっていた門番は食いついてきた。
「よければ二,三樽買ってくれません?」
302 :
ゼロの女帝:2010/04/09(金) 17:49:33 ID:OkqZjpAz
休憩中どころか本来勤務中のはずな兵士すら集まってきた。
「痛んでないのか?」
「味見してみましょうか?」
黒髪の少年は樽のふたを叩き割ると、木製のカップで一杯すくい、飲み干す。
「くああ、旨ぇ!」
その心底旨そうな声に、くびりと喉を鳴らす一同。
「隊長ぉ」
「しょうがねぇな、お前らカップに二杯だけなら飲んで構わんぞ 一杯ずつ順番だからな」
「うおぉぉぉぉ!」
樽に群がる兵士たち。
数分後、その場にいる兵士全員が大いびきをかいていた。
「これはどういうことだい?」
「俺が最初に使った以外のカップの裏底にモンモランシーが作った遅効性の眠り薬をしこんでたのさ。
みなカップを直接樽に入れて飲んでたからね」
「つまりこいつら気づかずに、自分で酒に眠り薬いれてたってわけ?」
「ま、そゆこと。半分眠ってくれりゃもうけ、と思ってたらまさか全員とは……」
「飢えた男って哀れね」
「さて、と」 ちゃきっ
デルフリンガーを構えるサイト。
「この先にタバサがいて、そしてその前にミゼットがいる」
「エルフだってば」
「それじゃ、いくぞ」
多くのいびきをBGMに、城へと向かうサイトたちなのでした。
303 :
ゼロの女帝:2010/04/09(金) 17:51:17 ID:OkqZjpAz
はい、本日はここまでです
えらそーなこといっておいてあの程度のトリックかよ、といわれるとまったくそのとおりなのですが。
さて、次はビダーシャルとご対面です
なるべく早いうちに投下したいと思っておりますので、またいずれ
女帝乙です
女帝さんは一話一話がかなり短めなのですな
女帝の人乙
女帝の人、乙です
そういえば戦艦大和が沈んだ日からもうすぐ三日か、長門があるんだし大和や武蔵を誰か召喚しないかな。
たまにでいいので信濃や金剛なんかも思い出してくださいね
だったらタバサが雪風を召喚して途方にくれるってのも見て見たいな。
この流れ、艦魂召喚とみた
戦闘妖精ではちゃんとタバサの二つ名にも触れてたね。
呼び出されたとたんに学院を押し潰すハボクックとかか
あえてここでマクロスを
じゃあ電子星獣ドルで
ならばヱクセリヲンかエルトリウムでも
ダハク辺りでひとつ
ハヴォック様を召喚とな
彼岸島そのものを召喚とか
浮遊小陸 彼岸島
無限に湧いてくる吸血鬼と住民達
ハァハァとした息遣いが今夜も響き渡る
>>315 そういえばあれの設定見たら、周囲の物理法則を書き換えて推進するとか、外殻が人工素粒子エルトリウムで構成されてるから反物質による対消滅以外では傷付けられないとかとんでもないこと書いてあったな。
>>319 多分、デルフリンガーは喋る丸太になるだろうな
>>319 炭鉱、教会、五重塔と、小島のはずが話が進むにつれ大陸になっていくのか。
>>322 島の質量は変わらず、何故か広さだけが無限大に広がっていくんじゃね?w
ちょwww海外ドラマのROMEで書いてる人とかいるんだ・・・ドラマ見てたそんなに人いるのか?
>>319 杖なんかじゃダメだ。みんな丸太に持ち替えろ!!
>>324 亜空間?しかし有り得ないとも言い切れないのが怖い。
外からはどう見ても1フロアもない五重塔の屋根裏に、巨大な剥製やら研究室やら詰まってる漫画だから。
彼岸島の破壊力は相変わらず凄ェな
恐らく数話どころか十数行ごとに「嫌ァァアアアアアア!!!!」
とか「ひ、ひぃぃいいいいい!!!」っていうルイズやシェスタが絶叫上げるんだな
ふーじこちゃーん
ハルケギニアにはポン刃がそこらへんに落ちてたり
どんなことがあっても味噌だけは持ち歩いてる貴族がいるのか
誤爆スマン
HEROESのピーターは魔法もコピーできるのだろうか
まあ召喚するならヒロのほうがおもしろそうだけど
犬型のを召喚するならと考えててラピード、パンディット、ルシエド出てきた
ルシエドだけ別格だ
守護獣って精霊みたいなもんだし
ルシエドは喜ぶかも
ルイズは強い願い持ち出し
ラッシーとかハチ公とか
アニメ版デスザウラーを召喚
ハルケが火の海になる
忠犬プックル、いやキラーパンサーは猫か。
日替わりの人、楽しみに待ってます。
世界を喰らうイビルジョーを召喚したら阿鼻叫喚ってレベルじゃないだろうな
犬型……あろひろしの「雲海の旅人」に出てきた犬型ロボットなんかどう? 名前が出てこない。
単行本は実家だからWikipediaで確認しようかと思ったら項目が無い。うーむ……マイナーすぎるか。
犬でドギー・クルーガーを思い出さずにはいられない。
>>339 周囲を薙ぎ払う尻尾振り回しに前進・後退ブレス、水に逃げようと飛んで来る岩石攻撃、
鈍臭い奴にフットスタンプ噛み付き…。
魔法学院は何分持つかな?
>340
うわぁ〜 「雲海の旅人」覚えてる人がいた!
ハルケギニアも 大陸浮上災害の阻止に失敗して、あんな感じの世界にならないかなぁ?
>>341 ドギーは召喚されたら最初はコボルトと恐れられるんだろうか
中の人は犬キャラを演じまくっているがどれがきてもそこそこ当たりに入るのかな
太閤立志伝5から足利義氏召喚
村雨欲しさに数多のプレイヤーに辻斬りされる公方様も、ガンダ補正で剣聖様でもぶった斬ってみせらあ。
でも大判振る舞いだけは勘弁な!
その流れでAチーム召喚したくなったじゃねえかw
ガンダ=コング
ミョズ=フェイス
ヴィン=モンキー
???=ハンニバル
ってとこか。
流れを読まずに投下予告
【原作】銃姫/MF文庫J/高殿円
【キャラクター】ギース=バシリス(本編終了後)
21:00〜くらいから第一夜終了まで投下しようと思ってます。
SS初心者なんでそれまで>>1と創作ガイドライン熟読して頑張ろうと思います
ではよろしくお願いします……
《簡単な原作設定》
・魔法を銀の弾丸に込めて発射する魔法銃(ゲルマリックガンズ)が普及している世界
・属性は火・水・土・風・光・闇の六つ
・ゼロ魔の杖のように銃を使わないと魔法が発動出来ない。素手で使えるのは血統を濃くした人間だけ
・呪文詠唱→銀に封呪→発射→呪文が再生→発動と手順が長いので、使い手は予め多種類をストックしておく(魔力の無い人間でも発射以降は可能)
銃姫今読んでるところなので読むことはできないが支援はするぜ
>>346 > 21:00〜くらいから第一夜終了まで投下しようと思ってます。
こういうの不味いんじゃなかったっけ?
ここまで遠いと逆に大丈夫な気もするけど、
まぁ書き上げてから投下5〜10分前予告のがいいやね
スレが進めばわかりづらくなるし、重なることも考えられるんだから駄目だろ
今は一旦撤回して、また改めて予告するべき
予約だけする荒らしへの対策でもあるんだっけ?
簡単な原作設定まで書いてくれてる人だから無いとは思うけども
事前に伝えておいて支援とか感想を増やしたいのも分かるんだけれども
352 :
346:2010/04/10(土) 13:22:50 ID:kFceGMuK
>>348-350 ご指導ありがとうございます。
初投下にビビりすぎてかなり遠い時間設定にしてしまいました。
とりあえず夜にまた投下予告させていただきます。5分前予告で!
>>347 支援ありがとうございます!
クロスSSは結構ネタバレしてるのでまだ読まない方がいいかもしれません
読了後、お待ちしてます。
21時前にまた予告すればいいんじゃね?
それなら21時前にだけ予約してください
…?
そう言ってるじゃないか。
折角のご新規さんにそんなにトゲトゲしなくてもいいじゃない
……?
354はご新規さんじゃなくて353宛
353はご新規さんじゃなくてそれ以前の流れに言ってると思ったんだけど、違ったのかな
>>356 安価付いてたほうが分かりやすくて良いぞ
間にレスが入っても問題ないし
>>357 それはごもっともだし、オレの考えも違わない。
時間が空いてるから353より前へのレスだと思われることは無いだろうと考えたんだけど、間にレスが入った場合を考えてなかったわ。
もうアンカ無しにレスなんてしないよ!
そういえばレイアース召喚って、ありそうでないな。
>>359 「ありそうでない」召喚を語りだしたら、多分それだけでこのスレが埋まるぜ
「おまもりひまり」の緋鞠を召還するのはどうかな?
そういや原作自体猫の使い魔って見た覚え無いぞ!
ムリョウ召喚とか
ドギー「ざっと数えて三万人か…勘を取り戻すには丁度いいぜ。」
神か
「そう!神を生け贄に捧げる」
の人帰ってこないかなあ
>>364 ドギーと聞いて何故かメダロットを思い出した。シアンドッグいいよシアンドッグ
367 :
ゼロの銃:2010/04/10(土) 21:04:28 ID:Zd0S+TOm
こんばんは。書き込みをPCに移して
>>346です。
改めまして21:10よりクロスSSを投下させていただく所存です
【原作】銃姫/MF文庫Jより
【キャラクター】ギース=バシリス
連載タイトルは『ゼロの銃』で、心の中の副題は〜使い魔はレースがお好き〜と続きますw
簡単な原作説明は
>>346をご覧下さい。
ではよろしくお願いします…・・・
しえん
では参ります。
『ゼロの銃 第一話』
世界でもっとも強い武器って何?
剣?斧?槍? ――銃?
魔法や超能力なんてのも、あるのだしたら強いだろうね。
でももっと強い武器を私達は持っているの。
それはとても揺るぎやすくて、不完全なものだけど。――ねぇ
水ほど馴染みやすく、恐ろしいものは無いんだよ。
太古の昔、人間は自分で魔力を発動させる力を持っていたという。
しかし人間は、持てる魔力を己が欲のために利用し世界は混沌の魔に包まれた。
嘆き怒った神々は、人間から魔法を発動する力を奪ってしまった。
ところが人間は知恵を働かせ、魔力を弾丸に混めて銃器で発動することを思いついた。
人は神にも屈しない力を振りかざし、次第に神は忘れられていった。
世界が、魔から解き放たれるまで――910年
物語は、915年後のある目つきの悪い男から始まる。
『ストレスが溜まるとレースが編みたくなる……』
どこかのコーヒー飲料の宣伝のような文句を呟いていたなぁとギース¬=バシリスは懐かしむように嘆息した。
ここはサンピートという山間にある小さな村で、彼はそこでレースの店を開いていた。
レース、レースだ。
1本の金のかぎ針でシルクの絹糸を静謐な模様へと紡いでいく。大輪を蕾に秘した薔薇だとか、無邪気な少女のようにこちらを覗くガーベラだとか。
そういったものに心を震わせ、繊細な技術を崇高なものだと感じる。
5年前の大海嘯が起きて炎が安定しなくなってから、レース編みの機械工業化の脅威は無くなったが――変わらずこの技術を伝えることを使命と科している。
ギースは今年で31歳になるが伴侶はおらず、職人から仕入れて小売りしているという訳でもない。勿論作って売っているのはギース本人だ。
村びとの評判は悪くなく、最近では遠く暁帝国から買い入れに来る商人も少なくない。
だが彼の心は冴えなかった。
「インスピレーションが湧かない……」
並べられた最近の『娘たち』を見て心の暗雲を濃くする。
今は亡きスラファトで親衛隊(サラマンダー)として激務をこなし、その合間に作り上げてきたレースのような新鮮さが無い、と思った。
5年前とは何もかもが違っていた。忠誠を捧げた国は滅び、人は魔法を使えなくなり、九つ目の月は姿を消した。弟を目の前で失い、沢山の人と縁を無くした。
魔銃士(クロンゼーター)は廃業。
その後は故郷の村で、かぎ針を取り、かぎ針を振るい、かぎ針を閃かせる日々を―― 只。
出世の為に国中をネズミのように嗅ぎまわっていた五年前を思うと、こんなに穏やかで良いのか?と自問してしまう。
飢え乾いているときの水の美味さは格別である。まぁ、そういうことだ。
ふと、等間隔に並べ吊るしたレースの向こうに、キラリと反射するものを見つけた。
レースを掻き分けると、それは自分と同じくらいの大きさの鏡だった。
ギースの脳裏に連日娘を売り込みに来る綿売りの男が過ぎる。
「あのおやじ……! こんなものを置いていって!」
なにかと物を都合しては恩を売ろうとする男で、今のギースの頭痛の種だった。壁から引き剥がそうと右手を伸ばすと
「うゎあっ!?」
周りの景色が暗転した。何も無いところで躓くなんて……鈍り過ぎだろう俺!
転ばないよう咄嗟に掴んだレースかけのポールごと鏡に―― ぶつからなかった
「は?」
短い疑問はそこで切れ、店は無音に包まれた。
人は、何かを示すために生きている。
農民は作物を作るという生業を。
商人は金と引き換えに品物を与える取引きを。
貴族は領民を統べるための権力を。
相手において自分がどういう存在なのかを誇示して生きている。
「魔法があまり得意でなくとも、私はあなたの味方よ」
二番目の姉はそういって優しく頭を撫でてくれた。
でもちぃ姉様。大抵の人は私にとって敵だわ。
周りが非道なのではなく、私が弱いから。
だから見つけなくてはいけない。相手に示せる『武器』を。
「では・・・次で最後だ。――ミス・ヴァリエール 」
「はい!」
コルベール先生が私を呼ぶ。
春の召喚儀式、これをパスしなければ私は進級ができない。
「できるのかしら?」
「何を召喚すると思う?」
「何を召喚できても、家名を汚すのには間違いないさ」
心にすっと冷ややかな風が吹く。次いで胸を満たすのは焦燥。
聞こえていないわけが無い。それを否定できないのは覆すための武器が無いから。
武器が欲しい。お前は立派な貴族だと、ここにいてもいいと認められるための武器を
――届け
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール 」
――伝われ
「五つの力を司るペンタゴン」
――声を聞いて
「我の運命に従いし」
――わたしを『貴族』にして!!
「使い魔を召喚せよ……!」
「っ!!がァッ!」
うつぶせに倒れたところにポールの棒が倒れてきた。
がん!
「〜〜〜〜〜〜」
ちょうど後頭部にぶつかり、あまりの激痛にのた打ち回る。
なぜ支えに掴んだポールが彼の上に降らなかったのか?
簡単なことだ。自分の手で丹精こめて紡いだレースが埃にまみれるのを許せるほどギースは肝要では無かった。
そもそもポールは壁のすぐ傍に置いてあったので完全に倒れることなんてあるわけが無いのだが。その事実に至りギースはがばっと体を起こす。
なぜか周りは煙が漂っていたが……突き抜ける青空にそこは外なのだと認識した。
外?
俺の店は!?
煙の向こうに人の気配があった。一人二人ではない、不特定多数のざわめく声がする。
視界が開けたとき目にしたのは愛嬌のある鳶色の双眼−
「―――プルート?」
『このせかいをあいしてるんだ。ここでしあわせになりたい』
影踏みのしぇん
しえん
何度も失敗したサモン・サーヴァント。
叫びにも等しい祈りを、始祖ブリミルは悉く無視した。
だから、閃光と共に爆風が起きたときはとうとう掴んだと思った。
なのに、
こんなのって
「おい見ろよ!平民の人間を召喚したぞ!」
「さすがゼロのルイズ!」
「しかも何?あれ仕立屋?さすがヴァリエール家の問題児は違うわね!」
囃し立てるクラスメイトの言葉に反論が出来ない。
だってどう見ても普通の平民・・・それなりにいい仕立ての服を着ているけど、商売物のレースなんかにまみれている姿は言うとおり・・・只の仕立屋だ。
燃えるような赤毛とは虫類を思わせる鋭い眼光。長身を灰茶のスーツに包み装飾品は銀縁眼鏡のみ。
平民と目が合った時(見てくれが悪いものでは無かったのは救いにはなるのかしら?)眼鏡の奥の神経質そうな目が驚愕に開かれ、短く何かを叫んだのを聞いたけど、その意味を理解することは出来なかった。
(平民の上に未開人!?・・・なんで!!)
「ミスタ・コルベール!儀式のやり直しを要求します!彼は人間……平民です!!」
「……私としても、経験が無いことなので判断し難い所ですが・・・・・・サモン・サーヴァントは神聖な儀式。やり直しは許可できません。」
コルベールの決定にぎり、と歯噛みする。嘲る視線が注がれていると思った。
「ただの平民に見えるかもしれませんが、運命が君にと選んだ使い魔なのですよ。君は彼を使役する義務があるし、彼は君を慕う権利が――」
「……わかりました。儀式を、続けます。」
表情を気取られないよう、召喚した平民の方を向くと・・・さっきとは打って変わった険しい眼光をこちらに向けていた。
その視線を受け、ルイズは眉を吊り上げた。
「仕える前から、いい態度じゃないの、この下僕。契約したらたっぷり躾け直してやるわ」
そう言って平民の頬に手を添えて、もう片方の手で杖を振る。
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール、五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
朗々と呪文と唱え、男に顔を近づける。
初めては……好きな人としたかったのに!
ああもうなんでよりによって人間なのよ!と運命の理不尽さを非難しつつ、硬く強張った唇に触れた。
どうしてこうなったのか、理解できなかった。
「何ご主人様のこと無視してんのよ仕立屋!!」
「黙れ!勝手に呼び出しといて主人気取りなんて何様のつもりだ!あと貴様のような不躾な小娘に俺のレースは売らん!!」
「論点をずらしてんじゃないわよおおお!!!」
地団太を踏む小娘に頭痛が走る。
桃色の長髪に鳶色の瞳、顔の造作は愛らしいといって差し支えないだろう。
だが本性はといえば高慢かつ傲慢。あまり女という生き物になれていないギースには、女の子はいつも傲慢なものさと知ったかぶりをすることは出来なかった。
あの後目の前の少女に連れられて・・・待遇を含めどうするかと話し合うことになり、少女の自室に連れてこられたのだが。
「・・・で、この家畜の焼印のようなものをつけておいて謝罪もなしか?」
「かっ家畜ってなによ!それは『使い魔のルーン』! わたしの使い魔だって言う証なんだから光栄に思いなさい!」
ベッドに腰掛け(ささやかな)胸を張る少女に、これ見よがしに嘆息してやった。
誰が知らないうちに下僕にされて喜ぶものか。生憎とギースにそんな性癖は無い。
あの平原に放り出されて灼熱とともに手の甲に刻まれた意味不明の語句。それまで理解しえなかった言語が、31年間耳に馴染んだ言葉で聞こえるようになった。
意志を伝える魔法は闇魔法だろうか?それとも遠く失われた神代の古代魔法?
しかし気になる語句が出てきた。それは魔法式(ゲール)を組む際に多用される言葉だ。
しえん
しえん
しえん
しえん
しえん
しえん
「使い魔……。帰るときも思ったがこの国ではまだ魔法が使えるのか?」
草原に放り出されて――契約の儀とか、そんな名目で口付けられて、その場から去るときにこの少女以外の全員が鳥のように空を飛んだのだ。
人が空を飛ぶと言えば蒸気機関を利用した飛空挺が思い出される。
だがあの時目にした光景はそれとは別の、魔法だとしてもギースの知る魔法式にあのような力があるものは――無い
「まだ?まだって何よ。まるでもう使えなくなったみたいに」
愛嬌のある顔が怪訝に歪められる。
「使えなくなっただろう?5年前の大海嘯、9番目の月(リコーラ)が落ちたときに」
「りこーら?なによそれ?」
「9番目の動かない月だ。今は月は八つしかない。」
途端、少女が耐えられないといった体で吹きだした。
「あははははっ! なにそれ! 何で月が八つもあるのよ! 月は二つに決まってるじゃない!見なさいよ! ほら」
少女はそう言うと窓の向こうの夜空を指し示し、それを見てギースは。
「……っ!」
月の数、それに大きさに言葉を無くした。
ぽっかりと開いた穴のような大きさで、だが煌々と輝いている月が『ふたつ』
どういうことだ。ここは、あの世界と同じではないのか!?
最初はダブロベインの魔法陣――通称〈門の魔法陣〉によって新大陸か暁帝国にでも飛ばされたのかと思った。魔法陣間を自由に移動できるそれは、一種の遺跡のようなものなので移動したり描き写しただけでは意味を成さないのだが、彼の知識に合致するものが他には無かった。
同じ地上にいるなら、どこにいても月は同じように昇るものだ。星と違い、月は地球に寄り添っているのだから。
違う世界。
魔法がまだ使えるということ。
月が二つしかないということ。
5年前の大災害によって影響の無かった土地など存在しない。世界の原理が人によって塗り替えられた瞬間なのだから。
「・・・どうしたのよ?迷子になったよーな顔して。」
「・・・小娘。」
「だから小娘とか言うんじゃないわよこの平民!!仕立屋!!わたしにはルイズ・ド・ラ・ヴァリエールという神々しく気品溢れる名前が!」
「ルイズ。私を元の世界に帰せ。」
「元の世界? 何よそれ? ……どんな妄想してるのか知らないけど使い魔を帰すことなんて出来ないわよ」
「・・・何故だ?」
毒を吐くように、冷たく悪意のこもった声だと思った。
「決まってるじゃない。あんたが、わたしの使い魔だからよ。契約を交わしたらあんたはわたしに絶対服従。第一呼び出せても特定の場所に帰すなんて魔法は――」
ないわ、とルイズは最後まで続けることが出来なかった。
襟を掴まれてヒッと小さい悲鳴をあげて――射殺すような瞳と、目を合わされた。
「契約? 一方的に説明も無く交わされたあれがか? 生憎と私は力も無い、振りかざす権力も無いただ喧しいだけの小娘に屈するほど無力な存在だとは思っていない。魔法式が使えなくとも、貴様の細い首を枝のように折ることなど容易い……!」
「……ッ! 権力なら、あるわ。あんた、わたしを殺して、わたしを騙して逃げられると思わないことね。貴族を殺して、この学園で召喚されたあんたが逃げたら、うちの家とこの学園が誇りをかけてあんたを探して、殺すわよ……!」
「………」
負けんとこちらを睨み据える鳶色の瞳に虚勢の色は伺えない。生死を握られながらも冷静にカードを切れる豪胆さは感嘆に値した。
「ふ、自分が無力だという自覚はあるのか。まあ、ある程度の判断力があるのは認め――」
てやる、とギースは最後まで続けることが出来なかった。
音には聞こえなかったが、ギースにはどぐしゃあ、とかメメタァとか惨酷な音が聞こえた気がした。
「ぎゃッ……ぐぁあぁぁああ」
蛙が潰れたような声を発し、股間を押さえながら床にへたり落ちた。
「仕立屋の分際で調子に乗るんじゃない!」
寛大なご主人様に感謝しなさい!と言ったは良いが、彼にはそこまで伝わらなかった。
しえん
しえん
しえん
しえん
「……具体的に使い魔とは何をするんだ?」
「ご主人様には敬語!朝食抜きにするわよ!」
「……チッ! 私が使い魔として成すべきことをご主人様にご教授していただきたく存じます」
「思いっきり舌打ちしてんじゃないわよ。……使い魔の仕事は色々あるけど、ひとつは主人の目となり耳となり、感覚を共有する能力が与えられるわ」
それはいい能力だな。自分の姿を客観的に見て色々反省するといい。とは思うだけにしておこう。
「だけど、あんたにはその能力は与えられなかったみたいね。何も聞こえないし、見えないもの」
「それは残念だ・・・です」
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。秘薬とかね」
薬草や物質の名称をつらつらと並べられるが、世界が違うからか共通するものを浮かべることは出来なかった。
「・・・残念だが、薬学の知識はあまり・・・」
「使えないわ・・・」
ルイズは頭痛をこらえるように嘆息した。
そのとき脳裏に過ぎったのは三歳下の弟。プルート・バシリスだ。
プルートは魔力が無かった分、多種多様な知識を学び軍でも独特の地位を得ていた。彼がここにいたら、自分よりもずっと優秀な使い魔だったかもしれない。
『いたら』
「最後に、これが一番大事!主人を敵から守らないといけないのよ!呪文詠唱中、敵の攻撃に晒されないようにね!」
「………」
これだ。魔法が使えるこの世界なら。
スラファトの親衛隊に召し上げられた実力。『赤いたてがみ』として恐れられた魔銃士。ギースにとっての武器は、存在意義はこれしかない。
す、とタイを止めていた銀製のピンを外して右手に乗せる。
「な、なに?そんなのいらないわよ」
「……〈火の大王の忠実なるしもべ、その内なる口に火の舌を持つ火蜥蜴よ〉」
彼の最も得意な属性である〈火〉の魔法式を唱える。どこか詩的でさえあるそれは、空気中の魔法元素(ロクマリア)をまとい青白い閃光を放ちタイピンへと落ちる。
「わあっ!何!?」
手の上のタイピンを覗きこんでいたルイズが突然の発光に尻餅をつく。
彼の世界では自由に魔法を放てない代わりに、こうして銀を触媒に神話の時代の言葉である魔法語(ゲルマリック)を組み合わせて魔法の要素を封じ込める。
空気中の魔法元素が足りない場合は、自分の精神島と呼ばれる魔力槽から補填するのだが、自然に存在するロクマリアを沢山封じたほうが威力は大きい。
無事火属性の魔法〈火蜥蜴〉(サラマンダー)を封じたタイピンは、淡く発光する魔法式を纏っていた。
「そ、それ何?」
「魔法式を納めたカートリッジもどきだ。私の世界では魔法をこうして銀に封じて使う」
魔法、と聞いてルイズは表情を硬くする。
「あんた……魔法が使えるの?」
「まあ、このままでは使えないが……こちらの世界に銃はあるか?」
「銃?……ああ。ゲルマニアで作られた武器のこと?」
「魔法を発動するためには発火のエネルギーが必要だからな。銃無しで魔法を撃てるのは火、水、土、風、闇、光の6つの属性を血統で極めた精霊王(アルティメット)だけだ」
「………」
ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、と地獄の魔女のような低い笑い声がする。
不気味さに怪訝とルイズを見ると、彼女は笑い声とは裏腹の、怒りとか憎しみとか悦びをシチュー鍋でぐちゃぐちゃと煮込んだような――深い顔をしていた。
「……般若!?」
「なーんか聞いてると、あんたの魔法ってスゴク効率悪いわよねぇ………」
「なっ何だと!?」
「偉そうに語るからどんな隠し玉を持ってるかと思えば……呪文詠唱をして、魔法を触媒にこめて、発火させなきゃ使えないなんて、それなら剣で攻撃したほうが早いわよ!!」
「この小娘がっ……! 魔法式の緻密な優美さを、行動の簡潔さ程度で野蛮な物理攻撃と比較するな!! 銃とカートリッジさえあれば貴様のような小娘、消し炭にしてやる!」
「銃なんて持ってるわけ無いじゃない」
「何!?」
「ここは魔法学院よ?学院単独で国の魔法師団2個分と張り合えるのに、ゲルマニアの新造武器が常備される理由がないわよ」
「…………」
ああ、異世界。故郷と同じ文化水準を期待してはいけないということ。
ギースは頭を抱えた。あの世界とどれくらいの文化的格差があるというのか!?
「あーーもう、あんたが仕立て以外何の役にも立たない平民ってことはわかったわよ! ……疲れた。もう寝る」
ルイズが長髪を振り乱しベッドに顔を伏せる。
「そのまま寝るのか。皺になるぞ」
「……やっぱり仕立屋なんだ。そういうとこ気がつくなんて」
「っ! 仕立屋ではない! 私はレース専門だ!!」
つい口をついた言葉が、誤解を増長させたようで必死に否定する。
「なんでもいいわよ……そうだ」
ごそごそと、布に包まった新種の生き物が蠢いている。かと思ったら何かがギースに向けて投じられた。
「それ、明日になったら洗っといて」
「……ッ!! き、貴様!女としてどうなんだ!? おおオレは世の女性の為にお前のこれを否定する!!」
投げられたそれを広げて、ギースは動揺を隠せない。
レースのついたキャミソールに、白くてちいさい『さんかく』
「 ? 結構気に入ってるんだけど」
「趣味は悪くない! ではなく、貴様女の皮をかぶったバロットか!? 」
下着の向こうに暁帝国で王子の皮を被っているだろう巨大汚れパンダが透けるような気がした。
「………何を言ってるのかサッパリわかんないけど、アンタは使い魔。んなもんに恥じらいなんか持ってられないわよ」
「的確に理解してると思うが!? 駄目だ! この小娘やっぱりバロットと同程度だ!!」
自分の価値を暴落させるのが趣味のあの男が、鼻をほじりながら笑ってる気がする!!
「ああもう! うるさいわよ仕立屋!! さっさと寝なさいよ!!」
「どこで!?」
「毛布やるから床にでも転がってなさい」
「………」
ばふっと投げつけられた毛布に抗議の台詞を封じられる。というか、あまりにもぞんざいな扱いに絶句していた。理不尽。そんな言葉が魔法式のようにまとわりつく。
鼻につく上司だとか、七光りで軍の末席を占めるドラ息子を適当にあしらってきたが、我侭お嬢様の子守をしたことはない。
娘を持ったらこんな感じなのだろうか?……いや、自分の娘には淑女の教育を徹底するぞと相手もいないのに固く誓う。
一人悶々とするギースに、ベッドの上から声がかけられる。
「………一応聞いておくわ。あんた、名前は? 」
「……ギース=バシリスだ。」
「バシリス? あんた、貴族なの? 使えない魔法、使えるみたいだし」
使えない魔法ではない!と叫びたくなる気持ちを押し殺す。
「……平民だ。故国には貴族なんてものもあったがな。近代の王が貴族制を廃止し、実力での登用を重視されたんだ。血統の統制も図られた。」
「実力」
「強力な魔銃士なら率先して高官に召し上げられる。私の兄も平民だが中将になった」
幼年学校を退学になったギースが軍にいられたのも、兄であるヨシュアの尽力が大きい。敬愛する竜王に見出していただけたことと同じ様に、彼には感謝している。
「………」
「……寝たのか? 」
呟いたきり沈黙する布のかたまりに声をかけるが、返事はない。
嘆息して、投げられた毛布を引き寄せる。 瞼を閉じると思いのほか睡魔が襲ってくる。
床で雑魚寝など何年ぶりだろうか。あれはユーロサットで等級狩りをしていたころ――
丁度いい暖気に包まれ、思考が停止する。
双月に見守られ、泥のような眠りに落ちた。
387 :
ゼロの銃:2010/04/10(土) 21:26:54 ID:Zd0S+TOm
ここまでで第一話終了です。
タイトル横の(○/7)って奴、ごめんなさい全部で6レス分でしたw
緊張して間違えました。すいません。
次回は間違えないようにします…・・・
お目汚し、失礼しました!
新作乙です。
久しぶりにうざいルイズを見たw
これからどう変わっていくか楽しみです。
周囲が平民扱いしてるってことは、あっちの魔法はディテクトマジックに反応しなかったのかな?
魔銃好きなので期待してる
頑張ってー
乙です
銃姫の原作知らないけどコルベール先生が活躍しそうな予感
ちょっとwikiで銃姫について見てきたけど、あっちの魔法は古代語を正しく発音しないと使えないみたいだから
翻訳された言葉を聞いているハルゲキニアの人間にあっちの魔法は絶対に覚えられないね。
ルイズが魔法式を使えるようになって自信回復とかはないか。
乙です
面白そうなんだが銃姫を先に読まないとなー
エナミさんが絵師してるから手を出そうとは思ってはいるんだがね
なにはともわれ頑張ってください
>>391 そういう先の展開を潰すようなのはやめてやれ
戦国BASARAの幸村を召喚する話を読んでて思ったんだけど…
この幸村がAC仕様だったらワルドは空の彼方に蹴り飛ばされてたんだろうな。
ACなら見えない壁に当たって(ry
AC仕様で思ったがAC北斗の拳からユダ様を召喚したら大変そうだな。
ダガールとコマクが居ないから出せない技が多々あるし…
ユダ様単体で使える技は伝衝裂波、鷹爪破斬、血粧嘴と投げ以外の通常技か…
あれ?ハルケだとこれで十分じゃね?
ギーシュなりマルコメなりワルドなりががダカールとコマクポジででてくるんじゃね?
裏切られた挙句真っ二つにされるワルドか
真っ二つ・・・真っ二つか。
「あれは、まさかゴーレム!?」
「ほーっほっほほ。そのとおり、よくご存知で」
「土くれのフーケ!!」
「如何にも!さあ破壊の杖を渡してもらいましょう」
そしてワルドは石の中にいる。
直情径行のサイト
激怒たるルイズ
眠りの鐘のオスマン
フェイス・ザ・タバサ
衝撃的なテファ
俺に出来るのはここまでだった
湖の一部を決壊させ水攻めをするユダ様
無双に続いてARMORED COREにもなったのか
無双4のOPの趙雲ならアルビオン7万平気で蹴散らしそうだな
>>401 乱世魔王アンリエッタ
魅惑のキュルケ
日系のシエスタ
でどうか
後は誰か任せた
素晴らしきロリコンナワルド
暮れなずむフレイム
白昼の半月コルベール・・・毛髪的な意味で。
>>401>>405 直系の怒鬼が被ってる?
混 乱世魔王アンリエッタ
衝 衝撃的なテファ
白 白昼の惨劇(二股発覚)
マ フェイス・ザ・タバサ
命 眠りの鐘のオスマン
激 激怒たるルイズ
眩 魅惑のキュルケ
暮 暮れなずむフレイム
直 直情径行のサイト 日系のシエスタ
素 素晴らしきロリロリカリンちゃん
(国際警察機構側だが)
そしてその中に、ゴーレムを駆る少年がいた!
ギーシュ「行け! ワルキューレ!」
北斗無双の聖帝の声が軽い
決して下手ではないがアニメでの銀河氏が強すぎてどうにも
皆さんこんにちは、ウルトラマンオフィシャルデータファイルも5冊目に入り、本棚で
ゼロ魔全巻のとなりで圧巻を誇っています。正直、これのおかげで書けた話も
少なくないのでコンプリートを目指すつもりです。
まあとりあえず、今週も95話が完成しましたので投下開始よろしいでしょうか。
問題なければ、15:50より開始いたします。
よろしく無いです
俺は問題ない
OK支援
毎回、毎回欠かさず日曜に投下するあなたは本当に凄いと思う。
第95話
最後の夜
ウルトラマンメビウス
ウルトラマンヒカリ 登場
ハルケギニアの夜空は、二つの月がそれぞれ個別に満ち欠けを繰り返し、
青い月が一つだけしか見えないときもあれば、どちらの月もまったく見えない
新月の夜もある。
そして、あの日食の日は二つの月が完全に満ちる特別な満月であり、それから
二日が過ぎたこの日の空は、青と赤の月が、まるで千千に乱れる才人とルイズの
心を象徴するかのように、中途半端な欠け方で、くっつきもせず離れすぎもせずに
夕闇に染まりつつある星空の中にたゆたっていた。
「ルイズ……おれ、地球に帰るよ」
エンマーゴとの戦いが終わってしばらくしてからのこと、才人に呼び出されて
地球へ帰るという決意を告げられたルイズは、一瞬頭の中が蒼白になってしまった
ものの、理性と意思を総動員して自分を奮い立たせると、高い熱を出しているときの
ように視界がぐらつき、動悸が押さえようもないくらいに激しくなっていく中で、
彼に言葉を返した。
「そ、そう……やっと決意が固まったの……よ、よかったじゃない。これで、
あんたも自分の家に帰れるのね」
そのとき才人がはっきりとルイズの顔を見ていれば、作り笑いの中で
大量の冷や汗をかきながら震えているのが見えただろうが、あいにくそのときの
彼にルイズの顔を直視する勇気はなく。
「ああ、長いあいだ世話になった」
と、視線を逸らして言うのが精一杯だった。
「ふ、ふん、無駄飯食いが減って、せいせいするわ。で、でも、どうして急に
そんなこと決めたの? それくらい教えなさいよ」
「……懐かしくなりすぎちまってな……」
「え?」
「レリアさんや、シエスタたち親子を見てると、お袋を思い出しすぎちまう。
きっと、すっげえ心配してるだろうな。それに……この村の人は、みんな自分の
故郷のために努力してる。おれは、やっぱりこの世界では根無し草だって実感した」
いくらこの世界に長くいようと、才人が地球人であることを動かすことはできない。
佐々木隊員のように、この世界に骨をうずめるだけの根は張り巡らせていないし、
第一地球にはまだ彼という草を育てた両親という土が、彼の根を離さずにずっと
待っている。根は地球に、葉はハルケギニアに、今の才人は洪水に飲み込まれた
一本の草のように、ただの草にも、ましてや水草になることもできずに水面で必死に
自分を探していた。
「あ、で、でも心配するなよ! 行ったっきり二度と帰れなくなるって決まったわけ
じゃねえし、きっとまた戻ってくるよ!」
それが気休めであることくらい、ルイズにだって簡単にわかる。それでも、
言わずにはいられないのだろう。
「サイト……わ、わたしも……」
ルイズは、自分も連れて行ってと思わず口にしかけて止めた。無理をしてでも
才人と離れたくないという気持ちに偽りはないが、それでは二人の立場を
逆にしてしまうだけだ。第一、無理に行ったとしても才人にルイズを養う力はない。
しばらくのあいだ、才人もルイズも次の句をつなぐことができずに、沈黙と静寂が
その場を支配した。それが破られたのは、二人とも棒立ちで何十分経過したのか、
寺院の扉が無遠慮に外から開け放たれたときだった。
「はーいーっ! 探したわよ二人とも、急に消えるもんだから何かあったんじゃ
ないかって……あら? お取り込み中だったかしら」
どうやら、かなり長い時間を無為に過ごしてしまっていたらしいが、キュルケは
二人の雰囲気を見て、なんとなくそれを察して訳を聞くと、なるほどとかぶりを振った。
「そう、とうとう覚悟を決めたのね」
思えば、この村には才人の望郷の念を呼び覚ますものが多すぎた上に、レリアと
シエスタの親子を見て、国の両親が心配になったというのが何よりも大きいだろう。
例えばルイズも、万に一つもないかもしれないが母親のカリーヌが倒れたり、
姉の誰かが事故に合ったという知らせが来たりしたら、いくら日頃反目している
とはいっても飛んで帰るし、キュルケもそれは同様。タバサも、もしも病床の
母に手を出す者がいたら、即座に殺すつもりでいた。
「で、ルイズはそれでいいわけ?」
「え?」
「え、じゃないわよ。使い魔と主人は一心同体、どちらかが死ぬまで離れる
ことはできないんだって、いつもあなたが言ってることじゃない!」
「……」
それが建前を利用した叱咤であることは明らかだった。才人が故郷に帰る
という苦渋の決断をしたことは仕方が無い。だが、ルイズはその”仕方がない”を
才人の意思を尊重するという理由で無条件に許容しすぎて、自分の気持ちを
いまだにまともに口に出せていない。要するに、キュルケは、
「いいかげんにしろ!」
と、ルイズを言外に怒鳴ったのだった。
しかし、無言で押し黙るルイズに、これまでのじれったさもあってさらに
怒鳴りつけようとしたキュルケは、そでを引いてくるタバサに止められた。
「どうせ無駄……」
キュルケは彼女らしくもなく、軽く歯軋りをすると怒りをおさめた。長いあいだ
他人に心を閉ざし続けたルイズの心の扉を、力でこじ開けさせるのは無理だと、
タバサの言葉で気づいたのだ。
「ああ……そういえばそうね。この子の頑固さは、ダイヤモンドより硬いん
でしたっけ。ともかく、一度帰るわよ、ここはどうも陰気くさくていけないわ」
扉を乱暴に開け放つと、キュルケはいつもの淑女を装った体ではなく、
荒っぽく道の砂利を踏みつけながら歩いていって、才人たちもタバサに
無言でうながされて、寺院を後にした。
しかし、タバサの一言は同時にルイズの心にも大きく突き刺さっていた。
”どうせ無駄”
それは、どうせ本当のことを才人に言う勇気なんか、どうしたってルイズに
あるわけがないと、この小さな少女からの、冷酷な侮蔑のように聞こえたが、
ルイズがそれに対抗できる文句は虚勢の一言も存在しなかった。
二人が戻ったときにはタルブ村での騒動は、後始末が一区切りついて、
リュウたちも一休みしていたところで、才人は自分の決意を彼らにも伝えた。
「本当に、それでいいんだな?」
「はい、ですが、みんなとあいさつをすませたいんで、もう一日待ってください」
才人の決意を聞いたリュウは、それ以上なにも言いはせずに、彼の肩を
軽く叩いただけだった。
「いいのか、何も言わなくて?」
「言ってどうする。ますますあいつを悩ませるだけだろう」
ジョージの問いかけに、リュウはそっけなく答えただけだったが、ジョージも
ミライも、そのとおりだとわかっているので、才人に対しては何も言ってやる
ことはできなかった。
それに、実際問題としてGUYSもいつまでも才人にだけかまっているわけにも
いかず、次のゲートを開くときにも備えて、この世界のデータの収集など、
やることはいくらでもあったし、激しい戦闘を繰り広げたガンフェニックスは
どうしてもいったんフェニックスネストに戻して整備を受けさせる必要があった。
そして、別れ際に才人はもう一つリュウに自分の持ち物を託した。
「この銃は?」
「ガッツブラスター、俺より前にこの世界に来た異世界の人が残していったもの
だそうです。もう弾切れですが、うちにもって帰るわけにもいかないし、
引き取っていただけますか?」
かつてアスカ・シンがオスマン学院長に託し、二十年の月日を経て才人の
手に渡ったビームガンは、リュウの手に渡されてその役目を終えた。
「いいの、あれあなたの武器なんでしょう?」
何度も肩を並べて戦って、ガッツブラスターの威力を目の当たりにしてきた
キュルケが、もったいなさそうに言ったが、才人は首を振った。
「いいさ、俺の故郷には戦いはないし、ここに残していって、誰かに悪用されても
困るんでな」
この世界の技術ではガッツブラスターの解析も複製も不可能だが、ライト兄弟の
飛行機の発明からゼロ戦が登場するのに、わずか四十年ほどしか必要としていない。
ここに残していって、百年後、二百年後に構造を解析されたら、当然のように
兵器に転用されるだろう。平和を守るための武器が、戦争兵器にされるのは
耐え難いことだった。その点、ゼロ戦も同様だが、さすがにあれを持ち帰るのは
無理なので、才人はあのゼロ戦のパイロットの遺体から預かった軍人手帳を
向こうの世界の遺族会に届けることにして、機体の破壊をロングビルに頼むことにした。
「だから、その分もうしばらく頼むぜ、デルフ」
「相棒……」
背中のデルフリンガーも、寂しそうにつぶやいた。半年前、武器屋で買われて以来、
なんだかんだ言いながらも才人とデルフは常に死線をくぐり続けてきた。才人が
いなくなったら、銃士隊にでも引き取ってもらえば使い手には困らないだろうが、
彼としてもこんな形でせっかくめぐり合った使い手と別れるのは心苦しいだろう。
「シエスタ、ごめん、さよならだ」
「サイトさん……」
最後に、シエスタとレリアの親子に才人は別れを告げた。シエスタは、エンマーゴに
壊されたタルブ村の復旧のために、ウェストウッドには戻らずにここで皆と別れる
ことになったから、必然的に才人ともお別れということになる。
「思えば、ずっと前からシエスタには世話になりっぱなしだったな。ろくにお礼も
できなくて、本当にごめん」
「そんな……お礼を言わなきゃいけないのはわたしのほうです。サイトさんが
来てから、学院のメイド仲間たちも、貴族の人におびえてばかりじゃなくなりました。
それに、サイトさんのお友達の人は、みんないい人ばかりで、ずっと働き甲斐の
あるところになって、みんな感謝してるんです。それに、それに……わたしは
そんなサイトさんのことがずっと……」
「シエスタ、聞き分けなさい。サイトくん、できれば私もあなたをシエスタの婿に
もらっておじいさんの畑を受け継いでもらいたかったんだけど、代わりにどうか
おじいさんの魂を故郷に返してあげてね」
レリアはぐずるシエスタをなだめると、才人に佐々木隊員の使っていた隊員服と、
メモリーディスプレイ、トライガーショットを手渡した。
「はい、おばさんにもいろいろとお世話になりました。それに、いろんな勉強を
させてもらいました。本当に、ありがとうございます」
それは才人の本音だった。親の心子知らずとはよく言うが、実際どれほど自分が
親不孝者だったか、嫌と言うほど実感していた。レリアは、祖父や両親から
受け継いだ村を、シエスタたち子供たちに受け継がせるために命を懸けていた
というのに、自分は生まれてこのかた両親から受けた恩を百分の一も返した
ことはない。孝行したいときに親はなしとも言うが、もし次の機会があったとしても、
それが間に合うとは限らないのだ。
名残惜しむシエスタや、感謝の気持ちを表す村人たちに見送られながら、
才人たちは、今度はシルフィードのみに乗り込み、ガンフェニックスから分離した
ガンウィンガーに引かれ、かろうじて動力の残っていたガンクルセイダーは
ガンローダーとガンブースターの二機に牽引されて、ガンウィンガーは
ウェストウッド村へ、残りの三機は地球へとそれぞれ飛び立った。
「じゃあ、俺たちはいったん地球に帰るが、ミライ、それまで彼らを見てやってくれよ」
「はい。まかせてください」
「セリザワ隊長も、お気をつけて」
「ああ……俺には、この世界でやらねばならないことがあるからな」
最後に無線で、リュウはガンウィンガーとともにこちらの世界に残ることに
なったミライとセリザワの二人に別れを告げてこの世界を去っていった。
計算によれば、ゲートが閉じる時間はこちらの世界では明日の昼過ぎ、
ガンフェニックスの最後のハルケギニア突入は地球時間で午前九時と決まった。
才人たちに残された時間は、あとおよそ半日程度……ウェストウッド村に
戻った才人にとって、それは長いのかそれとも短いのか、他人には判断できない。
「あの二人、どうしたの? 帰ってきてから、一言もしゃべらないけど」
「今は、そっとしておいて」
ティファニアに、戻ってきた才人とルイズがずっと沈黙して、何を言っても
無視されることを問われたキュルケは、自分も今はどうしていいのかわからない
というふうに寂しげに答えて、タルブ村で何があったのかを彼女から伝えられた
ティファニアは残念そうにうつむき、ロングビルは空を見上げると、憂えげに
ため息を吐いた。
「二つの満月、二つの月が重なるときに起こる日食が呼ぶ奇跡……ね」
恐らく、過去に日食のときに起こった奇跡と呼ばれている現象も、地球や
その他の異世界と一時的にハルケギニアが連結されることによって
この世界に現れた、この世界の人間では理解できないもののことを
指しているのだろう。
「ふっ……奇跡といえば、私がここにいるのも何もかも、奇跡みたいなもんだけどね」
これまであの二人が起こしてきた、”奇跡”と呼べるものは数知れない。
非情な盗賊フーケが、魔法学院教師ロングビルとしてこうしているのも、
それにトリステインを襲った様々な事件を解決してきた背後の多くには、
彼ら二人の姿があった。
ただ、奇跡とは神が人間に与えた祝福と言われるが、あの二人にとって
この奇跡は、果たして幸せなものになるのだろうか……
「神様ってのは、いったい人間に何をさせたいんだろうねえ」
鬼や悪魔なら、やることがはっきりしているからいい。しかし、神様というやつは
人を救うかと思えば試練を与えたり、罰を下したりと節操がない。さして敬虔な
ブリミル教徒ではない彼女は、あの二人にこんなろくでもない運命を与えた
神という奴がいるとしたら、靴の先っぽを踏んづけてやりたい気持ちになった。
そして、そんな才人たちを、セリザワとミライはガンウィンガーの翼の上に
たたずんで見守りながら、テレパシーを通して彼らの心の中にいる
ウルトラマンAと、精神世界で会話していた。
「エース兄さんは、やはりこの世界に残られるんですか?」
「ああ、ヤプールの大攻勢は食い止めたが、今日のようにそれとは関係ない
原因で暴れだす怪獣や、ヤプールに便乗して漁夫の利を占めようとする
宇宙人が、いつこの星を狙いに来るかもしれない。今、この星を離れるわけには
いかないんだ」
エースの言葉は、ヤプールをきっかけにしてこの星に怪獣頻出期が訪れる
かもしれないという可能性を示唆していた。そうなれば、地球と比べてさえ
はるかに戦力に劣るこの星など、簡単に滅亡してしまうだろう。
だが、メビウスはエースの言うことをもっともだと思いながらも、それがどんなに
危険なことかということを危惧していた。
「しかし、ヤプールはまた力を蓄えて大攻勢をかけてくるでしょう。いくらエース
兄さんでも、一人では」
「だからだ、メビウス、お前は向こうの世界に戻って、ゾフィー兄さんやウルトラの父に
この世界で起こっていることを直接報告しろ。そうして、皆を連れて必ずここに
戻って来い」
「兄さん、それじゃあ」
「ああ、これはもはや私一人で解決できることではない。我らウルトラ兄弟全員で
当たるべき問題だ。お前が次のゲートを開いてくるまでの三ヶ月、私が何としてでも
持ちこたえていよう。いいな」
おっと今日は日曜でしたな
支援
「兄さん……」
「心配するなメビウス、ここには俺も残る」
「ヒカリ!」
「ナイトブレスを持つ俺ならば、この世界でも行動に支障はない。それに、ボガールが
この世界で隠れ潜んでいるのならば、奴を倒すのは俺の仕事だ」
ヒカリにとってボガールの殲滅は宿命と呼んでいい。食欲のおもむくままに
惑星アーブを始め、数多くの命あふれる星を滅ぼしたあの悪魔が、この世界に
潜んでいる可能性が少しでもあるなら、絶対に見逃すわけにはいかなかった。
「わかりました。でも、無茶はしないでくださいね」
「ああ、俺はもう、二度と復讐の闇に囚われたりはしない。ボガールは、あくまで
宇宙警備隊員として倒す」
それを聞けば、メビウスにもう言うことはなかった。
「よろしくお願いします。僕も、必ずソフィー兄さんたちと共に、もう一度ゲートを開き、
この世界に戻ってきます! ですが、エース兄さん……」
「わかっている。メビウス、人間の命は我々に比べて短く、そしてその生涯には
常に試練がともなうものだ」
「はい、才人くんとルイズちゃん、ぼくらに何かしてあげられることはないんでしょうか?」
メビウスは、深く沈みこんでいる二人を心配して言ったが、エースはそんな迷える
弟に、人間、北斗星司として教え諭した。
「残念だが、我々には何もしてやることはできん。だが、人間には自分の力で
試練を乗り越えていける力がある。お前の仲間たちがそうであったように、彼らが
どんな答えを出すにせよ。信じて見守ってやれ」
「はい!」
ウルトラマンは決して万能の神ではない。怪獣を倒し、宇宙人の侵略を阻止
することはできても、一人一人の人間が、その中でどんな人生を歩むかは、
その人間自身の選択しかないのだ。
しかし、残された時間は過ごす方法が無為にせよ有意義にせよ、完全に
平等に流れていき、太陽が地平線上に消え去った後でも、才人とルイズは
ろくに会話をしようともしていなかったが、夕食後に才人から皆に頼まれたことは、
一同を驚かせた。
「今夜のうちに、学院に帰るですって!?」
「ああ、せめて学院長くらいにはあいさつしておきたいからな」
ガンウィンガーに牽引してもらえば、学院までは一時間半もあれば充分だろう。
夜半に飛べば地上から目撃されても流星と間違えられるかもしれない。しかし、
ルイズはそれでいいようだったが、それがこの世界への未練のためではないのかと
キュルケに問われると、才人はため息をついて答えた。
「正直に言うと、そうだろうな。てか未練がないなんて言ったら、おれはどんだけ
人でなしなんだよ」
「そうね……でも、やっぱり帰りたくなくなったからこっちに残るって、気が変わっても
あたしは全然歓迎だからね、ダーリン」
色っぽくウィンクしてきたキュルケに、才人は思わず赤面してルイズに無言で
蹴り飛ばされた。
「ってえなあ、何するんだよ!」
「足がすべったわ」
それっきりお互いにそっぽを向いてしまった二人に、キュルケとタバサは
顔を見合わせて、やれやれと首を振った。ほんとに、この期に及んでもなお、
素直になれずに嫉妬を燃やすとはたいした強情さだ。
「ちょっと、はっぱをかけてやるつもりだったんだけどねえ」
「あの二人の場合、逆効果」
タバサに、論文の内容を酷評されたようにつぶやかれて、キュルケは
軽く苦笑いして、ごまかすようにタバサの肩を叩いた。上っ面だけの
恋愛ごっこなら奪い取ってやりたくなるが、本当に大事な気持ちで
思っているのなら、下心なしで応援したくなる。それもまた、彼女の系統である
『火』の情熱のなせる業かはわからないが、才人と恋愛感情がなくなっても、
ルイズと家柄では宿敵同士でも、友情まで砕けることはなかった。
「まあともかく、学院に帰るのならわたしたちも同行するわ。もう付き合いも長いし、
ここでお別れなんて、つれないじゃない」
「ふんっ! 勝手にしなさいよ」
嫌そうに振舞っているが、それが照れ隠しなのは見え見えなので、キュルケは
笑いをこらえるのに苦労した。
今度の飛行では、ガンウィンガーにミライとセリザワが乗らねばならないから、
シルフィードに残りの全員が同乗することになった。しかし、才人、ルイズ、
タバサ、キュルケが乗ったところで、ロングビルが同乗を断ってきた。
「ロングビルさんは、行かないんですか?」
「ええ、元々もう少しここにいる予定だったし、それにせっかく戦争が終わった
んだから、この際あちこち見て回りたくてね。こんなとこでも、一応私の故郷だし」
ティファニアをかくまうようになってから、お尋ね者扱いされるようになった
マチルダ・オブ・サウスゴータも、レコン・キスタも壊滅し、旧体制で彼女の敵だった
貴族がほぼ廃滅か没落した今なら、もうこそこそ逃げ回る必要はないだろう。
むろん、本名こそ名乗ることはできないが、今更その名を名乗る気はないし、
商人からの速報でレコン・キスタの残党も、ロンディニウムに王党派が入城した
とたんに完全に降伏して、王権の再生がなった今、それがどういう方向に
向かうのか、それぐらいは自分の目で確かめてみたかった。
「それに、ま、一応教師みたいなもんだし、世界情勢ってやつにも詳しくないと
生徒のためにならないし、ね……しっかし、一時の宿と日銭稼ぎのつもりで
あのじいさんに取り入ったのに、いまや本職、人生ってのはわからないもんだよな?」
言外に、裏家業から抜けさせてくれたことへの感謝をにじませつつ苦笑いした
ロングビルに、才人は「いえいえ、ロングビルさんは面倒見がいいし、ほんと
天職ですよ」と答えて、さらに苦笑させた。
「言ってくれるわね。けど、私はあくまで給料に見合うだけの分は働いてやってる
だけってのを、忘れてもらっちゃ困るよ」
そう、あのホタルンガ事件の終わりで、彼女は盗賊をやめて学院長秘書として
正式に雇われるときに、オスマンに通常の五倍もの給金をふっかけ、その一部は
ルイズが出しているのだが、その分に見合うだけの仕事はしているのだ。
「だがまあ、子供の面倒をみるのは嫌いじゃないし、給料日を待って過ごすのも
思ったより悪くはない。だから、私はまたあそこに帰るよ、だからあんたも
人のことには構わずに、自分の思ったように行動しな」
彼女は不器用なりに才人を激励すると、あとは心配するなと眼鏡の奥の瞳を
緩ませて、昔からティファニアたちに見せてきたのと同じ笑顔で、早くいきなと
うながした。
「じゃあ、さようなら、ロングビルさん、テファ」
「元気でな。体に気をつけていくんだよ」
「さようなら……また、またいつでもいいですから、遊びに来てくださいね」
ぐすりと、涙をこらえながら手を振ってくるテファを見ると、また罪悪感が
こみ上げてくるが、それも自分で決めたことであるから仕方がない。
テファとロングビル、アイや子供たちに手を振って見送られながらシルフィードは
飛び立ち、ついで離陸したガンウィンガーが、今度はゆっくりめに加速して
夜のアルビオンの空を流星のように飛び去っていった。
やがて機体は大陸から洋上に出て、黒一色で塗り込められた中を速度を
さらに上げて疾走していく。学院までは、およそあと一時間ほどといった
ところだろう。
支援
相変わらず、誰も一言も発しないそんな中で、キュルケは才人が昼間の疲れ
からか、うつらうつらとし始めているのを見ると、彼が眠っているのを確認して、
隅のほうで向こうを向いたままひざを抱えてうずくまっているルイズの肩を軽く叩くと、
声をかけた。
「ルイズ、サイトに何か言うことはないの?」
「……」
「大丈夫、サイトは眠ってるわよ」
「……話せば、別れがつらくなるだけよ」
ぽつりと、しぼりだすように答えたルイズの言葉に、キュルケは話せば
つらくなるのは、自分ではなくてあくまで才人を指していることを感じ取った。
しかし、自分と話すことで才人の決意を鈍らせてはいけないというルイズの
決意の中に、本当に才人に言いたい言葉を、それは言ってはいけないことだと
自分の中に押し込めてしまっている、彼女の頑固で愚直すぎるほどの真面目さ
が生んでしまった苦しみも、同様にキュルケにはわかっていた。
「あなたって、本当にどうしようもないくらいに馬鹿なのね」
「……うるさい」
「でもね、同じくらいに純粋で、とても優しい心を持ってる。まるで、天使のような
きれいな心をね」
「え……」
思いもよらない宿敵からの優しい言葉に、ルイズは振り返りこそしなかったが、
少しだけ頭を上げた。
「サイトの気持ちを尊重してあげたいあなたの気持ちはわかるわ。けどね、
おそらくサイトはあっちに戻ったら、当分のあいだ、いいえ悪くすれば二度と
帰ってくることはできないわ」
キュルケの言うことに反論の余地はなかった。仮に三ヵ月後に再度の
ゲートを作り出すことに成功したとしても、どう考えても一般人である才人が
渡航させてもらえるとは思えないし、彼の両親をはじめとする人々が
それを許すまい。だが、この機会を逃せば、今度は二度と才人が帰ることは
不可能になるかもしれないのだ。
「わかってるわ……でも、サイトをずっと待ってるご両親を、これ以上苦しめる
わけには……いかないでしょう」
確かに、そのとおりだ。半年ものあいだ、子供と無理矢理に引き離された
親がどんな気持ちになるか、レリアとシエスタの親子に才人が感じたように
ルイズにだってわかるに違いない。しかし、キュルケにはそれも、ルイズが
『正論』という盾の影に隠れて、本当の気持ちを吐き出すことに怯えている
ように見えて、力づくで無理ならばと一計を案じることにした。
「ねえルイズ、こんなお話を知ってる? 昔々、あるところに戦争ばかりしている
二つの国がありました……」
キュルケはルイズからの返事を待たずに、彼女のかたわらに座りながら、
とくとくと子供に子守唄を歌う母親のように、よく通る声で語り話を始めた。
”二つの国は、ずぅっと長いあいだ戦を続けて、大勢の人が傷つき死んでいました。
そんな中で、片方の国に一人の少年兵士がいました”
”彼は、戦いの中で家族を殺され、自分も大勢の敵を殺してきました。けど、
あるときに彼は戦場で一人の傷ついた少女の命を救いました。けれど実は、
その少女は敵国の兵士で、彼はこんないたいけな少女を戦争に駆り出すとは、
敵国はなんてひどいところなのだと怒り、献身的に彼女を介護しました”
”初めは、単なる同情や、失った家族の代償だったのかもしれません。しかし、
共に過ごすうちに戦いに明け暮れていた少年は、誰かを守るということの喜びを、
死に怯えていた少女は守られることで生きることへの希望を持っていきました”
”そして、少年と少女は次第に惹かれあい、愛し合うようになっていきました”
”けれど、少女が負った傷はあまりに深く、少年の献身的な治療だけでは
治癒させることはできず、日を負うごとに少女は衰弱していきました”
”さらに、二人のことを知ったその国の軍隊は、少年にその少女を
引き渡すように要求してきたのです”
”少年は悩みました。いつまでも、愛する少女といっしょにいたい。けれども、
ここにいれば彼女は軍隊に殺されるか、それでなくとも衰弱して死んでしまいます。 8
助けるには、敵国に彼女を帰して治療を受けさせるしかありません。ですが、
敵国の人間である自分は、いっしょに行くことはできない。そうしたら二度と
自分は彼女に会うことができなくなってしまう”
”少女の死期が迫る中で、少年は悩み悩んだ結果、ひっそりと彼女を
敵国に送り届けました。あの国なら、彼女の家族も仲間もいる。自分なんかと
いるよりも、そのほうが彼女の幸せなんだと、自分自身に言い聞かせて……”
”しかし、少年の願いはかなえられませんでした。国に戻された少女は、
確かに傷の治療を受けさせられましたが、敵国に囚われていたということで
激しい尋問を受けさせられ、身も心もボロボロのままで、口封じのために
再び戦場に送り込まれました”
”さらに、国に残った少年にも、選択の代償はやってきました。これまでの
功績から死罪はまぬがれた彼でしたが、さらに過酷な戦場に送り込まれ、
少年は少女のことを忘れようとしているかのように戦いにのめりこんでいきました”
”そして、最後のときはやってきました。ある戦場で少年は敵軍を追い詰めます。
しかし、逃げようとしている敵を追撃している最中、少年は立ちはだかってくる
敵を殲滅した中に、あの少女が倒れている姿を見出して愕然としました”
”残酷なことに、少女は仲間からぼろくずのように使い捨てにされ、背中から
杖を突きつけられて、時間稼ぎのための捨石にされていたのです”
”少年は狂ったように少女の名を叫びます”
”少女も、少年の姿を見つけて閉じかけていた目を開けました”
”ですが、少女の体は少年の見ている前で、彼の仲間の手によって
恐ろしい魔法の餌食になり、血まみれの無残な姿に変えられていたのです”
”傷ついた少女を抱き上げたとき、彼は少女が仲間から受けた仕打ちを知り、
彼女の流した涙で、その地獄の中でずっと自分に助けを求めていたことを知りました”
”ごめん、ごめんと少年は血を吐くように謝りました。あんなところに帰したこと、
自分が非力なこと、助けを求められたのに気づきもできなかったこと、そして
守ってやることができなかったことを”
”けれど少女は恨み言の一つも言わずに、「どうして泣くの? もう一度会えて、
わたし本当にうれしいよ」と言って微笑むのです”
”そのときになって、ようやく少年は少女が何を求めていたのかを知りましたが、
すべてはもう手遅れでした”
”愛してる、その言葉を最後に息を引き取った少女の亡骸を抱いて、
少年は泣き崩れました……そのときに、少年の心もまた、死んだのです”
物語を、「おしまい」の一言で閉じたキュルケは、うつむいたままのルイズに
「どっかの誰かさんたちみたいねえ」と、からかうように言った。すると、
「だから、なんだっていうのよ」
「あら、居眠りしないで聞いてたのね。さてねえ、実は言ったあたしもよく
わかってないのよ。けど、いろんな悲恋の話は聞いたことがあるけど、
なぜかこれだけは忘れられなくてね」
「……」
「だってそうでしょ、あたしなら恋人が死に掛けてるなら、敵国だろうが
始祖の御前だろうが殴りこんでいって腕づくででも治療させるわ。
そうでなくたって、誰が愛する人を他人の手に任せるものですか!
そう考えたらもう、腹が立って腹が立ってねえ」
ルイズにも、キュルケの言いたいことはなんとなくだが理解できた。
彼女らしく不器用なやり方だが、才人をこのまま帰していいのか? それで、
本当に後悔しない自信はあるのかと言っているのだ。
ルイズは、さっきの物語でもしも少年の立場だったら、少女を国に帰しただろうかと
自分に問いかけた。そのときに、少女の命を第一に考えた少年の判断も、
もちろん間違ってはいない。しかし、少年と別れることで生き延びたとして、
少女に幸せは来たのだろうか? いや、これは自分の思い上がりだろう。
なぜなら、才人が自分を愛しているなどあるわけが……
「あ……っ!」
そこでルイズは、無意識に少年を愛した少女を才人に置き換えて、自分が
何を才人に望んでいるのかを気づかされた。
「わたし……どうすればいいの……?」
才人のために、自分はどうするのが正しいのか、ルイズの心はさらに乱れた。
そして深夜、日付が変わる時刻になったときに、ガンウィンガーとシルフィードは、
魔法学院に到着した。
「変わってないな」
学院は静まり返り、大型戦闘機が着陸したというのに人っ子一人出てくる
様子もない。ほとんどの教師や生徒が里帰りしているから、当然といえば
当然なのだが、フーケ事件の際に露呈した無用心さは改善されていないようだ。
「そうか、帰るのか……ここもまた寂しくなるのう」
学院にほとんど誰も残ってない中で、ロングビルの残していった書類の山に
うずもれながら暇をかこっていたオスマンは、気が抜けた酒を飲んだときのように
がっくりと安楽椅子に体を沈めた。
「すみません、お世話になりっぱなしのままで、それでわがままついでに、おれが
いなくなった後のことをお願いしたいんですが」
「ああ、それはかまわん。元々君はこの学院の生徒ではないから、手続きも
必要ないしな。しかし惜しいもんじゃ、君もようやくここになじんできたばかり
じゃというのに……おっと、余計なことを言ってすまんかった。コルベールくんも
悲しむじゃろうが、まあわしから話しておくわい」
「よろしくお願いします」
ルイズたちのクラスの担任教師のミスタ・コルベールは、ホタルンガと戦ったときに
助けに来てくれたことから親交が深まって、平民扱いである才人と対等に
付き合ってくれる数少ない先生だったのだが、残念ながらこのときはどこかに
旅に出ていて、いつ帰ってくるのかも定かではなかった。
才人たちはそうして、オスマンの恩人であるアスカ・シンが、その後タルブ村を
訪れていたことを話して、ミライとセリザワに部屋を一つ貸してもらえるように
頼むと、感慨深げに水パイプを手に取ったオスマンに一礼して退室していった。
それからの二人は、自分の部屋で休むというキュルケとタバサや、
ガンウィンガーの整備をしておくというセリザワとミライたちと別れると、
何気なく人気のなくなった深夜の学院をぐるりと一周して回った。火の塔、
水の塔、中庭や食堂、ホール、生徒たちや使用人たちもほとんど里帰りし、
最低限の警備員しかいない今はどこも人気なく、唯一使い魔の厩舎を覗いて
みたときに、ルイズのクラスメイトの灰色の髪の女子が使い魔の大ムカデに
エサをやっていたので声をかけていった。
「そっかぁ、サイトくん帰っちゃうんだぁ……寂しくなるねぇ」
彼女は、実家がかなりの貧乏貴族で、なかば口減らしのために学院に
押し込まれて、自分で秘薬とかを調合して売ることで生活費と学費を稼いでいる
という苦学生だが、健気にもそれを感じさせない明るい性格の持ち主で、才人も
召喚当時の右も左もわからないころは、いくらか助けてもらった思い出がある。
もっとも、使い魔のメガセンチビートとかいう空飛ぶ大ムカデに巻きつかれて
しまったときは、情けないが気絶してしまった思い出したくない記憶もある。
最近は色々あったせいもあって疎遠になっていたが、訳を話すと「別れに
涙は禁物だよ。はい、これ餞別だよ」と、手作りの傷薬をくれてはげまして
くれた優しさが身にしみた。
そうして、明日の朝一番で街に薬をおろしに行かなきゃいけないから、ここで
お別れだねという彼女と別れると、二人はもう一度学院の散策に向かった。
ギーシュと決闘したヴェストリの広場、ルイズが失敗魔法で大破させた
教室、行くところどこも、良くも悪くも半年間ここでつむいできた思い出を
ありありと思い出させてくれた。
「人のいない学院って、こんなに広かったんだな」
「ええ、一年半も過ごした学院だけど、こんな景色もあったのね」
教室の窓を開けて見渡した学院は、一枚の絵画のように幻想的な雰囲気に
包まれており、まるで二人が天空に聳え立つ神の城の王子と姫になったような、
そんな気分にさせた。
「おれがいなくなった後も、お前はここで過ごすんだよな」
「そうよ。これまでと変わらず、朝起きて、食事して、授業を受けて、宿題して
寝る。それだけよ」
「お前、おれがいなくてちゃんと朝起きられるのか?」
「……そろそろ夜も遅いわ、部屋に帰りましょう」
久しぶりに帰ったルイズの部屋は、あの終業式の大掃除のときのままで、
整然と片付いていて、なんとなく他人の部屋のようで違和感があった。
しかし、カーテンを開いて窓を開けると、二つの月が部屋の中を照らし出し、
懐かしい光景がそこに現出した。
「ねえサイト、あの日のこと覚えてる?」
「ああ、何度も忘れようと努力したが、ぜーんぜん忘れられなかった、あの
最初の日のことだろ……」
異世界ハルケギニアにやってきた最初の夜、この部屋でルイズから
使い魔の心得とやらを教え込まれ、二つある月にびっくりして、そして
硬い床の上で寝かされた散々な日のことを、才人は頭を抱えつつ思い出した。
「あ、あのときのことは、悪かったと思ってるわよ。だからほらっ! 今日は
特別に、わたしといっしょにベッドで寝ることを許可するわ」
「へいへい、ありがとうございます……ん? こいつは、そうか忘れてた」
才人はベッドに入ろうとしたところで、隅のほうに何か固い感触があるので
まさぐってみると、そこから出てきたものを見て思わず微笑んだ。
「それって、あんたがここに来たとき持ってた」
「ああ、おれのノートパソコンだ。すっかり忘れてたぜ、懐かしいな」
それは、才人が召喚される前に修理に出していて、電気屋からとりに行った
帰りに召喚されてしまったのでいっしょに持ってきてしまった彼のパソコン、
その後、電池残量が乏しくて封印していたのだが、どうせ明日にはこれも
持って帰ることになるのだからとスイッチを入れると、OSの名前に続いて、
立ち上がった画面が浮かび上がった。
「うわあ、きれいな絵ね」
「だろ、親父のツテで、中古だがかなり年式の新しいやつをもらったからな。
使いもしないのに、南極でも見れる衛星LANなん、て……!」
画面を才人の肩越しに見入るルイズの前で、才人は思わず固まって
しまった。そこには、修理に出す前と同じ壁紙の画面の隅に、この世界で
最後に立ち上げたときには確かに無かったウィンドウが、『新着メールを
359件保存しています』と、表示しており、まさかと思ってメールブラウザを
開くと、数秒の読み込みの後に、自分宛てのメールが次々と表示されてきた。
「これは……そうか!」
才人は、地球にいれば今日までの日付で止まったその大量のメールが、
どうして届いたのか思い当たった。考えられる可能性はたった一つ、
GUYSの開いたゲートを通して、インターネットをするための衛星回線が
このハルケギニアにつながったのだ。しかし、それにしたってなんという
奇跡か、考えてみればウィンダムを作るための大量の分子ミストを
送り込めた時点で気づいてもよかったのだが、こんなどこにでもあるパソコンが
地球とハルケギニアをつなげてしまうとは。
恐る恐ると、才人はスライドさせてメールの送り主の名前を見ていった。
友人のものもあった。ダイレクトメールがあった。
だが、一番多かったのは母からのメールだった。
最後の、つまり今日のメールを開いた。
《才人へ、あなたがいなくなってから、もう半年が過ぎました。
今、どこにいるのですか?
いろんな人に頼んで、捜していますが、見つかりません。
もしかしたら、メールを受け取れるかもしれないと思い、料金を払い続けています。
今日は、あなたの好きなハンバーグを作りました。
タマネギを刻んでいるうちに、なんだか泣けてしまいました。
生きていますか?
それだけを心配しています。
他は何もいりません。
あなたが何をしていようが、かまいません。
ただ、顔を見せてください》
次々にメールを開いていく。文面はほとんど変わらない。いなくなった才人を
案じるメールが、たくさん並んでいる。才人は、それらのメールを読んでいく
うちに、画面とキーボードの上に無数の涙を垂らして、パソコンの電池残量が
とうとうゼロになって、警告音に続いて電源が落ちたときには、もう何も見ることが
できなくなっていた。
「サイト、どうしたの? ねえサイトったら!?」
突然、ルイズには読めない文字の前で黙り込んで、とうとう泣き出してしまった
才人に、慌てたルイズが彼の肩を揺さぶりながら問いただすと、才人は
鼻水をすすってぽつりと答えた。
「メールだ……」
「メール?」
「手紙だ。母さんからの」
ルイズは蒼白になって息を呑んだ。そして、今才人が目を閉じていることを
神に感謝すると同時に、もう絶対に彼をこの世界に引き止めてはいけないんだと、
才人と同じように涙のしずくを垂らした。
続く
今週は以上です。支援、ありがとうございました。
どうも、こういうしんみりした心象描写は苦手です。しかも、才人もルイズも悩み始めたら
内にこもってしまうタイプですから、こういうときは話を進める上でキュルケがいてくれて
本当に助かります。代わりにタバサが半分空気ですが、無駄口叩かないキャラは
扱いが大変ですねえ。
なお、作中の悲恋の物語はあくまでハルケギニアに伝わる一物語ですので、地球上の
どこかに似たお話があったとしても、それはすべて偶然ですのであしからず。
では、次回からはまとめにはいります。
>>432 毎週毎週お疲れです
タバサはルイズろキュルケが喧嘩した時のストッパーとして重宝すればいいかと
おつおつ。
まさかの絶望の人出演に吹いた。
というか銃士隊の副隊長さんには別れを告げなくていいんだろうか?
乙
どうやってこの量と質を維持してるのか…
第95話
最後の夜
ウルトラマンメビウス
ウルトラマンヒカリ 登場
ハルケギニアの夜空は、二つの月がそれぞれ個別に満ち欠けを繰り返し、
青い月が一つだけしか見えないときもあれば、どちらの月もまったく見えない
新月の夜もある。
そして、あの日食の日は二つの月が完全に満ちる特別な満月であり、それから
二日が過ぎたこの日の空は、青と赤の月が、まるで千千に乱れる才人とルイズの
心を象徴するかのように、中途半端な欠け方で、くっつきもせず離れすぎもせずに
夕闇に染まりつつある星空の中にたゆたっていた。
「ルイズ……おれ、地球に帰るよ」
エンマーゴとの戦いが終わってしばらくしてからのこと、才人に呼び出されて
地球へ帰るという決意を告げられたルイズは、一瞬頭の中が蒼白になってしまった
ものの、理性と意思を総動員して自分を奮い立たせると、高い熱を出しているときの
ように視界がぐらつき、動悸が押さえようもないくらいに激しくなっていく中で、
彼に言葉を返した。
「そ、そう……やっと決意が固まったの……よ、よかったじゃない。これで、
あんたも自分の家に帰れるのね」
そのとき才人がはっきりとルイズの顔を見ていれば、作り笑いの中で
大量の冷や汗をかきながら震えているのが見えただろうが、あいにくそのときの
彼にルイズの顔を直視する勇気はなく。
「ああ、長いあいだ世話になった」
と、視線を逸らして言うのが精一杯だった。
「ふ、ふん、無駄飯食いが減って、せいせいするわ。で、でも、どうして急に
そんなこと決めたの? それくらい教えなさいよ」
「……懐かしくなりすぎちまってな……」
「え?」
「レリアさんや、シエスタたち親子を見てると、お袋を思い出しすぎちまう。
きっと、すっげえ心配してるだろうな。それに……この村の人は、みんな自分の
故郷のために努力してる。おれは、やっぱりこの世界では根無し草だって実感した」
いくらこの世界に長くいようと、才人が地球人であることを動かすことはできない。
佐々木隊員のように、この世界に骨をうずめるだけの根は張り巡らせていないし、
第一地球にはまだ彼という草を育てた両親という土が、彼の根を離さずにずっと
待っている。根は地球に、葉はハルケギニアに、今の才人は洪水に飲み込まれた
一本の草のように、ただの草にも、ましてや水草になることもできずに水面で必死に
自分を探していた。
「あ、で、でも心配するなよ! 行ったっきり二度と帰れなくなるって決まったわけ
じゃねえし、きっとまた戻ってくるよ!」
それが気休めであることくらい、ルイズにだって簡単にわかる。それでも、
言わずにはいられないのだろう。
「サイト……わ、わたしも……」
ルイズは、自分も連れて行ってと思わず口にしかけて止めた。無理をしてでも
才人と離れたくないという気持ちに偽りはないが、それでは二人の立場を
逆にしてしまうだけだ。第一、無理に行ったとしても才人にルイズを養う力はない。
しばらくのあいだ、才人もルイズも次の句をつなぐことができずに、沈黙と静寂が
その場を支配した。それが破られたのは、二人とも棒立ちで何十分経過したのか、
寺院の扉が無遠慮に外から開け放たれたときだった。
「はーいーっ! 探したわよ二人とも、急に消えるもんだから何かあったんじゃ
ないかって……あら? お取り込み中だったかしら」
どうやら、かなり長い時間を無為に過ごしてしまっていたらしいが、キュルケは
二人の雰囲気を見て、なんとなくそれを察して訳を聞くと、なるほどとかぶりを振った。
「そう、とうとう覚悟を決めたのね」
思えば、この村には才人の望郷の念を呼び覚ますものが多すぎた上に、レリアと
シエスタの親子を見て、国の両親が心配になったというのが何よりも大きいだろう。
例えばルイズも、万に一つもないかもしれないが母親のカリーヌが倒れたり、
姉の誰かが事故に合ったという知らせが来たりしたら、いくら日頃反目している
とはいっても飛んで帰るし、キュルケもそれは同様。タバサも、もしも病床の
母に手を出す者がいたら、即座に殺すつもりでいた。
「で、ルイズはそれでいいわけ?」
「え?」
「え、じゃないわよ。使い魔と主人は一心同体、どちらかが死ぬまで離れる
ことはできないんだって、いつもあなたが言ってることじゃない!」
「……」
それが建前を利用した叱咤であることは明らかだった。才人が故郷に帰る
という苦渋の決断をしたことは仕方が無い。だが、ルイズはその”仕方がない”を
才人の意思を尊重するという理由で無条件に許容しすぎて、自分の気持ちを
いまだにまともに口に出せていない。要するに、キュルケは、
「いいかげんにしろ!」
と、ルイズを言外に怒鳴ったのだった。
しかし、無言で押し黙るルイズに、これまでのじれったさもあってさらに
怒鳴りつけようとしたキュルケは、そでを引いてくるタバサに止められた。
「どうせ無駄……」
キュルケは彼女らしくもなく、軽く歯軋りをすると怒りをおさめた。長いあいだ
他人に心を閉ざし続けたルイズの心の扉を、力でこじ開けさせるのは無理だと、
タバサの言葉で気づいたのだ。
「ああ……そういえばそうね。この子の頑固さは、ダイヤモンドより硬いん
でしたっけ。ともかく、一度帰るわよ、ここはどうも陰気くさくていけないわ」
扉を乱暴に開け放つと、キュルケはいつもの淑女を装った体ではなく、
荒っぽく道の砂利を踏みつけながら歩いていって、才人たちもタバサに
無言でうながされて、寺院を後にした。
しかし、タバサの一言は同時にルイズの心にも大きく突き刺さっていた。
”どうせ無駄”
それは、どうせ本当のことを才人に言う勇気なんか、どうしたってルイズに
あるわけがないと、この小さな少女からの、冷酷な侮蔑のように聞こえたが、
ルイズがそれに対抗できる文句は虚勢の一言も存在しなかった。
二人が戻ったときにはタルブ村での騒動は、後始末が一区切りついて、
リュウたちも一休みしていたところで、才人は自分の決意を彼らにも伝えた。
「本当に、それでいいんだな?」
「はい、ですが、みんなとあいさつをすませたいんで、もう一日待ってください」
才人の決意を聞いたリュウは、それ以上なにも言いはせずに、彼の肩を
軽く叩いただけだった。
「いいのか、何も言わなくて?」
「言ってどうする。ますますあいつを悩ませるだけだろう」
ジョージの問いかけに、リュウはそっけなく答えただけだったが、ジョージも
ミライも、そのとおりだとわかっているので、才人に対しては何も言ってやる
ことはできなかった。
それに、実際問題としてGUYSもいつまでも才人にだけかまっているわけにも
いかず、次のゲートを開くときにも備えて、この世界のデータの収集など、
やることはいくらでもあったし、激しい戦闘を繰り広げたガンフェニックスは
どうしてもいったんフェニックスネストに戻して整備を受けさせる必要があった。
そして、別れ際に才人はもう一つリュウに自分の持ち物を託した。
「この銃は?」
「ガッツブラスター、俺より前にこの世界に来た異世界の人が残していったもの
だそうです。もう弾切れですが、うちにもって帰るわけにもいかないし、
引き取っていただけますか?」
かつてアスカ・シンがオスマン学院長に託し、二十年の月日を経て才人の
手に渡ったビームガンは、リュウの手に渡されてその役目を終えた。
「いいの、あれあなたの武器なんでしょう?」
何度も肩を並べて戦って、ガッツブラスターの威力を目の当たりにしてきた
キュルケが、もったいなさそうに言ったが、才人は首を振った。
「いいさ、俺の故郷には戦いはないし、ここに残していって、誰かに悪用されても
困るんでな」
この世界の技術ではガッツブラスターの解析も複製も不可能だが、ライト兄弟の
飛行機の発明からゼロ戦が登場するのに、わずか四十年ほどしか必要としていない。
ここに残していって、百年後、二百年後に構造を解析されたら、当然のように
兵器に転用されるだろう。平和を守るための武器が、戦争兵器にされるのは
耐え難いことだった。その点、ゼロ戦も同様だが、さすがにあれを持ち帰るのは
無理なので、才人はあのゼロ戦のパイロットの遺体から預かった軍人手帳を
向こうの世界の遺族会に届けることにして、機体の破壊をロングビルに頼むことにした。
「だから、その分もうしばらく頼むぜ、デルフ」
「相棒……」
背中のデルフリンガーも、寂しそうにつぶやいた。半年前、武器屋で買われて以来、
なんだかんだ言いながらも才人とデルフは常に死線をくぐり続けてきた。才人が
いなくなったら、銃士隊にでも引き取ってもらえば使い手には困らないだろうが、
彼としてもこんな形でせっかくめぐり合った使い手と別れるのは心苦しいだろう。
「シエスタ、ごめん、さよならだ」
「サイトさん……」
最後に、シエスタとレリアの親子に才人は別れを告げた。シエスタは、エンマーゴに
壊されたタルブ村の復旧のために、ウェストウッドには戻らずにここで皆と別れる
ことになったから、必然的に才人ともお別れということになる。
「思えば、ずっと前からシエスタには世話になりっぱなしだったな。ろくにお礼も
できなくて、本当にごめん」
「そんな……お礼を言わなきゃいけないのはわたしのほうです。サイトさんが
来てから、学院のメイド仲間たちも、貴族の人におびえてばかりじゃなくなりました。
それに、サイトさんのお友達の人は、みんないい人ばかりで、ずっと働き甲斐の
あるところになって、みんな感謝してるんです。それに、それに……わたしは
そんなサイトさんのことがずっと……」
「シエスタ、聞き分けなさい。サイトくん、できれば私もあなたをシエスタの婿に
もらっておじいさんの畑を受け継いでもらいたかったんだけど、代わりにどうか
おじいさんの魂を故郷に返してあげてね」
レリアはぐずるシエスタをなだめると、才人に佐々木隊員の使っていた隊員服と、
メモリーディスプレイ、トライガーショットを手渡した。
「はい、おばさんにもいろいろとお世話になりました。それに、いろんな勉強を
させてもらいました。本当に、ありがとうございます」
それは才人の本音だった。親の心子知らずとはよく言うが、実際どれほど自分が
親不孝者だったか、嫌と言うほど実感していた。レリアは、祖父や両親から
受け継いだ村を、シエスタたち子供たちに受け継がせるために命を懸けていた
というのに、自分は生まれてこのかた両親から受けた恩を百分の一も返した
ことはない。孝行したいときに親はなしとも言うが、もし次の機会があったとしても、
それが間に合うとは限らないのだ。
名残惜しむシエスタや、感謝の気持ちを表す村人たちに見送られながら、
才人たちは、今度はシルフィードのみに乗り込み、ガンフェニックスから分離した
ガンウィンガーに引かれ、かろうじて動力の残っていたガンクルセイダーは
ガンローダーとガンブースターの二機に牽引されて、ガンウィンガーは
ウェストウッド村へ、残りの三機は地球へとそれぞれ飛び立った。
「じゃあ、俺たちはいったん地球に帰るが、ミライ、それまで彼らを見てやってくれよ」
「はい。まかせてください」
「セリザワ隊長も、お気をつけて」
「ああ……俺には、この世界でやらねばならないことがあるからな」
最後に無線で、リュウはガンウィンガーとともにこちらの世界に残ることに
なったミライとセリザワの二人に別れを告げてこの世界を去っていった。
計算によれば、ゲートが閉じる時間はこちらの世界では明日の昼過ぎ、
ガンフェニックスの最後のハルケギニア突入は地球時間で午前九時と決まった。
才人たちに残された時間は、あとおよそ半日程度……ウェストウッド村に
戻った才人にとって、それは長いのかそれとも短いのか、他人には判断できない。
「あの二人、どうしたの? 帰ってきてから、一言もしゃべらないけど」
「今は、そっとしておいて」
ティファニアに、戻ってきた才人とルイズがずっと沈黙して、何を言っても
無視されることを問われたキュルケは、自分も今はどうしていいのかわからない
というふうに寂しげに答えて、タルブ村で何があったのかを彼女から伝えられた
ティファニアは残念そうにうつむき、ロングビルは空を見上げると、憂えげに
ため息を吐いた。
「二つの満月、二つの月が重なるときに起こる日食が呼ぶ奇跡……ね」
恐らく、過去に日食のときに起こった奇跡と呼ばれている現象も、地球や
その他の異世界と一時的にハルケギニアが連結されることによって
この世界に現れた、この世界の人間では理解できないもののことを
指しているのだろう。
「ふっ……奇跡といえば、私がここにいるのも何もかも、奇跡みたいなもんだけどね」
これまであの二人が起こしてきた、”奇跡”と呼べるものは数知れない。
非情な盗賊フーケが、魔法学院教師ロングビルとしてこうしているのも、
それにトリステインを襲った様々な事件を解決してきた背後の多くには、
彼ら二人の姿があった。
ただ、奇跡とは神が人間に与えた祝福と言われるが、あの二人にとって
この奇跡は、果たして幸せなものになるのだろうか……
「神様ってのは、いったい人間に何をさせたいんだろうねえ」
鬼や悪魔なら、やることがはっきりしているからいい。しかし、神様というやつは
人を救うかと思えば試練を与えたり、罰を下したりと節操がない。さして敬虔な
ブリミル教徒ではない彼女は、あの二人にこんなろくでもない運命を与えた
神という奴がいるとしたら、靴の先っぽを踏んづけてやりたい気持ちになった。
そして、そんな才人たちを、セリザワとミライはガンウィンガーの翼の上に
たたずんで見守りながら、テレパシーを通して彼らの心の中にいる
ウルトラマンAと、精神世界で会話していた。
「エース兄さんは、やはりこの世界に残られるんですか?」
「ああ、ヤプールの大攻勢は食い止めたが、今日のようにそれとは関係ない
原因で暴れだす怪獣や、ヤプールに便乗して漁夫の利を占めようとする
宇宙人が、いつこの星を狙いに来るかもしれない。今、この星を離れるわけには
いかないんだ」
エースの言葉は、ヤプールをきっかけにしてこの星に怪獣頻出期が訪れる
かもしれないという可能性を示唆していた。そうなれば、地球と比べてさえ
はるかに戦力に劣るこの星など、簡単に滅亡してしまうだろう。
だが、メビウスはエースの言うことをもっともだと思いながらも、それがどんなに
危険なことかということを危惧していた。
「しかし、ヤプールはまた力を蓄えて大攻勢をかけてくるでしょう。いくらエース
兄さんでも、一人では」
「だからだ、メビウス、お前は向こうの世界に戻って、ゾフィー兄さんやウルトラの父に
この世界で起こっていることを直接報告しろ。そうして、皆を連れて必ずここに
戻って来い」
「兄さん、それじゃあ」
「ああ、これはもはや私一人で解決できることではない。我らウルトラ兄弟全員で
当たるべき問題だ。お前が次のゲートを開いてくるまでの三ヶ月、私が何としてでも
持ちこたえていよう。いいな」
「兄さん……」
「心配するなメビウス、ここには俺も残る」
「ヒカリ!」
「ナイトブレスを持つ俺ならば、この世界でも行動に支障はない。それに、ボガールが
この世界で隠れ潜んでいるのならば、奴を倒すのは俺の仕事だ」
ヒカリにとってボガールの殲滅は宿命と呼んでいい。食欲のおもむくままに
惑星アーブを始め、数多くの命あふれる星を滅ぼしたあの悪魔が、この世界に
潜んでいる可能性が少しでもあるなら、絶対に見逃すわけにはいかなかった。
「わかりました。でも、無茶はしないでくださいね」
「ああ、俺はもう、二度と復讐の闇に囚われたりはしない。ボガールは、あくまで
宇宙警備隊員として倒す」
それを聞けば、メビウスにもう言うことはなかった。
「よろしくお願いします。僕も、必ずソフィー兄さんたちと共に、もう一度ゲートを開き、
この世界に戻ってきます! ですが、エース兄さん……」
「わかっている。メビウス、人間の命は我々に比べて短く、そしてその生涯には
常に試練がともなうものだ」
「はい、才人くんとルイズちゃん、ぼくらに何かしてあげられることはないんでしょうか?」
メビウスは、深く沈みこんでいる二人を心配して言ったが、エースはそんな迷える
弟に、人間、北斗星司として教え諭した。
「残念だが、我々には何もしてやることはできん。だが、人間には自分の力で
試練を乗り越えていける力がある。お前の仲間たちがそうであったように、彼らが
どんな答えを出すにせよ。信じて見守ってやれ」
「はい!」
ウルトラマンは決して万能の神ではない。怪獣を倒し、宇宙人の侵略を阻止
することはできても、一人一人の人間が、その中でどんな人生を歩むかは、
その人間自身の選択しかないのだ。
しかし、残された時間は過ごす方法が無為にせよ有意義にせよ、完全に
平等に流れていき、太陽が地平線上に消え去った後でも、才人とルイズは
ろくに会話をしようともしていなかったが、夕食後に才人から皆に頼まれたことは、
一同を驚かせた。
「今夜のうちに、学院に帰るですって!?」
「ああ、せめて学院長くらいにはあいさつしておきたいからな」
ガンウィンガーに牽引してもらえば、学院までは一時間半もあれば充分だろう。
夜半に飛べば地上から目撃されても流星と間違えられるかもしれない。しかし、
ルイズはそれでいいようだったが、それがこの世界への未練のためではないのかと
キュルケに問われると、才人はため息をついて答えた。
「正直に言うと、そうだろうな。てか未練がないなんて言ったら、おれはどんだけ
人でなしなんだよ」
「そうね……でも、やっぱり帰りたくなくなったからこっちに残るって、気が変わっても
あたしは全然歓迎だからね、ダーリン」
色っぽくウィンクしてきたキュルケに、才人は思わず赤面してルイズに無言で
蹴り飛ばされた。
「ってえなあ、何するんだよ!」
「足がすべったわ」
それっきりお互いにそっぽを向いてしまった二人に、キュルケとタバサは
顔を見合わせて、やれやれと首を振った。ほんとに、この期に及んでもなお、
素直になれずに嫉妬を燃やすとはたいした強情さだ。
「ちょっと、はっぱをかけてやるつもりだったんだけどねえ」
「あの二人の場合、逆効果」
タバサに、論文の内容を酷評されたようにつぶやかれて、キュルケは
軽く苦笑いして、ごまかすようにタバサの肩を叩いた。上っ面だけの
恋愛ごっこなら奪い取ってやりたくなるが、本当に大事な気持ちで
思っているのなら、下心なしで応援したくなる。それもまた、彼女の系統である
『火』の情熱のなせる業かはわからないが、才人と恋愛感情がなくなっても、
ルイズと家柄では宿敵同士でも、友情まで砕けることはなかった。
「まあともかく、学院に帰るのならわたしたちも同行するわ。もう付き合いも長いし、
ここでお別れなんて、つれないじゃない」
「ふんっ! 勝手にしなさいよ」
嫌そうに振舞っているが、それが照れ隠しなのは見え見えなので、キュルケは
笑いをこらえるのに苦労した。
今度の飛行では、ガンウィンガーにミライとセリザワが乗らねばならないから、
シルフィードに残りの全員が同乗することになった。しかし、才人、ルイズ、
タバサ、キュルケが乗ったところで、ロングビルが同乗を断ってきた。
「ロングビルさんは、行かないんですか?」
「ええ、元々もう少しここにいる予定だったし、それにせっかく戦争が終わった
んだから、この際あちこち見て回りたくてね。こんなとこでも、一応私の故郷だし」
ティファニアをかくまうようになってから、お尋ね者扱いされるようになった
マチルダ・オブ・サウスゴータも、レコン・キスタも壊滅し、旧体制で彼女の敵だった
貴族がほぼ廃滅か没落した今なら、もうこそこそ逃げ回る必要はないだろう。
むろん、本名こそ名乗ることはできないが、今更その名を名乗る気はないし、
商人からの速報でレコン・キスタの残党も、ロンディニウムに王党派が入城した
とたんに完全に降伏して、王権の再生がなった今、それがどういう方向に
向かうのか、それぐらいは自分の目で確かめてみたかった。
「それに、ま、一応教師みたいなもんだし、世界情勢ってやつにも詳しくないと
生徒のためにならないし、ね……しっかし、一時の宿と日銭稼ぎのつもりで
あのじいさんに取り入ったのに、いまや本職、人生ってのはわからないもんだよな?」
言外に、裏家業から抜けさせてくれたことへの感謝をにじませつつ苦笑いした
ロングビルに、才人は「いえいえ、ロングビルさんは面倒見がいいし、ほんと
天職ですよ」と答えて、さらに苦笑させた。
「言ってくれるわね。けど、私はあくまで給料に見合うだけの分は働いてやってる
だけってのを、忘れてもらっちゃ困るよ」
そう、あのホタルンガ事件の終わりで、彼女は盗賊をやめて学院長秘書として
正式に雇われるときに、オスマンに通常の五倍もの給金をふっかけ、その一部は
ルイズが出しているのだが、その分に見合うだけの仕事はしているのだ。
「だがまあ、子供の面倒をみるのは嫌いじゃないし、給料日を待って過ごすのも
思ったより悪くはない。だから、私はまたあそこに帰るよ、だからあんたも
人のことには構わずに、自分の思ったように行動しな」
彼女は不器用なりに才人を激励すると、あとは心配するなと眼鏡の奥の瞳を
緩ませて、昔からティファニアたちに見せてきたのと同じ笑顔で、早くいきなと
うながした。
「じゃあ、さようなら、ロングビルさん、テファ」
「元気でな。体に気をつけていくんだよ」
「さようなら……また、またいつでもいいですから、遊びに来てくださいね」
ぐすりと、涙をこらえながら手を振ってくるテファを見ると、また罪悪感が
こみ上げてくるが、それも自分で決めたことであるから仕方がない。
テファとロングビル、アイや子供たちに手を振って見送られながらシルフィードは
飛び立ち、ついで離陸したガンウィンガーが、今度はゆっくりめに加速して
夜のアルビオンの空を流星のように飛び去っていった。
やがて機体は大陸から洋上に出て、黒一色で塗り込められた中を速度を
さらに上げて疾走していく。学院までは、およそあと一時間ほどといった
ところだろう。
相変わらず、誰も一言も発しないそんな中で、キュルケは才人が昼間の疲れ
からか、うつらうつらとし始めているのを見ると、彼が眠っているのを確認して、
隅のほうで向こうを向いたままひざを抱えてうずくまっているルイズの肩を軽く叩くと、
声をかけた。
「ルイズ、サイトに何か言うことはないの?」
「……」
「大丈夫、サイトは眠ってるわよ」
「……話せば、別れがつらくなるだけよ」
ぽつりと、しぼりだすように答えたルイズの言葉に、キュルケは話せば
つらくなるのは、自分ではなくてあくまで才人を指していることを感じ取った。
しかし、自分と話すことで才人の決意を鈍らせてはいけないというルイズの
決意の中に、本当に才人に言いたい言葉を、それは言ってはいけないことだと
自分の中に押し込めてしまっている、彼女の頑固で愚直すぎるほどの真面目さ
が生んでしまった苦しみも、同様にキュルケにはわかっていた。
「あなたって、本当にどうしようもないくらいに馬鹿なのね」
「……うるさい」
「でもね、同じくらいに純粋で、とても優しい心を持ってる。まるで、天使のような
きれいな心をね」
「え……」
思いもよらない宿敵からの優しい言葉に、ルイズは振り返りこそしなかったが、
少しだけ頭を上げた。
「サイトの気持ちを尊重してあげたいあなたの気持ちはわかるわ。けどね、
おそらくサイトはあっちに戻ったら、当分のあいだ、いいえ悪くすれば二度と
帰ってくることはできないわ」
キュルケの言うことに反論の余地はなかった。仮に三ヵ月後に再度の
ゲートを作り出すことに成功したとしても、どう考えても一般人である才人が
渡航させてもらえるとは思えないし、彼の両親をはじめとする人々が
それを許すまい。だが、この機会を逃せば、今度は二度と才人が帰ることは
不可能になるかもしれないのだ。
「わかってるわ……でも、サイトをずっと待ってるご両親を、これ以上苦しめる
わけには……いかないでしょう」
確かに、そのとおりだ。半年ものあいだ、子供と無理矢理に引き離された
親がどんな気持ちになるか、レリアとシエスタの親子に才人が感じたように
ルイズにだってわかるに違いない。しかし、キュルケにはそれも、ルイズが
『正論』という盾の影に隠れて、本当の気持ちを吐き出すことに怯えている
ように見えて、力づくで無理ならばと一計を案じることにした。
「ねえルイズ、こんなお話を知ってる? 昔々、あるところに戦争ばかりしている
二つの国がありました……」
キュルケはルイズからの返事を待たずに、彼女のかたわらに座りながら、
とくとくと子供に子守唄を歌う母親のように、よく通る声で語り話を始めた。
”二つの国は、ずぅっと長いあいだ戦を続けて、大勢の人が傷つき死んでいました。
そんな中で、片方の国に一人の少年兵士がいました”
”彼は、戦いの中で家族を殺され、自分も大勢の敵を殺してきました。けど、
あるときに彼は戦場で一人の傷ついた少女の命を救いました。けれど実は、
その少女は敵国の兵士で、彼はこんないたいけな少女を戦争に駆り出すとは、
敵国はなんてひどいところなのだと怒り、献身的に彼女を介護しました”
”初めは、単なる同情や、失った家族の代償だったのかもしれません。しかし、
共に過ごすうちに戦いに明け暮れていた少年は、誰かを守るということの喜びを、
死に怯えていた少女は守られることで生きることへの希望を持っていきました”
”そして、少年と少女は次第に惹かれあい、愛し合うようになっていきました”
”けれど、少女が負った傷はあまりに深く、少年の献身的な治療だけでは
治癒させることはできず、日を負うごとに少女は衰弱していきました”
”さらに、二人のことを知ったその国の軍隊は、少年にその少女を
引き渡すように要求してきたのです”
”少年は悩みました。いつまでも、愛する少女といっしょにいたい。けれども、
ここにいれば彼女は軍隊に殺されるか、それでなくとも衰弱して死んでしまいます。 8
助けるには、敵国に彼女を帰して治療を受けさせるしかありません。ですが、
敵国の人間である自分は、いっしょに行くことはできない。そうしたら二度と
自分は彼女に会うことができなくなってしまう”
”少女の死期が迫る中で、少年は悩み悩んだ結果、ひっそりと彼女を
敵国に送り届けました。あの国なら、彼女の家族も仲間もいる。自分なんかと
いるよりも、そのほうが彼女の幸せなんだと、自分自身に言い聞かせて……”
”しかし、少年の願いはかなえられませんでした。国に戻された少女は、
確かに傷の治療を受けさせられましたが、敵国に囚われていたということで
激しい尋問を受けさせられ、身も心もボロボロのままで、口封じのために
再び戦場に送り込まれました”
”さらに、国に残った少年にも、選択の代償はやってきました。これまでの
功績から死罪はまぬがれた彼でしたが、さらに過酷な戦場に送り込まれ、
少年は少女のことを忘れようとしているかのように戦いにのめりこんでいきました”
”そして、最後のときはやってきました。ある戦場で少年は敵軍を追い詰めます。
しかし、逃げようとしている敵を追撃している最中、少年は立ちはだかってくる
敵を殲滅した中に、あの少女が倒れている姿を見出して愕然としました”
”残酷なことに、少女は仲間からぼろくずのように使い捨てにされ、背中から
杖を突きつけられて、時間稼ぎのための捨石にされていたのです”
”少年は狂ったように少女の名を叫びます”
”少女も、少年の姿を見つけて閉じかけていた目を開けました”
”ですが、少女の体は少年の見ている前で、彼の仲間の手によって
恐ろしい魔法の餌食になり、血まみれの無残な姿に変えられていたのです”
”傷ついた少女を抱き上げたとき、彼は少女が仲間から受けた仕打ちを知り、
彼女の流した涙で、その地獄の中でずっと自分に助けを求めていたことを知りました”
”ごめん、ごめんと少年は血を吐くように謝りました。あんなところに帰したこと、
自分が非力なこと、助けを求められたのに気づきもできなかったこと、そして
守ってやることができなかったことを”
”けれど少女は恨み言の一つも言わずに、「どうして泣くの? もう一度会えて、
わたし本当にうれしいよ」と言って微笑むのです”
”そのときになって、ようやく少年は少女が何を求めていたのかを知りましたが、
すべてはもう手遅れでした”
”愛してる、その言葉を最後に息を引き取った少女の亡骸を抱いて、
少年は泣き崩れました……そのときに、少年の心もまた、死んだのです”
物語を、「おしまい」の一言で閉じたキュルケは、うつむいたままのルイズに
「どっかの誰かさんたちみたいねえ」と、からかうように言った。すると、
「だから、なんだっていうのよ」
「あら、居眠りしないで聞いてたのね。さてねえ、実は言ったあたしもよく
わかってないのよ。けど、いろんな悲恋の話は聞いたことがあるけど、
なぜかこれだけは忘れられなくてね」
「……」
「だってそうでしょ、あたしなら恋人が死に掛けてるなら、敵国だろうが
始祖の御前だろうが殴りこんでいって腕づくででも治療させるわ。
そうでなくたって、誰が愛する人を他人の手に任せるものですか!
そう考えたらもう、腹が立って腹が立ってねえ」
ルイズにも、キュルケの言いたいことはなんとなくだが理解できた。
彼女らしく不器用なやり方だが、才人をこのまま帰していいのか? それで、
本当に後悔しない自信はあるのかと言っているのだ。
ルイズは、さっきの物語でもしも少年の立場だったら、少女を国に帰しただろうかと
自分に問いかけた。そのときに、少女の命を第一に考えた少年の判断も、
もちろん間違ってはいない。しかし、少年と別れることで生き延びたとして、
少女に幸せは来たのだろうか? いや、これは自分の思い上がりだろう。
なぜなら、才人が自分を愛しているなどあるわけが……
「あ……っ!」
そこでルイズは、無意識に少年を愛した少女を才人に置き換えて、自分が
何を才人に望んでいるのかを気づかされた。
「わたし……どうすればいいの……?」
才人のために、自分はどうするのが正しいのか、ルイズの心はさらに乱れた。
そして深夜、日付が変わる時刻になったときに、ガンウィンガーとシルフィードは、
魔法学院に到着した。
「変わってないな」
学院は静まり返り、大型戦闘機が着陸したというのに人っ子一人出てくる
様子もない。ほとんどの教師や生徒が里帰りしているから、当然といえば
当然なのだが、フーケ事件の際に露呈した無用心さは改善されていないようだ。
「そうか、帰るのか……ここもまた寂しくなるのう」
学院にほとんど誰も残ってない中で、ロングビルの残していった書類の山に
うずもれながら暇をかこっていたオスマンは、気が抜けた酒を飲んだときのように
がっくりと安楽椅子に体を沈めた。
「すみません、お世話になりっぱなしのままで、それでわがままついでに、おれが
いなくなった後のことをお願いしたいんですが」
「ああ、それはかまわん。元々君はこの学院の生徒ではないから、手続きも
必要ないしな。しかし惜しいもんじゃ、君もようやくここになじんできたばかり
じゃというのに……おっと、余計なことを言ってすまんかった。コルベールくんも
悲しむじゃろうが、まあわしから話しておくわい」
「よろしくお願いします」
ルイズたちのクラスの担任教師のミスタ・コルベールは、ホタルンガと戦ったときに
助けに来てくれたことから親交が深まって、平民扱いである才人と対等に
付き合ってくれる数少ない先生だったのだが、残念ながらこのときはどこかに
旅に出ていて、いつ帰ってくるのかも定かではなかった。
才人たちはそうして、オスマンの恩人であるアスカ・シンが、その後タルブ村を
訪れていたことを話して、ミライとセリザワに部屋を一つ貸してもらえるように
頼むと、感慨深げに水パイプを手に取ったオスマンに一礼して退室していった。
それからの二人は、自分の部屋で休むというキュルケとタバサや、
ガンウィンガーの整備をしておくというセリザワとミライたちと別れると、
何気なく人気のなくなった深夜の学院をぐるりと一周して回った。火の塔、
水の塔、中庭や食堂、ホール、生徒たちや使用人たちもほとんど里帰りし、
最低限の警備員しかいない今はどこも人気なく、唯一使い魔の厩舎を覗いて
みたときに、ルイズのクラスメイトの灰色の髪の女子が使い魔の大ムカデに
エサをやっていたので声をかけていった。
「そっかぁ、サイトくん帰っちゃうんだぁ……寂しくなるねぇ」
彼女は、実家がかなりの貧乏貴族で、なかば口減らしのために学院に
押し込まれて、自分で秘薬とかを調合して売ることで生活費と学費を稼いでいる
という苦学生だが、健気にもそれを感じさせない明るい性格の持ち主で、才人も
召喚当時の右も左もわからないころは、いくらか助けてもらった思い出がある。
もっとも、使い魔のメガセンチビートとかいう空飛ぶ大ムカデに巻きつかれて
しまったときは、情けないが気絶してしまった思い出したくない記憶もある。
最近は色々あったせいもあって疎遠になっていたが、訳を話すと「別れに
涙は禁物だよ。はい、これ餞別だよ」と、手作りの傷薬をくれてはげまして
くれた優しさが身にしみた。
そうして、明日の朝一番で街に薬をおろしに行かなきゃいけないから、ここで
お別れだねという彼女と別れると、二人はもう一度学院の散策に向かった。
ギーシュと決闘したヴェストリの広場、ルイズが失敗魔法で大破させた
教室、行くところどこも、良くも悪くも半年間ここでつむいできた思い出を
ありありと思い出させてくれた。
「人のいない学院って、こんなに広かったんだな」
「ええ、一年半も過ごした学院だけど、こんな景色もあったのね」
教室の窓を開けて見渡した学院は、一枚の絵画のように幻想的な雰囲気に
包まれており、まるで二人が天空に聳え立つ神の城の王子と姫になったような、
そんな気分にさせた。
「おれがいなくなった後も、お前はここで過ごすんだよな」
「そうよ。これまでと変わらず、朝起きて、食事して、授業を受けて、宿題して
寝る。それだけよ」
「お前、おれがいなくてちゃんと朝起きられるのか?」
「……そろそろ夜も遅いわ、部屋に帰りましょう」
久しぶりに帰ったルイズの部屋は、あの終業式の大掃除のときのままで、
整然と片付いていて、なんとなく他人の部屋のようで違和感があった。
しかし、カーテンを開いて窓を開けると、二つの月が部屋の中を照らし出し、
懐かしい光景がそこに現出した。
「ねえサイト、あの日のこと覚えてる?」
「ああ、何度も忘れようと努力したが、ぜーんぜん忘れられなかった、あの
最初の日のことだろ……」
異世界ハルケギニアにやってきた最初の夜、この部屋でルイズから
使い魔の心得とやらを教え込まれ、二つある月にびっくりして、そして
硬い床の上で寝かされた散々な日のことを、才人は頭を抱えつつ思い出した。
「あ、あのときのことは、悪かったと思ってるわよ。だからほらっ! 今日は
特別に、わたしといっしょにベッドで寝ることを許可するわ」
「へいへい、ありがとうございます……ん? こいつは、そうか忘れてた」
才人はベッドに入ろうとしたところで、隅のほうに何か固い感触があるので
まさぐってみると、そこから出てきたものを見て思わず微笑んだ。
ウルトラの人乙
「それって、あんたがここに来たとき持ってた」
「ああ、おれのノートパソコンだ。すっかり忘れてたぜ、懐かしいな」
それは、才人が召喚される前に修理に出していて、電気屋からとりに行った
帰りに召喚されてしまったのでいっしょに持ってきてしまった彼のパソコン、
その後、電池残量が乏しくて封印していたのだが、どうせ明日にはこれも
持って帰ることになるのだからとスイッチを入れると、OSの名前に続いて、
立ち上がった画面が浮かび上がった。
「うわあ、きれいな絵ね」
「だろ、親父のツテで、中古だがかなり年式の新しいやつをもらったからな。
使いもしないのに、南極でも見れる衛星LANなん、て……!」
画面を才人の肩越しに見入るルイズの前で、才人は思わず固まって
しまった。そこには、修理に出す前と同じ壁紙の画面の隅に、この世界で
最後に立ち上げたときには確かに無かったウィンドウが、『新着メールを
359件保存しています』と、表示しており、まさかと思ってメールブラウザを
開くと、数秒の読み込みの後に、自分宛てのメールが次々と表示されてきた。
「これは……そうか!」
才人は、地球にいれば今日までの日付で止まったその大量のメールが、
どうして届いたのか思い当たった。考えられる可能性はたった一つ、
GUYSの開いたゲートを通して、インターネットをするための衛星回線が
このハルケギニアにつながったのだ。しかし、それにしたってなんという
奇跡か、考えてみればウィンダムを作るための大量の分子ミストを
送り込めた時点で気づいてもよかったのだが、こんなどこにでもあるパソコンが
地球とハルケギニアをつなげてしまうとは。
恐る恐ると、才人はスライドさせてメールの送り主の名前を見ていった。
友人のものもあった。ダイレクトメールがあった。
だが、一番多かったのは母からのメールだった。
最後の、つまり今日のメールを開いた。
《才人へ、あなたがいなくなってから、もう半年が過ぎました。
今、どこにいるのですか?
いろんな人に頼んで、捜していますが、見つかりません。
もしかしたら、メールを受け取れるかもしれないと思い、料金を払い続けています。
今日は、あなたの好きなハンバーグを作りました。
タマネギを刻んでいるうちに、なんだか泣けてしまいました。
生きていますか?
それだけを心配しています。
他は何もいりません。
あなたが何をしていようが、かまいません。
ただ、顔を見せてください》
次々にメールを開いていく。文面はほとんど変わらない。いなくなった才人を
案じるメールが、たくさん並んでいる。才人は、それらのメールを読んでいく
うちに、画面とキーボードの上に無数の涙を垂らして、パソコンの電池残量が
とうとうゼロになって、警告音に続いて電源が落ちたときには、もう何も見ることが
できなくなっていた。
「サイト、どうしたの? ねえサイトったら!?」
突然、ルイズには読めない文字の前で黙り込んで、とうとう泣き出してしまった
才人に、慌てたルイズが彼の肩を揺さぶりながら問いただすと、才人は
鼻水をすすってぽつりと答えた。
「メールだ……」
「メール?」
「手紙だ。母さんからの」
ルイズは蒼白になって息を呑んだ。そして、今才人が目を閉じていることを
神に感謝すると同時に、もう絶対に彼をこの世界に引き止めてはいけないんだと、
才人と同じように涙のしずくを垂らした。
続く
今週は以上です。支援、ありがとうございました。
どうも、こういうしんみりした心象描写は苦手です。しかも、才人もルイズも悩み始めたら
内にこもってしまうタイプですから、こういうときは話を進める上でキュルケがいてくれて
本当に助かります。代わりにタバサが半分空気ですが、無駄口叩かないキャラは
扱いが大変ですねえ。
なお、作中の悲恋の物語はあくまでハルケギニアに伝わる一物語ですので、地球上の
どこかに似たお話があったとしても、それはすべて偶然ですのであしからず。
では、次回からはまとめにはいります。
ミシェルもいいけど、銃士隊ってめちゃくちゃ汗かきまくるだろうけど、平民だからやっぱサウナ風呂なのかな。
アニエスは貴族待遇だろうけど、彼女が自分だけ特別扱いするとは思えないから、学院に駐屯してたときは使用人の
風呂を借りていたのか……まさかいい若い娘たちが風呂なしはないだろ。
そういえば、18禁だが召使いの才人では貴族といっしょに入ってたな。
ラリカの外見がマジで地味子だったらフラグ乱立に説得力無いし
癖が強い外見だけど一応美人、と解釈した方が納得出来るよなぁ
仮に兎塚絵が地味でもアニメでは確実に魔改造されると思うw
シエスタとか原作は地味目のソバカス娘だけどアニメではやたら美人だったし
ウルトラの方、お疲れ様です。
毎週更新なんて自分にはとても真似できません。
というわけで、久しぶりになりますが16:45からGP−16.5(トリステインゼミナール2)を投下したいと思います。
>>432 ウルトラ乙
しかしここで帰っちゃったら水の精霊との約束はどうするんだろう
まだ指輪取り返して無かったよな
連絡が遅くなり申し訳ありませんでした.
まずは,この話を読まれて不快な思いをされた皆さまに深くお詫び申し上げます.
申し訳ありませんでした.
現在皆さまのご意見を参考にさせていただき,修正作業を行っていますが,おそらく大きく話を変えることは無いと思います.
それでもお付き合いいただけるようでしたら,今後の内容で取り返していきたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします.
それでは,失礼いたします.
「炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! GP−16.5」
「やったわね……」
「これでアルビオンも救われるでおじゃるな……」
大きく息を吐いて感慨深げに呟いたルイズ・ケガレシアだったが、
「のんびりしてる場合じゃねえぞ! 見ろ!」
デルフリンガーの言葉に、破壊されたステンドグラスから城外の様子を望む8人。
そこからは、多数の軍勢が城壁の防衛線を突破して彼女たちがいるこの城へと迫る様子がありありと見てとれた。
「あれは……」
「どうするぞよ?」
「皇太子!」
そこに慌てた様子でパリーが駆けてきた。
「ミスタ・パリー」
「皇太子は、皇太子はどちらに!?」
「ご安心ください、皇太子は既にアルビオンから脱出済みです。あとは私達が脱出するのみとなっています」
「なんと! それは有難い。これで我々も心残り無く決戦に臨む事ができるというものです」
「心残り無く……? まさかミスタ・パリー、奴らに突撃をかけるつもりなのですか?」
「もちろんです、ミス・ツェルプシュトー。皇太子の安全が確保された以上、我々に残された使命は**のみ」
「……無茶……」
「ルイズ達の使い魔でさえ出撃すべきか迷うほどの数なのですよ!」
「ぬしのような存在が犠牲になるなんて、そのような悲しい事をしてはいけないでおじゃる。そのような事をさせないために、わらわ達ガイアークはここに来たのでおじゃる」」
ニューカッスル城内、結婚式の会場だった小さな教会。その空間は今重い空気に満たされていた。
おおっと、失敗してました。再投下します。
「やったわね……」
「これでアルビオンも救われるでおじゃるな……」
大きく息を吐いて感慨深げに呟いたルイズ・ケガレシアだったが、
「のんびりしてる場合じゃねえぞ! 見ろ!」
デルフリンガーの言葉に、破壊されたステンドグラスから城外の様子を望む8人。
そこからは、多数の軍勢が城壁の防衛線を突破して彼女たちがいるこの城へと迫る様子がありありと見てとれた。
「あれは……」
「どうするぞよ?」
「皇太子!」
そこに慌てた様子でパリーが駆けてきた。
「ミスタ・パリー」
「皇太子は、皇太子はどちらに!?」
「ご安心ください、皇太子は既にアルビオンから脱出済みです。あとは私達が脱出するのみとなっています」
「なんと! それは有難い。これで我々も心残り無く決戦に臨む事ができるというものです」
「心残り無く……? まさかミスタ・パリー、奴らに突撃をかけるつもりなのですか?」
「もちろんです、ミス・ツェルプシュトー。皇太子の安全が確保された以上、我々に残された使命は叛徒どもに見事な死に様を見せる事のみ」
「……無茶……」
「ルイズ達の使い魔でさえ出撃すべきか迷うほどの数なのですよ!」
「ぬしのような存在が犠牲になるなんて、そのような悲しい事をしてはいけないでおじゃる。そのような事をさせないために、わらわ達ガイアークはここに来たのでおじゃる」
ニューカッスル城内、結婚式の会場だった小さな教会。その空間は今重い空気に満たされていた。
>>453 喜んでもらえて私も大変嬉しいです。
読者様の頑張ってという励ましの言葉ほど嬉しいものはありません。
ところエロはお好きでしょうか?
>>454 期待してもらえて作者冥利に尽きます。
――トリステインゼミナール−2――
「ボク達が行くよ!」
「行くですぅ!」
その声にルイズ達が振り返ると、壁に開いた大穴の前にカノンバンキ・ノミバンキが立っていた。顔はルイズ達に向いているものの、体は屋外に向けられていて今にも飛び出していかんばかりだ。
「危険なり! 数が多すぎるなり!」
「そうよ! 皇太子の安全も確保できたし、ここは一旦退くべきだわ!」
「ミス・ルイズの言う通りですな。交戦するのであれば、現状のままより準備万端の状態で迎撃すべきです」
ヨゴシュタイン・ルイズ・ヒラメキメデスが口々に説得を試みるも、2体の決意は固かった。
「もちろんそれくらいはボク達もわかってるよ。でもあいつらがこのままヨゴシュタイン様達を逃がしてくれるとは思えないんだ」
「それに今後ヨゴシュタイン様達がレコン・キスタと戦う事を考えたら、私達2体を残すよりもあの人達を叩き潰す方を選ぶべきですぅ」
「しかし、それはあまりにも無謀なり……。そのような危険な命令、下す事はできないなり!」
ヨゴシュタインの言葉にも、2体の目に宿る決意の光は鈍らない。
「ボク達、この作戦に……」
「……命を賭ける『覚悟』ありですぅ!!」
その覚悟と言葉の熱さについにヨゴシュタインも折れ、
「……わかったなり」
「それじゃ……、やってきます!」
「頑張ってくるですぅ!」
ヨゴシュタインの出撃承認を受け、そう言い残して最前線に向かって駆け出していくカノンバンキ・ノミバンキ。
それを見送るルイズは、どこか誇らしげな様子でキュルケ達に語りかける。
「お披露目よ、キュルケ」
「え?」
「ずっと疑問だったんでしょ? ケガレシア達ガイアークがいったい何者なのか。それを今から見せるわ」
そう言いつつ窓に歩み寄り開け放つ。
その外に広がる曇天の空の彼方から響くのは、ルイズ達にとって聴き慣れた荒々しいエンジン音。
思わずルイズへと視線を集中させる面々に、彼女は低く昏い怒りに満ちた声で言葉を吐く。
「誰に喧嘩を売ったか教えてあげるわ」
「砲撃位置に付きました。艦長、ご命令を」
「ふむ……。では王家の最後を華々しく飾り立ててやろうではないか。なあ」
(無駄口を叩いている暇があるならさっさと下命しろ)
口に出さずに若い貴族は艦長に対して侮蔑の言葉を吐き捨てた。
(一時的なお飾りの艦長とはいえ無能すぎだ)
まともに言葉を交わすだけで苛立たされるため、若者は適当に返答すると地上の陣を見下ろす。
兵士達は警戒心を隠しきれないようだが、上層部は「人海戦術でどうにでもなる」と判断していた。念のための捨て駒として傭兵達を先行させたが、迎撃を受けたという報告は無い。
訝しむ若者の視界に「彼女達」が映り込んだのは、視線を城に移した時だった。
「あれは……」
それは2人の少女だった。
「何を考えてこの場に現れたかは知らないが、このまま攻撃してしまえば……」
だがその言葉を遮るかのように、2人の少女の体が変化していった。
そして彼と、2人に攻撃を仕掛けるべく先陣を切っていた軍勢達の目の前に、大地を汚す悪夢……害地目蛮機獣カノンバンキ・ノミバンキが出現した。
キュルケ達がバルコニーに到着したその時には、既に2体はレコン・キスタとの戦端を開こうとしていた。
轟音と共にカノンバンキの背中に設置されたカノン砲が、弾幕の如き砲撃を浴びせかけた。
次の瞬間、最前線から10メイル以上後方までの数十人もの貴族派兵士が一瞬にして紙切れのように吹き飛ばされる。
そして彼女が次に発射する砲弾を体内で製造する隙を突かせず、今度はノミバンキが攻勢に出る。
上半身を高速でフル回転させ八艘飛びを加えての連続斬撃、死体が五体満足な者は相当幸運という有様だ。
惨劇は地上だけに留まらない。
上空より接近するもカノンバンキ・ノミバンキによる虐殺を目にした竜騎士達が思わず降下の勢いを緩めたその瞬間、予想外の方向から奇襲攻撃を受けた。
それは蛮機獣達に気を取られているうちに接近を許した蛮ドーマ5機からの破壊光線。
ある竜は一瞬のうちに頭部を吹き飛ばされ墜落。また別の竜達は混乱状態のまま飛行した結果、騎手を振り落とした挙句に正面衝突。
ここでようやくレコン・キスタ達は、相手が底知れぬ実力を持つ存在と認識した。
しかしそれは遅すぎたのだ。
カノンバンキ・ノミバンキが城から十分な距離を取った事を確認して、ヒラメキメデスが声を上げる。
「バリアシステム起動!」
その言葉と同時に、5機の蛮ドーマからリング状の光線が発射された。
光線は見る間に重なり合って半球状の光のドームを形成、軍勢をその内部に閉じ込める。
「ワフーッ!」
それを確認したノミバンキは凄まじい速度で縦横無尽に大暴れし、ドーム内部のありとあらゆる物を細かく削っていく。
カノンバンキも砲撃こそ加えられないものの、砲身自体を鈍器として当たるを幸い兵士達を殴打する。
そしてついに機は熟した。
削られた物体の粉末で視界は最悪に近かったが、2体にはドーム内部全域で条件が整った事を悟った。
最早命は無いと覚悟し、それでも奇跡を信じて衝撃に耐える体勢を取る。
「ワフーッ!」
「ウグーッ!」
『リトルバクハーズ・エクスタシー!!』
カノンバンキの砲口から火花が散った瞬間、ドーム内部が眩い閃光に満たされて崩壊し、一瞬遅れて爆音が轟いた。
動くものの無い焦土の中、ゆらりと立ち上がる2つの人影。
「カノンバンキ! ノミバンキ!」
ふらつきつつも懸命にルイズ達に接近しようとする2体に、5人は全力疾走で駆け寄る。
そして2体は満足げな笑みを浮かべ、
「……ボクの事……、忘れてください……」
「……ヨゴシュタイン様……、るぶりゅー・てぃびゃー……」
と言い残してヨゴシュタインの胸に倒れ込んだ。
「………」
「………」
5人は何も言う事ができず、ただ息絶えた2体を静かに見つめるだけだった。
ワルドはかすれる意識の中、呼んだグリフォンに飛び乗りアルビオンから逃走していた。
かつてこれほどの屈辱は無かった。
「おのれ……、おのれヒラメキメデス……っ! 絶対に……くそ……、絶対に……絶対……決して……」
血がにじむほどに右手を握り締め、肘から先を失った左腕を爪で掻きむしりつつ、ワルドは憎悪の呪文を唱え続ける。
「ガイアーク……、ヒラメキメデスっ……!」
自らの内を満たす復讐心に怨敵の名を呟いた時、
「く……っ……」
そこでワルドもグリフォンも限界を迎えた。
地上に向かってふらふら降下を開始し、最後には半ば墜落同然に地面へ倒れ込んだ。
「………」
薄れ行く意識の中、最後にワルドが見たものは敵味方さえ判然としない2人の人影だった。
――ガイアークゼミナール――
『ガイアークゼミナール!!』
「ケガレシア達ガイアークはヒューマンワールドから来たのよね?」
「その通りでおじゃる」
「でもヒューマンワールドも今ケガレシア達に侵略されてるんだけど、どうなってるの?」
「なぬ!?」
「答えはCMの後です」
「実は次元は全部で11あるのですが、世界は11だけではないのです。
11次元全体を1本の巨大な木に例えるならば、幹から11本の次元の枝が伸びていて、その枝の1本1本に無数の平行世界という葉が付いているようなものなのです。11の次元というのは、無数の世界を大雑把に11区分した分類だと思っていいでしょう。
ですからこことは別のマジックワールドでは、ミス・ルイズがヨゴシュタイン様達ではない別の使い魔を召喚しているという事もありうるわけです。
その使い魔の故郷はヒューマンワールドだけでなく、ハルケギニアと呼ばれているのとはまた別のマジックワールドからであるかもしれません」
「なるほど。つまりヒューマンワールドを侵略してるケガレシア達は、私に召喚されなかったヒューマンワールドにいるケガレシア達なのね」
蛮機獣カノンバンキ
【分類】害地目
【作製者】害地大臣ヨゴシュタイン
【作製モデル】カノン砲
【口癖】「ウグー」
【身長】171cm
【体重】192kg
「カノン砲」をモデルとして製造された女性型の蛮機獣です。
カノン砲とは巨大な砲弾を発射して敵を破壊・殺傷する砲台です。
カノンバンキは、体内が砲弾製造装置になっており、製造した砲弾を背中のカノン砲から発射する事ができます。
この能力で遠距離から敵を攻撃したり、連射による弾幕で相手の行動を妨害する事が可能です。
注)鯛焼きが大好物で時々食い逃げしますので、ご注意ください。
蛮機獣ノミバンキ
【分類】害地目
【作製者】害地大臣ヨゴシュタイン
【作製モデル】鑿
【口癖】「ワフー」
【身長】170cm
【体重】210kg
「鑿」をモデルとして製造された女性型の蛮機獣です。
鑿とは木材・石材・金属などに穴を穿ったり溝を刻んだりするのに用いる道具です。
ノミバンキは、左腕が強力な鑿になっています。
この鑿は、上半身を回転させながら相手を斬りつける「クドリャフカッター」や鑿から発射する破壊光線「くどどん波」等、多彩な攻撃に使用可能です。
注)英語が大の苦手で、英語で話そうとしても間違った内容や発音になってしまいます。
以上投下終了です。
時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。
ちなみにガイアークゼミナールで説明した世界観は、某TRPGの世界観を元にしたSSオリジナルの設定です。
今後の展開を考えると、ゴーオンジャーそのままだとちょっと矛盾が出てきそうなので……。
順調に行けば、1〜2話先くらいに才人達が登場するかなと考えています。
それでは。
>>458 投げやりな答えですが、「ストーリー上必要でしたらどうぞ」と言うしかありません。
逆に言えば、ストーリー上必要の無いエロはちょっと……という感じですね。
乙!
最後のこれはひどいw
おもしろかった、乙!
>>466 ……そうですよね、この期に及んで必要の無いエロなんて書きませんよね。
ウルトラの方、次回も期待しています。
ゴーオンジャーの人グッジョブ!
もうシリアスなんだかギャグなんだかw
469 :
ゼロ姫 作者:2010/04/11(日) 18:37:40 ID:Vxv1+UnH
一夜開けの挨拶になりますが、皆様ご支援ありがとうございました
>>388-393 の方々、あたたかい応援・フォローをありがとうございます!
銃はロマンです。えろい人しかそれは分からんのですよ
原作にははるか及ばない出来のSSですが、未読の方でも楽しめるよう
作中説明過多、ご都合解釈満載でお送りいたしますw
>>388 召喚直後にディテクトマジックをかけられる描写ってありましたっけ?
召喚直後はあんまり抵抗しませんでした。かぎ針しかもってなかったのでw
古代語の発音に関しては伏せさせていただきますが、後々いろんな人間が弾丸に封呪できるようになる予定です
すごく面白そうで、次回も期待してますけどあまり「挨拶」しに出てこない方がいいかも?
出る杭は打たれる、って言うとちょいと違うかもしれませんが
471 :
469:2010/04/11(日) 18:50:11 ID:Vxv1+UnH
>>470 あ、やっぱりそうですよね。
SSのフォローってあんまりしないほうがいいかなと気になってました
今後は投下前にまとめて軽くさせていただきます
とても重要なことなので、ご教授頂き有難いです
>>471 感想に返事したくなる気持ちはわかるし
そういう作者は個人的には好きだけど、今は頭が残念な子もいるし
避難所の雑談スレ辺りで返事するのがいいかもね
楽しみにしてるし頑張ってくださいな
ゴーオンジャーの方お疲れ様です
ノミ・カノンコンビはしばらくは活躍するかと思いましたが、こう来るとは意外でした
さらにワルドが生きていたのも意外でした
さらにサイトが出てくるとかどこまで楽しませてくれるのやら…
続きもめちゃ楽しみにしてます
476 :
電流:2010/04/11(日) 21:19:39 ID:mSz8rrML
重複がいらっしゃらないようでしたら、
「ゼロと電流」第七話 数分後から行かせてもらいます。
「電人ザボーガー! GO!」
マシンザボーガーの両脇から内蔵されていた腕が伸び、同時にタイヤの動きと内部重心の移動によりフロントが持ち上がる。
そのまま立ち上がったザボーガーの胸部と腹部に、両輪が折りたたまれ、縮小されながら格納されていく。
開く両足はしっかりと大地を踏みしめ、ザボーガーの両腕が気合いを入れるように眼前でクロスする。
初めて見るゴーレムの動きに、フーケは警戒をあらわにする。彼女が確認していた段階では、ザボーガーはただ立ち上がるだけの存在に過ぎなかった。このような動きは記憶にないのだ。
「ザボーガー! チェーンパンチ!」
ザボーガーの右拳がアクションと共に手首から離れ、弾丸となってフーケを襲う。
咄嗟に避けたフーケの背後で、拳の命中した巨木が音を立ててへし折れ、フーケに向かって倒れてくる。
チェーンパンチの威力に驚いたフーケは、思わずタバサとキュルケとは逆の方向へと逃げてしまう。
「今よ! チェーンパンチ!」
その隙に、残った左腕のチェーンパンチがタバサとキュルケへと向けられる。絶妙に狙いを外した拳が開き、二人を縛り付けていたロープを掴む。
ザボーガーの腕と拳を繋ぐチェーンが内蔵のモーターにより巻き戻され、二人の身体が引き寄せられた。
即座にルイズは二人を確保し、自分の背後へと横たえる。
「器用な真似をするじゃないかいっ!」
奪われた人質を深追いせず、逆に離れるように弧を描いた軌道の末、フーケは自らのゴーレムの掌に飛び乗った。そしてそのまま肩へと上げられる。
「だったら正面からっ、力比べといこうかい!」
見下ろすフーケの視線をはね返すように、ルイズは毅然と顔を上げる。
負けない。
キュルケとタバサを護るために。大事な友達を護るために。
ザボーガーの力を示すために。
そして、“人でなし”の言葉を否定するために。
「ザボーガー! ファイトっ!」
ゴーレムの拳が、高い位置から振り下ろされる。
それを正面から受け止めたザボーガーの足下が沈み込む。衝撃がザボーガーの身体を伝わり、地面へと届いているのだ。
受け止めたこと自体には満足しているものの、ルイズはこの状況に危機を感じていた。
ゴーレムとの体重差は、予想以上にザボーガーの不利となっている。
右拳を全身で支えるザボーガー。このまま左拳の一撃が横殴りに襲ってくれば、避けるためには受けた右拳を捨てて一旦退くしかない。
かといって、下手に受けている拳を離せばそのままゴーレムの体重をかけられる。それだけでザボーガーが破壊されるとは思えないが、今以上に地面に足がめり込めば、抜くまでの間は無防備に攻撃に晒されることとなる。
さらに、ザボーガーとルイズの後ろにはタバサとキュルケがいる。今の状態ではルイズはフーケから目を離すことはできない。つまり縄を解くことはできない。
二人を護るためには、ルイズとザボーガーはこの位置から動けないのだ。
一方、フーケもこの攻防に焦りを覚えていた。
相手は、ゴーレムの一撃を正面から受けているのだ、しかもこのサイズ比で。いったいどれほどのパワーを秘めているというのか。
左腕こそ自由に動かせそうだが、下手に殴りに行ってバランスを崩せば、先ほどのチェーンパンチを真正面から受けることになる。
一見フーケのゴーレムが押し込んでいるように見えるが、実際は膠着状態なのである。
パワーとスピードは明らかにザボーガーのほうが上。しかし、二体の圧倒的な質量差は、能力差を埋めるには充分すぎるほどなのだ。
フーケは、ゴーレムの肩の上からルイズを見る。
対するルイズは、デルフリンガーを構えた。ガンダールヴの力で剣を使いこなすことはできるが、それでもルイズ自身は素人である。はたして百戦錬磨のフーケに何処まで通用するか。
「……嬢ちゃん、気付いてるか?」
デルフリンガーが低く抑えた声で呟いた。
今のデルフリンガーは、ルイズのガンダールヴのルーンによってザボーガーとも繋がっている。ルイズやザボーガーの見えるものは、デルフリンガーにも見えているのだ。
「ええ。だけど、多分、タイミングは貴方のほうが確か。その経験、信じるわよ」
「失望はさせねえよ」
デルフリンガーを構えたまま、ルイズはじりじりと足を滑らせる。
一方のフーケも、ザボーガーへのプレッシャーをゴーレムに命じながら、ルイズから目を離さない。
「嬢ちゃん!」
「ザボーガー、下がって!」
デルフリンガーの合図と共に叫ぶルイズ。ゴーレムの拳を突き放し、飛び下がるザボーガー。辛うじて体勢を崩さないゴーレムの、左の拳が動いた。
ザボーガーが避ければタバサとキュルケに直撃する位置へと拳が唸る。
拳が当たる寸前、二人の身体を掴む爪。そして、ゴーレムに吐きかけられる炎。ゴーレムは右腕でフーケへの直撃を防ぎ、空振った左拳を抱えるように一歩下がる。
二人を引き上げたのは追いついてきたシルフィード、フーケを牽制したのはその背に乗ったフレイムによる攻撃である。
きゅいきゅい
きゅるきゅる
ヘリキャットの視界から使い魔の到来を知ったルイズとデルフリンガーの機転だった。
ザボーガーだけならまだしも、予想外のフレイムの攻撃から主を庇ったゴーレムが後方へよろめいた。
「ブーメランカッター!」
ザボーガーの頭部横、耳を模したような飾りを外し、手早く投げつける。
飾りの周囲に発生した力場が高周波の刃となり、触れるもの全てを切り裂くカッターとなるのだ。そして攻撃後は再びザボーガーの手元に戻ってくる仕組みである。
それが、ザボーガーの武装、ブーメランカッター。
舌打ちと共にフーケは土の障壁を作り上げるが、カッターは易々と壁を貫き、ゴーレムの両肩を切断する。
だが、ゴーレムは本来の意味での生き物ではない。切れた両肩とて魔力ある限りは再生するのだ。
その隙を狙い、ルイズは叫ぶ。
「速射破壊銃!」
口元のシャッターが開き、指より一回り太いくらいの銃口がせり出した。
連続する射撃音。一撃事に削られていくゴーレム。
「ちぃっ!」
フーケのゴーレム再構成は間に合わない、そのうえ、逃げようと土ゴーレムの遮蔽から出れば自分が銃のえじきになってしまう。
躊躇の数瞬でまさに土塊となり、爆発散開する土ゴーレム。同時に、フーケの魔力も限界を迎えていた。ゴーレム破壊のダメージが、精神ダメージとなって術者であるフーケにフィードバックされたのだ。
「なんて力だい、あのゴーレム」
逃げるが勝ち、と言わんばかりに駆け出そうとしたフーケの進路を塞ぐように空から着地する二人。
「よくもさっきはやってくれたわね」
「逃がさない」
キュルケとタバサだった。その後ろには、フレイムも火の舌を覗かせて控えている。さらには上空にシルフィードが。
立ち止まり周囲を探るフーケは、ザボーガーをバイク形態に戻して跨っているルイズに気付いた。
この場を逃げたとしても、追う準備は万端ということだ。
フーケは背中に背負ったままの破壊の杖を構えなおす。
キュルケが即座に言った。
「この距離でその杖を使う気? あの威力じゃあ、貴方も巻き込まれるわよ」
「少なくとも、あんたたちの一人はまともに爆発して身体がバラバラになる。あたしは足が残れば走ることはできる。三人いっぺんに相手にするよりはマシさ。賭けてみる価値はあるだろ?」
「ない」
唐突に一言。そして、タバサが一歩進む。
「タバサ!」
「何考えてんだい、このちびっ子は! 人の話はよくお聞き!」
タバサはキュルケの制止を気にせず、フーケの怒声を無視してさらに一歩進む。
きゅい、とシルフィードが啼いた。
「貴女は殺さない」
「面白いことを言うねえ。まさか、新手の命乞いかい?」
キュルケはフーケの動きを見逃さない。隙が見えれば、その瞬間に最も早く発動できる魔法を放つのだ。しかし、破壊の杖はタバサにしっかりと向けられている。動くことはできない。
「キュルケとルイズを、殺さない」
「タバサ……?」
ルイズとキュルケの呟きが重なった。
「殺すのは私だけ」
殺すのは“人でなし”だけ。
だから、殺されるなら自分。
フーケが殺すのは自分だけ。
ルイズとキュルケは、フーケには殺せない。
二人は“人”だ。自分とは違う。
「フーケ!」
ルイズがその場から動かず、声を上げていた。
「貴女が本当に私たちを殺す気なら、どうして最初に爆発させなかったの!?」
最初の一撃では、爆風により三人が飛ばされただけ。誰一人とて身体のどの部分も爆発していない。
そして、キュルケとタバサを人質に取る意味もなかった。仮に人質とするにしても、一人いれば充分なのだ。
この場合、身体が小さく簡単に運べそうなタバサさえいれば、極端な話、キュルケは必要ない。その時点で殺されていてもおかしくないのだ。
「身代金さ」
フーケは答える。
ルイズの問いかけに応えること自体が敗北だと悟っていた。
応える必要などない。ただ、破壊の杖を振るえばいい。破壊してしまえばいい。
しかしフーケは、ロングビルとして見てしまったのだ。
魔法を使えない貴族がいた。己の境遇に潰されかけ、それでも足掻こうとする少女がいた。醜い足掻きと蔑まれても、それでも足掻いている少女がいた。
異国の貴族がいた。激励ではなく、叱咤でもなく、甘言でもなく、同情でもなく、それでも、魔法を使えぬ貴族を“微熱”のように温かく見守る少女がいた。
それに寄り添うように佇んでいた少女は、二人には救われる価値がある……そして自分にはない……と断言する。
彼女らは紛れもなく貴族だった。フーケの、いや、マチルダ・オブ・サウスゴータの知っている“貴族”だった。
ならば、手を下すことができようか。
マチルダの知る貴族に、フーケが手を下すことなどできようか。
ああ、そうさ。とフーケは心の中で答えていた。
殺す気など無かった。身代金を取るだけでいい。
顔を見られても構わなかった。記憶は、義妹の力で消せるのだ。
三人は“人”である。それならば、自分に殺せる相手ではない。
“人でなし”となった自分が、それでも唯一縋るものがある。自分を謀らないために誓っていることがある。義妹に“人”として接するために護っているものがある。
だから、自分には三人は殺せない。
「ああ、そうかい」
フーケは自分に向けられている視線の中身に気付いた。
「あんたも“人でなし”なんだね」
支援
あの子の前で自分が“人”であるように、タバサはキュルケたちの前では“人”であろうとしているのだろう。
「あんたとサシなら、殺し合っていたんだろうねぇ」
微かに頷くタバサに、フーケは破壊の杖を下ろした。
そして、ルイズに向き直る。
「あたしの負けだ。好きにしな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
光一つ無い独房に、フーケは転がっていた。
両手足はきつく縛られ、身体を起こすのが精一杯だ。
しばらくの間、ここにいろ。それが自分をここに運んだ看守の言葉だった。
他に何ができるわけでもなく、フーケは別れ際のルイズの言葉を思い出していた。
「あんたたちもいずれ、人でなしの貴族になるのさ。その時は、殺しに行ってあげるよ」
「私は人になるわ。必ず、貴方が殺せない貴族になってみせるわ」
だから、その時が来たら会いに来なさい。そして貴女が失望したなら、私を殺しなさい。私は喜んでこの首を差し出すわ。
喉の奥で小さく、フーケは笑う。
なんて事を言うのだろう、あの能天気な世間知らずは。
そんな貴族がいるのか。たかが盗賊に過ぎない自分に誓うような、戯言で人生を左右されるような、そんな愚かな貴族が。
なんて愚かな。
こんなことでは自分は……
自分は、また夢を見てしまうではないか。
ああ、夢を見ようじゃないか。
もう一度、あの子と光の中へ出ていく夢を。
そのためなら、たとえ地獄に落ちても這い上がって見せよう。
貴族に刃向かった自分が牢獄でどうなるのか。これからまともに扱われるとは毛ほども思っていない。
自分に面目を潰された貴族たちは、これを機に容赦なく槌を振り下ろすだろう。
手間などかからない。刑務官にただ一言、「フーケをよろしく」と言葉を届ければいいのだから。
だから、折を見て抜け出すだけ。その手筈は、半ば整えられている。
「物思いに耽っているところ、申し訳ないが」
男の声。
「ここからすぐに出たいと思わないか?」
フーケは答えない。
「音に聞こえた土くれのフーケだ。黙って牢に入る気などないだろうが、簡単に出て行けるとも思ってはいまい?」
「それは認めるよ」
「条件次第ではすぐに出してやる。悪い話じゃない。君の嫌いな貴族の世界を破壊し尽くす話だ」
「そうかい」
「その足がかりとして、手始めにアルビオンを征服しようと思っているんだが」
頭の逝かれた類か、とフーケは警戒する。
それでも、利用しない手はないだろう。
「ああ、安心したまえ」
男の声が笑いを含む。
「君が望むなら、サウスゴータは荒らさないようにしようじゃないか」
フーケは答えず、闇の中に目を凝らした。
正体は知られているということか。
しかし、それとはまた異なる、ひどく危険な気配をフーケは感じていた。
「あたしには、もう関係ないことだね」
「確かに」
男の苦笑が聞こえる。
「ところで、ウエストウッド村のことだがね」
自分に選択肢がないことを、フーケは知った。
以上、お粗末様でした。
とりあえず、第一部「ザボーガー登場」編終了です。
少し幕間話を入れて、
第二部「電人ザボーガー対レコン・キスタ」編を始める予定です。
支援、ありがとうございました。
乙
誰だ、この男は何者だ
おかしい、こんな周到な準備をするワルドなんてワルドじゃない
ワルドであるはずが無い!
何者だコイツは!?
ワルドさんだ
488 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:20:59 ID:8F5m8gH2
ゼロと電流乙です
お久しぶりです
覚えている人がいるか分かりませんが、アノンの法則です
他に予定が無いようでしたら投下させていただきます
489 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:22:16 ID:8F5m8gH2
「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの? ルイズ! まだお説教は終わっていませんよ!」
厳しい母の声が聞こえる。
幼いルイズは、いつもできのいい姉たちと魔法の成績を比べられては、物覚えが悪いと叱られていた。
「ルイズお嬢様は難儀だねえ」
「まったくだ。上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……」
使用人たちにまで、そんなことを言われる。
悲しくて、悔しくて、ルイズはいつものように『秘密の場所』へ逃げ込んだ。
ラ・ヴァリエールの屋敷の、あまり人の寄りつかない中庭にある池。
そこに浮かべた小船の上で、毛布に包まる。そこはルイズが唯一安心できる場所だった。
「泣いているのかい? ルイズ」
優しい声に毛布から頭を出すと、そこにはつばの広い、羽根つき帽子にマントを羽織った立派な貴族の青年がいた。
帽子に顔は隠れていたが、それが誰かはわかる。
彼は親同士が決めた、婚約相手。ルイズの憧れのひと。
「子爵さま、いらしてたの?」
みっともないところを見られてしまった。
ルイズは慌てて顔を隠す。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね」
「まあ」
ルイズは頬を染めて、うつむいた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。僕の小さなルイズ。君は僕のことが嫌いかい?」
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……。私、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
憧れの子爵様は、手をそっと差し伸べた。
「子爵さま……」
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
「でも……」
「また怒られたんだね? 安心しなさい。僕からお父上にとりなしてあげよう」
大きな手。憧れの手。
ルイズがその手を握ろうとしたとき、風で彼の帽子が飛んだ。
「あ!」
現れた顔は、憧れの人などではなく、自分の使い魔のアノンだった。
「な、なによあんた」
当惑するルイズに、アノンが言った。
「なにって、ボクと踊りたいんだろ?」
いつの間にか、ルイズは髪をバレッタで纏め上げて、白いパーティドレスに身を包んでいた。
『ブリッグの舞踏会』で着たドレスだ。周りの景色も、ラ・ヴァエリエールの屋敷から、華やかなダンスホールへと変わっている。
アノンはいたずらっぽい笑みと、芝居がかった仕草で、
「喜んで。レディ」
とルイズの手を取った。
490 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:23:02 ID:8F5m8gH2
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
珍しく早い時間に目が覚めたルイズは、枕に顔をうずめて、悶絶していた。
(ありえない、ありえないわ。なんであんな夢見たのよ。舞踏会から一週間も経つのに、これじゃまるで、あの時のことが忘れられないみたいじゃない!)
パタパタと両脚をバタつかせるルイズ。
(大体あいつは使い魔よ、使い魔。私とそんな風になるわけ無いじゃない。確かに使い魔って言えばメイジのパートナーだけど……パートナー!?)
「ち、違うわ! そう言う意味じゃなくって……!」
「なにが違うんだ、娘っこ」
突然の声に、がばっと飛び起きるルイズ。
声の主は、鞘に収められ、相棒の枕にされているインテリジェンス・ソードのデルフリンガー。
「わわ、私声出てた? ききき、聞こえてたの?」
「ああ、ばっちり聞こえてたぜ。なあ、何が忘れられないんだ? そんな風になるって、どういう風になるんだ? ん?」
「う、うるさいわよ、このボロ剣」
表情があれば、絶対にニヤニヤしているだろうインテリジェンス・ソードに、顔を赤くしてルイズは言った。
「つれねーなあ。そう言わず、ちょっと俺っちにどんな夢見てたか教えてくれよ」
「黙りなさい、ガラクタ。溶かすわよ」
「ひでえ言い草だ。娘っこがそんな事言うんなら、俺は怒鳴る。ああ、怒鳴る。そして目を覚ました相棒に、今聞いたを独り言を包み隠さず話して聞かせるぜ。さて、鈍感な
相棒は、果たしてその意味に気づくだろうか」
「こ、この……」
ルイズは枕を握り締め、ベッドから飛び降りると、いやらしい性格のボロ剣に詰め寄る。
「ん……」
アノンが寝返りをうった。
藁の上で、気持ち良さ気に眠る使い魔を見て、ルイズの怒りの矛先が変わった。
「そそそ、そうよ。こここいつが勝手に私の夢に出てきたのよ。ぜぜぜ、全部こいつが悪いの」
「おいおい、娘っこ。そりゃ理不尽ってもんだぜ」
「うるさいうるさいうるさーい!」
ルイズは、眠っているアノンに向かって、枕を振り上げた。
今日、アノンの一日はご主人様による枕の爆撃で始まった。
491 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:25:57 ID:8F5m8gH2
今朝は、ルイズがアノンより早く起きたことと、妙にルイズの機嫌が悪く、デルフに溶かすの何のと怒鳴っていたこと以外は、いつも通りの朝だった。
フーケの事件から早一週間。その間に、ルイズのアノンへの待遇は、いくらかの向上を見せていた。
まず、あの神経質すぎる拘束は無くなった。
用があれば、アノンは特にルイズに断ることなく外出できるし、いちいち行き先を報告させられることも無い。
こっそり尾行されるようなことも無くなり、厨房での食事も黙認されている。
アノンも大した文句も言わず、日々の雑用をこなし、以前と比べると、二人の関係はずいぶん穏やかなものになっていた。
「ルイズ、いつの間にデルフと仲良くなったんだい?」
ルイズが早起きしただけに、早めに教室に着いた二人は、雑談に興じていた。
ここでもアノンはもう床ではなく、ルイズの隣の椅子に座っている。
「あれのどこが仲良く見えるのよ! ったく、あのボロ剣…わ、私の恥ずかしい、ひひ、独り言を……」
「その独り言ってナニ?」
「…知らなくていいことよ。ええ、一生知らなくていいわ」
「? ……それにしてもいないね、他の使い魔」
アノンが辺りを見回す。二人が早めに入ったとは言え、そろそろ授業始まる時間だ。
生徒達も教室に集まっているというのに、使い魔達の姿が見えない。
初授業からしばらくは、生徒達は自分の使い魔を教室に連れてくるものなのだが。
「ああ、なんかあんたに使い魔を見せると、遠くにぶん投げられるって噂が流れてるみたいよ?」
「なんだそれ」
どうもアノンは、動物に嫌われる質らしい。
毎回アノンが教室に入る度、使い魔たちが騒ぎ出すので、学院内には妙な噂が流れるようになっていた。
そんな風に話していると、教室の扉が開き、黒ずくめの教師が現れた。
風の系統の授業担当の、『疾風』のギトーだ。
ギトーは教卓から、一度教室を見回すと、おもむろに、
「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
と言った。
指名されて、キュルケが答える。
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」
引っかかる言い方のギトーに、キュルケは眉をしかめる。
「『火』に決まってますわ。ミスタ・ギトー」
キュルケは不敵な笑みを浮かべて、言い放った。
「ほほう。どうしてそう思うね?」
「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
「残念ながらそうではない」
ギトーは杖を抜く。
「試しに、この私に君の得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」
ぎょっとするキュルケ。いきなり生徒相手に、魔法を撃って来い、とは。
ましてや、ここは屋内である。
「どうしたね? 君は確か、『火』系統が得意なのではなかったかな?」
戸惑うキュルケに、挑発するようなギトーの言葉。
キュルケが、表情を引き締め、杖を抜いた。
「火傷じゃすみませんわよ?」
「かまわん。本気できたまえ。その、有名なツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならね」
今度はあからさまな挑発。
流石にカチンときたキュルケは、たっぷりと精神力を練りこんで、呪文の詠唱を始めた。
現れた小さな火の玉は、みるみる大きくなり、直径一メイルほどの大きさになった。
生徒達は慌てて、机の下に避難を始める。
だが、アノンは隠れず、じっとその光景を見ていた。
大きな火球がギトーに向かって、撃ち出される。
だが、ギトーが杖を剣のようにして振るうと、巻き起こった烈風が火の玉をかき消し、キュルケをも吹き飛ばした。
492 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:27:03 ID:8F5m8gH2
悠然と、ギトーが言い放つ。
「諸君、『風』が最強たる所以を教えよう。簡単だ。『風』はすべてを薙ぎ払う。『火』も、『水』も、『土』も、『風』の前では立つことすらできない。残念ながら試したことはないが、『虚無』さえ吹き飛ばすだろう。それが『風』だ」
キュルケは立ち上がって、不満そうに両手を広げたが、ギトーは気にした様子も無い。
二人の魔法を熱心に見ていたアノンは、隣のルイズに尋ねた。
「あれ、ホント?」
「…確かに、『風』は『火』と並んで、最も戦闘に向いてる系統って言われるけど。でも、あれじゃ、ミスタ・ギトーがキュルケより強いって証明にはなっても、『風』が『火』より強い証明にはならないわ」
若干不愉快そうに、ルイズは言った。
「なるほど、戦闘は『風』と『火』か…」
「目に見えぬ『風』は、見えずとも諸君らを守る盾となり……」
「失礼」
さらにギトーが『風』について、講釈を始めようとしたとき、教室の扉が開かれ、コルベールが現れた。
彼は実に珍奇な格好をしていた。
頭に大きなロールの金髪のカツラを被り、ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍が施されている。
「なんだアレ?」
アノンが、教室にいる人間全員の心を代弁した。
「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」
コルベールが重々しい調子で告げた。
喜ぶ生徒達。コルベールはその歓声を両手で抑え、
「えー、皆さんにお知らせですぞ」
と胸を張った。その拍子に、頭のカツラがとれて、床に落ちた。
それを見てタバサが、コルベールの禿げ上がった頭を指差し、ぽつりと呟いた。
「滑りやすい」
教室が爆笑に包まれる。
コルベールは、顔を赤くして怒鳴った。
「黙りなさい! ええい! 黙りなさいこわっぱどもが! 大口を開けて下品に笑うとはまったく貴族にあるまじき行い! 貴族はおかしいときは下を向いてこっそり笑うものですぞ! これでは王室に教育の成果が疑われる!」
その剣幕に、とりあえず静かになった教室で、コルベールは改めて重々しく話し始める。
「えーおほん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、よき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります」
コルベールは横を向くと、後ろ手に手を組んだ。
「恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」
姫殿下、という言葉に、教室がざわめいた。
「したがって、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること」
生徒たちは、緊張した面持ちになると一斉に頷いた。
「諸君が立派な貴族に成長したことを、姫殿下にお見せする絶好の機会ですぞ! 御覚えがよろしくなるように、しっかりと杖を磨いておきなさい! よろしいですかな!」
493 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:28:01 ID:8F5m8gH2
魔法学院の正門をくぐって、王女の一行が現れると、整列した生徒たちが一斉に杖を掲げた。
本塔の玄関に立ち、王女の一行を迎えるのは、学院長のオスマンである。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな────り────ッ!」
最初に馬車から降りてきたのは、枢機卿マザリーニ。
鳥の骨とあだ名される彼は、一手に外交と内政を引き受ける苦労人であったが、貴族、平民ともに人気が無い。
向かえる生徒達の歓声もまばらだった。
続いて、王女がユニコーンの馬車から姿を現すと、生徒の間から、今度は大きな歓声があがる。
王女はにっこりと微笑みを浮かべて、優雅に手を振った。
「あれがトリステインの王女? ふん、私の方が美人じゃないの」
トリステインの姫君を見て、キュルケがつまらなそうに呟いた。
「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
そう尋ねられたアノンだったが、その視線はすでに王女から外れていた。
アノンが見ているのは、羽帽子をかぶった、凛々しい貴族。
その貴族は、鷲の頭と獅子の胴体を持った見事な幻獣に跨って、王女の護衛をしていた。
「…強そうだね」
「どっちが?」
王女の訪問の騒ぎなどどこ吹く風と、今日も黙々と本をめくっていたタバサが、珍しく自分から口を開いた。
「どっちもさ。あの鳥みたいなの、彼の使い魔かな?」
「あれはグリフォン。乗りこなし方からして、恐らくは彼の使い魔」
「よくわかるね」
アノンは感心した様に言ったが、タバサはすでに本の世界に戻っており、返事はなかった。
ふとルイズとキュルケを見ると、二人とも凛々しい貴族に見とれている。
ふむ、とアノンは顎に手を当てた。
「彼は『火』かな? 『風』かな?」
494 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:30:08 ID:8F5m8gH2
その日の夜。
アノンは退屈だった。
ルイズが全くしゃべらないのだ。
昼間に、あの羽帽子の貴族を見て、すぐにルイズは部屋に篭った。
それからずっと枕を抱いて、ぼんやりと宙を眺めている。
「ルイズ?」
アノンは、ルイズの髪の毛を軽く引っ張ってみた。
反応なし。
ならば、と頬をつねってみる。
これも反応なし。
何をしても反応が無い。アノンは首をかしげた。
「あーこりゃ、アレだな。恋の病ってやつだ」
ルイズをつつきまわしているアノンを見ていた、デルフが言った。
「恋の病?」
「そうさ。相棒の話だと、その貴族の男を見てから娘っこはそうなったんだだろ? ならもうこれは恋だね、恋」
「ふぅん?」
剣のくせに、一丁前に恋を語るデルフリンガー。
「あーあ、今朝は完全に相棒の方にキてると思ったんだがな。その貴族、相当な男前と見える」
いつもは話し相手になるこの剣も、今日はこの話ばかりでつまらない。
アノンが、もう夜だし、寝てしまおうかと考え始めた時、ドアがノックされた。
ノックは規則正しく、初めに長く二回、それから短く三回。
ずっとぼんやりしていたルイズは、はっとして、急いで立ち上がり、ドア開けた。
そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾で顔を隠した、一人の少女だった。
少女は辺りをうかがうように首を回すと、そそくさと部屋に入ってきて、後ろ手に扉を閉める。
「……あなたは?」
ルイズは驚いたような声をあげた。
頭巾の少女は、口元に指を立ててルイズを黙らせると、杖を取り出して軽く振った。
光の粉が、部屋に舞う。
「……『ディティクトマジック』?」
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
そう言って少女は頭巾を取った。
そこに現れたのは、昼間見た、アンリエッタ王女だった。
「姫殿下!」
ルイズが慌てて跪く。一方、アノンはぼけっと藁の上に座っていた。
地獄界にも、長と呼ばれるまとめ役がいたものの、王族と言われてもピンとこないアノンには、これがどういう事態なのか良くわからないのだった。
アンリエッタ王女は、感極まった表情を浮かべて、膝をついたルイズを抱きしめた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」
「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい! あなたとわたくしはおともだち! おともだちじゃないの!」
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
「やめて! ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をしてよってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
ああ、もう、わたくしには心を許せるおともだちはいないのかしら。昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、あなたにまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」
「姫さま……」
それからしばし、二人は思い出話に華を咲かせた。
アノンが横で聞いていると、ルイズは幼い頃、アンリエッタ王女の遊び相手を務めていたのだという。
いわゆる幼馴染だ。
だがアノンは、そんなことよりも、あのルイズが他人に跪いたり、礼を尽くしている姿に驚いていた。
楽しげに話していたアンリエッタが、ふと、ため息をついた。
495 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:31:57 ID:8F5m8gH2
「姫さま?」
ルイズが心配そうに、顔を覗き込む。
「結婚するのよ。わたくし」
「……おめでとうございます」
ルイズはそう言ったが、アンリエッタの表情は暗く、どう見ても結婚を喜んでいるようには見えない。
そこでアンリエッタは、初めて、藁の上のアノンに気がついた。
「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」
「お邪魔? どうして?」
「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう? いやだわ。わたくしったら、つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね」
「姫さま! あれはただの使い魔です! 恋人なんかじゃありません!」
慌て首をぶんぶん振りながら、ルイズはアンリエッタの言葉を否定した。
「使い魔? 人にしか見えませんが……」
「一応、人です。姫さま」
「アノンです」
とりあえず、アノンは立ち上がって頭を下げておく。
「そうよね。はあ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
そう言って、アンリエッタは再びため息をついた。
「姫さま、どうなさったんですか?」
「いえ、なんでもないわ。ごめんなさいね……、いやだわ、自分が恥ずかしいわ。あなたに話せるようなことじゃないのに……、わたくしってば……」
「おっしゃってください。あんなに明るかった姫さまが、そんな風にため息をつくなんて、なにかとんでもないお悩みがおありなのでしょう?」
「……いえ、話せません。悩みがあると言ったことは忘れてちょうだい。ルイズ」
「いけません! 昔はなんでも話し合ったじゃございませんか! 私をおともだちと呼んでくださったのは姫さまです。そのおともだちに、悩みを話せないのですか?」
ルイズがそう言うと、アンリエッタは嬉しそうに微笑んだ。
「わたくしをおともだちと呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」
アンリエッタは頷き、
「今から話すことは、誰にも話してはいけません」
と言って、語り始めた。
496 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:33:10 ID:8F5m8gH2
それは、ハルケギニアの政治情勢。
アルビオン王国の貴族たちが反乱を起こし、今にも王室が倒れそうなこと。
反乱軍が勝利を収めれば、次にこのトリステインに侵攻してくるであろうこと。
それに対抗するために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶこと。
同盟のために、アンリエッタがゲルマニア皇室に嫁ぐこと。
そのアンリエッタの婚姻を妨げる材料を、アルビオン貴族が血眼になって探していること。
そして、その材料となってしまう手紙が、アルビオン王家のウェールズ皇太子の元にあること。
つまり、アンリッタの悩みとは、誰かにその手紙を回収してもらわねばならない、ということだった。
「姫さまの御為とあらば、何処へなりと向かいますわ! 姫さまとトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません!」
話を聞くなり、ルイズはそう言って立ち上がった。
「このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ! 懐かしいおともだち!」
「もちろんですわ! 姫さま!」
ルイズがアンリエッタの手を握って、熱い口調でそう言うと、アンリエッタはぼろぼろと泣き始めた。
「姫さま! このルイズ、いつまでも姫さまのおともだちであり、まったき理解者でございます! 永久に誓った忠誠を、忘れることなどありましょうか!」
「ああ、忠誠。これが誠の友情と忠誠です! 感激しました。わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れません! ルイズ・フランソワーズ!」
アノンは抱き合う二人の様子を、ぽかんとした表情で見ていた。
まるで何かの芝居のようだ。だが、二人に何かを演じている様子は無い。
お互いの言葉に酔う王女と侯爵家令嬢は、まったくアノンの理解の外であった。
ふと、アノンは部屋のドアに目をやった。
「あ。……ちょっといいかな」
「あによ」
二人の時間を邪魔され、不機嫌になるルイズ。
「これって、ひとに聞かれちゃいけない話なんですよね?」
アノンはアンリエッタに尋ねた。
「はい。しかし、メイジにとって使い魔は一心同体。あなたはルイズの使い魔ですから……」
「じゃあ、ちょっと待っててください」
アンリエッタの言葉を遮って、アノンが立ち上がる。
「ちょっと、アノン!」
姫殿下のお言葉を遮るなど、無礼千万。
ルイズが怒った声を上げたが、アノンはそれを無視してデルフリンガーを掴み、ドアの方へ歩いていく。
歩きながら、鞘からデルフリンガーを抜き放つ。
「お? なんだ相棒」
「あ、アノン!?」
室内で剣を抜いたアノンに、ルイズもアンリエッタも驚きを隠せない。
ドアの前まで来ると、アノンはいきなり、ドアの真ん中にデルフリンガーを突き立てた。
ドアの向こうで、固いもの同士がぶつかる音が響く。
アノンは、素早くデルフリンガーを引き抜き、ドアを蹴り開けた。
「酷いな。いきなりドアごと串刺しとは」
廊下には、薔薇の杖から伸びた『ブレイド』の刃を構えた金髪の少年、ギーシュ・ド・グラモンが立っていた。
まさか続きが読めるとは
支援
498 :
アノンの法則:2010/04/11(日) 22:35:57 ID:8F5m8gH2
以上です
四月から仕事が始まってしまったので時間が取れるか分かりませんが
とりあえず原作二巻までの話は書き上げていますので近いうち続きを投下させていただきます
ではまた
おお待ってました
今回のギーシュはなんかかっこいいぞ
500 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/11(日) 23:36:58 ID:Ne/seZWd
HUNTER×HUNTERのキャラが召喚されてるSSってまだないの?
見たことないな
H×Hのキャラは微妙な心理描写と頭脳戦が魅力だから書きずらいだろうな。
503 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 00:00:06 ID:Ne/seZWd
ハルケギニアで念能力が広まったら面倒なことになりそうだな。
あれは努力すれば誰でもある程度使えるようになるもんだから
貴族と平民の差を縮めかねない。
そうか?むしろH×Hの世界観は才能×努力な感じだしメイジ無双になっても可笑しくないような、烈風様が念能力を覚えました。とか
尚のこと無能な貴族が倒れてしまう
実力主義化するだろう
アノンの人乙です
やだこのギーシュかっこいい……
今から多忙になる中、体調にだけはお気を付けください
>>505 無い胸を多少気にしておっぱいを大きく見せる念能力を取得するカリンちゃんとな
>>500 あったけど2話ほどやって更新止まったけど例の騒動に乗っかってwiki削除
H×Hは実力差あっても状況に嵌れば勝てるからな
ライデイン直撃で致命傷にならなかったヒュンケルのように
RPGファイターが怪力とHPでメイジを圧倒する話が
今まであったら教えてくれ。
うえきの法則って漫画知らなかったからアノンって言われて某有名動画配信者に憧れていた某アメリカ人女子学生のことかと思ったよ。
昨日はなぜこんなに投下ラッシュが?
それはそうと、ウルトラに唐突な新キャラだなーと思ったら、これが噂のラリカか
ラリカって?
理想郷のゼロ魔作品のオリジナル主人公
正直痛いとか言いようがない
ウルトラに唐突な新キャラ? まさか大百足を使い魔にした女子の事か?
それなら気にするほどでも無いと思うけど
そろそろ誰かからくりサーカスの白金召喚してくれないかなぁ・・・
原作終了後ならけっこういいやつっぽいし・・・
あと生身になったり人形いなかったりで溶解と理解微妙っぽいけど分解は生身の人間にも使えるし・・・
なにより懸糸傀儡自分で作れたり変装出来たりとすごいじゃなくて物凄いスペック高いのに・・・
>516
ここは三次は禁止だろ
特撮とのクロスは普通にOKじゃん
>>510 あの世界メインキャラにライデインが一発直撃したくらいでくたばる奴いないような
レオナくらいならくたばるかも知れんけど
たしか同じドラクエキャラでDQ5勇者なんかがワルドを剣でたたいてのしたり
ライトニングクラウドくらってぴんぴんしてたような
怪力で圧倒してるというのとはちょっとイメージ違うかも知れんけど
>>517 白金に限らずしろがねなら誰でも傀儡は自分で作れるだろう
しろがねが使ってる傀儡はあるるかん以外みんな自分たちで作ったものなんだから
生命の水に由来する色々な知識はコッパゲ先生大喜びの代物だろうし
オートマータなら仲間を量産することもできる
個人的には最古の誰か召喚とか見たいな
最終後のアルレッキーノなんてタバサに鳥を彫ったりしてくれそうじゃない
モブとか台詞一言二言程度のストーリーにほとんど関わらないなら
オリジナルキャラを出しても構わないはず。
>>518は
三次創作 二次創作のキャラクター・設定を改変・流用するのが駄目ってことじゃないのか?
知らないけど、本人のオリジナルじゃなくて、他者が二次で創作したキャラってこと?
二次元・三次元ではない
ここは他の二次創作や同人から更に創作るの禁止だな
色々面倒なことになる上宣伝乙になるから
更に他の場所で連載してる作品と絡みたいならここでやらずに該当する場所でやれば宜しい
まあモブ扱いだからいいんです^^
とかそういう問題ではねーな
ウゼーしキモいしルールも読んでないカスってことだ
それ以前にちょっと考えれば、どういう結果を招くのかわかりそうなもんだがなぁ。
安易に馬鹿なことをしちゃったとしか言いようがない。
>>526 あれれ〜? テンプレにはそんなこと書いて無いよ〜?
どこを読めば良かったんだろう〜?
不破刃を召喚するネタって上がってないの?
>>530 いくら話し合ってもテンプレに追加されてない時点で無意味だボケ
あそこはあくまでもここの避難所だぞ
うわぁ……目障りだから知的障害者は黙ってろよ^^;
反論出来なくなったら罵るしか無いよなw
定義化されてないなら何でも許されると思ってるのか。
>>534 そんなわけねえだろw
定義化されてなけりゃ「ウゼーしキモいしルールも読んでないカスってことだ」なんて言えやしねえと思ってるんだよ。
何事も程度の問題で、
今回くらいならいいんじゃないかなー、と「俺は」思う。
でもそう思わない人が御覧の有り様になるから、
やっぱりダメなものはダメなのだなぁと思いました まる
荒らし紛いな御方様がたに配慮せにゃならんってのも阿呆臭いがね
アニメ魔改造は恐ろしいなぁ
シエスタは脱いだら凄い、なのにアニメでは着てても凄いし・・・
>>536 下手に調子に乗る可能性があるから、釘を刺しておくんだよ
もっともそれ以前にどういう神経してんだかなw
既に調子に乗ってるから平気でやらかすわけだ
なんだ、ただのアンチか
今回のは作者が三次創作にOK出してるとはいえ、そもそも三次なんか荒れる元でしかないわけで
まして他サイトに投稿されたものからオリキャラ引っ張ってくるってのは止めて欲しいな
>>540 結局そこだよな。
軽い気持ちでやったんだろうけど、そういうのが荒れる要素になるってのは少し考えればわかることなのに。
>>537 逆に考えるんだ。脱いだらもっと凄くなる。こう考えるんだ。
このスレでラリカが出てきたのは今回が初じゃないわけだが。
最初の人の時スルーしたから他の人まで出したんだろ。偉そうに自治るなら全部目を通しとけ。
開き直ったよ、おい……
Wikiの全てに目を通さなくちゃいけないのかwww本気で池沼だろwwwww
>>544 開き直ったんじゃなくて、前例があるから許されてると判断したのかもしれないって話だろ。
>>545 テンプレあるのに運営の全てに目を通さなくちゃいけないのかwww本気で池沼だろwwwww
もういいんじゃないか。いい加減釘刺され杉だろ
それより、ここまで荒れるならテンプレに追加した方がいいのかもね。これは運営で話すことだろうが
まぁちょっと謝って、Wikiを修正して、もうやらなければ済む話だわな。
>>538 >>526ではわざわざ挑発的な^^まで付けて印象を悪くした上に
ウゼーしキモいしルールを読んでないカスとまで言っておいて【釘を刺す】か
最近湧いてる荒らしが便乗して叩き潰そうとしてるようにしか見えなかったよ
> 既に調子に乗ってるから平気でやらかす
これなんて、まるでやらかす前から調子に乗ってたと言わんばかりだしな
ただ単に「三次創作の話題を出すと荒れる」っていう実例を作りたいだけだと思うからスルーでいいと思うよ?
そんなことより おっぱいだ
交響詩篇ゼロの使い魔 ご主人様がおっぱいでちっぱい
>>550 そうだよな、こいつちょっとおかしいもんな
俺だって三次創作自体は無しだと思うんだけどね
荒れるデメリットに対して、ちょい出しして知ってる人をニヤリとさせる程度のメリットじゃ割りに合わない
>>551 設定上ではNo.1がテファでonly.1がタバサでいいのかな
>>551 新キャラのエルフの方々のサイズが気になる今日このごろ。
なお、アニエスは筋肉ではなく普通にかなりある。(OVA魅惑の砂浜より)
南斗水鳥拳の人を召喚したらおマチさんとかアニエスさん剥かれそうだよな。
アニエスさんが鎧を着てようが関係無しにスパッといきそう。
ULTRAMANの真木さんを召喚して欲しい
ルイズのおっぱいの悩みを解決できる使い魔が増えて欲しいところである
これが私の望んだボディ
小さい事こそ至上であり至高であると諭せる使い魔ですねわかります。
寧ろ神楽天原におわす公式三桁の乳牛姫を召喚して「際限無く大きくても罵られるだけ」と悟らせるんだ
ギーシュの手の者がルイズの肉体改造に着手するということですねわかりません
無双の孔明召喚
アルビオン七万戦が五丈原みたいになりそうだな
無双乱舞のビームで直接殲滅しそうたが
ゾンダーメタルを召喚したらあらゆるストレスが解消されるよ!
エルドラン召喚
ハンターハンターのビスケの様に、体を全く別物といえるほどに変化させる事の出来る能力者がルイズに召喚されたら……ルイズとタバサがその技術を自分にも教えろと迫ってきそうだな。
何でたかがチョイ役でゲスト出演させたくらいでそこまで過剰反応するのか本気で理解できない。
まして元作品の作者がゲストOKってお墨付きまで出してるのに。
>>567 あのムキムキって念能力なの?
ただの体質?じゃないの?
>>565 元来は文明の退廃を防ぐため
ストレス等マイナス感情をリサイクルしてエネルギー化するためのインプラントだったが
どっちにしろ虚無とは相性悪いなぁ
おっぱいの悩み解消か・・・エロガード=エロリップでも召喚すれば
キュルケの胸の脂肪がケーキに変換されることだろう
そういや三次が禁止なのはともかく、
>>525で言われてる同人ってアウトだったんだ
普通に商業じゃなく同人ものって既に幾つかある気がするんだけど。知名度の問題かねぇ
>>571 著作権法違反は親告罪だから出版社側から要請がないと放置される
非親告罪にしようという動きがあるから、そうなったらすべて違法になるよ
>569
ビスケ本人曰く『ごつい姿』の方が本来の姿で、念能力で少女の姿に化けていたらしい。
つまり自分の好きな姿に化ける事が出来るわけで……ルイズならカトレアみたいな「ばいんばいん」になるために修行を頑張りそうですし。
ってスレルールの話か
同人がアウトだって言うなら東方とかもほとんどアウトになるなw
ゲシュートの青銅像を召喚したら、ルイズたちのストレスを吸い取ってあっというまに凶暴化するな。
しかしおっぱいミサイルの話題がなぜこない?
東方は一部書籍がすでに商業ルートに乗ってるからかろうじてセーフかもしれん
危ういことはかわらんが
サイズについては、8巻だか9巻だかのティファニアの分析によると、
1テファ=2シエスタ=4アニエスらしいな。
今回の騒ぎはモブキャラに「アッー」とか「ウホ」とか言わせたのを騒いでるようなもんか
ただのモブキャラならいいけど、二次創作のオリキャラを出してるからな
結局理由なんてなんでもいいから荒らしたいだけにしか見えないな。
そんなに騒ぐことでもないだろうし。
ぶっちゃけると、
「もう書くな」
だ罠
ルイズと乳の悩みを共有できる使い魔って誰か呼ばれた?
っていうか、ザボーガーの人がやった時はスルーだったのに、ウルトラの人がやったら騒ぎ出すとか、
いつものウルトラ狙いの粘着が工作しているようにしか見えないんだが。
そもそも三次創作禁止ってのは、三次された側のサイトや作者との間で面倒が起きるからだったはずだから、
三次OK出されてる奴に関してはうるさく言う必要ないと思う。
自演されるとウゼーとかもあったはず
自分でオリキャラのSSを書いて、それここで召喚するとかそういうの
他にも何かあったんじゃないかな
とりあえず、これについては運営で話し合った方が良いんじゃない?
せっかく話題を変えてくれたんだから、いつまでも引きずるのはやめようよ
単純に読んでいる人数に差があるからだろ
ザボーガー読んでないけどやってるなら、アウトだ
面倒が起きる云々なんて理由でもないし
>>584 ザボーガーの人には悪いがそれだけ「スルー」の魔法の使い手が多かったんじゃね
実際元ネタからしてまったく分からんから俺はスルーしてるし
ブロント騒ぎの時かな、三次創作が特にあーだこーだって言われたのは
>>584 三次禁止の理由は二次作者とのトラブルが問題じゃないぞ。
このスレで三次禁止になったのは、二次作品での独自設定を三次作品で使っちまうのが問題だったはずだ。
まぁ、うるさいこと言えば「シエスタが香水の瓶拾っちゃった」もそうなんだけどさ。
といか蒸し返すなよ・・・他のネタで流れかけてたってのに。
平日昼間から2chできるなんて学生は羨ましいなあ
>>589 そこは単に話の展開の問題だろw
二次を参考にして同じ話の流れにしたパクリってだけで、三次創作とは言わない
二次創作だけ読んで、元ネタを知らないまま二次創作の二次創作書いちゃうのがまずかったんじゃないの?
今回のオオムカデの女の子は「遊び」の範疇でしょ。
変則シフトで土日に出て平日休みだったり夜勤で昼間は居るような社会人もいるわけで
ていうか平日昼間に2chできる学生って時点で…
荒れた時はオッパイの話をするんだ
メイドガイのタユンの乳牛を召喚すればルイズもちいねいさま並の体格に
ただしエレねいさまは2mmが限界
鮫の話でも可だ。
荒らし?当方にスルーの用意あり。
確かに乳は全てを救う
>>596見て思い出したが覚悟のススメ出てないのか
小ネタで散が呼ばれて戦術鬼になったルイズを見た記憶はあるけど
ドラマCDでは豊胸ブラなんて夢のような代物を作り上げてるんだよなエレ姉さまは、
神学追求するアカデミーの技術を盛大に無駄遣いしとる。
荒れたときはおっぱい、鮫、カブトムシの話が定番だよな
モンモンは可愛いと思うんだ。
モンモン・・・原崎山三代目総長の息子召喚
言葉を解するおサル召喚、韻獣と勘違いしそうだが
つの丸世界じゃ猿も馬も普通に喋るんだよなぁ
モンモンに引きずられて色々と周囲が自己完結に近い形で丸く収まっていく光景が
おぼろげながら目に浮かぶわい
各巻よりセリフ抜粋・ギーシュ
1巻「確か、あのゼロのルイズが呼び出した、平民だったな。平民に貴族の機転を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」
2巻「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下とモンモランシーには会えなくなってしまうな……」
3巻「んー、きみはあれだな、ろくでなしだな」
4巻「なあに、ぼくなんか今学年は半分も授業に出てないぞ? サイトが来てからというもの、なぜか毎日冒険だ! あっはっは!」
5巻「白! 白かった! 白かったであります!」
6巻「ちょ、ちょっと大隊長どの! ぼくは学生仕官ですよ! そんないきなり中隊長なんて!」
7巻「……む、武者震いと言いたいが……、恐いだけだな。うん」
8巻「きみは平民だが、ぼくは友情など、抱いていたんだよ」
9巻「理想の自分っていうのかね。まぁ、ぼくは自分が理想だけどな! なんてったって、ぼくは世界一美しいからな! あっはっは! ああ! 何人ぼくの姿になるんだろう! ああ! ああああ! あ!」
10巻「きみってやつぁあああああ! ああああ、捕まっちまったじゃないかよぉ……! よりによって敬愛する女王陛下にぃいいいいい!」
11巻「ぼくはね、きみを友人だと思う。だからこそ、こうしたほうがいいと思うんだ」
12巻「なんというかね……、きみのいた国はどうか知らないが、こっちにだって可愛い女の子はいるし……、貴族にだってなれたじゃないか。もしルイズに放り出されるようなことがあったら、ぼくの領地に来ればいい。きみ一人ぐらい、養ってやるぜ」
13巻「まだ未完成の花束だ。最後の一本は……、キミダヨ」
14巻「笑って見送っておくれ。ぼくは貴族なんだよ」
15巻「そうだな。そうかもしれん……。でも、見ろサイト。ここに集まったロマリア、ガリア両軍の姿を! ここで一発格好いいところ見せてみろ! ぼくと水精霊騎士隊の名前は、子々孫々まで語り継がれるようになるぜ!」
16巻「サイト、実はおそろいの隊服を作ろうと思うんだが……」
17巻「だからぼくは、モンモランシーを他の女性の十倍、大切に扱う。ほんとはこれでも、足りないぐらいなんだろうな。でも、しないよりはマシだ。現にモンモランシーは、なんのかんのいってぼくをゆるしてくれる」
18巻「そりゃそうだが。最悪の場合を考えて行動しておかないと、無駄な犠牲を生むことになる。死んでる人間のために、部下を危険な目に遭わせるわけにはいかんよ」
>>601 こんなに出番のあるギーシュ君の恋人というポジション(のハズ)なのに、モンモランシーさんには大して出番がありません。
何故なのでしょうか?
誰か、何で『自分で作った二次設定』を使うのは良くて
『他人が作った二次設定』を許可とった上でも使うのはNGなのか解るように教えてくれ。
今回の話はぶっちゃけそういう事だからな。
鮫の生態。
目:一時期は悪いと言われていたが、普通に見えるらしい。
耳:めっちゃいい。
鼻:1万倍に薄めたって血の匂いを嗅ぎ取るよ。
歯:予備の歯が常に控えていて、1本欠けたら丸ごと交換するよ。
頭脳:研究によると犬や猫よりいいみたい。
鼻の先のロレンチーニ瓶って器官で、獲物の生体電流を察知したり、地磁気で地形を把握したりするよ。
ザラザラした鱗は泳ぐ時に水を上手い事かきまわして音を消すよ。
時速30〜70Kmで泳ぐけど、普通の魚より静かに寄ってくる海の捕食者さ。
鮫のHな話
種類によっては処○膜がある。
棒の方は2つあるんだ。
鮫って種類によっては交尾するんだ。だから魚に交わると書いて鮫って字なんだよ。
精○は年単位で体内に保存して、雌しかいない水槽で出産する例も。
実は単性生殖も可能かもしれないという説もあるが、まだ研究中。
さて、こんな凄い生き物がルイズに召喚されると・・・・・・
「いやあああああーー!!私の使い魔が死んじゃう!!」
そこには元気にビチビチと跳ね回る鮫の姿が!!
「あの時は本当にびっくりしました。まさか陸の上なんて。もう光る鏡に触ったりなんかしないよ」
>>605 水棲生物を召喚したら、水メイジと土メイジで水の入った水槽を出すんじゃないだろうか。
と空気を読まずマジレス。
誰かシャーク藤代呼んでこーい
烈風の騎士姫の貧乳表紙を見て
ルイズの深刻な遺伝病は母親に原因があると気づいた
>>608 となるとやはりカトレアはああいう身体だったから巨乳だったのか
親父のふぐりに似たんだろう
でかそうじゃん
アニメのカトレアは全然健康だけどな。
アニメって凄いね
はっはっはっ、アニメだからね!
ジロン召喚は面白そうだ
アニメじゃない、ホントのことさ
アニメのカトレアは何故結婚していないんだろう。
超優良物件だろう、彼女。
そして何かあると確信した616は調査を始めるのだが、
その後、彼を見た者はいない・・・
そう簡単に死ぬかよ!二次創作でさ!!
アニメ化記念で荒川UBから河川敷住民
テファがシスターを召喚し、アルビオン最凶武装孤児院を設立、って金星から電波が
行くぜ友よ!GO、アクエリオン!
とあるからって上条さんと一方さんしか呼ばれてないんだよな?
魔術サイドはハルケの魔法との折り合いが結構メンドそうだけど
科学サイドなら割と呼びやすそうじゃない?
>>616 体弱い
名家の次女だけど、分家継がされて、万が一に備えてハブる気満々
男兄弟はいない
長女は行き遅れで今後も相手ができる見込みは薄い
三女も長女と同じ気質
三女といい感じの相手は領地持ちの平民という限りなく微妙な立ち位置
どう考えても、ハルケギニア随一の地雷女だろ。
一時も気の休まる暇もなく、謀殺に怯えつつ、面倒事を全部押し付けられるのが好きなら、止めはしないが。
まぁ、ヴァリエールさんのところの面倒事の半分以上は、長女が空気を読めなかったところにあるんだが。
>>618 残念。二次創作だからこそ簡単に死ぬ場合もあるぞw
特にアンチ系とかならね。
ウェールズはけっこう生還するぜ
俺が一番好きなパターンは白ワルドです。
>>621 上条は召喚されてもガキの説教に動揺して
能力が破られたら動揺して混乱して素人のテレフォンパンチを食らうだけのデクになる
という禁書世界ルール適用しないと勝ち目皆無だけどな
ガンダールブと虚無を系統魔法や銃器で打ち破りたい、結局生まれ持った才能と運がすべてかよ
否、決して認められるか
最後に勝利するのは人の英知だ!人間の魂だ!
鮫で思い出したのが鉄拳チンミ。海中で鮫と戦って勝つキャラって現実寄りの作品では
チンミと花山さんくらいしか知らなかったから。
ただチンミだと虚無のどれもピンと来ない。格闘家だとガンダールヴってあんまり意味ないよね。
617
よろしければ616が調査した結果を纏めた手記を見せて貰えないだろうか?
お恥ずかしながら捜査本部に集まっている情報の大半が出所が不確かなので、
本人が残した手記だけが頼りになるような状況でしてね…
もしや616はハルケギニアへ…
…失礼、ただの独り言ですよ
ああ、あと一つ忠告ですが最近烈風とゼロの前で貧乳などと軽々しく口に出した者が続々と行方不明になっているようです
勿論そちらの方も捜査は続けられています
失踪してもご安心下さい
新任捜査官
>>626 限りなく一般人スペックだったサイトの例を考えると
レールガン発射見てから右手突き出し余裕でしたな上条なら結構いけそうじゃね?
良くも悪くも魔法が絶対的な世界だからかなり動揺しそうだし
ガンダールブと違って通常戦力が致命的だからアルビオン撤退戦で死にそうだが
見てから、ではなくコイン弾く動作に入るくらいの時に本能的に手を突き出してるだけ
>>603 なんだろう、ギーシュがそのケのある人に見えてくるな……
薔薇だからな
禁書世界よりはハルケギニアの方が物理法則がまともだからなぁ。
ラノベで、そういう細かいところに突っ込むのは反則というのはわかっちゃいるが、
さすがにあれは頭が悪すぎる。
それは貧乏だから硬貨的な物に反応してしまうとかそういう悲しい本能?
>>627 リョウキさんだって素手でイケるぜ!
>>630 最新巻で一方通行が説明してたな。
確かあれはレールガンを撃つ前の静電気などによる周囲の微妙な振動を無意識に感じとり防御態勢を取ってるって。
高い危機感知能力と積み重ねた経験値、生存本能で異脳を打ち消してるって感じか。
>>635 ちょっとおちつけ
>>627 チンミは棍使うときもあるからガンダールヴ発動はありじゃね
あと、キャラ的に動物なつきそう
はるか東洋の島国にはファイティングゴッド・ドッポ・オロチというファイターが
素手を武器同然に使うという噂を聞いたことが
素手で武器…
剣流星、メタルダーか。
メタルダーはありそうで無いな、軍団員もいいキャラ多いのに
かく言う自分もメンテとかどうすりゃいいのか悩んで踏ん切りがつかないが
自省回路の定義やら扱いがかなり面倒なことになりそうだがな。
そういう意味ならキカイダーの方がやりやすい。
「私の使い魔なら口癖があった方がいいじゃない。あと、下着洗っといてよ!じゃないとご飯抜き!」
「分かった。でもその頃にはあんたは八つ裂きになってるだろうけどな」
「そのタイミングで使うな!」
素手だけど武器な人ということで
「〜する子はしまっちゃおうねぇ」が口癖の使い魔とか…
たぶんルーンは胸に出る
ルイズがボートでふて寝しているとしまっちゃいに現れるんですねわかります
使い魔召喚前日に見る夢だな
646 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 14:11:49 ID:OCtKaclz
テイルズオブヴェスペリアからザギ(初期)を召喚
ルイズをフレンと勘違いして襲いかかってきます
647 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 14:13:14 ID:EjvOJ4hP
リアルバウトハイスクール〜召喚教師〜の南雲慶一朗を召喚とかどうだろ?
ソルバニアではなくて、ハルケギニアに召喚された南雲先生が大暴れ。とか、
もともと異世界召喚ものだし、合うと思うのだが……元ネタがマイナー過ぎか?
誰か書いてクレー
もしくはがんばって自作する
言質とったぞ
>>641 そういえばかなり前に召喚されてたけど
決闘直前で止まってたな
最終回後の服従回路(イエッサー)搭載状態だと、人間でも殺しそうで怖いが
650 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 14:27:21 ID:EjvOJ4hP
うう、自分で言い出したことだが……初ssになるんでクオリティは
期待しないでくれ。とりあえず、GW前にはあげる。
たぶん、南雲先生が地下の決闘でライフルで撃たれる所からはじめる。
リアルバウト読み返してくるわ。
PS 「処女作」とはいうけど「童○作」とはいわないよな?本って女性名詞なのか?
がんばれ超がんばれ
本は男性名詞だけど作品は女性名詞
期待する…と言いたいところだが、
もろもろの言動からすでに引用つぎはぎ会話文だらけのSS(笑)が目に見えるかのようだから
頑張らなくていいや。
勉強なりサークルを頑張ってくれ。
とりあえずsageれ
653 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 14:56:13 ID:EjvOJ4hP
そうなのか、ありがと。リアルバウトは前半のほうのギャグのノリが好きだった
けど、ミユキがさらわれたあたりから暗い感じが嫌いだったから、そこらで
読むのやめたんよ
なので、基本は1〜5巻ぐらいの軽い雰囲気で書くと思う。
すまん、サゲ忘れてた。サークルは飲みしかやらんのよ^^まぁ、適当に書いて
見るから、お目汚しだろうが勘弁してくれ^^
…あぁ、うん。ごめんね。
作品タイトルは個性的なのを頼むよ。
656 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/13(火) 16:14:14 ID:TUXmKMgH
>>605 >歯:予備の歯が常に控えていて、1本欠けたら丸ごと交換するよ。
事故って歯一本欠けた身としては非常にうらやましい・・・
吸血鬼の牙も折れたら再生するのかな? エルザが毎朝毎晩かかさず歯磨きしてたらそれはそれでシュールだ。
ダンスインザの吸血鬼の牙なしは抜いたらそのまんまだったかな
折れないから自慢のなんとか
>>634 最近俺も久々に読んでたんだ、BOY
ハレルヤ召喚面白いかもしれんな
まぁ背中からバットはともかく、フライパンにはガンダールヴは適用されまいが
>>639 素手で武器、というか全身兵器キャラでワイルドアームズ2ndのカノン
ただ欠点は彼女のシルエットボディはわりと簡単にガタがきそう
マリアベルも呼ばれてればいいが、そうでなければコルベールが天然セクハラ働きそう
パーマンセットを召還してルイズを魔改造しようぜ
>>646 ザギがジャギに見えた
無双版なら間違いなくガンダールヴ適性があるなw
MXで再放送始まったし、二期ももうすぐだしセキレイの面々喚んでハルケでセキレイ計画、と思ったけど
ルイズ達を葦牙にするとあちこちで百合の花が咲いちまうなぁ。
>>661 パーマンって実はすげえ強いんだよね。力が6600倍だっけ?
どうせならスワミツオを召喚してあげればw
じゃあミツオはミツオでもP4のミツオを
・・・まだ足立や生田目のほうがマシだ・・・
>>665 ペルソナ4で呼ばれてるのは主人公だけだったっけ
ペルソナ主人公呼んでコミュイベント風にストーリーがすすんだら面白いなあ
若しくはクマをよんでハーレムルート
ところで人間化したクマってギーシュに似てない?
あと一話で最終回とか言ってた気がするが
ジュネスのTVを召喚ってのもあった
駆け足気味だったがどんな結末になるのか期待している
>ところで人間化したクマってギーシュに似てない?
いやそれは全然
シャツと髪の色は似てなくも無いw
>>666 最初にあの姿を見たときはそうは思わなかったけど…
成る程、言われてみれば共通点が幾つかあるな
金髪とかYシャツとか
なるほど、シャツか・・・確かに
裏を返せばギーシュも死神コスが似合う可能性があると
迂闊に俺に近付く奴は、死ぬぜぇ!
>>671 俺が死神じゃないと、証明してやる!!
第08MS小隊召喚
色々あってオチはシローとアイナがアルビオンで隠遁
学園天国パラドキシアからぽんこつ二名召喚
ルイズの魂のデレ部分を切り取ります
673 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:46:14 ID:69CDNnge
アノンの法則です
予定が無いようなら投下させていただきます
674 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:46:56 ID:69CDNnge
「キミは……ギーシュくん?」
「ぎ、ギーシュ!? なんであんたがここに?」
ギーシュはつかつかとアノンの横を通りすぎ、部屋に入ると、アンリエッタの前に跪いた。
「先ほど広場でお見かけし、失礼ながら、後をつけさせていただきました」
「で、では…」
「あんた! 立ち聞きしてたの? 今の話を!」
だが、ギーシュはルイズの問いには答えず、
「姫殿下。その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
と、恭しく頭を下げた。
「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
「ちょ、ちょっと待ってください姫さま!」
慌ててルイズが割り込む。
「こいつはドットです! こんな任務に連れて行くわけには……」
「いいじゃないか」
「え?」
アンリエッタに訴えるルイズを遮り、アノンが言った。
「ずいぶん強くなったみたいだね、ギーシュくん」
「………」
ルイズはアノンの言葉に、改めてギーシュを見た。
そこで気づく。
服の上からでは分かりずらいが、以前と比べて、体がずいぶん引き締まっている。
それに、さっきもアノンの剣を『ブレイド』で受け止めていた。
「そういえば、あの決闘騒ぎ以来見てなかったけど……」
「ああ。実家に帰って、父上や兄上に鍛え直してもらっていた。いきなり帰ったので長くは居られなかったがね」
ルイズは驚いた。あの決闘は、軽薄な少年に相当な影響を与えたようだ。
心なしか、表情も男らしくなっているように見える。
「ルイズ、頼む。これは僕のためでもあるんだ」
決意の篭ったギーシュの目。それをアノンは嬉しそうに見た。
「いいだろ? ルイズ」
ルイズは躊躇いながらも、曖昧に頷いた。
アンリエッタが微笑む。
「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
姫殿下に名前を呼ばれて興奮したのか、ギーシュは顔を赤らめる。
「一命にかけても」
それでも、ギーシュは丁寧に礼をした。
話がまとまり、ルイズがアンリエッタに言った。
「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発いたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」
「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」
アンリエッタは机に座り、ルイズの羽ペンと羊皮紙でさらさらと手紙をしたためる。
最後に手を止め、
「始祖ブリミルよ……。この自分勝手な姫をお許しください。でも、国を憂いても、わたくしはやはり、この一文を書かざるをえないのです……。自分の気持ちに、嘘をつくことはできないのです……」
と、顔を赤らめて一文を書き加えた。
やっぱり芝居臭い、とアノンは思った。
「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」
それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を抜き取り、ルイズに手渡す。
「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」
ルイズは深々と頭を下げた。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなたがたを守りますように」
675 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:47:37 ID:69CDNnge
朝もやの中、アノンは馬を準備するため、ルイズより一足早く学院の門へと向かっていた。
正直、こんな面倒な任務は御免被りたかったが、目的地はここトリステインとは別の大陸にあるアルビオン王国だという。
別の世界の、別の大陸。それだけで、今回の任務はアノンの好奇心を刺激した。
それに、あのギーシュ。彼は自分に敗れてから、かなり成長している様だ。
彼がどの程度強くなったのか。それを確かめるには、この任務はうってつけに思えた。
アノンが門までやって来ると、そこには、すでに二人の分まで馬の準備を済ませたギーシュが待っていた。
「あ、ギーシュくん」
「アノンか…ルイズは?」
「すぐに来るよ」
「そうか」
それだけ話すと、ギーシュはアノンに背を向け、荷物の確認を始める。
「アノン」
背を向けたまま、ギーシュが言った。
「僕は君に敗れ、多くのものを失った」
真剣なギーシュの声を、アノンは黙って聞く。
「自信、プライド、誇り……だが、得たものもある」
「それは?」
「自覚と、目標だ」
ギーシュが振り返る。
その目に宿る、怒りと憎しみ。そして、それよりも強い、断固とした決意の光。
「今まで、どれほど自分が甘ったれていたのかよく分かった。見ていろ、僕はもっと強くなる。そして……」
ギーシュは、アノンを真っ直ぐに見つめた。
「いずれ、必ず貴様を倒す。必ずだ」
その言葉に、アノンは満足気な笑みを返した。
怒りと憎しみは、人間に凄まじい力を与える。
先の神を決める闘いでも、ロベルトがそうだった。彼の場合、植木と出会ったことでそれを失ってしまったが。
そして、時にその憎しみの力さえ凌駕するのが、覚悟。
誰よりも強くなったはずのアノンですら、己の存在の消滅を覚悟した一撃に敗れたのだから。
憎しみと覚悟。
その二つを内包したギーシュが今後どうなるっていくのか。
アノンは、しばらく退屈しなくて済みそうだ、と思った。
「アノン。馬は準備できてる?」
荷物を小さくまとめ、乗馬用ブーツを履いたルイズがやってきた。
「ああ、ギーシュくんが全部やっといてくれたよ」
「そう…」
ルイズは、ちらりとギーシュを見た。
彼のアノンとの因縁は、決して浅いものではない。
昨夜見ただけでも、前とずいぶん変わってしまった印象を受けたし、ルイズは主として、未だに罪悪感を感じている。
任務中、この二人がうまくやっていけるか心配だった。
「なあ、ルイズ。僕の使い魔も連れていきたいんだが……」
「あんたの使い魔?」
ルイズが聞き返すと、ギーシュは足で地面を叩く。すると、地面が盛り上がり、巨大なモグラが顔を出した。
676 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:48:19 ID:69CDNnge
ギーシュは膝をついて、そのモグラを抱きしめる。
「ヴェルダンデ! ああ! 僕の可愛いヴェルダンデ!」
ルイズは思わず、ずっこけそうになった。やっぱりギーシュはギーシュだ。
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
「でっかいモグラだなぁ」
「ねえ、ギーシュ。ダメよ。私たち、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物なんて、連れて行けないわ」
ルイズがそう言うと、巨大モグラが鼻をひくつかせ始めた。地面を這って、ルイズに擦り寄る。
「な、なによこのモグラ」
ヴェルダンデがいきなりルイズを押し倒した。
「ちょ、ちょっと!」
ヴェルダンデは鼻をひくつかせ、夢中でルイズの体をまさぐる。
「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」
ヴェルダンデは、ルイズの右手に光るルビーを見つけると、そこに鼻を擦り寄せた。
「この! 無礼なモグラね! 姫さまに頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」
ギーシュが頷きながら呟く。
「なるほど、指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
「カラスみたいだね」
「カラスとか言わないでくれたまえ。ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ。『土』系統のメイジの僕にとって、この上ない、素敵な協力者さ」
のろけるその表情は、まったく以前のギーシュのままだ。
「のん気に話してないで助けなさいよ!」
何とか巨大モグラを押しのけようと暴れるルイズが、ヴェルダンデの下で叫んだ。
「確かに、このままじゃ出発できないね」
そう言って、アノンはルイズにのしかかるヴェルダンデに手を伸ばした。
ちょっとごわついた茶色い毛皮に指先が触れる。
それだけで、ヴェルダンデはビクリと体を震わせ、逃げるようにルイズから離れると、地面を這いずってギーシュの後ろへ隠れてしまった。
「おや、どうしたんだい僕のヴェルダンデ。何をそんなに怯えているんだね」
ギーシュが不思議そうに尋ねるが、ヴェルダンデは震えるばかりだった。
「君たちが、姫殿下の使いかな?」
男の声が聞こえ、朝もやの中に人影が浮かんだ。
「何者だ!」
ギーシュは顔を引き締め、素早く杖を構える。
早朝の時間帯にこんな場所にいる者など、ほとんどいない。
「僕は敵じゃない」
そう言って、朝もやの中から羽帽子を被った貴族の男が現れた。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
ワルドと名乗った男は、帽子を取って一礼する。
「魔法衛士隊だって!?」
魔法衛士隊、と聞いてギーシュは目を輝かせた。
魔法衛士隊と言えば全貴族の憧れ。もちろんギーシュも衛士隊に憧れる貴族の一人だ。
「ワルド様……」
立ち上がったルイズが、震える声で言った。
「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」
ワルドは人なつっこい笑みでルイズに駆け寄り、抱え上げた。
「お久しぶりです」
ルイズは頬を染めて、ワルドに抱きかかえられる。
「相変わらず軽いな君は! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
「あー、ルイズ。君は一体、その御人とどういう関係なんだね?」
いきなり目の前でいちゃつき始めた二人を、怪訝そうに見つめて、ギーシュが尋ねた。
「おお、すまない。久しぶりに婚約者に会って、礼を失していたようだ」
ワルドのその言葉に、ギーシュが驚きの声を上げる。
「婚約者だって? 魔法衛士隊の隊長が?」
だが、考えて見ればルイズは、普段からゼロゼロと馬鹿にされてはいるが、公爵家の令嬢だ。
つまりは、トリステインでもトップクラスの家柄。その婚約者なら、それくらいの相手がいてもおかしくはない。
677 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:49:02 ID:69CDNnge
「だからあの時見とれてたのか」
アノンが一人、納得したように呟いた。
ワルドはアノンに気づいて、
「彼らを紹介してくれたまえ」
とルイズを下ろした。
「あ、あの……、ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のアノンです」
ルイズは二人を指差して言った。
ギーシュは敬意を払い、丁寧に頭を下げる。それに習って、アノンも頭を下げた。
「君がルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな」
ワルドは気さくに、アノンに近寄った。
「僕の婚約者がお世話になっているよ」
「こちらこそ。…で、子爵様はなんでここに?」
「姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
「なるほど」
アノンは間近でワルドを観察した。
学院のメイジたちは皆、魔法に頼りきっているのか、体はほとんど鍛えられていないが、ワルドは逞しい体つきをしている。
隊長、と言うからには魔法の腕も相当なものなのだろうが、体術の方もかなりできる、とアノンは分析した。
ワルドが口笛を吹くと、バサッと、大きな翼の羽ばたく音がして、朝もやの中から、一匹の獣が現れた。
鷲の頭と上半身に、獅子の下半身を持つ幻獣、グリフォンだ。
「あ、あのときの使い魔だ」
そう言ってアノンは好奇心を押さえられない様子で、グリフォンに駆け寄る。
するとグリフォンが大きく嘴を開け、鋭い声でアノンを威嚇した。
慌てて、ワルドがグリフォンの手綱を握る。
「どうしたことだ。僕のグリフォンがこんなに取り乱すなんて」
暴れ出しそうなクリフォンを、ワルドがどうどう、となだめる。
ギーシュがアノンに言った。
「さっきのヴェルダンデといい、君はずいぶんと使い魔に嫌われるな。そういえば、他の使い魔たちも君を避けてるようじゃないか」
「やっぱり、動物は勘が鋭いんだなあ」
アノンはそれだけしか言わなかったが、アノンと闘ったことのあるギーシュには、なんとなくその意味が分かった。
グリフォンが落ち着き、さっきからそわそわしているルイズに、ワルドが声をかけた。
「おいでルイズ」
ワルドは躊躇うルイズを抱きかかえ、グリフォンに跨った。
「では諸君! 出撃だ!」
ワルドとルイズを乗せたグリフォンが駆け出し、ギーシュも感動した面持ちで、後に続く。
アノンも怯える馬を、半ば力ずくで押さえ込み、その後を追った。
678 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:49:53 ID:69CDNnge
グリフォンは疲れを見せずに飛び続ける。
だが、アノンとギーシュの乗る馬はそうはいかなかった。
すでに二回ほど、途中の駅で馬を替えているが、それでも、ともすれば置いていかれそうになる。
学院を出発してから、アノンたちは一度も休んでいないのだった。
「凄いもんだな。もう半日以上、走りっぱなしだ。こっちは二回も馬を交換してるっていうのに」
とギーシュが言った。
少し疲れた声だったが、それでも以前の彼なら今頃完全にグロッキーだったはずだ。
短期間で、ずいぶんな成長を果たしているギーシュである。
「グリフォンっていうんだっけ、あれ。こっちにも一匹欲しいね」
羨ましそうに、アノンは前を行くワルドのグリフォンを眺めた。
アノンの方は、そう疲労こそしていなかったが、慣れない馬での走行に、少々尻が痛くなり始めていた。
低空を飛行するグリフォンなら、こんな振動もなく、きっと快適に違いない。
その証拠に、長時間休んでいないにも関わらず、ルイズとワルドは、時折笑い声を上げたり、顔を赤らめたりとずいぶん楽しそうだ。
「まあ、無いものねだりしても仕方ない。せめて、次の駅で馬を変えようじゃないか」
アノンはギーシュに頷いて、潰れかけた馬に鞭をいれた。
679 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:50:33 ID:69CDNnge
アノンとギーシュが、何度も馬を代えて飛ばしただけあって、夜中にはラ・ロシェールの町明かりが見えて来た。
ここまで来れば、あと一息だ。
だが、ここは山の中。左右の切り立った崖が、険しい山道を演出している。
「ラ・ロシェールって港町だろ? 海はどこだい?」
疑問を口にしたアノンに、ギーシュがあきれたように言った。
「君、アルビオンを知らないのか?」
「知ってるよ。別の大陸だって。だったら船に乗るんじゃないのかい?」
「信じられないな……」
驚いたギーシュだが、アノンは冗談を言っているようには見えない。
「? 何か変なこと言ってるかな」
「いいかい、アルビオンって言うのは…」
「あ、ギーシュくん。伏せて」
「え?…うわ!?」
アノンは反応を待たずに、ギーシュに飛び掛った。二人は馬から転げ落ちる。
「こら、置いてくぞ!」
「な、なにやってんのよアノン!」
ケンカでも始めたかと、ワルドとルイズが怒鳴った。
その時、グリフォンの前方に、崖の上から赤々と燃える松明が何本も投げ込まれた。
訓練されたワルドのグリフォンは動じない。
だが、アノンとギーシュの馬は松明の火に驚いて嘶き、めちゃくちゃに走り出した。
走り出した馬に、何本もの矢が降り注ぐ。峡谷に馬の断末魔が響いた。
「奇襲か!」
アノンに押し倒されたギーシュは、暗闇で位置を悟らせないため、抑えた声で言った。
しかし、松明の灯を目標に、矢は次々と飛んでくる。
「ワルキューレ!」
ギーシュが薔薇の杖を振ると、花びらが大きな盾を持った二体の青銅のゴーレムへと変わる。
ワルキューレはアノンとギーシュの前に立ち、その手の盾と体で矢を受け止めた。
「ルイズ!」
「こっちは大丈夫だ!」
アノンの呼びかけに、風の障壁で自分とルイズを守りながら、ワルドが答える。
ひとまず安心し、アノンはワルキューレの影から、矢が飛んでくる崖を見上げた。
矢の数からして、結構な人数がいるらしい。
このまま守っていてもジリ貧だ。かといって、矢が降り注ぐ中、あの崖を登るのは少し面倒だ。
背中のデルフリンガーに手をかけて思案していると、突然、崖の上から悲鳴が聞こえた。
続いて何かの羽ばたく音。
聞き覚えのある羽音に、アノンは空を見渡した。
ワルドが呟く。
「おや、『風』の魔法じゃないか」
その言葉通り、崖の上では小型の竜巻が巻き起こり、吹き飛ばされた男達が、アノンたちのいる道まで転げ落ちてきた。
間近で翼の羽ばたく音がして、夜空の月を背に、見事な風竜が舞い降りた。
タバサのシルフィードだ。
着地した風竜の背中から、赤い髪の少女が飛び降りる。
680 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:51:17 ID:69CDNnge
「お待たせ」
「お待たせじゃないわよ! 何しにきたのよ!」
ルイズが、キュルケに怒鳴った。
「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こして後をつけたのよ」
タバサは賊を蹴散らした後だというのに、シルフィードの上で、いつどおり本を広げている。
ただ、本当に寝込みを叩き起こされたらしく、パジャマ姿で頭にナイトキャップを乗せていた。
「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」
「お忍び? だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。とにかく、感謝しなさいよね。あなたたちを襲った連中を捕まえたんだから」
しれっとして、キュルケはルイズたちを襲ってきた賊を指差した。
ギーシュが捕らえた賊に青銅の手枷をはめて、尋問を始めている。
「それに、勘違いしないで欲しいわ。あなたを助けにきたわけじゃないの」
自分を睨むルイズにそう言うと、キュルケはワルドにすり寄った。
「おひげが素敵よ。あなた、情熱はご存知?」
だがワルドは、体を寄せるキュルケを、左手で押しやった。
「あらん?」
「助けは嬉しいが、これ以上近づかないでくれたまえ。婚約者が誤解するといけないのでね」
そう言ってルイズを見つめる。ルイズが顔を赤らめて俯いた。
「なあに? あんたの婚約者だったの?」
つまらなそうに言うキュルケに、ルイズが曖昧に頷いた。
「さあ、君たちは一体何者なんだね。誰の指示で僕たちを襲った?」
「けっ! さっきまでゴーレムの後ろで震えてたガキが偉そうによ」
「矢を避けるので精一杯のひよっこが粋がってんじゃねえ!」
先ほどから尋問を行っていたギーシュだが、甘く見られているのか、思い切り罵声を浴びせられている。
「あらあら。完全に舐められてるわね、ギーシュ」
「どれ、尋問は僕がやろう」
ワルドが進み出ようとすると、
「そうかい。…ところで、僕のワルキューレがキズだらけにされたお礼をしたいそうだ」
先ほどまで、矢よけにしていた二体のワルキューレが、賊の前に現れた。
その手には盾の変わりに、棘のついた禍々しい形の棍棒が『錬金』されている。
矢を受けたキズも相まって、二体のワルキューレは、なんともいえない迫力を放っていた。
「君たちは全部で何人かな。まあ、こちらとしては最後の一人に答えてもらえばいいわけだが……」
返事も待たずに棍棒を振り上げたワルキューレに、賊は悲鳴を上げて、ただの盗賊です、と叫んだ。
「物とりか、なら捨て置こう」
とワルド。
アノンが尋問を終えたギーシュに尋ねた。
「ギーシュくん。あの中に『風』か『火』のメイジはいなかったかい?」
「いや、メイジはいなかったな。いたら矢など使わなかっただろうし」
「それもそうか…」
ワルドが一行に告げる。
「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」
ルイズを抱きかかえて、ワルドはグリフォンに跨った。
グリフォンが先頭を行き、馬を失ったアノンとギーシュを乗せたシルフィードが後に続く。
ラ・ロシェールはもう目の前だった。
681 :
アノンの法則:2010/04/13(火) 21:52:42 ID:69CDNnge
以上です
ではまた
おお更新早くてうれしいです
この辺は普通の展開かー、続き待ってます
乙でした。新生ギーシュの活躍に期待しています。
て
風か火のメイジがいたら食う気だったのか?
乙です。
今後の展開楽しみにしております。
ルイズを食ったら俺TUEEEができるな
ルイズか誰かが怪我した時に思わず水魔法で治療してメイジ食ったのがばれる展開かな
>>647 何故か天啓的に何シーンか脳内に浮かんで来たんだが、俺は一度も読んだ事無いんだよな。
この気持ちどうしてくれる!www
ちなみに、確実にコックとギーシュはマジ泣きすると思うの。
あと一作くらいで次レスだな。まったく、アホな規制さえなければもっと早く埋まるものを。
ワルドかウェールズまたは両方を食うのでは。
おマチさんも今度こそ食的な意味で食われちまうかもしれない。
アノンはナイスガイも行き遅れもかまわず食っちまう男だからな…。
まレコンキスタと一発やらかせばメイジでもドラゴンでも食い放題だろうが。
692 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/14(水) 21:34:23 ID:8ioVg95e
ゼロのメイジと黒蟻の使い魔更新しないかなぁ。魔法権利使うルイズっていうのが独特で好き過ぎるんよ。
それはそうとハミュッツ召喚してみたいな。
被殺願望から来る狂喜でガンダールヴの力覚醒させる代行とか見てみたい。
>>692 黒蟻は俺も好きだ。もう、一年近く更新されてないか……。
あと、元ネタはよく知らんのだが舵輪も来てくれるのを待ってる。
>>692 グロとか18禁とかでなければ、好きに召喚すりゃ良いんじゃないかない?
失礼します。
携帯アプリ『ネクロノミコン』のキャラクター、『ジン・レイカー』が召喚される話を作りはじめたのですが……、かなりマイナーな作品ですが、宜しいでしょうか?
かまわん、行け
了解しました。
では次のレスから書き始めます。
投下始める、ですよね?
揚げ足取りみたいで申し訳ないけれども
【警告】
●本作品にはグロテスクな表現があります。また、ゼロの使い魔のキャラクターがエグい感じに死んだりします。
そのような表現が苦手な方の閲覧はお勧め致しません。
●ネクロノミコンや夢魔の天蓋に登場するアイテムは、基本的に原作と同じ形状ですが、どんな物かわからない物は、かなり勝手な描写をしています。
……失礼。「作りはじめた」って書いてありましたな。
投下予告みたいでややこしいですぜ
その手の作品は避難所の方がいいのではないだろうか
いや、警告が出たということは投下が今から始まるのか?
っていやいやいや避難所行きだろうそれは
「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ! 神聖で美しく、強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! わが導きに応えなさい!」
ハルケギニア大陸の国家『トリステイン王国』の広々とした草原にそびえるトリステイン魔法学院の中庭。そこに、トリステイン屈指の名門貴族の三女『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』の声が響く。
ルイズは、期待と不安が入り交じった念をこめて杖を振るった。
直後、どごぉん、と耳をつんざく轟音が響き、土煙が中庭を覆う。ルイズの前方の空間が爆発したのだ。
ルイズの召喚を見守っていた、頭がとても寂しい男性教師『コルベール』とクラスメイト達は、爆発が起こる事をあらかじめ解っていたかのように、マントで顔を覆うなり、ルイズに背を向けるなりして、爆発から身を守る。
やがて土煙が引いたころ、「あっ」と、クラスメイトの一人が爆発の中心に何かを発見した。他の生徒たちもコルベールも、爆発が起きた場所に注目する。
「あーもー、調子悪いわ……」
ルイズは悪態をつきながら、爆風と砂で台無しになってしまった自慢の桜色の髪を直す。
「……いつもの事じゃん」
クラスメイトの誰かが小声で呟いたのと、他の誰かが「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」と、大声でからかうように言ったのは、ほとんど同時だった。
「平民……?」
がしがしと髪を手で梳かしながら、ルイズは爆心地を見る。そして愕然とした。本当に右腕のない人間の男が立っていたからだ。
「ははは、本当に平民だ!」
「おい。あいつ、右腕がないぞ?」
「本当だ。普通の平民すら出せないなんてな」
生徒達がざわつく。その中には隻椀(せきわん)である事を貶す(けなす)生徒が何人かいた。
トリステイン魔法学院に通う貴族の子供は、自分の家の権力に絶対的な自信を持つ子供も少なくない。そのため、身体の一部が欠落した生物を貶す者がいるのは、当たり前の事といえば当たり前の事だった。
「…………」
男は辺りを見回す。ルイがその様子を見ていると、目が合った。
「すまないが――」
男はルイズに話し掛けた。
「ふぁいっ!」
ルイズはビクッと肩を奮わせながら、叫ぶように返事をする。
男は睨むように――少なくとも、ルイズには睨んでいるように見えた――ルイズを見る。
そして、生徒達の笑い声をバックに、「ここはどこなんだ?」と、ルイズに尋ねた。
鍔が短い紅色の帽子。ベルトを何本も巻いた藍色のチノパンを履き、マントのように羽織った分厚い藍色コートは、頬の半分が隠れるほど襟が長い。
そんな暑苦しい格好をした、見た目二十代半ば程の、顎に少し髭が生えている男。それが、ルイズが召喚した平民の男である。
男は、ルイズからサモン・サーヴァントの説明を受けた。
曰く、それは『使い魔』の召喚。この世界のどこかにいる生物を、魔法という超能力で呼び出し、契約し、使役する事。
ルイズの説明を要約すると、以上だ。
途中、「これは何かの間違いよ!」とか、「私が欲しいのは強くて美しい使い魔なのよ! あんたみたいな弱っちそうな平民じゃないわ!」など、散々な事を言われ、その度にコルベールに注意をされた。
「――で、俺はその召喚され、お前……」
そこまで言って、言葉に詰まる。
「ルイズよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。――って、私は貴族よ? お前≠セなんて呼ばないで欲しいわ。……で、貴族に自己紹介をさせたのよ? あんたの名前も教えなさい」
ふんっ、と鼻を鳴らしながらルイズは言う。
「そうだな、すまない。俺の名前はレイカー。ジン・レイカーだ」
「ふぅん……。ジンでいいかしら?」
「構わない」
>>699 その携帯アプリは知らんが、ネクロノミコンということはクトゥルフ関連かそれに近いものだろ?
ならば警告されるまでもなく、グロやエグイ死に方はデフォなので気にするな。
>>697 それよりも書いてから投稿しような。
グロとかそういうのは避難所でやるべきだろ
エグい感じに死ぬってのも程度によるが蹂躙になりかねんし
「――で、俺はヴァリエールの使い魔とやらにならなければならないのか?」
「ええ」
ふぅむ、と、ジンは唸る。
赤や青や緑等の異常な髪色をした人間と、どう見ても地球上のものとは思えない生命体がている所と、ルイズの説明から察するに、地球かどうか怪しいものである。
ジンは少し考え、ルイズに言う。
「わかった。俺はフランソワーズの使い魔となろう」
元の世界に戻る事はできないらしいし、未練もないので帰る気もない。
それまでは、このルイズと契約をし、衣食住を揃えるのもいいかもしれない。
『使い魔』とやらがどんな物か、詳しい事はわからないが、奴隷の如き扱いを受ける事はないだろう。――あくまで勘だが。
「――では」
ルイズはすぅ……と空気を吸い、詠唱を始める。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
ルイズは目を閉じ、ほんのり頬を染めながら、ジンに顔を近付ける。詰まる所キスをしようとした。
しかし、ジンの胸程しか身長がないルイズの唇が、立っているジンの唇には届かなかった。
ぴんっと背伸びをしたが、それでも足りない。
「…………」
ルイズは真っ赤になった。周りからクスクスと笑い声が聞こえはじめる。
「……しゃがみなさい」
「ああ、すまない」
ジンは片膝を付く。
こほんと咳払いをし、二度目の詠唱を始める。
「――改めて。我が名は――笑うな!」
ルイズはギャラリーを怒鳴り付け、ゴホゴホと大げさな咳払いをし、三度目の詠唱を始める。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
二人の唇が重なった。
「……これでいいのか?」
唇を離し、ルイズに聞く。
「ええ。――幸運に思いなさい。私のファーストキスを受け取れたんだから」
ファーストキス云々はともかく、確かに幸運だった。
ジンは、使い魔との契約とは、身体の一部を切って出た血をルイズに飲ませる(もしくはその逆)とか、ナイフか何かで身体に何かの印を刻み込むとか、身体の一部を切断するとか――そういうグロテスクなものを想像していたのだ。
彼はマゾヒストの類ではないため、キス程度で済んだのは本当に幸運だった。
「…………」
「ん?」
ふと見ると、ルイズがじっとこちらを見ていた。
何か言いたそうに、『あー』とか『えー?』とか唸っている。
「何だ? まだ何かあるのか?」
ルイズは不安そうにコルベールを見る。
いつの間にやら生徒達と異形の生命体はどこかに消えていて、この場にいるのはジンとルイズとコルベールだけになっていた。
「ミスタ・コルベール……」
「ええ。妙ですね……」
「……?」
二人は重い空気を漂わせながら、ジンを見つめている。
「おい、何なんだ?」
あまり他人に関心を示さないジンも、理由もわからずに見られるのは、あまり気持ちのいいものではない。
「ああ、失礼、ミスタ・レイカー。ご存知ないとは思いますが、使い魔には身体の一部に『ルーン』という模様が現れるのです」
「ルーン?」
「はい、ルーンこそが使い魔の証。一瞬強烈な痛みと熱に襲われ、ルーンが現れるはずなのですが……」
周りの生徒の誰一人、それどころか、教師であるコルベールが何も突っ込まなかった辺り、契約の方法はキスで合っているのだろう。
合っているのならば、痛み・熱と共にルーンが現れるはずである。つまり、ルーンが現れないという事は……。
「――コントラクト・サーヴァント、失敗?」
「ミス・ヴァリエール。落ち込む事はありませんよ。今日はたまたま調子が悪かったのでしょう」
今にも泣きそうな顔で呟いたルイズを、コルベールが慰める。
「今日はもう休みなさい。サモン・サーヴァントは成功したのです。契約はまた後日やり直しましょう」
コルベールは、ついに泣き始めたルイズを連れて、校舎と思われる建物に歩き始める。
「……面倒な事になったな」
ジンは、これから始まるルイズとの共同生活を想像し、ため息をついた時だった。
「――ッ!?」
突如膝を付き、右肩を押さえてうずくまるジン。
「ぐ――うぅ――」
「ジン?」
「ミスタ・レイカー?」
コルベールと涙を拭いたルイズが振り返り、ジンに駆け寄る。
「これが……ルーンの痛みか?」
額に汗を滲ませながら、ジンが聞く。
二人は、それはすぐに治まるから心配しなくていい、と言った。
(――違う)
最初の一瞬は激痛のあまり気付かなかったが、すぐに思い出す。これは断じてルーンの痛みなどではない。
ジンは、これと同じ痛みを――自分の人生を狂わせた痛みを知っている。
(何故だ!?)
ジンは、自分の右腕が元々あるべき位置を見て、考える。同時に、めきめきっ、と鈍い音を立て、右腕が生え≠ス。
(消えた筈だぞ。『宝鍵(ほうけん)』はッ――)
既にジンの視界は歪みつつあった。だが、右手に走る激痛が、意識の混濁を許さない。
我は万物の臓器。
ふつふつと脈打ちて。
永久の悪夢にまどろみ。
星をも孕む胎盤とならん。
ジンの脳に蘇る、忌まわしい記憶。捻くれて弾けた母と妹の姿。魔術に魅せられ異形と化した父の姿が蘇る。
「……う」
痛みが治まったのと同時に、ジンは意識を手放した。
投下終了です。
皆様の言う通り、二話目以降は非難所に投下すべきでしょうか?
少しでもゼロ魔キャラが酷い目に合うとSAN値が0になって発狂する方もいますので、そういうのは避難所の方が無難といえば無難ですね。
わかりました。次回から非難所に投下します。
乙でした
>>714 『非難所』……w
全く気付きませんでした。失礼しました。
風の聖痕とのクロスって全然無いの?
地水火風と属性かぶるし相性よさそうなのに
そういえばネクロノミコンって稀覯本のはずなのに、あっちこっちの作品で使われるからどんどん増えてくよな。
ブックオフで買える魔導書の名は伊達じゃないな。
アル・アジフにネクロノミコン〜蟲聲經に尸条書、屍龍経典ヴォイニッチ、新釈・断章、失われた規範書〜♪
だが秘呪法!てめーだけは駄目だ!!
>>705 その携帯アプリを知らなかったり、クトゥルフ関連だと分かる人じゃなけりゃ
グロやエグイ死に方がデフォだなんて分からないから、警告はした方が良いと思う
あと他の人が言って作者さんも了解してくれたけど、避難所向きだよね
>>710>>712>>715 乙です
今回も途中からそうして下さったので気分を害されてしまわれるかもしれませんが、
投下前に書き上げてからお願いします。
すいません、言葉足らずでした
今回も途中からそうして下さったので、既に分かってらっしゃることを言い、
気分を害されてしまわれるかもしれませんが、投下前に書き上げてからお願いします。
了解しました。
SS投稿は初めてなので色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが……、よろしくお願いします。
>>1のテンプレに書いて無いようなことなんて分かるわきゃないですし、
それも指摘される度に対処すりゃ全然問題無いと思うんで気にせず頑張ってください!
「このはしわたるべからず」
を見て真ん中ならいいんだね、とガチで考えるような感じが…
いやまぁ指摘される度に直してくれればいいとは思うけど
>716
ここじゃないけどArcadiaのサイトで1つあります。タバサが和麻を、
ルイズが綾乃を召喚してます。
呼び出されるは暴風と烈火というタイトルです。
そのここじゃないけど理想郷ってパターンをやりたがる奴は何なんだ
ここでの話ししてるんだから他所を無理矢理持ち出すこと無いし混同するなよ
態々別でやってるんだからちゃんと住み分けしろ
>>716 あの世界の精霊使いは精霊王から力を分け与えられてるので
別世界では術を使えません
そんなワケで「風の聖痕」はゼロ魔のみならず異世界召喚ものとは相性悪いです
まあンな事気にしなければいい、と言われればその通りなのですが
「このはしわたるべからず」
一休さん召喚ですね。けど坊さんは決闘もしないし戦争にもいかない。
むしろテファやジョゼットたち孤児を集めて育てたり(大人)、手紙を取り返さなくてもいいアイデアを出したりするほうが似合ってるな。
で、コマーシャル時にはルイズたちが「一休!」「一休」と呼んで「あわてないあわてない、一休み一休み」
>>725 実はハルケギニアはその世界の過去か未来だったんだよ!
もしくは、実はハルケギニアとその世界は同じ世界にあるんだよ!
ってのは?
>>710 いきなり右腕が生えた事が次回でどんな影響を及ぼすか楽しみではある
(外見は平民だが実は亜人じゃないかとか思われてもおかしくないし)
というかルーンは右の方?
ふと、3桁に及ぶサイズの乳の持ち主と言えば言葉様もそうだったなと思い出した
オーバーフローは何処まで誠君を変態にしたら気が済むんだろう…
730 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 15:36:06 ID:I+KK6Cjd
・・・題名はなんだろう??
そろそろ次スレを立ててよいかい?
ぉっ
それじゃあ埋めに入るか。
今回も、なじみの人や帰ってきてくれた人、新しく来た人で大変にぎわった。次も平穏無事に楽しくいきますように。
始祖ブリミルにお祈りします。
梅をかねて新スレから出戻り。
最近はトキって言うともっぱらMugen動画ばっかり見てたから感覚がおかしくなっている自分に気がつく。
『有情破顔流影陣!!!』
病気の心配が無いトキと言うとオルテガ召喚でも良いんじゃね?
しかし『ジョインジョイントキィ』が予測変換できるGoogle日本語入力もどうかしてる。
テンに殺されちゃうんだよね
じゃあかわりにトキさま(仮名)召喚
740 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/16(金) 16:08:09 ID:6ZWuux/1
ドラゴンボールマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
ミスターサタン召喚ですか?
ミスターサタン・・・・・・ロビンマスク・・・・アシュラマン・・・・・
塾長ぉ・・・・・しくしくしく
北斗無双のトキは病気を克服した上に救世主となって放浪するENDがあるぞ
まぁネタばれすると夢の話なんだが
無双のトキはアーケード以上に意味がわからないキャラになってた
空中に胡坐をかきながら浮かび上がってかの有名な破顔拳を出すわローリングバスターライフル使うわ
怪しい気功士のように手を触れずに倒すわ…
傍から見ると先住魔法でも使ってるんじゃないかってぐらい怪しい人間になってたよ
オガァーザァーン!オガァーザァーン!!
サタン……サタンビートル好きなんだよなあ
この間すこし話題に出た雲界の旅人からライナを召喚して
目隠ししてメンヌビルと対決
孔明がビーム出すよりは納得出来る
私としては六刀流で英語使う伊達政宗も許せんな
>>748 伊達政宗とかは比較的まともな方だろう。
アレが許せないんなら、本田忠勝とか明智光秀とかどうするんだよ。
ホンダムはもう・・・・・諦めた
3だと明智はリストラされたな
多分だけど謎の高僧・天海が似たポジションになる予感だけど
>>751 そういう細かいネタは外さないからな、あのシリーズ。
個人的には松永久秀を使いたいんだが。
大谷吉継の設定はどうかと思ったな。
ただの狂人じゃねーか。
>>753 光秀も市も狂人だろ。
ザビーやら本願寺顕如が許されるんだし、良いんじゃね?
>>710ですが、『避難所用SS投下スレ』に投下し、名前欄には作品タイトルを記入、でいいのですか?
>>754 面妖な阿呆が噛み付いてきたのは残念だった
いや、吉継のほかにも自称人権団体が抗議すべき設定のキャラナンボでもいるだろに
>>756 あそこまで明白なバカゲーなんだから、抗議しても仕方ないのにねぇ。
まぁ、この際細かい設定うっちゃってまんまCCOにするぐらいやれば、復讐鬼でもスルーされたかもわからんが。
>>754 大谷の時は元のモデルの傾向に対する崩し方とアレンジの仕方での差異が今までと明らかに違ったから
>>755 これはどうした?
712 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 01:03:25 ID:6Lq1vI7a
わかりました。次回から非難所に投下します。
スマン途中で書き込んだ
あとは避難所の各スレを読めば投下する場所は分かるし、
名前欄にタイトルを記入するかも他の人の投下を見れば分かるだろ
>>758 悪意というかマイナス面全開な曲解は他に何人もいるがな。
失礼しました。
これで合ってるなと思って行動したら間違えていた、というのがよくありまして……。
1.主人公が電話から聞こえる風鈴の音を頼りに部屋を発見
2.住人も助かってめでたしめでたし
3.聴覚障害者がショックを受ける!と健常者が抗議
4.なん・・・だと・・・?
PCFXで出てた北斗の拳のゲームでは仮面のなぞの男として普通にトキが生きて登場してたなあ……
ジャギの息子ジャドとかあらゆる面で強烈な設定だった
何故か水場でシエスタと並んで、愚痴りながらルイズのパンツを洗うジャギ様って光景が浮かんだんだが…
二次創作でチョイ悪ぶったお人好しのジャギ様ってのを見るが、ギャップ萌えなのかねこれ?
北斗の拳の登場人物が召喚されて混沌となるゼロ魔世界……しかしもし、始祖ブリミルが北斗神拳伝承者の一人だったら……男の貴族はモヒカンになるのだろうか。
汚物を消毒するメンヌヴィル
・・・一気に雑魚キャラに成り下がったな
ブリミルの正体が早く明かされないと書きづらいって人いそうだよね
いや、もうそこは割り切って「儂のSSやったら、こうなんじゃあっ!」で行くよ。
もうナノマシンで全て解決しちゃいましょう
>>736 4兄弟全員召喚で。ただし、
ジャギ…バイク
ラオウ…黒王
ケンシロウ…スポーツカー+"りん"
トキ…御輿
> ジャギ…バイク
FF13のシヴァみたいに、ジャギがバイクになるのを想像してしまったw
ブリミル自身が北斗の拳の人物よりも、四人の使い魔がソッチ系の方が盛り上がるかもしれない?
こう……それぞれの王家には魔法とは別の力が伝わっているとか。
>>761 むしろそういう曲解なら良かったが、元の個性を殺して名前使っただけってぐらいのパターンは今までに無かったからな
カトレアがデビルリバースを召喚して母親がわりに
「マ、マザー……」
「まあまあ、大きな赤ちゃんねえ」
カトレアって原作では使い魔召喚してないのかな
? 徳
ワルドが南斗鳳凰拳の使い手というネタを考えたことがあったな……
あとオッパイが邪魔で秘孔が突けない拳法殺しなテファ
南斗鳳凰拳ならば他人の下でチマチマやるようなせこい真似しないで
将星の宿命のままに一大勢力を築き上げろ
そういえばこの作品のエルフって弓使わないね
ティファニアは使えないだろうけど
まぁ先住魔法あるし
>>771 『ジャギ…バイク』でバイクに変形する仮面ライダーを思い出したのは俺だと思いたい。
そういえば園咲(旧姓:須藤)霧彦さん召喚とか有りだろうか?
もちろん召喚時は全裸にベルト一本でwww
>>782 呼ぼうにも、あの死に様じゃ流石にどうひっくり返っても無理だろ。
向こうの作中で息を引き取る→直後に死体が完全消滅なんて描写をされちゃったからね。
そもそも彼の風都という街に対する愛情は尋常じゃないから、万が一にも生き延びた場合
全力で向こうに戻ろうとするのは確実だからなぁ。
>>782 だよなぁ、やっぱり……
もしゼロ魔世界にもガイアメモリが流通してたら
退場時の霧彦さんなら流通止めに行くだろうけど、死体が完全消滅だし…
やっぱり無理があるか……
……今だれかに753と193を呼べと囁かれたような気がした……寝よう
音也パパンは生活力皆無に見えて、ヴァイオリンさえあればどこでも演奏して日銭が稼げるからなー
ルイズとしてもひとつでも取り柄があればそれなりに大事にするのではなかろうか
ルイズだったら音也の腕がわかるだろ
音也ならルイズのテンパってる様を上手に励ますだろうな。
カトレアさんが病弱なのは、トキの運命を継いでいるからとか……
ルイズ達の危機に謎の覆面桃髪メイジとして救援に来るカトレアねーちゃんとな
ソウルイーターからクロナとラグナロク召喚とか
部屋に引きこもって出てこなくなりそうだけど…
>>780 アマゾネスよろしく切り落としたテファが見たいとな?
テファが貧乳だったらもっと出番あったと思う
たまにモンモンあたりと「豊胸薬」を作ろうとしているルイズが居ますが、逆の効果を持つ薬を研究しているテファをみて、それを「豊胸薬」と間違えて大事故を起こすとか。
>>794 そういうの読んだことあるぞw
結果は想像の通りだが
小ネタの「きょうだいなる使い魔」はばいんばいんになるアイテムを召喚するものだったが、あれはいい意味でぶっ飛んだ作品だった。
小ネタだと「革命的な使い魔」も、おっぱいの話しかしてないぜ。
おっぱい!おっぱい!
ちっぱい!!ちっぱい!!
いっぱい!!!いっぱい!!!
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !// /
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ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / !
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l
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\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ / ,.-‐ ' ´ / ____  ̄ ̄フ ∧ l
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___ { / `< / \|
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ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/ /
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入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V ヽ \ ,. '´
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ヽ _>-ヶ--∧_} ノ j /` 7 ̄ ̄ ̄{ (  ̄ ̄`ー‐^ーく_〉 .ト、_>
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無駄にAA貼ってんじゃねーよ
板に負荷がかかるんだよボケ
残り3kb……微妙すぎる
>>801 とりあえず脳味噌取り替えた方がいいぞ
お前の脳味噌はもうダメだ
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / !
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\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ / / / l. l
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