あの作品のキャラがルイズに召喚されました part273

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635代理の代理:2010/04/29(木) 12:33:10 ID:dwNXbh03
 ギーシュは勢い良く頭を下げた。
 貴族が平民に謝罪するなど、本来は有り得ない。だがそれでも、ギーシュは頭を下げた。貴族だろうと平民だろうと悪ければ頭を下げる。
 それは建前や面子云々を抜きにして、正しいことだと感じた。そんなことも分かっていなかった。
「そ、そんな! 頭を上げてください、ミスタ・グラモン! 私のような平民に頭を下げるなど・・・・・・」
 恐縮して、慌てた様子のシエスタが頭を上げるように促すが、ギーシュは頭を上げようとしない。
 そんなギーシュの様子を見て、観客たちは信じられないものを見たような顔をしている。
「いや、これは僕なりのケジメだ! 僕は君に杖を向けた。君を力でねじ伏せようとしたんだ。それはどんな理由であれ、許されるものではない!」
 ギーシュにだって誇りはある。自分でその誇りを蔑ろにするところだった。
 ルイズが、『ゼロ』と呼ばれてもなお誇り高くあろうとした一人の『貴族』が、ギーシュにそれを気づかせてくれた。
「・・・・・・ありがとうございます。いえ、これは違いますね。こう言うべきでしょう、私は貴方を『許します』、ミスタ・グラモン」
「しかし、僕は君に杖を向けた。傷つけようとしたんだ」
 あそこでルイズが止めなければどうなっていただろうか。ギーシュにもそれはわからない。わからないが、ロクな事にならなかったのは確かだ。
「私たちは平民です。あんな事は多くは無いですけど、珍しくもないんです。私は幸運にもミス・ヴァリエールに助けられました。だからもう、いいんです」そう言ってシエスタは儚げに微笑む。

――情けない。

 シエスタの言った通り、こういった事は珍しくは無い。『貴族』が『平民』を、『力』で押さえつける。実に有り触れた、悲劇にもならないただの日常だ。
 その事実にギーシュは腹が立つ。そしてほんの少し前まで、ギーシュ自身も『そんな貴族』だった。
 そして目の前の少女に、こんな笑顔を浮かべさせたのは自分なのだ。
「・・・・・・すまない」
 だが今のギーシュには歯を食いしばり、ただ頭を下げることしかできない。
 そんな自分が悔しかったし、情けなかった。
636代理の代理:2010/04/29(木) 12:33:49 ID:dwNXbh03
   5

「少しは目も覚めたようね。ちょっと見直したわ」
「ああ・・・・・・目を開かせてくれたのは君だよ。ミス・ヴァリエール、ありがとう」
 ルイズは魔法が使えなかった。もしもギーシュが魔法を使えなかったら、ここまで気高く在れただろうか。
 ギーシュの感謝を聞き、ルイズはしばらく呆気に取られていたが、頬を掻きながらこう呟いた。
「・・・・・・私は別に何もしてないわよ」
 それは、誰が聞いてもわかる照れ隠しだった。

「そ、それじゃ片付けて、先生への言い訳を考えましょう。食事の後の体操にしては少々やりすぎたわ」
 広場は散々な様子だ。ワルキューレの残骸に、ルイズのジャベリン。まさに嵐が通ったような有様だった。
「その前にルイズ。君に一つ、頼みがある」
「なによ?」
 これだけは済ましておかなければならないと思うのだ。
「僕を殴ってくれ、ルイズ。決闘はまだ終わっていない。僕はまだ『参った』とも言っていないし、杖を持ったままだ。・・・・・・それに」
「それに?」ルイズは首を傾げる。
「自分で、自分を殴るのは難しいからね」そして。
637代理の代理:2010/04/29(木) 12:34:23 ID:dwNXbh03
――そして、僕は殴られでもしないと目が覚めないだろう。

 痛みを伴わない教訓には、意味が無いのだ。
「本当にいいの?」念を押すように、ルイズが確認する。
「ああ、遠慮は要らない。思いっきりやってくれ」
 ギーシュがそう言い終わった瞬間。躊躇い無く、ルイズは右の拳で思いっきりギーシュをぶん殴った。女生徒から短い悲鳴が上がる。
 ギーシュは足に力を入れ、その場に踏み止まった。本当に遠慮無しのいい拳だった。
 殴られたのは初めてではない。父に殴られた事も何度もある。幼い頃に粗相をすれば母に打たれた。兄たちと殴り合いの喧嘩だってした。力なら、父や兄の方が強い。
「・・・・・・痛いな」
 だけど今までで一番痛く、最も心に響いた。
「あんた、やっぱバカね」
 そんな呆れたルイズの声も今はなんだか嬉しかった。
「ああ、自分でもそう思う。でも、これでようやく気持ちよく言えるよ。『参った』、決闘は君の勝ちだ」
 腫れた頬を手で確かめ、観客に向かって堂々と宣言する。これぐらいの見栄は張りたい。
「諸君! 今回の件、全ての非はこの僕にある! ミス・ヴァリエールは決闘に勝利し、自身の正しさを証明した! この結果に文句のあるものは、この『青銅』のギーシュが相手になろう!」
 そこまで言い切った後でギーシュはふらついた。観客から飛び出てきたモンモランシーが慌てて支えてくれる。
 魔力切れ、だ。限界の七体のワルキューレを作ったうえに、無理をして武器まで作ったのだ。もう精神力は空っぽだった。
「ギーシュのバカー!」とか「心配かけて!」とか「なんですぐに降参しないのよ!」だとか。散々文句を言われた。
 モンモランシーに支えられ、医務室に向かう前にルイズに声をかけられた。
 その言葉を聞いて、ギーシュは呆気に取られる。

――まったく・・・・・・反則だよ。

 何かと思えば、ルイズはこんなことを言ったのだった。
『ギーシュ、あんたはバカだけど、謝った時の顔はちょっと格好良かったわよ?』
 そう言って微笑むのだ。ルイズに決闘で勝てなかった理由をギーシュは思い知った気がした。
 気づけばギーシュの顔にも自然と微笑みが浮かんだ。腫れた頬が痛かった。
638代理の代理:2010/04/29(木) 12:36:22 ID:dwNXbh03
諸君、私は王道が好きだ。
と、言うことで七章終了です。今回は今までで最高の量になってしまいました。
ちらほらと支援や応援が頂け、作者としては大変嬉しく思っています。
期待に答えることが出来るように頑張っていきたいもんです。
今回、初めて《P.V.F》をぶっ放したのですが、やはり深見先生のあの濃くも丁寧な描写には遠く及びませんね。
書いていて色々と不満の残る感じになりました。万分の一でも雰囲気が伝わればいいのですが。
ギーシュの見せ場も何とか作りましたが、なんだか不自然かもしれない。
wikiの方で加筆修正とかもするかもしれません。
では、今回はこの辺で。


ここまで、代理終了
639名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 14:00:51 ID:wR4csNSr
パラベラムの人乙です
しかしイド・アームズでこれならエゴ・アームズはどんな化物銃になるのやら
フーケやワルドの身が案じられる
640名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 15:47:56 ID:XAsHG17q
殺し屋1のジジイを召喚したと思ったら、いつの間にか洗脳されて「殺し屋ゼロ」へと改造されるルイズ。
そして「ルイズによる平和の王都(ハイキョ)計画」により、次々と血祭りに上げられていく王宮の貴族たち。

『いや、いやいやいや! 姫様は友達よ、殺したくない!』
『……そいつは違うぞルイズ、こいつが一番の“いじめっ子”だ。友達のフリして陰でお前を馬鹿にしてたんだ』
『!!』
『殺せルイズ!親友面した裏切り者を爆殺しちまえ!』


カッキー組長に相当するキャラは誰かなあ…
641名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 15:55:26 ID:P1qZ6O7W
乙であります
誇り高いルイズは見てて気持ちがいいね
いつになるかわからないけどスペシャル・ショットの出番にも期待
642名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 16:14:08 ID:AxjFP1Gm
>640
ジョゼフ王「待っていた……お前のような変態を……」
643名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 17:35:18 ID:UqAi7Fcl
パラベラムの作者氏、乙であります。
ルイズも格好良いですが、ギーシュも男を上げましたね。
やっぱり野郎って生き物は、敗北から学んでナンボなんだなぁ。
644無口っ子倶楽部:2010/04/29(木) 18:39:56 ID:WoYnHeJB
大昔のネタをサルベージしてきた。多少アレンジを加えたが覚えてる人がいたらすごい。
 
 
ルイズの召喚した使い魔たちはタバサと卓についていた。
 
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
 
一人やってきた。
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」

副官「コーヒー9杯」
 
一服して……
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」

瑠璃子「タバサちゃん、電波届いた?」
ルリルリ「バカばっか」
645無口っ子倶楽部:2010/04/29(木) 18:42:48 ID:WoYnHeJB
さらに。
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」
岩崎みなみ「……」
エリザベス「……」
カイジ「……っ!」
 
で……
 
タバサ「……」
レイ「……」
長門「……」
ヒイロ「……」
トロワ「……」
ユウ・カジマ「……」
アルゴ・ガルスキー「……」
シカログ「……」
アイゼナッハ「……」
岩崎みなみ「……」
エリザベス「……」
呂布(恋)「……」
カイジ「……っ!」


G13 「……」 ―・~
 
THE END
646名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/29(木) 22:36:59 ID:7LzHMs8Q
ピアスの少年とキタローとたっちゃんとマヤと番長先生も追加で
あとエイス=ゴッツオ
647名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 00:48:01 ID:H0ZFcf/p
>>644-645
クラーク「何か喋れよ! 何がしたいんだ、お前らは!  俺は戦場でもこんな孤独を味わったことはないぞ!」

from.無口会議 二
648名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 00:52:08 ID:hyYXXFNh
刹那「・・・・ガンダム」
649名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 01:36:19 ID:nrz6UqyR
最近のカジマさんは喋るぞ!?
650名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 02:22:50 ID:l9mOPjnL
うむ……最近のではないがチャンと喋る作品もあるからなぁ
ユウ「ッ……ガンダム!? 敵に鹵獲されたのか?」
とか、ねぇ
651名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 10:39:50 ID:q5mXU8/O
ギレンの野望でレイヤー中尉との絡みがあるな
652名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 13:06:30 ID:1rRj8ovQ
ユウ・カジマとマスター・P・レイヤーか
何からの召喚と言うべきなんだろうな
653無口っ子倶楽部2:2010/04/30(金) 13:46:10 ID:zG2TAx7i
勝手に適当に続き作ってみた


そのころ、他の卓では。
 
シエスタ「あ、あのー、お茶がはいりました」
 
白雪みぞれ「……」
ミストバーン「……」
ヘカテー「……」
ぼーちゃん「……」
リシド「……」
ステラ・ルーシェ「……」
ディアス・フラック「……」
サイレンス「……」
セフィロス「……」

シエスタ「ご、ごゆっくり(な、なに? なんなの、この気まずくて重苦しい空気は!?)」
654名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 14:33:21 ID:hyYXXFNh
アムロ「あ、このパーツをこう調整したらガンダムの速度も上がるかもしれないな・・・」
カミーユ「カミーユが男の名前で何が悪いってんだ・・・」
ジュド―「リィナ・・・」
バナージ「どこかズレている」
マフティー「クェス・・・」
シーブック「貴族の飯を食ってるからってそんなに偉いのかよ・・・」
ウッソ「どうしてさ・・・どうしてさ!」
ドモン「この男を知らないか?」
ヒイロ「・・・・」
ガロード「ティファ・・・」
ロラン「ディアナ様は大丈夫だろうか・・・」
キラ「やめてよね、こんな紅茶で僕のお腹が膨れる訳ないだろ?」
シン「大した茶の淹れ方の腕も無い癖に・・・」
刹那「ガンダム・・・ガンダム・・・」


この中に入っていくのは苦行だな
655名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 17:01:38 ID:k++fjpIC
カミーユが召喚されてガンダになったらカミーユに惹かれる女が次々戦死していきそうだな
ラスボスはワルドで体から湧き出る謎の力に圧倒されて貫かれる
656名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 17:07:59 ID:vV1F7t91
むしろ東方先生を召喚しようぜ
素手でヨルムンガントを打ち砕き火石の爆発を握りつぶして消すの
657名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 18:50:39 ID:su5FdzZ0
絶賛停止中≫東方先生を召喚
658名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:33:47 ID:SnFg569+
クロス先の作品で明確な設定がない場合は独自の解釈してもいいのだろうか
659名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:48:17 ID:nzrH8FfL
そんなの時と場合だろ
そしてその時と場合な判断出来ない程度の把握しか出来てない作品は扱わないほうがマシ
660名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 19:50:12 ID:L1G62K/D
天然戦士GからGOG(ゴキヴリ・オブ・ゴールド)召喚
二つ名がGのルイズになって、ますます孤立化してしまいそうだw
661名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:09:50 ID:dii+GyNT
G・・・
英雄に憧れた英雄のプロトタイプ
台詞が詩的を通り越して電波過ぎて
書くのが難しすぎる
無理
FFCCよりジェネシス=ラプソードスを召喚

そうだ、シド全員呼ぼう
T〜]V、T、アニメ作品まで
ルイズがハイウインドと雷神とファルシの奴隷
ジョゼフが12シドとOVAシド
テファがUシド(列車付き)
教皇がバロンの技師
元騎士と冒険家とブリ虫と黄色雨ガッパは途中の町に
そしてブリミルの正体はTシド
662名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:30:36 ID:pmUO6RVp
>>661
お前がFF1をやってないのはよく判った。
663名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:45:35 ID:t2p0rJOV
「私を使い魔に?おーっほっほっほっほっ…面白い事を言うおチビちゃんね…ワタクシ」

ブ チ 切 れ ま す わ よ ?

FF11から連邦の黒い悪魔ことシャントットを召喚とか…
664名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 20:59:20 ID:dii+GyNT
>>662
GBA版もDFFも大好きですとも

FFTのシドとDFFシドが同一人物らしいとの話

そしてよくよく考えれば13シドって仮に呼んでもいつかシ骸になっちゃうね
665名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:02:21 ID:B0QVxwSs
現在投下よろしいか?
特に問題なければ二分後投下します。
666ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:04:34 ID:B0QVxwSs
 ルイズはデルフリンガーを構える。
彼女の前に立ちはだかるのはギーシュ、キュルケ。

「まったく、ゼロの癖に調子に乗るからだよ」
「本当、目障りなんだから」
「何よ、なによなによ! あんたたち、集団で! 二人がかりなんて!」
「仕方ねえだろ? 嫌われ者なんだから。俺だって、お前さんになんか使われたくなんかねえよ」

手元からの声。デルフリンガーの言葉に、ルイズは剣を睨みつける。

「そう睨むなよ。俺だけじゃねえ。お前さんみたいな無能に使われるなんてまっぴら御免だとさ、ザボーガーも」

 その言葉に周りを見渡すが、ザボーガーの姿はない。
 いつの間にか、被っていたヘルメットもなくなっている。

「ここ」

 キュルケの背後でマシンザボーガーに乗っているタバサ。

「何やってるのよ、貴女」
「ザボーガーは私がもらった」
「どうして!」
「だから、お前さんみたいな役立たずなゼロが嫌なんだよ、ああ、頼むよ。俺のことも早く捨ててくれねえかな」
「役立たず」

 モンモランシーがルイズを指さす。

「どうして貴女が、貴女ごときがあの、名門の三女なの?」

 使い魔たちがルイズを取り囲んでいた。
 サラマンダー、風竜、カエル、ジャイアントモール、バグベア、蛇、フクロウ、鷹、狼、大ムカデ……
 使い魔の先頭に立ち、糾弾するようにルイズを指さすのはシエスタだ。

667名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:04:54 ID:DcvpMJtb
この予告パターンは駄作の予感。
668ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:05:24 ID:B0QVxwSs
「みんな言ってます。貴女のようなゼロに喚ばれたザボーガーが可哀想だって」
「ミス・ヴァリエール、君はいつになったら魔法が使えるようになるのかね? ここまでの劣等生だとは、さぞや父上も母上もお嘆きだろうね」
「まあ、錬金もできないのですか。なんてことでしょう。このような生徒が誉れ高き魔法学院にいて良いのですか?」
「フライもレビテーションもできない? 冗談は止めたまえ。そのような貴族などいるわけがない。もし私なら、とっくに首を括っているな」
「我が学院始まって以来の問題児じゃな。まったく、困ったもんじゃ、魔法を使えない貴族になどパン一切れの価値もないと言うのに」

 シエスタが、コルベールが、シュヴルーズが、ギトーが、オールド・オスマンがルイズを詰っていた。
 ヴィリエが指を指して笑っている。
 マリコルヌが、ケティが、レイナールが。

「ゼロ」
「ゼロ」
「ゼロ」

 ルイズはたまらず駆けだした。行く先などない。ただ、この糾弾から逃れたい。
 誰かがその手を掴む。
離して、と言いかけたルイズは掴んだ手の主に気付く。

「……姉さま」

 ヴァリエールの長女、エレオノールがルイズの手を掴んでいた。

「姉さまっ!」
「貴女、いつまでヴァリエールの名を辱め続ける気?」
「え」
「落ちこぼれは必要ないの。そして貴女には、ヴァリエールの名は不釣り合いよ」
「姉さま……」

 震えるルイズに触れる柔らかい手。
 見上げたルイズは、もう一人の姉に気付く。

「ちい姉さま!」
「ごめんなさい。そこをどいてください」
669ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:06:18 ID:B0QVxwSs
 次女カトレアが、ルイズの肩を横へ押す。

「姉さま、お久しぶりです」
「あら、カトレア」
「……ちい姉さま?」

 カトレアは、初めて気付いたようにルイズを見た。
そして微笑み、

「ごめんなさい、どなたでしたかしら?」
「ちい……」

 畳みかけるように、

「私には、魔法が使えなくとも立派な貴族になろうとする妹ならいます。けれど、力に溺れて自分を見失うような情けない妹なんていません」

 けくっ、とルイズの喉が鳴った。まるで、瞬時に締め付けられたように。

「エレオノール、カトレア」
「父さま、母さま」

 よく見知った別の二人へと、ルイズを無視して二人は駆け寄る。
 後から来た二人も、当たり前のようにルイズには目もくれない。

 ……そっか
 ……私はもう、ヴァリエールじゃないんだ
 
 周囲が黒く染まっていく。

 ……何もないんだ
 ……友達にも、姉さまにも、父さまにも、母さまにも、ちい姉さまにも……
 ……デルフリンガーにも、ザボーガーにも……
 ……もう、見捨てられちゃったんだ
 ……私、貴族になれなかった……

 黒い景色に塗り込められていく自分を、ルイズは何処か遠い視点から見つめていた。

670ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:07:11 ID:B0QVxwSs
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 おい。嬢ちゃん。
 嬢ちゃん。

「嬢ちゃん!」

 ルイズは身を起こす。
 ここは、自分の部屋。自分のベッドの上。

「手酷くうなされてたみてえだが、大丈夫かい?」
「……デル……フ?」
「おう。どした。まさか俺の名前を忘れたか」
「そこにいるの?」
「……また、夢か」
「……また……同じ夢」
「気にすんな。俺は嬢ちゃん見捨てる気ねえよ。キザ坊主だって、赤毛の姉ちゃんだって、青髪のちびっ子だって、くるくる頭だって一緒だと思うぜ。少なくとも、あれから反省してんだろ?」
「怖いの。私、怖いの。また、あんな風になることが」
「もうならねえよ。同じ間違いは二度しないだろう?」
「わかんない……わかんないの。魔法も使えない私がザボーガーを操って、また、自分の力を勘違いして……」
「嬢ちゃん。ザボーガーを召喚したのは嬢ちゃんだし、ガンダールヴのルーンの力が使えるのも嬢ちゃんだけだ。それは間違いねえんだ。嬢ちゃんに力があるのは現実だ」
「でも、でもっ!」
「嬢ちゃんが間違えたのは力の有無じゃない、力の使い方だ」

 しかし、言葉だけで納得できるものではないだろうということも、デルフリンガーは気付いていた。
 キュルケたちから聞いた、自分がここに来るまでのルイズの境遇。そして、自分が来てからフーケとの戦いがあるまでのルイズの様子と、その後の様子。
 魔法が使えないからこそ、貴族としての矜持を求め、実践していたルイズ。魔法を使えることで貴族になるのではない、その精神こそが貴族なのだと主張していたルイズ。
 その彼女が、ザボーガーという力を手に入れて増長していた。しかもその力は、格下であるはずのドットメイジにあっさりと敗れてしまった。
 屈辱と呼ぶことすらできない。まさしく無様だったのだ。
 己の言葉や信条すら裏切り、かりそめの力に酔いしれた痴れ者。
 ルイズの心は、自己嫌悪で悲鳴を上げているのだ。
 魔法が使えなくても友人はいた、優しい家族もいた。その全員を自分は裏切ったのだ。信頼を、土足で踏みにじったのだ。
 どうやって、皆に顔を合わせればいい。どんな顔を見せればいい。
 自分の望んだ貴族の姿に自ら背を向けて、どうすればいい?
 踏み外した自分は、どうやって戻ればいい?
 何もなかったような顔をして戻る?
 ああ。きっと認めてくれるだろう。キュルケも、タバサも、モンモランシーも、ギーシュも。他の連中は、どうせそもそものつきあいがたいしてない。
 だけどそれで良いのか。とルイズは自分に問う。
 彼女たちが認めてくれたとしても、自分は自分を認められるのか。
自分は、自分を認めなければならない。貴族の精神を、認めさせなければならない。
 だが、どうやって?

671ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:08:00 ID:B0QVxwSs
 個人が悩んでいても、組織は滞りなく進んでいく。時間は通常通りに過ぎていく。

 日が沈み、月が出て、日が昇り、朝になる。
 悩んでいても、空腹は訪れる。
 食堂へ。
 いや、部屋を出ることすら、ルイズは躊躇っていた。
 キュルケと偶然出くわしたら? どうする? 部屋は目の前だ。あり得ない話ではない。
 だけど、空腹が無くなるわけではない。
 結局ルイズは、マウスカーに手紙をくくりつけて食堂へ走らせることにした
 しばらくすると、シエスタが食事を運んでくる。

「大丈夫ですか? あの、ミス・アンナマリーに連絡しましょうか?」

 ミス・アンナマリーは、学院医務室付きの水メイジである。学院内ではトップクラスの水メイジで、コルベール、ギトー、シュヴルーズと並ぶ、学院内四大属性の代表であるらしい。
 マウスカーに付けた手紙には、体調不良だから食事を部屋まで運んで欲しい、と書いていたため、シエスタが心配しているのだろう。

「ありがとう。でも大丈夫だから安心して、シエスタ」
「はい」
「あ、それから、できれば今日は昼も夜も食事を部屋に運んできて欲しいのだけれど」
「かしこまりました」
 
 下がろうとするシエスタの背後に、ルイズは見知った人物が近づいてくるのを見つける。

「ルイズ!」

 キュルケとタバサの姿に、ルイズは慌ててシエスタを追い出すと扉を閉めた。  
 立派な引きこもりの完成である。

「何やってんのよ! ルイズ、開けなさい! こんなドア、吹き飛ばすわよ!」
「ザボーガー! ドアの前に立って! 誰も入れちゃ駄目よ!」

 ザボーガーを強行突破することはさすがのキュルケにもできない。部屋へ入るだけなら他にも手はあるのだが、そこまでの強硬手段は躊躇われるのだ。
672ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:08:50 ID:B0QVxwSs
「ルイズ、私は話がしたいだけだから。私が駄目なら、タバサでも、ギーシュでも、モンモランシーでもシエスタでも。とにかく部屋から出なさい!」

 ルイズは無言でヘッドに潜り込むと、毛布を被り耳を押さえ、目を閉じる。
 わかっているのだ。いつまでもこんな事はできないと。
 でも、今は駄目だ。自分を自分に証明できない今は駄目だ。胸を張って、背筋を張って、キュルケたちに向かい合いたい。
 だから、今は駄目なのだ。
 せめて、証明する方法を見つけるまで。思いつくまで。 

 翌日には、コルベールとアンナマリーが姿を見せた。
 話をするのはコルベールだけで、アンナマリーは教師といえど女生徒と二人きりで部屋にいるのは差し障りがあるとの判断で付いてきたらしい。

「まあ、そんな甲斐性がこいつにあれば、とっくに嫁を見つけて子供の二人もこさえてるだろうけどね」

 カンラカンラと笑う女傑に、ルイズもつい苦笑する。
 苦笑を通り越して毒気を抜かれた表情で、それでも優しくコルベールは尋ねた。
ただ一言。

「話せるかね?」と。

 ルイズは理解した。この人は、あの日の騒動を知っているのだと。そして介入なしに解決できることを望んでいる。つまりは、ルイズが自ら立ち上がることを望んでいるのだと。
 それを怠慢だとは思わない。それは信頼であり、試練だとルイズは考える。
 だからルイズはこう答える。

「話す必要はない。そう思わせるように努力します」
「そうか。では待つとしよう。院長には私から言っておく」
「ありがとうございます」

 立ち上がり、コルベールはふと立ち止まった。

「この学院に、アンリエッタ姫殿下が行幸なされることが正式に決まったよ。ゲルマニアご訪問のお帰りだそうだ」
「姫殿下が」
「歓迎式典の準備で皆が忙しくなるけれど、君を放置するわけではないことをわかっていて欲しいと思ってね」
「勿論ですわ」

 コルベールの背中を見送り一人になったところで、ルイズは思い出に耽る。
 自分が、幼少の頃に姫殿下の遊び相手を務めていたこと。ヴァリエールの家柄とはそういうレベルなのだ。
673ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:09:53 ID:B0QVxwSs
「ルイズは騎士になるの」
「はい、姫さま」
「悪いドラゴンを征伐に行きなさい」
「おー」
「オーク鬼を追い払うのです」
「おー」

 そうだ。私は騎士なんだ。
 思い出してルイズは笑う。
 アンリエッタの騎士。トリステインの秘密騎士。それはルイズ。
 ドラゴン退治を命じられてはトカゲを追いかけて、オーク鬼征伐を命じられると衛兵に悪戯を仕掛けに行く。
 王女アンリエッタと騎士ルイズ。二人の遊びはいつもそうだった。
 そして今も――

「お久しぶりですね、秘密騎士ルイズ」
「はいっ。姫殿下」

 しゃちほこばった儀式のように堅く名乗った二人は、言い終えるやいなや、どちらからともなく笑い始める
姫殿下行幸予定前夜、そっとルイズの部屋に忍び込んだ影は、辺りの様子を窺うとフードを外して正体を見せる。
 それこそ誰あろう、アンリエッタ姫殿下ご自身であったのだ。
 再会を喜び合い、互いに十年前にでも戻ったかのように笑いあう。そこにいるのは自己嫌悪に傷ついた貴族でも、務めに疲れ果てた王族でもない。仲の良い二人の少女だった。
 ルイズと会って、心ゆくまで語りたい。だからこそ敢えて、一日遅らせた日程で訪問すると学院には告げ、実際は一日早く姿を見せたのだ。
 一応極秘裏のうちに、最小限の護衛はついてきている。その一人は、アンリエッタの後ろに控えていた。
 髪を短く切った、目つきの鋭い銃士が一人。アンリエッタにより特設された女王付きの銃士隊の隊長である。
 魔法を使えずに身体を鍛えていたルイズの影響からか、アンリエッタは個人の戦技としての魔法には重きを置いていない。限定された状況での戦技ならば、訓練された平民がメイジを越えることは充分に可能だと考えている。
 アニエスもまた、その考えのもとに選ばれた元平民である。

「この部屋の様子を見て安心しましたか? アニエス」
「とりあえずの所は。しかし、どうしてもこの者と二人きりになりたいと仰せられるなら、窓は閉め切っていただきたいのです」
「狙撃されるとでも?」
「弓を使うメイジであれば、空中からでも狙撃はできるでしょう」
「わかりました、貴女は外で待っていなさい」
「失礼いたします」

 出て行くアニエスを目で追い確認すると、アンリエッタは改めてルイズに向き直る。
 そして、ザボーガーへと。
674ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:10:39 ID:B0QVxwSs
「あれが、噂に聞くルイズのゴーレムなのですか?」
「はい。ザボーガーと申します」
「ザボーガー。あのゴーレムとともに、フーケを捕らえたと聞きましたよ」
「いえ、私とザボーガーだけではありません。友人たちの助力の結果です」
「あら、ルイズも謙遜するのね」
「姫様……」

 半目でアンリエッタを睨むルイズ。

「どういう目で私を見ていたんですか?」
「いつも二人分用意されているおやつの半分以上を一人で食べてしまう人ね」
「うう」

 姫の分までおやつを食べていた常習犯に反論はできない。
 美味しかったんだから仕方がない、という言い訳も無意味である。
 そんなこととは関係なく、二人の話は延々と続く。小さな頃の話、近況、学院の噂、王宮での出来事。話すことはいくらでも湧いて出てくるようだった。
 しかし、ルイズはそこはかとない違和感を感じていた。
 アンリエッタの態度がどこかおかしいのだ。
 まるで、何か隠し事をしているかのように。一国の姫であるアンリエッタが、ルイズに対して何を隠しているというのだろうか。
 いや、隠しているのとは違う。これは、何かを言いそびれている。
 言えないことがある。
 それはきっと、アンリエッタのプライベートに関すること。
 国事に関することであれば、言えないのは当たり前である。その葛藤が表から見えることはないだろう。
 仮に国事だとしても、それはアンリエッタのプライベートに深く関わりのある内容なのだろう。

「私は無力かも知れませんが、話を聞くことくらいなら、口を噤んでいることくらいならできるつもりです」
「ごめんなさい、ルイズ」

 心配させてしまった友人として、無力な自分を見せてしまった王族として、アンリエッタは謝った。
 そして一瞬、ドアに目を向ける。ドア一枚向こうには、アニエスが待機しているはずだった。

「私はゲルマニア皇室に嫁ぐことになります」
675ゼロと電流 第十話:2010/04/30(金) 21:11:27 ID:B0QVxwSs
 ルイズは絶句した。
 結婚。それ自体に不思議はない。自国の王女が、そして友人が結婚するのだ。これがゲルマニアでなければ素直に祝福することができただろう。
 それがアルビオンであれば、二人は手を取り合って踊っていたに違いない。アルビオンの王子であるウェールズ皇太子とアンリエッタとの互いの想いは、ルイズもよく知っている。
 しかし、しばらく前から政情不安を抱え、きな臭い噂だけが聞こえていたアルビオンである。今では反乱軍『レコンキスタ』によって王族が各所から撤退を余儀なくされている、とも聞こえているのだ。
現アルビオン王軍は敗れる。という意見が大勢であった。そのため、アルビオンを手中に収めるだろうレコン・キスタに対抗するためにゲルマニアと結ばなければならない。それがアンリエッタ婚姻の一因でもあるのだ。
 嫁ぐこと自体に不満がないと言えば嘘になる。それでもアンリエッタは、嫁ぐのは王族として正しいことだと自分に言い聞かせている。皇太子への想いを封じ込めようとしている。

「ですが、一つだけ問題があります」

 かつて、アンリエッタがウェールズ皇太子に送った恋文。
 それがレコン・キスタの手に渡ったとすれば? それを黙って手元に置いておくとは考えられない。必ずや、その存在を公のものとするだろう。
 果たして、ゲルマニアの皇帝はそれをどう思うのか。
 若さ故の過ちと笑い飛ばすか、不実だと王女を詰るか。
 それだけで即決裂とはいかないとしても、アンリエッタの、ひいてはトリステインの発言力は極端に減じられるだろう。
 それは対等の同盟ではない。傘下であり、属国への道である。当然、それをトリステインが望むわけもない。
 ではどうする?
 恋文を取り返す。どうやって?
 ウェールズ皇太子に会いに行く? 反乱軍に包囲された王軍に接触しろと?
 それが可能なら、恋文どころの問題ではない。アルビオンの王族を救うことができるだろう。
 しかし、手紙を取りに行けなどという命令に意味はない。ただ、死ねと命ずればいい。
 それは今の状況では同義だ。

「ウェールズ皇太子は聡明な御方。恋文は火にくべるなりして始末してくださっていると信じます」

 間に合わなければ?
 皇太子のアンリエッタへの気持ちも嘘ではない。己の心を鼓舞するであろう手紙をできるだけ手元に置いておきたいとしても、その気持ちを責めることなど誰ができようか。
 
「私にも覚悟はあります。どのような責も、この身一つの上でなら甘んじて受けましょう」

 仮に手紙が始末されていたとしても、自分のかつての想いが消えるわけではない。それに関して責められるならば、その責めは受けるしかない。かつての自分の気持ちに嘘は付けない。
 できることはただ、嫁いだ後の自分が決して皇帝を裏切らないという誓いだけ。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 21:23:16 ID:9qVB5Ca5
次スレ……
容量……
677名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:44:35 ID:N9OsRt0x
俺に出来るのは支援だけだ。誰かスレ建てヨロ。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:50:55 ID:vp9gaWXu
んじゃま、適当にチャレンジしてみよう
679名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 22:53:44 ID:vp9gaWXu
ほい、建立完

あの作品のキャラがルイズに召喚されました part274
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1272635567/
680名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:01:30 ID:kZJeLJO7
容量的にギリギリだが
代理行きます

564 ゼロと電流 第十話 [sage] 2010/04/30(金) 21:16:31 ID:mouzRtbw Be:
20以下にしていたつもりでしたが、規制されてしまいました。
申し訳ありませんがどなたかお願いできませんか?
681名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:02:11 ID:kZJeLJO7

「それで充分なのかも知れませんけれどね」

 ゲルマニア皇室が望むのは、アンリエッタという女性ではない。トリステイン王族という血筋なのだ。
 仮にアンリエッタの心を得ることができなかったとしても、その血統を手に入れることさえできれば望みの九割は達成したに等しいのだから。

「そんな……」

 ルイズに理解できないというわけではない。自分にしても、魔法を早々に諦めていれば領地に戻って必要な学問を学び、何処かに嫁ぐことになっているだろう。
 それでも、ここまで意に添わない婚姻をさせられることはあり得ない。ルイズはトリステインでもその名の知れたヴァリエール公爵家の三女なのだ。
 父はその名にかけて良縁を捜すだろう。それは十分に可能な話なのだ。例えゼロと揶揄される娘であっても、ヴァリエールと姻戚関係となることを望むトリステイン貴族がどれほどいるか。
 そして魔法が使えないという一点さえ除けば、ルイズは優秀な頭脳と貴族の誇りと優しさを兼ね備えた可憐な美少女なのだ。
 その一方、アンリエッタが自分の望む相手と結ばれるためには、その地位は高すぎた。高すぎる地位は、逆に枷となる。自由意思など、高すぎる地位に属した義務の前では雲散霧消するのだから。
 だから、今のルイズには何も言えない。いや、言うべき言葉などない。アンリエッタに覚悟があるのなら、その覚悟を認めることだけが今のルイズにできることなのだ。
 それ以上の言葉を持たないルイズに、アンリエッタは嬉しそうに言った。

「いいのですよ、ルイズ。私はトリステインの王族として生きるだけです。誰にも恥じることなく、我が国のために」
「姫殿下、私は秘密騎士です」

 突然のルイズの言葉に、それでもアンリエッタは頷く。

「せめて今夜は、あの頃のようにしてください。秘密騎士ルイズに、御命じください」
「手紙を取り返せと?」
「ええ」

 ルイズは大仰に、下手な大道芝居のように跪いた。

「姫殿下の秘密騎士として、手紙を取り返して見せますわ」
「ありがとう、ルイズ。その言葉だけで、私には充分よ。貴女のようなお友達がいるトリステインを、私は決して忘れません」
「姫殿下」

 二人は再び、ただの幼馴染みとなってお喋りに興じ、笑い、そして泣いた。
 お休みの挨拶と共に、再び王女に戻ったアンリエッタはアニエスを従えて去っていく。
 また明日、次は公式に会いましょうとの言葉を残して。

 翌日、歓迎式典の中にルイズの姿はなかった。さらにルイズの部屋からは、ザボーガーの姿も消えていた。
682名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/30(金) 23:02:53 ID:kZJeLJO7
566 ゼロと電流 第十話 [sage] 2010/04/30(金) 21:19:08 ID:mouzRtbw Be:
以上、第十話でした。
 焦りのルイズさん、アルビオンへ

 ギーシュに続いて姫殿下改造。

 電人ザボーガーの元世界でのパートナーは「秘密刑事」大門豊


おまけ 
 ♪あなたは鋼の機械でも 赤い血潮が流れてる
  あなたは私の使い魔なのよ
  挑む相手はレコン・キスタ 虚無を騙ったレコン・キスタ
  命の限り闘うの
  私が喚んだ 電人 電人ザボーガー
683名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/01(土) 14:50:58 ID:0MZkmMRC
支援
>>663
博士なら問答無用で魔法ぶちかましてくるなw
684名無しさん@お腹いっぱい。
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
 __  |\       l/V  _{_____/x|    (_|::::__ノ   }ィ介ーヘ  /  ,.-‐ ' ´           /       ____  ̄ ̄フ ∧  l
  )-ヘ j ̄} /|        /___/xx|       _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___           {     /      `<  /  \|
  {  V  /`7.         /___./xXハ    ( |:::::::::::::::::ハ   >' ____ 二二二二二二>   /   __    〈
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    |     ',         {     |]]]>'  __      ∧ l\ \   丶、 ` 、   ∠ -――-  ..____ノ   /
   ノ     }       l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/  V'  \ ヽ    `丶\/                 /
  / ∧   { \      |      .|>' /      // :/ :/ :   ', l   \ ヽ  ,.-――┬      \         /
 入ノ. ヽ  く  ヽ______7 ー―∠__    〃  l :/    :l l     \V       ヽ       \    ,.  '´
`ー′   \  `<  | {      /   | /〃   :|/  __V/ ̄| ̄ ̄{_     \_      ` <
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      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
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