あの作品のキャラがルイズに召喚されました part265
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part264
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1261914329/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
イチオツ
一度おさらいしておいた方が良い
「板の常識」ゆえテンプレに入らない基本事項
支援:連続投稿規制対策、連レスの待機時間・回数制限を回避するために投稿者以外が行うもの
1レスでその場は効果が有るから先行者の存在を確認して無駄レス消費は慎む
ぶっちゃけ本文1レスにつき支援が5レスだの10レスだのヒートアップして重なると
無駄レス以外の何者でもない
さるさん:一個人の単位時間内の文章量基準の規制、規制も規制のためのカウントも正時(毎時00分)ごとにリセット、支援は無駄
鯖単位で個別に規制値は設定されている(値は秘匿)ここは8kB“らしい”と以前他所スレの実験で推定されている
(既に2年以上経過しているため今も同じかは不明)
親切でやっているのならやめてくれ。
最近はあんまり見ないけど
スレが立つたびに大量にコピペするバカがいるから。
へえ、そうだったのか。知らんかった。
けど、1投下レスにつき1支援でいい、という条項は不要でしょう。
「支援!」とだけ書いてレスするのは、「俺も見ているぞ!」
という応援表明を兼ねていますから、感想と並んで作者のやる気を喚起します。
ぶっちゃけ感想(出来れば好意的な)無いと誰も投下なんぞしません。
読んでもらえているのかすら判らんのでは、こんな場所に投下する意味ないですから。
ぶっちゃけ自分のメモ帳に書いて一人悦に入るかコメント禁止のブログにのっけりゃいいんだから。
スレ終盤に行われた10レスの本文投下にヒートアップした過剰支援で
総レスが200を超え、スレが投下作業より先に終了したとか言うシャレで済まない事態も
(数字は適当な例示なのでツッコミ無用に願う)過去有ったりしたから「限度は弁えろ」と言う話だが?
盛り上がるのは自由だが支援他の「作業」は状況を把握して冷静に。
それと「コピペバカ」に取り込まれたせいで嘘と思われてスルーされてるから
いまだにさるさん対応とかで的外れな事やらかす作者が絶えない面もあるので
ある程度の期間ごとの復習的な指摘は必要だろう。
そんな勢い今のこのスレに無いんだからべつに気にすんだよ
つかなんでそんなに過剰反応するんだ
長々と長文コピペを連発して容量圧迫してるわけでもなし
物理効果的には投下1レスには1支援以上は無駄(だから残存レス数他鑑みて冷静に自重するが吉)
を
>けど、1投下レスにつき1支援でいい、という条項は不要でしょう
と曲解して過剰反応したのはそっちだろ
その違いを指摘しただけでまた過剰反応扱いか
モチツケ
と、書きかけたらID類似の別人か
現実世界からシーシェパード&グリーンピース召喚。
使い魔制度は動物虐待にあたるとしてメイジと対立しそうだ。
>>14 そう言う話題は無意味に荒れる原因になるから持ち込まんでくれ。
皆さんこんにちは、第82話の投下準備ができましたので、これから開始してもよろしいでしょうか。
先約等なければ、15:50より開始いたします。
第82話
アルビオン決戦 烈風vs閃光 (後編)
古代怪鳥 ラルゲユウス
円盤生物 サタンモア 登場!
地上へ向かって艦砲射撃を加える戦艦レキシントンをはじめとするレコン・キスタ
残存艦隊と、それを全力で迎え撃つアルビオン王党派とトリステイン連合軍。
レキシントンに一〇〇門近く搭載された新式カノン砲が火を噴くと、地上で身を
隠す兵隊が何人か伏せていた穴ごと掘り起こされて粉砕されるが、王党派軍も
新型高射砲や制空権を確保した竜騎士隊で応戦し、この大型戦艦や護衛艦艇に
ダメージを与えていく。
だが、彼等のはるか上空では、それらとはまったく次元の違う戦いが繰り広げられていた。
「はっはっはっは! 遅い遅い! 『烈風』の異名はその程度ですかな?」
「ほざけ、速さだけが空中戦ではないぞ」
大気を裂き、雲を散らして二羽の巨大怪鳥と二人の騎士が火花を散らす。
一方は、古代怪鳥ラルゲユウスに乗る『烈風』カリンことカリーヌ・デジレ。
対して円盤生物サタンモアを操る『閃光』のワルド。
『風』のスクウェアメイジである二人の戦いは、両者とも自らの周りに空気の
防護壁を張ることで、マッハを超える巨大怪鳥の速度によって生まれる
強烈な衝撃波や、高高度での気圧の減少から身を守って戦っていたが、
いわばジャンボジェット機以上の大きさの戦闘機が超音速で空中戦を
やるわけであるから、そのソニックブームが生み出す爆音はレキシントンの
艦砲射撃以上のすさまじさを持って、あまねく地上を揺さぶった。
「ふん、このノワールより速いとはやるな、だがその程度の機動性では
こいつは捕らえられん」
両者の空中戦は、速度に勝るサタンモアが優勢に見えたが、ラルゲユウスも
小回りの効きのよさでは勝り、後ろに回り込もうとするサタンモアを機敏に
かわして、逆に回りこむチャンスを狙っていた。
これは、同じ鳥型怪獣でもサタンモアのまるで水中へ飛び込む前のカワセミの
ように流線的なシルエットは、宇宙空間をも飛行するために、必然的に
速度優先にならざるを得なかったからであり、そのためホバリングはできるものの、
大気圏内での旋回能力は低く、反面ラルゲユウスはそのまま巨大な鳥で
あるために宇宙は飛べず、速度もマッハ1.5が限界だが、巨大な羽は
空気を掴みやすいために小回りが効く。
「どうした? いつまでもぐるぐる回っているだけではつまらんぞ」
いくらワルドが後ろに回り込もうとしても、カリーヌはそのたびにノワールに
的確な指示を与えて、何度やっても無駄であることを知らしめ、ワルドも
互いに相手の尻に食いつこうとする一般的な空中戦では勝負がつかないと
ドッグファイトをやめさせた。
「ふん、ちょろちょろと小雀はすばしっこくて困る。ならば杖で決着を
つけてくれようぞ、『エア・カッター!』」
「望むところだ、『エア・カッター!』」
空中で二つの空気の刃が激突し、一瞬つばぜり合いのように押し合った
後で、互いにエネルギーを使い果たして元の空気に戻る。
だが、両者の魔法の応酬はそんなものではすまなかった。
『ウィンドブレイク』対『エア・ハンマー』
『エア・カッター』対『ウィンドブレイク』
空気の弾丸や、真空波の大太刀が作り出されては相殺、回避を繰り返し、
そのたびに津波のような衝撃波が発生しては、さらなる衝撃波に飲み込まれ、
さらにはタバサでさえまだ使えないような強力な呪文や、魔法の高速連射などの
超高等戦法が瞬きをしているあいだに繰り出され、戦いは激化の一途を辿る。
いよ!待ってました。支援。
その様子を、アンリエッタやウェールズは後方陣地から『遠見』の魔法を
使って見ていたが、とても若輩な自分たちが評論できるような戦いではなく、
なにが起こっているのかすら、把握するだけで精一杯だった。
「信じられない。あれが、人間の戦いなのか……」
ウェールズのその感想は、この戦いを見ていた人間全員を代表したものであった。
「わたくしも、伝説は時が経つに連れて誇張されていったものだと思って
いましたが、人間の想像力というものが、いかに現実に対してちっぽけで
あるかを思い知りました」
二人とも、メイジとしてはスクウェアに限りなく近いトライアングルクラスの
使い手であるが、その二人をもってしても百人がかりでも一蹴されると思えるほどに
次元が違う世界の戦いだった。
「あれほどの騎士がわが国にもいたら……しかし、あの『烈風』と渡り合っている
敵の騎士、あれほどの者がレコン・キスタにもいたのか」
「……」
アンリエッタは忠臣と信じていた者の裏切りをすでに知り、いずれは自分の前に
立ちふさがってくることを覚悟していたが、こうして目の当たりにしてみると
ふつふつと怒りが湧いてくるのを、はっきり感じていた。
切り札である『烈風』が戦線を離脱し、戦局は再び荒れ模様となっていくが、
上空でいかな強靭な竜でも追いつけないような超音速の激闘を繰り広げる
二者の戦いには、援護などという言葉は浮かんでこず、ひたすら『烈風』の勝利を
祈り続けるしかなかった。
だがそのころ、北の空にはもう二つの小さな影が現れていた。
「見えた! ちっ、もう戦いがはじまってんじゃねえか!」
「けどギリギリ間に合ったみたいよ! 急いで」
ともすれば停止しそうになるエンジンをあやしながら、才人とルイズを乗せた
ゼロ戦と、タバサたちを乗せたシルフィードは目的をはたすことができないままで、
やっとここまで戻ってきたのだった。
遠くには、レコン・キスタ軍の大型戦艦が地上へ向かって大砲を撃っている
姿と、迎え撃っている対空砲火の煙が見える。あんな大きな船が相手では、
王党派はさぞかし苦戦しているだろうとルイズは思ったが、戦いが続いている
ということはウェールズはまだ無事なのだろうと、希望を持った。
けれど近づくにつれて、一度この艦隊を見ているキュルケたちは、艦隊の
数がさきほど見たときより大幅に減っていることに違和感を覚えて、さらに
近づくと森や草原のあちこちで沈んだ船が煙をあげているのを見つけて驚いた。
「うっそ、あれだけの艦隊を地上兵力だけで半減させちゃったの?」
「ううむ、信じられん」
軍事に専門的な知識を持つキュルケやミシェルは、常識的に考えてありえない
展開に唖然とした。もちろん、彼女たちが両軍の内情や戦いの経緯などを知る
はずもないが、やがて陣地のかなたにアルビオンの旗と並んでトリステインの
旗と王家の紋章を見つけると、ここで何が起こったのかの一部を知ることができた。
軍旗はともかく、トリステインの王家の紋章をかかげることのできる人間は
一人しか存在しない。
「トリステイン軍が、姫様が援軍に来たのよ!」
それはまったくルイズにとって最高の意味で予測を裏切る出来事であって、
むろん才人たちにとっても、想像の範疇を超えたことだった。
「あの姫様、そこまでやるか」
二人が最近のアンリエッタに直接会ったのは、終業式の日の夜に呼ばれて
いったときの一回だけで、確かに非凡な才覚の持ち主のようであったが、
まさかあの華奢な体で自ら戦場に乗り込んでくるとは。
「人を見た目で判断するものじゃないってのは、本当なのねえ」
「……」
「姫様……」
キュルケたちも、空中艦隊に一歩もひかずに応戦する二カ国連合軍の士気の
高さを遠くからでも感じた。
「このままなら、何もしなくても勝っちゃうんじゃないの?」
ルイズなどは本気でそう思ったくらいだが、軍事の専門家であるミシェルなどから
見れば、補助艦艇はともかくレキシントン級の戦艦を撃沈するには決定力が
欠けているように見え、事実圧倒的な威力を発揮した新型高射砲もそれゆえに
集中砲火にあって四門のうち三門が破壊されて、たった一門では照準修正も
しがたく、苦戦を余儀なくされていた。
「レキシントン一隻のために、犠牲は増える一方だ。それに、あの艦には奴がいる」
脇腹の傷を押さえながら、ミシェルは目元にかかった青い髪をたなびかせてつぶやいた。
そう、敵がレコン・キスタと艦隊だけであれば自分たちの出る幕はなく、戦争は
軍隊にまかせておけばすむが、裏でヤプールが糸を引いているのならば、
人間たちが役に立たなくなったら、すぐさまクロムウェルに擬態させてある尖兵を
使って無差別破壊に出てくるだろう。勝ったと思ったら、戦場のど真ん中に
超獣が出現しましたとなっては目も当てられない。
「隊長はわかっているはずだが、この乱戦でそれどころではないのか……」
戦闘空域のギリギリ外を飛びながら、戦局を見渡そうとしても戦塵や煤煙で
見通しが悪く、才人などは、
「いっそ敵旗艦に強行突入して白兵戦でクロムウェルを倒すか?」
などと冗談半分に言ったが、ハリネズミのような対空武装をしている敵艦には
いくらゼロ戦でもたどりつけそうもなく、それ以前にこのまま直進したら戦闘に
巻き込まれかねないので、うかつに近づくわけにもいかなかった。
「けど、このままここでこうしていても変わらないわ。遠巻きに観ていて、
なにかあってから飛び込んでも手遅れになるわよ」
「気持ちはわかるが、おれたちだけで飛び込んで何ができる? かえって
アルビオン軍の邪魔になるだけだぞ。それに……」
そこから先は言わなかったが、才人はゼロ戦の機銃をレコン・キスタでも
人間には使いたくなかった。元より戦わされている兵士のほとんどは理由も無く、
強制されたりだまされたりした被害者であるし、なにより一般的な高校生だった
才人は殺人に大きな抵抗感を持っていた。
それでも、下手に飛び込んだら所属不明な彼らは両軍から敵とみなされて
袋叩きにされることはルイズにもわかり、考えに詰まった彼女を見た才人は
シルフィードで並行しているキュルケたちに助言を求めると、戦場での実戦経験や
判断力といえば、対怪獣専門の才人より軍門の名家の出身であるキュルケや、
彼はまだ知らないが花壇騎士のタバサ、それから本職の軍人であるミシェルの
ほうが当然優れていて、彼女たちはいくらか話し合ったあとで、才人に向かって叫んできた。
「おーい、とりあえず姫様が来てるのなら、指揮系統に問題はないわ!
わたしたちはとにかく少し様子を見ましょう。今動いてもやぶへびになるだけだわ」
戦争という巨大な歯車が一度動き出したら、もはや個人の力で止めることは
不可能であった。せめて、あの時空間での戦いが無く、艦隊の出航前に
叩けていたらと思うと残念でならないが、この世界を混沌に導こうとする何者かの
意思が複雑に絡まりあったことが一因であるとはいえ、人と人とがそれぞれの
生存をかけての戦いにはウルトラマンの入り込む余地はなかった。
「わたしたちって、無力なのね」
力が欲しいとルイズは思った。あの巨大な戦艦を沈めるほどの力が自分に
あれば、こんな無意味な戦いはすぐに終わらせられるのに、なぜお母さまは
あんなにすごいメイジなのに、自分にはその片鱗もないのだろう?
だが才人は、そんなルイズの苦悩をなんでもないことのように、のんきに声をかけた。
「世の中、なるようになることとならないことがあるさ。そう気を落とすなよ、
お前は責任感は強いけど、くそ真面目すぎるのが欠点だからな」
「なによそれ、あんたわたしをバカにしてるの?」
「だーから、お前はおれより頭いいから考えすぎるんだよ。いいか? ただの女学生
とその他少々が集まったくらいで戦争止められたら誰も苦労しねえよ。だろ?」
そう言われるとぐぅの根も出なかった。才人とて、このゼロ戦で助太刀に入りたい
のはやまやまだが、あの戦艦などを見てしまったら、とても二十ミリ機関砲程度では
歯が立たないとわかるし、やはり人は撃ちたくない。
「それにしても、あんたってどうしてそうのんきにかまえてられるの」
「誰かさんの扱いを受けてるうちに慣れたんだよ。さて、ここじゃまだ遠いから
もう少し近づいておこうか、ようし、行くぞ」
二人を乗せたゼロ戦とシルフィードは、戦火の激しい区画を避けて連合軍の
本陣のほうへと慎重に近づいていった。
だが、思えばこのとき、ルイズはある可能性について冷静に考えれば気づいて
しかるべきだったのだが、気づいたときには手遅れになっていた。戦場へと近づくに
つれて、一行の耳に響いてきた大砲の音とは違う爆音、ルイズはそれを最初は
なにかしらと思っても、別に気にも止めずに聞き流していたが、数秒後に
自分の注意力の無さを盛大に後悔することになる。
戦場に近づくゼロ戦とシルフィードを突然襲った真上からの突風、それに驚いて、
思わず上を見上げたルイズの目に映ってしまった信じられないものが、その答えだった。
「あ、あ……」
このとき才人がルイズの顔を見ていたら『血の気が引く音がする』珍しい
光景をじっくりと観察できただろう。彼女の両のとび色の眼に飛び込んできたのは、
彼女にとって小さいころからようく見慣れた……
「……て」
「え? なんだって」
ひざの上で突然小さくなったルイズの発した声を、才人は最初聞き取ることができなかった。
しかし、ルイズは突然振り返ると、才人の襟元をむんずと掴んで、血走らせた目を
いっぱいに見開いて怒鳴った。
「引き返して! 今すぐに! 早く!」
「なっ! なに!?」
何かに取り付かれたかのように、ルイズはつばを吐き散らすほどに取り乱して
才人に詰め寄り、困惑した才人が相手にならないとわかると、自ら操縦桿を
飛びついて倒そうとした。
「バカ! なにすんだ」
「うるるう、うるさいうるさい! にに、逃げないと! いゃぁ! お母さま、ごめんなさいぃっ!」
「あっ、フラップが! あっ……わーっ!」
錯乱したルイズがでたらめに操縦桿を動かしてバランスを崩したゼロ戦は、
さらに空気抵抗を調節するための可変翼(フラップ)を突然動かしたために、
完全に失速して墜落を始めてしまった。
「うわーっ!?」
「いゃー! ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!」
きりもみしながら落ちていくゼロ戦は、そのままだったら地上に激突して砕け散って
いただろうが、幸い間一髪のところでタバサたちがレビテーションで救い上げてくれて
助かった。
「まったく、なにをやってるんだミス・ヴァリエールは、サイトを殺す気か!」
ゼロ戦のコクピットの中でいまだに暴れているルイズを見て、ミシェルは自らも
レビテーションをかけながら、かろうじて間に合ったことに胸をなでおろしつつ
怒ったが、ルイズの錯乱の原因をなんとなく察したキュルケとタバサは
彼女の名誉のために一言付け加えた。
「複雑な、家庭の事情があるんですわよ」
「……お母さんが、来てる」
天敵というものが人間にも存在するのならば、ルイズにとっての根源的な
恐怖の対象はまさにそれであった。だが彼女たちも、ヴァリエール家で粗相を
した者が受ける『高度五〇〇〇メイルのおしおき』の恐ろしさは知らない。
しかし、娘のそんな醜態を見たら怒髪天を突いたであろう母親は、今ほかの
何人もたどり着くことのできないであろう空の上で、さらに戦いを激化させていた。
『ライトニング・クラウド!』
雷撃と雷撃がぶつかりあって、山のかなたまでとどろくほどの雷鳴を生み出す。
「くっ! ただの人間が、これほどの力を持っているとは!?」
「雑魚が多少力をつけたところで、多少強い雑魚になるだけだ。どうした、もう息切れか?」
パワーアップしたワルドは、自らが人間を超えた存在になったと自信を持っていたが、
世の中上には上がいる、彼が見てきた『烈風』は、あれでも全然本気を出して
いなかったことを思い知らされていた。
なにせ、同じスクウェアクラスでも魔法力のケタがまったく違う。いや、メイジとしては
最高位にあるスクウェアクラスだからこそ、ほかのクラスとは違って上限がないために
個々人の実力差が極めて大きく出ていた。
「魔法の威力は、そのメイジが待つ精神力を、いかに多く、また強く込めることによって
決まるといっていい……が、俺は並のメイジ百人近い容量を持ったというのに、
奴の容量はまるでラグドリアンの湖のように、まったく底が見えない」
ワルドの人間だった部分が、カリーヌがいまだにまったく疲れを見せないことに
焦りを感じていた。元よりワルドも『烈風』の伝説を聞かされて育ち、その実力を
訓練とはいえ間近で見たことから、これなら勝てると踏んだのに、まったく話が違う。
五分に渡り合えたのは最初だけで、互角の魔法戦を演じた結果は、精神力の
絶対量に劣るワルドがじり貧に追い込まれていた。
「どうした? いっそその貧相な器を捨てて、さっさと本性を見せたらどうだ?
そのほうが私もはりあいがあるというものだ」
「ぐぬぬ……人間の分際で」
ワルドの肉体を乗っ取り、その人格をも同化吸収しかけているものは、カリーヌの
挑発に、ワルドの人格を押しのけて外に出掛かったが、なんとか思いとどまった。
奴にとっては、執念、妄念、つまりはマイナスエネルギーに溢れたワルドの
体は非常に居心地がよく、簡単に捨てるのは惜しかったし、なにより人間に
負けて本性を現すというのは、高度な知的生命体である奴には屈辱であった。
また、ラルゲユウスに対抗しているサタンモアも、生物兵器としての差から
速力や武器では上回っていたが、生まれたばかりで戦闘経験が不足していて、
どうしても飛行に無駄が出てしまい、何十年にも渡ってカリーヌとともに戦場の
空を駆け巡ってきたノワールをまったく捉えることができなかった。
だが、追い詰められたとはいえ、奴はヤプール譲りの悪辣な知力と、ワルドの
持っていた戦術家としての能力を駆使して逆転の方法を考えて、やがて一つの
結論にいたると口元を歪めて笑った。
「フフフ、確かにあなたは人間にしては強い。だが、あなたもちっぽけな他人の
ために弱くなるくだらない人間には変わりないでしょう!」
ワルドが叫んだとき、サタンモアの腹の穴から、全長三〇サント程度の
サタンモアとよく似た姿かたちをした小型の怪鳥が無数に飛び出して、
まるでカラスの群れのように鋭い口ばしを振りかざして、地上の人間たちに
急降下していった。
「貴様、何を!?」
「ふははは! あれぞ小型怪鳥円盤リトルモア、宙を舞って人間の肉を
ついばむ悪魔の群れに、お前の仲間たちが餌食になるのを見るがいい」
「なんだと!」
カリーヌは慄然とした。サタンモアから射出される小型怪鳥円盤は大きさこそ
カラスくらいしかないが、天を覆うコウモリの群れのようなすさまじい数で王党派軍
全体にいっせいに襲い掛かり、素早い動きで剣や槍のすきまをかいくぐって人間に
鋭い口ばしを突き立てて血をすすっていく。
「うわっ! こいつらっ!」
「ぐぇっ、やめろぉ!」
軽装の鎧くらいは簡単に貫通する鋭さと強度を持つリトルモアについばまれて、
兵士たちが次々に血を流して倒れていく。もちろん人間たちの側も応戦して、
何羽かを叩き落したり、魔法で撃破したりしているのだが、サタンモアからは
無限であるかのようにリトルモアが射出され続けて、人間たちの抵抗を
あざ笑うかのように攻撃を続けていった。
「ちぃっ! 『カッタートルネード!』」
リトルモアの群れへとめがけてカリーヌの巨大真空竜巻が突進していき、
千羽近くを切り刻むが、その隙を見逃すワルドではなかった。
「隙あり! 『エアカッター!』」
空気の刃がカリーヌのそばをかすめて、マントの先を切り裂き、鉄仮面に
亀裂を入れさせる。カリーヌ自身に傷は無いが、はじめてワルドの魔法が
カリーヌに当たった。
「ふっふっふっ、いかな『烈風』といえども、私と戦いながら地上の人間ども
まで守ることはできまい。偏在を使えば分身はできるでしょうが、使い魔
までは増やせませんし、私相手にそんな余裕がありますかな?」
勝ち誇ったように杖を向けてくるワルドに、カリーヌは軽く息を吐き出すと
目に宿った光を別個の次元のものへと変えた。
「なめてくれたものだな。こんな姑息な策でもう勝ったつもりとは……
仕方ない、出来の悪い弟子に、特別補修をくれてやろう」
言い終わった瞬間には、すでにカリーヌは超高速で詠唱を終えて杖を
振り下ろし終わっていた。
「ちっ! エア・カッターか!? いや!」
ワルドの動体視力は確かにその、空間を歪めて飛んでくる不可視の
刃を見破っていたが、それは一発や二発ではなく、風に吹かれて飛んでくる
木の葉のように、瞬間的に数十発まとめて飛んできて、とても相殺することは
できないと見たワルドは『エア・シールド』で身を守ったが、そのときには
ラルゲユウスが猛烈な勢いで突進してきており、サタンモアと激突してふっとばし、
間髪いれずに『ライトニング・クラウド』の直撃が来た。
「うがああっ!!」
ワルドの口から絶叫が吐き出され、サタンモアから薄い煙があがる。ワルドが
憑依によって肉体強化されていなければ、瞬時に感電死していたであろう。
だが、死んでいない以上カリーヌの攻撃は緩まずに、さらに強力な雷撃の集中が
ワルドを痛めつける。
「がああっ、おのれっ!」
このままでは生きたままローストチキンにされると思ったワルドは、無理矢理に
思念波をサタンモアに送って、目から発射される破壊光線で攻撃をやめさせる
とともに、ついに奥の手を出すことにした。
支援。
「ユビキスタス・デル・ウィンデ……」
サタンモアの上でワルドが分裂して人数を増していく。先程カリーヌに使用を
示唆した分身魔法『偏在』で、その数は総勢三〇体。
「見たか! 今の俺はこれほどの数の偏在を可能にした。これほどの数、
貴様でも不可能だろう!」
三〇人もの同じ顔が同時にしゃべるのは異様であったが、偏在は単なる
分身ではなく、個々が意思を持つと同時に全体がつながっており、一つ一つが
オリジナルとまったく同じ能力を持つために、その戦力は正しく三〇倍に
なっていた。なのに、カリーヌは慌てた様子などかけらも見せなかった。
「やってみろ、私は一人でいい」
平然と、しかしあからさまな侮蔑の意思を込められた言葉をぶつけられて、
ワルドの怒りは頂点を迎えた。
「言ったな、ならば死ねい! 『ライトニングクラウド!』」
三〇人のワルドがいっせいに唱えた、三〇倍に拡大された超巨大雷撃が
カリーヌに襲い掛かる。しかしカリーヌはワルドがライトニング・クラウドを
発射する前に、魔法で周辺の湿度、気圧、大気組成を変化させて、自らの
周りはきわめて伝導性が低く、逆にその外は伝導性がよいように仕組んで
いたために、雷撃はカリーヌの周りだけをきれいに避けていってしまったのだ。
「な、にぃ!?」
「風のメイジの本分は風を己の体と同じにすることにある。お前にとっては
単なる道具にしか見えないであろう大気は、本当は血液のように複雑で
絶えず脈動しているのだ。単なる力しか見えない貴様では、私には到底勝てん」
カリーヌの強さは、単にその常人を超えた魔法力にあるのではない。
マンティコア隊の隊長としていくつもの内乱を収めてきたことを初めとして、
吸血怪獣ギマイラに苦杯をなめたことから、諸国を渡り歩いた修行の旅で
数え切れないほどの強敵との命を懸けた戦いで磨きぬいてきた、究極とも
言っていい戦闘感覚が、魔法力を何倍にも引き上げているのだ。
「まさか貴様、それでもまだ本気を出していないというのか?」
「さあな、試してみたらどうだ? お前の命を授業料にして、講義してやってもよいぞ」
「うぬぬ、なめおってえ! 死ねえ!」
逆上したワルドが嵐のような魔法の連射を放ち、さらに彼らを乗せたサタンモアも
甲高い鳴き声を上げて、口からの火炎弾を連射しながら突撃してくる。
「ノワール、好きなように飛べ、どうせ当たらん」
カリーヌは何十年も共に戦った戦友を信頼しきって、飛行の自由を完全に与えて
自らは三〇人のワルドを仕留めに回った。
「魔法の連携がまるでとれていなくて隙だらけだ、こんなもので私の相棒を
落とせると思うか」
「言わせておけば! だが、いくら貴様でもこの数の偏在とサタンモアを簡単に
落とせはするまい、その間に地上の人間どもはどうなるかねえ?」
人間たちの命を盾に、ワルドは再度の逆転を狙おうと挑発をかけた。しかし、
カリーヌは今度はまったく動揺などは見せずに、眼下をちらりと見下ろしただけだった。
「ふん、あまり人間をなめるなよ。私がいなくても、彼らは立派に戦えるさ」
そう、決して人は一人ではない。佐々木と、アスカに教えられたことは今でも
カリーヌの中で脈々と息づき、そして人間たちは反撃に出ようとしていた。
「全員、身を低くしろ! 奴らは上から襲ってくる。目をやられないようにして、
首筋を狙って切り落とせ!」
リトルモアについばまれていた兵士たちにアニエスの指示が飛んで、
一方的にやられるだけだった彼らは、そうすれば攻撃を受ける方向を限定
できることに気がついて、リトルモアの弱点である長い首筋に剣を振り下ろして
倒していった。
また、上空では才人たちの乗るゼロ戦やシルフィードも当然ながらリトルモアの
攻撃にさらされていたが、キュルケ、タバサ、ミシェルの三人はそれぞれの
魔法で弾幕を張ってシルフィードを守り、才人はさっきめちゃくちゃに動かしたせいか、
やっと機嫌を直してくれたゼロ戦のエンジンを吹かして空戦に突入していた。
「ルイズ、しっかりつかまってろ、振り落とされたら死ぬぞ!」
「いぎゃああっ!」
後ろについて、ゼロ戦の機体に穴を開けようとしてくるリトルモアの群れを、
ブラックアウト寸前のルイズを同伴させたまま、振り切ろうと才人はエンジンを
全開にして、急上昇をかけた。
「そうだ、ついてこい」
数十羽のリトルモアが群れをなしてゼロ戦を追尾してくるのを、才人は涙滴型
風防の中で振り返って確認すると、上昇の途中で急に機体を左旋回させながら、
失速寸前の状態で水平に立て直したかと思うと、一気に急下降をかけた。
「あびゃあっあっ!」
ルイズが涙と鼻水を撒き散らして、才人自身にも急激なGがかかるが、
下降して再度立て直したときには、いつの間にかゼロ戦は群れの後ろについていた。
「くたばれ」
短くつぶやいた才人はゼロ戦の七・七ミリと二〇ミリ機関砲を一気に発射した。
きらめく曳光弾が混ざった弾丸の雨が群れを覆い、さしもの小型円盤生物も
蜂の巣にされて落ちていく。おそらくリトルモアたちには、ゼロ戦が上昇の途中で
急に消えたと見えたに違いない。
「す、すごい! こんな動き、王軍の竜騎士隊だってできないわよ。い、今のどうやったの?」
「確か、ひねりこみって技さ」
才人はガンダールヴのルーンがやり方を教えてくれた、ゼロ戦の高度戦闘技の名前を告げた。
ひねりこみ、別名横山ターン、インメルマン・ターンともいうこれは、空中で機体の
向きを入れ替えることによって旋回においての半径を劇的に少なくし、一気に敵の
背後に着く空中格闘戦の必殺技だ。むろん、難易度はきわめて高く、旋回性能に
優れたゼロ戦のような機体でしか使えないのだが、その威力は見てのとおりだ。
「すっごいじゃない! それも、ガンダールヴの力なの?」
「いや、空飛ぶ豚の受け売りだ」
「はぁ?」
「男の中の男の称号さ。さて、次に行くぞ」
怪訝な顔をしているルイズをひざの上に抱いたまま、まだ弾丸には余裕があると
確認した才人は、シルフィードに群がっていたリトルモアを蹴散らすと、さらに
兵士たちを襲おうとしてる群れへと機首を向けた。
そして、王党派のかなめであるウェールズとアンリエッタの元には、特に数百羽が
一気に攻撃を仕掛けてきていたが、天空から黒い槍となって襲い掛かってくる
リトルモアの群れへと、恐れることなく二人は杖を向けていた。
「風のトライアングルには」
「水のトライアングルを!」
高々と杖を掲げた王子と王女を中心として、とてつもないエネルギーを持った
水と風の魔力が渦を巻いて一つになっていく。
それは、風と水のトライアングルメイジである二人が、三つの『風』と三つの
『水』を合わせて生み出す合体魔法。しかし通常はいかに息の合ったメイジ
同士でも、魔法を同時に発射や混ぜ合わせることはできても合体までは
させることはできないが、二人に流れる王家の血筋がその神技、二つの
トライアングルが一体となったヘクサゴンスペルを可能とする。
「全員伏せろ! 巻き添えを食うぞ!」
六芒星の描かれた、カリーヌのカッタートルネードにも匹敵する巨大な水の
竜巻が放たれると、かつてトリステン王宮の火災を消し止める際に使われた
同じものよりさらに完成度と破壊力に優れたそれは、またたくまに悪魔の
群れを包み込んで、圧倒的な水圧と真空波で数百の大群を数万の破片
へと粉砕しつくした。
「強くなったね、アンリエッタ」
「あなたとこうして肩を並べて戦える日が来るなんて、夢のようですわ」
一人の力は凡庸でも、強い絆で結ばれた者同士が力を合わせれば
その力は何十倍にも大きくなる。ワルドのように数を頼んでいるだけでは
決して生まれないその力と、力強く、そして優しい笑みを浮かべている
ウェールズとアンリエッタの勇姿に、全軍から巨大な歓声があがったのは
そのすぐ後のことであった。
いまや、ワルドが起死回生を狙って放ったリトルモアも次々と落とされ、
ワルド自身もカリーヌの前に、全ての偏在を破壊されて地獄の門の入り口を
見始めていた。
「おのれ……こんなはずでは」
「人間を甘く見すぎたな。確かに貴様らのような力の持ち主には、人間の力など
とるに足りないものに見えるだろうが、それは決して”無”ではないのだ」
「うぬぅ……」
「さて、貴様もそろそろ覚悟を決めてもらおうか、さっさとその馬鹿の体を
捨てて本性を現せ、それともいっしょに粉砕してくれようか?」
「人間ごときがぁ」
屈辱に燃えるワルドから黒いオーラが立ち上り、マイナスエネルギーが
凝縮していく。超獣化かと、カリーヌは杖を構えなおし、ワルドに乗り移っていた
者もそのつもりであったが、ワルドはふと見下ろした先に、レコン・キスタ軍の
駆逐艦が浮いているのを見つけて、どす黒い笑みを浮かべて変身をやめた。
「そうだ、こうすればよかったんだ。『ライトニング・クラウド!』」
ワルドの杖から強力な電撃が放たれる。しかしそれはカリーヌではなく
眼下の駆逐艦を直撃したではないか!
「貴様、血迷ったか!?」
「ふははは! いや、私は正気ですよ。考えてみれば、最初から人間どもの
争いの勝敗などどうでもよかったのだ。かくなるうえは、あの船どもを落として
地上の人間どももろとも皆殺しにしてくれるわ!」
「なんだと!?」
雷撃で大破炎上した駆逐艦は急速に墜落して、逃げ遅れた王党派の兵士や
脱出できなかった船員たちもろとも砕け散る。その阿鼻叫喚のちまたに
味を占めたワルドは、さらに残っていた十隻ほどのレコン・キスタ艦隊に
杖を向けて魔法を放った。
「ふはは、死ね、死ね人間ども!」
「やめろ!」
カリーヌが止める間もなく、三隻の船が燃え盛りながら、数千の兵士たちもろとも
業火に包まれていく。もちろんカリーヌは止めようと攻撃を放つが、ワルドは
サタンモアからの光線や火炎弾をも含めて、レコン・キスタと王党派を地獄の
業火へと突き落としていく。
「あっはっはっ! あの中で何人の人間が焼かれているんでしょうね?
悔しいかな? 私はあなたには残念ながら勝てないようだが、私も簡単には
落とされない。そうして人間たちが焼け死ぬ姿を指をくわえて見ているがいい」
カリーヌの攻撃を回避することにのみ専念し、攻撃はすべてレコン・キスタ艦隊に
集中して、一隻を落とすごとに惨劇をワルドは生み出していった。
あの炎の中で、何人の人間が故郷を、親兄弟を思い、残してきた妻や恋人、
子供たちの名を呼んで息絶えていっただろう。そして、夫や父親の死を聞いて、
何千何万の涙がこれから流れるのだろうか。
「外道が……」
血を吐くような怒りの言葉がカリーヌの口から漏れたとき、レコン・キスタ艦隊は
味方からの攻撃に慌てふためき、レキシントンを含むたった四隻にまで
打ち減らされ、さらにワルドの哄笑が耳朶を打ったとき、カリーヌはその素顔を
覆い隠していた鉄仮面を勢いよく脱ぎ捨てた。
「ワルドぉ!」
鬼神をも震え上がらせるであろう怒声が響き、ワルドの動きが止まった。
そこには、寡黙な仮面騎士ではなく、長く伸びたブロンドの髪を風にたなびかせた
壮烈にして華麗な、天空の戦女神が立っていたのだ。
「貴様は、この私を本気で怒らせた。もう後悔しても遅い……」
「ふん、な、なにを言っている」
けれども、ワルドの声は震えていた。彼と一体化した存在は恐怖などという
余計な感情は持ち合わせていないが、ワルドの本能は人間には決して消す
ことのできない原始的な感情に支配されていたのだ。
天に杖を掲げ、呪文を詠唱しはじめたカリーヌの周りの大気が渦を巻き、
彼女を覆うように高速で流動を始めたときに、ワルドは風系統の最高峰の
一つとして知られるスクウェアスペルの名を思い出した。
「『カッター・トルネード』か?」
「寝ぼけるな、そんな生易しいものだと思うな」
「なっ!?」
そう聞いてワルドは戦慄した。生易しいなどとはとんでもない。カッタートルネードは
世界でも使える者は数えるほどしかいない超上級魔法で、自分も元々はまだ
習得していないのだ。けれども詠唱を続けるカリーヌの杖の先で、上空が
見る見るうちに黒雲に覆われ、無数の稲光が舞い降りはじめる。さらに、黒雲は
渦巻き、生き物のように黒色の竜巻へと変わっていくではないか。
「まさか、天候が貴様の魔力の影響を受けているというのか?」
そんな馬鹿なことがあるはずがないと、ワルドの理性は否定するが、通常は、
たとえスクウェアスペルといえどもカリーヌが詠唱をすることはほとんどなく、瞬時に
魔法を完成させるのに、今は延々と呪文が続いていることが、彼の仮説を
何よりも強く立証していた。
ケタ違いの風と水の力が凝縮し、黒い竜巻は竜のようにうねる。そしてそこに
風のトライアングルと、水と風のトライアングルが重なった六芒星を囲むように
風のスクウェアが刻まれた紋章を見たときに、ワルドは絶望を知った。
「ま、まさか……魔法融合を、ヘクサゴンスペルを、一人で……」
「ヘクサゴンスペルではない。『ライトニング・クラウド』の雷撃、『ウェンディ・アイシクル』の
氷嵐、そして『カッター・トルネード』の真空竜巻……まだ名はないが、光栄に思え、
これを人間相手に使うのは初めてだ……消し飛べ」
「まっ、待てっ!」
命乞いは届かなかった。
ここに、カリーヌが三〇年前の修行の旅と、さらなる研鑽と戦いの末に体得した
結晶がこの世に顕現し、その瞬間、初めて見せるカリーヌの全力の魔力を込めた
三重融合魔法が、アルビオンの空を猛り狂った。
続く
以上です。YcypXxW3の人、支援ありがとうございました。
正月中は家を出たりイベントに参加したりして執筆が止まっていたので、今週は間に合わないかなと
思ったのですが、どうにか普段のペースにまで回復することができました。
それにしても、原作の11巻を見直すたびにトリステインは下手な軍備強化するよりカリーヌ様に
現役復帰してもらったほうがいいのではと思いまして、それをやってみたのですが、
さすが生きた伝説……
なお、烈風の騎士姫に関するカリーヌ様の設定ですが、追いかけ設定をすると話が無駄に
長くなるし、なにより巻が進むにつれてグダグダになりそうなので反映させないことにしました
のでご了承ください。
よって、本作におけますカリーヌのイメージおよび設定は、原作11巻のルイズをおしおきしたときまでの
描写とルイズやギーシュたちの台詞を基本とさせていただきます。
では、来週までしばしさようなら。
乙。
何かもう11巻時点とかそういう次元じゃないチートぶりね。
間に合わなんだー
乙。
烈風無双! 烈風無双!
汝こそ、万夫不当の英傑よ!
ああ、そういや原作でもルイズを一瞬で作り出した竜巻で吹っ飛ばしてお仕置きしてたな…。
また来週が楽しみです。
乙です。
ていうか正月の影響が今週って事はストック無しにホントに毎週この量を書き続けてるのか!?
マジすげー。
乙
書く人によって差はあれども
どんどんカリーヌ様が化け物じみた扱いになっていくw
だってよお、ルイズとは比較にならんぐらい優秀だぞ。兵器としても英雄としても。
>>35 そういうバケモノみたいなのが母親で、父親も母親とそこそこ戦える(はずの)実力者で、上の姉が国の研究機関の主席研究員か。
ルイズのコンプレックスの一端が分かった気がするな。
ああ 心にゼロが無ければスーパー虚無にはなれないのさ
ルイズが餓狼伝説の秘伝書を召喚してギース化する話があったけど。
ふとカリーヌ様がギース化したら威厳バリバリだよなw
カリーヌ「You can not escape from death」
>>38 つまり心に愛のあるキン肉マンがふさわしい友人なのだな
かなり遅いけど、ウルトラの人乙
ああ、近い内にラスボスの人に乙したいものだが……
44 :
罵蔑痴坊(偽):2010/01/10(日) 23:54:16 ID:dDqp5w+x
や、どーも。NWスレの方から召喚されました。
ウルトラの人の後であれですが、ウルトラの使い魔で行きます。
彼は、無限に続く牢獄の中にいた。
彼女は、自らの可能性を求めていた。
彼は、罰せられるべき輩を庇い、その受けるべき罰を一身に受けていた。
彼女は、背負うべき己が使命を知らず、無力さに耐え忍んでいた。
彼は、未来永劫までも虜囚……の、筈だった。その日、その時までは。
彼女は、ただの無力な少女……の、筈だった。その日、その時までは。
美しき、女がいた。
そう、その美しさを称えるのなら“人形”であろうか。
そして、彼女の戦う力、まこと計り知れず。
彼女が従うは、ある呪縛の故に。
彼女を操るは、大いなる絶望の淵を垣間見た、一人の狂える王。
人の世に蔓延るは、不信と憎しみ。
なればこそ、悪意をもたらさんとする試みは殊更無意味。
かつて引き連れた僕も、今はまだ眠りの時。
彼の者が見たのは美しき夕日。
適うのなら、あの光景だけをこの胸に、そしてささやかな友情を添えて。
語られる物語、それは、一組の主従を主軸とした、可笑しくも悲しく、限りなき冒険談。
人は、分かり合えるべきなのだろうか……
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが呼び出したもの、それは、一人の男だった。
黄色い、見慣れぬ仕立ての上着を纏った、60歳程度の……
「……って、どうしてこんなジジイと!」
当然ルイズは嫌がるが、既読スキップがあって何時ものやり取りの後その男に口づけをし、使い魔の契約を執り行う。
ややあって男が左手を押さえて苦しみ出し、そして使い魔のルーンが刻まれたようだ。
コルベールがそのルーンを確認し、記録する。記録し終わると解散を宣言。生徒たちは『フライ』の魔法で学園に戻っていった。
残されたのは、ルイズと、彼女の使い魔となった男の二人……既読スキップここまで。
「あんた、なんなのよ!」
ルイズが叫ぶ。そのやり場のない感情を、使い魔にぶつける。
無理もない。その理由が色々ありすぎるから。
「何って、ただの風来坊さ……いや、もう君の使い魔か。
とりあえず、どこか落ち着いて話の出来る場所はないかな?例えば君の部屋とか」
男は、その感情をさらりと受け流して立ち上がり、ルイズの手を取る。
その手の暖かさ、大きさは、何故かその心に染み入った……
かくして、ルイズの使い魔となり、『モロボシ・ダン』と名乗ったその男には、
昔、
ずっと昔、
気の遠くなるような昔、『ウルトラセブン』というもう一つの名があった……
男は、その紅き空の果て、再開すべき運命(さだめ)を見て取る。
女は、自らを束縛(さだめ)から解き放つ刃の振るわれる時を待つ。
「まず、ここはトリステイン魔法学院。そして私の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「長いな。ルイズと呼べばいいかな?」
「様、よ。ルイズ様と……まあいいわ、あなた年長だし、様付けする必要が無い時はルイズでいいわよ。
で、あなたは私の使い魔。それは分かってるわね」
「ああ、君の命令に従えばいいんだね」
「……人間を使い魔にした話は聞かないけど、随分と素直に従うわね。今まで何処で何をしてたの?」
「……今まで、か……
ちょっと、牢屋のようなところにね」
その途端、ルイズが半歩、後ずさる。まあ無理も無い。
「悪人には見えないわね」
「ん……友人の先祖が罪を犯してた事が発覚して、それを庇った結果さ」
「先祖の罪……どういう経緯でそういう結果になったのか、聞いてもいいの?」
「どういう……僕は本来、その罪を裁く側にいたんだ。
それで被害者の子孫が現れて、友人たちはその罪を自首して、後……まあ、色々あったんだよ」
自分の過去を、適度に端折って説明するダン。ルイズも、それ以上は聞かない事にした。
「どういう理屈があって君に呼び出されたのかは分からない。
けど、こういう事になったのは、君に仕える事が償いの続きなんだろう。そう思う事にしたんだ」
「まず、使い魔は主人の目となり耳となる……」
「口で言えばいいさ」
「主人の望むもの、例えば秘薬を見つけてくる……」
「そういう訓練を受けた事もあるが、正直自信は無いな……」
「そして、主人を守る……」
「それは自信があるぞ。今まで色々と守ってきたから」
「……でも、年寄りに無理はさせられないわね」
「……年寄り……そうか、年寄りか……」
ちょっと傷ついたようだ。
「まあ、無理の無いところで、雑用係かしら?悪いけど」
「確かに無理は無いけど……って、なんで服を脱ぎ出すんだ!」
「なんでって、寝るから着替えるのよ。男?使い魔はね、男のうちに入らないの。
それから、ベッドとかの用意は無いから、今夜はこの毛布で我慢してね。
明日になったら、これとかこれ、洗濯しておいてね。じゃ、お休み」
かくして、二人の最初の日は終わったのである。翌日の波乱など予想だにせず……
48 :
罵蔑痴坊(偽):2010/01/11(月) 00:01:36 ID:dDqp5w+x
と言うわけで、『ウルトラセブン』よりモロボシ・ダンを召喚しました。
今回はここまで。次回は、ギーシュ戦よりは先に行く予定。
因みに、『1999』で暗黒星雲に幽閉された、その後の時間軸から。EVOLUTIONはちょっと黒歴史になってます。
5番目より面白い、その調子で頑張ってくれ
乙。
わかっていてやっているんだと思うがあえて言おう。
ウルトラマン7は3番目だ。
>>41 なにげにキン肉マンって地球に捨てられてから漫画の悪魔編まで
ルイズよりも虐げられていたのに決して悪に落ちることなく人々のために頑張ってたんだよな
52 :
罵蔑痴坊(偽):2010/01/11(月) 00:55:24 ID:cImHHtLN
そうそう、今回の副題は『プロローグ・初日』です。
>49
お褒め頂きありがとう御座います。
>50
……ウルトラ“マン”7って、誰?
冗談はさておき、ウルトラセブンはウルトラ警備隊7番目の隊員です。
また、ウルトラシリーズと言う概念が出る前のウルトラセブンとかそういう感じでやってます。
ウルトラセブン以外のウルトラマンや怪獣は、基本的に出ません。
セブンはパラレルワールドだとか続編がどうしただとかの設定がややこしいからなぁ。
ウルトラマンゼロ!セブンの息子だ!
セブンはテレビ本来の設定では最終話で死んだことになってるしな。
まあ、もともとウルトラマンって一話完結の完全パラレル設定だからセブンが死んだ話も
生きててウルトラ兄弟として活躍する話もノンマルト関連でgdgdしたりマッチョになって
鈍器と化したアイスラッガーを振り回す話も全部ありなんだが。
>>51 王位編のフェニックス戦での過去の独白は涙を誘うよな。
スグルの過去に比べたら、ルイズはなまっちょろいな。
>>56
しかも、その悲劇の始まりが
「豚に間違えられて捨てられる」
という代物だからなあ。
>>57 よく考えたら豚に間違えられたのはスグルの顔じゃなくてマスクなんだよな
つまりスグルが捨てられたのはそんなマスクを被せた奴の所為じゃないか
後付け設定だがあのマスクはランダムで選ばれて被せられるのでどうしようもないらしい
スグルパパの時代は自由に選べたらしいんだけどな。
いつのまにか、パーソナルデータを入力して自動的にマスクが選出されるシステムになってたんだっけか。
>>48 まったくどうでもいいですが、卓ゲ板のコテハンの方ですか?
>>56 なまっちょろくても炎の逆転ファイターキン肉マンならきっと友達になってくれるだろうよ
キン肉マンの包容力はすごいぜ
個人的にまとめの作品の中で一番過去がやばいのはデュフォーだと思う
原作でもアニメでも実験動物扱いだし
ひょっとして今まとめwiki死んでる?
召喚したは良いが「命有る限り戦え、例え孤独でも」と言ったっきり消える使い魔
悲惨な過去を持つ主人公……ペルソナシリーズの主人公達も結構辛い過去を背負ってるよな。
「1」の直也は幼少時に双子の兄が自分の所為で死んだと思い込んでそれがトラウマになって
るし、「2」の達哉は初恋のお姉さんを目の前で殺されるし、「3」のキタローは元々シャドウ
関連には一番無関係だったのに、両親を失うわ身体の中にバケモノを封印されるわ仲間達からは事
ある毎に八つ当たりされるわ、挙句の果てに最終決戦で力を使い果たして死亡&時の狭間でアイア
ンクローの刑だぜ?
上田信舟版ペルソナから藤堂和也をジョゼフが召喚、とか脳裏をよぎった。
7巻の巻末おまけネタの神取&アキをジョゼフ親子に差し替えてみたら、シュールかもしれんw
一方番長は殺人鬼と神様をボコボコにして6股ぐらいかけて都会へと帰った
清原さんカッケー
かっとばせ!からなら出せるよね
71 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/11(月) 14:25:34 ID:7JX/quOU
まとめwiki繋がらないんだが、なんかあったのか?
ageたスマン
ジョジョの方も繋がらないから、wikiで何かあったのかもねん
人に聞くより自分で調べた方が早いよん
サンクス
>>67 聞いてないし、そういうのもういいから
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語ろうぜ
一応報告
どうやら18:00までメンテのようです
有栖零児&小牟(無限のフロンティア時)を召喚するネタを何故誰も書いていないのか?
君が書くのを待ってるから
ゔぁーるしゃいん「EXCEEDに出番あるかもしれないからしばらく留守にします」
ふと思ったが、もし探偵を召還してしまったら殺人事件が発生するんじゃなかろうか…
こんな感じで
第●話 バラの貴公子殺人事件
被害者 ギーシュ
第一発見者 マリコルヌ
被害者の恋人? モンモランシー
被害者の浮気相手? ケティ
パシュッ
ルイズ「あっ…この事件の犯人は」
コ●ン「この事件の犯人はこの中にいます…」
被害者は水気の無い密室で溺死している。馬鹿な、これは不可能犯罪だ!
じっちゃんの名にかけて真実はいつもひとつだから魔女なんか存在しない!
証拠がなければ作り出せばいい・・・
九十九十九が召喚されてフーケ事件の犯人が始祖だったんだよというオチになる
>>80 >コ●ン「この事件の犯人はこの中にいます…」
お前やw因果的に
なんとなくなんだが、迫水真次郎を召喚
サコミズ王じゃなくて原作小説版の
外道モット伯をブチ殺したり
発情したキュルケに強制飲にょ(ry
避難所行き確定でしたぁぁぁぁぁぁ
33分探偵ならば
探偵ならハーフボイルドとその相棒がいるじゃまいか
ルイズの部屋を事務所にしよう
電話帳に一番最初に載っている探偵さんは?
似たようなことリアルで考えた企業がそれなりにあったらしくて、
今じゃ「ああ探偵事務所」って名前だと一番にゃならないんだよな。
>>90 あの人が召喚されたら、破壊の杖奪われたあたりで凄くウキウキしてそうだなw
例の香水とかわざわざ自分で推理して持ち主を突き止めそうだし
あと何気に格闘・尾行・潜入・炊事・掃除・接客と何でもこなせるお得な召使www
>>88 ハーフボイルド探偵は確実に意地でも風都に帰ろうとするよ。
あいつの風都への思い入れは半端じゃない。
相棒に関しちゃ、ハルケギニアの知識などゼロな訳だから検索しても判らない事だらけで
役立たずになる所か、その所為で判らない情報を得る事に躍起になりすぎてどう言う行動に
出るか最早予測不能。
どっちにしても取扱が難しすぎるよ。
そもそも元の作品である仮面ライダーW自体が放送終了してないしね。
逆にルイズ達を風都に連れてきた方がやりやすいだろうな
30分2話のつもりで話を作ればまとまりもよさそうだし
じゃあ同じSHTから殿…もとい影武者シンケンレッドを。
それも今週の役目終えたてで「ビックリするほど何もない」状態のを召喚して、
超無気力なのをルイズ達がどうにかして更正させるような話とか面白そうだけど
書くには難易度高そうな悪寒
ハーフボイルド探偵と聞いて工藤俊作を思い出す俺はもはやオールドタイプなのか・・・・・・
ロリコン探偵は家族揃って大体呼ばれてるな、息子&娘のお話が続いてて安堵しているが
そろそろ母親のほうの話も続き読みたいでぇ
あと将来息子の友達になる獣も
アズラッド呼ぶのは躊躇われるが、エドガーなら・・・
走れメロスのメロスを召喚しようぜ
腕力も山賊相手に無双できる位だから問題ないし
>>98 前に呼ばれてたろ。
あれはカオスだった。
小ネタの最高傑作の一つ。
犯人はじっちゃんだ
>>92 んじゃおやっさん召喚でいいんじゃない?
映画は見てないけど死んでるのは確実みたいだから後腐れもないし
もしくは死亡フラグぶっ立ててる霧彦さんとかw
>>92 ハルキゲニアの知識がフィリップにあるかどうかは、メモリーと関係ないだろう。
フィリップの能力が地球の情報限定ならば確かに役立たずだろうけど、転移した先でも使えると設定すれば
普通にハルキゲニアでキーワード集めれば検索できるだろう。
異次元でもガイアメモリー(=地球の記憶)が普通に機能するのは夏と冬の映画で確認済みだしね。
おやっさん召喚かー
「いいかい、君のせいで二人のレディを傷つけてしまったんだよ、どうしてくれるんだい!」
下級生の娘に引っぱたかれ、彼女に頭からワインをかけられた金髪の少年が怯えるメイドに当り散らしている。
自分の過ちを他人に押し付けようと言うその行為がどれほど見苦しく、貴族としての尊厳を傷つけているか、
頭に血が昇って分からないのだろう。
私はクックベリーパイを紅茶で流し込むと、分からせてやるために席を立とうとしたが、先に声を掛けたものがいた。
「ギーシュ、やめておけ。女の子が本当に悪くったって、全部自分がひっかぶるのが男ってもんだ。
その上、今回のはたかが二人の女の子をうまくあやせなかったお前の不甲斐なさが原因だ。そうじゃないのか?」
見事に鍛え上げられた大柄な体を白いスーツに包み、食堂だというのに白い帽子をかぶったままの男。
私の使い魔、ナルミ・ソウキチ。
見事な正論(及び女性の敵な発言)だが、頭に血が登ったギーシュが平民の言葉に従うとも思えない。
やれやれ、またトラブルかと、私は軽く眉を顰めた。が
「あ、ああ、そうだね、ナルミ。全くみっともないマネだったよ、すまない」
「謝るのは俺にじゃないだろう」
「そ、そうだね、君、済まなかった。悪いのは僕だ。怖い思いをさせてしまったね」
ナルミの一言で正気ずいたギーシュはメイドに謝っている。以外な展開だ。
礼を繰り返すメイドに手を振って食堂から立ち去るナルミを見送るギーシュに問いただしてみる。
「ギーシュ、平民の言葉にえらくあっさり従ったものね?」
無論責めているわけではないのだが。
「ルイズ、女の君には分からないかもしれないがね。」
ナルミの背中を見る彼の目にあるのは
「平民だろうが貴族だろうが関係なく、ああなりたい、と男に思わせる男がいるのさ、彼のように」
まごうことの無いあこがれだった。
「その彼に軽蔑されるような男にはなりたくないさ。」
男のロマン?バカバカしい。
>>85 アンアンは股間にヘビぶち込まれてるってか?
絶版されたあの小説の内容で行くなら、確かに18禁の避難所行きだな。
>>92 本来のそれとは違うけど、契約時にミョズが刻まれればOKでは?
古畑が召喚されたら今泉がこき使われるのは明らか
右京さんが召喚されたら神戸君が空気になるのは明らか
謝れ!
右京さんに謝れ!
亀山がテファでミッチーが教皇な!
>>101 俺は好きだぜ、そのセンス
浅見光彦が召喚されたら速攻ヴァリエール公爵家に寄生するのは明らか
>>104 3月末にOVA版もプラスして再構成した「完全版」の単行本が出るそうだ。
全4巻・各2310円(税込)
OVA追加したゼロ魔アニメ完全版がでるのかと思ってビクッてなったじゃないか
>>107 古畑召喚・・・
ちょっとOPを考えてみる。
古畑「皆さん、御久しぶりです、古畑です。
突然ですが、皆さまは異世界というものをご存知でしょうか〜?
異世界とは正に異なる世界です。そこには我々が知っている常識というものは余り通用しません。
特にこの事件の犯人は魔法を使う異世界では有名な窃盗犯でした。
え〜、ですが、私達の世界であろうと、異世界であろうと共通する事も存在します。
例えば、犯人は必ず何所かで嘘を吐くということ」
OP曲〜
>>103 > たかが二人の女の子をうまくあやせなかった
おやっさんってこんなこと言う人だったのか、うろ覚え+飛び飛びで全然知らなかったw
古畑うまくかければ面白そうだな
上手く書ければ、な。
上手くかければ、どんなキャラを召喚したって面白くなるさね。
古畑は一人歩き回って証拠品を集めたり、台詞無しに犯人の失言に気付くからな
地の分に慣れた人でないと、文章化はかなり難しいそう
>>115 かなり雰囲気でてるね。GJ!
122 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/12(火) 00:13:30 ID:0hYfDTox
探偵なら安楽椅子サマナーの轟さん(ペルソナ2)を召喚。
原作では噂の流布と懸賞の代筆しかしてないけど
>>116 全然どんな人か分からないので、俺的吉川晃司イメージで適当
予約も無さそうなんで投下したいと思います。
デッビーッル支援
アクマ来た、アクマ来た、これで勝つる。
「ロングビルさん、起きてください」
「う…」
「ロングビルさん」
「あ………うわあああっ!?」
目を覚ましたロングビルは、自分の顔を覗き込んでいる人修羅に気が付き、心臓を鷲づかみにされたような錯覚に陥った。
わたわたと両手両足を振り、逃げようと身体を動かしたところで、自分の身体が怪我一つしていない事に気が付いた。
白い仮面を被った男に脅迫され、ゴーレムと傭兵を使って『女神の杵』亭を襲撃したロングビルは、人修羅の一撃で返り討ちにあった。
その時自分は石の下敷きになったはずだが、なんの痛みも残っていない。
「怪我はもう無いはずですけど…大丈夫ですか?」
「えあ、ああ、ああ、だいじょう、ぶ、だけど…」
多少混乱しているせいかロングビルのろれつが回らない。
手を引いて身体を起こさせ、近な木箱に座らせる。ロングビルはようやく落ち着きを取り戻したのか、自分が置かれている状況が気になりはじめた。
木で造られた倉庫というには何かがおかしい、違和感の正体は揺れだった、ここが船の中だと気が付くと、ロングビルは観念したようにため息をついた。
「あたしは、何でこんな所に?」
「…言いにくいんですけど、ゴーレムの巻き添えになったんです。覚えてますか?」
「ええと…そう、そうだ、あたしは、自分で作ったゴーレムの石に頭をぶつけて……」
「その時、仮面を被った男が気絶した貴方に杖を向けていた?」
「仮面、かめ…ああ、あいつが、杖を、私に?」
人修羅はここで一つの嘘をついた。
あの時、仮面の男はロングビルを放置して逃げた、最初から捨て駒扱いをされていたとしか思えないが、あえて『口封じに殺されそうだった』と臭わせる事でロングビルの出方をうかがったのだ。
「怪我の治癒はしたが、ラ・ロシェールに放置しておくわけにもいかないので、一緒に来て貰った。今アルビオン行きの船の中ですよ」
ロングビルは、ああ、と顔を手で覆った。
「アルビオンか…」
「ロングビルさん、教えてくれ、一体何があった?」
「……あたしは、あんたたちの泊まっている宿を襲えと、頼まれたのさ」
人修羅はロングビルの口調が変わっていることに気が付いた、だが、もしかするとこちらが本来なのかもしれない。余計な事は言わないことにして、ロングビルに続きを促した。
「ラ・ロシェールであんた達を見送ったら、すぐに魔法学院に帰る予定だったんだ。でも、仮面を付けた男が現れて、あたしをアルビオンの貴族派…確か、『レコン・キスタ』とやらに入るよう言ってきたんだ」
「レコン・キスタ…」
「あい、あいつら、エルフをうちたお、打ち倒して聖地を取り戻すんだとさ…馬鹿馬鹿しい」
ロングビルは、吐き捨てるようにそう言った。
「それで?」人修羅は続きを促した。
「仮面の男は、あたしの…ロングビルって名乗る前の…マチルダ・オブ・サウスゴータって知ってた、あたしが元アルビオン貴族も…ああ、し、仕送りに出したはずの…金貨の袋をあたしに見せつけたんだ」
ふと、ロングビルは顔を上げて人修羅を見た。自分を哀れんでいるのか、笑っているのか、それとも胡散臭い話だと訝しんでいるのか気になったからだ。
人修羅は疑っているとは言い切れないまでも、真剣な表情でロングビルの話を聞いていた。
「おねがいだよ…たすけてくれよ、あたしが死ぬのはいいよ、でもテファは、ティファニアは…」
そう呟いた所で、ロングビルの瞳がぶれる、幻覚を見ているのか、身体を震わせて視線を移しては怖がるような仕草を見せた。
「ごめん」
人修羅はそう言うと、ロングビルの頭に手を乗せた。
ロングビルが目覚める前、人修羅は可能な限り手加減した『テンタラフー』を使っていた、いかなる理由が有ろうとロングビルはルイズ達を殺せる魔法を使ったのだから、この際人権だの何だのと言ってられない。
軽い混乱状態に陥ったロングビルは、仮面の男に脅迫されてやむなく『女神の杵』亭を襲ったと喋った。
だが、これ以上続けていると強烈なバッドトリップに陥る危険があるので、人修羅は両手でロングビルの頭を覆い、体内の『イヨマンテ』のマガタマを活性化させた。
精神への影響(混乱、睡眠、魅了)を治癒する『パトラ』の魔法が使えれば簡単なのだが、人修羅では取得できなかったため、マガタマの力を借りることにしたのだ。
「あ……」
恐怖に染まっていたロングビルの瞳が、眠たそうな目つきに変わり、しばらくすると完全に眠ってしまった。
「…………」
人修羅はロングビルを寝かせると、部屋を出て行った。
◆◆◆◆◆◆
船底の船室から、もう一つの船室に繋がる扉を開けると、そこには聞き耳を立てていたルイズの姿があった。
あらかじめ『扉の外で話を聞いていてくれ』とルイズに頼んでいたのだが、ルイズは、何とも言えない複雑な表情で人修羅を見上げていた。
「聞いてたとおりだ。ルイズさん、彼女の名前に心当たりはある?」
そう問いかけ、ルイズの返答を待つと、少し悩んだ様子で答えが返ってきた。
「アルビオンにサウスゴータっていう地名があったのは覚えてるわ。たぶん、そこの出身よ」
「そうか…」
人修羅は腕を組み、ふぅとため息をつく。
このままロングビルをアルビオンに連れて行けたとしても、自分たちの目的地はあくまでも王宮、ニューカッスル城だ。
マチルダ・オブ・サウスゴータがどんな理由で名を変えていたのか解らないが、あまり良い理由では無いだろう、もしアルビオンを追放され、やむなく名を変えたのなら、ニューカッスルまで連れて行く事はできない。
それどころか入港の時点でストップがかけられ、投獄の危険もある。
悩んでいる人修羅に、ルイズが「ちょっと」と声をかける。
「どうした?」
「ワルドにも伝えたほうがいいかしら、なにかいい手を考えてくれるかも」
「いや…それは止めた方が良いんじゃないか。彼は俺達と違って王宮直属の軍人だろ? ロングビルさんの出自まで伝えるのはまずい。脅迫され、やむなくとはいえ…ラ・ロシェールで大暴れした事がバレたら、厄介な事になる」
「うーん、確かにそうかもしれないわね…」
「彼女は脅迫こそされたものの、それ以上のことは言われていない。おそらく『仮面を被った男』はもう一度接触してくる。そうなった今度は『アナライズ』で手がかりを掴んでみるよ」
ルイズは、沈痛な面持ちで船室の扉を…いや、扉の向こうにいるはずのロングビルに意識を向けた。
「ティファニアって、家族かしら」
「…かもしれないな」
(この旅が終わったら、学校を休んで、またカトレア姉様に会いに行こう)
ルイズは自然と、そんな決意を固めていた。
◆◆◆◆◆◆
人修羅とルイズが、船室から甲板へ出ようとしたところで、外から船員達の騒ぐ声が聞こえてきた。
「右舷上方………り……船が………す!」
「………………………………」
「…船………旗を掲げ………」
「…………る…くうぞく…………」
「間違い………乱に乗じ…………て、活動が…………ると…………」
「逃げろ!」
人修羅はハッとしてルイズに向き直る。
「空族らしい、ルイズさん、ここにいてくれ。俺は外に出る」
「でも」
言い返そうとしたルイズの肩に手を置き、真剣な表情で瞳を見つめた。
「…頼む」
ルイズは神妙に頷き、「わかったわ」とだけ呟いた。
人修羅が甲板に出ると、船長が船を空賊から遠ざけようと指示を飛ばしていた。
しかし、すでに空族らしき黒船は併走しており、脅し代わりにと船側の大砲を撃ち出した。
弾丸は、ぼごん!と音を立てて人修羅達の乗った船の針路を横切り、雲の彼方へと消えていった。
黒船のマストに四色の旗流信号が登ると、船員がそれを停戦命令だと気付き、船長に告げていく。
「停船命令です!」
この船にも武装はあるが、甲板に置かれた移動式の大砲が三門のみだ。
一方黒船は片舷側に二十数門も大砲を並べている、それに比べれば役に立たない飾りのようなものだろう。
船長は助けを求めるように、隣に立ったワルドを見つめていた。
「魔法は、この船を浮かべるために打ち止めだよ。あの船に従うんだな」
ワルドが落ち着き払った声で言うと、船長は頭を抱え「これで破産だ…破産だ…」と呟いた。
すぐにハァとため息をついて顔を上げ、力ない声で「裏帆を打て。停船だ」と命令した。
人修羅は無言で船室に入ると、不安そうな表情のルイズへと近づいた。
「ルイズさん、奥の船室に隠れて、少しの間ガマンしていてくれないか、ワルドさんは魔法を使いすぎている、俺は直接空族の頭領を狙う」
「頭領を?」
「そうだ…俺の技で空賊の船を吹き飛ばすには、相手の船が大きすぎる、余波でこの船までダメージを負うかもしれない」
「で、でも一緒に」
「ルイズ!」
びくん!とルイズの身体が震える。
「…必ず助ける、だから、協力してくれ。もし空賊に見つかったら自分が貴族だとばらすんだ、格の高い貴族なら人質としての価値が高い、相手もルイズさんを丁重に扱うはずだ、そうして時間を稼いでくれ」
どことなく戦士を思わせる、真剣な表情で見つめられ、ルイズは背筋に寒いものを感じた。
だが、それは貴族としてのプライドを刺激されるものでもあった、自分に与えられた役目を全うしようという気が、身体の奥からわき出てくるようだった。
「…わかったわ、人修羅も、無茶しないで」
「大丈夫だ」
人修羅は微笑むと、ルイズの頭に手をかざした。
「ラクカジャ」
じわりと身体に何かが染みこんでくる、一度も感じた事のない不思議な感覚だが、嫌ではなかった。
「これでしばらくの間、ナイフで斬りつけられても傷一つ付かないはずだ。奥に隠れててくれ」
そう言うと、人修羅は手近な縄を掴んで船室を出て行く、それを見送ったルイズもまた、ロングビルの居る船室の奥へと入っていった。
◆◆◆◆◆◆
「空賊だ! 抵抗するな!」
黒船から、メガホンを持った男が大声で怒鳴る、空賊の船には弓や銃を構えた男達が並び、こちらに狙いを定めている。
人修羅はデルフリンガーに縄を結びつけて背負うと、靴を脱いだ。
(俺を見ている視線は…たぶん無いな…)
殺気と比べ、視線を『心眼』で感じるのは難しいが不可能ではない、空賊達が自分に気づく前に、人修羅は船の外側を伝って船底へと下りていった。
空賊の船からかぎ爪つきのロープが放たれ、二つの船が近づけられる。
ある程度まで近づくと、空賊の船から斧や曲刀などの武器を持った屈強な男たちが、船の間に張られたロープを伝って数十人がやってきた。
それを見て、前甲板に繋ぎ止められていたワルドのグリフォンが、ギャァギャァと喚く、するとその瞬間、グリフォンの頭が青白い雲で覆われ、そのまま身体を横に倒し寝息を立て始めた。
「眠りの雲……、確実にメイジがいるようだな」
ワルドはそう呟いて、船室の方を見た、そこには人修羅の姿がないと知らないまま…
しえん
あっけなく空賊に捕らえられたワルドたちは、船底の船室に閉じ込められた。
マリー・ガラント号の乗組員たちは、空賊の手伝いをさせられ、ルイズはすぐに発見され杖を奪われた。
杖のないメイジなど恐れるに足らず、既に杖を失っていたロングビルはそのままだが、三人は手足のでない状況にあるのは間違いなかった。
船室と言っても実質的には倉庫である、酒樽や、穀物のつまった袋、火薬の入った樽などが雑然と置かれているため臭いがある。
ワルドはそれらを興味深そうに見回すと、小声でルイズに話しかけた。
「君の使い魔は?姿が見えないが…」
「空賊の頭領を狙うって言ってたわ…どうやるのか知らないけど」
「なるほど…では、伝説の『ガンダールヴ』を信じるとしようか」
その頃人修羅は、ヤモリのように船底に張り付いていた。
両手両足の爪を食い込ませて、少しずつ後甲板へと登っていく。
マリー・ガラント号は空賊の船に曳航されているが、海ではなく空なので飛び移るのにも神経を使う。
人修羅は背中のデルフリンガーに声をかけた。
「デルフ、後甲板に人はいるか?」
『見回りの空賊は前甲板に下りてったぜ、後ろには誰もいねえ』
「マストに登ってる見張りは?」
『ちょっと厄介だな…今はこっちを見てるぜ』
「後甲板に隙ができたら教えてくれ」
『おうよ』
人修羅が見た感じでは、空賊の船は大砲を舷側に供えていた。
移動式の大砲が甲板にも備えてあるかもしれないが、真後ろに撃つには時間がかかるはずだと考えていた。
『今だ、見張りが前を向いてるぜ!』
「よし」
人修羅は船の外壁から、後甲板へとよじ登った。
「高所恐怖症じゃなくて助かったな…」
そう呟きながらデルフリンガーを抜刀し、神経をとぎすませた。
「おい、誰だおま ぶ」
空賊の一人が人修羅に気付き、曲刀を向けるが時既に遅し、人修羅は手加減した一撃で空賊を昏倒させると、甲板を走り、空賊の船に向けて跳躍した。
(やっぱ恐ぇえええええええええええええええええええええええ!)
人修羅は叫ぶのを我慢しながら、ガンダールヴのルーンから送られてくる『最適な動作』を読み取り、空中で姿勢を整えて空賊の船へと着地した。
ドン!と音を立てて着地し、ガスン!とデルフリンガーを突き立てて身体を固定する。
「何だ!」
「貴様ぁ!」
空賊が人修羅の姿を見て驚くが、すぐさま武器を構えて人修羅を取り囲む。
「武器を捨てろ!」
杖を向けてそう叫ばれても、人修羅は恐れた様子もない。
『甲板の下、後部奥の部屋だ!』
デルフリンガーが叫ぶ、すると何人かの空賊はあからさまに表情を変えた。
「頭目はそこか」
デルフリンガーを引き抜くと、人修羅はまるで買い物に行くかのような気楽さで歩き出した。
「てめ え?」
人修羅に向けて斬りかかってきた男の武器を、素手で掴み、そのまま折る。
背後から杖を向けていた男の『エア・カッター』をデルフリンガーでかき消しつつ、甲板から船室に下りる跳ね上げ式の扉を蹴り砕いた。
「待て!」
「やめろ!」
空賊達の狼狽える様子を意に介すことなく、船の中に入った人修羅に向けて、何人かの屈強な男達が慌てて武器を構えた。
人修羅は息を吸い、全身に力を入れて『雄叫び』をあげる。
「 」
空賊達は一瞬意識を失いかけた上、で平衡感覚を失う。しかし船の上で揺れに耐えている空賊は耳をやられたぐらいでは倒れない。ただ、一瞬の隙ができるだけだ。
人修羅は身を低くして通路の奥へと駆け、一瞬で最奥の扉へとたどり着いた。
デルフリンガーを振るい、扉を×印に切断すると、人修羅は口を大きく開けた。
「ぎゃああ!」「うわ!」「殿下を…」
黄色のガスは船室にいる人間にショックを与え動きを鈍らせる、それが一時的な混乱を招く。
船室の真ん中に置かれたテーブルは、いかにも頭目だけが使えそうな重厚な作りであり、その奥の椅子にはボリュームのある黒髪と髭を蓄えた細身の男が座っていた。
『フォッグブレス』で混乱している隙に、人修羅はテーブルを飛び越え、頭目の隣へと着地した。
「殿…頭!下がって下せえ!」
混乱から回復した男達はそう叫ぶが、頭目からの返事はない。
別の男が、ガスが晴れた室内で頭目の姿を確認しようとして…「頭…あああああああっ!?」と声を上げた。
頭目は変わらぬ姿のままそこに居たが、隣には顔に刺青を入れた不気味な男が立っており、頭目の首へと剣を突きつけていた。
人修羅は空賊達の反応を見て、この男が空賊の頭目で間違いはなく、しかも都合の良い事に仲間からの信頼が厚いのだと感じていた。
デルフリンガーに『船内の異常を知らせに走る奴を探してくれ、そいつの行く先に頭目がいるはず』と頼んでいたが、これほどスムーズに確保できるとは思っても見なかった。
力ずくで頭目の身体を引き寄せ、左手で抱える。
頭目は、万力のような力で抱えられたため、このまま潰されるのではないかと背筋を寒くした。
「お前達、俺に構わず…ぐッ…」
「悪いが俺達の安全が確認できるまで、こいつは預からせて貰うぞ」
◆◆◆◆◆◆
一方、ルイズ達の閉じこめられている船倉では、空賊の一人が食事を運んでいる所だった。
この船倉はルイズ、ロングビル、ワルドの三人が閉じこめられている。
「飯だ」
扉の近くにいたルイズは、男を見てふん、とそっぽを向いた。
「質問に答えたら飯をやるぜ」
「…言ってごらんなさい」
ルイズがそう呟くと、空賊はにやりと笑った。
「お前たち、アルビオンに何の用なんだ?」
「旅行よ」
ルイズは座ったままだが、毅然とした声で言った。
「トリステインの貴族が、いまどきのアルビオンに旅行とは…? なにを見物するつもりだい?」
「そんなこと、あなたに言う必要はないわ」
「ほうほう、随分と強がるじゃねえか」
からかうような空賊の言葉に、ルイズは真っ向から見返す事で返答した。
空賊は一瞬驚いたような目をしたが、どこか仕方ないと言った笑みを浮かべ、皿と水の入ったコップを寄越した。
「ふん」
ルイズはそっぽを向いたが、ワルドがそれを窘める。
「食べないと、体がもたないぞ」
そう言われては逆らうわけにも行かない、しぶしぶといった顔で、スープの皿を手に取った。
ルイズは自分の分を飲むと、ロングビルを起こそうとしたが、揺すっても声をかけても目を覚まさない。
ロングビルの分を残してスープを飲むと、やる事が無くなってしまった、ワルドは壁に背をついて、なにやら物思いに耽っている。
しばらくすると、扉が開かれ、今度は痩せぎすの空賊が船倉へと入ってきた。
「おめえらは、アルビオンの貴族派か?」
ルイズは無言だが、眉がぴくんと動いたのを自覚した。
空賊は苦笑を浮かべて、くっくっくと笑う。
「くく、だんまりじゃわからねえって。でも貴族派だったら失礼したなあ、俺たちはあんた達の味方だ、王党派に味方しようとする酔狂な連中を捕まえるって、密命を帯びてるのさ」
その言葉を聞いて、ルイズはほんの少しの恐怖を感じたが…それ以上に冷静になっていく自分に気が付いた。
「…じゃあ、この船はやっぱり、反乱軍の軍艦なのね?」
「いーや、俺達はあくまで対等な関係ってやつでね、貴族派と協力し合ってるのさ、まあおめえらには関係が無い事だがなあ」
空賊はにやにやと笑いながらルイズ達の返答を待ったが、答える様子が無さそうなので言葉を続けた。
「で?おめえらはどうなんだ?貴族派ならきちんと港まで送ってやるよ」
ルイズは静かに立ち上がると、両手を腰に当て、空賊を真っ向から見据えた。
「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか!私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、王党派への使いよ。貴族派が勝利したわけでもないのに偉そうね!
アルビオンの正統なる政府はアルビオンの王室よ、わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使。だから私を大使としての扱いにするようあんたたちに要求するわ」
これにはワルドも驚いた。空賊もまた驚いた様子を見せたが、すぐに気を取り直し、多少引きつった笑みを見せた。
「…正直なのは、確かに美徳だ。だが、お前たち、ただじゃ済まないぞ」
「私は、あんたたちに嘘ついて頭を下げるぐらいなら、死んだほうがマシだわ」
ルイズはそう言い切った、その瞳にまるで迷いは見られない。
「…そうか、頭に報告してくる。その間にどうなるか…ゆっくり考えるんだな」
空賊は呆れたように部屋を出て行った、
するとワルドが寄ってきて、ルイズの肩を叩いた。
「いいぞルイズ。さすがは僕の花嫁だ」
ルイズはため息をついて、俯いた。
◆◆◆◆◆◆
一方、人修羅は空賊の頭目を抱えたまま、海賊船の甲板へと移動していた。
眼前に広がる雲海の向こうに、巨大な大地が見える。
「あれがアルビオンか…凄いな。こうして見ると神聖な気さえしてくるのに、戦争の最中とはな…」
人修羅の呟きに何か思うところがあったのか、頭目が口を開いた。
「不甲斐ないと思うかね」
「何がだ?」
「神聖な大陸を統治しながら、貴族派閥に負けそうな王党派が、だよ」
人修羅はほんの少し、力を緩めた。
「…俺はハルケギニアに来て日が浅い。貴族派に負けているという理由だけで王党派を不甲斐ないと決めつけられるはずがない」
「ハルケギニアに来て……? まさか、エ…」
「言っておくが俺はエルフじゃない。人間だよ。使い魔として召喚されたのさ」
「人間…? …フフフ、君を使い魔にしたメイジは、さぞかし優秀なのだろう」
「優秀かどうかは、これからだな」
人修羅はそう言うと、自分の周りを囲んでいる空賊達を一瞥した。
空賊達はおのおのが武器を構えていたが、人修羅の強烈な殺気に射すくめられ身体を震わせた。
「飛ぶぞ」そう言うと人修羅はデルフリンガーに力を込めた、ルーンが発光し、最適な力加減が身体に浸透していく。
人修羅は、マリー・ガラント号に向けて跳躍した。
◆◆◆◆◆◆
「か、頭!」
マリー・ガラント号に乗っていた空賊は、突然甲板に飛び降りてきた人修羅と頭目を見て驚愕した。
「人質を解放して貰うぞ……って、アレ?」
人修羅もまた、着地の衝撃で頭目の頭から落ちた”カツラ”に驚いた。
「てめえ…頭を離せ!」
「あー……とりあえず船を解放して貰えないか。こっちも、なるべく危害は加えたくないんだ」
甲板で空賊と人修羅がにらみ合っていると、船室の中に入っていた別の空賊が、ルイズを羽交い締めにして甲板へと現れた。
「人修羅!」
「ルイズさん…」
人修羅とにらみ合っていた空賊は、懐から出した杖をルイズに向け「頭を放して貰おうか、でなけりゃこいつが傷つく事になるぞ」とまくしたてる。
そうは言ったものの、空賊は何処か乗り気ではない、仕方なく人質に杖を向けている…そんな気がした。
こんな時のために、人修羅は幾つかの奥の手を残してある。
敵を混乱させる『原色の舞踏』と、魔法を封じる『マカジャマオン』、そして問答無用で敵だけを殺す『マハムドオン』だ。
しかし、今回はそれを使う必要は無さそうだと思った、ルイズの目に、全く恐怖が浮かんでいないのだから。
「動くなっ!頭を離せ、でないとコイツが」
「殺すなら殺しなさい、下郎」
「!?」
ルイズの言葉は、空賊を驚かせた。
実はルイズ自身も強い恐怖心に苛まれているのだが、それを凌駕する自信が心を支え、ハッタリを可能にしている。
「私はトリステインから、正当なるアルビオンの王政、王党派への大使よ。あなた方が貴族派の貴族でも、第三国の大使への扱いぐらい心得ているでしょう。ニューカッスルまで私を送り届けなさい」
ルイズは、精一杯のハッタリを…おそらくハッタリを通り越して、真実として言い放った。
そこには、確かに貴族としての威厳が、カリスマが存在していた。
頭はルイズの言葉を聞いて、言った。
「王党派と言ったな?」
「ええ、言ったわ」
「なにしに行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまう」
「あんたらに言うことじゃないわ」
「……貴族派は、メイジを欲しがっている。貴族派につけばたんまり礼金も弾んでくれるぞ」
「死んでもイヤよ」
人修羅は苦笑した、ルイズの気の強さがここまでとは思っていなかった。
ルイズの体がほんの少し震えていることに気づいていたが、それでも自分を取り囲む空賊を見据えているその姿に、どこか晴れ晴れとしたものを感じた。
「はは、はっはっは!」
頭は笑った。人修羅に抱えられたまま、大声で笑った。
「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな…私を抱えている、君、すまないが私の眼帯と、付けひげを取ってくれないか?」
「頭!」
空賊の一人が驚いたように叫ぶ。
「いいんだ、お前達、彼女を解放し整列しろ」
周りに控えた空賊たちは、武器を床に置くと、甲板で整列した。
マリー・ガラント号の船員達もその様子に驚いている。
人修羅は頭目の眼帯と、付け髭を取った。
すると頭目は、凛々しい金髪の若者へと変身した。
「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……。本国艦隊といっても、すでに本艦『イーグル』号しか存在しないがね。まあ、その肩書きよりこう言った方が通りが良いだろう。 …アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」
ルイズは口をあんぐりと開けた。ウェールズを抱えたままの人修羅も「なんじゃそりゃ」と言わんばかりに口を開けて、皇太子殿下を見つめている。
ウェールズは、にっこりと魅力的な笑みを浮かべた、人修羅は危険がないと判断し、ウェールズを解放した。
解放されると、直立して襟を正し、ルイズに向き直る。
「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」
この後、ウェールズの持つ『風のルビー』が、アンリエッタから預かった『水のルビー』によって本物だと証明された。
持ち主であるウェールズ皇太子も、幼い頃のルイズをラグドリアン湖の園遊会で見かけた等と思い出話を始めた事で、本人だと証明された。
なお人修羅は「知らなかったとはいえ皇太子殿下に剣を突きつけるとか、やりすぎよ!」と叫ぶルイズによって股間にトーキックを受け、天使達にお迎えされそうになった。これは全くの余談である。
===========
今回はここまでです
乙
天使にお出迎えはやめてくれ
嫌というぐらいみたシーンだから。
まさかのアクマの人リアルタイム遭遇!
ちょっと遅いお年玉でした乙
人修羅の場合強さがチート過ぎて
周りに被害与えまくるから補助系スキルの方が活躍するという罠
そんな人修羅をパトらせかけたルイズさんさすがっす
137 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/12(火) 01:06:12 ID:0hYfDTox
探偵なら安楽椅子サマナーの轟さん(ペルソナ2)を召喚。
原作では噂の流布と懸賞の代筆しかしてないけど
待ってたよアクマの人!
そんなことでパトられたらルイズとしてもたまらんだろうwwww
乙っした。
アカデミーに姫矢さんがいてロマリアに溝呂木がいてルイズが弧門召喚、ちい姉様は既にスペースビーストなゼロ魔
>>52 新連載は大変けっこうだけど題名が5番目と一字違いだし、ウルトラ7番目と来たらそもそもレオを連想するからまぎらわしいな。
タイトルでパロってるようなもんだから、事前に承諾くらいもらってるんじゃないの?
こういう大勢の目に付く場所で聞かれたら断りにくいし、個人的な知り合いかブログでも知ってるとかでさ。
まぁ別にタイトルは自由でしょ
セブンは登場作品によってかなり違うから面倒だな
耳がなかったりマッチョになったり
>>143 耳がないのはタロウのスーツを改造したから、
マッチョにはなったときは本当の力が封印された状態だから、最終回の覚醒後を除いて普通より弱い
強いて言えばマックスにもアイスラッガーだけ出てる。
けどダンはウルトラ銀河伝説ではけっこう派手なアクションしてるし、まだまだお若いよな。
意外にも快盗天使ツインエンジェルからはないのか
声優がかなりかぶってるが
セイントテールがなんだって?
>>92 ルイズ強化系の話として、
ルイズにフィリップの能力inハルケ版を持たせてあげれば面白くなりそう
アクマの人乙
LFO作者に物申したい。
おめーがいつまでも調子のってミーちゃん虐めんじゃねぇがな
今回は仲間連れてきたから耳かっぽじってよーく聞きな
黒崎一護「恥は無えのかよ…テメーには!!」
ルフィ「人の痛みが分からないおまえは人間辞めちまえ!!!!!」
ゴン(H×H)「人を自分の都合のいい道具扱いするなんてふざけるなよ!?」
緋村剣心「拙者も罪を重ねてきたが、常に向き合ってきたつもりだ。貴様は何が罪かもわかってないな」
ボーボボ「ミー!立ち直りたかったら俺についてこい! 但し!LFO作者とルイズ! てめーらは駄目だ!」
海馬瀬人「恥を知れ!!ゲスが!!!」
高町なのは「少し、頭冷やそうか」
毒吐きスレでやれ
赤面した
08小隊からジオンの村から脱出したエレドアとミケル召喚
・・・・その場で殴り合いになるな、うん。
お池にはまったミーちゃんが〜♪
大魔神を召喚。(元名投手ではない方です)
……1時間後、トリステイン魔法学院は消えてなくなりました。
蛇の目でお迎えうれしいな〜♪
「魔法を使う奴が相手なら覇王翔吼拳を使わざるを得ない!」
とか言いつつワルドだけは龍虎乱舞でボコるリョウ・サカザキを召喚とか…
何故か学園の宝物庫に天狗の面があったりしてなw
剛くんと出会った〜
>>157 やつならきっとジョゼフに召喚されてハルケギニアを面白くしてくれるはず
ダンスやってるからな
夜天の使い魔ってもう更新されねぇのかなぁ。
まるっと1年音沙汰無しだよ。
「え〜、剛がやらかしましてね。ちょっと剛がやらかしまして。しばらくハルケギニアに行くことになりましてね。
剛とにかくね、まあ俺ら、こうなんとかいない間がんばってるから。早く帰って来いよ。待ってるから!」
>>156 テファの所にユリ、教皇の所にロバートだな
無限のフロンティアの次の敵もアインストだってさ(ファミ通)
亀だけど、アクマの人乙!!これでラスボス、損失実験体、魔王伝の人たちが戻って
来てくれたらなあ。
まぁレジセイアが死んだわけじゃないしなぁ
クロスゲートもEFから見えなくなったけどレジセイアがアクセス権を失ってなければ
まだまだどうにもなるだろうとは思ってたけど・・・
IMPACTより末期のアルフィミィ召喚
ルイズと合体
食堂で再生
ギーシュ抉り
聖帝様がご投下になるぞーーー!さるさんは消毒だーーー!スレをあけろーーー!
この作品は、超!エキサイティン!!
中野TRFの提供でお送りいたします。
カリーヌ無双を見てると、K.I道場ならぬカリーヌ道場なるものがあったのではないかと思わなくもない。
ヒャッハー、サウザー様の到着だー!!
Mr.BRAINの九十九龍介を召喚
ギーシュが助手兼実験台だな
お久し振りです。
それでは聖帝の方の20分後くらいに投下させていただきます。
まさかの中野北斗勢ですか
「き、来たぞ!」
魔法学院の廊下を、あたかも奇跡を起こすトキの如く人を割る影が進む。
その影を避ける生徒の顔は恐れの一色。
ならば、進むのは修羅か悪魔か死神か。
だが、先を行く赤と青に挟まれるのは桃色がかったブロンドの髪の持ち主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人。
「あ、あれがミスタ・ギトーを一瞬で葬った……」
と、生徒たちが囁くが、噂というのは尾ひれが付くもので、人づてに話が伝わる事に大きくなり気絶させただけなのにGOLANの有様である。
実際問題として、ゼロと呼ばれていた自分がスクウェアメイジを倒したのだから本来ならば誇ってもいい事のはずだ。
ルイズ自身も学院に入って『ゼロ』と呼ばれるようになってから、いつか立派なメイジになって見返してやると思ってた。
「あれが南斗爆殺拳のルイズか……恐ろしい……」
ぽつりと生徒の一人がそう呟いた瞬間、俯き気味だったルイズがぬらりと顔を上げると、その声が聞こえた方を向いて小さく、それでいてはっきりと言った。
「ちょっとあんた。わたしの二つ名を言ってみなさい……」
「ひぃ!?」
まるでショットガンでも取り出さんばかりに自然に杖を取り出し、握る様はかの日の鉄仮面。
その迫力に押され、秘孔を疲れたわけでもないのに身動きの取れなくなってしまった生徒の頭の中ではなぜか
→虚無のルイズ
南斗爆殺拳のルイズ
ゼロのルイズ
という三択が浮かんでしまっている。
上の選択肢はありえるはずもなく、中と下はこの状況下で言えるはずがない。
時間的余裕も無いので回答不能。
答えにもならない言葉を出すとそのまま後ずさり背中が廊下の壁に当たる。
もちろんというか、そんな事ぐらいで今のルイズが止まるはずがない。
「……もう一度だけチャンスをあげるわ。わたしの二つ名を言ってみなさい」
ゆっくりと告げながら、弾を込めたショットガンのように杖の先端を額に押し付ける様は間違いなく恐ろしい。
流れる処刑用BGMはお好みで。胸像があればなお世紀末。
「なななな、なんと……」
「わたしは嘘が大っ嫌いなのよ〜〜〜〜〜!」
どもりながら何とか答えても、選択肢の中に答えなどはありはしない。
正解が用意されているだけ、まだジャギ様の方が救いがある。
パァン、と景気のいい音が鳴ると杖を押し付けられていた生徒の身体が崩れ落ちた。
肝っ玉の小ぇ野郎だ。ショック死しやがった。
……なんて事はなく、聞こえてきた音はキュルケがルイズの頭を軽くはたいた音。
「ほらほら、早く散らないと本当に消毒されちゃうわよー」
手を叩きながらキュルケがそう言うと、蜘蛛の子を散らしたかのように散っていく。
数秒もするとさっきまで生徒で溢れていた廊下は誰も居なくなっていた。その様は世紀末の荒野の如し。
「なにすんのよ!」
「あら、止めない方がよかったかしら?」
はたかれた事に対して怒鳴るも、さすがのルイズもそう言われるとぐぬぬ、としか言えなくなる。
とはいえ、トキィ既に遅し。
もうすっかりルイズの二つ名は固定化でもかけられたかのように南斗爆殺拳に固められてしまっている。
テンパってたとはいえ、自業自得である。
「……それもこれもあんたのせいなのになんで笑ってんの!どうすんのよこれから!南斗爆殺拳だなんて……!姉様や母様が知ったら何て言われるか!」
今まででさえ顔を見せればお説教を受けかねない状況だったのに、これが知れればただでは済まない。
怒りを声に出して吐き出した先には白いマントを靡かせた聖帝様が愉快そうに笑っていた。
「ふははは、気にする事はあるまい」
「するわよ!大体、あんた確か、南斗鳳凰拳っていうやつなのに、勝手に変なのにしないでよ!」
言葉の内には、爆殺拳なんて怪しいやつよりどうせならかっこ良さそうな鳳凰拳の方がよかった、という意味が含まれている。
とはいえ、ルイズが鳳凰拳の修行を百分の一でも体験すれば絶対に辞退するのは目に見えてはいるが。
当のサウザーはというと、ふむ、と小さく呟き少し考え、ルイズに何時もの人を見下したような笑みを向けた。
「正式に伝承者になるには南斗の里へ出向き聖司教の印可を受けねばならんが……ふっ、あの老害より、この俺が印可を与えてやる方が有難かろう。誰に憚る事なく南斗爆殺拳を伝承するがいい」
一子相伝という特殊性から鳳凰拳を除いて、南斗聖拳の伝承者は南斗の里へ赴き印可を受けねばならない。
そして聖帝正規軍に属する南斗聖拳は総派の半数というところで、南斗の実権はほぼサウザーが手中に収めていると言ってもいい。
「あー、そうね。そう言えば南斗の帝王だったわね。……って、ちょっと待ちなさいよ!」
「何だ」
「わたしがそれになるって事は、あんたの配下になるって事!?」
「ふむ、そうなるな」
事も無げにサウザーに短く返されるとルイズの頭に血が一気に上った。
力を貸すとか言ってたくせに、いつの間にか妙なのを伝承させられた上に配下にさせられていたのだから、ルイズが謀られたと思うのも無理は無い。
ただ、サウザーも単純に謀ったというわけでもなく、ルイズのあの力なら今のままでも南斗十人組み手の五人目ぐらいまでならいけると踏んでいるからである。
南斗聖拳の使い手もピンからキリで、正直あの里の男達は実力的にはそう大した事は無い。
六聖拳の一人がその気になれば里が壊滅する程度というところだ。
もちろん、そんな事はルイズの知ったこっちゃあないので持ち前の癇癪が爆発するまでには時間はかからなかった。
「そ、そそそ、そこに座りなさ〜〜〜い!」
平民はおろか、モヒカンでも何もしてないのに謝りそうな剣幕で怒鳴り杖を持った手を振り上げる。
今にも、何だぁその目はぁ!?とバスケ直行しそうな勢いだったが、その先に聖帝様のお姿は影も形も無い。
「〜〜〜〜〜〜っ!」
怒りの矛先と上げた腕を振り下ろす先が消えた事に言葉が出ず立ち竦んでいると、後ろから肩に手を置かれた。
「ねぇ、どんな気持ち?」
歯を食いしばりながらゆっくりと後へ振り向くと、手を置いたままのキュルケは笑いを堪えながらなんとも言えない微妙な口調で続けた。
「こんな事になって、今、どんな気持ち?」
「うっさいわね!!」
何故か骨が脆くなりそうな煽りに耐え切れずに突っかかるが、激流を制する静水のようにルイズは受け流されている。
妙なカツラを被ったコルベールが通りかかる頃には今にもルイズが掴みかからんばかりの状況だったが
アンリエッタ姫殿下が学院に行幸すると聞いて一瞬で頭に上っていた血が降りた。
もちろん、どこかに消えた聖帝様がなにかやらかさないかという意味で。
そのため、生徒が出迎えのために整列をしている最中も一人気が気ではなく、グリフォンに跨った羽帽子をかぶる貴族に気付く事は無かったという。
第九話『愛ゆえに』
それから数時間後。
すっかり暗くなって各々は自分の部屋に引き上げる頃合には、ルイズも自分の部屋のベッドに突っ伏していた。
支援!
支援じゃぁああ
「よ……よかった。姫様の身に何も起こらなくて……」
こんなに緊張したのは何時以来だろうかと、漠然とした思いで考えても答えは出ない。
なにしろ、相手は自分以外は貴族も人間も、恐らく亜人でさえ同列に見做している。
そう聞くだけなら問題は無いが、困った事にその同列というのが下郎や下僕という意味。
さらに、本人にそうさせるだけの実力があるのだから余計に性質が悪かった。
「こんなはずじゃなかったのになぁ……」
春の頃には立派な使い魔を召喚して、今まで自分をゼロと呼んできたやつらを見返してやるつもりだった。
それがどこで間違えたのか、呼び出された者は傲岸不遜を体現したかのような帝王。
見返す事には成功したけど、おかげで腫れ物にでも触るかのような扱いを受けるハメになってしまっている。
そんな風にしていると、ドアがノックされた。
規則正しく長めに二回、続けて短く三回ドア叩く音が聞こえる。
だが、しばらく経っても部屋のドアが開くことは無い。
ドアを叩く音を全部聞くことが出来れば這い蹲ってでもドアを開けただろうが、精神的な疲れから三回叩かれる前に夢の世界へと逃避してしまっていた。
そのルイズの部屋のドアの裏側の前には黒い頭巾をすっぽりと被った怪しい人影。
修羅の国のボロを彷彿とさせる姿形とは裏腹に、口から紡がれるのはどこか高貴さを持った少女のものだった。
「困ったわ……誰にも見つからないような来たのに……ルイズ、部屋にいないのかしら」
本人は見つからないようにとの配慮なのだろうが、怪しさ丸出しの姿でここまで誰にも気取られなかったのは奇跡にも近い。
辺りを見回して誰もいない事を確認した少女は、小さくため息を吐くと身に纏う漆黒のマントの隙間から杖を取り出す。
アン・ロックで部屋のドアの鍵を開けるという考えは少女の頭には無いらしく、廊下の窓へ身を乗り出すと短くレビテーションの呪文を唱えた。
ゆっくりと中庭へと降りると、巡回をしている衛兵に見つからないようにと茂みに隠れ、また、ため息を吐いた。
「ルイズ……どこに行ったんでしょう。……あら、あれは何かしら」
ふと、空を見上げてみると、部屋の一室の窓の光に映るように人影が入っていくのが見える。
「泥棒……?」
遠目に見てもフードをすっぽり被って全身を隠すようにしているのだから、ここの生徒でない事は一目で分かる。
人の事言えないナリをしている事はさておき、どうにもその人影が気になって落ち着かない。
もっとも、落ち着かない一番の理由は、一人では抱えきれない程の悩みを持っているからだが。
とにかく、こうして隠れているだけでは始まらない。
小さくフライの呪文を唱え、窓から部屋の中を伺う。
まず、少女の目を引いたのは部屋には似合わぬ豪奢な造りの玉座。
窓側とは背面になるため座っている者の顔は見えなかったが、傍らには先程見たフードを被った人物が傅いていた。
「…帝陛下。……アルビ…ンの貴族派が同志……るように…接………きました」
「ふふふふ……ご苦労。それで、連……状況と…的はど…した?」
「戦況…貴族派……利。王党…はニュー…ッスルま…追い……られています。
組織……境を…えた貴族……盟という名……に優秀なメ…ジを集……地奪還を謳っ……よ…です」
窓越しのため、よく聞き取れないところはあるものの、ところどころに少女が持つ悩みと合致する単語が届く。
「アルビオン……?それに王党派や貴族派って……」
途切れがちな言葉から推察するに部屋の中で交わされている話は、現在のアルビオンの情勢。
陛下と呼ばれている事から、玉座に座る人物はかなりの地位の人物という事も分かる。
そう自分なりに結論を出すと、小さいながらもよく通る声が聞こえてきた。
「……どうやら、ネズミが一匹入り込んできたか」
玉座に座る男が組んだ脚を解き、手にしたワイングラスをテーブルに置く。
魔法学院広しといえど、部屋の中に玉座などを持ち込むのは一人しかいない。
「自ら手を下されずとも、ここは」
フードを被った人物が懐中から杖を取り出すと、それを制するようにサウザーが立ち上がった。
「構わぬ。使えるようであれば捕らえておくのもよかろう」
人の気配はとうに感じていた。
捨て置くかとも思いはしたが、部屋の中を伺うような素振りをしていたので捕らえてみる事に決めた。
いつもと変わりなく、腕を下げたまま壁の前へと立つと深く呼吸をする。
それと同時に何かが潰れたような音が聞こえ、その音がした方向を見たフードの人物が息を飲んだ。
サウザーの足に接している部分の床がめり込むようにへこんでいるからだ。
突如、風を切るような音がすると、壁に穴が開いた。
分厚い壁にひとりでに穴が開くはずはない。
単純に、手刀を突き入れ、引き戻すという動作が見えなかっただけだ。
この純粋な力こそが南斗聖拳の真髄。
必殺の威力を持った無数の連弾が、南斗聖拳最強であるサウザーの手によって放たれた。
南斗鳳凰拳
『悠 翔 嶽』
巨大なゴーレムですらヒビ一つ入れる事ができなかった壁を容易に、そして大きな音も立てずに突き破る。
外部からの破壊。特に切り裂き、貫くという点では南斗聖拳の右に出る拳法は存在しない。
まして悠翔嶽は、あのラオウが放った北斗輯連打とも五分に打ち合える。
固定化が掛けられてはいるとはいえ、石の壁を突き破れぬ道理など無い。
最後の一撃。
手刀が石壁を突き破ると、中空に浮かんでいる人影の首筋を捕らえ掴んだ。
「ぅ……は、放し……ぁぁ……」
サウザーが掴む首はまるで小枝のようにか細い。
無数に穴を穿たれた壁が音をたてて崩れ去ると、首を掴んだまま引き寄せ頭巾を剥ぎ取った。
「ほう……薄汚いドブネズミかと思っていたが、迷い込んできたのは小鳥だったとはな」
頭巾の下は、すらりとした気品ある顔立ちに、薄いブルーの瞳、そして神々しいばかりの高貴さを放っている少女のもの。
並の男なら見惚れてしまう程の美少女だが、生憎とここに居るのは世紀末の体現。
世紀末での良い女というのは食料何日分で換算されてしまうのだから、サウザーにとっても少女の容姿は特に意味を成さない。
床に足を付けさせ、手の力を緩ると顎を手で持ち上げる。
薄笑いを浮かべ、値踏みするかのように少女の顔を眺めていると、この少女の正体はすぐに分かった。
「聖帝様。その者は、トリステイン王国のアンリエッタ王女にございます」
「ふっはははは。なるほど、こいつが噂に名高い飾り物の王女か」
――トリステインの王家には美貌はあっても杖が無い。杖を握るは枢機卿。灰色帽子の鳥の骨……
これは街で歌われている小唄だが、実によくトリステインの内情を表していた。
先帝が死んで以来、この国の内政は枢機卿であるマザリーニが取り仕切っている。
すなわち、今のトリステインの権力を握っているのは王家の人間ではなく、枢機卿であるという事だ。
「ふん」
一頻り眺めると、お飾りには興味が無いと言わんばかりにサウザーが手を離す。
今まで首を捕まれていたせいか、アンリエッタが床に崩れ落ちると手を付いて二、三回強く咳き込んだ。
「それではわたくしはこれで失礼いたします」
咳き込むアンリエッタをよそに、フードの人物が立ち上がり、サウザーがブチ破った壁へ向かう。
「ああ、よかろう。……一つ忠告しておくが、俺は一度でも裏切った者は決して許さぬ。もし裏切ればお前の命、無い物と思うがいい」
「……それは、十分分かっています」
表面こそ平静を装っている風だったが、注意深く観察すれば、顔は蒼白になり、その身体が震えている事が見て取れる。
世紀末の世を支配せんとした二人の王。
その野望を支えた拳王軍と聖帝軍。
聖帝軍は、正規軍に入れば水と食料には不自由しないという事もあったが、あの無法者達を軍団として纏め上げたのは、絶対的な力を持つ王への恐怖。
それだけに、命すら無いという言葉が、ただの脅しではない事がよく理解できていた。
サウザーのマントが、部屋に吹き込んできた冷たい夜の風で靡く。
その下では、ようやく息を落ち着かせたアンリエッタが見上げるようにサウザーを見ている。
「……何者ですか?トリステインでは見た事がある顔ではありません」
トリステインとゲルマニアの同盟を阻止しようとする、アルビオンの貴族の暗躍があるという事はマザリーニから聞いていた。
アルビオンから送り込まれた貴族。それとも、ガリアかロマリア、まさか同盟を結ぶゲルマニアかとアンリエッタは次々に考えを張り巡らせる。
そうすると、何故学院にこの男が玉座まで構えているのかと、嫌な疑問が過ぎった。
宮廷と一部の貴族の間で起こる不穏な動き。アルビオン貴族の手が魔法学院にまで伸びていたと考えざるを得ない。
考えすぎと、言われればそうだろうが、アンリエッタはそう思い込んでしまいそうになる程の不安材料を抱え込んでいるのだった。
何者かと問われたサウザーはワインを継ぎ足しながら、特に何の感情も込めずに言う。
「運が良かったな。もし、ユダが相手ならば、今頃は捕らえられているところだ」
「こ、答えなさい!アルビオンの反乱勢ですか!?さもなければ……」
「さもなければ、どうするというのだ?」
水晶が付いた杖を握ったアンリエッタを見ても、サウザーの表情は薄笑いを浮かべた余裕そのもの。
「ふっ……まぁいい」
サウザーが手にしたワイングラスを口元に運び赤い液体を飲み干すと、手にしたグラスを床へと叩きつける。
グラスが砕け、辺りにガラスの破片が飛び散ると同時にサウザーがようやく名乗りを上げた。
「俺は聖帝サウザー。南斗六星の……うん?」
ルイズに名乗った時と同じく、宣言するかのように名乗ろうとした最中に、こちらに向かってくる気配に気付いてそれを止める。
もうそろそろ来る頃だろうとは思っていたが、どうやら、部屋に向かっている人物は相当急いでいたらしい。
支援
寒くてキーが撃ち辛ぇww
ドン!と、派手な爆音が部屋に響くと部屋のドアが真ん中から折れたように吹き飛ぶ。
消し飛んだドアの向こうに見える人物は、アンリエッタが探していたルイズ・フランソワーズ、その人だった。
「くははは、思ったより早かったな」
「……ギーシュがアン・ロックまで使って起こしに来たから何事かと思ったけど、今回は最悪も最悪ね。姫殿下に手を出す事は絶対に許さないわよ!」
文字通りに部屋に飛び込んできたルイズがアンリエッタをかばう様にサウザーとの間に割って入る。
「姫殿下ーーーッ!お怪我はありませんかーーーッ!」
遅れて、大声を張り上げながらギーシュが部屋の中に飛び込んできた。
「たわば!」
相当慌てていたのか、足を引っ掛け、盛大に転び、止まった先はよりにもよって聖帝様のお膝元。
くだらない物でも見るかのような視線に晒されたギーシュは、聖帝様を刺した子供のように死を覚悟した。
「……ルイズ。ルイズ・フランソワーズ?」
「話は後です、姫様」
あまりの展開の速さについていけなくなり、きょとんとした表情のアンリエッタとは対照的に、ルイズの顔は緊張の極地というぐらい強張っている。
なにしろ相手が相手なだけに、身を犠牲にしてでもアンリエッタを逃がすとまで考えているぐらいだ。
当のサウザーは余計なオマケの登場は特にどうでもいいらしく、一瞥しただけで歩を進め玉座に座る。
組み脚に頬杖。完全に人を見下している何時ものポーズだ。
「俺は貴様のような飾りには興味が無い。とはいえ、飾りは飾りなりに役には立つがな」
自分の国の王女を公然と飾り呼ばわりされれば、怒りの一つや二つ簡単に沸きそうなものだが、今回ばかりは事情が異なる。
怒りより先に安堵の気持ちの方が先に来てしまって、ルイズとギーシュが同時に安堵の息を吐いたのは仕方の無い事だった。
「ルイズ、彼を知っているようですが何者ですか?先程、聖帝サウザーと名乗っていましたが……」
怪訝そうな顔でアンリエッタに問いかけられると、どこから話したものかと顔を曇らせたルイズが少し考え、憂鬱そうに口を開いた。
「それは……話せば長くなります」
「ああ!ルイズ!あなたとわたくしはお友達じゃないの!
もう、わたくしには心を許せるお友達はあなただけなのよ。昔馴染みのルイズ・フランソワーズ、隠し事なんてせずに全部話してちょうだい!」
「……分かりました」
「そう、ロバ・アルカイリエの……」
王女には刺激が強いため、暗殺拳というところは伏せられたが、ルイズが知っている事は一通りアンリエッタに説明した。
さすがに、使い魔の儀式で呼び出したという件は面食らった顔をしていたアンリエッタではあるが
ルイズの話を聞くにつれ、次第に落ち着きを取り戻し、今に至る。
ハルケギニアの政治情勢とは関係の無いロバ・アルカイリエから呼ばれたというところが一番良かったのかもしれない。
「ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」
ルイズに向けそう言うと、今度は玉座に座るサウザーの前へと進み、一礼をした。
「先程は失礼を致しました。ご存知とは思いますが、わたくしトリステイン王国王女アンリエッタ・ド・トリステインと申します」
サウザーが南斗の帝王と知っても、淀みなくそういった言葉が出てくるのはさすがに王族というところだ。
「いけません!姫様!そんな、姫様に乱暴を働いたやつに頭を下げるなんて!」
「いいのですよ。この方の部屋を覗き見したわたくしが悪いのですから」
「姫様がそうおっしゃるのなら……」
渋々という風体でルイズが引き下がると、そもそも何故、アンリエッタがこんな夜分に寮塔を訪れたのかと疑問が浮かんだ。
「姫様。わたしに何かご用があったのではありませんか?」
「いえ、なんでもないわ。あなたの顔が見たくなっただけよ……。気にしないで、ね」
ため息を吐きながら、暗い調子で言うという事は、何か悩みがあると言っているようなものだ。
誰にも言えない悩みを持っている人間というのは、得てして誰かに悩みを聞いてもらいたいと思っている事が多い。
「おっしゃって下さい。あんなに明るかった姫様が、そんな風にため息を付くって事は、何かとんでもないお悩みがおありなのでしょう?」
それを察したのか、熱っぽい調子でルイズがせき立てる。
どうやら、この二人はただの知り合いというわけではないらしい。
「いけません!昔はなんでも話し合った仲じゃありませんか!お召し物を汚してしまって
侍従のラ・ポルト様に叱られても、姫様はわたしをお友達と呼んで下さいました!そのお友達に悩みを話せないのですか?」
「わたくしをお友達と呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」
ルイズの言葉にアンリエッタが微笑むと、決心したかのように頷くと、語り始めた。
「今から話すことは、誰にも話してはなりません」
そう言われ、ルイズがサウザーを見たが、頬杖を付いたまま続けろと言わんばかりの態度だったので見ただけで諦めた。
「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」
「ゲルマニアですって!?あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
「そ、そんな……姫殿下がゲルマニアの皇帝と……」
物悲しい調子でアンリエッタが語り始めると、ゲルマニアが嫌いなルイズは嫌悪感を含んだ声で叫び
アンリエッタに惚れているギーシュが絶望の淵に立たされたような表情になって床に崩れ落ちる。
それとは対照的に、サウザーは特に感じ入った様子も無く、淡々と告げた。
「何を驚く事がある。強い者が心置きなく好きな物を手に入れられる。いい時代ではないか」
「……あんたのとこではどうか知らないけど、いちいち話の腰を折らないでくれる?」
力こそ正義の体現者だけに、その言葉には千金の重みがあったが、ルイズはなるべく関わらない事に決めた。
毎日毎日、嫌という程に力の差を見せ付けられているのだから、触らないようにするのが一番だ。
頭を抱えたくなる衝動を我慢してアンリエッタの話を聞くと、ルイズとギーシュにも今のトリステインとアルビオンが置かれている状況が理解できてきた。
アルビオンの貴族が、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでおらず、婚姻を妨げる材料を血眼になって探している事や
宮廷と一部の貴族の間で不穏な動きがあり、信頼出来る相手が居らずここに来た事も。
「……つまり、姫殿下の婚姻を妨げる材料のようなものがあるという事ですか?」
事の重大さにギーシュが顔を青白くさせて恐る恐る尋ねると、アンリエッタは悲しそうに頷き、顔を両手で覆うと床に崩れ落ちた。
程よく興奮した様子のルイズとギーシュをよそに、サウザーは、まるで見世物でも見るかのような笑みを携えて、それを眺めている。
トリステンの内情や、アルビオンの戦況などは全て把握している。
なんといったか、アルビオンの貴族派の組織は、国境を問わずに地位、血筋、家柄を問わずに優秀なメイジを集め戦争をしている。
綺麗だ汚いだの言っているようでは、なりふり構わない相手に敗れるのは、サウザーに言わせて見れば、当然の事である。
同盟を妨げる材料は、アンリエッタがアルビオン王家の皇太子であるウェールズにしたためた手紙であるらしいが
ここはアンリエッタの芝居がかった仕草と、それに同調するルイズとギーシュの芝居を楽しむことにした。
「姫様!このルイズ、いつまでも姫様のお友達であり、まったき理解者でございます!永久に誓った忠誠を、忘れる事などありましょうか!」
「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンにもお命じ下さい!」
「ああ、忠誠。これが誠の友情と忠誠です!感激しました。忘れられてた貴族の忠誠と、あなた達の友情を一生忘れません!ルイズ・フランソワーズ!」
どうやら、話が終わったようで、三人とも感極まっている。
本当にこれが劇場で行われる芝居ならば、幕が降り拍手喝采というとこだろうが、ただ一人の観客からは、静かな、それでいてよく通る含み笑いが送られた。
「ふふふ……ただの飾りかと思っていたが、なかなかやるではないか」
「……どういう意味よ」
「俺が貴様に言った、木に実った果実をどうするかという答え。まだ覚えているか?」
あの日、大食堂でサウザーが語った帝王学。
そんな事には興味が無かったので今の今まで忘れていた事を思い出そうとすると、ルイズにもサウザーが言わんとしている事が理解できてきた。
「……果実を取るのは王の仕事じゃない。つまりなに?この場合、果実が手紙って事?」
「その通りだ。口では友だと言いながら、その友を死地へと送り込む。並の者ではこうはいかぬ。ふっはははは」
手を前に翳し、嘲笑混じりの笑みを浮かべながらサウザーが笑う。
嘲笑混じりというが、サウザーはアンリエッタを貶めているつもりはこれっぽっちも無い。
むしろ、褒めているぐらなのだが、これが素である。
それを受けてアンリエッタは、さっきまでの芝居がかった仕草とは違い、全身から力が抜け落ちたような感覚に襲われ床に崩れ落ちた。
「ひ、姫様!」
ルイズが駆け寄って、アンリエッタを抱き起こすと、サウザーに向け思いっきり怒鳴った。
「あ、あんたねぇ!言っていい事と悪い事ぐらい分かりなさいよ!それに、わたしは姫様のお友達でもあり、ヴァリエール公爵家の三女!姫様とトリステインの危機を見過ごすわけないじゃないの!!」
「何を勘違いしている。ただの飾りではないと評価を改めてやったのだ」
「……もういいわ。ギーシュ、話の続きはわたしの部屋でするわよ」
悪びれる様子もなく見下しながら返すサウザーにルイズも、もう話しても無駄だと悟った。
「姫様、大丈夫ですか?」
ルイズが、アンリエッタを支え起こすと、よろけながら立ち上がった。
その顔は病人のように暗く重い。
先にギーシュが部屋から出て行き、次いでルイズがアンリエッタを連れ出そうとすると、アンリエッタの歩みが止まった。
「……姫様?どうかなさいました?」
心配そうにルイズが声をかけると、アンリエッタは俯いたまま、ぽつりと小さく呟いた。
「……ルイズ、先に行ってください。後から必ずわたくしも参ります」
先に行ってと言われ、ルイズは悩んだ。
一人で戻るということは、サウザーとアンリエッタを二人にするという事で、危険極まりない。
「姫様に指一本でも触れたらただじゃ済まさないわよ」
それでもアンリエッタの意に反するわけにもいかず、結局は、押し切られる形でルイズが退いた。
支援
部屋からルイズが離れていくのを見ると、アンリエッタが玉座に座るサウザーの前に立つ。
「どうした。まさか、この俺に聞きたい事でもあるというのか?」
「……その通りです。貴方はロバ・アルカイリエから来た帝王と聞きましたが、それなら教えてください。
国を憂いても、わたくしは、自分の気持ちに嘘を付く事ができません……。わたくしはウェールズ皇太子を愛しています。
今にも、あの方は殺されてしまうかもしれません。出来る事なら、トリステインに亡命して欲しい。でも……その事を伝えるためにルイズが死んでしまうかもしれない。わたくしはどうすればいいのでしょうか!」
アンリエッタが涙を浮かべながら、先ほどの芝居がかった台詞や仕草とは違う、本心を吐き出す。
トリステインには全く関わりの無いサウザーにだからこそ言えたのだろう。
それを聞いて、サウザーは短く、そして、なんの感情も込めずに答えた。
「帝王に愛も情けもいらぬ」
サウザーが言う意味合いとは違うが、政治に情けが入り込む余地が無いという事は、微妙な状況に置かれているアンリエッタにも分かる。
国を統べる者が私情を挟んではならない。
政治に情が入り込めば国が滅ぶ。
将来起こりうるであろう、アルビオンの侵攻に対抗するために行う、ゲルマニア皇帝との政略結婚の道具としての立場。
それはアンリエッタにも分かっていた。
いや、分かっていたつもりだった。
たった一つの言葉を聞けないまま、永遠の別れになってしまうなど、王女以前に恋に落ちた一七の少女には絶えられない事なのだ。
「わたくしには、あの方への想いを捨てる事など……とても……」
愛を捨てる事もできず、愛の為に自分では戦う事もできない己の無力さにアンリエッタが泣いた。
「どこまでも愛を引き摺っていくつもりか。まぁ、それもよかろう」
齢十五で愛と情けを捨て去った帝王は、ただの少女が泣き止むまで、黙ってそれを退屈そうに眺めていた。
投下終了!
Q:ねぇどんな気持ち?筆が遅いのってどんな気持ち?
A:く……悔しいです!(ビクンビクン
ルイズにもし、よく出来た妹がいたら、ジャギ様みたいになってんだろうかとか
四巻のアンアンの暴走は、愛などいらぬ!って感じで聖帝様と同じとこがあるなとか考えてみたり。
世紀乙
乙でしたー!!
聖帝乙!
サウザーが相変わらず最高だ
>帝王に愛も情けもいらぬ
これほど人の上に立つ者としての心構えとして分かりやすい言葉があるだろうか?いや(ry
まあ呼ばれたのがケンちゃんでも、言い方は柔らかいだろうが似たような事言ってただろうな
聖帝の方、乙でした。
うーむ、ギャグとシリアスの緩急が上手いですね。
でも世紀末ワールドの住人ということで受け入れられてしまうから不思議です。
それにしてもアンリエッタが真面目だ、ウチのと違って……ww
それでは、23:00から投下を行います。
ちなみに今回の話は書いてる途中であまりにも長くなりすぎてしまったので、もうギーシュパートだけを一話分として投下することにしました。
なお話の中でかなり無理があると言うか、見る人が見れば『コイツ馬鹿じゃねぇの』的なツッコミどころ満載な作りになっておりますのが、どうかその辺りはご容赦を。
>>163 なんてこったい。
いや、まあ、ここはアレです、スパロボでお馴染みのパラレルワールドってことでどうにかしましょう……うん。
スパロボだって、広い意味で見りゃシリーズが違えばみんなパラレルですし。
……つーか、EXCEEDにアルフィミィとアクセルが出るとは予想外でしたなぁ……。
前回のあらすじ。
おマチさんの故郷に攻め込んだギーシュたちの前にアインストが現れたよ。
ケンちゃん「オナラは万国共通のギャグだと思ってる」
パラレルワールドが存在するなら
俺とアルフィミィが結婚してる世界線もどこかにあるはずなんだ
俺はそんな世界線を夢見ならラスボスの人の支援をするんだ・・・
パラレルワールド「寝言は寝て言え」
エレ姉さまがでないと知ってがっかりするのも私だ
襲い掛かってくる『アインスト』に対して、ニコラの判断は素早かった。
「第一小隊! てえーーーーーーーーっ!!」
号令がかかるや否や、銃兵たちは一斉に怪物たちへと火縄銃を撃ち込んでいく。
しかし……。
「き、効いてない!?」
「……いや、まるっきり効いてないんじゃなく、効き目が薄いんです!」
骨のアインストにはヒビが入ったり、ツタのアインストの触手は千切れかけていたり……と各種類ごとにダメージに多少の差はあるようで、中には銃撃を受けて動きを止めた個体もいる。
だが大部分は銃撃をものともせずに直進し、グラモン中隊へと襲い掛かった。
「うわぁぁああっ!?」
先頭にいるためにアインストの脅威に真っ先にさらされることになるギーシュ。
ハッと横を見てみれば、頼るべき副官はいち早く退避(と言っても数歩分に過ぎないが)していた。
(なんて薄情な!)
……と思ったが、仕方のない判断かも知れないとすぐに思い直す。
役に立ってるんだか立ってないんだかよく分からない貴族の坊ちゃんを庇って、もし死にでもしたら、この150人からなる中隊をマトモに指揮する人間がいなくなってしまうのだ。
―――「最悪のケースは『上官が無能だった場合』だな」―――
ユーゼスもそんなことを言っていた。
何でも、部下が無能な場合は頭をひねればどうにかなることがあるが、上官が無能な場合は逆らうことも下手に出来ないので無駄死にする可能性が高くなるとか何とか。
つまりこの戦場においてはギーシュよりもニコラの方が価値が高いということである。
(うぅ……)
ギーシュも薄々とそれに感付いてはいたが、こうズバリと事実を突きつけられればさすがに落ち込んでくる。
……そうしている間にも『骨』のアインストは腕の先についている黄色い爪を巨大化させ、今まさにギーシュを引き裂き……。
「ぐ……く、くそぉおおっ!!」
(こうなったら、破れかぶれだぁー!!)
ギーシュはヤケクソ気味にバラを振って、花びらを五枚ほど宙に舞わせた。
その花びらは一瞬で青銅製の戦乙女へと変化し、まっすぐに異形の白骨へと向かっていく。
「―――ワルキューレぇぇええええっっ!!!」
槍や剣、斧などの武器を持つものや、徒手空拳の青銅ゴーレムが束になって一体の『骨』のアインストとぶつかり合った。
ゴガン、ガキ、めきょ、という音があたりに響く。
「う、うわ……」
激突の結果を見て、ギーシュは思わずうめき声をあげた。
……おそらくあのアインストとやらと自分が扱う青銅とでは、硬度や強度が根本から違うのだろう。
それなりに重装甲になるように作ったはずなのに、ギーシュのワルキューレは『骨』の爪によって紙細工のように軽々と破壊されていた。
まさに『切り裂かれた』という言葉がふさわしい。
ギーシュの知っているどんな幻獣の爪で攻撃されようとも、ここまでにはなるまい。
あの爪にかかれば人間など、かすっただけでも手足の一本は持って行かれそうだ。
直撃したら確実に命はないだろう。
「……っ」
ギーシュはワルキューレを破壊した異形の怪物の一撃に強い戦慄を覚え、そして、
「ど、どうだ……!?」
その攻撃に晒されずに済んだ『残り四体のワルキューレ』の攻撃の結果を見極めるべく、目を凝らした。
『グゥ、ァアアア……!』
異形の怪物と言えど、その身体の構造自体は人間とそれほどかけ離れているわけではない。
少なくともこの『骨』に関しては、上半身と下半身の区別は何となくつくし、腕と脚は二本ずつ、ちゃんと歩行もすれば頭部もある。
……変にトゲトゲしくて尻尾までついているが、そこは目をつぶるとして。
ともあれ主な攻撃手段と思しき『腕の先の爪』も、結局は右腕と左腕の二つしかない。
つまりどんなに頑張っても、一度に攻撃が出来るのは二体までが限度のはず。
「……………」
まあギーシュも一瞬でそこまで考えてワルキューレ五体がかりで仕掛けたわけではないのだが、いずれにせよ結果だけ見ればベターな判断だったと言えるだろう。
なお、その『残り四体のワルキューレ』の攻撃の結果はと言うと。
まず剣を持ったワルキューレが『骨』の頭部に切り込んでいたが、これは多少頭部を欠けさせただけで終わっていた。
次に斧を持ったワルキューレはちょうど肩口の『骨の継ぎ目』のあたりに刃を食い込ませつつも、しかしわずかにヒビを走らせるだけの結果に留まっている。
続いて徒手空拳のワルキューレがギーシュ最大の攻撃力を誇る『ディスタント・クラッシャー』を放ち、胸の骨盤にマトモに当てていたが、ほんの少し骨盤が割れるだけで逆に仕掛けたワルキューレの手がひしゃげる始末。
最後のワルキューレはその手に持った槍で、
「お……おお?」
『骨』、『ツタ』、『鎧』、『魚』の四種類全てのアインストに共通している部位……腹部の赤い光球を刺し貫いていた。
『グ、ガ……ァァ、……ァ……』
パラパラパラ、とその身体を灰化させていく『骨』のアインスト。
そしてワルキューレが光球から槍を引き抜くと、『骨』は全身を完全に灰化させてザラザラと崩れていった。
「や、やったのか……?」
ギーシュはおっかなびっくりと言った様子でワルキューレを操作し、その武器を使ってアインストの残骸である灰を突つかせる。
「……………」
何も起こらない。
どうやら本当に倒したようだ。
(……やった!)
ギーシュの心に達成感や喜びが湧き上がってきた。
正体はよく分からないが、とにかくこの謎の怪物を自分一人でやっつけたのである。
(やった、やった、やったぁ!!)
今の結果からすると、ワルキューレが貫いたあの赤い光球は弱点だったらしい。
そう言えば最初の射撃で動きを止めた一部のアインストも、腹部の光球に銃弾を受けていたような気がする。
偶然とは言え、それを的確に突いて敵を仕留めるとは……。
(やった! やれた! やってやったぞぉぉ!!)
そう、自分はやれば出来る子なのだ。普段はやらないだけで。
自分が成したこの成果を目にして、後方にいる部下たちもさぞかし勇気づけられたことだろう。
「中隊長殿、中隊長殿ー!!」
「おお、何だいニコラ君?」
副官が声を張り上げて、必死に自分を呼んでいる。
はっはっは、そんな賞賛や喝采を受けるほどじゃないよ。
さあ、君は安心して部隊の指揮をしてくれたまえ。
……そうしてギーシュは副官および自分が率いる中隊員たちに向かって手でも振ろうとして、
「早く! 早くこっちに逃げてきてくださいー!!」
「え?」
あまりにもニコラが一生懸命に叫んでいるものだから『何かあるのかな』と周りを見渡し、
「―――って、うわぁぁああああ!!?」
自分のすぐ後方にまで迫っていた大量のアインストの群れに、ようやく気付くのだった。
「う……っ、う、うぉっ、うぉぉおおぉおおおぉぉぉおおおおぉおっっ!!!!」
全力疾走で一目散に逃げ出すギーシュ。
せめてもの盾になってくれれば、と残っていた四体のワルキューレを自分とアインストとの間に配置するが、ハッキリ言って何の慰めにもならないことは他でもないギーシュ自身が一番よく分かっていた。
『グゥゥゥウウ……!』
『骨』のアインストの何体かがうなりをあげ、それと同時に彼らの頭と肩についている黄色いツノのような突起物が光を放つ。
そしてその突起物自体が意思を持っているかのようにブルリと震えたかと思うと、黄色い突起物は『骨』のアインストから分離してギーシュに襲い掛かった。
「げぇええっ!?」
仰天するギーシュ。
ここに来て飛び道具というか、遠距離攻撃を使ってくるなんて。
しかも一発や二発ならまだいいが、肩やら頭やらに『いくつかある』ツノみたいなものから、更に『何体かが』その攻撃を使ってきた。
「うわわわわわわわわわぁっ!!?」
十個前後の黄色い脅威がギーシュへと向かう。
一応ワルキューレ四体を使ってその『ツノを飛ばす攻撃』を防げないものかと抵抗してはみたが、ある意味で予想通りにバリバリッとワルキューレは砕け散ってしまった。
何ともまあ、ものの見事な全滅である。
取りあえずギーシュに向かってくるスピードがいくらか鈍りはしたが、全滅は全滅だ。
「ぐぐぐっ……!」
悔しさや悲しさを感じる暇もありはしない。
(そんな攻撃、さっきは使わなかったじゃないかぁぁ!!!)
迫り来る危機に対して、心の中で精一杯の文句を叫ぶギーシュ。
……実はズルいどころか最初の段階でこの攻撃を使われていたら確実にギーシュは殺されていたのだが、そんな幸運に感謝する余裕もなかった。
今のギーシュにあるのは、ただ『逃げる』という一念のみだ。
(で、でも……逃げるったって、もう……!)
たとえギーシュが人生最高の脚力を発揮してこの場を駆け抜けようと、すぐ後ろまで迫った飛来物は容赦なくギーシュに追いつくだろう。
人間の最高速度ではどんなに頑張っても、あの飛来物と競争して勝つことは出来まい。
つまり、ギーシュは逃げられない。
(に、逃げられない……?)
―――「……他のメイジはともかく、お前ならば割とスムーズに逃げられるだろうな」―――
―――「はあ? 何でそうなるんだね」―――
―――「『何でそうなる』は私のセリフだ。お前は自分の手持ちの戦力を忘れているぞ」―――
―――「手持ちの戦力、って……」―――
「……っ!!」
ユーゼス・ゴッツォによる『戦場に出る前の軽いレクチャー』での一つのやり取りが、瞬間的に思い起こされる。
今の状況で、ギーシュはこの攻撃から逃げることが出来ない。
そう、“ギーシュ一人だけでは”この攻撃から逃げることは出来ない。
そして“手持ちの戦力”。
「ああっ、クソッ!!」
もうこうなったらイチかバチかだ。
どうせこれが失敗すれば死ぬのである。
だったら、自分が誰よりも信頼している『彼』に任せよう。
「ぬぉぁぁあああっっ!!!」
ギーシュは全力疾走しながら、一瞬だけ不規則なリズムで足踏みをする。
ダダンッ、ダンッ。
いきなり突飛な動きをさせたせいで脚の筋肉にかなり負担がかかったが、命には代えられない。
そしてギーシュが更なる一歩を踏み出そうとすると同時に、その踏み締める予定の石畳にビキリと亀裂が走り、
「う……おっ!?」
そのヒビの入った石畳に足を置いた途端、石畳とその下の地面は崩壊し、ギーシュの身体はアルビオンの大地へと消えていったのだった。
地中ユニットは攻撃されないからなw
聖帝乙!
そして久々のラスボスに惜しみない支援を!
そんなことはない!私は召喚スレでコーディネイターの支援の虎と戦っていたんだぞ!
唖然としたのは、その光景を最初から最後まで見ていた副官のニコラやグラモン中隊の面々である。
―――中隊長を置いて逃げてしまったのは、さすがに申し訳ないとは思った。
だが、隊長1人が取りあえず生き延びることと隊員150人が浮き足立ってやられてしまう危険とを天秤にかけてしまえば、どうしても後者を選ばざるを得なかった。
若い者が死ぬ場面など見たいわけはない。
それでも、戦場においてこういう判断が出来る人間は必要なのである。
そのようにして覚悟を決めていたニコラだったが、結果としてギーシュは一体のアインストを打ち破った。
これは色々な意味で幸運だ。
アインストを倒せたギーシュはもちろん幸運だし、アインストの弱点があの光球だと知ることの出来たニコラも幸運と言っていい。
どんな人知を超えたバケモノだろうと、明確な弱点さえ判明してしまえば攻略法が見えてくるものなのだ。
……だと思ったら、今度はギーシュが一目散にこっちに逃げてきて、ついでにアインストも引き連れて来た。
まあ、これは仕方ない。
誰だって死にたくはないし、あんなバケモノと正面きって戦うのはあの少年には荷が重過ぎる。
それにどの道、奴らへの対処はしなければならなかったのだから、それが早いか遅いかだけの違いだ。
ニコラは逃げ惑う中隊長を援護すべく小隊に銃を構えさせていたが、迫るアインスト、走るギーシュ、待ち構える自分たちという位置関係である以上、下手に銃を撃ったらギーシュに当たってしまう可能性があったため、迂闊に援護も出来なかった。
そして『骨』のアインストが飛び道具を使い……。
(これは死んだな、あの坊ちゃん)
と、その時のニコラは本気で思った。
ギーシュも頑張って走ってはいるが、頑張ろうが何をしようが無理なものは無理だ。
ニコラは諦めと悔しさと冷静さと怒りを内心でごちゃ混ぜにしながら、中隊長が倒れた時を見計らって号令を下そうとして、次の瞬間。
その中隊長の姿が消えた。
「……!!??」
そう、『死んだ』とか『バラバラに引き裂かれた』とかではなく、『消えた』のだ。
まるで地面に吸い込まれるように……と言うか地面の中に落ちていくように見えたが、一体どういうことなのだろう。
……と、悠長に中隊長の安否を考えている場合ではない、とニコラの中の非情な部分が警告を発する。
今の自分の仕事は、あくまでこの正体不明の怪物への対処だ。
不可解な現象の分析など、事態が落ち着いてから専門家のメイジにでも任せればいい。
ニコラは敵の放った『ツノ』がギーシュのいた空間を通り過ぎ、地面に突き刺さったり見当違いの方向に飛んで行ったのを確認する。
どうやらあの『ツノを飛ばす攻撃』は有効射程がそれほど長いわけではないようだ。
そうしてひとまずの安全を認めたニコラは、銃兵たちに指示を飛ばした。
「第二小隊! 敵の腹にある赤い玉を狙え!! ……てえーーーーーーーーっ!!」
30人の銃兵が、接近しつつあるアインストの弱点に銃弾を叩き込む。
『グッ、ゴッ、ォオ……オォォォ……!』
さすがに30発全てが光球に命中はしなかったが、それでも前面に出ていた『骨』のアインスト数体が灰となって崩壊していく。
「……よし」
この要領で行けば、あの怪物たちも何とかなるはず。
能力や特徴などが判明しているのがまだ『骨』の一種類だけだというのが少し気にかかりはするが、これは手探りでやっていくしかないだろう。
あるいは自分たちと同様にアインストに対処しているアルビオン軍の様子を観察する、というのも一つの手だ。
とは言え、その方法を取るためには『安全に身を隠せる場所』が必要であり、アインストがそこかしこに跳梁跋扈している今のシティオブサウスゴータでそんな場所を見つけるのは困難と言える。
さてどうしたものか……とニコラは頭をひねりつつ、取りあえず各小隊にいつでも銃が撃てるよう準備させた。
その時。
ボコッ!
いきなり自分のすぐ隣の地面が、石畳ごと盛り上がる。
「うぉっ!?」
その石畳と土を掻き分けて……。
「…………あー、死ぬかと思った」
「モグモグ」
先程いきなり消えたはずの中隊長ギーシュ・ド・グラモンが、その使い魔のジャイアントモールと共に姿を現した。
パッパッと髪や服についた土を払いながら、ギーシュは穴から這い出る。
そして穴の中からひょっこりと顔を出しているモグラを抱きしめると、感激した様子でそのモグラに話しかけた。
「ああ、ヴェルダンデ! 今日ほど君が僕の使い魔でよかったと思う日はないよ!! あれほど的確に主人の意図を読んで、しかも迅速に救出してくれる使い魔が君の他にいるだろうか!? いや、いるわけがない!! 君は最高だぁ!!!」
「モグ!」
ひしっと抱き合う主人と使い魔。
モグラと熱い抱擁を交わす少年、という絵面はなかなかに『来る』ものがあるが、しかし引いている場合ではない。
「……中隊長殿。取りあえず状況説明をお願いしたいんですが」
やや放心気味のニコラがギーシュにそう言うと、ギーシュはフフンと得意げな様子で自分が取った行動について説明する。
「なあに、窮地に陥った僕はとっさの判断でヴェルダンデに穴を掘ってもらい、地下に避難。そのまま地面を掘り進んで君の隣へと進んだ……と、まあこういうワケさ」
キザったらしく髪をかき上げるギーシュと、そのすぐ横で同じような仕草をするヴェルダンデ。
「はあ」
副官としては、何と言うか呆気に取られるしかなかった。
生きていてくれたことは嬉しいのだが、ピンチになったかと思ったら助かってそれから更にまた死にそうになったり……と、この少年は見ていて心臓に悪すぎる。
これがいわゆる『悪運が強い』というやつだろうか。
「……まあ、ともかく」
生きてて良かったと心の底から喜ぶのは、この戦場を切り抜けてからの話である。
今はそれよりもアインストだ。
「……………」
ニコラはアゴに手を当ててヴェルダンデを見つめた後、ギーシュに質問した。
「中隊長殿、そのモグラはどのくらい土を掘れるんですかい?」
「え? どのくらい、って言うと……」
「掘り進む速度とか、掘り続けられる体力はどれくらいとか、そう言うのです」
「おお、聞きたいのかね!」
するとギーシュは得意げに自分の使い魔の能力を語り始める。
「まず速度についてだが、これは自信がある! 何せ、人を乗せた馬が走るのとそう変わらない速度を出せたりするからな! まあ、さすがに全力で飛ばされたら遅れるけど!」
「モグモグ」
「ほう……」
「体力についても問題なしだ! やったことはないが、多分やろうと思えば50リーグくらいはぶっ通しで軽く掘り進められるはずさ!」
「モグ!」
「なるほど」
「更に地面を掘ることももちろんだが、ヴェルダンデの最大の能力はその鼻でね。貴重な鉱石や宝石なんかを僕のために見つけてきてくれるのさ! 何たってユーゼスにも『優秀だな』って言われるほどの―――」
「ああ、いや、取りあえずその辺で」
この調子でいくと永遠に喋り続けそうだったので、ニコラはギーシュの話をやや強引に止める。
取りあえず聞きたい情報は得ることが出来た。
あとは……。
「中隊長殿、お願いがあるんですが」
「何だい」
「そのモグラで、地面を掘り返してもらえませんかね?」
「は?」
間抜けな声を出してしまうギーシュ。
「ええと……『逃げるために地下に通路を掘る』とかじゃなくて、『地面を掘り返せ』と?」
「その通りでさ。まあ逃げるんだったらその時もお願いするとは思いますが、今は取りあえず……こう、格子って言いますか……ハシゴみたいにして、地面にタテとヨコのミゾを作ってください」
「……もしかして『壕を作れ』って言ってるのか?」
「理解が早いですな」
「……………」
ニコラの要求にギーシュは困惑した。
確かに身を隠す場所は必要だとは思うが、何も壕を作る必要まであるのか。
……まあ、素人に毛が生えた程度の軍事知識と経験しかない自分よりは、ニコラの方が数十倍は信用出来るのだけれども。
精神コマンド「隠れ身」支援
それ以前の問題として、
「…………こんな街のど真ん中に、そんなデコボコした壕なんて作っちゃっていいのかなぁ」
壕を作るということは、石畳を引っぺがすなり壊すなりして地面を掘り返すということである。
いずれ自分たちの拠点として使うつもりの街に、そんなことしてしまっていいんだろうか。
「あとでお偉いさん怒られるのと、今の危険を少しでも回避するのと、どっちがいいかって話ですよ。……ところでやるんなら早くお願いします。こうして話をしてるのも、実は結構ギリギリなんで」
「えっ?」
ニコラが指差した先を見ると、三つある鉄砲小隊が迫り来るアインストに向かってそれぞれ交代で銃撃を行い、その侵攻を辛うじて食い止めている光景が広がっていた。
今の所こちらに向かってきているのは『骨』と『鎧』の二種類だけ。
だが、もしアルビオン軍と交戦している『ツタ』や『魚』が加われば……。
(……!!)
青銅製の自分のワルキューレですら、アッサリとバラバラにされてしまったアインストだ。
それよりも脆弱な人間の身体など、砂の城を崩すようにして壊してしまうに違いない。
「わ、分かった。壕を掘ろう!」
「お願いします」
そうしてギーシュはまずバラの造花を振り、ヴェルダンデの負担を減らすために街道の石畳に向かって『錬金』をかけ、石を砂に変える。
「イル・アース・デル!」
『石』はそもそもの成り立ちが『砂』や『泥』や『粘土』が固まって出来たものなので、材質的にはかなり近い。単なる形状変化と表現してもあながち間違いではないだろう(『石』という物質について細かく定義するとまた異なってくるが)。
よって『錬金』の難易度も相当低い。
……しかし150人が収容出来るほどの面積分の石畳に『錬金』をかけるのは、既にワルキューレ五体分の精神力を消費していたギーシュには骨だった。
「くっ……」
ほとんど限界ギリギリまで精神力を使って、ギーシュの目に映る内、六割ほどの石畳は砂と化す。
あとは、
「ヴェルダンデ、後は頼んだ!!」
「モグッ!」
ズドドドド、と物凄い勢いで土を掻き分け、地面を掘り進んでいくヴェルダンデ。
ヴェルダンデはまず街道の左右の端にそれぞれ土の通路を作り、次にその左右の土の通路を繋げる通路を橋を渡すようにしていくつも作り上げた。
途中、何度か地中にある『赤紫色の結晶』に引っ掛かりはしたものの、作業を遂行することにはさして問題はなかったようである。
そしてシティオブサウスゴータの街道はあっという間にハシゴ状の壕と化し、その壕の中にはグラモン中隊の面々が入り込んでいく。
と、そこでギーシュがニコラに質問した。
「ところで軍曹、どうしてハシゴ状なんだ? 一気に大きいものを作ればいいと思うんだけど」
「さすがに地面を丸ごと全部ひっくり返すってワケにはいきませんからね。しかしウチの中隊は人数が150人もいることですし、そう簡単に全員を収容は出来ない。だったら何列も作りゃあいいんじゃないか……と考えまして。
何列もありますから、時間差の一斉射とかも可能でしょうしね」
「なるほど……」
「それに両脇に通路もありますし、イザとなったらここから後方へ退避も出来ます」
「ふぅむ」
あのバケモノどもを相手にどこまで通用するのかは分からないが、なかなか考えられている。
まあ何にせよ今のところは壕の中に身を隠し、こちらに来るアインストを迎撃しながら、アルビオン軍とアインストとの戦いの様子を観察しなくてはならない。
『アインスト』という名称を付けていたことからして、どうも連中との戦いのキャリアはアルビオン軍に分があるようだ。
よって、その対処法も少しは確立されているはず。
というわけでギーシュはニコラと一緒に壕の中からひょいっと顔を出してアルビオン軍とアインストとの戦いを観察し、得た情報をまとめていった。
まず『鎧』は飛び道具の類は全く持ち合わせていないようで、攻撃手段は体当たりと、近付いて殴ることと、あとは……。
「……か、身体がバラバラになってオーク鬼に襲いかかっていったぞ」
「そうなったせいで弱点の『赤い光球』も露出してますけどね」
何とも捨て身な攻撃手段だ。
だがバラバラになった鎧が再結合し、その再結合に強引に巻き込まれる形で押し潰されたオーク鬼も悲惨だった。
圧殺と言うか、轢殺と言うか。
とにかく自分だったら絶対に嫌な殺され方だ。
あのタイトルですが、結構前にネタ振ったら黙認もらった覚えが。支援。
「次は『ツタ』か」
こいつはその見た目とアダ名どおりにツタを伸ばして敵に打ちつけ、甲冑のような殻のスキマから結構な威力の光線を放出していた。
その威力の程はと言うと、
「うっ、光線を受けたオグル鬼がバラバラになってる……」
「ふぅむ。確かにあの光線は危険ですが、接近戦用に使ってるあのツタじゃ多少傷つく程度でどうにかならないことはないみたいですな。それに光線を撃つのにオグル鬼をわざわざ投げ飛ばしてましたし……近接戦闘だとあの光線は撃てないのかな、こいつは」
「……冷静だなぁ、軍曹」
「生き残るのに必死ってだけですよ」
ニコラはそう言った直後に中隊へと指示を飛ばし、こちらに向かって来るアインストを一斉射撃で押し留めさせる。
そんな副官の働きぶりに、ギーシュはただ感心するばかりだった。
「え、えーと、最後に残ったのは『魚』だな」
とは言え中隊長としての面目もあるので、感心してばかりもいられない。
今の自分にも出来るせめてものこととして、あのバケモノどもの情報収集くらいはこなさなくては。
などと思っていたギーシュだったが……。
「何だ、アレ?」
『魚』のアインストがふよふよ〜と浮かんでいるのはいい。浮いてるだけならバグベアーだって似たようなもんだ。
そいつが『ツタ』と同じく、甲冑みたいな殻から電撃を放つのも大目に見よう。今更そのくらいで驚きはしない。
で、その電撃でトロル鬼が黒コゲになったことも……この際だ、よしとする。ユーゼスだってワルドの『ライトニング・クラウド』を受けて腕が焦げてたし。
問題は。
「アレは……銃、なのか?」
その『魚』のアインストに対してアルビオン軍が使っている兵器である。
車輪がつけられた台座の上に置かれている、金属製の筒。
最初は大砲かと思ったが、大砲にしては細すぎた。
強いて近い形を挙げるとするなら『銃』になってしまう。
その『銃らしきもの』から発射される何十発もの弾丸は、圧倒的な勢いで『魚』の殻を欠けさせ、光球をえぐっていく。
―――仮に自分たちの銃小隊が一斉に集中砲火を浴びせたらこうなるだろうな、というような光景だった。
また当然の結果として、蜂の巣にされたアインストは活動を停止し、白い灰となっていく。
「す、凄いと言うか……凄まじいな、あの銃……」
「…………あの銃口が自分たちに向いてなくてよかったですな」
驚愕しつつ『銃らしきもの』についての感想を口にするギーシュとニコラ。
一見したところ、あの銃撃はトライアングルかスクウェアスペル相当の威力がある。
しかし、そんな性能の銃など二人は見たことも聞いたこともない。
ギーシュもユーゼスからジェットビートルに搭載されている機銃について聞いてはいたが、実際にその威力を目の当たりにしたわけではないので、やはりかなりの衝撃を受けていた。
百聞は一見にしかず、というやつである。
「―――忘れてたけど、僕たちってアインストの他にアルビオン軍も相手にしなくちゃいけないんだよな」
「『ついさっきまで殺し合いしてた連中が、とっさの判断で手を組んで共通の敵に対処する』ってのも無理がありますしねぇ」
「仮に対処したとしても、終わったらまた殺し合うワケだから……」
「何だか今のトリステインとゲルマニアにも同じことが言えるような気がしますが」
「…………。取りあえず今は、そういう話は後にしよう」
「そうですな」
隣同士でしょっちゅう戦争しているトリステインとゲルマニアが今は連合軍を編成しているという事実を考えてみると、なかなか深い話ではある。
だが、今は戦闘中なのだ。
ギーシュは頭をブンブンと振り、ニコラは意識的に一度だけまばたきをして余計な考えを頭から追い出し、二人同時に壕の中へ頭を引っ込めると、取りあえずの対策を講じ始めた。
「まあ、あの銃にせよ『魚』のバケモノにせよ、弱点が全く見つからないってワケじゃありません」
「そうなのか?」
「取りあえずではありますがね。……まず『魚』の方ですが、こっちはあの電撃を撃つ前と後に“溜め”と言うか、隙が出来ます。そこを突きましょう」
「“溜め”?」
「連続で撃てないって意味です。火竜なんかもブレスをずっと吐き続けることは出来ませんし、それと同じような理屈じゃないですかね?」
そういうものか、ニコラの言葉に頷くギーシュ。
そしてニコラは残った最後の敵の弱点を語った。
「あの銃もそれと同じです。確かにあれだけの威力を連射し続けられるってのは脅威ですが、それにしたってずっと撃ち続けられるわけじゃあない。いつかは弾切れになります」
「……『いつかは』、って言われてもなぁ」
何ともあやふやな言い方だった。
その『いつか』とやらは、一体いつごろ来てくれるのだろうか。
「なあに、火縄銃みたいにありふれたものってワケでもないようですから、数も揃ってないでしょう。もし揃ってたら、もっと前面に出てくるはずですし……隙を突くのは割と簡単だと思いますよ」
「うーむ……」
何だかどれもこれも『敵の隙や弱点を突く』ものばっかりで『真正面から打ち破る』みたいな戦法がないのが気になるが……。
この際だ、贅沢は言うまい。
いや、そもそも贅沢を言える立場でもない。
「…………よぉし」
この状況で今の自分に何が出来るのかは分からない。
しかし何かをせずにはいられないので、ギーシュはその『何か』を見つけてくれるニコラへとそれを尋ねる。
するとニコラは笑みを浮かべ、ヴェルダンデを控えさせておくように言ってきた。
どうやらギーシュの使い魔を駆使して何かをするつもりのようだ。
「さて中隊長殿、これから忙しくなりますぜ」
ふと東の方に目をやれば、すでに空は白み始めている。
これから太陽が昇って見通しがよくなれば、戦いはますます苛烈さを増すだろう。
「だ、大丈夫だ! 何たって、僕とヴェルダンデのコンビは無敵だからな!!」
「モグ!」
ギーシュはわざと大声を張り上げつつも、これからすぐに起こるであろう激戦の予感に身震いするのだった。
しえんぬ
取りあえず以上です。
……えーと、まあ、壕ってこういうモノじゃねぇだろ的なご意見はごもっともでございます。
思いついた策で当てはまる言葉が『壕』しかなかったもので……。
なお、ヴェルダンデの穴掘り能力は原作2巻と12巻の描写を元にしています。
原作2巻では、ギーシュやキュルケたちがアルビオンのどこかに到着した後、そのままニューカッスル城まで穴を掘り進めていましたし、
12巻では水精霊騎士隊の全員が通れる穴をかなりアッサリ掘ってましたので。
少々過大評価しすぎたかも知れませんが。
ちなみにスーパーロボット大戦IMPACTの劇中のセリフによりますと、この骨型アインストの爪は『超合金ニューZを引き裂く(剣 鉄也・談)』ほどの強度をもっているらしく、ならばその劣化版のアインストとはいえ青銅を引き裂けないわけないよなぁ、
と考えてこのようになりました。
ちなみにアインストの『ツノを飛ばす攻撃』は正式名称シックナーゲルと言うのですが、そのツノはコミック版の無限のフロンティアによると斬冠刀の『火鼠の衣』の月輪でアッサリ両断出来るようです。
…………何だか基準がワケ分からなくなってきましたが、ともかく青銅よりは硬いってことで、ここはひとつ。
次回は多分、今週末くらいになると思います。
それでは皆様、支援ありがとうございました。
ラスボスの人乙!
スパロボで材質の堅さとか気にしたら負けかなと思ってる。
続きがすぐ来るようで楽しみだ
ジャギ様だって自分の胸像をスローな南斗聖拳でブチ抜けるし、アインストなら軽い軽い乙。
アクマの人乙です。楽しく読ませていただきました。
が、一つだけ。
フォッグブレスは混乱じゃなくて命中回避低下だったと思うのですが。
おーつ!!
終末が楽しみになってきやがった!!
・・・ところで、魚型アインストっていたっけ・・・?
オリジナルですか?
ラスボスの方、乙でした。
……おかしいな、ギーシュよりもヴェルダンデのほうが優秀に見える?
聖帝とラスボスの人乙。
なかなかいい引きで終わっているので、次が気になるぜ!!
>>213 初期ギーシュはヴェルダンデの引換券だから間違ってないさ
さすが巨大土竜の字のインパクトに恥じない能力だぜ
>>212 ムゲフロに出てる奴じゃね?
俺も知らないけど
>>212 すいません、『魚型アインスト』と言うか『魚っぽい外見のアインスト』と言うか……。
無限のフロンティアが初出で、名前は『アインストヘルツ』ってヤツです。
>>216 >>217 回答サンクス
・・・しかし思い出せない、魚型となるとヴァルナカナイとかに出てきてそうだが
EXに向けて久々にやってみるとしますかなぁ
色々拝むとしますぜ
>>203 ああ言う真似は黙認などと言う曖昧な形ではなく、せめて先方から「明確に」許可を
得てからにしてくれ。
でないと無用なトラブルの元になる。
それ以前に、真面目な話紛らわしくてwiki登録等に無用な混乱を招く原因になるし。
>>218 どうもツタ型アインストの亜種らしいんですけど、なんかパッと見で魚っぽかったんでそうしてみた次第です。
そもそも黙認を貰ったってどういう状況なんだろう……
黙認されているかなんて分かるの?
>>166 A:「戦いに勝つ秘訣は?」
カリーヌ様「作業デショウ」
聖帝を見てて思ったんだが、南斗爆殺拳伝承者となったルイズは他のSSや原作のルイズとは段違いに強くなってるような気がする。
邪魔するヤツは杖先一つで爆殺していく姿が容易に想像できてしまうんだよなww
ウーム、やっぱりあきませんですか……
アレになったのは、他の名前を思いつかなかったのが一番の理由なのですが、
『ハルキゲニアより愛を込めて』と言うのをたった今思いついたので、そっちに差し替えようかなぁ。
ウルトラタワー 〜オトンとゼロと、時々、おマチ〜
オトン セブンはゼロのオトン
おマチ セブンの現地妻
聖帝様とラスボス殿乙でした。
どっちもギーシュがいい味出してるなあ
サミタでサウザーにしばかれてこようかな
無料でできればいいけど
>>224 まさか12話を欠番にした『あいつ』が出てくると?www
ウルトラ七番目の使い魔の人、および題名について困惑をもたれている方々へ。
タイトル名について問題がもたれているようですので、このレスを借りて失礼いたします。
まず、黙認についてですが、かなり前に話題をふられたということですが、正直身に覚えがありません。
ですが弁解をさせていただきませば、このスレは日ごろから雑談、冗談、ネタ、感想その他でとても進行の早いものですので、避難所の運営スレなどで正式に
申し込まれたのならともかく、それらの中から本気かそうでないのかを見分けるのは大変困難で、おそらく多数のレスの中で読み流してしまったものと思われます。
そのため、誤解をもたれてしまったようで申し訳ありません。
それで、私からの返答につきましては、題名については作者さまの意思とアイデアを尊重したいと思いますが、やはり一字違いというのはきわめて紛らわしく
>>219の方のおっしゃるように混乱の元となる可能性がありますので、次案がありましたらそちらのほうへの変更をお願いしたく存じます。
最後に、ネット環境の規制の影響を受けましたが、報告が遅れましたことをお詫びいたします。
では、どうも失礼いたしました。
一瞬、82話きたかと思った。
ま、ンなこったろうと思った
ネットで「黙認」つったら大抵「気付かれなかった」ってことだからね
232 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/13(水) 19:25:38 ID:dnuxS6AL
聖帝様更新されてる!
作者さん乙
ウルトラマンタロウのZAT一同を召喚してほのぼのなゼロ魔
ZATならどんなトラブルも奇抜な作戦で切りれ抜けそうw
>7番目さん
改題はザ・ネクストにちなんで「ウルトラマン・ザ・セブンスファミリアー」みたいなタイトルとかどうかな?
他には「ウル使い魔ンセブン」とか。
あと「モロボシ・ダン、ハルケギニアへ行く」なんてのもw
いっそ「使い魔セブン」でもいいんじゃね?
「ウルトラセブンZ」とか
こ、これは乙じゃなくてアイスラッガーなんだからね! の使い魔
ルイズ「あたしがガンダムよ」
ガンダムダブルゼロ?
それ略したらWゼロ(ry
ゼロと名が付くものをハルケギニアに集結させるか
サイボーグ009の連中
ハルケじゃメンテが出来ないから001以外駄目だな
>>243 そこは禁断の「ゴーレムへ脳移植」でカバー。
大幅にパワーダウンしていい感じ。
オールゼロ 対 大巨乳
点数ゼロのノビタ
赤川ジロウ召喚
>>244 100%確実に拒むだろそんな危険極まりない事。
俺はブラックソードゼロ。俺を超えるものはゼロしかいない
チョビヒゲのゼロ&オリジナルのゼロ(KOF)
北斗モドキの台詞とワザで大暴れ。ゼロキャノンにクリザと龍と獅子のオマケ付き
あばよルイっつあ〜ん
強化外骨格零と神風零が禁断の出会いを果たしたのは異世界の地においてであった
キリヤマ隊長、ダン隊長、クラタ隊長、凪副隊長、
ヒルカワ、MAT岸田隊員、TAC山中隊員を呼んで
殺伐極まりない魔法学院を
ばっかも〜ん!
今のが土くれのフーケだあ〜!
>255
サブタイトルは「ワルドの城」ですね
……城、無くね?
父さんは嘘つきじゃなかった!
アルビオンは本当にあったんだ!
ルルル〜ルル〜ル〜ル〜〜〜♪
この流れは、紅のマリコルヌの予感!
ワルドならむしろ「おもひでぽろぽろ」だな
城・・・俺だけの・・・城・・・
ちょっかいを掛けてくるキザなイタリア野郎が居るんだ、ここはサイトくんだろう!
サイト「可愛い女の子や奇麗なお姉さんに発情しない犬は、ただの犬だ」
ヨマさん乙
どうしろと
保守代わりに・・・
ストライダー飛竜からグランドマスター抹殺任務完了直後の飛竜を召還
〜対ギーシュ戦〜
ワルキューレ展開後、口上を垂れるギーシュに対して・・・
「貴様にそんな玩具は必要ない」
〜対フーケ戦〜
M72 LAWの威力に驚愕する一同に向けて・・・
「善悪ではない、これは技術だ!」
(飛竜ならM72放置してサイファーだけで決着つきそうだが)
〜対ワルド戦〜
ウェールズの暗殺をあっけなく阻止されたワルドに対して・・・
「だから貴様は飼い犬なのさ」
〜対シェフィールド戦〜
ガーゴイルを全滅させされたシェフィールドに対して・・・
「帰ったらヤツに伝えておけ、 狩るのは俺で狩られるのはお前だとな。」
おまけ
〜対教皇戦(予定)〜
教皇の使い魔として召還されたグランドマスターを教皇ごと切り捨てた後・・・
「飛竜より主(ルイズ)へ・・・任務完了。」
・・・ガンダ補正無し、デルフリンガー放置で無双化しそうですけど誰か書きません?w
書きません
ワルドの落とす城
>>265 ガンダのルーンに関しては
「断る。飼い犬になる気はない」とかいって拒否すればいい
衣食住の保障と帰還手段の模索の代わりに雇用契約するだけってことで
あと、サイファーは召喚されたときに紛失したことにすればデルフも使ってもらえる
破壊の杖はロケランじゃなくてオプションにするとかいう方法もある
ついでにナムカプネタも使って、アルビオンからカタパルトジャンプしてシルフィードに飛び移ったりとか希望
269 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/14(木) 11:54:05 ID:OdVQYyEU
流れを切って悪いがリンク召喚物を考えてるんだが
一部シリーズのリンクを各虚無の人のとこに置きたいのだけど
あいつらって同一人物の存在だったけ、リンク
超人ロック 〜ゼロの魔法士〜
すまん、半年ROMってくる。
>>270 最終回までに何人生き残れるかな
とりあえずシエスタとタバサは死ぬと思う
>>268 漫画版の飛竜なら、子供に優しいんで契約してくれそうな
サイファーも捨ててるんでデルフの活躍の場もあるだろう
問題は漫画版知ってる奴どれだけいるかってことだがw
サイキックフォースからウォンあたりを召喚
バーンやキースだと属性的にキュルケやタバサの使い魔になりそうだから
>>272 その前に、ロックの超能力・掲載した媒体が終わるが発動しそうだよ
>>275 このスレが別の板に移転するんですね、わかります
メジャーで世界観的にも作りやすそうな割にロードス島戦記とかからの召喚ってあんま無いのな
ブラムドというかなり珍しい奴は召喚されてるがパーンとかディードとかカーラとかは無い
まアレクラストのほうからへっぽことかは呼ばれてるようだが
超人ロックから呼べそうなのってロックくらいしかいない…か
他のはネタがあんまりないかな
ストロハイム大佐を呼んで、宝物庫のアイテムはダイバースーツまたはニケで、とか
ボードゲームネタを使ってみるとか?
>>265 マブカプの中の人の声渋くて格好いいよね
それに彼はコブラと同じ臭がする
>>278 ロックが組み立てたあとの暴走する前のレムスなんかもいいんじゃない?
サイバーのメンテできないから、やっぱり召喚されても暴走しそうだけど
ハルケギニアより強い魔法の使い手ばかりじゃなくて、たまにはもっと不便な魔法の使い手はどうよ
例えば「深淵」TRPG世界の使うたびに傷つく魔道師とか
グラム山の魔法学校とトリステインの学校を比較したり
運命や魔族に関する話なんか、タバサあたりによく合いそうだと思うな
あとは一度元祖D&Dからなんか呼びたいのだが…上手く思いつかない
エルミンスター先生ってワケにもいかんわな
12:45から∞8を投下します。
「雪風とボクとの∞(インフィニティ) ∞8」
――……ミツナリに新しい友人ができた……。
――……同じめがねっ娘スキーのワルド子爵……。
三成と親しげに会話しているワルドを、タバサは木の陰からそっと見つめていた。
「最近『メガバーガー』とかいう物があるだろう」
「ええ、ありますね」
「あれ……、『メガネバーガー』と読み間違えてドキッとしないかい?」
「します!」
「『この店のメガネバーガー全部いただこーう!!』と叫びたくなるな!」
「なります!!」
ワルドの熱い思いに共感し、三成はがしっとその手を握り合った。
(……何を話しているかわからないけれど……何だか凄くわかり合ってる……)
頷き合う三成・ワルドの様子を眺めて、タバサは複雑な表情になった。。
「読み間違えといえば、もう1つあるのだが……、『メガミ』を『メガネ』と読み間違える事……」
「あります!」
そこで三成はふとある事に気付く。
「あっ! でもワルド子爵……」
「『めがねっ娘』=『女神』、意味は間違っていないのではないでしょうか!?」
「その通りだよ、ミスタ・ナグモ!!」
握手した手を振り何度も頷く三成・ワルド。
(……あ……また何か強くわかり合ってる……)
その様子にタバサは何やら言い知れぬ嫉妬を感じて、思わず2人の元に歩み寄る。
「……あ……ミツナリ……何してるの……」
「あっ、タバサ」
「むっ」
ワルドの向けた鋭い視線にタバサは本能的に何かを感じ取り硬直した。
「その歪みから察するに……、両目とも0.1って所かな?」
「……ぴったり……」
「流石ワルド子爵!!」
「その0.1の君は誰だい?」
「……あ……えっと……」
「僕の主人です」
「……タバサです……」
「めがねっ娘のご主人様あー!?」
あまりの精神的な衝撃に、ワルドは飛び退き、尻餅をつき、後方に倒れて頭を強打した。
「大丈夫ですか、ワルド子爵」
慌てて駆け寄った三成だったが、
「寄るな裏切り者!!」
「裏切り者?」
「キミは僕と同じ夢追い人だと思っていたのに。なのにちゃっかりめがねの青い鳥を手に入れているなんて……。その青い鳥とキミはあんな事やこんな事を!!」
ワルドの発言に思わず赤面する三成・タバサ。
「なっ……」
「……私達……まだそういう関係じゃない……」
「え? そうなの?」
「……はい」
「何だ、そうなのか」
「……もう……ワルド子爵ったら……」
誤解が解けて穏やかに笑いあう3人……と思われたが、
「……なんて騙されるものかあ!!」
「子爵!?」
「こんな可愛いめがねっ娘のご主人様がいながら何もしないなんて、君は聖人君子か!? 僕だったら絶対するね! 例えば……」
そう言いつつワルドは周囲を見渡し、
「この牛乳を……」
発見した購買部の売店でパック入りの牛乳を購入して、
「わざとピュッと彼女に飛ばして、キャッてなって……」
自分が飛ばした牛乳を素早い(フットワーク)で自分の眼鏡で受け止め、
「『ああ〜ん、めがねにミルクがあ〜。めがねにミルクがあ〜……』」
牛乳まみれの眼鏡をかけたまま荒い息遣いで呟くワルドにタバサは完全に引いていて三成にしがみつき、三成も冷や汗をかきつつその様子を眺めていた。
「あぶなーい!!」
「ぎゃぶう!?」
「……ルイズ……」
次の瞬間、ルイズの左ストレートがワルドの顔面を捉えた。
「はっ! ひょっとして今僕何か口走っていたのかい!?」
地面に倒れたワルドが身を起こした時、彼の目には正気の光が戻っていた。
「だだ漏れですよ!!」
「……すまなかった。僕は……、僕はめがねっ娘を見るとどうしてもいけない事を考えてしまうんだ!!」
(最低だ!!)
滂沱の涙を流しつつのワルドの告白にどん引きするタバサ・ルイズ。
「僕の心にはシャイターンがいるんだ!! シャイターンがいるんだ〜!!」
そしてそのままワルドは走り去っていってしまった。
(どうしてあんな人が婚約者になったのかしら?)
やはり滂沱の涙を流しつつ自身の不幸を嘆くルイズの後方で、タバサは三成に問いかける。
「……ねえ……ミツナリ……ミツナリの心の中には……シャイターンいないよね……」
「ああ」
「……よかった……」
タバサは三成の言葉にかすかな笑みを浮かべ、三成はそのタバサの笑みに安心感を覚えるのだった。
(僕のシャイターンはタバサの笑顔に封印されているようだ)
ふとタバサは手にしているパック入り牛乳の事を思い出した。
「……あ……これ……ワルド子爵の飲み残し……どうしよう……」
そこまで言ったところでタバサの鼻を何かがくすぐった。
「……ふぁ……は……くしゅん……」
くしゃみをした拍子に手に力が入り、ストローからほとばしった牛乳がタバサの眼鏡を汚した。
「……ふああ……いっぱいかかった……」
そう言いつつ白濁した視界の中三成達の方に歩み寄るタバサだったが、
――パアーン
「このシャイターンめ!!」
彼女を待っていたのは三成によるハリセンの一撃だった。
「……何で……」
「シャイターンめ! シャイターンめ〜!」
「……何でー……」
黄昏時の空に三成・タバサの声とハリセンの音が響き渡っていた……。
俺……このワルドとは友達になれそうだ、支援
以上投下終了です。
「7番目の使い魔」に関する書き込みを見て思ったのですが、「5番目の使い魔」以外でウルトラシリーズとゼロ魔のクロスって(ここで)何かありましたっけ?
個人的には「怪獣使いと少年」ネタで誰か書いてくれたら……と思ってるのですが。
>>281 アルシャードでは考えた事ありますが、
クエスターのPC召喚→PCvsギーシュ戦の最中スペクター化したルイズが乱入→PCがルイズを倒して元に戻す
以降の展開がさっぱり思いつきませんでした……。
>>288 たしか小ネタであった。
ルイズが地球に迷いこんでムルチを封印、そのまま帰れなくなって
身寄りの無い才人少年と暮らし、原作同様に暴徒と化した民衆に射殺されるやつ。
他にウルトラならレオ召喚するやつと、ルイズがゴモラ召喚する
「眠りの地竜」ってのがある。どっちも更新停止中だけど。
>>281 ルナル・サーガからだと魔法の威力はさほどでもない上に、過度の使用は命を削るよな。
リプレイで耳から血を噴きながら眠りの魔法を使ってるおっさんも居たしw
指輪物語のガンダルフは魔法使いなのに肉体派だな。
>>291 肉体派魔法使いと聞くと、どうしてもスレイヤーズのフィル王子が浮かんでくる
ゼロのおうぢさまか
殿下としか呼びたくない王子様だよな、ホントw
中年の王子でも別にいいやんとか思うんだけど、
フィルさんの顔思い出すと普通に「セイルーンの国王」と思ってしまう。
ベジータも何時までたっても王子だな。
もう星もないからな
>>291 魔法使いはあくまで仮の姿。
ガンダルフの本性は人より精霊や神に近い代物だからね。
もっとも中つ国にいる間はほとんど力を封じられてるんだけど。
ピアニィももう女王のはずなのにいつまでも姫呼ばわりだな
(初対面のルイズに向かって)「ためしに殺してみてもいいでしょうか」
>>299 あ、「アリアンロッド・サガ」の殺意高すぎるお姫様です
>中年の王子
ペルソナ3の幾月修司
おじさまの王子様
まぁ成れなかったんですがね
呼んだところでペルソナ使えるわけでもなし、戦闘できる訳でもなし
二面性の完全切り替えが可能くらいしか特技無し
うん、どう考えても主人公に据えられるキャラじゃねーな
>>288 ほかに、ウルトラマンガイア召喚のやつがあったけどそれも止まってる。
あと、七番目の人は新しい題名を【使い魔340号】にしたらしい。
セブンが恒点観測員340号だったからつけたんだろうけど、どうも宇宙囚人303のキュラソ星人のほうを連想してしまうのは俺だけだろうか…
>>265 そこまで想像できるなら書ける筈だ。筋道立てて書いてくれ、頼む
「貴様の辞世の句など、その程度だろうよ」も忘れるなよ!
「夜道」のオーク鬼が紅の豚のポルコで脳内再生されて、
小ネタのポルコが召還された話を久し振りに読もうとしたが消えていただなんてorz
ワルドの青春は輝いているか
>>303 「紅の使い魔」なら小ネタの元ネタ秘密にあるが?
>>302 セブンってウルトラ警備隊7人目の隊員的なネーミングだっけ?
そのエピソードは未放送ってオチだったような気もするけど
ウルトラマン系といえばネクサスとかも召喚しやすそう
ハルケでの溝呂木の黒い野望か
>>306 正しくは「うつ向くなよ、ふり向くなよ」らしいよ
>>308 ネット紳士(ダークザギ)の復活劇でもいけそう
ノアは最後どうなったかわからんしな
魔法の国ザンスから誰か呼ぼうぜ
ビンクとかドオアとかの初期メンバーで。
こんばんは。
寒い日が続きますが、進路クリアなら20:50頃より新年最初の第16話を投下します。
それではいきます。
トリステイン魔法学院は、その日、その時、厳かな空気に包まれていた。
学院長を筆頭に教師、生徒が揃って盛装し物音すら立てることなく直立不動で迎える様は、
そうそう見られるものではない。彼らが待っているのは、正門の外に見えている1台の豪奢な
藤色の馬車。
やがて馬車はゆっくりと正門をくぐり、学院長オスマンが待つ学院本塔入り口から伸びる
深紅の絨毯にその扉をぴったりと合わせて停止する。それはお召しの馬車を御する御者の
腕の見せ所。そして彼はその責務を完璧にこなして見せた。
「トリステイン王国アンリエッタ姫殿下!!
ならびにマザリーニ枢機卿!」
先だって幻獣グリフォンから降りた、立派な羽飾りのついた緑の帽子をかぶり同色の
マントを身につけた立派なあごひげを生やしたメイジが馬車の前でそう宣言すると、馬車の
扉がゆっくりと開かれる。扉から姿を現した、純白のドレスに身を包み、藍色の短いマントを
身につけたアンリエッタ姫を、羽飾りの帽子のメイジがエスコートする。件のメイジが手にした
タクト様の杖を優雅に振るうと、姫の可憐さを引き立たせるようにピンク色の花びらが
舞い降りた。
「アンリエッタ様ー!」
「姫殿下ー!」
「トリステイン万歳ー!」
「アンリエッタ姫殿下万歳ー!」
教師や生徒たちが一斉に歓喜に包まれる。舞い降りる花びらと臣民の歓喜の声に
包まれながら、アンリエッタ姫は羽飾りの帽子のメイジにエスコートされたまま、歓喜の
声に向かって女神のような微笑みを向けて優雅に手を振った。
その様子を見るキュルケは、アンリエッタ姫が通り過ぎてからその姿勢を崩す。その横で
タバサもまた本を取り出してその世界に埋没していた。不敬というかも知れないが、
国外からの留学生である二人にとっては義理は果たした、というところだった。
「あれがトリステイン王国の王女、か……」
「そうだ!あのお方が我らトリステインの美しき王女!」
キュルケのつぶやきにギーシュが口を挟む。その姿は熱狂的で何かに浮かされたような、
とキュルケは感じたが……あえて口にはしない。
「すらりとした気品あるお顔立ち、優雅なお姿……!
バラのような笑顔と神々しい気高さ!
ああ、まさに!トリステインの可憐な花!」
いつの間にか自身のバラの造花の杖まで取り出しているギーシュ。横でモンモランシーが
渋い表情のまま人差し指を額に当てている。なるほど、トリステイン王国ではそう称えられて
いるのか……とキュルケは思う。だが――
「外っ面のことだけなのねぇ?」
「な!?」
キュルケのつぶやきにギーシュが向き直る。その顔には信じられないものを見るような
表情が張り付いている。キュルケはギーシュだけでなくタバサやモンモランシー、そして
視線をアンリエッタ姫、というよりエスコート役の羽飾りの帽子のメイジに向けたままの
ルイズと、彼女の横にいるふがくにも聞こえるように言う。
「あたしはゲルマニアの人間だから気になるのよ。美しい姫だって、内心は『ゲルマニアの
貴族は成り上がり』とか思ってるんじゃない?」
「まさかそんなこと!
トリステインとゲルマニアは同盟を結ぶのよ!」
キュルケの言葉に反対の意を真っ先に示したのはモンモランシー。そこにふがくが口を挟む。
「……私には全然その辺りが見えないんだけど、いったいどうなってるの?聞いてる限りじゃ
姫殿下がそのゲルマニアって国に政略結婚で嫁ぎそうにも聞こえるんだけど」
「だいたい当たってるわよ。
アルビオンの内戦で勢力を増している貴族派の同盟『レコン・キスタ』に対抗するために
ゲルマニアとトリステインが軍事同盟を結ぶの。そのためにアンリエッタ姫殿下が、あたしの国、
帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世陛下にお輿入れすることになったのよ」
「へぇ。そうなんだ。でも、皇族や大貴族の結婚って、たいていそんなものじゃないの?」
それは精神的に上位に置かれる皇族から実質的に国を支配する将軍家に皇女が降嫁する
ことすらあった国に生まれたふがくにとってみれば珍しいことではなかったが、こっちでは
そうとは言い切れないらしい。
「そんなもの、じゃ済まされないわよ!
自分の気持ちは無視されて周りが勝手に決めるのよ?それで知らない男と結婚するなんて
冗談じゃないわよ!」
キュルケはそう言ってハンカチを食いしばる。
「……な、何かあったの?キュルケ……」
そう言ったふがくは爆発するキュルケにどう声をかけていいものか困惑する。そのとき――
「……そうよね。お国のためとはいえ、おかわいそうな姫殿下。
姫殿下は今もあの笑顔の下で、お悩みになっているのかも知れないわね……」
「ルイズ……」
ルイズが羽飾りの帽子のメイジから視線を離さずつぶやいた言葉を聞いたのは、
図らずもふがくだけだった――
熱烈な歓迎を受けたアンリエッタ姫は、そのまま学院長室へ案内される。秘書のロングビルが
折悪しく不在のため、歓迎の用意はすべてコルベールが取り仕切っている。テーブルの
上には東方から取り寄せた最高級の紅茶の香りが立ち上り、クリスタルの高坏に盛られた
アンリエッタ姫の好物、タルブ産の最高級ドロップが色とりどりの宝石のように窓から差し込む
光を受けて輝いていた。
「トリステイン魔法学院へようこそ。アンリエッタ姫殿下!」
「お久しぶりです。オールド・オスマン。
突然訪問してしまいすみませんでした……」
「いえいえ。こちらこそさしたるおもてなしもできず恐縮しております」
オスマンとアンリエッタ姫の社交辞令。しかし、アンリエッタ姫が紅茶のカップに口をつけた後の
一言はオスマンとその後ろに侍するコルベールを内心驚愕させた。
「……『土くれのフーケ』という盗賊を懲らしめたという貴族たちがこちらの生徒と耳にし、
叙勲はできずともせめて感状だけでも……と思って立ち寄ったのですが……今のわたくしには、
感状どころか感謝の意を述べることくらいしかできないということですの……
わたくしの知らないところで、いろんなことが決まっているみたいですわ……」
「姫……」
アンリエッタ姫の置かれた状況に同情するような言葉とは裏腹に、オスマンはどこで
その情報がアンリエッタ姫に漏れたのかを考える。『土くれのフーケ』の一件は学院内だけで
完結したはず。生徒はもちろん学院で働く平民にも外部に漏らさぬよう言い渡してあったはず
……と、そこまで考えてオスマンはあることに思い当たる。
アンリエッタ姫の事実上の私兵として設立された銃士隊――多くの貴族からは『姫殿下の
騎士団ごっこ』と揶揄されるそれは、隊長であるアニエス・シュヴァリエ・ド・ミランこそ
平民から特例でシュヴァリエの爵位が与えられているものの、おそらくマザリーニ枢機卿が
送り込んだと思われる副長を除くすべての隊員が『平民の』若い女性。面の割れていない
隊員が学院内にメイドとして入り込んでいるか、もしくは出入りの商人に付き添って情報を
入手されたか……いや、それ以外の、そう、表に出ている銃士隊以外の、情報収集や
汚れ仕事を受け持つ平民が手駒としている可能性もある。市井に流行る小唄のように
権威だけで実権がないと思いきや――
――何も知らない小娘と油断しておれば……その純白のスカートの中に何本金毛の尻尾を隠しておるのやら……――
オスマンの心境を知ってか知らずか、アンリエッタ姫は紅茶をもう一口口にする。
「トリステインの王家には、美貌はあっても杖がない――民がそう唄うのも無理はありませんわ。
本当にその通りですもの……」
「あ……あの〜〜〜〜〜〜
ゲルマニアご訪問でさぞやお疲れでしょう?歓迎の宴は取りやめに致しましょうか?」
オスマンとアンリエッタ姫の間に張り詰めた重苦しい空気に音を上げたコルベールが
そう提案する。その言葉を聞いて、学院長室の空気がが少しゆるむ。
「いいえ……まったく疲れてませんわ。
すべて枢機卿が事を進めたので……わたくしは黙っていただけでしたから」
そう言ってアンリエッタ姫は困ったような笑みを浮かべ、カップを手にした皿の上に置く。
それを見計らってオスマンが言葉をかける。
「同盟以外に……道はないのですかのぅ?」
「――ええ……そのようですわ」
アンリエッタ姫がティーセットをテーブルの上に置き、祈るように両手をその胸の前で
組んだ。
「『白の国』アルビオンの叛乱軍が、このところ力を増しているようなのです。
そう……アルビオン王家は、明日にも倒れてしまう危機に直面しています」
そう言ってアンリエッタ姫は立ち上がり、オスマンたちに背を向けて窓に向かう。
「この小国トリステインが生き残るためには、先を読み先に手を打つ――
かつて王家に従っていた貴族が信用ならない今、いつ成立してもおかしくない新政府に
対抗できるよう同盟を結ばなければなりません……」
アンリエッタ姫が窓に向かったまま目を閉じる。閉じられた目に映るのは、風になびく
金色の髪と、澄み切った青空のような碧い瞳。
「……悲しい時代になったものです」
「アンリエッタ姫殿下……――」
オスマンはそう呼びかけて、一度言葉を切る。そして背を向けるアンリエッタ姫が振り返るのを
確認してから言葉を続けた。
「お優しき姫殿下には、始祖ブリミルのご加護がございます。
それと……忠誠を誓う貴族を信じることも、姫の力となりましょう」
我ながら偽善な……とオスマンは内心思いつつその言葉を口にした。しかし、最後の
言葉に偽りはない。そう、たとえば……
「そうですね。そのとおりですわ。
感謝します。オールド・オスマン」
そう言ってアンリエッタ姫は微笑む。オスマンが思い浮かべた貴族のことは承知の上だと
言葉にせずとも分かっているような……そんな笑みだった。
夜空に双月が昇る頃――ルイズとふがくはルイズの部屋にこもったままだった。
すでにアンリエッタ姫の歓迎の宴もたけなわ。参加していれば王家の庶子の家系に
連なるヴァリエール公爵家の代表として、主賓に負けず劣らぬ宴の主役の一人となって
いただろうルイズは、昼間のアンリエッタ姫歓迎の後から部屋にこもってただテーブルに
肘をつき心ここにあらずなまま。そしてふがくもそんなルイズの様子を壁にもたれかかったまま
ずっと見つめていた。
>>278 リュウ・ハントは結構いけそうな気もするけどね
不死身で不老不死だけど身体能力的にはただの鍛えた人間なんで、しょっちゅうズタボロになるし
性格も割と主人公向けだし
「…………」
ルイズはアンリエッタ姫の供として学院に現れた羽飾りの帽子のメイジのことをずっと
考えていた。
ルイズは彼を知っている。王宮直属の三つの魔法衛士隊の中でも特に選ばれた貴族
のみで構成されるグリフォン隊の隊長、『閃光』の二つ名を持つ風のスクウェア・メイジ、
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。そして、彼は親同士が決めたルイズの婚約者でも
あった。
「……はぁ……」
最後に逢ったのはいつの頃だろう。まだ自分が何も知らない子供で、アンリエッタ姫の
遊び相手として、魔法が使えず叱られてばかりだったけれど毎日をそれなりに送っていた
頃――あの頃、確かにワルド子爵は自分の『理想の王子様』だった。けれど……
「……もう、覚えていらっしゃらないわよね……わたしのことなんか……」
そう。ルイズはワルド子爵とはもう10年から顔を合わせていない。10年前にワルド子爵の
お父上が戦死し、それからは領地を家臣に任せて魔法衛士隊に入隊された――ルイズは
そう記憶している。尋常ならざる苦労をして今の地位に上り詰めたのは、公爵家の婿として
ふさわしい地位を得るため……だったのだろうか。便りの一つもないまま年月が過ぎて、
もう自分のことなんか覚えてはいないだろう。まして『ゼロ』でしかない自分のことなど――
ルイズがそんなことを考えているとき、ふがくが突然寄りかかっていた壁から身を起こす。
そして普段は懐に入れたままのデルフリンガーを抜き放ち、扉に意識を集中する。
「……ふがく?」
「お?出番か?」
「黙って」
――コッコンコンコン……コンココン――
奇妙なリズムのノックの音。ふがくはいっそう警戒を強めるが、ルイズははっと顔を
上げた。
「ま……ッ、まさか!このノックの叩き方は……」
「ルイズ!」
ふがくが止めるのも聞かず、ルイズは飛びつくように扉を開ける。
「あ……あぁ、やっぱり!」
喜びの声を上げるルイズ。扉の向こうに立っていたのは、純白のドレスの上から墨色の
フードをかぶった女性。その姿を確認したふがくは、扉の脇に下がってデルフリンガーを
後ろ手にして片膝をつき頭を垂れる。
部屋に入りルイズが扉を閉めるのを確認した後で、女性はフードを降ろす。フードの
下から現れる藤色の髪と大きな宝石をあしらった銀のティアラ――そこにいるのは
アンリエッタ姫その人。ルイズの喜びと驚きの入り交じった顔をまっすぐ見つめ、
アンリエッタ姫は柔らかに微笑んでいた。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ!」
その姿、その声。ルイズには見間違えようもない。幻でも何でもない、本物のトリステイン王国
第一王女、アンリエッタ・ド・トリステイン姫が、そこにいた――
以上です。
やっとアルビオン編です。アンリエッタ姫のおしりには多分もふもふ尻尾はないと思います(何
本当は移動するまでまとめようとしたのですが、長くなったので次回に持ち越します。
それでは皆様、今年も宜しくお願い致します。
乙でした
進路確認せず、投下中に雑談挟んでしまってすみません
>>316 なるほど、確かに奴は結構向いてるかも
ただ、不死身なんで本人は死なんからな。ルイズをピンチにする方針か
タイトルは「ゼロの使い魔引き受けます」かな
パンツァードラグーンオルタからオルタとドラゴン召喚
トリステイン帝都を焼いたりロマリアを火の海にしたりで貴族らからは厄災のドラゴンで平民からは救世主と崇められる
トレス…は駄目だろうな
生身じゃ戦力ならんし(政治家としては面白いかも知れんが話が難しそう)、
船の状態では扱いが難しすぎる
ロックを呼ぶなら、レムスやストロハイムに関わっていたころのロックならば、
テレポートやサイコスピア、ラフノールの鏡などはないしあまりに万能すぎずいい感じかもしれない
時間的に、
レイザーク:テレポート
アマゾナ:サイコスピア(ビーム攻撃系能力)・幻覚攻撃
レオン:エネルギー吸収球・幻影分身
聖霊フラン:ラフノールの鏡
二ムバス:生きている岩
といった感じの順番で習得していくんだったかな
念動や読心、治癒能力、老化・若返りなどは最初期から習得しているようだが
光の剣や分身技をエスパーからパクるんじゃなく、
ブレイドや偏在の魔法をヒントに編み出すロック、なんてのも面白いかもな
強敵との戦いで敵の技を習得して強くなっていくのは原作どおりではあるし
ど・ろ・ぼ・う?
俺を呼ぶならトレジャーハンターと呼んでくれ!!
僕は君よりずっと前から通りすがりの仮面ライダーだったからね
いい台詞だ
感動的だな
だが無意味だ
正確には
王志明(ワン・スーミン):サイコキネシス
イリーナ・マルケロフ:代謝機能調節(治癒および老化・若返り)
ライザ:マトリクスのコピー
というようになっている
本当に最初期の、50歳かそこらのころのロックは念動もできなかった(スーミンから見よう見まねで習得)
無敵キャラのロックもいいが、その状態で召喚されて徐々にESPを習得してみるのも面白い?
成長系は面白いと思う
憶える力……アダム・ブレイドを召喚したら恐ろしいことになるな。
主になると宣言し、契約のキスをしてくるのがルイズだけに。
>>327 ギーシュ戦でサソード(貴族つながり)とケタロス(銅つながり)を召喚して、
デルフがあった武器屋が光写真館になったりするんですね。
超人ロックなら、クローンの誰かを召喚すれば、強力だがむやみに超能力を使うとどんどん寿命が縮むという制限があって面白いかもしれない。
>>327 なんかワルドが言っている様に見えた
つまり、ワルドが仮面ライダー化か
ルイズ「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
>>322 変身すらせずディエンドライバーの掃射で終了だろ。
それ以前に海東はキャラ的に契約に応じる事自体が100%ありえないから話が全く成り立たん。
ルイズと言うかあらゆる召喚主に依存する必要が全く無いし、基本的にお宝(と士、次点でアスム位か)
以外は歯牙にも掛けないし、そもそも自力逃亡余裕でしたな奴だからな。
ワルドが仮面ライダーに?
……ミラーワールドでカニに食われるポジションかな。
>>336 この世界のお宝は何かな、である程度は引っ張れると思うがなぁ。
フーケの事件を解決して終了、で短くまとめればどうにかなるような気が。
ルイズが「アウターゾーン」から
呼んだら不味い類のモノを召喚・・・
バイオちっくな寄生虫とか、悪魔が棲む絵とか、持ち主を幸せにする腕輪とか・・・
>>333 能力使うと寿命が縮むで、理想を現実に変える能力を思いついた
女性恐怖症の最強の能力者とか面白そうじゃね?
いや、全然……
(笑)
錆つくナイフで 刻んでくれないか 帰らぬ奴等を胸に
>>341 『能力使うと寿命が縮むで、理想を現実に変える能力を思いついた
女性恐怖症の最強の能力者を主人公にした小説』を書いて出版社に持ち込むから
出版したら召喚してくれよおまえらって事じゃね?
寿命が延びる理想を現実にしたらどうなるの?
ハブられる
>>341 アメコミではよくある能力ですよ、「現実改変能力」
スカーレットウィッチとかフランクリン・リチャーズとか。
しかし精神エネルギーが及ぶ範囲、及ぶ時間しかその『現実』が
維持されないので作り出したエネルギーを照射するとかマッハで空を飛ぶとか
相手の攻撃を防ぐ盾を作り出すとかそんな使い方をしていた
>>346 フツーに考えると精神エネルギーが切れたら寿命が元に戻るとか
「次の理想」を妄想したらキャンセルされるとかンなカンジかな
ぶっちゃけ「もしもボックス」とか「ソノウソホント」あたりの事じゃないか
レイアースだったっけ?
「『世界を維持するのに必要な力』を使って『世界を維持するのに必要な力』が不要になるようにする」
意味を理解するのに長い時間かけて、いまだによくわからんません
超能力学園Z
>>寿命が縮む理想を現実に変える能力
植木の法則じゃねーかもしかして。
初期は面白かったけど植木が天界人って展開で萎えたっけな〜。
才能のあるなしに関係なしに頑張ってる植木が良かったのに
サンデーの癖にジャンプの匂いのする展開だったw
>348
あれは「世界を支える役割を『柱』一人が背負っていた状態」を終わらせたと解釈してる。
さすがに記憶もあやふやなんで違ってるかもしれんが。
…レイアースから呼んだら、聖地にモコナが転がってるんだろうか…それとも語ることすら憚られるモコナなんだろうか。
魔神はアルビオンとラグドリアン湖と、あとどっかの火山辺りにいそうだが…
>>350 いや、むしろあそこから作者覚醒しただろ
それまでは劣化ガッシュだった
そういやまとめにも植木あったな
成長系には偉人や勇者の子孫で、その血統を受け継いでいるから強くなるってのと
正反対に何の血統もない凡人が努力して才能を開花させていくってのの二種類があるようだな。
前者はダイ大のダイ、後者はポップというところだな。
ゼロ魔はその点でいえばルイズは血統系、サイトは努力系でバランスがとれてるな。
>>340 アウターゾーンのアイテムは、持ち主の欲望や勇気を試す意味合いが強いから、召喚主によって結末は大きく分かれるな。
特に死者蘇生の方法を書いた本なんかをアンリエッタに渡したらえらいことに。
>>353 >死者蘇生
小ネタであったね
確かサイレントヒル2ネタ
>>353 ???「ほーほっほっほ お嬢さん、死んだ恋人を生き返らせたいのデスね
ワタクシがその願い、かなえて差し上げましょう
いえいえ、御代は頂きません ただ・・・・・・・」
猿の手があの姫さんの手に渡ったどうなるやら…
二つ目の願いで『ウェールズ様を生き返らせて』→無残な姿で登場は普通にありそうで困る
>>355 千年公?
>>356 アウターゾーンでは魔神の手だっけか?
その手のアイテムは最後には「**よ、消えてなくなれ」が定番だけど、それを願うにはすごい勇気がいるんだろうな。
そういう何でも願いをかなえる系(ただし代償がデカイ)のアイテムを虚無関係の人間が手に入れたらどうなるだろ?
ルイズだと→自分が魔法を使える事を願う→ただし虚無が使えなくなる
→カトレアが病気に悩まされなくなるように→死んで苦しみから解放される
テファは→両親が生き返るように→ゾン(ry
ジョゼフと教皇はちょっと思いつかんな
曲解して願いをかなえる、というのは昔からあるネタですね。
魔法戦士リウイで三つの願いをかなえるマジックアイテムがあって、しかし三つ目をかなえると魔神が解放されて閉じ込められた恨みを晴らそうとするので、最後の一つを残して隠していた、というのがあったな。
GS美神極楽大作戦ではわざと聞き間違えた振りをするっつージンが出たな
>>358 どっちも「はやく戦争になーあれ」っぽい願いをしそうで怖いわ
ゴクドーくんのジンを召喚したら
願いを言っても説教されてお終いっぽいんだけど
>>353 ポップは才能型だと思うけどなー
そんでサイトは才能型ですらない
ガンダールブなんて思いっきり外部デバイスだもん
まあ騎士団では人並みには訓練してるようだが死ぬほど訓練してる様子はない
人並み外れた度胸は認めるが、ぶっちゃけ棚ぼたヒーロー型だろ
>>363 そう言えばバーン戦でダイが「お前は昔から天才だったよ、ポップ」って言ってたな。
>>363 ガンダールヴをガンダムみたいな物と考えればいい
MSを使いこなすための努力をするみたいにガンダールヴを使いこなすための努力をしてるんじゃないか
>>365 >ガンダールヴを使いこなすための努力をしてるんじゃないか
してる……か?
>365
パイロットの場合、機体の挙動に耐えるための体作りはするだろうけれど、白兵戦が強いかはまた別と言うことですし。
368 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/15(金) 18:59:56 ID:2wtVRmS/
>>356 だが無残でも生きている以上魔法で治療出来てしまう可能性
>>367 現役自衛官(歩兵型)が数人でパイロットにけんか吹っかけたら逆にぼこられたそうな。
つまり、数倍の人数でもかなわないほどパイロットは強いそうだ。
エリート中のエリートだからね、戦闘機パイロットは。
才能の高いエリートが高度な訓練を受けて、訓練から脱落した者を除いて
もっと高度な訓練を受けさせてさらに選抜され…というのを繰り返すから。
ポップは途中で竜の血のでドーピングしてなかったっけ?
ヒーロー戦記のパーソナル転送システムの形って誰かわかるか?
372 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/15(金) 19:33:40 ID:UZDUV/na
純粋な天才型はありえても純粋な努力型はありえないといっていいくらい難しいからねぇ。
どこで線引きするかは人それぞれだろ。
バトル漫画じゃないけど努力型の中でも最右翼なのはおお振りの三橋だと思う。
努力の天才
努力し続けられる事自体が才能だと言われたり
圧倒的な才能で、凡才のカス共を踏みつぶすのが、面白くてたまんねぇんだよ
>>366 心を震わす方向には努力というか、色々とやっている気がする。
努力マンは名前からして努力型だよね?
兄の友情マンがあんなんだから、そうとも言い切れないか……
>>370 あれって身体が頑丈になるくらいじゃないっけ?
どっちにしろポップは天才型だと思うけどさ。
先生の元では怠けて才能を無駄にしてたけど、激戦を潜りぬけたり先生と違って鬼みたいな師匠に出会うことで無理やり開花された感じ?
>>375 花山薫ですねわかります。
ようは見せ方の問題なんだよねどこまでも。
>>375 上には上がいるから才能だけじゃいつか負けちゃうもんなw
兄のことを名前でうんこちゃんとか読んでたけど、あいつも一本糞ぶら下げまくりな髪型だよなw
>>378 アイシールドの最強の悪(笑)じゃないかったのか。
でも、花山ってそんなキャラだったっけ?
鍛えてます、シュッ
>>371 たしかシュウがグランゾンの転送システムを取られただか盗まれただかされてたな。
具体的な形はよく分からん。
>>380 いや、才能だけで努力してる人を捻り潰すキャラ、となると
>>375であげてるような傲慢な悪役キャラかキザな噛ませ犬かってのがお約束だけど、
そういうんじゃないキャラもいるよというつもりで花山を挙げただけ。
人の倍努力できるってのはその時点で才能だ、って話もあるよな
>>383 なるほど、あえて挙げられたのとは別のタイプの漢を出したわけか。
「ようは〜どこまでも。」でその補足もされてるのね、申し訳ない。
努力で到達できるのは秀才であって天才じゃないんだよ
>>386 その域に到達できるやつが努力の天才ってことじゃないのか
いんや
天才ってのは凡人には説明出来ない事を成せたりする存在を指す言葉だから、努力って理屈で説明がつく事の積み重ねの場合は違うんだよ
他の天才について考えてから、努力の天才に当て嵌めるというのはどうだろうか?
トラップの天才は、努力では辿り着けないレベルのトラップが出来るんだよ!
普通の人じゃ出来ないレベルのトラップが出来るんだよ!
努力の天才は、努力では辿り着けないレベルの努力が出来るんだよ!
普通の人じゃ出来ないレベルの努力が出来るんだよ!
どう?
じゃなくてだ
努力の天才って言葉が既に破綻した矛盾した言葉って事
ごく最近勘違い的に使われてるだけの言葉なんだよ
昔から努力で高いレベルに到達する人には天才じゃなくて秀才って言葉が用意されてるぐらいなんだよ
ガラスの仮面のマヤと亜弓みたいなもん?
そろそろ他でやってくれ
>>390 なるほどなるほど、つまり努力の天才=秀才ってことね?
その業界のトップ集団に天才と言わせれば天才
成績がトップクラスなだけなら秀才
ポップは魔力と器用な腕(ギラの一点集中やメドローアの調整)が天才の域なだけで、それ以外は普通の魔法使い以下(歴代ドラクエ基準)だと思うがなぁ
Lv50超えてる賢者の癖に使える極大呪文はメラゾーマのみだし
VだとだいたいLv40弱で極大系が揃うし、他の作品だと踊り子や良家のお嬢様がベギラゴンやらイオナズンを使うし
純粋な魔法使いとしては二流だと思う
メタな話になるけど魔法使いなのにポップってかしこさが低いし
それでもポップは好きなんだけどね
勇者ですら諦めてる絶望の中で、大魔王相手に啖呵切ってるし
読者や編集部から殺せ殺せと言われたのに、凄い出世ぶりだ
>>395 力も低いよね。
Lv50あれば、いかに魔法使いでも中級ぐらいのモンスターは楽に殴り殺せるぐらいにはなるんだが。
あのカイザーフェニックスを指でかき消したシーンには震えたな
というかあれどうやったんだろ?
>>395 一応魔王のハドラーでもベギラゴン覚えたのはバーン様に強化してもらったあとだぞ
同じDQでも魔法の習得が難しい世界観なんだと考えるほかない
史上最強の弟子で、師匠たちの誰かが「努力した者が報われるとは限らないが、成功したものはすべからく努力している」と言っていました。
確かにダイもポップも才能がある上に努力を重ねていたからな……しかも運まで完備していたし。
運を成果にかえるには力が必要なのさ
ここで自重タイム。
流れをブレイク
紫雲統夜が召喚されたらどうなるか
いや、むしろ逆召喚スレでルイズとキュルケとタバサを陣大高校の校庭に呼び出したほうが面白いか・・・?
カルビ姐さんの方が好きです
いやそこは某超人学園の皆さんを
別によくある台詞で一歩以前に似たような台詞もあると思うが
>>405 パクリといえるほど独創性のある展開でも、セリフでもないと思うが。
そのレベルで騒いでいたら、聖書とシェイクスピアしか、物語が存在できなくなる。
408 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/15(金) 22:29:40 ID:vNK54Prn
すまん、スレ違いい板違いだが言わせてクレ…
石川議員逮捕キター!!
さあ後は汚沢だ!
小沢は消毒だぁああああああ
スレ違いw 板違いw 言わせてクレwww
バカじゃねーの
「すべからく努力してる」は「すべからく」が誤用なので
そのまま引用してるならパクリ
まだν速当たりのスレへの誘導コピペの方が好感が持てるな
スレ違いの話題でも誤爆でも、そこから話が膨らむことは稀によくあるが、
ここでリアルの政治について言われても、話を膨らませようがないしなぁ。
東京都すべから区
まあまあ、アンリエッタも政治で悪戦苦闘しているし、
領主様=大貴族はすべて政治家だ。
秘書に一任している(執事に一任)ような政治家(領主)もいるがw
ハルケギニアにもオザーさんみたいな見た目も中身も悪いヤツが出てこないかしら
マザリーニはなんのかんの言っていい奴だし
悪徳政治家というのを、お話に出そうとすると、これが案外難しいんだよ。
下手に小物にすると話が膨らまないし、
大物にしすぎるとただの貴族制批判とかになっちゃうし。
ゼロ魔のコンセプトとは微妙に違うんだよね。
それなりの理由があって高い地位にいる悪徳政治家というのを書こうとすると、
色々と考えないといけないことが多くなりすぎる。
で、それはそれで、ゼロ魔っぽくないんだよね。
ぬるま湯ファンタジーなんだから、本当に汚い奴は出てこないでしょ。
リッシュモンがすごい悪徳政治家なんだが忘れてないか
>>412 誤用してた作品と同じで作者も編集も誤用をスルーしたってたってのは無い?
よくある誤用だと思うんだけどな、よくあるなら知れ渡ってるだろってのを言われると困るけどw
特に予定もなさそうなので代理行きまーす
日は虚無の曜日、向こうで言えば日曜日。
時は午後前、場所は学院の正門。
馬二頭に鞍二つ、一頭はルイズでもう一頭は九朔、ちなみに紅朔は九朔の前に横向きで腰掛けている。
馬に乗って学院正門に居ると言うことは、学院の外に出るか戻ってきた時くらいだろう。
二択の内、馬が向いている方向から一つ、戻ってきたと言う選択肢は無くなる。
「ちゃんと乗れるじゃないの」
「いや、知識だけであるからな。 実際に走るのは未だ不安だ」
先日言った武器屋へ使い魔のルーンの確認をしに行くこと、それが今3人が馬に乗る理由。
「……走って行った方が良いかもしれんな」
「馬でも3時間もかかるのに、走ったりしたらお昼過ぎちゃうでしょ」
「問題ない、3時間程度なら馬より早く走れる」
「いやよそんなの、せっかくの風情をちゃんと楽しまなきゃ」
「……確かに、馬に乗る機会などそうは無いだろうがな」
「アンタたちの移動手段ってなんなのよ……」
九朔たちからすれば、下手に自動車など乗って目的地へ向かうより、ビルの上など駆けたり空を飛んだ方が圧倒的に早い。
体力の問題も限りなく無いと言って良い、やろうと思えば時速数百キロで何十時間も走り続けられるほどの尋常ではない身体能力を持っている。
空も同様、音速を超える速度で飛翔し続けることも可能だ。
馬で3時間の道のりを僅か十分で駆け抜け、飛び辿りつける。
だが、ルイズも一緒にそのような速度で移動すれば、酷い事になるだろうから出来はしないのだが。
「大体が徒歩か徒走りであるな、自動車も全くと言って良いほど乗らぬし」
「じどうしゃ? なんなのそれ」
「動力を馬ではなく別の手段で補った乗り物だ、流石に工学的な説明は出来ないが」
「よくわかんないけど……」
「私達の事を田舎者と思ってる時点で理解なんて出来ないわよねぇ」
自尊心が大きすぎるのも厄介よねぇ、と紅朔。
「……さっさと行くわよ」
この数日で無視することを覚えた主殿は紅朔と視線を合わせずに、馬の腹を蹴って走らせ街へと向かう。
「我等が居た世界では魔術がある事は公にされてはいない、故に魔法や魔術に頼らず別のものを伸ばしてきたのだ」
「それがじどうしゃってやつ?」
「それもあるが風竜より早く飛べる飛行機や、何百何千万リーブルもの重荷を載せて航海する貨物船など上げればキリがない」
魔法や魔術が無くとも人間は力を手に入れていく。
時が進めば宇宙へと飛び出し、太陽系の外まで足を運ぶことが出来るようになるだろう。
それでも、そんな科学と言う名の力を手に入れても、宇宙の外の悪意には一瞬すら抵抗出来ないだろうが。
「話が大きすぎてよくわかんないんだけど」
「主殿からしてみれば常識外の話であるからな、理解しろと言う方が酷であろう」
「ピンクブロンドは普通に魔法を使えていたら、どうなっていたのかしらねぇ。 そこら辺の屑のように家柄を笠に来て威張り散らしてたかしら?」
「わかんないわよ」
ありもしない状況に想像を働かせているより、いずれ魔法を使えるようになった時のため、知識を貯めておく主殿は他の貴族とは一味違う。
無論そういう未来もあったかもしれん、そうであったなら他のメイジと同じようにハルケギニアの生物を召喚して使い魔にしていただろう。
間違っても我等が召喚されることなど無かったはずだ、と言うか今だ紅朔の呼び方はピンクブロンドのままだがそれで良いのだろうか。
「さして気にすることもあるまい、見るべき事はありもしない過去より在るべき現在であるからな」
「未来の方が気になるわよ」
「それより今を気にしなさい、足元を疎かにするとこけるわよ?」
「言われなくても!」
手綱を強く握り、もっと早く走れと馬をけしかける。
まるで生き急ぐかのように馬を走らせるルイズであった。
「逃げる事など無いというのに」
「わかってるわよ! 少しやりすぎただけよ!」
走らせすぎたルイズの馬はずいぶんと疲弊していた、馬は十分や二十分程度の休憩では再度走ることは出来ないだろう。
死んだように横たわっている馬を見ながら、三人はそれぞれの反応を示していた。
「少し休めば問題ないわ! ほら、さっさと武器屋に行くわよ!」
見て欲しくないものを見られているせいかルイズは九朔を押す。
「かわいそー」
馬を指差して紅朔が笑う、いつも通り追撃を掛けている。
「くっ、この馬に飼葉と水をたっぷり上げてちょうだい!」
と街の門のそばに在る馬専用の駅の駅員にそう指示して、また九朔を後ろから押し始める。
「そう押さずとも良いだろうが」
「じゃあさっさと歩きなさいよ!」
いくら力を込めても揺らぎもしない九朔に、半ば意地になって背中を押し続けるルイズ。
「あるっ、きなっ、さいっ!」
「そうは言われてもな、武具屋がどこに在るのか知らぬのだが」
それを聞いてピタリと止まるルイズ。
いくら九朔たちがルイズの記憶を知ろうとも、召喚の儀式時点までの記憶しか無い。
その後の事などもう一度血液を取り込まないと分からないし、勝手に記憶が更新されるわけでもない。
「……さっさと行くわよ!」
押すのをやめたルイズは先立って歩き始める。
「もうちょっと考えられないのかしら」
「誰であろうと慌てれば思考能力が落ちる」
「まぁ自分の失態を見られたくはないけどねぇ」
大股でドスドス歩いていくルイズの背を見ながら、二人の九朔は後を追い始めた。
そうして街への門を潜る、広がる街並みを見ながらも九朔は呟いた。
「……偶然と言うこともあるかもしれぬが」
「それはなさそうね」
「……はぁ、主殿に話しておくべきか」
「ご自由にー」
変わらず浮いたままの紅朔は動き出す。
「なるようになる、と言うのもな……」
ルイズ、紅朔に続いて歩き出す九朔。
こっちに来てから考えてばかりな事に、心労ばかり溜まっている気がした九朔であった。
ゼロ魔政治ネタに漬かると、何とか公爵記…的な何かになる訳で。
異世界知識を使った改革で立身出世していく主人公を見て楽しむわけだ。
俺は政治系のお話大好きだ。
「こっち、こっちよ……たぶん」
白色を基調として作られた街並み、向こうのアーカムシティでは全く見られない景色。
建築技術のレベルが違うし、建物の配置や道路などの効率もそれほど考えられてはいないだろう。
現にメインストリートであるこの道、大通りでさえ道幅5メートルも無い。
かなり狭い両側二車線の道路程度だ、歩道が出来るかどうかも疑わしい自動車が走れば簡単に埋まる道幅。
それは地球の話で自動車など存在していないこの世界で、大通りを闊歩するのは人間ばかり。
「いやになっちゃうわ、なんでこんなに狭いのよ」
浮かんだまま九朔の肩に腕を乗せ、九朔に引っ張ってもらっている紅朔は大きく溜息を吐く。
人人人、人の波が大通りを埋め尽くす。
しかも各々が行きたい方向へと進んでいるからよりごちゃごちゃと入り乱れていた。
「仕方あるまい」
などと言いながらもルイズと九朔二人の周りに人は居ない。
狭いからと言って誰かの体と触れるような位置に通行人は居ない。
ルイズは貴族の証であるマントを羽織っているし、二人の九朔はその身に纏う衣服や紅朔が浮かんでいたりで平民とは思えない存在感を出しているからだ。
明らかに貴族と平民に見えない二人に、度胸試しの如く近づく輩はいない。
故に人の波が割れる、小魚の群れを突っ切る大魚、そういう表現が合う光景。
「確かに、せめて倍ほどの幅があれば良いのだが」
「一番大きな通りで狭いって、随分とそっちは広いのね」
「一番小さい自動車用の道路でももう少し広い、区切りを置いて隣に歩行者用のもあるからあと3か4メイルほどはあるな」
気が狂っているとしか思えないとある科学者が巨大なドラム缶っぽいロボットを操ってよく暴れるので、すぐさま建物を建て直す為に効率的な配置がなされていたりもするアーカム。
発展具合も世界屈指の覇道財閥が本拠地を置くことから、例を見ないほどの大都市となっている。
そのアーカムシティがあるマサチューセッツ州、そことその他の州を統べているアメリカの国土は世界でも五指に入るほどの国土を誇る。
広大な土地に対して住む人間が少ないなどと言われる事さえある、そんな大都市に住む二人の九朔からすればこの大通りからしても狭く見えるのは仕方が無いのかもしれない。
「まだ着かないの? と言うか迷ってない? どれだけお子様なのよ」
フググと喉に出掛かった言葉を必死に飲み込む主殿。
「は、初めてなのよ、大体路地裏なんかに来ないんだから!」
そう言いながらも大通りから外れ、路地に入る。
時折足を止め、思い出すように唸る。
「ピエモン、秘薬屋の近くだったはず……」
路地を進み、さらなる裏路地へと入る。
「……なにこれ、汚らしいったらありゃしないわね」
「うぅ、なんでこんなゴミが置いてあるのよ……」
ルイズと紅朔は鼻をつまんで鼻を打つ刺激臭に顔を顰める。
言うなれば臭い、生ごみが腐ったり、まるで排泄物がそのままあるかのように。
「堪らんな、裏は汚いと言うのはどこも変わらんか」
「アンタ達の世界もこんなふうなの?」
「ゴミが置いてある時もあるが、流石に悪臭がするほどではないのだがな」
ゴミや汚物をできるだけ見ないようにして進み続ける。
「……ふむ、やはり偶然ではないか」
「……? なにが?」
「付けられている」
「付けられてる? 誰かが追いかけてきてるわけ?」
振り返ろうとしたルイズを九朔は遮って止める。
「最初は偶然かと思ったのだがな、街に着いてからもずっとこちらを見ている」
「……街に着く前から追いかけてきてるわけ? どこら辺で気が付いたのよ」
「学院を出る前からだが」
「最初っからじゃないの!」
「仕方あるまい、今日は虚無の曜日だ。 他の生徒も街へと繰り出すかもしれんしな」
「それはそうだけど、ずーっと見られてるってのはおかしいでしょ!」
「で? どうするの? 殺すの?」
「なんでそんな物騒な言葉が出るのよ!」
欠伸をしながら言う九朔の言葉。
洗脳とか記憶を消すとか、そんな事をしてるより出会い頭に首を落とす方が早い。
無論死体など残すはずも無く、綺麗さっぱり消滅させる事が出来るので行方不明扱いになるだろう。
すでに退屈している紅朔は面倒臭くてそう言っただけであろうが。
「あの四辻で待ち構えてみるか?」
「……相手に依るでしょ」
「とりあえず付いてきているのが誰か、確かめてからに」
「ええ、そうしてちょうだい」
歩きながら話し、10メイルも無い先にある四辻。
「武具屋もあるかどうか見ておかねばな」
「そうね、聞いた話じゃ銅で出来た剣の形をした看板だって……」
人気が少ない路地裏を、靴音を鳴らしながら進む。
十秒ほど掛かって四つ角、交差点に差し掛かる。
右、左と確かめて。
「あれではないか?」
「そうね、たぶんあれよ」
四つ辻を曲がった先に茶色の、錆びたように見える剣の形をしてぶら下がる看板を見つける。
「それでは主殿」
「追いかけてくるのを待つ訳?」
「隠れ追いかけてくる者の顔を確認しよう、知っている者なら理由を問えば良いし、知らぬ者なら尾行を撒いた方が良いだろう」
完全に撒いてから武具屋へ向かった方が安全だろう。
会話しながら角を曲がる、曲がり切ってから九朔は足を止め。
「主殿、体に触れるがよろしいか」
九朔はルイズへと向き直った。
「え? ええ、変なことじゃなきゃいいけど……」
「失礼」
一言詫びて、ルイズの背中から手を回し抱き上げる。
「キャッ!?」
いわゆるお姫様抱っこ状態で、ルイズの体を九朔は苦も無く抱えている。
「落ちぬよう、首に手を回していただきたい」
「……ええ、って落ちる?」
九朔に言われるがまま首に腕を回すと同時に、ルイズの視界が一気に上がった。
「え? ひゃあっ!?」
ほぼ垂直に一っ飛び、九朔はルイズを抱えたまま10メートル以上飛び上がり、隣の建物の屋根に左手を掛けて登り上がる。
そうして初めて見る景色、建物の高い階層から見る景色とは一味違う視界、フライを使えるメイジならもっと幼い頃に見れるはずの景色。
建物など登ったりしないで見下ろせる景色とはこんなにも違うものなのかと、白い石作りの街並みが全く違う景観に内心感動している。
「あん、騎士殿に抱えられて羨ましいわ」
そんな感動を無にするような声、ふよふよ浮いていた紅朔がクスクス笑いながらも二人を見ていた。
「ちょ!? 危ないじゃないの!!」
押し退けるように紅朔がルイズへと肩を合わせ、九朔の腕に収まろうとしていた。
「あら、いいじゃないの。 私もそうして欲しいからこうしているだけよ?」
「今じゃなくていいでしょうが! 落ちたらどうするのよ!」
「騎士殿が助けてくれるわよ、ねぇ?」
「確かにそうだが、今落ちたら面倒な事になるから止めておけ」
「騎士殿はとってもお優しいんだから」
押すのを止め、元きた道の方向へと飛んでいく。
「撒かないで覗けばいいじゃないの」
頭を指先で突付きながら、屋根伝いに飛んでいく。
九朔はルイズを抱えたまま九朔を追いかけ、屋根の上を跳ねる。
「知人であれば覗くのは止めておけよ」
「はいはい」
20メートルほど屋根から道なりに引き返し、浮かんでいる紅朔が下を覗く。
僅か数秒覗いて九朔は引き返してきた。
「赤い尻軽と青い無愛想」
そうして開いた口から出たのは、侮辱として通用する言葉。
見たまんまとルイズの記憶からの情報でその人物像を口にする。
「もうちょっとましな言い方はないのか」
「9割方ピンクブロンドの情報だけど?」
「………」
黙るルイズ、思い当たる節と言うかそのままの感想が紅朔の口から出たのが癪と言うか。
確かに自分の記憶を持っていると考えてしまう。
「……キュルケと、タバサ……だっけ。 何で追いかけてきたのかしら」
「興味本位でしょ? ピンクブロンド、じゃなくて私達のことが気になるとかね」
「アンタ達話してたんだったわよね」
「主殿を心配しているのだろうな」
「んなわけないでしょ」
降りましょう、と一言伝えれば「うむ」と言う返事が帰ってきて、体が軽くなったような重くなったような変な感覚をまた味わう。
10メートル以上からの落下、フワリと音も衝撃も無く降り立った。
「……真後ろじゃなくてもいいんじゃない?」
「先日目の前に降りたら大層驚かれたのでな」
「離れた所に降りるって選択肢は無かったわけ?」
文句を言いながら腕から降ろしてもらうルイズ。
「邪魔。 それで、何の用?」
いきなり背後に降りてこられ、反射的に杖を向けてきたタバサ。
その杖先はルイズと九朔に向けられ、ルイズが腕から降りれば鼻先に。
それを手で退け、腰に手を当てる。
「学院からずっと付けてきてたんでしょ? 全部わかってるんだから」
自信満々に、赤い尻軽ことキュルケと、青い無愛想ことタバサへと胸を張る。
「付ける? なんでゼロのルイズをつけなきゃいけないのよ」
髪を掻き上げながら、キュルケも胸を張る。
平原と山だった、隔絶した差、覆せぬ戦力差。
それは負ける事が決まっていた戦いだった。
「ああ、これは駄目ね。 お母様が居たら『もぐ』でしょうね、それも全力で」
その戦いに割り込む、背後からの奇襲を行ったのが紅朔。
キュルケの背面から逆さで、両手を使って胸を持ち上げていた。
「ちょ、いきなり何よ!?」
むにゅんもにゅんと揺れる、いきなりの事で振り払おうとキュルケは腕を振るう。
それは肘打ちになって紅朔に威を振るうが、紅朔は上体を逸らしながらも避けつつ舞い上がる。
「私はお母様似でも問題ないわ、騎士殿は……お父様似が良かったかしら?」
「それを言うでない……」
大十字 九朔の容姿は母親たるアル・アジフに似ている。
髪色から瞳の色、……そして背の高さも。
無論九朔の方が高いが、父親の大十字 九郎よりは低い。
両親の身長を足して二で割ったような背の高さ、男としては少し低いかなと言う程度。
九朔本人としては父である九郎と肩を並べ、見劣りしない高さが欲しかった。
「いいじゃないの、お母様にも似て嬉しいでしょう?」
「それはな、言わずとも分かろうが。 だがな……」
「あらあら、お父様に弄られて気にしちゃってるのね。 ベッドの中で慰めてあげましょうか?」
「いらん」
「ああん」
自由自在に飛び、抱きついてきた紅朔を押し退ける。
まだ希望はある、と内心将来に期待している九朔だった。
「どうしたのよあんた、ワインでも飲んできたわけ?」
尻餅を着いて見上げるキュルケ、そんな姿をルイズは訝しんで見下ろす。
ルイズはあの使い魔の後ろに居たために表情を見ていなかったんだろう、気が付いておらずいつも通りの少々眉を顰めた表情。
強張る首をなんとか動かし、隣に立っているタバサを見上げた。
その横顔は険しい、唇を噛み締め眉を顰めている。
杖を握る手も白くなるほど力が込められ、強く睨みつけるように彼女を見ている。
タバサもあの表情を見て、ルイズが召喚した使い魔に対して恐れを抱いたのだ。
あり得ないと否定したい、人間にあんな表情が出来ると言うのが、今目前で見ても否定したくなるほど。
「……いやぁねぇ、ちょっと小石に躓いただけよ」
嘘、あの使い魔に見えも触れもしない手で押された。
簡単に押し負けた、抗うことを瞬時に放棄して諦めた。
巡る考えを捨て一息深呼吸、震える足に活を入れて立ち上がる。
「そちらの使い魔さんの思う通りにはならないわよ、だって私はその人の大切なものには手を出しませんもの」
自分のミスを恨みながらキュルケは言う。
虚勢だ、立って居られないほどのモノを見てボロを出さないように全力を尽くしている。
ルイズが召喚した使い魔の一人と対峙して、体が凍りついたように動かなくなった。
体中に杭と言う杭を打ちつけられ、僅かばかりにも動かせない状態。
逃げ出したくても逃げ出せない恐ろしいナニかに、簡単に征服された。
「だって死にたくないですもの」
そう言った、気がつけばそう言っていた。
それを少し離れたところで聞いた紅朔はまた嗤う。
「死ぬ? 死ぬですって?]
あはははは、ととても愉快そうに笑って言った。
「安心なさいな、触れたりしたら死ぬのが救いだと思える程の目に遭うのだから」
「すまぬな、我等の一番大切なものは家族なのだ。 紅朔は特に過敏でな、こういう事に関してはやり過ぎてしまう」
申し訳ない、そう言いながらミス・ツェルプストーへと頭を下げる。
「……いえ、一番大切なものだって、気がつかなかった私が悪かったわ」
少々顔色が悪く、拳を作っている手も震えている。
紅朔の殺気に当てられ、恐怖を抱いてしまったのだろう。
トラウマにならなければ良いのだが。
隣の、主殿よりも背が低い青髪の少女、ミス・タバサが鋭い視線を向けてきている。
こちらの少女は警戒心剥き出しだ、それも虚勢に近いものだとわかるが。
「それで、貴方達はどこに行こうとしてたの?」
それでもなお聞いてくるところ、杞憂かもしれんか。
「武具屋へ向かっていた所だ」
「武器でも買うの?」
「……どのような物があるか見てみたいだけだ」
「ふぅん、どこの国も武器なんて変わらないと思うけど」
「さっさと行くわよ!」
話を無理やり中断させる、主殿が我の腕をとって引っ張るが。
「ぬぐぐ……!」
「貴女如きの力で動かせないって、いい加減理解しなさいよ」
踵で踏ん張り、腕を取って体を傾けながら引っ張るが少しも動かない。
「主殿、会話が出来るのだから言葉で動かさねば」
「……行くわよ!」
「了解した」
含み笑いの紅朔、なんだかんだと言って玩具的な意味で主殿を気に入っているようだ。
そうして笑いながら九朔の傍に寄る紅朔、変わらず肩に手を置いて引っ張ってもらう。
時間が無いわけではないが、無駄にするほど有り余っているわけでもなし。
故にさっさと武具屋に向かう。
「……ちょっと、なんで付いてくるのよ」
「いいじゃないの、私達も気になるんだから」
歩き出してキュルケとタバサの隣を通り過ぎ、後ろから聞こえてくるのは二つの足音。
振り返ればやはり居るのは赤と青。
「関係ないでしょ」
「関係はないけど興味があるのよ、色々とね」
「……ふん、付いてきても良いけど邪魔だけはしないでよね!」
「はいはい」
大して重要と考えていないのか。
事が偽では無く、真であるならば間違いなく危険だ。
今後の主殿の人生が様変わりするほどの出来事、容易く信用を置けるか分からない者に僅かでも示唆を与えるのは危険だ。
「主殿」
そうやって歩きながらルイズの耳元へ口を寄せる。
耳元で声を掛けられて、驚いたルイズの肩が僅かばかりに揺れる。
「な、なによ」
「あまり他人に見聞きさせることではないと思うのだが、彼女等は信用出来ると?」
「……ウソかホントか確かめてみてからでも……」
「そのような考えは勧められたものではない、主殿が『そうである』と言う価値観を欲しがる者もどこかに居よう」
「だから、確かめてからじゃないとそんなのわかんないじゃない」
「そういう話が出回る事自体、主殿に不利益を齎す可能性もある。 ここは二人を追い返すなりした方が良いと具申するが」
いわゆるネームバリュー、今は魔法を使えない落ちこぼれなどと思われているが。
もとより格式高い公爵家の一員で、伝説と謳われる虚無だと知られればいろんな方面から注目を集めることになる。
間違いなく今までとの環境が一変するであろう、最底辺から最高位の扱いを受けると思われる。
それが強力な力、例えば系統魔法を大きく超える破壊を齎すなら、間違いなく利用しようと言う輩が現れるだろう。
その一番可能性があるのは『国』、あるいは『ブリミル教』、どちらか、あるいは両方が近寄ってくるはず。
ルイズに取って国もブリミル教も、敬意を払い従うべきものだと見ている。
従えと言われれば喜んでかしずくだろう、これは貴族であるならば当たり前で常識的な話。
そうなれば国威の上昇や、権威のさらなる上昇へと利用される可能性もある。
ルイズが虚無である以上、利用し尽くした後に捨てる、等と言うことはないだろうが……。
系統魔法と違いあらゆる面で不明なことが多すぎる、虚無だからと言って切って捨てるのは甚だしい。
「謀り事の渦中に放り込まれるかもしれぬ、そういうものにはまだ触れるべきではないと思うのだが」
「なによそれ」
「主殿は自分の性格を理解しておられるか?」
「………」
「主殿が鍛え上げられた鋼の如く、強靭で折れること無い意志を持っているなら、我は何も言いはせぬ」
だがそうではないだろう? と言いたげな視線を送る九朔。
「そんな子供じゃないわよ! 自分のことは自分で決められるわ!!」
足を止め、九朔に向き直りながら怒鳴り声を上げるルイズ。
「ならば心に決めて欲しい、己が選んだ選択を最後まで貫き通すことを」
「……いいじゃない、決めてあげるわ! 誰が何と言おうと私のことは私が決める! これで良いんでしょ!!」
「はい、よくできました。 証人は4人も居るから、後でどうしよう……なんて言っちゃダメよ?」
軽く拍手しながら、小馬鹿にした笑みを浮かべる紅朔。
「何か良くわからないけど、ルイズが言ってる事って普通じゃないの?」
「……同意」
後ろの二人、キュルケとタバサはルイズが言った事など当たり前すぎてよく分かっていなかった。
「では主殿、先程の事を決めて欲しいのだが」
「変わらないわよ!」
「了解した」
「あら? 私達の話だったの?」
「もう終わってるわよ!」
怒り心頭、大股で歩く主殿。
この選択が間違ってなければ良いのだが、そう考えながらも目的の武具屋はすぐ目の前だった。
武器屋へと勧める石段、それを上る主殿については上がらない。
石段の前で止まって振り返る。
「……どうしたの?」
付いてくることを許可したのと、見聞きしたのを喋ることは違う。
つまりここで、二人には『約束』をしてもらわなければならない。
「一つ約束して欲しいことがある」
「約束? なにを?」
「これから武具屋の中で見聞きしたことは決して他言しないと誓って欲しい、でなければ主殿の言葉に逆らってでも追い返す事となる」
真っ直ぐと見つめ、約束の内容を口にする。
「……貴方としては知られたく無いってこと?」
「その通りだ」
隣で浮かんでいる紅朔は、珍しく笑みを消して二人を見ている。
「……どうする?」
ミス・ツェルプストーは隣のミス・タバサを見ながら言う。
「よぉーく考えてね、約束を破ったりしたら一族郎党皆殺しだから」
と言い。
「……ああ、そうなるとピンクブロンド以外の学院関係者も皆死んで貰わなきゃいけないわねぇ」
誰に喋ったか分からないから、丸ごと吹き飛ばした方が早いかしら。
と紅朔はほざいた。
「そんな訳があるか、からかうのは止せ」
「いやぁねぇ、単なる例えよ。 この子たちも喋ったりしたらそうなる位に考えていた方が口が固くなるわ、そう思わない?」
にっこりと作る笑顔、清々しいほどに悪ふざけを塗りたくった笑顔で二人を見る。
「はぁ……、紅朔の言ったことは忘れてくれ。 そんな事にはならないしさせもしない、精々汝らの記憶を消すか弄るかするだけだ」
向き直って約束を破った際にやるだろう事を教えておく。
「そういう事よ、怖いんならさっさと帰って自室のベッドにでも丸まって震えていなさい」
言うだけ言って紅朔は石段の上にある武具屋へと飛んでいく。
「……そういう事が出来るの?」
「……可能だろうな、魔力を込めたクトゥグァを一弾倉分撃ち込めば学院を──」
「……そっちじゃなくて」
「ん? 記憶の方か、何の問題も無く改ざん出来る」
「………」
「弄られた事すらも覚えていないので、汝らは違和感なく何時も通りに過ごせるであろう」
「……ほんと、どうする?」
難しい顔、眉を潜めて思案しているのだろう。
勿論紅朔が言った事などしないし、記憶の改ざんも約束を破らなければしない。
「……約束する」
興味が勝ったのか、喋らないことを約束したミス・タバサ。
隣のミス・ツェルプストーも同じように頷く。
「我としてはここで引き返して貰った方が尾を引かなくて済むのだがな」
「興味を惹くような気になる事ばかり言って、それでいて追い出そうとするなんてあんまりじゃない?」
「……汝ら貴族には知って欲しくはないものでるからな、せめて主殿が──」
「なにやってんのよ! 早く来なさいよ!!」
遮るように、実際遮って武具屋の前に居る主殿が上から声を掛けた。
「……とにかく他言無用で頼む」
「わかったわ、喋らないと約束しましょう」
「助かる」
欲しい答えを得て、石段を登り始める。
本当にこの二人が喋らなければ良いのだがな……。
以上で投下終了です、全然進まなくてスミマセヌ。
以上、代理終了……
なんですが、一部書き込みの冒頭で空行があったため、書き込み失敗しないように勝手に省いてしまったんですが、
よく見るとオリジナルのほうでは空行1行目にちゃんと1文字スペースが入力されてたってことに途中で気付きました
wikiに登録される方、お手数ですが代理スレの原文見て改行入れてください_| ̄|○
乙
おかえり
ベイダー卿召喚は別スレにあるけど、ダース・シディアスは召喚されたことってないの?
やっぱ難しいのかねえ
難しいも何も、そいつが呼び出されにゃならん理由が思い当たらん。
ルイズをダースなんとかに仕立て上げるとか
ルイズより教皇かジョゼフが召喚する方が良いと思うけどね
連想で8歳アナキン召喚して「お姉ちゃん天使?」なんて言われるルイズ妄想した
シディアスにはルイズよりタバサの方が葱背負った鴨に見えるか
紅朔は可愛いな
興奮した
乙
紅朔はブレないか
ルイズはいいオモチャ扱いだわな
暗黒卿はバチカンの業務が忙しいので召喚されてる暇がありません
つい、この間にジェダイの襲撃を受けたばかりだしな。
ひゃっほう、避難所の設定考察スレに名無しで書き込んだと思ったら名前欄を消し忘れてたぜ、しかも誤字ってたぜ、かなり恥ずかしかったぜ。
ともあれ、他にご予約の方がおられなければ15:45より第44話の投下を行います。
そう言えば昼間に投下するのって随分と久し振りな気がしますな。
「なるほどな」
ユーゼスはコルベールから、現在魔法学院がどのような状況に置かれているかの説明を受けていた。
それによって判明した事実は主に三つ。
魔法学院が賊に占拠されていること。
賊は女子生徒や教師たちのほぼ全員を食堂に集めていること。
そして、その対処に銃士隊が当たっていること。
(……食堂から光が漏れている理由はそれか。そして私に襲い掛かってきた連中も、その賊とやらの構成員というわけだな)
これで夜明け前という時間帯であるのに明かりが付いていた理由と、自分が戦っていた連中の正体が分かった。
しかし、まだ疑問はある。
「それで……お前はなぜここにいる、ミスタ・コルベール」
「なぜ、とは?」
この中年教師だ。
「お前とて魔法学院の教師だろう。その学院が危機に陥っているのならば、立ち上がって襲撃者と戦うのが筋ではないのか?」
「……それは……以前の授業でも言っていたが、私は臆病で……」
「お前が言うところの『臆病者』が、私を助けるためとは言え『それなりの実力者のメイジ』を『一瞬で焼死させる』ほどの炎を放つとは思えんがな」
「……………」
苦しげな表情で顔を伏せるコルベール。
おそらくは自分の行いを悔いているのだろう。
―――だが、ユーゼスは見ていた。
自分と戦っていたメイジを殺した直後、炎の中から姿を現したこの男の顔を。
何の感情も浮かべていない。
酷薄だとか残虐だとか、そんな形容すら生ぬるい。
あの局面で『ただ単に動きを止める』というだけならば足なり腕なりを焼けばいいだけなのに、コルベールはメイジの全身を炎で丸焼きにした。
それだけでこの男の戦闘スタイルは大体分かる。
(『殺し慣れている』……いや、『殺しを仕事や作業として割り切っている』のか、この男は)
自分の知識の中では、心を持たないタイプの人造人間が最も近かっただろうか。
戦うだけのマシン、という印象を真っ先にコルベールから受けたのだが……。
「……弁明はしない。私が先程行ったことは君の言った通りだからな。……しかし、それでも私は…………戦うことが、怖いんだ」
それでも今のコルベールからは、葛藤のようなものが感じられる。
いわゆる良心の呵責というやつだろうか。
(キカイダーやワルダーなどとは違うように思えるが……ふむ)
それぞれタイプが異なるが、善と悪との狭間で葛藤していた人造人間たち。もっとも、コルベールは犬を見て逃げ出すような真似はすまいが。
何となくではあるが、彼らに近いものを感じる。
……いや、善と悪の狭間で苦しむと言うのであれば、それはかつての自分とて同じだったか。
地球人の……人間の凶暴さや身勝手さ、愚かさ、弱さ。
仮面を被っていた頃の自分は、それを自分自身で具現化していた。
それに対する自分のコピーであるイングラム・プリスケンは、まるでユーゼスの良心の具現化したかのように創造主に逆らい、この自分を打ち倒した。
―――「俺たちの真の敵は、自分自身の中に潜んでいるのだ」―――
全ての決着がついた後、自分に向けてイングラムが言った言葉である。
イングラム・プリスケンがユーゼス・ゴッツォに……コピーがオリジナルである自分に言ったということを考えれば、何とも皮肉なセリフと言える。
(……まあ、いい)
コルベールの内心の葛藤とやらがどんなモノなのか探りを入れる気など、最初からない。
それにコルベールは一応、ユーゼスにとって命の恩人である。その恩人に対して、いつまでも精神的なプレッシャーをかけるわけにもいくまい。
加えて、自分は彼に偉そうなことを言える立場でも何でもないのだ。
葛藤から抜け出したか、葛藤の真っ只中にあるか。
抱えた葛藤の種類や深さに異なる点があるにせよ、ユーゼスとコルベールのハッキリとした違いはそのくらいであろう。
「お前の戦いや殺人に対するスタンスはともかくとして……」
妙なシンパシーを感じつつ、ユーゼスは今現在の問題へと会話をシフトさせる。
「これからどうするつもりだ? あの銃士隊の隊長―――ミス・ミランの性格からして、穏やかに交渉が運ばれるとは思えんが」
「……………」
これからの自分たちの行動には、大きく分けて二つの選択肢がある。
賊が占拠している食堂に行くのか、それとも行かないのか。
『行ったとして賊にどう対処するのか』、『行かないとして危機回避のために学院そのものから脱出するのか』など、選択した後もまだまだ分岐は数多いのだが、少なくとも行くのか行かないのかは決めなくてはならない。
その二者択一に対してまずユーゼスは、
「私は行く」
そう選択した。
「エレオノールや御主人様の無事を確認したいし……。何より正確な状況が知りたいからな」
「……………」
沈黙を続けるコルベール。
どうやらまだ決めかねているらしい。
ユーゼスの簡単な分析では、コルベールはかなりの手練れのはずだ。
戦闘になった場合に備えて、ぜひとも戦力に組み込んでおきたかった。
「ともあれ、お前が行かないと言うのならば、それでも―――、む?」
「……? どうしたのかね?」
無理強いして連れて行くのも、と考えた矢先、ユーゼスの目に映る光景がぼやけた。
正確に言うと、左目の視界に『今自分が見ているものとは別の光景』が割り込んできていた。
「これは……」
嫌な予感がしたので無事な右目で左手を見ると、『武器』に該当するものに触れてもいないのにルーンが光を放っている。
そう言えば召喚された夜、クロスゲート・パラダイム・システムを使ってルーンを調べた時に『主人の視覚を使い魔に投影する』という機能があったことを思い出す。
アレの発動条件は確か『主人が危機的状況に見舞われた場合』だったはず。
ということは。
「事態が動いたらしい。……ここで話をしている場合ではなさそうだ」
「……っ」
左目に映るのは食堂の中。
何者かは分からないがメイジと思わしき連中と、キュルケとタバサとアニエスら銃士隊の隊員たちが戦っている。
どうやら彼女たちで奇襲でもかけたらしい。
「ふむ……」
トライアングルメイジ二人に、腕利きのシュヴァリエ、そしてそれに準ずる実力を持った兵士が数名。
おまけに虚無の担い手まで参加するのであれば、並の敵は倒せるだろう。
ユーゼスとしても、それでこの事件が解決するのならそれに越したことはない。
だが、これから戦う敵が『並』以上だった場合のことも考えておく必要がある。
よってユーゼスは急いで、しかし目立たないようにして食堂に移動を始め、
「待ってくれ」
数歩目でコルベールに呼び止められた。
ユーゼスは無感情な目を中年教師に向け、その発言の意図を問いかける。
「……まさか、『危険だから行くな』とでも言うつもりか?」
「いや……。私も行こう」
「ほう」
コルベールの表情にはまぎれもない決意の色が浮かんでいる。
あれだけ躊躇していたと言うのに、一体どのような心境の変化があったのだろう。
「理由を聞いておこうか」
つい先程まで情緒が安定していないように見えたコルベールを、そう簡単に連れて行くわけにはいかない。
ただ場の空気に流されたり、単なる気まぐれだけで渦中に飛び込まれては、ユーゼスの身がかえって危ないのである。
「決まっているだろう?」
そしてコルベールは、渦中に飛び込むための動機を口にした。
「……今この瞬間、危険に晒されているのは私の教え子だからだ」
それはユーゼスにとって納得のいく説明ではなかったが、その言葉を語ったコルベールの口調と視線からは確固たる意志が感じられた。
まるで、かつて自分と敵対した者たちのように。
「……………」
ユーゼスはコルベールの申し出を否定も肯定もせず、食堂に向かう。
「―――――」
コルベールもまた、無言のままユーゼスに並走する形で食堂を目指す。
二人揃って走る中で、ユーゼスは『今日は結局、徹夜になりそうだな』などと考えるのであった。
支援
結論から言うと。
ルイズやアニエスら女性陣と、ユーゼスとコルベールが合流して事に当たるということはなかった。
なぜなら彼らが到着するよりも早く、彼女たちが行動を起こしてしまったからである。
「……………」
ルイズの視界を借りているユーゼスは、その行動の開始から経過、事の結果に至るまでを客観的かつ詳細に観察することが出来た。
―――まずタバサが風魔法で紙風船を膨らませ、更にそれを食堂の中へと飛ばす。
次にキュルケが『発火』あたりでも使ったのだろう、杖を振ってその紙風船に火をつける。
すると紙風船は派手な音と光とを撒き散らして爆発。
どうやら中にリンか何かの爆発物を仕込んでいたらしい。
同じタイミングでルイズも食堂の天井あたり目掛けて杖を振り、全体的な爆発の規模を大きくしていた。
人質として集められたのであろう寝巻き姿の女子生徒たちはその爆発に驚いて悲鳴をあげ(と言ってもユーゼスに声は聞こえなかったが)、敵と思しきメイジたちは閃光を直視したせいで視覚をやられ、目を押さえる。
そして混乱に乗じる形でキュルケ、タバサ、ルイズ、アニエスたちが敵集団に攻撃を加えていき、あとはこのまま押し切れるか……と思った矢先に。
いきなり炎の弾丸が彼女たちに襲い掛かった。
炎弾は寸分たがわぬ正確さで、まず銃士たちが持っているマスケット銃に命中。
銃の中の火薬に引火して爆発が起こり、マスケット銃は銃士の指を道連れに四散する。
アニエスだけはとっさに銃から手を離して手指の損傷を防いだようだが、やはりいくらかのダメージは免れないようだ。
続いて炎弾はキュルケたちへと飛来して彼女たちを次々と薙ぎ倒していく。
(ほう)
不謹慎ではあるが、ユーゼスはその炎弾の使い方に感心していた。
炎弾は『ただ単に炎を敵に当てる』という類のものではなく、着弾寸前に爆発して、その爆風の衝撃を敵にぶつけるという攻撃方法だったのである。
これならばただ熱エネルギーをぶつけるだけではなく、物理的な衝撃をもって相手にダメージを与えられる。
必殺とまではいかずとも、上手くいけば熱と衝撃の二重攻撃で相手を殺すことが出来るし、気絶でもしてくれれば後は始末するだけ、そこまで行かない場合だろうとダメージで動きは鈍るし、あるいは目くらましとしても使用が出来る。
しかも『単なる炎の弾丸』と『爆発』との使い分けすら可能なのだ。
何と使い勝手のよい攻撃方法であろうか。
(勉強になるな……)
ただしこれを実行するには、『命中する直前に相手の至近距離で炎弾を爆発させる』という操作を行う必要がある。
視界が良好な状態ならまだしも、煙が立ち込めるこの状況でそれを行うとは……。
まさに驚異的な命中精度と言えるだろう。
なお、ここまで詳細に『炎弾』の分析が出来たのは、他でもない視覚情報を提供している彼の主人もまたその攻撃を受け、一部始終を目にしていたからである。
支援
閑話休題。
倒れ伏している視界に、タバサがふらつきつつも立ち上がろうとしている光景が飛び込んできた。
それでも炎弾のダメージが強く残っていたのか、青髪の少女は起き上がりかけたところで大きくよろめき、食堂の床に転がる。
直後。
煙の中から、右目を眼帯で覆った白髪の男がヌッと現れた。
タバサよりは動ける状態らしいキュルケは床に落ちていた自分の杖を拾おうとして、その杖を男に強く踏まれてしまう。
男とキュルケが何か会話をする。
続いて男はおもむろに自分の左眼に指を突っ込んでその眼球を引きずり出した。
観察するに、どうも義眼らしい。
(……あの命中精度はこのためか?)
最初から目が見えていないのならば、煙幕や目くらましは意味をなさない。
それに視覚が無いのであれば、それ以外の感覚が鋭敏になっているはずだ。
もっとも、それだけではあの正確無比な射撃と爆破ポイントの見切りは成し得るものではないが。
ユーゼスがそのようにしてアレコレと考えている間にも、左眼に映される事態は目まぐるしく進行していく。
盲目のメイジが杖を振り、起き上がりかけたキュルケに向かって炎を放とうとする。
しかし、その炎がキュルケを焼くことはなかった。
いきなりアニエスがメイジの後ろから飛びかかり、剣を振るってその攻撃を妨害したのだ。
……いや、正確には『盲目のメイジを不意打ちで仕留めようとしたが、攻撃を中断させる程度の結果しかもたらさなかった』と表現するべきだろうか。
現に盲目のメイジはアッサリとアニエスの不意打ちを回避し、余裕たっぷりな様子でキュルケに放つはずだった炎をアニエスに放っていたのだから。
アニエスは辛うじて炎を回避し、続けざまに踏み込んで盲目のメイジを討とうと刃を向ける。
メイジはそれに応戦し、剣と鉄の杖とが数回交差した。
(このまま勝てるか?)
見たところ、剣の腕はアニエスの方が勝っているようだ。
ユーゼスとコルベールは、すでに食堂の入口間際にまで移動している。
後先考えずにいきなり乱入しては無闇に場が混乱するだけ……ということで機を窺っていたのだが、この分ならアニエスの優位が確定した段階で突入するべきだろう。
などと考えていると。
メイジが大きく後ろに跳躍して飛び退き、それと同時に杖から炎が放射され、アニエスの持つ剣をグニャリと融解させてしまった。
アニエスはイビツに曲がってしまった剣を厳しい表情で投げつけるが、当然のごとくメイジの杖に弾き飛ばされて終わる。
丸腰になったアニエスは一旦退避しようとするが……。
例の『爆発する炎弾』を受け、吹き飛ばされてしまうのだった。
「ぐぁああっ!!」
メンヌヴィルの攻撃によって宙を舞い、壁に叩きつけられるアニエス。
辛うじて気絶こそしなかったものの、爆発と打ち身で二重の衝撃を食らってしまったためにダメージは大きいようだった。
「……っ」
そんな光景に、ルイズは歯噛みする。
アニエスの不甲斐なさに、ではない。
自分の危機に居合わせない使い魔に、でもない。
何よりも、自分の無力さに悔しさを感じているのだ。
倒れ伏したままでコッソリと周囲の状況を確認してみれば、アニエス以外の他の面々もかなり苦戦していた。
黄燐を使った簡易爆弾の目くらましから回復したメンヌヴィルの部下たちは、まさに怒り心頭と言った具合に苛烈な攻撃を行い、それに対する銃士隊は半数近くが指を失ってマトモには戦えない。
キュルケも杖を拾って戦ってはいるが、ダウンしてしまったタバサを抱えながらでは分が悪いようだ。
(どうすれば……)
先の攻撃のダメージは、ある程度だが回復している。
立ち上がって銃士隊やキュルケに加勢することも出来るはずだ。
だが、自分が加勢してどうなる?
自分が使える虚無の魔法は『エクスプロージョン』と『ディスペル』。
どちらも強力ではあるが、使うためにはあの長ったらしい詠唱を延々と唱え続けなければならない、という欠点がある。援護の期待があまり出来ない今の状況では使えない。
ならばいつもの『失敗魔法』の爆発を使えば……とも思ったが、戦闘に関しては素人同然の自分の魔法が、それなりの戦闘経験を積んでいるであろうメイジたちに簡単に当たるとも思えない。
それに何より、位置が不味い。
ついさっきアニエスが食堂の壁まで吹き飛ばされたが、自分が今倒れている地点はアニエスから2メイルも離れていないのだ。
「フン……」
のっしのっしと歩く筋肉質の男。
彼はアニエスにトドメを刺すべく、杖を撫でながら彼女へと……つまりこちらに向かってくる。
……自分はどうするべきだろう。
立ち上がって杖を構え、真正面からあの男の相手をする?
無理だ。
不可能。
出来っこない。
そりゃあ自分が立ち塞がっている間、アニエスから注意を逸らすことくらいは出来るだろうが、その数秒後には美少女の焼死体が一つ出来上がっているはず。
無駄死ににも程がある。
(考えなさい、ルイズ……。考えるのよ……)
こんな時ユーゼスならどうするか。
どうすればこの男を倒せるか。
そうしてルイズがごく短い時間で考えた末に出た結論は、
(………………不意打ちしかないわ)
何とも泥臭いと言うか、スマートではない方法であった。
だが仕方ない。
不意打ちだろうが騙し討ちだろうが、結果として倒せればいいのだ、倒せれば。
こういう部分で使い魔からの影響が微妙に出ているのだが、ルイズはそれに気付かないまま不意打ちのための準備を始める。
吹き飛ばされても放しはしなかった杖を、軽く握り締め。
いつでも立ち上がれるように、身体に力を入れて。
攻撃のタイミングを逃さないように、神経を尖らせて。
「……………」
(あと、少し……)
そしてメンヌヴィルがすぐ近くにまで接近し、自分の横を通り過ぎるタイミングで……。
ドガッ!!
「あぐぁっ!!?」
仰向けに倒れたままの体勢で、背中をメンヌヴィルに強く踏みつけられた。
支援!!
ルイズは強い衝撃を背中に受けたために思わず杖を手放してしまう。
「う、うぅ……っ」
「気付いていないとでも思ったか?」
うめくルイズを足蹴にしながら、つならなさそうに言うメンヌヴィル。
「お前の身体の温度は、お前がやろうとしていたことを全て俺に教えてくれたぞ」
つい先程、このメンヌヴィルがキュルケに語った言葉を思い出す。
―――「俺は炎を使う内に、随分と温度に敏感になってね。距離、位置、どんな高い温度でも、低い温度でも数値を正確に当てられる。温度で人の見分けさえつくのさ」―――
それを忘れていたわけではない。
忘れていたわけではないが、まさかここまで鋭敏だとは思っていなかった。
「まあ今の不意打ちも、もしかすれば俺以外の奴になら成功したかも知れんが……」
「くっ!」
放してしまった杖を再び掴むべく、ルイズは懸命に手を伸ばす。
距離はたかだが数サントほど。
いくら背中を強く押さえつけられているとは言え、肩をひねるなりすれば届かないわけではない。
杖さえ持てば、爆発さえ出せれば、コイツにダメージさえ与えられれば、逆転のきっかけさえ作ることが出来れば、きっと何とかなる……はずだ。
そのはずなのに。
「だから気付いていると言っただろう」
「きゃああっ!!?」
ルイズの手が杖に届く寸前で、その華奢な身体はメンヌヴィルに蹴飛ばされる。
ゴロゴロと床を転がり、椅子に激突するルイズ。
杖は数メイル向こうにまで遠ざかってしまった。
もう、打つ手が―――ない。
「さぁて」
メンヌヴィルはニヤニヤと笑みを浮かべながら杖の先端に火を灯す。
「貴族のガキを殺しちゃいかんと言い含められてはいるが……何しろここまで抵抗されてしまっては『やむを得ず』反撃してしまっても構わないよなぁ?」
「……ぅ、ぅうっ……!」
ルイズは思わず硬く目を閉じる。
火は膨れ上がって炎となり、今まさにルイズを飲み込まんと更に勢いを上げた。
直接見なくとも伝わってくる熱波。
迫り来るそれを肌で感じ、決めきれない覚悟のままにルイズは使い魔の名前を叫ぼうとして、
「ユー……」
「待ちなさいっ!!!」
その声は、いつも彼女が聞いていた女性の叫び声によって掻き消されてしまった。
「ん?」
声のした方に注意を向けるメンヌヴィル。
その杖の炎は、いまだルイズを向いている。
「あ……」
ルイズもまたそちらの方を見てみれば、そこには後ろ手に縛られながらも毅然とした態度で立っているエレオノールの姿があった。
……隣に座っているミス・ロングビルが『うわぁ』とでも言いたそうな顔をしているが、それはこの際置いておこう。
「何だ、お前は?」
「―――私はラ・ヴァリエール家の長女よ。父はこのトリステインを動かす貴族の一人」
「ほお」
メンヌヴィルに相対し、あまつさえ睨みつけまでしながら、エレオノールは言葉を続ける。
(……!)
このタイミングで出て来たことの意味は、ルイズにも分かる。
エレオノールは自分の身分を武器にして、この場を何とか動かそうとしている。
そうさせたのは、自分の失態が……自分を危機から救おうと、庇おうとしたのが原因だ。
「っ」
同じヴァリエールの人間である以上、姉だけにそんな役目を任せてしまうわけにはいかない。
ルイズは、自分も同じくそうだと名乗り出るべく声を出す。
だが。
「ねえさ、」
「っ、そんな『どこの馬の骨とも知れない小娘』よりは、私の方が遥かに相手をする価値があるんじゃないかしら!?」
それをいち早く察したエレオノールが、強い口調でそれをさせなかった。
支援!!
久しぶりのリアルタイムだぜ!
「!!」
ルイズは、今の姉の言葉に込められた『自分に対するメッセージ』を理解する。
―――このまま大人しくしていなさい。
―――決して自分がヴァリエールの人間だと明かしてはいけません。
―――今は私に任せて。
「…………っ!!」
助けてくれて嬉しい。余計なことをしないで。生き延びられてホッとした。そんな自分が情けない。それはわたしの役目です。ありがとう、姉さま。
色んな感情がごちゃ混ぜになって、一斉にルイズを襲った。
もうマトモに声を出すことすら出来やしない。
「フン、心意気は買うが……」
そんなルイズをどう判断したのか、メンヌヴィルは杖の先の炎を霧散させてエレオノールの方へと歩いていく。
「ひっ!」
「きゃあ!!」
それを受けて懸命にメンヌヴィルから遠ざかろうとする周囲の女子生徒たち。
なお、その中にはちゃっかりミス・ロングビルも含まれていた。
「かと言ってお前一人をどうこうすれば良いという訳でもなくてな。例え三流以下であろうと、国中の貴族の子女の命が懸かっているとなればアンリエッタも考えざるを得まい」
エレオノールのすぐ近く、手を伸ばせば触れられる距離までメンヌヴィルは移動した。
「……ついでに『判断材料の提供』として一人か二人ほど見せしめに殺せば、かの女王陛下もより深くこの問題をお考えになられるだろう?」
「ぅ……」
杖の先端が、今度はエレオノールに向けられる。
エレオノールはそれでもメンヌヴィルから視線を外すまいと気丈に振る舞うが、逆にメンヌヴィルから発せられる独特の空気に呑まれているようだった。
「お前、怖いな? 怖がってるな?」
「そ、そんなわけが!」
「お前の温度はそう言っていないぞ」
笑いながらエレオノールに顔を近づけるメンヌヴィル。
無機質な瞳が接近し、エレオノールは思わず顔を背けた。
「フン、こういう時は目が見えないと不便だな。さぞかし気の強そうな顔をしているんだろうが……」
そしてメンヌヴィルは杖を持っていない左手を伸ばす。
「いや、まったく。お前の顔を見れないのが残念でならない」
その手がエレオノールの顔に触れるか触れないか、という所で……。
バンッッ!!!
「!」「えっ!?」
いきなり食堂のドアが強引に開かれ、目にも留まらぬスピードで『何か』が食堂の中に飛び込んできた。
その『何か』はエレオノールとメンヌヴィルとの間に強引に割って入った直後、手に持った剣を振るってメンヌヴィルを攻撃する。
「ぬっ!」
身体をひねってそれを回避するメンヌヴィル。
―――結果だけを見れば、その攻撃は彼の身体に毛ほどの傷もつけてはいない。
だがその攻撃の鋭さ、あと一瞬かわすのが遅ければ命が無かったほどの切っ先の速度、そして何の躊躇もなく首を狙ってきた点。
メンヌヴィルの顔色を変えさせるには十分すぎる一撃だった。
「剣を使う、ということは平民か。……今の今まで隠れていたくせに突然現れるとは、どういう風の吹き回しだ?」
「……それは私自身が聞きたいよ」
「何?」
間合いを取りつつも突然の乱入者に問いかけるメンヌヴィルだったが、その問いに対する回答は不可解なものだった。
ともあれ、この場においてこの問答はさほど重要ではない。
重要なのは……。
「まあいい。相手が貴族ではなく平民ならば、思う存分焼いても構わんということだからなぁ!!」
メンヌヴィルは鉄の杖を乱入者である銀髪の男に向ける。
それに応じて男もまた、剣だけではなく腰からロープのようなものを取り出して左手で持ち、本格的な戦闘態勢に入った。
「まったく……。厄介事というものは重なる時にはとことんまで重なるな」
そんなことを呟きつつ、銀髪の男……ユーゼス・ゴッツォはメンヌヴィルと睨み合うのだった。
支援
ここまでか?
ざわざわざわ、と食堂に動揺が走る。
いきなりのユーゼスの登場に、敵味方を問わず全員が驚いていた。
……実を言うと、ユーゼスはこのタイミングで食堂に突入するつもりはなかった。
事実、タバサが倒れ、キュルケが敗れ、アニエスが吹き飛ばされ、主人であるルイズが痛めつけられようが『まだ機ではない』と飛び込もうとはしなかった。
ルイズが攻撃を受けている間には左手のルーンがさかんに輝いて警告を送り、無力化した精神干渉の部分がしきりに自分を食堂の中へと導こうとしたが、それも無意味。
むしろ隣にいたコルベールが突入しようとするのを抑えるのに苦労したほどである。
そう言えばあのメンヌヴィルとかいう男をコルベールが見た途端、彼の顔色が変わってまた硬直、と言うか葛藤状態に突入してしまったが、あの男にトラウマを喚起される要因でもあったのだろうか。
しかしこのコルベール、役に立つのか立たないのかよく分からない人間である。
とは言え、ルイズがメンヌヴィルに殺されそうになった局面では『さすがに不味い』と思って飛び込……もうとしたら、今度はいきなりエレオノールが名乗り出た。
ユーゼスはこの展開に焦った。
(……あの馬鹿め)
今まさにルイズが殺されそうになっている段階でわざと注意を引くような行為をしては、自分が殺されたって文句が言えない。
仮に妹をかばうにしても、もう少しやりようがあるはずだ。
なぜあの女はこう、魔法の理論や学術的な理路整然さなどには目を見張るものがあるのに、とっさの衝動のブレーキが効きにくいのだろうか。
昔の自分でもあるまいに。
と、こんな感じにエレオノールの行動を苛立ち半分、心配半分で見守っていると。
メンヌヴィルがおもむろにエレオノールに顔を近づけて。
その手が彼女の顔に触れそうになり。
「…………!」
その瞬間、『理由はよく分からないのだが』物凄く不愉快になってしまって、気付いたらコルベールの声も耳に入らずに食堂に飛び込んでいた。
(―――なぜ私は飛び出したのだろう)
と言うわけで、この場におけるユーゼスの登場に一番驚いているのは、実は他でもないユーゼス自身なのであった。
「っ、もう、遅いわよユーゼス! 今までどこに行ってたのよ!?」
そんな銀髪白衣の男の困惑などはつゆ知らず、金髪眼鏡の女性は非難するような口調でメンヌヴィルと睨み合っている彼に問いかけた。
その顔が少しばかり赤らんでいるのは、メンヌヴィルの魔法の熱気に当てられたためだろうか。
支援
正時またいだが…
「叱責は後で受けよう」
そんな叫びに近い詰問をはぐらかしつつ、ユーゼスはエレオノールを庇うようにしてメンヌヴィルと対峙する。
今は戦闘中だ。
目の前の相手とならばともかく、他の人間と話し込んでいる余裕などはない。
……しかし、確認せずにはいられないことが一つあった。
「ところでエレオノール」
「な、何よ?」
「あの男に『近付かれる』以上の事はされなかっただろうな?」
「え?」
きょとん、とした顔になるエレオノール。
しかしその数秒後、
「…………〜〜〜〜っ!!」
ユーゼスの質問をどのように解釈したのか、見る見るうちにエレオノールの顔が真っ赤になっていく。
そしてエレオノールは少々しどろもどろになりながらも、何とか返答を行った。
「べ……べ、別に、大丈夫よっ。ロープで手を縛られてはいるけど、逆に言えばそのくらいしかされてないし」
「ならばいい」
会話を切り上げ、改めてメンヌヴィルに意識を集中させるユーゼス。
この戦闘に対するモチベーションは、ハルケギニアに召喚されて以降トップクラスと言っていいほどに高い。
相変わらずどこにどんな原因があるのかはよく分からないが、目の前の盲目のメイジに対して、怒りのようなモノがふつふつと湧いてきている。
よって感情をエネルギー源とするガンダールヴのルーンもまた、過去最高に機能している。
あとはこれが、この敵に対してどの程度通用するのかだが……。
(……こればかりは実際に戦ってみるしかないか)
オリハルコニウムの剣を右手に、快傑ズバットが使っていた鞭を左手に持ってメンヌヴィルとの間合いをはかる。
「話は終わったか、色男?」
メンヌヴィルがニヤついた顔でこちらに話しかけてきた。
対するユーゼスはあくまで無表情に、しかし僅かながらの感情をにじませながらそれに応える。
「お前が何をもって私をそのように形容するのかは知らんが……。……何にせよ、この騒動の報いは受けてもらうぞ」
「クハハハッ、お前にそれが出来るのであればな!!」
そう言い終わった直後にメンヌヴィルの杖から炎が噴き出し、ユーゼスもまたほぼ同時に鞭を振るう。
……かくして、新たな戦いが幕を開けた。
支援
ルイズはボンヤリとしながら、ユーゼスが戦っている光景を眺めていた。
「……………」
そして考える。
考えたくはないことだったが、頭の中の冷静な部分が勝手に考えてしまう。
ユーゼスが食堂に入ってきて、あのメンヌヴィルに切りかかっていったタイミング。
メンヌヴィルの手が、エレオノールに触れそうになった途端にユーゼスが現れたこと。
「……………」
あのユーゼスが何の策も考えもなしに、こんな事件が起きている食堂に飛び込んでくるわけがない。
事件の成りゆきを、敵の様子や情報を観察していたはずだ。
そう、見ていたはずなのだ。
自分があの盲目のメイジに踏みつけられ、蹴り飛ばされた光景も。
そして当然、エレオノールがあのメイジに近付かれて、何らかの危害が加えられそうになった場面も。
「……………」
自分に対しては、どんなに攻撃されようと飛び込んではくれなかった。
姉に対しては、敵の手が触れそうになった時点でなりふり構わず飛び込んできた。
―――つまりはそういうことなのだ、と。
「ぁ……」
答えが出た瞬間、そんなつもりはなかったのに涙が出た。
そして涙の後を追うようにして、感情が襲ってくる。
「ぅぁ……ぅ、ぅう、っ……」
終わった。
何が終わったのかよく分からないが……この瞬間、ハッキリと何かが終わった。
「えぐ……っ、っく、ひっく……」
泣き顔をさらしたくなくて、うつむくルイズ。
別に裏切られたというわけではない。
フッたとかフラれたとか、そういう問題でもない。
『好きだ』なんて言ったこともなければ(惚れ薬の一件は別として)言われたこともないし、そもそもそんな雰囲気になったことすらないのだから。
要するに、ユーゼスとルイズは最初から『ただの主従関係』でしかなかった。
「ぐすっ、ぇ……っう、ふぇ……」
いくら使い魔だからと言っても、ユーゼスだって人間だ。
誰か女の人を好きになる……とまではいかないまでも、惹かれることだってあるだろう。
そして、その『誰か』は自分以外の人間で。
もっと分かりやすく言うと、エレオノールだった。
それだけの話。
誰が悪いとか、憎いとか、恨むとか、お門違いもはなはだしい。
「……っひ、ぇうっ、ひくっ、……っ」
前々からそんな予感はあった。
初めて会った時から、ずっとレポートのやり取りは続いているようだし。
ビートルを回収してきた宝探しには、ユーゼスとエレオノールとギーシュという必要最低限のメンバーしか参加していなかったし。
いくら緊急手段とは言え、あのプライドの高い姉が口移しでプラーナとかいう魔力に似た力をユーゼスに分け与えてもいた。
実家に帰った時は頻繁に二人で会っていたはずだし。
それは姉が教師として魔法学院に出向してきてからも変わっていない。
そう言えば、この間は夜中に隣のユーゼスの研究室から、エレオノールの声が漏れ聞こえてきたこともあった。
とにかく、心当たりを思い出せばキリがない。
「ぁ……ぅくっ、ひ、えぐっ、うぅ」
そして何より。
エレオノールと一緒にいる時は、ユーゼスの身の回りの……雰囲気というか空気のようなものが、ほんの少しだけ柔らかくなるのだ。
召喚して以降ずっと一緒にいたルイズだから分かる、微細な変化。
……いや、ずっと一緒にいたからこそ、本当は薄々感づいていたような気がする。
ユーゼスの目には、自分は『その対象』として映っていないのだと。
スタートラインにすら立てていなかったのだと。
支援!
「…………っ」
改めて考えてみると、自分が抱いていた感情は恋だったのかどうか、それすらもよく分からない。
幼いあこがれと、恋愛感情を取り違えていただけだったのかも知れない。
最初は強い敵愾心と言うか、対抗心から始まって、それから気が付いたら異性として見るようになってしまって。
だが……例えこれが失恋ではなかったとしても、今以上に苦しい気持ちになどルイズは16年の人生の中で味わったことはなかった。
ワルドが裏切ったときなど比較にもならない。
『傷心』とはこういうことを言うのか、と妙な得心さえしてしまう。
「―――――」
それでもどうにか持ち直し、ゆっくりと顔を上げた。
今は戦闘中、命のやり取りをしている最中なのだ。
いつまでも泣いている場合ではない。
ないのだが……。
「ルイズ……! 大丈夫!?」
「あ……ぁぅ……」
目の前にエレオノールが現れてしまうと、どうにもまた泣きたくなってくる。
いや、分かっている。
姉に他意はない。
ただ純粋に自分を心配してくれているのだ。
だから腕のロープが解かれて杖を取り戻した途端、真っ先に自分に向かって駆けて来てくれた。
それは分かっているが、しかし。
「こんなに泣いて……。まったく、無茶をしてはいけないと日頃からあれだけ言っていたでしょう」
「う……ひっ、く……ぅ、ぅぅううう……っ」
相変わらずのお小言だったが、その端々に自分への気遣いが感じられて……なんだか余計にみじめになって、泣きたくなる。
今だったら赤の他人からの慰めでさえも自分の涙の後押しをしそうなのに、声をかけるのが他でもないエレオノールなのだから、涙腺の崩壊具合もひとしおだ。
「もしかして、あの男にやられたところが痛いの? ああ、誰か水魔法が得意な生徒を呼ばないと……」
「ひっぐ、だ、だいじょ……っぶ、で」
「あれだけ乱暴に扱われて大丈夫なわけがないでしょう!」
ピシャリと言い放つエレオノール。
直後、彼女は呪文を唱えてルイズの身体を浮遊させ、大急ぎで食堂から離脱していく。
「ね、ねぇさま、どこに」
「……とにかく今はこの場を離れないといけないわ。みんなの戦いの邪魔になりかねないし」
食堂の入口を通り過ぎる瞬間、エレオノールはもう一度だけ中の……ユーゼスの様子を見た。
「―――――」
そして、そんなエレオノールをルイズは見た。
食堂の中は見ていない。
今あらためてユーゼスを見てしまうと、今よりももっと大泣きしてしまいそうだったからだ。
「……ユーゼス……」
「―――――」
エレオノールの呟きと表情を目の当たりにして、何と言うか、感心してしまった。
(姉さま、こんな顔するんだ)
一言で表現すると、『女の顔』。
貴族として、ラ・ヴァリエール家の人間として、姉として、娘として、学者として。
ルイズは姉の色々な顔を知っている。
でも、こんな顔は知らない。
……ユーゼスと一緒にいる時はこれに近い雰囲気でいることがあったが、ここまでハッキリと『女』を意識させる顔は初めてだった。
「―――――」
そして、そんな事実にどうしてか打ちのめされる。
なんか、もう、色んなものが立て続けに自分に殴りかかってきているような錯覚さえ覚えてきた。
「……今はあの人を信じましょう。さあ、行くわよ」
「―――――」
エレオノールに連れられて、ルイズは食堂から離れていく。
ふと上を見れば空は暗く、二つの月は淡い光を地上に注ぎ続けていた。
白み始める気配すらまだ見えない。
夜明けには、まだ時間が必要なようだった。
支援
以上です。
つーか場面転換が激しいですね、今回。
前からやってみたかったことの一つである『ルイズの明確な失恋』を書いてみました。
これから姉ルート(あえてどちらとは言いませんが)を進むに当たって避けて通れないことではありますので、やるならこのタイミングかな、と。
うーむ、しかしこうして見るとルイズにフラグを立てたのは失敗だったかな、と思わないでもありませんね。
まあ、ダメな見本の一例としてでも他の作家さんの参考になってくれれば幸いです。
しかし『何でコイツら殺し合いする直前だってのに、その敵の前でイチャついてるんだろう』とか書いてる途中で思ったりもしましたが、よくよく考えりゃ原作でもそんなことやってたような気もしますな。
それでは、支援ありがとうございました。
乙でしたー!!
さぁて盲目の炎使いに対してどうユーゼスは対応する!?
でも結構多くないですかね? そんなことやってる場合かって言うときにイチャイチャしてる作品ってwwwww
ともかく乙です。今回も楽しませていただきました。
乙っす!!
あー、まぁ、脈が無いのは目に見えていましたから
決着が付いたのはよしと・・・しかし・・・これがどう影響していくのか
ユーゼスが自分の感情に曖昧ながらも認識を持ったのに対して
ルイズがこの痛みを割り切るのはいつになるか
コルベール先生とメンヌヴィル、ひいてアニエスの決着と合わせてハラハラします
そして、ユーゼス対盲目ときてふと思い出したけれど
スーパーヒーロー作戦の内部データにはマンダラガンダムが入ってるんですよねぇ
本編で見た覚えが無いけれど
キラルは何であのシリーズに登場率あんなに高いのやら・・・デンマーク代表の兄ちゃんも最終決戦での存在感は同じくらいあるのに
寺田のお気に入りなんじゃね?
それにデンマーク兄ちゃんと違って派手な必殺技があるから画面栄えするし。
ラスボスさん乙です。
やっぱりこのユーゼスは姉ルートですよねー。
ルイズには気の毒だけど、ほかにきっといい男が……いねえなw
(仕方なく)鍛えた力がここでどこまで通用するか、楽しみです。
>>470 ここで華麗に脈絡もなくコブラがやってくる
ヒューッ!
乙でした。
>美少女の焼死体が一つ出来上がっているはず
このタイミングでわざわざ”美”をつけるとは余裕だなルイズ。
が、まさかこんな展開が待っているとはいい意味で予想外でした。頑張れ万年朴念仁といかず後家。
次回を楽しみにしています。
ラスボスの人乙です。
>何でコイツら殺し合いする直前だってのに、その敵の前でイチャついてるんだろう
いやいや、これこそ王道ですよ。
ラスボスの人、乙でしたー。
まさにエレ姉ルート! ……ルイズとカトレアの扱いが今後どうなるかが気になります。
久々にユの字、乙でありました。
もう結婚しちゃえよお前らwwwな二人ですなw
>>470 サイ・サイシーとの絡みが前提のマーメイドと単独でキャラ立ち出来るマンダラの差でしょうな。
>>474 ルイズは泣いて諦めたけど、カトレアだとどうなるんだろ?
ラスボスだと微妙に黒いとこあるし、あの人w
ラスボス氏乙!
朴念神がついに怒ったか、エレ姉ルートに正式に進んだようなので俺歓喜w
乙ですた
>何でコイツら殺し合いする直前だってのに、その敵の前でイチャついてるんだろう
殺し合いしていた途中で敵の前でイチャついてる展開だってモノによってはあるんだから大丈夫
エレ姉様には2000回の模擬戦で負け知らずの彼を
ラスボスの人乙でしたー。
それにしても何、この萌えるユーゼスw
投下乙。
やっとのことでガンダ補正に感情修正が入りそうですな。
ラスボス乙
後、あの人だって、あの人w 何、このむず痒いエレ姉はw
新年あけましてです。
早々ではございますが、規制食らっちまったんで、どなたさまか代理お願いできませんでしょうか?
以下本文でございます。よろしくお願いいたします。
というワケで、20:50より代理行きます。
あ、やば、作品名書いてなかった
仰ぎ見た空の狭間、
銀竜共の咆哮の先、
混沌に巻く『虹』を切り裂いて、
彼にとっての『最高傑作』が、今敵陣に乗り込んだ。
よろしい。大変よろしい。筋書き通りにことは運んでいる。
「さて……」
脚本家、舞台演出家、ギャンブラー、投資家、軍事顧問……クジャと言う男は、実にさまざまな顔を持っている。
そして彼は今、自らにもっともふさわしい役柄に戻るときがきたことを感じていた。
演目が始まっているのに、指くわえ突っ立っているなど、愚の骨頂だ。
黒子に徹するのはもう終わり。ここからは自身が踊ってやろう。
主役を食ってしまうほどに踊るのも、また一興。
また、ここから逃れることのできぬ理由も存在する。
『紅の瞳』……ブラック・ジャック号の船底に据え付けた、
召喚獣や魂を飲み込むための装置は、不完全品と言わざるを得ない。
何しろ、オリジナルの方は、元々クジャの生まれである『テラ』の技術の粋を集めねば作れぬ物だ。
『神の頭脳』とやらの助けを借り形にはなったものの、いかんせん出力がオリジナルに劣る。
なんとか漆黒の巨人兵器、バブ・イルを足止めすることは適ったものの、
完全にその力を封印するには今しばらく時間がかかる。
つまり、その間ブラック・ジャック号は空中のこの位置に留まらねばならない。
足場は船の甲板のみ。
周囲は前後上下左右とも醜いまでの銀色の獣共で埋め尽くされている。
退くことも、前に出ることもできない防衛戦。
さしたる戦力は、己の身のみ。
悪くない舞台だ。久々の演武には丁度良い。
クジャは妖艶とも呼べる笑みを浮かべた。
「あ、あわわわ……」
いや、己の身のみ、という部分は語弊があった。
甲板にへたりこんでいる少年を戦力に数えるならば、の話ではあるが。
「――そういえば、いたんだっけねぇ、君。確か名前は……」
「ぎ、ぎぎぎ、ギーシュ・ド・グラモンですっ!!」
何事を成すにおいてにも、計算外という言葉がある。
今回の場合は、この金髪の若者がそうだった、ただそれだけのことだ。
クジャは故意に溜息をついた。
「あぁ、そうそう。ギーシュ君だ。
……今から、ここも戦場になる。奥に下がっていたまえ」
舞台袖の奥、甲板から船内へ避難する通路を優雅な手つきで提示する。
お引き取りください、というわけだ。
誰かをかばう余裕など、無い。
自分という人間が、他者を気遣うことは不得手であるということは、重々承知している。
「い、いえそれが……」
「ん?観覧希望かな?それとも、血みどろの茶番劇に付き合うつもりかい?」
命知らずの新兵ほど、厄介なものは無いと聞いたことがある。
彼らは状況をより悪化させ、有能なる者までをも死に追いやるからだ。
クジャはその言葉が真であるとの認識をより強くし、
また1つ大きく、わざとらしい溜息をついた。
「いえその……腰が……」
呆れ、を超越すると、時がわずかばかり制止する。
黒魔法や時魔法といったものに拠らず、
よくもこのような現象が起こせるものだ、とクジャは感心した。
「――はぁ……やれやれ世話が焼けるなぁ、まった……くっ!!」
厄介だが、ここは助け起こさざるを得ないだろう。
正直、見捨てても良いのだが、
敵の目的が『魂の収集』である以上、わずかでもそれを回避したい。
渋々、厭々、といった味わいを口内に拡げたような顔をして、
ギーシュとかいう命に手を差し伸べ、引っ張り、無理矢理に起こし立たせる。
少々、重い。
まったく、何もしなくとも肉はついているということだろうか。
「あの、こ、怖くは無いんですか!?」
「怖い?何が?」
礼の言葉もなく、質問ときた。なんという餓鬼だ。
当地の貴族は礼節というものを知らないのか、とクジャは訝しむ。
だが自分自身も、かつては作法を乱す側ではあったので、
その辺は追及してやらないことにした。
「こ、これだけの数の竜……味方がこれだけで……」
フッと噴き出してしまう。
なんだ、そんなことか。
怖い?ただの醜悪な猛獣が?ハルケギニア流の冗談の類か?
クジャという男が唯一恐れることは、醜くなる、ということ。
恐怖に顔が歪むなど、醜さの極みではないか。
そんな自分など、1秒たりとも存在させてはならない。
「――役者冥利につきるじゃないか!久方ぶりの表舞台だからねぇ!――それに」
だから、クジャは笑う。
一度死し、今一度の生を受けた身。
恐怖に沈んでいてどうするというのだ!
第一、である。
自分自身が、元から素晴らしかった美貌と頭脳の持ち主が、
その美貌を少々下げてまでルーンを刻みつけ、『神の頭脳』を手に入れた自分が、である。
少数精鋭だけで強大なる魔王に臨む、とでも?
伊達に、裏舞台で暗躍してきたわけでは無い。
妖艶なる笑みを、クジャは浮かべた。
「独奏曲、というわけでもないからね」
これは、独奏曲では無いが、協奏曲でも無い。
皆が皆、己の旋律を奏で、
それが共通したフィナーレへと物語を繋げていく、
いわば、混成曲なのだ。
ゼロの黒魔道士
〜幕間劇ノ七〜 戦闘混成曲 -Battle Arranged Medley-
----
#1 悠久の烈風伝説
助かった、という想いよりも、何故、という疑問が先に立った。
エレオノールの記憶が間違っていなければ、
それは風魔法の一種であった。
問題は、その規模だ。
自分を取り囲んでいた武装市民が、次の瞬間には全て空に舞っていた。
数値で言えば、最大半径300から500メイルほど。
それだけの範囲を、風でできた刃が抉り、空へと運び去ったのだ。
その現象を、初見であればエレオノールは何も言わずただただ、驚いたことであろう。
問題点は、それが初見では無かった、ということだ。
幼少期、何度か見た。
昔話に、何度も聞かされた。
それは、彼女が物ごころついたときから抱いた、畏怖の象徴。
「……」
竜巻の中心に、その人物は無言で立っていた。
軍人の証明である重みを感じる色合いのマントに、
高位の者である証拠の羽飾りをつけた帽子。
顔の下半分は鋼鉄の仮面で覆われているが、
エレオノールの脳裏に、幼き日のトラウマとその姿がほぼ十割重なった。
これが死の前に見る走馬灯であるなら、残酷すぎやしまいか。
「!?か、かかかかか母さムグ!?」
走馬灯の名を呼ぼうとした唇は、トラウマそのものの手で押さえつけられた。
頬に指が食い込む。痛い。夢じゃない。幻影じゃない。
それが、怖い。
仮面と帽子の隙間から、目が見える。
間違いない、見覚えがある。
それが、怖い。
「だ、団長どの、ご無事で!? ど、どなたか存じませんがありがとうござい……」
無事じゃないだろう、どう見ても。
そう言いたいが、口を押さえられている。
エレオノールは、駆けよってきた水兵服の部下へのツッコミを、口をもごもごするだけで諦めた。
「――礼はいらぬ。騎士としての務めだ」
細い体から、堂々たる声。
やや高音ではあるが、張りがある。
イントネーション1つを取っても、完璧なトリスタニア発音であり、
スラリとしたシルエットと共に、一流舞台の花形といった風情だ。
「騎士……?はっ!?
そのマントはトリステインのマンティコア隊のもの!?
それに、その羽飾り……ま、まさか!?」
「もがーまが!?むぐぎー!?」
騎士の手に、一層の力が入り、エレオノールは身もだえした。
苦しい。
鼻のあたりに指がかかり、息がしにくい。
「ま、まさかまさか、貴方様は伝説の……“烈風”!?!?」
「カリン、と申す。引退したが、その名を存じてらっしゃる方がいるとはな」
「知らぬわけがありましょうか!?遠くアルビオンまでその武勇は伝え聞いております!
火竜山脈での竜退治など今でも軍人達の語り草ですよ!?ま、まさか貴方様にここで会えるとは……」
一礼をした騎士に、元アルビオン空軍であった水兵服の男が嬉々としてしゃべる。
伝説、と大層な冠をかぶせられる存在は、そう多くない。
数少ない伝説の1つ、それが『烈風カリン』の名だ。
その名にまつわる武勇は、他者の創作を抜きにしても本が5冊は編めるほど。
その人気は今も絶大で、現在もハルケギニア全土でモデルとした小説が読まれている。
舞台化もされた。人形化もされた。
あまりの人気ぶりに、一時期販売禁止令が出たほどだ。
だが、かつてその武名を欲しいままにした伝説は、ある日忽然と姿を消した。
しかして今、伝説が復活し目の前にいる。
それで興奮するなと言われる方が無理というものだ。
「おしゃべりはそこまでだ。貴公も武人ならば、兵は神速を尊ぶと存じていらっしゃるはず」
「は、はっ!こ、これは失礼を…… っ!?ま、まだ動くのか!?」
切り裂かれた肉体達が、ぬるりと立ち上がる。
腕が取れそうな者、首が落ちそうな者、血みどろになっている者……
いずれもが手に手に武器を持ち、光の無い瞳は、
最早、己が人ではないということを雄弁に語っていた。
その現象に、伝説は頷いた。見覚えがある、といった風に。
「……こやつら、生ける屍は『癒し』の呪文で退治可能です」
「そ、それは真ですか!?」
「水メイジを急がせよ!幸いにここは『水の都』と呼ばれた地、触媒は多いはず!」
「は、はいっ!!」
風魔法で、死者の列を再び切り裂く。
騎士の素振りからすると、軽く、といった程度だが、
手加減が手加減になっていない。
その威力に放心した水兵服の男が、ようやっと指示を思い出し、走り去ったことを見届ける。
それからやっと、エレオノールの呼吸が解放された。
「むが……ぷ、ぷはぁっ!?お、お母様!?なんでここに!?いつもラ・ヴァリエールからお出にならないのに!?」
伝説の『烈風カリン』。
それがカリーヌ・デジレ、ルイズやエレオノールの母であるという事実は、世間では知られていない。
「……国法を破った、娘のお仕置きにです」
騎士の声から、母の声へ。
エレオノールは、その声の張り方が如実に変わったことを感じていた。
恐怖の塊が、母という皮をかぶってそこに存在している。
「は、はいぃっい!?」
「母は貴女に、どのような教育を施しました?」
それはもちろん、『鋼鉄の規律』。
マンティコア隊を唯一無比の舞台に仕立て上げた、『烈風カリン』のもう1つの伝説。
法規こそが、全てを律し、安寧な生活をもたらす。
母となってからも、カリーヌはそう子等に説いた。
当然、罰則も厳格そのものに執り行われ……
エレオノールは、己のトラウマの一端に足を踏み入れかけ、生唾を飲み込んだ。
「ちょ、ちょっと待って母様!?わ、私がいつ国法を!?」
やましいことは無い。
何一つとしておかしいことはしていない。
研究員として、船に乗っている最中に、救援が必要な年があったため降りただけだ。
何もやっていない。
何もできなかっただけかもしれないが、
始祖に誓って国法に背くような真似は……
「母の口から言わせる気ですか?口にするのもおぞましい……国境を無断で越えるなんて!」
「あ゛!?」
失念していた。
確かに、このアクイレイアはロマリア領。
調査許可を提出していたガリアの領土からは明らかに国の境を越えている。
いやそれでも、緊急事態だと感じたのだから。
仕方ないことだったのだから。
後でお叱りは受けたとしても厳しい罰則までは……
弁明と釈明の文言が頭の中をぐらんぐらんと渦巻くが、解答が出ない。
エレオノールは、完全に猫の前のネズミ状態となっていた。
「女王陛下に代わり、今すぐ罰を……」
「あ、あ……」
大竜巻を起こした杖が、再びひらめいた。
エレオノールは地面にへたりこみ、どうにかして状況を改善しなければと脳を動かす。
先ほどの死体に囲まれた時以上の恐怖を、感じていた。
杖はやがて大きく振られて……
「――と、言いたいところですが」
その矛先は、エレオノールのすぐ真後ろへ。
「状況からして、労働奉仕が最適な贖いと判断しますっ!!」
「っ!?か、母様!?」
轟、という風切り音。
風が風を切り裂いて、無限の刃を渦となす。
完全に瓦礫となったていた建物を、屍たち諸共に粉微塵へと変貌させる風。
これが、『烈風』。衰えることを知らぬ、まさに悠久の風。
「立ちなさい、エレオノール!貴族の者がここで立たずして、いつ立つのです!?」
実際のところ、カリーヌは嘘をついていた。
エレオノールは別に国法を破ってはいない。
何しろ、カリーヌ自身が許可をしっかりとっていたからだ。
もちろん、研究船の乗組員全員分である。
甘い。エレオノールは実に甘い。
本当に、母の教えをしっかり学んでいたのだろうか。
何故、カリーヌがここにいるかを少しでも考える余裕があれば、母の欺瞞に気付いたというのに。
もしくは、きっちりと船員名簿を隅から隅まで見れば、ひっそりと『雑用係』にその名があったというのに。
全ては、彼女の夫でありエレオノールの父が、親馬鹿であったことが要因である。
エレオノールの新恋人を気にするあまり、何をしでかすか分からなかったので、
先んじて研究船に乗り込むことにしたのだ。
その際、エレオノールが惚れたとおぼしきクジャという男に会ったが……
いや、評価は流動的であってしかるべき。
カリーヌはもう少女ではない、そのぐらいの分別はあった。
しかし、クジャめ。何が『何があるか分からないからお母様が同乗されれば安心です』だ?
やはり、第一印象で何か企んでいると察したのは外れていなかったようだ。
だが、この状況を想像していたらしいことは褒めてやっても良いだろう。
いや、あるいはこの状況を想定してエレオノールを団長に据えたのか?
疑念はつきないが、意味はあるまい。
それよりも、成すべきことがある。
「――貴女、片思いのまんま死ぬつもり?」
「な、なななななななっ!?な、何をおっしゃってるの母様っ!?」
「――よろしい、立てるようね」
「え、あ、ふぇ!?」
これで立てなかったら、『勇気の出る魔法』でもかけてやろうかと思っていた。
子供騙しの嘘呪文だが、それなりに効果はある。実体験で証明済みだ。
だが、カリーヌは信じていた。
自分の娘達は、自分などよりずっと強いということを。
『勇気の出る魔法』など必要無いということを。
「さて行くぞ!平和のために!!」
「あ、え……は、はいっ!!」
アクイレイアは業火の中。
伝説の烈風は、母となりし後も、戦場を駆け抜ける。
----
#2 ハンターチャンス
ヴィンドボナ、ゲルマニアの首都である。
歴史こそは他国の都市にやや劣るものの、
現皇帝の意向により商人達に門戸が広く開けたためか、
野心と金銭の坩堝となり賑わっている。
だがそれも、今は阿鼻と叫喚の坩堝へと姿を変えている。
「たすけて、たすけて、ママパパたすけてたすけてたすけてぇえぇええ」
今まさに幼子を襲おうとしていた銀竜。
情けも容赦も無く、ただただ血肉を求める獣。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRWA!」
鼻息がかかる距離。
もう救いの手は無い。
幼子が恐怖から目を閉じた、直後。
ガキン。
鋼を打ちつける、鍛冶場のような音。
「GRRWOO!?」
「いやぁああん!?こいつの皮、堅ぁあいヨォ!?」
「カマ野郎は下がってンだな!こういうのは急所を……どわぁっ!?」
幼子がうっすらと目を開ける。
いつの間にか地を蹴り飛びあがった竜の背に、2人の影。
1人は槍を、もう1人は剣をその手にもって。
「いやぁああん!?」
「と、飛ンじまうのァ卑怯だろッ!?」
飛行中の竜の背というものは、本来不安定な物である。
言わんや、背上の異物を振り落とそうとしているのだ。
暴れ馬など生易しいもので、かろうじてゴツゴツとした突起に捕まり落とされずに済んでいるという次第だ。
家屋に身体をこすりつけるように飛び、
やがて、急上昇。
地面にたたきつけるつもりか?
チキンレースだな?上等だ、人間様舐めるなよ!
背上の2人が、そう覚悟を決めた、次の瞬間。
「GRYAAAAAAAAAAAAAAA!?」
重力に逆らう運動が、断末魔と共に終焉を迎えた。
竜の顔に、3本の棒が突き出している。
両の眼孔と右の鼻孔を貫く真鍮の矢。
そこから溢れる、血の噴水。
「や、やべッ!?落ちンぞ!?リノ助、飛べッ!」
「言われなくてもそうするヨォッ!」
丁度良い位置にバルコニーが存在したことに感謝する。
血みどろドラゴンと一緒に石畳にめりこむなんて真っ平御免だ。
流石に体力を消耗した2人の視線の先、
青屋根の上、反射光が見えた。
反射光の正体は、遠眼鏡。
「――プププ、オデがあいつを狙い撃ち、アハ!」
「……よぉし、上出来だブワジ!」
青屋根の上、たっぷりとした腹を抱えゆさゆさと笑う巨漢と、
古傷を顔中に刻みつけた強面の男。
巨漢が持つのは、その体に見合っただけの長さを持つ大弓。
強面の男が持つのは遠眼鏡。
それと。
『おらブワジっ!?てめェ、せめて低く飛ンでッとこを狙えよッ!?』
『そぉヨォ!危ないでしょうヨォ!?』
「ギジュー!リノ!てめぇらは囮なんだからそれで良ぃんだよ!」
チェス駒を象った通信機、こいつが非常に役に立つ。
何しろ、離れた場所にいる部下共にガンガン指示を送れるのだ。
今回みたいに槍、剣、弓の連携なんざ、糞ったれのメイジでもいなけりゃ簡単にはいかないが、
キングス商会謹製の遠眼鏡と通信装置を組み合わせれば、あら不思議ってなもの。
チェス盤を上から見下ろすように的確な指示を送れてしまう。
こいつは良い。今までとは全く違うルールで戦っている感覚。
神の視点ってのはこんな心地か。高揚感すら覚える。
バッガモナンは手にしたおもちゃ達を愛おしげに転がした。
『ピンポンパンポ〜ン♪【メーヴェ団】のダチ様がお送りする、ポイントレース速報ぉ〜♪』
「お、来たか」
馬鹿な部下とは一味違う軽妙な調子で、通信機が歌い出し、
バッガモナンの注意がそちらに向けられた。
『なんとなんと!ここに来て一挙5ポイント獲得!【バッガモナン組】がトップに躍り出たぞ!』
『アタシ達トップ?ぃやったぁ!』
『おら!気ィ抜いてンじゃねェよリノ助!!』
朗報。素晴らしいじゃぁないか。
これでお宝にまた一歩近づいたものというもの。
今回のポイントレースは、ゲルマニア全土で行われている。
獣だのゾンビだのが街を襲うから、それを守って、ポイントゲットというシンプルなルールだ。
ポイント上位から、『キングス商会、オークション品どれでも』ってのも悪くない。
期待値は無限大、ポイント下位でも良いお宝が得られるチャンスってのは魅力だ。
とはいえ、より良い物を狙おうと、握る武器に気合いと力が入っちまう。
クジャとか言ったか、依頼主様もよくも考え付いたもんだ。
前払いや後払いといったもんより、よっぽど仕事に熱が入る。
傭兵やハンター、仕事人といった連中の競争心を煽りたて、俄然やる気が出るといった次第だ。
おまけに、その参加者ときたら豪華そのもの。
どっからかき集めたのやら、バッガモナンはその所業に舌を巻かざるを得ない。
【ヴァンネロ】、【チーム・ノラ】、【ガリー】と【ナッツ】のセントリオン系兄弟クランに、
速報を伝えてきたダチのいる【メーヴェ団】といった連中はバッガモナン達と同じ『賞金稼ぎ系』の参加者だ。
(最も、【メーヴェ団】は今回ポイント集計役を買って出ているので、厳密に参加者とは言えない)
普段から獣や人を追いつめる仕事をしている分手慣れており、気が抜けない相手だ。
『軍人系』の参加者もいる。傭兵や、元や現の国軍という連中だ。
元アルビオンの【赤い翼】、クルデンホルフ大公国の【空中装甲騎士団】、
寄せ集め傭兵集団【ミヘン・セッション】という具合に、こちらもそれなりに粒がそろってる。
こいつらは、何より地の装備が格段に良い。クジャから拝借する以前から手持ちの武装が半端じゃない。
砲亀兵なんてどでかいもんを持ち出して他所でがんばってる連中までいるらしい。
機動力ではやや劣るが、破壊力があるため注意すべきである。
危険度や爆発力という意味では、【ヴィジランツ】、【アヴァランチ】、【森のふくろう】、【リターナー】……
こいつら『反帝国系地下組織』の連中も侮れない。
そのモチベーションでもって練度の低さを補ってあまりある働きを見せてくる。
まぁもっとも、とバッガモナンは思う。
こういった『反帝国』な連中がいるせいで俺達が狩りだされたんだろうなと冷静に考えるのだ。
ゲルマニアは、その成り立ちから、現皇帝に対する恨みをもった連中が少なくない。
その領土を拡げるためには相応の策略がめぐらされ、相当の血が大地に染みたと聞く。
だからこそ、恨み骨髄に沁み渡った連中っていうのは国家の中枢にも存在していて、
例え国軍であったとしても、いつ謀反を起こすか分からないという危うさがこの国にはある。
それが故、ゲルマニアは『自由』の名のもとに、国軍に決定的な力は持たせないことにした。
様々な派閥が誕生したが、それをあえて束ねず、取り立てず、互いが互いを睨みあわせることで治めることとしたのだ。
それが、突発的な危機のときには仇となる。
連携が取れない軍隊ほど使えない物は無い。
烏合の衆とはよく言ったもんで、カーカー喚いて何も出来ず死ぬのがオチというわけだ。
だからこそ、依頼主は傭兵や仕事人といった連中を選抜し、ゲルマニアを守らせることにしたのだろう。
そうバッガモナンは読んだ。
重要なのは、金で仕事をこなす連中。
商人達の成りあがりの地、ゲルマニアらしい防衛陣ではないか。
問題は、何故クジャという野郎がやがてゲルマニアを襲うであろう危機を知っていたか、だが……
『バッガの兄ィ!次の指示をくれェ!!』
「お、おぉ、すまねぇ」
いや、よそう。依頼主をあれこれ詮索するのはご法度。
特に、金払いや物払いの良い、心得ていらっしゃる依頼主ならなおさらだ。
自分達がなすべきことはただ1つ。
より多くのポイントを稼いで、より良いお宝をゲットする、それだけだ。
「リノ、ギジュー!次は赤屋根の右のデカいの、狙うぞ!」
『おぅッ!』
『任せといてヨォ!』
通信機に向かって指示を飛ばす。
ポイントトップとはいえ追いつ抜かれつなのはいなめない。
遠眼鏡に入れるは重そうな竜。
高ポイント間違いなし。でっぷり肥って美味しそう、ってなわけだ。
「回り込んで追いつめ……なっ!?」
遠眼鏡の狭い視界の中、竜が、爆ぜた。
たっぷりつまった肉の欠片が、汚い花火みたいに空へ舞う。
何があった。何がありやがった。
『おっとぉ!?ポイントレースにまた動きが!?【メーヴェ団】のダチ様がお送りするぜ!』
通信機から聞こえる声も、心なしか興奮してやがる。
さっさと教えろ、状況が見えない。
『遅ればせながら【元素の四兄弟】がレースに参加だぁ!圧倒的な勢いで怒涛の猛追!これは見逃せないぞっ!』
伝えられた情報は、最悪としか形容できないものだった。
「げ、【元素の四兄弟】だとぉ!?」
仕事仲間の間じゃ『伝説』、あるいは『悪夢』。
それだけ言えば【元素の四兄弟】と分かるほど有名な連中だ。
たった4人という寡兵なのはバッガモナン達と同じだが、
そろいもそろって凶悪、強烈な一流メイジ。
それもただの貴族のボンボン魔法ではなく、超のつく実戦武道派ときている。
歩いた後に残るのはペンペン草一本生えぬ血塗られたレッドカーペットってな噂は耳にタコだ。
そんな連中まで参加しやがるのかよ!
バッガモナンは落とした顎がなかなか戻らないでいた。
『バッガの兄ィ!?ど、どうします!?』
「ば、バカ野郎!奴らと同じシマにいちゃこっちのポイントどころか命が危ねぇ!河岸変えるぞ!街の南だ!」
冗談では無い。
獲物がいなくなる場所なんかにいれるかよ、だ。
住宅地は諦め、街の南へ向かうことを決意する。
商業区なら、まだ獲物はいるだろう。
『了解!リノ助!おらこのカマ野郎!とっとと行くつッてンだろ!?』
『あぁん!待ってヨォ!』
あぁ、畜生!なんだって【元素の四兄弟】なんて化け物が出てくるんだ!?
これなら竜とかゾンビの方がまだ大人しいぜ!
----
#3 The Skies Above
タルブ平原にて、彼女は屍竜に襲われた。
家畜小屋の無事を確認した帰り、その最中である。
太陽を覆う影、襲い来る死の匂い。
声も出ないまま殺されかねなかったところを、救われた。
抱え上げられ、迫る牙をふりきり、森まで一気に逃げ、
ようやっと一息ついて、救い主が大きな鳥に乗った、女性であることが分かった。
「やれやれ……怪我は無い?」
「クェー!」
シエスタは目をぱちくりとさせ、その姿を見た。
「え、えぇ……」
「どっか、痛むのかい?ちょっと乱暴だったかな……」
騎上(いや、ショコボの上だから鳥上だろうか)の人物は見覚えがある。
確か、学院で……
「あなた、確かミス・ロングビル……」
「っ!?」
間違いない。
眼鏡こそ無いが、オールド・オスマンの秘書をやっていたミス・ロングビルだ。
「あ、私、学院のメイドで……」
「あ、あぁ……」
「御病気で学院を去られたとお聞きしておりましたが、お元気のようで……」
「ま、まぁーね!」
大粒の汗をかいているところを見ると、やはり身体の調子でも悪いのだろうか。
いや、それとも自分を抱えて逃げるのに体力を消耗したか。
いずれにせよ、悪い事をしたとシエスタは自省の念にかられた。
「それより、他の村人は?」
「あ、地下に潜ってます!」
「は?」
どういう意味だと、ミス・ロングビルが問う。
まぁ、村人以外には意外かもなぁと、シエスタは少し笑った。
「ひいおじいちゃんが、『こんなこともあろうかと』って作ってたんです!『地下に潜る家』!
昔話の『地下に潜るお城』をヒントに作ったそうですけど、今まで1度も発動させてなくて……」
エッヘン、と胸を張る。
彼女の曽祖父であるシド・ランデルは偉大なる発明家だ。
村人を守るための装置など、造作も無い。
「……ま、まぁいいけどさ」
それを見て、呆れるのは鳥上の女。
無事なら、その原理や理屈は問うまい。
何より、とミス・ロングビルこは思う。
自分が『土くれのフーケ』であることが学院には広まっていないらしい、
そのことの方がよっぽど重要だった。
たまたま学院のメイドに出会ってしまったときは焦ったが、
思わぬ情報が得られたことに感謝と安堵のため息をもらす。
『ミズ・サウスゴーダ!次陣が来よりますぞぉ!』
「う゛」
安堵に弛緩していた体が、急に強張る。
何も今ここで通信が入らなくても良いでは無いか。
しかも、隠し通していた己の名を呼ぶ通信が。
『マチルダさん!お早く!!』
「……サウスゴーダ?マチルダ?」
「アー……気にしないで。うん、仇名みたいなもんだから」
案の定、感づかれた。
笑ってごまかすしかあるまい。
「クェー!」
「ま、ともかく……タルブは安心そうね。じゃ、あたしはまだ仕事があるから!」
「あ、はい!お気を付けて……」
シエスタはその様子を、首をかしげて見ていた。
違和感があったのだ。
「……なんで、ミス・ロングビルがショコボに?」
あのショコボ、タルブの村の物ではなかったか?
なんで、ミス・ロングビルが……
だが、そんな思考は次の瞬間、ブッ壊された。
「ひぃっ!?な、何あの大っきいの!?」
地平線からせせりあがる巨大な山、山、山。
人の形は真似てはいるが、サイズが何回りも違う。
20メイル、いやそれ以上はある。ミス・ロングビルが豆粒に見えてしまう。
ショコボに乗った指揮官に従えられ、
地響きを轟かせながら行進する山脈を見て、
シエスタは森で一人、腰を抜かした。
一方のタルブ平原に、今再びの戦火の兆し。
何十体もの竜が、アルビオン方面に向かっている。
また、ラ・ロシェール方面に向かおうとするゾンビの群れが見える。
ショコボ上のマチルダは、指揮棒代わりの杖をふりあげたる。
「……行くさね!『ヨルムンガント部隊』っ!!爺い共、空は任せたわよ!」
『爺、とはお酷い……ですが、お任せあられいっ!!』
人の縁とやらは奇妙なもんで、
積年の恨みがこもった元アルビオン王軍の爺共と組んだり、
いけすかないド変態野郎のクジャが作り上げたゴーレム兵団を指揮する羽目になった。
まぁ、悪くは無い。
彼女とて、守りたいのだ。
彼女が暮らした、空の大地を。
彼女の妹が住む、その村を。
彼女の父と母が愛した、その国を。
ゆえに、彼女はショコボを駆る。
タルブの地平線の先、ひしめき合う亡者の群れ。
「さぁて、派手に戦いますか!」
アルビオン浮かぶ空の下、ゴーレム軍が唸り声を上げた。
----
#4 野薔薇のテーマ
全てが全て、クジャの描いた脚本どおり、というわけではない。
花が花壇のみに咲くわけではないように、
思わぬところから旋律が生まれることもある。
「一時退避!」
「か、囲まれたか……」
アーハンブラ、ガリアの端に当たる地は、悲惨そのものであった。
ここには、無能なガリア正規軍が居座り、襲い来る災いを退ける術をもっていなかった。
わずかに残った寡兵が、後退を続けながら、交易商人や街人達を逃がそうと懸命に足掻く。
クジャも、全員を守りきれるという楽観的な予測はしていない。
特に人が多く集まる大都市とその地域が守れるというのがせいぜいだろう、と読んでいた。
それは、非情だが、的確な判断であった。
全てを守りきれなくなる可能性よりも、確実に多くを守ることを選んだのだ。
割りを食った辺境の兵達は、足掻きながらその身を散らしていく。
わずかでも、守るため。
わずかでも、救うため。
「……全員無事か?」
「……スコット、、ボーゲン、ヨーゼフ……皆、死んだ……」
崩れ去った、アーハンブラ城。
その城壁の影、もたれかかったのは一個連隊に満たぬの平民兵達。
持てる牙は、粗末な槍と剣、斧と弓。
オンボロに疲れ果てた平民の武。
相対するは、何百の屍群と、空を跋扈する竜。
後から後から湧いて出る、疲れ知らずの力。
「――だが、まだ俺達がいる!」
「お前……まだ戦う気か!?正気じゃないぞ!?くそったれの上官まで死んだってのに!?」
「……オレも、戦う。弔い」
「やめとこうや。これ以上は、死ぬだけだぞ?」
たったこれだけで、何ができるというのだ。
たったこれだけで、どれだけが守れるというのか。
もうほとんどは逃げたか死んだかだ。
生きてここに残っている奴らはもう諦めて、自分達も逃げなくてはいけないのに。
同僚の無責任な気合いに、その兵はあきれ果てた。
「だが――俺達は、まだ生きている!」
「馬鹿じゃねぇか!?そうまでして戦う義理があんのかよっ!」
一際血気盛んな若者が、胸に手を当てる。
その質問に、思い出すのは、故郷の光。
その質問に、思い出すのは、過ぎし日のあの娘。
そういえば、あの娘、無事に家に帰れたのだろうか。
確か……ラミアと言ったか。桃色髪の可愛らしい子は。
軍人としての気持ちを、ほんの少し思い出させてくれた、あの娘は。
「俺には、命をかける夢がある!!
未来を信じ、今を貫く――それだけだ!」
彼には、夢があった。
野薔薇が咲く地に、いつの日か、あんな可愛い娘と結ばれて所帯を持つ。
そのために、こんなところで死ぬわけにはいかない。
そのために、多くを守りたい。
理由など、それで十分だ。
「出るぞっ!!」
「オレ、援護、する」
「あ、おい!?――あぁ、ちくしょ!青臭ぇんだよぉ〜、一々ぃ〜!!」
「行く、ぞぉぉお!あいつらに続けっ!!」
「おぅっ!」
「ま、待てよお前らぁ〜!!」
彼らが奏でた旋律は、小さく、意味の無いものだったかもしれない。
だが、その勇壮さは、荒野に咲く野薔薇のように力強かった。
----
#5 Otherworld
「おぉっと!」
甲板の上で踊る影。
「そぉれ!」
クジャが舞いながら放つ閃光は、遠く離れた銀竜をも捕え、
華やかなまでの眩さに爆ぜ、敵を排除していった。
しかし、数が多い。
『魂』の集まる場所、流石に次から次へと生まれる銀竜は凶悪というわけか。
クジャはふんっと鼻をならした。
銀竜は、『肉体』を持たぬ『魂』から生まれ、
ゾンビどもは『魂』を持たぬ『肉体』から生まれる。
どちらも、己が持たぬ『肉体』や『魂』に飢え、襲ってくる。
故に、本能に忠実なまでの凶暴さというわけだ。
「ぉゃ?」
ふと、背後でゆっくりと起き上がる気配。
銀竜の醜いものではない。
「――出る幕は無い、と思っていたんだけどねぇ?なんだ、君も戦うのかい?」
さっきまで腰を抜かしていた……ギーシュ、だったか。
馬鹿そうだった彼が、戦士の目をして、そこに立っていた。
「――僕だけ、こんなところで倒れていたら、ライバルに……合わせる顔が無いですからっ!」
ほう、いっぱしの口を聞く。
クジャは感心した。
ただの馬鹿から、なかなかの馬鹿に格上げしてやろう。
だが、邪魔だ。
命知らずの無謀さは不必要。
お引き取り願……
「それに――それに――」
「ん?」
まだ、何かあるというのだろうか?
立ち上がったギーシュを狙う銀竜の姿、
それを追い払うことも一瞬忘れ、クジャは彼の言動を見守ろうとする。
「『錬金』っ!!」
輝く光は、『虹』を反射する鋼のもの。
それが、ギーシュの身体を包む。
ギーシュオリジナルの技、魔導アーマー……だが、それだけではない。
「それにっ!帰りを待ってくれている人がいるんです!ここで死ぬわけには、いかないっ!英雄としてっ!!」
ギーシュ以外に、3体。
彼と同様に、光を受け輝く鎧姿。
それが銀竜を撥ね退け追い払う。
ギーシュは、密かに進化していたのだ。
彼も気づかぬ内に、ドットからラインへと。
彼がかつて得意としていたワルキューレと呼ばれるゴーレムの操作と、
魔導アーマーによる自己強化の同時発動。
大人のメイジでも難易度の高い技に成功するほどに、彼は進化していた。
進化のきっかけ。それは、文字通り『雷に打たれた』ような出来事の後。
ビビという少年が、思い出させてくれた。
いつからだろう、英雄がカッコ悪いだなんて思うようになったのは。
いつからだろう、女の子にモテることだけを追うようになったのは。
いつからだろう、自分の弱さを棚に上げ、さらに弱い者を叩くようになったのは。
それを、全て振り払ったのが、ビビの雷だった。
彼の、小さい体で見せた、英雄としての煌めきだった。
異世界から来た彼が、思い出させてくれたのだ。
英雄に憧れていた、かつての自分を。
ビビが、過去の自分が、語りかける。
今だ、行け!求める姿が、あるんだろう? と。
ゆえに、彼は、立つ。
ゆえに、彼は、戦う。
ゆえに、彼は、進化した。さらなる、高みへと。
「……『光の四戦士』、か。古くて新しい物語だね、実に」
クジャは、ギーシュに対する評価を改めることとした。
クジャの判断基準は、善悪などではなく、常に美醜だ。
ギーシュの想いと、輝きを、美しいと感じた。
何故美しいと感じるかは、今のクジャには分からない。
他者を想う気持ちなど無かったクジャには理解しえないのかもしれない。
ただ、漠然と、美しいと感じた。それだけで十分だ。
この少年を守る価値はあると、クジャは感じた。
「やれるかい?この数だ……逃げたっていいんだよ?」
背中あわせとなり、妖艶な笑みで問うは、クジャ。
「さあ?――あと1匹増えたら苦しいかもしれませんね!」
精一杯の強がりを、鎧の奥でしてみせるは、ギーシュ。
「フフ……その時は、僕が1匹多く倒すだけさ」
「なんだ……貴方も戦うんですか?」
「フフフ……」
「は、ハハッ……」
囲む敵の群れの中、意趣返しと言葉遊び。
悪くない。まったくもって、悪くない。
「ほぅらっ!!」
「はぁあああっ!!」
独奏からハーモニーへ。
ブラックジャック号の舞台が、一際華やかに彩られる。
混成曲は、いくつもの想いと旋律を巻き込んで、
フィナーレへと向かって続いてゆく……
----
以上でございます。
モブキャラが必死に戦うのが、楽しいと思うんですが、いかがでしょうか?
そんなこんなで適度な熱さなままつっぱしれたら良いなぁと思う2010年、
どうかよろしくお願いいたします。
では、お目汚し、失礼いたしました。
以上を代理、よろしくお願いいたします。
代理終了。
黒魔の方、乙でした。
>人形化もされた。
……むう、欲しい!!
黒魔さんも代理の人も乙でした。
いやぁ、そこかしこに歴代FFネタが散見出来ますなぁ。
さりげなく混ぜ込めるその腕前が素晴らしい。
っと、連投気味ですが、他にいらっしゃらなければ22:00から投下参ります。
mission15 Dance With The Drunkard
二週間前に終結した戦争は連合軍側の勝利に終わっていた。
だが、その決戦に割り込んだのがガリア王国だった。連合側の部隊が帝都まで目と鼻の先まで迫ったところで、ガリアの両用艦隊がロサイスを強襲、占拠してしまったのだ。
トリステインやゲルマニアにしてみれば鳶に油揚げをかっさらわれた格好となり、この戦争によって得るはずだった領地や諸々は大幅に減ってしまい、自然それらに付いていた傭兵達への払いも相応に低下してしまっていた。
そしてトリスタニアの安酒場に置いては、そんな割を食った傭兵達が酒を飲みながら愚痴をこぼしていた。
「ったく、ガリアの無能王もほんっと無能だぜ!」
「あいつのせいで俺たちゃ大損だ」
「とっとと死んでくれねえかねぇ……」
恨み辛みを吐きだしている連中から一人抜けて、スコールの隣に座るのはいつかの斧使いだ。
「おう、レオンハート。どうやらお前達の方が正解だったようだぜ。こんな事なら余所に行ってた方が余程儲けられた」
「災難だったな。だが、こればかりは仕方ないだろう。誰もあそこでガリアが加勢するなど予測していなかった」
「ああ、そのガリアよ。腹が立つぜ……簒奪王には、俺たちの稼ぎを横取りするのもお手の物ってか?」
(簒奪王……無能王……ジョゼフ……擬似魔法を広めた原因……)
大本の理由は判らないが、奴の目的は『もう一度泣く』事だという。自らの心を追い込むための一環として擬似魔法も広げた。では、今回のこともその一環か?
「って……おい、アニエスはどうしたんだ?」
スコールの隣、カウンター席で酔っているアニエスを指さす。ただその酔い方というのが、何というか尋常ではない。
「んん……?何だ?」
座った目をこちらに向けてくる。
「おい、レオンハート……話ばっかりしてないで少しは私に付き合え!」
酒の入ったコップをずい、と突き出してくる。
「だから、さっきも言っただろう。ガーデン規約三条四項『ガーデン生はその心身の健常な成長を促すためにアルコール類の接種は厳しくこれを戒める』。規約に従って俺は飲まない」
何度目かになる断りをきっぱりと告げて、コップを押す。
「ふん、私と酒は飲めないか。あーあー、私は信頼していたんだがなぁ?」
変わらず座った目で睨み付けながら、戻ってきたコップをぐいっと煽る。
「ま、アニエスさん。俺がお相手しますって」
と、空になったコップにまた酒を注ぎながらジョーカーが赤ら顔で応じる。
「お前は良い奴だなぁ、ジョーカー。お前の上官は強いが人付き合いの悪い人情味に欠けた奴だ」
「まぁ今はもう別に上官でも何でもないけどね」
アニエスの酒にジョーカーが付き合おうとした時に委員長であるスコールはもちろんいい顔をしなかったが
『あ、実は俺先月二十歳になったから書類上ガーデン卒業してるんだよ。……ここにいるけど大丈夫かなぁ。キングが上手く処理してくれてると良いんだけど』
と、思ったよりも年上であったらしい元SeeDはあっさりと返してきた。まぁ、卒業については時折『接続』されてくるキスティスにでも任せるとして……
酔っぱらいは苦手だ……とため息を付く。
(……こいつこんなに酔ったか?)
斧使いがひそひそと小声でそう尋ねてくる。
(ここのところ酒を飲む度にこうでな……今日は特にひどいが)
スコールも何処か心配そうにアニエスに目を向ける。
(あん?お前らも何か嫌なことでもあったのか?)
(心当たりは無いんだが……)
(おいおい、気をつけろよ?男にはどーでも良いことでも、女には重要な意味を持つこともあるんだ。お前も旦那ならそれぐらい気を回せ)
とりあえず、勘違いしているらしい男に突っ込みを入れておく。
(別に俺とアニエスは夫婦じゃない)
名字で呼ばれる夫など突っ込みどころが多すぎる。
(関係ないさ。やることやってるんだろ?)
(やってない)
額に手を当てつつ苦虫を噛み潰したような表情ではっきりと返す。
(ホントかよ?まぁどっちにしろ相棒なんだ。その不調ぐらいは気付かなきゃいけねぇぜ)
それだけ言い残し、手を振りながら去っていった。
(確かに……アニエスの異変に気付けなかったのは間違いない)
その点については不明を恥じる。改めてアニエスの顔を見つつ記憶を探る。
(酒量が増えたのは、アルビオンから帰ってきてから、か?)
確信とまでは行かないが、おおよその当たりをつけておく。
(酒に頼るのは、精神的な疲労がたたった時だと言う。あの前後にアニエスの精神に作用する出来事……)
強いて言うなら、彼女が仇を討った事か。だが尚のこと意味がわからない。
(それで精神的焦燥感が取れるというのなら判るが……アニエスは逆に精神的に不安定となって飲酒に逃げた……)
いや、或いは精神的にたがが外れて心ゆくまで酒を楽しもうという気になったか。
(……とてもそんな顔には見えないな)
軽く眉間に皺を寄せた顔を見てこの推測を破棄。
となれば、もう考えられるのは一つだけだ。というかこれでなかったらもう本当に見当が付かない。
(アニエスが仇を討ったことを、コルベールを殺したことを後悔している、ということか……?)
仇を討つことに意味など無い。やり通しても空しさが残るだけ。
物語の上ではよく聞く台詞だ。
スコールそれを信じていないタイプだった。何であれやり遂げることに意味はあるとそう信じていたし、その上で後悔するかは心の強さ次第だと思っていた。それともアニエスはその心の弱い人間だったと?
(まさかな……)
どちらにしろ、確認するのはきっちり酒が抜けた後にすべきだろう。
すっかり長居してしまったな、とスコールは三人分の荷物を持ちながら、空に浮かんだ三日月を見上げる。
人通りもまばらになり、少なくとも今はスコール達以外の人影は見あたらない。路地脇ではリバース真っ最中のアニエスの背中をジョーカーがさすってやっていた。
「大丈夫かな?」
「う……ああ……大分マシになった」
ジョーカーの呼びかけにそう答えながらふらふらと立ち上がる。
その危なっかしい足取りを見かねて、ジョーカーが背中を貸した。
「結局本当に一杯も飲まなかったな、お前は……」
ジョーカーの背から、恨みがましそうな声の言葉はスコールに充てられたものか。
「悪かったな、杓子定規で」
こちらも口を尖らせる。
「ふん……良いさ」
それだけ言葉を交わした後、しばし無言のまま歩く。
辺りに立つ建造物もまばらになって、街の範囲から外れたところでまたアニエスが口を開いた。
「……お前達は……仇討ちを、したことがあるか?」
「いいや、ない」
「ないね」
まさにこちらの聞きたかった核心であることは運が良かったのか?
「そうか……その方が、良いぞ」
ちらとこちらを向いたアニエスの目には覇気がなかった。
あの日、コルベールをメテオで殺害したすぐ後。職員や生徒達が彼の遺骸の元にやってきて、手遅れであると知り悲嘆にくれていた。
空から降ってくる隕石。まさかそれが、自分の仕業であるなどと殺されたコルベールとて気付きはしなかっただろう。
アニエスは誰からも責められなかった。ただ、ただ、彼女の目の前では悲しみに暮れる人々の涙が流される。
自分は何をしているのだろう。
『これも、天罰というやつなのかも知れんな……』
何も知らない銃士隊の隊長が、自分の隣でそう呟いた。
天罰などではない。これは、私の――
「今更、こんな事をした私が言うのも何だが……いや、ここまでやったバカな女からの忠告だ」
魘されて、飛び起きるようなことはない。これまでの戦場でそんなものは越えてきている。だが、アニエスの裡にはっきりとした痼りとして、悲嘆に暮れる者達の顔が残っている。
「誰か大切な者を殺されても、怨恨だけでは、人を殺めない方が、良い」
リッシュモンは、あのようなものは別に良かった。二十年前と相も変わらぬ金の亡者だった。
だがコルベールは、あの男は悔いていたのではないか。だからこそ自分に討たれそうになった時にも抵抗をしていなかったのだとすれば――
後悔はしていないつもりだ。でなければ、スコールに分けてもらっているフェニックスの尾でコルベールを回復させていた。だが、未練は残った。一度、彼とはきちんと話をしても良かったかも知れない。
「……あんたの言葉、覚えておく」
スコールは短くそれだけを返した。
恐れていた事態が発生したのは、それから二ヶ月後のことだった。
書き溜めをしておくと焦らなくても良いんですが、どこまで投下したか忘れそうになってしまいます。
では、今週はこの辺で。
ホントに殺しちゃったのか……
もしバレたら姫さんとキュルケ両方敵に回すというか、そういう展開もありか?
第3勢力的な
GJ
薄々予想してたがやっぱりコッパゲ死亡か
Seedの人、乙でした。
コルベールさん、やっぱ死んでしまったんですか。
アルビオン編は無事終了して今度はガリア編な訳ですが、この話、ゼロ魔側のメインキャラが余り成長してない&接点無しですので今後の予測が出来ません。
そこが面白いんですけどね。
続き待ってます。
そういえばサイトポジションがいないからタバサはあっさりオワタしてしまう可能性が高いのか・・・
シティーハンターこと冴羽リョウ召喚
ハルケに都会っぽさが足りん
511 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 00:28:01 ID:YUZnjRJF
そういえば、セイレーンのアビリティの『ちりょう』なら、タバサの母親の病気も治せるのでは・・・
魔法薬による混乱状態とみれば、理屈ではできなくもないと思います。
デアラングのボーゼルでもなんとかならんかな
確か原作では、「洗脳解くのめんどいから洗脳で上書きした」ようなことをやってたから、
タバサの母親も、「病気治すのめんどいから洗脳で上書き」すれば…
まあ、結果的に同じじゃね?なんでルイズに仕えるのかは見当もつかんが
Seedの人乙
ところで前回書き込めなかったんだけど
>(アビリティ、エンカウント無し、さきがけ、カウンター、早さ+40%ジャンクション。
> 属性攻撃にホーリー、防御にフレア、シェル、トルネド、クエイク。
> ST攻撃にスロウ、防御にペイン、エスナ、コンフュ、スリプル)
って言ってたのにクロムウェルに操られかけた時に
>(ああ……『不変の誓約』か……事前にコンフュをST防御にジャンクションしておけば良かったかもな)
ってなってたよ
>>513 ご指摘ありがとうございます。
修正してきます。
>204 :黒き天使デビルマン:2010/01/17(日) 03:36:36 ID:b34wg4q6
>どなたか代理お願いします
特に予定のある人もいないみたいなので、代理投下してみまっす。
『彼は前世の紆余曲折の中に自分の姿を見失い、双子の一人がかつては自分の半身だった片割れを愛するように私を愛するであろう』
ジャン・ジュネ/堀口大學訳『薔薇の奇跡』
『カエサルの物はカエサルに、神の物は神に納めよとキリストは言った。なるほど、金貨はカエサルの物だ。ならばこのワインは誰の物だ。
キリストの血であるはずのワインをローマにもたらしたのはカエサルだ。なあ、明。この真紅に彩られた酒は誰の物なんだ』
飛鳥了が細く繊細な指使いでワインのグラスをくゆらせ、明に問いかけた。明が首を横に振る。
『さあな。俺にはわからねえよ。キリストもカエサルも死んだ。死人は酒を飲まない。なら、少なくとも今はお前の物だろう。違うか?』
諧謔的な明の返しに思わず了がクスクスと忍び笑いを洩らす。確かにその通りだ。自分の手にあるワインはこの飛鳥了の物だ。
明がナイフでごっそりと切り取った血の滴るレアステーキをフォークで突き刺し、口元に運ぶ。
『しかし、とんでもない食欲だな。もっと食べるかい?』
『いいや、止めておくよ』
瓶ビールをラッパ飲みした。炭酸が口腔内で弾ける。明は口に残る血の味をビールで洗うように喉に流し込んだ。
了がじっと明の瞳を見つめる。明が不思議そうに見つめ返した。
『どうかしたか?』
了がキャメルのパッケージからタバコを一本取り出し、口に咥えて火をつける。そして煙を薄く吐き出すと明に微笑んだ。
『なんでもないさ。それよりも一つ聞きたいんだが、美樹とはどうなんだ。明』
赤く咲くのはケシの花 白く咲くのは百合の花 どう咲きゃいいのさ この私 夢は夜ひらく
十五、十六、十七と 私の人生暗かった 過去はどんなに暗くとも 夢は夜ひらく
ブラウン管の向こう側で藤圭子がマイクを握り締めていた。黒いドレスに身を包み、痛切な声を上げ、己の半生を歌と共に朗読する。
明は空になった瓶をテーブルの脇に置き、唇をハンカチで拭った。
『何でそんなことを聞くんだ?』
意味ありげに了が片方の頬を歪めた。口角を吊り上げ、笑う。
『別になんとなくさ。ただ、君と美樹の今の関係が知りたくてね。君は美樹を愛している。美樹も君を愛している』
『了、お前は何が言いたい?』
明の言葉を無視するかのように了が畳み掛ける。
『でも、本当に美樹が愛しているのは誰なんだろうな。元の穏やかな君自身なのか、それとも君の中にある荒々しいアモンの野蛮さなのか』
明が了を正面から睨んだ。思わず了がたじろぐ。
『……美樹が愛しているのはアモンだ。元々の気弱だった頃の俺ならば単なる居候のままだったろうさ。でもな。了、そんな事はどうでもいいんだ。何故なら俺が美樹を愛しているからだ』
『それは本当にお前自身なのか。美樹を愛したのはお前ではなく……本当はお前の中で眠るアモンではないのか』
にわかに明の顔が青白く退色していく。激しい不安と恐怖が明の心を食い潰そうと襲いかかる。了はまくし立てつづけた。
『美樹が身篭ったら子供は誰の子なのだ。お前かアモンか、あるいはその両方なのか』
力任せに明がテーブルを皿ごと叩き割った。瘧(おこり)にかかったかの如く身体をわななかせ、明が激しい剣幕で了を怒鳴る。
『いい加減にしろッ、そんな話はうんざりだッッ!』
今度は了もたじろかなかった。眼を逸らす事無く、明を見据える。了の中で燻りつづける嫉妬心──明には理解できなかった。
『いいや、止めないッッ、止めるものかッッ、美樹の体にはすでに君の……』
その場面で一切の記憶は途絶し、明は眼を開けた。
汗を吸った毛布を剥がし、飛び跳ねるように上体を起こす。心臓が胸板を強烈にノックした。
こめかみがズキズキと痛む。萎みきった肺が酸素を求めて喘いだ。
──大丈夫ですかい。旦那。
デルフリンガーが心配そうに明に声をかける。鏡を見た。デスマスクの如く生気を失った顔。
全身の毛穴から汗とともに力が流れ出していく。かぶりを振った。汗が飛び散った。
──大丈夫だ。心配するな。昔のことを思い出しただけだ。
ルイズが明の腰の辺りに横たわっていた。スヤスヤと寝息を立て、その裸体は安らかな夢の繭に包まれていた。
両腕を明の脇腹に巻きつけ、両足を明の筋肉質な太腿に絡ませて決して離そうとしない。ルイズの気息が溶けながら、空間に吸い込まれていく。
夢。何故今更になって夢を見る。不意に明は目頭を押さえた。涙が零れ落ちてくる。涙。最後に涙を流したのはいつだった。
心が蘇ること。それは同時に人間としての苦悩、懊悩を呼び覚ます事に他ならない。
泣いてみたって何になるわけでもない。だが、人は泣かずにはいられないものだ。
血で血を洗うデーモン達との戦いに明け暮れ、忘れていたはずの忌まわしい人としての記憶が明の中で喚起しつつあった。
飛鳥、飛鳥。本当の俺自身を愛してくれていたのは……お前だけだったかもしれない。
『黒き天使デビルマン』
風どころか双月でさえ、寝静まっているかのようなひっそりとした夜だった。フーケにしてみればあまり好みではない夜だ。
静寂は不用意な物音一つで容易に騒ぎ出す。獣の遠吠え、梟の鳴き声一つでもあればまた違ってくるのだが。
辺りは不気味なまでに静まり返っていた。例え深夜でも多少は何かしらの音が聞こえてくるはずなのだが。
特にこの時期はそうだ。もうすぐ季節が初夏にのびようとしているというのに、木々や草花といった植物が水を吸い上げる音すらない。
フーケはさっさと済ませてこの場を離れようと思った。ぐずぐずしてはいられない。騒ぎを聞きつけた歩哨が駆けつける前に宝を奪いたかった。
三十メートルの巨体を誇るゴーレムが宝物庫の壁めがけて拳を浴びせた。ドスン、ドスンという重く鈍い音が夜空に響く。
外壁に小さな亀裂が生じた。嫌、亀裂は元からあった。亀裂が徐々に枝分かれしていく。網膜状に広がった亀裂の中心部にゴーレムは最後の一撃を見舞った。
壁が砕け散り、瓦礫の破片が地面に降り注ぐ。ゴーレムの腕が宝物庫のガラクタを掻き分けた。フーケが値打ちのありそうな物を物色しつつ、目当ての品を探す。
闇夜に慣れた瞳孔がぐっと広がり、フーケは嬉しさに眼を細めた。宝に忍び寄り、そっと盗み出す。
間抜けな学院の教師どもが騒ぎ出す前に宝を安全な場所に運び出すとしよう。ロングビルに戻り、追っ手を罠にもかけなければならない。
フーケはゴーレムの肩に飛びうつった。ゴーレムが隠れ家に向かって歩を進める。地響きが上がった。それだけだった。
誰かがやってくる様子もない。誰の気配も感じられない。気づいていないのだ。明日になれば衛兵どもはお払い箱だろう。
宝物庫の壁に『破壊の杖、確かに頂きました』との声明文を刻みつけながらフーケは哀れな衛兵達を嘲笑った。
最後に土くれのフーケの名を記す。
嘲笑いながら胸に一抹の不安を覚えた。脳裏に横切るは悪魔。
不安を無理やり追い払おうとフーケは懐の杖を強く握った。
夜が明けるよりも早く、学院内では騒動が広がっていた。
もっとも騒いでいるのは教師連中のほうで生徒達は人だかりを作ってはフーケの噂に花を咲かせる程度だ。
おっとり刀で学院長室に駆けつけた教師達がさっそく誰の責任問題かという物議を醸し、実に様々な理屈をつけては責任を転換し合う。
オスマンとコルベールはそんな不甲斐ない教師にため息をつき、冷ややかな視線を送った。
「これは誰の責任でもない。わし等学院のメイジの責任じゃッ!」
声を荒げ、オスマンが教師達に向かって一喝した。フォローするようにコルベールが柔らかな物腰で一同を諌める。
「まあまあ、皆さん。責任の有無はともかく、今後どうするべきか考えましょう」
教師のひとりが前に進み出て意見を述べた。
「急いで王室に報告し、隊を派遣してもらいましょう」
それがいいと何人かがその意見に賛同した。だが、残りの教師が渋い顔を作り、貴族の名誉がどうとかメイジの誇りが云々などと言い出し始める。
「ふむ。では隊の派遣を良しとせぬ意見の者からフーケ討伐に加わる意思のあるメイジは杖を掲げよ」
先ほどとは打って変わって反対派の教師達が押し黙る。オスマンは臆病風に吹かれた教師達を情けないとばかりに一瞥した。
「これでは隊の派遣を呼ぶ前にフーケは姿を消してしまうじゃろ。さりとてお主らは一向に協力する気は毛頭無いようじゃな。いやはや、いかなわしでも困ったわい」
オスマンが大仰に諸手を上げて万歳した。その傍らで事の成り行きを見守っていたマチルダはいかにも真面目そうに表面を取り繕いながら心で嗤っていた。
「フーケを捕らえれば貴族としての名も上がるぞ。報奨金もかなりのものじゃ。殺してもかまわん。何人でいこうともいい。
そうじゃ、国からの報奨金とは別にわしの懐から一千エキュー出そうではないか。宝を、破壊の杖を奪還するだけでもかまわんぞ」
軽装兵(最下級兵士)の給金が月に七エキューのご時世だ。
貴族としてそこそこの家柄を持つ小隊長クラスのメイジでも年間に支給される額は金四百ダブロン(約八百エキュー相当)にまず届かない。
一千エキューは学院の教師からみても中々の高額だった。例え貴族でも一年は放蕩三昧で暮らせる。
それでも人間、やはり命は惜しい物、命あっての物種という。教師の中から杖を掲げる者は一向として現れず、時間だけが悪戯に過ぎていった。
「へっ、なんでえ、なんでえ、お偉い貴族様方がこんだけ雁首揃えて盗賊一匹相手に何もできねえってのかよ」
ゲラゲラと嘲るような笑い声が学院長室に響いた。鞘の中から漏れ出す笑い声に一同は振り向いた。
壁際にもたれ掛かった剣の持ち主を睨みつけ、凍った。剣の持ち主はルイズの使い魔であるギトー殺しの悪魔だ。
悪魔がこの部屋に入ってきた事に誰も気づかなかった。
腕を組み、集まった教師達を静観する明。それは少年が寡黙である事を人々に印象づけた。
デルフリンガーが主の代わりに喋り続ける。
「心優しい旦那がよ、そこの爺様の頼みを聞いてやるとそういいなさってるんだぜ。おめえらメイジが当てにならねえもんだからな」
オスマンが立ち上がり、満面の笑みを浮かべた。使い物にならぬメイジなどよりこの悪魔のほうがよほど頼りになりそうだ。
「おお、賊の手から宝を奪い返してくれるというのか、アモン殿」
使い魔に殿を使うオスマンに教師一同が目を見張った。それだけ、この悪魔はオスマンに期待されているのか。
デルフリンガーと明が少し話し込み、インテリジェンスソードがオスマンに答える。
「ああ、いいってよ。困った時はお互い様。その代わりルイズの謹慎を解けって旦那はいってるぜ。あと金は全額前金だ」
「心得た。そんな物はお安い御用じゃ」
オスマンから金貨の入った皮袋を手渡された明はデルフリンガーを握り締め、振り向く事無く部屋を出た。
晴天ではないが、窓から差し込む薄日がかろうじて晴れである事をルイズに知らせた。起きたルイズが大きな眼でアモンの姿を探す。
いない。いそいそと服を着替え、自室を出るとルイズは廊下を歩いていたキュルケにアモンを見なかったかを尋ねた。
「貴方の使い魔ならたったひとりでフーケから宝を奪い返しにいったわよ。貴方の謹慎を解く代わりにね。本当に主思いの使い魔よね。妬けちゃうわ。
強いし顔もハンサムだし。彼こそ本当の騎士だわ。悪魔にしておくのが勿体無いわね」
精悍な明の横顔を思い浮かべ、キュルケが頬を赤らめた。
ルイズがキュルケの両肩を揺さぶり「アモンの行き先を教えて頂戴ッ」と詰め寄るように指に力を込める。
「い、痛いわねッ、ちょっと落ち着きなさいよッ」
キュルケがルイズの指を引き剥がした。フレイムがルイズに向かって火を噴き、威嚇する。
「いい?アモンが貴方を学院に残したのは危険な目に合わせたくないからなのよ。使い魔は主の名誉と身を守り、危険を遠ざけるのが仕事。
だから彼は自分の仕事をしたまで、ルイズ、貴方は自分の使い魔を誇ってもいいわ」
ルイズはキュルケの言葉に耳を貸さず、学院の外へと脱兎の如く飛び出した。
唖然とした表情のキュルケが走り去るルイズの後姿を見送る。誰かがキュルケの裾を引っ張った。はっとしたキュルケが後ろに首を回す。
自分の袖を引っ張った者──青い髪をした少女、学友のタバサだった。
若い葦が遠くから吹き抜ける風に揺られてサァーっと騒いだ。冬から春にかけてすっかり落ち葉は堆肥となり、明がその軟らかな土を踏みしめる。
土地勘の無い明は己の勘だけを頼りにここまできた。デビルマンとしての明の感覚は鋭さを通り越し、異様なまでに発達している。
手前に見えるのは廃屋となった火の見小屋だ。天井と壁の一部が傾きかけている。新しく小屋が出来て見向きもされなくなってから急に朽ちていったのだろう。
明は小屋を無視し、古い巨木のてっぺんを見やった。
「おい、フーケ。お前がそこにいるのは旦那にゃお見通しだよ。お前が女だってのもな。わかったら出てきたらどうだ」
「……やれやれ、流石は悪魔だね。まさかこのあたしがこんな簡単に見破られるなんてさ」
フーケが軽業師の如き身のこなしで木から下りた。明が静かにフーケに手を伸ばし、金貨の詰まった皮袋を開く。
──お前の盗んだ物を返すんだ。お前も生きていかねばならないのはわかる。だから捕らえようとは思わない。この金貨と交換しろ。
「お前の盗んだお宝を皮袋に入ったこの千エキューで譲れと旦那は言っていなさるよ。旦那はお前を捕まえたりする気は毛頭ないとさ」
フーケ──ロングビル──マチルダは明から人間味を嗅ぎ取った。明の瞳がマチルダの瞳を射抜く。
マチルダは嗅ぎつけた。少年の寂寥感と渇きを。そして優しさを。
盗賊であるからこそマチルダは明から漂う絶望的な孤独を見たのだ。それは彼女自身が持つ孤独と同質のものだった。
殺人者、盗賊、アウトサイダーとはたったひとりだ。社会から己の正体を隠し生きる者達は他者からの密告や裏切りを極度に恐れる。
家族、友人、恋人にすら彼等は身を明かす事は無い。彼等が信用できるのは自分自身。何故なら自らを密告する者はいないからだ。
明はデビルマンとなった時、マチルダはフーケとなった時、その運命は決定された。
「わかったよ。破壊の杖をあんたに千エキューで渡そうじゃないか。金さえ貰えれば別にこっちはかまわないさ」
マチルダが宝物庫から盗み出した宝──ブラスターを明に引き渡した。嫌な記憶が明の中で揺り起こされる。
かつてのデーモンハンターが使っていた武器が今、自分の目の前にあるのだ。悪夢だった。自分だけではない。
地球からありとあらゆる物質がこの地に運ばれてきている。明は滅び去った哀れなる人類の過去に思い馳せた。
闇雲に探し回った所でアモンが見つかるわけがなかった。苔むした切り株に坐り込み、ルイズがしばし休憩を取る。
瀬音が聞こえた。どこかに川があるはずだ。音だけを頼りに清流を探る。あった。
常緑樹に蔽われた小川を見つけ、ルイズは近寄ると腰を屈めて紺碧色の爽やかな水を手酌ですくい上げて飲み干した。
冷たい水が喉に心地よい。身体の疲れを冷水が散らしていく。川の流れを目で追いながらルイズはもう一度、切り株に腰を下ろした。
竜に乗ったタバサが空中から明の姿を探す。流れる乳色の雲がタバサの視界一杯に広がっていた。
斜面をのぼり、用を足し終えたキュルケが小川で手をそそいだ。
わざと上流で手を洗ったので「ちょっと止めてよ。汚いわねッ」とルイズの顰蹙を買っていたが当人は相手にせずといった具合でタバサに声をかける。
シルフィードの視覚と嗅覚が遠くから立ち昇る狼煙と焼ける肉の匂いを捉えた。
きゅいきゅいと鳴きながら西の方面へと首を向ける。
「ねえ、タバサ。何か見つかったの?」
何も言わずにタバサが頷いた。西から見える小さな狼煙を指差す。もっとも地にいるルイズとキュルケには狼煙は見えないが。
一度地面に降り、ルイズとキュルケをシルフィードの背中に乗せるとタバサと竜はもう一度、空に羽ばたいた。
狼煙がだんだんと近づいてくる。人間の鼻腔でも焦げる獣脂の匂いがわかった。いた。崩れかけた小屋の近くで火を焚くアモンがいた。
小屋を藁葺き屋根に作りかえ、壊れた壁の一部を板で修復している。
三人と一頭の姿を認めた明が肉の一部を切り取り、シルフィードの頤目掛けて放ってやった。
空中で上手くパクリと肉を口に咥え、むしゃむしゃと噛み潰しては喉を鳴らして溢れる唾液とともにシルフィードが旨そうに嚥下する。
口腔内に残った肉をあらかた食べ終え、シルフィードが着地した。ルイズが竜の背中から弾かれるように明に駆け寄る。
「アモンッ」
ルイズが明の首を抱きしめた。タバサとキュルケも降りる。肉を物欲しそうに眺めるシルフィードに明が再度、大きな切り身を投げた。
そしてルイズに向かって振り返り、そっと少女の背中を摩ってやる。灰が風に飛び散った。赤く燃えた炭に落ちた脂がジュっと音を上げる。
「そういえば、フーケはどうなったの?」
明がブラスターをルイズの目の前に差し出した。デルフリンガーがルイズに説明する。
「そいつがオスマン爺様のいってた破壊の杖って奴だ。全くみょうちくりんな代物だよ」
「すごいじゃない。まさかフーケからもう宝を奪い返すなんて」
キュルケが混じり気のない賞賛の言葉をアモンに送った。もっとも、当の明は何も言わず肉を焼いているだけだったが。
「へえ、これが破壊の杖なのね。でもどうやって使うのかしら」
三人の少女がブラスターに興味を示し、食い入るように眺める。
白銀色に輝くブラスターの形状は杖というよりもマスケット銃に似ており、疑問を感じたタバサがこれは銃の一種ではないのかと呟いた。
「お、そこの青髪のお嬢ちゃんは利発だな。そうだよ。旦那が言うにはこいつは銃の一種らしいよ」
「なんだ。破壊の杖っていうくらいだからもっと凄い道具かと思ったわよ。確かに高価そうだけど、でもそれだけね」
ルイズとキュルケは興味を失ったとばかりにブラスターから視線をはずした。明がデルフリンガーの刀身に油を引き、黙々と石で磨く。
「ああ、良いこんころもちだ。旦那のようなお人の剣になれるなんて俺はなんて幸せもんなんだ」
枝を火にくべた。小枝がパチパチと爆ぜる。タバサだけが変わらず、ブラスターを見つめていた。
すっかり焼きあがった猪肉の切り身を大きな麻布で包みあげると明は残りをシルフィードに目前に置く。
「お嬢ちゃんは破壊の杖に興味があるようだね。ただの銃じゃないってのがわかってるようだ」
小屋の中で何かが動く音が聞こえた。気づいたルイズが小屋のドアを開けようと取っ手に触れる。
ルイズがあけようとした時にはドアのほうが開いていた。
小屋の中から出てきたのはオスマンの秘書であるロングビルだった。ロングビルがルイズに軽く会釈する。
「そこの姉ちゃんがフーケの居場所を教えてくれたんだよ」
「ミス・ヴァリエールの使い魔殿を無断でお借りしてしまい、申し訳ありません」
ロングビルがルイズに申し訳なさそうに頭を下げた。たなびく翠色の髪が項から零れ、耳元がルイズの視界に飛び込む。
桜色に上気した耳朶をルイズは見逃さなかった。ルイズが黙り、俯く。
「あんまり怒りなさんなよ、ルイズ嬢ちゃん。ロングビルの姉ちゃんは嬢ちゃんの為をおもって旦那に協力してくれたんだからな」
明がルイズの頭を撫でた。ルイズを背負い、空高く舞い上がる。タバサとキュルケもシルフィードに跨った。
「無事に宝も戻ってきたし、みんなで帰りましょうかッ」
キュルケの掛け声とともに一行は学院へと帰路についた。
廊下に並ぶ人垣を分け、明とルイズの一行は学院長室に入室した。ルイズとキュルケが失礼しますと挨拶する。
「おお、アモン殿、良くぞ無事で戻ってきてくれたのう。それで首尾はどうじゃった?」
明がブラスターをマホガニー机の上に転がす。オスマンの顔が輝いた。居並ぶ教師群がしてやられたとばかりに表情を曇らせる。
「これぞまさしく破壊の杖じゃ。流石はアモン殿、これで学院の面目も潰れずにすむわい。では約束通りミス・ヴァリエールの謹慎は解くぞ」
用件を果たした明は人払いをしてくれとオスマンに告げた。苦虫を噛み潰したような教師達と生徒と追い払い、オスマンは明に顔を向けた。
「それでアモン殿の話というのはなんじゃ?」
明が懐から羊皮紙を取り出し、オスマンの鼻先に突きつける。それは一種の誓約書だった。
羊皮紙には『もう二度と学院内で盗みを働く事は致しません』と土くれのフーケの名で書かれていた。
「オスマンの爺様よ。この筆跡に見覚えはねえかい?」
そこでオスマンはある事実に気づいた。己の秘書であるロングビルの筆跡とそっくりだったのだ。
「なんと、するとフーケの正体は……」
「そういう事さ。でもなぁ、爺様よ。ロングビルの姉ちゃんを捕まえようとはおもわねえこったよ。そういう了見はいけねえ。
旦那は爺様を信用してこの紙を見せたんだからな。そいつを裏切っちゃならねえやな。貴族の誇りに賭けても裏切っちゃならねえよ。
旦那を裏切れば爺様の寿命が消えちまうんだ。命は一つ、金玉は二つ、どちらも大事にしねえとよ。なあに、役得もあらあな。
試しに今度ロングビルの姉ちゃんのケツを撫でてみな。何もいわねえよ。なんなら下着に手を突っ込んでもいいぜ。
人間、灰になるまでっていうもんなぁ。雀百まで踊り忘れずってか」
デルフリンガーの言葉にオスマンが己の額を叩いた。この悪魔、下手な貴族なんぞ足元にも及ばぬほどのやり手だ。
「アモン殿は腕が立つだけではなく、世間知というものを知っておる。それに腹芸も中々じゃ。いやいや流石は悪魔殿よ」
オスマンがこめかみの部分を指をつついた。
「この件はわしの胸先三寸にしまい込んでおくとしよう。なるほど。国に突き出すよりはわしも好きに若い女の尻を撫で回したいしのう」
オスマンがおどけてみせた。明の頬が緩む。デリフリンガーが爺様も年のわりにゃ好き物だなとつられて笑った。
「そういえば旦那がいっていたんだがな。そいつはなんでもブラスターっていう代物で元々は旦那のいた世界の武器の一つらしいぜ」
「ほう、詳しく教えてくれないか」
無邪気な子供のように眼を輝かせ、オスマンが机から身を乗り出した。ぐらりと揺れた水タバコが危うく机から落ちそうになる。
「あいよ。じゃあ、ちょいと旦那に聞いてみるぜ」
明とデルフリンガーの会話は時間にして五分足らずだった。明が椅子に坐り、両腕を組む。
「旦那はオスマン爺様の脳に直接見せるとよ。事の始まりって奴を、ただし、こいつは他言無用に願いたいってさ」
明はオスマンの脳内に己の精神をぶつけた。サイコジェニーの使った幻影攻撃の応用だ。
オスマンの精神は明の精神と同調し、暗いトンネルの潜り抜けていった。
そして魂だけの存在となったオスマンは目の前に広がる光景に愕然とし、あるいは彼等の身体に触れようとした。
フラワームーブメント。グレイト・フル・デッドの激しいビートと重低音にヒッピーどもが肩を揺らし、つま先でリズムを取った。
フロアの中央で半裸の少女と踊り狂うのは同じく半裸のアモン。否、アモンに似ているが違う。あまりにも雰囲気がひ弱だ。
身体つきもアモンと比べて貧弱だった。だが、紛れもなくアモン自身である事をオスマンは理解した。
ここは阿片窟か何かなのか。オスマンの鼓膜が酷く振動した。
ダスター(ヘロイン入りタバコ)を吹かしていたドラマーがやたらとドラムを叩いたせいだ。
煙っぽい息を吐き出し、ビールをがばがばと飲みながら理性も何もかも吹き飛ばしながら騒ぎ吠える。
ヒッピー男の真っ赤に充血した目がギラつき、目の前にいた女をフロアに押し倒した。女は一切抵抗せず、男にその身を委ねる。
激しい音響が壁にぶちあたり、ピンボールの如く跳ね回った。奇声が渦を巻き上げ、狂騒と欲望が理性を呑み込む。
黄色い嬌声をあげ、シナを作る女達を取り囲み、口元をだらしなく開きながら声援を送る若者達。
アモンと踊っていた少女が一枚ずつ衣類を脱ぎ捨て、呂律の回らぬ口調で明を誘った。オスマンはただ、このサバトを眺めているだけだった。
クルクルと回るミラーボールが七色の光線をフロアの隅々にまで浴びせ、頭のイカレたバンダナ男が恍惚の表情を浮かべ、光を追った。
楽しむように少女が柔らかな尻朶をアモンの腰に押し付け、身をくねらせる。
「○◇×○△◇!」
秀麗な造形の顔立ちをした金髪の若者が明に何かを叫ぶと瓶を叩き割り、明と一緒に踊っていた少女に襲い掛かった。
砕けた瓶の切っ先が少女の胸に深く突き刺さる。突然の出来事に呆気に囚われていた少女は自分が刺されたと気づく事無く息絶えた。
瓶を少女の骸から引き抜く。鮮血が迸った。少女の血糊が金髪の若者のコートの袖口を濡らした。
「×○○△◇!」
アモンが金髪の若者に何かを叫んでいた。若者がそれを無視するように次々と周りの人間を割れた瓶で斬りつける。
絶叫と怒声が入り乱れ、フロアのタイルは夥しいほどの人間の血と臭気で溢れた。若者めがけて反撃する男達。
若者は数人の男達に取り押さえられ、凄惨なリンチを加えられた。若者に駆け寄ろうとしたアモンの口めがけて女がガラスのカップを炸裂させる。
飛び散ったガラスの破片がアモンの唇を切り裂いた。よろよろとアモンがフロアに手をつく。その時だった。
フロアの一角から悲鳴があがり、人々がその一角を凝視した。
人々の視線の先には不気味な唸り声をあげて醜悪なる怪物に変貌を遂げる一組のカップル。両腕は肘まで裂け割れ、眼窩からは蛇の如き触手が生えていた。
それを皮切りに次々とフロアにいた人間達が化け物へと変わっていった。人間である事を捨て、人間の為に立ち上がったデビルマンの全てはここから始まったのだ。
524 :
代理の代理:2010/01/17(日) 12:22:15 ID:0I5uS7Mz
212 名前: 黒き天使デビルマン [sage] 投稿日: 2010/01/17(日) 03:44:32 b34wg4q6
投稿終わりです、代理投稿おねがいします。
213 名前: 黒き天使デビルマン・代理 [sage] 投稿日: 2010/01/17(日) 11:41:08 UQMo0Zno
代理完了っす!デビルマンさん乙っした!!
・・・と書こうとしたら、ちょうどタイミング良く規制喰らってしまいましたw
何方か代理の代理で、本スレの方に代理完了宣言をして頂ければと・・・(汗
黒魔きてた(・ω・*)
これはほんと面白い。
元ネタの主だったイベントも、クロス先のFFネタも盛り込んで、なおかつ無理のないオリジナルに仕上がってる。
オリキャラも多いのに、出せるとこではしっかり出番与えてるし。
デビルマン乙!
代理マン乙!
代理マン代理マン乙!
皆さんこんにちは、第83話の投下準備ができましたので、これから開始してもよろしいでしょうか。
先約等なければ、15:50より開始いたします。
支援です
第83話
双月に抱かれた星 (前編)
古代怪鳥 ラルゲユウス
円盤生物 サタンモア 登場!
神の怒り、その光景を目にしていた者は、後にそう言い残している。
アルビオン王党派軍と、レコン・キスタ艦隊の戦闘の最終局面で、地上をはるか
四〇〇〇メイルで放たれた一つの魔法は、天変地異としか言い表せない悪魔的な
破壊力を持って、この世の悪魔に襲い掛かったのだ。
「ぐぎゃぁぁっ!」
今、ワルドは人間が作り出した究極の地獄の中にいた。そこは、かつて
ハルケギニア最強とうたわれた『烈風』カリンが、その人生の研鑽の末に
生み出した、二つのトライアングルスペルに最強のスクウェアスペルを融合させた
超魔法に、怒りの全魔力を込めた人知を超えた破壊空間、その中では、
人間を超えた肉体を持ったワルドとて、幼児にもてあそばれる人形のように
五体を引き裂かれていく。
「生き地獄の中で、己が罪を悔いるがいい」
カリーヌは冷酷な目で、並の人間なら瞬時に血風と変わってしまうだろう
暴風迅雷の中で、なまじ肉体を強靭にしたばかりに生きながら切り刻まれ、
焼かれ、凍りつかされていくワルドの絶叫を見つめた。
脱出は絶対に不可能、もだえるワルドは呪文を唱えるどころか五体の自由を
完全に奪われて、大怪鳥円盤サタンモアすら、かつて防衛軍のミサイル攻撃を
跳ね返したほどのボディを、まるで大鷹に捕まった小鳩のようになすすべもなく
裂かれていく。
「あれは、本当に人間なのか……?」
薄れゆく意識の中で、ワルドは自分が何と戦っていたのかと、悪夢よりも
ひどい現実に抗議するように思った。
だが本来ならば、カリーヌもここまでする気はなかったし、複合魔法はカリーヌに
とってもまだ危険な大魔法なのだが、ワルドはあまりにも卑劣な行為を続け、
怒らせるべきでない相手を怒らせてしまったのだ。
「これでとどめだ、二度とその不愉快な顔を私に見せるな」
一片の情すら見せず、カリーヌは意識を失い、かろうじて人間の姿を残す
だけとなったワルドと、外皮をズタズタに引き裂かれたサタンモアにとどめを
刺すべく竜巻の回転を極限まで上げていく。
しかし、ワルドの意識は死んでも、彼の肉体を占拠したものはまだ健在だった。
「役に立たん人間だ。戻してやった体は返してもらうぞ!」
再びワルドの肉体を完全に占拠した存在は、ワルドをすでに見限ったものの、
この竜巻の中でワルドと分離することは危険だと考え、痛覚を切り離した状態で
ワルドの口で叫んだ。
「人間よ! ここは貴様の勝ちにしておいてやろう! だが、こんな雑魚を
利用しようとしたミスは二度と犯さん、次は全力で皆殺しにしてくれるわ」
「ふざけるな、逃げられると思うか!」
カリーヌは竜巻の破壊力を上げて、逃すまいと壁を強化する。しかし、
ワルドはほくそえむと、竜巻の内部の空間に異次元への亀裂を発生させた。
「なにっ!」
ヤプールの手下はいざとなったら次元の裂け目を作って、そこに逃げ込む
能力を持っている。元より正々堂々などという思考などないために、メビウスと
戦ったドラゴリーなども、やられそうになると即座に逃げを打とうとしている。
しかしそれ以上に、密閉空間だった竜巻の中に、突然開放された空間が
現れたために気圧のバランスが崩れて、竜巻が逆に押し込む形になって
ワルドの体が吸い込まれていった。
「しまった、待て!」
だが時すでに遅く、ワルドの姿は次元の裂け目の中に消えうせ、次元の裂け目が
消滅すると、竜巻は激流を急にせき止めたときのように無秩序に暴走を始めた。
「ちぃぃっ! やむを得ん、引けノワール!」
魔法を解除したものの、バランスを崩されて暴走する竜巻は術者であるカリーヌも
飲み込もうと荒れ狂い始め、これを受けてはラルゲユウスといえどもひとたまりも
ないためにカリーヌは後退していった。
ただ幸い、ここは高度四〇〇〇メイルの高高度なので地上にまで被害が及ぶことが
ないのが救いだった。元々自然のものではなく、人工的に作り出した竜巻なので
送り込んだエネルギーが尽きればすぐに消滅するはずだ。
しかし、その安心感やワルドに対する怒りのあまりもあってか、さしものカリーヌと
いえども、その竜巻の中にまだ何が残されているのか忘れていたのは失態だった。
完全に暴走して秩序をなくした竜巻から、突如凶暴な金切り声を上げて、ワルドに
取り残されていた円盤生物サタンモアが飛び出して、ラルゲユウスめがけて
襲い掛かってきたのだ。
「ぐっ、しまった!?」
カリーヌはとっさに回避を取らせたものの、空中でホバリング状態でいたために
すれ違いざまにサタンモアの目から発射される破壊光線を翼に食らい、
墜落にはいたらなかったがしばらくは浮遊するだけで精一杯になってしまった。
けれど、向かってくるかと身構えるカリーヌの前で、サタンモアは襲ってくる
どころか眼下の王党派の人間たちへと急降下を始めたではないか。
「なにっ! おのれ、行かせる……うぐっ!?」
だが、魔法を打とうとしたカリーヌの体を突如強い痺れと疲労感が突き抜けた。
それはメイジが魔法を使うために必要な精神力を、短時間で枯渇させてしまったときに
まれに起きる現象で、普通ならば精神力が尽きても魔法が使えなくなるだけだが、
単独での三重複合魔法はその制御や使用に必要な精神力もケタ外れであるために
これまでの戦いも合わせて、さしもの『烈風』もとうとう限界が来てしまったのだ。
「くっ……やはり、無理をしすぎたか」
元々、この神技はカリーヌといえどもこれまでの人生でも数えるほどしか
使ったことはなく、かつ制御を失ったら無差別に周囲を破壊するために、いわば
禁じ手に当たる技であった。だが今回は周囲が無人であったことと、ワルドへの
激怒で増加した精神力を使うことで封印を解いて使ったが、それでもなおリスクは
大きいままで、反動をもろに受けたカリーヌは意識を失うことはなかったが、
降下していくサタンモアを追う力は残されていなかった。
「こんな、ところで……」
冷静さを失って禁じ手を使ってしまった己の未熟さを悔いながらも、カリーヌは
桃色のブロンドを汗に濡らして、使い魔の背にひざを突いた。
地上では、ワルドによる戦艦落としで甚大な被害を受けながらも、すでにほとんどの
リトルモアを撃墜して態勢を立て直しかけていたが、上空から火炎弾を吐きながら
降下してきたサタンモアの攻撃の前にはわずかばかりの陣形など意味を持たず、
圧倒的な空襲の前に再び壊乱状態に陥りかけていた。
「うわぁぁっ!」
「助けてくれっ!」
戦艦よりも強靭で、竜より機敏な巨大怪鳥には王党派の装備では手も足も出なかった。
確かにカリーヌの複合魔法で大ダメージを受けており、スピードも半減しているし
ボディも傷だらけだが、生物兵器として改造された際に植えつけられた凶暴性は
そのままに、目の前の敵と認識したものへと攻撃を続けた。
だが、突如どこからかの砲撃が暴れ狂うサタンモアへと襲いかかって、その体を
無数の爆発が包み込むと、それまで轟然と飛行していた巨鳥の行き足ががくりと鈍った。
「い、今の攻撃は……」
王党派の人間は、最初何が起こったのか理解できなかったが、それは実は
レコン・キスタ軍に唯一残った戦艦レキシントンから放たれた一斉射撃によるものだった。
「どういうつもりだね? ボーウッド君」
せっかく王党派を攻撃していたワルド子爵の怪鳥へと射撃命令を下した
ボーウッド艦隊司令官に、総指揮官であるクロムウェルの冷たい声がかかる。
「ワルド子爵は我が軍にも攻撃を仕掛けてきました。これは明確な裏切り
行為であり、その使い魔も同様と思われます。よって、本官は艦隊を保持する
という義務に従って、事前に脅威を排除しようとしたに過ぎません」
淡々と無感情に口上を述べるボーウッドは、王党派軍へと攻撃を再開せよと
命令してクロムウェルの反論を封じると、硝煙によって曇る空を見上げた。
こんなもので、主君に反した自分の罪が許されるとは思えないが、せめて
最後の誇りだけは失うまいと、彼は狂ってしまった自分の人生にささやかな
抵抗を試みたのだった。
だが、運命の女神ほど残酷で気まぐれな神は他に存在しない。レキシントンの
砲撃でようやく致命傷を負わされたサタンモアが墜落していく先には、
ボーウッドが忠誠の対象としていたウェールズの本陣があったのである。
「こ、こっちに来るぞぉーっ!」
墜落していくサタンモアは、偶然かそれとも最後の悪意のなせる業か、一直線に
本陣を目指して突進し、もはや避難は到底間に合いそうもなく、将軍や参謀達は
慌てふためくか絶望し、ウェールズはせめてアンリエッタだけでも救おうと
彼女をかばったが、墜落したサタンモアが爆発でもしたら半径一〇〇メイルほどは
吹き飛ぶことは確実と見られた。
しかし、執念深いヤプールの悪意の代行者のもくろみを成功などさせるまいと、
そのころ郊外にゼロ戦を不時着させて、戦いの続きを見守っていた才人とルイズは、
墜落していくサタンモアの先にアンリエッタとウェールズの本陣があると知ると、
誰の目もないことを確認して、彼らを救うべく手を結んだ。
「ウルトラ・タッチ!」
輝きが二人を包み、光の中からウルトラマンAが姿を現し、高速で飛行して
墜落寸前のサタンモアの前に回りこむと、細長い体を腰に抱え込むようにして
受け止めた。
「セヤァッ!」
慣性がついた一万五千トンの重量を、草原をかかとで削りながら停止させた
ところは、かろうじてアンリエッタとウェールズの立っているほんの一〇メイルだけ
前であった。
(ギリギリ間にあったわ!)
さすがに目を丸くしてエースを見上げているアンリエッタの顔を、エースの
後ろ目で確認しながら、ルイズは隠れた親友の無事を知り、次いで湧いてきた
憤怒を込めて叫んだ。
(よくも姫様に手をかけようとしたわね! 死ねーっ!)
そのときだけはルイズが体の主導権を握っていたのではと思うくらいの
気迫を込めて、エースはサタンモアの首根っこを掴むと、無人の森林地帯へと
向けて全力で投げ飛ばし、すでに飛行能力を失っていたサタンモアは
きりもみしながら地面に激突すると、体内の火炎袋が破裂した勢いで
断末魔の一声を上げると、木っ端微塵に吹き飛んだ。
(はぁ、はぁ……ざまあみなさい)
(……)
女を怒らせると怖いというのを、才人はあらためて実感し、エースは
北斗星司だったころの記憶、たとえばTACの同僚がひどい自己中の
女カメラマンにひっかかったり、自分も買い物の荷物持ちをさせられたなと、
あまり美しくない地球での思い出を蘇らせていた。
が、サタンモアが倒されて、ウルトラマンの登場に喜びに沸くアンリエッタや
ウェールズたちの前で、エースは突然よろめくとひざを突いた。
「ど、どうしたんだ!?」
くずおれたエースを見て人々の間からどよめきが流れる。しかも、登場した
ばかりだというのにカラータイマーはもう赤く点滅しているではないか。
(まだエネルギーが回復していなかったか……)
そうだ、時空間でのコッヴとの戦いがまだ尾を引いて、この短時間では
満足な回復ができていなかったのだ。だが、サタンモアは倒したし、ひとまずは
安心かと思ったエースの姿を、ヤプールは陰から見ていたのだ。
”現れたなウルトラマンAめ! あと一歩だったというのに忌々しい奴め。
だがどうやらエネルギーを消耗しているようだな。ようし、もう芝居はいいから
正体を現してエースを倒せ”
その思念波による命令はクロムウェルの下へと届き、彼は不気味に
微笑むと忙しく動き回っている艦橋の人間たちを無視して、窓から眼下に
見えるエースを見下ろした。
「ふっふっふ……のこのこ姿を現したのが運の尽きだウルトラマンAよ、
今こそこの私が……ぬ?」
だがクロムウェルが言葉を終える前に、エースはエネルギーの消耗からか、
透き通るようにして消えていってしまった。
「ちぃっ、逃げられたかっ!」
悔しがってはみたが、消えたエースはもうどこにも見当たらず、残された
クロムウェルは肩透かしを食らった気分で立ち尽くしていたが、そこへ
ボーウッドが叫んだ命令が耳に入って我に返った。
「全艦反転、撤退せよ」
「待ちたまえボーウッド君、撤退命令などは出していないぞ」
せっかくいいところなのに何を言い出すのかと、とりあえずはクロムウェルの
ままで、クロムウェルはボーウッドに命令の撤回を求めたが、彼は窓の外を
指差すと、憮然として返答した。
「日没です。暗がりでは砲撃の効果は得られません。それに残弾も残りわずかです。
ここは一旦引いて、待機されてある給弾艦で補給し、明朝以降に再度決戦を
かけるべきです」
確かに、激戦が続いて気がつかなかったが、いつの間にか夏の長い太陽も
かなたの山影に沈みゆき、赤い陽光も弱まりつつある。もうあと数分で
日没を迎えてしまうだろう。レコン・キスタのことなどは最初からどうでもいいが、
エースもいなくなってこのままどうするべきかとクロムウェルは悩んだが。
”エースを倒せないのであれば正体を現しても意味がない。しかし、人間どもを
追い詰めれば奴は必ず現れるだろう。ここは引け、そして日の出とともに
その人間どもを使って奴をおびき出すのだぁ!”
クロムウェルの頭の中には、異次元空間の極彩色の景色の中にうごめく
無数の顔のない人影が、新たな指令を送ってくる光景が映し出されていた。
そしてヤプールからの命令を受け取ったクロムウェルは、にこやかに
人のよさそうな笑みをボーウッドに向けた。
「よろしい、最終決戦は明朝としよう。全軍を撤退させたまえ」
「了解」
疲れ果てた声でボーウッドが再度転進を命じると、レキシントンのほかは
わずかに護衛艦数隻にまで打ち減らされてしまったレコン・キスタ艦隊は
まるで敗残兵のようによろめきながら、薄れゆく陽光の中へと帰っていった。
これによって、第二次サウスゴータ攻防戦は一応の終結を見て、急速に
暗がりを増していく中で、王党派軍は敵艦隊が去ったことを確認すると、やっと
戦闘態勢を解除した。
しかし、敵が去ってもやることは数多くあり、ウェールズとアンリエッタは
手分けして戦闘の興奮も冷め遣らぬままに、後始末に追われることになった。
「各部署は損害の確認を急げ、負傷者の手当ては貴族平民を問わずに
重傷者を優先するように徹底せよ」
差別のない救護命令が飛び、衛生兵や水のメイジが死に物狂いで
走り回る。さらに沈没艦から脱出した多数の捕虜もいたために、その収容と
武装解除、さらに離反者の味方入りのための手続きもあり、数時間の間
本陣から火が消えることはなかった。
が、それでもなんとか二つの月が天空にぽっかりと浮かぶ頃には、一定のことを
臣下に任せて、ようやく二人は息をついていた。
「やれやれ……本当に助かったよアンリエッタ、君がいなければ僕独りでは
どうしようもないところだった」
「あなたのお役に立てるのでしたら、わたくしに疲れなどはありませんわ。
まだまだ何でもおっしゃってください」
疲労困憊のウェールズに、疲れによく効くという東方由来のハチミツを
たっぷりと混ぜた紅茶を淹れて差し出すアンリエッタの瞳は、王女の者ではなく
年頃の一人の少女のものであった。
「ところで、これからどうなさるおつもりですの?」
アンリエッタは、ウェールズがティーカップの中身を、これはうまいなと言って
一気に飲み干すのを見ると、明朝までの対応策を尋ねた。
「そうだな……ここから南東に五リーグほど下ったところに我が軍の城が
一つある。かなり古いが補給基地として整備していたから物資の貯蓄は
充分だし、戦艦相手に平地で戦うよりはましだろうから、そこへ移動しようと
思うのだが」
「なるほど、城砦の防御力は無視できませんし、敵は砲弾の残りも
少ないはずです。いい考えですわ」
「そう、それに明日はあの日だ。本来は休戦するべきなのだが、敵は
もう後がないから夜明けとともに攻めてくるだろう。だが、知ってのとおり
軍艦は日中しか砲撃をおこなえないから、午前中に勝負をかけるために
短期決戦を挑まざるをえない。それまで耐え切れれば我々の勝ちだ」
ウェールズは自信ありげに答えたが、アンリエッタはもはや敵は
レコン・キスタなどではない以上、恐らくそうはならないだろうと思った。
しかしそれでも被害を最小限に抑える義務がある以上、ウェールズの
作戦が最善であるとも思っていた。
「そうですわね。では、もうしばらく休息をとったら移動を指示しましょう。
ところで……ウェールズさま」
「なんだい?」
「こうして、二人だけでお話するのも、ずいぶんお久しぶりですわね」
「ああ、最後に会ってから、もう何年になるか」
昼間は軍務のことで忙しくて、ゆっくり再会の感動に浸る間もなかったが、
こうして二人だけになると、三年前に初めて出会ったラグドリアン湖の湖畔から
いくつもの思い出が次々に浮かんできて、そのままでは涙を抑えきれなくなった
顔を見られてしまうと思ったアンリエッタは、ウェールズの横に座って、
顔が見えないように彼に寄りかかった。
「懐かしいです。ウェールズさまのにおい」
「やれやれ、甘えん坊なところは変わってないね」
ほんのわずかな時間だが、このときだけは二人の時間は三年前に戻っていた。
それから二人は思い出話をとつとつと続けて、この戦争についての話に
はいると、それは自然と目の前で見たウルトラマンAの話題に流れていった。
「それに、初めて見たけれど、あれが君の国の守り神かい」
ウェールズはウルトラマンAのことをそう呼んだが、アンリエッタは首を振った。
「いいえ、たぶんそうではありませんわ」
ベロクロンとの戦いではじめてその姿を現して以来、その存在がもてはやされた
ウルトラマンだったが、時が経つにつれて彼も無条件で助けてくれるという
ことではないことを、アンリエッタたちも気づいていた。
「確かに、彼は幾度となく私たち人間が窮地に陥ったときに、どこからともなく
現れて助けてくれますが、それは怪獣やヤプールなどの侵略者のような、
人間の力ではどうしようもない敵が現れたときにだけで、先程のレコン・キスタとの
戦闘など、それ以外の事柄で現れたことは一度もありません」
アンリエッタの判断は、だいたいの線で事実を指摘していた。ウルトラマンは
人間同士の事柄には干渉せずに、宇宙規模で平和と秩序を守ることを
使命としている。もちろん非常時の人命救助などの例外はあるが、
才人もルイズもウルトラマンの力は私的に乱用することは危険すぎると、
なかば本能的に知って心にブレーキをかけていたのだ。
が、なんにせよ地球人でさえウルトラマンが何者であるかを理解するには
何十年もかかったのだから、アンリエッタたちが推論以上で答えを得る術はなく、
話題が自然消滅しかけたところで、一兵士がアンリエッタの心音を急上昇させる
報告を持ってきた。
「ご報告いたします。ただいまトリステインのラ・ヴァリエールのルイズ・フランソワーズと
名乗る者をはじめとする一行が、姫殿下へのお目通りを願っておりますが」
半瞬を待たずして、喜色を満面に浮かべたアンリエッタが、すぐにここに
通しなさいと、間髪入れずに命令を出したのは言うまでもない。
ルイズたちがここに到着したのは、今からおよそ二十分ほど前であった。
戦闘が終了した後に、ルイズと才人はゼロ戦を放棄して皆と合流していたが、
戦闘終了後の混乱の中では、いくら貴族とはいえ女子供が入っていく余地はなく、
何時間も待ち続けてやっと受け付けてもらえたのだったけれど、陣営の入り口で
待っていた人との再会は、そんなイライラを吹き飛ばしてくれた。
「お前たち、無事だったか!」
「おかげさまで、目的は果たせませんでしたけど」
本陣に顔を出した一行を出迎えてくれたのはアニエスで、彼女は全員が生きて
帰還してきたことを知ると、柄にもなく大きな声で喜んでくれたが、目的を果たせずに
戻ってきてしまったことで叱られるのではと思っていた彼らは拍子抜けすることと、
ちょっとばかり照れくさく感じた。多分、一番危険な仕事を押し付けてしまったことに
負い目を感じていたのだろうが、今思えば無事にロンディニウムに着いていたと
しても警戒をかいくぐって、何らかの変貌を遂げているであろうクロムウェルを
打つことができたかは怪しい。
その後ロングビルとも再会を果たして、彼女もまた生徒たちの生還を心から
喜んでくれたが、奥へ案内されていく途中で、ルイズは無言のままアンリエッタたちを
守るように本陣の前にたたずんでいる仮面の騎士の前に出ると、思わず立ち止まって
見えない相手の顔を見上げた。
「……」
両者は少しの間何も言わずに視線を交わしたが、やがて仮面騎士のほうが
軽く首を振って、「行け」と合図してくると、一行は王党派の本陣の中にある
ウェールズとアンリエッタの私室のテントへと招かれていったが、ルイズは寿命が
十年縮む思いを味わっていた。
”お、怒ってるかも……”
昼間もそうだけど、改めて無言の圧力を受けて、ルイズは目眩を抑えながら
歩いていった。そしてそれを見送ると、仮面騎士は軽く息をついて、娘の無茶さ
加減を思うとともに、若いうちはこれぐらいの無茶はしておきなさいと、
相反した親心に身を焦がし、疲れきった体に鞭を打つと、見掛けは何も
変わらないように立ち続けた。
本陣の奥には、さすがにそうそうたる顔ぶれの将軍たちが顔を連ねており、
ルイズたちは場違いな者たちを見る視線に刺されまくったが、さすがにルイズや
キュルケなどは貴族らしく泰然たるもので、最奥の王族の部屋まで通されると、
中で待っていたアンリエッタとウェールズの前にひざまずいた。
「ルイズ、ルイズ、無事でしたか、よかった!」
アンリエッタはルイズの顔を見るなり疲労をまったく感じさせない顔で、
親友の来訪を喜んでくれた。
「姫様、まさか姫様がじきじきにこのアルビオンにまでいらっしゃるとは
思いませんでした。不肖ながら、この戦を止める働きが少しでもできればと
愚考していましたが、結局姫様のお手をわずらわせてしまい……」
「なにを言うのルイズ、あなたたちがどれほど頑張ってくれたのかは、みんな
聞きました。あなたたちがいなければ、わたくしがこれまでにしてきたことも
全て無駄になるところでした。わたくしにもっと先を読む力があれば……」
声を落とすアンリエッタに、ルイズはそれはどうしようもないです。姫様は
おろか他の誰にも読めなかったのですからと慰めると、彼女はやっぱり
ルイズは優しいわねと答えて、微笑を見せた。
「ともかく、皆さんご無事でお帰りになられたのが一番の幸いでした。
それに、こうしてウェールズさまもご無事で」
「話は聞かせてもらったよ。君たちが陰で我々王党派を……いや、アルビオンを
救ってくれたそうだね。心から感謝するよ」
ウェールズはアンリエッタと同じように、尊大な態度はかけらもなく気さくに
一行に話しかけてくれた。彼には洗脳されていた事実などはある程度脚色して、
ショックが少ないように伝えてあったが、さすがに何もなかったわけには
いかなかったので、ルイズたちの活躍は「ひかえめに」報告されていた。
「しかし、我が軍の名誉と信望を根本から損なうことなので、君たちの活躍を
表に出して表彰するわけにはいかないのだ。許してほしい」
「いえ、わたくしどもはそんなもののために行動したわけではありません。
そのお言葉だけで充分でございます」
それはルイズの本心であった。人一倍自己顕示欲の強いタイプではあるが、
アンリエッタやウェールズに認められたということが、彼女の胸を満たしていた。
それに、下手に目立っては後で天罰が怖い。その点ではキュルケたちも
同じで、名を上げるにしてももっと別な戦いでと考えていた。
一行は、初めて見るウェールズの本当の人格に好感を持って、この人なら
アルビオンは悪い方向にはいかないだろうと思うと、彼は気を利かせて
アンリエッタに場を譲った。
「わたくしからもお礼を申し上げます。あなた方には、いずれなんらかの
形でお礼いたします。さて、堅苦しい話はここまででいいですわね。
皆様とは学院以来になりますが、あのときのように自然に話してください」
「わかりました」
ルイズはそう答えたが、振り向くついでに才人やキュルケが無礼な
言動をしないようにと、視線で釘を刺しておくことを忘れなかった。
「サイトさんでしたね、いつもルイズを守ってくださって、どうもありがとうございます」
「い、いやあ……」
「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、他国の人でありながらこれほどの助力、
ルイズは本当によい友達をもってうらやましいですわ」
「国は違えど、同僚の危機を見捨てては貴族の名折れ、ですが姫様よりお褒めの
言葉をいただき、感無量の極みです」
「……」
一人ずつねぎらいの言葉をかけていくアンリエッタに、才人は照れくさそうに、
キュルケはウェールズもいる前ではさすがにふざけないが、猫をかむるのは
大得意といわんばかりに普段とは一八〇度言動を変えて、その隣でタバサは
無言のままで頭を下げた。
そしてアンリエッタは最後に、アニエスに肩を支えられてじっと待っていたミシェルの
前に出ると、少しのあいだ傷の痛みか、それとも別のものであるのか苦しそうな
顔をしている彼女の目を見て、ゆっくりと振り返るとウェールズに言った。
「ウェールズさま、申し訳ありませんが、少しのあいだだけ席を外していただけないでしょうか?」
「え? ……わかった」
ウェールズは突然のアンリエッタの言葉に戸惑ったが、彼女の視線が真剣で
あることを読み解くと、風に当たってくると言い残して外に出て行った。
「少し待ってくださいね」
アンリエッタはディテクトマジックで周囲を確認し、テントの周りにサイレントを
張って外に音が漏れる心配を除くと、あらためてミシェルの前に立った。
「……」
ミシェルは息を呑んだまま何も言えない。当然のことだが、彼女が間諜であり
暗殺の実行犯の一人であったことをすでにアンリエッタは知っている。普通ならば
死罪以外はありえず、特にウェールズを殺そうとしたことは、アンリエッタにとって
許すべくもないことのはずだった。
それでも、生きると決めたミシェルにとって、これは遅かれ早かれ避けては
通れない道で、どんな裁きが待っていようと受け入れる覚悟は決めていた。
しかし、沈黙を破ったアンリエッタの言葉は、その場にいた誰の予想をも
完全に裏切るものであった。
「ごめんなさい、わたくしのせいで、ずいぶん長いあいだあなたを苦しめてしまいました」
「え……」
一瞬、その場にいる全員の目の前が白くなった。それほどに、アンリエッタの
言葉は衝撃的で、返す言葉もかける言葉も思考の地平線のかなたへ吹き飛んでしまった。
「あなたの一族が、不当な罪によって滅ぼされてしまったことを聞きました。
それも、奸臣の跳梁などを許してしまった前王と、それに気づきもしなかった
未熟なわたくしの罪」
「そんな! 殿下に罪など」
思わずルイズはそう叫んだが、アンリエッタはゆっくりと首を振った。
「ルイズ、王族は国を受け取るときに権力や名誉だけでなく、先代までの業も
共に引き継がねばならないのです。それに、どうあれ彼女の心に気づいて
あげられなかったのはわたしのせい、本当の悪に気づかずに、真に国を憂える
者をないがしろにした、私自身の愚かさのせい」
「……姫様」
「ミシェル、先王に代わり、改めておわびいたします。謝ってすむことではありませんが、
傷つけられたあなたのご両親の名誉は、いずれ責任をもってわたしが回復します」
「そんな、いまさらそんなことをしてもらったって!」
父も母も帰ってきはしないと、ミシェルは苦しげに吐き捨てたが、アンリエッタは
王家に伝わる杖を置いて害意のないことを示すと、彼女の手をとって語りかけた。
「申し訳ありません。残念ですが、今のわたしにはあなたを満足させてあげられる
ような答えは見つかりません、けれども、たった一つだけ、あなたのご両親に
報いてあげられる償いがあります。それだけは、受け取ってほしいのです」
「それは……?」
瞳を見つめあう二人と、無言で見守る一同を静かな空気が包み込み、
ゆっくりと流れる時間が、アンリエッタの唇の動きから、それがつむぎだす
言葉を伝えていった。
「あなたの、命です」
「え……」
一瞬、なにを言われたのかわからなかったミシェルへと、アンリエッタの言葉は続いた。
「命令です。これから何があろうとも、どんな戦場に行こうとも決して死を選ばずに、
時間が人間としての終わりを告げるそのときまで生き抜いてください。戦死も自殺も
許しません。わたしはあなたから死を奪います。それがわたくしの償いです」
「い、意味がわかりません!?」
混乱するミシェルに、アンリエッタは口調をさらにゆっくりと穏やかに変えて、
子供に絵本を読み聞かせるように微笑を向けた。
「わかりませんか? では思い出してみてください。あなたのご両親は
亡くなるときに、その気があればあなたを道連れにすることもできたはずです。
ですが、ご両親はそれをせずに、あなたを残して逝かれました。それは、
あなただけはなんとしてでも生き延びて、幸せになって欲しいと願っていた
からではありませんか?」
ミシェルは頭を雷で打たれたようなショックを感じた。それと同時に、在りし日の
両親との思い出が蘇ってくる。仕事人間だったが、帰ってきたらいつも思い切り
抱きしめてくれた父、そんな父を誇りにし、あなたも大きくなったら父さんのように
責任感が強く誇り高い人間になりなさいと、父の帰りをいっしょに楽しみにしていた母。
「父さま、母さま……」
長い間心の奥底に悲しみと共に封じてきた懐かしさがどっと津波のように
襲い掛かってきて、ミシェルは思わず胸を押さえた。
「あなたにそれほど慕われていたご両親が、あなたの幸せを願わないはずは
ありません。わたくしにできるのは、その思いを少しだけ酌んであげることだけ」
もうミシェルに、言葉の形で返事をすることはできなかった。そうだ、
自分は両親の死という現実から来る悲しみばかり見て、その死が残した
意味までは考えなかった。こみ上げてくるめちゃくちゃな感情に、顔を押さえた
手の隙間から涙が漏れ、喉は嗚咽を漏らすことしかできない。
そして、子供の頃に戻ったように涙を抑えきれなくなったミシェルを、ドレスが
汚れることもかまわずに抱きとめたアンリエッタへ、半分期待で顔をほころばせた
才人が問いかけた。
「えっと、じゃあ姫様、ミシェルさんへの処罰は?」
「処罰? いまさら彼女へ罪を問えるような偉い人間がどこにいるというのです?
それに、万一彼女を死なせでもしたら、わたしは彼女のご両親に呪い殺されて
しまいますから、そう簡単にご両親と再会などはさせません。強いて言えば、
それが処罰ですね」
今度はまったく遠慮のない感激が皆のあいだを駆け抜けた。
「いよっしゃあ!」
全員を代表した才人の大きな歓声があがるが、今回ばかりはルイズも
無礼をとがめるような無粋な真似はしない。しかし実をいえば才人は、万一
アンリエッタが苛烈な裁きを下せば、後先考えずにミシェルをどこか遠くへ
逃がそうと考えていた。むろん、それがルイズにも迷惑をかけることを
想像できないほど彼は子供ではないが、もしもウルトラ兄弟ならばどうするか、
それを思えば答えは決まっていた。
そして、長年溜め込んだ思いを全て吐き出したミシェルが涙をぬぐうと、
アンリエッタは真剣な顔つきになって彼女を見つめた。
「ミシェル、許してほしいとは言いません。けれど、わたしはこれ以上悲劇が増え、
心ある者が死にゆくことを見たくはありません。人は生きてこそ何かをなせるし、
誰かを生かすためにこそ生きるべきと思います。ですから、生きてください。
その先にある、あなただけの光を天国のご両親に届けるためにも」
「はい」
もうミシェルの顔に迷いはなかった。人は死者のために生きるのではないが、
死者に報いるために生きることはできる。今死んだりしたら、天国の門で両親に
殴り倒されてしまうだろう。
だが、アンリエッタが許したとしてもトリステインではまだミシェルは反逆者
として手配されている身分であるから、おいそれと戻ることはできない。
そこでアニエスが進言した。
「姫様、私に考えがあります。ミシェルの身柄は、しばらく私が預からせて
いただいてよろしいでしょうか?」
「わかりました。して、その考えとは?」
「はい……ですが、その前にミス・ヴァリエール、あなた方にも出ていて
もらいたいのだが」
「なに? いまさらあたしたちが信用できないってわけ?」
「そうではない、だが、仲間であってもどうしても明かせないことというのもあるのだ。
遠からず、お前たちにもすべてを明らかにするが、今は私を信じてくれ」
そう言われてはルイズも信じるしかなく、テントの中にアンリエッタとアニエスと
ミシェルを残して、一行は外に出ようとしたが、その前にアンリエッタがルイズだけを
呼び止めた。
「ルイズ……ウェールズさまを救ってくれて、本当にありがとう」
「そんな、わたし一人の力では何もできませんでした。皆が力を貸してくれたから、
わたしなどほとんど何もしていませんわ」
自信なく、礼を返すルイズにアンリエッタは優しく笑いかけた。
「いえ、ルイズ、あなたがいてくれたからこそ、あなたのお友達もここにいてくれたのです。
その方々は、あなたがお友達だから力を貸してくれたのではないですか? 戦おうと
するあなたの勇気が、皆に目的を与えたのでしょう」
過大評価だとルイズは思うが、同時に最近は漠然とだが、単純な力のみが
強いのではないということも感じ始めていた。現に、才人は実力では完全に
負けているというのに、アニエスとの決闘を引き分けにまで持ち込んだではないか。
アンリエッタはもうルイズの古い記憶にある可憐なだけの少女ではなく、
立派な王族としての道を歩み始めている。しかし、自分は果たしてあのころから
少しでも成長できているのか、ルイズは自分自身がわからず、黙って頭を垂れた。
「では、わたしはこれで」
「そうね……あ、ルイズ、あなたは始祖の祈祷書というものをご存知だったかしら?」
「え、名前くらいは、確か始祖ブリミルが神に祈りを捧げた際に読み上げた呪文を
記したという、トリステイン王家に伝わるという秘宝では」
「そうです。そしてそれは代々の王族が……いえ、今言うべきことではないですね。
それはトリステインに戻ってからにしましょう。ともかく、記憶の片隅にとどめて
おいてくだされば充分です」
「は、では」
結局、アンリエッタが何を言いたいのかは聞けなかったが、ルイズはその
『始祖の祈祷書』という単語を脳内の一ページに赤字で書き込んで、幕の
外で待っている才人たちの元へと立ち去っていった。
本陣の外はいつの間にか喧騒も収まっていて、見上げればそこには天空を
覆い尽くす何兆という星々がまたたいて、ルイズたちを照らしていた。
「きれいね……」
地上の人間がどうあろうとも、宇宙は変わらずに静かに見守り続けてくれる。
だが、万古普遍の大宇宙と違って、ちっぽけな人間はあわただしく変わりゆく。
それからしばらくの後、アンリエッタとウェールズによって全軍移動が布告され、
一行も王党派軍について、後方の補給基地へと転進していった。
続く
今週はここまでです。qq5ihzcUの人支援ありがとうございました。
決戦といいながら、まあた引き伸ばしてしまってすいませんが、ラストを迎える前に
すませておかねばならないことが残っていましたので、バトルシーンはちょっと中断
させていただきました。
それと、ウルトラ銀河伝説はわたしも観ました。ベリアルさんは見事な悪役でしたけど
ベリュドラはなんと言いましょうか、だがアスカはかっこよかったぜ。グランスフィアに
飲み込まれた後であちこちを旅しているという設定でしたから、その途中で立ち寄った
ところの一つがハルケギニアだったと、そういうこともありでしょうか。
さて、次回はまた少々やっかいごとが起きるでしょうが、もう少しお付き合いください。
投下乙です。ルイズが虚無に覚醒する日が近づいてきましたな。
乙。
>ベリュドラはなんと言いましょうか
うん、まあ……ね。
ウルトラの人乙
545 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 16:31:38 ID:YLuUI8vC
ウルトラの人投下乙でした。
わたしこそ しんの つかいまだ!
はっ、なんだ!?
ここは、どこだ?
しにがみは どうしたんだ?
めいきゅうで うかつにもぎんのかがみにふれてみたとたん、
わたしはみおぼえのないばしょにでた
あかるいひざし、なつかしいだいちのかおり!
そして、わたしをとりまくおおぜいのひとびと!
みな、いちようにわたしをながめ、わらい、さざめいている
ゆうしゃのきかんを でむかえてくれているわけでもなさそうだが・・・
これはいったい、どうしたことだ?
しらべる→目の前の少女
「あんた かんしゃしなさいよね!
キゾクにこんなことされるなんて
ヘイミンには いっしょうないことなんだから!」
なっ、なんだ?
じじょうをきこうとしたとたん、
おんなのこが あかいかおをしてわたしにせまって・・・
・・・いきなり、わたしにくちづけた!
いったい、これはどういうことだろう?
しかし、ああ、なんというかぐわしいかおり・・・
うっ!?
きゅうに、わたしのむねがやきつくようにあつくなった
いっ、いたい!!
わたしは、からだをやきつくすようないたみにころげまわった!
「ツカイマのルーンをきざんでるだけよ!
おとなしく しなさい!」
しょうじょがなにかいっているが、わたしにきいているよゆうはない!
あまりのいたみに いしきがとおくなってゆく・・・
あんなしょうじょに かんしんをもつのではなかった・・・
ああ、なんておろかなのだ!
いちじのゆうわくに まけたばかりに・・・
ざんねん!
わたしのぼうけんは ここで おわってしまった!
ウルトラ乙
今日も支援が間に合わなかったぜ
>>550 なんだこりゃwww
自分は少しは知ってたからいいけど、他に分かるやつが何人いるだろう?
投下予告と終了宣言を忘れてた、申し訳ない
まあ、なんというか突発的にやった
別に後悔はしてない
これはワロタwww
しんのゆうしゃwww
フーケのゴーレムを前にピンチになったルイズ達の前にOガンダムが助けに来たら
これで続きモノだったらディアボロのごとくいちいち死にまくるのだろうなぁ
悪しきものよ…無(ゼロ)に還れっ!
デルフを手に入れたらとりあえず一度はセルフで使わないとなwww
つかう
ニア デルフリンガー
ニア セルフ
デルフリンガーをぬくと そのやいばはキラリとあやしくかがやいた・・・
わたしはデルフリンガーをむねにあてて、ちからをこめると
キラリとひかるやいばが わたしのしんぞうをつらぬいた!!
どくどくとわたしのむねからちがながれてゆく・・・
なんてことだ!こうなることはわかっていたのに!
わたしのからだは どんどんつめたくなっていく・・・
「ああっ、あいぼう!あいぼう!」
デルフリンガーがこえをかけるが わたしのいのちはすでにしにがみのてにわたっていた・・・
ざんねん!
わたしのぼうけんは ここで おわってしまった!
これだとゴーレム戦で20回は死ぬなw
スペランカー先生じゃぁ あるまいしw
つかう>つるぎ>せいどうのゴーレム
「ぼくを あまくみるなよ!!」
わたしが こうげきするよりも はやく こんぼうが
あたまの うえに!!
わたしは あたまを たたきわられてしまった!!
ざんねん!!
わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!
こうですかわかりません!
死んだと思ったはずがルイズに召喚されていた、という展開が多いこのスレですが――今朝の仮面ライダーW……頼むルイズ、霧彦さんを召喚してくれぇぇえっっ!!
いやです。自分でご勝手に召還してください
>>564 100%無理だろあれは。
あそこまではっきりと死亡描写をされちまったらもうどうしようもない。
死体が残ってたとかならまだしも、綺麗さっぱり、灰も残らず完璧に消え失せた以上
時々ある「瀕死の状態で召喚→助ける」的な展開も使えないからな。
いや、だから灰になる直前に呼んで救済してくれと言いたいのでは?
それに喚んだとしても風都ラブな霧彦さんはおうちかえるって言い出すだろうしなー
攻撃される直前に召喚されたとしても寿命僅かだしな
しかもナスカメモリとられてるし戦闘力激減
あれ? あんときドライバーも持ってかれたっけ?
怒る!
毎日心配ばかり!
寒くないか! 暑くないか! ケガしてないか!
ルイズがいなかったらどんなに気楽で自由か!
貴族だのなんだの言って、掃除も、洗濯も、身の回りのことでさえできないじゃないか!
俺だって人間だ! 人並みに夢もある!
聖人君子じゃないんだ! したいこともある!!
それをじっと我慢して、がんばってきたんじゃないか。
それぐらいわかってくれよ!! 頼むからしっかりしてくれ!!
今度だけは自由にさせてくれ!
もうすぐ大人じゃないか。もう子供じゃない!
自分のことぐらい自分でしてくれよ!!
ヴァリエール公爵夫人「残念だよワルド君・・・家族が減るのは・・・ <テラー>」
ワルド「なっ! <マザーコンプレックス>」
ワルドのケツを見てもなあ
むー
ワルドにお仕置きをする嫁さん――何故だろう、ルイズよりもエレオノールの方があっている気がする。
エレオノール的にはワルドは眼中にないんだろうな
でもきっとワルドは10歳くらいの「年上のお姉さん」に憧れる年頃に
エレオノールかあたりにラブレター送ってるんだぜ、きっと
カリーヌには「しょうらいぼくがししゃくけをついだらおよめさんになってください」とか
言ったに違いない
マザコンだからあいつ
・・・・・ああああああああ男ならきっと誰もが足を踏み込む地雷原な黒歴史
ワルド的黒歴史。
凛々しい年上のお姉さんに憧れる時代にエレオノールにこっぴどく振られる。
包容力のある優しい女性に憧れるが、病弱なカトレアを心配した公爵にシャットアウトされる。
年上は駄目だ、年下がいいとルイズを見初めるが裏がばれて使い魔に腕を切られる。
……中々に悲惨だな。
話の流れでロリコンにされたりマザコンにされたりワルドは悲惨だなw
>>580 ってか『不要キャラ』としてあっさり『処分』されそうなんですけど、この人。
手に入れたと思った力を暴走させて自滅
ってラストがすげえ似合うと思うのは俺だけ?
逆に考えるんだ。
ワルドの中ではママはロリババァだったと考えれば何の矛盾もなくロリコンとマザコンを両立できる。
(余計に大惨事)
超神ネイガーの小ネタでは実にきれいなワルドだったなあ
踊るハルケギニア捜査線
びっくりするほど何もないな、って落ち込み中のシンケンジャーの殿なら
召喚したら使い魔にもなってくれるだろうか
強いんだけど暇だったから使い魔やってもいいっていうキャラなら、世界を守る職務を放棄して遊びまわったあげくに
天空城を落としたマスタードラゴンとかもいいかも
あとウルトラマンゼノン、マックスが地球で頑張ってるのにマックスギャラクシー届けた以外は全然働かないヒーロー
または天体戦士サンレッドの兄弟戦士アバシリンみたいに、ひたすら暴れたくてうずうずしてる奴とか
だったらアホセル呼べば
戦闘力ガンダムファイター並みだし
マスドラは日替わり使い魔で出してくれりゃ良い
個人的に日替わりは仲間モンスターが入れ替わり立ち代わりする日常の方が好きだ
ゾフィー呼ぼうぜ
メンヌヴィルに頭焼かれてまさかの敗北
「ジョゼフは私が倒した」
ゾフィーをコケにするネタは嫌いだ
デスノのメロ召喚
ハルケでNo.1を目指すサクセスストーリー
ぱにぽにからメソウサを・・・
駄目だ、仮にガンダールヴになれたとしても剣を握れねぇ・・・
ゾフィーはメビウスで大円盤群を撃滅してサコミズ隊長を救う大活躍してるんだぞ。
それにゾフィーが助けにこなければウルトラマンもハヤタも死んでたし、エースは生き埋めで終わりだ。
バードンに負けたとか言うけど、タロウが一命をとりとめたのはゾフィーの適切な応急措置があったから。
ストーリー0ではチャータムにバラージの女王としての道を諭してるし、ほんとに呼んだら大活躍だろ。
TRPGとかの場合、オリキャラでもいいのだろうか?
世界観のみのクロスということになるが
>>594 よく話題になることだけど多分そういうのはアウトだと思う
つけるスキルやらがどうしてもどえりゃーハイスペックになってしまいがちだし
出来れば他人が理解ないし共感ツッコミその他が可能なキャラでやるべき
せめて商業モノに発表されたキャラで出来ればお願い致しますです、はい
>>594 TRPGリプレイから喚んでる作品はいくつかあるぜ
ゴーストステップ・ゼロとかへっぽこ冒険者と虚無の魔法使いとか
完全オリキャラはNGじゃなかったっけか?
すっかすかのプロット練っていて現在開戦くらいまでの流れが出来ているのですが、
アンチまではいかないレベルでもルイズと馬が合わないというか、
使い魔契約?「お断りします」、ギーシュとの決闘?「存在しません」
ゴーレム退治?「お断りします」手紙回収?「お断りします」レコンキスタと開戦?「へえ、物騒だね」
かなり大雑把ですがこんな感じで、
キャラの性格やら性能、目的的にタバサやコルベールとの協力関係になる形でのストーリー展開になるんですが、これってありでしょうか?
それを納得させるだけの理由があればいいんじゃあないかい?
聖帝様も契約してないけど、ルイズを気に入った形で進めて、NDKしてお楽しになられてる形だし。
まぁ、そこまでいくと、オリジナル展開考えないといかんかもしれんけど。
自分は読んでみたいが、とりあえず避難所の方がいいんじゃないだろうか?
ルイズの出番もかなり少なさそうだし
オオアリだとおもいます
「語る事さえ憚られる」某作品がンな展開
ある程度の基本ライン抑えてるならオッケーだとおもうのですよ
とりあえず投下してみてください
面白かったら絶賛するし面白くなかったらフクロにする、ただそれだけの事です
>597
まあ、ぶっちゃけやるのは構わんが、見た感じすごい危険性をはらんでるな。
成功すればそこそこ。失敗すれば公開黒歴史。
デッド込みのハイリスク、ローリターンってとこだな。
やっぱり、避難所が無難ですか
現在は本当にすっかすかなのでもうちょっと形にしてから数話書き上げて避難所に投稿してみる事にします
アドバイスありがとうございました
軽い物でも下手にルイズヘイト的な展開入れると
初期ルイズアンチ?的な人達が騒ぐ御輿にされちゃいがちなのでその辺は若干注意必要かも
避難所か理想郷が無難かねー
オリキャラ同然なんて言語道断
理想郷でもフルボッコにされるのが落ち
たまに汎用ゼロ魔FFスレがあればいいのになって思う
文字表現なら何でもありのカオスなスレ
魔界塔士サガの主人公を召喚
小ネタで本編後のドラゴン召喚なんてあったけど
開始直後とかの頃の荒くれ野郎ども呼んじゃったら
下手すればルイズの時点で
「てめーみたいなやつが いちばんムカつくんだよ」
されそうだ
まぁ開始直後だったらルイズに返り討ちくらう可能性も高いのだが
あるいは神殺しの直後に召喚されて
人間男が丸くなって『ちちおや』に至るプロセスをゼロ魔で〜ってのも面白いかなぁ
・・・ドア持ってたらすぐ帰れるな
「D−LIVE!!」の斑鳩をヴィンダールヴとして召喚とか。
最初の頃の待遇も「百舌鳥さんの修行よりマシ」でクリア。
ひょんな事からシルフィーに乗って能力発揮。
あれ? 今脳裏にジム・マジンガが浮かんできたよ?
某素晴らしきおっさんを召喚。
フーケのゴーレムも指パッチンで一撃さ。
斑鳩というと自分的には
「理想の器満つらざるとも屈せず」
なんだが…
>612
すでにあった気もしたが、バンテスおじさんの方かあれは。
ドズル閣下を召喚してくれ……
>>615 ドズル閣下を召喚しても中の人は助かりません
残念ながら・・・・・・
遅くなったけどデビルマンの人乙です。
ルイズと会話できる日はくるのだろうか。
仮面ライダーストロンガーこと城茂召喚
>>612 逆に錬金でいしのなかに(ry状態にされてしまいそうな気がしたのは
俺だけか
オフレッサーがヴァルハラへ……
オーベルシュタインの面なんか拝みたくないだろ
折角だし、美少女の護衛役としてトマホークを振るおうぜ
いい女と杯を交わす楽しみもあるんだぞ
>>611 空腹を訴える悟にスッとはしばみ草を差し出すタバサ
亡くなった声優繋がりで鬼太郎召喚が無かったのに気づいた
悪魔くんのやつでイザベラだかジョゼフに召喚されてるな鬼太郎
郷里さんって地味に人外結構演じているから
ルイズ的には当たりが多かったんだろうな…
人間でも人外クラスの方々ばっかりですけどね。
超兄貴のサムソンなら...ルイズが速攻で卒倒しそうだな。
海パン刑事とか月光刑事とかドルフィン刑事とか
>>サムソン
一瞬サムワンに見えた
バキの
初代と究極銀河最強男のサムソン&アドンなら言葉使いは後輩言葉だが紳士だぞ
他の作品だと暴走しがちなマッチョホモ
あとあいつあんなでも神々の1種なんで色々とすごい
年令が億年単位だったり実際の大きさが惑星並みだったり
全身無駄筋肉の塊のドルチルで
常識を超えた天才(バケモノ)を倒せるのは
常識が通用しない天然(バカ)だけ!
あっても無駄になるからじゃない?
色んなジャンルや場所で細分化してる現状でなんでもアリスレなんて立てても
住民が分散するだけで何のメリットもないじゃない
創作板の方に何でもあり的なゼロ魔スレがあったんじゃなかったか。
>>634 気兼ねせずに書けるってことで一定の需要は無いかな〜
各スレで弾かれたり、ちょろっとお試しで書いてみようと思った人が書いたりとか
ウルトラ系の召喚ネタ
東光太郎(タロウ本編終了後)だと変身しないし出来ないんだよな・・・どうするべきだろ?
「こんな事もあろうかと」的にオスマンを助けたのがウルトラの母で「いずれ資格ある者に渡してね」とウルトラバッヂ預けるとか・・・
シェスタの祖父が残り3話でいなくなった初代副隊長で無茶苦茶な作戦幾つも考えるとか
やっぱ「使い魔は使い魔使い(レイオニクス)」の方が良いのかな でもレイって暴走癖があるから隊長いないと
そうなると「バトルナイザー召喚」かな、ルイズがヴィンダールブによる擬似レイオニクス状態って感じで
妄想は幾つも出るんだけど文章には・・・誰かこう言うネタ カタチにしてくれないかなー
>>611 >ジム・マジンガ
彼はマブラヴ世界の方がお似合い……っつーか普通に居そうだ
練習用スレだってしたらばにはあるじゃない
>>641 あそこは別に何でも有りじゃないと思ってたんだけど、違ったの?
最終回後、帰郷中の新マンを召喚。
キスをされたのは郷なのに、使い魔になったのはウルトラマン。
そのおかげで、郷と新マンは初期の二心同体に戻ってしまった。
使い魔思考のウルトラマンと意思が合わず変身もできない。
郷がピンチでもルイズがピンチじゃないと変身はできない。
郷があぶない!さぁ、来週も皆で見よう!
>>643 >使い魔思考のウルトラマン
確実に見ないw
マイナーネタだが、ついカッとなって書いてみた。
しかし、こういうのは始めてのことなんで勝手がわからない。
何か気をつけるべきこととかある?
>>645 長編なら、フーケ戦くらいまで書き溜めてから投下する。
でも、最初は小ネタを投下してみて様子を伺ってみるのも良い。
フーケか・・・・・・召喚するものの都合で展開変わるかも知れないんだよな・・・・・・
おそらくマイナーネタだし、反応も聞いときたいんで
とりあえず一話投降してみてもいいかな?
とくに変わったとこはないが。
まぁ読む方も「そういうものだ」と割り切って読むでしょ
ってなわけでドゾー
それじゃ、お言葉に甘えて。
深見真著作『疾走する思春期のパラベラム』より『錠剤』を召喚。
不都合がなければ1:35分より投下します。
Si vis amari,ama.
――愛されることを望むなら、愛せよ。
Si vis pacem parabellum.
――シィ・ウィス・パケム・パラベラム。汝、平和を望むなら戦争に備えよ。
*
トリステイン魔法学院に在籍するルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールには一つのコンプレックスがある。
そのコンプレックスは、彼女が魔法学院の中で唯一魔法が使えない、ということ。
父は、トリステイン王国でも比べる対象を探すほどの有力貴族。母は、若き頃はその卓越した魔法で勇名をはせ、伝説とまで呼ばれた優れたメイジである。
姉であるエレオノールは、アカデミーと呼ばれる研究所の一員であるエリートだ。もう一人の姉のカトレアは、病弱で屋敷から出ることが困難なほどだが、その心は誰よりも優しく、メイジとしての技術も決して低いものではない。
婚約者であるワルド子爵は、王国内でも指折りのエリート部隊、グリフォン隊の隊長だ。
そして優秀な家族の中で、ルイズはただ一人、『魔法』が使えない。
しかし、彼女はある時を境に《パラベラム》となる。
*
トリステイン魔法学院にあるヴェストリの広場で、少女と少年が向かい合っている。
少女たちが立っているのは、学園の西側の広場の中央の辺りに向かい合っている。本来、人気のない場所だがこの時は、この学院の生徒である貴族で人垣ができている。ざわめきは広場を包んでいるが、向かい合う二人は意にも介さない。
二人とも杖を取り出し、構えている。
緊張感が高まり、見物人が我慢を切らしそうになった時。
「本当に降参はしないのか」
金髪の少年が口を開いた。
「ええ」
少女が頷く。
「君はゼロだ。今ならこちらも矛を収めよう」
「くどいわ。私はゼロじゃない。早く始めましょう」
「・・・・・・いいだろう、ゼロのルイズ」
少年は、薔薇を模した造花の杖を振る。杖から花弁が一枚、はらりと地面に落ちる。すると花弁は、ゴーレムへと変化を遂げる。細かい装飾を施された美しい鎧を身に纏った女騎士の青銅像。両手には何も持っていない。周囲からは静かな驚嘆の声が漏れる。
「これが、僕の『ワルキューレ』。 ゼロのルイズ、君にはこの一体で十分だろう。魔法の使えない君に勝ち目は、無い」
ルイズには確かに魔法は使えない。しかし、彼女はこの時すでに《パラベラム》だった。
――――そもそも《パラベラム》とは?
*
第一章 召喚の儀式
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの人生には、不遇がつきものだった。本人がどんなに努力しても、実力とは全く結びつかなかった。どんな勉強も、どんな訓練も報われない。そんな状況が何回も続くと、人間は努力をやめてしまうだろう。
けれどもルイズは、努力を怠らなかった。
人より多く杖を振り、人より多く本を読み、そして人より多く失敗した。
火、水、風、土。知りうる全ての呪文を唱えた。ありとあらゆる本を読み、知識を溜め込んだ。
しかし、ルイズの魔法が成功することはなかった。
初めて笑われたのはいつの事だっただろうか? 恐らく魔法学院に入学して、しばらく経った時。それまでは座学で、魔法の基礎や国の成り立ちについて説明を頭にいれる。
そう、その時点では、ルイズは優秀だった。
母のようになりたい。
父のようになりたい。
姉たちのようになりたい。
婚約者のようになりたい。
ただそれだけの想いに突き動かされ、ルイズは必死に努力した。
『さすがはヴァリエール家だな』『ねぇ、アナタはルイズがあの烈風の娘って噂はもう聞いた?』『なんでもお姉さんはアカデミーに勤めているらしいじゃないか』『ひょっとするとスクエアになったりするんじゃない?』
そんな風評は瞬く間に広がった。しかし。
迎えた初めての実技。
学友が次々と『レビテーション』を唱え、机に置かれた小石を浮かばせる。
レビテーションは物を浮かせる呪文。これは、どんな系統のメイジでも使える初歩的なコモンスペルである。メイジの力量により浮かせることができる物の数や重さは変わるが、これを使うことのできないメイジなどそうはいない。
順番が巡ってきたルイズの唱えたレビテーションは失敗した。浮かせようとした小石は、失敗の際に起きる爆発により砕け散り、教室を爆風が包んだ。
生徒たちには何が起きたのか理解できなかった。教師もそれは同じだ。理解できたのはただ一人。呪文を唱えた本人であるルイズだけだった。
混乱する同級生たちの中で、彼女は静かだった。
――まただ。また失敗。どうして私は・・・・・・・。
ルイズの心は静かだったが、それは痛みに慣れてしまっただけだ。もはや彼女の心は擦り切れて、今更失敗したところで波立ちはしなかった。代わりに生まれるのは闘志にも似た炎のような激情。
――諦めない。諦めたりなんかするもんか。
この出来事をきっかけに、周囲のルイズに対する評価は変わっていった。
『優秀な白鳥の雛』から『羽を白く染めたアヒルの雛』へと。
授業の実技の度に、魔法は爆発。成功はただの一度も無く、やがてルイズはこう呼ばれようになった。
『ゼロのルイズ』
メイジの表す象徴ともいえる二つ名。
『烈風』『閃光』『微熱』『雪風』『土くれ』『炎蛇』『香水』『青銅』
さまざまな二つ名があるが、そのどれもがそのメイジをよく表している。
魔法が成功しないルイズに与えられた二つ名は、ルイズを残酷なまでによく表していた。
『ゼロ』、『ゼロのルイズ』。魔法成功率0%のゼロ。
それが彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ラ・ヴァリエールに与えられた現実と才能だった。
そうして彼女は、友も味方のただの一人もいない孤独な学園生活を送る。けれどルイズは、諦めなかった。唯一、心の内に秘めた一欠片の矜持と常に気高くあろうとする誇りを支えに生きてきた。
そしてルイズは一年生最後にして最大の行事、『使い魔召喚の儀式』を迎えた。
学院から少し離れた草原。そこで若きメイジたちとは、己の生涯のパートナーである使い魔の召喚を執り行う。
次々と同級生たちが召喚に成功していく。カエルやネコ、鷲など普通だが、主人に見合った使い魔が召喚される。中にはまだ幼いが風竜を呼び出した実力者もいた。
『使い魔には主人に相応しいものが召喚される』
メイジであれば誰もが知っている常識だ。
――ならば自分は?
今まで一度の成功もしたことが無い自分には、答えてくれる使い魔がいるのだろうか?
この儀式は使い魔を召喚するものともう一つ、二年生への進級試験を兼ねている。
魔法学院に通いながら、使い魔を召喚することに失敗して落第した者など聞いたことがない。
それだけ使い魔を召喚するということは『当たり前』なのだ。
また生徒から歓声が上がる。草原の中央に目を向けるとそこには、サラマンダーがいた。
大きな蜥蜴を思い起こす容姿。しかし大きさは蜥蜴などとは比べ物にならないほど大きく、尻尾の先には炎が揺らめいている。
サラマンダー。風竜ほどではないにしろ、かなりのアタリだ。
召喚したメイジは、褐色の肌に艶のある赤毛。大きく胸元を開けた制服を扇情的に着こなした女生徒。
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ルイズの隣の部屋の住民であり、ルイズの敵。
キュルケのツェルプストー家とルイズのヴァリエール家には浅からぬ因縁がある。
キュルケはルイズの向ける視線に気づいたのか、こちらにウインクをして見せた。
奥歯を噛み締める音が脳髄に響く。
――負けられない。
その後も次々と召喚に成功していく。もちろん、失敗するものはいない。
やがて、ルイズの番が回ってきた。
担当教諭のコルベールをアドバイス与える。
「いいですか、ミス・ヴァリエール。落ち着いて、自信を持つのです。あなたは優秀で努力家です。私は応援しています」
「ええ、ありがとうございます。ミスタ・コルベール」
応援はしてくれても、信じてはくれないのか。
それでいい。私のことは私が一番信じている。
杖を取り出し、構える。ルイズの杖は煤だらけで、傷だらけだ。これはルイズの扱いが、雑というわけではない。これは彼女の努力の証。
「宇宙の果ての、どこかにいる私の使い魔よ・・・・・・私の求めに応じ、我が使い魔となれ」
呪文を唱え、杖を振る。爆音が響き、熱を孕んだ風がルイズを吹き飛ばす。
失敗。いつもどおりの爆発。ルイズは地面に叩きつけられ、低く呻いた。
「だ、大丈夫ですか? ミス・ヴァリエール」
コルベールが慌てて駆け寄り、ルイズを心配そうに覗き込む。
「・・・・・・大丈夫です。もう一度、やらせてください。」
まだ痛みを残す腕に力を入れ、立ち上げる。
コルベールは一瞬、止めようとしたがルイズの目に宿るギラつきを見て口を閉じる。
諦めない。決して、諦めるものか。
「やっぱり、ゼロだ! 見たか、サモン・サーヴァントまで失敗したぞ!」
「ははは、サモン・サーヴァントってどうやったら失敗するんだ? 教科書には載ってなかったぞ」
「いや、ネズミか何か召喚したのかもしれないぜ? まぁ、あの爆発じゃ肉屋も引き取ってはくれないだろうがな」
「おい、賭けしようぜ! 俺はルイズが失敗する、に50ドニエ賭けるぜ」
「バカ賭けになんないわよ。誰がゼロに賭けるのよ。勝率もゼロじゃない」
見返してやる。必ず魔法を成功させてやる。
「宇宙の果ての、どこかにいる私の使い魔よ・・・・・・私の求める力強い使い魔よ、我が導きに答え使い魔となれ」
やはり起きるのは爆発。再びルイズは放り出される。
今度の爆発はさっきより、規模が大きかった。ところどころ体がヒリヒリする。火傷したかもしれない。
またコルベールがルイズの元へやってくる。
止められたくない。ルイズはコルベールが口を開く前に立ち上がった。
「もう一度、お願いします」
呪文を唱え、杖を振る。
爆発。爆発。爆発。
杖を何度振っても、呪文をいくら唱えようとも、起きるのは爆発だけ。その度にルイズの小さな体躯は吹き飛ばされる。
それでもルイズは立ち上がるのをやめない。
――負けたくない。誰よりも、自分に負けたくない。
そろそろ十回を超えようとした時、見かねたコルベールが止めに入った。
生徒たちは飽きたのか、哀れんだのか、もはや嘲笑の類をルイズに向けようとすらしない。そのなかでただ一人、キュルケだけはじっとこちらを見ていた。
「ミス・ヴァリエール、これ以上は危険です。ほかの生徒の召喚の儀式もまだ済んでいません。今日はここまでにしましょう」
「・・・・・・嫌、です。お願いします。あともう一度だけ・・・・・・」
「ミス・ヴァリエール」
「お願いします」
「・・・・・・わかりました。あともう一度だけ、許可しましょう」
コルベールはすっと下がった。キュルケは相変わらず、こちらを見つめている。
これが最後のチャンス。ルイズは目を閉じ、スッと息を吸った。自分の魔法によって焦げた草の匂い。今度は失敗しない。するわけにはいかない。
「・・・・・・宇宙の果ての、どこかにいる私の使い魔よ・・・・・・力強く、何にも屈することの無い使い魔よ。私の求めに応じ、我が導きに答えよ!」
今までにない規模の爆発がおき、ルイズの召喚は成功した。
とりあえずこれで終了です。
肝心の錠剤は召喚できてないのですが、とりあえず区切りがいいのでここまで。
というか、どれぐらいの長さがちょうどいいのかわかんねぇ。
契約済ませて学院に戻るとこまで詰めた方がよかったか・・・・・・?
器物召喚系かぁ…
分類としてはニガテな代物だけど、読んだ感じだと面白そうではあるかな。元ネタ知らんけど。
俺は続けてみたらいいと思うですよ乙ー
乙
長すぎず短すぎずちょうど良いんじゃないかと思います。
これプラス定期的に投下できるペースでやってもらえると最高です。
でも、出来れば最初の一話で召喚してもらえた方が嬉しいです。
そうしてもらえると、読み続けるかどうかの判断が出来るのでw
特にクロス元を知らない作品を最後まで読んで召喚されてないとがっくりしますw
前話を思い出すのも億劫ですしね。
乙
切りのいいところで終わったし、短いってほどでもないんで、一話はこれでいいんじゃね
2:22から投下します
ギーシュがアンパンマンの黒バラ女王を召喚しました
ないよう
〜ルイズちゃん の まほう で くろバラじょおう を やっつけること が できました。だけど じつは……〜
おお、割と好感触?
長さはじゃあ、こんくらいで。
>>657,658
なんかやる気出てきた頑張ってみます。
やっぱ定期的に読みたいですよね、うん。
赤い目とかPZとか黒蟻とか来ないかな。支援の意味も含めて頑張ります。
>>659 ですよね・・・・・・
入れるかどうか迷ったんですけど、がっくり来ますよね。
よくわかってないんで、ウィキの方はまだ先になるでしょうが、編集の時に手を加えようと思ってます。
「あ……」
ルイズと女王が戦っている間、ギーシュは茨の蔓の陰から彼女達の様子を眺めていた。
彼が森の奥に隠れていたのは、他の生徒達による暴行を避けるためであり、女王から逃れるためではなかった。
他の生徒達に見つけられないように身を潜めながら、彼は女王の前に飛び出す頃合いを見計らっていた。
これ以上誰かに殴られることなく、大人しく鉄の像にされる――それは満身創痍の身で絶望に打ちひしがれていた彼が最も簡単に楽になれる方法であった。
その時、彼は他の生徒達が鉄化されるまでは体の痛みに耐えるつもりでいた。
しかし、彼の考えは女王と戦うルイズの姿を見るにつれて段々と変わっていった。
貴族としての誇り、それは彼にとっても大切なものであった。
彼が今日の昼頃にサイトと決闘をしたのも彼なりのプライドを貫き通すためだった。
ところが、女王の横暴とルイズの戦い様を見て、彼の心には今まで自分が貴族としての誇りと思っていたものに対する疑念が漠然と生じていた。
逆らう平民を力でを従わせること、それは女王が自分達にしたことと同じではないのか。
そして、目の前の敵から逃げ続け、逃げ切れないと分かれば楽に死ねる方法を探そうとする――そのような貴族にどんな誇りがあるというのか。
ぼんやりと感じられるそのような思いに彼が悩んでいると、彼の目の前が突然真っ白になった。
そして数秒後に視界が開けると、彼の目の前には茨の森ではなく乾き切った荒野が広がっていた。
天を衝く女王の巨大な姿は消えていた。
半径10リーグの範囲にあった茨の蔓もまた跡形も無く消えていた。
ギーシュの周りに残っていたものは鉄化した人間と草花、そしてルイズだけだった。
「ル、ルイズ……?」
意識を失ったルイズはアンリエッタの像の正面に背中をもたれ掛けていた。
足を伸ばし、地面に座るようにして倒れている彼女の体は鉄化していない。
ギーシュは彼女の元に駆け寄った。
その時の彼には、ルイズがどのような魔法を使い、どのようにして女王を倒したかは気にならなかった。
誇りある貴族としての在り方、その一つを見せてくれたルイズの安否だけがただギーシュには気掛かりだった。
「大丈夫かーい! ルイズ!」
足を踏み出す度に、ギーシュの体には鈍い痛みが走った。
だが、彼はその痛みに耐えながら走り続けた。
ルイズとギーシュとの間の距離は段々と縮んでいく。
彼は彼女まで後一歩の位置まで近づいた。
――ところが……
「ルイ……!? うわあああ!!」
今まで女王の姿が見えなかったために、ギーシュは油断をしていた。
彼の目前にいたルイズに黒い稲妻が直撃したのだ。
彼はその衝撃で勢いよく後ろに吹き飛ばされた。
「あ……そ、そんな……」
尻餅をついた彼が見たのは、鉄像と化したルイズではなかった。
彼の目の前では、黒い紫色の炎が激しく燃えていた。
「いやああああああああああああ!!!」
凄まじい悲鳴を上げながら、炎の中に浮かぶルイズの黒い影が踊り狂った。
長い髪を振り乱しながら全身をくねらせる彼女の体からは、何かが割れるような不気味な音が発せられていた。
「ひ……」
炎が勢いを増すと、中にいるルイズの影は次第に薄れていった。
そして、彼女の姿が完全に見えなくなったときにはもう彼女は声を出さなくなっていた。
「うぅ……あぅ」
ギーシュは慌てて上空を見上げた。
しかし、そこには女王の姿は無い。
赤黒い空には灰色の雲が漂うばかりだった。
「ほーっほっほっほっほ!」
「ルイズ!?」
突如ルイズの高笑いが聞こえ、ギーシュは彼女の方を向いた。
彼は一瞬、彼女が無事だったと思い安堵した。
ところが、そこにはまだ黒い炎が燃え盛っていた。
怪訝そうに炎を眺める彼の脳裏に悪い予感が過ぎった。
「ま、まさか……君は……」
ギーシュは後退りながら呟いた。
すると、黒い炎が四方に弾け飛んだ。
「ほーっほっほっほっほ! そうさ、私は黒バラ女王さぁ!!」
両腕を広げ、炎を振り払って現れたルイズの体は異形のものとなったいた。
関節が外れ、筋肉が伸びきった異常に長い手足と首。
死人のような灰色がかった青白い肌に、足元まで届くウェーブの黒髪。
そして、見下すようにギーシュを見つめる真っ赤な瞳がそこにはあった。
---
ルイズが最後に唱えた魔法、"虚無"の魔法は女王を完全には倒していなかった。
その時の虚無の魔法は、敵が唱えた魔法による力を強制的に解除する魔法――ディスペルの魔法であった。
そのために、闇の力によって模られた女王の身体と女王の魔力によって生み出された茨の蔓は消え去った。
しかし、ディスペルには精神力や魂まで消し去る効力は無かった。
闇の力を実体化させているにすぎない女王の肉体を消し去っても、女王の魂が意識を残している限り、それだけでは女王を倒したことにはならなかったのだ。
(ふ〜ん、私じゃ繋がらないようだねぇ……)
女王には漠然と、ルイズの身体を乗っ取っても自分には大魔法を使うことができないということが理解できた。
「それじゃあね、ギーシュ」
優しげなルイズの声色で、女王はギーシュに別れを告げた。
ルイズの体は彼に背を向けると、ゆっくりと宙に浮かんでいった。
女王にはもうギーシュのことなどどうでもよかった。
彼女は早く他の国を襲って、人々から集めた恐怖や絶望で自分の体を再生させたいと思っていた。
このまま女王が立ち去れば、ギーシュは助かることができた。
「ま……待てぇ!」
ところが、ギーシュは自ら女王を呼び止めると、両手で地面を押して倒れている体を起き上がらせた。
「みぃーーー!」
すると、女王はルイズの甲高い声を上げながらギーシュの前に急降下した。
元々153サントだったルイズの身長は180サント程に伸びており、彼の身長を上回っていた。
「私に命令するな!!」
赤い瞳を輝かせながら八重歯を覗かせるルイズの顔がギーシュの顔に突き合わされた。
「僕は、き、君に……っ!」
ギーシュは後退し、歩み寄ってくる女王との間合いを取る。
そして、ギーシュは胸元から薔薇の造花を取り出すと、その花冠の部分を女王に向けた。
「下らないこと言ったら……ただじゃおかないよ」
奇怪な肢体には不釣合いな、可愛らしいルイズの笑顔が彼を睨み付ける。
「僕は……君に、君に決闘を申し込む!!」
ギーシュは造花の杖を握る力を強めると、勇気を振り絞って自分の思いを叫んだ。
彼は、ルイズのように最後まで女王と戦う道を選んでいた。
//以上です。
//ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王の決闘がこのssのラストバトルです。
//今週は仕事が忙しいので来週水曜以降が次の投下になります。
乙ー
がんばれ男の子!
黒バラ女王様乙っす!
ギーシュがんばれギーシュ
乙乙
来週水曜以降が楽しみだぜ
俺はパラベラムは3巻までしか読んでないがルイズがどんなスペシャルショットになるか期待だ
6.4女乙ー
誤射いってぇw シナリオ部分も待ってるよ!
魔王者もがんばれー
フェイタルは、クロスについて訊きたいってことすかね?
もしそうなら外野意見になりますが、折角だから「何か撃てば特殊セリフが出る」くらいにしたら面白いかも。
蛮刀狼牙とかシェアスとか、はてはリューンの居合い斬りまで。
まぁ言うまでもなくクソ大変な割に見せるのは一瞬だから、そこまでしなくてもいい気もしますが。あれ前後矛盾しちった
口にするのも憚られる場所から誤爆。
どうか頼むから見なかったことにしてください…
ゼロのルイズ
ご立派なルイズ
南斗爆殺拳のルイズ
さて、ルイズにとって、もっとも最悪な二つ名ってのはなんなんだろう?
言いたいことも言えないこんな世の中は
>675
自主規制的な意味で?
最近ワルドの顔が思い出せなくなってきた
キムタク呼んでくれ
キムタクという略称には納得がいかんのじゃよ〜
これは何者かの陰謀なのじゃよ〜〜!!
類まれなユーティリティープレーヤーだったな
まさか元キャッチャーとはいえ急造捕手までやるとは思わなかった
黄色い浪速のキムタクもけっこう好きだ。
村作れるアイドルグループ呼んだ方が…
>683
なるほど、タルブ村は彼らが作ったのですね。
>>683 あのスーパーじいちゃん呼ぶだけでよくね?
>>686 スーパー爺ちゃん・・・
壊造時次郎のことかー
何も持ってこなくても普通にみんな改造してしまいそうだな
キムタクといえばハウルだな
アシタカ召喚はあんまり面白みに欠けるかな
滝宮レナ召喚
仇名はデル女
ルイズの部屋がガラクタ置場
こんばんわ。4作目ができたので投下したいと思います。
予定がなければ0:50から投下させていただきます。
「はあぁ~~~~」
ルイズはあの騒ぎの後から自分の部屋へと帰ってすぐ、自分のベッドの上にうつぶせに倒れこんだ。
そしてぐるんと寝返りを打ち、天井をぼんやりと見つめた。
見慣れた天井を見つめながら、ルイズは今日のことを思い返していた。
自分の召喚した幻獣、マイスの覚醒。
マイスが人の言葉をしゃべったこと、記憶喪失だったこと、持っていたリュックがとんでもない代物だったこと、マイスが話せることを秘密にされてしまったこと、秘密を知ってしまっていたシエスタに口止めすべく、あちこち散々探し回ったこと。
「・・・冗談じゃないわよー・・・」
走り回ったせいで疲れきった体を横たえつつ、ルイズはつぶやく。
ルイズには、疲れたことよりもマイスが話せることを秘密にしなければならなくなったことのショックの方が大きかった。
人の言葉を話せるような幻獣を召喚したとなれば、皆を見返してやれると思っていた。
私はこんな立派な使い魔を召喚できたとだと、召喚魔法をつかえたのだと。
『ゼロ』という屈辱的な二つ名で呼ばれることもなくなるはずと考えていた矢先。
最大の長所を見せるのを禁止されてしまうとは思いもよらなかった。
むろん、禁止されてしまう理由も理解はしたつもりだし、秘密は守らなければならないことも重々承知している。
しかし、やはり納得は出来ても不満は残ったままだった。
そして、ルイズは力なく寝転んだまま視線をマイスに向けた。所在無さげな様子で床に座り、その手には今回の騒動の原因たるリュックが握られている。
あの後、何か思い出せるかもしれないという理由から一応はリュックを返してもらった。
ただし、リュックからは中身の大半が抜かれている。公にするのは危険だということと、少し中身を調べたいという要請を受けたからだ。
調べてもらえば何かわかるかもしれなかったため、それについては了承することにした。
「結局、手がかりにはならないし、しゃべるのは禁止されちゃうし・・・ もう最悪」
「・・・・・・・・・」
ルイズの言葉に、マイスも何も言えなかった。
正直なところ、手がかりになるどころか、かえって謎を増やしただけのような気がした。
入っていた物も気になるが、何より厄介なのはその統一性のなさだ。
武器が入っていたと思ったら、今度は農具が出てきた。
農具が出てきたと思えば装飾品が出てきたり、植物の種が出てきたりと、物に一貫性がない。
大体、中身のほとんどがマイスのサイズに合わない。
マイスの身長は1メイル足らず、あの武器や農具はどうみても1メイル後半、おそらくは人間のサイズに合わせて作られた代物だ。
自分に扱えないような代物を、何故持つ必要があるというのか。
持ち物を探れば自身の情報も探れると思っていたが、これでは話にならない。
むしろさらに深くなった問題に対し、両者は深くため息をついた。
「あー・・・ そういえばさ、ルイズ」
重い雰囲気を少しでも和らげようと、マイスは努めて明るく尋ねた。
「そういえばずっと聞いてなかったけど、使い魔って具体的には何をすればいいの?」
マイスの問いかけを聞いたとたんに、ルイズはベッドから跳ね起きる。
その表情は先ほどとは打って変わって明るく、『よくぞ聞いてくれましたっ!』みたいな表情を浮かんでいた。
「そうね! せっかくだからあんたにも説明しといてあげる!
いい?使い魔の役目は大きく分けて3つあるわ!」
「3つ?」
「ええ。まず一つ目。使い魔には主人の目となり、耳となるべく感覚の共有ができるようになるわ。わかりやすく言えば、あんたの見たもの聞いたことが、わたしにもわかるようになるってこと。」
「おおー」
おもわずマイスは感嘆の声を漏らしていた。
それは確かに便利かもしれない。
互いの視界が見えれば、その分活動範囲が広がる。
また、互いに行けないところ、入れないところを補い合ったりも可能だろう。
「じゃあさ、早速やってみせてよ」
マイスが期待しながらそういうと、ルイズはバツの悪そうな表情になる。
「あー・・・ なんというか、その・・・・・・できないのよ」
「・・・・・・え?」
マイスが思わず聞き返した瞬間、ルイズは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「だから! できないの!! 何でかわからないけど、感覚の共有ができないのよ!!」
「ええ!? なんで?」
「だから、わたしにもわからないって言ってるでしょう!!」
そこまで叫んでから、ルイズはゼイゼイと肩をおろす。
「・・・まあ、いいわ。たまたまうまくいかないだけかもしれないし。ひょっとしたら一時的なものかもしれないし・・・ とりあえず次!!」
「2つ目は、使い魔は主人の望むものを見つけてくるの!」
「望むもの?」
「そうよ。秘薬に使う硫黄とかコケとかね。だから・・・」
「・・・僕、この辺の地形とか、何が取れるとか全然わからないんだけど」
朗々と語っていたルイズだったが、そういわれた瞬間に表情が固まった。
そういえば忘れていた。こいつは記憶喪失だったんだ。
記憶喪失ではどの辺りに何があるとか、秘薬に必要なものが何かとか分かるはずもない。
「み・・・3つ目よ! これが一番大事なのよ!!
使い魔はその能力でもって主人を・・・守って・・・・・・・・」
そこまで言い切ったところで、ルイズの話し声が徐々に小さくなる。
ルイズはマイスの体をじっと見つめた。
体はあまりに小さい。自分の半分程度しかない。
見た目は完全に羊。犬や猫のように牙や爪があるわけでもない。
体はモコモコの毛に覆われているが、それだけだ。耐久力など皆無だろう。
こいつがはたして敵から自分を守ってくれるのか
―――――――無理だ―――――――
どちらかというと守られる側でしょ、これ。
そこまで考え付いたところでルイズは思わず眩暈がした。
「ル・・・ルイズ?」
マイスの声が聞こえたが、もはや聞いてる余裕もない。ふらっと再びベッドに倒れこんだ。
「な・・・なんてことなの・・・ 使い魔として出来ることが何一つないじゃない!」
体を怒りと失望に震わせながら、握り締めた拳をベッドへと叩きつける。
「あー・・・その・・・なんというか・・・ ごめん」
暗くなった雰囲気を和らげようと質問したつもりだったが、完全に逆効果になってしまった。マイスは内心頭を抱えつつ申し訳なさ気に頭を下げた。
支援!
さらに重くなった雰囲気の中で、ルイズはふてくされつつ考える。
完全に予想外だった。
これでは使い魔としての役割をさせられるのかどうかも怪しい。
しゃべるのを禁止させられただけでこんなことになるとは思いもよらなかった。
かといってこのままにしておくのもなんか悔しい。
せっかく人並みの知能を持っているというのに・・・
そこまで考えたところで、ふとルイズはひらめいた。
そして、おもむろにブラウスのボタンを外し、服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと! いきなり何してるの!?」
「何って、着替えてるのよ」
「まだ僕がいるのに!?」
「何いってんの。あんた使い魔でしょ? 使い魔が見てるからって何がまずいの」
「う・・・」
確かに、自分はあくまで使い魔だ。どうみたって羊だ。 着替えを見られたからといってどうということはない。というのはわかる・・・様な気もする。
だがなんとなく、見てはいけないというような予感がしたためマイスはとっさにルイズとは逆の方向を見ることにした。
しばらく布のこすれるような音がした後、ばさっと何かがマイスに被さった。
なんだろうと思い、手にとって見てみると、レースのついたキャミソールに、パンティだった。
ぎょっとして思わずそれを放り投げる。
「な、何だこれ!?」
「下着に決まってるじゃない。あと、明日それ洗っといて」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
あまりに突然、かつ予想だにしなかった言葉に目が点になる。
「え?洗うって?僕が?ええ?」
「そうよ。あんた使い魔の仕事何一つできないんだもの。だから代わりに」
そこまでいってからルイズはにやりと笑う。
「掃除洗濯、その他もろもろの雑用をしてもらうわ」
「ええっ!?」
「だってせっかく人並みの知能を持ってるんだもの。それぐらいはやってもらうわ。
それに、雑用のできる幻獣ってことならまだ使い魔としての面目も立ちそうだし」
「・・・・・・・・・・・はぁ」
どうやら従うしかないらしい。居候させてもらう身の上である以上拒めるわけもない。マイスはため息をつきながら肩を落とした。
せめて下着くらいは自分で洗って欲しいところだが、文句を言ったところでこの少女が承諾するとは思えなかった。
ふと気づいたんだが、「感覚の共有ができない」って別に原作準拠じゃなくても良い事じゃね?
「それじゃあ、それ頼んだわよ。あと、明日の朝になったら起こしなさいよね」
そういいつつルイズはベッドに潜り込んだ。
「・・・僕の寝る所は?」
「そこ」
ルイズの指したところは床だった。何かが置かれているわけではない。ごく普通の床だった。見るからに硬そうだ
たぶん普通に寝たら体が痛くなることは必須だ、背中とか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
流石にマイスの戸惑うような、悲しそうな視線が気になったのか、ルイズは『毛があるんだからいいじゃないの・・・』とぼやきつつも毛布を1つ投げてきた。
人間が寝るのには物足りない代物だったろうが、マイスは体が小さいため十分だった。普通に体に巻きつけることが出来るくらいだ。
「それじゃあ、お休み」
「うん。おやすみ」
互いに言い合った後、ルイズが指を鳴らすと同時に机の上におかれていたランプの火が消えた。
これも魔法なのかと妙に感心していると、走り回っていたせいで疲れていたのか、早くもルイズの寝息が聞こえてきた。
ふと、マイスは包まっていた毛布から音を立てないようこっそりと抜け出す。
そして部屋にある窓から外を見る。
見上げた空には無数の星と、色の違う2つの月。
その光景に何か違和感を覚えつつも、マイスは今日のことを思った。
突然召喚されたこと、怪我のこと、自分が記憶喪失なこと、持っていたリュックのこと、その中身のこと、そして使い魔をすることになったこと。
自分が誰かわからない。何をしていたかも、ここがどこかもわからない。
ほぼ成り行きに彼女の使い魔をすることになったが、はたしてどうなるかはわからない。
わからないことだらけの不安だらけの状況だが、それでもやるしかない。
「やるしか・・・ないか」
一言そうつぶやいてから、マイスは眠るために再び毛布にくるまった。
翌日
部屋に差し込み始めた日の光と、外でさえずり始める小鳥の鳴き声でマイスは目を覚ました。
自身がくるまっていた毛布から這い出た後、まだ少し寝ぼけ気味の頭であたりを見渡す。
見覚えのない部屋に一瞬首を傾げるが、意識がはっきりするにつれ、昨日のことを思い出した。
「ああ、そうか・・・使い魔をすることになったんだっけ・・・」
そしてルイズのほうを見る。まだ彼女はぐっすりと眠っているようだった。
とりあえず昨日言われたとおりにルイズを起こそうとするが、ふとその時窓の様子が視界に映った。
「・・・今日はいい天気だ」
なんとなくそんなことをつぶやきつつ窓から外の様子をうかがう。
外はまだ少し暗い。
春先ということもあるのだろうが、おそらくはまだ早朝なのだろう。その証拠に太陽はまだ出てきたばかりのようだった。
少し考えてから、マイスは窓から廊下への扉へと移動し、扉を開けて辺りの様子を伺う。
部屋周辺にはまだ人が活動している様子はない。まだ誰も起きてないのだろう。
そこまで確認してからマイスは部屋に戻る。
どうやらルイズを起こすべき時間より、だいぶ早く起きてしまったようだった。
こんな時間にルイズを起こせば、気の短そうな彼女のことだ、おそらく癇癪が爆発するだろう。
しかし、もう一度寝るつもりにもなれない。
どうも体のほうは完全に起きてしまっている様子で、目も完全に覚めてしまっていた。
どうしたものかと考えていた時に、昨日ルイズから投げ渡された洗濯物が目に入る。
「せっかくだし、今のうちにやっておくか」
とりあえず、洗濯物をその辺に置いてあった籠へと入れてから、マイスは籠を抱えつつルイズの部屋を後にした。
しばらく後
マイスは洗濯に出てきたことを後悔し始めていた。
洗濯の場所が全くわからなかったからだ。
この学院の広さを甘く見ていた。てっきり部屋からはそんなに離れていないだろうと思っていたのだが、その辺を探してみてもそれらしいものが全く見られない。
昨日学院中を走り回った彼だったが、あの時はシエスタを見つけるのに必死だったせいで学院の構造を見ているヒマがなかった。
何より最悪だったのは慣れない場所を変に動き回ったせいで、自分の現在位置が完全にわからなくなってしまったことだ。これではルイズの部屋に帰れるかも怪しい。
誰かに道を聞くことも考えたが、辺りには人の気配がない。それ以前に自分はしゃべるのを禁止されてしまっている。
正直なところ、打つ手がない。正に八方塞の状態。
「・・・どうしよう・・・」
完全に途方にくれてしまい、マイスはつぶやいた。
せめてルイズに洗濯の場所を聞いておくんだったなぁと思うが、もはや後の祭り。
どうしたものかと頭を抱え込んだその時、廊下の曲がり角から見覚えのある人影が見えた。
そして向こうも自分に気がついたらしく、こちらへと近づいて来る。
その人影が近づいてくるにつれ、沈んでいたマイスの表情が明るくなる。
マイスには近づいてくる人影が、それこそ救いの神に見えていた。
「マイス・・・さん?」
「シエスタさん!」
そう。手に大きい籠を持ちつつマイスの前に現れたのは、学院内でも数少ない自分がしゃべることの出来る人物。シエスタその人だった。
―――――――――――――――――――――――――
「で、洗濯する場所がわからない上に、部屋への戻り方もわからなくなってしまったと」
「は、はい」
恥ずかしげに頭をかいたマイスに、シエスタはくすりと笑う。
「ふふ、気にしないでください。 これだけ広いと迷ってしまうのも仕方ないですよ。私だって最初はどこに何があるかわからなかったですし」
そういいつつ、シエスタは地面に置いていた籠を再び持ち上げた。
「私も今から洗濯に行くところだったんです。せっかくですから案内しますよ」
「本当ですか? ありがとうございます!!」
素直に喜ぶマイスの様子に、微笑みつつ洗濯場所に移動しようとしたシエスタだったが、ふと何かおもいたったように歩みを止めた。
「シエスタさん?」
「あの、案内する代わり・・・というわけではないですけど、ひとつだけお願いしたいことがあるんですがいいですか?」
「え? あ、はい。僕にできることなら」
突然のシエスタの申し出に一瞬面食らうマイスだが、断る理由もないし、何より助けてもらう以上、出来る限りのことをしようと考えていた。
「あ、ありがとうございます。―――ではその・・・」
シエスタはそこまで言ったところで少し迷うようなそぶりをみせる。
「えっと、その・・・ す、少しだけ・・・」
「?」
首をかしげるマイスの様子を見て決心が付いたのか、ぎゅっと表情を引き締め・・・
「あの、少しだけ・・・抱かせてもらっていいですか?」
予想外の言葉にマイスはおもわず目をぱちくりとさせた。
ちなみにこの後、望みどおりにマイスを抱きかかえたシエスタだったが、その抱き心地と愛らしさに、意識がしばらくあっちの世界へいってしまったようで、
マイスが『洗濯の時間がなくなるから』と、静止の声をかけるまでシエスタに抱きかかえられ続けるのだった。
「それにしても、洗濯なんて引き受けてよかったんですか?」
あの後、洗濯場所にたどり着いたシエスタとマイスは、互いに洗濯の準備を始めていた。
「まあ、居候・・・っていうか使い魔としてお世話になるわけだし、これくらいの雑用は」
屈託なく語るマイスだったが、シエスタのほうは正直気が気でない。
何せ彼は幻獣なのだ。確かに知能は高いが、それだからといっていきなり家事ができるとは限らない。
それに洗濯は見た目よりも難しい。
ただ桶の水のなかに突っ込んで洗えばいいというものではない。
特に貴族の持つ衣服は上質な物が多く、扱いにくいものが多いことをシエスタは経験上よく知っていた。
もし洗濯に失敗して服を破いたりなどしたら、主人のルイズから間違いなくお叱りを受けるだろう。
彼女がそうひどい罰を下すようには思えないが、それでも彼が怒られるというのは忍びなかった。
だから、シエスタは彼がもし失敗しそうならすぐにサポートしてあげようと少しながら張り切っていた。
そう思っていたのだが・・・
「・・・なんというか・・・普通にうまいですね」
「え?そうですか?」
マイスがきょとんとした顔で聞き返すが、話しつつも手はしっかり動いている。
そのかたわらには洗い終わった洗濯物が積み上げられ、残っているのはほぼわずかだった。
最初のうちは多少のぎこちなさもあったものの、シエスタが少し手ほどきしたところ、あっさりとコツをつかんでしまったのか、ほぼ完璧に洗濯ができるようになっていた。
「マイスさんがここまで器用なんて思っていませんでしたわ。これでは教えがいがなくてつまらないくらいです」
そういいつつ、シエスタはすねたような表情でぷいとそっぽを向いた。
「す、すみません」
おもわず表情をこわばらせてしまったマイスに、変わらず不機嫌な表情なシエスタ。
どうしよう、気を悪くさせただろうかと、半ば本気でマイスが悩み始めた時、
「クスッ、冗談ですよ」
と。いたずらっぽい笑みを浮かべながら、クスクスとシエスタは笑った。
そんなシエスタの様子にからかわれたことに気がついたマイスだが、クスクスと笑い続けるシエスタを見ていると、なんとなく自分もおかしな気分になり、その口から自然に笑みがこぼれた。
そうして、1人と一匹は、しばらくの間笑い続けていた。
「あれ?シエスタ? 今日の洗濯当番ってあんただったの?」
突然後ろから聞こえてきた声にマイスとシエスタはびくっと体を震わせた。
さっと後ろを振り返れば、そこにはシエスタと同じような姿をした学院のメイドと思わしき少女が数名、似たような洗濯籠を持って立っていた。
「ロ、ローラ・・・ ど、どうかしたの?」
先ほどの会話を聞かれていたかもしれないという不安から、若干シエスタの声は上ずっている。マイスもとっさのことに思わず洗濯籠の影に隠れながら、事の成り行きを不安げに見つめている。
ローラと呼ばれた先頭に立っていた金髪の少女はそんなシエスタの言葉にふんと鼻を鳴らした。
「どうかしたもなにも、私たちも洗濯に来たに決まってるでしょ。
ほら、最近雨が多かったじゃない?そのせいで洗濯物が溜まってたみたいで。
ほら、見てよこの量! おかげで皆急に洗濯係に回されちゃってさぁ。
雨続きだったからって何もこんなに溜め込むことないでしょうに・・・」
そんな不満を言いながら少女らは籠を下ろしていく。
どうやら先ほどの会話は聞かれていなかったらしく、シエスタとマイスは内心胸をなでおろした。
そういやルイズはあんまりマイスに萌えてないね
抱きまくらにして寝てもおかしくないのに
「っていうか、居るのあんただけ? 何か来る途中話し声が聞こえてたんだけど?」
ローラの言葉に再びシエスタとマイスに緊張が走る。
シエスタは顔を引きつらせ、マイスはよりいっそう息を潜めて籠の影に縮こまった。
「え!? う、ううん?さっきから私ひとりだけよ? 誰かいたなんてそんなこと全然ないわよー アハハー・・・・・」
シエスタは必死で否定するが、顔色は悪いは視線は泳いでるはで怪しさ満載である。
なんかもう、マイスからみてもひどく怪しい。他のメイドたちから見ればどれだけ不審に見えることか。
「なんか怪しいわね・・・」
案の定。シエスタのあわてた様子はかえって他のメイド達に不信感を与えてしまったのか、全員不審そうな表情を浮かべている。
そんな皆の様子にさらに慌ててしまったシエスタは、思わずマイスが隠れている籠の方に視線を向けてしまう。
こっち見ちゃダメー!と内心叫びたくなるマイスだが、もはや手遅れ。それを見逃すローラでもなかった。
「・・・そこに誰かいるの?」
シエスタの顔がさらに青くなった。マイスも大きく息を呑む。
会話をしていたのがばれるのではという危機感に、両者とも緊張が高まる。
ローラが周辺のメイドたちに目配せをした。皆も何をするつもりか察したのか一斉にうなずいた。
そしてローラは洗濯籠の方へ素早く近づいていく。それを見たシエスタが慌てて駆け寄ろうとするが、他の少女らによって行く手を阻まれてしまった。
「あ! ちょ、ちょっと待って!ローラ!!」
とめようとするシエスタを無視し、置いてあった洗濯籠を勢いよく引き剥がす。
そして、その影にいたものを目にした瞬間、少女らの目が大きく見開かれた。
「モ・・・モコー(ど、どうもー)」
それは、完全に出てくるタイミングを逃し、少し恥ずかしげに愛想笑いを浮かべて手を振るマイスの姿だった。
『か―――』
「・・・・・・?」
『かわいい―――――――――!!』
言うがはやいか、少女らは一斉にマイスへと走りよる。
「なにこの子――――!かわいい――――!!」
「きゃー!!ふわふわ――――!!」
「もこもこ――――!!」
それはまさに肉食獣に群がられる哀れな子羊のごとく、マイスの姿は突如走りよってきた少女らに埋もれて見えなくなった。
「モッ!モコ―――――ッ!!??」
「ああっ!! マイスさん!? マイスさ―――――ん!!」
シエスタの制止の声もむなしく、マイスは圧倒的な女子パワーの前に、触られ、掴まれ、抱きとめられ、もみくちゃにされるのだった。
以上で投稿終了です
・・・あれ? マイス君にもっとモコモコ言わせたかったはずなのに、全然言えてなくね?
次回はもうちょっとマイス君にモコモコ言わせてやりたい。
乙
>>689 カリン様に「黙れ小僧!」と言われるアシタカが真っ先に浮かんでしまうw
「(魔法が使えないというコンプレックスから)あの子を解き放て!あの子は娘だぞ!」
とか言っちゃうくらいしか思いつかないけど、それまでにルイズ自身や親兄弟間だけでどうにかなる話じゃないってのは分かってるだろうしな……
7時15分投下予定
王宮には、始祖の祈祷書がある。
この始祖の祈祷書は、贋作だけで図書館が作れるくらいにある。
しかもこの始祖の祈祷書、ページが全て真っ白。
ようするに儀礼用の始祖の祈祷書なのだ。
誰も本物とは思っていない。
本当は、学院の方からルイズの手に回る予定だったのだが。
結婚式の日が開戦の為、結婚式に姫が向かわない。
つまり、始祖の祈祷書も不必要。
ルイズの手に回る事も無くなった。
学院の中ではオスマンとコルベールとロングビル以外に、開戦を知っているものはいない。
学院は至って平和そのものだったのだ。
ただ、たまにギーシュが学園にこないことを怪しむ者もいたのは確かである。
が、そんなことでまさか開戦説が定着するわけもなくコルベールは常に冷や汗をかいていた。
なんてったって学院が混乱したら、まず真っ先にオスマンと自分に責任が来る。
オスマン氏は大丈夫だろうが、自分は守ってくれる盾が無い。
自分が教職を追い出されたら、研究室の置き場が無いのだ。
秋山が来るまで、心臓を常に全力で活動させながら生徒に授業を教えていた為、周りから見れ
ば当然変だった。
しかし、コルベール先生が変といったことは稀に良くある事なので、特に誰も触れなかった。
「いやはや、本当冷や汗だけで体内の水が全部なくなりそうでしたよ。」
「苦労しとるの。」
「それだけですか。」
「ん――これじゃあ、こちらの被害もでるのー、いかんいかん。」
秋山の無視、と言うのも、他人の研究所の机に地図を広げて、コンパスと定規を持ち線をひいて
は罰点を書く、罰点だらけになればその紙は塵になる、要は作戦を立てるのに必死だったのだ。
「……でも、何故ここで?」
「落ち着くのが第一じゃ、臭いはまぁ、気にならん。」
「作戦というのは機密情報でしょうに……。」
「問題ない、ここに来るのは変人だけぞな。」
「ハハハ、違いありませんな。」
そういう会話をかわしながらも、秋山は片手間で紙に描いては捨て、描いては捨てて。
もともと汚い研究所がさらに汚く。
それを見て、床に散らばる紙をどんどん片付けていくコルベール
ふと、そのコルベールが口を開いた。
「にしても、秋山殿は国にとって得体も知れないはずなのに、どうしてここまで信用されているので
すか?」
「多分な、姫さんはまだ若い、じゃから頭が固まり易い、姫さんの頭には国の頂点としてこうあるは
ずじゃ『有能な者を使って、無能を退ける。』多分あしは有能と見られたんじゃろう。」
「なるほど。」
「しかし、有能か無能かなんてものは実際の戦場でなければ分からん、しかし、それのお陰であし
がここにいるのじゃから、今は幼さに感謝ぞな。」
「でも、私は貴方ならできると思います。」
本当にどうでもいい言葉なのだが、こう言われると困る、戦争が起こればそこで何が起こるかは誰に
も分からない、作戦が成功すれば生きれるかもしれない。
崩れれば死ぬ、想像すれば、武者震いではなく、ただの臆病にやられてしまいそうになる。
「――いや、これは武者震いぞな。」
そう言って自分を慰めた、コルベールは気付いていない。
不味い、感情の制御の為にひとりごとを言ったのが裏目ってしまった。
人はたまに、どうでもいいように見える事で、感情が変わってしまう。
自己嫌悪に走ってしまう、そして自己嫌悪を解消するには……。
自傷、机に頭をぶつける、頭のスイッチを切り替えた、頭を振って、周りを見回した。
「だ、大丈夫ですか?」
心配しているようだ、そりゃそうだ。
傍から見れば変人にしか見えない。
と言っても、ここには変人しかこない。
「よし、よし。」
秋山は、気持ち落ち着いたようで。
もう一度地図を広げて、そこにペンを走らせた。
すると、先程までの手際が嘘のように。
すらすらと、地図に線を引いていった――。
それから数日。
決戦初日
婚姻の為にトリステインは馬車を出す。
中には王女ではなく、身代わりの女性。
当のアンリエッタは城で兵士の前で演説を奮うための練習をしている。
兵士も将校も全員緊張で体が強ばっている、無理も無い。
もちろん、最前線で待機している空海軍、それにアルビオン王政派の空海軍の緊張はそれを上
回った。
特に、トリステイン空海軍は旗艦以外砲すら積まれていない。
その開いた分を風石につぎ込んだ為に、全力で後退が可能なのだが……。
「ピエロだな、砲の無い艦隊、更に平和と愛って旗が掲げられていれば、もっと面白かろうに。」
「違いありませんな。」
ラメ―とフェヴィスが笑う。
上官とは常にゆったりどっしり構えていなければならない。
つまり、部下を心配させては行けないのだ。
それが例え、敵に方位された状態であっても。
「にしても、見たまえ、あの戦艦。」
「あの中に敵兵がうん千といるのでしょうな。」
「うむ、まぁ私らが所有している砲じゃ装甲すらぬけんだろうがね。まぁ、私らの任務は逃げる事だ、
これで給料がもらえるなら、文句はいえんなぁ、君。」
「違いありませんな。」
上官は落ち着いていても、下士官の中には震えや吐き気の止まらない者もいた、砲があろうがな
かろうが、あの艦隊との戦力差には祖国がどうなるかを思い絶望せざるを得なかった……
所変わってタルブの海岸。
「っふー…。」
「ギーシュ、えらく落ち着いているな。」
「ぼ、僕の父上が、上官は、常に偉そうでなければ、と。」
「声が震えとるぞな。」
「うるさいっ!これは武者震いだ!!」
そのギーシュの言葉は自分を勇気づける為の言葉にしか聴こえなかった。
「安心せい、死にゃせんぞな。」
「だから怯えてなど――。」
突如、アルビオンからの祝砲が鳴った。
その祝砲の音源からちょうど背中を向けていたギーシュはその音でビクつく、そこから一度小さく顔を
左右に振った。
そして、砲兵に命令を下した。
「総員配置に付け!弾はまだ込めるな!!」
空海軍は手際よく自分の配置につく、そして弾と紙包火薬を砲の横の木箱に分けていく。
その最中にトリステイン側も祝砲を発砲。
そこで事故が起こる、敵艦の一つが爆発したのだ。
その花火を渋い顔でみる艦長がいた。
「なるほど、こういう策か。」
「さて、無線は手短に全速力で逃げましょう。」
「うむ、そうだな。」
そして、その爆発を笑う者もいた。
「アッハッハッー!こりゃ面白いのー!」
「ど、どうして笑ってられる!!」
「そりゃ、こんな周りくどい事なぞ、狐や狸でもせんじゃろからの!」
「狐…?」
さて、上を見上げれば最低限の無線だけ残して既に四散している艦隊がいた。
敵はここから8キロ先まで迫っていた、中々足も速い。
しかし、ここまでの逃げる際の手際を怪しがる者も敵、アルビオン空海軍にいた。
(あれはどうみてもトリステイン空海軍の総力ではない、しかもすぐ逃げに走ったあの手際、相当頭
が回るか、情報が漏れているのか……どちらにしろ、艦隊にダメージが無いというのは痛いな。)
ボーウッドであった、ボーウッドは戦術・指揮・艦隊操作に長けた歴戦の軍人であった。
戦の歴も長く、知恵も働く、まさに将軍の鏡と言えし人であった。
「海岸沿いで降下準備に入れと伝達!敵は内地で進行に備えている可能性がある。」
「し、しかし海岸沿いでは距離が……。」
「海岸沿いで最前線司令部を作れば、まだ希望があるかと思います。」
「この作戦は、奇襲が主体じゃなかったのか!?」
「奇襲もばれればマヌケの突撃です、着陸地点で砲撃に合えば、全滅です。」
「……わかった、許可する。」
すぐさま手記信号により艦隊全部に伝令を伝える、最後尾から了解の返答が帰ってくる。
「よし、念には念を入れる、竜騎士隊に海岸沿いに偵察行動を。」
「了解!」
「……やる事はやった、どう出るトリステインの姫は。」
口に微笑を浮かべる、その頃のトリステインの姫は――。
「――かの栄たるアルビオン王国を崩した売国奴レコン・キスタが今、アルビオンだけでは飽き足らずと
悪魔の手をこの美しきトリステインに迫りよろうとしております!現在、その悪魔は西の空で我が艦
隊に勝った事に喜んでいるでしょう。
ですが艦隊は無傷、私達は負けていません、栄え有る英雄諸君!トリステインを守る守護者
達よ、今こそ正義の剣を天に振りかざし、ハルケギニアに地響きを鳴らし、悪魔を征伐しに行こう
ではないか!」
兵を鼓舞する演説、元々若者には人気の高い姫である、兵士全体は興奮と歓声で上がる、士
気は最高潮。
もはやこの場に戦争の凄惨さを知るものはいなかった。
兵は後続に1000人主力2000人総勢3000人の支度が整っていた。しかし、士気はよかろうとも、主
力の半分は民兵、つまり錬度が低い部隊、後続の1000人ももちろん民兵、傭兵は1割以下、国
軍がその他に当たる、ちなみに魔法衛士隊の頭数は無い、前線の砲台の後退用に使用する為
である、この件もなかなか反対が多かったのだが、代わりに女性だけで編成された部隊を王女の
周りに付ける事にして、王女が独断で決めた。
そして敵の戦力はアルビオン王政派の資材をすべて持ってる上に傭兵はトリステインでは勝てない
と見てる輩も多い為、戦歴の長い傭兵が多い、その上先の大戦もある為にノウハウもある。
質では相手、量は同等、士気はこちら。
これを崩すにはただ戦術。
秋山は勝つ方法を記した紙を既にマザリーニに提出していた。
演説も終わった姫は士気最高潮の兵士を連れ、城を出て行く。
それを、老人と女子供は様々な顔で見送った、地獄へと。
彼らの戦場は、タルブ。
「うむ、うむ高度を下げておる、あしは運が良いぞな。」
「か、艦砲射撃の危険性は……。」
「もうすでに死角じゃろ、まー茂みでこちらの砲台は偽装したんじゃ、龍がバカでよかったの。」
「違いないね。」
とはいえ、砂浜から近くに急に青々しい木々が一点にある時点色々おかしいのだが。
まさか、そこに兵が潜んでいるとしても、数は知れたもの、無視しても良いと判断したのだろう。
「もう震えておらんな。」
「当たり前さ、ここまで来たら、やるしかない。」
「上出来じゃな、といっても、あしもこれが初めてじゃが。」
「……胆が大きいな。」
「海の上は常に戦場じゃからな。」
「――距離3!標高1!!」
一人の水兵から声が張り上げられた。
アルビオン将校が問う。
「撃ちますか?」
「まだ高さがある、竜騎士にやられておしまいだろう、もう少し引き付けて効力射を二発目で打てる
ようにしろ。」
「了解!」
内心焦りを感じる風が少し強い、当たるかどうか、当たらない時の事はしっかり考えている。
それでも被害が少なければ少ないほどこちらの侵攻が早まる。
この戦争は本土防衛時でも敵地侵攻時でも短期決戦じゃなければならない、何故なら国庫の
中にはもう1年も戦争する備蓄がない。
元々国力の無いトリステインには少し大きすぎる戦争なのだ。
「よし、装填開始。」
「装填開始!」
秋山が言い、ギーシュが伝える復唱。
「紙包火薬装填後、散弾装填!」
全砲門に砲弾がこめられた、後は火薬に点火するだけで良い、次に火事の原因になる偽装用
茂を取り外していった。
既に艦隊から見える場所になく、敵はただ自軍に裸を見せるだけとなった。
準備は整った、後は秋山の命令だけを残すのみとなった。
そこには少しの間、風と、それに動かされた草木、生唾を飲む音が流れるだけが流れるのだった……
。
「――点火!!」
「点火!!」
ギーシュの復唱と同時に砲から火が飛んでいく。
(当たれ……当たれ……!)
全員がそれを願って艦を見た。
それに秋山が気づき皆の気を戻した。
「見とる暇ないぞな!次弾装填急がんと――」
散弾の破裂、4発が目標設定地点よりも早く爆発した。
残りの11発の内、不発は2発、敵に損害を与えた弾は
4発、残りは虚しく空中で弾け、木片を少しだけえぐるだけであった。
中尉が叫ぶ
「各砲方向修正!右三の上一!!」
「じ、次弾装填!」
兵は言われた通りに動く、が、全員時間が惜しい。
早く、早く、艦を沈めたい。
そんな焦りが、悲劇を産んでしまった。
悲劇は装填前、掃除棒をしっかり入れない事で起きた。
この砲弾は紙包火薬を使用する為よく火種のある紙片が残る事が訓練中分かっていた。
その為、二回奥まで入れる事としていたのだが、それを怠ってしまったのが。
今回の悲劇である。
しかし、それだけなら火薬が一つ消えるだけで問題は無い。
もう一つの問題は、今まで新しく製造していた砲弾を訓練弾に使用した事であった。
兵器とは常に整備をしていなければ最高の精度で使うことはできない。
つまり、中にある導火線が不良品と化していた。
この二つの要因が合ってしまった。
もし、火薬が暴発しなければ砲身が壊れるだけで済んだ……。
だが、砲身から出た瞬間の弾から出る炸薬が砲を4門、そして水兵を18人も道連れにしてしまった
いや、炸薬の有効範囲から言うなら不幸中の幸いと言える、皮肉にも人を砲弾の炸薬から砲の
硬さが守ってくれたのである、これが端の砲ではなく、中心の砲なら、3倍以上の被害を出してたに
違いない。
「うっ、うわぁぁっ!」
「……くっ。」
秋山には別状なかった、しかし、不味い。
次の弾が撃てるかどうか、兵の士気は駄々下がりであろう。
恐怖で動けなくなっているのではないか。
が。しかし、それは杞憂にすぎなかった。
「じ、次弾装填完了しました!!」
一番若い兵が最初に声を上げた。
その声に、秋山が安堵して声を張り上げた。
「――よし!撃て!」
その声に続いて、壊れなかった砲でアルビオン王政派空海軍はアルビオン艦隊に向けて発砲する
。
それと同時に後続にいる予備の空海軍兵が死体と砲、近くにある火薬の処理を行っている。
彼らは興奮と恐怖で普通を忘れているだろう、だが彼らは軍人なのである。
「わいら、こいつも後方に頼む。」
「はっ!」
秋山が命令すると、すぐさま
隣で気絶しているギーシュを水兵二人で簡易塹壕に担いでいった。
血の匂いのせいで集中できない、鼻から吸って、口から出す。
そんな事も出来ない。
とにかく今は、どれだけ当てて、どれだけの戦果が上げれるかどうか、それしか考えられなかった――。
「どうなってる!状況は!!」
「どうやら船体より下、地上からの対空砲撃です!」
「なんだと?馬鹿な報告は休み休み言え!」
「しかし、爆音がなりひびき、我が船体下部の木片が剥がれた箇所も……」
報告をしてる合間にもまた砲撃が食らわされ、死角からの完全な奇襲を受けたダメージコントロールは容易ではなかった。
「次いで報告します!!3番艦のアルフォンソが敵の葡萄弾らしきものを直撃、風石にダメージを受け、このままでは航行不能との事!」
だんだん敵の砲が当たってきている、それもそうだろう、艦隊は降下準備の為に気付かずとも自らその身を差し出していたのだから。
「こうなったら無理にでも降下せねばならんらしいな、急ぎ竜騎士隊に発信命令を――ッ!」
レキシントン号が揺れた、どうやら爆発地点は近いらしい。
「……忌々しい、状況は!」
「我が艦の左舷にて炸裂!詳細はお待ち下さい!」
打ち上げた弾が当たる、その場から歓声が広がった。
「レキシントン左舷に命中!各所の爆発を確認、弾薬庫まで行きませんが、多分、左舷半分の
砲は飛ばしました。」
「よし、撤退じゃな。」
「まだ弾がありますが……。」
「運がよければ、竜騎士隊と道連れになってもらうぞな、導火線を100に設定、後に後退じゃ!」
試作品の初運用にしてはなかなかいい結果を残せた、中破1隻、大破1隻
こちらの被害は18と砲4門、これから砲全門破壊する事になるのだが、それでもこの戦果はこの被害
に対して大きいものだろう。
「死んでいった彼らを、運ばせて欲しいのですが。」
中尉が秋山に進言する、しかし、中尉の言う事を実行出来るほど。
余裕は無かった。
「今は、仮にここに埋めておく必要がある、本隊に死体をみせれば士気にかかわる。」
「……了解です。」
後退の為に、ほど後ろに待機していた魔法衛士隊を呼び出した。
竜騎士の追撃がある場合に備えてである。
そして後ろに様々な部品に固定化をかけたピポグリフの速度に耐えられるように設計された馬車
に近いものがセットされていた。
乗員は8名が限界。残った82人でピポグリフ10人を使用、秋山とアルビオン王政派空海軍中尉は
ピポグリフに直接乗る事で足りる、残りのピポグリフは火竜が来たときに対応する護衛隊の役割に
まわる。
報告に来た士官はそこら中を怪我していた、左舷で砲術長をしていた男らしい。
「報告!レキシントン号の被害は左舷の羽の被害は軽微、航行に異常無し、左舷半分の砲台
が使用不能、弾薬の消耗率28%、風石には問題無し、竜の沈静確認!発艦可能です!」
「竜騎士隊を発艦させろ!下の砲を黙らせるのを最優先にしろ、もし一基でも拿捕が可能ならそ
ちらを優先しろ!」
我が竜騎士隊から馬如き逃げれるはずがない、出来れば皆殺しが良いが。
まずその砲を潰す、後に敗走してる輩を炭にすればいい。
ボーウッドは、爆音による傭兵達の士気がいくら下がっているかを気にして、苛立っていた。
ただでさえ傭兵共は空に慣れていない為、神経が逆立っていたりする、空で何もせずシヌのは嫌
だ、外も見れない状況で一体何が起こっているのか。
傭兵達の不安要素が多ければ多いほど、こちらに不利になる。
ボーウッドと参謀は悩んだ、背水の陣を敷くか、もう少し内地で陣を作るか……。
前者は、もしかしたら傭兵が必死になって120%の実力を出せる可能性がある。
しかし逆に恐怖で暴動を起こさないか。
後者は、安心感で、兵士の苛立を取り除く事ができる、がまだ砲がある可能性があるのと。
これ以上の航行で更にストレスを感じさせないか。
考えている内に時は一刻一刻すぎていた。
ボーウッドが決断する。
「海岸沿いに着陸を開始せよ!」
「了解!」
船内で暴動を起こされたらそれこそたまらない。
「目視で砲台を確認、部隊の存在は確認できません!」
「よく見ろ!もう逃げてる!」
飛行中は声が風により遮られる、そのためその編隊の隊長の竜の隣に行き大声で叫ぶしか連絡
方法がないその後、隊長からサインが出されようやく行動出来るという事だ。
「どうします!追撃しますか!」
「遠視を使う癖をつけろ!相手は精鋭の魔法衛士だ!こっちは偵察に20、敵わん!」
「では砲台確保ですか!」
「命令だからな!何かしらの罠に気をつけろ!」
「了解!」
もう使われない砲台に、竜騎士達は旋回しながら近づく、よほどの警戒である。
そして、信管作動用導火線は残り10秒の長さになっていた。
竜騎士は、そんな事を知らない。
「少尉!君が先行して安全の確保だ!」
「了解!!」
もし被害が出ても、竜と人一人の被害で済む、当たり前の判断である。
少尉は砲台を中心に円を描いて降下していく。
――遠視を使う癖をつけろ。
隊長の言ったこの言葉は、自身の距離でしっかり見られる範囲では適用外だったらしい。
しっかり見れば、弾につながれた導火線が、少しの煙と少しの火を灯しているのが分かったはずな
のに。
――幾万の火薬、砲弾の弾ける音、金属が飛び、ぶつかる音が互いに音を鳴らした。
その音の中に、竜と人の悲鳴は混じっていたのかもさえ分からなかった。
「少尉、すまんな。」
隊長が呟く。
謝っても帰ってこないのは分かっている。
でも何も言わないのは自分が辛い。
「偽善者だな……、竜を落ち着かせたら、すぐ帰艦するぞ!」
「りょっ了解!!」
音に吃驚して竜が言う事を聞かず、先に艦に戻ろうとする竜もいたが。
そこは、さすがアルビオンの竜騎士、すぐに竜を落ち着かせると。
すぐさま艦に収容されていった、皆浮かばぬ顔をして……。
そんな、ある竜騎士が、艦上に着いて、竜から降りると、その横からグリフォンが通り過ぎていった。
そのグリフォンはある男を乗せ、トリステイン本隊の方向に滑空していった。
アルビオン竜騎士の彼らとは対照的なトリステイン本隊、相手に与えた被害をマザリーニは既に手
にしていた。
少し少なめの戦果だと思ったのだが、贅沢も言ってられない。
一つの艦を沈めただけでも素晴らしい戦果なモノだ。
「よし、砲は全てここに敷け!」
「はっ!」
マザリーニは、秋山からもらった紙を見ながら、その紙に書いてある通りに部下に命令を下していっ
た。
秋山の陸戦に対する戦術思想は奇襲、もしくは奇抜な物が多い。
義経の崖降りなどに興味を持つ時点でそうだといえよう。
「ここで兵に休憩をとらせろ、決戦が近い。」
「了解!」
兵が伝令を伝えるために出て行くと、また一人が報告を伝える為に枢機卿の前に立つ
「報告!前線から後退中の部隊を目視で確認。」
「そうか、了解した。」
これで魔法衛士隊の戦力も加わる。
ここまでは問題ない。
「王女様。」
「どうしました枢機卿。」
王女は驚くべきほどに落ち着いていた。
「大丈夫でしょうか、と聞こうとしたのですが……、ふっ、この老体要らぬ心配をしたようですな。」
「いえ、私も怖いです、ですが……本当に怖いのは兵隊でしょう、私はぬくぬく後ろで見てればよいだけなのですから。」
枢機卿は自分でも気付かずに密やかに笑っていた、この王女は無能ではなかった。
少なくとも、今城で温まっている貴族将校よか、数倍は有能であった。
「そうですな、ですが、指揮するものが死にませば、その軍は烏合の衆になりますから。相関関係でしょう。」
「そう、なんでしょうね。……枢機卿貴方、私に笑顔を見せたのは何時ぶりかしら?」
指摘され、自分でも驚いた顔で枢機卿は自分の手で口元を覆う。
「別に隠す事でも無いでしょうに。」
王女がくすりと笑い、枢機卿は手をもとに戻した。
「貴方はいつもいつも、難しい顔をして、常につかれた顔をして……。いえ、実際疲れていたのでしょ
うね、貴方は国の為にたくさん働いた、私の父がしていた政務も全て引き受けて、それでも国民は
その事も知らないで貴方を責めて、何時過労で死ぬか心配していましたよ?」
「今は亡き王に出来た事を私が引き受けただけにございます、その位で死ぬならまさに鳥の骨でし
ょう、しかし、笑ったのはなんとも……何年も前の為覚えておりませんな!」
王女アンリエッタと、枢機卿マザリーニが両方口元に笑みを浮かべる。
王女の笑いは孫が祖父母に見せる顔のように、枢機卿の笑みは祖父母が孫に見せる顔のように
。
「さて、話をする時間もそろそろ無いでしょう、王女様も毅然となさっていれば、兵は必ず勝利をも
たらします。」
「えぇ、分かりました。」
「伝――。」
枢機卿が兵士を呼ぼうと声を上げようとした時、都合よく伝令が目の前に現れた。
「見方の前線の部隊が本隊と接触しました、如何いたしましょう。」
「アキヤマ殿とギーシュ殿ををここに、他の部隊には休憩を、魔法衛士隊はここの護衛に。それと、
銃士隊隊長をここに。」
「了解!」
時もそう掛からず、秋山真之は枢機卿達の前に立った。
公式の場である為、丁寧語を用いる。
というか、今までが軽く無礼だったのだが。
「ご苦労、大変な戦果です、……ギーシュ殿は?」
「初の実戦で気絶し、伸びております。」
「そうですか、大変でしたね。」
「戦果は戦艦の大破1、中破1。しかし、事故で部下を18名も失いました。彼らは今最前線の地に
眠っております、願わくば彼らをアルビオンの地にて、眠らせたいのです。」
秋山は、キリとした目で王女を見つめていた。
「……分かりました、この戦争が終わりましたら、必ず。」
「それで、何の用で私を?」
「君の部下丸々を我が軍に編入する為にな。うむ、君を空海軍の大尉にしたいと思ってな。と、
言ってもまだ名誉職に近い、が。階級があるかないかで大分違うとは思う。」
空海軍の大尉となると分隊長クラスにはなる、しかし実力昇進ではないので、いきなり軍艦で指
揮できる訳が無い。
「なるほど、兵が不足している訳ですな。」
「恥ずかしいがその通りだ、短期で潰すには兵が足りんのでな。」
「そこらへんは全部任せます、失礼します。」
「うむ。」
秋山が枢機卿の前から立ち去る為に後ろへ振り向く、と同時にある売国奴の笑い声が聞こえた。
その声に振り返ると、紺の帽子にマントを着けた騎士が、アンリエッタの喉元にレイピアの形をした
杖を突き立てていた。
「相も変わらず、ざるな警備ですなぁっ!王女様!」
以上代理終了
日露の人、乙
やたら書き込みがないけれど、まぁた規制強化か何かか?
>>720 携帯からは相変わらず書き込めないなぁ
不便で仕方ない
いちいち2ちゃんに書き込むためだけにPCを動かすのも面倒だから、はよ規制解除してほしいものだ。
どうにも去年の暮れからどこも閑散としててならん。まるでデルフを買った後の武器屋のようだ。
どんな例えだw
質問なんですけど、実写映画のキャラが出てくるSSはここではまずいですかね?
ケイシー・ライバック(スティーブン・セガール)が召喚されたSSを投稿したいんですけど。
ライダーとか召喚されてるし
全然かまわないんじゃね?
現在の実在の人物そのものを扱うのはアウトだそうだが
半ばキャラとして存在するような過去の歴史偉人とかはどうなんじゃろな
一話完結短編なら本スレ投下もありだけど
あくまでもオレ個人の意見としては念のために避難所に投下してみるのもアリかと
実在の人物をモデルにした作品から喚べばいいんじゃないの。
風林火山から山本勘助が喚ばれているし。
>>722 ドラえもんが未来に帰った後ののびたの心境にも似てる……
では憚られる使い魔としてムハンマドを・・・・
おやこんな時間に誰だ?
>>724 海外の実写ドラマからも召喚されてるから問題ないだろう。
731 :
724:2010/01/20(水) 21:19:10 ID:xfX+WIeV
皆さん、返信ありがとうございます。
問題はないけど避難所の方がいいということみたいですね。
ありがとうございました
社会主義はメイドスキーからカール・マルクス召喚しようぜ
只のコックがギーシュやワルドの手首をへし折る作品でも投下しようというのか
ヴィンダールヴ=マルクス
ガンダールヴ=スターリン
ミョズニルトン=モンテスキュー
記すことすら憚れる=ヒトラー
これは勝てる
そういやエルフは民主制だか選挙だかで動いてる社会なんだっけか?
どこかで読んだSSとごっちゃになってるかもしれんけど
ネフテスは議会制だけど、そこに出席してるのはそれぞれの族長だから民主制とも違う気がする。
運用形態はアラブ首長国連邦だな>ネフテス
小ネタが思いついたんだが、AOEネタはここではNG?
スターリンがガンダとか、酷いことになるぞ
ヒトラーのユダヤ虐殺がマシに見える様なことばかりしているし
ヒトラーは意外とまともで政策も民主に見習わせたいことを多くしてるし
ロシア戦で負けたのとユダヤさえなければ坂本龍馬並の英雄だったと思う
という訳でガンダはヒトラーの方が最適じゃないか?
>>739 その前にモンテスキューに突っ込むべきだと思うのは俺だけか。
ネフテスのエルフネフテスのエルフネフテスのエルフ・・・
ネルフ?
ヴィンダールヴ=スターリン
ガンダールヴ=ルーズベルト
ミョズニトニルン=チャーチル
憚られる=ムッソリーニ
こうだな
車いすのガンダールブは、いろいろと活躍しにくいと思う。
セオドアのほうなら問題ないが。
そして、スターリンがヴィンダールブだと、密告万歳になりそうで嫌だ。
>>743 キラー7でも呼べばいいじゃん>>車いすのガンダールブ
んでミョズがクン・ランでレコンキスタ全軍がヘブンスマイル化とか
>>744 そのノリだと、ヴィンダはスティーブンあたりか?
最強の弟子ケンイチで車椅子キャラが居たがあいつなら問題ないか
>>ヒトラーは意外とまともで政策も民主に見習わせたいことを多くしてるし
空手形を連発しまくり、他国とその資産を併合し続けなければ破綻するような自転車操業のような財政運営がか?
>>ロシア戦で負けたのとユダヤさえなければ坂本龍馬並の英雄だったと思う
大躍進と文革が無ければ毛沢東は英雄だった、と言うような物だな。
これ以上は歴史板
>>739 ネズミ講じみた経済政策をお望みは、とんだマゾヒストだな
じゃあネズミ男を呼ぼうか。
臭い汚い弱い、性格悪いで嫌われ方はサイトの比ではなく、追い出されてトリスタニアで路頭に迷うが、もちまえのしぶとさで裏社会で姑息な悪事を
して生き残り、モット伯に町娘を斡旋したりしてもうけるが、やっぱり調子に乗って失敗し、アニエスたちに一斉摘発されてチェルノボーグ行き。
>750
そういわれると、ネズミ男と両さんが被るな。
ガンダールヴに両さん、ヴィンダールヴにネズミ男、ミョズニトニルンにGS美神、とか欲の皮の突っ張った連中ばかり召喚したら……第四の使い魔はその抑止力(鬼太郎、大原部長、美神隊長)あたりかな?
遊戯呼ぼうぜ
千年パズルはアカデミーに回されて暫く変身不可で
>>751 最近の大原部長は、結構ダメなおじさん化してるからなぁ……
可愛い子の前で調子に乗ったり、欲の皮組に乗せられたりしそうw
>>752 後半になると素の遊戯も結構鬼畜だった記憶があるんだが
アニメ版だけかな?
ボヤッキー&トンズラー召喚
ルイズよりエレオノールに召喚させた方が良いかもしれんがw
756 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 13:30:10 ID:nFgbYrcg
エレノオール「やぁっておしまい!」
ボヤッキー&トンズラー「アラホラサッサー!」
…違和感ないな
ネズミだったら某王国付きのネズミ様で
ネズミだったら某「チューイせよ」だろう常識的に考えて
物識りだしな
チンプイ呼ぼうぜ
逆にまったく使えない奴がよばれたらどうなるんだろ
「ナルニア国ものがたり」から誇り高きネズミの騎士リーピチープ……いかん、割とマトモだ。
というわけで「超感覚ANALマン」からデカチュウ(後方不敗)にしようぜ!
風来のシレンから魔蝕虫を召喚
ルイズのお小遣いがピンチ!
と言うかハルケギニアの金貨がピンチ!
魔蝕虫とかエクスプロージョンでお仕置きしたら即死しちゃうな
>>758 内山まもると古谷敏がウルトラ族の始祖役で握手とか超萌えたw
内山安二だとなんだろな? あさりに自著でも渡すか?
>>762 >ルイズのお小遣いがピンチ!
じゃあCREEPING COINを召喚しよう
CREEPING COINは仲間を呼んだ CREEPING COINがあらわれた
CREEPING COINは仲間を呼んだ CREEPING COINがあらわれた
CREEPING COINはブレスをはいた ワルドは1のダメージをうけた
・
・
・
・
ソラノヲトからカナタ呼んでみたら…
平和になりそうだなあ…
たまに下手なラッパが聞こえる位な物で特になにも起こりそうにない。
ソラヲト自体、けいおんのメンバー召喚したSSなんじゃねーの?
>>766 だからまずはマウスピースだけで練習しろと
あのラッパを聴く度に突っ込んでしまう金管楽器経験者
769 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 18:03:11 ID:vQj+H5zJ
命有る限り戦う、それがゼロだろう!
と右手が義手のイケメンを召喚
でも7万の軍勢相手に死にそうだな
今は(作品)止まってるが、新城に大隊与えれば、7万の軍勢ですら任務受ければ止めるんだろうな。
新城にとってかけがえのないものである
駒城のない世界に拉致(新城から見ればだけど)された新城が
素直にルイズに従うとも思えないけどね
というかルイズみたいなのは一番嫌いなタイプじゃないか
新城が好きなタイプの人間は、あの年頃の普通の学生には存在しえないと思うんだ。
まぁ、それを差し引いたとしても、ゼロ魔世界に新城が気に入りそうなキャラはほとんどいないのだが。
おマチさんぐらいじゃね?
775 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 22:00:19 ID:Aimr147P
初めまして、Gikuwと申します。
この度ニジエキ.netという二次創作小説データベースサイトを開設させていただきました。
作品データの追加等によってポイントがたまり、そのポイントを使って作品を宣伝することができます。
また作品データにタグをつけることによって、自分の好きな傾向の作品を簡単に見つけることができます。
もし宜しければ、参加してみてください。
ttp://r-st.net/
うわ、こっちにもきた
スゲーな、宣伝しに来てるってのにテンプレ無視して普通にageてるぜw
こいついつぞやのなんたらデータベースと同一犯らしいじゃん
勝手にリンクしてアフィで稼ぎ、それがバレて怒られたら外すってやつだっけ?
>>772 昔 投下されたままの作品があるからまとめで読んでみ?
新城らしいままルイズの使い魔になるところで終わってて悔しい
新条は漫画版と原作で全然容姿が違うから困る。
漫画版の作者のシュトヘルも面白いよ。
こいつ何時ぞやの携帯版まとめWikiのやつだっけ?
有料サイトでやるからアフィつけても良いよね、とか言い出したバカ
ロンド・ベル召喚
果たして官僚主義の地球連邦とハルケとどっちがマシだろうか
>>779 更新が途絶え放置されたサイトのSS、作者が音信不通になったSSを選んで無断転載してた墓荒らし野郎。
ついでに言えば、こいつのサイトにはもう既に作者自ら削除したSSをweb魚拓にとって勝手に公開してる。
更についでに言えば、こいつの接続は三重県から。
(こいつに相互リンクを申し込まれたサイト管理人の発言より)
コルベール先生……!補給が、したいです……
コルベール先生!塩が足りません!
って、これはWB隊か……
補給か…牟田口がレコンキスタの頭目なら良かったのに。
オーバーテクノロジーな兵器を持ち込むと補給が一番の問題だよな…
そのへんは続戦国自衛隊がオモシロイと思う
そこで自給自足な連中を呼べばいいんですよ
ブレンって補給必要だっけ?
ドズル中将がハルケギニアにて復活
ところでそろそろ次スレか?
レコンキスタ総帥マフティー・ナビーユ・エリン
そこでシュバルツバース調査隊の皆さんを…
歴史といえば戦国無双3の立花宗茂がツンデレキラーでルイズといい感じに
絡めそうだぞ。ストーリーの展開は広がりそうにないけど。
今のところ歴史上の人物でよばれたのって山本勘助だけだっけ?
>>794 正統な預言者の王は何に対して粛正するのだろうか…
>>796 上の作品に歴史上の人物出てるんだけどね。
>>795 まともな調査隊なら良いけど
ジャックとライアンの不快な仲間達を呼んだら
酷い事になりそうだな・・・
シュバルツバースに突入した調査隊が、それぞれ四人の虚無の担い手の下に?
主人公(名称未定)はルイズ、ヒメネスはティファだとして……ゼレーニンはどう考えても教皇の所だろうなぁ。
ジョゼフに隊長……は相性が悪すぎるからジャックか
ここでまさかのアンソニー
どこに行ってもギャグにしかならねー
ヒメネスは普通に地獄から解放されたって喜びそうなものだなぁ
なんか、ネタバレスレのほうで、またお化け怖いショックに匹敵する大事が語られてたんだけど、また新刊でもめるかねえ
もう488kbか…
次の投下で新スレだな
いや、もう480を超えてるから新スレ立てる時期っしょ。
・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
ということで挑戦してくる。
いつも思うんだけど
>>980or490kbくらいでいいんじゃね?
>>810 でっかいのが来た時に備えてるんじゃね?
ってことで、でっかいのが来ることがあった時期のままなんだろう。
>>811 今でもでっかいのは来るだろう。冬休み終わったからスローダウンしてるけどまたチャージされたらラッシュになるさ。
けど、昨年末からの携帯規制はいいかげん解除してほしいもんだな。支援も乙もすぐにできなくていらつくわ。
向こうも規制したくてしてるんじゃなくてシステムダウンって物理的障害があるんだしさ
>>812 それもそうだね。
480を過ぎても気付かずに雑談を続けてたり、気付いても平気で続ける奴もいるしな……。
余裕があるくらいでちょうど良いのかな。
>>809 乙乙 まぁ週末だし今夜あたり何か来るかな?
新刊出たね
話題禁止は一週間くらい?
じゃあこっちは埋めに入ろうか。
明日劇場版公開記念で、遊戯王シリーズから遊戯、十代、遊星の三大主人公を召喚。
「おれとゲームしようぜ」
「力こそ正義だ」
「おい、デュエルしろ」
ACfAから首輪付きの獣召喚
もふもふで可愛いけど中身は人類種の天敵…
フロム系の主人公はオリジナルっぽくなっちまってなあ
PC側規制解除やっと来たわ…
つぐももの主人公と桐葉さん召喚したら凄い事になりそうだ
桐葉さん良く全裸なるしギ―シュとかもヤバいかも(凝視してフラレイベントとか)
><に違和感を感じるのは俺がアニメを見ていないからかな
>>817 なんで十代の状態が覇王なんだよw
その状態で召喚したら世界征服ルートまっしぐらじゃねえか。
ルイズって意外とスタイルいいんじゃないの…3サイズとかあの身長ならいい感じだろ…
>>824 明らかにビジュアルと設定されたスリーサイズが一致してない
まぁゼロ魔に限らず良くある事
俺はタバサのおっぱいがちゃんと小さければほかはなにも文句いわないよ
ふむ、田舎故まだまだ新刊ゲット出来ないが……書き進めるのをちょいと見合わせた方が良いかな。上を見ると。
もふもふ首輪付き獣とかスレ民wiki民でしかわからんものを
>>828 だったらAMIDAかアーマイゼだ!
センチュリオン・バグやスカウタ・フリーでもいいよ
>>830 馬鹿だねこの子は。
俺だったらソルディオス・オービット本体ごと召喚するね!!
ウエストの値が全体的におかしいから、数値以上にあるはずだしね。
押し入れ整理してたらGTOを発掘したので久々に全巻読んだ。
ルイズがGTOキャラ喚んだらどうなるか考えた。
鬼塚…色々騒ぎを起こす。コルベールとかに被害が…
内山田教頭…最初にキモイオヤジとの評価を受ける。正直喚びたくない。
桜井・袋田…キモイ奴との評価を受ける。どちらも捕まる可能性がある。
勅使川原…ルイズの下に付くにしてもキレると…
冬月…一番まともかもしれない人。
レッドキング…亜人扱い
ジェイソン君…亜人扱い
ギトー先生がスネイプ先生を召喚したようです
一体、新刊で何があったと言うんだ……。
タバサ救出された
>>837 デルフの中に封印されていたブリミルが、十数時間かけてサイトに胡散臭い虚無を唱えたら潜在能力以上の力が引き出された。
>>839 でも結局魔人ブウに吸収されちゃうんだよな
「ルイズとシャルロットが合体してシャルイズってとこかしら」
さらに・・・こいつが超シャルイズ!
これは酷いフュージョンw
「今だから言うのじゃが、本当はオールド・オスマン3の時に倒せていたんじゃ……」
砂漠のギーシュ
シャルロットとルイズで、シャルr……!
>>826 新刊でルイズよりもタバサの方が小さいことはサイトが確認した
何で普通にバレしてるの?
こ・・・これがバレだと言うのか・・・
新刊の内容バラしゃバレだろ
程度なんて誰が判断するんだよ
そらそうよ。
エルフを狩るモノたt・・・いや何でもない・・・
おっぱいの大きさバレが最も重要な事態とされるスレと聞いて駆けつけました
普通のバレならID:vtCe7iXUが怒るのも無理はないと思うが、
怒っている対象がタバサのちっぱいだと思うと何か笑えるwww
くっ
【使用前】
ノ´⌒`ヽ
γ⌒´ \
.// ""´ ⌒\ )
.i / \ / i )
i (・ )` ´( ・) i,/ 事務的なミス、職員がやったなどとする言い逃れする政治家の発言が多い
l (__人_) | 資金管理団体、政党支部の代表者は政治家本人だ
\ `ー' /
http://www.dpj.or.jp/news/?num=11745 民主党広報委員会
. /^ .〜" ̄, ̄ ̄〆⌒ニつ ビシッ!
| ___゙___、rヾイソ⊃
【使用後】
___
/ \ ノ⌒`ヾ?
/ノし u; \ ;γ⌒´ \
| ⌒ ) // ""´ ⌒`\. ); 秘書がやったなら議員に責任はないだろ!
| 、 ); .. i;/ \, ,/ ;i ); なんだバカ野郎
| ^ | ;i (・ )` ´(・ ) ;.i/;
| | l; (__人_) u |;
| ;j | / :\-^^n`ー' /、゚,
\ / ! 、 / ̄~ノ∠__/ i;
/ ⌒ヽ ヽ二) /(⌒ ノ;
/ r、 \ / ./  ̄ ̄ ̄/;
ノ´⌒ヽ
γ⌒´ \
.// "´ ⌒\ )
i./ ⌒ ⌒ .i )
i (⌒)` ´(⌒) i,/ フフ ぼくも召喚されないかなぁ
| ::::: (_人_) ::::: |
(^ヽ__ `ー' _/^)、
|__ノ  ̄ ̄, |、)|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
埋め立て乙
ノ´⌒`ヽ
γ⌒´ \
.// ""´ ⌒\ )
.i / \ / i )
i (・ )` ´( ・) i,/ <魔法使いと使い魔は同等ではない!
l (__人_) | 使い魔はしょせん下僕!
\ `ー' / 下僕が魔法使い様の罪を被るのは当然だ!
. /^ .〜" ̄, ̄ ̄〆⌒ニつ
| ___゙___、rヾイソ⊃
| `l ̄
. | |