あの作品のキャラがルイズに召喚されました part264

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part262(実質263)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1261051571/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。



.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 20:50:18 ID:uzN2biTP
>>1乙
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 21:07:27 ID:NICP+vFa
>>1
乙にござる
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 21:13:16 ID:6bRTrmNf
テンプレは>>1のみ
乙ー
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 21:18:44 ID:8UTt2fNJ
>>1
投下されなくても満足するしかねぇ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 22:48:49 ID:AJsfHnWP
>1
乙。

これは、これだけはテンプレに入れるべきかも。

【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚89人目】
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1250429623/l50
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 23:02:57 ID:kSEU0cb9
いらねえだろう……
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 23:24:10 ID:SoxjUpR1
んなのイラネえよ
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/27(日) 23:30:23 ID:F48JcbDW
おまえは何を言ってるんだ(クロコップry
10ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:37:55 ID:vXEHYPVU
こんばんは
ネタ回は(主に俺だけが)楽しいので早めにできました
空いてるようなので45分頃から投下します

11ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:44:07 ID:vXEHYPVU
 

 魔法学院から馬でたっぷり三時間、王都トリスタニアに辿り着いた柊とルイズがまず向かったのは王城直近にある仕立屋だった。
 何でも着の身着のままでハルケギニアに召喚されたエリスのために服を用意していたらしい。
 ルイズにそう説明されて柊はそう言えば前の虚無の曜日になにやら人が来てエリスの採寸やらをしていたのを思い出した。
 ちなみに柊の分はない。
 もっとも彼が身に纏っているコート――『スターイーグル』はこう見えてファー・ジ・アースの魔法技術を使ったれっきとした魔道具であるので換えは利かないし、
身なりにこだわるという訳でもないので特に不満はなかった。
 とはいえせめて肌着くらいは欲しいので頼んでみたところ、あっさりと了承された。
 そして店員からうやうやしく運ばれてきた荷物を見て……柊は眉を潜めてしまった。
 文字通りで山のように衣装箱が積まれているのだ。
 アニメや漫画ではよく見る描写だが実物を見るのは初めてだった。
 その荷物の山を見て満足そうに頷くと、ルイズはそれを放置して店を出ようとした。
「どうすんだよ、これ」
 と尋ねてみると、彼女はさも当然のように柊に言った。
「あんたが持つのよ。ゲボクなんだから当たり前でしょ?」


 ※ ※ ※


「……便利なのね、月衣って」
 王都で一番大きいブルドンネ街を歩きながら、ルイズは嘆息交じりにそんな言葉を漏らした。
「まあな」
 彼女の隣を歩きながら答える柊は荷物を何一つ持っていない。
 仕立屋で出された荷物は片っ端から月衣の中に収納してあるのだ。
 ウィザードが纏う簡易結界である《月衣》の収納能力は物の重量こそ無視できないものの、その大きさは一切問わない。
 要するにそのウィザードが持ち得るのならそれこそスペースシャトル並みの大きさがあったとしても構わず収納できてしまうのだ。
 幸い箱の数は多かったが重さ自体はさほどでもなかった(何しろ服一着に箱一つだ)ので総て月衣に収納しても少々の余裕はあった。
「エリスも月衣が使えなくなった時、不便だって言ってたしな」
 言いながら柊は町並みをきょろきょろと見回した。
 似たようなファンタジー世界のラース=フェリアで少しばかり過ごしていた事があるので、別段トリスタニアの町並みが珍しい訳ではない。
 だが初めて来た場所を観察して見たくなるのは仕方のないことだろう。
「エリスが月衣を使えなくなった……って、あの子もウィザードなの?」
「元、な。色々あって今はもうウィザードの力をなくしてる」
 柊の言葉にルイズは僅かに顔を傾けた。
 そして彼女は探るように柊を見上げると、ほんの少しだけ声色を翳らせて言った。
「……あの子も、あんたみたいに凄い力を持ってたの?」
「別に俺は凄かねえけど……」
 言って柊はルイズから眼を逸らして、空を見上げた。
 表情を読めずに怪訝な顔をするルイズをよそに、柊は僅かな沈黙の後、答える。
「あいつは普通のウィザードだったよ。特別なんか何もねえ、俺達と同じ普通の奴だ」


12ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:47:26 ID:vXEHYPVU

 

 二人がうらぶれた通りにある武器屋に入ると、来客に気付いた店主の面倒くさそうな視線が出迎えた。
 しかし店主はルイズの姿を見て取ると途端に慌てて駆け寄り、恭しく頭を下げた。
「貴族のお嬢様。うちは真っ当な商売をしてまさぁ。お上に目をつけられるようなことなんざ、これっぽっちもありませんや」
「客よ。剣を見せてちょうだい」
「剣? お嬢様がお使いになられるので?」
「使うのはあいつ」
 ルイズは店内に飾られている剣を物色している柊を指差すと、彼に向かって声をかけた。
「剣を使うんなら目利きくらいできるんでしょ? どれがいいの?」
「あ? あー……」
 言われて柊は思わず渋い顔をしてしまった。
 何しろウィザードに覚醒してからこっち、継承した魔剣一本で戦い続けてきたのだ。
 剣を見る眼などないも同然だった。
「いや、実はよくわかんねえんだけど……」
「なにそれ……あんた剣士じゃないの?」
「自分、剣士じゃなくて魔剣使いっすから……」
 照れ臭そうに頭をかく柊にルイズは嘆息すると、店主に向き直って投げやりに口を開いた。
「……あいつが使えそうなのを見繕ってやって」
「へえ、お任せを!」
 言われて店主は顔を輝かせ、意気揚々と店の奥へ引っ込んで行った。
 ややあって店主は大振りの剣を手に戻ってくる。
 ルイズはそれを見て思わず感嘆の息を吐いた。
 白銀に輝く刃や様々に宝飾が施されたその大剣は見るからに店内にある武器とは一線を画しており、貴族たるルイズからすれば気に召すのも当然だろう。
「この店一番の業物、ゲルマニアのシュペー卿が鍛えし名剣でさ。お嬢様のお付きならこれぐらいは下げていただかねえと」
「まあそうね。ゲルマニアってのがちょっと気に入らないけど……でも、よくこんなものがあったわね」
「へえ、最近『土くれ』のフーケとかいう盗賊が城下を騒がしてるそうで。そいつが貴族様方のお宝を好んで頂くってんで、下僕に剣を持たせるのが流行ってるようでさ」
「ふぅん……」
 お愛想全開な調子の声を聞きながらルイズは大剣をまじまじと観察し、次いで柊に眼をやった。
「これでいいんじゃない?」
「剣ならなんでもいいんだけど……これ、高いんじゃねえか?」
「そりゃもう。何しろこれほどの剣はこのトリスタニアでも片手ほどもありやせんし」
 店主の言葉に柊は渋面を作ったが、一方でルイズは平然としていた。むしろ希少価値があることでより気に入ったようだ。
 ルイズは満足そうに頷くと、勝気に腕を組んで口を開いた。
「で、いくらなの?」
「へえ、エキューで三千……と言いたい所でやすが、お嬢様になら特別に二千で結構でさ。新金貨なら三千でやすな」
「!?」
 もったいぶった店主の言葉にルイズが固まった。
 明らかに尋常ではない彼女の様子に柊は恐る恐る尋ねてみる。
「……エキューで二千って、高いのか?」
 ここでようやく柊は自分がこの世界の貨幣価値について何も知らなかった事に気付いた。
 何しろ召喚されてからこっちずっと学院の中で過ごしていたため、金銭が必要になる場面が全くなかったのだ。
 先程の仕立屋でも金銭回りについてはルイズが勝手に取り仕切っていたのでそこに触れる機会はなかった。
 柊の問いにルイズは肩を小さく震わせながら、答える。
「……庭付きの屋敷が買えるわ」
「ぶぅっ!?」

13ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:50:37 ID:vXEHYPVU
 

 予想の斜め上を行き過ぎた答えに思わず柊が噴き出した。
 しかし言い出した当の店主はさも当然とばかりに一つ頷いてしたり顔で語る。
「名剣は新城に匹敵しやすぜ。屋敷ですむなら安いもんでさ」
 この値段は流石にルイズも予想外だったらしく、渋面を作って口の中で何事かを呟き考え込んでいる。
「お、おい……ルイズ?」
 明らかに法外な値段に思えるのに何故か考え込んでいるルイズを見て、柊は不安になっておずおずと声をかけた。
 それが契機になったのだろうか、彼女は小さく頷くと顔を上げ、店主に向かって言った。
「それでいいわ」
「へぇ、毎度ッ!!」「おいーっ!?」
 店主の喜び勇んだ声と柊の悲鳴が重なった。
 決断を下して満足気になっているルイズに柊は詰め寄り、泡を食って口を開く。
「お、お前っ! そんな大金あるのかよっ!?」
「そういえば手持ちはなかったわ。小切手でいいわよね?」
「勿論でさ! 少々お待ちを!」
「違ぇ! そういう意味じゃねえよ!」
 いそいそとカウンターに引っ込んでいく店主をわき目に柊は慌ててルイズの肩を掴んで振り向かせた。
「家買えるような金をなんで持ってんだよ! さっき値段聞いて固まってたじゃねえか!」
「たかが剣一本がそんな値段ってのに驚いただけよ。額自体は出せないほどじゃないし」
「おかしいおかしい……! お前なんか金銭感覚が……って、あ!?」
 ルイズの肩を揺らす柊が唐突に小さく呻き、顔色を変えた。
 そして月衣から衣装箱を一つ取り出して彼女の前に突きつける。
 何もない場所から唐突に現れた箱に店主が眼を剥いたが、そんな事を気にする余裕は今の柊にはなかった。
「こ、これ……これ! エリスの服! これはいくらなんだ!? あと俺が買ってもらった奴も!」
「うるさいわね……最低限のものでいいってエリスがしつこく言うから、全部合わせても千エキューは超えてないわよ。あんたのはどうでもいいから……三着で百くらい?」
「……」
 二千エキューで庭付き一戸建てが買えるのなら、大体一エキューで一万円は下らないだろう。
 エリスの服が総額約一千万円。肌着三着で約百万円也。
 柊は目の前が暗くなった。
 どうやらエリスは貨幣価値などについて知っていたようだが、根本的に『貴族』であるルイズの金銭感覚を読み誤っていたらしい。
 柊は自分達とルイズの間に『格差』という巨大な二文字が横たわっているような錯覚を感じた。
「お嬢様、小切手はこちらで」
「ええ」
「! ま、待て! 待てぇっ!?」
 いそいそと小切手を差し出す店主の動きで柊は我に返り、声を上げた。
 煩わしそうにねめつけてくるルイズと邪魔臭そうに睨みつける店主の前で、柊は身振りも加えて必死に叫んだ。
「そんな高っけえのいらねえって!!」
 無論剣を手に命懸けで闘ってきた柊としては剣の性能が良いに越したことはなく、性能に見合うならば多少値段が張っても気にすることはない。
 実際彼の纏っている『スターイーグル』やファー・ジ・アースで手にする予定であった新しい魔剣の改造費用もそれなりに高額だ。
 そしてそれらの費用は総て柊が自腹で賄っている。
 これは卒業した後で気付いた事なのだが、ふと思い立って自分の預金を調べてみたところ驚くべきことにこれまで一年間引き回されていた分の依頼の報酬がちゃんと支払われていたのである。
 普段好き勝手に柊をいじくり回すアンゼロットではあったが、こういう点に関してはきっちりとこなしてくるので彼としてはぐうの音も出せないのであった。
 ともかく。
 自分の使う得物である以上柊はなるべくなら自分の手に収まる範囲で済ませたいのである。
 場合によっては援助を受けることもやぶさかではないが、現状世界の存亡だのと言った問題とは無縁なこのハルケギニアにおいてそこまでしてもらう道理はなかった。

14ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:57:41 ID:vXEHYPVU
 
 しかし言われたルイズの方からすればそうでもなかったようで、彼女は苛立たしげに腕を組んでから柊を睨みつける。
「アンタはわたしの護衛でしょ! だったらそれに見合うだけのものを身に着けるのが当然なの! みすぼらしい剣なんか帯びさせてたらラ・ヴァリエールの沽券に関わるわ!」
「……ヴァリエール?」
 そこで声を上げたのは柊ではなく、脇に控えていた店主だった。
 小切手を持っていた手を僅かに震わせて、ルイズの顔を窺うようにしておそるおそる口を開く。
「ヴァリエールって……"あの"ヴァリエール?」
「……トリステインにヴァリエールは一つしかないはずだけど?」
 口を挟まれて苛立ちが増したのか、不機嫌さをあらわにしてルイズは店主に言う。
 すると彼は表情を固まらせたまま顔色だけが青くなった。
 ヴァリエール家といえばトリステインでは間違いなく五指の内に入るほどの名家中の名家なのだ。
 王室からの覚えもよく、トリスタニアで生活するのならまず間違いなく耳にする家名である。
 そんな名家の人間がこんな場末の武器屋に顔を出すなど笑い話にもならないのだが、片田舎ならばともかくトリスタニアで貴族を騙るにはヴァリエールの名は巨大すぎる。
(するってえと……本物?)
 店主は戦慄した。
 ヴァリエール家の人間に剣を高値でふっかけ、買わせかけたのだ。
 もしも後に事が露呈すれば、店の存続どころか命の存続すらも危ぶまれる。
 少なくともそうできるだけの力が、ヴァリエール家にはあった。
「大体剣なんて振って斬れりゃあそれでいいんだよ! 宝石とかなんとかそんなみてくれなんて必要ねえだろ!?」
「ゲルマニアの蛮人みたいな事言うんじゃないわよ! トリステインには格調というものがあるの! わたしがいいって言ってるんだからこれにしなさい!」
 なりふり構わず訴える柊を一蹴するようにしてルイズは吐き捨てると、店主の手から小切手をもぎ取ろうと手を伸ばした。
 今の店主から見れば死刑執行書にも等しい小切手を奪われそうになって、店主は慌てて小切手を背中に隠し呻く。
「お、お嬢様……お嬢様っ!」
「なによ。お金ならちゃんとあるわ、見くびらないで」
「お嬢様の言う事ももっともでさ! しかし……しかし、剣には使い手との相性ってもんがありやす! 実際剣を振るのはそちらの旦那ですから、旦那の望む剣にしておいた方がよろしいかと!」
「……あんたさっき名剣は新城に匹敵するって言ってなかった?」
「た、確かに言いやしたが……使い手との相性が合わねえといかな名剣、新城とてハリボテ同然でやす! ほらよく言うでしょう、『一流の使い手は武器を選ばない』と!」
「そ、その通りだ! 良い事言うな親父!」
「あたぼうよ、伊達に武器屋はやってねえぜ!?」
 思惑は別として利害が一致した柊と店主が結託して頷きあった。
 ルイズはその様子を険の入った表情でしばし見つめた後……はあと諦めたように溜息をついた。
「……わかったわよ。それなりの剣の腕だってのは知ってるし……」
 渋々と言った体で吐き出したルイズの言葉を聞いて、柊と店主は心の中で違う意図のガッツポーズを決めた。
「それじゃどれがいいのよ。好きなの選びなさい」
「お、おう。それじゃとりあえず……親父、一番安いのは?」
「えっ? あ……安いってのならそっちの樽に突っ込まれてるのが投げ売りものでさ」
 柊に言われて、最悪は回避したが実入りも消し飛んだことに気付いた店主が沈んだ調子で店の端にある樽を指差した。
 柊に同調した手前彼の言を無下にすることはできなかったが、それでも店主は抵抗を試みる。
「けど、そっちにあんのは中古だったり傷物だったりでガラクタ同然の奴ですぜ。せめて新品の方が……」
「いい。これ以上びた一文使いたくねえ」
「ちょっとあんた、わたしにガラクタを買わせるつもりなの!?」
「問題ねえ。親父も言ってたろ、一流の使い手は武器を選ばねえってな」
 普段ならそこまで自信過剰に言い切ることなどないが、今だけはとりあえず乗っておく。
 確認を怠った自分のせいとはいえルイズに高額の負債を背負ってしまった身としては、もはや剣の体裁さえ保っていれば何でもよかったのである。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 02:58:50 ID:Zbv9z24G
陰技・支援
16ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 02:59:28 ID:vXEHYPVU
 
 検分を始めて見ると、大方は店主の言ったとおりガラクタ同然の代物ばかりだった。
 どれもこれも錆が浮き上がっていたり曲がっていたりのこぎりのように刃が欠けていたり、およそ使えそうな得物はない。
 一縷の望みをかけて鞘に入った剣を抜いて見るが、それらもやはり中身の剣身は同じようなものばかりだった。
 それでも棚に飾ってある新品の剣は見るのが(正確にはその値段を見るのが)怖いので柊は樽の中古品の検分を続けていく。
 そして何本目かの鞘つきの剣を手に取ると、不意に店主が小さく声を上げた。
「あ、それは……」
 店主の反応が少し気になったが、柊は構わず剣を鞘から抜いた。
 すると唐突に低い男の怒号が店内に響き渡った。
『コラァ、いつまでほったらかしにしてやがんだ!』
「うおっ!?」
 柊は驚いて周囲を見回したが、店内には三人の他に誰もいない。
 柊と同じように驚いているルイズの横で、店主が頭を抱えて天井を仰いだ。
 柊は再び剣に視線を戻し、眉を潜めた。
「……もしかしてコイツか?」
『おうよ、他に誰がいるってんだ』
「インテリジェンス・アイテム……でいいんだっけ?」
 ファー・ジ・アースでも通っている名称でルイズに尋ねてみると、彼女は店主に視線を向けた。
「へえ、お察しの通りインテリジェンス・ソードでさ。あんまりにも口が悪いんで黙らしてたんでやすが……そんな所に紛れてやがったのか」
『ふざけんじゃねえよ! 俺様をこんなくず鉄共と一緒にしやがって!』
 うんざりといった口調で店主が漏らすと、剣は怒気も露に叫んだ。
 ルイズも不快そうに眉を顰めて剣を見やり、そして柊も少し呆れたようにため息をついた。
「お前も錆びてんじゃねえか……」
 見れば確かにこの剣も他の武器と同様に錆が浮いていた。
 薄手の両手剣で使い勝手としては以前使っていた魔剣に近しい。
 作り自体もしっかりしていたが……いかんせん錆があってはその性能は推して知るべしといったところだろう。
 要するに購入する剣としては考慮外の代物だ。
「今度から大人しくしとけよ。じゃあな」
『待て待て! 出逢いはもっと大切にしようぜ!?』
 鞘にしまおうとした柊に剣が慌てて口を挟んだ。
『俺を発掘してくれたよしみだ、悪いようにはしねえぜ?』
 この手のタイプは非常に面倒くさそうな事になりそうなので柊は思い切り眉を顰めてしまった。
 ルイズも剣を見ながら小さく「……うざっ」と呟いた。
 二人の反応をよそに剣は自分を手にしている柊を値踏みするように沈黙すると、
『……ふぅん。おめえ、幸薄そうな顔つきのワリに結構やるみてえだね』
「やかましい。……わかるのか?」
『まあな。俺様は特別だかんね』
「特別ねえ……」
 うさんくさげに柊は剣を見やったが、剣の方はそんな事を気にもせずに言葉を続けた。
『……まあいいか。おめえに使われてる方がこのまま埋もれてるよりはマシだろ。てめ、俺を買え』
「いや要らねえ」
『即答!?』
 愕然と声を上げた剣に柊は生暖かい視線を向けたまま口を開く。
「いくらなんでも錆びた剣はないわ。それに俺、喋る魔剣とか人化する魔剣とかあんま好きじゃねえんだよ。……データ的にそんな強くなる訳じゃねえし」
『メタな事言うんじゃねえよ!?』
 わめく剣にいい加減嫌気が差したのか、脇からルイズがヒイラギに向かって口を挟む。
「……ちょっとヒイラギ。もうそんなのほっといてさっさと選びなさいよ」
「あいよ」
 答えて柊は剣を鞘に戻そうとすると、完全に鞘に収まる直前、剣がくぐもった笑い声を上げた。
『フッ……みてくれだけで選ぶたあ、おめえも所詮二流の使い手だね。そこのお飾り好きな娘っ子と変わんねえや』
「……あん?」
 先程のやり取りはともかくとして、柊自身は自分を一流だとは思っていない。
 だが、他人にそう言われるとやはり気に障るものだ。
 それはルイズも同じだったようで、彼女は肩を怒らせて剣に一歩詰め寄った。
「なによ。じゃああんたはみてくれだけじゃないっての?」
『俺は特別だって言ったじゃねえか』
 再び引き抜かれた剣は偉そうにそんな事を言うと、胸を張るように僅かに身体を揺らせて言った。
『耳をかっぽじって良く聞きやがれ。この俺、デルフリンガー様はな――――六千年前から生きてる由緒正しき魔剣なんだぜ!?』
17ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 03:02:14 ID:vXEHYPVU
 

 前半と後半でわざわざためを作って芝居がかった風に剣……デルフリンガーが叫ぶと、店内が静まり返った。
「その妄言は初めて聞いたな。大きく出やがって」
 店主は肩を竦めて失笑した。
「六千年って始祖ブリミルの時代? あんた、外見だけじゃなくて中身まで錆びてたの?」
 ルイズは大いに眉を潜め、怒りを通り越して呆れを含んだ声でそう言った。
 そして柊は、
「ふーん。で?」
 驚くでもなく呆れるでもなく、デルフリンガーを見つめたままそんな事を言った。
『あれ、なんだその反応?』
「いや、だからどこが特別なんだよ」
『そりゃ俺が六千年前から……』
「……それくらいなら普通だろ?」
『「普通っ!?」』
 ルイズとデルフリンガーが声を揃えて叫ぶ。
 柊はおもむろに頷き、遠い眼をしながらしみじみと語った。
「俺が前持ってた魔剣だってミッドガルドで二万年ばかり過ごしてるし。知り合いの持ってるヒルコっつー剣は何千万年前だかに生まれたらしいし。
 聞いた話だと四十五億五千万年前から継承されてる剣ってのもあるな」
「よ、よんじゅう……なんですって?」
「四十五億五千万年。まあ俺の世界の話だけどな」
「……」『……』
 臆面もなく言い切る柊をまじまじと見やった後、ルイズは頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てて唸った。
「あんた……そういう事いうから胡散臭いのよ!」
「本当の事だからしょうがねえだろ……」
 柊は嘆息交じりに答えた後、改めて『普通』のデルフリンガーを見やった。
 彼(?)は柊の台詞を聞いた後黙り込んだまま、カタカタと身体を震わせていた。
 二人が反応を待つことしばし。
 デルフリンガーは裏返った叫び声を吐き出した。
『うるっせえ!! 無駄に年月重ねてりゃ凄ぇって訳じゃねえんだよ!!』
「キレた!?」
「というか言いだしっぺのお前が言うな!?」
『いいの! 俺はいいの!! なんたって俺にはそこらの魔剣なんか眼じゃねえ凄い能力があるんだからよ!!』
「能力?」
 そこでようやく柊が食いついた。
 確かに錆付きの剣というだけなら論外だが、何がしかの能力があるというなら話は別である。
 しかしデルフリンガーの方はといえば、何故か再び黙り込んでしまった。
 そして彼は厳かな声で力強く言い放つ。
『……長い事使ってねえんで忘れちまったが、凄い能力があったような気がする!』
「意味ねえ!?」
『意味あるよ、超あるよ! 今は使えねえけど、思い出したら使えるようになんだろぉ!?
 ほらアレだ、敵の放った系統魔法を吸収したり! 吸収した魔法の分だけ使い手の身体を動かしたり!
 そういう事ができるようになるかもしんねえぜ!?』
「ほー。じゃあその内あらゆる空間と結界を斬り裂く能力とか、神の如き因果や運命を持つモノを斬り裂く能力とかが生えてきたりすんのか」
『場合によってはそうなるかもわからんね!』
「……別のにすっか」
「そうね」
『あ、待て。いや、待って下さい』

18ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 03:05:24 ID:vXEHYPVU
 

 ついに下手に出始めたデルフリンガーを見かねたのか、それまで三者のやりとりを微妙な視線で見守っていた店主が話を切り出した。
「……旦那。デル公も何やら執心のようですし、何かの縁と思って買ってくれやせんか。お安くしときますんで」
「えー? 嫌よこんな胡散臭い剣!」
「錆び付きだけど能力持ちの剣か……」
 ルイズはあからさまに嫌そうな顔をして声を上げる。
 だが柊は(不明ではあるが)能力的なメリットに一考の価値はあると判断したのか店主に向き直り、尋ねた。
「……ちなみに、いくらくらいで売ってくれんだ?」
「厄介払いも込みで新金貨百でどうでやしょう」
「それでも百もすんのかよ……」
「これぐれえの剣の相場が二百でやすし、デル公はこんなでもれっきとしたインテリジェンスソード……魔法が付加された一品でやすから。錆がなけりゃあこの百倍は下りやせんぜ」
「マジか……」
 いまいち相場が理解できない柊は小さく唸って考え込んでしまう。
 するとデルフリンガーが声を上げた。
『なんだ、文句あんのか? だったらタダでいい、俺を連れてけ!』
「!? て、てめえデル公、何言ってやがんだ!」
 泡を食って叫ぶ店主に、しかしデルフリンガーは逆に噛み付くような勢いで言葉を続けた。
『コイツは俺をこけにしやがった。断固許せん! 男にはな、どんなに安くても引けねえ戦いって奴があるんだよ……!』
「耐久消費財の分際で生意気な事言ってんじゃねえぞ!」
『うるせえ、俺はもう決めたんだよ! 四の五のほざくようなら娘っ子に言っちまうぞ!』
「あぁ!?」「?」
 店主は肩眉を吊り上げ、そして唐突に話を振られたルイズは訝しげに首を傾げた。
 そしてデルフリンガーは声を落とし、呟くようにしてぼそぼそと喋り始めた。
『鞘に収まったら喋れねえけど、会話は聞こえてんだからな。おめえがそこの娘っ子に何ちゃら卿とかいうののナマクラを――』
「うわあぁあああっ! 待て待て待て待てぇーー!!」
 店全体を揺らすような店主の叫び声が響き渡った。


 ※ ※ ※


『まーそんな訳でよろしくな、相棒』
 武器屋を後にして開口一番、デルフリンガーが心なし喜色を称えて言った。
 路地裏を歩く二人の表情は優れない。どちらかというとうんざりと言った表現が正しいだろう。
 溜息をつく柊はもちろんのこと、ルイズの方がより落胆が大きいようだった。
「なんでそんな胡散臭い剣なんか……」
 ルイズはこれ見よがしに何度目かになる溜息を吐き出す。
 柊もルイズと同じように気を吐きながら答えた。
「しょうがねえだろ。親父に泣きつかれちゃさあ」
 武器屋でのやり取りの後、何故か店主は態度を翻してデルフリンガーをもらってくれと頼まれた。
 柊はデルフリンガーと店主の会話の端からなんとなくその理由を把握したがルイズは聞き取れなかったようで、なおシュペー卿の剣を選ぼうとしたのだ。
 するとデルフリンガーがせっついて店主がしつこく頼み込む。
 仕方ないので柊がデルフリンガーを選ぶことで落ち着いた。
 ちなみに、流石にタダでもらうのは気が引けたので、半額の新金貨五十で買うことにした(そしてルイズはそれを渋った)。
「まあアンタがどうしてもっていうから折れてあげたけど……なんで鞘を貰わなかったのよ」
 ルイズは柊の手に握られているデルフリンガーをジト眼で睨みつけながら呟いた。
 デルフリンガーは鞘に収めていれば喋る事ができなくなるそうで買った時に一緒についてくるはずだったのだが、柊がそれを断ったのである。
 それをデルフリンガーが喜んだのは言うまでもなく、そのおかげか彼は上機嫌なのであった。
「だって俺、鞘は使わねえんだよ……」
『うんうん、中々いい心がけだぜ相棒! おかげで俺の好感度がぐぐっと上がったね、だいたい一万八千ぐらい!』
「小豆相場より上下が激しいじゃねえか。どこの対戦型ギャルゲーだよ」
 嘆息しながら柊は返し、そして軽くデルフリンガーを構えて正面から睨みすえた。
「……お前、これで実は能力がねえとか言ったらへし折って捨てるからな」
『安心しな、ちゃんと折り紙つきの能力を持ってるぜ。だが……今はまだ使う時じゃねえんだ』
「……」「……」
 柊とルイズは黙り込んでデルフリンガーを見つめた。

19ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 03:08:22 ID:vXEHYPVU
 

『その眼……疑惑をやめぬ瞳……』
 明らかに胡散臭げな視線を放つ二人にデルフリンガーが呻く。
『ならば! 体裁を取り繕う必要はないな……退屈のために変えていたこの姿でいる必要も……ない!!』
「はあ?」
「お前何言っ……うお!?」
 柊が訝しげに眉を潜めたとたん、手にしていたデルフリンガーが唐突に光を放った。
 慌てて周囲を見回して人がいないことを確認すると、柊は改めて驚愕の視線をデルフリンガーに向ける。
 デルフリンガーから放たれる光は刀身全体を包み込み、やがて――
『そうだ!! これが俺様の真の姿――インテリジェンスソード・デルフリンガー! 設定年齢六千歳、蟹座のB型!!』
「「し……新品だっ!!」」
 錆び一つない、白銀に輝く刀身が露になった。
「ってか、蟹座とか血液型とかあんのかよ! ハルケギニアにはよぉ!!」
『よくわかんねえが相棒に握られてたら勝手に思い浮かんだ。ふしぎふしぎ』
「こいつ……」
 理不尽さに眉をしかめながらも、柊はとりあえず姿を変えたデルフリンガーをまじまじと見やった。
 見れば確かに、武器屋にあった時には至る所にあった錆がどこにも見当たらない。
 作り自体は元よりしっかりできていたので、新品同然となった今ではシュペー卿とやらの剣と比べても全く遜色はないだろう。
 だが――
『はーははは! どうよ、相棒に言われて必死に思い出したんだぜ! 他にも何かあったような気がするけどおいおい思い出すだろ……見直したか!?』
 それを補って余りあるほどにやかましい。
 得意絶頂になっているデルフリンガーに眉を顰めながらルイズは柊を睨んだ。
「ねえ、本っ気でうるさいんだけど。今からでもいいから鞘貰ってきなさいよ」
「だから鞘は使わねえんだって……」
「だったらこのまま喋らせとく気? 学院から追い出されるわよ?」
「いや、こうすれば多分大丈夫」
 言いながら柊は軽く腕を上げると、手にしていたデルフリンガーを月衣へと収納した。
『お? おおお?? おおおぉぉっ!?』
 奇声を上げながらデルフリンガーの姿が掠れ、虚空の中に消えていく。
 その存在が完全に消失すると、歩いていた裏通りに静寂が戻った。
「まあ、こんな感じだから月衣から出すたびに鞘から抜くと二度手間になっちまうんだよ。鞘にも能力があるってんなら別だけど」
「……なるほどね」
 とりあえず頷いてはみたものの、ルイズとしては少しだけ納得がいっていなかった。
 確かに月衣の中に入れている間は静かになるだろうが、取り出す度にさっきみたいに喚かれるのではないのだろうか。
 それを聞こうとして彼女は口を開きかけ、ふとある事に気付いた。
 別に大した事ではないが、ちょっとだけ興味がわいたのだ。
「ちょっと聞いていい?」
「なんだ?」
「月衣の中って、どうなってんの?」
「俺にもわかんねえ。基本的に生物は入れられねえし、どうなってるかなんて――」
 答えながら柊はルイズの質問の意図に気付いてはっとした。
 そしておもむろに月衣からデルフリンガーを取り出す。
『……うおお、なんだ今の不思議空間は!?』
 出てくるなり悲鳴を上げたデルフリンガーに二人は興味津々と言った表情で詰め寄った。
「なあ、デルフ。月衣の中ってどうなってんだ?」
『お? おお、そりゃああれだ、なんていうかこう……凄くて……凄くて……凄かった!!』
「貧弱な語彙の感想だなぁおい……」
「所詮は剣って事ね……」


20ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 03:10:52 ID:vXEHYPVU
 

 落胆も露な二人をよそに、デルフリンガーは柊に向かって叫んだ。
『おい相棒、なんだよ今のは!? あんな所に入れられるなんて聞いてねえぞ!?』
「そりゃ言ってないもんなぁ」
『ひ、酷い……騙したのね! ワタシのカラダだけが目当てだったの!?』
「まあ実際問題、お前の剣身(カラダ)にしか用はないわな」
『あなたはケダモノよォー!!』
 芝居がかった微妙な裏声でデルフリンガーが叫んだ。
 いい加減相手をするのがイラついてきた柊が口を開きかけたが、それより先に酷く冷め切ったルイズの声が響く。
「……いいこと思いついた」
「ル、ルイズさん?」
『ど、どうした娘っ子』
 思わずかしこまってしまった二人を他所に、とうに怒りを通り越えたルイズはデルフリンガーを見据えながら言った。
「さっき武器屋で、コイツは錆がなければ百倍以上って言ってたわよね。コイツを売って新しいのを買いましょう」
「それだ!?」
『ノーモア転売!?』
 眼から鱗が落ちたように相槌を打つ柊と、泡を食って悲鳴を上げるデルフリンガー。
『ま、待て! 待ってくれよ!』
「待たない。さっきの武器屋で売るのは流石にアレだから……そうね、せっかく王都に来たんだしアカデミーに行きましょう。
 インテリジェンスソードなら研究素材にもなるしそれなりで引き取って貰えるだろうから」
『なんだよぅ、久しぶりに喋れるようになったからちょっと羽目を外しただけじゃねえかよう!』
「……わたしは黙れって言ってるのよ」
『すみません。以後自重します』
 デルフリンガーはまるで怯えるようにカタカタと剣身を揺らして恭しく答えた。
 黙り込んだデルフリンガーを見てルイズは鼻を鳴らし、肩を怒らせたまま歩き出した。
 十分に距離を取ったのを見計らって、デルフリンガーが柊に小さく囁いた。
『あの娘っ子こえー。マジこえー……』
「あんま怒らせんじゃねえよ……一応世話になってんだからよ……」
『俺は相棒に使われるけど、相棒は娘っ子に使われてんのな。ゲボク同士仲良くやろうぜ』
「ゲボクじゃねえ!?」
「ヒイラギ、何やっての! 行くわよ!」
 怒気を孕んだルイズの叫び声が響き、柊は慌ててデルフリンガーを月衣に納めると歩き出した。
 と、不意に足を止めて振り向く。
 お世辞にも衛生的とはいえない路地裏の通りには柊達以外には誰もいない。
 ――少なくとも見える範囲には、人はいなかった。
「……まあいいか」
 柊はそう呟くと、既に表通りの方へと消えたルイズを追って走り出した。
 
21ルイズと夜闇の魔法使い ◆73M7D8ljuU :2009/12/28(月) 03:12:40 ID:vXEHYPVU
今回は以上。
妄言度合いでナイトウィザードに対抗するなど百万年早い!
思いつくままネタを詰め込んでいったらデルフが何か危険なキャラになってしまいました
突っ込まれる前に言ってしまうとお金の相場やら何やらは何も考えてません(どうでもいいので)
本作では治療費不要だったし、キュルケが恋愛ゲームで新金貨千を軽く出せるのでルイズならこれくらい出せるかなあ、と
・・・公金という事を考えなければ五百程度スッた内にもはいりませんよね
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 03:14:21 ID:bo6FJACc
あれ……このデルフ、なんだか田中天っぽいぞ……?
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 03:49:09 ID:/b9t2zRR
なんというか間違うことなくGM:田中天です、ありがとうございました。

ところで、柊、お前の魔剣も出会った時は喋ってたはずだぞ、おい。

あと、45億年前から継承されてる魔剣ってなんだっけ?
星の勇者は固有装備ないよね?
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 07:55:08 ID:+mSxDM+X
ファンブックに出てきたレーヴァテイン(戦艦にあらず)じゃないかな
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 08:09:08 ID:80Wlb6hX
うぉぉぉ、下がる男おつです!
それにしても柊連司……仮定の話とはいえ、田中天っぽいキャラ相手に流せるようになるとは成長しましたねぇ(しみじみ

中の声の人に引っ張られだしたエリス、田中天っぽいデルフ。
これに小暮英「魔物の魔」っぽいのが追加されたら……頑張れ、ゲボク生活が最悪のさらに斜め下になるけど頑張れw



>>23

厳密には魔剣じゃなくて遺産ですが、レーヴァテインのことでしょう。
リプレイ「FLY ME to the MOON」にて45億5千万年前の事件とか関係してたし。
まぁ、製造日不明ながら太古に製造された「美少女型に変形できて魔王級に強い」魔剣もありますからねぇ。
柊連司は遭遇してないので知らなかったのでしょうが……本当にナイトウィザードって、
妄言度すごいな……いやはやw
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 08:24:16 ID:EVcGy5Rq
貴様デルフリンガーじゃなくて、ジグマール(漫画版)だろ蟹座の19歳w
というわけで乙です

そういやレーヴァと言えば、芳香剤は何やってるんだろ?
アイツ、柊を追って自力でミッドガルドからファージアースに来たりしてるし、
その気になればハルケギニアにも来れそうなんだよなぁ……
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 09:42:16 ID:mwTBjZFV
乙っす

> 芳香剤
案外ロマリアに先回りして寝てたり?
世界結界内ではベル様本気モード並みに燃費が悪そうなんで身動きが取れないってのも普通にありそう
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 10:03:49 ID:5lCYhiSr
下がる人乙っす
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 11:16:51 ID:qxqPvPxR
乙。満足させてもらったぜ
30ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:27:17 ID:OjLSdhh5
夜闇の人、投稿乙かれさまです。
今回の話を読んでいるとやっぱりヴァリエールは凄いなーとしみじみ思いました。
ルイズKOEEEE!超KOEEEE!


さて、どうも無重力の人です。前回は本スレをお騒がせしてしまいました。
そんな自分ですが、12時35分から今年最後の投稿をしたいと思います。
もし可能ならば、支援をよろしく御願いします。
31ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:35:33 ID:OjLSdhh5
トリステイン魔法学院はあいかわらず平和であった。
王都では多くの人々が戦争が起こるとか言ってやいのやいのと騒いではいるがここでは大した騒ぎにはなっていない。
あるとすれば、何人かの男子生徒達が談笑のネタとして話してるぐらいだ。
戦争が起これば自分の父や兄達が手柄をあげるとか、軍には行って敵を倒しやるぞ。といったものである。
トリステインの貴族の男子達は大きくなったら軍に入り、数々の手柄をあげたいという夢を大抵の者が持っている。
そんな事を話している彼らを見て、そのガールフレンドや親しい関係を持っている女子生徒達は顔を曇らせるのだ。

と、まぁ…とりあえずは魔法学院の生徒達は今の状況を充分に楽しんでいるのである。
実際に戦争が起こるかもしれない。というのは別にして。

そして、魔法学院の女子寮塔の部屋で暮らしているルイズはベッドに腰掛け窓ガラス越しに空を眺めていた。
珍しく今日は上空に雲一つ無く、清々しいほどの青い空が鳶色の瞳に映り込んでくる。
昨日の昼頃に帰ってきたルイズと霊夢は学院に帰ってきた途端、生徒達から質問攻めにあってしまった。
ギーシュは以前ルイズが魔法衛士隊の者と一緒に何処かへ行った事を他の生徒達に言いふらしていたのだ。
霊夢はともかくとしてルイズは結果的に質問攻めにあってしまい、最初は焦ってしまった。
流石に真実を話すのは躊躇い、少し学院長に頼まれて王宮までおつかいに行っていたと話すことにした。
結果それを聞いた生徒達はがっかりしながら解散した。彼らは一体何を期待していたのであろう。
その後の霊夢はというと「疲れた」と言って一足先にルイズの自室へと戻っていった。
霊夢と別れた後、学院長室に呼ばれオスマン学院長とコルベールから「良く無事に帰ってきてくれた」という言葉を貰った。
二人の言葉を聞いたルイズは素直に喜んだ。ワルドに殺されかけた後、生きている事自体が素晴らしく思えてきたのである。
その後オスマンから今日と明日は十分に休みなさいと言われた。まさかの休暇である。

ルイズは少しだけ慌ただしかった昨日を思い出しつつ、頭の中である考え事をしていた。
(姫様から貰ったこの指輪…。本当に貰って良かったのかしら?)
視線をテーブルに移し、小さな指輪ケースに入っている『水のルビー』を見つめた。
昨日、アンリエッタに手紙と『風のルビー』を手渡したルイズは、アンリエッタからこれを受け取ったのだ。
ルイズはすぐに首を横に振った。例えヴァリエール家でも、王国の秘宝を受け取るなんてことは恐れ多い。
しかし、アンリエッタは忠誠には報いるところがなければいけない。と言い、その一言でルイズもコクリと頷いた。
一緒にいた霊夢の方に対しても何かお礼がしたいとアンリエッタは言ったが霊夢はそれをハッキリと拒否した。

「お礼?それなら別にいいわよ。だって私はアンタの命令で行ったわけじゃないんだし」

という事を一国の姫の目の前で言ってのけたのだ。相変わらず遠慮のない巫女である。
アンリエッタはその返事を聞き、焦った風にこう言い直した。
「ち、違います…。私の友人であるルイズを助けてくれたお礼をしたいのです。別に忠誠とかそういうものではありません」
それを聞き勘違いしていた霊夢は「あっそう」と呟き、アンリエッタにある品物を要求した。
32ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:40:07 ID:OjLSdhh5
「王女様に要求した品物がこれだなんて…物欲が少ないというか…むしろ金目の物には余り興味がないというか…」
ルイズは指輪ケースを注いでいた視線を、その隣に置かれた茶葉が入った大きめの瓶に移した。
あの瓶の中に入っている茶葉は王宮でしかお目にかかれない代物であり、並大抵の貴族では拝むことすら出来ない。
それ程の高級品をアンリエッタは道ばたの雑草をむしり取るかのように霊夢に差し出したのである。
この瓶の中に入っている量を全て換金すると一体どれくらいの値段になるのか想像すらつかない。無論売る気など無いが。
そんな高級なお茶を手に入れた霊夢はというと、今この場にはいない。
今朝、コルベールに聞きたいことがあると言って部屋を出て行ったきりである。
部屋を出て行くときに「そのお茶、私のなんだから勝手に飲まないでよ」という言葉を残して。
ルイズはその言葉に従いこうしてベッドに腰掛けて待ってはいるがその間にも沸々と怒りが沸いて出てきていた。
その怒りの原因は、霊夢が部屋を出て行く前にルイズに言った言葉であった。

――――――――――そのお茶、私のなんだから勝手に飲まないでよね

要はこの部屋の主であるルイズが、居候(あえて使い魔とは言わない)である霊夢に命令されているのだ。
勿論その居候がアルビオンで自分の命を助けてくれたのは本当に有り難い。しかしそれとこれとは別である。

そんな風にイライラしてルイズが待っていると、ふと背後からカチャカチャという物音が聞こえてきた。
何かと思い後ろを振り向くと、突然大きめのカラスが開きっぱなしの窓から部屋の中へ入ってきたのである。
「うひゃっ!?か、カラス…!」
ルイズはそのカラスに驚き、ドアの方へと後ずさった。
カラスは二、三回羽ばたくと柔らかいシーツを敷いたベッドに降り、つぶらな赤い瞳でルイズの顔をジーッと見つめた。
その赤い瞳は透き通っており、まるで一種の工芸品かとルイズに思わせてしまう。
ルイズはと言うと外から飛んできたカラスが自分のベッドに居座っている事に気が気でなかった。
(折角洗濯に出して貰ったばかりのシーツに座るなんて…一体誰の使い魔よ!)
カラスを使い魔とする生徒は大変多く、自然とそういう考えに至ってしまう。
一方のカラスは鳴き声一つ出さずにジーッとルイズの顔を数秒間見つめた後、羽を広げて外へ飛んで行った。
突如部屋に入ってきた鳥がいなくなり、ルイズはおそるおそるベッドへ近づこうとした。

そんな時、ドアを開けてようやく霊夢が帰ってきた。
ルイズは霊夢の暢気そうな顔を見た途端、そちらの方へ顔を向け彼女を怒鳴りつけた。
「遅かったじゃないの!一体何してたのよ!?」
怒り心頭のルイズとは正反対にのんびりとしている霊夢は怠そうに言った。
「何って…?ちょっとコルベールと相談よ相談。…あと話し相手を貰ってきたわ」
そう言って霊夢は右手に持っていたのは、薄汚れた鞘に入った薄手の長剣であった。
話し相手?とルイズは首を傾げつつ何処かで見たことがあるような、と思ったとき…

『おうよ、その話し相手こそがこの俺デルフリンガーさ!』

突然その剣がブルブルと震えだしたかと思うと鎬の部分までがひとりでに出てきて自慢げにそう言った。
それを見てルイズは思い出した。以前フーケ退治の際に学院長が霊夢に手渡したあのインテリジェンスソードだ。
あの時は霊夢の手によって無理矢理鞘に押し込まれていたが、何故かその霊夢がデルフリンガー片手に部屋に戻ってきた。
一体どういう風の吹き回しだろうか、と思っているとデルフリンガーは嬉しそうに喋り始めた。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 12:40:15 ID:mUX7/PrL
支援
34ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:45:23 ID:OjLSdhh5
『いやーそれにしてもこりゃどういう風の吹き回しかねぇ?何せ俺を乱暴に扱ったコイツがまさか「ガンダールヴ」とはねぇ。
 伊達に数千年間は生きてるけどこれ程おでれーた事は…ってウォォ!?』
堪りに堪っていた鬱憤を晴らすかのように喋りまくっていたデルフリンガーの刀身部分を、ルイズが掴み掛かってきた。
恐らくこれは、六千年生きてきたデルフリンガーにとって二番目に驚いた出来事になるだろう。
幸い刀身の部分はまだ鞘に収まっているため怪我する事は無かったが、デルフリンガーは大いに驚いた。
「え…!?ちょっ、ちょっとアンタさっきのどういう事!」
『うぇ?伊達に数千年間生きてきたって…』
「違うわよこのバカ!さっきガンダールヴがどうとかって言ってたじゃない!?」
少々乱暴に揺すりながらもルイズはそう言った。
『あぁそっちかよ…。そうさ、いまアンタの目の前にいるお嬢ちゃんは紛れもなくガンダールヴだ。ってことさね』
デルフリンガーがそう言うと、霊夢は溜め息をつきつつ左手の甲をルイズの目の前に近づけてこう言った。

「良かったわね。私がアンタの使い魔になってて。私は全然嬉しくないけど」

イヤそうに言った霊夢の左手の甲には、のたくった蛇の様な文字が刻み込まれていた。
古の歴史に興味を持つ者が一目見たならば、それが何を意味するのかすぐにわかるであろう。
ルイズはそのルーンを見つめながら、つい二日ほどの前の事を思い出していた。
(そうよ…私はこれよりも前に見てたんだわ、あいつのルーンを…ニューカッスル城で)
心の中で呟きながらその時の会話を思い出した。

―――ちょっとレイム、左手のソレって…!

―――――いきなり何よ?少し驚いたじゃないの

―――こっちの方が驚いたわよ!左手のソレ…使い魔のルーンじゃない!

―――え…?あぁ、やっぱりこれってそういうモノだったのね

(あの時はワルドの事もあったけど…どうして今の今まで忘れてたのよ?)
ルイズは自分の不甲斐なさに落胆する事となった。
使い魔のルーンをちゃんと刻めたのは良かったが、よりにもよってこんな奴が使い魔なのである。
たとえ自分が主人になろうとも今の生活状況は変わらない。絶対に。
これからの事を想像し、ルイズは大きな溜め息をついた。

その日の夕方頃…

魔法学院の一角にあるアウストリ広場に、二人の少女が仲良くベンチに腰掛けていた。
一人は青髪の小柄少女で眼鏡の奥のこれまた青い瞳をきらめかせ、熱心に本を読んでいる。タバサであった。
「ねぇタバサ、少し聞きたいことがあるんだけど」
そしてタバサの隣にいるのは、赤い髪が眩しいキュルケであった。
彼女は己の系統の゛火゛を象徴するかのような赤い髪をかきあげ、自分の隣で読書に没頭するタバサに話し掛けた。
「あなた、少しおかしいとは思わない。あのヴァリエールが行きは魔法衛士隊の隊長と一緒で、帰りはいつの間にかいなくなってたあの娘と帰ってくるなんて。」
それはギーシュがベラベラと話しまくっていたルイズの事であった。キュルケの言う゛あの娘゛とは霊夢のことである。
ギーシュの言うことが正しければルイズは魔法衛士隊の隊長と一緒に何処かへ行ったことになる。
そして帰りは何故かいつの間にか学院からいなくなっていた霊夢と一緒に竜籠に乗って帰ってきたのだ。
ルイズならば帰りも魔法衛士隊に送ってもらう筈なのに、何故かあの霊夢と、それも泥だらけの服で帰ってきたのだ。
あの二人の姿を見たキュルケは、絶対ただ事ではない何かが起こったのだと予想した。
「考えすぎ」
しかし、タバサは短くそう言うと次のページを捲ろうとしたが、その前にキュルケにしなだれかかられた。
「もう、あなたって本当こういう話に釣られないわよね。偶にはバカになってこういうゴシップ話を考察するのも楽しいのに」
キュルケは楽しそうに言うと自分の頭の中で色々と考えた説を興味を示さないタバサに話し始めた。

その様子を、少し離れたところから見るモノ達が三゛匹゛ほどいた。
『相変わらずというかなんというか…ウチのご主人様は君のご主人様に夢中だね』
真っ赤な皮膚を持つサラマンダーが、人間には低いうなり声にしか聞こえない発音で、隣にいる青い竜に話し掛けた。
青い竜は背中から生えた翼を少しだけ上下に動かしながらサラマンダーに返事をする。
『そうなのね。でもおねえさまも少しだけ嬉しそうなのね』
嬉しそうに言いながら青い竜――シルフィードはタバサとキュルケの方へ視線を向けた。
35ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:50:30 ID:OjLSdhh5
あの二人は自分たちがここへ召喚される前から随分と仲が良く、おかげで隣にいるフレイムとも仲良くなれたのだ。
『でもさ、彼女って随分無表情だよね。君はもうあの主人の心の内側が読めるようになったのかい?』
そんな二匹のうしろにいるジャイアントモールのヴェルダンデが鼻をヒクヒク動かしながらそう言った。
ヴェルダンデの言葉にシルフィードは低いうなり声でこう言った。
『わからないのね。でも…私と一緒にいるときよりかはおねえさまの雰囲気が少しだけ良い気がするの』
『確かにね。ウチのご主人様も楽しそうだよ』
フレイムはクルクルと喉を鳴らしながらシルフィードにそう言った。


そんな時、ふと三匹の後ろからガサゴソと物音が聞こえてきた。
物音に気づいたフレイムがゆっくりと頭を後ろへ向けると、後ろにある草むらから黒猫がヒョッコリと顔を出していた。
フレイムに続いて他の二匹も振り向き、此方に顔を向けている黒猫に興味本意でヴェルダンデが声をかけた。
『見ない顔だねぇ。もしかして迷い込んだ野良猫かな?』
黒猫は鼻をヒクヒクと動かすヴェルダンデの方を一瞥した後、バッと草むらから飛び出し一目散に本塔の方へ走っていった。
あっという間に目の前から姿を消した黒猫の゛尻尾゛を一瞬だけ見た三匹は驚きの余り目を見開いてしまう。
『なぁ…あいつの尻尾…』
怯えているようにも見えるフレイムの言葉にシルフィードも少しだけ身体を震わせながら頷いた。
『一体全体何であんなのが私達のところへ来るのね。なんだか不吉な事がおこりそうなのね』
シルフィードはそういってブルブルと身体を震わせた。ヴェルダンデも同様である。

「でねータバサ、私はこう思うのよ…」
一方のキュルケはというと、未だタバサに話し続けていた。



その夜、夕食や入浴も終わり、消灯時間も近くなった頃…
ルイズは自らの自室で霊夢とインテリジェンスソードのデルフリンガー(以後デルフ)と何やら話し合っていた。
「さっきも聞いたと思うけど。あんたそのルーンは本物なんでしょうねぇ?」
今霊夢の左手の甲に刻まれているルーンを見つめつつルイズは信じられないという風にそう言った。
「それならさっきも言ったでしょうに…。ちゃんとあのコルベールとかいう奴に調べて貰ったのよ?」
鬱陶しそうに霊夢はそう言うとティーカップの中に入った緑茶を口の中に入れた
「嘘ついてるなら今の内に吐きなさいよ。今なら拳骨ひとつですましてあげる」
ルイズはそんな霊夢を見て少し細めていた目を更に細めた。
最初にガンダールヴのルーンを見せて以来、ルイズは自分の目が信じられないようだ。
何せ今まで魔法が成功せず『ゼロのルイズ』と呼ばれた自分が、始祖ブリミルの使い魔であるガンダールヴを召喚していたのだ。
信じられないというのも無理はない。別段ルイズがおかしいというわけではない。
一度フーケの事で学院長にその事を話されたときはまさかと思っていた。
その時には霊夢の左手にルーンがないものだから、てっきりコルベール先生の勘違いだと思っていたのだ。

デルフは話し合いを始めてから数分間はじっと黙っていたが、とうとう我慢できなくなったのかひとりでに鎬の部分が出てきて喋り始めた。
『おいおい娘っ子、疑っても始まらないぜ。そいつは正真正銘のガンダールヴのルーンだ』
突然割り込んできたデルフにルイズは顔を顰めるとズカズカと壁に立てかけられているデルフの横まで行き、持ち上げた。
持ち上げられたデルフは驚くこともせず、またもやチャカチャカと鎬の部分を鳴らして喋り始める。
『第一、使い魔のルーンには偽物なんて存在しねぇ事ぐらい、お前さんでも知ってるだろう?』
デルフの言葉にルイズは更に顔を顰める。
「わかってるわよそれぐらい。けどね…」
『けどね…?なんだよ?』
ルイズはそれを言う前に大きく深呼吸をすると、思いっきり叫んだ。

「 な ん で こ ん な 奴 が ガ ン ダ ー ル ヴ な の よ ォ ! ! 」

テーブルがフルフルと微かに震動するほどの叫び声に、さしものデルフもその刀身を揺らしてしまう。
霊夢はというといきなりの怒声に目を丸くし、思わず手に持ったティーカップを落としそうになった。
36ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:55:20 ID:OjLSdhh5
叫び終えたルイズはと言うと、ハッとした顔になりすぐに先程のしかめっ面に戻った。
どうやら部屋の壁がプライベート上の為か、全面防音性だという事を思い出したからであろう。
もしそうでなかったら、今頃寝間着の姿の隣人が鬼の様な形相で杖を片手にルイズの部屋へ入ってきたに違いない。
霊夢はやれやれと言う風に首を横に振るとティーカップをテーブルに置き、ルイズにこう言った。
「出来れば私もこんな薄気味悪いルーンなんか付けられたくなかったわよ」
嫌みたっぷりにそう言いはなった言葉に、ルイズはキッと霊夢の顔を睨み付けた。
霊夢も負けじとにらみ返し、そんな一触即発の状況を回避しようとしたか否か、デルフが口?を開いた。

『まぁそんなもんさ、始祖の使い魔だからといって根が真面目すぎる奴が召喚されるワケじゃないのさ
 例えば、誰かが竜を召喚したいと願っても絶対に竜が出てくるという保証は無い。そんなものさ』

デルフの言葉に流石のルイズも返す言葉を無くしてしまった。
「うぅ〜…でも納得がいかないわ。大体、どうして今頃になってルーンがまた刻まれたのよ?」
まだ納得がいかないルイズは、一番疑問に思っていたことを口に出した。
最初に話をした際、霊夢の話ではアルビオンへ行った時に気づいたらいつのまにか刻まれていたという。
それが一番の謎であった、何故契約した直後に消えたルーンがまた刻まれたのだろうか?
ルイズの疑問に、すぐさまデルフリンガーが待っていましたと言わんばかりに答えた。

『詳しい事は俺は知らねぇが、恐らくは何かキッカケがあったんだろうよ。
 おいレイム、アルビオンに行った際に何か無かったか?自分の記憶に残る事とか』

「アルビオンで、ねぇ…」
デルフに呼び捨てで名前を呼ばれたが霊夢は気にすることなく、つい数日前の出来事を思い出し始めた。
お姫様が持ってた幻想郷緑起…ラ・ロシェールでの戦い…アルビオンの真下にあった大穴…
そんな風に記憶を掘り返している内に、二つほど思い出した。
「そうねぇ…二つほどあるわ。一つは森の中での事で…んで二つめは私がやられた時…」
霊夢はそう言って、その時の回想を頭の中に浮かべ始めた。




一つめの思い当たる節――それはウエストウッドの森で出会った少女ティファニアのことである。
アルビオンにやってきた際、初めて出会ったのに、私を小さな村に泊めてくれた。
本当は食事だけをもらうつもりだけだっのだが、ちょっとした事情で泊まる事にもなった。
その事情を作ったミノタウロスと戦っていた時、ティファニアが呪文を唱えたのだ。
彼女の呪文を聞いていると気持ちが和らいでいく気がした。戦っていた化け物もその呪文で戦意をなくしたのか、何処かへ行ってしまった。
そしてその夜、ふと気がつくと左手にぼんやりとこのルーンが浮かんでいたのだ。
今ほどハッキリとではないが、それでも自分の目で認識することが出来ていた。
37ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 12:59:57 ID:OjLSdhh5
そして二つめ、これは少し思い出したくはないが…
裏切り者だったとか言うワルドにやられて用水路に落ちた後である。
もしかしたら、私が弱っていた時にこのルーンが表に出てきたのかも知れない。
詳しい事は知らないが、そうでなければまともに剣を握ったことのない私があんな芸当できるワケがないし…
それにガンダールヴはありとあらゆる武器と兵器を使うことが出来るとコルベールは言ってた。
とりあえず、早くこのルーンを何とかしないと。呪われたりでもしたら厄介だし…



そんな風に霊夢があまり良くない思い出に浸っていると、ふとドアをノックする音が聞こえた。
「ん?…一体誰かしらこんな時間に」
ルイズはイスから腰を上げるとつかつかと歩き、ドアを開けた。
しかしドアを開ければ、そこには誰もいなかった。ルイズがあれ?と思った時、足下に何か黒い物体がいる事に気がついた。
視線を足下に移してみると、、そこには小さな黒猫が頭を上げてルイズの顔をジッと見つめていた。
「うわぁ…可愛いわね。どこからやって来たのかしら?」
ルイズはそう言って屈むと猫の頭をゆっくり撫でた。
黒猫も満足なのか、頭を撫でられた気持ちよさそうに鳴いた。
霊夢も猫の鳴き声に気づきそちらの方へ目を向ける。
「どうしたの?化け猫でもいたの?」
その瞬間――――頭を撫でられていた猫がピクンと耳を立てるとルイズの横を通って部屋の中に入って来た。
あっという間に黒猫は霊夢の足下まで来ると、霊夢の靴を肉球のある手でペシペシと叩き始めた。
「何よコイ―――…!?」
霊夢は部屋に入ってきて自分の靴を叩いている黒猫の゛尻尾゛を見て、驚きの余り言葉を無くしてしまう。
一方、自分の部屋に入られたルイズはすぐさま振り返りった。
「ちょっと…部屋に入らな――――…霊夢?」
言い終える前に、霊夢が目を見開いて猫を凝視している事に気がついた。
黒猫は靴を叩くのを止めると、霊夢のジーッと見つめると、その口を開いた。

「やっぱり紫様の言う事は何でも当たるねぇ。すぐに紅白と【虚無】の少女を見つけちゃった」
黒猫は元気溢れる少女の声でそう言うと、『二本もある尻尾』を嬉しそうに振った。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 13:02:36 ID:07Q0DLzP
支援
39ルイズと無重力巫女さん:2009/12/28(月) 13:05:15 ID:OjLSdhh5
はい、以上で今回の投稿は終わりです。
支援してくれた方、本当にありがとうございました。

前回はもう少し吟味すれば良かったと深く思っています。
あの時は本スレを騒がせてしまい、申し訳ありませんでした。
これからはそれを胸に刻み、ルイズと霊夢の話を進めていきたいと思います。

では、本スレや避難所の皆様。来年は良いお年になる事をお祈りしています。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 13:21:34 ID:3lBGBac0
ちぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!

ふぅ、巫女の人乙でした
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 13:38:19 ID:h6B8lDHI
霊夢の人乙ー

ちぇええええええええん
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 13:45:51 ID:Tprv2Dnx
乙か霊夢

ちぇぇええええええええん!!


それにしても、カラス……カラス……まさか、ね?
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 14:01:23 ID:qxqPvPxR
二度も満足させてもらえるとは思わなかったぜ
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 14:15:20 ID:nNN8lZYN
>>42
ハルケギニアに新しいエネルギー資源が誕生するんですね、判ります

見た目的にはエクスプロージョンと似た様な事になりそうな気がしないでもない
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 14:28:06 ID:gBbPOVvi
吸引力の(ry
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 15:19:05 ID:d7nfWwcK
ヒャッハー!ハルゲギニアが核の炎に包まれるぜぇー!
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 15:51:05 ID:Tprv2Dnx
何で揃いも揃って、おHばっかりなのかと、小一時間(ry
誰かブン屋のカラスを連想するヤツは居ないのかよwww
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 17:06:59 ID:dGbQFOB9
ふと思ったが守矢の3人を召喚したらギャグテイストになりそうだな

風祝「このハルケギニアでは常識にとらわれてはいけないのですね(キリッ)」
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 17:17:27 ID:sDSx4glt
正宗「御堂よ! 共に正義を行なおうぞ!!」
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 17:45:43 ID:3RbktrVl
>>49
あなたを召喚するとルイズが万国びっくりショーも驚きの状態になっちまいますぜ?
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 17:54:11 ID:ZqTljEAo
>>48
書き手のさじ次第じゃないかね
常識云々は色々曲解されてるところだし
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:07:43 ID:yS7ZoR08
カラス……夜叉鴉こと那智を召喚
死の化身だからどんなにされようと絶対死なないし、触れるものはすべて土に変えられる
うん、チートすぎるな。聖徳太子のほうがまだましだ。
 
孔雀王は、イザナギのじいさんあたり面白いかも。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:10:35 ID:yPOvxbXN
>>49
「さて!今日のゼロの使い魔は、ハルケギニアのある学院から物語を始めよう!」
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:10:35 ID:0L5OLIbx
>>50
痛くない!苦しくない!


ところで、殺気の爆発で右足がちと吹っ飛んだが、なに気にするな
55寿命3秒の使い魔:2009/12/28(月) 18:49:03 ID:1aXrbXdJ
『北斗の拳』から死ぬ直前のザコを召喚

「あ、あれここはどこ……くぎゅううぅぅぅぅうう!!!」
 ルイズが召喚した厳つい平民の頭が弾けとんだ。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 19:02:19 ID:ZUyjCwfO
>>55
どうせだったら当たりが出るまで次々に死ぬ直前のやつらよんじまおうぜ。

「金がないよ〜!」

「俺もだ〜!」
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 19:17:52 ID:Z2IzDTUB
当たりって何だよw

ラオウ「我が生涯に一片の悔い無し!!」
ルイズ「せっかく強そうな平民だったのに!!」
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 19:22:21 ID:KTmP7diV
ボンバーマン召喚→しかし囲まれている!
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 19:27:14 ID:Igh9+rvw
>>55
はたから見てるとルイズが失敗魔法で頭を吹き飛ばしたように見える!

>>56
「かーーー! ねーーー! がほしいよぉぉぉぉ〜〜〜↑」
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 20:23:39 ID:cdjIGmAx
いまわの出オチか・・・
自爆寸前のセルと悟空
消滅真っ最中のラクティスとヴォイジャー
爆裂寸前のジガンスパーダ(アーチボルド)
トモルに望みを託したオーガン
スザクに刺されて転げ落ちたルルーシュ
爆発寸前のアポロン

思いついたのほとんど爆発する奴ばっかりだ
ところで、それと関係ないけど
何故かP2罰から「菅原だったもの」を召喚なんてふと思いついた
果たしてルイズはアレにキスできるでしょうか?
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:04:59 ID:v1FGxceo
「異世界の聖機師物語」より柾木剣士召喚

なんせ祖父&義姉達の特訓や仕込みとカニな義姉による改造で
戦闘力は勿論その他ありとあらゆる方面にチート能力発揮
七万の軍勢もゲリラ戦闘で圧倒してしまうことでしょう
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:40:20 ID:zLkK1T64
いっそことたがみよしひさの『NERVOUS BREAKDOWN』から安堂一意喚んだらどうだ?
頭脳は折り紙付きの一級品。
でも
・超虚弱体質で動けないわ
・ところ構わず吐くわ
・トドメは女性は見境無く口説いて落としまくるわ

或る意味壮絶な展開が期待できるぞ。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:44:56 ID:F4g5LuA1
>>62
相方の方はガンダ効果があれば七万でも倒せそうだけど、才人より馬鹿だからなぁwww
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:48:39 ID:BS1GaC2N
>>61
で、面白いのかねそれは?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:53:41 ID:g1fGtAJf
ふと思ったんだが、無双な方々がガンダになったら無双乱舞使い放題なのかね?
だとしたら無敵すぎるんだが
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 21:56:03 ID:954bXEFw
だから七万は戦うべき相手じゃないと何度
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:03:54 ID:1aXrbXdJ
七万をあっさり倒すような奴クロス召喚したら
召喚元の敵キャラ召喚しなきゃ戦闘場面が味気なくなる

で、そうするとゼロ魔キャラがお助けキャラ・補充要員の役割以外担えなくなる
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:05:25 ID:QiaGJfUB
逆にガンダ補正が足枷になるようなキャラって居るかな?
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:07:05 ID:1aXrbXdJ
お助けキャラ・補充要員=そのss中で雑用以外で活躍できないキャラ

ガンダが強すぎて、他のメイジは錬金でガンダの使う弾薬や燃料作らされるだけとか

70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:15:59 ID:E1daHr/v
>>69
まあ最近は原作でもそんな風になっちゃったキャラが出てきてますけどね。
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:18:09 ID:1aXrbXdJ
>>68
スラムキング

筋力があまりにも強すぎて、内臓や骨が潰れて死ぬようなキャラ。
ガンダ補正でパワーアップしたら
体が軽くなるどころか、筋肉が膨張して弾け飛ぶ
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:23:39 ID:J8kfU0tV
姉妹スレのガンダムX召喚を読んで思ったんだけど、
ルイズって既に恋人や妻がいるキャラを好きになったらどうなるのかな?
簡単に感情を抑えて諦められる性格じゃないし、
かといって略奪愛とかに走れるタイプとは思えないし。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:24:26 ID:NytIZBoj
爆発するんじゃね
読んだままの意味で
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:34:11 ID:sFWLaN4t
まあ、一応貴族なわけで。
本来なら、結婚相手じゃない男との恋愛は遊び止まりで、そう深刻なことにゃならん、筈なんだけどなあ。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 23:05:58 ID:Vj8dfVpB
>>68
鬼哭街の主人公が呼ばれたのがそんな感じだったぞ。
76ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:18:54 ID:QvS3Y6S+
仕事納めました。一年間、皆さまお疲れさまでした。
そんな年末気分で、今年最後の投下をしたく存じます。
00:30頃より、多いのでゆっくりめで投下しますので、支援等お願いしたく存じます。
どうか、よろしくお願いいたします。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 00:30:04 ID:QvS3Y6S+
投下開始です
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何百もの唸り声。
何百もの殺気。
ブラックジャック号の周囲が、銀色のペンキで塗り尽くされたようだった。

「う、うわわわ!?な、何体いるんだっ!?」
ギーシュが尻もちをついて声をあげる。
数えようも無いほどの銀色のドラゴンが、今にも襲いかかってきそうだった。

「醜悪、だねぇ……もう少し、センスの良い味方はいなかったのかい?」
フフン、と笑うような感じで、クジャが言う。
……こういの、『余裕しゃくしゃく』って言うんだよね?
なんか、その余裕が腹立たしかった。

「ふん、貴様の真似をしただけなのだがね」
もう取り繕う必要もないからか、
肉食獣のような笑顔を作って、教皇……いや、フォルサテが言った。
真似って……クジャの?

「ほぅ?」
クジャが、ゆっくりとフォルサテの方へ向き直る。

「『世界扉』という魔法があってね……5年ほど前だったかな?
 大樹の奥に引きこもった君の姿、見させていただいたよ」
大樹……?イーファの樹……?
クジャと、ボク達との戦いが……見られていた?

「なるほど……どおりで、三文以下の筋書きなわけだ」
わざとらしい溜息をふん、と鼻で鳴らすクジャ。
……言われてみれば……
魂の集まる場所。
銀竜。
召喚獣を封じ込める光を持った船……
あのときと、状況は似てる……かもしれない。

「実を言えば、君には協力して戴きたいと思っていたのだが」
「何だって?」
フォルサテの言葉に、クジャが目を見開く。
惑わすような、そんな猫なで声。

「異世界での君の役者ぶり、非常に私好みでね……
 どうせこちらの世界に、義理も何もあるまい?」
「ふむ?」
クジャの意外そうな声。
真面目に、検討してしまっている……?
やっぱり、敵なの?
78ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:33:07 ID:QvS3Y6S+
「我が片腕となって、共に永遠なる命と支配を楽しむのも、一興だろう?」
「支配……なるほど。昔語りの『魔王』といったところかな?」
フォルサテの言葉に、クジャが食いついた。
……場合によっては、二人とも、倒さなければならない。
いや、クジャがもともと悪い奴だったってことは、知っていたじゃないか……
迷う理由なんて……無い。
無いはずなのに……
『――大丈夫さ。この手の届く範囲を、守りたい』
なんで、なんでクジャの言葉が頭から離れないの?
クジャに裏切って欲しく無い。
クジャを信じてるわけでもないのに、嘘をついていて欲しく無い。
なんで、なんでそんなことを想ってしまうんだろう……

「人の欲という業を、私が全て負うというわけさ。
 聖職者らしい、崇高な理念だろう?
 越えられぬとすれば、神ぐらいなものさ」
フォルサテが手を差し伸べる。
こっちに来いと、言わんばかりに。
行かないでって、思ってしまう。
クジャを相手にするのは、厄介だから。

……それだけ?
……ボクは、クジャと戦いたく無い……なんで?


「……美しくない」
クジャが、フォルサテの手を、言葉で払いのけた。
「何?」
フォルサテの動きが一瞬止まる。

「あぁ、醜すぎて反吐が出る!
 人としての命を持ちながら!節操も無く求め!欲し!
 その陳腐な願望のために命を永らえさせる?とんだ駄作だ!」
……改めて、クジャのことを考える。
クジャが戦ったのは……あまりにも短い、それこそ、ボクよりも短い命に失望したから。
だからいっそ、全部滅んでしまえ!自分と一緒に!って暴走した……
……そのこと自体が、許せるわけじゃない。
許しちゃいけない、悪いことなんだけど……

「……所詮は虫けらの命しか持たぬもの、か。
 人の欲というものを理解できないらしい――」
命を、物扱いして、ただただ自分のために求めるこいつは……

「欲で、皆の命を奪っていいっていうの!?」
もっと、許せそうになかった。

「あぁ、お前もいたのだったな……虫けらに作られた粗末な人形が」
人形。
ボクは、確かに人形だ。
短い命しか持っていなかった、ただの人形だ。
……人間みたいにはなれない、人形だ。
でも。

「人の……命を何だと思っているんだ!」
人の命を持て遊ぶ、こいつの方が……
よっぽど、人間なんかじゃない!
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 00:34:23 ID:IA/BGLvF
 
80ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:36:04 ID:QvS3Y6S+
「何だと思っている――だと?むしろ感謝してほしいくらいなのだがな。
 我が血となり、肉となり永遠を生きる!
 取るに足らない虫けらの命に対する、救済だ!
 感謝されこそすれ、恨まれる覚えは無いな!」
自分を、神様か何かのように言う……
もう、これ以上聞く気も、話している気もしなかった。
左手のルーンが、輝きを増す。

「自分を何だと……そんなことさせるもんかっ!!」
デルフを構えて、一気に飛んだ。
距離はそう遠く無い。
間合いを詰めて、上段に構えたところから、一気に振り下ろす……

ふわり。
手ごたえを例えるなら、霧や雲を斬るかのような感じ。
デルフは、フォルサテの体をすり抜けて……

「うわっ!?」

ブラックジャック号の甲板に突き刺さった。
そんな、確かに斬りつけたはずなのに。

『羽虫が、神に盾突こうとでも?
 所詮蟻には――天の高さは知ることができん、か』
フォルサテの姿が、ゆらめきながら、嘲笑う。
声もそれに合わせてか、奇妙に歪んだような音になっていた。

「幻影の呪文、といったところか……流石に、僕達の前に姿を晒すほど馬鹿じゃないか」
クジャが憎々しげに言う。
幻影……ここに、フォルサテはいない?
じゃぁ、どこに?

『指輪も3つしか無く、巨人の封印は完全に解けたとは言えんからな』
幻に映るフォルサテの手には、3つの指輪がはまっていた。
そのうち2つは、見たことがある。風のルビーと水のルビーだ。
残りの1つ、黄色い宝石だけはよく分からない……
でも、フォルサテの言葉から考えると、巨人……バブイルの封印に関わるものなんだろうなっていうことが分かる。
……え……ってことは、不完全な復活で、あれだけの力を?

『しかし、“魂”の収集も順調そのもの。
 4つ目の指輪も、力ある者に任せてある……我が支配は、何もせずとも近いだろう』
フォルサテの姿が、揺らめきながら薄くなっていく。
水面に映った像のように、ゆらゆらとかき消えるように……

『さぁ!我が支配までの余興となるが良い!!』
遠のいていく声で、最後にフォルサテは高笑った。
全てを馬鹿にするような、嫌味ったらしい笑い方……

「待てっ!!」
……こう言ったところで、待つわけがないんだけど、言わずにはいれなかった。
でも、像は目の前にふわりと消えて……

「GURUAAAAAHH!!」
代わりに出てきたのは、
シルフィードと同じくらい大きい銀色の竜の影。
81ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:39:21 ID:QvS3Y6S+
「くっ……!」
デルフを構えようとしても、
少し遅い。
甲板にデルフが刺さっている。
抜く前に、銀竜の顎が先にボクの体を捕えて……

「――『錬金』っ!!」
銀竜よりも、デルフよりも早くきらめいたのは、
フレアの色をした爆発だった。

「GUOOOOM!?」
体の半分ぐらいを消し飛ばされて、
もだえ苦しむ銀竜。

「ルイズおねえちゃん……?」
振りかえると、ルイズおねえちゃんが、
杖を片手に立ち尽くしていた。

「ほんっと……何だってのよ……
 教皇様がフォルサテ様で?フォルサテ様がブリミル様を殺していて?
 ……価値観崩壊も良いとこじゃない……!」
怒っているのか、泣いているのか、うまく言えないけど……
そんな感じでルイズおねえちゃんは叫んだんだ。
ぐっちゃぐちゃになりそうな、頭の中の思いを、全部。

「……」
ボクは、何て声をかけていいのか分からなかった。

「……――ビビ!」
「ぇっ!?」
爆発も突然なら、声をかけられるのも突然だった。


「何ボサッとしてるのよ!あいつら……ぶっ倒しに行くわよっ!!」
「ルイズおねえちゃん……」
ルイズおねえちゃんが、強いなって思うところは、
迷ったとしても、迷いを振り切った後がものすごく強いところだなって思う。
真っ直ぐなんだ。自分のやると決めたところに。

……ボクも、やることは決まっている。


「ビビ君、行ってくれるかい?」
「クジャ……」
クジャが、歩み寄る。

「バブイルの中に、あいつらがいる場所へ繋がる扉があるはずだ。
 『悪魔の門』……言葉そのままだね」
「……」
悪魔の、門……
あいつらがいる場所には、ぴったりかもしれない。
「いいか?『ウネとドーガ』の物語の魔王だって光の戦士達に倒された!
 魔王なんて、お伽話以外の世界から出してはいけない!」
クジャが、言い放った。
……あのクジャが。
……自分自身も、魔王のようにふるまっていたような、あのクジャが。

「クジャ……ボクは、やっぱりお前を信用できない……」
ガイアをかき乱したこいつを、許すことは、やっぱりできない。
……信用するなんて、とっても……
82ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:42:04 ID:QvS3Y6S+
「……ビビ君?」


「でも!それ以上に!……ボクはあいつらを、許せない!」

クジャがしたことを許すつもりはないけど、
それと同じぐらい、いやそれ以上にひどいことをするつもりの、
フォルサテを許すわけにはいかない。
許せるわけがない!

フォルサテが去って、銀竜達の動きが激しくなってきていた。
ギラギラと光る牙が、剣のように鋭い翼が、甲板上のボク達に襲いかかる。


ゼロの黒魔道士
〜第六十六幕〜 No Reason


「――ハハハハハ!考えうる最良の答えだ!
 では……行きたまえ!」

クジャが、右手を大きく振るって、光る魔力の弾を放り投げた。
それが銀竜の体に当たるか当たらないかの内に、瞬いて弾ける。
竜達の猛攻に、わずかな隙間ができる。

「ルイズおねえちゃん!」
「えぇ!」
クジャが作った道を、走った。
襲い掛かる牙を、デルフで受け止め、薙ぎ払う。
そして、甲板のその先へ。
一思いに、飛んだ。
重力に抗う風が、ボク達を包む。

後戻りなんて、考えるつもりもない。

だって、

誰かの命を虫けらのように扱う奴を倒すのに……

理由なんて、いるものか!

「足場を頼むよ、船長さん!」
『ワイヤー射出!』

『虹』と銀竜で歪んだ空を貫くように、
ブラックジャック号からワイヤー付きの銛が放たれる。

空中に足場を得たボクは、ルイズおねえちゃんを抱きとめて、その勢いでワイヤーの上を滑っていく。
高い所は、やっぱり怖い。
でも、そんなことも考えるつもりはない。
……左手のルーンが、輝いていた。

……待っていろ、フォルサテ!
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 00:43:08 ID:IA/BGLvF
 
84ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:45:41 ID:QvS3Y6S+
----
ピコン
ATE 〜How Can We Fake This Anymore?〜

キュルケは、何が起こったかを理解するのに苦労していた。
まず、自分を殺そうとしていた義眼の男は、壁にめり込んでいる。
何故そうなったかは分からない。
だが確かにめりこんでしまっているのだ。

一方、支えを失った自分は床に完全に倒れているわけではないらしい。
優しい手の温もりを、確かに感じた。
おそらく誰かに、抱きかかえられていると思われる。


「ケホッ……誰だ?」
義眼の男がせき込みながら壁から体を引きはがす。
ややあって、キュルケは気付く。自分の傍らにいる男に助けられたのだと。
そのナイトの顔を、恐々と振り返る。
そこにあったのは、見知った顔。

「……ミスタ?」
ジャン・コルベール。
つまらないだけの、ただの教師。
禿頭に何のセックス・アピールも感じない、しょぼくれた男。
自分を支える教師の顔は、見たことのない表情だった。

「私の教え子から、離れろ」
義眼の男をじっと睨みつける眼差しは、研ぎ澄まされた刀剣のごとく。
男を知り尽くしたキュルケですら見たことも無い、男を感じさせる顔であった。

「あぁ……っ痛ぇ……ぁん?」
首をさすりながら、義眼の男がコルベールに気付く。
暗がりでも、その表情がはっきり見える。
義眼と歯が、窓から射す光に反射しているのだ。
最初は、驚き。
一瞬後、徐々に大きな歓喜へと。
まるで濁りきった『虹』色の空のように、男の表情が歪んでいく。

「おお、お前は……お前は!お前は!お前は!」
沸騰し噴出する男の感情。
溜まりに溜まった熱量が、歓喜の渦となって空気を焼く。
熱い、そして、怖い。破壊の炎そのものだ。
キュルケは、コルベールの体を赤子のごとく求め、抱きついた。

「お前は!お前はコルベール!
 そうだ、これこそ探し求めた温度!お前はコルベールだ!
 俺だ!忘れたか?メンヌヴィルだよ!隊長どの!おお!久しぶりだ!」
ここで、キュルケは初めて微動を感じた。
コルベールの体が、メンヌヴィルという名前と、隊長という役職名に反応したのだ。
「貴様……」
ぎりっと歯の鳴る音を聞く。
次の瞬間キュルケが見たのは、怒りと憎悪。
ありったけのそれらを、コルベールの横顔に見る。
85ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:48:04 ID:QvS3Y6S+
「何年ぶりだ?なあ!隊長どの!二十年だ!そうだ!
 あぁ、スポンサー様ありがとう、だ!まさかここでお前に会えるとはな!
 しかし、隊長どの!今は教師なのか!これ以上おかしいことはないぞ!貴様が教師とはな!
 いったい何を教えるのだ?人の燃やし方と壊し方か?は、ははは!はははははははははははははははははは!!」
男が笑い声を上げるたびに、空気がビリビリと揺れる。
キュルケはその度に身体を震わせながら、怪訝な表情を浮かべた。
コルベールとこの男、一体、どういったつながりがあるというのか。

「理解できてないって温度だな、えぇ?じゃぁ僭越ながら俺様が解説してやろうか、いいだろ、『先生』様?はははは!」
キュルケの当惑を熱量で読み取ったか、
メンヌヴィルが下卑た笑いのまま、キュルケの知らぬコルベールの紹介をはじめた。

「この男はな、かつて“炎蛇”と呼ばれた炎の使い手だ。
 特殊な任務を行う隊の隊長を務めていてな……女だろうが、子供だろうが、かまわずホイホイ燃やし尽くした男……
 そして俺様から両の目を……光を奪った男だ!」
コルベールが、軍人か何かだったと?
普段ならば、下手な冗談であると一笑するだけだろうが、
状況が状況だからか、キュルケはあっさりとそれを信じた。
キュルケは、確かに感じたのだ。
コルベールの横顔に、彼の過去を。
義眼を指でピンッと弾き、男は一層口元を釣り上げた。
愉快でたまらない、といった風に。
年月と共に積み重なった思いを全て吐きだせることを、天に感謝するかのように。

「……ミス・ツェルプストー」
「は、はぃ……」
コルベールの顔を再び見やるキュルケ。
先ほどとは違い、そこにはいつもどおりの、
普段のしょぼくれてはいるが、優しい教師の顔があった。

「ミス・モンモランシを連れて、下がっていてください」
声を発せず、ただキュルケはうなずいた。
何とか、身体を動かすだけの力は出る。
コルベールの支えを自ら辞し、モンモランシーの倒れた場所まで素早く動いた。

コルベールはそれを確認すると、
再び表情を軍人のそれへと戻した。

「ははは!まだ教師ごっこを続けるつもりか、えぇ?
 お前を燃やしたくて、俺は二十年待ったてのによ!
 ――待てよ?ってことはお前か……ダングルテールと縁があるし……
 ……ははははは!俺、分かっちまったぞ、えぇ?『先生』様ぁ?良ぃい生徒だろ、なぁ?」
「……何です?」
ダングルテール。
それは、コルベールの最後の任務の場。
新教徒狩りを名目とした大虐殺。
歴史の闇に葬り去られた語られぬ影。
そして――コルベールがメンヌヴィルの目を焼いた場所。

とはいえ、昔話をするために、学院を襲った訳はあるまい。
コルベールは警戒の構えをより一層強くした。

「『炎のルビー』は、隊長どのがお預かりってわけだ!どうだ、当たりか?花丸でももらえるか、えぇ?」
「!」
「はははぁっ!答えは言わなくていいぞ!温度で分かる!
 なるほど、『炎のルビー』を隠すために教師に成り下がったってわけかぁ!
 どおりで見つからないわけだぞ、えぇ?こんな温いところに隠れてコソコソ逃げてたんだからな!」
86ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:51:03 ID:QvS3Y6S+
コルベールは把握した。
この男の狙いが、自身の預かる宝石であることを。
同時に、理解した。
今も見る悪夢が何故起こったのか、ダングルテールの事件の真相を。
慈悲も何も無い、あの陰惨な任務は何故命令されたのかを。
全ては火のルビー――ただの石ころが原因だったのか
コルベールは深く溜息をついた。
なんと、馬鹿らしいことだ!

息を、吸って、吐く。
熱気が肺腑を満たす。
懐かしく忌まわしい戦場の空気。

「……いいえ、貴方は間違っています」
逃げていたことを、否定する権利は無い。
全てを今、償おう。

「どこが違う?あんたは“炎蛇”のコルベール!強くてえげつない、俺の永遠の憧れだぞ?
 いざとなったら生徒共を盾にでもするつもりだったんだろ、えぇ?」
「違う!」
コルベールは理解した。
自らの罪の遠因を。
いや、知らずとも、なすべき行動は変わらなかっただろうか。
断罪の炎を、橙色の炎を、身体に纏わせた。

「言い訳しなくても良いさ!同じ釜の飯食った仲じゃないか、えぇ?隊長どの!」
「私は……教師だ!」
手加減無用とばかりに同じく炎を纏ったメンヌヴィル。
先に動いたのは、コルベール。
牽制の炎の弾を、メンヌヴィルに放つ。

「“フリ”だろ?分かってるって!さっきお嬢ちゃん逃がしたのも、教師のフリを続けたいからだろ、えぇ?」
「教師が生徒を守ることに!理由など必要無い!!」
小蠅でも散らすように弾き飛ばされる初撃の炎。
コルベールは、それに構わず間合いを詰めにかかる。

脳裏に浮かぶのは、とんがり帽子の少年。
『何故戦うのか』との問いに、『誰かを助けるのに理由はいらない』と答えた少年。
今、必要なものは理由抜きの、決意。
覚悟と共に、一気に駆る。

「――じゃぁ、守って見せろよ、えぇ?隊長どのよぉっ!!!」
対抗するメンヌヴィルは、上げるは地獄の火炎。紫色のインフェルノ。
禍々しく、立ち上る熱気と殺気。純粋なる破壊の象徴。

生徒が危機に瀕している。
忌避できぬ過去ではない、守ることのできる現在に。
戦いを恐れ、争いから逃げ、教師という仮面をかぶっていた。
嫌だった過去から目を背けることで、今日を生きようとしていた。

だがもう、偽り続けることはできない。
戦うのだ、過去と。守るのだ、現在を。

トリステイン魔法学院の廊下に、文字通りの火蓋が切って落とされた。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 00:52:19 ID:IA/BGLvF
 
88ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 00:54:03 ID:QvS3Y6S+
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ピコン
ATE 〜It Takes Away a Part of Me, But I Won't Let Go〜

銀竜の牙は、少年の身体に触れることすら無く、宙に留まっていた。

「せ、先生っ!?」

開け放たれた銀竜の顎門は、女性の細腕とは思えぬような力でもって動くことすら敵わない。

「何を……やっとるんだ、貴様らはっ!!」

トリステイン女王直属銃士隊、隊長アニエス。
トリスタニア一の剣士とも言える彼女の解体作業は、あっという間であった。
ただ身体を引き抜き、竜の眼球を狙い、一撃。
穿たれる剣撃。竜の目からほとばしる血の飛沫。
それは脳髄をも抉り、返り血を女剣士の全身にふりかける。
断末魔の咆哮すらあげること敵わず、銀竜は絶命した。

一仕事を追え、呼吸を整えるように鋭く息を吐き、
アニエスは少年達を睨みつける。

「あ、あの、ボク達……」

タマネギ隊の一人、アルクゥが弁明をしようとする。
自分達が考えず行動したわけでは無かったことを。
自分達が考えなかったのは、後先や自分達の身の安全であり、それは最優先できるものでは……

「タマネギ隊!」
が、アニエスは何を聞こうともせず、怒鳴った。
「「「「は、ははいっ!!」」」」
条件反射のように、タマネギ隊4名の姿勢が『気をつけ』になる。

「立ち止まるな!街の人を、全て城へ!あそこならば多少持つ!
 街を良く知るお前らなら、近道も分かるだろう!」
街が混乱の中にある。
最大限の行動を、最低限の時間と人手でなさねばならない。
アニエスの指示は、的確と言えた。

「「「「はいっ!」」」」
「返事はいらん、急げ!」

駆けるタマネギ隊の後ろ姿を一瞥し、
見送る必要も無かろうと、銀竜の骸を再び見る。
後どれだけこいつらを斬ればいいのか分からない。
なまくら剣になるまでに終われば良いのだが。

「ミシェル!」
「はっ!」
呼んだ名前にすぐに応えるは銃士隊副長。
到着が遅かったことは火急の事態につき寛大に許してやろう。
普段は軽率そのものであるが、戦闘に関してはアニエスも認めている女性だ。

「銃士隊各員に伝達、各員散開し、街を守れ!以上、復唱不要!」

流石にミシェルは心得ており、敬礼の動作をごく小さくした後、すぐさま持ち場へと走り去った。

その場に残るはアニエスと、死骸の竜。
トリスタニアを包むは、炎と悲鳴。
89ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 01:00:32 ID:QvS3Y6S+
幼き日の思い出が、蘇る。
ダングルテールの、惨劇が。
父を、母を、友を、街を。
何もかもを奪い去った、あの炎の記憶を。
復讐を誓った、あの日のことを。

「……ふんっ!!」
剣をぶんっと振るって血を飛ばす。

復讐を誓い、剣を振り続けてきた。
街を燃やした貴族達を屠るために、斬り捨てるためだけに研いできた。

だが、今は違う。

ただ、相手を切り裂くだけの剃刀ではない。

守護。
今の彼女が抱く最大の感情は、その一点にある。
彼女の心に、剣の峰のように一本筋の通った強固な願いが生まれていた。

「――誰も、あんな目に合わせんぞっ!誰もだっ!」

アニエスは駆けた。
己が心の剣に従って。
ただ斬るために、武器は存在するのではない。

「復讐などではないっ!そんな理由など――いるものかっ!!」

今必要なのは、1の貴族を斬る力ではなく、10の民を守る力。

鋭く容易に折れただろう剃刀が、意志を持った頑強な騎士剣となり、
今王都トリスタニアを、行く。



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ピコン
ATE 〜When We All Fall down, It Will be Too Late〜

ガリアの首都、リュティス。
ハルケギニアにおいて最大の人口を誇る一大都市である。
石造りの建造物は横に広がることを諦め、樹木のように上への活路を見出した。
街の中心へ中心へと金も物も集まって、近頃は息苦しい。

かように過密になりつつある人の群れは、格好の的となった。
人が多い、すなわちそれだけ『魂』が多いということだ。
何より好都合なことに、ガリアという国は、フォルサテの潜んでいたロマリアに程近い。
延命と支配のために『魂』を求めていた彼奴にとって、望むべき猟場がまさにここにあった。

「くそっ!!何だこいつらはっ!!どうやっても倒せんというのか!!」
氷の刃が、再び放たれる。
薙ぎ倒すことが敵うのはわずかな先頭集団のみで、まだ後ろにその数百倍は存在する。
物も言わず進み続ける人の列は、物量という至極単純で強大な戦力となって大通りを蹂躙していた。
だが問題は数ばかりではない。
水魔法を放ったばかりのカステルモールは、己の目がまだ信じられなかった。
自身の腕には自信がある。
ガリアの東薔薇騎士団と言えば、ハルケギニアでも名の通った存在だ。
氷の魔法は、東薔薇騎士団のエースとも言える自身の得意中の得意だ。
なのに、それなのに。
90ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 01:03:33 ID:QvS3Y6S+
「不死、とでも言うのか!?馬鹿げている!くそっ!」
先頭の男が、立ち上がる。
右手には鎌、そして左手では――落とした首が笑っていた。
倣うように次々と『死体』が戦列へと復帰する。
まさに、死者の行進。
王宮へと進む亡者の群れを、止めることができない。

「呪いだ……シャルル王弟の呪いだぁああ!?」
「馬鹿を言うなっ!シャルル様は、例え亡霊になったとて民を傷つけるような御人では無いっ!!」
恐慌状態に陥る隊員を叱りつける。
そうとも、シャルル王弟様は清廉潔白そのものであられた。
お亡くなりになられたが呪いなどとは無縁である、とカステルモールは信じていた。

可能性があるとすれば、シャルル様の兄。すなわち王、ジョゼフ。
シャルル様を卑劣な所業で亡き者とした彼の簒奪者ならば、
他者のことなど玩具も同然としか考えない蛮王ならば、
『実験』と称して、死者の大軍を作り上げることもし得るのではないか?

カステルモールの頭が疑念で満たされる内に、
大通りは死臭で埋め尽くされていく。
あの中に平民が紛れていたとして区別し助け出すことなど、まず不可能であろう。

「か、数が多すぎますぅう!物量で押しつぶ……ぐぁあっ!?」
おまけに、上空は竜だ。
それも、火竜や風竜といった一般的な軍用のものではない。
死臭と爛れた肉を撒き散らす、屍の竜。
そいつらが餌をついばむ雀や鳩のように、
ときどき舞い降りては、兵員の首をもぎ取っていく。

死が死を呼ぶ、この世の地獄。
惨状が大通りからリュティスを、果てはガリア全土を満たすのも時間の問題だろう。

「くそっ!かくなる上は――」
カステルモールは、覚悟を決めた。
死を見続けることを、死をこれ以上広げることを、許容できない。
大通りごと、全てを封じる。
シレ川の水と、通りの建造物を利用すれば不可能ではないだろう。

問題は自分達も、通りに未だ残っている一般市民も封じられてしまうだろうということ。
だが、事は切迫している。
大多数を守るために、少数の犠牲は諦めるより他は無い。
それが、王家の――それが簒奪王の下であっても――仕える者の選ばなければならない道だ。

東薔薇騎士団の面々の顔を見る。
全員疲弊し、もう終わらせたいと願っている。
ならば、終わらせよう。
カステルモールは最期の命令を部下に伝えようと……


「早まったことするんじゃないよ!馬鹿ステルモール!」

死を留める声は、聞き覚えのある声だった。

「んなっ!?」

大通りの向こう側、死者の葬列を見下ろし、街を見守る塔の上。
夢か幻か。影か光か。
五つの姿がそこにはあった。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 01:04:05 ID:IA/BGLvF
 
92ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 01:06:34 ID:QvS3Y6S+
「だ、誰だっ!?」

その問いに答えるより早く、五つの姿が、跳んだ。
堕ちていく先は、死者共の真っただ中。
馬鹿な。自ら死に赴くとは。
骸共の手にかかり、彼奴等の仲間にでもなりにいたっというのか。
東薔薇騎士団の誰もが、その生存を絶望視した。

――次の瞬間。
葬列が、爆ぜる。
岩場に打ちつけられた波しぶきのごとく、弾け飛ぶ。
そのエネルギーの中心に、彼らはいた。

「誰だと、申されましても……ごく普通に通りががったヒーロー、ってところでしょうか?」
影の1つは、銀髪の青年。
手にはカードと投げナイフ。
給仕のような形格好。魅せる表情は、ニヒルな笑顔。
軽快なステップの中投げられた獲物は、おもしろいように死者の列を縫い、
関節の隙間を抉り、葬列の機動力を奪い去っていく。

「普通、通りがからんぞヒーローは……」
続く影は、堂々たる体躯。
頑健な肉体の上に、猛牛の頭。
ミノタウロス。
獰猛なる口蓋から涎を滴らせるも、目に浮かぶのは哲学者の輝き。
圧倒的な筋力に裏打ちされた斧の一撃が、機動力の削がれた死者共を、天の高みへと打ち上げる。

「通りがかってもいいんじゃない?エルザは悪くないと思うな、そういうの!かっこいいじゃん!」
合間より見えるは、小さき影。
フリルにより縁取られた服が良く似合う、花のように可憐な少女。
場違いな姿で、ピクニックの中というような楽しげな表情。
彼女が手を振りかざした所から、蔓と蔦が石畳の通りを食い破り、
伸び、絡み、絞め、死者達を磔の刑に処していく。

「そもそもヒーローという柄か?」
カステルモールの目を最も引いたのは、この影である。
金色の髪、白い肌、長身痩躯の神々が嫉妬する美貌の持ち主。
その耳は、ナイフのように尖り天を指す。
エルフ。ハルケギニアが最も恐れる、万物の敵。
軽く振られた指先に従い、風が舞う。
いかほどの斬撃が含まれていたというのか、
不死であろうとも、再起が不可能であるほどに死者共が千と万の細切れと化す。

「ヒーローだ?はっ!そんな安っちいお子様向け芝居の役なんて、願い下げだね!」
満を持し、異形の者共を従えた五つ目の影が、姿を見せる。
手にしたナイフを正眼に構え、堂々と、死者の列を切り裂いて闊歩する。
覇王の風格。乱世に生きる将の姿。輝く額は、知性の表れといったところか。

「何たって私は――」
青髪の彼の者に襲い掛かる死者の群れ。
それに目もくれず、ただ口元を釣り上げる。

「この国の女王なんだからね!ほーっほっほっほっほっ!!」
水が、洪水とも呼べそうな大量の水が、醜悪なる者どもを押し流し、彼女の道を守る。
汚らわしい死臭など、覇王には近寄るべくも無いと言わんばかりに。
五つの姿が、大通りに降り立った。
それはまさしく、古の勇者の――いや、彼ら自身の言葉を借りるならば――
ヒーローそのものの、姿であった。
93ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 01:09:33 ID:QvS3Y6S+
「い、イザベラ様ぁああ!?」
駆けより、カステルモールは驚愕する。
イザベラ、まさしく簒奪王ジョゼフの娘、
すなわち女王の姿が、目をこすってもそこにあった。
まさか、あの我儘で怠け者で虎の威を借る狐の小娘が、
こんな戦闘の真っただ中にいることなど、誰が信じられよう?

「さぁ、下僕共!存分に働きなっ!」
しかし、そのまさかはまだ続く。
無能王の娘、簒奪者の地を引く者は、異形の者達を下僕と呼び、さらなる指示を出した。
ナイフを突き出し、天を指す様は、正しく戦の陣頭に立つ将と見まごうばかりだ。

「……やっぱムカツキ、このデコッパチ……血吸い尽くしてやろっかなぁ……」
「後にしておけ。まだ先は長いぞ」
「ちぇー……」
少女とエルフは、大通りをさらに下った広場方面へ。
不平不満をもらしつつも、彼らの歩みに迷いは無い。

「人使いが、んっとに荒い……ノーマルな平民なんですけどねぇ、わたし……」
「平民も貴族も関係無いということだろう。……牛すらも関係無いようだしな」
牛鬼と青年は、戦場を縦横無尽に駆りつつ、路地の奥へ。
あそこは確か、孤児院のあった方向では無いかとカステルモールは気がついた。

「い、イザベラ様、その……」
スパァンッ。
心地よい打撃音が、大通りにこだまする。
「っ!!」
イザベラの手の甲と、カステルモールの頬が赤く腫れていた。


「何勝手な真似してくれてんだい?えぇ!?
 あんたはねぇ、私の部下!部下は部下らしく、上司の指示仰いどきなっ!」
激昂する、女王。
その様は、ある意味いつもどおりであるが、
有無を言わさず他者を従える迫力が、そこには存在した。

「も、申し訳……」
「それとだねぇ!勝手に街ごと、自分ごとブッ壊して止めようとしたろ?
 んっとに馬鹿だね!あぁ!馬鹿ステルモールだよ、あんたは!」
謝罪の言葉を、さらなる怒声で押しとどめ、イザベルが続ける。
キンキンと高い声が、耳鳴りのように響く。

「そ、それは……」
「いいかい!この国はねぇ、私の国だよっ!この街も私の街さ!
 あんたら軍人も!ここらの人民も!ここらの建物も!全っ部、私のもんさ!」

イザベラの目に、カステルモールは何かを感じた。
児戯に興ずる我儘娘ではなく、勇王と呼ぶに足る何かを。

「それを好き勝手荒らされといて、挙句に自爆?なめた真似してくれるわねっ!」

ここまでを、一息に言いきった後、イザベラは惨状の現場へと視線を戻した。
小紛れにしそこねた死者共が、再び行進を始めようと起き上がりつつある現場を。

「私の物に、散々手ぇ出してくれて……許せる理由が見つからないわっ!!」
その様をふんっと鼻息を吹かし睨みつけるは、女王イザベラ。
もう、愚図で間抜けな箱入り娘の姿はどこにも無かった。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 01:10:23 ID:IA/BGLvF
 
95ゼロの黒魔道士 ◆ICfirDiULM :2009/12/29(火) 01:11:18 ID:QvS3Y6S+
カステルモールは、感服する。
シャルロット――今はタバサと名乗ってはいるが――を虐め抜いた馬鹿娘が、こうも変わるのかということに。
あるいは、彼女の資質は全て乱世に生きるために存在したものなのかもしれない。
少なくとも、今ならば、自身の全てを預けて良いとカステルモールは感じていた。

「馬鹿ステルモール!あんたは私の援護っ!
 ちょっとは私を失望させないような働き、見せてみな!」
「……はっ!!」
「それじゃ、行くよ!馬鹿共にお仕置きのお時間だわっ!!」

死者蠢く、地獄と化したリュティス。
だが、一筋の光が見えたことを、カステルモールは感じていた。

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以上で、今年の投下は完了です。
いやー、今年の目標2つとも完結しました。
1:sum41の「NoReason」って曲をテーマで書く
2:ガリア戦隊イザベラファイブ(仮称)を書く
……くだらない目標でごめんね!
来年中に終わらせたいと思います。
頑張って参ります。生暖かくで結構、冷たくても結構ですのでよろしくお願いいたします。
それでは、お目汚し失礼いたしました。よいお年を。また来年。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 03:42:27 ID:yaPZREMw


>>94
その支援の仕方は目立たなくて良いね。
「支援」と書かれている時に比べると、スムーズに作品が読めそう。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 04:00:55 ID:LOoZnclP
だが一歩間違うと空白荒らしと判断されかねない危険性
支援が気になるならID抽出して読めば良い訳で
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 04:24:24 ID:0QowfupW
投下してる側としては、支援と書かれてると
応援してもらってるようでちょっと嬉しくなるんだけどな。
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 07:09:38 ID:Lac9sxtH
黒魔道士の人乙です!
イザベラファイブ…なんという素敵なヒーロー戦隊だw
それでいてとても悪役な教皇も恐ろしい。
良いお年をお祈りします。

>>98
確かに、支援という一文字があるだけで安心できるよ。
少なくとも誰かが見てくれるという気がして。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 10:24:35 ID:J7Aii7tO
てっきり新手の嫌がらせかと思った。支援だったのか……。
101Intermission 01「ワルドの『家族に乾杯!』」:2009/12/29(火) 12:54:08 ID:Jwa9txWy
ごぶさたしてます。『ゼロの戦闘妖精』です。
なんとか年内に間に合いました。
1〜2ヶ月に一回しか投下できなくて すいません。
五分後より 投下開始しますので、よろしくお願いします。
102Intermission 01 1/8:2009/12/29(火) 12:58:37 ID:Jwa9txWy
Intermission 01「ワルドの『家族に乾杯!』」

♪〜しーあーわせをあーりがーとー ぬくもりとどきましたー(以下略)

例えばである。
貴方が、どこかの会社に勤めていて そこで課長クラスの役職だったとしよう。
幸運にも、貴方は可愛いお嬢さんと婚約することが出来た。
それも、貴方の会社から見て親会社に当る大企業の 重役の娘さんである。
ある日、その娘さんが会社を訪ねてきて、貴方の会社・貴方の部署で働きたいと言ってきた。
試験を受けさせると、大変優秀であり 適正も高かったので採用した。
ところが、その後 ご両親の承諾を得ていないことが判明する。
正式に採用した以上 簡単に取り消す事も出来ず、かといって親会社重役の機嫌を損ねる訳にもいかず…
つまりは、そういうこと。

あの『黒ワイバーン一味 宝飾店襲撃事件』から、一週間が過ぎた。
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、グリフォン隊隊長にとって、『刑の執行を待つ死刑囚』の気分を満喫した日々だった。
再び巡って来た 虚無の曜日。ルイズを伴ってヴァリエール邸を訪問する日である。
こちらの願い出る件が、何の問題も無く受け入れられる可能性は…限りなく、いや 完全にゼロだ。
なにしろ あの家族である。
宮廷イチの子煩悩(というより『親バカ』)のヴァリエール公が、どれだけ末娘を溺愛しているか、宮中に知らぬ者は無い。
長姉のエレオノール女史は、苛烈な性格でアカデミーの全ての研究員から畏れられているが、そもそも 二人の妹が抱えた問題を救ってやりたい、必死でそれを探しているうちに 気がつけば学者になっていたという人物である。
(傍目には とてもそうは見えないが、)妹達の為に己の生涯を懸けるほど、その愛情は深いのだ。
次姉 カトレア嬢は 生まれつき身体が弱く、この面子で唯一の癒し系だ。
他人をを攻め立てるような姿は想像も出来ないが、逆に 誰であっても 彼女に無理な要求を突きつける事は出来ないだろう。
おっとりとしているようで、物事の本質や嘘・欺瞞を見抜き、慈母の如く優しく相手を諭す。
ワルド自身、カトレアに反対されれば翻意しかねない。実に手強い相手だ。
そして、ルイズの母上 カリーヌ様。
現役時代、鉄のマスクを常用し 素顔を晒す事が少なかった為、その事実を知る者は少ないが、彼女こそ、
『生ける伝説』 『歴代最強の衛士隊長』 『一人機甲師団』
こと 元・マンティコア隊隊長 『烈風』カリンその人である。
『鉄の規律』をモットーに、自分の部隊を『最強の軍団』に育て上げた女隊長が、ワルド配下の『魔法愚連隊』を どう評価しているか、考えるまでも無い。

難攻不落のヴァリエール家を どうやって攻略するか?
ワルドの頭の中に浮かぶのは 『無理』の二文字だけだった。
103Intermission 01 2/8:2009/12/29(火) 13:02:30 ID:Jwa9txWy
夜明け前、ルイズの雪風がグリフォン隊舎に到着したが、
「学院の方で どうしても外せない用事ができたから 先に言ってほしい」
と告げ、連絡用にデルフリンガーを置いて飛び去ってしまった。
なんでも、先日話に出た『無線機』の試作品が出来上がったらしい。ならば、仕方ない。その機械には ワルドも大いに期待をかけている。
とはいえ(ルイズめ… 逃げたな!)という気持ちも捨てきれない。
隊舎からヴァリエール邸まで、馬車なら二日 グリフォンでも半日弱はかかる。のんびりもしていられなかった。
「さて 行こうか、デルフ君。」
ワルドは、剣と二人で 憂鬱な空の旅に出発した。

数回の休憩を挟んで 昼前にはヴァリエール領に入った。
「ほぉ。この辺りが『嬢ちゃん』の故郷か。いいとこそうだな。」
グリフォンの鞍に括り付けられたデルフリンガーが のんびりと言う。
「ああ、今 トリステイン国内で、生産性 治安 領民の忠誠、どれをとっても一番安定しているのが このヴァリエール領だよ。
 それを背景とした経済力 軍事力も国内有数、ただし真っ向過ぎる性格と 跡継ぎの嫡子が居ない事で、政治的に第一線にはお立ちにならないのさ。」
「そんならよぉ、おめぇさんが後を継いでやりゃーいーじゃねーか?」
「ハハハ、やめてくれよデルフ君。僕にヴァリエール公の代わりなんか務まらんさ。
 魔法衛士隊の隊長なんてものになって、下っ端ながら宮廷にも顔を出すようになり 痛感したよ。
 僕は『現場の人間』だって。
 権力だとか一国一城の主とか 考えないわけじゃなかったが、宮廷は泥沼だ。腐臭を放つ 金色の糞溜めさ!
 あんな所で毒虫と戦いながら 肥え汲み人夫として働くなんて とてもじゃないが僕には出来んよ。
 それだけでも、僕は公を尊敬するね。」
(だがな、そーいうマトモな感覚の持ち主が、王宮に居なくなっちまった時 国ってヤツは滅ぶんだけどね・・・)
珍しい事に、デルフリンガーは その思いを声にしなかった。

それから四半時程で ヴァリエール邸に到着した。
羽振りのいい貴族が最近建てている 『機能度外視 外観重視』の館と違って、ここは旧来の『城』に近い。
隣国ゲルマニアと国境を接するヴァリエール領は、あまたの戦役の舞台となった土地であり、平時である現在も 警戒の手は緩んでいない。
深い堀と高い外壁 ひとたび事あれば、半日で要塞へと変わるだろう。
その美しくも厳しい姿が、これから会うヴァリエール家の人々に重なって見えるワルドだった。

グリフォンを中庭に降ろすと、そこには既に出迎えが来ていた。
なんと ヴァリエール公爵とカリーヌ夫人、その人だった。
「良く来てくれた、ワルド君。
 久しい 本当に久しぶりだ!実に嬉しいよ!」
公爵は、喜色満面の笑みでワルドを迎えた。
「いえ、長きに渡る無沙汰の程、まことに申し訳ございません。
 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、ただ今 帰ってまいりました。」
挨拶を返すワルド。
『帰ってきた』。それは社交辞令でも何でもない 偽らざるワルドの本心だった。
父を亡くし、生活の為 家屋敷も売り払った。僅かな領地は残ったが、所有するのは名義だけ。実際には そこを耕す農民こそが 愛着を持って『オラが土地』と言えるのだろう。
そして母も神に召されて以来、ワルドにとって『帰るべき場所』は ヴァリエール家とグリフォン隊の二つだけだった。
(あぁ そうだ、帰ってきたんだ。)
ワルドは、自分の目に うっすらと涙が浮かんでいるのに気付かなかった。
104Intermission 01 3/8:2009/12/29(火) 13:05:06 ID:Jwa9txWy
「ルイズからの便りで 貴方が来ると知らされて以来、この方はずっとこんな様子なのですよ、『ジャン坊や』。
 いえワルド子爵、ようこそおいでくださいました。
 でも、ルイズの姿が見えないようですが、一緒ではなかったのですか?」
悪党共から『鬼』と恐れられるグリフォン隊隊長も、カリーヌ様にかかれば子供扱いだ。
「『坊や』は勘弁願いますよ、カリン元隊長殿。イロイロとシゴかれた記憶が蘇ってきますので。」 
「そういえば、最近の『グリフォン隊』は どうもヤンチャが過ぎているようですね。
 『尻叩き』にでも 行ってあげようかと思ってましたのに…」
にこやかに微笑んでいるが この方なら、やりかねないから怖い。ワルドは 話題を変えた。
「ルイズは 少し遅れて来ます。
 今日 学院でどうしても外せない用事があり、それを済ませてから来るそうです。」
「なんだ、それでは どんなに急いでも晩餐ぐらいにしか顔を出せないのか。」
がッがりとする公爵。
「あのおチビ、自分から連絡しておいてスッぽかすなんてぇ!」
ワルドの到着に気付いて、中庭に出てきたエレオノール女史が 不満げに声を荒げる。
「いえ、
 『昼食には間に合わせたい。』と言っていましたから 間も無く到着するでしょう。」
「ちょっとワルド、学院からここまで どれだけあると思ってるの!そんなの 仮に風竜に乗ってたって無理よ!」
「それが、出来るんですよ。
 彼女の使い魔、『雪風』なら。」

「おう 隊長さんよぉ、その『嬢ちゃん』から伝言だ。あともう五分もしないうちに着けるってよ。」
突然割り込んできた声に ワルド以外の一同が辺りを見回す。
「皆様、ご心配なく。今のは ルイズが所有するインテリジェンスソード『デルフリンガー』です。」
そう言って グリフォンの鞍に括り付けた剣を指し示す。
「そ そうなのか。
 だが、『ルイズの伝言』というのは?」
「ルイズと雪風は、特別な『絆』で繋がっています。お互いの距離に関係なく お互いの考えを伝え合う事が出来るんです。
 そして デルフリンガーと雪風の間でも、同じ事が出来ます。ルイズの言葉を雪風が聞き それをデルフリンガーに伝える。
 だから 僕は連絡用に、あのデルフ君を借りてきたんです。」
「ワルド。その説明 もっともらしいけど、おかしいわ!」
アカデミー主任研究員の目で、エレオノールが鋭く突っ込む。
「メイジと使い魔の間なら まぁそんな事もあるかもしれない。
 でも、なんで無関係なインテリジェンスソードと使い魔の間でも、同じ事が出来るのよ!」
「まぁ それは、雪風に刻まれた『伝説のルーン』のお陰なんですけどね。
 それより、聞こえませんか あの音。」

ワルドの見上げる 遠方の高空、その方向に注意を向けると、
…確かに 何かが聞こえる。かすかだが、聞き覚えの無い音が。
しいて言うなら 遠雷に近いかもしれないが、今日の空は 雲一つ無い快晴だった。
「あっ、あれ!」
エレオノールにやや遅れて中庭に現れたカトレアが 最初に気付いた、ほんの小さな影。
鳥? それにしては、あまりに高いところを飛んでいる。それに、早すぎる!
見る間に大きくなる音と姿。カン高い唸りと重い響き 全く羽ばたかない翼。予想をはるかに超えて大きくなる。
そして、屋敷の敷地 正門入り口から建物正面玄関へと続く馬車道に、謎の怪物は舞い降りた。
着地する直前に車輪を出したそれは、ゆっくりと中庭に進入すると、頭のガラスドームをやや後方移動させて開いた。
「お父ー様〜、お母様〜。」
ガラスドームから現れた、頭部をすっぽりと覆う兜を被った人物が 立ち上がって手を振る。
ヴァリエール公の前で停止した機体から降りて ヘルメットを脱いだのは…
「「「ルイズッ!?!」」」
「おかえりなさい、ルイズ。」
他の三人が驚きの声をあげる中、カトレアだけが普通に出迎えた。
「ルイズ・フランソワーズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、只今戻りました!」
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 13:08:08 ID:xHsLim50
いかん、バルキリーになった・・・
106Intermission 01 4/8:2009/12/29(火) 13:08:30 ID:Jwa9txWy
いつもなら、ここでヴァリエール公が真っ先にハグしてくるのだが、今回は違った。
「ルイズよ…これがお前の…使い魔…」
いまだ驚きから回復しない様子で、愛娘に問いかけた。
「はい。これが私の使い魔、FRX-00 戦術偵察機『雪風』です。」
「すごく大きいけど、可愛いコねぇ。」
カトレアさん、雪風を目の前にして『可愛い』なんて言い出すのは 貴女だけです!(いや、深井中尉なら…?)
「おチビ!、いったい何なのよコレは。説明しなさい 今すぐ!!」
国内最高の研究機関 アカデミーの一員である自分の前に現れた 未知の存在。エレオノールが興味を惹かれないハズが無かった。
「簡単に言えば、『空を飛ぶ機械』です。ゴーレムやガーゴイルと 似て非なるものと思ってください。
 油を燃やして風を生み その力で飛びます。
 詳しく説明するには、『航空力学』の初歩から始めなきゃなりませんから、長いことかかりますよ。」
「うぅぅぅぅう…」
久しぶりの家族団らんの場で、それほど時間は取れない。エレオノールがしぶしぶ諦めると、
「ルイズ。そんな使い魔を召喚したという事は、お前の『系統』は『風』なのか?それとも『火』なのか?」
「お父様。それが まだ判らないのです。
 今までに成功した魔法は、この雪風の召喚と契約のみ。その後は 相変わらず失敗ばかり。
 それに 雪風は、空を飛ぶのに魔法の力を使っておりません。」
「あんたねぇ〜、バカな事言ってんじゃないわよ!
 こんなデカい物が 魔法無しで飛べるワケが無いじゃないの!」
鳥や虫ならともかく、騎乗用の大型幻獣で、翼だけで飛行出来るものは少ない。翼はメイジの杖と同様、魔法を発動させるための器官である。
まして ルイズの使い魔は、生物には見えなかった。
これが魔法を使わずに飛ぶなど ハルケギニアの常識として、魔法を研究する者として、エレオノールには認められなかった。
「大姉様、でしたら、雪風にディデクト・マジックをおかけください。
 契約のルーン以外、何処にも魔法の兆候は見つからないはずです。」
「あんたがイイって言うのなら、やらせてもらうわ!」
エレオノールは、携帯用の杖を取り出し 妹の使い魔に向け『魔法探査』の呪文を唱えた。
結果は・・・ルイズの言った通りだった。
「こんな杖じゃ 細かい事は解らないわ!
 おチビ、この使い魔については 後日 アカデミーでキッチリ調べさせてもらうわよ!イイわねっ。」
「はい、お願いします。
 アカデミーには、これから色々とお世話になると思いますので。」
雪風と出会って まだ一月程しか経過していないにもかかわらず、ルイズの内面は大きく変化した。
あれほど苦手としていた姉と 対等に渡り合えるほどに
107Intermission 01 5/8:2009/12/29(火) 13:10:13 ID:Jwa9txWy
「で、ルイズ。用事は済んだのかい?」
「はい隊長。『無線機』の試作第一号は、後部座席に積んであります。
 半導体の概念を理解してもらうのが難しいようで、トランジスタは作れなかったんですが、四系統のメイジ総がかりで なんとか真空管は作れました。
 大きさやら バッテリーの持続時間やら、まだ実用には程遠いんですけど、史上初のハルケギニア製電子機器としては 思った以上の出来ですね。」
不明な単語が頻出する会話だったが、カリーヌ夫人は ある事に気付いた。
「ルイズ。ひとつ聞きます。
 貴方は 何故 ワルド子爵を『隊長』と呼んだのですか?」
母親に声をかけられ ルイズの背筋が、ピィーンと伸びて『ギギギギ・・・』と効果音が入りそうな動きで 母の方へ向き直る。
「おお母様、そそそその件と、わっ私の しっ 将来の事で、じじ重大ぃな おは お話が・・・」
『姉』とは対等に話せるようになっても、『母』の壁は 厚かったようだ。
「ルイズ、そこから先は僕が言おう。 
 ヴァリエール公、奥方様、…」
だが、緊張しているのはワルドも同じ。
「ル、ル、ルィ…」
口を開いても、言うべき言葉が出てこない。
こんな時ほど 人は、トンデモない言い間違いをしてしまったりする。
プレッシャーを跳ね除けようと、最大限に声を張り上げた一言は、

『ルイズお嬢さんを、僕に下さい!』
『『『『!!!!!』』』』

「たたっ隊長ぉ〜、それ違〜うぅ!」
「そーかそーか。ワルド君、やっと決心してくれたか!
 いや〜目出度い、実に目出度い。さっそく詳細を詰めていこう。
 なーに、式の方は こっちに任せたまえ! さーて、何処の教会を押さえたものか?」
「ワ〜ル〜ド〜!それにルイズ!!
 アンタ達、判ってるわよね。
 姉である私をさておいて結婚しようだなんて、そんなこと 始祖だってお許しにならないわよ!!!」
真逆の方向で まくし立てる、父と姉。
「まっ、間違い 間違えました!
 訂正しま〜す、
 『お嬢さんを 僕の『部隊』に入隊させてください』。」
瞬間、喧騒は 重苦しい静寂へと変化した。
108Intermission 01 1/8:2009/12/29(火) 13:13:31 ID:Jwa9txWy
「どうやら、こんな所での立ち話では 済まない事のようですわね。
 もう 昼食の頃合も 大分過ぎております。料理長やメイド達も、困っている事でしょう。
 続きは、お屋敷の方で。」
皆が沈黙する中、カリーヌ夫人に即され 一同は食堂へと場所を移した。

食堂では、待ち構えていたメイド達によって すぐに昼食の仕度は整えられた。だが、誰もそれに手を付けようとはしなかった。
「ワルド子爵、君は一体何を考えているんだ。
 何故、年端も行かない娘を 衛士隊になんぞ引っ張り込もうとする!」
「ヴァリエール公、これはルイズ本人の望んだ事なのです。」
「ルイズは まだ子供だ!!」
「お言葉ですが、僕がグリフォン隊に放り込まれたのは 今の彼女と同じ歳でしたが?」
「男と女では 話が別だ!!!」
「現在 わが国には『衛士は男性に限る』という規則はございません。
 その件については、偉大な先達が公のお隣にいらっしゃいますので 御理解いただけると思いますが。」
「それは あくまで『実力』あっての事だ。未だ魔法を使えんルイズは 只の無力な子供。」
「いいえ お父様。
 私自身は無力かもしれませんが、私には『雪風』がいます。 
 使い魔の力は、主人たるメイジの力の一部。
 そして メイジの力は、民の為 国の為に使われるもの。それこそ 貴族の責務。
 『大いなる力には、大いなる責務が伴う』
 昔の事ゆえ 誰から言われたものか判りませんが、そう教わりましたこと 私は忘れた事はございません。」
「ルイズ。貴族の責務とは、何も戦う事だけではないぞ。なのに 何故衛士隊に、戦いの場に出ようとする?
 それに、あの使い魔に どれだけの事が出来ると言うのだ?」
「雪風は、異世界において作られました『兵器』です。
 雪風自身が力となりますのはもちろん、その存在自体が他の兵にとっての力にもなります。」
「その件に関しては、既に実証されているんです。実は、先日の捕物の際に…」
ワルドは、黒ワイバーン一味を捕縛した際の顛末を語った。

「うーむ、『偵察と指揮』か…。 それが、そんなにも効果的だと?」
「ハルケギニアでは『物見の兵・偵察兵』は軽視されていますが、雪風の世界では、『情報』は個々の武勇よりも遥かに重視されています。
 もし 我が軍の本陣を奇襲せんとする伏兵がいたとして、それを相手より先に発見するか 見落とすか。極めて重要な 戦況の分岐となります。
 また 情報を如何に速く正確に伝えることが出来るか?それは、戦争の大局を左右しかねません。
お父様は先ほど、
『戦うだけが貴族の責務ではない』とおっしゃいましたが、同様に
『剣を振るう、魔法を放つだけが戦いではない』のです。」
娘の語る内容に すっかり考え込んでしまう公爵。
軍略として間違ってはいない むしろ現状よりも進んだ考え方ではあるが…
「ルイズよ。お前は、本当にあのルイズなのか?
 前回の帰省からほんの数ヶ月、軍隊のぐの字も知らなんだ娘の語ることとは思えんぞ。」
「それもまた 雪風の『力』です。
 雪風が異世界の戦場で得た経験と知識、私はそれを共有できます。戦術・戦略についても 多くを学ぶことが出来ました。
 女子といえども『三日会わざれば、活目して見よ』ですわ お父様。」
公爵は思った。
見違える程しっかりとした 娘の成長を喜ぶべきなのか、戦場に出るなどと 親不孝な事を言い出す娘を悲しむべきなのか…。
109Intermission 01 7/8:2009/12/29(火) 13:16:35 ID:Jwa9txWy
「お父様、おチビなんかにやり込められて どうするんですか!
 ちょっとルイズ、あんたがいくら偉そうな事を言っても 自分の身すら守れないようなシロウト娘を戦わせるなんて 家族として許せるワケが無いでしょ! 
 少しは常識ってモノも考えなさい!!」
攻撃側の選手交代、今度はエレオノールだった。
「大姉様、雪風は偵察機ですが 決して弱くはありませんよ。
 敵も味方も『情報』を重視する戦場で、偵察機が狙われないハズはありません。
 雪風は、常にこう命じられていました。
『たとえ味方が全滅しようとも 助けようなどと思うな。
 武器は自分と自分の持つ情報を守る為だけに使え。
 絶対に帰って来い』と。」
「味方を見殺しですって!なんて卑怯な事を。貴族として いえ 人として許される行為じゃないわ。
 ルイズ、貴女まさか そんなつもりで…」
妹の意外な発言に、わなわなと身を震わせる長姉。しかし 父から、
「エレオノールよ。
 女のお前が戦場を知らんのは当然だが、己が命惜しさに友軍を見捨てるのと 任務の為に助ける事すら禁じられるのでは、全く意味が違うのだ。
 あの使い魔が、元々どのような戦場にあったものか 想像すら難しいが、そこにはアレを操る兵士が居るのだろう。
 その者は どのような決意と覚悟で戦っていたのか。お前の言う『卑怯者』であったとは とても思えんのだ。」
と 援護射撃が入り そして次姉も、
「そうですよ姉様。貴女の知っているルイズは、そんな卑怯な娘でしたか?
 大丈夫です。この子は いつだって真っ直ぐな頑張り屋です。貴族の誇りを忘れたりなんかしませんよ。」
そう言われ、エレオノールは普段の強気一辺倒の仮面が外れ 眼を潤ませながら 叫ぶように言った。
「わかってるわよ、そんな事。
 だから 、ルイズはきっと 頑張りすぎて…無茶をして…。私は、この子が大怪我したり…死んじゃったりして欲しくないのよぉ!」
ルイズは姉の手を取って その目を見つめながら言った。
「大姉様、でしたら 私に命じてください。
『絶対に 生きて帰れ』と。
 そうすれば、私も 雪風も誓いましょう。
『必ず 生きて帰る』と。」
110Intermission 01 8/8:2009/12/29(火) 13:20:02 ID:Jwa9txWy
「おおよその話はわかりました。」
それまで皆の話を聞くだけだった公爵夫人が ついに動いた!
「ルイズ。貴方は昔から 言い出したら聞かない子でしたね。
 貴族の責務、戦の意味、どちらも理解した上での決意だと言う事も判りました。
 そこまでは良いでしょう。
 ならば、最後の一つ『必ず 生きて帰る』 これを証明して見せなさい。」
「おっ、お母様。」
「ワルド子爵、すみませんが 貴方のグリフォンをお借りしますよ。
 私のマンティコアは 既に年老いて隠居中ですから。」
「はぁ かまいませんが、一体何を?」
「確か、ルイズの使い魔は 風竜よりも速いのでしたね。だから、何に追われても逃げ切れる。
 そうですね?」
「はい、お母様。雪風は 『最速』です!」
ルイズは自信を持って答えた。
「それを 私に確認させてもらいます。
 この館から周囲10リーグ、そうねぇ ウォーカーブリッジからキーストン牧場 トゥループの森の外れ辺りまでの範囲で、半刻の間 私から逃げ切れたなら合格としましょう。
 その時は 貴方の好きな様にしなさい。
 けれど 私も本気で攻撃するわ。貴方の使い魔は、壊れるかもしれない。
 それでも 良いわね?」
母は 静かに問いかけた。
姉のように むやみに反対するのではなかった。大声を出したり 感情的になることも無かった。
ただ その身に纏ったオーラが、何よりも雄弁に『本気』『全力』『手加減無し』と告げていた。
ルイズの知る限りにおける 最大級のプレッシャー。物心つく前から 延々と刻み続けられたトラウマ。絶対に逆らってはならない存在。
だが これを乗り越えなければ、未来は無い。彼女は 無意識のうちに、使い魔に助けを求めていた。
(雪風!)
返事は無い。具体性の無い語りかけに 雪風は応えない。
慰め・励まし・叱咤。雪風のAIに そういった語彙はあっても、そのような思考は無い。電子知性体は 人間的感情を有しない。
ルイズと雪風を結ぶ絆は、愛でも友情でもない。それは ただの超高速情報回線。
今のルイズには、その事が逆に『頼もしく』思えた。
(落ち着きなさい、私。
 冷静に、冷静にならなくちゃ。雪風の様に。)

「承知致しました。お母様。」


以上です。長くなったので、2分割しました。続きは 明日。
今回は、「ワルドがヴァリエール一家にフルボッコにされる ギャグ回」になるはずでした。
そのつもりで、インターミッションにしたんですけど・・・何故か こうなりました。
あぁ、ハッチャケた話が書けない 小心者の自分が悲しい。
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 16:16:29 ID:fZU3skmK
GJですた
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 17:26:13 ID:sbvYO1o2
黒魔導士の人、GJ
ものすごく熱い展開に興奮しっぱなしです。
さっそうと駆けつけるアニエスに、ここでまさかのミシェルの登場とは。
そしてイザベラファイブ、なんと燃えるプラスかっこいいやつらなんだ!
やっぱりいつの世もヒーローは美しい。今年も本当に乙でした。
113ダブル・ゼロ:2009/12/29(火) 18:01:54 ID:O+iHrIHr
小ネタを一発
114ダブル・ゼロ:2009/12/29(火) 18:04:57 ID:O+iHrIHr
ダブル・ゼロ


「見事な手並みであったぞ、ゼロよ」
「お褒めにあずかり光栄です」
 ほっそりとした黒髪の青年が軽く一礼した。
 礼をした先にはソファーにゆったりとくつろぐ美丈夫、ガリア王ジョゼフが嬉しそうに笑っている。
 彼らの間にはチェス盤。
 ゲームはステールメイト(引き分け)に持ちこまれていた。
「まさか、余が引き分けにせざるをえないとはな。このような胸躍るゲームは久しぶりであった」
「王の知略を前に、勝利を得るすべは思いつきませんでしたから」
 その言葉と共に、周囲からは拍手が巻き起こる。
 ルイズ・アンリエッタ・マリアンヌ・マザリーニ・オスマン等、トリステインの重鎮達が居並ぶ。
 魔法学院最上階の校長室では、ゼロと呼ばれた若者と突然来訪したジョゼフがチェスを打っていた。

 ジョゼフが油断ならぬ野心家であると、主であるルイズに警告したのは黒髪の若者、ゼロ。
 だがその彼は、いきなりやってきてチェスの勝負を挑んだジョゼフを快く迎えた。
 二人のチェスゲームは凡人の域を遙かに超えた頭脳戦で、どちらが有利か不利かすら他者には理解できなかった。
 そのゲームは卓越した頭脳が生む素晴らしいものだった、そのことだけ分かっていた。

 だが、周囲の人々は知らなかった。そのゲームの真の意味を。
 かつて二人が人知れず、まるでハルケギニアを盤に見立て、人を駒のように操り、ゲームのように戦っていたことを。

 内線に敗北したアルビオン王太子ウェールズを、大量のアルビオン王党派貴族と共に亡命させたゼロ。
 亡命貴族により増強されたトリステイン軍事力を背景に、ゲルマニアと対等な軍事同盟を締結させたゼロ。
 アルビオンを掌握したかに見えたレコン・キスタに内紛を起こして自滅させたゼロ。
 これら全て、ハルケギニア全土へ張り巡らせたジョゼフの策略を挫くものだった。
 今や、アルビオン・トリステイン・ゲルマニア三国は連合し、ガリアと拮抗する。

 ゼロと呼ばれる若者は知っていた。レコン・キスタを裏から糸引くはジョゼフだと。
 ジョゼフも気付いた。ルイズが瀕死のまま召還した若者は、自分に匹敵する策士だと。

 ジョゼフは会いたくなった。
 自分を楽しませてくれる若者を見たくなった。
 己の全てを賭けて正面からぶつかりたくなった。

 だが、その願いは暗に拒まれた。
 引き分け、という形で。


 ジョゼフは少しの失望と、なかなかの疲労感と、大いなる充実感を胸に立ち上がる。
「良い勝負であった。貴公とは、別の場で別の形で力を競い合うかもしれぬな」
「いえ、恐らく、そのような日はこないでしょう。なぜなら…」
 若者も立ち上がり、今度は深々と礼をした。

「私は、人々が争うことのない優しい世界を目指していますから」

 ちょっと拍子抜けした王は華麗にマントを翻して部屋を去る。
 だが、去り際に少し振り向く。
「そうそう、貴公はゼロと名乗っているそうだが、それは偽名ではないかな?」
「いえ、別に偽名ではありません。それは、私の二つ名のようなものです」
「そうか…なら、差し支えなくば本名を名乗られよ」
「はい。私の名は・・・」
 身体こそ華奢だが強い意志を秘めた目を持つ青年。黒髪を少し揺らし、堂々と名乗る。
「ルルーシュです。ルルーシュ・ランペルージ」
115ダブル・ゼロ:2009/12/29(火) 18:07:24 ID:O+iHrIHr
 本塔の図書館で、今日もルルーシュは本を読む。
 表向きは、このハルケギニアで戦う知識を得るために。
 でも本当の理由は、平和な学園の穏やかな時間を楽しみたかったから。

 彼の主であるルイズがツカツカとやってくる。
 もっとも、誰がどうみてもルルーシュの方が保護者だったけど。
「あんた、わざと負けたわね?」
 彼は視線を本から動かさない。言葉だけで答える。
「負けてないさ。引き分けに持ち込むのは歴とした戦略だ」
「それに、あんたの能力も使わなかったでしょ」
「今は使うべき時ではない。それだけだよ」
 ルイズは腰に手を当てて、大きな溜め息をつく。
「あんた、相変わらず嘘つきねぇ」
 別に主は怒っていない。ただ呆れているだけ。
 彼がいつも、わざと自分を悪役に仕立てようとしているのを知っているから。

 ルイズは本当に不思議だった。
 どうしてこいつはいつも悪者ぶってるんだろう。
 自分から人の苦労をしょいこんで、何の見返りも求めないなんて。
 陰からみんなの幸せを願って、自分のことはほったらかし。
「全く、あたしがいなかったら、すぐに死んじゃいそうね。まるで贖罪してるみたいな生き方だわ」
 そんな彼を見ていると、心配でしょうがない主だった。


 かつてギアスという力を用い、世界に反逆した少年。
 世界を独裁政治で支配し、全ての憎しみを我が身に受け止めた青年。
 自分が生んだゼロという名の「救世主」に扮した親友に自らを討たせることで、世界を平和にした男。
 ルイズに召還されて九死に一生を得た、悪人になりきれなかった人。

 優しい世界を目指して、今日も彼は学園で静かに本を読む。

       コードギアス最終話より、スザクに討たれた直後のルルーシュを召還
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 18:51:34 ID:gWw//4le
ありゃありゃ、まさか本当に呼ぶとは乙
一期半ばで呼ばれてタバサを味方につけたルルもいたが
これもまたアリですね
ちなみに最初に黒髪のゼロときて
ブラックマトリクスの隠しご主人様と勘違いしかけたのはここだけの秘密だ

そろそろ誰かが魔王ゼロを呼ぶ気がする
ナナナの
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 18:53:16 ID:h74wfUl2
このゼロ(ルルーシュ)はマッチョにはならないのか?
次も満足させてくれよ
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 19:17:42 ID:O+iHrIHr
マッチョ違う
それルル違う
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 19:32:57 ID:kOqzJGOS
魔王CCのマッチョ振りはルルの願望が反映してるんだろうか
120ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:34:06 ID:V5Kw/jum
19:45から投下します

ギーシュがアンパンマンの黒バラ女王を召喚した話です。
黒バラ女王は最後に必ず負けます。
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 20:38:50 ID:qJI0ezKb
お待ちしています。って20:34なのに19:45から投下?
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 20:39:27 ID:6FeZYmRb
>>120
時を遡って投下だと・・・!?

貴様、Dメールを使う気だな!!
123ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:41:14 ID:V5Kw/jum
ぐええええ! 間違えたのです、119の時間を見ながら書いたから……
20:45でし
124ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:45:16 ID:V5Kw/jum
「!?」
 薄暗い茨の森が、突如鮮やかな朱色に染まった。
 森に居る人間達の目に映る全てのものにおどろおどろしい血の色が広がっていた。
「これは一体……」
 コルベールは生徒に背負われながら青い炎を放っていた。
 紅色の空間の中、彼の放つ炎は一際目立って輝いている。
 コルベールは恐る恐る上空を見上げた。

---

 森の外を目指して飛び進むメイジ達の列、その中間の位置にキュルケとタバサは居た。
 火系統のメイジであるキュルケはタバサの上に乗っている。
 タバサは飛行速度を抑えながら慎重に列の中央を飛んでいた。
 列の先陣は奇襲を受けやすい、彼女がそう判断していたからだ。
 前方の地面から突然現れる茨、急な事態に対応が遅れる先陣の生徒達――そのような奇襲をタバサは想定していた。
 ところが、先陣への奇襲は思いも寄らない形で行われた。
「い、ぎぎゃあああああああああああ!!」
 目を固く閉ざしたキュルケが悲鳴を上げた。
 彼女達とその周りに居た生徒達は衝撃波で勢いよく後方に吹き飛ばされる。
「あ、あが、あぎ……」
 地面に叩きつけられた生徒達は恐怖に身を竦ませた。
125ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:46:38 ID:V5Kw/jum
「な、ななななな……」
 彼らの前には巨大な光の柱があった。
 自然のものではない黒い雷とその周りを覆う青いオーラ。
 爆音と共に、天空から降り注ぐ無数の稲妻がコルベールが居た位置を中心に邪悪な光を輝かせていた。
 雷は数秒間轟き続けた後、青い火花を迸らせながら止んだ。
 爆心地にいたものは全て黒い鉄と化していた。
 コルベールや他の生徒達は勿論、地面や茨の蔓さえも紅色の光を反射させる金属の塊となっていた。

「ふっふっふっふっふ」
 不気味な笑い声が森中に響き渡った。
「ほーっほっほっほっほっほっほ!」
 列の後方にある茨が黒い巨大な何かに潰され圧し折れた。
 上空で椅子に座っていた女王が飛び降りてきたのだ。
「これで奴らはみんな……あら」
 女王は先ほどの攻撃で全ての人間達を黒くしたと思い込んでいた。
 しかし、地上に降りてきた彼女の足元にはまだ十数人の子供達の姿があった。
 雷が直撃したのは列の先頭に居たメイジ達だけだった。
「呆れたねぇ、お前達まだ生きてたのかい」
 目を丸くしながら女王は杖で地面を叩いた。
 女王の足元から生えた茨が椅子を造る。
 腰を下ろした女王は彼らの居る方を向くと溜息を吐いた。
126ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:47:44 ID:V5Kw/jum
「まったく……ここまでしぶといとある意味興醒めだね」
 そう呟くと、女王は左手の人差し指を突き出した。
 鋭い爪の生えた指が地面にへたり込んだ一人の男子生徒を指し示す。
「お前、何か芸をしろ」
 一同の視線はその生徒に集中した。
 その生徒は口をぽかんと開けたまま震えている。
「何をボケっとしている!」
「ああ!! あの……えぐっ」
 女王の一喝を受けた男子生徒が涙を浮かべながら立ち上がった。
 その生徒の脚は小刻みに震えている。
「ぼ、僕……」
「遅い!!」
 女王の人差し指と男子生徒の額の間を黒い閃光が走る。
 雷が直撃した生徒の体が鉄化した。
 女王は伸ばしていた腕を戻すと、左手で頬杖を突いた。
 そして、目を瞑ると何事も無かったかのような顔をして悠々と語り出した。
「私をこれだけ手古摺らせたんだ、お詫びに何か見世物をして私を楽しませろ」
 女王の命令に一同は戸惑った。
 状況を理解できない者もいれば、どんな芸をするべきか迷っている者もいた。
 まず最初に彼らの頭に思い浮かんだのは、この場から逃げることはできない、ということだった。
 周囲はフライの飛行速度よりも速く伸びる茨に取り囲まれ、目の前には雷を自在に操る巨人がいる。
 たとえメイジといえど、彼らがこの場逃げられるはずがなかった。
127ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part11:2009/12/29(火) 20:51:24 ID:V5Kw/jum
「ルイズ……き、君は何をするんだい?」
 ギーシュは隣に座り込んでいるルイズに小声で尋ねた。
 この場から逃げ切れないと諦めた彼は、女王の命に従い何か芸をしようと考えていた。
 そして、ギーシュはルイズもその場を凌ぐために芸をするものだと思っていた。
 しかし彼女から返ってきた答えは、その予想に対して全く反するものであった。
「しないわ」
 唖然としたギーシュを尻目にルイズは話を続ける。
「どうせ何をしたって私達は助からないわ。それだったら、私は貴族としてのほこ……ひっ!」
 そこまで言い掛けたところでルイズの言葉が止まった。
 女王の左手が彼女達を目掛けて飛んできたからだ。
「お前達がなんにも思いつかないようだから、私が代わりに考えてやったよ」
 10メイルはある女王の人差し指がギーシュを指し示す。
「う、うあああああぁぁぁぁぁあああ!!」
 黒い槍のような爪の先端がギーシュの眉間に刺さる寸前のところで止まっていた。
 彼は人の声とは思えないような叫びを上げながら後ろに倒れ込んだ。
「こいつを叩きのめすんだ。お前達全員でね」
 女王は笑みを含ませた口調で彼らに命令を下した。

//以上です。
//おまけ:part1か2では「女王は封印された状態だと無力」と書いたのですが
//どうやら封印された状態でも雷撃を使えたみたいです……
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 20:53:35 ID:dtkIStqq
乙乙
ギーシュどうなっちゃうんだぜ
やっぱりアンパンマンの大ボスの恐ろしさはハンパないんだぜ
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 21:18:50 ID:6FeZYmRb
乙おつー

ギーシュが酷い目に遭いそうだけど、ギーシュだから別にいいやと思えてしまう
ふしぎ!!
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 21:24:21 ID:eKM8Ks6V
ガンダムマイスターの四人を召喚
CDドラマ版ならガンダム無しでもいける筈
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 22:24:01 ID:W47xCKS1
つまり・・・「ちょりーっす」が召喚後の土煙の中から聞こえてくるのか・・・
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 22:28:48 ID:SjJ/BWAH
マイスター関係から四人召喚

左手:問答無用、東方不敗マイスターアジア
右手:そのプレーには動物ですら身惚れる(と思うよ)、マエストロとかいう愛称があったらしいジネディーヌ・ジダン
頭脳:たぶん色々と出来るよ、元案内人マエストロ
記憚:にゃにゃにゃーすでバイバイジャンプ
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 22:57:47 ID:9IMMRCbb
休みに入ったしそろそろアプトムさん帰ってくるかな
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 02:21:43 ID:ZIy8MC46
マイスターと聞いてふざけるなァ!
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 02:27:37 ID:TnomTh1c
いかでわが こころのつきを あらはして やみにまどえる ひとをてらさむ
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 02:53:26 ID:cG914zei
真改さん召喚したらルイズ無双の始まりだろ
137名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 03:15:33 ID:TnomTh1c
我が仕手よ。当方を纏うには少々体力が足りぬようだ。また熱量不足も深刻である。
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 04:40:04 ID:CwQE0iun
胸部の熱量タンクは一条さんが大丈夫だったんだし多分問題なs…あれこんな時間に誰だ
139ゼロの戦闘妖精:2009/12/30(水) 09:00:06 ID:OQmP9JZQ
昨日の続きです。
五分後から開始します。
140Intermission 02 1/6:2009/12/30(水) 09:05:07 ID:OQmP9JZQ
Intermission 02「ざ・らいとすたっふ」

母親から提案された『実技試験』のために、ルイズはデルフリンガーを雪風に装備した。
「今度は、伝説の『烈風』殿と対決か。まったく 嬢ちゃんといると、退屈してるヒマが無ぇな!」
「デルフ 何を期待してるのか判らないけど、たぶん 貴方の出番は無いわ。あくまで『保険』よ。
 むしろ 出番があったらマズイの。」
「そりゃまた どーして?」
「今回は 『逃げ』に徹するから、グリフォン隊の入隊試験の時と違って相手に突っ込んでいく事は無いわ。
 だから 攻撃魔法は後方から私達を追いかけてくるハズ。
 仮に スクエアスペルのカッター・トルネードを使われたとしても、竜巻自体の移動速度は雪風よりも遅いから まず届かないと判断していい。
 流石に雷撃は雪風よりも速いけど、ライトニング・クラウドは 前段階で雷雲を発生させなきゃならないから、高速飛行中に使うのは無理だし。」
「そりゃそーだ。雲なんざ 吹っ飛はされちまうからな。」
「怖いのは、魔法よりも剣ね。
 お母様は 全速力で逃げる飛竜の騎士を 追いかけて斬った事があるっていうし、私もお母様の全力飛行って 見たことが無いの。
 ねぇデルフ、貴方から見て お母様ってどうだった?雪風より速いなんて事が あると思う?」
「さーて、どうかねぇ。判るのは 両方とも『すんげぇ速ぇ!』って事までだ。どっちも 常識ってモンの範疇を越えちまってるからな。
 俺っちに そんな事を聞くのは、十までしか数えらんねぇガキに 千や万単位の数字の大小を比べろってぇのと同じだぜ。」
「あ〜あ。貴方の『六千年の記憶』でも、データ無しか!
 もうイイわ。此処まで来たら 雪風を信じるしか無いんだから。」

ヴァリエール邸から 一騎の幻獣と一機の航空機が飛び立つ。
羽ばたき飛行のグリフォンは、垂直離陸も可能だが、カリーヌは騎獣を滑走させ 更に水平飛行で速度を稼いでから一気に上昇した。
雪風も、自重を上回る最大推力をもって 離陸直後から垂直上昇に移行、先行したグリフォンを追い抜き 十数秒で予定高度に到達した。わずかに遅れて グリフォン到着。
「では 始めましょう。」
ルイズから渡された フライトオフィサ用のインカムで カリーヌが宣言する。
同時に エアハンマーが雪風を襲う。通常の三倍速いといわれる、『烈風』アレンジ版のエアハンマーだ。
それを 爆発的な加速で回避する雪風。そのまま 設定空域の周回飛行に入る。
〔ひょえー。こないだより 一段と速ぇな!〕
(そうね。今回は 速度リミットをいつもより高めに設定したから。
 それでもまだ 全開には程遠いけどね。ソニックブームとかも危ないし、せいぜい亜音速域までよ。
 さて この後何も無ければいいんだけど。)
141Intermission 02 2/6:2009/12/30(水) 09:10:07 ID:OQmP9JZQ
カリーヌは ルイズを信じていない訳ではなかった。
一般に言う『風竜よりも速く飛べるものは無い』、それは間違っている。自身 風竜よりも速く飛んだ事もある。
だから それを想定した速度で飛んでいるつもりだった。
甘かった。あれは、『風竜を追い抜く事ができる速度』等ではない。『風竜を置き去りにする速度』だ。
だが まだ追える。問題は アレが使い魔の全速ではないだろうという事だ。
「まさか、この呪文を使う事になろうとはな。」
それは 彼女のオリジナル、超高速飛行の呪文だった。

《マスター:警告》
コクピット内のルイズに、緊張が走る。
(何、雪風?)
《ターゲットα、後方50メイルまで接近。》
(来たわね。)
〔おいっ、ウソだろ?相棒!〕
デルフリンガーと違って、ルイズはこのくらいでは驚かない。予想範囲内だ
(ターゲットαとの距離は現状で固定、引き続き詳細な情報収集と解析を実施。)
《RDY
 現在までに判明の事項
 ・ターゲットαは 何らかのフィールドを形成して空気抵抗を低減。
 (タバサ・シルフィードのデータから類推)
 ・フィールドの一部に吸入口を作り、それを後方に噴射して推進力を増加。
 (空間受動レーダーにより確認)》
(つまり 魔法式のジェットエンジンね。
 でも、複数の魔法を同時に使うなんて、普通 出来ないわ。
 確かに お母様は普通じゃないけど、それにしたってコモン・マジックと簡単な魔法程度が限度のハズよ!
 なのに、特殊形状の結界と 大出力の風魔法だなんて…)
《マスター:推測
 複数の効果をワンスペルで発動させる 自作魔法である可能性。》
(なによそれっ、やっぱりバケモノだわ!!)

上空で繰り広げられる 前代未聞の追いかけっこ。それを中庭から見物しているヴァリエール家の皆様+1。
デッキチェアに日傘付きテーブル、ティーセットに茶菓子も用意されている。
「お母様、相変わらずお元気ねぇ。」
「うむ。あれほど楽しそうなカリーヌを見るのは 久しぶりだな。」
「非常識よ、どっちも!」
「…同感です。」
誰も 慌てる様子はない。家族の奇行など もう慣れっこである。
「ときにワルド君、」
「何でしょう?」
「ちょっと 頼まれてくれないか…」
142Intermission 02 3/6:2009/12/30(水) 09:15:11 ID:OQmP9JZQ
風の結界が 激しく震える。
重い。風が、深き水 いや水銀の如く重い。
精霊にすら許されぬ速さ この重さは禁を犯す者への戒めか?
否、断じて否! 新たなる世界への道は 常に厳しい。それを乗り越えられる者だけに 祝福は与えられる。
あの使い魔は 追えば追うほど速くなる。やがては『風が壁になる領域』に突入するだろう。
カリーヌ本人ですら、若き日に数回だけ感じる事の出来た世界に。

《マスター:要請
 現在 時速750メイル。速度リミット上限。ターゲットα、なお加速中。リミット解除の要あり。》
(ソニックブームの ターゲットαに対する影響は?)
《確率80パーセントで、結界フィールドのため 身体に影響無しと推定。》
(分かったわ。リミッター再設定、上限値マッハ1.2、音速突破!)
《RDY》

ルイズの使い魔が また速度を上げた。
既に 風が壁となって立ち塞がる領域。そこから、ああも易々と加速する・・・素晴らしい!
カリーヌは魔力を振り絞って それを追う。
今こそ理解した。あの使い魔『雪風』は、この先の世界を飛ぶためのものだと。
前方で「ドーン」という音がした。雪風が『壁』を突き破ったのだろう。「ならば」と、カリーヌも掛け値なしに全力を魔法に注ぎ込む。
結界がバラバラに砕け散るような轟音と振動、それでも強引に加速、
「まだよ、まだっ! あと少しぃい!!」
そして、唐突に『音』が、消えた。

それは、大嵐を脱した船の前に現れる 凪の海。いや もっと神々しい世界。静寂と光の空。
ハルケギニア有史以来 此処にたどり着けたメイジは 何人いるのだろうか。
恐らく 十指を満たす事はないだろう。
それゆえ 語られる事も無く、音速の概念のない社会では 想像もされなかった『超音速の世界』。
「(あぁ 私は再び 此処まで来れた・・・)」
公爵夫人は そう思いながら意識を失った。

《ターゲットα、失速。急速降下。》
(えっ 大変。雪風 急いでお母様のところへ!)
143Intermission 02 4/6:2009/12/30(水) 09:20:13 ID:OQmP9JZQ
雪風が引き返して来た時、カリーヌの元へは マンティコアに二人乗りしたヴァリエール公とワルドが到着していた。
まず ワルドが精根尽き果てたグリフォンをレヴィテーションで支え、公爵がそれに移乗。妻を抱えてマンティコアに戻る。
替わってワルドがグリフォンに騎乗すると、本来の主人が乗った事で 愛騎の気力も僅かに回復、自力で屋敷まで戻ることが出来た。
「さすがですね、ヴァリエール公。こうなる事を見通してらっしゃったとは。」
「カリーヌは若い頃から、物事に集中すると自分の限界を超えても気付かないタチだったからな。
 それと、他の『伝説』に紛れて 余り知られていないが、トリステイン最速騎士の記録保持者も彼女なのだ。
 むきになって張り合うだろう事は すぐに予想できたよ。」
「なるほど。自分の娘であっても トップを譲る気は無かったと言う事ですか!」
「そんな事はありませんよ!」起き上がるカリーヌ夫人。女性は、悪口と噂話に敏感である。
「私は、久しぶりに『あの世界』へ 行ってみたかっただけです。」

着陸した雪風からルイズが、屋敷の方からエレオノールとカトレアが駆け寄ってくる。
「お母様 凄い、凄すぎます! 生身で音速を突破するなんて!!」
ルイズが驚嘆の声を上げると、
『音速?』 ハモるカリーヌとエレオノール。
「はい。お母様には判っていただけると思いますが、あの直前まであった『壁』は、空気の壁と同時に『音』の壁だったんです。
 音は一瞬で遠方まで伝わりますが、如何に速くとも ゼロ時間ではありません。
 落雷の際 雷光よりも雷鳴が遅れる事をお考え下さい。それが 音の伝わる速度です。
 音は 上下前後左右いずれの方向にも伝わりますが、物体が音速に迫ると、自ら出して前方に伝わる音は圧縮され 壁となります。
 その壁を突き抜けた先に現れるのが、『超音速領域』なのです。」
「そうですか。それゆえに あの世界はあれ程 静かなのですか。
 あれこそが、雪風という使い魔の 本来の領域なのですね。」
「そうです。でも、あれはほんの入り口。
 雪風を召喚して間もない頃、一度 全速力で飛ぶように指示しましたが、身体への危険性を理由に拒否されました。
 パイロット用抗Gスーツと言う 異世界のアンダーアーマーのような服を 私のサイズに仕立て直して着用しなければ 命にかかわるとの事です。
 ですが、マッハ2.0ぐらいまでなら、高機動しなければ何とかなります。
 お母様、今度は雪風の後部席にお乗りください。私と共に その先の世界を御覧下さい!」
「ええ、喜んで。」
そう言って立ち上がる母。さすがは『烈風』、魔力は使い果たしても 体力には余裕あり。昔とった杵柄か?
144Intermission 02 5/6:2009/12/30(水) 09:27:07 ID:OQmP9JZQ
だが、
「待ちなさい おチビ!少しはお母様の御身体のことも考えなさい。
 私が先に乗るわ!」
「大姉様!?」
エレオノールが 雪風に乗ると言い出した。
「『音速』ねぇ? 面白い考え方だわ。アカデミーで研究する価値は 充分にあるわね。
 ならば、研究員として 実際に体験しておかなくては!」
「じゃあ その次は私ね。」
「ちい姉様まで!」
身体の弱いカトレアまでが、まさかの搭乗希望。
「だって、あんなに楽しそうに飛んでいるんですもの。
 なにも さっきみたいな無茶な飛び方じゃなくて、ゆっくりでいいの。
 できるでしょ、ね 雪風ちゃん。」
ついに『ちゃん』付けである。カトレアさん、肝の据わり具合も凄い!
ともあれ、末娘の風変わりな使い魔は、ヴァリエール家女性陣からは すっかり受け入れられたようだった。
どうやら、交代で乗る事になり 順番を決めるのにモメているらしい。
その様子を見ながら、ワルドが問う。
「ヴァリエール公、貴方は お乗りにならないのですか?」
「そうだな・・・いや やめておこう。
 ワルド君、正直なところ 私はアレが怖いのだよ。
 召喚したルイズをあれほどに変えてしまい、カトレアに一目で気に入られ、エレオノールの興味を強く引き付ける使い魔。
 ついには、カリーヌすら凋落させた存在。
 ひょっとしたら アレは、魅了か幻惑の魔法のかけられた 呪いのアイテムではないのか。
 アレに乗ったりすれば、私もその術中に嵌ってしまうのではないか。そんな気がしてね。」
宮中での堂々たる態度からは想像できない 戸惑うヴァリエール公爵。
それは 家族を心配する、夫であり父である『男』の姿。
ワルドは、早世した自分の父の おぼろげな記憶を、公爵の姿に重ねていた。
「確かに雪風は 不明な部分が多いのですが、あれは 魔法無き世界で造られしもの。
 呪い云々があるとは思えませんし、もしそうであれば、先程エレオノール様が気付いていた事でしょう。
 ルイズも言っておりました。『雪風は武器』と。
 邪なるモノが用いれば悪魔となり、心正しく使うなら 救国の英雄とも成り得る。
『伝説の武器』の逸話としては、まぁ ありがちなことでしょう。」
とりあえず納得した ヴァリエール公。が、ある事を思い出す。
「そういえば君は、『伝説のルーン』がどうかしたと言っておったな。」
「ええ。実は、雪風の翼に刻まれたルーンなんですが、これが 始祖の使い魔が一つ、『ガンダールヴ』のルーンらしいのです。」
「なん だと!」
「トリステインが未曾有の国難を迎えようとする この時期に、伝説のルーンを持つ使い魔が召喚される。これは果たして偶然でしょうか?」
「子爵、君も 開戦は避けられぬ、と。」
「はい。主流派の唱える『アルビオン封じ込め策』は、確実に失敗します。我々だけでも 準備はしておくべきでしょう。」
「だが、残された時間は あまりに少ない。」
「そして もう一つ。
 唯の可能性 私の考え違いという事ならよいのですが…
 始祖の使い魔を召喚する事が出来るメイジ、さて その系統は一体何なのか。 
 どう思われますかな?」
「まさか!」
「確証はございません。しかし 状況証拠は揃いつつあります。
 公爵様、もしもの際は どうかお覚悟を。」
公爵から 返事は無かった。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 09:32:40 ID:fHStXvKB
このカリン様化け物過ぎるんですけどwww支援
146Intermission 02 6/6:2009/12/30(水) 09:33:13 ID:OQmP9JZQ
結局 雪風への搭乗順は、カトレア、エレオノール、カリーヌと決まったらしい。
次女と三女を乗せて 雪風が離陸する。
「娘達は あの使い魔の上で、どのような話をするのであろうか。」
「さぁ。我々の様な内容でないことは 確かでしょう。」
そして ヴァリエール公は、ワルドに深々と頭を下げた。
「ワルド子爵、娘を ルイズを宜しく頼む。
 私は運命論者ではないつもりだ。だが この先ルイズは『運命』とやらに翻弄されるだろう。
 頼む・・・ルイズを、助けてやってくれ。」
「ルイズは 僕の部隊の一員です。いかなる運命が待ち構えていようと、既に一蓮托生ですよ。
 ですから これだけはお約束します。
『僕より先に ルイズは死なせません』。」
「判った。
 では、無理を承知で もう一つ我儘を言わせてもらう。
『君も 死ぬな!』 たぶんルイズも、そう願うだろうから。」
そこまで言って ヴァリエール公は歩き出した。
「公爵様、どちらへ?」
「いや、『娘を頼む』というなら、あの使い魔殿にも話を通しておくべきであろう。
 お〜い エレオノール。次の順番 私と替わってくれんかー!」
 
(余談)
この後 延々と『雪風試乗会』は続き、ガス欠となった雪風の為に、ワルドは 燃料タンクを抱えて学院まで往復するハメになった。 
 


終わりです。
「ライトスタッフ」をイメージして書きましたが、超音速の描写等 酷い間違いがありましたらご指摘願います。
なんとか 訂正したいと思います。(笑って許せる程度のものは ご勘弁を)

書きながら思いついた ボツネタ
「このSSのAIって、『雪風』というより『レイズナー』のレイっぽいな。」
で、
ルイズがレイズナーごとエイジを召喚
・「僕の名はエイジ、トリステインは狙われている!」
・前半のルイズは、アンナのポジション。
・ワルドはゲイル先輩? それともゴステロ?(ハーフゴーレム化、「脳ミソが痛ぇ〜」)
・グラドス→アルビオンで、浮いているのではなく、次元回廊の向こうに存在する。
・後半のルイズは、サハラの聖女(笑) 聖地→刻印発動でEND
注:書きません!

次回は 手紙回収ミッションになるハズです。
それと いつになるか判りませんが、インターミッション3は ワル平犯科帳の予定。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 13:16:37 ID:s741I3aG
ワルド「……君の血に濡れた手でルイズを抱く事は許されない」
ワルド「さらばだ、エイジ!」
エイジ「さようなら、ワルド先輩!」

ワルド「なんという、清らかで美しい光なんだ……お前が、命を駆けて守ろうとする……あれが虚無の力か……」


なんか綺麗過ぎるな
ゴステロならメンヌヴィルも結構いけるかもと思った
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 14:58:43 ID:UbvnUEjc
急に執筆意欲がムンムンと沸いてきたので、15:00から投下してみようと思います。
題名は「ゼロノ・トリガー」で、召喚されるのはクロノ・トリガーからクロノです。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:00:50 ID:UbvnUEjc
前略おふくろ様へ。自分は、今現在、遠く、見知らぬ地に居ます。
急に見知らぬ地に飛ばされるという大変珍しい経験も、それが2度・3度と繰り返されてくれば、意外と慣れてくる物のようです。
しかし、今回の場合、少し事情が違うように思います。・・・ここは一体、『何時の”時代”』なのでしょうか?
・・・それとも、もしかしたら、何時の時代でも、無いのかもしれません。

第一話「契約」

「あんた誰?」それが、この時代?に来てから聞いた、初めての言葉だった。
その言葉を発したのは、ルイズという名の、本名がやたらと長い、桃色ブロンドの髪の女の子だった。
なんでも、この女の子が自分の『ご主人様』なんだそうだ。

魔法王国ジールの海底神殿、魔神器の間で出現したラヴォスから仲間達を庇い、消滅させられそうになったと思いきや、目の前にはその女の子が居たのだ。
ラヴォスから放たれた光に包まれる瞬間、一瞬鏡のようなものが見えたような気もしたような・・・。
場所もラヴォスの異空間ではなく、草原のような場所に寝そべっていた。周りにはその女の子と似たような格好の少年少女たち。遠くには、城の様な物も見える。

で、問われた、「あんた誰?」と、目の前の女の子に。
問われたからには名乗り返すべきか?と、体を起こして、クロノだ、と、名乗っておいた。

「どこかの平民・・・にしては身なりはそれなりに整って・・・って、剣!?」

左手の辺りを眺めたあたりで、その女の子はそういって驚いて、仰け反った。
そういえば、ラヴォスに向かって行こうとした時に抜き身の刀を構えていた。
状況はよく分からないが、初対面の人間相手に凶器抱えているのはよくないだろう。そう思い、刀を鞘に閉まった。

「平民の剣士か!?」「そういえばあちこちに負傷が・・・」「どっかで戦ってたのか?」「いや、それよりあの剣、かなりの業物じゃ・・・」「・・・・・・」

周囲から声が上がる。なんというか、ざわめきだっているような感じだ。

「ミ、ミスタ・コルベール!」

女の子がそう怒鳴った。すると、人垣の中から、一人の男が現れた。
頭の禿げ上がった、メガネの中年男のようだ。その姿は・・・なんというか、黒いローブ姿が、御伽噺に出てくる魔法使いを彷彿とさせた。
で、その中年男が、女の子と揉めている。『使い魔』とか、『召喚』とか、『平民』とか、『契約』とか。そんな感じの単語がぼそぼそと聞こえた。
それと、気のせいだろうか『暴れる』とか『危険』とか『物騒』だとかいう単語もちらほらと。・・・え?こっちのことなの?

・・・で、相談は終わったようで、女の子がこっちに向かってきた。
そして、何か呪文のようなものを唱えたかと思うと、顔を合わせる様に、しゃがみ込んできた。
感謝しなさいよ、そう言うと女の子は、未だに戸惑いから醒めないこちらに向けて・・・唇を、重ねてきた。

・・・・・・えぇ?いや、意味分からないんだけど。
女の子も、恥じらいながら離れていって同年代くらいの別の女の子とモメてないで、説明してほし・い・・ん・・・だ・・・・け・・・・・ど・・・・・・
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:02:01 ID:UbvnUEjc
声にならない叫びを上げた、様な気がする。熱い、主に左手が、焼けるように熱い。思わず、立ち上がってしまう。
熱さが引き、熱かった左手を見ると・・・手の甲に、文字のようなものが刻まれていた。
・・・これが、さっき言ってたぼそぼそ言ってた『契約』なのか?自分の知らない魔法だろうか、
それとも、何時の間にかヤバイ呪いとかでも刻み込まれたんじゃなかろうか。
ぬぅっと、中年男が左手を覗き込んできた。「珍しいルーンだな」と言う。

これは、初対面とか言ってる場合じゃないんじゃないだろうか、力ずくで無力化するべきなんじゃなかろうか?
周囲を囲まれてはいるが、サンダガなりでも唱えて切り抜けるべきか・・・?
頭を抱えてそんなことを考えていると・・・周囲の人垣が、無くなっていた。
周りを見回してみると、固まって空を飛んで移動していた。
やはり、魔法使いの集団なのか?じゃあここは、魔法王国?いや、ジールでも見たことの無い格好だったが・・・

じゃあ別の時代の魔法王国なんだろうか、そんなことを考えていると・・・
「・・・あんた、なんなの?」契約とやらをしたらしい女の子が、こちらを覗き込んで、そう言ってきた。

だから、クロノだって。「いや、名前じゃなくて・・・」名前以外?えーと、人間?「バカじゃないの?そうじゃないわよ!」
初対面の相手をバカ呼ばわりとは、失礼な。親御さんが泣くぞ。いや、親御さんもコレに近いのか?

「アンタ、平民?剣士なの?」一応、剣士・・・かな?本業じゃないけどね。ヘイミンってのはよく分からないけど。
いや、それよりもこっちの質問に答えてほしいんだけど。「何よ?」ここは何処?君は誰?さっきは何をしたんだ?
「ここはトリステイン魔法学院で、私は二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。さっきのは使い魔の契約よ。」

なんだか、よくわからなかった。ここは魔法学院とかで、この女の子の名前がルイズ何とかで、さっきしたのが契約で・・・?
・・・魔法学院?魔法を教えてるのか?「当たり前でしょ。」ここは、魔法王国?「まぁ、そうね。」・・・魔法王国ジール?「何処?そんな国。」

「ここは!トリステイン王国のトリステイン魔法学院なの!わかった!?」はい、わかりました。

話をまとめると、ここはジールではない魔法王国でトリステインと言い、その魔法学院で、
自分は、そこの2年生のルイズと使い魔の契約をした、で、いいのか?

「そういうことよ。ていうか何処よ、ジールって。あと、ご主人様を呼び捨てにしない!アンタは私の使い魔で、私がアンタのご主人様なんだから!」
・・・あぁ、はい、分かりましたよ、ご主人様。
どうもこの娘はマールのように、人を強引に引っ張っていくタイプのようだ。苦手なんだよな、こういうの。
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:03:22 ID:UbvnUEjc
そんな感じで、女の子・・・「ルイズ」は、ご主人様となったらしい。
あの後、ルイズの部屋に向かい、色々と話を聞いた。召喚の儀式、サモン・サーヴァントと、コントラクト・サーヴァント。
そして、使い魔とやらをしなくてはならないことなど。主人の目となり、耳となる。秘薬などを探す。主人を守る。それらが、使い魔の役目らしい。

使い魔になることは、まあ、受け入れよう。偶然だろうが、一応命を助けられた恩もある。
それに、どこかに飛ばされた場合、与えられた役目をこなせば帰れるという前例もある。(攫われた王女を助ける、ロボットや恐竜人達と戦う等)

目となり、耳となる。というのは、どうやら無理らしい。プライバシーの侵害に値すると思うから、できなくて良かったと思う。

次に、秘薬などを集める。触媒とかになるのかは知らないけど、薬なら少し持ってるな。
そう思い、バッグからハイポーションを一本取り出して呷った。ラヴォスにやられた傷が残っていて、痛みが気になっていたのだ。
すぐに効果は表れ、傷がたちまち塞がる。と同時に、こっちを眺めていたルイz・・・ご主人様が掴み掛かってきた。

「あんた、そんな効果の高い水の秘薬なんて、何で持ってるのよ!?」と、詰め寄られた。
何でも何も、普通に買ったんだけど。「買ったって、そんなにお金持ってるの?」いや、そこまで高価なものじゃないんだけど。

「・・・その、あんたの言ってたジールとかって言う国には、そういうのが普通に売られてたの?」
ジールどころか、約6500万年前から、1300年後まで、ほぼあらゆる時代で売られてたんだけどな。ここじゃあ、回復薬ってそんなに高価なの?

「時代?・・・あんたの言ってることはよく分からないけど、少なくとも、平民が安易に買えるような物じゃあ、とてもないんだけど。」
ヘイミンって何?「魔法を使えない、貴族じゃない者のことよ」・・・ここでも、魔法を使えない者は差別されてるのか。
ちなみに、平民はどういう生活をしてるんだ?「どうって、普通に城下町とかで暮らしてるわよ」・・・そうなのか。

「ジールとかってとこじゃあ、どうだったのよ?」そう聞かれた。
魔法を使えるものが『光の民』と名乗って空中大陸の王国ジールで豊かな暮らして、
魔法を使えない者たちは『地の民』と呼ばれて、極寒の地上の洞窟の中に固まって、まるで囚人か奴隷のようだ。と、説明した。

「・・・なんか、ずいぶん酷い所みたいじゃない、あんたの居た国ってのは。」まぁ、そうだな。
「で、あんたは地の民の剣士だったわけ?」いや、別にジールの時代の住人とかじゃなくて、生まれはガルディア王国ってとこで・・・
「ガルディア王国ぅ?また聞いたことの無い国名が出てきたわね。」いや、そもそも同じ時代ですらなくてですね・・・

「・・・・・・なんか、ちょっぴりうそ臭くなってきたわね。」はぁ、そうですか?
「高価そうな秘薬を惜しげもなく使って見せたから、聞いたことも無い遠い国の剣士かと思えば、言ってることが支離滅裂だし。」

そりゃあまぁ、説明するのは色々と難しい話だな。
とりあえずラヴォスっていう怪物と戦って、殺されそうになったところを、気付いたら召喚されてた、って流れか。

「ラヴォス、ねぇ。聞いたこと無いけど。殺されそうになったの?あんた、強いの?主人を守ることなんてできるの?」
自分では、わりと強いと思うんだけどなあ。でも、未知の場所だから、どんな危険が存在しているのかも分からない。
「不安ねぇ・・・。まあいいわ。今日はもう晩いし、寝ちゃいましょうよ。あんたは、床にでも寝てなさい。」
床かぁ。まぁ、冒険してると(携帯用シェルターはあったけど)外で寝ることも多かったから、床でもまだありがたいな。

そう考えながら床を見ていると、パサリと、何かが飛んできた。反射的に掴む。女性用の下着だ。
・・・・・・女性用の下着だ。大事なことなので2回言った。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:04:14 ID:UbvnUEjc
ルイズの方に目を移す。ベッドの上に座っている。ネグリジェに着替えていた。
「それ、明日になったら洗っておいて。」そう言われた。・・・え?洗うの?
使い魔の仕事って、洗濯まで含まれてるのか?「含まれてるかいないかじゃなくて、出来ることを最大限するのよ。」そーですか。
ルイズが、指を弾いた。すると、部屋の明かりが消えた。かなり生活にまで魔法が密着してるのかな。

トンデモな出来事には大体慣れた気でいたが、召喚されてからこれまでで、大分精神的に消耗してしまった。
とりあえず、寝よう。一晩ぐっすり眠れば、体力も精神力も回復するだろう。話は、それからでもいいや。

窓から空を眺めると、月が二つ、これは、時代がどうとかいうものじゃないような・・・。
仲間達の下へ、戻れるだろうか。みんなは無事だろうか。
・・・早めに帰らないと、母さんに「猫の世話が大変だ」とかって愚痴られそうだなぁ。



投下終了です。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:16:45 ID:HIE3ULj5


うーん個人的には好きなタイプのSSだが、本スレよりも避難所投下の方が無難か?と思ってしまった
時の卵も絡ませる気か?(>帰還するにゃ)
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 15:44:10 ID:dGWXGkDV
読みにくい
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 16:12:24 ID:r5VhF7Wh
SSのタイトルがすぐわかるように名前に入れてくれ〜
「名無しさん」じゃなくて「ゼロノ・トリガー part1」てな感じ
156ゼロノ・トリガー:2009/12/30(水) 17:00:21 ID:UbvnUEjc
批評・感想どうもです。
>>153>>155
ありがとうございます、次回からはそうします。
>>154
ぜ、善処します
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:04:55 ID:D8stnsIC
セリフと他の文を分けたほうが読みやすいかな、めげないでがんばってくれ
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:15:21 ID:fHStXvKB
>>157
地の文は演出じゃないのか?
ほら、クロノって本編中台詞無いから「こういう意味合いの台詞を言ってますよ」で後は各々脳内変換とか。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:18:26 ID:VWtZD7b5
まぁ無口キャラを喋らすと、殆どオリキャラ同然になるからなあ。

どれとは言わんが。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:24:01 ID:Gw8nNsA9
>>156
投下乙です。
文章の体裁とかは直ぐに覚えられると思うんで頑張ってください。
個人的には「・・・(中点×3)」じゃなくて「……(三点リーダ×2)」を使ったほうが読みやすいかなと思いました。

それと、肝心の内容については大好きなクロノ・トリガー物ということもあって素直に楽しめました。
クロノは剣技だけじゃなくてサンダガとかの強力な魔法も使えますからその辺がルイズに知れた時の反応が楽しみです。
次回の更新を心待ちしています。
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:24:53 ID:D8stnsIC
あーしゃべんない主人公なのか、書くの難しそうだね
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:47:13 ID:bOYfYwrd
オリキャラ状態にして、自己投影したり好き勝手やりたいだけの人からしたら最高じゃないの?
163ゼロノ・トリガー:2009/12/30(水) 17:50:32 ID:UbvnUEjc
クロノには鍵括弧付きのセリフと一人称は喋らせないようにしています。
理由は>>158-159のほぼそのままです。
その分難しいかと思いますが、ルイズの内面書くよりは楽かなぁと。
三点リーダの件は、参考にさせて頂きます。
批評・感想、本当にありがとうございました。
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 17:52:29 ID:vI6vhluq
しゃべるエンディングが一つだけあるんだよな
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 18:24:50 ID:vAv61wVZ
ガイバー熱が再燃してきました
アプトムの人帰ってきてくださ−い!!
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 18:49:19 ID:bOYfYwrd
ageるような信者に言われても辟易するだけじゃない?
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 20:38:24 ID:7IGP8qXR
ソニック召喚
アニメでもゲームでも別世界に〜なんてシチュは経験済みだから馴染み易いんじゃないか
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 21:18:00 ID:+R3DffS3
ソニックセイバーか
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 21:18:37 ID:WWGk/APh
ソニック「私のアルターの名は!ラディカル・グッドスピード!!!」
170名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 21:46:34 ID:dGWXGkDV
ガイル?
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 22:01:30 ID:7MDyeCgT
ソニックキャットは女子プロレス
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 22:15:43 ID:EF9YlbD0
ソニックウイングスはSTG
173萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:25:36 ID:rWFEe+3j
お久しぶりです。
規制と入院回避で遅れましたが、進路クリアなら22:30頃から第15話を投下します。
174萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:30:51 ID:rWFEe+3j
それではいきます。


「……はあ……はあ……まずったわね。こりゃ……」
 トリステイン王国の空海の玄関口、港町ラ・ロシェールの裏通りで、一人の若い女が
苦痛に喘いでいた。そこは汚水と埃の臭いが立ちこめ、間違っても若い女がいるような
場所ではない。
 流れ落ちる紅い命の雫とともに薄れゆく意識の中、若い女――マチルダはどうして
こうなったのか考えていた。
「……は……袖にしないで片棒……担いでおけば……良かったのかねぇ……」
 先のトリステイン魔法学院への『土くれのフーケ』襲撃事件の褒賞としてもらった休暇
――彼女にしてみれば自作自演の結果なのだが――を使って義理の妹たちが待つ浮遊
大陸アルビオンへ行った帰りの道中、マチルダは港町ラ・ロシェールで白い仮面を
かぶったメイジの男に声をかけられた。

 夜中を走ることになってもこの町を離れておけば良かったのかもしれない。そうでなくとも
もう少し奮発した宿を取っていれば違ったのかもしれない――けれど、それらはすべて
過ぎたこと。こぼれたミルクはコップには戻らない。結果マチルダは白仮面のメイジと
出会ってしまった――


「……『土くれ』だな……?話が……ある」
 白仮面は平坦な声音でそう言った。マチルダが「人違いじゃありませんか?」と白を
切るものの、白仮面は意に介さない。
「ククク……お前からすべてを奪った王家に……復讐したくはないのか?マチルダ・オブ・
サウスゴータ」
 その言葉にマチルダは驚愕の表情を隠せなかった。そして往来での会話に危険を感じて
人気のない裏通りへと移動する。それが仇になるとはマチルダは思いもしなかった。
「あんた……何者?何故私の名前を?」
「我々は国の将来を憂い国境を越えてつながった貴族の連盟さ……どうだ?復讐したくは
ないのか?マチルダ・オブ・サウスゴータ……」
 マチルダの頬を一筋の薄ら寒いものが伝い落ちる。しかし、それを極力気取られないように
マチルダは言葉を紡ぐ。
「ふざけないでよ。あんた、王家に楯突く気?……まさか……」
 白仮面は笑う。しかし、その表情は一切分からない。
「――そう。革命さ。アルビオンの王家は近いうちに倒れる……
 ハルケギニアは我々の手で一つになり、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を、我らの
手に取り戻すのだ!」
 その言葉にマチルダは言葉を失い――そして不意に笑い出した。
「は!冗談はその奇妙な仮面だけにしておくんだね。私はそんな世迷いごとにつきあえるほど
暇じゃ……」
 マチルダの言葉は最後まで紡がれなかった。なぜなら……白仮面が目にもとまらぬ
速さで間合いを詰め、マチルダの胸を貫いたからだ。
「かはっ!な、何を……」
「……今はまだ機が熟していない……協力しないのであれば……死んでもらうだけだ」
 マチルダの胸を貫いたのは、不可視の鋭く固めた空気をまとわせた杖――『エア・ニードル』の
魔法がかかった杖だ。それがトライアングル・メイジであるマチルダの反撃すら許さず
彼女の胸を貫いていた。そして白仮面のメイジが杖を引き抜き、マチルダのロングビルとしての
仮面でもある伊達眼鏡が地面に落ちた音がしたとき……その姿が幻であったかのように
かき消えた。
 白仮面の姿が消えるとともに、薄汚れた地面に倒れ伏すマチルダ。そしてしばしの間を
置いて地面を紅く染めながらもようやく体を起こし、近くの樽に身を預けたのだった――


175萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:32:26 ID:rWFEe+3j
「……く……は……。でも、ま、死ぬ前にテファの顔を見られたからねぇ。それにあの娘……
チハ……だっけ?あの娘もいるなら……テファが……ずっと欲しがっていたからねぇ……
『オトモダチ』ってのは……」
 浮遊大陸アルビオンの隠れ里とも言えるウエストウッド村――そこにマチルダの義理の
妹と呼べる少女、テファニアと、内乱で家族を失った戦災孤児たちが暮らしている。
マチルダが若い女の身で危ない橋を渡り続けたのも、ひとえにテファニアと子供たちを
飢えさせないためだ。そんな小さな村に戻ったマチルダを待っていたのは、義妹たちだけでは
なかった。
 さんざん彷徨った末に転がり込んだらしいチハと名乗った少女――それは一言で
言い表せばおびえた小動物、といいたくなるような少女だった。その装いは東方風の
衣装の上から部分的な鎧を身につけたよう……ではあったものの、布部分があちこち
つぎはぎだらけのみすぼらしいもの。ただ、マチルダにはその格好に見覚えがあるような
気がしてはいた。なぜならそれは――ふがくの装いに似ていたから。
「……こんなことに……なるなら……チハに……ふがくのこと、話してやれば……はぁ……
良かったねぇ……」
 そう言ってマチルダは顔を上げる。すでに目はかすみ、そして港町ラ・ロシェールの
裏通りからは空は見えない。アルビオンへ向かうフネも、桟橋はずっと遠く――喉の奥から
こみ上げる熱いものをどうすることもできず、マチルダがそのまま意識を手放さそうとしたとき……
それを邪魔する声が響いた。

「……あーーーーーっ!姉(あね)さんどないしたんやー?えらいケガしとるやんー!大変やー!」

 それは聞き覚えのない訛りの少女の声。そして自分に近づいてくるキュラキュラキュラ
……という鉄帯で床を叩くような音は、先日聞いたばかりの音にそっくり。マチルダが
ゆっくりと顔を動かすと……
「……あかん。あかんって。今動いたらあかん。待っとき。そんなケガ、今すぐ治したるからな!」
 焦ったように言って少女は左手を掲げる。その手には何かが握られているようだったが、
マチルダにはもうそれを確認できるだけの力は残っていなかった。

「ここは愛のパスタ伝道師の出番や!みんなを元気にするんや。アモーレ!アモーレ!」

 少女の言葉に呼応するかのように、手にしたものから緑色の輝きがあふれ出して
マチルダを包み込む――すると、失血死寸前で致命傷だった胸の傷が跡形もなく
消え去ってしまった。

「治ったからって、あんまり無理したらあかん」
 そう言って少女はマチルダに満面の笑顔を向ける。一方、マチルダは自分の身に
起こったことを理解しようとして言葉を失っていた。ぱくぱくと陸揚げされた魚のように
口をしばらく動かして、ようやく言葉を紡ぎ出す。
「……せ、せ、先住魔法?」
「えー?なんやー?うちの『アモーレ!アモーレ!』は、そんな聞いたこともない『魔法』
なんかやないでー?」
 マチルダの言葉に小首をかしげて頭に『?』をいくつも浮かべたような表情をする少女。
よく見ると、少女の姿は猫の耳のようなデザインのピンク色の帽子をかぶった太ももまで
届くストレートのピンクブロンドの可愛らしいもの。格好もおへそが見えるポケットがいくつも
ついたカーキ色の服と同色のホットパンツ、それに赤白緑のトリコロールカラーのマフラーと
ニーソックスに膝まで覆うカーキ色の角張った脚甲を身につけ、顔には絶対合わないような
見慣れない大きな眼鏡が前髪の上まで上げてあり、右手には見たこともない銃身の短い
連装銃、左手にはフォーク――いや、さっき魔法を使うときに掲げていたからこれが彼女の
杖なのだろう――を持っている。さっきの魔法から『水』のメイジなのだろうか、ともマチルダは
思ったが、致命傷から一気に傷跡も残さず全快させるようなとんでもない治癒魔法なんて
聞いたこともなかった。
176萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:33:27 ID:rWFEe+3j
「でも、間に合って良かったわー。うちがレンティッキア探しにこーへんかったら姉さん
そのまま死んでたでー?」
 そう言って少女はにこやかに笑う。このゆるーい雰囲気はマチルダにとって心地よいもの。
そのため、マチルダはそれまで鉄則のように守り続けていた『警戒心』すら解いてしまっていた。
「そうね。本当にありがとう。貴女、お名前は?」
「んー?うちはイタリアの鋼の乙女、軽戦車L-3のベローチェや。よろしゅーなー。
 ところで姉さん、ここらでうちみたいな格好した猫見ーひんかった?」
 それを聞いてマチルダは得心する。道理で歩くときにチハみたいな音がするわけだ、と。
同じ鋼の乙女でもふがくが空戦型ならチハとベローチェは陸戦型なのだろう。しかし……
「……どうも二人とも強いって感じはしないのよねぇ……」
「んー?何か言うたー?」
「……何でもないわ。助けてくれて本当にありがとう、ベローチェ。私の名前はマチルダ。
残念だけどレンティッキア、だったかしら?とにかく猫は見なかったわ……って、何?」
 何故このとき『ロングビル』ではなく『マチルダ』と名乗ってしまったのか、後になって
考えても分からない。けれど、そう名乗った後のベローチェは心底驚いた顔をしていた。
「ほえー。うちはつくづく『マチルダ』って名前の姉さんに縁があるんやなー。
 うちの知ってるマチルダの姉さんはなー、ほんまに強ーて美人やけど、ものごっつ怖いねん。
けどなー、それ以上に優しいお人やねんでー。うちの作ったパスタ、おいしそうに食べてくれるしー」
 そう言ってベローチェはころころと笑う。自然にマチルダの顔もほころび……ふと視線を
下に移すと、そこにはベローチェと同じカーキ色の服を着た猫が、ベローチェのマフラーと
同じトリコロールの旗を持って立っていた。
「……ね、猫?」
「あーーーーっ。レンティッ……」
 盛大な舌をかんだ音が聞こえた。さっきは言えていたのが嘘のように、ベローチェが
口を押さえてうずくまる。
「あうぅ。さっきは言えたと思たのにー」
 ベローチェが恨めしそうな顔をする。その様子にマチルダが再びくすりと笑った。


 ――一方その頃、トリステイン魔法学院では――

「……はぁっ!」
 緩降下からの気合い一閃。デルフリンガーを抜刀したふがくが、菱形の盾を構え以前と
異なり直線的な構成の鎧に身を包んだ『ワルキューレ』を一刀両断にする。勢いも
そのままに再び高度を取るふがく。その様子にギーシュが嘆息する。
「……こうも簡単に一刀両断にされるようじゃ、ぼくもまだまだだなぁ……」
「何言ってるのよ。前に比べたらかなり進歩したわよ。3回に1回は盾で受け流すじゃない」
 そうギーシュを慰めるのはモンモランシー。
「最初は盾を構える暇もなく斬り飛ばされていた。次は今のように盾ごと。材質を考えると
それだけでもすごい」
 タバサも同じくギーシュをフォローする。
「そうね。『ヒダンケイシ』だっけ?装甲を傾けると攻撃を受け流しやすくなるってアレ。
ふがくにそれを聞いてから貴方の『ワルキューレ』もずいぶん進歩してるわよ……防御に
関しては、ね」
177萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:34:41 ID:rWFEe+3j
 キュルケも二人と同意見。実際、ふがくにデルフリンガーの試し切りを依頼されてからと
いうもの、ギーシュの『ワルキューレ』は格段の進歩を遂げていた。
「……あれでもうちょっとデルフの見栄えが良ければわたしも文句はないんだけど……」
 ただ一人、ルイズだけが溜息を漏らす。ルイズにとっては『ワルキューレ』の進歩よりも
自分の使い魔が錆びた魔剣を使っていることの方が気がかりだったのだ……

 もとよりギーシュもただの試し切りの麦藁束代わりになるつもりなどなかった。剣ならば
間合いも上等。ならば隙あらば一撃――先の決闘の雪辱を果たすべくその申し出を受けた
ものの、結局はほぼなすすべなく一刀両断の憂き目にあう。一方のふがくも銃撃や爆撃とは
異なる重心移動を試しながらなので、ほぼ姉のレイのまねごとのような機動はどことなく
ぎこちない。
「さすがにレイの『絶刀 主翼斬』のようにはいかないか……」
「……いや、俺はさすがに軌跡に花びら飛ばしたりはできねーし」
 ふがくのつぶやきに冷静に突っ込むデルフリンガー。相変わらず錆びた刀身は、傍目には
何を考えているのかうかがい知ることはできない。
「しっかし、あの坊主もやるねぇ。あんまりな有様に見かねた相棒からちょっとヒントもらったら
3日でこうだ。
 相棒、さすがに斬撃弾かれたときには焦ってただろ?」
「ちょっとは、ね。元帥の末っ子って言うだけはあるわ。やっぱり蛙の子は蛙ね」
 ふがくは地上に聞こえないように答える。下手に妙な自信をつけさせたら元も子もない、
というのがその理由だ。それでも被弾経始など概念すらないこのハルケギニアで、
その概略だけ教わって3日で実装してきたギーシュの応用力と努力にはふがくも脱帽もの
だった。
 これで効率的な生成方法と確実な運用まで確立できたらギーシュの『ワルキューレ』の
防御力はそれこそ上位のメイジをもしのぐものになるだろう。それは間違いなく彼の発想と
努力の賜だ。
「とはいえ。対地はギーシュで訓練できるけど、本音は対空の方がやりたいのよね……」
 対艦訓練は最初から諦めているふがくがそう言って視線をタバサに移す。
しかしアイコンタクトで『無理』と返す様子にふがくが軽く溜息を漏らした――


 ――同時刻――

 朝露輝く街道を豪奢な装飾が施された四頭立ての藤色の馬車が多くの護衛に守られて行く。
陸だけではなく、上空にも魔獣グリフォンに騎乗した魔法衛士隊が何人たりとも通さぬ
守りを固めている。馬車に掲げられた百合を象った紋章は、トリステイン王国のもの。
それに並ぶ聖獣ユニコーンと水晶の杖を象った紋章は、この馬車にトリステイン王国の
王女アンリエッタが御座していることを示していた。
「ここは静かなのね。小鳥のさえずりが聞こえてくるわ」
「自然豊かな山の中ですゆえ」
 カーテンを上げた窓から、まだうら若い少女の声が聞こえる。それをたしなめる男の声は、
まだ平静を保っている。
「まぁ!美しい花がたくさん咲いていますわよ!
 川の水もとっても綺麗だわ!」
「姫殿下!」
 窓越しの絶景に思わず身を乗り出す少女。それを男が強くたしなめた。
「カーテンを下ろし、奥へお座りください。
 身を乗り出すことなど王女のすることではありませぬ!」
 法衣を身につけ、帽子をかぶった老年に見える男――トリステイン王国宰相、枢機卿
マザリーニ――が、純白のドレスに身を包み大きな青い宝石で飾られた銀のティアラを
身につけた少女――王女アンリエッタ・ド・トリステインその人――を強くたしなめた。
マザリーニの口調にアンリエッタは小さく溜息をつく。
178萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:35:33 ID:rWFEe+3j
「いいじゃないの少しくらい……ゲルマニアではおとなしくしていたのですから」
 アンリエッタが小声で愚痴る。その様子は臣民から『トリステインの可憐な花』と呼ばれる
王族としての威厳と美しさを兼ね備えた姫ではなく、17歳という年頃の少女そのもの。
しかし、それはマザリーニの耳にしっかりと捉えられていた。
「いいえ!
 姫殿下には常に『政治と国』を頭に入れておいていただきたい!そもそも……」
「もうやめて!やめてちょうだい!」
 マザリーニの諫言をアンリエッタはきっぱりと拒絶する。そしてマザリーニが沈黙したのを
見計らって、アンリエッタは窓から外に目を向けたまま言葉を紡ぐ。
「……そのお話はもうしないで欲しいわ!
 ところで枢機卿。魔法学院はまだ遠いのですか?」
「先ほどワルド子爵麾下の衛士を1騎先行させました。到着は前方に見える橋を渡った
先ですので、今しばらく……」
「ワルド子爵といえば、確か『閃光』の二つ名を持つメイジでしたわね。アニエスから聞いた
ことがあります」
 アンリエッタが腹心の銃士隊隊長の名とともに、自分の空の守りを担っているメイジの
ことを思い出す。アニエス――アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランは、平民の身でありながら
5年前のアンリエッタに見出されてシュヴァリエの称号とともに彼女が設立したトリステイン
銃士隊の隊長に封じられた女性。『メイジ殺し』として知られるほどの剣と銃の名手でもある。
 今回アニエスがそばにいないことをアンリエッタは不満に思っていたが、平民上がりの
銃士を今回の大事には同行させられないとしたマザリーニの強い意見に封じられていた
のである。それが故に、予定に入っていなかったトリステイン魔法学院行幸は、アンリエッタの
ささやかな意趣返しでもあった。
「はい。王国の剣たりえる忠臣であり、若くしてグリフォン隊の隊長となった逸材にて」
 マザリーニは自身が信頼する男をアンリエッタにそう紹介する。それはやもすればメイジ、
言い換えれば貴族出身者以外の部下を持ちたがるアンリエッタを掣肘する意味合いも
含んでいたのだが……アンリエッタはそれを意に介さなかった。意図的かどうかは
とにかくとして。

「――ああ、待ち遠しいわ。今日は……『懐かしき心の友』に会えるのですから!
 わたくしのおともだち、ルイズ・フランソワーズ!」
179萌え萌えゼロ大戦(略) ◆E4H.3ljCaE :2009/12/30(水) 22:38:36 ID:rWFEe+3j
以上です。何とか予定のコミック換算2巻分まで書けました。

なお、アンリエッタとアニエスのイメージはエミーリア姫とイリーナの関係のようなイメージで
書いていたりして...あっちは姫と騎士団長の娘ですが。

入院するまでにアルビオン編終わらせられるように新年からまたがんばります。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 04:36:18 ID:h2z52hZ6
高高度からの投下乙
でもルーデルじゃあるまいし、入院回避はほどほどにw

それではよいお年を。
181ゼロの戦闘妖精:2009/12/31(木) 06:58:51 ID:QwWWeR1L
『萌えゼロ』さん キタァー!待ってました!!
当方、同じ?航空兵力召喚SSの書き手として (一方的に)ライバル視してますので。
入院されるのは心配ですが、なに 現代医学も捨てたもんじゃありません。
私も五年前 ヤブ医者に「余命半年」と言われたのに、他のイイ先生に助けられ こうして生きてますから。
手術痕でも見せない限り、○○だったなんて 誰も信じてくれないぐらいです。

ということで、『完治祈願』っと。
よいお年を。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 16:51:06 ID:RIYvADpv
年末なのにやたら書き込みがないが、また大規模規制か?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 17:06:30 ID:5Vb/2SIh
規制中っていうか帰省中でネット環境がないんじゃね?なんつって
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 17:17:06 ID:r7NSrJDj
ドコモとAUが丸ごと前鯖規制中
だけどそれだけでここまで勢いが落ちるもんかな
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 17:18:33 ID:RIYvADpv
そーだなあ
ところで正月といえば除夜の鐘だが、ゼロ魔の連中はどいつもこいつも煩悩多すぎてとても108じゃ足りんな
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 19:02:42 ID:CW7v/mPI
あれは数じゃなくて種類、つまり108種類の煩悩に対応してるんじゃなかったっけ?
まあ煩悩の種類分けって宗派やらでまちまちで、多いとこは6万越えるとかいうから、細かいこと気にせんでもいいか。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 19:35:32 ID:WfzMBZco
あと、コミケ3日目が終了してくたびれてるんじゃねーの
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 21:10:20 ID:3tpROZnW
なーに、明日になれば作品の一つでも来るさ
189名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 00:30:55 ID:VjplU4Di
あけおめ!
190名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 01:00:44 ID:xAlHfT0P
ことぜろ!
191名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 08:11:39 ID:hFoSm1b5
開けましておめでとうございます!
今年も良いことがありますように!




ルイズの胸は無いだろうけど。
192名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 08:17:29 ID:EjAm3vuX
あけましておめでとうございます
今年こそは続きを投下……できたらいいな
193名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 09:42:45 ID:3aJnmDzp
今月中に最新話を投下できるかなぁ
194名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 10:39:37 ID:9JO5DoXv
今日中には第一話を投下できるように頑張りたい。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 10:40:59 ID:9JO5DoXv
今日じゃねぇ
今年だた
196 【大吉】 【276円】 :2010/01/01(金) 11:27:41 ID:Sg1zq+v4
あけおめ、大吉なら続き読みたい作品が復活
197 【大吉】 :2010/01/01(金) 11:54:55 ID:+VdBx0n/
あけおめ
今年は良作がもりもり投下されますように
198名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 13:59:57 ID:J9eshTGJ
光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士の召喚はまだっすか?
199名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 14:06:45 ID:k4RIhDhS
>>198
あれは無理だと思う…
200名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 14:58:13 ID:X76UUCtk
>>198
在庫ニングさんのことですか?
201名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 15:05:10 ID:hKszBVER
音速の騎士から高速の聖騎士になって伝説にまでなった彼ですか?
202名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 15:19:49 ID:RdTNZRO6
FF13か・・・一応ネタを考えたけど
新年早々こんな欝ネタを書き出すのは躊躇われたので
暫くは見送らせてもらうよ

そして誰かあのエッグモンスターを召喚してくれるかと思ったが
そんなことは無かったわだぜ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 15:33:40 ID:s2c+kmX3
>>201
IIの頃のいろいろ吹っ切った後の大人になりかけでハンドガンとか持ってるバージョンから、
CDドラマでパフリシアの王になるまでの間に光速の聖騎士と呼ばれるようになるんだよな。
全く語られていない部分だからほぼオリキャラになるな。
204名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 15:42:41 ID:hKszBVER
>>203
漫画版の最後のほうで呼ばれてなかったっけ?
205名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 16:00:54 ID:kMp9c6aE
>>204
これまでの話がそう呼ばれる様になる物語の序章、って言ってたたな。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 17:53:22 ID:s2c+kmX3
>>204
「後に光速の聖騎士と呼ばれた騎士の最初の冒険の物語である」だったかな?
語られた時点では本人の名乗り通りの音速の騎士。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 19:26:11 ID:lDY34YZN
最終回直後のメタルダーとスプリンガー召喚
208名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 20:27:03 ID:Q8UVWF+j
スプリンガルド、バネ足ジャック伝説
inハルケギニア
209ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 20:51:16 ID:ALO/aI1v
すごい、お久しぶりです。
ゼロの騎士団、投下させていただきます。
21時00分を予定しています。
久しぶりなので 不備があるかもしれません。
よろしくお願いします。
210ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:00:31 ID:ALO/aI1v
ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 9 「到着と再会」

「……ここは?」
かき消えそうな声と共に、ニューは目を開ける。
(どうなっているのだ? ……私は確か、ソーラ・レイ撃った後、意識を失って倒れた筈だ)
自分が目を開ける事があけたことへの事実と共に、意識が途切れる前の事を考える。
少なくとも、ニューが気絶する寸前の視界に、真駆参がマチルダを連れていく所が映っている気がした。
おそらく、二人は退避したのだろう。
その後、こうやって起きていると言う事。真駆参達は撤退して、ニューに止めを刺さなかったのだろう。
(恐らく、あの時の一撃で撃退できたのだろう。しかし、倒れるとは……あの時と同じだ)
視界は天井の白い壁に塞がれている、と言う事は屋内だと言う事は起動し始めた頭でも理解できた。
しかし、体の方は自分のすべき命令を理解出来なかったようだ。
「いっ!」
激痛に声を漏らす。
腹に力を込めて起き上がろうとするが、筋肉を引きちぎるような感触に襲われる。
「この程度で済んだと考えるべきなのか?」
体のストライキを理由にニューは納得するが、そのままと言う訳にも行かなかった。
本当なら背中に当たる柔らかなベッドの感触を感じていたかったが、優先すべき事を体に命令する。
視線を地面と平行にし、ゆっくりと状況を確認すべく身を起し辺りを見回す。
そこで、隣に複数のベッドがあるのを確認する。
医務室なのだろうか? そう思い、ベッドに居る人物を見て、ニューは言葉を失う。

ニューの絶句した理由を理解できるのが、この場に居るとすればそれは一人の少女であった。
ルイズもまた、ニューと同じ場所に居て、ニューと同じ様に絶句する。
彼女の視界には起きたばかりのニューが居た。

そして、その隣には、まだ寝ているニューが居た。

(どういう事、ちょっとニュー! これ一体どういう事よ)
とりあえず、訳が分からなくなり、ニューに声をかけるがその声に反応している様子は無い。
起きた方のニューに近寄り詰め寄ろうとするが、ルイズはそこで足を止める。
(何故、私はこれを見ているんだ……)
ニューの声が脳内に聞こえ、その声には驚きが含まれている。
ベッドの上のニューはそんな二人に気づかずに、未だに寝ている。
(これは! 私が初めてギガ・ソーラを撃った時の事じゃないか)
ニューが何かを思い出したようだ。
(え!)
はっと顔を見上げて、ルイズは黙ってニューの方を見る。
ルイズはその言葉を瞬時に理解する。ここ最近、夢の中で彼女はニューの事をよく見ていた。
自身の剣の才能がない事を知り嫌々ながら家を出た事。
ゼータに剣で負けた事。
魔法を習っている事。
そして、敵に囲まれた際にギガ・ソーラを使い倒れた事。
(この間の夢の続きなの? あ、目を覚ました)
気付いて目を向けると、未だ寝ていたニューの方も目を覚ました。
目を開けた後、もう一人のニューもまた、身を起して部屋を見回す。
(無事だったんだ)
過去の出来事とは言え、ニューが倒れた所を見ていただけに、彼が無事である事に安堵する。
そして、もう一人のニューが部屋の内装から自分達の居城、
アルガス城に居るとこに気がついた所で、部屋に入る者が居た。
その顔をルイズは覚えていた、ニュー達の団長であるアレックスである。
211ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:01:56 ID:ALO/aI1v
アレックスはニューが起きている事に気付くなり、嬉しそうに彼のベットに近づいた。
「ニュー、気がついたのか……良かった、三日間眠り続けていたから心配したぞ」
(あれから三日も眠っていたの!)
ルイズもその言葉を聞いて驚く。
確かにすごい魔法であったが、あの時三人で魔法を使ったのに、それでも三日も眠るとはルイズも思わなかった。
その言葉を聞いて、ニューは倒れる前の事を思い出したらしい。
「アレックス殿、ムンゾ帝国の敵はどうなりました!? それに、タンク殿やメタスは!?」
彼にとっては先程までの状況をアレックスに確認する。
自分達は確実に危機にあった。
そして、魔法を撃った後、敵はどうしたのか?自分と同じ様に魔法を使ったタンクやメタスはどうなったのか?
「少しは落ち着け、魔法により敵は全滅した。
そして、タンク殿とメタスはあの後、お前同様に倒れたが、次の日には目を覚ましたよ」
アレックスは落ち着いた声で、ニューの疑問に答える。
ニューとしては結末を見ていなかっただけに、それは彼等にとっては最も望ましい結果であった。
(そう、敵は全滅していた、そして、次にアレックス殿が言った言葉は今でも覚えている)
二人のやり取りを見ながら、自身の過去をトレスして、もう一人のニューが呟きを漏らす。
ルイズもニューの言葉が気になったのか、二人に視線を戻す。
ちょうど、アレックスがニューに対して何かを話そうとしている所であった。
「今回全滅を免れたのは君のおかげだ、ありがとう」
「いえ、そんな事無いですよ、無我夢中でやっただけです」
直前まで自分に出来る訳ないと思っていただけに、アレックスの言葉に対して、ニューは謙遜する。
アレックスはそれを聞いてから、考えていた事を伝える。

「ニュー、私は君を騎馬隊から外し、法術隊へ行ってもらいたいと考えている」

良く通る声でその言葉は部屋に響いた。
ルイズは驚いていなかった、それは、今のニューを知っているからだった。
しかし、目の前のニューは明らかに驚いていた。
「法術隊は常に慢性的な人手不足であり、
その事で悩んでいた、それを補強する意味でも君には法術隊に入ってもらいたいのだ」
「そんな、無理です! あの時は偶然上手く行っただけです!」
ニューはいきなりの転属を切り出され戸惑っていた。
(もし、法術士になったら、本当に騎士の道を閉ざす事になる)
ニューはこの時既に、転属の意味に気付いたのだろうか、ルイズはそんな事を考える。
しかし、アレックスはそれを聞いても言葉が足りなかったのだろう。
「今は偶然かも知れない。
しかし、修行を積めば君は僧侶、いや、法術士にもなれるかもしれないのだ……頼む!」
団長が下の物に対して、頭を下げるなど普通は考えられない。
しかし、アレックスはニューに対して頭を下げていた。
それを見て、口を数秒あけた後、ニューは口を開いた。
「……少し考えさせて下さい、整理がつかないのです」
絶対の拒絶は出来なかった。
「すまない、まだ起きたばかりだったな、ゆっくり考えてくれ」
もう少し何か言いたそうであったが、アレックスもそれを聞いて、何か考え込んだ後、部屋を出る事にする。
アレックスが出ていくのを見届けた後、無言で俯いているニューを二人は見る。
そして、部屋の沈黙を破るように声が流れ始めた。
(あの時、ルイズには騎士の道を閉ざす事になると言った
……だが、法術士になる事を躊躇ったのはもう一つ理由があった)
それを聞いて、ルイズは目をもう一人のニューに移す。彼女に気がつかないまま、ニューは独白を続ける。
(……私は恐ろしくなったのだ。ギガ・ソーラを使った事が、一瞬でたくさんの命を奪った事実が)
212名無しさん@支援いっぱい:2010/01/01(金) 21:03:23 ID:7Tf78KiM
 
213ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:03:42 ID:ALO/aI1v
「ルイズ、大丈夫かい?」
その声をかけたのはニューではなく、帽子をかぶった髭の男であった。

「……ワルド?」
無意識と意識の狭間で、ルイズはその男の名前を呼ぶ。
それは当たっていたらしい、ワルドは安心した顔をする。
「ここは?」
ニューのソーラ・レイを見た後、船に乗った安心感と泣きつかれた疲労感から、
大した時間を経たず、ルイズは部屋で寝た気がした。
状況が分からず、先程とニューと同じような感覚で、辺りを見回す。
気のせいか自分と居た部屋と違うような気がした。
その事を言おうとして、ワルドを見ると、彼は申し訳なさそうな顔をしていた。
「ルイズ、不味い事になった……この船は空賊に占拠された」
少し間を置きながらの発言は、それに見合うものがある。
しばらく起きたばかりで事情がつかめなかったが、ルイズは驚きの言葉を探す。
「え!どういう事!?」
突飛でも無い言葉に対する模範的な反応にワルドは一息ついてから、語り出す。
「君が寝てから、深夜に空賊に襲われた、暗闇で気付かずに接近されたらしい。
どうやら積荷を狙われた様だ、僕達は奴らのアジトに連れていかれる」
そう言ったワルドの顔には疲労の色があった。 
自分が寝ている間、警戒を怠らなかったのか? ルイズはそのような事を考えていた。
「どうするの、私達は姫様の命を果たさなければならないのに」
(せっかく、ニューが足止めしたって言うのに)
ニューの行いが無駄に成るのでは無いか? そう思うと、ルイズは無意識に胸が詰まる。
それを見て、ワルドが諭すように、説明する。
「落ち着くんだルイズ。ここは船の上だ、どの道逃げ場はない。
奴らのアジトに着いたら隙を見て逃げ出す、いいね?」
まだ、アルビオンは見えていない。
その状況で小舟を奪うよりは、アジトに着いた空賊達が安心した瞬間を狙い脱出する。
ワルドはそう考えていた時、扉が開くのを感じる。
中から、髭面のいかにも空賊の様な男が現れる。
近付いただけで、嫌悪を満たす体臭がルイズに非常事態を教えていた。
「来てもらおう、お頭がお呼びだ」
親指で部屋から出る事を促す。
ルイズはワルドの顔を見るが、ワルドは抵抗するのは無理と言う表情を浮かべていた。
(ニュー、どこにいるの……)
自身の状況の悪さを感じながらも、心はどこかにいる自身の使い魔の事を考えながら、部屋を後にした。

214ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:05:21 ID:ALO/aI1v
杖を取り上げられたルイズとワルドは男に連れられて、部屋の中まで来ていた。
男はその容姿からは似合わないノックをしながら、部屋の中に確認する。
「お頭、例の貴族を連れてきました」
「おう」
短い言葉だが、ルイズには声は若い男に感じられた。
そして、その印象は当たった。
部屋の中には机を隔て、一人の男が居た。
賊達の様な簡易な服装とは違うどこか大将を思わせるような格好であった。
顔は髭で覆われていて詳しくはわかりにくいが、それでも目元などからワルドよりも若く思えた。
(……あんまり怖そうじゃないわね)
そんな事をルイズは考える。何となく汚らしい大男か眼つきの鋭い老人等を予想していただけに、
目の前の男はそう言った威厳を感じなかった。
「アンタ達かい、あの船に乗っていた貴族様は?」
男の声は、やはり最初聞いた印象を覆す事は無かった。
ルイズは考える、自分達はどうなるのだろうか? 
船に乗っていた中で連れてこられたのは感じられる限りでは自分達だけの様だ、
二人は高価な物はあまり持ち合わせていない。
唯一、アンリエッタから渡された指輪だけだ。
自分を慰み物、あるいは人買いに売るのだろうか? 
しかし、少数とはいえあの船には若い女は居たが、それを連れてきた形跡は感じられない。
一番考えられるのはレコン・キスタだろうか? 最低限の情報を与え、ルイズ達を捕獲しレコン・キスタに売る。
ルイズがいろいろ考えていると、ワルドが頭の相手をするように一歩前に出る。
「お前達は何が望みだ?」
「俺達に力を貸してほしいのさ、
今ここら辺は貴族派が睨みを利かせているから、最近厳しくてな腕の立つやつが欲しいのさ」
男は半笑いを浮かべながら、こちらを見ている。
話から察するにレコン・キスタや貴族派とは関係ないようだ。
「そっちの嬢ちゃんはともかく、アンタの方は腕が立ちそうだしな、
軍人さんか何かだろ?嬢ちゃんは変装までして、ここに何の用だい?」
ワルドの杖を弄びながら、男はワルドを見る。
恐らく自分達がアルビオンに何かしら用があって来た貴族と思ったのだろう。
ルイズの格好は平民であるが、杖を持っていたし、
ワルドの格好は平民にはとても見えない。これでは変装した意味がなかった。
「断る。お前達に協力する理由はない」
「そうだよな、けど、アンタが協力する理由は充分だぜ、そのお嬢ちゃんを保護しているんだからな」
男は保護の部分を強調する。
その言葉を聞いて、話の筋がルイズにも掴めて来た。
戦力が欲しいなら、ワルドだけを連れてくれば良い。
しかし、当然のことながらワルドは首を縦に振らないだろう。
ならば、理由を作ればよい、簡単に理由を作れる物がある。
ルイズである。
彼女を押さえておけば、ワルドは簡単には断れない。
そして、ルイズ達の目的を果たす上で、
ルイズが持っている水のルビーは、どうしても、持っていなければならない。
そんな事も知らずに、男は答えが解っているかのように嬉しそうにワルドの言葉を待っていた。
しかし、ワルドの言葉を待たない者がいた。
215ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:06:51 ID:ALO/aI1v
「ふざけんじゃないわよ! なんで、あんた達みたいな賊何かに手を貸さなくちゃいけないのよ! 
私達にはやる事があるのよ!」
(そうじゃなきゃ、ニューは何の為に、あそこに残ったのよ!)
ルイズは少し涙を浮かべながら机を叩きつけて叫ぶ。
それは、賊に対してと言うよりも、彼女の使い魔が、
命がけで任務を果たした事に対する、運命の報酬の非情さであった。
ルイズがいきなり叫びだした為に、男は少し唖然としていた。
それに構わず、ルイズは続ける。
「だから、アンタ達何かに手を貸すのは嫌! ついでに、私は何としてでも目的を果たす!」
(こいつ等に力を貸すのは嫌、けど、ニューや姫様の為にもなんとしても、任務はやり遂げる)
「ははは、ずいぶん都合のいい事を言うお嬢ちゃんだ」
支離滅裂とも取られ兼ねないルイズの言動を聞いて、男は笑いだした。
最初こそ笑い出したが、言葉の最後の方はその笑いが無くなっていた。
「けど、そう言う事を言うのは嫌いでは無い」
男はそう言いながら、髭に手を掛ける。少し力を入れると、男の髭は簡単に取れてしまった。
髭のとれた顔は、年頃の端正な男の顔であった。
「ようこそ本物の貴族の方、私はアルビオンのウェールズ・テューダー。この空賊の首領を務めている者だ。
なるほど、確かに君達の言う通りの人物だったな」
それはルイズがもっとも合いたい人物の名前であった。
挨拶をしながらも、なぜかウェールズがドア越しに声を掛ける。

入ってくる人物はルイズにとっては予想外の人物であった。

「なんでアンタがここに居るのよ!」
婚約者と礼を尽くさねばならない人物がいるにもかかわらず、ルイズは驚きを持って、その人物を指差した。
「よお、ルイズ久しぶりじゃねぇか」
人――本来その表現が正しいのかは別として、
目の前には自分の嫌いな人物の使い魔が先程の緊張感のかけらも無い声で部屋に入って来た。
「よお、じゃないわよ! ダブルゼータ、なんでアンタが乗っているのよ!? アンタがいるって事は」
「はーい、久しぶりね、ルイズ」
扉が開き、目の前に自分が最も会いたくない人物が現れる。
そこには、女海賊とでも形容されるような格好のキュルケが居た。

状況に対して、説明がつかなかった。
キュルケ達が旅行でアルビオンに居る事は知っていたが、
少なくともルイズの前に現れるとは思ってもみなかった。
そもそも、既に帰っていると思っていた。
それだけに、目の前のダブルゼータを見ても再会の喜びよりも、理解不能の文字が脳を支配する。
「彼女達には私の部下を助けてもらってね。そのついでに、傭兵として協力してもらっているのさ」
ルイズの疑問に、ウェールズが答える。
ルイズの行動は、納得というよりも怒りを表していた。
「アンタ達、何をやっているか解っているの!? これは戦争なのよ!」
「分かっているわよ、あなたこそなんでこんな所に居るのよ? しかも、そんな立派な殿方と一緒に」
久方ぶりの会話。
学院で繰り返される会話。
しかし、お互いが得たい情報が多すぎて、やり取りする情報を間違えている。
それに気が付いた、部外者2名は苦笑いを浮かべていた。
216ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:08:47 ID:ALO/aI1v
「ところで、なんで此処に居るんだ。 それとニューはどうした?」
ルイズとダブルゼータの会話がやっと噛み合いだした所で、ダブルゼータが思った事を口にする。
自分とキュルケならともかく、ルイズの元にニューが居ない事に気付いて疑問を口にする。
それを聞いた途端、それまでの強気な顔が崩れる。
「おいおい、どうしたんだよ急に、何か悪い事聞いたか、喧嘩でもしたのか? アイツは口が悪いからな」
「そうよ、ニューがあなたの事を桃色攻撃色小娘とか、
寸胴空洞無反動ナイムネ砲とか言うのは珍しい事無いじゃない」
2人の言葉は的を射抜く気が無い射手であった。
軽い気持ちで聞いただけに、ルイズの顔が変わったのが二人を焦らせる。
「違うわよ! ニューは……ニューは私達を船に乗せる為に一人で……」
言葉が途絶えがちになり、最後には嗚咽が交り出す。
2人は理解できなかった。
そして、答えを求めて、目の前の男に視線を動かす。
これにより、場が動く事を2人は直感する。
「それについては私から説明しよう。初めまして、ウェールズ皇子。
私は魔法衛士隊隊長のワルドと申します。
この度はアンリエッタ王女の命を受け、このルイズの護衛としてまいりました」
ワルドが名乗り、今回アルビオンに来た目的を説明する。
それを聞いて、ウェールズは何かを悟ったような顔を浮かべた。
「そうか、あの手紙か……わかった、今ここには無いので城に帰ったら渡そう。
それに、君達を客人として持て成さねばならない」
一瞬、暗い顔を浮かべながらも、するべき事、
そして、人に対して向ける仮面を被り直しウェールズはルイズ達に微笑みを浮かべた。
その中で、ワルドの話を聞いたダブルゼータは、ぼんやりと窓を見ていた。
「アイツなら大丈夫だろうぜ……何たって、この俺を何時のろま扱いするんだからな」
ルイズを励ます訳でもなく、だが、絶対の自信がある訳でもない。
ダブルゼータの心情を現すかのように、雲の中に見え隠れする黒い影が濃くなる。
雲を抜け、窓から差し込む日の光が視界を遮る。
数秒の後、ダブルゼータはここ数日で見慣れた場所を見下ろしていた。
雲の中から、表れたような大地――アルビオンを。

男のその日の最後は乗船者の確認であった。
それは毎日の日課と言う訳では無く、その船〈キング・リーヴェル〉は、鉱石等を主要とした輸送船であった。
こう言った輸送船は本来、積載量に影響する為一般人の乗船を嫌う。
なので、乗る為にはそれなりの方法がある。
一つは客船の数倍の金額を払う事。
男は目の前のフードをかぶった二つの影を見る。
「この船に乗せてもらう予定の者よ。ロングビルの名前で話は通って居る筈だけど」
フードを深くかぶった一人が出した名前は、男の聞いていた名前と一緒だった。
フードから時折垣間見える表情が女である事が分かる。
(船長や誰かとコネのある人物だよな)
酔って昔話――商船の船長とは思えない様な自慢話をする船長の客人としては、
これ以上ないくらい適人に思えた。
この船は、時に船長の“昔馴染み”を乗せる事がある。
今度も恐らくその類であろう。
だが、後ろに居るもう一人は?
ローブを被っているので完全には把握できないが、
隙間からフルアーマーの鎧――それも、ハルケギニアでは見た事のない鎧を着た小男に見えた。
こちらの方は素顔を全く見る事が出来ずにいた。
鎧もおかしいが、それ以上におかしいと思えるのは、
小男は自分と同じくらいの袋に包まれた何かを涼しい顔で背負っている。
正確には解らないが小男の荷物は明らかに軽い様には思えず、何よりそれを背負っている状態でも、
ふら付いたり、力を込めている様子は見えず、事もなく持っている。
(嘘だろ、重くないのかよ)
仕事上、力自慢が何も自慢にならないような環境で生きている自分ですら、それには驚くものがあった。
この仕事に就いて堅気の人間ではない者達を幾人か見て来たが、目の前の二人はその中でも特に異質に見えた。
気に留めつつも、男は仕事をこなす事にする。
217ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:09:39 ID:ALO/aI1v
「あぁ、話は聞いている。第二船倉を使ってくれ」
「船室じゃないのかい? こんなホテルのサインみたいな真似をさせて」
渡された紙に名前を書き、女が自分に渡してくる。
「この船には、そんな上等な物は無いぜ。なんなら、俺の部屋に泊まるか? 
俺のベットはクラリッジにも劣らないぜ」
「クラリッジはいつから王家に星を返上したんだい」
この船に乗る人間との冗談のやり取りの一種である。
女の顔は不満を持ちながらも、結局はすべてを理解していた。
「じゃあ、遊覧飛行でも楽しみますかね」
「窓は付いてないぜ、見たけりゃ外に出るんだな」
男の言葉を聞いて、女は軽く舌打ちしながらも船倉に続く階段に向けてゆっくりと歩き出す。
それに続いて、後ろの小男も無言で歩き出す。
すれ違いざまに、男は背負っている布の紐が少し解けているに気づく。
「おい、アンタ、紐がほどけているぜ」
「そうか」
小男は短く呟き、いったん袋を置いて、紐を縛ろうとする。
だが、視界が悪いのかもともと不器用なのか、その作業は思ったより時間がかかっていた。
「手伝うか?」
男はそれを見て声を掛ける。
手伝うと言うよりも、本音を言えば男の荷物が何なのか少し気になったのだ。
「いや、構わない。こう言った作業は苦手でな」
男の意図に気づかないのか、それとも気付かない振りをしているのか、
小男は特に気に掛ける事もなく答える。
その言葉の通り、最初の苦戦して居た様子から、
段々とコツを掴んできたのか紐の曲線が増えてくる。
本来なら、そのままにしておいてよかったのだが、その時、何故か動いてしまった。
「おっと! 倒れそうだったぜ、本当に大丈夫なのか?」
そう言いながら、小男の視界から隠れるようにして荷物を支える。
だが、それは嘘であり、男は近づいた時に、開いた袋の中を盗み見る。
「済まない……もう、大丈夫だ」
集中して居たのだろう、社交辞令の様な礼を述べつつ、もう一度紐を強く結ぶ。
「行くよ、マークスリー」
自分の後を付いて来ないのが気になったのか、階段を降りかけた女が声を掛ける。
その表情には、少しだけ苛立ちの色が見えた。
「わかった」
再び、荷物を背負い階段を下り始める。
それを振り返る事もなく、男の耳に、重たそうな足音が聞こえ、段々遠くなっていく。

男は言葉が出無かった。
袋の中には形は違えど、小男とよく似た鎧が入っていたのだから。


「38 お前達には協力してもらうぜ」
海賊 船長
若い男のようだ。
HP 440
218ゼロの騎士団:2010/01/01(金) 21:10:38 ID:ALO/aI1v
以上で投下終了です。
久しぶりなので緊張しました。
ありがとうございます。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 21:42:29 ID:JBeDgDzX
おかえりなさい。乙でした!
220名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 22:34:11 ID:hKszBVER

おかえりなさい
ずっと、ずっとずっとお待ちしておりました
221名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 23:49:01 ID:kYHcT8Ib
>>218
おひさしぶり、乙でした!



風は偏在する。
http://news.livedoor.com/article/detail/4529113/
222TALES OF ZERO 作者:2010/01/02(土) 00:36:42 ID:eQRyJwcx
あけましておめでとうございます、そしてすいません
すぐに投稿すると言っておいて、年が明けてしまいました
よろしければ、0時45分に3話の後半を投稿させて頂きます
223TALES OF ZERO 1/10:2010/01/02(土) 00:46:55 ID:eQRyJwcx
第三話 ガンダールヴ 後編


ヴェストリの広場で始まった決闘は、才人からクラースに代わって続行された
両者は相手の出方を見るように、間合いをとって構えている
「(まさか、異国のメイジを相手にするなんて…あっちが相手なら楽勝だったのに。)」
口では勇ましい事を言っていたが、ギーシュは内心怯えていた…クラースと戦う事に
異国のメイジなら、自分達の知らない魔法を使ってくるかもしれない
そう、エルフ達が使う先住魔法のような、恐ろしい力を…
「(お、怯えるな僕…さっき言ったとおり、見せてやるんだ…僕の力を!!)」
自身を奮い立たせると、ギーシュは杖を振るった
指示を受けたワルキューレが、クラースに向かって動き出す
「(どんなに凄いメイジでも、詠唱が出来なければ…。)」
詠唱をさせない為の攻撃…ワルキューレの腕がクラース目掛けて振り下ろされる
だが、クラースはそれを難なく避けた

「せぇい!!」

後ろに回りこむと、持っている本の角でワルキューレの首を狙った
ゴキンという音と共に首が折れ、頭部が地面に転がる
「え…ええっ!?」
ギーシュは驚いた…驚いて目の前の光景に自身を疑った
何せ、自分のワルキューレが魔法ではなく、本で壊されたのだから
観客達もまさか、本なんかで…と騒いでいる
「脆いな、これくらいで壊れるとは…これの材質は青銅か?」
なら、仕方ないな…と呟くと、また本を振るってワルキューレを吹き飛ばした
地面に倒れるワルキューレだが、すぐに立ち上がって襲い掛かってくる

「たぁ、やっ、はっ!!」

その後も、クラースは向かってくるワルキューレに攻撃を繰り返す
ワルキューレの間接を狙って本を振るい、徐々に壊していく

「す、すげぇ…あのメイジ、本だけで青銅のゴーレムと戦ってる…。」
「つーか、本で戦うのもそうだが、それで青銅を壊すってどうなんだよ。」
「…本は武器じゃない。」

クラースの異様な戦いぶりに、周囲は別の意味で感心するしかなかった
ある程度の攻撃を終え、クラースはワルキューレから離れる
散々クラースに本で殴られたワルキューレは、本来の姿の大部分を失っていた
「き、君は本当にメイジなのか、メイジならメイジらしく、魔法を使ったらどうなんだ!!」
杖をクラースに向かって突き出しながら、ギーシュが叫ぶ
自分のワルキューレを凄いとはいえ、本で壊されるのが堪らなかったのだ
「まあ、確かに本ばかりでは決着がいかんからな…では、これを使わせてもらおう。」
クラースはワルキューレに向かって右手を構え、詠唱を始める
すると、彼の右手に光の球体が現れた
「……吹き飛べ、バースト!!!」
詠唱が終わり、クラースはワルキューレに向かって呪文…バーストを唱えた
これは自分の子孫がいる未来世界で覚えた、クラース自身が使える唯一の攻撃呪文だ
光弾はワルキューレに直撃し、バラバラに破壊する
『おお〜〜〜〜〜!!!!』
ようやく魔法らしいもの…それも、見た事も無い術に観客に歓声が上がる
ギーシュも少しばかり驚いたが、すぐに平静を装った
「や、やっと本気を出したようだね…中々の魔法じゃないか。」
「それはどうも。」
まあ、これは自分の本気にも満たないのだが…面倒なので、クラースはこれだけしか言わなかった
「(あれが異国の魔法か…あれぐらいなら、恐れる事はないな。)」
あれがクラースの限界に違いない…と勝手に思い込むギーシュ
彼は一気に勝負を決めるべく、杖を振るって先端にある造花のバラの花びらを散らした
すると、六枚の花びらが、武装した六体のゴーレムへと変貌する
224TALES OF ZERO 2/10:2010/01/02(土) 00:48:02 ID:eQRyJwcx
「ほぅ、ゴーレムはこう作っていたのか…本当に興味深いな、此処の魔法は。」
「君相手には手加減はいらないようだからね…此処からは本気でやらせてうよ。」
ギーシュが指示を出すと、ワルキューレは前後二体ずつの三列に並ぶ
後衛は自分の護衛に回し、前衛の三体をクラースに差し向ける

「行け、僕のワルキューレ達…ハルケギニアのメイジの力を思い知らせるんだ!!!」

その言葉と共に、ゆっくりと動いていたワルキューレ達の動きが早まった
持っている武器をクラースに向け、一斉に襲い掛かる
「おっと。」
クラースは三体の間を潜り抜け、攻撃を避ける
即座に一体が追撃を行うが、クラースはこれを回避
続けて二体が襲ってくるが、それもまた紙一重でかわした
「(うむ…これは…。)」
クラースはワルキューレを避けながら考えた…今の自分の体の変化に
「(今日は調子が良いのだろうか…何時もより素早くなった気がする。)」
決闘が始まってからずっと、クラースはこの調子だった
ワルキューレ達の動きも遅いように見え、普段よりも早く回避行動がとれた
何故…そう考えているクラースの左手に刻まれたルーンは、淡い光を放っている
「フッ…どうやら、避けるのに精一杯で、魔法が使えないようだね。」
そんなクラースの疑問など知らないギーシュは、余裕の笑みを浮かべている
今自分が優勢だと思っている為、普段の調子に戻ってきた
「クラース〜〜〜、遊んでないでさっさとやっつけなさいよ!!」
後ろから、ルイズが少し痺れを切らしながらクラースに向かって叫んだ
彼が本気を出せば、この程度は楽勝の筈だ
「おっしゃる通りだ…そろそろ私も本気でいかせてもらおうか。」
クラースはこれ以上の回避を止めると、その場に踏みとどまった
構えを取って、詠唱を始めようとするが…
「魔法を使うつもりか…そうはさせないよ!!」
その前に決着を付ける…ギーシュはクラースに向けて杖を振るった
ワルキューレ達は一斉に、クラースに向かって攻撃する

「はっ!!!」

が、クラースは大きく振りかぶって本を振るい、ワルキューレ達を攻撃する
本の角を受け、ワルキューレ達はそれぞれ三方に散らばる
「なっ…。」
「邪魔をするのは無粋だな…これから私の本領を見せてやろうと言うのに。」
クラースは持っている本を開き、ある程度ページを捲らせた
「き…君の本領だって!?」
「そうだ…先ほど見せたあれは、私の力のほんの一部分にしか過ぎん。」
ギーシュの問いに答えながら、ページをパラパラと捲っていくクラース
そして、何ページ目かを開くと、目をカッと見開く

「見せてやろう、奇跡の体系…召還術!!」

その言葉と同時に、クラースの周囲に魔方陣が出現する
魔方陣から溢れる光がクラースと、周囲を照らした
225TALES OF ZERO 3/10:2010/01/02(土) 00:50:04 ID:eQRyJwcx
何だこれ…これは魔法なのか?こんな魔法見た事ないぞ…
ギーシュは光り輝く魔方陣と、その中央にいるクラースに見入っていた

「何だ、何だ!?」
「何が始まるんだ!?」

周囲からも戸惑いの声が聞こえる…彼等もこれが何なのかを知らない
それを知っている才人とルイズだけが、黙って見守っている

「我が名はクラース・F・レスター…指輪の契約により、この儀式を司りし者なり」

そんな彼等に構わず、クラースは詠唱を開始した
彼の口から発せられる言葉がギーシュに…そして周囲の耳に聞こえてくる

「我が契約に答え、我に秘術を与えよ…我が身に御身と、知恵と、栄えあり」

淡々と、クラースは詠唱を続け…それに呼応するように魔方陣は輝きを強める
見たことも無い光景に放心し続けていたギーシュだが、顔を振るって正気を保つ
そうだ、攻撃…攻撃しなければ

「こ、こんなの見せ掛けだ…い、行け、ワルキューレ!!!」

ギーシュは杖を振るい、前衛の3体をクラースに向けてけし掛けた
三体のワルキューレは、クラースに向かって行く…
が、その判断は少しばかり遅かった

「出でよ、風を司りし者…三人の乙女達よ…」

武器をクラースに向け、接近してくる三体のワルキューレ達…
だが、それに恐れる事無く、クラースは詠唱を続ける
そして、ワルキューレ達がすぐ傍まで来た時…彼は目を見開いた

「契約は完了せり…シルフ!!!」

風の精霊の名を叫んだ時…クラースを中心に竜巻が発生する
その竜巻に阻まれ、ギーシュのワルキューレは弾かれた
「うわっ…な、何だ!?」
竜巻によって砂煙が舞い、観客達のマントがはためく…
自分が知る風魔法より強い突風に、吹き飛ばされないようにギーシュはクラースを見る
しかし、凄まじい竜巻で中にいる筈のクラースの姿は見えない
「な、なんて魔法なんだ…こんな竜巻は初めてだ。」
「これは魔法とは違うな…古より伝わりし秘術…召還術だ!!」
ギーシュの言葉に答えるように、竜巻からクラースの声が聞こえる
召還術…召還術ってなんだ?
そんなギーシュの疑問をよそに、再びクラースの声が響く

「そして、私のような者を人はこう呼ぶ…召還術師《サモナー》と!!」

やがて、竜巻が弱まり、中からクラースが現れた…が、現れたのは彼だけではなかった
彼を守るように、それぞれ剣と弓と盾を持った三人の乙女達の姿があった
226TALES OF ZERO 4/10:2010/01/02(土) 00:52:02 ID:eQRyJwcx
クラースが呼び出した者達…それを見た観客達は、騒然となった
あれは何だ、妖精か、そんな馬鹿な事が…
口々に囁かれる言葉…そのどれもが、目の前の光景を信じられないでいる
「これは…僕は幻を見ているのか?」
それと対面している筈のギーシュでさえ、この調子だ
それだけ、彼等の見ている光景が想像以上だったのだ

『お呼びですか、マスター?』

昨日出会ったシルフが、最初にクラースに声を掛ける
クラース自身も少し驚いた様子で、二人のシルフを見比べる
「驚いたな…他の二人まで、姿が変わっているとは…。」
『そう言えば、この姿でマスターに会うのは初めてだね…僕はシルフ三姉妹次女のユーティス。』
弓を持った勇ましいシルフが、最初に自分の名を告げる
『私は三女のフィアレスです、よろしくお願いします。』
次に、盾を持ったシルフが礼儀正しく、頭を下げながら答える
『そして、私は長女のセフィー…例え姿は違えど、我等三姉妹は貴方の風となります、マスター。』
最後に、剣を持ったシルフが名乗り、彼女達は主であるクラースの指示を待った
「そうか…じゃあ早速で悪いが、あのゴーレム達と戦ってくれないか?」
そう言ってギーシュのゴーレム達を指差し、三姉妹は一斉に其方へ目を向ける
相手が一斉に此方を見たので、ギーシュは「ヒィ」と短い悲鳴を上げる
『……なんだ、あれ只の青銅じゃないか、あれくらいじゃ僕達の敵じゃないよ。』
すぐに相手が青銅のゴーレムと分かったユーティスは、気だるそうに呟く
『ユーティス、相手が誰であれ全力をつくすものですよ。』
『それは…分かってるよ、姉さん。』
姉の言葉に、ユーティスは気を取り直して弓を構えた
セフィーも自分の剣を、フィアレスも盾を構えて戦闘体勢を整える
「こっちはこれでよし、と…おい、ギーシュ君、そっちは準備良いのか?」
「えっ、あっ…えっ?」
クラースの声に、未だに呆けているギーシュは、間抜けな声しか出せなかった
「何だ、さっきと違って威勢がないな…こないなら、こっちからいくぞ。」
「えっ…ちょ、まっ…。」
「いけ、シルフ!!」
待って…と言い終える前に、クラースがシルフ達に指示を出した
シルフ達はそれぞれの武器を手に、ギーシュに向かって飛んでいく
「わ、わわわ…ワルキューレ!!!」
慌てて杖を振り、三体のワルキューレでシルフ達に応戦する
青銅の乙女達の武器がシルフ達を襲うが、攻撃が当たる前に姿が消える
「き、消えた…ど、何処だ!?」
ギーシュはビクビクしながら、シルフ達を探した
観客もどうなったのかと辺りを見回すが、彼女達の姿は見えない
だが、ギーシュ達の目が他所に向いている間に、三姉妹はそれぞれ自分の相手の背後に現れた
「いきます!!」
最初はセフィーが、ワルキューレをその剣で一刀両断にする
「いっけぇ〜〜!!!」
続いてユーティスが弓を引き、無数の矢がワルキューレを破壊する
「いきますぅ〜〜〜!!!」
最後にフィアレスが持っている盾で体当たりし、ワルキューレを粉々にする
ギーシュのゴーレムは何も出来ず、ただやられるだけだった
「えっ、あっ…ええっ!?」
気付いた時には既に遅し…ギーシュの目の前には、ワルキューレ達の無残な姿が散らばっていた
227TALES OF ZERO 5/10:2010/01/02(土) 00:55:31 ID:eQRyJwcx
騒然となっていた広場は、シルフ達の戦いによって静寂が支配していた
見た事がないクラースの召還術、その姿が伝説の妖精に似ているシルフ達…
それによって、観客達は歓声を上げる事が出来ずにいる
「凄いわ…これがクラースの本気なのね。」
決闘がクラースの優勢に進んでいるのを見て、ルイズはそう呟く
その表情には喜びよりも、驚きが多くを占めていた
「ああ…これが英雄の力ってやつなんだろうな…。」
自分が苦戦したワルキューレを、三体相手に圧倒的な差を見せ付けた
やっぱり、クラースさんは凄い…
「………。」
だが、才人の心の中は晴れ晴れとはいかず、ある想いが才人の中で犇いている
…本当に、このままクラースさんに任せたままで良いのだろうか…と
「さて、ギーシュ君…これでもまだ続けるか?」
無残に散らばったワルキューレ達の残骸をはさんで、クラースが呼びかける
シルフ達はクラースの周りに浮かび、何時でも戦えるように待機している
「ば、馬鹿にするなよ…ま、まだ勝負はついちゃいないんだ。」
そう、まだ僕には三体のワルキューレが残っている…
どうあっても、ギーシュは自身から降参するつもりはないらしい
「素直じゃないな…やはり、一度そのプライドを叩き壊さないと更生は無理か…。」
仕方ない、此処で一気に畳み掛けるとしよう…クラースが攻撃しようと、手をかざそうとするが
「クラースさん、待って!!」
その直前、突然の才人の声がクラースの耳に届いた
「どうした、才人?」
攻撃の指示を止め、クラースは才人の方へと振り向く
才人自身も、自分の行動に戸惑う素振りを見せたが、意を決して口を開いた
「クラースさん…俺に、やっぱり俺にやらせてください。」
才人の言葉に、ルイズが少し驚いた様子で彼を見つめる
「あんた何言ってんの、さっきあんだけやられたんだから、クラースに任せれば良いじゃない。」
「でも、この決闘騒ぎを始めたのは俺だ…けじめは自分でつけたいんだ。」
「けじめって……。」
才人は視線をルイズからクラースへと向け、真剣な眼差しを送る
クラースから見ても、それは生半可なものではない事は解った
「………。」
しばらく目を合わせ…やがてクラースは、隣にいるシルフ達の方を振り向いた
彼女達に向けて手を翳すと、シルフ達はクラースの意思を悟って姿を消した
どうしたんだ…そんな声が周囲から聞こえるが、クラースは気にせず才人に歩みよった
「けじめは自分で…本気なのか?」
「はい…でないと俺…俺自身が納得出来ないんです。」
クラースの問いに、才人は答える…その言葉と表情に嘘偽りはなかった
そうか…そう呟くと、クラースは持っている道具袋へと手を伸ばした
しばらくして、彼は道具袋から何かを取り出す
「なら、これを持ってみろ…これを使えるのなら、後は君に任せる。」
取り出したのは、一本の剣…前にクラースに持たされた、あのロングソードだった
鞘から抜くと、クラースはロングソードを地面に突き刺す
「流石に、生身一つで戦うのは無理だからな…どうだ?」
「………。」
あの時、持つのがやっとだった長剣…かつてクラースの仲間が愛用していた英雄の剣
才人は黙って、左手を剣に向かって伸ばす
「あんた本気でやる気?剣なんか持っても平民が…そもそも、そんな体で勝てるとおもってるの?」
ルイズだけが納得できず、才人の体の事を持ち上げた
グミで少しは回復したとはいえ、彼の体は完全には癒えていない
そんな体で、剣を持った所で何が出来るか…
「…俺、よく負けん気だけは強いって言われてんだ…だから…」
少しばかり息を吸い…吐くと、剣を握るのと同時に叫んだ

「もう…絶対に負けねぇ!!!」

才人が剣を握った瞬間…彼の左手に刻まれたルーンが輝いた
228TALES OF ZERO 6/10:2010/01/02(土) 00:58:26 ID:eQRyJwcx
気がついた時、才人はロングソードを片手に持って一人立っていた

今自分がいるのは、何処とも解らない荒野だった

地平線の先には、沈んでいく太陽が見える

何故…どうして俺は此処にいるのだろうか

確か、俺はギーシュっていけ好かない奴と決闘を始めて…

クラースさんに代わってもらって、もう一度あいつと…

そんな事を考えている中、ふと才人は顔を上げた

沈みゆく太陽…黄昏の光に包まれるように、誰かが立っている

風にのってたなびくマント…

茶髪の髪にハチマチ…

体には鎧を纏っている…

腰に剣を差している姿は、どう見ても彼が剣士である事を意味していた

才人は何故か、あの人を知っているような気がした

何故……

その時、彼が此方の方を振り向いた…顔は太陽の光のせいで、よく見えない

…待っていたよ、才人…

彼が喋ったのか…声が才人の頭の中に響いてきた

貴方は、貴方は一体…そう尋ねようとすると、また声が頭に響いてくる

…僕と戦おう、本気でね…

彼はそう言って、才人に向かって持っている剣を構えた

才人も、自然に持っているロングソードを構えた

…俺も、俺も貴方と…
229TALES OF ZERO 7/10:2010/01/02(土) 01:00:40 ID:eQRyJwcx
「才人…おい、大丈夫か?」

クラースは蹲る才人に向かって声を掛ける
剣を握った途端、才人は地面に膝をついて動かなくなったのだ
何度も呼びかけるが、返事は返って来ない
「ちょっと…どうしたのよ、サイト!!」
ルイズが呼びかけても、体を揺すっても才人から返事は返って来ない
まるで、体だけが残った抜け殻のようだ
「どうしたというのだ、一体…。」
あれだけの傷を受けた体で、戦う事も剣を扱う事も出来る筈がない
それを解らせる為に、こうして才人の前にロングソードを出したのだが…
「クラース、何とかしなさいよ。あんたがあんな事を言ったからサイトは…」
「それは解っている、解っているが…。」
ルイズにせがまれ、クラースは道具袋から道具を取り出そうと探してみる
ミックスグミ、ミラクルグミ、ライフボトル、パナシーアボトル…
何かないかと探していると、突然才人がゆっくりと立ち上がった
「才人…大丈夫なのか!?」
「………。」
クラースが声を掛けるが、相変わらず返事は返って来ない
才人は剣を持ったまま、ゆっくりと前に歩き出した
「ねぇ、ちょっと…あんた本当に大丈夫なの!?」
ルイズが声を掛けても、才人は何も答えない…黙って歩き続けた
そして、ギーシュの近くまで歩み寄ると、剣を構えた
「な、なんだい、君…君との戦いはもう終わったんだよ!?」
予想外の事ばかり起こった為か、ギーシュは才人が出てきた事に不安を感じていた
まさか、彼まで何かとんでもない事をするつもりじゃ…
「…かった。」
「えっ?」
そんな中、才人が何か言ったようだが、声が小さくてよく聞こえなかった
少しして、才人は顔を上げると、さっきより大きな声で言った

「俺も…貴方と戦いたかった、クレス・アルベイン…。」

クレス・アルベイン…聞いた事のない名前にギーシュとルイズは首を傾げる
ただ一人…クラースだけが、その名に反応した
「クレスだって…才人、君は…。」
クラースが尋ねようとするが、才人は剣を大きく振りかぶった
そして、鋭い目つきになると、一体のワルキューレを見据えた

「魔神剣!!!」

そう叫んで剣を振るった…と同時に、剣先から衝撃波が発生した
衝撃波は地面を駆け抜け、立っているワルキューレを一体吹き飛ばす
ワルキューレはギーシュを横切り、観客達の間を縫って学院の壁に衝突する
「……へっ?」
数秒経って、ようやくワルキューレが吹き飛ばされた事に気づいたギーシュは背後を見る
後ろを見ると、壁に打ち付けられて粉々になったワルキューレの姿があった

「なっ…何だ今のは、剣から何かが出たぞ!?」
「あれ、魔法か…あの平民、メイジだったのか!?」
「でも、何で剣から…。」

周囲からどよめきが走る…が才人はそれを別に気にしてはいなかった
「何よ、あれ…あいつ一体何をしたの!?」
ルイズも目の前の光景に、ただただ驚くしかなかった
只のオマケだと思っていた少年が、あんな事をするなんて…
「あれは…魔神剣か、しかし何故…。」
クラースだけが、才人が使ったあの技を知っていたが、彼が何故使えるのかは解らない
周囲がざわめく中、才人は剣を構えなおすと、今度はギーシュに向かって走り出した
230TALES OF ZERO 8/10:2010/01/02(土) 01:04:25 ID:eQRyJwcx
「わっ…わわわっ!?」
ギーシュは向かってくる才人を恐れ、杖を振るった
ワルキューレは持っている槍を、才人に向かって突き出す
が、正面に向かってくるそれを、才人は体をずらしてよける
「はっ!!」
剣を振り払い、ワルキューレの持っている槍を叩き折る才人
それによって体勢を崩したのを、彼は見逃さない

「飛燕連脚!!」

ワルキューレに向かって飛び掛ると、今度は二段蹴りを繰り出す
一撃目で右腕、二撃目で左腕をもぎ取り、最後に剣を胴体に突き刺した
突き刺した箇所からヒビが入り、ワルキューレは砕け散った

『……………』

観客達は勿論、ギーシュも、ルイズも、クラースさえも唖然となっていた
誰が、このような展開を予想できただろうか?
観客達は思った、あれが平民の…いや、人間に出来る事なのだろうかと
「………。」
だが、才人の快進撃はまだ終わらない…残った一体のワルキューレへと駆け出す
指示を出すのも忘れたギーシュのせいで、ワルキューレは動く事が出来ず…
「アルベイン流奥義!!」
そう叫びながら、才人は風の如く駆け抜け…
「魔神…」
最初に放った衝撃波を、ワルキューレに向かって放つ
放たれた衝撃波によって、青銅のゴーレムは宙を舞い…
「飛燕脚!!!」
続けて、先程使った二段蹴りでワルキューレを蹴り…剣を突き刺した
一連の攻撃を受けたワルキューレは、ギーシュの目の前で粉々に砕ける
「ひ、ヒィィ!!!」
ギーシュは尻餅をつき、情けない声を出してしまった
逃げろ、逃げなければ……
そう思って体を動かそうとした所で、剣が顔先に向けて突きつけられた
「………。」
才人はギーシュに剣を突きつけたまま、無言で睨み付ける
あ、う…と何か言いたそうに声を漏らしたギーシュは…
「ま…参った…。」
降参の言葉を出した…それを聞いて、才人は剣を引いた
くるりと剣を回すと、高々と剣を頭上で掲げる

『……………。』

決闘は終わった…様々な出来事が起こった中、才人の勝利によって
あまりに想像以上の出来事が続いた為、喝采は起こらないと思われたが…

「………す、すげぇ!!!」

静寂が支配する中、観客の一人が正直な感想を告げた
それを皮切りに、周囲から喝采が沸き起こる

「凄いぞ、平民!!!」
「あれが異国のメイジとその使い魔の実力ってやつか!!」
「何かわけが解らない事があるけど…とにかく凄い!!」

観客達は決闘の勝者である才人とクラースを、兎に角称えた
231TALES OF ZERO 9/10:2010/01/02(土) 01:06:40 ID:eQRyJwcx
「サイト!!」

拍手喝采が起こる中、ルイズが才人に駆け寄った
クラースもそれに続き、才人は二人を見る
「サイト、あんた凄いじゃない!!そんな凄い力を隠してたなんて。」
「…えっ?」
ルイズの声に、才人は自分が持っている剣を見つめる
…あれ、俺どうしたんだ…
「才人、今の技…何故君がアルベイン剣術を使えたんだ?」
「クラースさん…俺、何を…。」
続いてクラースも問いかけてくるが、才人自身もどう答えて良いのか解らない
剣を握ったと思ったら、変な光景が見えて…そして…
続きを考えようとすると、突然体のバランスを失った
「えっ…あれ?」
反射的に剣を地面に突き刺して杖代わりにするが、体中から力が抜ける
剣から手を放し、そのまま地面に倒れそうになったのを、ぎりぎりでクラースが支えた
「おい、才人…大丈夫か?」
「すいません…何だか凄く疲れた感じが……。」
疲れだけではなく、睡魔までもが襲ってくる
眠たい、眠たいのだが…まだやる事がある…
才人は何とか顔を上げると、ルイズの方を見る
「ルイズ…悪いけど、少し頼まれてくれねぇか?」
「何、どうしたの?」
「あいつに…ギーシュに言伝頼むわ、ちゃんとシエスタに謝れよって…。」
そう、この決闘を始める時、ギーシュに交わさせた約束だ
ギーシュはそんなのはありえないと笑っていたが…
「主人に言伝を頼むなんて…まあ良いわ、ギーシュにちゃんと伝えてあげる。」
「ああ…それと…お前の事…馬鹿に…し…て…本島…悪かっ……。」
最後に、途切れ途切れでルイズに謝罪すると、才人はだらりと首を下ろした
「ちょっと、サイト…大丈夫なの?」
「……いや、どうやら眠っただけのようだ。」
クラースの言うとおり、才人は眠っていた…鼾をかきながら
「眠っただけ…ま、全く、最後まで主人を困らせる使い魔ね。」
怒った素振りを見せるルイズ…だが、それとは裏腹に何処か安堵している様子も感じられた
「兎に角、決闘騒動は終わったんだ、才人をベッドに寝かせないとな…よいしょっと。」
クラースは才人を自分の背に背負うと、ゆっくりと歩き出した
行く先には、決闘の光景に呆然としていたシエスタの姿があった
「シエスタ…悪いが、才人を寝かせられる場所まで案内してくれないか?」
「えっ…は、はい、此方に…。」
シエスタはおどおどしながらも、クラースを救護室まで案内する
「………。」
ルイズはクラースと、その背に背負われる才人を見つめる
先住魔法のような術を使うメイジ、凄い剣技を見せたオマケと思っていた少年…
何故か、これから凄い事が始まるんじゃないかと、予感めいた思いを抱いていた
「おい、ルイズ…彼等は一体何者なんだ?」
ギーシュは未だに震える足で、何とか立ち上がってルイズにたずねる
それはギーシュだけでなく、周囲の観客達も知りたい事だろう
その言葉に、ルイズは少し考えると…
「…決まってるでしょ、遠い国から来た私の使い魔達よ。」
笑みを浮かべながらそう答え、ルイズは二人を追って駆け出した
観客の間を潜り抜ける前に、思い出したようにギーシュの方を振り向く
「あっ、そうだ…あんた、後でメイドに謝っておきなさいよ。」
約束したんでしょ…そう言ってルイズは再び駆けていく
その後姿を、ギーシュは呆然としながら見送るしかなかった
232TALES OF ZERO 10/10:2010/01/02(土) 01:12:27 ID:eQRyJwcx
『………。』

同じ頃、学院長室…
遠見の鏡で一部始終を見ていたコルベールとオスマンは言葉を失っていた
先程の決闘の光景を、どう表現すれば良いのか考えているようだ
「……オールド・オスマン、彼等が勝ったようです。」
しばらくして、ようやくコルベールが口を開いた
うむ、とオスマンは頷く
「あれは…一体何なのでしょう、ミスタ・レスターは妖精らしきものを呼び出しましたし、彼の使い魔である少年は…。」
そこまで言うと、コルベールはうーんと唸った
「あれは異国の人間だからこそ使えるものなのでしょうか…それともガンダールヴの力…。」
「解らんのう、あんなのわしも初めてじゃったし…えー、確かガンダールヴとは…。」
「はい…伝承によると、あらゆる武器を使いこなし、主である始祖ブリミルを守ったそうです。」
「おお、そうじゃったな。」
伝承によると、始祖ブリミルの扱う魔法は強力だが、詠唱がとても長かったそうだ
詠唱を行わなければ魔法は発動しない…そして、詠唱中メイジは無防備状態になる
始祖ブリミルが魔法を使えるよう、守っていたのがガンダールヴだという
「千人もの軍団を一人で屠り、並みのメイジは歯が立たなかったとか…。」
「ふむ…ミスタ・レスターは兎も角、あの少年はその伝承通りのような戦いぶりじゃったな。」
「そうですね…では、ミスタ・レスターのあれは異国の魔法なのでしょうね。」
とりあえず、二人はクラースの召還術を異国の魔法という事で納得する事にした
それでも、色々と謎や問題は多くあり…
「オールド・オスマン、この事を王都には……。」
「報告するか、かね…止めておきたいと思うのが、わしの意見じゃな。」
今回の事を王都に報告すれば、彼等の身柄を拘束するのは間違いない
それは彼等にとって酷であるし、何より色々と話がややこしくなるだろう
「この件は私が預かる…時が来るまで外部には漏らすでないぞ。」
「そうですか…いやぁ、良かった…。」
オスマンの決定を聞き、何処か安堵した表情で呟いた
「良かった…とはどういう事かね?」
「あ、いえ、その…彼等は異国から来たそうなので、色々と話を聞きたいと…その…。」
それを聞き、成程…とオスマンは納得した、この男は探究心や好奇心が人一番強いのだ
「まあ、程々にするんじゃぞ…それよりミスタ・コルベール、確かミスタ・レスターにガンダールヴの事を話したそうじゃな?」
「あ、はい…ほんの少しだけですが。」
「なら、隠しても仕方ないのう…すまんが、ミスタ・レスターを此処に呼んできてくれんか?わしから彼に説明したい。」
それに、彼の素性についてもう少し聞き出しておいた方が良いだろう
彼等はもう、『ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔』という枠だけで捉える事は出来ない
「解りました…では、失礼します。」
指示を受けたコルベールは一礼すると、学院長室を後にした
残ったのはオールド・オスマンただ一人…ふぅ、と溜め息をつく
「異国のメイジとその使い魔、それにガンダールヴ…ミス・ヴァリエールはとんでもない人物を召還したようじゃのう。」
よっこいせ…と、オスマンは立ち上がると、傍にある本棚へと歩み寄った
そこにある自身が所有する書物の中から、古ぼけた一冊の本を取り出す
「異国から来た、特殊な力を持つ者…これもまた関係しているのかのう?」
この本の表紙に刻まれた文字は『黄昏の4戦士』と書かれている
黄昏の4戦士…それは、始祖ブリミルの時代に存在したと言われる伝説の4人の戦士達である
遠い異国の地よりやってきた彼等は、その特殊な力で始祖ブリミルを幾多の苦難から救ったと言われている
彼等に関する資料は少なく、本当に実在していたのか定かではないが…
「流石に考えすぎかな…それにしても…。」
オスマンはパラパラと、古ぼけた本のページを捲っていく
そして、挿絵の描かれているある一ページを開いた

「あの少年の構え…まるで、この剣士のようじゃったのう。」

オスマンが見る挿絵…そこには、剣を掲げる勇ましき剣士の姿が描かれていた
233TALES OF ZERO あとがき:2010/01/02(土) 01:21:36 ID:eQRyJwcx
これで投稿終了です、本当に此処まで投稿が延びてしまって申し訳ありません
いけると思ってたら、手直しやら仕事やらでずいぶんと時間をくってしまったので…
それはさておき、本編の具合ですが…才人、アルベイン流剣術使いになりました
なんせこれから凄い奴ら相手に戦う事になるので、これくらいはしないとクラースとルイズ守れないですからね
次回から、タバサの冒険の第一話へと話は進んでいきます
早速テイルズキャラが数人登場予定なので、お楽しみに
234名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 03:05:38 ID:Z5gYtda1
テイルズの人乙でした。フレインのネタが来るとは以外。
となると色々と外伝的なキャラも来たりするか楽しみだ。
俺の子分にするんだ!な双子の子に期待。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 10:38:58 ID:1oR2unnq
乙。ロングソードにこめられた経験を読み込んだって感じかな
この後デルフと二刀流かまして元祖アルベイン流(つかロイドは我流だが)やって欲しいなw
236PERSONA-ZEROの人 ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:44:35 ID:ze63ClEJ
PERSONA-ZERO 第四話。
ペルソナ4より番長を召喚。

問題なければ18:50から投下させていただきます。

※今回思うところがあって、試験的に今までと書き方(改行や文体)を変えてみました。
  今までと比べてどうかご意見いただけると嬉しいです。
237PERSONA-ZERO 4話 (1/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:50:16 ID:ze63ClEJ
「断る」

番長の返事は膠も無かった。
この騒動に注目していた生徒達全員の目が点になる。
少し離れたテーブルで、ルイズが宙を掴むように脱力していた。
「な……ちょ、ちょっとまて!」
騒ぎの張本人であるところのギーシュ本人が一番目を丸くしている。
なんなんだ、ここは雄々しく受けて立つ場面ではないのか。
でなければ先ほどの怒りに充ち満ちた目はなんだったのというのか、と。
「悪いけど、なんでもかんでも力で解決しようとするやりかたは好きじゃない」
「……!」
自分が聞き分けのない子供だと言われたようで、自然とギーシュの顔の表面が熱くなる。

事実、ある一面だけを言えばその通りだ。
同時に2人の女性に振られ―――自業自得ではあるが―――衆目の真中で恥をかき、
たかが平民の男に好き放題に言われて、恥をかかされた。
結果、冷静な大人の思考はなりをひそめ、頭に血の上った彼は子供の痴態を衆目に晒した。
いや、メイドの少女の前で怒声を上げていた時点で、それはすでに手遅れだったろうか。
いつもはいい奴なんだけど。そう言われたとしても、今のギーシュの姿には説得力がない。

「ふ、ふん……ああ、そうか。アレだな君は、何だかんだ言って僕との決闘が怖いんだろう。
 小賢しいこと言った割には、いざこうなったら理由を付けて逃げるのか君は。臆病者」
「なんとでも言えばいいさ」
 ギーシュの言葉を軽視するでもなく、しかしムキになるでもなく番長は続ける。
「正直、頭にきている。できるならお前を叩きのめしたいとも思う」
 「叩きのめしたい」の部分で、ギーシュが薄ら笑いを浮かべた。
 しかしそれを無視して番長はさらに続ける。
「だけど……シエスタに対するお前の行動についての是非は、周囲がつけてくれるだろう」
 そう言われてギーシュが周りを見渡すと、生徒達のほとんどがギーシュを白い目で見ていた。
 先ほど、呆れたようにこの場を去った男子生徒もその中に入っている。
 平民を軽く見る一部の生徒達は、どうでも良さげだった。
「……く」
「ルイズへの侮辱については、ルイズ自身が答えを出してくれるさ」
「その通りよ」
 いつのまにか近くまで来ていたルイズが間を割った。
「私の力は、近いうちに私自身の手で証明してみせるわ。アンタが何を言ったところで痛くも痒くもないもの」
 そう言って、ルイズは不敵に笑った。

 ―――この先、ルイズが相対する『敵』に対して、もっとも多く見せることになる顔である。

「はっ、明日から本気出すって? 怠け者の常套句だよそれは」
「違うわね」
 ギーシュの皮肉にもルイズは動じない。
「私はいつだって本気だった。いつでも真剣だった。そしてそれはこれからも同じよ」
「……!」
 それは、シュヴルーズがそう言っていたように、ギーシュのみならず誰もが認めるところだ。
「ということだ。もう、俺からお前に対してすることは何もないよ」
「まあ、バンチョーがアンタをコテンパンにするところを見られないのがチョット残念だけど」
 煽らないでくれよと番長が頭を抱えるが、ルイズは気にも留めない。
 番長の予想通り、ルイズのその言葉はギーシュのプライドを大いに逆撫でした。
「うん? これは僕の聞き間違いかな? まさかルイズ、君は僕がそこの平民如きに負けるとでも……」
「思ってるわよ。バンチョーは私の使い魔よ。その主が自分の使い魔を信用できなくてどうしようっていうのよ」
 ルイズの目は、どこまでも真っすぐで揺らぎがない。
「……っ……この……」
 言い返せない。
 元々が、頭に血が上った自分の言動が端を発した騒動であるし、やりすぎたこともギーシュは自覚していた。
 これ以上食い下がれば、周囲の自分への評価がどうなるか馬鹿でもわかる。
「もういいよルイズ。行こう。シエスタも一度着替えてきた方が良い。いいですよねマルトーさん」
 番長が厨房のマルトーに声をかける。中から「おうよ」と声がした。
 シエスタは何度も礼を言いながら、奥に歩いて行った。
238PERSONA-ZERO 4話 (2/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:51:08 ID:ze63ClEJ
「……くそっ」
 ギーシュが悔しさに顔を歪めながら駆け出す。
 番長とルイズを押しのけて、逃げるようにその場を後にした。

「なにもう終わり? つまんないわね」
 キュルケとタバサもこっちに来ていたようだ。
 キュルケは心底つまらなそうな顔をしている。
「余計な争い事は避けるに越したことはないよ」
 番長が苦笑混じりにそう答えると、キュルケは艶めかしく歩きながら番長の首に手を回した。
「ふ〜ん? でも、そういうトコロも素敵よダーリン」
 わかっていてキュルケはやっているんだろうか。いや、わかっているんだろう。
 そ〜いうことをするとだ。
「ちょ、キュルケ! アンタどさくさに紛れてなにやってるのよっ!」
 こうなる。もう、お約束であった。
 この一件に注目していた生徒達が、あきれ顔と苦笑交じりに散開していく。
「…………」
 そんな中、タバサが番長を見つめていた。心中を覗き込むように。
「……? どうしたの?」
「……なんでもない」
 番長には、やはりタバサの表情は読み取れない。
 だが、一つだけ見てとれるものがあった。
「お弁当、ついてるよ」
 タバサの左頬に、『草』がついていた。
 親指でふき取るように拭い取ってやる。
「…………」
 顔を隠すように本を持ち上げた。わざとらしくページを捲っている。
 その顔は―――やはり表情は変わらないが―――照れているように見えた。



 ※※※



 その夜、ギーシュは悔しさに布団を抱いていた。
(くそ……なんなんだ、あの男は!)
 語るまでもなく、夕食時の一件が原因である。
 あの時、ギーシュは番長との決闘でその欝憤を晴らすつもりでいた。
 我ながら大人気なかったと思う。だが、それはあの男も同じだったはずだ。
 振り向きざまに見せた番長の瞳の色、相当頭に血が上っていたのは間違いない。
 そして、かなりの修羅場を潜ってきたであろうことも想像できた。
 それでもメイジである自分に敵うはずはない、とギーシュは思っていたが、
 戦いには相当の自信を持っているだろう、戦えば本当に勝てるつもりでいるかもしれない。そう考える。
 だのにあの男は、あの平民の男は。あっさりと決闘を断った。
 わからない、ギーシュにとって初めて接するタイプの人間だった。
(……散歩でもしてくるか)
 このままでは寝付けそうもない。
 時間は既に深夜を過ぎていた。今頃なら双月が美しい輝きを見せてくれるだろう。
 その清廉なる光明は、今の気分をキレイに洗い清めてくれるに違いない。
 そう考えて、ギーシュは寝巻を着替え部屋を後にした。
 どこまでも気障な男であった。

 同じ頃。学生寮から少し離れた庭で動く影があった。
「ほらまた、アンタは力みすぎなんだってば」
「う、うるさいわね。わかってるわよ」
 ルイズとキュルケだ。番長とタバサもいる。
「アンタ、今まで魔法使えなかったせいか、力任せにやろうとしすぎなのよ。
 そんなんじゃ、また『止めきれなく』なるわよ」
「わかってるって……っていうか、なんでアンタが口出ししてんのよ! っていうかなんでいるのよ!」
「なによ今更、アンタが魔法の特訓したいって言うから付き合ってあげてるんじゃないのよ」
239PERSONA-ZERO 4話 (2/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:52:08 ID:ze63ClEJ
「余計なお世話よ! なにを企んでるのかわかったものじゃない……それに、バンチョーがいれば十分よ」
 その声に答えたのはキュルケではなく番長だ。
「ルイズ。確かに俺はある程度魔力の流れをつかむことができるし、俺の力と魔法は同じものだとは言ったけど……
 魔法そのものについては素人だし、やっぱり専門家に教えてもらった方がいいよ」
「それはそうかもしれないけど……」
 そう言われてもルイズは納得できない。理屈ではなく、主に感情の部分がだ。
「それにキュルケとタバサはトライアングルメイジだそうじゃないか。実力は問題ないだろう?」
 そういう問題ではないのだ。というか問題ならありすぎる。特にキュルケとかキュルケとかキュルケとか。
 犬猿の仲というのもそうだが、なにせキュルケのことだ、事ある毎に番長にせまっていくから集中できない。
 そう、集中できないから困るだけだ。集中できないだけ。

(アイツら……こんな時間まで……)
 それを見ていたのはギーシュである。
 散歩中、何の気なしに庭へ出て何の気なしに少し遠くへ足をのばした。
 そこでルイズ達を発見し、自分への意趣返しでも画策しているのかと覗いてみると。
(特訓……だと……?)
 ギーシュの頭に、夕食の時のルイズの言葉が蘇った。
 『私はいつだって本気だった。いつでも真剣だった。そしてそれはこれからも同じよ』
 自分はどうだったろう。
 もちろん努力はしてきたつもりだ。
 兄達のように華麗に魔法を行使する姿を夢見て、一人部屋で勉学に励む日もあった。
 それについてきた結果は、元帥を父に持つ名門グラモン伯爵家の四男にしてドットというメイジ最下級の実力。
 まわりのクラスメイトたちが次々にラインへ昇格していく中、自分は取り残されていった。
 いつからだろう、諦めてしまったのは。
 今も努力は続けているつもりだ。ドットという位置に留まるつもりもない。
 いつからだろう、夢を見なくなったのは。
 いつかはスクウェアに。そしていつかは、それに相応しい貴族に。
 いつかは、いつかは。それを言い訳にしていたかもしれない。
 『明日から本気出すって? 怠け者の常套句だよそれは』
 違う。そんなつもりは毛頭ない。だが自分は、あれほどまでに自分を信じられたか。
 そうギーシュが思い悩んでいる時、彼の目端を人影が通り過ぎた。
(あれは……?)
 双月高き星雲の深夜。関係者であることは考えにくい。
 ギーシュの頭に不審者の3文字が浮かぶ。しかも人影の向った方向は、宝物庫のある本塔だ。
(盗賊……?)
 そう言えば、噂で聞いたことがある。最近、貴族を中心に狙う盗賊が出没しているらしいことを。
 確か、『土くれ』のフーケとかいったか。
 誰かを呼びに行っている暇はない。その間に不審者を見失ってはまずい。
 宝物庫を荒らされ、逃げられてしまうかもしれない。
「ル……」
 ルイズ達に声をかけようとして、ギーシュは躊躇した。
 夕食時の一件もあって顔を合わせるのは気まずい。自分ここにいる理由を変に勘繰られるのも嫌だった。
 少し迷った後、ギーシュは一人で不審者らしき影を追いかけた。

「やっぱり、やっかいだねコレは……」
 『彼女』は宝物庫の壁の前で首を捻っていた。
 予定を早めようと決めたのは、つい先ほどだ。本来はもっと時間をかける予定だった。
 なにせトリステイン王国随一の魔法学院へ盗みに入ろうというのだ。慎重に慎重を重ねてなお万全ということはない。
 『貯え』にはまだ余裕がある筈だ。それに『アイツ』もいる。いまいち頼りになるんだかならないんだかわからない奴だが
 たいていの事からは『あの子たち』を守ってくれるだろう。時間をかけるに見合う見返りもあった。
 ただ、流石にオールド・オスマンは只者ではなかった。それとなく情報を引き出そうとしてものらりくらりとかわされる。
 噂では齢200だか300だかを超える化けものだ。色好きと聞いていたが、少し邪険にしすぎただろうか。
 だが、あれが本質でないことも伺えた。スケベジジイであることは正真正銘罷り間違いなく事実だが。
 他の教員達も一筋縄ではいかない強兵揃いだ。
 特にあのコルベールという教師。あの男が見せた炎の蛇は感嘆に値する。
 その時の光景を思い出し、『彼女』は脳裏に流れる冷汗を拭った。
 深くかぶったフードから一瞬覗き見えるその顔は―――トリステイン魔法学院・学院長秘書、ミス・ロングビルその人だった。
「まあ、厳しいのは覚悟してたけどさ」
240PERSONA-ZERO 4話 (2/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:52:58 ID:ze63ClEJ
 不確定要素も多くなった。特にあの使い魔の少年。異質な能力を持っていたが、それだけに得体が知れない。まだ底がありそうだ。
 そして、その主たる女子生徒。あの魔力量ははっきりいって脅威だ。
 まだ制御ができないようだが、もたもたして時間を与えていたら案外あっさりと化けるかもしれない。
 そうなれば、あの『めぎどーらうんちゃらー』をマトモに使われたら、自分の得意魔法で生み出す『ゴーレム』などひとたまりもないだろう。
 引き返すという選択肢はなかった。これだけ時間をかけて、それを無駄にするなどということは彼女の矜持に触れる。
 それらの事実と、盗賊―――『土くれ』のフーケ―――としての経験からくる、言わば『勘』が彼女の行動を早めさせたのだった。
「……ま、なにがなんでも今すぐどうこうってワケでもないけどね」
 外側からの調査は既に何度も済ませてあった。今夜ここを訪れたのは、再確認のためだ。
 本塔の外壁には物体の損傷・劣化・変化を阻害する『固定化』の魔法がかけられている。これでは外壁の破壊も難しい。
 自慢の『ゴーレム』を試してみたくもあるが、その時生じる騒音を考えれば危険な賭けであることは間違いない。
「やっぱり、もう少し探りを入れてからにするか」
 そう結論を出し、ロングビル改め『土くれ』のフーケが踵を返した時、それは起こった。
 まず最初に聞こえたのは爆発音、そして地鳴り。
「……はっ、私の『勘』もまだまだ捨てたもんじゃないね!」
 フーケが見たものは爆煙、そして爆光の残滓と思われる『紫』色の燐光。
 その中から、決して破壊されないはずの壁に亀裂が入っているのが見えた。

「……あちゃ」
「あちゃ、じゃないわよ……」
 ルイズの特訓に付き合っていたキュルケが頭を抱える。
「『小出し』にできるようになったのはいいけど、どんだけノーコンなのよ。
 射線と距離を意識しなさいって言ったじゃない。漠然とイメージしてるだけじゃ駄目なのよ」
「わかってるわよ!」
「わかってない! アレどーすんのよ!」
 キュルケが指差す学院本塔の壁には、明らかにルイズの魔法が原因と思われる亀裂が走っていた。
 タバサが不思議そうな―――しつこいようだが表情は変わらない―――顔でそれを見つめている。
「……?」
 『固定化』がかかっている以上、単純な破壊力では亀裂など入らないはずだ。
 だというのに、アレはどういうことか。常識を覆すほどの破壊力―――例えば先日の教室破壊のような―――があれば話は別だが
 今の半失敗魔法にそれだけの威力があるとは思えない。
 番長も額に巨大な汗マークが見えそうな表情をしていた。流石に昨日の今日でコレはまずい。
 しかし、さらに『まずい』ことが起ころうとしていた。
「な……なにアレ」
 最初に気付いたのはルイズだ。次いでキュルケ・タバサ・番長が同時にそれを見る。
 3人が一様に、本塔の斜め下方の位置に巨大な人影を見た。
「……ゴーレム」
 目検討で高さがおよそ30メイルはあるだろうか。
 タバサによって正体が明らかになったゴーレムは、巨大な腕を振り上げると壁の亀裂に拳を叩きつけた。
 壁に人一人通れるくらいの穴ができる。その穴に人影が飛び込むのが見えた。
「ちょ、あれって……もしかして……」
 今日の授業の前に、生徒達はシュヴルーズからある警告を受けていた。
 風邪をひいたらしいシュヴルーズの少々枯れた声は、それでも真実味を帯びたものだった。
「『土くれ』のフーケ……?」
 キュルケがそう呟いたとほぼ同時に、ルイズが番長を振り返る。
「いくわよ!」
 ルイズの考えを読み取り、番長が腰を上げる。
「いくってどこによ!」
「現場に決まってるでしょ!」
 言いながら、ルイズと番長は駆け出した。
「現場って……行ってどーすんのよ! それより誰か読んだ方が……」
「ちんたら人呼びに行ってたら逃げられちゃうわよ!」
「だからってアレ相手にただ突っ込んだって……! ああもう! 少しは考えなさいって言うのよ!」
 そう言いながらもルイズに続くあたり人付き合いの良いキュルケである。

「……来たわね」
 フーケは穴の中から、走り来る4人を見ていた。
 もとより爆発が起こった時に、その犯人を確認している。
 学院の生徒3人にその使い魔が1人。その中にルイズと番長がいることに内心舌打ちをしたが、
 ゴーレムがいれば時間稼ぎくらいはできるだろう。
241PERSONA-ZERO 4話 (5/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:53:47 ID:ze63ClEJ
 残りの2人はキュルケとタバサと言ったか。2人共トライアングルの実力者だそうだが所詮は学生、
 経験においてコチラに一日の長がある。フーケはそう思っている。
 それに飛べるのはあの2人だけのはず。万一ゴーレムを瞬破されても学生2人ならなんとでもなるはずだ。
 そう考え、フーケは搭の中に姿を消した。

「これでもくらいなさいっ!」
「って、だからアンタはイキナリ!」
 ルイズが杖を振るう。キュルケの足元で爆発が起きた。器用に避けるキュルケ。
「だからっ! なんでアンタはそんなノーコンなのよ!」
「……ちっ」
「ち……ちって言った? ちって言った? ねぇ! 今ちって言ったよこの子!」
「うるさいわね! 魔力が暴れるから制御が難しいのよ!」
「嘘だっっっ!」
 緊張感がないんだか余裕があるんだか。
 番長が再び大玉の汗を浮かべた。
「2人とも、賑やかしはそれくらいでいいよ。ゴーレムがコッチに気付いた」
 ゴーレムがゆっくりとこちらを向き、番長たちに立ちふさがる。
「見てなさい、お手本を見せてあげる! 【ファイアーボール】!」
 キュルケの杖から、火球が灼熱を僕に宙を飛ぶ。
 ゴーレムに火球が当たると、激しい爆発とともに肩の部分がえぐり取られた。
「どうよ!」
 しかし、それをキュルケが確認する間もなく、えぐれた肩はみるみる修復されていく。
「うそ!」
「自己修復するのか? ……やっかいだな」
 再生能力を持つ敵とは番長も以前戦ったことがある。
 赤子のような本体が、どこかできいたことのある呪文(?)を唱えると、外装が修復されるタイプだ。
 そのシャドウは、本体である赤子が再生を行っていた。
 このゴーレムが自己修復するにせよ術者が修復しているにせよ、単体の生き物でない限り
 近くに再生のための魔力を供給している術者がいるはずだ。
(塔の中か……?)
 『エネミーサーチ』もどきには何の反応もない。
 どうやらコレは、自分かルイズ周辺のごく限られた範囲にしか効果がないようだ。
「バンチョー! 危ない!」
 ルイズの声に思考を切り離す。眼前にゴーレムの拳が迫っていた。
(しまった……!)
 この番長、戦いの中で戦いを忘れていた。
 どんなに強力な能力を持っていようと、使いこなせなければ無いものと同じだ。
 その点で言えば、今の番長はルイズとなんら変わりがない。
「くっ!」
 まだギリギリかわせる。
 そう考え飛びのこうとした直後、番長は自らの反射神経に急ブレーキをかけた。

 ルイズがゴーレムの拳の進行範囲内にいる!

「バンチョー!」
 しくじった。
 八十稲羽町の事件が終わって安堵し過ぎたか? ここへ来て皆に持て囃され増長したか?
 いずれにせよ、番長は油断した。油断して相手を『見る』ことを怠った。『準備』を怠った。
 ペルソナを悠長に選んでいる暇はない。番長は咄嗟に意識の『眼』についたペルソナを『選択』した。
 ゴーレムの巨大な拳
 衝撃、そして重圧。かろうじて防御したが、ミシミシと腕の骨が悲鳴を上げている。
 クー・フー・リン。物理攻撃に耐性を持つペルソナだが、流石にこの巨体と重量からくる打ち下ろしには限度があった。
「ぐうっ!」
 はたして、番長は吹き飛ばされた。なんとか力の方向を逸らすことには成功し、ルイズは無事だ。
 だがその代償も安くはなかった。右足首に激しい痛み。負荷に耐えきれなかったようだ。
 そして二激目―――かわそうとして右足の激痛が邪魔をした。迫り来る巨拳。
 いかに物理耐性を持っているとはいえ、大地とサンドイッチにされればミンチよりひでぇ。
 なんとか足掻こうと、番長が手を伸ばす。しかしその手は芝生を毟るだけだった。

 絶体絶命。ルイズがこの先の惨劇を想像し目を瞑った瞬間―――
242PERSONA-ZERO 4話 (6/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:55:07 ID:ze63ClEJ
 
 その手は何者かに体ごとさらわれた。番長の体が空高く舞い上がる。
「キュイ!」
(……ドラゴン!?)
 番長は、その手をさらった、命を救ってくれた者を見てそう驚いた。
 番長の想像よりいくらか細見だが、大まかなシルエットは幻想に住まうドラゴンそのものだった。
「君が……助けてくれたのかい?」
「キュイキュイ!」
 そのドラゴン(仮)は、その通りだと言わんばかりに自慢げに胸を張って鳴いた。
「そっか……ありがとう」
「……バンチョー! 今!」
 再び鳴こうとしたドラゴン(仮)の声を、珍しいタバサの大声が邪魔をする。
 下ではタバサの『風』が激しい竜巻が巻き起こしていた。
 風圧と、その衝撃がゴーレムの体を削っていく。順次再生されていくが破壊と再生の速さは完全に同等。
 なによりその荒れ狂う暴風により、ゴーレムは身動きがとれずにいる。
「そうか……よし!」
 番長は瞬時に『3人』の意図を理解した。
 ルイズ・タバサ・キュルケはゴーレムから少し離れた位置で取り囲んでいる。
 その距離はおよそ15メイル。ゴーレムを中心とした直径で『30メイル』だ。
「ペルソナ……ルシフェル!」
 青白い閃光とともに現れたる大天使。その光景にドラゴン(仮)が驚いて番長を放した。
「キュイ! しまったのね!」
 番長の体が重力に捕らわれる。だがかまわない。
「『メギドラオン』!」
 爆光・爆音・爆風。荒れ狂う力の奔流が、全てを無に帰さんと咆哮をあげる。
 後に残ったのは、番長が前言した通りの30メイルのクレーターであった。

 [BGM : Reach Out To The Truth -First Battle- / 目黒将司 / Persona4 Original soundtrackより]

「ありがとうみんな、助かった」
「……キュルケの指示」
 そう言ってタバサがキュルケを指差した。
 あの竜巻は物凄かったが、どうやらチームプレイは苦手らしい。
「あのドラゴンは、タバサの?」
 尋ねながら番長は自分を救ってくれたドラゴン(仮)を見上げる。
 ペルソナ召喚に驚き、一度ドラゴン(仮)は手を離してしまったが、番長が地面に激突する直前
 器用に落下スピードを殺しながら再び番長をくわえ上げてくれた。
 ルイズには自分、キュルケには火トカゲ、ならば『彼』はタバサの使い魔ということだろう。
「……シルフィード」
 タバサはコクンと頷きながら、『彼女』を紹介した。
 なんでも『竜』の名は冠するが『風竜』というドラゴンとは別の生き物らしい。
 あと、彼女はメスらしい。これは失礼と頭を下げると、シルフィードは気にするなとばかりに「キュイ」と鳴いた。
「でもさっき、なんか喋ってた気がするんだけど……」
 その言葉にハッとしたように―――(略)―――タバサは振り向いたが、暫く考えたような様子の後、
 自分の唇に人差し指をあてた。内緒にしてという意味だろう。
 秘密にする理由が気になったが、なにせ命の恩人のことだ。番長は黙って頷いた。

「まあ、私にかかればこんなものよ」
「ああ、ありがとう。流石の機転だったよ」
 その言葉にキュルケが胸を張る。たわわな胸が、慣性に、負けて、揺れた。
「その前の【ファイアーボール】は役に立たなかったけどね」
 ルイズが何故か自分の胸を隠しながら悪態づいた。
「あら、勢いだけのノーコン『めぎどらほにゃらら』よりましよ」
「なによ!」
「なにさ!」
 こんな時でもいつものノリなあたり、実は仲が良いんじゃないかと番長は思う。
 だけど、とりあえず『メギドラオン』の名前くらい、いい加減に憶えてくれ。
「2人とも、そんなことやってる場合じゃない。フーケ……と決まったわけじゃないけど、盗賊を追わないと」
 番長が傷の痛みに耐えながら、2人を制止する。
「あ、そ、そうだった!」
243PERSONA-ZERO 4話 (7/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:56:12 ID:ze63ClEJ
 ルイズは本気で忘れていたようだ。
「でも、バンチョー、怪我は?」
「ん? ああ、これくらいなら……」
 いつもの様に青白い光を握りしめると、番長の体の擦り傷や切り傷が瞬く間に塞がっていく。
 右足に僅かな痛みが残っているが、残痛というやつだろう。問題はない。
 番長の背中で僧衣を着た骸骨の姿が浮かんで消えた。
「……本当に瞬時に治るのね」
 ルイズが感心したような、改めて驚いたような、そんな顔で息をのんだ。
「……準備おーけー」
 タバサがシルフィードの傍で手招きをしていた。
 本塔の『穴』は、通常の階層でいうと三階から四階の高さにある。
 どうやら本来は、飛べないルイズと番長のために『彼女』を呼んでくれていたようだ。
 番長はシルフィードの背に乗ると、優しく首筋を撫でた。
「ありがとう。よろしく頼むよ」
 シルフィードはうっとりしたように顔を上げると、まかせておいてとばかりに「キュイ」と鳴き、その大きな翼をはためかせた。

「……ちっ、もうやられちまったのかい」
 爆音と地鳴りと、そしてゴーレムと自分の繋がりが絶たれたことを感じてフーケは舌打ちした。
「今の音は『アレ』か? だったら少しは持ったほうか……まあいいさ、目的の物は見つかったしね」
 フーケの手には一枚の鏡が握られている。
 額や装飾がところどころ欠けている古ぼけた鏡だが、その鏡面だけは曇り一つなく美しく輝いている。
 よく見ると、まっすぐきれいに割った跡のような繋ぎ目が一筋入っていた。
 元々一つだったものを分けたのだろうか。それとも二つを組み合わせて使うものなのだろうか。
 オスマンはこれを『神魔の鏡』と呼んでいた。
 それは奇跡を具現化した物であり、正しい使い方で使えば神にも悪魔にもなれるという。
「問題はその使い方だけどね……まあ、今はさっさとオサラバする方が先か」
 ルイズと番長がここまで飛んでくる手段を得ていたとしても、到達するまではもう少しかかるはずだ。
 その間に身を隠し気配を殺してしまえば、彼らに自分を見つける手段はない。
 よもやロングビルが『土くれ』のフーケだとは気付いてもいまい。
 後はなんとか鏡の使い方を聞き出し、頃合いを見て学院長秘書を辞職すれば……いや、長居は危険か?
 フーケがそう考えながら、自ら開けた壁の穴へ向かおうとした時だった。
「そこまでだ! 『土くれ』のフーケ!」
 今まさに向かおうとしていた方向から意外な声がかかる。
「なっ……!?」
 もうアイツらが? まさか、早すぎる!
 フーケがそう驚き、薄暗い宝物庫で目を凝らす。しかし、そこにいたのは。
「もう逃げられないぞ! 観念しろ!」
 ギーシュであった。
 ギーシュはフーケに杖を突き付け、行く手を阻むように壁の穴の前で左手を広げている。
 その腕にはマントがひるがえっていた。
「……はっ、驚かせるんじゃないよ」
「なに?」
 ギーシュが凄みを利かせようとするが、フーケはギーシュを見てもいない。
 やれやれと肩をすくめると、フーケは自分の杖を左右に振った。
「むやみに杖を人に向けるもんじゃないとママに教わらなかったかい坊や」
「なっ……」
 今の事実を客観的かつ単純に語るとこうだ。
 フーケがギーシュを馬鹿にした。見下した。実力のある者が、そうでない者を言う様に。
 当たり前だ、上位にいる者がより下位の者をそう評するのは。フーケはただそれにフーケなりの味付けをしただけだ。
 ―――いつだったか、ギーシュがルイズにそうしたように。
「ふ、ふざけるなっ!」
 だが、ギーシュは激昂した。それも当たり前だった。
 ギーシュがバラを模した杖を振るう。
 揺れ落ちた花弁が一枚、床につくと同時に淡い光を伴って、甲冑を身にまとった戦乙女の姿へ変化する。
 『土』系統のメイジ、ギーシュが得意とするのは『錬金』。それが生み出した青銅のゴーレム、『ワルキューレ』である。
「いけ『ワルキューレ』! フーケを捕えろ!」
 フーケはギーシュを軽く見て、魔法の詠唱準備にすら入っていない。
 実力は遥か上といえど、盗賊メイジなど魔法がなければただの人、詠唱させないまま押しきれば捕えられる。
 しかし、そのギーシュの目論見をフーケはあっさりと裏切って見せた。
「ふん、甘いんだよ」
244PERSONA-ZERO 4話 (8/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:57:02 ID:ze63ClEJ
 大振りの戦乙女の攻撃を軽くかわし足を引っかける。
 バランスを崩した『ワルキューレ』の肩を掴み、前に引き倒した。
 床に叩きつけられ、拉げ割れた頭部に空洞が見える。
「舐めてもらっちゃ困る。坊やとは潜ってきた修羅場が違うんだよ」
「くそっ……」
「さて、お遊びはここまで。私は退散させてもらうよ」
 フーケが足早に近づいてくる。目的地は壁の穴。ギーシュは進行方向にいるだけだ。
 あくまでフーケはギーシュなど眼中にないらしい。
(逃がしちゃダメだ。逃がしちゃダメだ。逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ!)
 しかしどうする? 『手持ち』はフーケに通じない。
 フーケは聞くところによるとトライアングルメイジらしい。戦闘経験もギーシュとは雲泥の差。
 油断されていてさえ、ギーシュの杖はフーケに届かない。
 先程の動きから見て、『ワルキューレ』1体を7体にしたところでフーケには通じないだろう。
 だが、それでも屈せない。貴族として。ここを守り得る者の一人として。
 いつか、立とうと思っていた。メイジとして。貴族として。『戦場』に。『戦士』として。『騎士』として。
 いつかっていつだ? 『いつか』は『今』だ。
「まだだっ!」
 杖を握り『立つ』。ギーシュが一度に作り出せる『ワルキューレ』7体のうち、5体分の魔力を集中させた。
「なんだって!?」
 フーケが思わず後ずさる。
 見上げると、そこには宝物庫の天井にも届かんばかりの『ワルキューレ』がいた。
 その姿には先ほどの『ワルキューレ』のような優雅さは殆どない。ただシルエットのみが戦乙女のイビツな姿であったが
 今までにない威圧感がある。5体分のわりに小さいが、その分質量があるのだろうか。
 流石にコイツを体術ではどうこうできない。
 慌ててフーケが杖を振るうと、そこに『ワルキューレ』より一回り小さなゴーレムが出現した。
「舐めるなと言った!」
 『青銅』対『土くれ』。激突。激しく組み合う。
 体勢はわずかに『青銅』が有利だ。
「くっ……しまった」
 魔力を消耗し過ぎた。ゴーレムに自律行動能力と自己再生能力を付与するには多大な魔力を必要とする。
 実際の戦闘での再生にも随分消耗させられた。こうして遠隔操作のゴーレムにしても出力が足りない。
「このっ……レディは優しく扱うようにって学校で習わなかったのかい!」
「生憎この『ワルキューレ』は乙女でね! 乙女に押し倒されるなんてゴーレム冥利に尽きるだろうさ!」
「くっ……上手いこと言ったつもりかい!」
 ミシミシと双方のゴーレムが軋む音が聞こえる。その重圧に耐えきれず、床に亀裂が入る。
 正直見くびっていた。この少年の意思を見誤っていた。
 あわよくばヒーローに。そんな程度だと思っていた。
 無理もない。事実、先ほどまでのギーシュの心の内に、それはわずかながら確かにあったのだから。
「く……そ……っ!」
 だが、フーケにも引けない理由がある。犯罪に手を染めても尚、守りたいものがある。
 意地と意思のぶつかり合い。覚悟と矜持のせめぎ合い。
 数秒でしかないそれが、永遠にも感じ始められた頃。
「ギーシュ!」
 声が2人に時間を取り戻させた。
「遅刻だよルイズ……レディが時間にルーズなのは、感心……しないな……っ!」
「ギーシュ! なんでアンタがここに!?」
「は、話は後だ……早くフーケを……っ!」
「アイツがフーケ?」
 キュルケがゴーレム2体の向こうにいるメイジの姿を確認する。番長とタバサもその場に駆けつけていた。
 フーケの顔は深くかぶられたフードに隠れてよく見えない。だがどこかで見たことがあるような気もする。
「ここまでよフーケ! もう逃げられないわ。大人しく観念しなさい!」
「はんっ……それはさっき聞いたよ!」
 その時、2体のゴーレムに限界が訪れた。
 組み合った腕から全身に亀裂が走り、物理法則を無視するように粉々に砕け散る。
「ちっ……!」
 フーケが5人から距離をとるように後方へ飛ぶ。だが、そちらに出口はない。
「なら言い方を変えてあげる。終わりよフーケ。終わり、お終い、フィナーレよ」
「そうでもないわ」
 そう言ってニヤリと笑うと、フーケは杖の先を5人に向けた。
「詠唱は既に完成している」
245PERSONA-ZERO 4話 (9/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 18:57:47 ID:ze63ClEJ
「!」
 魔法はあらかしめ呪文の詠唱を終了させておけば、いつでも発動できる。
 この状況で使う魔法といえば、攻撃的なもので間違いないだろう。
「動くな……この魔法は石つぶてを飛ばすだけの単純なものだけど、その速さはマスケット以上。
 防御のための魔法は間に合わない。威力は低いけどその分魔力の消耗は少ない。
 それに威力が低いと言っても、急所に当たれば怪我じゃすまないよ」
 マスケット銃。それはこの世界における銃のことである。
 番長の世界の銃より性能は劣るものの、至近距離で撃たれれば避けきれるものではない。
「ハ、ハッタリだわ」
「そう思うなら試してみればいい。言っておくけど範囲は広いよ。みんな巻き添えに死ぬかい?」
 しかし、その言葉を無視して動く者がいた。
「……私も詠唱を完成している」
 タバサだ。タバサは杖をフーケに向けて睨みつけている。
「はん、それこそハッタリだね」
「……試してみる?」
「…………」
 その場に一抹の緊張が走る。誰も動けない。空気が鋭利な氷柱のように冷たく肌を刺激する。
 しかし、その空気を氷解させる者がいた。
「『ワルキューレ』!」
「な……っ!」
 突如、フーケの後ろで誰かが立ち上がった。
 いや、誰かではない。何か。『青銅』のゴーレム、『ワルキューレ』だ。
 ギーシュが杖を振るうと、『ワルキューレ』はフーケを羽交い絞め、杖を持つ手を捻り上げる。
「バカな! 『触媒』になる物はなかったはずだよ!」
「悪いけど、ひっかけさせてもらった。状況に助けられたとは言え、魔法勝負で五分に持ち込めるとは思ってなかったからね」
 見ると、『ワルキューレ』の顔は歪み、砕け、中の空洞が見えていた。
「まさか……最初から!?」
「いや、『ワルキューレ』がそこにいたのは偶然さ。ただ、もう1体操作できる魔力を残しておいた。それだけさ」
「……! くそっ!」
 やられた。ただのボンボンだと思っていた少年に、戦術さえも上まわられた。またしても見くびった。
「早く、フーケを……長くは持たない!」
 その声にいち早く反応したのは番長だ。
 短刀を抜き、距離をつめるために駆け出す。
「動くなと言ったよ!」
 それに応じたフーケが無理矢理手首を動かし、杖を番長に向ける。
 激痛が走ったが、フーケにそれを感じている余裕はなかった。
「……!」
「バンチョー!」
 弾丸並の速さで石つぶてが番長に襲いかかる。
 タバサが魔法を発動させようとしたが、範囲内に番長がいることに気づき急停止した。
 キュルケが息をのむ。
 ルイズの悲鳴のような声が聞こえる。
 ―――だが。
 石つぶてが番長の五体を貫かんとした瞬間。それは跳ね返るように急激に、その進行方向を変えた。
 『マカラカーン』、全ての魔法攻撃を反射するペルソナスキルである。
「―――なっ」
 跳ね返った自らの魔法に襲われたフーケは、出口とは反対の壁まで吹っ飛んだ。
 その衝撃で、フーケにしがみついていた『ワルキューレ』は今度こそ粉々になった。
 さらに、フーケの懐に入れてあった『神魔の鏡』が床にこぼれ落ちた。
 とっさにフーケが手を伸ばす。しかし、番長の足元まで転がっていったのを見て諦めた。
「くそ……『土』系統は『反射』できないんじゃなかったのかい……」
 思わずフーケがそう言葉をこぼした。
 番長がその言葉に反応するが、フーケは傷ついた体で即座に次の行動へ移る。
「ち……この私が獲物もつかめずに逃げ出すことになるなんてね……」
 そう言って懐から『何か』を取り出した。
(あれは……?)
 番長が見覚えのあるそれに目を見張る。
「この状況で逃げられると思っているの? 往生際が悪いわよ」
 ルイズがフーケに杖を向ける。いまだにルイズは自らの魔力を制御しきれていないが
 今のフーケにはそれでも驚異に見えるだろう。
246PERSONA-ZERO 4話 (10/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 19:00:01 ID:ze63ClEJ
「ふん……だからアンタ達はひよっこなんだよ。自分達の知らない物は『無い』ものかい? 違うだろう」
「……気を付けて。……アレ、なにか変な力を持ってる」
 そう言ってタバサがフーケの右手を指差す。
 その言葉に生徒達が緊張するのをフーケは見逃さなかった。
 まだ活路―――『神魔の鏡』を手に入れつつ脱出する方法は残されている。
「さあて……なんだろうね? ヘタしたらここにいる全員が無事じゃすまないかもよ?」
 ハッタリだ。そんなことはあり得ない……いや、あり得るかも知れない。
 二転三転する状況に学生達が戸惑いを覚える。
 人間が未知に遭遇した時、湧き上がる感情は好奇と恐怖。アレはなんだろう、もしかしたら危険な物かもしれない。
 切り札として持っていたとしても、自らをも傷つける物だとしたら、今まで使わなかったことにも一応の説明がつく。
「させるかっ!」
 だが番長は動いた。
 番長はアレを知っている。それの効果を知っている。しかしそれはこの場には無い筈の物だった。
 八十稲羽町を離れる前、自分たちが戦う為に必要だった武器・アイテム類はある人物に預けていた。
 中には必要だった人に分け与えたものもあるが、
 それらの中には現実世界に持ち込むにはいろんな意味で危険な物もあったからだ。
 だから、それらは全て『TVの中』で管理してもらうことにしたのだ。
 なのに、アレが何故ここに―――?
「……ちいっ!」
 番長がフーケに詰め寄る。
 まずい、コイツは何をしでかすかわからない。
 フーケはそう判断し、瞬時に思考を切り替えた。『神魔の鏡』は諦めるしかない。
 かくして番長の手がフーケに届く寸前、その体は眩い光とともにその姿を消した。
「今のは……」
 ルイズは今の光景に見覚えがあった。
 主観と客観の違いはあれど、今の力は自分と番長、
 そしてシュヴルーズが爆発寸前の教室内から脱出したものと同じと見て間違いない。
「バンチョー、今のは」
「ああ……すまない。逃げられた」
 脱出スキル『トラエスト』と同じ効果をもつアイテム。その名を『カエレール』と言う。
 オヤジギャク満開のネーミングだがこの際気にしないでおこう。
「ま、これが無事だっただけで良しとしましょ」
 そう言って、キュルケが番長の足元にあった鏡を拾い上げる。
「これがフーケが狙ってた獲物?」
「多分そうでしょ」
 そうルイズに答えながら、キュルケが【ディテクトマジック】をかける。
 次の瞬間、キュルケの目が驚きに見開かれた。
「な、なにこれ……凄い魔力……魔力とはちょっと違うかも……でも物凄い質量と密度」
 キュルケにはそれ以上のことはわからない。
 だが、それだけでこの鏡がただのマジックアイテムでないことは想像できた。
「ん……? なにか書いてあるわね」
 鏡を裏返すと、そこには明らかに後から誰かが書いたと思われる文字のようなものがあった。
「ん〜? なんだろ……見たこともない文字だわね」
 ルイズとタバサも覗き込む、それは明らかにこの国の言語体系にはない文字だった。
 最後に番長がそれを見て、驚きに息をのんだ。
「これは……」
 そこには、子供が書いたようなたどたどしい『平仮名』で、こう書かれていた。

 ―――『そのむら まい』



「結局、一番おいしいトコロは君に持っていかれたな」
 ギーシュが自嘲気味に呟く。
 妬んでいるわけではない。その証拠にギーシュの顔はやり遂げたような清々しい表情をしている。
「そうでもないさ」
 番長は鏡に書かれた『名前』が気になったが、いったん置いておくことにした。
 まずは報告が先だ。そろそろ騒ぎを聞きつけて誰かやってくるだろう。
 これについてはオスマンがなにか知っているかもしれない。
247PERSONA-ZERO 4話 (10/11) ◆tVsVHJCCJw :2010/01/02(土) 19:01:10 ID:ze63ClEJ
「おま……ミスタ・グラモンがいなければ間に合わなかっただろう。さっきの機転にも助けられた。
 ルイズの素早い行動。キュルケの作戦。タバサの魔法と使い魔。ミスタ・グラモンのゴーレム。
 そのどれが欠けても駄目だった。その中でも一番の功労者は君だよ」
 番長は思い出していた。
 互いに足りないものを補い合い、助け合い、ともに戦った仲間たちの姿を。
「そうよ、見なおしたわギーシュ。もっと胸をはりなさい。いつものナルシストなアンタらしくないわよ」
 そう言って、キュルケがギーシュの背中を叩く。
「そ、そうかな……」
 この男は。この番長という男は。
 なぜこの期に及んでそんなことが言えるのだ。しかも今、彼は自分のことを敬称で呼んだ。
 敬称? 敬意を払ったというのか。彼が、自分に。
 憎しみと怒りに満ちた目で自分を見ていたのは、つい先ほどの事だというのに。
「……一つ聞きたい」
 ギーシュは番長のその瞳をまっすぐに見つめた。
「なぜあの時、決闘を断った? 僕は見たぞ。あの巨大なゴーレムを消し去った魔法。
 あんなものがあるなら、僕を打ち負かすのは難しくなかったはずだろう」
「ギーシュ! アンタまだそんなこと……!」
 詰め寄ろうとしたルイズを番長が手で制した。
「その問いにはもう答えたはずだよ。力でなんでも解決しようとするのは好きじゃない。
 きっとそれは、ミスタ・グラモンがフーケに立ち向かった理由と同じはずだ」
 その言葉に、ギーシュの心にその時の気持ちが蘇る。
 負けたくなかった。屈したくなかった。
 力で及ばないことはわかっていた。それでも立ち向かった。
 それは何故か。守りたかったからだ。明らかな犯罪を犯す彼女を見過ごしたくなかったからだ。
 力では解決できない。しかしそれでも立ち向かわなければならない意思がそこにあった。
 ―――同じだ。言葉は真逆でも、言わんとすることは同じものだ。
 すなわち、『力だけが全てではない』と。
「……ギーシュでいい。君に敬称で呼ばれると、なんだか恥ずかしい」
 そう気づいた時、ギーシュは自然と番長に手を差し出した。
「わかったギーシュ。俺のことは番長と呼んでくれ」
 番長がその手を握り返す。
 2人がその手を離すとギーシュはルイズに向きなおり、その頭を深々と下げた。
「ちょ……ギーシュ?」
「すまなかったルイズ。僕はあの時頭に血が上っていたとはいえ、何も知らずに君を侮辱した。許して欲しい」
「……な、なによそんなこと……別にいいわよ。それより、謝るべき人は他にいるんじゃない?」
「ああ、わかってる。シエスタと言ったっけ、あのメイドには後で謝っておくよ。それから、不義理した2人の女性にもね」
「そう、ならいいわ。私は別に気にしてないから」
「そうか、ありがとうルイズ」
 ルイズは照れくさそうに、そっぽを向いている。
 その光景を、微笑ましそうに番長は見つめていた。
「それから……バンチョー、君にも謝っておかなければならないな。随分失礼な事を言った」
「いや、それは俺も同じだよ。お互い様だ」

 下の方がなにか騒がしい。どうやら騒ぎを聞きつけた警備員や教師が集まってきたようだ。
 野次馬根性の生徒達の姿もちらほら見かけられる。
「まったく、今更ノコノコ集まって……遅すぎだっていうのよ」
 キュルケが下を覗き込みながら、そう悪態づいた。
 タバサは全てが終わってすぐに本を読み始めている。この薄明かりしかない中でよく読めるものだ。
「さて、そろそろ下に降りようか」
 番長がそう宣言する。壁の外ではシルフィードが既に待機していた。
「これからまだ忙しくなるよ。いろいろ聞かれるだろうし」
 タバサ以外の3人が「うげ〜」とウンザリするような顔をした。
 深夜の乱闘騒ぎで疲労もピーク。体が睡眠を求めている。
 だが全員が、どこかやり遂げたような笑顔を浮かべていた。
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以上です。ナンバリング間違えた……。

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
今年もヨロシク……。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 19:22:56 ID:E4Nq8P9j
投下乙ー
異聞録とは…
249SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:00:25 ID:frcAvbeU
久しぶりに復活です。
他にいらっしゃらなければ5分から。
250名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 22:05:03 ID:Y8Zk92Qr
先行支援だ
251SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:05:28 ID:frcAvbeU
mission13 Dead End


 アルビオンから帰ってきて、スコールはおよそ5ヶ月ぶりにトリステイン魔法学院へとその足を向けていた。
(……また来るとは思ってなかったな……)
「レオン?」
「……何でもない。早くこいつを届けよう」
 と、ジャケットの裡から便箋を取り出す。
 結局指定されていた宿に、ロングビル本人は来なかった。警戒されていたのかも知れない。使いになっていた子供から手紙を受け取って、すぐさま帰ってきた。
 今日明日にも開戦の兆しが見えており、既に艦隊は出立したとも聞く。手早くこちらを手空きにしたかった。
「何でもないという顔か、それが。ああ……召喚されたんだったな、お前は……」
 動揺を見せたスコールの素性を思い出す。
「ああ。俺がハルケギニアで初めて入った建物だ」
「何なら私一人で行くか?」
「大丈夫だ。遺恨が無い訳じゃ無いが、いちいちそれに引っ張られてもいない」
 と、率先して足を進める。
 そうして入った学院は、明らかに何かがおかしかった。
「……人気が無さ過ぎるな」
 この戦争に際して、ほぼトリステイン全土の総力を結しているという事から、学院の男子生徒までが徴用されたという話は既に聞いている。だがそれでも、門に衛兵の一人も見あたらないというのはおかしな話だった。
 妙な胸騒ぎを覚えつつ、不慣れな敷地内へと足を踏み入れ探索することしばし。建物の一つを囲むようにしている十数名の人影があった。
「何者だ、貴様ら!」
 何故か、視界にはいるのは鎧を纏った女性ばかり。その内の一人が振り向いて誰何してくる。
「傭兵のスコール・レオンハートだ」
「その相棒のアニエスだ」
 敵意がないことを示すため、両手を上げながら名乗ると、彼女たちの大半が驚きの表情に変わった。
(何だ?レオンハートの名前が出た途端に騒いで)
「そう言うあんた達は何者だ。何か起きているようだが」
 腕を下ろしても大丈夫そうだと判断して下ろしつつ、尋ねる。
「……我々は女王陛下直属の銃士隊の者だ。……現在、賊が大半の女子生徒と職員を人質にとっている」
 後半は少し間を置いて、迷った末に告げたように思えた。
「人質?」
「職員もか?」
 予想外の事態に、二人は顔を見合わせる。
「それで貴様達は何をしに来たんだ」
 ここで隊長格らしい女性が前に出てくる。
252SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:06:32 ID:frcAvbeU
「俺たちは、先日ここの学院長に依頼を受けていた。その任務が完了したので報告に来たんだが……」
「こんな事になっているとはな……」
「ちょっと失礼するわよ?」
 そこで他の隊士をかき分けながら現れたのは3人の人影だ。
「やっぱり、あの時の傭兵さん達ね」
「…………」
「スコール・レオンハート……!」
「お前達は……」
 ラグドリアン湖で会った、火のメイジと風のメイジ、そして
「ヴァリエール……」
 出来ることなら、顔を合わせずにここからは立ち去っていたかったのが本音だ。
「生徒は下がっていろと言っただろう!」
「あなた方だけでは状況を変えられないから、手を貸して差し上げると言っているんでしょう?」
 銃士隊隊長の言葉に平然と返し、スコール達に向き直る。
「あなた達も、手を貸して下さるかしら?」
「人質の救出か?」
「ええ。実はあんまり時間もなくてね……」
「ちょっとツェルプストー!あんたこいつに頼むつもり!?」
 ヴァリエールが目を三角にしてツェルプストーと呼ばれた少女に怒鳴る。
「もちろん。アナタは知らないかもしれないけどね、彼、並みのメイジよりずっと強いわよ」
「それは……知っているけど……」
 不満げなヴァリエールを余所に、スコールとアニエスへと視線を向ける。
「それで、どうかしら?」
「……こちらとしても、依頼主に何かあれば事だが」
「ああ。ここは協力すべきだろうな」


 ライオンハートも帯刀せず、両の手を挙げて敵対の意志を示さないまま、スコールは食堂へと近づいていく。
 もちろん、敵対の意志を見せていないとは言っても賊側に認知された行動ではないから声がかけられる。
「おい貴様!ここに近づけば人質の命は無いぞ!」
 ここまで近づければ十分だ。あとはG.F.の発動準備を開始しつつ隙をうかがうのみ。
「この学院の長に雇われていた傭兵だ。任務をこなしたが……学院長が死んだ場合どこから成功報酬を請求出来るのか教えて欲しい、と言伝てもらいたい」
「そんなこと知るか!早々に離れろ!」
 窓からこちらへと杖を掲げてみせる。
「それは困る。こちらも慈善事業をやっている訳じゃない。直接会う必要はないんだ。学院長に取り次ぐだけで……」
 全てを言うより早く、スコールは雷に撃たれた。
(警告も無しか……!)
 一瞬身を仰け反らせ、前方へ体が傾いでいく。
 ざわ、と後ろと食堂内から声が上がる。
「良いか!?早く女王を連れてこい!さもなくばここにいる全員が――」
 窓辺からの声が辺りに響く。つまりそれは、
(俺から、目を離したな!)
 倒れる中、前方へ手を付きクラウチングスタートの構えに。
「――こいつと同じ様に――」
 一番体重が掛かる時の反動を利用してダッと一気にかけ出す。オートヘイストは掛かっていないが、それでもトリプルをジャンクションしてあるスコールのスピードは並みの人間とは桁違いだ。見張りがそれに対応出来ないうちに、窓枠越しで右ストレートを見舞う。
 倒れ込む犯人によってまた別の悲鳴に満たされる食堂へ目を向け、全ての対象を補足。
「G.F.召喚、セイレーン!サイレントヴォイス!」


 一瞬にして辺りの風景が食堂から海辺へと変わって、打ち寄せる波飛沫に、座っていた女子生徒達が悲鳴と共に慌てて立ち上がる。
253SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:07:30 ID:frcAvbeU
「おい、勝手に動くな!」
 賊がそうは怒鳴るが、彼ら達自身、いきなり変わった辺りの光景にすっかり動揺していた。
 そこへ、音が聞こえてきて食堂にいた者達は全員がそちらへ目を向ける。
 海辺の浅瀬、そこに突き出た一つの岩礁。その上に座った裸の亜人がハープを奏でている。頭から生えているのは髪か羽か、誰も見たことのない亜人だった。
(――ほ、これは眼福じゃ。が――)
 何か危険な匂いはした。ダテに齢を重ねた訳ではない魔法学院学院長オールド・オスマンの経験が直感へと結びつき警鐘を鳴らすが、とらわれの身の中、動くに動けない。
 そして気付けば、全員再び食堂の中にいた。
 一体何が起こったのか?
 特に誰に向けるでもなくそう呟こうとしたオールド・オスマンは有ることに気付いた。
 ――声が出ない。
 今度こそどうしたのかと、周りに意思疎通を試みようとして、悟った。全員が、首を押さえている。つまり、この場にいる者達全てが自分と同じ状況になっているのだろう。
 正体不明の幻覚――らしきモノと声が出せなくなった自分たち。
 じたんだをふむ者の音が聞こえてくるからコモン・マジックのサイレントの類では決してない。この症状に晒されているのは場ではなく自分たちだ。
 そこでオールド・オスマンはまた別のことに気付いた。
 何で、食堂の真ん中に紙風船など浮かんでいるのだろうか?


 カッと食堂中が光に包まれるのを察する。
 黄燐を包んだ紙風船を使い、火と風のメイジによって行われた即席のスタングレネードだ。
 スコール達に話された段階での作戦は、この紙風船だけで突入する予定だったのだが、それでは自棄になった賊のめくら撃ちの魔法で死傷者が出ないとも限らない、と渋られていたのだ。
 そこでスコールは、それよりも前に自身が食堂内にいる者達全てを口の聞けない状態にするとし、作戦を補完していた。
「突入!」
 閃光の確認と共に銃士隊隊長の号令が下され、前衛と後衛に別れて突入が開始される
「レオン!」
 同時に走り出しながらも、誰より早く走ってきたアニエスが投げたライオンハートを受け取り、半透明の青い刀身を抜き放つ。今回は対メイジ戦が、それも特殊任務に向けられるような強敵が想定されているため、アニエスの方もジャンクションは済ませていた。
「行くぞ!」
 発光に目をやられないようにと隠れていた壁から、窓側へ移りアニエスと共に内部へ突入する。
 口の聞けなくなった事と、視界を奪われたことで内部は行動を躊躇する者がほとんどで、半制圧状態とも言える状況だった。ただ、一人を除いては。
「動く奴が居る!」
 この場にいるオールド・オスマン以外の男ということで、そいつが敵対者であることはほぼ間違いない。その人物は手近な女子生徒の一人を掴むと、自分の体に引き寄せ盾代わりにしつつ食堂の出口へと向かった。
 その手に持つ杖はレイピア型のような刺殺出来るデザインには見えないが、
(あの体格、下手をすればそのまま首をへし折られかねないな)
 要するに、人質に出来てしまっているのだ。
「あれ、モンモランシー!?」
「これは……!?くっ!行動不能に陥っている賊を捕縛、急げ!君たちは他の生徒達の誘導を!」
 突入して、状況を理解した銃士隊隊長が他にそう命ずる。と、それに弾かれるように男は女生徒を連れたまま、食堂から表へ飛び出していた。
「あの男、目が利いているのか!?」
「そうらしい。目を閉じていたのか何なのか……」
 驚きの声をあげる隊長と共に、男を追って表に出る。以前ヴァリエールが囚われていた時と同じく、距離を詰めて擬似魔法のデスをたたき込めば何とかなるだろうが……。
「全員下がれ!人質を取っている!」
 後詰めに回っていた面々が、距離を保ちながらの後退を余儀なくされる。そんな中――
「? コルベール!下がって頂きたい!ひとまずは人質の安全を……」
254SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:08:30 ID:frcAvbeU
 学院に所属する男の中でただ一人難を逃れていた人物が、離れるどころか近づいていっていた。
「ミスタ・レオンハート、彼を話せるようにしてくれるかな?」
「出来ますがしかし……」
 銃士隊隊長の言葉を遮り、妙な殺気を伴ったコルベールからの申し出にスコールは難色を示す。
「どのみちこの状況では魔法が使えようと使えまいと大した差はありません。それよりはまず意思の疎通を図ることが重要でしょう」
(会話で隙を作り出すつもりか……?)
 真意を推測し、それに乗ってみる。ジャンクションを切り替え、男に向かって手を向ける。
「G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」
 ぱぁっとその男を光が包む。
「は、ははぁっ!お前は……。お前は!お前は!お前は!」
 口がきけるようになった男の口調から察せられたのは驚きと、
「捜し求めた温度ではないか!お前は!お前はコルベール!懐かしい!コルベールの声ではないか!」
 そして歓喜だった。
「何年ぶりだ?なあ!隊長殿!二十年だ!そうだ!」
(隊長?何のだ……)
「オレだ!忘れたか?メンヌヴィルだよ隊長どの!おお!久しぶりだ!」
「メンヌ……ヴィル……?」
(ん?)
 隣にいる相棒が、男の名を繰り返したが、今はとりあえずそのメンヌヴィルとやらの様子をうかがう。
 メンヌヴィルの興奮ぶりに対して、コルベールは静かだ。
「わたしの教え子から、離れろ」
 ただし、その静かさの裏には別なモノが見えるが。
「教え子?なんだ?隊長殿!今は教師なのか!これ以上おかしいことはないぞ!貴様が教師とな!いったい何を教えるのだ?炎蛇≠ニ呼ばれた貴様が……、は、はは!ははははははははははははははははッ!」
 そこで腕の中で震えている少女に顔を向ける。
「きみたちに説明してやろう。この男はな、かつて炎蛇≠ニ呼ばれた炎の使い手だ。特殊な任務を行う隊の隊長を務めていてな……、女だろうが、子供だろうがかまわずに燃やし尽くした男だ」
 その話の内容に、ハッとスコールは隣の相棒を見た。余りにも似通っている。
 では噛み締めるように名前を繰り返したのはつまり……
「メンヌヴィル!それに、コルベールと言ったな!?」
 コルベールの静かな怒りも、メンヌヴィルの高笑も遙かに上回る怒声を放つアニエス。その場にいる全員の目が彼女に集中する。
「貴様らが……貴様らの居た隊が魔法研究所実験小隊か!」
「ほう!オレたちのことを知っている者が居たとは光栄だな」
 心底嬉しそうに、軽くアニエスの方へ向けた顔を、僅か数瞬で距離を詰めたアニエスの右膝が強襲する。反動で出来た滞空時間を利用し、もう一度右の、今度はヴォレーキックを頭部へと見舞う。
 メンヌヴィルが吹き飛ぶ傍らで、放り出される形になった少女の側へとスコールは駆け寄る。
「G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」
 助け起こしつつ、サイレスを解除する。
「怪我はないか?」
「ちょ……ちょっとすりむいた……」
 半泣きになっているのは、人質にされていた恐怖か、それとも安堵か、或いは両方か。
 ともかく、このままではアニエスの戦いに巻き込まれかねないと、少女を抱えて離脱する。
 アニエスの剣が趨り、ブーツが舞い、拳が唸った。メンヌヴィルにいくつもの打撃と斬撃を見舞っている。もちろん、ジャンクションの上乗せでだ。
「ぐ、く、お!オレは……!コルベールと、だ!フレイムボール!」
 猛攻の中で、必死に反撃の魔法を向けるが
「そんな炎で私の怒りまで吹き消せるかぁっ!」
255SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:09:30 ID:frcAvbeU
 属性防御ファイガで防ぐどころか自身の活力へと転換し、その燃える体のままに体当たりを行い、
「待っていたぞ、仇を討てる、この時をなぁっ!」
 どぉっ!とメンヌヴィルの体が塔に打ち付けられる。
「く……う、う……馬鹿な……貴様、人間か……」
 右手の剣は憎き仇敵を討たんが為
「人間などとうに止めた。あの時の仇を討つために!」
 左手を添えつつ振りかぶり
「オレは……オレは死ねん!コルベール隊長と……あの時の、続きを……!」
 二十年前に着火した恩讐の種火を業火に変えて
「もう二度と貴様らの好きにさせるものか!その続きは冥府でやれっ!」
 一刀両断。
「お、ごぉ、お……」
 袈裟切りに切り捨てられ、メンヌヴィルはついにその目的の欠片すら行えぬままに、塔の外壁にもたれて果てた。
「奴もすぐに送ってやる……」
 背後の壁ごと斬ったためにアニエスの剣は完全に刃が潰れていた。
 握りを返し、反対側の刃を外へと向けて振り返る。
「王軍資料庫の名簿を破ったのは、貴様だな?」
 その視線の先にいるのは、全てを察した様子のコルベール。
「そうだ」
「メンヌヴィルには言い損ねたな……教えてやろう。わたしはダングルテールの生き残りだ」
「……そうか」
 静かに、呟く。
「弁明も開き直りもしないのか」
 冷ややかにそう尋ねつつ、正眼に構え直す。
「……討たれる覚悟が出来ているととらせてもらうっ!」
 振りかぶった高速の一撃は、
「待て、アニエス」
 彼女が高速に至る力を与えた男によって防がれた
「何故止める!?その男は、私の捜していた最後の一人だ!」
 ライオンハートで剣撃を受け止めながら冷静に、答える。
「ここで斬ることは出来るだろうが、それじゃああんたが捕まる。俺としても、あんたの敵討ちに手を貸したいとは思うが、それ以上に捕まって欲しくない」
 スコールの言葉に、ようやく徐々に周りが見えてくる。
 銃士隊の面々はあっけにとられた顔をしているし、助け出された生徒も恐ろしいものを見るような目を向けている。
「……少し頭に血が上っていたようだ」
 血を拭い、剣を納める。
 もう一度だけコルベールを睨み付けた後、つい、と視線をずらした。


 なんだ今の戦いは。
 ルイズは目を見開いていた。
 銃士隊の訓練、コルベールに習った擬似魔法、そんなのはまるで役に立たないと言わんばかりの傭兵アニエスの戦いぶりと、それを鍔迫り合いを経て制止して見せたスコール・レオンハート。
(……敵わない)
 もし、アンリエッタから彼を討伐するように『命令』されていたとしても、一矢報いることすら敵わずに無駄死にを晒してしまうだろう。
 ならば、今成すべき事は一つ。
 アニエスは少し離れたところで目を瞑り、スコールはライオンハートを鞘に収めて銃士隊隊長へ向く。
「他に討ち漏らした連中はいるか?」
「い、いや、他は全て私の部下が捕縛している」
「そうか。なら、すぐにみんなを喋れる様にしてくる。人質達はまだ食堂か?」
「ああ、頼む……アニエスの名は知っていたが……何とも……」
 隊長の独り言のような言葉を背に聞きつつ、食堂へと歩を向けるスコール。その前に、ルイズは立つ。
「……ヴァリエール?」
256SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:10:30 ID:frcAvbeU
「スコール・レオンハート、話があるわ」
「……早く人質達を喋れるようにしたい。その作業をしながらになるが」
「っ……ええ、いいわ」
 真面目に人の話を聞けと怒鳴りたいところだったが、とりあえず学友や教師達のことを思い出して従う。
「あなた、この前ウェールズ皇太子を殺めたそうね」
 歩き出したスコールに尋ねると、不思議そうな顔をしてルイズへと視線を向けてくる。
 周りに居た銃士隊の者で、ルイズの声を聞いた者はハッと目を向けるが、ルイズはそちらには気付かなかった。
「?……誰のことだ」
「とぼけないでっ!アンリエッタ様の前で、ウェールズ皇太子を亡き者にしたでしょうっ!?」
「……知らない。俺がこの国の女王に会ったのは、あんたを送った時と、タルブ平原の戦いの報償を受けた時の二回だけだ」
 きっぱりとそう答えつつ、食堂への戸を潜る。
「何ですって……?」
 余りにも堂に入ったたたずまいに、ルイズが飲まれかけたところで、別の方から声がかけられる。
「ああ、ようやく来たわね、ミスタ・レオンハート。これ、どうしたらいいのかしら?どうやってもみんなが喋れるようにならないんだけど」
 キュルケの質問に、一つ頷きながら、学院長の側に向かう。
「大丈夫だ、俺が治せる。みんなが混乱しないように、順番に待たせておいてくれ。
 G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」
 ぱっと光が散り、オールド・オスマンの沈黙状態が解除される。
「お、おお……喋れるぞ!いやぁ、一時はどうなることかと思ったが、助けられてしまったのう」
 こりゃ追加料金も払わなければならんかな?とおどけるオスマンの視界に、ルイズが入ってくる。
「待ちなさい!アンリエッタ様がアンタの姿を見たっておっしゃってるのよ!陛下が嘘をついたとでも!?」
 何だかどこかで聞いたような問答だなと、オスマンは目を細める。
「……俺は女王にも皇太子にも会っていない。
 アビリティ ちりょう」
 キュルケの誘導で並んだ女子生徒と教師達の沈黙状態解除をスコールは始める。
「あー、ミス・ヴァリエール。話は後回しにせんかね?この通りミスタ・レオンハートは忙しいようじゃし、その件についてはまぁワシも少々聞き知っておるでな。答えられる範囲では答えよう」
「アビリティ ちりょう」
 横目でその光景を見ながらちりょうを続ける。喋れるようになった者達も、ルイズの放つ威圧感に萎縮して、或いは白い目をしつつそそくさとその場を去っていった。
「……ではオールド・オスマン。お聞きしますが、あの事件で現れたというウェールズ様は本物なんでしょうか?ワルド子爵によって殺められた筈なのですが」
「う……む、それは……」
 流石にそこまでは知らないオスマンが言い淀んだ所で、スコールが振り向く。
「あれは本物のウェールズ皇太子だ」
「アンタ、やっぱり……!」
「ミスタ・レオンハート?」
 オールド・オスマンが良いのか、と目で利いてくるが、これは幾らでも言いつくろえる。それに出来るだけルイズとの繋がりは早めに切っておきたいのがスコールだ。
「あの事件に関して、別件で情報が必要だったのである程度調べてある」
 そこでキュルケへ視線を向ける。
「ラグドリアン湖で、俺が水の精霊と契約を交わしたのを覚えているか?」
「え?あ、ええ、確か指輪を……そっか」
 スコールの指摘にキュルケは何かを思い出したように頷く。
「アンドバリの指輪ね」
「アンドバリ……?」
「ふむ、水の先住魔法を封じ込めた指輪じゃったかな?」
 その老成された知識を呼び起こしながらオールド・オスマンが呟いた。また一人沈黙を治してスコールが振り向く。
257SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/02(土) 22:11:44 ID:frcAvbeU
「そうです。死者に偽りの生を与え、人を意のままに動かす指輪。長いので経緯は省きますが、俺はその奪還を依頼されています。推定ですが、現在の指輪の所持者はアルビオン帝国皇帝のオリバー・クロムウェル……」
「ほ……」
 スコールの言葉にオスマンは一つ感心したようなため息を出すと、スッと目を細める。
「つまり、そのウェールズ皇太子というのは、指輪の力によって蘇えり……」
「アルビオン皇帝に操られていた、と考えています」
 そこで再び、スコールは治療に専念し始める。
「ふーむ……王家への反乱のみならず、人の意志をねじ曲げるとはオリバー・クロムウェル、外道じゃな」
 吐き捨てるようにそう言ったオスマンの顔がルイズへ向けられる。
「結局ミスタ・レオンハートの手を煩わせてしまったが、これでミス・ヴァリエールの疑問も晴れたかな?」
「は、はい……」
 ルイズの胸中に飛来するのは、安堵と怒り。
 あのウェールズ皇太子は本物だけれど、意志が無い操り人形だった。つまりそれは、狙うべき仇は目の前の男よりもあの皇太子の決死の覚悟を冒涜したレコン・キスタの連中なのだと言うこと。
(……こいつを相手にしなくて良くなってほっとするだなんて……情けない!)
 悔しさにギリ、と奥歯が鳴るが、今はそんなことを言っている場合ではないだろう。今は兎も角一刻も早くこの事を女王に伝えなければ。
 そうルイズが意識を固め、手紙をつづるためにひとまず自室へ戻ろうと踵を返したところで、銃士隊の一人が駆け込んできた。
「水メイジは居るか!?魔法が使えるようになっているならすぐに来てくれ!コルベールが流星に打たれた!」




今回はここまで。
アニエス無双の回でした。
念のために書いておきますが、私は別にコルベールが嫌いという訳ではありません。というか寧ろ好きです。男分の少ないゼロ魔にあって俺的に殆どオアシスのような存在です。
ただアニエスに力を持たせると、コルベールの出番が減りアニエスの復讐劇が完遂される、という課程と結果です。
それでは次回、「強襲揚陸白兵戦には浪漫がある」
258名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 22:26:07 ID:+b6oHz8j
投下乙です。
最後はアニエスのコメット(FF8的にはメテオ?)でもくらったのかwww
259名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 23:03:37 ID:mzCF19hr
新年早々からの投下
皆様楽しませていただきました
感謝の乙を捧げたい

>番長
そのむら まい って・・・まさか混沌の鏡っすかぁ・・・コンパクトっすかぁ
どっちにしろ力がある代物だとヤバいですね
ジョゼフの所にいけばきっとエライことに
>SeeD
ああ、コッパゲ先生・・・コメット喰らったら流石に・・・
先生も殺されるだけのことをしましたからね
せめてアニエスが後悔の無いように生きられることを願います

ちなみにたった今]Vが終わりました
今回のシステム上とあいまってラスボスが糞外道です、リスタートなければ液晶叩き割ってますね
終わってみてモンスター召喚ネタは思いつきそうですが、キャラは難しいですねぇ
どっちかっていえば逆召喚向きなのかもしれない
もしくは冥碑召喚でルイズがミッション受諾
260名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 23:06:27 ID:PAneXztx
バンチョーの人、SeeDの人、乙でしたー。
メガテンはFCの頃からやってますけどP3・P4はやって無いんですよね……なので彼の人物評についてはノーコメント。しかし彼によって変化する物語に面白いと感じています。
そしてコルベール先生がどうなったのか、それだけが気がかりです。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 00:33:42 ID:taXW/Ucd
よい年始であります
262名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 00:58:58 ID:vHlXelXa

メテオで事故死にみせかけて暗殺してしまったのか
コルさん南無
263名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 01:06:08 ID:NvDs+wUg
SeeDの人、お久しぶりです&あけましておめでとう&更新乙です。

メンヌヴィルがマジで空気。まあ、火オタその2だから、属性防御してれば楽勝ですな。
火オタその1・コルベールもメテオで瀕死。これが事故死になるか殺人になってしまうのか続きを期待しています。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 01:14:20 ID:KXRlfzBS
あけおめ、予定ないようなので代理いきます
265虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:15:35 ID:KXRlfzBS
 奪う、戦争ではごく当たり前のことだ。
 武器に食料、乗り物など、技術すら奪うし命も奪う。
 マスターチーフからしてみれば敵歩兵は歩く武器庫、この世界でもそれはあまり変わらないのだが……。

「マスターチーフ、考え直さないか? 君は魔法を使えない、失敗すれば落ちれば死んでしまうぞ?」
「問題無い」
「何故そう言い切れるんだ?」
「失敗はしない、それにこの高さから落ちても死にはしない」
「……君がタフなのはわかった、だが落ちて死ななくても下の兵に包囲されるだろう?」
「その為に子爵が居る」
「まさか失敗して落ちたときは魔法で蹴散らせ、等と言わぬよな?」
「レビテーションで重量の軽減を頼む」

 狙って飛んだとしても、相手は常に動いている。
 不意に速度を早めたり緩めたり、生き物故の不規則。
 魔法を持たぬチーフに落下中任意で方向を変えることは難しい、500キログラム近くあるからこそ風圧に因る軌道変化も難しい。
 無論そんな重さの物体が落ちれば、その下にあるものは大きなダメージを受けることは間違いなし。
 そこで子爵の魔法で重さを軽減しつつ、風圧に頼った軌道修正より確実であろうレビテーションでズレを減らす。

「まだ上か」

 唖然とするワルドを横切り、チーフは廊下の窓の外を覗く。

「ちょっと待ってくれ、それは幾ら何でも……」
「出来ないのならそれでいい、別の手段を探す」

 挑発めいた、実際挑発なのだろう言葉にワルドは噛み付く。

「その位瞼を瞑ってでもやってみせよう!」

 そう言った時にチーフは振り向き、ワルドは自分の失言に気が付いた。
 大きな自信を持って出来ると宣言してしまった事、その一言が作戦の遂行可能かを決めてしまった事に。

「なら任せる」

 ワルドは呻きながらもまだ口を開く。

「……この作戦を行えることはわかっている、君の度胸と僕の魔法が加われば無理ではないと思う。 だが成功するかどうかとは違う、もっと確実な作戦を考えた方が合理的ではないのか?」
「子爵は任務の失敗を念頭に置いているのか」
「その可能性もあると言っているだけだ!」
「任務を達成する、しないの話ではない。 我々は任務を『達成させるしか無い』」
「それは……、確かにそうだが……」
「ならば考える事ではない、やるだけだ」
「………」

 考えるだけで任務を遂行できるならいくらでも考えよう、だが現実はそうではない。
 考える暇があるなら動け、動いて任務を達成させるためだけに動け。
 それ以外の思考は必要ない、不要なものにリソースを配分するなどただ失敗への確率を増やすだけ。

「……本当に、出来るんだな?」

 その問に頷き、歩き出す。
 目指す場所はニューカッスル城にある一番高い部屋、ウェールズの居室だった部屋。
 降りるはずだった階段を登り、上へ上へと上る。
 その途中もやはり敵は居ない、降りてくると思い恐らくは下の階に兵を揃えていた可能性が高い。
 予定通り下の階へと向かっていれば、激しい戦闘になっていたかもしれない。
266虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:15:59 ID:KXRlfzBS
「……しかし、君の行動は突拍子も無いな。 下から行けないからと言って上から飛び込む、なんて普通に思い付かないと思うのだが」
「やれる事は全てやる、それだけだ」

 階段を駆け上がりながら、ワルドはチーフの奇怪な考え方に声を漏らす。
 マスターチーフと言う存在を生み出したスパルタン計画の真髄、超兵士育成による状況の打破。
 なんとしても作戦を遂行する事を求められる存在、故にあらゆる方向からのアプローチを掛けなければいけない。
 不可能を可能にすると言うことがこの計画の最大の命題、ならばマスターチーフは最大の成功作と言われるだろう。
 そう言われ、思われて当然の戦功をいくつも残しているのだから。

「……そうか、やはり僕とは違うのだな」
「………」

 軍人と言う括りは同じでも、与えられた役割は全く違う。
 ワルドの役割りは『王族の護衛』、対するチーフの役割りは『最前線で戦う歩兵』。
 最も前に出る軍人と、最も後方に居る軍人、比べ差異を語るなど意味はない。

「子爵の考えは分かり難い、だが国の安否を思うのは理解出来る」
「………」

 結局はどちらも守るために動くと言うこと、思惑は理解できないが行動は理解出来る。
 それを機に会話は途切れ、二人は階上を目指す。





「ここだ」

 子爵の記憶頼りに廊下を進んでとある部屋へと入る。
 そこはニューカッスル城で一番高い天守の一角にある部屋、ウェールズの居室であった。
 室内には木で出来たベッドや机と椅子、壁には戦いを記したタペストリーや、1メイルほどの窓位しかない質素な部屋。
 ドアを潜り室内に入る、最短で窓まで歩み寄り、外を確認する。
 上下左右、室内から見える景色を確かめ、窓を開いた。

「すぐに後を追えば良いのだな?」

 ワルドのその問に頷き、もう一度外を見る。
 城の上空にはフネが浮かび、その周囲には騎士が乗った竜を飛び交っている。
 城の周囲にも竜が飛び交い、おそらく場外に出るだろう存在を警戒している。

「下しか狙えないだろう、タイミングは全てチーフに任せる」

 万有引力、全ての物は重力に引かれて下へと落ちる。
 チーフが単身で飛べない以上落ちるしかあり得ないため、チーフより下に居る竜しか狙えない。

「……行こう」

 僅かばかり顔を出してこちらに気がつく位置に敵が居ないことを確かめ、窓から外へ出る。
 バルコニーなど無く、何かに掴まっていないと確実に転げ落ちる傾斜。
 窓枠がチーフの重量に耐えられるか確かめ、右手にハンドガンを持つ。

「ひえー、高けぇーな。 落ちたら相棒でも死ぬんじゃないかね?」
「やはりインテリジェンスソードか……、確かにここから落ちたら頑丈なオーク鬼等でも即死するだろう」

 高いゆえに風が吹く、風切り音が耳元でうるさく聞こえるほど。
 高所恐怖症の者なら失神してもおかしくない、そうでなくとも足が震えたりするだろう高さ。
 それを目前としてチーフは淡々と答えた。
267虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:16:28 ID:KXRlfzBS
「問題無い、2リーグの高さから落ちた事がある」
「「……は?」」

 デルフリンガーとワルドの声が重なる、それを切っ掛けにチーフは窓枠を手放した。
 踏ん張り体を傾け、天守の傾斜に沿って駆け出す。
 5メイルほどの、もう落ちていると言って良い傾斜を駆けて飛び出した。

「冗談だろぉぉーーーーー!?」

 自殺紛いに飛び出した事か、あるいは2リーグの高さから落ちた事か。
 短い助走で傾斜を蹴って横への距離を一気に稼ぐ。
 空を飛べないチーフが空へと舞う、2メイル越えの巨体、1000リーブル近い物体が速度を上げながら落ちて行く。
 その落下地点は地面、では無く空を飛び飛竜。
 落ちならがも他の飛竜との位置を確かめ、できるだけ位置を調整する。

 頭を上に向ければ続いて飛び降りて風を切るワルド。
 下に向ければ上に気付かず飛び続ける飛竜。
 後十秒も無い、そうして飛竜の上に降りれるだろう。
 ……順調に行けば、だったが。

 元より人間より優れた感覚を持つ飛竜が、上から落ちてくるチーフ達に気が付き大きく鳴き声を上げる。
 その声、警告だったのだろう鳴き声に反応して竜騎士が手綱を引き、飛ぶ速度を上げる。
 それは飛竜の上に落ちるはずだった予定を狂わせるに十分、このズレは修正出来ない、チーフは間違いなく地面に叩きつけられる。
 チーフが一人だったならの話だが。

 飛竜ではなく地面の上に落ちるはずだったチーフが突如大きく曲がる。
 チーフが小さな閃光を放ち、エネルギーシールドが反応するほどの威力を持った風に煽られて曲がる。
 真っ直ぐ下に落ちる軌道が、斜め下に落ちる軌道へと変化、その調整は神掛かっていたと言って良い。
 バランスが崩れて縦横問わず回りながらも見事、速度を上げた飛竜の上へと四つん這いに近い状態でチーフは落下する。

「ギャォッ!」
「なッ!?」

 無理やりな軌道修正で僅かばかり落下速度が鈍ったとは言え、1000リーブル近い重さを持つチーフが落ちれば人より強靭な飛竜とは言え痛い。
 むしろそれで墜落しない竜を褒めるべきか。
 飛竜の悲鳴と、竜騎士の驚きと、落下時の一瞬の硬直が重なるが、竜騎士へ迫るに十分な時間が生まれている。
 飛竜の背を蹴って駆け出し、低い姿勢からの強襲。
 チーフの太い腕が竜騎士へと伸び捉える。

「ぎざばッ!」

 背中から抱え上げられ、杖が握れぬよう腕を拘束。
 ミシリと竜騎士の背中が軋み、濁った声が上がる。

「一つ言っておく」

 飛竜の上と言う不安定な足場で、竜騎士の腰に指していた杖を引き抜いてチーフは竜騎士に向かって一言。

「杖を手放すな」

 そう言って強引に竜騎士に杖を握らせ、腕一本で竜騎士を空へと放り投げた。
 悲鳴を上げながら竜騎士は落ちて行く、そうして全長10メイルを超える飛竜に付けられた手綱を握る。
 それを引っ張り、鳴いていた飛竜の速度を緩める。
 ざっと周囲を見渡し、異常に気が付いて向かってくる他の飛竜を視界に収める。
 飛竜のブレスや竜騎士の魔法が届くまで後数十メイルだが……。
268虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:17:05 ID:KXRlfzBS
「本当に無茶をする!」

 ワルドが飛竜の背に降りてきて、手綱を奪うように握る。

「しっかり掴まっていてくれよ!」

 手綱を操り、その先の飛竜まで操る。
 飛竜が吠え、その大きな翼を羽ばたかせ速度を上げる。

「あれは片付けるか!?」

 速度を上げて、クロムウェルが居るだろう天幕を目指すのだが。
 他の飛竜が追撃を掛けてきている、間違いなく邪魔に成るだろう一団。
 500キログラム、1000リーブルほども有るチーフを乗せていれば、間違いなく速度の差が出来上がって追いつかれる。

「ああ」

 ワルドへと背中を向け飛竜の背びれを掴み、出来るだけ飛竜の揺れと体の揺れを合わせる。
 左手で背びれを掴み、その左手の上にハンドガンを持った右手を乗せる。
 飛竜が羽ばたく際の上下の揺れと、敵飛竜の軌道を予測する。

「………」

 より正確に急所へ、一撃必殺を意識したハンドガンでの狙撃。
 銃爪に少しずつ力が込められ、後数ミリ引けば弾丸が飛び出す。
 狙う、追撃を掛けてきている飛竜の頭を。

「片付ける」

 上下に揺れる敵飛竜の頭部、それが一瞬止まる位置。
 そうして引き金を引いた、『M6G ピストル』の銃口からマグナム弾が吐き出される。
 同時に排莢、僅かばかりに銃口から排煙、衝撃を逃がすためのスライドブローバック、そして弾頭は敵へと一直線。
 高威力高機能化が進んだ地球人類が使う拳銃、ハルケギニアの物と数倍から数十倍もの威力や射程距離を誇るそれ。
 比較的威力の低いものと認識されるハンドガンでも、飛竜の鱗を持ってしても止められるものではなかった。

 硬い鱗を突き抜け、頭蓋骨を砕き、脳を蹂躙して、飛竜を絶命させる。
 そうして二度三度と間髪入れずに発射音。
 そのどれもが追撃を掛けてきている飛竜へと吸い込まれるように当たる。
 突如頭に赤い花を咲かせて死に至る飛竜に驚愕し、墜落する飛竜から飛び降りる竜騎士達。

「これで!」

 邪魔者はいなくなったと、ワルドが声を上げて手綱を操る。
 翼を羽ばたかせながら滑空して行く、半ば落ちているために速度も加速して行く。
 どんどん大きく、近づいて天幕の詳細が分かる距離まで迫る。
 下では飛竜の落下と、下降してくる飛竜に慌て驚き走り回るレコン・キスタ軍。

「誘き出す」
「僕に討たせてくれ!!」
「任せる」

 なんとしてでも自分の手でクロムウェルを打ち取りたいのか、ワルドが声を荒らげてチーフに言った。
 それを聞き任せながらも腰のフラググレネード一個とプラズマグレネード二個に手を掛ける。

「爆音で気を引く、出てきたら魔法で討ち、出てこなければ天幕ごと討て。 これに関しては成功しても失敗してもすぐ離れよう」

 任務の内容は神聖アルビオン共和国皇帝、クロムウェルの捕獲か暗殺。
 だが大前提の二人とも生きて帰ることを達成しなければならない、クロムウェルに構い過ぎて討つことも逃げることも出来なくなるのは避けなければならない。
 たった一度の一撃離脱しか許されない状況、軍艦も浮いているし、遠くだが飛竜もまだ飛んでいる。
 もたもたしてるとどうにも出来なくなる状況、その状況へと至る泥沼に片足を突っ込んでいるために一度だけの攻撃。
269虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:17:47 ID:KXRlfzBS
「……行くぞ」
「ああ!」

 青色の球体に緑色の線で構成されたプラズマグレネードを右手に取り、起爆用のスイッチを押す。
 同時に甲高い音が鳴り、球体から青白い炎のような物が溢れ出す。
 それを飛竜の尻尾に当たらないよう上へと放り投げて落とす。
 青白い尾を引きながら落下して行くプラズマグレネード、数秒掛けて落ちたそれは地面へと到達し。

「グオ?」

 高さ5メイルほどもある一匹のオグル鬼の頭に落ちた。
 音を出しながら炎のような青白い光を放っているそれを手に取ろうとする。

「……?」

 だが手に触れれば手もくっついて離れない、力任せに引っ張るも異常な吸着力に引き剥がせない。
 それを見ていた周囲のオグル鬼も興味本位で近づき、それに触れようとした時閃光が走った。
 プラズマ爆発、プラズマグレネードがくっついていたオグル鬼の上半身が吹き飛び、そのオグル鬼に近寄っていた他のオグル鬼も爆風で致命傷を負いながら吹き飛んだ。
 一瞬で起こった惨状、何が起こったのか分からないまま肉片となったオグル鬼。
 ざわめきが起きて、少々慌て始める周囲、それを加速させるようにもう一度爆音が鳴った。

「な、何が起こっている!?」

 吹き飛んだオグル鬼と、別のところでもう一度起こった爆発に驚き状況を確認しようと一部隊の指揮官が声を荒げる。

「わかりません、青い光が爆発したとしか……」
「さっさと調べろ!」

 そう怒鳴り終えると同時に、さらに爆発音。
 慌てふためき、言ってはならない一言がついに飛び出した。

「敵襲! 敵襲ッ!!」
「敵!? どこだ!」
「竜騎士達は何をしていた!!」
「南から来ているらしい! 戦闘準備!!」
「違う! 東だ!」

 錯綜する情報、正しいのか間違っているのか、それを確認出来ずに慌ただしく動く。
 まるで大砲のような轟音、それだけで戦況が有利に発展する。
 たった三つの爆発、一つのフラググレネードと二つのプラズマグレネードでレコン・キスタ軍に混乱が広がっていく。
 ただでさえ数が少ないグレネード類を全て使い切ったのだ、多少なりとも混乱してくれなければ困る。
 それを尻目に飛竜とそれに乗った二人は一際大きな天幕へと迫る。

「やはりあれだったか!」

 手綱を握ったままワルドは立ち上がり、右手に持った杖を天へと向ける。
 爆音と騒ぎが気になったのか、大きな天幕からメイジの一団を引き連れているクロムウェルらしき男が出てきた。
 それを確認すると同時に風が大きく鳴る、ワルドの杖先に風が渦巻いて轟音を立てる。
 高速で空を飛び、耳に入る大きな風切り音に負けぬ音を立てて、風が渦巻く。

「傾けるぞ、落ちてくれるな!」

 その警告に飛竜の背びれを掴み直し、落ちぬよう体を固定する。

「何が虚無か! あのような外道を認めてなるものか!!」

 バレルロール、螺旋に飛竜を回りながらも魔法で狙い澄ます。
 それは『エア・スピアー』、風で出来た投擲槍。
 薄い鉄板でも容易く抉り貫き通す威力を持った風が、逆さまになった飛竜の鞍乗から放たれる。
270虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:18:16 ID:KXRlfzBS
「……見事だ」

 高速、流石に音速には届かないが放たれた矢より速い速度で空を裂き、メイジの壁に守られていた男を斜め上から胸を串刺しにした。
 目算距離で200メイルもないだろうが、この距離で当てられるメイジはそれこそ数が少ないだろう。
 王族を守る魔法衛士隊の隊長と、スクウェアと言う肩書きは伊達ではなかった。

「これで……良い」

 手綱を引き、下降気味だった飛竜は舞い上がり始める。
 顔を見知っているワルドがクロムウェルだと言うなら、風の投擲槍で串刺しにした男はクロムウェルなのだろう。
 とりあえずだが殺害には成功したが、まだ脱出は終わっていない。
 無事に帰還して報告するまでが任務の内になる、気を抜くにはまだ早すぎる状況。

「どこでも良い、まずはアルビオンから降りなければ」

 この飛竜に乗るものがクロムウェルを殺したことなど、多くの将兵が見ただろう。
 混乱が広がっているとは言え、すぐに追っ手を掛けられるのは目に見えて居る。
 ぐずぐずしていれば包囲される。

「わかっている」

 前を向いたままワルドは頷き、飛竜に速度を上げさせる。
 チーフは背後の警戒のため、ワルドに背を向けていた。





「ああ、陛下!」

 一人の将軍が胸に大穴を開けて横たわるクロムウェルを見た。
 間違いなく死んでいる、胸に大穴を開けて生きている人間など居ない。
 これが陛下でなければ陛下が虚無の魔法で生き返せただろうが……。

「おのれ……ッ!」

 強い怒りを瞳に映し、振り返りながら立ち上がる。

「親衛隊は何をしていた! 竜騎士どもも一体何をしている! 早く賊に追っ手を掛けぬか!」

 喚くように大声を上げる、彼からしてみれば許しがたい出来事。
 空から侵入してきた賊を艦隊は見過ごし、竜騎士達は止められず、あまつさえ皇帝陛下を討たれてしまった。
 大失態にも程がある、艦隊の責任者と竜騎士達を処分したとしても収められぬ怒り。

「バカ者共が! 何をつっ立って居る!? さっさと動かんか!」

 その怒鳴り声にも反応せず、周囲の将兵はざわめくばかりで一歩も動こうとはしない。


271虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:18:53 ID:KXRlfzBS
「貴様ら!!」
「……ご、ぞのひづようばな……ゴホッ」

 怒り狂う将官は背後から聞こえてきた声に、驚きを顕に振り返る。
 胸に大穴を開けたクロムウェルがゆっくりと、吐血をしながらも立ち上がっていた。

「へ、陛下ッ!?」
「んん……、ゴホ。 流石にしてやられた」

 口周りの血を拭きながら、クロムウェルは平然と立ち上がっていた。
 その旨に開いた大穴はゆっくりとだが、見て分かる速度で塞がっている。

「少々侮りすぎていたか」
「お、おお……。 なんと……まるで奇跡……」
「奇跡ではない、虚無の力だ」

 そう言ってのけたときには胸の大穴は塞がり、何事も無かったかのようにクロムウェルは振舞っていた。
 予想外も良いところだ、死者を生き返らせるだけでも奇跡に等しいのに、まして自身にもそれを行えると言うのは想像だに出来ない。

「追っ手は掛ける必要はない、私を殺せたとぬか喜びしているだろうからね」
「しかし……」
「良い、死んだと思われていた者が実は生きていた、なんて面白い話ではないかね?」
「た、確かに」
「うむ、流石に穴開きのままではいかんな。 着替えが終われば会議の続きを始めよう」
「は、仰せのままに……」

 間違いなく勝てる、虚無の力を扱うクロムウェルに付いていけば、間違いなくハルケギニアはクロムウェルの手中に収められるだろう。
 そう考えながらも翻って歩き出すクロムウェルを、将軍の男は畏まって後ろ姿を眺めていた。
272虚無と最後の希望 代理:2010/01/03(日) 01:19:31 ID:KXRlfzBS
以上で投下終了です、幾つかご指摘が有ったグレネード。
プラグではなくフラグでした、申し訳ありません。

ここまで、代理終了
273名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 02:05:57 ID:utLLyuK8
番長いい男過ぎて感動した
274名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 14:35:01 ID:CSOj/L0c
夢幻紳士怪奇編より夢幻魔実也召喚。
いや学校怪談の「素敵な曾お爺ちゃ……もといお兄様」の方が良いか。
学校怪談の方だと幽霊状態だが召喚の際に受肉して。
ひ孫の九鬼子の少女時代を思わせるルイズを魔実也は気に入るだろう。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 14:46:53 ID:CSOj/L0c
ギーシュの香水は魔実也自身が拾うなら上手い事フォローして決闘にはならないかもしれない。

シェスタの曾お爺ちゃんが魔実也自身ってのも面白いか。
以前にもハルキゲニアに来て帰っていったって設定で。
シェスタ及びジェシカに不思議な力(霊能力)が備わってしまうが。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 14:57:06 ID:IXcJqMjG
08MS小隊一同召喚
カレンとサンダースに頭を丸められて使い魔もろとも学院の外を走らされるギーシュ、マリコルヌ達が浮かぶ
277ウルトラ5番目の使い魔:2010/01/03(日) 17:41:04 ID:YtLKwZ8k
皆さん、新年あけましておめでとうございます。
昨年度はたいへんお世話になりました。
では、今年最初の投下、81話を開始しようと思います。
よろしければ、17:50より開始いたします。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 17:52:52 ID:yR7ug5ai
支援
279ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (1/12):2010/01/03(日) 17:53:01 ID:YtLKwZ8k
 第81話
 アルビオン決戦 烈風vs閃光 (前編)
 
 古代怪鳥 ラルゲユウス
 円盤生物 サタンモア 登場!
 
 
 才人とルイズたちが時空間に囚われていた間に、事態は大きく動いていた。
レコン・キスタ艦隊はすでにロンディニウムを後にして、王党派陣営を直撃するために
進撃中だという。
「どういうこと? アルビオン艦隊は風石不足で動けないはずじゃあ」
「ヤプールもなりふりかまうのをやめたってことだろ。どのみち正攻法じゃあ
レコン・キスタの逆転がなくなった以上は、適当に使い切ってポイ捨てってとこだろうな」
 ゼロ戦をシルフィードとともに飛ばしながら、才人はこの先始まるであろう
血みどろの戦争を想像して吐き捨てた。彼らが時空間にいる間に敵艦隊は
この場所を通過して、今やずっと先にいるはずだった。むろん、そのときは
タバサたちの前を通り過ぎていったのだが、さすがに艦隊相手には手が出せず、
森に隠れてやり過ごした後に才人たちが戻ってきたのだ。
 二人はレコン・キスタ艦隊がすぐには風石不足で動けないと、甘く見ていた
ことを後悔した。
「もっと速く飛べないの?」
「だめだ、時空間内でいろいろ無茶をやったツケが回ってきやがった。これ以上
加速するとエンジンが止まるかもしれん」
 ゼロ戦は時空間脱出の後から、一定以上にトルクを上げようとすると異常振動を
起こすようになっていた。どうやらエンジンのどこかを損傷したのか接触が
悪くなってしまったようだが、元々放棄されていた上に、エアロヴァイパーと
あれだけ激しく戦ってなお飛び続けられたことこそ奇跡に近い。
 かといってシルフィードも翼を怪我したままで、エースもコッヴとの戦いで
エネルギーを消耗している。一行は、行きに比べて遅くなった足で、焦りながら
来た方向へと飛び続けた。
 
 
 だがそのころ、才人たちのはるか前を航行するアルビオン艦隊は、もはや
レコン・キスタの全戦力となった一万の兵力を全て乗せ、窮鼠猫を噛むの言葉を
自ら実践するために殺気を撒き散らしながら進んでいた。
「進め進め、今敵は油断しているだろう。勝利は我らの前にあるぞ」
 艦隊旗艦レキシントン号の艦橋から全艦に向かって流されたクロムウェルの
士気を鼓舞するための演説を受けて、各艦のレコン・キスタ派の貴族が
大きく歓声を上げるが、この艦の艦長、サー・ヘンリ・ボーウッドらのような
非レコン・キスタ派の人間はもうやる気を失っていた。
「いったい、なんのために戦うのか?」
 もとより革命などに興味のなかった彼のような人間は、もはや趨勢を
変えようもない今になっても、戦い続けなくてはならないことに疑問を
抱かずにはいられなかった。
 確かに、ここでウェールズら王党派の首脳陣を抹殺してしまえれば
王党派は力を失うが、後に残されるのは国内の混乱と国力の疲弊、
それにともなう税率引き上げによる圧政だ。一部の者のみを喜ばせる
ために国の将来を犠牲にする戦いに、彼のような実直な人間は苦悩したが、
その軍人としての実直さゆえに彼は上官たるクロムウェルに逆らえなかった。
280ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (2/12):2010/01/03(日) 17:54:37 ID:YtLKwZ8k
「索敵の竜騎士から連絡、前方距離四十万に王党派軍を確認」
「全艦、砲雷撃戦用意!」
 ボーウッドの命令が全艦隊に伝達され、将兵は配置につき、大砲に砲弾が
装填されていく。彼は本来この艦の艦長にしか過ぎないが、本来の艦隊司令官である
サー・ジョンストンが主力軍全滅の報を聞いて、脳溢血で卒倒してしまったので
ほかに艦隊指揮のできる人間もいないことから、不本意ながら司令官代理を
勤めて、かつて忠誠を誓った相手に挑まなければならない羽目に陥っていた。
「後世の人間は、私のことを恥知らずな裏切り者と記すかもしれんな。だが、
それが私の運命ならば、もはや仕方あるまい」
 唯一の救いは、彼らはもはやクロムウェルが人間では無く、レコン・キスタも
王党派もこの世から消してしまおうとしていることを知らずにすんでいることだろう。
 破滅へ向かって、様々な思いを乗せながら、レコン・キスタ艦隊はついに
王党派陣営を空からその視界に捉えようとしていた。
 
 その一方で王党派陣営も、再編を完了して行軍を再開しようとしていたが、
上空警戒中の竜騎士が大型戦艦を中心とした大小六十隻の大艦隊を
山影のかなたに発見して、即座に行軍準備の完了を待っていたウェールズと
アンリエッタの元へ報告していた。
「この局面で艦隊を投入するだと? 敵は何を考えているのだ」
 報告を聞いたウェールズは呆れかえった。ここでいささかの損害を王党派軍に
与えたところで、現在ほとんどの拠点を王党派が抑えている今となっては
補給もできずに艦隊はすぐに行動力を失う。むしろ戦略的にはロンディニウムで
持久戦に入り、艦隊の強大な攻撃力と防御力を防衛に活かし、戦局の転換を
図るべきなのに、なぜわざわざ長躯して艦隊をすりへらそうというのか?
 彼は常識的な人間なので敵の意図を読みかねた。むしろそこが用兵家
としての彼の限界を示しているのかもしれなかったが、彼より客観的に、かつ、
貴族というものの負の面を彼より見慣れてきたアンリエッタには想像がついた。
「追い詰められて冷静な判断力を失い、無謀な冒険に出てきたのでしょう。
おそらく、わたしたちの首をとれば逆転できると考えて……まあ、あながち
間違いではありませんが、ともかく、艦隊戦力を持たない今の私たちには強敵です。
すぐに迎撃の準備をしましょう」
 ここでハルケギニアのことをまだ詳しく知らない才人なら、空を飛ぶ艦隊に
なすすべを失っただろうが、ハルケギニアでは空中艦隊は当たり前である
以上それに対抗する手段も当然ながら存在し、敵襲の報はすぐさまアルビオン軍
七万に伝達され、「全軍、対空戦闘用意」が下命された。
 また、アンリエッタもアニエスにトリステイン軍一千五百も戦闘参加することを命じた。
そのときアニエスはレコン・キスタ軍が来たことで才人たちが失敗したのかと、
彼らの身を案じていたが、冷静な軍人の部分の彼女は冷徹にアンリエッタの
命令を遂行していった。
 砲兵に配備されている大砲は、アルビオンの冶金技術で作られたものは
射程が短く対空用に使えないために後送されてカモフラージュの布をかけられて
隠され、輸入品であるゲルマニアの少数の長砲身の大砲は榴弾を装填されて
高射砲へと変わっていく。
281ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (3/12):2010/01/03(日) 17:56:10 ID:YtLKwZ8k
 さらに、チブル星人によって与えられた銃は星人の死によってハルケギニアの
標準的な性能に戻っていたが、銃兵は弾を込めて待機し、弓矢や槍しか持たない
平民の部隊は即席の蛸壺を掘って、その中に避難していった。砲弾による被害と
いうものは、大部分が爆風と破片によるもので、地中に隠れれば直撃でも
受けない限りは安心だ。陸兵が無事なうちは、敵も兵士が無防備となる
降下作戦には移れないだろうので、これでも充分に敵への威圧になる。
 そして、頼みの綱はやはりメイジだが、火や風の優れた使い手は火炎や
風弾を数百メイル飛ばせるために攻撃に、やや劣る使い手や土の使い手は
防御壁となるために、水の使い手は消火および救護要員にと、指揮官さえ
復活すれば熟練した軍隊の動きを取り戻して、きびきびと配置についていく。
 それらは、地球でも航空機が戦争に使われるようになってから見られる
ようになった光景と、ハルケギニアならではものを合わせた軍事行動であったが、
敵は空に浮かんだ艦隊、この程度で対抗できるのだろうか。
 そんなとき、参謀の一人がもっとも対艦戦に有効な竜騎士が足りないと言ってきた。
「殿下、敵の射程に入るまでにはあと三〇分ほどと思われますが、現在
戦闘可能な竜騎士はおよそ一〇〇騎、いささか心もとなく存じますが
いかがいたしましょう?」
 ブラックテリナとノーバの影響で、竜騎士は大部分残っていたが、肝心の
竜のほうが暴徒化した人々に襲われたり逃げたりして、半数もの数が
使えなくなっていたのだ。
 だが、アンリエッタの助力を得て、名誉挽回に燃えるウェールズは、
ほんの少し前まで廃人の一歩手前だったとは思えないほど果敢に攻撃を命じた。
「かまわん、全騎を出撃させろ。数だけにものをいわせる烏合の衆などに
先手をとらせるな!」
 そのウェールズの攻撃的な姿勢に、病み上がりに不安を抱いていた参謀は
驚いたが、それでは竜騎士を無駄死にさせるだけだと反論した。
「待ってください。一〇〇騎の竜騎士は我が軍の唯一の空中戦力です。
これを失ってしまえば……」
「わかっている。正面きって激突すれば我がほうは数で負ける。しかしな……」
 そこでウェールズはアンリエッタと、彼女のそばで控えているアニエスから
教えられた、アルビオン軍の弱点と、魔法の使えない銃士隊がメイジと戦って
これた戦法を応用して、その弱点を突く作戦を説明していき、全部を聞き終えた
参謀は今度こそ本気で驚いた。
「そんな、しかしそんな戦法では我が軍の誇りに傷がつきましょう」
「馬鹿者! 負ければ奴らは我々のことを臆病で惰弱な愚か者だったと世界中に
言いふらし、あらゆる歴史書にそう書き残されるであろう。そうすれば我らの
誇りなど闇に葬られる。それに空から地上の人間を虐殺しようとしてくる敵に、
なんの遠慮がいるのか!」
 宮殿の端整な貴公子から、戦場の猛将のものに変わったウェールズの
怒声に、参謀は目が覚める思いがすると同時に、彼への評価を改めていった。
「わかりました。では命令を徹底しましょう」
「そうだ。あとは地上からの対空砲火で敵艦隊を漸減していく」
「それで、あの艦隊と戦えますか?」
「そこはやりようだ。敵とて無理をしてここまで来ている上に、艦隊に乗っている
一万程度の戦力では七万の我々を制圧することはできないから、艦隊さえ
なんとかしてしまえばレコン・キスタの命脈はそこで尽きる」
282ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (4/12):2010/01/03(日) 17:57:53 ID:YtLKwZ8k
 ウェールズは残された時間でいかにして敵艦隊を迎撃するか、脳細胞を
ここで使い切るくらいに考えた。こちらの持っている戦力はすべて把握
しているから、あとはそれをどれだけ効率よく使い、敵の弱点をつけるか
どうかで勝敗は決まる。彼は王党派の命運がかかっているのもあるが、
とにかくじっと見守っているアンリエッタにみっともない姿は見せられないと考えていた。
 
「婦女子に戦争の手ほどきをしてもらうようでは、アルビオンの男は天下に
大恥をさらしてしまうだろう」
 
 それは、敵襲の報告を受けてすぐのこと、ウェールズは復帰してから調子を
早く取り戻そうと、焦りながらもてきぱきと指示を出していっていたが、
艦隊を相手にしては、とりあえず対空戦闘準備を命じたものの、すぐには
続いて出す有効な手立てを思いつけなかった。
 だが、そうして悩むウェールズに、参謀が伝令のために立ち去って、人目が
なくなったことを確認したアンリエッタは優しげに話しかけた。
「ウェールズ様、今はわたしもここにいます。あなたの苦しみはわたしの苦しみ、
わたくしにもあなたの苦しみをわけていただきたく存じますわ」
「いや、アンリエッタ、君の気持ちはうれしいが、軍事上のことを君に相談しても
仕方が無い。ことは君のような可憐な人には似合わない、殺伐とした世界のことなのだ」
「いいえ、確かに敵は強大ですが、敵は隠しようも無い弱点をいくつも持っています。
それを突けば、勝利は遠くありませんわ」
 アンリエッタは驚くウェールズに向けて、レコン・キスタ艦隊の弱点を一つ一つ
説明していった。
 空を飛ぶ艦隊は地上の軍隊にとって天敵と思われがちだが、決してそんなことはない。
確かに、まともにぶつかれば力の差は圧倒的だが、巨艦をそろえたら強いので
あれば駆逐艦や巡洋艦はいらなくなるし、陸戦でも歩兵より戦車が強いのなら
歩兵はいらなくなるが、実際にそんなことはない。なぜなら、巨大であることは
メリットだけでなくデメリットでもあるからだ。
「ある意味、追い詰められたのは彼らでもあるのです。なにせ、危険物を満載した
当てやすい目標に潜んでいてくれるのですから」
 そう、戦艦とはいわば動く火薬庫で、もしそこに攻撃が命中すれば一瞬にして
炎は自らを焼き尽くす。地球でも過去に不沈とうたわれた多くの巨大戦艦が、
弾火薬庫への引火で沈没している事実からも、それは疑いない。また、図体が
でかい分だけ攻撃をこちらから当てやすいというのもあり、舵、姿勢制御翼、
マスト、指揮艦橋など、一発でも攻撃を受ければ艦の機能に著しい障害を
与えるところはいくらでもある。
 それに対して、防御を固めた七万の兵隊を高高度からの砲撃だけで全滅させるのは
困難で、精密射撃を試みたり陸兵を下ろそうと低高度に下りようとすれば、降下中が
絶好の攻撃のチャンスとなる。
「それに敵は指揮する貴族は後がなくなってヒステリーになっていますし、兵士は
勝つ価値の無い戦いに厭戦気分が高まっているでしょう。そこにもつけいる隙はあります」
 それらの考察は、軍事の専門家を自負するウェールズをうならせるのに充分な
もので、勝機があるどころか王党派の優勢をも示すそれには、発想を転換して
みればピンチはチャンスにもなるという、もう一つ言うならば心に余裕を持てという
アンリエッタからのアドバイスであった。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 17:57:55 ID:O9vTIuSc
今年最初のウルトラ支援
284ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (5/12):2010/01/03(日) 17:59:33 ID:YtLKwZ8k
「敵は数の半分の力も出せないでしょう。油断さえしなければ、恐れるべきものはありません」
「うむ。君の洞察力は、僕の想像を超えているようだ。けれど、君はそれほどの見識を
いつのまに身につけたのだい?」
「ウェールズさまのお役に立てるのでしたら、わたくしは何でもいたしますわ。
ただ、ちょっとわたくしは軍事顧問の先生に恵まれましてね、ほほ」
 軽く口を押さえて上品に笑うアンリエッタを、ウェールズは唖然として見ていた。
 
 
 両軍が激突したのは、それから二〇分後の、双方の竜騎士隊の接触からである。
「撃ち落してくれる!」
「全騎、迎撃せよ!」
 レコン・キスタ軍二一〇騎、王党派軍一〇〇騎の火竜、風竜の大部隊同士は
正面きって激突した。
 たちまち竜のブレス、魔法の応酬、竜同士の牙と爪の組み合い、さらに
近接しての騎士対騎士の肉弾戦があちこちで繰り広げられる。だが、最初の
戦局は数で圧倒的に勝るレコン・キスタ側が優勢に進めた。
 状況が変わったのは、戦闘開始から十分ほど経ってからである。敵側の
竜騎士はレコン・キスタ派の貴族が多数であるから、文字通り必死になって
攻撃してきたが、ウェールズから作戦を与えられた王党派陣営の竜騎士隊は
敵軍の凶熱をまともに受け止めようとせずに、戦力を温存しながら負けて逃げ帰る
ふりをして、追いかけてきた敵を友軍の銃兵の射程に誘い込んで撃墜していった。
「追撃戦をしているときこそ、一番敵の奇襲を警戒せねばならんものだ」
 これはアニエスがまだ無名であった銃士隊の原型の部隊を率いていた頃
使っていた戦法の一つで、一部が負けたふりをして逃げ帰り、敵を逃げ場の無い
十字砲火の巣に引きずり込んで殲滅するというもので、これに一度誘い込まれれば
メイジだろうがオーク鬼だろうが反応するまもなく蜂の巣になるのだ。
「卑怯な!」
 レコン・キスタ側の竜騎士は怒ったが、王党派の竜騎士は彼らとは反面、
はぐれメイジやレコン・キスタに親兄弟を奪われた貴族の生き残りがその多数を
占めていたから、勝つためには手段を選ばずに、そのほかにも二、三騎で一騎を
袋叩きにしたりと、数で勝る敵軍と互角の空中戦を演じた。
 
 そして、とうとうやってきた艦隊に対しての王党派軍の反撃は、卑怯な戦い方を
してきたレコン・キスタのやり方を跳ね返すような徹底したものが加えられた。
「ごほっ! ごほっ! くそっ、煙幕とは」
 接近して大砲を撃ってこようとしてきた艦隊に、風向きを計算して、二千の兵が
油や木材を焚いて放たれた煙幕がもうもうと襲い掛かる。これは一見地味だが、
軍隊なら必ずあるタバコの葉や竜など動物の糞を乾燥させたものをくべることで、
催涙ガスともなって、煙の上がっていくほうにいる艦隊の将兵の目と喉を痛めつける。
「おっ、おのれ! 風のメイジは煙を吹き飛ばせ」
 それぞれの艦の艦長は当然の命令を出したが、これもまたウェールズの
作戦のうちであった。密集した艦隊のそれぞれから放たれた『ウィンド・ブレイク』
などは確かに煙を吹き飛ばす働きをしたが、同時に煙の先にいた味方に
当たって、敵の攻撃と誤解されて逆に風の槍を返されるという同士討ちが
あちこちで見られた。
「うろたえるな、高度を上げて振り払え!」
 熟練の指揮官であるボーウッドは、味方の醜態に舌打ちしつつ艦隊を守ろうと
命令を飛ばすが、彼より爵位の高い貴族の艦長の操る船はその命令に従おうとせず、
バラバラの方向に転舵して、挙句の果てに味方同士が衝突して沈没するという
最悪の展開を生み出した。
285ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (6/12):2010/01/03(日) 18:01:18 ID:YtLKwZ8k
「連中は素人か、なにをやってるんだか」
 王党派のパリーという老いた将軍は、まともに統率すらとれていないレコン・キスタの
艦隊に呆れかえった。敵の大艦隊が接近中の報を聞いたときには、皇太子殿下を
お守りして名誉の戦死をとげようと覚悟していたのに、相手がこれではもったいなくて
到底死ぬ気にはなれなかった。
 だがそれというのも、全体の司令官たるクロムウェルが艦隊戦はわからんよと
早々に命令を出すのを放棄して、あとは戦意だけはあるが協調性がない艦長たちが
司令官の命令をあちこちで無視したり、戦意不足な兵士たちがサボタージュを
したりしたので、アンリエッタの予言どおりにせっかくの大艦隊も、その実力の
半分も出せてはいなかった。
 それでも、まだ艦隊は健在であるので、今度は本格的な攻撃が艦隊に襲いかかった。
「高射砲隊、撃ち方始め!」
 地球の基準からいえば、それは多少長く見えるだけの鉄の筒にすぎないが、
王党派がありったけの財力と交渉を駆使してもたった四門しか手に入らなかった
その砲は、射程八リーグ、砲弾到達高度三〇〇〇メイルと、砲兵器では砲亀兵と
呼ばれる部隊が持つ、射程たった二リーグほどしかないカノン砲が最強クラスの
ハルケギニアでは、とにかくバカ高いことをのぞけば、戦艦殺しとして大いに
期待される新兵器で、それが一斉に高度一〇〇〇のアルビオン艦隊に向けて放たれた。
「着弾! すごい威力だ」
 放たれた四発の砲弾のうち、三発は外れてかなたの森に火柱を上げるだけに
とどまったが、護衛艦『エンカウンター』の右舷艦首付近に命中した一発は、
艦首の兵員室を吹き飛ばした後に、二本あるマストの前部を倒壊させて、
八〇〇トン程度しかないこの船を、即座に戦闘続行不能、総員退艦に追い込んだ。
「全砲、射角調整急げ! いける、この砲なら戦艦でも沈められるぞ」
 だがそれでも、数にものをいわせた敵艦隊は、おそるべき対空砲火に
犠牲をはらいながらも、高高度から王党派軍主力の頭上に砲弾を降らせようと
艦首付近の砲門を開き、砲弾を装填した。
「見ておれ、下賎なるものどもに鉄槌を下してくれるわ!」
 怒りに燃えているレコン・キスタの若い貴族の士官は、ともすれば手を抜こうとする
兵士たちに杖を向けて脅しながら砲撃準備を整えさせると、やっと煙幕を
脱して視界に捉えた王党派の陣地に向かって、「砲撃開始」と怒鳴った。
 火薬が砲内で一瞬にして燃焼して、そのガス圧で音速近くまで加速された
球形の砲弾が数十発撃ち出されて、さらに重力の助けも借りて地上に這いずる
敵兵を粉砕した。
「やったぞ、ようし、あの敵兵が固まっているところにどんどん撃て」
 調子付いた彼は、旗が何本も立って人影の多く見えるところへの砲撃を命じ、
周りの艦の同じような若い士官もそれに続いた。
 だが、彼らにとっての敵は阿鼻叫喚どころかほくそえんでいた。
「馬鹿な連中だ。人形だということに気づいていない」
 そう、それは土のメイジが作った等身大の泥人形に、華美な貴族風衣装を
着せたダミー人形で、本物の人間は別のところに目立ちにくい格好で分散して
いたので、人的被害はほとんど発生していなかった。
 これが、熟練したボーウッドのような指揮官であったら即座に見破って
無差別砲撃を加えていたであろうが、ダミーやカモフラージュといった戦法は
効果、歴史ともに深く古いものであって、たとえば三国志の諸葛孔明が
赤壁の戦いでかかしを積み込んだ船に攻撃させて十万本の矢を集めたり、
近代でも爆撃から守るためにニセモノの工場や飛行場をわざわざ作ったり、
停泊している航空母艦を迷彩ネットで覆うばかりか、甲板上に小屋まで建てて
島に偽装した例が実際にあるので、若くて血気盛んだが経験不足な士官たちは
こんなものでもあっさりとだまされてしまったのだ。
286ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (7/12):2010/01/03(日) 18:03:30 ID:YtLKwZ8k
 ボーウッドは味方が見当外れの方向を攻撃していることに気づき、忠告して
やめさせようとしたが、その隙に王党派軍の攻撃部隊は艦隊の真下にまで
潜り込んでいた。
「目標は直上、全員撃て!」
 空に浮かんだ敵艦への最短距離である真下に陣取ったメイジたちは頭の上に
向かって総攻撃を開始した。火球を投げつける者、空気の槍を発射する者、
ガーゴイルを体当たりさせるものなどいろいろだが、目標は船にとって死命を
決する最重要の木材である竜骨に集中していたのだけは変わりない。
 以前才人たちの乗った『ダンケルク』号が竜骨が折れかけて沈みかけたように、
竜骨が折れればそのまま船は真っ二つになる。むろん軍艦は重要な部分の
部品には念入りに『固定化』がかけられているが、それも同等以上のクラスの
高レベルのメイジの連続攻撃に耐えるには限度があり、外れても船底は
もっとも防御が薄い部分であるために、艦内に飛び込んだ魔法が被害を与えていった。
「真上と、真下、さて、もろいのはどちらでしょうか?」
 戦いは、情け容赦なく敵の弱点を突け、アンリエッタは彼女の軍事顧問から
叩き込まれた鉄則を忠実に実行して、レコン・キスタ軍をすり減らしていっていた。
 
 これが、能力、士気ともに万全であったなら、レコン・キスタ軍は王党派に
大打撃を与えられたかもしれないが、積極性を欠く指揮官と、実戦経験の薄く
士気の低い将兵に操られていたのでは、そもそも勝てる道理がなかった。
 だが、まだ旗艦レキシントンほかの多数の艦が健在で、往生際悪く
砲撃を続けてきて、こちらにも無視できない死傷者が出ている。アンリエッタは、
敵が損害の大きさに驚いて撤退してくれればいいがと期待していたが、それが
かなわないと悟ると、味方と、そして敵の犠牲をこれ以上拡大させないために
切り札を投入することを決断した。
「やはり、使わざるを得ませんか……すみませんが、よろしくお願いいたします」
「御意」
 アンリエッタの命を受けて、それまで彫像のように直立不動の姿勢で彼女の
傍らに立ち続けていた鉄仮面の騎士が、ゆらりと最敬礼の姿勢をとった。
 
 それから五分後、硬直状態にある戦場で、その姿を最初に見つけたのは
レコン・キスタ艦隊の戦艦『レパルス』の見張り員であった。
「なんだ……鳥?」
 太陽の方向にちらりと見えた影が一瞬陽光をさえぎったので、手で光を
さえぎりながらそれが何かを確かめようと見上げたが、次の瞬間にその影が
今度は完全に太陽を覆い隠すと、それが鳥どころかドラゴンより巨大であると
気づき、反射的に絶叫していた。
287ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (8/12):2010/01/03(日) 18:05:37 ID:YtLKwZ8k
「ちょっ、直上から敵襲ぅっ!」
 しかし、彼の叫びは艦長の命令ではなく、その鳥の方向から放たれてきた
『エア・カッター』によって返答された。彼がまばたきしている間に、空気の
刃はレパルスの四本あるマストと甲板上にある人間と救命ボート以外の全てを
バラバラに切り刻み、さらに舵をも破壊することによってこの船を瞬時に戦闘不能に
追い込んだのだ。
「レパルス大破! 戦線を離脱します」
 ボーウッドの元にその報告が届いたときには、すでに第二第三の犠牲者が
レコン・キスタ軍の沈没艦リストに予約を確定させていた。巡洋艦『ドーセットシャー』が
特大の『エア・ハンマー』で甲板を押しつぶされ、戦艦『リベンジ』が『エア・カッター』で
真っ二つにされて墜落していく様は、何人もが目をこすってほっぺたをつねってみたほどだ。
「いったい何が……」
 破壊された三隻から、乗組員たちが救命ボートで脱出を図っている。彼らにとって
さらに信じられなかったのは、攻撃を受けた三隻ともに轟沈にはいたらずに、
戦闘不能かゆっくりと墜落していくことになったので、乗組員のほとんどが
無事に脱出できていることだった。
 が、それも三隻の艦を撃沈せしめた上空の敵が降下してきたときには、甲板上の
全ての大砲を向けろという命令にすりかわって、彼らは対空用の榴弾を込めた
大砲を謎の敵へとぶっ放した。
「二時の方向、仰角六〇度、距離五〇〇……撃てぇ!」
 いっぱいに上を向かせた大砲が硝煙と炭素の混じった黒煙を撒き散らしながら、
小さな鉄の弾を数百数千と上空へ打ち上げていく。それらは徹甲弾に比べれば
威力は劣るが、鉄の小弾丸が高速で当たるので竜の皮膚をも打ち抜く威力を誇る。
「落ちろ!」
 太陽を背にしているせいで、何がいるのかはよくわからなかったが、数十門の
一斉射撃である。これにかかればどんな竜でもグリフォンでも逃げ場なく撃墜
されるものと思われた。
 だが、数千の鉄の豪雨の中から姿を現したのは、血だるまになった
ドラゴンなどではなく、戦艦にも匹敵する広大な翼を広げながら、死神の
鎌のような巨大なカギ爪を振りかざして急降下してくる怪鳥だったのだ。
「巡洋艦『ベレロフォン』、轟沈!」
 哀れにも最初の犠牲者になった二本マストの巡洋艦は、巨大なカギ爪に
船体をつかまれると、そのまま大鷲に捕まった子牛が肉を引きちぎられる
ように、無数の木片をばらまきながら真っ二つに引き裂かれたのだ。
「巡洋艦を一撃でだと!?」
 軍艦の構造体には固定化がかけられていて、並の鉄骨くらいの強度が
あるはずなのに、それを気にも止めずに力任せに引き裂いた怪鳥に、
隣接していた艦から何人もの愕然とした声が流れたが、惨劇はそれで
終わらなかった。それからわずか一〇秒の後に。
「戦艦『インコンパラブル』『インディファティカブル』、護衛艦『アキレス』
撃沈! 戦艦『テメレーア』大破、戦線離脱します」
 四隻もの艦が撃沈破されたという信じられない報告がレキシントンの
艦橋に届けられたとき、冷静沈着を持ってなるボーウッドも、思わず杖を
落としてしまいそうになった。
288ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (9/12):2010/01/03(日) 18:07:15 ID:YtLKwZ8k
「馬鹿な、いったい何が起こったというのだ!?」
「そ、それが……」
 報告を持ってきた兵士は、司令官の怒声に緊張しながら、自らもとても
信じられなかった光景のことを説明しようとしたが、ボーウッドはそんな話よりも、
艦橋の窓から見えてきた翼長五〇メイルにもおよぶ巨鳥と、その背に立って
杖を振り、一撃の『エア・スピアー』をもって巡洋艦の艦腹に風穴を開ける、
鉄仮面の騎士の姿を見つけてしまっていた。
「あ、あれは……」
 ボーウッドの脳裏に、士官候補生だったころにトリステイン、ゲルマニア間で
一週間だけ続いた国境線争いのとき、留学していたゲルマニア空軍の
戦艦『ザイドリッツ』で体験した記憶が蘇る。
 あのとき、ゲルマニアは国境線に居座っていたトリステイン軍を空から
制圧しようと彼の乗る艦を合わせて一〇隻の艦隊を出撃させ、これで
空軍の進出の遅れたトリステイン軍を追い返せるものと確信したが、
その目論見はたった一人の騎士によって阻止され、あわや全面戦争も
と思われた緊張は一週間の小競り合いで終了した。
 その騎士は、たった一つの魔法と、使い魔への一声の命令をもって
艦隊の半数を撃沈し、指揮官を捕虜にして戦いを艦隊の降伏を持って終わらせた。
 幸い、『ザイドリッツ』は攻撃を免れて帰還したものの、あの恐るべき
巨大竜巻と、羽ばたく風圧だけで戦艦を落とした巨鳥の姿は今でも
忘れることはできない。
「まさか、あれは三〇年も前のことだぞ……」
 しかし、彼の目の前では、その巨鳥が通り過ぎただけでマストを全て
へし折られた戦艦がよろめきながら離脱していき、やっと大砲の照準を
あわせた六隻の艦が四方から集中砲火を食らわせても、その騎士は
杖の一振りで自らの乗る巨鳥の周りに風の防護壁を作って全弾を
はじき返し、ケタ違いに大きい『ブレイド』で巡洋艦を輪切りにしてしまった。
 もう間違いはない。目の前の光景が記憶の中の伝説の仮面騎士と
完全に一致したときに、彼は指揮官としての名誉も威厳もすべて
かなぐり捨てて叫んでいた。
「反転一八〇度、全軍撤退! 『烈風』だ! 『烈風』が現れた!」
 それは、レコン・キスタ艦隊の、実質の敗北宣言であった。
 
 そして地上でも、ケタ違いの強さで次々と敵艦隊を撃沈していくたった一人の
騎士に、ある者は胸躍る快感を、ある者は恐怖を、ある者は信頼と尊敬の
まなざしを向けていた。
「あの方が、あの伝説の『烈風』……なんという強さだ」
 ウェールズは、自らもトライアングルクラスの使い手ながら、そんなものが
まるで通用しない次元の戦いを、呆然とアンリエッタとともに見ていた。
「はい……本来はもう戦場には出ないと決めていたそうですが、この世界の危機に、
決して侵略には力を使わないということを条件に力を貸してくださいました」
 今は仮面をかぶって正体を隠しているが、『烈風』カリンことカリーヌ・デジレと
その使い魔の古代怪鳥ラルゲユウスのノワールは、かつてタルブ村を
滅ぼしかけた吸血怪獣ギマイラをはるかに超える脅威に、佐々木とアスカから
教わった勇気を次世代に伝え守るべく、再び立ち上がったのだった。
289ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (10/12):2010/01/03(日) 18:09:10 ID:YtLKwZ8k
「そうか、君の軍事顧問というのは」
 彼はそれでアンリエッタの急激な成長の理由の一端を理解した。
確かに、教師としてはこれ以上の存在はハルケギニア中に二人といるまい。
「それにしても、犠牲者が極力出ないように手加減してくださいとは
言いましたけれども、やはりすさまじいものですわね」
「なっ……あ、あれで手加減しているのかい!?」
 見た目には派手に暴れているように見えるが、実際には攻撃はマストや
風石の貯蔵庫などに集中して、船体を破壊されたものも浮力を残したまま
ゆっくりと墜落したので、被害の割には死傷者の数は驚くほど少なかった。
 
 だが、全軍撤退を指示したボーウッドの指令は、当然ながらクロムウェルに
却下されていた。
「なぜ逃げる、撤退の許可など出していないぞ」
「もう勝ち目はありません! 敵は伝説の『烈風』です。あれに敵う者など
全世界に一人とて存在しません!」
 ボーウッドは説明する暇すら惜しく、自分がどれほどの醜態をさらしている
のかすら念頭にない様子で、ひたすらに全速力で逃げるようにとの命令のみを
発し続けた。今の彼は、まるで雷に怯える幼児のように本能の底から湧き出る
恐怖に支配されていた。
 けれどもクロムウェルは能面のように穏やかな表情のままで、ボーウッドの肩に
手を置いた。
「ほほお、あれが噂に聞く烈風か、確かに噂にたがわぬすさまじい力よ。
だが落ち着きたまえ、君の気持ちはわかるが恐れる必要はない。我らには
あれに匹敵する切り札があるのだ」
「は……ははあ」
 ボーウッドは、枯れ木のように細い腕ながら、びくともしないほどに強い力で
肩を押さえてくるクロムウェルの笑顔に、まるで触られたところから生気を
抜かれていくような冷気を感じて、それ以上口を開くことができなくなった。
 もしこのとき、クロムウェルの秘書扱いであるシェフィールドがそばにいれば
クロムウェルの異常に気づいたかもしれないが、彼女は万一にも艦橋への
被弾が起こることを恐れて、遠方からガーゴイルを使って高みの見物を決め込んでいた。
「無様ね……せめてウェールズと刺し違えることくらいできれば、お前を使って
もう少しこの国で遊べたのだけれどもと、あの方もご慈悲を与えてくれるものに」
 せせら笑いながら、万一にも勝てたらもう少し生きながらえさせてもとと、
心にもないことを考えたが、彼女はすぐに自分の目を信じられない光景を
目にすることとなった。
 それは、レコン・キスタ艦隊のめぼしい大型艦を戦闘不能にしたカリーヌが
レキシントン号の前に出たとき、艦首に見覚えのある人影がたたずんでいるのに
気づき、翼を止めて睨みあった。
「ワルド子爵……」
「ふふ……お久しぶりですな、教官殿」
 そこには、グリフォン隊の隊長にしてカリーヌの不肖の弟子、しかし今や汚らわしい
裏切り者として汚名をさらすワルドが、不敵な笑みを浮かべていたのだ。
290ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (11/12):2010/01/03(日) 18:12:07 ID:YtLKwZ8k
「話は聞いている。私欲のためにレコン・キスタと通じていた……そうだな?」
「ええ、間違いなく」
 悪びれた様子もなく明確に答えたワルドに、鉄仮面の下でカリーヌは舌打ちをして、
杖の先をワルドに向けた。
「ふん、私はランスの戦いで戦死した貴様の父上にも昔世話になったし、お前の
メイジとしての将来にも期待していたから、ルイズとの婚約を了承したのだが、
どうやらとんだ見込み違いだったようだな」
「見る目が無いというのは、つらいものですねぇ。あははは」
 短い間とはいえ、教え子だった男に反されて、なおかつ愉快そうに前よりも
やや濃くなった口ひげを揺らしながら笑うワルドに、カリーヌは娘の将来を
もてあそばれたことも含めて、すでに決めていたことだが、あらためて強烈な殺意を覚えた。
「なにが目的だ、金か? 権力か? ……いいや、今更そんなことはどうでもいいな。
その体は使い心地がいいか?」
 カリーヌはすでにワルドが何者かに体を乗っ取られてしまった経緯を聞いていた。
つまり、目の前にいるのはワルドであってワルドではない。しかし、そんなことは
もはやどうでもよく、乗り移った奴ごと粉砕してやるつもりだったが、ワルドは
余裕でレイピア状の杖を抜いてカリーヌに向けた。
「ふふ、まあ確かにそんなことはどうでもいいですな。だが、私がこの体を無理矢理
所有していると思ったら大間違いですよ。『ウィンドブレイク!』」
「なに!?」
 ワルドの杖から放たれてきた空気の弾丸を、カリーヌはとっさに杖をふるって
はじき返したが、その威力はかつてのワルドのものよりも強力で、カリーヌの
杖を握る手がわずかにしびれた。
「貴様、魔法は使えなくなっているはずではないのか?」
「ふっふっふ、それなりに利用価値がありそうな男だったので乗り移ったが、
この男はお前たちが思っていたよりも大それた野心と欲望を持っていた。
そのためになら悪魔にでも魂を売ると……だからこそ、”私たち”の利害は
一致したのだよ」
「ちっ!」
 再び撃ちかけられてきた『ウィンドブレイク』『エア・ハンマー』を跳ね返しながらも、
その威力に押されてカリーヌは使い魔のラルゲユウス・ノワールを後退させざるを
えなかった。
「なるほど、ワルドの人格と欲望を取り込んだのか……ということは、貴様は
ワルド本人でもあるということだな?」
「ええ、あなたに受けた修行の数々や、ルイズの可愛らしい顔もよーく覚えて
いますよ。ルイズを私のものにできれば、ヴァリエールの名もあっていろいろと
便利な道具になると思って小さい頃から面倒を見てきたというのに、今となっては
すべて徒労になって残念ですよ」
「……」
「ですが、あなたの娘さんは本当に純情で愛らしくてなかなか楽しかったですよ。
そうだ、ルイズは落ち込むといつも湖のボートで小さくなっていて、私が慰めにいくと……」
「もういい、その汚らわしい口でこれ以上私の娘の名を呼ぶことは許さん。
これでもう、私は貴様への情けなど欠片も持たなくてよくなった。覚悟しろ、
生きたまま五分刻みで解体してくれるわ」
「ふふ、ご老体にできますかな?」
「この『烈風』をなめるなよ。確かに魔法を使えるようになった上に威力も本来の
奴のものよりも強化されている。だが、それだけで私に勝てると思っているのか?」
「ふっ、確かに攻撃力はともかく戦艦に乗ったままのこちらは機動力で分が悪い。
ならば……いでよ、サタンモア!」
291ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (12/12):2010/01/03(日) 18:14:07 ID:YtLKwZ8k
 ニヤリと笑ったワルドが指をはじくと、レキシントンの上の空がガラスのように
ひび割れたかと思うと、砕け散って真っ赤な裂け目が現れた空間から、壊れた
笛のような甲高い鳴き声をあげて、鋭い口ばしと流線型のシルエットを持つ、
全長六〇メイルにも及ぶ怪鳥が飛び出してきたのだ。
「なに!? 避けろ、ノワール!」
 怪鳥が大きく開いた口から発射してきた火炎弾を、カリーヌはとっさに使い魔を
急旋回させてかわしたが、怪鳥は飛び乗ってきたワルドを背に乗せると、
カリーヌとノワールに向かってきた。
「それが、貴様の新しい使い魔か?」
「ふふふ、こいつの名は大怪鳥円盤サタンモア、これで条件は対等ですな。
では、かつて『烈風』と呼ばれたあなたと、『閃光』の異名をとるわたくし、
共に風のスクウェアとして、どちらが最強か決闘といこうではないですか!」
「ほぅ……私に決闘を挑む者など、もう一生現れまいと思っていたが、おもしろい。
多少強くなった気でいるようだが、身の程というものを思い知らせてやろう」
「ふはは! では、お世話になったご恩返しをさせてもらいましょう」
「ほざけ、すぐに化けの皮をはがしてくれる!」
 
『ウィンドブレイク!』
『エア・ハンマー』
 
 二人の放った空気の弾丸同士が空中でぶつかり合って、まるで台風のような
爆風がレキシントンやレコン・キスタ艦隊どころか、地上の王党派軍にも降りかかる。
 
 かつて、ハルケギニア最強とうたわれた『烈風』カリンと、その使い魔の古代怪鳥
ラルゲユウスのノワールに対するのは、ヤプールに支配されて、その実力を
何倍にも増加させた現トリステイン最強の魔法騎士『閃光』のワルドと、かつて
ブラックスター九番目の殺し屋としてウルトラマンレオを苦しめた円盤生物サタンモア。
 その人知の想像を超えた激突に、至近で爆風を食らったレキシントンのボーウッドも、
思わず指揮を忘れて見とれてしまった。
「あ、あれが切り札?」
「そう、我らの崇高な志に共鳴して同志にはせさんじてくれたジャン・ジャック・フランシス・
ワルド子爵だ。とある事情でこれまで実力を隠していたが、彼さえいれば『烈風』などは
恐れるに足らんさ。さあ、攻撃を続けたまえ」
「ほ……砲撃を始めよ!」
 優しげに肩を叩くクロムウェルの笑顔に、ボーウッドは催眠にかかったように
王党派への攻撃を命じた。一隻で並の戦艦三隻分に匹敵するレキシントンの
全砲門と、残存艦隊の大小かまわない弾雨が切り札を封じられた王党派軍に降り注ぐ。
 
 だが、はるか上空ではそんな戦いすら児戯にすら思えるような、風と風、雷と雷、
牙と牙、爪と爪がぶつかり合う。
 アルビオンの空に、真の最強を決する激戦の幕が切って落とされた。
 
 
 続く
292ウルトラ5番目の使い魔 第81話 (12/12):2010/01/03(日) 18:18:06 ID:YtLKwZ8k
以上です。>>278>>283さん、初支援ありがとうございました。
さて、アルビオン編も最終、ついに両陣営の正面決戦に突入しました。
それにしても、今回はゼロ魔主体で、原作中盤の見せ場であるアルビオン決戦まで行きましたが、
どーもヤマト復活編を何度も観に行ったためかウルトラの要素が少なく艦隊描写がかなり多くなってしまいました。
そんでもって、普通にガチで戦ったら瞬殺かなぶり殺しかはともかく虐殺確定の勝負ですが、
うちのパワーアップしたスーパーワルドくんはやる気なので温かく見守ってやってください。
では、今年もよろしくお願いいたします。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 18:51:19 ID:yR7ug5ai
ウルトラの人乙!
294名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 18:53:13 ID:O9vTIuSc
乙です

小物が多少パワーアップしたところで何とかなるとは思えんが
・・・・・・・・・・パワーアップが「多少」でないとしたら?
早くも来週が待ち遠しいです
295名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 19:16:12 ID:e4p2EZkJ
ウルトラGJ

小物の無謀なパワーアップは死亡フラグの元
となるのか……
296名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 19:31:17 ID:F9F82E4y
乙でした。しかし・・・
>孔明が赤壁の戦いでかかしを積み込んだ船に攻撃させて十万本の矢を集めたり
これは史実ではなく小説(フィクション)の話ですのでご注意くだされ
297名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 15:03:35 ID:gTd5mTWk
人もいないようなので代理投下
298LFO代理:2010/01/04(月) 15:04:26 ID:gTd5mTWk
待っていた人もそうでない人もあけましておめでとう御座います。
それでは以下からお願いします。
299LFO代理:2010/01/04(月) 15:05:05 ID:gTd5mTWk
トリスタニアにある王宮では一週間ほど前から、天と地がひっくり返った様な騒ぎが連日続いていた。
主要な閣僚達は駐在している周辺諸国の各関係者との対処に追われたし、それは末端の役人に関しても同じだ。特にその様はアルビオンの侵攻が起きて以降、一層苛烈さを増している。
そんな中、会議室ではトリステイン王女アンリエッタの号令によって、十二回目の会議が開かれていたが、当然の事ながら議会は紛糾し、空転するばかりで明確な結論は何一つとして出ない。
課題は山積しているにも拘らず、有力貴族達は今後の方針について、理性的とはいえ口喧しく言い合っているだけだった。

Louise and Little Familiar's Orders「Survivors and Predators」

「やはりここはアルビオンに特使を派遣し、講和に向けて動くべきではないのですか?」
「何を悠長なことを言っておる?!敵は強大な軍事力をもって、今尚何の報せを送ることも無く我が国の地を侵しているのだぞ!早急に軍備を整え迎え撃つべきだ!」
「その通りだ!ここで我らが退くような真似をしたらば、先代の方々や散っていった者達にヴァルハラで顔向け出来ん!
例え事を穏便に済ませようとしても、それに図に乗るであろうあの恥知らず共がそれで納得する訳が無い!仇敵は断固討つべし!」
「しかし先程から申し上げているようにアルビオンの空軍は強大です。現在の士官不足を鑑み人員を補充したとしても、制空権を握られたままでは戦に勝つ事は出来ますまい。」
「左様。行うべきは各国と連携し合い、アルビオンに通じる一切の物流を止めることでしょう。アルビオン自体が干上がり、戦闘続行不可能となった時こそ動くべきなのです。勇み足は余計に国としての命を縮めますぞ。」
「そんな敗北主義者の考え方でどうする!第一、その意見が正論なのは私も認めるが、その案件を口にするのはガリアかゲルマニアから確かな協力を得られる状態になってからにして欲しいものだ!」
「じゃが、わしとしては……かの無能王には期待しとらんが、出来ることならガリアから支援を仰ぎたいものじゃ。ゲルマニアのような……あー、その……成り上がりの野蛮な国にこれ以上弱味を握られるわけにもいくまい。」
「いい加減にして頂きたい!伝統も格式も大事ですが、今我々は選り好み出来る立場にないのですぞ!それとも貴殿は、姫殿下の手紙の件を一種の僥倖とお考えになられておるのですかな?!」

年若い一人の貴族がそれを言った瞬間、上座に座っていたアンリエッタはびくっと小さく体を震わせる。
発言を糾弾された老貴族は、至極むっつりとして反論した。

「そんな訳はあるまい。ましてや僥倖などとんでもない。」
「分かっておられるではありませぬか!宜しいですかな?物資も戦艦も不足している中、国力で力のあるどちらかを味方につけねばならないのですぞ!
背に腹は替えられませぬ。ガリアが駄目なら梃子でもゲルマニアを引き入れなければ!」
「愚か者!!それが如何にしても出来ない故に、こうして会議を開き、状況の打開策を考えておるのではないか!当初の目的さえも貴殿は忘れたか?!」
300LFO代理:2010/01/04(月) 15:05:36 ID:gTd5mTWk
最早会議は会議の体すらもなさず、ただの怒号が飛び交う場所となる。誰かが纏めようとしても結論は堂々巡りとなった。
そんな身をつまされる様な雰囲気の中、アンリエッタは下を俯きながら、この回の会議における初めての発言を行う。

「皆さん……申し訳ありません。私が……王族として生まれた者の義務と運命を忘れ、無責任な事をしてしまったばかりに……何と、御詫びすれば良いのでしょう……」

その言葉に貴族達は熱く交わしていた議論を止めるが、同時に鼻白んでしまう。
手紙の一件が発覚してから今日に至るまで、アンリエッタのこうした涙交じりの謝罪は何度も行われた。その回数はざっと三桁に上ろうかといった具合であった。
だが、それで起きた事が跡形も無く消えるわけではない。更に本人は意識していなかったとはいえ、どこと無く芝居かかった調子も、自分の身に起きている事がまるで他人の身に起きている様に聞こえさせるのに十分だった。
王家の人間でなければ、徹底的に非難したいと思っている貴族も何人かいる具合である。
そんな状況を察して、王女の横に控えていた枢機卿のマザリーニが彼女を宥めるように告げる。

「姫様。あなた様からの謝意を、我々はこの数日でもう十二分に受け取りました。これからは我が国の今後の方針を考え述べて頂きとう御座います。」

アンリエッタはその言葉を聞いて、取り敢えず目を潤ませるのを止める。しかし今後どうすればいいのか。齢十七の彼女では到底分からない。
先代の王……父にあたるフィリップ三世の頃でもこれほど難しい局面という物は確か存在しなかったはず。
彼女は現在の状況を閣僚達の意見を総合した上で、出来る限り冷静に論理的に精査した。
掻き集められるだけ掻き集めても未だにトリステイン軍全体の力は少ない。今の状態のままアルビオン軍に対してまともに正面からぶつかったところで全滅するのが関の山だろう。
自分が前線に出て指揮をすれば……いや、大将は常に後方で戦局を把握し、全体を動かさねばならない。みすみす出て行って撃たれたら、その後を何とする。
しかし自軍の力を十分に蓄えた後、敵を内地に誘い込んだ後、各方面から一斉に攻撃するというのも、輸送に大事な港を始めとする施設全体と制空権を奪われてしまっている以上、ジリ貧になる結果は見えている。
となると正攻法はやはり、国家の枠を超えたアルビオンの封鎖しかないのだが、今は他国に対しそう気安く援助を頼むわけにはいかない。
そして終に、アンリエッタの心の中で一つの結論が出た。だが、それをただ言っただけでは効力は薄い。年齢からして軽んじられている自分はもっと決然とすべきだとも思った。
彼女は一息吐いて立ち上がった後、全員に聞こえるよう良く通る声で言い放った。

「トリステインはこれより、アルビオン軍の攻撃に対する持久戦を開始します!軍部は直ちに士官の再編成を行い、来たる全面抗戦に向けての用意を!
財務部は国庫を至急開放し、物資類の補給を行うよう!出し惜しみは勿論の事、如何なる特例も認めません!
その他、現在王都にいる官吏は、避難して来た国民を手厚く遇しなさい!貴族平民は問いません!費用が足りないのであれば財務部と協力しなさい!」

それから彼女は全体を見回して反応を窺う。あまりの勢いに呆然としている者もいた。その内の一人、財務卿のデムリが申し訳ない調子でアンリエッタに訊ねる。

「姫様。賢明な判断には恐れ入りますが、それを実行するためには概算要求だけとしましても、現在国庫にある金額の数倍の額が必要となりますが……」

その言葉に会議場が一気にざわめく。今のところ国庫を成り立たせている分の金額だけでも国内総生産数年分はゆうにするというのに、更にその数倍とは一体どれほどになるのだろうか。
しかしアンリエッタは何かを振り切るようにきっぱりと言う。
301LFO代理:2010/01/04(月) 15:06:02 ID:gTd5mTWk
「これは王女、いえ、女王としての命令です。費用が必要だと言うのであれば私から率先して倹約に努めましょう。そうです。王宮の私財を擲つのです。
そもそも国主たる私が模範たる姿勢を見せなければ、国民はこの非常時に誰一人としてついては来ないものです。
これで事態が少しでも解決しないようであれば、税率の引き上げか身分の貴賎を問わない供出物品の作成、或いはその両方を私は行うつもりです。」

アンリエッタの隣に控えるマザリーニは驚いた表情で彼女の顔を見た。何しろアンリエッタが女王を名乗るなど初めての事だったからだ。
先王が亡くなって以降、王妃であったマリアンヌは「生涯喪に服する」と言い張って聞かなかったし、アンリエッタも自由の束縛と、膨大すぎる重責から、自分が王位につく事を快く思っていなかった。
ただ駄々を捏ねていたそんな昔の頃とは違うあまりの姿勢に対して、マザリーニは純粋に、しかしこっそりと感激した。
だが会議の席にいる者達はお互いの顔を見合わせ、一層喧しく話し出すだけだった。
毎月国から支給されている年金の額を気にする者がいるかと思えば、貴賎を問わず頭を下げる姿勢を見せる事によって、王家が他国に蔑まれるであろう事を心配する者。
地方の事情を大雑把ながらも知っている者に至っては、反乱の起きる恐れがあるとも進言するほどだった。
それでもアンリエッタは臆する事無く、議場の机を叩いて全員を黙らせた後、必死に熱弁する。

「何度も申し上げますが、これは王命です!この会議が終わり次第、関係者は与えられた任務を可及的速やかに履行しなさい!
どうしてあなた方はそうも結論を先送りにしたがるのです?!無辜の民が大勢傷ついているというのに、自分達だけは上手く立ち回って甘い汁を吸おうというのですか?
力を持たず、我々の生活を支える彼らを守ることこそ、我等が一番に果たすべき義務ではないのですか?!その義務が、貴族のあるべき姿に付帯されているからこそ、我々は彼らの上に君臨することを許されているのではないのですか?!
こうしている間にも、敵の手によって多くの血が流れ、焦土が広がりつつあるというのに、それが全て終わるまで座して待てというのですか?!
その時はこのトリステインが誠の意味で死んだ時です!私はそのような姿勢を採り続ける事を断固として拒否します!国土が焼け果て、国民が皆死んだ後に存在する君主とその取り巻きなぞ……一体どこの喜劇ですか!
本当ならば、今このような場所で事の是非をいちいち論議しているまでもないはずです!団結こそが肝心要のこの時に、己が利ばかりを主張して手を取り合おうともしないなど何たる醜態ですか!
分かったのなら急いで自分の持ち場に行きなさい!さもなければ、敵国に恭順した売国者とみなします!」

アンリエッタの厳然たる言葉に、その場にいた者達は尻に火が付いたかの如く、大慌てで議場を去っていく。
それを確認したアンリエッタは、糸の切れた人形のように力無く椅子に座り、黙って頭を抱える。
ただ一人議場に残っていたマザリーニは一頻り感心した面持ちで彼女に声をかけた。
302LFO代理:2010/01/04(月) 15:06:34 ID:gTd5mTWk
「陛下。素晴らしき姿勢でございました。正に貴族、いえ、王家の鑑です。これで手紙の一件の汚名もいくらかは雪げたというもの。」
「私には過ぎた言葉です。ああ、何も言わないで下さい、マザリーニ。私はそのような器の人間では決してありません。」
「何を仰いますか。あの昂然たる態度は人民を統べる人物の態度そのものです。国民は陛下を支持し、敢然とこの国難に立ち向かうことでしょう。」
「では、お訊きしましょう。その国難の直接的な原因が私にあるとしてもですか?」

震えた声の質問にマザリーニは黙ってしまう。いつの間にかアンリエッタは目から一粒、また一粒と涙を流していた。

「今はまだ一部の人間しか知らぬ手紙の一件。ですが、それがもっと公に知られてしまったならば、国民は私に畏敬の念ではなく石を向けるでしょう。
例え彼らの手によって私の御霊がヴァルハラへ捧げられようとも、この国がこの先ずっと外国から後ろ指を差されてしまうのは必定。
先程の席で私は、王族として出来る限りの事を提案し、また実行に移すようにも命令しました。ですが、心を幾ら尽くしてもそればかりはどうにもならないのではありませんか?」
「姫様。仰られた事を心配する気持ちは私にもよく分かります。ですが過ぎた事にいつまでも拘り、起きてもいない事を不安に思う事は心にも体にも毒です。
また、心を尽くしてどうにもならないと仰いましたが、全く何の行動もとらずにおいて早々に愛想をつかされる方がもっと悲惨な物です。
どうか前を向いてくだされ。現実は尚も酷な事に変わりはありませんが、我々がなすべき事はまだ山積している事に変わりは無いのですから。」

枢機卿の穏やかながらも確かな激励を、アンリエッタは俯きながら聞く。さながら灌漑地に立てられた粗悪な造りの高楼の如く脆い心に、それがどれほどの意味があったかは分からないが。
戦端が開かれる前から彼女の中ではあらゆる感情が渦巻いていた。思いを寄せていたウェールズ皇太子死去への悲しみ。その彼を殺したレコン・キスタへの憎悪。
立場も弁えず恋文などしたためた自分の軽率さへの悔恨。そして迫り来る他国からの攻撃に対する恐怖。
身動きの取れない状況の中、アンリエッタは決断を迫られる事になった。そして出した答えが先程の答えだったのである。果たして上手くいくのかどうか。
アンリエッタはちらと窓の外を眺める。そこに広がる空は彼女の胸中を皮肉るかのように、どこまでも雲一つ無い晴れ模様だった。
303LFO代理:2010/01/04(月) 15:06:57 ID:gTd5mTWk
シエスタと兄弟達、そしてミーは死に物狂いで森の道を走っていた。
この数日というもの何も飲み食いしていないせいで、体内のどこからも力を振り絞れそうに無い。体のあちこちは痛むし、息も切れかかっている。
それでも走り続けなければならない。何故か?答えはその直ぐ後ろから迫っていた。

「待ちやがれ!大人しくこっちに来い!」
「お前ら逃がさねえぞ!大事な金づるだからなぁ!」

人相の悪い、弓や槍で武装した十人ほどの男達が、シエスタ達の後を追っている。
彼等は盗賊。それもかなり質の悪い方に位置する連中で、これと目をつけた獲物がいたら、物品の強奪は勿論の事、人攫いを利用した人身売買まで平気でやってのける連中だった。
ここ二、三日の間、彼等はまともに食い扶持にありつけていなかった。無論、アルビオンの侵攻に際して王宮から戒厳令が出されたからである。
侵攻の混乱にかこつけて火事場泥棒をしても良かったのだが、手に入れられる額は雀の涙ほどだろうし、その量では全員の腹を満たしてやる事は出来ない。
そんな時ある話が舞い込んで来た。なんでも、十人近い戦災孤児が方々で宿泊を乞い願っているという。それも全員平民との事。
賊の頭目は、孤児全員を攫い、どこかの好事家な貴族に売り払ってやろうという算段をあっという間にたてた。
売り払われた孤児の運命は、年齢に係わらず男の子か女の子かで大きく二分される。男の子ならば、日がな一日鞭で叩かれながら屋外で畑仕事をする事になるだろう。
そして女の子は、貴族の世話を甲斐甲斐しくしなければならない。特にいかがわしい意味合いで。
どっちにしてもそこそこの額で取引されるであろう事は間違いない。これは只の商売ではないのだから。

「お姉ちゃん!」
「しぃっ!喋っちゃ駄目!もっと速く走って!!」

シエスタ達は縺れそうになる足を懸命に動かして逃げ続ける。
心臓が破裂しそうに鼓動を打っていたが、構っている余裕は無い。喉が新鮮な空気を十分取り込めないために噎せ返ってしまうが、ちょっとでも休めば命取りになる。
ともかく遠くへ。それが出来ないのなら何所かに身を隠すだけでも良い。ほとぼりが冷めたなら、またトリスタニアに向かっていけば良いだけの事。
だが、出来るだけ森の地形を生かして一時的に引き離すように走っていても、相手はやはり大人。追っている盗賊達との距離はだんだん短くなっていく。
その時……
304LFO代理:2010/01/04(月) 15:07:32 ID:gTd5mTWk
「きゃああっ!!」

終に最後尾を走っていたミーが、小石に足をすくわれてその場に転げてしまった。

「ミーちゃん!!」

シエスタは足の方向を急旋回させ、ミーの転げた場所、森の中でも少し開けた広場のような場所に向かう。しかし、盗賊達の方が一歩早かった。
盗賊の中でも一番野卑そうな面構えをした小太りの男がミーの髪だけをむんずと捕まえて宙に浮かせる。

「そォらっ!!やっと一人目か!」
「いぃっ!痛い痛いっっ!!痛いィッッ!!!やあぁっ、いやぁぁっ!はっ、放してぇっっ!!!」
「喚くんじゃねぇっ!おらっ、静かにしろ!!」

痛さに耐えかねてミーが絶叫するが、男はその声も打ち消さんばかりの大声で怒鳴りつける。

「おい、オメェら!全員大人しくこっちに来い!さもねえとこの場でこいつの首、この剣で刎ね飛ばすぞ!!」

遅れて駆けつけた賊の中でも副将らしき輩が、ミーの身長と同じ位の長さをした段平を陽光に煌かせる。
錆も欠けも一つも見えない事から、かなり手入れのされている業物と言える。切れ味は相当のものだろう。
そこへ賊の頭目がバスのかかった低い声で諌めるように声をかける。

「落ち着け。血の気は上がるだろうが間違っても傷モノにするな。小さいやつ一つ付けただけでも買い取り価格が著しく下がるからな。」
「分かってまさぁ。脅しッスよ、脅し。これで全員手に入りやすって。」

副将は小さい声で気軽に答える。とても人一人の命を預かっているようには思えない口ぶりだった。
一方、シエスタ達はどうする事も出来ないでいる。抵抗のしようが無いからだ。大体、故郷の森から離れ、数日の間村を転々としながらここまで生きてこれただけでも僥倖というもの。
だが、もうどうにも出来ない。考えられる手はとっくに相手によって詰まれている。シエスタは俯き、声を押し殺して号泣する。
ふと頭の中に様々な思い出が蘇ってくる。別世界の言葉で言えばそれは『走馬灯』とも言える物。
これで何もかも終わりだと言う時はこのような事を考えてしまうのだろうか。
―お父さん、お母さん、それからミス・ヴァリエール、ごめんなさい。私はこれで精一杯です。もう何も出来ません。―
心の中でそう思い、賊達に歩み寄ろうとした時だった。

「ヒメグマ……お願い。お願いだから、助けてぇ……」

ミーが蚊の鳴く様な小さい声で懇願する。するとシエスタ達の側に逃れていたヒメグマがいきなり音も無く飛び出した。
そしてあっという間に、ミーへ剣を突きつけていた盗賊の顔面に向かって体当たりをかましたのである。
305LFO代理:2010/01/04(月) 15:08:07 ID:gTd5mTWk
「あべしっ!!」

実に奇妙な悲鳴を上げつつ、副将は持っていた剣もろとも軽く後方に吹っ飛ばされ、ミーは副将の手から逃れた。
そしてヒメグマは臆する事無く、小さい体を上手く活かしながら賊に対して次々と色々な攻撃を素早く仕掛ける。
その間にミーはシエスタ達の方に逃げようとするが、すっかり腰が抜けてしまっていたがために、匍匐前進をするようにしか前に進めない。
シエスタとその兄弟達も、起こっている事に対して上手く体が反応出来ないでいた。
すると、どこか遠くから、自分達が逃げていた方向とも、賊達が追って来ていた方向とも違う方から、馬車が猛烈な勢いでやって来る音が聞こえてくる。
程無くして二頭立ての馬車が広場に現れたのだが、その御者台に乗っている人物を見てシエスタは驚愕のあまり大きな声を上げてしまった。

「ミス・ヴァリエール?!!」

そう。方々の村を回って、この辺りにいるかもしれないと勘繰っていたルイズがちょうど通りかかったのである。
場は色々と混乱していたが、状況を一瞬で把握したルイズは、馬車を一気に止めた後、御者代から飛び降り、ミーの元へ駆け寄る。

「ミー!!」

絶叫に対しての返事は無い。シエスタが叫んだ時点で、ミーは積もり積もった虚脱のため既に気を失っていたからだった。ルイズは何とかミーを抱えシエスタ達の所まで戻る。
その時、ミーの服からある物が転げ落ちた。タルブの村に昔いたポケモントレーナーが残していたモンスターボールの一つだ。
シエスタがいち早くそれに反応する。

「それ……曾お祖母さんが残した、モンスターボール……」
「何?これが何だっていうの?教えて!」

ルイズは息せき切って訊ねる。シエスタは縺れる舌を何とか動かしながら説明をした。

「それに、それにポケモンが……あそこにいるミーちゃんの熊みたいな生き物が、入っているんです。」

それを聞いたルイズの頭は、それまでに持ち合わせた知識と記憶を用いて驚異的な勢いで回転しだした。
殆んどミーしか知りえないポケモンという存在……そしてその能力……獣を自在に操る伝説の使い魔ヴィンダールブ……
直ぐに一つの答えに辿りついたルイズはミーの体を揺さぶって起こそうとした。

「ミー!起きなさい、ミー!」

静かにうっすらと目を開けたミーは、何が何やら分からない調子で答える。

「ご主人様……私、ええっと……」
「ミー、命令よ!この!モンスターボールを開けなさい!今直ぐ開けなさい!あんたの手で!!」
「駄目、ご主人様……それ、開かなかっ……」
「これは命令よ!簡単に諦めるんじゃないわよ!いい?!この中にいる生き物はあんたしか手懐けられないの!ヴィンダールブであるあんたが一番上手くそいつを操れるのよ!!
言い訳は聞かないわ。絶対に開けなさい!!」

ミーはそれ以上言葉が出なかった。壊れている事も、自分がポケモンを持って良い年齢である事も何もかも。
しかしルイズの命令は絶対である。仕方無しにミーは弱弱しく何回もボールの開閉スイッチを押してみた。それでもボールは開かず何も出て来ない。
シエスタの曾祖母さんは六匹のポケモンを従えていた。ポケモンは手持ちの数が六匹を超えたら自動的にパソコンへ転送されるので、この中にも何かが必ずいるはず。
その時。遂にボールが開いた。眩い光と共に出て来たそれは……
その場にそぐわない実に平和そうな顔立ち、そして全長8メイル近くはありそうな扁平な菱形をした体躯をした、どう表現していいのか分からない生き物であった。
だが鰭らしき部分をばたばたと動かしている事から、水棲生物であろう事は何とはなしに分かる。
ミーは驚いた。空想の世界で自分が欲していたポケモンだったから。そして、自分の目の前に現れたその個体は、一般的に知られている同種の生き物より明らかに大きかったから。
306LFO代理:2010/01/04(月) 15:09:01 ID:gTd5mTWk
以上で今回の投下を終了します。何かそれほど話が進展せず、マターリと話が進んでいるようですみません。
最後にSの権下、マルキド・サドの言葉を。
「もっともキツい加虐とは対象になる者が何かゲロったら終わりになる加虐ではなく、
加虐をするための加虐である。(中略)そして加虐されるものにとって最悪の加虐とは、
その果てに死が待っている加虐である。」
本編ルイズのはまだ生温いかと。


ここまで
307サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:21:57 ID:7qEf9VOj
17時30分から投下。
308サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:33:52 ID:7qEf9VOj
船倉に戻ったキュルケは、火薬樽に体重を預け、両膝を抱えて座り込むルイズを見つめた。
ルイズの両目は開かれているが、その瞳には何も映されていない。
今のルイズのような目をした女性を、男性経験豊富な彼女はこれまでの人生で何度も見たことがある。
男の帰りを待って待って待ち続け、やがて待ち疲れた女の目だ。

(……いや、あれはどっちかっつーと)

キュルケはその考えを訂正した。

(主人に捨てられた子犬の目、かしらね)



船尾に設けられていた船倉を後にした悟空とワルドは、一度デッキを上がった後、ひたすら下へ下へと歩を進めていた。
先頭に立っているのは悟空だ。船内にいる賊をやりすごすため、遠回りを余儀なくされている。
ワルドはその悟空の後を黙ってついて来ていた。

(ここまでは、オスマンのじっちゃんの言ったとおりになってんな)



ギーシュと悟空がトリステインに戻った日。
手合わせの後、駆けつけたモンモランシーによってタコ殴りにされ、更に無断外出の件を問い詰められていたギーシュをどう助けたものかと
眺めていた悟空をコルベールが発見し、3人はオスマンの執務室へと向かった。
そこで悟空とギーシュは、フーケがワルドの保護観察下にあるのではなく、脱獄したのだと聞かされた。

「馬鹿言え。裁判も始まってないのに、保護観察になるわけが無いじゃろう。第一保護観察なんて、ここトリステインじゃめったに執行されんわい」

とはオールド・オスマンの言である。
この時、アンリエッタは既に城へと帰っていた。
もしこの場に彼女がいたなら、最も信頼している家臣の一人が脱獄の手引きをしていたと知って、ショックのあまり気を失っていただろう。
犯人はワルド以外ありえなかった。彼女は彼の保護観察下に置かれている。
フーケがそう言った。ワルドもそう言った。
チェルノボーグにいた門番の話では、さる貴族を名乗る怪しい人物に『風』の魔法で気絶させられた、との事だった。
言うまでも無いことだが、ワルドは風のスクウェア・メイジだ。

「…状況証拠がここまで出揃えば答えは明白。どうやら、敵は外だけでなく内にもいるようじゃな」

白い顎鬚を撫でながら、ため息をつくようにオスマンは言った。
そこから、オスマンを中心として作戦会議が始まった。



『ミス・ロングビル……じゃなった、フーケはミスタ・グラモン、お主がなんとかせい。やっこさん、今なら油断しきっとるに違いあるまい』

ギーシュは昼食の際、フーケにこれでもかと給仕しまくった。
酒癖の悪さを隠さなくてもよくなったフーケは、開き直ってぱかぱかグラスを空にした
309サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:36:55 ID:7qEf9VOj
しまいには、エールの入った大瓶を抱えて離さなくなった。
酔い潰れ、フーケにマトモな行動を取らせなくした時点でギーシュの任務はひとまず達成された。

『ミス・ヴァリエールの使い魔の…ゴクウ、じゃったか? お主はワルドの動向に気を配れ。出来る限りミス・ヴァリエールから遠ざけておくんじゃ。
 できれば彼一人をどこかに閉じ込められればよいのじゃが……』

2人は梯子を上って甲板から三つ下のデッキにたどりついた。このデッキには今、悟空とワルドを除けば誰もいない。
悟空はL字型の通路の中ほどにある扉を開け、中に入った。ワルドも後に続いた。
そこは船の側面に取り付けられた翼の機関部だった。
奥行きは10メイルほどしかなく、両脇は冷却用のパイプやら大小さまざまな歯車やらでひしめき合い、大の大人が2人並ぶのがやっとのスペースしかない。
おまけに機械類が絶えずガチャガチャと音を立てている。これなら外を賊の誰かが通ったとしても気付くことは無いだろう。
と、悟空はルイズ達を置いてきた船倉に何者かの気が近付いてくるのを感じ、動きを止めた。
先ほどのジョニーとかいう男のものではない。が、悟空はこの気に覚えがあった。
甲板で眠らされる直前、上昇した気と同じものだ。
悟空の様子がおかしいことに気付いたワルドが声をかけようと足を踏み出すと、突然悟空がこちらに振り返った。

「ワルド、悪ぃけど、おめえちょっとここで待っててくれ」
「は?」

――ピシュン
悟空が瞬間移動で消えた。

「………あれ?」

ガチャンガチャンと機械がせわしなく音を立てる小部屋に、ワルド一人がとり残された。



船倉の扉が開いた。
悟空が戻ってきたものと思っていた一同は、入ってきた人物の顔を見て凍りついた。

「なんでぇ、やっぱり2匹ほど居なくなってやがんな。ったくジョニーの奴サボりやがってよぉ」

空賊の頭が、室内を舐め回すように覗き込んでいた。
その顔を見た瞬間、呆けた様子だったルイズの瞳に、強い怒りが宿った。
ゴクウを眠らせた奴だ。
出し抜けにルイズは立ち上がり、頭の目をキッと見据えたまま、室内の皆を庇うように前に進み出た。
頭は何も言わず、面白そうな笑みを浮かべたまま黙ってルイズを見下ろした。ルイズも負けじと睨み返す。
今ここにゴクウはいない。
だからせめてわたしが皆を守るんだ。
そうルイズの背中は語っていた。キュルケには、その様子れが主人の居ぬ家を守る犬のようにも見えた。
タバサは、頭の左耳に着けられていた片眼鏡に注目していた。
先ほどと違い、緑色レンズの部分に何か模様が描かれているように見える。
310サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:39:02 ID:7qEf9VOj
すると、片眼鏡から奇妙な音が鳴り、レンズに描かれた模様がひとりでに形を変えた。

「ん?」

頭がその音と模様に怪訝な表情を見せると同時に、突如悟空が船倉内に出現した。

「ゴクウ!」

反射的にルイズが叫ぶ。先ほどの気丈な様子とは裏腹に、その瞳にみるみる涙が浮かんだ。キュルケ達もこの状況で一番頼れる男が戻ってきてくれたことで、その顔に安堵の色を浮かべていた。

「なっ!? 何だ貴様! 今どうやって現れやがった!?」

余裕を見せたルイズ達と違い、初めて悟空の瞬間移動を見た頭は驚いていた。
無理も無い、とギーシュは思った。杖も詠唱も無しにあらゆる障害物や制約を無視して移動してのけるその能力は、何度か間近で見ているギーシュですら、今のように突然現れると少しはビックリするのだ。初見では尚更であった。
そして、もう一人この状況に驚いている人物がいた。
悟空は、自分を眠らせたと思しき人物の顔についている物を見て、反射的に自らの気を上げた。
あのスカウターとかいう強さを測る機械を、今目の前にいる男が身に着けている。
服装が違う上に力も感じないのでとてもそうは見えないのだが、こいつも自分同様ハルケギニアに迷い込んできたフリーザ達の仲間なのだろうか。
悟空の気の上昇に伴って、ピピピピ…という音と共に相手のスカウターの数値が見る見る上がり、やがて止まる。
今の悟空の気は、戦闘力に換算して5000程度には上がっているはずだ。
相手は自分のように気をコントロールできる実力者かもしれない。これくらい気を上げていれば、相手の実力が今の悟空の気より弱ければ警戒するし、悟空より強ければ油断した様子を見せるはずだ。そう判断してのことだった。
だが、目の前の相手はそのどちらも無い行動に出た。

「何だ、うるせえな」
「へ?」

数値の上昇などお構い無し。警戒も油断もせず、スカウターの耳当ての部分を指先で数度つついただけだった。。
悟空の頭に一つの疑念がよぎった。

「……おめえ、もしかしてそれが何か知らねえで使ってんのか?」
「ん? そういう貴様はこれの使い方知ってるのか。…ということは貴様ら、やっぱり貴族派なんだな」
「バカ言わないで!」

貴族派と言われて頭に血が上ったルイズがたまらず叫んだ。

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか! わたしたちは王党派の使いよ!!」
「王党派の使い?」頭の視線がルイズに向いた。「何しに行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまうよ」
「あんたらに言うことじゃないわ」
「…貴族派じゃねえんだな?」
「くどい!!」

それを聞いて、頭は縮れた黒髪を剥いだ。驚くべきことに、それはカツラだった。中から現れたのは、銀河帝国の皇帝と張り合えそうな豪奢な金髪。
311サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:41:24 ID:7qEf9VOj
付け髭も剥がされ、野性的な風貌の頭は一転して凛々しい金髪の若者へとその姿を変えた。まさに劇的ビフォーアフター。

「なら私達は味方同士だ」



「……いえ、今のところこちらに届いたのは1つだけです。もう1つは所在がわかっておりません」
『こちらからは同時刻に別々のルートで出発させた。今になっても届いていないということは、恐らく王党派の襲撃を受け、奴らの手に渡ったのだろうな』
「申し訳ございません。ジョゼフ様に頂いた品、この身に代えても必ず取り戻して見せます」
『別に構わん』スカウターの向こうで、王が面倒そうに片手をひらひらさせる様が目に浮かんだ。『遠くの者とこうして会話ができる程度の品なら、他にいくらでも替えが効く』
「寛大な処置、痛み入ります」

アルビオン首都ロンディニウム、王家ハヴィランド宮殿に設けられた一室で、シェフィールドは彼女の主、ガリア王ジョゼフ一世とスカウターを通じて会話していた。
ジョゼフには、これは遠くに居る者と会話ができる機械。ディスプレイに表示される記号は調節のためのものであり、特に気にする必要は無い、と説明した。
探せばありそうなちょっと珍しいマジック・アイテム。そう相手に思わせることが目的だった。
そして、ジョゼフはそれで納得した。
今はそれでいい。シェフィールドは一人笑みを浮かべた。
この地に来てから何年経つだろう。
一時は諦めかけた元の世界に戻る手がかりが、今になってようやくこの手に飛び込んできた。
後はこのスカウターがいつ、どうやってハルケギニアにもたらされたのかを調べる必要がある。

「ところで、このアイテムはいつ入手を?」
『先週だ。ビダーシャルが言うには、4年ほど前に発見された「場違いな工芸品」の中で発見したらしい』

エルフの名を出されて、シェフィールドの形の良い眉がしかめられた。

「場違いな工芸品?」
『ロマリアの連中が、ハルケギニア外部からもたらされたらしい物品をそう呼んでいるそうだ。相当な数をエルフ達の目をかいくぐって蒐集していると言っていたな』

今回はたまたま移送前に発見できたんだそうだ、とジョゼフは付け加えた。
サハラ方面になら何か手がかりがあるだろうとシェフィールドは踏んでいたが、ここに来てもう一つ調査対象が増えた。
正直、今すぐにでもロマリアに足を運びたいところだ。
だが、の興味と戦力はほぼ全てアルビオンに向けられている。彼女もそこに配置された重要な駒の一つだ。独自に動くことはできない。
まあいいか、とシェフィールドは考え直した。
もう30年近くこの世界に居る。あと1、2年待ってもいいだろう。



ルイズは目の前の光景が信じられなかった。
先ほどまで不倶戴天の敵だと思っていた空賊の頭は、あろうことかアルビオン王国皇太子、アンリエッタ姫の想い人、ウェールズ・テューダーその人だったのである。
船長室まで案内され、集められた空賊たち―ジョニーは便所に行ったままだった―が一斉に直立不動の姿勢を見せた時は、おもわずキュルケと互いの頬をつねり合った。
312サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:44:39 ID:7qEf9VOj
もっとも、頭の髪の毛と付け髭が取り除かれ、凛々しい皇太子の素顔が露わになるとキュルケは途端に普段の様子を取り戻したが。
ルイズの指に光る水のルビーを目ざとく見つけたウェールズが、自分の指に嵌めていた風のルビーを近づけてその身分を証明したことにより、ようやくルイズも納得して姫から託された手紙を皇太子に託した。
ウェールズがその手紙を読んでいる間、悟空とギーシュから更なる衝撃的な発言を聞いた時には、ルイズは卒倒しそうになった。
ワルドが、あのフーケを脱走させた張本人で、しかも、しかも……敵である可能性がある。
今はフーケ共々先ほどまで居た船倉に閉じ込めている。ルイズは信じたくなかったが、ギーシュがルイズに語って聞かせた学院でのオールド・オスマンとのやり取りと、それを告げられた時のワルドの狼狽っぷりが、その話が嘘でないことを何より如実に物語っていた。
ちなみにフーケは最初から最後まで酔い潰れていた。立場上は凶悪な脱獄犯であるはずなのだが、だらしのない顔で盛大に眠りこける様は、とてもそうは見えなかった。
互いに一通りの自己紹介を終えると、ウェールズは一行を正式な大使としてアルビオンに迎えることを約束した。
件の手紙もアルビオン本国にあるらしく、ルイズたちはこのまま空賊船改め偽装船<イーグル>に乗って行く事になった。
その手筈が整うと、タバサはさっさと<ドレーク>の甲板に係留したままになっているシルフィードの餌やりに行ってしまった。
キュルケとギーシュは、ウェールズと悟空を中心とした会話に参加している。
議題は、ウェールズが身に着けていたスカウターについてだった。
悟空からスカウターの機能について簡単に説明を受けたウェールズは、感じ入ったように頷くと、このオーパーツを手に入れた経緯について話し始めた。

「4日ほど前だ。今日のように貴族派の物資輸送船に奇襲をかけ、戦利品の中にこいつがあった」
「誰が着けてたのかわかるか?」
「いや。これは箱に収められていた。最初は使い方が判らなかったが、やがてこの模様が人間の場所を示すらしいことが判明したので、襲撃の際に相手の人数と位置が把握できるようにと私が使うことになった。
が、まさかこれが相手の力を計るものだったとは思わなかったな」
「あと、オラの兄ちゃんが言ってたんだけど、これを着けてる他の奴と会話とかもできるらしいぞ」
「そんな凄いものなのか…。ふむ、マジックアイテムのようだとは思っていたが、これはそれ以上だな。……生憎私が持っているのはこれ1つだけなので、会話はできないだろうが。
 それよりもう一つの機能というのが気になるな。これで本当に相手の力が判るのか?」
「ああ」
「ダーリン、よかったら使って見せてくれない? ちょっと興味があるわ」
「オラが?」
「だって、あたし達じゃ何が書いてあるのか読めないもの。ダーリンは読めるんでしょ?」

ああ、と悟空は頷いた。
かつてヤードラットから地球に帰る際、乗ってきた宇宙船に再度コースを入力するため、現地の科学者が総出で機能を解析してくれたのだが、実際にコースをインプットした後の
微調整などは乗組員本人が行わなければならない仕様だったため、悟空も簡単な操作や計器の読み方をレクチャーしてもらったのだ。
313サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:47:06 ID:7qEf9VOj
そのため、フリーザ軍で使用されている言語も少しなら読める。当然、刑期に表示される数値などはお手のものだった。

「よし、じゃあ誰の力から計っかな〜」
「ぼ、僕のから頼むよ!」

ギーシュが期待を顔にありありと浮かべて言った。
悟空はスカウターを装着すると、赤いスイッチを入れた。ピピピピ…と電子音が鳴り、やがて止まった。

「えっと…ギーシュの力(りき)は……5だな」
「それって、強いのかい?」
「う〜ん…普通……かな。魔法使う時とかは、この何倍にもなってると思うんだけどよ」
「ねえダーリン、あたしはどうなの?」
「キュルケは…」再びスカウターのスイッチを入れる。「……6。お、やっぱトライアングルなだけあってギーシュより強えな」

悟空はせっかくだからと、船内に居る者の戦闘力を片っ端から計っていった。

「ルイズも6、ワルドが9、う…うぇ…」ウェールズだ、と再び自己紹介が入る。「ウェールズが6」皇太子をつけなさい、とルイズからツッコミが入る。「タバサは4、フーケは5だな。やっぱワルドが一番強えんだな」
「でもタバサだけ低くない? あの子もあたしと同じトライアングルなのよ?」
「魔法使ってねえ時はこんなもんなんじゃねえか? あいつちっこいし」
「ゴクウ、ちょっと貸してくれ。君の力を計ってみたい」
「いや、オラは別にいいよ。強くも弱くもできっからさ」
「それならば参考までに、さっき私の前で上げた時の値を出してくれ」

そうウェールズに促され、じゃあ、と悟空がスカウターをギーシュに渡す。ギーシュがスカウターを装着している間に、悟空は気を再び上げた。
数値をここに書き出すといい、とウェールズから紙とペンを渡されたギーシュは悟空をスカウターの表示範囲内に捉えると、スイッチを入れた。
これまでの誰よりも長い時間ピピピピ…と電子音が鳴り、やがて止まる。ギーシュはその値を紙に書き出し、悟空に見せた。

「どれどれ、オラの今の力(りき)は……。んーと、5034か」
『ごせん!!??』

悟空を除くその場の全員が驚愕の叫びを上げた。
文字通り桁が違う。違いすぎる。
口々に悟空を褒め称える声が上がる。それを効いているのが次第に辛くなり、ルイズは部屋の隅で両耳を塞ぎ、目をぎゅっと閉じた。
またひとつゴクウの凄さが証明された。
わたしは相変わらずだ。ギーシュより強いけど、慰めにもなりはしない。
何なんだろう、この差は。
その時、船長室に設けられた窓の外が真っ暗になった。

「どうやら、そろそろ到着するらしいな」ウェールズが言った。「今この船は雲海を潜って大陸の下を通り、ニューカッスルに近付く。そこに我々しか知らない秘密の港があるのだ」
「どうしてわざわざそんなことを?」
「今、ニューカッスルの制空権は叛徒どもの手の内にある。かつての我々の旗艦<ロイヤル・ソヴェリン>が拿捕されてしまったのだ。今はそいつが城に向けて、たまに嫌がらせのように大砲をぶっ放していく」
314サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:49:09 ID:7qEf9VOj
それに答えるかのように、外から大音響が轟いてきた。

「あれがそうだ」
「あ、オラ前に見たことあるぞ。ルイズも」
「では、あの船がいかに強力かも知っていよう。あれが敵の手にある限り、我々の空は戻ってこないのだ」

<イーグル>と<ドレーク>は、静かに闇の中を進んでいった。



シェフィールドのスカウターが警戒信号を発した。
彼女のスカウターは今、観測範囲をアルビオン国内に限定している。そこに強い戦闘力を持った何者かが侵入してきたのだ。
詳細な数値を確認したシェフィールドは、ありえない数値に思わず驚愕の声を上げた。

「5000!?」

一瞬故障を疑った。
が、ミョズニトニルンとしての能力が、スカウターに何の以上も無いことを教えてくれている。
シェフィールドの戦闘力は84。メイジに魔法で対抗されない限り、ほぼ最強といっていい数値だった。
その彼女をも上回る、エリート級の戦闘力を誇る何者かがこの地にやってきた。自分と同じように召喚されてきた同僚かもしれない。
座標から場所を確認する。ニューカッスル城内。
確か、「閃光」と「土くれ」が皇太子の命を奪うために先行しているはずだ。
もしや、と疑念がよぎる。
「土くれ」がこちらの側につくための条件と言っていた「こちら側に引き込んで欲しい人間」だろうか。
もしそうなら、同じ穴のムジナである自分が居た方が話が早い。
シェフィールドは、一人宮殿を後にした。



「これが姫から頂いた手紙だ」

ニューカッスル城に到着後、ひとしきり歓迎を受けた一行は、揃ってウェールズの居室に案内されていた。城の一番高い天守の一角にある彼の居室は、王子の部屋とは思えない、質素な部屋であった。
何度も読み返されたらしいボロボロの手紙をウェールズは最後にと愛しそうに読み返すと、丁寧に畳み、封筒に入れてルイズに手渡した。

「この通り、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」

ルイズは深々と頭を下げると、その手紙を受け取った。

「明日の朝、非戦闘員を乗せた<イーグル>が、ここを出航する。それに乗って、トリステインに帰りなさい」
「感謝します。ですが、それには及びません。わたしの使い魔が連れて行ってくれます」
「ほう? どうやってだね?」
「ゴクウ」
「ん?」
「わたしを姫様のところに連れて行って。せっかくだから今のうちにこの手紙を渡してしまいましょう」
「わかった」
315サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:50:18 ID:7qEf9VOj
「見ててください、殿下」

――ピシュン
悟空がルイズの肩に手をやり、もう一方の手で自分の眉間に指を2本当てると、瞬時に2人の姿は掻き消えた。



アンリエッタ姫は、トリステイン王宮の自室で、一心不乱にペンを走らせていた。
創作意欲がグングン湧き上がってくる。何かに吐き出さないと、どうにかなってしまいそうだ。
今はただひたすらに、書く、書く、書く!
取り付かれたかのように書をしたためる姫の口元からは、ブツブツと呟きのような音が低く漏れていた。
広い部屋の中、従者すらも追い払われ、いかなる干渉も受け付けないかのようにサイレントがかけられた室内は書き連ねられた紙がそこかしこに散らばり、ペンを走らせるカリカリと言う音だけが聞こえていた。
その時までは。

――ピシュン

聞き慣れない音に、集中力を削がれたアンリエッタが顔を上げる。

「オッス」
「姫様…?」

ルイズと使い魔が、そこに居た。
呆気にとられた顔でぽかんと2人の顔を交互に見つめたアンリエッタが、がたんと椅子から転げ落ちた。
と、手足をわさわさと動かして部屋中を這いずり回り、散らばった紙をかき集めていく。
この2人に見られるわけにはいかなかった。
だって、今書いているのは、

(ヤバいヤバいヤバい! 何で? 何でこの2人が居るの!? 誰か来てーって無理だぁサイレントかけてるから聞こえるわけねー!!! ていうか誰にも見られるわけにはいかねー!!!!!)

悟空×ワルド本の原稿なのだから。
狂ったように散らばった紙を回収するアンリエッタをとりあえず手伝おうと、ルイズも手近な紙に手を伸ばす。その表面に書き込まれた文章が、ふとルイズの目に止まった。

「『そう、そのまま飲み込んで、オラのデルフリンガー』……?」
「み、見ちゃらめぇぇ」
「ルイズ、何だそれ? デルフのことが書いてあるんか?」
「うん、良い子は見ちゃ駄目」

何が書かれているのかを大体察したルイズは、頬を染めながらも勝ち誇った顔で集めた原稿をアンリエッタに差し出した。
口では駄目といっているものの、もの書きのサガか、だれかに原稿を読んでもらいたいという欲が羞恥心を上回ったアンリエッタは、じっくりねっとり読み込まれた原稿を真っ赤な顔で受け取った。

「ず、ずいぶんと精が出ますのね姫様。今度はゴク×ワルですか」
「ええ、ルイズ。やはりあの方は受け――」
316サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 17:52:06 ID:7qEf9VOj
「それは違いますわ姫様」

ぴしゃりとルイズが遮った。

「ワルドは攻めよ。わたしとゴクウは確かにその証拠を聞いたわ」
「何ですって……?」
「ゴクウ、ラ・ロシェールの酒場で、ワルドは貴方に『やらないか』って言ったわよね?」
「ああ」ルイズは言外に違う意味を込めて言ったが、悟空は知る由もない。「そういやそんなこと言ってたな」

アンリエッタの頭上に雷が落ちた、ように感じた。
衝撃にアンリエッタの膝がガクガクと振るえ、口が打ち上げられた魚のように力無く開閉を繰り返す。
姫は今、真っ白に燃え尽きた。

「お、おい、姫様大丈夫か…?」
「今はそっとしてあげて。信じていた未来が崩れ去ろうとしているのよ」

どこか遠い目をして、ルイズはそっと嘆息を漏らした。

「悲しみを繰り返し、人はどこへ行くのかしらね……」
317名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 17:57:41 ID:rCvsj2H+
あらお久しぶり
続きが読めてとても嬉しい

支援
318名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 17:58:52 ID:w5AHn8to
……アホかこの腐女子共wwwww
こんなんがトリステインの最高権力者&名家の娘じゃ風前の灯だな
319名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 18:07:22 ID:rCvsj2H+
さるさん?
18:00をまたいだから解除されていると思う
320名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 18:09:09 ID:RQygC7vC
本人ですか?

ともあれ


>「今はそっとしてあげて。信じていた未来が崩れ去ろうとしているのよ」
>「悲しみを繰り返し、人はどこへ行くのかしらね……」

555かよ!
321サイヤの使い魔 試しに書き込んでみる:2010/01/04(月) 18:09:36 ID:7qEf9VOj
以上、投下終了。一つ前の話に誤記を多数発見したので、今から直してきます。

ネタはずいぶん先のほうまで用意してあるのですが、ワルドの扱いに悩んだまま気がついたら年が明けていました。反省。
ちなみに魔法詠唱時の戦闘力は以下のようになっています。

ルイズ:53
タバサ:64→79(スクウェア化)
キュルケ:61
ギーシュ:24
ワルド:72
フーケ:68
オスマン:90
コルベール:96

あと、この作品中ではスカウターの数値は所持している武装に左右されないことにしています。
もしスカウターの数値が武装の威力によって上下するのなら、例えばスカウター直結型ビームガンを装備した惑星戦士を2人用意して互いの戦闘力を計らせたら
際限なく戦闘力が上昇してしまうからです。
322名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 18:10:56 ID:nw8ZItwj
>>318
帝国全体で即売会を開く連中もいるんだからこれはまだましな方だよ
しかも公式設定で
323サイヤの使い魔:2010/01/04(月) 18:11:24 ID:7qEf9VOj
あ、本当だ。書き込めた。
支援ありがとうございました。

「今から直してきます」と書いたものの、wikiの方にアクセス規制食らってたようなので、
お手数ですがどなたか避難所の代理投下スレの方に残してきた修正依頼の方、お願いします
それでは。
324名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 18:26:47 ID:4Sk6b/Gf
>>322
日本の文化を断片的にしか知らないから
色々と抜けている事に気がついていないって設定でしたっけ。


続きは期待しちゃいけないんだろうな。
一応区切りはついているから出なくても困らないけど。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 18:28:45 ID:EnWM5wc3
サイヤの人、投下乙です
続きが読めて嬉しい限りです

>>322
星の眷属のことはそっとしてあげて、とある副官の胃がすげぇ事になってたから
326名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 19:11:08 ID:n47RTbBR
やってはいけないあとがき例



第一話 始まりと秘石と旅立ち・・・

トリス「フッ・・・では行こうか、新たなる未来を切り開くために。」
レナ「我、汝のために骨身まで尽くす予定。」
シャロン「さあ☆いくわよ♪新たな旅立ちへ!!」



あとがき
作者「どーもどーも!作者の○○です!
   どうでしたか第一話!こういう展開もいいと思ったんですよね!」
シャロン「うわっ、作者だ!エロい顔してるんじゃないよ!」
作者「そんな事言っていいのかな?(笑) 俺は作者だぞ、
生きるも生かすも俺次第だぜ?」
トリス「くっ・・・なんて卑怯な奴だ!」
レナ「殴ってしまえ。」
作者「ぐわっ、こら!やめて!あっ、オッパイが当たってる、でへへ。」
シャロン「にゃー!何するの!」
レナ「死刑実行、排除する。」
作者「ひー!これ、俺は作者だぞ、皆さんまた次回をお楽しみに!
ぐわあああああああああああああ!」
トリス「始末終了!」
327名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 19:14:00 ID:myoXqA9v
悟空が全力出せば少なくとも数千万になるのを知ったら誰かがショック死しそうだw
328名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 19:22:15 ID:G2JcO2vq
>>321
強さの認識ってやっぱ結構差あるのな
自分は

オスマン>>ワルド>コルベール>>4タバサ≧フーケ>キュルケ>>>その他

って感じだわ
329名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 19:27:01 ID:kiePgSsM
エロジジイで原作空気のオスマンが強いとは思えない
330名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 19:44:31 ID:TtnRPG8u
ここだとたまに正体は竜とかそんなんあったりするけど
原作の学院長って今のところ
『実力はあるらしいけど果たして本当に敬われるほど凄いのかは分からない一応タダモノじゃないらしいエロジジィ』
だよね
これからいつかコッパゲ先生みたいに見せ場と活躍があるのかすら定かではない
ただエロスで絡めるには最適なわけで
たまにはオスマンの出番活躍の多い話があっても楽しいかもしれない

というわけで
学園天国パラドキシアからQ子召喚でも検討してみっか・・・
でも単品じゃなぁ・・・やはり浄霊委員会4人揃ってないと成り立たん
331名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 20:00:25 ID:rCvsj2H+
爺ファンタジーを始めるオールド・オスマン氏
332名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 20:02:30 ID:rCvsj2H+
あれ、『オールド・オスマン』自体が敬称?
さらに氏をつけるのは間違いか
333名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 21:02:32 ID:9j4lOZ7S
サイヤktkr
シェフィールドはオリキャラ?
スカウターが読めて戦闘力80ちょいで女性って誰かいたっけ?
334名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 21:23:31 ID:oOowILeQ
80って天下一武道会で戦った頃の悟空ぐらいかね?
フリーザ編だとモブでもサイバイマンより強いだろうからなー
335名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 21:39:52 ID:X8B3Wf0x
>>333 ミョズの力でスカウターの文字を理解してるんじゃなかったっけ?
336名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:16:52 ID:TQCuZOP+
フィリップ「検索しよう、「ハルケギニア」、「魔法」「ガンダールヴ」・・・・ありえない、検索に引っ掛からないorz」
337名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:20:32 ID:OuToAZFX
>>334
80くらいの強さって多分、最初期ぐらいだよな
亀仙人VS少年悟空で天下一決勝やってた頃くらいの
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:20:42 ID:8yGbamHE
ヴィンダールブになれそうな爺さんキャラってどんなのがいるかな?
339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:26:19 ID:sTGSk5T5
>>338

ムツゴロウ先生に一票。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:31:08 ID:pmphQ4PT
動物と仲良しな爺さんか

指輪物語のガンダルフとかどうかな!
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:34:45 ID:RbUphZMV
>>337
だとすれば戦闘力84のシェフィも、ジャッキー・チュン同様に月を破壊できるということにw
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:39:54 ID:G2JcO2vq
>>341
月破壊時の戦闘力って130くらいなかったっけ?
343名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:43:40 ID:8MC+TA7A
DBの強さは場面ごとに変わるからな…
シリアスシーンでもサタンが悪ブウに殴られても平気だったりするし
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:46:55 ID:a2VpJhXR
DBの戦闘力とか完全にフィーリングなんだから、まともに考察しようとするのは阿呆
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:47:44 ID:myoXqA9v
かめはめ波は元の戦闘力の二倍ちょっとの破壊力だから亀仙人のかめはめ波は戦闘力300ぐらいの威力になる。

346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:47:53 ID:oPiAo+BM
DB初期はコミカルな表現も多かったからなぁ
月ぶっ壊したのもそんな感じだろう
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:49:38 ID:pmphQ4PT
>>342
計測はされてないけど、体全体が巨大化して時間かけて貯めて全エネルギー消費だもんな
ピッコロ(通常時)→魔貫光殺砲使用時ぐらいの比率で戦闘力上昇はするんじゃね?
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 22:57:46 ID:kiePgSsM
DB厨うぜーから、スレ違い消えろよ
349名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 01:02:41 ID:Wk55ctR6
ある程度若い世代で、男に生まれてDB厨じゃない奴っているのかな?
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 01:16:48 ID:2dFK0K32

教育方針で中学入るまでアニメとかほとんど見れなかったせいだが
351名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 01:32:24 ID:1eFd8xZj
>>349
ここにいるぞ!
352名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 03:56:15 ID:mHqCi32/
悟空の人帰ってきたんだ
辛抱して待ってた甲斐があった
353名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 06:02:43 ID:gjh7V9S+
>>321 >>328
私的戦闘力評価とその理由

ルイズ:35
爆発魔法の利便性からギーシュ本体よりは強いかと
エクスプロージョン習得時点での評価は精神力フルで150
月を壊すフルパワー亀仙人(平常時139、かめはめ波使用時は300前後?)より高いとは思えない

タバサ:65→80(スクウェア化)

キュルケ:60

ギーシュ:30
本体の強さ。自身の攻撃能力は乏しいのでルイズより低い
ワルキューレは人造人間と同じで戦闘力は無いと思うが数値としては20
石飛礫でギーシュ本体でもタイマンなら倒せるだろうから
1体出すごとに本体の戦闘力が若干落ちるが、精神力がカラにならなければ大きくは低下しない

ワルド:78
偏在フル使用時は70x5
戦闘力の若干の低下は精神力の消耗によるもので、1体あたり2と計算

フーケ:63
ゴーレム準備抜きの本体自身はタバサより弱い
ゴーレムは数値としては73
ただし周囲の環境(土の有無など)によって若干変動する

オスマン:不明(しかし高くてもおそらく100未満)

コルベール:85
354名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 06:15:11 ID:gjh7V9S+
ワルドあたりならブルー将軍には勝てるかも知れん
ブルーの超能力は初見だとタバサとかでも絶対引っかかりそうだが

がそのブルーをベロで瞬殺し、
当時のゴクウのかめはめ波(普通の人間は死ぬだろうからライトニングクラウドより威力はあるだろ)
でも無傷な桃白白に勝てるメイジはおるまい

っていうか初代ピッコロ大魔王くらいの強さ(銃は効果なし、ミサイルでも平気と自負。爆裂魔光砲一発で街を廃墟に)
でも充分すぎるほどオーバーパワーでハルケギニア全土の危機クラスだと思うのだが
Z後半のゴクウってなによw
競輪の試合に超音速ジェットで参戦するより大人気ないぞ
355名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 06:19:50 ID:kzD+c6aU
>>354
最初から読み直してみなって。これが面白いんだから。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 10:13:36 ID:/YFaFBwx
戦闘力5000であり得ない、エリートと言ってることから、フリーザ一味ではないのかねぇ。
もしかして、人造人間7号とかそのあたりだろうか?
357名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 14:52:12 ID:eAoh0csf
無印のマンガやアラレちゃんに近い感じだと思ってるけどな
358名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 15:04:35 ID:mD5p77ha
>>356
大体の雑魚兵はラディッツ以下くらいのレベルじゃないかと。
戦闘力1000前後だろう。

5000もあれば十分エリートだろう。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 15:47:05 ID:+c/hlWdv BE:1580183647-2BP(200)
ttp://edentheworld.zero-yen.com/sentouryoku.htm

参考までに。インフレってレベルじゃねえな…
360名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 15:47:32 ID:+c/hlWdv BE:902961582-2BP(200)
sageます
361zeropon!:2010/01/05(火) 15:49:48 ID:m/MS86gy
すいません、zeropon!を書いていたものです。
この度、arcadiaの方に投稿することにいたしました。
読んで頂いてた方々、本当にすいません。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:38:17 ID:eKfJO3HG
>>361
まとめサイトのは消すのですか?
なんならarcadiaと同時進行って手も……
363名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:40:29 ID:v8ANdAvJ
同時進行はアウトだろ
364名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:42:07 ID:5nsYx0fW
消すんなら避難所の運営スレに申告もしくは依頼かな?
365名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:46:31 ID:Ee98pSoO
>>361
とりあえず投稿規程くらいは読んだ方が良いですよ。
感想で指摘されてから報告ってんじゃ読んでないと言っているようなものです。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:52:19 ID:eKfJO3HG
>>363
arcadiaと小説家になろうで同時連載してる人はいるけど、ここじゃあちょっとダメか。
だとしたらまた寂しくなるな。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 16:54:43 ID:EXiVXF1y
2重登校禁止するメリットってなによ?
368名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:14:24 ID:HYFDrM1P
そもそもここって二重投稿が禁止されてんの?
369名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:19:24 ID:KCX5xYtx
とりあえず、理想郷のほうは二重投稿が規約違反になるはず。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:19:29 ID:ZWgzg/aA
冬だなぁ
371名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:27:21 ID:HYFDrM1P
>>369
二重投稿先がそれを許可していて、二重投稿先にて理想郷との二重投稿だと明記すればokのはず。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:50:30 ID:eIkfqdM1
>>1 を読んでみたが二重投稿禁止なる条文は存在しない。
よって、他で投稿しつつこのスレで投稿することに対して、
『このスレ内で叩く』事はただの荒らし行為。
避難所で叩くことも、規約違反ではないので荒らし行為もしくは的外れ行為となる。

ただし、こことは別の投稿先の規約に二重投稿禁止なる条文があり、
その行為に対しての叩き行為が許可されているのであればそれは荒らし行為ではない。




ま、どこだって叩き行為は禁止でしょうから、「静かに指摘する」程度が限度と思いますけど。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:53:23 ID:eIkfqdM1
なお、姉妹スレがある場合にそちらで投稿したほうが喜ばれる、
という条文が>>1に存在する。
しかしこれは、二重投稿を禁止する条文ではなく、投下場所を勧める条文でしかない。
よって、これを根拠に二重投稿を『このスレッド内で』叩く行為は荒らし行為となる。
374名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:54:15 ID:HYFDrM1P
そういう封じ込めるようなやり方は反発されるだけなのにね……。
叩き行為と「静かに指摘する」の判断は誰がするんだか……。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 17:58:43 ID:/YFaFBwx
>>358
ベジータがフリーザ軍に所属してたとき、戦闘力1万ちょいで、上級兵(エリート?)。
ナッパは4000だけど、上級ではないと読んだことがあるぞ。
376名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 18:01:30 ID:Jh157Wxw
理想郷にss投稿した方が感想沢山もらえるかんなぁ……

「感想貰えると嬉しい」ってよく言う人なんかは、
あとで理想郷の存在知って
「はじめからこっちの方に書いときゃいっぱい感想もらえたのに……」
と思うかもしれん
377名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 18:03:43 ID:EXiVXF1y
理想郷は上から目線の感想が多くて怖い
378名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 18:05:35 ID:h2DQTyRw
スレの運営や理想郷についてはスレ違いじゃね?
運営は避難所の運営、理想郷は該当するところでやるかスレを立ててやってくれ。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:14:18 ID:bFGwRYxO
要するに、色々感想が欲しくてルール無視で好き勝手やったわけでしょ?

死ねばいいんじゃない?
380名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:40:31 ID:p+y3VTgU
>>379
ここに出てる情報をどう集めればルール無視で好き勝手になるのかが俺には理解できないが
お前の中ではそうなんだろうな
381名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:47:36 ID:sGr5RZqv
作品自体は読んでないからどうでもいいし、ルール的に問題がある訳ではないが
二重投稿自体を自分を含めて不快に思う人はいると思う。

まあ、はっきり問題があると思う人は運営で二重投稿禁止を
明記するように提案すればいいのでは?
382名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:49:05 ID:bFGwRYxO
>>380
あ?馬鹿なの?

>・二重投稿はご自分のサイトか二重投稿先が許可している場合に限ります

> 上記の通り、二重投稿先が許可している場合に限って二重投稿を許可します。
> また、これまでに、他サイト様との二重投稿で何度かトラブルが起きていますので、二重投稿のサイには、「必ず」Arcadiaにも投稿している旨を「他の投稿先の作品に明記」してください。
> 明記されていない場合には、作者以外の人間が投稿している可能性があるとして、削除する可能性があります。


と、あっちにゃあるのに、指摘された途端にいきなり報告をしに来た。
指摘がなけりゃ何事もないかのように好き勝手同時進行、か或いはいずれか放置などでやってたろうし、クズ以外の何者でもないわw
383名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 19:58:53 ID:ZWgzg/aA
arcadiaに投稿するなら、まずはこっちで撤退の旨を伝えて、「これからはarcadiaに投稿します」と宣言してからarcadiaに投稿するのが道理だな
もしくは同じくarcadia投稿の旨をこのスレとかで宣言して、どこで許可(?を得るかは知らんが、きちんとそこら辺を収束させてからarcadiaに投稿をするべきだった
それが通すべき筋
既に投稿された作品はそのままにしてもいいし、削除要請してもいい

現状だと指摘されたからノコノコ出てきて、「すいませんでした、これからは向こうだけでやります」と言ってるようにしか見えない
そんな作者を擁護する気には到底なれんな
384名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:01:01 ID:EXiVXF1y
お前ら元気だな
385名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:02:12 ID:+4l/JLM9
正義の執行者は元気じゃないとな
386名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:28:02 ID:tJ27a7EP
というか、そう言うのってWikiと理想郷の二重投稿になるだけで、本スレで何やかや言うことなのかね?
避難所の運営板で相談してくればいいと思うけどな。

理想郷で危惧しているのは、二重投稿という行動そのものよりも、
盗作行為の犯人が「俺作者なんだから、こっちでも投稿しても良いだろ」とか言い出して話がこじれることだろ?
運営板で話が解決すれば、ここに投稿してから別の場所に投稿しても問題ないんじゃないの?
他のクロス作品だって、ここと自分のサイトやブログの二つで発表してた物もあるんだし
態々火種を持ち込むこともない。
387名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:35:23 ID:Jh157Wxw
こういうときは二つ三つ前のssの感想を書くに限るぜ
388名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:36:19 ID:JuZ1WvPU
文句だきゃ一人前だなw
389名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:38:20 ID:ZmVRVOk7
パタポンの人の一番の問題は、理想郷のルールを読んでいないことだな。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:52:24 ID:w4dc35tL
ルール読んでなかったのは悪いけど、ダメだよと指摘されてすぐ是正したのをたたき続けるのもどうかと。
大体、作者本人はもうここから撤退したんだから、ここでいくら非難しても読んでないんじゃね?
391名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:58:25 ID:ZmVRVOk7
>>390
やっぱり撤退なの?
ってことは、まとめからも削除?
392名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:11:42 ID:j5+xKlDe
ここから撤退する人が増えたのは雰囲気悪くするからだろ・・・
393名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:17:51 ID:ZkB+BLdN
……増えた?
何でいきなりそんな話になってるんだw

>>391
作者が明言して無いんだから誰にも分からないかと。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:25:29 ID:WXKZYfAG
ええい、君たちそんなことよりおっぱいについて語りたまえ
395名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:28:52 ID:0S1/Acko
ルイズは身長対比から推測すると大き目の乳でグラマーな体型だとかか?
396名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:33:33 ID:2dFK0K32
日本の血が混じってるシエスタのがでかいのが納得いかないとかか?
397名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:48:00 ID:atSUzFmT
ティファニアは村の子供達に視姦されていたのかとか?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:56:22 ID:25+6x7NU
>>397
あれは視姦を超越して崇拝するレベル
399名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:57:14 ID:qnXcE54K
サイヤ人が地球人と混血すると戦闘力の高い雑種が生まれるように
日本人とハルケギニアの血が交わるとレジェンド発生との説

まぁ、ここのシエスタは日本人の血が入ってない場合が多々あるが

何故かふと異次元の邪神の血が入ってるシエスタなんて思いついた
馬小屋よりでっかい妹がいる
400名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 22:08:24 ID:rJhljRyP
学院に居るのは宝物庫の魔道書目当てで、フーケのゴーレムのドサクサに紛れて盗んだりするのか
401名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 22:20:27 ID:qnXcE54K
>>400
そう、そして体臭がちょっとキツい

美少女ならアリだと思います
馬面とか山羊面は勘弁してほしいが
デモンベインやった後じゃ『戸口に立つもの』のインスマス混じりの嫁すら
目がデケェだけの美少女と脳内変換する困った脳です、俺

しかし、よく考えてみると
これだと犬(サイト)には嫌われるな
402名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 22:26:33 ID:9S3bgzqj
帝国華撃団召喚
403名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:03:23 ID:0S1/Acko
>>402
霊子甲冑使うなら整備が超キツくて金食い虫なので辛い

でもあの連中実は生身でも無茶苦茶強いんだぜ
さくらは三階くらいまで垂直ジャンプで飛び上がれて、
機関銃が発射された後に射線に横から飛び込んで全弾叩き落せたりする
404名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:04:26 ID:tlutaFoj
>三階くらいまで垂直ジャンプで飛び上がれて、
ドイルさん思いだした
405名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:23:41 ID:yctRN837
>さくらは三階くらいまで垂直ジャンプで飛び上がれて、
>機関銃が発射された後に射線に横から飛び込んで全弾叩き落せたりする

なんかファミコン時代のドット絵アクションゲーに脳内変換されたのだがw
406名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:38:23 ID:1eFd8xZj
霊子甲冑を纏うから強いのではない!強いヤツが霊子甲冑を纏うから強いのだ!(キリッ
407名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:41:51 ID:HPqnCk4Q
聖闘士?
408ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:15:14 ID:oIsAwjl5
12:20から投下します
ギーシュがアンパンマンの黒バラ女王を召喚しました。

〜ないよう〜
 いじわる な くろバラじょおう は みんな から やさしいこころ を うばおうとします。
409ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:19:59 ID:oIsAwjl5
 女王はギーシュのことを酷く嫌っていた。
 その理由は昨日のギーシュの行動に起因している。
 彼女は封印されている間、自分が自由になることだけを考えていた。
 そのため、ガラス玉の中に居る内はギーシュに対して怒りや憎しみを感じることはほとんど無かった。
 ところが、一度封印が解かれてしまえばそのようにはいかなかった。
 ギーシュ達が森の中で茨の蔓から逃げていた頃、暇を持て余していた女王はふとあることを思い出していた。
 昨日のギーシュとの会話の内容である。
 彼は女王のことを"使い魔"と言っていた。
 
「さあどうした? 早くこのゴミを片付けろ」
 一向にギーシュをいたぶろうとしない生徒達に対し、女王は再び命令をした。
 一同を見下ろす女王の瞳は紅色の光を放っている。
 ギラギラと燃える太陽のような瞳から照りつける赤い光が彼らの肌をじわじわと焦がす。
 彼らの居る場所の気温は急激に上昇していった。
 耐え難い暑さは彼らの思考力を段々と奪っていく。
 突如、一人の男子生徒が奇声を発しながらギーシュに向かって走り出した。
410ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:20:53 ID:oIsAwjl5
「うあああ! きああああああ!」
 その生徒は握り締めた右の拳を時計回りに捻じらせながら斜め上方に打ち出した。
 全身を突き上げるような拳を受けて、ギーシュの鳩尾に鋭い痛みが走る。
 ギーシュは腹部を押さえながら後ろに退いた。
 すると、彼の後ろまで迫っていた別の男子生徒が彼の右上腕に回し蹴りを喰らわせた。
 ギーシュは右上腕三頭筋に痺れを感じた。
 その瞬間、始めに彼に殴り掛かった生徒が彼の背部に右肘を落とした。
 その一撃を喰らうと、前屈みになっていたギーシュはそのまま膝をつき、うつ伏せに倒れてしまった。
 
「ちょ、ちょっと待ってよ……?」
 ルイズのすぐ傍では凄惨な私刑が行われていた。
 それは女王による理不尽な制裁だった。
 女王の怒りを買うことを恐れた生徒達はギーシュを袋叩きにする。
 体を丸め頭を両腕で隠したギーシュは、横倒しにされないように必死で顔を地面に擦り付けていた。
 彼は顔面をまともに蹴られることだけは避けようとしていた。
「や、やめてよ! やめなさいよ……」
 ルイズには彼らを止めることはできなかった。
 ギーシュを責め立てる彼らの異様な気迫が彼女を足を竦めさせていた。
 仄暗い灼熱の闇の中、溢れ出す汗を飛び散らせながらルイズ以外の生徒達は拳を振り下ろした。
 朦朧とする意識の中で、彼らは蹲るギーシュを一心不乱に踏み続けていた。
411名無しさん@支援いっぱい:2010/01/06(水) 00:21:46 ID:0YLyIjwZ
 
412ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:22:39 ID:oIsAwjl5
「ルイズ!!」
 汗で顔に前髪を張り付かせたキュルケがルイズに抱きついた。
「ツェ、ツェルプストー! な、何よ!」
 身動きを封じられたルイズは乱暴に締め付けられた。
「ルイズ! あ"んたも一緒にやりなさい!」
 キュルケはかすれた声でそう叫ぶと、嫌がるルイズを無理矢理生徒達の輪の中に押し込んだ。
 ルイズが今立っている場所は先ほどまでキュルケが立っていた場所である。
「嫌!!」
 体を左右に激しく揺らし、ルイズはキュルケを振り払った。
「こんな酷いことして! あんた達、それでも貴族だって言えるの!!」
 ルイズの熱が篭った怒号に、一同がギーシュへの攻撃を止めた。
 彼らの視線が砂塗れになっているギーシュからルイズへと変わる。
「邪魔すんのか」
 男子生徒の一人がルイズを睨み付けた。
「あ、当たり前じゃない!」
 ルイズも精一杯の睨みを利かせてその生徒に応えた。
 一触即発の雰囲気の中、無言の時間はしばらくの間続いた。
413ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:23:32 ID:oIsAwjl5
「ルイズ!!」
 沈黙を破ったのはキュルケだった。
「あのねぇ! これはここにいる全員の命に関わることなの!」
 キュルケはルイズの両肩掴み、彼女を自分の方に向けた。
 そして力の限りルイズの肩を握り締め、彼女を揺さぶった。
「ただ殴るだけ! 殺すわけじゃない! 女王様の言うとおりにしなきゃ駄目なの!!」
 顔をルイズに近づけながらキュルケは絶叫する。
「私もあんたも! ギーシュもみんなも! そうしなきゃ殺される! 死んじゃうのよ!!」
「そんなことはないさ」
 キュルケの叫び終えると、それに答えるかのようにあっけらかんとした声が響いた。
 それは、彼らの様相を楽しげに眺めていた女王の声だった。
「ギーシュが終わったら、次はお前。赤い髪は嫌いだからね」
 足元で蠢く小さな人間達をせせら笑いながら女王は話を続けた。
「でもそれで終わりじゃないよ。最後の一人になるまで続けるんだ」
 にこやかに細められた巨大な目が一同を冷たく見つめた。
「最後に残った子だけは助けてあげるよ。もっとも、もうこの国には食べ物も飲み物も……帰る場所さえ残ってないだろうけどね」
 女王は椅子から身を乗り出し、満面の笑みで自分の真意を彼らに伝えた。
「おーっほっほっほっほっほっほっほ!! あーっはっはっはっはっはっはっは!!」
414ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part12:2010/01/06(水) 00:27:08 ID:oIsAwjl5
「そ、そんな……」
 生徒達はそのとき気がついた。
 彼らが最後の希望だと思い込んでいたものは、女王が彼らにより深い絶望感を与えるために用意したものだったということに。
 絶望の淵に落とされた生徒達は支えを失った人形のように地面に崩れ落ちた。
 ある者は呆然と座り込み、またある者は止め処なく泣き続けた。

「ひ……あう……」
 その時、全身を負傷したギーシュは地を這いながら森の奥に進もうとしていた。
 他の生徒達の攻撃の手が止み、女王が空を見上げながら高笑いしている今は、ギーシュにとってこの場から逃げ出す最大のチャンスであった。

//以上です。
//うつ伏せを固持していたので、ギーシュは顔や股間などはノーダメージです。
415名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 13:56:08 ID:upYjIkEZ
乙です。正義の味方のいない世界の悪党って怖いですね。
しかし、規制のせいか、やたら寂しい年末年始になったなあ……
416名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 14:01:07 ID:if+AWVwh
規制って今そんな酷いの
確かに色んな所がひっそりとしてるけど
417名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 14:17:33 ID:5yamX/gk
茸と白犬が全面規制だっけ?
418名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 14:22:58 ID:RM/EUXsD
docomoとauが全板規制
419名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 14:55:10 ID:h90JHtxZ
主なのは携帯の規制か
420名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 15:54:45 ID:WzgtHBOp
黒バラの人乙なんだぜ
股間と顔は守られたのか、よかった
421名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 19:22:00 ID:fytyJmMs
黒バラの人乙
ええいあんパンは、あんパンはまだか!

ところで、久しぶりにサイヤの投下があったから、久しぶりに読み返してみたんだが、初授業の錬金失敗の後、悟空が「オラがおめえくらいの頃は、まだまだてんで弱かったぞ」 って言ってるんだよな。
でもそれはDB基準の話で、ハルケ基準だと初登場時の悟空でもメイジ殺しになれるくらいには強いんだよな。

何が言いたいかというと、初登場時の悟空を召喚すれば、それはそれで面白いかもな。
ルイズに玉がねえとか言ったり、シエスタにパンパンしたり、キュルケにパンパンしたり、タバサにパンパンしたり、モンモランシーにパンパンしてギーシュと決闘したり。
422名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 19:23:34 ID:VhxGarBf
月の周期が問題だ
423名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 19:30:34 ID:ya58ri+n
7万とRR軍ってどっちがつおいかな
424名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 19:50:37 ID:yMxxB5Kw
平野&内藤「悟空が一番強い」
425名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 19:59:03 ID:aCz+zRIJ
RR軍
426名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 20:06:26 ID:raYIphZn
右京「子供達を餓死させたくない、自分を追い込んだ貴族を憎む気持ちは解ります
でもね、それが物盗りをしていい理由にはならないんですよ、ロングビルさん!」
427名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 20:09:45 ID:fP9bzZyT
>>421
おまえパンパンさせたいだけだろwwwwwww
428名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 20:29:09 ID:VhxGarBf
7万がアルビオン軍の事なら、兵力次第でもあるが圧倒的にRBだろう
近代軍隊とじゃ射程威力速度が違い過ぎるってか爆撃されたら終わるんじゃね?
429名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 21:12:55 ID:fP9bzZyT
人数差にもよるな。
RR軍が数千人ぐらいならわからん。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 21:45:01 ID:FWPq3Q91
>>427
一瞬、パ○パンに見えてしまった俺。明日眼科にいくか……
431名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 22:10:24 ID:IhHYCt5y
毎晩大猿化でハルケ終了のお知らせ。
大猿だとZ開始直後の強さとかわんないし。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 22:12:15 ID:yMxxB5Kw
>>428
レッド……ボリン軍?
433名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 22:19:48 ID:VhxGarBf
R……B…?
いわれるまで気づきませんでした
御免なさい
434名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 22:32:04 ID:KOYPwiWk
なぜか魔法の国のポリンちゃん召喚を連想した
435名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 22:39:46 ID:TNP3dKQk
なに?レッドバロン召喚とな?
メタルファイトinハルケギニア
436名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 23:08:34 ID:xByF2dkc
>>435
悪の組織「レコンキスタ党」は、万国使い魔博覧会に出展された世界各国の巨大使い魔すべてを強奪した。
彼らは戦闘用に改造した使い魔軍団で世界を征服するつもりなのだ。
437名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 23:09:56 ID:qkWm39KV
仮面ライダーアギトからG3ユニットの3人を召喚
まず小澤さんが焼肉とビールが無い事に凹むだろう
438重攻の使い魔第15話 ◆ecegNbNqok :2010/01/06(水) 23:10:34 ID:gzHUe27+
23:15頃より投下します。

 海抜0より、おおよそ3000メイル上空に浮遊する巨大な大陸アルビオン。途方もない巨体を支え続けて
いる原理は未だ解明されていない。元々風石の鉱脈が潤沢に存在する地ではあるが、大陸の大きさを
考慮すれば極微量といえるだろう。
 ある研究者は、具体性を欠いた調査、もしくは意図的に編纂された調査結果に基づき、大陸の中心部の
奥深くに光り輝く途方もない大きさの風石が存在すると言った。また別の研究者は、過去の文献を読み
漁り、都合の良い部分を切り貼りして、強大な魔力を誇ったという始祖ブリミルが残した偉大なる遺産
であり、その始祖の血を引く代々のアルビオン王家の人間が遺産を受け継いでハルケギニア最大の奇跡を
維持させていると言う。全く何の根拠もなく、その両方が真実であると言う者もいれば、現在広まって
いる諸説は全て裏付けのない妄言だと切って捨てる者もいる。はたまた神の御心を疑り、探るような真似
をするなど救いようのない不信心者だと嘆く熱心な宗教家もいた。
 とどのつまりは、真実は誰も知らないと言うことであった。仮に当てずっぽうで真実を言い当てられた
所で、闇雲に打った賭博に勝利したと言うだけのことであり、そこに何ら意味は存在しない。
 そのように始祖ブリミルと並び、国家自体が神秘的な存在として認識されているアルビオンであるが、
昨今は甚だ不名誉な事態に置かれていた。声高に共和制を叫び、レコンキスタと名乗る革命軍が、盲目的な
夢物語への傾倒によって歴史あるアルビオン王家を打倒しようと企てたのだ。その活動歴は判然として
おらず、どの時期に発足したのかも不明である。その活動が一挙に表面化したのは直近半年前であった。
長年の地下活動で徐々に支持者を増やし、新体制においてより高い地位を望む大貴族のパトロンより、
兵力を整えるだけの資金・土地・人材の援助を受け、十分すぎるほどに準備を整えたところでアルビオン
各地において一斉蜂起を行った。
 革命派にそれほどの大戦力を整えるだけの時間を与え、実態を正確に把握できず、何らかの有効な対応策を
行えなかったのは王党派の失態である。そして蜂起後僅か半年間で完全に押さえ込まれ、あわや王家の血筋を
断絶させる寸前まで陥らせたとあっては始祖ブリミルの名に泥を塗るも同然であった。しかし、絶体絶命、
四面楚歌という状況において、一日にして目を疑うような逆転劇を演じてみせたアルビオン王家に、
ハルケギニアの関心はいやがおうにも高まらざるを得なかった。

 劇的な勝利を得たものの、アルビオンの受けた損害は無視できないものであった。青々と茂っていた
数千平方リーグに渡る森林は見るも無残に焼き払われ、革命軍に参加していた傭兵たちの死骸がそこかしこに
転がっていた。皮膚が焼け爛れている程度の死骸はまだ良い方で、中には全身が完全に炭化し、少しでも
触れると脆く崩れ去るものや、酷いものになると上半身が消滅しているものまであった。また、森林に
息づいていた様々な原生動物たちも、無残な姿を晒していた。
 被害は集落や街にも及んでおり、判明しているだけでも2つの街と少なく見積もって10程度の村落が、
被害を受けた。生存者は数える程しかおらず、戦争に関わらない犠牲者の数は千数百人にも上ると予測
されている。焼かれた土地には農村や牧場も多く、アルビオンの国内における食糧事情に少なからず影響を
与えるのは想像に難くない。更に、土壌が光沢のあるガラス状に変化してしまっている土地などは、以前の
状態に再生させるのは不可能だと言われている。

 そして、人的被害で言えば住民の少ない農村よりも、人口の集中する街の被害の方が深刻であった。火災で
死亡した者や、崩壊した建築物の下敷きとなって命を落とした者が続出した。住民は逃げる暇すら与えられ
なかったようで、生存者は極めて運が良かったといえる。とはいえ、親族を亡くし一人生き残った人間が
幸福であるかは何ともいえないものであった。
 施設面でいえば、アルビオン一の軍港であるロサイスの完全崩壊が途方もない痛手となっていた。首都
ロンディニウムより程近い土地に建造された軍港は規模、設備面から見てもハルケギニア有数であると評判
であった。空中大陸であるアルビオンにとって、船とは己の足も同然であり、その重要性は他の国家に比べて
非常に大きい。
 ロサイスは軍港ではあるものの、ロンディニウムに最も近いということもあり、民間の貨物船や貿易船も
数多く停泊する湾口施設であった。食料品・日常雑貨・建築資材その他諸々、大量に物資を運搬するには
船が必要であった。また、貨物の積み下ろしをするには基本的に接岸しなければならない。貨物船の乗組員は
基本的に平民であり、魔法を使用できる者は極僅かしかいない。必然的に手下ろしになるのだが、そうなると
適当な場所に碇を下ろし、積荷の積み下ろしができない。結局はロサイスよりも離れた中小規模の港より運搬
する他なく、常に物資に溢れていたロンディニウムや周辺都市は早くも物資の流通が滞りはじめている。
 現在ロサイスの係留施設は基礎部分から破壊されており、復旧させるよりは他の地に同様の施設を建造した
方が余程時間と資金の節約になると考えられている。とはいえ、新たに大規模な軍港を建造するにしても、
予算の策定・資金調達・土地の選定・大量の現場作業者の確保・整地・建設と、恐らく10年以上の歳月と
数百億エキューもの資金が必要となるだろう。現にロサイスは50年以上も昔から拡張工事を繰り返し、
あそこまでの巨大軍港に発展したのだ。同様の軍港建設にかかる困難は想像に難くない。
 ハルケギニア各国の主要都市ではてんやわんやの大騒ぎになっており、街行く人々の話題は連日アルビオン
絡みであった。また、触らぬ神に祟り無しと、アルビオン内乱を傍観していた各国の首脳が受けた衝撃は
計り知れないものがある。表向き革命軍に組するものはいなかったが、秘密裏に援助をしていた貴族は
当然の如くいた。ましてやアルビオン王家へ肩入れする人間などいない。良心的な判断として各国連合を
組織しようと画策する程度である。




 アルビオン首都ロンディニウム。つい先日まで革命軍に占拠されていた王城ハヴィランド宮殿は、往年の
煌びやかさを失ってはいなかった。声高に王家打倒を叫んでいた革命軍レコンキスタにしても、流石にこの
宮殿を破壊するような愚な犯さなかった。ハヴィランド宮殿は数百年も昔に建造され、現代までその美しさを
失わずに立ち続けている城である。アルビオン国民にとって切って離せない象徴のような存在であり、
そのような建造物を破壊すれば国民から多大な反感を買うことは目に見えているからだ。また、王家を殲滅し、
その居城を手に入れるということは、レコンキスタ構成員の支配欲を刺激した。単純かつ幼稚な感情では
あるが、それもまた人として正直な選択でははあった。

 結局レコンキスタがハヴィランド宮殿の処遇に関して下した結論は、やはりこれだけの物を捨てるのは
もったいない、ということである。
 その宮殿内部、優に100人以上が入っても、まだ余裕のある巨大な会議室。部屋は正確に計算された正方形で、
奥行きは50メイルほどもある。天井も高く、どれほど高名な細工職人が、どれほど手間隙かけて作り上げた
のか、そしてどれだけの資金が必要だったのかと思わず考え込んでしまうぐらいの巨大なシャンデリアがぶら
さがっている。部屋中央に置かれた円卓には蝋燭をのせた燭台が幾つも置かれ、恐らくそこいらの貴族では
手も出ないほどの肌理の細かいシルクのテーブルカバーが掛けられている。床には鮮やかな赤に金銀様々な
絹糸で編み上げられた絨毯が、部屋全体の美しさを際立たせる。
 その会議室の円卓には、現在4名が腰掛けている。最奥の上座にアルビオン王国皇太子ウェールズ・
テューダー。皇太子の臨席にトリステイン王国国王代理、アンリエッタ・ド・トリステイン王女。その
隣にロマリア連合皇国大使のトリステイン王女に勝るとも劣らない美貌を持つ女性アイ・ディー。そして
扉に最も近い下座にトリステイン王国国王代理、アンリエッタ・ド・トリステイン王女、帝政ゲルマニア
皇帝アルブレヒト三世と、ハルケギニア各国代表が顔を突き合わせていた。表向き、ようやく内乱を収めは
したものの、国内の混乱は未だ収まる気配を見せないアルビオン王国への援助の申し出という目的で参画
している2国であるが、それが建前であると言うことはアルビオン王家関係者の間では暗黙の了解になって
いた。特にゲルマニア皇帝は人物が人物だけに、端から信用されてはいない。そしてもう一人、混乱冷め
やらぬ混沌とした状況を見逃すはずもない、この場にあるべき人物が一人欠けている。ガリア王国国王
ジョゼフ一世である。彼ならば嬉々として首を突っ込んでくるに違いなかったからだ。会談の予定開始
時刻は過ぎており、この場の人物に、所詮は無能王である、と再認識させることとなった。
 会議室にはこの4人以外には給仕しかおらず、護衛の兵士や付き人は部屋の外で待機している。その給仕
も呼び鈴で呼ばれない限り入室することはない。正にハルケギニア首脳陣による頂上会談と呼べるもので
あった。
 
 ウェールズ皇太子は集結した首脳陣の顔を一通り眺め、ウェーブのかかった美しいブロンドの髪を揺らし
ながら発言した。

「各々方、遠方よりよくぞこられました。長旅でさぞかし疲れておられることと思います。アルビオンは
出来うる限りのもてなしをさせて頂きます」

 その後、皇太子は内戦終結への大まかな流れを説明した。元は小さな不穏分子がちらほらと散見される
程度だった。そのため一応の監視を付け、具体的な処分は下されることはなかった。これは過去再三に渡り、
己にとって疑わしき者は罰せよ、を信条としていたジェームス1世の姿からはかけ離れていた。
 話を聞くアンリエッタ及びアルブレヒトは当然のように疑問を持った。アルビオンがこれまで王権を
堅持してこられたのは、ジャームズ1世の断固たる姿勢によるものだ。そもそも王たるものはそうでなけ
ればならない。

 その疑問に皇太子は渋面を作る。王族たるものが地盤を覆されるという醜態を見せたことは非常に遺憾
である。国王は昨今の急激な体調悪化のために、多大な心労を負っている。日に日に始祖ブリミルへ祈り
の言葉を捧げる時間が増え、大神父を呼びつけ一日中祈祷させていることもある。心身ともに弱っている
ところを付け込まれたのだろう、と皇太子は言った。
 無論、皇太子以下臣下がそのような国王を適切に支えていれば、このような事態には陥らなかっただろう。
だからこそ今後は己が王国の舵を取り、かつてのアルビオンを蘇らせてみせる、と皇太子は野心を滲ませ
ながら語る。
 そこで無遠慮な足音が響き、調度に似つかわしくない音と共に大広間の扉が大きく開かれた。

「素晴らしい、実に素晴らしい演説だな! まったく、貴君が王であったならばさぞかし様変わりしていた
であろうに! これを機にお父上に休暇を差し上げてはいかがかな? もちろん寝心地のいいベッドも用意
しなければな! 余りの心地よさに起きてこなくなるかもしれないがね!」

 突然現れた美丈夫は、サファイアのような青い髪と髭をもっていた。背は高く、全身に分厚い筋肉を
まとっているその姿は非常に均整が取れており、外見だけを見れば完成された肉体と呼んでも遜色はない。
その姿はまるで古代の剣闘士のようであり、そこいらの戦士など軽く蹴散らしてしまえるように思えた。

「ガ、ガリア国王陛下がおなりになられました!」

 あたふたと遅れて入ってきた衛兵が大声で最後の賓客が到着したことを言った。 
 開始時刻を守らないだけでなく、余りと言えば余りに無礼な登場に、誰もが口を挟むことが出来なかった。
 無能王ジョゼフ1世は驚きに目を見開いている一同を見回し、アルブレヒトを目に留めると、嬉々としな
がら歩み寄り、臣下の者にするように力強くアルブレヒトの肩を叩いた。

「いやまったく、今日はめでたい日であるな! ブリミルの子孫がこうして一同に会することなど絶えて
久しいではないか! なに、親愛なる皇帝陛下よ、気に病むことはない! こうして座を同じくして、光栄
だと思えばよかろう!」

 その言葉にアルブレヒトが顔を引きつらせる。例え始祖の血を引かないとはいえ、一国の王に対して
まるで配下であるかのような言動。非常識にも程があるというものだった。
 ジョゼフ1世は気にせずに話し続ける。

「戴冠式の折は出席せずに失礼した! 聞く所によると、親族ともども健康だそうだね! 何、貴君にあれ
だけ膳立てをして貰えて光栄の極みだろうよ! 鍵のついた頑丈な扉に守られ、パン一つに水一杯。暖炉の
薪さえ週二本。うむ、贅沢は健康の最大の敵と言うからな! 私もぜひ見習いたいものだ!」

 王座につくために、政敵であった親族を片端から幽閉したことへの痛烈な皮肉に、アルブレヒトは当たり
障りのない返答しかできなかった。無能王のその余りにも朗らかな笑顔と声音に、本当に誉めそやしている
ようにも思える。
 ジョゼフは次にアンリエッタの手を取り、少年のような青く澄んだ瞳で少女を射抜いた。

「おお、随分と大きくなられたな、アンリエッタ姫! 覚えておいでか? 最後に顔を合わせたのはラグド
リアン湖で催された園遊会だったのだよ。あの時もそう、幼いなりに美しかったが、更に磨きが掛かった
ようだな! ハルケギニア中の花という花が頭を垂れるであろうよ!」

 そしてジョゼフは、ただ一人何ら動揺しているようには見えないロマリア大使の女性の下へ歩み寄った。
 女性は腰まで届く薄紫の艶やかな長髪を後ろで束ねていた。か細くしなやかな肢体を包む法衣は、髪の色
に合わせているのか、やはり薄紫と絹以上に透き通るような光沢を放っている。法衣には見たこともない
ルーンが刻まれ、所々にあしらわれた金色の生地が、女性の美しさをより際立てている。手にした杖は女性
の背丈を上回るほど大きく、先端には拳大にもなる巨大な紺碧の宝石がはめ込まれている。
 その姿はまるで空に舞う粉雪のように儚く、神秘的な雰囲気を醸し出している。

「そなたはかのロマリアの大使であられるようだな! ふむ、ロマリアに相応しいその美しさに高貴さ、
大使に選ばれるのも頷けると言うものだな! エイジス聖下もさぞかし鼻が高かろうよ!」

 始めて見る顔であるためか、ジョゼフは余り踏み込んだことも言わずに女性の下を離れようとした。
しかし、そこで女性アイ・ディーがジョゼフの背中に向けて口を開いた。

「……あなたは何を求め彷徨っておられるのですか? その透き通った美しい瞳は何も捉えていない……。
まるで深く暗い海のよう。あなたの姿はとても虚ろに思えます」

 その言葉に、ジョゼフは一瞬動きを止めた。しかしすぐにそれまでの威勢を取り戻し、女性の言葉など
聞こえなかったとでも言うように振舞った。ジョゼフが指を鳴らすと、ガリアより同行してきた召使やら
給仕やらが料理の載った盆を抱えて入室してきた。彼らは手際よく出席者の前に皿を並べていく。まるで
自分が仕切るとでも言うような態度に、流石の皇太子も憤慨し、口を開こうとするが、ジョゼフは先を制
するように手を振った。そして皇太子の隣の上座へとどっかと腰を下ろし、一際通る声で宣言した。

「ともあれこうしてハルケギニアの指導者が集ったのだ! 今宵くらいはささやかな宴を開こうではないか!
我らが盟友の華麗なる勝利に乾杯!」

 三時間ほども続いた宴はジョゼフの突然の退席でお開きとなった。騒ぎながら飲むだけ飲み、食べるだけ
食べた後、彼は一言眠くなったと告げると、挨拶もそこそこに部屋に引き揚げてしまったのだ。曲がりなり
にも来訪した出席者が欠けてしまっては会談を続けようもない。というよりもジョゼフが現れた時点で既に
会談の体裁は崩れ去っていた。
 皇太子が仕方なしと言わんばかりの表情で本日の会談終了を告げた。アルブレヒトはアルビオン勝利の
秘密を何としても聞き出したかったが、ジョゼフの登場で当てが外れて不服だという態度であった。もっとも
たらふく料理を平らげていたことで、それなりに苛立ちは治まっていたが。
 ロマリア大使の女性は失礼しますと告げると、一つ会釈をしてしずしずと退室していった。浮世離れして
いる出席者一同であったが、中でも一際浮世離れしているように感じられた。
 皇太子と二人きりとなった大広間で、アンリエッタはこれ以上辛抱できないといった様子で駆け寄ろうと
するが、皇太子は静かに手で制した。アンリアッタの顔に不安が浮かぶ。

「ウェールズ様……?」

 不安げなアンリエッタを前に、皇太子は表情を崩さず、儀礼的に感謝の意と足労を労った。そして懐から
一枚の紙切れを取り出すと、アンリエッタの細い手のひらにそっとのせた。
 アンリエッタはその紙切れに書き連ねられた言葉を目で追うと、ぱっと表情を輝かせ、皇太子に向かって
こくりと深く頷いた。
 二人はそれぞれの付き人を連れ、部屋へと引き揚げていく。
 



 それぞれの思惑が渦巻くハヴィランド宮殿。赤く輝く双子の月が見下ろす中、夜は静かに、ことさら
優しく世界を闇に染めていく。
445重攻の使い魔 ◆ecegNbNqok :2010/01/06(水) 23:20:54 ID:gzHUe27+
以上で終了です。
久しぶりの投下だというのに、我ながらぐだぐだで酷い代物ですが……
446名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 23:26:07 ID:ZAnENv38
>445
乙彼様〜〜
ライデンが頑張りすぎたせいで、こんなところにまでしわ寄せがw
447名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 23:41:05 ID:pKsfQ22Q
あれれ・・ジョゼフの立ち回りが
どこかで見たような気が…
448名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 00:02:26 ID:tvBOe1bI
このロマリア大使ってもしかしてエンジェか?
449名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 00:25:34 ID:oNby7MPD
「重攻の使い魔」、改めて読み直しましたけど、『土くれのフーケ』は一体誰?
450名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 06:59:24 ID:dKEp6FJY
>>441にアンリエッタが二人いますぜ
451名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 07:11:03 ID:uNyvqdec
ほんとに二人いるな
推敲ミス?
452名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 08:14:45 ID:RbUzjbGG
アンリエッタは遍在する
453名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 08:26:22 ID:1sfegqnh
ゆでだから
454名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 08:28:12 ID:PnV73ggB
ジェロニモかよ
455名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 13:37:57 ID:dbg5UELR
私を暗殺しても第二第三のアンリエッタが必ずや……
456名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 13:44:56 ID:Aev+dgZG
NARUTOだと実体を持った分身にも結構種類がある。
ゼロ魔の魔法だと「風の偏在」以外に実体を持つ分身は作れないのだろうか。まあ、作ったら作ったで異端扱いされそうですが。
457名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 13:48:17 ID:B3hw+vtk
新しく編み出したら異端扱いされんの?
458名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 14:08:16 ID:yQFtrzdX
有り得んとはいえなかったと思う。良く覚えてないが。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 14:17:49 ID:3PQbZSYO
アカデミーという一見すると先進的・先端的な魔法技術の研究開発を行っていそうな
王立機関の主要な研究対象が「ブリミルの使った火の形はどうだったか?」といった
完全に過去へと向けられたものだからね。
で、下手に前衛的な研究を始めると即座に異端審問フラグが立ってしまうという……。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 14:26:14 ID:Y7RHLEsU
ユーゼス〜〜〜ッッカムバ〜〜〜ック!!
461名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 14:58:36 ID:OIbhM/IF
忍者なら飛影からエルシャンク一行呼ぼうぜ
462名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 15:29:17 ID:R+xSIKiy
忍者なら幻影陣使えるあの人を相方の侍とあわせて呼ぼうぜ
463名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 15:40:22 ID:knZ8ig6p
流影陣に見えて「影二……いや斬鉄か!?」とか思ったら見間違えだったぜ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 16:03:44 ID:KFjqD8TZ
>>459
それって多分研究の為の研究という奴だろうね。
実質トリビア的な学術や理論は
高い予算は取りにくいけどある意味失敗しづらく言い訳もしやすい。
こうなった研究所等にとっては重い責任も負う前衛的な研究を
やりたがる若手やガチの研究者はむしろ邪魔・・・
465名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 16:16:10 ID:yUwzdjow
ミョズだとゴーレムとか作れるわけだから
地下水みたいな魔法が使える剣とか作れるのかな

てかパソコンがやっと規制解除されたお
携帯とパソコン両方規制とか簡便してほしいわ
466名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 16:41:48 ID:D8G2RL1t
雑談する時間があるなら
うぃきに登録してない作品を追加しろよ
467名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 17:29:28 ID:R+xSIKiy
>>466
気持ちは判らんでもないが強制するものでもされるものでもないね

「「登録したい」と心の中で思ったならッ! その時スデに登録は終わっているんだッ!」
468名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:00:42 ID:fP2zM5eS
>>466
自分が読んでるものは気がつけば追加するか、すでに他の人がやってる。
良作駄作とかは関係なしに読んでない作品まではまとめる気にならない。
469名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:03:18 ID:ODXiqDMP
つーか作者が自分でやればいいじゃん
スレに投稿するついでにやりゃいいのになんでやんないのかね?
470名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:06:40 ID:ulijYqVE
してくれれば嬉しいけど別に登録されなくてもいい思ってんだろ
必ず登録しなきゃいけないってもんでもない
471名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:15:48 ID:RqCzKSgy
wiki意識してない作者は結構いそう
ここでの反応とかを見たくてやってる人とかも多いだろうし
472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:18:26 ID:zHWsfkeL
読んでくれた誰かが、手間を掛けて登録してくれる。
感想レスのみならずそういう方がいてくれるとモチベが上がる、それを見る為のバロメータとして、
登録しないって心持ちが自分にはある。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:27:33 ID:eMdybSma
面白い、と感じてくれた人が登録してくれるから嬉しくて
自分で登録したら負けかな、とか思ってる
474名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 18:47:31 ID:RqCzKSgy
あとはどっか余所で見たが流れや勢いで投下はするけど
後から見ると恥ずかしくてかなわんからむしろwikiには登録しないで欲しいぐらいな人とか
475名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 19:15:43 ID:Dj9xX4Sj
誰も登録しなかったら、ああ面白くなかったんだなと判断するだけだしね
476名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 20:07:58 ID:B3hw+vtk
>>459
今のメイジの火よりも、ブリミルの火の方が優れていた。みたいなのはどうだろう?
ハルケギニアの人に魔法を教えてくれた人だし、やっぱ何かしら凄いんじゃね?
効率、威力、速度、その他、もしくは全てにおいて。

>>472-473>>475
格好良いな
477名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 20:16:43 ID:1eQpvU+Y
もしかして6000年の間、新しい魔法の開発とかはされてない?
478名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 20:36:07 ID:l3EbVtLX
さあねえ、その辺りはノボルの都合でいくらでも変わるんじゃないのお? けっ
自分としちゃエレオノールがアカデミーにいるのは……いるのは……いるのは病弱な妹に対するデレの為だと思ってたんだ。
それが今では……
479名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:06:19 ID:O/HAR0yS
>>478
ん? その辺の動機って原作で明言されてたっけか?
それとも新刊のネタバレ?
480名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:10:23 ID:sxnQ3aIk
戦国無双3やってたんだけど、立花宗茂がめっちゃツンデレキラーでルイズにおすすめ
481名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:42:42 ID:mTWClikC
立花宗茂と言われると境ホラのガル茂が思い浮かぶな
そういえばあの世界も月が二つだった
482名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:49:30 ID:3glAwHrQ
あっちの宗茂もツンデレキラーだよね
ガチガチの重装ツンツン娘落としてるんだから
483名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:57:15 ID:q538nf63
ストライダー飛竜が召喚されたら格好良いかもしれん
アンドバリの指輪を取り戻すために、ラグナロクをクロムウェルに叩き込んで「貴様にそんな玩具は必要無い」みたいな。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:37:19 ID:l3EbVtLX
>>479
現状においては明確な動機の描写は無し。
ただ、6千年前、何かにつけてエルフの娘っ子に張り倒されていたバカの像を作るという行為にどんな意味があるか自分にはよくわからん。
485名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:45:00 ID:OIbhM/IF
クレヨンしんちゃんの組長を呼んだら顔だけで戦わずして無双できね?
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:47:49 ID:JWy6yENH
>>485
ピカピカの実の能力者ですね
487名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:57:02 ID:2Pk2GsXs
>>485
それなら、保護者参観の帰り道にエンジェル伝説の北野親子召喚の方が
最凶無双できると思う
488名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:58:54 ID:TO55VcVB
川村ヒデオ・・・いや、なんでもない
489名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:59:53 ID:U9fHWvI4
>>483
ウロボロスで接近でも遠距離でもメイジフルボッコだな
490名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 00:21:15 ID:h0QfnR4h
>>488
レイセンのヒデオだとヤバイ幼女が憑いてるから拙い・・・
ことはないか、むしろ色々と喜びそうな展開だ
491名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 00:28:23 ID:NuaQXi6K
近い内に聖帝様とアプトムが降臨する…ような気がする。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 00:56:33 ID:0v1TrErA
既刊全部読んだら温めていた企画を執筆に移したい
ファイアーエムブレム紋章の謎よりマリク(Lv20司祭)を召喚
マリクが使用可能な魔法と杖がすべて使用可能なチートキャラ
オスマン氏の要請で戦闘教官に
ついでに誰かドラゴンナイトもつれてきたらシルフィードとの絡みがおもしろいかも
敵はガーネフにするかと考えてジョセフとガーネフのキスを想像したら気持ち悪くなってきた
493名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:19:31 ID:Vj5i7nyG
能力がああだチートがどうだと戦力ばっかりでキャラを計ってて
肝心要のキャラの性格やゼロ魔との相性だとかに目が向いてないレスには
お前テンプレ展開で俺TUEEEする以外の話考えてるのかよとつい突っ込みたくなって困る
494名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:21:22 ID:cDGDDbiF
>>492
魔道書と杖が無くなったらなんの役にも立たなくね?
495名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:23:28 ID:nKj9cTzO
サイヤの使い魔が再臨していたのには感動すら覚えた。
いいお年玉でした。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:31:50 ID:RqQvA8cy
西部警察召喚
497名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:36:35 ID:SbH1DmEl
シャアを召喚してその思想に感銘を受け、宇宙に出てニュータイプに目覚めるルイズとか
498名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 01:45:54 ID:LZc7aMkh
原作を再読してみたら、うろ憶えだった細かい設定や言い回しが
自分のSSで間違いだらけだった事実に、乳首がもげそうになった。

そんな松の内の深夜。
499名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 02:30:30 ID:NCJ8fu6n
>493

 そんなことより重要なのは、短くてもいいからきちっと1本完結させることだ。
 どんなに設定がマッチして凝っていても、終わらせられなきゃ意味がない。
 そういう意味じゃ“ご立派な使い魔”は手本にするべき作品だ。
 とことん馬鹿げた展開でありながら、お約束を守った上でオチまでつけて終わらせたのはすごい。
 逆に秀逸でも“ウル魔”は部分部分は参考にしても、展開は真似しないほうがいい、あれは一種の化け物だ。
 まあなんにせよ、エターってのは悲しいもんだからなあ。
500名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 04:39:18 ID:glx9haHH
エターイヤー
501名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 04:55:33 ID:2DsMCtKo
仮面ライダーWの翔太郎とフィリップが召還されたら楽しそう
フィリップなんてゾクゾクしまくりだろうな
502名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 06:06:18 ID:OsS2x7Xb
ふと思ったがワンピ連中が知名度の割りにあまり召喚されていないのは
体になにかを刻む+貴族に従わされるってのが問題だからだろうか
503名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 06:13:21 ID:OwUQmazn
>>502
主要人物がみんなワンピ世界内でどうしてもやらなければならないことを抱えていて、
他の世界でのんきに使い魔やるのに違和感があるからじゃないか?
投稿の止まってる砂鰐さんにせよ、原作再登場で白鬚に因縁があることが語られてるし。
504名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 09:37:06 ID:eD1EM3Np
ある程度の数のSSを読んでるとさ、俺TUEEEの話もいいんじゃないと思うようになった。
ほとんどの話が強い使い魔を呼び出しても、対抗馬ともいえるのが敵側に呼び出されて拮抗するってのがほとんどで
ワンパターンだなって思うようになって来たよ。
上手くやれば敵が蹂躙されるカタルシスを感じるような話になるとは思うんだが、バランスが難しいんだろうな。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 09:40:39 ID:ECo20KSS
ワンピのイカレどもがほいほい他人に従うってのは想像できんな
すぐルイズボコるか殺すかしてどっかいっちゃいそう
506名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 10:37:56 ID:3o2YlpWA
ダブルクロスでオーヴァードが力を使えば使うほどジャーム化する危険性が上がるように、強いキャラには力を出せない何らかの制限をすればいいと思うんですよ。
507名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 10:50:32 ID:Cgh1Tygr
対抗馬をクロス元から持って来るのはクロスする意味が無い気がするな
508名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 11:13:39 ID:ufML95RH
タッグマッチと考えれば意味が無くも無いような
509名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 11:31:51 ID:IqN7wyl4
召還先が継続中の作品だと不都合が何かと発生しやすいからどんなに人気があっても避けられるんだよ
510名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 11:49:38 ID:ECo20KSS
別に厨キャラよんだからって必ず戦う必要はないはず
バトルキャラ呼んでハートフルコメディやったっていいんだ
511名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 11:53:36 ID:eblM2nAc
爆熱はある意味ハートフルコメディだったなw
512名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 14:26:40 ID:IqN7wyl4
キングオブハートだけにな!
513名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 14:30:59 ID:DbhvjRSv
え?
514名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 14:33:50 ID:lAzPmvDI
新年から結構投下されてるな
515名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 15:21:23 ID:tcaMtlV+
爆熱は北野君とならんで俺様的復活希望No.1!
516名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 15:43:16 ID:FTXg0QSc
シュバルツブルーダーが召喚されました
517名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 15:57:25 ID:eblM2nAc
シュバルツじゃ契約のキスができないな。
あいつはコーヒーを飲むときすらマスクがあのままだった男だぞwww
518名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 16:10:46 ID:6QD8JlwK
>>517
じゃああのままキスすれば問題ないんじゃないの?
519名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 16:36:01 ID:XhT8t9Vb
>>516
キョウジ兄さんの優秀な頭脳+第七回ガンダムファイト優勝者の経験+UG細胞で全盛期になった肉体
=チート ってキャラだぞwww
520名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 16:43:14 ID:gGNp9o/w
汚い忍者「飛竜かと思ったか?俺だよ!!」
521名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 17:02:52 ID:OJtlFWw1
忍者・・・バング殿でござるな!
522名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 17:17:42 ID:2d62fLXb
汚い忍者といえば彼が召還されるのは確定的に明らか
もうあるけど
523名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 17:22:59 ID:AYfzan3W
>>505
神エネルや金獅子のシキなんかは即ハルケ支配に乗り出しそうだしな
ワンピースは基本ひとところに落ち着くキャラが少ないからクロスさせにくいか

>>508
ジョゼフなんかがクロス先の悪党とつるむ例は多いな
524名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 17:26:27 ID:ECo20KSS
たまには楽して儲ける忍者のことも思い出してあげてください
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 17:55:11 ID:SbH1DmEl
ルイズ側でこち亀の両さん召喚
ハルケにない道具でルイズ、ギーシュ達とビジネスを興す
最初は順調そのものだったけどちょっとしたアクシデントで事業が頓挫
借金塗れでエレ姉様らから勘当され怒り狂ったルイズが逃げる両さんに爆発魔法連発END

両津「もう異世界なんて、懲り懲りだァ―――――――――――!!」
526名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 18:26:36 ID:TRuj1s+/
タフガイ過ぎてルイズの身が持たんなw
527名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 18:32:31 ID:1AqEAM8f
>>525
大体そんなネタがもうあったような
ガリア側だったけど

忍者か・・・ちょっと一本思いついた
その気があればやってみよう・・・
すぐに浮かぶのはやっぱし飛影、シュバルツ、ロム兄さん、ボルフォッグ、ポルタン
蜘蛛、赤影、マスク・ザ・レッド、烈火、おぼろ丸、ユフィ

大体こんなとこか
っていうか、ポルタンは普通に考えれば召喚できねー・・・こともないのか?
三重連太陽系って地球とは時空を隔ててたようだし、ピサ・ソールがあるなら大丈夫なのか
528名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 18:43:09 ID:cCIEQRnJ
飛燕は?
529名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:06:27 ID:U6rWlbe5
単身赴任中のサラリーマンは?
530名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:09:16 ID:gGNp9o/w
カッタナノサッビニ…シッテクッレルゥウウウウウウウウウウ!
531名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:12:18 ID:XhT8t9Vb
>>527
おいこら、ボルフォッグだけじゃねーだろ勇者忍者は。
シャドウ丸・カゲロウ・空影・シャドーダグオンを忘れてはいかん。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:13:43 ID:BfPNPDLa
飛影呼んだら召喚して契約したら即離脱して
ルイズがピンチになるたびに例のBGMを流しながら登場、好き勝手に暴れた後に
誰かの使い魔と無理やり合体して獣魔あたりに変形し
戦闘終了後にまたどこかに去っていきそうだな

インパクトからだとこんなイメージなんだが
これは三次創作になってしまうのだろうか
533名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:17:51 ID:UgGmvBIJ
ひえいはそんなこといわない
534名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:18:52 ID:2dD457hn
>>532
実は、ジョウ達の旗艦になってる、オリヅルのなかにひっそりと帰ってるんだよね
忍者戦士って

あと、認識はあってる
535名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 19:23:48 ID:HmJZXdoX
224 名前: しらたき(catv?)[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:01:21.04 ID:Dsb7/n5I
SO4
http://nagamochi.info/src/up55484.jpg
EOE
http://nagamochi.info/src/up55485.jpg
FF13
http://www.tkfm.jp/ff/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%A9.jpg

242 名前: モンキーレンチ(dion軍)[] 投稿日:2010/01/08(金) 19:07:42.77 ID:MU2BZvRb
>>224
>FF13
>http://www.tkfm.jp/ff/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%A9.jpg

釘宮かと思った

263 名前: インク(アラバマ州)[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:12:02.46 ID:jbmEvAGy
>>224
EOEの絵どっかで見たなと思ったら2002年頃のイリュージョンか

248 名前: さつまあげ(東京都)[] 投稿日:2010/01/08(金) 19:09:13.51 ID:XeoURgFO
>>242
http://www.tkfm.jp/ff/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%A9.jpg
http://art3.photozou.jp/pub/623/224623/photo/17571041.jpg

そっくりです

257 名前: 偏光フィルター(dion軍)[] 投稿日:2010/01/08(金) 19:10:37.94 ID:aN5wAt9A
>>242
現実見ろよ
http://himatubusidesu.up.seesaa.net/image/1233388404.jpg
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/cb/ba29ecd7acc24e2a56315799af7bda18.jpg

253 名前: バールのようなもの(東京都)[] 投稿日:2010/01/08(金) 19:10:11.58 ID:f8yx4Spp
>>248
完全に一致

258 名前: モンキーレンチ(兵庫県)[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:10:46.13 ID:9bzpqq7t
>>248
くぎみーと結婚してくる!

282 名前: イカ巻き(東京都)[sage] 投稿日:2010/01/08(金) 19:16:20.83 ID:3V9rDa8o
>>224
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org541131.jpg
このぐらいがいい
536名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 20:05:34 ID:+dhTBs0q
サラリーマン金太郎召喚
537名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 20:25:22 ID:BfPNPDLa
結構色んな作品が年末年始にかけて復活したな
続きが読めてうれしい

この調子でマテパの人も帰ってきてくれないかな
538名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 20:38:53 ID:WWGn4pmH
ニンジャといえばGの影忍
539名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 20:59:43 ID:Vnz6dL5y
ラスボスさん、まだかなあ。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:10:46 ID:KOzzr7Eb
忍者と言ったらシャドウ丸だろ
基本形態は犬で
541名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:13:59 ID:9xNESjaY
大筒変化ですか。虚無も真っ青ですね。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:15:31 ID:SbH1DmEl
忍者ならカクレンジャーを
543名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:16:34 ID:ufML95RH
忍者といえばハットリくん
544名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:18:43 ID:mMdoDszo
>>533
なんて古くさいネタをまだ言ってる奴がいたとは
545名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:37:03 ID:rkiFDcLm
忍者といやバング殿でござろうニンニンそれはともかく
銀河伝説は面白かったしウル魔も盛り上がってきたし
そろそろサイヤの人よろしくレオとゴモラの人も戻ってきて欲しい所だが
後者なんてwikiから消えてるけど
546名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:44:39 ID:a3aWiV5+
>>544
例の仏像のせいでちょっと再燃してたよ…
547名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 21:48:55 ID:6YRxi8xj
忍者っつったらいしいひさいちだろ
548名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:11:39 ID:E9x1IuN4
望み薄だろうけど、俺は不敗の人に戻ってきて欲しいなぁ。
ルイズをいきなり躾けてるマスターが衝撃的過ぎた。
しかも全く違和感ないし。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:12:01 ID:SbH1DmEl
ワルドvsレナ(ひぐらし)
550名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:26:16 ID:rVSfcN4a
東西南北中央ハルケギニア不敗
551名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:27:12 ID:kiV68eBD
ニンジャと言えばスペース忍者シュリケンジャー
フーケゴーレムに対して天空神はやり過ぎの域か
552名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:31:06 ID:BfPNPDLa
毎度毎度とんでもないところから出てきてはルイズを叱咤激励するゲルマン忍者な使い魔とな
553名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:34:28 ID:8ZrYVGqX
忍者ねぇ……さっちゃんでも呼ぶか。

「嬲りなさいよ!好きなだけ嬲ればいいじゃない!」
554名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:38:38 ID:/YqAJXOh
忍者か
「赤影」なのか、「マスク・ザ・レッド」なのか
バランスが違いすぎるからなあw
555名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:42:48 ID:Afu2NDdm
>>552
明鏡止水の心を会得するルイズを想像したが、虚無の力の源がなくなってしまう
556名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:45:54 ID:w7ORhsNu
>>555
問題なし。
戦闘能力なら十二分すぎるようになる。


たぶん。
557名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:50:04 ID:7hMDLvIx
>>555
怒りや憎しみ、妬みや嫉みとはち違う虚無の力に目覚めるから大丈夫
558名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 22:51:19 ID:U6rWlbe5
愛なの? ラブラブエクスプロージョンなの?
559名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:03:01 ID:OKw8NUKC
オカマキャラって呼べないよな
サモナイ3のスカーレルとか、九龍妖魔學園紀の茂美とか
560名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:05:31 ID:0/fUD5mj
ボンちゃん
561名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:08:14 ID:DqTbLu/7
もののけ姫を召喚してはどうか
562名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:11:20 ID:kiV68eBD
>>559
喚べないことも無い
ただ契約が上手く出来るかと言うと……
(主将、地院家若美を召喚して)コルベールやギ―シュを生贄に捧げたら不意を突いて唇奪え!
563名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:17:05 ID:ujpDqf8Z
……げる
564名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:18:09 ID:SbH1DmEl
オカマならこち亀のマリア
565名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:19:53 ID:Kf6XrYtk
>559
今書いているのが、途中でオカマキャラの顔を出すようになる。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:23:48 ID:5sboTLKx
>>564
あれいつのまにか女になってなかったっけ?
神様のちからだか魔法だかで。
567名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:27:47 ID:0/fUD5mj
魔法使いのじいさんじゃなかったか?
568名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:31:03 ID:TQ2upXPJ
ファイターズヒストリーのクラウンだな
ピエロの化粧したオカマのホモ中年で美少年好きの変態
569名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:33:52 ID:U6rWlbe5
>>566-567
天国か何かにいる魔法使いのじいさんだっけ?
570名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:39:58 ID:UfTXu22b
あのじいさん一応神じゃないっけ?
571名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:45:33 ID:/Cf9i45K
宇宙忍者ゴームズことファンタスティック・フォーの皆様
572名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:45:56 ID:gGNp9o/w
もうタートルズでいいよ
573名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 23:52:53 ID:SbH1DmEl
両手がハサミのセミ宇宙人がいたな、あれも一応忍者だが
574名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 00:02:02 ID:yPVaE4Rn
高坂義風
あのキャラと暗殺能力をうまく料理できれば
575ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:19:31 ID:Gh8apoXg
12:21から投下します
ギーシュがアンパンマンの黒バラ女王を召喚しました

ないよう
〜ルイズちゃん は ゆうき を だして くろバラじょおう に たちむかいました。だけど、ルイズちゃん の まほう は くろバラじょおう には きかなくて・・・〜
576ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:21:07 ID:Gh8apoXg
「おーっほっほっほっほっほっほ、ほ……む!」
 女王の甲高い笑い声が止んだ。
「ぬおぉぉおっ!」
 女王が唐突に声を荒げた。
 首を反らした彼女の頭が逆さになって真後ろを向いた。
 すると、先ほどまで女王の額があった位置に突然激しい爆発が起こった。
(これは、まさか……!?)
 その爆発から感じ取れる魔力に女王は覚えがあった。
「何者だ!!」
 女王は目を見開くと椅子から立ち上がり、血相を変えて辺りを見渡した。
 周囲には女王が生やした茨があるばかりで女王に襲い掛かるような者は見当たらない。
「ぬぅ!?」
 女王の首元で再び爆発が起こった。
 しかし、その爆発は見かけの派手さと規模の大きさに比べて破壊力は小さかった。
 被爆した部分に熱が残ったものの、女王は全く傷を負っていない。
「下からだね」 
 女王はその爆発から魔力の発信源を突き止めた。
 そして同時に、彼女は恐れていた事態が起きていないことを確信した。
 最初に女王が謎の爆発から感じ取った力は、彼女の世界における高等魔法、"大魔法"の力に似ていた。
 彼女の知る大魔法とは破壊と創造を司る封じられた禁術であり、例え彼女といえども、その力をまともに受ければ無事で済むはずがなかった。
577ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:22:04 ID:Gh8apoXg
「おぉぉまえかあぁぁぁああ!!」
 下を向いた黄金色に輝く巨大な眼球には、杖を上に向けたルイズの姿が映っていた。
 ルイズは両足の震えを抑えながら、女王の顔に向けて火炎弾の魔法を放っていた。
 ところが、彼女の唱えた魔法は全て失敗する。
 彼女は特殊なメイジだった。
 どんな魔法を唱えても暴発した魔力による爆発しか起こらない、それがルイズというメイジだった。
「どうせ殺されるくらいだったら、私は戦う! 私は貴族としての誇りを最後まで…・・・絶対に捨てないわ!!」
 覚悟を決め、ルイズは自分の信念を高らかに宣言した。
 後には退けない状況と限界を超えた恐怖感が彼女を一層奮い立たせていた。
 それは、他のどの学生よりも貴族としての在り方を重んじていた彼女だからこその行動だった。

(この目! 自分の正義を信じ、それを貫き通すその目は、まるで……)
 女王はルイズの瞳の中に一人の男を見た。
(アンパンマン!!)
 女王の全身に寒気が走った。
 目の前に居るちっぽけな人間が見せるその勇気が、女王をこの上なく不愉快にさせた。
「無駄なことはやめろ!! そんな小さな体で何ができるというのだ!!」
「うるさい!!」
 ルイズは女王の言葉に構わず魔法を唱え続けた。
578名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 00:22:31 ID:Zl4TZvgk
忍者と言ったら花のピュンピュン丸
579ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:23:03 ID:Gh8apoXg
 連続で起こる無数の爆発は女王の全身を包み続ける。
「えぇい!! 私に刃向かうな!!」
 細長い十本の指の先から黒い雷が発せられた。
 青いオーラを纏った稲妻がルイズの周囲に落とされる。
「私が望めばお前ごとき! 容易く消し去ることができるのだぞ!!」
 ルイズの周りにいた生徒達は黒い鉄像と化していた。

 女王はルイズの心を折ろうとしていた。
 圧倒的な恐怖さえも克服させるルイズの勇気――その存在を女王は許せなかった。
「お前が私に逆らったからそこの屑共は黒くなったのだ! お前の独りよがりの勝手な行動が、そいつらの未来を奪ったのだ!!」
 十体の鉄像の中にはキュルケもいた。
「うるさい! うるさいうるさいうるさい!! 私はただ! 私はトリステインの貴族として……!!」
 鉄像と化した彼らに対して、ルイズは責任を感じていないわけではない。
 しかし、トリステイン貴族としての彼女は、国や王女のため、また貴族としての誇りのために、その命が尽きるまで戦わねばならないという義務も同時に感じていた。
 自分のせいで命を奪われた者達に対する罪悪感と国家に対する忠誠心、それら二つの間で板挟みにあった彼女は泣いていた。
 目を赤くしながら、ルイズは大声で泣きながら魔法を唱え続けていた。
「貴族貴族ぅ……? ハッ、何が貴族だ! なぁにが誇りだ!」
 ルイズの信じるものの意味が女王にはわからなかった。
「下らない! あぁー下らない、そんなもの」
 失敗魔法による爆発を受けながら、女王は呆れるような声でと呟いた。
「力こそ全てだ! 見ぃるがいい!」
 女王が語気を強めそう言い放つと、女王の左手がそのすぐ前に出来た闇の中に沈んでいった。
 そして闇の中から何かを取り出すと、女王はそれをルイズの目の前に投げつけた。
 それは一体の黒い鉄の像だった。
 砲弾のような勢いで飛んできた鉄像は足の部分から地面に衝突すると、そのまま腰の位置まで地面にめり込んだ。
「既にこの国は私のものだ! お前がそんなに貴族としての誇りとやらを大事にするなら、私の前に跪け!!」
 ルイズは自分の前に置かれた鉄像の顔に見覚えがあった。
580ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:24:14 ID:Gh8apoXg
「ア、アンリエッタ……姫、殿下……」
 その鉄像の正体は、国王が不在のトリステイン王国において実質上の女王とも呼べる少女、アンリエッタ・ド・トリステインその人であった。
 幼少より彼女と親しい間柄にあったルイズは、その変わり果てた姿に言葉を失った。
 詠唱を止め、アンリエッタの像を見つめるルイズの焦点は定まっていない。
「ほほほ、お前達が学院の中にいる間にね、私はちょーっと街まで遊びに出掛けていたんだよ」
 鉄像の頬に手を寄せたまま動かないルイズを見て、女王の顔に笑みが戻る。
「その小娘が女王なんだって? 悪い冗談だねー本当に」
 嘲るように語る女王の言葉はルイズの耳には届かない。
 鉄像と瞳を見合わせるルイズの瞳は淡く濁っていた。
「まぁ、お前達みたいな屑ばかりいる今までのこの国には、お似合いの女王様だったろ〜けどねぇえー」
 女王はおどけた口調でトリステインを罵った。
 ルイズの心を完全に壊したという自信が女王にはあった。
 そしてそれ故に、彼女はルイズが小声で詠唱をし始めたことに気がつかなかった。
「ほーっほっほっほっほ!」
 ルイズが今唱えている呪文はこれまでの呪文とは大きく異なっていた。
 虚ろな目でルイズが唱える呪文のスペルは異常な程に長かった。
581ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王 part13:2010/01/09(土) 00:26:32 ID:Gh8apoXg
「さぁて、そろそろお前の、そのケバケバしい色も見飽きてきたねぇ」
 一頻り笑い続けると、女王は左手をルイズにかざした。
 女王は心の壊れたルイズにはもう構う必要が無いと判断していた。
 既に女王の目には、桃色の髪をしたルイズはただ目障りなだけの存在としてしか映らなくなっていた。
「黒くおなり……!」
 女王は人差し指の先に魔力を集中させた。
 指先からは青いオーラが迸しっている。
 その時、黒い稲妻がルイズの頭上に落とされた。
 しかし稲妻がルイズに命中する直前、ルイズ握っている杖の先端から凄まじい光が発せられた。
 球状に膨らんだ眩い光が女王を包み込む。
 輝きを増した白い光は、瞬く間に森中に広がっていった。
//以上です。
//まだ数回続きます。(以前に「あと数回」と言ったのに10回くらい続くことに……すみません)
582名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 00:26:46 ID:9/z1nkcr


あんぱん怖い
583名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 00:49:10 ID:+g89cwRU
おれこのままバッドエンドでもいいと思うんだ
584名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 00:55:10 ID:0gePpYdz
>>559
ここじゃない別の場所でのSSだけど、GS美神の鎌田勘九郎が召喚されたのがあったな
585名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 01:32:05 ID:RpZltF2U
乙乙
どれだけ続こうが歓迎するぜ
586名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 16:14:01 ID:vv8zv/qY
刹那「始祖ブリミルだと…この世界に神など居ない!」
587名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:05:07 ID:pOzd34Sh
刹那だって状況と場所くらい弁えるぜ
神の存在を頭ごなしに否定できる場所じゃ無いだろハルケギニア
588名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:06:05 ID:2ijM0ai2
実在の人物を神格化して崇めてるだけだからそんな突っ込みはしないと思うが。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:09:02 ID:0dJnrWSp
そのキャラ知らないけど仏教徒なのかな?
590名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:17:55 ID:aT39Co/D
どっちかってとムスリム。それも原理主義的な。
過去テロリストの少年兵だったし。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:27:17 ID:lahI1uqP
なにその誤解を招くような紹介の仕方。
592名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:31:05 ID:Sfz+VfVp
コルベールにそんなこと言ったら二重の意味で怒られちゃうな
593名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 18:13:14 ID:2ijM0ai2
神を崇拝するのがアンデルセン。
ガンダムを崇拝するのが刹那。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 18:23:29 ID:yBJuD0Ad
そういえばアンデルセン神父召喚SSじゃ、
ロマリア教会に凸しようとしてたな
595名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 18:48:30 ID:cW3G1klo
オカマじゃないが、阿部さんなら召喚されてたな。
ギーシュに。
596名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:01:11 ID:OZQGy60M
あの原型まるで留めて無い阿部か
597名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:05:27 ID:p6URoYZk
信仰で自分の親を殺した刹那にとってはロマリア教会は潰したくてしょうがないだろうな
598名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:17:43 ID:2a0GV3sN
刹那の神否定は、状況に流された自分への戒めって感じだな
自身の基準で行動できなかった後悔が言わせたんじゃないか?

しかし、宗教に聖地奪還……
どこぞの大主教様の出番かな。地球教の執念再び
599名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:26:29 ID:5PL4tXXC
神とガンダムを組み合わせたまったくあたらし

くないな
600名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:34:25 ID:3deObUDt
>>599
ゴッドガンダムがどうしたって?
601名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:35:56 ID:d9C27Oe4
え?バーニングガンダムとダークガンダムだろ?
602名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:41:31 ID:cKo9zWqD
スペリオルドラゴンと大将軍だろ、常識的に考えて
603名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:44:39 ID:CO+aK8aj
ガンダムキャラか


キラ「やめてよね。本気でケンカしたらギーシユが僕にかなうはず無いだろ」
604名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:50:39 ID:+MORGc+d
軍人としても政治家としても超優秀で国家の近代化に貢献したけど
その為に宗教裁判の完全廃止やイスラム原理主義者を片っぱしから
無期懲役か刑場送りにしたトルコ初代大統領ムスタファ・ケマルが
ガンダールヴになったらとんでもない事になりそうだw
605名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:51:05 ID:CO+aK8aj
しかしガンダムキャラって生身ならギーシユにもフルボッコされそうだな
G除いたらWの奴くらいか
ガンダ無くてもやれそうなの
606名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:53:26 ID:ZihW9heA
一方日本では、銅像が野ざらしにされていた
が、最近になって移転が決定した
607名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 19:56:48 ID:kQB2oOtK
>>605
Xのメンバーは、何とかしそうなやつが多い気がする。


まぁ、生身で殴りあう状況をそもそも想定しないですむ世界の人間だから、
そっち方向に長けていないのは仕方ないでしょ。

本職の軍人でも、ナイフぐらいならともかく、剣なんか見たこともなかろうし。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:00:48 ID:qD4r7eqG
クワトロならやれると思うよ
609名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:01:37 ID:2a0GV3sN
カミーユは空手を習ってたぞ
アムロだって、シャアと剣(サーベルだったか?)を交えていたシーンがある
ウッソ・ジュドーなども、ガンダム非搭乗時に大立ち回りを演じた経験があったような
初めからの軍属は、生身での格闘に類する訓練は受けてるだろ
MSに乗るだけがパイロットじゃない。基地への潜入など、地に足を付けた任務はある


もちろん、腕っ節の強い軍人よりかは弱いだろうが、ギーシュ程度なら対応可能だろ
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:03:17 ID:Eu4HWCrI
持ってる拳銃で即終了なんてことには(ry
611名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:04:04 ID:zKDdJ61h
まあガンダムパイロットで生身最弱じゃないかというキラですら一般人よりは少し強いわけだし
というかこいつだとすぐヘタレるか増長するかどっちかぽいが
612名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:04:17 ID:6r5yF+tl
武器無しガンダ補正無しならギーシュに勝てる奴はそういないだろ
613名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:07:32 ID:kQB2oOtK
そりゃ、武器なしで、相手は魔法ありというハンデ戦なら、勝てるやつはそう多くないだろうけどな。

でも、ウッソなら、なんか突拍子もないこと考えて何とかしそうだし、
ガロードならあり合わせのものでなんとかしそうだしなぁ。


ただ、MSのパイロットって白兵に関しては最低限の訓練しか受けていないと思う。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:08:52 ID:NmJ0hts3
一方久保はチートを使った
615名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:09:32 ID:Sfz+VfVp
御大将はガンダールブになっても刀が折れるからギーシュに勝てないな
616名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:10:14 ID:zKDdJ61h
GやWは別格としてそれ以外だと、本当に意外だが種死のシンかな
(本編ではあまり反映されてなかったが、ナイフを使っての戦闘は教官以上だったとか)
617名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:11:17 ID:d9C27Oe4
>>612
主人公以外は軍属かテロリストとかばっかりで主人公達はNT能力とかで先読みしたり出来る奴らだぜ?

というか殺傷する可能性があってもそれを生身の人間にぶつける事に躊躇が無いのが怖い
618名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:12:15 ID:CO+aK8aj
まぁ生身でも強い奴がゾロゾロ出てきて原作でもガンダの立場が危うくなっている気がする
619名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:12:52 ID:l/naYrxm
兵士20人程度に囲まれて、それを撃破する能力ガあればワルキューレを掻い潜り、ギーシュの杖を奪えるか。
ドズル辺りならやれそうな気が。

あれで子煩悩だし、ルイズにもいい影響を与えそうだ。
しかし顔がアレなのでキュルケは近寄ってきそうにないがw
620名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:14:49 ID:+8UgcaIq
コルベールとくっつくキュルケだぞ?
究極的には顔は気にしなさそうだが
621名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:17:51 ID:Sfz+VfVp
キュルケのは吊り橋効果
あっけなく破局でも俺は驚かない
622名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:20:36 ID:vv8zv/qY
シャア「私の世界では昔の人々はロケットという乗り物に乗り、
あの二つの月のずっと向こう側・・・宇宙(そら)と言う広大な場所を目指したのだ。
彼らはそこに希望の大地があると信じたのだ。
この世界の貴族のような支配階級を憎むよりも、その方がずっと建設的と考えたからだ。
そして重力から振り切った時、感覚を鋭利にし、誤解も無くピュアに他人と分かり合える能力を掴んだ者たち・・・
ニュータイプの能力が開花したのだ。
ルイズ、いずれ私は宇宙に行く。君も希望が欲しければ共に行き、ニュータイプになるといい。」
623名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:22:18 ID:zKDdJ61h
>>619
お前、ゼナ様に失礼だろ
624名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:23:19 ID:ZcZ3Zn73
メイジだから魔法で戦う。文句ないよね?理論で行くと
MSのパイロットにそれを言うのは自殺志願としか思えないんだが。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:54:10 ID:sDZDpLy4
>>613
決闘を申し込まれたときに、決闘の手段は? とか微に入り細に入り条件を確認して条件を対等にしちゃうキャラが居ても良いと思うんだ。
626SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 20:54:55 ID:H5Md1jJx
他にいらっしゃらなければ21:00より、参ります。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:56:27 ID:KbPlJagA
コナン召喚
628名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 20:56:38 ID:KNk+aYx6
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
629SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 21:00:00 ID:H5Md1jJx
mission14 Force Your Way


(どこで失敗したかなぁ……)
 神聖アルビオン帝国帝都ロサイス。
 そこの守りに着いている彼は、ようやく少年期を脱却しつつある青年だった。
 レコン・キスタが旗揚げされた時、これはここ一番の大勝負の機会だと見切って真っ先にそこに参加したのは、間違っていなかったはずだと信じたい。
 その甲斐あってそこそこの戦果を上げ、こうして守備小隊の一つを受け持つ小隊長になったのだ。一年前まで鍬や鋤しか握ったことの無かった平民の若者にしてみれば破格の出世と言って良いだろう。
 だが、トリステインへの遠征辺りからだんだんおかしくなってきたのだ。
 竜が凄まじい火を吐いただとか、正体不明の城からの砲撃だとかでアルビオンの艦隊は壊滅状態。揚陸されていた陸戦隊もちりぢりに蹴散らされ、アルビオンは戦力的に窮地へと追いやられてしまった。
 そして今、失われた戦力回復の目処も立たないままにトリステイン・ゲルマニア連合の侵攻を受けていた。
(そろそろ、離れるべきなのかなぁ……)
 彼の部下も何名かが既に軍を脱走していた。それでも彼がそれに倣わなかったのは、今の地位に対しての未練だ。
 十数名程度とはいえ部下に上司面が出来て、日がな一日ただ立っているだけで金と食い物が手に入る。それは余りにも惜しかった。
(それに……お袋や親父、怒るだろうなぁ)
 家出か勘当かという勢いで家を出てしまった手前、帰りづらい。
 そんな風に星空を見上げながらぼやいている彼の目に、何か、星の光よりも強い光が見えた。
「?」
 何の光だ?
 彼の脳がその疑問を明確な意識として認識するよりも先に、答えがやってきた。
ビュウビュウビュウビュウビュウ
 無数の光の線が彼の頭上を通り過ぎていき、城壁に突き刺さる。
「うああああああああ!?」
 立っていたのは城壁際ではないものの、それでも飛散してくる欠片から身を守るために離れる。と、そこで次なる衝撃が起こった。
 光の線と同じ方向から飛んできたものが、ズクズクになった城壁に突き刺さったのだ。
「な、なんだあれ!?」
 月明かりや城下町の光に照らされているのは……紅い、竜だろうか?
「あ、あああああ!」
 結局あの竜が何なのかは判らないが、彼は間違いなくそこで正しい判断を下した。
(もうお仕舞いだ。レコン・キスタはもうお仕舞いだ……!)
 逃げよう。脱走だ。親に怒鳴られることなど構うものか。命あっての物種だ。


 城に突入した時点で着陸脚を展開し艇体を固定。ハッチを開放してラグナロクから外に出る。
「アニエスとジョーカーはここでラグナロクの確保を」
「了解」
「一人で行く気か?」
 剣の方は今朝の刃こぼれが直せていないので、ビスマルクのポンプを引いて装填させながらアニエスが尋ねる。
 ちなみにアニエスもG.F.をジャンクション済みだ。多勢に無勢の状況であるし、何よりももう仇討ちが済んだ以上記憶に拘ってジャンクションを躊躇う理由も無くなっている。
「ああ、どのみちこの人数だ。一人で行くか二人で行くかの違いなら、確実にラグナロクを確保しておく必要がある」
「わかった」
「侵入者か!」
 声のした方から近づくのは、数名の男。鎧と槍とで武装しているところを見ると非メイジの衛兵か。
「こちらは任せろ!」
 すかさずアニエスがビスマルクの銃口を向け、散弾をぶち込む。
「ぐわぁぁぁぁあああ!?」
630SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 21:00:51 ID:H5Md1jJx
 全身に弾を受けつつ倒れる衛兵達。
 そちらを尻目に、G.F.を召喚する。
「ラグドリアン、指輪の位置は?」
『うむ、近いな……ここよりも高いところだ』
 ひとまずは階段を探して走り出す。
(アビリティ、エンカウント無し、さきがけ、カウンター、早さ+40%ジャンクション。
 属性攻撃にホーリー、防御にフレア、シェル、トルネド、クエイク。
 ST攻撃にスロウ、防御にペイン、エスナ、コンフュ、スリプル)
 会敵率を下げ、更に急な襲撃にも対応出来るようにとジャンクションを組み替えていく。これで大抵の攻撃には耐性が出来ているはずだ。
「いたぞ、あれだ!」
 そう叫びつつこちらに向かってくる敵兵、総数5。その後ろに見えるのは上へと続く階段か。
 ライオンハートを振りかざして、先頭の男を一刀両断。攻撃後の隙を突いて突き込まれてくる槍を受けるも、ジャンクションで威力は殺され、クロスカウンターで叩き斬る。
「邪魔をするなぁっ!」
 もう一度ライオンハートを振りかぶり、スコールが吼えた。


 基点基点でラグドリアンの誘導を受けつつ、一つの扉の前にスコールは辿り着いた。
 扉の前に陣取っている衛兵二人を伸した後、確認のためにラグドリアンを喚び出す。
「G.F.召喚、ラグドリアン……ここで合っているか?」
『うむ……我が守りし秘宝はこの向こうだ』
 シヴァの容姿に、どこかうっとりとした表情を浮かべるラグドリアンの言葉に従い扉を開けようとするが、やはりというか鍵が掛かっている。
(探してる時間的な余裕もない……)
 ほぼ即決でライオンハートを構えて×の字に斬って扉と鍵とを切り分け、蹴破る。
 豪奢な部屋の中には、誰の姿も見あたらなかった。
『秘宝は……あそこのようだな』
 ラグドリアンの指し示すクローゼットに近づき、開ける。
「う、うあああああああああ!?」
 ちょっとした部屋ぐらいの広さのクローゼットの中で何か顔真っ青で悲鳴を上げるおっさんがいた。
『ああ……別れてより二百の月の交差を経て……ようやくに再び相まみえることが出来た』
 そのおっさんの手に光る指輪を見て、慈しむようにラグドリアンは呟く。
(あれがその指輪か……)
「こ、こうなったら……!」
 うずくまる体勢のまま、指輪を填めた手だけをこちらに突き出す。
(何だ……?)
「私に従えっ!」
 キラリと指輪が光り、スコールはゆっくりとライオンハートを下ろしていく。
『……いかんな。多なる者よ、我の守りを受けよ』
 スコールの姿をとっていたラグドリアンが再び不定形の形となってバシャッとスコールに浴び掛かる。
「うっ……!……俺は一体何を……」
『秘宝の力によって操られようとしていたのだ。案ずるな。今はもう我の加護の中だ』
(ああ……『不変の誓約』か……事前にコンフュをST防御にジャンクションしておけば良かったかもな)
 ラグドリアンのG.F.としての能力を思い出し、納得すると共に、指輪の能力を知っていながら余りにも迂闊な自分の行動に自戒の意味を込めて頭を横に振る。
「何故だ……!?何故正気を保っている!?」
「……その指輪の本来の持ち主の力だ」
 親指で隣に佇むラグドリアンを指さす。
「その指輪では俺を操れない」
 そう宣言すると、おっさんがクローゼットの中で後ずさる。
「た、頼むぅ……いっ命だけは……命だけ、はっ!助け、て、くれぇっ!」
 情けない声をあげて命乞いをしているが、別に失禁しているおっさんに興味はない。
「あんたの命も、あんたが誰なのかも俺にとっては重要じゃない。そのアンドバリの指輪さえ渡してくれるのならな」
 剣を向ける必要も無さそうだとライオンハートを収めて掌を差し出す。
631SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 21:01:40 ID:H5Md1jJx
「なっ……この指輪を!?」
 スコールの要求におっさんは一層顔を情けなく歪める。
「……嫌なら力ずくで行かせてもらうが?」
 手を引っ込め、再びライオンハートの柄に指を這わせる。
「ひっ!?わたす、渡す!渡すからぁっ!」
 震える手で必死に自身の指に填った指輪を外し、差し出す。
「い、命だけは……」
 その差し出された指輪をラグドリアンが受け取り、なめるように見つめる。
『再び我が元に戻った……』
 僅かの間そうしてから、指輪をスコールに差し出す。
『では多なる者よ。指輪を我の元にまで頼む』
「了解だ」
 おかしな言い回しだが、この場合の我はあちら側の、湖に残っている本体の事だろう。水の精霊にとってはどちらが本体かなどの概念はないにしても、やはり元有った場所が良いらしい。
 指輪を受け取ると共に、G.F.ラグドリアンを戻して再び駆け出す。
「ふぁ……あああああああ……」
 後に一人残った男は、安堵の声を漏らしていた。


 散弾を込めてトリガー。
 至近距離にまで肉薄していた数名はそれで全身穴だらけとなりのたうち回る。
「っふ……!」
 ジャキッとビスマルクを廃莢して一息つくと、アニエスを遠巻きに包囲している連中が一歩後ずさった。
「か、閣下!ダメです、近づけません!」
「ええい、不甲斐ない!こうなれば私が魔法で……!」
 そんな話声が聞こえたので見ると、メイジの一人が包囲の表に出てきながら杖をこちらに向けていた。
「エア・ハンマー!」
 空気の塊を正面から受け、大きく仰け反ったアニエスは、すぐに身構え直した。
「なっ……!?が、頑丈な女め……!」
 驚きに表情を歪ませ、すぐさま高速詠唱。
「エアカッター!」
 アニエスへと真空のかまいたちが向けられるが、無造作に差し出された手が全ての刃を受け止めきり、そのままメイジへと手を向ける。
「ドロー エアロ!」
「うわぁぁぁぁ!?」
「うおおおおおおお!」
 床から突風が吹き上げ、衛兵とメイジ達を天井に叩き付ける。
「トドメだ!」
「ぎゃあああああああああああああぁぁぁあああ!?」
 強かに打ち付けられ、落ちてきた所に火炎弾を装填し、一射。業火に舐められた一帯を前に廃莢し、更に奥の方を見据える。そこから、接近する影があった。一瞬身構えるが、それが見知ったものであるとすぐに見分ける。
「レオン!戻ったか!」
「任務は成功、後は離脱するだけだ」
 駆け寄りながらライオンハートを収め、アニエスと共にタラップへと向かう。
「ジョーカー、殿を頼む」
 アニエスと反対側の廊下に向いていたジョーカーに頼むと、イカサマのダイスを指の間に挟んだ手で後ろ向きのまま手を振った。
「了解」
 タラップを駆け上がってブリッジへ、操縦席にスコール、副操縦席にアニエスが座る。
「メイン反応路出力上昇」
「三番、四番、上昇用エンジン出力異常なし」
「一番、二番、メインエンジン異常なし、ジョーカー!」
「はいよ!」
 スコールの呼びかけを聞き、ジョーカーは最後に残っていたプリヌラを『カード』で捕らえてタラップへ駆け上り、殺到する衛兵を前にファイガを一発放ち、ハッチを内側から閉じた。
632SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 21:02:30 ID:H5Md1jJx
「主脚収納、メインエンジン逆噴射開始!ラグナロク、発進!」


 この日、反旗を翻していたトリステイン・ゲルマニア連合の前衛部隊が揃って再度の恭順を示した。
 後に開かれた軍事法廷に置いてこれらの指揮官達への詰問が行われたが、「なんとなく」だの「そうしなければならないと思った」などとどれも要領を得ない答えしか返ってこず、
また結局この前衛部隊が一番の功績を挙げていたこともあり、それぞれに短い謹慎処分が下されるのみであった。


 湖に指輪を放ると、そこを基点に波紋が広がり、此度はアニエスの姿をとってラグドリアン湖の水の精霊が姿を現した。
『多なる者に単なる者よ、よく秘宝を取り戻してくれた』
「それが、あんたからの依頼だったからな」
 こくりと頷き、自分の中に切り取られているラグドリアンを召喚する。
「あんたの一部も、返す」
『いや……多なる者よ。邪魔でないのならばそのまま我を連れて行ってもらいたい』
「何?」
 少々の驚きを持って尋ねる。
『此度、我は初めてこの地より離れた。我はもっと別な場所へも赴きたい。また多なる者の裡にて多なる者達と語り合っていた。それを失いたくない……今しばらく共にありたいのだ』
「……今まで通りG.F.として助けてくれるのなら連れて行っても構わない」
『うむ。我の力が必要となればすぐにでも力を貸そう』
 ここに、水の精霊との間で二度目となる誓約が交わされた。
633SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger:2010/01/09(土) 21:03:48 ID:H5Md1jJx
今回はここまで。
やっぱり強襲揚陸戦はいいですねぇ。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 21:15:25 ID:gr9TW/9X
お疲れ様でした。
というか、ラグドリアン……デレた?
635名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 21:30:48 ID:xCddcH3L
SeeDの方、乙でしたー。
敵討ち成就。良かったですねアニエスさん……ってコルベールせんせぇぇぇぇぇぇええ?!
636名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 21:46:11 ID:0dJnrWSp
投下乙でした。相変わらず展開早ぇー

そりゃまあ、アニエスにしてみりゃコルベ先生行かしとく理由ないし、最後の一人とくれば
それはもう念入りにトドメくれたろうしなー
637名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 21:49:50 ID:zKDdJ61h
だけど実際にヌッコロされた話見たのは初めてだなw
638名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 22:00:41 ID:DCjh/LO0
だが一寸待って欲しい
敵討成就とは言ってるがコルベールが死んだとは未だ書かれていない!
メテオぶつけてすぐ去ったと言う可能性も有るんじゃなかろうか
639名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 22:09:11 ID:yNteT3hN
>>613
リアルだと戦闘機のパイロットは敵地で撃墜された場合を想定して厳しいサバイバル&戦闘訓練を積んでるんだぜ
640名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 22:35:04 ID:38KaY8OV
サイヤの使い魔の腐女子っぷりは…
ナマモノはレベル高すぎだろう。どう考えても。
641名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 22:57:23 ID:Vw01y4+G
>638
つまり、アニエスさんが『敵討ちを成就した』と思えるほどの怪我を負わせた、で済ませた可能性があると言うのですね。
642名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 22:58:35 ID:3BVmiST5
なにそのTV版仕様
643名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 23:16:05 ID:jeh5ebrS
480KB超えてるので新スレ立ててきます。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 23:17:31 ID:jeh5ebrS
645名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 01:25:44 ID:yt6UPKFW
ガンダムキャラでルイズに召還されるとしたら……

ウモン・サモンなら……ウモンじいさんならギーシュ戦も7万戦もお得意のNT能力でサイト以上に要領よくやってのけるはず。
646名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 02:53:33 ID:c9E+kgwC
カミーユを召喚したら
最初にルイズに名前を馬鹿にされてぶん殴り、
その後に食堂でギーシュに名前を馬鹿にされてやはり殴って決闘だな
ワルキューレもNTオーラで動かなくなる
647名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 03:15:38 ID:/EJ/bmbq
戦闘機の一般パイロットは一般の歩兵よりもずっと強い。
訓練もそうだけど、身体能力が普通にやたらと高いんだよ。
以前、パイロットのヤツと揉めてリアルファイトしたんだが、3対1という有利な状況なのにボコられてのされたww
と、元陸上自衛隊の俺が言ってみるww
648名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 03:30:38 ID:7g5HjoMp
カミーユって実は男にも普通につける名前なんだよな
649名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 04:02:29 ID:lnZZEAy/
てか士官学校実質主席で出たシャアより、
数ヶ月前まで半分引きこもりやってたアムロの方が
体を使った戦闘が上手いと言う事実があったりするので
ニュータイプってのはドンだけ新人類なんだよと・・・・

まぁシャアが基本的にへたれだとか、
戦闘技術も低重力下限定かもしれないけど。
650名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 04:47:26 ID:PphOrhUQ
でもア・バオア・クーの無重力下のフェンシング、シャアさん思い切り額に食らってるしなー・・・
651名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 08:50:32 ID:6KNicr5F
>>647
そりゃあまあ、戦闘機パイロットといえば、もっとも思考力、反射速度、
体力などが必要とされるから、少なくとも才能の面ではエリート中のエリートが選ばれますしね。

歩兵の場合、直接戦闘が任務とはいえ、一山いくらで使用されますから
平均的な才能(むしろ少し劣る)の入隊者を鍛えれば出来ること、
に訓練内容にしろ任務にしろ限定されますからね。

高い才能を持った人が高度な訓練を施され、ついていけない人はどんどんふるい落とされる…
大空の侍(二次大戦のゼロ戦エースの自伝)なんか読んでいると、
どれだけエリートなのかよく判ります。
652名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 09:13:08 ID:kd3t027Z
ガンダム厨と軍オタは隔離しろよ
653名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 10:37:04 ID:rnwBVuql
>>652
同意。
というか、隔離されてなかったっけ?
654名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 10:39:46 ID:3dfITucr
「パイロットがルイズに召喚された場合」というテーマで駄弁ってるのだから
隔離されるほどピントのずれた状況ではないと思うのですよ
655名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 10:40:51 ID:lnZZEAy/
まぁ埋め立てついでってのもあるがな。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 10:53:54 ID:yt6UPKFW
パイロット

綾波レイなら……どう科学起こすかワカラねぇ。
へたすりゃ学院の人間がLCL化するし。

工藤シン呼んだら……鳥の人怒るし。

ここはミストさんを呼んでですね、ハルケに絶望してもらいましょう。

「平民? ああ、アトリームにもありましたよ。でもハルケゲニアよりも扱いは酷くはなかった。
 もういやだよ。貴族なんかのためにこれ以上戦いたくはない。こんなんじゃ俺はルイズたちのことを守りたくなくなっちゃうよ」
657名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 10:58:54 ID:Mi+MSBop
>>651
ルーデルなら、どんなチートでも現実になりそうだから困る。
658名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 11:01:33 ID:3dfITucr
ここはアメコミはX−MENからフォージを呼んでみましょう

「触るだけであらゆる機械の使い方を理解し複製出来る」というその能力は・・・・・・
ハルケギニアではビミョーに役立たねぇ
「複製を作る」ことは出来ても「原理を理解できる」訳ではないのがまたビミョー
659名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:11:57 ID:p3wlG+mY
>>656
(惣流)アスカは…ルイズと壮絶な喧嘩を繰り広げそうな気が…どっちもアレな女だし。
もういっそのことミサト呼べww

パイロットと言ってもいろいろだからなあ… 練度もピンキリだし。
シンジ君みたいな速成の少年兵(に類する者)も職業軍人・正規兵・学兵も
“搭乗員”と言う面では同じだしな。
機体ないとただの人っていう可能性もあるわけで…
            
660名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:22:18 ID:3dfITucr
>>659
劇場版は見てないけどTV版のアスカって性格カツに似そっくりだよね

もしカツが召喚されるとしたら・・・・・・・・・やっぱマルッコイ?
661名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:27:54 ID:dcu1MGPM
パイロット召喚……ハルケギニアに存在していても、おかしく無さそうなロボットってあるだろうか。
ファンタジー系だとゴーレムみたいな物ばかりで、パイロットが必要そうな物は思いつかないし……終わりのクロニクルの機竜みたいのがいるとか?
662名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:28:25 ID:c9E+kgwC
ジェイデッカーから勇太とデッカード召喚
ショタに目覚めるキュルケと黙ってないデッカードが伺える
663名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:32:28 ID://nGQluE
>>661
サーバインとかズワウスあたりがいいんじゃないかと思う
664名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:38:16 ID:3dfITucr
途中でイタくなり過ぎて読むの止めたけど「オルフィーナ」に出てくるロボットは外見まるっきりドラゴン

防御力と飛行速度とファイヤーブレスがまるっきりオーバーテクノロジーだけど
弱点としてはコントロール設備をやられたら終わり、というのと攻撃力が高すぎて混戦になったら使えないという事
あと防御力を上回るパワーで攻撃されたら壊れる
665名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:44:01 ID:LR9m4UdO
吉田創版カツ・コバヤシinダンボールガンダム召喚。

……敵につっこんで自爆させられる姿しか思いうかばねぇ。
666名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:46:46 ID:vha7Il/1
そこでトランスフォーマー(ビーストウォーズ)の連中ですよ

でもあれって吹き替えのおかげでギャグになってるけど本当はめちゃくちゃ重くて
鬱な話なんだよな…
667名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:00:24 ID:INzBn4M2
ロボット物で、3日とたたずに動けなくなりそうなのはエリアルくらいか?
668名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:14:21 ID:uwY47mOy
パトレイバーのX-0零式も結構きついのでは?
669名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:22:04 ID:NXOVa2wm
>>661
エスカフローネあたりがよろしいのでは。
670名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:23:59 ID:NXOVa2wm
>>668
0式に限らず、レイバーの稼働時間ってどれくらいなんだろうね。
フルパワーで機動したら1時間もバッテリー持たないイメージがある。
671名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:25:15 ID:ouSuXpWT
ウォーカーマシン辺りは少々雑な使い方しても大丈夫なイメージがあるw
672名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:26:46 ID:uwY47mOy
ぴっけるくんみたいな第一世代や第二世代とかはガソリンエンジンだから持ちそうだけど
イングラムとかヘルダイバーとかは厳しそうだね。
本気で駆動したら第三世代以降はヘルダイバーみたいな燃料電池搭載機除いて
1時間持たないと思う。
673名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:27:13 ID:8OBw6eCD
前から話には出てるけど、聖刻群龍伝とかの操兵は、魔法の石をはめ込んだ仮面以外は基本的に鍛冶ができれば
修理可能。筋肉筒とか血液とかも錬金でなんとかなるだろう。
674名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:30:51 ID:CinXwuKA
>>672
パトレイバーって、そこらへんが妙にリアルなんだよなwww
675名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:39:26 ID:CG+czhDl
>>673
ランクが低いのならともかく高いの呼び出したら世界規模でやばくなるけどな
自力再生余裕ですなのもいるし
676名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:41:37 ID:IF1MoGs2
リアルロボットものはメンテナンスができないから数回出撃したら使えなくなるのばかりな気がする。
677名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:54:21 ID:XCvIdUWT
聖刻と言われても「真・聖刻」(SFC)
678名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:13:22 ID:PnIUaiKn
>>676

メンテナンスに関してはシエステに任せてみては?
こう、曾お祖父ちゃん=召喚された主人公の上官ORロボ関連の技術士で、シエスタはその技を受け継いでいる、みたいな?
679名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:20:55 ID:LR9m4UdO
装甲とかは錬金でどうにかして、機械的な部分はそれでいいとしても
電子部品が完全にいっちゃったらハルケではどうにもならなくね?
680名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:23:12 ID:uvlCVTaX
リアルロボット系は主人公の世代で爆発的にテクノロジーが進歩してるのが多いので
曽祖父の代のメカマンがいても恐らくどうしようもない
パトレイバーではレイバー出現時から関ってるおやっさんが「最近のには手が出せない」つってるし
ガンダムならミノフスキー粒子すら無い頃のレビル将軍の親の代になるわけで
681名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:27:19 ID:2Wwln0wa
ダインバインとかは?
もともとバイストンウェルを思わせるんだよな
682名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:31:21 ID:gZNvv2yH
つか、その技術が何の役にも立たないハルケギニアでその技術を継承させる
(実際にメンテナンスできるレベルで)ってなると、相当理由が無いと無理な気がするぞ
683名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:43:58 ID://nGQluE
メンテナンスフリーな奴を持ってこないとダメだな
684名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 14:46:38 ID:FZawIpR6
>>680
曽祖父を主人公と同世代にすれば良いんじゃね?
そこだけ解決しても、他の問題があって無駄だけどさw
685名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:04:26 ID:+FCQS7KQ
ゴーバリアン(笑)
686名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:05:47 ID:ouSuXpWT
だから究極のエコロボット、ボスボロットを(ry
687名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:09:17 ID:3BpnbY9S
まず油田開発から石油精製の流れを作らにゃならんのか・・・
もういっそ酒で動くエタノールメカでも作っちまうか
688名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:10:11 ID:uwY47mOy
火石があるんだから石炭からの人工石油合成はできるでしょ?
689名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:24:08 ID:LR9m4UdO
>>688
問題は錬金でそれができるかだな。
化学・科学では不可能なわけで。
そういえば錬金って個体→個体しかなかった気がするんだけど
個体→液体の錬金ってできるんだろうか。
690名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:26:56 ID:D9wZcAwn
>>689
原作でハゲが石炭→ガソリンはやってるだろ?
691名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:29:26 ID:+zFJJFUV
石油とか機械のパーツなら錬金で何とかできるだろ
メンテナンス含め上手い事扱う事ができるかどうかが問題点なだけで
692名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:52:03 ID:65qEtiVr
>>678
技術があっても設備が無いから無理だと思う
693名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:54:23 ID:LR9m4UdO
>>690
あったっけ、やべ忘れてる。
罰として原作100回読んでくるわ。
694名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:54:57 ID:Va0iL32V
じゃあメンテナンスフリーのロボで
髭とか血塗れの巨神とか冥王とか悪夢水晶とかヒゲ男とか
血塗れは再生遅いし、ヒゲ男も別に装甲とかが再生できるだけでメンテ要らずでもないんだろうけど

あ、ソウルじゃなくてアークだったらメンテ要らんな
パイロットもいらんけど
695名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:58:55 ID:vKnN/Q8t
>>690
正確に言うと「ガソリンの現物と、石油と性質が似てる石炭を参考にして石油を錬金した」だな。
696名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:01:10 ID://nGQluE
>>691
それで部品が作れたとしても寸法精度は悪そうだな
697名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:03:23 ID:+FCQS7KQ
そういえば「錬金」ってどの程度のものまで作れるんだろう

優秀な土メイジが、現物見れば何でも作れちゃうのかな
ゾルマニウムとかゲッター合金とか超合金Zとか

まあどこぞの武器屋に置いてあった大剣みれば大体想像つくけど

武器屋のおっちゃんの口上がハッタリでなければ、の話だが
698695:2010/01/10(日) 16:09:11 ID:vKnN/Q8t
錬金したのはガソリンだったorz
699名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:12:02 ID:Va0iL32V
生体金属的な働きをする代物は
多分ゴーレムになるんじゃないかと思う
700名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:20:26 ID:+FCQS7KQ
>>699
生体金属的な動き・・・・・・腰のところがぐにゃって曲がるRX−78?
701名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:32:44 ID:INzBn4M2
そーいやあ、ストフリはメンテ不要(藁)だからいくらでも使えたな
702名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:36:14 ID:fcAfmwd+
ハルケをコンピューターワールドにすればグリッドマン召喚
703名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:43:41 ID:p3wlG+mY
士魂号や騎魂号(士魂号複座型)とかもダメか…
ウォードレスとかは大丈夫だろうか…
704名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:44:41 ID:hF9fgFaE
その場合ハルケはゼロ魔の世界を仮想体験できるサイトで、なんやかんやでゼロ魔がきらいになった武士が
怪獣を送り込んだところへ、才人になりきって楽しんでいた直人がグリッドマンに変身して戦うことに
705名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:49:13 ID:+qdrBSKp
Pちゃん・改なら自力でメンテできるだろうが
魔法やら幻獣を見たことでもの凄い自己改造をしそうだ
706名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 16:53:12 ID:a2Zzu66c
士魂号や騎魂号は単なる機械ってわけでもないし無理臭いな
まあ、その部分置いておいても人口筋肉や強化プラスチックetcの素材や構造の複雑さ、サイズの問題から無理そうだけど
サイズの点についてはばらして部品を、ってことも出来るかもしれんが精度や組み立ての面に問題ありすぎる
ウォードレスも同じ理由で無理だろうね
できるなら戦車やバズーカ、銃器類もコピーできることになるし
707名無しさん@お腹いっぱい。
旋盤がない時点でお察しください、って感じだね。