アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part11
1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
6/6【けいおん!】
○平沢唯/○秋山澪/○田井中律/○琴吹紬/○平沢憂/○中野梓
3/6【咲-Saki-】
● 竹井久/○天江衣/○福路美穂子/ ● 池田華菜/●加治木ゆみ/○東横桃子
6/6【新機動戦記ガンダムW】
○ヒイロ・ユイ/○デュオ・マックスウェル/○張五飛/○ゼクス・マーキス/○トレーズ・クシュリナーダ/○リリーナ・ドーリアン
6/6【戦国BASARA】
○伊達政宗/○真田幸村/○織田信長/○明智光秀/○本多忠勝/●片倉小十郎
6/6【とある魔術の禁書目録】
○上条当麻/○御坂美琴/○白井黒子/○一方通行/○月詠小萌/○海原光貴
6/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○セイバー/○アーチャー/○バーサーカー/○ライダー/○キャスター
4/5【空の境界】
○両儀式/○黒桐幹也/○浅上藤乃/○荒耶宗蓮/●玄霧皐月
4/5【ガン×ソード】
○ヴァン/○レイ・ラングレン/ ● カギ爪の男/○ファサリナ/●プリシラ
4/5【逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
○伊藤開司/○利根川幸雄/●兵藤和尊/●安藤守/○船井譲次
5/5【コードギアス 反逆のルルーシュR2】
○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./○ユーフェミア・リ・ブリタニア/○アーニャ・アールストレイム
5/5【化物語】
○阿良々木暦/○戦場ヶ原ひたぎ/○八九寺真宵/○神原駿河/○千石撫子
3/3【機動戦士ガンダム00】
○刹那・F・セイエイ/○グラハム・エーカー/○アリー・アル・サーシェス
56/64
※書き手枠で決定した下記の12名は、バトルロワイアル内で参加者に支給されてた名簿には名前が記載されていません。
中野梓@けいおん!、片倉小十郎@戦国BASARA、月詠小萌@とある魔術の禁書目録、海原光貴@とある魔術の禁書目録
玄霧皐月@空の境界、プリシラ@ガン×ソード、兵藤和尊@逆境無頼カイジ、安藤守@逆境無頼カイジ、
船井譲次@逆境無頼カイジ、ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス、アーニャ・アールストレイム@コードギアス、千石撫子@化物語
バトルロワイアルのルール
【原則】
64名の参加者が残り一名になるまで殺し合う。
【スタート時の持ち物】
各人に支給されたデイパックの中身は以下の通り。
地図、名簿、食料、水、メモ帳、筆記用具、ルールブック、デバイス、腕時計、懐中電灯、
応急処置セット(絆創膏、ガーゼ、テープ、ピンセット、包帯、消毒液が詰められた救急箱)、ランダム支給品(各人1〜3個)。
【名簿について】
64名中、52名の参加者の名前が記載されている。
未掲載の12名については、第一回放送の際に発表。
龍門渕透華の名前は最初から掲載されていなかった。
【ルールブックについて】
ルールが書かれた小冊子。開会式中でインデックスが語った内容とほぼ同一。優勝特典についても記されている。
【デバイスについて】
現在自分がいるエリアがデジタル表記で表示される機械(【A-1】といった具合に)。方位磁石としての機能も兼ね揃えている。
【禁止エリアについて】
六時間に一回の頻度で行われる放送ごとに、三つずつ増えていく。
参加者が禁止エリアに踏み込んだ際、首輪が起爆する(爆破までに時間差や警告があるかどうかは不明)。
【優勝者への特権について】
優勝者には賞金として10億ペリカ、そしてその賞金で買い物をする権利が与えられる。
ペリカの使い道は以下の通り(これはルールブックにも記載されている)。
・元の世界への生還――1億ペリカ
・死者の復活―――――4億ペリカ
・現金への換金――――9億ペリカ
・その他の願い―――――要相談
※1ペリカ=10円。10億ペリカ=100億円。
【作中での時間表記】
【深夜:0:00〜1:59】
【黎明:2:00〜3:59】
【早朝:4:00〜5;59】
【朝:6:00〜7:59】
【午前:8:00〜9:59】
【昼:10:00〜11:59】
【日中:12:00〜13:59】
【午後:14:00〜15:59】
【夕方:16:00〜17:59】
【夜:18:00〜19:59】
【夜中:20:00〜21:59】
【真夜中:22:00〜23:59】
書き手向けルール
※詳細はまとめwikiにて確認をお願いします。
http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/24.html 【状態表について】
SSの最後には下記の状態表をつけてください(服装と備考の欄は、必要なければ省略してください)
【エリア/場所/経過日数/時間】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:
1:
2:
3:
[備考]
【予約について】
予約をしたい場合はしたらばの予約スレ(
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1256477871/)に
トリップをつけて予約したいキャラ名を書き込んでください。
予約期限は3日(72時間)です。予約期間中に申請すれば2日(48時間)の延長ができます。
予約の延長は、一回の予約につき一度だけ利用できます。
あるキャラの予約が行われた時点で、他の書き手はそのキャラを含んだ予約または作品投下が出来なくなります。
予約は予約期限切れ、予約破棄宣言、対応する作品投下のいずれかを持って解除されます。
予約期限切れ、予約破棄宣言の場合、その時点を持って予約されていたキャラの予約が可能になります。
対応する作品投下の場合、その作品に対して24時間以内に修正・破棄の要求がなければ、その作品のキャラの予約が可能になります。
【支給品・キャラの能力に関する制限について】
まとめwikiの制限一覧を確認してください。
http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/23.html ★企画に興味を持ったら★
当企画への参加に資格は必要ありません。どなたでもどんどんどうぞ。
但し、企画の円滑な進行のため、守るべきルールは存在します。
特にSS書き手として参加される方は事前に以下の「書き手用ルール」のページをお読みください。
企画への参加は「SSを書く」、以外にも「絵を投稿する」「MADを投稿する」「感想を書いてスレを盛り上げる」
等様々な形があります。そういった形での参加も大歓迎。みんなの技術を持ちよって企画を楽しみましょう。
「気づいたら六人、かぁ」
――さて、僕はいったい何分ぶりに言葉を発しただろうか。
周囲の人たちが濃いキャラばかりだったもので、すっかり発言を自粛していた。
全員が全員、軽く自己紹介をし合った程度の仲だけれど、各々の素性は揃って怪しいものばかりだった。
枢木スザク。
ブリタニアという国の騎士。
肩書きはナイトオブゼロ。
ルルーシュ・ランペルージとC.C.の二人を捜している。
真田幸村。
戦国武将。
史実に名を残すあの人と同姓同名。
存在自体が疑わしく、それでいて暑苦しい男。
デュオ・マックスウェル。
自分のことについてはまったく語っていない。
言葉は流暢だが、名前からして日本の人ではないのかも。
明智光秀というヤバげな男に襲われたらしい。
セイバー。
デュオと同じく己の素性は語っていない。
たぶん本名ではない。
プリシラという少女を捜す。
両儀式。
素性不明。
古風な彼女。
かったるそう。
……帝愛グループなる組織の方々は、なんの目的でこんなバラエティ溢れる面々を集めたのか。
特に、真田幸村に明智光秀。この二人は、おそらく、きっと、僕が思っているとおりの人なのかも……。
財力にものを言わせて《魔法》を買ったんだったか。だとしたら、そこに真相は隠されているのかもしれない。
信じがたいことではあるけれど、《魔法》なら――と。この場に忍野がいたら、どんな解釈をしただろうか。
っていうか、まとまるのか、この面子。
チームリーダーがいるわけでもなしに。
共通項といえば、『とりあえず殺し合う気はない』という一点だけ。
不和は生まれないだろうが、その代わり同調も生まれないのではないか、と僕は思う。
サバイバルゲームで築かれた集団が、ちょっとしたすれ違いをきっかけに崩壊するなんてのはよくある話。
チームを作ろうと提案したのは枢木だが、僕には彼が、僕も含めた五人をまとめきれるとは思えない。
というよりは、枢木自身にまとめ役をやる意思が見えないというか。実際そうみたいだし。
不安、というか、先の展望が見えてこない。固まるメリットは、この段階ではあまりないのではないか、と。
僕はそんな風に、思ったことを口に出したり、時には胸の奥に仕舞い込んだりして、ようやくの指針が決定した。
◇ ◇ ◇
以上が、《シーン4》。
出会って、話して、和解――なんだか、釈然としない。
緊張感に欠けるというか、熱が入らないというか、揃いも揃って協調性がないというか。
真っ先にチーム結成を提案した枢木にしたって、みんなを引っ張っていこうという気概は見せないし。
これは、なんだろう。
チームというよりは、『捜索隊』だろうか。
各々の知り合いを捜すだけの、人手の集合体。
統率も団結もあったものではない、日雇いバイトの仲間みたい関係。
誰も気を許してはいない。信用しきってもいない。
ただ、こいつに殺されることはまあないだろう――と、そんな曖昧な安心感をもとに身を寄せ合う。
これははたして、長生きするための知恵と言えるのだろうか。どうだろう。
まあ、そんな風に出会った六人だったから……当然のごとく、立派な団体行動なんてできるはずがなかった。
とりあえず程度に面識を作り、じゃあ別行動しようか、という流れに至るまでは、案外スムーズなものだった。
それぞれが、別々の道を行く。分散の仕方は、こんな感じだ……――。
◇ ◇ ◇
「さて……話し合いの結果、俺が『敵のアジト』に向かうことになったのはまあ、いいんだけどよ」
両儀が提供してくれたサイドカー付きのバイクに跨りつつ、デュオがごちる。
彼はこれから、最北のエリアに位置する『敵のアジト』へとひとっ走り行って来るはめになった。
というのも、僕たちに殺し合いを強いている『敵』が『アジト』にいると信じて疑わない、真田のためである。
まず本当にそこに倒すべき敵がいるのかどうかわからない、仮にいたとしても少数で攻め込んでは勝ち目も薄い。
枢木たちの説得の介あって、「なら誰かが下見に行って、攻め込むのはそれからにしよう」という提案でようやく折れた。
そこで抜擢されたのが、バイクの運転ができ、なおかつそういった偵察活動にはそれなりの心得がある、デュオというわけだ。
心得がある、って……こいついったい何者なんだ?
僕よりは年下だろうけど、どうやらただの学生ってわけでもなさそうだし。
個人のプライバシーに関しては、本当に最小限のことしか教え合っていない。
僕でたとえると、戦場ヶ原や八九寺、神原のことは皆にも話したが、僕との関係については黙っている。
戦場ヶ原が僕と付き合っていたり、八九寺はそもそも浮遊霊だったり、ましてや怪異のことなんかは、話さないほうがいいだろう。
デュオもそのへんは心がけているのか、自身の素性や交友関係についてはまったく語っていない。
そこはセイバーや両儀も同じだった。誰か、捜したい人間はいないかと訊いたところ、出てきたのはプリシラの名前だけである。
それに比べたら枢木と真田は素直なもので、ルルーシュ・ランペルージにC.C.、伊達政宗に本田忠勝の名前を教えてくれた。
伊達政宗と本田忠勝というのは……やっぱりというかなんというか、武将らしい。
ルルーシュとC.C.の細かな素性については、さすがの枢木もぼかした風に説明していた。
「これはオレの荷物に入ってたもんだ。文句を言われる筋合いはないぞ」
「ああ、そうですかい。そりゃ、ご提供感謝いたしますですよ。ついでに運転もしたらどうだ?」
「免許は持ってないんだ。悪いな」
デュオが跨るバイク、そのサイドカーに乗っているのは、バイクを提供した両儀だった。
申し出たのは本人。どうやら、彼女も敵のアジトに行きたいらしい。
真田みたいな安直なことは考えていないようだけれど、こっちはこっちで、なにを考えているのかまるで読めない。
ただ単に、一箇所に留まるのが好きじゃないだけなのかもしれない。
もしくは、急に風を感じたくなったとか。
それとも、この近辺をうろついている変態から距離を置いておきたいのだろうか。
そうそう。デュオとセイバーが襲われたという明智光秀……両儀もその被害にあったらしい。
三人が三人ともに感じた印象は、『気色悪い』。真田もこれには否定しなかったし、いったいどんな男なんだろう。
歴史上の明智光秀といえば、そこまで変態的なイメージはないのだが。
羽川あたりだったら、僕が知らないような逸話の一つや二つくらい、知っているのかもしれない。
「かたじけない、デュオ殿。本来なら某が赴かねばならぬところ、恥ずかしながらこのような珍妙な馬の扱いには慣れておらず……」
真田が飛び込んでいったら、下見の意味もなにもないだろう。
それに、自称戦国武将が颯爽とバイクを駆る姿というのもなかなかにシュールである。
「んじゃ、昼までには戻ってくる予定で。よろしく頼むぜ」
「道中、もしプリシラを見かけるようなことがあれば、駅のほうに誘導を頼みます」
「了解。じゃ、ちゃっちゃと行って来るぜ」
再会を前提とした別れは、実に淡白だった。
デュオと両儀を乗せたバイクが、北へ進路を取る。
残された僕たち四人は、手を振ってそれを見送った。
【D-6/駅前/一日目/早朝】
【デュオ・マックスウェル@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:牧師のような黒ずくめの服
[装備]:フェイファー・ツェリザカ(弾数5/5)@現実、15.24mm専用予備弾×93@現実、
BMC RR1200@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式×2、デスサイズのパーツ@新機動戦記ガンダムW、メイド服@けいおん!
[思考]
基本:なるべく殺したくはない。が、死にたくもない。
1:『敵のアジト』に向かい、中を調査。正午までには『D-6・駅』に戻り、詳細を報告。
2:プリシラを見かければ駅に誘導。明智光秀、平沢憂には用心する。
3:デスサイズはどこかにないものか。
[備考]
※参戦時期は一応17話以降で設定。ゼクスを知っているか、正確にどの時期かは後の書き手さんにお任せします。
【両儀式@空の境界】
[状態]:健康、光秀へのわずかな苛立ち
[服装]:私服の紬
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]
1:とりあえずデュオと一緒に敵のアジトまで行く。その後も共に行動にするかは未定。
2:黒桐は見つけておいた方がいいと思う。
3:光秀と荒耶に出会ったら、その時は殺す。
4:首輪は出来るなら外したい。
[補足]
※首輪には、首輪自体の死が視え難くなる細工がしてあるか、もしくは己の魔眼を弱める細工がしてあるかのどちらかと考えています。
※荒耶が生きていることに関しては、それ程気に留めてはいません。
※藤乃は殺し合いには乗っていないと思っています。
【BMC RR1200@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
両儀式に支給された。
リヴァル・カルデモンドの愛車。サイドカー付きのバイク。
◇ ◇ ◇
「僕は西に。【D-5】にある政庁というところを調べてみます」
デュオと両儀が出発してすぐ、枢木が単独行動すると言い出した。
「そりゃまた、なんでそんなところに?」
ちなみに、話し相手になっているのは僕。
なんだか無口キャラみたいな印象が漂っていたが、それは単に、僕が喋るべき場面を省いてきただけのことなのだ。
「調べものがしたいんだ。そこでなら、いろいろと設備も整っているだろうから」
『クルルギドノ!クルルギドノ!』
「そのおもちゃ……いや、ロボット絡みで?」
「そういうこと」
ハロという名の赤い球体が、枢木の周りで元気良く跳ね回っている。
ああ、こういうおもちゃ、僕が小学生くらいのときに流行ったよなぁ。
こっちが喋ると、向こうも喋り返してきてくれたりして。
このハロは、僕が知っているそれより幾分か高性能そうだけど。
「こっちは徒歩でも十分に行ける距離だし、遅くならない内に戻るよ」
「私が護衛に付きましょうか? 明智光秀のこともありますし、単独行動は危険だと思いますが」
「いえ、セイバーさんは阿良々木くんたちについていてください。僕も自衛の手段くらいは持っていますから」
セイバーの申し出をやんわりと断る枢木。その表情には、怯えがない。
表面上は好青年だけれど、こいつもこいつで、なんか隠してそうなんだよなぁ……。
騎士っていうくらいだし、本人が言うとおり、それなりに強いのかもしれない。
……にしても。
「それじゃあ、留守を頼むよ阿良々木くん」
こいつ、本当に忍野に声似てるな。
【D-6/駅前/一日目/早朝】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康、「生きろ」ギアス継続中
[服装]:ナイトオブゼロの服
[装備]:赤ハロ@機動戦士ガンダムOO
[道具]:基本支給品一式、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、バタフライナイフ@現地調達、湿布@現地調達
ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
基本:ゼロレクイエム完遂の為、ルルーシュ、C.C.と共に生還する(特にルルーシュを優先)
1:政庁に向かい、端末を見つけてハロの中に収められている情報を閲覧する。正午までには『D-6・駅』に戻る。
2:プリシラを見かければ駅に誘導。明智光秀、平沢憂には用心する。
3:ルルーシュ、C.C.、名簿外参加者の中にいるかもしれないゼロレクイエムの計画を知る人間を捜して合流。
4:ルルーシュに危険が及ぶ可能性のある要素は排除する。
5:確実に生きて帰る為の方法、首輪を外す方法を探す。
[備考]
※ラウンズ撃破以降〜最終決戦前の時期から参戦。
※主催がある程度の不思議な力を持っている可能性は認めていますが、死者蘇生が可能という点は全く信じていません。
※少なくとも、『真田幸村』が戦国時代の武将の名前であることは知っていますが、幸村が本物の戦国武将だとは思っていません。
※もしかしたら『敵のアジト』が『黒の騎士団のアジト』ではないかと少し疑っています。
◇ ◇ ◇
二人が北へ、一人が西へと向かい――残された僕たち三人は、駅で待機することになった。
全員がバラバラに動いていては、チームを結成した意味もない。
チームと言えるほどのまとまりは、やっぱりないような気もするけれど……それでも、一応。
この【D-6】の駅を集合場所として、僕たちはまた会う約束をしたのだった。
「運行休止、か。いったいいつまで続くのかな……」
改札口の前で、僕はベンチに座りながら電光掲示板を眺る。
駅を集合場所に定めたのは、人の出入りが激しいと予想できるからだ。
これだけ広い会場内、公共の交通機関を利用する者も多いだろう。
それが捜し人であれ、危険人物であれ、ここで待っていれば必然、人とは出会うことになる。
ただし、こちらから電車に乗ることはしないようにと、デュオに忠告されていた。
なぜかといえば、目の前の電光掲示板にも映し出されている告知、運行休止のお知らせが原因。
電車の利用者が多いというとは、当然、そこに付け込む輩も出てくるわけで。
要するに、デュオは運行休止の原因が人身事故にあると推測したのだ。
駅のホームに誰か落ちたのか、走行中の列車にトマホークでも投げ込んだのか、線路に岩でも置いたのか、
はたまた力技でもって線路自体を破壊してしまったのか――はは、まさか。ないない、ありえない。
人為的に事故を起こすというのは、案外容易い。それゆえに、不特定多数の乗客の命を奪うことも容易なのだ。
便利だからこそ危険な、ある種トラップとも言える電車には、なるべく頼らないほうがいいと。
僕はそんな助言を受けたのだった。
「まあ、今すぐどこかに行きたいってわけでもないしなぁ」
流されるがままに六人の内の一人として数えられてしまった僕だけど、本当にこれでよかったのかどうか、正直不安だった。
戦場ヶ原たちや憂ちゃんのお姉さんを捜すにしても、あてがないのは確か。
バトルロワイアルを否定しきり、会場から脱出するにしても、それだってあてはない。
やるべきことは、安全の確保……それだけ、なんだよなぁ。正直なところ。
問題の解決に至るまでの道筋が見えない。
これは怪異絡みの問題じゃないから、忍野の助けも借りられない。
そもそもここに、あの軽率なアロハはいないのだ。
どうするよ、僕。
せめて。
せめて八九寺のような、気軽に言葉を交し合える女の子が傍にいればよかったのに。
なにを考えてるんだ僕は。
今はそんなことしてる場合じゃないだろう。
「コヨミ」
と、不意に僕を下の名前で呼ぶ女声が。
僕を暦と呼ぶ女の子なんて、妹たちや千石くらいだ。それにしたって『お兄ちゃん』という敬称がつく。
が、この場にあの三人がいるはずもない。
僕の名前を呼んだのは、両儀に刀を突きつけたのが印象的な金髪の女性――セイバーだった。
「ああ、えっと……セイバー、でいいのかな。僕になにか用?」
「用というほどのものはありません。少し尋ねたいことがありまして」
「なに?」
「シロウ……衛宮士郎という男性について、なにか知っていることはありませんか?」
衛宮士郎……?
初めて聞く名前だった。
六人が話し合いをした場でも、出てこなかった名前だ。
それが今になって、どうしてセイバーの口から飛び出すのだろう。
「いや……知らないな。僕がここに来てから出会ったのは、平沢憂って子だけだし」
「あなたに襲い掛かったという……その少女は、放置しておいて大丈夫なのですか?」
「どうだろう。一応、お灸を据えてはおいたし、武器も没収しておいたから滅多なことはないと思うけど」
憂ちゃんのことに関しては、他の五人にも用心するよう伝えてある。
対策はしておいたつもりだけれど、さすがに黙っているわけにはいかないだろうし。
彼女のお姉さんも、早めに見つけてあげたいところだ。
「で、士郎だっけ? どこの誰かっていうのは、訊かないほうがいいのかな?」
「……いえ、知らないのであれば結構です。私事ですので、気にしないでください」
セイバーはそう言うと、僕の隣の席に腰を落ち着かせた。
護衛のつもりなのだろう。電車に乗ってここを訪れた人間が危険人物であった場合、対処が遅れては事だから。
専門ってわけじゃないけれど、僕に与えられた役割は交渉役ってところか。
それにしたって、電車が復旧しない限りはこうやってぼけーっとしているくらいしかやることがないのだが。
ぼけー……っと。
「……」
「……」
セイバーと、二人並んで、ぼけーっと。
「……」
「……」
なんだろう、この沈黙は。
こいつとは会話が弾む気がしない。
おもしろおかしい話題が思いつかない。
僕ともあろうものが。
…………え、なに。電車が動き出すまで、ずっとこの空気ですか?
【D-6/駅構内/一日目/早朝】
【阿良々木暦@化物語】
[状態]:疲労(小)
[服装]:直江津高校男子制服
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ギー太@けいおん!、エトペン@咲-Saki-、ゲコ太のストラップ@とある魔術の禁書目録、
スコップ@現実(会場調達) 竹箒@現実(会場調達) 、トラウィスカルパンテクウトリの槍@とある魔術の禁書目録、
スクール水着@化物語
[思考] 誰も殺させないし殺さないでゲームから脱出。
基本:知り合いと合流、保護する。
1:駅で待機。デュオたちの帰りを待つ。誰かが来るようなら、共に行動するよう呼びかける。
2:戦場ヶ原、八九寺、神原と合流したい。他にも知り合いがいるならそれも探す。
3:憂の姉を見つけたら、憂の下に連れて行く。
4:……死んだあの子の言っていた「家族」も出来れば助けてあげたい。
5:支給品をそれぞれ持ち主(もしくはその関係者)に会えれば渡す。
[備考]
※アニメ最終回(12話)終了後よりの参戦です。
※回復力は制限されていませんが、時間経過により低下します。
【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[服装]:普段着(白のシャツに青いロングスカート)
[装備]:七天七刀@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(未確認)
[思考]
基本:人々を守る。
1:上記の『望み』を実行する傍ら、自分のなすべきことを一から考え直す。
2:駅を訪れる人物を見定める。危険人物が乗り込んでくるようなら、率先して対処。
3:できればプリシラと合流したい。
4:士朗ともう一度話がしたい。
[備考]
※参戦時期はアニメ20話途中、士郎との喧嘩直後から。
◇ ◇ ◇
ちなみに、真田は駅の入り口で門番を務めている。
公共機関に門番という言葉を用いるのはなにか違和感があるが、間違ってはいないと思う。
悪漢が攻めてくるようなら即成敗、戦う意思がないなら中に通すよう、言ってはあるけれど……。
正直、真田のコミュニケーション能力がどれほどのものかわからない僕は、不安で仕方がなかった。
……セイバーと真田の立ち位置、代えてもらったほうがよかっただろうか。
でもなんか、こいつはこいつで疲れそうだしなぁ……。
ああ、八九寺みたいに抱きついたり揉みしだいたりしても大事にならない女の子とか、来ないかなぁ。
【D-6/駅の入り口/一日目/早朝】
【真田幸村@戦国BASARA】
[状態]:健康、右手に軽い打撲(治療済み)
[服装]:普段通りの格好(六文銭の家紋が入った赤いライダースジャケット、具足、赤いハチマキ、首に六文銭)
[装備]:物干し竿(ステンレス製)×2@現実
[道具]:基本支給品一式(救急セットの包帯を少量消費)、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]
基本:『ばとるろわいある』なるもの、某は承服できぬ!
1:武田信玄のことは何があろうと守る。
2:『敵のあじと』に乗り込む……ためにも、今は我慢。デュオと式、スザクの帰りを待つ。
2:怪我をしている伊達政宗、名簿に記載されていない参加者の中にいるかもしれない知り合い、 ルルーシュとC.C.を捜す。
2:主催を倒し、人質を救い出す。
2:これは戦ではないので、生きる為の自衛はするが、自分から参加者に戦いを挑むことはしない。
2:争いを望まない者は守る。
2:織田信長と明智光秀は倒す。
2:あらあら殿とセイバー殿の御身は、某が守り通す!
2:『えき』に近づく輩は、この真田幸村が成敗いたす!
※武田信玄が最優先であること以外、本人には優先順位をつけるという発想がありません。矛盾もありますが気づいていません。
[備考]
※長篠の戦い後〜武田信玄が明智光秀に討たれる前の時期から参戦。
※MAPに載っている知らない施設のうち、スザクにわかる施設に関しては教えてもらいました。
※スザクとルルーシュのことを、自分と武田信玄のような主従関係だと勝手に思い込んでいます
813 名前: ◆tILxARueaU[sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:48:18 ID:qNMma6Bs
投下終了しました。
問題なければどなたか代理投下のほうお願いします。
以上を持って代理投下終了です。
投下乙ー。
対主催がこれだけ集まったら分散するしかあるまい、って感じの話。
だけどそれぞれのキャラがちゃんと個性を見せて読んでいて飽きることのない話だった。
新コンビのデュオ&式やトリオの幸村&セイバー&ありゃりゃ木さんのこれからの関係に期待
……しかしサワラビさんは最後どさくさにまぎれて何言ってんだwww
知らないぞ、彼女がもうすぐ来るかも知れんというのにw
おい最萌スレでアニロワの話題止めろって言っただろマジで
侵攻してくんじゃねえよ
やれやれ
もしも次に同じような
【大規模規制 】 が発生した場合には
3ちゃんねる・・という掲示板が在ります。
________
Google 検索 | 3ちゃんねる |
. ∧__,,∧  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ・ω・)
. /ヽ○==○ 【大規模規制 解除】 【ぬるぽ】
/ ||_ | 【大規模規制 解除】 【 ヤレヤレ 】
し' ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_))
>こよみパーティー
投下乙!
集合情報交換即分散!これぞロワの日常風景の一つ!
真田門番かー、絶対トラブル起きるぞコレー!www
>>16 火種を持ち込むな、て意味じゃ駄目だろ
>>17 そう意味か
まあ俺が持ち込んでは無いんだけど、最近多いからさ
おまえらだって唯豚みたいな身障参加させてんじゃん
スレ違い。騙りスレに行け。
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 16:06:00 ID:uwyWwNTj
投下乙です
確かにこの面々はまとまりが無いというか誰もまとめ役になれないなw
組もうと提案したスザクすら叩けば埃が出る立場だしw
問題起こる前に分散出来てよかった……のかな?
さてデュオは式にもメイド服着てくれと言うのか。
投下乙です
対主催が固まり、分散…
さて、それぞれの往く道はどうなることやら
今からでも遅くないから門番をセイバーに変わってもらえwww
>>23 式のメイド服、だと…
期待せざるおえない
投下乙です
最終目的は同じだが微妙な考え方の違いもあってみんながみんなまとまることはないんだな
やはりリーダー役は重要だな
幸村は悪意がない分暴走したら大変そうだ、阿良々木君まだセイバーの方が相手としてはマシだ
それにしても「はたまた力技でもって線路自体を破壊してしまったのか――はは、まさか。ないない、ありえない。」いや実際ありえたんだけどねー
らぎ子さんの発想は未だ現実的かつ気楽だなぁ…
あんたのせいで憂ちゃん着々とカウント増やしているというのに…
今回は一般常識層が上手く幸村をコントロールしてるな
ホント舌戦は数ですよねー
しかし一人で門番とか嫌な予感しかしないw
キャスター、黒桐幹也、田井中律
投下します。
しゅるり。
薄暗い礼拝堂に衣擦れの音が響く。
ぼんやりとした意識の中であたしはそれを感じた。
自分の着ている制服が脱がされていく。
ふわふわする。ぐらぐらする。くるくる廻る。
よく分からない。
頭が痛い。でもその痛みすらどこか鈍い。
「―――可愛いわ」
熱っぽさを含んだ声が聞こえる。女の人の声だ。
ぱさり。
あ。
また少し寒くなる。
……というか、下着を脱がされた。
生まれたままの姿になった自分に注がれる視線。
あまり肉付きの良くない裸体。
恥ずかしいという気持ちすら他人事のようだった。
ひやりとした冷たい手が体を撫でるのを感じる。
一糸纏わぬ体に這う手は優しくゆっくりと胸の合間をなぞる。
……はあ。
澱む瞳でそれを眺める。
女の人はあたしが汗ばんでいるのに気づいたようだ。
濡らしたタオルを持ってきて体を拭いていく。
―――なんか、むかし、そんな話を読んだことがあるような気がする。
やがて体は拭き終わった。
次にその人はきれいな小瓶を取り出した。
そこから何滴か水を手のひらに落としてから揉み合わせてのばす。
そのあと、あたしの体中に染み込ませる様にして塗っていく。
くすぐったくて、息がちょとだけ荒くなる。
「―――は、あ……」
―――そうだ。思い出した。
あれは『注文の多い料理店』だったっけ。
えーっと、確か……
色々きれいにされたあとで、猫に食べられる話?
そんな感じだ。
……じゃあ、あたし、食べられちゃうのか。
嫌だな。
死にたくない。
まだ、したいこといっぱいあるのに。
みんなともっと軽音部で遊びたかった。
武道館に行くとか、ちょっとだけ本気だったのに。
恋とか―――してみたかった。
澪にまた、会いたい。
「―――ふふふっ」
でも、食べられちゃう。
全部食べられちゃうのか。
そんな想いも全部。
でも、さ。
どうせ食べるって言うんなら。
―――澪のほうが、柔らかくてよっぽどおいしそうだ。
何て。
そんな風に、あたしは思う。
☆ ☆ ☆
「はああぁ……可愛いわ」
如何にも魔術師然とした格好をした女、キャスター。
その真名は「メディア」。裏切りの魔女と呼ばれた反英霊。
そんな彼女が……フードの下から僅かに見える目を輝かせていた。
偶然にも先ほど拾った少女―――田井中律を着飾らせて悦に浸っているのだ。
少女の格好は黒を基調にフリルやチョーカーを付けた、所謂ゴシックロリータ調の服装だった。
―――バトルロワイアル真っ只中。何故、こんな状況になっているのか。
それを説明する為には少し時間を巻き戻す必要があるようだった。
☆ ☆ ☆
一時間ほど前。
「ガイドブックで見つけたときは真逆と思ったけれど……」
少女を拾った後にまた飛行魔術を使い、『神様に祈る場所』へと降り立ったキャスターは辺りを見回しながら呟いた。
「―――どうみても、あの場所に違いないわね」
たどり着いたそこは自分も知っている場所。冬木の聖杯戦争が監督役たる言峰綺礼の本拠地。
―――丘の上に立つ教会。
元より冬木のこの地は霊脈の通る一級品の霊地である。
もしもそれがこの場にも存在するというのなら――そこもまあ霊地である可能性は低くは無い。
そう判断してここへとやってきた。
結果は十分以上だった。
冬木の教会に劣らぬだけの霊脈がここに流れ込んでいるのを感じる。
『神殿』を作製するのにまさに相応しい場所だといえた。
「黒桐くん」
「はい、なんでしょうか。キャスターさん」
傍らで少女を抱えて立っていた青年。黒桐幹也に声をかける。
「その娘の様子は私が見ているから、少しこの建物とその周辺になにか隠されていないか調べてくれないかしら」
この教会についてキャスターが知っていることはさほど多くない。
精々が霊地であり、監督役がいる、という程度の情報でしかない。
しかもここにある教会は冬木のものと変わらないという保障すらないのだ。
自分が『陣地作成』をしている間、探し物に優れている幹也に調査させておく、というのは真っ当な判断だった。
「分かりました。その子のことよろしくお願いしますね」
「――ええ。一応、竜牙兵もつけておくけれど気を付けるのよ」
彼にはまだ役目はある。こんなところで死なれては困るのだから――。
そう考えながら竜牙兵を召喚する。
竜種の牙を用いて召喚するこの骸骨兵は一種のパペットゴーレムである。
ある程度までは複雑な命令もこなし、刃の付いた武器はクリティカルしない。使い勝手のいい存在だ。
モンスターレベルでいうならば5はある。駆け出しの冒険者風情なら難なく制してしまえるだろう。
しかし今は『制限』がある。
召還主からあまり距離を離しては制御することは出来なくなり、本来備えている高い防護点、回避力もいささか弱体化している。
数を多く召還することも出来ない。
だが、それでも素人に遅れをとるほどではないだろう。護衛には十分だろうと判断した。
人のよさそうな顔をして頷きを返し周りを調べ始めた幹也を置いて、キャスターは教会内部へと入っていく。
魔力に導かれてたどり着いた地下の礼拝堂。
そこには十分以上の霊脈が感じられた。
さあ、ここに神殿を作ろう。
適当な場所へと律を降ろしてキャスターはそう考えたが―――
「―――あら?」
そう、またしても『制限』である。
本来であれば陣地作成にかかる時間は最短時間。
それほど多くの時間がかかることは無い。それが作成に適した霊地であれば尚更のことだ。
しかし、スキルを使用する段階へと至り気付いた制限はその所要時間が長くなっているということ。
神殿の完成までには恐らく3、4時間程度は必要とするようだ。
しかしその間儀式を続けなければいけない、というものでもないらしい。
必要なのは最初の操作程度。後は魔力を注ぎ続けるだけでいい。
……まあ、つまり神殿の完成までキャスターは出歩くこともできず、さりとて特別しなければいけないこともなく。
ぶっちゃけると時間を持て余してしまったわけなのだった。
「―――どうしようかしら」
そう呟いたキャスターの目に寝かせておいた律の姿が映る。
―――そういえば、ハズレと思っていたけれどこんな支給品があった。
神殿が完成してからゆっくりと楽しむつもりだったけれど……もう使ってしまってもいいだろう。
デイパックから"その"支給品を取り出す。
それと同時にぽろりと付属していた説明書が落ちる。
ひらひらと舞い落ちるその紙には「さわ子のコスプレセット」と書かれていた―――。
☆ ☆ ☆
そして冒頭へと戻る。
というわけで遊びながらも続けていた魔力注入も一時間。
この教会も工房クラスの拠点にまですることができた。
しかしそれでも神殿の完成までは後数時間は必要だ。
―――その間に黒桐くんを『死者の眠る場所』へ探索に行かせてもいいかもしれない。
幸いさほど遠くはないし、いつここが禁止エリアになるか分からない。
できれば保険は用意しておきたいところだ。十分検討に値するだろう。
霊地であるかどうかも簡単な使い魔でもつければ確認できる。
ついでに適当な参加者に声をかけてここに誘い込んでくれれば一石二鳥。
使えそうなら洗脳して手駒を増やしてもいい。手に余りそうな相手なら殺せばいい。
陣地内で自分が負けることなどないに等しいのだから。
しかしもし殺されてしまったら?
―――惜しいには惜しいけれどどうせいつかは殺す駒。
デメリットよりもメリットのほうが大きそうだ。
ここの探索を終えて報告を聞いたらそう命じることにしよう。
まあ、自分がしばらくやることがないのには変わりないのだけれど―――
今しばらくはこの少女で楽しめそうだから時間を潰せそうだから、それはいいか。
いまだ呆けたままの少女の顔を撫でながらそんなことをキャスターは思う。
コスプレ服の大半は品のないありきたりな服装ばかりだったが、一部シックなキャスター好みのものも混じっていた。
―――ああ、自分も十年は若い姿で召喚されれば。そうすればこんな服装も似合っていただろうに。
それを考えると少し残念になる。
「―――まあ、でも。今はこの子がいるし」
気持ちを切り替えて目の前の少女を愛でることにする。
セイバーや遠坂の小娘もいいけれど――この子もまた違うタイプでいい。
―――持って帰っちゃ駄目かしら。
そんなことをつい考えてしまう。
いやいやいや。そもそもここは殺し合いの場だ。この子もいずれは切る札。
楽しんでも感情移入なんてするものじゃない。それは分かっている。
大体持って帰ったって宗一郎様になんて言ったら―――
―――いや、そうだ。
養子にする、なんてどうだろう。そう、私と宗一郎様の子供―――!
英霊である自分に子供を宿す機能が具わっているのかなんてキャスターたる自分にも良く分からない領域の話だ。
それぐらいなら養子を取ればいい。そしてどうせ養子にするなら可愛い子がいい。
自分の娘を着飾る母親なんて普通だから毎日のように可愛がれる。
洗脳すればこの子が反対することもないだろうし、宗一郎様も深く反対したりはしないだろう、きっと。
―――悪くない。
それに優勝した後で死者の蘇生と元の世界への帰還が賞金で可能とのことではなかったか。
元々生還以外に興味はなかったけれど……どうせ余るなら可愛い子を持って帰ってもいいだろう。
いい考えに思わず耳もピコピコ動く。
もっとも別に可愛い子はこの子だけじゃないかもしれないから別にこだわる必要はないし、
殺すことは殺すのだから特別扱いをするってわけではないのだけれど。
優勝、帰還が最優先。余裕があればその先で、の話なのだ。
そこまで考えてからそっと少女のほうを見る。
薬の影響も少し小康状態にあるのか、静かに眠っていた。
「―――やっぱりカチューシャしてないほうが可愛いわね。私、オデコ属性ないし」
キャスターは前髪をさらりと撫でながらそんなことを呟いた。
【C-5/神様に祈る場所/一日目/早朝】
【キャスター@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[服装]:魔女のローブ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2個(確認済み) 、バトルロワイアル観光ガイド 、さわ子のコスプレセット@けいおん!、下着とシャツと濡れた制服
[思考]
基本:優勝し、葛木宗一郎の元へ生還する
0:可愛い子……
1:奸計、策謀を尽くし、優勝を最優先に行動する
2:『神殿』を完成させ、拠点とする。
3:黒桐幹也が探索を終えたら『死者の眠る場所』へと探索に行かせる。
4:他の参加者と出会ったら余裕があれば洗脳。なければ殺す。
5:会場に掛けられた魔術を解き明かす
6:相性の悪い他サーヴァント(セイバー、アーチャー、ライダー、バーサーカー)との直接戦闘は極力避ける。
7:優勝したら可愛い子をつれて帰ってもいいかもしれない……。
[備考]
※18話「決戦」より参戦。
【さわ子のコスプレセット@けいおん!】
桜が丘高校の音楽教師で吹奏楽部兼軽音楽部の顧問山中さわ子の所有するコスプレセット。
作中に登場した様々なコスプレ用の服が靴下や下着、香水やら髪留めまで込みで揃っている。
しかし何故かメイド服が一着欠けている。
☆ ☆ ☆
ふわふわ。
くらくら。
あたしの世界がゆれている。
耳から聞こえる言葉も、眼から見える光景も。
現実感がない。
かわいい。
そう聞こえた。
前髪を下ろしたほうがいい。
そんなことも聞こえた。
―――なんだか、うれしい。
あたしだって、女の子だし。
かわいい、かぁ。
澪なら、なんていうかなあ。
前髪を下ろした君の姿を見てみたい。
なんて、ね。
あはは。
うん。
それじゃ。
おやすみなさい。
【田井中律@けいおん!】
[状態]:情緒不安定、幻覚症状 、睡眠中
[服装]:ゴシックロリータ服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(懐中電灯以外)、九字兼定@空の境界、その他不明0〜2個
[思考]
基本:澪に会いたい。
1:???
※二年生の文化祭演奏・アンコール途中から参戦。
※レイの名前は知りません。
※ブラッドチップ服用中。
※ゴシックロリータ服はけいおん!第6話「学園祭!」の際にライブで着ていた服です(ただしカチューシャは外してある)
投下終了です。
問題点などあれば指摘お願いします。
投下乙です。
内容は問題ないと思うけど、黒桐幹也の状態表がないかな。
「キャスターさんはちゃんとあの子のこと見ててくれてるかな……」
そんなことを言いながらも探索を続ける実直そうな青年、黒桐幹也。
まさか見てはいるけれど可愛がってばかりで体には特に気を配っていないだなんて考えもしていない。
かしゃかしゃと音を響かせながら着いてくるのは一体の竜牙兵。
与えられている命令は『黒桐幹也を守れ』。
こちらから積極的に戦闘を仕掛けることはないが、敵に攻撃されれば反撃する。そう設定されていた。
そのため特に危険が迫っていない現在は大人しく後ろを着いてきているのだった。
外にはあまり変わったものは見つけられなかったため、今は地上部分の教会礼拝堂を調べている最中。
窓の外が明るくなってきていて夜から朝へと移り変わるのを感じる。
―――まあ、徹夜するのは結構慣れている。幹也はそんなことを考えながら祭壇の裏を覗き……
「―――ん?」
奇妙なものを発見する。
「―――これは、どうしたものかな」
そう呟いてみるが答えは出ている。キャスターに報告するしかないということを。
だってこれは自分が判断できるものじゃない、明らかに魔術的なものだ。
―――人の血のように赤い色で書かれた魔法陣なんて。
【黒桐幹也@空の境界】
[状態]:疲労(小)、キャスターの洗脳下
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ブラッドチップ・2ヶ@空の境界
[思考]
以下の思考はキャスターの洗脳によるもの。
基本:キャスターに協力する。
1:キャスターに探索の結果を報告する。
2:少女(田井中律)を介抱する。
※参戦時期は第三章「痛覚残留」終了後です。
※竜牙兵が守護についています。
与えられた命令は『黒桐幹也を守れ』。こちらから攻撃はしません。
強さは本来ならば素人が敵う相手ではないですが、弱体化しているためどこまで強いかは不明です。
また、同時に出せる数やキャスターから離れることの出来る距離も制限されています。
※魔法陣や探索成果の詳細は後の書き手にお任せします。
☆ ☆ ☆
以上です。お騒がせして申し訳ありません。
投下乙です
キャスターさんすげー楽しそうだwwwww
りっちゃん、頑張って生きろ
乙でした
しかしこのキャスター、ノリノリである
りっちゃんはキャスターの母性本能全力で擽って少しでも守ってもらえる確率上げたらいいと思うよww
投下乙です
キャスターさん充実しているな、良き夫に恵まれて今度は可愛い養子まで・・・
それにしても律も幻覚症状とはいえなんか危ないな
>―――澪のほうが、柔らかくてよっぽどおいしそうだ。
Medeia Girlsの結成か・・・!
投下乙!
このキャスターさんノリノリだー!しかもかなり物騒だwww
コクトーさんのジゴロ属性も旦那さんいるキャスターさんには効かないかw
そして律、地味にやべぇwww
48 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 13:11:49 ID:AVhKPm4n
投下乙
キャス子さんばねえw 何かフラグが立ってるぞw
律は律で変なフラグ立ってるしw
もし澪と再会する機会が出来たらどうなるんだ?
殺し合いという状況も考えずキャスターさんはけしからんなあ
まったくけしからん、もっとやれw
キャス子さんマジパネぇっスwwww
投下乙。
モンスターレベル5とか言うなwwwww
しかしなんだかんだ言って強いなぁ
52 :
代理:2009/11/15(日) 21:47:48 ID:/xdmLvG6
福地美穂子、ライダー投下します
線路の上をひた走る影がある。
人の身とは思えぬ速度は、その者の特異な存在故であろう。
両の足で線路を蹴る、その動作自体は何処でも見られるありふれたものだ。
しかし早い。単純に脚力を誇るというわけでもない。
強固な線路を蹴り出す度に力強い足が人ならぬ加速を生み出す、わけではないのだ。
俯瞰的な視点で見るとよりはっきりする。
速度に緩急が無いのだ。
まるで車輪を用いてるかのように一定の速度で、しかし確実に前へと進む。
二本の足にてこれを行う不自然さが、見る者に奇怪な印象を与える。
地にねばりつくように、這いずるように、あるいは滑るように。
落ち着かぬ心を振り払うように走り続けたライダーは、線路の半ばで足を止める。
振り返れば駅は遠く、ここまで来れば安全であろうと思える場所まで辿り着いていた。
戦闘の疲労もあり、一度ここで一休みするのも悪くないと、人目につきずらい場所を選び腰を降ろす。
『たかが人間相手に何てこずってるのよ!』
不意に声が聞こえた気がする。
思わずびくっと背筋を伸ばし、周囲をきょろきょろと見渡す。
当然、居るはずもない相手である。
『まったく、だから貴女はグズなのよ』
またも聞こえた声に驚き振り返る。
やはり、誰も居なかった。
頭を振って意識をはっきりさせた後、怪我をした右腕を見下ろす。
人間の勇者と、狩りではなく戦いを行ったのは、随分と久しぶりである。
そのせいかと苦笑しつつ背もたれ代わりの壁によりかかる。
ライダーは遙かな昔、何人もの人間の勇者達を屠ってきた。
その後は、決まって二人の姉に何やかやと言われたものである。
そもそも二人の姉目当てに来た連中を、ライダーが代わりに撃退していたわけであるから文句を言われる筋合いなど無いと思うのだが、素直に罵られるがまま頭を垂れていた。
ロクでもない思い出だが、それでも、笑みが零れるのは何故であろう。
ライダーは聖杯戦争に思いを馳せる。
セイバー、アーチャー、バーサーカー、キャスターがこの地に来ているらしい。
残るはランサーとアサシン。たった二人であるが、二人のみであるのなら他のマスターを殺しつくすのも難しくはあるまい。
ただ、そこで真のマスターの存在に気付けるかどうかは別だ。
シンジはあの性格だ。ライダーが居ないにも関わらず、無駄に目立つ行動をしてさっさと殺されている事だろう。
となれば後は……と考えると少し愉快な気分になれる。
令呪の有無に関わらず、あの子は、何というか味方をしてやりたくなる。
上手くここで生き残れれば残るサーバントは二人。
しかもライダーのマスターを殺したと油断しきっている相手だ、奇襲の得意なライダーにとってこの上無い良い状況である。
今の所魔力の充填はかなり良い回り方をしている。
そろそろ結界を敷いて、大規模な魔力吸収を試みてもいいかもしれない。
もしさっき見逃した少女が結界に巻き込まれるような事になれば間違いなく死ぬだろう。
それもまた運命、結界から逃がれる運があれば生き残る事もあるだろうし、正直、どちらでも良かった。
ッザー
どうも調子がおかしい。
短期間に血を吸いすぎて酔いでもしたか? いや、それほど急なペースでもない。
あのC.C.という少女の血に妙なものでも混ざっていたのかもしれない。
少し控えるべきか。いや、さほど実害もないし、何より全てを殺し尽くさねば真のマスターの元へは戻れないのだ、ならば仕方無いだろう。
ああ、やはりC.C.も、あの少女も殺しておくべきだった。
今から戻って殺そうか。全員殺す事が条件であるのだから仕方が無い。
笑いがこみ上げる。
後々がどうのと考える必要もなく、出会う者全てを殺し、血を吸わなければならないのだ。
人差し指で、とんとんとこめかみを軽く叩く。
やはり調子がよろしくないらしい。
偶々真逆の発想があったとしても、先に下した自身の判断を覆す必要はないはず。
どちらが生きようと死のうと、どうでもいいはずなのだから。
恐れるような事態なぞ、どちらであろうと起こるはずはないのだから。
ライダー自身も気付かぬ無意識下に恐れている事が、あるかどうかなど当然ライダーに判断出来るはずもなく。
ならば恐れ故回避した行動があるかどうかも判断出来ぬ道理であった。
◇
福路美穂子が目を覚ましたのは、意識を失ってどれ程の時が経ってからであろうか。
緊張に満ちた時間であると認識してた故、ほんの僅かなきっかけですら目を覚ましてしまったのだろうか。
幸か不幸か、そのまま致命的な事態に陥る事も無く、悪意を持つ何者かに発見される事もなく、美穂子は目覚めた意識と共にその身を起こす。
彼女は責任感のある女性だ。
記憶にある出来事を、無かった事として無視するような真似はしない。
ふらつく体を支えられるよう両膝に力を込め、同時に上体が崩折れぬよう手を膝につきながら、ゆっくり、ゆっくりと歩き出す。
視線が低いせいか視界は常より狭い。
それでも数歩歩くだけで、それを見つけられた。
ホームの灯火に照らされて、土気色の肌を晒し倒れる男。
腹部は、そこだけ墨汁をぶちまけたような黒に染まっている。
「片倉さん!」
慌てて駆け寄ろうとして足がもつれ、小十郎の遺体の側に倒れ掛かる。
額にぬるっとした感触、ライダーも流石に床に落ちた血液までは嘗めとっていかなかったらしい。
顔を上げると、すぐ側に、見た事も無い程生気を失った人のカタチがあった。
「っ!」
思わず息を呑むのも無理はなかろう。
震え怯え後ずさりし、悲鳴を上げて逃げ去るか、腰を抜かして動けなくなるのが美穂子の世界でのこの年の子の反応だ。
しかし、美穂子はきっと小十郎を見据え、既に流れ出るものもない腹部の傷にバッグから取り出した包帯を巻く。
小十郎の大柄な体から上衣を脱がし、それこそ父のものしか見た事が無い男性の裸体を、苦労しながら包帯で綺麗にくるむ。
それが終わると今度は胸に手を当て、何度も呼びかける。
人が来るかも、またあの怖い女性に襲われるかも、そんな危惧は歯牙にもかけず、何度も何度も小十郎の名を呼ぶ。
そして、左腕の手首を取り、心臓に耳を当て、口元から出る吐息が無い事を確認した時、彼が、死んだ事を理解した。
片方開いた目は興奮の為か充血し、これだけの作業をこなした程度で荒い息を漏らす。
温和で穏やかな表情は失われ、歯を食いしばり、頬の引きつった状態のまま顔が固定されてしまっている。
同じ学校の者が彼女を見ても、一目ではそれと気付けぬだろう形相をしているが、美穂子はそんな自身にも気付いていなかった。
次に美穂子は小十郎を置いたままホーム内を駆け回る。
書かれている壁の表示に目を配り、焦りからかやたら狭くなっている視界にも関わらず目的の物を見つける。
AEDと書かれた緊急時用の装備を手に取ると、蓋を開いて慎重に、音声ガイダンスに従って処置を行う。
機械音声が心室細動ではない為、AEDは使用しないよう忠告すると、がっくりとその場に膝を落とした。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
美穂子の吐く息の音だけがホームに木霊する。
「はぁっ……い、移動、しないと……他の、駅を使う人が……困りますし」
小十郎の上から両脇に手をかけ、ずりずりと小十郎を駅長室まで引っ張っていく。
ベッドのようなものを期待したのだが生憎そんな気の利いたものはなく、仕方なく室内の机を移動し、スペースを作り床に寝かせる。
小十郎の体躯を引きずるのは美穂子には随分な労苦であり、筋肉の痺れた腕を撫でて痛みを紛らわせる。
殊更に大きな動作で振り返り、駅長室の片隅にある掃除用具入れであるロッカーを開く。
モップとバケツを持ち、途中見かけた水道で水を足し、美穂子は飛び散った血潮の掃除を始めた。
ホームの天井から降り注ぐ青白い輝きに照らし出された彼女は、小十郎の遺体をいじっていたせいか、制服の所々に濃い染みを作ってしまっている。
櫛が何の抵抗も無く吸い込まれそうなふんわりとした髪も、赤黒くメッシュに染め上げられている。
美穂子は何度も何度も言い聞かせる。
自分がやらなきゃ、と。
元々誰かに仕事を任せるのは苦手なのだ。
名門風越のキャプテンをやっていたが、こういった性質はリーダーに相応しいとは言い難いだろう。
かつて遭遇したことの無い事件の連続に、美穂子が動揺していないわけでは無論ない。
現にこうしてモップを操る腕も足も小刻みに震えたままだ。
小十郎の遺体を治療していた時はもっとひどかった。
一工程ごとに、小十郎の体に触れる度に、ありったけの勇気を振り絞るための時間が必要であった。
気の遠くなるようなそんな作業を、しかし美穂子は最後までやりとげ、汚れを全て拭き取った後で駅長室に戻る。
途中、打ち捨てられた六本の刀を見つけ、これは小十郎にとって大切な物であったと全てを拾い集めた。
美穂子は両手で抱えるようにして刀を持ちながら、じっと小十郎を見下ろす。
この刀をご遺族に、小十郎が心から大切に思っていた主君という方に届け、亡くなった事を伝えなければ。
次のやるべき事ははっきりしているのに、そこで、決して止まる事の無かった美穂子の動きが静止した。
刀を胸に抱き締めながら、泣き虫であったはずの彼女は、ようやく涙を溢す。
小十郎の真摯で立派な態度、初対面でも、美穂子のような子供相手でも礼儀を尽くす、そんなしっかりした人間であったと美穂子は小十郎を捉えていた。
壮健な肉体と全身からあふれ出す覇気は、これからもっともっとたくさんの事を成し遂げられる、そんな気概を感じられた。
そんな彼が失われた事が悲しくてならなかった。
彼の家族も小十郎を誇りに思っていただろう、文句無くそう思えるような素晴らしい人間。
そんな彼が道半ばにして倒れる無念を考えると悲しくて仕方が無かった。
大切に思っていた主君を何としても守らねばと悲壮な表情を浮かべていた。
そんな彼が主君と出会う事すら出来ず命を落とした事が悲しくてたまらなかった。
この時福路美穂子は全てを忘れ、ただひたすらに、小十郎の死を悼んでいた。
何かを生み出す悲しみではない。
ただ悲しむためだけの悲しみ。恨む事よりも、恐れる事よりも、自責に囚われる事よりも、何よりも先に美穂子は悲しんでいた。
自分を後回しにし、他人の考える事を、自身が払う労力と天秤にかける事すらせず気にかける、それが福路美穂子のあり方であった。
だからこそ今はまだ、この戦場の狂気を目の当たりにしたにも関わらず、恐怖に怯え竦むような事も無かったのだろう。
【F-3/駅付近線路沿い/一日目/早朝】
【ライダー@Fate/stay night】
[状態]:魔力充実++ 右腕に深い刺し傷(応急処置済み)
[服装]:自分の服、眼帯
[装備]:猿飛佐助の十字手裏剣@戦国BASARAx2 閃光弾@現実×2
[道具]:基本支給品一式x3、不明支給品x0〜6(小十郎から奪ったものは未確認)、風魔小太郎の忍者刀@戦国BASARA
ウェンディのリボルバー(残弾1)@ガン×ソード
[思考]
基本:優勝して元の世界に帰還する。
1:魔力を集めながら、何処かに結界を敷く。
2:出来るだけ人の集まりそうな街中に向かう。
3:戦闘の出来ない人間は血を採って放置する。
4:不思議な郷愁感
5:雑音?
[備考]
※参戦時期は、第12話 「空を裂く」より前。
※C.C.の過去を断片的に視た為、ある種の共感を抱いています。
※忍者刀の紐は外しました。
【F-3/駅ホーム/一日目/早朝】
【福路美穂子@咲-Saki-】
[状態]:
[服装]:学校の制服
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜1)(確認済み)、六爪@戦国BASARA
[思考]
基本:池田華菜を探して保護。人は殺さない
1:池田華菜を探して保護
2:伊達政宗を探し出して六爪を渡し、小十郎の死を伝える
3:上埜さん(竹井久)を探す。みんなが無事に帰れる方法は無いか考える
4:阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら?
[備考]
登場時期は最終回の合宿の後。
※ライダーの名前は知りません。
代理投下終了
最後のスレだけは改行が多すぎるのエラーが出たので、状態票だけ分けて投下させていただきました。
投下&代理投下乙です
人間、異常事態に陥った時は無意識に普段と同じ行動を取ろうとするとか
キャプテンはそれかな、その分放送で池田の死を知ったらヤバそうだけど・・・
代理投下い行きます
代理投下乙です
ライダーさんは何が起こったのか? 本当にCCの血の影響か?
キャプテンは強いな。でも放送聞いたらどうなるか
本来は人が満ちているであろう、工場地帯。しかしそこには一切の活気と光源は無く、嫌に閑静に建造物達は構えていた。
その過ぎた静けさには、一種の不気味ささえ感じざるを得ない。
……いや、これらの言葉には語弊があるかもしれない。
此所が現の世界であろうが、深夜の工業地帯は一貫して至って静かなものであり、コンクリートと鉄は黙している筈であるからだ。
しかし。しかしそれでも如何に深夜であれ、連なる工場の一切のシステム、機器が完全に停止している事実は、到底尋常とは言えなかった。
更に、虫や生物の類が居る気配が一つとしてない事も、この場に漂う非常性に拍車を掛けている。
人が造りし科学の晶、しかしそこは、幽邃境と言い換えても差し支えがない程までに、奇妙な空気に抱擁されていた。
酸性雨に晒され、朽ちた様な鉛色の壁を競う様に走る管は、細い路地の彼方、漆黒の大口へとその手を伸ばしている。
大気に晒されコールタールの様に変化してしまった潤滑油に濡れて、黒く頭を垂れる葦を一瞥し、男は―――荒耶宗蓮は、眉間に皺を寄せた。
掘りが深く、ただでさえ不機嫌そうな顔が、より一層歪んでゆく。
荒耶は闇に沈む漆黒のコートを翻すと、険しい目線を遥か上空に移した。
頭を後ろに下げると、すう、と頭部の血液が下がる様に感じられ、荒耶は深く息を吐く。
「嫌に身体が重いな。結界を斬るあの刀でも誰かに支給されたか、もしくはそれに似た何かが此処にあるのか。
……両儀に感付かれ、横暴を赦す前に確実に破壊せねば。あれは脅威だ」
まるで列べられたドミノの如く、彼方まで連なり重なる高層工場は、碌に星空を覗かせない。
幾何学模様に切り取られた虚空は、蛍光にも及ばぬ僅かな月光を荒耶に捧げる。
月にさえ祝福を拒まれるか、と荒耶は皮肉混じりに呟くと、まるでたった今思い出したかの様に足を前に出した。
赤褐色に錆びた金網を上を踏みしめる。ぎぃと軋む音は、漂う虚しい空気も相俟って、荒耶には酷く悲痛な叫び声に聞こえた。
寂しさを紛らわす様に寄り添い群がる杉蘚を越え、主と来客を喪失した蜘蛛の巣を潜り、青錆の牢獄を抜け、荒耶はひたに進む。
口を真一文に噤み、時折何かに耽る様に立ち止まり、黙々と荒耶は黒き地平線へと足を運んでいた。
暫くはそうして迷路の様な路地裏の隙間を進んでいた荒耶だったが、橋を越え遂に満天の星空の下へと、目的地であった宇宙開発局エリアへと、その身体を晒す。
しかしそれは必然であり、あらゆる有象無象へと達観した視点でしか観測出来ない荒耶は、眉一つ動かさず足を進め続けた。
だが、如何に永久を生きる魔術師、荒耶宗蓮と言えども、その本質は紛れもなく人間である。
故に言わずもがな肉体的休息は必要であり、荒耶は適当な足場に腰を下ろし、支給されたボトルを右手に、ぼうと壁を見つめていた。
あちこちを這う金網と配管を何の気なしに目で追いつつ、荒耶は支給品袋の口を解く。
荒耶個人としては、最初は内容物にさしたる興味もなかったのだが、放置するくらいなら開けたくもなるのが人の性。
それに、荒耶は式を確実に手に入れなければならない。ならば、武器は多い方に越した事はないのだ。
そもそも、本来労力も使わず一瞬で行き来が可能な会場を、徒歩という非効率的な手段を以て徘徊しているのだ。
その上、両儀式の元へ偶然を装いながらも、一刻も早く辿り着かなければならない。とはいえ、ストレートな行動は禁物。
焦りもあるが、しかしゆっくりと慎重に。多少遠回りでも構わないので、怪しまれずに、ごく自然に両儀式に接触する必要がある。
その為の南からの迂回だ。そして正面から莫迦みたいに正当法で攻めるのは、能力制限がある今、お世辞にも賢い選択とは言えないのが現実でもある。
荒耶は一度式に敗北している。ならば軽挙は愚の骨頂だ。
が、流石の荒耶とて、この妙な束縛感と募る焦燥感には、歯痒さを禁じ得ない。ならば余興の一つや二つ、求めたくもなるのも自然だった。
「さて」
鬼が出るか蛇が出るか……大した期待はしておらぬがな、と荒耶は支給品袋に手を突っ込み、中を弄る。
お目当ての品は直ぐに見付ける事が出来た。指先から伝わる冷たさと、つるりとした感覚。
ずっしりとした重さを持ったそれは、長年の経験から言って――そうでなくとも予想出来得る範囲内だが――、荒耶は硝子だ、と言い切る事が出来た。
まぁつまるところが、恐らくこの支給品は“殺傷能力を伴わないハズレ支給品”だという事だ。
しかし、と荒耶は思う。ハズレならハズレで、少々の興味もある。
故に荒耶はそれをむんずと掴み、支給品袋から取り出す事にした。
ぱさり、と生成色の支給品袋が布同士を擦らせ、乾燥した音を上げる。
延々と続く空に浮かぶ、欠けた銀鏡が硝子の表面を凛と照らす。ごぽり、と気泡が動く鈍い音。
飴色の土台から生えた硝子の内部には、透明な水が九割方、満たされていた。白銀に揺らめく水面の下、内容物がダンスを踊る。
それまで眉一つ動かさなかった荒耶だったが、それを目の当たりにし、初めて眉を動かした。
いや、それだけではない。伏せ目がちな双貌をかっと見開き、息をはっと飲み、その額には汗を浮かべている。
何故ならそこには、荒耶の想像を遥かに上回る極上の皮肉があったのだから。
「……そうか」
嗚呼、と荒耶は唸る。運命とは、何と皮肉なものだろう、と。これ以上の皮肉があるものか。
荒耶は額の汗を袖で拭き苦々しく笑うと、けれども肩を揺らしながら口元を歪め、大いなる喜びを露わにした。
「残念だったな。貴様の弟子や両儀式が此処に居る事も、私がこのバトルロワイアルの会場を、主催に協力し用意した事も。
そして私が今生きている事も全て、貴様が知ろうとも決して抵抗出来ない。
指を銜えてそこで見ているが良い。矛盾したこの島で起きる惨劇を、哀れな人の性を、それを疎む私の姿を」
荒耶がその様な、到底らしくはない妙な反応を見せるのも仕方がないと言える。
「貴様を持つのが私でなければ、或いは殺され、調査の為に動けたやもしれぬだろうが……いかんせん、運命は時に悪戯が過ぎるようだな」
何故ならば。
何故ならば荒耶の両手にずしりと沈むそれは、その硝子ケェスの中にあったのは、真っ赤な真っ赤な、名前と相反する髪と瞳、切断面。
ああ、それはまさに蒼穹とは相容れぬ黄昏を思わせる―――
「貴様もそう思わぬか――――――――――――――――――――――“蒼崎橙子”よ」
―――傷んだ赤色<スカー・レッド>。胴体を喪失の彼方に置き忘れた、蒼崎橙子の無残な生首。
荒耶は安らかな表情で漂う燈子を見下し、意地悪く鼻で嘲る。
これが支給された人間が、もしも荒耶でなければ。
確かに荒耶の言う通り、燈子は会場の様子を記憶し、完全な死を以て再び蒼崎橙子として覚醒した可能性があっただろう。
しかし流石に運が悪かった。
橙子の脳がこうして荒耶に掌握されている以上は、燈子のスペアがそれまでの蒼崎橙子として記憶を継承し、覚醒する事はないのだから。
何故ならそれが荒耶個人にとって脅威になり得ると、荒耶本人が身に染みて理解しているからだ。
故に荒耶は橙子を殺さない。外部からの不確定要素介入の余地を絶対に許さない。
パラドックスの観点から言って 、此処の蒼崎橙子が脳を保持し続ける限り、如何なる世界の蒼崎橙子も此処への介入が不可能なのだ。
荒耶は、蒼崎橙子を決して過小評価していない。
スペアすらもがない追い込まれた現在の荒耶には、燈子は一つの大いなる脅威であり、また荒耶はそれを認めていた。
故に、脅威となり得る力の芽を予期せず摘んだ事を、荒耶は純粋に喜ぶ。根源へも、辿り着き易くなったというものだ。
「助かった、と素直に言っておこうか蒼崎橙子。制限が課せられた今回ばかりは、貴様に余計な水を注されては少々厄介なのでな」
荒耶はごとりと瓶を地面に置くと、水に踊る艶麗な赤髪を嘲笑した。口では言わぬものの、傷んだ赤色<スカー・レッド>と馬鹿にしつつ、だ。
一方の橙子は捻れた首をこちらに見せるだけで何も応えない。応えられない。
荒耶は暫く橙子の首を舐めるように視て遊んでいたが、やがて休息もとれ満足したのか、ゆっくりと立ち上がった。
南下して迂回するか、と荒耶は息を吸う。多少遠回りでもしないと、矢張り不自然だ。
不自然にも関わらず参加すると言った以上、主催側は荒耶をより一層強く監視している事だろう。目的を探ってくる筈だ。
しかしあちらとて、会場を用意した荒耶の死は本意ではない筈。故に膠着状態。あちらは荒耶に手を出そうにも出せず、こちらは式に直行しようにも直行出来ない。
お互いにカードを切らない、尻尾を見せない今の状況は、まさにコールド・ウォー。
荒耶が目指すは現在駅に居る両儀式、そして根源。宛もない長旅が再び、始まろうとしていた。
と、荒耶は目を細め、前方を遮る有刺鉄線へと一瞥を投げる。
式の居場所を探ろうと、会場とのシンクロを試みたのが功を奏したのだ。
……だが最初は、見間違いか何かかと思った。決して自惚れている訳ではないが、それでも荒耶は自らの腕にそれなりの自信と信頼があった。
永年生きてきた賜物、とでも言うのだろうか。故にナイフを握る荒耶には、網膜に映し出されるその映像が如何しても信じられなかった。
荒耶は、参加者の顔から能力、性格まで全てのスペックを把握している。それは主催サイドの人間である以上当然の事だった。
そう、だからこそこの言葉が今、意図せず自然に荒耶の口から零れ落ちるのだ。
「……貴様は誰だ」
見えている人間が、これといって特筆すべき要素もない、一般的な軽音楽部女学生、中野梓だからこそ。
そう、繰り返すが梓は極めて普通の人間、即ち一般人だった。
戦闘に関して腕が立つ訳でもなければ、精神的に秀でている訳でもなく、特別、学や才があるといった訳でもない。
強いて才に近い要素を挙げるとするならば、それは努力だろう。
梓のギターの上手さ、またギターへの並々ならぬ知識は、偏に才ではなく、積み重なった努力の結晶によるものである。
しかしそれを才として認めるかと問われれば、それはほぼ確実にノゥだろう。実にナンセンスな質問だ。
彼女らの世界で才がある人間が居るとすれば、それは平沢唯の様な、絶対音感を持つ人間である。
さて、少々話が脱線したが、つまり荒耶は何が言いたいのかというと。
周りに存在感を感じ辛くさせ、更に足音の殆どを封じるだなんて、本来の中野梓とキャラクター像が一致しなさ過ぎる、という事だ。
荒耶の持つ情報だと、バンドメンバーである中野梓はどちらかと言えば存在感が濃い方だった筈。
狂気に感染しやすいこの異常な場では、通常一般人は興奮や動揺、萎縮により目立つ筈だ。
そもそも、個が所有する存在感は簡単に変動するものではない。そう、そこに荒耶は疑問を感じた。
この変動はまるで、個の変動そのものに近い。別人の存在率周波……。
だがそれはどちらかと言えば魔的要素。尤も足音の大きさの変動は技術的要素なのだが、どちらにせよ少々不自然だ。キャパシティを越えている。
ならば仮に誰かに存在感の希薄化や足音の消し方を教授して貰ったとすれば、と一瞬の内に荒耶は左脳で思うが、直ぐに右脳が否定する。
習得スピードが時間的に有り得ない。第一、一般人に習得させる意味もないので、その推理は論外中の論外であった。
しかしと荒耶は喉を鳴らす。解せない。
現にこうして、中野梓がその存在を薄くし、更に足音をほぼ消し、歩いて来ているのだ。
それは気配絶ちや存在隠匿には遠く及ばないものの、度合いには首を傾げてしまう。
おまけにその存在感の希薄さは、荒耶の前方20メートル地点に至るまで、接近を僅かに感じ難くさせるという折り紙付き。
それは動揺を感じるものとは程遠い。が、確かな疑問を覚える。足音の制御を、殺し屋でもない一般人が可能だとでも言うのか。
気が触れた可能性を考慮しても、異常な状況の渦中の一般人としては、到底理解の許容内とは言い難い。存在と能力が矛盾している。
自らが身体でそう認識してしまっている以上、中野梓が少々異常であるという現実は決して覆せないのだ。故に疑問を口にした。
……ならば或いは、何らかの外的要因による超能力覚醒か、何者かによる肉体操作か支給品による能力か、幻術や成り済ましの類か。
孰れにせよ、現時点では特定不可能。
荒耶は身構えると、周囲を目線だけで見渡す。背後に狭い路地、右に巨大な未来的建造物、左に河川。
些か不安定なフィールドではあるが、大きな問題はないと荒耶は踏み、視線を梓へと向け直す。
覚束ない足取り、しかし何故か足音を抑制しこちらへと進む梓の表情は、深い影が落ち窺う事が出来ない。
だらりと頭を下げ、すらりと伸びる腕を振らず歩むその様と、常に漂う儚げな雰囲気は、浮浪者の様だと言っても過言ではなかった。
そして、遂に荒耶は発見してしまうのだ。
梓の右手に握られた、黒金を弾き出す、幼気な少女には分不相応過ぎる獲物を。左手に握られた、月光を禍々しく反射する凶刃を。
「一つ問おう、中野梓よ。貴様は本当に“中野梓”か」
荒耶は明確な問いの意を込めた声色を以て、10メートル程先に立つ梓に、語尾を強調しそう訊く。
梓はその声に肩をびくりと弾くと、黒髪の隙間から大きな、しかし光を亡くし虚ろな瞳を見せた。
荒耶は顔を顰める。しかし、相も変わらず己のこの油断は悪い癖だ。
能力の完成度に依存するが余り、他者への警戒を怠ってしまう。小川マンションでの時も、先のアーチャーと御坂の時も、それが原因だ。
一般人かもしれない人間に接近を許すなど、馬鹿馬鹿しい。底が知れると笑われてしまう。
「え、ぁ、あ……い、やッ……!」
動揺に身体を震わせ、護身用であろう銃と鉈を慌ててこちらへ向けるその姿に、荒耶は半秒で目前の女学生が中野梓本人である、と確信した。
同時に、ある疑問に目尻をぴくりと動かす。
この時点で漸く梓が荒耶に気付いたならば、先程の“……貴様は誰だ”という言葉は、梓の耳に入っていなかったという事になる。
ならば、この存在感の無さは本人の意志とは無関係の可能性が高い。同時に足音の制御もだ。
何故ならばこちらの最初の問い掛けに反応出来ない程、何かを思考していたならば、当然存在希薄能力や足音軽減能力の展開も疎かになる筈であるからだ。
そして次に、今だ。現在、荒耶の目前で梓は動揺している。しかし何故か存在希薄能力の展開だけは為されている。
それはどう見ても不自然だった。そもそも、存在がバレた時点でそれを続ける意味がないのは、素人目にも明白。
以上から、荒耶はこの妙な存在感の希薄さが後天的外部作用によるもの、即ち梓に支給された何かが要因なのだと確信した。
そして同時に荒耶は、氷の様な冷徹さを取り戻す。先程から鼻孔をつく、嫌な臭い。これは間違いなく。
「……人を殺めたのか、中野梓よ。人間の性は、矢張り救いきれぬな」
ぼそりと呟かれたその言葉を聞くや否や、梓の顔はさあと血の気を失った。
蒼白い四肢をがたがたと、歯をがちがちと震わせ、梓はごくりと生唾を飲み込む。
見ず知らずの人間に名前と殺人を見破られたのだ。動揺は当然だった。
指摘されて脳裏に描かれる、フラッシュバック。忘れもしない、殺人の感覚。
ふわりと揺れる身体、驚愕と僅かな殺人衝動。少し遅れて、肉が大地に叩き付けられる、不快な音。
深紅に染まる視界、闇の誘い。目前の男が持つ刃に、足下にある瓶詰めの生首に、心臓が高鳴る。胸の内側から、警鐘の音色。
狂気が身体を浸食してゆく。腐敗させてゆく。期待が、理想が、表面から壊死してゆく。
竹井久の場合とは違う。荒耶の足下には瓶に入れられた生首がある。動揺により混乱した梓は、パニックに陥った。
目前の男は確実な、敵。ならば殺される。あの刃物で己も首を刈られる。しかし勿論、それに易々と従う訳にはいかない。
生きるには、殺されるのを防ぐには、殺してしまった人を助けるには―――そう、答えは出ているのだ。最初から。
「違っ、ち、が……な、んで……」
血色の悪い土色の顔には、べったりと恐怖と驚愕の色が張り付いている。
ふるふると頭を左右に振りつつ、梓は現実から逃げる様に二、三歩後退った。違う。軽音部の皆を探すんだ。帰るんだ、皆で。
今その選択をすると、戻れなくなる。でも、でも、でもッ!!
それでも、死ぬのは……―――
「ナンセンスな質問だ」
支援
荒耶は呆れる様に低く唸ると、ゆっくりと足を前方に出す。
そう、ナンセンスなのだ。何もかもが。
最初から詰んでいるのだ。この、死に逃避して絶望に身を委ねる、思考矛盾者は。
荒耶には分かるのだ。殺戮の一歩手前で揺れる、消えかけの蝋燭の灯火の如く儚過ぎる存在の色彩が。
死と生の狭間で醜く蠢く、矛盾した思考の螺旋、行けども逝けども進まぬ、無限回廊が。
「幾ら隠蔽しようが、逃避しようが、現は常に影となり血塗れた足枷となり、加害者に寄り添う。
死臭は棺まで消えぬのだ、中野梓。それだけの血の臭いを漂わせながら、隠匿と忘却とは、少々虫が良すぎるのではないか?」
荒耶は淡白にそう言い放つと、梓を鳶の様に鋭い目で睨み付けた。
荒耶の威圧感に圧倒されてしまっている梓は、不規則な呼吸を繰り返し、荒耶へと呪うかの様な悪意に満ちた目で見つめている。
荒耶はナイフを強く握る。或いは駒として機能するかとも考えたが、もう人を進んで殺す事も、何かを目指し生きる事も出来ないだろう。
考えが甘かったという事か。利用価値を求めて発狂促進効果を付与したのだが……失敗作、か。
……しかし何分、この場合は起源が悪かった。半覚醒したこの状態では、どの道もう、誰が介入しようが世界の言葉に抗えはしない。運が悪かった、か。
かちかちかちり。
荒耶は溜息を一つ吐くと、汪溢していた殺気を解除する。
かちかちかちり。
そうして、梓は今にも崩れそうな笑顔で空を仰ぎ、思うのだ。
これで良いのかもしれない、と。
かちかちかちり。
しかし、矛盾した螺旋に終わりは無い。巡り巡って到達した思考にさえ、裏があるならば、それは。
かちかちかちり。
廻る廻る思考の大渦。混沌とした灰色の水底に、誰は何を見る。
かちかちかちり。
何かを思い出したかの様に、慌てて刻む午前2時58分。
―――……死ぬのは、嫌だ!
梓は自己の思考矛盾に、薄々気付いていた。
自らが殺めた者に、再び命を吹き込みたいという願い。
そして、それと相反する位置、対極にある、仲間と再会して平和な世界に戻るという願い。
これらは対極思考故に、矛盾を呼ぶ。この願いは必ずどちらかが成立しないのだ。
思考の矛盾は、葛藤を呼ぶ。確かに梓はおもし蟹により、殺害、死の呪縛から解放されたが、しかし精神へのダメージは深く、甚大だった。
短時間に蓄積された矛盾による鬱積は、梓の胸を必要以上に強く締め付けてやまなかったのだ。
死者の蘇生には、無論、優勝が必須条件である。優勝とは即ち、自分以外の存在を殺害により排斥してしまう事だ。
そしてそれは、仲間を殺害する事の必須性を示唆している。
しかし、梓には仲間と会いたいという思考もまたあった。仲間と会う、それは即ち平穏を願っての事。
だが、梓は既に殺人犯であり、梓もそれは理解している。故に平穏は、仲間と再会したところで永久に訪れないであろう事も、知っている。
ここで梓の盤は既にして詰んでいた。袋小路に入った猫が、万に一つ餌にありつける訳が無い。そこでの長考には意味が無い。
そんな飽和した梓の思考の前に現れたのが、荒耶だった。
かちかちかちり。
すう、と脳が隅から覚醒してゆく。ああ、面倒だ。もう如何でもいい。
生きるには、殺されるのを防ぐには、殺してしまった人を助けるには―――そう、殺してしまえば良いのだ。なんと単純明快な事か。
梓は荒耶への畏怖を前に、己の殺人衝動を前に、しかし何故か安心感に似た何かを覚えていた。
それが純粋に絶望なのだと気付くまでに、半秒。引き金に指を掛けるまでに、更に半秒。
矛盾の末に生まれたのは、極限の現実を甘ったるく彩るとびっきりの調味料、諦観だった。
思考を切りさえすれば良かったのだ。そうすれば不安になる事もないし、選択の底無し沼に呑まれる事もない。
かちかちかちり。
迫り来る死と殺戮の荒波は、何処か悦楽の海にも似ていた。
絶望感に身を委ねる事は、こんなにも楽で心地良い。死は解放だ。唯一無二の、絶対の解決方法なのだ。
罪も罰も、理由も口実も、理想も現実も。全ては死の前に無力であり、無価値という名の同要素だ。
かちかちかちり。
そうして、梓は今にも崩れそうな笑顔で、否、泣顔で空を仰ぎ、思うのだ。
これで本当に良いのだろうか、と。
かちかちかちり。
しかし、矛盾した螺旋に終わりは無い。巡り巡って到達した思考にさえ、裏があるならば、それは。
かちかちかちり。
廻る廻る思考の大渦。混沌とした灰色の水底に、誰は何を見る。
かちかちかちり。
何かを思い出したかの様に、慌てて刻む午前2時59分。
ぱぁん、と乾いた音。
それはまるで、世界という空間を内側から破壊した様な、酷く虚無感に満ちた音だった。
震える梓の右手は、中途半端に空へと掲げられている。その手中には、火薬の匂いを漂わせる銃。
黒光りする銃口は、最早照準が合わせられる事を諦めたかの様に、灰色の溜息を吐き続けていた。
からぁん、と空の弾奏が無機質な断末魔を上げながら地面に伏す。
荒耶は梓の手前で静止したまま、その髪を旋風に靡かせていた。
高鳴る心臓、なんで、と紡ぐ口。嫌な予感と冷たい汗。流れる鮮血。ゆらり、と揺れる梓の身体。
震える指先、交差する視線。恐る恐る、梓は視線を荒耶の左手へと向ける。かっ、と見開かれる血走った目。
終焉の弾は、確かに荒耶を捕捉した。しかし仏舎利の加護を破るには至らなかったのだ。
だからその結果、梓が死に物狂いで放った弾丸は、荒耶の左手で握り潰されるに至った。
梓は言葉を失う。この状況を最も理解していなかったのは、あろう事か発砲を行った本人、中野梓であった。
己は確実に荒耶を撃った。にもかかわらず何故荒耶は倒れないのか。いや、それよりも、だ。何故……何故、銃弾が荒耶の左手にあるのか?
この時点で梓の理解は、全く現実に追いついていなかった。魔術と無縁の梓には、埒外の超常現象にしか見えなかったのだ。
……訳が分からない。何が何だか、もう理解できない。
「……それが答えか、中野梓」
最初の段階で邪魔者を排除する考えだった荒耶にとって、梓が殺害対象になるまでに、時間はさして掛からなかった。
先程は相手が英霊だった故に引き考え直したが、今回は違う。そして敵意を示す邪魔者が疎ましい事には変わりない。
元々、邪魔をするならば御坂美琴とアーチャーにも容赦はしないつもりだった。
ならば話は簡単だ。厄介でない者なら、邪魔者を殺す事に躊躇はない。障害は罰す。それ以上も以下もない。
……この娘は、今の様に行動の邪魔になる事はあろうとも、到底、利を呼ぶ代物には成り得ないだろう。
利用価値は一切無い。更に言うと今放置するとその起源故、余計な害を及ぼしかねない。白純里緒の場合とは異なり、自覚ある自己満足では済まないのが厄介だ。
白純里緒の起源は自己解決型の内的要因を促す、しかし中野梓の起源は外的要因と成り得る。無意識に他の運命を巻き込むのだ。
たかが一般人、されど一般人。塵も積もれば山となる。なにせ事あるごとに荒耶を阻んできた抑止力は、そんな無力な一般人の意識集合体と言っても良いのだから。
と、まあ尤もらしい事を羅列したが、要するに、中野梓はもう使い物にもならない、邪魔な死駒なのだ。
「やめておけ、時間稼ぎにもならん。銃弾の無駄だというのが分からぬ程、箍が外れた訳でもあるまい」
荒耶がずいと足を出すと、梓は奇声にも似た悲鳴を上げ、再び銃を荒耶に向けた。
何かの間違いだ、と梓は焦点の合わぬ目線を騒がしく動かす。人間が銃弾をキャッチするなんて、常識的に考えてあり得ない。
きっと何かの手品に違いない。黙っていてもあの生首になるのなら、何度でも何度でも抗って<殺して>みせるッ!!
「愚かなり。無駄と理解してもなお、こちらへと銃口を向けるか」
歯を剥き唸る荒耶を尻目に、梓は冷静な思考を完全に飛ばしてしまっていた。
自分が命を狙われているのだと、疑心暗鬼に捕われた梓には、そう考える事でしか現状を把握する事が出来なかった。
しかし、それは自分の新たな殺人を認める事になる。梓にとって、そこはもう二度と越えてはならない一線である事もまた、確かだった。
口をだらしなく開けたまま、梓は荒耶へと狂気に歪んだ目線を向ける。
「揺るがぬか。いいだろう、ならば私も動かざるを得ない」
荒耶は大きな溜息を一つ吐くと、大地を思い切り蹴り上げた。どうと大気が震撼し、瞬間、飽和する殺気に梓の全身の毛が逆立つ。
一瞬の内に梓の目前へと移動し、梓の胸倉を掴むと、荒耶は梓を粗暴に持ち上げる。
……人間として明らかに異常な軽さだった。成程これが足音のトリックか、と荒耶は一人ごちる。
「後悔は済んだか」
荒耶の左手にはナイフが鋭く構えられ、側面から梓の首筋にあてがわれていた。
梓は動かない……いや、動けない。非常としか形容出来ない現象にショートした思考回路は、巡り巡って再び絶望と死による全思考放棄を算出していた。
荒耶はそんな様子の梓に歯を軋ませる。此処で壊れるとは、絶望の波に翻弄されるとは、なんて、都合がいい混迷。
「……まぁよい。どの道貴様は死に行く無駄駒だ。場合によってはと一時は考えていたが、最早そうはいかぬ。
この落とし前は着けて貰おうぞ中野梓……だが、最期だ。私も心臓一つの一人の人間、せめてもの慈悲として、黄泉への手向けに一つ教えてやろう」
かちかちかちり。
梓は無表情で漆黒の世界を仰ぎ、小さく呟く―――――――――――――――こんな世界、いらないや。
支援
「“翻弄”。それが貴様の起源だ」
かちかちかちり。
また一廻り。
矛盾した螺旋にも、しかし終わりが訪れる時が稀にある。それが終焉、即ち死だ。
巡り巡って到達した思考のまま逝けるならば、それは本人にとって未来永劫不変の真理となる。
故に或いは、僥倖。迷いが断ち切られるその瞬間は、本人にとって、ある意味では最も望ましい形での解放。
「場の空気に翻弄され、この会場を漂う死臭に翻弄され、叶いもせぬ理想の未来に翻弄される」
かちかちかちり。
また一廻り。
ああ、そう言えばそうだった。何時しか部活でも周りに呑まれて、此処でも殺し合いの罠に呑まれて、理想に呑まれて。
矛盾の罠に呑まれている。
「挙句、こうして私の決意をも翻弄し、狭間で蠢く迷いに翻弄され……そして最終的に、死の大渦に翻弄される。
敵味方関係なく巻き込むその起源の不安定さと、此処の特殊環境故に、私にも捨てられる無用の駒。……哀れなり、中野梓」
かちかちかちり。
また一廻り。
あれ、それってでも、私である必要、あったのかな。私に個性って、意思って、あったのかな。
何時も場に翻弄されて、弄ばれて。結局そこには私が居ない。全部、私である必要がない。
別に誰でも良かったんじゃないのかな。じゃあ私って、何処に居たのかな。
かちかちかちり。
個性という要は、最初から欠落していた。中野梓の本質は、拙いハリボテで固められた、単純な記号でしかない。
それだけでしかない。
かちかちかちり。
また一廻り。
ナイフが舌舐めずりをしながら、血液を貪らんと肉を食い破る。どくん、と血潮が身体を巡った。
此処に生きていた証なんて、この程度しかない。
梓は飛沫を上げながら自嘲する。今際の際に存在の真理に気付くだなんて、なんて虚しいのだろうか。とんだ笑い種じゃないか。
がらんどうの身体の正体だなんて、3900ml程度の酷く冷めた血潮と、脆くて汚い蛋白質の塊でしか、なかったのだ。
かちかちかちり。
支援
また、一廻り。
「……貴様は、最初から、」
――――――――――――ああ、そっか。
―――――――――――――――最初からどこにも居なかったんだ。私。
【E-5/路上/一日目/黎明】
【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:黒服
[装備]:ククリナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、鉈@現実、不明支給品(0〜1)、不明支給品(0〜1)
S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(5/6)、.38spl弾x54、不明支給品(0〜2)、蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。
1:式の元へ行く。
2:制限が厄介なので無理はしないが、邪魔をする障害は容赦なく殺す。ただし利用出来そうな者は最大限に利用する。
【蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界】
封印指定を受けた魔術師でもあり人形師でもある蒼崎橙子の生首。
脳を破壊すると、蒼崎橙子本人と寸分違わないスペア人形が、蒼崎橙子本人として、脳が破壊される寸前までの記憶を継承して行動を開始する。
【中野梓@けいおん! 死亡】
代理投下終了です
お二方とも投下乙です。感想は後ほど。
では自分も
伊藤開司、八九寺真宵、グラハム・エーカー、天江衣
利根川幸雄、白井黒子、衛宮士郎、秋山澪、投下開始します
【利根川幸雄 ギャンブル船/2階スイートルーム -1:28:37】
「はっきり言わせてもらおう、利根川氏。
貴方を信用すること、それは『悪魔の証明』でしかないと」
ちっ……このグラハムとかいう若造。
軍人と名乗っているだけはある。そう簡単にわしを信用はせんか。
元々こちらが圧倒的に不利というのもあるだろうが、こいつさえいなければあっちの小娘だけなら篭絡できたかもしれんのに。
「帝愛の幹部であった過去があり、情報を持っている。
成程。確かにそれは接触の価値も同行する価値もあるだろう。
ただし、それは貴方が本当に幹部であったことがあり有力な情報を持っている場合だ。
私とて生憎そんな虚言にわざわざ乗るほど酔狂な者ではない。なにしろ同行者がいるのでな。迂闊にこちらの情報は開示できない。
故に利根川氏。貴方が幹部であったということが確実でない限り、私は貴方と共に行動し情報を開示することはできない。
しかし貴方が幹部であったと言う証明はあまりに難しい。
貴方の言う知り合いはこの名簿にたった1人。出会うにはあまりに確率が低いと言わざるを得ない。
その知り合いに遭うのを延々と待っている時間はこちらにない。私達は捜さなければならないものがあるのでね。
知り合いに会えない以上貴方が帝愛の幹部であったと言う証明はまず不可能だ。
さっき話したギャンブルルームの黒服。彼に聞いたとしても同じだろう。
彼らはこの殺し合いにおいては中立の立場を貫いているように思えた。ギャンブルにおいてのみ手を出すのだろう。
それは逆を返せば」
「ギャンブルに関する以外の質問には微塵たりとも答えない、ということ?」
今まで黙っていた小娘が口を突っ込んできた。
小さな体躯に大きなリボン……ふん。最近の小娘どものセンスはわからん。
それでいて口調はたまに古臭い言葉を使う。最近の若者はまったくわからん。
しかし、まさかギャンブルルームなどというものがありしかもそこに黒服の男が配置されているとはな。
4時間以上ここにいてそれに気づかなかったことがばれた時はこいつらに危うく蔑まれそうになった。
『こんな所につれてこられて突然平静でいられる方が不自然だ』と言い負かしてやったがな。
そもそもわしのスタート場所は元々この船内、しかもギャンブルルームよりも上階だ。更に言えばその階から動いていない。
階下のギャンブルルームに気づけず何が悪い。手順矢印も1階駐車場へのタラップを上がってきた奴らを誘導する為のもの。
ギャンブルルームより上の階には張られていないのだ。
にしてもさすが帝愛、会長の考えそうなことだ。殺し合いの中にギャンブルを織り交ぜるとは。しかも血液搾取のシステム。
これはつまり、身体的弱者でも強力な武器を入手できる、そして身体的弱者が身体的強者を殺すことも可能ということだ。そう、この老人のような弱者でも!
まあそれにはまず相手をギャンブルにのせねばならんがな。ペリカという餌がある以上できんことはないとは思うが。
黒服の男はギャンブル以外の質問には答えない。これは正解だろうな。私も『向こう側』ならそうさせる。
過剰な干渉は退屈を招く。なぜなら、それは参加者を甘えさせることになる。
それでは見ている方は面白くない。与える情報は最低限………そんな限られた状況で足掻く様………それは観覧者にとって極上のショー………っ!
さながら蟻の巣に水を流し込み慌てる蟻どもをみる無邪気で残酷な子供に似た心境っ!
「そういうことだ。例え私たちの後にあそこに誰かが来たとしても、彼は私達のことを教えはしないだろう。
奴らに言わせれば『フェア精神』と言ったところか。
わかってもらえたか。利根川氏。貴方が幹部であったという証拠が無い以上、こちらからの情報開示はできない。
それに信憑性が無いと言うのでは貴方の人間性に疑いを持たざるを得ない。となれば貴方をそう易々と保護は出来ない」
「くっ……!」
私は顔を曇らせた。
言いたいこと言いよってこの若造が。軍人と言いながら民間人を保護する気はなしか。
「………ねえ、グラハム」
辛そうな私の顔に耐えかねたのか、小娘が男に話しかけた。
その声には同情の色が見て取れる。少し前まではわしに恐れている様子が見て取れたが、流石にわしの落ち込み様にその恐怖を引っ込めたらしい。
「何かね衣」
「確かに不確実な事を名乗った老人にも非はある。でもここで見捨てるのはこの老人が可哀相だ。
お願い。衣に免じて1つ、チャンスを上げてくれないかな?」
「チャンス?」
小娘は見かけによらず優しい心根らしい。
男に切り捨てられ後が無さそうな私を見かねて『チャンス』を提案してきた。
私が帝愛幹部であったと言う証明になりそうな『チャンス』。
私にとっては喜ばしい限りだ。
小娘がわしにチャンスをくれた。
そう。
わしの思惑通りにな。
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【衛宮士郎 ギャンブル船/2階ギャンブルルーム -1:10:49】
「改めて歓迎しよう、白井黒子、衛宮士郎、秋山澪……! ようこそ、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへ………!」
船にやってきて手順の矢印の通りに進んできた先にあったギャンブルルーム。
そこに足を踏み入れた俺達を待っていたのは、いくつものギャンブル用の遊戯台、そして黒服の男の拍手だった。
秋山が驚きのあまり気絶しそうなのを白井が気付ける間に男は勝手に喋りだした。
ここにいる人間の中で、唯一首輪を嵌めていない男が。
内容はこのギャンブルルームについて。
ここでは色んなギャンブルができること。ここでは戦闘行為を禁じている事。ただしギャンブル目的以外での長期滞在は禁止。篭城はできないってことか。
協力スタッフ、ハロの存在。わらわらと球が転がってきて喋ってきた時は俺もびっくりした。
秋山に至っては危うく倒れる所だった。今は遊戯台の1つに背を預けて気を落ち着かせている。
ただ白井だけはそれほど驚いたように見えなかったな。単に表情に出にくいだけなのか?
得たぺリカによって景品を獲得できること。トカレフとかベレッタとか俺でも聞いた事のある銃器の名前が俺の手元にあるファイルにざらっと並んでいた。
「質問してよろしいですの?」
大体の説明を終えたらしい黒服に一歩歩み寄ったのは、白井だった。
彼女に漂うどこか凛とした雰囲気。なんか少しだけセイバーに似てるな。
思えば秋山に比べて白井はかなり落ち着いている。もしかしたら俺よりも。この中じゃ1番年下のはずなのに。
「まず1つ。『参加者の位置情報』。景品にこれはありませんの?」
そうだ。ココに来た目的はそもそもそれ。銃器やピザとかは正直どうでもいい。いや武器は欲しいがまずは探し人の所在だ。
「成程。お前たちの目的はそれか」
「わたくし達の名前を即答したことを考えれば、その探し相手も予想ついていそうですわね」
「その点に関してはご想像にお任せする……。
でだ。参加者の位置情報……最後のページから3ページ目、めくってみろ」
そう言われて白井は俺に目を向ける。今ファイルを持っているのは俺だ。俺はその視線を受けてファイルをめくった。
最後から3ページ目……あった。
『参加者1人の位置情報(1時間) 【3000万ペリカ】』
「なっ……!」
「どうしたんですの、衛宮さん」
「おい!なんだよこれ! RPG-7より高いじゃないか!」
俺は黒服にファイルを見せ付けた。
RPG-7。いわゆるロケットランチャーだ。獲得できればかなり強力に違いない。
それですら2500万ペリカ! こいつはそれより更に高額!
しかも、3000万ペリカは俺達に支給されたあのICカードの初期残高ピッタリ。つまり、当初の予定通りギャンブルなしで得られても1人の情報しか分からない。
そして得てしまえば俺達は1文無し……!1文無けりゃ、ギャンブルにはもう挑めない!つまりその1人以外の情報は得られないってわけだ。
「くくっ……!何を驚く……!
『参加者の位置情報』。これがこの殺し合いでどれだけの価値を持つか……!
探し人ならばすぐに行けば会えるかもしれない。危険人物ならば近づいてくるのを避けてしまえばいい。
探し人に会えること、危険人物を避けられること。それはかなりの有益!ここでは……!
そう……使い方次第では……ロケットランチャーよりも有益……!
これは妥当な価格だ。先に言っておこう。変えろという要求は却下する」
「っ……!」
そう言われて俺は黙るしかない。
無駄だ。こいつらは価格を変える気なんて毛頭ない。言っても無駄か……!
「……この情報はどうやって受け渡ししますの?」
「要求者のデバイスに本部から情報を送信させる。1時間の間、当該人物の位置情報がリアルタイムで逐一表示される。相手が移動すれば地図上の光点が移動する。
どうだ。便利だろう」
何が便利だ。
もし相手がここから離れた、南西とかにいたらどうするんだ!1時間じゃ電車を使ってもギリギリ。その間に相手が移動したら元も子もない。
1時間じゃあまりに短い!
かといって、3時間、5時間となると更に高額だ。こんなのよほどギャンブルが強い奴じゃないと……いや、ギャンブルが強い奴なんているのか?
結局は運じゃないのか? そうだ、そんなのイカサマでもやらないと……。
「わかりました。では次ですわ。この部屋の安全性に関して。あなたのさっき言った『戦闘行為の禁止』。戦闘行為とはどこまでの範囲を言いますの?」
「どこまでの範囲、とは?」
「銃や刃物はまあわかりますわ。では、誰かが素手で相手を殴った場合、誰かを関節技などで拘束した場合はどうなんですの?」
「殴った場合は、1回時点で忠告。それを聞かず2回目を行った時点で首輪を爆破。
拘束した場合は戦闘行為とは見なさない。ただし、拘束して危害を加えようとした場合は爆破だ」
「では、毒物で誰かを殺害した場合は?」
「!」
白井の言葉に黒服の言葉が止まった。
もしかして、これについては対策がないのか?
『戦闘行為』。考えてみればこれはかなり曖昧だ。
銃や刃物、殴るなんてのは正攻法でわかりやすい。
だが拘束や毒物での殺害。これは相手を妨害し死に至らしめる行為だけど、『戦闘行為』とは言いにくい。
そうだ。『戦闘行為の禁止』。一見安全そうなこのルール。穴がある…!
白井の奴、すぐにこれに気づいたのか!?
「どうなんですの?」
「…………毒物の死に関しては『戦闘行為』とは認められない。よって黙認する」
「あらあら。とんだ『楽園』ですこと」
やっぱり……!
こいつらが明確に禁じているのは『明確な戦闘行為』!
毒物とか拘束とか、『分かりにくい戦闘行為』は黙認する……!
そして、『戦闘行為』は禁じても『殺害行為』は禁じていない!
「では次。例えばある人物がここに爆弾を仕掛けて出て行った。そしてその後爆発。
この場合は?」
「ハロが四六時中この部屋を監視している。設置は不可能だ」
「それでも、仮にできてしまった場合。もしくは設置がばれた場合は?」
「……」
また黒服が黙った。
『爆弾の設置』。これは戦闘行為か?
「……判明した場合は、黙認する」
「まあ爆発してしまったら貴方もおしまいですものね。
やれやれ大分穴がありますわね、ここは」
白井がいつしかなんだか優勢になってる。
別に俺達はまだゲームをしているわけじゃない。
だが、奴らの『戦闘行為の禁止』。一見楽園に見えるこのルールの穴をつく。
別に穴をついたからって俺達にあまり益はない。だが、『戦闘行為は禁止だから』とここで油断する事は無くなる。爆弾や毒物に警戒が出来る。
「では次。貴方はこの『ギャンブルルーム』及び『特設会場』での戦闘行為は禁止と仰いましたわね?
ならば、この『外』からの攻撃。この部屋の上から下を射抜くとか、特設会場が外なら、船の外から狙撃するとか。
その場合は――」
「そこまでだ」
「ひっ……!」
っ!
あの黒服……目つきが変わった!
って、秋山がまた震えだした!? 本当に繊細だなアイツ!
「警告する。それ以上の質問は『ギャンブル以外の使用目的』と判断し首輪を爆破する」
「あら。これは『ギャンブルをする為にここの安全性を確かめたい』理由で質問しているんですのよ?」
「ギャンブルが始まればそんなものは関係なくなる。要は常に警戒をしていればいいことだ。
既にお前たちが入ってかなりの時間が経った。ギャンブルを行わないならば」
まずい……こいつ、本気で俺達の首輪を爆破する気か!?
「わかりましたわ」
「白井!?」
まさかギャンブルする気か!?
いくら元手があるっつっても、1ペリカでも失えば情報が手に入らないんだぞ!?
「ならば純粋にギャンブルについて質問をいたしましょう」
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【天江衣 ギャンブル船/3階スイートルーム -1:00:00】
【白井黒子 ギャンブル船/2階ギャンブルルーム -1:00:00】
「衣は気付いていた。あのギャンブルルームのゲームの中」
「麻雀にブラックジャック、聞きなれたものが多い中、聞き覚えがなかったゲームがありましたわ」
「その数は3つ。グラハムも聞き覚えがなかったらしいし、つまりその遊戯は」
「貴方達帝愛のオリジナルゲーム」
「利根川翁。もしあなたが本当に幹部なら、当然帝愛の作ったゲームは知ってるはずだ」
「わたくしたちにはそのゲームの全貌がまったくわかりません。ですので」
『その3つのゲーム。3つとも全て説明してみせてくれ』
くださいますか?』
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【利根川幸雄 ギャンブル船/3階スイートルーム -0:58:35】
「成程。彼が本当に帝愛の幹部ならば帝愛オリジナルゲームを知り尽くしているはず、か」
「そうだ。ただ……」
「利根川氏。貴方が本当にギャンブルルームに行った事が無い。これが前提だ。
既に貴方がギャンブルルームを見つけ、黒服にゲームを聞いていた場合」
ちっ。疑い深い若造め。
「ふん。恥を忍んで言わせて貰うが、わしは本当に2階にすら降りた事は無い。この槍も3階にある施設の材料で作ったものだ。
貴様らが疑うならそれまでだがな、それこそさっきの話と同じにな」
「………わかった。ギャンブルルームについて話した時の貴方の反応。
かなり真に迫っていたからな。それを信用して貴方に説明を求めよう」
ふん。最初からそう言っていればいいのだ若造が。
そう、これはあの小娘からもたらされたチャンスなどではない。
わしが既に想定したチャンスだ。
奴らとてわしの持つ情報というのが魅力的であるのは事実だ。ただ不信感がそれを妨げる。
それを払拭するにはわしが幹部だったと言う証拠が必要。証言者はカイジしかいないが、あいつに会える可能性などそうない。そんな運否天賦を頼るのは愚者のやること。
それ以前に、わしを叩き落す事になった原因に頼るなどわしのプライドが許さん。利用してやることは呑んでもこれは譲れん。
ならば奴らが提示できるのは、ゲームの内容説明だと踏んでいた。ギャンブルルームについて聞いた時点でな。
勿論ギャンブルルームについて聞いた時の反応は本物だ。そこに行った事が無いのも真実。
そしてだ。
あの若造は『悪魔の証明』だなどと抜かしたが、ふざけるな。
悪魔は存在しない。だからその存在の証拠は提示できない。これが悪魔の証明だ。
だがわしは違う。わしが幹部だった時間は存在する。だから証明が出来る……!悪魔の証明などではない!
そう。わしは帝愛のゲームに関わってきた。故にオリジナルゲームも熟知している!
勝算はある。いや、勝算しかない!
「では始めよう。貴方にはゲームの名称とそのゲームのルールをできれば仔細に説明してもらう。
その後、私と衣がギャンブルルームに戻り、そのゲームのルールを聞いてくる。つまり答えあわせだ。
もし合っていれば私達は貴方を信用し、同行しよう。情報もこちらから話す。それが疑った分の謝罪としよう。
ゲームは3つ。よろしいか?」
「帝愛のオリジナルゲームはいくつもある。そこから当てずっぽうで言わせる気か?」
「グラハム。最初の1文字と最後の1文字だけ教えるのはどうだ? それならば知らなければ当てられることはまずないと思う」
「そうだな。それでいいか利根川氏」
「構わん」
そうしてわしとグラハムは向かい合う。部屋の中央にイスを対面になるよう移動させ、それぞれ座り向かい合う。
小娘はメモ帳と筆記用具を手に、扉の近くでこちらを見ている。
奴はわしの説明したルールを記録する役目と、誰かが近づいてきた時それに気づく役目を担っている。だから扉の近くに位置させているらしい。
「では始めよう」
もっとも、これに関しては少し博打の部分はある。
わしとて帝愛の全てのオリジナルゲームを知っているわけじゃあない。ただその知っている割合が高いというだけのことだ。
だが、割合は高い。ここにおいてわしに目は向いている……!
わしはこの殺し合いで這い上がるつもりだ。
その座にいたるまでの道は、この2人を抱き込むくらいできずに、再び駆け上がれる簡単な階段ではない!
わしがかつて上った大理石の階段はな!
「まず1つ目。最初の文字は」
来い………来い………!
再び………駆け上る力を………!
得るんだ……あの、安全≪セーフティ≫を!
「『い』だ」
な………?
『い』………だと?
『い』………『い』………
「最後の文字は『ど』。どうだ利根川………氏?」
「ど、どうした利根川!」
若造と小娘が戸惑いながらこちらを見てくる。
ああ、そうさ。当然だ。
わしが今、突然顔を歪ませ笑いだしたんだからなぁ!
「く、くくく……あはははは……!
よりにもよって………!よりにもよってそのゲームが来るか!
今のわしに………そのゲームが!」
頭が『い』で最後が『ど』。
ああ、わかる。思い浮かぶ。忘れていない。
いいや、忘れられるわけがあるまい! あのゲームを!!
わしが落ちることになった、あのゲームを!
奴に敗北したあのゲームを!
やはりツキはわしに来ている……!
わしが這い上がる為の第1歩が、わしが落ちることになったつまずきの石なのだから!
「――――だ」
「っ!」
グラハムとやらが目を見開く。
くくっ、軍人といえどまだまだ若造。表情が隠しきれておらんぞ……!
気持ちがいい。もう一度言ってやろう。
「『Eカード』だ。……次はルール説明だったな。ああ説明してやろう。
『奴』に話してやったように、な。ふふふ……!」
======
【秋山澪 ギャンブル船/2階ギャンブルルーム -0:49:32】
「Eカードは1対1で対戦するゲームだ。
使うのは3種類のカード。この『皇帝』、『市民』、『奴隷』。
それぞれ配られるカードは5枚。そしてその内訳は決まっている。
『皇帝側』が『皇帝』1枚、市民4枚。『奴隷側』が『奴隷』1枚、『市民』4枚。この『皇帝側』、『奴隷側』の説明は後にする。
次に対戦方法。
これは至って簡単。遊戯台を挟んで向かい合い手札から1枚カードを選び遊戯台に置く。自由に出来る部分はここくらいだ。どうだ、簡単だろう?
お互いカードを置きおえたら、先に置いた方からめくる。2枚ともめくり終えたらそこで勝敗判定だ。
なに、勝敗判定はよくある三すくみだ。
『市民』は『奴隷』に勝ち、『皇帝』は『市民』に勝ち、そして……『奴隷』は『皇帝』に勝つ。
この関係に疑問そうだな。まあこれはあくまでこのゲーム上だ。現実において、とかは考えるな。それにあながち……いや、いいな。これは関係のないことだ。
勝敗判定で勝てば、そこでまずその1回は勝利となる。『市民』と『市民』のあいこの場合は当然勝つまで続行。最大5回まで。
あいこに出したカードはその1回の間には手元には戻らない。
次の『1回』ではある3回を除き、手札は最初の通り元に戻る。内訳は変わらない。
これを全部で12回行う。
ただし、3回を4セット。そして1セットごとに、初期手札を変える。
ここでさっきの『皇帝側』、『奴隷側』だ。プレイヤーは1セットごとにこれを入れ替える。
つまり1人のプレイヤーにして見れば、4セットの手札は『皇帝』『奴隷』『皇帝』『奴隷』もしくは『奴隷』『皇帝』『奴隷』『皇帝』の順となる。
そしてカードを出す手順、これは手札を出す『1回』で交代だ。最初は皇帝側が先に出すカードを決定、次の回では奴隷側からだ。
ルールの説明は以上だ」
私がやっと落ち着いてきた時、黒服の人は長々とした説明を終えた。白井さんが要求したゲームの説明。
流石にそれは私にも理解できた。
「なんかややこしいな……」
「そうでもないですわ。奴隷、皇帝とわかりにくい単語で考えるからややこしいんですの」
頭を掻く衛宮さんに白井さんが振り向いた。
「三すくみなのですから、ジャンケンと考えればわかりやすいですわ。
皇帝をグー、市民をチョキ、奴隷をパーとして。
普通のジャンケンと違うのは」
「使える回数が限られているのと、使える手も限られているってところ、ですか?」
私は何とか息を落ち着けて言った。
大丈夫。落ち着いてきた。私にもEカード、大体はわかった気がする。
白井さんは感心したような顔で私を見た。
「その通り。
例えばわたくしが『皇帝側』つまり『グー側』の場合、使えるのはグーが1回とチョキ4回。
衛宮さんを対戦相手としたなら、貴方は『奴隷側』つまり『パー側』、使えるのはパーが1回とチョキ4回。
では衛宮さん。ここで問題です。
貴方が勝てるのはお互いどんな手を出した場合ですの?」
「え? えーっと……。
まず俺がパーを出して、白井がグーを出した場合か?」
「そう。『奴隷側』は『奴隷』を出し、『皇帝側』が『皇帝』を出せば『奴隷側』の勝ちですの。
そして、それ以外に『奴隷側』が勝てるケースはなし」
「! そ、そうか。あとは俺がチョキを出した場合だけ。でも白井はパーを持ってないから、俺はチョキを選んだら絶対勝てない!」
「一方わたくし『皇帝側』は、こちらがグーならば相手がチョキ、こちらがチョキならば相手がパーを出せば勝ちですの」
「そ、それじゃ……『皇帝側』の方が圧倒的に有利ってことか!?」
そう。一見すればそうなんだ。
グーに勝つパーは相手には1枚、チョキに勝つグーは相手になし。
つまり『皇帝側』が負けるケースは『奴隷側』がパーを出した場合だけ…!
「くくっ……説明するまでもなく辿り着いてしまうとは……さすがだな白井黒子。学の違いが出たな」
「あら。やはりわたくし達のこと、知り尽くしているみたいですわね」
口を挟んできた黒服の人に向かって白井さんが厳しい目つきを向けた。
「安心しろ……どっちにしても『奴隷』と『皇帝』は交代して互いに2回担当する。そこで十分にフェアになるだろう。
それに、不利は不利なりのリターンをちゃんと用意している」
「リターン?」
「そうだ。『奴隷側』で買った場合に得られるペリカは、『皇帝側』で買ったときに獲得できるペリカよりも高額になる。
『賭けるもの』が同一でもな」
「なるほど。憎らしいくらいよくできたルールですこと」
「だが白井。そうなると」
「ええ。仮に互いの1枚しかない札を『切り札』としましょう。『皇帝側』ならば『皇帝』、『奴隷側』ならば『奴隷』。
そしてそれぞれ後に札を出す場合。
『皇帝側』の勝利条件は、奴隷が切り札を出さないと判断した時に自らの切り札を打ち込む。『皇帝が市民を討つ』場合。
もしくは、奴隷が切り札を出してきたと判断した時にこちらは切り札を出さない。『市民が奴隷を討つ』場合。
『奴隷側』の勝利条件は、皇帝が切り札を出してきたと判断した時に自らの切り札を打ち込む。『奴隷が皇帝を討つ』場合のみ。
よろしくて?」
「つまり、『奴隷側』は如何に皇帝側が切り札を出すタイミングを見極めるかがカギ、ってことか?」
「そういうことですわね」
「いや、待てよ。『奴隷側』はずっと市民でアイコにしてれば最後には自分に奴隷、相手には皇帝が残るから…」
「ううん。それは危険……だって衛宮さん。もしその間に相手に皇帝を出されちゃったらどうする?」
「あ。そっか……負けちまう。ていうか、やっぱりこれ運なんじゃないのか?
相手が切り札を出すかどうかなんて」
「まあそのあたりの論議は後にしましょう」
白井さんが話を切り上げて再び黒服の方をむいた。
凄いな……年下のはずなのに、凄く落ち着いて頼りになる。あんな怖い人になんで正面から向き合えるんだろう。
物怖じしない。堂々として怖い者知らずみたいなところ…………似てるなぁ。
「さあ。次のゲームについて教えてくださいませ。
『勇者の道』とやらを」
律…………どこにいるんだ?
=======
【利根川幸雄 ギャンブル船/3階スイートルーム -0:40:11】
「……どうだ? 鉄骨渡りに関して聞いた感想は」
「ああ。かなり趣味が悪いゲームだという事は理解した」
「なんだそれは……そんなものはゲームではない、ただの殺人ではないか!!」
『勇者の道』について話してやった後の奴らの反応はそんなものだった。
若造は冷静になりながらもその目の怒りを隠せず、小娘に至っては隠しもしないで激昂する。
まったくそろいも揃って程度の低い。
『勇者の道』は早い話が『鉄骨渡り』。
離れたスタート地点とゴール地点の間に掛かる細い鉄骨。それを渡る。それだけのシンプルなゲーム。
距離は25m。ただしスタートとゴールの間にあるのは距離だけではない。
高さ。そう高さもある。
この高さは実は2つほどある。それはゲームが『座興』か『本番』かで異なる。
『座興』ならば、高さは9m前後。落ちたとしても足を下にしていれば骨折はするだろうが命はまず助かる高さだ。
『座興』の場合は勝利条件に『誰よりも』が着く。1番ならば高い賞金、2着にも順当、3着以下ならば無し。
だがこの状況で『座興』はないだろうな。レース形式となると参加者数が多く必要になる。
目の前の相手を押し、後ろの奴に押されるかもしれない。そういった蹴落としあいが魅力なのだから。
補充するにしても、話じゃあ機械がやるらしい。そんな技術が帝愛にあったはずはないがこれは後だ。
機械なんかじゃ『座興』の面白みはない。奴らがこっちをやる可能性は低いだろう。
となればありえるのは『本番』だ。
『本番』と『座興』の違い。まずは競争ではない事。参加者は向こうに辿り着けばいい。時間制限がある可能性は高い。
本来なら参加するには『座興』で得られるチケットが必要だが……ここは変更せざるを得んだろうな。
次に、鉄骨の幅も長さも同じだが、鉄骨には電流が流される。死なない程度、ただし流れれば転落は必至の電流がな。
これは鉄骨に手を突き座ってただ進んでいくような興ざめな事態を防ぐためだ。
そして最も大きな違い………それは高さだ。
『座興』が9m前後だったのに対し、『本番』は………74m!
実に………約8倍!! 転落すれば……死は免れん!
『座興』を乗り越えた奴らは皆言う。『さっきと同じだ』『長さは同じだ』『もう1度同じようにやればいい』と。カイジもそうだった。
だが違う……! 8倍の高さ………落ちる場所すらわからない、暗闇………!
死の恐怖が足を止め、体を震わせ、幻覚を見る奴すらいる。そして………落ちる………星になる………っ!
まあ現実問題、こんな船の中で74mの再現は無理だろうがな。『魔法』とやらもそんなことができるかどうか。
せいぜい落ちる場所に『必ず死ぬ細工』をしておけばいくらか再現は出来るだろうがな。
で、この説明を終えたら小娘が怒り出した。
74mの高さを命綱もなしに足元に電流が流れた状態で渡る。これが許せんらしい。
まったくこれだから平和な場所で安寧している連中は。
学生という安全圏………そこで『平和だ』と微温湯に使っているガキ………。
このゲームが社会の縮図とも知らないで………いつか自分が放り出される場所だとも知らないで。
社会で生き抜けるのは、学生である時点でそれを見抜き勉強する奴らだというのにな。
「何を言う。金を求めて参加するのは奴らの方だ。2000万という大金を目当てにな。
小娘。まだ中学になったかならないかのお前程度ではわからんかもしれんが、世の中とは」
「衣は高2だ」
「…………」
「…………」
「でだ。世の中とは」
「沈黙の後黙殺とはどういうことー!?」
「あからさまな嘘に付き合ってられるか。キーキー喚くな。
2000万という大金はそう簡単に手に入れ」
「利根川氏。その話は後にしてもらえるか。最後の証明に移りたい」
若造があからさまにせかしてくる。
まあいい。長い説明も次で終わりだ。奴らの反応からして今までのものが正解なのは見え見え。
そしてわしにはもう最後のゲームの予想は付いている。
そうだ。名簿を見た時点でヒントはあった。
わしとあのカイジの名前くらいしか知り合いがいない時点で!
間違いない。
ギャンブルルームのオリジナルゲーム、それは全てカイジが経験したゲームだ!
Eカードも、『勇者の道』も! 帝愛のオリジナル、わしが何回も見てきたということ以外の共通点はそれだけ!
おおかたあの会長の気まぐれだろう。彼はカイジをやけに買っていたからな。無論悪意たっぷりに。
だから奴に苦い経験を思い出させるためにあんなゲームを………。
いや待て。本当にカイジだけなのか? まさか、わしも?
わしもあの二つのゲームにはいい思い出が無い。あってもカイジが現れて全て吹っ飛んでしまった。
2つのゲームはわしへの嫌がらせでもあるのか……?
まあいい。この証明状況では逆に好都合だ。
そしてカイジが参加したゲームは……あと1つしかない。
他ならぬこの船で行われたゲーム……!
『限定ジャンケン』!
間違いない、最後のオリジナルゲームは限定ジャンケンだ!
つまり
「いいだろう。ほれ早くしろ」
「了解した。最後のゲーム、」
最初の文字は………『げ』………!
これで決まりだ………!
「最初の」
さあ早く言え。
今お前の仕事はそれだけだ。
さっさと『げ』と言えばいいんだ………っ!
さあ言え………言え………!
「文字は」
早くしろ……早くしろ……!
『げ』………『げ』………『げ』………!
「………」
『げ』だ!『げ』だ!『げ』だ!『げ』だ!
お前がそういえばすぐに言ってやる!
『限定ジャンケン』とな! 後はお前たちに懇切丁寧に説明すれば終了!
これでわしは盾を手に入れ、お前たちに情報をちらつかせることで優位に立つ!
そこからわしの道は始まる!あの座に戻る階段が!
お前たち屑はわしの盾となり道具となり
「『じ』だ」
使い捨てて…………………。
「最後の文字は『す』だ」
な…………は…………?
聞き………まち、が、え………たのか?
『じ』………? 『す』………?
「さあ利根川氏。ゲーム名を………む」
聞こえるわけがない。
『げ』以外の音が。その後は『ん』のはずだ。
聞こえるわけがない。
聞こえるわけがない。
聞こえてはいけない!!
『げ』以外の音など!!
聞こえてはならんのだ!!
それが………それがぁ………!!
「どうした利根川氏。顔色が悪いぞ?」
ありえん!ありえんありえんありえん!!
ありえんならば、答えは1つ。
こいつ……この若造!
とんだペテン師!!
「おい若造! 貴様………わしをハメる気だな?」
「何の話か理解しかねる」
「とぼけるな! 『じ』だと? 『す』だと?
そんな文字がつくゲーム、帝愛にはない!
わざと間違った文字を出してわしを罠にかけようとしても無駄だ!わしは知っているんだからな!
何が軍人だ! 姑息な手を使いおって! 恥知らずが!
おい小娘! こんな男は信用できんぞ!」
リボンの小娘を見やる。
こいつは知っているはずだ。この男と一緒にゲームを見たこいつなら!
中学ですらギリギリそうな小娘なら、正直に!!
正直でその辺のガキにしか見えない……。
小娘を見て、わしの動きは止まった。
小娘は戸惑っていたと思っていた。だが、その目はやけに静かでどこか威厳を保っていた。
なんだ、この変化は……!
「利根川………グラハムは嘘をついていない。確かにゲームの頭は『じ』で最後が『す』だ。
衣がそれを保証する」
馬鹿な………馬鹿な………馬鹿なっ!!
なんだこいつの落ち着きようは!さっきと雰囲気が違うぞ!
いやそんなことはどうでもいい!
こいつめ……小娘まで抱きかかえて嘘を!!
「貴様………小娘まで抱きかかえて一介の老人を陥れようと言うのか。
素直に言ったらどうだ。『限定ジャンケン』。
最後のゲームはこれだ。そうだろう!」
「…………それが貴方の答えか。利根川氏」
若造はこちらを静かに見ている。くそ、このペテン師が!
なんだその目は! なんだその哀れむような目は!
「ならば、不正解だ利根川氏。
『女性限定水上アスレチックレース』。これが最後のゲーム名だ」
な………っ!
こいつ……こいつ……!
どこまでとぼける気だ……!
「嘘をつくな!
そんなふざけたゲームは帝愛にはない!!
わしは知らん! わしは知らんぞそんなゲーム!」
「だが帝愛にこのゲームが無いという証拠は無い」
ふざけるな………!
自分で証明をさせておいて、間違えたらこれか!
そうか……こいつ、始からこうするつもりだったのか!
最後の最後に自分で考えたゲームなど入れて……!正解を知っていようがわしを問答無用で『不正解』にする!言い分も聞かない!
そうやってわしの地位を貶め、一方的に情報を搾取する!
こいつ………人の良さそうな顔でっ!
若造がイスから立ち上がり、こちらを見下す。
くそ……なぜだ、なぜっ!
「では私達はギャンブルルームに戻り答えあわせをしてくる。
利根川氏。貴方はここで待っていて欲しい。すまないが、まだ貴方を完全に信用はできないのでな」
「ふ、ふざけるな……! それでは『限定ジャンケン』がないかどうかを証明できんだろうが!
第一わしを1人にして襲われたらどうする気だ!」
「ルールを黒服に聞いて戻ってくればすぐに案内する。
時間はかけない。不安ならば鍵をかけてくれればいい。戻ってきた時、ノックを短く3回、3セット叩く。それで開けてくれればいい」
「おい待て、待て若造!!」
若造は踵を返し、こちらを心配そうに見る小娘を連れ部屋からでようとしている。
「貴方が信用できたならば、その時は謝罪しよう。
いくぞ衣」
「あ、ああ……」
くっ……なぜだ……なぜだ……!
なぜ限定ジャンケンじゃない!
そもそもなぜ帝愛オリジナルでないゲームを混ぜる!
いや、待て。
なぜ帝愛オリジナルとわしは決め付けた。『全て』帝愛オリジナルなど、限らないではないか。
聞いた事がないからだ。
違う。そう言ったのは別の奴だ。
そうだ。
あの言葉で帝愛オリジナルと印象付けたのは、わしをその思考の網に捉えたのは……!
そもそも、わしが想定していたとはいえ、『チャンス』を掲示してきたのは……!
わしを正解をいようが言うまいが不利にできるこの証明を持ちかけたのは……
合点がいった瞬間、扉が閉じた。
奴らは部屋を出た。
わしはイスから動けない。
優位に立てるはずだった、完璧な優位から落ちた衝撃……動けない……!
だが、できることはある。
怒ることは、できる。
確信した。
違う。若造じゃあない。
わしを本当に追い詰めたのは。
わしに間違いをさせ信用を失っても仕方なくしたのは……!
安全圏にいて非道な事には怒る小娘……それが演技だとしたら………!
まさか、あの若造は本当は奴の傀儡!? 思えば、時々の会話のイニシアチブを握っていたのはあの小娘!
ありえん。ありえん。あんな奴が。だが一瞬見せたあの冷徹な顔……あれは……!
全ては、全ては……!
あの、『鬼子』………天江、衣ぉ………!!
「小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
======
【天江衣 ギャンブル船/階段 -0:34:54】
「グラハム!
あれでは利根川翁がいくらなんでも可哀相だ!」
「衣よ。
話してわかったとおり、利根川氏は老獪な人だ。少しでも隙を見せれば付けこまれる。そうなれば、危ないのは君だ。
こうして先に手を打ち、荒療治をしておかねばならん」
「だが……! 一度間違えたからといって見捨てるのか!?
もし本当に帝愛オリジナルではなかったなら、非があるのは全部帝愛オリジナルだと思い込んでいた衣たちだ!」
階段を下りながら衣はグラハムに詰め寄っていた。
いくら文句を言ってもグラハムは構わずどんどんと階段を下りていく。
衣に振り向かず、どんどん……
「衣よ。少し誤解が生じているようだな。
私は利根川氏を見捨てる気はない。むしろ、戻ったならば積極的に話を聞くつもりだ」
「え………?」
思わず足が止まってしまった。だがグラハムが足を止めないので慌てて後を追う。
「だが、利根川翁は最後を間違えて」
「ああ、そうだな。だが……私は逆に信用した。
彼は帝愛のゲームに大きく関わり知っているということをな」
「え!?」
「むしろ3つとも当てる事ができた方が私の疑念は大きかっただろうな。
そうなると、ギャンブルルームに既に行っていたという可能性がどうしても頭を離れない」
「そ、そういえばそうだ」
「だが彼は2つを当てて1つを間違えた。
もし彼が既にギャンブルルームに行っていたならそんなことをする必要が無い。わざと間違えてわざわざ信用を下げる真似はしないはずだ。
つまり、彼は本当に帝愛の関係者であり最後の1つは帝愛のものではなかった、という彼の理由は真実味を帯びてくる」
「グラハム……」
階段を降りながらグラハムの顔が曇るのが分かった。
その顔で分かった。本当は軍人として市民である利根川翁を追い詰めた事を気に病んでいたんだと。。
でも、それは衣のためだ。
老獪な利根川翁に衣が利用されないように、あそこまで利根川翁を追い詰めて……。
「グラハム。それでもまだ利根川翁を疑っているのか?」
「一抹の、な。もしかしたらあれすら演技では、という疑念はある」
「それはない!」
「衣?」
衣の断言にグラハムはやっと足を止めてこっちを見た。
「衣は色んな相手と麻雀を打ってきた。その過程で、相手の一喜百憂をいくつもいくつも見てきた」
「憂が多いな」
「う。そこは気にするな!
だから衣は面と向かえば本当に怒っているか本当に喜んでいるか、少しはわかる自信がある。
利根川は本物だったと思う。2回目までは本当に喜んでいた。2回連続で和了できたようなそんな顔だ。
そして最後の時もだ。倍満に振り込んでしまったような、そんな顔だ。何回も見たから……わかるんだ。
あれは演技ではなかった。衣が保証する!だから」
と、そこでグラハムがずいっと近づいてきて
「失礼」
「ふ、ふわ……」
ま、また……あ、頭をぉ……。
「いきなり、な…」
「失礼だと言った、とは2回目だな。
何。君は本当に優しい子なのだなと思っただけだ」
「こ、子供扱いするなぁ」
「またも失礼してしまったか。
ならばこう言おう。
君は本当に優しい女性だ」
「っ!! そ、そんな甘露のような台詞を真顔で言うなー!!」
うう、グラハムめ。撫でるのをやめろー!
======
【白井黒子 ギャンブル船/3階スイートルーム前 -0:33:58】
目の前の景色が変わり、かすかな浮遊の後わたくし達は床に降り立ちました。
床の厚さがわからなかったので少し長めに飛びましたが、大丈夫だったようですわね。
と、そんなことを考えている場合ではありませんでした。
「嫌だぁ……嫌だぁぁ!」
「しっかりしろ秋山! 落ち着け!」
わたくしが肩を抱く秋山さんは完全に恐慌状態。嫌だ嫌だと叫び涙を流して震えている。
一方、便宜上肩をつかんだ衛宮さんはその彼女をなだめようと必死。ですが効果はなさそうですわね。
やはり、ここは。
「衛宮さん。そこの部屋にわたくしと秋山さん2人で入ります。彼女もベッドなどがある場所なら少しでも気持ちは和らぐでしょうし。
衛宮さんは申し訳ないのですけど、ここで見張りをしていただけますか?」
「それは構わないけどさ……やっぱり俺も中に」
「こういう時は同姓の方が心を開いてくれるものですのよ?」
「………変なこと、するなよ?」
「わたくしはお姉さま一筋ですのと何回言えばいいんですの」
釈然としない顔の衛宮さんを廊下に置いたまま、わたくしと秋山さんは部屋に入りました。
内装はかなり豪華。どうやらスイートルームのようですわね。
まあそんなことを考えてる場合ではないのですけれど。
「痛いのは嫌だぁ……嫌だぁ……!血……血っ……!」
「落ちついてください秋山さん!」
ベッドに未だ狂乱する秋山さんを座らせ、わたくしは落ち着かせようと声をかけ続けることにしましたわ。
そうしながら思い返しますの。
なんでこうなってしまったのか……。
Eカード、『勇者の道』の説明を聞き終えた後のこと。
秋山さんがあるボードを指差したんですの。それは『奴隷』『皇帝』の文字や勝敗と書かれていたことからおそらくはEカードのスコアボード。
説明を受けた後ならばほとんどの意味は分かる……なのに、1つだけわからない項目が。秋山さんはそれに気づいてしまったんですの。
『距離』という項目に。
思えばあそこで止めておくべきでした。
けれどわたくしも衛宮さんも『距離』が何を表すのかわからなかった。だから気になってしまった。
秋山さんの疑問に、黒服はこう答えましたの。
このEカードにおいては、ペリカ、血液(これを聞いた時既に秋山さんはグロッキー状態でした。衛宮さんは激昂しておりました)の他に代償が許されると。
わたくしが嫌な予感がよぎった時にはもう遅く、男は奇妙な器具をカウンターの上に置きました。
少し形の違う2種類の器具。何かを覆うような形状。そしてその中を貫通している棒。
その棒の先には……針が3つ三角型に取り付けられた凶悪な形のものが。
『距離』という単語に何か思い当たったのは、おそらくその時点でわたくしだけ。
わたくしが黒服の男を止めようとした瞬間、奴は言いました。
『代償は耳もしくは目。負ければ針の距離が進み……耳は鼓膜を破られ、目はその中心を粉砕される……!』
血液を抜く、よりも痛々しい、味わいたくない代償。
それを想像してしまった秋山さんがついに錯乱してしまったんですの。
今までのストレスが関を切ったように、ダムが崩壊するように流れ出した。
こうなればもう説明どころではありません。又のお越しを、という男の言葉を他所にわたくし達は部屋を出ました。
ギャンブルルームは広い為周辺に客室はなし。
錯乱したまま船の中を歩き回らせるわけには行かないので、見取り図を頼りに2階へと空間移動。そして今に至るわけですの。
「助けてぇ……助けて律……助けて皆……」
友人達の助けを求める秋山さん。
『弱い』などと蔑む事はできません。むしろこれが普通。わたくしこそが異常なのですから。
それに、これはわたくしの責任。
こういった方を守り通すことこそが『風紀委員』の仕事だというのに。『距離』などに目を引かれていなければ。
彼女の肩を抱き、自分や衛宮さんがいることを言いながら、わたくしは考えます。
『参加者の居場所』。それはわたくしたちの持つ全財産ペリカでやっと1人分。
つまり今のままでは1人分の情報しか貰えない。しかもその時間はたった1時間。
距離が遠ければすぐに移動しなければいけない時間。つまり他の2人を振り回す事になる時間。
3人とも捜し人がいる中でこの状況。
わたくしはギャンブルなどする気はなかった。けれど、それでは手に入る情報は1人分だけ。
となれば、ペリカを手に入れなければいけない。問題はその方法ですわね。
わたくしと同じようにペリカを支給された参加者を捜す――これが1番堅実。ただし捜して歩き回るにはリスクもある。
施設内にペリカがないか捜す――これは不確実ですわね。
そして……ギャンブルゲームでペリカを得る。
わたくし達には今3000万の元手。負けても血液は抜かれないし耳を破壊されることはない――鉄骨渡り以外は。
けれど、1文でも負ければ情報に手が届かなくなる。
こういう時ギャンブルに精通している人間がいれば頼りになるのですけれど……。
秋山さんは論外、衛宮さんも反応からしてギャンブルをよくやっているとは思えない。
勿論わたくしも賭け事など嫌いですのでまったくやったことはありません。
では素人同然のわたくしたちがギャンブルに勝つには――――必勝法を掴むしかない。
けれどそんな時間があるんですの? そしてそんな方法がそもそもあるんですの?
わたくしの長所。『空間移動』。
これを利用すればもしかしたら――。
けれどそれは向こうとて承知のはず。となればわたくしの『空間移動』を阻害する何かがあるかもしれない。
それにそもそも、『空間移動』によるイカサマ……わたくしの『風紀委員』としてのプライドがそれを許したくない。
そんなことを言っていられる状況ではないとはわかっていても……!
けれど、目の前で震えて泣く秋山さんを見ると、だんだんと心が揺れてくる。
使ってしまえ。『空間移動』を使ってしまえと。
お姉さま………わたくしは、どうしたらいいんですの………?
======
【利根川幸雄 ギャンブル船/3階スイートルーム -0:30:04】
小娘どもへの怒りをぶつけるかのように寿司を口に放り込んだわしの下に、あわただしい音が聞こえてきた。
憎らしい小娘どもが戻ってきたにしてはやけに早い。それに、音がしたのは……隣の部屋だ。
部屋が空いた音と駆け込む音。
おそらく誰かが部屋に入ったんだろうが……気になる点がある。
わしは寿司を食いながらも廊下に耳をすませていた。
だが廊下を歩いてくる足音はほとんどなく、扉が開き誰かが入った。
まるで廊下に突然現れたような感じだ。わしが聞き落としたのか?いや、それとも……。
わしは音を立てんように扉に近づき、耳を扉に近づけた。
「大丈夫かな秋山……白井が付いてくれてるから大丈夫だとは思うけど、さ。
くそ、あいつ……笑いながらあんなこと言いやがって。帝愛、どこまで外道なやつらなんだ……!」
聞こえてきたのは若い男の声。さっきの若造よりも若い、小僧だ。
声に満ちているのは心配と憤慨。
わしは聞こえないようデイパックから名簿を出し今の声で聞こえた『秋山』、『白井』を捜してみる。
あった。
『秋山澪』と『白井黒子』。名前からして2人共女だな。
その後も奴はぶつぶつと独り言をしていた。
おそらく独り言で自分の精神を落ち着けるタイプのようだ。そういうタイプはいる。
自分の言葉を出して自分の心を確認する、そういう奴が。
駄目だな小僧。そんなんじゃ社会に出ても落ちるだけだぞ。
いくら廊下に誰もいないといってもこうやって耳を澄ます男がいるのだからな。
奴の独り言から判断すると、どうやら奴らはギャンブルルームに行き、そこでルール説明の際に秋山澪が錯乱。
ギャンブルルームを出てここまで移動してきたらしい。
ふん。説明如きで錯乱するとは……秋山澪、確実に弱者……足手まとい……!
まあ肉の盾にはなるだろう。まあこいつらに利用価値を見出したらの――
『こっちには三千万の元手があるとはいえ……やっぱ足りない。ギャンブルで増やすしかないのか?
遊戯台にイカサマがないかどうかはわかるかもしれないけど……。
そういえばさっき、ここまで飛んできた白井の能力は……『魔術』なのか? 聞きそびれたけど、後で聞いてみようか』
な、何?
今こいつ、とんでもない情報をどんどん吐き出したぞ!?
三千万の元手。
つまりこいつらは既に三千万ペリカを持っていることになる。
わしにはない。若造鬼子らにもない。わしらは血液や目、耳を差し出さなければギャンブルができない。
だがこいつらは違う。もしこいつらのペリカ、なんとか分けてもらうか奪う事が出来れば……。
遊戯台にイカサマがないかわかるかもしれない。
馬鹿な。一体どうしたらそんなことができる?
こいつ、何かそういった技能でも持っているのか?
ここまで飛んできた能力、だと?
飛んできた、となると足音が無かったのは頷ける。
そして飛ぶという単語には聞き覚えがある。あの遠藤とかいう奴の言葉だ。『部屋から飛ばす』と。
わしは結局5分の間部屋にいたらこの豪華な部屋にいつのまにかいた。だから『飛んできた』というのも納得できないでもない。
もしそれとその女の能力が同じならば……白井黒子、とんでもない駒になるかもしれん。
そして……『魔術』?
奴らが開会式で言ったのは『魔法』だ。
わしからすれば代わりは無いが、この男、本当にそんな違いで使ったのか?
普通なら開会式の言葉を受けて『魔法』と言う。大きな違いは無いんだからな。
ということは、こいつは……『魔術』という何かを知っている。
もしかしたらそれは帝愛が買った『魔法』と関係あるかもしれん。
つまりコイツは『魔法』に食い込む楔になる……!?
これは……チャンス。
鬼子たちにちらつかされた、偽りのチャンスではない。
わしのもとに舞い込んだ、偶然のチャンス! いや、わしが引き込んだ!
隣の部屋に、しかもあの忌々しい2人が離れたまさにそのタイミングで!
強力な駒が2人も近づいてきた! 1人邪魔なのがいるがまあ許容してやる。
さあどうする?
接触せずにこいつらを見逃す―――悪手……!そんなのはリスクをおそれて賭けに出ない、逃げ……!ここで勝負に出ないでどうする!
接触は確定だ。問題はその後。どう奴らを手なずけ、取り込むか。
そしてその後。
あの忌々しい2人の処理だ。
戻ってくるのを待って合流――これはアリだ。もし3人を味方につけられれば数はこっちが有利。奴らをグループ内で劣勢に追いやる事もできるっ!
奴らを殺戮者だと教えて排除する――これは少し危険か。なにしろわしは3人の戦力を知らん。2人は若造が拳銃、小娘は戦闘で役立つはずがない。
有利……だが、油断はできん。
そうだ、油断だ。さっきのわしにはそれがあった。
慢心、油断。それがわしの目を曇らせ、まんまと天江衣の罠にかかってしまった。
勝利しつづけた奴らが油断し、堕落していく。そんな様は何人も見てきたというのに!
わしはまだ腑抜けていたようだ。酔いがそうさせたのかもしれんが、そんな言い訳はできん。
わしは失敗した。マイナスだ。ただし、失敗は必ずしも終わりと=ではない。
失敗には2種類ある。『致命的な失敗』と『そうでない失敗』。
そして『そうでない失敗』にも2種類ある。『どうでもいい失敗』と『成功への布石になる失敗』だ。
カイジはそうだった。奴もEカードでは失敗していた。
だがそれはわしを油断させ成功に繋がる失敗だった。
そうだ。まだ大丈夫。まだこの失敗は致命的ではない。まだプラスで補えるマイナスだ!
この失敗はわしを目覚めさせた。夢から、酔いからさめさせた!
もう油断はしない。もう慢心はしない。それを心に誓う。
ここが正念場だ。
わしはここにいる5人の所在を掴んだ。奴ら同士にはどうやら存在を確認していないらしい。
そう、つまりわしだけ……わしだけが知っている! 5人全員の存在と場所を!
だからこそ、ここが勝負時!分水嶺!天下分け目……!
乗り越えてやる。
試練を。苦境を。逆境を。
そして再び這い上がるのだ。
全てを見下ろし、安全≪セーフティ≫を約束されたあの場所に!
=====
利根川はほくそ笑む……!
希望の船、エスポワール。そこに集った人間、全員の運命は自分次第だと信じて……!
全員自分が掴んでいると信じて……!
確かにそれは正解……黒服を除けば、利根川はこの船にいる全員を知っている……!
がっ……利根川は知らない……!
この船に、『まだ』入っていない2人組がいることを……!
そしてその2人のうち、1人は自分にとって因縁であることを!
まだ知らない……!
=====
【伊藤開司 港/民家 -0:25:33】
シャッ、という音と共に俺はわずかにカーテンを開けた。
窓から見える、その先には……船。俺にとっては見覚えがあり、できればもう見たくなどなかった船だった。
エスポワール。
俺と『帝愛』の因縁の始まりで、俺が騙された場所で、俺が運命共同体を作った場所で、俺が勝利した場所で、そして俺が裏切られた場所……。
それが港に止まり、船頭側と船尾側両方からタラップを降ろして停泊している。ギャンブル船という名で地図に書かれているのだからおそらくこいつが出航することはないのだろう。
俺の視点からはそのタラップが2つとも見える。つまり、船に入る場合は必ず俺の目に留まるわけだ。
何回か間を置いては見ているが、未だに船に入っていく者はいない。
だが、中には必ずいるはずだ。
ギャンブル相手として待機しているはずの、サクラ参加者の利根川が!
俺と八九寺が未だに船に入らないのも1つは奴が原因だった。
ここは奴の砦も同然。俺達がいるのはその砦の門前……。
そこにフラフラと無防備に入っていっていいのか? いや、よくない。
しかも俺達はここまで4時間山道を歩き通し……疲労している。
奴はサクラである以上、武器を優遇されている可能性が高い。
マシンガンとかショットガンとかが俺の脳裏に浮かぶ。
いきなり攻撃は無いとは思うが、万が一ということはある。
だから俺は慎重に動く事にした。
まずは休憩。近場の民家で休憩し、体力を回復させる。
時折船に入っていく奴らを確認しておく。そして様子を見る。
八九寺は少し渋ったが、あいつも疲れているのは事実だったみたいで提案には乗った。
民家で手ごろなベッドを見つけた俺はそこで八九寺に睡眠するよう言った。
『寝ている間に……!?』とかふざけたこと抜かした八九寺だったが、時々まぶたが降りそうになっているのを俺は見逃さなかった。
結局、『カイジさんは隣の部屋です』と言われ俺は隣の部屋で見張りをすることにした。
鍵までかけやがって。ちゃんと寝てるんだろうなあのガキ。
利根川はほくそ笑む……!
希望の船、エスポワール。そこに集った人間、全員の運命は自分次第だと信じて……!
全員自分が掴んでいると信じて……!
確かにそれは正解……黒服を除けば、利根川はこの船にいる全員を知っている……!
がっ……利根川は知らない……!
この船に、『まだ』入っていない2人組がいることを……!
そしてその2人のうち、1人は自分にとって因縁であることを!
まだ知らない……!
=====
【伊藤開司 港/民家 -0:25:33】
シャッ、という音と共に俺はわずかにカーテンを開けた。
窓から見える、その先には……船。俺にとっては見覚えがあり、できればもう見たくなどなかった船だった。
エスポワール。
俺と『帝愛』の因縁の始まりで、俺が騙された場所で、俺が運命共同体を作った場所で、俺が勝利した場所で、そして俺が裏切られた場所……。
それが港に止まり、船頭側と船尾側両方からタラップを降ろして停泊している。ギャンブル船という名で地図に書かれているのだからおそらくこいつが出航することはないのだろう。
俺の視点からはそのタラップが2つとも見える。つまり、船に入る場合は必ず俺の目に留まるわけだ。
何回か間を置いては見ているが、未だに船に入っていく者はいない。
だが、中には必ずいるはずだ。
ギャンブル相手として待機しているはずの、サクラ参加者の利根川が!
俺と八九寺が未だに船に入らないのも1つは奴が原因だった。
ここは奴の砦も同然。俺達がいるのはその砦の門前……。
そこにフラフラと無防備に入っていっていいのか? いや、よくない。
しかも俺達はここまで4時間山道を歩き通し……疲労している。
奴はサクラである以上、武器を優遇されている可能性が高い。
マシンガンとかショットガンとかが俺の脳裏に浮かぶ。
いきなり攻撃は無いとは思うが、万が一ということはある。
だから俺は慎重に動く事にした。
まずは休憩。近場の民家で休憩し、体力を回復させる。
時折船に入っていく奴らを確認しておく。そして様子を見る。
八九寺は少し渋ったが、あいつも疲れているのは事実だったみたいで提案には乗った。
民家で手ごろなベッドを見つけた俺はそこで八九寺に睡眠するよう言った。
『寝ている間に……!?』とかふざけたこと抜かした八九寺だったが、時々まぶたが降りそうになっているのを俺は見逃さなかった。
結局、『カイジさんは隣の部屋です』と言われ俺は隣の部屋で見張りをすることにした。
鍵までかけやがって。ちゃんと寝てるんだろうなあのガキ。
俺も眠い事は確かだが、ガキよりは夜に強い自信がある。
それにガキに見張りさせて寝るなんて不安で仕方ない。俺は手元の拳銃を握り、水を飲んだ。
待っていろ利根川……。
『会長』の奴が主催でお前の上にいるなら、Eカードの対戦はまだ有効なはず!
必ずお前を倒して、石田さんや佐原たちに謝らせる! そしてこの殺し合いについても全部吐いてもらう!
希望の船とか言っていたな。
俺は一度掴んだんだ。泥まみれに傷だらけに涙まみれになって掴んだ……!
今度も掴む! お前から奪う! 希望を……俺の……俺や八九寺の希望を……!
=====
天江衣は自分が誤解されているとも知らずに利根川を心配する。
グラハム・エーカーは衣の優しさを撫でる事で褒め称える。
秋山澪は血や怪我の恐怖で親友達に助けを求める。
白井黒子は少女の恐怖と自らの禁断を秤にかける。
衛宮士郎は自分が情報を漏らしているとも知らず自分の精神を確認する。
利根川幸雄は誤解を含み強力な駒を手にせんと手を模索する。
伊藤開司は敵でないものを敵とし尚魔法を否定しながら休息を得る。
八九寺真宵はカイジの危うさを知りながら黙して隣室に潜む。
希望の船『エスポワール』。
集う者たちは皆希望を求める。
だが、最後に手にできるのは……わずか。
何人が堕ち、何人が助かるか。
その内に誤解や疑念を孕みながら、鉄の巨船は黙して語らない。
もうすぐ1回目の放送(サイレン)が鳴り響く。
希望への『試練』はまだ、始まったばかり……!
【B-6/ギャンブル船・2階3階間の階段/一日目/早朝】
【天江衣@咲-saki-】
[状態]:健康
[服装]:いつもの私服、ぬいぐるみを抱いている
[装備]:チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、麻雀を通して友達を作る
1:グラハムについていき、利根川を受け入れる。
2:ひとまず一万ペリカを手に入れて、ギャンブル船で『麻雀牌セット』を手に入れる
3:そしてギャンブルではない麻雀をして友達をつくる
4:まずはグラハムに麻雀を教える
5:チーズくんを持ち主である『しーしー』(C.C.)に届けて、原村ののかのように友達になる
6:利根川は…怖い……でも助けたい。
【備考】
※参戦時期は19話「友達」終了後です
※グラハムとは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。
※参加者は全員自分と同じ世界の人間だと思っています
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退
0:黒服と答えあわせをした後、利根川に謝罪し同行。情報を得る。
1:主催者の思惑を潰す
2:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける
3:地図が本当に正確なものかどうかを確かめるために名所を調べて回る
4:衣の友達づくりを手伝う。ひとまずは一万ペリカを手にいれ、『麻雀牌セット』を買ってやりたい
【備考】
※参戦時期は1stシーズン25話「刹那」内でエクシアとの最終決戦直後です
※衣とは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※刹那・サーシェス以外の参加者が自分とは違う世界の人間であることに気づいていません
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
【B-6/ギャンブル船・3階客室303号室/一日目/早朝】
【利根川幸雄@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 悪酔い(大分冷めてきた)
[服装]:スーツ
[装備]:Draganflyer X6(残りバッテリー・20分ほど)、即席の槍(モップの柄にガムテープで包丁を取りつけた物)
[道具]:基本支給品一式、シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)@現実×26本
:特上寿司@現実×61人前、予備バッテリー残り×4本、空のワインボトル×4本
[思考] 基本:ゲームからの脱出。
1:油断、慢心はしない。
2:集団を作り、脱出への突破口を模索する。他人は利用。カイジと遭遇しても集団に引きこむ。
3:隣の部屋の3人と接触する。グラハムたちを取り込むか、排除するか…?
※天江衣が自分を嵌めたと思い込んでいます。
※ギャンブルルームについて情報を知りました。
【B-6/ギャンブル船・3階305号室/一日目/早朝】
【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]: 健康
[服装]: 常盤台中学校制服
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、ペリカード(3000万ペリカ)@その他、不明支給品(0〜1)*本人確認済み
[思考]
基本: 殺し合いはせずに美琴、澪や士郎の知り合いを探し出しゲームから脱出する
0:澪、士郎と行動を共にする
1:澪を落ち着かせる。情報の為にギャンブルをするか否か。
2:互いの信用できる知り合いの探索
3:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限
距離に反比例して精度にブレが出るようです。
ちなみに白井黒子の限界値は飛距離が最大81.5M、質量が130.7kg。
その他制限については不明。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
【秋山澪@けいおん!】
[状態]: 健康 、錯乱状態
[服装]: 桜が丘高校制服
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式
[思考]
基本: 死にたくない。殺したくない。皆に会いたい。特に律に会いたい。
0:士郎、黒子と行動を共にする
1:嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
2:知り合いを探す
3:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
【B-6/ギャンブル船・3階305号室前廊下/一日目/早朝】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]: 健康、額に軽い怪我(処置済み)
[服装]: 穂村原学園制服
[装備]: カリバーン@Fate/stay night
[道具]: 基本支給品一式、モンキーレンチ@現実 、不明支給品(0〜2)*本人確認済み
[思考]
基本:主催者へ反抗する
0:黒子、澪と行動を共にする
1:女の子を戦わせない。出来るだけ自分で何とかする
2:澪が落ち着くのを待つ。部屋の見張り。
3:セイバーや黒子、澪の信用できる知り合いを探す
4:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※参戦時期は第12話『空を裂く』の直後です。
※残り令呪:1画。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
【B-6/港近くの民家/1日目/早朝】
【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 疲労(小)
[服装]:私服(Eカード挑戦時のもの)
[装備]:シグザウアーP226(16/15+1/予備弾倉×3)@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考]
基本:人は殺さない……なるべく……なるべく人が死なない方向でっ……!
1:八九寺真宵と一緒に行動する。
2:民家で体力を回復させてから船へ向かう。船へ行く人物を見張る。
3:ギャンブル船に向かい、待っているであろう利根川を倒し情報を引き出す。
4:『部屋から会場への移動方法』を魔法なしで説明可能にする。
5:『5分の退室可能時間』、『主催の観覧方法』が気になる。
6:八九寺のボケは基本スルー。
[備考]
※Eカード開始直前、賭けの対象として耳を選択した段階からの参加。
※以下の考察を立てています。
・帝愛はエスポワールや鉄骨渡りの主催と同じ。つまり『会長』(兵藤)も主催側。
・利根川はサクラ。強力な武器を優遇され、他の参加者を追い詰めている。かつギャンブル相手。
・『魔法』は参加者達を屈服させる為の嘘っぱち。インデックスはただの洗脳されたガキ。
・戦国武将はただの同姓同名の現代人。ただし本人は武将だと思い込んでいる。
・八九寺真宵は自分を幽霊だと思い込んでいる普通人。
※デイパックの構造に気付いていません。
※黒子たちの到着後に到着したため、黒子達を確認していません。
【八九寺真宵@化物語】
[状態]:健康 疲労(小)、睡眠中?
[服装]:私服、大きなリュックサック
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品×1〜2 紬のキーボード@けいおん!
[思考]
基本:まずはお約束通り、知り合いを探してみることにしましょう。
1:?
2:伊藤開司と一緒に行動する。話し相手は欲しいので。でも微妙に反応がつまりません!
3:阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎを捜す。
[備考]
※「まよいマイマイ」終了後以降からの参加。
※デイパックの構造に気付いています。
※黒子たちの到着後に到着したため、黒子達を確認していません。
【ギャンブル船について(追記)】
賞品の中に【参加者の現在位置(1時間) 3000万ペリカ】がある。位置は要求者のデバイスにリアルタイム送信される。1時間有効。
更に長い時間有効なものは更に高額になる。
またギャンブルルームにおける『戦闘行為の禁止』には穴あり。
ギャンブルルーム外からの攻撃に対しての対応は不明。
タラップは船頭側と船尾側にあり、船頭側に駐車場がある。
施設の位置は、甲板下の3階にスイートルーム客室、食堂。2階にギャンブルルーム。1階に駐車場。他にも施設は存在している。
投下終了です。
多数の支援ありがとうございました。
感想の間もなく投下開始したのは失礼でした。申し訳ありません。
ご意見ご感想矛盾点など、ぜひここや避難所にお願いします
>>58 投下&代理投下乙ですー。
うーむ、キャプテン……何と痛々しい。しかもこれで放送……
ライダーさんは何か変な、と言うと失礼だけど変わったフラグが立ってますね。
>>145 投下乙ですー。
まず一言。 そんなギャンブル判ってたまるかw
8人いや9人か、上手く丁寧に捌いていて判りやすかったです。
状況の交錯が上手いと思いました。
投下&代理投下乙
あずにゃんはここで脱落か
相手が悪かったな
そして何か重要なアイテムが出たけどどうなるんだ?
投下乙です
黒服入れて9人をよく描き切った。それでいて判りやすかったぞ
利根川は相変わらず黒いな。でも深読みしすぎだぞ。全然大丈夫じゃないぞw
衣は優しいしグラハムはまだまだ甘いぞ。人間らしいとも言いかえれるけど
黒子、能力を使うことを躊躇う時じゃないぞ。でもどこまでやれるか不安だ
澪、泣いてる場合じゃないってw
士郎、お前は知らない内にフラグ立ててるぞw
そしてカイジが来たか。利根川いるがそれは偶然だぞ。不安だ
投下乙です
>存在 ◆dGkispvjN2
あずにゃーん・・・ここに来てからいろいろあったがその結末がこれか・・・
でも何の力もないただの一般人なら仕方ないか、翻弄、言い得て妙だな
>試練/どうあがけば希望?
とりあえず利根川ドンマイwそして衣を恨むのは筋違いだw
さてここから挽回なるか、外のカイジは相変わらず勘違いしたまんまw
149 :
146:2009/11/15(日) 23:09:22 ID:z9YQJksb
あれ、何か変なミスした
>>82 投下&代理投下乙ですー。
梓……何と言えばいいのか……
状況が上手く回ればもっと良い方向に向かう期限だったのかな。
アラヤの話は難しいw この再現度合いは凄いです。
何か勘違いしてうっかり見逃して申し訳ありませんでしたorz
梓にゃんでは駒に成り得なかったか・・・
皆様、投下&代理投下乙です
>恐怖の調理法あれこれ
キャプテン…
強いけど痛々しい、泣いてもいいんだよ、一般人なんだから…
ライダーさんに変なフラグが…
>存在
あずにゃんが落ちたか…
死者スレでは部長にちゃんと謝っとくんだぞ
>試練/どうあがけば希望
よく黒服含め9人を動かしますな、感服です
利根川よ、深読みしすぎだ…というかそこまで読むなら帝愛オリジナル以外のギャンブルが入ってる可能性に辿りつけって…まあこんな状況だから無理か
しかしミオが終始一貫して一般人だw
こっちはこっちで大勢力ができそう、カイジももとから利根川を殺す気はないし、寿司とワインを見たら戦意もなくなるだろう
投下乙
>
ライダーの雑音が気になるな。禍となるか福と転ぶか…。キャプテン、泣かないという事は一見健気だが、それは感情を押さえ込むという事…!
そして小十の死は何処までもこれから取る行動を束縛していく…!思考の墓場…!
>荒耶…より橙子の首の方が気になるな。何故主催はこんな自分達へのジョーカーに成りうるものを用意したのか…?梓は乙。罪を重ねないだけよかったか?
>エスポワール…カイジと利根川はそう心配する事はないな。それより憂が乗り込めば希望の船は絶望の船になりそうだ。安藤も罪な事を教えたな…。
153 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 00:20:36 ID:8+yy/uNa
荒耶宗蓮、代理投下します
そこは暗闇と呼ぶに相応しい空間であった。
外部からの明かりはなく、地下室なのか地上の密室なのかすら明瞭ではない。
天井も壁も見えず、無間の闇と見紛うばかり。
ただひとつ、床に置かれた鉄板だけが明るかった。
真っ赤に灼熱した大きな鉄板が、辺りを照らしあげている。
「動いたか――」
深すぎる闇と熔炉の如き光の境界で、荒耶は重い瞼を開いた。
一汲みの水が赤い鉄板へと自動的に注がれる。
水は瞬時に加熱され蒸発し、上昇気流に乗って舞っていく。
ちらつく赤光が、荒耶の彫刻じみた面差しに陰影を作る。
もはや他の表情を忘れたとしか思えないほどに、苦悩を刻み込まれた貌であった。
「争い合う者達ではないと思っていたが、こうも想像通りとはな」
荒耶は意識を飛ばした先で知覚した情景を思い起こし、低く呟いた。
この体内も同然の異界において、荒耶は他者にはない知覚を持つ。
ひとつは、生じた異変を感じ取る常時の知覚。
ひとつは、意識を飛ばすことで得る知覚。
前者で得るのは、参加者の大まかな位置と生死。
ここが体内である以上、内部の状況は把握できて当然である。
小川マンションにおいて、コルネリウス・アルバの死と、彼が死んだ場所を即座に把握したように。
後者で得るのは、その場で監視するも同然の情報。
肉体の昏睡というリスクはあれど、状況を仔細に確かめることができる。
アルバが果てた後、戦場となった一階ロビーへ意識を飛ばし、事の顛末を確かめたように。
どちらも彼だけに許された多大なアドバンテージである。
そしてつい先ほどまで、荒耶は後者の知覚を用いてD-6駅の周辺を監視していた。
目的は無論、両儀式。
付近にいたのは、セイバー、デュオ・マックスウェル、枢木スザク、真田幸村、阿良々木暦の五人。
どれも無益な殺戮を肯定する者ではない。
この程度のことは、事前の情報と前者の知覚のみでも知りうることだった。
荒耶が求めていたのは、両儀式の行動指針である。
そこを把握しておかなければ、今後の活動に障りが出るからだ。
結局、彼らは巨大な集団を成すことなく別れていった。
両儀式とデュオ・マックスウェルは共に北へ。
枢木スザクは単独で西へ。
セイバーと阿良々木暦、真田幸村らは駅に残留。
最も望ましいのは両儀式が単独行動することであったが、これ以上は求めるまい。
万が一、セイバーと行動を共にされていたら、攻め落とすことすら至難であっただろう。
それを考えれば随分と楽なものだ。
「だが移動速度の上昇は厄介だ。奴らめ、余計なものを用意する」
荒耶は毒づき、音もなく立ち上がった。
計算外のことがあるとすれば、車両による移動だ。
列車の運行が停止したため、当分は駅周辺から離れまいと踏んでいたが、計算を改める必要があるだろう。
『主催』と一口に言ってもその内情は一枚岩ではない。
会場を創った荒耶の仕掛けを他の者が知らぬように、他の者が用意した部分を荒耶は熟知していない。
担当した者が自分自身の利益を求め、どんな仕込みをしているか知れたものではなかった。
支給品などがそのいい例だ。
自分が選定に関与していたなら、蒼崎橙子など決して紛れ込ませてはいない。
よもや他の主催こそが抑止力ではあるまいな――
荒耶は嗤うこともせず呟いた。
「ならばこちらも動くのみ」
異界に関しては荒耶がほぼ掌握している。
この肉体が滅びるという不測の事態への備えこそあれ、常に主導権は荒耶にあるのだ。
例えばこの工房もそうだ。
荒耶が支配する、荒耶だけの領域。
水が弾け、蒸気に変わる。
上昇気流に乗った水蒸気は、どこかに吸い込まれるように消えていった。
腕を伸ばし、五本の指を順に握りこむ。
そのまま肘を折り畳み、だらんと垂らす。
肉体の機能を確かめるような動きを繰り返してから、荒耶は口を開く。
「六割――いや、七割か。やはりそう早くは馴染まぬとみえる」
制限――
多くの参加者に架せられた、力の差を縮めるための措置。
だが、荒耶のそれは通常の制限とは異なっていた。
端的に言えば、肉体そのものが制限の発生源なのだ。
蒼崎橙子ほどではないが、荒耶も人形を創る技術には長けている。
今まで使ってきた数多くの肉体と同様、この身体もそうして創り出したものだ。
新しい身体に乗り換えたときは、いつも馴染むまでに時間が掛かる。
その期間こそが荒耶に付与された制限の正体。
ぷしゅー、と蒸気の音がする。
ごぽごぽ、と泡立つ音がする。
荒耶は、参加者であると同時に主催者である。
本来なら、安全な場所で異界の管理を行うべき立場にありながら、あえて戦場に踏み込んでいるのだ。
このような奇行が怪しまれないはずがない。
故に、荒耶は他の主催達に偽りの理由を伝えていた。
『死の観察と蒐集』
殺し合いという特異な状況において、人がどのように人を殺し、どのように死んでいくか。
またその際、魂がどのような様相を呈するのか。
それを調べる魔術的研究であると法螺を吹いたのだ。
この空間も研究に使う工房という名目で用意した。
異界の中において更に特別。
不信感を抱かせぬため、存在自体は奴らに教えてあるものの、干渉の困難性は群を抜いている。
恐らくは如何なる方式の監視であろうと受け付けまい。
当然だが、死の蒐集で荒耶の本来の目的は達成されない。
そんなことはとっくの昔に分かっている。
しかし典型的な俗物である遠藤は、自分に縁のない哲学的なことだと解釈し、嘲笑混じりに参加を了承した。
禁書目録は実験の成果を疑問視したが、害のない研究であると判断し、最終的にはこれに応じた。
ただし本来の目的を妨げないための処置として、荒耶に一つの条件を提示してきた。
馴染みにくい身体を使うこと。
何か別の目的があると呼んだのか、最初から殺し尽くされては困ると考えたのか。
或いは、時間が経つほど制限が緩んでいく殺害者という形式を望んだのか。
いずれにせよ飲めない条件ではなかった。
それが荒耶の制限。
時間の経過で消えていくハンディキャップ。
「感覚機能は――以前よりは良好か」
肉体の機能をあらかた確認し終える。
まだ完全には遠かったが、これまでよりは格段に良くなっているようだ。
不完全だった霊的感覚も戻りつつある。
御坂美琴を仕留めるのに手間取り英霊の介入を許したことや、中野梓の変化に戸惑ったような醜態は二度とないだろう。
そろそろ、本格的に動き出すべき頃合かもしれない。
荒耶は鳥篭大のガラス壜を台の上に置いた。
眠るように目を閉じた橙子の首が、液体の中でふわふわと浮かんでいる。
「蒼崎、貴様はそこにいろ。連れ歩いて死なれるわけにはいかん」
偽ることは厄介だ。
偽りを隠すため、更なる偽りを重ねなければならない。
荒耶は暗がりに置かれた筐へ視線を移した。
柱のような、人間を収めて余りある大きさの直方体。
美しい棺を思わせるそれを、焼けた鉄板が照らしている。
妖艶な赤に染まった溶液の中に浮かぶ、標本の少女――中野梓。
荒耶によって殺された少女は、荒耶によって肉体を保存されていた。
首輪はなく、代わりに縫い目が首を巡っている。
一度切り離された上で、肉体の機能を維持させるために繋ぎ直されたのだ。
人間としては死んでいるが、有機機械としては稼動しているという、境界の状態。
こぽりと、肺に残っていた空気が泡となる。
呼吸ではない。
抜け切れていなかった分が漏れただけ。
実験という名目で動いている以上、その行動は実験目的に即したものに見えなければならない。
喩え、蒼崎橙子の首の保管と両儀式の観察が主な目的であっても、手ぶらで研究室に向かったのでは怪しまれる危険がある。
そこで、他の主催に研究行為を強調する隠れ蓑として、荒耶は中野梓の亡骸を持ち込んだ。
『死の観察と蒐集』という命題と死体の確保は違和感無く合致する。
中野梓の亡骸が工房にある限り、工房へ戻るという行為への違和感が消滅するのだ。
杞憂かもしれないが、警戒を重ねるに越したことはない。
またカムフラージュ以外にも理由はある。
参加者の身体に何か仕掛けられていないか、それを調べるためのサンプルとしても使うつもりである。
他の主催が何を目論んでいるか分からない以上、慎重に慎重を重ねなければならない。
首尾よく両儀式を捕らえたとして、彼女の肉体に仕掛けが施されていたのでは堪らない。
いざという時に備え、調査用の肉体を確保しておく必要があったのだ。
だが死んだ細胞では作動しない仕掛けも考えられる。
中野梓を保管、修復したのはそのためで、調査をする前に組織が駄目になっては困るからだ。
また、本物の首輪を手に入れられたのも喜ばしい。
荒耶が付けているのはダミーの首輪であり、飾りも同然だ。
主催側であることが理由に挙げられていたが、実際のところは、解析試料を与えたくなかったということだろう。
他にも使いどころは色々と思い浮かぶ。
それにしても。
生きていた頃は無為であり、死して初めて役に立つとは、随分な皮肉ではないか。
荒耶は踵を返し、暗闇へ歩を進める。
偽りを隠すために偽りを重ねる。
いずれはそれが綻びとなり、真実を曝け出す。
しかし露見を先延ばしにすることは可能だ。
偽りが目的ではなく手段であるなら、露見する前に目的を果たせば良いのだから。
壁の前で立ち止まる。
うぃん、という機械音が鳴り、暗闇が裂けていく。
本来ありえない深さまで降下したエレベータが、異界の主を迎えるべく扉を開いたのだ。
「ゼロ――いや、張五飛。邪魔になるならば――」
ここへ来る前に聞いた宣誓を思い出す。
正体を偽っていたようだが、荒耶を誤魔化し切ることはできない。
影響がないのであれば、わざわざ始末するまでもないだろう。
だが、仮に――
扉が閉じ、再び光が消え失せる。
魔術師が消えた研究室に、蒸気の音が響いていた。
【E-5/展示場 地下/一日目/早朝】
※展示場の地下深部に荒耶宗蓮の研究室が秘匿されています
※「蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界」が研究室内に放置されています
【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:黒服
[装備]:ククリナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、鉈@現実、不明支給品(0〜1)、不明支給品(0〜1)
S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(6/6)、.38spl弾x53、不明支給品(0〜2)、
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。
1:式を追って北部へ赴く。
2:必要最小限の範囲で障害を排除する。
3:利用できそうなものは利用する。
4:ゼロ(張五飛)については判断を保留。
※首輪はダミーです。時間の経過と共に制限が緩んでいきます。
※ゼロの正体に気付いています。
: ◆C8THitgZTg:2009/11/16(月) 00:10:02 ID:Dqx0c/H6
投下終了です
本スレで規制に巻き込まれているため、どなたか代理投下お願いします
ジョーカーとして、そして自分の目的の為に暗躍する彼は以外としんどい立場だなw
あずにゃんの遺体も酷いことになってるなw
それと重要そうな首は地下か。どうなることやら
投下乙
地下に工房か・・・そこには全裸のあずにゃんの死体が展示されているのですね・・・
ヤバイ・・・すごく行ってみt(
思ったんだが死の蒐集ってことでロワに参加してるってことはこれからも荒耶は死体を見つけたら工房に展示することになるのか?
282 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/11/16(月) 00:55:41 0
ロワは咲豚に天誅を食らわす正義のコンテンツ
見ていて気分爽快だね
おい止めろって言っただろ隔離スレから出てくんなよゴミどもが
知るかとしか言いようが無いわけだが
ここで騒ぐより突撃した本人に忠告しろよ
こっちの台詞だ萌豚
・・・よく考えれば非はこっちにあるんだよな。不快な思いをさせてすまんかった
できるだけの対応考えるから今回はそれで勘弁してほしい
まぁ、好きなアニメキャラに殺し合いをさせてるような連中がまともな精神なわけないよな
萌え豚は自スレでブヒブヒ鳴いてろよ
投下乙です
さすが主催者の一人、地下にこんなものを用意しているとは
しかも徐々に制限が緩んでいくとか・・・もしかしてそのうち制限皆無のパーフェクトあらやんになるんじゃ・・・
投下乙です
ジョーカーはジョーカーで大変そうだ
あずにゃん、死んでまで酷いことに…
170 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 19:39:45 ID:wOPF7SZ+
琴吹 紬、千石 撫子、平沢 唯、船井 譲次、東横 桃子、代理投下します
地震雷火事親父。
日本人ならば誰しも聞いた事があるであろうこのフレーズからも分かるように、人々が生きていく上で『災害』という存在は切っても切れない関係にある。
そして、天災・人災を問わずに含むこれらの『災害』が発生した時に、最も恐ろしい物はその災害自身では無いとも言われている。
それは、被災者達を襲う混乱。パニック。集団ヒステリー。
正常な判断を失った人間は、短期的な生存を優先した挙句に異常な行動に出る。
災害発生時に何よりも恐ろしい障害となり得るのは、他でもない生存者自身なのかもしれない。
ならば、ある意味で人災とも呼べるであろう異常事態――閉鎖空間での殺し合い、それに付随して現れた『魔法』のように人を殺す少女の襲撃――に巻き込まれてしまった少女。
琴吹 紬は、どのような行動に出たのか。
先に述べた『生存者を襲うパニック』の点からいえば、紬は及第点であろう。
確かに常識では考えられぬ殺人鬼に命を狙われ、目の前で凄惨な解体ショーを見せつけられたにも関わらず、紬の精神はまだパニックに陥ってはいなかった。
その理由は、今現在彼女が手を引いているもう一人の少女にある。
彼女の名は千石 撫子。紬よりも2〜3歳は年下だと思われる、中学生ぐらいの女の子。
何故かアニメなどに対して非常にマニアックな知識を持ち、おそらく人見知りで恥ずかしがり屋。
紬が千石 撫子について知りえているのは以上で全てである。奇妙なアニメ談義の合間合間に挿入された自己紹介は、残念ながらお互いの名前についてのみだった。
だが現状、それ自体には何の問題も無い。この場で最も重要な情報を、紬は得る事が出来ていたからだ。
すなわち、彼女が自分と同じ少女であり、加えて自分よりも年下である事。
千石 撫子は、琴吹 紬よりも弱い存在であろう、という認識。
人は、自分よりも混乱している人間を目の当たりにした時、逆に平静を取り戻すという。
それとよく似た状況を今、琴吹 紬は体験している。
傍にいる相手が自分よりもか弱い人間であるからこそ、守ってやらなければならない相手であるからこそ、紬は恐怖心を抑え込み脱出に向けて行動する。
だから、その直後に起きた異常事態にもどうにか対応する事が出来たのかもしれない。
「………っ!!」
それは、丁度2階へと下りて1階へと向かう階段にたどり着いた時に発生した。
紬達の目の前で、鉄骨とコンクリートで作られた階段が『凶って』いく。
まるで雑巾か何かを絞るかのように鉄筋は崩壊していき、あっという間に出口への道は通行不能となっていた。
「そんな……!?」
愕然とした紬の呟きはミシミシという耳障りな音に掻き消された。
余りにもタイミングが悪すぎ……いや、良すぎる。僅かに内部を回っただけだが、少なくともこの学校は突然崩壊を起こすまでに老朽化しているとは思えない。
それも、ただ階段が崩れさるだけではない。まるで怪物が力任せに捻り潰したかのように、目の前の階段は『凶って』いったのだ。
まるで……つい先ほど目の当たりにした、奇妙な殺人を無機物で再現したかのように。
「……っ……く…」
肉体が弾け、臓物が千切れ飛ぶ。間違いなくR指定が付くであろうグロテスクな光景、そして生々しい臭いを思い出し吐き気を覚える。
どうにかそれを振り払いながら、紬は思考を巡らせる。
この崩落が偶然によるものには思えない。
現象の近似性から見て、どういう理屈かはわからないが――それこそ、あの遠藤という男の言う『魔法』か――これはあの殺人鬼である少女の手による物か。
自分達をこの学校から逃がさず、確実に殺す為の。
まるで背筋にツララを突きたてられたかのような寒気に身を強張らせながら、琴吹 紬は脱走の一手を模索する。
学校の構造から言えば、廊下を渡った反対側にも下へと続く階段は存在しているだろう。だが、それは学校に通った者ならば誰でも気が付く事実。
制服を着ていた以上、おそらくはあの少女も学生であり、その事を知らない道理は無い。
むしろ、わざと一つの脱出路を残しておく事によって自分達を確実に追い詰める為の罠かもしれない。
長い廊下を渡って、反対方面まで移動する時間は無い。ならば―――どうする?
藁にもすがる思いで周囲を見回した紬は、そこで一つの事に気づく。
リスクは高い。だが、試してみる価値はある。少なくとも…ここで待ちぼうけた揚句に、無残に殺されるよりかはマシだ。
天然お嬢様、という呼称が似合う柔和な顔を悲壮な決意に強張らせた後、彼女は意を決してそこへと走り出した。
※
守るべき者の存在によってどうにか混乱を抑え込み、脱出へ向け確実に行動している紬に比べ、千石 撫子の精神状態は酷く荒れていた。
無理もない事だろう。ただでさえ彼女は見知らぬ人に話し掛けられただけで逃げてしまうような、『温めますか』の一言が怖くてコンビニでまともな買い物も出来ないような臆病な少女だ。
そんな深刻な対人恐怖症を患っている女の子が、見知らぬ人間に突然襲われたらどうなるか。
(………………痛…い)
恐怖、驚愕、混乱、怯え。ありとあらゆる負の感情でないまぜになっている彼女の中で、ただ一つハッキリしていたのは痛覚への刺激。
片足が地につき、また離れる振動に呼応して、ズキン、ズキンと彼女を蝕んでいくそれ。
謎の殺人鬼の凶弾を受け、絶えず血を流し続けている左足の痛み、そして熱さだけが彼女の精神(ココロ)に浮かび上がる。
不幸な事に、ただ逃げる事で精いっぱいの同行者は撫子の怪我に気付けない。
撫子もまた、自分の痛みを紬へ告げる事が出来ない。
それは、撫子自身の『痛みを我慢してしまう』性分による物か、パニックにより正常な判断を失ってしまっているが故か。
(撫子、ここで死んじゃうのかな)
明確な痛みは、明確な死の裏付けだ。
ただでさえ、撫子は目の前で確実に失われて行く命の灯を、悲惨な断末魔の叫びを聞いてしまっている。
それが余りにも気持ち悪かったから、また撫子は腹の中の物をリノリウムの床にぶちまけた。
嘔吐による苦痛、疲労、辛さが、それでなくとも消耗している状況判断能力をますます削り取って行く。
命を失いかけたのは、初めての事ではない。
『凶がる』視線のような、何らかの異能も持たない彼女も、常識では考えられない出来事によって死にかけた事がある。
呪い。怪異。『蛇切縄』。
心無い者達の手によって、彼女はその命を苦痛の中で失いかけた。
だけど、そう。あの時は―――――
(暦……お兄ちゃん……)
思い浮かべたのは、己の最愛の人の名。最愛の人の姿。
自分を、死の淵からその手で救ってくれたその人の事。
ズタズタに切り裂かれた精神(ココロ)は、ただただ救いを求めて何かに縋りつこうとする。
ゆっくりとその手を前に伸ばした彼女が求めたのは、また自分を助けてくれるかも知れない、恋した少年の姿だった。
しかし、今この場に彼がいる訳も無く。伸ばした手が捕まえたものは、ただ目の前にあっただけの同行者のディパックであった。
(………………)
思考回路、未ダ復帰セズ。
たび重なる苦痛によって考えることをやめたまま、撫子は手の先を彷徨わせる。
それが僅かに開いていた取り出し口の隙間に入り込むまでそう時間はかからず、程なくして手の中に『何か』を掴ませることに成功する。
(……………?)
思考回路、僅カニ復帰。
それは、琴吹 紬へと幾つか支給されたアイテムの1つ。3個1セットとして配られたそれの1つを、クレーンゲームのように掬いあげた。
手の中に入っていたものは、小さな竹細工の――――笛。
笛。ふえ。フエ……笛? フエ…フェイト?
ああ、それはいけない。そっちに行くのはアウトだ。
バトロワで参加者間のメタ知識は禁じ手なんだから…戦国○双だってギリギリだったんだぞきっと!?
一瞬奇妙な語り口調が混線する。それを知ってか知らずか、千石 撫子はふとある事を考えた。
(ああ…一回吹くと長男が、二回吹くと奥さんが、三回吹くとお父さんが召喚されるんだっけ)
―――おい、幾ら僕でもそんなマニアックかつ古すぎるネタまでカバー出来ないぞ!?
ふと、大好きな人の声が聞こえた気がして、撫子はほんの少しだけ微笑んだ。
※
騒音と共に教室のドアがスライドする。
勢い余ったそれは終着点へと衝突し、運動エネルギーに従って半分ほど元の位置へと戻ったがそれを気にしている余裕はない。
紬は撫子の手を引いたまま教壇の前を駆け抜け、ベランダへと続くガラス戸を引き開けた。
紬達が飛び込んだのは、2階階段口のすぐそばにあった教室の中だ。
彼女が選んだ脱出ルートは、そのベランダ。すなわち、『2階のベランダから外へと飛び降りて、この学校から逃げ出す』という道。
言うまでも無いことだが、これはリスクが高い。
さすがに死ぬ事は無いだろうが、着地の際に捻挫、脱臼、最悪の場合は骨折してもおかしくないだろう。
しかし、あの制服の殺人鬼に鉢合わせるよりは遥かにマシだと、紬はそう判断した。
慈悲のかけらもなく捻じ『凶げ』られて殺されるよりは、生き残れる公算は高い。
祈るような気持ちでベランダの手すりに手をかけ、下をのぞき見る。
ここに至ってようやく幸運の女神はほほ笑んでくれたようで、紬達の真下にあるのは柔らかい土で覆われた花壇であった。
堅いコンクリートで無いことを確認して、思わず安堵のため息を着く。
が、即座に気を取り直して周囲を見渡し、空になったステンレスの傘立てを発見するとそれを裏返して足場を作った。
大丈夫、中高生女子の体重ぐらいならば踏み台がわりには十分。
一瞬だけ気分を落ち着けるための深呼吸をした後で、紬は後ろの撫子へと振り返る。
「撫子ちゃん、今からこの下に飛び降りるけど、ちょっと我慢を――――え?」
脱出ルートの説明をすべく撫子を見た紬が、ぽかんとした表情を浮かべる。
その視線が注がれているのは、彼女が手に持ち、今まさに吹こうとしている竹の笛。
――いつの間にそんな物を? もしかして撫子ちゃんの支給品? ああ、でもここで笛なんて吹いたら、こっちの居場所が
そんな思考が頭を回る時間もあればこそ、人見知りの少女は無機質な笛へと口づけを交わす。
別に、深い考えがあっての事ではない。
合理的思考などあるはずもなく、その意味は混乱・錯乱した上での異常行動と片づけられるだろう。
ただ、千石 撫子は、『笛の音を聞きつけて、自分の好きなあの人が助けに現れる』などという夢想に囚われてしまっただけの事。
切迫した状況下では、パニックに陥った生存者は常軌を逸した行動に出る。
解説を付け加えるならば、その一言で事足りる。
まあ蛇足だが、ここにもう一つの注釈を付け加えるならば……かつて、同じ笛の持ち主が、良く似た思いを込めて『それ』を吹いた事があるという過去の事実。
さらに、そのくの一は事実九死に一生を得たという事。以上の二点で事足りる。
――――――そして、笛は吹かれた。
『ヒューーーーーーーーーーーーーーーーッ…………』
甲高い音色でもなければ、ピロリロリロという馬鹿らしい音でもない。
そもそも、音など聞こえてこない。周囲に流れたのは、深く息を付いた空気音だけ。
琴吹 紬も、千石 撫子も、いやそもそもこの会場にいる全ての参加者は須らくこんな感想を残すだろう。
『その発想は無かった』、と。
そして、変化は唐突に表れる。
頭上に?マークを浮かべながら口を離し、ぼうっとした瞳で見つめられた笛が、突如として黒煙を上げた。
さらに、手の中に納まるほどのサイズだった竹の柄がグン、と伸びていく。
「えっ………!?」
「きゃっ!?」
予想外の事態に驚いた撫子は、思わず伸びた笛から手を離す。
思考回路の挟まる余地もない反射から、思わず紬はすでに2mほどの長さにまで伸びていた笛を捕まえる。
右手には笛、左手には撫子、状況を認識できない紬を置き去りにして、笛はさらに変形を続ける。
伸びきった笛の先が扇子状に開かれ、虹色の薄幕が張られる。
扇子の左右端からは、まるでドラゴン花火のように火花が飛び散っていた。
茫然と頭上を見上げる紬の前で、火花を散らす両端が仕上げとばかりに瞬く。
――――瞬間、爆発。
「……………!?」
余りにも突然すぎる出来事に、声を出す余裕すらない。ふと気が付いてみれば、ふわりとした浮遊感が二人の体を襲う。
『ボン』という爆発音を残して、琴吹 紬と千石 撫子は学校の2階ベランダから空の彼方へと舞い上がっていった。
※
笛の正体、それは武田軍に所属するとある忍びが作成した『緊急脱出装置』である。
一度それを吹いてみれば、コンパクトサイズの笛がアッという間にグライダーに似た細工へと姿を変える。
上空へと飛びあがる推進力は、仕込まれた火薬による爆風だ。
いかな仕組みか、僅かな爆風でさえも見事な推進力へと変えて、装置は空中へと飛び上がる。
これが、少女たちを救った物の正体。
紬の背負ったディパックの中には、あと二つの笛と上記の説明が記された説明書きがあるのだが、現状それを確認する暇も余裕もない。
ただ、どんどん小さくなっていく校舎を見つめながら、紬はどうにか殺人鬼から逃れることができたのだと察した。
空中を移動するグライダーの速度は速い。少なくとも走りでは追いつくことができないだろう。
車やバイクなどの類だったとしてもどうだろうか。地上には随分と障害物が存在している。
何の壁にもぶつからずに空を飛ぶ自分たちを追うのは、やはり困難だろう。
そう、予想外の方法で、少女たちは学校からの脱出を、殺人鬼からの逃走をやってのけた。
だと、言うのに。
この脱出装置は、もともと一人乗りを目的として開発されたものだ。
元より忍びという存在は、単独行動で任務をこなすのが当たり前。
だからこそ、想定以上の重量を抱えたグライダーは、徐々に高度を落としていく。
いや、それには何の問題も無い。自分たちはただあの『浅上藤乃』という殺人鬼から逃れたかっただけ。
すでに校舎の影は随分と小さくなっている。もう1エリア弱の距離は取れていると見て間違いないだろう。
だから、このまま着地・不時着したとして何の問題も無いはずなのだ。
「う……くっ……!」
端正な顔立ちをゆがめて、紬は苦しげな声を上げる。
彼女の右手が掴んでいるのはグライダーの竹の柄、彼女の左手が掴んでいるのは撫子の手。
少女の両手に掛かる負荷は想像を絶する。もしも普通の女子高生だったらば、あっという間にどちらかの手は開かれてしまっただろう。
だが、そんな結果は齎されない。
その理由は、彼女自身の腕力が『普通の女子高生』以上だったからだ。
例えば、文化祭での公演に必要な思いアンプ類を、部室から体育館まで鼻歌交じりで平然と運んで見せたり。
合宿中の食材の買い出しで大量の買い物袋を両手に提げたままニコニコと帰ってきたり。
おっとりとしたお嬢様然とした容姿からは想像もつかないが、紬はかなりの腕力の持ち主だった。
だから、本来ならばさほど問題はなかったはずだった。
2人分の体重によって、グライダーが通常よりも早く不時着することも相まって、全てはいい方向に転がって行くはずだったのに。
この手を離す理由など、何一つ存在していないのに。
ぐ、と歯を食いしばる。
両手はもう痺れを感じるが、それでもなお自分を奮い立たせながら紬はさらに力を込める。
自分の力を両手へと集中させながら、ゆっくりと下を向く。
彼女が見つめているのはたった一つの懸念材料。ハッピーエンドを迎えるためには乗り越えなければならない、高い壁。
「………撫子……ちゃんっ!」
それをどうにかして打ち砕こうと、紬は手の先にいる少女に必死で呼び掛ける。
千石 撫子は、ただ虚ろな眼差しを彼女へと向けたままだった。
自分とグライダー、そして紬へとつながれているたった一つの命綱、紬と繋がれた右手には、ほとんど力が入っていない。
いかに人よりも腕力がある紬とて、握り返す力のない片手を掴み続けるのは困難だ。
もしも、撫子が健康体であったならば、その意識がはっきりとしていたならば、両の手をしっかりと握りあい、脱出することができたであろう。
だが、現実は非情だった。
まるでタイムリミットであるかのように、僅かずつ……ほんの僅かずつ…握っている本人ですら気付かないぐらいの速度で、2人の手は離れていく。
「お願いっ! しっかりして、撫子ちゃん!!」
そう呼び掛ける紬はすでに涙声だ。それもまた、無理のないこと。
彼女はとても友達思いで、心優しい少女だった。
たとえ撫子と話しができた時間が短くとも、彼女の話すアニメの内容がよくわからない物であったとしても、それでも共に過ごした時間は確かに楽しさを感じていた。
もしも、浅上藤乃による襲撃が無ければ新しく友達になれたかもしれない。
いや、今この窮地を脱することができれば、一緒に生還することができれば、きっとそれは叶う願いなのだ。
だからこそ紬は、藁にもすがる想いで撫子へと呼びかける。
「お願いだからしっかりして!! 私の手を……っ、離さないで!!」
対する撫子の様子は、まさに顔面蒼白といった所だった。
意識が散り散りになる。体に力が入らない。紬の必死の叫び声さえ、とぎれとぎれにしか聞こえない。
原因はたった一つ。殺人鬼・浅上藤乃が放った凶弾……撫子の左足を貫通した銃創。
そこから流れ出る血が、多すぎた。紬に手をひかれ、無理に走り回ったのがいけなかった。
もしもその場で、撫子がしっかりと傷の事を紬に告げることが出来ていれば…紬が、撫子の足の怪我に気づくことが出来ていれば……。
しっかりとした止血さえ出来ていれば、全ては丸く収まったのかもしれない。
しかし、全てはもう遅い。
賽は投げられ、レースは始まり、ギャンブルからはもう降りられない。覆水は盆に返らず、流れ出した血液(みず)は元には戻らない。
だから紬は、必死に自分にできることをする。
例えそれがどんなに頼りなくとも、効果を見せるのか不安でも、愚直にそれをこなし続ける。
「こんなところで死んじゃ駄目!! 頼むから…ちゃんと、私の手を握ってッ!!」
知らず知らずのうちに、その両目からは涙が溢れる。
こんな所で彼女を死なせたくない。せっかく逃げられたのに、手放すことなど出来ない。
悔しさともどかしさが形になったかのように、紬の涙は次から次へと流れ出す。
重力に従い下へと落ちていく水滴が、ポタリポタリと撫子の頬を刺激する。
……………く…い……。
それは、ともすれば風の音でかき消されてしまったかもしれない。
それほどまでに微かで、それほどまでに危ういモノだった。
けれど、紬は気づくことが出来た。
………た…ない…。
やはり、容易に吹き飛んでしまいそうな程微かに、それでも先ほどよりは強く。
再び、そよ風のような物音が紬の耳を刺激する。
息を飲みながら、彼女はその音の――いや、『声』の出所を見つめる。
「撫子……にたくないよ………ちゃん…」
その頬を、自分のものではない涙で濡らしながら、千石 撫子はそう呟いた。
顔色は今もなお悪い。現在進行形で血液が流れ続けている以上、それもまた当り前だろう。
瞳にはやはりぼんやりとした靄が見える。そこからは未だはっきりとした意思が覗いてはいない。
いや、そもそも…紬は、撫子が自分を見ていない気がした。
彼女の口から切れ切れになりながら、一部だけ自分の耳に届いた名前を思い起こす。
彼女が見ているのは、ほんの少し前にあったばかりの自分ではない。きっとそれとは比べ物にならないほど大切な誰かの姿だ。
それが、紬自身が大切に感じている『友達』のような存在の事なのか、それとも別の何かなのか、それはわからない。
けれど、そんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。
大切なのは、重要なのは、千石 撫子という少女が必死に生きる意志を見せたという事。
自分が掴んでいる左手が、ほんの僅かに握り返されたのを感じて、紬は泣きながら笑った。
この重さは命の重さ。
重労働に悲鳴を上げる筋肉を無理に抑えつけて、紬は尚も彼女の手を握り返す。
より一層の力を込めたからか、グライダーの高度がさらに下がって行く。
もう少し、あと少しの辛抱だから。あと少しで、生き延びることが出来るから。
彼女の命の重さを痛みと共に感じながら、紬は歯を食いしばる。
この意味は生きる意味。
紬の予想通り、撫子は紬の姿を見ていない。朦朧とした意識の中で、自分が空を飛んでいることすら認識しているかも怪しい。
ただ、その手を離してはいけない事、もしも離してしまえば、もう二度とあの人に会えないことがわかっていたから、少女は意識を奮い立たせようとする。
己の生きる意味たるその名前を呼びながら、消えようとする意識をどうにかその身に縛り付ける。
そして。
風は、吹いた。
突然の突風。
風に乗りやすいように調整されたデザインのグライダーは、容易に激しいそれを受け止める。
装置が、跳ね上がる。急上昇する。負荷は容赦なく、少女たちへと襲いかかる。
風を予測することなど出来ない。あまりにも突然だったから、反応など出来るはずもない。
冷たい冷たい向かい風は、手の中の温もりすらも奪い取る。
決定的瞬間を目の当たりにしたとき、人は体感時間に著しいズレを感じるという。
例えば、自分に向ってくるトラックを茫然と見つめるとか、自分の頭部にぶつかる野球ボールの皺までもはっきりと認識したとか、そんな話をテレビで見たことがあった。
琴吹 紬は別に命の危機にあったわけではない。それが降りかかったのは、彼女の方だ。
だというのに、紬は彼女の顔を見つめている時間をとても長く感じた。
この時もまた、千石 撫子は紬を見てはいなかった。
もしも自分の事を見ていたのならば、どんな表情をしていたのだろうか。
怒りか、憎しみか、それとも怨みか、どんな感情を自分に向けたのだろうか。
撫子はただ、ほんの少し悲しそうな顔をして、呟いた。
「―――――――暦お兄ちゃん」
その一言を合図にして、スロー再生のスイッチは切られた。
一瞬にして、少女の姿が消えていく。先ほどの学校を遥かに凌ぐ速度で、小さくなっていく。
伸ばした手はもう届かない。流した涙も、届きはしないだろう。
ただ、彼女からは――グシャリ、という、命が尽きる残酷な音だけはしっかりと届けられた。
「……………………あ……」
己の手が掴むのは、最早冷え切った夜の空気だけ。
一人分の体重が減ったグライダーは高度を上げ、それに合わせてその身を切る風もまた強まる。
「あ、ああ……あああ……あ…っ…」
それでもなお、紬は手を動かせない。風によって、手の中に残っていた彼女の体温が急激に奪われていくのだけが恐ろしくはっきりとわかる。
「…う、そ……いや……こんな、こんなの……あぁぁっ……!!」
現状を認識できない。認識したくない。
直前に凄惨な死のイメージを見ているからこそ、あっさりすぎるそれを受け入れきれる事が出来ない。
けど、それでも、紛れもない現実は少女を攻め立てる。息苦しい。胸が痛い。どうして、どうしてこんな事に? 私たちが何をしたの!?
「――――――――――――――――ッッッッ!!!!」
混乱しきった彼女の口から出たのは、まるであの笛を吹いた時のような掠れた息だけ。
声にならない叫びは全て、残酷な月夜に吸い込まれていった。
【千石 撫子@化物語 死亡】
しえん
支援
…さるったご様子ですね
携帯からなので投稿できず申し訳ない
バトルロワイアルの会場を、一台のベンツが駆け抜ける。
まるで何かに追い立てられるかのように、速く、速く。
おそらく、もしも物陰から突然参加者が飛び出してきたとしたらそのまま轢いてしまいかねないだろう。
(ったく……余計なことしてくれからにっ……あのアホンダラがっ……!)
ベンツの運転手、船井譲次は必要最低限の注意を周囲に向けながら毒づく。
罵倒の相手は言うまでもない。自分たちを襲撃し、あまつさえ物騒極まりない放送を垂れ流した仮面の男、ゼロだ。
あれさえなければ、事はもっと上手くいっていた……! ギギ、と歯ぎしりすらしながら船井は回想する。
命からがらタワーへと到着し、そこでゼロによる宣戦布告を目の当たりにした船井達は、結局何をすることも無くその場を後にすることになった。
本来の予定ならば、タワーの放送設備を使って船井が参加者たちへ『自分たちとチームを作る』ように演説、容易に人を集める手はずを整えるはずであった。
だが、それもゼロという、積極的に殺し合いに乗る異常者の存在のために断念。
それだけでなく、ここで放送を行う事自体が完全に裏目になるような事態へと陥ってしまった。
例えば、ゼロの宣戦布告を受けて、船井達が予定通りに演説を行ったとしよう。
他参加者の目から見れば、それは僥倖だ。
殺し合いに乗った恐るべき敵に対して絶望を覚えた直後に、反抗の糸口となるような勧誘…たとえ相手が殺し屋だろうと、徒党を組めばなんとかなる…そんな幻想に縋りつきたくなるだろう。
ともかく駒を増やしたい船井としては、それは願っても無いチャンス。タイミングの関係からして、効果はバツグンと見て間違いない。
そう、タイミングが良すぎるのだ。まるで狙い澄ましたかのように、最高のタイミングが生まれてしまった。
例えば、もしも船井だったら……ゼロの演説が放送された後、それに対抗するかの様にチームを組み、グループを作ろうとする放送を聞いたとしたら、まず最初に覚えるのは『疑い』だ。
余りにもタイミングが良すぎる。ゆえに、これもまたゼロの策略ではないかと、そう予測を立てる。
アメとムチ……殺し合いを煽るようなムチの後に……救いの糸となる甘い甘い勧誘(アメ)…それにおびき寄せられたマヌケどもを、一網打尽……!
例えば、今の同行者である平沢 唯のような間の抜けた女子高生ならば、あっさりとそれに釣られホイホイと着いていってしまうだろう。
それが良く分かるからこそ、船井は放送設備を使えない。
相乗効果が高すぎるがゆえに、その策は通じない……過ぎた薬は毒となるのだ。
ゆえに、船井はタワーでの放送施設利用を諦め、別の目的地を目指すことにした。
その場所は、薬局。先の襲撃はどうにか車体に僅かな傷を残すだけで済んだが、この先もそうだとは限らない。
積極的に殺し合いにのった参加者がいると知れた以上、怪我に対する備えは必要だ。
基本支給品の中に応急処置セットは入ってはいるが、それはあくまで応急処置。
それ専用の薬類を用意しておくメリットは高いだろう。
仲間を増やすうえでも、治療薬の類を持っている事は勧誘材料として十分な武器になる。
またそれとは別に、一刻も早くこの宇宙開発局エリアから脱出したいという想いもあった。
先ほどはどうにか逃げ切れた物の、あの仮面の男・ゼロはおそらくまだこのエリア周辺に潜んでいると見て間違いない。
もう一度襲撃を受けた場合、また生還する事が出来るのか? 当たり前だが100%とは言い切れない。
だからこそ、船井は急ぐ……! 全速でベンツを運転し、一刻も早い脱出を図る……!
船井の焦りは、エリアF-5の端まで到達し、橋を渡りきるまで続いた。
※
「まだ油断はできへんけど…まぁここまで来たら大丈夫やろ…」
船井が零したその一言を聞いて、平沢 唯はようやくベンツのスピードが随分と落ちた事に気がついた。
奇妙な仮面を被った男の襲撃、そして宣戦布告。これらを目の当たりにした唯の混乱は未だ解けきってはいない。
とりあえずわかっているのは、ひとまずの目的地が『薬局』に変わったという事。
それに対して船井が色々と説明してくれたような記憶があるが、正直右から左へ抜けていた。
唯の耳の暴走は、僅かながらだが今もなお続いている。
タイヤ音、ブレーキ音、マフラー音、銃声。これらが奏でる不協和音が耳の奥に残り、不快な演奏会を続けているかのようだった。
そんな感覚を覚えたのも、彼女が軽音部という音楽関係の部活に所属しており、また彼女自身も絶対音感という才能を持っているが故か。
ただ、唯はベンツの窓を僅かに開けて外の音を聞いていた。
またあのゼロの『音』が自分たちを追ってこないか不安だったから、じっと耳を澄ませて不協和音が聞こえないかと探り続けていた。
だからこそ、『それ』に気づく事が出来たのだろう。
「…………?」
「地図を見る限りやと、もうすぐ薬局に着けるはずや…時間からいっても、薬局で色々やっとるうちにもう放送になるやろな……って、どないしたんや?」
誰に言うでもなく説明を続けていた船井が、疑問の言葉を投げかける。
傍らにいた唯が突然ベンツの窓を一気にあけ、身を乗り出し始めたからだ。
そんな事したら危ないで、と僅かに怒ったような声も意に介さず、唯はじっと耳を澄ます。
「……おい、ほんまにどないしたんや? いい加減にせんとマジに怒るで」
ゼロの件もあってのことだろう、苛立ちを滲ませながら船井が言う。
ここに至って、唯はようやく一言だけ言葉を返した。
「…………聞こえる」
「あん? 何がや」
「…泣き声……向こうの方で、誰か泣いてる」
「なに?」
唯の言葉を聞き、船井はブレーキを踏みしめて急停止すると、彼女と同じように耳をすませ始めた。
ベンツの窓を開け、じっと息を潜める。神経をグッと集中させ、数分ほど経った所で……確かに船井にも聞こえた。
女の泣き声だ。それも、おそらくはそんなに年を行っていない…学生ぐらいの少女の。
全く気付かなかった。そもそも運転に集中していたとはいえ、この泣き声もまた風に掻き消えてしまうほどに微かな物だ。
唯がいなければ全く気付かないままに素通りしていただろう。
「なんや、よう気付いたな唯さん……いや、せやけどこれは……」
素直に感心した船井だったが、すぐにその眉間に皺が寄せられる。
近くに参加者がいる、これは確かに重要度の高い情報だ。
しかし、その参加者はこの殺し合いに乗っているのではないか? そんな疑念が船井の胸中に浮かび上がる。
声を聞くに相手が少女なのは確実、しかしだからと言って油断していては足をすくわれかねない…狡猾な男は、慎重に事を運ぼうとする。
しかし、同行者の少女はそれに真っ向から反発する姿勢を見せた。
「船井さん!! すぐ、声の聞こえるところまで行って!!」
「んん?」
普段の天然な彼女からは想像できないほどに強い語調に、一瞬船井がたじろぐ。
なんだって急に……? と疑問を浮かべながらも彼は少女を宥めようと試みた。
「いや、せやけどな唯さん…さっきのゼロの例もある。
泣いとる女の子言うても、油断はしきれへんし…そもそも俺らみたいのを陥れるための罠っちゅー可能性も」
「船井さんッ!!!」
しかし、そんな説得の言葉さえも唯の叫びによって遮られた。
この迫力、やはり尋常ではない。もしや先ほどのカーチェイスで頭でもぶつけたか?
一瞬間の抜けた仮説を浮かべた船井だったが、直後の彼女の言葉によって全ての疑問が氷解した。
「この声、ムギちゃん…私の友達の声だよ!! だから、急いで助けに行かなきゃ!!」
※
あれからもう、どれだけの時間が経っているのだろうか。
気がつけば闇に覆われていた空は徐々に明るさを取り戻し、直に朝が来る事を告げていた。
街角の道路に茫然と座り込んだままで、紬は虚ろな瞳を空へと向ける。
いつの間に大地へと着地が出来たのか、それは紬自身覚えていない。傍らにはひしゃげたグライダーだった物が落ちている。
紬自身の体には大した傷は残っていなかったが、そんな事もどうでも良かった。
虚無のような精神状態にあっても、涙だけは流れ続けていた。
それは自分が救えなかった者に対する涙。離してしまった自分に対する涙。
自分が、『殺して』しまったあの少女への涙。
最期の瞬間のあの悲しげな顔が脳裏を離れない。最期に残したあの言葉が、あの名前が耳の奥にこびり付く。
『―――――――暦お兄ちゃん』
暦……おそらくは、阿良々木暦。
あまりにも奇妙なその名前は、名簿確認の際に妙に印象に残っていた。
その彼を兄と呼んだあの少女との関係は、一体何だったのだろうか。
名字が違う所を見れば、従姉妹や親戚なのか。それともそれは家庭の事情に寄るものだけで、実の兄妹だったのだろうか。
もしくは…ただの親しい、年上の友人だったのだろうか。
それを彼女の口から聞く事は、もう出来ない。
紬がその手を離してしまったから。紬が彼女を、殺してしまったのだから。
「…………う、あ………あぁぁ……!」
きゅうきゅうと胸が締め付けられる。まるでピアノ線で器官が縛られているかのようだ。
胸を押さえ、心と体の痛みにもだえながら、紬は大地にうずくまる。
もう何度繰り返してきただろうか。数時間もの間をこれだけ苦しみ続けたとしても、紬の心は決して晴れる事は無い。
罪の意識はより一層彼女を攻め立て、自己嫌悪という名の追い込みを駆ける。
あの殺人鬼のような、おぞましい殺し合いにのった人物が通りがからなかったのは幸福だったと言えるのか、それとも不幸なのか。
紬にはそれすらもわからない。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……! あぁ……! ……ぁぁぁぁぁあああああっ!!」
助けたかった少女は、助けられなかった少女を想い、むせび泣く。
だが、幾度目かのその慟哭は別の騒音にかき消された。
モーターの鈍い駆動音。アスファルトがタイヤに擦れる音。こちらに何かが、近づいてくる。
うっ、うっ、と嗚咽を漏らしたままで、のろのろと顔を上げる。
程なくして、ライトを浮かべながら此方へと向かってくる一台のベンツが目に入った。
自分のもとに向ってくる参加者がいる。一体誰が? この殺し合いに乗った人間? それとも殺し合いを良しとせず、反逆を狙う参加者?
薄ぼんやりとした頭の中でそんな事を考えているうちに、ベンツは自分の前方、数メートルほどの位置で停車する。
すぐにドアが開き、中から一人の男が出てくるのが見えた。
無精ヒゲを生やし、お世辞にも美男子とは言えない中年の男。ただしその視線は鋭く、どこか狡猾な雰囲気を漂わせている。
そんな怪しげな男の姿を見ても、紬の心はさざ波ほどの反応を示さなかった。
この人は私をどうしたいんだろう? そんな事をぼうっと考えていた。
その男の背後から、ふと別の少女の姿が除くまでは。
おそらくは同年代。黒いブレザー…制服を着た、高校生ぐらいの――――
『今晩は』
ビクリと紬の体が震えた。
霞がかったような脳内が瞬時に冴えわたる。一つの忌まわしい記憶を掘り起こそうと、全力で活動を始める。
『あ、皆さん、すみません。いきなり入ってきてしまって』
「あ、あ、あ、あああ、あああああ」
ヒューヒューという息と共に漏れる音は、先ほどまでの嗚咽となんら変わりがない。
だが、その色合いは劇的な変化を見せていた。カチカチカチと白色のカスタネットが演奏を始める。
「―んや、――夫か? 突――え―、そん――えん――、――は―――」
『先輩を……黒桐幹也という人を、知りませんか』
男が何か、口を動かしている。だが何を言っているかは聞こえない。聞く余裕がない。
いま紬が聞いているのは過去の幻聴、回想による幻覚だ。
その事に気づく事も出来ず、少女は恐怖の中で震える。
極限状態の中で紬がまだ冷静さを保てたのは、自分が守らなければ、助けなければいけない少女が傍にいたからだ。
その少女がいなくなってしまった今…それも、己の手で彼女の命を散らすという最悪の状況で心の支えを失ってしまった今、紬の心は徐々に均衡を失い、精神がブレ始める。
混乱。恐怖。絶望。災害をその身に受けた後の、錯乱のような物が着実に彼女の内を汚していく。
『そうですか。では、』
「…や……いや……お願い……ないで……さないでっ…!!」
ずりずりと、腰を浮かす事も出来ないままで後ずさる。
恐怖に耐えきれずに、途切れ途切れの命乞いの言葉を漏らしながら、必死でその場から逃れようとする。
それは、なんと醜い姿であっただろう。
先ほどまでは心の片隅で罰を求めていたにもかかわらず、いざ自分の命の危機を感じ取ったならば即座に命乞いをする。
なんて自分勝手で、自己を省みない行動なのだろうか。
気がついてみれば、男の後ろにいたはずの少女の姿が見えなくなっていた。
え、と疑問の言葉を口の中で発した次の瞬間、紬は死角から制服の少女に組み付かれた。
瞬間、最も残酷な記憶が扉を開く。
『凶れ』
―――ひゅ、な、ばッッ、ぎゃ、わ、た、のッぎ、あァァがびゃあぁぁぁぁッアああじ足びゅぎゃぁあがぎょぁぁッ!!!
「……ゃん!! ムギちゃん!! ねぇ大丈夫!? どこか怪我したの!? ムギちゃん答えてよぉ!!」
「………っ……え………あ……?」
グラグラと自分の体が揺すられ、耳元で悲痛な叫びが聞こえる。
でもそれは、おぞましい断末魔の叫びではない。楽しい生活の中で聞きなれた、大事な大事な友達の声。
過去を見ていた瞳の焦点が、ゆっくりと現代へとピントを合わせていく。
自分に組み付いているのは、あの恐ろしい殺人鬼じゃない。
目に大粒の涙を貯めて、本気で自分の身を案じてくれている、友達だ。
それを、はっきりと認識した所で。
「唯……ちゃん……」
琴吹 紬の意識の糸は、ぷっつりと切れた。
※
「ム、ムギちゃん!? やだ、死なないでよぉ!! ムギちゃん死んだらやだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ええい、いったん落ち着けや! 怪我人の体そんなに揺らしたら傷に障るやろうが!!」
涙と鼻水まで垂らしながら紬の体を揺らし続ける唯をどうにか引きがして、船井は血まみれの少女の体を検分する。
その外見と憔悴しきった様子から、もう手遅れなのかと危惧したが、調べてみれば調べてみるほどその疑念はあっさりと晴れていった。
「うっ、うっ……ムギちゃぁん……ぐすっ…毎年ちゃんとお墓参り、行くからねぇ……」
「……残念やけど、その必要はあらへんな。この子、見たところ怪我しとらんようや」
「ぐしゅ……ふぇ?」
すでに彼女が死んだものと思い込んでいた唯は、予想外の言葉を受けてぽかんとした表情を向ける。
船井は無言で彼女の腕に紬の体を預けると、瞳を閉じた彼女の口元に手をかざす。
そこからは、定期的に息が吐き出されていた。
「どうやらぐっすり眠っとるだけみたいや。血ぃが付いとるのは制服だけで、この子には傷一つついてへん」
「じゃ、じゃあ……ムギちゃん、大丈夫なの?」
「さっきの様子がおかしかった所から見て、まぁなんかに巻き込まれたんは確かやろうが……少なくとも命に別状はないと見てええやろ」
「……よ……よかったぁぁぁ〜〜〜〜〜! ムギちゃん、ホントに良かったよぉ〜!!」
ぶわっと再び涙を流しながら、笑顔で紬の顔に頬ずりする唯を見ながら、船井はやれやれと肩をすくめた。
平沢 唯の顔見知りである琴吹 紬に出会えたことは素直に嬉しい。
怪我人、つまり足手まといだったならば問題もあったが、少なくとも身体面に異常がなさそうなのも重畳だ。
これで、もう一人駒を増やすことが出来るか……唯に紬を車内に運ぶように指示しつつ、船井は内心でほくそ笑んだ。
もちろん、これを手放しに喜べるほど能天気な船井ではない。
唯からの情報によれば、琴吹 紬という少女はとてもおっとりとした性格で、他人を傷つけたりするような事は無いらしい。
それを参考にするならば、彼女の制服に付着した血は、おそらく彼女と共に行動していた何者かによるもの。
誰かと行動していた琴吹 紬は、殺し合いにのった第三者に襲われ、命からがら逃げ出してきた……すぐそばに落ちていた壊れたグライダーを見ながら、まず船井はそう仮説を立てる。
もちろん、完全にそうと決まった訳ではない。何らかの理由で、何かのはずみで、彼女自身が誰かを殺してしまったのかもしれない。
こんな異常な状況下だ、そういう事が起きる可能性も十分にあるだろう。
(この子が目ぇ覚ましたら、しっかりと情報を得なきゃアカンな…っつっても、最初はこの唯に任せといた方が安全やろうが)
先ほど船井が紬に接触しようとした時の、少女の錯乱ぶりは尋常ではなかった。
もしもこの場に唯がいなければどうなっていた事か。
ともかく、これからの予定を考えながら船井はベンツのエンジンを吹かす。
目的地は変わらず、薬局だ。見たところ紬に怪我は無いようではあったが、本人にしか気付かない場所に異常があるかもしれない。
大事な『駒』として扱う以上、それは困る。どうせ怪我をして使えなくなるのならば、骨の髄までしゃぶりつくした後で無くては。
本心を幾重にも押し隠して、狡猾な男はバックミラーで『駒』たちの様子を確認しながら、アクセルをゆっくりと踏みしめた。
※
(………そんなオカルトあり得ないっす)
ありとあらゆる物を棚上げして、東横 桃子が胸の内で呟いたのはその一言であった。
彼女が語るオカルト、それを成した存在は現在彼女の横手で友人に介抱されている。
琴吹 紬。平沢 唯という名の天然さんの知り合いらしいその少女が取ったたった一つの行動が、小骨のように突き刺さっていた。
道路にぼんやりと蹲っている少女を発見した直後、船井と唯の二人は即座にベンツから降りて紬の元へと向かっていった。
すなわち、船井は運転席側から、唯は助手席側から。そして、後部席に座っていた桃子は外には出ず、窓を開いて頭だけを覗かせたのだ。
少しだけ様子を伺ったら、気付かれないうちにすぐ頭を引っ込めて窓を閉じるつもりだった。
だが、船井の後ろからひょいと紬の姿を確認した瞬間―――彼女と、目が合った。
そして、それまで茫然としていた紬は、突如として平静を失い恐慌状態へと陥り……その後の出来事は見ての通りだ。
『紬は、桃子の姿を見た瞬間に、何らかの理由でパニックを起こした』。
本来ならば、この結論に疑問の余地を挟むものは誰一人としていないだろう。
だが、その対象がステルスモモだというのがその答えを180度別の物へと変える。
これでは、まるで―――
(まるで、この眉毛さんが私の存在に気付いたみたいじゃないっすか……ありえないっす)
どこか憮然とした表情で、ステルスモモこと東横 桃子は腕を組む。
自分のステルス性能は完璧だ。
それはこの殺し合いが始まってからずっと共に行動しながら、一向に自分たちに気づかない2人の人間が証明している。
だというのになぜ、なぜこの紬という少女は『自分と目が合い』、『自分に怯えた』のか。
それがさっぱりわからなくて、桃子の胸の内にどうしようもない不快感を生み出す。
不快感はそれだけではない。ふと視線だけを横に向け、気を失っている紬の制服を確認する。
そこにべったりと付着している血液はすでに乾き切っており、臭いも殆ど漂ってはこない。
だというのに、なぜだろう。何故こんなにも、その血痕に不快感と――焦燥感を覚えるのだろうか。
(先輩……)
知らず知らずのうちに思い浮かべるのは、彼女の誰よりも大切な人の姿。
この世界でただ一人、自分を必要をしてくれた、大好きな大好きな先輩の事。
(先輩は……大丈夫っすよね。いつでも沈着冷静で、頭も良い先輩だったら……ちょっとやそっとの事じゃ、どうにかなったりしないっすよね)
それは、自分の中の大切な人に語りかけるというよりは、自分自身に言い聞かせるような言葉だった。
胸騒ぎは収まらない。どうしようもない不快感に襲われながら、ただ桃子は愛する人の事だけを考えた。
東横 桃子は知らない。
会場内の制限により、自分のステルス能力が弱まっている事を。
『制服を着た女子生徒』という存在に、強くトラウマを刻みつけられた少女は、常人よりも敏感にそれを感じ取ってしまった。
そしてまた、東横 桃子は知らない。
自分の、誰よりも大切で愛していた先輩が…この紬という少女の目の前で、無惨にその命を散らしてしまった事を。
彼女の制服に付着している大量の血は、他ならぬ彼女の物だという事を。
そして後数十分もすれば、桃子は己の知らぬ真実の半分を知る事になる。
彼女にとって、最も不幸な現実を、まざまざと突き付けられてしまう。
それが明らかになった時、幕を開くのは――――――。
【E-4/北部・薬局周辺/1日目/早朝】
【平沢唯@けいおん!】
[状態]:健康、紬が心配
[服装]:桜が丘高校女子制服(夏服)
[装備]:ジャンケンカード(チョキ)@逆境無頼カイジ
[道具]:デイパック、基本支給品(+水1本)、ジャンケンカード×十数枚(グーチョキパー混合)、不明支給品x0-2
[思考]
基本:みんなでこの殺し合いから生還!
1:ムギちゃん……大丈夫だよね…?
2:船井さんを頼りにする。
3:友人と妹を探す。でもどんな状況にあるかはあんまり考えたくない……
[備考]
※東横桃子には気付いていません。
【船井譲次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:ナイフ、コンパス。他にも何かあるかは後続にお任せ
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品x0-2 遠藤のベンツの鍵@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor
[思考]
基本:優勝か別の手段か、ともかく生還を目指す。
1:ひとまず薬局へ向かい、薬類を確保しておく。
2:紬が目を覚ますのを待って、情報を得る。聞き出すのはひとまず唯に任せる。
3:唯の友人らを探す方法を考える。利用できそうなら利用する。
4:仲間を勧誘し、それらを利用して生還の道を模索する。
5:絶対に油断はしない。また、どんな相手も信用はしない。
6:嘘かどうかさておきゼロの情報は……大切せんとな。悪人も善人にも旨みがある。
[備考]
※東横桃子には気付いていません。
※登場時期は未定。
※ゼロの正体に気づいてません。
【東横桃子@咲-Saki-】
[状態]:健康、ステルス、酷い胸騒ぎ
[服装]:鶴賀学園女子制服(冬服)
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品(-水1本)、不明支給品x1-3
[思考]
基本:自分と先輩(加治木ゆみ)の生還を目指す。
0:私のステルスが効かない? そんなオカルトあり得ないっす。……でもなんだか不安っす。
1:船井の策にこっそり相乗り。機を見て横取りする。ただし必要と感じるならステルス状態解除も視野に入れる。
2:先輩を探す。または先輩のために武器、道具、情報を収拾する。
3:信じにくいッスけど、ゼロの情報は……ヤバイッス。悪人も善人にも美味しいッス。
4:先輩は…大丈夫っすよね?
[備考]
※登場時期は未定。
※ゼロの正体に気づいてません。
【琴吹紬@けいおん!】
[状態]:精神的ダメージ大 、撫子への罪の意識、『制服を着た女子生徒』に対するトラウマ、気絶中
[服装]:制服 (血塗れ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA×2、ランダム支給品(1〜2、未確認)
[思考]
1:撫子ちゃん……ごめんなさい……。
2:『浅上藤乃』が恐ろしい。殺されたくない。
3:友人達が心配。非常識な状況下で不安。
4:阿良々木暦に会ったら、撫子の事を――――
[備考]
※浅上藤乃の殺人を目の当たりにしたトラウマで、『制服を着た女子生徒』を見ると彼女の姿がフラッシュバックします。
精神的に回復すれば軽減されるかもしれません。
※E-3北部〜E-4北部間の何処かに千石 撫子の死体があり、すぐそばに彼女のディパック(基本セット、ランダム支給品1〜3入り)が落ちています。
【忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA】
武田軍の忍び、猿飛佐助が上杉軍の忍び、かすがへと送ったアイテム。
見かけは小さな竹笛だが、一度吹けばグライダーへと姿を変え、自動で空中へと飛び立つ。
一回限りの使い捨てで、ロワでは3個セットで支給。
投下終了宣言は?
宣言前でまたさるったw;
代理投下終了です
改行の為、こちらで勝手に切らせてもらいました
撫子、ありゃりゃ木さんに会いたがってたけど脱落か
ムギちゃん、これは辛いわ
トラウマのせいかステルスを見破られた桃は放送後が危なそうだ
そして船井は相変わらずだがその二人は役に立つ駒になりえないぞw
では、投下及び代理投下乙です
ムギも生存と引き換えにえらいトラウマをしょったもんだ
けいおんメンバーの合流の早さが気になるとこだが…
さて、どうなることやら…
代理乙
ムギも相方転落死の仲間入りか…
安藤やあずにゃんの二の舞になるなよ…
唯はやっと能力発揮か。ギター忘れて戦闘術でも覚えれば…
でも船井逃げてー!フラグ立ってるよー!
モモも微妙だなあ。奉仕転向しようにもステルスの自信がなくなりそうだし…
投下&代理投下乙です
撫子…南無…
それにしても紬の精神状態がヤバめだな
モモはどう出るか、紬が加治木のこと話そうものなら…
現在議論スレでXIzIN5bvns氏の作品の「紬の反応」について議論中です
意見のある方は議論スレまで
どこもおかしいように見えないけど・・・
普通にちょっと変わった制服に見える俺の目はおかしいのだろうか
横浜で見たよこんな感じの
まぁ議論スレの狂気は俺には理解出来ないので任せるけど
制服というよりは修道服に見えるかな
議論の人たちはL5が発症しているように見える
正直勘弁してほしい
読み手「ちょっとくらいの矛盾は見逃せよ・・・わざわざ議論にあげることか?」
議論「上げたくて上げてるわけじゃない!ルールに従ってるだけだ!文句があるならルールを変えてみろよ!!」
てな感じかね?今の心境は
「制服かどうか」じゃなくて「制服に見えるかどうか」だから・・・
また主観の押し付け合いによる泥沼の殴り合いスタートかな
終わったら知らせてくれ
ナニイテンダとしかいいようがない
そらまあミッション系の制服ならこんな感じだろうよ
小さな疑問の受け皿がはっきりしてないのが問題だな
制服だという前情報なしで
>>200を見て、女子高生の制服だと見抜いた点に疑問を持つのは、別におかしいことじゃない
「この辺が妙だと思うんだけど、作者はどう思う?」と、議論やら修正やら以前の疑問を提示するだけのことなんだが、
そういうのをどこに書き込めば作者に伝わるのか、イマイチ分からないんだろう
だからわざわざ議論スレに流れてしまうんじゃないかな
実際俺もこういう制服少なくとも近所では一度も見たことないし
既に言われてるがシスターみたいな服って印象がまず浮かんだし少し疑問にも思った
細かいことかもしれんけど、議論が狂気とかL5とかって言い方はしないでほしいな
別にイチャモンつけるために言ってるわけではあるめいよ
かじゅのグロイ死に方関係をトラウマにするなりで結構対応出来そうなもんだし
他ロワから流れて来た人にとってみればまさに狂気としか
こんなんここで指摘して終了でいいじゃん
作者はそれがもっともだと思えば直せばよし、そうでなければスルーすればよし
>こんなんここで指摘して終了でいいじゃん
まだ大規模規制の影響が消えてないんだよ
自分もようやく規制が解けたばかりだ
作者による投下じゃなくて、代理投下になっていることからも分かるだろう
いやしたらばの避難所でも別にいいけど
要は感想のついでにってこと
まさか感想書かずに指摘だけする馬鹿はいないだろ
避難所で言えば作者に確認して貰えるという形式が成立してるなら、それでいいんだろうけどね
作者には避難所へ目を通す義務もないし、必然性も高いわけじゃない
それなら意見を目に留めて貰いやすいところへ流れるのが自然だろう
もちろん、本スレの規制が解除されて、こっちが活動の中心になるのが一番なんだが
いや絶対に見て貰いたいなら勿論議論スレ行き
俺が言ってるのは今回みたいな些細な違和感程度の場合ね
こんなん一々議論スレに持ち込まれたら堪らん
むしろあれだ。
議論スレにあげるな、って言ってる人がキャプ見沢病状態みたいなもんだよ、ほんと。
議論スレにもちゃんとルールが出来た。
前ほどぐだぐだにはならないだろう。
それにたいしたことない問題ってこともないだろう。これからの展開に十分以上関係するんだ。
修正点もすぐに直せそうなところだし、過剰反応しすぎだと思う。
自分が〜に見える・感じる程度のリレーに支障をきたすわけでもない、そして確実な答えがない
些細な部分をいちいち議論スレに持ち込むこと自体狂気の沙汰だけどな
あまりにもひどい、あり得ない状況を常識に感じちゃってるせいで、簡単な問題は議論に持ち込むなよって言ってる人が
キャプ見沢病状態に見えるんだろうな、ある意味ものすごく滑稽で哀れな人だ
狂気の沙汰ほど面白い
普通のロワならは感想でちょこっと触れて
書き手が直したくなったら、それにレスするくらいだからな
アニ3はかなり特殊
まあいいけどそろそろ流石に毒吐きに行け。
自分も言っといてあれだけど本スレの話題じゃないだろ。
いや、因縁の戦いはここで終わらせるべき
誰だっけその台詞
どう見ても咲豚がごねてるだけ
スルーしろ
もう一度言うけど毒吐きに行け。
これ以上やるなら荒らしと一緒だ。
じゃあ別の話題でも振るか
今回のぶっとんだ支給品枠って実はBASARA?
そんなことより参加キャラの服装語ろうぜ
一番私服のセンスないのは誰か、とか
>>225 らっきょの生首とか
なぜかガンダニウム合金のじゃんけんカードとか
インデックス「支給品はランダムです。でも短髪はピザ食って死ね」
衣の私服はもはや警察とアグネスが介入してくるレベル
コクトーは春夏秋冬と黒一色
>>229 おい短パン馬鹿にすんな
放送当時は同期のEVAよりきゃーきゃー騒がれてたんだぞ
そりゃWの方が半年速いしな
マリーメイア軍の制服はなぜか短パンだったな
223 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage :2009/11/17(火) 09:01:34 ID:VfS3vlwW(2)
どう見ても咲豚がごねてるだけ
スルーしろ
232 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage :2009/11/17(火) 10:34:06 ID:VfS3vlwW(2)
>>229 おい短パン馬鹿にすんな
放送当時は同期のEVAよりきゃーきゃー騒がれてたんだぞ
出たよ京アニ厨
準決で討ち取られた咲豚(笑)
最萌でも負けてロワでも負けた気分はどうだい?
そういう作品間の煽り合いは毒吐きでやって下さい><
こういうのは別の話題で流すのがベストだよ
例えば二次創作でよく女の子になってとう……上条さんをたぶらかすもやしのアクセロリータはカフェイン中毒になってしまえとか
咲って最萌史上最強陣営じゃん
一方通行の声が男なのがいまだに納得できますん
トレーズ様が24歳なのが納得できません
萩原聖人が実写版カイジに出ていないのが納得出来ません
ゼクスが19歳とか納得できません
五飛含めWのガンダムパイロットは全員身長156cm
ゼロのコスプレ、トレーズは様になるだろうけど五飛は……
腕が短い
ごひ「シークレットブーツがあればどうということはない」
ナタクに仮面を被らせればおけ
アナザーガンダムは年齢に違和感がある奴が多いからな
フロスト兄弟とか若過ぎだろw
ルルーシュ・ランペルージ、平沢憂代理投下します
悪夢のようなゲームが始まってから数時間がたった。
彼は半ば眠ったような意識で行動を決めかねていた。
唯一の方針はゼロレクイエムの根幹である
――――救世主“ゼロ”枢木スザクをこのゲームから生還させる
ということ。
元来死にたがりだったスザクには「生きろ」というギアスも掛けてある。
身体能力、戦闘力、己に煮え湯を飲ませ続けた戦術を加味すると、そうそう死ぬ事はないだろう。
他の参加者に出くわしたら「枢木スザクを守れ」とでもギアスを掛けようと考えていた。
自ら積極的に他者を加害して排除する気は毛頭なく、
そうかと言って黙って殺されてやる気も更々起こらない…
という緩やかな自殺…生の放棄に他ならなかった。
生前苛烈だった幸福への渇望、憧れも薄弱となり、思考も曇りがちだ。
彼は短くも壮絶で波乱に満ちた自らの人生を全うしきったのである。
仮に元の世界に戻ったとしても、彼の居場所は世界の何処にも存在しない。
なぜならば…
――――彼はブリタニア帝国99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだから
宇宙開発局を調査し首輪の解析が可能な設備が有るか否かを確認し、
そこを拠点に首輪を解体出来る技術者を探しだすつもりだった。
まだ夜も深い頃D-6駅近くの大型スーパーマーケットで店内を物色し、
必要不可欠な移動手段や衣類、食料に日用雑貨、その他諸々を可能な限り調達した。
「……っ!?む?」
雑貨やペットボトルの水をいくら支給品バッグに入れた所でふと気が付く。
自分が持てる限界まで可能な限り詰め込もうと思っていたのだが、
幾ら食料や雑貨をバッグに詰めても一向に重くならず、明らかに容量に限界がない。
支給品バックの異変に気付いてからの行動は早かった。
店内に有る全ての鏡、キャンプ用の折り畳み椅子、消化器、灯油のポリタンクなど
幾らバッグに詰め込んでも一向に重みを感じず、ロープや、カセットボンベ、
混ぜると劇薬になる大量の風呂用洗剤…
とにかく必要と考えられるものをひたすらバッグに詰めていった。
スポーツ用品コーナーでダイバーセットを発見した時はニヤっと頬を釣りあげた。
「…フハハハ!至れり尽くせりじゃないか」
例の孤島に浮かぶ遺跡を調査する為には海を越えなければならなかった。
マスクとシュノーケル、ウェットスーツにフィン、酸素ボンベ、を鞄に入れた。
まだまだ大量にバッグに入れる。
ルルーシュの戦いは敵に対面した時には全て決まっていなければならない。
まだ見ぬ敵との戦闘はもう始まっている。
いかなる状況にも対応できるように、手持ちのカードは出来る限り増やす事が必要だった。
眉唾物であったこのゲームの主催者、帝愛グループのチンピラが宣言した言葉
――――なにせ我々は……《金》で《魔法》を買ったんだからなッ!!
というバカな発言も自らの復活と、この狂宴で最も身近なものに起こっている自体を
合わせて考えると、あながち誇大妄想ではないようだ。
そして参加者が例外なく身につけ、生殺与奪を握られている首輪…
ルルーシュは逆にそのメリットを考える。
参加者をこの会場に縛り、強迫観念から思考を停止させる楔であると同時に、
この世の物理法則を捻じ曲げ暴虐の限りを尽くすような強大な戦闘力を持つ者も
一撃で死に至らしめる必殺の武器であるとも思っていた。
それに加えてこの会場の全参加者の中でも最高級のアドバンテージだと思われる武器
――――ギアス
いかなる相手にでも命令を下せる、絶対遵守の力。
他人の意思を捻じ曲げ強制的に駒にし、人ならば誰もが持つ己の倫理感、理想や嗜好、
愛する物の記憶の消去、死んでも譲れない信念すら書き換え蹂躙する、
果ては神ともいえる集合無意識すら自らの意に従わせる事が出来る、
この世の理を根こそぎ変える事の出来る強力な力だ。
そのような力を振るうものは人々から畏れられ…悪鬼羅刹、天魔、魔神などと呼ばれる。
◇◇◇
時間にして数時間前だ、まだ夜明けには暫く掛かりそうな頃、
そんな彼に冷や水を頭からぶっかけて無理やり叩き起そうとする者がいた。
戦利品を調達して意気揚々とシティサイクルを漕ぎF-6 まで来た。
橋を渡り展示場を眼前に望む所まで来た時、時衝撃的な物が目に飛び込んでくる。
彼自身よく知る、否自分自身といってもいい仮面の男がそこにいた。
――――私の名はゼロ。諸君と同じ、このバトルロワイアルの参加者だ。
「――――何―――だと――!?これは――!?」
宇宙開発局全域に響き渡った演説に対してルルーシュは目を見開いて呻く。
――――この戦い――殺し合いにおいて、私は諸君がこの世界に貫くべき自らの『正義』を見出すことができるか。それに期待している。
それは展示場にある巨大モニターに現れた。彼のよく知る仮面を身に付け、
挑発的で大胆に、なおかつ激しい口調、身振り手振りで戦いを煽る者が映る。
――――有史以来、人は常に争いの中で発展し、進化してきた。
であればこそ、この殺し合いの中においても人は正しく進化することができるのではないか?
ルルーシュは俯いて全身を震わせた、前髪がかかって表情を窺う事が出来ない。
――――もう一度言おう。我が名はゼロ!
人々よ、我を恐れよ! 私はここに、諸君ら全員の抹殺を宣言する!
垂れ流される演説に血が出るほど下唇を噛みしめて沈黙する。
俯いた顔を上げ巨大なモニターを呪い殺さんとばかりに睨みつけた。
「――――ゼロを騙る偽者めぇ――散々使い倒してボロ雑巾のように処刑してやる!!」
その偽物ゼロの意図するところ、成そうとしている事を瞬時に理解し、
久方ぶりに腹の底から湧き上がる震えあがる程激しい憎悪と殺意を思い出した。
偽者のゼロによる暴挙を知り皮肉にも、唐突に蘇ってからずっと虚ろに曇っていた双眸に鈍い光が戻り、
その仄暗い炎が自らの全身を包みこんでゆく。
この会場に飛ばされてからは靄の架かったようにヌルヌルと回っていた
幾多の敵を操り、欺き、陥れ、葬り、蹂躙してきたその頭脳が唸りを上げて高速で回転し始める…
そんな感覚をルルーシュは覚えた。
◇◇◇
ルルーシュは展示場の周辺を調査していた。
このゲーム中に自分が野垂れ死に、スザクも倒れたとする。
幸運にも偽物が元の世界に生還しあのような言動を取ったとしたらどうなるか?
俺とスザクが行ったゼロレクイエムの根幹は崩壊してしまう。
ルルーシュが生涯を賭して作り上げたゼロという奇跡の存在は、一人の人間を差すモノではない。
その仮面を正義の象徴とし、中の人間が朽ちようとも入れ替わり、永久に残り続ける人類の希望にする。
争い続ける人類を交渉のテーブルに付け、生まれた悪意に対してはゼロの名の元に人々は結集し
抗いその悪を排除するというシステムそのものなのだ。
その仮面の重みを理解しえぬ者が戯れに身につけてよいものではない。
この戦場からスザクを何としても生還させるのは第1目標だが、
“偽者のゼロを生かして帰さない”という目標も優先度は同レベルだ。
今後戦いを煽り、不和を撒き散らす為に現れると予想される模倣犯にも必ず天誅を与える。
容赦しない。
―――――たとえどのような理由があろうともゼロを騙る者は必ず破滅させる
と静かに決意した。
何を置いても絶対に排除しなければならない敵の出現に対して、
このまま徒手空拳でタワー周辺に猪突して、偽ゼロの首を跳ねるという
短絡的な行動を取ろうとは思い至らなかった。
行動を起こすにしても、まずは先立つ者が必要だ。
(――大々的に多くの参加者の目に触れるこの行為…大きなリスクがある。
偽者のゼロは恐らく戦闘力に絶対的な自信を持っている――
多少の襲撃者は返り討ちに、あるいは退却できる程度の力は持っていると推測される)
咄嗟の際に使える武器は取り回しの悪い機関銃に儀典用の剣と
――――ギアス
まだ何の準備もしていない現状、盤上の駒はこれだけだ。
「現状ゲームに乗った卓越した戦闘者と鉢合わせれば、勝利することは難しい――」
そして…
「C.C.が参加している…これが意味するところは――」
――――不死者すら殺す力が働いている可能性がある
ゲームバランスを崩壊させかねないギアスは制限しなければならない力だ。
自分が主催者でも一番入念に制限をかけたいと考えるだろう。
出会うもの全てを駒として、効かない者は数で封殺する。
「…フッ、それではゲームにもならん」
主催者がルルーシュの能力を知った際の反応を想像して嘲笑した。
こんな能力者をポンと出せばゲームにもならない、ただの予定調和になるからだ。
(高みの見物を決め込んでワインで一杯やりながら酒の肴に見ているのか…あるいは闇の世界大物が集い莫大な金の動くギャンブルに饗されているのか…あるいは両方か?は定かではないが…)
スタート前に壇上に立った遠藤という男を思い出してまた不快になった。
絶対的な安全圏から地獄の釜の底を除く快楽と愉悦を全身で感じるあの浅ましい表情…
しかしあの男は末端も末端だ、正真正銘のチンピラだろう…問題視するのはその背後。
(真の敵は奴の背後にいる――!魔法を操る強大な組織が必ずいる。そしてギアス饗団…安易なギアスは警戒しなければな…)
故に十全にギアスは使えないと予測している。
人の本能や信念を曲げる事は容易ではないが、逆に認識をずらす、
あるいは記憶を消すという事は劣化していないのではないか?
人の認識というのはただでさえ曖昧で不確定なものだ。
有るものが見えない、あるいは無いはずの物が見え、大事な事を忘却することもある。
ギアスという脳に介入する力ならそれをさらに助長させる事は容易い。
あるいは思考に明確なベクトルがない場合、同じ方向性の命令なら軽く曲げる事は可能だろう。
――――禁止エリアの情報を忘却させてまっすぐ走らせる
能力者の力を封じるギアス
――――能力を忘れろ
後はスザクに掛けた“生きろ”というギアスに近い性質のもの。
――――俺を裏切るな
という三つの命令、命令を無視されて窮地に陥る事がないように、
戦闘力を持たない標準的な人間で実験して持続時間や、抵抗具合を見る。
あるいはスクワットや腕立て伏せなど、意味の無いギアスを掛け無防備になる一瞬を狙うか…
武器のスペックを知らなければ、いざという時役に立たないどころか無為に手を曝してしまう。
そうなれば己の死は必然…
この疑心暗鬼に陥った参加者の中で人を操る能力を持つ者を信用する者などいないだろう。
ギアスは強力無比だが一度使用した人間には二度と使えないという弱点がある。
生かしておいたギアス使用済みの者が障害になった事が生前にもあった。
妙な言動を取り続ける者を見れば他の参加者が不審に思う、その物の友人や知人で有ればより顕著に…
「――使用済の人間は…速やかに始末必要があるな」
散策を続けながら深く考察をし続けた。
ギアスを活用するためにルルーシュの頭脳が唸りを上げて高速回転する。
――――悪逆皇帝ルルーシュと呼ばれていた頃のように人を人とも思わぬ冷徹な思考に切り替わった。
展示場の北あたりを調査していた時、探していた物を見つけた。
宇宙開発局と名乗っている以上、開発した艦船や浮遊航空艦が出入りするドックや
ロケットの発射場などが何処かに有ると推測していたのだ。
恐らく偽ゼロがこれを発見出来なかったのは、命令系統のネットワークから遮断されていたからだろう。
こういう物には非常時に電源を使用せず手動で起動させるようなバックアップシステムが必ずある。
世界を二分する軍組織のリーダーを務め、世界を統一したルルーシュにとっては当然のことだった。
これをチラつかせれば餌として駒を集めるのも幾分か楽になるだろう。
今すぐ偽ゼロを追い詰める事は難しい…しかし力を手に入れた暁には必ず報いを与えると誓った。
「私はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!――世界を壊し!!――創造する男だ!!」
◇◇◇
F-6エリア、頭上を電車の高架が通る場所、平沢憂は一糸纏わぬ姿でそこにいた。
安藤守を果物ナイフで刺して殺害した時、手と制服に血が付着した。
憂は袖口や胸元に血が付いている事に気が付いてぎょっとなった。
こんな血の付いた服を着ていては他の参加者に警戒されてしまう。
そうなれば阿良々木暦のように殺しはしないが離れて行ってしまうか、
このゲーム最初の死者池田華菜の様に疑心暗鬼になって襲いかかってくるか…
二つに一つだ
鼻の効くものなら血の匂いにも気付く可能性があった。そうなれば最後…
細腕で何ら特別な力を持たない女である自分に勝算はない…と判断した。
安藤を殺してしまったのは失敗かもしれないと舌打ちをしたい思いだった。
あの偽善ぶった安藤という男と一緒に、カイジを中心とする集団と合流する方が効率よく人数を減らせたかもしれない…
ギャンブルに夢中になっている連中を一人ずつ始末することは容易いが…その機会は逸してしまった。
とにかく体を洗い流したいと、安藤守のマウンテンバイクを軽快に漕ぎ、
D-6あたりの住宅地で生きている水道を探した。
水道の蛇口は所々に見つける事が出来るが肝心の水は出なかった。
住宅に挟まれた細い路地をまっすぐに突き抜けると、辺りには公団住宅が立ち並ぶ。
公園が見えたあたりで西へ向かう、平坦で舗装された道路が多くサイクリング気分で走り抜ける事が出来た。
背中の方向では銃声が引っ切り無しに聞こえる。
明確な意志を持って殺人を犯そうとする者が、何処に潜んで機を窺っているか分かったものではないが気にしなかった。
(――出くわしたら私の運がなかったって事だね…)
安藤が熱心に語っていたギャンブル船に行くにしても、こんな所で不意に名も知らぬ襲撃者に殺されるようでは
運も何もない、勝負にもなりはしないだろう。とにかく体勢を立て直す必要があった。
憂はスッパリ思考を切り替えて、血の付いたまま出会うわけにはいかないが、
当面の間は強力な戦闘力を持った者の庇護下に入りたいと痛感していた。
こんなに人が集まりそうにない地図の端の端ではなく展示場やタワー、駅の様な
人が集まりそうな所に行かなければ話にならない。
(――ずっと一人って訳にもいかなくなってきた)
F-6高架の下まだ辺りは薄暗い…川で体を流すというより殆ど海だろうか?
生まれたままの姿になって、バシャバシャ水浴びをすることにした。
性格なのか服は全て岩場に丁寧に畳まれている。
塩味を感じるが仕方ない汗でベタつく顔を洗う
頭の天辺まで水の中に潜って限界までぶくぶく泡を吐きだす、
頭を水面から上げるとザバっと水が跳ね上がった。プハァッと新鮮な酸素を求めて深呼吸をする。
顔、首筋、胸、背中、腕、腰、お腹、お尻、足、体中に纏わりつくイヤな油汗も、
物言わぬモノになった安藤の返り血もそして……
――――――――悲痛な断末魔も洗い流してサッパリした。
彼女と姉の平沢唯は平凡な一般家庭に生まれた。
戦争も貧困も…そして人が人を蹂躙することに愉悦を感じる事も知らず、
大好きなお姉ちゃん日本ののほほんとした空気の中で育ってきた唯は、純真無垢そのものだ。
ゴロゴロしながらアイスを欲しがるお姉ちゃんを見ているのが幸せだ。
高校に入ってからはギターに夢中になって、暇さえあればいつも弾いている。
軽音部の皆に出会ってからお姉ちゃんは1日1日どんどん変わってゆく…
そんなお姉ちゃんがキラキラ眩しい。
憂があれほど愛おしく思う人は世界の何処を探しても彼女を置いて他にはいない。
あの笑顔を守るためなら何でもやってやる!そう!私の幸せのために!
(……お姉ちゃんは人殺しなんて絶対ダメって言うよね?)
私の大好きなお姉ちゃんなら絶対そんな事は許せないはずだ。
お姉ちゃんが笑っている事が、ギターを掻き鳴らしてポーズをキメてる事が
私の幸せ!
――――この戦いで私がお姉ちゃん以外を殺し尽くす事とお姉ちゃんは無関係なんだ。
…と堅く心に誓うのだが緊張感が途切れた反動なのか、堪えていたものが一気に溢れ出てきた。
彼女の歯がカチカチ音を立て、汗をかいて暑いはずなのに寒気が止まらない。
はっ、となり憂はようやく何が起こっているのか理解した。
方針は決めた、覚悟も決めた、後はやりきるだけだというのに体の震えが止まらない…
なんという様だろう。
私は私の幸せを維持したくないのか!と必死に奥歯を食いしばった。
それを自覚した瞬間胃の奥に酸っぱいモノ感じ、それを堪えようとした。
「――すぅ…ハァ…すぅ…ハァ…ぅ……」
深呼吸をして紛らわそうとしたがもうどうにもならなかった、
生理的な現象である体の欲求には逆らえそうにない。
「――ウッ…うぇぇぇエ……」
強烈な嘔吐感を堪える事が出来なかった。
夜から水しか口にしていなかった為、透明な胃液を海に撒き散らした。
涙目になりながら口を拭い、体が酸素を求めてゼイゼイ息を取り入れようとブルブル肩を震わせる。
「なんで!どうしてよ!」
小さな拳を硬い岩に叩きつけるとゴンと鈍い音を立てた。
「…ハァ、ハァ、ハァ……ハァ、ハァ、ハァ……」
今まで何かを殴ったことなどない柔らかい拳は皮がめくれて血だらけになった。
それを塩水につけると傷が浸みて激痛が走る、強烈な刺激に顔を顰める。
憂は自らの脆弱な精神に対して激昂する、決心して2人も殺したというのに、
精神が常識に拘って体にかける異常を心底情けなく感じた。
「これぐらいで…なんて情けない!」
その眼に光る涙は嘔吐によるものなのか、落胆によるものかは判別がつかない。
手の甲で涙を拭い酸っぱくなった口は塩っ辛い海水で濯いで洗い流した。
――――彼女は拳の痛みに再び誓った、私の幸せを守る…その為には…
◇◇◇◇
支給品の水でぐじゅぐじゅっと口をすすいでからペッと吐きだした。
直接水分を補給する。
グビグビと喉が鳴り冷たい水が通り過ぎていくと酸素も一緒に供給されていくようだ。
荒々しく胸元を上下させていた呼吸も落ち着き、気分の悪さも少し収まった。
バッグを漁り応急セットから消毒液と包帯を取りだした。
傷だらけになった拳を消毒して包帯をバンテージのようにぐるぐる巻いて固める。
シクシク痛むが歯を食いしばって堪える、堅く拳を締め付け再びペットボトルの水を飲む。
一息付いた所でF-6の宇宙開発局の方に行ってみようかなと思った。
下着を履いた丁度その時
―――――ゴン―――シュ―――、キュルキュルキュル―――――ウィンウィンウィン――――――
対岸にある宇宙開発局の倉庫や転落防止用の柵がある岸壁が唸り声を上げて迫上がり始めた。
徐々に周囲にも影響を与える。高架辺りの水嵩が引いていき海の下にあった岩場が剥き出しになる。
その時を迫上がり始めたドックを見て憂はハッと何が起こったのか理解する。
大急ぎで服を全てバックにしまいこみ、靴だけを履き着るものも着ないで駆けだした。
(…これだ、これを見つけ出した人を付いて行って利用する!)
―――――ビ――ッ、ビ――ッ、ビ――ッ―――
ブザーがけたたましく周囲に鳴り響く、辺りの船舶や周囲の人間に警戒を呼び掛ける為だろう。
眼前にはガレージの様なシャッター?否、開閉できそうなコンクリートの壁が現れた。
やがてドックは迫上がるのを止めコンクリートの壁はゴリゴリと音を立てて上がってゆく。
対岸まで200m程あったのが今は水嵩が下がり100m程になっている。
憂はそこから出てくると予測されるモノに出来る限り近づく為に脚に水が浸る位まで駆けて来た。
対岸のコンクリート壁が迫上がり終わると中から巨大なボートが出てきた。
憂いはその名を知らないが車を3、4台積めそうなこのサイズなら揚陸艇といってもいいだろう。
揚陸艇はゆったりとした動きで航行し始めたその時憂は行動を起こした。
「……あの――――!!ちょっと!!すいませ―――ん!!!」
パンツと靴しか履いていないあられもない姿だったが気にしていられない。
出来る限り限界の声で力一杯叫んだが船は東に舵を切ろうとしていた。
「ちょっと――!!無視しないでくださいよ―――!!!」
船は横を向くと速度を落とし止まりそうな所で、バタンと船室のドアが開き中から背の高い男が出てきた。
男は重厚で武骨な機関銃を船のヘリに置いて、憂に向かって機関銃を撃ってきた。
――――――ドドドドドドドドドドドドド
水面はバシャバシャ弾ける様を見た憂は足元のバランスを崩して転倒しまった。
「――――ッ!!」
―――バシャバシャバシャ
他人の顔を見るなり突然撃ってきた男に狼狽を隠しきれず、
海の中にパンツ一枚のお尻を浸けたまま胸を隠し、弱い抗議をするのが精いっぱいだった。
「ちょっと―!何をするんですか――!やめてください――!」
男はウェットスーツの上半身を半脱ぎにしていた。両手持った禍々しい機関銃は煙を吹いている。
艶めかしい黒髪は海に入ったのか濡れていて、目元にまで張り付いている。
髪に隠れてその表情は良く見えないがわかる、鑑賞に耐えうる美系というのだろうか?
スラッとした長身に抜けるように白い肌とその黒髪のコントラストは、
それしかあり得ないという完璧な調和は保った美しさだと思った。
こんな男はテレビで見る芸能人やスターにも見た事はない。
これまでにこの会場で出会った3人とは明らかに異質。
「あっ―――」
声を上げようと思ったその時――――
船のヘリに足を置いて膝を立てこちらを窺っていた男が割り込むように口を開いた
「――――なぁ……キミは――――金で魔法を買ったというあの男の話を信じるか?」
自分のペースに持っていこうと話しかけようとしたが、あっさり出鼻を挫かれた。
「金で魔法を買った」という言葉を信じるか?という男の第一声に
「……」
口籠るしかなかった、どう返答するべきか…
「信じます!突然こんなところに連れて来られて訳が分かりません!こんな事人間が出来る事じゃないです!」
「――――いい答えだ…そう…この会場には魔法や超能力の類を使う能力者がいる、―――キミや――――キミが殺した人間のように一般の人間ばかりではない」
「!!」
「こんな時間に君の様な一般人が人目に付かない海で体を流していれば当然だ、同行者を殺して返り血を流していたのだろう?」
「どうして分かるんですか!汗をかいて気持ち悪かったからですよ!そんな決め付け……」
先出しも後出しもなかった、一方的に畳み掛けられるばかりで勝負もさせてもらえない。
男はこんな小さな少女に対して、会話をしている今も全く警戒を解いていない。
「――――簡単に信じただろう?……君のような少女が一人でいればそうする、例外はあるが……」
「そんなことしません!!」
「キミのその噛みしめて血が出ている唇と青ざめた顔……興奮が引いてきて気分が悪くなったのだろう?」
一々見透かしたように自分の状態を言い当てる男にどう対処すればいいのか、
頭が混乱するが話をなんとか切り返さないといけない。
「―――あなたは誰ですか?あんな所から船で出てくるなんておかしいです!」
「…ふむ、まぁこの辺にしておいてやる、俺の名はルルーシュ・ランペルージだ。キミは?」
ルルーシュは鼻で息をして、己の名を明かした、がそれはあくまで名簿上の名前だ。
真の名前は警戒して教えなかった。
東洋には真名を知られると呪いを掛けられるという話がある。
一般人ではない可能性は低いがそういう事に特化した力を持っている可能性も否定できなかったからだ。
「私は平沢憂です」
「ほう平沢…、姉か妹がいるのか?」
「っ!!どうして」
「名簿に平沢という女は2人だけだろう?名簿の名は全て把握してある」
憂はここで初めて髪を掻き上げたルルーシュの貌をみた。
憂はゾクッとした、こんな美しい人間は生まれてこの方見た事はないがその瞳に怖気が走った。
彼女は胸を手で隠しただけの裸なのに、狼狽や気恥ずかしさの欠片も見えない。
人形やゴミでも観察するように窺うその眼には感情が一切見えなかった。
果たしてこれは人が人を見る時の目だろうか?
2人の人間を殺した憂は何か良くない魔物を呼んでしまったような気がした。
「――――俺と共に来るか平沢憂?…俺が指示する作戦には従って貰わねばならないが、
俺はお前の行動に干渉しない。場合によっては策を与え、良い武器が手に入ったらくれてやってもいい」
「はぁ??それって…」
「お前が何処で何をしようとも関知しないという事だ。」
ルルーシュの言う事を理解して憂は驚いた…
(――――私が人を殺しても気にしない目をつぶる、むしろ手を貸すと言っている……
自分に火の粉が飛ばなければ何をしても許すという事…この人って……最低!!)
「俺はお前が止めた者には手を出さない、その代わりお前も俺が止めろと言った者には手を出すな。」
「――――えっと、分かりました。」
「――――これで契約は成立した。そこのタラップから乗れ…それと自転車は有った方がいい。この戦場では素早く移動できる、静かでいい乗り物だ。」
「――――はい!」
憂はバシャバシャと音を立てながらマウンテンバイクを取りに戻った。
靴とパンツ一枚の姿でこちらに戻って来た憂を見ていたルルーシュが目元を触った。
憂の瞳を覗き込みながら何人をも縛る必殺の言霊を唱えた。
―――――平沢憂、俺を裏切るなよ
ルルーシュの深い紫色の双眸がクリムゾンレッドに変わり怪しく煌めく、
ギアスの紋章は解き放たれ、凶鳥のように翼を広げて羽ばたく、その怪しい光は平沢憂の瞳から侵入し脳を犯した。
「――――はい、平沢憂はあなたを裏切りません」
憂は立ち止まって催眠状態になったように口を開いた
――――まず言葉で制約をかけ納得させてからギアスをかける、二重の制約
いつかは裏切る気満々でも、全ての思惑を粉砕され、自分の行動を言い当てられる…
完全な恐慌状態だ、約束をした直後から裏切ってやろうなどとは思えない。
ルルーシュが一切隙を見せなかった為、機を見つけた時にこそ裏切ろうと思うからだ。
船を止めて平沢憂と接触したのはこの実験ためだ、
突然の機関銃に無抵抗だったことから何の能力も持たない正真正銘の一般人だろう。
固い意志を持ち姉妹の為に殺しを決意する一般人…
ギアスに対する抵抗具合や持続時間を見るにはサンプルとしては最高クラスだ。
「――――ありがとう」
ルルーシュはニヤッと頬を釣りあげた。
◇◇◇◇
「――――騒がしくし過ぎた…早く船を出さねばならんな。禁止エリアが設定され浅瀬に閉じ込められれば身動きが取れなくなる。
宇宙開発局エリアから離れなければ…」
揚陸艇はその速度を上げて動き出した。
格納庫にシティサイクルとマウンテンバイクを止めてある、中は3台ほど車を止められるほどのスペースがあり
憂には良く分からないが、機械を整備したりできる機材がいろいろある。
元々はナイトメアフレームを搭載し強襲を掛ける為に作られたもので、ルルーシュが黒の騎士団で使ったものだ。
今は自動運転で西側にタワーが見える辺りを航行中。
ここに来て初めてルルーシュは気恥ずかしそうに眼を覆った。
「まぁその格好では…風邪をひく。湯を沸かしてあるから塩水をシャンプーとボディソープで洗え、
それと…とっておきの服をくれてやる」
と先ほどまでの無感情な顔から一転、表情を崩し笑った。
同じ人間とは思えないほどの変わりように頭が混乱する、どっちが本当の顔だろうか?
あれに比べれば私の仮面などまだまだだ、あの人に学ぶことはたくさんありそうだ。
(今殺すのは無理っぽいか…?ギャンブル船の事を話した方がいいかな?当面は力を利用しようかな)
ルルーシュが持ってきた服を見て笑った。
「――あはは…なんなんですか?そのゴスロリは」
「ああこんな事もあろうかと調達したものだ、サイズは合うか?目立つだろうが囮になってもらうぞ」
フリフリの白いブラウスに、胸元の黒いリボン、胸を強調するような赤い上着、
短いスカートの腰の一番細い部分にも黒いリボンが付いている。
黒と白のニーソックスにブーツ、首にレースと小さな帽子まで付いている。
孔雀のように着飾って男を油断させろと?憂は納得したようにゴスロリを受け取った。
支援
支援
【G-6/海上/一日目/早朝】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(小)、静かな怒り
[服装]:ジャージ(上下黒)
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、皇帝ルルーシュの衣装@コードギアスR2
シティサイクル(自転車)@スーパーマーケット、鏡×大量、キャンプ用の折り畳み椅子、消化器、灯油のポリタンク、
ロープ、カセットコンロ、混ぜるな危険と書かれた風呂用洗剤×大量、ダイバーセット@スーパーマーケット
その他医薬品・食料品・雑貨など多数@スーパーマーケット
(まだ沢山スーパーマーケットから調達しています。後の書き手さんにお任せします)
[装備]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる
1:偽ゼロは生かして帰さない、今後ゼロを騙る者は破滅させる
2:平沢憂を徹底的に利用する。偽ゼロを始末する為にはまだ戦力が足りない、駒が必要だ
3:騒がしくし過ぎた、宇宙開発局エリアから少し離れるか
4:スザク、C.C.と合流したい
5:首輪の解除方法の調査、施設群Xを調査する?
6:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
7:ギアスの効果時間や抵抗具合を見る、いろいろ実験したい
8:偽ゼロを殺すまでは死ねない、目的の為には手段は選ばない
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※深夜のスーパーで支給品のバッグは幾ら物を入れても、重さサイズは変わらない事を知りました。
シティサイクルやジャージを調達した時に、限界まで必要と思われるものをバックに詰めました。
まだまだあるようです。後の人にお任せします
※F-6で黎明に五飛による偽ゼロの演説を聞きました。
※F-6の早朝に展示場北にドックが迫り上がりました。その際警戒音やドックの動く音が宇宙開発局エリア(F-5、6、G-5、6)に響きました。
※平沢憂に「俺を裏切るな」というギアスをかけました。
[アイテム]
黒の騎士団用強襲揚陸艇@コードギアス反逆のルルーシュ(ナイトメア無し)
1期12話[シャーリーと銃口]にてコーネリアを奇襲する際に黒の騎士団が使用した強襲揚陸艇
1度に4発のミサイルを撃つ事が可能、ナイトメアを3、4機搭載する事が出来、簡単な整備が出来ると思われる。
大きなボートの様な形をしていて、驚異的なスピードで海から陸に飛び出てナイトメアを粉砕した。
【平沢憂@けいおん!】
[状態]: 疲労(小)、拳に傷
[服装]:ゴスロリ@スーパーマーケット
[装備]:果物ナイフ@現実(現地調達)、拳の包帯
[道具]:基本支給品一式、日記(羽ペン付き)@現実、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュR2、制服、ギミックヨーヨー@ガンソード、
モデルガン@現実、手紙×3、遺書、カギ爪@ガン×ソード、阿良々木暦のMTB@化物語、カメオ@ガン×ソード、包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor、確認済み支給品0〜3
[思考]
基本:自分の幸せ(唯)を維持するためにみんなを殺す。
1:日記を書いて逃げ道を消す。
2:ルルーシュを利用する。機会があれば殺…あれ??裏切りません。
3:安藤が話していたギャンブル船の事をルルーシュに話してみる。
[備考]
※民家で果物ナイフを手に入れました。
※安藤のこれまでの経緯と人物情報を得ました。
※ルルーシュの「俺を裏切るな」というギアスをかけられました。
[アイテム]
ゴスロリ(衣類)@スーパーマーケット
ルルーシュがC.C.にプレゼントした私服に似ている
代理投下完了です
一部、文字数制限のため改行を入れさせてもらったところがあるのですが…
少しミスってるかも……
どーでもいいけどルルと憂ちゃん二人とも荷物大杉w
投下乙!
俺を裏切るな、か
相変わらずルルーシュは頭良いし、ギアスの万能さは異常w
憂がなんとか長生きできそうで良かったw
でも妹とか…ルルーシュの情フラグが…
代理投下乙です
ルルーシュがキレたか。何か怖いフラグを立てたな
しかし、よくゴスロリまで用意したなと思ったらCCにプレゼントしてたわw
憂はこのままマーダーするよりはマシか?
ギャンブル船に行くかどうかわからないがルルーシュらまで来るのか?
先が気になります
投下乙です。
ルルーシュ、パロロワでデパートなんかに行くシーンがあったら絶対やるべき!という行為を見事にやってくれましたw
憂は超絶美形なルルーシュと密閉空間で二人きり……今後のやり取りが楽しみ過ぎる。
ルルーシュなら麻雀も得意だろうな。トレーズが凄腕だったくらいだしw
Eカードの方があってるかもだけど。
何にせよ油断してサクッと殺されなくて良かった。
投下及び代理投下乙です
さすがのヤンデレも本気の童帝の前には無力か…
ギアスの制限は明言されてないぶん後続の書き手がどうするかが楽しみだw
憂の水浴び、だと…
おい、誰か絵心のあるやつはいないか!
すぐに筆を取り、お絵かき掲示板に急ぐんだ!
投下乙です
正直憂のガチマーダーは能力持ちばかり残ってきた今となっては現実的に無理だし、
ルルについていった方が賢明だ
つーかルルかっけえw
ようやく世捨て人じゃない本気のルルーシュが見られるぜ
バーサーカー、レイ・ラングレン、アーニャ・アールストレイム、リリーナ・ドーリアン、刹那・F・セイエイ、本多忠勝、織田信長 投下します
無人の野を征く孤影、名を古代ギリシャの大英雄ヘラクレスと言う。
が、現在彼を呼ぶにその名は相応しくはない。
この場に彼のマスターがいればこう呼ぶだろう、『バーサーカー』と。
その名が示すごとく、狂戦士は闘争の場を求め行く手を遮ることごとくを破壊し、粉砕し、蹂躙し、一路北東へと走りゆく。
やがて、視界の端にバーサーカーの生きた時代には見られなかった、直線で構成された建造物が映る。
英霊となって得た知識が、あれは学び舎であると答える。そして、その内に複数の命の鼓動――獲物を、感じる。
生前は高潔なりし武人であったヘラクレスのこと、罪無き者の命を摘み取ることに呵責を感じないわけではない。
己一人ならば躊躇うことなく帝愛グループなる悪漢へとこの豪腕を叩き付けられる。
既にこの身は生を終えた存在。戦場を駆け白刃に身を晒し、血に濡れ倒れることに恐れはない。
だが、しかし。この肩に背負うは自らの命ではなく、マスターたる少女の命だ。
マスターとサーヴァント、二者を繋ぐ魔力のパスは寸断されている。本来、令呪を使いきるか死に別れるかしなければ断たれることなき絆が。
あるいは、主催者は聖杯以上の魔法を手にしているのかもしれない。
そんな輩がバーサーカーのマスターにして聖杯の器たる少女を放置しておくか?
――否。
考えるまでもない。バーサーカーが抵抗の間もなく囚われたのならば、あの少女一人で逃げ切れるはずがない。
今この瞬間も、少女は、自らのサーヴァント以外に頼る者を知らない哀しきマスターは彼を待っている。
是非もない。
たとえ冥府魔道に墜ちようと、一刻でも一寸でも一瞬でも疾く主の元へ馳せ参じなければならない。
そのためにはどうすればいい?
島中を走り回り、魔力経路を頼りに彼女を探すか?
――否。
単独では日常生活もままならない少女がこの戦場にいる可能性は低いと見ていい。
もし彼女が死ねば、極度の魔力喰らいたるバーサーカーもまた現界してはいられない。おそらくは主催者の元で人質として囲われているだろう。
では仲間を集めて主催者に反抗するか?
――否。
もしバーサーカーが主催者の意にそぐわぬ行動を取れば、囚われのマスターへと危害を加えられるかもしれない。
そもそもにして、バーサーカーのクラスたる今の自身では他者との友好的な接触など望むべくもない。
探しても手は届かない。
守ろうにもここにはいない。
で、あるならば――残った道は一つしかない。
主催者の手の中のマスターへと、最も迅速に、かつ少女の安全を慮った上で辿り着く方法。
主催者の機嫌を損ねず、望み通りに振る舞うこと――すなわち、闘争だ。
万象一切灰燼に帰してでも。
死山血河を築こうとも。
立ち塞がる全てを打ち倒し、主催者の望むままに、操られるままに、踊り狂うしかないのだ。
今一度、胸中の決意に触れる。
問題はない。既に一度、殺戮と破壊の衝動に身を任せたのだ。
先ほど干戈を交えた敵手。サーヴァントとは違う、だがギリシャの大英雄と伯仲するほどの武人。
バーサーカーに勝るとも劣らぬ豪壮な体躯、練り上げられた技。
そして幾千幾万の戦場を越えてきたと自負する大英雄を恐れず、正面から打ち合える凄まじい覇気。
あの武勇。生前、そして英霊となった死後通じて手合わせしてきた者達の中でも五指に入る。
惜しくも水入りとなった先の邂逅を思い出し、バーサーカーの巨体が震える。
こんな状況でなければ正々堂々、全身全霊を賭して刃を交えたい豪傑であった。
キタ!リアルタイム!
この先バーサーカーが修羅の道を進むならば、再びあの武人と相見える機会が必ず来る。
あの眼光の中に、バーサーカーをして感嘆せしめる正義を執行する気高き意思を垣間見た。
おそらく彼は己と真逆の道を往く。
決着を着けねばならない。
サーヴァントとしてではなく、一人の武人として。
烈火のごとく湧きあがるその想いを、戦場に生きるバーサーカーは抑えられない。
そしてもしも許されるならば。
この手にかける者は戦う術なき弱き民ではなく、あのような強き者であってほしい。
感傷であるのはわかっている。
それでも、願わずにはいられない。
我が身に纏わり付く、忘れ難い誇りの残滓。
英霊としての気高き戦を望む、戦士ヘラクレスとしての願望を。
小高い坂を駆け上がる。
見えた。あれが現代の学び舎。
歩いても数分かからずという距離。
バーサーカーは鬨の声を上げようと息を吸い込む。
そこで、見た。
遥か東、薄明の空に舞う紫紺の影を。
直感する。
あれはバーサーカー自身と同類――すなわち、サーヴァントであると。
跳んでいるのではなく、飛んでいる。
空を飛ぶサーヴァント。ライダーか?
いや違う。ライダーであるならば何かに乗っているはずだ。
だがあのサーヴァントは何かに騎乗している様子ではない。
いかに神話に名を残す英霊と言えど、翼なき身で空を往くことは不可能だ。
あのサーヴァントは翼でも乗り物でもなく、独力で空に舞っている。
ならば答えは一つ。
重力の頸木すら断ち切るほどの魔力を噴射し得る、ただ一つのクラス――キャスターだ。
悠々と、こうして下からバーサーカーが見上げていることすら気付かずにキャスターは遠ざかる。
正面から戦えば、バーサーカーにとってキャスターなど敵ではない。
魔術師ごときがいくら小細工を弄しようと、最強のサーヴァントに力勝負で太刀打ちできるはずがないのだ。
だが、それはあくまで尋常な果たし合いであればこそ。
キャスターのクラスがすべからく持つ、陣地作成と道具作成のスキル。
これらを効果的に運用し、またその絶大な魔力で他者を傀儡とし己が戦力とすることが可能ならば、キャスターは決して侮れない存在となる。
たとえば数刻前に戦った武人。彼ほどの豪傑が容易く術中に落ちるとは考えにくいが、そこはキャスターのサーヴァント。
魔の領域において、バーサーカーなど及ぶべくもない知識の持ち主にかかればどう転ぶかは分からない。
彼ではなくとも、六十余名もいればその獲物は選り取りだ。
純粋な脅威として。
また、武人の誇りを穢しかねない許すべからざる下郎として。
まさに目前へと迫った学び舎から矛先を転じ、バーサーカーは一路キャスターを追って走り出す。
学校に集う者達を見過ごすのは痛いが、未だ正体不明の何者かと魔術師のサーヴァント、どちらが厄介かと言えば間違いなくキャスターだ。
なんとなればここは後回しにしてもいい。だが、一度キャスターを見失えばそれだけ以後が不利になる。
武を信条とするバーサーカーにとり、戦場とは力と力のぶつかり合う狭間。全てを剣と拳に預ければ自ずと答えの出るもの。
しかしキャスターの戦いは違う。奴の戦いとはすなわち、戦場に入るまでに決している物のことだ。
自身に有利な条件を構築するという点において、キャスターは他のクラスの追随を許さない。
一度逃がせば次は倍の。二度仕留め損なえば次は二乗の脅威となることは間違いない。
今ここで、見逃すわけにはいかない。
この位置からでは自慢の豪腕による投擲も届きはしない。故に走る。ひたすらに、自らの足を頼りに。
先ほどとは違い、無駄に破壊を撒き散らすことはしない。万が一察知され、気配を遮断されては面倒だ。
足を地に叩き付ける。だがその太く逞しい豪脚が奏でるのは、無音とは言えないまでも赤子すら起こさぬであろうごく微量の音律。
ヘラクレスは本来キャスター以外の全てのクラスに該当する資質を持つ英霊。
キャスターを遠間から発見した視力はアーチャーのクラスであれば存分に活かされたもの。
では、こうして巨体を感じさせることのない静謐な走法は何か?
問うまでもない。アサシンのクラス、隠業もまたお手のものである。
天高く舞う黒蝶を追い、学校から離れゆく孤影。
向かう先に待つのは――新たな戦場以外、あり得ない。
◆
耳に響くのは銃声と甲高い金属音。
目に映るのは火線の閃きと異形達の乱舞。
リリーナ・ドーリアンの存在するこの場所こそが、今まさに戦場と化していた。
右手には大昔の武士のような格好の金髪長身の男。
左手にはこれまた時代を感じさせる武者鎧をまとい、勇壮な軍馬に跨る壮年の男。
リリーナと連れ合いのアーニャ・アールストレイムの前に突然現れ、有無を言わさず戦い始めた二人の男。
その余波を受け危機に見舞われたリリーナ達。その時、あわやと言うところで割って入った影二つ。
金髪の襲撃者と撃ち合うのは、刹那・F・セイエイと名乗った黒髪の青年。
その彼にホンダムと呼ばれたモビルスーツもどき……巨人は、鎧武者へと向かって行った。
銃声轟く戦場に降って湧いた、猫の額ほどの空白地帯。
要するに戦い合う四者のちょうど中間にいるリリーナとアーニャは、未だ頭上を飛び交う銃弾のおかげで逃げることもできずにいる。
無論、リリーナに逃げるという選択肢はない。
この争いを静めることができずして、完全平和主義など謳えるはずもない。
だがしかし、同時に言葉で止まる者達かと言うとそうではないとリリーナも理解している。
不用意に飛び出せば、すぐさまリリーナの身体は狂乱する弾丸によって食い荒らされるだろう。
ままならない状況に、リリーナは歯噛みする。できるものなら今すぐにでも立ち上がって声を上げたいというのに。
それを察したか、傍らのアーニャはリリーナの方を押さえる手を離さない。
銃声はますます激しくなる。モビルスーツが暴れているのか、倉庫の破砕音すらも聞こえてきた。
このままここに留まっていても、安全という保証はない。
アーニャが手振りで移動すると伝えてくる。頭を上げないように、離れた所にある廃材の影へと這いずっていく。
充分距離が空いたところでリリーナは、油断なく拳銃を構え周囲を警戒するアーニャへと問いかける。
「アーニャ、どうにかできませんか? せめてあの者達に語りかけることは……」
「止めた方がいいんじゃないかしら。どう見たって、あれはやる気よ」
「彼らも私達も、殺し合いを強制されているという点では同じ立場です。理解し合うことだって不可能ではないはずだわ」
「別に私は止めないけど。助けもしないわよ?」
「アーニャ……」
額を押さえ、眉を顰めつつアーニャが言う。
頭を打った割に機敏な受け答え。意見を否定されたことを残念がりつつも、大事なさそうなアーニャの様子に胸を撫で下ろす。
「――っと。優先するべきは私達の安全。リリーナ……様も、それを忘れないで」
「ですが……」
「それに、乱入してきた二人が味方だという保証もない。この状況、私達は一番不利なポジション」
言ってアーニャが拳銃で指し示したのは刹那と言う青年。
「彼とあのナイトメア……じゃない、あれも参加者? とにかく、あの二人は組んでいる。心強い援軍ではあるけど、明確に私達の味方と決まった訳じゃない」
「私達を救ってくれたではありませんか」
「単に私達が小娘二人だったから後回しにしているだけとも考えられる」
「人の善意を疑うというのですか、アーニャ!」
「あいにくそんな抽象的なものに価値は感じない。まあ、とりあえず敵ではないとは判断してもいいと思う。
それよりも残りの二人。あっちは明らかに危険」
刹那と相対する金髪の男と、軍馬を縦横に操りモビルスーツらしき参加者――ホンダムと呼ばれていた――と渡り合う武将。
金髪の青年は無表情に、それこそ道に落ちている小石を蹴るかのように引き金を引いている。
対して武将の方は、今も哄笑を上げ軍馬を巧みに操りパワーで勝るだろうホンダムをスピードで翻弄している。
どちらにも共通するのは、人に銃を向けることに一切の躊躇いがないという点だ。
僅かなリとリリーナが二人の関心を引いてしまえば、その銃口がどこに向くかは考えるまでもない。
「リリーナ様、デイパックの銃を貸して」
「……どうする気です?」
「決まってる。敵ではない方を援護して、敵を排除する。あの武将のマント、何かの兵装みたい。
あの――ホンダムの、ナイトメア並みの攻撃を軽々と受け止めている。私が援護したところでそれほどプラスにはなりそうにない」
「アーニャ」
「でもあの金髪の男は違う。ラウンズ以上の身体能力だけど、少なくとも撃てば死ぬはず。まずは刹那を援護する」
「アーニャ!」
思わず大声を上げる。存在を秘匿しなければならないということも忘れて。
アーニャが咎めるような視線を向けてくる。
「……何」
「あなたまで戦うというのですか?」
「仕方ない。黙って殺される訳にはいかないから」
「それは私も同じです。ですが、一度銃を撃ってしまえば、再び対話のテーブルに着くことは困難になります。
まして、もし誰かが死ぬようなことになれば取り返しは付かないのですよ!」
「じゃあ、どうすればいい? どう見たってあの二人は話を聞いてくれる感じじゃない」
「それは……そう、ですが……」
代案など思いつきはしない。
話し合いで平和の道を模索するためにはまず銃を置かねばならない。
だがこの状況で銃を自ら手放すのは、平和主義者などではなくただの愚か者だ。
そしてリリーナは愚か者ではない――しかし、筋金入りの平和主義者であった。
だからこそ、この場で初めて声を交わした同年代の少女が銃を手にすることに、無意識の反発を覚えてもいた。
言葉は出てこない。だから目で訴える。
他の方法があるはずだ、と。
リリーナの視線を怯むことなくアーニャは受け止める。
やがて――根負けしたのはアーニャだった。
「……殺しはしない。それが私にできる最大限の譲歩。とりあえずあの二人を無力化する。
死なない程度に戦闘力を奪うから、そこからはリリーナ様の出番。それで妥協してほしい」
「……ッ、わかり……ました。他に方法がないのなら……。ですが、あなたも死んではなりませんよ、アーニャ」
「そのつもり」
渋々とリリーナがデイパックから取り出したAK-47とボールペン型の銃、そして両者の予備弾倉をアーニャが受け取る。
アーニャは自身が持つ拳銃、ベレッタM92を代わりに渡そうとしたがこれはリリーナに断られた。
「私に銃の心得はありません。いえ、あったとしても。完全平和主義を掲げる私が武力を手にする訳にはいかないのです」
「……そう。じゃあ、安全なところに隠れていて」
ペン型銃を胸ポケットに引っかけベレッタをベルトへと挟み、AKを抱えて刹那がいる方へと小走りに駆け出していくアーニャ。
その背に、リリーナの言葉が追いすがる。
「アーニャ! ――気を付けて!」
わかってるわよ――声に出さずに呟いたその表情は、主君のために戦場を駆ける騎士そのものだった。
歯を食い縛り頭痛を押し殺す。こんなところで死ぬわけにはいかない。
彼女の主君、第98代神聖ブリタニア皇帝のために。
◆
ガンダムマイスターたる刹那にとって、生身の戦闘は本分とは言い難い。
だが、幼少の頃アリー・アル・サーシェスによって叩き込まれた戦闘術が、ソレスタルビーイング加入後も怠らなかった訓練が、刹那を寸でのところで死神の抱擁から遠ざける。
身を引き壁を背にした刹那の傍らを音速の弾丸が駆け抜ける。当たっていれば刹那の頭部は熟れ過ぎた果実のように弾けていただろう。
(こいつ……手強い奴だ!)
胸中で舌打ちする。
首輪探知機を使い、都合四つの反応があるこの倉庫群へと飛び込んできた刹那と忠勝。
折り悪く戦闘中だったらしく、現場には争う二人の男と怯え惑う二人の少女。
反射的に忠勝が動き少女達の危機を救い、なし崩し的に戦闘へともつれ込んだ現状を再認識し刹那は焦燥に身を焦がす。
(ホンダムが戦っているのは織田信長――徳川家、そして本多忠勝の怨敵。援護したいところだ、が……ッ!)
倉庫の入り口から眼だけを出して中にいる敵手の姿を確認しようとするものの、途端に銃弾が放たれ慌てて頭を引っ込める刹那。
まずいことに敵の武装は拳銃一丁だけではないらしい。クロスレンジならともかく、一度距離を空けると刹那の不利は動かし難くなった。
(銃声、弾速、発射頻度から察するに狙撃用のセミオートライフル……射程、威力ともにこの拳銃とは比べ物にならない)
どうやら敵は相当銃の腕に自信があるようだ。
外したからと言って、焦っての無駄撃ちは一つもない。刹那が隠れている状態から顔を出すその一瞬で照準・発砲してのけるその技量。
銃を扱うことにかけては刹那の遥か上を行っている。
ソレスタルビーイングの盟友にして射撃の名手、ロックオン・ストラトスに匹敵するかもしれない。
(加えて奴には拳銃もある。このままでは押し込まれるな)
単純に考えて敵の手数はこちらの二倍だ。
無策で飛び出したところで、まずあの狙撃銃による牽制が来る。牽制と言っても必殺の一撃だが。
そしてそれを避けることができても、生まれた一瞬の隙を見逃してくれるほど生易しい相手ではない。すぐさまサイドアームによる追撃が来て、敗北するのは目に見えている。
歯噛みする。自身に加え、脳量子波が伝える忠勝の焦燥を感じるからだ。どうやら向こうも一筋縄ではいかない相手らしい。
「せめて、奴の気を散らすことができればな……」
「あら、それなら私が手伝ってあげましょうか?」
「……ッ!?」
背後で囁かれた声に息を飲む。
咄嗟に振り返ればそこにいたのは先ほど忠勝が助けた少女の片割れだ。
戦場に会ってその表情は泰然としていて、微塵の恐れも感じさせはしない。
いかに金髪の男に集中しているにしても、容易く背後を取られるほど刹那は警戒を怠ってはいなかった。
この少女もまた、只者ではないということだろう。
「お前は……」
「アーニャ・アールストレイム。もう一人はリリーナ・ドーリアン。ま、自己紹介は後にしましょう。
あの男を排除したいのでしょう? 私も協力するわ」
「戦えるのか?」
「これでも皇帝陛下直属の騎士よ? ナイトメア操縦だけが芸じゃないわ」
「皇帝……ナイトメア? 済まないが何を言っているかわからないな」
「……その辺りは、後で詳しく話し合いましょう。今はまず、この場を収束させなければ」
「……了解だ。策はあるのか?」
「私がこのライフルでここから援護するわ。見たところ向こうの銃は連射が利かないようだから頭を押さえることはできるはず」
「その間に俺が接近する、か。わかった、それでいこう」
「話が早くて助かるわ。あ、これも持って行きなさい」
アーニャが差し出したのは、一般的なボールペンだ。
何のつもりだと言いそうになる刹那だったが、続けて渡された五発の弾丸に得心する。
「暗殺用の偽装銃か」
「まあ、こんなチャチな物でもないよりはマシでしょう?」
袖口にボールペン型銃を仕込み、刹那が壁際でタイミングを計る。
上着を脱ぎ、放り投げる。間髪いれずに弾丸が飛来し、ズタズタに引き裂かれた。
「行きなさい!」
アーニャが転び出てライフルを連射する。敵は突然一人増えた標的に動揺したか、身を隠したようだ。
機を逃さず刹那も駆け出す。
背中を会ったばかりの者に預ける不安がなくもなかったが、他に方法もない。
アーニャは自らを騎士と称した。騎士、と言う割に銃器の扱いは大したものだ。
的確に金髪の男の鼻先へと弾丸を集中させ、反撃のタイミングを与えない。
コンテナの影から、ぬっと拳銃を構えた腕だけが伸びた。
反射的に足に力を込め、左方に跳ぶ。弾丸は寸分違わず刹那の頭があった位置を通過した。
遮蔽物の影に隠れ、視界に目標を捉えずともあの精度。刹那の頬を冷たい背が流れ落ちる。
「止まらないで! 行きなさい!」
後方から追いすがるアーニャの声。彼女もまた、こちらへ走り出しているようだ。
ここは一気に畳み掛ける時と、刹那も拳銃を握る手に力を込めて飛び出した。
瞬時に襲い来る無数の弾丸。だが今度はアーニャの牽制が効いたか、先ほどよりも甘い狙いのものばかり。
凶弾を身を伏せやり過ごし、そのバネを活かして一気に跳んだ。
男から数m、近接戦闘の距離。刹那の目が、窓から差し込む黎明の空の明かりで明確になった男の顔を捉える。
金髪長身、どこかの民族衣装のような服装。切れ長の目は何の感情も感じさせることはなく、この苦境に至ってもいささかの怯えも動揺もない。
男が身体を回す。拳銃を持つ方と逆の手に握られた長大なライフルがぐんと旋回し、刹那の頭を狙う。
鉄の塊を再度伏せて避ける。間髪いれず跳ね上がってきた男の足を、腕を交差させることで受け止めた。
衝撃で一瞬身体が浮く。
流れた体勢の中、刹那は痺れる腕を叱咤し拳銃を男へと向ける。
男もまた、ライフルを落とし拳銃を刹那へと照準する。
交差する視線/射線。
鳴り響いた銃声は、二つ。
「……チェックメイト、かしら?」
そう言って、硝煙香る拳銃を手に近づいてきたのはアーニャ・アールストレイム。
男が引き金を引き絞るより一瞬早く、飛来したアーニャの弾丸が男の手から銃をもぎ取ったのだ。
少女の介入がなければ撃ち負けていたであろう刹那の放った弾丸は、男の左肩を撃ち抜いていた。
転がった拳銃を横目で見やり、男はだが敗北を認めてなどいない眼で刹那達を睨みつける。
男の足元にある狙撃銃、拾うのは二秒もいらないだろう。
だが一瞬あれば充分。刹那とアーニャの向ける銃口は、付け入る隙を与えてはいない。
「クライアントからの要請で、あなたは殺すなと言われているの。だから、申し訳ないけど……死なないくらいに、撃たせてもらうわね」
アーニャが拳銃を男の足へと向ける。
刹那は止めようかとも思ったが、この場を実質的に収めたのはアーニャだ。決定権は彼女にあると口を噤んだ。
アーニャが引き金を引き絞る瞬間、男が肩を押さえる右手を下ろす。
漏れ出した血がその身体を染める。
「あいにく……」
「え?」
下げられた手が握り込まれ拳となる。
その刹那からは見えない拳の中、何かを押し出す指の動き。
拳銃と狙撃銃を拾われることに気を割いていたアーニャは気付かない。
「死ぬのは、俺ではない。お前達だ」
四角い何かが拳から顔を覗かせる。
静かな言葉とともに男の親指がそれにかけられ、弾かれる。
弾丸のように飛び出た何かは、目にも止まらぬ速さでアーニャの構える拳銃へと食らいついた。
親指大ほどの物体が、拳銃を宙に弾き飛ばす。
男の足が振り下ろされ、地面にあったライフルを跳ね上げる。
刹那が発砲する。舞い上がったライフルのストックに命中し、衝撃でライフルは男の手の中へ。
伸ばされた男の両腕、先ほどと同じ四角い物体が握られている。
(指弾か――!)
刹那とアーニャへ向けてそれぞれ一発ずつが飛来する。
拳銃の柄尻で叩き落とす。
目に映るそれは、刹那のいる環境ではあまり目にすることのないもの――麻雀牌。
だが、銃を通じて伝わった感触はただの娯楽用の小道具などではあり得ない硬さの反動。
これをあの速度で放たれれば、近距離なら拳銃並みの威力にもなろうというもの。
アーニャも辛うじて回避したようだが、片腕で拳銃を保持していた際に受けた指弾の衝撃はその腕の自由を少なからず奪っていたようだ。
アーニャがライフルを構える。が、片腕のその速度は明らかに遅い。
その一瞬の隙を突かれ男は狙撃銃を回収し、あまつさえ取り落とした拳銃へと猛然と走りだしていた。
もはや戦闘力を奪うなどと悠長なことは考えず、刹那はその背中へと立て続けに二発、発砲。
だが男は同じ銃使いとしてその行動を予測していたか、振り返りもせず身体を傾け銃弾をやり過ごす。
駆け抜けざまに拳銃を拾い、勢いのままに跳躍。
刹那の銃口が後を追うが、壁や階段の手すりを蹴って縦横に反転するその身体を捉えることはできず。
あっという間にその姿は工場の二階へと消えた。
アーニャの落とした拳銃と指弾に使われた麻雀牌を回収し、刹那はアーニャに後退を指示する。
一度距離が開けば狙撃銃を持つあちらが有利なのは自明の理。開けた場所では餌食でしかない。
幸い、あの銃創はかなりの深手。早急に処置せねばならない分、時間は稼げると言える。
◆
狙撃を警戒しつつ近くの建材の影へと退避した刹那とアーニャ。
こうなれば倉庫から脱出したいところだが、背を向ければあの男は即座に狙い撃ってくるだろう。
倒さなければ脱出は不可能だ。
アーニャが手を開閉する。感触は戻ってきた。
「済まないな。俺が迂闊だった」
「それはこっちの台詞。まさかこんなもので逆転されるとは、ね」
刹那が回収した麻雀牌を検分し、アーニャが呟く。
「これは……たしか麻雀っていう娯楽に使う小道具ね。でも硬くて重い……特別製なのかしら」
「こんなものでも使い方次第では武器になる、か。あの男、相当の手練れだな」
「そうね。悔しいけど銃を扱うこと、物を飛ばすことにかけては私たちでは及びそうにない。そして、あの身体能力」
「人間離れした跳躍力だったな。少なくとも俺はあんな軽業を行える人間は見たことがない」
「あれに蹴られると思うとゾッとしないわね……回転したりしないでほしいわ」
拳銃とライフルの弾丸を装填し直しつつ、どうするかを考える。
これで相手は刹那達を侮ることなく、相応に危険な相手と認識したことだろう。追い詰めて、しかし倒しきれなかったことが悔やまれる。
「まあ、私達も身動きは取れないけどそれは向こうも同じこと。千日手ってとこかしら?」
「いや……奴はいざとなれば撤退すればいいが、こちらはホンダムがまだ戦っている。座して待つ訳にはいかない」
「ホンダム……ああ、KMFみたいな人ね。あの鎧姿の敵はそんなに強いのかしら?」
「聞いた話だが、ホンダムに匹敵するほどの力の持ち主らしい。織田信長……できれば奴もここで仕留めたい」
「は? 織田信長って……あれが?」
聞かされた名前にアーニャは驚いた。
名簿を確認したときは同姓同名、あるいは偽名だろうとその程度にしか思っていなかったのだが。
だが、今も倉庫の外で激しい戦いが繰り広げられているのか、轟音はひっきりなしに聞こえる。
明らかに人の身の戦いとは思えない規模のそれを身近にしては、冗談と切って捨てることももうできはしない。
さすがに本人ではなかろうが、その力は決して侮れるものではない。
「じゃあ……ホンダム、って言う人の、本当の名前は?」
「本多忠勝だが」
「はぁ……なんでもありなのね、ここは。まさかあの第六天魔王に、戦国最強の武人がお出ましなんて」
「……? お前はホンダムと織田信長のことを知っているのか?」
「まあ、エリアイレブンのことは大体調べたからその程度はね」
「エリアイレブン……? 済まないがお前が何を言っているのか、今一つ理解できないのだが」
「何って……ああ、そういうこと。つまりね、私達が元々存在していた世界は――」
物わかりの悪い生徒を見るような眼で語ろうとしたアーニャを遮ったのは、倉庫中に反響する銃声。
とっさに刹那が手を引き難を逃れたものの、完全に位置を掴まれたらしい。
敵は銃創の応急処置を終えたのだろう。もう悠長に話し込んでいる時間はなさそうだ。
夜が明けつつあるとはいえ、光源の限られる倉庫内はまだ薄暗い。
金髪の男は一度撃てば位置を変えるようで、次々に撃ち込まれる弾丸は全て違う角度からの物だ。
巧みにお互いの背後をカバーしつつ、刹那とアーニャは必死に安全地帯を求め疾走する。
だが途中で気付く。まるで追い立てられるように、入口から離されていると。
「これは……ちょっと、マズいわね……!」
「俺達を逃がさないため、か。こうなると独力での脱出は難しいな……!」
「追い詰められたところで、もしあいつが爆弾なんて持ってたらお終いね。どうする?」
「…………」
目前に迫った袋小路へと駆けつつ、アーニャは思案する。
行かねば銃弾に貫かれ、行けば逃げ場のない行き止まり。
現状を打開する一手は――
「――ッ! そうか……”ならばいい”!」
「ちょ、ちょっと!?」
突然そう叫んだ刹那がスピードを上げて走り出す。
アーニャが危険と思った、まさにその袋小路に向けて。
「大丈夫だ! ついて来い!」
振り返らずに刹那が叫ぶ。その声は自棄になったのでも無策でもなく、ただ満ち溢れている。
この状況を突破する手がある、そんな確信に。
忠勝と信長が近付いているのか、地に響く震動がますます強まる。
問う暇もなく、アーニャも仕方なしに刹那に続いた。
行き止まりに辿り着き、遮蔽物に身を滑り込ませる刹那とアーニャ。
壁は分厚く、刹那達の装備ではとても破れそうにない。
「どうするの!?」
「奴を牽制しろ!」
答えになってない指示を返され、アーニャの胸に苛立ちがよぎる。
だが実際の脅威は刹那ではなく金髪の男。ひとまずは指示通り、男がいると思われる地点へとライフルを斉射する。
男が身を隠すのがちらりと見えた。
だが命中はしていない。地の利は敵にあり、火力も向こうが上。
敵はもうこちらが疲弊するのを待てばいいだけだ。決定的な瞬間はもうそう遠くはない。
焦燥を押し込め、刹那を見やるアーニャ。
刹那はタイミングを計るように壁の一点を凝視している。
その頬を流れる汗の量、決して平素ではない。
二人の間を切り裂く銃弾。
確実に近づかれている。
もう、猶予はない。
たまらず、叫ぶ。
「刹那ッ!」
「――ここだッ!」
拳銃を構える腕を伸ばす刹那。
向けられたのは金髪の男――ではない。
あらぬ方向の、壁の一点。
タン、タタタンッ――
リズムを取るような間隔で銃弾が壁面を叩く。
何をしているのよ――と、そう叫ぼうとしたアーニャより一瞬速く。
刹那がアーニャに飛びかかってきた。
「な――」
「伏せろッ!」
刹那に組み敷かれるアーニャ。
視界の端で男が身を乗り出すのが見え、その銃口が刹那とアーニャを貫く射線を的確に位置取る。
(こんなところで――ッ!)
もはや間に合わないと、全てがスローになった意識の中でわかってはいてもアーニャは銃を構えようとする。
敵手は勝利を確信したか、僅かに口の端を持ち上げる。
どうしようもない、全てが遅い――
刹那が何かを叫ぼうとする、
アーニャの構えたAKが金髪の男を照準しようと動く、
男の銃から弾丸がアーニャと刹那の命を刈り取るべく撃ち放たれる、
その瞬間。
「――――――――――――ッ!」
鈍色の衝撃と黒の竜巻が、アーニャの眼に映る全てを吹き飛ばしていった。
◆
濛々と立ち込める粉塵の中、屹立する巨影が一つ。
性は本多、名は忠勝。
人呼んで『戦国最強』。
徳川三河にその人ありと謳われた当代随一の武人、本多忠勝。
だが今は敢えてこう表するべきか――その名はホンダム!
その眼光が見据える先、差し込む光を背に、忽然と現れた黒い壁の内から立派な軍馬に跨る男が姿を見せる。
本多忠勝の視線を真っ向から受けて立つは、小国尾張から旗揚げし瞬く間に天下統一の目前まで駆け上がった男。
地に舞い降りて天を制す、人呼んで『征天魔王』織田信長。
戦国最強を相手に一歩も引かぬその豪勇。まさに魔王を名乗るに不足なし。
忠勝も信長も、激戦の凄まじさを物語るように全身が粉塵に塗れ、血に(オイルに?)濡れている。
しかしその覇気にいささかの衰えもなし。ともに戦意は十二分。
「フハハハ……さすがは戦国最強と言うだけはある。粘りよるわ」
「…………」
「余をここまで楽しませるとはな。大儀であるぞ、三河武士。褒めて遣わそう」
魔王が嗤う。
右手に携えるは騎士王が宝具、約束された勝利の剣(エクスカリバー)。
左手でその存在を主張するのは学園都市の技術の粋を凝らした銃器、オモチャの兵隊(トイ・ソルジャー)。
足を預けるは勇猛で名高き奥州筆頭伊達政宗が愛馬。
遠近隙のない武装、縦横無尽の機動力。
戦国最強を持ってしても、容易い相手ではない。
「……ほう? なるほど先刻の無謀は弱者どもを救いに入るためか。竹千代といいそやつらといい、とんだうつけよな――戦国最強よ」
工場の片隅で身を起こしたアーニャを、信長の瞳が捉える。
その底冷えのする眼光に、歴戦の戦士たるアーニャの身が我知らず震える。
傍らに刹那が並ぶ。視線は油断なく見晴らしの良くなった倉庫の中心に立つ信長を突き差していた。
刹那が壁に撃ち込んだ弾丸。
あれは金髪の男への攻撃ではなく、本多忠勝への合図。
脳量子波により忠勝の接近を感知した刹那は、状況をひっくり返す手段として忠勝の豪腕を頼った。
無論、刹那から忠勝へは声を介さずして指示を出すことはできない。
脳量子波はあくまで忠勝から刹那への一方通行。
が、だからこそ、これは刹那と忠勝の信頼関係の賜物と言っていい。
事前に打ち合わせておいた戦術プラン。
刹那は忠勝ならわかってくれると信じ、一定のリズムを刻み銃弾の合図を送る。
忠勝は刹那なら必要な指示を過たず下せると信じ、信長を巻き込んで倉庫に突撃する。
結果、信長を討つことはできなかったが、金髪の男がいた二階部分は木っ端微塵に消し飛んだ。
そして刹那とアーニャもほぼ無傷。
ここからは信長一人に対し、忠勝・刹那・アーニャの三人で対することができる。
ガンダムマイスター並みの連携とはいかずとも、即席のコンビネーションにしては上出来だ。
銃を構え、刹那とアーニャも忠勝の横へ並ぶ。
もはや金髪の男への警戒は無用だろう。さすがにあの有様では生きているはずがない。
「フン……雑魚どもが群れよったか。こともなし――この征天魔王直々に貴様らの首を落としてくれようぞッ!」
信長の足元から立ち昇る、蛇のごとき暗黒の炎。
意思を持ったかのように蠢き、剣を銃をコーティングする。
「何、あれ?」
「GN粒子か……!?」
驚愕する二人をよそに、戦国最強だけがその表情を動かさない。
数の上では不利になっても、信長の気勢は一向に衰えず。
その全身から放たれるプレッシャーは、アーニャにある男――剣を捧げた主、ブリタニア皇帝を思い起こさせた。
声も似ている気がする……それはともかく。
「ここに信長と金髪の男がいたということは、リリーナ様の安全は確保できたと見ていい……彼女には悪いけど、もう殺さずなんて言ってられないわね」
小声で呟くアーニャ。手加減などしている余裕などもうありはしない。
数はこちらが三倍だが、戦力は向こうが三倍と考えてもいいくらいだ。
忠勝が槍を構え、斬り込んだ。
その槍はアーニャにも見覚えがある。ブリタニア制KMF、グロースターに採用されていた戦闘用ランスだ。
当然、人に向ける代物ではない。が、
「愚かなり、戦国最強よォ!」
「…………!?」
ランスの回転機構が働かない。
振り下ろされた槍は地を割る威力ではあったものの、それはひとえに忠勝の腕力ゆえのこと。
巻き込んだ物を削り砕く回転槍ではなく巨大な鈍器にしか過ぎないそれは、信長が頭上に構えたエクスカリバーによって受け止められた。
少なくとも人の範疇にあるその体格で、3mを越える忠勝の一撃を受け止める信長もまた人間外の膂力。
が、そこはやはり体格の差か、剣に手を添えた信長もそれ以上の身動きが取れず額に汗を浮かべる。
膠着した一瞬を逃さず、刹那のワルサーとアーニャのAKが唸りを上げる。
左右同時に解き放たれる無数の銃弾。
「小賢しいわッ!」
叫びに応えるかのごとく信長の背から翼のような外套――マントが翻る。
吸い込まれるように、弾丸。
容易く鉄を砕き人を殺傷せしめる暴威は、大鴉の羽撃きによって吹き散らされる。
硬質な音を響かせ、弾丸は全て叩き落とされた。
信長の足が一閃。腹を蹴られた軍馬がいななき、前足を振り上げ忠勝の胸を強打する。
「…………!」
「うつけどもを顧みるからこうなるのだァ!」
忠勝がたたらを踏んだ一瞬、同時に信長が剣を傾け槍の力を下方に逃がす。
一瞬速く馬ごと旋回した信長の左手に、子どもが欲しがる玩具のような外見の銃器が握られている。
地を噛んだ槍の中ほど、機械部分の隙間にその銃口が押し付けられた。
連続する鋼鉄の咆哮。
「ホンダム!?」
背から刹那の声。激しい火花と金属音を前に、忠勝が後退する。
忠勝自身に傷はない。胸部装甲が数ミリほど凹んだだけだ。
だが、その手にも構える槍は中ほどから弾け折れ、半分ほどの長さになっていた。
傲然と信長が下々の者を睥睨する。
その足先が弄ぶのは。砕かれた槍の穂先。
「そうか……! 済まない、ホンダム。奴をここに押し込む時に槍に損傷を受けていたのか」
「…………」
「まずいわね。頼みの綱の最大火力が期待できないってことかしら」
忠勝の巨体に隠れるようにして、アーニャが言う。
信長の携える剣は忠勝の一撃を受けても折れず、歪曲した様子もない。
また左腕のライフルは相当の威力・重量であるだろうに、片手で発砲してもほとんど反動がないようだった。
そして軍馬だ。猛々しく主の敵を睨みつけるその視線は、人でなくとも充分に脅威を感じさせる。
戦闘を恐れないというのか、忠勝の巨体を前にしても寸毫の怯みも見せず命令あらば襲いかかる気性を持っている。
あの豪脚で蹴り付けられれば、忠勝はともかく刹那とアーニャは骨まで微塵に砕け散るだろう。
「愚昧たる身でこの信長の前に立ったこと、悔いることあらば死力を尽くし抗ってみせい! 恐れと絶望で我を楽しませるが、貴様らに与えられた唯一無二たる生の価値よ!」
馬を駆り、烈火のごとく攻め寄せる征天魔王。
忠勝がその突進を受け止めるべく折れた槍を構え、刹那とアーニャはその邪魔にならぬようにと散開しつつ信長へと弾丸を送り込む。
マントで弾き、あるいは馬を跳躍させて躱し、果ては手にした剣にて音速の銃弾を叩き落とす信長。
「本当に人間か……!?」
「でたらめもいいところね……!」
驚愕の声を上げる二人を捨て置き、信長は現状最大の脅威かつ天下統一を阻む徳川の守り神へとその狙いを定める。
瞬間に間合いを詰められた忠勝は馬を討たんと槍を薙ぎ払うが、寸前で軍馬は蹄を地に撃ち込み急減速。
目測を誤った槍は虚空を薙いで、当然がら空きになったその巨体へと上空から影が踊り込む。
「ホンダム、上だ!」
忠勝が見上げるより速く刹那の声。
「我に屈せい、戦国最強!」
「…………!」
疑いなくその声を信じ、見上げる隙を晒さず忠勝は槍を自らの頭上へと突き込んだ。
忠勝の腕に重い手応え。そして視界を侵食する常闇の輝き――
戦国最強の掲げた槍を、宙に舞う征天魔王の剣が半ばから斬り裂いていく。
火花を散らし、槍が鮮やかに二枚に下ろされる。
もはや邪魔はなしと信長が巨人を斬り伏せようとした刹那、その極短の瞬間を意味する名を持つ男から横槍が入る。
煩わしいとばかり、視線をやる栄誉も与えずマントで我が身を覆う信長。
その黒壁の中から一点、閃光が煌めいた。
慌てて身を伏せた刹那の頭上、闇を帯びた5.6ミリ弾が歓喜の声を上げながら行き過ぎる。
当てられはしなかった。だが、刹那の狙いは打撃を与えることではない。
左腕を刹那へと向けた信長の身体は一瞬バランスが崩れ、右手の件を振り下ろす動きにも影響を与えた。
頭部を断ち割るはずだった一閃は、兜の角飾りと肩の装甲を寸断するに留まった。
間髪いれず忠勝は槍を失った両の拳を握り、未だ宙にある信長の身体へと叩き付ける。
さすがにこれは片手間で受けること不可能と断じたか、信長がこちらも両の腕にマントを巻き付け直接忠勝の拳を防ぐ。
人形のように信長が再び高く打ち出されるが、くるりと回転したかと思うとその黒繭はばらりと解ける。
五体満足の信長がその足元へ滑り込んできた軍馬の鞍へと着地した。
「もらった!」
忠勝の指示によりその位置を予測していた刹那が駆け寄り、至近で馬を潰すべくその足へと立て続けに発砲。
同時に地に向け薙ぎ払われた黄金の剣から先刻の闇が噴き出し弾丸を蒸発させ、攻撃失敗と判断した刹那が後退する前に翼によって打ち払われる。
吹き飛んだ刹那を忠勝の腕が受け止めた。
「フン……小虫どもが。中々どうして、やりよるではないか」
騎士王の剣を軽く振り、信長が不敵な笑みを見せた。
信長が本来使う大剣とは使い勝手が異なるものの、戦国最強の『戦場にて傷を受けたことがない』との風説を容易く打ち砕いた業物だ。
そして奥州筆頭の愛馬もまた、本来の主に匹敵するほどの馬術を見せる征天魔王に応え予想以上の働きを示す。
獲物に不備はない。昂る戦意に身を任せ、信長は頬から流れ落ちてきた血を舐め取った。
刹那を弾き飛ばす際に防御を解いた一瞬を狙い撃たれた。
乾坤一擲の一撃を放ったのは桃色の紙の少女だ。
惜しくも信長の命には届かなかったものの、魔王の奥方・濃を思い起こさせる女傑ぶり。
戦国最強と、その最強と息の合った動きを見せる青年。
信長をして一筋縄ではいかない者達。
「ちょっと、大丈夫?」
「問題……ない。あのマント、銃弾を弾く程度には硬度があるが、殺傷力は低いようだ」
衝撃こそ凄まじかったものの、剣閃銃撃を食らうより遥かにマシ。
打たれた腹は痛むものの、特に動作の支障になるほどでもないと刹那は判断する。
忠勝が折られた槍の先端を拾い、刃として構える。
もはや重量を活かせそうにないそれは忠勝の体躯と比較してとても頼りなく見えた。
刹那の脳裏に、忠勝から無音の思念が届く。
(撤退する……お前を置いて? 駄目だ、ホンダム。いかにお前といえど、奴を相手にその武器では勝てない)
言葉に出さず残弾を装填し直すことでその意思を伝える刹那。
忠勝が囮になればたしかに刹那とアーニャはこの場を逃れることができるだろう。途中でリリーナを拾う余裕もあるかもしれない。
だが代償に、忠勝が敗する公算が非常に高い。
忠勝の豪力に耐えられる武器がない以上、戦国最強といえど決して無敵の存在とは言い切れないのだ。
(だがこのまま戦っていてもやがて押し込まれる……何か、戦場を動かすきっかけがあれば……)
焦りの滲む思考で打開策を考えるも、攻守速と三拍子揃った敵の牙城を打ち崩すにはやはり力が足りない。
撤退するにしても、機動力と遠距離攻撃の手段で勝る相手から退くにはやはり誰かが残り足止めを行わなければならない。
忠勝は脱出・主催反攻のための中心戦力になり得る。ここで失う訳にはいかない。
が、刹那とアーニャではそもそも足止めすら不可能だ。
せめて拳銃などではなく、爆弾や重火器があれば話は別なのだが。
「だが飽いた。これ以上我が覇道を阻むのならば是非もなし……疾く消え失せいィ!」
「来るか……!」
身構える、四人の戦士。
睨み合う両者間の空間が軋みを上げ、激突の瞬間を予見させる。
溢れ出んばかりの王気を纏う征天魔王の凶銃が一時の静寂を裂かんと掲げられ、
不利な状況なれど敗北を是としない戦国最強が小さな二人の同胞の盾たらんと一歩を踏み出し、
天上人の一員と皇帝直属の騎士が魔王を照準し、
「お待ちなさい!」
刹那に制止される。
倉庫中、いや一区画に通ろうかというほどによく響く声が闘争の出鼻を挫いた。
反射的に四者が視線をやる、倉庫の入り口――そこにいるのは無力なはずの少女。
「リリーナ様……?」
最初から舞台に在って、だが演目に興じなかったただ一人。
その眼に決意の火を灯し、戦場となった倉庫に躊躇いなく踏み込んでくる。
「そこまでです。双方とも、武器を置きなさい」
「リリーナ様……なんで来たの?」
「アーニャ、あなたは戦う力を奪うだけと言ったでしょう? ですが……あの金髪の男性はどうしました?」
「それは……」
「こうしてあなた達が三人であの方と相対しているということは……そういうことなのでしょう。
いえ、一人隠れ守られていただけの私が文句を言うことはできません。そうしなければ収まらなかったのでしょうから。
ですが一人を相手に三人という数の暴力で押し潰そうというのであれば――私は黙って見ている訳にはいきません」
「……リリーナ、と言ったか」
どうやらリリーナは信長に対し三人で攻撃することを責めているらしい。
襲われた身であるのに、理不尽な暴威はたとえ敵である者にさえそれが降りかかることは看過できない。
アーニャはこれほど扱い辛いお姫様が世に二人といることに軽く絶望した。
信長は事情を知らずともリリーナに興味を持ったか、少なくとも激発しかけた殺意を一旦なりと押し込める。
忠勝にその信長の警戒を託し、刹那はリリーナへと問いかけた。
「はい。あなたは刹那・F・セイエイ……さん、でしたね?」
「自己紹介はいい。この状況だけ見ればたしかに俺達が奴を踏み付けようとしているように見えるだろう。
だが、奴の戦力は俺達より遥かに上だ。現実、追い詰められているのは俺たちなんだぞ」
言外に、足手まといがもう一人増えたというニュアンスを滲ませる。
状況が状況だ。ただでさえ劣勢なのにこの上彼女を守りながら戦うというのであれば、それはもう戦況を決するには十分すぎる。
自然、刺々しくなる刹那の声にリリーナは一切頓着せず、刹那達の目前、つまりは信長の目前でもあるところに立ち塞がる。
「アーニャ、あの金髪の方は残念な結果に終わったようです。責めている訳ではありません……それがあなた達のやり方というだけ。
ですが一度機会を譲ったのですから――この方には私が、私のやり方で、対処させていただきます」
刹那達の非難の視線にも、もっと直接的な危険である信長の銃口にも怯まずに。
リリーナはもう刹那達に構うことなく、信長へとまっすぐに信念に満ちた視線を叩きつける。
「私はリリーナ・ピースクラフトと申します。いえ、既に国家を解体したですのでリリーナ・ドーリアンと名乗るべきでしょうか。
私はあなたと刃ではなく、言葉にて語り合いたいと思っています。よろしければあなたの名前を教えていただけませんか?」
「……我が名を問うか。天下万民余すところなく伝え聞くものと自負しておったが……。
よい、名乗ってやろうではないか。我こそは織田上総介信長よ。尾張より発し、日の本の国――いいや、この世界そのものを手中に納める征天魔王ぞ!」
「織田……信長、さんですか。その名前、私の記憶にないものではありません。たしか延暦寺という宗教寺を焼き討ちしたという……」
「ほう? あれを知っておるか。であれば、余がどのような性根であるかも知っていようぞ。その上で余と語ると申すか」
「あなたがどのような人であるか――それは今、対話を行わない理由にはなりません」
「――フン。よかろう、興が乗った。囀るがよい、小娘」
いつ信長がその凶弾を放つかと警戒していた刹那達にとって意外な成り行き。
信長は構えていた銃を下ろし、刹那達に関心を失ったかその瞳はリリーナただ一人を捉えている。
リリーナもまた、取っ掛かりを得たと一層の奮起を自らに課す。
うまくすれば、なんとか戦いを止めさせる方向でこの戦国武将と手を取り合うことができるかもしれない。
「ではまず、あなたがこの殺し合いにおいて戦う理由を教えていただけますか?」
「つまらぬことを聞く……余は帝愛に指図されたから貴様らを鏖殺するのではない。それが余の覇道であるからよ」
「戦い、奪い、殺すことがですか?」
「然り。戦国乱世とはそういうものよ」
「私はそうは思いません。心からの言葉をぶつけあえば、武力を用いずわかりあうことだってできるはずです」
「わかりあう? ハッ、くだらぬな! 弱き者はすべて滅される、それがうつつよ。尾張とて余が立たねばいずれ今川、美濃辺りに食い荒らされておったわ。
奪われる前に奪う。それこそが人の世の理、三千世界どこであろうと通用するただ一つの真理ぞ!」
ガッ、と信長が剣を地に突き立てる。
床が割れ、幾条もの暗く鋭い棘が噴き出した。
リリーナを取り囲むように発現したその刃は、肌に触れるギリギリというところで停止。
後方で刹那らがリリーナを引き離そうと身構える気配がする。リリーナは手振りだけで彼らに手出し無用と伝えた。
恐怖がリリーナの胸中をよぎる。だがそれに屈さず、なおも言葉を重ねる。
「ち……違います! 戦い合うだけが人の業ではありません!」
「ならば問うぞ、小娘。うぬは先ほど国がどうと抜かしたな。うぬもまた一国を率いる王ということか?」
「ええ、以前はそうでした。私の国は、忌むべき武力侵攻により晒されたのです。だからこそ、こんな殺し合いがどれほど愚かかわかっているつもりです!」
「うぬの考えなどどどうでもよい。詰まるところうぬは国を守れなかったのであろう?」
「……そうです。私は民を守るため、国家の主権を放棄しました。サンクキングダムという国はもうありませんが、そこに生きた人の志は――」
「ハッ、是非もなし! うぬごとき軟弱な王に率いられた国なぞ滅するが道理よ。無能な王を戴くとは、民も不幸よな」
予想通りといったリリーナの返答。信長は鼻を鳴らし蔑視の視線を向ける。
「よいか、小娘――王たる者とは! 自国の民、征服した敵国の民、双方をすべからく支配する存在であらねばならぬ。
そのために何が必要か――うぬにはわかるまい?」
「……理想です。民の心の拠り所となる、清廉にして気高き理想。国を導くには万民の信を得られるだけの理由が必要でしょう」
「ほう……吠えおったな。では、うぬが掲げる理想とは何だ?」
来た。ここが勝負どころだ。
リリーナは一度深く深呼吸し、今は亡き母国を想った。
「完全平和主義です。人は宇宙に進出するに至ってもまだ、争うことを止められないでいます。
何故戦争は起こるのか……私は武器や兵器があるからだと思っています。誰かを信用したくても、その手に銃が握られていては心から信頼し合うことはできない……。
悲しいことに歴史上何度も戦争は起こりました。最たる発端の理由は人の疑心……他者を信頼できない心の弱さが原因です。
だからこそ、人は武器を捨てるべきなのです。武力に拠らず、対話で双方の意見を擦り合わせ、お互いが納得できるまで何度でも話し合うこと。
それが世界中に広まっていけば、やがて武器を、戦争を根絶することができましょう」
「…………」
信長は腕を組み、黙然とその言葉を吟味する。
むしろ後ろで聞いていた刹那こそが、リリーナの言葉に衝撃を受けていた。
(俺達、ソレスタルビーイングとは違う方法で戦争根絶を目指す者……完全平和主義、だと……?)
かつて世界に対し武力介入を仕掛けた刹那の記憶には、サンクキングダムという名前はない。
でたらめか、と切って捨てることは簡単だ。だが魔王の眼前で果敢に理想を語る少女からは、一片とて嘘の成分は感じ取れはしない。
その姿は刹那に一人の姫君の姿を思い起こさせる。
生を受けた地、クルジスの隣国。刹那の国を滅ぼした敵性国家――アザディスタンの代表、マリナ・イスマイールを。
彼女もまた、戦争を、刹那がソレスタルビーイングとして世界に対し戦いを挑むことを間違っていると言った。
否定された刹那はしかし、彼女こそ世界のために必要な人物だと思っている。
破壊による再生などありえない。
ソレスタルビーイングによる再生は歪められ、イノベイターの意に沿う世界が産声を上げようとしている世界。
その世界に、リリーナの語る理想は通用し得るのか。
(だが……あの意志の強さなら、あるいは……)
征天魔王をもう少しで説得できる、あの様子ならば。
刹那が淡い希望を抱いたその瞬間、
「否……断じて、否ァァァァッ!」
カッと目を見開いた信長。霞のごとき信長のオーラが、物理的な圧力となって倉庫を満たす。
傍らの剣を引き抜き、リリーナの喉元へと付き付けた信長。
忠勝が凶行を許さぬとばかり割って入ろうとするが、どうしたところで信長が腕を突き出す方が速いのはわかりきっている。
刺激してはならないと刹那に制止され、忠勝は音もなく停止した。
「戦う以外に道はなし。我往くは覇の道、天下に分を布く道なり。平和というならばそれは余に下った世こそが平和ぞ!
所詮うぬもあの愚妹と同じく、手を汚す覚悟なき者か……まずい座興であったわ」
「ま、待ってください、私の話はまだ!」
「賢しき小娘よ……余を翻意させたくば力で我が身を貫き、屈服させてみよ!」
「そ、そんなこと……!」
「出来るか? いいや、できぬであろうな。うぬの理想とやらはどう繕ったところで弱者の夢物語、腰抜けの理屈でしかないわ!
この信長の時を下らぬ夢想で浪費させた、分をわきまえぬ愚行狼藉……死して報いよ!」
殺気が充満し、剣身を伝う。
直にプレッシャーに充てられたリリーナは身動き一つできず。
忠勝が飛び出す。
刹那とアーニャが撃とうとするも肝心のリリーナの身体が邪魔をする。横に跳び射線を確保。
だがどれも間に合わない。
「夢を持つことが……間違っていると、言うのですか!?」
「笑止なことよ。虫ごときに夢など過ぎた物……余が塵芥と帰してやろう」
信長の静かな宣告とともに閃いた剣が、稲妻のごとくリリーナの細く白い首を薙ぎ払った。
誰も動かない。
剣を振り抜いた信長も、
短くなった槍を投擲するべく振りかぶっていた忠勝も、
間に合わないと知りつつ銃を向けた刹那も、
半ばリリーナを諦めて信長を排除するべく姫君ごと魔王を討とうとしたアーニャも、
そして呆然と瞬きを繰り返すリリーナも、
その全てが、高らかに鳴り響いた銃声の前に動くことを許されない。
ヒュンヒュン、と空気が切り裂かれる音が聞こえる。
やがて硬い物同士がぶつかる音。
それを受け、信長が濁った眼で振り返る。
「どういうつもりだ……? 雑兵ごときが、余の道を阻むか?」
信長が、虚空を握る掌を――最前まで黄金の剣が存在したはずのその右拳を握り込む。
地に突き立ったのはエクスカリバー、信長の手にしていた剣。
睨みつけるのは誰もいない倉庫の片隅、忠勝が吹き飛ばした二階部分の残骸が降り積もる場所。
その爆心地のような瓦礫の中から一点、細く長い銃口が伸びていた。
「別に……ただ、貴様が気に入らなかっただけだ」
金髪の男――レイ・ラングレンは、硝煙昇るドラグノフを構え感情のない声で呟いた。
◆
月明かりで目が覚めた。
命を拾えたのは単に運が良かっただけだろう。
黒髪の男と桃色の髪の少女を追い詰め、止めを刺さんとしたところでレイの記憶は途切れていた。
最後の瞬間眼に入った、ヨロイらしき巨人。
あのヨロイに外から攻撃されたのだろう、と察した。
(骨は……肋骨が何本か、折れているな。だが手足は間隔がある……)
走る足と、引き金を引く腕さえ無事なら問題はない。
瓦礫に埋もれ、痺れた身体は満足に動くこともままならない。
しばしの待機を命じられた身体は、しかし休息を待ち望んでいたかのようにどっと脱力する。
朦朧たる意識の中で、聞き慣れた音――銃声が聞こえる。
重い瞼をこじ開ける。
狭まった視界の中、あの巨人と先ほどの敵手二人、そして白兜の男が鎬を削り合っていた。
好機だ、と思う。誰もレイの存在に気が付いていない。
だが、もどかしいほどに身体は動かない。
(いや、動いたところで……今は、ダメだ。俺一人では、奴ら全てを相手にはできない……)
猛烈に湧き上がってくる睡魔と闘いながらも、レイの本能は冷静に戦況を分析していく。
あの白兜、やはり強い。三対一と数では圧倒的に不利なのに、逆に圧倒しているように見える。
(あれが奴の本気……先ほどは遊ばれていたか)
あの力を振るわれていれば、レイは初撃で討ち取られていてもおかしくはなかった。
そういう意味では、戦力を観察できるこの状況は悪くないかもしれない。
レイの瞳は白兜のみならず、ヨロイや青年、少女の動きも見逃さない。
ヨロイはともかく、他の二人は明らかにレイより劣る動きだ。
先の敗北は様子見に徹しすぎたことと、純粋な数の不利だろう。
(決着が着くまで待ち、勝った方を狙撃する、か……)
しっかりと抱き抱えていたライフルを、誰の注意も引かぬように、少しずつ動かしていく。
幸い周りは瓦礫だらけ。隠蔽は完璧と言っていいはずだ。
ゆっくりと、その時を待つ。やがて舞台に変化が現れた。
割って入った少女が、白兜と問答を開始する。
――人は武器を捨てるべき――
位置関係はちょうどいいことに白兜の背後。いつでも、頭を狙い撃てる。
だが今撃ったところで排除できるのは白兜一人。三人残しては意味がない。
どうにか全員を一気呵成に叩ける好機が来ないものかと、ほぞを噛む。
支援
――弱者の夢物語でしかないわ――
聞こえてきた言葉。
(夢――夢。俺の、夢は)
――夢を持つことが……間違っていると、言うのですか――
(間違っている……? 夢を、持つことが、か……?)
――虫ごときに夢など過ぎた物……余が塵芥と帰してやろう――
白兜が剣を振り上げる。
少女は立ち竦み、今にもその命を刈り取られんと――
(夢を……奪うのか)
血が沸騰する。
脳裏に描かれたのは一人の女性。
かつて愛した、奪われた――レイの夢。
(俺の前で――また、夢を奪うのか!)
霞がかっていた思考に風が吹いた。
熱い風――その源泉は、怒りだ。
もう、何も考えられはしなかった。
ままならないはずだった身体は羽根のように軽い。
一息に飛び起き、全身に覆い被さっていた瓦礫が飛散。流れるようにライフルを構える。
狙った瞬間、撃たずとも先に命中が確信できた。
この弾丸は当たる。誰に? どこに?
あの白兜。後頭部を撃ち抜くことなど造作もない。
だがそれでも動き出した剣は止まらないだろう。あの娘は死ぬだろうが、それはどうでもいいこと。
レイは、銃爪を引き絞る――
◆
「愚昧どもが……戯れに興じてやればつけ上がりおって。もはや是非もなし――余が直々に比良坂へ送ってくれようぞ!」
信長の全身から、寸前までと比べ物にならないほどの殺意が放射される。
傷の痛みを押してなお、魔王たる自身に歯向かう存在は許し難し。
そのオーラは目に見える形となって信長を包み込む。
刹那の眼に映る信長の姿、まさに魔王と言う他はなし。
(あれも世界の歪み……いや、違う! 俺には、奴が――昔と今、そしてこれからの世に跋扈するすべての邪気と魔性が人の形に集まった化物に見える!)
「余こそが天下の織田信長――第六天より来たりし魔王なりィッ!」
咆哮とともに信長が突進する。忠勝がその巨体にて盾となるべく前に出て、アーニャがリリーナを引き寄せた。
刹那はとっさに信長の横を大きく回り込み、立ち上がれない様子の金髪の男へと接近した。
のろのろと伸ばされるライフルを蹴り飛ばし、銃口を突き付ける。
眼光は未だ鋭いが、やはりダメージは大きいのだろうと刹那は判断した。
「一応聞いておくが、俺達に協力する気はあるか?」
「……何?」
「お前がどういった意図で動いているのかは知らないが……少なくとも、リリーナはお前に助けられた。俺も、今はお前を殺しはしない。
だがすぐに信用することもできない……だから、少なくともこの場は銃を収めろと言っている」
「奴を排除する手助けをしろ……と、言うことか?」
「そうだ。お前も一人ではこの場から離脱することは難しいだろう? 俺達もまた、奴を排除するのは現時点では難しいと言わざるを得ない。
一人でも多く、手が必要だ。そしてお前の腕はよくわかっている」
しばし、熟考する素振りを見せた金髪の男。
その間刹那は狙撃銃を拾い上げ信長を狙おうとするが、やはり本業ではないためかどうしても狙いがうまくつけられない。
舌打ちし、駆け出そうとしたとき返答が返る。
「……奴を排除した後、お前達が俺を撃たないという保証はない」
「彼女を信じろ、としか言えないな」
隅の方に追いやられたリリーナを示し、刹那は言う。
「彼女なら無闇に血を流すことを許しはしない――俺達とは違う場所にいる人間だ。それをわかっていたからこそ、お前も彼女を助けたんじゃないのか?」
違う、と脳裏で否定する。
彼女を助けたかった訳ではない。ただ……夢を失うということがどれだけ辛いか、それを考えてしまっただけだ。
信長ではなく剣を撃ったのは偶然でしかない。
決して、助けようと思った訳ではないのだ――その想いは口には出せなかった。
何にしろ、死んでしまっては意味がない。カギ爪の男に辿り着くことができないまま、意味もなく死ぬ訳にはいかない――
レイ兄さん、だけどそのモチベーションの相手はもう…
「いいだろう。この場は、奴を排除することを優先する」
「礼を言う。俺は刹那・F・セイエイだ」
「……レイ・ラングレン」
金髪の男――レイを瓦礫から引っ張り上げ、銃を返す刹那。
銃を返したのはこの状況で刹那達を裏切りはしないだろうと思ったからだ。レイとて信長は単独で相対できる相手ではないと理解しているはず。
忠勝と激しく位置を入れ替え打ち合っている信長を見据え、刹那とレイは介入の好機を待った。
やがて、剣のない信長の隙を見出した忠勝が攻勢に出る。
マントで槍を逸らす信長。そこに背後の警戒が疎かになったのを見て取り、レイがドラグノフを構える。
必殺の一撃を放とうとした瞬間、
先ほどの忠勝と信長のときのように、外側から倉庫の壁が力任せに叩き潰された。
全員の視線が釘づけになる。同時に、何かが飛来する気配。
伏せた刹那らだが、すぐに自分達のいる方に飛んできたのではないと悟る。狙いは倉庫の中心で揉み合っていた忠勝と信長だ。
「…………!」
「ぬうッ……!?」
あらぬ方向から迫る殺気を、それぞれ避け、叩き落とし、両者はいったん距離を取る。
飛んできたのは鉄製の砲弾――ごく一般的な、缶詰だ。
誰もがその缶詰が発射されてきた方向を見据える。
重厚な足音を響かせ粉塵を割いて現れたのは――
「■■■■■■■■■■■■■■■■――!!」
本多忠勝の巨体に見劣りしない体躯の、古代ギリシャの大英雄――バーサーカーだった。
戦の燈明に誘われて、最後の役者が舞台に上がる。
ここがいわゆる、正念場。
◆
キャスターを追って一路東へ向かうバーサーカー。
だが、遮るもののない空を往く者と、障害物を飛び越え、時には打ち崩して地を駆ける者ではやはり速度に絶対的な差がある。
ほどなく降下したらしいキャスターを見失ったバーサーカー。その耳はほどなくして、絶え間なく続く銃声と破壊音を耳にする。
近くで大きな戦いがある――そう考えが至ったときには既に走り出していた。
島の南部、工業地帯の一角。
ある大型の倉庫の近くに来た時、気配は全て一か所に集まっていた。
是非もない。
大英雄は肩に担いだ戦斧を軽々と振り回し、自らもその狂演の渦中へと身を投げ出していった。
戦の匂いに高揚するバーサーカー。
狂戦士は戦意燃え盛る瞳で戦場を睥睨する。
驚愕に打たれ立ち尽くす刹那、レイ、アーニャ、リリーナと大して興味もなさそうにその視線が行き過ぎて。
その眼が、一点で止まる。
数刻前に死闘を演じた、武者姿の愛しき宿敵。
その好敵手と互角に渡り合っていたらしい、サーヴァントに比肩するほどの王気を纏う男。
二者は怯えも迷いもなく、純然たる戦意を以てバーサーカーの視線を受け止める。
望み待ち望んでいた強者が、二人。
「■■■■■■■■■■――!」
歓喜の咆哮を上げ、狂戦士は弾丸のように飛び出した。
向かう先は戦国最強――まずは先刻の続きからだと、戦神覇王・武田信玄の軍配斧を真っ向から振り下ろす。
刃渡りの短くなった槍では受け止めきれないと見た忠勝は、スラスターを展開し急旋回。
己にかかる制限を正しく認識した戦国最強は、以前よりもさらに鋭い動きでその一撃を回避する。
そのままバーサーカーの左後方に抜けて、回転の勢いのままに背後から心臓めがけて突き入れる。
バーサーカーは、動かない――
「…………!?」
そして、先の手合わせの再現のように、必殺の槍はバーサーカーを討ち果たすことは叶わない。
今度こそは完全に入った一撃だった。前のように手による防御も間に合わなかった。
だというのに、この刃は届かない。
鋭く尖った先端は、バーサーカーの皮膚一枚を突き破ることもできずにギリギリとその身を震わせている。
やがて忠勝の豪力、そして強靭なるバーサーカーの筋肉の鎧との挟撃に耐えかねた槍が内側から弾け砕ける。
つんのめった忠勝の頬めがけ、振り返ったバーサーカーの強烈無比なる豪腕が激突した。
ここでバーサーカー投入かよ!!!!!!
がんばれホンダム…
お前がナンバーワンだ!
成す術もなく戦国最強が宙を舞う。コンテナをいくつも貫通し、忠勝の姿が消える。
追撃を送り込まんと踏み出すバーサーカー。
が、その足は立ち塞がった征天魔王により止められる。
「今宵は無粋な邪魔ばかり入りよる……戦国最強の首を取るはこの信長ぞ! うぬごとき下郎が余の道を阻むでないわッ!」
漆黒の翼がバーサーカーの首を絡め取る。
軍馬が蹄を打ち鳴らし、ぐいとバーサーカーの巨体を牽引するべく走り出す。
圧迫される頚部。だがこの程度ではバーサーカーは止まらない。
斧を振り上げ、地に叩き付ける。
砕かれ舞い上がった石片を、空の左腕がぐんと押し出す。
軍馬の腹に命中し、悲鳴が上がる。
姿勢の崩れた信長の隙を逃さず、逆に黒布を引き寄せる。
「むぅッ!?」
軍馬から引っこ抜かれた信長が舞い、バーサーカーの直上へ。
たわめられた右腕の筋肉が膨張し、大戦斧へと余すところなくその力が伝達される。
落下する信長、迎え撃つバーサーカー。
交錯する一瞬。
信長はマントを盾の形に集約させる一方、両腕にしっかりと保持したトイ・ソルジャーにてバーサーカーの顔面へと砲火を集中させる。
瞬時に反応したバーサーカーが左腕をかざし、銃弾を食い込ませつつも目や脳を保護することに成功。
が、一瞬視界は閉ざされる。
気配のままに超音速で薙ぎ払われた大戦斧を、そうと誘導した信長は何重にも重ね合わせたマントで防がんとした。
一層二層三層四層と、積み上げられた布陣が食い破られていく。
だが一つの層を破るごとに、確実にそのスピードもまた減殺される。
見開かれる信長の炯眼。
可能な限り速度を殺したと見極めた信長は、大戦斧の最上部――刃のない位置、刀身の芯へと”着地する”。
同時にマントの防御を解体。遮るものない大戦斧は勢いを取り戻し、振り抜かれた。
当然、信長の身体はそこにはない――斬撃の勢いを利用し、天高く舞っているからだ。
甲斐甲斐しくその着地点へと伊達政宗の愛馬が先回りする。遅滞なく信長が落下、再び馬上の人となった。
確殺の一撃を回避されたバーサーカー、回避したとはいえ紛れもなく死線を渡らされた信長。
両者の瞳にもう油断はない。
消えた戦国最強と同じく、この敵手も等しく己に類する敵――同時にその確信を抱いたからだ。
十秒にも満たない攻防ではあったが、観戦していた刹那達から熱を奪うには充分だった。
「あれが……ホンダムを退けたという強敵か……!」
「チッ、また厄介なものが来たな」
刹那とレイはどうにかして介入を狙っていたが、一連の動きには全く付け入る隙間などなかった。
万が一手出しをしてこちらに矛先が向けば――忠勝が戦線離脱した今、結果は火を見るより明らかだ。
二人の元へ、アーニャとリリーナもやってきた。
「信長だけでも手一杯なのに、さらに大物のご登場ね。どうするの?」
「どうする、と言ってもな……今は奴らが潰し合ってくれるからいいが、俺達が手を出せば一溜まりもないだろう」
「信長という奴はともかく、お前達も見たはずだ。心臓を狙ったヨロイの一撃がまるで通用しなかったのを。あれで防がれるなら、俺達の攻撃では傷も付けられんぞ」
アーニャもレイが誘いに乗ったことは既に承知している。敵愾心もなく、アーニャ、刹那、レイが各々意見を述べた。
忠勝の一撃は確実に決まったはずだ。いかに装甲が厚いとはいえ、一筋の傷も付かないというのは考えられないこと。。
だというのにあの巨人はさしたる痛痒もなく反撃に出た。
忠勝から聞いてはいたものの、改めて脅威の存在であると刹那は思い知らされる。
信長つええええええええ
バーサーカーもきた!
ホンダムうううううううううううううううううううう頑張ってくれえええええええええええええええええええええ
「だが、今なら撤退できるのではないか?」
と、レイが言う。確かに今なら、バーサーカーと信長はお互いの姿しか目に入っていない。
「かも知れないが……万が一追ってこられたらそこで終わりだ。俺達が離脱することで、奴らの均衡も崩れるかもしれない。
それに、ホンダムを置いて退く訳にもいかない」
「退くにせよ、どちらかにそれなりの痛手を与えてからの方が望ましい……ということね」
「ああ。首尾よく撤退できたなら、俺が首輪探知機を持っている。追われさえしなければ身を隠すことは難しくない」
「問題はその痛手を与える方法がないということだがな」
そう、作戦はそこに帰結する。
最大の打撃力たる忠勝が通用しなかった時点で刹那らに打つ手はないと言っていいのだ。
「でも……信長の銃撃、頭部を狙ったあれは防御したわね? あそこを吹き飛ばせば何とかなるってことじゃないかしら」
「どうだろうな……。ホンダムの話では、腹に空いた大穴が一瞬で治癒したらしい。だが、試す価値はあるかもしれないな」
「試せるかという問題はあるがな。至近距離での銃撃を防ぐあの反応、不意を打った程度で易々と討ち取れるとは思えんが」
「あ……あの、みなさん」
そこで、戦術には疎いリリーナから声がかかる。
三人とも失念していた訳ではないが、こういう状況では彼女の出番はないと思っていたのだ。
見ればその懐には信長が振るっていた黄金の剣を抱いている。
移動するときアーニャが回収したものを、銃撃の邪魔になると持たせていたのだ。
「私が、」
「駄目だ」
と、先回りして刹那が封殺する。
彼女の言いたいことには予想がついた。
「信長は言うまでもないが、後から来た方に言葉が通じるように見えるのか?」
「それは……そう、ですが……」
「通じるとすれば俺の狙撃……そして、信長の銃だけだろうな」
冷めた声でレイが話を戻す。リリーナの言うことに興味などないと言わんばかりに。
「拳銃やそのライフル程度では奴の身体の内部まで到達できんだろう。狙撃なら俺がやるが……」
「それだけでは足りない、わね」
「そうだ。万が一防がれることを考えると、もう一面、同じタイミングの攻撃が欲しい」
「奴に期待するしかないか……」
三人は未だバーサーカーとぶつかり合う信長を見る。
信長がもう一度バーサーカーの頭部へと銃弾を叩き込むこと。
それに合わせてレイのドラグノフを放つ、二段構えの作戦。
当然、信長は乗りはしないだろう。彼にとってはこの場の全てが敵なのだから。
「どうにかして奴に隙を作るしかないな。信長なら見逃さないだろう」
「そのどうにか、が問題ね。私達の手持ちの武器では……」
押し黙るレイとアーニャを尻目に、刹那が一人立ち上がる。
「それは俺とホンダムがやろう。レイ、お前は奴を撃つ最適のポイントを探せ」
「ホンダム……あのヨロイか? 奴はもう」
「生きているさ。今、”声”が届いた」
言って、刹那は身を低くして駆け出した。その先は先ほど忠勝が消えた瓦礫の山。
声とはどういうことかとレイとアーニャは怪訝に思ったものの、今は疑っても仕方がない。
大分軽くなってきた身体を持ちあげ、レイもまた狙撃ポイントへと駆けていく。
残されたのはアーニャとリリーナ。二人には特に割り振られるべき役割もないので、事が終わるまで隠れているしかなかった。
「さて……どうなるかしらね」
「…………」
銃を弄びつつ言うアーニャ。その顔には死が目前まで迫っている恐怖は見られない。
どうも記憶にあるアーニャの感じと違う……とリリーナは思ったが、さすがに今言うことではないと口には出さなかった。
やがて、状況に変化が訪れた。
やはり剣を失った信長では分が悪く、マントのほとんどを引き裂かれた信長が頬を歪め後退した。
止めを刺さんと前進するバーサーカー。
その背後から、轟音とともに飛来する大型のコンクリート片。
とっさにバーサーカーが戦斧で迎撃、粉々に砕く。
だがそのとき既に礫は役割を果たしていたと言えた。
バーサーカーの周辺が影に包まれる。
見上げた先には、背から光をたなびかせる戦国最強の姿。
その頭上に、小さめの家ほどもある巨大なコンテナブロックを掲げていた。
「………………………………ッ!!!!」
裂帛の気合とともに、忠勝がそのコンテナごと隕石のように駆け下りる。
先刻の槍とは違い、当たれば穴が開く程度では済まない質量。身体ごと粉々にせんと忠勝の速度は更に増していく。
「■■■■■■■■■■■――!!!!」
バーサーカーが斧を放り捨てた。コンテナは斬り砕ける大きさではないからだ。
落下するコンテナを、バーサーカーは”受け止めた”。
全身に魔力を循環させ、いっときの増幅剤として。
足を踏ん張り、両腕を突き上げる。
鈍い音と共にバーサーカーの腕がコンテナの外郭を突き破る。中身が詰まり相当の重量となった匣を、決死の形相で押し返そうとする。
杭となって地に突き刺さる両脚が、ゆっくりと沈み込んでいく。
バーサーカーの豪腕を以てしても、本多忠勝の全力を賭した質量攻撃に抗することは容易なことではない。
食い縛られた歯にぴしぴしと亀裂が走る。震える筋肉から立ち昇る蒸気。
高濃度の魔力が体表面を覆い、噴き出す汗が一瞬にして蒸発する。
鬼の形相で食い下がるバーサーカー。
その視界に映るのは――愉快でたまらないといった笑みを浮かべる、第六天魔王の銃口だ。
両腕を頭上に回している現状、バーサーカーにその銃撃を防ぐ手段は――ない。
「滅せよ、下郎」
穿たれる。
バーサーカーの頭部へと食らいついたトイ・ソルジャーの弾丸。
そのほとんどは頑強な頭蓋骨によって弾かれる。だが、柔らかな眼球や歯を砕いて口内に侵入した弾丸はその限りではない。
内部で炸裂する5.6ミリ弾。受肉したことにより人体を模したことがある意味では不幸か。
最奥へと到達した鉄の破片は存分に脳を蹂躙する。
魔力の流れが寸断されたのを、バーサーカーが感じる時間があったかどうか。
そして同時に響いていたもう一つの銃声。
レイ・ラングレンによる狙撃は、バーサーカーの後頭部から侵入し、頭蓋骨を粉砕。
同じく脳内で暴れ回る5.6ミリ弾の残骸と短いダンスを踊り、バーサーカーの眉間から脱出を果たす。
一瞬にして、バーサーカーの頭部は消失した。
命令を送る脳が消失したことで四肢が弛緩する。
爆音――忠勝が押し続けたコンテナがバーサーカーの残る首から下を、粉微塵に砕け散らせた音。
狂戦士、バーサーカーのサーヴァントはここに潰えた。
「……やったか」
物陰から刹那がゆっくりと現れる。
埋もれていた忠勝に作戦を説明した後はできることもなく戦況を窺っていたのだが、完全にバーサーカーを討ち果たしたと確認するために。
忠勝がその刹那のそばに後退。各部に相当のダメージを蓄積させながらも、その眼に未だ膝を屈する気配はない。
まだ勝利を手にした訳ではない。この場にはまだ、排除せねばならない悪がいる。
見据えるのはただ一人、織田信長。
信長もまた、満身創痍と言っていいほどに傷を負っていた。
だが退く気配は塵ほどもない。
ここに至ってはもはや言葉はいらぬとばかり、爛々と光る瞳で忠勝を睨む。
忠勝は足元に転がる大戦斧を拾い上げた。
かつて忠勝自身が槍を合わせた覚えがある、武田信玄の大斧。
槍とは勝手が違うものの、充分に忠勝が振るうに足る超重武器だ。
最前までそれを振るっていた強敵に一瞬の黙祷を捧げ、忠勝は斧を振り上げる。
忠勝の邪魔にならぬよう刹那が身を隠し、信長も迎撃すべく銃を構えた。
高まる激突の機運。
だが、
「待ってください! もういいでしょう!? これ以上戦って何になるというのです!」
三度割って入ったのは、身を潜め戦の終結を願っていた平和の国の王女だった。
バーサーカーの墓標の横で、争いの愚かさに耐えかねたリリーナは全身で停戦を訴えた。
陰から信長を狙っていた刹那が、ひっそりと場に現れていたアーニャに非難の視線を向けた。
呆れたような顔の口元が動く。私は止めた、と。
レイの姿はない。おそらくバーサーカーを倒した瞬間に撤退したのだろう。
元より戦場で結ばれた同盟関係、咎める気はない。忠勝が新たな武器を得た今、信長は三人で倒せない相手ではない。
それよりも、一度決裂した交渉を再度試みようとするリリーナが問題だ。
しかも始末の悪いことに今も剣を抱きかかえている。あれを信長に奪われるのは避けたいところだ。
刹那と同じことを思ったか、信長もまた黄金の剣に視線を合わせ嗤う。
「小娘……うぬと語る舌など余は持たぬ。大人しくその剣を差し出すがよい」
「……これを渡せば、戦いを止めてくれますか?」
アーニャが額を押さえるのが見えた。刹那もそうしたいところだったが。
実際、これで剣を渡すようなら実力による阻止も辞さないと銃に込める力を強める。
「ハ、この上何を抜かすかと思えば……よかろう、愚昧。うぬを切り刻むのは最後にしてやろうではないか」
「私の話を聞いてください、と言っているのです!」
「語る舌はないと言うたぞ、小娘!」
苛ただしげにライフルを突き付けられ、リリーナが息を呑む。
これまでだ、と忠勝が介入しようとし、刹那もまた信長を撃ち抜くべく拳銃を――
やった!第一部完!
やったか禁止!!!!
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!」
ゴバッ、と何かが弾けたように爆風が駆け抜ける。
寸前に聞こえたのは紛れもない、狂戦士の咆哮。
反射的に目をやれば、地に刺さっていたコンテナがゆっくりと持ち上がっていく、否、持ち上げられていく。
予想通り――できれば外れていてほしかった予想通り、その下から狂戦士のサーヴァントが姿を見せる。
完全に粉砕されていた身体はあるがままの姿を取り戻し、どころか消失した頭部さえも再生させて。
誰もが――信長でさえもが、言葉がない。
至近にいたリリーナはそれが現実の光景であると信じられないような眼で、バーサーカーを凝視していた。
コンテナが忠勝へ向けて放り投げられた。
先ほどは自らが仕掛けた攻撃を返され、だが狼狽することなく忠勝はスラスターを吹かし回避する。
その一瞬。
一瞬で充分だった。
戦国最強の出鼻を挫き、バーサーカーの腕がリリーナへと伸ばされるには。
同時に信長がバーサーカーの狙いを察し、阻むべく銃爪を引く。
バーサーカーの腕が、一息にリリーナの細い腕を掴み――
「え――」
放り捨てた。
その胸に抱いていた、黄金の剣だけを抜き取って。
直後、凶弾が少女の全身をズタズタに引き裂いた。
悲鳴を上げることも、痛みを感じる暇もない、そんな短い時間に。
リリーナ・ドーリアンの短い生涯は、ここで幕を閉じた。
【リリーナ・ドーリアン@新機動戦記ガンダムW 死亡】
◆
「……退くぞ、ホンダム、アーニャ!」
状況は一変した。
どういう理屈か死亡したはずのバーサーカーが蘇生。
そして――リリーナが死んだ。
あまりに現実感のない一連の出来事に、刹那もまた混乱をきたしていた。
復活したバーサーカーの五体に不備はない。
消耗した忠勝と自分達では、抗うことなどできるはずがない――
否、奴をここで討つ――そうかたくなに主張する忠勝に、刹那は叫ぶ。
「駄目だ! お前もわかっただろう――奴が何度殺そうと生き返る秘密を解かない限り、たとえ千回戦ったところで俺達は勝てない!
今は退いて、対策を見つけ出すんだ! 不死の秘密を解き明かし、奴を確実に仕留めることができる方法を!」
必死の形相で叫ぶ刹那。忠勝の心情は痛いほどわかる。
一度倒したと油断したから――気を緩めたから、あの少女は命を散らしたのだ。言ってみれば、この結果は刹那達の責任。
だからこそ、刹那も忠勝もここで果てる訳にはいかない。
生き延び、奴を倒す方法を見つけ出し、仇を討ち――少女を知る者に、その最期を告げなくてはならないのだから。
悔しげに忠勝が意を曲げ、するすると後退する。
バーサーカーは追ってはこない。さすがに消耗しているのかもしれない。
アーニャもまた後ろについてきている。
見れば信長も不利を悟ったか、刹那達とは違う方向から離脱しようとしていた。
(今は、奴を追う余裕はない……しかしいずれ――!?)
視線を前に戻したとき、一瞬前にはいなかった人影があった。
金髪長身、ライフルを背負う殺し屋のような男。
(レイ・ラングレン――ッ)
動揺した一瞬を突かれ、懐に潜り込まれた。
跳ね上がってくる膝が刹那のみぞおちを強打し、動きを止める。
何のつもりだ、という声すらも出ない。
忠勝が動く一瞬前に、レイが刹那を抱きかかえ動きを封じる。遅滞なく腕が刹那の懐に伸び、持ち歩いていた首輪探知機を掠め取った。
そのまま腰の拳銃へと手を伸ばすレイ。
(させ――る、かッ!)
とっさに、袖口に仕込んでおいたボールペン銃をレイの身体に押し付けた。
圧縮空気で打ち出された9ミリの弾丸が肉を抉る。
「――ぐっ」
呻き声が聞こえた。
レイの背にあったデイパックが地に落ちる。
飛び離れたレイが自身の銃を構えようとしたとき、忠勝の振るう大戦斧が刹那とレイの間に突き刺さった。
これ以上は無益と判断したか、レイが後退していく。
追おうとする忠勝。だがその前に、
「私が追う! あなたは刹那を!」
桃色の紙の少女が取り落とされたデイパックを拾い、レイを追って駆けていく。
それを確認したところで、刹那の意識が暗転した。
気を失った刹那を抱え、忠勝はアーニャ達とは別方向へ向かう。
意識のない刹那を抱えていては、戦闘に対応できないからだ。
こうして、七人の戦場は終焉を迎えた。
残っているのは、騎士王の剣を手にした狂戦士だけ。
傷は癒えたものの失った魔力は甚大だ。ゆえに誰をも追えなかった。
倉庫のどこかに発火物があったのだろう。瞬く間に炎は燃え広がり、全てを焼き砕いていく。
その只中で――
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!」
足元に平和を願った少女の亡骸を見下ろしながら、バーサーカーは吠える。
それは勝ち鬨か、それとも死者を悼む鎮魂の歌か。
知っているのは、彼自身だけ。
やがて、影は炎に消えた。
【E-3/工業地帯/1日目/早朝】
【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)、狂化
[服装]:上半身裸(デフォルト)
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、食料(缶詰セット)
[道具]:なし
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
0:休息し魔力を回復させる
1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。
2:キャスターを捜索し、陣地を整えられる前に撃滅する。
3:次こそ本多忠勝と決着を着けたい。
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3
・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。
現在残り蘇生回数4回。
・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
おもちゃの兵隊、ドラグノフ 大質量の物体
・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。
※参戦時期は14話 理想の果て直後です。
※エクスカリバーが黒く染まっています。
※E-2南西部から中央部にかけてバーサーカーが通った破壊跡ができました(多数の家屋・電柱・街路樹・線路の残骸あり)。
※銃撃により一度、コンテナにより一度、都合二度死亡しました。
うああああああああああああああああああああん
リリーナ様が死んだあああああああああああああ
ピースクラフトファンクラブを結成しようと思ってたのにいいいいいいいいい
>おもちゃの兵隊、ドラグノフ 大質量の物体
>大質量の物体
おおざっぱすぎるwww
【E-4/市街地/1日目/早朝】
【刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00】
[状態]:疲労(大)、精神的ダメージ、イノベイターとして半覚醒 気絶
[服装]:私服
[装備]:ワルサーP5(装弾数4、予備弾丸27発)@機動戦士ガンダム00、ボールペン型の銃(0/1)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜1(確認済)、9oピストル弾×5
[思考]
基本:世界の歪みを断ち切る。ダブルオーガンダムを奪還し島から脱出。
0:…………
1:宇宙開発局→都市部 の順に移動し、ガンダムを捜索。
2:専守防衛。知り合い、無力な民間人がいれば保護する。
3:サーシェス、グラハム、トレーズ、信長、光秀、バーサーカーを警戒。政宗は保留。
4:バーサーカーの情報を広め、また不死の秘密を解くため情報を収集する。
5:リリーナの知り合いを探し、その最期を伝える。
6:アーニャが気掛かり。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン第23話「命の華」から。
※帝愛グループをイノベイターと関わりのある組織、あるいはイオリア計画の遂行者ではないかと疑っています。
※脳量子波により本多忠勝の意思を理解できます。ただし刹那から送信はできません。
脳量子波の受信範囲は広くても声の届く範囲ほどです。
脳量子波は忠勝が「考えたこと」だけが受信されます。本人が望まないことは伝わりません(忠勝の意識レベルが低下している時を除く)。
【本多忠勝@戦国BASARA】
[状態]:疲労(大)、胸部装甲破損(鋼板などにより応急修理済み) 兜、肩の装甲が一部破損 全身に細かな傷
[服装]:全身武者鎧
[装備]:武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA
[道具]:デイパック
[思考]
基本:徳川家康(参加者にはいない)の遺志を継ぎ戦国最強の名に恥じぬ戦いをする。
0:まずは刹那を安全な場所まで移送する。
1:戦いに乗った者、主催者グループを打倒する。
2:刹那に伴い行動する。真田幸村と合流したい。
3:バーサーカーとはいずれ決着をつけたいが、まずは不死の秘密を解く。
4:信長は必ず倒す。
[備考]
※参戦時期は第12話で安土城へと向かっている途中。
尚、後述の飛行機能以外は主催者の力で修復された模様。
※バックパック内の装備は没収されているため、原作ゲームにおける攻撃形態、防御形態、援護形態使用不可。
他、ゲーム版での固有技、バサラ技が使えるかはお任せ。
※主催者側から飛行機能に制限が課せられています。短時間低空飛行には問題ありません。
※対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 は破壊されました。
◆
後方から熱気が押し寄せてくる。
振り返れば先ほどの倉庫一帯が炎上していた。もう少し離脱が遅ければ、レイも危なかっただろう。
充分距離を稼いだと見て、レイは足を止める。
失態だ――先の戦闘を回想する。
目当ての物を奪ったは良いが、新たに手に入れたデイパックを落としてしまった。
あの眼鏡の男から奪ったものはさすがにライフルと同時に持ち歩くのは困難だったのだ。
レイの趣味にも合わないものだったので、失ったことは別に問題はない。だが誰かに拾われることを考えると安穏としてもいられない。
麻雀牌、というものは身体の各部に仕込んでいたので失うことはなかったが。
まあ、結果的にあの戦闘のリターンは大きいと言っていいだろう。
首輪探知機。ある意味ではどんな武器よりも役に立つ。
刹那がふと零したその一言、レイは聞き逃してはいなかった。これがあればレイの目的を達することも格段に楽になる。
未だどこにいるとも知れぬ、妻の仇――
奴に比べれば、先ほど相対した者達など何の価値もないのだ。
(待っていろ、カギ爪――すぐに、殺しに行ってやるぞ……!)
未だ絶えぬ復讐の炎。
だが、既にその願いは叶うことはない。レイがそれを知るのは放送が終わってからだろう。
届かない願いを胸に、男はただ、歩み続けていく。
【F-3/工業地帯/1日目/早朝】
【レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[状態]:疲労(大) 肋骨を数本骨折 左肩に銃創(処置済み) 脇腹に浅い銃創
[服装]:武士のような民族衣装(所々破損)
[装備]:ベレッタM1934(0/8)、平バール@現実
[道具]:基本支給品一式×2、デイパック、ドラグノフ@現実(3/10)、ドラグノフの弾丸(20発)、9mmショート弾(76発)
ブラッドチップ・3ヶ@空の境界 、GN首輪探知機@オリジナル、麻雀牌×31個
[思考]
基本:カギ爪の男を八つ裂きにする。
1:首輪探知機を利用し、カギ爪を捜索する。
2:他者と遭遇した時、勝算があれば戦うがリスクを感じた時は撤退も考慮する。
3:利用できるものは利用する。
4:ヴァンは出会えば殺す。だが利用できるなら利用も……。
5:時間があれば日が沈む前に円形闘技場に寄る。
[備考]
※参戦時期は第8話〜第12話のどこかです。
【麻雀牌】
とある世界で一般的な娯楽となった麻雀に使用する牌。
ただしガンダニュウム合金製で、非常に硬い。
エクスカリバーってバーサーカーからしたらフォークみたいなサイズだな……w
◆
「お待ちください、信長公」
倉庫より撤退した信長を、ある声が呼び止める。
既に相当の距離を稼いだので馬を休めていた信長は、軽い驚きとともに来訪者を迎え入れた。
「何用ぞ。まさか一人でこの征天魔王の首を取りに来たか?」
「滅相もない……私はあなたにお仕えするために、こうして馳せ参じたのです」
言って、跪いた桃色の紙の少女――アーニャ・アールストレイム。
レイを追うと見せかけ、反転し織田信長の後を追って来たのだ。
「仕える……だと?」
「はっ。恭順の証に、これをお納めくださればと」
デイパックから抜き出されたのは五尺七寸の長大な刀。
名を物干し竿――冬木市の聖杯戦争において、アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎が愛刀として活躍した刀。
「信長公は剣を必要とされている――と、愚考しましたゆえ」
「ほう……」
少女の差し出す刀を受け取り、抜刀する。
長大な刀は、信長の剣気を受けても砕けることなく冷たい光を放つ。相当の業物、と評せる逸品だ。
満足げに刀身を眺めた信長は、しかし鞘に納めず少女の首筋へと白刃を突き付ける。
「余があの小娘に何と言ったか、忘れた訳ではあるまい。臣下など必要としていると思うてか?」
「信長公のお力は重々承知の上でございます。が、この島は広く、人も多い。些事にて公の御手を煩わせることもありましょう。
ですから私が公の意を代行する手となり、公の覇道の露払いをしたいと考えます」
刀は白磁のような肌を浅く切り裂き始めている。
だが寸毫の恐れも見せず語る少女に、信長は微量の興味を抱いた。
剣を必要としている――つまりは、自らを剣として扱えということでもあったのだ。
「差し出がましいと承知の上で申し上げます。信長公は、ただあの主催者の言うなりになるつもりなど毛頭ないのではありませんか?」
「無論よ。有象無象どもを間引いた後は彼奴らとて生かしては置かぬ。この征天魔王に弓引いたこと、死を以て償わせてやるわ」
「恐れながら、信長公。たとえ公のお力を以てしても、お一人でそれを成すは困難であるかと」
「……何ィ?」
ぎろり、と信長のプレッシャーが増す。
無礼なことを言うようならその首刎ねんと、刀がさらに前進する。鮮やかな赤が溢れ出し、白の領域を蹂躙する。
が、少女はやはり冷や汗一つ浮かべずに。
「たとえばこの首輪。これがある限り、公の刃がどのように振るわれても奴らに届きは致しませぬ。ですが私が――いえ、私の知人なら、この首輪も外すことができるかもしれません」
初めて少女が顔を上げる。
まっすぐ信長を射抜く、その瞳――まるで底知れない湖のように深い。
「また、軍略知略に長けた者、将兵として優れたる者を存じております。そのような者を駒に用い信長公の軍団を築くことこそ、あの主催者へ一撃を与える最善手かと……」
「余の……軍団、とな……?」
「はっ。もちろん公の意に沿わぬ者は斬り捨てればよろしいが、そうでなき者……才のあるものを登用するは決して愚策ではありませぬ」
「フン……口が回るな、娘。だが一理ある……」
戦国最強に、死しても黄泉返る亡者。
この島には信長をして一筋縄ではいかない者が集っているようだ。
そのような者達をいちいち相手にしていては、いつまでたっても天下統一などできるはずがない。
「……よかろう、娘。うぬの進言を聞き入れようではないか。名は何と申す」
「名簿にある名は、アーニャ・アールストレイム。しかし、私めのことはこうお呼びください」
立ち上がる少女。
少女らしからぬ妖艶な雰囲気を漂わせ、薄く微笑む。
「マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア――と」
【E-2/橋/1日目/早朝】
【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:疲労(大) 全身に裂傷 マントがぼろぼろの状態
[服装]:鎧
[装備]:物干し竿@Fate/stay night、おもちゃの兵隊(0/30)@とある禁書の魔術目録、伊達軍の馬(負傷)@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン92本(合計100本×各30発)
[思考]
基本:皆殺し。ただし使えそうな者は臣下にする。拒めば殺す。
1:ひとまずはマリアンヌの進言を聞く。
2:目につく人間を殺す。
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
4:もっと強い武器を集める。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
【物干し竿@Fate/stay night】
五尺余りの備中青江。
アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎が愛刀。
セイバーの振るうエクスカリバーと対等に打ち合えることからして、かなりの業物であるようだ。
【アーニャ・アールストレイム@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、マリアンヌ状態
[服装]:ラウンズの正装 (排水の汚れ)
[装備]:ベレッタM92(14/15)、AK-47(0/30)、アーニャの携帯@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ベレッタの予備マガジン(4/4)、AK-47の予備マガジン×4(7.62mm弾)
[思考]
基本:主催者に反抗する。
1:状況を把握する。
2:スザクと合流する。
3:リリーナの言葉に少しの興味と少しの警戒。
[備考]
※リリーナの死には気づいていません(アーニャ)。
・マリアンヌの思考
基本:C.C.と合流したい
1:信長に仕えるフリをして身の安全を確保する。
2:使えそうな者は信長の臣下に推薦する(C.C.、ルルーシュ、スザク優先)。
[備考]
※少なくとも21話より以前からの参戦です。
※マリアンヌはCの世界を通じての交信はできません。
またマリアンヌの意識が表層に出ている間中、軽い頭痛が発生しているようです。
以上、投下終了です。
一時間にわたる支援、ありがとうございました。
タイトルは某小説より「煉獄の炎」で。
投下乙!!!
手に汗握る展開で最後まで読んでしまった、面白い、本当に面白かったです。
せっちゃんとホンダムの息の合った連係最高っす。
そしてまたガンダニウムか!
主催め無駄使いをしおって
しかし信長も化け物だが、バーサーカーは更に上か・・・
そしてアーニャ・・・というかママン・・・
これだけの人数が本当によく動いていました。
次作も期待しています。
リリーナ様に黙祷
>>351 おっつ乙!
ええもの見させてもらったわぁ
投下乙
ガンダニュウム合金製の麻雀牌だと
これはランジングサンが見られるのか!!!
投下乙でした!
寝る前に良いものが見れたぜえええええええええ!
信長公TUEEEEEEE!!そしてバサカYABEEEEEEE!!!
俺がホンダムでも太刀打ち出来んとはこいつらマーダーの中でも一つ頭が抜きんでてるぜ……!
そして完全平和を最後まで目指し続けたリリーナ様に黙祷
牌が可哀想…
投下乙です!
いや、手に汗握る展開、よく人数を動かす技量はすごいです
バーサーカーはバサラ武将二人がかりでも止まらないか…
首輪探知機がレイの元にいく、マリアンヌ降臨、エクスカリバーを手にしたバーサーカー…うは、続きはどーなるよ
いや、いいものを見させていただきました
最後にリリーナへ、黙祷
・お知らせ
修正発議が入っていたXIzIN5bvns氏の「この重さは命の重さ、この意味は生きる意味/血も涙も街(ここ)で乾いてゆけ」ですが、修正発議が取り下げられ、正式に通しとなりました
それに伴い、琴吹紬、平沢唯、東横桃子、船井譲次の予約が解禁状態となりました
位置、時間はしたらばの予約スレで確認してください
以上
投下乙!
すっげえええええええ!!
なんだこの乱戦は!
武装面の弱さをチームプレイでカバーする俺とホンダム。
互いに語る口は多く無けれども相手を信頼しているからこその連携がかっけかった!
そんな彼らを相手に勝る信長公ぱねえええ!
やっぱしカリバーは黒バージョンか!
その信長を前にしても退こうとしなかったリリーナは気高かったがしかし無情!
蘇生に炎をバックにとモンスター全開バーサーカー!
リリーナに肩入れしていたアーニャはマリアンヌに取って代わられ、これからどうなる!?
しかし個人的に夢をくだらないと言った信長を嫌って銃撃し、けど組むのでもなく不意をうってレーダーぱくってくレイ兄さんがらしくて良かった。
脳内再生がどのシーンも自然とされ、どきどきしまくりでめちゃくちゃ面白かったです。
GJ!
リリーナ(´;ω;`)ブワッ やっぱこういう場で長生きはできないよね。黙祷。
アーニャはやっぱしマリアンヌになってたのねwそしてさすがマリアンヌ。ずる賢いw
人格が戻った時にどうなるかが気になります。
あ、エリア11はエリアイレブンじゃなくてエリアじゅういちですよーとだけw
連投すみません。投下乙でした!
乙です
リリーナさん・・・しかし、これから狂戦士の12の命をどう削るか楽しみです
いくつか疑問ができたのですが
レイさんの状態表で基本支給品一式×2とありますが
ディパックを一つ落としたと本文で書いていたので
一つ減らしたほうがいいのではないですか?
麻雀牌のことですが数が少ないの
全種類一牌づつの34牌だからでしょうか?
(たいていの麻雀セットは144牌あります)
後、本文で刹那が拾っていたので
道具欄に入れておいたほうがいいですよ。
投下乙
これは熱い!
アニロワ3rd初の大乱戦、堪能させて頂きました
どのチームも今後に期待っス
そしてリリーナ様黙祷、ムチャシヤガッテ・・・。
あああリリーナ乙
レイ兄さん相手の説得ならともかく信長相手はさすがに無理だったか…
バーサーカの思考と不死性が格好いいっす
ホンダム死んだかと思ったw
あとマリアンヌw声優ネタでもあるな
今夜はブリタニア親子が調子のりすぎw
しばらくアーニャはお休みかな?アーニャ乙
投下乙!
長ぇすげぇ!よくぞ大人数バトルを書ききって下さいました!
リリーナ黙祷!頑張ったよ、超頑張ったよ!レイ兄さんの心をちょっとはゆさぶったよ!
だが信長とバーサーカー外道w
もう一回、投下乙でした!
>>362 原作の無限の剣製食らった後からの参戦で、
参戦後はホンダムに二回、信長に一回殺されてる
いや〜しかし本当に読みごたえがあった
投下乙であります
投下乙
すげえ!なにこの終盤並の濃い密度の大乱戦。まだ第一放送の時間ですらありませんよ?
バーサーカーとホンダムの因縁は続く、か。でもどうやったらあと4回も殺すんだよ…。
しかしアーニャはなかなかやるな。臣従すると見せかけて微妙に信長の方針を変更させるとは。
投下乙です
>我が揩スし悪の華 ◆zZobvbdlGE
ルルーシュお前詰め込みすぎだろwそしてなんちゅうもん現地調達しやがる、この今までボッチ野郎w
あ、ルルーシュの前だと所詮一般人マーダーの憂もあっさり陥落は当然か
>煉獄の炎 ◆.ZMq6lbsjI
ホンダムもバーサーカーも十分凄いが、それに引けを取らない信長半端なさすぎる・・・
だってホンダムやバーサーカーと違って信長人間サイズだろ、しかもホンダム・刹那・アーニャの3人がかりでもむしろ圧倒とか・・・
まさに戦国最強なるぬ戦国最凶
でもアーニャはマリアンヌ状態か、どうりで口調に違和感感じたはずだ
そしてリリーナ南無、途中演説し始めた時は本気でウザッと思ったが、最期まで意志を貫く姿勢は尊かった・・・
周りに他に敵対的な勢力も無いからいいものの
結構みんな消耗しちゃったのう
探りの為の戦いじゃなくて、どいつもこいつも本気で戦闘してたからなw
序盤戦最大の戦だった
これぞバトロワの醍醐味だな
確かにこういう大乱戦こそバトロワの醍醐味の一つだよ
状況が二転三転して敵味方が変動する
1対1、1対複数、水入り、不意打ち、乱入、一時の同盟、裏切り、何でも有りだからな
ところでリリーナの直接の殺害者は誰になるんだろ
信長?
だろーね銃殺だし
バーサーカーのゴッドハンド1消費はキルカウントに含まれないのかな?
人一人キルするよりしんどいと思うのだけど
入らないだろ。ロワ的には死亡扱いじゃないから。
死んだと見せかけて復活、は1stのアーカードを思い起こさせるな
回数制限はあるがはたしてどうなる事やら
>>371 まぁ騎乗形態なら見劣りしないんじゃね?
予約の上では今のところごひだけ黎明に取り残されてるけど、無理に予約入らなくても放送行けるかな?
バーサーカーの状態表には死んだら状態は健康まで回復、って書いてあるけど実際には魔力消費大になってるな
これそのままでいいの? 一応今までのssと矛盾してるとは思うんだが
◆fQ6k/Rwmu.氏の作品、『試練/どうあがけば希望?(後編)』 ですが、微妙にページ容量をオーバーしてしまったので分割点の調整をお願いします。
あれま。大丈夫かと思いましたが…むむ。
では少し中途切りになってしまいますが、
>>108の「最後の文字は『す』だ」
までを前編でお願いします。
月詠小萌・浅上藤乃投下します
「○○ちゃん、バカだから補習ですぅ〜」
月詠小萌はその時不意に、学園都市の夏休み中、ある自分の教え子に電話から掛けた言葉を思い出していた。
超能力開発が主な目的で創設された学園都市において、
レベル0
「無能力」
と、周りの教師や学園都市の科学者達に烙印を押された教え子の中の一人。
月詠小萌の生徒達の中の一人であったある少年の事だ。
彼は周りの大人達から見れば、面倒事ばかり起こす厄介な生徒という印象を与えていた。
実際、彼が問題を起こす度に月詠小萌は教師として彼を叱ってきた。
だが、少年が起こす問題というのは、決して、
無能力―――持たざる者が持てる者への嫉妬でも、 リビドー
誰にでも経験があるであろう、思春期特有とも言える【有り余る衝動を誰かれ構わず相手にぶつけたいから】。
というような刹那的な理由でも、なかった。
少年はいつでも自分のやった事に対して言い訳はしない。
ただ、彼が大きな問題を起こすときは、大抵誰か自分以外の人の為にしていた事だったのだと、
月詠小萌が気付くまで、そう時間は掛からなかった―――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
舞台は戻る。
ここはとある真夜中の学校。
だが、月詠小萌が教鞭を振るっていた学園都市内での学び舎ではない。
月詠小萌自身もまったく見知らぬ場所の学校である。
その教室内に見知らぬ女生徒と二人きり。
勿論、これが夜通し行われる教育熱心な月詠小萌らしい補習授業でも、
かなり大きな問題があるのだが、そうではない。
今、目の前の少女は、確実に月詠小萌に対して殺意を向けている。
消火器の煙が室内に立ち込めてはいるが、まるで世界から全ての音が消えてしまったのかのような
静謐に満たされた職員室に、窓から差し込む月夜の光で妖しく照らされた桔梗色の髪。
まるで日本人形のような端整な顔立ちの少女の全身は紅い鮮血に染まり、
翠と紅に彩られた瞳はまるで宝石のような輝きを放つ。
だが、その瞳の輝きは暗く澱んでいるかのように見えるのは月詠小萌の錯覚だろうか。
何故、あんなにも簡単に人間を殺せるのか?
それは今までの教員生活で数多くの生徒を育て、
その生徒達を卒業式において、万感の思いで送り出してきた月詠小萌にも理解はできない。
只、今の状況からはっきり分かる事がある。
それは、
このままでは、確実に、殺されるという事だけだ。
「凶れ」
まるで表情を変えなかった少女が冷たく言い放つ言葉。
その直後、彼女の瞳から、翠と紅の半透明蛍光色の螺旋が、あらゆるものを捻じ切る絶対的な死が、
月詠小萌に襲い掛かる!!!!!!!!!!!
これは月詠小萌にとっての死刑宣告――――――。
月詠小萌の肉体はこの一言によって、本人すらも気付かぬ一瞬のうちに物言わぬ肉塊へと変貌を遂げる!!
――――――。
はずだった。
この無慈悲とも言える超常の力の前では、
単なる一教師であるはずの月詠小萌が、生き残れる要素など何一つ存在しようはずがない。
だが――――――。
浅上藤乃から放たれた魔眼――――――。
翠と紅の螺旋は、結果として職員室の床を渦上に抉り取っただけだったのである。
浅上藤乃から螺旋が放たれたその瞬間、
月詠小萌は反射的に職員室の出口に向かって跳んだのだ。
もちろん、高速で接近する浅上藤乃の魔眼に対して、
戦闘の際には超人的な身体能力を発揮する両儀式のような人間でも無い限り、
彼女の魔眼を跳んだ程度で避けきれるという事態はまず起こり得ない。
だが、浅上藤乃は魔眼が小萌の体を捻じ切らなかったと認識した刹那、
かすかに顔を歪めて思索した。
(・・・・・・。つま先から順番に捻じ切ってやろうと思ったのに――――――)
さきほど放たれた浅上藤乃の魔眼の標的は、月詠小萌の命を瞬時に奪う為のものではなかったのだ。
彼女が敬愛する先輩。黒桐幹也に人殺しの自分を知られる危険を生み出し、
浅上藤乃が殺人を愉しんで愉しんで愉しみぬいて殺すつもりだった二人の獲物を逃がした月詠小萌に対し、
生きているのが苦痛になるくらいの罰を与える。
まず―――つま先を捻じ切り、その後両手首を捻じ切る。
失血死されても興が削がれる。
捻じ切った後の傷口は丹念に絞り切って、
無駄な出血などさせてやらない。
後は内臓から頭に向かって、少しずつ少しずつ少しずつ肢体を捻じ切って
心の臓が止まるその瞬間まで凶げ続ける。
せっかくの愉しみを奪われた代償は、絶対に償わせる。
そんな浅上藤乃の、月詠小萌に対しての激しい憤りが、今この瞬間の結果として、
月詠小萌の命を永らえさせたのだ。
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!
と廊下を駆ける音が聴こえる。
跳んだ勢いで廊下に飛び出した月詠小萌は、
廊下を転がりながら、そのまま体勢を立て直し駆け出していた!!
浅上藤乃はそんな月詠小萌をその場からすぐに追う訳でもなく、
その場から動かず、ただ【千里眼】を廊下を走る月詠小萌に向ける――――。
「そう――。狐狩りは、殺すのが目的じゃないもの。」
中世ヨーロッパに於いて、貴族の嗜みともいわれていた狐狩り。
生きるために獲物を狩る狩猟ではない。
これはただ狐を狩ればいいというだけではない。
生に対し狡猾な狐をあらゆる手段で追い詰めて追い詰めて、その果てに狩るというのが、
当時廃頽的な娯楽に飢えていた貴族達の心を掴んで止まなかった遊戯である。
当時、【魔眼】に目覚める前だった浅上藤乃は、
読んでいた書物で狐狩りについて知った時、
(なんて残忍な事ができるのだろう)と眉をひそめたものだったが、
今の浅上藤乃なら、狐狩りに興じた中世当時の貴族達の心境が手に取るように分かった気がする。
「いいわ―――。遊びましょう。狐さん――――――――。」
浅上藤乃が微笑む。
だが、その笑顔は彼女が彼女であった時期―――。その少女に微笑まれた
いかなる男性をも浅上藤乃に夢中になってしまうような愛らしいものではない。
唇を僅かに上部に引いただけ、まるで引き釣ったような醜悪な笑みであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!
月詠小萌は走っていた。
おそらく彼女の生涯において、こんなに真剣になって走ったのはそこそこ永い生涯の中でも、
生まれて始めての経験だろう。
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!
その生まれて始めてを経験する場所が、
月詠小萌が普段、生徒達に走らないよう呼び掛けていた、
学校の廊下だとは、なんとも皮肉な結果であるが。
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダ
だが、今はそんな悠長な事を考えてる場合ではない!
月詠小萌は【逃げろ】と本能に基づく脳から来る指令だけで動く体で必死でねじ伏せ、
浅上藤乃の【能力】について思考していた。
(あれはPK(Psychokinesis、サイコキネシスの略)の一種でしょうが、
学園都市でもまだあんな能力者は見た事ありませんっっっ!)
月詠小萌は体と脳を同時にフル回転させつつ、更に思考を続ける。
(でもっっっ!しっかりとは確認できてませんが、いくつか仮設を立てるならっっっ!)
メキャ
その瞬間、廊下を全力疾走する月詠小萌の傍にあった消火栓が、
何の前触れも無く空間ごと捻られた!
ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
消火栓が設置されていた場所から勢いよく水が噴出される!
その水の勢いで、月詠小萌は教室側の壁に叩きつけられた!!
「カハッっっっっ!!!!!」
叩きつけられた瞬間、思わず息を吐く月詠小萌。
前方に向かう物理エネルギーをそのまま真横に変換されたのだ。
無防備な状態で壁に激突した月詠小萌の足が思わず止まる。
壁から吹き出す激しい水音で、月詠小萌は気付いていない
その遥か後方の角からは、
コツコツコツと硬い廊下を靴で鳴らしながら、
ゆっくりだが、確実に浅上藤乃が迫っていた。
壁に打ち付けられたその小さな体をヨロヨロと起こしながら、
月詠小萌は立ち上がる。
だが、その表情には絶望や恐怖の色はまったく感じられない。
(やはり・・・あの娘、直接対象が見えてないと、人間に【能力】が使えないんでしょうか・・・)
月詠小萌が周囲を見渡すと浅上藤乃の姿はまだ視界に見えない。
しかし、消火栓を凶げたのは、浅上藤乃の能力で間違いないだろう。
(だったら、なんで―――。私をそのまま攻撃しなかったんでしょう?)
仮に、浅上藤乃がいかなる場所でも自由に能力が発動できる場合、
わざわざ月詠小萌の傍の消火栓を破壊する必要などない。
月詠小萌の足でも手でも、見えない所から好きに凶げさせれば、
こんな追いかけっこをする必要すらない。
そうしないのは、月詠小萌をじわじわなぶり殺すための可能性もあるが、
ただ恐怖を与えたいだけなのなら、能力で実際に体を痛めつけた方が遥かに効果的なのだ。
全身に走る鈍い痛みに耐えながら立ち上がった月詠小萌は、
自分が打ちつけられた教室のドアを開ける。
そこは、【家庭科室】と書かれていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
月詠小萌の体から痛みが全て引く気配はまったくないが、
小走り程度で駆け出す程度なら、まだ痛みを我慢できる程度には回復した。
だが、教室に入った瞬間、月詠小萌の周りの棚や机が一斉に凶がりだした!!!!!!!
メキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャ
月詠小萌は、教室内の次々に捻れ曲って凶がっていく棚や机には一切構わず、また小走りで走り出す。
そして、棚から零れ落ちた【小麦粉】の袋を抱えて教室から飛び出していく!
だが、月詠小萌のその移動速度は、以前の全力疾走と比べると明らかにペースが落ちてきている。
体の痛みの事もあるが、何より月詠小萌の体力がもう限界に近いのだ。
その間にも、浅上藤乃は月詠小萌の目前、
すぐ横の廊下の曲り角まで迫ってきていた―――。
「そろそろ・・・追いかけっこも終わりにしましょうか。」
学園都市製の軍用ゴーグルを装着していた浅上藤乃はそう呟いた。
狐なら、ともかく人間狩りである。
獲物は無様に悲鳴を上げて、恐怖に怯えながら逃げ惑う。
それを狩るからこそ、達成感も得られるというのに――――。
【千里眼】で直接見なくても月詠小萌の様子を観察できた浅上藤乃は、
期待を裏切られたという軽い失望に苛まれていた。
(こんな事なら・・・、あの時、一息に殺しておくべきだった。)
追い詰めても追い詰めても、月詠小萌の表情に恐怖の色が宿ることは無い。
こんなことなら、この教師はもうさっさと終わらせて、2階の階段を凶げて閉じ込めた、
あの二人でうさを晴らそうか。
そんな事を思い、二人の様子を見ようと【千里眼】の視線を月詠小萌から、
2階にいるであろう琴吹紬と千石撫子に移したその瞬間、
浅上藤乃の耳に、激しく花火が打ち上がるような音が飛び込んできた。
浅上藤乃は知る由もない。
月詠小萌を追うのに夢中になるあまり、二人にまったく注意を払っていなかった最中、
まさか琴吹紬と千石撫子が、武田軍に所属するとある忍びが作成した『緊急脱出装置』を使って、
半密室であるはずの学校から脱出を図ろうとしていたなんて。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
支援
同じくその時、その二人が脱出する瞬間をしっかり見届けた人間がいる。
浅上藤乃のいる廊下側からすると、教室の外窓側から脱出した形になるのでちょうど反対側。
浅上藤乃が月詠小萌から【千里眼】をそらした際に、
満身創痍の月詠小萌が飛び込んだ教室、【科学準備室】の窓から、
同じく花火のような音が外から聴こえてきた事に気付いた月詠小萌は、高速で飛んでいく二人の姿を眺めていた。
(よかった・・・。二人とも無事脱出できたんですね・・・。)
あの二人のどちらかの支給品に、まさか脱出装置が入っていたなんて、
月詠小萌としても予想外の出来事であった。
しかし、仮に脱出装置があったとしても、月詠小萌が命懸けで時間を稼いでいなければ・・・。
先ほどの職員室で、月詠小萌が浅上藤乃にあっさり殺されていたとしたら・・・。
抗いようが無い超常の現象に、成すすべもなく蹂躙され、単なる肉塊と化した遺体が4体に増えただけだっただろう。
月詠小萌は今後の二人の無事を祈りながら、準備室の薬品棚を探る。
目的の薬品は厳重に鍵が掛かった棚に保管されていたが、
部屋の中で鍵を探しているうち、準備室を管理しているであろう教員机の中から既にその鍵を見つけていた。
だが、ここで月詠小萌の頭にある一つの疑問が浮かび上がる。
(なんで、急にあの娘の【能力】での攻撃が止んだんでしょうか・・・?)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
浅上藤乃の苛つきは頂点に差し掛かっていた。
先ほどの花火のような音を聞いて、2階に【千里眼】を飛ばし、
学校の教室からトイレ・物置やロッカーの中まで、隅から隅までくまなく探しても、
琴吹紬と千石撫子、二人の姿が一向に見当たらない。
(まさか―――。さっきの花火の音は・・・)
考えたくもない。まさかそんな事は有り得ないが―――。
なんらかの支給品で半密室と化した学校から脱出を図り、それにまんまと成功せしめた。
現時点の情報では、そう結論つけざるを得ないだろう。
浅上藤乃はハッ、と気付いたように月詠小萌に【千里眼】を戻す。
(貴方だけは―――。絶対に殺す。)
もう遊びの時間は終わりだというかのように、月詠小萌への殺意を増す浅上藤乃。
本人の苛々も相まってか、翠と紅色の魔眼は、今までで一番妖しい輝きを放っていた。
【千里眼】で月詠小萌に視点を戻した浅上藤乃は懸念していた。
2階の二人を探してる間、
月詠小萌にまったく注意を払っていなかったいう事実。
これで、もしもあの教師まで逃がしたら、もう・・・私は―――。私でいられなくなる―――。
浅上藤乃は一種の悲壮感すら漂う決意を胸に、【魔眼】を発動させる―――。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
月詠小萌は今、何やら棚にあるビンを色々といじっているようだ。
【千里眼】で並んでいるビンのラベルをよく見てみると、硝酸アンモニムや硫酸といった記述が見える。
どうやら、学校の化学準備室のような場所で何らかの薬品を探しているらしい。
月詠小萌はこの千載一隅とも言える、浅上藤乃最大の隙にすら、
この学校から逃げ出していなかった―――――。
この事実は、どうしようもない憤りを感じていた浅上藤乃の溜飲を下げる結果となったのだが。
「良い子ね・・・。でも、許さない―――――。」
浅上藤乃は【千里眼】に力を込める。
それに呼応するのかのように、浅上藤野の両目の魔眼が煌いた。
パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!
薬品のビンのあった棚が、浅上藤乃の【千里眼】によって容赦なく凶げられていく。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
月詠小萌は思わず悲鳴を上げてしまった。
薬品棚で探し物をしていた際、急に浅上藤乃の攻撃が再開した事により、
彼女の細腕に【硫酸】と書かれたビンから割れた液体が降りかかったのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」
思わず声を上げてしまった事に気付いて、
脳から伝達させる堪えきれない程の危険信号に、必死にあがない痛みを堪える月詠小萌。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
月詠小萌の陶磁器のような白い肌は、あっと言う間に赤く醜く爛れ、腫れあがっていく!
このように通常、硫酸が腕などに付着した場合の処置としては、
流水で長時間、付着部分を洗い続けるといった行為がもっとも効果的、かつ適切だと言われているのだが、
浅上藤乃という、脅威が迫ってる今、そんな流暢な真似をしている時間などない。
今にも思わず泣いてしまいそうな程の激痛を堪えながら、
火傷した腕を抱え、月詠小萌はヨロヨロと、【化学準備室】と部屋の中で繋がっている【化学室】へと移動を開始した―――――。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだ・・・。そんな所にいたのね。狐さん。」
月詠小萌の悲鳴は、浅上藤乃が立っている廊下のすぐ傍。
もう隣ともいってもいいくらいの、教室の中から聴こえてきた。
どちらにしても、【千里眼】で薬品の入った棚を確認したという時点で、
学校内で薬品を管理している場所などそう多くはないだろう。
しかし、月詠小萌の悲鳴は、隠れていた狐の居場所を確認できたというだけではない。
静寂な校舎内に響き渡る、絹布を強引に引き裂いたかのような、か細い女性から吐き出される悲鳴。
琴吹紬と千石撫子、この二人をおめおめと逃がしたという浅上藤乃の苛立ちを
多少なりとも沈める効果を発揮したのである。
(今度は・・・。もう、しくじらないようにしなきゃ―――――。)
冷静になった浅上藤乃は、【化学室】と書かれた教室内に突入する前に、
昂ぶって昂ぶってはち切れそうなくらいに膨れ上がった、自身の殺人衝動を落ち着け、
月詠小萌を、この部屋で確実に葬り去る為の準備を始めることにした。
支給された軍用ゴーグルを被り直し、モードを赤外線(サーモグラフィー)に切り替える。
赤外線モードは、自身の視覚情報を、対象から発する熱源に変換する装置である。
これで、月詠小萌が【化学室】内のどこに隠れていようが、月詠小萌から出る熱を探知する事により
確実に隠れている場所を見つけ出して、凶げる事ができるであろう。
さらに、加治木ゆみから奪った拳銃、デリンジャーのマガジンを開き、
再度拳銃の弾を確認、デイパックの中から予備の弾を取り出し再装填した。
拳銃の取り扱い方法について、浅上藤乃のこれまでの人生において、まったく心得がなかったのだが、
月詠小萌を確実に殺す手段の一つとして、準備を怠る理由にはならないだろう。
そして、この部屋で確実に仕留める為に、浅上藤乃にはもう一つしなければならない事があった。
この教室、【化学室】を外界から完全に隔離しなければならない。
もう、万に一つの可能性も月詠小萌に与えてはいけないのだ。
大きく息を吸い込み、呼吸を整える浅上藤乃。
階段を凶げた時は上手くいったが、今度のものはそれより少しばかり大きいのだ
何らかの制限が掛かっている自身の能力に、幾何かの不安を覚えながら、
「凶がれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――!!!!!!!!」
浅上藤乃は対象に向けて、翠と紅の螺旋状となった【魔弾】を放つ。
その目標は学校の廊下、
【化学室】という空間だけを物理的に、事実上の密室に仕上げる為だ。
メキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャ
浅上藤乃の思惑通りになった。
【化学室】と書かれた教室の両側の廊下は、およそ7m間隔で完全に抉り取られていた。
その抉り取られた廊下の下は、一階まで吹き抜けとなっている。
この階は3階、たとえ、そのまま月詠小萌が廊下から飛び降りたとしても、
着地の際には無傷ではすまないだろう。
これでは、浅上藤乃自身もこの空間に閉じ込められた。という事になるのだが、
先ほどのように、獲物をわざわざ逃がすという愚考よりはよほどマシだろうと浅上藤乃は考えた。
この校舎からどうやって外に出るかは、さっさと月詠小萌を始末した後にでもゆっくり考えればいい。
支援
さて、全ての準備は整った。
【千里眼】で教室内にいるであろう月詠小萌の様子を確認する。
彼女は【化学準備室】内での机の物陰に潜んでいるようだ。
まだ何か小ざかしい事を企んでいるのか、それとも先ほど浴びた薬品の影響で
逃げ回る事すらできなくなったのか。
どちらにしても、もう月詠小萌はこの教室から逃げ出す気はないようだった。
仮に逃げ出そうとしても、ついさっき浅上藤乃が廊下ごと凶げた事により、
それは叶わぬ行為ではあるのだが。
(諦めの良い狐というのも、それはそれで興が削がれるわね・・・。)
もちろん、こんな事を思ったのは、浅上藤乃が月詠小萌の退路を完全に絶ったと確信したからである。
これはいうなれば、象が蟻を踏み潰すかの如き、東から昇る太陽が西へ沈むかの如くの規定事項。
越えられない壁、超越者による絶対的勝利の確信。
後は部屋に入り、月詠小萌の肉体を、【魔眼】で思う存分陵辱した後、
先輩・・・。黒桐幹也を探しに行くだけだ。
あぁ、逃げた二人も追わなきゃならないけど、
今の私には【千里眼】もある。
先輩に会う前に二人を始末するなんて、そんなに大した問題でもないだろう。
「もう・・・。これでオシマイ。凶れ」
メキャメキャ
【化学室】と書かれたドアを開ける前に、ドアごと凶げて入り口を作る。
月詠小萌の息の根を完全に止めるため、
浅上藤乃は凶げた【化学室】の入り口から教室内に入った―――――――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
支援
教室に入ったその瞬間、浅上藤乃は思わず顔を歪めた。
その【化学室】の教室内は窓が暗幕で閉め切られていて一面真っ暗。
浅上藤乃が破壊したドアから微かに光が漏れてくる程度だ。
ここで浅上藤乃の表情を曇らせたのは、その室内の暗闇ではない。
「この匂いは・・・。ガス―――――?」
そして、その間に、月詠小萌が先ほど家庭科室から拝借してきた小麦粉をぶちまけた!
白い小麦粉が部屋中に充満する!
そして続けて、月詠小萌は【化学室】にあった消火器の栓を抜き、こちらも自分の傍に向けて発射していた。
小麦粉と消火器の白煙に包まれた月詠小萌。
彼女の姿は、普通の人間になら、その姿を遠目からでは認識出来ないほどの煙に包まれる。
だが、浅上藤乃の装着していた軍用ゴーグルは
体温が上昇して真っ赤な月詠小萌の姿を、はっきりと映し出していた―――――。
「凶れ」
クチャ
浅上藤乃がその台詞を発した直後、月詠小萌の絶叫が響いた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
翠と紅の螺旋が月詠小萌に襲い掛かる。
その螺旋が、消火器の栓を握っていた月詠小萌の左腕に溶け合い、有り得ない方向へと複雑に入り組んで凶がっている。
浅上藤乃の【魔眼】はここで、月詠小萌を始めて捉えたのだ。
先ほどの火傷どころの話ではない。
即座に意識を失ってもおかしくない程の激痛が、月詠小萌の全身に駆け巡る!!!!!!
月詠小萌は豚のような悲鳴を上げながら、地面に転がりかえっていた。
その悲鳴を聞いて満足げにする浅上藤乃。
彼女の加虐心は、直接自身の能力で月詠小萌の肉体に痛みを与えた事により、
硫酸を彼女に浴びせた時とは比べ物にならない程の満足感を得られたのである。
床を無様に転げまわる月詠小萌に向けて。
デリンジャーを構えながら、ゆっくりと近づく浅上藤乃。
「でも、やっぱり凶げる時は――――。自分の目で、見ながらでないとね。」
ゆっくりと、だが確実に月詠小萌に近づいていく浅上藤乃。
その思考は、もはや
(次は、どこを凶げれば、悲鳴がかわるのかしら――――。)
月詠小萌の肉体を存分に思うがまま蹂躙する事で一杯になっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
支援
全身に走る激痛に思わず気を失いそうになる月詠小萌は、
全身から脂汗を流しながら、自身の意識を必死に保っていた。
ほんの少しでも気を抜けば、間違いなく彼女の意識は途絶える。
だが、今この瞬間に意識を失うという事実は、
間違いなく永遠の眠りを意味する行為であろう。
床を転げ回りながら、月詠小萌は叫んだ!
「黒シスターちゃあああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!」
黒シスター・・・?もしかして、一見すると修道女に間違われるような礼園女学院の制服を着ている自分の事だろうか?
だが、月詠小萌のこの叫びに対して浅上藤乃はまったく応えなかった。
もはやこの場所において、月詠小萌のあらゆる言葉に対して返答を返す意義がもはやない。
構わず月詠小萌に向けて歩を進める浅上藤乃に、
月詠小萌が息も絶え絶えになりながらも声かけを続ける。
「【粉塵爆発】って知ってますか?」
その時、月詠小萌の手元に注目する浅上藤乃。
無残にも折れ曲がった月詠小萌の小さな手とは逆の方にライターが握られている。
このライターは【化学室】で調達したものではない。
普段の喫煙量の凄まじさは職場の同僚から【ホワイトスモーカー】と呼ばれるほど。
口に咥えただけで煙草の品質の違いが分かるらしい月詠小萌は
いついかなるどんな時でも、必ずライターだけは持ち歩いているのだ。
(不味い・・・!!もしかして・・・!!)
部屋内に充満する小麦粉と消火器の粉末、
そして屋内に充満するガス。
このガスについてはおそらく、浅上藤乃が屋内に突入する前から、
月詠小萌が【化学室】のガス栓を捻っていたのだろう。
よく見ると月詠小萌周辺の机から、ガス栓が開かれているようだ。
もはや一刻の猶予もない。と判断した浅上藤乃は
月詠小萌の息の根を即座に止める事にした。
その【魔眼】の座標を月詠小萌の体全体に設定する。
これで【魔眼】が放たれれば、また一体、人であった無残な肉団子が完成するのだ。
「凶がっ」
浅上藤乃がそう言い終わる前に、月詠小萌は床に充満するガスに向けて、ライターに火を点けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
部屋に充満したガスが青白い炎を上げて、部屋全体を包み込み、
浅上藤乃の視界は一瞬、一面の炎に包まれた。
だが、結果だけ言うのであれば浅上藤乃が危惧していた、部屋ごと大爆発という自体は起こらなかった。
そもそも、浅上藤乃は【化学室】のドアを壊した時点でこの部屋は密室ではない。
なおかつ、小麦粉を少々室内にぶちまけた程度では部屋ごと爆発など起こりえる訳がない。
部屋のガスは一瞬で燃え上がったものの、屋内で散布していた消火器の溶剤のおかげなのか
教室一面が火の海に包まれるという自体にはならなかった。
月詠小萌が火を点けたガス台周辺は、ガスによって木材に引火したのか
メラメラと燃え上がっているが、その他の教室はあちらこちらに火の手が上がっている程度だ。
だがそのまま消火せず放っておけばこの教室は遅かれ早かれ炎に包まれる事だろう。
しかし、ここが仮に屋外だっとしても、風が少ないコンテナに囲まれた倉庫地帯だったのなら、
粉塵爆発が起こりえたかは分からないのだが。
そして、月詠小萌の狙いは、部屋ごと爆発させる粉塵爆発ではなかった――――。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
浅上藤乃に向けて絶叫しながら月詠小萌が走り出す!!!
支援
浅上藤乃はこの一連の自体に戸惑いながらも
月詠小萌の絶叫を聞き、視界を月詠小萌に移すのだが・・・。
(何よ・・・。これ・・・。)
浅上藤乃の付けていた軍用ゴーグルの視界は真っ赤になっていた。
大きな火の手ではないとはいえ、部屋中のあちらこちらに火の手が上がっていれば、
熱源探査の赤外線モードは正常に働かなくなる。
月詠小萌がここまで意図していたかは分からない。
だが、結果的に月詠小萌がガス栓を捻り、ガスに火を点けたことにより、
軍用ゴーグルを装備した浅上藤乃の視界を奪う事に成功したのだ。
軍用ゴーグルをつけたままでは、直接視界で確認しないと効果を発揮できない【魔眼】は使えない。
【千里眼】では今、自分に向かってきている月詠小萌の息の根を直接止める事はできないのだ。
その間にも月詠小萌は絶叫しながら浅上藤乃に向かって来ていた。
「死ねぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」
浅上藤乃は即座にゴーグルを脱ぎ捨て、突進してくる月詠小萌に向かい、
構えていたデリンジャーを発射する!!!!!
パンッ!パンッ!
空気を咲く様な銃声が二発響く。
その弾丸が突進してくる月詠小萌の肩と足に命中した!
だが、月詠小萌は若干体勢を崩した程度で止まる気配がない。
拳銃の扱いに慣れていない浅上藤乃は、とっさに初弾を発射した時点で、
自分の合わせた照準が、月詠小萌という小さな的の運動能力を適確に奪うためにどこを打ち抜けばいいかという、
考えは思い浮かばなかった。
拳銃は一発撃つごとに照準を合わせないと、
同じ箇所に飛ぶ事はないのだ。
やはり、扱いなれない拳銃じゃダメだ。
(・・・・・・!直接凶げれば、関係ない!)
拳銃で撃たれても止まらない月詠小萌に対して、
浅上藤乃が翠と紅の両目の【魔眼】を月詠小萌に照準を合わせたその刹那、
突進してくる月詠小萌が先ほど、ライターを着火した手にはライターではく、
小さな茶色い小瓶が握られているのに気がついた。
そしてその小瓶の中の液体が、自身にむかって振り掛けられると気付くまでの間、
瞬きをする間もないくらいほど、あっと言う間の出来事であった――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
支援
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
この悲鳴を上げたのは、突進してくる月詠小萌に対し、【魔眼】を行使した浅上藤乃のものではない。
悲鳴を上げているのは浅上藤乃自身。
彼女は今、酢のような刺激臭に包まれながら地面を転げ回っている。
その、月詠小萌にぶっかけられたその液体は、彼女から完全に視界を奪い、
目や鼻から来る激痛にその身をもだえさせている。
全身ボロボロの月詠小萌が、浅上藤乃に浴びせた液体の正体は、酢酸。
別名:氷酢酸、エタン酸とも呼ばれる科学物質である。
この液体が皮膚に触れると重症の薬傷を起こし、
眼に入ると特に角膜障害、結膜炎を起こす。失明に至ることもある。
ちなみにこの濃度を薄めた催涙スプレーも存在し、
低濃度の場合でも、数十分間視界を奪うには充分な効果を発揮する代物である。
先ほど、職員室から逃げ回る際に月詠小萌が立てた浅上藤乃の能力への仮説は、
「視界を奪えば能力が発揮できないのではないか?」
という物だった。
確証があった訳ではない。
だが、月詠小萌がいた学園都市において、超能力というもの自体も、滑稽無等な力ではない。
ある程度の法則性があり、それを行使する為に何らかの制約、つまり
人間的な限界値が設けられている場合が非常に多いというのは、
パイロキネシス
学園都市で発火能力について専攻し、さまざまな超能力に対して、
資料の上でも触れていた月詠小萌だからこそ出せた結論なのかもしれない。
家庭科室で小麦粉を持ってきたのは、少しでも浅上藤乃の視界を奪い、
その隙に化学室なら常備しているであろう、【酢酸】に目を付けたのだ。
もちろん、浅上藤乃にかけた【酢酸】は、濃度そのままの原液ではない。
月詠小萌が浅上藤乃が入室してくる前、化学室の水で薄めた代物であるが、
市販の催涙スプレーのものよりは、遥かに高濃度のものだ。
月詠小萌も教員生活でこの薬品についての知識自体はあったのだが、
実際に調合するのはこれが初めてだ。
最悪失明するという可能性は少ないだろうが、
少なくとも1時間近くは、まともに物体を見る事は叶わないだろう。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
目がああああああああああああああああああああ目があああああああああああああああああああああああ!!!!!!
激痛に耐えかね、さらに床を転げ回る浅上藤乃。
月詠小萌は腕が折られた激痛と撃たれた肩と足への痛みで、
(先生が、昔見たアニメでもこんなシーンがあったような・・・。)
意識が朦朧としながらも、支給品のバックを担ぎ上げ、教室の窓へと近づき暗幕で閉め切られた教室の窓を開ける。
部屋一面がガスと酢酸の刺激臭に包まれた3階の教室に、外の新鮮で清浄な空気が入ってくる。
そして、今にも途切れそうな自分の意識を、手に残った酢酸のビンの刺激臭を嗅いで覚醒させ、
窓の外をしっかりと眺めた。
窓の下には、植え込みされたのであろう二階までの高さくらいの木と花壇がある。
月詠小萌は未だ、痛みを叫び続ける藤乃に対して、何か声を掛けるべきかと迷ったが・・・。
結局、何も声を掛ける事もなく・・・。その窓から、飛び降りた――――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
支援
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!!!! ドサッ!
月詠小萌の体が地面に打ちつけられる。
だが、しばらくすると、月詠小萌はヨロヨロと立ち上がり歩き出した。
落下した際に植え込みの木を目掛けて跳んだ事により
直接地面に叩きつけられるのは免れたのだが、枝をへし折って落ちてきた際に全身に擦り傷を負い、
地面に激突の際に、背中に軽い打撲を伴ったものの、
背中にしょっていた支給品のバックが、衝撃をいくらか分散してくれたのもあり、
その落下により、月詠小萌の命を奪うには至らなかった。
そして、月詠小萌はそのまま学校を後にした。
先ほど浅上藤乃によって、凶げられた左腕の失血自体はそれほどではない。
念入りに凶げられた事により、左腕には完全に血流が止まってしまっているので、
このまま放って置いても壊死してしまうだろう。
ヘブンキャンセラー
学園都市にいる、自分の教え子も散々お世話になった変人ドクター。冥土返し なら
この左腕も何とか出来るかもしれないが、月詠小萌の素人目から見ても、
完全に元通りというのは不可能に近い。
それより問題は先ほど撃たれた肩と足。
動脈は外れていたので激しい失血ではないが
月詠小萌の意識と体力を確実に奪っていく。
このまま何の処置もしなかったら、結果は明白だ。
(これは・・・。かなり大ピンチですねぇ・・・。)
もうすぐにでも途切れそうな意識を、学校で調達した【酢酸】の空き瓶の気付けで戻しながら、
学校周辺の住宅街のうちの一軒に入っていった。
玄関から入って鍵を閉め、支給品のバックを空け、救急セットを取り出し、
肩と足の銃創を止血するだけの簡易な応急処置を施す。
(見知らぬ人様の家の玄関に黙って入るなんて、上条ちゃんの事を叱れませんね・・・)
そのまま治療しなければ、確実に死が待っているという最中でも、
月詠小萌はそんな悠長な事を考えていた。
簡易的な処置ながらも、とりあえず失血だけは何とか止まった事を確認すると、
月詠小萌の意識は・・・・・・・・・・・・・・・・・そこで途絶えた――――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【E-2/学校近くの民家/一日目/深夜】
【月詠小萌@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(極大)、左腕完全粉砕、肩と足に銃創(止血済み)、全身に擦り傷、背中部分に打撲、腕に薬品による火傷、意識不明
[服装]:パジャマ(ボロボロ)
[装備]:酢酸の空き瓶@現実
[道具]:基本支給品一式
[思考]
0:上条ちゃん及び他の学園都市の生徒を探し出して保護。
1:困っている人がいたら保護
2:シスターちゃんを絶対に助ける
[備考]
※命に関わるような失血は止まったものの、
まともに動ける状態までの回復はかなりの時間が掛かりそうです。
少なくとも第一回放送開始くらいまでは起きません。
アイテム
酢酸の入ってたビン@現実
学校の化学準備室から手に入れた酢酸が入っていたビン
もう中身はほとんどないが、中に入っていた溶液の刺激臭により
気付けとして使用することが可能。ものすごく酸っぱい香りがする
支援
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガス爆発による火事で、煤けた屋内の教室。
水浸しになった教室内で、浅上藤乃は憤っていた。
この水は浅上藤乃が撒いたものではない。
月詠小萌が窓から飛び降りて、しばらくした後、
学校に備え付けられている消火用スプリンクラーが作動したのだ。
この放水により、部屋の火事は消し止められ、浅上藤乃は何とか火事から一命を取り留めた。
まさか、あの教師はそこまで計算していたのだろうか。
浅上藤乃の視界は結局、月詠小萌から薬品をぶっかけられた後、一晩中戻らなかった。
おぼろげながらも視界を確保できた時点で、流水による洗眼を行ったのだが、
また【魔眼】が問題なく使えるようになったと、確認できた時には、
とっくに夜が明けていたのである。
今の浅上藤乃は怒りに震えてどうにかなりそうだった。
憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。
あの教師が、あの女だけは絶対に許さない。
100回凶げても凶げ足りない!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
月詠小萌への殺意の塊となった、浅上藤乃の情念は凄まじい。
そして、そんな浅上藤乃のいる教室の時計は、
そろそろ朝の6時を迎えようとしていた。
【E-2/学校・3F化学室/一日目/早朝】
【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:千里眼覚醒・健康
[服装]:礼園女学園制服(血塗れ)
[装備]:軍用ゴーグル@とある魔術の禁書目録 、参加者詳細名簿@アニロワ3rdオリジナル、デリンジャー(0/2)@現実
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1 、かすがのくない@戦国BASARA×8本、拡声器@現実、予備弾薬@現実
[思考]
基本:幹也の為、また自分の為(半無自覚)に、別に人殺しがしたい訳ではないが人を殺す。
1:絶対に月詠小萌を殺す。その後琴吹紬。千石撫子を探し出して殺す。
2:3人を殺害した後、移動して人に会い、本当に申し訳ないが凶げて殺す。
3:幹也に会いたい。
[備考]
※式との戦いの途中から参戦。盲腸炎や怪我は完治しており、痛覚麻痺も今は治っている。
※デリンジャーの弾数に言及がなかったので一般的に普及しているモデルと同じく二発にしました
投下終了しました
支援ありがとうございます
支援
支援
投下乙です
とりあえず藤乃の魔眼が無事で一安心
投下乙です
先生、知識と策でふじのん相手に生き延びたのか
こういうのもロワらしくていいね
しかし両方とも見てるだけで痛そうだなw;
ふじのんも怖いことなってるぞ
投下乙です
小萌先生、よく頑張った
でも、止めをささず…この場合はさせずだな
それが後にどう響くか…
ふじのん、完全に火がついちゃったし
ところでごひと予約されてるのが来たらそろそろ放送?
投下乙
力の差を策で埋めるのはやっぱり面白いな
先生ほぼ死に掛けだけど
ひとつお願いというか、場面転換のときに氏がつかっている―なんですが、
量が多すぎてwikiに乗せた際にはみ出るんで少し減らしてもらいたいです。
消し忘れてました
>>477 別に全員早朝まで行かなきゃいけないわけじゃない(特に語るべきことはありませんでした、でいい)から、ごひ来なくても放送行ったっていい。
投下乙!
藤乃が怖すぎる……!学校の実験室を使った戦略は思わずゾっとした。
小萌先生は死んじゃうかなと思ったけど機転を生かしてよく頑張ったといいたい!
既に満身創痍だけどもこの先どうなってしまうんだろうかぁ……。
さらにやばいことになった藤乃も先が怖すぎるしw
では完成したのであららぎさん、セイバー、幸村を投下します。
バトルロワイアル開始から既に五時間以上は経っている。
様々な参加者が出会い、別れ、そして死んでいったことに違いない。
中には仮初の同盟を結んだ者達が居てもおかしくはないだろう。
実のところ大小様々な集団が形成されている。
エリアD-6の駅入口にもその内の一人が立っている。
彼は言うなれば門番の役目を担っていた。
「いつでも来られよ!この真田源次郎幸村、いかほどの相手であろうともむざむざと見せる背は持っておらぬ!!」
赤いライダースジャケットにこれまた赤い鉢巻が嫌でも目を引く。
加えてその言動は力強く、同時に暑苦しい。
湧きあがる勢いは言うなればその衣服と同じく赤色。
そう、彼は今真っ赤に燃え滾っている。
誰に言うわけでもなく大声を出し、自身を叱咤する。
たったそれだけのことでも己が全力を注げられる。
何故なら己には仲間から頼まれし使命がある。
その心意気はまさに忠義。頑なに強い忠義心そのもの。
彼こそが戦国の世を駆け抜ける一人の武将、真田幸村だ。
紛うことなき正真証明の戦国武将の一人。
残念ながらこの場ではあまり信じられてはいないだろうが。
「……しかし、くるるぎ殿達は上手くやっておられるだろうか」
ひとしきり叫び終わった後、幸村が声のトーンを若干落として言葉を紡ぐ。
幸村にとって自身が周りからどう思われているかは問題ではなかった。
もしくはそこまで考えが回っていないだけかもしれない。
彼は先程顔を会わせた、彼らの事を考えていたのだから。
「くるるぎ殿、でゅお殿、りょうぎ殿……無事に戻られることを不肖の身ながらこの幸村めが願っていましょうぞ!」
物干し竿を握った腕に力が籠る。
くるるぎ殿――枢木スザクとは互いに初めて出会った人間であり、交流はそれなりにある。
しかし、でゅお殿――デュオ・マックスウェルと名乗った黒ずくめの青年、
そしてりょうぎ殿――艶やかな袖姿の少女、両義式とは碌に会話をしていない。
デュオに至っては自分の不注意で正面衝突すらもしている。
あの場はなんとか許しをいただけたが、結局は己の不注意が招いた惨事である。
二度と繰り返しはしない。幸村は改めて決意し、脱線しかけた思考を戻す。
投下乙
小萌先生頑張った!よく頑張った!!!
無能力でも超能力都市の先生やってるだけはあった
能力に対する知識があるのと無いのじゃ大違いだもんね
色々と面倒だった学校をよくぞ書ききってくれました。
時間も合わせたしね。
スザクとデュオと式の実力は未だ幸村にはわかっていない。
自分と互角、それ以上の武を誇る者かもしれないしそうでもないかもしれない。
ただわかっている事は一つ。
彼らが何事もなく戻ってくることは絶対に言いきれない事だ。
全ての人間が同じ考えをもっているとは限らない。
むしろ思想や利害の不一致から争い合う方が多いだろう。
幸村が生を受け、武を振るっていた群雄割拠の戦国時代がいい例だ。
この場にも争いは生じるに違いない。
更には帝愛グループなるものがお膳立てをしている。
火種は各地で起こっているに違いない。
もしや今頃三人の内誰かが、ひょっとすれば三人とも――
そう考えれば気が気ではない。
今すぐにでも、助勢に馳せ参じたいと願う思いは激流のように渦巻いている。
だが、行けるわけもない。
今の自分はここの守備を命じられている。
自身の使命を蔑ろにしては元もこうもないだろう。
ほんの少しの間ならまだしも、彼らの正確な位置がわからなくては追いようがない。
たとえ彼らの身に危険が及んでいようとも、自分にはどうする事も出来ない。
わかっていてもその現実は幸村にとってはあまりにも歯がゆかった。
「こんな時佐助が居てくれば……!」
武田軍が誇る忍者、猿飛佐助の不在がなんとも嘆かわしい。
彼さえ居てくれれば、離れ離れになったスザク達の様子も常にわかるに違いない。
だが、配られた名簿なるものには佐助の名前はない。
それどころか勇猛果敢な武田軍の士も誰一人としていなかった。
この場に呼ばれた武田軍の者は真田幸村ただの一人。
スザク達と同盟を結んだとはいえ、未だ知り合ってからあまりにも時間は少ない。
そう、言うなればまさに孤独。結局のところ己の武がこの場を生き抜くには肝となることだろう。
しかし、今の幸村はお世辞にも万全とはいえなかった。
使い慣れた槍は手元になく、物干し竿で代用しているのが現状だ。
これでは満足に戦場で戦うことは出来ない。
早急に自らの得物を手に入れる必要があるだろう。
やはり状況は芳しくない。
昂ぶらせていた幸村の感情も次第に萎れていく――
ただし、それは一瞬の事だった。
「――いや、弱気になる道理はござらん。
道が険しいのであれば某が切り開かんのみ!
それにくるるぎ殿達だけではなく奥州の伊達殿も居られるのだ!
我らの力を一つに、さすれば阻む者が何者であれ仔細はなし!!」
逆境が一体どうしたものだろうか。
まるでそう言わんばかりの気迫が幸村にはあった。
何も完全に一人というわけでもない。
これは天下を分ける戦ではなく、下賤な理由の下に起きた戦場だ。
きっとあの男も憤っているだろう。
蒼の鎧を纏い六の太刀を振るう竜――“独眼竜”と呼ばれし武士、
伊達正宗も殺し合いには乗らず、自分と同じく帝愛グループの打破を狙っているに違いない。
ならば協力を申し出るチャンスはある。
正宗の武と己の武があれば、もはや向かうところ敵なし。
実際に槍と刀で斬り合った幸村にこそそれは確信出来た。
思わず胸の奥底が焼けるように熱くなる。
正宗との同盟。新たに生まれた使命が自身に活力をくれている。
たしかに幸村はそう感じていた。
「お館さま! この幸村必ず御役目を果たしましょうぞ!
武田軍の名に恥じぬよう、この戦場を全力で駆け抜けるのみ!
だからご覧くだされ、お館さま――」
故に幸村は宣言する。
今は居ない、あまりにも広すぎる背中が脳裏に浮かぶ。
己の君主でありまさに武人の中の武人。
その武は甲斐の虎と呼ばれる程に勇ましい。
男の名は武田信玄。幸村が命を賭けるに値するに相応しい御方。
彼の拳骨を貰うたびに目が覚める思いがした。
だが、此処には信玄公は呼ばれていない。
たとえ間違った道を己が歩もうとしても彼の言葉を聞く事は出来ない。
ならば――叫ぼうではないか。
支援
あの方を安心させるためにも、また己のためにも。
幸村はただ強くそう思う。
「おおおおおおおおおおおおやかたさまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
確かに自分は此処に居る。
真田源次郎幸村ここに在り――と。
我が身の健在さを君主に見せつけるかの如く、幸村は咆哮をあげた。
◇ ◇ ◇
入口の方で声が聞こえるのは気のせいだろうか。
ホームに腰を下ろし、そんな事を思うのがこの僕、阿良々木暦だ。
まあ、いつも以上に周囲の音に敏感になっているのもあると思う。
なにせ殺し合いだ。注意深くなるのは仕方ない。
今もどこか遠くから危ない奴が監視しているかもしれない。
こう、某イギリスを舞台にした、スパイ映画に出てくる組織の凄腕エージェントが、
それも殺しのライセンスを持っているような奴が狙っているかもしれないし。
だから無駄に喋らず、じっくりと耳を潜ませる僕の行動はわりといい線をいっていると思う。
などと我ながらちょっと自分を褒めてみるのだけども――
『おおおおおおおおおおおおやかたさまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!』
はいアウトー。僕のささやかな行為は結局意味がなかったわけだ畜生。
こうもあっさりとやられると逆に清々しいかもなぁ、と半ばヤケクソだ。
だけども安心した。聞こえてきた声の主は知っている人だったからだ。
今の声はまちがいない、真田幸村のものだろう。
まだあまり話してはいないけども悪い奴じゃない筈だ。
それよりも問題は彼の素性なのだが、ぶっちゃけ怪しいに限る。いや、ほんとに。
ここで言っておくけど何も僕は疑り深い人間ではないと思う。
世間一般で考えれば、割とお人好しの部類に入るんじゃないだろうか。
たとえば階段から落ちてきた同級生を受け止め、その後口の中にカッターナイフとホッチキスを手厚く突っ込まれても、
彼女の悩みに役立ちそうな人間を紹介したぐらいのお人好しさはある。
まあ、これは僕の体質的な問題もちょっと関係はしているのだけども。
……別に自慢しているわけじゃない。要するにだ。
僕は疑心暗鬼の果てに、おはぎの中に針が入ってるような幻覚を見るほどには追い詰められてはいない。
だから極めて正常な判断の元、僕は真田を胡散臭いと正直考えている。
数学以外赤点常習犯の僕だが、真田幸村という名前ぐらい聞いたことはある。
たしか徳川家康とかそこらへんの人と同じぐらいの時代の人物だ。
これは一体どういうことなんだろう。
同姓同名、なんとも紛らわしい人だなぁという認識でいいのだろうか。
個人的にはそっちの方向でなんとか落ち着かせたい。本音だ。
だって本当の戦国武将がこの場に居るだなんてあまりにも馬鹿げている。
春休み前の僕ならきっと自信をもってそう考えたに違いない。
だが、僕は怪異と出会った。今までの常識を覆す世界を知ってしまった。
伝説の吸血鬼、おもし蟹などなど。だからこそ思う。
あんなものがあるなら、戦国武将の一人や二人紛れてもいいんじゃないか、と。
バカのバカによるバカのための考えね、とか罵られてしまいそうだが、つい考えてしまう自分が居る。
でも頭を疑われそうだなと思うのは確かだ。
だから誰かに相談するのはちょっと遠慮したいというのが微妙に情けなく、実に僕らしい。
色々と疑問はあるけども取り敢えず真田のことについては保留にしておこう。
絶えず失われていく脳細胞を無駄に使うのは勿体ない。
それに悪い奴でなければ僕にとってはオッケーだ。ぜんぜん問題はない。
だけど、“親方さま”って誰のことなんだろう。
真っ先に連想したのはトンカチをトントンカンカンしている大工さんだ。
案外悪くないような気がする。
真田は存在自体がいかにも体育会系ですってアピールしてる感じだ。
なによりも身体を動かすのが好きそうだし、体育大会とかでは活躍しそうなタイプだ(僕と違って)。
まあ、あんな胸がはだけた派手なジャケットは大工さんのイメージには合わないかもしれないけど。
まさかヴィジュアル系大工さんと名乗るわけにもいかないだろうしなぁ。
「――」
真田のことについて一しきり好き勝手に考えた後、僕は急に一種の緊張のようなものを覚えた。
厳密にいえば思いだしたとでも言えばいいんだろうか。
多分僕は無意識に真田のことを考えていたんだと思う。
気を紛らわすための格好の材料。真田には悪いけどそんな感じだ。
そう、実際に僕は出来ればこの場から逃げ出したいとも思っているのだから。
叫んでんじゃねぇぞ、幸村
(それにしても……)
そんな僕の横には一人の少女が座っている。
真っ白なシャツに青いロングスカート
端正な顔立ちに、流れるような金髪が実に様になっている。
まず美人の部類に入るだろう。
いや、年齢や身長を考えれば美少女の方がしっくりくる。
これは一種の芸術じゃないだろうか。
彼女のデザインを手がけた神様にはぜひ称賛と疑問を送ってやりたい。
同じ人間として生まれてきた僕とはエライ違いだなぁ、と。
彼女の名はセイバーというらしい。日本人には見えないけどもセイバーってのは偽名かなんだろうか。
どこからがファーストネームでどこまでがラストネームかわかりやしない。
まあ、セイバーの名前については置いておこう。
今はなぜ僕が逃げ出したいということについてだ。
別にセイバーが気にいらない奴だとは断じて思ってはいない。
簡単に言ってしまえばアレだ。
贅沢な悩み――そう思ってもらってもいい。
(き、気まずすぎるってもんじゃないぞ!)
もしこの場で一つ願いが叶うとしたら真っ先に僕は願うだろう。
僕は復旧したらしい電車がこのホームにやってくるまでの間、
この麗しき少女といい雰囲気とは言わずとも、話くらいは出来るような話術が欲しかった。
きっと話術以外にも色々と足りないだろうが、とにかくこの気まずい沈黙はどうにかしたい。
しかもセイバーの容姿は見ての通り非凡だ。
そこに美少女を横にした、実に青春染みた緊張も加わって尚更にたちが悪い。
そんなセイバーはさっきから何か考えているらしくずっと無言だ。
何か気になることでもあるのかい?、とセイバーに聞けばいいのだろうけど、どうにも聞きにくい。
これが八九寺なら気兼ねなく会話に転がれそうなんだけども。
ああ、こんな事言ったらロリコンとか思われるかもしれないけど、八九寺の方がやりやすかっただろうなぁ!
話を戻そう。ふと思ったことがある。
やはりセイバーより真田の方がましだったかもしれない、と。
セイバーとはまた違った意味でめんどうかもしれないが、この不気味な沈黙よりかはいいだろう。
いや、もっと欲を言えば真田を含めて三人でというのはどうだろう。
真田には入口の門番を頼んだため、結局は無理な相談だが三人であれば多分緊張も和らぐ。
一対一。どこかの不良さん達が好みそうなタイマンってやつは、双方に無駄に緊張を与えてくれる。
何をするにも自分次第。全てを一人で決めるってのはどんな時でも難しいもんだ。
二人以上なら互いの顔色を窺ったり、秘密なアイコンタクトを決めたりしてどうにかなりそうな気もする。
ちょっと暴論な気もするけど、こんな事を考えるほどに僕は気まずい思いをしているのだから仕方ない。
電車が運行休止になっているのが恨めしい。
運行に何事もなければこんな思いはしなくてすんだだろうに。
段々と汗が増えてきた。たぶん今の僕は気を紛らわすためにせわしなく視線が宙を泳いでいることだろう。
ああ、今すぐにでも真田あたりが入口から駆けだして来たりしないかなぁ。
そうすればこの重苦しい空気も少しは変わりそうなんだけども――
事実は小説よりも奇なりとはよくいったもんだ、と僕はその時強く思った。
「ありゃりゃぎ殿! せいばあ殿! 真に申し訳ない! この幸村、失念していたことがあったでござる!!」
すごいよ真田!
今のおまえは少なくとも、僕の望む空気をこれでもかってくらいによんでるさ!
この際、僕の名前を上手く言えてない事には目を瞑るけども。
◇ ◇ ◇
「どうしたのですか、幸村。
あなたには入口の守護を頼んだハズですが――」
「どうしても今聞いてもらいたいのでござる!!」
立ちあがったセイバーに幸村は喰ってかかる。
その態度にセイバーは少しムッとする。
幸村は己の仕事を半ば放棄して此処にやってきたようなものだ。
逆に自分がこんな風に言われる筋合いはないだろう。
しかし、持ち前の鈍感さもあって幸村には特に気にした様子はない。
「えーっと……それで聞いてもらいたいことって?」
「はっ! 先ずはこれをご覧くだされ!!」
セイバーの代わりに今度は阿良々木が聞き、幸村がデイバックからあるものを取り出す。
それは阿良々木とセイバーにも見覚えがあった。
64名の参加者に配られた一冊の名簿を取り出し、幸村はページを開いていく。
目当てのページをみつけたのだろう。
己の指を向けながら幸村は阿良々木とセイバーに名簿を見せる。
「真っ先に言うべきでござった!この明智光秀という男は真の外道、存分に気をつけられよ!」
「ッ! あの男はあなたの知り合いだったのですか?」
「なんと!セイバー殿は既にあやつと出会ったのでござるか! ならば話ははやい、この男は先の戦で――」
幸村は話し出す。
長篠の戦いで明智光秀が行った奸計を、
自身の同士であるはずの浅井長政を犠牲にした、その非道さを。
以前に光秀と遭遇したセイバーの表情は明らかに曇っていく。
(明智光秀……しくじりました。やはりあの場で仕留めきれなかったのは私の失敗です……!)
光秀は気に入らない男だ。
黄金のサーヴァントとはまた違った嫌悪感を匂わせてくれる。
その男の以前からの振る舞いを聞き、セイバーが怒りを覚えないわけもない。
これでこの場で誰か一人でもその手に掛けていたりでもしていたら――
許せるはずもない。今度こそ自らの振るう剣の錆にさせてみせよう。
幸村の話す内容に耳を傾けながら、セイバーは固く決意する。
有益な情報に感謝し、セイバーは幸村に礼を告げようとするが彼の話はまだ終わっていなかった。
「それともう一人。実はこちらの方が重要でござる……!」
まるで場を支配する空気に重みが増したかのようだ。。
幸村の言い方からして本当に重要なことなのだろう。
阿良々木、そして特にセイバーに緊張が走る。
光秀ですらも厄介な相手だったのだ。
重要、ということは恐らく光秀以上の人物がまだ居るということだろう。
そして幸村がここぞとばかりに口を開く。
「第六天魔王織田信長……まさに魔王と呼ぶにふさわしい、恐るべき男なり!!」
セイバーの予想に答えるかのように、幸村の指は一つの名前を指していた。
◇ ◇ ◇
僕、阿良々木暦は真田の話にまたも驚かされる形となった。
明智光秀の時点でこれは雲行きが怪しいぞとは思ったんだ。。
でも、まさかあの織田信長の名前までも飛び出てくるとはなぁ。
たしかに戦場ヶ原達の名前を確認した時に見かけたかもしれない。
その時は考えないようにしていたのかわからないがとにかく、今こうして真田のせいではっきりと認識させられた。
明智光秀、そして織田信長と名乗る人物がこの場には居るらしいことを。
もう全員同姓同名でいいんじゃないだろうか。既に僕は白旗を上げている。
仮に真田を含め本当に歴史上の人物だとしよう。
何故彼らとふつーの高校生でしかない僕が顔を合わせることが出来るのか。
それに真田達が、本当に社会の教科書に載っているような人物かなんてもわかりやしない。
だって結局僕らは記録に残った絵でしか彼らを見たことがないんだしな。
まあ、それを言えばこのライダースジャケットを羽織った真田は、絶対にあの真田幸村じゃないと断定は出来ないのだけども。
取り敢えず何が言いたいかというと簡単だ。
こんな脳細胞労働は僕の本分じゃないし、忍野のような奴に任せればいいんだ!
だからこの話はおしまいにしよう。
阿良々木暦は考えるのをやめた――それでいいよもう。
話を変えよう。
今度は真田のことではなく真田の話してくれた内容についてだ。
真田の話ぶりから明智光秀はかなりヤバイやつに思える。
でもそれ以上にヤバそうな織田信長の方だ。
真田の顔が真剣過ぎて嘘は言ってないように見える。
よほどヤバイやつなんだろう。
右腕に銃を持って左腕に剣をもっているらしいけど……なんかすげー怖いんですけども。
第六天魔王だなんて大層な修飾語もどうにも笑えない。
とにかく織田信長がやってこないことを願っておこう。
もちろん八九寺や神原、それに戦場ヶ原の方にもだ。
意味のあるかどうかわからない祈りを終えた丁度その頃、再び声がした。
「詳しく聞かせてください、その織田信長なる人物について」
セイバーの凛とした声が真田に向けられる。
何かを思いつめたようなその顔は実に綺麗で、同時に僕にはどこか危なげなものに見えた。
◇ ◇ ◇
(織田信長……たしかにあの男が口にしていた名前ですね)
少し驚いたような顔しながらも説明を続けた幸村の話が終わり、セイバーは胸中で感想を洩らす。
織田信長という名前をセイバーは知らない。
だが、幸村が名を口にした際、セイバーは織田信長に強い興味を惹かれた。
おそらく魔王という名が気になったのだろう。
自分と同じく、“王”を冠する者が居ることはセイバーにとって少なからず衝撃的だった。
選定の剣を引き、女としての自分を捨て、一国の王として戦い抜いた己の軌跡。
結局は護るべきはずだった家臣の裏切りで終わった人生。
それをやり直すためにも、自分よりも理想的な王を見つけるためにも、
セイバーはサーヴァントとなり、今も万物を叶えると謳われる聖杯を求めている。
(だけども違う。彼は真の王ではない……それだけは確かです。
義弟の命すらも容易に切り捨てる行為は、あまりにも道を外れている。
ならば答えは決まっている)
理想の王には成れなかったセイバーが言うことではないかもしれない。
だが、セイバーは思わずにはいられなかった。
幸村の話から聞き知った織田信長の悪評、そして魔王と畏怖される所以。
その一つ一つが、また光秀のような男を家臣として用いているのがセイバーには理解出来なかった。
むしろ憤りのようなものすらも覚えた。
その非道の数々を考えれば魔王と名乗るのも頷ける。
しかし、それを見過ごせるかどうかと訊かれれば頷くわけにはいかない。
たとえ生まれた場所は違え、治める国は違っていても王を名乗る者の非道は許せない。
セイバーはただ純粋にそう強く思った。
「あの……どうなされた、せいばあ殿? 某の話になにかわからぬことでもあったであろうか」
「いえ、そんなことはありません。それよりも、幸村――」
「はっ?」
まるで疑問符を張り付けた顔を浮かべる幸村の言葉にセイバーは答える。
何を言うのかは決まっている。
応えるのだ――自分の想いの下に、自分の言葉で。
たとえ己の宝具が、“約束された勝利の剣”が今はなかろうとも関係ない。
暴虐の限りを尽くす王を、同じ王として認めたくはないのだから――
「討ちましょう。明智光秀、そして織田信長を私たちで必ず……!」
「も、もちろんでござる! この真田源次郎幸村、この身を燃やす覚悟で全力を尽くしましょうぞ!!」
セイバーは幸村と誓いを結ぶ。
そして差し出されたセイバーの手を幸村は力強く握り返す。
しかし、女性との接触が著しく少ないため、外見が同世代だろうとも幸村は緊張を隠せない。
つい力みすぎてしまうがセイバーに気にした様子はない。
むしろ幸村に応えるように更に力を強める。
(不思議でござる。先程よりも、せいばあ殿がずっと大きな御方に見えるのはいったい……!)
幸村の脳裏に浮かんだ影は己の主君、武田信玄の姿。
似ている。何故だかセイバーはどこかお館様と似ているのではないかと幸村は思う。
人の上に立つ人間――忠義を尽くすに値する人柄。
いまだセイバーのことについてはよく知らない。
もしかすれば自分の見当違いかもしれないが、今は自分も応えよう。
差し向けられた、一見すれば華奢な一本の腕に、
いいようのない力強さを伴った彼女の腕に、ただ己の腕をもってして。
◇ ◇ ◇
なんだか一見落着のようだ。
ほっと一息つくぐらいしか出来ないのが妙な疎外感を感じる。
因みに僕が会話に全く参加していないように見えるけども実際はそうじゃない。
ちゃんと一言は発言したのを忘れないでほしい。
自分でも忘れてしまいそうなぐらい少しってのが傷だけども。
色々あったけどもいい時間潰しになったとは思う。
セイバーと真田も前よりかは打ち解けたような気がするし。
真田の話からすると伊達正宗って人と本多忠勝って人も良い人らしい。
伊達正宗はこれまた聞いたことはあるけど、あいにく本多忠勝は記憶にはない。
まあ、羽川や戦場ヶ原は知ってるんだろうけどさ。この成績優良者どもめ。
あとは電車の運行再会を待って、皆と合流すればいい話だ。
そういえば今、時間は――思わず僕は目を疑った。
時計が示す時刻はほぼ午前六時。見間違いじゃない。
えーっと、ということは俗に言う放送の時間ってやつ?
誰に訊くわけでもなく、僕は一人疑問を漏らして――
そして放送が始まろうとしていた。
【D-6/駅構内/一日目/早朝(放送直前)】
【阿良々木暦@化物語】
[状態]:疲労(小)
[服装]:直江津高校男子制服
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ギー太@けいおん!、エトペン@咲-Saki-、ゲコ太のストラップ@とある魔術の禁書目録、
スコップ@現実(会場調達) 竹箒@現実(会場調達) 、トラウィスカルパンテクウトリの槍@とある魔術の禁書目録、
スクール水着@化物語
[思考] 誰も殺させないし殺さないでゲームから脱出。
基本:知り合いと合流、保護する。
1:駅で待機。デュオたちの帰りを待つ。誰かが来るようなら、共に行動するよう呼びかける。
2:戦場ヶ原、八九寺、神原と合流したい。他にも知り合いがいるならそれも探す。
3:憂の姉を見つけたら、憂の下に連れて行く。
4:……死んだあの子の言っていた「家族」も出来れば助けてあげたい。
5:支給品をそれぞれ持ち主(もしくはその関係者)に会えれば渡す。
[備考]
※アニメ最終回(12話)終了後よりの参戦です。
※回復力は制限されていませんが、時間経過により低下します。
【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[服装]:普段着(白のシャツに青いロングスカート)
[装備]:七天七刀@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(未確認)
[思考]
基本:人々を守る。
1:上記の『望み』を実行する傍ら、自分のなすべきことを一から考え直す。
2:駅を訪れる人物を見定める。危険人物が乗り込んでくるようなら、率先して対処。
3:できればプリシラと合流したい。
4:士朗ともう一度話がしたい。
5:明智光秀、織田信長の両名を倒す。
[備考]
※参戦時期はアニメ20話途中、士郎との喧嘩直後から。
【真田幸村@戦国BASARA】
[状態]:健康、右手に軽い打撲(治療済み)
[服装]:普段通りの格好(六文銭の家紋が入った赤いライダースジャケット、具足、赤いハチマキ、首に六文銭)
[装備]:物干し竿(ステンレス製)×2@現実
[道具]:基本支給品一式(救急セットの包帯を少量消費)、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]
基本:『ばとるろわいある』なるもの、某は承服できぬ!
1:武田信玄のことは何があろうと守る。
2:『敵のあじと』に乗り込む……ためにも、今は我慢。デュオと式、スザクの帰りを待つ。
2:怪我をしている伊達政宗、名簿に記載されていない参加者の中にいるかもしれない知り合い、 ルルーシュとC.C.を捜す。
2:主催を倒し、人質を救い出す。
2:これは戦ではないので、生きる為の自衛はするが、自分から参加者に戦いを挑むことはしない。
2:争いを望まない者は守る。
2:織田信長と明智光秀は倒す。
2:あらあら殿とせいばあ殿の御身は、某が守り通す!
2:『えき』に近づく輩は、この真田幸村が成敗いたす!
2:明智光秀、織田信長の両名を倒す。
※武田信玄が最優先であること以外、本人には優先順位をつけるという発想がありません。矛盾もありますが気づいていません。
[備考]
※長篠の戦い後〜武田信玄が明智光秀に討たれる前の時期から参戦。
※MAPに載っている知らない施設のうち、スザクにわかる施設に関しては教えてもらいました。
※スザクとルルーシュのことを、自分と武田信玄のような主従関係だと勝手に思い込んでいます
投下終了しました。
支援どうもです。
なにかあればお願いします。
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乙です。幸村いいキャラしてるなwww
これで未投下は一つ。週末には放送行けるな
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┗━┓┃ ┏━┛┗┓┃┃ ┗━━━┛ /. \ :::',`゙tッィi≠彳ψ゙ヽ ∨_,,.-‐''". ┃┃┃┃
┃┃ ┗━┓┏┛┃┃ ┏━━━┓ ムィ , \::::::}:: ゙"/¨゙.. ゙ー ´ ゙ヽ :}マ:::::: ┃┃┃┃
┃┃ ┏━┛┗┓┃┃ ┗━━┓┃┏━━━━━━━ :// : : :::::::::| イ へ,::. ./.! :マ :::::: : ━┓ ┃┃┃┃
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>>491,
>>493 お前らwww
ありゃりゃぎ君の独白がいいね
そしてせいばあ殿がだんだんと対主催ルートに入っているのが
何よりだぜ
投下乙
あららぎ君がかなり空気www
幸村とセイバーの同盟あたりも良かったです
・・・しかし光秀、信長両名の危険性は前回のSSの時にすでに進言されてたようなんですけど・・・
今回のSSはまるで初めて話しているような雰囲気がします
なんとかできないものでしょうか
幸村故致し方無し
投下乙です
これからのふくらみを期待させるいい繋ぎの話でした
幸村いいキャラしてるなー
セイバーとの誓いはよかった
後、ありゃりゃ木さん、空気化してませんかw
>>495 まあ幸村だし
>>497 幸村だから仕方ないで済まして良い問題じゃないと思うのだが・・・
前回のSSで光秀、信長の危険性が進言されているのにも関わらず、セイバーと阿良々木はまるで初めてその話を聞いたみたいな感じになってる。
セイバーが幸村と光秀が知り合いだということを知らなかったことがそれを裏付けているじゃないか。
少なくとも微修正は必要だと思うわけだが・・・
感想どうもです。
>>498 ご指摘どうもです。
確かに矛盾ですね。
では初めて話すのではなく改めてセイバーとあららぎさんに話した……という感じに修正したいと思います。
近日中には仮投下スレに修正内容を落とす予定ですので。
>>499 あんまり親しくない人にさっきもその話聞いたよ…
なんて言ったら空気悪くなるだろう
付き合い的に考えて
優しさです
投下乙
幸村、信玄がいないからといって思いっきり叫んでいるなw
でもこの面子だと阿良々木君ホント大変そうだな
修正頑張ってください
そういえば幸村の思考が2ばっかなのってわざとなのかな。前のSSでも2ばっかだったから気になって
言われるまで気付かなかったわwww
これは幸村だから仕方ないとしか言いようがないな・・・
三から先は数えられないからな
>>504 >※武田信玄が最優先であること以外、本人には優先順位をつけるという発想がありません。矛盾もありますが気づいていません。
これでしょ。で、
>2:織田信長と明智光秀は倒す。
>2:あらあら殿とせいばあ殿の御身は、某が守り通す!
>2:『えき』に近づく輩は、この真田幸村が成敗いたす!
>2:明智光秀、織田信長の両名を倒す。
かぶっとるwさすが幸村w
幸村だし、何もおかしい点はないな
>>507 被ってるだって……も、もちろんわざとですよ!
断じてうっかり見落としてたわけでは(ry
修正文をしたらばの仮投下スレに投下しました。
でも、アレだけをまた投下するのもなんだかわかりにくいんじゃないかなーと。
というわけでwikiに収録された際に修正部分を差し替えようと思ってますがよろしいでしょうか?
右側マーダーいなさすぎ
左下マーダー固まり過ぎ
左上人いなさすぎ
戦力配置が極端すぎる
511 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 19:54:35 ID:mE6q3tp3
目的や理由もなく左上の山道登る人いないからな
右側は誤解で戦闘とか起きるかも
左下はそろそろ適度に分散するだろう
まだ始まったばかりだ
焦ることはない
>>510 そこで第一放送ですよ
どうせアニロワなんだし、なんかご褒美つければいいんじゃねーの
喜べ屑共!火口に武器が隠してあるぞふははー
とか
放送でゼクスは確実に方針変わるしな
筆頭とレイはどうなるか
放送ごとに全参加者を島の何処かにワープさせれば出会いももっと増える
ギャンブル船周辺は衣に恨みを持ってる利根川・その利根川に恨みを持ってるカイジ・梓の死を知る澪・すぐ近くにいる光秀と爆弾はそれなりにあるな
政庁・公園周辺はマーダーがサーシェスだけで他は基本対主催だし波乱は少なそうだが…
宇宙開発局はジョーカー荒耶、マーダー憂に煽り屋五飛がいるが、まともな対主催が上条さんしかいない…ってか上条さん包囲網かこれw
工業地帯の辺りはバサカ、ライダー、レイ、トレーズ、キャスターと危険人物に事欠かないなー。孤立してる美穂子が超やばいw
船井組も放送後にモモがどうなるかわからんし、なにげに洗脳状態の律もすぐ隣のエリアにいるんだが…俺とホンダムだが近くにいるからどうなるやら
西側学校周辺、小萌先生&海原ァ!は東のふじのん西のユフィ北のファサリナ南の信長と大変な事になっておられるぞー!
まぁ海原は実際日本人じゃないからユフィとは組める可能性もあるが…ファサリナもヒイロがいるからまだわからないか
律実はまだ洗脳されてないけどなー。時間の問題だと思うけど。
というか今はキャス子さんたちは神様に祈る場所にいるんだぜ。
◆.ZMq6lbsjI氏、『煉獄の炎』に関して、wiki収録の際に分割が必要になると思われるので分割点の指示をお願いいたします
>>517 いくつか修正するらしいけど収録していいのかな
あと土曜日までネットに接続できないっぽい
質問スレに土曜までに疑問点を集めて、収録後修正が可能な範囲なら修正してしまってかまわんだろう
修正するにしてもパッと見SSの展開自体に大きな影響を与えそうな修正はなさそうだし
ちょっと連絡
したらば避難所スレで放送どうするかが話題になってるんで、意見ある人は避難所スレで
>>519 誤字訂正
×修正可能な範囲なら修正してしまって
○修正可能な範囲なら収録してしまって
携帯なのでコピペできないのですが、分割は多分三つになると思うので一つ目が
>>292まで、二つめは
>>320まででお願いします。
疑問点や誤字などの修正とアーニャの人格の追加説明など変更箇所が散見されるので、wiki収録していただければ非常に助かります
と、鳥忘れ
>>509 修正されたものを拝見させてもらいました。
修正前とたいして変わりないのでwiki収録後でも良いと思います。
誰も返事をしてなかったので返事させてもらいました。・・・黙認てやつかも知れませんが・・・
>>509 それで問題ないと思います
修正乙でした
連絡事項
したらばの「ルールに関する議論スレ」で、下記のルールが決定しましたので報告させていただきます。
何か意見があれば、「ルールに関する議論スレ(
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1258188493/)」までお願いします。
【修正要求・議論に関するルール】
修正要求に関する発議・議論・修正稿の投下は下記の手順で行ってください
@SSの問題点・矛盾点に対する指摘を行い、修正が必要ではないかという発議を行う
・この発議は誰でも自由に行えます
・発議を行う際は具体的に根拠を提示し、なるべく対案を出してください(対案に関しては義務ではありません)
・発議した際は、本スレに報告し議論スレへの誘導を行ってください
A@で行われた提案に対して議論スレにて話し合い、本当に修正が必要な場合は要点を纏めた修正要求を作成する
・発議が行われてから結論を出すまで、議論に最低24時間かけ、5人以上の同意を得られた内容を正式な決定事項・修正要求とする
(短時間・少人数での採決の強行防止、修正点に関する見落としがないかの確認を徹底するため)
・議論の結論は本スレに報告を行ってください(修正なしで通しの場合はその旨を、修正要求を行う場合はその内容を本スレに告知)
・正式な修正要求を出す際は対案を用意してください
ただし、あくまでも『案』であり、問題点が解消されるのであれば修正内容が対案通りでなくてもいいものとします
−−−ここからは、修正要求が出された場合−−−
B書き手氏は、議論スレで作成された正式な修正要求に対してのみ対応してください
・修正要求が不当な内容だと感じられた場合は、この段階で反論を行ってください
・修正要求がなされた時点で、修正を行うかどうかの意思表明を行ってください
・議論中の修正稿投下は控えてください(修正回数が増えてしまうことを防ぐため)
C修正稿は仮投下スレに投下し、仮投下された修正稿に対し再度審議を行う
・修正稿を仮投下スレに投下した際は本スレに報告し、議論スレへの誘導を行ってください
・通しか再修正かの議論は、Aの場合と同様、最低24時間かけ、5人以上の同意を得られた内容を正式な決定事項とする
・通しに決定した場合は本スレへ本投下を行い、この時点で予約解禁とする
※修正稿を通すかどうかの判断基準はあくまでも「修正要求で指摘された問題点が解決されているかどうか」に限定します
修正案通りでなくとも、問題点が解消されていれば通しとします
また、正式な修正要求を出した後に問題点がみつかった場合でも、修正要求に応じる内容であれば通しとします
−−−ここからは、再修正が必要な場合−−−
D修正要求で指摘した問題点が改善されていない場合、修正したことによって修正前にはなかった問題点が発生した場合は再修正要求を行えます
・再修正要求の方法・議論に関するルールはAの場合と同じとします
・ひとつのSSに対する再修正要求は二度まで(修正要求→再修正要求→再々修正要求まで)とします
再々修正要求でできた修正稿に関しては、そのまま破棄か通しかの二択で審議してください
下記は、修正要求・再修正要求・再々修正要求に関する共通ルールとなります
※修正要求がなされた場合の修正稿の締切等は下記の通りとします
・書き手氏側から反論が出た場合→議論スレにて議論
・書き手氏が修正を行う場合→修正要求から72時間を修正稿の期限とする
・書き手氏からの反応がない→修正要求から48時間経っても反応が無い場合は強制破棄
※修正要求の議論は、長期化を防ぐため最大で発議から72時間とし、72時間経過時点で結論が出ない場合は下記の通りとします
○何らかの修正が必要であるとされているが修正要求の内容で意見が纏まらないor対案が出せない場合
議論制限時間を越えた時点で「議論のまとめ(決定事項ではなく議論中に出た意見のまとめ)」を作成。
書き手氏は「議論まとめ」を見て修正が必要な点を判断、修正を行う。
○修正か通しか、破棄か通しかで意見が割れている場合
・最初に投下されたSSに対して修正が必要かどうかで意見が割れる場合→通し
・修正要求に応じて出された修正稿で、修正前には無かった新たな問題点に関して意見が割れる場合→通し
・修正要求に応じて出された修正稿で、修正要求で挙げた点が修正されているか・再修正が必要かで意見が割れる場合→修正要求
・再々修正要求によって出された修正稿に対して通しか破棄かで意見が割れる場合→通し
【予約に関するルール(現行ルールに追加)】
・荒らし防止の観点から、まったく予約無しでの投下は禁止とします(予約後即投下はOKです)。
・予約の中に含まないキャラをSS内に登場させることはルール違反とはなりません(予約したキャラ+予約していないキャラでの投下はOKです)。
ただし、予約を行わないで作品に登場させる事ができるのは、その作品の投下開始時に予約が可能なキャラのみとなります。
以上です。
現在のスタンスってこんな感じかしらと自分の主観でまとめ
対主催・15人
ヒイロ、デュオ、政宗、幸村、忠勝、上条、美琴、黒子、一方通行、海原、士郎、セイバー、スザク、刹那、グラハム
一般人対主催・7人
唯、衣、小萌、カイジ、阿良々木、真宵、駿河
情緒不安定・4人
澪、紬、律、美穂子
不明・4人
ゼクス、式、ヴァン、C.C.
危険人物・12人
桃子、五飛、アーチャー、黒桐、レイ、ファサリナ、利根川、船井、ルルーシュ、ユフィ、アーニャ、ひたぎ
マーダー(一般人)・2人
憂、トレーズ
マーダー(超人)・8人
信長、光秀、バーサーカー、ライダー、キャスター、藤乃、荒耶、サーシェス
放送後に危なそうなのは梓の死を知った澪、リリーナの死を知ったゼクス、カギ爪の死を知ったレイとファサリナ、かじゅの死を知ったモモか
放送に影響されそうなキャラ多いなー
けいおん勢不安定過ぎワロタ
ヴァン、投下します
ありゃりゃりゃ木さんはああ見えて一般人枠じゃない
でなければ憂ちゃんに刺されて既にピンピンしてるわけなかろう
士郎さんの聖剣の鞘の回復力と、アララギさんの吸血鬼の回復力、C.C.の制限付き回復力は、
どの効果が一番大きいんだろう
びちゃびちゃ、からん。
ここはF-1エリア中央部。瓦礫の山に座り込んでいた男が空になった瓶を投げ捨てる。
男の持っている徳用から揚げ弁当は醤油にソースに塩胡椒、加えてマヨネーズからケチャップ、それにタバスコ、ドレッシングなど、
おそよ家庭に存在するだろうありとあらゆる調味料の一切合財をぶちこまれ原型をほとんど留めていない。
弁当に調味料がかかっているのか、はたまた調味料の中に弁当が浮いているのか、というかそもそもこれは食い物なのか、それすらも判別は不可能だ。
しかしそのおよそ人の食べるものとは思えないような虹色マーブル弁当を男は何の躊躇も無く口元へ運ぶ。
甘味、酸味、塩味、苦味、うま味に加えてとろみやら辛味やらが互いの足を引っ張りまくりながら好き勝手に奏でるシンフォニーが口いっぱいに広がり、文字通り脳天を直撃する味を演出する。
それでも男は手を止めない。
一口、二口、淀みなく動き続ける箸はその食物にあるまじき色をしたナニカを確実に男の口へと運び込み、繰り返される咀嚼は男がこのカオス料理を間違い無く味わっていることを表していた。
とはいえ、男がもし人並みの味覚を持っているのならこのような惨状にはならなかったのだろう。
男はとある事情により味覚のほとんどを失っている。故に味が濃い=ウマい、と解釈している節があるのだ。
もちろん並大抵の濃い味付け程度では男の味覚を納得させることはできない。この超ド級の味オンチを満足させたくば、それこそこの世のものとは思えない味でなければならない。
当然そんなキチガイ料理を作る馬鹿はいないので、男は既に完成された料理に手を加えることで自分に合う料理を作る必要がある。
だがそれは、料理の味を無視してひたすら調味料をぶちこみ続けるという調理人の創意工夫を粉砕し、料理の尊厳を踏みにじるという許し難い暴挙に他ならない。
男が料理に手を加えている様子の破壊力たるや、どこぞの弓兵が見れば泡を吹いてひっくり返るだろう。
事実、男の手によって変わり果てた自身の料理を見て失神した料理人は少なくない。
そしてそうした過程を経て完成したポイズンクッキングは実に男の好む味付けとなっており、ひとたびそれを食せばウマイだの辛いだの何かしら絶叫するのが通例となっているのだが・・・
「・・・・・・・・・」
途中立ち寄ったショッピングセンターで手に入れた大量の調味料、それをふんだんに使用した極彩の料理は(色んな意味で)天にも昇る味だった。
しかし男の機嫌が依然として悪いまま。その理由は男の視線が向けられている名簿。
そこには先ほど見た『カギ爪の男』だけではなく『レイ・ラングレン』『ファサリナ』といった、既にヴァンの中では死亡している人物の名前が書かれていた。
これがカギ爪だけならば、まぁカギ爪を付けた別人だという解釈も可能だろう。しかしレイやファサリナは説明のしようが無い。
故に男は死者が蘇生したという現実を嫌がおうにも受け入れなければならなくなったのだ。
「チッ」
“死んだ者は生き返らない”、そんなことはバカでもわかる。いや、バカだからこそどうにもならないという事を本能で理解しているのだ。
仮にお前の恋人を生き返らせてやろう、などと男に言ったとしても、例え本当にそれが可能だとしても、決して男は首を縦には振らない。
なぜなら、それが男の人生だから。恋人の死という過去があって今の男があるのだ。それを奪うことはたとえ神であっても許されない。
だというのに、実際問題として名簿には死者の名前が記載されている。この事が男を混乱させた。
カギ爪の男は死んだ。彼が殺した。だというのにカギ爪の男は生き返ってしまった。では彼はどうするべきか?
死者は生き返らないという当然と、死者が生き返っているという現実の間で揺さ振られ、男は今何をするべきなのかを完全に見失っていた。
「一体どうなってやがる・・・・・・」
男が今現在行っている行為。それは食事ではなく現実からの逃避。要するにヤケ食いだ。
何をすればいいのか、何をするべきなのか。思考が同じ部分をぐるぐる回り、何もかもがごちゃごちゃだ。
その様子は男が今手にしている弁当にそっくりで、どうしようもないほどに手の付けようが無かった。
「・・・・・・不味い」
わからない。それが男の出した結論だ。
それでも男がゲームの参加者であることに変わりはない。殺し、殺されなければならない。それはこの会場のどこかで生きているらしいカギ爪も同じ。
仮にカギ爪が男以外の誰かに殺されてしまったら、男はどうするのが正しいのだろうか。
復讐の対象を横取りされたことに憤るべきだろうか。それとも自分の復讐は既に終わっているのだと笑うべきだろうか。
それもわからない。わからないのだ。目的無く目的無く、男はひたすらに美食を貪り続ける。
男は新たな調味料を加えようと調味料の詰まったデイバックに手を突っ込み――――
ふと、おかしな感触がしたことに気が付いた。
(革製品・・・・・・靴?)
男がショッピングセンターでかっぱらってきたものは大量の調味料と弁当、牛乳のみ。それ以外はデイバックに入れていない。
ということはこれは何だ? 男は真相を確かめるため一旦デイバックの口から手を抜く。
そしておもむろに立ち上がると、デイバックを逆さまにひっくり返して中身の検分を試みる。
ざらざらと調味料が落ちてくるが、その中に革製品らしきものは無い。ということは男の勘違いだろうか、と思ったその瞬間。
デイバックに入っていたにしてはあり得ない大きさと質量を持ったナニカがその口からずるりと滑り落ち、
「あ」
男がデイバックを取り落とす。
ごしゃりという危険な音と共に地面に落下したもの。それは調味料でも靴でもなく、紛れもない人間だった。
☆
デイバックの中から現れた人間は20代後半ほどの女性。ぱりっとした白のワイシャツに黒いタイトなズボン、縁の薄い眼鏡をかけている様子はさながら社長秘書と言ったところだろうか。
オレンジ色のコートを着ているということは外出中だったのかもしれない。
どういう経緯でデイバックに詰められていたのかは不明だが、一応の非は男にあるため素直に謝罪する。
「すいません。まさか中に人が入ってるとは思わなくて」
返答は無いが、それは当然のこと。
男の目の前にあるのは人形なのだから動くはずはない。
「その・・・大丈夫ですか?」
ちなみに人形は制作者である蒼崎橙子と寸分違わぬ外見をしている。
そのまま歩き出しても不自然な点はないほどに精巧な出来だが、所詮人形は人形。
起き上がることはおろか返事すら出来る道理はない。
もちろん男はそんなことは知らないため、見てくれだけのデクノボウ相手に律儀に謝り続けるハメになるのだった。
☆
「・・・・・・」
あれからどれほど時間が経っただろうか。
既に人形は放置されていた。人形だと男が気付いたからではなく、男が沈黙を肯定と勝手に解釈したためだ。
男はデイバックの内から更なる調味料を取り出し、じゃばじゃばと弁当に振りかける。
だが男は知らなかった。その調味料―――――みりんが、どういうものなのかを。
これがみりんではなく、みりん風調味料であるのなら何も問題は無かった。
みりん風調味料とは、みりんの味を化学物質や水飴で人工的に再現したものである。
手間がかからず大量生産できるため値段も安く、現在一般的に使われているものはこのみりん風調味料といっていい。
一見しただけでは本物との区別が付かないが、煮物などを作れば違いは歴然。
また、みりんは普通に飲んでも割とイケるが、みりん風調味料はとても飲めたものではない。
その差とはすなわち、アルコールが入っているか否か。
みりんとは本来スーパーなどではなく、酒屋で買うものなのだ。
つまり、みりんは酒なのだ。
「・・・・・・っ!?」
アルコール度数約14%、一昔前までは飲用酒として普通に親しまれていたみりん。
それを盛大にぶっかけたものを男は何の警戒も無しに口に放り込んでしまった。
ワインを一口飲んだだけでぶっ倒れるような者がそんなことをしてしまった日には、
「―――――――あ、」
どうなるかなど、わかりきっていた。
【F-1/エリア中央部/1日目/黎明】
【ヴァン@ガン×ソード】
[状態]:満腹、泥酔、睡眠中
[服装]:黒のタキシード、テンガロンハット
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード 、徳用弁当(残り1/5、調味料まみれ)
[道具]:基本支給品一式、 蒼崎橙子の人形@空の境界、調味料×大量、徳用弁当×7、1L入り紙パック牛乳×6
[思考]
基本:何をしたらいいのか分からないが、自分の感情の赴くまま行動する
1:zzz・・・
2:今は誰とも関わりたくない
3:向かってくる相手は倒す
4:主催とやらは気にくわない
[備考]
※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。
※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。
※死者が蘇生している可能性があることを確認しました。
※蒼崎橙子の人形@空の境界を生きている人間だと思っています。
【蒼崎橙子の人形@空の境界】
最高位の人形師といわれる蒼崎橙子の作品。
製作者の蒼崎橙子と外観はそっくりだが・・・?
投下終了。支援ありがとうございました
投下乙です
見た目はとんでもないのにそれを平然と食べるヴァン、あいつ以外誰が食べれるんだろう
そして酔っぱらうなwww
投下乙です
橙子さんの人形キターーー!!
果たして目を覚ますことはあるのだろうか・・・
投下乙です。
酔っ払って等身大お人形かかえた危ないタキシードの明日はどっちだ。
つか放送聞けw
つづいてアーチャー、サーシェス、C.C.、ビリビリ投下します。
空は透き通るようにして、まさしく澄み渡るといった表現が相応しい。
夜から朝へと色を変えつつあるその下で無人の市街地が赤に染まろうとしている。
そこに存在する二人の赤によって、だ。
燃え盛る赤。アリー・アル・サーシェス。
溶岩のように煮立つ赤。アーチャー。
赤い太陽の朝日。
サーシェスの炎を思わせるような赤毛。
アーチャーの血で染まったかのような紅の外套。
そして鉄火がもたらす流血の予感すらも同じ色。
さらに二人は赤い激情をその心から解き放ち、向かい合う。
その表情。
獣の笑みが見せ付ける、歓喜とない交ぜになったサーシェスのそれ。
鋼鉄のように重く圧し掛かる視線がぶつけるアーチャーのそれ。
その感情の名は殺意という。
人を殺せば血が流れるゆえに、その発起となる感情に色があるのならば、やはりそれは赤だろう。
サーシェスの手には戦国最強を屠りしガトリングガンと魔王のショットガン。
アーチャーの手には無限の双剣、干将・莫耶。
あたりは静かだ。
ビルの谷間を掠める風の音が微かに聞こえるだけ。
対峙する二人の間でのみぶつかり合う圧力が、大気を軋ませているのはおそらく錯覚。
いや本当に錯覚なのか。
そのうちに軋みは増大し、そして空間を砕き割ってしまうかのように思える。
きっとその瞬間に赤が弾ける。
アーチャーが。
サーシェスが。
朝日の色に染まった大気が。
二人の殺意が。
結果として流れる鮮血が。
やがてちゃきり、という金属音が静寂の中で響いた。
それはどちらの持つ鋼のものか。
サーシェスか。
アーチャーか。
もしかしたら両方同時か。
戦争屋の口元が歪み、弓兵は眦を決する。
それが合図だ。
一気に染まっていく。
朝日に染まる。
戦意に染まる。
血に染まる。
――赤に染まる。
◇ ◇ ◇
やべえ。
一目見ただけでわかったがこいつはやべえ。
猛獣みたいなやべえ匂いがぷんぷんしやがる。
だが解せねえ。
あのツラだ。あのツラは戦争屋ってより、かたっくるしい軍人みてえなツラだ。
しかも戦いってもんの楽しみをしらねえ。てか頭っから拒否してやがる。
険しいツラしやがってよぉ。時々いやがるんだよな、戦いが嫌いなくせに余計な責任感でしゃしゃり出てくる馬鹿がよ。
イラつくぜぇ、クルジスのガキみてえに無駄に思いつめやがって。
戦いを楽しめねえような奴が戦場に出てくんじゃねえよ、人には向き不向きってもんがあんだからよ。
事情ってもんがあるにせよ、せめて割り切ってこいよ。
クソの役にもたたねえ綺麗事ほざくために戦いに来てんのかテメェは!?
そうじゃねえだろ。
理屈抜きでよぉ、胸の中がガーってなるような燃え上がるアレだろ。
黙ってたっていつかはくたばるんだ。
命ひとつになんの意味がある。
皆殺しだ、皆殺しだ。
死のうが生きようが知ったこっちゃねえが、命を晒して真っ先に駆けるこのスリルはたまらねえ。
俺の目当ては名誉でも金でもねえのさ。
皆殺しだ、皆殺しだ。
どいつもこいつも綺麗事ほざこうがどうしようが戦争大好きで仕方ねえんだろうが。
戦争が嫌いってんなら、俺を否定するなら、ガンダムに乗って殺しにかかってくんじゃねえよクソッタレ。
おとなしく戦い捨てて平和に暮らしてろよ、俺がいつかテロでぶち殺しにこないよう祈りながらなぁ!
分かってんのかよ、クルジスのガキィ!
皆殺しだ、皆殺しだ。
くたばっても結構、生き残りゃあなお結構。
恩だの仇だのは知ったこっちゃねえが、そのほうが盛り上がるってんならやぶさかじゃねえ。
皆殺しだ、皆殺しだ。
気付かねえとでも思ってんのか、赤コートさんよお。
テメエみてえな戦いを楽しめねえ類の人種がなんでわざわざ出てきた?
正々堂々じゃなけりゃ嫌ですなんてキャラしてねーだろうが。
隠れて不意打ちでも狙撃でもすりゃあいいってのによお。
考えられるのは、その出てきた民家から俺の気を引き離したいってとこだ。
皆殺しだ、皆殺しだ。
それに分かるんだよ、命の気配ってやつが。
ゲリラなんてーのは民間人に化けてテロをかましてなんぼの商売だ。
ニコニコ笑った無害そうなガキやバーサンが差し出した花束に爆弾、なんてなぁ使い古された手段もいいとこ。
だからこっちも殺されねえように、ぜぇんぶ殺すのさ。
男も、女も、ガキも、老人も、妊婦も、逃げようが隠れていようが皆殺しだ。
非戦闘員なんて言い訳はとおらねえぜ。
どんなやつだって引き金をひく指一本があれば人を殺せるんだからな。
それが戦場だ。だから命の気配を本能で嗅ぎ取れなきゃこっちが死ぬ。
プンプン匂うぜぇ、そこにいるのがよ。
――皆殺しだ、皆殺しだぁ!!
支援
◇ ◇ ◇
連続する爆発音が大気に嵐を巻き起こした。
続いて鋭く澄み渡る音の連打は窓ガラスが爆ぜて砕ける音だ。
雨戸が撃ち抜かれ、撃ち砕かれて倒れゆく鈍い音。
ガトリングの炸裂音が響き渡り続ける中で家の壁が抉り取られ、崩されていく。
アーチャーが飛び込まんとする一歩手前、絶妙の間合いでサーシェスのガトリングガンは撃ち放たれた。
だがその銃器の狙いは相対する敵、すなわちこちらではない。
「――!?」
その後方。
一軒の民家。
轟々と大気を裂く音と共に、無数の弾丸が撃ち貫いた。
そこには二人の娘がいることをアーチャーは知っている。
ゆえに思わず振り向き、安否の確認を行ってしまう。
ただのガトリングの一斉射というにはあまりに凄まじい破壊力だ。
雨戸もガラス窓も撃ち砕かれ、あまつさえ壁までが崩れかけ、おそらく柱も何本か折られたのか、民家そのものがぎしぎしと傾いでいる。
アーチャーは現状を一目で把握、だがそれは敵に背を向けるのと同義だ。
地を蹴る音を背後から聞き取る。
振り向けばすでに敵は逃走を開始していた。
「ちっ!」
逃すわけには行かない。
先ほどの機先をとった勘といい、戦場の嗅覚じみたものは図抜けている。
それが相手に対するアーチャーの評価だった。
この手合いはこういったサバイバルで生き残ることにかけては滅法得意だ。
そいつが殺し合いに積極的に関わっているとなっては、逃せば大きな災いとなる確率が高い。
おまけに図らずも今ここで自らが立証してしまったとおり、衛宮士郎のような人間はもっとも苦手とするタイプだ。
このような男に殺されるわけにはいかない。
自分も、もう一人の自分も。
ゆえに目的の障害となる可能性は今ここで駆逐する――!
「逃さん!」
「けっ!」
敵は狭い路地へと飛び込んだ。
朝日は昇りきっておらず、まだ薄暗い細道を赤毛の男が駆け抜けていくのが見える。
追い足ではこちらが圧倒的に勝っている。
相手はサーヴァントクラスの身体能力には遠く及ばない。
そうとわかれば直ちに排除するべきだ。このまま――、
「おらよッ!」
追撃せんとするアーチャーにショットガンの弾幕が襲い掛かった。
狭い路地に入り込めば逃れるスペースはない。だがそれは人間であるならの話だ。
一蹴りの跳躍で、建物の二階天井ほどの高さまで飛び上がり、それを回避。
投下乙!
ヴァンw真ん中で寝たら危ないぞwww
>>507 見落としてたみたいだ。サンクス
僅かに赤い外套の裾を掠めただけだが、これも尋常の銃弾ではない。
喰らえばサーヴァントですらダメージを受ける。
そんな予感はおそらく間違ってはいまい。
「化物かよッ!?」
「消えてもらうぞ、戦争狂!」
飛び上がったままで干将・莫耶――二本の夫婦剣を投擲する。
アーチャーのサーヴァントの力によって放つそれはただの剣ではありえず、もはや砲弾と呼ぶのが相応しい威力を持つ。
朝焼けの大気を甲高い音を立てて切り裂き、そして獲物を真っ二つにすべく襲い掛かった。
「やべっ――」
相手はぎりぎりで一本目をかわした。
だがそのままの勢いで細い道路に突き刺さった剣は、アスファルトを砕き割って散弾のように跳ね上がらせる。
それに巻き込まれ、動きを封じられたところに二本目。
直撃。
しとめたか――と感じた直後、鋭い金属音が響き渡り、その確信を掻き消した。
「ぐぁああっ!!」
敵の鈍い悲鳴。
ダメージを与えたことに違いないが仕留めてはいない。
直撃なら声など出せるはずもなく体が吹き飛んで絶命しているはずだ。
一撃目で捲き起こった土煙の向こうに目を凝らすと、地に伏せてのた打ち回る赤毛の男の姿があった。
手足に欠損はなく、胴体が千切れてもいない。
だがそのそばには銃身の半ばがほぼ直角にへし折れたショットガンが転がっていた。
「その銃を盾にしたのか? しかし、そんなもので私の一撃を受け止められるとは解せん。
何かの細工がしてあるのか……まあ、どちらにしろ貴様はここで終わりだ」
「くそった……れ……」
注意深く淡々と、アーチャーは地に蹲る敵に向かって歩みを進める。
これでとどめを刺せば終わりだ。
戦いは決着する。
その時、駆け抜けてきた路地の向こう側――御坂たちがいる方角から、何かが崩れ落ちる音が聞こえてきた。
おっと支援
◇ ◇ ◇
『ダイジョウブ! ダイジョウブ!』
「……ぐっ」
やかましい電子音声にうんざりしながら自らの呻き声を聞く。
結構しっかりした声だな、と半ば他人事のように考えながらC.C.は力を入れて身を起こした。
あたりは薄暗い。割れた窓から朝日が差し込んでいる。
いったいなにがどうなったのか、彼女は記憶を掘り起こす。
爆発かと思うほどの激烈なガトリングの掃射を立てこもる民家もろともに浴びて、どうやら意識が途絶えてしまったらしい。
『シーツーオキタ! シーツーオキタ!』
「ああ、起きたよ。すまんが少し静かにしろ」
オレンジ色のハロとかいう名前のロボットに声をかけ、そして現状の確認を試みる。
気絶していたのは数秒か、数十秒か。
体力をだいぶ消耗していたこともあるし、あの鼓膜そのものを殴りつけるような轟音と衝撃の嵐を浴びては無理もない。
だがこの程度、ただの人間ならともかく、不死の魔女としてはいささか情けないように思った。
わき腹と太腿を弾丸がかすめ、肉がちぎれて出血。
頭からも血が出ているようだが、只の人間ならともかく自分ならばたいしたことはないだろう。
「やれやれ……ん、人間?」
そういえばもう一人、自分の傍でのんきに寝こけていた娘がいたのを思い出した。
周りを見回しながら、その娘に呼びかけてみる。
ほどなくして見つかった。二メートルも離れてはいない。
まだぼんやりと暗い部屋の中、床に飛び散ったガラスに注意しながら中腰で近づく。
ガトリングの掃射をくらった民家はひどい有様だ。
壁やガラス窓はおろか、柱や箪笥などの家具まで穴だらけで、そこらじゅうに破片が飛び散っている。
そんな中で、バチバチとうるさかった小娘は蹲るようにしてベッドの隅に体を横たえていた。
「おい、大丈夫か。怪我は――」
近づいてみてわかった。
身体の下、ベッドのシーツに血溜まり。
抱き起こしてみれば顔は青い。
出血がひどいのだ。
自らの手で押さえているわき腹は、すでにどす黒い赤に染まっていた。
あの銃撃によるものであることは言うまでもない。
C.C.は思わず歯噛みする。あの赤い男は何をやっているのかと。
「……いったあ……」
「おとなしくしてろ、ここから逃げるぞ」
「……アンタ」
「余計な口を叩くな」
御坂の身体を肩にかついで立ち上がろうとすると、足取りがおぼつかずに大きくふらついた。
まだ血を吸われた影響が残っているのだ。
あの大喰らいの吸血女め、と心の中で毒づく。
「ちょっと……アンタこそだいじょ……」
「黙れといったぞ。大丈夫だ、さっき聞いていたんだろう。私は死なないから大丈夫だ」
民家の軋みが大きくなっている。
このままではいつ崩れて押し潰されてもおかしくはない。
外の状況はわからないが、とにかくここから脱出するのが先決だった。
だるさが抜けずふらつく身体の悲鳴を無視。
意識で逆に無理を押し付け、一歩一歩出口に向かって歩き出すよう命令する。
ぎぎ、ごご、と大きく軋む音が二人を包み込む。
最早一刻の猶予もないことは明らかだった。
「……ありがとう」
ビリビリ女の声だ。
大きな軋みの音が邪魔で聞こえないフリをした。
自分は何を似合わないことをやっているのだろうか。
不死の魔女と言われた自分が必死になって人命救助の真似事とは、らしくないにもほどがある。
『デグチ! デグチ!』
床を飛び跳ねるハロの先導に従って、御坂の体を引きずるように歩いていく。
パキリと足元で音がした。
割れたガラスを踏んだ音か。
足の裏を切ったかもしれないが気にしている暇はない。
「……くそ、開かない。歪んでるのか!?」
ドアの目の前まできたが、押しても引いてもびくともしなかった。
崩れようとする建物自体の重さで潰され、動かなくなっている。
こうなってはもう末期だ。
軋みの音が断続的なものから段々と大きく長くなっていく。
『ジカンナイ! ジカンナイ!』
「くそっ!」
苛立ちの感情に任せてドアを蹴りつけ、ついでにハロも蹴って黙らせたが、そんなものでどうにかなるはずもない。
どうする。
自分はともかくこの娘は――、
「……ごめん、ちょっと手伝って」
声をかけられてハッとなる。
見れば、ビリビリ女――たしかミサカという名前だった――は自分の荷物から何かを取り出そうとしている。
先ほどは話だけで、互いの荷物を確かめたりはしなかった。
この状況をどうにかできる何かを持っているのか。
思い至ったC.C.はミサカという少女の指示通りにデイパックの中身を取り出す。
「……財布? このコインでいいのか?」
「うん、ありがと……」
コインをどうするつもりだとは聞かない。
間近でよく見てみれば、顔色は一層ひどくなっており、その唇は力なく震えるように言葉を紡ぐ。
口元には血のあと。限界が近いのは一目でわかった。
おそらく内臓に致命的なダメージを受けている。
ここを抜け出しても、すぐに適切な治療を行わなければ遠からず死ぬだろう。
だがどちらにせよ、このままでは押し潰されるだけだ。
ならばせめて好きにさせるべきだと、そう思った。
自分をおいて人は死んでいく。
いつものことだ――そう思えばC.C.の感情は急激に冷めていった。
一際大きく軋む建築物の音。
それが二人を死の傍へと追いやる声のように聞こえた。
だが私は死ねないんだよ。
どうやってもそうなんだ。
いつしか全て諦めて割り切るように、そう思っていた。
そして今も――、
「――大丈夫、必ず助けるから」
そう思った、そんな時。
彼女はそういって笑った。
軋む音が崩壊のレベルに達したのはその瞬間。
紫電が薄暗闇に飛び散る。
細く、血の気のない白い手で放り投げたコイン。
二人の頭上に弧を描き、放物線を描きながら、やがて落ちゆく。
顔を上げてそれを追った直後、その向こうに映る天井が降り落ちてきた。
矮小な自分たちを押し潰そうとする、それはまるで意地悪な運命のようだ。
それを誰が打ち破れる?
誰が――、
「ぶっ壊れろ――――!!!!」
魔女は見た。
迷い無き眼光。
煌くその意志が弾けるかのような蒼雷。
弾き出されたコインは白金の輝きを帯びて、暗く覆いかぶさろうとする闇をことごとく蹴ちらし、天へと上る。
超電磁砲。
C.C.の知らない、撃ち出したその一撃が、意地悪な運命を前にした御坂美琴の答えだった。
『――大丈夫、必ず助けるから』
諦めてなどいなかった。
それどころか最期の力を振り絞ってまでC.C.を助けようとした。
「あ――」
民家の床から上は全て吹き飛び、頭上には夜明けの光にかき消されようとする月があった。
その下でC.C.は御坂の身体を抱きかかえ、呆けたように肺の中から声を搾り出す。
窮地は脱した。だがもう一つの窮地は依然としてそこに在る。
流れ出る血は本人だけでなく、すでにC.C.すらべっとりと赤く染めていた。
息は細く、意識はあるのかどうか分からない。
「あ、あ――」
何故だ。
何故助けた。
出会って間もない、赤の他人だ。
何かをしてやったつもりもない。
なのに、何故?
そんな血まみれの体でどうして?
教えてくれ。
私を、魔女と忌み嫌われる私を何故?
聞きたいんだ。
だから死なないで――、
「ルルーシュ――!」
ここにいない者の名を呼んだところで、都合よく助けに来るはずもない。
それに気付いてC.C.は他に何か術はないかと思考を巡らせる。
誰か、誰か――、
「アーチャ――――――――ッッ!!!!」
藁をも掴むというのはこういうことなのかもしれない。
この場で唯一の可能性、その名を朝焼けの空に向かって叫んだ。
セイギノミカタに救いを求めるその声が、朝日の赤に染まる空間に響き渡った。
◇ ◇ ◇
「呼んでるぜ、アーチャーって……どうすんだい、おめえさんは?」
「……!」
崩壊の音が路地の向こうから響いた直後、さらなる轟音と共に空に向かって稲妻が立ち昇った。
いかにも切迫しているとわかる女の呼び声が聞こえたのはその後すぐだった。
眼前の赤コートの男を呼んでいるのだと、呼び声を聞いたときの反応を見てサーシェスは察知した。
さらにカマをかけてみれば、今にも自分にとどめを刺さんとしていたこの男は息を呑み、動きを止めた。
これは最早、そうですと言っている様なものだ。
ここで終わりかと半ば観念したが、思わぬ機を得た。ここが命の分水嶺。
九死に一生を得るかどうかはこの瞬間にかかっている。
サーシェスはアーチャーの僅かな反応も見逃すまいと目を細めて様子を伺う。
そしてそうしながら慎重に言葉を選び、揺さぶりをかける。
「やるならさっさとしなよ。だが俺もそうなりゃ抵抗するぜ? 十秒でも二十秒でも足掻いて、足掻いて、足掻きまくる。
あの声の様子はかなり切羽詰ってるみたいだが、どうするんだ。悩んでる時間も惜しいんじゃねえのかい」
いつものように相手の感情を煽るような言い方はしない。
低く抑えた声で淡々と、伝えるべきことのみを告げる。
支援
支援
それこそが今、この場でもっとも効果的な方法だ。
そしてアーチャーのこわばった表情を観察し、その通りだったと確信を得る。
「貴様……」
煮えたぎる怒りを押さえ込んだ声だった。
おっかねえな――と、心中で冷や汗をかくが、それをおくびにも出さない。
先程の轟音と稲妻で一瞬の隙ができたおかげで、倒れ付した姿勢からどうにかガトリングガンを構えることができた。
相対距離は五メートルほど。
だが銃口を突きつけたところで、この男を殺せる気が全くしない。
もしこちらに向かってくれば、形振り構わず逃げ惑っても十秒持つのがせいぜいだろう。
自分の命は紛れも無く、目の前の赤い外套の男が握っていた。
「……」
沈黙。
何秒経った?
まだそんなに時間は過ぎていないはずだ。
このアーチャーという男が、決断するにあたってそんなにモタモタするような愚図だとは思えない。
とすれば、これは錯覚か。
命を刃の上に乗せた瞬間というのは随分と長く感じるものだ。
幾度も修羅場を潜り抜けてはいるが、こういう展開はあまり経験がない。
サーシェスほどの男がここまで追い詰められたのは、それこそ数えるほどしかなかった。
その数えるほどの相手であるガンダムマイスターの顔が脳裏をかすめ、やがて――、
「――投影完了」
アーチャー、一瞬の早業。
どこからともなく先程の双剣のうちの黒い一本を取り出して、投げつける構えを取っていた。
考える前に身体が反応した。
形振り構わず、地を転がるようにしてその場を離れる。
一瞬の後、サーシェスが倒れこんでいた場所が爆砕した。
先程の攻撃と同じだ。
その剣を投げつけるというだけで、それは砲弾の威力を持っていた。
どうやら策が失敗したかと歯噛みしつつも、こうなれば少しでも足掻こうと、体勢を立て直しながらアーチャーの姿を探す。
「――あ?」
サーシェスの視界に映ったのは、遠ざかっていく赤い外套の背姿だった。
どういうことか。
向こうが撤退を選んだということを理解するまで僅かな時間があった。
そしてそう思い至った瞬間に足腰から力が抜けそうになる。
思わず大きく息をついた。
助かった――掛け値なしにそう思う。
「っと、やべえ。だからってグズグズしてられねえやな」
機を見るに敏。
切り替えと変わり身の早さが生き残る秘訣だ。
いつだってそうやって死線を潜り抜けてきたのだ。
へし折れたショットガンはもう駄目だ。
ここに捨てていくしかないが、一発撃った感触は悪くなかっただけに惜しいことをしたと思う。
現状の装備はガトリングガンと包丁にドライバー。
「まだだ……まだ足りねえ」
ここから遠ざかるべく駆け出しながら、苦い顔で呟いた。
あの化物を打倒しなければ優勝は望めない。
同士討ちを待って漁夫の利を狙うのは現実味がなさすぎる。
先程の稲妻のような光がアーチャーの同行者によるものだとすれば、ああいう怪物の類が複数いることになるからだ。
いや、自分自身がこの目で見たではないか。
片倉小十郎の持っていた雷を放出する刀と同じような、とんでもない力を持つ武器がこのバトルロワイアルでは溢れかえっている。
この手に構えるガトリングガンも、実際に撃てば見た目以上の破壊力を秘めていた。
「ちょいと搦め手を使う必要があるかもな……」
どうにかして強力な支給品を取り揃えたい。
どうやらこのサバイバルゲームで生き残る秘訣はまずそこにある、とサーシェスは見た。
真っ向から奪う、というのは得策ではない。
向こうも強力な支給品を持っている可能性がある以上、素人相手に苦戦することも充分ありえる。
となれば、不意打ち、騙し、裏切り、盗むなどそういった手段も必要になるだろう。
搦め手とはそういう意味だ。
幸い、先程の戦闘では名前を知られていない。
自分の正体と名前を知っているのは、現在確認できるところでは片倉小十郎だけだ。
先に奴と接触して情報を得てしまえばお手上げだが、この広い会場ではそう早く情報が広まることはないだろう。
何も知らない奴らを騙す隙は充分にある。
「とりあえずは奴等と鉢合わせしねえように河岸を変えるか……さて、何処に向かうかな」
地図を取り出し、これから行く先を吟味し始める。
戦争屋の表情は、負け戦の直後にも関わらず早くも次の闘争に向けて活き活きと輝いていた。
【E-5/市街地 路上/一日目/早朝】
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ、額より軽い出血(止血済み)。
[服装]:赤のパイロットスーツ
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数50% 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実
[思考]
基本:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
1:周辺を見て回り、できれば組める相手を見つける。
2:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。組んだ相手を騙すことも辞さない。
3:アーチャー、片倉小十郎との決着をいずれつける。
【備考】
※セカンドシーズン第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※ガトリングガンは予備弾装とセットで支給されていました。
※破壊されたショットガンが放置されています。
※何処に向かうかは次の書き手さんに任せます。
◇ ◇ ◇
正義の味方を目指した。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
誰も傷つかない世界が欲しかった。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
だけど――この世界は誰かが傷つかなければ、幸福は形を保てない。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
それに気付かず――いや、気付きながらも、それならば自らが傷ついて誰かが幸せになるなら、それでいいと思った。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
今度こそ終わりだと、今度こそ誰も悲しまないだろうと、つまらない意地を張り続けた。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
それが苦痛だと思う事も、破綻していると気付く間もなく、ただ走り続けた。
『ミサカシッカリ! ミサカシッカリ!』
ただ俺は、自分が知りうる限りの世界では、誰にも涙して欲しくなかっただけだった。
「アーチャー……」
いまだに帯電する空間の、オゾン臭の真ん中で、不死の魔女は駆けつけた赤い弓兵を見上げてその名を呼んだ。
丸いボール状のロボットらしき物体が、その周りを飛び跳ねながら同じ言葉を繰り返している。
この女は血に汚れることなど全く意に介さず、傷ついた御坂美琴を抱いたままで助けを待っていたのだ。
「こいつが死にそうなんだ、助けてくれ……」
――そんなことはできない。
かつて正義の味方を目指した。
誰かの涙を止めたいと思った。
だがそれは大きな間違いだった。
そもそもセイギノミカタなどというものに、そんなことは所詮、無理な芸当だったのだ。
悪を滅ぼすのが、災いを討ち果たすのがセイギノミカタの務めというのならば、そんなものは災いが無数の幸福を食い散らかした後を片付ける掃除屋に過ぎない。
ゆえに誰かが犠牲になることを止められない。ゆえに誰かの涙を止めることなどできない。
誰もが笑っていられる世界など、もたらすことはできやしない。
だから自分に御坂美琴は救えない。
こんな男に今できることはたった一つ。
それは誰にでもできること。
セイギノミカタなどというものには一切関係のないこと。
英霊という人を超えた力――百里を駆ける駿馬の如き健脚に意味は無く、剛勇無双の膂力も意味はない。
だけどここには他に誰もできるものはおらず、だから自分がやらなければならないことだ。
それは、たった一言告げるだけ。
目の前で血塗れの「ソレ」を抱きかかえて雛鳥のように助けを求めるこの女に、たった一言告げるだけ。
「――もう死んだよ」
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録 死亡】
【E-5/市街地 一軒家前/一日目/早朝】
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小)
[服装]:赤い外套、黒い服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×3
[思考]
基本:過去の改竄。エミヤシロウという歪みを糺し、自分という存在を抹消する
1:……。
2:情報を集めつつ、士郎を捜し出し、殺害する
3:士郎を殺害するために、その時点における最も適した行動を取る
4:荒耶、赤毛の男(サーシェス)に対し敵意。
[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:体力枯渇(小)、左の肩口に噛み傷、わき腹・太腿・頭部から出血(全て徐々に再生中)
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:基本支給品一式 誰かの財布(小銭残り35枚)@???、ピザ(残り63枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:……。
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。
※E-5から立ち上った超電磁砲の光が周囲から見えたかもしれません。
投下終了、支援感謝。
ご意見ご感想お待ちしています。
565 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 00:12:04 ID:M3e+l9mz
投下乙です
アリーは見ただけでよくそこまでわかったな
アーチャーVSアリーはやっぱり英霊の勝ちと思ったら彼女が!!
ああ、凄くアーチャーらしい展開でした
そしてCCもこれで傍観者気取りはできなくなったなか?
アリーもしぶとく策をめぐらすしやっかいな
ビリビリィィィーッ!
美琴が死んだのは惜しいがこういう空しさもバトロワの醍醐味さ
投下乙でした。
投下乙
まず一言御坂ああああああああ!!(泣)
レールガンが逝ってしまった・・・放送を聞いた黒子はどうなるかな・・・
サーシェスは生き延びたか・・・しかもステルスフラグ立ってるし・・・
アーチャーとC.C.はこれからどう動くかね・・・
投下乙!
さすがにサーシェスも厳しいかと思ったが、こうなるかー
いくらレベル5でも、これはきついわな
残ったアーチャーとC.C.、そしてサーシェスはどうなるか。
スゲー気になるw
うーむ、実に面白かったw
投下乙です
まず一言
御坂あああああーーーーーっ!
早すぎるぞーーーーーーっ!
さすがのサーシェスでもサーヴァント相手には勝てんか
アーチャー、CCもどうなることやら
>>528 トレーズ様は超人に分類して良いと思う。
五飛を圧倒する剣技を誇り、常人が乗るとGで圧死するトールギスの加速に耐えるほどだから。
つーか、良く言われる事だけど、W勢の身体能力はGガンに次ぐトンデモスペック。
ヒイロなんかガンダムの自爆に巻き込まれても生き残り、50階のビルから飛び降りても平然としてるんだから。
リリーナ様でさえライオン(200キロ以上あります)を余裕で抱き上げたりするし。
対主催 能力持ちorトンデモ身体能力・14人
ヒイロ、デュオ、政宗、幸村、忠勝、上条、黒子、一方通行、士郎、セイバー、スザク、刹那、グラハム、阿良々木
対主催 一般人・6人
唯、衣、小萌、カイジ、真宵、駿河
情緒不安定・4人
澪、紬、律、美穂子
不明・5人
ゼクス、式、ヴァン、C.C. 、海原
危険人物・12人
桃子、五飛、アーチャー、黒桐、レイ、ファサリナ、利根川、船井、ルルーシュ、ユフィ、アーニャ、ひたぎ
マーダー 一般人・1人
憂
マーダー 能力持ちorトンデモ身体能力・9人
信長、光秀、バーサーカー、ライダー、キャスター、藤乃、荒耶、サーシェス、トレーズ
投下乙です
御坂がまさかのリタイアか、でも寝ている時の襲撃じゃどうしようもないか
それにしてもアーチャーもC.C.も苦悩が深い、どっちも助けられなかった負い目が心配だ
これがこれから変に影響しないといいけど・・・
では月詠小萌投下します
それはいつもと同じ見慣れた光景のはずだった。
いつも通りの校舎。
いつも通りの職員室。
いつも通りの廊下。
それはいつもと変わらぬ日常。
いつも通り?の教室。
いつも通り?の生徒達。
すっかり当たり前となってしまった風景がそこにあった。
そしてどこか不思議な感じを覚える。
その理由には全く心当たりがない。
だがこの時ばかりはそれは後で考えればいいと思った。
そして月詠小萌はいつも通りの言葉をかける。
「はーい、ホームルーム始めますよ」
その声に従って生徒達が続々と席に着く。
最近は何かと先生に反抗する生徒が多くなる中でこのクラスは至極平和だった。
ただ中には数人、席に着いても小萌がいるにもかかわらず隣同士でお喋りを続ける光景がいくつか目に飛び込んできた。
「はいはい、そこー、静かにしてくださいねー」
そう言われて注意された女子生徒二人はバツが悪そうな顔をしながら居住まいを整えた。
眉毛がタクワンを思わせる女子生徒と前髪で顔を隠しそうな人見知りな女子生徒。
そこでふと疑問に思った。
あの二人は前からこのクラスにいたのだろうかと。
だがすぐに気にならなくなった。
何にせよ今あの二人がこのクラスの一員である事に変わりはないからだ。
他にも話している生徒がいたが、二人が注意されるのを見てすぐに小萌の方に目を向けていた。
「えっと、今日はみんなにビッグニュースです。なんと今日から転入生追加なのです」
その途端に沸き起こる歓声。
これまたいつも通りの光景。
それに何故か安心する自分がいる事に小萌は少し驚いた。
いつも通りの当たり前の光景を目にしてなぜこんなにも不思議な気持ちになるのかと。
「ちなみに女の子ですよ。おめでとう野郎ども、残念でした子猫ちゃん達、さあ転入生ちゃんどうぞ」
だがそれは置いておく事にした。
今は緊張しているであろう転入生をフォローする事が教師としての務め。
少なくとも小萌はそう思ったからだ。
そして教室の扉がゆっくりと開いて件の転入生が皆の前に現れた。
「はじめまして、浅上藤乃と言います」
「みんなー、仲良くしてあげてくださいねー」
名前を表すが如く藤色の綺麗な髪の清楚でおとなしそうな女子生徒の登場でクラスのボルテージは一気に跳ね上がった。
綺麗な女子生徒が新たに加わるという事で歓喜する男子生徒達。
その男子の様子を少し冷ややかな目で見る女子生徒達。
だが中には周囲とは違った反応を示す生徒もいた。
なんか投下ラッシュだな
支援
「キャラ。被っている」
新たな転入生の登場で自身の影の薄さがさらに加速する事に危惧を抱く黒髪の女子生徒。
ふと浅上藤乃と声が似ている事に気付いたが、深刻そうな表情をしているので今はそっとしておく事にした。
「とーま、お腹すいたー」
「まだ1時間目始まっていないよ」
最後列でグテッとして項垂れているシスター服の少女と眼鏡をかけてサイドポニーでナイスバディーな女子生徒。
どこかおかしな気がするが、気のせいという事で流しておく。
「今月もこいつのおかげで食費が嵩む……不幸だ……」
そして黒髪でツンツン短髪の男子生徒がお決まりのセリフを口に出して落ち込んでいる。
これまたいつもの光景だ。
近くの青髪ピアスの男子生徒と金髪グラサンの男子生徒が慰めているようだが、どうやらあまり効果はないらしい。
「もう、上条ちゃんはしょうがないですね」
いつもの光景。
つまりは日常。
いろいろあるが、それでもここはなんだかんだ言って居心地がいい。
手間が掛かる生徒が多いが、その方が自分には合っている。
それは小萌の美点でもある。
某不幸な少年曰く「出来の悪い子供を見れば見るほどニコニコの笑顔になる」という評価は的を得ている。
そうこれは幸福。
月詠小萌にとっては紛れもなく幸福な日々。
そう間違いなく小萌にとって幸福な――。
――夢だった。
◇ ◇
人には運が良い時と運が悪い時がある。
所謂ツイている時とツイていない時だ。
大抵の人はそれが多少の偏りはあってもバランスよく人生の中で配分されている。
ただ中にはその偏りが極端な人もいる。
毎度毎度不幸に纏わりつかれる人や常時金運に恵まれている人とか。
だが月詠小萌に関してはそんな事はない。
至極普通の運のツキ具合だ。
まずバトルロワイアルに巻き込まれたこと自体は大きな不幸だ。
そして支給品がコンデンスミルクだけという事も不幸だ。
だが二人の生徒を危険人物から無事に逃がせた事は幸運だ。
その後も何度も死にそうな目に遭いながら今まで生きていられた事も幸運と言える。
だからであろうか。
次に小萌を不幸が襲ったのは必然だろうか。
いやこれは必然ではなくただの偶然だろう。
それは不幸な事故だった。
小萌が命からがら藤乃から逃げのびて避難した住宅地。
その時はまだ周囲には危険はなかった。
だから小萌は安心して怪我の応急措置を済ませると緊張が解けた事もあって意識を手放した。
だが小萌は最期まで知らなかった。
学校の殺戮の気配に誘われて来た一人の参加者の存在も。
その狂戦士の名を冠する参加者が逸早く学校に着こうと邪魔な建物を破壊してきた事も。
その矛先が自分の避難した家屋に向けられた事も。
そのせいで倒壊した瓦礫の下敷きになって自分が命を落とした事も。
小萌は全て知らないまま死んでいった。
これは事故、ただ不幸な事故でしかない。
だがこれはある意味幸運な事かもしれない。
藤乃に曲げられた左腕は放っておけば確実に壊死していた。
そうなれば遠からずクラッシュ症候群を引き起こして苦しみながら死んでいく可能性もあった。
そうでなくてもここはバトルロワイアルの会場。
これからどんな死よりも恐ろしい目に遭うか分かったものではない。
それに比べたら瓦礫の下敷きになって意識がないまま死んだ方が余程幸せとも言える。
もちろん本人はこんなところでむざむざと死んでいく事に納得しないだろう。
まだやり残した事も山ほどあったに違いない。
だが何かをやり遂げたと思って死んでいけた事は幸運であり幸福なのかもしれない。
その証拠に死の瞬間の顔は不思議と幸せそうであった。
【月詠小萌@とある魔術の禁書目録 死亡確認】
[備考]
※【E-2/学校近くの民家跡】の瓦礫の下に月詠小萌の死体とデイパックがあります。
投下終了です
支援ありがとうございました
ちょっ、小萌先生wwwふじのんからようやっと逃げ延びた結果がこれかwww
美琴に続いて小萌先生まで脱落するとはな・・・
放送地の上条さんの精神が心配だ
投下乙でした
( ゚д゚)
(゚д゚ )
( ゚д゚ )
これは……
投下乙です
これは・・・・・どうしてこうなった!?
うなーーーー
変化球過ぎるぞwwwww
あっ、言い忘れてました、投下乙です
投下乙!
事 故 死 www
すげえwww
投下乙!
これはなんというか先生乙
こんなことになるなんて誰も創造できねーよw
キルカウントバーサーカーになるんかなw
バーサーカーにやっとキルマークがついた・・・
見かけ倒しにならなくて良かったぜ
えっ……?あれっ?……。
ありのまま起こったことを(ry
投下乙でした。
>>570 >50階のビルから飛び降りても平然としてるんだから
これってTVシリーズの最初のほうでサリィに捕らえられた時のことだよね?
まとめwikiの登場人物のトコにもあったけど、あの時は自殺する気で飛び降りて
リリーナの声で思い直してパラシュート開いたけど高度が足りず、それでも下が砂浜で受身をしっかりとったので片足骨折…だったはず。
操縦席間近で自爆スイッチ押して生きてたのは演出だし。
あとヒイロは上着がタンクトップ一枚なのに北極で平然としてた所は何気に凄い
ちょっと連絡
放送について、放送案の締切は水曜夕方、放送前の投下は火曜日中という方向で話し合いが進んでいます。
(まだ正式決定ではないので変更されるかもしれません)
なので、放送前の投下を考えている書き手さんは注意してください。
詳しくはしたらば避難所スレまで
なんか禁書キャラを無理矢理殺してる感が強いな
そういう企画なんだし別にいいよ
後は好きにやってくれ
まぁ未だに被害者数ナンバーワン作品の座は揺るがないんですがね
投下乙なんだけど、細かく見るとタイムライン的に無理がある展開のような……
「狂戦士の歩み」の終了時点でバーサーカーはE-2の中央部、つまり学校まで半キロほどの位置
「煉獄の炎」の開始時点で校舎内に数人いると書かれてるので、この時点で月詠小萌は校舎内
その後、学校まで歩いて数分の位置でキャスターに標的を変えた
以降は破壊を止めて追跡してるから、民家を壊すことはない
ということは、バーサーカーが全力で「半キロ−徒歩数分」の距離を移動する間に、
満身創痍の月詠小萌が「徒歩数分」の距離を移動した上、応急手当までしてから気絶したってことになるんじゃ
バーサーカーがとんでもなく遅いか、月詠小萌がとんでもなく速いかのどちらかじゃないと、これまでの話と矛盾する気がする
この時間になるといつも出現する人か
質問です
『煉獄の炎』によるとバーサーカーが学校を後にした時にはまだ小萌先生は学校に居るっぽい供述があるんですがなんとかなりませんかね?
よくそんな細かいことを気にできるな
バーサーカーは馬鹿だから途中で道に迷ったり転んだりしたんじゃねーの
あれ?もう書き込まれてたか・・・
携帯って扱いづらいな・・・
それは非常に面白い意見だが・・・ボツSS投下スレじゃないんだしそれはないだろ・・・
それに矛盾してる段階ですでにたいしたことですよ
倒壊しかけてた民家に入っちまったんじゃないの
で、時間が経って崩れたということなら問題無い
言うほどの矛盾じゃないな
そういう発想もあるか・・・
だがそれだと小萌先生が安全性を確認したという供述に矛盾が・・・
まぁこれだとたいしたことないしwikiに収録された後直せばいいか・・・
いくら意識朦朧でも半壊した民家に入るかな
とくに応急処置するくらいには意識はっきりしてるわけだし
細かく言えばバーサーカーが学校の中に複数いると感じてる点で一つ、小萌先生がその時点でバーサーカーの近くにいたとしてもバーサーカーが気づかないはずがない…というのが二つ、矛盾だと思うが
604 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 02:44:21 ID:M3e+l9mz
収録後に直せばいいと思うけど
ゴネ厨は静かにしようね
>>603 意識朦朧としてたら普通は応急処置なんてできないが、きっと無意識のうちにやったんじゃないか?
実際になんか気付いたらどうにか出来てたとかいうのがあるくらいだし
だから別に倒壊しかけた民家に入ってもなんの問題はない
>>604 調子に乗ったかもしれんスマン
単純な指摘にゴネ厨とか言ってるやつの方が気持ち悪いな
なんか2レス投下で簡単に殺したかっただけに見える
実際そうだろうな
殺すのが目的のロワで何言ってんだか
転んだの半壊だのがあったらあらかじめ描写されるだろ。そういうのがないって事は
矛盾なんだ。あらかじめ半壊だったんで壊れました?そんなら実はエスポワールにはあらかじめ船底に時限爆弾がしかけられてて
第一放送直後に爆発してエスポワールが沈没、全員死にましたって書いてもいいんだよな?よくないだろ?
悪いがゴネ厨とか言ってる奴は作品に対する否定的な意見を全部ゴネてる、で片付けようとしているようにしか思えない
死に様は作者毎にクオリティの違いが如実に出るからな
とりあえず今回の死亡SSは両方酷かった
>>611 2nd中盤以降を見る限り、そのくらいの超展開は十分有り得るから覚悟しとけ
小萌先生何の為に学校で死ななかったのか分からん死に方だわ
美琴にはせめてバーサーカーを1KILLして欲しかった。
描写しないことで矛盾が発生することは「矛盾」の定義上あり得ない
描写が足りないってんなら作者にお願いして描写足してもらいな
足してくれるかは作者の気分次第だけど
>>614 それ言ったらほかの死亡者も同じだけどな
てか矛盾が嫌なら自分でSS書き足して補完したらどうかな
まさか展開が気に入らないからいちゃもんつけてるわけじゃないよね
>>617 じゃあ信長が電車に乗ったSSが出た時も反対する奴にそう言ってやればよかったじゃないか
実は近くでローラースケート見つけて駅近くまで履いてたがSSが始まる直前で壊れたので捨てたかもしれない、とかでよ
>>617 小萌先生に関してはその展開がなー
批判バッシングはしかたあるまい、せっかくのキャラをただ単に適当に理由つけて殺しただけの話だし
ニコロワのキョンレベルなら大喝采だったが
>>618 議論は積み重ねていくものだよ、君
特に理由もなく超移動したカイジたちや憂を見たまえ
毒吐きでやれようぜえなあ
じゃあ話題変えますか
なんか第一回放送にしては死者多くね?
マーダー不足じゃねと危惧された割に順調だな
まあ、みんな死なないロワにならないか
危機感あったんだと思うw
序盤はこんなもんだよ
というか、進むにつれフラグが積まれて殺しにくくなるから早めに減らすに越したことはない