アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part10

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1名無しさん@お腹いっぱい。
このスレはリレーSS企画、アニメキャラ・バトルロワイアル3rdの本スレです。
企画の性質上残酷な内容を含みますので、閲覧の際には十分ご注意ください。


参戦作品リスト
 【咲-Saki-】
 【新機動戦記ガンダムW】
 【Fate/stay night】
 【けいおん!】
 【戦国BASARA】
 【空の境界】
 【ガン×ソード】
 【とある魔術の禁書目録】
 【化物語】
 【機動戦士ガンダム00】
 【コードギアス 反逆のルルーシュR2】
 【逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】


SSのまとめwikiはこちら
http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/

規制時の避難所はこちらのしたらばです
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13136/


前スレ
アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1256997078/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:34:27 ID:fIr51Oz9
6/6【けいおん!】
 ○平沢唯/○秋山澪/○田井中律/○琴吹紬/○平沢憂/○中野梓


3/6【咲-Saki-】
  ● 竹井久/○天江衣/○福路美穂子/ ● 池田華菜/●加治木ゆみ/○東横桃子


6/6【新機動戦記ガンダムW】
 ○ヒイロ・ユイ/○デュオ・マックスウェル/○張五飛/○ゼクス・マーキス/○トレーズ・クシュリナーダ/○リリーナ・ドーリアン


6/6【戦国BASARA】
 ○伊達政宗/○真田幸村/○織田信長/○明智光秀/○本多忠勝/○片倉小十郎


6/6【とある魔術の禁書目録】
 ○上条当麻/○御坂美琴/○白井黒子/○一方通行/○月詠小萌/○海原光貴


6/6【Fate/stay night】
 ○衛宮士郎/○セイバー/○アーチャー/○バーサーカー/○ライダー/○キャスター


4/5【空の境界】
 ○両儀式/○黒桐幹也/○浅上藤乃/○荒耶宗蓮/●玄霧皐月


4/5【ガン×ソード】
 ○ヴァン/○レイ・ラングレン/ ● カギ爪の男/○ファサリナ/○プリシラ


4/5【逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
 ○伊藤開司/○利根川幸雄/●兵藤和尊/○安藤守/○船井譲次


5/5【コードギアス 反逆のルルーシュR2】
 ○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./○ユーフェミア・リ・ブリタニア/○アーニャ・アールストレイム


5/5【化物語】
 ○阿良々木暦/○戦場ヶ原ひたぎ/○八九寺真宵/○神原駿河/○千石撫子


3/3【機動戦士ガンダム00】
 ○刹那・F・セイエイ/○グラハム・エーカー/○アリー・アル・サーシェス



59/64



※書き手枠で決定した下記の12名は、バトルロワイアル内で参加者に支給されてた名簿には名前が記載されていません。


 中野梓@けいおん!、片倉小十郎@戦国BASARA、月詠小萌@とある魔術の禁書目録、海原光貴@とある魔術の禁書目録
 玄霧皐月@空の境界、プリシラ@ガン×ソード、兵藤和尊@逆境無頼カイジ、安藤守@逆境無頼カイジ、
 船井譲次@逆境無頼カイジ、ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス、アーニャ・アールストレイム@コードギアス、千石撫子@化物語
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:34:51 ID:fIr51Oz9
バトルロワイアルのルール


【原則】
 64名の参加者が残り一名になるまで殺し合う。

【スタート時の持ち物】
 各人に支給されたデイパックの中身は以下の通り。
 地図、名簿、食料、水、メモ帳、筆記用具、ルールブック、デバイス、腕時計、懐中電灯、
 応急処置セット(絆創膏、ガーゼ、テープ、ピンセット、包帯、消毒液が詰められた救急箱)、ランダム支給品(各人1〜3個)。

【名簿について】
 64名中、52名の参加者の名前が記載されている。
 未掲載の12名については、第一回放送の際に発表。
 龍門渕透華の名前は最初から掲載されていなかった。

【ルールブックについて】
 ルールが書かれた小冊子。開会式中でインデックスが語った内容とほぼ同一。優勝特典についても記されている。

【デバイスについて】
 現在自分がいるエリアがデジタル表記で表示される機械(【A-1】といった具合に)。方位磁石としての機能も兼ね揃えている。

【禁止エリアについて】
 六時間に一回の頻度で行われる放送ごとに、三つずつ増えていく。
 参加者が禁止エリアに踏み込んだ際、首輪が起爆する(爆破までに時間差や警告があるかどうかは不明)。

【優勝者への特権について】
 優勝者には賞金として10億ペリカ、そしてその賞金で買い物をする権利が与えられる。
 ペリカの使い道は以下の通り(これはルールブックにも記載されている)。
 ・元の世界への生還――1億ペリカ
 ・死者の復活―――――4億ペリカ
 ・現金への換金――――9億ペリカ
 ・その他の願い―――――要相談
 ※1ペリカ=10円。10億ペリカ=100億円。


【作中での時間表記】
 【深夜:0:00〜1:59】
 【黎明:2:00〜3:59】
 【早朝:4:00〜5;59】

 【朝:6:00〜7:59】
 【午前:8:00〜9:59】
 【昼:10:00〜11:59】

 【日中:12:00〜13:59】
 【午後:14:00〜15:59】
 【夕方:16:00〜17:59】

 【夜:18:00〜19:59】
 【夜中:20:00〜21:59】
 【真夜中:22:00〜23:59】
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:35:11 ID:fIr51Oz9
書き手向けルール
 ※詳細はまとめwikiにて確認をお願いします。 http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/24.html

【状態表について】
SSの最後には下記の状態表をつけてください(服装と備考の欄は、必要なければ省略してください)


【エリア/場所/経過日数/時間】

【キャラクター名@作品名】
[状態]:
[服装]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本:
1:
2:
3:
[備考]


【予約について】
予約をしたい場合はしたらばの予約スレ(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13136/1256477871/)に
トリップをつけて予約したいキャラ名を書き込んでください。

予約期限は3日(72時間)です。予約期間中に申請すれば2日(48時間)の延長ができます。
予約の延長は、一回の予約につき一度だけ利用できます。

あるキャラの予約が行われた時点で、他の書き手はそのキャラを含んだ予約または作品投下が出来なくなります。
予約は予約期限切れ、予約破棄宣言、対応する作品投下のいずれかを持って解除されます。
予約期限切れ、予約破棄宣言の場合、その時点を持って予約されていたキャラの予約が可能になります。
対応する作品投下の場合、その作品に対して24時間以内に修正・破棄の要求がなければ、その作品のキャラの予約が可能になります。


【支給品・キャラの能力に関する制限について】
まとめwikiの制限一覧を確認してください。 http://www29.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/23.html


★企画に興味を持ったら★
当企画への参加に資格は必要ありません。どなたでもどんどんどうぞ。
但し、企画の円滑な進行のため、守るべきルールは存在します。
特にSS書き手として参加される方は事前に以下の「書き手用ルール」のページをお読みください。

企画への参加は「SSを書く」、以外にも「絵を投稿する」「MADを投稿する」「感想を書いてスレを盛り上げる」
等様々な形があります。そういった形での参加も大歓迎。みんなの技術を持ちよって企画を楽しみましょう。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:39:14 ID:YtFi8cwG
>>1スレ立て乙
6 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:41:31 ID:Tv0+gs1y
スレ立て乙です


では早速、田井中律、キャスター、黒桐幹也、アリー・アル・サーシェスを投下します
7Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:42:51 ID:Tv0+gs1y
でもさ、それはすごく大事な事なんだ。

無知でいる事は必要なんだよ、コクトー。

子供の頃は自分しか見えないから、他人のどんな悪意だって気付きはしない。

たとえ勘違いだとしても、愛されているっていう実感が経験になって、誰かに優しく出来るようになるんだ。



――人は、自分が持っている感情しか表せないから。



                ――殺人考察(前) / 両儀織


   ◇  ◇  ◇



ブラッドチップは覚醒剤なのか、だと?
また奇妙なことを聞くものだ。
白澄里緒が売り捌いていた麻薬はアシッドと大麻のカクテルだろう。
ブラッドチップの成分は知らんが、形態や状況からしてアシッドか大麻のどちらかであることは間違いない。

……よく分からない、と言いたげな顔だな。
そもそも私のような一介の人形師に、麻薬について訊ねること自体が間違いなんだ。
適当な医者なり薬剤師なりに訊ねれば、濫用の危険性も含めてじっくり教えてくれるぞ。

まぁ、いい。

アシッドとはLSDの別称であり、カクテルとは複数の麻薬を同時に使用することを指す。
つまりLSDを染み込ませた紙と煙草状の大麻とのセット販売だ。

……LSDについても説明が必要か。

結論から言って、ブラッドチップは覚醒剤ではない。
いわゆる薬物の分類は幾つかのパターンがある。
ごくシンプルに区分するならば、以下の三つになるだろう。

興奮系(アッパー)、抑制系(ダウナー)、幻覚系(サイケデリックス)だ。

興奮系にはコカインやクラックが分類され、覚醒剤もここに含まれる。
疲労感の消滅や、活力・集中力の増大という作用があり、典型的なイメージ通りの麻薬といえるな。
コカインはコカという植物を原料として生成される薬物で、中枢神経を刺激して精神を興奮状態にする。
さすがにコカ・コーラはよく知っているだろう?
ごく初期のことだが、材料としてコカの成分を使用していたことが名前の由来だ。
……おいおい、変な顔をするな。
コカ・コーラの原点は、古くから興奮剤として使われていたコーラという植物のエキスと、
当時は薬効があると思われていた炭酸水、モルヒネ中毒の薬として注目されていたコカインを、
ワインと調合して製造したフレンチ・ワイン・コカという薬用酒だとされている。
コカインは薬として薬用酒に配合されていたんだよ。
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:43:10 ID:fIr51Oz9
支援
9Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:43:43 ID:Tv0+gs1y
ちなみにクラックは、正確にはクラック・コカインという。
粉状のコカインを炭酸水素ナトリウムか水酸化ナトリウムで処理し、大き目の粒に加工したものだ。
『クラック』というのは、加工時に鳴るそういう音が鳴ることから来ている。
材料を混ぜて加熱処理するため、そんな音が鳴るわけだ。
無論、わざわざそんな加工をするのには理由がある。
通常のコカインは、粉末を鼻から吸い込むスニッフィングという方法で吸引する。
だが粒の大きなクラック・コカインではスニッフィングができない。
代わりに、燃やした煙を水タバコや特殊なガラス管で喫煙する手法を取る。
クラック・コカインは通常のコカインより低温で気化する上、わずか八秒で脳へ到達するんだ。
機材は要るが、効果が早くて強力――それがクラック・コカインのメリットだ。

……話題が逸れたな。
肝心の覚醒剤だが、こいつは単一の物質を指す呼称ではない。
広い意味で捉えれば、中枢神経系を刺激して機能を活発化させる薬物の総称だ。
この場合はコカインやカフェインも覚醒剤ということになる。
狭い意味で捉えれば、覚せい剤取締法で規制されている物質のことだ。
つまりフェニルアミノプロパンとフェニルメチルアミノプロパン等が覚醒剤だな。
アンフェタミンとメタンフェタミンという呼称の方が有名かもしれない。
コカインもそうだが、アンフェタミンやメタンフェタミンはドーパミンの放出を促進すると同時に、
放出されたドーパミンの再取り込みを阻害して過剰な量を充溢させる。
その結果、神経伝達物質としてのドーパミンが司っている『快の感情』が増大させられてしまうわけだ。
覚醒剤の一種で、エクスタシーやMDMAと呼ばれるメチレンジオキシメタンフェタミンは幻覚作用もあるんだが、あくまで特殊な例だよ。
正真正銘の幻覚剤には及ばない程度の作用しかない。

とにかく、覚醒剤は中枢神経を刺激して興奮させる薬物と覚えておけばいい。
疲労が吹き飛び、何でも出来るという万能感を得るが、効果が切れた後は極度の疲労感と不安に苦しめられる。
これを解消するためにまた服用するという悪循環に陥りがちだ。

抑制系ではアヘン、モルヒネ、ヘロインが有名所だ。
効能は興奮系と真逆。精神の高揚を抑えるものだ。
アヘンは名前くらい聞いたことがあるだろう。
とにかく歴史の古い麻薬で、五〇〇〇年以上前にも栽培されていたことが分かっている。
紀元前三〇〇年代には、既に麻酔や鎮痛に用いられていたというほどだ。
このアヘンの薬効物質を取り出したものが、いわゆるモルヒネという奴になる。
モルヒネは身体的にも精神的にも依存性が高いんだが、
オピオイド受容体に作用して下行性抑制系や下行性陣痛抑制系を活性化させて鎮痛効果を発揮することから、
特に医療用として使われている薬物だ。
ヘロインは塩酸モルヒネを無水酢酸で処理して生成する薬物で、モルヒネより効果が大きいんだが、こいつは少々強力過ぎる。
この世の物とは思えない快感を得られるそうだが、禁断症状の重篤さもこの世の物とは思

さて、幻覚剤の代表例はリゼルグ酸ジエチルアミド……つまりLSDだ。
その名称の通りの幻覚作用と感覚の鋭敏化が伴い、芸術分野でもインスピレーションを得るため使われていたという。
幻覚効果はMDMAの比じゃないぞ。
最強の幻覚剤と呼んでも過言ではない。
いちおう致死量もあるんだが、死亡例は毒性より幻覚が原因の事故や自殺が圧倒的に多い。
負の方向に思考が歪んで自殺に走ったり、万能感を得たために無謀な行動を取って事故死したりとな。
薬効が消えてから、見てしまった幻覚への恐怖や狂気に耐え切れず、自ら命を絶ったケースもある。
覚醒剤が興奮を高めるメカニズムと違って、LSDが幻覚を引き起こす原因は未だに不明だ。

本来のLSDは透明な結晶なんだが、主に液体の形で製造される。
液体なら固形物より加工が楽だろう?
現にLSDは様々な形状で流通している。
ありきたりな錠剤、カプセル、ゼラチン状……。
今回のケースは紙片に吸い取らせたペーパー・アシッドというものだ。

ちなみに幻覚剤というのは様々な神話や民話の題材にもなっている。
古代のシャーマンなどが薬理作用による幻覚を神託として伝えていたわけだな。
幻覚作用や麻薬作用のある植物を宝として崇めるのは、世界中の様々な地域で見られた信仰形態だよ。

10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:44:06 ID:fIr51Oz9
支援
11Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:44:28 ID:Tv0+gs1y
これら三種類の他に、マリファナ、即ち大麻などを別系統として分類する向きもある。
大麻もなかなか歴史が古くてね。
アヘンほど古くはないが、紀元前から薬品として用いられてきた。
無論、宗教との結び付きもかなり強い。
古代インドのバラモン教では神への奉納物とされ、ゾロアスター教では薬草として扱われている。
日本人に馴染み深い神道や仏教でも頻繁に使われてきたんだぞ。
ただし、薬用というより繊維としての利用が中心だがな。
神道では神聖な植物と考えられ、注連縄等に使われているどころか、皇室への貢物にもなっていたくらいだ。

大麻を乾燥させたものをマリファナといい、樹液を固形化させたものをハシシという。
ハシシは元々はイスラム圏の単語だ。
英語で暗殺者をアサシンというだろう。
これはイスラム教のニザール派が、大麻を餌に暗殺者を用意し、対立者を暗殺させていたという伝説に由来する。
確かにニザール派は暗殺も手段としていたが、大麻を使っていたかどうかは眉唾だ。
そもそもハシシという言葉は、当時のシリアでは罵倒語として一般化していた。
口語訳するなら「この麻薬中毒者め」くらいのニュアンスだろう。
また、暗殺教団の伝説とは別に、謎の老人に浚われた若者が麻薬で快楽の極地を与えられ、
再び味わいたければ標的を暗殺するよう命じられた、という伝説がある。
これらの事象が西洋人に同一視され、大麻を用いる暗殺教団の出来上がりというわけだ。
十八世紀は東洋学が大流行していたからな。
連中の大好きな『東洋の神秘』を感じさせられる事柄だけに、あっさりと受け入れられてしまったんだろう。


さて、白澄里緒が配っていた薬は覚醒剤ではない、というのは分かってもらえたかな。
大麻もLSDも覚醒剤とは別種の麻薬だよ。

……LSDが見せる幻覚だと?

馬鹿を言え。幻覚剤の作用は幅が広すぎるんだ。
次回の服用時どころか、一瞬先の知覚すら予測できない。
今までみたいに一言で説明するのは困難だ。
まとめるだけで学術的な文献が出来上がるぞ。

――大雑把に言うなら、知覚、感情、意識に変化が現れる。

物の形状や遠近感が歪む、視界が波打つ、色彩が強烈になる、音の聞こえ方が変わる。
あるはずのない物が見える、幾何学的な模様が見える、色を見ると音が聞こえる、音を聞くと色が見える。
感情が鋭敏となる、環境の変化に過剰な反応を示す、凄まじい幸福感を得る、想像を絶する恐怖感に襲われる。
記憶を再体験する、歴史や神話と自分を混同する、宗教的ないしは哲学的な幻想に溶け込む感覚を得る。

ほら、少し並べただけでこの量だ。
芸術家や音楽家がインスピレーションを求めて服用したというのも分かるだろう。
当然、一度にすべてを体感するわけではない。
同じ人間が同じ量だけ服用しても、同じ幻覚を見るとは限らない。
服用時の精神状態、肉体的コンディション、個人の性格、服用条件、周囲の状況、薬物経験……様々な要素に左右されるんだ。

確か黒桐は、例の大麻とペーパーを同時に試して、目に映るもの全てが食べ物に思えた、とか言っていたな。
そういう幻覚を見る奴もいるということだよ。


――そうだな。
精神的に追い詰められたときの幻覚は、きっとろくなものではないだろうね。



   ◇  ◇  ◇



12Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:45:11 ID:Tv0+gs1y
夜はなおも深く、静かに町を包んでいる。
微かに吹く風は冷たくもなく、暖かくもない。
季節感というものが欠落しているようであった。

「あぅ……あ……」

D-4中央、円形闘技場。
その外郭に縋るようにして、田井中律は独り蹲っていた。

「……ぅん」

右手の人差し指と中指を口に挿し入れ、舌の付け根を探らせる。
壁に突いた左の指先が、壁面を削るように曲げられる。
石材の強度に敵うわけもなく、指の方が削られて薄皮を失っていく。
闘技場の窓を風が吹き抜け、管楽器のような低い音を立てる。
しかし、その音は律の意識には届いていなかった。
ボンッという破裂音が、頭の中で何度も何度も反響して、それ以外の音を駆逐していた。
――殺された。
――自分と同い年くらいの子が殺された。
飛び散った赤色と、それに混ざっていた灰色が目に焼きついて離れない。

「っぐう……」

暴れる舌を押さえ根元を強く圧迫する。
唾液が指を伝い、手首を流れて袖口を濡らす。
唇からも垂れて糸を引き、石畳の道に染み込んでいく。
視界がチカチカと明滅する。
明るく、暗く、明るく、暗く。
ぐにゃりと歪むフラッシュの中、シんだ先生の貌が浮かんで消える。

「……えうっ」

胃が痙攣するように収縮し、食道を熱いものがせり上がる。
律は口腔から指を引き抜いた。
粘膜を焼く灼熱が喉を逆流する。
飲み下そうとする反射を必死に堪えて、律は両手を壁に突いた。
ごぽ、と喉が鳴る。
苦い酸味に味蕾が蹂躙される。
律は身を震わせ、口内に溢れた胃液を吐き戻した。
薄く色のついた酸が壁際の側溝で飛沫を立てる。
一度だけでは収まらず、二度三度と胃が震え、その度に吐瀉を繰り替えす。
喉を逆上る苦痛に自然と涙が滲んでくる。
できることなら忌まわしい記憶も吐き出してしまいたい――

「――っ! ――っ」

けれど、駄目だった。
強く思えば思うほど記憶は強くなり、心を蝕んでいく。
あの男は殺せと言った。
カギ爪の男以外を殺せと言った。
もしそれを拒めばクスをリ与えないとも言っていた。
当然だが、律が持つ麻薬の知識は酷く乏しい。
『覚醒剤を飲ませた』と脅されて、それらしい症状が現れれば、疑いを差し挟むことすら不可能である。
ペーパーによる摂取はわずか0.001mgでも効果を発揮するLSDならではのもので、覚醒剤に適した摂取方法ではない。
多少の知識があれば、与えられた薬物の正体を見抜くことが出来ただろう。
しかし、律にとっては覚醒剤だろうとLSDだろうと関係ない。
薬物を飲まされたということ自体が重要なのであり、恐怖であった。
律は肩で息をしながら立ち上がり、あてもなく歩き出そうとした。
――が。
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:45:57 ID:YtFi8cwG
しえん
14Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:46:05 ID:Tv0+gs1y
「……あれ……?」

ぐらりと世界が揺らぐ。
唐突に、地面が柔らかくなったかのような錯覚。
貧血を起こしたときの眩暈と似た、けれど明朗な意識の中で、律は地面へと吸い寄せられていった。

地面が波打つ。
草木が蠢く。
夜空の星はあまりにも鮮やか。
風の音に合わせて点滅する視界。
がちがちと歯が鳴るたびに、色とりどりの火花が弾けて消える。

世界が廻る。
秒針が廻る。
ネズミが廻る。
廻る廻る廻る廻る――
サカシマにサカシマにサカシマに――

「なんだよ……これ……」

律は地面に爪を立てた。
どうにかして起きようと、手足を必死に動かす。
けれど薬効によって歪んだ五感はまともに機能せず、うつ伏せに倒れているのが精一杯だった。
目の前には、道を舗装する石材に食らい付いた右手がある。
細い右手。
白い右手。
細くて白くてぐにゃぐにゃでぶるぶるでしわくちゃで――
膨らんで萎んでミイラになって溶け出して起き上がって蠢いて元に戻って――

「……ぁ」

無理やりに体勢を仰向けに変える。
服がざらりと擦れる音が、奇妙に間延びしたエフェクト付きで頭に響く。
鼓膜が音を捉えるたびに多彩な色彩が揺れ動く。
クスリのせいなのかな――
律は胡乱な思考回路の中でそう呟いた。


―――――は死んだ。
首を吹き飛ばされて死んだ。

―――――は死んだ。
頭を撃ち抜かれて死んだ。


男は言う。
クスリが欲しければ人を殺せと。
カギ爪の男以外をみんな殺せと。

もし言うことを聞いたらどうなるんだ?

きっと死ぬのだろう。
自分のせいで人が死ぬのだろう。


――の少女は死んだ。
首を吹き飛ばされて死んだ。

黒髪の――は死んだ。
頭を撃ち抜かれて死んだ。
15Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:46:47 ID:Tv0+gs1y


分からない。
殺し方が分からない。
殺すときのココロが分からない。

知らない。
そんなの知らない。
誰かを殺すなんて知らない。

でもきっと苦しいんだ。
クスリが切れると死ぬほど苦しいんだ。
だって、テレビでそう言ってたから。


だから――


黒髪の少女を殺す。
首を吹き飛ばして殺す。

黒髪の少女を殺す。
頭を撃ち抜いて殺す。


澪を、殺――


「――だ、め――」


律は強引に身を起こした。
狂った視界の只中で、胸の奥が急速に冷えていく。
考えてはいけないことを考えてしまった。
思ってはいけないことを思ってしまった。
焦燥は恐怖に取って代わられ、強迫観念のように律の背中を押す。
手と膝を突き、無我夢中に路上を這い――目の前にあった脚に縋りついた。


それが何者なのか確かめることすらせずに。


「やっぱイカれちまってんのか……死なせた方が慈悲って奴だな、こりゃ」


銃声。



   ◇  ◇  ◇


16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:47:43 ID:fIr51Oz9
支援
17Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:47:53 ID:Tv0+gs1y
息が、苦しい。



ぱしゃぱしゃって音がする。



口の中が水っぽいのでいっぱいだ。



体が浮かんでるみたい。



ふわふわ?


ぷらぷら?


くらくら?



……そんな気分。



きっと天罰が下ったんだ。



澪のことを―してしまえと、一瞬でも思ってしまったから。



だから、苦しいのは当たり前だ。



きっと、そうだ。
18Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:48:39 ID:Tv0+gs1y
   ◇  ◇  ◇



「……けほっ! けふっ……!」
「ああっ、ごめん!」

少女がむせ返ったのを見て、彼は慌ててペットボトルを離した。
円形闘技場の入り口から少し入った物陰に、少女の咳き込む音が反響する。
虚ろな眼差しの先には、黒い服に黒縁眼鏡の黒い髪をした青年の姿。
彼は横たわる少女の上体を片腕で支え、吐瀉物で汚れた口を漱がせていたのだ。
その途中に少女が意識を取り戻し、無理に呼吸をしようとして溺れかけ、今に至る。

「大丈夫、もう少し眠っていてもいいから」

彼は可能な限り優しい声を掛けながら、服の裾で少女の口元を拭った。
傍らに置いてあった自分のデイパックを引っ張り寄せて、少女の頭の下に敷いて枕にする。
その間も、少女は焦点の定まらない瞳で、天井をぼうっと見続けていた。
彼は少女が持っていたビニル袋を握り、辛そうに目を細めた。

「LSDだと思います」
「……LSD?」

暗がりから声が返る。
見れば、妖艶なローブに身を包んだ女がそこにいた。
少女を介抱する彼に対し、通路の奥から興味の薄そうな視線を向けている。
もっともローブのフードに遮られて、彼からは表情すら伺えないのだが。

「麦角やアサガオの一種から抽出される幻覚剤です。近年は化学合成されていますけど」
「キュケオンみたいなものかしら? 使い物にならないなら捨てていくわよ」

女の声に少女への憐憫は欠片もない。
彼は視線を落とし、釈明するように二の句を次いだ。

「一枚だけの服用なら、たぶん四時間前後で効果が切れるはずです。
 大量に摂取したか、相当な常習者でもない限り、しばらくすれば元に戻ります」

意識が魔術の影響下にあるとはいえ、意のままに操られる機械になったわけではない。
魔術によって架された条件を逸脱しない範囲であれば、普段の彼と同じ思考をし、同じ行動を取るのだ。
故に、彼は彼自身の意思で少女を助けた。
厳密には、少女を助けるよう女に頼んだというのが正確なのだが。

「それならいいわ」

音も気配も一切伴わず、女が少女の傍に現れる。
女が彼の主張を受け入れたのには幾つかの理由がある。

一つは、いつでも切り捨てられる手駒としての利用価値。
無論、こんな魔術師でもない小娘に戦力など期待していない。
だが小間使いとして使う程度なら、むしろ脆弱なほうが反逆もせず扱いやすいだろう。
優勝直前、最後の最後で処分するのも簡単だ。
高潔な騎士たるセイバーや、お人好しなそのマスターに対しては、盾としての価値も見出せる。
この哀れな少女を手にかけることなど、連中にはできはしまい。

もう一つは、生贄としての用途。
魔術師でない人間は魔力を生成する能力を持たない。
たまに少量ながら保有している者もいるが、量は高が知れている。
しかし、ただの人間からでも魔力を得ることは可能なのだ。
命を奪いかねない乱暴な方法ではあるが。
それに魔術と生贄の密接な関係については、今更説明すべきことでもあるまい。
19Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:49:25 ID:Tv0+gs1y
そして最後の理由。
恐らくはこれが最大の――

「もう少し髪が長いほうが似合うと思うんだけど――」

女は少女のカチューシャを外し、髪を指先で整えた。
耳元から頬へ撫でるように手を沿わせ、親指で唇に触れる。
幻覚に酩酊する少女の無防備な顔を眺めながら、女は妖艶に微笑んだ。

「――可愛い子ね」



   ◇  ◇  ◇



D-4南東部、市外周辺。
島を南北に流れる川から五〇〇メートルほど西のカフェテリア。
アリー・アル・サーシェスは、そのカウンター席に腰を下ろしていた。
当然ながら、周囲に客の姿はない。
それどころか店員すら見当たらない始末だ。
E-4の民家で休息を取った後、サーシェスは周辺の偵察に乗り出していた。
戦闘の趨勢は地の利に大きく左右される。
まさか地図に書かれていることが全てではないだろう。
そしてここが誰にとっても未知の島である以上、早い段階で情報を得ているのはそれだけで有利だ。
だが無計画に歩き回るのは愚行だ。
サーシェスは範囲を半径一キロと定め、目立つ施設をチェックして回ることにした。
そうしてやってきたのが、D-4にそびえる円形闘技場であった。

「ちっ……」

ショットガンの銃身を開き、つい先ほど発砲した二発分を新たに装填する。
この程度は歴戦の傭兵であるサーシェスには日課も同然だ。
手早く弾込めを終えて、自分で淹れてきた冷水を呷る。
一連の仕草からは明らかに感情が滲み出ていた。
適当にグラスを放り、ショットガンとデイパックを担いで立ち上がる。

「稲妻の出る刀といい、さっきのアレといい……」


では、その感情とは何か?


憤怒?


苛立ち?


殺意?


……否。


「面白ぇ! とことんまで殺りがいがありそうだ!」

サーシェスはショットガンの銃口を彼方に見えるコロッセウムへ向け、高らかに吼えた。
口元に歓喜と愉悦を滲ませて。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:49:40 ID:YtFi8cwG
支援
21Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:50:32 ID:Tv0+gs1y
 


ほんの十数分前。
サーシェスはコロッセウムの近くでイカれた餓鬼を見つけた。
恐怖に耐え切れず精神が破綻したのか、恐怖から逃れようと変な薬物に手を出したのか。
どちらにせよ生かす意味はないと考えて、その子供を殺そうとした。
が、トリガーを引く寸前に狙いを変え、散弾を虚空へと放った。
原因は、影だ。
円形闘技場の周辺には、月明かりによって投射された闘技場自身の影が出来ている。
そこに突如として人影が混ざった。
サーシェスは影の形状から闘技場の外壁の上に人がいると判断し、即座に狙いを変えたのだ。
狙撃のテクニックとして、一人目を敢えて殺さず痛めつけ、助けに来た二人目以降を撃ち殺すというものがある。
サーシェスの脳裏を過ぎったのは、それだ。
子供を囮とした狙撃――十分に有り得る。
散弾は距離が遠退くごとに威力と命中率が低下するが、それでも威嚇には十分だ。

しかして放たれた散弾は、命をもぎ取る掌のように広がりながら、標的へと殺到した。
けれど標的に食らいつくことは叶わず、強靭な防弾ガラスに阻まれるかのように霧散する。
コロッセウムの壁にいたのは、魔女としか言いようのない風貌の女であった。

理由を問われれば、直感としか答えようがない。
それほどの迅速さでサーシェスは後方に飛び退いていた。
地形の関係上、円形闘技場は周辺より少し高い位置に建てられている。
そのためサーシェスの数歩後ろには、二メートルほどの落差を挟んで別の道が通っていた。
サーシェスが低い柵を跳び越えた瞬間、魔女の手元が眩く光り、光の弾が繰り出された。
光弾は柵を吹き飛ばしてサーシェスの頭上を掠め、夜闇へと消えていった。

――小型のビーム兵器か!?

そう考える暇もなく、サーシェスは生垣に落下した。



胸に踊るは驚きと期待。
そして今、サーシェスは夜に霞むコロッセウムへ布告をしている。

「待ってな、魔女さんよぉ! 手前ェもブッ殺してやるからなぁ!」









【D-4/円形闘技場 エントランス/一日目/黎明】
【田井中律@けいおん!】
[状態]:情緒不安定、幻覚症状
[服装]:下着とシャツが濡れた制服(汗と水で)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(懐中電灯以外)、九字兼定@空の境界、その他不明0〜2個
[思考]
基本:死にたくない。皆と会いたい。特に澪と会いたい。
1:殺したくない
2:苦しいのは嫌
※二年生の文化祭演奏・アンコール途中から参戦。
※レイの名前は知りません。
※ブラッドチップ服用中。
22Murder Speculation Part1 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:51:13 ID:Tv0+gs1y
【キャスター@Fate/stay night】
[状態]:健康、魔力消費(微)
[服装]:魔女のローブ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3個(確認済み) 、バトルロワイアル観光ガイド
[思考]
基本:優勝し、葛木宗一郎の元へ生還する
1:奸計、策謀を尽くし、優勝を最優先に行動する
2:『神様に祈る場所』『使者の眠る場所』のどちらかに赴き、可能なら神殿とする
3:会場に掛けられた魔術を解き明かす
4:相性の悪い他サーヴァント(セイバー、アーチャー、ライダー、バーサーカー)との直接戦闘は極力避ける。
[備考]
※18話「決戦」より参戦。


【黒桐幹也@空の境界】
[状態]:健康、キャスターの洗脳下
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ブラッドチップ・2ヶ@空の境界
[思考]
以下の思考はキャスターの洗脳によるもの。
1:キャスターに協力する。
2:少女(田井中律)を介抱する。
※参戦時期は第三章「痛覚残留」終了後です。




【D-4/南東 カフェテリア/一日目/黎明】
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:疲労(小)、腹部に打撲の痣、額より軽い出血。
[服装]:パイロットスーツ
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数75%  信長のショットガン@戦国BASARA 8/8 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 
[思考]
1:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
2:周辺を見て回る
3:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。
4:片倉小十郎との決着をいずれつける。
【備考】
※第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※G-5にナイフ@空の境界が落ちています。
※ガトリングガンは予備弾装とセットで支給されていました。
23 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 01:51:58 ID:Tv0+gs1y
以上で投下は終了です
支援ありがとうございました


ちなみにタイトルにPart1とついていますが、別に分割話ではありません
これで全部です
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:57:56 ID:YtFi8cwG
投下乙です
よかった、律はまだ生きてる。生きてはいるぞw
ロクでもない幻覚を見たがとりあえず無事か
魔女と戦争狂との対決はどちらに軍配が上るのか?
どちらも簡単には負けないだろうが
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 02:09:10 ID:3b/vhJpd
投下乙
でたー!キャスターさんの少女趣味だーっ!
うん、キャスターはそうだよなー。かわいい女の子ゲットしたら着せ替えしなくちゃ嘘だよなー。
律もアニメ出展だから澪にこだわりまくりでいいなwこのロワで果たして再会出来るのか……?

と、まあ麻薬の話やらも詳しくてなかなか勉強になるなーと思った。コクトーは流石そういうの詳しいな。つーかやっぱりとーこさん話長いw
さりげなく真・アサシンの元ネタがあるのも面白かった。
26 ◆b8v2QbKrCM :2009/11/05(木) 02:59:08 ID:Tv0+gs1y
何箇所か誤字脱字が見つかったので、修正しておきます

>>7>>11
>白澄里緒
白純里緒

>>8
>この世の物とは思えない快感を得られるそうだが、禁断症状の重篤さもこの世の物とは思
この世の物とは思えない快感を得られるそうだが、禁断症状の重篤さもこの世の物とは思えないらしい。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 03:37:43 ID:dZjEtuC6
>>伊達政宗、神原駿河、ゼクス・マーキス、一方通行、プリシラ、明智光秀で予約。
おーっと!!ついに武将同士の邂逅が来るかぁ!!
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 04:54:26 ID:Dl0eaFV6
またカオスなメンツだなw
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 05:05:59 ID:wQPRJZlC
予約した人、最初から五人混戦書いてとばしてた人でしょw
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 10:39:00 ID:/0SEsGeZ
投下乙です
律はもうダメだと思ったら間一髪助かったか
でもまだまだ危ういな、幹也大丈夫だろうか
それにしても長い、長いよ、橙子さんwww

それと新スレ立て乙です
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 10:42:23 ID:jNURQWbr
議論スレにて、バーサーカーの修正稿についてが議題になっています。
また、修正要求の方法について・議論スレの使い方について発議がされています。(バーサーカーの件の結論が出た後の議題になる予定)
意見のある人は議論スレまでお願いします。
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 12:04:53 ID:Qw+tTxyE
投下乙!
長い、長いよ橙子さんwww
さすがは説明おば(ry
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 15:48:24 ID:3BfcRUzC
予約でグラハム衣に利根川が加わったかぁ
でもあの潰しあい麻雀勝負自体は一時から三時間ごとに開催なんだよな
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 16:05:57 ID:I7wCehuT
まずはハムに教えないとなw
35 ◆lDZfmmdTWM :2009/11/05(木) 17:18:08 ID:LvBqJLT3
短いですが、信長投下いたします。
36魔王、駆け行く ◆lDZfmmdTWM :2009/11/05(木) 17:19:13 ID:LvBqJLT3
火口より降り立ち、静かに麓へと歩き出した第六天魔王。
立ち塞がる全てをただ滅するのみ。
それだけが目的である信長にとって、これといった目的地というものは特に無い。
強いて言うならば、人が集まりそうな場所という所だろうか。

「しかし、本多忠勝。
 濃が仕留めたと聞いていたが、生き延びていたとは。
 戦国最強の称号は飾りではない、ということか」

ふと、信長は先程見た名簿の内容を思い返していた。
そこに記されていた名の内、知っている者は四人。

忌むべき謀反人『明智光秀』
戦国最強『本多忠勝』
奥州筆頭独眼竜『伊達政宗』
甲斐の若き虎『真田幸村』

彼等もまた、信長同様にこの地へと連れ去られたのだろう。
死亡したと聞いていた忠勝が生き延びていた事は流石に予想外ではあったものの、
信長にとってこの事態は、言わば怪我の功名だろう。
上杉は軍神を失い、武田も甲斐の虎を失った。
徳川の家康は既に―――戦国最強が生き延びていたという事実こそあるものの―――仕留めた。
多くの名のある勢力を打ち潰してきた今や、織田軍に対抗できる者は限られている。
そしてその限られた者達の内、実に三人もの武将がこの場にいる。
更には、忌々しき謀反人たる明智光秀までも……信長にとって、始末すべき者達が揃っているのだ。
37魔王、駆け行く ◆lDZfmmdTWM :2009/11/05(木) 17:20:59 ID:LvBqJLT3
「……是非も無し」

しかし、信長は然程強くは意に止めてはいない。
彼にとって、立ち塞がる相手は誰であろうとも『敵』に過ぎない。
知っている相手だろうがそうでなかろうが、日の本の国の人間であろうがなかろうが。
そんな事は、どうでも良い話なのだ。

あるのはただ一つ、絶対的な意志。
この会場に集う全ての者も、そして裏で糸を引く愚劣な帝愛も。
全てを容赦なく蹂躙し、奪い、叩き潰すのみ。

「我が覇道を阻む者には、死あるのみよ……!!」



□ ■ □ ■ □ ■



歩く事しばらく。
深く暗い森を抜けた信長は、その建物の門前へと辿り着いた。
先ほど、山の頂上からもはっきりと視認する事が出来た見覚えのある所有物―――安土城。
天下を見下ろす山の頂にそびえる、織田軍が誇る未曾有の大城砦。
その模造品だ。

「我が居城を、こうも正確に模すか。
 この『でばいす』といい、銃といい、その技巧のみは認めてやろう、帝愛よ」

信長からすれば、己が根城を模造された事に対する怒りは勿論あるが、それ以上に帝愛の技巧は評価していた。
城主である彼の目から見ても、本物と遜色なき実に精巧な模造品であった。
ならばと、迷う事無く信長は足を踏み入れる。
人の気配をこの城からは一切感じられなく、殺し合いに乗った者にとっては意味のない立ち寄りだろう。
しかし、その内部を熟知している信長ならばまた話は別になる。
彼は入手に来たのだ。
他の参加者が集まる場所へと向かうに当たり、最も効率が良いその手段を。
38魔王、駆け行く ◆lDZfmmdTWM :2009/11/05(木) 17:22:48 ID:LvBqJLT3
門を潜り、しかし城の内部には入らず。
信長が目指した場所は、本丸を離れ隅に位置する小さな小屋。

「フッ……やはり居おったか」

軍馬の住処たる、馬小屋……!!
信長が手にしようと考えた移動手段とは、ずばり馬だった。
戸を開き中を除けば、殺し合いのバランスを崩さぬ為だろうか、繋がれているのはたったの一頭のみ。
しかしそれは―――奇妙な装飾を施された点を除けば―――実に、見事な軍馬であった。
迷う事無く、信長はその馬を小屋の外へと出す。

「何処のモノかは知らぬが、見事な軍馬よ……我が脚となるに相応しいわ」


蹄鉄の音が、静かな闇を切り裂き鳴り響く。

向かうは人里―――南東の方角。


【C-3/北西/一日/深夜】
【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:健康
[服装]:鎧
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、おもちゃの兵隊(27/30)@とある禁書の魔術目録、伊達軍の馬@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン99本(合計100本×各30発)
[思考]
基本:皆殺し
1:参加者が集まるだろう町へ向かう
2:目につく人間を殺す
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
※B-3の城は、安土城の精巧な模造品の様です。
39魔王、駆け行く ◆lDZfmmdTWM :2009/11/05(木) 17:25:36 ID:LvBqJLT3
【伊達軍の馬@戦国BASARA】
奥州筆頭伊達政宗が駆る愛馬。
見事な名馬なのだが、どういうことなのかバイクのハンドルとマフラーっぽい装飾がつけられている。
その為、ファンの間では「馬イク」と呼ばれていたのだが、後にアニメスタッフまでもが「馬イク」と
口にしたことから、もはやその名が公式として定着している。


以上、投下終了です。
五飛がバイクを現地調達していたので、信長にも馬イクを現地調達させてみました。
何か問題点等がありましたら、ご指摘お願いいたします。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 18:06:59 ID:/0SEsGeZ
投下乙です
信長は移動手段を手に入れて行動範囲がぐっと広がったな
でも馬イクだから政宗と会った時に信長振り落とされそう

ところで前スレはもう埋めておくべき?それとも短い作品を待つべき?
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 19:33:26 ID:vasRhjQX
投下乙です
現地調達とかもロワの戦術ですからいいと思いますよ
さて、次はどこに向かうのか……
42 ◆9kuF45dxA2 :2009/11/05(木) 21:02:54 ID:RDddBfVg
バーサーカーの修正稿を投下します
43 ◆9kuF45dxA2 :2009/11/05(木) 21:05:27 ID:RDddBfVg


戦国最強との戦いを中断された狂戦士は海沿いに北上していた。
なぜかと問われればその本能の赴くままに、というところだろうか。
理性を奪われた彼に思考する力はほとんど残っていない。参加者に出くわしたら殺す。
彼はバーサーカーだ。その本能のままに暴力を振りまき殺戮する事が存在理由。強さこそが全て。
故に負けるわけにはいかない。彼の帰りを待つ白い少女のためにも、必ず生きて帰らなければならない。
この会場に存在する全ての参加者を鏖殺しこのゲームを終わらせる。
あらゆる障害を破壊し、あらゆる敵を消滅させる。それはこの殺し合いを終えた後も変わらない。

「────────────────」

感じる。
彼の視線は遥か北東に向けられていた。その先にあるものは、学校。
狂戦士の剥き出しの本能、研ぎ澄まされた感覚が直感する。
あそこでは既に殺し合いが始まっている、と。
ならば彼のするべきことはただ一つ。
撃滅し、蹂躙し、粉砕し、叩き潰し、打ち砕き、殺し尽くす事。それだけだ。
彼はその手に持っていたデイバックを投げ捨てる。その中に殺しあいに有用なものは入っていないことはさきほど確認済みだ。
しかしその眼は、デイバックの口からざらりとこぼれたものに向けられていた。



物を投げる、という行為はあらゆる飛び道具の原点だ。
遠くから一方的に相手を攻撃できる、という点において飛び道具は画期的なものだった。
最初は石を投げるだけだった。そしてより遠く、より強くと次々に改良と工夫が重ねられていった。
単純に投げるのではなく、遠心力や張力を利用した投石機やスリング、弓矢などの登場だ。
ただしそれらの原動力は全て人の腕力によるもの。更なる高みを目指そうとすればそんなものでは到底足りはしない。
そこで登場したものが銃だ。火薬による運動エネルギーはそれまでの飛び道具とは一線を画す力を人類に与えた。
だがよく考えてみて欲しい。投石も、銃も、“遠くから相手を攻撃できる”という点においては何も変わらないということを。
飛び道具とは、要するに弾が標的に当たって殺せればいいのだ。それが投石によるものだろうと銃によるものだろうとそんなものは関係無い。
当然威力も射程も、投石と銃弾では比べ物にならないほどの開きがある。
所詮人の身体能力には限界があり、人間の筋力では火薬の力を越えることはできない。投石では銃に勝てないのだ。
つまり、もし仮に炸薬の代わりに“腕力”、銃弾では無く“缶詰”を使ったとしても、
たとえそれが“投石”と呼ばれるものであろうとも、それが銃よりも優れた力を持つのならば、それを“銃”と呼んでしまってもよいのではないのだろうか────────

44 ◆9kuF45dxA2 :2009/11/05(木) 21:07:25 ID:RDddBfVg
彼が見ていたモノ────────それは、缶詰だ。
なんてことは無い、彼に支給されていた普通の缶詰。スーパーやコンビニに行けば1個100円くらいから売っている保存食。
しかしそんな普通のことは問題ではない。何しろ彼はバーサーカー。彼の手にかかれば森羅万象あらゆるものがたちまち殺人兵器へと変貌する。当然この缶詰とて例外ではない。
彼は無数に散らばった缶詰の中から一つを取り上げ、その双眸を周囲の民家へと移す。
何をするのか? そんなことはわかりきっている。




“投げる”のだ。




どこにでもある、ありふれたはずの缶詰は巨人の剛腕によって埒外のパワーを叩き込まれ、その存在を日常から異常へと昇華させた。
唸りを上げるサバのミソ煮缶はもはや携行火器などとは比べ物にならない速度で大気を切り裂き、発生した衝撃波がそのブリキのボディを散弾銃よろしく爆裂させる。
切り刻まれた金属片と鯖のほぐし身が超音速で標的を直撃し、哀れな民家はたったの一撃でその半分以上を消し飛ばされていた。
その威力、その脅威たるや、参加者の一人である“超電磁砲”と比べても一切見劣りしない。
試し撃ちを終えた巨人は幾つもの缶詰を腰巻の間に“装填”していく。
右手に大斧、腰に弾丸、歪な猟銃を備えた異形の狩人は改めて学校を睥睨する。
準備は整った。あとは、殺すだけだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

鉛色の巨人が咆哮する。
その一撃は破城の鉄鎚。その肉体は不落の城塞。その咆哮は覇軍の行進。
踏みしめた足が大地を抉り──────────殺戮が、始まる。


45 ◆9kuF45dxA2 :2009/11/05(木) 21:10:31 ID:RDddBfVg
【E-2/エリア南西部/1日目/深夜】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:健康、狂化
[服装]:上半身裸(デフォルト)
[装備]:武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA、食料(缶詰セット)
[道具]:無し
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。
2:学校へ向かいその場にいる者を皆殺しにする。
3:本多忠勝とはいずれ決着をつけたい?
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3
 ・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。
  現在残り蘇生回数6回。
 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
  現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
 ・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。

※参戦時期は 14話 理想の果て直後です
※バーサーカーの咆哮がE-2全域及び周辺マップに響きました。
※食料以外の基本支給品が入ったデイバックがE-2南西部に放置されました。
46 ◆9kuF45dxA2 :2009/11/05(木) 21:12:22 ID:RDddBfVg
投下終了。題名は「狂戦士の夜」です
47 ◆fQ6k/Rwmu. :2009/11/05(木) 22:17:17 ID:6ZFXh944
投下乙です。
缶詰弾……こえー。バーサーカーにかかれば缶詰すら弾丸と化すのか。

では自分も投下開始します。
「おお……ここが『エキ』なるもの……なんと面妖な屋敷か……!
 枢木殿! ここに『電車』なるものがおるのは誠でござるか!?」
「ええ、多分……ですけど、さっき説明したように電車っていうのは真田さんが考えているようなものじゃ――」
「うおおおおおおお! いざ、敵の本陣へぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっと!? 待ってください!!」


 D-6に存在する駅。
 そこへ向かう通りに2人の男の姿があった。
 『黒』と『紅』、並べばその服色のコントラストに一瞬目を奪われそうな2人組だった。

 枢木スザクと真田幸村。互いに主の為に行動している2人である。
 尤もスザクの主はここにいることが確実、幸村の主は不明、と状況は異なる。
 そんな中、幸村の定めた目的地が『敵のアジト』だった。
 どうにも単純思考な幸村が、『敵』ともろ名称が入っているここに向かう気持ちを抑えられないのはある意味仕方ない。

 当然スザクも説得は試みた。きちんと『アジト』の意味も教えて。
 だが……幸村は曲がらなかった。
 むしろ『アジト』が『隠れ家、潜伏地』という意味だと知ってなおさら行く気にブーストがかかってしまったのだ。
 そこが敵の本拠地に間違いないと。

 一方、冷静思考のスザクはそうはいかない。
 『敵のアジト』などと堂々と名称を書くような施設に、本当に主催たちがいるわけがない。
 これは罠。あるいは『敵のアジト』とは単なる名称に過ぎず、絶対に主催たちはここにはいないと何度も何度も言った。
 こんな勘違いで、地図の中では南寄りなここからよりにもよって北端まで行くのは正直非効率的だ。
 せめてこの辺りを調べつくして、ルルーシュもC.Cもここにいないと絶対の確信を得てから行きたい。

 もしかしたら、この真意をちゃんと幸村に伝えていれば彼は聞いてくれたかもしれない。
 ただ、言えなかった。どうしても自分の弱みを曝すようで。
 スザクはまだ幸村を信用しきれなかったのだ。それが、ここまでズルズルとなってしまった。

 幸村はスザクの説得にも全く折れず、わざわざ載せるわけがないという言葉にも。
『尋常にここで勝負をしたいという敵ながら天晴れな潔さでありましょうぞ!』
 という駄目な暑さで言い返され、『そんなわけがない』と言えば
『なれば枢木殿! 『敵のアジト』などというただの名称ならば、一体それは何のアジトなのでござるか!』
 と言い返された。


 これがスザクの心に迷いを生んだ。
 『敵のアジト』が主催の本拠地ではなく、ただの施設の名称、『学校』や『ホール』と同じだとしたら。
 これは『誰』のアジトなのか?

(まさか……いや、そんなはずが)

 もしそのアジトが他から移されてきたものだとしたら。
 『転送』という『魔法』をやってのけた帝愛だ。ありえない話ではない。

 その考えが一度浮かぶと、後はもう止めようが無い。
 どうしても、どうしても思ってしまう。その思考をとめられない。


 ここは『黒の騎士団』のアジトではないのかと。
 そして、ルルーシュやC.Cも同じことを考えていないかと。

(馬鹿な……あの2人が、こんな馬鹿らしい名称に目をつけるわけがない。
 絶対いない。絶対……でも……!)

「枢木殿!
 後生でござる!もし枢木殿の言うとおり、アジトに何もなかったならば!
 この幸村、心から謝罪申しあげますれば!どうか……!」

 さらに追随するのは幸村の懇願。
 迷いが生じ頭を下げ、ここまで頼み込まれては……スザクも折れるしかない。
 ここで意固地に断っても、彼と自分の間に溝が広がるだけだ。
 ここでグダグダとするよりは、やはり向かった方がいいのか。


「わかりました……ですがアジトに何も無かったら、すぐこっちへ戻りますよ」
「おお!かたじけないでござる! では、いざ参りましょうぞ敵のアジト!
 道のりは長くとも! この幸村にとっては!」
「……ちょ、ちょっと待ってください真田さん!」

 スザクは走り出そうとする幸村を頭のハチマキ掴んで止めた。
 急激に引っ張られ、一瞬変な姿勢になって跳ね上がる幸村、がすぐに着地。
 頭を抑えてこちらに怪訝な顔をする彼を見て、咄嗟に掴んだのを少し悪く重いながらスザクは言った。


「向かうって……電車、使いますよね?」
「デンシャ……とは如何様なものでござるか?」



 *****


(ここまで筋金入りだと……本当に戦国武将なのか、って信じそうになるな……)


 自分を武将だと思い込んでいるにしても、電車すらわからないとはかなりの筋金入りだ。
 それだけなりきってるという考えも出来るが、そうだとしたらこれはもう病的だ。
 だがそうでないとしたら……帝愛の魔法は時間すら遡ることができるというのか。


(……いや、まだわからない。まだ……)


「枢木殿!」


 スザクは幸村の声に我に返った。
 気が付けば、もう既にそこは駅の入り口。目の前には切符売り場。その横に改札口と別段変わった所ない普通の駅の入り口があった。

 で、そこで幸村は。


 ここは『黒の騎士団』のアジトではないのかと。
 そして、ルルーシュやC.Cも同じことを考えていないかと。

(馬鹿な……あの2人が、こんな馬鹿らしい名称に目をつけるわけがない。
 絶対いない。絶対……でも……!)

「枢木殿!
 後生でござる!もし枢木殿の言うとおり、アジトに何もなかったならば!
 この幸村、心から謝罪申しあげますれば!どうか……!」

 さらに追随するのは幸村の懇願。
 迷いが生じ頭を下げ、ここまで頼み込まれては……スザクも折れるしかない。
 ここで意固地に断っても、彼と自分の間に溝が広がるだけだ。
 ここでグダグダとするよりは、やはり向かった方がいいのか。


「わかりました……ですがアジトに何も無かったら、すぐこっちへ戻りますよ」
「おお!かたじけないでござる! では、いざ参りましょうぞ敵のアジト!
 道のりは長くとも! この幸村にとっては!」
「……ちょ、ちょっと待ってください真田さん!」

 スザクは走り出そうとする幸村を頭のハチマキ掴んで止めた。
 急激に引っ張られ、一瞬変な姿勢になって跳ね上がる幸村、がすぐに着地。
 頭を抑えてこちらに怪訝な顔をする彼を見て、咄嗟に掴んだのを少し悪く重いながらスザクは言った。


「向かうって……電車、使いますよね?」
「デンシャ……とは如何様なものでござるか?」



 *****


(ここまで筋金入りだと……本当に戦国武将なのか、って信じそうになるな……)


 自分を武将だと思い込んでいるにしても、電車すらわからないとはかなりの筋金入りだ。
 それだけなりきってるという考えも出来るが、そうだとしたらこれはもう病的だ。
 だがそうでないとしたら……帝愛の魔法は時間すら遡ることができるというのか。


(……いや、まだわからない。まだ……)


「枢木殿!」


 スザクは幸村の声に我に返った。
 気が付けば、もう既にそこは駅の入り口。目の前には切符売り場。その横に改札口と別段変わった所ない普通の駅の入り口があった。

 で、そこで幸村は。


「こ、この面妖なものはなんでござるか……柵ではない。なのに異様に並んでいる……!
 しかも正面には円形の一つ目と細長い口! これはもしや……入り口にて門番をする妖!?」
「あ、いや……それは改札…」
「怪殺とな!! 名前からしてなんと恐ろしげな!」
「いやですからそれはただの」
「だが!この真田源次郎幸村!!妖怪如きに臆しはせん!!敵のアジトへの道をふさぐならば!
 この鉄球を持って貴様ら、吹き飛ばしてくれようぞ!!」


 勘違いの突っ走りっぷりについていけないスザクを他所に、幸村はデイパックからその『鉄球』を取り出した。
 オレンジ色で、なぜか真ん中に横に線が入り目のような二つの丸、四つの楕円が上下に二つずつ配置されている。さっきは幸村が一目で『鉄球』だと判断し、スザクもそう思ったのだが――


 ひらり、とスザクの足元に紙が落ちてきた。
 それは幸村が鉄球を取り出した時に一緒に出てきたもので、幸村は気づかずそれが空気に乗ってスザクの足元に滑り込んできたらしい。
 ふとそれを拾ってみてみるスザク。それと同時に――


「くらええええええ!『怪殺』めがぁぁぁぁぁ!!」


 幸村が思いっきり振りかぶり、『鉄球』を改札目掛けてぶん投げた。


 ガン、と凄い音がして鉄球が改札から跳ね返り床を転がる。
 改札の方は少し凹んだだけで特にアクションはない。
 幸村はそれをまだ倒したと判断せずに。

「むううう! 未だ倒れぬか『怪殺』!
 なればもう一度……!」


 幸村が再び鉄球をぶん投げる為鉄球を拾おうと近づいた、そのときだった。


 幸村をもっと恐ろしい事態が襲った。



『ハロ ハロ』


「のうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 あまりの出来事に思わず腰を抜かしてしりもちを付いてしまう歴戦の武将幸村。
 それも仕方ないだろう。


 なぜなら、突然奇声と共に転がっていたはずの鉄球が突然二つの○を輝かせ、耳のようにパーツを展開させたのだから。しかも左右にころころ転がっている。


『ハロ ハロ。ナゲラレタ ナゲラレタ』


「な、こ、こ、ここは坂道ではないのに……!鉄球が転がっている……!独りでに!勝手に!
 
 ! そうか! これは『怪殺』の妖術! この鉄球に別の妖怪を憑かせたのでござるな!?
 面妖な!」


 が、そこはさすが武将。すぐに気を取り直してステンレスの物干し竿を振りかぶる。
 もとは自分の持ち物だが仕方ない。妖怪となってしまったならばいっそ破壊するしかない!


『ハロ ハロ。
 ボウリョクハンタイ ボウリョクハンタイ』
「ええいかどわかすな! 波浪波浪などと訳わからぬことを!
 妖怪よ、今こそ滅して」
「待ってください真田さん」

 物干し竿を振り下ろそうとした幸村の前に今まで静観していたスザクが立ちはだかった。
 その行動に幸村はすかさず物干し竿を止めてスザクを咎める。

「な、なぜ止めるでござるか枢木殿! その鉄球は妖怪となってしまったのですぞ!?
 危険で御座る! どいてくだされ!」
「いえ……壊すにしても、それはコイツから話を聞いてからです」
「話……?」

 困惑する幸村を尻目に、スザクは鉄球に振り返ると手元の紙を見せつけながら言った。

「『ソレスタルビーイングによって作られた独立型マルチAIを搭載したサポートマシン』。
 『ハロ』……であっているかい?」
『セイカイ セイカイ』

 おそらく肯定だと思われる音声をどこか嬉しそうに発しながら小さく跳ねる『ハロ』。
 一体どうやって跳ねているのかスザクは少し気になった。

「枢木殿……今のそなたの言葉が全くわからなかったのでござるが……」
「簡単に説明すると、コイツは妖怪ではなくてカラクリです」
「か、カラクリとな!? しかし、カラクリ人形は喋らないでござる! もしや誰か隠れているのでは!」
「いや、AIってことから多分コイツ自身が話してるんだと思います」
「えーあい……とは、帝愛の仲間でござるか?」


 スザクはハロについてどう幸村に伝えたらいいのか悩みながらも別のことを思考していた。

(こんな高度なAI……僕はまるで知らない。
 ましてや『ソレスタルビーイング』なんて組織は聞いた事も無い。
 この説明文の『MSの補助操縦』や『ガンダムデュナメス』という単語もだ。
 MS? ガンダムデュナメス? KMFの亜種にしたって、僕が聞いた事くらいあるはずだ。
 コイツがAIなら、色々と聞きださないといけないな。もしかしたらそこから何か得られるかもしれない!)


 困惑する幸村、思考するスザクをさておき、当の元凶であるハロはただ小さくはね続けていた。


『クルルギ ユキムラ。クルルギ ユキムラ。』



 *****


(喧しいな)


 駅で電車を待っていた両儀式に、幸村の騒々しく暑苦しい声が聞こえていないはずがなく。
 式は一旦ホームから降りて入り口近くの物陰に潜んでいた。

 聞こえてきた声は明らかに男の声が2種類。男とも女とも取れない機械音声みたいな声が1種類。
 さすがにノコノコと姿を出す気もなく、距離が開いている為会話の中身までは聞き取れず姿も確認は出来ないが、3人はいると見ておく。


(こんなところであんなに騒いでいる馬鹿が真剣に優勝を目指しているとは思わないが……だからといって油断は出来ないな)


 ここで接触するべきか。それとも無視して次に来た電車にさっさと乗ってしまうか。
 接触するにしても相手は選びたい。
 無能な味方は悪意ある敵と同等に厄介だ。こんなところで大声で騒ぐ奴に、自らの姿を曝したり情報を流していいものか。
 最悪、敵に自分の情報が知れ渡ってしまうかもしれない。
 そんな悪手は踏みたくない。


(さて、どうするか。…………にしても、少し聞こえた『ハロ』と言う言葉……妙な感覚がするのはなぜだ?)



【D-6/駅入り口・改札前/一日目/黎明】



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]: 健康、「生きろ」ギアス継続中
[服装]: ナイトオブゼロの服
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、バタフライナイフ@現実(現地調達品)、湿布@現実(現地調達品)、
     ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
 基本: ゼロレクイエム完遂の為、ルルーシュ、C.C.と共に生還する (特にルルーシュを優先)
 1: ルルーシュ、C.C.、名簿外参加者の中にいるかもしれないゼロレクイエムの計画を知る人間を捜して合流
 2: ルルーシュに危険が及ぶ可能性のある要素は排除する
 3: 確実に生きて帰る為の方法、首輪を外す方法を探す
 4: しばらくは幸村と共に行動
 5: 幸村と共に『敵のアジト』に電車で向かう。できれば止めたいが……
 6: ハロから情報を聞きだす。あとハロをどう幸村に説明したらいいのか。
[備考]
 ※ラウンズ撃破以降〜最終決戦前の時期から参戦。
 ※主催がある程度の不思議な力を持っている可能性は認めていますが、死者蘇生が可能という点は全く信じていません。
 ※少なくとも、『真田幸村』が戦国時代の武将の名前であることは知っていますが、幸村が本物の戦国武将だとは思っていません。
 ※もしかしたら『敵のアジト』が『黒の騎士団のアジト』ではないかと少し疑っています。


【真田幸村@戦国BASARA】
[状態]: 健康、右手に軽い打撲(治療済み)
[服装]: 普段通りの格好(六文銭の家紋が入った赤いライダースジャケット、具足、赤いハチマキ、首に六文銭)
[装備]: 物干し竿(ステンレス製)×2@現実、ハロ(オレンジ)@機動戦士ガンダムOO
[道具]: 基本支給品一式(救急セットの包帯を少量消費)、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考]
 基本: 『ばとるろわいある』なるもの、某は承服できぬ!
 1: 武田信玄のことは何があろうと守る
 2: スザクと共に行動、恩義に報いる為にも協力を惜しまない
 2: 『敵のあじと』に乗り込む
 2: 怪我をしている伊達政宗、名簿に記載されていない参加者の中にいるかもしれない知り合い、 ルルーシュとC.C.を捜す
 2: 主催を倒し、人質を救い出す
 2: これは戦ではないので、生きる為の自衛はするが、自分から参加者に戦いを挑むことはしない
 2: 争いを望まない者は守る
 2: 織田信長と明智光秀は倒す
 2: 何者でござるかこの『波浪』とやらは!!
※武田信玄が最優先であること以外、本人には優先順位をつけるという発想がありません。矛盾もありますが気づいていません。
[備考]
 ※長篠の戦い後〜武田信玄が明智光秀に討たれる前の時期から参戦。
 ※MAPに載っている知らない施設のうち、スザクにわかる施設に関しては教えてもらいました。
 ※スザクとルルーシュのことを、自分と武田信玄のような主従関係だと勝手に思い込んでいます。
 ※ハロ(オレンジ)の参戦時期は後続の書き手に任せます。機能や記憶情報に制限が施されているかどうかも後続の書き手に任せます。

【D-6/駅内/一日目/黎明】
【両儀式@空の境界】
[状態]:健康、光秀へのわずかな苛立ち
[服装]:私服の紬
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式 ランダム支給品0〜2
[思考]
1:とりあえず、電車の到着を待つ。が、乗るかどうかは……。
2:改札前にいる3人(?)と接触するか、無視するかを決める。
2:黒桐は見つけておいた方がいいと思う。
3:光秀と荒耶に出会ったら、その時は殺す。
4:首輪は出来るなら外したい。
[補足]
・首輪には、首輪自体の死が視え難くなる細工がしてあるか、
 もしくは己の魔眼を弱める細工がしてあるかのどちらかと考えています。
・電車がいつ到着するかは、次の書き手さんにお任せします。
・荒耶が生きていることに関しては、それ程気に留めてはいません。
・藤乃は殺し合いには乗っていないと思っています。



【ハロ(オレンジ)@機動戦士ガンダムOO
 真田幸村に支給。
 ソレスタルビーイングで活動しているサポートマシン、ハロの一体でハロの中でも『オニイサマ』と慕われて少し格上のハロ。
 AIが搭載されており、ある程度独自な思考ができるようだ。同じ単語を2回ほど繰り返す口調が特徴。
 主な仕事はロックオン・ストラトスの相棒としてガンダムデュナメス、2期ではガンダムケルディムのサブパイロット、操縦補助を行っている。
 他にも専属の小型MSでMSのメンテナンス作業もこなせる。
 ちなみに手足のギミックが内蔵されていて、水に濡れても大丈夫らしい。
 声はソーマ・ピーリスと同じ小笠原亜里沙】
投下終了です。
ご感想、ご意見、矛盾点ありましたら是非ここや避難所にお願いします。

ちなみに最後の式の発言は単に声優ネタです。詳しくは『種 デス』で検索。
と、指摘前に自分で見つけてしまった……。
『アカイイト』にてオレンジハロ既に出てましたね。
同一機は見当たらないので、セカンドシーズンから登場の『赤ハロ』に変更したいと思います。
少し修正点が多いので後日修正稿を仮投下します。
申し訳ありませんでした。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 22:52:10 ID:Qw+tTxyE
投下乙!
いかん、戦国武将のリアクションが面白いwww
怪殺ってwwwその発想はネーヨwww
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:00:51 ID:vasRhjQX
投下乙です
スザクは程よく揺さぶられてるな
カイジみたいに違う方向には行くなよw
それと真田、ハロを壊そうとするとは許せんなw
式は人見知りかな。でも情報交換して顔見知りになった方がいいぞ
さて、このままだとルルーシュとご対面だが……
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:07:33 ID:Qw+tTxyE
あら、確かルルーシュの電車の上には奥州筆頭がいたようなw
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:09:38 ID:R/GUn4Qf
ルルーシュとかは時間的にすでに通り過ぎてないかな?
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:21:53 ID:8T808rVH
筆頭は予約入ってるし、時間的には間違いなく通り過ぎてるな
ルルーシュもしかり

スザクさんは第一放送後はユフィ関連で荒れると思うと、なんて平和なんだ…
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:37:06 ID:pO6sqw+F
◆eodXldT6W6氏 戦場ヶ原ひたぎ、上条当麻、安藤守
代理投下します。
64絶望への反抗 ◇eodXldT6W6:2009/11/05(木) 23:38:17 ID:pO6sqw+F
「絶対に…!こんな下らない殺し合いは止めてやるっ…!」

安藤はマウンテンバイクを全力で漕ぎながら疾走する…!
爆発地点のF-7に到着するのに時間は余り掛からなかった。

「おい!誰か居ないのかっ…!」
安藤は叫ぶっ…!ひたすら叫ぶっ…!

だが爆発地点は瓦礫の山…!

「人が生き埋めになって居るかもしれない…!
早く助けなきゃ…!」

安藤は瓦礫を手探りで退ける…!
必死で退ける…!
「クソっ…もう殺し合いに乗った人間も居るのかよ…」

安藤はくやしそうに顔を歪める…!

瓦礫の中を探り終わり人が居ない事を確認…!
「ふぅ…」
「って何を安心してるんだ俺は…!今は殺し合いの最中…!安心している暇は無いんだ…!
グズグズしている暇はないっ…!
はやくカイジさんを探さなきゃ…!」

安藤は地図を開く…!
「ギャンブル船…」
安藤は忌まわしい記憶を思い出すっ…!
あの頃の安藤はクズであった…!
誰もが認めるクズ…!圧倒的クズ…!
絶望的な状況の中、安藤に協力を持ちかけ…!助けてくれた命の恩人カイジ…!
カイジは、最終的に星を安藤と古畑に託し…!地獄の釜の底へ落ちた…!
その、カイジを助ける為の星を、自分の欲の為に売り捌き…!カイジを地獄の釜から引き上げなかった…!
むしろ死ねっ…!と思っていた最悪のクズである…!
だが、カイジは咄嗟の機転で地獄の釜から脱出…!
安藤は制裁され、カイジに残った金と星をすべて取られ…!小汚いおっさんを救出した…!

だが、今の安藤なら当時のカイジの気持ちが痛い程わかる…!

ボロ…ボロ…

安藤は呟く…。
「カイジさん…!本当にすいませんでした…!
こんな自分は絶対に許してくれないかもしれない…。
だけど、ひたすら謝ろう…!」

「やり直そう…!この殺し合いが終わったら…!絶対に…!」

安藤は涙を拭く…!

おそらくカイジもギャンブル船に向かうだろう…!
そう直感した安藤はマウンテンバイクに跨り…!全力で漕ぐ…!
カイジが居るであろうギャンブル船に向かう…!
65代理 絶望への反抗 ◇eodXldT6W6:2009/11/05(木) 23:40:59 ID:pO6sqw+F
「F-6北部/市街地・路地裏」

安藤は全力でマウンテンバイクを漕ぐ…!
夜道にライトも付けていないから見通しも相当悪い…!
そして、十字路に差し掛かった時…!少年が飛び出してきた…!
安藤は急ブレーキを踏む…!が間に合わず…!

「不幸だーーーーーーーーーー!」

少年を跳ね飛ばす…!盛大に跳ね飛ばす…!

「大丈夫ですか…!」

安藤は少年に駆け寄る…!
少年は膝を擦りむいた程度の軽い怪我であったが安藤は消毒を施し包帯を巻く…!

「あら?そのマウンテンバイク阿良々木君の物じゃない?
寄越しなさい。」
「え?でも…」

カチャ…!

鼻の穴にコンパスの針を入れられ涙目になる安藤…!

「阿良々木君の物は私の物。私の者は私の物よ。」
「ひぃー…」

安藤マウンテンバイクを取られる…!

「おいおい、戦場ヶ原!やめろよ…!」
必死で止める少年…!

「今は、そんな事をやってる場合じゃない…!
とりあえず、自己紹介をしよう…。俺の名前は、安藤守殺し合いを止めようと思ってる…!」

「俺の名前は上条当麻です。俺もこんなふざけた殺し合いは止めたい!
そっちの怖s…美しいお姉さんが戦場ヶ原さん。」

クズを見るような目で安藤を見る戦場ヶ原…!
66代理 絶望への反抗 ◇eodXldT6W6:2009/11/05(木) 23:41:24 ID:pO6sqw+F
「まず、情報交換をしよう…。
俺は…前にも帝愛に、殺し合いに近いゲームをさせられた事があるんだ。」

安藤は話す…!エスポワールでのギャンブルの情報…!帝愛の事…!そしてカギ爪の男の事…!

上条もインデックスの事…!学園都市や魔術の存在を話す…!

戦場ヶ原も必要最低限な情報だけ話す…!

名簿に友好人物と危険人物にチェックを入れ、それぞれの特徴も話す…!

「×:利根川幸雄

△:一方通行、ヴァン、レイ・ラングレン、ファサリナ

○:伊藤開司、御坂美琴、白井黒子、阿良々木暦、神原駿河」


一通り情報交換を済ませ次の行動方針を決める…!

「俺はカイジさんに会わなければならない…!君達も会わなきゃならない人物が居るんだろ?
ここからは別行動だ…!別行動ならそれぞれの人物にも会いやすいだろう…!
もし俺と仲間になってくれるのなら…!次の放送後にB-5のギャンブル船に来てほしい…!」

「俺達も必ず行きます!」

走って北に行こうとダッシュする安藤…!だが…

「待ちなさい!」
「え…?」
「このマウンテンバイクをあなたに貸すわ。
阿良々木君に会ったら返しなさい。必ず彼を連れてギャンブル船に来なさい。」
「わかった…!」

安藤はマウンテンバイクに跨り疾走する…!
情報を集め…!仲間を集め…!主催者を打倒する為に…!
67代理 絶望への反抗 ◇eodXldT6W6:2009/11/05(木) 23:42:01 ID:pO6sqw+F
【F-6北部/市街地・路地裏/1日目/黎明】

【安藤守@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 覚悟完了
[装備]:カメオ@ガン×ソード、阿良々木暦のMTB@化物語
[道具]:デイパック、基本支給品(パンが1つだけ微妙に欠けている)×2、
    確認済み支給品0〜3、手紙×3、遺書、カギ爪@ガン×ソード、
    包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor
[思考]
 基本:仲間を集めてゲームからの脱出。  
 1:カイジと合流。その際きちんと謝罪して、協力を要請。
 2:可能であれば手紙の相手を探して渡す。
 3:見知らぬ相手と会ったらまず会話。その後は状況によって判断。
 4:危険人物以外をB-5のギャンブル船に集める。
 5:阿良々木暦にマウンテンバイクを返し、B-5のギャンブル船に連れていく。
[備考]
 ※参戦時期はエスポワール号下船後です。
 ※手紙の相手とカギ爪の男の関係は知りません。


【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:健康、冷静
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、スフィンクス@とある魔術の禁書目録、
    アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式、不明支給品(1〜3、確認済)
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
 1:上条当麻に協力。会場内を散策しつつ阿良々木暦を探す。
 2:神原は見つけた場合一緒に行動。ただし優先度は阿良々木暦と比べ低い。
 3:ギャンブル船で阿良々木暦と合流したい。
[備考]
 ※登場時期はアニメ12話の後。
 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、疲労(小)
[服装]:学校の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。
 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。阿良々木暦を探す。
 2:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
 3:壇上の子の『家族』を助けたい 。
 4:危険人物以外をB-5のギャンブル船に集める。
[備考]
 ※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:44:08 ID:pO6sqw+F
代理投下終了です。

2ページ目の改行が制限値を超えてしまった為、
こちらで分割してしまいました。ご了承くださいませ。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 23:52:23 ID:g4qOy2Bc
投下乙です

>HELLO!!/幸村、妖怪を退治せんとするのこと ◆fQ6k/Rwmu.
幸村少しは落ちつけよwww『怪殺』っておいwww
スザクと式は真面目に悩んでいるのに・・・あ、幸村も真面目か

>絶望への反抗 ◆eodXldT6W6
船のことを悔やむなんてやっぱりこの安藤はきれいな安藤だ
だが「やり直そう…!この殺し合いが終わったら…!絶対に…!」あれ?なんとなく死亡フラグ?
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 00:40:43 ID:1YqT36CS
投下乙です
確かにきれいな安藤だがカイジどころか船には利根川が居るぞ
それにレイはマーダーだから死ぬからw
もしグラ衣組だけでなく黒子組も船に向かうのなら大人数になるなぁ
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 04:33:38 ID:pgBr3vND
議論スレがフル稼働だな。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 05:27:44 ID:NV3cUgXD
まとめwikiに収録されている065話『Murder Speculation Part1』までに発生した、
周辺に物音が聞こえている可能性のあるできごとと、電車の動きに関してのまとめです。もしよければご利用ください。

http://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0326.png

※銃声・爆発音に関しては、具体的に範囲が書いてあるもの以外は「周辺に響いたかもしれない音」で、実際に音が聞こえた範囲は不明です。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 07:59:51 ID:guQ+yAUx
議論スレ「我を使いきりたければその三倍持って来い……!」
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 12:29:39 ID:NUIl5EGp
我様www
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 15:28:32 ID:q8WXPRTt
>>72
乙です
地形的にやっぱり左上は静かか
76 ◆lDZfmmdTWM :2009/11/06(金) 16:40:34 ID:7RZy67JX
先日、もっとも忘れていてはならない事を書き忘れていたので、この場で謝罪させていただきます。

先日投下した信長パートですが、真に勝手ながら
没となった◆DisZRX5UPQさんの信長パートの一部分をそのまま文中に使いました。
話自体は没になったとは言え、個人的にはとても好きなものだった為、
どうにかして載せたいと思い、この様な形にしてしまいましたが、
その事について謝罪が遅れてしまい本当に申し訳ありません。

今回のSSについてですが、失礼ではありますが、
出来ましたら◆DisZRX5UPQさんに直接の返答を願えればと思います。
自分の行為には大きく問題があった為、破棄して欲しいと言われれば勿論破棄致します。
どうか、よろしくお願いいたします。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 17:48:08 ID:5gS7qgyB
絶対に許さない
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 18:13:28 ID:pqHpcaPj
>>76
信長パートに没となった◆DisZRX5UPQさんの文を流用した事使いました。

この事実、意外に問題大きいね…簡単に許してしまったら作者全体に好きな文節があれば丸々引用しても良いのかという、モラルハザードに繋がるんじゃない
まぁアニロワで二次三次の権利云々を言うのはアレだけど
79 ◆DisZRX5UPQ :2009/11/06(金) 18:21:17 ID:9dUW5/Q7
>lDZfmmdTWM氏
かえって気を遣わせてしまったようで、申し訳ありません
こちらは大して気にしてはいませんし、むしろ話の展開的には好みの展開ですので、修正等の必要はありません
気付いた時は驚きましたが、そういう理由ならば何の問題も無いです
どうせ没にした作品ですし、それがこうして多少なりとも日の目を浴びたことは純粋に嬉しいですし
氏の次の作品も楽しみにしております
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 19:50:25 ID:1/17nHSq
危険な追加予約がw
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 20:54:29 ID:guQ+yAUx
というかしたらばがカオスな件について
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 21:05:54 ID:guQ+yAUx
>>73
議題「行くぞ、議論スレ――レスの貯蔵は十分か?」
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 22:47:37 ID:FaQD1K2L
◆10fcvoEbko氏 レイ・ラングレン、アーニャ・アールストレイム、リリーナ・ドーリアン、刹那・F・セイエイ、本多忠勝、織田信長
やべぇ…なにがなにやらさっぱりわからん
84 ◆lDZfmmdTWM :2009/11/06(金) 22:53:03 ID:7RZy67JX
DisZRX5UPQさん、寛大なご処置をして本当にいただきありがとうございます。
自分の軽率な行動でこの様な結果となってしまい、大変なご迷惑をおかけしてしまいました。
今後は、二度とこの様な事が無いようにいたします。

本当に、申し訳ございませんでした。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:10:48 ID:9+au2KYt
>>83
カオスすぐるwwwwww
墓石はいくつ発注しといたらいいかな…
ありゃりゃ木さんが生き延びたからそっちのあまりをまわして…
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:17:54 ID:3sZsluO2
>>84
盗作問題は一つ間違えば企画自体が文字通り【終わる】危険あるから
今後はマジ自重お願いします
87怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:19:33 ID:9JboAE/L
ヴァン、ユーフェミア投下します。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:19:44 ID:3sZsluO2
>>83
BASARAの因縁やらガンダムの因縁やらそんなの関係ねぇ復讐鬼さんやらかw
予測は不可能、ならば俺たちに出来ることは……墓石の用意か!
89怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:20:24 ID:9JboAE/L



 白。

 白い。

 純白だ。



 綺麗。

 ああ、綺麗だ。

 綺麗だ。



 道。

 教会。

 教会までの道。



 手をとって。

 一緒に。

 一緒に。

 一緒に……。



 幸せで、

 幸せで、

 幸せの絶頂で……



 いつまでも、

 いつまでも、

 いつまでもお前を……。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:21:15 ID:9+au2KYt
おっと投下か
支援
91怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:21:20 ID:9JboAE/L



 守る。

 守るって、

 守るって……、決めたんだ……。





――なのに、俺はあいつを守れなかった……。





 男が、カギ爪が、カギ爪の男が、アイツが……。

 赤、赤い、肩を、カギ爪が、血、血が、

 そんな……、やめろ、止めろぉぉぉ!!

 エレナ、エレナ、エレナ、エレナエレナエレナエレナエレナエレナエレナエレナ!!!!!

 カギ爪ェ!エレナ!エレナを!!

 エレナ、エレナエレナエレナエレナエレナエレナエレナエレナ!!!!!





 エレナァァァァァ!!!!!!





 ◆ ◆ ◆



92怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:22:03 ID:9JboAE/L

 怒り。

 噴出したるは純然たる怒り。

 黒のタキシード姿の男、ヴァンを突如として襲った怒り。

 たった一行。

 たった一つの名前。

 たった一人の男の名前。

 それを見ただけで、ヴァンの記憶は全てを呼び起こし、一瞬にして感情を爆発させる。

 肩を震わし、眉間にしわを寄せ、歯を食いしばり、鬼のような形相へと変化する。

 抑えられない。

 いや、抑えない。

 抑える必要がない。

 今湧き上がった感情そのままに隠そうともせずに怒りを全身から放出する。

 それがヴァンだ。

 ヴァンという男だ。

 大切な人を失った者にしか解らない、怒りそのものを背負い復讐の為だけに生きた者の姿だった。





 ……が、それは所詮、一時のもの……。





 “復讐の為だけに生きた者”

 そう、ヴァンの復讐は終わっている。

 大切な婚約者、エレナを殺したカギ爪の男は、つい先日、ヴァンの持つ蛮刀により胴体を真っ二つにして殺した。

 ヴァンの手にもその感触は未だに残っている。

 奴のカギ爪を切り落とし、肉を裂き、骨を両断し、命を奪った。

 確かな実感として残っているのだ。

 三年を費やした復讐の旅は、ようやく終わりを迎えた。

 それをヴァンは自分自身に刻み込んでいる。


93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:22:33 ID:3sZsluO2
支援
94怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:22:44 ID:9JboAE/L

「どうして、カギ爪の野郎の名前があるんだっ!!!!!」



 ゆえに、納得できない。
 死んだ者、自分が殺した男、その名が刻まれた紙切れを震える眼で見つめ、声を荒げる。
 咆哮が虚空へと広がり、海風と潮騒を一瞬だけかき消した。
 その咆哮は、傍にいる一人の高貴な少女を震えさせるには十分だった……。



 ヴァンはカギ爪の男の名を見た瞬間、記憶を呼び覚まし怒りを爆発させた。
 最愛の婚約者を殺された怒り、そして、守ることが出来なかった自分に対する怒り。
 自身の記憶と対面するたび、ヴァンは取り戻せない現実を再認識し、慟哭交じりに怒りを露わにする。
 だからこそ、ヴァンは選んだ。
 エレナの為、エレナに貰った命を使い、エレナを奪ったカギ爪の男を殺す。
 そうする事で、エレナと共のあろうとしたんだ……。



 そして、それは達成された。



「殺した!アイツは俺が殺した!生きているはずない!」


 医者?魔法?
 そんなもの関係なく、どうやっても死者は生き返らない。
 それはヴァンの持つ絶対の理。
 カギ爪にもヴァン自身がその口で言い放ったばかりだ。
 頭の悪いヴァンでもこの一点だけは覆らない。
 いや、頭が悪いからこそ、この絶対的なルールだけは覆してはならないのだ。
 死者は生き返らない。何度でも言う。死者は絶対に生き返らないのだ。
 エレナ同様、カギ爪の男の“死”も、決してヴァンからは『奪えない』。
 カギ爪の男は死んだ。
 ヴァンの中に、もしもなんて存在しない……。


「アイツは死んだ!死んだ奴は絶対に生き返らない!こいつは誰だ!」


 ヴァンの中に浮かび上がったのは、当然のように「なぜ?」と言う疑問のみ。
 死者は生き返らない。
 それを信じているからこそ、名簿に記載されたカギ爪の男という表記に対し、怒りと共に疑問をぶつけるのだ。
 混乱した頭の中、感情に流されるままに……。


95怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:23:28 ID:9JboAE/L

「落ち着いてください!!」



 一人の少女の声が、ヴァンに負けず劣らずに張りあがる。
 ヴァンの咆哮を止めたのは、誰でもない、目の前に立つユーフェミアにしか出来ないことだった……。



 ◆ ◆ ◆



「……ひッ……」

 最初、ユーフェミアは突然豹変した目の前の男の声と表情に震え上がり、息を呑んだ。
 声が出ない。
 声を掛けることができない。
 息を吸うことさえ、恐怖に震えて忘れそうになる。
 それだけの威圧感を、目の前の男は放っているのだ。

 ユーフェミアは怯えた表情で見つめていた。
 見つめるしか出来なかった。
 男が自分の名簿を見た事でどういう心境に至ったのかまるで解らない。
 ただ呆然と、見つめるしか出来なかった。

 だが、このままではいけない。

 そう思い、意を決して恐怖を喉の奥底に押し込んだ。
 それは、民衆が混乱している中、その上に立つ皇族がしっかりしないといけないという、ごく当然の奮起。
 幼少時より当たり前のように見てきた、強い父や兄、最愛の姉の姿を自身にも宿したいと願い手に入れたブリタニア皇族としてのユーフェミアの姿と言えるだろう。

「落ち着いてください、ヴァンさん」

 突然強い口調で響き渡ったユーフェミアの声がヴァンを貫く。
 一瞬はっとして、現状を再確認するヴァン。
 目の前に立つ少女の姿を見つけ、その力強い眼差しを受け止めた。
 それだけのこと……。
 それだけの事で、いつ破り捨てられてもおかしくない名簿を握り締めた手が、自然と緩んでいった。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:23:56 ID:9+au2KYt
しえーん
97怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:24:14 ID:9JboAE/L

「何があったのですか?誰かお知り合いでもいたのですか?」

 冷静に、あくまで冷静に、ヴァンの落ち着くのを待ってユーフェミアがゆっくりと聞く。
 それを受け、ヴァンは自分が周りを見えなくなるほど動揺していたことを悟った。
 だが、別に反省をしたわけじゃない。
 それを証拠に、未だ表情は怒りの形相のままだ。

「……お前には関係ない」

 この時既に、ヴァンの中では湧き上がった怒りが幾分かは収まりつつあった。
 なぜなら、先ほども言ったように、怒りはあくまでカギ爪の男の名前を見つけたことで呼び起こされた過去の記憶に対するものであり、
 カギ爪の男に対しての今現在のストレートな怒りではないからだ。
 言うなれば、怒りはあっても殺意はない。殺意はカギ爪の男を殺したことで決着した。
 思い出した怒りに翻弄されはしたが、ヴァンはもう二度と、カギ爪の男に対して殺意は抱かないだろう。
 それは先にも言ったように、カギ爪の男の『死』も、ヴァンからは誰も奪えないからだ。
 カギ爪の男は死んでいる。
 それを信じているからこそ、後に残るのは単純な疑問唯一つ。
 それも、落ち着いて考えることで既に答えは出ていた。
 なぜ殺した相手の名が名簿に載っているのか?
 簡単だ、単なる間違いだ。
 間違いじゃないとしても、カギ爪をつけた別の奴と言う可能性も十分にある。
 少なくとも、ヴァンの知っているカギ爪の男ではない、そう心の中で断言したのである

――ムナクソ悪ィ……。

 表情がそのままなのは、感情を隠そうともしない単純な思考の現れ、残滓のようなものだ。
 ゆえに、ヴァンはイラつく思考に促されるままに、ユーフェミアに対してぶっきら棒に答えるのである。

「関係ないって……そんな……」

 先ほどまで見せていた覇気のない表情が一変し、まるで近づくもの全てに敵意を向けるよう表情。
 それを目の当たりにし、さすがのユーフェミアも続く言葉を失ってしまう。

「これ返す。じゃあな」

 苛立ちの表情を崩すこともせず、皺が走っている名簿をユーフェミアに押し付ける。
 そして、ユーフェミアの気持ちなど一切考えず、ヴァンはアッサリと背を向け歩き出した。
 今はとにかく何も考えたくない、余計な面倒はこれ以上背負いたくない……、そう考えたからこそ、ヴァンは迷いなく自分に正直に行動するのだ。

「待ってください!」
「知るか!」
「待ってくださいヴァンさん!」
「付いてくるな!」

 ユーフェミアの再三の制止の声も届かない。
 もう誰も、ヴァンを止められない……。

「そんな……」

 会ったばかりの少女、ユーフェミアではヴァンは止められない。
 物事を深く考えない人間を止める為の言葉を持ち合わせていない。
 小さくなっていく黒衣の後姿を呆然と見送り、ユーフェミアは続いて襲い来る無力感と孤独に苛まれる事となった……。



 ◆ ◆ ◆


98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:24:14 ID:3sZsluO2
支援
99怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:24:58 ID:9JboAE/L

 今のヴァンは剥き出しの刀その物。
 度重なる混乱の中、一度落ち着ける場所を見つけて面倒ごとを片付けようとした矢先に殺した相手の名を見せられれば、
 ヴァンでなくても、他者との交流など煩わしいと感じることだろう。

 吊り橋を渡りながら、先ほどデイパックの中に手を突っ込み見つけた食料、60p程のフランスパンを空腹に答えるように乱暴に齧る。
 改造の副作用により味覚の大半を失っている為、ほとんど味のしないパンをイラつく表情を隠そうともせず無遠慮に胃の中へと放り込んでいるのだ。

(あー、クソっ……調味料が欲しいな……)

 そんなことを考えながら、強烈な海風がタキシードを揺らそうと、まったく意にも介さず歩を進める。
 今は誰とも関わりたくない……、そう考え、ヴァンはただ、目的もなく前へと進む……。



【E-1/吊り橋/1日目/深夜】

【ヴァン@ガン×ソード】
[状態]:疲労(小)イライラ
[服装]:黒のタキシード、テンガロンハット
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1
[思考]
基本:何をしたらいいのか分からないが、自分の感情の赴くまま行動する
1:今は誰とも関わりたくない
2:大量の調味料が欲しい
3:向かってくる相手は倒す
4:主催とやらは気にくわない
[備考]
※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。
※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。
※カギ爪の男の名前を確認しましたが、間違い、または別人であると考えています
※レイ、ファサリナの名前は目に入っていません




100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:25:16 ID:q8WXPRTt
 
101怒りと悲しみと ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:25:41 ID:9JboAE/L

――追いかけなくては……。



 そう考えたユーフェミアだったが、なぜか体が一歩も動かなかった。
 理由は単純だ。
 今のユーフェミアには、もう身を削って懸けるものがないからだ……。



 大切な人を失わなくてすむ、せめて戦争のない世界という夢を見て、
 ユフィは自身の皇位継承件と引き換えに「行政特区日本」を設立したばかりだった。
 理想の国家とか大義とか、そういう難しいことではなく、ただみんなの笑顔が見たいがために、ユーフェミアは納得して自身の身を削ったのだ。
 これで全てうまくいく。
 これで、スザクも、ナナリーも、そしてルルーシュとも平和に、幸せに暮らせる時が来ると信じていた……。

 そんな矢先に、ここに召還されてしまった。

 最初は当然のように殺し合いを否定し、同じ想いを持つ者を集め、スザク、ルルーシュといった者と手を取り合ってこの悪夢からの脱出を夢見ていた。
 だが、現実は非情にも、ユフィの理想を足元から削り取っていく。

 最初に出会った赤い槍を持つ女性に殺されそうになり、次に出会ったタキシード姿の男の人には突然拒絶された。
 それは、心細くも懸命に立ち向かおうとしていたユーフェミアにとって、現実を見つめさせるには十分な出来事……。
 彼女は無力なのだ。
 この世界では、ユーフェミアの掲げる理想など有って無きにしも等しい。
 皇女としての地位も無く、力も、去り行く一人の男を止める言葉さえ思い浮かばない彼女は、真に何も出来ないただの少女でしかない。
 「お飾りの副総督」などと言う陰口をたたかれていても、それなりにやるべき事はあったというのに、現状は、自身の話さえも聞いてもらえない。
 父や兄、そして、最愛の姉の姿を真似て勇気を振り絞ることは出来ても、その後に続く実力が無い。
 今のユーフェミアには、文字通りの意味で何も無いのである。



「スザク……、私は間違っていますか……?」



 涙と共に零れ落ちた言葉は、海風に乗って虚空へと空しく消えていった……。



【D-1/吊り橋/1日目/深夜】

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康、悲しみ
[服装]:豪華なドレス
[装備]:H&K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数3/12発/予備12x2発)@現実
[道具]:基本支給品一式、H&K MP5K(SMG/40/40発/予備40x3発)@現実、アゾット剣@Fate/stay night
[思考]
基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する
特殊:日本人らしき人間を発見し、日本人である確証が取れた場合、その相手を殺害する
1:私は無力だ……。
2:スザク……。
3:殺し合いには絶対に乗らない
[備考]
※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。
※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。
 会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間に影響が出ているかは不明。
※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。
102 ◆70O/VwYdqM :2009/11/06(金) 23:26:22 ID:9JboAE/L
投下終了です。
支援感謝です。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:26:48 ID:9+au2KYt
投げ捨てたのか、爆弾を
支援
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:28:34 ID:FaQD1K2L
安全ピン外れちゃったな
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:31:22 ID:3sZsluO2
投下乙です!
ユフィ、ヒロインしてるなぁ……爆弾さえなければ完璧なのにw

そしてヴァン、せっかく仇討が終わったというのにこれはムカつくのは分かるが
その仇討が即効で自殺したというなんとまあ……南無w
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:32:29 ID:BXchTifh
投下乙です
イライラ状態で安全弁になりそうな人と別れたのか
そして同じくボッチになったユフィ
そうか、ギアス後の虐殺前か。確かにモチベーションが微妙だな
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:33:41 ID:d2KWSXwV
我らが童貞王の行く末はどっちだ
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:35:53 ID:q8WXPRTt
投下乙です
ヴァンのイライラは分かる、この時期だからな
でもユフィは置いていっちゃダメw
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:38:00 ID:q8WXPRTt
ちょっと連絡
議論スレにて、下記のルールが決定しましたので報告させていただきます。
日付の変わる0:00から施行としますので内容をご確認ください。
また、本ルールで何か問題が発生した場合は、改めて議論の場を持つ予定です。

【議論スレルール】
○発議に関して
・SSの内容について発議する場合、作品投下後から該当するSSの次の予約がされるまで受け付けます。

・議論スレで発議する内容は簡潔にまとめて下さい。

 SSに関して発議する場合は疑問、または修正要求などを具体的にし、作者氏への質問としてまとめて下さい。
 また作者氏に、議論を立ち上げたことを本スレで伝えて下さい。

 ロワ全体や、本スレ、したらばに関して発議する場合は、具体的にどのように変更したいかをまとめて下さい。
 また住民に、議論を立ち上げたことを本スレで伝えて下さい。

・本スレで事足りることは議論スレに持ち込まないで下さい。
 具体的には「書き手氏が直接説明する必要がない質問、疑問」、「wiki収録後に訂正すればいい範囲の修正」などです。

・本スレで議論が必要だと判断された場合、議論スレに誘導して下さい。
 またその場合、議論スレで発議したことを本スレで報告して下さい。

301 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/06(金) 02:33:34 ID:d4KTlNbA
○議論進行に関して
・基本的に先着順で行いますが、緊急を要すると大多数が判断した議論は先行して行います。

・議論終了は、議論終了の宣言により議論終了とします。
 SSに関して議論終了宣言を行う場合、議論の結果をまとめ、修正・破棄要求を作者氏に伝える形にして下さい。
 ロワ全体、本スレ、したらばに関しては、テンプレとしてまとめwikiに収録できる形にして下さい。


○仮投下スレのご利用に関して
・仮投下を利用される場合は、SSの投下前か後に「本スレへの代理投下を依頼する」「意見を聞きたい」「修正稿」の
 いずれかを明記して下さい。

・書き手氏が意見を求めて利用される場合は、本スレなどで意見を求めていることを書きこんで下さい。

・修正されたSSを投下した場合は、本スレに仮投下スレに投下したことを書きこんで下さい。
 投下後24時間が経過し問題がなければ、本スレに投下をお願いします。

○その他
・wikiに収録された作品の加筆、削除、修正の報告は本スレ、またはしたらばの避難所をご利用下さい。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:41:58 ID:YyM2Ngls
投下乙ー
ヴァンはそりゃやりきれないよなー、せっかく殺したカギ爪が生きてるとかひどいわ
ユフィも思考は綺麗だけどギアスかかってるから怖い……
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 23:44:37 ID:9+au2KYt
投下乙です

ガンソはよく知らんがヴァンという男についてはよくわかった
ユフィは爆弾さえなければ正統派ヒロインなのに…
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 00:27:06 ID:Dd5Xgi/l
投下主が規制なので代理投下
参加者のビジュアル確認用にMAD支援です

ttp://www.youtube.com/watch?v=Tazno3L_Z7I
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 00:51:05 ID:rkBKO3Ut
MAD乙です
分かってはいたが咲が普通に異能力バトル物に見える不思議
そして1カットルルーシュじゃなくて咲世子混じっているwww
これは主催者側にいるフラグか!?
GJです
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 11:52:13 ID:mApUPY9d
さっそくMAD支援とはアニロワすげーな
唯と憂のそっくりネタと00の裸空間が欲しかったw
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 12:34:39 ID:rdPxU/lM
アニメが素材だからやっぱ作りやすいんだろうかね。漫画やラノベとかだとスキャナー使うとかしか無理だし
116狂戦士の歩み ◆axfxlx6u.Q :2009/11/07(土) 15:49:06 ID:rkBKO3Ut
短いですがバーサーカー投下します
117狂戦士の歩み ◆axfxlx6u.Q :2009/11/07(土) 15:50:43 ID:rkBKO3Ut

昔昔あるところに一人の英雄がいました。

その英雄は生前数々の偉業を成し遂げました。

そしてついに英雄は英霊になりました。

それから月日は流れ英雄はある時一人の少女によって召喚されました。

英雄が召喚された目的はただ一つ。

冬木の地で行われる聖杯戦争に勝ち残り聖杯を手に入れること。

英雄の強さはかなりのものでした。

しかし少女はどうしても聖杯が欲しかったのです。

だから少女は英雄の理性を犠牲にしてさらなる力を与えたのでした。

英雄にそれを拒む権利はありません。

しかし英雄はそれでも構いませんでした。

それが少女の望みだから。

果たして英雄はとてつもなく強くなりました。

これなら聖杯を手に入れることも夢ではありませんでした。

実際その時の英雄に正面から敵う敵などほとんどいませんでした。

しかし物事はそう上手くはいきません。

あれは赤い弓兵を倒した後のこと。

英雄は気付いたら誰もいない部屋にいました。

そしていくつか説明がされて唐突にバトルロワイアルが始まりました。

しかし英雄は自分が何をすればいいか分かっていました。

マスターである少女の元へ戻る。

そのために他の全ての参加者を皆殺しにする。

それがここで英雄がするべきこと。

最初に出会った武将は逃しましたが、既に英雄は次の獲物の気配を感じ取っていました。

それは北東の方角。

英雄は知りませんでしたが、そこには数人が集まる学校がありました。

そこへ向かうため英雄は邪魔なものは全て破壊していきました。
118狂戦士の歩み ◆axfxlx6u.Q :2009/11/07(土) 15:51:42 ID:rkBKO3Ut

家を取り囲む塀。

塀や庭に囲まれた家。

無機質な電柱。

緑が生い茂る街路樹。

線路を支える柱。

それらを破壊した跡に何が残るかなど英雄は気にも留めません。

家は廃墟と化し、道路には残骸が散らばり、線路は倒壊しました。

それでも英雄は止まりません。

全ては主である白き少女の元に帰るため。

その英雄の名はヘラクレス。

だが今は狂戦士のサーヴァント――バーサーカー。



【E-2/エリア中央部/1日目/黎明】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:健康、狂化
[服装]:上半身裸(デフォルト)
[装備]:武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA、食料(缶詰セット)
[道具]:なし
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。
2:学校へ向かいその場にいる者を皆殺しにする。
3:本多忠勝とはいずれ決着をつけたい?
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3
 ・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。
  現在残り蘇生回数6回。
 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
  現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
 ・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。
※参戦時期は14話 理想の果て直後です。

※E-2南西部から中央部にかけてバーサーカーが通った破壊跡ができました(多数の家屋・電柱・街路樹・線路の残骸あり)。
119 ◆axfxlx6u.Q :2009/11/07(土) 15:52:25 ID:rkBKO3Ut
投下終了です
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 17:47:00 ID:Wj0K7B0X
投下乙です
バーサーカー暴れすぎだろwww
121 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:50:44 ID:ra8sBAzR
乙です。
バーサーカーやり放題すぎwww落ち着けww

真宵、カイジ投下します。

「うーむ…?」
「…」
「um...?」
「……」
「○×⇒※――?」

先程カイジが考えごとにふけっていたように……今度は少女…………八九寺が…八九寺真宵が思案顔を浮かべている…っ!
これまでの遣り取りから新たなるボケと推測し……………徹底的に無視を決め込んでいた………カイジ……!
しかし!しかし……っ!…執拗っ………あまりに執拗すぎるっ、八九寺真宵!!
ここでカイジは考えるっ!
………八九寺とて、ただの少女っ…!その上…幽霊を自称して……構ってアピールをするくらいの……………寂しがり屋っ……!
大口を叩いてはいるが…本当は不安なのではないか……!
もしや…会話中によく顔を覗かせる『阿良々木』とやらのことが心配で…………悩んでいるのではないかと…!

「なぁ…もしかして………本当に悩んで…?」
「失礼な言いかたですね。
 まるでわたしがいつも何も考えていないみたいじゃないですか!
 言っておきますがパイジさん、わたしはいつだって脳をフル回転させてボケのネタを考えているんですよ」

万が一の『一』に賭けたカイジっ!………だが、勝敗は……………哀れっ………!カイジ……敗北……っ!
カイジは決めた……!たった今っ………!二度と…二度とっ!……少女に話を振らないと…………心に誓った……!

「仕方ないですね、パイジさんが全裸で土下座までして言うのなら、
 ちゃんと話してあげますよ」
「…そんなことは……していない…!
 あと…その呼びかたはやめろっ……!
 それで……何だよ…?」
「本当にメイジさんのツッコミは中途半端ですね。
 まぁいいです。所詮、明治ブルガリアヨーグルト♪さんはその程度の人間もどきだったということで」
「おい………っ!」
「おや、もしやチョコレート派でしたか?奇遇ですね、わたしもメイジはチョコレート派でして」

募る………!募る…苛立ち………!だが!だが…っ!堪えた………噴火直前の…火山の如く………己の中で蠢くものを……………零してしまわぬように……!
震える拳を握り締め……カイジはただ、黙ったまま………八九寺の言葉に耳を傾け続けた…っ!

「で、実はわたし、ずうっと気になってたことがあるんです。
 カイジさんが初めて声を掛けてきたとき、わたしが何をしていたか覚えてます?」
「……荷物の………確認…?」
「まぁ…そうですね。そのときに気付いたことがありまして」
「何だっ………?何か………分かったのかっ…!?」
「はい、実はですね、
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………
 ………………………………………………………………………………」
123 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:53:26 ID:ra8sBAzR
饒舌だった今までと違い………………吹き出し中に三点リーダを過剰に使用する八九寺………………!
恐らく……軽い話ではない…………簡単には口にできない………重大なヒミツを見つけてしまったのだろう……………。
まさか『魔法』に関する手がかり…………?
しかも、これだけ溜めるところを見ると……主催者の『魔法』という『嘘』を暴けるくらいの何か…………!?

八九寺が、次の言葉を吐き出そうと息を吸う……っ!
ゴクリ!
―――来るぞ!
カイジは唾を飲み込み…………こめかみから一筋、妙にひやりとした汗を垂らした…………!

「な」

──…………来た!

「んだか、わたしの顎と鼻、尖ってきてません?」
「…は?」

顎先と鼻の頭を指でこすりながら問うてくる八九寺………!
なんだ!どうした…………っ!?…何が言いたいんだ、八九寺真宵…………っ!?

(あっ……!?)

カイジの脳裏で………二人が出逢いを遂げた直後の会話が再生されるっ……!

『ええ。尖った顎に尖った鼻。ザワザワしてても仕方がない人相をしています』
『顎と……鼻……!? 尖ってるって……んなわけあるかっ……! はじめてだ……そんなこと言われたの……!』


「いえね、カイジさんと一緒に居たら、顎と鼻がこう…にゅうっと尖ってきたような。
 わたしのプリティーチャーミーなお顔は大丈夫でしょうか?」

ここで…………苛立ちが後悔の念に変わる………っ!!
けれどそれは………カイジ自身が……選択した行動………………っ!八九寺が悪いのではなく………カイジが愚かなだけ……………っ!
聞かなければよかった…………!悔やんだ…………心の底から…………カイジは自分の愚行を…っ!
カイジはわざと………歩行ペースを上げ……………彼女の先を行く………!大人げない!大人げない、カイジ…っ!
それでもなんとかカイジに歩調を合わせ……………隣に並ぼうとする………………八九寺………なんと健気…!

124 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:54:35 ID:ra8sBAzR
わたしはこの時、本当は『魔法』に関する手がかりになるであろうことを口にしようとしていました。
飽くまでも『魔法に関する手がかり』であって、誰かさんが期待している『虚言を暴く証拠』ではないのですが。

最初にわたしがしていたこと――カイジさんが言うとおり、荷物の確認。
たしかにあの時、わたしは荷物の確認をしていて、そこでカイジさんに発見されました。
でも違うんです。カイジさんが見たのは、本来の目的を達成するための、ただの途中過程。
本当は荷物を点検して、その後に、この目で確かめておきたいことがあったのです。とんだ邪魔ものが入ったおかげで中途半端になってしまいましたけれど。

わたしがカイジさんとの邂逅を果たした位置は地図で示すとA−1の丁度中間地点辺り。
しかしわたしはこの土地に転送された当初から、そこに居たわけではありません。遠くに海が見える場所でしたからきっと、上記エリア内の隅の方でしょう。
そこに強制的に送られてまずわたしがしたことは、荷物の確認。
中身をひととおり物色して、じっとしているのもアレですし、歩き始めました。特に行く宛もなく。目的は周囲の探索として。とりあえず。
で、何分ほどでしょうか、歩いていて思ったのです。
背中に背負っているリュックの中の荷物。思い出のアルバムやその他――乙女の領域なので詮索しないでください――それなりに重たいものが入っていて、担いでいるとやっぱりそれなりの重さを感じまして。
さらに今日はもうひとつ余計な荷物が増えているのですから、いつもの倍肩が凝ってしまうな、と。
125 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:55:16 ID:ra8sBAzR

思って初めて、意識しました。

デイパックが、あまりにも軽いことに。重さがない――ということではなく、ほとんどない。
名簿、腕時計や懐中電灯、デバイスとやら、食料に水、応急処置セット。支給品だってみっつ入っていたのに、最低限の重さがありません。
しかもよく考えてみると、おかしいんです。わたしの支給アイテムの中にあれだけ大きなキーボードが入っていたのに、どうしてこんな寸法の鞄に収まっているのか。
わたしは歩くのをいったん止めて、近くに生えていた大木の下に腰を降ろしました。もう一度荷物と―それからデイパックの中身を確認してみよう、と。

言いたかったのはこのことだったのですが――カイジさんは『幽霊』を否定するぐらいです、きっと主催者さん側の『魔法』だって虚言と思っているはず。
きっと先程の考えごともこれに関することでしょう。あれ以降悩む様子を見せていないところを見ると、どうやら答えは落ち着いたようですね。
『自称幽霊』であるわたしへの対応を見ている限り、恐らく無理矢理自分論をこじつけて納得しただけという感じですか。
となると――これを知らせるタイミングは間違えないほうがいいでしょう。
これだけ自分が見てきた世界に執着しているのです、もしもこれを知ってしまったら何をしでかすかわかりません。
まぁ、この人のヘタレ具合だと発狂とまではいかないかもしれませんが―生憎、わたしに未来予知の能力は備わっていません。一秒後のカイジさんなんて想像つかないんです。
ですから今はまだ黙っておいたほうがお互いのためかもしれませんね。

おや。
126 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:56:08 ID:ra8sBAzR
「つきましたね」

わたしはカイジさんの腕を叩いて、前方を指差しました。カイジさんは一拍遅れてその先を見ます。

目の前に聳え立った、威圧感を覚えるほどに巨大な建物。
暗闇を着飾っている様がなんとも不気味で、見たもの全てを恐怖の虜にしてしまいそうな雰囲気を醸しだしています。
なんだか幽霊でも出てきそうですね。というかわたしでした。

さて、カイジさん。
先ほど言った通り、こういうおかしなこと…、いえ。正しくないですね。ちっともおかしくないこと。現実的なこと。日常的なこと。
あなたが見ていたのは、狭い狭い鳥かごの中の風景だけで、もっと周りをよく見たら、もっともっと多くの『日常的なこと』が見えてくるんです。
と言ったって、『魔法』とやらが『日常的なこと』の類であるとは断言できません。
ですが、もしも主催者さんが言った『魔法』というものの真実があなたの望んでいるものと違っても。

「手間かけないでくださいよね、いい歳して」
「なんの話だっ…?」

【A-5/アジト前/1日目/黎明】
127 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 17:57:54 ID:ra8sBAzR
【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康
[服装]:私服(Eカード挑戦時のもの)
[装備]:シグザウアーP226(16/15+1/予備弾倉×3)@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考]
基本:人は殺さない……なるべく……なるべく人が死なない方向でっ……!
1:八九寺真宵と一緒に行動する。
2:ギャンブル船に向かい、待っているであろう利根川を倒し情報を引き出す。
3:『部屋から会場への移動方法』を魔法なしで説明可能にする。
4:『5分の退室可能時間』、『主催の観覧方法』が気になる。
5:八九寺のボケは基本スルー。
[備考]
※Eカード開始直前、賭けの対象として耳を選択した段階からの参加。
※以下の考察を立てています。
 ・帝愛はエスポワールや鉄骨渡りの主催と同じ。つまり『会長』(兵藤)も主催側。
 ・利根川はサクラ。強力な武器を優遇され、他の参加者を追い詰めている。かつギャンブル相手。
 ・『魔法』は参加者達を屈服させる為の嘘っぱち。インデックスはただの洗脳されたガキ。
 ・戦国武将はただの同姓同名の現代人。ただし本人は武将だと思い込んでいる。
 ・八九寺真宵は自分を幽霊だと思い込んでいる普通人。
※デイパックの構造に気付いていません。

【八九寺真宵@化物語】
[状態]:健康
[服装]:私服、大きなリュックサック
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品×1〜2 紬のキーボード@けいおん!
[思考]
基本:まずはお約束通り、知り合いを探してみることにしましょう。
1:伊藤開司と一緒に行動する。話し相手は欲しいので。でも微妙に反応がつまりません!
2:阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎを捜す。
[備考]
※「まよいマイマイ」終了後以降からの参加。
※デイパックの構造に気付いています。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 18:20:17 ID:uuFpvh8Y
投下乙
こいつら…やる気ねぇぇぇ
129 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/07(土) 19:02:18 ID:ra8sBAzR
終わりです
終了宣言するの忘れてたすみませんorz
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 19:16:36 ID:7Y2WZgW8
投下乙
こいつらの漫才はwww カイジ可哀そうにw
でも後半は真面目だな。今は黙ってるのか
誤解フラグをそのままにしてたら離れ離れになった時にカイジが詰むかもなw
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 19:21:18 ID:7Y2WZgW8
議論でおkが出たのでルルーシュ投下します
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 19:22:15 ID:JOdGiDqe
投下乙
今度はまよいのターンか
カイジ頑張れW
カイジよりもよほど今の状況を理解してるけど、この二人が本当の意味でわかりあえる日は来るんだろうか
133施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:22:53 ID:7Y2WZgW8
「あれが死者の眠る場所か」
窓の外を流れる光景を横目にルルーシュはそう呟く。
月に照らされたそこに見えるのは、数件の民家と寂しげな墓地だ。
(あの墓や民家の形状といい、さっきの駅の様子といい、やはりここは日本なのか?
 いや、それよりも。なぜあんな場所をわざわざ地図に記している?)
もちろん、詳しく調査しなければなんとも言えない。
だが、目に映る限りではただの墓場にしか見えなかった。


(参加者に配られた地図――少なくとも俺に配布された地図には大別して38の施設が記されていた)
そのうち範囲の大きいものや地形、エリア自体を示しているのが9ヶ所。
火口、トンネル、廃村、砂浜、吊り橋、団地、宇宙開発局、工業地帯、倉庫群、堤防。
名前は表記されていないが駅が5ヶ所、それが今現在乗車中の電車が通っている線路で結ばれている。
そして残りがそれらに含まれない24ヶ所の施設だ。
(さらに、それが大きく2種類に分けられる)
すなわち名称からは何の施設か想像できない場所。
心霊スポット、敵のアジト、憩いの館、神様に祈る場所、死者の眠る場所、象の像。
そして残り18ヶ所。
学校や太陽光発電所に代表される、それがどういう場所か大体予想がつく施設である。
134施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:24:01 ID:7Y2WZgW8
(さて、ここまで考えて出てくる疑問が3つ)
一つ目は、何故これらの施設名を地図上に記したかだ。
やはり、一番の理由は参加者が現在地を知るためのランドマークとしての役割だろう。
どう好意的に見ても、この地図は正確性が欠けているとしか言い様がない。
これを見てわかるのは、簡単な地形と島全体が49のエリアに分けられている事くらいだ。
施設名の表記が無ければ、道に迷い、禁止エリアとやらに突っ込む者が続出する可能性がある。
そして、おそらくそれは帝愛の本意ではないだろう。
彼らの言動やルールとして示された内容を見る限り、禁止エリアは焦燥感を煽る為の脅しでしかないのだ。
無論、それ以外にも何らかの理由があるかもしれないが。
(それは次の放送時――禁止エリアが配される場所が明らかになってから考察するとして……)
ここで重要なのは帝愛が求めるのは参加者同士の殺し合いであり、迷走の挙句の自爆ではないという事。
(事故死では娯楽にならない求めるのはあくまでも参加者同士の諍いという事か……虫唾が走るな。
 だがそう考えれば、例えば火口や間欠泉、線路が地図に記されているもう一つの理由も想像がつく)
例えば有毒ガスの噴出している可能性のある火口や間欠泉。
さらに、今まさに電車が往来している線路。
まったく皮肉な事ではあるが、それらが記されている理由は参加者の安全のため……
あるいは逆に、武器が無くとも他者を殺害できる場所としての表記なのだろう。

(だが、それだけという事は無いだろう)
ただ、地図上の目印としてのランドマークというだけでは無く、
参加者が集まる――あるいは参加者を集める目標という意味でのランドマークというのもあるだろう。
けれども、それだけの為に39もの施設を表示するだろうか?
それに城や学校は理解できるが、なぜ廃ビルなのだろう?
周囲と相当の違いが無い限り、現在位置の目印にするには明らかに不向きだ。
135施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:25:10 ID:7Y2WZgW8
まだ疑問はある。
(なぜ、わざわざ遠回しな表現をする?)
心霊スポットや象の像など比喩的、あるいは暗示的な表記をされた6ヶ所の地名。
死者の眠る場所など、ただ墓場と明記するわけにはいかなかったのだろうか?
また、象の像以外の5ヶ所が全て北部に集中しているのも何か意味ありげではある。
もしかすると、この場所――仮に施設群Xと名づける――だけ地名をつけた人間が違うのかもしれない。
(あるいは、この6ヶ所に何らかの秘密があるのか?)
ありえるとすれば、殺し合いを促進させるための強力な武器や他の参加者の情報等だが……
もちろん、そういう考えに至った者に対する帝愛の罠の可能性もあるし、
相手にそんな意図は無く、ただ適当に名前を付けただけの可能性も高い。
さらに逆転の発想として、その6つのXを除いた全てに何か隠してあるという事だって考えられる。
(さすがに、そこまで考えると際限がなくなるがな)
などと、ルルーシュが考えているうちにも電車は走り続け、窓の外には民家の数が増え始めていた。

「そろそろ停車駅か」
そう呟きながら、ルルーシュはちらりと上を見やる。
電車の天井、あるいはその上からは何の物音も聞こえてこなかった。


時間は十分ほど前に遡る。
B-4の駅を発車してすぐに、激しい物音が上から聞こえてきたのだった。
まるで大きな物が落ちてきたような音にルルーシュは一瞬驚いたものの、
その後はたいした反応も無かったので様子を見る事にしたのだった。


(あの時は、何かが電車の上に飛び乗ったのかと思ったが……違ったのか?)
それとも、飛び乗ったはいいが速さに耐えられず転げ落ちたか、はたまた自ら飛び降りたか。
そんな事を考えながら傍らのミニミへと目を移す。
それがすぐに手に取れる場所にある事を確認しながら、ルルーシュはすぐに思考を再会した。
136施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:26:15 ID:7Y2WZgW8
(今までの推測を踏まえて……これからどう動く?)
いろいろと考えられるが、大別して出てくる案は5つ。
D-6の駅で降り線路沿いを北上、死者の眠る場所と神に祈る場所を調査するか。
または当初の予定通りにF-5で降り、宇宙開発局の探索及び拠点の確保を行うか。
もしくはF-3で降車し、一番近い調査対象――象の像を調査しに向かってみるか。
はたまた、このまま終点のD-2まで行って憩いの館まで足を伸ばしてみるか。
あるいは、B-4まで戻り施設群Xを徹底的に洗うか。
どの案にしても、まず重要視すべきは時間である。
これらを本当の意味で自由に調査できるのは、残り数時間の間と見積もったほうがいいだろう。
それ以降、すなわち主催からの最初の放送より後は禁止エリアという制限が生まれるからだ。
だから、時間は無駄には出来ない。
調査対象を取捨選択しなければならない。

(そのためにも、まず考えるべきはこの電車の移動時間についてだが……
 さっきの駅でダイヤを確認しなかったのは、痛いミスだな)
他者との接触に対する警戒と停車時間に対する不安で、駅の調査を見送ったことが悔やまれる。
次の停車時間も同じ程度ならば、ダイヤを確認する余裕くらいはあるだろうが。

(まあいい、進行速度から予測だけでもしておこう)
まず、先ほど考えた通りこの列車が停まる駅は全部で5つである。
この後すぐにD-6に到着、続けてF-5からF-3。
D-2で終点となって、そこからまた逆に引き返し最終的にはB-4に到着。
その往復を自動運転で繰り返すのが、この列車のだいたいの走行予定だろう。
さて、B-4からここまでは結構な時間がたっているように感じた。
地図から推測すると、D-6以降の区画はこれより時間は短そうだが、
停車時間等を踏まえて考えてみる片道はそれなりの時間がかかるだろう事が推測できる。
その推測を元に先ほどの案を精査してみると……


(とりあえず、このままB-4に戻るのは論外だな)
確かに例の施設群が北部に集中しているのは気にはなる。
が、山林地帯よりは都市部の方に人は集まるだろうし何より時間がもったいない。
(同様の理由でD-6の案も薄い……)
B-4よりはましだろうが、それでも死者の眠る場所などまで引き返すには時間がかかる。
さらに似たような理由でD-2も優先度は低い。
そこから憩いの館へはいけない事もないが、少し距離が離れているからだ。
ただ、この付近には施設群Xには含まれてはいないものの、気になる場所である廃ビルが存在している。
もしD-2で降りるなら、調査対象を廃ビルのみに絞るべきだろう。
137施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:27:09 ID:7Y2WZgW8
(やはり、F-5かF-3……宇宙開発局か、それとも工業地帯か)
先にも考えた通り、宇宙開発局に向かえば首輪解除に有用な機材などが発見できるかもしれない。
機材に関しては工業地帯でも発見はできるだろうが、開発局の方が充実しているだろう事は予想できる。
さらに言えばルルーシュと同様に首輪の解除を考える技術者等も、この地区に集まる可能性が高い。

対して、F-3駅に向かう利点は施設群Xの1つが容易に調査できるという事だ。
例の施設群の中で、ただ1つだけ南部に存在する象の像。
どういう施設かは不明だが、それゆえに調べてみても損は無いだろう。
(まさか、本当に象の像が建っているだけ……では無いと思うが)
それに、この付近には気になる場所がもう1つある。
それはF-2の孤島にある、ただ一言遺跡と表記された場所。
島内に無数に存在している施設の中で、唯一そこへと至る道が存在しない施設である。
遺跡に渡るための船があるのか、それともそれ以外にルートが存在するのか。
(そもそも、このような場所をどうして地図に明記する?)
例えば、同じ遺物として括るならば、B-3に存在する城やD-4の円形闘技場などがある。
だが、それらは先に推測したように二重の意味でのランドマークとして機能を期待できるだろう。
しかし、この遺跡のように他から切り離された、目指すだけでも労力が必要となる場所となると話が別だ。
はっきりとした目的意識でも持たないかぎり、このように隔離された場所に進んで向かう者は居ないだろう。
(いや、違うな……単なる隔離された孤島なら、むしろ篭城を考える参加者がでてくる可能性も……
 だがその場合奴らが禁止エリアを指定すれば……ああ、そうすると逆に発電所一帯を隔離してしまうのか)
禁止エリアを配する目的が殺し合いの促進なのだとすれば、
参加者の逃げ場を失くす配置はあちらとしても避けたいはずである。
だからこそ、少しでも多くの動きがあるように、地図上にランドマークを配置した。
(つまり、もともとそこには遺跡なんてなかった……? いや待て、そう決め付けるのは早計……)
138施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:28:27 ID:7Y2WZgW8
と、不意に身体に軽いGを感じルルーシュは顔を上げる。
窓の向こうにはすでに民家の姿は無く、無数のビル群へとその姿を変えていた。
(……何にせよ、まずは他の参加者との接触だな)
結局の所、何をどう考えようと全てはルルーシュの憶測である。
どんなに推論を重ねようとあくまで机上の空論、脳内で展開された脆弱な論理でしかない。
(だが、まったく何も無いと言い切れもしない……調査してみる価値はある)
そう、これ以上の推測を進めるにあたって基礎となる物――つまりは情報が必要だ。
それが圧倒的に不足している以上、ルルーシュの考察は正しいと胸を張って言い切れるような代物ではないのだ。

「どう動くにしろ、やはり他者との接触が必要か」
電車がゆっくりと速度を落としていく。
その感覚に身を任せながら、ルルーシュは側に置いていたミニミを抱えあげた。
(さて、この先に居るのは鬼か悪魔か、それとも……)
電車が完全に停車した事を感じながら、危なっかしく立ち上がる。
「まあ、何が出てこようと、簡単に命を投げ出すつもりはないな」
ルルーシュの小さな呟きは、より大きな音にかき消される。
機械的な音をたて、自動ドアはゆっくりと開かれた。
139施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:29:40 ID:7Y2WZgW8
【D-6/電車内/一日目/深夜】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:皇帝ルルーシュの衣装
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
[装備]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる
0:駅にいるだろう参加者に対処
1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
  もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:施設群Xを調査する?
5:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
6:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
7:自分の生存には固執しない
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※頭の中では様々な思考が展開されています。しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていません
※電車はD-6駅ホームに停車中です
※電車のダイヤについてはあくまでもルルーシュの想像です。これより時間が前後するかもしれません
※駿河と政宗がまだ上に居るかどうかは後の書き手氏にお任せします


【施設群Xと施設名に関する考察について】
※施設群X
 地図に表示されてる中で表記のおかしい(とルルーシュ主観で思われる)6ヶ所の事です
 (心霊スポット、敵のアジト、憩いの館、神様に祈る場所、死者の眠る場所、象の像)
 この場所には何らかの秘密があるかもしれないとルルーシュは考えています
※施設群Xより優先順位は低いですが廃ビルと遺跡も気になっています
※象の像が何らかの比喩表現だと考えています。実際に象の像があるとは思っていません
※遺跡はもともと孤島にあった物では無く、主催者によって作られた物かもしれないと考察しています
140施設Xを追え ◇BXnAdYmV9c 代理投下:2009/11/07(土) 19:32:43 ID:7Y2WZgW8
◆BXnAdYmV9c:2009/11/06(金) 00:49:02 ID:l2hSlMsI
投下完了しました
作中に電車に関して言及した部分がありますので、それに対する意見などお願いします。
またそれ以外にも問題点等ありましたらお願いします

代理投下終了です
こちらも考察してるけど、どこまで真実やら
一歩間違えると見当違いな方向に行くからな
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 19:53:02 ID:rkBKO3Ut
代理投下行きます
142◇Ok1sMSayUQ:2009/11/07(土) 19:53:57 ID:rkBKO3Ut
 無人の駅のホーム。
 割と新しい風に見えるけれども、行き交う人もなく物音の少ない構内では却ってそれが寂しさを引き立たせた。
 時折吹き込んでくるひゅうひゅうという風音も演出に一役買っている。
 そのせいか、ここにいる自分も孤独なように感じられ、福路美穂子は我知らず溜息をついていた。

 隣にはまだ半分ほど中身が入っているペットボトルがある。
 一息にその量を飲み干した片倉小十郎が残していったものだ。
 持っていかなかったのは美穂子にも飲めという気配りなのかもしれない。

 もしそうだとするなら、些細なことでも自分がこのように気遣われるのは実に久々のことで、
 飲むのは勿体無いなとわけもなく思ってしまった美穂子は、呆れられそうだと思いながらもペットボトルに手をつけることはなかった。

 電車とやらが来るまで周辺を探ってくる、と言い残してすたすたと行ってしまった小十郎は、
 駅のホームを登ったり降りたりして抜かりなく危険を探っているようだった。
 電車が来たらどうしよう、と少し美穂子は不安になったがそれ以上にひょいひょいと身軽に行動している小十郎の姿を見ていれば、
 だんだんとその気持ちも薄れ、それどころか好奇心旺盛な子供のようにさえ思えてきて、
 美穂子は微笑ましい気持ちで小十郎の様子を追っていたのだった。

 もっとも今はホームの下に行ってしまい目で追えなくなり、少し残念な気分なのだが。
 のんびりと時間を過ごしているが、華菜は今頃どうしているのだろう、とふと人懐っこい後輩の姿を思い出した美穂子は、
 焦ってはいけないと分かっていながらも手に握っている小刀に力が入るのを抑えることが出来なかった。

 池田華菜は風越高校麻雀部の主力であると同時に大切な後輩でもある。
 陰口を叩かれるようになり、上手く友達も作れないようになって、他人行儀同然の付き合いしか出来なくなった自分に光を与えてくれた後輩。
 愛想笑いしか浮かべられなくなっていたのに、華菜と一緒にいるようになってから泣くこと、怒ること、悲しむこと、喜ぶことを思い出すことが出来た。
 それまで自分のためにしか優しさを向けなかったのが、初めて本当の意味での優しさを向けられるようにもなった。

 先輩がうざいって言われてるのなら、あたしがもっとうざくなって、図々しくなってみせますよ。

 調子に乗って失敗することも多く、何かと自分とは対照的な華菜だがその根底は殆ど同じと言ってよかった。
 勘の鋭い華菜は、自分の抱える負債を請け負ってくれたのだ。

 だから私は、華菜を守らなければいけない。
 自分を守るためにではなく、救ってくれた恩を返したいから。
 優しさに、優しさで報いるために――

 ……そうしたいからこそ、今はもう少し待たないといけない。麻雀もそうだ。
 急いて焦ったツモ切りをするから振り込む。
 寧ろこの状況だからこそ、と美穂子は前向きに考える。

 片倉小十郎という味方をつけたことで、間接的にではあるが華菜も少しだけ安全にはなっている。
 長い目で見れば、味方を増やすことは華菜を守れることにも繋がるのだ。
 他人を利用しているようで心苦しく、自らの不甲斐なさを自覚させられるようで情けないが。

 それでも、やれることを全てやろう。

 風越のキャプテンとして、池田華菜の先輩として。
 せめて自分だけには恥じない人間でいたい。
 故に今はこれでいいと結論して、美穂子は手にかけていた力をようやく緩めることが出来た。
143◇Ok1sMSayUQ:2009/11/07(土) 19:54:43 ID:rkBKO3Ut
 また、華菜に助けられたのかな。

 苦笑しかけたところに、目の前のホームの下からもぞもぞと這い上がってきた小十郎の姿が見えて、美穂子はきゃ、と驚きの声を上げてしまった。
 言ったそばから情けないという思いがあったが、「失礼」と多少引け目を感じているらしい小十郎に、いえ、と美穂子は笑った。

「案外お茶目なんですね」
「そんなつもりはなかったんですがね」

 言いながら、ペットボトルに目を走らせた小十郎は「飲まなかったんですかい」と尋ねてくる。

「あ、ええ……一つで十分だと……」
「飯がなけりゃ戦はできません。水だって同じです。飲めるうちに飲んでおくべきです。特に福路殿は少々疲れてらっしゃる」

 本当に軍人みたいなことを言う人だ、と美穂子は思った。伊達政宗、と小十郎が主君の名として語った、歴史上の人物の名前が頭に広がる。
 まさかと感じながらも、腰に刀を差して堂々と語る姿は男の貫禄というものがあり、無下に断る気持ちは持てなかった。
 それに、勿体無いと思ったときの気持ちを説明できる自信はなく、美穂子は蓋を開けてちびちびとお茶を口の中に入れる。

 お茶の味が喉に広がり、体を潤してゆく感覚があった。
 どこにでもあるはずなのに、ひどく美味しいと感じてしまったのは、考えていた以上に喉が渇き、緊張で疲弊していたということなのだろうか。
 自分の驚きを敏感に察知したらしい小十郎は僅かに口の端を緩める。

「美味いもんでしょう。上等の茶に喉が渇いてるとなりゃ、尚更格別ってもんです」

 上等、という言葉から、こんなものでも格別だと感じているのかと思い、まさか、の気持ちが薄れてゆく。
 そもそもペットボトルの存在も知らなかったような男だ。もしかすると……と考えかけて、やめようと思った。
 小十郎が戦国時代の人間かどうかはこの際関係がない。知るべきは小十郎がどういう人間かということだった。

 自分達は知り合って間もなく、名前以外には知っているようなこともない。
 ここはお互いに親睦を深め合い、なるべく知識、見解に対する溝を埋めておくべきなのだ。
 電車にしても説明はしたもののあまり要領は得ていなかった。知識の差は大きいと見て間違いない。

 つまりここで親睦を深めておくことは、この先どう行動するかを話し合うときでも役に立つ。
 この会場については、少なくとも自分の方が知識的には詳しいという自覚がある。
 上手くフォローしてあげられれば行動にロスが少なくて済むはずだった。
 お茶を飲み終えた美穂子は「美味しかったです、ありがとう」と礼を述べる。

「福路殿がお持ちになったのに、礼を言われるとは可笑しな話ですな」
「勧めてくれたことに対してのお礼ですよ」

 なるほど、と頷いた小十郎に、美穂子は掴みが上手くいったのを確信しつつ、先程から気になっていたことを尋ねてみる。

「あの、お座りになられてはどうですか? 立ちっ放しというのも……」

 小十郎はホームの中央に仁王立ちしたままだった。
 時刻表を見てみるともう少しで電車が来るという時間帯だったが、
 それにしても無人なのだから座らないのだろうかと疑問に思ったのだ。

「いえ、この程度物の内に入りません。……それに」
「それに?」
「ご婦人と、その、恥ずかしながら……あまりお近づきになった事がないもんでして」
144◇Ok1sMSayUQ:2009/11/07(土) 19:55:38 ID:rkBKO3Ut
 言葉を詰まらせながらの、それまで男ばかりの世界でしか生きてこなかったことを匂わせる小十郎の発言に、くすっと笑みを漏らしてしまう。
 笑う美穂子の姿を直視出来なかったのか、視線を反らして鉄面皮を気取ろうとすることが余計に可笑しかった。
 それまであった壁のようなものが一枚剥がれたような気がして、美穂子は「それは失礼しました」と多少意地悪なものを含ませて言ってみた。
 今度は無言で顔を反対側に向けられる。言わなければ良かった、という雰囲気まで見え隠れする始末で、
 正直な人なのだなという感想を抱いた美穂子は、今度は真面目な声色で次の質問を尋ねる。

「……では、お聞きします。片倉さん、貴方は私を、それに私の後輩も守ってくれる、と仰いましたね」

 美穂子の真剣な気配を感じたのか、「ええ」と応じた小十郎の背中はしゃんと伸びていた。

「私は、貴方を利用しているだけかもしれません。用済みになれば貴方を殺すかもしれない……そうは思いませんでしたか?」

 小十郎はすぐには返答しなかった。
 美穂子は逃げ場をなくすために、さらに一言付け加えた。

「女でも、人を殺すことは出来ます。鉄砲を撃てば、人は死にます。それに私と貴方は見ず知らずの間柄です。何故私の言葉を信じたのでしょうか?」

 所詮女なら、という言い訳は要らなかった。
 必要なのは上辺の言葉ではなく、理由だった。

「私の涙は、嘘の涙かもしれませんよ」
「言うまでもありません」

 今度は間を置かず小十郎が答えた。試していることなど先刻承知といった言葉を、美穂子も正面から受け止める決意を固めた。

「例えそうだとしても、ご婦人を守るのが武将の、いえ男の役目ってもんです。正直に申しますと、俺達の時代じゃあ女だって油断ならない。
 かの武田信玄と互角にやり合う上杉謙信もいる。忍として暗殺だってやってのける女もいる。
 ですが、貴女は戦の世界も知らないただのご婦人だ。ならば一人の男として、奥州の武人として為すべきことを為すだけです。
 嘘でもいい、俺は貴女の言葉に誓って貴女と、貴女の大切な方を守る。それだけです」

 それで言葉を締めくくった小十郎には、礼節を重んじる誠実さと、武人としての生き方しか知らない愚直さとがあった。
 あまりにも真っ直ぐ過ぎる言葉に、美穂子は試そうとした自分が馬鹿だったという気持ちを抱く一方、この男とならやっていけそうだという思いがあった。
 どうやら運が良かったのか、巡り合わせとでも表現するべきなのか、またまた自分は似たような人間と出会ったらしい。

 そんな安心感があったからか、美穂子は自然に「片倉さんは実直ですね」という感想を口にしていた。
 それしか能のない男ですから、と照れ臭そうな声色で言った小十郎の背中は、初めて会ったときよりも頼れるものに見えた。

「……あれですかね、電車ってやつは」

 小十郎が右を指すと、遠方からレールの上を走ってくる電車が美穂子にも確認できた。

「ええ、あれに乗るんです」
「しかし、世の中には奇っ怪な馬もあるもんだな……」
「中に乗るんですよ」
「中に……? っと」

 いつの間にか隣に並んでいた美穂子から一歩距離を取る小十郎。どうやら自分に慣れてもらうにはまだ多少の時間がかかりそうだった。
145◇Ok1sMSayUQ:2009/11/07(土) 19:58:39 ID:rkBKO3Ut
【F-5/駅ホーム/1日目/黎明】


【福路美穂子@咲-Saki-】
[状態]:健康、冷静
[服装]:学校の制服
[装備]:風魔小太郎の忍者刀@戦国BASARA、ウェンディのリボルバー(残弾1)@ガン×ソード
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜1)(確認済み)
[思考]
基本:池田華菜を探して保護。人は殺さない
1:電車で小十郎と共に工場地帯に向かう。
2:小十郎と行動。少し頼りにしている。
3:上埜さん(竹井久)を探す。みんなが無事に帰れる方法は無いか考える
4:阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら?
[備考]
登場時期は最終回の合宿の後。
※忍者刀には紐で鞘と鍔が結ばれて抜けません



【片倉小十郎@戦国BASARA】
[状態]:頭部と腹部に打撲の痣。
[服装]:戦支度
[装備]:六爪@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2個(未確認)
[思考]
1:美穂子と行動、美穂子を護る
2:政宗と合流する。
3:アリー・アル・サーシェスを必ず倒す
4:殺し合いを開いている帝愛とやらをぶっ潰す
5:帝愛打倒の為の仲間を探す。


[補足]
※名簿を確認して、真田幸村、織田信長、明智光秀、本田忠勝に気付いているか不明です。
※第11話、明智光秀との一騎打ちに臨んだ直後からの参戦です。

540 名前: ◆Ok1sMSayUQ[sage] 投稿日:2009/11/05(木) 23:36:05 ID:oo47DaF2
投下は以上です。
タイトルは『やれることを全てやって』です。



代理投下終了です
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 20:04:49 ID:7Y2WZgW8
代理投下乙です
こっちは見ていてほっとするコンビだなw
でも池田は……そろそろ放送に近づいてるからなぁ
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 20:10:10 ID:rkBKO3Ut
投下&代理投下乙です。

「彼の言葉は真実/そして、虚言/それぞれの事情 ◆YLoNiOIZ66」
真宵の顔が福本風になるとかやめてくれぇぇぇ。
そしてカイジとうとう会長(死体)と対面か!?

「施設Xを追え ◆BXnAdYmV9c」
そう言われたら確かにそういう固まり方しているな。
D-6というと・・・スザク幸村式のいるところじゃないか。

「やれることを全てやって ◆Ok1sMSayUQ」
キャプテンその華菜はもういないんだよ。
後輩想いが光るしほっとできるが・・・せつない。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 20:13:59 ID:lmU4NET6
>>147
黎明の頃はまだ会長は生きているはずだから…もしかして死ぬ瞬間に立ち会いとか?
会長が死んだ時、アジトでの詳しい描写が無かったし
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 20:21:33 ID:7Y2WZgW8
アジトはまだまだ描写する要素あるから実は隅で見ていましたでもイケるw
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 20:22:57 ID:7Y2WZgW8
昨夜本スレで告知された議論スレ等に関する新ルールのうち

>・修正されたSSを投下した場合は、本スレに仮投下スレに投下したことを書きこんで下さい。
> 投下後24時間が経過し問題がなければ、本スレに投下をお願いします。

の部分を

・修正されたSSを投下した場合は、本スレに仮投下スレに投下したことを書きこんで下さい。
 本スレならびに避難所スレで問題が無いと判断されれば、本スレに投下をお願いします。
 また、本スレに正式に投下された時点でそのパートの予約を解禁とします。
 (修正前の最初の投下から24時間経過していない場合は、最初の投下から24時間後に予約解禁となります)

に変更することを提案させていただきます。

事前にどういった箇所に問題があり、どのような修正がされるのかある程度わかっている修正稿に対して
24時間もあける必要はないと思ったので。
何を以て「問題が無いと判断された」とするかは基準が必要かもしれませんが……

意見は議論スレでお願いします。
151 ◆.ZMq6lbsjI :2009/11/08(日) 01:31:35 ID:AP233llr
特に問題ないようなので、トレーズ投下します
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:34:25 ID:VhrnJqrZ
支援
153混迷への出撃:2009/11/08(日) 01:35:18 ID:AP233llr
引き戸を開ける。
途端に流れ込んできた冷気に絡め取られ、火照った肌は瞬間の冷却を強いられた。
トレーズ・クシュリナーダはさて湯冷めせぬ内にと腰に一枚タオルを巻き、服は着ずにそのまま脱衣所を出る。
向かう先は番台の前、備え付けられた冷蔵庫。
扉を開け、取り出したのは茶色の小瓶。

脱衣所に戻り、2mはある大きな姿見の前へ。
傍らの椅子へ小瓶を置き、腰のタオルを勢いよく剥ぎ取った。

鏡に映る裸身。
一切の贅肉のない、均整のとれた身体。程よく筋肉がつき、しかし必要以上に自己主張しない。
OZ総帥、軍人として鍛え上げられたその肉体は決してお飾りの物ではない。
滴る水滴は、まるでその身体に長く触れることを許されなかったかのごとく次々と地に落ちていく。
トレーズは半身を引き、右腕を後方へ。
握るのは空。しかし見る者が見れば、そこに確かに『剣』を見たことだろう。
しばし、静寂。ジッと目を閉じ、精神を統一させていく。
足はしっかりと地を踏み締める。

「……フッ!」

やがて、短い呼気。
足裏で床を蹴り付け、昇ってきた反動を腰を回し上半身へ流す。
全く同じタイミングで突き出された右腕に、しっかりと全身の力が乗った。

ゆら、と宙を舞ったのは腰を隠していたタオル。
雷光のように鏡に向かって打ち出された右腕の先、鏡面にビシッ、とひび割れが走る。

否、鏡は割れてなどいない。
ひびのように見えたのはトレーズの右腕から迸った水滴だ。
右腕を突き出す、その余りの速度に右腕を流れ落ちていた水分が全て弾き飛ばされたのだ。
鏡面を濡らす飛沫。それはまるで、これ以上美の化身たるこの男を己ごときに映すことなど拒んでいるようにも見えた。

満足げに息を吐いたトレーズ。
見えざる剣を手放し、その手に収まったのは先程の小瓶。
包み紙を剥がし、内蓋を取る。
トレーズの鼻をくすぐる、芳醇な香り。
154混迷への出撃:2009/11/08(日) 01:36:14 ID:AP233llr
腰にもう片方の手を当て、トレーズはその小瓶――コーヒー牛乳を、呷った。
一糸纏わぬその姿を見ることは、先ほど視界を閉ざされた姿見を含め誰にも許されない。
扇風機が風を送る音だけが響いている。

砂糖のたっぷり入った、子どもが好きそうな甘い味が下の上で踊る。
喉元を滑り落ちる冷たい感触。
ごきゅごきゅと音を立て、一息に飲み干した。

「――ふう。これが日本の銭湯の礼儀か。実に風流だ」

銭湯による新陳代謝の活発化、その後飲む冷たいコーヒー牛乳。
まさに天上の至福、とトレーズはこの場所に配されたことを帝愛グループに感謝した。



衣服を身に付け、脱衣所を出たトレーズが腰を下ろしたのは浴場へと続くエントランスの片隅、小さな食堂だ。
店員はいない。ただ片隅に食券販売機があり、キッチンらしきものは壁に隔てられ客席からは見えなかった。
食券を買い(と言っても無料だったが)、注文した。
食券を販売機の横に備え付けてあった箱に入れる。
すると十秒もしないうちに機械音が響く。ガシャッと壁の一角が開き、そこにあったのは湯気の立つうどん。
サービスが行き届いている、とトレーズは感心し、出されたうどんを受け取りカウンター席へと座った。
天かすと七味をたっぷりかけ、音を立てて啜る。
よく練られたうどんに、ダシの効いたスープ。
コーヒー牛乳を飲んだことで冷えた身体が、再度内から温められていく。

(こうして食料を配給しているということは、食料が争いの種になることはない……決着は早期につく確信があるということか?)

うどんを呑み込みつつ、考える。
トレーズは知らないことだが、参加者の中には寿司だのピザだの明らかに過剰な量の食料を支給された者もいる。
いつの時代も飢えや貧困は戦争の引き金になってきた。
自国の貧しさ故に肥沃な土や貿易上の要所などを求め、隣国に争いを仕掛けた国は歴史上吐いて捨てるほどある。
当然、この殺し合いの場においてもそれは変わらない。
人が感じる最も身近な死の危険とは、飢えと渇きだ。
たとえ命を預ける戦友であろうが竹馬の友であろうが、極限にまで飢え渇いた者にそんな建前は通じない。
一昔前の時代、雪山で遭難したグループが食料を奪い合い、殺し合った。そんなニュースには事欠かなかったのだ。

このバトルロワイアルの中で殺し合うつもりがない者が大半だったとしても、一週間ほど放置されれば当然支給された食料は尽きる。
そうなれば後は言うまでもない。
生き延びたい誰かが誰かの食料を狙い、あるいは優勝して飢えから解放されようと自分以外を排除にかかるだろう。
155混迷への出撃:2009/11/08(日) 01:37:16 ID:AP233llr
その心配がないとすれば、理由は一つ。
それほど長くゲームは続かない。そんな悠長な理由を考える必要がないほどに、戦いは頻発するということ。

(それはつまり戦いを生業とする者……おそらくは軍人や傭兵、殺し屋と言った殺人を躊躇しない者が多数いるということか)

うどんを食べがてら名簿を見た限り、日系人が多いようだ。
このU.C.195年の時代においても、日系人にはかつての自国の敗戦のショックからか戦争を肯定する者は少ない。
トレーズの記憶でも、宇宙産業の発達した現在、あの島国にそれほどの軍事的価値はなく平和そのものだった。
であればこの平沢唯、憂(おそらくは姉妹だろう)、池田華菜、東横桃子、上条当麻に御坂美琴といった名前はそこから呼ばれたのだろう。
彼ら彼女らが殺し合いという非現実を容易に受け入れられるとは思えない。
そのような者たちを戦いに駆り立てる要因の一つたる食料を重要視しないということは、そういうことだ。

(気になるのはこの織田信長や伊達政宗、そしてアーチャーやライダーという名の者達)

前者は遥か古代とすら言える過去の偉人。当然生きている訳がない。
後者は偽名ですと言わんばかりの名前。
両方がおそらくはどこかの工作員のコードネームなのだろう。

これらの者達は弱者を屠ることになんら忌避感を持たぬはず。
殺し合いに乗るかはともかく、そうなった場合には即時対応が可能だろう。

そしてトレーズの友ゼクスと、ガンダムパイロット達。
彼らがどう動くのか、気になるところではあった。
リリーナ・ドーリアンがいる以上、ゼクス・マーキスとヒイロ・ユイの動きは朧げながら予測できる。
デュオ・マックスウェルという、ガンダム02のパイロットとは直接顔を合わせたことはないから予想は付け難い。
残る一人、ある意味ではトレーズが最も期待していると言えなくもないのがガンダム05のパイロット、張五飛だ。
直接剣を交え、打ち破った少年。その後目立った活動もなく、姿を眩ませていたはず。
しかし最近になってガンダムパイロットが終結し、その中で再起を果たした彼の姿があったと聞いている。

(五飛……君は今どうしている? 君の正義は、この殺し合いを……そして私を認めるか?)

トレーズの知る時の五飛のままなら、今も彼だけの『正義』を貫くために奔走していることだろう。
会えばきっと、再度の戦いを求められるはずだ。

(決着はモビルスーツで……と、いきたいところなのだがな)

そう思いつつトレーズもまた再会を楽しみにしていることに気づく。
どこにいるかはわからないが、人の集まるところならば邂逅の可能性は高いはずだ。
地図上、この太陽光発電所は隅の隅というところ。
もたもたしていれば、トレーズは誰とも会わず殺し合いが終結に近づくという事態にもなりかねない。
本来、こんな場所でうどんを啜っている暇などないはずなのだが――

(そろそろ、刹那・F・セイエイも充分距離を離したことだろう。動く時が来たか)

再会を約束した青年。
彼が彼なりの答えを貫くことができるのか。それもまた、トレーズの求める疑問の内の一つ。
会えば戦うことになる。だから、今はまだ会うべき時ではない。
少なくとも、彼がトレーズを討つ明確な理由を見出すまでは。

「……っ、……んむ。…………ふう、中々の味だった」

汁の一滴まで飲み干し、トレーズが席を立とうとしたその時。
ちょうど対面に設置されていたテレビが点いて、映像が流れ出した。
156混迷への出撃:2009/11/08(日) 01:38:42 ID:AP233llr
     ◆


「…………」

黒衣の人物からの宣戦布告。
一度終わったそれはリピートされ、今もトレーズの鼓膜を震わせている。
帝愛グループの協力者。
この世界に貫くべき自らの『正義』を求める者。
名はゼロ。標榜するは参加者全ての抹殺。

こんなことをすれば、参加者の誰もに敵として狩り立てられるのは明白。
そもそもにして主催者側の人物というだけで敵意を煽るには十分だ。
何故、自らが不利になるような行いをするのか?

「仮面を外せば誰かは分からない。表面上は友好的に振る舞い、ゼロなる人物を仕立て上げることで結束を深めようとしている……?」

誰の目にもわかりやすい脅威があれば、それに対する敵意を持つことで手を結ぶのは容易いことだ。
あるいはその意思は本物で、本気で参加者を殲滅させようとしているのか、はたまた仮面と素顔を使い分けることで人心に取り入ろうとしているのか。
可能性はいくらでも考えられる。少なくとも会って言葉を、剣を、実際に交えてみないことにはその真意を掴めはしないだろう。
変声機でも使っているのだろう、声色からは男とも女とも判別がつかない。
モニターに映っていたのはその仮面だけだ。体格もまた不明。

言うなれば、仮面さえあれば誰もがゼロになり得るということだ。
記号としての、実体のない65人目の参加者。

「……面白い」

真意は分からずとも、利用することはできる。
歩き出したトレーズがその懐から取り出したのは、チェスのキングの駒を模したスティック状のもの。
刹那が荷物を探った時に発見できなかったのは、トレーズが風呂場へと持ち込んでいたからだ。
同じく風呂に入る前に隠していた最後の支給品、日本刀を回収し温泉を出た。
発電所の裏へと回り、倉庫の前で足を止める。
倉庫という割に入口がない。ただのコンテナのように見えるその目前で、トレーズはスティック――否、スイッチを押し込んだ。
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:39:30 ID:WIssdg0O
支援
158混迷への出撃:2009/11/08(日) 01:40:51 ID:AP233llr
バシュッ、と炸薬が弾ける音。
倉庫の内側で爆ぜたそれは、衝撃で己が身を崩していく。
外壁が剥がれ落ち、現れたのは一回り小さくなった倉庫――ではなく、巨大なトレーラーだ。
大型のダンプカーよりもさらに大きいその車体は、小さい物であれば車ですら積み込めそうなほど。
トレーズは満足げにその威容を見やり、手にしていたスイッチをもう一度押し込むと今度はトレーラーの扉が開いた。

一通り見て回ったところ、このトレーラーは言ってみれば移動基地のようなものだとわかった。
睡眠・炊事やシャワー室などの生活設備に加え、大型の通信機を備えた情報管制設備。
そして一番のキモと言えるのは、KMFなる機動兵器を整備することのできる開発設備だ。
首輪の解析に大きな助けとなるのは間違いない。

普通に考えれば大当たりといえる支給品。
だが――

(何故こんな物を支給する? 首輪を外されても構わないということか?)

これが脱出を望む者の手に渡り、広く存在を知らしめられれば参加者間の戦意は著しく低下するはずだ。
そうなれば殺し合いなど破綻する。害悪でしかないはずだが。

(あるいは、このトレーラーを奪い合うこともまた計算の内、か……)

首輪を外す方法は何も一つではない。優勝すればいいだけの話だからだ。
そういう輩に対しては、このトレーラーは何の価値もないだろう。あるいは、獲物を集める体のいいエサか。

「まあ……いい。どの道私にはさしての使い道のない物だ。私を打ち破った者に、褒賞として与えるとしよう」

理由にはなる。
脱出を望むのなら、トレーズを打倒したその先に脱出への糸口があると言えば奮起し向かってくることは間違いない。
このトレーラーは、トレーズを含む殺戮者が駆逐された後に予想される帝愛グループへの反攻の際に拠点して活躍することだろう。

運転席に入る。
目に飛び込んできたモノに、トレーズは苦笑した。

「何という僥倖……彼に続け、ということか」

それは仮面。
さきほど目にしたばかりの、しかし細部が少々違うゼロの仮面と、漆黒のマント。
仮面を被ってみれば意外に快適な付け心地。
ボイスチェンジャーは標準装備されているようだ。

トレーズの美学からいえば、仮面を纏い素顔を隠すのは美しくはない。
だがこの状況、ゼロなる道化の存在をアピールすることにかけては役に立つと言える。
同じ時間に違う場所にいる二人のゼロ。
その情報は大いに参加者達を畏怖させ、惑わせることだろう。

まずはこのトレーラーで市街地へと移動する。
その後どこか人に見つかりにくい場所に隠し、トレーズに打ち勝った者にのみ存在を示唆することにしよう。
エンジンに火を入れる。
唸りを上げて走り出したトレーラーはまるで小山が動いているかのようにも見えた。

トレーズの向かう先、はたして誰との、どのような出会いが待っているのか。
その答えはまだ、薄明の彼方。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:41:36 ID:AP233llr
【F-2/工業地帯/一日目/早朝】

【トレーズ・クシュリナーダ@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:軍服
[装備]:サブマシンガン、片倉小十郎の日本刀 ゼロの仮面 マント
[道具]:基本支給品一式×2、薔薇の入浴剤@現実 一億ペリカの引換券@オリジナル×2 黒の騎士団のトレーラー
[思考]
基本:全ての参加者から忌み嫌われ、恐れられる殺戮者となり、敗者となる。
1:この争いに参加する。生き残るのに相応しい参加者を選定し、それ以外は排除。
2:ゼロの存在を利用する。
[備考]
※参戦時期はサンクキングダム崩壊以降です。



【片倉小十郎の日本刀@戦国BASARA】
片倉小十郎が使う日本刀。業物だが特に変わった能力はない。

【黒の騎士団のトレーラー@コードギアス】
黒の騎士団の活動開始時にアジトとして使っていた大型トレーラー。
ある程度の生活設備に加え、簡易基地としての設備も備える。
KMFの整備も可能。

【ゼロの仮面(一期)@コードギアス】
ルルーシュが最初に使用していた仮面。
神根島にてスザクに破壊された物。
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:42:22 ID:AP233llr
投下終了。
装備にマントを追加しました。
支援どうもですー
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 14:28:23 ID:lKyNj+E8
投下乙です
前半のトレーズ様の寛ぎっぷりが半端ない、完全に温泉ライフ満喫しているよw
で、後半は打って変わって真剣モード
ゼロ二人のこと知ったらルルとかスザクとかどう思うんだろ
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 15:21:03 ID:e7F6HsUt
投下乙です
コーヒー牛乳やらうどにゃらどこのおっさんだよwww
でも無駄に優雅なんだよなwww
しかしごひと同じくゼロの仮面を利用するのか
これはギアスキャラが混乱するだろうな
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 17:15:07 ID:muCpFQNE
流石トレーズ様、エレガントだ
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 17:32:29 ID:5Huj6Mwk
投下乙です

トレーズ様、ついに始動か
今までが悠々自適な時間だったからこれからどうなるか
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 17:42:33 ID:QRis1f/z
投下乙です

見える、トレーズ様がエレガントに特攻野郎Aチームばりのハンドル捌きを見せてくれるのが・・・!
166結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:32:23 ID:4Ooydf4l
伊達政宗、神原駿河、ゼクス・マーキス、一方通行、プリシラ、明智光秀、投下します
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:33:57 ID:Hg5KyRnd
待ってたぜ!支援
168結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:34:30 ID:4Ooydf4l
「……テメェなにしやがンだ」
「なにを、と訊かれても」
 
 金髪の男の手が白髪の華奢な少年の顎元に伸びる。
 いや、そもそも『少年』という言葉は考えものか。彼の身体付きは一見して少女のソレと区別が付かない。
 ホルモンバランスの異常か、それとも太陽光や紫外線などの外部刺激の少なさか。
 アルビノのような白い髪。クリムゾンの双眸。真っ白い肌。
 女と男を識別するための要素が、著しく、欠落している。断定することは、出来ない。
 
 だが、一つだけ。乾いた唇から漏れる押し殺した声だけは、第二次性徴を迎えた男性のそれと称して間違いないだろう。
 口うるさく喚くその声波だけが、彼の性別に明確な回答をもたらす。
 そして――その確固たる結果こそが、二人の間に決して赦されない『禁忌』という言葉として横たわっていた。

「言ったはずだ」

 場所は海風漂う海沿いの小屋。今にも崩壊してしまいそうなバラックだ。
 室内に人影は二つ。潮の臭いが染みついた柱と密閉された窓。
 熱く滾るような吐息と体温が部屋の温度を上昇させる。
 
 構図は簡単だ。シンプルでそして非常に分かりやすい。
 人類にとって、最も好ましく、身近で、そして欠かせない要素である――愛。
 その感情を行使するにあたって、性別の差など些細な問題ではない。それだけのことだった。
 
「――私は君が欲しい、と」
「っっっ……!」

 先のアルビノのような外見の少年へ金色の長髪を靡かせた美青年、ゼクス・マーキスがのし掛かっていた。
 対する一方通行《アクセラレータ》の紅石のような瞳が大きく見開かれる。
 そして、ゆっくりと唾液を飲み込む音。衣擦れ。遠鳴りのように響く波。絡み合う視線と肢体。
 
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:35:13 ID:Hg5KyRnd
支援
170結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:35:20 ID:4Ooydf4l
「そういう、ことなのかよ」
「ああ」
「チッ……クソが」

 ごろん、と一方通行が観念したかのように背中を汚れきった板の間に預けた。

「…………好きにしろ」
「抵抗、しないのだな」
「ンだ、泣き喚いて罵声の一つでも口にしろってェのかァ?」

 何故か愉しそうに、クッと一方通行が唇の端を持ち上げた。

「でもよォ、俺ァはそォいうまどろっこしいのは好きじゃねェンだ。
 それとも、アレかァ。しっかり、お優しく、こォして言葉にしてやンねェと分からねェか」

 日頃の彼は常に狂犬のように荒々しく、周りの者を遠ざけるような眼をしていた。
 だが、彼がそんな暴虐な態度を取るには理由がある。
 否。理由があるからこそ、彼の歪みは大きく、そして深刻なモノへと形を変えていたのだ。

「満足させてみろ、ってンだよ」
「ッ――」

 ゼクスが唇を噛んだ。いつの間にか攻守は逆転していた。
 上か下か、という単なるカタチの問題ではない。
 どちらが相手を精神的に屈服させ、リードを取るかという命題。何よりも――重要なこと。

「はっ……なンだァ? 怖じ気づいたってェのかよ。
 これだからお上品な血統書付きの犬は好きじゃねェ。餌が当たり前みてェに用意されるのが当然だと思ってやがる。
 ちィっとばっかし焦らしてやったらすぐにコレだ。盛りの付いた野良犬みてェな眼ェしてるくせによォ。
 ンだァ、そんなもンで俺のことを――っァ!?」

 台詞の途中で一方通行からあまりに大袈裟な嬌声が漏れた。
171結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:36:01 ID:4Ooydf4l
「私も舐められたものだな」
「テ、メェ……!!」

 一方通行を悶絶させたのは――ゼクスの指先だった。ゼクスの巧みな指技はすなわち、経験の現れである。
 彼は亡国の王子という側面を持つ一方で、秘密組織OZのエースパイロットという肩書きを持っている。
 光のような疾さと正確さでモビルスーツを操り、敵機を撃墜することから、付いた通り名がライトニング・カウント(閃光の伯爵)。
 軍隊仕込みの熟練した技と電光石火の攻めは、たとえ学園都市最強の超能力者、レベル5の一方通行といえど一溜まりもない。 

「満足させてみろ、か。よかろう。君の身体も随分と期待しているようだからな」

 ゼクスの氷のような視線に一方通行は小さく口元を歪ませる。
 その笑みがどのような意味を持つのか。
 恐怖でもあり、不安でもあり、期待でもあり。綯い交ぜになった感情の塊が一方通行の胸の奥で熱を放っていた。
 そして、混ざり合う慕情と繋いだ汗の香りにただ侵されるように――二人は堕ちていく。




 
 
「――というような情事が我々と出会うまでに繰り広げられた後であると、私は確信して止まないわけなのだが。
 とはいえ、決めつけるのは良くない。出来ればお二人には採点を頼みたい所だ。
 流石に出会って四時間ほどでハードコアに興ずる余裕はないと思い、かなりマイルドな方向性にしてみたのだがどうだろう。
 ああっ、すまん! 本当は既に多種多様なアブノーマルプレイを経験済みなのかもしれんが、今日の私は少しばかり乙女ちっくストライクでな。
 普段、自分とあまり接点のないタイプの男性が多すぎて純情路線に走ってしまった。
 ちなみに、二人のタチとネコについてなのだが、コレは私としても断言しにくい所だ。
 特に難しいのが一方通行≪アクセラレータ≫さん……そういえば、名簿で君の名前を見た時から気になっていたのだが、今読み方を聞いて更に驚いたよ。
 いくら何でも一方通行と書いてアクセラレータと読ませるのはかなり無理があるのではないかな。
 同じ厨二だとしても、恒久の氷結と書いてエターナルフォースブリザード。それくらいならば私も許せるのだが……すまんな、微妙に話が逸れた。
 そのような理由で、私はフレンドリーに『一方さん』とそちらを呼びたいのだが、問題ないだろうか」 
「「…………」」

ゼクス・マーキスと一方通行、伊達政宗と神原駿河の四人はほんの一時間ほど前に出くわしたばかりであった。
四人の現在位置はD−6の駅周辺に建てられたデパート内のカフェテリア。
主催者に対して反抗心を持つ人物、ということで出会い自体も割合スムーズに進行した――のだが。

「なァ、コイツぶっ殺していいかァ?」
「……止めておけ」

爛々と赤い眼を輝かせ、唇をヒクヒクと震わせながら一方通行が訊いた。
あまりに明確なまでの――殺意。
ちなみに、これはあくまで駿河が外見と声から判断して展開した妄想なので、一方通行の具体的な性別に関する言及はされていない。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:36:16 ID:Hg5KyRnd
ほいほい支援
173結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:36:41 ID:4Ooydf4l
「意外なことに阿良々木先輩ですらBLの素養はないのだからな……カップリング論を口にしても共感を抱いて貰えないか。
 次回からは私の頭の中だけに留めておくとしよう」

まさに、『全然意外じゃねぇよ!』というツッコミがどこからか聞こえて来そうなシチュエーションである。
二人の冷ややかな反応を他所に、うんうん、と勝手に頷く駿河。
思わず思考がフットーして妄想をベラベラ口にしてしまったが、ドン引きしてしまうのも仕方ないという所か。
少しは自重しよう。そんなことを駿河は思った。

「神原駿河。お前のjokeはちぃっとばかし、長すぎるぜ。大事な話をしてんだ。武芸者の話には口を出さねぇで貰いてぇ」
「とはいえ筆頭。三人ものキャラの濃い男性陣に囲まれ、私は少々焦ってしまったのだ。
 何もせずボーッとしているだけでは、禁書目録(空気)になってしまうからな。
 いや、放置プレイは私の主食ではあるのだが……まぁそれはいい。自己紹介も兼ねて、私に出番をくれてもいいのではないだろうか」
「Ha、ha! そいつぁ配慮が足りなかった。すまねぇな」

構図は分かりやすい。デパートの五階。
飲食エリアに設置されたカフェテリアで妙な取り合わせの四人組が額を付き合わせていた。

学園最強の超能力者――一方通行。
金髪流麗の軍服の男――ゼクス・マーキス。
青い武者鎧の戦国武将――伊達政宗。
天才バスケット少女――神原駿河。

主に会話をしているのはゼクスと政宗だ。
もちろん、彼らの話していることはかなりズレまくっている。

「頑駄無? 十尺を余裕で越えるカラクリ武者ねぇ……『戦国最強』みてぇのがゴロゴロしてるわけだな。
 そいつぁスゲェ。バテレンの技術は日本より大分先に進んでるってことかい」
「……バテレン、か。私の記憶では日本に戦国武将が存在したのは数世紀以上前だったはずだが。一方通行、日本人として君の意見を聞きたい所だ」
「合ってる。伊達政宗なんざァ、五百年は昔の人間だ。どォせ、成りきりかなンかだろうがなァ」

当然、その理由は『伊達政宗』というどう見ても歴史的な人物との邂逅にある。
彼が着込んでいる甲冑と甲はまさに戦国時代のソレ。
常識的に考えれば、こんな格好をしている人間と出会えば眼を疑うのは当然だろう。

「いや、違う。おそらくコレは≪怪異≫ではないかな」
「≪怪異≫だァ?」
「そう。戦国武将、伊達政宗の≪怪異≫に取り憑かれてしまった戦國男子。それが筆頭の真の姿だ」
「はっ、憑依なんてオカルトな単語出してくるじゃねェか。
 つっても、記憶操作≪マインドハウンド≫に洗脳能力≪マリオネッテ≫辺りを併用すりゃあ、似たようなもンも可能だろうがなァ」
「……超能力、か。精神に何らかの細工を施された、と解釈すれば彼のこの状態も説明出来る気もするな。
 機械を用いても精神状態に大きな影響を及ぼすことは可能だ。
 私の周りには≪ゼロシステム≫という神経伝達物質の分泌量をコントロールするシステムがあってだな……」

結果、三人は政宗の頭が完全におかしくなっている、という前提で話を進め始める。
一見、出会ってからほとんど時間が経っていない割に、随分と馴染んでいるように見えるが、実際はそうではない。
単純に、誰よりもツッコミ所が満載の戦国武将(しかも武将のくせに英語を話す)への懐疑が一時的な結束力を生み出していただけの話だ。
異なる世界から呼び出されている――という意識はあるものの、彼があまりにアバンギャルドな存在であるため、思わず別の方向性を模索してしまうのだ。
とはいえ――

「どうにも困った奴らだぜ。憑依? 俺がghostにでも祟られてるってぇのかい。
 この奥州筆頭・伊達政宗――生まれてこの方、他人の意志に呑まれたことも、頭を弄くられた経験もねえ」

実際に――彼は本物の伊達政宗なのだから、三人の推測は完全に的外れだった。
174結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:37:37 ID:4Ooydf4l
歴史の教科書に記されている事実は完全に異なるとはいえ、そもそも史実とは後の歴史家が作り上げるものである。
戦国時代において、「Are you ready guys!?」などという英語を口癖にし、ビームを出して空を飛び回り、
ハンドルとマフラーの付いた馬イクに跨る武将が本当に存在しなかったと、百パーセントの自信でもって断言することの出来る人間は稀少だろう。

「…………あぁっ?」
「どうした筆頭。妙な声など出して。もしや急に喘いでみたい気分にでもなったのだろうか。
 筆頭にそういう趣味があったのなら、喜んで私もお供させて貰うぞ。こう見えて嬌声には自信がある」
「Be Quiet! 生憎と、鳴いてる場合じゃなくなったようだ」

口元に一本指を立て、政宗が神原の戯言を静止した。
そして、徐に腰掛けていた椅子から立ち上がると懐から取りだしたドラムスティックをまるで投げナイフのように投擲した。
丁度、政宗にとっての真後ろ、階下へと通じる階段のある方向だ。
空を飛ぶ燕のように真っ直ぐ飛んでいったドラムスティックは――ドッ、と鈍い音を立ててコンクリートの壁に突き刺さる。


「Hey! HIDE and SEEKは止めにしようぜ!」
「きゃっ!!」


第五の人間の声、である。単純な感覚の鋭敏さではこの面子の中では政宗が最も優れている。
能力をセーブされている一方通行や、モビルスーツ戦闘が専門分野であるゼクスは周囲に気を配る動作に慣れていない。
基本的には運動神経の良い少女であるだけの神原など、尚更だ。
政宗が一番最初に来訪者の気配を察知することは、半ば当然とも言えた。

「な、な、何するのよぉーっ!! 危ないじゃないっ!!!」
「Oh,Sorry……っと!?」

現れた少女に叱責され、肩をすぼめ、謝罪の言葉を口にするもソレはすぐさま驚愕の呻きに形を変えた。
とはいえ、彼女の登場に眼を剥いたのは政宗だけではなかった。
ゼクスも一方通行も、実際、我が眼を疑わずにはいられなかったのだから。

なぜなら、頬を膨らませ、こちらへ歩み寄る少女の格好が――極めて露出度の高いビキニしか身につけていなかったのである。

「なンだァ、ありゃあ……頭おかしいンじゃねェか。髪の色もピンクだしなァ」
「…………一方さん」
「あン?」

怪訝な顔つきで神原に声を掛けられた一方通行が振り向く。
彼の名前はあくまで≪アクセラレータ≫であり、≪いっぽうつうこう≫ではない。
故に神原駿河の口から本当に宣言通りに放たれた≪いっぽうさん≫という呼称は、何とも座りが悪い。

頬を赤らめ、妙にソワソワし始めた駿河が言った。
175結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:38:33 ID:4Ooydf4l
「――あの女の子、物凄くエロ可愛いと思わないか?」
「……知らねェよ」

補足するまでもないが、神原駿河にとってBLを嗜む腐女子という属性は単なる一側面に過ぎない。
彼女はそれ以外でも多彩な性癖を持ち合わせている。つまり、分かりやすく言うと――

「なっ……そうか、一方さんはもしや、阿良々木先輩すら持ち得なかったBL属性を……!?
 先程の激高は事実を指摘された故のツンデレ……そう考えれば辻褄が合う」
「……ふざけンな、腐れ女。勝手に妄想してンじゃねェよ」
「ちなみに、私はレズだ」
「…………勝手に言ってろ」

神原駿河は生粋の変態なのである。


 ▽


「さてと……長居したな。情報交換も終わったし、俺はそろそろお暇させて貰うぜ」

あまりに数が多いから、ということで一方通行が投げて寄越した缶コーヒーを飲み干した政宗がそう呟いた。

「筆頭!? いきなり何を言い出しているんだ!?」

しかし、立ち上がった政宗へ、隣の駿河が信じられないモノを目撃したかのような言葉を投げ掛ける。
とはいえ、政宗自身は彼女が何故こんな態度を取るのか分からなかったらしい。
「Huhn?」と不思議そうな顔をして、彼女を眺めた。

「まだ私とプリシラさんが話を始めてから二十一分しか経っていないのだぞ!?」

神原がバンッ、と右手で机を叩いた。あまりにも無駄に激しい主張であった。
そんな彼女の態度を見て、プリシラは首を傾げた。

何故、家でデュオ達を待っていることを約束したプリシラがデパートにいるのか、その理由は単純だ。
まず、彼女達の待ち合わせ場所とこのデパートが目と鼻の先に位置している点。
そして、これが最も重要な理由ではあるのだが――水着以外の服が入手したかった、ということだ。

ちょっとだけなら、いいよね。
プリシラはそんなことを思い、一切の衣服が存在しなかった民家を後にし、すぐ見える場所にあったデパートへと訪れたのだ。
そして、その途中で政宗達一行と出くわしたことになる。

「Ha、誰に付いていくかは神原駿河、お前の勝手だ。頭を変えたいってんなら俺は止めねぇ。
 顰め面されるだろうが、ゼクス達に厄介になるのも悪くねぇだろう。今のCOFFEEみてぇに甘い道程を行こうってわけじゃねぇんだ」
「むぅ……筆頭の一転攻勢にさしもの私も困り果ててしまうな……」
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:38:50 ID:Hg5KyRnd
レッツパーリィ!支援
177結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:39:25 ID:4Ooydf4l
チラリ、と名残惜しそうな眼で駿河がプリシラを見つめた。
プリシラが四人と遭遇してから、約十分。
それほど大した情報交換は出来なかったが、自分も早めに戻らないとならないだろう。

「仕方ない。私も退出するとしよう。筆頭はタチだから、強引に下の人間を引っ張っていけるのが長所だからな。
 矮小な一市民に過ぎない私にとって、これ以上ないほどのヘッドだよ」
 
そう言うと、駿河もデイパックを背負い直し、ゆっくりと立ち上がる。 
そして、「世話になったな。ゼクスさん、一方さん、プリシラさん」と軽く挨拶をしてから、既に歩き出していた政宗の後を追った。
嵐のような時は収まり、何とも微妙な静けさだけが残った。


「うざってェ二人組がやっと消えたか」


ぽつり、と一方通行が呟いた。

「で、アンタはいつまで一緒にいるつもりだ」
「……一方通行。その言い方は彼女にあまりに失礼だぞ」
「甘ちゃんだなァ、ゼクス。俺ァ、善意で忠告してやってンだよ。
 他の人間と待ち合わせしときながら、フラフラ出歩くのは馬鹿のやるこった。
 役に立たねェ人間と馴れ合うほど暇じゃねェンだ。さっさと消えな」

まるで邪魔者を見るような眼で、一方通行がプリシラを眺める。
彼のそんな素っ気ない態度にプリシラは若干、頬を膨らませながら、

「ひっどーい! 女の子にそんな乱暴な口利いちゃダメでしょ!」
「女の子だァ? 痴女みてェな格好して、ほっつき歩いてたアホ女が言う台詞か、ソレ」
「……ねぇ『ちじょ』って、なに?」
「おいおい。ふざけてンのか、アンタ?」
「ふざけてなんてない!」
「…………マジで言ってンのかよ。はァ、逆にこっちが驚くぜ」

プリシラの回答が、どうも一方通行には相当不可解だったらしい。
一方で、プリシラとしては尋ねてもまともに答えが返ってこないことが不満でならない。
ゼクスの方に期待を込めた視線を寄せても、気まずそうに眼を逸らされるだけ。
白髪ロン毛の男が口にした『いんばい』という単語もよく分からないし、どうも難しい言葉を使う人間が多すぎる気がする。

「でも、わたしもう着替えたし! 『ちじょ』なんかじゃないんだから!」

そう――あの後、プリシラは見事に水着に代わる衣装を手に入れていた。
しかし、デパートの婦人服売り場から新しい服を調達したわけではない。
一方通行の支給品に、なんとプリシラが普段ブラウニーへ搭乗する時に着用するボディスーツが含まれていたのである。
非常にノリノリで着替えを手伝ってくれた駿河のおかげで、既にプリシラは目的を果たすことが出来ていた。
178結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:40:16 ID:4Ooydf4l
「いや、一方通行の言っていることも、あながち間違いではない」
「ゼ、ゼクスさんもわたしが『ちじょ』だって言うんですか?」
「……違う。君が待ち合わせ場所から、一人でここまで来てしまったことだ」
「あっ……」

ゼクスの言葉に、プリシラは思わず顔を顰めた。

「もっとも……君一人を置いて飛び出して行く人間にも問題はあるが。
 同行者の名前はデュオとセイバーと言ったか。おそらく、君が帰ってくるのを心配して待っているはずだぞ」

その言葉を聞いて、プリシラはグッと胸元で拳を握り締めた。
ゼクスの言い分はもっともだ。
衝動的に飛び出してきてしまったが、おそらく例の民家で入れ違いになっている可能性は高い。
書き置きも何も残してはいないのだ。最悪、自分が襲われたものだと勘違いされるかもしれない……。

「わたし、帰ります!」
「それがいい。一方通行、私達も行くぞ。彼女を一人で出歩かせるわけにはいかない」
「あ、いえ。大丈夫です。ほんのすぐ近くですし」
「ゼェクス、ガキの使いじゃねェンだ。ほっとけ」

掌を追い払うように振る一方通行。
プリシラは彼のそんな態度に正直かなりムカッとしたのだが、ここは年上の自分が我慢するべき所だと考え、なんとか自制した。

「じゃあ、これで。二人と合流したら……」
「ああ。私達はこれから街を南下して、宇宙開発局へと向かう。
 君達の方針にもよるが、縁があるならもう一度出会える機会もあるだろう」
「はい。分かりました! 色々ありがとうございます!」

ぺこり、とプリシラは頭を下げた。

「特に謝られるようなことはしていない。こちらも情報を入手出来て嬉しい限りだよ」
「一方通行も服、ありがとね。支給品だったのに」
「ンな服持っててもどうせ使わねェ。ゴミを捨てる手間が省けただけだ」
「なんなら、代わりにこの水着、あげようか?」
「……変な気ィ使ってンじゃねェ」

口元に微笑を携えているゼクスと違い、
一方通行の表情は駿河にBLの話題を振られていた時よりも険しくなっていた。
苛立ちを交えつつ、木製のテーブルを白い指先が叩く。そして、

「じゃあ、また! 一方通行もコーヒーばかり飲んでちゃダメだよ。
 ちゃんとご飯食べないと、体力付かないんだから!」

と――言い残して、プリシラも席を立つのだった。


 ▽

179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:41:21 ID:Hg5KyRnd
お着替え支援
180結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:41:33 ID:4Ooydf4l
「……君は、彼女に大して随分と妙な態度だったな」
「うるせェ。アイツ、頭ン中弱すぎだろ。俺より年上のくせにアレはねェよ」

恐ろしいまでに邪気がない相手。
一方通行の頭の中へ、とある少女の顔が浮かび上がる。
見た目はまるで似ていないが、あの脳天気さは根本では同じタイプであるようにも思える。

「どうだろうな。今時珍しいタイプだとは思うが」
「チッ…………結局残ったのは俺とオマエだけか」

ゼクスの妙に落ち着いた態度を見て、一方通行が小さく舌打ちをした。

ゼクス、一方通行、そしてプリシラ。
そして政宗に駿河と五人もの人間が先程までこの場所にはいた。
それぞれ、殺し合いに乗るつもりはないが、それぞれの目的は微妙に異なっていた。

主催を潰し、この遊戯を破壊しようとする者――伊達政宗。
最終的な目標は前者と同じだが、何よりも親しき人間の保護を最優先に考える者――ゼクス・マーキス、一方通行。
反抗する具体的なプランを持っているわけではないが、知り合いを探している者――神原駿河、プリシラ。

だが、可能性としては五人が纏まって行動する、という案もあったはずだ。
数は力。それはホワイトファングの指導者であるゼクスも、奥州伊達軍の筆頭である政宗も十分に熟知している。
では、何故それをやらなかったのか――といえば。

「現状を把握したいからこそ、あえて別れて行動する、ね。裏目に出ても知らねェぞ」
「とはいえ、君の能力もあまり大人数と共闘するのに適していないだろう」
「まァな」
「だからこそ、私は――」

目的が異なると同時に、彼らがあまりにこの島の現状に無知である、という理由があった。
調べるべきことは山ほどある。
無事に帰還するには、島の形やライフライン、科学技術、力を持つ参加者の保護など、多くの難題が待ち受けている。
プリシラの言葉から、進んで殺し合いを享受している人間がやはり存在していることも明らかになった。
少なくとも、彼らを排除・拘束することが出来なければ、この舞台が収束するとは考えにくい。故に、

「コネクションを形成し、一つの《グループ》を作る。集団を形成しようとする人間は多く存在するはずだ。
 だが、当然のようにその枠組みから外れる者も多数出て来る。
 年齢、性別、主義、主張、人種すら異なる者達が一つに纏まるためには私のような人間が必要なのだよ」
「カカッ、アンタの妹も似たよォなことやってるかもなァ」
「どうかな……。だが、殺し合いを強制されていることで、不安定な精神状態に陥っている者も多いだろう。
 リリーナならば、そのような人間を見たら放っておくことは出来ない、とは思う」
 
根底で繋がった集団――つまり、このバトルロワイアルに反抗し、転覆を企てる人間で力を合わせるという考え。 
ゼクスと一方通行も共に探し出したい相手がいる。
とはいえ、闇雲に走り回るにはこの島は少々広すぎる。
ならば、信頼出来る人間を見つけ出し、手分けして互いの知り合いの庇護を行うことが最も効率的だ。
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:43:09 ID:Hg5KyRnd
支援
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:47:28 ID:bKwH1Gge
さるったか?
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:47:57 ID:H6PBaRMe

184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:48:26 ID:FxH+7vc+
 
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:48:40 ID:H6PBaRMe

186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:49:40 ID:FxH+7vc+
 
187結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:50:09 ID:4Ooydf4l
「つっても、あの腐れ女とあの武将みてェな分かりやすい奴ばかりじゃねェ。
 真っ正面から突っ込んで来る虫なら俺がブチ殺す。ケドよ、今日の十八時か?
 あと十二時間後に、又聞きの連鎖で人間が集まって、顔も合わせたとして――オマエ、それ掌握出来んのかよ。
「……腹に一物隠し持った人間が混ざる可能性は勿論ある」
「だよなァ」
「だが、やるさ。そうでもしなければ活路はない。元々、生還の可能性の方が格段に少ない状況なのだ。
 多少のリスクは覚悟しなければ、ゲーム盤をひっくり返すことは出来ない。だろ?」
「ハッ」

数時間前に、一方通行が発した言葉を模倣し、ゼクスが小さく笑った。

「とはいえ、私は発起人ではあるが、必ずしもまとめ役をやるかと言えばそうでもない」
「はァ?」
「相応しい人間がいたら、私はその席を譲るつもりだ。もちろん、軋轢が起こらないよう精一杯のサポートはするがね。
 ……残念ながら、私は弱い。途中で命を落とす可能性は決して低くない」
「例えば、誰だよ」
「政宗なんて適任だろう。彼は生粋のリーダー体質だよ。後ろに彼を支える人間がいれば、申し分ないだろうな。
 それに――運の良いことに、私の目の前にも一人、候補者がいる」
「俺はリーダーなんて柄じゃねェよ」

ふいっ、と一方通行が顔を背けた。ゼクスの言葉を性質の悪い冗談だと解釈したのだろう。
その時、だった。

「――あ?」
「どうした、一方通行」
「黙ってろ。こっちは、能力制限されてンだ。雑音入れンじゃねェ」

不意に立ち上がった一方通行が、自身の耳を抑えながら眼を剥いた。

「…………コイツは、」

彼の能力はベクトル操作。
この世に存在するありとあらゆる指向性を持つ要素を自在に操ることが出来る。
その能力の応用の一つに『音』も含まれる。
空気振動である音のベクトルを操り、拡散する振動波を集約することで彼は非常に遠くの物音をも聞き分けることが出来る。

例えば――女の叫び声、男の嗤い声、などであっても。



【D-6/デパート/一日目/早朝】
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:51:04 ID:H6PBaRMe

189結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:51:18 ID:4Ooydf4l
【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康 能力使用可能(最大使用時間、残り十四分)
[服装]:私服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、缶コーヒー×24、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考]
1:このゲームをぶっ壊す!
2:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)
[備考]
※知り合いに関する情報を政宗、ゼクス、プリシラと交換済み。

『一方通行の能力制限について』
【制限は能力使用時間を連続で15分。再使用にはインターバル一時間】
【たとえ使用時間が残っていても、ある程度以上に強力な攻撃を使えば使用時間が短縮されます】
【今回の使用はあまりに過度の能力だったため、次からは制限される可能性があります】
* ゼクスのいた世界について情報を得ました。
* 主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。
* 飛行船は首輪・制限の制御を行っていると仮説を立てました。

【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:軍服
[装備]:真田幸村の槍×2
[道具]:基本支給品一式
[思考]
1:リリーナを探す
2:一方通行を……
3:第三回放送の前後に『E−3 象の像』にて、一度信頼出来る人間同士で集まる

[備考]
* 学園都市、および能力者について情報を得ました。
* MSが支給されている可能性を考えています。
* 主催者が飛行船を飛ばしていることを知りました。


 ▽
 

「急がなくちゃ」

慣れたパイロットスーツに身を包み、プリシラがデパートの階段を駆け下りる。
桃色のポニーテールが風に揺れ、襟元を擽る。
彼女が待ち合わせの民家を出てから、まだ大して時間は経過していない。
とはいえ、もちろんタイムラグはあるだろうが、今、自分がセイバーとの約束を破っていることに変わりはない。

(わたし、どうすれば良かったんだろう)

そんな、郷愁にも似た感情がプリシラの中になかったと言えば、嘘になる。
プリシラがこの島で出会った人間は誰もが誰も、自分の意志に従って行動する者ばかりだった。
口だけではない。ちゃんと自分に何が出来て、どんな力があるのか把握している人達だ。

愛機であるヨロイ・ブラウニーさえあれば、プリシラも戦力になることが出来るだろう。
先程出会ったゼクスもプリシラと同じく、機動兵器のパイロットだったようだが、機体の支給に関しては推測の域を出ない、と語っていた。
わざわざ殺し合い、と言っているのだから生身で戦わせることに意味があるだろうと、プリシラ自身も思ったりする。

(でも、優しい人達と出会えたのは良かったな)
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:51:42 ID:Hg5KyRnd
いっぽうつうこう支援
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:52:04 ID:FxH+7vc+
 
192結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:52:23 ID:4Ooydf4l
だからこそ――無力感、とでも言えばいいのだろうか。
何とも言えない、やるせなさだけがプリシラの心の中に募っていた。
思わず、民家を飛び出してしまったのも、そう言う意味で少しセンチメンタルになっていたせいかもしれない。
いつものプリシラならば、たとえセイバーに拒否されたとしても、彼女と一緒にデュオを助けに行ったと思う。

(それが出来なかったのは……どうして?)

殺し合いを強いられることが正しいことだとは絶対に思わないし、
最初に首を飛ばされた女の子のような犠牲者は一人も出したくない。

自分に出来ることはないだろうか。
それを模索していたからこそ、待ち合わせ場所を飛び出してしまったのだろうか。
実際、この後デュオ達と上手く合流出来たならば、得る物はあっただろうが……。


「――おやおや。これは先程のお嬢さんではないですか」


生ぬるい風が辺り一面に満ちていた。
太陽が顔を出し、黒の世界が薄れた光に溢れる時間帯。
その男の周囲だけは、不自然なまでに暗澹とした瘴気で枯れ果てたような様相を示す。

白と赤、という印象がプリシラの頭で一つの像を結ぶ。
そっくりだった。だが、どうしてここまで纏う雰囲気が違うのだろう。
真っ白い髪。爛々と輝く赤い眼。青白い肌。
無愛想ながら、その身に宿した熱い信念を感じずにはいられなかった――彼とはまるで正反対の一片の曇りもない、悪。

「あの衣装は脱いでしまわれたのですか? ンフフフフフフッ……非常によく似合っていらしたのに」
「っ――」

あっ、と思った時はもう遅かった。

淡い希望は儚くも砕け散った。
少女が夢見た幻想は、理想は、願いは紅に濡れたの白刃に刈り取られる。
見る者に底知れない気持ち悪さを抱かせる笑みを貼り付けた男が言葉と共に大地を駆けた。

ずぶり、と男の手にしていた大鎌の刃がプリシラの腹部へと沈み込んだ。
そして、払い。飛び交う鮮血。切り裂かれる皮膚と肉。
すぅっと力の抜けた四肢が地面に吸い込まれそうになる。

「……ぐっ…………!」

腹部から血が滲む。
深々と突き刺さった刃が切り裂いた肉が、血管が、神経が悲鳴を上げる。


「あははっははっ……やっと、流れたっ……! 紅く輝く果実のような……血がっ……!」


鎌の先端に付着した血液を蛇のように舌を伸ばし、男が舐め取った。
そしてビクッ、ビクッ、と全身を痙攣させるように震わせた。
特に大地を踏みしめる両脚から這い上がって来たかのような衝動に身を任せ、下半身を震わせる様は、プリシラに生理的嫌悪感を超えた恐怖を抱かせる。
彼がどのような悦楽を味わっているのか、それはプリシラには全く理解出来ない。
しかし、背中で捉えるその声は、押し寄せる高波のように彼女の心を蝕む。

プリシラは半ば感覚的に男とは反対の方向へ駆けだしていた。 
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:53:14 ID:Hg5KyRnd
変態キターーー
194結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:53:22 ID:4Ooydf4l
「どちらへ行かれるのですか? せっかく、再会出来たのです。互いの運命に祝福を上げようではありませんか」
「誰……がアンタ……なんかとっ……!」
「淫売に相応しい下品な視線です……! ですが、それがいいッ!
「その憤怒の中に隠しきれない屈辱と恐怖を抱いた眼! 苦痛と困惑で上擦った声! 無力さに強く噛み締められた麗しき唇!
 いいッ、素晴らしいッ! もっともっと、私を見てくださいッ! 熱い怨嗟で私を昂ぶらせてッ!」
 
既に、自分の身体がどうしようもなくなっているのは悟っていた。

「ああっ……ああっ……! 久しぶりに貪る馳走のなんと甘美なことかッ!
 信長公ッ! 貴方が今、身を任せていらっしゃるであろう絶頂の感覚に今、私も達しつつあります!」 
 
背後から愉しそうな声が聞こえてくる。
ただ、プリシラは本能に従い、逃げ出すことしか出来なかった。
まともな叫び声を上げることさえ出来ない。
背後から迫ってくる存在が、あまりに異質で、そして――計り知れなくて。

(ヴァン……!)

大好きな人の名前を頭の中で言葉にする。
まるで、その存在を意識することだけで自分を保っていられるかのように。

「さぁ、遊びましょう! お嬢さん! 私と共にッ!」

背後から迫る羅刹の声が、朝焼けの光の中で腫瘍のように蠢いていた。



【C-6/草原南東部/一日目/早朝】
【プリシラ@ガン×ソード】
[状態]:体力枯渇、腹部に大きな刺し傷、裂傷(ダメージ大)、大量出血
[服装]:ヨロイ搭乗時のボディスーツ@ガン×ソード
[装備]:無銘・短剣@Fate/stay night、ミズーギーの水着(白のきわどいビキニ)
[道具]:
[思考]
基本:殺し合いなんてしたくない。
1:光秀から逃げる

※参戦時期は17話途中、水着着用時
※名簿を確認していません。
※重傷です。処置しなければ(しても?)数時間以内に死亡します
※知り合いに関する情報をゼクス、一方通行、政宗、駿河、と交換済み。

【明智光秀@戦国BASARA】
[状態]:疲労(小)
[服装]:甲冑(一部損壊)
[装備]:桜舞@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式 、信長の大剣@戦国BASARA
[思考]
0:目の前の前菜を貪る
1:一刻も早く信長公の下に参じ、頂点を極めた怒りと屈辱、苦悶を味わい尽くす。
2:信長公の怒りが頂点でない場合、様子を見て最も激怒させられるタイミングを見計らう。
3:途中つまみ食いできそうな人間や向かってくる者がいたら、前菜として頂く。


 ▽
 
 
195結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:54:17 ID:4Ooydf4l
「どうした筆頭? 難しい顔をして」
「……いや」

政宗が北東の方角を見つめ、眉を顰めた。隣の駿河が不思議そうにそれを見つめる。
彼らの現在位置はD−5の政庁。ゼクス達と別れた二人は、一路進路を西に取っていた。

「嫌な風が吹いて来たな、なんて思ってよ」
「ふむ」

駿河が顎を一撫でして頷いた。

「ならば急ごうではないか――風が止む前に」
「どこに、だよ」
「私に聞かれても困るぞ。私は敏感肌ではあるが、超常的な感覚には自信がない。
 むしろ、そちらは筆頭の得意とする分野だと思うが」
「俺だって神道の心得があるわけじゃねぇ」

そして、政宗は虚空を眺めながら小さく呟いた。

「だが――こういう空気が大好きな奴を知っているだけだ」
「先程、危険人物として挙げていた『明智光秀』という人物のことか」
「ああ」
「筆頭にそこまで言わせる人間なのか。私の中の明智光秀像はイマイチ冴えない地味系の男、といった感じだぞ」
「Ha、ha! 相変わらず想像力が豊かだな! どこからそんなimageが出て来たんだ?
 あの男は一度見たら忘れられるような相手じゃねぇよ」

スッと、政宗は空を見上げた。
辺りを覆い隠していた暗闇は消え去り、一日目の夜が完全に明けようとしていた。


【D-5/政庁前/一日目/早朝】
196結ンデ開イテ羅刹ト骸 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:54:57 ID:4Ooydf4l
【伊達政宗@戦国BASARA】
[状態]:健康
[服装]:眼帯、鎧
[装備]:田井中律のドラムスティク×2@けいおん!
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1(武器・確認済み)
[思考]
基本:自らの信念の元に行動する。
1:主催を潰す。邪魔する者を殺すことに抵抗はない。
2:信長、光秀の打倒。
3:神原は変態。馬の件は嘘じゃなかったし、とりあえず泳がせとこう。
4:ゼクス、一方通行、プリシラに関しては少なくとも殺し合いに乗る人間はないと判断

[備考]
※参戦時期は信長の危険性を認知し、幸村、忠勝とも面識のある時点からです。
※神原を完全に信用しているのかは不明。城下町に住む庶民の変態と考えています。
※知り合いに関する情報をゼクス、一方通行、プリシラと交換済み。
※三回放送の前後に『E−3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランに同意しています。
 政宗自身は了承しただけで、そこまで積極的に他人を誘うつもりはありません。
 
【神原駿河@化物語】
[状態]:健康、腕に縄縛紋あり
[服装]:私立直江津高校女子制服
[装備]:縄@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(未確認)、神原駿河のBL本セット
[思考]
基本:殺し合いをしたくはない。
1:出来れば戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦と合流したい。
2:政宗と行動を共にする。
[備考]
※アニメ最終回(12話)より後からの参戦です
※政宗には戦場ヶ原たちの情報、怪異の情報を話していません。
※政宗を戦国武将の怪異のようなもの、と考えています。
※知り合いに関する情報をゼクス、一方通行、プリシラと交換済み。
※三回放送の前後に『E−3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランに同意しています。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:55:13 ID:Hg5KyRnd
 
198 ◆tu4bghlMIw :2009/11/08(日) 18:56:22 ID:4Ooydf4l
投下終了です。支援ありがとうございました。
規制辛いな……うーむ。
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 18:58:12 ID:Hg5KyRnd
投下乙、対主催の希望の光が見えてきてる感じですね
そして変態に追われる痴女・・・・
これなんてAV?
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 19:02:15 ID:QRis1f/z
投下乙です

神原だめだこいつ・・・早くなんとかしないと・・・
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 19:07:00 ID:tQb46CdR
投下乙です
神原、おまwww 本人の目の前でよくそこまで言えるなwwww
最初は何があったんだと思ったぞw
しかし特に揉めずに情報交換出来てよかったよかった
プリシラは服が手に入ってよかったと思ったら光秀キター!
腹に穴開くとかきついわ。頼む、誰か来てくれ!
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 19:51:02 ID:5Huj6Mwk
投下乙です

神原自重しろwwww
光秀相変わらずキメェwwwwwww
セイバー、デュオー、早くきてープリシラ死んじゃうーwww

…さて、また新しい墓石を発注する作業に移るか
しっかしよく六人をさばくな、見事なもんです
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 20:09:26 ID:rmsvDXUV
神原さん生き生きとしすぎだろ…
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 20:14:43 ID:lKyNj+E8
投下乙です
のっけからの神原妄想暴走しすぎだろwwwよく殺されなかったな、おいwww
そしてプリシラさんヤバい奴に出会ってしまったばかりに…
それにしても神原にしろ明智にしろ生き生きしているな
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 20:33:24 ID:zorETztY
投下乙!
神原www本気で自重しろwww
何事かとガチで狼狽えたぞコンチクショウwwwww
そして信じられないことに定評のあるBASARA、そしてそんなこと毛ほども気にしてない筆頭は流石過ぎるw
さてやっと本格的になってきたグループ交流、今後どう影響するやら

とりあえずプリシラ生きろー!ヴァンー早く来てー!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:12:06 ID:4eP4zQ+y
投下乙!
神原……お前はなんつー妄想を……本人の前で喋るのかよwww
しかも「〜何もせずボーッとしているだけでは、禁書目録(空気)になってしまうからな〜」って
放送の時にペナルティで爆☆殺されても文句は言えんぞwww
207名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:26:37 ID:lKyNj+E8
議論スレから報告

先日告知された議論スレや仮投下スレに関する新ルールのうち、下記の項目を変更することとなりましたので報告します。

【元のルール】
・修正されたSSを投下した場合は、本スレに仮投下スレに投下したことを書きこんで下さい。
 投下後24時間が経過し問題がなければ、本スレに投下をお願いします。
  ↓
【変更後】
・修正されたSSを投下した場合は、本スレに仮投下スレに投下したことを書きこんで下さい。
 本スレならびに避難所スレで問題が無いと判断された場合、
 もしくは仮投下から24時間経過しても問題点の指摘が行われなかった場合は本スレに投下をお願いします。
 また、本スレに正式に投下された時点でそのパートの予約を解禁とします。
 (修正前の最初の投下から24時間経過していない場合は、最初の投下から24時間後に予約解禁となります)
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:28:17 ID:lKyNj+E8
>何もせずボーッとしているだけでは、禁書目録(空気)になってしまうからな

特に間違っていないから何も言い返せない…
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:29:31 ID:Hg5KyRnd
何もせずボーッとしてた結果が主催者サイドだよ!!!
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:33:23 ID:zorETztY
咲「私のことですね」(キリッ
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:49:16 ID:QRis1f/z
インデックスは空気じゃないんだよ。わざとなんだよ。
ただ食べてるだけのキャラじゃないんだよ。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:51:20 ID:VhrnJqrZ
>>211
え? ただのニートシスターじゃねぇの?
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:52:33 ID:Hg5KyRnd
そうか、インデックスは食べ物につられて帝愛の進行役になったのか!
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 22:01:36 ID:5Huj6Mwk
>>213
んで、与えられてるのはピザハットのピザというわけだな

ん、来客だ
ついさっき頼んだピザが届いたのかな
しかしずいぶん早いなあ……
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:02:59 ID:zorETztY
黒服「申し訳ありません、ピザは全て支給品にしてしまいました」
インデックス「!!!」
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:15:45 ID:VhrnJqrZ
ピザが食いたかったら殺されればいい
死者スレの食料はピザだからな
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:16:30 ID:lKyNj+E8
ピザがないならタコスを食えばいい!
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:21:24 ID:GvKBlid8
タコスもどっかで出てきたな
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:27:00 ID:rmsvDXUV
インデックスはジャンクよりはしっかり食べる派じゃないか?
まぁ本人は食えればなんでもいいのかもしれんが、とーまはインデックスにはちゃんとしたもん
食わせてたしな
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:28:16 ID:fGqN+uv3
>>213
禁書キャラに限ってやたら飲食物支給してるしなw

八票さん「とりあえず短髪はピザ食って氏ね」
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 23:35:08 ID:QRis1f/z
最初は消費期限切れのモン食わせてたような・・・
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 00:01:00 ID:QXtJFmxG
>>221
生ゴミ(野菜クズ)炒めて食わせてたぞ
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 00:04:47 ID:+CAQeGCl
純粋にそれをありがたがるインデックスにいたたまれなくなって残りを無理矢理奪って自分で食べたじゃないか
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 01:09:36 ID:+1XDbcZa
少なくともかなりの質を要求してくる某大食らいのニート王よりはよっぽどマシj(エクスカリバー!
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 01:19:30 ID:mxxaenUB
大丈夫だ。時系列から考えればここの王様はニートでもないし、大食い属性も薄い
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 01:22:43 ID:B3UXAaoe
セイバーは黒化さえすれば立派なマーダーになれるようなキガスル
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 04:22:30 ID:H9AIma60
もう、マーダーセイバーはいいよ…
1stでお腹いっぱいだ
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 06:45:51 ID:ncakSij/
まとめwikiの現在地MAPは時間がわからないので、時間ごとに色分けしたMAPを作成してみました。
ミスがあるかもしれませんが、もしよければご利用ください。

ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0336.png
229名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 10:23:26 ID:/9P5JTQn
正直1stで参加者ラスボスを担当した経験からもうセイバーはマーダーやってほしくない。
それならズガンのほうがよっぽどいいよ。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 10:48:40 ID:Qz+PZOWJ
うわすげえ釣りw
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 10:58:29 ID:Jti4pKkp
つまり、やってくれってリクエストだろw
考えておくわ
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 11:05:53 ID:mxxaenUB
押すなよ、絶対押すなよ
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 12:47:32 ID:+CAQeGCl
なんだ。パロロワの法則も知らない初心者かよ?
全く言ったら招くんだぜ、こういうことはさ

まあ俺もセイバーマーダーはうんざりなんだけどね
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 13:16:31 ID:vyaB80z3
1st、2ndで活躍したセイバーとルルーシュに関しては別スタンスでやってほしいな。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 13:52:34 ID:ImCWQ+OU
単純なマーダーより誤解から誤殺して壊れてほしいなw
最初からマーダーより堕ちたり壊れたりした方が面白いwww
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 13:59:59 ID:XaO9Vvpi
3度目の士郎は流石に外してよかったんじゃないの
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:00:50 ID:mAzSXzEV
牽制球投げても無駄
自分で望む展開に持っていくプロットでも練っておけ
俺は妨害するプロット練ってるから
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:05:18 ID:NNQa3tY+
ま、妨害なんて発想が出る時点で釣られてるんだけどね
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:05:35 ID:jg0yjUR0
落ちる落ちない以前に、セイバーのために文面使う時点でつまらん
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:07:48 ID:Jti4pKkp
そもそもセイバーは信長のエクスカリバーに貫かれて死ぬ
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:10:53 ID:w60+IO2u
アニロワ4rdも士郎は出てくるな
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:12:45 ID:Jti4pKkp
たまには雄山の息子の方連れて来いよ
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:13:51 ID:CUIZiEya
なんで和解したんでしょうかね
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:22:02 ID:NNQa3tY+
士郎出すくらいなら京極さんや副部長出せよ
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:28:08 ID:cs0ifnUY
>>235
あずにゃんをこれ以上苦しめないでくれ…
自責の念からもはや人ですらなくなってしまったんだ…
246 ◆mist32RAEs :2009/11/09(月) 14:30:57 ID:e4EdeCkq
海原投下します
海原光貴。
またの名をエツァリ。
とある女子中学生一人のために南米の魔術結社を抜け出し、変装し、学園都市の暗部に入り込んでいる男。
裏切りをうけた魔術結社は、海原を見つければすぐさま粛清にかかるだろう。
そこまでしてその女子中学生を見守る(本人談)とは、まさに命を懸けた大いなるロリコンといえる。
つーか、ある意味ストーキングじゃねーのかにゃー。
今は学校を目指して歩を進める。
黒曜石を探すという名目だが、ブルマやスク水探しに行くの間違いではなかろうか。このロリコンめ。
メイド服があったら是非分けてください海原様。
何ィ? あるわけねえだとォ? 可能性はゼロじゃない限り諦めないのが男ってもんだぜい?
と、突然に彼は歩みを止めた。
そこには破壊され、瓦礫が散らばった線路がある。
それをしばらくじっと見つめていた。

「……」

そいつはつい先刻バーサーカーという名の怪物が過ぎ去った後の、台風のような破壊がもたらした残骸の山だ。
辺り一帯、その怪物が通り過ぎた跡を眺めれば、家は吹き飛び、道路はひび割れ、線路は瓦礫で見えない。
海原は隠れてやり過ごしたおかげでなんとか助かったようだ。
一度見つかってしまえば、それはイコール死あるのみというところだったろう。
そいつは学校のほうへ向かっていった。
目的地は同じ方向だ。
だが海原もさすがにこのまま予定通りに同じく学校へ、という考えは起こさない。
あいつと鉢合わせする危険性を考慮すれば、あるとも限らない黒曜石捜しに向かうのはリスクがでかすぎる。
もうひとつ、東にある学校へさっさと向かうのが得策ってもんだろう。
ところが海原はすぐに東へ向かうことはせずに、何を思ったのか線路の瓦礫を拾い、どかしはじめた。

「よし……破壊されたように見えて線路そのものは飛散した瓦礫に埋まっているだけだ。こいつをどかせば復旧するはず」

どうやら線路そのものはぶっ壊されちゃいなかったみたいだ。
しかしなんでわざわざこんなことをするかね?
海原は2、30kgはありそうな石塊を腰を入れて持ち上げ、線路からどかす。
それを繰り返す。
みるみるうちに汗だくになって、額に張り付いた前髪をうっとおしそうにかきあげる。
ふう、と大きく息をついて、そしてまた作業に戻る。
なんでこんなことをするのか。
大方このままほっといたら通過する電車が脱線おこして乗ってたやつが死ぬかもしれないって、そういうことなんだろう。
そんなことが起こったら御坂美琴がきっと悲しむなんて、こいつはそういうことを考えていやがるんだろう。
まあ実際は帝愛のほうで運行停止させてるから、ぶっちゃけ杞憂なんだがな。
そうこうしてるうちに作業のほうは終わったようだ。
すくなくとも線路の周辺はきれいさっぱり瓦礫がなくなった。
海原はそれを確認すると、休むことなく今度は東へむかって歩き始める。
歩きながらデイパックから取り出した水やおにぎりをほおばって、一歩一歩強く地を踏みしめて進む。
休むつもりはまったくない様だ。だが当然といえる。
別に焦っているわけじゃない。
海原は御坂美琴や一方通行といった連中の力を知っている。
そしてバーサーカーや本多忠勝などの、そいつらに匹敵する化け物どもの存在もその目で見た。
さらには前述した彼らとまともにぶつかれば跡形も残らず消し飛ぶような、自分や上条当麻のような存在も知っている。
このバトルロワイアルという殺し合いに参加させられたものたちの戦力バランスは、それを鑑みれば無茶苦茶もいいところだ。
今の海原は、御坂美琴の力になるどころか自分の身の安全すらおぼつかないとはっきり理解している。
そう思えばゆっくり休んでいる暇はないと考えるのは当然のことだろう。
それなのに彼女が悲しむからって、線路の復旧なんて作業で時間潰すって、どこまで命を懸けた大いなるロリコンですか、お前は。


「……あなたに言われたくありませんよ、品性が欠けた大いなるシスコン」


なんですとぅ!?
この土御門さんほど品性と自制心に長けたシスコンは他にいませんよ!?
だってほら、血が繋がった妹なんて要るわけないじゃないかってどこぞの現代視覚視覚文化研究会も言ってるし!?
つまり血が繋がらない妹なら近親相姦に入らないから手を出したって全然セーフ(ry


ブツッ ザーッ ザーッ ザーッ




【E-2/線路沿い/一日目/早朝】

【海原光貴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、疲労(小)
[服装]:ブレザーの制服
[装備]:S&W M686 7ショット(7/7)in衝槍弾頭 包丁@現地調達
[道具]:支給品一式(水僅か、食料一食消費)、コイン20束(1束50枚)、大型トランクケースIN3千万ペリカ、衝槍弾頭予備弾薬35発   
    洗濯ロープ二本とタオル数枚@現地調達
[思考]
基本:御坂美琴と彼女の周りの世界を守る
  1:なんとしても黒曜石を調達するため、東の学校へむかう。
  2:人と出会い情報を集める
  3: 殺し合いに乗った危険人物、特にバーサーカーと本多忠勝の排除
[備考]
※この海原光貴は偽者でその正体はアステカのとある魔術師。
現在使える魔術は他人から皮膚を15センチほど剥ぎ取って護符を作る事。使えばその人物そっくりに化けることが出来る。海原光貴の姿も本人の皮膚から作った護符で化けている。
※F-1で目撃できたのは、バーサーカーの再生よりも後からです。
※線路が復旧しました。
249 ◆1a2h1bQtNw :2009/11/09(月) 14:34:38 ID:e4EdeCkq
投下終了です。
250 ◆mist32RAEs :2009/11/09(月) 14:35:34 ID:e4EdeCkq
と、鳥ミス
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:53:22 ID:H9AIma60
投下乙です

海原なにやってんだお前wwwww
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 14:53:45 ID:76a/00rU
投下乙です
とりあえず地の文の人南無
海原は美琴一筋で健気だな

ひとつ気になる点
電車ですけど既にいくつかの作品で高架の上に線路が通っている事が判明しているので海原一人で数時間で復旧できるものではないと思います
しかもバーサーカーは諸に支台の柱ぶち壊していますからなおさら
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 16:02:22 ID:ImCWQ+OU
投下乙です
海原、お前はwwwwwww

一人で復旧させるのは無理があるかも?
それにさすがに何時狙われるかわからない状況でこんなことするか疑問
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 17:16:17 ID:Pdt9G2Ar
投下乙です
>>252
片付けが先かロワ完結が先か楽しみだしっ
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 21:32:02 ID:Jti4pKkp
投下乙だけ言って皮肉とか凄いな
それなら乙なんぞ言わない方がマシ


素直に言ってやれよ、
バサカ論争に負けてこんな手で覆そうとするのはみっともないって
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 21:53:07 ID:B1jKpiUJ
◆axfxlx6u.Q乙
257 ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:25:43 ID:QnuaTcSb
ぎりぎりになりましたが投下します
258RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:26:53 ID:QnuaTcSb

死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
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死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね


―――どこかから、声が聞こえる。

それはきっと、一人生き残った自分に対する怨嗟の声だった。
この世の全ての悪意を感じる。
渇望し、それでも届かなかったものへの憧れと怨み。
その気持ちは、きっと自分にも理解できるものだった。
そうだ。それでも俺は生きなくちゃいけない。
俺の目の前でどうしようもなく死んでいったあいつらの分も。
夢を託して死んでいった―――親父の分まで。

人を蘇らせることが出来る、魔法だと主催者のやつらは言った。
だけど、そんなことは望めない。
だって人は生き返ったりしない。決して。
たとえ出来たとしてもそんなことをしちゃいけない。
それは今までの人生の否定だ。
嫌な過去から目を逸らしてなかったことにしようとしているだけだ。
俺は今までの生き方が、夢が間違ってないって信じてる。
全ての人を助けたい、死なせたくないってその想いだけは―――間違ってないと信じてる。
だから、そんな望みは持てない。



「そうか。―――ならば理想を抱いて溺死しろ」



聞きなれた声が響く。
ゆっくりと振り返ると、アイツがいた。
手には白と黒の双剣。
それを携えてゆっくりとこちらに向かってくる。
俺には何故かわかった。

―――ああ、アイツは俺を■す気だ。

いや、アイツだけじゃない。


その後ろから理性を奪われたギリシャの大英雄が。
神速の槍兵が。聖獣の乗り手が。裏切りの魔女が。至高の剣客が。
俺を■そうとしてくる。


逃げるなら―――いや、もう遅いか。
259RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:27:47 ID:QnuaTcSb

俺はそいつらを呆然と見る。
生きなくちゃいけないのに、生きている自分が想像できない。


「――現実で適わぬ相手なら、想像の中で勝てるモノを幻想しろ。忘れるな。イメージするのは■■■■■■……」


アイツの言葉に雑音が混じる。違う。俺はまだその言葉を聞いていない。
だから聞こえない。それだけだ。


―――ああ、もう終わりなのか。


そんなことを思ったときだった。


「―――そこまでだ」


聞いたことのある声が聞こえた。
寺生まれで生徒会長の一成だ。

英霊たちに囲まれて今にも殺されそうな俺の前に来ると、梵字を切って「破ぁ!!」と叫ぶ。
すると指先から放たれた青白い光が次々に英霊たちを切り裂いていく!
アッという間に英霊は全滅した。

「一成、どうしてここに―――?」
そう尋ねると一成はかんらかんらと愉快そうに笑った。
「何、妙な気を感じたものでな」

一成が言う話によるとここら辺では昔大きな事故が起こり今でも霊が出やすいらしい。


「―――世は並べてこともなし。今日もお寺は平穏を保っている。衛宮、気をつけて帰れよ」


そういって一成は颯爽と帰っていった。
寺生まれはスゴイ、俺は初めてそう思った。



 ◇ ◇ ◇
260RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:28:40 ID:QnuaTcSb



「―――ってなんでさ」

夢落ち。つまりはそういうことである。
開かれた目に映るのは知らない天井。少年、衛宮士郎の声が月明かりに照らされた部屋に響き渡る。


「ここは―――……」
「あら、眼を覚ましましたの?」

言葉に釣られて体を起こし部屋を見渡す。
荒れた畳。割れた電球。古く荒れた家。煤けた硝子から差し込む光に照らされて青く包まれる部屋。
声を発した主だろう小柄なツインテールの少女と……なんかシーツに包まってぶるぶる震えているカタマリ。
なにさ、あれ。
そんな疑問が浮かび上がるものの気を取り直して目の前の少女に向き合う。
するとだんだんと記憶が戻ってくる。

殺し合いをしろといわれて。そんなこと許容できるわけはなくて。
でも最初に飛ばされたところに誰もいなかったから、ギャンブル船行こうと考え移動していると―――

「……そうだ。悲鳴が聞こえてきて、それで―――!」
「待って下しまし。まずはこちらの質問に答えてほしいですの、ラッキースケベさん」
「―――ラッキースケベって……ああ」

一瞬絶句するが気絶する直前の状況を思い出す。そして赤面。
―――それで、女の子同士があられもない姿で絡みあっているのを見てしまったのだった。
実際のところラッキーとは言いがたいような気もするけど―――まあ、うん。言われても仕方ないのかもしれない。

「いや、なんていうか、ごめん。―――でもさ……スケベとか……女の子がそんなこと口にするものじゃないぞ」



恥ずかしそうに、それでもこっちを見ながらそう言った赤毛の少年を見て、白井黒子は少々呆れ返ってしまう。
どうやらこの少年、見た目から判断していたよりもずっと純粋というか……初心らしい。
その手の話への耐性のなさはお姉さまと慕う御坂美琴に匹敵するんじゃなかろうか。どうみても年上の男子高校生だというのに。

(―――まあ、それぐらい馬鹿正直なほうがこんなゲームの中では信用できるからいいのかもしれませんけど)

とりあえず危険人物の可能性はなくなったかな、と考えながらもお約束として一応黒子は聞いておく。
結果が予想できるときでも―――これは答え合わせのようなものだから。

「わたくしの名前は白井黒子と申します。よろしければ貴方のお名前と―――この殺人ゲームに乗っているのか否かをお聞かせいただけます?」


正義の味方志望。魔術師見習い。もちろん彼の返事なんて一つしかない。
誰が相手でも、それは譲ることの出来ない思いだ。
恥ずかしそうだった様子を捨てて真剣な顔をして黒子と向き合う。
261RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:29:22 ID:QnuaTcSb

「俺の名前は衛宮士郎。ゲームには乗らない。こんなこと許されるはずがない―――! 白井、お前はどうなんだ―――?」
「勿論、わたくしもゲームに乗ってはいませんわ」

少女、白井黒子も自分と同じ答えを得ていたようで安心する士郎。
こんな女の子が殺し合いに乗っているなんて考えたくはなかったけれど―――
万が一のこともある。大体、この部屋に入ったときのアレをどう解釈したらいいのか衛宮士郎にはよく判断が付いていなかったのだ。
……ていうか、あれはなんだったんだろう。
目の前の小柄な少女が、大人びた少女を押し倒して。激しく動いたようで荒れた息がどこか艶っぽさを演出し。
前に見たセイバーの裸も十分艶かしかったけど、これはこれで―――
何て。脳内にその場面を思い浮かべてしまいまた少し赤くなってしまう。

「それより衛宮さん。ちょっと手伝ってほしいことがあるんですの」
「……え? ああ、なんだ? 俺に出来ることでよければいいけど……」

答えながらも黒子を見てさっきの下着を思い出してしまう。

―――正直、似合ってなかったけど……でも、ドキドキした……って、俺は何を考えているんだ!?
そんなこと考えてる場合じゃない、いやそれ以前に相手は子供じゃないか……!
まだ精々中学生ぐらいの小さな子だぞ……。ああでも身長はセイバーとあまり変わらないな―――

「――宮さん? 衛宮さーん? 聞いておられます?」
「―――んっ!? ああああ聞いてる聞いてる」

カクカクと首を縦に振りながら答える士郎に訝しげな顔をした後、
「まあいいですわ」と軽く流して、意味ありげに視線を後ろへと向ける。
士郎も動揺を隠しきれないながらもそれに釣られるように目を向ける。

そこにはぶるぶると震えるシーツお化けがいた。


 ◇ ◇ ◇
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:30:14 ID:oOrCQsfI
 
263RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:30:58 ID:QnuaTcSb



(…………もう、お嫁にいけない…………)



そして秋山澪は泣いていた。
殺し合いに呼ばれて、混乱して女の子に剣を向けて、なんだか不思議なことになって気絶して、女の子に襲われて、男の人に下着姿を見られた。
―――恥ずかしい……!
色んなことがありすぎて、混乱して、もうよく分からない。
じっと握り締めたシーツに汗が滲む。きもちわるい。
それでも心細くて仕方がなくて、シーツを手放すことが出来ない。
こんなことしている場合じゃない、そんなことを冷静な自分が考える。
どうしてこんなことになったんだろう。どうして私はいつまでも泣いているだけなんだろう。


いつもは、どうしてたっけ。
どうやって、泣き止んでいたんだろう。


―――そうだ、律だ。
律が、いつも馬鹿なこと言ったり、話題を変えたり、気遣ってくれたりした。
それで気分が落ち着いた。笑うことが出来た。
一番私のことを弄ってくるのも律だったけど、一番私のことを考えてくれるのも律だった。
……ちょっと方法は分かりにくいけど。でも、そういうことなんだよな?

今ここに律がいたら、私を慰めてくれるだろうか?
そうすれば、私は泣き止むことができるんだろうか。



「――――――…………律」



ぽつり、と名前を呼ぶ。
当然、返事はない―――


「―――律、ってこの田井中律さんのことでよろしいですの?」
「うひゃう?!」


突然耳元で聞こえた言葉。驚いて飛びのきそちらを見ると、手に何やら用紙を持ったツインテールの少女と、その少し後ろのほうに赤毛の少年が見えた。
―――そう、少女は意識のない自分を襲っていた子で、少年はそれを目撃した人だった。

「ひぃ…………」
「えっと、さっきは悪かったですわ。でも、もうなにもしませんわよ? だから話を聞いて欲しいんですけれど……」

宥めるような声で言う彼女。額には汗。必死の作り笑いでこっちの様子を伺ってくる姿は―――そんなに悪い子には見えなかった。
でも、怖かった。最初はいきなり消えたり現れたりした。次に自分に欲情しているように見えた。
そして今は私のことを心配してるみたいに見える。
どうしたらいいんだろう。律に、律に会いたい。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:32:11 ID:+CAQeGCl
 
265RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:32:15 ID:QnuaTcSb


あれ?


―――…………『田井中律さん』?


「どうして…………?」
「え?」
「―――どうして律の名前、知ってるの……?」

血が、すっと引いていく感覚を憶える。嫌な予感がした。
本人のことは知らないのに、名前だけは聞いたことがあるというようなその態度。
もしかして、


「どうしてって、この名簿に名前が欠いてあったからですけど……?」

しかし少女の声は無情にも事実を告げる。
信じたくない。

少女の持っていた名簿に書かれた名前を追う。
秋山澪、私の名前。
それだけじゃない。平沢唯、琴吹紬、平沢憂。

―――田井中、律。

そうだ。律もこの殺し合いに呼ばれている。それが、この子が名前を知っていた理由だ。


嫌だよ。


殺される、律を想像してしまった。自分が持っていたような剣で切り裂かれる姿。
泣きながら、暴れながら、それでも容赦なく死んでいく姿を。
笑った律の顔が引き裂かれて消えていく。


「―――嫌だ。嫌だ、いやだ……っ……律っ……!」


―――でも、同時に考えてしまった。
律が殺し合いに乗ってしまったら……?
そんなことを考えてしまった。
律は、殺すのだろうか。人を。
知らない人を。知ってる人を。仲間を。―――私を。
殺すのだろうか。
そんなことを、一瞬だけ、考えてしまった。


―――怖かった。
266RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:33:16 ID:QnuaTcSb


「――――嫌だ。死にたくない……! 殺したく、ないよ……!」

胸が、痛い。

「―――そんなことはさせない」


言葉を遮るように声が響いた。
驚いて前を見ると、強い意志をこめた視線で赤毛の少年がこっちを見ていた。

「―――誰も死なせたりなんかしない。そうだ、そんなこと許されるはずがないんだ。だから―――」
「―――衛宮さんの言うとおりですわ。貴女も、貴女の知り合いも誰一人死なせない。こんなふざけたゲームを壊してみせますの」

続けて少女も決意を込めた言葉を放つ。
その眼を見て思う。
この人たちは、さっきあんなことになった人たちだ。
でも。信じても、いいのかも知れない。
だって、今私を見つめる二対の瞳は、嘘をついているようにはとても見えなかったのだから。


「……………………ホント?」


だから少しだけ、勇気を出してそう聞き返す。

「―――ええ。ですからまず教えてくださいます? 貴女の名前と―――これからどうしたいのかを」
「―――……私は、秋山澪。死にたくない。誰も殺したくない。みんなと一緒にこんなゲームから逃げ出したい」


だけど今はこれが精一杯。

 ◇ ◇ ◇
267RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:33:56 ID:QnuaTcSb


「―――衛宮士郎、穂村原学園二年生だ」
「白井黒子。学園都市常盤台中学一年生ですわ」
「秋山澪。 桜が丘高校の二年生……」

やっとのことで落ち着いて話をできるようになった一同は部屋の中心のほうで支給品を確認しながら情報交換をすることにした。

「秋山と俺は同じ学年か……」
「なんだかわたくしだけ随分と年下なのですけれど……あまりそんな感じがしませんわね」
「どうせ私は頼りない年上ですよ……」

自分たちの学年、学校名(これは誰もお互いの学校に聞き覚えはなかったがそれぞれ神戸、京都、東京と所在地が分かれていたのでそんなものかと考えた)の交換に始り、知

り合いの情報を教えあう。
危険人物、信用できる人物―――名簿を取り出してそれらにチェックを入れておく。
次に支給品の確認に移る。

「えっと、衛宮くんって、剣とか使える?」
「―――ああ、一応少しだけ……ってこれはセイバーの剣か……!」



秋山澪に支給された聖剣―――カリバーン。勝利すべき黄金の剣。永遠に失われた王の選定の剣。
その装飾は華美にして絢爛であるが――武器としての本質を失なってはいない。
アルトリアと契約したことにより、夢で見たあの剣。
それがここにある。

「わたくしも秋山さんも剣の心得はありません。それにどうやら知り合いの持ち物のようですし、衛宮さんが持っていてくださいな」
「―――ああ。分かった。これは俺が使う」

どうしてここに失われたはずの剣があるのか。これも主催者の言っていた魔法の業なのだろうか―――?
そんなことを思いながらも、士郎は不思議と手になじむその剣をつかむ。
すると不思議な感慨が胸に沸き起こる。
―――セイバーに返してやったらどんな顔をするだろうか。



「うーん、でも他に武器になるようなものはないようですわね―――あら?」
「どうかしたのか? 白井」

支給品を確認していた黒子が妙な声を出す。手に漆黒に金で印字されたカードを持っている。

「―――次の目的地はやはりギャンブル船にいたしましょう」

突然の提案。ギャンブル船はもっとも近くにある施設であるためそこに立ち寄るべきではないかとは元々考えられていた動きの一つであったが―――
黒子はどちらかと言えば駅に行って電車で広範囲を探索すべきでは、と考えていたはずだ。

「俺は別に構わない。最初からそのつもりだったし」
「私もいいけど―――何があったの?」
「―――これですわ」

掲げられたものはプリペイドカードのように見えた。色は漆黒。ICチップがついていて金字で『ペリカード』と書かれていた。
268RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 22:34:39 ID:QnuaTcSb

「どうやら同封されていた説明書によりますと最初から3000万ペリカが入っているようですわ。もちろんそこから使用することも可能ですし、
 逆に貯めることも可能であるようですわね。」
「―――金があるのは分かったけど……それでどうするんだ? まさかギャンブルをするっていうのか?」
「違いますわよ。勝ち目があるならやるのもいいかもしれませんけど……賭博をさせる、つまりお金を手に入れさせる施設には当然お金を使わせる施設だってあるはずですわ


わたくしはそこで―――参加者の情報が買えるかもしれない、と思いましたの」
「―――参加者の、情報?」
「そう―――例えば、参加者の位置情報とか」

そう、ギャンブル船では武器や防具などの殺し合いを促進させる物品ももちろん売っているかもしれないが―――
同時にこのバトルロワイアルで大きな利点となりうる『情報』。それも扱われているのではないか、と黒子は考えたのだ。
当然だが、それを求める理由は殺人のためなどではない。

「そうか、顔見知りの探索か」
「ええ。保護と言う意味ももちろんありますけれど、主催者に対抗するためにはこちらも人数をそろえたほうがいい。
 ―――それも出来るだけ信用できる相手が。元々の知り合いならそういった判断も容易でしょう?」

確かに闇雲にこの会場内をうろつきまわるよりそのほうが効率がいいかもしれない。
いや、もし情報を売ってくれることがなかったとしても……あれだけ開幕で金を強調した主催者達だ。
なにかあると考えてギャンブル船に集まる参加者は少なくないだろう。

「―――律と、会えるかな……?」

しばらく言葉を黙って聞いていた澪がつぶやく。それはまるで純粋な子供のようだった。
黒子は、見た目も実際の年齢もずっと澪のほうが年上なのにどうしてか彼女を守ってやらねばという気になる。
今まできっと平穏な日常を送ってきたのだろう。<ジャッジメント>の自分のように犯罪に関わったりしたことなどなかったのだろう。
見た目と裏腹な態度のギャップが原因だろうか。愛おしさのようなものを感じる。
―――もちろん、お慕いしているのはお姉さまだけでしてよ?

「―――ええ、きっと。私達が再会させて見せますわ」

脳内のお姉さまにちゃんとそう告白をしておいて、黒子はキメ顔でそう言った。

 ◇ ◇ ◇
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:38:21 ID:oOrCQsfI
  
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:38:47 ID:B1jKpiUJ
しろー、お腹がすきました
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:54:57 ID:B1jKpiUJ
遠く離れた場所で律に死亡フラグが立っているんだが…
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:56:13 ID:H9AIma60
さるっちまったのかい…
273RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 23:01:15 ID:QnuaTcSb
そうしてギャンブル船へと移動を始める一行だったが―――

「―――そういえば律さんと秋山さんはどういう関係でして? ―――恋人とか?」
「はっ?! ……えっ、ええ!? いや、私と律とはただの幼馴染で―――ってそれ以前に女同士だ!」
「あら、女同士で何がいけませんの? そこに愛さえあれば問題など皆無ですわよーーー!」
「―――えっと、別に俺も同性愛に偏見はないつもりだけど……」
「違う、違うから!? 衛宮君も眼を逸らしながらそんなこと言うなー!」

―――どうやら、前途は多難な用である。



【B-6/廃村/一日目/黎明】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]: 健康
[服装]: 常盤台中学校制服
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、ペリカード(3000万ペリカ)@その他、不明支給品(0〜1)*本人確認済み
[思考]
基本: 殺し合いはせずに美琴、澪や士郎の知り合いを探し出しゲームから脱出する
0:澪、士郎と行動を共にする
1:ギャンブル船に移動。そこで有用な情報を買えれば買う。
2:互いの信用できる知り合いの探索
3:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限
 距離に反比例して精度にブレが出るようです。
 ちなみに白井黒子の限界値は飛距離が最大81.5M、質量が130.7kg。
 その他制限については不明。


【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]: 健康、額に軽い怪我(処置済み)
[服装]: 穂村原学園制服
[装備]: カリバーン@Fate/stay night
[道具]: 基本支給品一式、モンキーレンチ@現実 、不明支給品(0〜2)*本人確認済み
[思考]
基本:主催者へ反抗する
0:黒子、澪と行動を共にする
1:女の子を戦わせない。出来るだけ自分で何とかする
2:ギャンブル船に移動して有用な情報を手に入れる。
3:セイバーや黒子、澪の信用できる知り合いを探す
4:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
 参戦時期は第12話『空を裂く』の直後です。
 残り令呪:1画。


 ◇ ◇ ◇
274RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 23:02:00 ID:QnuaTcSb
律について色々言われて―――自分にとって律が何なのかを考える。
幼馴染で親友。それは間違いないと思う。
でも、さっき。
律がこの殺し合いに参加していると知ったとき。
怖かった。
律に殺されてしまう自分を想像してしまって、怖かった。
ありえないことを考えたから怖かったのか。
一瞬でも友達を疑ってしまった自分が怖かったのか。
それとも、本当に律に殺されると思って怖かったのか―――?

違う。


私は―――


  「律になら殺されてもいいかもしれない」


―――なんて思ってしまって。そんな自分自身が、理解できなくて怖かった。

……律はどこにいるんだろうか。
まだ、生きてるよね。
大丈夫、きっと、大丈夫。
大丈夫、だから。

そんな根拠のない言葉をそっと心の中で唱え続ける。



ああ―――でも、やっぱり。死にたくないな。



【秋山澪@けいおん!】
[状態]: 健康
[服装]: 桜が丘高校制服
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式
[思考]
基本: 死にたくない。殺したくない。皆に会いたい。特に律に会いたい。
0:士郎、黒子と行動を共にする
1:ギャンブル船にいって情報を手に入れる
2:知り合いを探す
3:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です


【ペリカード@その他】
ペリカをチャージしたり使用したり出来るプリペイドカード。
ICチップが付けられており、制限もあるが御坂美琴でもデータを弄ることの出来ない防御性能を持つ。
初期より3000万ペリカがチャージされている。
基本的にペリカを使用する全施設でこのカードによる支払いが可能。
275 ◆1aw4LHSuEI :2009/11/09(月) 23:04:10 ID:QnuaTcSb
投下終了です。
誤字脱字おかしなところ等お気づきになりましたら、ちょっとした指摘スレにてご報告くだされれば幸いです
(もちろん根本的におかしなところがあれば議論スレまで……)
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:12:03 ID:H9AIma60
投下乙です

いい具合に対主催がまとまってる感じですね
みーおー、りっちゃんは君よりもっと悲惨な目にあってるんだぞw

後細かいことですが、律の名前が出た後の部分なのですが、
「名簿に欠いて」ではなく「名簿に書いて」ではないでしょうか
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:18:42 ID:CrQdnjw1
投下乙です

>こんなにロリコンとシスコンで意識の差があるとは思わなかった……!
海原せっせと線路直しか、結構大変なのにがんばるな
それと地の文もしかして土御門かw

それと議論スレにて線路に関する修正依頼が来ているので報告しておきます

>RHYTHM DIMENSION ◆1aw4LHSuEI
夢落ちとはいえ一成の活躍がロワで見れるなんて予想外w
澪はかなり律に依存しているんだな、律になら殺されてもいいって・・・
でもその頃とうの律は・・・

278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:30:57 ID:mTEmJf3g
ギャンブル船の人口密度がかなり増えそうだな
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:32:17 ID:SfGfYTBr
今回の華だからな
咲やカイジを参戦させた価値が上がる
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:33:25 ID:+1XDbcZa
利根川大変だなw
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:34:54 ID:B1jKpiUJ
来た連中一人一人にあの猿芝居を見せるのかw
たいした情報持ってないだろうに。。。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 23:39:49 ID:WzZFkgyt
投下乙です
これで対主催がまとまったが黒子はともかく士郎と澪は不安だな
利根川の口車に翻弄されそうだ。もっとしっかりした大人がいないと
でも利根川も他のカイジ勢に悪評流されたらやばいんだがw
283 ◆he9NcoBEPO9o :2009/11/10(火) 00:52:06 ID:3k0fY6U4
戦場ヶ原ひたぎ、上条当麻投下します
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 00:52:08 ID:1mAtqUDR
投下乙
ま、茶でも一杯どうぞ

つ
285 ◆lK65MFXsYAXm :2009/11/10(火) 00:53:56 ID:3k0fY6U4
なんかトリが変です
286 ◆he9NcoBEPO9o :2009/11/10(火) 00:56:25 ID:3k0fY6U4
何故かしたらばで出るトリと違いますね

◆1ZCuwzjAYc氏の代理投下致します
周りの景色が白んできている

どうやら、いつもと様子が違うインデックスが、このふざけた殺し合いに巻き込まれていたり
ゲーム開始早々、バラエティー番組のコントの如く小屋ごと爆死されられそうになったり
知らないねーちゃんに出会った早々、カッターを突きつけられた挙句自身の人格を完全否定されたり
セクシュアルハラスメントな発言でちっぽけな自尊心を傷つけられた散々なこの非日常も
ここだけはいつもと変わりない夜明けを迎えようとしているようだ

周囲の暗闇が徐々に晴れてくる早朝
夜明け特有の冷たい澄んだ空気と、海沿いの潮風の香りが混じる道路を歩きながら
上条当麻は周りの建物を漠然と眺めつつ思い出す

先ほど出会った「安藤守」という男の言葉についてだ

「(ギャンブル船に集合か・・・)」

上条当麻は考えていた
参加者同士を殺し合いさせるというこの状況について完全に把握できた訳ではない
一体誰が何の為に?という疑問は情報が少なすぎる今は考えなくてもいいだろう

今、重要なのは、どうやってゲームの主催者に操られているであろうインデックスを助け出すか?
そして今現在同行?している戦場ヶ原+3匹の支給品の事だ

上条当麻はふと、自分の前をスタスタ歩いている戦場ヶ原の方を見た

上条当麻の事などまるで気にもとめない素振りで歩いている戦場ヶ原
その彼女の後をまるでカルガモの親子のように付いてトコトコと歩いている三匹の猫達
この場面だけなら、まるで映画のワンシーンのような微笑ましい光景だ

彼女は言った

”恋人の阿良々木くんに逢いたい”と

自分の最重要目的であるインデックスを助け出す
これは絶対の行動指針だ
だが、戦場ヶ原に絶対恋人に逢わせると宣言した自分の言葉も偽りじゃない
さらに上条当麻の支給品であった、3匹の癒し系小動物という実に頼もしい仲間達もいる 


そうさ!どんな辛い状況でも信じあう仲間がいるなら乗り越えられる!いや、乗り越えるんだ!
ってのは、少年漫画ならベタベタな王道展開ですよね!


「ふうっ・・・」


上条当麻は思わずため息が出てしまう

                                      
自分と同行している仲間達の                                イマジンブレイカー
あまりの頼もしさに、この有りえない程の幸運をもたらしてくれているであろう、右手の幻想殺しへの感謝の気持ちで涙が出そうになるが
今優先すべき事は、彼女らをまず安全な場所まで連れて行く
自分の目的はその後でもいい


上条当麻はそんな事を思った後、不意に楽観的とも捉えられる自分の考えに更に心の中で自問した


「(・・・そもそも、この会場にそんな安全な場所があるのか?)」


しかし、結局の所、当てもなく会場を歩き回るよりは
少しでも人が集まりそうな場所の方が、周りの情報も手に入るだろう

戦場ヶ原の探し人についても、何か情報が入るかもしれない
もしかしたら、阿良々木君とやらも北へ向かった安藤と途中で出会っていれば
安藤が一緒にギャンブル船に連れて来る可能性だってある

ウダウダ悩んでいても仕方がない、と上条当麻は
ブンブンと左右に頭を振って意識を切り替え
自分のデイバックを探り、支給品の地図を取り出す
夜明けを迎え、周りが徐々に明るくなってきているのもあって
地図の内容を確認できる程度の視界は確保できている

そもそも、上条当麻という人間は
頭を動かしてアレコレ策を練るよりは、とりあえず目的に向かって直進する方が得意なのだ
というより
過去にインデックスを助けるために、魔術によって過去の記憶を喪失しているというのも、今の彼の思考に影響しているのかもしれない
もっとも、その事実について知るものは、上条当麻の周りにも殆どいないのだが

上条当麻は改めて地図を眺める
今自分達のいる位置はおそらく、F6と呼ばれる地帯の周辺
遠くに見える大きな建物、あれは方角的に考えると地図に表記されている展示場の事なのだろう
そして展示場の近く、エリア的には隣のF5区域には電車の駅だと思われる表記もある

現在地点から見ると、ギャンブル船は反対方向
いつ殺し合いに乗った連中に襲われるかと、心配しながら時間を掛けて長距離を移動するのと
電車の駅で、もしくは電車での移動中に襲撃されたらどうする?というどちらの案にも不安要素はあるが・・・



「(よし、戦場ヶ原に提案してみるか)」
「なぁ、せんじょ・・・」


意を決して、上条当麻が戦場ヶ原に話かけようと顔を上げ、口を開きかけた直後
先頭を歩いていたはずの戦場ヶ原の顔が、上条当麻の目の前にあった
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:09:55 ID:sLh10XrF
sienn
「うおっ!???ツンドラ系美少女とイキナリドキドキ急接近とかこれなんてフラグですかーーーー!!!????」

「良かったわね。それは死亡フラグよ」


笑顔の戦場ヶ原が上条当麻の股間に容赦なく蹴りを入れる
男にしか理解できないであろうデリケートな部分を痛打された衝撃が、上条当麻の全身を駆け巡る!!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!」

声にならない悲鳴を上げながら道路をゴロゴロ転げまわる上条当麻
この痛みだけは、実際に体感したものでないと理解できない痛みであろう
そんな上条当麻に構わず、戦場ヶ原は話を続ける


「ねぇ、劣情トンマ君。近くの駅に向かいましょう」


「何だ!その明らかに意図的とも思える屈辱的な名前は!?」
「気に食わないの?だったら下條アトムでいいわ」
「ほとんど合ってねーしその元ネタを理解できるのはおっさんくらいだぁ!」
「あら、実は10万馬力の鉄腕ロボよりも出たのが先だなんて、日本人としての一般教養じゃないかしら?」

取りあえず激痛に苦しみつつもツッコミだけは入れた上条当麻
話を元に戻すためにもう一度さっきの話について触れてみる


「えっ、駅にですか?セ・ン・ジョー・ガ・ハ・ラ・センパーイ?」


股間の痛みも引いてきた上条当麻が再度尋ねる
どうやら、戦場ヶ原も上条当麻と同じような事を考えていたらしい

「まるで心がこもっていないカタカナ発音ね。
で、上条君はどうするの?何処か他に行きたい所でもある?」

戦場ヶ原と自分の目的地が一緒であるなら回答を躊躇う必要もない
上条当麻は答えた

「いや、駅に向かおう。目的地はギャンブル船なんだろう?」

その返事を聞いた戦場ヶ原は驚きの表情を浮かべてこちらを眺めていた
視線はまるで、パソコンのキーボードを器用に叩いて研究者の質問に答えるチンパンジーを見るような視線で

「驚いた・・・貴方に人間並みの思考能力があるとは想定外よ・・・
逆説的に考えると私の出した結論は、人間としての思考力じゃ落第点という事なのかしら・・・
深刻よ・・・深刻な問題よ・・・」

上条当麻の発言に対して、陰鬱な表情で肩を落として本気で落ち込んでいる戦場ヶ原を眺めて、
上条当麻は心の中で絶叫した


「(体の暴力の他にも、言葉の暴力ってのも存在するんですよおおおおおおお!!!!!!)」


声にならない悲鳴が上条当麻の心の中だけに響く
今、彼の小さな自尊心は、完全に自らの心の折れる音を聞いたのだった
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:15:39 ID:IACYWPUt
規制きつそうだな
支援
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:18:35 ID:IsTkp1XZ
 
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:19:17 ID:IsTkp1XZ
  
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:20:02 ID:IsTkp1XZ
   
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:20:56 ID:IsTkp1XZ
     
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:21:04 ID:dUCBrl+O
しえん
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:21:37 ID:IsTkp1XZ
     
しかし、あらゆる幻想をぶち殺してきた上条当麻は、この程度ではいつまでもへこたれない!

いや・・・本音でいうと、参加者同士で殺し合いをさせられているという、特殊な環境でなければ・・・

(見た目だけは)美少女にこんな罵倒を受けた日には・・・三日三晩は部屋の片隅で膝を抱えつつ
この世に生まれてきた事を後悔し、嗚咽をこぼしながら引き篭もる事だろう



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



しばらく経ち、股間の痛みもすっかり引いた上条当麻は
戦場ヶ原によってポッキリ折られた心をなんとか奮い立たせようと、せめて颯爽と立ち上がり戦場ヶ原に促す


「じゃあ行こうぜ。もしかすると、阿良々木って人とも途中で会えるかもな」

勿論、必ず逢える確証なんてない
だがこんなところで立ち止まっていても、事態は何も好転しないのも事実
戦場ヶ原も今の状況はしっかりと認識しているようだ

「えぇ、時間が惜しいし、駅まで少し急ぐわよ
貴方も、わざわざ後ろから私の歩くペースに合わせなくてもいいわ
この子達も退屈してるみたいだし」

そう言って、3匹の頼もしい仲間達を見る戦場ヶ原
アーサーとあずにゃん2号とスフィンクス
だが、スフィンクスに関しては

「待ってください姐さん、あっしの、修羅場を潜り抜け鍛え上げられた鋼の肉体でも、これ以上は無茶ですぜ・・・」

と、言わんばかりに軽くバテ気味のようだが
これは猫としての体力的な限界というよりは、日ごろ室内でインデックスと食っちゃ寝食っちゃ寝の
不摂生な生活を送っていた為の自業自得だろう

ここはスフィンクスの健康の為に、敢えて心を鬼にすべき!と上条当麻は考えた

「決まりだな。じゃあ行くか」


今度は上条当麻が先頭になって駅まで向かう
その後に、戦場ヶ原、そして二匹の猫が続く

それから少し遅れてスフィンクスが

「いやいやいやこれ以上はマジ無理だから!!!
もう体力の限界、ほんと我慢の限界千代の富士!!!!!」

と不満タラタラな視線を感じるような気もするが、上条当麻は気にしない事にした

299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:22:24 ID:IsTkp1XZ
       
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:28:50 ID:1mAtqUDR
つ
戦場ヶ原とその下僕と愉快な仲間達は無事
展示場の横を通り過ぎて駅に着いた

夜が完全に明けて、周囲が明るくなった事により
他の参加者に途中で襲撃されるんじゃないか?と上条当麻は警戒していたが
駅に到着するまで、幸いにも恐れていた事態には発展しなかった
だがそれは、もしかしたら駅に向かうまでに、殺し合いには賛同しない参加者と合流できるかもしれないという期待も
同時に叶わなかったという事だ

駅への改札へ向かう道の前で立ち止まる上条当麻
その自分の横でスフィンクスが

「燃えた・・・燃え尽きたよ真っ白によ・・・」

コーナーポストに寄りかかるように白い灰になっている
どうやら食って寝てばかりだったインデックスとの思い出を走馬灯のように回想しているようだが、上条当麻はそれを見なかったことにした

「あら?この子ぐったりしてるわ。大丈夫かしら」

スフィンクスの普段の怠惰な生活を知らない戦場ヶ原は、どうやら心配のようだ

戦場ヶ原に上条当麻は軽く答える
「大丈夫だって。コイツは普段からの運動不足でヘバってるだけだって」

そんな上条当麻の軽口に対してまるで動物園のサルを見るような目で戦場ヶ原が答えた

「はぁ・・・発情トーマス君のような猿人類並みの感性の持ち主に、人並みの思いやりを期待した私が愚かだった・・・」
「そんなお子様には分からない上に場所柄的に危ないネタを振るなぁぁぁ!」
「えぇ痴漢は立派な犯罪行為よ仮に私の学生服姿に興奮してしまったとしても、けっして赦される行為ではないの
 発情君も冷たい鉄の輪に両手を拘束されて延々と取調べを受けている最中、自らが犯した罪の重さを悔恨の涙を流して自覚するといい」
「なんで、すでに捕まってる前提なんだあああああああーーーーーーーー」 

戦場ヶ原のボケに戸惑いつつも、上条当麻は周りに視線を配る

上条当麻自身は学園都市で能力開発されている超能力者ではない
ただ、他人の面倒ごとに後先考えず首を突っ込みたがる性格の上に
神のご加護も打ち消す、幻想殺しのおかげなのか普通に暮らしている学生より厄介ごとに巻き込まれる事が多い

一部、ある意味自業自得な面もある自身の経験から、上条当麻は辺りを見回した
駅の中に入った時点で感じていたが、今の駅構内には、誰かが他にいるような気配はない

自分達の声以外はまったく響かない静かな空間となっている
生徒達の下校時刻を過ぎた学園都市の駅構内のようだと上条当麻は最近また改めて得た【記憶】を思い出しながら

「(ここは今、本当に無人なのかもしれないな。駅内の見晴らしの良い場所とはいえ
これだけ騒いだら、敵意を持った連中なら構わず仕掛けてくるだろうし・・・)」

とはいえ、まだ完全に安心は出来ない
上条当麻は戦場ヶ原に

「ちょっと向こうの様子を見てくる、そこでスフィンクスを見ていてくれよ。戦・場・ヶ・原・先輩」

と告げて改札に向かう

後ろから、戦場ヶ原が何か言っているが
上条当麻は敢えて無視して改札に向かった


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「不幸だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

上条当麻は思わず呟いた
彼を不幸のどん底に突き落としたのは、物陰に隠れて命を狙う思わぬ襲撃者でも
言葉と体の暴力を容赦なく振るう戦場ヶ原でもない

駅の改札入り口に表示された電光掲示板だった

【現在、線路の一部が破損した事により列車の運行を停止しています
運行再開までしばらくお待ち下さい】

繰り返し同じアナウンスが流れる掲示板を見て
上条当麻は己の不幸を呪う

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

その上条当麻の絶叫を聞きつけて
戦場ヶ原と3匹も駆けつける
スフィンクスもどうやら白い灰から復活したようだ

「根性君、その下品な雄叫びを止めないと・・・、」

もはや確信犯とも言える名前間違いで何か言い掛けた戦場ヶ原の動きが止まる
どうやら戦場ヶ原も電光掲示板を見たようだ

「そんな・・・。阿良々木君・・・阿良々木君・・・」

電光掲示板を凝視して動かなくなった戦場ヶ原がその場に力無く崩れ落ちる

「おっ、おい!?大丈夫か?」

思わず倒れそうになった戦場ヶ原を支える上条当麻
その時、上条当麻は改めて気付いたのだ

突然見知らぬ場所に送り込まれて
参加者同士で殺し合いしろと告げられた上
一晩中誰かに襲われるかもしれないという心配をしながら、神経と体力をすり減らして歩き通したのだ
態度には出さなかったものの、彼女はおそらく駅に向かうまでの最中も、ずっと神経を張り詰めていたのだろう

普通に考えたら、誰かにいきなり殺されるかもしれないなんて環境に置かれただけで、普通の神経の人間じゃ発狂する者も出るだろう
彼女は一見物怖じしない、性格的に図太いように見えるがそうではない

【阿良々木君に逢いたい】

その一心だけで自分を保ってきたのだ
もちろん、無事に会えるなんて保証はないのも本人は理解っていただろう
だが、その僅かな希望に向かう道が閉ざされた
その現状は彼女の体に今までの疲労を思い出させるのには充分な効果を発揮した

「やっぱり痴漢ね・・・どさくさに紛れて私の体に触れるなんて・・・
いっそ社会的に抹殺された上に、その息の根を止めるまで罪を自覚できないのかしら・・・」

毒舌もやはり先ほどまでの力が無い
ぱっと見て医者が必要な程の深刻な状態ではないが、少し休ませる必要があるだろう
上条当麻はふと改札横にある【駅長室】という表札を見た

「もしかするとあそこになら・・・」

心配そうに戦場ヶ原を見つめる三匹と共に
力なく上条当麻を罵倒する戦場ヶ原を【駅長室】と書かれた部屋に連れていく事にした
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:36:32 ID:sLh10XrF
支援
どうやら、鍵は掛かっていないようだった【駅長室】と書かれた扉を開けると
そこは、駅員の為の事務所のような空間になっていて、その奥はさらにいくつかの部屋に分かれていた
改めて【駅長室】と表札がある部屋もあったが、上条当麻の目的はその場所ではない

駅職員が業務の際の仮眠などで使う、通称仮眠室だ
上条当麻がグッタリとした戦場ヶ原を背負って見渡すと

あった。

おそらく職員の仮眠に使われているであろう部屋が
【談話所】と表記があるが、戦場ヶ原を休ませるスペースとしては問題ないだろう

上条当麻は扉を開けて【談話所】の中に入る
中の広さは8畳程の和室
古びたブラウン管のTVや壁際の棚には漫画や雑誌が並べてある
充分な年季を感じさせる部屋になっているが部屋に文句を言っている暇も無い

戦場ヶ原を畳の上に寝かせた上条当麻が、和室の押入れを空けると中に布団があった
どうやらこの駅ではこの部屋を仮眠室としても使っているらしい

中に入っている布団を畳の上に敷き、改めて戦場ヶ原を寝かせる
布団の上に寝かせた戦場ヶ原の呟きが聞こえてきた

「もしも動けない私に変な事をしてみなさい・・・
股間の粗末なブツをカッターで切り落としてそのまま頚動脈を掻き切ってやるんだから・・・」
「はいはい憧れの戦場ヶ原先輩を介抱できて
私、上条当麻は光栄のあまり失神しそうでありますよ。っと」

これだけ毒舌が吐けるなら大丈夫だろう
上条当麻は戦場ヶ原に

「心配すんなよ。戦場ヶ原先輩。俺は部屋の外に出てるから。
それに、もしかすると、ここでしばらく待ってれば、電車がまた動き出すかもしれないだろ?」

そういって、部屋を出ようとする上条当麻
3匹はさっそく戦場ヶ原の布団の上でくつろいでいるようだ

出口のドアに手を掛けた瞬間、急に後ろから声が聞こえてきた

「ありがとう。」

そんな上条当麻に声を掛ける戦場ヶ原
その口調は今までのものとは違う、本当に感謝のこもった言葉だった

 ・ ・ 
「童貞の癖に、優しいのは阿良々木君だけだと思ってた」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


やはり、いつも通りの戦場ヶ原の調子に安心しつつも、ある単語に対して非常に腹立たしい気持ちはあったのだが
上条当麻はそっと、和室のドアを閉めた
【F−5/駅構内談話室/早朝】

【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:黎明の長距離移動から来る疲労の為、談話室で睡眠中
[服装]:直江津高校女子制服
[装備]:文房具一式を隠し持っている、スフィンクス@とある魔術の禁書目録、
    アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん!
[道具]:支給品一式、不明支給品(1〜3、確認済)
[思考]
基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。
 1:上条当麻に協力。会場内を散策しつつ阿良々木暦を探す。
 2:神原は見つけた場合一緒に行動。ただし優先度は阿良々木暦と比べ低い。
 3:ギャンブル船で阿良々木暦と合流したい。
 [備考]
 ※登場時期はアニメ12話の後。
 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。

【F−5/駅構内事務所/早朝】 

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、疲労(中)
[服装]:学校の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。

 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。阿良々木暦を探す。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する
 2:他の参加者が集まるであろうギャンブル船に向かう(出来るだけ安全な方法で)
 3:危険人物以外をB-5のギャンブル船に集める。
 4:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
 5:壇上の子の『家族』を助けたい 。
 
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。
※電車については狂戦士の歩み ◆axfxlx6u.Q(1日目/黎明)で線路を破壊された影響により運休しています
  今後壊された路線以外で運行再開するのか、またその運行再開時間などは他の作者様にお任せします
※駅構内の駅長室(事務所)は内側から鍵を掛けて施錠中です
投下終了しました

支援してくれた方々、ありがとうございます
代理投下を名乗りながら、仮投下スレに投下したものと文章が一部異なっておりますが
◆1ZCuwzjAYc氏の了承を得た上で校正後の文章投下となっております
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 01:51:57 ID:sLh10XrF
投下&代理投下乙
この二人は相変わらずと思ってたら少しは距離が縮まったかな?
しかしギャンブル船に集まる人多いな
でも時間差が大きいから行き違いの可能性大きくて不安だ
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 03:42:19 ID:Pmy3i45/
えぇっとギャンブル船組って
利根川・グラコロ・ひたぎブレイク・安藤・しろー黒子澪・カイジまよいだっけ
既に大集団になってるな
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 07:42:09 ID:LCQlxQF/
水上アスレチックフラグか・・・っ!!
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 07:45:00 ID:LCQlxQF/
でもそれだけ集まっても、異能とガチ対抗できるのが居ないってすごいな
能力持ちでも上条さん・士郎・黒子くらいしかいない
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 09:11:04 ID:q2LZpsGo
投影できない士郎さんは足手まといだが、カリバーンとの出会いが何かのきっかけになるといいな
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 09:55:33 ID:7r6qN8Ul
弓は得意だから、援護に徹すれば役に立つんだが、援護に徹してくれないからな
まあ、いざとなれば使い捨ての盾になればいいさ
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 10:16:45 ID:BC3loAfk
士郎が投影するたびに上条さんがそげぶしていく……
なんという連携力ッ!
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 10:37:37 ID:q2LZpsGo
ありゃりゃりゃぎさんを入れて三主人公が揃い踏みしても、
よっしゃこれで勝つる!と思えないんだよな、最近の男の子主人公はw

どうしてこうなった
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 10:49:58 ID:HLZe9JBK
一般人はギャンブル船に
ガチ連中は中央に
大体二極化されつつあるな

唯モモ船井組がすんげぇ勢いで孤立してるなぁ
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 11:55:02 ID:q2LZpsGo
唯ってみんなのことが好きだけど、依存しているわけじゃないのが強みか
不安はモモだなあ
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 12:51:20 ID:gW0ATcIq
ギャンブル船組と言うが距離にバラつきがあるからひたぎブレイク組がたどり着く前にみんなどこかに行く可能性がある
安藤は人集めてる状況だからあっさり死ぬか動かなくなる可能性もある

それにしてもカイジも一応主人公なのにスルーされてるなw
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 13:01:35 ID:PVGV9keC
カイジは青年だから、学生主人公とは違う
…空回り派の主人公も情けないな
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 14:11:34 ID:gW0ATcIq
おkが出てるので衣・グラハム・利根川代理投下します
『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。』

とあるSF作家が定義した法則の一つを、グラハム・エーカーは思い出す。
この身を切る夜風はとても涼しげで心地がいい。やや強めの向かい風を受けながら、グラハムは思考の海に身を沈める。
例えば、ある意味では自分もまた『魔法』が一般的な世界に生まれ育ったとも言えるのでは無いだろうか。
地球と宇宙を結ぶ、巨大な軌道エレベーター。各国の兵士たちが駆る人型起動兵器、モビルスーツ。
その中でも特別な存在であるガンダム、それの心臓部である太陽炉。
彼にとって常識であるこれらの存在は、過去の人々にとってはまるで空想の中のマジックアイテムのように見えるのでは無いのだろうか。
そう、数百年前に日の本の地を駆け抜けた戦国武将と呼ばれる人々にとっては、特に。
……最も、流石にそんな人間がこの会場にいるとは思えない。あくまで、もしいたとしたらの話ではあるのだが。

(乙女座の私としては、ロマンチズムを感じずにはいられないな…)
「グラハム! 何かが見えてきたぞ、あれがギャンブル船では無いのか?」

微笑を浮かべながら物思いに耽っていたグラハムは、同行者の声によって現実に引き戻される。
可愛らしい少女が小さな手で指さす上空を見てみれば、木々の間から宵闇に浮かび上がる巨大な船影が覗いていた。
ライトアップがされているのだろう、おぼろげに浮かび上がるその姿は一種異様な威圧感すら感じさせる。
だが、今は自分の腕の中にいる小さな同行者―天江 衣にとってはそうでは無いらしい。

「ギャンブル船では、麻雀が出来るかな…? 衣は早く、沢山友達を作りたい!」

サラサラとした金髪をたなびかせながら、衣は楽しげに柔らかな黄色いマスコットを抱きしめる。
年相応に無邪気なその行動は、まるでテーマパークへ行くのが待ち切れない子供のようであった。

(こんな状況でなければ、心を和ませる光景なのだがな)

衣に気づかれぬように小さくため息を付きながら、グラハムは己が手の先にある『モノ』に意識を集中させる。

グラハムは、『魔法』という不可思議な物の存在を信じている訳では無い。
確かに、そのようなファンタジックな概念自体は彼にとっては好ましい物ではあるが、かと言って現実に存在するのかと聞かれれば否と答えるだろう。
『我々は金で魔法を買った』
遠藤という、この殺し合いの進行役を名乗った男が告げたそれは、ある種の名言ではある。
しかし、ただのハッタリにしか聞こえない事もまた事実。
そんなオカルトありえません、などという声がどこからか聞こえてきそうだ。

だが、グラハムは『魔法』とも言うべき事象に遭遇してしまった。目の前で、まざまざとそれを見せつけられてしまったのだ。

「それにしても、お前は凄いな。電光石火、疾風怒濤! もう目的地に目前にまで迫っているぞ!」

キャッキャとはしゃぎながら、衣は背後の男が駆っている『モノ』の首を撫でてやる。
その手付きがくすぐったいのか、はたまた心地良かったのか。衣の手に反応して、『モノ』はブルリと震え、小さく嘶いた。

その『モノ』――いや、仮にも生物に対して『モノ』と呼ぶのは失礼に値するだろう。
その『生物』は、『馬』。赤い装飾をその身につけた、巨大な軍馬。
天江 衣に支給された支給品の一つ、であった。



それと邂逅したのは、トンネルの調査を終えてギャンブル船へと向かおうとした直後の事。
沢山の友達がいる世界を作る、そう豪語して足取りも軽やかに先を行く衣の背中を見送った時にその異変は起きた。

衣が背負ったディパックの口から、突如として馬の首が生えたのだ。

これには流石のフラッグファイターも度肝を抜かれた。
しかも、生えてきた馬の首はどうやら生きているようであり、徐々にその体をディパックからはみ出させていく。

『な、なんだ? 急にディパックが重く…なんだ!? グラハム、衣のディパックはどうなってる!?』

と怯えた様子を見せるディパックの主の事などお構いなしに、馬はその身を窮屈だったであろう空間から脱出させ、晴れて雄大な大地へと帰ってきた。
ある意味、少女による馬の出産という異常な光景を最初から最後まで見せられたグラハムも、
重さから解放された事でようやく後ろを見て、突如として現れた馬の姿を認識した衣も、ただ茫然と目の前の光景を見ていることしか出来ない。
ディパックから馬と同じくひらひらと飛びだして、足もとに流れ着いた紙切れ―――
『武田軍の馬。天下が誇る武田騎馬隊の要。こちら側で特別に躾けた為、素人でも乗りこなすことが可能です』と書かれたそれにグラハムが気づいたのは、数分ほど後の事であった。



ギャンブル船は、エリアB-6の北部、廃村の港部分に当たる場所にしっかりと存在していた。
ここに至って、トンネルに続きギャンブル船もまた地図通りの場所に設置されている事が判明する。
とは言え、まだ確認が取れたのが二つきり。
もう二〜三の施設をこの目で確認するまでは、『各参加者の地図の情報に差異がある』という仮説を否定するには尚早だろう。
タラップから船内の駐車場に侵入し、ひとまず適当な場所に馬を止めながら、グラハムはこの先の予定を考える。
経緯はどうあれ、支給品の中に馬が合ったのは僥倖と言えるだろう。 
バイクや車などとは速度面では比べるべくもないが、先ほどまで自分達がいたような森や山のような悪路を進むには都合がいい。
同行者が衣のような小柄な少女である事もあって、二人乗りでもなんら移動に支障がない事は今しがた確認したばかりだ。
支給された地図に情報操作がないとすれば、この会場の半分以上は舗装もされていない自然のままであるようだし、
これから先は地図内の施設を回ろうと計画しているグラハム達にとっては願ったりかなったりだろう。
だが、一つだけ。

「グラハム。この馬は、ここに置いて行くのか?」

説明書きの通りに良く躾けてあるのだろう。
見知ったばかりの主の命令ですらも忠実にこなし、素直に駐車スペースに佇んだままの馬を撫でてやりながら、衣が不安げに尋ねた。
彼女の言わんとしている事はわかる。船内まで馬に乗って行く事は流石に出来ない以上、一旦適当な場所に留めて行く必要がある。
だが、起動にキーが必要な車類ならいざ知らず、ただの馬がむきだしに置いてあるのでは、他人に奪われる恐れも大いにあり得た。
しかし、こればかりはどうしようもない。

「仕方ないだろう。こればかりは、運を天に祈るしかあるまい」
「………そうだな。いいか、知らない人間に付いて行ったりしてはダメだからな。 衣達が帰ってくるまで、いい子で待ってるんだぞっ」

グラハムの言葉に一瞬悲しげに眼を伏せた衣であったが、すぐに馬を元気づけるかのように笑顔になり、そう呼びかける。
呼びかけを受けた馬の方もまた、それに答えるかのように少女へと顔を寄せた。
互いに、随分と懐いてしまったようだ。
「わっ、こらっ…くすぐったいぞ」

叱るような声をあげた衣の方もまた、その表情は輝くような笑顔だ。
殺し合いという血なまぐさい場所において、なんとも心を和ませる微笑ましい光景に一瞬頬が緩むが、
ふとグラハムは衣の腕の中にいる黄色いマスコットへと視線を向ける。
衣の体より一回り小さい程度のそのぬいぐるみは、小さな黒い帽子に眠ったような目で微笑みを浮かべていた。
『チーズくんのぬいぐるみ』、というのがそれの名前であるらしい。軍馬がディパックから飛び出してきた際に、
一緒にこぼれ落ちてきたのが発見のきっかけとなった。
かなり大きめのそれは小学生程の体型の少女にはかさばる荷物であるが、彼女は決してそれを離そうとはしなかった。
と言っても、それは単純にこの可愛いマスコットが気に入ったからという理由では無いようだが。

『このぬいぐるみは、【しーしー】という参加者の大切な物らしい。だったら、衣がその人に届けてあげて、衣と友達になってくれるようにお願いするんだ!』

ぬいぐるみについての説明書きを読んだ後の衣の言葉だ。
その身に抱きながら離そうとしないのは、そうしておいた方が【しーしー】…もとい、【C.C.】なる参加者が見つけやすいからだろう。
グラハムとしては何度か説得も試みてはみたが、彼女の意志は固かった。
詳しい事はわからないが、ぬいぐるみが縁で友達を作る、という事になんらかの拘りがあるように思えた。
ともかく、押し問答を続けても仕方あるまい、とグラハムの方が先に折れる事になったのだが………。

閑話休題。気になるのは、それとは別の事だ。
先ほども述べたように、このぬいぐるみはかなりの大きさだ。
そう、馬はもちろんの事、このぬいぐるみ単体でも他の基本支給品と共にディパックの中に詰め込める物では無い。

(容量がほぼ規格外のディパック、か……これは超高度に発展した科学の産物か、それともマジックアイテムなのか…)

苦しい仮説を立ててみるならば、主催側にはかのイオニア・シュレンベルグのような超天才が協力者として技術提供を行っている、と見る事も出来るが、
判断材料が少なすぎる現時点では、それこそ実際に『魔法使い』が協力している、という仮説と信憑性は変わらない。
もしもこの場に、己が親友であるビリー・カタギリがいたならば、もっと正確な予測を立ててくれたかも知れないが、結局は無い物ねだりだ。

「何をしているんだ、グラハム? 早く先を急いで、麻雀をしに行こう! ルールは衣がちゃんと教えるから心配しないでいい!」

そんな事を考えている内に、幼い相方は痺れを切らしてしまったらしい。
大きなチーズくんを抱きしめたまま、急かすように足踏みをしてこちらを見ている彼女にやれやれと苦笑を浮かべると、
グラハムは衣を伴って船内へと足を踏み入れた。



地図上には『ギャンブル船』と記されていたこの施設であったが、どちらかと言えば『豪華客船』と呼んだ方が差し支えがないのではなかろうか。
廃村の港にて外観を眺めた時から感じていたが、この船は途轍もなく広大だ。
途中途中で、『順路・ギャンブルルームはこちら』と書かれた表札がなければ、特定の目的地にたどり着くのは困難であっただろう。
逆を言えば、この船の適当な客室に紛れ込んでみれば、追手を撒く事も出来るのかも知れないが。
閑話休題。表札の道案内が存在していたお陰か、グラハム達はすぐにギャンブルルームへとたどり着く事が出来た。
上部に『ギャンブルルーム』と書かれたシンプルな看板を携えた、巨大な両扉を前にしてグラハムはそのノブに手をかけた。

ゆっくりと、そのドアを押し開く。いざという時の為に、片手にはコルト・パイソンが握られている。咄嗟の事態にも対応は出来るだろう。
少しずつ広がっている隙間から、部屋の中の様子を窺う。
扉の巨大さと同じく、そのホールもまた巨大な空間が広がっていた。
人間がゆうに百人は入るのではないかと思わせるスペースに、幾つか遊戯台らしきものが見える。
吹き抜けとなっている高い天井に、二階部分へ登る階段までが見受けられる。
上にもまた、別の遊戯台が用意されているのか、それとも全く別の何かが待ち受けているのか。

そして、観音開きになった扉の向こうから、乾いた破裂音が耳に入ってきた。
――――パン、パン、パン、パン。
しかし、それは命を刈り取る為の凶弾が放たれる音では無い。

「ようこそ、ようこそ…………!」

若い男の声が聞こえる。グラハムの物とは別の第三者によるものだ。
破裂音と声、双方の発信地はホールの中央部から――そこに、一人の男が立っていた。

「ここはギャンブル船……希望の船『エスポワール』のギャンブルルーム……!」

黒づくめのスーツに、真っ黒いサングラス。とても堅気の者には見えない服装をした男が、パン、パンと手を鳴らし続けながら口上を続けている。
そして、その首には、首輪が存在していなかった。
それに気づいたグラハムの目が僅かにしかめられる。参加者全員に枷として嵌められている筈の首輪、それがないという事は即ち―――

「私は、このギャンブルルームにて……ディーラーとして、本部から派遣された者だ……!
参加者間で行われる、ギャンブルの監視役としての命も受けている……!」

グラハムの脳裏に浮かんだ疑問を即座に見抜いたかの様に、黒服の男は自分の立場を説明する。
ここに至って彼はようやく拍手を続けていた腕を止め、ホール内に設えてある様々な遊技台を指し示し始める。

「ここにはありとあらゆるギャンブルが揃っている……! ルーレットやポーカー、ブラックジャックのようなメジャーな物も……!
花札やチンチロリン、チェス、麻雀などもある……! 麻雀については、パソコンを通じてのネット麻雀も完備している……!」

麻雀、という言葉に反応するかのように、衣のリボンがピクンと動く。
黒服が指し示した台を見てみれば、確かに見なれた麻雀台が存在していた。

(やっぱりここでは麻雀が出来るんだ…! 衣にも、色んな友達を作れる場所があるんだ!)

少女の喜びを如実に表すかのように、リボンがゆらゆらと揺れ動く。
感激のあまり普段以上にきつく抱きしめられたチーズくんは苦しそうにも見えたが、今ここにそれを気にする人間はいない。

「他にも、オリジナルのギャンブルとして…! Eカードに、特設ルームにて行われる『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)…!
女性参加者限定だが、特別な水着を着用した上での、水上アスレチックレースなども用意させてもらった……!」

黒服は、ただ淡々と説明を続ける。
Eカード、という言葉と共に指さされたのは、『先攻』、『後攻』、そして『皇帝』、『奴隷』、『距離』などという奇妙な言葉と表が描かれているホワイトボードだ。
そしてまた、ホールの奥の方を見てみれば、傍に『この先、特設会場』と書かれた立札のあるドアがあるのが確認できた。
『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)、そして水上アスレチックという物の詳細は分からないが、
何やら大がかりな設備が必要なギャンブルという事なのだろうか。
女性限定、という枕詞に主催側のいささか無粋な思惑を感じ、グラハムの顔が微妙に歪んだ。

「また、このギャンブルルーム及び特設会場でのみ…参加者間での戦闘行為はすべて禁止とされている……!
このルールに違反すれば、その時点で首輪が爆破される……! それには、ディーラーに対する攻撃も含まれている……! 妙な気は起こさない事だ…!」

そう言う男の視線は、グラハムの片手へと注がれている。そこに、自分を殺しうる拳銃があると知った上での警告……いや、脅迫か。
癇に障る部分が無いわけではないが、無理を通して命を散らすのはそれ以上に馬鹿馬鹿しい。
無言のまま、グラハムはコルト・パイソンをディパックの中へと仕舞った。
戦闘行為が全て禁止されているという事は、裏を返せば自分たちの身の安全も保障されているようなものだろう。
よほどの事がない限りは、主催側から自分達の命を奪う可能性も低い。

「しかし、だからと言ってここは避難場所でも、休憩場所でもない……!
 ギャンブル中などの理由がある場合を除き……ただ単にここに留まり続ける事は許可しない……!
 そのような行動が見られた時は、力づくでの強制退去…最悪の場合は首輪の爆破も視野に入れている…! くだらない希望は、捨てておく事だ…!」

付けくわえるように更なる警告を行い、男は僅かでも殺し合いから逃れられる術を潰す。
主催者は、どうしても自分達に心休まる時間と場所を提供したくない心づもりのようだ。

「そう、この空間での勝負は全てギャンブルにて行われる……!
 ランダムに参加者に支給された、ペリカさえあれば…また、それが無くとも別の代償を払えば…!
その時点で、何者であろうとギャンブルに参加する権利が与えられる…!
 ここは、ありとあらゆる逆転(ミラクル)が起きうる場所……! 起死回生の一手によって、奴隷が皇帝を打つ事も……!
 身体的強者を、身体的弱者が思うまま蹂躙する事さえありうる……!」

両手を広げながら、黒服は更にルール説明を続ける。
この殺し合いの舞台に置いて、異彩を放つ『ギャンブル船』の特別ルールを、初めてのルーム入場者たる二人の参加者へと解説する。

「改めて歓迎しよう、グラハム・エーカー、天江 衣……! ようこそ、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへ………!」

再び、男の両手が一つに重なり、数回ほどの乾いた音がホールに響く。
それを最後に、ギャンブルルーム内を沈黙が支配する。物音一つしない静寂。
静かな事が逆に耳に痛い事もあるのだと、ふと衣はそんな事を思った。
「……幾つか質問したい事がある。いいだろうか」

銃を仕舞い、丸腰となったグラハムが黒服へと尋ねる。
しばらくその顔を見つめていた男は、ゆっくりと頷いて口を開いた。

「答えるかどうかはこちらで判断させて貰うが、それでも良いのならば聞こう…」
「それは僥倖。こういった状況では、僅かなりとも情報は貴重だ。ありがたく情報収集をさせていただこう」

ふ、と浮かべた微笑は主催側への皮肉が込められた物なのか、それともただ単に喜びから洩れた物なのか。
二人の会話を横で眺めることしか出来ない衣には、判断は出来なかった。
なんとなく、チーズくんに半分顔をうずめる。

「まず、一つ。ここにいるディーラーは、貴方一人だけなのか?」
「……主催側から派遣された人間は、俺一人きりだ」
「ふむ……それは妙だな。たとえば、これは純粋な疑問から尋ねたいのだが…
 複数人の参加者がここに現れ、不意を打ち、悪意を持って貴方に襲い掛かったとして…即座に全員の首輪を爆破する事が出来るのか?」

そう言いながら、グラハムは目の前の黒服の男を検分する。
服装や立ち居ふるまいから言って、少なくとも堅気ではなく裏…たとえば、ヤクザやマフィアなどに属していそうな雰囲気は持っている。
が、かと言って武術武道の達人に見えないのも確かだ。
常人ならばともかく、グラハムのような訓練を受けた軍人複数相手に対応しきるのは、不可能なように思えた。
だが、そんな質問を受けても黒服の顔色は変わらない。

「確かに、俺一人では不可能だ……だが、首輪爆破の指示を出すのは、俺では無くここを監視している外部……
 つまりは、本部の人間だ…たとえ俺を殺したとしても、参加者達の末路は変わらない…!」
「監視……だと?」

思わず、ルーム内へと目を走らせてみれば、天井や壁など数か所にカメラが設置されているのが程なく見つかった。
ここの部屋の状況は、逐一リアルタイムで殺し合いの主催側へと流れているという事か。
ぞっとしないな、と思わずグラハムは肩を竦めた。

「しかし、それでもたった一人でここのディーラーを務めるのは骨が折れそうだな。
 今回は二人きりだったからいいが、それ以上の大人数がここでギャンブルを始めたとすればどうする?」
「問題ない……人間は俺一人だが、協力スタッフはちゃんと用意してある……!」

黒服の男がしばらく懐の中を探り、そこから小さなベルを取り出す。
それをリン、と涼やかな音で鳴らせば、数秒もしない内に上、ホールの二階部分からガタゴトという物音が聞こえてきた。
何事かと二階へと続く階段を見てみれば、サッカーボール程の球体がこちらへと向かってくるのが目に飛び込んでくる。

『ハロ、ハロ』
『ギャンブル、ギャンブル』
『ザワ、ザワ』
「うわぁ……!」

それも、大量に。色取り取りの、おもちゃの様な球体が、羽のような両サイドの板を動かしながら飛行したり、転がったりしながら降りてきていた。

「ぬ、ぬいぐるみが動いてる!? 凄い、あんな物衣も見た事がないぞ!」
「MS……ではないな、流石に…小型の、ロボットか?」

ある意味ファンタジックな光景に、子供っぽい精神が刺激されたのだろう。衣は目を輝かせながら転がってくる球体達を眺めている。ぴょんぴょんと跳ねはじめたりもする始末だ。
対するグラハムは、多少驚きはしたものの冷静だった。
元より巨大なMSが闊歩する世界にて生まれ育った身であり、小型ロボット程度の科学技術ならば見慣れている。
そもそも、この球体ロボットはグラハムと同じ世界から集められた存在なのだが、グラハム自身はその事を知る由もない。
黒服は、自分の足もとに転がってきた適当な一体をつかみ取り、解説を続ける。

「ギャンブルの監視、及びディーラーはこの小型AI、『ハロ』達も行う。人員的問題は全てクリアされている……!
見ての通り、これらにはまともな手足が無いが…」
『ウソ、ウソ! テアシ、アル! テアシ、アル!』

その説明が気に入らなかったのか、手の中のハロはバタバタと暴れ、やがて上下の両サイドからニュッと小さな手と足を生やした。
予想外のギミックに衣が「おぉ…!」と歓声を上げたが、それらを意に介さないままに黒服はハロをホールの奥へと運んで行く。
そして、ホールの隅に並んでいたロボットらしい物体の上部、半円状の穴のあいた部分に腕の中でジタバタと暴れるハロを押し込んだ。
『ハロ、ハロ! ガッタイ、ガッタイ! ゴー、ゴー!』

ロボットと接続されたのに反応し、ハロの両目が赤くチカチカと輝く。
それに合わせてモーター音のような物が聞こえだし、やがてそれまで全く動かなかったロボットがゆっくりと立ち上がった。
頭部を排除した人型のような姿をしたそれは、何度か確認するように両腕を動かし始める。
それを見届けた黒服は、再びグラハム達の前へと戻り、ハロが搭載されたロボット、小型MSもその後に続く。

「この通り、ハロを搭載する事の出来る小型MSによってそれを補う…! 各種ギャンブルのルール、テンプレートは既にプログラミング済みだ…!」
『トランプ、キル! トランプ、キル! シャッフル、シャッフル!』

ハロの方はパフォーマンスのつもりなのか、手近な遊技台にあったトランプを手に取るとその場でシャッフルを始める始末だ。
しかし、グラハムの目から見ても、その手付きは鮮やかでありAIのプログラミングには見えない程なのも事実。
ふと傍らの衣の様子を見てみれば、まるで魅入られたかのように感心した表情でハロのトランプさばきを眺めていた。

(全く、良くも悪くも子供らしい)

一瞬だけクスリと小さく笑みを漏らし、本人が聞けば再び激怒しそうな事を考えながら、グラハムは黒服の男へと視線を戻す。

「ここがギャンブルルームとして問題なく稼働出来る事は理解した。
 そして、ギャンブルを行うためにはランダムで支給されたペリカが必要らしいが…
 それを増やすことが出来たとして、メリットが得られるのは優勝後に限定されてしまうのではないか?」
「いや、それだけに留まらない……!
優勝後に限らず、この会場において、所持ペリカを増やす事によるメリットはちゃんと存在している……! これを見てみろ…」

グラハムの疑問に首を振って答えた黒服は、すぐ傍の遊戯台の上に置いてあった一冊の分厚いファイルを差し出す。
ずっしりとした重量のあるそれを捲って見れば、まず最初に飛び込んできたのは黒光りする拳銃の写真がいくつかと、
それぞれにつけられたネームプレート、そしてペリカ表示の札だった

『トカレフTT-33』 【800万ペリカ】
『デリンジャー』 【600万ペリカ】
『ベレッタM92』 【900万ペリカ】
『RPG-7(グレネード弾×3、煙幕玉×2付属)』 【2500万ペリカ】…………

「なるほど、ペリカと引き換えに武器となる銃器を購入できる、と……」
「銃器類は、特別な付記がない限りは装弾数分の弾丸も込みで支給する……! ただし、それ以上の予備弾丸、弾倉はまた別途購入してもらう……!」

解説を聞きながら更にファイルを読み進めてみれば、後半に行くにつれて奇妙なアイテムまで見受けられるようになってきた。
曰く、桜ヶ丘高校軽音部のデモテープ、特殊繊維製伸縮自在の水着、ピザハット特別ピザ詰め合わせセット、etc,etc……。
殺し合いに何ら役に立つとは思えないそれらは、やはり価格設定も【5000ペリカ】、【100ペリカ】、【1ペリカ】などと極端な値段が付けられている。

「銃火器の類…殺しあいにおける重要度が高い物であればある程高額という事か。合理的かつ分かりやすくはあるが、それにしても随分と暴利だな」
「価格設定に対する不満は受け付けない……!」

やれやれ、にべもない―と一通り目を通したファイルを閉じた後で肩を竦める。
さて、どうしたものか。先の馬の件もあり、衣と共に自分の支給品を確認してはみたが、ペリカらしき物は入ってはいなかった。
銃火器類の購入、という特典は魅力的ではあるが、先立つ物がないのでは意味がない。
ならば、ここは素直に退出するという選択肢しか――
「………グラハム。衣は、ここでは麻雀が出来ないのか?」

傍らから聞こえた、消え入りそうな小さな声。
見てみれば、いつの間にか遊戯台に積み上がっていたトランプタワーを前に泣き出しそうな瞳の少女が存在した。

『ハロ、ハロ?』

早くも二個目のトランプタワーを完成させようとしていたハロが、気遣うような声を漏らす。
しかし衣はそれに応じる事もなく、ただグラハムをじっと見つめていた。

「衣は……友達を、作れないのか……?」

きゅ、と可愛らしい迷子のマスコットを抱え、まるで捨てられた子犬のような眼差しを向ける様は、その手の筋の人間が見れば理性を一瞬で剥ぎとっていたであろう。
だが、グラハム・エーカーはそのような特殊性癖を持ち合わせてはいない。

「残念だが、そうなるな……ペリカという元手がない以上、ここで麻雀を打つ事は出来ない。
 いや、そもそも同行している我々同士でギャンブルを行った所で大して意味がないというのも実情だ」
「ペリカやギャンブルなんてどうでもいい! 衣はただ、グラハムや他の誰かと麻雀で遊びたいだけなんだ! ……それでも、ダメなのか……?」
「……………これは難問だな」

幼い少女の健気な訴えを聞き、流石にグラハムの良心が痛みを覚え始める。
しかしこればかりはグラハムがどう努力した所でどうにかなる問題では無い。
ならばどう説得した物か……おねだりしてくる娘のあしらい方の重要性を、こんな状況下で嫌という程に身につまされるとは、流石のフラッグファイターも予想出来なかった。


「………ペリカが無くとも、ギャンブルをする方法はある…」
「…っ、それは本当なのか!?」

気まずい沈黙を破ったのは、意外な人物。
このギャンブルルームの主とも言える、黒服の男が告げた言葉を聞き、衣の顔に笑顔が浮かび、グラハムの顔に驚きが浮かんだ。

「最初に言っていただろう……。 ペリカが無くとも、別の代償を払えば、ギャンブルへの参加資格は与えられる……!
その代償は、天江 衣…お前だけでなく、一人を除き参加者のほぼ全員が払う事の出来る物だ…」
「じゃあ…じゃあ、今の衣でも麻雀を打てるんだな! あ…けれど、グラハムの言うとおり、私とグラハムとがギャンブルをしても詮無き事……」

太陽のような笑顔を見せた衣だったが、すぐに先ほどグラハムに教えられたもう一つの問題に気づき、再び顔を曇らせる。
グラハムと衣が一つのグループとなっている以上、そのグループ間でペリカやそれに準ずる物の遣り取りをしてもメリットは得られないのだ。
だが、それに対しても黒服は一つの対案を提示する。

「問題は無い……ギャンブルは参加者間で行われるだけでなく、こちら側……主催側と行う事も出来る……
 麻雀に関して言えば…こちらで3人までメンツを用意する……そのメンツを下す事が出来れば、点数に応じたペリカを与えよう…!」

男の説明に応じるかの様に、ハロを接続した三体の小型MSが麻雀台の近くへと移動し始める。

『ワハハ、ワハハ!』
『ウム、ウム!』
『タコスダジェ、タコスダジェ!』

ぱたぱたと頭部側面の板を開閉させながら、紫、黒、橙のハロがそれぞれ奇妙なセリフを飛ばす。
なんだかどこかで聞いたような記憶があるように感じたが、衣はそれを疑問に思うだけの余裕はなかった。
その心に満ち満ちている物は、深い喜び。

――衣の友達が、増やせるかも知れない!
『ヤッタネ、コロモ! ヤッタネ、コロモ!』

衣の感情を察したかのように、トランプを自由自在に操っていた先ほどのハロが賞賛の声を上げた。
うん、と嬉し涙まで浮かべながら元気よく頷いた衣は、トテテと可愛らしい足音を立てながら麻雀台まで向かおうとし、
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 14:52:27 ID:8W6xaSVg

「―――――失礼」
「ふにゃっ!?」

その腕を、他ならぬ同行者の手によって掴まれた。
小さく告げられた謝罪の声に含まれていた緊張に気づかぬまま、衣は思わずグラハムの顔を睨みつけた。

「何をするんだグラハム! グラハムは、衣が衣の友達がたくさんいる世界を作るのを邪魔する気なのか!?」
「誓ってそんなつもりは無い。だが、それをするのはもう少しだけ待っていて欲しい。…肝心な情報をまだ聞いていない」

少女を強引に引きとめた軍人の視線は、しかしてその少女へは向いていない。
グラハムが見ているのは、少女では無く、ある意味でこの事態を作り上げた張本人。
ギャンブルルームのディーラーを名乗った男を見据えた表情は、その奥底に僅かな怒りすら感じさせる。

「改めて尋ねよう。『参加者のほぼ全員』が支払う事が出来る、ペリカの『代償』とはなんだ?」

グラハムが思うに、それはそう簡単に払える物では無い。
優勝後の換金制度や、このギャンブル船にて行われる景品交換制度を見てみても、ペリカという存在はそれなりに貴重な物だ。
だと言うのに、『誰でも払える何か』を用いれば容易にペリカを手に入れるチャンスが来るとは、この悪趣味な殺し合いの主催者にしては虫が良すぎる。
ならば、何らかの裏があると見るのが妥当……では、その裏とは何なのか?
それがはっきりしない限り、この純粋な幼い少女の身の安全が保障されない限りは、麻雀開始を認めるつもりはない。

そして、その問いに対して黒服が口を開きかけるの当時に、車輪を回すような軽い音が部屋の中を駆け巡った。
一同の視線が、その音の発信源へと注がれる。

『ハロ、ハロ。ジュンビ、ジュンビ』

音の正体は、車輪の移動音。その何かを、麻雀台へと運んでいるのは、先ほどまで衣を楽しませていたトランプのハロだった。
彼が持っているのは長いシャフト部分。細長いそれの先にはポリビニールの袋のような物が付いており、またその反対には、鋭い針。
ハロのもう片手にはなにやら機械らしき物が抱えられており、目的地へとそれらを運び終わるのと機械と細長いそれの接続作業を始める。

なんだっけ。あれ、衣も見た事がある。
そうだ、昔、病院なんかで――

「………代償として払ってもらうのは、『血液』だ」

先ほどまで嬉しく飛び回っていた心臓が、氷のような腕で握りつぶされた気がした。
「レートは10万ペリカ=10cc……参考までに言えば、人間の場合、平均として2000ccの採血までは可能であるとされているな……。
しかし、血液をそのままペリカに換える事は禁止する……ペリカが配布されるのは、あくまで勝負に勝利した後…結果が出た時点で、血液の採取もしくはペリカの配布を行う…」
『サイケツ、サイケツ』

ハロの無邪気な機械音声が、淡々とした説明に続く。
先ほどまではあんなに可愛らしく見えたロボットが、急に無気味な存在へと変貌を遂げたようだった。

「また、代償を血液以外に限定しているギャンブルもある……たとえば、このEカードは…」
「もういい。もう、それに関する説明は結構だ」

尚もギャンブルについての解説を行おうとするディーラーを、強引に押しとどめる。
『このギャンブルルームでの戦闘行為は禁止』。その意味がようやく理解できた。
ここは決して安全地帯などでは無い。ただ、命を奪うための手段が、『戦闘』では無く『ギャンブル』へと形を変えただけの事だ。
もしかしたら、既にギャンブルが原因で血を奪われ、命を失った哀れな参加者もいるのかもしれない。
………これ以上、おぞましい話を聞くのは沢山だ。

(何よりも…これ以上この子を傷つけたくはない)

ほんの数分前まであんなに求めていた場所を呆然と眺めている少女に心を痛めながら、グラハム・エーカーは苛立ちに奥歯を噛みしめた。



「……次に訪れた時には、ペリカを用意できている事を期待する…」

ともすれば皮肉に取れるような黒服の声にも振り向く事は無く、グラハム・エーカーは天江 衣の手を引いてギャンブルルームから退出していった。
残された一人の男は、仕組みに従いゆっくりと閉じた扉の音と立ち去って行く二つの足音を聞き届ける。

『カタヅケ、カタヅケ』
『ワハハ、アトシマツ、アトシマツ』

ふと聞こえてきた別の声に反応し、麻雀台の方を見てみれば、先ほどまで集まっていたハロ達が麻雀牌や採血器具の回収を行っているところだった。
しばらく何とはなしにそれを見ていた黒服だったが、やがてハロ達に一つの指示をだす。

「いや、片づけるのはいい…それよりも、参加者がいつ来ても対応できるように採血装置の用意だけを済ましておけ……」
『ハロ、リョウカイ、リョウカイ!』

命令を忠実に聞き届け、手分けして各遊戯台に採血装置をセットし始めるハロ達を見ながら、苛立たしげに舌打ちを一つ打つ。
無理もない。この黒服とて、こんな殺し合いの会場にたった一人で飛ばされた事に対して大きく不満を持っている。
主催者側の人間として、先ほどここを訪れた二人をはじめとした全参加者のパーソナルデータはしっかりと頭に入れてある。
つまりは、この会場には知性を持たない巨大な化け物や、簡単にこの船すら破壊する事の出来る危険人物がいる事を、彼はしっかりと理解している。
首輪による拘束が無くとも、その命は参加者と変わらず風前の灯……!
自分の身の安全は、このギャンブルルームでのみ保障されている。 
もしもここから出てしまえば、脱出などを考えてしまえば…遠からず待っているのは、無残な死…! デッドエンド……!
その事実を、彼はよく知ってしまっているのだ。

この場所に派遣されたのが、彼一人だけなのもそれが理由だ。
命を落とす危険がある場所に送り込む人間はたった一人で十分…帝愛はそう判断を下していた。
では、なぜそのスケープゴートにこの男が選ばれたのか?
理由は簡単だ。仕事上でミスを犯し、組織から切り捨てられた。ただそれだけの事。

帝愛が定期的に主催するギャンブル大会、それに参加したとある参加者がいた。
どうにかそれに勝ち残り、僅かながらも富を勝ち取ったはずのその参加者だったが、ツキがまだ自分にあると思い込んでしまったのか…軽率な行いから一つミスを犯してしまった。
大手を振って仲間の元へと帰ろうとした道すがら、魔が差してしまったのか別の賭博へと手を出し、せっかく得た富を全て失ってしまったのだ。
原因は『賭け麻雀』。見事にカモにされたその人物は、最早見る影も無かった。
余りにも情けなさすぎる結末。その参加者を元の場所まで送り届ける役目を負っていたこの黒服は、見るに見かねた結果、無償で自分のポケットマネーを参加者に与えてしまった。
それが、いけなかった。この帝愛の体質と最も相反する行動を取ってしまった男は、(当時の)会長の逆鱗に触れ、降格・左遷の処分を受けた。

そうした結果が、今現在の状況だ。
いつ自分の命が尽きるかもわからない会場内で拘束され、ただ参加者とギャンブルを命じられた損な役回り。
ペリカ交換用の武器類を強奪し、本格的に帝愛に反旗を翻す道もないわけでもない。
だが、それはあまりにも現実的では無い。帝愛で働いている男は、帝愛の巨大さ…恐ろしさ…決して逃げられぬ事の出来ぬ、その組織力をよく知っている。
故に、反抗を企てる気など起きる筈もない……ただ、命じられた仕事をこなし、汚名返上を図るしかない。

もしも、途中でその命を失った場合には、同じように切り捨てられた帝愛の役員が来るのか、それとも補充などは行われないのか…それは彼にもわからない事だ。
しかし、まだ完全にその命が散らされると決まったわけでは無い。
怒りや絶望を押し殺し、ギャンブルルームの主はまた新たな参加者を待ち、ゲームの終了を待ち望む。
この場から生き残れば、あるいは再び返り咲く可能性が生まれるかも知れない。
それもまた、一つの逆転(ミラクル)………。


カツコツと、ギャンブルルームから出入り口への順路…客室のドアが立ち並ぶ廊下を歩く。
気がつけば、同行者が握っている場所は自分の二の腕ではなく小さな手のひらになっていた。
いつの間にこうなっていたのだろう。あの部屋から出た時にはそうだっただろうか?
頭がぼぅっとして、よく思い出せない。何かを考えるのが非常におっくうだ。
さっきはあんなに楽しかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。

少女が受けたショックは、大きかった。
彼女は孤独な存在だった。父も母も失い、この世に生きる存在意義はただ一つ『麻雀』だけ。
その麻雀ですら、彼女をより一層孤独へと陥らせる要素でもあった。
たった一つの目的のためにその身を捧げ、それによって最も欲しい物を遠ざける。

けれど、そんなジレンマを抱えていたのも過去の事。
あの戦いをきっかけに、天江 衣は本当に麻雀を楽しめるようになった。
ようやく、麻雀を通して一番欲しかった物を手に入れられるようになった。
だからこそ、彼女にとって『麻雀』とは単なる卓上遊戯では無く、とても重要な物だった。

そして、先ほどの出来事はまるでそれを否定されたかのようだった。

衣は、麻雀がしたい。麻雀を通して、いっぱいいっぱい友達を作りたい。
けど、衣は死にたくない。父上や母上や……とーか、みたいに死にたくはない。
みんなの分まで、ずっとずっと長生きしたい。
でも、それじゃあ。

ぐるぐる、ぐるぐると同じ言葉が堂々めぐりを繰り返す。
何も考えられないような状態だったから、最初はまともに反応も出来なかった。

「先ほど、ペリカと交換で手に入るアイテムを調べていた時に面白い物を見つけた」
「……………そうか」

自分の手を引く男の言葉に、気のない返事を返す。
今は誰かと会話をしたい気分ではない。むしろ、一人になりたい。
まだ欲しい物が手に入れられなかった頃のように、ただ一人きりでどこかに。

「確かに、その殆どは仮面だの、着ぐるみだの、羽織袴のような…こんな状況でなければ興味深くはあるが、必要のない物ばかりではあった」
「…………………」

もう返事を返すのも億劫だ。聞き流してしまおう。
…こんな気持ちなのに、話し掛けてくる方が悪い。

「『麻雀牌セット』。役表や点計算用紙、初心者向けルールブックも込みで1万ペリカだそうだ」
「……………そんな物」

麻雀牌なんてどうでもいい。今衣に必要なのは、自由に楽しく麻雀が出来る――――

「え?」
「銃器類の相場を考えれば、決して高い買い物では無い。あっても無くてもいいような値段設定だ。
 我々はペリカという物を持ち合わせてはいないが、何かと交換で手に入れる事は不可能では無いだろう」

ハッとした表情で自分を見上げる衣を意に介さず、グラハムは言葉を続ける。
ただ、立ち止まった衣に合わせて、手をつないだままで自分も立ち止まって。

「なに……私も麻雀については詳しくはないが、テーブルの上でも出来るものなのだろう?」

そう言うと、グラハムは顔を動かして少女と視線を合わせる。
そこに浮かんでいるのは優しげな微笑みと、僅かに見え隠れする気遣いの表情。
昔、どこかで見た事のあるような表情。そう、一人法師になってしまったあの時、自分に話し掛けてくれた、とても大切だった人のような。

衣の心に突き刺さっていた氷の杭が、ゆっくりと溶けだしていく。
「……っ……グラハ」
―――――――ギィィィィィィ………

少女の感極まった声を遮ったのは、無粋な軋みのノイズであった。
軍人・フラッグファイターの反応は素早い。即座に衣を庇うように前に立ち、手には拳銃を構える。
見据える先にあるのはノイズの発信源、未だキィキィと音を立て動いている客室の扉だ。
ほんの今さっき前を通ったばかりの扉が、不自然に半開きになっていた。

1秒、2秒。緊迫した沈黙が続く。
息が詰まるような空間に耐えきれなくなって、衣はグラハムに話しかけた。

「か……風で、勝手に開いたのでは……ないか……?」
「その可能性も否定できない。だが、ありとあらゆる状況を想定しておくべきだ」

衣の問いかけに即座に答え、彼はゆっくりと問題の部屋へと進んでいく。
その後ろ姿を見送りながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。心臓がズキズキ痛む。
この殺し合いが、衣の大事な家族がその命を散らしてから早数時間。衣は、未だに自分達に害を与えようとする人間には出会っていない。
その痕跡すらも、見つけてはいない。これが初めての経験だ。
未知である事はそれだけで恐怖を生む。自分を襲おうと息をひそめている悪漢がすぐ傍にいる気がして、衣は腕の中の相棒を強く抱きしめる。

やがて、グラハムが扉のノブに手をかける。
きっかり2秒ほど呼吸を置いた後で、彼は一気にそのドアを開け放った。

「動くな! ここは、大人しく」

怒号は不自然に中断された。続いて聞こえたのはヒュン、という軽い音。
何の音? 何かが風を切る音。刃物のような、鋭い何かが。
そう連想した時には、まるでばね仕掛けのおもちゃのように飛び出していた。

「グラハム!!」

自分に何ができるのかはわからない。ただ、不安だった。
自分に出来た友達、そして家族でもあったあの少女を失ったように、また誰かがいなくなるのを見るのは嫌だ!

ドアの前に立ったグラハムの脇から、部屋の中を覗きこむ。
果して、衣の目に映ったのは。


「…………その物騒な物を下せ。折角の酒が不味くなる」

椅子に座ったままで、包丁を棒に括りつけた槍もどきを中空へと伸ばしながら、ワインをラッパ飲みしている初老の男性だった。



利根川幸雄が、グラハム・エーカーと天江 衣の接近に気付くのにそう時間は掛からなかった。
船の最上階にて飛ばしていたラジコンヘリの画像に、奇妙な馬に乗りながらこちらの方向へと向かってくる二人の姿が映っていたからだ。
その存在を発見したのは、一度アジト方面の偵察を終えてバッテリー交換と共にしばらく休息を終えた後の事。
音声を得る事の出来ないヘリカメラでは、この親子のような二人連れがどのようなスタンスかははっきりとはわからなかったが、
殺し合いにおいて足手まといにしかなり得ない子供を引き連れている事が判断材料となった。
恐らくは、進んで殺しあいに乗っているものではあるまい。ならば、どうするか?
利根川の目標はただ一つ、生き残ってこの会場から脱出する事……!
その為の手段は問わないが、年老いた自分が数十名の参加者を殺し回れるとは思わない…!
ならば、する事は一つ……! 手駒…! 自分の盾になるもの…! 自分の手足となるもの…!
それを、集める……! その為に必要なのは、集団を作り上げること……!
人数さえ集まれば、何らかの突破口が見つかるかも知れない…! それに掛ける…! 利根川、逆転の一手に全てを掛ける……!

多少の足手まといは許容する、それんな参加者でも肉の盾ぐらいにはなりえるだろう。
もちろん、見知った物がほとんどいないこの場所で、集団を作るのはそう簡単には行かない。
ただでさえ『殺し合い』という極限状態の中だ、疑心暗鬼が横行し先ほどまでの味方が即座に敵と変わる事もありうる。

だが、利根川には武器がある……! 一つの武器、おそらく参加者の大多数には通用するそれが……!
だから、利根川は彼らとの接触を選んだ…!
いざという時の武器を作るために、船のキッチンにて包丁と、掃除用具のモップの柄を手にいれ、
船内で見つけたガムテープを使い即席の護身武器を作っている間に、彼等は船内へと侵入してしまったが……!

結果オーライ……! 先回りにより、適当な客室に潜み…おびき寄せ…! 利根川は出会えた……! 自分の駒となりうる者…盾となりうる者……!
後は、己の話術次第……! 引きこめるかどうかは、利根川の実力によって決まる……!
既に4本目のワインボトルを煽りながら、利根川は次の一手を模索する…!


先に動いたのは、侵入者、グラハム・エーカーの方からだった。

「…銃を下ろす前に、尋ねたい。貴方はこの殺し合いに乗っているのか?」
「フンッ……!」

ありきたりな質問を受けた利根川の答えは、冷笑。苦虫をかみつぶしたかの表情でワインを飲みほし、酒臭い吐息を吐きながらグラハムを睨みつける。

「あ、あぅ……」

眼が座っている利根川に恐怖を感じたのか、ぬいぐるみを抱えた連れの子供が二、三歩後ずさったが知った事では無い。

「殺しあい……殺す……!? 出来ると思うのかっ…!? この老いぼれに…!
 武器と言えばこの包丁ぐらいしかない…そんな人間に…! お前のような銃を持った男を殺せると…!?」

グラハムへと向けていた槍モドキをブンブンと空中で振り回した後で、忌まわしげに投げ捨てる。
それを眼で追っていた男は、やがて己の拳銃も懐へと仕舞いこんだ。

「機嫌を損ねてしまったのならば謝罪しよう。私の名はグラハム・エーカー。こちらの少女は天江 衣だ。私達も、殺しあいに乗るつもりはない」
「……………」

手短な自己紹介を聞き届けた利根川は、空になったワインボトルをディパックの中へと放り投げる。
たかがワイン瓶といえど、一応の武器にはなるだろう。
手ぶらになった利根川は椅子から立ち上がり、グラハムへと向き直る。
ここからが、本番……! 利根川は用意する…! 一つの必殺の武器を…! おそらく、この会場で唯一自分だけが持っている武器…! 
事実、一人の老人が死んだ今となっては確かにその通りである武器を……!

「利根川幸雄……この殺し合いの主催グループ、帝愛の……幹部だった男だ……!」
「……!!」

その時……グラハム・衣に電流走る………!!

これが、利根川の武器……! それは、情報……!
追い落とされたとは言え、長い期間を組織の発展に尽くしてきた男、利根川……!
彼は間違いなく、この会場の生存者の中では最も、『帝愛』を知り尽くした男……!
これはおそらく、殺しあいにのった物でも…! 優勝を狙いながらも、黒幕である主催者の正体を掴みたがっている者にとっても、有効な武器……!
そう、あの因縁の相手……! 自分を蹴落とした…! 伊藤開司にとってもそれは同じ…!
だから、それを使う……! それは切り札……! 
利根川に、逆転(ミラクル)を起こしうる、起死回生のSPカード……!

敗北により、地に這いつくばった男、利根川……! 大逆転物語……大団円、なるか………!?


【B-6/ギャンブル船・客室/一日目/早朝】

【天江衣@咲-saki-】
[状態]:健康
[服装]:いつもの私服、ぬいぐるみを抱いている
[装備]:チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、麻雀を通して友達を作る
1:ひとまず一万ペリカを手に入れて、ギャンブル船で『麻雀牌セット』を手に入れる
2:そしてギャンブルではない麻雀をして友達をつくる
3:まずはグラハムに麻雀を教える
4:チーズくんを持ち主である『しーしー』(C.C.)に届けて、原村ののかのように友達になる
4:利根川は…なにか怖い……
【備考】
※参戦時期は19話「友達」終了後です
※グラハムとは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※参加者は全員自分と同じ世界の人間だと思っています


【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退
0:ひとまず利根川から情報を得る。ただし、完全に信用はしない。
1:主催者の思惑を潰す
2:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける
3:地図が本当に正確なものかどうかを確かめるために名所を調べて回る
4:衣の友達づくりを手伝う。ひとまずは一万ペリカを手にいれ、『麻雀牌セット』を買ってやりたい
【備考】
※参戦時期は1stシーズン25話「刹那」内でエクシアとの最終決戦直後です
※衣とは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※刹那・サーシェス以外の参加者が自分とは違う世界の人間であることに気づいていません
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
【利根川幸雄@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 悪酔い 
[服装]:スーツ
[装備]:Draganflyer X6(残りバッテリー・20分ほど)、即席の槍(モップの柄にガムテープで包丁を取りつけた物)
[道具]:基本支給品一式、シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)@現実×26本
   :特上寿司@現実×63人前、予備バッテリー残り×4本、空のワインボトル×4本
[思考] 基本:ゲームからの脱出。
1:集団を作り、脱出への突破口を模索する。他人は利用。カイジと遭遇しても集団に引きこむ。
2:ひとまず、『帝愛』についての情報をちらつかせてグラハム達を引きこむ。


※ギャンブル船の駐車場スペースに『武田軍の馬@戦国BASARA』が止まっています。
ただ止まっているだけなので誰でも乗ることが出来ますが、衣に懐いているため他人に奪えるかどうかは不明です。


【チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
C.C.お気に入りの巨大ぬいぐるみ。黄色い色した可愛いアイツ。
C.C.は常にこれを抱いているため、おそらく抱き心地はいい物と思われる。ピ・ザ・ハッ・ト♪

【武田軍の馬@戦国BASARA】
武田信玄率いる武田軍の馬。赤い装飾が付いているが、馬イクほどはっちゃけてはいないので影が薄い。
基本的には普通の馬と変わらないが、帝愛によって誰にでも乗りこなせるように調教されている様子。

【ギャンブル船について】
船内に特設されたギャンブルルームにて、ペリカ、もしくは血液等を賭けた各種ギャンブルを楽しむことができる。
ギャンブルや支給品によって手に入れたペリカに応じて、銃器をはじめとした様々なアイテムを購入する事も可能。ただし、値段はかなり割高。
スタッフは【黒服@逆境無頼カイジ】が一人と【ハロ@機動戦士ガンダム00】が無数。ハロは本編にてガンダム整備を行っていた小型MSに搭乗する。
ルーレットやポーカーなどから、花札や麻雀まで、様々なギャンブルが行えるようになっている。会場内の各施設とのネット麻雀にも対応している。
また、特別なギャンブルとして『勇者の道(ブレイブ・メン・ロード)@逆境無頼カイジ』に『Eカード@逆境無頼カイジ』、
『女性限定水上アスレチックレース@ガン×ソード』がある模様だが詳細は不明。
対戦相手は一緒にいる参加者、もしくは主催側で用意したハロ。
そして、ギャンブルルーム内ではディーラーや他参加者への戦闘行為を一切認めておらず、それに違反した物はその時点で首輪が爆発する。
ただし、ディーラーを含め脱落者が現れたとしても、それに対する救済措置は一切行われない。
なお、ディーラーはデータとして各参加者の顔・名前を知っているが、特別な面識のある人間は利根川・兵藤を除いて一人も存在しない。
代理投下終了です

ギャンブル展開が一気に進んだ今回の話、咲と福本の世界観がぶつかった気がする
そりゃほのぼの麻雀アニメとガチギャンブルアニメだからなw
利根川は二人を取り込もうとするがお前、それほど情報知らないだろw
カイジ組や黒子組もこちらに向かってるしどうなるか先が気になります
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 15:35:21 ID:Pmy3i45/
ほのぼの…
過去の衣周辺はさほどほのぼのともしてないような気もするが
まぁいいか
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 15:41:56 ID:q2LZpsGo
投下乙であります

衣がぴょんぴょん跳ねてる様子が可愛い
乙女座の男はすっかりパパだなw
グラコロコンビいいなあ
この二人を見ると和む
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:17:02 ID:ncXKWd/k
投下乙
満を持してチーズくん人形が登場
しかし大事なスポンサー様のマスコットに粗相があっては拙い
有事の際にはグラ衣コンビと利根川に身を挺してでも守ってもらわねば
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:34:31 ID:q2LZpsGo
世界経済どころか魔法すら操るピザ屋恐るべし
344 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:40:29 ID:3R3/y4/7
お待たせしました。これより投下を始めます。
345戦争と平和 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:41:13 ID:3R3/y4/7
Stance.1 忠義


やはり、そう都合よくはいかないものか。
既に何度繰り返したかも分からない徒労だけを収穫に、刹那は倉庫の検分を終えた。
海沿いに立ち並ぶ倉庫群の一つである。刹那は忠勝の軌道力を武器に、工業地帯の調査を進めていた。
地図に描かれた倉庫の巨大さからあるいはモビルスーツも、と言う期待も多少はあったが今のところ成果は芳しくない。

倉庫はどうやら機械の組み立て用部品の保管場所に充てられていたらしい。それぞれ規格の違うボルトやナットが袋詰めにされ、うず高く積み上げられたまま放置されている。
使われなくなってから大分経っているようだ。潮風に浸食された鉄錆の臭いが、割れた窓硝子を通して内部にまで届いていた。

黴を呼吸しているような気分になりながら、刹那は倉庫を後にする。さっきまで暗かった空は大分明るみを増し、夜明けが近いことを教えていた。
刹那は不要になった旧型の懐中電灯を消すと、鞄へと戻す。
固く閉じられていた入り口は忠勝にこじ開けてもらった。それこそモビルスーツに匹敵する程のパワーだが、当の本人はそれを誇るでも振りかざすでもなく、埠頭に泰然とその巨体を湛えている。
自身がひしゃげさせた鉄のシャッターの前でじっと佇む姿は、まるで門番だ。

このあたりの工場やビルはいくつか見て回ったが、刹那の調査中に忠勝がついて回るというようなことは一度もなかった。代わりと言うように、調査中は常に門前に待機し刹那の背中を守ってくれている。
自分の仕事はこっちだと無言で示しているように刹那は感じたのだが、それは半分だけ正解だった。それくらいしかできることがなかった、というのが実際のところだったらしい。
言葉に拠らぬ意志を通じ合わせてみたところ、忠勝はこのような機械や金属に囲まれた場所を見たのは今回が初めてだったらしい。
本人が機械の塊のようなものなのに、おかしいものだと刹那は思う。

その身、その力。どこでどのように手に入れたのかと気にならないではなかったが、くどくどと問い詰める気はなかった。
いずれ尋常でない道を歩んできたのだろう。歴戦の風格に、真に己の正義を貫こうとする鋼にも似た頑健な意志を感じ取った刹那は、この男の過去がどういうものであろうと気にするつもりはなかった。

「待たせたな、ホンダム」

346戦争と平和 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:41:54 ID:3R3/y4/7
声をかけると同時に、刹那の倍以上の高さからが視線をくれられた。
不思議とどこかガンダムに通じるものを思わせる両の瞳は、睨むだけで薄い鉄板程度なら貫いてしまいそうな圧力を持っていた。
同時にそれは、刹那が肩を預けるのに足る男だと改めて教えてくれる光でもある。

「そうだな。そろそろ次の場所へ行った方がいい」

手当たり次第に行った調査はどれも空振りだった。
地図では工業地帯と示されたこの一帯は、稼働していた形跡はあるが全くの無人だった。不気味な話だが、それを除けば他に不審な点はない。
モビルスーツについては影も形も見えなかった。部品すら存在していないようだ。
判ったことと言えば、この近辺では車や家電と言った、何の変哲もない工業製品の生産に力を注いでいたらしいということだけである。
専門家でない刹那の本格的ではない調査による判断だが、少なくとも軍事関係の産業とは何の接点も持っていなかったことは間違いない。

「・・・・・・急ぐのか。ホンダム」

忠勝の挙動に何か変化があったのではない。言語はおろか行動さえ最小限に止める男は、たとえ一挙手一投足を具に見たところで感情というものを表に出さない。
だと言うのに、刹那は何という理由もなく、先を行こうとバーニアを展開する忠勝の姿に僅かに焦りのようなものを感じていた。

「それ程までに危険な相手なのか。ホンダム、お前を動かす程に」

鋼の巨体に身を預けると、忠勝の思考がより一層深く伝わってくる。
主君の仇である織田信長。その家臣光秀。忠勝に匹敵する力を持ち悪逆と暴虐の限りを尽くすというその男たちは、先も聞いた世界の歪みだ。
駆逐されるべき存在なのは刹那にも分かる。体が満足なら今すぐに空へと飛び出したいのだろう。
だが刹那は、心身ともに「最強」の名に相応しい男がそこまで感じるからこそ、逆に信長という存在に具体的なイメージを持てないでいた。

347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:42:20 ID:YVqR6Kff
348戦争と平和 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:42:37 ID:3R3/y4/7
「魔王。圧倒的な暴力で世界を歪める魔王軍・・・・・・か」

刹那に答えるように、忠勝の心象が伝わる。
乱世を我がものにせんと覇軍を続け、敵であれば降伏も許さず皆殺しにする。信長という男の凶状はまさに悪鬼そのものであったらしい。
虐げられた人々は信長を魔王と恐れ、また信長自身もそれを自称したという。
魔王とは人にあらざるものの名だ。刹那は自らの記憶を掘り起こす。
何も知らずゲリラとして幼少を過ごしたクルジスで。ソレスタルビーイングとして介入したあらゆる紛争地帯で。世界を影から操ろうとするイノベイター達の中で。
虐殺されることしかできない一般人も、金を、権力を持ちながら無惨に使い捨てられた人間も刹那は見てきた。
戦争に負け、迫害を受けながら行き続けることしか出来なくなった民族の姿も知っている。

だがそこに人間以外の影があっただろうか。悪魔のような所行を繰り返しものの正体が、本物の悪魔だったことはただの一度もなかった。

「違うな・・・・・・ホンダム。そいつらは人間だ。
 どれだけ血が流されても、人を殺し、世界に歪みをもたらすのはいつだって人間なんだ」

バーニアの風切り音が高くなった。刹那の言葉が忠勝にどのように届いたのかは分からない。
刹那もまた、それ以上言葉を重ねようとはしなかった。
バーニアが点火し、風圧が刹那を襲う。
トラック用に広くとられた道路が、朝靄に疾駆する二人の戦士を包み込むように見送っていた。


349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:43:07 ID:YVqR6Kff
350戦争と平和 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:43:28 ID:3R3/y4/7
Stance.2 復讐


厄介なものと出会った。
レイ・ラングレンがそのとき抱いた感情は、その一言に収斂することができた。

「雑兵が。朽ち果てよ」

野太い声をした居丈高な男である。
白磁をくすませた灰褐色の甲冑で全身を包み、ハンドルのような持ち手が付いた筋肉質の馬にまたがっている。
壮年の終わりに差し掛かったあたりと見えるが、黄金色の剣と自動小銃で武装したその姿からは年の衰えを感じさせない覇気が立ち上っていた。
小銃の銃口は、レイの眉間にぴたりと狙いを据えている。距離にして2メートル程か。
両腕をピンと伸ばせばそれだけで届く距離だ。必殺の間合いというにも近すぎる。
それでも、レイが揺らぐことはない。常人なら抱いてしかるべき怒りや恐怖と言った生々しさは、そこには一片も見られなかった。
レイに感情がないわけではない。一切の不純物を混ぜず限界まで凝縮し精錬された怒りが、磨き上げた剣の鋭さを保って存在している。
だが、それを見せるべき相手はこの男ではない。
レイに満ちた憎しみの海は、一所では魔王とまで呼ばれた男の殺意を真正面に浴びながら、そよ風一つ起ない凪を保っていた。

(不用意に草原に出たのは失敗だったか)

死を目の前に冷静すぎる自省の念がよぎる。アクシデントに対するネガティブな感情も、どこか機械のような冷徹さを伴っていた。
男は、轟く蹄の音も高らかに山頂の方角から現れた。警戒を怠ったつもりはないが、さすがに馬賊まがいの真似をする者がいるとは予想外である。
あと少し時間があれば、工場の中に飛び込めたものを。出会い頭の応戦に消費した分のツケとしては少々痛い。ヴォルケインを召還できないことを少し煩わしく思った。

男の厳めしい眉が怪訝そうに顰められる。声からすると、絶体絶命の状況にありながら微塵も恐怖した様子を見せないレイが不満なのだろう。
生憎、加虐趣味に付き合う気はない。苦しみにあえぐ叫びも、憤怒の果てに流す涙も、とうに使い果たしてしまった。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:43:52 ID:YVqR6Kff
352戦争と平和 ◆10fcvoEbko :2009/11/10(火) 18:44:10 ID:3R3/y4/7
レイは何も感じない世界にいる。何もない世界で、ただ一つの復讐のために生き続けている。
男の指に力が掛かった。

「消えよ」
「俺の邪魔をするというなら・・・・・・死ね」

引き金が絞りきられる直前、レイは横飛びに柔らかな草むらの中に転がり込んだ。
狙うべき対象を失った空間に5.6ミリの弾丸が降り注ぐ。肥えた土が弾ける警戒な音は、無反動を誇る小銃がレイに傷一つ与えられなかった証拠だ。
流麗なその動きは戦国に生きる男から見ても鋭敏を極めている。常人なら目で追うことさえ不可能な俊敏さは、男が照準を定め直すより早く行動を終えていた。

レイの手が地を付いた瞬間に一発。身を起こし立ち上がる直前に一発。手の中の拳銃が二度火を吹いた。放たれた9mmショート弾は、さっき奪った道具に含まれていたものだ。
不安定な姿勢から発射されたことなどまるで無視するかのように、ベレッタの弾丸は一直線に男の眉間に迫る。
命中の寸前、初弾は間髪入れずにかざされた黄金の剣によって弾かれた。その事実にもレイは眉一つ動さない。
本命の二発目の弾丸は、防がれることなく既にその役目を終えている。大型バイクのように猛々しい軍馬の、剥き出しの胴体に傷を付けたのである。

「ぬぅぅ、小癪な……!」

馬を潰す程の傷ではないが、時間を稼ぐには殺してしまうよりいい。火がついたように暴れ出した馬に手を取られ、男の注意が反れる。
その隙をついて、レイは身を翻した。男が体勢を整えるまでの短い時間で工場地帯へと進入する。
障害物を挟んでの射撃戦ならこちらに分がある。背後から遠雷のように深い怒声が響き、5.9ミリ弾が飛来した。
その内の一つが頬を掠め血が伝い落ちたが、軽やかなレイの動きを何ら阻むものではない。
手近な小屋へ飛び込んだレイの背中を、揺るがしがたい意志が支えていた。


353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:44:37 ID:YVqR6Kff
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 18:54:45 ID:r2vvoGeq

Stance.3 完全平和主義


「知らないの」
「ええ」
「本当に」
「私は嘘などつきません」
「ふうん」

微塵の後ろめたさないと言わんばかりの、リリーナの言葉は実にきっぱりとしている。
それに対しアーニャ・アールストレイムが返したのは、実に淡泊な相槌だった。無関心を全身で表明するかのような、幼い四肢に不釣り合いな乾燥したリアクションだ。
会話中だというのに、相手の顔も見ずに愛用の携帯電話をカタカタと揺らしつづける姿が、その印象により拍車をかけている。
アーニャは別にリリーナとの対話がつまらなかったわけでも、苦痛に感じていたわけでもない。
その証拠に、闇夜に微かな光明をもたらしているアーニャの手元では、二人がこれまでに話合った内容が簡潔かつ丁寧にまとめられていた。

これまでに分かったことは、おおまかに言って一つ。アーニャとリリーナの持つ、世界についての知識が真っ向からくい違っているということだ。
アーニャにとって世界規模で統治を行っているのは神聖ブリタニア帝国であって地球圏統一連合ではないし、リリーナにとって軍の主力兵器はモビルスーツであってナイトメアフレームではない。
ましてや、アーニャの常識には宇宙での生活を可能にするコロニーなどという巨大建造物は存在しない。
最初に感じた違和感がより鮮烈に現れた形だ。聞けば聞くほど、互いが本気で言ってることが分かるから余計にたちが悪い。

「私の話を狂人の戯言とお笑いになりますか」
「条件はこちらも同じ。私も、嘘つきだと思われたくはない」
「では、どういうことなのでしょう」
「分からない」

フラッシュをたく必要のない昼間なら、アーニャはそのときの表情をカメラに納めていただろう。困惑の色を浮かべていても、リリーナの振る舞いは高貴な貴族のそれだった。
歴史が根本から違っているとしか思えないそれぞれの世界観のズレについては、ひとまず保留とした。
ここまで相違が大きいとどうにも解釈のしようがないし、上辺だけ取り繕って相手に合わせるのはアーニャの好みではなかった。
そもそも、分からないことだらけなのだ。言葉は通じるし、人となりにも嫌悪は感じない。直接の危険がないだけでも十分とアーニャは判断し、携帯電話をカタカタ鳴らした。
どうせこれと言った指針もない。深夜の、廃墟と見紛う程に寂れた工場地帯である。
少女二人が、別れ別れになったところでメリットなどない。
「とりあえず、スザクを探す」
「あら、私も探したい人はいましてよ」

会話を通じていくらか距離が縮まったのか、リリーナの声に年相応の気安さが混じる。
いたずらっ気のあるその声音は純粋にこちらをからかっているのか、あるいは年上として場を和ませようとでも考えているのかも知れない。

「探すと言ってもとりあえずは歩き回るだけだから。リリーナ様も一緒に探せばそれで済む」
「そのスザクさんという方が、さっき私に会わせたいと仰っていた人なのかしら」
「違う」

スザクと会わせたところで、それ程面白いものは期待できない。
会わせたいと言った相手は別の人間だ。アーニャにとっては夢物語にしか聞こえないリリーナの理想も、彼女は本気で実現することを願っていたのだろう。

「ナナリー様。前に私が仕えていた方」
「その方もこちらに・・・・・・?」
「名簿にはいない。でも、それは私も同じ」
「そう・・・・・・優しいのね、アーニャは。その方も、きっとお優しいのでしょうね」

彼女にとってみれば信憑性など皆無の世界の話であるにも関わらず、リリーナは真剣にこちらの意思を汲み取っている。
悲しげに伏せられた眉根が、形式上の気遣いによるものではないことはアーニャにも分かった。
珍しい人。行動力のある理想主義者。だから悲劇にも遭いやすい。アーニャそうは結論付ける。

「優しい方。だから利用されて、悲しんだりする。リリーナ様と同じ」
「私と?」
「国を丸ごと明け渡すような無茶は、ナナリー様はしないけど」

そのような行動力が彼女にもあれば、とは考えても詮無い話だ。
国が、環境が違いすぎる。アーニャはそれ以上考えることを止め、辺りに気を配りながら続くリリーナの言葉に耳を傾けた。

「平和を望む方と、自由にお話ができればよいのですが・・・・・・。その方が苦しまれているならなおさらです。
 本来、サンクキングダムはそういう場として機能するべきでした」
「リリーナ様は理想的過ぎ。囚われるのも当然」
「私は自分のしたことが間違いだったとは思っていません。いくら困難だからと言って、行動しなくては何も変えることなどできません」
「そういうことを・・・・・・」

普段でもまずないくらい口数が多くなってしまったのは、彼女の語る理想がさすがに綺麗過ぎたからだろうか。あるいは、女王の持つカリスマという奴がそうさせたのかも知れない。
いずれにせよ、アーニャが口にしかけた言葉は突如頭上から叩きつけられた破砕音によって阻まれ、リリーナに届くことはなかった。
Stance.4 天下布武


背の高い金髪の男が空から降ってきた。
それだけ聞くと何か壮大な物語の出だしのような印象を受けるが、眼前でそれを見せつけられたアーニャには、まるで飛び降り自殺のようにしか見えなかった。
ガラス片をまき散らしながら着地した男がそのまま動くことを止めていたら、本当にただの自殺と判断したかも知れない。実際は、ビル2階分の高さをものともせず鮮やかな着地と、同時に反転まで決めてみせたのだが。

「あなたは・・・・・・」
「待って」

派手な演出で突然登場した青年への誰何の声をアーニャは遮った。不用意な接触が許される状況ではない。
青年の民族衣装風の緩やかな衣装はまるで激戦地を潜り抜けてきた後のように汚れている。それを着る本人にもいくつか生傷が確認できた。
その上、青年はこちらに構いもせずアーニャ達の右手上方、彼が飛び出してきたビルの窓を注視し続けている。明らかに、何かを警戒した仕種だ。
中空に向けて構えられた銃には皇帝直属の騎士であるアーニャから見ても一分の乱れもなく、その完璧さが、余計に彼の待ち構えるものの危うさを増幅していた。

危険。即刻逃げるべき。
判断に要したのは、飛び降りた男が構え直すまでの時間とほぼ同じ、数秒にも満たない僅かな時間だった。猛禽類の鋭さと氷の冷たさを掛け合わせたような青年の静止しきった瞳が、否応なくアーニャの足を急がせる。
一刻も早くこの危険地帯から離脱する。アーニャはそう決断し、決断した端から、振動するうねりのような重低音に動きを止められた。
「え・・・・・・?」
「チ・・・・・・」

とっくの昔に逃げ出せない場所にまで踏み込んでいたのだと、青年が苦々しく漏らした舌打ちが教えてくれた。
窓だ。高さにして8メートル程、アーニャ達が立っている場所から直線距離にして10メートル程の場所に、青年が破壊した窓がある。
人間の通行を許し吹き抜け状態になったそこには、申し訳程度の破片が残っているだけの、見るも無惨な様相を晒している。
地響きは、その四角い区切りの中から聞こえていた。天から轟く地響きという奇妙な現象は、暗雲を食む消化器のようなぽっかりとした暗がりの奥から、間断なく届けられていた。

振動が近づく。次第に大きくなる。窓は廊下の突き当たりに面していたようで、階段の踊り場などに備え付けられたタイプではないらしい。
それならば勢いに任せて飛び出してくることも身体能力が許せば可能だろう。銃があれば尚更だ。もっとも、あの窓はそんなに大きくはないようだから、力を殺さないためには相当な技量が必要だろうけど。
轟音はすぐ近くまできている。そもそも、あのサイズでは大きすぎる人間は通ることができない。

そんな理屈を吹き飛ばすように、そいつは『壁』をぶち抜いて現れた。

「ぶぅわははははははっ!!小賢しい雑魚よ、この我から逃げきれると思うてか!」

壁。壁である。鉄筋の通った壁は、当然ながら窓が埋められなかった壁面部分を補うために存在している。優れた耐震、耐圧を目指して行き着いたその形は、それこそKMFでも持ち出さない限り、生半可な力で破れるものではない。
それをダンボールの空箱を突き崩すように軽々と破砕した男は、馬に跨っていた。白兜を被っていた。さっきの青年よりは、かなり年輩のようだった。

吹き飛んだ外壁がサイコロステーキのようにくるくると宙を舞う中、アーニャには全身鎧甲の男が持つ銃が、こちらを狙っていないことを確認することしかできなかった。
「貴方がた、あぁ!」

アーニャが反射でさえない本能的な思考でリリーナの手を引いていなければ、彼女の上半身は今頃肉塊となって消えていただろう。
アーニャ達を挟撃する形で向かいあった男達は、間の少女のことなどまるで見えていないかのように、コンマのためらいも持たず引き金を引いたのだ。

「アーニャ、離しなさい!彼らを止めるのです!」
「どっちも無理。絶対」

抵抗するリリーナを引きずりながら、排水処理用の側溝に転がり込む。落ちる寸前足下を鋭い音が抉ったのには、さすがに冷えるものがあった。
登場するや否や銃撃戦を始めた二人の闖入者に対し、命を失わずに済んだのは訓練の成果でもアーニャの素質でもなく、ひとえに幸運が勝っていたからだと思う。
隠れる場所のない住宅地で遭遇していたら、流れ弾になす術もなくやられていただろう。

『ふはははははっ!!踊れ、踊れぃ!!』

「守られてばかりですね、私は・・・・・・」

多少排水の湿り気が残る側溝の下で、アーニャに組伏せられる形となったリリーナが呟いた。
さすがに耳をつんざく弾雨の中に飛び込む蛮勇は持ち合わせていないのか、態度も幾分しおらしいものに変わっている。
彼女も武器は持っていたはずだが、それを使う姿は想像もできなかった。
口調には悔恨の念が強く含まれていた。勝手に想像すると、彼女が国を明け渡したときも似たような状況だったのだろう。
繰り返される歴史、無力が暴力に勝てる道理はない。頭一つ上では、音速を越えた凶器が飛び交っている。
戦いは軍馬の男が理不尽な力に物を言わせているようだ。青年は負傷こそしないものの、決定打を撃てず防戦に徹している。

『無様な姿よォ!百鬼眷属、悉く我が背にありぃ!』

「それが、王女様の仕事」
「私はそんなものを望んでなどいません」
「現実はリリーナ様も分かってるはず」
「だからこそです。私に志を曲げろと仰るの?」
「そこまでは言わない」
「でしたら、何と?」
「分からない」
「では・・・・・・」

「でも、今大事なのは一つだけ」
「え?」

「とりあえず、生きる。それが先決」

そのときのリリーナの表情を、アーニャはカシャリという音と共に写真に収めた。フラッシュを気にする必要はもうなかった。
アーニャの横で、リリーナがクスリと笑みをこぼす。
アーニャとしては「何でもいいからさっさと逃げよう」以上の意味で言ったつもりはなかったのだが、彼女はまた別の受け止め方をしたらしい。
すぐ側では、奇妙な男二人が近づいたり離れたりしながら、相も変わらず戦い続けていた。

「確かに、喧嘩している場合ではありませんでしたわね。助けてもらったことには感謝しています。
 ありがとう、アーニャ」
「大したことはしてない」

側溝でうつ伏せの姿勢を取る二人からは見えていないが、このとき、二人の頭上を見下ろすようにそびえ立つコンクリート塀は、襲いくる戦闘の余波に着実にダメージを積み重ねていた。
凶乱に用いられている道具は方や拳銃、方や技術の粋を集めた最先端のアサルトライフルである。流れ弾の一つ一つが致命傷となり、セメントの塊に過ぎない土塀に次々と綻びが生まれ、やがて耐久の限界を超える。
そうして朽ち果てた一抱え分程の大きさの残骸が、野晒しにされた少女の後頭部めがけて、音も泣く落下を始めた。

「アーニャッ!」

声を聞いたときには手遅れだった。リリーナが覆い被さる衝撃の後、耳を割った特大の粉砕音にアーニャの意識は失せて消えた。
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 19:16:59 ID:r2vvoGeq

362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 19:17:57 ID:r2vvoGeq

Stance.5 武力による戦争の根絶


リリーナはそのとき自分が間違いなく死んだと思った。とっさの出来事過ぎてこれまでのことを振り返る余裕もない。
最後に思い浮かべたのが誰の顔だったか理解する間もなく意識は闇に落ちたリリーナが、次に感じたのは頬に降り注ぐパラパラとした細かい砂の感触だった。

「・・・・・・探知機を使っておいて正解だったな」

落ち着いた男性の声にはっと顔を起こす。飛び込んできたのは、モビルスーツを思わせる巨大なシルエットと、それを従えるように立つ少年の姿だった。
見下ろす少年の顔が月明かりにはっきりと曝されたそのとき、リリーナはよく知る少年の名前を呟いたかも知れない。
巨体が持っている特大の槍が自分達を寸前で救ってくれたのだと、何となく理解していた。
少年と意志疎通しているらしい巨体は、よく見るとモビルスーツ程大きくはなかった。

「お前達はそこで隠れていろ。こいつらは俺達が叩く」

アーニャも意識を取り戻したのか、支えていた体に力が戻る。
気づけば、痛いくらい鳴り続けていた銃声はぴたりと止んでいた。

「何・・・・・・?分かった、そいつはホンダムに任せる。俺は奴を倒す」

軍場に跨った禍々しい雰囲気の男も、ひどく冷たい印象を受ける青年も、今は戦いの手を止めて、てきぱきと指示を出す少年を注視している。
逃げるしか手を知らなかったリリーナと違い、この二人は実際に戦いを止めてみせた。
アーニャの言った通りだ。いや、アーニャに言われる前から知っていた。これまで何人にも言われた通り、戦場で力を持たない者はただ駆逐されるだけだ。
理屈は分かっている。サンクキングダムも完全な武装放棄はついに成し得なかった。
戦いを止めるのはいつだって別の力だ。
そして、その力が新たな戦いの幕開けになる。

「刹那・F・セイエイ、ホンダム・・・・・・目標を駆逐するッ!」

得も言われぬ悲しみが、リリーナの体を引き裂くように襲った。
【E-3/工業地帯/1日目/早朝】

【刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00】
[状態]:健康、イノベイターとして半覚醒
[服装]:私服
[装備]:ワルサーP5(装弾数9、予備弾丸45発)@機動戦士ガンダム00
[道具]:基本支給品一式×2、GN首輪探知機@オリジナル、ランダム支給品0〜1(確認済)
[思考]
基本:世界の歪みを断ち切る。ダブルオーガンダムを奪還し島から脱出。
0:目の前の男(レイ)を無力化する
1:工業地帯→宇宙開発局→都市部 の順に移動し、ガンダムを捜索。
2:専守防衛。知り合い、無力な民間人がいれば保護する。
3:サーシェス、グラハム、トレーズ、信長、光秀を警戒。政宗は保留。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン第23話「命の華」から。
※帝愛グループをイノベイターと関わりのある組織、あるいはイオリア計画の遂行者ではないかと疑っています。
※脳量子波により本多忠勝の意思を理解できます。ただし刹那から送信はできません。
 脳量子波の受信範囲は広くても声の届く範囲ほどです。
 脳量子波は忠勝が「考えたこと」だけが受信されます。本人が望まないことは伝わりません(忠勝の意識レベルが低下している時を除く)。

【本多忠勝@戦国BASARA】
[状態]:疲労(小)、胸部装甲破損(鋼板などにより応急修理済み)
[服装]:全身武者鎧
[装備]:対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:デイパック
[思考]
基本:徳川家康(参加者にはいない)の遺志を継ぎ戦国最強の名に恥じぬ戦いをする。
0:信長を討つ。
1:戦いに乗った者、主催者グループを打倒する。
2:刹那に伴い行動する。真田幸村と合流したい。
3:バーサーカーとはいずれ決着をつけたい?
[備考]
※参戦時期は第12話で安土城へと向かっている途中。
 尚、後述の飛行機能以外は主催者の力で修復された模様。
※バックパック内の装備は没収されているため、原作ゲームにおける攻撃形態、防御形態、援護形態使用不可。
 他、ゲーム版での固有技、バサラ技が使えるかはお任せ。
※主催者側から飛行機能に制限が課せられています。短時間低空飛行には問題ありません。
【レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[状態]:疲労(少)
[服装]:武士のような民族衣装(所々破損)
[装備]:ベレッタM1934(2/8)、平バール@現実
[道具]:基本支給品一式×2、デイパック、ドラグノフ@現実(9/10)、ドラグノフの弾丸(20発)、9mmショート弾(84発)ブラッドチップ・3ヶ@空の境界 、その他不明0〜2個(玄霧皐月に支給されたもの)。
[思考]
基本:カギ爪の男を八つ裂きにする。
0:状況に対処
1:基本は動くもの全て排除。
2:だが、利用できるものは利用する。
3:ヴァンは出会えば殺す。だが利用できるなら利用も……。
4:時間があれば日が沈む前に円形闘技場に寄る。
[備考]
※参戦時期は第8話〜第12話のどこかです。

【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:疲労(小)
[服装]:鎧
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、おもちゃの兵隊(15/30)@とある禁書の魔術目録、伊達軍の馬(負傷)@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン96本(合計100本×各30発)
[思考]
基本:皆殺し
1:参加者が集まるだろう町へ向かう
2:目につく人間を殺す
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 19:20:24 ID:NMQNJAlr
誤字報告
>>323
>主催側にはかのイオニア・シュレンベルグのような超天才が
イオニア・シュレンベルグ→イオリア・シュヘンベルグ
【リリーナ・ドーリアン@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:私服 (排水の汚れ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ボールペン型の銃(1/1)、9oピストル弾×5、AK-47(30/30)AK-47の予備マガジン×5(7.62mm弾)
[思考]
基本:完全平和主義の理念を貫き通す。
0:この人達は……
1:ヒイロとミリアルド(ゼクス)を探したい。
備考]
※参戦時期は36話、王国(サンクキングダム)崩壊から38話、女王リリーナ誕生誕生までの間。


【アーニャ・アールストレイム@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康、記憶が途切れることへの不安
[服装]:ラウンズの正装 (排水の汚れ)
[装備]:ベレッタM92(15/15)、アーニャの携帯@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ベレッタの予備マガジン(4/4)
[思考]
基本:主催者に反抗する
0:状況に対処
1:まずはスザクを捜す
2:リリーナの言葉に少しの興味と少しの警戒

※マリアンヌの思考
基本:C.C.と合流したい

[備考]
※少なくとも21話より以前からの参戦です
※マリアンヌはCの世界を通じての交信はできません
 またマリアンヌの意識が表層に出ている間中、軽い頭痛が発生しているようです
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 19:32:47 ID:NMQNJAlr
誤字報告
>>345
>刹那は忠勝の軌道力を武器に
軌道力→機動力
◆10fcvoEbko:2009/11/10(火) 18:54:17 ID:4jemLANM
以上で投下終了です。本スレでは支援ありがとうございました。
お手数ですがどなたか代理投下をお願いします

信長とレイの戦いに巻き込まれた二人、その戦いで傷つきあわやという場面で刹那とホンダムが武装介入
そして戦いは第二ラウンドで切りか。迫力ある展開でした
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 20:08:55 ID:4mmd1MMF
投下乙です
魔王を前にしても一切表情の変わらないレイにーさんに痺れつつ、
銃撃戦→巻き込まれる少女二人→目標を駆逐するッ!の流れが自然に頭に入って興奮しました。
ホンダムは因縁の魔王とか……近くにいる奴らが全員巻き込まれて死ぬぞww
371 ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 22:59:08 ID:TseYZF6e
憂、安藤投下します。
372じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 22:59:49 ID:TseYZF6e



  この手はなんの為についている…?

  人生で何かを築いた者にとっては

  それを放さない為…守る為にある…

  だが持たざる者はその手で

  掴みに行かなきゃダメなんだ!



           『箴言』遠藤勇次



 ◆ ◆ ◆



 ハァッ、ハァッ、ハァッ、と、荒い息遣いが響く。
 場所はD-6の東、線路脇の住宅街。
 東に綺麗な砂浜を有する海、西には緑茂る小高い山々。
 その間に作られたその場所は、まるで何処かのリゾート地のように綺麗な町並みが広がっていた。
 白い綺麗な家々が立ち並び、誇らしげに美しい景観を作り出したその町並みは、
 殺し合いが行われているなど気にも留めてないかのように優雅な雰囲気を醸し出している。
 俗に言う高級住宅街と呼ばれる場所だ。

 そんな場所で荒い息遣いを響かせているのは、幾分その場所に不釣合いともいえる肥えた体型の男。
 眼鏡を曇らせ、全身から汗を染み出させ、見る者が見れば思わず顔を背けたくなる程醜い姿。
 美観を損ねるのも構わずに、そんな姿を男は高級住宅街のど真ん中で晒していた。

 敗者、弱者、負け犬、持たざる者、クズ……。
 呼び名は何でもいい。
 その美しい景観を損なわすその男の姿は一見してまさに底辺そのもの。
 それが、勝者、強者、持っている者、築いた者、金持ち等の勝ち組に属する者から見た場合の本音だ。
 自分たちの作り上たものを土足で荒らし、また、そのことに一切気づかない。
 貧乏人は金持ちの本当の気持ちを知らない。
 金を持ってるから大抵のことは笑って許す?
 冗談じゃない。
 景観とはそれだけで一つの芸術品。
 たかが景観、と言って、何も知らず貧乏人が立ち入っていい場所ではないのだ。
 その場所で、その空間で、その世界で、金持ちだけが綺麗な色を添えることが出来る世界と言うものが有るのだ。
 貧乏人はもっと周りに見て考えるべきだ。
 自分たちが立っているその場所が、いったいどれ程の金を投じられて作られているのかを。
 クズ共はもっと配慮するべきだ。
 自分がここに立っていい存在なのかどうかを。
 たった一つの異物が、目の前に広がる景観を壊し、頭と心で作り上げた美しいイメージを陵辱する事もある。

 さぁ、そこで醜い姿を晒す豚よ、美しい景観を壊すな!即刻立ち去れ!
 でなければ、我らの力を持って貴様を永遠の地獄に叩き落すぞ!
 さっさと失せろ、クズ!
373じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:00:32 ID:TseYZF6e



 ……と、そんな事を言った所で、今そのクズと呼ばれた男が荒い呼吸をしている場所は人っ子一人いない無人。
 金持ちだの貧乏人だの一切関係ない、誰がどこで息をしようと許される殺し合いの場だ。
 高級住宅街?
 そんなもの、今はただのゴーストタウンだ。
 美しい景観?
 見て悦に浸る金持ちなどどこにもいやしないじゃないか。
 いるのは、ただ、絶望を跳ね除けようと身を粉にして駆けずり回る勇敢な男だけ……。
 自身の危険も省みず、武器も持たず、声を上げ、同士を集める為走る。
 敗者でも弱者でも負け犬でもない、ただ純粋に人の為に動く立派な男の姿だ。


 そんな男を、いったい誰が貧乏人と罵り、嘲笑えると言うのだろう……。



 ◆ ◆ ◆



  人生の岐路で、いつもその判断を

  他人に委ね、

  流されて生きてきた…

  救われない…

  こんなバカ…



           『箴言』伊藤開司


 ◆ ◆ ◆


374じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:01:28 ID:TseYZF6e

 高校生男女の二人組みと別れた後、安藤はとりあえずの目的地をギャンブル船へと定め、マウンテンバイクを全速力で走らせていた。
 途中人を見つければ話しかけ、協力を呼びかける。
 危険な人物に会う可能性もあったが、話せばきっと通じる。
 そう思い、僅かな恐怖を押し殺して全力でペダルを漕ぐ安藤。
 その瞳は、勇気が満ち、輝きが溢れている。
 もっと速く、もっと沢山……。
 一分一秒もったいない。
 自分に出来ることは全部やる!
 安藤の頭にあるのは、カギ爪の男の意思をついで、巻き込まれたほかの参加者と共にこのゲームからの脱出を目指すこと。
 そんな崇高な理想を掲げ、安藤は噴出す汗も無視して走っているのだった。

 だが、人間はいきなりそんな無茶が出来るようには作られていない。

 頭でどう思おうと、安藤の体力には当然のように限界が訪れる。
 呼吸が荒くなり、汗が噴出し、足が重くなり、筋肉が硬くなり、ついには、力をこめていた腕まで微かな痙攣を訴えてくる。
 前へ進みたいと言う思いだけが残り、気力だけが費やされる。
 そして、当然……。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 ペダルを力強く踏み込んでいた両の足が異常警報のように悲鳴を上げた。
 筋肉が痙攣し、少し動くだけでも痛みとダルさが肉体と精神を襲う。
 尋常じゃない汗に混じり、目鼻口等の穴という穴からも、いろんな液体を溢れさせている。
 言うまでもない、単純に肉体の限界が訪れたのだ。

「……ハァ、ハァ、クソっ!」

 自転車を止め、うなだれる様にハンドルに全体重を預ける。
 そして、デイパックから水の入ったペットボトルを取り出し、一気にがぶ飲み。
 500mlの水があっという間に安藤の口の中へと消えていく。
 欲望の赴くままに……。

「ヨシッ!」

 水を飲み干し、再び奮い立とうとする安藤。
 だが、意思に反して体は言うことを聞かない。
 足は動かず、体も未だにハンドルに預けたままだ。

『クエ……?』

 小さな同行者も心配げ安藤の顔を見上げる。
 首からぶら下げたペンダント、の様に見える亀のカメオ。
 そんな同行者のつぶらな瞳にも励まされるが、やはり体は動かない。

「大丈夫、大丈夫……」

 カメオの眼差しに無理やり笑顔で答えながら、呟くように漏らす。
 カメオに言っているのか自分に言い聞かせているのか、おそらく両方なのだろう。
 笑顔と共に力を入れようとするが……やはり、動かない。動く気配がない。
 気持ちだけが空回り。
 どんなに前に進みたくても、体は正直でしかなかった。
375じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:02:09 ID:TseYZF6e





 使命感と言うのは、容易く自身を見誤らせる。
 きっかけは当然、カギ爪の男との出会い。
 カギ爪の男の優しさに触れ、自身の愚かさを知り、変革を求めるように意思を継いだ。
 それはとても崇高な行いだろう。
 今までのろくでもない人生を反省し、今度は前向きに人の為に生きようとしている。
 確かに安藤は変わった。変わったと言える。
 だが、その変革全てが安藤一人の意思でなしえたことではない。
 安藤は気づいていない。
 自分の意思で変わったと思い込んでいる事こそ、安藤にとっての誤り。
 いや、本当は変わっていないと言うことに気づいていない事こそが最大の誤りだった。

 安藤はただ、自分でも気づかぬうちに自分を誤魔化しているだけに過ぎない。
 カギ爪の男の遺志を継ぎ、仲間を集めてゲームの脱出という、本来なら絶対考えないような崇高な目標に酔いしれ、
 自分にしか出来ないことだと自信に言い聞かせているだけの、ただの道化。
 それはつまり、結局は流されているだけという事。
 安藤はそのことに、まだ気づかない……。





 肉体正直だ。
 どんなに精神を誤魔化そうと、肉体だけは何時もの安藤そのものなのだ。
 肥満体系で明らかに運動が得意とはいえない安藤にとって、その極限を越えた疲労は最後の警告だ。

 自分はそんな器じゃない。
 誰かを助ける前に自分を助けろ。
 ほら、体も苦しんでる。
 無理するな。
 もう十分がんばったって

 肉体の悲鳴が言葉となり、酸素が十分に行き渡っていない朦朧とした頭へと幻聴のように響く。
 ここまで追い詰められれば大抵の人間は根を上げて楽な方へと逃げるだろう。
 事実、安藤も当たり前のように欲望に身を任せたいと言う考えが頭を擡げ始めた。

 何でこんな疲れてまで……。
 もう十分だよな……。
 あ、そうだ、放送まで休もう。
 そうだ、それがいい。
 まだまだ先は長いんだ、少しぐらい休んだって……。

 本来であれば、その判断は正しい。
 一流のアスリートでも疲れを押して無理をしては体を壊しかねない。
 安藤の考えは当然と言える。
 だが、ここでどういうわけか安藤の頭の中に一人の男の姿が浮かび上がる。
376じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:03:01 ID:TseYZF6e



――いや、ダメだ!



 カギ爪の男。
 その姿が安藤に楽な道を歩かせない。

 ……これは一種の呪いなのかもしれない。

 安藤にとって、カギ爪の男は出会ったことのないタイプ。
 いや、頭に思い浮かべた事すらない人間だろう。
 そのあまりのインパクトと、自分自身の醜さ、愚かさと向き合ったことで、
 安藤は今現在、自分自身の醜さ愚かさに蓋をして、正しい事のみを求めて進んでいる。
 その行為は、言うなれば麻薬のようなもの……。
 時間を掛けるにつれ未だかつて体験した事がないような高揚感と、足を一歩踏み出すだけで得られる充足感と達成感に酔いしれる。
 安藤は陶酔しているのだ。
 良い事をしている(と思い込んでいる)今の自分自身に……。
 正しい事をしていると言う過程で得られる充足感に……。
 ゆえに、気づけない。
 蕩ける様な甘美な感覚に脳を支配され、一切の自身の判断がなくなったその頭では、自分がどれだけ愚かなことをしているのかをまったく持って気づけないのだ。



 そして、そんな状態だからこそ、自分が今、人生の岐路に立たされていることに気づかない……。



 ◆ ◆ ◆



  疑い続けること…

  不安であり続けることが

  ギャンブルで生き残るために

  もっとも必要な心構えなのに…



           『箴言』利根川幸雄




 ◆ ◆ ◆
377じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:03:43 ID:TseYZF6e



 意を決して気力だけで再びマウンテンバイクを走らせようとしたその時、遠くの街灯の下に小さな人影が揺らめいたのを安藤は見逃さなかった。
 一瞬驚きを覚え、踏み出そうとした足を止める。
 だが、すぐに先ほどまでの考えを呼び覚まし、とりあえずどんな相手だろうと接触し、協力を呼びかけようと考える。
 それ以外の考えはない。いや、考えるだけの思考力がもう無いと言う方が正しいだろう。
 未だ安藤が自身に酔っている証拠だ。
 誰も止めない。止める人間がいない。
 安藤は迷いなく、寧ろ溜まっていた疲労を無理やり考えないようにしてペダルを踏み出した。
 その行動がどういう結果を少しも考えずに……。



 しばらく進むと、人影の輪郭がはっきり見えてきた。
 年は高校生ぐらいだろうか?幾分若く見える女の子が街灯の下に立っていた。
 怯えた表情、震えた体、明らかに現在の状況に恐怖している、肉体的にも精神的にも弱い存在だと一見して解る。
 その姿を確認し、安藤は瞬時に少女をこれ以上怯えさせないようにしなければと考えた。

「お、落ち着いて聞いてくれ!俺は安藤守!
 殺し合いには乗っていない!」

 マウンテンバイクを少女から5メートルほど離れたところで止め、デイパックも傍に放る。
 勿論両手には何も持っていない。
 それが解るようにゆっくりと、ゆっくりと少女に近づいていった。

「……こ、こないでください!」

 当然の反応。
 安藤もその程度は覚悟していた為、落ち着いて次の言葉を口にする。

「怯えるのも解るが、俺はあんたに何もしない。
 俺はこのゲームを止めようと思っている。
 頼む、君も力を貸してくれ!」

 そう言いながら、安藤は少女の手前で膝を付き、一切危害を加えないことをアピールするかのように、両手をも付く。
 土下座。
 いや、頭を下げたわけじゃないので正確な土下座とは違うが、大の大人が、危害を加えないと言うただそれだけの為に膝を突くのは、常識では考えられない光景だろう。
 それは安藤にとっての必死のアピール。
 自分は無害だ、信じてくれ、という、安藤なりの誠意の見せ方だった。
378じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:04:24 ID:TseYZF6e

「……」

 少女にとってもそれは衝撃の光景だっただろう。
 男が、それも大人の人が、ただ自分を安心させたいが為に、膝まで付いて自身に全てを投げ出している。
 そんな誠意の示し方を、若い少女は話に聞いたことはあっても見たことがない。
 少女の常識を打ち砕く力が、安藤の土下座には確かにあったのだ。

「……本当に……、何もしませんか?」

 少女の震えた声が細やかな空気に乗って安藤の耳に届く。
 その声を受け、真剣な眼差しのまま、安藤は力強く頷いた。

「もちろん!俺は君を救いたいだけなんだ!」

 その瞬間、安藤の中で沸々と自身に湧き上がる得体の知れない気配に気づく。
 それは言うまでもなく、一人の怯える少女を落ち着かせることができたと言う達成感。
 安藤は再び得も言われん甘美な快感を脳で感じ取り、いっそう気分を高揚させていく。
 こうなればもう止まらない。
 自身を物語の主人公に当てはめ、さながらヒーローのように少女を救い出す光景を幻視するものそう遠くない事だろう。
 安藤は完全に自身の行いで世界が救われるんだと思い込み、酔いしれていた……。



 ◆ ◆ ◆



  快感は…

  本当のめくるめく快感は…

  常軌を逸するからこそ

  辿り着ける…



           『箴言』兵藤和尊



 ◆ ◆ ◆


379じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:05:14 ID:TseYZF6e

 少女は平沢憂と名乗った。
 殺し合いには乗っていないと言い、涙を流しながら嗚咽交じりで必死にこれまでの恐怖を吐露し続ける。
 その姿を見て、安藤は安心させようと、必死に勇気付けようと声を掛けた。
 それこそ慣れない行為だ。
 本来の安藤だったら女子高生の泣き顔にあたふたして声を掛けるどころじゃなかっただろう。
 だが、それも自身に酔いしれている安藤ならば可能。
 さすがに語彙の貧困さは目を瞑るしかないが、それでも着実に少女の泣き顔を晴らしていく事につながっている。

「とりあえず、俺は仲間を集めながらギャンブル船に向かおうと思っている。
 一人になるのが怖いんなら、どうだろう、一緒に来ないか?」

 安藤に出来る精一杯の笑顔を作り、少女を安心させようとする。
 幾分かは落ち着いたのだろう、少女も安藤に少しだけ心を許したのか、少し躊躇った後、涙をぬぐって答えた。

「……はい、よろしくお願いします……」

 その声に力は無い。
 か細く、消え入りそうな程、少女の心をそのまま表す弱々しいものだ。
 枯れる事のない涙、震える体、少女の絶望が深いことを如実に物語る。

 安藤がその姿を見て改めて決意を固めるのは当然の成り行き。

 もう、この少女を泣かせてはいけない。
 苦しませちゃいけない。
 俺が、少女を守るんだ。

 膨れ上がった高揚感は、容易く状況を、自身を見誤らせる。
 安藤がこの時点で、自身を物語の主人公に据えているのは考えるまでもないことだろう……。




380じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:05:59 ID:TseYZF6e

「じゃ、急ぐから、後ろに乗って」

 マウンテンバイクに跨り、少女に後ろに乗るように手で指示を出す。

「落ちないようにしっかり捕まってくれよ」
「……はい」

 少女のか細い声が背中から聞こえた。
 それを耳に入れ、安藤はハンドルをしっかりと握りこむ。
 その力強さが、安藤の機嫌の良さを物語っていた。
 少女を背中に乗せると言うことは、少女を背中に隠し、一人戦うナイトのような気分。
 安藤の頭の中には、もう危機感や、猜疑心などの言葉はない。
 あるのは生まれたての単純な正義感のみ。
 ゆえに、続いて響いた軽い衝撃の正体に一切思考が回らなかった……。


 トンっ……。


 背中を叩く感触が最初に走る。
 その衝撃を受け、マウンテンバイクの後輪に跨る為に支えをとして手を置いたのだろうと安藤はごく自然に考えた。
 だが、続いて響いてきた、ゴリゴリ、だの、ブチブチだのという、耳を疑うような轟音を脳に直接叩き込まれたことで何かがおかしいと気づいた。


――何だ……これ……


 『クエーッ』と言う小さな同行者のささやかな警告が響く。
 だが、それはもう既に手遅れ……。


 ゴフッ!


 喉から何かがこみ上げてきた。
 口で留める事も出来ず、噴出してしまう。
 それは、暗くてよく解らないが、何やら赤い液体のように見えた。


――血……?血っ!?


 理由がわからない。
 なぜ自分が血を口から吐き出しているのかがわからない。
 解らないまま、安藤の意識は強制的に断ち切れた。
381じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:06:41 ID:TseYZF6e





 後に残ったのは、己に酔いしれ、また酔っている事にも気づかないクズの残りカス。


 快感を追い求め続けた成れの果て。


 それが、自身の器と言うものを考えもせず、狂気に溺れた男の最後だった……。








【安藤守@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor 死亡】



 ◆ ◆ ◆



○月×日 04:32
アララギさんのことは反省しなきゃ。
女の子のわたしが男の人とまともに戦っても勝てる確率が低いよね。
だから、今度はもっと慎重にやろう。
そう思って歩いてたら、アンドウさんって人に出会った。
アンドウさんはなんていうか、アララギさんいじょうに優しい人だ。
これはいいチャンス。
さっきの家で手に入れた果物ナイフを隠して、怯えた女の子を演じてみる。
そしたらこれが予想以上に効果的で、アッサリと私に背を向けてくれた。
気づかれないように首の後ろにナイフを突き立て、めいっぱい捻る。
それでオシマイ
ゴメンね、アンドウさん。





 それはジャンケンみたいなもの。
 あの人は後出しならぬ先出し。
 そして、私は……。


382じゃんけん! ◆70O/VwYdqM :2009/11/10(火) 23:07:39 ID:TseYZF6e

 殺し合いを止めたいってのはとてもすばらしいことだと思う。
 けど、それはぜんぜん現実的じゃないよ……。
 ただ言葉にしてるだけ。
 中身なんて無い。
 少なくとも、私には届かない。
 多分だけど、あの人は普段はそんな事少しも言う人じゃないんじゃないかな?
 だって……、表情も態度も真剣なのに、それを相手に伝えようとする冷静さが全然見えなかったんだもん。
 少しも私を疑わなかった事が良い証拠……。
 あの人は殺し合いを壊すという事に酔っていただけなんじゃないか?
 何の力も無い自分のことを考えないようにするためにね。
 だから、私みたいなただの高校生なんかに……。



 こういう場所だから、考えなきゃいけない。
 後出しが卑怯なんじゃない。
 先に手の内を見せてるほうが悪いだけ。
 その事をもっと真剣に……。



「……ギャンブル船か……、どうしよっかな?」



【D-6/線路横の住宅街/一日目/早朝】

【平沢憂@けいおん!】
[状態]:頭にたんこぶ 疲労(中)
[服装]:制服
[装備]:果物ナイフ@現実(現地調達)
[道具]:基本支給品一式、日記(羽ペン付き)@現実、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュR2、
    ギミックヨーヨー@ガン×ソード、モデルガン@現実、手紙×3、遺書、カギ爪@ガン×ソード、
    包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor、確認済み支給品0〜3
[思考]
基本:自分の幸せ(唯)を維持するためにみんなを殺す。
1:日記を書いて逃げ道を消す。
2:ギャンブル船か……、どうしよっかな。
[備考]
※民家で果物ナイフを手に入れました。
※安藤のこれまでの経緯と人物情報を得ました。
※安藤の荷物から基本支給品以外を回収しました。
 今後の方針とカメオ@ガン×ソード、阿良々木暦のMTB@化物語をどうするかは次の方にお任せします。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 23:18:40 ID:wQcgErBI
……安藤に何か恨みでもあるのか?
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 23:24:52 ID:qfhIf9Hm
投下乙
安藤はクズのまま逝ったか…憂はコスト稼ぐし、やっぱ強いな…
…でも安藤、俺はお前をクズとは言わん…少なくとも、某ボーカロイドなんかに比べるとお前が人一倍上だよ…
だから、冥福を祈る。
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 23:25:29 ID:PG0XS71F
避難所見たら終了宣言でさるったみたいだね
改めて投下乙!
安藤はここで逝っちまったか…
折角心を入れ換えて頑張ろうとしてたのに…南無
 
つーか憂が怖すぎるw
人が集まりつつあるギャンブル船に向かったら…ゴクッ
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 23:57:04 ID:LCQlxQF/
うーむ安藤・・・ここまでかあ
惜しいなあ、実に惜しい
カギ爪フラグもこれでおじゃんか・・・

冥福を祈ります
387 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/10(火) 23:57:13 ID:0i+VFW3c
前回まよい、カイジを執筆した者です。
上記キャラの目的地を勘違いしていたため、>126部分を以下に修正します。



「つきましたね」

わたしはカイジさんの腕を叩いて、前方を指差しました。カイジさんは一拍遅れてその先を見ます。

波に踊る、威圧感を覚えるほどに巨大な船。
空を包む暗闇に飲み込まれず、煌びやかな光を着飾り異彩を放つ様が逆に不気味さを醸し出しています。


さて、カイジさん。
こういうおかしなこと…、いえ。正しくないですね。ちっともおかしくないこと。現実的なこと。日常的なこと。
あなたが見ていたのは、狭い狭い鳥かごの中の風景だけで、もっと周りをよく見たら、もっともっと多くの『日常的なこと』が見えてくるんです。
と言ったって、『魔法』とやらが『日常的なこと』の類であるとは断言できません。
ですが、もしもこの先に待ち受けるものが、主催者さんが言った『魔法』というものの真実があなたの望んでいるものと違っても。

「手間かけないでくださいよね、いい歳して」
「なんの話だっ…?」

【B-6/ギャンブル船前/1日目/黎明】
388 ◆YLoNiOIZ66 :2009/11/11(水) 00:00:41 ID:LecjEskX
また、wikiのほうの更新は明日の夜以降となりますのてご了承ください
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:33:00 ID:b/g4jt49
えー…安藤ここで殺されちゃったの…?てっきり某ロワの自称トキみたく活躍してくれると思ってたのに…がっかりだ
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:39:59 ID:XneL35QM
最後の最後にクズな所を見せて欲しかった……。
フラグも多いキャラだったし。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:40:52 ID:qPyJjL2J
そういや上条さんの熱膨張ってあり?
アニメの範囲外は流石に不味いかな?
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:47:08 ID:C9zkLEKv
>>391
熱膨張自体が議論スレに話題になりそうなくらいスレスレなネタじゃねーかwwwwwwwwww

拳銃は熱い紅茶に弱い
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 01:25:22 ID:b0vW7MiU
ハッタリとしてぐらいならなんとか……
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 01:50:30 ID:C9zkLEKv
*禁書のそんなことはなかったぜ!

・スプリンクラーを「手 動」で発動させた→「あはは、君って戦いの天才だね!(キリ」
・ステイルにとってインデックスは何年も連れ添った最愛の人かと思ったが踏みつけたり一年しか付き合いがなかったりでそんなことなかったぜ!
・神裂にとって(ry
・インデックスの完全記憶能力でインデックスが危ない!→そんなことなかったぜ!ググレば秒殺だぜ!
・錬金術師の能力でインデックスが危ない!→そんなことなかったぜ!ヘタレだったぜ!
・上条の腕が千切れ飛んでも2日後にはそんなことなかったぜ!
・10億V直撃で上条が危ない!→そんなことなかったぜ!そのまま喧嘩売りに行ったぜ!
・粉塵爆発で上条が危ない!→そんなことなかったぜ!コンテナ吹っ飛んでも上条無傷だぜ!
・最強の一方通行の能力で上条が危ない!→そんなことなかったぜ!またヘタレだったぜ!
・天使が降ってきて世界が危ない!→そんなことなかったぜ!体が入れ替わっても無事故でなんてことなかったぜ!
・土御門の拳で上条が危ない!→そんなことあったぜ!
・土御門の魔術で土御門危ない!→全くもってそんなことなかったぜ!
・土御門命がけで世界救ったぜ!→「また借りができましたね、上条当麻(キリ」
・一方通行は血を逆流させて殺す&指食う殺人鬼だぜ!→そんなことやりたくなかったんだぜ!
・金星の光を反射してなんでも分解するぜ!→レベル4のアストロンは分解できなかったぜ!
・高い技術を持つ暗殺者→光線ナイフが頼みのヘタレだったぜ!
・記憶を失い人格がウィルスに汚染されても生体電流をベクトル変換すれば、全部元通りだぜ! (New!!)
・ちなみに記憶なんて失ってないんだぜ!(New!!)
・女科学者「学校の先生になりたかったから子供を犠牲にするのは許さない!(キリッ」
→でもミサカ虐殺実験やってたぜ!打ち止め見殺しにする気だったぜ! (New!!)

395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 03:38:37 ID:cg9bheLP
>>392
上条さんの説明は的を射てる事自体が少ない
いわば叙述トリックの一種だってことをそろそろ理解した方がいい
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 03:46:32 ID:w9NqWvRR
鎌池はゆで理論の継承者なので正面からツッコむのは野暮というものなのさ
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 03:47:48 ID:w9NqWvRR
そんな俺のIDはリアルリアリティ
感感俺俺
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 05:20:28 ID:i3vofp4A
341 :メロンさんex@ご利用は紳士的に:2009/11/11(水) 04:46:42 0
今年のアニロワはマジで神
咲のカスキャラが悉く虐殺される展開にカタルシスを覚える
書き手の人ありがとう

おいキチガイども一々アニメサロンexに転載してうぜえしきめーんだよ
今すぐやめないとこのスレぶっ潰すぞ
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 05:21:51 ID:i3vofp4A
今度アニメ最萌トーナメントに話題持ち込んだり転載したら売りスレみたいに追放してやるからな
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 08:29:10 ID:H1FpM3wh
安藤……安藤……安藤よぉ……
どうして……どうしてっ! ひどい……ひどすぎるっ!
こんな話があるかっ! 命からがらやっとの思いで生まれ変わったのに……
これからなのにっ……
 
ナイフ……あの果物ナイフがもぎ取ってしまった……
せっかく手にした熱血対主催主人公フラグを……
安藤……安藤……
クソっ! クソっ! くそぉ……
 
 
 
あ、SS自体はスゲー面白かったです
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 10:42:27 ID:C0foV+No
まぁ、歪む前、きれいなままで死ねたっていうのも一つの作者愛なのかもしれないな

…あらららぎさんが迂闊すぎる、って言いたいな
誘導してしまったのは安藤だが、
放置したのは奴だし
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 11:21:42 ID:xpQdxzNe
正に「あーらら……木」だな
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 12:22:12 ID:b0vW7MiU
自分の知り合いを呪った見ず知らずの男まで命懸けで助けようとする奴だから仕方ない
しかも一度失敗して誰も救えなかった経験もあるのにだからな
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 15:56:17 ID:w9NqWvRR
805 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:08:19 ID:VYwGbiig
これ以上進むとまた議論が再発されるようなので纏めさせていただきます

結論から言わせていただくと昨夜の段階で議論は終結しました 
今述べられている指摘も擁護も議論の流れで話されつくしたものです
そこで、互いに納得できないまでも折り合いをつけて>>672を正式な修正要望として出したと言うわけです
ここで何を指摘しようが擁護しようが>>672で修正していただくと言う結果で議論は終結しています
 
修正案を読ませていただきましたが、作者氏は修正案を出した意味を理解されていないように思われます
長きに渡る議論の結果、正式な要望として出した修正案を自己の判断で無視され、こうして矛盾点の指摘が来ている以上議論でも出ましたように破棄とさせていただきます
 
もう一度言わせていただきますが、議論は昨夜の段階で終了しています

後は今回予約されたキャラの最予約可能日時についてですが、金土日をフルに使えるとの理由で金曜日の0時00分を提案いたします
異論がないようでしたら破棄となった結果と合わせて本スレに転載しておきます

806 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:16:16 ID:HDBXAA/k
>>805
根本的な部分で異議を申し述べさせていただきます。
破棄を決定するのも、その手順を決めるのも、その裁定を下すのもあなたではありません。
どうかそれをご理解下さい。

807 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:23:53 ID:YM0wBzxE
>>805
その纏めはいくらなんでも強引ではないでしょうか?
今回の修正稿で通しでも構わないという意見は少なからず出ています。
どこを修正すべきかではなく、
修正稿が昨夜の修正要求に対して十分な物であるかどうかで意見が割れているのが現状ではないでしょうか?

議論である以上、双方が修正要求と修正稿を照らし合わせ意見の根拠を提示したうえで
落としどころを見出す方向で調整すべきだと思います。

808 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:23:56 ID:VYwGbiig
>>806
勘違いなされているようですが、私が決めたことではなく全て議論の結果です。
あなたの意見ですとこのまま纏める人もいないままに結論のない議論を続けろと言っているように聞こえます。
破棄を決定するのも、その手順を決めるのも、その裁定も全て議論の結果です。
それを否と断ずるの権利はあなたにはありません。
どうかそれをご理解下さい。
 
これ以降このSSに関する議論はスルーと言うことで
最予約可能日時についての意見をお願いします

809 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:26:40 ID:VYwGbiig
>>807
氏の発言を見ていただければわかりますが、自分の判断で修正要望とは違う形にしたと発言されています
そして、またしても指摘が起こり議論が長引きそうな流れになっています
もう一度言いますが、昨夜の段階で落としどころを見つけ修正要望と出させていただき、それでも指摘が出る・矛盾が出ている場合は破棄と議論で決定しました
 
上にも書いたように、これ以降このSSに関する議論はスルーと言うことで
最予約可能日時についての意見をお願いします

405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 15:56:59 ID:w9NqWvRR
810 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:29:13 ID:aseDBnJs
ここまで長引いたうえに再予約は金曜とか遅すぎるだろ
木曜でいいよ

811 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:30:47 ID:VYwGbiig
>>810
木曜日だと今から時間があまりない事と、仕事などで深夜まで帰れない方の事を考慮して金曜日としました

812 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:33:46 ID:9/uyIH/Y
>>809
了解しました。
予約解禁は金曜0時でいいと思います。
あと八時間後では都合がつかない人が出ると思うので

813 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:35:50 ID:aseDBnJs
>>811
それもそうかな
金曜って事に異論はないだろうし本スレへの連絡よろ

814 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:37:10 ID:HDBXAA/k
>>808
独断を総意であるかのように仰るのは議論に対して誠実な態度とは申し上げかねます。
また修正案をすべて満たさなければ破棄という意見が決定事項であるかのように仰るのもおかしな話かと思います。
ご覧頂ければ分かる通り、今回の修正が妥当であるという意見は決して少数ではありません。
もし、この議論スレに書き込める人間全員を完全に納得させなければならないというお考えをお持ちなのであれば、
それはまったくの筋違いであると申し添えさせていただきます。

815 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:38:57 ID:s.qP4Lzw
どうみても自分の都合良く話を決めたいだけです。
本当にありがとうございました。
それにしても破棄するという結論に持っていけそうで良かったですね。
お疲れ様でした。

816 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:41:34 ID:aseDBnJs
>>814
昨日の議論を追ってみろよ
 
それにこの作者も修正する気はないし修正案を出したところが全く修正されてないだろが
いい加減ごり押しはやめろよな
 
>>815
煽るならもっとうまくやれよ

817 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:44:38 ID:VYwGbiig
>>816
また議論が始まりますので、スルーしてください
 
もう少し待って金曜予約開始への反論がないようでしたら、本スレに連絡しておきます

818 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:47:40 ID:s.qP4Lzw
反論あり。
昨日どうであれ今日それを許容しない意見が少なくなくある以上、それにこだわり続けるのはやはり独断でしかありません。
昨日と今日では新しい修正案が出て状況も変わりました。
新しい意見に意味がないとは思えませんが。
>>817
議論スレに相応しい書き方を出来ない書き込みを自分に都合がいいからと認めるのは如何かと。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 15:58:05 ID:w9NqWvRR
819 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:50:01 ID:TfdUYQtQ
さすがに昼間のこの時間帯に1時間程度で結論を出すのは明らかに性急です
しかもことは強制作品破棄という非常にデリケートな問題です
もう少し時間を置いてするべきです

自分はL5氏の修正案で問題ないと思います

820 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:52:18 ID:yNCzPxF6
>>805
反対させていただきます。
破棄という結論ありきで反論に対し何らまともな解答を返さず独断専行で事を進めるのは
明らかに常識的な態度ではありません。

821 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:54:22 ID:AWOfSYqc
そこまで意見言うのなら鳥出せ、鳥

822 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:54:41 ID:VYwGbiig
さて、金曜の0時に最予約可という意見に反対は無いようなので本スレに連絡しておきます

823 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/11(水) 15:54:59 ID:YM0wBzxE
>>817
だから、それはいくらなんでも強引すぎるのでは?
今回の修正稿で問題ないとしている人たちの意見は無視ですか?

これ以上の修正が必要な状態なのであれば破棄という選択肢を視野に入れざるを得ないとは思います。
が、現状は、これ以上の修正が必要かどうかで意見が割れているのですから
破棄を決定できる段階にはないと思います。



ID:VYwGbiig
↑こいつは自分に賛同する書き込み以外は目に入らない病気なの?
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 15:59:38 ID:hAjN+iBn
まだ決定していないことを決定したかのように書くのは横暴だと思います
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:01:22 ID:hAjN+iBn
おっと、これは失礼しました
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:09:58 ID:wiguzOJl
一行も読んでないけど長いぞ
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:26:56 ID:9h2leWa+
仕方ないから女キャラクターの太ももの話しようぞ

とりあえずキャスター一強でその後美琴とかが続く感じだと思う
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:36:15 ID:b0vW7MiU
俺はモモとか捨て難いと思うけどな
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:55:26 ID:H1FpM3wh
C.C.以外眼中に無し
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 16:58:35 ID:02kg7OZ2
ころもの非常にこどもらしいふとももをなでなでしたい
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 17:19:20 ID:GjdMzXnH
キャスターに膝枕してもらいたい


どうでもいいがなんで腿で枕するのに膝枕なんだ?
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 17:22:16 ID:46llvfxW
かじゅの太ももは筋肉と贅肉が適度なバランスで間に挟まれたら凄い感触だったと思うんだが……バラバラになっちゃった
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 17:24:03 ID:leY4TJdo
唯の黒ストッキングに包まれた太ももに挟まれたい
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 17:24:40 ID:matidJQd
かじゅならバラバラだろうが関係ない
正直かじゅになら掘られたっていい
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 17:44:58 ID:XneL35QM
流石にキモい
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 19:11:03 ID:7jfuCpXR
モモなら散乱したかじゅの肉片に全裸で転がりながら絶頂出来る
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 19:15:20 ID:46llvfxW
それに似た状況はありそうで怖い
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 23:24:41 ID:m49f7BQF
代理投下開始します
422◇mist32RAEs代理投下:2009/11/11(水) 23:26:27 ID:m49f7BQF
海原光貴。
またの名をエツァリ。
とある女子中学生一人のために南米の魔術結社を抜け出し、変装し、学園都市の暗部に入り込んでいる男。
裏切りをうけた魔術結社は、海原を見つければすぐさま粛清にかかるだろう。
そこまでしてその女子中学生を見守る(本人談)とは、まさに命を懸けた大いなるロリコンといえる。
つーか、ある意味ストーキングじゃねーのかにゃー。
今は学校を目指して歩を進める。
黒曜石を探すという名目だが、ブルマやスク水探しに行くの間違いではなかろうか。このロリコンめ。
メイド服があったら是非分けてください海原様。
何ィ? あるわけねえだとォ? 可能性はゼロじゃない限り諦めないのが男ってもんだぜい?
と、突然に彼は歩みを止めた。
そこには破壊され、瓦礫が散らばった線路がある。
それをしばらくじっと見つめていた。

「……」

そいつはつい先刻バーサーカーという名の怪物が過ぎ去った後の、台風のような破壊がもたらした残骸の山だ。
辺り一帯、その怪物が通り過ぎた跡を眺めれば、家は吹き飛び、道路はひび割れ、線路は瓦礫で見えない。
海原は隠れてやり過ごしたおかげでなんとか助かったようだ。
一度見つかってしまえば、それはイコール死あるのみというところだったろう。
そいつは学校のほうへ向かっていった。
目的地は同じ方向だ。
だが海原もさすがにこのまま予定通りに同じく学校へ、という考えは起こさない。
あいつと鉢合わせする危険性を考慮すれば、あるとも限らない黒曜石捜しに向かうのはリスクがでかすぎる。
もうひとつ、東にある学校へさっさと向かうのが得策ってもんだろう。
その考えどおりに向きを変えて歩き始めようとしたところで、なにやら妙なことが起こった。

「学園都市の……作業用ロボット?」

学園都市ではおなじみのドラム缶みたいな形のロボットがどこからともなく一機だけ近づいてきた。
思わず警戒体制をとる海原をスルーして、ロボットは破壊された線路の近くまでやってくると、そこに居座って動かなくなった。

「これは……」

怪訝な顔をしておそるおそるロボットに近づく。
423◇mist32RAEs 代理投下:2009/11/11(水) 23:27:15 ID:m49f7BQF
するとなにやら看板らしきものを、サンドイッチマンのように胴体にぶら下げている。
そこにはこう書かれていた。


『線路の破壊に伴い、D-2からF-3間の列車運行はストップします。
 F-3からD-4間はダイヤの調整のため一時列車をストップし、第一放送後から運行を再開します』


海原はそれを確認すると、大きな溜息をついた。
つまりF-3までは列車は来ない。
東に行くには電車を使ったほうが速いのだが、この区間の線路が破壊されたからにはF-3の駅までは、現状徒歩しかないのだ。
しかしただこうしていても無益だと思い立ったのか、このまま休むことなく今度は東へむかって歩き始める。
歩きながらデイパックから取り出した水やおにぎりをほおばって、一歩一歩強く地を踏みしめて進む。
休むつもりはまったくない様だ。だが当然といえる。
別に焦っているわけじゃない。
海原は御坂美琴や一方通行といった連中の力を知っている。
そしてバーサーカーや本多忠勝などの、そいつらに匹敵する化け物どもの存在もその目で見た。
さらには前述した彼らとまともにぶつかれば跡形も残らず消し飛ぶような、自分や上条当麻のような存在も知っている。
このバトルロワイアルという殺し合いに参加させられたものたちの戦力バランスは、それを鑑みれば無茶苦茶もいいところだ。
今の海原は、御坂美琴の力になるどころか自分の身の安全すらおぼつかないとはっきり理解している。
そう思えばゆっくり休んでいる暇はないと考えるのは当然のことだろう。
しっかしそんな状況下でそれもこれも御坂美琴のためとか、どこまで命を懸けた大いなるロリコンですか、お前は。


「……あなたに言われたくありませんよ、品性が欠けた大いなるシスコン」


なんですとぅ!?
この土御門さんほど品性と自制心に長けたシスコンは他にいませんよ!?
だってほら、血が繋がった妹なんて要るわけないじゃないかってどこぞの現代視覚文化研究会も言ってるし!?
つまり血が繋がらない妹なら近親相姦に入らないから手を出したって全然セーフ(ry


ブツッ ザーッ ザーッ ザーッ




【E-2/線路沿い/一日目/早朝】

【海原光貴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、疲労(小)
[服装]:ブレザーの制服
[装備]:S&W M686 7ショット(7/7)in衝槍弾頭 包丁@現地調達
[道具]:支給品一式(水僅か、食料一食消費)、コイン20束(1束50枚)、大型トランクケースIN3千万ペリカ、衝槍弾頭予備弾薬35発   
    洗濯ロープ二本とタオル数枚@現地調達
[思考]
基本:御坂美琴と彼女の周りの世界を守る
  1:なんとしても黒曜石を調達するため、東の学校へむかう。
  2:人と出会い情報を集める
  3: 殺し合いに乗った危険人物、特にバーサーカーと本多忠勝の排除
[備考]
※この海原光貴は偽者でその正体はアステカのとある魔術師。
現在使える魔術は他人から皮膚を15センチほど剥ぎ取って護符を作る事。使えばその人物そっくりに化けることが出来る。海原光貴の姿も本人の皮膚から作った護符で化けている。
※F-1で目撃できたのは、バーサーカーの再生よりも後からです。
※線路の破壊に伴い、D-2からF-3間の列車運行はストップします。
※F-3からD-4間はダイヤの調整のため一時列車をストップし、第一放送後から運行を再開します
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 23:28:13 ID:m49f7BQF
657 : ◆mist32RAEs:2009/11/10(火) 14:32:56 ID:dSyL.9/M
『こんなにロリコンとシスコンで意識の差があるとは思わなかった……!』
の修正版を投下しました。
これでよいかどうか意見をお願いします。


修正乙です。
土御門自重しろw
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 23:28:37 ID:I72gkL8F
C
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 23:41:53 ID:do4cwu48

427傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:46:23 ID:C9zkLEKv
684 名前: ◆kALKGDcAIk[sage] 投稿日:2009/11/10(火) 22:38:25 ID:LLpHxn9I
規制中の為こちらにC.C.、御坂美琴、アーチャー、アリー・アル・サーシェスを投下します

代理投下開始致します
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 23:46:26 ID:b/g4jt49
投下乙
全くだ。ロリコンはこんなに綺麗な思考なのにシスコンときたら殺害率を稼ぎまくってるもんな。どうしてこうなった?どうしてこうなった?
429傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:46:56 ID:C9zkLEKv
先ほど負った額の傷を治療しながらも、サーシェスの笑みは止まらない
最初に戦った片倉小十郎。先ほど遭遇した魔女。
予想もしていなかった力を持つ奴ら。

流れる血は赤いのか。
心臓を潰せばちゃんと死ぬのか。
死ぬときはどんな表情を浮かべるのか。
憤怒か。
絶望か。
恐怖か。
後悔か。

分からないことだらけ。だからこそ面白い。

やりたいことは沢山ある。
群れる弱者を絶望に突き落とす。
驕れる強者を屈辱に陥れる。
戦争を知らぬ無垢なる民間人に殺しの味を教えるのも面白い。
ここでしか楽しめない至高の娯楽が待っている。


傷の治療を終えたサーシェスは歩き出す。
獲物を求め、選んだ方角は東だ。
この方角に意味などない。ただの勘。
だが、サーシェスは知っている。
戦場ではこういった勘だって、案外馬鹿に出来ないという事を。


待ち受ける戦争に心躍らせ、サーシェスは彷徨う。
430傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:47:17 ID:C9zkLEKv
*****

「説明はこんなところだ。何か質問でもあるか?」
「質問って言われても、その……」
「別に一度の説明で理解出来るなど期待していない」
「ア、アンタねぇ」

魔術なんて根拠のないオカルト話だと思っていた。
アーチャーが言うには魔術にもちゃんとした理論があるらしいが、説明されてもチンプンカンプンだった。
学園にいる頃の私なら、話されたとしても本当のことだと受け入れられなかったかも知れない。
でも、こんな状況じゃどんなオカルトだって真実だって受け入れられてしまいそうだ。



「質問がないなら、もう話は終いだ。さっさと寝ろ。まだ6時までは時間がある」
「何よ、子ども扱いして。べ、別に眠くなんてないわよ」
「なら、目を瞑っているだけでいい。静かにしていろ」
「わかったわよ!でも横になるだけだから、別に寝たりしないから!」

しぶしぶ空いていたベッドに横になる。

横になっても、考えることが多くて眠れるはずなんてない。

そう思った。


あれ?何か頭がボーっとする。


……私もしかして疲れてた?
大した運動もしてないはずなんだけど。

眠くないとか言い張っちゃって、私カッコ悪いなぁ。
そんなこと考えながら、私の意識は深く沈んでいった。
431傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:47:31 ID:C9zkLEKv
*****

「強がっていても所詮は学生。無理もないか」

5分も経たずに眠りについた美琴を見て、皮肉混じりに呟く。
本来、このような殺し合いとは無縁な場所に生きる人間。
やはり、この環境が与えるストレスは本人の予想以上に精神をすり減らしたのだろう。
これから先に待ち受ける過酷さを考えれば、今眠ることは正解だ。


―――先ほどの会話。気になることがあった。
魔術の神秘は守られるべきもの。一介の学生が知らないのは当然であり、何ら驚くことではない。
しかし気になるのは、御坂美琴という少女が超能力者であること。
話の流れで知った、学園都市という大規模な超能力開発施設。
超能力そのものはアーチャー自身も知っている。
だが己の知る超能力と齟齬がある。
そもそも、超能力とは生まれ持った才能に近いものだ。
開発という形で得られるようなものではない。

「やはり魔法か、それに近い力を持つ者がいるのは確定的か」

この殺し合いの参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められた。
それが御坂から得た情報からアーチャーの立てた仮説であった。
もっとも根拠は薄い。
出会った参加者は明らかに自分と同一の世界から連れてこられたと思われるライダーを除けば3人だけだ。
さらに他の参加者と接触しなければ核心に至ることは出来ないだろう。
432傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:47:56 ID:C9zkLEKv
さらにもう一つ。アーチャーには気になることがあった。
最初に刃を交えた黒い魔術師のことである。

奴は自分の知っている魔術師像に何ら反するものではなかった。
主催と繋がっていることが本当ならば、その目的は大体予想出来る。


根源への到達。
全ての魔術師が抱く悲願。
自身が関する聖杯戦争も、本来はこの願いを成就させるためのもの。
この殺し合いでいかに根源へと辿り着こうとしているのか。
殺し合いそのものが根源に至るための儀式に一環になっているのか。

根源に至ることが目的なのか。それともその先に望むものがあるのか
無視できない事には変わりない。



やはり情報が足りない。
今後の方針をどうするか、目的を果たすためにどのように立ち回るか。
最善の判断を下すには、
全ては、
―――衛宮士郎という歪みを抹消する為に。



そこまで思案に至ったとき、アーチャーの思考は無意識に切り替わった。


感じる。


かつて、数多の地獄で経験してきたこの感覚。
あえて隠さず、まるで誘うように。
戦争を愛し、戦争に生きるものが醸し出す殺意だ。


「真剣な顔だな。どうした?」

いつからだろう。先ほどまで眠っていた女、C.C.が目を覚ましていた。

「少し外に出てくる。お前はここで大人しく二度寝でもしていろ」

その言葉でC.C.も今の状況が把握できたのだろう。

「物騒な客か。確かにそういう輩はお前に任せたほうがよさそうだ。なら、お言葉に甘えてもう一眠りさせて貰うよ」

返事はせず、C.C.の視線を背中に受けながら、アーチャーは音を立てず、静かに外へ出て行った。
433傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:48:15 ID:C9zkLEKv
【E-5/市街地 一軒家/一日目/早朝】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:体力枯渇(小)、左の肩口に噛み傷(全て徐々に再生中)
[服装]:一部血のついた拘束服
[装備]:オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:なし
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
   不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:外のことをアーチャーに任せる。
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない

[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。

【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:睡眠中、腹に打撲、疲労(小)
[服装]:常盤台中学制服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式 誰かの財布(小銭残り35枚)@???、ピザ(残り63枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:人を殺したくはない。
0:睡眠中
1:上条当麻、白井黒子の安否が気になる。一方通行は警戒。

※アーチャーからFate/stay nightの世界における魔術の話を聞きました。
434傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:48:47 ID:C9zkLEKv
*****

民家の前から15m程。その男はいた。

「そっちから来てくれるとは嬉しいなぁ」
「やはり血の匂いに飢えた狂犬か」
「へっ、いいねぇ。その目、殺る気満々って感じじゃねぇか!」

雰囲気だけでサーシェスは目の前の標的が只者でないことを理解した。
相手は戦場を生き抜いてきた生粋の戦士。

「貴様のような奴には微塵の容赦もない。さっさと殺してやる」
「はっ、言ってくれるじゃねぇか!テメエもまた殺し合いのしがいがありそうだ」

アーチャー。
殺しを否定し、争いを憎み、それ故に戦場に身を置いた男。
人々を救おうとし、その先に絶望に辿り着いた男。
地獄と化した地で惨状がそれ以上広がらぬようその場にいた者達を切り捨てる掃除屋。

アリー・アル・サーシェス。
殺しを肯定し、争いを愛し、それ故に戦場に身を置いた男。
人々を虐殺し、その先に快楽を見出した男。
戦いの主義主張には一切興味が無く、ただ金と戦場のスリルを求めて動く戦争屋。

戦場における人の業を理解しつくしている二人。
故にお互いを深く理解し、故に決して分かり合えない。

サーシェスは無言でガトリングガンを構える。

「――――投影、開始」
対してアーチャーの得物は愛用の夫婦剣、干将・莫耶。


戦場にて生と死を見続けてきた男達の戦いが始まる。




435傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:49:17 ID:C9zkLEKv
【E-5/市街地 一軒家前/一日目/早朝】
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小)
[服装]:赤い外套、黒い服
[装備]:干将・莫耶@Fate/stay night×1(2時間後に消滅)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×3
[思考]
基本:過去の改竄。エミヤシロウという歪みを糺し、自分という存在を抹消する
1:アリー・アル・サーシェスを殺す
2:情報を集めつつ、士郎を捜し出し、殺害する
3:士郎を殺害するために、その時点における最も適した行動を取る
4:荒耶に対し敵意

[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。


【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:疲労(小)、腹部に打撲の痣、額より軽い出血(止血済み)。
[服装]:パイロットスーツ
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数75%  信長のショットガン@戦国BASARA 8/8 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 
[思考]
1:アーチャーを殺す。
2:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
3:周辺を見て回る
4:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。
5:片倉小十郎との決着をいずれつける。
【備考】
※第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※G-5にナイフ@空の境界が落ちています。
※ガトリングガンは予備弾装とセットで支給されていました。
436傷んだ赤色  ◇kALKGDcAIk氏代理投下:2009/11/11(水) 23:51:01 ID:C9zkLEKv
代理投下終了です

最後のアーチャーとサーシェスの状態表は
行数制限により分割投下させて頂きました

作者様の意図を損ねた行為であるなら申し訳ありません
代理投下開始致します
(さて、この先に居るのは鬼か悪魔か、それとも……)



数分前まで、ルルーシュは覚悟していた。



駅に到着した瞬間、待ち伏せていた襲撃者から突然攻撃を受けるという可能性――――

そして、ルルーシュ自身の目的の為に、あらゆるものを利用し、踏みにじり、
自らの手も血に染めたその結果―――

ブリタニア皇帝に即位した後には、彼が彼である理由―――

心の底から愛していた実の妹からすらも、憎まれ――謗りを受けるという
まるで喜劇のような境遇にすら、厭わなかったあの時のように――――


彼は出会った参加者には、ルルーシュ自身の駒として利用する為に、
ギアスを使う事を躊躇う気は微塵もなかった―――――






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「読み違えたか…」



ルルーシュは無人の駅構内でポツリと呟いた。
駅構内には今現在、ルルーシュ以外の誰かがいるような気配がまったく感じられない。

もちろん、駅のどこかに潜んでるという可能性も考慮し、駅構内の調査も行ったが、
今現在持ちうる情報からの結論では、この駅は現時点で無人。


【どう動くにしろ、やはり他者との接触が必要】

先ほどしていた自身の思考を思い出し、ルルーシュは軽く自嘲する



(この一手は、チェスでいうなら[Bad move]『良くない手』だったのかもしれないな――)


悪手というほどではない。ただ機会が、タイミングが悪かった。
ルルーシュはそう考えることにした。
(他の参加者が、自身の移動に関して電車を利用するであろう、という推測自体は間違っていないはずだ…。
だが、もしも仮に自分以外の参加者全員に何らかの移動手段が支給されているという可能性も・・・。
しかし、こちらに関しては限りなく低いだろう。参加者全員にある程度安全な移動手段があるのなら、
このゲームにおける、参加者同士の殺し合いを促すという要素の阻害でしかない。)











ルルーシュは今の状況から、今後取るべき行動について改めて考察した。
現状ではこの二つの指針のうち、どちらを選ぶべきか。








1、駅構内に潜んで、他の参加者が来るのを待つ





2、このまま宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
  もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査







(まず1についてだが―――、こちらについては不安要素も残るな)


ルルーシュの調査結果、この駅構内にはいくつか誰にも気付かれずに潜伏できるような場所を発見している。
さらに、ルルーシュに支給されていたミニミ軽機関銃


総重量7kg弱の兵器だが、彼自身自覚していたが、ルルーシュの腕力では、
突然の襲撃に対して、自身の身を守る為、とっさに使いこなすことは出来ないと結論を出していた。


だが、固定砲台としてなら。設置した後に標的に狙いを定めるという使用法なら彼にも充分取り扱える。



しかし―――、この武器だけなのだ。



彼が今持つギアス以外の力で、彼の身を守る為の他者を圧倒できそうな武器。

最低現、遠距離からでも相手を足止めし、ギアスを相手にかけるための隙を作る、
抑止力としても充分機能するであろう武器は。

支給品として与えられたゼロの剣―――
長さ90cm弱、両刃の西洋剣であるが、こちらについては、
ルルーシュが抱いている感想としては、ないよりはマシという程度の認識である。

相手を剣により殺傷できる距離、
それは同時に相手の攻撃もルルーシュに届く範囲であるという事だ。

ルルーシュ・ランペルージは彼自身の能力をしっかり把握していた。
女・子供―――、なおかつ、まったく戦闘経験の無いような相手であるのなら、
支給されたこの剣も彼の身を守る要素にはなるだろう。


だが、相手が明らかに戦闘において、ルルーシュを上回る身体能力を持っていた場合、
容易に剣を奪われ、逆に自分が窮地に陥る場合も考えられる。

もちろん、そうなる前にギアスを掛けてしまえば問題ないだろう。
だが、ギアスという能力は相手の目を見ないと発動できないという制約もある。

ギアスを発動させる間もなく、自身が殺害されるという可能性も考慮した場合、
安全が確認できる、もしくは相手の戦闘能力が把握できないうちに、
相手との接触を図るというのは、ある程度リスクも伴う。


そのリスクを加味するのであれば、
今現在持ちうるカードが、軽機関銃と一本の剣、絶対遵守の力―――ギアスだけという状況では、


ここに留まってまで、他の参加者との接触を図るという案について積極的に肯定できる要素が少ない。
つづいて、2の宇宙開発局へ向かうという案についてルルーシュは思索する―――


こちらの案についても、リスクは存在する。



仮に、宇宙開発局で殺し合いに積極的な参加者による、何らかの待ち伏せを受けた場合、
今この場で判明している駅構内の環境よりも、更に危険が伴う事も充分考えられる。

だが、逆に考えるのであれば、
その待ち伏せを看過、もしくは撃退し、
宇宙開発局を調査した結果、交渉の材料として使えそうな更に有用なアイテム、
もしくはこのゲームからスザクを生還させる要素が見つかる可能性がある。

(今持てる手持ちの札で勝負するか・・・・・・・・チェンジによって上の手を狙うか・・・・・・・)

彼の今の思考を、ポーカーに例えるのであれば、ルルーシュは今、
手持ちの札だけでもツーペアは完成しているようなものだ。

自分からツーペアを崩せば、更なる上の手も狙える状態である。

勿論、上の手を追求し手札を崩した結果、今より状況が悪くなるという事態も考えられる。
だが、彼の今の持ち手でこのゲームを勝ち抜けると思うほど、楽観視は到底出来ない。

(フッ―――、何を迷っているんだ。俺は。)


かつて、ゼロとして世界を支配としていると言っても過言ではなかったブリタニア帝国を打倒し、
皇帝の地位まで昇り詰めたルルーシュ・ランペルージ。

彼は常にリスクの少ない安全な策を取り続けた訳ではない。
時には、自分の命すらも天秤にかけて、目的を果たす為に邁進したからこそ。
その目的が達成できたのだ。

今のこの状況、彼が取るべき選択はもう決まっていたのかもしれない。

「カードチェンジだ。」

そう呟いた彼は駅構内から表に出る。
目的地は宇宙開発局。






だが、電車を降りた時のような、心の中での決意表明、は敢えてしなかった。








皇帝となった彼にも自らの思惑が外れた際に、それを恥じるというような感情は
まだ若干ではあるが、持ち合わせているようである。
【D-6/駅付近/一日目/深夜】

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】

[状態]:健康
[服装]:皇帝ルルーシュの衣装
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
[装備]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる
1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
  もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:施設群Xを調査する?
5:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
6:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
7:自分の生存には固執しない

[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
続いて、ポーカーフェイス(Poker face) 2◆X/RX3k8bNY氏代理投下致します
深夜の街を移動する自転車が一台――――――


その自転車、辺りは街灯の少ない真っ暗な道だというのに、ライトも付けていない。


もしも今、誰かが急に飛び出してきたら、自転車に気付かず轢いてしまうかもしれないくらい、
ほとんど物音を立てずに移動を続けているのだが、
その運転者はルルーシュ・ランペルージ。


かつては、ブリタニアを打倒する為の革命闘士、ゼロと呼ばれ。
そして、若くしてブリタニア帝国の皇帝となった青年である。


その彼が運転するのは一般的にシティサイクルと呼ばれる家庭用自転車。
以前、アシュフォード学園において、ルルーシュが使用していたモデルに非常に似ている機種だ。


(ふむ、今の所、他の参加者と接触するような気配はないか・・・・・・)



ペダルを軽く漕ぎながら、ルルーシュは思索する―――――
先ほど列車から降下して、宇宙開発局を目指す事にしたルルーシュには、
途中で降りる目的もあった。


このゲームを勝ち抜く、いや、有利に進める為のアイテム調達である。



地図を確認した所、駅周辺は都市部となっていたので、ルルーシュは
何か使える物資がないか探索を兼ねて移動する事にした。


彼が都市部で期待した目下の探し物は、強力な兵器でも、
ましてや他の参加者との交流でもない。

駆動に燃料を必要とせず、静かに、かつ徒歩よりも早く移動できる手段。
つまりは自転車のようなものである。


そう考えて、駅周辺からしばらく歩くと、大型のスーパーマーケットのような店があった。
店内の非常灯だけ点いていて、うっすらだが店内の様子が外からもある程度確認できる。


もちろん、外から見る限りではあるが、中に人がいるような気配は感じられない


(入り口や内部に警報装置があると厄介なんだが・・・・・・)

そう考えたルルーシュは一度、店の裏手、一般的に商品の搬入口と呼ばれているであろう場所へと向かった。

店の裏口を見るとかすかにシャッターが空いている。
周りを観察してみるが、無理やりこじ開けたような形跡は無い。
どうやら元々いた従業員が閉め忘れたのだろうか。

できるだけ気配を消し、静かに中の様子を窺う為にシャッターまで近づくルルーシュ。


(これじゃまるで泥棒だな)


ブリタニア帝国の皇帝が、見知らぬスーパーでこそ泥紛いの真似とか、
スザクやナナリーや沙世子、会長やリヴァルが知ったらどんな顔をするだろうか。

自身の自虐的な考えに自嘲しつつ、ルルーシュはシャッターの中を覗き込んだ。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その数分後、ルルーシュは目的の自転車売り場まで到達していた。


シャッター内部にもやはり人がいる気配は無く、売り場へと入るための通路は、幸運にも施錠されていなかった。
仮に施錠されていたとしても、ある程度穏便に必要最低限ではあるが、鍵を破壊する覚悟は出来ていたのだが。

店内に向かう通路の途中には、【警備室】と書かれた部屋も発見し、中の様子を覗いてみたのだが、
警備員はおろか、真っ暗になっているモニターを見る限り、今のこの店は防犯カメラすら動作していないようだ。

警戒していた防犯装置に関しても、まったく機能していないのを確認し、
ルルーシュは静かに売り場の探索を始める事にしたのである。

売り場に入って確認すると、一般的な自転車屋と変わらず、MTBやスポーツサイクルといった様々な種類の自転車が陳列されている。
売り場の中心に作業場のようなスペースがあり、そこにはどうやら販売予定であったのであろう。
組みあがった自転車が一台放置されている。

その自転車は、アシュフォード学園時代、ルルーシュが使用していたものと非常に似ている機種だった。
もちろん、細部には違いはあるが、一見するとほとんど同じような機種に見えるだろう。

ブレーキやタイヤの回り具合といった動作を確認し、
問題が無い事を確かめた上、ルルーシュはその自転車を拝借する事にした。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


そして、他にも店内を巡り、
医薬品や食料品・替えの下着類といった物資を調達したルルーシュ。
服に関しても、自転車屋の隣にあったスポーツコーナーからジャージを拝借した。

生地は主にポリエステル製、
一般的に上下になっており下をトレーニングパンツ、上をトレーニングシャツと呼ぶことが多い運動着である。
それをルルーシュは暗闇の中でも自身の存在が目立ちにくい黒を基調とした物を選んだ。

皇帝の衣装は、有事の際には自身の動きを制限する上、物陰に潜伏するにはまったく適していない。
むしろ、このバトルロワイヤルという舞台においては、皇帝としての権威を示すという事以外には何の意味もなさない物だ。

もちろん金銭的な価値でいうのであれば、
ブリタニアの一流仕立て職人達がルルーシュの為だけに持てる服飾技術を総て結集した祭事に使用する礼服である。
ここのジャージが100丁あっても釣り合わない程、珠玉かつ高価な一品ではあるのだが。

(ジャージを着るなんて、久しぶりだ)

皇帝に即位して以来、まったくと言って良いほど着る機会のなかったジャージ
ルルーシュの学生時代、体育の授業の際には必ず着用させられていたものである。
そもそも、ルルーシュ自体は体育の時間はあまり好きではなかったのだが。


着替えを終え、皇帝ルルーシュの衣装を丁寧に畳んでバックにしまい、
必要な物資を調達し終わったルルーシュはそのまま店内を出た。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



そして時間は先ほどに戻る
スーパーで商品を物色していたのもあり、時間も大分経過しているようだ。


自転車を手に入れた事により移動時間に関しては飛躍的に向上したルルーシュは
あえて表通りを避け、裏道を抜けるように移動を続けていた。


表通りを使わないのは、深夜とはいえ、無人の往来を堂々と走行し、
襲撃者の目に触れる可能性を減らす為でもある。



(地図によると、そろそろのはずなんだが・・・・・・)


空気が徐々に潮の香りを伴ってきた。
どうやら海の近くまで来ているようだ。
遠くの方に大きな橋が見える。
おそらく、あの橋を越えれば、宇宙局は目前だろう。


目的地まで近づいたことを感じながら、
ルルーシュはペダルを漕ぐ足に力を込めた――




【F-6/宇宙局に渡る橋付近/一日目/黎明】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】

[状態]:健康
[服装]:ジャージ(上下黒)
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
    皇帝ルルーシュの衣装@コードギアスR2
    シティサイクル(自転車)@スーパーマーケット
    その他医薬品・食料品・雑貨など多数@スーパーマーケット
    (何を拝借してきたかは後の書き手さんにお任せします)
[装備]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる

1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
  もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:施設群Xを調査する?
5:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
6:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
7:自分の生存には固執しない

[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。


アイテム

【シティサイクル(自転車)@スーパーマーケット】
ルルーシュがスーパーで手に入れた自転車
アシュフォード学園時代に使っていたモデルと非常に似ているが同じものではない
3段変則ギア搭載モデル。これで坂道も楽々。
買い物に便利な大きめな前カゴもGOOD

【ジャージ@スーパーマーケット】
前にチャックがついている一般的な黒いジャージ
PUMAというロゴが刻印されている
実は細部を良く見るとPOMAとなっているコピー商品なのだが
機能的にはまったく問題が無い為、ルルーシュは気付いていない

代理投下終了しました

一部文章に訂正がありますが作者了承済みです
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 01:36:43 ID:MF0ijLIM
投下乙です
ルルーシュの一人旅はまだ続きそうだな
あと自転車に乗ったルルーシュ想像してみた・・・すぐバテるイメージしかなかったぜw
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 01:56:15 ID:VnyxFqN+
ほいよっと

アニロワ3rdを騙るスレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime4vip/1257958356/
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 05:21:59 ID:+3bmmkrP
 
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 05:34:32 ID:+3bmmkrP
まとめwikiに収録されている078話『運行休止(サスペンション)』までに発生した、
周辺に物音が聞こえている可能性のあるできごとと、電車の動きに関してのまとめです。もしよければご利用ください。

http://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0337.png

※銃声・爆発音に関しては、具体的に範囲が書いてあるもの以外は「周辺に響いたかもしれない音」で、実際に音が聞こえた範囲は不明です。
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 11:27:58 ID:bljStlBw
果たしてもやしは自転車でどこまで行けるのだろうか……
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 11:47:00 ID:RKgctgBM
息切れしながらママチャリこいでるルルの横をトレーラーが爆走するわけですね
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 11:50:12 ID:oqF9PrX2
ルルはゼロの仮面じゃなくてサンレッドの仮面をつけるべきだな
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 13:43:56 ID:ui5fScK+
ネリー「卵焼き食べてみろ、粉々にしてやるよ」
MCS「ヤッテミロ、オマエノロッコツをゼンオリシテヤルカラナ」
美琴「ただいまー、あれ? なんでネリー倒れてるんだ?」
MCS「サー、イモタレデモオコシタンジャンナイデスカ?」
ネリー「わーん、痛いよー痛いよー」
ロリ宗「誰だネリーたんを泣かせたのは!!」
シラリー「うるせえ、ロリコン」
ロリ宗「ロリコンじゃねえ、子供好きだ!!」
シラリー「同じじゃねえか!!」
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 15:46:51 ID:qUpOmQjH
もやしに自転車とは…
すぐにヘバって倒れる絵しか思い浮かばんww
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 18:03:53 ID:9aqJN4Mv
でも、皇帝後だからなぁ。
あいつダモクレスの中を走って移動して息切らしてないんだよな。
原作中でも空白の期間で体力づくりしたとしか思えない光景だったから……
まあ常人程度の体力はあるんじゃね? 
そこに持ってきてチャリまで確保してれば、まあ歩くよりは遥かにマシだろう。
いかにも奴らしい、限界を見据えた対策だ。
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 18:22:13 ID:ui5fScK+
      l::〈:::::〉\    丿   >、:::ヽ:::::\
 ー三  二ニ ―/ ̄ ̄ヽ ィ´  、::::ヽ:::::::\
ー三二 ー三:;三  _ /´`  \彡'  :::::、::::::::::\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´   ,  ̄',--ハノ   ';::::lヽ::::::::::::.、
             ト, |...  {___.  ソ;:l丿::l丶::::::、
           _ 」<Lノ‐一{   ,--イ|ハ:::|  \|
---------一;    {``‐‐--Vヽ._i';/|:::/リ `
―――‐ ==`--一`ゝ:::‐''´:'   L-、___
           __ノ´rノ r‐‐‐/    ̄,, ̄ヽ
        / ̄   |―‐‐/     ,,'' イヾ丿
       /\'',,.     |  /    ,, ''/   \  
なんで生きてんだ黒子!!
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 20:10:00 ID:Br0V6ELr
そいつは池田や!!
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 20:26:14 ID:+3bmmkrP
代理投下します
463(代理投下)偽物語 ◇BXnAdYmV9c:2009/11/12(木) 20:28:01 ID:+3bmmkrP
明かりの無い、ただ月のみに照らされた道を一人の少女が歩いている。
その足取りに力は無く、瞳に浮かぶのはただ迷いのみ。
いっそ足を止めた方が、疑心と恐怖に囚われ動けなくなる方が良かったのかもしれない。
ただ、とても不幸な事に少女は、そこで立ち止まっていられるような人間ではなかった。
他者に襲撃され、拒絶され、それでも少女は孤独に歩み続ける。
やがて、彼女は目前に現れた黒く巨大な箱の体内へと消えた。



「……なんなの、これは」
ユーフェミアがショッピングセンターに訪れた理由は単純だった。
付近にある施設の中で、参加者がもっとも集まりそうなのがここだったからだ。
危険な人物に出会う危険ももちろん感じていた。
危険でなくとも、話を聞いてもらえず再び拒絶されるだけかもしれないとも思った。
けれども、そんな人間だけじゃないと、そう信じたいと勇気を振り絞ってこの場所まで歩いて来たのだ。

そして今、彼女の目前にある大型モニターの中では、仮面をつけた人物が殺し合いを扇動している。

「なんなの、これは」
本来は客達の憩いの場なのであろう噴水のある広場。
そこに一人立ち尽くし、大型モニターを見つめる少女の口からは再び同じ言葉が漏れる。
あまりにも理不尽だった。
ようやく実現しようとしていた行政特区日本。
スザクが、ルルーシュが、ナナリーが、そしてユーフェミア自身が。
みんなが望んだはずの平和な世界は血に塗れた手で引っくり返されたのだ。
いったい、誰がそんな事を。
決まっている。
今、モニターの向こうでゼロの名を騙る主催側の人間にだ。

「止めなきゃ……!」
今、ショッピングセンター内で流れている映像もそうだが、
なによりゼロの名を貶め、利用しようとしている者を止めなければならない。

ゼロは日本人にとっての象徴のような存在である。
黒の騎士団を束ね数々の奇跡を起こした、日本人すべての希望。
そんな彼と同じ姿を持つ者が殺し合いを肯定し、他の参加者にもそれを強要している。
この映像を見てしまうと、日本人の参加者には絶望する者も出てくるだろう。
また、想像したくは無いが一部の者はその言葉に従ってしまうかもしれない。
それにもし外部からの救助、もしくは内部からの反攻で無事脱出したとしても、
この映像を口実にゼロを投獄、処刑するという動きが出てきてもおかしくはない。
(私が止めなければ……!)
ユーフェミアはモニターを管理しているであろう部屋を探すべく、走り出した。
464(代理投下)偽物語 ◇BXnAdYmV9c:2009/11/12(木) 20:29:47 ID:+3bmmkrP
一時間ほどの後、白みつつある空の下を一人の少女が歩いていた。
アスファルトを踏む足取りには力が張っており、瞳に浮かぶのは固い決意。
たしかにショッピングセンターに流れる映像は止めた。
二度と流れないよう、管理センターでみつけたビデオメール自体を消去した。
けれども、それだけでは止めた事にはならないだろう。
あのメールが送られたのはここだけでは無いだろうし、
ゼロを名乗る正体不明の人物が、それであきらめるとも思えない。
(私が……私ができる事をしなきゃ)
あれが本物のゼロでない事を知っているのは、たった二人だけなのだから。


額の汗を拭いながら少女は北にある駅を目指して歩く。
駅から電車を使い政庁を目指すためだ。
おそらく、政庁ならばそれなりの放送施設や通信施設があるだろう。
そこから全参加者に宣言するのだ。
あれは本物のゼロでは無いと。
殺し合いなど馬鹿げているからやめようと。
そして反攻の意志を持つ者達を集め、共に主催者を討とうと。

もちろん、危険性は重々承知している。
その美しい顔には疲労の影も浮かんでいる。
だが、とても不幸な事に少女の優しさが疑心と恐怖に囚われ動かない事を認めなかったのだ。
自分にできる事を誰かに背負わせる事をよしとしなかったのだ。
他者に襲撃され、拒絶され、それでも少女は果敢に歩み続ける。
その果てに待つものはなんなのか、少女はまだ何も知らない。


(スザク……私は間違っていませんよね)
465(代理投下)偽物語 ◇BXnAdYmV9c:2009/11/12(木) 20:30:47 ID:+3bmmkrP
【E-1北東部/路上/一日目/早朝】
【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:中程度の疲労、怒りと決意
[服装]:豪華なドレス
[装備]:H&K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数3/12発/予備12x2発)@現実
[道具]:基本支給品一式、H&K MP5K(SMG/40/40発/予備40x3発)@現実、アゾット剣@Fate/stay night
[思考]
基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する。自分にできる事をする
特殊:日本人らしき人間を発見し、日本人である確証が取れた場合、その相手を殺害する
1:偽ゼロの存在を全参加者に知らせる
2:D-2にある駅から東へ向かう
3:政庁で放送施設や通信施設を探し、全参加者に呼びかける
4:殺し合いには絶対に乗らない
[備考]
※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。
※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。
 会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間に影響が出ているかは不明。
※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 20:32:14 ID:+3bmmkrP
以上で代理投下終了です
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:30:29 ID:bljStlBw
なんと健気な……マジ爆弾さえなければ頑張れと応援しとるのに……
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:36:46 ID:MF0ijLIM
投下&代理投下乙です
ユフィはゼロの正体知っているからそういう行動とるのか
でも今の状況で「あのゼロは偽者」なって言ったら誤解されるだけのような
それ以前にギアスという爆弾が……
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:42:39 ID:+3bmmkrP
代理投下します
470[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vFY:2009/11/12(木) 21:43:43 ID:+3bmmkrP
 畳敷きの八畳間。部屋は襖で隔てられており、上の欄間には木彫りの装飾が施されている。
 ヒイロ・ユイとファサリナの二人はこの古式ゆかしい和室で相対していた。
 ファサリナは扇情的な仕草で畳に両膝をつき、腕を、ゆっくりとヒイロへと伸ばす。
「ファサリナ、だったな。同志とやらの理念はわかった。完全平和を望む姿勢は俺と敵対する思想ではない。だが、平和に至る道もまた一つではない」
 伸ばした手を止め、ファサリナは上目遣いにヒイロの目を伺う。
「その為に私達が選んだ方法を聞きたいと?」
「ああ。手段の齟齬から戦闘が発生する可能性もある」
「このような場所に招かれなければ、後一歩で同志の夢が適う所まで来ておりました。なればこそ、どうしても同志にはこの地より脱出し、作戦の続きを行っていただかなければなりません」
「作戦の内容は他人に漏らしていいようなものではないだろう。だが、これだけは答えてもらう。同志とやらの作戦で誰が死ぬ?」
 ファサリナは間髪入れず即答した。
「予定されている死者は一人だけおります。それ以外一切の犠牲を伴わない、同志でなければ為しえなかった作戦です」
「一人とは誰だ?」
「同志その人です」
 数秒の間の後、ヒイロは訝しげに口を開く。
「やはり解せないな。たった一人が何をした所でロームフェラやコロニーを止められるとも思わないし、トレーズもまた同様だ」
 ヒイロは完全平和を成し遂げるために必要な事として、自らの世界で戦争の大元となっている勢力の名を上げる。
 しかしそれはファサリナにとっての平和への障害ではありえない。
「……ロームフェラ、それとトレーズ、ですか? 申し訳ありませんがその名に聞き覚えはありません。ですが……」
「ふざけるのは止せと言った。更に戯言を繰り返すのなら、お前とは対話不能と判断する」
 遮るように釘を刺すヒイロに、ファサリナもまた真剣である事の現れかにこりともせず言い返す。
「戯言などではありません。同志の計画ならば一国の争いに限らず惑星エンドレス・イリュージョンに住む全ての人間が平和を享受出来るのです」
「何?」
「ロームフェラやトレーズといった人達は知りませんが、その方々にも同志の作戦は影響……」
「いや違う。惑星、何と言った?」
「ええ、エンドレス・イリュージョンに住む全ての人にです。例外はありません」
 ヒイロは眉根に皺を寄せ、真意を確かめるべくファサリナの瞳を見つめ返す。
「惑星、だと? お前は何処の話をしている? 地球にある国にも、コロニーにもそんな名前は聞いた事が無いし、そもそも惑星とは地球を指して言う言葉だろう」
「地球? コロニー? 私達の住む惑星は一般的にはエンドレス・イリュージョンと呼ばれておりますよ? それに、すみませんが、貴方は一体どの国のお話をされているのか私にも……」
「俺は地球という星全体と周辺コロニー全ての事を話しているつもりだ」
「私もエンドレス・イリュージョンという星全体のお話を……」
 二人の背筋を得体の知れない冷風が吹き抜ける。
 先にそれを口にしたのはファサリナだ。
「……まさか、別の、惑星から来られたと……」
「それこそ戯言だ。外宇宙に進出したという話など聞いた事もないし、ましてやその先に人間が定住出来るような星があるなど……」
「もしかしたら貴方はマザーの出身では? エンドレス・イリュージョンは元々マザーから送られる犯罪者の流刑先として開発された経緯もあるそうですし」
「馬鹿な、いい加減にしろ。ならばお前達は外宇宙を航行する術を持っているとでもいうのか」
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:43:46 ID:MF0ijLIM
 
472[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vFY:2009/11/12(木) 21:45:42 ID:+3bmmkrP
「エンドレス・イリュージョンにおいてその技術は失われて久しいそうです。必要性も感じませんし」
 すっとヒイロは立ち上がる。最早語るべき事も無いとばかりに。
「これ以上お前の妄言に付き合う気はない」
「いえ、私は信じます。それならば私達の話す言葉が同じ事にも、用いる文字が一緒な事にも納得がいきます。それに貴方は不必要な嘘をつく方にも見えません」
 踵を返すヒイロの手を、ファサリナは必死に掴み食い下がる。
「待って下さい。他惑星から人を集める程の人達を相手に、私一人で同志を守るのは至難極まります。どうか、お願いします。私に協力を……」
「同じ事を言わせる気か?」
 絶対に離さぬ、そんな決意が伝わる程に強くヒイロの腕を掴む。
 ファサリナの瞳は揺れ、興奮しているせいか頬が紅潮する。
「いいえ、いいえ、引けません。この地に、貴方のように私の話を聞いてくださる方ばかり居るとはとても思えません。見ず知らずの女性を守らんと命を賭けられる人が居るとは思えません」
 人間の欲望を良く知るファサリナは、その半生において人の弱さを嫌という程見せつけられてきた。
 ヒイロのように他人を守る為、躊躇う事無く自らの身を投げ出せる人間が如何に珍しいかも。
 そして敵の強大さを知る事で同志生還の厳しさを目の当たりにするに至り、動揺から常の余裕ある話術を繰る事も出来ず、ただ必死に懇願するのみとなる。
 無情にもヒイロは腕を振り払おうとするが、ファサリナはとにもかくにも引き止める為に声を張り上げる。
 以前にヴァン達を誘った時とは状況が違う。今の彼女には、同志を守る術が圧倒的に不足しているのだ。
「で、では名簿を見て下さい! 私の知人と貴方の知人以外の方に聞いてみればはっきりします!」
 ファサリナは言葉を発しながら理屈を組み上げる。
「貴方の星とエンドレス・エイトと、それ以外の星から来ている方もいらっしゃるかもしれません。その事が確認出来れば私の言葉を証明出来ます。そうすれば貴方も私を信じて……」
 小柄な体格にしては強い力でファサリナの手を振り払うヒイロ。
 ファサリナは俯き加減のまま、全身を振るわせる。
「貴方の、判断は正しいです。私が貴方の立場だとしても恐らく同じ判断を下すでしょう……ですから、私にはただお願いする事しか出来ません。
 貴方は同志の目指す平和に興味を持ってくれました。貴方と同志で目指す場所は同じはずです……どうか、僅かでも構いません、私に機会を。この命は同志の為のもので差し上げられませんが、他のものでしたらどんな事でも……」
 同志を失う恐怖故か、ファサリナは涙を溢す。
 その瞳の下に、ヒイロはすっと指を通した。
「あ……」
「お前の言葉を信じるにはあまりに情報が足りなく、荒唐無稽にすぎる。だが、お前が平和を望むという同志を信頼している事だけは、信じてもいい」
 ファサリナの涙を拭い、最後の言葉を口にする。
「それが、真に平和へと至る道でなければ……俺が、お前を殺す」
「あ、えっ……それはどういう……」
 ヒイロの回りくどい言い方にファサリナは意図を察しかねるが、続くヒイロの言葉にようやく彼女らしい柔和な笑みが戻る。
「ヒイロ・ユイだ」
 ヒイロが同行を認めてくれたと理解したファサリナは、同志と『幸せの時』への万感の信頼を持って答えを返す。
「はい、どうぞ殺しにいらっしゃってください」

 ヒイロはもちろん同志を信用したわけではない。
 ただ、少なくとも直接会ってその真意や平和への手法を問いただすぐらいには、ファサリナを信じる事にした。
473[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vF:2009/11/12(木) 21:46:31 ID:+3bmmkrP
 ヒイロに装備品を返し、爆弾を半分だけ分けてもらったファサリナは、では一刻も早く同志を探そうと言うが、ヒイロは待ったをかける。
 この招かれた場所の異常性故だ。
 確認すべき事を確認し、与えられた条件を精査する事抜きに闇雲に動けば、先の不意打ち女の例のような致命的な事すら起きかねない。
 それ程時間はかからないというヒイロの言葉に、ファサリナは渋々だが妥協した。
 古い家屋の中を探し回り、最初にヒイロが目を付けたのは電話である。
 横で見ているファサリナが目を見張る速さで黒電話を分解すると、すぐに興味を失ったのか次に移る。
 次なる目標は居間のテレビである。
 これまたあっと言う間に外枠を外した後、電源部をいじり電気を通す。
 チャンネルを合わせ、ずらし、周波数を幾つか確認していると、不意に映像が映る。
「これは……?」
「わからん。何処からか電波を発信している所があるのだろう……ゼロ、だと?」
 仮面を被り、マントを羽織ったゼロを名乗る男が、全参加者に向けて戦線を布告するといった内容である。
 一通りを聞き終わり、繰り返し同じ映像が流れ出すと二人はテレビから目を離した。
 ヒイロは静かに宣言する。
「任務、了解。これより『ゼロ』を敵とみなす」
 早速同志を殺しかねない人間を見つけ、ファサリナも唇を噛む。
「……この方、随分と自信を持ってらっしゃるようですわね」
 ヒイロは地図も見ず、次なる行き先を決める。
「地図の南側に近代的な設備が集中している。特に南東の宇宙開発局には相応の通信設備が備わっていると推測される。ゼロはここより放送を行った可能性が高い。また名簿にゼロの名が無い事から、不明十三人の内の一人であるか偽名であると思われる」
 二人の意思に齟齬は無い。まだ、この段階では。
「ヒイロくん……」
「ヒイロでいい」
 即座に注文をつける辺り、もしかしたら君付けは好まないのかもしれない。
「そう、ではヒイロ。同志の保護も最優先ですが、所在も掴めぬ今は同志を殺害しかねない危険人物の排除を行いつつ捜索を行うというのが妥当だと考えます」
「同志にのみ危険という意味でないのなら同意する。……一つ、言っていいか」
「なんでしょう」
 ヒイロは嫌味でもなんでもなく、真顔のまま率直な要求を伝える。
「真面目に話が出来るのなら最初からそうしろ。間延びした他人を煙に巻くような言動では相手の信頼は得られない」
 人差し指を頬に当て、ファサリナを小首をかしげる。
「ですが、こうした方が殿方にはウケがよろしいのでは?」
「お前のやり方で俺の好意を得られたと思うか? それに今後出会う相手が男とは限らない」
「ではその時はヒイロがお話すればよろしいでしょう。ヒイロは美男ですし、女性も気を許し易いのでは?」
 ヒイロからの返事は無い。
 再度小首をかしげたファサリナは、これまた邪気の無い顔でヒイロに問う。
「もしかして交渉は苦手ですか?」
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:46:34 ID:MF0ijLIM
 
475[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vF:2009/11/12(木) 21:47:36 ID:+3bmmkrP
「問題ない。それが任務ならば」
「苦手、ですか?」
「それがどのようなものであれ任務は遂行する」
「苦手?」
「…………女のみを対象とした交渉術の訓練は受けていない」
 うふふ、とヒイロがあまり見た事のない類の笑みを浮かべるファサリナ。
 あまり良い予感はしないと、さっさと話を切り上げ家を出る。
 歩きながら、ヒイロは幾つか所見を述べた。
「モニターは旧式のブラウン管タイプ。有線通信も原始的だ。扱う電波も洗練されているとは言い難い。一般に普及している技術レベルは本来の地球のものと比べて数世代分低い」
「ですが宇宙開発局の名の通り、宇宙に進出する技術があるという事ですから……エンドレス・エイトの最新技術と比べても劣っているとも思えません」
「一般がこのレベルであるのならそういった判断も出来るが、ここが、奴等言う所のゲームの会場であると考えれば額面どおり受け取るのは危険だ。魔法云々と言っていたが、俺達のそれと比して極めて高度な科学技術に対する比喩として用いている可能性もある」
「では、この首輪に使われている技術も……」
「断定は出来ないが、同時に楽観も出来ないな」
「彼等は何故このような事をするのでしょう」
「不明だ。が、俺とお前と同志に関してのみなら予測は立つ。皆平和を得るべく活動している者達だ。そういった行為自体を嫌う先のゼロのような思想の持ち主かもしれない」
「名簿にヴァンという名前がありました。彼は同志に恨みを持って動いていた者ですし、貴方の推測は成り立ちません」
「こちらでも同様の状況は確認している。トレーズ・クシュリナーダは戦争を望んでいる」
 ファサリナはふう、とため息をつく。
「では、やはり不明のままですか」
「そうなるな。お前が見知った人間はそれだけか?」
「はい。同志をカギ爪の男と表記している点が気にはなりますが……ヒイロの方はどうですか?」
「デュオ・マックスウェル、張五飛、ゼクス・マーキスの三人だ。だが五飛は共闘を望まず、ゼクスは……いずれ俺の障害になるか」
 リリーナの名を出さなかったのは、ヒイロなりに思う所があるのだろう。
 もしかしたらリリーナに代わって同志を見極めようとしているのかもしれない。
「ヒイロもこのゲームを主催している人間の言葉を、鵜呑みにすべきではないとお考えですか?」
「奴等は倒すべき敵だ。だが、現状ではこちらより遙かに高い技術を有していると判断せざるをえない。ならば……」
「ならば?」
「敵の技術を奪取し反撃する」
 あまりにもあっさりと結論付けるので、ファサリナは呆気に取られながら聞き返さずにはいられない。
「そんな事が出来るのですか」
「同じ人間のやる事だ。不可能ではない」
 淡々とそう述べるヒイロに力んだ様子も、無理をして意地を張ってる様も見られない。
 ファサリナは、最初にヒイロと出会った戦闘を思い出す。
 反射神経はともすればファサリナをも凌ぐ程鋭いものであった。
 年齢は随分若いだろうに体力や筋力もあり、その俊敏な動作は基礎能力の高さを物語っている。
476[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vF:2009/11/12(木) 21:49:12 ID:+3bmmkrP
 だが、近接した時の戦闘技術はファサリナに及ばない。
 ある程度の訓練は行っているようだったが、反射神経の異常な鋭さとは比べようも無い。
 そこでふと、ファサリナは一つの事に思い至った。
「もしかしてヒイロはヨロイ……いえ、人が操る巨大な兵器を扱っていたのではありませんか?」
「モビルスーツの事か? 何故そう思った?」
 ファサリナはヒイロの高い反射神経と、戦闘慣れした精神、それらに比して低い格闘戦能力、機械の扱いに慣れている事を指摘すると、ヒイロは少し不機嫌そうに頷いた。
 内心のみで歓声を上げるファサリナ。
 興奮するはずの戦闘の最中においても撤退の時期を見誤らぬ冷静さを持ち、物事を判断する能力も充分にあると思われる、その上ヨロイを扱う事も出来るという。
 そして何よりも、次にやるべき事を即座に決め、実行に移す行動力が素晴らしい。
 きっとヒイロは同志の大きな力になるだろうと、ファサリナは相貌を崩す。
 銃弾で風穴を開けられた体を、厭う事もなく力強く歩くヒイロの背中は、この上なく頼もしいものにみえたのだ。
「奴等の提示したルールとやらを連中が何処まで守るつもりかはわからない。だが、もしこのルールに説得力を持たせるつもりでいるのなら、予定されている放送、特に一回目は正確に事実を提示するだろう」
 異論の余地はあるが、基本的にはヒイロの言葉は間違っていないだろうとファサリナは頷く。
「だから6:00に予定されている一回目の放送は絶対に聞き逃すな。これが会場に集まった人間を計る指標にもなりうる」
 僅かに視線を落とすファサリナ。
「……出来れば、それまでに同志の安全を確保したいですわ」
 たわわに実る果実の前で、きゅっと両手を握り締めるファサリナの姿からは、槍を振り回し銃弾を跳ね返した剛勇などとても想像がつかない。
「ファサリナ、お前が同志に従うのは何故だ?」
 不意の質問に、ファサリナは先程口にした理由を繰り返す。 
「それは、世界に平穏と友愛を……」
「俺はお前の理由を聞いている」
 理性的で冷静な判断力を持つヒイロに、ファサリナは思う所そのままを口にして良いか迷う。
 だが、ヒイロがこうして共に歩んでくれているのは、理屈ではなくファサリナの同志への想いが通じた故の事ではないのか。
 ならばヒイロの信頼を得るために、ここで誤魔化すような言葉を発する事は出来ない。
 ヒイロは、きっとそれが見抜ける人間であろうから。
「……私は穢れと共に生きてきました。そんな私を救い上げてくれたのが同志です。正義でもなんでもない、それが、おそらく、私の最初の理由だったと思います……」
 曖昧でおおざっぱな表現であったが、これが、ファサリナの精一杯だ。
 ヒイロは、やはり表情一つ変えぬまま静かに告げる。
「感情に従って行動するのは正しい。……俺は、そう教わった」
 まるで感情などとは無縁であるようなヒイロから出た言葉とは思えず、大きく目を見開いてヒイロを見直すが、すぐにヒイロはふいっと顔を逸らしてしまう。
『もしかして、慰めてくれたのですか?』
 真実はわからないし、きっと聞いても答えてはくれないだろう。
 それでも不安に満ちていたファサリナの胸に、暖かい何かが生まれたのは確かな事であった。
「ありがとう、ヒイロ」
「礼を言われるような事はしていない」
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:49:26 ID:zYfAvD7E
478[代理投下] (ふぁさっ)ひいっ! ◇0hZtgB0vF:2009/11/12(木) 21:50:01 ID:+3bmmkrP
 相変わらず無愛想な返事であったが、そんなヒイロを、ファサリナはとても可愛らしいと思えたのだ。



【D-2/南西/1日目/早朝】
【ファサリナ@ガン×ソード】
[状態]:健康
[服装]:自前の服
[装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品3個(確認済み)
    M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした)
[思考]
基本:カギ爪の男を守る。新しい同士を集める。戦力にならない人間は排除。
1:カギ爪の男と合流し、守護する
2:カギ爪の男の意志に賛同する人間を集める
3:ヒイロと共に行動する
4:明確な危険人物の排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。
5:ゼロを名乗る危険人物の排除
[備考]
※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。
※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています
※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています


【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:左肩に銃創(治療済み)
[服装]:普段着(Tシャツに半ズボン)
[装備]:基本支給品一式 
    コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした)
[道具]:無し    
[思考]
基本:主催側の技術を奪い、反撃する
1:ファサリナと同行し、カギ爪の男を見定める
2:ゼロを名乗る危険人物の排除
3:リリーナ……
4:ユーフェミアは……
[備考]
※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。
※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。
※ヴァンを同志の敵と認識しています
※ファサリナの言う異星云々の話を信じてはいませんが、確認はしようと思っています
479名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 21:51:39 ID:+3bmmkrP
本スレ投下時にエラーが出たので、こちらの判断で改行させていただいた点があります。申し訳ありません。
以上で代理投下終了です。
480 ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 22:55:56 ID:yud8U8Qb
今から投下します
481Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 22:57:17 ID:yud8U8Qb



「成程、中々の速さのようで」

「ほんの少しですけど、これなら安全に移動できると思いますよ」

念のためということで最後尾に乗ったのだが、中には誰もいなかった。
駅のホームにも誰もいなかったし、彼ら以外に電車にのった者はいないだろう。

美穂子は落ち着いた様子で座席に腰掛け、小十郎もそれに倣う。
彼はやはり慣れていないのか、身体を固くした状態だ。

「…福路殿」

「はい?」

何か訊きたい事でもあるのかと思ったがどうやらそうではないらしい。
小十郎は立ち上がり、彼女を隠すように立ちはだかっている。
その視線の先には――

「危険ですので、隠れていてください」

車両の連結部分の更に向こう、つまり前の車両に、人がいた。
長い紫の髪。身の丈にはアンバランスな黒のボディコンスーツ。
眼は眼帯で覆われている。

あれで前が見えるのだろうか。
そんな些細な疑問は彼らには浮かばない。そんな余裕は無い。
なぜなら、その女の手には巨大な手裏剣が携えられていたのだから。



F−3駅到着まで、あと1分。


   ◆◆◆


何時入られたのか。
それは彼らにはわからないが、大方の推測は出来る。
おそらく電車内に入ったのを見計らって、前の車両に乗ったのだろう。
ギリギリまでは確認しなかったために入る余裕は少なからずあった筈だ。
小十郎に不手際は無い。いると思われる場所は眼の届く限りの範囲で確認した。
だが、それだけでは足りない。屋根の上は死角となって、彼の監視から逃れるには容易かった。
尤も、女が彼らを発見するのもまたギリギリだったのだが。

隠れろと言われたものの、車掌室は鍵が掛かっていて開かない。
となると、座席の僅かな陰に隠れるしかないのだがこの場合は攻撃が届かない場所にいろと謂う意味だろう。
そうであっても、全身を入れられる程のスペースは存在しなかった。

小十郎は一足でドアの手前まで詰め寄るが、それ以上は近づけない。
良くも悪くも、ドアが障壁となっている所為でどちらも次の行動を取れないでいるのだ。
睨みあう事数秒。

突如、女の姿がその場から消えた。
窓越しであるためにその行動を見咎めるのが一瞬遅れる。
しかし、相手が何をしたか小十郎には見て取れた。
482Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 22:58:35 ID:yud8U8Qb

ダン、という音。
それは上から聞こえてきた。

「まさか…この上に?」

美穂子は度肝を抜かれた。
高速で動いている電車で、窓から出て上に飛び乗るなんて。
体操選手でも出来なさそうな芸当だ、と彼女は感じた。

しかし上に登ったところで特にどうとなるわけでもない。
両者が一撃で攻められないのは同じこと。
この場合、どちらからも相手の位置は見えていないのだから。

「福路殿…この天井、壊しても問題ありませんか?」

「え!?壊せるんですか…?…でも、もしかしたら止まってしまうかもしれないし……」

電車に詳しいわけではない彼女に答えることはできない。
だが、こんな所で止まってしまうのは危険だと感じた。
せめて駅に着いてからでないと、逃げ場がない状態では拙い。
そう、ほんの少し考えているうちに、

「クッ!?……」

ガラスの割れる音と同時に、女はするりと小十郎の横へと飛び込んできた。
突然の事で驚きはしたがこれは小十郎にとっては好機だった。
飛び込んできたとなれば着地が必ず必要となる。そのタイムロスはコンマ数秒でしかないが、それでも戦闘では長い。
一瞬の隙が命取りなのだ。

すかさず蹴りこまれて未だ中空にある相手の足目掛けて剣戟を繰り出す。
充分なタイミングだった。明らかに女の手は届かない。
しかし、その手には、先程持っていたはずの十字手裏剣がなかった。

してやられた、と思った瞬間。
小十郎の視界の端から刃が向かってくる。
既に刀は振っている。引き戻せばギリギリ防御には間に合う。
そして咄嗟の判断で、彼は身を引くことにより刀で防ぐ過程を短縮した。

ギン、と響く金属音。
小十郎は目視する。
女の長い紫色の髪が、まるで生き物のようにうねり手裏剣を掴んでいた。
無論髪の毛の力だけでは到底小十郎の両腕の腕力には及ばないが、遠心力を利用すればそれなりの威力にはなる。

小十郎はすかさず手裏剣を右方向に往なし、それに釣られて引き伸ばされた髪を斬ろうとする。
しかし、相手の体勢は万全の状態となっていた。

「足元がお留守ですよ」

女が声を発したか否か、その時小十郎の身体が大きく傾いた。
単純、軸足に足払いを掛けられたのである。
電車はその時点で緩やかなカーブで車体が僅かに傾いており、そのうえ女の蹴りは凄まじい威力だったので彼は容易く尻餅をついてしまった。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 22:59:50 ID:l+CHXlCP
規制解除された俺に怖いものなどない!

投下乙
ヒイロとゼロを排除に出たか
やっぱりあの放送は影響力がデカいな
ただヒイロ、ゼロの正体はごひだ
そして、ファサリナさんも放送が怖いなー

あとエンドレスイリュージョンが一部エンドレスエイトになってますよw
484Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:00:45 ID:yud8U8Qb

それでも小十郎は猶、攻撃を止めない。
その手に持つ刀には、電撃が纏っている。

「喰らいな!」

「む――」

雷撃が迸る。
目掛けられたのは女の顔。
この至近距離であれば避けることは不可能だと踏んでの攻撃。
だが、それすらも敵は予見していた。

小十郎の首を貫かんとしていた手裏剣をすぐさま戻し、転がり込むように床へと待避する。
標的を見失った雷はそのまま天井を貫き、破片を溢した。
その拍子に回路を切断された電灯が停電する。
一瞬で暗闇と化したことで、眼が順応に追いつかない。

尚も、女の攻撃は止まることがない。
地を這う蛇のように、かつ素早い動きで小十郎との距離を一気に詰める。
小十郎は右に寄り、左から来た斬撃を受け止めた。
二度、三度と交わされる金属音。
そこで女は自身の不利に気がつく。

目の前の男は斬撃を受ける前に右へ、左へと身体を移動している。
最初はただのタイミング合わせかと思ったが、違う。
小十郎は、自身に有利な状況を作り出している。
壁際に身体を寄せられては、得物としては大きい手裏剣ではどうしても攻撃できる軌道が限られてくる。
それを見越して、彼は都度五撃目となる刃を受け止めたのだ。

驚くべきことに、女の腕力は小十郎と同等かそれ以上のものだった。
自身より力の強い攻撃。まともに受けなければ押し負ける可能性も充分に在り得る。
自分一人ならば賭けに出ても構わないと判断したかも知れないが、彼には守るべきものがある。
万が一にもそれを失うわけにはいかない。故に安全策をとった。
どの道この狭い空間では攻勢に出にくい。もうすぐ着くであろう次の駅に、到着してからが本当の勝負だ。

アナウンスが流れる。停車まであと30秒未満。
両者は未だに拮抗している。
地の不利と状況によってどちらも攻めあぐねているのが原因か。
それでも、お互い息は切れていない。緊張からの発汗は僅かにあるようだが。
どちらかが止まらぬ限り、勝敗は決しないだろう。

美穂子は目の前の常軌を逸した光景にただ驚くばかりだった。
眼にも止まらぬような剣戟や足捌き。
おまけに小十郎の繰り出す雷撃のせいで、彼女の現実感が揺らいできた。
だが、それと同時に実感する。
485Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:02:44 ID:yud8U8Qb

(これが……魔法なの……?)

画面越しの主催者が言っていた言葉が思い起こされる。
目の前のあれはまさしく、その非現実ではないか。
それを考えると恐ろしくなる。魔法の存在にではない。
自分がそれと対峙したとき、逃れる術はあるのか。
否応無しに自身の無力さを思い知らされる。
誰かに守ってもらうということは、誰かの足かせになるということ。
自身で予測したことを、彼女はありありと実感していた。

窓越しに駅のホームが見えてきた。
電車は徐々にスピードを緩める。
停止まで10秒とかかるまい。

彼女はここでどう動くべきか、考えざるを得ない。
女のスピードは、小十郎がいないと仮定すれば一息で美穂子との距離をゼロとする程度か。
位置的に見れば、小十郎が持ちこたえている以上はドアは妨害されているので外に出た美穂子を追うのには遅れが出る。

(ドアが開いた瞬間に私が逃げれば……でも、今の状態じゃわからない。ギリギリまで見極めないと。
 けれど電車にずっといるわけにもいかない。都合よくあの女の人を追い出せるわけじゃないもの)

そう、電車内に比べて駅のホームは広すぎる。
あくまでも比較しての話だが、行動範囲は遥かに広がるのだ。
今でこそ堰き止められているがホームでの戦闘となった場合、目の前の敵は小十郎の刀を掻い潜り美穂子の下に
辿り着くことは否定できない。相手がどういうスタンスかは分からないが、美穂子を人質に取るということくらい考えられる。

ただの交渉ならば危害が加えられない可能性が高い。
人質は生きていなければ意味が無いからだ。
しかし、この相手は違う。対峙した瞬間から既に敵と認識している。
おそらくそういった者が美穂子をどう扱うかといえば、盾くらいのものだろう。
人質という考えすら生温い。第一、このゲームは誰が誰を殺すか分かったものではないからだ。
殺し合いに乗っている者にとって、弱者の存在など取るに足らない。

停止する。
ドアが、開いた。

「ここから先は行かせねぇ!」

声を張り上げて小十郎が叫ぶ。
その気迫は確かに他を圧倒せんとするものだ。

「そうですか。ならば、あちらから行かせてもらいます」

淡々と女は告げる。
その言葉通り、軽いバックステップで後ろのドアまで辿り着き、そこから飛び出た。
そのままホームを疾走する。狙いはやはり、美穂子か。
486Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:04:00 ID:yud8U8Qb

「させるかよ!」

それを妨げるように小十郎が前に躍り出る。
完全に間に合っている。此処からでは、すぐさま美穂子に辿り着くことはできまい。

カコン、という音。
不思議な音だ、と小十郎は思う。
そう。足音はこんな音はしない。何か、金属の塊が落ちたような、そんな感じのものだ。
その音の出所に彼は目をやる。
床に当たり撥ねる、拳ほどの大きさの鉄の筒。
それが何なのか、嫌な予感がした時に――


彼は一瞬にして、音と光を失った。


   ◆◆◆


(何…が……)

それは、美穂子も同じだった。
目が見えない。音も、聞こえない。
驚いて自分が叫んだ声すら、聞き取れなかった。
凄まじい閃光と轟音で、視覚、聴覚が麻痺させられたうえに脳にまでダメージを及ぼし、嘔吐感を訴える。
しかし身体に外傷は無い。あれだけの爆発なら、破片や爆炎が身を襲うに違いない。そう考えたのだが。

閃光弾(スタングレネード)。
視覚と聴力を無力化することにより、対象から戦闘能力を奪う。
強烈な光は目を焼き付かせ、肌を叩くほどの大音響は聴覚異常を引き起こし無音状態に陥れる。
未経験の相手ならばほぼ確実に戦闘不能状態に叩き込む光と音の一斉攻撃。

それを美穂子はまともに喰らった。
その所為で今も前後不覚状態になっている。
回復には、いささかの時間がかかるだろう。

しかし、この点で注意すべきことはこの攻撃の対象は美穂子では無いという所だ。
これに関してだけ言えば、彼女はあくまでも巻き込まれた者に過ぎない。
そう、これを繰り出した者には、本当の狙いがある。

「ぐ……ふ……」

口から血が漏れる。
自ら出した声すら分からない。
しかし、口の中の血の味は確かに実感できた。
そして自身の胸を貫く鋭い感触。
何が起こっているかは、見るまでもない。
487Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:06:20 ID:yud8U8Qb

為す術もなく地面に倒れ伏す。
同時に凶器は胸から引き抜かれた。
だくだくと血溜りが広がっていく。

彼は、認識を誤った。
          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
あれを爆弾だと理解してしまったが故に、全身を投げ出して飛び退いてしまった。
しかし、それも自らの目を光が覆った時に気づく。
爆弾とは、敵味方構わず周囲を爆破するもの。
投げた当人が至近距離にいれば、それは自殺行為というものだ。
だから、あれは決して爆弾などではない。そう気づいたときには、もう遅かった。

一方、女は――ライダーはほぼ影響を受けていないようだ。
それも当然、使用した本人が使い方を分からぬはずもない。
目は眼帯があるので目を閉じるだけでよく、耳は両手でしっかりと塞いだ。
それでもゼロ距離ということもあってか聴力に関しては防御し切れてはいない。
そうなることは自明していたが、数分程度なら問題あるまいと考えたのだろう。


美穂子は、自分の腕が掴まれる感触をおぼえた。
明らかに男の手ではない。

「や、やめて…!」

当たり前だが彼女の視力はまだ戻ってはいない。
いつも閉じている右目だが、その程度で防げるような代物ではない。
訳もわからぬままずるずると引き摺られ、車外に放り出される。

被害を軽減できた右目だけが有様を彼女に伝える。
ライダーは彼女が装備していた二振りの刀を苦も無く奪った。

「……? これは…」

忍者刀に結わえられた紐を訝しむ。
だが、特に気にすることも無くそれを引きちぎった。

「何故です。使わないのなら、捨てておけばいいのに」

その問いも美穂子には聞こえない。
どうしようもなく無音の世界が続く。

「…まあいいでしょう」

そう呟くと、ライダーは美穂子の首筋に口を近づけた。
まともに戦うには、まだ魔力は足りないくらいだ。
美穂子にしてみれば何をされるか分かったものではない。
ただ、物凄く嫌な予感がしただけだ。
自分も此処で殺される。その考えが、頭の中を廻っていた。
488Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:07:48 ID:yud8U8Qb

逃れようと必死にもがくが、身体を固められて殆ど動けない。
かろうじて動く手先足先も充分に届かないので意味が無い。
武器さえ持っていれば抵抗も出来るだろうが、それはできなかった。

ライダーの吐息が首にかかる。
それに対しての嫌悪感や何やらは感じている暇は無い。
ただ、得体の知れない恐怖。死に対しての恐怖が彼女を襲っていた。

「い…やだ……」

乞うように声を絞り出すが、ライダーには届かない。
彼女の意識は、そのまま飲まれるように消えて――

唐突に、ライダーの動きが止まる。
誰に向けたかも分からない命乞いが届いたのか。いや、それはあるまい。
ならば何故。

不意に、美穂子は自分の肌にぽたぽたと温かい液体が落ちるのを感じた。
それが何なのか、思い至るまでに少しの時間を要したが。

血。
それも目の前の女の。
美穂子は何もしていない。ならば、

「驚いた。致命傷だと思っていましたが……」

ライダーの右腕には深々と刀が突き刺さっている。
誰が放ったものか。それは後ろを見ればすぐに知れた。

立っている。
小十郎は、胸を穿たれながらも。
口から血を流しながらも、彼は立っていた。

「させねぇ……それ以上は、動くんじゃねえぞ……」

偶然にも、刺されば即死と思われる凶器を受けて、彼はまだ生存していた。
しかし死に体であることに変わりは無い。
血液は流れ出て意識ははっきりとしない。
だがその意志は、はっきりと燃えていた。
彼は、片倉小十郎はまだ終わってはいなかった。

ぞぶり、とライダーは腕から刀を引き抜く。

「殺してはいません。まあ聞こえてはいないでしょうが……」

決着をつけるべく、彼女も立ち上がる。
その、引き抜いた刀を構えて。
489Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:09:22 ID:yud8U8Qb

小十郎も、残りの内の一本を構える。
ぼんやりとしか相手は見えていない。
僅かにふらつきながら、相手を定めて。

対峙は一瞬だった。

「うおおおおおおおおっ!!」

そして、勝負も―――


   ◆◆◆



ライダーは、六爪を床に捨てた。
小気味良い音がホームに響く。

「それにしても、ここまでサーヴァントに対抗できる者がいたとは……」

腕に包帯を巻きながら、彼女は思う。
不意を突かれたり、制限の所為もあるだろうが、この男の強さは本物だった。
運が悪ければやられていたかもしれない。
しばらく傷が回復するまで休んでおいた方がいいかもしれない。
勿論、基本的には今までどおり行動するが、無理はしないということだ。

小十郎の血を吸い終えると、違和感を覚える。
電車が、何時まで経っても発車しない。

(おかしいですね。さっきはもっと早く出たように思えますが)

その答えはすぐに見つかった。
上部にある電光掲示板。そこに流れている文字を読めば理解できる。

「運行休止、か……あまり便利ではありませんね」

どんな事情があったのか汲み取る気にもならない。
興味が湧いたから獲物を襲う序でに乗ってみた。その程度の物でしかないからだ。
彼女ならば、徒歩でもさして支障は出ない。

ライダーは床でぐったりとしている美穂子を彼女のバッグと一緒に物陰に隠すと、そのまま立ち去った。

(運が良ければ生きて遭うこともあるでしょう。その時は、また血を貰います)

少しとは言えど、エネルギーが限られている以上下手に殺すのは忍びない。
そうするならば何処かに監禁するのが手だが、流石にそこまで煩わしい事はできない。
事実、運任せといったところか。

彼女はそのまま駅を後にした。






【片倉小十郎@戦国BASARA   死亡】
490Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:11:14 ID:yud8U8Qb

【F-5/駅付近/一日目/黎明】
【ライダー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、魔力充実++ 左腕に深い刺し傷(応急処置済み)
[服装]:自分の服、眼帯
[装備]:猿飛佐助の十字手裏剣@戦国BASARAx2 閃光弾@現実×2
[道具]:基本支給品一式x3、不明支給品x0〜6(小十郎から奪ったものは未確認)、風魔小太郎の忍者刀@戦国BASARA
[思考]
基本:優勝して元の世界に帰還する。
1:魔力を集めながら、何処かに結界を敷く。
2:出来るだけ人の集まりそうな街中に向かう。
3:戦闘の出来ない人間は血を採って放置する。
4:不思議な郷愁感


[備考]
※参戦時期は、第12話 「空を裂く」より前。
※C.C.の過去を断片的に視た為、ある種の共感を抱いています。
※忍者刀の紐は外しました。

【F-5/駅ホーム】


【福路美穂子@咲-Saki-】
[状態]:恐怖、意識不明、貧血
[服装]:学校の制服
[装備]:、ウェンディのリボルバー(残弾1)@ガン×ソード
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜1)(確認済み)
[思考]
基本:池田華菜を探して保護。人は殺さない
0:―――――。
1:電車で小十郎と共に工場地帯に向かう。
2:小十郎と行動。少し頼りにしている。
3:上埜さん(竹井久)を探す。みんなが無事に帰れる方法は無いか考える
4:阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら?
[備考]
登場時期は最終回の合宿の後。
※ライダーの名前は知りません。
※小十郎が死んだことをまだ知りません。

※六爪@戦国BASARAは小十郎の死体と共に放置されています。
491 ◆WWhm8QVzK6 :2009/11/12(木) 23:12:46 ID:yud8U8Qb
以上です。
感想、意見あればどうぞ
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:19:21 ID:TI5zyRg6
投下乙
ライダーさん恐いな。まさに蛇の戦いそのものって感じだった。小十郎は南無…。まあ結果的に護るべき者を護れたし酬いる所はあったな。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:37:46 ID:yMXk07fu

議論スレから報告

現在、予約凍結状態にある学校パートに関する対応が決定しました。
内容は議論スレを確認してください。
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:53:16 ID:gC6rZMK0
投下乙!
小十郎南無……唯一自重出来る貴重なBASARA勢が逝ったか
しかしこのキャプテン、放送時が楽しみで仕方ない……あれ?
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:10:18 ID:HiJG/7Pc
うわあああああああああああああああ
龍の右目があああああああああああああああああ
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:20:18 ID:ZVbHVFkl
小十郎……このロワでも屈指の漢が逝っちまいやがったよ。
六爪が死体と共に放置されたのなら、これはなんとしても筆頭に拾ってほしいな。
魂を受け継いでくれ……
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:29:51 ID:bLxFj9MZ
投下乙です

>(ふぁさっ)ひいっ! ◆0hZtgB0vFY
異世界の事に気付いたようで気付いていない微妙な状況か
でもカギ爪さんはもう既に死んでいるんだよなー

>Only lonely girl ◆WWhm8QVzK6
唯一まともなBASARA勢が・・・それにしてもライダーさん上手くやったな
キャプテンこのまま気絶したまま放送聞かない方が幸せっぽいな
498 ◆ref/sv0Ke5Fh :2009/11/13(金) 00:35:15 ID:UDuDMTtP
ゼクスさんとその他、投下します
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:36:02 ID:9JgUsZ7l
支援
500 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:36:21 ID:UDuDMTtP
あれ? トリが違う?
これでいいかな?
501届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:37:20 ID:UDuDMTtP

どんな世界でも明けない夜はないように、この殺し合いの舞台にも朝は訪れる。

爽やかな朝の陽ざしが美しい銀髪を輝かせ、吹く風が頬を撫ぜる。
武将、明智光秀は優雅な朝の散歩を鼻歌交じりに満喫していた。
光秀は朝の空気を確かめるように、大きく息を肺に吸い込む。
霞かかった空気もどこか心地よく感じられるようだ。

光秀にとってはいつも通りの爽やかな朝の風景である。
おかしな点などどこにもない。

ただ、強いておかしな点を挙げるとしたならば。

周囲に霞を張るのが、朝露ではなく赤い血飛沫であるということ。
辺りに響くBGMが小鳥の囀りではなく少女の悲鳴であるということ。
そして、血まみれの少女が逃げ惑っているということくらいだろう。

彼にとっての当たり前。
彼女にとっての惨劇悲劇。
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:37:28 ID:jIl2edfl
前話までのほのぼのは死亡フラグだったか。
右目さん南無。キャプテンはそのまま放送を聞かない方が……。
503届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:38:33 ID:UDuDMTtP



プリシラは逃げる。

戦うなどという選択肢はなかった。
彼女は優秀なヨロイ鎧乗りである。
曲芸染みたこともできるくらいには運動神経はいいほうだし、何よりトレースシステムを搭載しているブラウニーを操作する身体能力はなかなかのものだ。
だが、生身での戦闘経験などないし、何より最初に受けた腹部の傷が致命的だった。
いや、たとえ万全であったとしてもこの男には遠く及ばないだろう。

「さぁお逃げなさい! さもなくば死に追いつかれてしまいますよ」

言われずとも、プリシラは必至で足を動かしているが、優雅なまでに怠慢な動きの相手をまるで振りきれない。
まるで、自分の体ではないような違和感。
腹部の傷が深すぎて思うようにいかないのだ。

そんなプリシラの様子を嗤いながら光秀が右腕を振るう。
朝日を照り返し銀光が揺らめく。
プリシラの背から飛沫のような朱が舞った。

「これですよ、この血飛沫の色! 私が飢えていた、朱の色!」

光秀は避けるでもなく、真正面からシャワーのように血飛沫を浴びる。
その感触に愉悦に身を震わせ、光秀は踊るように身をくねらせた。

光秀がプリシラを殺すのはハッキリ言って容易い。
それだけのハッキリとした力量差がそこにはある。
だが、光秀はそれをしない。
より長くこの一時を愉しむために。
より長くこの彼女の命を愉しむために。

もはやこれは戦闘ではない。虐殺でもない。
光秀の血と肉の飢えを足すためのただの儀式だ。
故に、彼女は、ただの供物。
504届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:39:37 ID:UDuDMTtP

「ほぅら、足元がお留守ですよ」

プリシラの足に灼熱が奔った。
ドサリと無様にその場に倒れこむ。
足の腱が断ち切られた、逃げるどころか、もう立ち上がることも叶わない。

噎せ返る様な鉄の臭いが充満し、光秀の鼻孔をくすぐる。
死神が恍惚の表情を浮かべながらブルリと身を震わせた。

「脳髄まで痺れるような芳しい血の香り、ああ……愉しい愉しい、私は愉しい!!」

叫びながら、切り刻む。
倒れこんだプリシラの髪を皮膚を肉を神経を斬って斬って切り刻む。
死なないよう、ギリギリのラインを探るように。

「ッ…………ぁあ……!」

嗚咽の様な声がプリシラの喉奥から漏れた。

腹部からは命が赤い液体となって流れている。
熱い水が流れ出るたび体温が失われ、消えていく。
冷たい冷たい死が迫っていた。

「いいですねぇ。苦痛に喘ぐその表情、生きようともがくその執念。
 あぁ堪りません、獲物を追い詰めるのは実に愉しい!
 殺し合いとはまた別格の趣があります。なんて愉しい、殺したくない!」

光秀が叫ぶ。
その不愉快な声もプリシラの耳にはどこか遠くに聞こえた。
目が霞む、もう辺りに何があるのかもよくわからない。
痛みが和らいでいく代償に、感覚自体が消えていく。
意識にも霞がかかってきた。
白とも黒ともつかない何かに、思考が侵食される。
505届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:40:56 ID:UDuDMTtP

それでも、

死にたくない。

心の底からそう思った。

ヨアンナが、孤児院のみんなが待ってるのに。
私が子供たちを守らなくちゃいけないのに。
こんなところで、死ぬわけにはいかないのに。

なけなしの意識を振り絞り、ギリと歯を食いしばる。

死にたくないから逃げる。
いつだって理由は単純だ。

足は動かないから、地面を這って進んでいく。
その道のりに赤い道を造りながら。

ヴァン。
ヴァン。
ヴァン!

心の中に浮かんだ名を叫び続けた。

やっと再会したばかりだったのに。
まだ伝えてないことが沢山あるのに。

声に出したい想いは沢山あるのに。
言葉にならない声はどこにも届かない。

背後には、黒いタキシードの男ではなく、白い死神が迫っていた。
506届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:42:19 ID:UDuDMTtP



探るように音の確認していた一方通行が目を見開く。
それが確認終了の合図であると悟り、ゼクスはすかさず問いかけた。

「何が聞こえた一方通行?」

ゼクスの問いに、一方通行は舌を打って答える。

「チィッ。さっきのバカ女の悲鳴だ。
 あの女ァ。とンだガキの使いだったみてェだなァ!」

そう悪態をつくと、一方通行は足裏に能力を展開し、跳ぶように駆け出した。
音の方向から位置は特定できる。
距離は多少あるが、能力を使って加速すれば、そうは時間はかからない。

「待て、一人で動くな一方通行! 行くのなら私も共に、」

後方から静止をかけるゼクスの声を無視して一方通行はさらに前へと進む。
一方通行もゼクスが足手まといになるとは思わないが。
聞こえた声の様子からして、ゼクスの歩調に合わせれられるほど余裕はなさそうだ。

「スグに終わらせるからよォ! そこで大人しく待ってろゼクス!」

後方のゼクスにそう告げると、一方通行は疾風の如く駆け抜けた。
その背は一瞬で小さくなり、あっという間に目で追えない場所へと消えていった。
507届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:43:58 ID:UDuDMTtP

「……まったく、場所も告げずに駆け出されてはな。
 これでは追うことも、合流の仕様もない」

それを見送り、取り残されたゼクス・マーキスは一人ごちた。

ゼクスとしてもあとを追いたいのは山々だったのだが、駆けだした一方通行の速度は人間の足で追っていけるものはなかった。
一方通行の後を追って結果、すれ違いになっては本末転倒である。
先程プリシラに同じ注意をした手前、うかつに動くわけにもいかない。

ここは一方通行を信じて待つのがベストだろう。
とはいえ、彼に限って心配はいらないとは思うが、時間制限がある以上、不安は残る。
それ以前に彼が素直に自分のもとに戻ってくれるという保証もないのだが、それを含めて信頼するほかない。

だが、いつまでも待ちぼうけをしているわけにもいかないのも事実だ。
もう時期、最初の放送の時刻である。
それまではここで待ち、放送を終えても一方通行が戻らなかった場合に方針を決めよう。
彼を探すのか。
この場での合流を諦め、別の場所へ向かうのか。
最悪、第三放送まで無事でいれば合流できるはずである。

そう考えてゼクスは静かに一方通行の帰りを待った。

【D-6/デパート/一日目/早朝】
【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:軍服
[装備]:真田幸村の槍×2
[道具]:基本支給品一式
[思考]
0:一方通行を待つ。第一放送までに戻らなければ別の方針を決めるく
1:リリーナを探す
2:一方通行を……
3:第三回放送の前後に『E−3 象の像』にて、一度信頼出来る人間同士で集まる

[備考]
* 学園都市、および能力者について情報を得ました。
* MSが支給されている可能性を考えています。
* 主催者が飛行船を飛ばしていることを知りました。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:44:56 ID:bLxFj9MZ
 
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:45:00 ID:7aUMJDpd
支援
510届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:45:12 ID:UDuDMTtP



「ん?」

プリシラの苦悶の様を上機嫌で鑑賞する光秀が何かに気付き動きを止めた。

直後、突風が吹いた。

惨劇の間に彗星ようにその場に現れたのは狂ったように白く、歪んだように白く、澱んだように白い影。
学園都市最強の超能力者、一方通行である。

急停止した一方通行はちらりと光秀を一瞥する。
その口元に浮かぶのは薄気味悪い笑み。
見たところで嫌悪感しか浮かばない。

一方通行は早々に光秀から眼を反らし、足もとに視線を移した。
地面に引かれた赤い道筋をたどれば、そこには縋り付くように地面を這いずるプリシラの姿があった。
その目の焦点はあっておらず、見えてもいないのか、一方通行の到着に気づく様子もない。
もはやまともな意識があるかも怪しいところだ。
どう見ても死ぬ直前。
誰が見ても手遅れだった。

「悪ィな。俺はお前を助けねェ」

そんな彼女に向けて、一方通行はそう告げた。
助けられないのではなく助けない。
彼女に聞き取れるだけの意識があるかは不明だが、残酷なまでの最後通告だった。

一方通行の能力であるベクトル操作を使えばプリシラの延命は可能だ。
血流を操作すれば破れた血管の代りを果たすこともできるし
生体電気を操作すれば心肺機能の強化し生命活動の維持を補佐することもできる。

だが、それも気休めにしかならない。
普段ならともかく、能力に制限時間がある以上、延命できて15分。
それまでに奇跡的な治癒方法を探せるとは思わないし、『冥土返し』のような名医に都合よく巡り合えるとも思えない。
そんな奇跡に期待するほどロマンチストでもない。
救えない命に執着して限られた能力を浪費するほと感傷的な性格でもない。

あの無能力者(レベル0)ならどうしただろうか。
ふと、一方通行はそんなどうでもいい事を思った。

「み……、…ヴ………ァ…………。」

プリシラの口から掠れた呟きが漏れた。
だが、それまでだ。
それ以上は、パクパクとプリシラの口が動くばかりで、声は言葉になりきれず消えていく
呟きは風に流される。
誰の耳にも届かない。
届かない声。
伝わらなかった言葉。
それだけを残して、少女の命の炎が消えた。
一方通行はプリシラに背を向けたまま、ただその気配だけを感じていた。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:45:45 ID:bLxFj9MZ
 
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:46:28 ID:bLxFj9MZ
 
513届かなかった言葉 ◆Wf0eUCE.vg :2009/11/13(金) 00:47:50 ID:UDuDMTtP
「おや? もう死んでしまわれたのですか、もったいない。
 もう少し愉しみたかったのですが。やはり脆いですね、人間というのは。
 まぁいいでしょう。次の獲物が自ら来てくれた。
 んふふふ。愉しみですねぇ。貴方は一体どんな味がするのでしょうか?」

光秀は嗤う。
少女の死なぞ気に留めず、次の期待に胸を躍らせながら長い舌を伸ばし血色の悪い薄紫の唇を舐めずる。
スンスンと光秀が鼻をならす。

「あぁ、血の臭いがしますね。貴方からは私と同じ拭いようのない大量の血と臓物の臭いが。
 んふふふ。こんな場所で貴方の様な同類に逢えるだなんて夢のようだ。
 貴方も私と愉しみましょう、夢のように愉しい殺し合いを!」」

鋭敏な光秀の嗅覚がその臭いを感じ取った。
辺りに漂うプリシラの血の臭いではない。
一方通行から感じ取れるこの臭いは被害者のそれではない。
加害者のそれだ。
一方通行にしみ込んだ、拭いようない殺人者の匂い。
自分と同じ血と臓物を好む畜生外道の匂い。

美しく光る白銀の髪。
血溜まりの様な真紅の瞳。
不健康なまでの白い肌。
そして身に染みついた血の臭い。
闇の世界に生きるどうしようもない悪党。
光秀の言うとおり、対峙する二人はどこまでも似通っていた。

「はン。テメェ何ぞと一緒にすンなよ、三下」

だが違うと、一方通行はそれを否定する。

「確かに俺もお前もクソったれの悪党だろうよ。今さら綺麗事をほざくつもりもねェ」

一方通行は正義の味方でも何でもない。
実験のためとはいえ一万人の妹達(シスターズ)を虐殺した殺人者だ。
そんな男が、少女の悲鳴を聞きつけ駆け付ける事自体がそもそもオカシイ。

どんな状況でも都合よく駆けつけて全てを救う。
そんなのは正義の味方のやる事だ。

「けどな、それがこいつが殺されていい理由にはなんねェだろうがァ!
 俺とお前がクズだってことが、誰かを傷つけていい理由にはなンねェんだよ!」
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:49:17 ID:bLxFj9MZ
 
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:49:58 ID:bLxFj9MZ
 
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:51:12 ID:wRqmmtiX
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:51:20 ID:qOjL5Eqb
支援
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:51:22 ID:7jjEYc1L
 
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:52:25 ID:PirbBKl2
いったれ!ひとかたさん!
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:52:34 ID:bLxFj9MZ
 
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:52:54 ID:wRqmmtiX
代理投下いきます
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:53:35 ID:9JgUsZ7l
プリシラ…
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:53:45 ID:bLxFj9MZ
 
524届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:54:26 ID:wRqmmtiX
正義でなくとも。
悪党であろうとも。
それが誰かを見殺しにしていい理由にはならない。

プリシラは表に生きる人間だった。
光の世界に生きる人間が闇の世界に生きる人間の喰い物にされる。
それが一方通行には気に食わない。

「テメェが『あいつ』の脅威になるかもしれないってンならよォ」

一方通行が能力を解放する。
これまで部分的にしか使用していなかった能力の制限を解き、膜を張るように全身に能力を張りめぐらせる。

相手が光を食らう闇ならば。
一方通行は闇を食らい続ける悪になる。

慈悲もなく、容赦もなく、寛容もなく、更生の機会すら与えず。
理に適ってるって理由だけで、迷わず武器をとり凶漢をブチ殺す。
そんなのは善人じゃない、似たような悪党だ。
そして、一方通行はそれでいい。

守りたいものを守るためならば、敵対するものを容赦なくぶち殺し。
必要とあらば善人であろうと容赦なく切り捨て。
必要ならば守りたい相手とすら敵対する。

それが悪党としての一方通行の生き方だ。

「この場でさくっとブチ殺してやンよォ―――――三下ァ!!」

525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:54:45 ID:bLxFj9MZ
 
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:55:41 ID:bLxFj9MZ
 
527届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:55:45 ID:wRqmmtiX

ゴバッ!! と爆発音じみた音を立て、一方通行が地面を踏みつけた。
たった一歩の踏み込みで一方通行の体は弾丸の如く加速する。

愛鎌、桜舞を構え、迎え撃つ光秀。
飛来する一方通行の勢いは確かに速い。
だが、その程度の動きを戦国の世を生きる武将が一人、明智光秀が捉えきれないはずもない。
向かい来る一方通行は、斬って下さいと言わんばかりの正面突破。
獲物の首を眼前に差し出され、堪え切れる光秀ではない。

「お望みとあらばッ!!」

応えるように死神の鎌が揺らめいた。
かつて甲斐の虎すら打ち取った必殺の一撃が一方通行の白い頭を赤い柘榴に裂かんと振り下ろされる。
前方に突撃する一方通行には避けようのないタイミングである。
そもそも光秀の放った一撃を避ける技量は一方通行には存在しない。

いや、それ以前に、避ける必要性自体がないのだが。

「な………………っ?」

戸惑いの声は光秀の喉から漏れた。
一方通行の頭部に振り下ろしたはずの鎌の穂先が真上へと跳ね上がった。
防がれたというより弾かれた。
弾かれたというより跳ね返された。
直撃したはずの一撃が防御や回避ではない別の何かによって防がれた。

理解の埒外。
不可解極まりない現象だ。
光秀の知る以外の何か。
まるで妖術や何かの類である。

これこそが異能。
これこそが超能力。

超能力開発を目的として設立された学園都市、最凶にして最強の超能力者(レベル5)、一方通行。
その能力はベクトル操作。
この世界のあらゆる物理法則を繰る超能力である。
全身に張り目がらされたその力は、あらゆるベクトルを”反射”する。
いかに強力な一撃であろうとも単純な物理攻撃が一方通行を捉えられるはずもない。
制限下でなければ、たとえ核兵器が直撃しようとも、彼はかすり傷一つ負うことはない。
528届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:56:38 ID:wRqmmtiX

「無様にスッ飛ンでろォ、三下ァ!」

強引に光秀の懐に飛び込んだ一方通行が無造作に足を振り上げる。
鍛錬を積んだ武術家のような洗練された動きではない。単純で直線的な素人の蹴りだ。

だが、その素人の一撃は彼の能力、ベクトル操作によって一転。
凶悪な破壊力を秘めた必殺の一撃へと昇華される。

蹴りにより発生する衝撃を一点に集中、さらにそれを敵を穿つように加速させる。
攻撃を跳ね上げられ体制の崩れた光秀にその一撃は避けられない。
それでも咄嗟に腕を十字にクロスさせ光秀は蹴り足を受け止める。
蹴りを受けた腕の骨がミシミシと軋みをあげた。
衝撃までは殺しきれない。
堪え切れず、光秀の体が空高く宙を舞った。

それを追って、一方通行が地面を蹴り跳躍する。
脚力のベクトル変化だけではない。
風を操り暴風を更なる推進力として、天高く舞い上がるロケットの如く一方通行の体が打ち出させた。

「…………甘いですねッ!」

それを視界の端で確認した光秀が目を見開く。
光秀は体勢を立て直すのではなく、グルンとしなやかに身をよじり、体を軸に鎌で円を描くように空中で回転した。
空中にて振りぬかれた桜舞が半月のような弧を描く。
死神の鎌が狙う獲物は当然の如く一方通行の首一つ。
それは自らの落下速度、一方通行の上昇速度まで計算に入れた完璧なタイミングの一撃である。
この状況と体勢で正確に首を狩りに行く執念と技量は驚嘆に値する。

だが、

一方通行の首元に触れた瞬間、刃の勢いは”反射”される。

放たれた威力をそのままに。
否、それ以上のベクトルを付加して、衝撃を使い手に反転する。

「くぅ…………っ!」

すさまじい衝撃が光秀の手首に圧し掛かる
光秀は刹那の判断で桜舞を握る腕から力を抜き、その衝撃を桜舞へと一任する。
衝撃を流された桜舞が明後日の方向へと弾き飛んだ。
だが、その判断は正しい。
あとコンマ1秒手を離すのが遅れていたら光秀の手首はへし折れていただろう
難を逃れ、息をついたのも束の間、

遥か空を見上げた光秀の眼前には、固く握りしめた拳を振り上げる一方通行の姿が。

叩きつけるように振り下ろされた拳が、光秀の腹部直撃する。
降り注ぐ隕石の如き勢いで光秀が地上に向かって墜落した。
遅れてかち割られた鎧の破片がパラパラと宙を舞った。

地を震わす轟音。
大量の砂埃が巻き上がり、落下点を中心に小さなクレーターが生み出される。

都合二発で文字通り相手を沈めた一方通行は、光秀とは対象的に落下のベクトルを操作し音もなく地面に着地する。
その実力は圧倒的だった。
一方通行には傷一つない。
様々な能力者が犇めく学園都市で頂点を極めるその実力は伊達ではない。
529名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:57:07 ID:7jjEYc1L
 
530届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:57:22 ID:wRqmmtiX
だが、

「…………ンフフフ」

様々な兵の蠢き覇を狙う、戦国の世を生きるこの男も、当然の如くこれで終わりなはずもない。

「フフフフフフ。ハハハ、フハハハフフハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
 クククク、フヒヒヒ、ウフフフ、フハハハハハ。ンフフフフフウフフウフフ!!
 ウフフフフ。アヒャヒャ、クフフフフフフ。クケケケ。ウハハ、ウッフッフ!!!
 フハフハ。ウフフウフフフ。ンフフフ、フフフハハウフフ。アッーハハハハ!!!!」

砂ぼこりの奥から嗤い声が響いた。
聞く者に怖気と不快感をもたらすような、粘ついた嗤い声が。

「――――――――素晴らしい」

風が吹き、砂埃が晴れる。
その先に見えたのは全身にぶちまけられた誰のものともつかない赤に病的なまでに白い肌。
そこには鎧を砕かれ上半身裸で両腕を広げた、血濡れの白い死神が立っていた。

「素晴らしい!! 素晴らしいですよ貴方!
 あぁッ! 痛い! 痛い! 私、このままでは達してしまいそうです!」

頭部からドクドクと血を流しながらゾクゾクと身を震わせ光秀は歓喜に喘ぐ。
自らの負傷を一切に気にする様子は一切ない。
むしろ痛みを愉しむように嗤いながら喘ぎながら身をくねらす。

「……………………」
「きゃん…………!」

そんな光秀めがけ、一方通行は無言で足もとの小石を蹴っ飛ばした。
特に意味はない。
強いて言えば、近づきたくない程度に気持ち悪かったからだ。
気にするでもなく、光秀は投石によって仰け反った上半身を体のしなりで跳ね起こす。

「うふふふ。痛い、痛いですねぇ!
 あぁ……この痛みを、もっともっともっと味わいたいところなのですが、ここは引いておきましょう。
 弾き飛ばされた桜舞も探さなくてはならないし、貴方を味わうのはもう少し後、前菜を食らい尽くしてからにいたしましょう」

そう言って光秀は後方に跳んだ。
その動きに負傷による鈍りは感じられない。
むしろ生き生きとしているようにも感じられる

「私は明智光秀と申します。貴方のお名前をお尋ねしてもよろしいですか?」

「あァ? 逃げられると思ってンのか?
 これからくたばる野郎に、ンなもん答えても意味がねェだろうがァ」

そう言って、光秀にとどめを刺すべく、一方通行が地面を蹴り出した。
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:57:27 ID:bLxFj9MZ
 
532届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:58:24 ID:wRqmmtiX
「ッ!?」

だが、加速は生まれず、代りに一方通行の膝がガクンと崩れた。

「おや? そちらもそちらで何か事情が御有りの様だ。
 それではまた相見えましょう、貴公とはまた会えると確信しております。
 その時は互いに万全であることを祈っていますよ」

そう言って明智光秀はその場から姿を消した。

それを忌々しげに見送った一方通行は、チッと舌を打ちながら体勢を立て直した。
彼が膝を崩した理由は明快、踏み込んだ感触が想定値とあまりにも食い違ったから。
有体に言うと、能力の使用制限時間が切れたのである。
一方通行自身は確認できないが彼の首輪は既に――使用不可能――赤を示していた。

「冗談じゃねェぞ、早過ぎンだろ、クソッ」

移動を含めたとしても15分には達していない。
能力の消費が予想以上に早すぎる。
全力展開すれば一分と経たず燃料切れ。
普段無意識に行っている全身展開でも五分と持たない。
とはいえ、部分展開では今回の様な無茶な戦い方はできないだろう。
これはいよいよ本気で効率のいい能力の運用を考えなければならないようだ。

ふと視線を落とせば、事切れたプリシラが目に映った。
天真爛漫だった少女の面影はそこにはない。
美しかった桃色の髪は乱雑に切り刻まれ。
白く健康的だった肌は血の気が引き青白く染まっていた。
別に無惨な死体は見慣れてるし、それ自体に嫌悪も思うところもないのだが。
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:58:29 ID:bLxFj9MZ
 
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:59:21 ID:7jjEYc1L
 
535届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 00:59:19 ID:wRqmmtiX

「チッ…………面倒なもンを預かっちまった」

そう、一方通行は悪態をついた。

プリシラが事切れる直前に呟いた言葉にすらなりきれない声。
彼の能力ならば、あの瞬間に限定して彼女の喉の震えに集中すれば、声にならない声を聴きとることはそう難しいことではなかった。

声にならなかった言葉。
彼女の最後の言葉。

別にわざわざ相手を探しだして伝える義務もないし必要性も感じない。
が、たまたま、偶然、道中で会うことがあったなら、伝えてやってもいい。
その程度には思う。

一方通行の耳に届いた、届かなかった言葉を。

【プリシラ@ガン×ソード 死亡】

【C-6/草原南東部/一日目/早朝】
【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康 能力使用不可能
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、缶コーヒー×24、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考]
1:このゲームをぶっ壊す!
2:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)
3:機会があればプリシラの遺言を伝える
[備考]
※知り合いに関する情報を政宗、ゼクス、プリシラと交換済み。

『一方通行の能力制限について』
【制限は能力使用時間を連続で15分。再使用にはインターバル一時間】
【たとえ使用時間が残っていても、ある程度以上に強力な攻撃を使えば使用時間が短縮されます】
【今回の使用はあまりに過度の能力だったため、次からは制限される可能性があります】
* ゼクスのいた世界について情報を得ました。
* 主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。
* 飛行船は首輪・制限の制御を行っていると仮説を立てました。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:59:54 ID:bLxFj9MZ
 
537届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 01:00:15 ID:wRqmmtiX


「嬉しいですねぇ、愉しいですねぇ。
 生きてきてこれほど嬉しいと思ったことはありません。
 信長公以外にも私をコレほどまでに昂ぶらせる御馳走が沢山あるだなんて!」

次なる獲物を求めて光秀は野を駆ける。

信長公に出会うまでの口慰みとして、つまみ食いを繰り返してきたが。
なかなかどうして、この場にいるのは極上の獲物ばかりである。

死神の目を持つ少女。
獅子の気迫を持つ少女
自らの与り知らぬ力を操る少年。
はたしてこの舞台にはあとどれほどの魑魅魍魎が蠢いているのか。

「愉しみですね、想像しただけで私、気絶してしまいそうです!」

傷つけることも。
傷つけられることも。
殺すことも。
殺されることも。
生きることも。
死ぬことも。
全て等しく光秀にとっての愉悦である。

まただ見ぬ兵は何処や。

【C-6/北部/一日目/早朝】
【明智光秀@戦国BASARA】
[状態]:ダメージ(大)疲労(中)ヘブン状態
[服装]:血まみれ、上半身裸
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式 、信長の大剣@戦国BASARA
[思考]
1:一刻も早く信長公の下に参じ、頂点を極めた怒りと屈辱、苦悶を味わい尽くす。
2:信長公の怒りが頂点でない場合、様子を見て最も激怒させられるタイミングを見計らう。
3:途中つまみ食いできそうな人間や向かってくる者がいたら、前菜として頂く。
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 01:01:37 ID:bLxFj9MZ
 
539届かなかった言葉 ◇Wf0eUCE.vg氏代理投下:2009/11/13(金) 01:01:52 ID:wRqmmtiX
投下終了。
このSSはゼクスさんにひどいことしたよね(´・ω・`)
ダメもとで本スレ投下に行って普通に投下できてビックリしたのは秘密だ












ヘヴン状態wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
そしてプリシラぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああああああああああああ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 01:04:39 ID:7jjEYc1L
投下&代理投下乙ー

ヘブン状態ってwwwwwww明智さんパネエっすwwwwwww
プリシラ救えなかった一方さんもかっけえ……!
そしてゼクス置いてけぼりかよwwwww
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 01:13:08 ID:jIl2edfl
おい、鬱も燃えもあったのに『ヘブン状態』に全部持ってかれたぞww
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 01:16:38 ID:bLxFj9MZ
投下乙です
最後の光秀の状態表「[状態]:ダメージ(大)疲労(中)ヘブン状態」
ヘブンしちゃったよwwwww
その一方でプリシラの延命処置を無駄と切り捨てる一方さん、こちらもさすが
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 01:20:48 ID:PirbBKl2
しかしまぁ制限きついなぁ一方さん
光秀が光秀足りえなかったら死んでたやん
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 02:41:22 ID:zDbFVRXx
皆さま、投下&代理投下乙です

>(ふぁさっ)ひいっ!
とりあえずここは合流か、しかし同士はもう…
しかしここの書き手諸氏はファサリナの動かし方が巧い

>Omly lonely girl
小十郎、逝っちまったか…
貴重な自重できる人が、でもアンタはかっこよかったぞ!
キャプテン…そのままのびてた方が君にとっては幸せなのだろうが、そうもいかないんだろうな(´・ω・`)

>届かなかった言葉
プリシラ…結局間に合わなかったのか…
一方さんかっけー、ゼクス(´・ω・`)
そして光秀、お前はいい加減自重というものをだな
お前にはキメェという言葉すら生ぬるい
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 03:13:13 ID:p64K6RIM
中の人はアニ2でもピンク髪にひどいことしたよね>明智
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 03:54:15 ID:jIl2edfl
そういやニコ兄も速水だったな
547名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 04:40:33 ID:0YAIziWh
平沢唯、船井譲次、東横桃子、張五飛 代理投下します
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 04:42:24 ID:0YAIziWh
「とっ! やっ! はっ! 」

振りかざす両腕は空を切り……吐き出される息は喝を生む。
許されざる悪党どもを、血塗られしこの手で刈らんと燃ゆ。

「ちぇすとーっ! 」

与えられる任務は絶対服従……しかしそれらのほとんどは命を捨てる覚悟で望まねばならぬものばかり。
闇に生き、月光に染まり、死線に酔うくの一。されど傍目には軽薄で能天気な女にしか見えない……!

「はい!ほい!はい!ほい!はーい! 」

女忍者ヒラサワ・ユイ。
悪の暗殺集団『化夷怨舞』の抜け忍である彼女は、毎日が追手と戦う日々。

「はいはいはいはいはいだらー! 」

表の職業は寺の住職タクアン和尚。正体は上流階級の名士たちを金で操る珍問屋、ハッピー・ツムギ。
猫の妖怪『猫又』の血を引く半人半妖のカギ爪使い、ナカノアズニャー。
光り輝く額とカチューサ。吉原を牛耳るイタリア帰りのマフィア、リッチアーノン・タイナッカー。
柳のように垂れた黒髪で結ばれた弦楽器。それは死への誘い。三途の川からの甦り“閻魔少女”ミオ。
正体不明。相手の戦闘スタイルを真似て殺すことを身上としている。“ドッペル”ウィー。

「滅っ! 」

それでも彼女は情に流されることなく、昔の仲間に決別を誓う。


組織は彼女に軽蔑の念をこめて――『利意奴擬他』と呼んだ。


 ◇ ◇ ◇
549代理:2009/11/13(金) 04:45:44 ID:0YAIziWh
(――ナレーションをつけるなら、こんな感じッスかねぇ)

ことわっておくが、上の説明文は当然ウソ……!
『化夷怨忍者ヒラサワ・ユイ』はフィクションであり……関係者、団体名、その他一切関係ありません……!
東横桃子が平沢唯の動きに合わせて喋った……!
唯がガンダニュウム合金で作られたカードを振り回す姿が、忍者のように見えたから。
とどのつまりアテレコっ……!

「どっからでも、かかってきなさい! 」

天然……まっこと天然の女……!
バトルロワイアルの状況下においてこの体たらく……!
カードと戯れるあまり本分を見失う……まさに現実逃避……しかも無意識……!

(早く部屋から、出してほしいッスよ)

そのおかげで東横桃子は出られなくなってしまった。
彼女たちがいる衣装部屋の扉は1つだけ。その扉の前で唯が踊っているのだ。
ステルス能力に長けていれど、ドアの前で遊ぶ人間に気づかれないようにドアを開けるのは難しい。
万が一、唯の手がたまたま桃子に当たってしまったら、ご破算である。

(窓から部屋を出るのも……今はダメッスね)

窓ガラスに頬をぴったりと当てる桃子。
ひんやりとした感触と、かすかに伝わる振動。きっと外が騒がしいせいであろう。
町中に流れる、大規模な放送。締め切った部屋にいる桃子たちには、内容を正確に聞き取ることはできない。

「あうっ!? 」

何と何かがぶつかり合う音。
桃子はそれがドアとドアの前にいた人のせいとわかっていた。

「……何をしとんのや唯さん」

ノブを握りながら、船井が拍子抜けしたように唯を見下ろしている。
後頭部を抑えながら、尻餅をついている少女は、笑ってごまかすしかなかった。


 ◇ ◇ ◇
550代理:2009/11/13(金) 04:46:32 ID:0YAIziWh

「ええー! さっきの音って放送だったんですかぁ!? 」
「俺も最初からしっかり聞いとったわけやない……が、ちょっと気になってな」

素っ頓狂な反応にすっかり慣れてしまったのか、船井は淡々と会話を続ける。
彼が話題にあげたのは、謎の人物からの大規模な連絡。彼は知る由もないが――張五飛の通信についてだった。
自分たちが聞いたのがバトルロワイアルにおける放送連絡だったなら、なぜ定時に流れなかったのか。

「ど、ど、どうしよう……私、全然聞いてなかった」
「まあ大事な放送なら、どっかで記録ぐらいはされとるやろ。オレもしっかりした内容をもっかい聞いときたい」

船井は放送に重要性があると判断。
放送内容がもう一度確認できそうな施設へ向かうことを決意した。
あわよくば、その施設から放送が流されているかもしれないからだ。

「ついでに、人探しもやっとくで」

暗闇の町中に、一台の乗用車が進行中……運転手は船井譲次っ……!

「唯さん、ほんまに忘れ物はないな? 」
「はいっ! 大丈夫ですっ」

一通り民家を調べ終えた船井組、各々手に入れたした品を回収……!
一行は民家に隠されていた乗用車を発見し……使用することを決定……!
一見すれば、自らの存在を知らしかねない騒音の散布……しかし船井は発想を逆転……!
一人の人間を探すのではなく……向こうから探させることで手間を短縮っ……!

「こんだけ広い土地や。いぶり出すくらいせんと」

この土地に招待されたものの……いきなり殺しを強要されて、殺せるわけがない……!
むしろ迷い……困惑し……うずくまる……何も出来ずに……!

――そこへ現れる一筋の光っ……!

船井組の車を見たものは皆気づく……現実に引き戻される……!
仲間を探す者が出てくる……平沢唯のように……!
あるいはどこかへ逃げる者もいる……隠れていても意味のない状況と悟り……!
わずか一日分も満たない食料……同じ場所に隠れ続けることは至難の業っ……!
飢餓と渇きと不安に押しつぶされそうになれば……しがみつくっ……誰かにしがみつくっ……!
とにかく、人間を動かす……これこそが船井組の狙い……!

「待ち合わせなら、ようわからん道よりデートスポットやろ」

人を探す者は……地図を見る……!
人と会う約束をするものは……出会いやすい場所を選ぶ……!
知らず知らずに動いてしまう……記載された目立つ場所に……!
こちらは先回りして待つ……向こうからやってくるのを待つだけ……!

「お友達、いるとええな」
「みんななら、ぜったい私を見つけてくれます! 」
551代理:2009/11/13(金) 04:47:55 ID:0YAIziWh
もし、このバトルロワイアルが船井譲次の想像するようなものだったら、この作戦は正しい。
『ただの一般人が1つの島に集められて殺し合いをさせられる。大企業が開催する闇の娯楽』。
これが現時点で船井が認識するバトルロワイアルの全貌だ。
最初から進んで殺しを行う者は、精神異常をきたしたか、その筋の者か……よくて全体の1〜2割。
超能力、魔法、未来の技術、異世界の介入などない。あくまで自分の常識を基準として使える悪夢。

船井も唯も、このバトルロワイアルの本質をまるで理解していない。

殺すことに何の躊躇もない人間……いや、人間どころか人外がいることを。
殺すことを前提として行動できる人間だらけの宴。
過去人、異世界人、超能力者などはいて捨てるほどいる。
彼らはまだ玄関の扉さえノックしていないのだ。

(確かに。街中でベンツ乗り回す人なんて、そうはいないッス)

後部座席に一人陣取り、窓ガラスから周囲を覗く、東横桃子。
車に乗り込むチャンスはいくらでもあった。
乗車する前から唯が大袈裟にベンツの周りで騒いでいたからだ。
唯にしてみれば高級車に乗る事はそれだけ新鮮味に感じたのだろう。
その挙動不審っぷりが船井にもスキを作らせてしまったのだ。

(それにしても……何でクチビルさんの名前が、載ってないんスかね)

“ベンツは帝愛側が用意したサービス。これくらいの援助はありえる”
船井の話では、彼の支給品の1つが『遠藤勇次のベンツの鍵』だった。
付属の説明書によると、船井が最初にいた場所からそう遠くない地点に隠されているとのこと。
しかし、それを立ち聞きにしていた桃子には、その言葉を素直に受け入れることは出来なかった。

(クチビルさんとサングラスさんは、裏で繋がってる――コンビ打ちかもしれないッス)

『遠藤勇次』は主催者として最初に現れた人物である。
その男の車のカギを、名簿に載っていない『船井譲次』が持って現れた。
船井は自らをリピーターと名乗り、しきりに逃げ道のありかを匂わせている。
桃子にとっては船井は、嘘つきっ……そんな認識を頭に抱え始めていたっ……!
552代理:2009/11/13(金) 04:49:24 ID:0YAIziWh

(……ん? あれってもしかして……)

しかしその刹那っ……!
まさにその刹那っ……!

「「(――バイク!? )」」

流れるっ……!
桃子の思考、流れるっ……!
いや、桃子だけではない……船井も唯も行き着く疑問はみな同じ……!
静寂を突き破らんと鳴り響く爆音……闇を切り裂かんと飛び出した黒い彗星……!
滞りなく進行していた平穏に、突如現われた一台のバイクっ……!

「しっかり捕まっとき! 」

いち早く危機を察知した船井がハンドルを回すっ……!
本来ならば……正面からやってくる車体に対して……急なハンドル操作は極めて危険……!
だがそこは船井……かつてはエスポワールを突破したリピーター……!
バイクが方向修正するどころか、むしろスピードを上げてきたのを察知……!
相手が正面衝突をも辞さない運転であることを看破……車線を大きくまたぎながら退避成功……すぐさま車を再度発進……!

「冗談やないでホンマ! 」
「船井さん!あの人、怪我をしているかも……」
「唯さん、今はそうも言ってられん。逃げるのが先や」
「へ? に、にげ――」

しかしバイク、いまだ危険な運転を止めずっ……!
再びをマフラーを吹かせて発進……獲物を逃がさんとばかりに船井たちを追尾開始……!
この事故は偶然ではない……バイクの狙いは最初から船井組……!
553代理:2009/11/13(金) 04:51:14 ID:0YAIziWh
「まったく何を考えとるんや! 」

相手の狙いがわからぬ船井……歯噛みすっ……!
無理もない。バトルロワイアルで、最初から殺人を前提に動く(可能性をもつ)相手と接触したのはこれが始めて……!
初体験……船井初体験っ……!
進んで殺しを行う者……バトルロワイヤルという船に人が簡単に乗りかかるとは……頭では信じきれない……!
一歩間違えば自分が死ぬかもしれない愚考を、平気で行う人間など、常識の範疇を越える……!
スピードを上げて逃げるベンツ……しかしそのわずか数メートル後を追うバイク……!
気がつけば、これはもはやカーチェイス……ベンツをバイクのカーチェイス……不釣合いなコラボレーションっ……!

「仮面っ……仮面っ……あの人っ……仮面っ……!」

ざわざわと騒ぐ唯の指示を受け、船井しっかり後方確認っ……!
バイクの運転手は仮面着用……素性を割ることは不可能……!

「なん……やと……!? 」

ここで船井に、電流が走るっ……!
バイクの運転手はハンドルから両手を離していた。
代わりに握っていたものは――拳銃。狙いはもちろん、ベンツ一択。

「いかん! 頭を伏せんかっ! 」

懸命にアクセルを吹かし、船井はベンツを走らせる……!
次なる目的地はタワー……エリアG-5に聳え立つタワーっ……!


 ◇ ◇ ◇


「…………」
「…………」
(…………)

静寂っ……!
どんなに切羽詰まった状況であろうと、終わってしまえばそれは過去……!
永遠に続くと思われた地獄のカーチェイスは、わずか数分で終了……!
追跡を諦めたのか、それとも発砲時に距離が開けたせいなのか……バイクはいつの間にか消失……!

「……………………」

船井組、生還っ……!
命からがらバイクをまくことに成功っ……! 現在地はG−5のタワー内部……!
すでにベンツを駐車場に置き、予定通りタワーの探索を開始……!

「……………………」

ちなみに、探索中の会話はゼロっ……まったくのゼロっ……!
この沈黙はベンツをタワーの駐車場に停車させてから、ずっと続いている……!
喜びを分かち合うことも無く……不平不満を出すことも無く……泣きべそをかくわけでもなく……!
せっかく生き延びたのに、誰も言葉を口に出そうとしない……!

(……………………)
554代理:2009/11/13(金) 04:53:35 ID:0YAIziWh
船井は……ベンツを止めた後、まず車の傷の具合を確認。
傷は、激しい運転をしたときについた掠り傷に加えて、銃痕を1つ発見した。
銃弾の当たり所は車の使用に支障をきたすものではなかったが、相手は走行中のバイクにまたがり発砲したのである。
その事実は、あのバイク乗りがいかに銃器の扱いに慣れているかを物語っていた。
船井の記憶には、バイクが突っ込んできたときの映像が焼きついている。
夜なのにライトも点けず真正面からきたバイク。何の躊躇もない……迫りくる狂気。

桃子は……ベンツが止まった後、すぐにペンを取り出して絵を作成。
名簿の隙間に即興でバイクの運転者の姿を書く。特に仮面を強調して的確に。
名前もわからぬ誰かとして、頭の隅に留めておくわけにはいかなかった。
桃子の記憶には、拳銃を発砲した男の覚悟がセンセーショナルすぎた。
余りにも非現実的な現実……これが真実であると受け入れるかのように、桃子のペンは狂気を描く。

唯は……ベンツを止めた後も、しばらく助手席で震えていた。
恐怖で体が金縛りになったあげく、彼女の耳が暴走を始めていたのだ。
道路をこするタイヤの音、無理な操作で生じたブレーキ音、マフラーの排気音、そして銃声。
すべての音が自分たちを追ってこないか――唯はそればかり考えていた。
その音が再びやってきたら、ついてきてしまったら、またあの人がやってくる。
どうしたらいい? どうすればいい? いや、どうにもできない。
自分はあの時、何をどうしていいかまったくわからなかった。だから、次も同じ。
絶望というほど落胆しているのではない。彼女の底抜けの明るさは、そうは狂気に落ちない。
しかし、それは現状察知能力に乏しいことへの裏返し。
ぬるま湯に放り込まれた蛙と同じなのだ……湯が沸騰しても……気づくことなく……茹だって死んでいく。
体は船井について行くのがやっと。彼女の耳は今も狂気に混乱している。

「ここや……! ええかんじに揃っとるな」

誰に聞かせるわけでもなく、船井が顔を見上げて、ぽつりとつぶやいた。
その場所はタワーにある1部屋。1階からエレベーターで登った先にある管制室。
最初に侵入したときに見た施設の掲示板をもとに、船井が探し当てた新たなる目的。
放送機器が充実ぶり、タワーに入る前に見た、屋上のアンテナ。条件は良好。

「これなら、どっか他の施設に連絡もできるかもしれん。唯さん、オレらはついとるで! 」

逸る気持ちを抑えて、船井は管制室のシステムを起動させていく。
きびきびと手際良く動く船井……まるで何かを忘れたがっているかのように。
パチ、とスイッチを押す右手は……汗でぐっしょりと濡れている……!
555代理:2009/11/13(金) 04:57:38 ID:0YAIziWh

――その時だった。


”突然の無礼を、まずは詫びよう。 私の名はゼロ。諸君と同じ、このバトルロワイアルの参加者だ”


衝撃っ……!
やっと……やっと逃げ切れたと思っていたのに……!
モニターからぼわっと……バイクの運転手登場っ……!

船井の操作が、一度送られたはずの通信データを管制室でリピートすっ……!
もちろん彼らは知るよしもない……!
この映像はタワーに来た人間が閲覧できるよう、張五飛が意図的に残していたものっ……!

“人々よ、我を恐れよ! 私はここに、諸君ら全員の抹殺を宣言する! ”

あっさりっ……こうもあっさりと宣言っ……!
まさかまさかの皆殺し上等っ……! 
その者の名前はゼロっ……正体不明の仮面の者ゼロっ……!

“諸君らが本当に『生きている』と、自らの行いが『正しい』と確信があるのなら――抗ってみせろ!”

ついさっきまで、自分たちを追いかけていた者は殺人者っ……!
伊達や酔狂ではない……物取りや冷やかしでもない……バトルロワイアルに生きるリアルな現実……!
余りにも唐突な突きつけ……!
何の反論もできずに……沈黙っ……船井たちは沈黙っ……!
なぜなら自分たちは……ついさっきまで……本物の死線を渡らせられていたのだ……!

ゼロの放送で移動を開始し……ゼロの追撃を受け……ゼロの存在を知らしめらた……!

てのひらっ……!
すべてはゼロの掌のうえっ……!


 ◇ ◇ ◇
556代理:2009/11/13(金) 05:19:02 ID:0YAIziWh
道路脇にバイクを止めて、五飛はヘルメットを外す。

「あやうく怪我をしそうになったのは、お互い様だ」

彼が語るものは、船井たちが運転していたベンツとの交通事故についてである。
タワーを後にした彼が、もう少しで正面衝突しそうになったのは偶然である。
慣れぬバイクの操作に手間取りながらの運転だったので、ライトの灯火を失念していた。
船井たちは無灯火のバイクを認識するのに、時間がかかってしまったのだ。
かろうじて緊急回避をしたので、怪我はなかったのだが……。

「少し、派手にやりすぎたか」

なんと五飛はこの偶然を利用することを思いつく。
進行方向を変えて船井たちを追い回し、彼らに殺意をもってつっかかったのだ。
最後の支給品である『ラッキー・ザ・ルーレットの拳銃』で威嚇射撃も行った。
代償として、運転しながら発砲したために、フルスロットルで飛ばしたベンツに逃げる余裕を与えてしまった。
常識で考えればこれは当然のことだ。
運転しながら銃器を扱うことは、普段の何倍も多大な集中力を消費する。
隙が生じてしまうのは仕方のないこと。

しかし、これで彼らは結果的に仮面をつけた男を危険人物として勘違いするだろう。
そもそも五飛は彼らと最後までやりあうつもりなどなかったのだから。

「さて……」

再びヘルメットをかぶり直して、五飛はエンジンをかけた。
神龍の次の獲物はいずこに。




【F−6/道路/一日目/黎明】

【張五飛@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:マリーメイア軍の軍服   分厚いマント
[装備]:ラッキー・ザ・ルーレットの二丁拳銃(銃弾1発消費)@ガン×ソード ゼロの仮面@コードギアス 刹那のバイク@機動戦士ガンダム00
[道具]:デイパック、基本支給品、干将・莫耶@Fate/stay night
[思考]
基本:オレが参加者の脅威となる!
1:殺し合いに乗ったものは倒す。
2:ゼロとして『戦う意思』のない者達を追い詰める。……それでも『戦う意思』を持たなければ――
3:人間の本質は……
[備考]
※参戦時期はEndless Waltz三巻、衛星軌道上でヒイロを待ち構えている所です。
※バイクはデュオの私物だと思っています。
※船井たちの顔をはっきりと確認できたかどうかはわかりません。

支給品解説
【ラッキー・ザ・ルーレットの二丁拳銃@ガン×ソード】
ラッキー・ザ・ルーレットがロシアンルーレットで使っていたもの。
リボルバータイプのため、銃弾の装填数は6つ。
予備弾薬が一緒に支給されているのかは不明。


 ◇ ◇ ◇
557代理:2009/11/13(金) 05:21:08 ID:0YAIziWh
 ◇ ◇ ◇


「唯さん、名簿を見せてくれへんか……!」

船井さっそく見直し……自分が調べた名簿ではなく……唯の名簿を見直し……!
ない……ない……ゼロという名などどこにも載っていない……!

「ワシの持ってる名簿も、唯さんの名簿にも、ゼロなんて奴は載っとらん
 早いとこ、手を打ったほうが――あっ」

この時船井は、ゼロに対し2つの可能性を考えていた。

1つ……ゼロは帝愛が用意した駒……殺すことになんの躊躇も無いプロっ……!
船井のように名簿に登録されていない、内通者でもある……!
いたずらに恐怖心を煽り、適度に間引きをする……いわば死亡者帳尻合わせの請負人っ……!
船井のようなリピーターとは似て非なるものだが……帝愛が用意することは道理っ……!
彼らは結局、弱者が慌てふためき無様な姿を晒すのを見たいだけなのだから……!
帝愛にとって厄介な人間をゼロに始末させれば……バトルロワイアルはスムーズっ……便利なゼロっ……!

2つ……ゼロは参加者の成りすまし……正体を隠して円滑の殺しを行なおうとする……これもプロっ……!
確実に殺しにかかるリスクと負担を減らすための雲隠れ……!
露骨なまでに相手を煽っていたのは……感情の矛先をゼロに向けるためっ……!
頭のおかしい快楽殺人者を仕立て上げ、何食わぬ顔で仲間を作ることも可能……!
善人のフリをしていれば……罪は全部ゼロが背負ってくれるのだから……!

「あっ……! ああっ! あっ……!」

そう思いかけていた船井に……再び驚愕が走るっ……!
目の前の通信システムを活用すれば、ゼロの存在を他の参加者に知らせるのは可能っ……!
だが忘れてはならない、ゼロの宣言を自分たちが知ったのは偶然っ……!
ゆえにゼロが何者であろうと、この情報はすべての参加者に知らされていないのは必然っ……!
ひょっとすれば、平沢唯のように聞き逃している者もいるかもしれない……!
わざわざこちらが『ゼロ』という情報を広めるには、リスクが伴う……!

「このサバイバルは持久戦やない……下手すると……超短期決戦……! 」

放っておけば、ゼロも、ゼロを利用する者もどんどん数を増やしていく……!
これはもはや狂言ではないっ……!
システムっ……! バトルロワイアルを活性化させてしまうシステムっ……!

(会場が偽ゼロだらけになってまう! )

ゼロの話を聞いて“しめしめ”と喜ぶ参加者を作ってしまったら……それはゼロの増殖を促す……!
最悪のケースは全参加者ゼロ状態……まさしく64 の キセキっ……!
それに現状ではゼロを話をしても誰も信じてくれない……逆に疑われるのが関の山っ……!


――そして……


(……知られてマズいのは悪い人だけじゃないッス)

東横桃子も迷うっ……!
彼女もまた船井と同じくゼロについて思案すっ……!

(ゼロさんのおかげで得をするのは、善人も同じ)
558代理:2009/11/13(金) 05:23:15 ID:0YAIziWh
ちらりと左を見る桃子……視線の先は平沢唯……混乱のあまり頭がパーンと弾けて、呆けてしまった平沢唯……!

(もし彼女がクチビルさんを、不慮の事故で殺してしまったとするッス。
 死んだのは“ゼロのせい”と言ったら……お友達は彼女を疑うッスかね? )

“私、実はゼロさんがいなくなるまで、何も出来なくて〜。な、なんて謝ったらいいか〜”

仮定っ……!
もし、無邪気な平沢唯が船井を殺してしまったケースに対し……起こりうる可能性っ……!

“気にするな唯。唯はわるくないよ! ”
”おねえちゃんは悪くないよ。おねえちゃんがそんなことするはずないもん”

真実が明るみにならない……!
心から信頼していた人間が殺人を犯していたとしても……違うと否定出来てしまうから……!

“そうです。悪いのは先輩じゃないです! 悪いのはゼロ!”
“唯さん、手をかしましょう。さあ、立ってください”

ゼロが罪を被ってくれるからっ……!
全部ゼロのせいっ……ゼロが悪いっ……ゼロの馬鹿っ……!
自分が信じている相手が犯罪をするはずがないと……!

“みんなでゼロをぶっとばしにいこーぜー! ”

疑いこそすれ……問い詰めようとは……簡単にはできない……きっとゼロのせいだから……!
楽だから……ゼロのせいであった方が都合がいい……傷つく必要もない……お互いに……!
あれは間違いだった……きっと何かの間違い……!


““““““おー!””””””
559代理:2009/11/13(金) 05:26:08 ID:0YAIziWh

後回し……
ゼロを憎むだけで……現実から目を背ける……!
憎むだけで後回しっ……ゼロが現われたら本気出すっ……!

「相変わらずえげつないことしてくれるわ……! 」

単純に殺し周る者よりは、騙し討ちを得意とする者のほうがゼロの恩恵を受けるだろう……!
だが、その人を騙してナンボの者よりも、ゼロに助けられるのは……善意の皮を被った者なのだ……!

船井は大きくため息を吐く。
帝愛という組織に対する侮蔑を、再確認させられたから。
それがまったくの勘違いとも知らずに。

『ゼロ』の情報が広まるほど……バトルロワイアルの人間模様が複雑になるのは確実……!
特にバトルロワイアルにノリノリな者ほど……自ら殺しに興じる者ほど……その影響を受ける。


罪を被せられる……だから乗っても損っ……!


「通信システムか――他の使い道……活路……見出せんか……? 」


船井、唯、桃子。
3人はバトルロワイアルに関してはまだまだ素人……!
神の視点など持つはずのない彼らの行動は、暗闇を迷うかのごとく……!

希望の船『エスポワール』のような攻略方法で挑めるほど、この殺し合いは甘くない……!
お膳立てされた通信システムに対し、彼らが取る次の行動は




吉となるか凶となるか……っ!
560代理:2009/11/13(金) 05:27:27 ID:0YAIziWh
【G-5/タワー管制室/1日目/黎明】

【平沢唯@けいおん!】
[状態]:健康
[服装]:桜が丘高校女子制服(夏服)
[装備]:ジャンケンカード(チョキ)@逆境無頼カイジ
[道具]:デイパック、基本支給品(+水1本)、ジャンケンカード×十数枚(グーチョキパー混合)、不明支給品x0-2
[思考]
 基本:みんなでこの殺し合いから生還!
 1:船井さんを頼りにする。
 2:友人と妹を探す。でもどんな状況にあるかはあんまり考えたくない……
 3:ゼ、ゼロ……? 殺し……?
[備考]
 ※東横桃子には気付いていません。
 ※張五飛の襲撃とゼロの演説で混乱しています。


【船井譲次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:ナイフ、コンパス。他にも何かあるかは後続にお任せ
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品x0-2 遠藤のベンツの鍵@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor
[思考]
 基本:優勝か別の手段か、ともかく生還を目指す。
 1:まずは唯の友人らを探す方法を考える。利用できそうなら利用する。 通信システムを使うかどうか迷っている。
 2:仲間を勧誘し、それらを利用して生還の道を模索する。
 3:絶対に油断はしない。また、どんな相手も信用はしない。
 4:嘘かどうかさておきゼロの情報は……大切せんとな。悪人も善人にも旨みがある。
[備考]
 ※東横桃子には気付いていません。
 ※登場時期は未定。
 ※ゼロの正体に気づいてません。



【東横桃子名@咲-Saki-】
[状態]:健康、ステルス
[服装]:鶴賀学園女子制服(冬服)
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品(-水1本)、不明支給品x1-3
[思考]
 基本:自分と先輩(加治木ゆみ)の生還を目指す。
 1:船井の策にこっそり相乗り。機を見て横取りする。ただし必要と感じるならステルス状態解除も視野に入れる。
 2:先輩を探す。または先輩のために武器、道具、情報を収拾する。
 3:信じにくいッスけど、ゼロの情報は……ヤバイッス。悪人も善人にも美味しいッス。
[備考]
 ※登場時期は未定。
 ※ゼロの正体に気づいてません。


支給品解説
【遠藤のベンツの鍵】
主催者である遠藤が乗っていたベンツ。
カイジがタイヤに傷をつけていたときのもの。
561代理:2009/11/13(金) 06:03:41 ID:0YAIziWh
名前: ◆zg9MHZIP2Q :2009/11/13(金) 04:30:08 ID:ux0Sumz2
投下完了しました。

タイトルは 乗り損・エスポワール・スタンダード です。

唯は呑気過ぎと思ってたら急展開だな
さすがにロワの恐ろしさがわかっただろうな
船井と桃はゼロの影響力を考え出したが次の一手はどう出るか?
しかしカイジ風ナレーションとか使うのが上手いな
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 10:25:08 ID:7KWAZiSd
まさに「これが現実だ」……
この恐怖を乗り越えられるかどうかが今後の命運だな
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 12:08:06 ID:o77sdIPL
そろそろ放送が流れるし、この不安定な状態でかじゅの死を知ったモモはどんな行動に出るかのう
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 14:09:39 ID:zDbFVRXx
投下乙です

ようやく唯船井組も動き出したか
それぞれが不安定だからもうすぐ流れる放送を聞いたらどうなるか…
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 14:43:01 ID:N1g+Tpyn
ところでいつまで東横桃子名になってるんだろうな、状態表w
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 15:10:57 ID:bLxFj9MZ
投下乙です
最初の女忍者ヒラサワ・ユイの下りで盛大に笑ったwww
特に「三途の川からの甦り“閻魔少女”ミオ」背丈違うけど姿格好ほぼそのままじぇねえかwww
後半のカーチェイスとのギャップが・・・

ところで『利意奴擬他』ってどう読むんだ?『化夷怨舞』が「けいおんぶ」っていうのは分かったんだが
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 15:12:18 ID:7jjEYc1L
リードギター、では
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 15:13:08 ID:BjyfHdRm
リードギター……?
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 15:22:03 ID:bLxFj9MZ
ああ、なるほど>リードギター
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 18:23:23 ID:UeoRdqoi
誤字報告
>>473
>全参加者に向けて戦線を布告する
戦線→宣戦
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 18:27:05 ID:XuahGBA5
採用不採用が交錯しまっくってwiki更新が滞っとるねしかし
10話以上未収録なんじゃないか?
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 18:40:43 ID:UeoRdqoi
>>507
>もう時期、最初の放送の時刻である。
もう時期→もうじき
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 19:41:13 ID:BjyfHdRm
>◆XIzIN5bvns氏
『大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE-』なのですが、まとめwikiで分割になるので
とりあえずこちらの判断で(1)(2)にわけて収録させていただきました。
分割点を指定いただければ編集し直しますので連絡をお願いします。


>◆X/RX3k8bNY氏
『ポーカーフェイス(Poker face)』『ポーカーフェイス(Poker face)2』なのですが、
これはwiki収録時はタイトル通りわけて収録すればよいのでしょうか?
それとも前半部分でのルルーシュの状態表を削って一作とした方がよいのでしょうか?
経緯を考えるとどちらがいいのか判断しかねるので、回答をお願いします。


あと、細かい誤字指摘のレスがあるのですが、これは収録時に反映した方がいいのでしょうか?
書き手氏からのコメントがない+ぶっちゃけ修正しながら収録していく手間が(ry なので、現状は投下された状態のまま収録しているのですが
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 19:42:44 ID:BjyfHdRm
P.S.したらばの避難所スレも見てるので、規制中であれば回答は避難所スレでいただければと思います。
575 ◆XIzIN5bvns :2009/11/13(金) 20:04:57 ID:Mf9S6wTF
大逆転物語の作者です。
分割についてですが、仮投下スレで投下時に書き込んでおいたのですが…
分割場所は、『それもまた、一つの逆転(ミラクル)……』までを前編としてください
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 20:08:21 ID:BjyfHdRm
>>575
すみません。本スレからコピペしたので見落としてました。
それで編集し直しておきます。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 20:28:57 ID:NmW1sf59
>>573
したらばで使ってるトリだと
2ちゃんでは違うトリとして出るので本物だと証明が難しいですが

状態表削り一作扱いでお願いします
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 20:59:01 ID:BjyfHdRm
>>577
たぶんですが、トリキーの最初の8バイト(半角だと8文字、全角だと4文字)だけを入れて書き込めば
したらばと同じトリップが出ます。
もしくは避難所スレの方に書き込んでいただければ。
579 ◆X/RX3k8bNY :2009/11/13(金) 21:24:46 ID:NmW1sf59
>>578
ありがとうございます
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 01:49:25 ID:Wrt/i0HY
てすと
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 01:50:36 ID:Wrt/i0HY
お、書けた。
代理投下します。できれば支援よろしく。

名前: ◆tILxARueaU[sage] 投稿日:2009/11/14(土) 01:33:26 ID:qNMma6Bs
規制中なのでこちらに。
阿良々木暦、枢木スザク、真田幸村、両儀式、セイバー、デュオ・マックスウェル投下します。
582こよみパーティー ◇tILxARueaU:2009/11/14(土) 01:51:19 ID:Wrt/i0HY
 薄っすらと空が白み始めた、早朝の駅郊外。
 そこには通勤中のサラリーマンも、登校中の学生も、囀るスズメの姿も見えやしない。
 風が吹き、古新聞が僕たちの間を縦横無尽に駆け巡った。
 この場にいる誰もが、そんなことには目もくれない。
 それどころではなかったから。
 夢中にならざるを得ない光景が、目の前にあった。

 やたらと長い日本刀を人に向かって突きつける――金髪の少女。
 赤いハチマキに赤いライダースジャケットの――暑苦しい男。
 貴族のような服装の上に――豪奢なマントを羽織った少年。
 牧師のような黒い服を纏い――髪を三つ編みにした少年。
 そして――日本刀を突きつけられている紬姿の少女。

 加えて、僕――阿良々木暦。

 うららかな朝の風景は、一触即発の物騒な空気に包まれていた。
 男子四名、女子二名。六人がどうしてこの場に居合わせたかは、順を追って説明しておく必要があるだろう。
 僕は普段どおりの要領で、顛末を語っていく。まずは定石どおり、時間を遡ってみることにしよう……――。


 ◇ ◇ ◇


 枢木スザクという男に関して、僕が語れることはそう多くはない。
 どこかの貴族様を思わせる豪奢な服装とマント、それには不釣合いな日本人の容貌。
 自称するところの肩書きは『ナイトオブゼロ』、ブリタニアという国の騎士様らしい。

 この僕、阿良々木暦は受験戦争の真っ只中を生きる高校三年生だ。
 無理してレベルの高い学校に進学したせいで授業についていけない、一種のおちこぼれ。
 それにしたって、自分の明らかな学力の低さを自覚したのは高校生になってからだ。
 中学レベルなら、まあ、なんてことはない。
 だから、『ブリタニア』という国が実在するのかどうかって問題にも、無難な回答を下すことができる。

 世界地図には決して存在し得ない未知の国に住む人、それが枢木スザク。
 僕の勉強不足なのか、枢木が嘘をついているのか、真の正解は、まだ、この時点では手繰り寄せられない。

 そんな悩みは些細なものだった。

 枢木と一緒にいた『戦国武将』。
 日本史にもしっかとその名前が刻まれている、真田幸村。
 彼のことを思えば、ブリタニアなんて国の実在証明はイージー問題だ。

「アララギとクルルギって、なんか響きが似てるよなぁ……」
「え?」
「いや、なんでも」

 存在しない国の騎士と、
 武将なる歴史上の偉人。

 どちらも、面と向かって会話するには恐れ多い存在のように思える。
 しかしまぁ……日本語は通じてるんだよな、不思議なことに。
 実はただの仮装好きな人だったりして。
 ははは、まっさかぁ。
583こよみパーティー ◇tILxARueaU:2009/11/14(土) 01:52:41 ID:Wrt/i0HY
 少なくとも、この二人は誰かを殺そうとしたりはしない。
 なら、安心して会話を楽しむこともできるってなものだ。 

 それはそれとして。
 枢木スザクと真田幸村との邂逅。
 なにが一番僕の琴線に触れたかというと、

「……こんなところかな。それじゃあ、次は阿良々木くんの番だ」

 こいつ、すげー忍野に声似てるな、ということだった。


 ◇ ◇ ◇


 以上が《シーン1》。

 駅前に建つ小さな喫茶店。そこが、偶然巡り会った男子三名の会合の場だった。
 北のエリアから、線路沿いに南下してきた少年――僕、阿良々木暦。
 駅で電車を待っていたものの、急なトラブルのせいで北上を一時断念した――彼ら、枢木スザクと真田幸村。

 双方が顔を合わせたのは、駅の入り口でのことだった。
 なんでも二人は駅で電車を待っていたそうなのだが、不意に運行見合わせのアナウンスが鳴り、これを断念したらしい。
 いや、一応来たには来たそうなんだけど、それは彼らが待っていた北行きではなく、南行きの電車だったとか。
 同時刻、せっかくだから駅の中でも覗いていこうかと考えた僕は、運がいいのか悪いのか、彼らとばったり遭遇することに。

 あの子、平沢憂ちゃんのこともあったから、僕はこの遭遇を幸運とは思わなかった。
 ただ、結果を見れば幸運と言えたのだろう。
 こちらに交戦の意思がないことは、すぐに枢木が察してくれた。

 とりあえず話がしたい、という彼の誘いに僕は乗り、場所を駅前の喫茶店へと移す。
 僕と枢木が話している間、隣の真田幸村さんがなにやら大声で騒いでいたが、なにを主張していたかはよく覚えていない。

 にしても、なんか、こいつの声で『阿良々木くん)と呼ばれると、あれだよな。
 無性にむずがゆくなる。やたらとフレンドリィだし。

 こんなところで、次に移ろう……――。


 ◇ ◇ ◇


「ギブ」

 街の往来を行く少年、デュオ・マックスウェルは立ち止まってそう宣言する。

「はぁ」

 彼に同行していた金髪の少女、セイバーは同じく立ち止まりデュオの降参を聞いた。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 01:52:44 ID:MwfI0Io9
しえん
585こよみパーティー ◇tILxARueaU:2009/11/14(土) 01:53:27 ID:Wrt/i0HY
「……つーかよぉ。なんで俺らが必死こいてあの水着女を捜さなきゃならんわけだよ」
「それは……彼女をあの場に留めたのは、私の配慮。いえ、短慮と言う他ありませんから」
「動くなって言ったのに動いてんのはあいつだろ? なら、セイバーが責任感じることはねぇさ」
「いいえ、軽率でした。私に少しばかりでも、彼女の行動を読む意識があれば……」

 セイバーが抱く自責の念。
 プリシラという少女は、待てと言われて大人しく待っているお利口さんではなかったということ。

 狂人、明智光秀を退けたデュオとセイバーの二人は、別所で待機を言い渡してたプリシラと合流しようとするも、これを果たせず。
 合流場所の民家に行ってみれば、そこはもぬけの殻。仕方なく、近場の街を捜し回っているという状況である。

「合流を蹴ったのだって、俺たちとはやっていけねぇってことじゃないのかねぇ」
「仮にそうだとしても、このまま彼女を放っておくわけにはいきません。あの男がまだ近辺にいるともなれば――」
「ああ……そいつは心配だな、確かに。あの変態がこの辺りをうろついてると考えると、気が滅入る」

 げっそりした顔を浮かべ、デュオは肩を落とした。

「とはいっても……八方塞だよなぁ。見つけてやりたいのはやまやまだが、心当たりなんてねぇしよ」
「この辺りの区画は入り組んでいますから、闇雲に捜しても実りは薄そうですしね……」
「しかもあいつ、きっと水着のままだぞ? まんま痴女じゃねーか。こっちはせっかく、代えの服用意してやったっていうのに」

 デュオのぼやきに、セイバーの表情が固まる。
 機械的な動作で視線を転じ、棒読みギリギリの平坦な声で訊いた。

「デュオ。その、代えの服というのは……先ほどの……」
「他にあるかよ」
「…………」
「そんな目で見るなぁ! なんだよ、街中水着でぶらつくよりはマシだろーが!」

 ごもっともな意見である。
 とはいえ、知り合って間もない女性にとりあえず「着てくれ」などと発言してしまった男の悪印象は、それなりに尾を引く。
 行動を共にする、と一度は決めたものの、表面上の態度は冷たく。セイバーはデュオに対しそんな風に接していた。

「まったく、女難の相でも出てんのかね。そろそろおっかねぇ女とヤバい男以外のまともな人間に会いたいわ」
「……っ、デュオ」
「なんだよ。ああ、私はおっかねぇ女じゃねーですよと主張したいのか? よく言うぜ、おまえのせいで俺は」
「いえ、そうではありません。なにか、声が聞こえませんか?」

 セイバーに促され、初めて耳をすませてみるデュオ。
 コンクリート製の建物が立ち並ぶ市街では、音という音が反響し合う。
 が、ほとんど無人と言えるこの街で聞こえてくるのはただ一声――ある男の、大音声のみだった。


「――待っておれ帝愛! この真田幸村、いくさ場で慣らした健脚にて、いざ駆け抜け――」


 うおおおおおおおおおおおおおおおお、という雄叫びと共に近づいてくる、気配。
 デュオは首を傾げつつも声のほうへ歩を進めていき、曲がり角を折れた。
 そこで、
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 01:53:56 ID:MwfI0Io9
 
587こよみパーティー ◇tILxARueaU:2009/11/14(土) 01:54:18 ID:Wrt/i0HY
「ぬぅおおおおおおおおお――――おおぅ!?」
「なっ――」


 ゴッチ〜ン☆


 と、実に爽快な音が響き渡った。
 デュオと、突然駆け込んできた赤いライダースジャケットの男、真田幸村の衝突によって。


 ◇ ◇ ◇


 以上が、《シーン2》。

 プリシラという少女を捜して街を歩いていた二人、デュオ・マックスウェルとセイバー。
 彼らとの遭遇はこれまた幸運だったのか不運だったのか、少なくとも出会い方は最悪と言えただろう。

 真田幸村(驚くことに僕や枢木と同年代らしい)があんなところで叫びながら走っていたことについて説明しよう。
 北へ向かう電車が運行見合わせとなり、彼の目的地である『敵のアジト』への移動手段は徒歩に限られた。
 電車というものの仕組みについて詳しくないらしい真田にこのことを説明したら、あとはもう一目散。
 僕や枢木が止めるのも聞かず、喫茶店から飛び出していったというしだいである。

 そしたら、デュオと正面衝突。まさに走り出したら止まらない、暴走機関車のような猛将だった。
 僕が言うのもなんだけど、このデュオという奴もなかなかに運がないと思う。
 共感する。悲しいとこだけど。

 とはいえ、この真田幸村という男。無鉄砲ではあるが礼儀はなっている。
 ぶつかってしまったデュオには素直に詫びを入れ、すぐに僕たちが追いついたこともあって、争いには発展しなかった。
 デュオとセイバー。この二人も、僕らと同じ《バトルロワイアル否定派》の人間のようだった。

 人間、出会うときは出会うものである。遭遇は奇跡的にも平和的に。なべてこの世は事もなし。
 バトルロワイアルか……本当にそんなもんに賛同してる奴なんているのかな、と思ってしまうほどに。

 だがまあ、それも一瞬の気の迷いというものだろう。
 だって僕は現に、殺し合いに乗った少女を目撃し、襲われているのだから。

 デュオとセイバーにしたって、似たような境遇を体験していたらしい。
 第六天魔王・織田信長が家臣、明智光秀というのが二人を襲った男の名前だ。
 どうやら真田の知っている人間らしく、その危険性は二人が語るとおりとのこと。
 真田幸村に明智光秀、そのうえ織田信長か……ますますもって戦国時代だ。

 この辺りで次に進もう。大分端折ってきたけど、ようやく役者が出揃うから……――。


 ◇ ◇ ◇
588こよみパーティー ◇tILxARueaU:2009/11/14(土) 01:55:03 ID:Wrt/i0HY
「僕たちでチームを組みませんか?」

 路上。五人を相手に、突拍子もなく提案したのは枢木スザクだった。
 チームという単語に馴染みのない真田は一人わかっていない顔をしていたけれど、他四名の反応は僕も含めて悪くない。
 チーム。団体。群集。どのような形、どのような呼称であろうとも、協力体制を築き上げるのは大切だろう。
 人間、一人では限界がある。他力本願と言われようとも、誰かしら頼れる存在は作っておくべきなのだ。
 僕が怪異のことについて忍野に相談するのと同じ。殺し合いのことについては専門家に任せたい。それが庶民の心情。

「チーム、ねぇ。口で言うほど簡単でもないと思うぜ。全員が全員、出会って間もないわけだしな」
「最終的な目的……バトルロワイアルの破壊、という部分が一致するのであれば、合理的ではあるかと思いますが」
「某も枢木殿も決意は同じ! 共に帝愛ぐるーぷなる輩を打ち倒さんとし、ゆえに一刻も早く『敵のアジト』へと――」
「おいおい正気か? 確かに地図にはそう載ってるけどよ、まさかそのまんまってことはないだろ」
「我々の目を欺くための、もしくは何者かを誘導するための罠とも考えられますね」
「し、しかし……!」
「そもそも、それで本当に帝愛の奴らがいたらどうすんだ? 一人や二人で殴り込んだって、返り討ちに遭うだけだろ」
「その前に、我々の首に嵌っているこの機械を爆破されたら終わりです。勝算は皆無と言えますね」
「な、なんと……!」

 舌戦は数だなぁ、と僕は実感する。
 いや、僕もさっきの喫茶店で真田の説得を試みたのだが、これがなかなかに強情で、上手くいかなかった。
 苦笑を浮かべてはいるが、デュオとセイバーの援護には、心なしか枢木も安堵しているようである。
 一人でこんな暑苦しい男の相手をするのは疲れるだろうなぁ。と、僕は彼の苦労を忍ぶ。

「スザクや暦も捜し人がいるわけで、俺とセイバーも一応合流しなきゃならない相手がいる」
「人手が大いに越したことはありません。特に断る理由もないかと思いますが……」

 枢木の誘いを受け、デュオとセイバーは早くもこれを受け入れる様子だった。
 まあ、枢木は見た目好青年だし、真田は他人を騙すってタイプにも見えないから、不信は買いにくいんだろう。

「それじゃあ、了承してもらえますか?」
「志を同じくする仲間が増えるのは、某も喜ばしく思うでござる。となれば、皆を率いていざ敵の本陣へと――」
「いえ、待ってください」

 真田を諌めるいいタイミングで、セイバーが一同に制止をかけた。
 なんだか張り詰めた表情をしている。
 ついさっきまでは、凛とした風貌の大人の女性というイメージだったのだが。
 その印象は途端に、おっかないものへと変化していく。

 男四人の目がいく中で、セイバーはおもむろに刀を抜いた。
 僕の身長よりも長さがあるんじゃないだろうかというほどの、大太刀。
 セイバーはそれを軽々と持ち上げ、枢木と真田が立つ間に突きつける。
 まるで、その先に両親の仇でもいるかのような――僕みたいな一般人にもわかる、敵意だった。

「先ほどからこそこそと、我々の様子を窺っていたのでしょう。隠れていないで出てきなさい」

 このとき僕は、セイバーがなにを言っているのかわからなかった。
 気配だとか、物音だとか、僕は特別、そういうのを感知できるスキルは持っていなかったから。
 たぶん、枢木と真田、デュオもそんな感じだったのだろうと思う。
 気づけていたのは、セイバーだけだった。

 路地裏から、ゆったりとした動作で紬を着た女性が出てくる。
 いかにも、セイバーに潜伏を看破されたから仕方なく、といった様子で。
 僕たちの話に、ずっと聞き耳を立てていたのだろう。
589こよみパーティー ◇tILxARueaU
 その、両儀式という名前の彼女は。


 ◇ ◇ ◇


 以上が、《シーン3》。

 過去を遡るのはこれにて終了。
 セイバーが刀を突きつけ、両儀が刀を突きつけられていた理由、そのへんおわかりいただけただろうか。
 バトルロワイアル否定派の人間、要するに殺し合いなんてくだらないと思っている人間たちが話し合いを進める中、
 一人こそこそと様子を窺っている人間がいたら、そりゃ不信感を買うのも仕方がないと言えるだろう。
 セイバーは刃を用いることで明確に、僕たち男衆は無言の視線という形で、紬の彼女に警戒心を向けた。

 ただ困ったことに、彼女――両儀式からはなにも返ってこなかったのだ。
 僕たちに対する敵愾心も、それ以上の殺気も、ましてや弁明の言葉なども。
 なにをするでもなく、なにを語るでもなく、彼女は僕たちの前に立った。
 目的が見えない虚ろな存在。ゆえに対処方法もわからない。
 刀を突きつけていたセイバー自身、両儀のあまりの反応のなさに困っていたようだった。

 彼女の出方によって、これまでの平穏も一気に崩れ去るんだろうな……。
 ここから先は未来の話。回想として語れる部分じゃない。

 願わくば、穏便に進行してもらいたいもんだけどね……――。


 ◇ ◇ ◇


「幹也みたいな真似はするもんじゃないな……」

 ぼそり、と少女が漏らした言葉は、誰も拾い切ることができなかった。

 なんだろう、彼女のこの反応と態度は。
 刀を突きつけられているというのに、まるで動揺していない。
 イタズラが露見し、必死になって言い訳を考える子供のような、そんな違和感。
 彼女があまりに『なにもしてこない』ので、先に刀を突きつけていたセイバーのほうが折れた。

「……どうやら、敵意はないようですね」
「察しが良くて助かるよ。面倒なのは嫌いだ」
「自分で面倒な状況にしたっていう自覚はないのかねぇ。おたく、なにが狙いで俺たちに近づいた?」

 セイバーが刀を下ろしたのを発端とし、紬の少女との対話が始まる。
 真っ先に質問を投げたのはデュオだった。

「別に。狙いもなにもありゃしないさ。興味本位で探偵の真似事をやってみただけだよ」
「立ち聞きが探偵の真似事ねぇ。家政婦かなにかの間違いじゃねーの?」
「……最初につけてたのはその二人さ。駅にやたらやかましいのがいたんでな」

 言って彼女が指差したのは、枢木と真田の二人。
 なるほど、探偵の真似事っていうのは尾行のことか。どうやら、駅からつけられていたらしい。
 ん? となると、喫茶店での僕と枢木たちのやり取りのときもいたのだろうか、こいつ。
 全然気づかなかった。この場合、凄いのは気配を絶っていた彼女か、それともそれを見破ったセイバーか。
 もしくは、僕と枢木と真田がお間抜けなだけだろうか。
 だとしたら――僕もいい加減、意識を改めるべきなのかもしれない。