【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 10【一般】

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1ラプラスの魔
ここはローゼンメイデンの一般向けSS(小説)を投下するスレです。
SSを投下してくれる職人は神様です。文句があってもぐっとこらえ、笑顔でスルーしましょう。
18禁や虐待の要素のあるSSの投下は厳禁です。それらを投下したい場合は、エロパロ板なりの相応のスレに行きましょう。
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http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1198461642/
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http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1191748088/
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【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 5【一般】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1178641673/
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http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1171710619/
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http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1156249254/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 2【一般】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1146976611/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1143018114/

関連スレ

Rozen Meiden ローゼンメイデン SS総合 8
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1164813753/

保管庫
http://rozen.s151.xrea.com/
http://www.geocities.jp/rozenmaiden_hokanko/
http://rinrin.saiin.net/~library/cgi-bin/1106116340/
2ラプラスの魔:2009/10/17(土) 14:31:45 ID:7PLqyDF9
■スーパーリンク
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/
↑ TBS公式
ttp://p-pit.ktplan.ne.jp/
↑ もものたね (原作PEACH-PITのHP)
ttp://www.gentosha-comics.net/birz/index.html
↑ コミックバーズ
ttp://kanaria.ddo.jp/rozen_upload2/
↑ アップローダー (画像関連)
ttp://i.cool.ne.jp/rozen-aa/
↑ ローゼンメイデンAA保管庫
ttp://futaba-info.sakura.ne.jp/cgi/dic/chara/ziten.cgi?action=aiu_i
↑ 虹裏キャラ辞典 (実装・赤提灯など)
ttp://rozen.sync2ch.cc/
↑ 2ch RozenMaiden過去ログ倉庫
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 18:51:44 ID:h0t8fy6c
保守age
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 15:23:32 ID:pBBwe7lb
誰か書いてー
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 18:21:10 ID:fThSJ8Tb
あげ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 20:42:49 ID:Ycq35VAa
>>1乙保守
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 21:14:25 ID:Qwx3LhAY
関連スレ

Rozen Meiden ローゼンメイデン SS総合 8
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1164813753/

この系統のスレはなくなっちゃったのかね?
まぁ、過疎ってるSSスレ2つもいらんと思うけど
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 21:47:48 ID:XRmLcBTp
スレは1つでいいよね
ま、まったりいこうや
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 19:38:27 ID:MmILn7gH
書き手が居ないのォ
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 20:35:10 ID:jk4AoTCL
ほす
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 20:30:32 ID:na2Ny5bD
「薔薇乙女達の決着」を書いた人です。
続編というかその辺の完全版を書いてます。
飯食ったらうpするゾ。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 20:52:49 ID:ohlzHGMG
総員待機!
13薔薇乙女達の好日:2009/10/22(木) 21:22:23 ID:na2Ny5bD
【薔薇乙女達の好日】

>>11っす。
※4月下旬に某所に投下した奴の「完全版+α」です。
※前作【薔薇乙女達の決着】は、9スレ目の>>450から>>557までにあります。
※全13話を不定期に投下する予定です。今日は第1〜2話を投下しますよ。
14薔薇乙女達の好日:2009/10/22(木) 21:45:18 ID:na2Ny5bD
【前作のあらすじ】

 僕の名前は桜田ジュン。中学2年生で、もうすぐ3年生になる。
2月28日……僕と真紅、翠星石、みっちゃんさん、金糸雀の5人が、
およそ半年振りにnのフィールドへ飛び立ったんだ。
目的は4つ。蒼星石、雛苺、薔薇水晶を助けること、昔の僕に勝つこと、
エンジュさんに立ち直ってもらうこと、そしてラプラスの魔に勝つこと……だった。

 途中、なぞの少女……ローゼンメイデン・真の第7ドールの雪華綺晶に
出くわした僕たちは、彼女もまたラプラスの虜になっていることが分かり、
「彼女の心を元に戻すこと」を目的にしつつ、ラプラスを追った。

 雛苺、蒼星石、そして僕の世界を巡りながら、ラプラスと死闘を繰り広げた。
途中で助けに来てくれた水銀燈、そしてジャバウォックの協力もあった。
そして、水銀燈と金糸雀の従える5体の龍とともに……ラプラスの野望を食い止めた。

 こうして、9秒前の白をさまよっていた3人と、ずっと抜け殻になっていたエンジュさんの、
4つの日常を取り戻すことに成功した僕たちは、涙で再会の喜びを分かち合い、
それぞれの「つづき」を始めることが出来たんだ。

 そして3日後の3月3日。
僕が薔薇水晶やエンジュさんと、久々にまともな再会を果たした次の日から、この物語は始まる。
15薔薇乙女達の好日 第1話:2009/10/22(木) 21:48:20 ID:na2Ny5bD
【第1話 雛祭】
[03/03 12:54]
[旧礼拝堂]

 ごきげんよぉ……ローゼンメイデン・第1ドールの、水銀燈よ。
再び私たちが全員揃ってから、3日……。
今まで私がしてきたことも、意味がなかったわけだしぃ……。
やるだけのことはやった、返すだけのことは返したはずだけど……。
でも何か足りない……。

 何をすればいいの……?

 ……そうだ、真紅の所にでも行ってみましょぉ……
この前の礼もあるし、ついでになにか分かるかもしれないわぁ。


 さ、鏡は確か一番奥……
せぇ、のぉっ……!

ヒューン……
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 21:56:07 ID:na2Ny5bD
[12:59]
[桜田家]

バシューン……

 久しぶりの感覚だわぁ。
……たしか、この扉を開けるといいのよね……
しかし、相変わらず、ぜんぜん片付いてないわねぇ。変な置物ばかり……
誰の趣味かしら? ジュン? のり?
まさか、真紅ぅ? ククク……ハハ、らしいわねぇ……!

 ……ハァ。 なんだか虚しいわぁ。

ガラッ
銀「……えらく静かねぇ……。のりとジュンは学校にいるはずだから、
  真紅たちがいると思うけれど……」

銀「こっちがジュンの部屋よね。」
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 21:58:27 ID:na2Ny5bD
[ジュンの部屋]
ガチャッ
銀「ごきげんよぉ……」

シーン

銀「あらぁ……?」


 誰もいないようねぇ……。
真紅たちも、カバンはあるみたいだけど……。

 下に降りてみようかしら……。
「くんくん探偵」でも観てるかもしれないしぃ……。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:06:30 ID:na2Ny5bD
[13:04]
[桜田家 リビング。]

ガチャッ
銀「……ごきげんよぉ……。」

「〜♪」

銀「あら、誰かいる……」

「あーっ! 水銀燈なのー!!」

銀「ひっ、雛苺ぉ!?」

雛苺「ごきげんよーなの!」


 私の6番目の姉妹・雛苺が、楽しそうにお絵かきをしていたわぁ。
見たところ、雛苺以外に、この家には誰もいないようねぇ……
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:14:18 ID:na2Ny5bD
銀「……誰もいないのぉ?」

ヒナ「うぃ。ヒナ、おるすばんしてるのよ!」

銀「翠星石と真紅はどうしたの……?」

ヒナ「うーとね、翠星石は蒼星石のお見舞いに行ったの。
   真紅もいっしょに行ったの。」

銀「あなたは連れて行かなかったわけ?」

ヒナ「ヒナ、まだちょっとだけ疲れてるの。だからここにいるの。」


 そういえば、ジュンたちがこの子を起こすまで、
半年は眠りっぱなしだったわけだし……ただでさえ小さい体だから、
無理は出来ないわよねぇ……この子は、自分なりにちゃんとその辺を分かってるようね。
真紅と違って気高いわねぇ……


ヒナ「……真紅のこと悪く言っちゃ、メッメッなのよ!」

銀「あ、あら、ごめんなさい……」


 この子、心が読めるの……?
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:18:39 ID:na2Ny5bD
銀「……一人で大丈夫?」

ヒナ「うん! ヒナ、もうひとりは怖くないのよ!」

銀「そう……あなた、変わったわね……。」

ヒナ「それ、トモエも言ってたの。」

銀「トモエ?」

ヒナ「前の契約者なのよ。今度一緒に逢いにいこう?」

銀「ええ。楽しみにしとくわぁ。」


 楽しみに、ねぇ……
……何をすればいいか、なんとなく分かってきた気がするわぁ。
けど、いまいち固まらないというか……モヤモヤしてるというかぁ……。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:23:54 ID:na2Ny5bD
[13:21]
ヒナ「あ、そうだ♪ たしか、れいぞーこのなかに……」

ヒナ「よいしょっ……」
フラッ
銀「!!」
ヒシッ
ヒナ「あう……ありがとなの。」

銀「ふぅ……取ってきてあげるわぁ。何か入ってるの……?」

ヒナ「"うにゅー"がふたつ入ってるの。」

銀「"うにゅー"……?」

ヒナ「うぃ。 ちょっと待っててなの、絵に描いてみるね。」


 うにゅー……うにゅー……
何なのかしら……?
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:28:54 ID:na2Ny5bD
ヒナ「んしょ、んしょ…… 〜♪」


 ……ふふっ、なんだかかわいいわねぇ……。
楽しそうにしてるわぁ……。


ヒナ「できたのー!」

銀「貸しなさい。 ……これが、"うにゅー"?」

ヒナ「なの! 赤くて黒くて白くて、にゅーっとしてて甘いのよ!」

銀「……なんとなくだけど、分かったわぁ。冷蔵庫に入ってたわよねぇ?」

ヒナ「うん!」
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:33:55 ID:na2Ny5bD
[13:37]
ヒナ「うにゅーおいしいの♪」

銀「ええ、おいしかったわぁ、苺大福。
  今度、めぐにも食べさせてあげようかしらぁ……。」

ヒナ「めぐ?……えーと、うーと……前にも聞いたことがあるの。」

銀「私の契約者よぉ。あなたはまだ逢ったことがなかったわね……。」

ヒナ「うゆ。どんな人なの?」

銀「……難しいわねぇ……。私に似てるといえば似てる、のかしらねぇ……?」

ヒナ「今度、みんなで逢いに行きたいの。」

銀「そうねぇ……めぐも、逢いたがっていたし……
  けど、167時間後には、アメリカに渡るようだから……
  逢うなら、帰ってきてからになるわね……ついでに、
  あなたの体調がよくなってからのほうがいいわよ。」

ヒナ「わかったなの。ヒナ、楽しみにしておくね!」


 ……たしか、この子は昔、我慢もできなかったはず……
ジュンやのり、妹たち、そして……トモエ。この子をここまで変えるなんて……すごいわねぇ……。

 それなら、私ももっと変わらなきゃ……。
さっきよりも、何をしたらいいのかっていうイメージが、固まってきた気がするわ……。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:40:00 ID:na2Ny5bD
[14:02]
ヒナ「そうだ! ねぇ、水銀燈ー!」

銀「何?」

ヒナ「ジュンのお部屋に行くの! えーと、うーと……
   ヒナ……ヒナのお人形があるの!」

銀「ヒナ……?」

ヒナ「赤くて、高くて、ヒナがたくさんいるの!
   ジュンのお部屋にあるのよ!」

銀「じゃあ、行きましょぉ。」


 さて、私が飛べばいいわけだし……。
雛苺を抱いて、2階に上がりましょぉ……。


ヒナ「ふおおー! 速いのー!!」
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:46:03 ID:na2Ny5bD
[14:04]
[ジュンの部屋。]
ヒナ「じゃーん、なの!」

銀「これは……えっと、たしか……めぐの病院でも見たことがあるわね……」

ヒナ「ヒナお人形なの!」

銀「雛人形ねぇ。 ……けど、どうしてここにあるの?
  ジュンは一応オスだから……」

ヒナ「ううん。えーとね、これはのりのなの。」

銀「じゃあ、のりの部屋に置けば……」

ヒナ「のりは『もう私は大きいからいいかな』って言ってたの。
   だからこれ、ヒナや真紅たちにあげるって……」


 確かに、この子や真紅、翠星石の物は全部、
この部屋にあるわけよねぇ。それならここにあるのも不自然じゃないわねぇ。
……真紅と翠星石だけで、棚を11分の8も占領してるわね……
少しはこの子に分けてあげたらどうなのよ……
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:51:52 ID:na2Ny5bD
ヒナ「ヒナの棚はちゃんとあるから、狭くても大丈夫なの!」

ヒナ「真紅や翠星石といっしょに使ってる"くんくんセット"とかもあるから、
   半分くらいはヒナのものもあるのよ!」

銀「……え、えっと、雛苺……?」

ヒナ「うゆ?」

銀「……どうして……あなたは……そんなに優しいの?」

ヒナ「うー……むずかしいの。……ヒナ、みんなを守りたいの。
   ヒナはもうアリスにはなれないの。でも、真紅が、
   ヒナに時間をくれて……」

銀「……!」

ヒナ「だから、ヒナね、ヒナにできることを、考えたの。
   7分……34秒かな、その間、考えたのよ。
   ただの人形になるか、真紅のゲボクになるか……」


 そう……だったわね……。
この子はこの時代で一度負けている……。
だから、アリスゲームの示すところのアリスには、
もうなることが出来ない……だから一度は、意識も無くなって……
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:56:21 ID:na2Ny5bD
 動いてる間も、いつ永い眠りにつくかわからない状態だった……
それでも、真紅たちを護ったり、ジュンを助けたり……
……一度も逃げなかったし、大きくなったわねぇ。けど、私は……


ヒナ「……うん。ヒナね、何もしないまんま、また眠るのは怖かったの。
   あの時は、まだひとりじゃ寂しかったから……だから、だからね、
   みんなの力になることができたら、って考えたの。それで、真紅に……」

銀「……動かしてもらってたってわけね……。」


 何をしていたのかしら、私。
蒼星石は、あの掟は絶対だって思ってたのもあったけど……
容赦なく、蒼星石たちのローザミスティカを奪うだけ奪って……
考えさせてやらなかった……。今までだってそうだったわねぇ……。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:58:12 ID:na2Ny5bD
銀「……けど、よかったじゃない、それで。」

ヒナ「うゆ?」

銀「もしかしたら、真紅に助けてもらってなかったら、次の時代でも……
  ……前と同じ、ただ泣いては甘えるような、そんなあなただったかもしれない……。」

ヒナ「……うゆ。なんとなくだけど……ヒナ、分かったの。
   後で、真紅にありがとするの!」

銀「……まさか、あなたに救われることになっちゃうとはねぇ……。
  ありがと、雛苺。」

ヒナ「うぃ! それに、みんないるから、みんなといるほうが楽しいの!
   みんな幸せなのがいいの! 水銀燈も、笑顔えがお!」

銀「ふふ……。」
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 22:59:02 ID:na2Ny5bD
[14:35]
銀「お雛様、ねぇ……。」

銀「めぐから聞いたけど、たしか幸せと、無病息災を祈るっていう……」

銀「……なんだか、雛苺のようねぇ……。」

ヒナ「……すぅー……すぅー……」

銀「……あら、お昼寝……」

ヒナ「……すいぎんとー……」

銀「……?」
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:00:18 ID:na2Ny5bD
ヒナ「……すいぎんとー……」

銀「……?」

ヒナ「……すいぎんとうも……ひとりじゃないよ……」

ヒナ「……みんな……いるよ……」

銀「……雛苺……」

ヒナ「……すぅー……すぅー……」


 ……今まで、契約者たちのことは……「糧」としてしか
見てきていなかったわねぇ……

 ……この時代には、長くいられそうだし……
今までの分、返していかないとねぇ……
少しずつでいいから……全部……。
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:03:30 ID:na2Ny5bD
[16:28]
[ジュンの部屋。]
ジュン「ふぅ、学校も疲れる……あぉ!?」

ジュン「こ、これは……!?」

バシューン……

翠「ただいまーですぅ。チビ人間? 帰ってるですかー!?」

真紅「戻ったわ。 ジュン? のり? いないの?」

ジュン「お、お前ら、帰ってきたのか。ちょうどよかった。
    ……見てみろよ……」

翠「どれどれ……おー!?」

真紅「……二人とも、肩と肩を寄せて寝ているわね……」


銀「……くー……」
ヒナ「……すぅー……」

ジュン「……寝かせといてやろうか。」

真紅「賢明だわ。」
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:04:30 ID:na2Ny5bD
[17:15]
[ジュンの部屋。]
銀「……ハッ!? 私……寝て……」

ヒナ「うーん……うゆ、お昼寝してたの……」

銀「……ジュンたちも帰ってるようねぇ……下が賑やかよぉ……」

ヒナ「降りてみるの! ジュンたちに逢いに行こう?」

銀「ええ。 じゃ、行きましょぉ。」

ヒナ「あっ、水銀燈、笑顔じょうずになったの!」
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:06:07 ID:na2Ny5bD
[18:32]
[ジュンの部屋。]
ヒナ「あかりをつけましょぼんぼりにー♪」

のり「お花をあげましょ、桃の花〜♪」

ジュン「ごーにんばやしがふっとんでー」

ヒナ「うー! ちがうのー!」

ジュン「ハッハッハ……」

真紅「まったく……品が無いのだわ……」

銀「……どうやら……この時代でやらないといけないことが、
  またひとつ増えたようねぇ……」
グリンッ
ギロッ
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:07:36 ID:na2Ny5bD
ジュン「……な、なんだよ(や、やべっ……動けなっ……)」

銀「ジュンをもっと鍛えなおすことよぉ!!
  覚悟しなさい……!?」

ジュン「は、はあ……!?」

銀「真紅? 下僕の教育がなってないわよぉ……?」

真紅「まったく……」



 ねぇ、真紅ぅ……?
貴女なりのやり方でやるんなら……



ヒナ「ねー、水銀燈ー?」

銀「何?」

ヒナ「夕ご飯、いっしょに食べよう?」

銀「ふふ……いいわよ。」


 徹底的にやんなさい……?
この時代の……「つづき」をねぇ……!


                                          【第1話 おわり】
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:09:49 ID:BxH8k46p
おつーん
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:10:33 ID:ohlzHGMG
丁寧な作品ありがとう。あんたのSS大好きだー!
雛苺はアニメ版を継承しつつ、原作風の細やかさを描いているのが嬉しい
雛苺なら、譲ってもらったひな壇を大切にするはず
37薔薇乙女達の好日 第2話:2009/10/22(木) 23:12:25 ID:na2Ny5bD
【第2話 水銀燈】

[03/31 01:00]
[旧礼拝堂。]

 あーあ……また眠れないわぁ。
こうやって古い教会で寝泊りするのも、もうなれちゃったわ……。
……寒いわねぇ……まだ3月の終わりじゃぁ、ちょっと冷えるわね……。


「……〜ン……」

 なっ……!

「……ブ〜ン」

 なによぉっ!?

「……ブーーン……」


銀「誰よぉ!? うるさいわねぇ!!」

ジャキィッ!!
ドゴォッ

蚊「ブーゥゥン」

銀「チィッ……このぉ!!」
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:15:35 ID:na2Ny5bD
ドドドド……

蚊「ブゥゥーー」

パシッ!!

銀「ふん……」


 ……どうしてこんな時期に蚊が飛んでるのぉ?
あんまりうるさいから、半分ジャンクにしてやったわぁ……
可愛そうな蚊ぁ……自分の運命を呪いなさぁい……?
今日のところは許してあげるわぁ……アハハハ……!


蚊「…… !」
ブーン……


 やっててむなしいわぁ。
眠れないついでに、散歩にでも行こうかしら……
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:18:02 ID:na2Ny5bD
[01:27]
[旧礼拝堂付近 公園。]

 ……この辺には桜が咲いているようねぇ……
真っ黒い桜は無いのかしらぁ……?

 やぁねぇ……私ったら、夜中だからって変なテンションだわぁ。
あやうく、夜桜に心をジャンクにされそうだったわぁ……


銀「……暇だわぁ。誰も起きてないのよねぇ……」

銀「けどぉ、夜の公園での花見も、なかなかオツなものねぇ……。」

 ……結局40分近く公園でたむろしてしまったわぁ。
でもぉ、起きてそうな人、ひとりいるじゃなぁい……?
いいこと思いついちゃったぁ。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:19:20 ID:na2Ny5bD
[02:04]
[有栖川大学病院。316号室。]

めぐ「くらいかばんのー……なーかー……
   とーけいとー……おわかれー……」

バンバン
めぐ「……!」

ガラッ
銀「めぐぅ!!
  やっぱり起きてたわねぇ。」

めぐ「……あら、私の天使さん……眠れないのね……
   私もよ……」

銀「ねぇめぐぅ、さっきの歌……なんなのぉ?」

めぐ「これはね……昨日のラジオで流れてたのよ……」

銀「昨日って……もう憶えたの?」

めぐ「まぁね……。なんだか、こんな私でも、励まされてるような気がして。
   もう一人はこわくないっていう……そんな歌詞があるんだけど。」

銀「……そぉ。続き、聞かせて?」

めぐ「うん……いいよ。
   だーれかがねじをまーくまでー……」
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:24:12 ID:na2Ny5bD
[02:10]
めぐ「思いあっていれば…… 離れてても……
   心はいっしょね…… ずっと……」

銀「……いい歌だったわぁ。」

めぐ「……またいい歌が流れてたら……憶えて……
   水銀燈に聴かせてあげるね。」

銀「……楽しみにしておくわぁ。」


 めぐったら、そういう記憶力はいいのよねぇ……
離れてても、心はつながってるものなのかしらぁ……?

 ! ……これが、これが……真紅の言ってた、絆……!
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:24:52 ID:na2Ny5bD
[02:44]
 夜更けになって、もっと冷えてきたわねぇ……

銀「めぐぅ……布団、入ってもいい……かしら……?」

めぐ「いいよ……天使さんといっしょに寝られるなんて……
   しあわせ……


 めぐがしあわせなら、それでいい気がしてきたわぁ。
……アメリカに渡って、手術は終わったけど、まだまだ検査が必要みたいだから……
もうちょっと、ここに入院するみたい。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:26:09 ID:na2Ny5bD
[03:24]
銀「ねぇ、めぐぅ。」

めぐ「なぁに?」

銀「ここからの桜、いい眺めねぇ。」

めぐ「そうだね……。私も眠れない時は、ここから桜を見ているの。」

銀「そぉ……。」

めぐ「……桜って……咲いているのはほんの少しだけど、
   ずっと愛されているのね。」

銀「えっ……どうしたのぉ?」

めぐ「ふふ。桜って、なんだか尊敬しちゃうなぁ。
   散ってからも、誰からも愛されて……」

銀「はぁ……。」


 なんだか深い話ねぇ。
たしかに……桜が咲いてるのはほんの何週間かだけど、
この国の人は一年中桜の咲き誇る様子を思い描いては、
その姿に酔いしれてる……。

 散ってからも愛される……よほどすごいものじゃないと、無理な話よねぇ。
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:32:54 ID:na2Ny5bD
[03:59]
銀「それでねぇ、めぐぅ。真紅ったら、猫を見たとたん逃げ出しちゃうのよぉ。」

めぐ「ふふ。気高いのに、おもしろいのね、真紅ちゃんは。」

銀「普段は生意気なくせに、いざ困ったら、たすけてぇー、だなんて……」

めぐ「でも、そんな真紅ちゃんが可愛いんでしょう?」


 ……困ったわぁ。
しごく当たり前のことに、答えられないなんて、ねぇ……
雛苺はかわいいと思えるのに……どうして……?


銀「かわいくないわぁ。」

めぐ「ふふ。強がっちゃって。」

銀「強がってなんかないわよ!?」

めぐ「ジェラシー、かな? ふふ……そんな水銀燈も、かわいい……。」


 めぐったら、ちょっとテンションがおかしいわねぇ。
3時になると活発になる種類なのかしらぁ……?

 ……前までの「アリスゲーム」とかではないけど……
やはり、真紅にはどこか負けたくないのかもしれないわねぇ……
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:34:08 ID:na2Ny5bD
[04:44]
めぐ「……くー……」


 どうやら、寝ちゃったみたいね、めぐ。
ふぁー。私も眠たくなってきちゃったぁ……
けど、やっぱ眠れないわぁ……

 そろそろ5時……蒼星石のマスターが、
起きるころねぇ……ということは……。
ふふ、蒼星石と遊んであげましょぉ……♪


[05:01]
柴崎元治「「ふおおおお!!」」

蒼「ふぁっ!? どうしたんですか、マスター。
  雛苺みたいな声上げて……」

元治「蚊じゃ! 蚊が現れたんじゃ!!」

蒼「はぁー……またですか。この時期だから……アカイエカかな……。
  もう12匹は退治してますよ。」


ピカーッ
蒼「! 鏡が……!」

元治「……誰かが、来……!」
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:35:10 ID:na2Ny5bD
スゥッ
銀「ごきげんよぉ……」

蒼「あっ、水銀燈!!」

元治「!? 君は!
   助けに来てくれたのか!?」

蒼「ちょうどよかった!
  水銀燈、落ち着いて聞いて欲しいんだ。」

銀「なっ……なんなのよぉ!?」

蒼「この部屋に、蚊が紛れ込んだらしい!
  急いでジャンクにしてやってくれないか!?」

銀「お安い御用よぉ!
  私はここ一週間で50匹ほどジャンクにしているわぁ……」

蒼(ご……ごじゅう……!?
  あの教会には、そんなにいるのかな……まぁ、古いし……。)

元治「おおーっ! 助かるぞい!」
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:38:24 ID:na2Ny5bD
[05:19]
パシィッ

銀「ひゃぁっ!?すごい血ぃ……」

元治(むむ……片手で蚊をつかみおった……
    戦いに手馴れておるのか……。)

蒼「助かったよ、水銀燈!」

銀「どうして病院帰りに血を見なきゃならないのよぉ。」

元治「病院? 人間ドックかい?」

蒼「マスター、違いますって。
  病院ってことは……めぐさんのところかな?」

銀「そうよぉ。眠れなくて、ちょっとね……」

元治「おともだちかい。」

銀「私のマスターよぉ。」

元治「そうかい、そうかい……」

蒼「そうだ! せっかく来たんだし、お茶でも飲んでいきなよ!
  あっ、洗面所はこっちだよ。」


 なんだかんだで、蚊をジャンクにしてやったらほうじ茶をいただいたわぁ。
紅茶もいいけど、たまにはシブーいのも、いいわねぇ。
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:41:27 ID:na2Ny5bD
[06:08]
[旧礼拝堂。]
 さて、帰ってきたわ。
うっすらと日が薔薇窓から差してくるの、久しぶりに見たわぁ。

 お土産にもらったおせんべいを朝ごはんにしよっとぉ。
そういえば……眠かったのを忘れていたわぁ。
ちょっと寝ようかしら……


……すー……
  ……すー……


『……なにを寝ぼけてるですか、腹黒人形』

銀「……ええっ!? どこなのよぉ!?」

『こーこーでーすー。』

銀「翠星石ぃっ……!?」

『このまえ、チビチビのクレヨン食べちまったですね?!』

銀「ええっ!? おせんべいは食べたけど……なにがなにやらぁ……」
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:42:37 ID:na2Ny5bD
『水銀燈ったらひどいの。ヒナのクレヨン全部食べちゃったの……』

銀「ひぃっ……雛苺!? 何を言っているの!?
  クレヨンなんて食べられるはずないでしょ……」

『それだけじゃないわ。私のくんくん変身セット、食べたでしょう!?』

銀「!? し、真紅まで……!?」


『それにこの前なんか、翠星石のドレスかじりやがったですぅー!!』

『おいおい……腹が減ってるのは分かるけど、
 そこまでしちゃぁ、お前のお父さんも怒るぞ?』

銀「……ジュン!?」

『カナの玉子焼きをよくもぶちまけてくれたかしらー!?』

『僕をよくも変態よばわりしてくれたね!?』

『わたしの……がんたい……眼にバチーンって……』

『黒薔薇のお姉さま……他のお姉さま方がだまっていませんわ。』

銀「あ……あらぁ……!? ちょっ……」

『『『この……』』』

『『『……!!』』』

銀「いやああああああああ!!」
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:44:10 ID:na2Ny5bD
銀「いやだ……いや……!!」

 たす……けてぇ……!!

……

ガバッ!!

[11:32]
銀「ハァッ……!?」
ゴシゴシ……


 ……夢ぇ!?……なんて悪夢……
あやうく、ジャンクにされるところだったわぁ……
しかももう11時半だなんて……ジュンみたいだわぁ。


[同じころ、桜田家]
ジュン「ッキシッ!!」

翠「チビ人間、こんな時期に風邪ひきやがったですか?」
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:45:50 ID:na2Ny5bD
[11:45]
[旧礼拝堂前。]
ギィッ……
パタパタ……

 あー……寝覚めが悪いわぁ。
大体どうしてこの私が雛苺のクレヨンを……?


「あーっ! 水銀燈なのー!」

「あの子が、一番上の……。」

銀「その声はぁっ!? 雛苺……!!」

雛「うゆ? 水銀燈、なんだか元気ないのー。」

銀「そ……そぉ!?」


 そうはいうけどぉ! 八分の一くらい、あんたのせいなのよぉ!?
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:47:16 ID:na2Ny5bD
巴「こんにちは、水銀燈。」

銀「……雛苺の契約者ねぇ?」

巴「ええ。元、ですけど……
  柏葉巴といいます。いつも雛苺がお世話になってます。」

銀「い……いやっ、そのへんは大丈夫よぉ!
  この子はよいこだから……」

雛「ヒナよいこにしてるのよ!」

銀「そうそう、よいこよいこ……」
ナデナデ


 どうも雛苺にさえ気おされてしまうわぁ。
どうしたのかしらぁ……?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:48:47 ID:na2Ny5bD
雛「水銀燈ぉー! じゃじゃーん、みてみてなの!」

銀「なぁに……いぃー!?」


 クレヨンね。えーと……
1、2、3、……何本あるのよ!?


雛「72色クレヨンなのー! トモエに買ってもらったのよ!」

巴「これ、298円なの。お得だよね。」

銀「は……はぁ……そ、そぉねぇ。すごいわねぇ!」


 な……72色……!?
72本も食べられ……いや違っ……!!
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:49:28 ID:na2Ny5bD
雛「うゆ? 水銀燈、顔が焦ってるの。」

銀「そ、その!! 絵ぇ描いたら見せるのよぉ!? わかったぁ!?
  ばいばーい!!」

雛「ば……ばいばいなのー。」

巴「……ねぇ雛苺、いつもあんな感じなの?」

雛「ちがうの。いつもは、もっと元気というか強気なのよ。」

巴「はぁ。」


[11:58]
 ふぅ……なんとか落ち着いたわぁ。
クレヨンごときに怖気づくなんて、私らしくないわぁ。
72色で300円しないって、明らかに安すぎる気がするわぁ。

 ああいうの、大体1本か2本はジャンクが混ざっているものよねぇ……。
でも雛苺のことだし、そんなのお構いなしに絵を描くはずだわぁ。
……なんだか、完成が楽しみよねぇ。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:52:41 ID:na2Ny5bD
[12:08]
[薔薇野マンション 220号室。]

みつ「カナ〜!お昼ごはんですよぉ〜!」

カナ「わぁい!超甘玉子焼きかしらー!」

みつ「年度末の仕事を昨日で仕上げといた甲斐があったわ〜!
   だから、みっちゃんがんばっちゃった!」

カナ「うまそ〜うかしら〜♪」


ピーンポーン
銀「ごきげんよぉ……。」

カナ「ん!? あのドスの利いた猫なで声、水銀燈かしら?」

銀(ドスの利いた……!?)
  「暇なんで……遊びにきちゃったぁ……」

みつ「きゃ〜! 水銀燈ちゃ〜んがここにいる〜ん!
   一ヶ月ぶりねぇ〜!! 逢いたかったよぉ〜……」

スリスリスリ……ギュオオオオオ
銀「ひっ!?」

カナ「みっちゃ〜ん! けむり出てるかしら!」
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:55:03 ID:na2Ny5bD
 確か最後に逢ったのが、ラプラスとの戦いの時……
737時間と12分振りねぇ……。

 ……すごい摩擦だったわぁ……。


みつ「あら!?いけないいけない、みっちゃんはりきりすぎちゃった!
   水銀燈ちゃんの分のお昼ご飯も作るわよ〜!」

銀「あ……ありがとぉ……。」

カナ「みっちゃん特製、"激甘玉子焼き2.0"かしら!」

銀「!?」


 まただわぁ……玉子焼きごときにやられる私じゃないわぁ……!
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:56:08 ID:na2Ny5bD
パクッ
モムモム……

 ――!?
この玉子焼き、とってもおいしいわぁ!
……あらぁ!? なんだか目の前が……


みつ「水銀燈ちゃん、涙を流すほどおいしかったのね!
   みっちゃん感激!!」

カナ「おいしかったかしらー!?」

銀「ええ……!」


 これが"しあわせ"ねぇ……
お父様も、本当はこうしたかったのかしらね……。
ずっと独り身だったって聞くから……。
寂しかったのかもねぇ……。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 23:58:53 ID:na2Ny5bD
[13:12]
コサカイ『"こう見えても私、○○なんです!"……甘く見るんじゃねぇですぅ!』
客『『甘く見るんじゃねえですぅ!』』
コサカイ『さあシゲル松崎さんは"こう見えても"……?』
シゲル松崎『コサカイさん、こう見えても僕ね、日焼けには気をつかってるんですよ!』


カナ「"ごきげんよぉ"の当たり目のはがき、ぜんぜん読まれないかしら……。」

みつ「毎月送ってるのにぃー。」

銀「その前に"当たり目"が出ないことにはねぇ……」

カナ「いつもカナが可愛いイラストを描いてるかしら!」


 金糸雀……絵が可愛くても、あれは運だと私は思うわぁ。
さて、おいしい玉子焼きもいただいて、もう昼下がりだわぁ。
どこに行こうかしらねぇ……

 そういえば、みつ……が、私にコスプレとやらをさせようとしてるみたいねぇ……
一体何なのかしら……? ちょっとだけ、楽しみにしておいてやるわぁ……
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:00:55 ID:6UXjOLlB
[13:30]
[薔薇野マンション前。]
 そうだ……みんなにご飯をいただいてばかりもなんだしぃ……。
私の料理の腕をふるおうかしらぁ……。
こっそりと、のりに教えてもらってたのよぉ……!
スーパーマーケットに行けばいいのよねぇ……!!

ふふふふ……♪
あははは……!

[13:35]
[草笛家から飛んで5分 スーパー ゴトーナノカドー。]
ガーッ

店員1・桃井「いらっしゃーせー」


 えーと……このカートを使えばいいのねぇ……。
よっ……と……ちょっ、何これ、重い……!!


桃井「……えーと……あのすごい服の子……」

店員2・種市「……カート……重くないのかナ。顔色も悪いし……」

桃井「うーん……」
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:01:38 ID:6UXjOLlB
 ……重いのよぉ!
これは……思ったより、体力を使うわねぇっ……!!
それに、もともと色が白いだけよぉ!! ジャンクにされたいの……ッ!?


桃井「カート重くないっすか」

銀「え……ちょっと……重いわぁ……!」

桃井「カートは戻しておきやすから、こっちを使って下せえ。」

銀「あ……りがとぉ……」


 あやうくこっちがジャンクになるところだったわぁ……。
こっちの「おこさま仕様カート」は、軽くていいわねぇ!
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:04:11 ID:6UXjOLlB
[13:50]
カタコトカタコト……

 材料はぁ……これで、そろったわねぇ!
ナンバーズで軽く当てといてよかったわぁ♪


種市「2428円でーす」

銀「……」
チャリッ

種市「2500円から」


 ちょっとぉ! 種市ぃ……!!
「(2500円)から」ってなによぉ!? ジャンクにするわよぉ……!?

ドドドド……
種市「…… ……(殺気!!)」

銀「おつりはいらないわぁ。 適当に募金しといて頂戴……!?」
ドドドド……

桃井「あ……わかりやした、ありやした、さーせんしたー……!!」
種市「うう……」


 さて……みんな集まるところといえばぁ……?
……あそこしかないわねぇ!
せっかくだし、堂々と玄関から入ってやろうかしら……。
今までは、鏡からしか出入りしてなかったから……いいわよね?
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:06:34 ID:6UXjOLlB
[14:12]
[桜田家。]

ピーンポーン
ジュン「はい?」

銀「おじゃま……するわぁ……」

ジュン「!! 久しぶりだな……ま、まあ、ゆっくりしていけよ。」
    (……げげげ玄関から、すすす水銀燈!?)


 いいじゃないのよ……。
そんなに驚くことなのぉ……?
乳酸菌足りてないんじゃないの……?


真紅(水銀燈……!?)

翠「よ、ヨォ。ですぅ……」
 (水銀燈自ら"玄関から"ホーモンですとぉ!?)

真紅「あら、珍しい……」
   (どういう風の吹き回しかしら……?)


 なんなのよぉ……どうしてそんなに冷や汗が出てるわけぇ……?
そんなに私が玄関から入ってくるのが珍しいわけぇ?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:08:55 ID:6UXjOLlB
のり「いらっしゃい!」

銀「みんな揃ってるぅ……?」 

のり「雛ちゃんなら巴ちゃんとお出かけしてるわよぅ?」

銀「さっき逢ったわぁ。」

のり「あら、そうなの! そうだ、今日、ついにやるの?」

銀「ええ……。やってやるわぁ……。」
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:11:06 ID:6UXjOLlB
[14:21]
のり「みんなー! 水銀燈ちゃんから重大発表よーぅ!!」

銀「今日の晩御飯は……私が作るわぁ!!」

ズコーッ ×3

銀「誰よぉ!? 今ずっこけたのはぁ!?
  ジャンクにするわよぉ!!?」

真紅「ご……ごめんなさい……あまりにも唐突すぎたから、その……」

翠「すまねーですぅ……けど、なんで水銀燈が料理するですか!?」

ジュン「ご、ごめん……おどろかすなよー。」

銀「……日ごろの感謝を込めたいのよぉ。仮にも第一ドールだしぃ……。
  その……740時間くらい前のこともあるしぃ……。」

ジュン(照れてやがる……)

真紅「……楽しみにしているわ。」

翠「……楽しみにしてるですぅ!」
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:13:24 ID:6UXjOLlB
[15:48]
くんくん[セル輔さんよ……田舎のお袋さんが、悲しむぜ。]
セル輔[ちくしょぅ……ちくしょおおおおおお!!]
くんくん[さあ、ネコミミさん、ダンスの続きを……。]
[第4話:天下一舞踏会殺人事件 完]


銀「……くんくん探偵……恐ろしい子……!」

真紅「ええ。彼は天才よ。次の第5話は、バローと推理対決なのだわ!」

銀「はやく再生しなさぁい!」

真紅「さぁ……はじまるわ。」


ジュン「水銀燈もくんくんが好きなんだ……」

翠「意外ですぅ。」

ジュン「お前は観ないのか?」

翠「……真紅と20回は観てるから十分ですぅ。」
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:17:39 ID:6UXjOLlB
[15:52]
くんくん[第5話:ジェットコースター殺人事件!]
バロー[ふーん……お前が"くんくん"か]
くんくん[よろしく、バロー!]


ギィッ
雛「ただいまーなのー!」

銀「おかえりなさぁい。雛苺、くんくん探偵、面白いわよぉ。」

雛「あっ、バローの話なのー! ヒナもまぜてー!」


翠「……チビチビは真紅と40回は観てるはずですぅ……?」

ジュン「よくわかんないなー。」
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:18:22 ID:6UXjOLlB
[17:20]
雛「そーいえば、お昼にも水銀燈に逢ったの!」

翠「へぇー。そういうこともあるもんですねぇ。」

雛「水銀燈元気になってよかったの!」

銀「ふふ……ますますお礼しなくっちゃねぇ。」

雛「うゆ?」

翠「今日の晩御飯は、水銀燈が振舞うらしいですぅ。」

雛「ふおおおー!?水銀燈が作るの!?
  うわーい! すいぎんとーの、ごーはーんー♪」


 より闘志に火がついた感じだわぁ……!
そろそろ5時半……準備に取り掛かる時がきたようねぇ……!
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:19:18 ID:6UXjOLlB
[18:18]
 ついに……ついについにぃ……!
このせりふを言えるときがきたのよぉっ……!!

銀「みんなぁーっ!!ご飯よぉーーー!!」


ドドドド……

ジュン「おっ、これは!」

雛「うわーい! はなまるサイコロステーキなのー!!」

真紅「まぁ! グリーンピース、コーンそしてにんじんだわ! 彩りも抜群ね!」

翠「フライドポテトまであるですぅ。こんなスキルがあったとは……驚きですぅ。」

銀「たぁーんと、めしあがれぇ。」
  (みんなありがとぉ……ここ600時間ほど頑張ってきた甲斐があったわぁ……!)

のり「じゃあ、いただきましょう!」


 ……ふふ、喜んでもらえてよかったわぁ……!
……えーと……ちょ……「長女」らしいことできたしぃ、2倍うれしいわぁ!
今度、薔薇水晶と雪華綺晶にもつくってあげよっとぉ……。
そういえば、雪華綺晶の体、もうちょっとでできるみたいね……。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:22:13 ID:6UXjOLlB
[19:45]
 さて…そろそろめぐのところに行かなきゃ……
なんだか充実した一日だったわぁ。

雛「水銀燈ー! まってなの、これー!」

銀「? あっ、できたのねぇ! ありがと、雛苺ぉ!
  大事に飾るわぁ!」

雛「へへへ……ヒナ、うれしいの!」

真紅「気をつけて帰るのよ。」

翠「次来た時は翠星石のスコーンをお見舞いするですから
  覚悟しやがれですぅ!」

銀「楽しみにしておくわぁ。じゃぁ、ばいばーい……♪」
バタム

ジュン「……あいつの料理、おいしかったなぁ。」

のり「やっぱり、お姉さんなのね!」
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:24:28 ID:6UXjOLlB
[20:22]
[有栖川大学病院 316号室。]

めぐ「……どうしたの?この絵……」

銀「雛苺にもらっちゃったぁ。」

めぐ「ふふ。かわいらしい絵ね。この真ん中のが水銀燈かな……?」

銀「そうねぇ。真紅たちもいるわぁ。あっ、めぐもいるわよぉ。」


[20:59]
 絵は、額縁に入れて飾ることになったわぁ。
クレヨンをたくさん使ってあって、カラフルなのよぉ。
雛苺らしい絵だわぁ。雛苺、これからもがんばんなさぁい。

 ……あら、もう9時、消灯の時間ねぇ。
ふぅ、今日は本当に楽しかったわぁ。
久しぶりにこんな感情を抱いた気がするわ。
多分、1082592時間と29分ぶりかしら……。


 じゃあめぐ、私もう寝るからぁ。おやすみなさぁい。
明日の病院食には、ヤクルトついてるといいわねぇ…。
ふたりで……飲むんだからぁ……Zzz……

 ……ひとり孤独に、あの時目指してたアリスになるより……
……いいですよね? お父様……


                      【第2話 おわり】
7111:2009/10/23(金) 00:31:34 ID:6UXjOLlB
……今回の投下は以上です。
読んでくれた方、ご清聴ありがとうございました。

>>36
こちらこそありがとうございます。
ヒナ×銀を書いてみたくて、第1話を書き下ろしました。
ヒナは本当にやさしい子です。これから、原作でもその姿を
見ることが出来るよう祈っています。
銀も、よい子のはずです。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 20:03:46 ID:sK0MF3hr

水銀燈が語り部か。しっかし長女してるところに胸キュン
そして第2話でも雛苺はいい子だった。ほろり
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 20:04:30 ID:sK0MF3hr
>>72
× しっかし長女してるところに
○ しっかり長女してるところに
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 20:10:13 ID:BMe7ZEQl
某所のSS読み返してきた。
7511:2009/10/25(日) 21:30:54 ID:njuLRzCx
ども、>>11っす。今日は第3話と4話を投下しますよ。

>>72-73
ありがとうございます。
イメージとしてはオーベルの頃の穏やかな顔をした、
それでいて1期2期のような神々しさというか、凛々しさというか
そういうものを持った銀ということで……

>>74
ありがとうございます。
某所のは今読み返すとやたら記憶違いが目立つなーという具合ですかね……草苗とかカナちゃんとか……
ローゼンを調べれば調べるほど、原作を読めば読むほど、
アニメを観れば観るほど、発見というか、「これはこうだったんだ」と気づくというか……
奥深い作品なんですよね。

あと、「こまけえこと」なんですが、某所のは2008年2月〜12月という設定で書いてるんですが
こっちのは原作初連載時の2002年をアニメ1期2期とした時間軸で書いてるんですね。
ですので、「決着」のジュン始業式が日曜になるんですが、その辺の事情にはちゃんと対応しています……
76薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:35:52 ID:njuLRzCx
【第3話 金糸雀】

[04/07 06:24]
[薔薇野マンション 220号室。]
チュン……チュンチュン……

カナ「ん〜っ、……あら、もう朝かしら……?」


 ……6時……24分?
最近、日が昇るのが……早くなってきたかしら……。
みっちゃんはぁ〜……大の字になって寝てるかしらぁ……!?
寝相わるすぎかしらぁ……
77薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:39:44 ID:njuLRzCx
 こんな時間は……なんにもないし……
もう一眠り……する……かしらぁ……むにゃむにゃ……


『……金糸雀……金糸雀……!』

カナ「……え……誰かしら……?」

『とぼけないでぇ……? 私よぉ。』

カナ「す、水銀燈……?」

『そうよぉ。135時間と34分前は、本当にあ・り・が・と。
 ”激甘玉子焼き2.0”ぉ、とってもおいしかったわぁ。』


カナ「はあ……。それはどうも……かしら。」


 水銀燈がなんで目の前にいるのかしら!?
泊まってるはずないし……来るにしては早すぎるかしら!
それにここは……nのフィールド!?
78薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:42:02 ID:njuLRzCx
『けど……』

カナ「えっ……?」

『それとこれとは話は別よぉ!!』
ジャキンッ!!

カナ「ひぃっ!?」

 ひええええ!!??
なになに、なんなのかしらー!?
カナは何もしてないかしらーー!!
それにあの戦いは――

ズバアッ
79薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:43:37 ID:njuLRzCx
『…… ……!!』
ビュウッ

カナ「―― ―― ――!!」

ガバッ!!
[08:01]

オグラさん[[おはよーございまーす!!]]


うわっ!?
わ……ああ……夢!?
とんでもない悪夢だったかしら……


みつ「きゃ〜、カナ〜!! おはよ〜う!!」ゴシゴシゴシ

カナ「ひええ!! 速攻でまさちゅーせっつかしらー!?」
80薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:51:44 ID:njuLRzCx
[08:02]
オグラさん[4月7日月曜、今週も"とくダベ"にお付き合いいただきたいと思います。]
カサイさん[なんでも、昨日日曜日にもう1学期が始まった学校もあるみたいですね。]
オグラさん[ゆとり教育の見直しだと言われていますが……完全週休二日制の2年目なんですよ?]


みつ「ふーん、もう新学期か……」

みつ「ねぇカナ、さっきとんでもない声出してたけど、どうしたの?」

カナ「わ……悪い夢を見たかしら……」

みつ「まぁ……だいじょうぶだった?」

カナ「大丈夫かしら! 
   カナはこのとおり、ピンピンしてるかしら!」

みつ「だといいけど〜……うん、嫌なことは忘れて、朝ごはんにしましょう!」

カナ「そ、そーするかしら!! じゃあ、ちょっと歯磨きしてくるかしら!」


 ……とはいうものの、忘れられるわけがないかしら。
こうなったら、みっちゃんが仕事に行ったあと、例の大学病院まで行ってみるかしら!
カナは潜入のプロフェッショナルかしらー!!
81薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:55:48 ID:njuLRzCx
[10:20]
[有栖川大学病院 316号室。]

めぐ「……ねぇ……水銀燈……」

銀「なぁに? めぐぅ♪」ニヤニヤ

めぐ「……病院食に、久しぶりにヤクルトがついたからって……
   いつまでニヤけてるの? ついたちの分にもついてたでしょ?」

銀「だってぇ……めぐとふたりで……ヤクルトを飲めるなんて……。
  あー、もう!」 ジタバタ

めぐ(ヤクルトで……酔っ……てる?)


 あれ? 水銀燈、やけにうれしそうな顔をしているかしら……
確かに、最近はあんなこともなくなったし、神経を使うことも無いし……
けど……
82薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 21:59:14 ID:njuLRzCx
バンバン
めぐ「あら? 誰か来たみたい……」

銀「あっ、金糸雀ねぇ。」ニヤニヤ

ガラガラッ
カナ「ごきげんよーかしら。 なにをニヤけているのかしら?」

銀「これよぉ、これぇ。」

カナ「やくると……?」


 なんだか拍子抜けしたかしら。
とても何かたくらんでるようには、見えないかしら……
それに……こんな絵を飾るなんて……
本当に、あの水銀燈かしら……?
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 22:01:23 ID:njuLRzCx
カナ「どしたのかしら? この絵……」

銀「これぇ? 前に、雛苺がくれたのよぉ!」

カナ「雛苺が!?」

銀「よく描けてるでしょぉ?」

カナ「激しく同意……かしら。」


 雛苺と水銀燈って、最近仲がいいのかしら?
まぁ、ここのところ平和だし……不自然ではないけど……。
84薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:06:34 ID:njuLRzCx
銀「あ、めぐぅ? 紹介するわ。ローゼンメイデン・第2ドールの金糸雀よぉ。」

カナ「こ……こんにちは、かしら。」

めぐ「……こんにちは。第2ってことは……水銀燈のすぐ下の妹なのね。」

カナ「そ、そーいうことになるかしら?」

めぐ「……私は、水銀燈の契約者……柿崎めぐ。よろしくね。」

カナ「よろしくかしら、めぐ!」


 ……なんだか疑ってかかってて申し訳ない気分かしら……。
でも、一時期に比べて水銀燈、ずいぶん元気になったかしら?
聞いた話、つい1週間くらい前に、めぐがアメリカから帰ってきたんだって!

 20日間、遠く離れていたとはいっても、またこうやって契約者と触れ合える……
とってもいいことなのかしら♪ さて、いよいよ天守閣に潜入するかしら!
……あっ! 水銀燈、カナの前口上忘れてるー!!
85薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:09:58 ID:njuLRzCx
[12:01]
[桜田家 裏庭。]

 さぁーて……失敗を重ねに重ね、はや888回……っ!
成功したのは今までに13回、しかも半年以上前……っ!
今日こそ黒星街道から反れてやるかしら!!
さぁ! 突撃かしらあああ!!


カラカラッ
カナ「そろ〜り……裏口から不法侵にゅ……」

雛苺「「 ぶ わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ …… ! ! 」」
ブ ゴ ー ン !!

カナ「ひえええ!!??だ、大音量かしらぁー!?」キィィン

バンッ
ジュン「どーした! ……あれ、金糸雀。」

カナ「あ、あははは……♪」

雛「びええええ……」
86薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:11:35 ID:njuLRzCx
[12:07]
カナ(……あっさりバレてしまったかしら……。)

雛「うぐっ……ぐすっ……」

カナ「何があったか知らないけど、泣かないで、かしら!」ナデナデ

真紅「あら、金糸雀。6日ぶりね。」

カナ「そうかしら?」

真紅「水銀燈がディナーを作ってくれた次の日に、シルベスターギムネマ茶を餌に
   蒼星石を釣ってたじゃない?」

カナ「そういえば最後に真紅に逢ったのはその日、エイプリルフールだったかしら!」


[12:14]
カナ「ところで真紅、どうして雛苺は泣きじゃくってるかしら?」

真紅「翠星石に苺大福を食べられてしまったようね。」

カナ「平和なケンカでいいかしらー……。」

真紅「そうでもなくってよ? 少なくとも雛苺にとっては大問題だったようだわ……。」

カナ「はぁ……あ、真紅! 実は……」


 とりあえずカナは、これまでのいきさつを話すことにしたかしら。
87薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:14:03 ID:njuLRzCx
[12:24]
真紅「……そんな夢を見たのね。」

カナ「まるで、ずいぶん前の水銀燈だったかしら。」

真紅「でも、最近は水銀燈も落ち着いてきているようだし……
   ただの悪夢だったと捉えておきましょう?」

カナ「そうするかしら! さて、雛苺たちのほうを解決するかしら!
   ちょっと出かけてくるかしらー!」

真紅(……なんだか、一段とお姉さんっぽくなってるわね……
    金糸雀は第2ドール。今桜田家にいる中では、一番のお姉さん……。)


 ……実は、カナの心の中には、まだアリスゲームに執着してる
水銀燈たちの姿があるかしら……。

 これが原因かもしれないけど……何とかして、カナたちが間違いなく
その運命に勝ったことを、カナの心に言い聞かせなきゃ……
よーしカナ、気合い、気合い!!
88薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:17:32 ID:njuLRzCx
[12:39]
[菓子屋の不死家。]

店員・鳥越「らっしゃっせー。」

カナ「えーと、苺大福、20個くださるかしら!!」

鳥越「わかりやした。2200円でございやす。」

カナ「にせん……にひゃくえん、と!」

鳥越「ありあしたー。」


 これだけあれば十分かしら!! 雛苺と翠星石に6個ずつやっても、
あとはカナが8個も食べられるかしら!!
さすがはカナ、薔薇乙女一の策士かしらー♪


[12:47]
[桜田家。]
ガチャ
カナ「策士再び光臨かしらー♪」

真紅「”おじゃましますかしら”でいいわ。」

カナ「ちょ、ちょっとかっこよく言ってみただけかしら!!」

真紅「雛苺と翠星石なら、上にいるわ。あと」

カナ「カナにかかれば揉め事はチョチョイのチョイかしらー!」


 さて! すみやかに作戦を実行するかしら!
89薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:18:46 ID:njuLRzCx
[ジュンの部屋]
バンッ
カナ「そこぉー! ケンカはやめるかしらー!!」

雛「うゆ?」

翠星石「なんですか?」

ジュン「お、金糸雀?」


 ……あれ? ケンカ……してないかしら……?


[同じころ、リビング]
真紅「ジュンも一緒にいるってこと、言おうとしたのに……。」
90薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:21:29 ID:njuLRzCx
[12:48]
カナ「……もう! ケンカしたらダメかしら!」

翠「十分反省してるですぅ。翠星石がおとなげなかったですぅ。」

雛「ヒナもなの。ヒナもっと強くなるの!」

カナ「仲直りかしら!? じゃあ、これあげるから……仲良く分けるかしら!」

雛「わーい! うにゅーだー!!」

翠「ひーふーみー……20個ですから、翠星石と雛苺とチビ人間と金糸雀とで5個ずつですぅ!」

カナ「!!」ガビーン

雛「5個ぉー! たくさん食べられるのー!!
  ありがとう、金糸雀ぁ!」

ジュン「お、いつ喰ってもこれはいける! ありがとなー、金糸雀。」

カナ「ど……ど……いたしまして……かしら……」


 ジュンを計算に入れてなかったかしら……。
8個が5個に減ってしまったかしらー……うぅ……。
でも、なんだか解決してたみたいだから、よかったかしらー!


カナ「あれ? ジュン、今日は月曜日だけど、学校はどうしたのかしら?」

ジュン「僕の行ってる学校は、曜日に関係なく4月6日に始業式をやるんだ。
    今年は日曜だったから、今日が代休なんだ。」

カナ「へぇ……いろいろあるのかしら……。なんか、今朝も聞いたよーな……。」
91薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:25:38 ID:njuLRzCx
[14:25]
カナ「おじゃましたかしらー♪」

のり「はーい! またくるのよぅ!」
バタム

 いいことをした後は気持ちがいいかしらー!
今日の最高気温は21度、4月の頭にしては暑いかしら。
日傘もばっちり装備かしらー!


カナ「いちねんじゅうさきみだれるー、
    ばらのそのでくらせたならー……♪」

スゥッ
レンピカ{チカチカッ……!}

カナ「あら? あなたは……レンピカね!
   どうしたのかしら?」

レンピカ{…… !!}

カナ「着いて来いって?」
92薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 22:31:31 ID:njuLRzCx
[14:31]
[近所の公園。]

カナ「あ、蒼星石かしら!」

蒼星石「やぁ、金糸雀! おーい、金糸雀が来たよーっ!
  ありがとう、レンピカ!」

薔薇水晶「あ……ども……。」

雪華綺晶「こんにちは、黄薔薇のお姉さま……」

カナ「ごきげんよう、かしら! 雪華綺晶、昨日も空を散歩したけど、体のほうは慣れたかしら?」

雪「はい、おかげさまで。」

カナ「それはよかったかしら♪ それにしても、めずらしい組み合わせ……どうしたのかしら?」

薔薇「あの……いいにくいんだけど……」

カナ「なにかしら?」

雪「先ほどまで、青薔薇のお姉さまと薔薇水晶と……、
  こちらでキャッチボールをしていたのですが……」

カナ「はぁ……」
93薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:01:21 ID:njuLRzCx
[14:21]
蒼『よーし、いくよー!』ビュン!

薔薇『いい球……!』

雪『なかなかすばらしい球を投げま……あっ!!』

蒼『あの方角は!!』

ヒュー……ストン……
薔薇『あれは……山本さんの家……』

蒼『や、山本さんの家……?!』

雪『エンジュさま曰く……あちらにボールを取りに行って、無傷で戻ってこられたのは、
  過去30年に、一人だけ……』

蒼『えぇーっ……なんとか潜入して取り戻さないと……
  けど、囲いも高いし……僕にはうまくやる自信が無いよ……。』

薔薇『わたしも潜入は……あっ!
   ……金糸雀なら……なんとかしてくれる……!』

雪『黄薔薇のお姉さまは、侵入のプロでしたわね!』

蒼『うーん……早く来てくれるといいけど……
  よし、レンピカ! 金糸雀を探してきてくれ!』
94薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:05:33 ID:njuLRzCx
[14:38]
[山本さん宅 庭。]

カナ「よ〜し……そこそこ……かしらっ」

山本「何やっとるんだ?」

カナ「ひええ!!」


 お、おっかないオジサマかしら〜!!


カナ「ごめんなさいかしら、ごめんなさいかしら〜!
   キャッチボールをしてたらここにボールが飛んでいってしまったらしいかしらぁ〜!!」

山本「……そうか。ホレ。ボールだ。お嬢ちゃん、えらいぞ。」

カナ「は、はぁ……」

山本「それと、正直者へのほうびだ。"雷おこし"だ!」

カナ「あ……ありがとかしら……」

山本「そうだ、茶でも飲んでいけ。」


 ふぅ……たいしたことなかったかしら!
訳を話したら、「雷おこし」を100本もいただいてしまったかしら〜。
どうやら、カナは二番目の生還者になったかしら!
……30年間、ちゃんと訳を話してくれたのが一人だけだった……悲しい話かしら。

 ちなみに、このおじ様の孫が、のりと学校が同じなんだって!
さーて、ミッションも完遂したし、また蒼星石たちと遊んでくるかしら!
95薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:08:26 ID:njuLRzCx
[17:00]
[帰り道。]
テクテク……

蒼「あー、楽しかったねー。」

薔薇「うんどう……たまには……いいよね。」

雪「黄薔薇のお姉さまがノモフォークを投げることが出来たとは……想定外でした。」

カナ「カナはヴァイオリンを弾いてるから、日ごろから肩をきたえてるかしら!」

蒼「じゃあ、僕はこっちだから! またねー!」

薔薇「ばいばい……!」

雪「ごきげんよう。」

カナ「バイバイかしらー!」


 まさか、このメンツでキャッチボールが出来る日が来るとは、夢にも思ってなかったかしら。
東に伸びる4つの影……ホント、ジュンのおかげかしら!

 かわいい妹たちの役にも立てたし、今日はいい日かしらー♪
96薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:14:47 ID:njuLRzCx
[17:08]
 薔薇水晶たちの店は、みっちゃんの家の近くにあるかしら!
店のオーナーは、あのエンジュって男かしら。
最近は「がんぷら」や「だんがん」ってのも展開してるんだって……だから、男の子の出入りも多いみたい!


薔薇「それでね……昨日水銀燈に……雪華綺晶の体が完成したからって、
   はなまるサイコロステーキを、つくってもらった……」

雪「とっても……おいしかった……。
 黄……いえ、金糸雀お姉さまもぜひいただいてみては……?」

カナ「たのしみにしとくかしら!」

薔薇「あ……お父様のお店に……ついたから、ここで、バイバーイ……」

雪「また、遊びましょう……?」

カナ「もちろん!」

 ……雪華綺晶、カナを名前で呼んでくれたかしら!
とってもうれしかったかしら♪
97薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:21:09 ID:njuLRzCx
[17:13]
 さて、今日の晩御飯はなーにかなー、かしら♪


雪「金糸雀お姉さまー!」

薔薇「……ま……まってー」
ダダダ


 あれ? 薔薇水晶……雪華綺晶……!?


薔薇「はぁ……はぁ……追いついたー……」

雪「まだ……そんなに遠くに行ってなくて……、よかったです……。」

カナ「どうしたのかしら?」

雪「エンジュ様が……お逢いしたいと……」

カナ「……了解かしら!」
98薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:28:24 ID:njuLRzCx
[17:20]
[ドールハウス・Enju Doll。]

カナ「こんにちはー……かしら」

エンジュ「君が、ローゼンメイデン第2ドール・金糸雀だね?」

カナ「は、はぁ……。」

エンジュ「この子たちから話は聞いた。ぜひとも一度、逢ってみたくてね。」

カナ「そ……そう……かしら?」

エンジュ「この子たちと仲良くしてくれて、ありがとう。」

カナ「はぁ……ど、どういたしまして、かしら。」

エンジュ「薔薇水晶や雪華綺晶に笑顔が戻りつつある。
      礼を言いたい……」

カナ「え……?」

薔薇「ありがと……。」

雪「楽しゅうございました……♪」ニイッ

エンジュ「それで、頼みがあるのだが……。」

カナ「なにかしら?」
99薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:35:18 ID:njuLRzCx
[18:35]
[薔薇野マンション 220号室。]

カナ「ただいまーかしらー!」

みつ「カナ、おかえり〜!!……あれぇ? この子達は?」

カナ「ローゼンメイデンかしら!
   今晩、泊まっていくんだって!」

みつ「ほんとにほんとに!?」

雪「ご無沙汰しております……ローゼンメイデン・第7ドール、雪華綺晶……。
  今晩はお世話になります……。」

みつ「あっ、雪華綺晶ちゃんね! ご無沙汰っ!!」

雪「はい……!」

薔薇「わたしも第7ドール……ばらすいしょう……こんばんは……」モジモジ

みつ「…… ……」ジーッ

カナ「…… ……」ゴクリ

みつ「きゃ〜っ!! かわいい〜ん!! 薔薇水晶ちゃんね!
   私は金糸雀のマスターをやってる、草笛みつ! みっちゃんって呼んでね!」

薔薇「よろしく……みっちゃん……」

みつ「あ〜んもう眼帯かわいい〜!!肩パットかわいい〜!!
   まさちゅ〜せっちゅ〜♪」

薔薇「あ……あつい……」
100薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:38:32 ID:njuLRzCx
雪「……2ヶ月前は、本当にありがとうございました……。 」ペコ

みつ「なぁーに、いいっていいって! あ、ここにいるってことは……!?」

雪「体……昨日、出来上がりました。まさちゅーせっちゅ……してください。」

みつ「きゃぁ〜! ほんとに!? ありがとー!!
   お言葉に甘えて、まさちゅ〜せっちゅ〜♪」

雪「ああっ、とけちゃいそう……!」


 みっちゃんたち、一瞬にして仲良くなったかしら!
カナ、めっちゃ空気かしら……
101薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:42:05 ID:njuLRzCx
[19:24]
みつ「みっちゃん特製、"超甘ふんわりたまごで赤まんまをくるんだオムライス"〜!」

カナ「わーい!! いっただきまーす!」

薔薇「わぁ♪……いただきまーす……」

雪「いただきます……あ、とってもおいしいです……!」

みつ「ふふふ♪ 喜んでもらえて、みっちゃんうれしいなぁー♪
   きゃ、うま〜い!」

カナ「やっぱ卵かしら〜!」

みつ「そうだ! こんど、新しいお洋服とか作るから、みんなでお茶会をしましょー!!」

カナ「それいいかしらー!」

薔薇「それ……いい……♪」

雪「お姉さま方とティータイムですか……うふふ♪」
102薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/25(日) 23:44:27 ID:njuLRzCx
[20:02]
薔薇「こ……この服……かわいい……」

雪「なんだか新鮮です……」

カナ「二人ともかわいいかしらー!」


 みっちゃんのファッションショー、開幕かしらー!
薔薇水晶は……パステルカラーの紫をベースとした、メイドさんの服かしら!
雪華綺晶は……なんと、白無垢のウェディングドレスかしら!
めっちゃお金かかってるかしらー……

薔薇「おかえりなさいませー……ご主人様」
雪「あなたを……愛すと誓います……」


みつ「きゃ〜!! かわいい〜!! もうインスタントカメラ2個も使っちゃったぁ〜ん♪
   次はこのポーズね! よーし!いい顔よ〜!!」

薔薇「……いつも……こうなの……?」

カナ「うん!」

雪「すごい……ですね……」
103薔薇乙女達の好日 第3話:2009/10/26(月) 02:06:00 ID:2HTHZpG7
 そうだ、去年の夏に撮ってもらった写真を
薔薇水晶たちに見せてやるかしら!


カナ「この写真を見るかしら!」

薔薇「あ……雛苺たち……かわいい♪」

雪「これらもすべて……みっちゃんさんが手がけたのですか?」

カナ「そのとおりかしら!」

薔薇「ひゃぁー……まえすとろ……」


[20:47]
 なんだか、いつも以上におもしろい一日だったかしら!
まさか、3件も侵入するなんて……よく体力が持ったのかしら。
朝に病院で見た絵、一枚欲しくなったかしら。今度雛苺に描いてもらおっかなー……。

 みっちゃんはこの後も仕事があるみたいだから、先に寝るかしら!


薔薇「すぅー……すぅー……」
雪「……Zzz……」

 あ、あの二人、もう寝ちゃってる……
それじゃ、カナも、おやすみ……
明日は晴れるかしら……?
                                             【第3話 おわり】
104薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:12:17 ID:2HTHZpG7
【第4話 翠星石】

[05/05 07:18]
[桜田家 階段。]
 どーやら、世の中はゴールデンウィークとかいうやつらしいですぅ。
最近は至極平穏な日が続いてるですから、翠星石としてもうれしいかぎりですぅ〜。
夢の扉の向こう側も、明るい色に包まれてることが多いですぅ!

 さぁてと! チビ人間を起こしに行ってやるですかねぇ……
今日こそは、翠星石特製スコーンを喰らってもらうですぅ♪
うふふふふ〜♪


蒼星石「翠星石……やけに機嫌がいいなぁ。」

真紅「昨日、ジュンと『明日の朝ごはんはスコーンにする、ですぅ』
    っていう約束をとりつけていたのだわ。」

蒼「あはは、それでかぁー……。」
105薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:19:10 ID:2HTHZpG7
[07:21]
雛「うゆー……翠星石ぃ、おはようなのー。」

翠「チビチビぃ♪ おはようですぅ〜。」

雛「うゆ? 翠星石、すごくごきげんなの! どうして?」

翠「それは朝ごはんの時のお楽しみですぅ〜!……〜♪」

雛「……うん! ヒナ、楽しみにしてるの!」


 キシシシ。もうチビ人間の部屋の前ですぅ♪
どうやって入ってやろうかなーですぅ〜。
106薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:27:34 ID:2HTHZpG7
[07:25]
[桜田家 リビング。]
雛「おはようなのー!」

真紅「あら、雛苺。 目覚めたのね。」

蒼「やぁ。」

雛「蒼星石ぃー! どうしてここに……?!」

真紅「驚くことは無いわ。あなたが昨日眠ってすぐ後に来た、それだけよ。」

蒼「昨日から泊めさせてもらってるんだ。ゴールデンウィークだからね。」

雛「ごーるでん……うぃーく?」

真紅「この国にも祝日というものがあって、その日は、人間たちの休息の日になるのは、お分かりね。
   あまり意識していなかったけれど、この国では5月は……
   基本的には3日から5日までの3日間、休日が続くわ。」

蒼「振り替え休日で、もっと増えることがあるよ。最長で5連休だね。」

雛「ふおおお、すごいの。なんだか強そうなの。」

蒼「え……?」
107薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:32:16 ID:2HTHZpG7
[07:29]
真紅「さて、朝のティータイム……」

翠「「「あーさーでーすーよー!!! あ〜さ〜で〜すぅ〜!!!」」」 
ドゴォオオン
翠「「「しゃっきりメンタマ開けやがれですぅーーーー!!!」」」
ビリビリ

 ……キィーン……
真紅「きゃっ!? 何!?」

蒼「うわぁっ……ジュンくんを起こす時ってこんな感じだっけ……!?」

雛「ちょっと、はりきりすぎなの……!!」
108薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:36:38 ID:2HTHZpG7
[ジュンの部屋。]
ジュン「ふぁあっ!? なんだなんだ!!
    金糸雀のヴァイオリン攻撃か!?」

翠「やっと起きやがったですか? ぐうたら寝てると、ぶたさんになっちまうですよ!?」

ジュン「だれがぶただ、誰が。」

翠「つべこべ言うなですぅ。 もう朝ごはんはできてるですよ!」

ジュン「はぁ。そうか。えーと……! 今朝はスコーンだったな!」


 はぁ〜。 なんだか、落ち着かんですぅ〜!
あ、まだ食べてもらってなかったですぅ。 落ち着くですよ、翠星石!


翠「さあさあ、食卓へ急ぐですぅ!」


[同じころ、草笛家。]
金糸雀「ッキシ!! 風邪かしら?」
109薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:42:39 ID:2HTHZpG7
[07:32]
[リビング。]

カルベさん[さてお次は? 今女子高生の間で流行の、くんくん探偵変身セット!]
JK1[きゃ〜♪ かわいい〜♪]
JK2[ガイシャの首をみてください! 昆布が二重に巻かれてます!?]
カルベさん[うーん、かわいいですねぇー。 来週もこのコーナーをよろし〜、くんくん!]


雛「くんくん!」

真紅「のりくらいの年の子は、物わかりがいいわね。」

蒼「カルベさんったら、なりきっちゃってるよ。それにしても……
  ……ジュンくん。」

ジュン「かぁ〜。朝からこんなにおいしいのが食べられるなんて!
    最高の朝だなぁー!」

翠「まぁこの翠星石にかかれば、お茶の子さいさいですぅ……!」

雛(翠星石、まっかっかなのー……)


 感無量ですぅ。さっきのチビ人間の声が、エコーして聞こえやがるですぅ♪
翠星石、いま猛烈に感動しているですぅー!
110薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:46:33 ID:2HTHZpG7
[08:00]
のり「おはよぅー! あら、もう朝ごはんはすんだの?」

翠「はいですぅ。翠星石がのりの分もつくるですぅ!」

のり「本当〜! ありがとねぇ。」

翠「チビ人間! ……スコーン、どうだったですか!?」

ジュン「ああ、おいしかったよ。今日は気分がいいから、図書館にでも行こうかなー。」


 翠星石! チビ人間の機嫌がいいことはそうそうないことですよ!
このチャンスを逃すわけにはいかないですぅ!


翠「チビ……じゃねーですぅ、ジュン……?」

ジュン「?」

翠「おねがいがあるですぅ。」

ジュン「え?」


 がんばるですぅ!! 翠星石ぃー!!


翠「……今日の昼、翠星石とふたりでおでかけするですぅ!! いいですか!?」


 言っちまったですぅー!!
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/26(月) 02:48:34 ID:43fSsN83
支援
夜遅くに乙だ
112薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:50:59 ID:2HTHZpG7
ジュン「いいよ。そうだなー。どこにするかなぁ。
    病院の近くに、シロツメクサの咲いてる野原があったはず……そこでいいか?」

翠「ぜ、ぜんぜんいいですぅ〜!!」


 ぐはー!! テンション最高潮ですぅ〜!!
日本語がおかしくなっちまったですぅ!!


[08:24]
のり「今日の朝ごはん、とってもおいしかったわ〜!」

翠「ありがとですぅ!」

のり「さぁーて、今日は部活もお休みだし、なにしようかなぁー。
   あ、そうだ! 巴ちゃんのところにでも行ってみようっと!
   電話、かけなきゃ……雛ちゃーん、真紅ちゃーん、蒼星石ちゃーん?」

TV[今日は、午前中は、晴れるようです。午後はにわか雨に注意してください。]
TV[最高気温は25℃、すこし汗ばむかもしれません。]


 ふむふむ、どうやら昼からは雨のようですねぇ。
これは相合傘のチャンスですかぁー!?
ヒヒヒ、折りたたみの傘を持っていっとくですぅ♪
113薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 02:55:34 ID:2HTHZpG7
[08:59]
雛「トモエトモエトモエー♪
  トモエのおうちー♪」

蒼「僕は、初めてだね。 どんなところなんだろう……?」

真紅「"何天堂64"で遊ぶと言っていたわね。」

のり「じゃあ、行ってくるねぇ!」

翠「いってらっしゃーい、ですぅ♪」


 のりめ、でかしたですぅ! これで早くもふたりきりですぅ♪
はぁー、幸せですぅ〜。


ジュン「じゃ、僕らも行こうか。」

翠「せんまさお、よしいくぞー!、ですぅ♪」

ジュン「どこで覚えたんだよ……」
114薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:00:12 ID:2HTHZpG7
[09:13]
[道中。]
翠「みーどーりーのーひーかーりーゆーれてるー♪」

ジュン「こころのもりのなかをあるく……」

翠「チビ人間、この歌知ってるですか?」

ジュン「あぁ。ラジオで聴いたんだ。いい歌だよな。」

翠「さっすがチ……ジュンですぅ! えいっ!」ヨジヨジ

ジュン「うわっ、なんだなんだ!?」

翠「よいしょ! ジュンのぼり〜ですぅ〜♪」

ジュン「わ、ととと、雛苺かお前は……
     ちょっと重いカナ……3kgくらいあるんじゃないか?」

翠「しゃーねーですぅ。翠星石はちょっと大振りですから……
  ……って、言わせんなーですぅ!」

 ジュン登りしちまったですぅ〜♪
でも、チビチビはよくあんなにもスルリと登れるもんですねぇ……
ちょっと尊敬しちまったじゃねーですか。
115薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:04:08 ID:2HTHZpG7
ボクッ!!
ジュン「わっ!!」

スタッ
翠「ひえっ!?」

ジュン「あててて……」


 どうやら、電柱にぶつかっちまったみてぇですぅ。
前が見えなかったですかねぇ……


翠「ご……ごめんですぅ……」

ジュン「いいって、どうってこと……ハハハ」

翠「……? ……」クスッ



 翠星石もチビ人間も、おめでてー奴みたいですぅ。
116薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:07:14 ID:2HTHZpG7
[09:25]
[有栖川大学病院 316号室。]
めぐ「……もう、こいのぼりの季節ね……」

水銀燈「そうねぇ……鎧兜にせいくらべ……」

めぐ「男の子の知り合いがいないからねぇ。かっこいい兜の実物に出会えない……」

銀「男の子、ねぇ……このへんじゃぁ、ジュンくらいしかいないわぁ。」

めぐ「はぁ……あれ?」

銀「どうしたのぉ?」

めぐ「あれ、ジュンくんじゃない?
   めがねをかけて、爆発頭で……」

銀「あら? あ、うわさをすれば……」

銀(……ジュンと、翠星石ねぇ。珍しい組み合わせ……
  そういえば、ジュンは翠星石とも契約していたわねぇ。
  なんだか翠星石ったら、幸せそうねぇ。ふふ、いいことだわぁ。)

めぐ「あっ、……女の子でも楽しめるもの、あるじゃない。」

銀「?」

めぐ「……かしわもちとか、ちまき。」

銀「なるほどねぇ。売店に売ってなかったぁ?」

めぐ「後で行ってみよっか。」


 誰かに見られた感じがしたですが……
チビ人間といっしょなら、それもいいですぅ♪
117薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:12:09 ID:2HTHZpG7
[09:38]
[病院の裏。]
ジュン「さぁ、ついたぞ。」

 翠星石が見たもの……それは、翠の野原に、
星のようにシロツメクサの花が咲いている、
まさにこの世の平和な光景ですぅ〜。

翠「ひゃぁ〜。きれいですぅ〜。」

ジュン「僕も、勉強に飽きたらたまに来るんだ。
    勝手に、"翠のじゅうたん"、って呼んでるけど……。」

翠「いいネーミングセンスしてやがるですぅ。」

ジュン「ときどき、柿崎さんと水銀燈も見かけるね。
    今度見かけたら、声をかけてみようかな。」

翠「そいつぁ意外ですぅ。この場所、覚えておいて損は無いですねぇ。
  今度蒼星石にも教えてやるですぅ!」


 ここで水銀燈がはしゃいでるさまは……なかなか想像しがたいですぅ。
蒼い空……とても昼から雨が降るとは、思えないですねぇ。
ん? チビ人間のやつ、なにか作ってるですねぇ……?
118薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:15:35 ID:2HTHZpG7
ジュン「できたぞー。ほれ、翠星石。」

翠「ん? ……おお、冠ですか。」

ジュン「よく柏葉に作ってやったっけなー。」

翠「やっぱり、お前は何かを作るぶんには天才ですぅ。」

ジュン「ハハ、手先が器用だからかなー……」


 昔は、あのトモエという人間ともよく遊んだみたいですねぇ。
ここだけの話、夢の扉から何度かそういう光景を見かけたことがあるですぅ。
これはチビ人間には内緒ですよ?


[10:05]
翠「あっ、四葉のクローバーですぅ♪」

ジュン「あっ、いいなぁー。うおっ、こっちにも。」

翠「もって帰らないですか?」

ジュン「いや、僕はいいよ。見てるだけで幸せだし。
     三つ葉もかわいいからな……。」


 そうですねぇ。ありふれた三つ葉も、生きているです。
今度、シロツメクサの種を育ててみるですかね。
119薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:19:17 ID:2HTHZpG7
[10:28]
この"翠のじゅうたん"の上……思い出すですぅ。


[1913年夏、スイスのとある丘、昼下がり。]
翠『蒼星石ぃー、この空はどこまでつづいてるですかねぇ?』

蒼『どこまでもだよ。』

翠『すごいですねぇ。』

蒼『なんだか……この野原も、どこまでも続いているみたいだね』

翠『青い空と緑の原……翠星石たちみたいですぅ。』

蒼『ハハハ。……あ、雨だ。はやく、あの木の下へ!』

翠『おりゃ〜ですぅ!!』ダダダ……

蒼『ねえ翠星石。僕、最近分かったんだけどね』

翠『なにがですか?』

蒼『今、空は曇っているけど……雲の上は、いつも晴れてるんだね。』

翠『いまさらですかぁ?』

蒼『そんなこと考える余裕が、あんまりなくてね。』


[そして今。]
翠「チビ人間〜。」

ジュン「なんだ?」

翠「曇り空の上って、いつも晴れてるんですよ!」

ジュン「当たり前だろ。」

翠「はは……当然ですぅ……」


 ……なんだかすべっちまったですぅ。
120薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:24:01 ID:2HTHZpG7
[11:05]
 チビ人間といろいろ話してる間に、雨雲がやってきやがったですぅ。
まぁ、にわか雨だし、すぐ止んじまうですよね……?
あ、でも……止まないほうが……

ゴザーッ
ジュン「うわっ! 雨だ!!」

翠「チビ人間! これを使うですぅ!」

ジュン「おっ、折りたたみの傘! でかしたぞ翠星石!!」

翠「いやぁそれほどでも……
  って、ぎゃぁー!!」

ジュン「どうした!!」

翠「ドレスの……ドレスのすそがぁ〜……」

ジュン「落ち着け、家に帰ったら洗濯してやるから!」

翠「うぅ〜。」


 思いのほか激しい雨ですぅ。
これじゃぁ、相合傘しても濡れちまうですねぇ……
121薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 03:30:04 ID:2HTHZpG7
ジュン「……ほれ。傘はお前が差せ。」

翠「…… !?」

ジュン「お前を雨ざらしにするわけにいかないだろ。僕は平気だから。」

翠「でもそんなことしたらチビ人間が風邪をひいちまうですよ!
  それに……翠星石ならちっと雨に濡れても平気ですぅ!!」

ジュン「そ……そうか。じゃあ、相合傘だ。」


 もう言葉にできないですぅ。
70cmほど上にあるチビ人間の顔が……なんだか、りりしいですぅ。


[11:12]
ジュン「お? 雨、あがった……」


 もう相合傘タイムは終わりですかぁ〜!?
でもまぁ、しゃーねーですぅ。にわか雨ですから……


ジュン「お、虹が出てる。綺麗だなー、翠星石。」

翠「そ、そうですねぇ……」


 雨上がりのあとには、コレが待っていたことを忘れてたですぅ!
翠星石、われながら不覚ですぅ。
122薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:21:53 ID:2HTHZpG7
[11:28]
ぐるるる

 ……!

ジュン「……」

翠「……な、なんですかぁ!?」

ジュン「腹減ったなぁ。じゃ、早く家に帰ろうか。」

翠「そうするですぅ!」



[12:02]
[桜田家 リビング。]
ジュン「何か観るかー?」

翠「この時間ってなにやってるですかー?」

ジュン「"いいですとも"か、"おもっきり"か。」

翠「"いいですとも"にするですぅ。」

ジュン「ラジャ。」 ピッ
123薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:23:35 ID:2HTHZpG7
[12:05]
シンゴ[ゴールデンウィーク企画〜身内自慢コンテストォー!!]


翠「あ、お昼ごはん、翠星石がつくるですぅ!」

ジュン「そっかー……僕も手伝おうかな。」

翠「えっ……?!」

ジュン「じゃ、なにつくろうかなぁー。」

翠「ハ……ハハハハヤシライスにするですぅ!」

ジュン「また渋いところをついてきたなぁ。よーし!」


 きゃぁ〜っ、チビ人間と二人で料理ですぅ〜!!
124薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:24:59 ID:2HTHZpG7
[12:29]
タモ[罰ゲームはカツマタ!]
カツマタ[ちょっタモさんやばいってやばいって]
カツマタ[アッー!!]

ジュン『ふいー。うめぇー。』

翠『ジュン〜、はい、あーん♪』

ジュン『……うはー、うめぇー。』

翠『ふふふ……』


翠「うーふーふーふーふー♪」


ジュン「……おーい翠星石?」

翠「はうわっ!? あ、な、なんですか!!?」

ジュン「いや、ボーっとしてたからさ」

翠「い、いや、ハヤシライスが、あまりにもおいしいからーなんてーですぅー」

ジュン「……ヘンなやつだなぁ……」

翠「あははは……」


 もう気が気じゃねえですぅ。
なんてこったいですぅ。
125薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:27:26 ID:2HTHZpG7
[13:08]
のり「ただいまぁー。」
真紅「ただいま。」
雛「ただいまー!!」
蒼「帰ったよ。」


 お、帰ってきやがったですか。
気がついたらテーブルで20分ほど、座ったまま昼寝をぶっこいてたですぅ。


巴「おじゃまします。」

ジュン「? か、柏葉……!」

巴「こいのぼりの話になって……雨も上がったし、
  こいのぼりでもたしなもうかな、と思って」

ジュン「あぁ……そういうことね。」

巴「……くすくす」

ジュン「ん? どうしたんだ?」

巴「……桜田君ったら、お口の周りに……ハヤシかな……?」

ジュン「!!?」

雛「翠星石もなの!」

翠「!!?」

蒼「おそろいだね。」


 な……何を言いやがるですか、蒼星石ぃ……!
126薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:28:35 ID:2HTHZpG7
[13:24]
ジュン「……とんだ恥をさらしちまったな……」

翠「翠星石もですぅ。」

ジュン「ハァー。」
翠「ハァー。」

ジュン「……プクク」

翠「なんですかぁ」

ジュン「ため息までハモるなよ……」

翠「じゃかましーですぅ! さっさとこいのぼりを探すですぅ!」

ジュン「へいへい。……えーと……」


 どうやら、10年くらい、こいのぼりは使ってないらしいですぅ。
魑魅魍魎が沸いてなければいいのですがー……あ、ちょっとオーバーですかね。


ジュン「お、あった!」

翠「見たところ、異状はないようですねぇ。」

ジュン「よーし、持っていくか!」
127薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:30:38 ID:2HTHZpG7
[13:44]
 庭先に10年ぶりにこいのぼりがあがったみてぇですぅ。
一番上の吹流し……黒、赤、青、緑……いろとりどりですぅ。
これが日本の風物詩ですかぁ……

 えーと……あれ? 緑の鯉の下にも、なにかいるですぅ。
ピンク、黄色、紫、白? くんくん……!?


雛「ヒナもこいのぼりさんつくったのー!」

蒼「なかなか上手いじゃないかー。」

真紅「くんくんもつけてみたわ。」

巴「みんな、新聞で兜を作ってみたから、よかったらかぶってみて?」

雛「うわー! 強そうなの!!」

真紅「なかなか似合ってるわよ。ねぇ?」チラリ

蒼「な、何なのさ……」

翠「刀もあるですぅ。 気分は"せんごくぶしょー"ですぅ!! えいっ!」ポコ

雛「なにするのー! やぁっ!」ポコ

翠「おぬし、なかなかやりおるなぁですぅ!」
128薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:33:06 ID:2HTHZpG7
巴「うふふ、桜田君、よく新聞兜が似合ってる。」

のり「まるで昔のジュンくんみたいねぇ。」

ジュン「あ……あのなぁ……僕もう15歳だよ……?」

雛「えーい!」パクッ
翠「えいっ! やぁ! とぉーーー!!」
ボクッ ×3

ジュン「いってえええ!!! どこたたいてるんだぁっ……!!」

翠「遊んでやってるんだから、感謝しやがれコンチクショー!、ですぅ!」

ジュン「だからって、スネは……!」


 はぁー。なんだか、こういう日常って最高ですぅ。


[同じころ、ドールハウス・Enju Doll。]
エンジュ「ごーがーつーいつかーのー、せいくらーべー……フンフフンフ♪」

薔薇水晶「お父様……これは……?」

エンジュ「人形サイズの鎧兜だ。どうだ?」

雪華綺晶「とっても……重いです……。」
129薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:35:41 ID:2HTHZpG7
[14:59]
巴「そろそろおやつにしましょうか。」

のり「えーと、苺大福にぃ、柏餅! ちまきもあるわよぅ!」

雛「うわーい! うにゅーだー!!」

蒼「はぁー。落ち着くなぁ。」

翠「蒼星石にはこういうのはよく似合ってるですぅ。」

蒼「はは、そうかなぁ? ……ところで、翠星石?」

翠「なんですか?」

蒼「ジュンくんとは……どうだったかい?」

翠「あの……その……相合傘とか……」モジモジ

蒼「あはは、やっぱり。途中、雨が降ってたからね。」

翠「と、と、ともかく、楽しかったですよ!
  さて、ちまきでも狩りにいくですぅ……」

サッ
翠「あ」
ジュン「お」


 翠星石が狩ろうとしたのと、チビ人間が獲ろうとしたのが、
まったく同じちまきだったですぅ……


翠「ご……ごめんですぅ」

ジュン「ハハ。じゃあ、半分にするか。」

翠「……ありがとですぅ。」
130薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:38:01 ID:2HTHZpG7
[16:30]
くんくん[さあ、白状するんだ! ヤス!!]
ヤス[むしゃくしゃして……やった……]
ネコ刑事[やはり……]
くんくん[犯人はヤス……!]

ドッパーン……
フナコシ刑事[署までご同行願おうか。]
ザッパーン……


真紅「やっぱりくんくんは天才だわ!」

雛「天才なのー!」

蒼「しかし……G.W.2時間スペシャルってことで、実写を取り入れ、崖の上でロケをするなんて……」

巴「まるで、『くんくん刑事』ね。」

真紅「なんだか、2期っぽいタイトルだわ。」


くんくん[次回第124話「くんくんvs偽くんくん!?」 来週も〜、よろし〜くんくん!]

真紅「くんくん! ああ、あなたはどうしてくんくんなの……!?」

のり「ふふふ。」

翠「今週はやたらスケールがでかかったですぅ。」

ジュン「あれはもう2時間ドラマだったよな。」

翠「そうですねぇ。」


 翠星石にとっちゃぁ、今日一日がなんだかドラマですぅ!
131薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 05:39:03 ID:2HTHZpG7
[18:35]
ジュン「よーし、これと……これだ! ビンゴォ!!」

翠「まずいですぅ! あと10枚……とんとん拍子に行けば、チビ人間に勝たれちまうですぅ!」

真紅「まだまだこれからよ。あわてる必要は無いわ。」

ジュン「……ちっ、はずしたか。」

翠「翠星石の番ですぅ! ……はずしたですぅ」


雛「オセロなら負けないのよー!」

蒼「なんと! 僕が5連敗するとは……マスターと特訓する必要があるなぁ。」


 結局、神経衰弱ではチビ人間に勝ちを持っていかれてしまったですぅ。
オセロではチビチビが猛威をふるってたですぅ。やるですねぇ。
蒼星石の特訓……たぶん、翠星石もつき合わされるですぅ。
132薔薇乙女達の好日 第4話:2009/10/26(月) 06:00:16 ID:2HTHZpG7
[19:05]
のり「はぁーい! 今日はみんな仲良く出来たから、はなまるハンバーグよぅ!」

雛「うわーい!!」

翠「うわーいですぅー!!」

蒼「ありがとうございますー。」

巴「私まで……本当にありがとうございます。」

ジュン「柏葉……いいのか?」

巴「ええ。家には、連絡したから。」

真紅(……翠星石のとジュンのだけ、ハンバーグの上に旗が立ってるわね……
   ちょっとくやしいのは、どうして……!?)

翠「いっただっきまーすですぅ♪」


[20:58]
 はなまるハンバーグ……最高だったですぅ〜!
今日はなんだか、いつもよりすごーく充実した感じがするですぅ。
いつまでもこんな日が続けばいいですねぇ!

 じゃあ……ジュン、本当は隣で寝たいですけど、翠星石たちは
カバンで眠らなきゃぁならんですので、先に寝るですよ。
おやすみなさい、……ですぅ♪
  
                                【第4話 おわり】
13311:2009/10/26(月) 06:04:35 ID:2HTHZpG7
……今回の投下は以上です。
読んでくれた方、ありがとうございました。

 やはりどこの板でも、さるとは戦わなければならない運命にあるみたいで……
1話と2話のときは、1時間に20回くらい書き込んでもさるは来なかったのに
今回はきっちり10回で来やがって……なんちゅう気まぐれ……

>>111
支援ありがとうございます。
励みになります。
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 00:12:47 ID:7YtFzzle

雛と翠のチャンバラシーンは涙が出るじゃんかよ
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 15:25:52 ID:5AmnYbWU
13611 ◆TEGjuIQ24E :2009/10/30(金) 21:57:08 ID:JQlLQpL6
ども、>>11です。
規制に巻き込まれてしまった……ッ!!
やむをえず電話からッ……!!
そのため投下ペースが遅くなります。すいません。

今回は第5話を投下しますよ。
137薔薇乙女たちの好日 第5話:2009/10/30(金) 21:58:42 ID:JQlLQpL6
【第5話 蒼星石】

[06/15 05:12]
[柴崎時計店。]

チュン...チュンチュン...

 ……うーん……朝か……。
よし、そろそろ起きよう。
マスターも、もう起きてるはず……。

 ……柴崎家の朝は、とっても早い。
ドールズはたいてい、7時か8時まで寝ているけど、
僕はもっぱら5時半までには目が覚めちゃうんだ。
138薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:00:13 ID:JQlLQpL6
[05:14]
蒼「おはようございます、マスター。」

柴崎元治「うむ、おはよう、蒼星石。よく眠れたかの?」

蒼「はい、おかげさまで。ですが、今日はいつもより15分早く目が覚めましたよ。」

元治「そうかそうか……ワシも、もうトシじゃ……。
   日に日に朝が早くなりおる。5時になる前に目が覚めてしもうた。」

蒼「はぁ……」


 僕のこの時代のマスターは、時計店を切り盛りするおじいさん。
30年ほど前に、一人息子を亡くしてから、マスターの奥さんと僕ともども、
ずいぶんと病んでいたけれど……ドールズのおかげで、立ち直ることが出来たんだ。
139薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:05:56 ID:JQlLQpL6
 僕も、この時代に来てから、一度は意識だけが彷徨った。
お父様の影を追って、夢中になっていたアリスゲームの最中に、僕は倒れてしまったんだ。

 その時は、マスターたちを本当に悲しませてしまった。
半年ほどだったかな、9秒前の白だとか、無意識の海だとか……
長い間あちこちをふらふらしていた。

 けど、ドールズ、そしてジュン君たち契約者と、その周りの人々の声、
絆が、また僕を助けてくれたんだ。その時僕のそばにいた、
雛苺と薔薇水晶もいっしょにね。
140薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:15:38 ID:JQlLQpL6
元治「早く梅雨が明けてくれればいいのじゃが……。」

蒼「そうですね……。」

元治「てるてる坊主でもつくるかの?」

蒼「えっ!? 今日は……梅雨の中休みで、晴れですよ?」

元治「梅雨明け祈願じゃよ!!」


 もう誰も、特にマスターと翠星石だけは悲しませたくない。
だから、僕は少しずつだけど頑張っている。
この時代の「つづき」を、みんなで、いいものにしたいから。
昔の僕の影を、断ち切るんだ。
141薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:22:05 ID:JQlLQpL6
[06:40]
柴崎マツ「朝ごはんですよ。」


 この人がマスターの奥さん。僕たちのことを、快く受け入れてくれたんだ。
マツさんがつくる朝ごはんは、本当においしいよ。


元治「お、鯖の味噌煮とな!」

蒼「わぁ、すまし汁だ!」

マツ「おっと、ほうじ茶を忘れてたわね。はい、どうぞ」コトッ

蒼「ありがとうございますー!」


 僕の朝は、一杯のほうじ茶から始まるんだ。
この渋さがたまらない。これで、眠気も吹き飛ぶよ。
142薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:26:09 ID:JQlLQpL6
[07:45]
 それにしても……暇だなぁ。
今日は日曜日、マスターとマツさんは、8時からゲートボール大会があるみたいだ。

 うん、僕も出かけよう。
久しぶりに、あそこに行ってみようか……
よーし、ゆけっ、僕のカバン!! 行くよ、レンピカ!!
あっ、戸締りも忘れないように……!


[07:56]
[ドールハウス・Enju Doll。]

カランカラーン♪
蒼「おはようございまーす。」

エンジュ「おや? 君は確か第4ドールの蒼星石……」

蒼「ごぶさたしてます。」

エンジュ「あぁ、3月以来だな。」

蒼「もうそんなに経つんですか?」
143薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:31:06 ID:JQlLQpL6
 僕が最後にこの店に入ったのは、3月1日だった。
また動けるようになった次の日、薔薇水晶とエンジュ……さんに、逢いに行ったんだっけ。
その1ヶ月後に雪華綺晶の体ができたと聞いた時は、僕もうれしかったなぁ。

 店の前まで行った事はよくある。薔薇水晶や雪華綺晶と遊んだあとで、
僕は彼女たちをこの店まで送り届けることにしてるんだ。
僕は彼女たちの「お姉さん」だからね。


薔薇水晶「あ……蒼星石……おはよう……」

雪華綺晶「おはようございます……蒼星石お姉さま♪」

蒼「え……いま……僕の名前を……」

雪「ずっと言おうと……思っていたのですが……」

蒼「……」

雪「……青薔薇の、なんて長ったらしくて……それに……
  ……私の大切なお姉さまの、大切なお名前だから……」


 この朝、今まで気づかなかったけど、なにか大きな壁が消えたような、
そんな感じがしたんだ……。
144薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:36:07 ID:JQlLQpL6
[07:59]
エンジュ「そろそろ8時だな。」

薔薇「……"サンデーモーニングッド"……」

蒼「あ、そうだったね! よーし、行こう、雪華綺晶!」

雪「ええ。」


 薔薇水晶たちは、日曜のこの時間は、このニュース番組を観ているみたいだね。
僕もマスターとよく観ているよ。


蒼「ああ、また"喝"かぁ……」

雪「またしても"喝"です……」

薔薇「かぁーつ……」

今日は"喝"ばかりだったなぁ……。
145薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:41:04 ID:JQlLQpL6
[11:17]
薔薇「……ほうじ茶……飲む……?」

蒼「あるのかい!?」

雪「あります。ほぉら……ここ……」

蒼「……本当だ。」

エンジュ「ふむ、君も好きなのか。」

蒼「はい!」


 まさかほうじ茶が、ここにあるなんて……
どうやら、エンジュさんもよく飲むみたい。
「落ち着きたい時には、これが一番いい」、と言っていたよ。


エンジュ「ちょっと待っていてくれ。」


 エンジュさんがほうじ茶を淹れに台所に行った、その後だった。
146薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:45:23 ID:JQlLQpL6
雪「!?」

薔薇「どうしたの……?」

雪「……何かの気配を……感じるのです……」

蒼「えっ……?」

雪「浴室の方です……急ぎましょう。」


 雪華綺晶が、浴室のほうから、何者かの気配を感じ取ったんだ!
一体、なんなんだろう……?


ダダダッ!!
雪「誰……!?」

蒼「誰も……いない?」

薔薇「……あ、……あそこ……せんめんだい……」

雪「……あら……」
蒼「……ええっ……!?」
エンジュ「……!?」


 僕たちが見たもの……それは……
147薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:52:59 ID:JQlLQpL6
水銀燈「…… ……」 ポカン


 洗面台の水をためるところに、茫然としたままの水銀燈が立ってる光景だったんだ。


銀「あ……あらぁ……ごきげんよぉ……うう……。」

蒼「す……水銀燈……どうしたんだい?」


 どうやら、水銀燈はあんなところが出口だと思ってなかったみたいだよ。
たしかに、どこの鏡につながってるか、分からないからね……。


蒼「まぁ……そんなこともあるよ。」

銀「うぅ……想定外だったわぁ……。
  エンジュのところだから、工房にでもたどり着くとばかり思っていたから……」

雪「ふふふ……どうですかお姉さま、お茶にしましょう?」

銀「え、ええ……」
148薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 22:56:26 ID:JQlLQpL6
薔薇「……クスクス……フフフフフ」

銀「薔薇水晶……何を笑っているの?」

薔薇「何を笑っているって……なんだか、面白かった……」

銀「な、何よぉ……フッ、ウフフ、アハハハハ……」

雪「お姉さまが笑っているところ……久しぶりに見ました……!」

銀「私もよぉ。 あまり表情を見せなかったあなたたちの、
  笑ってるところが見られるなんて……!」

蒼「……これだ、これだよ!」

雪「どうしたのですか?」

蒼「ありがとう、みんな……! 僕は嬉しいよ……!」


 笑い合える喜び……どうして今まで気づけなかったんだろう……?
僕も久しぶりに見たよ、あんなに笑ってる水銀燈……。
149薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:00:20 ID:JQlLQpL6
[12:05]
エンジュ「さあ、淹れたぞ。 ん? 一人増えてるな……」

銀「!!」

薔薇「あの……え……えっと……!」

エンジュ「ようこそ。確か、君は第1ドールの水銀燈だね。」

銀「あ……ど……どうも……」

エンジュ「そうだ、ランチにしないか……? 出前をとろうか。」

蒼「え……いいんですか?」

銀「い……いいのぉ……?」

エンジュ「いいとも。日ごろ、薔薇水晶たちと仲良くしてくれているからな。
      うむ、皆が食べられるように、ピザにしようか。」

蒼「ありがとうございます!」

銀「あ……ありがとぉ。」
150薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:07:53 ID:JQlLQpL6
[13:10]
 ピザ、こんなにおいしかったんだね。
エンジュさんが、タバスコ一袋をピザ一切れに全部かけちゃって、おもしろかったよ。

 なんだか……馴れ合うのが嫌いだった昔の僕が、どうかしていた……。


薔薇「"くんくん探偵"のDVD……観ましょう……?」

銀「いいわねぇ。」

蒼「うん。久しく観てなかったからなぁ。」

雪「つい先日、真紅お姉さまから"くんくん探偵"のすばらしさを、
  熱く語ってもらいました……!」

蒼「へぇー……真紅、それを語り始めたらとまらないよね。」

薔薇「さぁ……はじまる……」

[第22話 何でも鷲掴み! オオワシ伯爵]ドッドーン!!
151薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:14:06 ID:JQlLQpL6
[13:35]
オオワシ[畜生……覚えてろワシ!]
くんくん[クサイ飯ほおばって反省するんだ!]


 くんくん……かっこいいなぁ……
これは真紅が入れ込むわけだ……


くんくん[次回第23話、ショートケーキの苺強盗事件! 来週も、よろし〜、くんくん!]

蒼「くんくん!」


 番組が終わったら、こう言えばいいんだったよね!
ああっ……なんだか……楽しいよ♪


[16:13]
蒼「おじゃましましたー。」

エンジュ「また、いつでも来なよ。」

 水銀燈はもちろん、薔薇水晶や雪華綺晶とは、もっともっと仲良くなりたいなぁ。
明日晴れたら……キャッチボールをしようかな。

 マスターたちは、確か夕方まで帰ってこないって言ってたね。
よし、翠星石のところに行ってみよう。
152薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:18:13 ID:JQlLQpL6
[16:35]
[桜田家 リビング。]
ジュン「ふぁー。おはよ……」

雛苺「ジューン! おは……のん!こんにちはーなのー♪」

ジュン「うぁー、眠い……5時までオークションめぐりしてたからかなぁ……」

真紅「ジュン、日曜日だからと言って眠りすぎなのだわ。」

翠星石「そんなに寝てたらぶたさんになっちまうですよ!?」

ジュン「なんでいつもいつも、ぶたさんなんだよ……」

翠「じゃぁ、なまけものさんですぅ。」

ジュン「あう…… ……!!」

真紅「それはあまりにも直球すぎるのではなくって?」

雛「じゃーあー、コモドオオトカゲさんなの!」

ジュン「なんでやねん……」
153薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:24:44 ID:JQlLQpL6
[同じころ。]
[桜田家 玄関前。]
蒼「ふぅ、やっと着いた……カバンを使っても、
  エンジュさんの所からは、遠いなぁ……。」


「ごきげんようー、」

蒼「!?」

「かしら♪」

蒼「かしら!? ど、どこだ!?」


 どこからか、金糸雀の声がしたんだ……。
でも……いない……どこなんだ!?


金糸雀「ここかしらー!」

蒼「え……ええ!? 上っ!?」

カナ「とうっ!」ビュン!

蒼「えっ……!? わわわ……」


 なんと……金糸雀は、上空20mからフワフワと傘を操って浮かんでいたんだ!
そして姿を見つけた瞬間……一気にこっちに向かって急降下してきたんだ!!
154薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:30:16 ID:JQlLQpL6
カナ「ひいー!?」ヒューン

蒼「わあああ!!」


ズン!!


カナ「あうぅ……」

蒼「わ……、わあ……。」


 僕は間一髪受け止めたんだけど……金糸雀は目を回してたよ……
傘が壊れちゃったみたいだね……。
155薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:38:10 ID:JQlLQpL6
[16:37]
バムッ!
のり「どうしたの!?……あら、蒼星石ちゃんとカナちゃん!!」

蒼「こ、こんにちは……」

カナ「うー……え〜っと……ごきげんよーかしらー!!」
スクッ

のり「すごい音がしたけど……」

蒼「え? そうかなぁー!?」
カナ「ききき気のせいかしらぁ!?」

のり「そぅ。……上がってく?」

蒼「はい……おじゃま……します……」

カナ「おじゃまするかしらー。」
156薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:42:15 ID:JQlLQpL6
[16:39]
蒼「やぁ。こんにちは。」

カナ「ただいま参上かしら!」

真紅「あら、めずらしいツーショットね。」

雛「わぁー♪ 蒼星石ぃ、蟹味噌ぉ♪」

カナ「カニミソじゃないかしら! カナリアかしらぁ!!」

雛「まちがっちゃったのー。」

蒼「ハハハ……そういえば、この前はカナガワだったね。」

カナ「やかましいかしら!」

翠「おっすですぅ。蒼星石ぃ、チビカナァ。」

カナ「チビカナでもないかしらぁ!! うぅ……。」

蒼「お、おちついてよ……。」


 金糸雀には、なんだかたくさんあだ名があるんだねぇ……。
……違うか。
157薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/30(金) 23:48:38 ID:JQlLQpL6
[17:25]
 僕たちはジュン君の部屋で、トランプをして遊んだ。
ジュン君から、「ジジ抜き」とか「7並べ」を教えてもらったよ。
僕はことごとく負けちゃったけど……とても楽しかった。
その後は真紅たちと、リビングで、ティータイムを楽しんだよ。


真紅「これから、暑くなっていくのね……」

蒼「そうだね……僕がこの家によく来るようになったのが、去年の今頃だったよね。
  あのころは笑うのがヘタだったっけなぁ……アハハ。」

真紅「今では、そんな過去も笑い話ね。」

蒼「ハハハ……ねぇ翠星石、僕……笑うの、うまくなったかな?」

翠「とってもうまくなったですよ!」
158薔薇乙女達の好日:2009/10/30(金) 23:54:13 ID:JQlLQpL6
[17:47]
雛「蒼星石ぃー! 白雪姫ごっこするのー!」

カナ「雛苺が白雪姫、カナが小人を3人分やるから、4人分お願いできるかしら!?」

蒼「えっ……いいけど、魔女は誰にするんだい?」

カナ「もちろん……頼んだかしら、翠星石♪」

翠「こ、この展開、なんだかデジャヴュのよーなものを感じるですぅー!!」

蒼「ふふっ♪ 翠星石ったら……」

真紅「私がナレーターをやるわ。のり、あの時の台本、持っているの?」

のり「うん、あるよ。ちょっと待っててね。」


 あの時も「白雪姫ごっこ」をしたんだっけ。
今度は、雛苺が白雪姫か……うん。頭の上のティアラが、とっても似合ってる。
のりさんに作ってもらったんだね。
159薔薇乙女達の好日:2009/10/31(土) 00:00:26 ID:JQlLQpL6
蒼「はいほー、はいほー、ここは森の中……♪
  白雪姫と、歌って踊って、楽しい毎日……♪」

雛「あっ、蒼星石ぃ! その歌覚えてたの!?」

蒼「うん、思い出せたんだ。確か、その時は真紅が白雪姫だったよね。」

真紅「さて、そろそろ翠星石の出番なのだわ。構えて頂戴。」

翠「まかせろですぅ! オーッホッホッホ♪
  このりんごを食べれば、とっても美しいお姫様になれるですよぉー♪」

蒼「懐かしいなぁ。」

雛「いっただっきまーす♪ おいしいのー!」

真紅「そのりんご、一応毒が入ってるという設定よ。」

雛「うゆ、そういえばそうだったの。うー。」パタ


 このまま行くと、王子様はジュン君かな……?
160薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/31(土) 00:04:03 ID:wVQOg1OL
[17:55]
ピーンポーン
巴「こんにちはー。」

ジュン「おっ、柏葉だな。」

ガチャッ
巴「こんにちは、桜田君。」

ジュン「よう。」

雛「トモエトモエトモエー♪」ピョンッ

巴「雛苺、いい子にしてた?」

雛「してたしてた♪ えへへ……」


 この人が、雛苺の元マスター、柏葉巴さんかぁ……
優しい眼をした、とても綺麗なひとだ……
雛苺、とっても幸せそうだね。
161薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/31(土) 00:08:09 ID:wVQOg1OL
巴「この子は……」

蒼「あっ……」

巴「こんにちは。」

蒼「こ……こんにちは……
  僕、ローゼンメイデン・第4ドールの、蒼星石といいます。」

巴「あなたが第4ドールの……。雛苺がお世話になってます。」

蒼「いえいえ……よろしくお願いします。」

巴「よろしくね。
  もうすぐ、夏本番だね。桜田君、明日のテスト、頑張ろうね。」

ジュン「ああ、もちろん。お前には負けないぞ。」

巴「うん♪ あ、そうだ。これを、みんなに。
  それじゃあ、また明日ね。」

ジュン「おお、またな!」
162薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/31(土) 00:12:24 ID:wVQOg1OL
[18:03]
雛「うわーい! うにゅーなのー!」

蒼「蕨もちも入ってる……もう、夏なんだね。」

ジュン「そうだなぁー……今度、花火でもするか!」

雛「はなびーはなびー♪」

蒼「風流だね。」


 この国の人は、夏になると、より活発になるんだよね。
太陽が一番元気な季節、それが、夏。
翠星石と、植物を育てるにもいい季節だね。


[18:14]
翠「サツマイモの苗を手に入れたですぅ!」

蒼「秋には食べられるね。」

翠「とびっきり大きなイモになるといいですねぇ♪」

蒼「ふかしイモにするか、石焼イモにするか、悩むところだね。」

翠「チビ苗に水をあげるですぅ♪」


 なんだか、わくわくしてきたよ。
水の加減がちょっと難しいけど、育てがいがあるみたいだよ。
秋には、ドールズやマスターたち、みんなで食べたいなぁ。
163薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/31(土) 00:16:11 ID:wVQOg1OL
[18:25]
蒼「じゃあ、僕はこれで。今日は本当にありがとう!」

翠「またくるですよ!」

雛「またくるのよー!」

真紅「今度はポーカーで勝負よ!」

蒼「もちろんさー! またねー!!」

のり「またねー!」

ジュン「また来いよー!」

 みんなの笑顔が見られて、本当によかったよ!
さあ、帰ったらマツさんの夕ご飯が待ってる……今日は何かな♪


[19:10]
マツ「さぁ、できましたよ!」

元治「おお、カレーライスとな!」

蒼「わぁ〜、おいしそうだぁ……!」

マツ「夏野菜を入れてみましたよ。」

元治「ヘルシーじゃの!」

蒼「あはは……♪」
164薔薇乙女達の好日 第5話:2009/10/31(土) 00:20:10 ID:wVQOg1OL
[20:49]
 今日は本当に楽しかったなぁ。
午前中は、水銀燈、薔薇水晶、雪華綺晶と楽しく過ごせたし……
水銀燈が元気になってて、よかったなぁ。
くんくん探偵、リアルタイムで見なくちゃ……

 午後は、真紅、翠星石、雛苺、金糸雀と遊んで、とってもおもしろかったなぁ。
本当、みんな笑顔が一番だね!
こんどお邪魔する時は、なにか料理を振舞おうかな!


 お父様、見ていますか?
あなたに逢いたいという気持ちは、消えてはいません。
その気持ちはみんな同じなんです……

 どうか、みんなに、7人のアリスに逢っていただけませんか……?
その時は、マスターたちや薔薇水晶も連れてきますね。

 じゃあ、マスター、お先にお休みします。それでは、また明日……

                                 【第5話 おわり】
16511 ◆TEGjuIQ24E :2009/10/31(土) 00:25:48 ID:wVQOg1OL
……今回の投下は以上です。読んでくれた方ありがとうございました。

>>134
>>135
ありがとうございます。
いつか原作で、真紅があの日々を取り戻してくれるのを
祈っています。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 00:23:42 ID:18ABbSH9
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 14:11:38 ID:4vonz0M9
168無題:2009/11/03(火) 14:12:37 ID:4vonz0M9
おお! 書き込めた
169無題:2009/11/03(火) 14:14:56 ID:4vonz0M9
序章

薔「ん−…」

薔「んー…」

薔「はっ…夢…」ガバッ

薔「…? なにこれ…」
170無題:2009/11/03(火) 14:21:43 ID:4vonz0M9
薔「とりあえず…お姉さまに…」

薔「お姉さま…起きて…起きてください」

雪「うう…あと10分…」

薔「…起きてください!」

雪「ひやぁ!」
171無題:2009/11/03(火) 14:29:57 ID:4vonz0M9
雪「うう…がーんがーん…」

薔「これ見てください!」

雪「ええ…? えーと…
『雪華綺晶と薔薇水晶へ
今から彼女らに試練を与えよう…
ドールのマスターに会いなさい…
さすれば…         仙人より』」

雪「仙人?」
172無題:2009/11/03(火) 22:04:06 ID:4vonz0M9
薔「うさんくさい…」

雪「でもちょっと興味あるわ
やってみましょう、えーとまずは…」

薔「……」

序章 終わり
173無題:2009/11/03(火) 22:08:07 ID:4vonz0M9
第一章

め「ねえ水銀燈」

銀「…」

め「死後の世界ってあると思う?」

銀「ふん、くっだらな〜い」

め「ねえ、人間って死んだら何処に行くのかな」

銀「どこにも行かないわぁ〜。ただ土に還るだけよぉ」
174無題:2009/11/03(火) 22:12:35 ID:4vonz0M9
め「いや、案外そうじゃないかもよ?」

銀「ねえ、そんなことばか考えてて楽しい?」

め「楽しいわ、いろいろ考えるだけで死ぬのが楽しみになっちゃう」

銀「ふん、勝手にしなさぁい」

薔「…」ぱくぱく

雪「最近なぜかカップ麺ばっかだから、食べておかないと」ぱくぱく

銀「…あんたたちなにしてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
175無題:2009/11/03(火) 22:18:27 ID:4vonz0M9
雪「い、いえ…」

銀「言いなさい…なんでここにいるのか…さもないと…
ジャンクにするわよ…」ギロッ

め「水銀燈…こわい…」

雪(ここは嘘をついて切り抜けよう)「じ、実はですね!」

銀「?」

雪「お、お父様にドール全員のマスターに会ったらアリスになれる
って言われまして…ね? ばらしー」

薔「は、はい!」

銀「はぁ!?」

雪(…駄目?)

銀「なんでそれを早く言わないのよ!」

雪(…あれ? 信じた?)
176無題:2009/11/03(火) 22:24:24 ID:4vonz0M9
銀「それでアリスになれるなんて…簡単ね! 流石お父様!」

雪(…)

薔「ところで、なんの病気なんですか?」

め「ああ私? 心臓の病気よ」

雪「治るんですか?」

銀「違うわね…めぐはもう…この先長くないのよ」

雪「え…?」
177無題:2009/11/03(火) 22:30:19 ID:4vonz0M9
め「大丈夫よ、もう慣れたわ」

薔「…」

雪「だ、大丈夫ですよきっと! ほら、窓の外の木の葉っぱを見てください」

め「ああ、あの一枚しかないの?」

雪「あの木の葉っぱが落ちるまでは大丈夫です、生きてますよ」

銀(めぐにそんな気休め…)

雪(気休めでもいいじゃないですか)
178無題:2009/11/03(火) 22:36:53 ID:4vonz0M9
め(…落ちろ落ちろ落ちろ…)

銀(あんなこと言って、葉っぱが落ちちゃったらどうするのよ)

雪(そう簡単にあの葉っぱは落ちないと思いますよ
今日はそんなに風もなさそうですし)

薔(…)

ひゅーーーん はらり…

銀・雪(落ちたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

め(やったー落ちた!)

薔(?)
179無題:2009/11/03(火) 22:42:48 ID:4vonz0M9
銀(ちょっとあんたどうしてくれるのよ! 
葉っぱ落ちちゃったじゃない! 責任とってよ!)

雪(そうは言ったって…)

銀(あんたが言ったんだから責任はあんたにあるでしょぉ!?)

雪(うう…)

薔「もしよかったら、話しませんか?」

銀(空気よめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!)

め「あら、いいわよ」
180無題:2009/11/03(火) 22:48:16 ID:4vonz0M9
銀・雪「…」

薔「まず、お姉さまのいいところを教えてください」

め「水銀燈のいいところね? えーと……」

銀(どきどき)

め「まず、なんだかんだで面倒見がいい
文句言いながら私の愚痴に付き合ってくれるのよね」

銀「め、めぐぅ…」
181無題:2009/11/03(火) 22:54:16 ID:4vonz0M9
め「2つめ、なんだかんだで私のことを想ってくれてる」

銀「え?」

め「ほら、こうやって水銀燈の近くにいるだけで水銀燈の想いが
伝わってくるって言うか…」

銀「め、めぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

め「すいぎんとぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

雪(私達は外へ出ましょう)

薔(え? なんでですか?)

雪(別に…ただ売店で飲み物が買いたいだけよ)
182無題:2009/11/03(火) 23:02:38 ID:4vonz0M9
薔「…マスターがいるって…いいですよね」

雪「ん?」

薔「わたしには、そんなのいなかった…」

雪「お父様は?」

薔「いえ…確かにお父様は好きですが…わたしがいいたいのは…」

雪「あー…そういうことね、大丈夫!」

薔「え?」

雪「私があなたのマスターになってあげる」

薔「お、お姉さまぁぁぁぁぁぁぁ!」

雪「ばらしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
183無題:2009/11/03(火) 23:25:07 ID:4vonz0M9
雪「ただいま〜事は終わりましたか?」

め「そういえばそろそろ昼ごはんの時間ね」

銀「あら、時間がたつのは速いわね」

め「はぁ…また○ロみたいな食事か…」

銀「こらめぐ!」

雪「あ、もし良かったら食べますよ!」

め「え? あんなゲ○みたいな食事を?」
184無題:2009/11/03(火) 23:29:59 ID:4vonz0M9
薔「…」いらいら

雪「ゲ○みたいな食事って…結構おいしかったですよ?」

め「へえ? それってつまり舌がおかしいんじゃないの?」

雪「…ばらしー」いらいら

薔「はい」いらいら

め「?」
185無題:2009/11/03(火) 23:37:08 ID:4vonz0M9
雪「3つだけ言っておきます。まず一つ目、食べ物を粗末にしない」

薔「二つ目、女の子なら汚らしい言葉を使わない!」

雪「そして三つ目! 自分の意見を他人に押し付けない!」

め「え? ちょ、なにを…」

雪・薔「あなたの心の悪を砕く! マインドクラーシュ!」

め「ぐはぁぁ!」

雪「ふう…」

薔「これでよし、と」

銀「…あんたら…うちのマスターに…」

雪「…?」

銀「なにしてるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

雪・薔「ああああああああああごめんなさーい!」

め(ふふ…)

第一章 終わり 
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 18:15:45 ID:daJp1/7X
乙っす。

きらばらが主人公なんだな。
めぐや銀もよく書かれててよかったぜ。
18711 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/05(木) 22:00:51 ID:TwfOMnlC
ども、>>11です。
規制解けたみたいなのでテスト書き込み。
電話は辛かった……!
次は第6話から投下しますよ。1週間以内に投下します。

>>166>>167
ありがとうございます。
>>167-185
乙です。
いい雪華薔薇SSをありがとうございます。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 00:21:37 ID:WbKAwY4Y
携帯での投下ご苦労様でした
18911 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/10(火) 10:16:57 ID:pvSklSAc
ども、>>11です。
今日は5限だけなので、今のうちに投下しちゃいます。
第6話を投下しますよ。
19011 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/10(火) 10:19:01 ID:pvSklSAc
【第6話 野原】
[07/06 14:30]
翠「チビ人間ー?」

ジュン「Zzz……」

翠「また昼寝してるですかー!?」

ジュン「……Zzz」

翠「……まったく……今日が日曜だからって言って、
  グータラ寝てるなんて言語道断ですぅ!」


 チビ人間たら……最近たるんでやがるですぅ。
腹筋1000回じゃすまさねーですよ!? ……まったくぅ……。
191薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:21:42 ID:pvSklSAc
[14:35]
くんくん[うおお……!!]
ネコ警部[どうした、くんくん!!]
くんくん[ホシが……わからない!]

雛「いっちご、ケーキぃ♪」


くんくん[わああおおおお……!!]
ネコ警部[くんくん! 落ち着いてくれ!!]

真紅「くんくん……どうしてそんなに悩んでいるの……?」


翠「……」
ソォーッ……

雛「いっただっきまーす♪ 真紅もいっしょに食べよう?」

真紅「くんくんの力になってあげたいから、後にしておくわ……。」

雛「うゆ……。」


翠「……やめときますかねぇ……。」

雛「あっ、翠星石ぃ! いっしょに食べる?」

翠「いや、いいです。」

雛「うゆ? ……なんだか、へんな翠星石なの……。」
192薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:22:47 ID:pvSklSAc
[14:42]
 なーんか、気分がのらねーですぅ。
チビ人間が寝てるからですかねぇ……?
日曜日のこの時間は、いいかげん起きてるんですけど……

 のりはのりで、ラクロスの試合にいっちまったですし……
つまんねーですぅ……

 あっ、そうだ……そうですよぉ!!
あそこがあったですねぇ……!!


[05/05 09:38]
ジュン『さぁ、ついたぞ。』

翠『ひゃぁ〜。きれいですぅ〜。』

ジュン『僕も、勉強に飽きたらたまに来るんだ。
    勝手に、"翠のじゅうたん"、って呼んでるけど……。』
                 
                             ※第4話



 病院の横だったですね。
いっちょ、癒されにいくとするですぅ!
193薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:24:26 ID:pvSklSAc
 ……けど、独りじゃぁやっぱ寂しいですぅ。蒼星石でも連れて行……
……あっ、そういえば、昨日おじじのゲートボール大会に行くなんて言ってたですぅ!
あう〜!! どうすればいいですかぁ〜!!


「……お困りのようですね……翠星石お姉さま……」

翠「ん!? ……オメーは……」

「うふふ……ごきげんよう、お姉さま。」

翠「雪華綺晶ォ!?」

雪「はい……お出かけですか?」

翠「お、おうですぅ。おめーこそ、どうしてここに……?」

雪「……その、薔薇水晶と諍いあってしまって……
  ……戻るに戻りづらいのです……」

翠「そう……ですか……。オメーらでも喧嘩するんですねぇ……。
  ってぇ、それじゃあ家出じゃねーですか!」
194薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:28:02 ID:pvSklSAc
翠(あっ!! ……つい心にもねえことを……!!)

雪「……うぅ……」

翠「す、すまんですぅ。し、しゃーねーですから、翠星石が
  いいところに連れて行ってやるですぅ!」

雪「……いいのですか……!?」

翠「ったりめーですぅ! オメーだって可愛い妹ですよ!
  さ、とっととカバンに乗りやがれですぅ。」

スィドリーム{チカチカチカチカ……}

翠「……そうですねぇ。オメーには1.5倍ほど頑張ってもらわんとですぅ。」

スィドリーム{カッ!}

翠「ありがとですぅ。」


 雪華綺晶には、精霊らしきものが見当たらんですぅ。
いるにはいるんだと思いたいですけど……
理由は翠星石たち姉妹にも、薔薇水晶にも、多分本人にも分からんですぅ……。
195薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:31:22 ID:pvSklSAc
[15:03]
[上空。]
 ふーむ……改めてみても、けっこう背がデカいですねぇ……。
これでも、あのチビチビの妹ってことになるですから……。


雪「重くありませんか……?」

翠「へっちゃらですぅ。これは翠星石のカバンですよ?」


 おじじの時計店が見えるですねぇ。
見慣れた町でも、上から見ると新鮮ですぅ。

 っと、雪華綺晶の手が、見知らぬジジイの方を示してるですぅ。
 

雪「……あっ、あの人……」

翠「ん? あのジジイがどうかしたですか?」

雪「……詳しいことは、その……翠星石お姉さまが行こうとしているところで
  お話しますから……。」


 ……元契約者とかですかねぇ……?
国際化と高齢化が進みまくってるって時代ですから、前の契約者が
この町をほっつき歩いていてもおかしくねーですけど……
196薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:33:29 ID:pvSklSAc
[15:12]
[翠のじゅうたん。]
雪「……なかなかいいところですわね……」

翠「ジュンが教えてくれたですぅ。 ……あっ、ジュンって言ったのは、
  内緒ですよ……!?」

雪「はぁ……」


 ここにくるのも、久しぶりですねぇ……。
今度は蒼星石も連れてきてやるですぅ。

 さて、コイツの話でも聴いてやるですかね……。


翠「……で、話ってのは何ですか?」

雪「……最初に逢った老人……
  ……もうお分かりでしょうけど……2個前の、契約者でした。
  現在、99歳になります……。」
197薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:36:18 ID:pvSklSAc
 ……ふむふむ……
確かに、雪華綺晶はついこないだまでアストラルってやつでしたから、
nのフィールドからこっちを覗けたですよね……
たまにエーテル化してこっちに来てたって噂もあったですけど……。


雪「……前のアリスゲームまで……お姉さま方は思い思いの方法で、
  1つしかない座を争っていましたが……私……は……」

翠「どうしたですか?」

雪「……今まで、お姉さまがたに……救われてからも……
  黙って……いたのですが……」

翠「……とっとと本題に入りやがれですぅ。」

雪「実は……」
198薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 10:43:07 ID:pvSklSAc
[15:27]
翠「……ふむ、よーするに『契約者を苗床とか糧にして、アリスを目指してた』、ですか……。
  それが、オメーの戦い方だったってわけですね……。」

雪「あの方々だけではなくて……お姉さま方の契約者……すべての人に……
  ……何と言ったら……よいのか……」

翠「……何も言わなくていいですよ。」

雪「え……?」

翠「大丈夫ですぅ。オメーだって、何が何やら分からん状態だったんですよね?
  許されるわけじゃねーかもしれんですけど、一概には責められねーですから……。」

雪「うぅ……ああっ……!」

翠「泣くなです! 昔のチビチビですかオメーは……
  それに、何かあったら翠星石たちが弁解しちゃるですよ?」

雪「だって……だって……」

翠「現にあのジジイ、ピンピンしてやがったじゃねーですか。
  じゃあ、なんであそこにいるですぅ?
  何事も無かったかのように……なんだったら、ためしに逢いに行ってみるですぅ。」
199薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:00:22 ID:pvSklSAc
雪「えっ……?」

翠「モーマンタイですぅ。……ほれ、そこのシロツメクサの花でも持っていってやるですぅ!」

雪「……ですが……」

翠「姉を信じるですぅ。」


 ちょっと烈しいかもしれねーですが……
言葉にしたくない悲しみも、乗り越えなきゃならんのですぅ。

 ベクトルは違うとは言っても、あの水銀燈のヤツも、昔の雪華綺晶と同じようなことを
言ってやがったですぅ。けど、現に今、ああやって立ち直れてるです。
200薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:03:09 ID:pvSklSAc
[15:38]
[有栖川大学病院近く。]

雪「……あの……オーシャ・ゲントさん、ですか?」

ゲント「……んっ? おお、おぬしは……雪華綺晶!」

雪「! ……その……」

ゲント「おおお……元気にしておったか! こんな異国で出逢えるとは……!
    お……おおっ、体があるではないか!」

雪「……はい……!」

ゲント「よかったのう……よかったのう……!
    今まで、生きた甲斐があったもんじゃ……!」


 顔を見りゃぁ、大体何を考えてるかは分かっちまうもんですぅ。
雪華綺晶だって、現に昔と顔色が変わってますからねぇ……。
笑顔でいりゃあ大丈夫ですよ♪
201薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:06:24 ID:pvSklSAc
[15:42]
[上空。]
雪「ううう……あああ……」

翠「シロツメクサ、ちゃんと受け取ってくれたですぅ♪ やっぱり杞憂だったですねぇ。」

翠「そうじゃなきゃ、あんなに再会を喜んだりなんかしねーですから……。」

雪「……そう……ですね……!」

翠「そんじゃ、もう一件片付けねーとですね……
  シロツメクサの花、冠にしてやってみてはどうですぅ?」

雪「……作ってくださいますか?」

翠「作るの、初めてですか?」

雪「はい……お願いします、お姉さま……!」

翠「し、しゃーねーなー、ですぅ! ここは翠星石が五肌ぐれー脱いじゃるですよ!」


 前にチビ人間に作り方を習いましたから、こんなのはお茶の子さいさいですぅ!
……雪華綺晶の目、なんだか真剣ですねぇ……。
202薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:07:36 ID:pvSklSAc
[15:49]
翠「いいですか? ここをこうやって、こう結んで……」

雪「こう、ですね♪」

翠「おう、なかなかやるですぅ。オメー、見所があるですぅ。」

雪「うふふ……こうやって自然と戯れるのも……楽しいですわね♪」

翠「当然ですぅ! 自然を感じなきゃあ庭師なんか務まらねーですから……!」


 こいつ、いつ見ても……笑うと、かわいいじゃねーですか……
……チビチビのでもそう思うことがあるですけど……
これは内緒ですよ?
203薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:09:39 ID:pvSklSAc
[16:21]
翠「……ひゃあー……こりゃあまたとんでもねー数を作り上げたですねぇ……」

雪「あの……その、はまってしまいまして」

翠「……28個も冠があるですぅ。 あっ、あの辺だけ禿げ上がっちまってるですね……」

雪「……すみません……」

翠「翠星石にお任せあれですぅ。スィドリーム!」

スィドリーム{ポオッ……!}

翠「野原に花を咲かせましょう、ですぅ♪」


パアアッ……
パアアアア……!!

雪「……これは……!」

翠「威力を間違えちまったですかね……?」


 ……シロツメクサの花だけ、前の2倍くらいの多さになっちまったですぅ。
まぁ、見た目には問題ないですから、これでよし、ですぅ!

 さて、そろそろ、行きますかね……!
さ、行くですよ、雪華綺晶!


キキーッ
サイクリング中の梅岡「おおっ、いいシロツメクサのじゅうたんだなぁ。……今度の遠足はココにしよう!」
204薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:10:53 ID:pvSklSAc
[16:45]
[ドールハウス・Enju Doll。]
カランカラ〜ン♪

エンジュ「いらっしゃ……おお、雪華綺晶。お帰り。」

雪「た、ただいま……」

翠「こんにちはーですぅ。」

エンジュ「……君は確か……第3ドールの、翠星石だな。」

翠「おう、ですぅ。エンジュ、オメー目つきが変わったですか?」

エンジュ「そ、そうだろうか……」


雪「……」

薔薇水晶「……」

雪・薔薇「「あ、あのっ……」」

雪・薔薇「「あうっ……」」
205薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:14:17 ID:pvSklSAc
翠「オメーら、こんなとこでも息ピッタリなんですねぇ。
  ほれ、とっとと渡すですぅ。」


雪「……さっきは、ごめんなさい……」

薔薇「……さっきは、ごめんなさい……
    わたしも……強がってた……から……」

雪「……ええと……これを……」

薔薇「……これ……」

翠「雪華綺晶が一生懸命こしらえたものですよ。」

エンジュ「ほう……上手じゃないか。」


薔薇「んしょ、んしょ……こっちを……ここにつけて……」

エンジュ「うむ。……せっかくだ、雪華綺晶にも
      半分つけてあげなさい。」

薔薇「うん……えっと……お姉さま、両腕と頭、出して……?」

雪「ええ。」
206薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:15:38 ID:pvSklSAc
[16:51]
雪「ふふ……おそろいです♪」

薔薇「うふふ……おそろい♪」

雪・薔薇「「ふふふ……♪」」

翠「オメーら、本当に息が合ってるですぅ。翠星石と蒼星石以上かもしれんですねぇ。」

エンジュ「……ありがとう、翠星石……。これからも、仲良くしてあげてくれ……。」

翠「もちろん、ですぅ!」


翠「ところで、オメーらはどうして喧嘩してたですか?」

雪「たいしたことではないのです。……短冊が一枚余ってしまって、
  どちらが願い事を書くかで……」

薔薇「明日は……七夕……。 この一枚は……翠星石にあげる……!
   翠星石のお願い事は……?」

翠「す、翠星石の願い事ですかぁ……!?」


 トートツに言われたら、結構迷うものですねぇ……
ここは……チビ人間のことにしとくですか……?
いや、でもあの野郎なんかに……
207薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:16:20 ID:pvSklSAc
雪「……ジュン様のことを書かれてはいかがでしょうか……?」

翠「ひいっ……!?」 ドキンッ

翠「お、お前ー!! そんなこと言うですか!?
  ち、チビ人げ……ジュンのことなんか、ここここれっぽっちも……」

翠「そ、それに……あのグータラ野郎に一体何を願えばいいのですか……!?」

雪「もっと素直になってください、翠星石お姉さま……」

翠「!」

雪「契約者を支えること……
  ジュン様を支えるのもまた、ドールとしての使命……
  ……たまにはお休みの日のお昼も、起きていてください、というのは……?」

翠「よ、よーし、それにしとくですぅ。」

雪「……ジュン様のところで書かれるときは、また別のものにするとよろしいですよ。」

翠「そ、そうですねぇ。立派な妹を持って、姉として鼻が高いですぅ♪」

雪「ふふふ……ありがとうございます。」
208薔薇乙女達の好日 第6話:2009/11/10(火) 11:18:09 ID:pvSklSAc
[16:58]
雪「翠星石お姉さま……?」

翠「どうしたですか?」

雪「実は……その、短冊にも書いてあるのですが、私……
  ……お父様のほかに、とっても逢いたい人がいるのです。」

翠「ふむ……一体、誰なんですか?」

雪「……今の契約者……です。 もう、1年会っていません……。」

翠「ほぉ……。」

雪「…… ……」

翠「……大丈夫ですぅ。必ず、逢えるですよ!」

雪「はい……!」


[17:01]
[帰り道。]
 さーて、なんだか、長い2時間半だったですぅ。
滅多に雪華綺晶と話はしないですから、今日はたくさん話が出来て
よかったですぅ。それに、こんな翠星石を頼ってくれるなんて……
本当、いい妹を持ったもんですぅ♪
雪華綺晶、薔薇水晶と仲良くするですよ!

 ……さぁ、今日の夕飯が楽しみですぅ♪

                                       【第6話 おわり】
20911 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/10(火) 12:02:47 ID:pvSklSAc
今日の投下は以上です。
読んでくれた方ありがとうございます。

やはりパソコンは楽だ……。
さて、雨の中学校に行ってくるか……。

21011 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/10(火) 13:33:36 ID:pvSklSAc
書き忘れ。
規制が解けたのでごく近いうちに7話を投下できると思います。
察しがつくと思いますが、次は真紅です。

ちなみに、>>209は「ちゅうがっこう」ではありませんw
21111 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/10(火) 23:56:54 ID:/MQlPVZE
またもや巻き添え規制……
なんてこった。
というわけでまた投下が遅れます……すんません。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 16:28:45 ID:5HuhT1mr
解除恋
213無題:2009/11/12(木) 21:27:57 ID:5HuhT1mr
薔「そういえばお姉さまは身体がなかった頃は
どうしてたんですか?」

雪「基本はnのフィールドにいたわ
たまにエーテル化してこっち来てたけど」

薔「え? エーテルってあの、MPが100ポイント回復する…」

雪「…みんなエーテルって聞くとそれ思い浮かべるのよね…」
214無題:2009/11/12(木) 21:40:55 ID:5HuhT1mr
第二章

雪「こんにちわ〜」

金「あ、あなたは…」

み「なになに?」

雪「始めまして、私は雪華綺晶と申します
きらきーって呼んでください!」

薔「薔薇水晶です。ばらしーって呼んでください!」

金「…」

み「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
215無題:2009/11/12(木) 21:45:36 ID:5HuhT1mr
み「が! ん! た! いぃぃぃぃぃ!」

薔「ぎゃあああああああああああああ!」

み「うわあああああああああああああ!」ズリズリズリズリズリ

薔「死ぬーーーーーーーーーーーーー!」



金「なんのようかしら?」

雪「実は…この手紙に…」

金「ふんふん、なるほど」
216無題:2009/11/12(木) 21:50:37 ID:5HuhT1mr
薔「はあ…はあ…死ぬかと思った…」

み「ねーねーなんで眼帯をつけてるの?」

薔「こ、これは涙を隠すためです!」

み「ふーん…」びよーん びよーん

薔「あ、あまり引っ張らないでください…」

み「えいっ」バッチーン☆

薔「うわぁ!」

金「みっちゃん、そろそろやめるかしら」

み「いやよぉまだそっちが残ってるわ」

雪「…え?」
217無題:2009/11/12(木) 22:42:04 ID:5HuhT1mr
雪「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

金「まあ、ゆっくりしていくかしら」

薔「じゃあお言葉に甘えて…」

金「そういえばそろそろお昼の時間かしら
食べるかしら?」

薔「はい」

金「みっちゃーん! お昼ごはん作るかしら!」

み「あ、はーい」

雪「…」
218無題:2009/11/12(木) 22:49:03 ID:5HuhT1mr
み「というわけで、じゃーん、みっちゃん印の卵焼き!」

薔「いただきまーす」

雪「…」パク…

金「きらきーどうしたのかしら〜?」

み「あ、あら…おいしくなかった?」

雪「…ちょっとキッチン貸してください
ああばらしー! 私のは食べても良いわよ」

薔「あ、はい!」

金「カナ達は将棋でもして待つかしら」
219無題:2009/11/12(木) 22:55:13 ID:5HuhT1mr
10数分後

金「詰みかしら!」

薔「うう…こういう頭を使うのは苦手です…」

雪「できました! きらきー印の卵焼き」

金「…みっちゃんには悪いけど…こっちの方がおいしそうかしら」

雪「食べてください!」

金「どれどれ…」パク「!! みっちゃんのよりおいしいかしら!」
220無題:2009/11/12(木) 23:01:59 ID:5HuhT1mr
み「ありがとう、卵焼きはああすればおいしくなるのね
勉強になったわ」

雪「えっへん」

薔「わ、わたしも料理したいです!」

雪「? ばらしーって料理できたっけ?」

薔「大丈夫です! お父様に習ってますから!」

雪「そ、そこまで言うなら…」
221無題:2009/11/12(木) 23:07:30 ID:5HuhT1mr
10数分後

雪「ふっふ…お姉さまやりますね」

金「伊達に策士はやってないかしら」

薔「…」

雪「ど、どうしたのよばらしー」

薔「…こげた…」

金「ありゃりゃ…」
222無題:2009/11/12(木) 23:15:54 ID:5HuhT1mr
雪「槐さんに料理教えてもらってるんじゃないの?」

薔「…いつも失敗してこがしちゃったりしちゃうんです」

雪「まさか…最近カップ麺ばかりなのって…
…でも言われたとおりやればちゃんとできるわよ」

薔「…そうでしょうか…?」

雪「大丈夫! いざって時は私が教えるし」

薔「…お姉さま!」



金「あのー…」

み「空気ね…」
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:21:55 ID:bQElBJKZ
マイナーなギャルゲーSS祭りを開催したいです。
マイナーなギャルゲーSS祭り!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 20本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 20本
エーベルージュ 一話完結型の短編 20本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 20本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 20本
ダーク、18禁、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで20KB以下禁止、20KB〜45KB以内

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/11/08

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀SSサイト管理人に賞金10万円を授与します。
224無題:2009/11/12(木) 23:25:14 ID:5HuhT1mr
雪「さて、食事も終わったことですし、話でも」

薔「みっちゃんはカナ姉さまといる時どう感じますか?」

み「一言で言うと、幸せね」

雪「幸せ? 幸せってなんですか?」

み「幸せかー、幸せって言うのは…こう…
心がうきうきするって言うか…なんというか…」

金「みっちゃんそんなに考え込まなくてもいいかしら」
225無題:2009/11/12(木) 23:33:28 ID:5HuhT1mr
み「とにかく! 私は今幸せよ! こうやって
みんなで楽しくしゃべってることがね」

金「み、みっちゃん…」

薔「なるほど…わたし達も幸せになれますか?」

み「当然よ! 幸せになるにはね…
幸せな心になればいいのよ! 簡単でしょ?」

雪「どうすれば幸せな心になれますか?」

み「それは…自分自身で見つけなさい
この先長いから、そのうち見つかるかもね!」

金「みっちゃんなんか理不尽かしら…」
226無題:2009/11/12(木) 23:39:47 ID:5HuhT1mr
雪「なるほどね…」

み「さーかったるい話は抜きにしてそろそろ
自作の服を…あれ、見つからない」

雪(お姉さまに見せたいものがあるんです…)

金(なにかしら?)

雪(内緒です。ちょっと準備が必要なので
nのフィールドに行って来ます 
大丈夫です、すぐ帰ってきますから)

金(わ、わかったかしら)
227無題:2009/11/12(木) 23:46:46 ID:5HuhT1mr
み「やっと見つかった…あれ? あの子達は?」

金「ちょっと準備でnのフィールドにいるかしら」

み「まさか逃げたんじゃ…」

雪「逃げてませんよ」

金「きらきーにばらしー…見せたいものって…」

雪「実は最近ギター始めまして」

薔「わたしもベースを」

金「それは担いでるものをみればわかるかしら」
228無題:2009/11/12(木) 23:51:15 ID:5HuhT1mr
み「ちょっ、ちょっと弾いてみて」

薔「でも、音が…」

み「大丈夫よ、防音壁だし」

雪「じゃあ遠慮なく」

薔「…」

そして…。
229無題:2009/11/12(木) 23:57:22 ID:5HuhT1mr
始まった瞬間、私は驚いた。
きらきーの撫でるようなギターの旋律。
ばらしーのはねるようなベース。
その2つが見事に融合して私のヴァイオリンでは
とても真似できそうにないメロディーを奏でていた。

雪「ど、どうでしたか?」

み・金「ブ、ブラボー! ブラボー!」
230無題:2009/11/13(金) 00:08:50 ID:/LjWpA3S
み「さあいろいろあったけどそろそろ自作の服を着てもらおうかしら」

金「かしらかしらー!」

雪「こ、この服ですか?」

薔「…」

雪「私の、なんか悪魔みたいなんですけど」

み「ああそれね! 小悪魔的な天使を表現してるのよ
ばらしーのは…普通の人間よ」

金「きらきーは悪魔にしか見えないかしら
ギター担ぐとロックバンドにしか見えないけど」
231無題:2009/11/13(金) 00:11:45 ID:/LjWpA3S
修正

み「さあいろいろあったけどそろそろ自作の服を着てもらおうかしら」

金「かしらかしらー!」

雪「こ、この服ですか?」

薔「…」

雪「私の、なんか悪魔みたいなんですけど」

み「ああそれね! 小悪魔的な天使を表現してるのよ
ばらしーのは天使のような悪魔ね」

金「きらきーは悪魔にしか見えないかしら
ギター担ぐとロックバンドにしか見えないけど」
232無題:2009/11/13(金) 00:19:59 ID:/LjWpA3S
み「次はこのポーズ!」

雪「こ、こうですか?」

薔「…」

み「そうよばらしー! そんな感じ!」

雪「こ、こう?」

み「そう、そういう感じ! 撮るよ! 1+1は〜?」

雪・薔「2ぃ!」パシャ
233無題:2009/11/13(金) 00:23:16 ID:/LjWpA3S
雪「そういえばお姉さまはヴァイオリンできましたよね?」

金「ええ」

薔「もし良かったらセッションしませんか?」

金「も、もちろんかしら!」
234無題:2009/11/13(金) 00:30:08 ID:/LjWpA3S
それぞれ配置につく3人。
ポジションは左から順にきらきー、カナ、ばらしーという感じ。

人形好きの私からすればカナのヴァイオリンを見るのだけでも
満足だが今回は違う。とにかく増えている。
3人の弦楽器を見るなんて機会、もう訪れないチャンスである。
もう私、死んでもいい。

そうこうしていると演奏が始まった。

3人の弦楽器がいい感じに混ざり合い絶妙なハーモニーを
この狭いステージに響かせていた。

第二章 終わり
23511 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/17(火) 22:16:11 ID:gc1349Ar
ども、>>11です。
今日は第7話を投下しますよ。

>>234
「無題」第二章、今回はみつのもとへ行ったということで
やはりまさちゅーせっちゅ〜炸裂!
眼帯引っ張っちゃうみっちゃんの愛の力は強力カナ……!?
しっかりとお姉さんをしているきらきー、家庭的なばらしー、よかったです。
投下乙でした!第三章楽しみにしています。
236薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:19:36 ID:gc1349Ar
【第7話 真紅】

[07/07 07:00]
[ジュンの部屋 真紅のカバンの中。]

真紅「……うーんぅ……」


 ……ふぅ、よく眠ったわ。


サワ……


真紅「きゃっ!?」


 な……何……!?


真紅「ホーリエ! 狭い上に起きたばかりで悪いけれど、ちょっと照らして頂戴!」

ホーリエ{チカッチカッ……}


真紅「ありがとう、ホーリエ。……あら、笹の葉だわ。 カバンで挟んでしまっていたのね……。」

 そういえば、今日は七夕……のりから聞いたことがあるわ。
一年に一度、織姫と彦星が……愛するもの同士が、逢うことを許される日。
織姫は彦星のもとで、幸せになる。

 ……なんだか、朝から感傷的になってしまったわ。
さ、そろそろジュンたちを起こそうかしら……。
237薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:21:10 ID:gc1349Ar
[07:01]
パカッ
真紅「ジュン、目覚めの時間よ。」

ジュン「なんだ、真紅か。」

真紅「ジュン!? 起きていたの!?」

ジュン「いやぁー、昨日ずっと通販サイトめぐりしてたら朝になっててさー……」


 たるんでるわね……また水銀燈に鍛えてもらう必要が……


ジュン「それに今日は七夕だろ? 1時間目の道徳の時間使って、
    教室の笹の葉に飾り付けをするんだ。」
238薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:24:01 ID:gc1349Ar
真紅「……この部屋の笹の葉はどうしたの?」

ジュン「ああ、これか? 昨日、もらったんだよ。
    クラスの奴がさー、『俺の家の笹でよかったらやるよ』って言ってさ。」

真紅「そう。 帰ってきたら、この笹にも飾りつけを?」

ジュン「もちろんさ。よーし、じゃあ朝ごはん……おっと、その前に……
    アイツらを起こさなきゃな。」

真紅「ええ。カバンを開けましょう?」


 外はいい天気……。これだけ晴れていたら、夜まで持ちそうね。

 ……ジュンがまた学校へ行くようになって、もうすぐ1年。
昼間にあの声が聞こえないのは、少しだけ物足りない気がするけど……

 私のぜんまいを巻いた時よりも、私の右腕を取り戻してくれた時よりも、
薔薇屋敷で戦った時よりも、ラプラスと戦った時よりも……
……ジュンが成長してくれて、うれしいのだわ。
239薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:25:39 ID:gc1349Ar
[07:18]
のり「みんなおはよぅ! 朝ごはんできたよー!」

ダダダダ……
雛「おはようなのー!! 朝ごはん何ぃー!?」

のり「今朝はねー、ジャムパンとスコーン、オレンジジュースよー!」

雛「わぁー♪ やったーなのー!!」

翠「寝起きですがうまく焼けたですぅ! ご賞味あれですぅ♪」

ジュン「おお、うまそうだなー。」

真紅「いただくわ。……ジャムパンと朝陽、なんて相性がいいのかしら……」

雛「うゆ。どっちもどっちも、それに真紅も、まっかっかなのよー!」

翠「なかなかうめーことを言うようになったですねぇ。」


 雛苺も、最近は私の感性をわかってくれているようね。
240薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:29:22 ID:gc1349Ar
[07:52]
ジュン「いってきまーす。」

のり「いってきまーす!」

雛「ジューン! のりー! 
  あいとっ! あいとっ!!」

翠「脳みそに知識をぶち込んで帰ってきやがれですぅー!」

真紅「気をつけて行ってくるのよ。」


 『生きることは戦うこと』……いつか言った言葉だわ。
今は、それだけではない……『生きることは何かを得ること』。
……ありふれた言葉だけど、ね。
241薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:32:07 ID:gc1349Ar
[08:27]
 平日は、ジュンとのりが学校に行くと、家の中は私たちだけになる。
私は紅茶を飲みながらくんくんのDVDを観たりしているわ。
この家は、ジュンの知っている人以外には、あまり人が来ないから、静かに過ごせる……。
ずいぶん前に、山本という男が来たくらいね……。

 翠星石と雛苺はというと……


翠「ゆけーゴミ食べ機ぃーですぅ!!」

雛「力の限り、吸いつくすのよー!」

シーン……
雛「動かないのよ?」

翠「あっ、プラグ差して無かったですぅ。」


真紅「……!」
ズコーッ!!


雛「うゆー……あ、真紅がずっこけてるの。」


 ……いたた……勢いだけはいいのだわ。
まぁ、いつもこんな調子よ。
242薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:33:32 ID:gc1349Ar
[08:56]
[桜田家 物置。]
 そろそろ……蒼星石のところへ行こうかしら。

真紅「行くわよ、雛苺、翠星石!」

雛「らじゃ、なのー!!」
翠「行くですよぉー!!」


 契約者がいないと、私たちはnのフィールドには30分しかいられない。
私たちには全員契約者がいるから、これは無問題だわ。
雪華綺晶にも契約者がいるけれど……もう長いこと逢っていないそうよ。

 ……契約者の問題を抜きにしたとしても、蒼星石のところへは
ここを通っても50秒ほどしかかからないから、どちらにせよ大丈夫だけれど……。
もっと遠くの扉を開けないといけないときは、やはり契約者なしでは
厳しいものがあるのだわ……。

 だから、私にとってジュンの存在は大きいし、他の姉妹も同じ。
水銀燈も、あの戦い以降、めぐの見方が変わったようね。

 さて、そろそろ到着ね。
243薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:38:34 ID:gc1349Ar
[08:57]
[柴崎時計店。]
柴崎元治「これはこれは、皆の衆。いつもいつもありがとよ。」

蒼「やぁ、みんな!」

マツ「紅茶と、緑茶、オレンジジュース、入りましたよー。」

雛「ありがとなの!」

真紅「ありがとう。」

翠「ありがたくいただくですぅ。」


 蒼星石の契約者の妻、柴崎マツが淹れてくれる紅茶は、美味だわ。
さすが……経験が豊富なだけあって、温度は完璧ね。
茶葉の開き方も申し分ないわ。


柴崎マツ「本当、孫みたいですねぇ。かわいい孫がたくさんですよ。」

元治「一樹も幸せな顔をして見ておるじゃろうて。ホッホッホ……。」
244薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 22:43:01 ID:gc1349Ar
[09:49]
ガラガラッ
「こんにちはー。」

元治「いらっしゃい、お嬢ちゃん。」

「あら、あの子達、相変わらず元気がいいですねぇ。
 今日は前よりにぎやかですけど……」

元治「なかなか、こういうのもいいもんじゃよ。」

「ふふ。これをひとつ、直してくださいませんか。」


 なかなか……綺麗なレディが来たのだわ……
……見たところ、20代のフランス人ね。
元治は、前にもこのレディの時計を直したことがあるみたい……

 そして左手に光るのは……薔薇の指輪。
245薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 23:35:36 ID:gc1349Ar
元治「どれどれ……ほぉ。年代ものの懐中時計。」

「私の、祖母の父が買ってきたものでして……祖母のものなんです。」

元治「ははぁ。あのおばあさんのものか……。いい仕事をしておる。
   ワシにお任せを。2日ほどで仕上がるじゃろう。」

「2日、ですか……。
 私、今、仕事で世界各地を飛び回っておりまして……明日には、成田へ行きます。」

元治「そうかそうか。では、またここを訪れた時に、取りに来るがよかろう。」

「ええと……840円でしたね。」

元治「たしかに。」

「はい。ありがとうございます。」

元治「また来るんじゃぞー。」
246薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 23:42:27 ID:gc1349Ar
[10:15]
元治「ふむ……しかし、本当にいい仕事をしておるの。
   おや、時計の裏に何か書いてあるのぉ……
   おい、蒼星石、なんと書いてあるんじゃ?」


蒼「ふむ……これは、フランス語ですね……」

元治「読めるかの?」

蒼「はい。5つ前のマスターがフランス人でしたから。」

元治「はぁ。」

蒼「えーと……『愛する娘、コリンヌ・フォッセーへ……11歳の誕生日、おめでとう。
  かわいい小さき苺とともに……』? 『M,C,M,X,X,X,V,I,I』……。
  メッセージは後から書かれたようですね。」

元治「時計自体はイタリア製かの。ローマ数字じゃな。MCMXXXVII……
    せんきゅうひゃくと、さんじゅう、なな……。」


 コリンヌ・フォッセー……? どこかで聞いた名ね……


雛(Corinne......。懐かしい名前なの。)
247薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 23:51:31 ID:gc1349Ar
真紅「……元治?」

元治「おお、真紅か。どうかしたかの?」

真紅「……あのレディについて、教えて頂戴?」

元治「……オディール・フォッセー。齢23にして、世界を飛び回るジャーナリストじゃ。
   前に彼女の腕時計を直した時に、話はいろいろ聞いていたのじゃ。」

真紅「そう……他には?」

元治「母国はフランスじゃが、幼いころには日本に住んでおったそうじゃ。
   バブルがはじける頃には、引っ越していったんだそうな……
   そして、その祖母が時計の裏にその名が刻まれていた、コリンヌさんじゃ。」

元治「コリンヌさんについてもいろいろ聞いておるぞ。
   なんでも、雛苺の元マスターだったそうじゃの。ホッホッホ……。」

蒼「ロケットを見せてもらいましたね。幸せそうな顔だったなぁ……。」

真紅「やはり……」

元治「それにしても、あの指輪は。」

蒼「やはり、気になりますか……。」

真紅「指輪が本物だとすれば……そうとしか考えられないわね……。」
248薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 23:52:12 ID:gc1349Ar
[11:27]
蒼「今日は、七夕だったよね。天気予報では晴になってたよ。」

雛「巴から聞いたんだけど、お空に、天の川が流れるのよ!」

真紅「いつ聴いても、ロマンティックなお話だわ。」

翠「ちび笹にもお水をあげるべきですかね?」


 翠星石……その如雨露の威力を少しは考慮なさい……?
竹やぶにでもするつもり……?


[11:54]
真紅「今夜、ジュンの家で七夕を祝おうと思っているわ。蒼星石もいかが?」

蒼「マスターに聞いてみないと……」
249薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/17(火) 23:54:05 ID:gc1349Ar

元治「ワシはかまわんよ、行っておいで。ワシはマツと二人で、
    天の川を眺めるとするかの。実は、今日が結婚30周年じゃしのぉ。ハッハッハ。」

蒼「い……いいんですか!?」

マツ「いいとも。私もかまいませんよ。楽しんできなさいな。」

蒼「ありがとうございます!」

真紅「午後7時7分7秒に、桜田家で待っているわ。」

蒼「うん! みんなにも声をかけてみるよ!」

真紅「それでは、おじゃましました。」

雛「おじゃましましたなのー!」

翠「また遊びに行くですぅ!」

元治「おお、待っとるぞ。」
250薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:00:39 ID:u5im83V0
[12:52]
[桜田家 台所。]
 さて、ランチの時間だわ。
私は、最近、翠星石や雛苺と一緒に、クッキーをつくるのにはまっているわ。
味は……以前よりは、いくらかマシになったとは思うけど……。

 ちなみに、コンロは使わないソフトクッキーだから、
そのあたりは大丈夫よ。


翠「うめぇですぅ〜! 真紅のクッキーが美味しくなってるですぅ!」

真紅「それは、その……頑張ったから……。」

雛「真紅のクッキーは……パンダさん?!」

真紅「ちがうわよ! これは、くんくんなのだわ……」

翠「どっからどうみてもパンダですぅ?」

真紅「う〜ん……なかなか難しいわね……」


 ずいぶん前から技を練ってきたはずなのだけど……。
あまり、うまくいかないものね……。
のりと特訓する必要がありそうだわ。
251薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:07:19 ID:u5im83V0
[13:47]
[ジュンの部屋。]


 私がジュンの部屋で錬金術の本を読んでいると、あの子が現れたわ。
――水銀燈。


銀「ごきげんよぉ♪」

真紅「ちょっと?! どこから入ってきて……!?」

銀「あ・そ・こ・よぉ。」

真紅「ぱ……パソ……コン……の、画面……?」

銀「この水銀燈に不可能はないわぁ!」

真紅「まぁ……大きく出たわね。」

銀「なによ! 信じなさいよ……」

真紅「冗談よ。」

銀「……ありがと。」


 水銀燈……なんだか、ここ半年ほどで、
昔のような穏やかな顔に戻ってるわね……。
……けど、神出鬼没なところは、変わらないようね。
252薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:09:20 ID:u5im83V0
[14:01]
真紅「さて、水銀燈、今日が何の日か、ご存知?」

銀「七夕。」

真紅「正解よ。」

銀「……あたりまえじゃなぁい。」
 (めぐの病院でも、飾り付けをしていたわぁ。)


 あっさり答えられてしまったわ……


銀「この国では、8月7日に七夕を祝うところがあるそうよぉ……。」

真紅「そ、そう……」


 これは知らなかったのだわ……この国に来て1年3ヶ月も経つというのに。
もっと知識を磨かなくてはならないようね。
253薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:12:50 ID:u5im83V0
[14:08]
真紅「……ねぇ、水銀燈?」

銀「なぁに?」

真紅「今晩、暇はある?」

銀「ふーん、七夕……するのね?」

真紅「ええ。午後7時7分7秒までにここにくるといいわ。」

銀「楽しみにしておくわぁ。」


 詳しく言わないまでも、お互いに心の中が分かってしまう……
……不思議なものだわ。


[14:11]
真紅「それにしても、平穏な日々って、いいものね……」

銀「……私もそう思うわぁ。めぐと触れ合う時間も増えたわけだし……それに」

真紅「……?」
254薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:15:51 ID:u5im83V0
銀「……いろいろ、姉らしいことをたくさんできるようになった……
 かりにも、私はローゼンメイデン・第1ドールだから……」

真紅「……今までは、そうは行かなかったわね……」

銀「真紅ったら……そんなに昔のことを、無理に思い出さなくてもいいじゃない……。」

真紅「ええ。……そうよね。」

銀「私はねぇ……妹たちを支えるのが、第1ドールとしての……
  誰かに愛されるのが、人形としての幸せって気づくのに……
  ……何百万時間もかかってしまったわぁ。」

真紅「……!!」

銀「ホンット、恥ずかしい限りだわぁ……。
  何回も、貴女たちに諭されてきていたというのにぃ……
  お父様も嘆いているはずだわ……」


真紅「…… ……!」


 やだ、何を泣いているの? 私……
255薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:18:43 ID:u5im83V0
真紅「ううっ……ううっ……私だって……悪かったのに……なのに……
    ……ずっと……ずっと……以前、貴女を倒してしまった時にも……
    酷いことを言ってしまった時にも……」

銀「……泣くことないでしょ……真紅、私は、あなたに礼を言っているのよ……?
  それに、私だって、一人で、勝手に……」

真紅「だ……だって……」

銀「本当に……ありがと……。」

真紅「……」


銀「ちょっとだけ……昔を振り返っていい……?」

真紅「ええ……」

銀「昔は……、かつての私が思い描いてきた"アリス"にならないと、
  こういう日々は手に入らないと思っていたわ。」

真紅「…… !?」

銀「だから……幸せのためなら、なんだってなぎ倒してきた。」
256薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:21:03 ID:u5im83V0
銀「でも、それじゃぁ……不幸になる者も出なければならない……」

銀「そんなの、美しくともなんともないじゃない。
  またこの時代に甦ることが出来て、あなたたちの顔を見て……だんだんと気づけた……」

真紅「……貴女……」

銀「"アリス"っていうものも、私たちが知っていたのとは、違う意味のものなのかもねぇ……」


 私と水銀燈は、しばらく涙に暮れていたわ。
水銀燈は、ずっと私を胸に抱いてくれた……
とても、温かだった……


銀「あなたは第5ドール……私の、妹……だから、思い切り甘えていいわ……」

真紅「……ええ……!」


[16:02]
銀「……いいことを思いついたわぁ。」

真紅「何?」

銀「耳を貸して頂戴……。」

真紅「…… ……それは名案ね。ジュンの驚く顔が目に浮かぶのだわ!」

銀「じゃぁ、そろそろめぐの相手をしてくるわぁ。
    また今宵、会いましょぉ。」

真紅「ええ。待っているわ。……ありがとう。」
257薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:22:12 ID:u5im83V0
[16:24]
 そろそろ、くんくん探偵の時間ね。再放送だけど、私は見逃さないわ!
今日は……確か第104話、2期最終回「探偵たちの鎮魂歌」、だったわね。

雛「今日スペシャルなのー?」

翠「2期の最終回ですねぇ……。1時間スペシャルですよ。」

雛「うわーい! いつもより長いのー!」


 そう、雛苺がこの話を観るのは、初めてだったわね。
この話が入ってるDVD26巻はまだ買っていないし、
11ヶ月前の本放送の時は、まだ眠っていたから……。


[17:14]
ジュン「ただいまー。」

シーン……

ジュン「あれ? 出かけてるのかー? おーい!」

ガチャッ

くんくん[真犯人は……アンタだ!!] ドン!!
ジュン「ほげぇっ!?」


真紅「ジュン、帰ったのね。
   でも、その位置に立たれると困るわ。」

雛「見えないのー。」

翠「見えねーですぅ。」
258薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:24:58 ID:u5im83V0
ジュン「あ……すまん……あのさぁ」

真紅「どうしたの?」

ジュン「これなんだけど……」

翠「ふむふむ、『たなばたゼリー』ですか。どうしたんですか、コレ。」

ジュン「学校休んだ奴の分を、ジャンケンで手に入れた。」

真紅「あら、そういう運はいいのね。」

ジュン「うるせえ。……ここに丁度よく4個ある。みんなで食べようか。
    保冷材ももらっといたから、冷えてるぞ。」

雛「うわー! おいしそーなの♪ いただきまーす!」

真紅「……この食感……新感覚だわ!」


 七夕ゼリー……ジュンの学校のランチで出たものらしいわね。
透明なシャーベットの中に……いちご、レモン、メロン味の星型のゼリーが入っているわ。


真紅「……これは……芸術品よ!」

ジュン「ちょっとオーバーだぞ……」
259薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 00:26:31 ID:u5im83V0
[17:39]
 さて、笹への飾り付けを作ってみようかしら。
雛苺と翠星石は、もうクレヨンやマジック、糸、折り紙の準備が万端ね……

雛「さーさのーは、さーらさらーなのー♪」

翠「軒端に揺れるぅ〜ですぅ〜♪」


 五色の短冊……何を書こうか、迷うわね……
あっ! ちょっと翠星石、短冊を見ないで頂戴……
別に、見られても困るものではないけれど……


のり「ただいまー!」

雛「おかえりなのー!!」

翠「おかえりですぅ!!」

のり「あら、この……かいじゅうとか……あめだまとか……」

雛「ヒナが描いたのー♪」

のり「そう! じょうずねぇー。」

翠「このくつしたは翠星石が作ったですぅ♪」

のり「まぁー、すごいわねぇー!!」


 何かが根本的に間違ってる気がするのだけど……
私は……くんくんの絵を切り抜いて飾るわ!
はやくお願い事を、考えなくては……


[19:06]
 さて、そろそろ時間だわ……37、36、35……
のりのディナーの準備も整ったようね。
260薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:02:40 ID:u5im83V0
[19:07:07]
ガチャッ
蒼「やぁ。こんばんは。」

銀「来たわよぉ。」

真紅「待っていたわ。さあ、ディナーにしましょう!」

のり「じゃじゃーん♪ はなまるハンバーグ、七夕スペシャルよぉ!」


蒼「わあ……!」
銀「すごい……」


 にんじんが星型になっているわ……!
フライドポテトとコーンで、天の川と星を表現している……
それにチーズで、短冊をイメージ……のり、これは傑作よ!


[19:27]
翠「さぁーて、短冊をつけちゃるですぅ〜♪」

雛「ヒナもヒナもー!」

真紅「……書けたわ!」

銀「短冊はどこぉ? 私……もう願い事決めちゃったぁ。」

蒼「僕もだよ!」
261薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:04:27 ID:u5im83V0
[19:32]
ピーンポーン
ジュン「はい?」

巴「こんばんはー。」

みつ「ジュンジューン!こんばんわー♪」

カナ「おじゃまするかしらー!」

エンジュ「やぁ、こんばんは。」

薔薇「……ジュン……ごぶさた。」

雪「こんばんは……。翠星石お姉さまは、昨日もお逢いしましたね。」

翠「おぅ、ですぅ!」

ジュン「うおっ! みんな……!」
262薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:05:22 ID:u5im83V0
蒼「あ、みんな来てくれたんだね♪」

翠「蒼星石、あなたが呼んだですか?」

蒼「うん! みんなで祝うほうが、楽しいと思ってさ。」

真紅「ありがとう、蒼星石!」

翠「うひゃー、勢ぞろいですかー。」

雪「昨日は、ありがとうございました。」
薔薇「ありがとう……」

翠「どういたしまして、ですぅ。」

雛「トモエトモエー!!」
巴「♪」

カナ「短冊はどこかしらー!? もう願い事は決まってるかしら!」

みつ「もちろん、みっちゃんもよー!」

エンジュ「むろん、私も。」

ジュン「えーと……僕は僕は……」

巴「私はねぇ……」
263薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:06:17 ID:u5im83V0
[20:01]
 ちょっと前では、考えられない光景ね。
こうして、みんなで集まることができるなんて……!
空には、星がきらめいているわ。


真紅「あれが……天の川……!」

雛「ふおおー……きれいなのー。」

蒼「すごいなぁー……まともに見るのは、初めてだよ……。」

翠「のんきに空なんぞ見られなかったですからねぇ……。
  ちなみに、天の川は"ミルキー・ウェイ"ともいうですぅ。」

カナ「カナも泳いでみたいかしらー。」

銀「星空をまともに見るのも、久しぶりだけれど……すごいわぁ。」

薔薇「……おりひめと……ひこぼし」

雪「今夜は、逢えているでしょうね……」


 今日が過ぎると……また、離れ離れになってしまうけれど……
思い合っていれば……何万光年の距離も関係ない。
そして、次の七夕には、また逢えるから……
264薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:07:41 ID:u5im83V0
[20:25]
真紅「ジュン……灯りを消して頂戴?」

ジュン「!? ……分かった、ちょっと待ってくれ。」

パチッ
エンジュ「ふむ……」

銀「……薔薇水晶、雪華綺晶。」

雪「はい?」
薔薇「……?」

銀「裏庭に出て、空に浮かんでもらえる?」

雪「わかりました。」
薔薇(……もう何するか分かった……クスクス)

ヒューン……

銀「さて……メイメイ!」
真紅「ホーリエ!」

メイメイ{チカッチカッ}
ホーリエ{チカチカッ}

真紅「さぁ、あなたたちも精霊を。」

翠「がってんですぅ! スィドリーム!!」
蒼「レンピカ!」
カナ「ピチカートぉ!!」
雛「ベリーベルゥー!!」

ピチカート{チカチカ}
スィドリーム{チカッチカッチカッ}
レンピカ{チカチカチカッ}
ベリーベル{チカッ……チカッ……}ヘロヘロ
265薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:08:53 ID:u5im83V0
銀「メイメイ、精霊たちを導いて……あの子達の周りへ行って」

真紅「そして、輝いて頂戴。」


メイメイ{……!}ヒューン

キラキラキラッ……!!
クルクル……


みつ「わぁー! 素敵ー!!」

エンジュ「これは。」

のり「きれーい……」

ジュン「お、お前ら……すごいぞ!」

蒼「レンピカたち、踊りが上手だね。」

雛「ベリーベルもじょーずなのー!」

翠「……まだ少しだけヘロヘロですけどね……」


雪「……私たちも、踊りましょう?」

薔薇「うん……あんまり、うまく踊れないけど……」


 作戦成功ね。思わず、私たちも見とれてしまったわ。
……あの子の精霊も、見つかるといいわね。
266薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:11:10 ID:u5im83V0
[20:48]
 飴玉やオオトカゲ、靴下、くんくんまでぶら下がった笹に、
16枚の短冊がたなびいているわ。


[あまーいたまごやきがたくさんたべられますように! かなりあ]

[みんななかよくすごせますように ひな]

[柴崎時計店の商売繁盛 蒼星石]

[めぐと歩きたい 水銀燈]

[ほうさく折がん すいせいせき]

[おとうさまあいしてる ばらすいしょう]

[家内安全 雪華綺晶]

[カナといーっぱいあそべますように♪ みっちゃん]

[薔薇水晶と末永く暮らしたい、あと商売繁盛 えんじゅ]

[みなの衆に幸あれ ともえ]

[オークションの王様になる! ジュン]

[みんなが仲良く暮らせますように のり]

[薔薇乙女達がお父様に逢えますように 契約者一同 筆:ともえ]

[契約者たちに幸せをもたらせますように 薔薇乙女一同 筆:蒼星石]
267薔薇乙女達の好日 第7話:2009/11/18(水) 01:13:46 ID:u5im83V0
 みんな、素敵な願い事ね。 けど翠星石、字が間違っているわよ。
私は……
[くんくん変身セットグレートがほしい 真紅]

 ふふ……でも本当はね……ジュン……

 ……やっぱり秘密。
さて、そろそろ眠りの時間ね。
今日は本当に楽しかったわ。

 ジュン! 明日は火曜だから、徹夜はするべきではないわ。
早く寝るのよ。それでは、おやすみなさい……


ヒラヒラ

[ジュンがもっと立派な人間になりますように 真紅]


                               【第7話 おわり】
26811 ◆TEGjuIQ24E :2009/11/18(水) 01:18:34 ID:u5im83V0
……本日の投下は以上です。
第8話は……ヒナです。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 01:20:39 ID:jt6L/7cU
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!

1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)

EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本

BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止

2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07

3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。

1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 06:41:17 ID:XmM7xv5C
乙でした
人工精霊を照明にするという発想には唸らされました
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 23:08:05 ID:/WGskMip
再度雛苺か
期待
272臭撃!! 真紅対国会議員:2009/11/22(日) 12:40:51 ID:yI0EvkNK
 その日、JUMが大学に行っているので、真紅は一人で過ごしていた。
と、そんな時だった。突然呼び鈴が鳴ったのである。しかも相手は余程急いだ用があるのか
何度も何度も連続して呼び鈴を鳴らし続ける。

「全く。うるさいわ。一体誰だと言うの?」

 真紅が渋々ドアを開けると、そこから現れたのはまるでアントニオ猪木みたいな顔をした大男。
Yシャツの胸の所に付いた議員バッジを見るに国会議員と思われるが、一体何の用であろうか?

「トイレを貸してくれ。ウンコが漏れそうなんだ。」
「え!?」

 国会議員は有無を言わせずにトイレへ駆け込み、ドアの鍵を閉めてしまった。そして…

「ダァァァァァァァァ!!」

 その様な雄叫びと共に、凄まじい脱糞音が響き渡る。それには真紅も眉を細めるしかない。

「人間のオスはやっぱり想像以上に下劣ね…。」

 脱糞を終えた国会議員はそのまま帰って行ったが、開きっぱなしになっていたトイレのドアを
真紅が困り顔で閉めようとした時に彼女はとんでもない物を見てしまった。

「え!? えええええええええ!?」

 何と言う事だろう。国会議員の出したそれは便器からはみ出てしまう位に凄まじく巨大な物だったのである!

「え!? 何で!? 大きいにも程があるわ!?」

 真紅は慌てて流そうとするも、ブツが余りにも巨大すぎて流れない。むしろブツの混じって茶色くなった
水がトイレ中に撒き散らされてしまう程だった。

「臭い! 臭いわ!」

 真紅は思わずトイレから飛び出してしまっていたが、果たしてこの状況、どうするべきか?

「大変だわ。こんな状況を他の人に見られでもしたら…。」

 真紅は今後の展開を想像して真っ青になった。今はJUMが大学に行っている時間である故に
JUMがやったとごまかす事は出来ないし、見ず知らずの国家議員が出して行ったと言っても
信じてもらえはしまい。九分九厘真紅の仕業にされるのは目に見えており、特に水銀燈に見付かった日には…

『くっさ〜い! 真紅ったらこんな凄い事しちゃうなんてぇ〜。ローゼンメイデンの面汚しとはまさにこの事よぉ。』

 とかそれっぽい事を鼻をつまみながら言うに決まっている。こんな事は誇り高きローゼンメイデン第五ドールの
名にかけて絶対に防がねばならなかった。

「でも、でもこれを一体どうすれば…はっ!」

 ここで真紅は思い付いた。ブツをビニール袋に積めて外に捨てれば良いのである。
273臭撃!! 真紅対国会議員:2009/11/22(日) 12:42:10 ID:yI0EvkNK
 とにかく真紅は藁をもつかむ思いで、ゴミ箱の中からJUMがコンビニ弁当を持って帰る時に
使っていたビニール袋等をかき集め、便器の中の巨大ブツを必死の形相で袋に詰めた。
そして匂いが外に出ない様に強く結んで塞ぎ、それを抱えて外へ出た。

「重いわ。けどこれを誰かに見付かる前にどこかに捨てないと大変な事になるわ。」

 真紅は必死だった。だからこそ、その重く巨大なブツの満載されたビニール袋を抱えて
外に出ると言う事が出来たのだが…ついにそこで水銀燈に見付かってしまった。

「あら真紅、そんな大きなの抱えて何をしてるのぉ?」
「すっ水銀燈! な…何でもないわ。ただゴミを捨てに行ってるだけだわ。」

 真紅は苦し紛れにただのゴミと言い張るが、そこで水銀燈はこう返して来た。

「あら〜真紅知らないの〜? 今日はゴミの日じゃないのよぉ? それに、ゴミは指定ゴミ袋に入れないと
業者が引き取ってくれないのよぉ〜? そんな事も知らないの〜?」

 何故か妙に詳しいのが不思議な水銀燈だが、彼女も彼女で真紅の行動に不信感を抱いていた。

「あんたそれゴミとか言ってるけど、本当は違うんじゃないのぉ? だって普通のゴミなら
いつもあの人間が朝早くに出しに言ってるわよねぇ? ちょっと見せなさぁい。」
「あっ! ダメ! ダメだわ!」
「早く見せなさいったらぁ!」

 ここで真紅と水銀燈で袋の取り合いが始まってしまった。そして双方がそれぞれに袋を掴み、引き合う。
いくら何重にもビニール袋を重ねていたとは言え…中身も重いのだ。次第に耐えられなくなり………

「うわっ! くっさ〜い!」

 こうして…真紅と水銀燈の長きに渡るアリスゲームはくそみそな結果に終わった。

終わり
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 23:37:30 ID:64Y7/GxJ
ho
275無題:2009/11/24(火) 17:00:18 ID:agignuHZ
第3章

雪「午前11時…お昼の再放送まであと3時間…」

薔「それまでに戻れますか?」

雪「大丈夫…多分…さあ、あと少しよ」

薔「はい…」

雪「ほら着いた」

薔「わぁ…」
276無題:2009/11/24(火) 17:07:32 ID:agignuHZ
 私は驚愕した。
そこは、今までに見たこともないような大きさの庭を持つ家だった。
いったいいくつ悪いことをすればこんな家が建つのでしょうか…。

 わたしは驚いた。
そこにはいつか見たような広い庭を持つ家…。
お父様がこんな家を建てるにはいくつ人形を売ればいいんでしょうか…。

雪「ここが…蒼星石姉さまが住んでる家…」

薔「凄い…広い…」

雪「呼び鈴を鳴らしてみましょう」

ピンポーン…
277無題:2009/11/24(火) 17:13:25 ID:agignuHZ
3分後

雪「遅い…」

薔「家まで遠いから届くのが遅いのでしょうか…」

雪「…」

<やあ

雪「ん? 呼び鈴から声が…」

<君達の様子は防犯カメラから見てたよ

薔「この呼び鈴カメラついてません?」

<うわっ! ば、薔薇水晶…

薔「ばらしーって呼んでください!」

<わ、わかった…わかったからカメラを覗くのをやめて…
278無題:2009/11/24(火) 17:20:59 ID:agignuHZ
雪・薔「おじゃましまーす」

蒼「何のようかな? こっちは警備で忙しいんだ」

雪「こんな広い家なのに警備員雇ってないんですか?」

薔「きっと家を買ったら警備員を雇えなくなったんですよ」

蒼「…」

雪「えーとこの手紙見てください」

蒼「仙人ね…なるほど…そのためにマスター巡りをね
まあ邪魔はしないように」

雪・薔「はーい」
279無題:2009/11/24(火) 17:28:10 ID:agignuHZ
雪「こんにちわー」

一葉「な、なんだね君達は」

薔「わたし達はあなたの命を」雪「わー! わー!」

葉「?」

雪「えーと、蒼星石姉さまに呼ばれて来た警備員です」

葉「あ、ああ…よろしく」

雪「あのー、広い家なので今ひとつどんな間取りかわからないので
案内させてもらってもいいでしょうか?」

葉「ああ、構わんよ」
280無題:2009/11/24(火) 17:35:54 ID:agignuHZ
蒼「あ、マスター! 駄目ですよ! 暗殺でもされたら…」

葉「大丈夫だ」

雪「誰が暗殺するんですか? そんなにえらい人なのでしょうか」

薔「カリカリしてたら警備員も勤まりませんよ」

蒼「うるさい! とにかく、気をつけてくださいよ!」すたすた…

雪「あんなにカリカリしてるなんて…過去に何かあったのでしょうか…」

葉「いや、特に私は何もしていないはずなんだが…
警備員も頼んだ覚えはないし」

薔「あ、車椅子はわたしが押します」
281無題:2009/11/24(火) 22:17:26 ID:hEQvVy1+
葉「ここは私が主に音楽を聴きながらティータイムを楽しむ部屋だ」

雪「何を聴くのでしょうか?」

葉「主にクラシックだ。クラシックは心を落ち着かせる」

雪「クラシックね…」

葉「どうかしたかな?」

雪「いえ、こっちも音楽をたしなんでおりましてね
ちょっとギターを…」

薔「わたしもベースをちょっと」

葉「ならばその腕前を見せてもらおう。そうだな…適当なクラシックを
弾いてみてくれ」

雪「わかりました」
282無題:2009/11/24(火) 22:19:36 ID:hEQvVy1+
雪「では…」

〜♪

葉「これは…モーツァルト…!?」

葉「すごい…だが…」

葉「合ってないな…」
283無題:2009/11/24(火) 22:27:23 ID:hEQvVy1+
1時間後

葉「えーと…この寝室で最後だな」

雪「…流石に疲れました…」

薔「…」

葉「はっはっは、それじゃあ休憩として私の話を聴いて
もらおうかな」

雪「何でこんな広い家に警備員も執事も雇わずに1人だけで
住んでいるんですか?」

葉「…私にはな…好きな人がいたんだ」

薔「?」
284無題:2009/11/24(火) 22:42:34 ID:hEQvVy1+
私には双子の弟がいた。
その弟はある女性と恋に落ちたんだ。
しかし結菱一族としてはそれは認められなかった。

雪「三菱?」

薔「エネルギーを 素敵に〜♪」

雪「それENEOS」

二人は外国へ逃亡しようとした。
だが乗ってたダイナ号が、沈没したんだ…。

私はあの日からなんだか間の抜けたような人生を送っていた。
私は二葉を奪ったあの女が許せなかった。
気付けばあの手紙が来ていた。

「まきますか まきませんか」
285無題:2009/11/24(火) 23:02:16 ID:hEQvVy1+
私はなんとなく「まきます」を選んだ。
そして…あの双子が来た。

そして彼女たちとの闘いを見て気付かされたんだ。
私は憎んでいたんじゃない。あの女性のことを…好きだったんだ…。

私はどうすればいい? 復讐のための人生なら、
復讐をなしえたその後は…?

葉「年寄りのしょうもない話に付き合ってくれてありがとう」

雪「…私がこんなこと言えた義理じゃありませんが…」

葉「?」

雪「せめて人生の楽しいことを堪能してください
今からでも遅くはありません」

葉「…君も…そういうのかね…」

雪「はい」
286無題:2009/11/24(火) 23:11:47 ID:hEQvVy1+
葉「ふっ…しょうがないな…」

薔「あ、あの…」

葉「ん? なんだね?」

薔「あの…もし覚えていれば…名前でも…」

葉「名前か…なんだっけか…柿崎とか言ったっけな?」

雪・薔「!?」

葉「駄目だ、歳のせいか記憶が…」

雪「いや…まさかそんなこと…あは、あはははははははは!」

葉「?」
287無題:2009/11/24(火) 23:26:36 ID:hEQvVy1+
蒼「えー、自宅に異常はありませんでした!」

葉「そ、そうか…ありがとう」

蒼「それじゃ僕はこれで」

葉「あ! ちょ、ちょっと待ってくれ」

蒼「…」バタン

雪「ばらしー」

薔「お姉さま」
288無題:2009/11/24(火) 23:38:24 ID:hEQvVy1+
雪「蒼星石姉さま!」

蒼「なに?」

薔「マスターにあんな態度はないと思います!
それでもあなたのマスターですか?」

雪「この前にも水銀燈姉さまやカナ姉さまのマスターの
ところにも行きましたがこんなに冷ややかじゃありませんでしたよ?
カナ姉さまのマスターはやりすぎでしたが」

蒼「いいかい? マスターとドールってのは元々…こう…
冷ややかなものなんだ。言い換えると…そう!
執事とご主人のように!」

雪「そんな…」
289無題:2009/11/24(火) 23:52:46 ID:hEQvVy1+
蒼「じゃあ僕はここで」

雪「あっ! 待ってください!」

薔「…多分追っても耳を貸さないと思います…」

雪「…戻りましょうか…」
290無題:2009/11/25(水) 00:01:04 ID:erqXDz45
雪「はぁ…あれ? いない…」

薔「きっと客に紅茶出すの忘れたから、入れてるんですよ」

雪「…そう…だといいけど」

薔「…どうかしましたか?」

雪「…いやな予感がするのよ…」

ひらひら…

薔「あれ…この紙……お姉さま!」

雪「なに?」

薔「これ見てください!」

雪「…!」
291無題:2009/11/25(水) 00:09:44 ID:erqXDz45
『蒼星石へ

あなたのマスターは預かった。
返して欲しければ
私のフィールドに来なさい。

             水銀燈より』

雪「早く蒼星石姉さまに伝えなければ…」
292無題:2009/11/25(水) 00:14:24 ID:erqXDz45
眠さによりいったん休止
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 12:33:12 ID:WuCsacdZ
カービィの続きはどうなった
294こんなジュンは激しく嫌だ:2009/11/26(木) 12:37:36 ID:xwaVkZPB
真紅はジュンの所へやって来たのだけど、どうやらジュン違いをしてしまった様子で
桜田ジュンでは無くジュン=ゲバルの所へ来てしまった。

「私はローゼンメイデン第五ドールの真紅。お前は今から真紅の下僕とな…。」

そう言おうとした瞬間、ジュン(ゲバル)の拳が真紅の顔面目前まで寸止め状態で迫っていた。

「お前が俺の部下になるんだ。」
「は…ハイ…。」

ジュン(ゲバル)を下僕にする所か逆に部下にされてしまった真紅だが、ジュン(ゲバル)は凄い男だった。

若干21の若さで南米の一離島に過ぎなかった小さな国をアメリカから独立させ、その国の大統領となった男であり、
自身もまた武術の達人で、同時に部下達に対する武術の師でもあると言う同じジュンとは思えない男だった。

そして真紅からアリスゲーム等の事情を聞いたジュン(ゲバル)は真紅に対しても武術を伝授し始める。
それを機に真紅が持っていたステッキ等の武器の使用を禁止。青臭い正義感を振りかざそうとしたのでは無い。
必勝の信念に裏打ちされたジュン(ゲバル)の計画。

ジュン(ゲバル)の訓練は熾烈を極めた。対徒手、対武器、対銃器、対爆薬
これらは多数の犠牲者が続出するも、自ら離脱を申し出る物は皆無だったと言う。
それだけジュン(ゲバル)の特訓は必勝を実感出来る物だったからだ。

真紅の身体に傷跡が増えなくなった頃、武器持たぬ最強ドール完成。

ついに宿敵水銀燈との対決の日がやって来た。

「あ…あの…何か…見ない内に随分とワイルドになっちゃったんじゃなぁい…?」

ジュン(ゲバル)の特訓を受けた真紅は水銀燈すら引いてしまう程にまで様変わりしていた。
しかしジュン(ゲバル)からの教えを受けた真紅はそんな水銀燈にも容赦はしない。
素早く水銀燈の耳へ向けて張り手を叩き込み、その衝撃で水銀燈の鼓膜を破壊。
そしてジュン(ゲバル)から伝授された恐るべき技を放つ。
その技とは、自身の頭から髪の毛の数本を引き抜いた後、それらを束ねて鼓膜を破った
相手の耳の中へ差し込み、そのまま内部を破壊すると言う恐るべき技。
さしもの水銀燈もこの技の前には一溜まりも無かった。

水銀燈を倒した真紅は、破竹の勢いで他のドールズも次々に倒して行く。
ジュン(ゲバル)から課せられた地獄の様な特訓の日々に比べれば
雪華綺晶さえも怖くなかった。


そうして難なくアリスゲームを勝ち抜いた真紅だが……今の真紅の姿……
果たして究極の少女と呼ばれるアリスと呼べるのだろうか…………?

おわり
295無題:2009/11/26(木) 17:48:11 ID:cyx53D5N
再開

雪「蒼星石姉さま、これ見てください」

蒼「ん? これは…」

薔「あの後部屋に戻ったら…これが…」

蒼「…行くよ…水銀燈のフィールドに」

雪「…はい…」(私もあんなこと嘘とはいえ
あんなこと言ってしまいましたし)
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 22:52:28 ID:hG1k3YKb
お?
297無題:2009/11/26(木) 23:07:41 ID:cyx53D5N
水銀燈のフィールド

銀「やっと来たわね」

葉「そ、蒼星石!」

蒼「…要求はなんだ…?」

銀「簡単よ。あなたのマスターを渡してくれればいいの
簡単でしょ?」

葉「蒼星石! 私のことは気にするな!」

蒼「…」
298無題:2009/11/26(木) 23:15:37 ID:cyx53D5N
蒼(…)

銀「悩んでいるようねぇ…大丈夫よ、悪いようにはしないわ」

雪「お姉さま…」

薔「…」

葉「蒼星石! ここは私が行く! だから…」

蒼(…マスター…ごめん)「…水銀燈…その取引…受けるよ…」

雪・薔「!?」
299無題:2009/11/26(木) 23:22:08 ID:cyx53D5N
葉「蒼星石…ありがとう」

銀「意外ねぇ…てっきり断るのだと」

葉「水銀燈、これで蒼星石には手を出さないでくれるんだな?」

銀「ええ」

薔「…」おどおど

雪「…蒼星石姉さま…本当にそれでいいんですか?」

蒼「…え?」
300無題:2009/11/26(木) 23:32:41 ID:cyx53D5N
雪「お姉さま…それがあなたのマスターへの愛ですか?
マスターのためならなんでもする、マスターに反対しない
それでいいんですか?」

蒼「で、でも…」

雪「お姉さまは言いましたよね、『マスターとドールは
ご主人様と執事のような冷ややかな関係だ』と
それは私は間違っていると思います! なぜなら…!」

雪「そんな冷ややかな関係で一緒に歩んでいけるわけがないから!
マスターとドールは家族同然の暖かい関係であるべきです!」
301無題:2009/11/26(木) 23:38:41 ID:cyx53D5N
蒼「…!」

雪「はぁ…はぁ…どうですか!?」

蒼(…そうだ…僕はいつもそうだった

回想

蒼「マスター! 大丈夫ですか!?」

葉「大丈夫だ…ちょっと腰が痛いだけだ」

蒼「マスター…」



蒼「マスター! だ、大丈夫ですか? か、顔が赤いですよ!」

葉「ああ…蒼星石…ちょっと風邪引いたみたいだ…
ちょっと眠らせてもらうよ」

蒼「マスター…」
302無題:2009/11/26(木) 23:45:47 ID:cyx53D5N
蒼(そうだった…僕はいつでも…守りたいものを守れなかった…
腰痛の時も、風邪の時も…せめて僕が看病してあげられたなら…)

蒼(蒼星石…今こそ…人間がよく言う勇気とやらを出してみる
ときじゃないのか?)

蒼「…マスター…ごめんなさい…初めて…命令を無視してみます」

葉「?」

銀(はっ! つい聞き入ってしまったわ…)

蒼「水銀燈! 前言撤回させてもらうよ! 
マスターは渡さない!」

銀「へぇ…?」
303無題:2009/11/26(木) 23:50:39 ID:cyx53D5N
雪「そういうことです…それでも力づくで奪うというなら…」

薔「こっちも力づくで追い返します!」

銀「ふぅん…言ってくれるわねぇ…残念だけど
あなたたちのおままごとに付き合ってる暇はないの
じゃあねぇ〜」

薔「…逃げた…」

銀「それと蒼星石! 今回は諦めるけど、次は奪って見せるわよ!
覚悟しておきなさい!」

雪「…」
304無題:2009/11/26(木) 23:55:11 ID:cyx53D5N
葉「蒼星石ぃ!」

蒼「マスター!」

葉「良かった…蒼星石の身に何かあると思うと…」

蒼「いえいえ…」

雪「さて…警備の仕事も終わったことだし帰りましょうか」

薔「はい」

蒼「ちょっと待って」

雪・薔「?」
305無題:2009/11/26(木) 23:59:09 ID:cyx53D5N
蒼「この2つの携帯電話、あげる。2人で使って」

雪「え? でも…」

蒼「僕にマスターとドールのあり方を解いてくれたでしょ?
だからそのお礼」

薔「でも…そんな…」

蒼「いいんだ、もともとマスターが僕と連絡を取るために買ったんだけど
あんまり外出歩くことないし」

雪「んじゃあ…お言葉に甘えて…」
306無題:2009/11/27(金) 00:05:34 ID:cUfVuzSl
翠「蒼星石ぃー! 遊びに来たですよー!」

蒼「あ、みんな」

紅「暇だから来たの」

雛「ものすごく大きい家なのー!」

紅「そんなことより相棒が始まってしまうわ!
テレビはどこにあるのかしら!?」

翠「真紅…蒼星石の家に来てもそれですか…」

その頃

薔「急いでくださいお姉さま! 相棒始まっちゃいますよ!」

雪「わ、わかってるわよ!」

第三章 終わり
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 22:41:27 ID:okiISMCU
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 00:00:10 ID:cRpD++YB
うるわしんく
30911 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:12:24 ID:cfP17yUZ
ども、>>11です。

遅くなってしまい申し訳ございません。
第8話を投下します。
310薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:15:58 ID:cfP17yUZ
【第8話 雛苺】
[08/01 06:25]
[桜田家 ジュンの部屋]


チュン……チュン、チュン……


[腕を大きく前から上にあげてーッ
のびのびと背伸びのうんどーからーッ!]

パカッ

雛「……うゆ〜……」


 なんだか、外がうるさいの……


[ハイッ! 1、2、3……]

 どこから聞こえてくるの……?
……あっちの方は、たしか……
こうえん、かなぁ……?
311薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:17:35 ID:cfP17yUZ
雛「行ってみるの。」


 まだ真紅も寝てるけど……ヒナ、今日は早起きするの。


ベリーベル{チカッ……チカッ………}フラフラ

雛「おはようなの。ベリーベルもおでかけするのよ。」

ベリーベル{カッ……}!?

雛「……うー。ヒナだって早起きするのよ。」

ベリーベル{……}フワフワ


 ベリーベル、なんだかびっくりしてたの。
……お出かけするまえに、のりがやってるように、
お顔を洗って、歯を磨くの。
ヒナのはぶらしは、ちっちゃいピンク色のなのよ♪
312薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:21:45 ID:cfP17yUZ
[06:44]
[公園。]
 ふぅ、やっぱりここから声がしてたの。
 ヒナが公園についたら、すごいものを見たのよ。
……おじさんたちが集まって、のびのびをはじめたの……。


ラジオ[手足のうんどーっ! いち、にっ、]

ヒョコ
雛「……。」じ〜っ

おじさん1・内藤「おっ、お嬢ちゃんも入っていくか。」

おじさん2・長岡「ちょうどよかったな。
       今3セット目が始まったばかりだからな……」

おじさん3・荒巻「ちっちゃいのに感心だなぁ。」


 ヒナ、ひげのおじさんに囲まれてしまったの。
ベリーベルは、木の陰に隠れちゃった。
 ……ヒナ、ちっちゃいけど、
もう子どもじゃないもん。
313薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:24:48 ID:cfP17yUZ
ラジオ[まわしまっ! そとまっし、
   うちまっ! しち、はちっ]


内藤「つぎは、腕を交わしながら、胸を大きく張るんだ。
  こうやるんだよ。」

雛「……うゆ。」


 ヒナも、のびのびをしてみるの。


雛「うゅ〜……いたたたた」


 う〜っ、あんまりお外に出てなかったから、からだが痛いの。
もうちょっと、お庭に出て遊ばないとなの……


[06:48]
蒼「あっ、雛苺じゃないかー。おはよう。」

雛「蒼星石ぃー、おはようなの!」

柴崎元治「雛苺や。ラジオ体操をしにくるとは、
    感心じゃのう。」
314薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:29:56 ID:cfP17yUZ
雛「らじおたいそう?」

蒼「うん。……朝早くにこうやって体を動かすと、
  とっても健康にいいんだって。
  僕も、マスターとよくここに体操をしにくるんだ。」

雛「そうなのー……
  やっぱり、お外はおもしろいの。……いてて」

蒼「……ふむ、雛苺、最近お庭で遊ばないから、
  体がなまっているね?」

雛「うゆ……そうみたいなの。」

蒼「このところ雨続きだからね……
  梅雨、明ければいいけど……
  さあっ、次はジャンプだよ!」


ラジオ[いちっ、にっ、さん、しっ
 ひらいてとじて、ひらいっとじるっ!]

雛「にぃ、にぃ、さん、しぃ!」

蒼「ごー、ろく、しち、はちっ!」

元治「ーッ!!」


 うゆーい! なんだか、風がきもちいいのーっ!
315薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:33:51 ID:cfP17yUZ
[06:53]
蒼「体を思いっきり動かすのも、なかなかいいだろう?」

雛「うん! ヒナ、バッチリおめめ覚めたのよ!」

内藤「お嬢ちゃん、楽しく体操していたね。」

荒巻「ジュース、持っていきな。」

雛「ありがとなの!
  ヒナ、オレンジにするー!」

蒼「僕は、サイダーにしようかな。」

元治「リポビタムにしようかの。
  若いもんには、負けてられんからの。」

蒼「アハハ。」


[06:55]
蒼「それじゃ、またね!」
元治「またのう!」

雛「うーい! ばいばいなのー!」


 〜♪
もうみんな、起きてるかなぁ……?
316薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:37:03 ID:cfP17yUZ
[07:05]
[桜田家 リビング。]
真紅「おはよう、のり。」

のり「おはよーぅ!」

雛「のりぃ、真紅ー、おっはよーなのー!」

真紅「あら、雛苺! 今日は早起きなのね。」

雛「うん!」

のり「雛ちゃんは朝から元気いっぱいね!」


[07:15]
ダダダッ
翠「おはよーございますですぅ!」

雛「おはよーなのー!!」

翠「……ち、チビ苺!?
起きてやがったですか!?」

雛「うん! ヒナね、らじおたいそーに行ってきたの!
蒼星石もいたのよ!」

翠「そ、そーですか……
  け、健康に気を使うのは、とってもいいことですぅ……」
 (蒼星石もラジオ体操をやってるですか……
  これは翠星石もいっちょやるしかねえですぅ!)


のり「それじゃあ、お顔を洗って、歯みがきしましょう!」

雛「はーい!」
317薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:39:29 ID:cfP17yUZ
[07:52]
雛「のりぃー、朝ごはんなにー?」

のり「今朝はねぇ……いちごのフリューチェよぅ!」

雛「うわーい! いっちごー♪」


 ヒナ、早起きしたからラッキーなのよ!


[08:19]
雛「ごちそーさまでしたーなの!」

のり「はぁい!
   早起きすると、気持ちがいいでしょう?」

雛「うん!」

翠「早起きは30ポンドの得って言いますからねぇ。」

真紅「それを言うなら3文の徳よ。」

雛「さんもん?」

真紅「現在の貨幣価値にして、ざっと60円というところね。
   とはいえ、健康な生活習慣を心がけることも、
   立派なレディのつとめよ。」

雛「うゆ。」

真紅「ま、それは男の子にも言えることだけど。
   もうそろそろ、降りてくるわ……」
318薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 14:42:17 ID:cfP17yUZ
[08:21]
ジュン「……おはよ」

雛「おはよう! ジュン!!」

翠「おはようですぅ。ちーっと遅れをとっちまったですねぇ。
 フリューチェはもうないですよ。」

ジュン「なっ、フリューチェだったのか!?」

真紅「ジュン、足元がふらついているわ。」

ジュン「そうかー……?
   しかし、雛苺のやつ、やけにテンションが高いな……どうしたんだ?」

雛「ヒナねー、ラジオ体操したの!
  今度ジュンもいっしょにやろー?」

ジュン「……」

雛「…… !」


 あっ、思い出したの……ジュンって、こういうのがあんまり好きじゃないってこと……
 ジュン、怒っちゃった……?


ジュン「……そうだな。たまには、体を動かさないとな。」

真紅「いい心がけね。
  それでこそ、私たちの最高の家来よ。」

ジュン「おいおい……ま、いいか。」


 ジュンのご機嫌、なおったのー!
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 18:02:27 ID:02kkR3Ek
おお!続きktkr
待ってたよー
320薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:02:10 ID:cfP17yUZ
ジュン「じゃあ、スコーン食べようか……
   翠星石、焼いてくれ。」

翠「しゃーねーなー、ですぅ。
 眠れる獅子のたのみとあらば、断るわけにはいかんですぅ。」

ジュン「あのなぁ……」

雛「さっ、早くお顔洗って、はみがきして、スコーンたべるのよ!」

ジュン「そうせかすなって……ハハ。」


[08:35]
TV[……千葉は晴れ時々曇り、最高気温は34度です。
 降水確率は20%……]

ジュン「さて、図書館に行ってこようかな。」

雛「ジュン、あいとっ。」
真紅「気を付けて行ってくるのよ。」

ジュン「ああ。そんじゃ、行ってくるよ。」
バタム

翠「……チビのくせに、背中がでっけーですぅ。」

のり「男の子は、みんなそんなものなのよ。」


 真紅が言ってたけど……
「お父様も、背中が大きかった」んだって。


 ジュン、傘を持っていってたの。
さっき、テレビでは晴れ、って言ってたのに、どうしたのかな?
321薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:04:13 ID:cfP17yUZ
[08:42]
のり「それじゃ、部活に行ってくるねー!」

雛「のりも、あいとっ!」

翠「勝鬨をあげてきやがれですぅ!」

のり「はーい! 行ってきまーす!」

雛「行ってらっしゃいなのー!」


 のりはラクロス部なの。
ラクロス、面白そうだけど、
ヒナにはラケットがおおきすぎるの……。


[09:26]
翠「ちっと蒼星石のところに行ってくるですぅ。」

雛「どうしたのー?」

翠「おじじとおばば、朝ご飯済ませたら、スガモってところまで
  『でいと』しに行ってるです。
  それで、蒼星石が留守番中なんですぅ。」

真紅「そう、それで……。
  店を空けるわけには、いかないものね……」

翠「おじじたちが帰ってきたら、またこっちに来るですぅ。
それでは、行ってくるです。」

雛「うゆ。行ってらっしゃいなの!」

翠「はいですぅ!
  そうですねぇ、おやつまでには戻るですぅ!」
322薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:07:28 ID:cfP17yUZ
[09:48]
真紅「雛苺?」

雛「うゆ?」

真紅「ティータイムにしましょう。」

雛「うぃー。紅茶を淹れてくるから、ちょっと待っててね!
  95、95、紅茶の適温は95℃なのよ〜♪」
トトト…

真紅「……」

雛「るんるるんるん〜♪」

真紅「……ふふっ、私も手伝うわ。」
トトト

雛「お砂糖もちょこっといれるの!」

真紅「……あら、スティックシュガーという便利なものが、
   切れてしまっているわ。
   仕方ないわね、普通のお砂糖を使いましょう……」
サラサラ

雛「あっ、そっちは……」

真紅「……!」

雛「…… ……」

真紅「…… ……」

雛「……もう一杯淹れるの。」

真紅「……そうね……。」


 えへへ……真紅とティータイムなの♪
『なつやすみ』だから、10時から『くんくん』を観たのよ!
323薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:10:31 ID:cfP17yUZ
[10:35]
雛「ねぇ真紅〜?」

真紅「どうしたの、雛苺。」

雛「ヒナとおでかけしよう?」

真紅「……! そ、その……
   ま、まあ、気分転換にはいいかもしれないわね。」

雛「うわーい! じゃあ、パンとか、お菓子を
  たくさん持っていくのよ!」

真紅「お、お菓子を食べながら、
   気分を変えるってことね。文字通りのおいしい作戦だわ……」ブルブル


 真紅ったら、猫さんがこわいから、
ヒナとおでかけするってことになると、
いっつもこうなのよ。

 ……ヒナだって、オバケはこわいけど……

 リュックのなかに、パンとお菓子をたくさん入れて、
いざ出発なのー♪
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 19:12:21 ID:Jb/x8zsc
ほんわかするわぁw
325薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:13:31 ID:cfP17yUZ
[11:08]
[道中。]
雛「お日様今日もご機嫌かしら♪」テクテク

真紅「……日傘もバッチリー……装備……」トボトボ

雛「絶好のおでかけ日和ね♪」テクテク

真紅「みんな計画通り……」トボトボ

雛「くーつのリボンギュッとしめたーらー、
  あっ、猫さんなの!」

猫「にゃー。」

雛「こんにちはなの!」

猫「にぃー。」

真紅「…… ……!」

猫「……?」


 猫さんにあいさつしたら、
真紅、ヒナの後ろに隠れちゃったの。

 お歌は、金糸雀に教えてもらったのよ!


真紅「……まだ着かないの?」

雛「もうちょっとなの!」
326薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:16:53 ID:cfP17yUZ
[11:14]
[公園。]
 ヒナたちが公園についたら、滑り台の上に誰かがいたの。

雛「あっ、雪華綺晶なの!」

真紅「薔薇水晶もいるのだわ。」

薔薇「こんにちは……」

雪「ごきげんよう、お姉さまがた。」

雛「こんにちわーなの!」
真紅「お店はどうしたの?」

雪「エンジュさまが改装作業をなさっているので、
  15時のおやつまでは外で遊んでいようと思いまして……」

薔薇「今日は……お店はお休み……」

雛「ヒナたちもおやつの時間まで遊ぶのよ!」

雪「それは丁度よかったです……
  そうですね……何をして遊びますか? 雛苺お姉さま。」

雛「かくれんぼー♪」

薔薇「よし……では、じゃんけん……」


真紅「……私の鬼ね。
   すぐに見つけ出してやるのだわ……。」

327薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:18:42 ID:cfP17yUZ
[11:58]
雛「ばらすいしょー、みーっけ!」

薔薇「さすが、雛苺……
5分かからずに、全員を……」

雪「真紅お姉さまの、四分の一の時間しか経っておりませんわ……!」

真紅「うう……こういうのには、慣れていないから……
  そろそろ、お昼にしましょうか。」

雛「うぃー!」


[12:01]
真紅「あら、あなたたちは……お弁当を持ってきたのね。」

雪「お姉さまがたは……パンですか。」

薔薇「……くんくん探偵のくるみパン……」

雛「ビスケットもあるのよ!
  ……うゆ!? 雪華綺晶と、薔薇水晶のお弁当の上に、
  くんくんがいるの!」
真紅「これは……素晴らしいわ!
  ああっ、くんくん……。」

薔薇「お父様と……作った。
  くんくんのお弁当……。」
328薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:22:01 ID:cfP17yUZ
[12:21]
雪「雛苺お姉さまのリュックサックは……
  やはり、いちご柄なのですね。」

雛「うぃー! トモエに買ってもらったのよ♪
  雪華綺晶と薔薇水晶は、おそろいのかばんなのね!」

雪「はい……エンジュ様に、作っていただきました。」

薔薇「真紅のリュック……
   名前が書いてある……」

雛「ばらぐみ さくらだ じゅん……ジュン!」

真紅「これしかなかったのだわ……」

雪「かわいらしい、熊のワッペンがついていますわね。」

薔薇「……かわいらしい……とっても。」


[12:42]
 公園の中に咲いてた、ひまわりさんを見上げてたら、
首が痛くなっちゃったの。
ひまわりさん、おっきいの。

 それでね、みんなでベンチでお話をしていたら、
誰かが来たの。
329薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:25:16 ID:cfP17yUZ
銀「あらぁ? ……先客がいるじゃなぁい……」

雛「あっ、水銀燈なのー!」

雪「ごきげんよう……水銀燈お姉さま。」

銀「ごきげんよぉ……。」

薔薇「……水銀燈は……何をしに……?」

銀「ちょっと、ひとりで考え事をしようと思ってねぇ……」

銀「けど」

銀「……折角だからぁ、私も混ざっていいかしらぁ……?」

雛「うわーい! みんなで遊ぶのー!」

薔薇「……それでは……かくれんぼのつづき……」

雪「はじめましょうか……♪」

真紅「ええ。」

銀「負けないわよぉ。」


 ヒナたち5人で、かくれんぼしたの!
水銀燈ったら、真紅が鬼になったら、真紅の後ろに
そーっと近づいて、
クスクス笑ってて、面白かったのよ!
330薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 19:27:35 ID:cfP17yUZ
[13:39]
 ……みんなで遊んでいたら、雲がおっきくなってきたの。
 みんな、なんだかそわそわしてるの……蝉さんも鳴き止んじゃった。


真紅「……雲行きが、怪しくなってきたのだわ……」

薔薇「……夕立……大雨になる……」

雛「あっ! だから、ジュンは傘を持っていってたのね……」


ポツ……ポツ

雪「いけませんわ! 早く、屋根のあるところへ……」

銀「……礼拝堂へ行くわよ!!」

真紅「急ぎましょう!」

雛「うぃー!」

薔薇「……みんな……はやい」
ダダッ
331薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:00:31 ID:cfP17yUZ
[13:54]
[旧礼拝堂。]
 ヒナたちはいっしょーけんめい走って、礼拝堂にたどりついたの……
 みんなが、ほっとひといきしたら、すごい雨が降り始めたのよ。
 雲のごきげん、ななめだったのかな……?


ザザーッ

銀「すごい雨ねぇ……間に合ってよかったわぁ。」

薔薇「わたしたちのお店まで行っていたら
   ……確実に間に合わなかった……」

雛「ありがとなの。
  あっ、これ、お礼なの。リュックのなかに、入ってたのよ!
  みんなもどーぞなの、走ったから、おなかすいたでしょー?」

銀「こちらこそ……ありがと。
『どうぶつビスケット』ねぇ。めぐがよく食べているわ。」

雪「いただきます……これは、猿ですね……」

薔薇「BEAR……くま……」
332薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:02:28 ID:cfP17yUZ
真紅「くんくんのような、かっこいい犬は入っていないの……!?」

雛「うわーい! わにさんが入ってたのー!」

銀「……雛苺、ワニが好きなのね……」

真紅「動物ならなんでも好きなようよ。
  とくに、爬虫類は……」

銀「知らなかったわぁ……
  妹のこと、もっと知る必要があるわねぇ。」

雛「ねぇ、水銀燈はなんの動物が好きなの?」

銀「そ、そうねぇ……
  何かしら……龍ぅ?」

雛「ふぉぉー……、すごいの。
そういえば、水銀燈の翼って、龍になるの!」

銀「ま、いろいろと思い入れがあるからねぇ……ふふ。」


 水銀燈の翼、とってもかっこいいの。
……金糸雀に聞いたんだけど、昔の水銀燈も、寂しがり屋だったんだって。
翼もその時に生えたって言ってたの。
だけど、水銀燈も、寂しさを乗り越えた。ヒナ、それがとってもうれしかったのよ!
333薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:28:50 ID:cfP17yUZ
真紅「ひぃっ、猫が入っていたのだわ……こんなもの、噛み砕いてやるわ!」

薔薇「あわてて食べては……身体に、悪い……」


[13:57]
ゴロゴロ……

雛「うゆ!?」

真紅「雷……まだ、遠いようね。」

雪「稲光が見えてから、雷が落ちるまでの時間が……
  鍵を握ります。」


ピカッ ピカッ!!
雛「ひっ!?」

薔薇「!!」


ゴロゴロ……
真紅「……24秒。」

銀「ま、まだ……遠いわね……」


カッ!!
薔薇「っ!?」

雛「うゆ!?」


ドド……ン
雪「13秒ですわ。」

真紅「近づいてきたわね……」

銀「じょ、冗談じゃないわぁ……」

カッ!!!
真紅「!」
雪「!!」
薔薇「……!?」
雛「……!!」
銀「!!!」

ゴォッ
ピシャァーン!!
334薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:31:15 ID:cfP17yUZ
……
銀「―― ――!!」

雛「ぶわーん」

真紅「い、今のは響いたのだわ……」

薔薇「……うう……」
ヒシッ
雪「……もう、大丈夫ですよ。 それに、周りを見てください……」

雛「う……うゆ?」


 ヒナ、雷の音にびっくりして、泣いちゃったの。
薔薇水晶も、雪華綺晶にぎゅーってしてたの。
けど、ヒナも薔薇水晶も、
すぐに泣き止めたの。
だって、あたりを見たらね……

銀「……ふぅ……翼って、こういう使い方もあるのよぉ。」

真紅「水銀燈……貴女の翼が……」

雪「お姉様も含め……ここにいる5人を包み込んで、護ってくださった……。」

雛「ありがとなの、水銀燈!」

薔薇「……ありがと。」

銀「……遊んでくれたことと、ビスケットのお礼よぉ。
ほら、入ってたわよぉ、竜……♪」

雛「ふぉぉー……おっきいの。
  ……どぅ、らごん?」
雪「DRAGON……ドラゴン、
つまり……英語で竜ですわ。」

雛「DRAGON! こうやって書くのね!」


 ヒナ、えいごはたまに真紅たちが使ってるのを
聞いて、まねっこしてるくらいしかやってないから、
あんまり書けないの。

 だけどね、ご本を読んで、この国の文字を練習してたら、
さっきみたいな文字も出てきたし、
コリンヌもトモエも、お勉強であんな文字を書いてたのよ!
 水銀燈が教えてくれたんだけど、あれは『あるふぁべっと』っていうんだって!
335薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:35:55 ID:cfP17yUZ
[14:14]
チュン……チュンチュン……チュン
雪「雨も止んだようですね。」

真紅「日も射してきているわ。外に出てみましょう。」
ギイッ

 ヒナたちが外に出たとき……
久しぶりにアレを見たの!

雪「まぁ……虹ですわ!」

雛「うわーい! 虹なのー!」


 お空に虹が架かってたのよー!


銀「綺麗ねぇ……まともに見るのは、いつ以来かしら……」

薔薇「あれが……虹……
  ……とっても綺麗。」

真紅「珍しいわ、2本架かっているわね。」


 フランスでは、虹の見え方が、もうちょっと違うのよ!

 そのあと、3時まで礼拝堂でいっぱいおしゃべりして、
雪華綺晶と薔薇水晶を、エンジュのお店まで送ったの。
336薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:40:48 ID:cfP17yUZ
[15:10]
[ドールハウス・Enju Doll。]
エンジュ「おかえり、薔薇水晶、雪華綺晶。」

薔薇「ただいま……」

雪「ただいま戻りました。
  ……お店、綺麗になりましたね。」

エンジュ「いや……改装は終わったわけではない。
新しい棚を頼んでいるが、発送してくるまでに
もうしばらくかかりそうだ。そうだな……19時までには届くだろう。」

薔薇「新しい……棚?」

エンジュ「ドール用の服が出来上がったら、
     飾ろうと思ってな。……というわけだ、
もうしばらく遊んできていいぞ。」

薔薇「……はい。」

雪「わかりました。」

エンジュ「……皆、いつもありがとうな。
    あの子たちも、あんなに笑えるようになった……」

真紅「こちらこそ。」

銀「いいってことよぉ。
  前に、ピザも頂いているから……。」

雛「うゆ! ふたりとも、ヒナのすてきないもうとなの!」

薔薇「……ふふ。」
雪「うふふ……♪」

 そろそろ、翠星石も帰ってくるから、
ヒナたちも行くのよ♪
337薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:43:21 ID:cfP17yUZ
[15:28]
[桜田家 玄関。]

雛「ただいまーなのー!」
真紅「戻ったわ。」

翠「おかえりですぅ。翠星石も、さっき戻ったばかりですよ。」

ジュン「おう、おかえり。
出掛けてたのか。」

雛「ジューン♪」ピョンッ

ジュン「おっとと……夕立があっただろ? 大丈夫だったか?」

真紅「凌げたわ。水銀燈のおかげよ。」

銀「ごきげんよう……」

ジュン「よう。……なるほど、礼拝堂と言うわけか。」

銀「古ぼけた礼拝堂でも、役に立つものよぉ。
  5人とも難を逃れたわぁ。」

ジュン「……5?」

ヒョコ
薔薇「……♪」ペコ
雪「ごきげんよう……ジュン様。」

ジュン「おお、揃ったな。
8人イッキは、七夕以来だな……。」

雛「うゆ?」

ジュン「蒼星石ー、紅茶5杯追加してくれー!」

蒼「はーい!」

真紅「あら、蒼星石も来ているのね。」

ジュン「金糸雀もいるんだ。
さ、上がれよ。」


 みんな揃ったのー!
金糸雀は、雨が上がってからジュンのお部屋を覗いてたら、
見つかっちゃったって言ってたの。

 蒼星石は、翠星石といっしょに帰ってきたんだって。
やっぱり、ふたりはとってもなかよしなの!
338薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:48:40 ID:cfP17yUZ
[15:34]
[桜田家 リビング。]
ガチャッ
のり「ただいまー! 雷怖かったよー。」

雛「のりー! おかえりなの!」

のり「……あれ? いち、にい、さん……
   ……8! みんな揃ってるわね!」

ジュン「ああ、久々にオールスター集結だ。」

蒼「お邪魔してます。
  のりさん、紅茶はいったよー!」

のり「わぁ、ありがとう♪」

カナ「こんにちはーかしら!
虹は見たかしら!?」

のり「見えたわ!
  とってもきれいだったわよ!」

カナ「カナも見とれちゃって、
   油断してたらジュンに見つかって……」

ジュン「うそつけ、お前がうとうとしていたところを、
   僕が瞬時に見つけたのに……」

カナ「瞬時じゃないかしら!?
   しばらくキョロキョロしてたかしらぁ!」

ジュン「何ぃー!?」
バッ

銀「ちょっとぉ! ふたりとも落ち着きなさい……?
  ジュン、少し背は伸びているようだけどぉ……
まだまだ子供ねぇ……」

真紅「めんぼくないわ……
私のしつけが足らないのかしら……」

銀「いや、私のしつけかもねぇ……」

ジュン「おまえらなあ……」ゾクッ
339薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:53:58 ID:cfP17yUZ
のり「さあさあ! みんな揃ったみたいだから、おやつにしましょう!」

雛「わーい! おやつー、おやつ〜♪」

翠「落ち着きやがれですぅ。
  今、この翠星石が美味しいスコーンを作ってやるですよ!」

蒼「あっ、僕も手伝うよ!」

カナ「カナもやるかしらー!」

雛「ヒナもヒナもー♪」

雪「私もお手伝いいたします……♪」

薔薇「……わたしも……」トコトコ

銀「……さぁ、ジュン。」

真紅「私たちも、加勢しましょう。」

ジュン「……よーし、やるか!」

のり「ふふ……ジュンくんったら、あんなに元気になって……
  よかったぁ。さっ、私もお手伝いしよっと!」


 みんなでスコーンを作ったの。とっても楽しく作れたのよ〜♪
真紅も、お料理がちょっと上手になってたの!


真紅「……今度は間違えないわ……」

銀「もしかして、お砂糖とお塩を間違えたのぉ?」

真紅「あ、貴女こそ今手にしているのは……」

銀「これはお砂糖よぉ。」

真紅「それは重曹よ。」

銀「……!」

ジュン「そこんとこは相変わらずだな、おまえら。」

真紅「……ふふっ」
銀「……ふふっ」

 真紅と水銀燈、息がピッタリだったの。
「じゅうそう」っていうのを間違ってとっちゃったから、
ついでにクッキーも作ったのよ!
真紅と水銀燈、仲良くクッキーを作ってたの♪
340薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 20:55:55 ID:cfP17yUZ
 おやつを食べたあとは、みんなでかくれんぼしたの!
……えへへ、みんなで仲良く遊ぶっていうの、
ヒナの夢だったの♪

[16:35]
のり「……えーっと、たしかこのあたりに……
   あった!」

雛「のりー、何かあったなのー?」

のり「カメラよぅ。すぐに写真が出てくるのよ!」

ジュン「ポラロイドか……
   一度も使ってなかったっけ。」

のり「みんなソファのところに集まってー!」
341薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 21:02:38 ID:cfP17yUZ
ジュン「じゃ、僕はここに座ろう。
    よいしょっ、と……」ボス

雛「ヒナここがいいのー!」
ピョンッ

ジュン「やっぱ、頭の上か。」

雛「うゆ♪」

雪「……私は、ジュン様の左後ろに行きます。」

薔薇「……わたしは……逆サイド……」

真紅「私はジュンの右隣にするわ。」

カナ「カナは左隣かしらー!」

翠「翠星石は……翠星石は……」

ジュン「ここに来なよ。」
翠「ほぇ!? ち、チビ人間の……膝の上ですか。
  本当にいいのですか……?」

ジュン「ハハハ。いいぞ。」

銀「……じゃぁ、私たちはソファの両端に座りましょう?」

蒼「うん、そうしよう。
  さ、のりさんも早く!」

のり「はぁーい! それじゃ、セルフタイマー、ONっ!」


 ヒナと、ジュンとー、のりと、真紅たち!
10人で写真を撮ったの!
みんなのぶん、10枚撮ったのよ!
ヒナの、たからものにするのー♪
342薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 21:04:11 ID:cfP17yUZ
[17:15]
銀「今日は楽しかったわぁ。
  ありがと、雛苺。」

蒼「僕もだよ! おやつ、楽しかったよ。」

雪「お昼時はありがとうございました。」

薔薇「また……遊びましょう。」

カナ「それでは皆々様、また逢うかしらー!」

真紅「ええ。またお茶会しましょう。」

翠「スコーン焼いて待ってるですよー!
  契約者ともどもお待ちしてるですぅ!」

雛「ばいばいなのー!」


 みんな、笑った顔が素敵だったのよ!
みんなだーいすき♪
343薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 21:08:32 ID:cfP17yUZ
[19:27]
のり「はーい、今日はみんなとっても仲良くできたから……じゃじゃーん♪」

ジュン「おお……肉が2枚!」

真紅「2枚あるのだわ!」

のり「ダブル花丸ハンバーグよぅ!」

雛「わぁぁぁ♪
  ダブルなのー!」

翠「夢の2枚ですぅ!」

雛「いっただっきまーす!」ニコニコ

ジュン「ハハハ。」

のり「こんなによろこんでもらえて、
  嬉しいなぁ♪」
344薔薇乙女達の好日 第8話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 21:12:35 ID:cfP17yUZ
[20:59]
[ジュンの部屋 鞄の中。]
 今日はとっても楽しかったの!
みんなとたくさん遊べたし、たくさんお話したの。
ヒナ、夢が叶って嬉しかったよ♪
明日、トモエに今日のことを聞かせてあげるのよ!


 眠ってたヒナたちを、また起こしてくれた……
また、かばんから出してくれた……
ジュンたちに、ありがとう、なの!

 明日も、晴れるといいなぁ。
……すー……すー……


                   【第8話 おわり】
34511 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/08(火) 21:25:11 ID:cfP17yUZ
……本日の投下は以上です。
第8話雛苺編でした。

皆さま方、諸般の事情で投下が遅れてしまったことをお詫びいたします。

第9話は主人公が二人の特別編です。
それではグッナイ。

>>306 無題のかた
乙でした。
こちらの蒼い子のマスターは結菱氏なんですね。

どのようにきらばらが
この先活躍するのか
ワクテカしている次第でございます。
第四章楽しみにしています。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 12:37:45 ID:4d5j9Qkl
やっぱり雛苺はかわいいな
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 23:16:59 ID:Hs7MwMbB
ぬふぅ
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 23:43:21 ID:A0h7nQ/a
これは旧雛苺の一日だね
そちらを読み返して二度おいしい
乙でした
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 22:51:38 ID:X3gL01u4
遅ればせながら乙
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 20:09:10 ID:6AGp6uUi
旦那www
35111 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 18:33:55 ID:w0tCVKwK
ども、>>11です。
第9話を投下しますよ。

>>346-349
ありがとうございます。
励みになります。
352薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 18:41:11 ID:w0tCVKwK
【第9話 変化】
[08/31 13:12]
カナ「〜♪」
皆々様ぁ、ごきげんようかしら!
今日こそは……このローゼンメイデン一の策士、
第2ドールの金糸雀が……
ビシッ

 桜田家に、気づかれることなく突入してやるかしら!!
今までに失敗を重ねること899回……成功したのはわずか13回……
……まぁ、今となっては、大きな理由もないけれど……
策士として、遊びに行くなら、一味違った登場の仕方をしたいかしら。
……ただ、それだけかしら……。
さて、家の中を覗いて……
353薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 18:50:41 ID:w0tCVKwK
ジュン「うーむ……」


 ジュン、何か書いているかしら。秘密書類……?
策士としても、これは気になるところ……
ここはピチカートに行ってもらうかしら!


ピチカート{……}ソォーッ

ジュン「……まずいな……最終日でも何とかなると思ったが……」

真紅「計画倒れね。」

ジュン「……うるさいなぁ。まぁ、確かに計画倒れなんだけどさ……」

真紅「……私に頼んでも、国語は手伝えないわ。」

ジュン「べ、別に頼もうとは……!」


 ……真紅も一緒かしら。
354薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 18:58:46 ID:w0tCVKwK
 ジュンったら、こんな昼間から口げんかかしら……
ほんとに、仲がいいのか悪いのか……
……って、見とれてる場合じゃないかしら!
早く潜入作戦を立てなければ……!


ジュン「おーい、金糸雀ぁー。ちょっと来てくれー。」

ヒューン
カナ「何かしらー!?」
ジュン「……おい真紅、本当にいたぞ!?」

真紅「……姉妹の気配を感じることなんて、たやすいことよ。」

カナ「!?」

 ば、ばれてたかしらぁ〜……。


[13:24]
[桜田家 ジュンの部屋。]
真紅「……そもそも、ピチカートをよこしてきた時点で分かっていたわ。
   あなたが、このあたりに来ていることも……」

カナ「うぅ〜……」

ジュン「ま、玄関から入ってこないのも、お前らしいといえばお前らしいんだけどな。」

カナ「策士、策におぼれてしまったかしら……」

ジュン「そうだ、お前を世界一の策士と見込んで、頼みごとがあるんだ……。」

カナ「何かしら?」
355薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:07:39 ID:w0tCVKwK
真紅「……私からもお願いよ。これはとても、この真紅だけでは
   何とかできる問題ではない……」

カナ「まかせて! どんな難題でも、このローゼンメイデン一の……」

ジュン「じゃ、これを片付けるのを手伝ってくれないか?」

カナ「……夏休みの友……? 中2国語……」


 これは……赤い表紙に筆で書いたような文字で、「夏休みの友」と書かれた……
あっ、さっきジュンが書いていた、重要機密書類……!?


カナ「……開けてみていいかしら?」

ジュン「いいぞ。……そんなに深刻そうな顔をしなくても……」


ペラッ
カナ「……ふむふむ……」
カナ「…… ……。」

カナ「……。」

356薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:13:22 ID:w0tCVKwK
ジュン(……やたら真剣に読んでるな……)

真紅(やはり、金糸雀を頼って正解だったのだわ。)

ジュン(……別に水銀燈とか、雪華綺晶とかでもよかったんじゃないか?)

真紅(いいえ。水銀燈はめぐの相手をしに昨日から病院に行っている。
   雪華綺晶と薔薇水晶は風邪を引いたエンジュの看病に忙しいそうよ。)
ジュン(蒼星石も、家で留守番中だろ。
    そして翠星石と雛苺は姉ちゃんと、姉ちゃんの部屋で昼寝してる、と……
    どっちみちこいつにしか頼めなかったな……。)

真紅(そもそもジュンが、この長い休みの間に怠けることなく……)

ガタッ!!
カナ「……!!」ブルブル
357薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:17:49 ID:w0tCVKwK
ジュン「……ど、どうしたんだ!?(まずい、怒らせたか!?)」

真紅「じゅ、ジュンの無礼があったなら、私が謝るわ……!」

ジュン「あのな」

バッ
カナ「ジュン……!!」

ジュン「……ど、どどど……」

カナ「鶴が……がじら゛ぁ〜……」べすべす

ジュン「……?」

真紅「……『鶴の恩返し』……」

ジュン「……なるほどな……爺さんが鶴を助けるって話だっけ?
    ……童話なのに、中2の国語のテキストに載るとはな……。」


 恩返し……方向を間違えるととんでもないことになっちゃうけど、
普通にすれば、とても素晴らしいことかしら。
……今度、みっちゃんに卵焼きを作ろうかな……?
358薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:23:06 ID:w0tCVKwK
[14:00]
カナ「よし、終わったかしら! 楽勝だったかしら〜♪」

真紅「……ジュンのたまりにたまった宿題も、片付いたようね。」

ジュン「ありがとな、お前ら。本っ当ぉに助かったよ……」

真紅「さあ、ティータイムにしましょう?」


[14:04]
[桜田家 台所。]
ジュン「卵を溶いて、と……」

ジュン「えーと、砂糖はこれくらいでいい、か、なっと……
甘目なほうがよかったんだよな……」

ジュン「そんでもって紅茶、と……」

[リビング。]
真紅「……」じ〜っ

カナ「どうしたかしら? 真紅……
ジュンの方、ずっと見てるけど。」

359薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:27:51 ID:w0tCVKwK
真紅「ちょっと、背中が広くなっている……。
あれから、1年が経つわね……」

カナ「1年? ……あっ、あの時の……」


 1年前といえば……薔薇屋敷での戦い……
前のアリス・ゲームの終わったころ……かしら。

 あの時……カナは、まだ弱かったかしら。
自分でも、そのことはじゅうぶんにわかってた。
だけど……


[1年前]
[薔薇屋敷。]
翠『だっ、だめですぅ!! 早く逃げろですぅ!!』

カナ『逃げないかしら!!』

カナ『――!!』


カナ「…… ……。」ポカン

真紅「……金糸雀?」

ジュン「おーい、卵焼きできたぞー?」

カナ「……あぅっ、あ、ありがと……かしら。
いただきまーす……」


 ジュンが作ってくれた卵焼き、とっても甘くて美味しいかしら。
……やればできるってやつかしら。
360薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:34:58 ID:w0tCVKwK
 カナだって…… カナだって……



カナ『翠星石のローザミスティカは、カナが守るかしら!!』

薔薇『…… ……。』


……結局、カナは負けた。
 少しだけ記憶がまばらだけど、手も足も動かなかったから、
そういうことなんだ、というのは分かってた……
とにかく、翠星石のローザミスティカを、護りたかったから……


カナ「…… ……」モムモム

真紅「……金糸雀? 貴女、どうしたというの?」

ジュン「もう2分近く噛んでるぞ……そんなに甘すぎたか……?」

カナ「…… ……」モムモム
361薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:39:34 ID:w0tCVKwK
 今、こうやって動けてるのが、すごく不思議に思えることがあるかしら。
あの後……ジュンが、動かなくなった真紅を抱いて、
エンジュに叫んで、薔薇水晶の体が崩れちゃって……
これは全部、ジュンと真紅に聞いた話なんだけど……。

 それで、また動けるようになって……なったけど……
カナが動けても、アリス・ゲームで負けてた雛苺と蒼星石が
同じように帰ってくるわけじゃなかった。
だから、ずっと落ち込んでた……かしら。
362薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:46:06 ID:w0tCVKwK
 それから半年が過ぎて、ジュンやみっちゃん、真紅、翠星石と、
水銀燈と……第67982世界で、ラプラスと戦った……

 ジュンは……薔薇水晶と雪華綺晶のことも考えてくれてたかしら。
カナの6番目の、7番目の妹……敵であるまえに、姉妹だってこと、
……すっかり忘れちゃってたかしら。

 水銀燈……たった一人のお姉ちゃんと、力を合わせて、
5体の竜を操って戦ったこと……今でも夢に見るくらい、覚えてるかしら。

 ……これは、水銀燈には内緒にしてる。
だって、水銀燈にだって、カナしか知らない秘密がたくさんあるかしら!
363薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 19:54:26 ID:w0tCVKwK
カナ「……ふふ……」

ジュン「……なんだァ? 変な奴だなぁ……」


[14:34]
カナ「さて! テレビでも観るかしら!
ジュン、紅茶を淹れてくれるかしら?」

ジュン「(……ふっ)分かったよ。レモンティーでいいか?」

カナ「ありがとかしら!」


ピッ
TV[続いては特集です。西洋の人形製作技術を、日本に伝える巨匠の姿に迫ります。]

TV[誰しもが最も親しみを込めて遊ぶもの。――人形。
その人形を作る人形師の中でも、最強の腕を持つ男が日本にいた。]

TV[――どうもこんにちは、エンジュです。]


ジュン「おっ、エンジュさんだ!」

真紅「……えっ? 風邪をひいて寝込んでいるはずではなくて?」

カナ「これは生放送じゃないかしら。」

真紅「ど、どうなっているの……!?」
364薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 20:18:24 ID:w0tCVKwK
エンジュ[……人形でもおもちゃでもそうですが、大切に扱ってあげてください。
また、壊れてもすぐに捨てるのではなく、できるだけ長く、手元に残してあげてください。
そうすれば……また動き出すかもしれません。]


 エンジュ、いいこと言うかしら!

 エンジュも、1年で本当に変わったかしら。
薔薇水晶も……水銀燈だって、蒼星石だって……
この時代に来て、みんな変わっていったかしら。


カナ「……ねえ、真紅?」

真紅「何? 金糸雀。」

カナ「……カナ、この1年で……」

カナ「…… ……あの、その……」


真紅「……分かっているわ。……けど」
365薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 20:28:18 ID:w0tCVKwK
カナ「……?」

真紅「変わらないことも、また美しさなのだわ。
   もちろん、成長してこその話よ。」

カナ「え……?」

ジュン「そうだなー……いいことなんじゃないか?
変わらないところがあるってのも……。
そりゃあ、変わると嬉しいこともあるけどさ。」

カナ「……うん」

ジュン「ま、真紅はミョーに姑くさい所なんかが
全然変わらないんだけどな」
ガッ

カナ(華麗なるくるぶし直撃かしら……)

真紅「口を慎みなさい……」

ジュン「あうう〜……」

真紅「まったく……ジュンも、そういうところは変わらないのね……
最近、少しは背中が広くなったと思ったのだけれど……」

カナ「……ふふ……」

ジュン「……ハハハ……いってぇ〜……」


 結局、あんまり根本的なところは変わってないのかしら。
けど、それはそれで安心できるってこと、やっと分かったかしら!
なんだか……杞憂だったかしら。
366薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 20:34:19 ID:w0tCVKwK
[14:54]
カナ「さーて、カナはそろそろお家に帰るかしら!」

ジュン「そうか? もう少しゆっくりしていけばいいじゃん。」

カナ「……実は、みっちゃんがお昼寝してるところを、
こっそりと抜け出してきたのかしら。」

真紅「そう……みっちゃんさんも、目覚めて最初に見るのが貴女の顔なら、
とても幸せだと思うわ。」

ジュン「ぼ、僕だって。」

真紅「その言葉、翠星石が聞いたら喜ぶのだわ。
……わ、私だって、その……」

ジュン「お前らは立派な桜田家の一員だからな、当り前さ。」

真紅「そ……そうね。ありがとう、ジュン。」

ジュン「お前もな。」

カナ「あ……ありがと、かしら……。」
367薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 20:43:50 ID:w0tCVKwK
[15:02]
ギイッ
翠「くぁー、よく眠ったですぅ。 ……あれ?
チビカナ、来てたですか?」

雛「金糸雀ぁー! いらっしゃいなのー!!」

のり「どうもにぎやかだと思ったら、あなただったのね!」

カナ「わ、わあ……お、起こしてしまったかしら!?
ごめんかしら……」

のり「大丈夫よ、ついさっき起きたばかりだから。」

雛「ねーねー、金糸雀ぁー。」

カナ「どうしたかしら?」

雛「あそぼ!」

カナ「うん! オッケーかしら! 真紅たちも遊ぶかしら!」

真紅「ええ。」

翠「いいですよ! ここはかくれんぼでいくですぅ!」

雛「うわぁーい!!」

のり「みんなァー! おやつのクッキー作ってるから、遊んだ後に食べてねー!」

カナ「ありがとかしら!」

真紅「ありがとう、のり。」
368薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 20:52:27 ID:w0tCVKwK
[15:34]
のり「……1年前と変わらないね、この光景……」

ジュン「まあ、な。昼間っから生き人形がはしゃいでるっていう、
    すっごくシュールな光景なんだけど……慣れちまったな。」

ジュン「けど、姉ちゃん。……変わったところも、あるぞ。」

のり「うん。みんな、とっても楽しそうね♪」


 のりの言う通り……1年前、この庭でそうめん流しをしていた時、
この4人で庭に出て、雛苺と追いかけっこして……たくさん笑ったかしら。

 ……素直に楽しめていたか、って聞かれたら、そうじゃなかった。
蒼星石が倒れて、翠星石はすごく沈んでて、真紅も戦わないといけなくなって……。
カナがなんとか元気を保ててたの、雛苺のおかげかもしれない……。

 だけど、今は違うかしら。
こうやって、たくさん笑えるし、卵焼きもじっくりと味わえるし、
77回しっかりと噛んで……

翠「金糸雀みっけたですぅ!!」

ビクウッ
カナ「フィニッシャアアアアア……!!」

翠「ちょろいもんですぅ。」

カナ「ふ、不覚をとったかしら……」

雛「あっ、金糸雀見つかったのー!」

真紅「そう。……これで全員ね。
   さ、そろそろおやつにしましょう。」

翠「のりのクッキー、食べに行くですぅ。」

雛「うーい! 金糸雀ぁ、行こう!」

カナ「かしら♪」


 おやつを食べたら、またあと少し遊ぶかしら!
369薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:01:21 ID:w0tCVKwK
[16:52]
カナ「それじゃ真紅、カナはそろそろ帰るかしら!」

真紅「そう。……そろそろ、みっちゃんさんが戻ってくるのね。」

カナ「うん。 ……今日はありがとかしら。」

真紅「こちらこそ、ジュンのことがあるから……」

カナ「ジュン、明日からまた学校かしら。確か、ジュンがまた学校に行くようになってからも
   1年が経つのかしら?」

真紅「そうね。この1年で一番変わることができたのは……ジュンかもしれないわね。」

カナ「背も伸びてきているし、これからが楽しみかしら。
   それじゃ、また逢うかしらぁ♪ ピチカート!」

ピチカート{チカチカッ}
フワッ

真紅「ええ、気をつけて。」


 さて、ふわり風に乗って、お家まで帰るかしら!
もうそろそろかし……


ビュウゥゥゥ

カナ「ひええ!! と、突風はないかしらぁー!!」
ビュオオオオォ
370薔薇乙女達の好日 第9話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:08:50 ID:w0tCVKwK
[17:00]
[薔薇野マンション 220号室。]
みつ「たっだいまー! カナは……出かけてるのね。
   けど、5時だし、もうそろそろ帰ってくるね……洗濯物、取り込まなきゃ。」

カラカラ
[ベランダ。]

みつ「〜♪」

「「かしらああああ!!」」

ゴオォオッ

みつ「超高速で帰ってきたぁー!!」

カナ「みっちゃああああ……!!」

みつ「カナあああああ!!」
ガシッ


カナ「超高速で……ただいま……かしら……。」

みつ「お帰りぃぃ!! みっちゃんも高速まさちゅーせっちゅ〜!!」
ごしごしごしごしごしごし……

カナ「あうううう……!!」

 ふー、……みっちゃんったら、全然変わらないかしら。
けど、カナはそれでもいいと思う。ジュンはジュンだし、真紅は真紅……
みっちゃんは、みっちゃんだから……かしら♪

 さて、明日も晴れるかしら……?

                             【第9話 おわり】
37111 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:19:07 ID:w0tCVKwK
第9話、カナと真紅編でした。
続いて、第10話を投下しますよ。
372薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:29:42 ID:w0tCVKwK
【第10話 雪華綺晶】
[09/23 06:55]
[nのフィールド 中心部。]

 ……外は……すごい嵐のようです……
ここからでも……よく見える。
私は雪華綺晶。ローゼンメイデン・第7ドールです。

 そろそろ、薔薇水晶たちを起こす時間です……。
私が持っているこの時計、真紅お姉さまからいただいたもの……
「最新型の懐中時計を買ってもらったから、これはあなたにあげるわ」とのこと……
いわゆる、おさがりというものですね。

 いままで、どれくらいの時をきざんできたのでしょう……?

 ……私は、nのフィールドで就寝・起床をしています。
……ここを一日中空けておくわけにもいきませんし、
まだ、1年前の事について、自省し足りないので……
373薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:36:00 ID:w0tCVKwK
[07:01]
[ドールハウス・Enju Doll。]


nのフィールドから薔薇水晶のところ、エンジュさまの家に行くと、
この洗面所に到着します。以前、水銀燈お姉さまが、
ここに茫然と立ち尽くしていたことがありましたね。

タオルや歯ブラシ、洗面用具など……すべて3人分あります。
エンジュさまは独身のはず、なのになぜ……
そう、これは薔薇水晶と私の分なのです。

さて、エンジュさまたちの寝室は……


[寝室。]
エンジュ「ヘプシッ!! あ〜っ、風邪か……?」

パカッ
薔薇水晶「……うぅ。」
ゴシゴシ

エンジュ「すまない。起こしてしまったな。」

薔薇水晶「……いいです、お父様……。もう、起きる時間……」

エンジュ「……どうだ? 鞄の寝心地は……」

薔薇「……最高」


ガチャ
雪「おはようございます……エンジュさま、薔薇水晶。」

薔薇「おはよう……」

エンジュ「おはよう。」

雪「今日は、嵐のようですね……」

エンジュ「厄介だ……客足が……」

薔薇「商売人の、しかつ……もんだい。」

雪「こればかりは、仕方ありません……」

薔薇「ここで話もなんだし、……朝ご飯にしましょう」

エンジュ「ああ。」
374薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:41:16 ID:w0tCVKwK
 ……薔薇水晶は、エンジュ様が作ったドールです。
薔薇乙女を超える存在として……
ずいぶん前に、この子がお姉さま方と戦った時には、たいへんな修羅場だったと、
この子から聞いております。

 今はそんなことは気にしていませんし、お姉さま方も、かわいいかわいい8番目の姉妹同然に
接しております。それに……私の双子の妹のようで、目に入れても痛くはありませんわ。
少しだけミステリアスですが……かわいい妹です。

 エンジュ様は、最高の人形師とも言われております。
お姉さま方からうかがったのですが、初めてエンジュ様にお会いした時……
お父様と見間違えたそうです。

 エンジュ様は「ローゼンを超えてみせる」と、昔はうわごとのように何度も何度も
言葉にしていたのですが……今は、そんな言葉も聞いておりません。
375薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:50:36 ID:w0tCVKwK
[07:42]
[台所。]
エンジュ「よし、できたぞ。今朝は、シーザーサラダとオムライスだ。」

薔薇「いただきまーす……おいしい……♪」

雪「『サウザンアイランド』というドレッシングがよく合いますわ。」


エンジュ「実は、今日は商談があって、今から出かけてくる。
まぁ、商談といっても、服飾メーカーとのコラボレーションの……」

雪「どちらまで行くのですか?」

エンジュ「そこの商店街の奥の、服屋さんだ。そうだな、お昼までには戻ってこれるだろう。
……というわけで、出かけていていいぞ。」

薔薇「でも……雨」

雪「そうですね。nのフィールドからあちこちにいけるわけですし……」

薔薇「そっか。」


[08:50]
[nのフィールド。]
 薔薇水晶と共に、 nのフィールドを散歩です。

雪「どこに行きましょうか、薔薇水晶……」

薔薇「……水銀燈お姉さまのところ」

雪「……はい!」
376薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 21:58:45 ID:w0tCVKwK
[08:51]
[有栖川大学病院 316号室。]

雪「おじゃまします……」

薔薇「おじゃま……します」

めぐ「あら? 二人とも、水銀燈の……妹さんよね?」

雪「ええ。水銀燈お姉さまは……いますか?」

めぐ「今日は……まだ来てないみたい。礼拝堂じゃないかな?
あっ、古い方ね。」

雪「そ……そうですか。」

薔薇「……おじゃましました……また来ます」

めぐ「はぁい。(ふふ、かわいい)」


 礼拝堂にいらしているとは……
すっかり忘れていました……

薔薇「……起きてる、かな」

雪「大丈夫でしょう。」


[08:57]
[旧礼拝堂。]
ギイッ

水銀燈「あらぁ? 雪華綺晶に薔薇水晶じゃない。」

雪「水銀燈お姉さま♪」

薔薇「おはよう。」

銀「ごきげんよう。……急にどうしたのぉ?」

雪「遊びに来ました♪」ニカッ

薔薇「……来ました」ニッ

銀「遊びに来たのぉ? ……私も今から出かけるところよぉ。
めぐのところだけど、来る?」

雪「ええ。」

薔薇「そのつもりだった……」

銀「……グッドタイミングってことね。じゃ、行きましょ。」
377薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:09:24 ID:w0tCVKwK
[09:02]
[有栖川大学病院 316号室。]

めぐ「おかえり♪」

銀「ただいま、って、何それ……」

薔薇「……仲良し」

銀「……薔薇水晶ったら……」

めぐ「なんだか……天使さんが3人いるみたい♪」

銀「……そぉ?」

薔薇「……天使」

雪「まぁ……天使だなんて……そんな」

銀(雪華綺晶をオトしてしまったわぁ……恐ろしい子ぉ。)

薔薇(めぐ……すごい。)

 確かにちょっと前まではアストラルでしたが……
天使と言われたのは初めてですわ。うれしい……♪

378薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:18:54 ID:w0tCVKwK
[10:47]
 なんだか、話が弾みすぎてしまいましたわ。
病院に長居するのもなんですし、私たちはこれで……

銀「そう、もう戻るの……。」

めぐ「……ひまがあったら、いつでもおいで♪」

銀「おいでって……めぐぅ、貴女そろそろ退院でしょぉ?」

めぐ「そっかぁ。まぁ、水銀燈がなんとかしてくれるから♪」

銀「まぁ、待ってるわ。……じゃ、ばいばぁい!」

雪「ええ。またお会いしましょう♪」


 さて……お昼までまだ時間があるし……
金糸雀お姉さまのところに行きましょうか。
この前の、”こすぷれ”のお礼もありますし。
379薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:24:37 ID:w0tCVKwK
[11:26]
[薔薇野マンション 220号室。]

雪「おじゃましま……」

みつ「きゃ〜!! カナ、超かわいい〜っ!」


薔薇「……っ!?」

雪「な、なんですか!?」

カナ「みっちゃ〜ん、うしろうしろ……」

みつ「ん? あ〜っ!! 雪華綺晶ちゃんに薔薇水晶ちゃ〜ん!!
……きらきーちゃんとばらしーちゃんって呼んでもいいよね!?」

雪「い……いいですけ……ど」

薔薇「……うん」

みつ「きらき〜〜〜ちゃん!! ばらし〜ちゃん!!
よく来てくれたねぇ〜♪」


 まぁ……「きらきー」なんて……
素敵なあだ名を、みつ様からいただきました♪
薔薇水晶も、うれしそう……!

380薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:30:20 ID:w0tCVKwK
みつ「それにしても久しぶりねぇー。」

雪「そうですね……。」

みつ「どことなく背が伸びたような……?」

薔薇「……そう?」

カナ「雪華綺晶は末っ子のくせに背が高すぎるかしら?!
ちょっと分けて欲しいかしらぁ……」

雪「だ……大丈夫です、金糸雀お姉さま♪」

カナ「40cmくらい上からお姉さまっていわれてもぉー……」

薔薇「……金糸雀は、いつだってどこだって、誇り高き第2ドール……」

雪「そうですわ。」

カナ「……ありがとかしら」


……確かに、私はドールズの中でも背が高いほう。
特別、意識はしていませんでしたが……。
381薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:36:19 ID:w0tCVKwK
[11:45]
みつ「そーうだ! きらきーちゃん、ばらしーちゃん、ちょっとこれを着てみて♪」

雪「はぁ。」

薔薇「……?」

カナ「気になるかしらー♪」


 とりあえず、着てみましたが……
やたらと重いです……私が着せていただいたのは、薄い桃色の着物です。
薔薇水晶は、紫色の十二単です。
これを、この国の古の女性が着ていたのですね……


薔薇「……重い」

みつ「古くから伝わる日本人形というか、そのあたりをイメージしてみたよ。
がっちり当てはまってるぅ〜! カナ、撮るわよぉー!」

カナ「イエッサーかしら! ピチカート、照明お願いかしら!」

ピチカート{チカチカッ チカチカッ}

カナ「……何? 背景が黄色くなっちゃうって?
   こまかいことはいいかしら!」

ピチカート{チカチカ}

雪「……ふふ」

薔薇「……うふふ」


 なんだか、その気になってしまいます……。
382薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:42:02 ID:w0tCVKwK
[11:58]
 そろそろお昼の時間ですので、私たちはこれでお暇します。
また”こすぷれ”をお願いしようかしら……?

みつ「きらきーちゃん、ばらしーちゃん! 新作できたら、試着おねがいね!」

カナ「またくるかしらー!」

雪「ええ。おじゃまいたしました。」

薔薇「……おじゃましました……またね」


 楽しかった……さて、今日のお昼はなんでしょうか?
nのフィールドを抜けて、帰りましょうか。

[11:59]
[ドールハウス・Enju Doll。]

雪「ただいま戻りました。」

薔薇「ただいま」

エンジュ「おかえり。お昼、できてるぞ。」

薔薇「きょうは……そうめん」

エンジュ「9月に入ったというのに、暑いからな。涼もうではないか。」


 私たちは服が白いから……けっこう気を使って食べないといけませんわね。

383薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 22:48:30 ID:w0tCVKwK
[13:11]
 エンジュ様はお店番をしています。
……薔薇水晶と二人で、暇ですわ。


薔薇「……ひま……ねむい」

雪「そうですわね……」

薔薇「……すぅ……」


 あらあら、もう眠ってしまったの……?

薔薇「……おとう……さま……」
おねえ……さま……だーいすき……すぅ……」

 か……かわいいです♪
なんだか、私も……ねむく……
384薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:03:32 ID:w0tCVKwK
[14:41]
 ……私ったら、いつの間にかお昼寝を……
薔薇水晶、まだ寝ていますね……

 ……あら、その横にはエンジュ様も寝ていますわ。
雨ですから、お客さんが来ないのでしょうか……


薔薇「……んぅ」
ギュウ

 きゃっ……薔薇水晶、抱きついてきましたわ……
次は、どこに行こうかしら。
決まるまで、薔薇水晶を抱っこしてあげましょう……

[14:50]
 ……蒼星石お姉さまのところがいいですね!
よいしょっ、と……

薔薇「……くー……」

エンジュ「……Zzz……」

 ……ふふ。
おやすみなさい、薔薇水晶、エンジュ様。
385薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:11:19 ID:w0tCVKwK
[14:51]
[柴崎時計店。]

スウッ
雪「おじゃまします。」

元治「おや? 君は……」

雪「……ローゼンメイデン、第7ドール、
  雪華綺晶です。」

元治「きらきしょうか。ほうほう。ワシは蒼星石のマスターをしておる、
   柴崎元治じゃよ。第7ってことは……妹さんかの。」

雪「はい。」

元治「そうかそうか。蒼星石から話は聞いておるよ。仲良くしてくれてありがとうのぉ。」

雪「い……いえ、こちらこそ。」

元治「ちょっと待っておれ。おーい、蒼星石や。」

蒼「はーい? あっ、雪華綺晶じゃないかー!」

雪「ごきげんよう……遊びにまいりました。」

蒼「(ふむ……なるほど。雨だから、鏡から。)薔薇水晶は一緒じゃないのかい?」

雪「エンジュ様とお昼寝をしています。私だけ起きてしまいまして、
  あの子とエンジュ様は、まだ起きないでしょうから……」

蒼「そうなんだ。」
386薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:21:25 ID:w0tCVKwK
元治「雪華綺晶や。ほうじ茶でも飲んでいかんかね?」

雪「い……いいえ、結構ですわ」

元治「まぁまぁ、遠慮するでない!」

雪「そうですか……ありがとうございます。」

蒼「マスターの淹れてくれるほうじ茶は、本当においしいよ!」

雪「いただきます……」チビチビ

元治(ワクワク)

雪「これは……しぶくておいしいですわ♪
元治さまのほうじ茶には、やさしさがありますね。」

元治「そうかそうか。ありがとよ。」

蒼「よろこんでもらえてうれしいよ。」


[15:10]
 おいしいほうじ茶もいただきましたし、なんだか、今日は充実してます。
皆様の笑顔が、見るたびに素敵……

 さて……長居もなんですし、そろそろおいとまして、
翠星石お姉さま達のところへ行きましょうか……


雪「それでは、私はこれで……ほうじ茶、ありがとうございました。」

蒼「また遊ぼうね!」

元治「蒼星石を、これからもよろしくたのむぞい。
   鏡を磨いて待っておるぞー!」
387薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:27:08 ID:w0tCVKwK
[15:13]
[桜田家 物置。]

 よいしょっと……わっ!
きゃあっ、暗いですわ……ね……
ここは物置ですね……灯りはどこ……?
あ、ドアがありましたわ。これを引けば、出られ……

ドンッ
雪「きゃあっ!?」

「い……いたたた」

雪「だ、誰!?」

「だ……誰なの……?」


ガラガラッ
翠「はい、チビチビみーっけ……ん!?」

雛「うゆ……みつかっちゃったの。」

翠「一人増えてるです……」

雛「ほえ? ……あーっ! 雪華綺晶なのー!!」

雪「おじゃま……してます。」

翠「ふむふむ、雨だからここから来たですか。」

雪「はい。」

雛「雪華綺晶もかくれんぼするのよー!!」

雪「そんな……負けませんわよ。」

真紅「あら、いらっしゃい。貴女がここに来るなんて、めずらしいわね。」

雪「そうですか? そうですね、先月以来になります……」

真紅「さ、じゃんけんするわよ。」

雪「はい♪」

 ……私が鬼ですか……負けていられませんわね。
背が高いことを活かして、戦いましょうか。
30秒数えて、捜索開始……!
388薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:36:12 ID:w0tCVKwK
[15:17]
[ジュンの部屋。]

 ドアが開いていますね。ここに、誰かがいる……!
あたりを……みまわして……

雪「……!」


 ベッドの上に、誰かがいますね。
布団の中に隠れているのが、よく分かる……。

バサッ

 ……くんくん探偵1/1人形でしたか。
ダミーを置いておくとは、なかなかやりますわね!
ですが、机の下に……

雪「見つけましたわ、真紅お姉さま!」ニヤッ

真紅「あらあら……見つかってしまったわ。
   これは金糸雀がよく使う戦法よ、覚えておくことね。」

雪「参考にさせていただきます♪」
389薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:49:15 ID:w0tCVKwK
[15:19]
[リビング。]

翠(ヒッヒッヒ……ソファに寝転べばこっちのもんですぅ♪
  保護色ってやつですぅ。雛苺の相手をしていたら、こんな戦法も
  身につくってもんですぅ! ヒーッヒッヒッ♪)

雪「見つけましたわ、翠星石お姉さま♪」

翠「げげっ、ばれちまったですか」

真紅「詰めが甘いのだわ、翠星石。」

翠「ぐぐ……残るは、チビチビですか。
  強敵を最後に残しましたねぇ?」

雪「ええ、分かっています。以前も、雛苺お姉さま達とかくれんぼをしましたが……
  やはり、いちばん長く隠れられていましたわ。
  相手にとって不足が無いということは、やはりすばらしいことです……」

翠「どこにかくれたんですかね?」

真紅「どこかしら……そろそろジュンが帰ってくるころね。」
390薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/21(月) 23:57:55 ID:w0tCVKwK
[15:21]
[玄関。]

 雛苺お姉さまは、やはりお強い。
5分以上探しても見つかりません……どこなのでしょうか?

ジュン「ただいまー。おぉ、雪華綺晶!」

雪「こんにちは。おじゃましています……」

ジュン「遊びに来ていたのか。」

雪「ええ。今は、かくれんぼをしています。」

ジュン「なるほど。誰を探しているんだ?」

雪「雛苺お姉さまです。」

ジュン「はぁー。そいつは強敵……」

雪「あ、見つけましたわ、雛苺お姉さま!」ニカッ

ジュン「え? どこだ……あーっ! 雛苺お前っ」

雛「えへへ……見つかっちゃったの。」

雪「これは恐れ入りました。まさか、ジュン様の頭の上にいらっしゃるとは」

ジュン「いつのまに……!」

雛「さっき、傘を差してお庭を歩いていたら、ジュンをみつけたのー!
それでね、ジュン登りしたの!」

ジュン「……そういえば、頭がすこし重かったような。
   頭までは気が回らなかったな……」

真紅「あらあら、ジュン、ついに隠れる場所にされるなんて」

翠「チビ人間の髪の毛が生い茂っているせいですぅ。」

ジュン「うるせぇー!」

雪「……ふふ♪」
391薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:05:01 ID:3qg+NuZF
[15:39]
ジュン「さて……そろそろ、柏葉が来るなぁ。」

雛「えっ!? トモエくるの!?」

真紅「そういえば、今日は巴がおやつを持ってくる日ね。」

雛「うーとね、うーとね……トモエが来る前に、傘を取りに行きたいの!
  ジュン、乗せてー♪」

ジュン「しょうがないなぁー……ほれ。」
ヒョイッ

雛「♪」

 ジュン様登り……雛苺お姉さま、とっても幸せそうです。
帰ったらエンジュ様登りでもしてみましょうか。
392薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:22:53 ID:3qg+NuZF
[15:42]
巴「こんにちはー。」

雛「うわーい!!トモエトモエー♪」

巴「雛苺、いい子にしてた?」

雛「うぃー!」

巴「あら、雪華綺晶。こんにちは。」

雪「こんにちは。」

巴「苺大福を買ってきたんだけど、一緒にどうかな?」

雪「ありがとうございます。」

雛「雪華綺晶といっしょに、うにゅー食べるのよ♪」


 巴様の買ってこられた苺大福は、よく伸びて、とっても甘いのです。
もっちりしたところが、「うにゅー」と呼ばれる所以なのでしょうか?
もう秋ですから、あんまり数は見られなくなってきてはいますが……

 巴様と雛苺お姉さま、本当に仲の良い姉妹のようですわね。
……契約は解かれているようですが、そのつながりよりも強い……
絆の力を、感じます。


 雛苺お姉さまは、かつて、とても寂しがりでした。
 私も……孤独には耐えられずにいました。
それが高じて……多くの人に、お姉さまがたに、
心配をかけました。たくさん……傷つけてしまいました。

 ですが、雛苺お姉さまをはじめ、お姉さまがたも、薔薇水晶も、
暗い時代を乗り越えられた……
……私も、そうあれるように、頑張っているところです。
393薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:28:09 ID:3qg+NuZF
[16:48]
雛「ねぇー雪華綺晶、ヒナとお絵かきするの!」

雪「いいですわね。」

雛「ジュンの部屋に行くのよ!」
ダダダ

雪「はぁい♪ ジュン様、おじゃまいたします。」
タタタ

ジュン「いいとも。」


くんくん[ちいっ、逃したか!?]

ネコ警部[そこの路地だ!! あそこは行き止まりになっている!!]

くんくん[よぉし、行くぞ!!]

真紅「……そこよ、くんくん!」

翠「暇さえあればくんくんのDVDですか、真紅。」

ジュン「なんだか、内容を覚えてしまったぞ。」

巴「私もよ。雛苺も、くんくん大百科を持ってるし……」
394薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:34:32 ID:3qg+NuZF
[16:51]
[ジュンの部屋。]
雛「おえかき、おえかきぃー♪」

雪(こんな感じかしら? …………)

雛「うゆーい♪」

雪(……かわいらしい表情を出すのが難しいですわ……)

 雛苺お姉さまは、自由な発想でさまざまな物を描き上げていっています。
すごいですわね。私は……ふふ、まだ秘密……♪


[17:15]
雛「できたのー!」

雪「できました。雛苺お姉さまは、何を描いたのですか?」

雛「うーとねー、これがヒナ! こっちがー、しんくー! それでね、こっちがかいじゅうさんで、
  これがうにゅーで、ジュンもいるの。それでそれで、雪華綺晶なのー!」

雪「紙の上にこれだけのものを描き上げるとは……すごいですわ。」
395薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:39:55 ID:3qg+NuZF
雛「雪華綺晶は何を描いたの?」

雪「はい、これです……」

雛「ふおおお、これは、ヒナなのー!!」

雪「なかなか難しかったですわ。とくに髪の毛の辺りが……」

雛「うゆ? とってもじょうずなのー。」

雪「まぁ。ありがとう♪」

雛「雪華綺晶ぉー、この絵、あげるのよ!」

雪「いいのですか……?」

雛「ヒナとお絵かきしてくれたお礼なの!」

雪「ありがとう……では、私からはこの絵を」

雛「ありがとなの! お部屋にかざるのよー♪」


 雛苺お姉さまから、絵を貰いましたわ。
これはお店に飾りましょうか。お人形屋さんにぴったり……♪


[18:14]
[玄関。]
 そろそろ晩御飯の時間ですね。
では、私はおいとまさせてもらいます。
雨も上がったようですし、ここから帰りましょうか。

雛「またお絵かきするのー! かくれんぼもするのよー!」

翠「次は負けんですぅ!」

真紅「また、ゆっくりしていくといいわ。」

雪「ええ。それでは、またお逢いしましょう!!」

雛「ばいばいなのー! 今日はありがとなのー♪」

雪「ばいばい……ふふ♪」


 こんな一日、少し前では、考えられませんわね。

 ですが……これが、姉妹として生まれ、誰かの支えになる人形の……
本来のあるべき姿なのでしょう……そうでしょう? お父様。
396薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:43:49 ID:3qg+NuZF
[18:30]
[ドールハウス・Enju Doll。]
エンジュ「おお、かわいらしい絵だな。」

薔薇「どうしたの? この絵……」

雪「雛苺お姉さまから、私へのプレゼントです。」

薔薇「すごい……」

エンジュ「額縁を買ってこないとな……さて、夕飯にするか。」

薔薇「今日は……なぁに」

エンジュ「今日は、花丸ハンバーグだ。以前、翠星石から教えてもらっていたのだ。」

雪「楽しみです♪」
397薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:47:05 ID:3qg+NuZF
[19:58]
 とってもおいしかったです、花丸ハンバーグ。
エンジュ様、料理の腕前もあるのです。やはり、何かを作る事にかけては
ストイックな姿勢を見せていますわね。

薔薇「ねぇ、雪華綺晶」

雪「なんですか?」

薔薇「今日……いっしょに寝てくれますか……?」

雪「ふふ……いいですよ。」

薔薇「わぁ♪ ……お姉さま」

雪「!?」

薔薇「……なんてね。 雪華綺晶……♪」
ギュゥ

雪「……ふふ」

エンジュ「……本当に仲のよいことだ。今日は、私の部屋で寝ると良い。
     せっかく雪華綺晶専用の鞄を作ったんだ、薔薇水晶の鞄と並べてあげよう。」

雪「はい♪」
398薔薇乙女達の好日 第10話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 00:54:12 ID:3qg+NuZF
[20:47]
[エンジュの部屋。]
 今日は充実した一日でした。
これも皆、お姉さま方や薔薇水晶、周囲の方々のおかげですね。

 私が忌まわしき呪縛から解かれ、エンジュ様に身体を造っていただいてから、
まもなく半年。

 それまでは、優しくも激しくも切なくも、高貴にも無垢にも、
お姉さま方や、周囲の方々を傷つけることでしか……着替えられなかった。  
 ですが、今では……着替えるのはあくまでも自分自身だということに、
改めて気付けた……そんな感じがします。
どんな私にもなれるということの……本当の意味が、分かってきた気がします。
 きっと、お父様も笑って見守ってくださっているはずですから……。

 夢の中でも、みんなと遊べたらいいですわね。
では、私も……おやすみなさい……。
                          【第10話 おわり】
39911 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/22(火) 01:00:09 ID:3qg+NuZF
……本日の投下は以上です。読んでくださった方、ありがとうございます。

第11話は……ばらしーです。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 17:58:14 ID:0iTPypjH
長いな
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 20:49:23 ID:bKhRWTgD
とても楽しく拝見させて頂きました
第11話、期待してます
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 12:42:34 ID:fXOnJ9YP
40311 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:24:14 ID:JagJVxRI
ども、>>11です。
第11話を投下しますよ。

>>400-402
ありがとうございます。
404薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:27:50 ID:JagJVxRI
【第11話 薔薇水晶】

[10/18 07:02]
[ドールハウス・Enju Doll。]

エンジュ「おはよう、薔薇水晶。」


 …… ……。


エンジュ「なんだ、まだ寝ているのか……。」

パチッ
薔薇「……おはよう」

エンジュ「ッ!?」

薔薇「驚いた……?」

エンジュ「ふぅー……驚いた。」


 わたしは、ローゼンメイデン・第7ドールの薔薇水晶。
今日は土曜日。お店は、おひるまで……。
405薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:34:53 ID:JagJVxRI
[07:24]
 おとうさま、ワクワクしてる。
今日、ジュンが、この店にくるの……。
真紅たちの、契約者。


エンジュ「来ると言っても、昼過ぎだが?」

薔薇「そう……」

エンジュ「まぁ、土曜だからな。さて、雪華綺晶を起こしに」

雪「おはようございます。」

エンジュ「!? いつのまに……私の背後に。」

雪「つい今しがたです。」


 彼女は、わたしのお姉さま、雪華綺晶。
ローゼンメイデンの、第7ドール。
そう、わたしも第7ドール。

 雪華綺晶、足音を消すのが、上手。
そろそろ朝ごはんの……時間。
406薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:41:38 ID:JagJVxRI
[07:42]
[台所。]
 今朝は……ベーコンと、レタス、めだま焼き、それと……
食パン、コーンポタージュ。スタンダードな、朝食。

エンジュ「よし、できたぞ。さぁ、いただくとしよう。」

雪「いだだきます。」

薔薇「……いただきまーす……」


 ふぅー……ちょっとだけ、ねむい。
目玉焼きには、塩こしょう……。

[08:17]
エンジュ「店を開けてこよう。」

 最近、お客さんが来ない日は、お店が静か……。
従業員もいない。白崎ってひと……逃げた。

 それで、ジュンが、来春からここにアルバイトに来るの……。
……のりとふたり暮らししているうえに、
勉強の方も大事にしないといけないから、
一週間に一度くらい、ここに来るそう……。

 彼はマエストロ……何も無いところから、
何かを生み出す、そんな力を持っている。
407薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:52:00 ID:JagJVxRI
[08:31]
エンジュ「看板、出して、と……。」ドスッ


 ……この眼帯、いまじゃ、あんまり必要ないけれど、
おとうさまの作ってくださった、お気に入りだから……


[08:48]
カランカラーン
「おはよーございまーす!!」

エンジュ「いらっしゃいませ。ああ、金糸雀の契約者の。」

みつ「はい!」

カナ「おはよーかしらー!」

みつ「あら? 確かあの子は……」

薔薇「……あっ、みっちゃん。おはよう。」

みつ「おはよう! ばらしーちゃん♪」

エンジュ(ふむ……ばらしー……か。 かわいらしい……。)


 「ばらしー」……みっちゃんからつけてもらったあだ名……
「ばらりん」っていうのもあった……
408薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 12:58:50 ID:JagJVxRI
[08:54]
みつ「ばらしーちゃ〜ん!! 5月のとこないだのコスプレの写真、焼き増しできたよー!!」

エンジュ「どれどれ……ふむ。(メイドと、十二単か……。どちらも愛らしく美しい。)」

薔薇「……なつかしい」

トトト
雪「あら? どうされて……あ、みっちゃん様!」

みつ「きゃー!! きらきーちゃーん!! おはよ〜う!!」

雪「おはようございます……。いまさらですけど、このあいだはお世話になりまして。」

みつ「いいえ〜。あ、きらきーちゃんのコスプレ写真も、焼き増ししたよー!」

雪「ありがとうございます。……今日はどのようなご用件で?」

みつ「あ、あのー、黄色い糸を買いに来たんですぅ。」
409薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:12:33 ID:JagJVxRI
[08:59]
エンジュ(雪華綺晶は……ウェディングドレスに、着物、か。
和洋どちらも、よく似合っている。)

薔薇「えーと……えーと」トテトテ

カナ(お店番かー……おりこうさんかしら!)マジマジ

薔薇「……はい、どうぞ……84円です」

みつ「あら、ありがと♪ はいっ」

薔薇「ありがとう……ございました」
ペコ

エンジュ「ありがとうございましたー。」

みつ「またねー、きらきーちゃん、ばらしーちゃん♪」

カナ「ごきげんよーかしらー!!」
カランカラーン

 とっても仲良し……金糸雀と、みっちゃん。
コスプレの写真、お店に、飾った。



みつ「……!」
ピキーン

カナ「ど、どうしたのかしら!?」

みつ「まさちゅーせっちゅーし忘れちゃったー!!」

カナ「い、い、行かなくていいかしらー!!」
ムギギ
410薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:21:09 ID:JagJVxRI
[10:54]
 みっちゃんと金糸雀を最後に、だれもこない……
……暇……です……。

薔薇「ねぇ、お姉さま」

雪「はい?」

薔薇「遊ぼう……?」

雪「いいですわね。裏庭に行きましょうか。」

エンジュ「私も混ざってよいか?」

薔薇「……もちろん」

エンジュ「よし、私とキャッチボールといこう。」


 おとうさま、完全に全部もっていっちゃって……
でも、こういうの、いいかも。

 雰囲気を出す為に……先週買ってもらった、青い野球帽を使いましょうか……
お姉さまは、白靴下印の、真っ白な野球帽……
お父様は、なぜか赤いペイズリーのバンダナ。
グローブは、いつものもので……。
さあ、裏庭に行きましょう。
411薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:29:52 ID:JagJVxRI
[11:15]
[裏庭。]
パシッ
エンジュ「おお、雪華綺晶、いい球を投げるじゃないか。」

雪「よく、蒼星石お姉さまや、金糸雀お姉さまとキャッチボールをしておりますから♪」

エンジュ「なるほど……。よーし薔薇水晶、ストレートだ。」

ビュン
パシッ
薔薇「うん。よーし……フォーク」

ヒュンッ……ストンッ
エンジュ「おお、フォークか。」

薔薇「このまえ……金糸雀に教えてもらったもの。
みっちゃんとテレビを観ていたときに、ノモという投手の投法が目に入り、
興味を抱いた……そうです。」

雪「金糸雀お姉さまの観察眼は、とても鋭いのです。」ポコポコ


 お姉さま……グローブはめたまま拍手したら、ポコポコって……
ああっ、愉快……♪

 わたしは、かつての戦いで、目が慣れているから……
速球も、捕ることが出来る……。
412薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:35:18 ID:JagJVxRI
[11:57]
エンジュ「次は変化球……」

ぐるるる

シーン

エンジュ「……ははは、そろそろ昼飯時か。」

薔薇「うん、わたしも……おなかすいた。」

雪「私もです。」

エンジュ「よし、買い物に行くとしよう。」

薔薇「……♪」


[12:17]
[スーパー・ゴトーナノカドー]
店員1・桃井「……えーと」

店員2・種市「カート、重くないのかナ」

桃井「そんな客前にもいなかったっすか」

種市「あれじゃないかナ? あ、なんだ、お子様カートに変えるみたいだ」

桃井「あれなら軽いっすね」


銀「何よ、軽い方のカートがあるじゃない……」

薔薇「あ、水銀燈」

銀「あらぁ? 薔薇水晶じゃなぁい。」
413薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:49:09 ID:JagJVxRI
銀「ひとり?」

薔薇「おとうさまと……雪華綺晶もいる。
   水銀燈は……どうしたの……?」

銀「めぐが、『病院食以外も食べたい』っていうからぁ……」

薔薇「おつかい……?」

銀「まぁ、そんなところねぇ。とりあえず、ヨーグルト……
乳酸菌はとらなきゃねぇ。」

薔薇「……ふふ、なんだか、たのしそう」

銀「そぉ? ……けっこう大変なのよぉ。
あの子の体調も考えなきゃだし……。」

薔薇「そろそろ、退院じゃなかった……?」

銀「明日よ、明日。だから、病院食以外も食べたいって。」

薔薇「そう。あの、おめでとうって……言っといて」

銀「わかったわぁ。ありがと♪
あ、そろそろ行かないと……ばいばぁい!」

薔薇「ばいばい……♪」

エンジュ「よし、買い物終了。帰るぞー。」

雪「お昼は……お好み焼きですわ。」

薔薇「……おなかすいた」


銀「ちょっとぉ! レジ袋は要らないって言ってるでしょぉ!?」


薔薇「……くすくす」

エンジュ「ほう、あの子もいたのか……」


 水銀燈、前より明るく、美しくなった……
そんな気がする……。
414薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 13:55:23 ID:JagJVxRI
[12:38]
[ドールハウス・Enju Doll。]
エンジュ「さて……ホットプレートは……」

エンジュ「あった。 よし、焼こうか。」

雪「焼きそばも買ってありますから、モダン焼もいけますわね。」

薔薇「わぁ……♪」


[13:11]
 お好み焼きに焼そば、モダン焼……おいしかった。
けど……よく見たら、別の材料も買ってある……
これは、クッキー……?

エンジュ「……これはおやつだ。ジュン君たちが来たら、皆で食べようと思ってな。」

薔薇「……なっとく。」
415薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:07:55 ID:JagJVxRI
[13:54]
カランカラーン
ジュン「こんにちはー。」

雛「こーんにちはーなのー!!」

真紅「ごきげんよう。」

翠「こんにちはですぅ。もうかってますか?」

エンジュ「……微妙だ。人形で遊ぶ子も、珍しくなってきてるからな……
今朝、草笛さんと金糸雀が来たぞ。」

翠「チビカナたちが来てたですか!」

ジュン「えーと、今日はこれを仕上げればいいんですか」

エンジュ「ああ。よろしくたのむ。」

 ジュンは、この店で売ってる、ドール用の服を仕立ててる。
……おとうさまの作ったものよりも、売れている。
一時は、14万5千円の値段がついたんだって……。
416薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:17:02 ID:JagJVxRI
[14:00]
ジュン「なぁお前ら、暇だろ? 外で遊んできなよ。」

エンジュ「そうだな。裏庭が空いているぞ。」

薔薇「はい……裏庭に行きましょう。」

雛「わーい! みんなで遊ぶのー!!」

翠「たまには運動もいいですぅ♪」

真紅「いいわよ。何をするの?」

雪「そうですね……」

雛「おにごっこするのー!!」

薔薇「おにごっこ。」

真紅「負けないわ。」

薔薇「せっかくだから……みんなを呼んでくる」

翠「おまえ、飛べたんですよね。じゃあ、頼んだですぅ!」

薔薇「まかせて……!」
ヒューン

417薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:23:59 ID:JagJVxRI
[14:14]
薔薇「おまたせー……」

蒼「やぁ、みんなー! ちょうど暇してたんだ!」

カナ「雪華綺晶、また会ったかしらー!」

銀「あらぁ。みんなおそろいだったのねぇ。」

雛「うわーい! みんなそろったのー!!」

真紅「腕が鳴るわね……」

翠「何人来ようが、負けんですぅ!」

雪「それでは、最初の鬼はだれにしましょうか。」

薔薇「……これで決めましょう……8面ダイス。
第何ドールか、ということで……。」

コロッ

蒼「……"8"、だね。」

雛「薔薇水晶ー、"8"は誰が鬼になるの?」

薔薇「それはわたし……わたしが、雪華綺晶よりも後に作られた。
さあ、みんな逃げて……わたしが10数えたら……戦闘開始。」

雛「逃げるのぉー!」

カナ「策士なら最後まで逃げ切るかしら!」


 さあ、10秒。
418薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:29:18 ID:JagJVxRI
[14:19]
薔薇「蒼星石……とらえた」

蒼「ッ! 鬼ごっこは……追いつかれなければいい!」

薔薇「おいつくと、いい」ヒューン

蒼「わぁっ! ……速い!」

薔薇「タァッチ……!」

蒼「むう……僕が鬼か。」


[14:20]
蒼「よーし、見つけたよ、水銀燈!」

銀「つかまえてごらんなさぁい♪」

蒼「その翼で飛べるんだよね……けど、僕も、飛べるんだ!!」
ビュンッ

銀「(す……すごい気迫)もう追いつかれる……!!」

蒼「よくやったよ、水銀燈。でも、君の鬼だよ。タッチ!」

銀「……ふふふ、上等よぉ。次の獲物は……しんくぅぅぅ!!」
ゴオッ
419薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:35:00 ID:JagJVxRI
真紅「すごい気迫だわ……!」

銀「羽を矢にして……着陸地点をキメるわよぉ!」
シュタタタタタッ

真紅「ッ!! やはり、そうくるのね!
   けど、着陸点がわかっていれば……!」

銀「でもぉ……それは、ダミーよ♪」

真紅「!」

銀「タァーッチ!!」

真紅「や、やられた……わずかな差を制されてしまったのだわ。
……はっ、そこに隠れているのは……」

雪「あらあら、見つかってしまいましたわ。ですが、私の速さならば!」
ヒュンッ

真紅「くっ……!」
ヒュウッ

雪「真紅お姉さま……速いですわね。
  ……負けていられません」
ヒュオオオ

真紅「は、速いわね!」

420薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:40:32 ID:JagJVxRI
[14:25]
翠「うーむ、なかなかやるですねぇ。」

雛「真紅も雪華綺晶も、とってもすごいの。」

カナ「白熱したバトルかしらぁ! しかぁーし、頭脳派はココで勝つかしら!」

真紅「雪華綺晶……ここまで速いとは……。」

カナ「ここでカナのおでましかしらー!!」
バッ

キキーッ
真紅「……なら、金糸雀、あなたにするわ! タッチ!!」

カナ「ひええ!! なんという不意打ちかしらー!!」

翠「ププー、自爆ですか……ってえ! まーずーいーでーすぅ!
  チビチビ、逃げるですぅ!」ダダダ

雛「うゆーい! 逃げるのよー!!」タタタタタ


 みんな……とても楽しそう。
……ローゼンも……こうしたかったのでしょうか。
あの人は、天涯孤独だったと聞く……
だから、7人の娘に囲まれて……笑いの絶えない、そんな家庭を作ろうと……
……考えすぎ、かな……?


雛「たーっち、なのー! えいっ!」

薔薇「あっ……やられた。」
421薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:55:51 ID:JagJVxRI
[15:14]
[アトリエ。]
ジュン「うーん……よし、できました。」

エンジュ「うむ。おお、これは……すばらしい。
皇女のローブか……そんなものまで作り出してしまうとは。」

ジュン「ありがとうございます。それにしても……」

雪「とらえました……!」
翠「ヒッ!? ままま、待つです! まだ心の準備が」

雪「準備ができ次第、タッチさせていただきます♪」
翠「ぐぬぬ……」


ジュン「あんなに楽しそうにはしゃいで。」

エンジュ「うむ。私としても、とてもうれしい限りだ。
……以前では、こんなことは考えられなかった。」

ジュン「真紅たちが、ラプラスに、過去の自分たちに勝ったおかげです。」

エンジュ「そうだな……本当に、あの子たちには感謝している。」

ジュン「僕も同じです。真紅たちに、人生を劇的に変えてもらいましたから。
あの時……"まきません"を選んでいたら、どうなっていたんだろう……
見当が付かないや……」
422薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 14:56:33 ID:JagJVxRI
雪「……♪」

翠「や、やりましたわねぇ! こーなったら……真紅ぅ! 待ちやがれですぅ!」

真紅「追い付いてみせて頂戴……♪」


ジュン「……ふっ。家の中でも、あんな調子なんですよ。」

エンジュ「私もだ。さぞかし、賑やかだろう。」

エンジュ「……さて、ひと段落付いたところで、おやつにしないか? クッキーがあるが。」

ジュン「いいんですか?」

エンジュ「ああ。あの子達の分もある。みんなで食べなよ。」

ジュン「ありがとうございます。 おーい、おまえらー! おやつだぞー!!」
423薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 15:01:47 ID:JagJVxRI
[16:42]
[テラス。]
 お姉さまたちと、クッキーを嗜みながら、お茶会。……といっても……

 水銀燈はレモンティー、雛苺はオレンジジュース、金糸雀は麦茶。
翠星石はセイロン、蒼星石はほうじ茶、真紅はダージリン。
ジュンとおとうさまはコーヒー。
雪華綺晶お姉さまとわたしは……ミルクティー。

 それぞれの好きな飲み物で、楽しく、お話をした。
とってもいい時間……過ごせた。
424薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 15:06:32 ID:JagJVxRI
[17:09]
ジュン「今日はありがとうございました。」

エンジュ「うむ。いいものが仕上がって、よかった。
    またよろしくたのむ。」

ジュン「はい。それでは、僕らはこれで。
    真紅ー、雛苺ー、翠星石ー。行くぞー。」

真紅「ええ。それでは、ごきげんよう。」

雛「ばいばいなのー!」 翠「また来るですぅ。」

薔薇「ばいばい……。」

雪「またいらしてくださいね。」
カランカラーン


[17:15]
蒼「そろそろ、マスターがゲートボール大会から帰ってくる時間だから、僕はこれで。」

銀「めぐの退院準備、手伝わなきゃ……それじゃ、ばいばぁい♪」

カナ「みっちゃんも帰ってくるかしらー。じゃあ、みなみなさま、ごきげんようかしら!」

薔薇「ばいばい……!」
雪「またあそびましょうね。」
カランカラーン

 みんな、それぞれの家や、契約者のもとに、帰っていった。
しあわせな顔をして……。
425薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 15:14:23 ID:JagJVxRI
[17:20]
薔薇「今日は……楽しかった、です」

雪「ええ、とっても。」
薔薇「……みんな……たくさん笑ってた。」

雪「……ふふ、少女というものは、
  笑顔でいることが一番素敵なのです、薔薇水晶。」

薔薇「……。」


 少しだけ、お姉さまの横顔が、いつもよりまぶしく見えた……


[19:13]
[台所。]
エンジュ「さて、今晩はオムレツだ。一味違う風に仕上てみたぞ。」

雪「ハート型ですね。
  まあ、中からミートボールが……!」

薔薇「中からミートボールが……!」

雪「素敵ですわ♪」

エンジュ「これも翠星石から習ったのだ。……私とて、学ぶ事はたくさんある。
     ……無論、お前たちからもな。」

薔薇「……はい♪」

雪「……ええ♪」

エンジュ「さあ、温かいうちに、いただくとしよう!」

薔薇「……では、いただきます……♪」
426薔薇乙女達の好日 第11話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 15:34:14 ID:JagJVxRI
[20:47]
薔薇「……もう、寝るの?」

雪「そうですね。眠くなってきましたし……」

薔薇「うん……わたしも、眠くなってきた。」

雪「……薔薇水晶?」

薔薇「……なぁに?」

雪「……これからも、私とたくさん遊んでくださいね。」

薔薇「……もちろん。わたしとも、たくさん遊んで……♪」

雪「ええ♪ ……それでは、おやすみなさい。」

薔薇「うん、……おやすみなさい。」


 今……わたし、とっても幸せ。
こうして……、笑いあえる事が……
一度は薔薇屋敷で欠片となっても、今ここに息づいていけている事……
この時代をすごせていること……それが、とても幸せ……。

 みんな、わたしの7人のお姉さまの、ジュンたちの、
そしておとうさまのおかげ……
本当に、ありがとう……。
たくさん、この恩をお返しするから……
お姉さま達が好日を、過ごせるように……ふふ。

 ……それでは、おやすみなさい……
                        【第11話 おわり】
42711 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/24(木) 15:41:48 ID:JagJVxRI
 ……以上、第11話、ばらしー編でした。読んでくれた方、ありがとうございます。
これでドールズの日常は
8人分すべてを書きましたが、
このシリーズはあと2話あります。
次回投稿時に両方投下します。
ではまた。
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 23:46:05 ID:yFMK1lj/
メリークリスマス乙
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 14:55:25 ID:5LmEFneA
目玉焼きは塩胡椒ですよね
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 23:33:48 ID:w/6pYMnO
超乙
43111 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 22:55:23 ID:cohUxO8Q
ども、>>11です。
第12話を投下しますよ。
432薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 22:56:24 ID:cohUxO8Q
【第12話 絆】
[11/01 15:23]
[ドールハウス・Enju Doll。 リビング。]
蒼「こんにちはー。やあ、薔薇水晶。」

薔薇「あっ……蒼星石。」


 ……ごきげんよう……わたしは、ローゼンメイデン、第7ドール……薔薇水晶。
今日は……わたしの4番目のお姉さま、蒼星石が来ている……。


雪「いらっしゃいませ、蒼星石お姉さま♪」
 
薔薇「……どうしたの? 突然……」

蒼「日ごろのお礼ということで、これを持ってきたんだ。」

薔薇「……これは……芋。」

蒼「うん。翠星石が6月の終わりに仕入れてきたものが、
  おいしそうに育ったからね。みんなにも食べてほしくて。」

薔薇「ありがとう。」

雪「ありがとうございます。」
433薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 22:58:11 ID:cohUxO8Q
ギイッ
エンジュ「……おお、蒼星石か。いらっしゃい。」

蒼「こんにちは、お邪魔しています。あっ、エンジュさんもよかったら
  これを……」

エンジュ「ふむ、薩摩芋、か。……天候不順だったが、よくここまで育っ……
     ……おっと。君たちの如雨露を持ってすれば。」

蒼「いいえ、翠星石は庭師の如雨露を使わずにここまで育て上げましたよ。」

エンジュ「ほう……すまない、私が軽率だった。」

蒼「いえいえ! 僕も、まさかここまで育つとは思っていなくて……!」


 翠星石は……烈しい。昔は、とても気弱だったって聞くけれど……
ずっと、誰かを思いやる気持ちの強さは変わらないそう。
そのときの繊細な心が、今もいい方向に息づいてる……ということ……。
だから、芋があんなに大きく育ったの……かな?


薔薇「……そうだ。ねえ、お父様」

エンジュ「何だい。」

薔薇「今度、ここで……お茶会、しない……?
   先週も……したけれど。」

エンジュ「いいとも。裏庭なら、広く使えるだろう。」

蒼「そうですね、焼き芋や粉ふき芋なんていかがですか?
  大学芋でもいいですね。」

エンジュ「風流だな。……いよいよ、秋も深まってくるな。」

雪「楽しみにしています……!」
434薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 22:59:08 ID:cohUxO8Q
[17:22]
ラジオ[くんくん探偵カレンダー! かっこいいくんくんのイラストが
   表紙も含めてなんと13枚! 毎月、いろんなくんくんに逢えるよ!]

薔薇「……真紅が……よろこびそう」

蒼「そうだね。翠星石や雛苺、水銀燈なんて大喜びしそうだよ。」

薔薇「……水銀燈?」

蒼「知らなかったかい? 水銀燈もくんくん探偵が好きなんだ。」

薔薇「そう……それは意外。」


 わたしも、くんくん探偵は……好き。雪華綺晶といっしょに、
毎週観ている……知識は、真紅には及ばないけれど、ね……。
435薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:00:54 ID:cohUxO8Q
ラジオ[アンニュイな夕方、この提供は……]

ギイッ
エンジュ「おお、珍しい。ラジオを聴いてるのか……」

雪「たまには、ラジオもいいものですわね。」

薔薇「うん。 なかなか、面白い」


ラジオ[えー、ラジオネーム・梅ちゃづけさん、千葉県31歳の男性からのお便り……
    『私は教師をしているのですが、そろそろ合唱コンクールの時期にさしかかり
    クラスの団結力に大いに感嘆しています、絆の強さをふつふつと……』]


エンジュ「ほう、絆か……。」

蒼「みんなで歌えば、団結力も強まりますよね。」
436薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:04:08 ID:cohUxO8Q
ラジオ[続いてのお便り、ラジオネーム・ビローンさん、
    こちらも千葉県、20歳女性からのお便り……。]

ラジオ[えー『昨日有名人に逢っちゃいました』、ほほう、いったい誰なんでしょうねぇ。]


エンジュ「ふむ……」



ラジオ[『有名なジャーナリストの、オディール・フォッセーさんです』、ははぁー、これはすごいですね]


蒼「!」
エンジュ「!」
雪「!!」

 ……オディール……? フォッセー……!?
もしかして……


ラジオ[そうそう、近々、彼女の講演会が東京渋谷で行われるとのことですので、
   みなさんどしどしご来場ください、っと、宣伝になってしまいましたね]
437薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:04:58 ID:cohUxO8Q
蒼「……まさかと思うんだけど……
  一人しか、いないよね……?」

薔薇「……うん」

エンジュ「……雪華綺晶の契約者、オディール・フォッセーさんで間違いない。
     まさか、この日本に来ていたとは……!
     ……雪華綺晶。近く……出会えるかもしれないな!」

雪「はい……! やっと、再会できるのですね……!!」


 よかった……ずっと逢いたがっていた……
雪華綺晶お姉さまがずっと、待ち焦がれていた人に逢える。
わたしは……とっても嬉しい……です。
438薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:06:18 ID:cohUxO8Q
[18:22]
雪「もう6時半ですが、大丈夫ですか?」

蒼「ああ、僕なら大丈夫だよ。マスターたちはカラオケ大会で出かけているから。
  たぶん、8時くらいまで帰ってこないと思う。」

雪「そうですか……。でしたら、お店の中を、
  ゆっくり見ていってくださって結構です。」

蒼「ああ、ありがとう。」

エンジュ「営業時間は終わっている、自由に見ていってくれ。」

蒼「はい、そうさせてもらいます。」

雪「私は、ミルクティーを淹れてまいります……蒼星石お姉さまも、
  そちらでよろしいですか?」

蒼「うん! いただくよ。」

エンジュ「私も頂くとしよう。さ、行こうか」

雪「はい♪」
439薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:11:36 ID:cohUxO8Q
[18:25]
薔薇「……この絵は、雛苺が描いたもの……」

蒼「へぇー。ふむふむ……色使いといい、可愛らしいよね。
  こっちの、十二単を着てる写真は……あはは、薔薇水晶かぁ。」

薔薇「……重かった。右に貼ってある写真……雪華綺晶。」

蒼「ウエディングドレスかぁ。綺麗だね!
  ……うん! とってもよく似合ってるよ。」

薔薇「よかった。 それを聞いたら、雪華綺晶も、喜んでくれる……」

蒼「あはは。……あれ? 入り口に、誰かいるなぁ……。」


 あれ……本当。ドアの前に、誰かがいる……
こんな時間に、誰……?


薔薇「おとうさま……」

エンジュ「どうした?」

薔薇「誰か……来てる」

エンジュ「分かった。すぐに行く。」
440薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:12:44 ID:cohUxO8Q
カランカラーン
エンジュ「いらっしゃいませ。」

オディール「こんにちは。オディール・フォッセーです。」

蒼「……!!」

エンジュ「(オディール……?)今日は土曜日なので営業時間は終了しておりますが、
     ご用件ならなんなりと……。」

オディール「こちらに……雪華綺晶はおられますか?」

エンジュ「……はい! 少々お待ち下さい。」


 えっ……!?
本当に……来たというの……!?
441薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:13:46 ID:cohUxO8Q
[18:34]
[リビング。]
エンジュ「き、雪華綺晶……」

蒼「た、たいへんだよ」

雪「どうしたのですか……?」

エンジュ「お、オディール・フォッセーさんが……お見えになった。」

雪「ほ、本当に……!?」



 オディール・フォッセー……
お姉さまの、今の契約者。
ずっと逢いたがっていた、その人が来た……!!
あまりにも、突然に。
442薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:19:00 ID:cohUxO8Q
[店内。]
雪「オディール様……ですか!?」

オディール「ええ! 雪華綺晶……逢いたかった……!」
ヒシッ

雪「オディール様! 私も……逢いたかったです……!!」
ヒシッ

オディール「1年4ヶ月ぶりね……!!」

雪「……今まで……すみませんでした……」

オディール「大丈夫……大丈夫よ……!! あなた、身体が……!」

雪「はい……! エンジュ様に、7ヶ月前に作っていただきました。」

オディール「もう、なんとお礼を言えばよいか……!」

エンジュ「い、いいえ……。
     ……私は師匠、ローゼン様ではありませんが、弟子として、
     薔薇水晶の父としてできることは、薔薇水晶を、
     薔薇水晶の姉たちを、助けることですから。」


 そう……何から話せばいいか……
全部、わたしが、おとうさまから聞いた話だけど……

 去年の7月……真紅たちが、前のアリスゲームを
本格的に迎える少し前のこと……
白崎、いや、ラプラスの手ほどきを受けて……おとうさまはnのフィールドに入った。
そのとき、雪華……お姉さまに出会ったんだって……
443薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:22:52 ID:cohUxO8Q
[1年4ヶ月前。]
エンジュ『これが……師匠のローゼンメイデン・第7ドール』

ラプラス『はい。アストラルで在らせられますが……
     それゆえ、誰よりも若くして、誰よりも長い孤独を……』

エンジュ『そうか……』

ラプラス『このまま、この子を外には出せません……
     エーテル化するにも、弱り切ってしまっている。そこで、例の計画です』

エンジュ『分かっている。後はローザミスティカの精製のみだ』

ラプラス『その必要はありません。もう……巻いてありますよ』


 こうして……わたしが生まれた。
お姉様の代わりに、第7ドールを務めるために……。
おとうさまが、師匠の願いを果たす為に。
……すべてが、まやかしだったけれど……。

 そこでおとうさまが見たものは……今までお姉さまと契約した人が、
水晶の中に閉じ込められていたり……
ドールズを襲った時の様子が映された額縁……
第7ドールを勉強するために、そういうものを見たそう……。

 一番新しい水晶の中には、オディールという人がいた。
その人が……お姉さまの、今の契約者。
444薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/27(日) 23:26:48 ID:cohUxO8Q
雪「……ううっ……オディール様……」

オディール「……私が目を覚ました時……病院の中だった。
      有栖川大学病院、1001号室で……私は、
      9ヶ月も眠っていたわ……」

蒼「きゅ……9ヶ月……。目覚めたのは、いつごろだったんですか?」

オディール「そうね、2月28日。
      そう、2月28日、18時22分。よく覚えているわ。」

薔薇「……2月28日」

蒼「あの、最後の戦いの日だ。そうか、あの時目覚めたのは、僕たちドールズだけじゃなかった……」

エンジュ「ああ。私も、その日、そのあたりの時間、夢から覚めるような感覚に襲われたな。
     雪華綺晶も、あの時私の元へ戻ってきたから、知っているだろう?」

雪「はい……!」

オディール「……私は、目覚めるなり……ベッドから飛び起き、
      その後の手当ても受ける事無く、無我夢中で……
      病院じゅう、貴女を捜した……でも、見つからなかった。」

薔薇「……」
445薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:04:27 ID:ATnzMfeZ
オディール「そして、3月に入って、退院してから、すぐに仕事が立て込んで、
      ろくに捜すこともままならなくなって……
      ……本当に、ごめんなさい……雪華綺晶……!!」

雪「わ、私の方こそ……何も伝えずに……nのフィールドに」

オディール「ええ……」

雪「……私は……今までの償いを、今までを戒めとして……
  ずっとnのフィールドで……私にできることを考えていました。
  エンジュ様が、先月、私の鞄を作ってくださった後も……」

オディール「ええ……ええ……私も、ずっと気がかりで……
      それでも、仕事の方を優先してしまった。
      本当に……私は」

雪「いいのです……オディール様……!」
ギュウッ

オディール「うう……ああ、雪華、綺……」


 1年4ヶ月という……長い空白を埋めるように、
ふたりは……あつく抱擁を交わしてた……
涙を、流しながら。
446薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:06:25 ID:ATnzMfeZ
雪「あの日……私も、悪い夢から、覚めたのです。」

オディール「ええ……実は、その日に何があったのかを、
      柴崎、元治さんから聞いていたわ……!」

蒼「そう、だったんですか……マスターが」

オディール「貴女も、その日に目覚めた、と。
      ジュンという男の子のおかげで……
      ええと、蒼星石、よね? 第4ドールの……」

蒼「はい! ……あれ……? どうしたのかな、僕まで……なんだか……」

薔薇「…… ……わたしも」

エンジュ「…… ……私もだ。」


 涙が止まらない。
447薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:08:00 ID:ATnzMfeZ
[18:34]
オディール「さあ……私たちのお家へ、帰りましょうか。」

雪「はい……! では……」
クルリ

薔薇「……!」

雪「エンジュ、様……薔薇、水晶……1年4ヶ月もの間……
  ほん、とうに……お世話に……なりました」

エンジュ「……な、泣くんじゃない。帰るべきところに、帰られるんだろう?
     胸を張って、お家へ帰るんだ……!」

雪「エンジュ様……こんな私を、今まで……共に住まわせていただいて、
  ありがとう……ござい、ました」

エンジュ「な、わ……私の方が、ありがとうを……言いたい。」

雪「……薔薇……水晶」

薔薇「……うん」

雪「……テレビを一緒に観てくださって……寂しい夜は、一緒に眠ってくださって……
  一緒に、料理をしてくださって、……たくさん、笑いあって、くださって」

薔薇「……」

雪「ありがとう、ございました」
448薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:10:45 ID:ATnzMfeZ
薔薇「……わたしも……たくさん、お礼を言いたい。
   鏡を使えば……どんなところでも、逢いに行けるから……!
   明日も、遊ぼう……?」

雪「もちろんです……!」

オディール「……大丈夫。そこの、マンションに引っ越したから……
      『薔薇野マンション』という名前よ。210号室。」

蒼「あっ……たしか、みつさんと、金糸雀が住んでるのが220号室だから……
  角部屋の、お向いさんだね。」

オディール「金糸雀……? 金糸雀、金糸雀……。」

蒼「第2ドールですよ。」

オディール「思い出したわ! ……そう、この子のお姉さんが。」

エンジュ「そうか、そこのマンションに……よかったな、薔薇水晶、雪華綺晶。
     歩いても、互いに遊びに行けるじゃないか。」

雪「ええ……!」

オディール「私の家でよければ、他のお姉さんも歓迎するわ!」

薔薇「……ふふ♪」

蒼「あはは……♪」


 よかった……遠く離れた国に、オディールが住んでいると
ずっと思っていたから……!
オディールは……日本に、ジャーナリストとしての活動拠点を置くと言っていた……。

 そして……お姉さまが、お家に帰る時間が来た。
449薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:16:35 ID:ATnzMfeZ
[18:45]
雪「それでは……お世話に、なりました……!」

エンジュ「いつでも……遊びに来るがいい。こんどの月曜が祝日ということで、
     その日にお茶会を開くから、楽しみにしていてくれ。
     オディールさんも、いかがでしょうか。」

オディール「はい、喜んで。他のお姉さんのことも、薔薇水晶のことも、
      契約者の方のことも、よく知りたいと思っていたところでしたので」

蒼「楽しみにしています!」

薔薇「……さよならは、言わない。また……
   あそ、びに……きて……ね……!」

雪「もちろん……です!」

薔薇「……またね……!」

蒼「うん、雪華綺晶、僕も、そっちに遊びに行くから。」

雪「はい……! 今まで通り、私もおじゃまします……!
  オディール様も、一緒に……!」

オディール「ええ! では……失礼いたします。」

エンジュ「ありがとうございました!」

薔薇「……またね……雪華綺晶!」

カランカラーン バタム


 ……眼帯が……涙で、取れちゃった。
でも……もう、涙を隠さなくていいの。
お姉さまの、帰る場所が、大切な人が見つかった。


 おめでとう……お姉さま!
ありがとう……お姉さま!
450薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:19:10 ID:ATnzMfeZ
[19:03]
エンジュ「薔薇水晶……疲れて眠ってしまったな……」

蒼「それでは……僕もそろそろ……。」

エンジュ「ああ。11月3日に、お茶会を開くから、その時はよろしくな。」

蒼「はい! ……それにしても、いいニュースを家に持って帰られます。」

エンジュ「そうだな。私も、あの子の契約者が見つかったことが、とても嬉しい。
     突然のことだったとはいえ……長い間ずっと、独りだったからな……あの子は。」

蒼「そうですね……僕も、分かるんです。ずっと、独りでも生きて行ける、
  僕は僕なんだと、間違った方向に思っていましたから……
  そのことで、特に翠星石や契約者には心配をかけてしまって」

エンジュ「私も、人間の家族はいないから、薔薇水晶を作ろうと決めるまでは独りだった。
     薔薇水晶がいなくなってからも、独りだった。だが、今は違う。」

蒼「独りなんかじゃない。僕は以前、雛苺からそのことを学びました。」

エンジュ「最初はみんな、独りきりだが、徐々につながりを増やしていく。
     それは家族だったり、友だったり、仲間だったり……。
     絆と言うのかな……ゴホン、私としたことが、妙なことを」

蒼「大丈夫ですよ。そのことは、自然なことなんですから。
  ……おっと、もう7時15分ですね。では、お邪魔しました。」

エンジュ「ああ。気をつけて帰るんだぞ。」

蒼「はーい!」


[19:15]
 ……蒼星石が帰った後、夕ご飯ということで、お父様に起こしてもらった。
久しぶりの、二人きりの夕ご飯……かつ丼だった。
いつもより……塩気がきいてた気がして……。

 この日は、ご飯が終って、髪を梳いてもらって、歯を磨いて、
いつもより1時間も早く、眠りに就いた……。
451薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:30:05 ID:ATnzMfeZ
[11/03 12:45]
[Enju Doll 裏庭。]

 あれから2日後……お茶会の日がやってきた。
わたしたち……8人のドールズと、おとうさまと、オディール。
みんなで、親交を深めた。


雪「みんな私の、お姉さまですよ。」

オディール「みんな、素敵な子ね。この子と仲良くしてくれて、本当にありがとう。」

銀「ええ。もう、あんな過ちは繰り返さないから……
  だから今、こうして、姉として接することができるわ。
  しかし……めぐが言ってた”眠り姫”が、貴女だったとはねぇ……」

カナ「キャッチボール、とっても上手かしら!
   ……まさか、向かいに引っ越してくるとは……吃驚かしら。」

翠「笑うとかわいいんですよ。結構、翠星石も世話になってるですぅ。」

真紅「ここには、長くいられるのかしら?」

オディール「ええ! ……永住するつもりです。」

真紅「この国は居心地がよろしくてよ。 私も、今までに訪れた国の中でも
   ここが一番快いと思うわ。」

雛「それにしても、コリンヌにそっくりなの。」

オディール「そうでしたね。そういえば、おばあさまは雛苺の契約者でした。
      ……この写真に比べ、どことなく大きくなったような……」

雛「うゆ? ヒナ、体は大きくなってないのよ?
  トモエが言ってた、かわる、ってことなの?」

オディール「ええ、心が大きくなったのよ。
      おばあさま、雛苺は、こんなに立派になりましたよ。」


 そう……この時、オディールの祖母が雛苺の契約者だったということを、初めて知った。
なにかの、めぐりあわせ……かな?
452薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:33:12 ID:ATnzMfeZ
雪「そして、改めて……こちらが妹の薔薇水晶です。」

オディール「いつも、この子と仲良くしてくれて、ありがとう。
      あなたといるときの雪華綺晶、とっても楽しそうで……」

薔薇「……ふふ♪」


[12:59]
蒼「さあ! みんな、お芋が焼けたよー!!」

翠「ちび苗からガンガン育てたですぅ、ご賞味あれですぅ♪」

エンジュ「紅茶も入りましたよ。……うむ、いい秋晴れだ。」


蒼「ねえ、薔薇水晶。」

薔薇「何?」

蒼「お茶会は、みんなの笑顔が見られるから、僕は好きなんだ。」

薔薇「うん、わたしも同じ。」

蒼「いつか、お父様に会える日が来たら……お父様も、笑ってくれるよね。」

薔薇「……うん。わたし、ローゼンが……お姉様たちのお父様が、今、
   笑顔でいてくれていると、信じているから……次の時代に行っても、ずっと……」
453薔薇乙女達の好日 第12話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 00:35:54 ID:ATnzMfeZ
薔薇「……こんどは、わたしが訊きたいことがあるの」

蒼「なんだい?」

薔薇「……わたし、お姉様たちが次の時代へ……行く時が来たとしたら、
   わたしも、いけるのかな……? それが、とても気がかりで……」

蒼「大丈夫だよ。ねじが朽ちて錆び逝くまで……いや、そうなってからも、
  僕たちは姉妹なんだから。ずっと、絆でつながってる姉妹だよ。
  君だって、姉妹じゃないか。」

薔薇「ありがと……でも、わたしはお姉様のお父様が作ったわけじゃ……
所謂、……イトコ」

蒼「何を言っているんだい? お父様も納得してくれるよ。
  エンジュさんだって、お父様の弟子、でしょ?
  けど、君はいわゆるイトコじゃなくて……立派な妹だよ。」

薔薇「いもうと」

蒼「うん! 君だって、かつては僕たちとゲームを戦って、乗り越えてきたじゃないか。
  前にも言ったと思うけど……ね。だから、何の心配もいらないよ。」

薔薇「……そう、だよね。うん、ありがとう、蒼星石……おねえさま」

蒼「はは、君にそう呼ばれると、なんだか照れちゃうなぁ……」


 ……わたし、この10日間で、大切なことに改めて気づけた……
そんな気がする。10月、25日に日記を書いてから……今日までの10日間。
これからも……みんなとの絆を、大切に……

 この石焼き芋を食べ終わったら、この前みたいに、鬼ごっこ……。
おとうさまも、オディールも……一緒に、遊ぼう……♪

                    【第12話 おわり】
45411 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:04:57 ID:ATnzMfeZ
続いて、第13話(最終話)を投下しますよ。
455薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:06:33 ID:ATnzMfeZ
【第13話 聖夜】
[12/25 17:30]
[桜田家 リビング。]
TV[だから、わしがサンタやっちゅうねん]

TV[なにいうとりまんのん! サンタやおまへんやろ!!]ドッ


翠「面白ぇーですぅ!!」

真紅「テレビの中も賑やかなのだわ……」


 今日はクリスマス……最後にまともにケーキを食べて
歌を歌って騒いだようなクリスマスは、何年前だろう……。

 僕の家では、親が出て行ってからずっとケーキなんか食べなかったし
ツリーも置かれなかった。サンタクロースなんてもってのほかだった。
引きこもったまま迎えた中1のクリスマスは、徹夜でオークションをしていたっけ……。
去年は……久々に、3人以上、しかも居間でクリスマスを迎えたけど、
とても盛り上がる事の出来る雰囲気じゃ、なかった。
次の日の朝まで、雛苺と蒼星石の分のショートケーキは残っていた。

 だけど、今年は違う。みんなが揃って……この日を迎えられた。
まぁ、僕は受験生なんだけど、景気付けってことで。
柏葉も、雛苺といっしょにこの日を祝うべく、勉強がてら僕の家に来ている。
456薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:07:23 ID:ATnzMfeZ
[17:35]
TV[くんくん探偵クリスマスフェスタ、不死屋で開催! 今、不死屋でお買い物をすると、
  くんくんのサンタフィギュアがもらえるよ!]


真紅「何ですって!? ジュン!」

ジュン「なっ……まさか、今から行けというわけじゃないだろうな」

真紅「行くわよ。」

ジュン「ば、バカ言えよ! 外は大雪だぞ!?」

翠「雰囲気が出てていいじゃないですか。
  この翠星石が、特別にお買い物についていってやってもいいですよ?」

雛「ヒナもお買い物に行くの!」

巴「そう。それなら、勉強もひと段落ついたことだし、私も行こうかな。
  いいでしょう? 桜田君。」

ジュン「……ま、いいか。」

のり「そうねぇ。ちょっと冷えるから、真紅ちゃんたちは
   この間買ってあげた上着を着ていくのよぅ!」

真紅「ありがとう……すこし重いけれど、これは暖かいのだわ。」

翠「羽毛入りですからねぇ。……髪の毛にフードが当たってくすぐったいですぅ。」

雛「ふわふわしてて気持ちいいの♪」

巴「よかったわね、雛苺。 のりさん、ありがとうございます。」

のり「いいのよ♪ さあ、吹雪にならないうちに!
   遭難しちゃだめよぅ!」

ジュン「大丈夫だって。それじゃ、行ってくるよ。」
457薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:08:40 ID:ATnzMfeZ
[18:16]
[道中。]
 僕たちは不死屋で苺大福を買って、3人分のくんくんフィギュアを貰って帰った。
雛苺と翠星石と来たら、歩きながら雪合戦を始めちゃって……
そのあとは雪だるまを作ってた。なんて器用なんだ。


巴「……もう、中学生で最後の冬休みかぁ」

ジュン「そうだな。早いもんだ。」

巴「3年間、いろんなことがあったけど……一番は、この子達に出会った事かな。」

ジュン「僕も、かな。2年生のはじめごろだったな。真紅が家に来てさ、
    最初はすごくナマイキで、平気で僕を引っ叩いて……」

巴「私も、最初は部活の帰りが遅いと泣きつかれたりしていたわよ。
  けど、この子はこんなに変わった。……桜田君のおかげだね。」

ジュン「うーん……そう、なのかな。僕も真紅たちに、変えてもらったからな。」

真紅「……引っ叩いていたかどうかはさておき、私たちもジュンに
   いい方向に導いてもらえた事は確かなのだわ。 ありがとう、ジュン。」

ジュン「……」ポリポリ


ヒュッ  バシッ
ジュン「あてて……だ、誰だ!? うしろから雪球をぶつけたのは……」

翠「ヒヒヒ、バッチリ命中したですぅ♪」

雛「ジュンも雪合戦するの!」

ジュン「ぬう、こーなったら……特大を」セコセコ


 僕がしょうもない反撃を企てているとき、
意外な人に出会ったんだ。
458薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:10:29 ID:ATnzMfeZ
ビュウッ ベシイッ
ジュン「あうっ!!」

巴「真正面から……あれ? たしかあの子は」

真紅「水銀燈ね。」


銀「ごきげんよぉ。……お久しぶりね、巴。」

巴「水銀燈! ごぶさた、しています。」

ジュン「あいてててて……あ、なんだ、お前か。」

銀「なんだとは何よぉ。もうすこし、いいリアクションを期待したのに……」

ジュン「不意打ちは慣れてるさ。 ……あ、きみ、あなたは」

めぐ「こんばんは。柿崎、めぐです。あなたが桜田ジュンくんね。
   そして……柏葉巴さん。あなたたちのことは、この子から聞いていたわ。」

ジュン「……ども。……桜田、ジュン、です」

巴「こんばんは。柏葉巴です。」

雛「こんばんはー、なの!」

めぐ「あなたが……雛苺ね。ローゼンメイデン、第6ドール。
   うしろに隠れてるのが、第3ドールの翠星石。」

翠「……。 め、めぐは……もう、か、からだは」

ジュン「ハハ、人見知りなんです、こいつ。体の方は大丈夫なんですか」

めぐ「はい、おかげさまで。
   ……ありがとう、ジュンくん。あなたのおかげで、私は手術を受けるって決められた。」

ジュン「えっ……? 僕が?」

銀「ジャバウォックが来てくれたでしょう? めぐが呼んでくれたのよぉ。
  手術を受けるから、って……覚えていないの?」

ジュン「……そのあたりの記憶は、マバラだからなぁ……」

真紅「ジャバウォックの指輪は、めぐのもとにあったというわ。
   やはり、ジュン、あなたには特別な力があるかもしれないわね。」
459薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:12:42 ID:ATnzMfeZ
めぐ「……覚えているわ、5月に、翠星石がジュンくんといっしょに、
   楽しそうにお散歩をしていたのを、窓から水銀燈と眺めてた事。」

翠「み、み、みてやがったですか!? やっぱり……誰かに見られてたと思いましたけど……」

銀「いいじゃなぁい、契約者のそばにいられて。私も今、やっとこうしていられる……」

めぐ「お外って、面白いわ。いろいろなものがあって……雪ってこんな感触をしていたんだ、
   星空って綺麗だな、って。」

巴「ずっと、入院していたのですか?」

めぐ「うん、私、18歳になるけど……生まれてから、ずっと心臓が弱くて。
   家に帰れたのも、日数にして1ヶ月もないかなぁ。」

巴「そうだったんですか……すみません、いけない事を聞いてしまって」

めぐ「ううん、そんなことないわ。痛みに負けそうなときは、この天使さんに
   たくさん元気を貰ったから。今にして思えば、変な事をしちゃったと思うけど、
   私、水銀燈に貰った元気を倍返ししてて……。」

銀「……なにそれぇ」

雛「ヒナもトモエやジュンに、元気にしてもらってるの。もちろん、水銀燈にもなの♪」

翠「そうですぅ。翠星石がこうしていられるのも、ジュンがいてこそですぅ。」

真紅「御礼をしてもしきれないほどよ。」

銀「……ふふ♪」
460薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:13:54 ID:ATnzMfeZ
真紅「めぐ?」

めぐ「はい?」

真紅「よければ、私たちとケーキを食べましょう?
   ここで逢ったのも何かの縁、クリスマスということで……よろしくて?」

めぐ「うん。いいわよ。ね、水銀燈♪」

銀「そうねぇ。行きましょ。」

ジュン「あのなぁ……まぁ、いいか。狭いですけど」

めぐ「ふふ……天使さんがたくさんね。」

銀「天使さんって……別にいいけどぉ。」

翠「ケーキはチビ人間がたくさん食べると思って、大き目のをいくつか買ってあるですぅ。
  遠慮せずに食っていくといいですぅ。」

ジュン「僕はそんなに食べないっての……ったく、姉ちゃんは」
461薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:14:55 ID:ATnzMfeZ
[18:31]
 ……というわけで、柿崎さんと水銀燈を連れて、家路を急いだんだ。
玄関のドアを開けたとき、予想だにしてなかったことが起きた。

 靴がやたらとたくさんあって……家の中がすごく賑やかだった。

[桜田家 リビング。]
のり「おかえりー! もうみんな来てるわよ!」 

ジュン「いっ、いつの間に!?」

蒼「やぁ。お邪魔してるよ。実は今日はみんなで、ここで祝おうって決めてたんだ。」

カナ「ジュンの家が一番広いし、なんせ3体もドールがいるから、ここに決めたかしら♪」

薔薇「ここ、なんだか……落ち着く。お家と同じくらい。」

雪「日ごろの御礼もありますからね♪」


のり「あら、いらっしゃい♪」

めぐ「おじゃまします。はじめまして、水銀燈の契約者、柿崎めぐです。
   以降、よろしくお願いします。」

のり「あっ、あなたが水銀燈ちゃんの! ゆっくりしていってねぇ!」

カナ「お久しぶりかしらぁ! 退院したのね!」

みつ「あなたがめぐちゃんね。私は草笛みつ、金糸雀の契約者やってまーす!
   みっちゃんって呼んでね!」

蒼「はじめまして、ですね。ローゼンメイデン・第4ドールの、蒼星石といいます。」

元治「わしが蒼星石の契約者、柴崎元治じゃよ。こちらは妻のマツ。」

マツ「はい。微力ながら、主人やこの子たちの助けになれるよう勤めておりますよ。」

雪「ご無沙汰しております、めぐ様。」

オディール「はじめまして、雪華綺晶の契約者である、オディール・フォッセーです。
      宜しくお願い致します。」

薔薇「……ご無沙汰。改めて……退院、おめでとう、ございます。」

エンジュ「君が、第1ドール・水銀燈の契約者だね。はじめまして、私がエンジュ。
     木偏に鬼と書いてエンジュ。以降お見知りおきを。」

のり「そして私が、桜田ジュンの姉の、桜田のり、高校3年生です!
   ふつつかものですが、よろしくおねがいします♪」

めぐ「はい……!」

銀「ええ。みんな、めぐのこと、よろしくねぇ。」
462薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 03:15:56 ID:ATnzMfeZ
 柿崎さんは、みんなに歓迎された。とても嬉しそうだった。
これで、この時代の契約者とドールが、みんな揃ったわけだ。


のり「さあさあ、ケーキ、たくさんありますよ! 遠慮なく召し上がってくださいね!」

雛「いっただっきまーす、なのー!」

翠「いただくですぅ♪」

真紅「それでは、頂くわ。」


[19:03]
 そんなわけで、僕の家で盛大なクリスマスパーティが始まったんだ。
こんな日が来るなんて、夢にも思っていなかった。


カナ「モンブラン、すっごくおいしいかしら♪」

みつ「みっちゃんも好きよー! 甘くておいしいね!」


蒼「マスター、抹茶のケーキというのも、なかなかいいですね!」

元治「ほうじ茶がうまいのぉ。甘いものにはほうじ茶じゃ。」

マツ「苺大福もおいしいですよ。ほら、あの子なんてとても幸せそうに頂いていますよ。」

蒼「雛苺ですね。はは、本当にこれが好きなんだなぁ。」

雛「うにゅーがいっぱいなのー♪」

巴「ふふ、喜んでもらえてよかった。」


薔薇「チョコレートケーキ、美味しい……です」

雪「ほどよい甘さがあって、私は好きです♪」

エンジュ「ああ。これは本当に美味だ。のりさん、コーヒーをお願いできますかな」

のり「はい♪」

オディール「苺のショートケーキも美味しいですね。今度の特集はケーキにしましょうか♪」


翠「このマカロン! 特別に入手してきたですぅ。ご賞味あれですぅ♪」

蒼「うん、おくちのなかでとろけて、ふわふわしていて美味しいね!」

雛「まかろーん、まーかーろん♪」
463薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:00:13 ID:ATnzMfeZ
[19:34]
 それぞれが、思い思いに談笑する中で、僕はあの日のことを思い出していた。


ジュン「……あれからもうすぐ、10ヶ月か。」

真紅「ええ。……今でも覚えているわ。あの日のことを……」

翠「おめーが根性を出してくれたおかげで、今ここにみんながいるですぅ。
  感謝してもしきれねーですよ。ありがとですぅ。」

ジュン「礼を言うのは僕の方だ。学校にも行けるようになったし、
    勇気が沸いた、というか……。まったく、いいクリスマスプレゼントだよ」

真紅「……?」

翠「どーいう意味ですぅ?」

ジュン「……お前らが、ここにいてくれてるってのが、最高のプレゼント、だ。
    ガラにもないこと言っちまったかな……」

翠「て、照れるですぅ。」

真紅「……もう」


 プレゼントの交換会も始まったようで、僕もいろいろなものをもらった。
ハンカチや鉛筆、お守りとか、いいプレゼントを貰ったな。

 雛苺からは手紙、翠星石からはスコーン山盛り、蒼星石からは万年筆、
薔薇水晶からは紫水晶の置物、雪華綺晶からは白い薔薇、
水銀燈からは黒い腕輪、金糸雀からは伊達巻、姉ちゃんから黄色い幸せのふんどし。
そして真紅からは……照れ隠しの為の巻き毛ウィップを貰った。
464薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:01:07 ID:ATnzMfeZ
[20:02]
みつ「さあさあ、写真を撮りますよー! みんな寄ってくださーい!」

銀「めぐと写真……照れくさいわぁ」

めぐ「照れなくてもいいでしょう? ……かわいい♪」

カナ「みっちゃん、セルフタイマーのボタン押したら、ダッシュでカナのところへ来るかしら!」

翠「のり、ゲンジューに抱くですよ。」

のり「大丈夫よぅ!」

翠「……なんか照れるです」

蒼「さ、こちらですよ。」

元治「…… ……!」

マツ「そんなに緊張なさらないでくださいよ。」

雛「今日はトモエのぼりするの!」

巴「んしょ……ちゃんと登った?」

雛「ばっちりなの♪」

オディール「さあ、雪華綺晶。」

雪「はい、オディール様。いっしょに写真に写ることが出来ることが、とても嬉しいです♪」

エンジュ「よし、いつでも準備オーケーだ。」

薔薇「……わたしも、オーケー」
465薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:03:19 ID:ATnzMfeZ
真紅「さ、ジュン。抱っこして頂戴。」

ジュン「よっ、と。 久々に聞いたな、その言葉。」

真紅「ねえ、ジュン。」

ジュン「なんだ?」

真紅「いつまでも、覚えていて頂戴。この日々を……私たちと過ごす日を。」

ジュン「……当たり前だろ。忘れるわけないよ。こうやって写真も撮るからな。
    まぁ、忘れたくても忘れられないって。」

真紅「……ふふ。」

みつ「よーし、さーん、にー、……」
ダダダッ

カシャッ!


 こうして、和やかなムードの中、20時半にクリスマスパーティは終わった。
466薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:04:44 ID:ATnzMfeZ
[21:05]
 みんなはそれぞれの家に帰り、真紅たちも眠った。
片付けも終わり、僕と姉ちゃんはリビングでくつろいでいる。


ジュン「……なーんか、広いよな、この部屋」

のり「ふふ、家が大きいだけよ。楽しかったね、クリスマスパーティ。」

ジュン「ああ。……紅茶でも飲もうかな」
スクッ

のり「……大きくなったね、ジュンくん。」

ジュン「え?」

のり「ほら、もう上の戸棚に手が届くでしょう? ……160cm、越したかな?」

ジュン「そう、かな……。ハハ。」


ジュン「真紅、か。 ……思えば、あれは1年8ヶ月前のことだったかな。」

のり「もう、そんなに経つのね。あの子達がここに来てから……」

ジュン「……今までごめんな、姉ちゃん。さんざん迷惑かけてさ。」

のり「いいのよ、ジュン」

ジュン「……今、僕の事」

のり「……くん」

ジュン「……どっちでもいいや」

のり「……ふふ。」
467薔薇乙女達の好日 第13話 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:15:08 ID:ATnzMfeZ
[12/26 02:20]
 僕は……真紅たちが来てからの1年8ヶ月で、劇的に変わったと思う。
姉ちゃんも変わった。あまり、ヘンなことを言わなくなったし。
それはそれで、寂しくはあるけれど。
柏葉もそうだ。前よりも、明るくなっている。

 僕はこの春、高校生になる。
2月の私立、3月の公立高受験を終えると、もう卒業だ。
残された中学校生活は少ないけど、3年間のうち後半は間違いなく充実したと思う。
これも、真紅たちに感謝、かな……。10ヶ月前、頑張ってよかった。

 あの時、「まきます」に丸をしなかったら……どうなっていたのだろう。
こう思う事が良くある。前にも、エンジュさんが言ってくれたけど……
ひょっとしたら、真紅たちには違う形で出会っていたかもしれないな。
今日から冬休みだから、真紅たちが起きたら、一緒に出かけてやろう。
久々に、薔薇屋敷にでも行ってみるか……。

 ローゼンさんも、笑ってくれてると思う。
是非見てください、立派に成長した娘たちの姿を。

 さて、もうすこし勉強してから寝ようかな。



                    【第13話 おわり/薔薇乙女達の好日 完】
46811 ◆TEGjuIQ24E :2009/12/28(月) 04:41:51 ID:ATnzMfeZ
 ……以上で、13話、合計約224KBにわたった
「薔薇乙女達の好日」は完結です。
たくさんの支援、激励、乙、ありがとうございました……!!

 途中、さるや規制、PCの故障などで度々投下が遅れてしまいましたが
なんとか完結することが出来ました。

 >>13>>348でも出ている通り、これらは今年4月に自分が某所にて投下した
「――の一日」シリーズを加筆修正したものをベースに、
ドール2体が主人公の話(第1、6、9、12話)を追加したものです。
13話は「薔薇乙女の決着」の最後にあったおまけを加筆修正したものでした。
一番修正したのはエンジュのセリフかと思われます。
至らない点多々あったと思います。ここにお詫び申し上げます。

 では、ローゼンメイデンのSSスレの繁栄とご多幸、
ローゼンスレの更なる発展、ローゼンメイデンという素晴らしい作品の繁盛
そして薔薇乙女達の幸せをお祈りいたしまして、ここでひとまず筆を置くことにします。
ありがとうございました。 >>11
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:23:34 ID:zX+XLAwp
乙かれ様
楽しく読ませていただきました
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 22:59:10 ID:d8hsFICB
皆幸せそうで、こっちまで嬉しくなってくるSSでした
本当に素晴らしかったです
471名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 18:20:52 ID:jZJWtb9/
保守
472名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 13:24:45 ID:eyMNUnID
473原作改変 ◆6l/JuqULF6 :2010/01/11(月) 16:30:42 ID:GJJLRxz1
 やけにあっけからんとした部屋の片隅で、黒縁の眼鏡を掛けた少年は、だらしなくもうつ伏せになり、只々物思いに耽っていた。
 「真紅……」
 彼は時折そう呟くと、虚ろな目から一筋の涙を流した。今、彼の頭の中を支配しているのは、自信が信じ難い事実か、それとも空想上の戯言か。
 真紅が死んだ。いや、正確に言えば、体を奪われた。
 少年にとって、この出来事が嘘か誠かを判断する術はない。それは何故か? 答えは簡単である。真紅どころか、他の全てのドール、果ては人工精霊まではたと姿を消してしまったからだ。彼にはもう、何も残されてなどいなかった。
 「僕の……僕の所為だ」
 少年は自分を責めた。責めて責めて、これでもかという位に責め続けた。もしあの時、彼女たちの異変に気付いていれば。あの時、自分に助けを請う声を聞いて聞かぬふりをしていなければ。
 「うあああああああ!」
 感情が爆発し、止めどなく涙が溢れ出た。拭えど拭えど、それは留まるところを知らない。やがて少年は泣き疲れると、自然と深い夢の中へと落ちていったのだった。
474原作改変:2010/01/11(月) 16:44:33 ID:GJJLRxz1

 「ハッ?」
 突然、少年は机の上から顔を上げた。表面には涙やら涎やらで世界地図が形作られていた。
 「僕はいつの間に寝てしまったんだ……」
 そう一人ごちて、くるりと頭を反転させる。床には見慣れた鞄が一つ、窓から差し込む朝日を反射していた。果たしてそれは空っぽの箱に過ぎない事は自明だった。
 「真紅……ごめん」
 左手の薬指にかつて填められていた指輪の跡をさすりながら、ゆっくりとした足取りで鞄へと近づいた。そして無駄だと分かっていながらも、その手を鞄の蓋に掛けた。
 「あれ……?」
 おかしな事だ。ひょっとして、これは悪い夢なのかもしれない。もしくはやはり、僕の思い違いだったのか。いずれにせよ、構わない。
 「真紅っ!」
 感極まって、そこに横たわる人形を抱きかかえた。それ程日が経っていない筈なのに、どこか懐かしい肌触り。それは間違いなく真紅のボディーだった。
 「真紅、真紅! ごめん、僕が……僕がふがいないばっかりに!」
475原作改変:2010/01/11(月) 16:59:31 ID:GJJLRxz1
 暫く感涙に入り浸っていた少年だったが、真紅を離してみてようやくある異変に気付く。いつもならば鉄拳制裁を仕掛けるであろう彼女は、未だにぐったりとしたままだった。
 真紅が、目を覚まさない。
 「そ、そうだ。ゼンマイを巻けば……」
 慌てて鞄の中をまさぐった。しかし、どこにもゼンマイなど見当たらない。
 「ゼンマイっ……どこだ、どこにあるんだよっ!」
 その時、部屋のドアが、ギィという音を立てた。ゆっくりとドアが開き、誰かが中へと入って来る。少年はその方へと首を回し、ぼんやりと見つめた。
 「姉ちゃん……?」
 「残念だけど、君の期待に答えられないかもしれない」
 そこにいたのは、蒼星石だった。小さな体に不釣り合いな大きなシルクハットを頭に被り、これまた大きな鋏を携えた、オッドアイが特徴的な第四ドール。
 「お前っ、動かなくなった筈じゃ……?」
 「僕らは、ローザミスティカが無ければ只の人形と化す。もし、それ自体が戯言だとしたら?」
 蒼星石は無表情のまま、静かに少年へと詰め寄っていく。少年は思わずたじろぎ、真紅を抱えたのとは逆の手で制止しようとした。
 「くっ、来るな!」
476原作改変:2010/01/11(月) 17:14:41 ID:GJJLRxz1
 途端、蒼星石は歩くのを止め、代わりに左手を彼の前にすっと差し出した。
 「君の捜し物は、これかい」
 少年は目を見開き、音速の速さでそれをひったくると、真紅の背中に急いで当てがった。
 「じゃあ、僕はもう行くよ。幸せに……ね」
 蒼星石の言い残した台詞を無視して、必死になって真紅の起動を待つ。
 「真紅、頼む! 目を覚ましてくれ!」
 バシーン。突如、頬に走った鋭い衝撃。少年は驚いて手中の少女を見つめた。
 「全く、人間の雄は想像以上に下劣ね」
 それが、真紅と少年が再会してから最初に発せられた言葉だった。
 「真紅! よ、よかった……!」
 「ちょっと、いい加減放しなさい!」
 真紅の猛攻を物ともせずになかなか放そうとしない彼に業を煮やし、ひとまずとある作戦に打って出た。
 「人間、残念だけど貴方はここで死ぬわ」
 「えっ?」
 隙を見せた少年の鳩尾にそこ突きを繰り出し、何とか拘束から抜け出すと、数歩間の距離を取って、
 「人間、名前は?」
477原作改変:2010/01/11(月) 17:28:00 ID:GJJLRxz1
 一瞬、彼女から投げ掛けられた質問の意味が理解出来なかった。そんなのは愚問にも程がある。一体何の冗談なのか分からぬまま、
 「さ、桜田ジュン」と受け答えた。
 「早速だけどジュン、私は貴方に選択を迫るわ。死にたいのなら、私の事は放って置く事。死にたくなければ……」
 すっと指をジュンの左手に突き出した。
 「その指輪に誓いなさい。この真紅のローザミスティカを護ると」
 違う。これは真紅なんかじゃない。
 そう考えると同時に、部屋の窓ガラスが心地よい音を立てて粉砕され、破片が散らばった床にくまのブーさん人形が降り立った。
 「あっ、あいつ! 僕が直した……」
 言い終わるか終わらないかの内に、ビュッと音を立てて包丁が飛んで来た。それはジュンの頬を掠め、後ろの壁に垂直に突き刺さった。
 「おい、何するんだよ。僕を憶えてないのか? お前を直してやっただろ!」
 だがブーさんは聞き耳を貸さず、包丁を両手に、鼻息を荒く立てながら接近して来る。
(ダメだ。このままじゃ、殺される)
478原作改変:2010/01/11(月) 17:57:40 ID:GJJLRxz1
 バッと傍らの真紅を見やる。悠然と立っているその出で立ちは、どう見ても真紅。セイントなんとかではない。だが……何か、何かが違う。そこにいるのは、得体の知れない偽物だ。
 (でも、今はこいつと契約するほかない)
 契約をしようがしまいが、いずれにせよきっと死ぬ。ならば、まだこの先生キノコる可能性に掛けてみようと思い立った。薔薇の指輪に顔を近付け、契りを結ぶ儀式を行った次の瞬間、部屋に真っ赤な薔薇の花弁が舞った。
 「いい子ね、ジュン」

 あれからというものの、どうも不可解な点が多い。というか多過ぎる。しかも、どれも附に落ちないものばかりである。
 まず、あのブーさん人形だが、僕が修繕した形跡は一切なかった。あれは確かにあの日のブーさんと同一の筈なのに。僕には分かる、直接触れて直した者だから。
 そして何よりも、この真紅がまるで僕との記憶を浚われたかの様に振る舞っている事だ。
 「ちょっと! 届かないわ、開けて頂戴」
 ドアのノブに手を届かせようと背伸びしている。彼女は、愛用の真紅専用台の存在をも忘れているのか。
 「しょうがないな……」
479原作改変:2010/01/11(月) 18:10:55 ID:GJJLRxz1
 僕は指摘するのもアホらしく、ノブを回して部屋を出た。
 「狭苦しい家ね、信じられないわ。どこかで紅茶が飲みたいわ」
 ジュンの腕の中で、真紅はぺちゃくちゃと喋り続ける。まるで真紅と最初に会った時と同じだな、とジュンは脳の片隅で思った。
 「あらっ。この部屋は何かしら、ジュン?」
 そう言った真紅の指した部屋。そこはまさしく個室トイレだった。まさかーーー。
 「狭いけど、落ち着いた雰囲気ね。香水も好みだわ」中を見回した真紅が軽く便座を叩きながら、「ここに紅茶を運んで来て頂戴」
 果たして、ジュンの予感は的中したのである。

 「まあっ、この子が真紅ちゃんっていうの? クレバーなのねぇー」
 「気安く障らないで」
 手を出し掛けたのりに、容赦なく通称、巻き毛ウィップを繰り出している。このそっけない態度は、まさにあの頃の真紅そのものだ。
 「でもお姉ちゃん、びっくりしちゃったわよぅ! ジュンくんの事だから、てっきりダッ……」
 「死ね!」
 こんな会話したの、凄く久々な気がする。実際には一月程度しか経っていないのに。それだけ僕が復学の事で必死になり過ぎて、こんなたわいもない会話をして来なかったからかもしれない。
480原作改変:2010/01/11(月) 18:22:13 ID:GJJLRxz1
 「ねえジュン、ダッ……て何なのかしら」真紅が訊いて来た。
 「さ、さあ。それより、紅茶どうぞ」
 そういえば、こうして真紅に紅茶をいれてやるのも、久しい事だった。最近は専ら、のりにいれさせていたからだ。
 真紅は差し出された紅茶を受け取ると、そっと口へと運んだ。
 「……美味しいわ。とても、美味しい」
 真紅はそう言って、感嘆の目で僕の顔をじっと見据えてきた。真紅のことだ、きっと紅茶に込められた僕の想いを感じ取ったに違いない。
 「お前の為に何回もいれてきたんだ。美味しくて当たり前だろ」
 僕は自信満々にそう言ってやった。
 「あら……貴方、変な事を言うのね。貴方からいれられた紅茶はこれが初めてじゃない」
 「まあ、そんな事どうだっていいだろ。お前がいれば、どうだって……」
 ジュンの脳裏に、突如訪れたあの悲劇の場面が蘇った。
481原作改変:2010/01/11(月) 18:35:50 ID:GJJLRxz1
 「真紅っ!」
 ジュンの叫び声も虚しく、少女は白薔薇を象った巨大な罠へと飲まれていく。
 「ジュン、私の事はいいから、早く逃げなさい!」
 真紅は枯れた声で必死に訴えるが、ジュンは首を横に振って、
 「僕がお前を助ける!」
 今はもう無き指輪の填められていた左手を握り締め、蜘蛛の糸を模した茨の上を慎重に渡っていく。
 もう少しだ。あともう少しで、真紅に手が届く。
 「させませんわ……」
 雪華綺晶の手から放たれた茨がジュンの体を捕らえ、やむなく拘束されてしまった。いくらもがいてもそれは窮屈に締め付けるばかりで、ほどけない。もはや真紅の救出はおろか、自分の命の存続さえも絶望的だった。
 「真紅、真紅ーーーっ!」
 僕がもっと早く行動を起こしていれば、この様な最悪の状況は免れたかもしれないのに。彼の頭の中を、後悔の二文字だけが支配していた。
482原作改変:2010/01/11(月) 18:49:04 ID:GJJLRxz1

 「ちょっと、ジュンーーージュン?」
 呼び掛けられた声でハッと我に返った。真紅がズボンの裾をぐいぐいと引っ張っている。
 「どうした。何か用か?」
 「どうしてさっきから泣いているの? ジュン」
 ジュンは慌てて顔に手を当てた。頬が、濡れている。僕は知らず知らずの内に涙を流していたらしい。
 「これは、別に何でもないから」
 「そう。ならいいけど……」真紅は踵を返そうとして、「貴方、変わった人間ね」
 「えっ?」
 予想外の言葉に、思わず振り返る。
 「だって貴方は、まるで私と出会っていたかの様な言動をしたり、そうやって一人で泣いていたりするじゃない」
 「言っただろ。僕はネットでお前たちの研究に没頭して、現実に一緒に生活していたみたいな感覚に陥ったりするって。今泣いてたのも、お前が、お前が……」
 再び、涙腺が湧き出して来た。何だこの汗は。
 「おっ、お前が……僕をかばって……!」
 よもや、話を続けるのは無理だった。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/13(水) 00:06:26 ID:kpEwm5I9
続きまだー?
484名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/14(木) 23:24:54 ID:CGyCNIBW
まだー?
485 ◆6l/JuqULF6 :2010/01/15(金) 14:32:33 ID:cLprRiom
センターがッ! 終わるまでッ! 書くのを始めないッッッ!
486名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 23:10:22 ID:NKKiMgIk
>>485
俺はお前を待つぞォージョジョー!!
487名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/24(日) 10:24:53 ID:60h7Ejtl
二次試験もあるだろ
488名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 23:02:13 ID:ogHw/HB7
保守
489名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 14:43:29 ID:7xrvChCl
保守支援
490名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 19:54:43 ID:XdKamuux
ここってアニメ設定のものだけ?
491名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 19:58:51 ID:Zmue/fWO
そこまで細かくない
怒る人もいない
492名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/08(月) 13:07:05 ID:ZmduQAPK
保守だオラー
493最終決戦大予想:2010/02/11(木) 10:13:05 ID:NCIVOZRP
 雪華綺晶はついに全ドールズのローザミスティカを手に入れ、アリスになってしまった。
「よくやった。ついにアリスに出会う事が出来たのだな。」
「ああ〜お父様…。」
 アリスが誕生すると共に何処からとも無くローゼンが現れ、アリスと見詰め合うが…
「ちょっと待てよ! 僕は認めない! 僕は認めないぞ!」
 そこへ現れたのは桜田ジュン。彼はローザミスティカが抜けてただのドールと成り果てた真紅を抱き抱え睨んでいた。
「やれやれ、もうドールのマスターでも何でも無くなった君に何が出来ると言うのかね?」
「出来る! 例えマエストロの力が無くても、一人の人間として出来る事がある事を教えてやる!」
「やれやれ、困った少年だ。さあアリス。最後の仕事にかかろう。彼に君のアリスとしての力を見せてやるのだ。」
「ハイお父様。」
 ジュンは雪華綺晶に敗れた真紅達の仇を取るべく、一人立ち向かうつもりであった。
それにはローゼンも呆れたが、自身の求めたアリスの力がどれ程の物なのか確かめる意味も込めて
ジュンの挑戦を認めた。そして桜田ジュン対アリスと言う最後の頂上決戦が今始まる。

 戦いが始まって早々、ジュンは早速駆け出した。それにはローゼンも呆れてしまう。
「やれやれ、仇を取ると偉そうな事を言っておきながら逃げ出すのかい? けれど…逃がしはしないよ。
アリス、一気にやってしまいなさい。」
「ハイお父様。」
 ローゼンはアリスにジュンを追う様に命令した。それに合わせてアリスもジュンの追跡を開始したが、
ジュンは決して逃げたわけでは無かった。
「よし、こっちだ。こっちに来い。」
 アリスが追って来るのを見てジュンは笑っていた。そしてアリスが、自身の持つ既存のドールズとは
比べ物にならぬ力を誇示するかの様に行く手にある物を次々に破壊しながらジュンを追う姿は
ジュンにとってますます都合が良かった。何故ならば、ジュンには作戦があったからだ。
「よし、ここだ。」
 目的の場所に辿り着いたとジュンは、そこに置かれていた物の陰に隠れた。
「何処に隠れようと無駄。私はアリス。人間が何をしても無駄。」
 アリスは自分の強大な力を誇示するべくジュンが隠れたと思われる物を破壊した。
と、その時だ。突然その破壊した物から大量の液体が噴出し、アリスはそれを全身に浴びてずぶ濡れになってしまった。
「何これ…何でこんな所から水が? でも…何か変な匂い…。」
「それは水じゃない!」
494最終決戦大予想:2010/02/11(木) 10:13:49 ID:NCIVOZRP
 ずぶ濡れになったアリスの前にジュンが飛び出して来た。そして彼は言った。
「それはガソリンって言ってな、要するに…化石燃料の一種さ。」
「え?」
 そう。ジュンがおびき寄せた場所とはガソリンスタンド。そしてそこのガソリンタンクを故意に
アリスに破壊させ、そこから吹き出たガソリンを浴びせたのである。
「そしてな、ガソリンって言うのは…凄く燃えるんだぞ。」
 ジュンの手には百円ライターが握られていた。そして、火を付けると一気にアリスへ投げ付けた。
「それ! これで燃えてしまえ!」
「ああ!!」
 ジュンの投げた火の付いたライターに対し、思わず横に駆けて回避するアリスであったが、
地面に飛び散ったガソリンに引火し、忽ち巨大な炎を上げた。そして、ガソリンを全身に浴びた
アリスの身体から流れ落ちるガソリンを伝ってその炎が一気にアリスへ襲い掛かったのだ。
「行け行けー!」
「あ! あああああ!」
 アリスは必死に炎から逃げた。しかし、アリスがどんなに逃げても炎は追って来る。
そしてついにアリスの身体に火が付いた。ガソリンが大量に染み込んだアリスのドレスは一気に燃え上がり、
ついにアリスの全身が大炎上を起こしていた。
「ああー! お父様ー!」
「アリスー!!」
 火達磨になってのた打ち回るアリスに駆け寄ろうとするローゼンだが、その強烈な炎の為に近付く事も出来ない。
こうして…ローゼンが長年探し求めた究極の少女アリスも…哀れ消し炭に…
「見たか! 人間の力で人形を倒したぞ!」
「そんな…。」
 ドールズのマスターとしての力…マエストロの力も何も使わず、人間が出来る限りの力でアリスを倒し
誇らしげなジュンに対し、ローゼンは見るも無残な灰になったアリスを見つめて途方にくれていた。

 それから、久々に学生服に袖を通したジュンの姿があった。もうローゼンメイデンのドールズはいない。
故にジュンは一人で生きていかねばならない。しかし、ジュンはドールズのマスターとしてでは無く
一人の人間としてアリスを倒した。
「僕はやるぞ。アリスだって倒せたんだ。きっと乗り越えられる。」
 ジュンは強い決意を固め、久々に学校へ向かうのであった。

 おしまい
495名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 10:20:16 ID:I6l2csHO
ガソリンが揮発性ってこと知らないんだね
496名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 10:33:55 ID:TGQTHA1D
夜間に給油してると揮発性であることを実感する
ガスがライトに照らされて給油口が陽炎みたいになる
497名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 10:35:42 ID:NCIVOZRP
  /         \                       r´ -┼‐ ナ丶  
  }  (  聞 ど  l        .<´  ̄ ̄ `> 、    ┌´ (才    tナ 
 f´   )  こ う  ヽ      / 丶   /  ,   \    ヽ   '´   /   
 l   (  え も    } .n⌒l   ,  /! /{ /ヽ ヽ   }   つ  /へノ 
 {   )  ん       l |l |n  /  / j/ ーヘ{´ l || |   {  -‐ァ  -‐ァ、、
 }   (  な     {    | {  j」_ /  /        `}ノ! /   〈   (,__  (,__
. )   !     ,f   / j  /ヘ/   l ミミ      l/}    }   r‐、     
└-、         ,/⌒ヽ人  ゝ_|   | , ,     ミミ./ 廴_   )    f´    
    ゝ 、_,,,,,,,...-ゝ   〈ヽ二/__」   |    /`¬ , , | |  {__ノ})    ゚
       〈        `Tチ´‐ |   |>-| /_,ノ  \   く└----、-、 __,,.、




     ::|.      / /| |
     ::| |ヽ_ノヽ / .|、、へノ|
     ::| ヽヾヽ ヽ ..| | _/
     ::| 丿 ̄\丶|,|√.ノ(、         ガソリン…かどうかは別として
     ::|ーヽノ ̄\...|o|/丶 一フ      石油を被った後で東光太郎に
     ::|ヽ .| !ー-、ヽ|/,--1 | /       銃撃されて引火して
     ::|.丿| .ヽ:::::@.|.!:::::ノ ソヽ,     火達磨になって爆死した
     ::| ̄ !  . ̄  |. ̄ ./ ̄        バルキー星人に謝った方が良い
     ::|  ';:  トェェェイ /   
     ::| _〉ヽ ヾ一ソ./       
     ::|  /:::::::::` ̄´:|___
     ::|。. /_::::::::::::::::_ヽ 。_⌒ヽ
     ::| ヽ。.  。!:::::::!。 .。/:::i ..ヽヽ  
     ::|::::::::ヽ。 ..ー″。/:::::::::::|:::::::::ヽ)
     ::|::::::::::::::ヽ .▲ ./::::::::::::::|、::::::::::〈 
498名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 02:00:53 ID:+3zkeP7s
誰か投稿してくださいー
499最終決戦大予想U:2010/02/13(土) 11:07:01 ID:lI4LI0fl
 雪華綺晶はついに全ドールズのローザミスティカを手に入れ、アリスになってしまった。
「よくやった。ついにアリスに出会う事が出来たのだな。」
「ああ〜お父様…。」
 アリスが誕生すると共に何処からとも無くローゼンが現れ、アリスと見詰め合うが…
「ちょっと待てよ! 僕は認めない! 僕は認めないぞ!」
 そこへ現れたのは桜田ジュン。彼はローザミスティカが抜けてただのドールと成り果てた真紅を抱き抱え睨んでいた。
「今更何をしようと言うのかね? もうアリスゲームは終わったんだ。」
「終わってない! まだ僕が残ってる! 僕が真紅達の仇を取ってやる!!」
 ジュンは真紅達ドールズの仇を取るつもりらしかった。それにはローゼンも呆れてしまう。
「やれやれ困った少年だ。しかし、究極の少女アリスの力がどれ程の物か、あの少年を実験台に
見てみると言うのも良いだろうな。と言う事でアリス、やっておしまいなさい。」
「ハイお父様。」
 こうして桜田ジュンVSアリスと言う頂上決戦が今始まった。

「フフフ…脆弱な人間風情がこの私…アリスゲームを制してアリスになった私に勝てると思ってるの?」
「確かにお前達から見れば人間は弱いだろうさ。そして自分で言うのも何だけど、僕はその人間の中でも
特に弱いだろうな。」
「そんなに弱いのにどうして私に挑んだりしたの? 大人しく震えていれば長生き出来たのに…。」
 確かにアリスの言う事は正論である。ジュンは自分でも自信満々に豪語する位に弱い人間である。
アリスを遥かに下回る実力のドールズにすら振り回される毎日を送っていたヒキコモリの中学生。
では何故彼はそんな身でアリスに挑戦したのであろうか?
「何も腕っ節の強さだけが人の価値を決めるわけじゃないだろ? 確かに僕に力は無いけど…頭はある。
オツムの出来の違いと言う奴をお前に見せてやる。」
「ウフフフ…ならば見せて頂戴?」
 ジュンはアリスの圧倒的な力に対し、頭脳で対抗するつもりらしかった。ならばジュンは一体
どんな策を持ってアリスに対抗すると言うのであろうか?
「まずはこれでも喰らえ!!」
 次の瞬間、ジュンは何か液体の様な物をアリスに対してぶちまけた。
不意を突かれたアリスは忽ちそれを被り、身に纏う美しいドレスも忽ちずぶ濡れになってしまった。
「お父様が作ってくださった大切なドレスをこんなにも濡らして…許さない。」
「ハハ! そんな事を悠長に言ってる場合かよ!」
「え? ああ!!」
 自分のドレスを濡らし汚したジュンを睨んでいたアリスだが、ジュンに指摘されてある事に気付いた。
「あ! ああ! 凍る! 私の身体が凍って行く!」
 何と言う事だろう。アリスの身体が忽ちの内に凍り付いて行くでは無いか。
500最終決戦大予想U:2010/02/13(土) 11:09:32 ID:lI4LI0fl
「さっきお前にぶちまけた液体はただの水じゃなく液体窒素! ゴジラも凍り付く超低温だ!
如何にアリスと言えどもカチコチで動けないだろう! …って言ってる間に本当にカチコチだ…。」
 先程ジュンがアリスにぶちまけた液体は何と液体窒素であった。液体窒素は滅茶苦茶に低温である。
皆も理科の実験で経験は無いだろうか? バナナを液体窒素に付けると硬くなり、クギが打てると言う物。
ジュンの狙いはそこにあった。特にアリスの身に纏うドレスは防水等想定されてはいない為、
液体窒素をかければ忽ちそれがドレスの奥にまで染み込み、アリスの全身を凍結させてしまったのだった。
「あっ! アリスー! うわっ冷たい!」
 思わず凍結したアリスに駆け寄っていたローゼンだが、余りの冷たさに低温火傷を起こしていた。
「よし! 次はコイツだ! これで粉々になってしまえ!」
 次にジュンが取り出したのは鉄アレイ。そして鉄アレイを凍結したアリス目掛けて投げ付けた。
アリスは液体窒素をかぶって凍結してしまった。固くなったと言う事はそれ即ち柔軟性が無くなり
脆くなったと言う事である。通常のアリスならばジュンが鉄アレイを投げ付けたとしても
回避するか簡単に弾き返してしまえたであろう。しかし液体窒素によって凍結した今は違う。
鉄アレイの直撃を受けたアリスは忽ちの内に粉々に砕け散ってしまった。
「あっ! アリスー!」
「見たか! 人間の力で人形を倒したぞ!」
 究極の少女であったのに、無残に砕け散ったアリスの姿を見てローゼンが絶叫する中、
ジュンは誇らしげにガッツポーズを取っていた。
「くっくそ! 良くもアリスを…こうなったらラプラス! お前が行けー!!」
 アリスを砕かれて激怒したローゼンはラプラスの魔を指差してジュンへ差し向けようとしたが…
「え? 嫌ですよ。」
「何!?」
「あれをぶっ掛けられてカチコチにされたくありませんからね。それに貴方に手を貸すのもここで潮時。
私はもう生かせてもらいますよ。」
「あ! 待てラプラス! お前がいなかったら私はどうすれば良いんだ!」
 こうしてラプラスの魔はローゼンを見捨てて去って行った。アリスも無く、ラプラスにすら見捨てられた
ローゼンはもはや不老不死なだけのキモイ中年男である。
「そ…そんな…。私の…負けだ…。」
 ローゼンはガックリと肩を落とし、負けを認めた。

 翌日、ジュンは久々に学生服に袖を通し、学校へ向けて出発していた。
ローゼンメイデンのドールズはもういない。しかし、ジュンは自分の力で未来を切り開く決意であった。

 おしまい
501名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/14(日) 21:49:57 ID:WYMgUTQ8
しえん
502名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/23(火) 19:32:27 ID:37aF/xNd
ho
503桜田JUM VS 翠星石:2010/02/24(水) 19:52:15 ID:yxKzJMeh
 翠星石はJUM邸に訪れる際、故意に空飛ぶ鞄でJUMの部屋の窓ガラスを突き破る事は知られている。
しかし事あるごとにそうやって窓ガラスを割られるJUMにとっては災難な話である。確かに最初の頃は
真紅が壊れた窓ガラスを元通りにしてくれていたが、その力を使う度に真紅と契約しているJUMの
体力は消耗してしまうし、最近は真紅本人が面倒臭がって窓ガラスを直さなくなってしまった。
おかげで翠星石が割った窓ガラスは結局弁償するハメに。その窓ガラスの修理代が桜田家の財政を
圧迫していたのは言うまでも無い。

「このままじゃダメだ! やはり地球は我々人間の手で守り抜かねばならない!」

 この未曾有の危機にJUMは立ち上がった。その時発した言葉の意味は不明だがとにかく凄い自信であり、
何か考えがある様子であった。

 それから数日、翠星石はまたも空飛ぶ鞄に乗ってJUM邸に向けて猛スピードで飛んで来た。
無論そのままJUMの部屋の窓ガラスに突っ込み、甲高い音を立てて窓ガラスを貫通………しなかった。
窓ガラスは割れる事無く、翠星石を弾き返してしまったのである。

「どうだ翠星石! お前が何時も何時も窓ガラスを割るからそう簡単に割られない様に強力なのを買ったんだ!
薄い二枚の防弾ガラスの間に特殊フィルムを挟みこんだ多重構造だ! 理論上は対戦車ライフルだって弾くらしいぞ!」

 JUMは窓を開けて自信満々にそう叫ぶが、そこで彼は見てしまった。

「うっ!!」

 思わずJUMは目を背けてしまった。何故ならば、JUM邸の前の道路に粉々に砕け散った鞄と
原型を留めぬまでの無残な残骸と化した翠星石が転がっていたのだから。

 よく考えて見れば分かる事である。確かにJUMは理論上は対戦車ライフルも防ぐっぽい強化ガラスを窓に使い、
翠星石の窓ガラス貫通を阻止する事に成功した。しかし、猛スピードでその防弾強化ガラスに突っ込んだ
翠星石にかかる衝撃は凄まじい。その上固いアスファルトにも叩き付けられるわけであるから…
忽ち粉々になってしまう事も仕方の無い事だった。
504桜田JUM VS 翠星石:2010/02/24(水) 19:53:03 ID:yxKzJMeh
「………………。」

 JUMが気まずい顔で黙り込んでいると、真紅が外に出て来た。そして道路に転がるかつて翠星石であった物を
見つめていた。

「ヤバイ…真紅に見付かった。怒るとあいつ…。」

 こんな物を見られたら真紅は確実に激怒するはずである。そうなった彼女がJUMに何をするか分からない。
そして案の定真紅は大急ぎでJUMの部屋まで駆け上がって来た。

「JUM! よくやったわ!」
「え…?」

 怒ると思われた真紅だが、何とJUMを褒めていた。

「あれはJUMがやってくれたのね。流石はこの真紅の下僕ね。まさか人間の身で翠星石を倒してしまうなんて…。
おかげで私は自分の手を汚さずに翠星石のローザミスティカを手に入れ、またアリスに一歩近付く事が出来たわ。」
「そ…それはどうも…。」

 本気でJUMを褒め称える真紅にJUMは気まずい顔になっていたが、その真紅の手には翠星石の
ローザミスティカが握られていた…。

 おわり
505名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 23:14:48 ID:0xH4xqXq
hosh
506名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 18:19:57 ID:ve8ow6oB
保守支援
50711 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 00:46:26 ID:zcrqAota
ども、ご無沙汰です、11です。
書きあがりましたので投下しますよ。
まとめてですが、みなさん乙っす。

【桜田ジュンの卒業式】
>>467までの「好日」の続きの、前後篇全2話です。
今日は前篇を投下しますよ。
508桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 00:51:07 ID:zcrqAota
【桜田ジュンの卒業式】

【前篇 氷解】
[2004/03/10 15:02]
[ジュンの通う中学。 3年6組。]

梅岡「明日はいよいよ本番だ。最高の思い出になるように、
   頑張っていこうじゃないか!」


 梅岡の無駄に大きな声が聞こえる。
公立高校の入学試験も終わり、推薦入試を受けに行ってるヤツ以外は、
今日の半分を卒業式の練習で潰して、最後の放課後を迎えた。

 明日で終わる中学校生活を振り返ってるヤツや、直帰したヤツ、
卒業アルバム一番最後のページの余白を、寄せ書きで埋めようと頑張ってるヤツ、
「お礼参りをしてやろうか」など、いかにも餓鬼っぽいことを企んでるヤツ……

 僕はと言うと……梅岡の話が終わるとすぐに、
教室を出て、ある場所へ走った。


 体育館。2年前、一度は全てが終わった場所だ。
509桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 00:58:18 ID:zcrqAota
[15:06]
[体育館。]
 誰も居ない体育館で、アルバムを開く。
たしか……このあたりだったな、1年3組の並ぶ場所は。

 ……やはり載っていたか、1年のときの文化祭。

 ……結局は、あのデザインのまま、桑田さんはあの服を着たらしい。
まあ、評判は良かったようだ。全部、柏葉から聞いた話だ。
何だかんだ言っても、彼女はクラスで人気だったようだし……。

 天井にぶら下がる水銀灯を仰ぎ、そういえば、
似たような名前のやつを一人知ってるな、とつぶやく。

 そこへ……誰かが体育館に入ってきた。


ガラッ

トットットッ
「…… 誰? 桜田……君?」

ジュン「……!」


 ――桑田由奈……桑田さんだった。
あの時……一番、巻き添えを食らったであろう人物。
あのまなざしを忘れる事はできない。
が……
510桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:02:04 ID:zcrqAota
[15:09]
ジュン「ッ……!」

桑田「桜田君も、ここに来ていたのね。」

ジュン「なっ……なんでも、ないって……」


 実は、ずっと桑田さんとは口を利いていなかった。
あの事件が起きてからはもちろん、また学校に行き始めて、
今まで……大体、2年と5ヶ月か。


桑田「……」

ジュン「「すまない!!」」

ジュン「僕のせいでどんな目にあったんだ……!?
    色々と言われただろ! ぼ、僕なんかがあんな、
    いや、学校生活だって、友達だってその――」


 謝ることが先に浮かんできて、言葉だけが並べられていった……
とりあえず、それしかできなかった。

 まだ春が来たばかりだというのに、汗すら噴出してきた。
顔を真っ赤にしながら、目の前を気にした、その時だった。
511桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:04:21 ID:zcrqAota

桑田「そんなことないよ、桜田君。」

ジュン「!?」


 あっけにとられてしまう。
ほんの何秒かの静寂が、とても長く感じられた。


[15:11]
桑田「私ね、あの服を着て……気付いたの。ただ外観だけじゃない。
   みんな、似合ってるって言ってくれたし……」

ジュン「え……?」

桑田「とても動きやすくて……着る人の事も気遣ってくれてるんだ、ってこと……
   桜田君の、気遣い、だよね。他の人が同じものを造ったとしても……
   ……言い方が悪いけど、思春期の男の子だから、外観しか……興味、ないというか。」

ジュン「…… ……。」

桑田「でも、桜田君は違った。ずっと前から、そういう服のデザインを考えてきたんでしょう?
   ……桜田君の作った服なら、みんなが喜んでくれる……」
512桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:06:19 ID:zcrqAota
 ……桑田さんの話を聞いていて、ふと思った。
昔の僕なら、途中で話をさえぎったはずだ。

 「うるさいな!!」と叫び、そして……また閉じこもる。
だけど、今は違う。


ジュン「……ありがとう。」

桑田「……うん、よかった、最後の……わだかまりが無くなって」

ジュン「僕の、方こそ……。」


 一瞬、静寂が僕達を包んだが、春の少しだけ暖かい風が、
開け放たれたままのドアから、吹き込んだ。
513桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:09:11 ID:zcrqAota
[15:16]
桑田「……桜田君、変わったよね。」

ジュン「……そうかぁ? ……みんな、よく言うけどさ。
    やっぱり、変わったのか?」

桑田「背筋が伸びてるし、肩も下がってる。目つきも穏やかだな、って……」

ジュン「そーいう見解は初めてだな……ハハ。」

桑田「ふふ……うん、それじゃあ、明日は、いい式にしましょう。」

ジュン「ああ。……気をつけて帰れよな。」


 後姿を見送り、改めて舞台の雛壇の方を振り返る。
全てが終わった場所で、僕はまた新たなスタートを切るんだ。
514桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:10:20 ID:zcrqAota
[15:20]
[3年6組。]
ジュン「さて、後はコイツを持って帰って、と……」

 ロッカーに置きっ放しにしていた辞書を鞄に詰め、教室を出る。
廊下の手洗い場の、開けっ放しの窓の前を通ったその時、人相の悪い2人組とすれ違う。


中西「おう、桜田」
岸本「またな」

ジュン「オウ。」


 2年前、僕をコケにした奴らだ。揃って、3年2組だ。
昔の僕は、コイツ等を見ただけで足がすくみ、やがては体が動かなくなったんだっけ。
――今は、笑い話にすらできる。もう、恐れるものは、何も無い。

 さあ、まっすぐ家に帰ろう。真紅たちに、紅茶を淹れてあげないとな。
515桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:11:53 ID:zcrqAota
[15:48]
[桜田家 リビング。]
ジュン「ただいまー。」

真紅「あら、ジュン。お帰りなさい。」

翠星石「お帰りですぅ。スコーンが焼きあがってるですよー。」

ジュン「おお、ありがとよ。今、紅茶を淹れるからな。
    ……あれ? 雛苺は?」


 飛びついてくる元気な声が聞こえてこないことに、
違和感を抱いたが、それはすぐに取り除かれた。


真紅「あそこよ。御覧なさい?」

ジュン「あ……」

雛苺「おかえりなの、ジュン。 ちょっと、静かにしていてなの。」

ジュン「お、雪華綺晶に薔薇水晶か。こいつらも、来ていたのか……。」


 雛苺は、窓際の日陰の辺りで、小さな左膝に雪華綺晶を、
右膝に薔薇水晶を寝かせ、二人をあやすような感じで座っていた。
516桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:13:38 ID:zcrqAota
真紅「……茶葉の開き具合も申し分ないわね。ジュン、完璧よ。」

ジュン「ハハ、もう慣れっこだよ。ところで、こいつらは。」

翠「例によって、エンジュの店が改装作業をしているですから、
  ここに遊びにきたみてーです。」

真紅「けど、遊びつかれて、眠ってしまったようだわ。
   あの子たちの分のスコーンも、焼きあがっているけれど……」

ジュン「タッパーあるから、そこに入れとくよ。
    家に帰って食べればいいさ。……しっかし、雛苺のやつ。」

真紅「あの子も、立派なお姉さんね。」

雛「うゆ!」

ジュン「けど、お前も重たいだろ。昼間は布団でよかったんだよな。」

翠「ですぅ。2階に布団が余ってなかったですかね?」
517桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:15:15 ID:zcrqAota
 階段を上りながら、昔ここで兵糧戦じみたことをやってたことを思い出した。
あの時は、翠星石と雛苺が喧嘩して、僕の部屋で雛苺が拗ねてたんだっけ。
最後は僕が操ったくんくんがその場を鎮め、とどめに姉ちゃんが吼えて終わったんだよな。


[15:50]
[リビング。]
ジュン「あったあった。そこに敷いていいな。」

雛「……雪華綺晶ー、薔薇水晶ー、お布団に寝るのよ。」

雪華綺晶「んぅ……わかり……まし……」

薔薇水晶「……くー……」

真紅「ありがとう、雛苺。」

雛「うゆ……なんだかヒナも眠たくなってきたの。ぽかぽかしてて気持ちいいのー。」

翠「もう、春ですからねぇ。蒼星石と、チューリップでも育ててみるですぅ。」

ジュン「……うーむ、確かに少しだけ眠いな。けど、今から寝たら夜眠れなくなるかもしれん。
    姉ちゃんが帰ってきたら、ちょっと出かけてこようかな。」
518桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:17:03 ID:zcrqAota
 姉ちゃんは、3月1日に高校を卒業して、今はアルバイトをしている。
今日は4時には上がるって言ってたから、そろそろ帰ってくるな。


雛「ねぇ、ジュン?」

ジュン「何だ?」

雛「夜眠れなくなったら、ヒナがお話聞かせてあげるの。」

ジュン「……お前と添い寝ってか?」

雛「それでね、それで……朝になったら、起こしてあげるね♪」

ジュン「……ありがとよ」
519桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 01:18:18 ID:zcrqAota
翠「こ、ここは翠星石が起こしてあげんこともないですよ?」

雛「うゆ、それなら二人で起こすの。」

翠「キヒヒ、何時に起こせばいいですかぁ? ♪」

ジュン「……寝坊しないように頑張るよ。」

雛「えへへ……」

翠「……ふふ」

真紅「…… ……ふふ、いい子ね」


 紅茶を飲みながら微笑む真紅を見て、僕も笑ってしまった。
やっぱり丸め込まれてるな、と思った……。
520桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 02:00:29 ID:zcrqAota
[22:02]
 姉ちゃんが帰ってきて、夕飯も済み、風呂に入って……10時を回った。
部屋に一人で戻ると、いつもと違う光景が広がっていた。


ジュン「……あれ? お前、まだ起きてたのか?」

翠「た、たまには……ですぅ。」

ジュン「雛苺はまぁ、いつも早く寝てるけどさ。真紅のほうが早く寝るとはな。」

翠「き、今日は目がさえてて眠れんのですぅ。」

ジュン「あー。なんか珍しく眠いから、もう寝るぞ。
    灯りの消し方は分かるな?」

翠「まかせんしゃい、ですぅ!」

ジュン「ん。そんじゃ、あんまり遅くなるなよ。おやすみ。」

翠「いい夢みるですよー。おやすみですぅ。」


 あいつより早く寝るなんて、なんだか変な感じだが……
眠気が襲ってきていたので、今日はもう寝る事にした。
寝坊でもして、力尽くで起こされるわけにはいかないからな。
丁度、良かった……
521桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 02:01:49 ID:zcrqAota
 朝の空気は、一段と冷えていた。布団から出たくなかったが、
今日が何の日かを思い出すと、すぐに身を起こしていた。
姉ちゃんは、まだ寝ている。

 ……と、机の上に、なにやら箱とメモが置いてある。


ジュン「ん? ……何々……」


[かえってから あけるです
       すいせいせき]


ジュン「……帰ってから開けるか。」


 箱の中身が気になるところだが、翠星石のメモに従うことにした。
ところが、よく机の上を見てみると、同じような箱とメモが、あと2組あった。
522桜田ジュンの卒業式 前篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 02:10:08 ID:zcrqAota
[かえってきたら あけてなの!
          ひな ]

[かえってから あけなさい
         真紅 ]


 ふむ……それぞれがそれぞれ、何かを準備したようだな……。
帰ってからの楽しみにしよう。
真紅も雛苺も、翠星石も、まだ寝ている……。

[07:56]
ジュン「いってきまーす。」

のり「はぁい、いってらっしゃい!
   卒業式、見に行くわよぅ!」

ジュン「んー。式終わったら帰ってていいからなー。」

真紅「ジュン、私も連れて行って頂戴」

ジュン「お前は『くんくん』でも観てろ。昼には戻るから。」

真紅「……仕方ないわね。気をつけて行ってらっしゃい。」



                          【後篇に続く】
52311 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/13(土) 02:17:37 ID:zcrqAota
今日の投下はここまでです。
読んでくれた方ご清聴ありがとうございました。
体調の管理に気をつけてグッナイ。
524名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/13(土) 02:55:40 ID:XkMSYe1f
待ってました
前作も楽しませてもらいました
今回も楽しみです
525名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/13(土) 19:36:43 ID:0cjDzxux
乙乙〜
続きもよろ
52611 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:48:48 ID:lP/+4+IG
ども、>>11です。
今日は後篇を投下しますよ。

>>524
>>525
ありがとうございます、励みになります。
527桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:49:41 ID:lP/+4+IG
【後篇 卒業式】
[2004/03/11 09:01]
 学校に着き、柏葉たちと軽く挨拶を済ませ、
僕のクラスが最後に体育館に向かう。

 姉ちゃんが保護者席に座っていたのを見て、
なぜだかとても安心した。
……スーツ姿の姉ちゃんって、変な感じだな……
まぁ、それはそれで、ヨシとして……。

 ここにいるヤツらが、お互いに別々の道を
ここから歩き始める……んだよな。
そういう表現をするんだろう。


「卒業証書を授与される者、3年1組、阿部翔太」
「ハイ」
528桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:50:49 ID:lP/+4+IG
 僕は6組の10番だから、まだまだ時間がある。
今頃……真紅たちも起きているだろうか。
紅茶でも飲んでるんだろうな。
茶葉を開かせるには湯温95度……だっけな。



 『お前、裁縫が趣味なんだって?』
 『本当かよ』

 『この衣装を考えてくれたのは――』
 『1年3組の、桜田ジュンくんです!』

 『早くジュンくんとお話、たくさんしたいな』
 『うるせぇ、ブス』


 ……僕が引きこもってなければ、あの手紙が届いたかも
わからないんだよな……。あの事件がなければ……
どうやって今日を迎えたんだろうか……?
529桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:52:34 ID:lP/+4+IG
 柏葉とのかかわりがあるのも、雛苺がいたからこそだし、
みっちゃんさんと服のデザインなんかも、金糸雀がいなかったら
していなかっただろう。時計店にも、行っていなかっただろうな。
ましてや、病院になんか行かなかっただろう。
水銀燈が、ここに来ていなければ……。

 そして僕も、柏葉も、みんな……弱いままだっただろう。
今にして思えば、真紅たちも同じような感じかもな。
とくに雛苺は……強くなった。雪華綺晶も、体を得た。
別の時代の、別の契約者の所に行っていたら、どうなっていたのか……
想像もつかない。まったく、スケールの大きな話だ。
530桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:54:09 ID:lP/+4+IG
梅岡「同じく6組、石井ゆみ子」
石井「はい」


 いよいよ、6組の番か。いかん、緊張してきたぞ。
隣に真紅が座っていたら、怒られるんだろうな……

『ジュン? 何を震えているの……?』
『しっかりするですぅ!』
『なのー!』

ほら、こうやって幻聴まで……


梅岡「柏葉巴」
巴「はいっ」


 えーと……柏葉が5番だから……あと5人か。
一番右の一番前……来賓がこっち側に座ってるから、
アイツはもっと緊張して……ないな。
やっぱ、落ち着きがあるよな。伊達に生徒会長やってねえや。
目の前の佇まいが、なんだか無性にうらやましいぞ。
531桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:55:44 ID:lP/+4+IG
梅岡「桑田由奈」
桑田「はい」

梅岡「桜田ジュン」
ジュン「ハイ」


 名前を呼ばれて立ち上がった時……隣の桑田さんと
一瞬、目が合った。


桑田『……いよいよだね』

ジュン『……そうだな』


梅岡「山本美也子」
山本「はい!」

梅岡「以上3年6組、男子15名、女子15名、計30名。」

梅岡「礼!」

教頭「以上、卒業生180名。起立! ……礼!」


 よし、一仕事終わったな。
……次は送辞と答辞か。答辞を読むのは……
532桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 04:56:59 ID:lP/+4+IG
教頭「続きまして、卒業生によって答辞が読まれます。
   卒業生総代として、3年6組、柏葉巴さんに、答辞を読んでもらいます。」

巴「はい」



巴「……答辞。温かな春の風が、学び舎を優しく包む今日……
  私達180名は、この学校を卒業します。」

巴「……時には、些細な諍いで、仲を違えることもありましたが、
  今となっては、全てがよき思い出です。いい事も、悪い事も……
  全てが、私達の糧となって、経験となって……私達を変えてくれました。」

巴「そんな私達を支えてくれたのは、友達であり、諸先生方であり、家族です。
  どんなときも、私達の側にいて、時には厳しく、時には優しく……
  励まし……包んでくれました。本当に……有難うございました。」

巴「後輩のみなさんへ……この学校のよき伝統を守り、引っ張っていくのは、
  今の2年生の皆さんです。来月入学する、新入生を、先輩方の前で見ていくのが、
  1年生の皆さんの役目です。」
533桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 05:01:20 ID:lP/+4+IG
巴「これから、試練に立ち向かわなければならない時が
  何度も皆さんに訪れるでしょう。そのときは……周りの誰かを、頼ってください。」

巴「必ず……あなたの力になります。怖くなどありません。
  ひとりでは、ないのです。それはこの先何年たっても……同じ事です。」

巴「……私達180名は、それぞれ、別々の道を、今日から歩んでいきます。
  それでも……時には、助け合い、励ましあいながら……ずっと、
  夢に向かって、いや、夢を叶えてからも、共に歩んでいきます。
  家族や、諸先生方には、これから先、何度も迷惑をかけると思いますが、
  ……私達は、全力で、前へ前へと、進んでいきます。どうか、時には厳しく、
  時には優しく……見守ってください。」

巴「……以上で、答辞を終わります。2004年、3月11日。
  卒業生代表、3年6組。柏葉 巴。」


ワァァァ……!!
オォォォ……!!


 ……あとは、卒業の歌を歌えば、式は終わる……。
534桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 05:02:11 ID:lP/+4+IG
[12:21]
[3年6組。]
梅岡「みんな、お疲れ様だった! いい式だったよ!!」

梅岡「さあ、最後のホームルームを始めるぞー!」


 梅岡の号令で、この学校での最後のホームルームが始まる。


梅岡「よし、それじゃあ、クラスのみんなに一言を……
   ……一人ずつ言ってもらおう!」


 うおっ、また長ったらしいことが始まるのか。
ひとり1分としても30分かかることになるな……
535桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 05:04:01 ID:lP/+4+IG
梅岡「同時に卒業証書を渡すからなー。それじゃあ今日は11日だから
   11番……笹岡!」

笹岡「はいー。 ……あんまり上手くはいえないが、頑張ってくれよなー。」


梅岡「うむっ。ありがとうな。高校に行っても頑張るように。
   はい、次は12番、沢口!」


 なんだ、僕は一番最後か。笹岡なんか10秒で終わったから……
すこしはツラツラと言ってもいいかもな。
さて、何にするかな……
536桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 05:05:46 ID:lP/+4+IG
[12:35]
梅岡「次、5番のー、柏葉!」

巴「はいっ。 ……えー……言いたいことは、だいたい答辞で言ったので……
  ……そうですね、6組のみんなも、ひとりじゃ、ないから。」

巴「もし何かあったら……みんなを頼ってね。
  ひとりで立ち向かう事も、大切だけど……心配だけは、かけないようにね。
  それじゃあ、以上……です。」


 ほお、柏葉、いいことを言うよな。


巴「……ふー。」
 『がんばってね 桜田君』

ジュン『……お、オウ。』
537桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 05:08:32 ID:lP/+4+IG
[12:37]
梅岡「ハイ、桑田、ありがとうな。服飾関連のデザイナー、目指して頑張れよ。
   それじゃあ、ラストは桜田だな。」

ジュン「はい。」

ジュン「……えーと、みなさん卒業おめでとうございます。
    ……僕からは、ひとつだけ、ことわざを贈ります。」

ジュン「『芸は身を助ける』」

ジュン「……あまり大きなことは言えないけど、みんなが持ってる特技とか
    得意技を活かして、道を歩いていくのも、アリだと思います。
    僕は、……服飾のデザイナーになります。副業にしてでも、です。」


『右腕が無くたって……』
『…… ……私は 欠落してしまった……』

『なぁ、真紅……』

『ありがとう、ジュン。』
538桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 06:00:19 ID:lP/+4+IG
『あなたの想いが……ここにあるのだわ。そしてそれが、私の宝物』

『私は誇り高い、ローゼンメイデンの第5ドール』

『そして、幸せなあなたのお人形』


『マエストロでもないと、直せはしないはず……』


『私達みんなで、アリスゲームを終わらせるのだわ……
 薔薇乙女の、誇りにかけて』
539桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 06:05:24 ID:lP/+4+IG
ジュン「……ひょっとしたら、知らないうちに、誰かを助けてるかもしれません。
    それに気付いたときは……まぁ、自分に紅茶でも淹れてやりましょう。
    今のは、どうでもいいんですけど……僕からは、以上です。」


ワアア……!!


梅岡「……ありがとう、桜田。あの時は……すまなかった。
   私が軽率だった。お前の気持ちも知らずに……」

ジュン「……いいんですよ、先生。」


 ふぅ。これで、僕のやることは終わったな。
後は家に帰って、真紅に紅茶でも淹れてやるか……
何となくだけど、第67982世界で水銀燈と戦った後の、
後ろ髪を解いた真紅の微笑が、頭の中に甦っていた。
540桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 06:11:08 ID:lP/+4+IG
桑田「桜田君。」

ジュン「なんだ?」

桑田「……桜田君のおかげで、道が開けました……ありがとう。」

ジュン「……ああ、頑張ろうな。」

桑田「うん。」


梅岡「よし、それじゃあ帰りの挨拶は、最後に素晴らしいスピーチをしてくれた
   桜田にお願いしよう! 頼んだぞ、桜田!」

ジュン「(……ったく) きりーつ、気を付けー。 礼ー!」
541桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 06:16:53 ID:lP/+4+IG
[13:03]
[帰り道。]
ジュン「……あの答辞、よかったぞ。」

巴「ふふ……。あの答辞を書けたのは、あの子の言葉があったから……」

ジュン「やっぱり……雛苺だな。」

巴「うん。 ……私も、ある意味一人きりだったから、あの子にはいろいろと
  教えられたなー、って……。」

ジュン「僕もだよ。雛苺だけじゃなくて、水銀燈たち……あの人形たちからは
    本当にいろんなことを教わったな。だてに何十年も生きてないや。
    そして、これからもな。」

巴「ふふふ……あっ、そういえば、この間のりさんから聞いたけど……
  2年生の始業式のとき、上履きに落書きをしたんだよね?」

ジュン「……あ、ああ、あれのことか。」

巴「J,U,M……これじゃあ、ジャムね。」

ジュン「ジャムか……どうかしていたよ、あの頃はさ。」

巴「くすっ……♪」

ジュン「……帰ったら紅茶淹れるけどさ、飲んでくか?
    アイツら、そろそろ騒ぎ出すころだから。」

巴「うん、ありがと。」
542桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:01:19 ID:lP/+4+IG
[13:16]
[桜田家 リビング。]
ジュン「ただいまー。」
巴「おじゃましまーす。」

のり「あっ、おかえりなさーい!」

ジュン「ふぅ、疲れた。」

のり「お疲れ様。……あら、巴ちゃん!
   答辞、とってもよかったわよぅ!」

巴「ありがとうございます。のりさん、来ていたんですね。」

のり「ええ♪ 改めて……卒業、おめでとう!」

ジュン「あ、ありがと……。」

巴「ありがとうございます。」
543桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:04:57 ID:lP/+4+IG
真紅「あら、ジュン、帰っていたのね。」

翠「巴もいるですぅ。」

ジュン「おうっ、ただいま。」

巴「こんにちは♪」

雛「トモエトモエー♪ ジューン♪ おかえりなのー!」

真紅「……あの箱を、開けてみるといいわ。」

ジュン「あ、あれだな。今から開けに行くぞ。」

雛「トモエも見てなの♪」

巴「うん、ありがとう。」
544桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:12:03 ID:lP/+4+IG
[13:21]
[ジュンの部屋。]

 僕と柏葉が部屋に入ると、真紅たちがくるりとこちらを向く。
空気が、すこしだけ張り詰める。


真紅「さて、ジュン……いえ、桜田ジュン。柏葉巴。」

ジュン「お、おう。」

巴「は、はい……」

翠「ご、ごそつぎょー、おめでとうございますですぅ。」

雛「おめでとうなの! これからも、頑張ってなの!
  それとー、」

ジュン「ん?」


 真紅たち3人から、祝いの花束と言葉を貰った後、
雛苺の言葉が合図になっていたかのように……
545桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:20:29 ID:lP/+4+IG
ギィッ
水銀燈「おめでとぉ、ジュン。巴。」

金糸雀「3年間ごくろーさまかしら! 高校でも頑張るかしらー!!」

蒼星石「やぁ。ご卒業、おめでとう。」

雪「今日は、おめでとうございます♪」

薔「ふたりとも……おめでとう。」

ジュン「お、お前ら! いつの間に……!?」

巴「あっ、みんな……♪」


 5人が、僕の部屋に入ってきた。
それぞれが、それぞれの服と同じ色の薔薇の花束を、
僕と柏葉に手渡してくれた。
546桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:26:07 ID:lP/+4+IG
ジュン「ありがとな、お前ら。」

巴「ありがとう、みんな。」

蒼「ふふ、うまくいってよかったよ。」

金「さ、後は例のアレかしら!」

銀「ジュン、机の上にある箱を、開けてみなさい。」

雪「巴様も、箱をお開けになってください。」


ジュン「……増えてるな。」

巴「そうなの?」

ジュン「ああ。行きがけは3つだったが、16個あるぞ……
    ……僕と柏葉で、8つずつだな。」

薔「……ぜんぶ……開けてみて」
547桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:38:40 ID:lP/+4+IG
 言われるままに、箱を開けてみる。
そこには――


真紅「ジュン、改めて、卒業祝いよ。これからも精進するように。」

翠「気合入れていくですよ、15歳!」


 真紅たち8人の、それぞれの姿が彫られたガラス細工が1箱に1つ、入っていた。
全部で8個。それぞれの服の色と同じ色に、ガラスに色がついている。
柏葉も同じように、8つのガラス細工を貰っていた。
どうやら、薔薇水晶の水晶から作ったようだ。


薔「みんなが……心を込めた。これでいつでも、そばにいられる。
   ……なんらかの理由で、わたしたちに会えなくなっても、
   これを見て……思い出して……ください。」

ジュン「ありがとな。本当に……ありがとうな。」

巴「みんな、これ、大切にするね。」

雛「うん! ヒナたちも、そういってもらえてとってもうれしいの♪」
548桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:45:01 ID:lP/+4+IG
[13:45]
金「みっちゃんやのりから聞いたけど、高校生っていうのは
  とっても忙しいかしら。覚悟はいいかしら?」


ジュン「ああ。」
巴「ええ。」


雪「ふふ……いい表情ですわ。」

薔「熱意……勇気。そういうものが、伝わってくる……♪」

蒼「可能性、だね。僕達も、そんな力があって、動いていける……」

銀「まだまだ若いから、今からが楽しみよねぇ。めぐの所に行って、いい報告ができるわ。
  ……絆ってのも、あるかもねぇ。今なら、綺麗とか、美しいと言えるわ。」


 もう、どんなことがあっても、逃げ出したりする事はないだろう。
僕を支えてくれる、こいつらが……契約者たちが……いるから。
ひとりきりじゃないから。
信じた世界を、選び取ろう……なんてな。
549桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:47:50 ID:lP/+4+IG
翠「それじゃ、聞くまでもないと思うですが、質問するですぅ。」

雛「……あたらしい世界のとびら……」

真紅「開きますか? 開きませんか?」


ジュン「決まってるさ。 ……開けるよ。」
巴「もちろん……開きます。」


真紅「いい子ね、ジュン。巴。」


のり「みんなぁー、お茶にしましょう!」

真紅「……さあ、ジュン。抱っこして頂戴。」

ジュン「よっ……と。」


 ……さあ、紅茶を飲んだら、久しぶりにネットオークションに顔を出してみよう。
……と思ったけど、たまには真紅たちと、『くんくん探偵』でも観ようかな。
550桜田ジュンの卒業式 後篇 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 07:55:10 ID:lP/+4+IG
ジュン「なぁ、真紅?」

真紅「何?」

ジュン「実は鞄でも使って、学校に来てただろ?」

真紅「さ、さぁ? 何の事かしら?」

翠「翠星石たちはなーんにも知らないですぅ?
  チビ人間が震えてたなんてことも……」

雛「あっ……」

真紅「……」

翠「!!」

ジュン「ま、いいんだけどな。紅茶でも飲もうか。」

真紅「ええ。ジュン、紅茶を淹れて頂戴。」


                       【桜田ジュンの卒業式 完】
55111 ◆TEGjuIQ24E :2010/03/14(日) 08:10:54 ID:lP/+4+IG
……以上で、「桜田ジュンの卒業式」は完結です。
読んでくれた方、ご清聴有難うございました。

3月ということで、卒業式を書きました。
桑田さんがしゃべってる描写はあまり無かったので
これでいいかどうかは分かりませんが……
ジュンに深く関わる人物として登場させた次第です。

……次に書くのはいつになるかは分かりませんが、
スレはいつも見ているので、このスレの、そして
ローゼンメイデンのますますの繁栄を祈って、
筆を置くと共に床に就くことにします。それではまた。>>11
552名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 09:01:21 ID:wjzYPTou
乙!
よかった
553名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 16:16:16 ID:yj/QlOLo
末妹3人がかわいすぎる。
乙でした
554名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 23:50:44 ID:FObKas0u
相変わらず見事すぎるSSでした
なんというか、全登場人物を好きになれる
また次回策があっても必ず読みます
555名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/29(月) 07:52:39 ID:1+BDIU9M
今から読む
556名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/07(水) 22:18:30 ID:+Adx9BV7
解除記念保守
557名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 18:40:52 ID:xznjyewA
オリジナルキャラ注意。キャラぶち壊し注意。
1)
この真っ黒な服を着た人形が家にきてかれこれ一週間になる。
未だにまともな会話のキャッチボールをしたことがない。今日も無言で窓に座り外を眺めているだけだ。
道路と住宅しか見えないのに。
「なぁ」
無視。
「なぁ!」
まるで俺の存在自体に気がついていないように徹底無視。
「なぁってば!!」
ここまで無視されたらドMな俺でもいい加減頭に来るってもんだ。
「何」
突然返事をされた。無視されるもんだと思い込んでいた故、話題を考えていなかった。
「いや・・・その・・・」
人形の鋭い視線が目に突き刺さる。何もかも見透かされているようだ。
「なんで左の羽が曲がってるの?」
人形の目元がピクリと動く。何か訳有りのようだ。
「あなたには知る必要の無いことよ。」
まただ。何か聞けばすぐこれだ。俺には必要ない俺には関係ない。そればかりだ。
「お前なぁ、人ん家に居候させて貰ってんだろ。なのにその言いぐさはなんだ。」
「別に好き好んでこんな汚い家に来たんじゃないわよ」
カチンときた。
「んだとテメェ!!!!そんなに気にいらねぇなら出て行け!今すぐに出て行け!」
頭にきた俺はそう怒鳴って部屋を出た。なんだあの言い方。あいつと一緒に居るだけでストレスがたまる。
正直どこかにいってほしい。
戸を閉めた時、短く「キャッ!」という声と同時にドサッと重いものが堕ちる音がした。
嫌な予感がした。嫌な予感?あの人形がどうなろうと俺には知ったことではない。
しかし・・・
窓から下を見ると人形が堕ちていた。俺は急いで一階に降り、人形の元へ駆け寄った。
抱きかかえ、声をかけてみるが反応がない。顔をビシバシ叩いてもピクリとも動かない。
首元へ手を当ててみる。やばい。脈がない。
・・・当たり前だ。こいつは人間じゃない。
とりあえずここでは人目につく。俺の部屋に運ぶ事にした。抱きかかえ立ち上がった時、
損傷していた左羽がへし折れボロンと落ちた。
558名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 18:44:08 ID:xznjyewA
2)
翌日。人形は普通に目覚めた。自ら箱を開けて出てきた。
「大丈夫・・・か?」少し動きがぎこちない。羽が1枚しかないせいでバランスがとりにくいのだろうか。
人形は俺の方を見た。しばらく見つめた後、衝撃的な言葉を発した。
「お前は・・・誰だ?」
「は???」
「知らん顔だ・・・」その人形は眠そうに目を擦りながらボサボサの髪を掻いて言った。
もしかしてこいつ・・・頭を打って・・・
「うーん・・・」その人形は両手で頭を掻きまわした。
「お、おい、大丈夫か。」
「ん?あぁ頭が痒いだけだ。」
「んだよ!」
「とりあえずお腹が空いたな。」
「腹?お前人形なのに飯食うのかよ。」
「そのようだ。」
「そのようだって・・・」
どうやら完全に記憶が富んでるようだ。
人形のくせに記憶喪失だとか、飯を食うとか、怪奇現象もいいとこだぞ。まぁ動いて喋ってる時点で驚異だが。
「わ、分かった。ちょうど昼だ。飯を作る。待ってろ。何が食いたい?」
「そうだな・・・うーん・・・」
やけに悩むな。ピロシキ!とか言われても作れんぞ。
「すまない。思いつかん。食ったことがないんだ。」
「本当に飯食えるのかよ・・・」
「んー、じゃあとりあえずお前が好きなものを私も食べたい。」
「じゃあなんでもいいんだな。」
「まかせる。」
人形は見たことない笑顔でそう答えた。
「よ、ようし!」
ちょっと動揺してしまった。
数分後。若干焦げ気味だが焼き飯ができたぞ。
「どうよ」
はじめて見る食べ物のようで、しばらく眺めていた。
「何か黒っぽいぞ。」
「秘伝の特殊調味料です。」
俺はほろ苦い焼き飯を掻き込んだ。人形はスプーンでそっと一口食べた。
「苦い・・・」
「漢方薬だ。体にいい。多分。」
「でも美味い。」
俺は思わず箸を止めた。今まで飯は自分のためにしか作ったことが無かった。人に作ってあげたことなんて無かったし
無論褒めてもらったことなんてない。
「そ、そうか。良かった。」恥かしくなって嬉しさを必死に隠した。
それ以降俺は飯に金と時間をかけるようになった。栄養バランスがよくなったからか、気分がよくなった。
559名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/12(月) 18:46:43 ID:xznjyewA
3)
人形の記憶は消えている。しかしどこまで消えているのだろうか。ひょっとすると何か少し覚えているかもしれない。
人形の招待がもしかすると分かるかもしれない。
「なぁ、一つ聞いてもいいか。」
人形は本を読んでいた。俺の大学の参考書だ。題名は行政法総論とある。
「その前にいい?」人形が切り出した。
「なんだ。」
「私は何だ」
「おおう、こりゃまた壮絶な質問だ。」
「私には名前が無いんだ。名前が欲しい。」
「名前か・・・そうか名前ねぇ・・・お前は以前、水銀燈と・・・」
「以前?水銀燈?」
「あぁ、そうだ。知らないんだな。お前は俺の家に突然やってきて勝手に俺に「契約」させたんだ。
んでこの家に住むようになったんだが、その時お前は自分を水銀燈と名乗っていた。
一週間ほど経った頃か、お前は窓から落っこちて記憶をなくしたんだ。」
「そうなのか・・・全く覚えていない。私は勝手にここに住み着いているようだが、迷惑か?」
「いやいや、そんなことないよ。」
「そうか、ならいい。で、名前なんだが・・・水銀燈か・・・難しい名だな。水銀燈・・・水銀・・・水だ。
翠と呼んでくれ」
「翠か・・・俺的・・・SS的にもまぎら(ryなんというか語呂的にも銀がいいかな。銀。その方がしっくりくる。」
「まぁお前がそういうのならそれでいい。銀だ。私は水銀燈の銀だ。改めてよろしくな。お前。」
銀は笑顔で握手を求めた。
「記憶をなくした私と再契約だ。」
「あ、あぁよろしくな。」
「うん!」
560名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 18:20:51 ID:nv+abbMs
無反応(´・ω・`)ショボーン
561名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 23:27:07 ID:5oj49fJK
>>560
さっき読みました。乙です。
最後の最後で完全に不意を突かれたというか。
オーベルの時の、あの銀の笑顔が浮かんできまして。
次回作もあれば是非読ませていただきます。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/24(土) 06:25:07 ID:K3+vzs8G
保守
563名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/26(月) 00:58:03 ID:7M06Zyh4
ここは人がいるのかどうかが分からない
保守程度でSSがきてるかどうか、確認しに見てる人がほとんどだよなぁ
564名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 21:39:43 ID:BOzFhHqV
保守

諸事情によりPCは週1、電話は規制中だから書き込めない……
それはそうと今書いてるんで書きあがったら投下します
565名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/03(月) 21:59:39 ID:X76BUuMb
保守

>>564
楽しみにしてます
566名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/04(火) 16:21:10 ID:YByRbN7C
保守
567名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/04(火) 17:18:12 ID:Iz4AbC04
ずっと構想している銀様オンリーのSSあるんだが
オンリーでも別にいいんだよなぁ
原作準拠でもなんでもないけれど
568名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/04(火) 22:25:35 ID:bbQCUL1e
>>567
銀SS楽しみにしてます。
569...and the angel ladder:2010/05/10(月) 03:17:35 ID:2smQDGla
風に当たりたいと思う。
すると、想像した通りの風が、頬を撫で髪を揺らして吹き抜けて行く。
普通ならこの風の心地良さに一瞬だけでも浸る事ができただろう。
しかし水銀燈はそうは感じなかった。
無性に腹立たしく思えたのだ。
この世界ではすべてが想像した通りになった。
この世界は水銀燈そのもの。
廃れた街。
無意識が作り出す街。
どこまで行っても同じこの世界で水銀燈は一人、そこに在った。
壊れかけた家のベランダ。
手すりに腰掛ける。
眼下には枯れた小さな噴水。
取り巻くように街並みが揃う。
無音が支配していた。
そして、ほんの少し思ってしまった。
寂しいと。
一人は孤独で、どうしようもない不安感が心の中で芽生える。
そして慌ててその思いを消し去ろうとまた別のことを考えようと努力した。
だが、間に合わなかった。
水銀燈がまばたきすると、さっきまでの無音の世界は嘘のように様相を変えた。
眼下に広がるのは街の一角。
壊れた家は、よく手入れされたレンガ造りの家へと変わる。
枯れた噴水は一瞬の間に水が貯まっていて、ずっとそうであったかのように水を噴き上げ、涼しさを感じさせる水音を立てる。
その縁には老人が腰掛けて、周りを走り回る子供を眺めている。
中年太りした男が新鮮な野菜を売ろうと、商売文句を大声で通りに向かって何度も繰り返す。
馬車が行き交う。
日傘をさした女性が二人連れ立ってどこかへ歩いていく。
水銀燈が目にする範囲が艶やかな色になる。
想像したとおりの音が、声が、すべてが眼下の街中で再生される。
消えろ。願ってもそれはなかなか消え去らない。
心のどこかで消えてしまうのを怖がっているのかもしれない。
いつまで続くのかわからないこの夢の中で、水銀燈は目を瞑った。
喧騒が聞こえる。
耳を両手で塞いだ。

水銀燈はこの世界で一人だった。
たくさんの人間に囲まれて、孤独な世界に在った。
570名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/10(月) 03:18:30 ID:2smQDGla
保守がてらの
プレ版プロローグ
まだまだうまくまとまらない
571名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/15(土) 08:25:01 ID:OE8sQ6wS
保守
572名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/23(日) 13:59:38 ID:zVo5SXcv
保守
573名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/25(火) 20:39:50 ID:vMEGsUsm
保守
574名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 12:11:04 ID:chBj0XJX
77 名前: 40歳無職(東京都) [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 22:26:21 ID:nU6siOSR0
[ 水銀党員向け回覧 ]

翠に援軍を出すべし。
相手に偽が入っているのは間違いないが、実際のところは全くわからない。

投票数:5320レス 18:30:00現在
1位 2254票 柊つかさ@らき☆すた
2位 1816票 翠星石@ローゼンメイデン オーベルテューレ


救援のメリット
・党員が翠の負けを望んでいるみたいな不名誉なうわさを否定できる。
・翠の支援なしには銀様も勝っていくのは厳しい、こちらも救援の姿勢を見せる必要あり。
・今回、アンチがローゼン潰しに成功したら、味をしめて銀様にも仕掛けてくる可能性が高い。
・もし翠が圧勝すれば、アンチローゼンの士気が落ちて、最強といわれる銀様潰しは断念してくるかも。
・なにより、苦戦している仲間を見捨てれば、銀様と党員は卑怯者の烙印を押されてしまう。

デメリット
・翠が勝ったとき枠数の関係で、銀様戦では、より激しい抵抗が予想される。
575名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/31(月) 18:19:55 ID:JblAcKRy
次作を
576 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:03:08 ID:qxhjsQ+N
規制解けてたら
新作書き上がりましたので投下しますよ。
577雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:05:22 ID:qxhjsQ+N
【雛苺と翠星石の手紙】
[04/05/26 13:38]
[桜田家 リビング]

雛苺「〜♪」

雛「お昼のおべんとう、おいしかったのー!」

真紅「ふぅ、おいしいハンバーグ弁当だったわ。
   それじゃ、私は読書をしてくるから……」


 5がつ26にち、はれ!
今日はきんようび、明日はジュンとトモエとおでかけするの!


翠星石「…… ……」

 うゆ……? 翠星石、ごちそうさましたあとから、
ずーっと何か書いてるの。
578雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:09:31 ID:qxhjsQ+N
雛「すいせーせきー」ヒョコッ

翠「わああああああ!!! な、何ですかチビ苺ォ!?」ササッ

雛「何書いてるの?」

翠「な、な、なんでもねーですぅ!! やめろですぅ!」

雛「うぅ…… びええええ……!」


バタン
真紅「静かになさい。」
翠「はい」
雛「はい」


 ……真紅に怒られちゃったの。


[13:42]
翠「……しゃーねーですぅ。翠星石は……その……」

雛「わかったなのー! おてがみ書いてるのね!」

翠「げげっ、なぜバレたですか」

雛「! おてがみだったの?」

翠「……!」
579雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:12:32 ID:qxhjsQ+N
 翠星石はお手紙を書いてたの。
そういえば、ずいぶん前に、ヒナもお手紙を出しに行ったの。


翠「……まさか、素で訊いてきていたとは……時々、おめーの行動パターンが読めんですぅ。」

雛「よいしょっ……」ヒョイッ

翠「ん? どうしたですか。」

雛「ヒナもお手紙書くの。またポストに行くのよ!」

翠「そういえば、そんなこともありましたねぇ。
  ……あの時はたしか、金糸雀が水鉄砲を撃って……
  ぬぅー! 思い出すだけで若干腹でセイロンティーが……!」

雛「翠星石ぃ! おちつくのー!」


 ……金糸雀、ジュンのお家に来るときは、あまり玄関から入ってこないの。
だって、「カナは策士だから、玄関から入るのが得策な時以外は
入らないことにしてるかしらー!」って言ってたの。
 ヒナがトモエのお家にいる時も、よく窓から入ってくるのよ!
580雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:20:33 ID:qxhjsQ+N
[13:51]
翠「ふぅ。チビカナには今度、卵焼きでも焼いてもらうですぅ。
 そういえば、あの時郵便ポストは襲いかかってこなかったですかぁ?」ニヤニヤ

雛「だいじょうぶ! ヒナね、頑張ってお手紙出せたのよ♪」

翠「……ってみるですぅ」

雛「うゆ?」

翠「翠星石も手紙を出しに行くですぅ!!
 さぁ、さっさと手紙を書いて行くですよー!」

雛「う、うぃー……」


 ヒナは、ジュンとトモエに書くの。
たくさんこの国のご本読んで、文字の練習したのよ!

 翠星石、まだ一文字も書いてないの。
何て書こうかなー、って、迷ってるみたいなの。
581雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:23:26 ID:qxhjsQ+N
翠「ぬぬ……いざ書くとなると、結構筆が止まるもんですぅ……。
 蒼星石は、あんなにすらすら書いていましたのに……」

翠「ふぅ……チビチビは何て書いたですか?」

雛「うー! まだ見ちゃだめなのー!」

翠「す……すまんですぅ。」


[14:02]
バタン
紅「あら、二人とも真剣な顔して……」

雛「できたのー!」
翠「できたですぅ!!」

紅「……? 何か作っていたの?」

雛「おてがみなのー!」

翠「真紅も手紙出しに行くですぅ!」

紅「! ……わ、私はいいわ。て、手紙だってその、……書いていないから」

翠「アレ、出さなくてもいいんですかぁ?」

紅「……出してきて頂戴」

雛「わかったなのー! 出してくるね!」
582雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:31:24 ID:qxhjsQ+N
 真紅は「くんくん探偵変身セットグレードII」の、けんしょーの
お手紙を書いてたの。真紅ったら、ねこさんが嫌いだから、
ぜんぜんヒナたちとお出かけしてくれないの……。


 ヒナたちじゃあ、玄関のドアを開けられないの。
いつもお風呂の窓が開いてるから、ここからお出かけするの。
ベリーベルとスィドリームもいっしょにね!
翠星石ー、おやつは持ったなのー?!


[14:12]
[道中]
翠「ぐぬぬ……チビチビ、なかなかデンジャラスな冒険をしたようですねぇ……。
 翠星石がやっと通れるくらいの隙間を、いとも簡単に……」

雛「今日はこっちを通るの! エンジュのおうちの裏なのよー!
 ベリーベル、はぐれちゃ、めっなのよ!」

翠「き、今日は、って……大丈夫なのですかぁ!?」
583雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:51:13 ID:qxhjsQ+N
 エンジュのおうちの裏を通ったら、薔薇水晶と雪華綺晶が、
お庭でひなたぼっこしてたの。ヒナたちが手を振ったら、
薔薇水晶たちは笑って手を振ってくれたよ!

 そろそろ、ねこさんの所に着くの。


雛「あっ! ねこさん! ねこさーん!」

猫「にゃぁ」

翠「ひぃっ!! な、なんですかこのケダモノはぁっ……!」

猫「にぃー。」クイクイ

翠「うきゃあああ!! 翠星石のドレスの裾は美味しくないですよぉぉ!」

タタタ
斑猫「みゃあー。」

雛「うゆ!? ねこさんが増えたなの。 お友達?」

猫「にゃあお。」コクリ


 ねこさんのおともだちが来たの。ヒナの知ってるねこさんよりも、
少しだけ大きいの。それと……おめめが翠星石と同じ色なの!
こっちがみどりで、こっちがあか!
584名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/02(水) 19:52:59 ID:yRgzQ+MX
支援
585雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 19:57:09 ID:qxhjsQ+N
斑猫「みゃああ。」ツンツン

翠「な、なんですかおめーは……」

スィドリーム{チカチカッ チカチカッ}

翠「ん? 何て言ってるのかわかるですか?
  ……乗れ?」

斑猫「みぃー。」

翠「……しゃーねーなー、ですぅ!翠星石はともかくとして、
  超・重要機密書類を持ってるですから、丁重に運ぶですよ、ぶちねこ!」

斑猫「みゃあ!」タタタ

雛「ヒナたちも行くのよ!」

猫「にゃあ!」タタタ
586雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:00:20 ID:qxhjsQ+N
[14:17]
ドドドドド……
翠「ひえええええ!! と、と、飛ばしすぎですぅぅぅ!!」

ダダダダダ……
雛「うゆーい! とっても速いのー!
  疲れたらヒナたちに言うの、おやつのビスケットがあるから!」

猫「にゃー」

斑猫「みゃあ」

翠「……あと、どのくらいで着くですか?」

雛「もうちょっとなの!」

[14:21]
翠「……意外と、猫に乗ってのお出かけも悪くないですねぇ……
  これは真紅には内緒にしてやるですぅ。」

雛「真紅もねこさんとなかよくすればいいのに……。
  あっ、真紅はね、ヒナのおねえさんなの。おこるとちょっとこわいけど、
  とってもやさしくてきれいなのよ!」
587雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:02:55 ID:qxhjsQ+N
猫「にぃー?」

雛「えっとねー、ヒナにはおねえさんが5人いて、いもうとが2人いるの。
  みんなとっても優しいの。」

猫「にゃー。」

翠「チビチビ……」

雛「翠星石もおねえさんなのよ!」

猫「にぃ。」ペコ

翠「お、おう、ですぅ。」

雛「あっ、ポストなの!」

[14:22]
 やっと、ポストに着いたなの。前みたいに、思いっきりじゃんぷするの……
ヒナは、前より強くなったの。だから、もっと高く……


雛「……」ググッ

翠「どうしたですか、そんなに遠くまで行かんでも……」ヒョイッ
588雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:06:12 ID:qxhjsQ+N
雛「うゆ?」

翠「さ、翠星石の肩にのるがいいです。」

雛「す、翠星石……。ありがとなの。」


猫「にゃおー。」
斑猫「みゃあお。」

翠「手紙は入れたですか?」

雛「うん、いまから入れるの!」
ストン


翠「……降りたですか?」

雛「うぃ!」

翠「……そうですねぇ、今度、蒼星石でも連れて、猫とお出かけするですかねぇ……
  あっ、蒼星石は、翠星石の双子の妹なんですぅ。」

斑猫「みぃー。みゃあお」

スィドリーム{チカチカッチカチカッ}

翠「なんですって? ……まあ、それは本当ですか?」
589雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:08:49 ID:qxhjsQ+N
雛「おっきいねこさん、何て言ってたなの?」

翠「どうも、この猫にも、双子の兄弟がいるみてぇですぅ。」

雛「そうなの!? えへへ、ねこさん、仲良くするのよ!」

猫「にゃー。」

斑猫「みゃぁー。」

雛「♪」


[14:55]
翠「ふぅー、手紙も無事に出せましたし、一件落着ですぅ。」

雛「真紅のくんくん変身セット、当たるかなー。」

翠「真紅は記入事項を10回は見直しますから、書き漏らしなんかはないと思うですぅ。
  たまーに、くんくんの絵を描いて送ることもありますからねぇ。」
590雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:10:43 ID:qxhjsQ+N
雛「今度、ヒナも送ってみるの。」

翠「おめーのは字が読めねえですぅ。」

雛「うー! ヒナだってちゃんと文字のれんしゅうしてるの!!
  翠星石のだって読めないのよー!!」

翠「な、なんですとー!? 翠星石だってそこは日々鍛錬を積んでるですぅ!」

猫「にぃやああ。」キーッ
斑猫「みやああああ。」グルル

雛「……ごめんなさいなの。」

翠「すまんですぅ。 ……っぷぷー……♪」

雛「……きゃはははは♪」


 ねこさんに乗ったまんまケンカしちゃったから、
ねこさんたちに怒られちゃったの。 ……けど、
なんだかそれがおかしくて……気が付いたら、ふたりとも笑ってたの。
591雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:13:45 ID:qxhjsQ+N
黒猫「ぅにぃー……」フラリ

雛「あっ! くろねこさんなの!」

翠「結構、猫っていろんなところにいるもんなんですねぇ……。」

雛「……くろねこさん、どこに行くのかな……?
  あっちはたしか、ふるい礼拝堂だったの。」

翠「……ひょっとしたら、水銀燈を迎えに行ってるんじゃないですかね?」

雛「うゆ……同じまっくろだから、そうかもしれないなの。
  水銀燈は、ねこさんと仲良くなれるのかな。」

翠「だいじょうぶと思うですぅ。真紅とくんくんを観てるときだって、
  何故かネコ警部が出てるときだけ異様にテンションが高ぇですから。」
592雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:18:30 ID:qxhjsQ+N
[15:02]
[桜田家前]
 ヒナたちはねこさんにのって、今までの道をもどって、
ジュンのおうちの前にたどり着いた。ねこさん、ありがとうなの!


雛「また遊ぶのよ!」

翠「なかなか面白かったですぅ。それじゃあ、また今度ですぅ!」

猫「にゃおー」
斑猫「みゃあおー」タタタ


 また遊ぼうね、ねこさん!
593雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:19:59 ID:qxhjsQ+N
[15:07]
[桜田家 リビング]
TV[くんくん探偵ソーセージ! 君もこれを食べて、難事件を解き明かそう!]

くんくん[チーカマも、よろしくんくん!]

雛「ふぅ、久しぶりに遠くまでおでかけしたの。」

翠「最近は、ジュンたちも忙しいですからねぇ。」

雛「トモエもなの。こうこう、っていうところは、とっても忙しいんだって。
  トモエはこうこうでも剣道してて、けんたいかい、っていうところに行くのよ!」

翠「ほぉー、なかなかやるですね。県大会と言えば、たしかその道を極めんとする
  武士だけが行ける所……まぁ、百戦錬磨のトモエなら、優勝までいけるですぅ。」

雛「うゆ! だからね、ヒナ、おまもりを作ったの。」

翠「ふむふむ、おまもりですか……ここはいっちょ、ジュンにでも持たせてやるですかね。」
594雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:23:23 ID:qxhjsQ+N
バタム
紅「あら、それはいいわね。ジュンが聴いたら喜ぶわよ。」

雛「あっ、真紅ー! ただいまなのー!」

翠「ひえええええ!! し、しんくー!! い、今のは聴いてなかったことにするです!
  ってぇ、ただいまーって言いましたのに……」

紅「ごめんなさい、少しまどろんでいて…… けど、面白い夢を見たわ。」

雛「どんな夢?」

紅「猫よ、猫。」


 うゆ? 真紅は、ねこさんが苦手だったはずなの。
なのに、面白いゆめ……?
595雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 20:25:05 ID:qxhjsQ+N
翠「ね、猫って……たしか真紅が嫌いなもののひとつでしたよねぇ?」

紅「あれはジョナサンが悪かったのよ。あの螺旋を飲み込もうとした猫。
  よく見ると、猫という生き物は、どこか気持ちを和ませてくれるのだわ。」

雛「しんく……!」

紅「……けど」

翠「?」

紅「猫に乗って……くんくんが……! ああ、くんくん……あなたはどうして
  そんなに凛々しく美しく……!」

翠「(くんくん補正でしたか……)
  ……くんくん変身セット、当たるといいですねぇ……」

雛「うゆ……」


 やっぱり、真紅はねこさんよりも、くんくんが好きなのね。
596雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:22:03 ID:qxhjsQ+N
[19:35]
翠「晩御飯ができたですよー!」

のり「はぁーい、今日は……はなまるハンバーグよぅ!」

雛「うわーい!! はなまるさーん♪ はなまるさーん♪」

ジュン「2年前から、ほんとに好きなんだなー……」

紅「これは本当に素晴らしいものなのだわ……」


 今日ははなまるハンバーグ!
トモエものりに作り方を教えてもらってたの、それでね、
トモエのお家で食べることもあるのよ!
597雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:24:24 ID:qxhjsQ+N
[20:57]
[ジュンの部屋]
翠「ふー、今日はスペクタクルな一日だったですぅ。」

雛「とっても楽しかったのよ!」

紅「……今度手紙を出すときは…… 私も連れて行って頂戴?」

雛「うん! 真紅もおでかけするの!」

翠「猫は大丈夫なんですかぁ?」

紅「世の中、悪い猫ばかりではないのだわ……多分、ね。
  さ、もう9時を回ってしまうわ。 おやすみなさい、雛苺、翠星石。」

翠「おやすみですぅ。 いい夢みるですよ!」

雛「おやすみーなのー!」
598雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:28:08 ID:qxhjsQ+N
 あしたはどようび。ジュンは「第4土曜だから休みだ」って言ってたの。
だからきのう、ジュンとトモエと、おでかけするって約束したの!

 ……ジュンががっこうに行くようになって、トモエのおうちにいたときと
同じように、ヒナはお留守番。だけど……だけどね、

 もうさびしくないの。真紅たちがいるから、ひとりじゃないけど……
……ひとりも、怖くない。夜寝るときも、みんなのお顔を思い出したら、
よく眠れるの。あしたは、晴れると……いいなぁ……

 ……すぅ…… すぅ……
599雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:37:26 ID:qxhjsQ+N
[04/05/22 13:53]
[桜田家 玄関]
 5がつ22にち、はれ!
きょうは……ジュンとトモエと、のりと、ヒナと、
真紅と、翠星石と、ピクニックにいくの!


ジュン「よーし、よく晴れたな。」

のり「最高のお出かけ日和ねぇ!」

巴「あ、そうだ、これが届いてたんだけど……」

ジュン「ああ、僕にも届いてた。」


 トモエとジュンが、何か紙をもってきて……
あっ、ヒナたちが書いたお手紙なの!

 翠星石ったら、ドアのかげに隠れちゃったの……。

雛「翠星石ぃー!」

翠「ちょっ、こっちくるです!」ヒョイッ

雛「う、うゆ。」
600雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:39:03 ID:qxhjsQ+N
翠「……ちゃんと、読んでもらえるですかねぇ……」

紅「心配はいらなくてよ、ほら。」ぐい


雛「…… !」ドキドキ
翠「…… !」ソワソワ


 ヒナたちは、すこーしだけドアのかげから顔を出してみるの。
そしたらね……

ジュン「ほぉー、字、うまくなったなー……。
    ふっ、『ジュンさま』の『ま』が逆だよ……」

巴「ふふ、いいじゃない、一生懸命書いてくれたんだから。
  私のは絵も入ってたよ。……よくこれだけ描いたねー……。」
601雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:40:09 ID:qxhjsQ+N
 ちゃんとお手紙読んでくれたの。翠星石のもよく読んでいたわ。
ありがとう、ジュン、トモエ!


ジュン「えーと……水銀燈だな、んで金糸雀、おっ、翠星石が怒ってないな。」

巴「蒼星石、真紅、雛苺……雪華綺晶に薔薇水晶。みんないるんだね。」

ジュン「真ん中が……僕と、巴と、姉ちゃん、だな。」


 ヒナね、ジュンたちの絵を描いて、入れておいたの。
……翠星石は、なにか入れたのかな……?
602雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:41:24 ID:qxhjsQ+N
ジュン「……ふふふ、どうやら、翠星石は今度スコーンを焼いてくれるみたいだな。
    たのしみにしとけですぅ、だってよ。」

巴「ふふふ……楽しみだね。 あっ、一番最後の行、
  『ぴーえす』って書いてあるよ?」

ジュン「……2枚目は……ないな。裏か?
    おっ、あった。 『ともえけんどうのしあいがんばるですよ ふあいと』
    『のりいつもありがとうです りょうりがんばるです』」

巴「わぁ……ありがとう、翠星石。」

のり「どういたしまして!」
603雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:44:04 ID:qxhjsQ+N
翠「と、と、と、とんでもねーですぅ、翠星石こそ、どういたしましてですぅ……!」ヒョコッ

雛「ヒナのもよんでくれてありがとうなの!」ヒョコッ

ジュン「あっ、なんだそんなところに居たのか……」

巴「お手紙、ありがとうね。桜田君も、のりさんもとっても喜んでくれたよ!」

雛「♪」
翠「♪」
604雛苺と翠星石の手紙 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 21:45:22 ID:qxhjsQ+N
紅「……これで来週、私のくんくん変身セットが当たればいいのだけれど……」

のり「大丈夫! 真紅ちゃんは字も上手だし、常連さんだから……」

紅「ありがとう。 さ、もうそろそろ2時になってしまうわ。はやく目的地に行きましょう?」

雛「レッツゴー! なのー!」

翠「レッツラゴー、ですぅ!」

ジュン「だからソレ古いって……。」

翠「つべこべ言わずに、とっとと行くです!」

雛「行くのよー!」


 えへへ……きょうは、みんなで、いーっぱいお外で遊ぶのよ♪
ねこさんたちも、あそびに来ないかなー、なの!

                   【雛苺と翠星石の手紙 おわり】
60511 ◆TEGjuIQ24E :2010/06/02(水) 22:03:52 ID:qxhjsQ+N
今回の投下は以上です。
規制中シベリアで書いたものを、こちらに投稿しました。

が、
投稿後になって気づいてしまったので、
訂正事項をひとつ……。

>>577、2004年の第4金曜は5月21日でした。
ですので、>>577

[04/05/21 13:38]

 5がつ21にち、はれ!
……となります。
ここに訂正するとともに、お詫び申し上げます。
以後、推敲の徹底に気を付けます……

>>584
支援ありがとうございました。

それでは、また。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/02(水) 22:05:52 ID:yRgzQ+MX
久々の投下で素晴らしい良作
乙乙
607名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/07(月) 11:52:13 ID:uQpkHAga

77 名前: 40歳無職(東京都) [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 22:26:21 ID:nU6siOSR0
[ 水銀党員向け回覧 ]

翠に援軍を出すべし。
相手に偽が入っているのは間違いないが、実際のところは全くわからない。

投票数:5320レス 18:30:00現在
1位 2254票 柊つかさ@らき☆すた
2位 1816票 翠星石@ローゼンメイデン オーベルテューレ


救援のメリット
・党員が翠の負けを望んでいるみたいな不名誉なうわさを否定できる。
・翠の支援なしには銀様も勝っていくのは厳しい、こちらも救援の姿勢を見せる必要あり。
・今回、アンチがローゼン潰しに成功したら、味をしめて銀様にも仕掛けてくる可能性が高い。
・もし翠が圧勝すれば、アンチローゼンの士気が落ちて、最強といわれる銀様潰しは断念してくるかも。
・なにより、苦戦している仲間を見捨てれば、銀様と党員は卑怯者の烙印を押されてしまう。

デメリット
・翠が勝ったとき枠数の関係で、銀様戦では、より激しい抵抗が予想される。
608名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/10(木) 12:24:30 ID:RQ9c1/6i
>>607
なんだこれ?、新手の荒らしか?
609名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/13(日) 07:27:20 ID:jnG98rr4
乙。素晴らしい。
猫は原作とアニメの猫なのかな?
610名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/17(木) 19:31:12 ID:ng3oRft6
保守
611名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/25(金) 12:42:38 ID:l0tIgdso
「アリスゲームが終わったら」はまだ読めないのか
612名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/04(日) 12:11:00 ID:hyIZPIE4
>>611
俺もいまだに待ってるよ
613名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/09(金) 20:37:01 ID:xpypxR/u
新作期待
614名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/15(木) 00:55:11 ID:jWfJi8of
615名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/04(水) 08:33:08 ID:tC6GaLZk
保守
616名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/11(水) 12:49:15 ID:tBtgifqb
HOSH
61711 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 13:22:42 ID:Ln6dIui0
書き込めたら新作投下しますよ。
61811 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 13:47:36 ID:Ln6dIui0
ご無沙汰しております、>>11です。
>>606>>609
ありがとうございます。
猫はその通りです。

【水銀燈と薔薇水晶の贈物】
題材的に6月に投下しておきたかったものですが
色々在りまして8月になって投下態勢が整いまして。
今日は第1話を投下します。ではいきます。
619水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 13:53:23 ID:Ln6dIui0
【第1話 父への思い】

[2004/06/19 14:44]
[ドールハウス Enju Doll]

めぐ「開業2周年フェア……? 今なら2割引、かぁ……。」

めぐ「ここだよね? 水銀燈。」

水銀燈「ええ。」


 ……珍しく、この子が外に出てきている。
柿崎めぐ、18歳。私の契約者。めぐは……去年の10月26日まで、
ずっと入院していた……。今でも、一ヶ月に一度、
術後の経過を診るため、病院に通っているわ。

 今はその健診を終えて、家に帰るところ。
めぐは幼い頃から身体が弱くて、ろくに運動もしたことが無いって言っていたから、
めったに外には出てこないけど……こういうときは、決まって私を連れ出すわ。

 私がめぐと出会って、1万9200時間と少しが経つ。……2年と、2ヶ月。
316号室には、別の誰かが入院していたけれど、今でも、あの歌が聞こえてくる気がする……。
620水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 13:56:50 ID:Ln6dIui0
銀「今日は土曜だから、ジュンもいると思うわぁ。」

めぐ「そうなんだ。 あれ? まだ何か書いてある……」

銀「『父の日に、お父さんに素敵なお人形を贈ろう』」

めぐ「!」

銀「…… ……」


 私のお父様は……あの戦いが終わった今も、姿を現さない。
「アリス」にしか、逢うつもりはないという……。
あんな形の「アリスゲーム」が終わり、今ある形のゲームが続いていて、
まだ「アリス」は生まれていないから……。

 そもそも、「アリス」がどういうものなのか、私達にも、契約者にも分からない。
……お父様なら、間違いなく知っているけれど。


めぐ「…… ……入ってみよっか。」

銀「…… ええ。ジュンの働きっぷりを、見てみたいからねぇ。
  それに…… あなたにも協力してあげるわぁ。」

めぐ「どういう意味?」

銀「ふふ……。」
621水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:01:12 ID:Ln6dIui0
[14:47]
カランカラーン
ジュン「よーし、上がりだ。 ……あれ? 柿崎さん。」

めぐ「あっ…… こんにちは。」

ジュン「水銀燈。」

銀「ごきげんよぉ。今日はもう、仕事は終わったの?」

ジュン「ああ。たった今、な。いいものが仕上がったんだ。
    そこに……ホラ。」

めぐ「わぁ……『黒無垢』って感じだね」

銀「……あら、素敵なドレスねぇ。」


 桜田ジュン。マエストロ級の腕をもつ男の子。
真紅と翠星石、それと雛苺の面倒を見ているわ。

 あの真っ黒いドレスも、ジュンが作り出したもの。
……また、彼の力を貸してもらおうかしら。
622水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:05:22 ID:Ln6dIui0
ジュン「ありがとよ。 ……お、薔薇水晶ー。」

薔薇水晶「はい…… あっ、水銀燈。」

銀「ごきげんよぉ、薔薇水晶。」

薔「きょうは……めぐも一緒」

めぐ「こんにちは、薔薇水晶。 ……あれ? その紙は……」

薔「……なんでも……ない。ちょっと、手紙を……」

めぐ「そうなんだぁ。」

薔「……秘密……だから」

銀「大丈夫よぉ。……あらかたの見当はつくけどぉ。」


 ふーん……薔薇水晶、エンジュに手紙を出すのねぇ。
言いたい事があるなら、直接……いいえ、手紙で伝えたい事も、
あるにはあるわよねぇ。
手紙でしか伝えられない事も……。
623水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:11:33 ID:Ln6dIui0
[14:56]
めぐ「えーと……このオススメのにします。」

ジュン「これですね。」

銀「……逆の十字もつけておいて頂戴?」

ジュン「おう、まかせとけ。」

めぐ「水銀燈……着てくれるのね!?」

銀「いいわよ。」

ジュン「完全オーダーメイドなんで、サービスしときますよ。」

めぐ「ありがとう、ジュンくん。」


 ふふ……めぐのためなら、なんだってするわぁ。
……同じように、同じ悩みを持ってきたんだから……。
624水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:16:02 ID:Ln6dIui0
[15:02]
[帰り道]
めぐ「今日ねぇ、パパの仕事も一区切りつくから、5時くらいには帰ってくるの。」

銀「そう……今日は早いのね。あなたのお父様、土曜でも8時くらいにしか帰ってこなかったし……
  時には夜中に帰ってくることも、日曜に仕事に出る事もあるんだったわね。」

めぐ「一応、役職持ってるから……。ずっと、仕事仕事って。
   私もずっと入院してたから、遠出なんてしたことなくて」

銀「……」

めぐ「ずっと手を握ってくれてたおばあちゃんも、私が小さいころには死んじゃって、
   ママも耐え切れなくて、出て行っちゃって……。」

めぐ「何度も何度も、パパを……」

銀「…… ……そんなことも、あったわねぇ。 私だってそうだった。
  完全に造ってくれなかったお父様を、何度恨んだか……
  ……けど、恨んでも恨んでも、やはり……というか……」
625水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:18:43 ID:Ln6dIui0
めぐ「素直じゃなかった。子どもだったんだね、私。」

銀「私もよぉ。 ……あれじゃあ、お父様も逢ってくれないはず……。
  たとえあの『殺し合い』を制していたとしても……。」

めぐ「……つづきは、お家で、ゆっくり話しましょう?
   紅茶でも飲みながら……。」

銀「それも、そうねぇ。さ、早く開けて頂戴。」

めぐ「はいはい。 えーと……ごー、まる、に、っと……」



 めぐの父親は……仕事柄あちこちを転々としていたと聞く。
めぐの退院が決まって、すぐにこのマンションに引っ越した。病院が近いから、という理由で。
備えあれば……ね。

 めぐはまだ、自分の父親に、私のことは内緒にしているわ。
たまに見舞いに来ても、私はベッドの下に隠れさせられていたから……
点滴の薬が入っている容器や、食器が床にばら撒かれるのを、何度も見たことがあるわ。
帰っていく背中が、淋しげだった……。帰っていくというより、逃げているようにも見えたけど。

 だから、まだ、私とめぐの父親とは、直接会ったことがない。
626水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:22:08 ID:Ln6dIui0
[15:08]
[柿崎家。]
銀「今日のお昼は、ハンバーグねぇ。」

めぐ「……形がいびつだけど。もうお昼っていうより、おやつだね。」

銀「まぁ、ねぇ……。のりの方が一万倍上手だわぁ……。」

めぐ「……ふふふ」


 めぐの父親は、めぐに昼食を作ってから仕事に出て行っている。
……たまにめぐが自分で料理したり、私が作ってあげたりしているけど。
ちなみに、めぐの料理は、すこしだけ味が濃くて、父親のは、すこしだけ味が薄いのよ。


めぐ「はい、紅茶。」

銀「ありがと。」

めぐ「……そこの本、読んでいいよ。」

銀「ええ。……なら、アレ、取ってくれる?」

めぐ「『TV Jiro』? はい。」


 ……『くんくん探偵』も気になるし、暇はつぶせそうだわ。
いちおう、他のプログラムのことも、頭に入れておきましょう……
……ふーん、いろんな番組があるのねぇ……。
627水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:24:19 ID:Ln6dIui0
パラパラ……
銀「……『アットホーム・ダディ』 ……見ごたえはあるの?」

めぐ「うーん……どうだろ? 火曜の10時だったよね……
   私は観たことないから、よく分からないなぁ。」

銀「そう……。めぐは早く寝ちゃうからねぇ……。
 『トリビアの湖』…… あら、『くんくん探偵』!」

めぐ「……予約しよっか?」

銀「……ジュンの家で観るから、いいわぁ。ありがと。」

めぐ「そう。」


[15:15]
ペラペラ……
銀「……『父の日特集』」

銀「ねぇ、めぐ?」

めぐ「……『父の日』、さっきのお人形屋さんにも、そんな貼り紙があった……
   ……パパにありがとうって言う日……じゃないかな。」

銀「……6月20日ですって……。 明日……!?」

めぐ「あした……なんだ……。急に言われると、もう? って感じよね……。」
628水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:25:33 ID:Ln6dIui0
[16:55]
銀「……そろそろ、帰ってくるころじゃない? ……出かけてくるけど……」

めぐ「そ、そう……? うん……。」

銀「……なら、21時には帰ってくるから。」

めぐ「うん、分かった。」


 ……少し調べものがあるから、出かける事にするわ。
めぐの家庭との兼ね合いもあるし、丁度良かった……。

 さて、ジュンの所に行きましょう……


[17:04]
[桜田家。]
ジュン「くぁー……やっと終わった。単語ばかり書いてると、腕が痛くなるな……。
    さて、ヤホオクでも覗くか……」

ジュン「……ぬおっ、『金の脳みそ』が出品されてるじゃん! これは欲しい……
    壱万円か……高いなー……。メロンパン入れに壱万は……。」

バンバン
ジュン「……? お、水銀燈か。」

銀「ごきげんよぉ。また逢ったわね。相変わらず大きな独り言ねぇ……」

ジュン「……うるせぇ。」
629水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:28:20 ID:Ln6dIui0
銀「ひとり?」

ジュン「ああ。真紅たちは下でくんくんのDVD観てると思う。」

銀「そぉ。 それならちょうどよかったわぁ。」

ジュン「……ん? パソコン、使うのか?」

銀「ええ。少し、使わせてもらえる?」

ジュン「いいけど……調べ物か。」

銀「ええ…… 少しね。」


[父の日   ] [検索]

ジュン(……「父の日」?)


 調べてみると……父の日は、毎年6月の第三日曜日。といっても、
この国での話で、国によって違うそう。

 1909年……米ワシントン州で、ドット夫人という人が、男手一つで
育ててくれた父親に感謝し、教会の牧師に頼み込んで、父が生まれた6月に
礼拝をしてもらったことが……ルーツと言われているようね。
母の日があるなら父の日も、という願いがあったそうよ。
630水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 14:31:17 ID:Ln6dIui0
銀「…… ……」

ジュン(…… め、眼が本気だ)


 このドット夫人の父は、1861年に勃発した南北戦争に召集され、
彼女を含め6人の子どもは母親に育てられることになった。
父親の復員後すぐに、その母親が亡くなって、その父も子ども達が
全員成人する頃に亡くなるけれど、男手一つで、6人の子どもを育て上げた……
……というわけねぇ。

 そして……父の日に、父親に贈る花。それが……薔薇。
ドット夫人は、父親の墓前に白い薔薇を供えたそうよ……。


ジュン(ふーん……薔薇なんだ……
    そーいえば……こいつらって)


 父の日と私達……先に生まれたのは私だけど、
どこか……つながりを感じずにはいられないわねぇ……。

 そろそろ、めぐの父親も、帰って来る頃ねぇ……。
631水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:07:19 ID:Ln6dIui0
[17:05]
[柿崎家。]
めぐの父「ただいま。帰ったぞ。」

めぐ「……おかえり」

めぐの父「身体は大丈夫か?」

めぐ「……パパったら、いつもそれなんだから。大丈夫。」

めぐの父「ははは……やっと仕事もひと段落ついたから、明日は休めるぞ。」

めぐ「そう……」

めぐの父「……さて、夕飯は何にしようか……」
632水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:11:40 ID:Ln6dIui0
[17:36]
[ジュンの部屋。]
銀「……ありがと。……ジュン、もういいわ」

ジュン「ん。そうだ、飯でも食っていくか?」

銀「……いいの?」

ジュン「いいぞ。ちょっと待ってろ、姉ちゃんにメールする。」

銀「……?」

ジュン「携帯電話だよ。去年、父さん達が買ってくれてたんだけど……。
    受験とかあったから、ろくに使った事なくて。」

銀「ふーん……」


 そういえば……ジュンの両親は、今まで一度も見た事がないわねぇ……。
確か、仕事でずっと海外に行っているとか……

 携帯電話も、めぐは持ってないし……
みつの家で、ちらりと見たくらいだったわねぇ。


ジュン「……気味が悪かったよ、最初は。なんだっていきなりあんなものを寄越すのか、
    って……。高校に上がったから、フルに使ってやろうって思ってさ。
    だからクラスの奴らのよりかは、形が2個くらい古いんだよな……。」

銀「…… ……そうよねぇ。分かるわ。」

ジュン「……紅茶でも飲もうか。降りてきなよ。」
633水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:12:55 ID:Ln6dIui0
[17:45]
[リビング]
真紅「……すぅ ……すぅ……」
雛苺「すぅー…… すぅー……」
翠星石「……ダメですよチビ人間…… 賞味期限……きれてるです……Zzz」
のり「……Zzz」

ジュン(……もう眠ってやがる……ものの30分で。)

銀「……よく眠っているわねぇ……」

ジュン「遊び疲れたんだろ。姉ちゃんも姉ちゃんだ、これで社会人かよ、ってくらい
    週末になるとこいつ等と遊び倒してるし……」

銀「……ふふ」

ジュン「ホラ、そこの写真立ての中の。もう……すっごく前のだけどさ」


 ……これが、ジュン? この子が……
のりもいるわね。 ……後ろの二人は……


ジュン「……左が姉ちゃん。6歳だな。
    それで……姉ちゃんを抱いてるのが父さん、僕を抱いてるのが母さん」
634水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:16:07 ID:Ln6dIui0
ジュン「らしい。」

銀「らしい、って……」

ジュン「けど……わかるだろう? もうずっと会ってないのに、親なんてさ。
    ……死んでるのと同じだ、と思ってたこともあった。」

銀「そうねぇ…… 私も……前のゲームに負けるまでは、そう思ってたわ。
  死んでる、とか……じゃなくて、殺したいくらいにねぇ……。
  めぐも、自分のお父様に、そう言ってたわぁ。アイツさえ居なければ……って」

ジュン「うーん…… けど、やっぱり……心のどこかで、淋しいと思っちゃってるのかもな。
    なんだかんだで、親がいないと、……さ」

銀「…… ……愛しかった、ってことなのかもしれないわ。
  愛憎、って言うくらいだから」

ジュン「……けど、深いところまでは僕にはまだ分からないや……。
    子どもだからかな……。」
635水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:19:26 ID:Ln6dIui0
[17:56]
ジュン「そういえば……薔薇水晶のやつ、手紙を書いてたな。」

銀「めぐに手紙を見られそうになって、必死に隠していたわねぇ。
  誰宛なのかしら? あらかたの見当は付いてるけどぉ……」

ジュン「……エンジュさんだろ。」

銀「やっぱりぃ……」

ジュン「なんせ、明日が父の日だからな。」

銀「……ああ、そういう意味なのねぇ。」


 ……父の日だから、父親に宛てるのは
当然と言えば当然……かも……。


銀「…… ……」

ジュン「…… どうしたんだ?」

銀「…… 金糸雀たちは…… どう思っているのかしら……」

ジュン「…… お父さん……ローゼンか」

銀「ええ。」
636水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:21:08 ID:Ln6dIui0
ジュン「…… 本人達に聞いてみないと、分からないな……
    けど、どこかしら、思っているところはあるかもな。
    あんなゲームにも、懸けていた訳だし。」

銀「そうよねぇ……。」


 今となっては、あんまり誰も口に出さないけど……
あれだけ必死に戦っていたのは、事実。
時代が経つにつれて、一日中お父様の事を口に出す姉妹は
減っていったけど……ね。

 雛苺なんかは、一回もお父様について話をしなかったし。
翠星石もずっと蒼星石のことばかりだったわね。


[18:00]
[ジュンの部屋]
銀「……今でも、夢に見ることがあるわ。
  舞踏会に出る夢……相手は……お父様。」

ジュン「ほぉ……。」

銀「ずっと前から……めぐと出会う前から、ずっと、そんな夢を見るの。」

ジュン「…… やっぱ、」

銀「…… ?」

ジュン「好きなんだな、お父さんが。」

銀「けど……顔は見えない。見ることが出来ない……。
  顔なんか、はっきり見た事がないから……。」

ジュン「……お前が、覚えてないだけじゃないのか?」

銀「え……?」
637水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:27:01 ID:Ln6dIui0
ジュン「……ローゼンさんは、覚えてると思うぞ。お前の、
    本物の……笑顔とか。こればっかりは本当に顔を見てないと、
    見られないわけだろ?」

銀「そう……かしら……。」


銀「……けど」


銀「お父様は……あの時、私を置いて……行ってしまった」

ジュン「大丈夫だって。実際、僕も親の顔なんか覚えてないし、
    あてに出来るのはあの写真だけなんだ。
    今、いい加減年もとって、どれだけしわが増えてるかとか、白髪が増えてるかとか、
    どうなってるかすら全然想像がつかないし……。それこそ、置いていかれてるよ……。」


ジュン「けど、姉ちゃんは言うんだ。」

銀「……?」

ジュン「今でも、僕の事も心配してくれてるんだって。
    たぶん……柿崎さんのところも、お前も、そうじゃないかな……。」

銀「……ふふ……そう、よね……。」
638水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:32:15 ID:Ln6dIui0
ジュン「手紙でも、書いてやりなよ。それと……」

銀「?」

ジュン「……僕なら……もう、逢ってもいいと思うな。」

銀「どういう意味……?」

ジュン「なんでもない。僕も、たまには手紙の一つでも書くかなぁ……。」

銀「…… ……」


 ……手紙ねぇ……。薔薇水晶もやってたけど……
なんとなく……届きそうな気がするわね。

 さて……ちょっとだけ外に出て、気分転換しましょうか……。

カララ
パタパタ……

ジュン「……あれ? 窓が開いて……蚊が入っちゃうだろ……、
    水銀……ん?」
639水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:32:59 ID:Ln6dIui0
[ちょっと外の空気を吸ってくるわね ありがと][検索]


ジュン「……やっぱ、変なとこ素直じゃないなぁ……」

蚊「ブゥーン」

ジュン「ぬぁっ、このっ……!」アタフタ


 
 30分くらいして、また部屋に戻ってきたら、
窓は締めていくように、ジュンに怒られてしまったわぁ……。
真紅たちも起きていたし、夕ご飯もいただいたわぁ。

 ……団欒のなかで、父の日についての話題は出なかったわねぇ。
別段、何があるじゃなし、いつもどおりに夕ご飯も終わった……。
640水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 15:37:25 ID:Ln6dIui0
[22:59]
[めぐの部屋。]
めぐ「……ねぇ、水銀燈?」

銀「めずらしいわね、退院してから、こんな時間まで起きてるなんて。
  ……明日の協力なら、してあげるわよ?」

めぐ「……それは大丈夫。けど……」

めぐ「ああいうときって、肩をもんであげればよかったのかな?
   今までそういうこと、したことなかったから……分からなくて」


 ……ジュンの部屋から、気分転換って言って、
礼拝堂に戻っている間……めぐが父親の事で悩んでいたら
どう答えてあげればいいか考えていたけど、
30分かかっても結局分からなくて、行き詰ってしまっていたのよねぇ……。


銀「……ごめん、めぐ」

めぐ「……?」

銀「……私にも……考え付かないわ。」

めぐ「……そっか……」
641水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:00:49 ID:Ln6dIui0
銀「……ジュンは手紙を書くって言ってたけど……」

めぐ「……お互い、パパには慣れてないから……」

銀「……あっ、だけど……ひとつだけ……ひとつだけ、浮かんだわ。」

めぐ「なぁに?」

銀「耳を貸しなさい? …… ……」

めぐ「…… ……それを言えばいいの?」

銀「これしか思いつかなかったわ。けど……これなら……喜んでくれるはずよ。」


銀「…… すき、って。」
めぐ「…… すき って」

めぐ「……言えばいいのね。」

642水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:02:45 ID:Ln6dIui0
めぐ「……手紙もいいけど、やっぱり……言葉が一番なのかな」

銀「……お父様には慣れてないから、よく分からないわ。
  私はもちろん……ドールズは……みんな。けど」

銀「あなたならたぶん……何が一番か、分かるはずよぉ。
  ジュンや私は、すぐには逢えないから、手紙にするけどねぇ。」

めぐ「……そうだね」

銀「ふふ……なら、私はもう少し本を読んでから眠るから。
  メイメイ、右のページを照らしてくれる?」

メイメイ{チカチカッ}

めぐ「……おやすみ、黒い天使さん」

銀「おやすみなさい、めぐ」
643水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:07:24 ID:Ln6dIui0
[04/06/20 08:02]
銀「…… !」ガバッ

めぐ「おはよう、水銀と……あれ? どうしたの、水銀燈。」

銀「え……っ?」

めぐ「悲しい夢でも見たの? 泣きながら眠ってたみたいだけど……」

銀「……だ、大丈夫よ、めぐ。」ゴシゴシ


 めぐったら……たぶん、私が眠っている間に、
勝手に鞄を開けたようね……別に、いいけどぉ。 



めぐの父「……Zzz」

銀「よく眠ってるわねぇ……」

めぐ「ふふ……パパ、まだ寝てるの。たぶん、お昼まで寝るかも。」

銀「こういう日くらい、めぐと出かければいいのに……」

めぐ「仕事で疲れてるのよ、きっと。だから、寝かせておいてあげようかな、と思って。
   ……ママが昔言ってたんだけど、家に帰ってしっかり寝るのも、
   一年で半分もなかったみたいだから。」

銀「そう……。」
644水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:11:34 ID:Ln6dIui0
めぐ「パパが起きたら、一緒に出かけてこようかな。」

銀「そうしてあげなさい。」

めぐ「さ、朝ご飯にしよっか。」

銀「そうねぇ。卵焼きがいいわぁ。」

めぐ「甘いの、作ってあげるね。」



 そう……あの夢を見たの。
夢の中で……まともに父親の言葉を聴けない
自分が、情けなくて……泣いていたわ。

 いままではそんなことなかったのに……
ジュンの言葉のせいかしら……?
……できれば、めぐには見られたくなかった……
645水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:12:20 ID:Ln6dIui0
[08:23]
 めぐが作ってくれた卵焼きをほおばっていると……
突然、めぐが真剣な顔で、私の方を向いた。


めぐ「……私、決めたんだ」

銀「何を……?」

めぐ「今日の夜……あなたを、パパに紹介する。命の恩人の一人だって」

銀「……そう。」

めぐ「……それに、こうすれば、水銀燈も一緒にお出かけできるから。」

銀「……ふふ」
646水銀燈と薔薇水晶の贈物 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:14:07 ID:Ln6dIui0
 私たちは、本来は『まいてくれる人間がいない限り』……
招かれざる客……居てはいけない者だった。

……以前までは、まいた人間がいたとしても、高く売捌いたり、
裏取引に使ったり……何度も埃をかぶってきた……。
私たちが珍しい人形だと知って……。

 けど……やはり、この時代だけは特別のようね。
誰もが……私たちを受け入れてくれている。

 人間の形をしていても、人間ではない私たちの間にも……
ちゃんと、つながりを見出してくれている。
ジュンたちは「絆」と呼んでいたわね。


 さて、今日もジュンの所にでも、遊びに行くとしましょうか……。

                    【第2話へ続く】
64711 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/12(木) 16:25:56 ID:Ln6dIui0
……今回の投下は以上です。読んでくれた方、乙でございます。

【SPECIAL THANKS】
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%88%B6%E3%81%AE%E6%97%A5
ttp://gogen-allguide.com/ti/chichinohi.html

5月に「父の日に贈り物でもしよう」と思ってググってたら
「薔薇を贈る」という事実を今更知り、
瞬時にローゼンを思い起こし、これを書き始めました……。
……来年の父の日は6月19日です。

それではまた。
648名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/13(金) 19:45:39 ID:lgF+/3UR
続きまだ〜
64911 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:25:30 ID:3d9x4tAd
お待たせしました

水銀燈と薔薇水晶の贈物

第二話、投下しますよ。
650水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:33:15 ID:3d9x4tAd
【第2話前篇 父に贈るもの】
[2004/06/20 10:02]
[上空。]

 ……こうして空から町を見てみると……
日曜日だから、人が多いわねぇ……


スゥーッ……
「……御機嫌よう、水銀燈」

銀「? ……あらぁ、薔薇水晶じゃない。」

薔「ふふふ…… お出かけには、いい天気……」

銀「どこへ行くのぉ?」

薔「病院の裏の……野原。水銀燈も、来ますか……?」

銀「ええ。……懐かしいわねぇ。少し、寄り道しようかしら……」
651水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:40:13 ID:3d9x4tAd
[10:10]
[有栖川病院の裏、野原。]

 ここは……めぐがそろそろ退院するっていうころ、よく訪れていたわ。
礼拝堂のすぐ近くにあるし……森の中を抜けていけば、誰にも感づかれずに
たどり着けたわねぇ……。そういえば、翠星石たちも、ここに遊びにきているようね。

 薔薇水晶は……さっきから、あたりを見回しているわね……
ここにはシロツメクサと森と礼拝堂以外、なにもないのに……


薔「……」キョロキョロ

銀「……どうしたの? ……落し物?」

薔「……いいえ」スック

銀「……!?」

薔「落し物じゃあ……ない。」ギラリ

銀「はぁ……!?」
652水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:47:24 ID:3d9x4tAd
 薔薇水晶の眼が、本気になっているわ……
まるで、2年前の夏……前のアリスゲームの時のよう……


薔「!!」ビシィッ

銀「……まさか」

薔「……」スゥーッ

グググ……


 人差指で、丁度地面が禿げているところを指差して、
上にスッと上げて……水晶を作りだしたわ。
高さは、8cmほど……。

薔「ふぅ……」ジャキィッ

銀「あ……貴女、それは……」

薔「水銀燈、……少しだけ……下がってて」

銀「……!?」


 ……紫水晶で出来た剣を取り出したわ……。
こんなところで……いったい何を……
まさか、あの水晶を斬るのぉ……!?


薔「……!!」ズバンッ!!

銀「ひっ……!?」

薔「…… ……」ズバンズバンズバンズバンッ!!
653水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:52:28 ID:3d9x4tAd
[10:14]
薔「99、100……よし、これで全部……。あとは、糸に通して……」

銀「……紫水晶の玉が、100個。 ……ふふ、ブレスレットねぇ?」

薔「ふふ……ブレスレット。 ……お父様に、あげる……♪」


 切り出した水晶から、ブレスレットを作ってしまったわぁ。
水晶を扱うのは、お手の物ねぇ。流石だわ……。
けどぉ……使ったのは40個。後のは、どうするのかしら……。
654水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/18(水) 23:57:19 ID:3d9x4tAd
[10:40]
 結局、ブレスレットが3個出来上がったわ。
ひとつがエンジュとして、小さい方と大きい方が一つずつ……
誰にあげるのかしら……?


薔「……こっちの……20個で出来ている方は……水銀燈、あなたにあげる……♪
  ……付き合ってくれた、お礼。」

銀「あら……ありがと。」

薔「本当は……ローゼンにもあげたいけど……3つ目のブレスレット……」

銀「お父様に……。」

薔「お姉様のお父様だから……。 ……いいでしょう?」

銀「もちろんよぉ。エンジュはお父様の弟子……だから、よく分かってるはずよ。」

薔「逢える時が来れば……渡します。」

銀「そうねぇ……。きっと、喜んでくれるわよ。」
655水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:02:03 ID:bFZ+sZsU
[10:50]
銀「そう…… それで、今夜、渡すのね?」

薔「……夕御飯の、前にでも……」

銀「ふふ……。それはそうと、あんな眼は久しぶりに見たわぁ……。」

薔「……剣を握ると、眼が本気になってしまうの……。気合が入る……。
  たぶん……トモエも……」

銀「剣道をしているわよねぇ。」

薔「貴女も、そうじゃない……?」

銀「……それもそうねぇ。私も剣を持っているけど、確かに気が研ぎ澄まされるっていうかぁ……。
  何かに気を込める時、そんな気分になるわぁ。半端な気じゃぁ、何にも出来ないから……。」


 ……ふふ、1年前、貴女や蒼星石、雛苺……
そして私を救ってくれた、ジュンや真紅たちの
熱い眼を思い出したわぁ。

 ……そうね、あの出来事がなければ、
私たちはここでおしゃべりなんてしていないはず……
いいえ、もっと悲しいことに……

 だから、ジュンたちには本当に感謝してもしきれないわぁ。
もちろん、真紅にもねぇ。
656水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:07:49 ID:bFZ+sZsU
[11:01]
銀「……耳を澄まして御覧なさい……?」

薔「…… ?」

薔「…… 何か……聴こえる。 ……歌」

銀「……また、誰かが、歌っているのねぇ……。」


 やはり、薔薇水晶にも聞こえた……北原白秋・山田耕筰の「からたちの花」。
これは……めぐが歌っていた歌の一つよぉ。


薔「…… …… 夢は 風 光 導く」

薔「これも、……めぐが歌っていた」

銀「そっちの歌も聞こえてきたのねぇ……。」

銀「……けど、これはめぐが自分で作ってた歌のはず……」

薔「……めぐが自分で作ってた歌のはず…… きっと……
  隣の部屋の人が……憶えていたのかも……」

銀「ふふっ、めぐはそんなに声が大きい方じゃないから、
  それはないと思うけどぉ……ま、それはそれで……
  アリかもねぇ。」
657水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:11:13 ID:bFZ+sZsU
[11:09]
 歌が聞こえてくる、病院の3階のほうを見上げ……
私とめぐが契約を交わしてすぐ、めぐが苦しんでいたら、
薔薇水晶がやってきた時の事を思い出した……


銀「……ねぇ貴女、憶えてる……? 2年前、私とめぐが、
  あの病室で誓いを交わした頃のこと……」

薔「……2年前……。 もちろん……です。」

薔「…… …… 忘れる わけが……ない……
  忘れては…… いけない……
  ねえ貴女、憶えてる…… 2年前、貴女とめぐが……契約した頃のこと」

銀「……ふふ……もちろんよ。忘れてはいけないわぁ。
  今になって思えば……貴女が居なければ。めぐを助けてやろうなんて
  思わなかったかも……。」
658水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:17:18 ID:bFZ+sZsU
薔「…… ……」

銀「……、もう、いいのよぉ。 まったく……真紅といい、貴女といい……
  あんなに昔の事…… 私もだけど……。」

薔「めぐは貴女のために 貴女はめぐのために。」

薔「けど…… わたしは…… わたしは、それを……」

銀「……一番……ジャンク、ジャンクって言ってたのは……私なのにねぇ……。
  そういうことは、言うものじゃないわね……。
  あなただって…… 好きなエンジュのために、闘っていたじゃない……。」

薔「…… ……!」
659水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:22:10 ID:bFZ+sZsU
 ……正しかったのかはさておき……誰かの為に戦うって事が、
独りよがりの戦いよりも、どれだけ意味があるかってことを、
あの時、私は教えてもらった……そんな気がするわぁ……。


銀「……ほら、眼帯……取れちゃってるわよ……」

薔「…… ありがと……水銀燈」

銀「…… ありがとぉ、薔薇水晶。」

薔「…… ……それじゃあ、もうすこし……ゆっくりしていきましょうか……」

銀「ええ。 いい天気ねぇ……。」

薔「いい天気……。いい風……。」


[11:54]
 薔薇水晶は、自分の店へ帰って行ったわ。
なんでも、「手紙を書き足したい」そうよぉ。
彼女の眼は、やはり本気だった……。

 さて、ジュンの家に向かうとしましょう……。
660水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:26:40 ID:bFZ+sZsU
[12:01]
[桜田家。]
銀「シャツはここに置いといていいのぉ?」

のり「うん! ありがとねぇ、水銀燈ちゃん。いつもいつも……」

銀「いいのよぉ。いつもお世話になってるからぁ。
  真紅ぅー? 貴女のお着替え、持って行きなさい!?」

真紅「今行くわ。 雛苺と翠星石のぶんの洗濯は、もう済んだのかしら?」

銀「あと8分ってところよぉ。ところで……ジュンは?」

紅「まだ眠っているわ。なんでも、手紙を書いていて、眠ってしまったそうよ。」

銀「ふふ…… よほど伝えたいことが多いのねぇ……
  あっ、雛苺ー? そろそろお昼だから、降りてきなさいよぉ。」

雛苺「うーい!」


 お昼御飯ができるまで、洗濯のお手伝いよ。
今日のお昼はエビのピラフ。いま、翠星石とのりが作っているわぁ。


翠星石「のりぃー! 早くねぎを切るですぅ!」

のり「はぁーい!」
661水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:34:12 ID:bFZ+sZsU
[12:07]
紅「水銀燈…… 明日は父の日だそうだけど、
  お父様に、何か贈り物は……?」

銀「もちろんよぉ。……手紙を書くわ。真紅、貴女こそ……」

紅「……私だって、言いたいことはたくさんあるのだわ。
  だから、やはり手紙にしたためる形になるわね……。それと、何かささやかな贈り物を。
  いつかの翠星石と雛苺みたいに、実際にポストに出しにいくわけにはいかないけれど……」

銀「金糸雀達は……?」

紅「みんな手紙にするそうよ。 翠星石も、雛苺もね。」

銀「そぉ……。」


 真紅たちも、手紙にするのね。
雛苺も、翠星石も……心の隅で、憶えていたのかしら……。

 そう……皆……お父様に逢いたいという気持ちは、
消えてはいないし……これからも、同じように消えない……。
662水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:37:43 ID:bFZ+sZsU
銀「また、夢に出てこないかしら……」

紅「……今でも観るのね、あの夢……」

銀「ええ。」

紅「……私も、時々観るわ。……やはり、顔は出てこないけれど……
  ……いつも遠くを見ているのだわ、夢の中では……。」

銀「そうねぇ……。 ……私の場合は、すぐそこにいるのに、顔を見られないのよねぇ。」


翠「エビピラフ、いっちょあがりですぅ! ご賞味あれですぅ♪」

雛「うわーい! エビピラフー! いっただっきまーす♪」


ギイッ
ジュン「……あれ、もう昼飯時か…… お、水銀燈。来てたのか。」

銀「御機嫌よう。遅かったじゃなぁい。」

ジュン「ああ……手紙書いてたら、寝てしまっててな……」

紅「なら、私たちも、昼ごはんにしましょう?」

銀「そうねぇ。 いただくわぁ。」
663水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:41:49 ID:bFZ+sZsU
[13:04]
[のりの部屋。]
のり「Zzz……」
雛「すぅー……すぅ……」
紅「……すぅ ……すぅ」

 どうやら、お昼寝のようねぇ……。
翠星石は、蒼星石の所に遊びに行った。
ジュンは……金糸雀の新しい服を造りに行ったわ。

 思えば、最初に私がここに侵入したとき、
ここには真紅と雛苺しか来ていなかったわねぇ。
少しして、翠星石がやってきたのよね。

 私たちが、ここに居られるのは……
……お父様が、私たちを造ってくれたからに他ならない。
あんな悲劇も、あったけどねぇ……。


 金糸雀のヴァイオリンが巧くなったこと、
翠星石のスコーンが美味しくなったこと、
蒼星石の世界が明るくなったこと、
真紅とティータイムを嗜んでいることとか……。

 雛苺がとても強くなったこと、
雪華綺晶の身体が完成したこと、
薔薇水晶という妹ができたこと……。
 
 そして私が……独りじゃなくなったってこと……。
そう、今の暮らしのことも、……手紙に書いてみましょうか……。
本当は、言葉で伝えたいけれど……。


                      【第2話後篇に続く】
664水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 00:48:50 ID:bFZ+sZsU
【第2話後篇 父の呼ぶ声】
[2004/06/20 11:55]
[Enju Doll。]

薔「…… ただいま」

エンジュ「おお、お帰り、薔薇水晶。昼御飯、今から作るからな。」

薔「……出来たら 呼んでくれますか」

エンジュ「うむ。」


[11:56]
[エンジュの部屋。]
 さて…… ブレスレットは、鞄の中にしまって……
手紙を……書きましょうか……

 ……内容は、出来てはいましたが……
水銀燈に逢って、気付けた事も……思い出せたこともあった……。
だから……書き足す。

 ……思い出せたこと……
あの……あの時の出来事。
わたしが…… 一度は散ったあの時のこと……
665水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:00:15 ID:bFZ+sZsU
[2年前。]
[2002/08/31 16:50]
[薔薇屋敷。]


エンジュ『薔薇水晶……! ローザミスティカを……出すんだ……!』

薔『おとうさま…… おとうさま……』

薔『…… …… !』

エンジュ『薔 薇 水 晶 ォ ォ …… !!』

 お父様の…… 温もりに抱かれたまま……
わたしは、 ……壊れていった。

 伸ばそうとした……手も……届かずに。

 …… ……

 そして……しばらくの間、わたしは……意識だけが、
さまよっていた。光の中なのか、闇の中なのか……分からないところ……。
おとうさまは……居なかった。
666水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:05:00 ID:bFZ+sZsU
 ずっと…… 今までのことを……思い返していた。
わたしがつくられて ……戦い始めて……

 全部壊して……全部奪って……
……全部手に入れて……全部、なくした……

 お父様も。お姉様たちも。自分自身すら……なくしてしまって……。
弱い…… 「貴女は弱い」 ずっと言っていたけれど……

いちばん よわいのは わたし……


 ずっと、それだけを考えていた……
突然、目の前に……大きな光が差すまでは……。


『バラスイショウ……!』
『ばらすいしょう……!』


 わたしを、呼ぶ声。それは……ジュンの声だったり、
真紅の声だったり……お父様の声だったり……
ぼんやりと……聞こえてくるときがあって……。
667水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:09:19 ID:bFZ+sZsU
 
『バラスイショウ』


『ばらすいしょう』


『薔薇水晶!』


 その声がはっきりと聞こえたとき……自分がどこにいるのか、
自分がだれなのか……分かった。


薔『ここは …… まっしろ』

薔『墜ちて行っているの……? それとも……浮かんでいるの……?』


 ……「9秒前の白」。お姉様たちは、そう呼んでいた……。
nのフィールドの中……いろんな世界に、通じるところ……。
668水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:14:36 ID:bFZ+sZsU
[2003/02/28 18:19]
[9秒前の白。]

 わたしを呼ぶ声のする方に、……ひたすら……ひたすら……。
……そんなとき……わたしと同じように、ここを飛んでいく影が見えた……。

 ……戦いに敗れ、散って行った……
第4ドール・蒼星石と、第6ドール・雛苺……。


蒼星石『僕たちの帰りを、待ってる人がいるみたいだね。』

雛苺『はやく……おうちにかえるのよ……!』


 ふたりは……はっきりと意識を持って……
楽しく、お話をしていた……。

 ラプラスのまやかしに負けない思い……父への思い、雛苺の宝物、蒼星石の宝物……
観てきたすべてが、たからもの……
そして これからも……
669水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:19:38 ID:bFZ+sZsU
 わたしを よんでくれている そんな人がいる……
第7ドール……ローゼンメイデンではなくても……わたしを呼んでくれている。
そんな人が、たしかにいる……。


 友として、ジュンたちが……
 妹として、真紅たちが……
 そして 娘として、お父様が――


薔『あなたたちは……つよい』

雛『あー! 薔薇水晶なのー!!』

蒼『君は……たしか!』

薔『さっきの話…… きかせて……もらいました……』

薔『わたしをよんでくれている そんな人がいる。
  少しずつでいいから…… こんどは……恩返し、したい……!』


 半年の時を隔てて……わたしは……よみがえる。
薔薇屋敷、真紅と戦った部屋で……すべてが終わった場所で……。
670水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:26:22 ID:bFZ+sZsU
 わたしのかけら……胸元の、紫の薔薇……ドアの隙間から、見える。
そこに散らばる、わたしのかけらに……一筋の光が……差してきている……。


蒼『じゃあ、また逢おう、薔薇水晶。』

雛『ヒナとうにゅー食べるのよー♪』

薔『……はい……!』

蒼『もう誰も悲しませたりは……しない。……運命を、変えてみせよう。』

薔(そう…… 運命を 変えてみせよう……
  あの光…… そこに……飛び込めば……)


バシューーン……
キラキラキラ……

…… ……
671水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:35:48 ID:bFZ+sZsU
[2003/02/28 20:22]
[薔薇屋敷。]

薔『…… ……。』ガバッ

薔『…… わたしのからだ …… 戻ってる』キョロキョロ

薔『…… かがみは どこ……? あ…… あった』



薔『わたしを呼ぶ…… 声がする。 それに……』


薔『ひとつの 戦いが……終わった。 ……終わったのですね』


薔『……雪華綺晶も ……待ってる。』


薔『…… いままで ごめん みんな』

薔『今までの分は 返します』

薔『…… 行きましょう 急がないと』
672水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:42:01 ID:bFZ+sZsU
[2004/06/20 12:39]
[Enju doll、エンジュの部屋。]


スラスラスラ……
薔「…… ……」

スラスラスラ……
薔「…… ……書けた。」


 また……眼帯が……取れてしまった。
お父様に、付けてもらいましょう……


エンジュ「薔薇水晶ー、お昼できたぞー。」

薔「…… はい。」

エンジュ「おいおい、眼帯が取れてるじゃないか。ちょっと待ってろ、今付けてやるからな。」


 それじゃあ……手紙も、鞄の中にしまって……
お父様と、お昼にしましょうか……。
673水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:46:29 ID:bFZ+sZsU
[12:41]
エンジュ「金糸雀直伝、甘いオムライスだ。どうだ? うまいか?」

薔「とっても……おいしいです。」

エンジュ「それはよかった……! さて、私も頂くとしよう。」


[13:12]
エンジュ「ふぅ、美味かった。ご馳走様。」

薔「ご馳走様。 …… あの、おとうさま」

エンジュ「どうした?」

薔「夕ご飯がすんだら……渡したいものが……ある……いいですか?」

エンジュ「それは楽しみだな。わかった、その時に渡してくれ。」

薔「はい……♪」
674水銀燈と薔薇水晶の贈物 2 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 01:51:14 ID:bFZ+sZsU
 水銀燈たちも……ローゼンに、いろいろなことを伝えたいのでしょう……。
わたしも、山ほどあるけど……、お姉様たち、はやく、逢えるといいですね……。

 今日、めぐが……水銀燈を、父親に紹介するって……
水銀燈……あのドレスを、着るのかな……? ふふ……今度、着てるところを、
見せてもらいましょうか……。


エンジュ「薔薇水晶ー、洗濯をするから、手伝ってくれないか!」

薔「はい……♪」


【第3話に続く】
675名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/19(木) 01:59:43 ID:Mtlhddm1
お疲れ様です
初めて読んだけれどこういうほのぼのはいいものだ
67611 ◆TEGjuIQ24E :2010/08/19(木) 02:07:04 ID:bFZ+sZsU
今回の投下は以上です。
読んでくれたかたありがとうございます。

今回第2話は前編が銀サイド、後編がばらしーサイドの話でした。



それでは、グッナイ。
677名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/28(土) 09:09:56 ID:BrilPNHc
乙です
678名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/30(月) 19:27:05 ID:B0Z1T0U7
「アリスゲームが終わったら」書いていた人です
まだ待っていてくれた人がいた書き込みを見てびびりましたので書かせていただきます

待っていた人には本当申し訳ないのですが 没りました・・・
モチベーションの維持に限界がしました

作成協力の「水晶の星空」の作者さんにも申し訳ないです

でも、それなりに構想を温めていたSSなので中途半端な製作中断の亡骸のtxtファイルや
アイデアメモ、おおまかな全体のストーリーのメモなどどこかにアップロードしようかなと
思ったりもします

でも、失敗作なので期待しないでください。ではノシ

P.S.
最近規制のいじめを受けているのでしばらく出没できない可能性もあり・・
679名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/04(土) 11:01:49 ID:TTUWN9Ws
乙かれさまでした。

完成品が読めないのは残念ですが、wktkさせていただきました。
没の報告してくれたのはありがたいです。

質問ですが、「水晶の星空」はどうなったか知ってます?
このスレの人じゃないんですが
680 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:05:37 ID:8GA5ES82
書き込めたら投下しますよ。
68111 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:21:00 ID:8GA5ES82
17日のご無沙汰でした……
また書き込めなくなる前に
『水銀燈と薔薇水晶の贈物』第3〜4話
イッキに投下いきます。

>>675>>677
ありがとうございます。
励みになります!

>>678
乙でした…
俺もwktkさせていただきまして
ありがとうございました。
データあがれば必ず読みます!
682水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:27:38 ID:8GA5ES82
【第3話前篇 父への言葉】
[19:32]
[桜田家。]
 ジュンの家で、3時のティータイムを楽しんで……、
真紅たちのくんくんタイムに付き添って、それから晩御飯も作ったわぁ。
メニューはやはり「花丸ハンバーグ」……もう、得意料理になっちゃったわねぇ。

のり「本当にありがとねぇ、水銀燈ちゃん!
   とっても美味しかったわよぅ!」

銀「いいのよぉ。この家に呼ばれたら、いつだってお手伝いするわぁ。」
683水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:30:57 ID:8GA5ES82
のり「……ジュンくんから聞いたけど、水銀燈ちゃん、
   お父さんに、お手紙を書くのね……」

銀「ええ……ジュンも、そういうのりだって……」

のり「やっぱり、年に何度かは、お手紙を書かないと……
   私は、暑中見舞いと年賀状、それと母の日と今日の父の日には、
   お手紙を書くようにしているわ。」

銀「そぉ……」

のり「自分たちが元気でいるってこと、ちゃんと知らせて
   安心させたいっていうのもあるのよ。」

銀「…… ……」
684水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:33:51 ID:8GA5ES82
のり「私はみんなより、あなたのお父さんのことはよく分からないけど……
   みんなが元気にしてるってこと知ったら、すっごく安心すると思うわ。
   もちろん、薔薇水晶ちゃんもね!」

銀「ふふ……ありがと、のり。それじゃ……時間も時間だし……
  そろそろ、行くわぁ。」

のり「お父さんへの言葉、……きっと届くわよ!
   また遊びに来てねぇー!」

銀「もちろんよぉ……♪」パタパタ……
685水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:35:50 ID:8GA5ES82
[19:42]
[上空。]

 そうねぇ……言葉を文字にして、手紙として伝えるってことも……
繋がりを持つことの、手段なのねぇ。
何にも伝えなければ、そこで止まっちゃうわけだから……

 まぁ、「便りがないのは、元気な証拠」っていうこともあるけどぉ……
その証拠、たまには見せなきゃねぇ……。また、
ジュンやのりから教えられたわぁ。

 さて……めぐの部屋の灯り、点いてるわぁ。
本を読んでるみたいねぇ……。
686水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:38:38 ID:8GA5ES82
[19:45]
[めぐの部屋。]
パタパタ…
銀「ただいま、めぐ。もう、夕飯は済んだかしらぁ?」

めぐ「おかえり、水銀燈。もう、済んだよ。
   ……どうしたの? 何かいいことでもあった?」

銀「どうして?」

めぐ「なんだか、とてもうれしそうな顔をしてたから……」

銀「ふふ……お父様に、手紙が届きそうな気がして……
  真紅たちも、手紙を出すって言ってたわぁ。」

めぐ「そうなんだぁ。 ……ふふ、水銀燈のパパって、幸せ者だよね。」

銀「……どういう意味?」
687水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:40:29 ID:8GA5ES82
めぐ「やさしい娘が、たくさんいるから……」

銀「ふふ……めぐったら……」

めぐ「……この後、パパに……あなたを紹介するね。」

銀「わかったわぁ。それじゃ……あのドレスを……」
688水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:42:11 ID:8GA5ES82
[19:55]
[柿崎家 リビング。]
 昨日、エンジュの店で買った『黒無垢』のドレスを身に纏って……
めぐの部屋で、その時を待った……。
 そして……ここに戻って10分。めぐが、切り出した。


めぐ「あのね……パパ」

めぐの父「どうしたんだ?」

めぐ「パパに……逢わせたい人がいるんだ。」

めぐの父「……私に……?」

めぐ「私の天使さま……命の、恩人だよ。」


ガチャッ
銀「……」

めぐの父「き……君は」
689水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 10:44:37 ID:8GA5ES82
銀「はじめまして……ごきげんよう」

めぐの父「……!?」

銀「私は……ローゼンメイデン・第1ドール……
  水銀燈。」

めぐの父「……スイ、ギン、トウ……水銀燈……か。」


 めぐの父親……顔をまともに見るのは、初めてだわ。
見たところ、初老の……すらりとした体格……聡明なイメージね。



めぐの父「ろ……ローゼン……メイデン……」

めぐ「私を……助けてくれたの。……メイメイ。この娘の、人工精霊だよ。」

メイメイ{……ポォォッ}

めぐの父「こ……これは……!」

銀「……詳しくは、追々話すから……」


 メイメイが……2年前、薔薇屋敷での戦いが終わって、
私が三度この時代に蘇った後……めぐのそばにいる時のことを、
めぐの父親に見せている……。
690水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:04:54 ID:8GA5ES82
[2002/12/31 17:28]
[薔薇屋敷の戦いから4ヶ月]
[有栖川大学病院 316号室。]
めぐ『夢は……風…… 光……導く……♪』

銀『…… ……』

めぐ『……やっぱり、気になるんだね。ドールズ……妹達の事。』

銀『…… ……』

めぐ『……またここに戻ってきてくれてから、ずーっと……
   北の空ばかり見てる……』

銀『…… ただ考え事をしているだけよ……
  星がきれいねぇ……』

めぐ『そう…… あ、そうだ。眠り姫って知ってる?』

銀『……童話の?』

めぐ『ううん……眠り姫は、この病院にいるよ……』
691水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:09:45 ID:8GA5ES82
銀『…… 誰のこと?』

めぐ『10階の、1001号室に……すっごく綺麗な外国の女性が入院してるんだけど……
   たしか、7月に担ぎ込まれてから……ずーっと眠ってるんだって……』

銀『…… 生きてるの?』

めぐ『さぁ……。まだ生きてるんじゃないかな。けど……
   …… 私は、眠ったらずーっと起きなくて、そのまま……死んでも、いいかも。
   天使になって、天国に行くのよ……』

銀『…… 貴女、いつもいつも…… だったら……
  …… ……』

めぐ『?』

銀『……いいえ、何でもないわ。それより、さっきの歌の続き……聴かせなさい?』

めぐ『うん、いいよ。 硝子窓に……揺れている……♪』


…… ……
692水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:15:02 ID:8GA5ES82
…… ……


めぐの父「そうか……めぐの、話し相手になってくれていたのか。
     病院に居る間、独りごとが多かった、と聞いていたが……
     こういうことだったのか……。」

銀「…… ……。」


 たしかに、私は顔を出すわけにいかなかったし、いないことになっていたから、
独り言のように聞こえていたのねぇ……。看護師たちの態度がおかしかったのは、
そのせいだったってわけね……


めぐの父「……どうかしていたよ、私は。こういうことは、父の、
     親の役目だったというのに。仕事仕事と、ずっと誤魔化してばかりで……」
693水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:18:28 ID:8GA5ES82
めぐの父「……めぐ、お前からも、逃げるように……危険な目に何度も遭わせてしまった……。
     どこかで……お前を……怖がっていた……本当に最低な親だ……」

めぐ「わ……私も……心臓のこと……パパやママのせいにして、困らせてばかりだった。
   5歳になっても、10歳を過ぎても、……17歳まで……」

銀「…… ……。」

めぐの父「わ……私は……ああ……」

めぐ「……パパ……なかないでよ……」

銀「……めぐの言う通り……メイメイ」


 そして……あの戦いの最中、めぐがジャバウォックを呼んだ時……
その瞬間を、見せているわ……! あの時のことを、メイメイはみんな覚えている……!


メイメイ{……!}ポォォ
694水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:28:22 ID:8GA5ES82
[2003/02/28 17:46]
[薔薇乙女達の決着の日]
[有栖川大学病院 316号室。]
銀『……!』グッ

めぐ『どうしたの? ……ローザミスティカの所、押さえて……』

銀『……ちょっと、ね……。鏡は……』ズイッ

めぐ『鏡? ……何か……あったの?』

銀『分からないけど……何か、起きている……!
  そこの、鏡……見てみるといいわ……。』

めぐ『え……これって……』

銀『…… 戦っている……』

めぐ『……誰?』

銀『……金糸雀……翠星石が…… 蒼星石の世界で……』

めぐ『その子たちは確か……第2、第3ドール……よね?
   前に、水銀燈が教えてくれた……』

めぐ『……? けど、戦いは、終わったんじゃなかったっけ……?』
695水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:30:52 ID:8GA5ES82
銀『……このゲームの相手は……ドールズじゃないわ……!』

めぐ『……あっ、映った…… あの大きなウサギと、戦っているの?』

銀『ええ……あれは、ラプラスの魔。あんなの相手にしてたら、2対1でも無茶よ……』

めぐ『……2人じゃないよ? あと、3人いる……男の子と、背の高い女の人と……
   それと、……あの、紅い服の子』


銀『真紅』


銀『……貴女まで……』

めぐ『! ……いつも話に出てくる、第5ドール・真紅だよね……?
   なんだか、すごく……苦しそう』
696水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:33:41 ID:8GA5ES82
銀『…… ……』

めぐ『…… ……』


銀『…… けてくるわ……』

めぐ『…… えっ……?』

銀『ちょっと出かけてくるから、おとなしくしていなさい……
  ……わかったわね……?』

ダダダ……
バシューン

めぐ『ちょっ……水銀燈……!?』

697水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:35:27 ID:8GA5ES82
[2003/02/28 18:39]
めぐ『っ……! 指輪が……熱い……っ!』

めぐ『苦しんでいる……私の黒い天使さんが……』

めぐ『私の天使さんに、もっと……力を……!』

めぐ『もう死にたいなんて……言わない。言わないから……
   ……手術、受けるから……』

めぐ『お願い、ジャバ……ウォック……!』

めぐ『ジャバウォック……!!』

カッ!!
698水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:37:23 ID:8GA5ES82
ゴゴゴ……

『…… ……久しぶりだな めぐ……』

めぐ『ジャバウォック…… 本当に、来てくれた……んだね……』

『…… ……どうした』

めぐ『私の天使さんを……水銀燈を…… みんな……を、助けて……!!』

『……わかった すぐにいく』

めぐ『……よかった……ジャバウォック……あり……が……』
バシューン


カチッ

ピピピピピ…… ピピピピピ……



…… ……


 私がジュンの家で蒼星石と雛苺に再会してから、夕食を頂いて……、
ここに戻って来たとき……めぐの顔が、今までにない笑顔だったのを、
よく憶えているわ……。
699水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 11:39:32 ID:8GA5ES82

めぐの父「……! めぐが手術を受ける契機に、君が……!
     君の妹たちが……そして……契約者という人たちがいたのか。」

めぐの父「めぐ、お前も契約者となって……
     この子を助けていたのか。……助け合う……親友に。」


 友……今までも、絆とかつながりという名前があったけど、
ドールとマスターとの間にある関係に、
こんな呼び方もあるのねぇ……。
700水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:01:25 ID:8GA5ES82
 メイメイは、最後に……クリスマスに、ジュンの家で
クリスマスパーティをしたときの光景を、めぐの父親に見せたわ……。
あれは、記念写真を撮った時ねぇ……。



めぐの父「……おばあちゃんも、ママも、喜んでいるだろうな。
     めぐに、たくさんの友達が出来たって……。」

めぐの父「ありがとう。本当に……ありがとうな。」

銀「……ふふ ……どういたしまして」



 言葉なんて……偽りばかりだと思っていたけど……
絆なんて……すぐに消えてしまうものだって……思っていたけど……

 話を聞く限り……18年、途切れとぎれの絆も、
完全に切れることはなかった……
二人は、抱き合って、涙を流しながら笑っていたわ。
701水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:03:32 ID:8GA5ES82
[20:19]

めぐ「……ねぇ、パパ」

めぐの父「なんだい、めぐ。」

めぐ「この子……この家に居ていいでしょう?」

めぐの父「いいとも。めぐの、大切な友達……
     ……いや、家族だ。後で、好きなものを聞いておこうか。」

銀「ありがとう……ありがとう。それと……めぐから……」

めぐの父「ん? ……おお、これは、薔薇の花……
     見事な黒だ……美しい。」


めぐ「……好きだよ、パパ……。」

めぐの父「……ハハハ、そうか。ありがとうよ。やっと……聞けたな。
     18年間、待っていた……その言葉を。」

めぐ「ふふ……」
702水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:07:43 ID:8GA5ES82
めぐの父「よし。久々に3人分、夕飯を作るか……!」

銀「ふふふ……」

めぐ「…… 水銀燈を、抱っこしてあげて?」

銀「ちょっとぉ…… めぐったら…… 別にいいけどぉ。」

めぐの父「失礼。 ……ふっ、めぐが小さい時のことを思い出すな……。」




 ありがとう……めぐ。めぐの、お父様。
こんな私でも……受け入れてくれて……。

 世界に必要なのは、私とお父様……これだけだと思っていた。
けど……これじゃあ……当然、足りるはずがないわよねぇ。
二人きりじゃ手に入らない、そんなものもある……。

 悪くないわねぇ…… 父の日っていうのも……



                     【第3話後篇に続く】
703水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:09:19 ID:8GA5ES82
【第3話後篇 父への感謝】

[2004/06/20 19:32]
[Enju Doll、リビング。]

エンジュ「さて……夕飯も済んだし、薔薇水晶。髪を梳かそうか。」

薔「はい…… お父様?」

エンジュ「どうした?」

薔「……あとで……お昼に言ってた、渡したいもの……渡すから……」

エンジュ「ああ、そうだったな。 楽しみだ。」



 時は来た…… これを、渡すときが……
お父様、喜んでくれればいいけど……
704水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:15:03 ID:8GA5ES82
[19:40]
[エンジュの部屋。]

サラサラ……
薔「…… やっぱり 落ち着く……」

スゥーッ……
エンジュ「そうか。 ハハハ……」

ファサッ
薔「……っ くすぐったい……」

エンジュ「おお……すまない。」

薔「…… あの……お父様」

エンジュ「?」

サッ
薔「…… これを…… 受け取って」

エンジュ「ふむ……」

エンジュ「…… これは」
705水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:17:35 ID:8GA5ES82
ジャラッ
薔「…… ……」

エンジュ「すばらしいブレスレットだ…… 美しい。
     こんなにも輝いているものを…… 私に、くれるというのか?」

薔「わたしからの 日頃の感謝です」

薔「おとうさま」

薔「……いつも…… ありがとう」

エンジュ「…… こちらこそ…… ありがとうな。
    ふふ……おお、腕に、しっくりとくるな。」

薔「……それと」

エンジュ「……?」
706水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:25:06 ID:8GA5ES82
ササッ
薔「……この手紙…… 後で読むから……ついてきて……くれますか?」

エンジュ「ああ。 じっくり……聴かせてもらうよ。
     ……案内してもらおうか。薔薇水晶。」

薔「はい……♪」


 お父様……とっても喜んでくれた……!
やはり……笑顔は、いいものですね……。

 手紙は……あの場所で……読みたい。
お父様が、わたしに何かを伝えようとしたところ……
わたしも……伝えようとしたところ。
薔薇屋敷の……あの部屋で……。
707水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:29:18 ID:8GA5ES82
[19:43]
[薔薇屋敷、中庭。]

エンジュ「……ここに来るのも、久しぶりだ……」

薔「……前々から、ここを……お父様と、散歩したかった……」

エンジュ「そうだな……二年前に来たときは、昼間だったが、
    ……星が、綺麗だ。」

薔「……いい星空……。」

エンジュ「ああ。まるで、宇宙にいるようだ……
    そこのドアを、入ればいいんだったな。」

薔「……ついてきて」

エンジュ「うむ。」
708水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:30:46 ID:8GA5ES82
[19:49]
[薔薇屋敷、大広間。]
 わたしは1年4ヶ月……お父様は1年10ヶ月ぶりに、
足を踏み入れた……薔薇屋敷の、一番大きな部屋……。


ガチャッ ギィィーッ
薔「……この……部屋」

エンジュ「ああ。……思い出すまでもなく……よく憶えている……。
    そう、このあたりだったな……」


トコ……トコ
薔「……手紙を……読むから……」

エンジュ「……うむ。」


薔「……おとうさま」
709水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 12:46:07 ID:8GA5ES82
――――――――――――――――――――

おとうさまへ

 ……わたし、薔薇水晶をつくってくれて ありがとうございます

 前のアリスゲームのとき……わたしのために たくさん 苦労をかけました
ごめんなさい そして ありがとうございます

 真紅に……薔薇乙女に負けないような そんなドールを目指して
お父様の願いを 叶えるために たたかい たたかい きずついて

 わたしは こわれてしまいました
だけど そんなとき お父様は さいごまで
わたしのことを 呼んでくれました

 お父様の 力になりきれなかったこととか
願いが叶えられなくて 悔しかったからなのか
わたしがこわれていくことが 怖かったからなのか
いろいろまざりあってしまって
あのとき流した 涙の意味はわかりません……

 わたしを抱きしめた うでがあたたかくて
わたしも抱きかえそうとしたけど
それも かなわなくて……
710水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:01:19 ID:8GA5ES82


 だけど わたしが完全に消えてしまうまでのあいだ……
わたしが nのフィールドで さまよっているとき……
薔薇屋敷で また起き上がれたとき……

 お父様はずっと わたしを呼んでくれました
声をたよりに またここに戻ってこられました

 ジュンや みっちゃん お姉様たちにも 感謝しても しきれません
お父様には なかなか 言えなかったけど
今日…… 父の日になら お父様に……言えます
711水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:05:08 ID:8GA5ES82



 おとうさま

いつも わたしの名前を
呼んでくれて ありがとうございます

わたしを 7人のお姉様に
逢わせてくれて ありがとうございます

わたしを お姉様たちの 契約者たちに
逢わせてくれて ありがとうございます

そして もういっかい

わたしを つくってくれて
娘にしてくれて
ありがとうございます

おとうさま

これからも よろしく

2004年 6月20日


   薔薇水晶


――――――――――――――――――――
712水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:06:11 ID:8GA5ES82

エンジュ「……手紙、……たしかに……受け取った……ぞ」

エンジュ「こんな……ふつつかものの父親だが……
    よろしく……頼む……! 薔薇水晶……!」ガシッ

薔「おとうさま……! おとうさま…… 大好きです……!」グッ

エンジュ「ありがとうよ……本当にありがとうよ……!
    眼帯……取れてるぞ……。」

薔「ありがとう……お父様」


 よかった……。お父様、とっても喜んでくれた……!

 今度は、壊れないから……腕の温もり、感じていられる……
713水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:10:22 ID:8GA5ES82
薔「お父様……」

エンジュ「どうした?」

薔「あと……これを……」サッ ジャラッ

エンジュ「ん……これは、ブレスレットじゃないか。
    もうひとつ、作っていたのか。
    ……はっ、そうか……!」

薔「はい…… お父様……ローゼン『お父様』にも……
  これを、あげたくて。」

エンジュ「そうか……きっと、師匠も喜ぶぞ。
    お前の姉の父親なんだから……父だ。立派な父だ……」
714水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:11:38 ID:8GA5ES82
エンジュ「弟子として、私が……預かろう。」

薔「はい……!」

エンジュ「……渡すときは、一緒に渡そうか。」

薔「一緒に……。お願い……!
  ……さて…… もう少しだけ……お散歩して、帰りますか」

エンジュ「そうしようか。 私もじっくりと、ここを見たかったのでな……。
    今度は、雪華綺晶たちも連れてこようか。」
薔「もちろん……♪」


 三日月が輝く……夜の薔薇屋敷を散歩して……
楽しい時を、過ごせた……お父様、本当に……ありがとう……!

 水銀燈とめぐも……うまくいったはず……
 水銀燈の、お姉様たちの思い……言葉、感謝……
ローゼンお父様に、届くのを祈って……
715水銀燈と薔薇水晶の贈物 3 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:14:58 ID:8GA5ES82
[21:01]
[Enju Doll、エンジュの部屋]

パカッ
薔「すぅ……すぅ……」

エンジュ「……よく眠ってるな……私の作った鞄、寝心地は、いいようだな……。
    そうか……もう、2年になるのか……。」

エンジュ「あのときは白崎もいて……どうしているだろうか、ヤツは……
    しっかり反省したら、またここに来ればいいが……」

エンジュ「……私とて、反省しきれたわけではない……
    しっかり、返していかねば……」

エンジュ「愛する娘のために……娘たちのために……
    今日はありがとうな、……薔薇水晶。」

薔「……おとう……さま…… すぅ……すぅ……」

エンジュ「……ふふっ さて……少し早いが、私も床に就かせてもらうか……
    おやすみ、薔薇水晶……。」
パカッ



                 【第4話に続く】
716水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:16:48 ID:8GA5ES82
【第4話 父へ……】

[2004/06/20 22:11]
[めぐの部屋。]
めぐ「……すぅ……すぅ……」

 めぐったら……気持ち良さそうに眠ってるわね。
さ……日付が変わらないうちに、手紙を書きましょうか……
717水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:18:32 ID:8GA5ES82
――――――――――――――――――――

お父様へ


 お父様……突然のお手紙、お許しください……



 まだ、お父様に逢うことをあきらめたわけではありません。
私は、私たちは……アリスとなり、お父様に逢いたいのです。

 最近、やっと、x時間よりも上の単位を使えるようになりました。
真紅とお茶のことで喧嘩したのが119年前、
真紅と契約者の絆のことで言い争ったのが69年前、
真紅と一番派手に戦ったのも69年前。

 この時代に降り立ったのが2年と2ヶ月前。
そして真紅が、真紅たちが、運命を変えて、あのゲーム以外の方法で、
アリスを目指すようになってから……1年と4ヶ月が経とうとしています。

 ……この時代の契約者たちのおかげです。特に……
私の契約者・柿崎めぐと、翠星石と真紅の契約者・桜田ジュン……
私も、独りではなくなったのです。
718水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:19:46 ID:8GA5ES82


 前の時代の最中から、この世界には「父の日」という日が存在し
この日は薔薇の花を添えて父親に感謝の意を送るという習わしがあるのです。
今私がいる国・日本では……第3日曜日が父の日で
今年は……今日、6月20日が父の日に当たります。

 金糸雀は、前よりもしっかりものになりました。ヴァイオリン、とても上手です。
翠星石は、人になつくようになりました。料理の腕も、上がっています。
蒼星石は、人に悩みを話せるようになりました。真面目なところは、変わりありません。

 真紅は、この時代をいいものにしようと、前以上に頑張っています。
雛苺は、とても強くなりました。すぐに癇癪を起こすことも、無くなりました。

 ……あなたの弟子・槐が作り上げた薔薇水晶も、皆に認められ、8番目の姉妹となりました。
さらに……槐は、あの七番目……白薔薇・雪華綺晶の身体を作り上げることに成功したのです。
719水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 13:22:31 ID:8GA5ES82



 もしもお父様がお許しいただけるならば……

 ……8人で、8輪の薔薇を持って、
あなたに、逢いに、行きます……。

 妹たちからも同じように手紙が届くかもしれませんが、
私の黒い薔薇を添えて、この言葉を贈ります。


 ……Ich liebe dich.


            2004. 6.20

           Mercury Lampe

―――――――――――――――――――――
720水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:00:51 ID:8GA5ES82
 この手紙は……鞄の隅の方に、畳んで置いておきましょう……

 ……私も……そろそろ、眠ろうかしら……


…… ……

…… ……
721水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:03:22 ID:8GA5ES82

…… ……

…… ……


銀「…… ここは」

銀「…… あの舞踏会場……?」


 いつものように、お父様と、鏡張りの舞踏会場で踊っている夢。
けど…… いつもと違った……。
それは……


銀「お父……様が …… 笑ってる……」


 もう……怖くない。完全に顔は見えているわけではないけれど……
お父様は……笑っていたわ。 ……涙を、流しながら……。



『手紙 ありがとう』
722水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:04:50 ID:8GA5ES82
[2004/06/21 07:43]
[めぐの部屋。]

銀「おはよう、めぐ。」

めぐ「おはよう、水銀燈♪ いい夢、見た?」

銀「ええ。とっても……いい夢をねぇ。」

めぐ「そっかぁ……水銀燈が嬉しいと、私も嬉しいな。ふふふ。」

銀「……どうしたの? めぐったら、そんなににやついちゃって……」
723水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:07:35 ID:8GA5ES82
めぐ「……私も、夢を見たの。パパと、ママと、おばあちゃんと……遊園地に行く夢。
   私は何故か3歳だった。けど……だんだん大きくなって……
   ……最後は、18歳になった私と、パパ、ママ、おばあちゃん……そして水銀燈。5人で遊んだよ。」

銀「そう……! よかったわねぇ、めぐ……♪」

めぐ「うふふ……じゃ、朝ご飯にしましょうか。」

銀「ええ。めぐの父親の分も、作っておいてあげましょう。
  今日は……真紅たちのことも話すわぁ。」

めぐ「ふふ……たぶん、真紅のことが8割くらい占めると思うな。」

銀「何よぉ。」

めぐ「うふふ……♪」

銀「そうだ、めぐ、朝御飯が終ったら……薔薇水晶のところにでも、行ってみない?」

めぐ「うん、行ってみよっか。」
724水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:09:38 ID:8GA5ES82
 3人での朝御飯……やっぱり、真紅のことをたくさん話したわぁ。


めぐの父「……行ってくるよ。今日は、早く帰るからな。」

めぐ「うん! 行ってらっしゃい!」

銀「行ってらっしゃぁい。」


 めぐのお父様を仕事に送り出して、私たちも出掛けることにした……
今日は、めぐのお父様、早く帰ってこられるそうよ。
725水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:13:03 ID:8GA5ES82
[09:32]
[Enju Doll。]
カランカラーン

エンジュ「いらっしゃいませ。 ……おや、君たちは……」

薔「水銀燈……!」

銀「ごきげんよぉ。」

薔「今日も……めぐと一緒」

めぐ「おはよう、薔薇水晶。 ……とってもいい笑顔…… いいこと、あったんだね。」

薔「ふふ……♪」

エンジュ「ふっ…… 素晴らしい贈り物をもらったよ。」

726水銀燈と薔薇水晶の贈物 4 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:15:25 ID:8GA5ES82
銀「うまく渡せたみたいねぇ。 良かったわぁ。」

薔「水銀燈こそ…… 手紙、届くと……」

銀「……ふふ、……届いたわよ、贈り物……♪」



               【水銀燈と薔薇水晶の贈物 完】
72711 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/05(日) 14:29:55 ID:8GA5ES82
 ……以上で、4話にわたった
『水銀燈と薔薇水晶の贈物』
は、完結です。
度重なる規制のため、先にシベリアに投下していた第3〜4話を再び掲載しました。

 『決着』から通算24〜27話目となる今回は
ローゼンメイデンの最大のテーマのひとつに迫ることと、
この話を考え付いたのが6月『父の日』だったことから、
銀、ばらしー、めぐ、ジュンの4人の『父』への思いを描きました。

 第2話と第3話は、どちらも前篇が銀、後篇がばらしーの視点で描いています。

 ……読んでくれた方、ありがとうございます。
では、また。
728名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 17:18:19 ID:FazSxhdm
乙乙
やっぱローゼンSSはいいねえ
次回作もきたいしてまつ
729名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 20:09:36 ID:3my4yMbr
乙です
トロの敵キャラコンビですね。
利害に基づく関係な2人もなかなか魅力的ですが、全てが片付いたらこんなのもいいですね
730名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 00:23:06 ID:+urCeSoa
【完成】ローゼンメイデンにレッツゴー!陰陽師を躍らせたい【原曲版】
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm12005146
731 ◆TEGjuIQ24E :2010/09/06(月) 01:45:42 ID:5PCBuZI3
>>730
ついに完成したんですね!
クオリティの高さももちろん、たくさんのマエストロが助け合い
ひとつの作品を作り上げた……!
なかなかできないことです。本当に素晴らしいです!

職人の皆さんに心から乙!!

>>728>>729
ありがとうございます。
次回作、できれば来月までにお届けできればと……

そう、二期ではそれぞれ『敵』どうしだった2人……
それぞれの正義を胸に……
父のため、愛する人のため、戦った。

『正義の反対は、また別の正義』ということを、ローゼンメイデンから学べたように思います。
732名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/08(水) 06:46:31 ID:Ots22C9d
久しぶりにSS書きたいなぁとおもて数年前に書いた過去の自分の作品を読み返したら
読みにく過ぎてワロタw
また書き直したいなぁ
733名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/15(水) 20:10:31 ID:9GXVDhHF
再チャレンジしてもいいと思うの
734名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 23:34:25 ID:Y7YSCnhl
hosh
735名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/25(土) 22:05:53 ID:IVt+pFn+
終わコン
736名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/07(木) 07:59:14 ID:8pCt9RaR
保守
73711 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 07:57:26 ID:saFI0aMc
ども、>>11です。
新作書きあがりましたので投下します。

28【雪華綺晶と金糸雀の晩夏】
73811 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 07:59:46 ID:saFI0aMc
【雪華綺晶と金糸雀の晩夏】

[2004/08/31 13:00]
[草笛家。]

草笛みつ「……よし、更新完了っと! メールしなくちゃ!」

金糸雀「みっちゃーん、今度のお洋服は何かしら?」

みつ「騎士! ナイト様風よ〜!」

金「さすがみっちゃんかしら! ……どうかしら? 雪華綺晶!」

雪華綺晶「白のナイトに黒のナイト…… チェスの駒のようですわ。
      ……みつ様は、本当にドールのお洋服やアクセサリーが
      お好きなんですね……」

みつ「そうねぇ。 今じゃこうやってインターネットショップも開いているし
   いつかは本物のお店を開こうと思ってるのよ!」

金「だから…… 戸棚には、お人形がたくさんあるかしら!
  ……寝るとき ちょっとこわいけど……」

みつ「せっかくだから、きらたんにもコレクションを公開してあげる!」

金(きら……たん……?)

ガラガラッ
雪「わぁ…… ! 全部、みつ様が……!?」

みつ「自慢の、かわいい娘たちだよー!」

カナ「アハハハハ……」
739雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:02:01 ID:saFI0aMc
 8月31日 快晴……

 今日は、みつ様と金糸雀お姉様の所におじゃまさせていただいています……

 みつ様は個人で「Angels Cage」という名のドールサイトを開いていて
ドールの紹介をしたり、服やアクセサリーを販売したりしておられます。
ドールのドレスアップなら、「みっちゃんにオマカセ!」ですね!

 オディール様ももちろんこのサイトはブックマーク済み……
一時はこのサイトに、あのジュン様の手がけた服が展示されていたこともあったそうです。


みつ「……あ! カナぁ、ちょっといいかな?」

金「どうしたかしら? ……何? この手紙……」

みつ「全員応募サービスなんだけど……消印有効が今日までなの。
   だけどみっちゃん、今日は今から東京のほうのお友達の所に行かないといけないから……お願いできる?」
740雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:04:26 ID:saFI0aMc
金「……待ってました! ここはカナの出番かしら!!」

雪「雪華綺晶の出番ですわね♪」

金「雪華綺晶も行くのかしら?」

雪「ええ♪ みつ様のお役にたてるなら……!」

みつ「きゃああああ〜! きらたんありがと〜!!
   歓喜の摩擦熱ぅぅぅ〜!!!」

雪「くすぐったいです……!」


 きらたん…… またしてもあだ名が増えましたわ。
みつ様は本当にフレンドリー……金糸雀お姉様も、さぞかし幸せなのでしょうね。

 みつ様から預かった手紙……お姉様のおやつについているポイントを
50ポイントを集めたすべての人に「A賞」が当たるという企画に応募するものだそうです。
詳しくは分かりませんが……後でお姉様に聞いてみることにしましょう。
741雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:07:45 ID:saFI0aMc
[13:14]
 さあ、みつ様の出発と同時に、私たちも出発です。
金糸雀お姉様の肩掛け鞄……雛苺お姉様のものとお揃いになるように、
ジュン様が作ってくださったそうです。


金「雪華綺晶ー、疲れたらカナに言うかしら! おやつもバッチリ装備してるかしら!」

雪「はい! ありがとうございます♪」

金「さて! 目指すはポスト! 一瞬だけジュンの家の上を通ってみるかしら……♪」

雪「おもしろそうですわね……!」

雪「あっ、ところでお姉様…… 『A賞』とは?」

金「カナもよくわからないかしら…… みっちゃんたら、カナに内緒で
  これを集めてたみたいだから……。 箱の中に応募はがきが印刷されてること、
  この策士にも全然わからなかったかしら。」
742雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:10:53 ID:saFI0aMc
[13:16]
[桜田家]
ジュン「そーか…… あしたから9月なんだっけ」

真紅「また『がっこう』が始まるわね、ジュン。もう『しゅくだい』は済んでいるの?
   去年、企画倒れに終わりそうになって、あわてていたけれど……」

ジュン「大丈夫だよ。夏休みの間も、ちょくちょく学校には行っていたからな。」

紅「そう…… 金糸雀? それと……雪華綺晶も一緒のようね。
  今年は大丈夫だそうよ。」

金「! や、やはり真紅には……バレてしまったかしら……」

雪「さすがですわ、真紅お姉様……♪」


 やはり、真紅お姉様は私たちの気配を敏く感じられましたわね……
金糸雀お姉様の、この家への侵入成功率が1割にも満たない理由にも
納得がいくというものです……

 去年のこの日、真紅お姉様と一緒に、金糸雀お姉様はジュン様の
夏休みの宿題を手伝ったそうです。
743雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:12:06 ID:saFI0aMc
ジュン「なんだ、急いでるのか?」

金「カナたち特殊部隊は今、超重要任務を遂行中かしら!」

雪「みつ様に頼まれて、手紙を出しに行っているところなのです。」

ジュン「へぇー。 まぁ、上を通って行けばすぐだけど……
    カラスには気をつけろよ、カナのやつ、カラスは苦手みたいだから……」

金「べ、別に苦手ではないかしら! よく邪魔しにくるってだけで……
  ……お気遣い……ありがとかしら……」

雪「では、私たちはこれで…… 学校、頑張ってくださいね♪」

ジュン「ありがとよー! またなー!!」
744雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:13:05 ID:saFI0aMc
[13:31]
 空から町を見下ろすと…… 朝顔の花が目につきますね。
もうお昼ですから、しぼんでしまっていますが……

 お昼まで開いている昼顔、夜にだけ開くヨルガオ……
まるで、太陽と月のよう……


金「どうやら、この時代のこの国の小学生は、朝顔を育てることで
  観察力を磨く…… 庭師のお仕事をするみたいかしら!」

雪「あの、青い植木鉢がそうなのですね。」

金「そういえば、みっちゃんもベランダで育ててるかしら。
  『小学生の時によくやったんだよねー』って……」

雪「そうなのですか…… オディール様も今、朝顔を育てているのです。
  ……あっ、ポストが見えましたわ!」

金「いざ突撃かしらー!」


 私はそのまま…… 金糸雀お姉様は日傘を差して、
郵便ポストのもとへ降下します。 さあ、
後はこの川の上を通って、お手紙を……


「カアー!」
745雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:16:07 ID:saFI0aMc
雪「!」

金「ひえええぇぇぇぇ……!! か、カラスかしらぁ!!
  こっちに突っ込んでくるぅぅぅ」

雪「っ……!!」

カラス「アアァァァ」
ヒュオオォォォ ズバッ


金「危なかったかし…… らぁぁぁ!?
  手紙が…… 葉書がカバンからァァァァ!!」

雪「! なんてこと……!」


 前方からやってきたカラスを、ひらりとかわしたまでは良かったのですが……
身を翻した拍子に、金糸雀お姉様の鞄から、頼まれていた葉書が
するりと飛び出してしまったのです。

 上空20m…… この真下は、小川……
このままでは、葉書が流されてしまう……!


雪「いけませんわ! はああっ」
ゾゾゾゾ……

金「ナイス雪華綺晶ォ! これなら……
  ……届くかしら!?」

雪「……もっと早く……!!」


 力の限り、茨を出しますが……
届くのか届かないのか、かなり微妙なところです。

お願い、届いて……!!
746雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:18:35 ID:saFI0aMc
ヒュウッ
ハシッ


金「!?」

雪「!!」


カラス「……」ニタリ

金「あ…… ありがと かしら……」

雪「まあ!」


 先ほどのカラスが、きりもみ状態で舞い落ちる葉書をくわえて、
見事にキャッチしたのです……!
747雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:21:24 ID:saFI0aMc
カラス「……」ヒューン

金「あ! ままま、待つかしら!!」

雪「…… 大丈夫ですわ、金糸雀お姉様。
  あの方向には、ポストがあります!」


 カラスを追って、私たち2人はポストのほうへ急ぎます。
カラスは前を見据えたまま、ポストに突っ込もうとしていました……


雪「あ、危ないです!!」

金「今度こそ正面衝突かしら! ポストに食べられるかしらぁ!!」

ヒュウッ
カラス「……」
スコン

カラス「カァー」

金「な…… なんという技かしら」

雪「カラスは頭がいいといいますわ。このカラスは、とても利口なのですね♪」

カラス「アホー」

金「んぐぐ…… 口の利き方をもう少しお勉強したほうがいいかしら……!」

雪「金糸雀お姉様、落ち着いてください!」

カラス「…… ……」ニタリ
748雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 08:25:37 ID:saFI0aMc
[14:02]
金「ふう…… ひとまず、任務は完遂かしら。」

雪「あわや大惨事……でしたわね……」

金「まったくかしら。 上を通るときは、気をつけなくては、かしら。」


 ひと悶着ありましたが、なんとか任務完了です。
先ほどのカラスには、感謝ですね。

 再び空中散歩をしながら家路を急いでいると……
あの方が道を歩いていました。


雪「あっ…… 巴様ぁー!」

金「トモエ? あ、本当にいたかしら!」

巴「? あら、雪華綺晶に金糸雀じゃない。こんにちは。」

雪「ごきげんよう♪」

金「その荷物…… 剣道部の帰りかしら?」

巴「うん。 今日は、見学だけどね。大会のすぐ後だから、顔を出しに行ったの。」


 部活動帰りの巴様でした。
高校でも、剣道を続けられているのですね。
749雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:04:18 ID:saFI0aMc
雪「いかがでしたか?」

巴「ふふ…… なんとか優勝できたよ。この調子で、県大会も頑張らないとね。」

雪「おめでとうございます♪」

金「やっぱり、トモエは強いかしら!」

巴「照れるよ……。 そうだ、今から花屋さんに行くけど、一緒に来る?
  お庭の花を増やそうと思って……」

雪「……そうですね。 喜んで!」

金「カナも行くかしら!」

巴「うん、じゃあ、行きましょうか♪」
750雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:05:48 ID:saFI0aMc
[14:45]
 巴様とともに、3人で花屋でお買い物……
巴様は、薔薇の花を買われました。

 手紙を出しに行くときのことを思い出したので、
私とお姉様は、朝顔を見ていました。

 色とりどりの花弁……朝が来るたび開くので、
「明日もさわやかに」……これが朝顔の花言葉のひとつだと、
巴様がつぶやいていました。


巴「ふふ…… 私もねぇ、幼稚園のときに、朝顔を育てたよ。
  初めて花が咲いたときは、嬉しかったなぁ。」

金「巴もかしら……」

巴「もちろん、桜田君もだね。桜田君のはクラスで一番早く花が咲いたから、
  とってもよろこんでた……って、のりさんが教えてくれたよ。」

雪「そうなのですか。 ふふふ…… 幼いころのジュン様は、
  どのような人だったのですか?」

巴「うーん…… 別に、今とあまり変わらないよ。
  お姉さんとも仲が良くて、いつも絵を描いていたの。
  そうだ、それで……すこし不思議な話があるんだけど」

金「ふむふむ……」
751雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:08:02 ID:saFI0aMc
雪「昔からなのですね。」

巴「うん。 それでね、それを着たお人形さんも良く書いてたんだけど、
  それが……真紅と雛苺にそっくりで」

金「!? 本当かしら!? 今、ジュンが満16歳だから
  幼稚園といえば……5歳ぐらいかしら?
  けど、カナがみっちゃんに逢ったのは、ジュンが14歳のとき……」

巴「最初は、良くあるお人形の絵を描いてただけだと思ったの。
  それに、真紅も雛苺も、そんな感じの姿だし……
  だから、私の思い過ごしかもしれないけどね。」

雪「……やはり、運命めいたものだったのかもしれませんわね。
  その時から、すでにマエストロとしての、私たちと逢う運命は
  決まっていたのでしょうか……」

金「なんだか、スケールの大きな話かしら……。」


 ……私も、オディール様とのあいだには、運命めいたものを感じる……
そんなことがあります。 ……オディール様の祖母、コリンヌ様が
同じように契約者だったことも、あるのかもしれません。

 先日、オディール様は新しいロケットをお買い上げなさいました。
その中には…… オディール様と、私の写真が入っています……♪
身に着けられていないときは、コリンヌ様のものと、並べて置いてあります。
752雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:11:14 ID:saFI0aMc
[15:02]
[柏葉家前]
巴「それじゃ、オディールさんによろしくね。」

雪「はい!」

巴「みつさんにもお願いね。今度、雛苺の新しいお着替えを頼もうかな。」

金「オッケー! みっちゃんなら、光の速さで仕上げちゃうかしら!
  トモエも、学校頑張るかしら!」

雪「剣道のほうも、頑張ってくださいね!」

巴「ありがとう、金糸雀、雪華綺晶♪ それに、あの『おまもり』があるから……大丈夫だね。」

雪「うふふ……」


 巴様の、金糸雀お姉様の笑顔…… とてもさわやかですわね。
そう、あの朝顔のように……


金「帰ったら何しようかしら―……」

雪「そうですね…… 少し冒険しましたから、お昼寝しましょうか。」

金「たまにはそれもいいかしら! みっちゃんとシエスタシエスタ……
  ……夢の中でもまさちゅーせっちゅー! されちゃうかしら?」

雪「かもしれませんね♪」
753雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:12:57 ID:saFI0aMc
[20:58]
[草笛家の向い フォッセー家]
オディール「さて、髪も梳かしたし…… 寝る前のティータイムも済んだ……
      朝顔にお水もあげた」

雪「うふふ…… いつもありがとうございます、オディール様。
  ……少し、櫛を貸していただけますか?」

オディール「ええ、いいわよ。 ……? 雪華綺晶?」

雪「今度は私が、髪を梳かしましょう。」

オディール「あらあら…… ありがとう、雪華綺晶。」
サラサラ

オディール「ふふ…… 明日から9月、いい秋にしていきましょうね。」

雪「はい♪」
754雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:16:41 ID:saFI0aMc
 本当の意味で、自由に外に出られるようになって、1年4ヶ月……
幾万時間にもわたる、蜘蛛の巣で這いつくばっていた時間に比べれば、
とてもとても短い期間ですが……

 ――それ以上に、この1年4ヶ月で得たものはとても大きいのです。
オディール様も、他のお姉様がたも、薔薇水晶も……
朝が来るたびに笑っている。夜には、その笑顔を願って。


オディール「この朝顔の花のように……」

雪「明日もさわやかに」

オディール「そろそろ9時、私も眠るから、鞄を閉じるわ。
      ……おやすみなさい、雪華綺晶。」

雪「おやすみなさい、オディール様。良い夢を……。」


金『うきゃぁぁー! ちょっと! また増えてるかしら!!
  ワンケーじゃあ、ひーふーみー…… 50体は狭いかしらぁ!!』

みつ『えへへへ…… かわいいお洋服着てたから……♪
   これと同じもの、作ってあげるね!』

金『…… もう みっちゃんってば』


オディール「…… 草笛さんたら…… 向かいにまで聞こえて……」

雪「……ふふ♪」
755雪華綺晶と金糸雀の晩夏 ◆TEGjuIQ24E :2010/10/15(金) 09:18:40 ID:saFI0aMc
[21:11]
[草笛家。]
金「それじゃ、カナも寝るかしら!」

みつ「明日は晴れるかしら?」

金「夜のニュースの天気予報は、降水確率ゼロ%! 2学期初日は快晴かしら!」

みつ「2学期……なつかしい響きだねー……」

金「新学期に新しい月! だけど、明日を迎えるのは、変わらないかしら?
  ……涼しくなってきてるから、いい朝になるかしら。もうすぐ秋かしらー……」

みつ「この朝顔も、寝覚めよく開くかもね。 ……うん、アレだね、えーと……
   ……花言葉 『からみつく愛』……とは別の……なんだったっけ?」

金「『明日もさわやかに』 かしら!」


 そう…… 明日も さわやかに



                               【雪華綺晶と金糸雀の晩夏 完】
75611 ◆TEGjuIQ24E
 以上で「雪華綺晶と金糸雀の晩夏」は、完結です。12KBの短編でした。
薔薇でない花と絡む話を書いてみたくなったので、これを考え付きました。
何気にRM本編で猛威を振るっていたカラスが初登場です。

 では、次の「紅×蒼」で、また。