あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part243
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part242
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1247640488/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
乙
乙
>>1 乙!
最近欧米のファンタジー文学に興味が出ていたり。ドラゴンランスとか、アイスウィンド・サーガとか、コナンシリーズとか。
でもそれと比較すると日本のファンタジーは頓狂で、やっぱりライトですよねぇ。
所詮借り物か……。
またHAGANEか!
>>1 乙っす
鋼といえば神崎将臣の漫画を思い出してしまう
一瞬HANAGEに見えたorz
>>8 ボーボボ来いってか
あのおじさん殺せる人っているのかな
俺も一瞬、HANAGEに見えたw
そのままマルハーゲの連中と戦って来いwww
あの作品を文章だけで表現すんのってすげえ難しそうだな・・・
すべての理不尽を、1コマで許容するからなぁ。
てかボーボボは上級者向けだろ。
まぁポジション的には
ルイズ→ビュティ
ギーシュ→破天荒
タバサ→ヘッくん
て感じか?
米海兵隊が召喚されて
GOOD BYE!SAMURAI!が見たい
あれは凄かった、俺握手してもらったぞ
>>17のネタ振り半端ないって
普通反応できひんやん
あなたは、そこにいますか?
いま、あなたのうしろにいるの
いま、ゴルゴのうしろにいるの
24 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 03:02:59 ID:7UFmb+EM
田楽は・・・・デルフリンガーで
あと関係ないけどそろそろケンシロウが召喚されてもいいと思うんだ
ケンシロウ「お前はもう、禿げている」
タバサ「ワックス始めました」
コルベール「ええい!だまりなさい!こわっぱがぁ!」
武器屋の親父「これが育毛剤『竹林』だよ!効果は1日!買ってくかい?」
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 03:23:18 ID:IGf8Zdn1
>>25 アトリエ…ヴィオラートのは結構話数あったな
原作リリーまでしかしらんからみてないけど
27 :
>>24:2009/07/21(火) 03:36:14 ID:7UFmb+EM
ちょっと暇があったら書いてみようかな。
設定的にはOVA新・北斗の拳の後辺りで
28 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 03:43:04 ID:M8AfnBTz
>>1乙
個人的には史上最強の弟子ケンイチのケンイチを召喚すると
面白いと思う。
LV99で全職制覇なカダブウ召喚ネタとか見て見たい
30 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 03:48:58 ID:M8AfnBTz
っふふ
すいません
誤爆りましたorz
ロングビルの今日のパンツの色について
オスマンや他男子生徒数名と賭けをする鬼塚先生
>>26 ヴィオラートはちゃんと完結させているから凄いものだ。
剣客商売から秋山小兵衛を召喚したら
料理の解説が妙に美味しそうになったり
孫くらい年が離れた嫁の事話してルイズ達に引かれたり
という所までは思い浮かんだ。
友伍郎の煙管とか話が膨らみそうな小ネタはいっぱいあるんだけどね。
え?喧嘩商売から佐藤十兵衛召喚だって?
バイキンマン召喚
当然ソリは合わないがルイズにドキンちゃんの影を見て案外優しくしそうな気が
そして驚異のメカ軍団でハルケを制圧
童貞というと、ヴァン(ガンソード)とエイジ(ドスペラード)が思い出されてしまうのですが。
銀河英雄伝説のアイゼナッハでSSが書ける奴がいたら一生尊敬してやる。
>>37 >>32とかで挙げられている鬼塚もそうだけど、むしろサイトと同じ童貞を読んだ方が良い気がする。
もちろん気がするだけなので根拠は無い!
>>36 バイキンとルイズの共通点はツンデレだよなw
しかしコルベールの発明を「モーターだ!」というどころか、
そのままバイキンUFOくらい完成させそうだ
バイキンマンなら、コルベールに材料指定して色々と作ってくれそう
>>38 俺はフリオニールかな
……あいつは素でガンダールヴじゃないか
ヴァン「俺は童貞だ」
ギーシュ「かくいう私も童貞でね」
>>44 何せウェポンマスター、奴に掛かれば魔道書すら最強の武器に・・・
ところで、ふと考えたのだが
仮にコードギアスのロロ召喚して使い魔にしたら・・・
契約から数分足らずで契約破棄されることになりそうだなぁ、と
まぁ絶対に使い魔になんぞならんで即ルイズの喉切り裂いて脱出するんだろうけど
あと最終回後のシュナイゼルが召喚されたら
ゼロゼロ言われるルイズにも従ってしまうのだろうか・・・
ところでwikiにある「学食の飯田さん」って、もしかして直接投下なのか?
>>47 この世で真に「ウェポンマスター」の称号に値するのはただブルーノ警部補のみよ
彼がガンダールヴになった場合どの程度でルーンが反応するんだろう
♪おーれーのーぶーきーをー 知ってるかーい
「モップ!コショウ!柱時計!」
きょーおーもー じーけんーだー
コショウと柱時計が逆だぜ
あとモップの使い勝手の良さは異常w
>>46 いつからフリオニールはそんなネタキャラになったん?
ことばおじさんって召喚してもいいのかな?
あくまでも番組内のキャラだしセーフ?
微妙……
俺判断だと、ことばおじさんは愛称だと判断してアウト。
>>49 何処のどなたか存じませんが
そりゃ敵わんなぁw
武器かそうでないかの判断基準はルーンの方に含まれているような気もするけど
ここのSSだと大抵武器扱いでないシュペー卿の錬金剣って、原作だとすぐ折れたけど一応は武器認識されたんでしたっけ?
>>51 ラミアクイーンの見え見えの誘惑に引っかかりそうになった時から・・・だと思うんだな
>>51 ディシディアからだよ
しかし時期的にFFのボス系SSいくらかきてたが案の定話題にならなくなったくらいに投下されなくなったな
>>49 伝説のリュー「リューウェポンマスター」を思い出した俺
デホレス呼んだら店開きそうだ
こないだ聖樹がいらっしゃってましたよ、とりあえず決闘は消化
同じく決闘中のうぼぁーが気になる・・・ギーシュこのままだと死んでまう
なんだかんだいってギーシュがいないとその後の展開に支障をきたすし、半殺しあたりで許されるのが常じゃね。
あの聖帝さまを相手に生き延びたんだから、めったなことじゃ死なんだろ。
むしろギーシュを倒して満足して、作品が死んじゃうほうが心配だ。
やっぱり人間「満足できねえ!」で、いかないと。
ばいきんまんは汚染と腐敗の化身だから
放っておくと原因不明の疫病でハルケギニアは滅ぶ
>>59 テンプレなんてものは単なる目安だ。後は勇気で補えばいい!
……と、俺は思ってる。
62 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/21(火) 20:58:14 ID:IGf8Zdn1
>>59 奇妙な使い魔のほうでプロシュート兄貴に首折られて死んでた
下げ忘れスマソ
>>62 ギーシュの生存率は全体的に99%というところか。
フーケは多少死亡がある。ワルドは悲惨な末路が多い。
最も死亡率が高いのはやはりメンヌヴィル。
次にワルド(たまに綺麗なワルドがいるので)、おマチさん、ギーシュ、といったところだろうか。
……当たり前だけど、ルイズ死亡は二つ三つしか見たこと無いな。
ギーシュは…生きる!!
生きてばr…モンモランシーと添い遂げる!!
ゼロ魔を尊重してゼロ魔側のキャラは誰一人としてクロスキャラには負けないし殺されない
>>59 あの流れだとどうなるんでしょうねぇ・・・子猫相手とはいえ
即死スキル持ちが相手で
陛下は許すつもりは無いしで・・・あー、早く続きが読みてぇです
>>64 デモンベインからの召喚だとフーケ死亡率は現状ほぼ90%近いっすね
ワルドは・・・一番悲惨なのってなんだったろう
フーケも結構悲惨な末路が多いような
魔剣に身体喰われたり、蒸し焼きにされたり、蛇に丸呑みにされたり
別スレだと至近距離からロケラン喰らったのもあったな
>>68 ゼロのGrandmaのワルドかな?逃げようとして逃げられずわずかな抵抗もむなしく
死をにおわせただけで完全退場。
まかり間違ってウルトラ警備隊からキリヤマ隊長を召喚したら
>>68 ZERO A EVIL も忘れるな
偏在作って袋叩きにして捕らえるつもりが…
ジャンガちゃんの蛆虫以下と呼ばれたワルドさんも思い出してやってください
>>75 シュウの最大の逆鱗の一つに触れたからしょうがないw
シラカワ博士はちょっとムカついただけでその相手をぶっ殺すからなぁ
>>79 シュウは基本的に手出ししなければ無害だよ
関わると高確率で酷い目にあうけど
オスマン死亡は見たことあるけどコルベール死亡は見たことないなー
>>80 シュウが明確に敵意を持った抹殺対象つーと、ヴォルクルス、ゼゼーナン、ユーゼス、ルオゾールか。
……並べてみると凄いな。
>>82 邪神とはいえ一応神相手に死んでも許さんを本当に実行して復讐したからな
ゼゼ公は哀れすぎる
>>65 ギーシュ:まず死なない
おマチさん:時々死ぬ
ワルド;よく殺される
かな?
そういえばウェールズ殿下が生きているケースはどのくらいあるんだろう?
>>68 重攻ではライデンの鉄拳を食らい木っ端微塵になっていた。
知っているのか?
ギーシュが死んだのはプロシュート兄貴に
死に掛けまで老化⇒頚椎踏み潰しでジ・エンド。ぐらいしか覚えてないなぁ
ギーシュが死んだヤツ? 牙狼とか?
>>86 エルダースクロールのマーティン皇帝のだと生き残ったけど
色々と吹っ切れたアンリエッタに振られてたな。
(ギーシュが華麗に勝利するほうが死ぬより少ないなんて言えないっ)
狂ったプレインズウォーカーになってブロスブルームぶちかましたワルドもいる。
死ぬキャラってのは最大の見せ場が終了して以降、どう扱ったらいいのか分からん場合が多い。
>>86 虚無のパズルでは刺された後全快したのに敢えて突っ込んで行ったな
ヘルシングスレの初期の作品で、アーカードに文字通り引き裂かれたのがあったな>ギーシュが死んだヤツ
>>79 いくらなんでも彼はそこまで殺人狂じゃないです。
ただ単にフリーダムなだけです。
>>84 第4次Sでは彼の力に溺れる様を見て「醜悪な……」と呟いていました。
邪神に操られていた過去の自分を想起するから余計憎悪も増したのでしょう。
>>95 そういえばそうだったな
続きまだかなぁ
挿絵の人と思われる人が書いたゼロクロ1p漫画はこの間見かけたけど
ssなんだから誰が死んでも特に気にならないな
零姫さまの母親を八つ裂きにされた上、佐々木武雄に瞬殺されたワルドとか。
まぁ殺されてしょうがないよな
「ワル」ドだし
あれ?まとめサイト落ちてる?
魔砲使いではウェールズ殿下が死ななくて、
尚且つワルドが死なないどころかレコン・キスタについていない
というレアケースだったな。
>>103 ゴーストステップでもレコン・キスタから乗り換えてるぜ!
皇太子殿下も死んでないし
「ダークドリームの冒険」の番外編その2ができました。
23:40から投下したいのですがいいでしょうか?
>>103 まぁ目の前であんなことになってなおレコンに与し続けるのは自殺行為だからねぇ。
しかし高町教導官強過ぎ。
>>105 You have control!!
OK
支援
>>104 ぬ!そうだったか。
ゴーストステップはスルーしていたから知らんかったわ。
ダークドリームがトリステイン魔法学院に帰ってから、数日……。
おみやげに持って帰った日本のお菓子は大好評だった。
厨房のマルトー親父など、ポテトチップスをいたく気に入り、3日後には食堂のメニューに加えたほどだ。
とはいっても、デザートとして出したのではない。
じゃがいもを薄くスライスして素揚げしたものを、肉料理の付け合せにして出したのだ。
パキパキ割れる食感が面白いと、生徒や教師にもなかなか好評なようだった。
続いて、厨房のコック達は『ミルキー』や『ポッキー』の再現にかかった。
『ミルキー』は比較的簡単に再現できたが、『ポッキー』はかなり苦労している。
プレッツェル部分は何とかなるのだが、なにせ、チョコレートがないのだから、どうしようもない。
そこで、生クリームやピーナッツバターにハチミツを混ぜたものなど色々と試しては悩んでいる。
そんなこんなで、『アルヴィーズの食堂』の今日のデザートはポッキー風のプレッツェルだった。
何種類かのディップを塗ったプレッツェルが、皿の上に5本ほど上品に並べられている。
厨房のみんな、すごい!ここまで作っちゃうんだ。などと感心しながら、ダークドリームは食事を終える。
『アルヴィーズの食堂』から出たところで、ダークドリームは1人の生徒に呼び止められる。
茶色のマントを羽織っている、ということは1年生であろうか。
「あなた、ちょっとお待ちになってくださいませんこと」
「わたし?」
「そう、あなた。ダークドリーム……でしたっけ」
「うん、そうだけど、あなたは?」
「はじめまして。わたしは、ケティ・ド・ラ・ロッタですわ。
あなた、異国の珍しいお菓子をたくさん持っているって本当ですの?」
ダークドリームが首を縦に振ると、ケティと名乗る生徒は嬉しそうに両手を合わせた。
「なんでも、今日のデザートも、あなたが持ってきたお菓子が元になっているとか」
「うん、すごいよマルトーさん。たった一箱のポッキーであんなにおいしいお菓子を作っちゃうんだもん」
「それですわ!わたしも自分でお菓子を作ってるんですけど、その『異国のお菓子』に興味があるんですの。
あなたの持っているお菓子を、分けていただけませんかしら」
「いいよ。まだ、たくさんあるし」
「ありがとう!じゃ、あとでわたしの部屋に来ていただけませんこと」
ケティの部屋に入ったダークドリームは目を丸くした。
お菓子作りは彼女の趣味である。部屋にはそれなりの設備が整っていた。
オーブンや水をためる瓶、そして魔法を利用した、材料の冷蔵保存庫……。
魔法学院では、こうやって自分好みに自室を改造してしまう生徒が少なくない。
学院側も、出て行くときに元に戻すのならば、あまりうるさいことは言わなかった。
「すごい、なんでもあるよ!」
ビニール袋を提げたまま、入口で立っているダークドリームをケティは部屋の隅にあるテーブルに招き入れた。
「今、お茶を入れますわね」
といってケティはビスケットを出してきた。
ほんのり甘いビスケットには、ところどころに苦い粒がアクセントのように入っている。
「これ、おいしい!」
「ハーブの代わりに、乾燥させた『ハシバミ草』を粉にして混ぜてますの。
この、『蛙苺』のディップを少しだけつけて食べても、風味が引き立ちますわよ」
「ほんとだ、酸っぱいけどおいしい!!」
「気に入ってくれたようで嬉しいですわ。では、今度は『異国のお菓子』を見せていただけませんこと」
「うん、えーっと、最初は……」
こうして、ダークドリームは、ちょくちょくケティの部屋に行ってお菓子作りを手伝うようになった。
しかし、元々の材料が違うだけあって再現するのは難しい。
「うーん、たしか、こまちさんが『甘くするときは羊羹を入れたらいい』って言ってたよねー」
「……だからって、『羊羹』1本配達するために、こんな遠い世界まで呼ぶなロプーー!!」
疲れきった顔で抗議するシロップを、ケティが目を丸くして見つめていた。
ダークドリームたちが、そんな毎日を送っている頃。
ルイズは昼間から部屋のベットで1人布団をかぶっていた。
才人が元の世界に帰る方法を見つけた。
それは、いいことだ。いいことだと……思う。
わたしも、元の世界に帰る方法を見つける手伝いをしようと思っていた。
なのに……、
なんで、わたしはひとりで布団をかぶって落ち込んでるんだろう。
なんで、わたしはガタガタ震えてるんだろう。
あの子が持ってきたお菓子は才人の国のものだったらしい。
あの子は才人の国と同じ出身で、帰る方法を見つけたってこと。
もしかしたら、わたしは、こんなにあっさりと帰る方法が見つかるとは思ってなかったのかもしれない。
口では『帰る方法を探してあげる』なんていいながら、本心では見つからない事を願っていたのかもしれない。
才人は『やってる事が一段落してから考える』なんて言ってるけど……。
もし、才人が帰っちゃったら、わたしはどうしたらいいの?
二度と会えない……なんて、本当に耐えられるの?
だって、今、わたしはこんなに震えてるんだもの……。
こんな風にルイズが落ち込んでいるところで、ドアのノブがガチャリと回った。
ルイズがあわてて飛び起きると、シエスタが手に何かを持って入ってきた。
「なんだ、シエスタか」
「なんだじゃないですよ、ミス・ヴァリエール。もう、お日様はこんなに高いですよ」
そういいながら、テーブルに持ってきた皿を置く。
そこには、丸く大きなパンケーキがこげ茶色に焼きあがっていた。
「おひとついかがですか?ミス・ヴァリエール」
「なにそれ?」
「『ホットケーキ』だそうです。サイトさんの国のパンケーキなんですよ。意外と簡単に作れました」
厨房では『異国のお菓子』作りが流行ってるらしいから、その一環だろう。
ルイズが一切れ取り上げてみると、プーンとバターの匂いが鼻腔をくすぐる。
「結構甘いわね」
「本当は、この上に、さらにハチミツとバターをかけるらしいです」
「へー、すぐにお腹いっぱいになっちゃいそう」
「向こうでは、朝ごはん代わりに食べる人もいるらしいですよ」
なるほど、温かいホットケーキを食べたら、少しだけ元気が出てきた気がする。
落ち込んでても仕方ない。今、自分にできることを考えなきゃ。
ルイズは、制服に着替えると、部屋を出て行った。
ルイズが向かった先は、タバサの部屋だった。
軽くノックすると、ダークドリームが顔を出した。
「あれ、どうしたのルイズ。タバサは多分、図書館にいるよ」
「いや、そうじゃなくて、あなたに聞きたいことがあるの」
「え、そうなの。じゃ、立ち話もなんだから」
ダークドリームは、ルイズを部屋に招きいれた。
椅子を勧めると、コップに水をついで、ビスケットと一緒に出す。
「このビスケット、わたしが作って焼いてもらったんだ。『羊羹』入りだよ」
齧ってみると、ところどころ見える黒い粒が、ものすごく甘い。
こんなところでもお菓子作りブームか……なんて思いながら、ルイズはじっとダークドリームを見つめた。
「で、聞きたいことってなに?」
ダークドリームは、ビスケットをかじりながら尋ねた。
「あの……サイトの国に帰る方法が見つかったって本当?」
「うん。『シロップ』に頼めば連れて帰ってくれるよ」
シロップ……確か、才人も言っていた。
「確か、どんな世界でも飛んでいける『運び屋』ってサイトに聞いたけど」
「うん、シロップは一流の『運び屋』さんだよ。わたしがこっちに帰れたのも、シロップが見つけてくれたからだし」
「ってことは……その『運び屋』は、『ハルケギニア』と『サイトの世界』を自由に行き来できるってこと?」
「そうだよ。でも、『遠いからあんまり気軽に呼ぶな』って怒られちゃった。
そのビスケットに入ってる『羊羹』を運んでもらったんだ。」
ルイズはビスケットをしげしげと眺めた。
この、黒くて甘い粒粒を『サイトの世界』から取り寄せたってことだろう。
『羊羹』というのが、どれくらいの大きさかはわからないけど、ビスケットの材料を取り寄せるなんて。
トリスタニアから『伝書ペリカン便』で取り寄せるのでも高くてやらないだろうに。
もしかして、『運び屋』っていうのは自分が思っていたより気軽な存在なのかもしれない。
「その『運び屋』に連絡を取るにはどうしたらいいの?」
「『メルポ』に手紙を出すと来てくれるよ」
その『メルポ』がわからないんだけど……、
まあ、ダークドリームに頼めば来てくれるでいいのかな。
「あの……それで、その『運び屋』の運賃っていくらくらい?」
顔を乗り出して聞いたルイズに、ダークドリームは首をかしげた。
「いくらだろう……お金払った事がないから、わかんない」
「え?」
「この間、ここに来てもらったときは、ホットケーキ食べ放題だったけど……
ちゃんと頼んだら、いくらくらいするんだろう?」
ホ、ホットケーキ?……それって確か、さっきシエスタが作ってたパンケーキだ!
『簡単に作れた』って言ってたし、お菓子代くらいなら、そう高くはないだろう。
そんなに簡単に行き来できるのなら、少なくとも才人と生き別れなんて事態にはならなくてすみそうだ。
場合によっては、わたしも才人の世界に行ってみるなんてこともできるだろう。
ルイズは、すっかり肩が軽くなって、気分が明るくなってきた。
「ねえ、その『運び屋』って、次はいつ呼ぶの?」
「うーん、この間、怒られたばっかりだから、しばらくは呼ばない……、
とりあえず、あそこにある『奇跡の青い薔薇』が咲いたら、みんなに連絡取るつもり」
ダークドリームは窓辺にある鉢植えを指差した。
その鉢植えからは、10サントほどの茎が伸びている。
「それって、いつごろ咲くの?」
「わかんない。来週かもしれないし、何ヶ月もかかるかもしれない」
「わかった、ありがとう。咲くときはまた教えてね」
ルイズは、すっかり足取りが軽くなって、自分の部屋へ向かっていた。
なんだ、あんなに心配してそんしちゃった。
いつでも『運び屋』を呼べて、『お菓子代』くらいでサイトの世界にいけるなら簡単なもの。
いざとなれば、こっちから迎えにいけるし、一緒に行って向こうの世界を見るってのも悪くないわね。
『ホットケーキ』はあのメイドが焼けるんだし、いくらでも作らせて……。
ルイズの思考はここで止まった。
あのメイドに『ホットケーキ』を作らせる?……なんて説明するの?
馬鹿正直に説明したら、才人の分は作ってもわたしの分は作らないだろう。
それどころか、あのメイド、自分が一緒に行くとか言い出しかねない。
ん?ちょっとまって、そもそも、なんであのメイドがこのタイミングで『ホットケーキ』を作ってるの?
まさかとは思うけど……、すでにダークドリームにわたしと同じ話を聞いたんじゃ……。
ルイズの中で、みるみる疑念が膨らんでいく。
まずい、そんなことになったりしたら……。
わたし一人だけ寮で留守番なんて絶対に許せないわ!!
とはいえ、あのメイドが事情を知らなかったら、ヤブヘビだし……。
とりあえず、なんとか、あの『ホットケーキ』とやらの作り方を調べないと!
「なんで私にお菓子の作り方なんか聞くのよ」
モンモランシーは、自分の部屋にやってきたルイズを見て、頭が痛いとばかりに首を振る。
何事も形から入るルイズらしく、どこからか拝借してきた衣装に身を包んでいた。
真っ白のエプロンに、三角巾。ご丁寧に手にはフライパンとヘラを握っていた。
「いっつもろくでもない薬を作ってるあんたなら、お菓子の作り方くらい知ってるでしょ」
モンモランシーはため息をついた。
「あんたってほんとに、無駄に威張るのね……」
「お互い様じゃないの。いいから、早く教えなさいよ」
「お菓子の作り方なんかわからないわよ。わたしが作れるのはポーションや香水。料理道具なんか触った事もないわ」
ルイズは冷たい声で「困ったわ……」とつぶやいた。
「どうしてまた、お菓子の作り方なんて知りたがるの?そんなの、町で注文すればいいじゃない」
「サイトの国のお菓子なのよ」
「それなら、なおさら知るわけないじゃない!」
と、モンモランシーは怒鳴った後に、あ、と手を叩いた。
「そういえば、1年生に『異国のお菓子』を作ってる子がいるって話よ。ほら、あのケティって子」
ルイズはむう、と唸った。
確かにその子は知っている。この間、才人にクッキーを焼いていた1年生だ。
……けど、ほかに方法は思いつかない。背に腹は帰られない、とルイズは1年生の宿舎に向かった。
その日の夕方、ダークドリームはいつものようにケティの部屋に向かった。
ノックをしても返事はない。鍵は開いているようだ。
そっと扉を引くと、中から焦げ臭い匂いがプンと漂ってきた。
部屋の隅ではケティが疲れきった表情で、椅子に座り込んでいる。
「どうしたのケティ!?」
「どうしたもこうしたもないわよ……。
昼過ぎにミス・ヴァリエールが押しかけてきて、『ホットケーキの作り方を教えて』なんていうのよ」
ケティは確かにホットケーキの作り方を知っていた。
まあ、この間シロップが来たときに、ホットケーキを作ったのは彼女なのだから当然だろう。
「なんか、断ったらやばそうな雰囲気だったんで、中に入れたんだけど……あれ見てよ」
厨房には、焼け焦げたホットケーキらしきものの残骸が大量に放り出されている。
真っ黒な墨になっていたり、まだらに焼け焦げていたり、無残な姿を晒している。
「10枚以上焼いて、1枚だけ成功したから、やっと帰ったところなの……」
それだけ喋ると、ケティはカクンと首をたらした。
その頃、ルイズはニコニコ顔で自分の部屋に向かっていた。
「よーし、これで、いつ『運び屋』が来ても大丈夫ね」
今回はここまでです。
読んでくださった方、支援くださった方、前回感想を下さった方、Wikiに登録してくださった方、ありがとうございました。
ちなみに、ケティの部屋の描写やルイズの格好は、「ゼロの使い魔番外編・ルイズのタルト」(コミックアライブ8月号付録)からの引用です。
さて、次回で番外編も終了です。
さすがにちょっと時間がかかりそうですが、できれば、次の日曜日に投下したいと思っています。
それでは、また、よろしくお願いします。
オツ
乙でしたー
乙です
やっぱり、平和っていいですね。たかがホットケーキでドタバタやれるってのも。
しかし、あまり食うとダークドリームはともかく生徒たち太るのでは?
次回で番外編も終わりってことは、本当に全部終わりってことですか。いつかは来ることだけど、
寂しくなります。日曜日が早く来てほしいような、ずっと来てほしくないような。
乙です
羊羹一本でパシられるシロップにワロタw
食事イベントで食に目覚めてから食べ物に執着してるなぁ
いまさらなんだが才人のいた地球はプリキュアのいる地球なんだろか?
>>119 いや、本編に関わりない小ネタではあるけど、鳴滝の旦那に対しての口ぶりからすると違うんじゃない?
ダークドリームの人乙
しかし、相変わらず教皇涙目だなw
>>119-120 一応、同じ「日本」という前提で書いています。
てか、もう終わるのにそんなところでネタやってる余裕はないですw
諦めるなよ!!諦めるなお前!!
どうしてやめるんだ!!そこで!!
もう少し頑張ってみろよ!!駄目駄目駄目駄目諦めたら!!
周りのこと思えよ!!応援してくれてる人達のこと思ってみろって!!!
あともうちょっとの所なんだから!!
俺だってこのマイナス10度の所!!シジミが取れるって頑張ってるんだよ!!
ずっとやってみろ!!必ず目標達成できる!!だからこそ!!
Never Give Up!!!
>>68 遅レスだが悲惨なワルドといえばやはり漫画版ウィザードリィのキャラ召喚したアレでしょう。
おもいっきしシリアスな場面で、悪魔の大軍従えてルイズにむかって「僕の母親になってくれ!」
そのあと自分の虚無の能力が目的なのかと問われて「君の身体を手に入れる!」
どの作品か忘れたけど杖をニセモノに摩り替えられて大泣きしたってのがあったな。
>>125 杖をすり替えられたのは天地無用!だな。
>125
あの自爆っぷりには笑いました、あれなら二代目シェゾを名乗っていいくらいでしたね。
ドリームの人乙そしてGJでした
いいなあなんか甘いもの食べたくなってきた
ちょっとコンビニいってくる(AA略)
可哀想なワルドといえば個人的には
台詞もなく竜から振り落とされたのが臭わされただけの
マミーモン召喚ネタのワルドも中々に可哀想だと思う
デモンベインクロスだとワルドが地球皇帝になりそうな気がしてならない
>>125 すみませんが漫画版ウィザードリ−ですか?
読みたくなったのですが見つからんません
小ネタ? 小ネタにもないし
シェゾとワルドの変態対決だと…!?
シェゾ「お前(の魔力)が欲しい!」
…ワルドと思いっきし被るな
ワルドでないやつとかも、ある意味悲惨かもね
原作での扱いが一番ひどい
いいオチだ
しかし作品中の扱いが悪いとしても、死の瞬間で全てを覆せるケースがある。デルフ……
ウルトラマングレート召喚
ゴーデス細胞がハルケに逃れてゴーレムやエルフに憑衣して怪獣になる
ルイズは天から落ちて来た変なペンダントでグレートに変身して戦う
>>138 デルタ・プラズマーを変なペンダント扱いすな。
グレート召喚だとカトレアがゲルカドンを生み出して、どっかに飛んでいってしまいそうで怖い。
それはともかく、ひどい扱いで涙目になるワルドはいいとして、ひどい目にあうほどに喜ぶ豚が一番手に負えない気がする。
召喚されたポルコ・ロッソにマリコルヌが対抗心を燃やすと申したか
142 :
鋼の人 ◆qtfp0iDgnk :2009/07/22(水) 17:03:20 ID:izJgJoRa
こんにちわ。
タバサメインの外伝が出来上がったので投下に入りたいと思いますがいいでしょうかね?
予告1710から…。
あ、ageてた失礼
タバサはその時も、鞄より取り出した本を広げて項を目で追っていた。いや、例えどのような場所であっても、自分の自由に出来る時間であるならば、タバサは本を広げ、
読み続けるのであった。
それが使い魔シルフィードの背中、高度三五〇〇メイルの上空であっても。
耳には風を切る音が轟々と鳴り、顔を上げれば雲海の広がる晴れ上がった空と、その上方にうっすらと見える二つの月が幻想の世界を形作っていた。
見下ろす雲の切れ間から、林と林の間を筋のように延びる街道が、かろうじてそこが人の営みのある世であることを知らせてくれる。
「お姉さま。今日はどこにいくのかしら?」
甲高い、かわいらしい声がどこからか聞こえてくる。それにタバサは顔を上げる事無く答えた。
「リュティス」
それはハルケギニア半島東部にあるガリア王国の都にあたる。さして声量を出さないつぶやきであるのに聞こえるのは、彼女の乗るシルフィードが、世界を満たす
精霊の力を借りて、大気の障壁をその周囲に作り出しているからであった。
そう、このシルフィードと名付けらた蒼穹を溶かしたような鱗の持ち主は、一体ただの風竜ではなかった。
「きゅい。あの大きな町!でもあそこにいくってことは、あの小生意気な娘に会いに行くのね。シルフィ行きたくないのね」
「任務だから」
きゅいきゅいとシルフィードが間断なく鳴きながら、その話し声は聞こえてくるのだった。
彼女……タバサの使い魔、風竜シルフィードこそ、数多ある幻獣の中でも、もはや人里にあって伝説の域となった希少種、韻竜(ジング・ドラグ)の中の一体なのである。
彼女達の種は最強種であるドラゴンの中でも、さらに個体数の少ない者達だ。長じた個体であればその鱗は何物をも弾き、爪牙は獲物を捕らえ、息吹は空気を焦がす。
それだけではなく、人間……特にメイジとって脅威なのは、人語を理解し、話す事さえできる知性と、先住魔法と人間達が言う精霊を操る力であった。
幼生とはいえ、そのような生物を自らの使い魔として支配下に置くタバサの、潜在する魔法の力がどれ程のものか、推して知るべくもない。
「そーれーにー、シルフィはお昼ごはんを食べて、フレイム君と川の字に小粋なお昼寝と洒落込みたかったのね。それだというのにこの小娘は、いっつも任務だ外出だって、
使い魔を扱き使いすぎなのね!」
「十分な休息はしてるはず」
「それにしてももう少し労わって欲しいのね。具体的にはもっとたくさんご飯を!」
「向こうに着いたら用意させる」
「本当に?」
「約束する」
「わーい!ご飯、ご飯♪お腹一杯食べるのねー。るーるるーるるー」
実年齢でタバサの二十倍はあるはずの竜は実際のところ、その態度はまるで子供のようで、楽しくなった挙句鼻歌まで歌い始めていた。
「うー、でもでも、ご飯は嬉しいけれど、シルフィとしてはもっともっと、お姉さまとお話したいのね。ねぇ、どうして人前でしゃべったらいけないのかしら?」
「貴方達はもうこの世に存在しないことになっている。知られたら、面倒」
きっと、トリステイン“アカデミー”や、リュティス“塔”機関が、背後の王政府を動かしてでもタバサにシルフィードを引き渡すように迫るだろう。
「そりゃ、私だってお姉さまと離れ離れになるのはいや。でもでも、やっぱりお話したーいーのーのー」
やかましいほどに抗議するシルフィードの後頭部に、タバサの踵が叩きつけられて、幼い風竜から悲鳴が上がった。
「あう!いたいの〜」
「煩いのは、嫌い」
「あう〜嫌いにならないで欲しいのね。でも、やっぱりおしゃべりしたいわ」
ぶつぶつとつぶやくシルフィードの背中で揺られながら、タバサはその凍りついたような無表情のまま、ただただ広げた本を読み続けていた。
二人が何ゆえ、ガリア王国の都を目指しているのかというと、こういうわけである。
或る日正午頃のトリステイン魔法学院はタバサの部屋に、一通の書状を携えた伝書梟が舞い込み、手紙を渡していった。
厳しくも、蒼い蝋でされた封をはがして中身をタバサは見た。そこにはただ一文、
『プチ・トロワへと出頭されたし』
とだけ記され、日時すら書かれてはいなかった。
それを読んだタバサは、いつも部屋の隅に置いてある鞄を確認した。中には簡素な着替え一式、傷薬、服用式の解毒剤に、一辺が2メイル半ほどある表が紺色、
裏地が褐色に染められた布が綺麗に折りたたまれて入っていた。
タバサはその中に、机に積み上げられたまま、目を通していない本から適当に数冊を抜きだして詰め込み、鞄を背負った。
部屋の窓を開け放つ。空は千切れた雲が散見し、空気も適度な湿りを帯びて良好な天候と言えた。
再び荷物を確認する。必要なものを詰めた鞄、腰の皮ベルトには、以前の節くれた大杖に変わって手にしている短杖が差し込まれていた。
トリスタニアソレイユ工房製、ストームX型カットオフカスタム。伝説的騎兵『烈風カリン』に肖ったタクト型杖の五世代目デザインに、取り回しやすいように先を詰めた上で、
カップ型の小さな鍔を取り付けた代物。
その上から貴族の証であるマントを着け、さらにその上から皮ベルトで吊った剣を肩にかけている。それは小柄なタバサが抜きやすい様、刀身が短く、刃の片面しかついて
いないものだ。
凡そ少女に似合わぬ姿、凡そ貴族らしからぬ装いであった。
自分の荷物を確認したタバサは窓枠に足をかけ、外に向かって跳躍した。それと同時に指を加えて笛を吹く。
笛音は風にかき消されたかに思えたが、落下するタバサを蒼い巨大な何かが掬い取る。
蒼い何かは笛に応えたシルフィードであった。蒼く輝く鱗に覆われた体躯が躍動し、タバサを乗せたシルフィードは一路、雲すら見下ろす上空へと駆け上った。
かくしてタバサとシルフィードは雲海の人となり、一路トリステイン魔法学院より遥か南東へと飛び続けた。
やがて眼下の雲が晴れ、広く見下ろせる大地の先に、毛織物を広げたような多様な彩りを思わせる都市が見えてくる。二股に分かれてゆく大河に抱かれた中州に建てら
れ、今や人口三十万を超えるハルケギニア一の大都市となった、ガリア王国の首都リュティス。長い年月を経て縦横に拡大していったこの都市の東側に、先々代の王は新
宮殿ヴェルサルテイルを開いた。現国王ジョゼフ一世が現在その中心『グラン・トロワ』の主である。
タバサとシルフィードは、そのグラン・トロワより渡り廊下と隔壁で繋がっている小宮殿の前に降下した。小宮殿といっても、その壮麗さたるや大貴族の邸宅でも足りぬほど
だ。その外壁は薄桜色の飾り石で葺かれていて、見る者に強く印象付ける。
大宮殿の付属物のように見えるが、しっかりと一つの宮殿としての機能を持っていて、タバサは宮殿付の厩舎にシルフィードを案内し、厩番に食事を摂らせる様、しっかりと
言い含めると、宮殿の中へと入っていった。
小宮殿の名を『プチ・トロワ』という。国王の子女のための宮殿であった。
壮麗なる宮殿の主はその時、居室にて寝椅子に寄りかかりながら、壁に掛けられた的に向かって投げ矢(ダーツ)を放っていた。的と矢は杖にも使われる硬い樹木に、宝
石を砕いた石絵の具で数字や絵が描かれた最上級のもので、そのまま飾っていても問題が無いような品だ。投げられた矢は寸分と違わずに、的の中心に刺さる。掛けられ
た的は不思議なことに、長い間飾られているように見えながら、一つの傷も見受けられなかった。
腰まで伸ばされた髪と瞳は澱み無き青、年頃は十七ほどで、肢体は少しばかり痩せ型だが、年相応の瑞々しい膨らみで曲線を描いていた。丁寧に梳かれた髪と、光沢の
ないドレスが合わさって、その姿は寝椅子に張り付いた影のようだ。だが、頭に被せられた豪奢な冠と、覗くすべらかな額、そして鋭い眉尻を備えた眼差しが光っている。
丁寧に紅の注された唇を微動だにせず、彼女は部屋に垂れ下がっていたロープを引いた。
部屋の外、どこか遠くで鈴の鳴る音が聞こえ、暫くして足音ともに、傷塗れのドアが開かれた。
「お呼びでございましょうか。イザベラ殿下」
殿下と呼ばれた少女、イザベラは寝椅子に座ったまま、首も向けずに言った。
「退屈よ」
「ゲ、ゲームのお相手でも、いたしましょうか?」
緊張する召使の女の後で重々しい音と共にドアが閉まる。
「結構よ。そこに立っていなさい」
その言葉の意味するところを知っている召使は、これから始まる時間を思って気色を失った。
テーブルに並べられた投げ矢が五本、召使の目の前で消えた。
それと同時に、風切り音を伴って召使の両耳をほんのわずかに掠るようにして投げ矢が通り抜け、背後のドアへと突き刺さる。
「ひぃ!」
ガクガクと膝の震える召使を一瞥ともせず、イザベラは並べられた投げ矢二十本を瞬く間に投げ続ける。投げ矢が指と指の間を、脇下を、股下を抜けてドアに心地よい音を
立てて刺さる。
投げ矢がテーブルの上から無くなると、今度は果物を切る為のナイフが飛んだ。次に編み物用の棒が、さらにペンが三本続けてこめかみの脇を通って刺さった。
「は……は……は……」
一分にも満たないその時間で、召使の女は二十年は年をとって見えるほど恐怖し、足元に滴る染みから鼻を突く匂いが立った。
「主人の部屋で粗相をするとはいい度胸ね? でも、いいわ。良かったわね? 私の手元にもう投げるものが無くて」
名状しがたい邪悪な微笑みを、イザベラは浮かべて言った。
飽いた様にイザベラは窓を見た。外は晴れ渡り、宮殿の外を彩る花壇が萌え上がっている。
だが、リュティスの大宮殿にとって『花壇』というのは別の意味を持っているのだった。
そのことにイザベラが思い巡らそうとしていた時、鈴の音と共に召使がまた一人やってきた。
新たな召使は壁に釘付けにされた同僚を見て、苦しい顔を一度作っては消すと、自らの主人に向かって傅いた。
「イザベラ殿下、シャルロット様がおいでになられました」
イザベラは瞬間、傅く男召使に振り向いた。男召使は顔を上げようとする体を懸命に抑えた。
今、首を上げれば、その首は胴から離れるかもしれない。そう思わせるだけの何かが、頭垂らす先の少女から放たれているのを感じ取れたからだ。
「シャルロット? 誰だいそれは。……もし、あの人形娘(ガーゴイル)の事をそう呼んでいるのなら……」
背中が焼けるような殺気を浴びて召使は頭を垂れ続けた。そして次の言葉を待った。ほんの一瞬が永遠に思えた。
「……歓迎しておやり。私は下の部屋で待つよ」
寝椅子から立ち上がりながらイザベラは言い、自室から下の謁見室――小国の玉座に相当する華麗なものへ続く階段へ向かった。
心労でがくがくと震える体を立たせながら召使が立ち上がろうとした時、階段に足をかけたイザベラが振り返った。
「そうだ。ただの歓迎では、面白くないね。こういうのは、どうだい?」
果たして、召使は見てしまった。
イザベラの氷の如き眼差しを。
タバサは門衛に、続いて引継ぎの文官に名前と書状を教え、中へと通された。その名前とは、本来の名前『シャルロット』ではない。
北花壇騎士(シュバリエ・ド・ノールパルテル)
ヴェルサルテイルを囲む花壇と、そこに植わられた花々にちなむガリア騎士団の中で、唯一、花無き北の花壇の名を与えられた騎士団があった。表向きには存在せず、
公にならぬ任務のために技術を磨いた特殊な集団、それが北花壇騎士団である。
タバサのガリア上での地位は『北花壇騎士七号』。騎士団の中で席次にして七番目に位置する。一応、席次=騎士団での実力であるはずなのだが、集団で行動する事無
き北花壇騎士にあって、そんな序列はあってないようなものだった。その実体を知っているのは、全ての騎士団のトップであるべきガリア王ジョゼフと、騎士団長に任じられ
る『北花壇騎士一号』だけだった。
『北花壇騎士七号』タバサは王女イザベラの謁見室前に立った。衛兵の名乗りもなく扉は開かれ、タバサはその中へと入っていった。
毛氈のしかれたる謁見室は奥行き五十歩、幅二十歩足らずの部屋で、最も奥の段に拵えられた小玉座に悠々とした風情でイザベラが座り、タバサを見ていた。
イザベラの元までタバサが進んでいく。その距離にして三十歩を切った、その時。
「お覚悟!!」
部屋を支える柱と帳の間から腰溜めにナイフを構えた召使の一人がタバサに向かって飛び掛った。その顔には恐怖が張り付いた、鬼気迫るものだ。
タバサの体に緊張が走る。とっさにタバサは腰を落として、逆に召使に向かって飛び込んだ。只でさえ小さいタバサが屈みこんだことで、ナイフの切っ先からタバサが外れ
た。タバサは召使の懐へ入り込み、飛び込む力を利用して鳩尾に向けて肘を突き込む。
召使は強かな一撃を受けて呻きながら後じさる。そのまま横なぎに倒れ、苦しげに呟いた。
「申し……わけ……ありません……」
それだけを言って召使は気を失った。
「おやおや……随分と嫌われたものだねぇ、人形娘」
名を付ける気にもならない悪意が込められた声でイザベラは近寄ってくるタバサにそう言った。
イザベラの椅子から八歩のところでタバサは止まった。
「暗殺者に狙われるなんてねぇ」
悠然とのたまうイザベラを、タバサは無言の眼差しで見た。
「何か言ったらどうだい?」
言葉を請われてもタバサは自若として口を動かさなかった。ただ、その眼差しでイザベラの目を見る。その奥に、自分の目指すべきものを見るように。
その様を見たイザベラは、ほんの一瞬だけ、常とは違う顔をしたが、それも一瞬の事で、恐らく誰も――今最も近くにいるタバサですらも見逃している。
「まぁ、いいわ。北花壇騎士七号に命ずる」
玩具に飽きた子供のような口ぶりで、イザベラはどこからか取り出した一枚の紙をタバサへと投げつけた。
「詳しくはそこに書いてあるけど。お前には牛頭鬼(ミノタウロス)の討伐を命ずるよ。知ってはいるだろうが、牛頭鬼は亜人の中でも、群を抜いた生命力と頑強な体躯を持って
いる。お前はその命令書に示された場所へ向かい、先に行った者と共に牛頭鬼の首を上げるのが、今回の仕事だ」
「先に行った者?」
ここにきて初めてタバサはイザベラへ向かって言葉を使った。
タバサの疑問は当然であった。本来、北花壇騎士は単独行動を取る。私的に知り合いならまだしも、その活動にあって協調行動を取る事などまずないはずだ。
「あぁ……先に行ったといっても、北花壇騎士じゃあないよ。……まぁ、なんだ。多少魔法が使えたといっても、お前はまだまだ餓鬼だからね。助っ人を用意したということさ」
面倒臭そうにイザベラは答えた。助っ人? まさか。隙あらば任務に託けて謀殺することを考えているはずのお前達が?
明らかな疑問、疑惑を見せたタバサを見て、イザベラは僅かにだが溜飲を下げ、満足げに、そして悠然と宣した。
「さぁ、行くが良いさ。分かっているだろう? お前に選択の余地は無いんだからさ」
イザベラの言う通りだった。タバサにとって北花壇騎士の仕事は全てを賭けさせられたものだから。
命も、残された母も、なけなしの何もかもを。
プチ・トロワの外で竜の鳴き声が聞こえ、やがてそれが遠ざかっていくのを、暫くの間イザベラは椅子に腰掛けたまま耳を澄まして聞いていた。
やがてそれが聞こえなくなるのを確かめてから、イザベラは立ち上がった。
「そこに転がっているのを早く片付けるんだよ。あと、今日はもう誰もプチ・トロワに入れないように」
謁見室に並んだ召使達が深々と頭を下げてそれに答えた。
「私は『地下』に行く。呼び出すまで、怠けないで働いているんだよ?」
声音だけは優しく、だが、見るものを慄かせる恐怖の笑みで、イザベラは言った。
シルフィードはリュティス上空を旋回しつつ、背の上の主人から今回の任務についてあらましを聞かされたのだが、相手が牛頭鬼と聞いた瞬間に悲鳴のような非難の声を
上げた。
「きゅい!きゅい!お姉さま、悪い事は言わないのね。牛頭鬼は相手にしないに越した事はないのね。あいつらは精霊に働きかける事はできないけれど、馬鹿じゃないかって
くらい身体が頑丈で、体力もあるのね。お姉さまみたいな小娘が大好物だから、きっとパクッと食べられちゃうわ」
「任務だから」
煩い使い魔にただそれだけ言って、タバサは渡された命令書に目を落としていた。
「そーれーにー、あいつらって基本あなぐらで生活してるから、お姉さまみたいに風の魔法で戦う場合すこぶる不利だと思うのね」
「分かってる。でも、任務だから」
「むー。この無表情娘。シルフィはこれでもお前を心配してやっているっていうのに。ぶーぶー」
そこまで言うシルフィの頭にタバサの強かな蹴りが打ち込まれる。
「痛い!痛いの〜」
「ここから北へ飛んで、街道沿いに」
「もう、わかったよぅ。くれぐれも慎重にやってほしいのね。あと、あんまり頭を蹴らないでほしいわ」
ぶつぶつと文句を言いつつも、シルフィードは振り返って翼と尻尾を躍動させながらリュティスから離れた。
シルフィードの背でタバサは再び命令書を読み直す。
[リュティスから北へ百五十リーグ先にあるランス街道沿い三つ目の宿場町にある、『白猫と黒猫亭』を訪ね、そこで待っている『緑髪の女性』と合流し、牛頭鬼の出没地帯
へ移動すべし。事件の詳細は当地にいる『緑髪の女性』から聞くように]
事務的な文面を割愛し、内容を単純に纏めると、命令書にはそのように書かれていた。
「ふんふん。とりあえずその宿場町まで行けばいいのね」
シルフィードは水飲み鳥のように頷いた。
「宿場に着いたら私はどうすればいいのかしら?」
「厩で待っていて」
「えー?シルフィお姉さまが心配なのね」
「大丈夫」
いつもの感情を感じさせない声でタバサは言った。
「む〜。……ところでお姉さま。シルフィはお腹がすいたのね」
「さっき食べたはず」
プチ・トロワにいた間、シルフィードは確かに厩番から餌をもらっていたはずなのである。しかし、彼女にしてみればそれでは足りなかったようだ。
「きゅい。あれくらいじゃシルフィのお腹は満たされないのね!」
「我慢して」
「ねーお姉さま。宿場で宿屋さんの中に入るんでしょ?その時、一緒にシルフィご飯が食べたいのね。ねぇ、いいでしょ?」
食べたい、食べたいとやかましく囀るシルフィードは、ふと、見下ろす地面を見てから続けた。
「ほら、もう下は三つ目の宿場よ。さぁちびすけ。大人しくシルフィと一緒にご飯するのね」
とつに食べ物の事となると煩い使い魔に、タバサは暫く考え込んでいたが、どうせこのままだと自分を降ろしてくれないのだろうと思い、仕方が無く鞄から一着の上下を取り
出した。
「これを着て、大人しくしている事」
それが条件、と聞いてシルフィードは嬉しさの鳴き声を上げた。
「うーん、何度着ても人間の服って動きづらいのね」
タバサの隣を、タバサと同じ青い髪の女性がえっちらおっちら危なっかしく歩きながら、宿場町の門前に立った。
タバサはそんな危なっかしい“人に化けた”シルフィードを見て、少し軽率だったかもしれないと俄に思うのだった。
シルフィードが使う“先住魔法”精霊の力の一つに変化【メタモライズ】というものがあり、それはシルフィードが知っているもの、イメージできるものであれば、その姿に精霊
の力を借りて変身することが出来るというものだ。
幼生とはいえ巨大な竜の姿を人一人に変えてしまうほど、強力な能力である。系統魔法にも変顔相【フェイス・チェンジ】等、見た目を偽装する方法はあるが、これほどのこ
とはできない。それほど、亜人や希少な幻獣がつかう精霊の力というのは大きい。
ただし、変化では着る服などは再現できないので、タバサはシルフィードを化けさせる時用に常に一着余分な服を鞄に用意してあった。
宿場町の中を、長い髪の綺麗な女性に変身したシルフィードとタバサが歩く。
シルフィードは人に化ける時、いつも『タバサが大人になった時、こうなっているといいな』というイメージで以って変身していた。その姿はすらりと伸びた手足に、綺麗に伸
ばした長い青い髪を持っている。
タバサとしては自分が不自然にならない、大人の姿に変身してくれれば十分らしく、どうしてそんな姿なのか、などは聞かなかった。
(お姉さまって可愛いもの。きっと大人になったらこんな風になるんだわ。でも、可愛いんだからもっと笑ってほしいのね。お家の事情が辛いのは知ってるけれど、シルフィは
笑うお姉さまが見たいのね……)
先を歩くタバサの姿を見ながら、シルフィードはそんな風に思うのであった。
やってきた宿場はごくごくありふれた場所だった。四方を石垣で囲い、四方に物見用の台がある。石垣で区切られた中では、人と物が建物の間を縫うように溢れている。宿
場町で暮らすのは石垣の外に農地がある者か、宿場を通る旅人や行商人を相手に商売をする者が殆どである。特に旅人を相手にする食堂兼宿屋が多く、今から二人が行
く『白猫と黒猫亭』も、その一つである。
「『白猫と黒猫亭』って、縁起の悪い名前なのね」
店に掲げられた、まさしく白猫と黒猫が描かれた看板を見て、シルフィードはそう感想を漏らした。
白猫と黒猫は相性が悪く、一緒に買うと飼い主は猫の妖気によって方向音痴になる、という迷信が広く聞かれるからだ。
「反って縁起が悪い方が、厄除けになると聞いたことがある」
そう答えて、タバサは店の中へ入って行き、シルフィードは急いでそれを追った。
店の中は盛況でテーブル席はどこも人が座っているため、しかたなく二人はカウンター席を並んで座った。
「いらっしゃい!お嬢さん達、食いもんかい?それとも酒かい?」
「お肉と付け合せのサラダを頼むのね!」
「元気のいい姉さんだ!ちょっと待ってな」
店の人はそう言って引っ込んだ。タバサは鞄の帯を緩めながら、店の中に座る客達を見渡した。
客は男も女もいる。若い者も、年老いた者も。皆昼過ぎだというのに豪快に飲み食いし、楽しんでいるように見えた。
命令書には、ここに訪ねるべき人物がいると書いてあった。『緑髪の女性』とだけ記されていたが、見る限りでそれらしき人は見られない。
と、そうしている内に店の置くから人が戻ってきた。その両手には山盛りに盛られた炙り肉と、ボウルにはいった野菜サラダがあった。
「あいよ!オックスのワイン煮込みと、付け合せのサラダだ」
「あっりがとーなのねー♪いただきまーす」
皿に盛られた肉にシルフィードは早々に被り付く。一緒に煮込まれたハーヴの香りが漂い、肉汁と脂で口周りをてかてかにしながら骨にしゃぶりつくシルフィードの姿は、変
身している女性の格好とあわせてひどく滑稽に見えた。
タバサもそろそろと食べ始めると、出された皿はあっという間に空になってしまった。小さな身体ながら、タバサは驚くほどの大食漢なのだ。次から次に料理を注文する二人
を見て、店側も調子をよくしてどんどんと料理を運んで行った。
積み上げた皿が“一人につき”十枚を越えた頃、タバサは頼んだワインをジョッキから戴きながら、店を仕切っている主人らしき男性に尋ねた。
「ここにリュティスから来ている、緑髪の女性がいると聞いている」
頭を薄くした男は、蓄えた髭を扱きながら答えた。
「あぁ、その人なら上で部屋を取ってますよ。……見たところ、貴族のお嬢さんみたいだけど、あんた達、あの人に用事かい?」
頷くと、食事を終えて大人しくしていたシルフィードが皿に残っていた檸檬を齧りながら聞いた。
「その人ってどんな人なのね?」
「大体、二週間くらい前からここに泊まってるんだよ。金払いは良いし、変に騒いだりもしないんだけどさ。ただ、下に降りて飯を食う様子もないし、あと、よく部屋を開けてどこ
か行っちまうんだよ。部屋の掃除もしなくて良いって言うしさ」
「ふーん、変な人」
ジョッキを開けたタバサは荷物を持って席から離れる。
「その人の部屋に案内して」
投下終了。歯切れが悪いですが今日はここまで。
しえん
しえんしようとしたら投下終わってたww
乙です
HAGANEOTSU
デトロイトメタルシティから
根岸宗一(クラウザーの衣装とギターを所持)を召喚したら
ラスボスはもう帰ってこないの?
ゼロ魔キャラがDODの魔物を召喚したら
契約の代償で失いそうな物は
ルイズ=言葉
イザベラ、ジョゼフ=死
タバサ=音(聴覚)
キュルケ=時間
>>156 ルイズは意思が失いそうだけどな
魔法を使いたいっていう意思が
確かにラスボスの人にしちゃ間隔空いてるが1ヶ月くらいは大したことあるまい。
俺は魔王伝とウフコックをずっと待ってる。
シカジャナ芋?
俺はいつまでもゼロのガンパレードを待つぜ
SSで一ヶ月なら短いぐらいと思わなきゃ
そう考えるとウルトラの人は凄まじいな。毎週あれだけの量を投下するなんて
しかも面白いし
キュルケは情熱とか愛じゃねえか
失うの
ルイズは欲望だな
うろ覚えだからwikipedia検索してみたんだけど、どうも失われるのは身体機能みたいだよ
>どうも失われるのは身体機能みたいだよ
魅力とか失ってる奴もいるのでそうとは限らない
歌だったりな
ツンを失った。
こんばんは。
萌え萌えゼロ大戦(略)、2話を投下したいと思います。
進路クリアなら21:15頃から開始します。
しえーん
それではいきます。
トリステイン魔法学院で執り行われた春の使い魔召喚の儀式から明けた朝――ふがくは
自分を取り巻く景色が変わっていないことにちょっとした絶望感を味わっていた。
「……あーあ。目が覚めたら『元の世界』に戻ってた、なんて期待した私がバカだったわ……」
ふがくは学院女子寮の屋根の上で、目に映る景色に大きくため息を漏らす。夜空を
彩っていた天空に浮かぶ蒼紅の双月は今は見えないが、昨日激しい痛みで叩き起こされて
からのことがすべて現実だとそろそろ認めなくてはならないとも思い始める……
――『ダイニッポンテイコク』?聞いたことないわね。どこの田舎よ?――
――元に戻すなんてできないわ!『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけだもの――
昨夜、ルイズと名乗った桃色髪の生意気な少女が言った言葉がこれだ。
「火」「水」「土」「風」そして失われた「虚無」と呼ばれる系統に分けられた「魔法」のこと、
そして「メイジ」と呼ばれる貴族階級の存在。貴族については大日本帝国にも存在しているので
ことさら驚きはしなかったが、「魔法」についてはちょっとだけ驚いた。「鋼の乙女」と呼ばれる
兵器である自分が生み出されたのはあくまで「科学」という技術。魔法なんてものは子供向けの
空想漫画くらいにしか出番はないはずなのに、ここではそれが全くの逆になっている。
しかし、ふがくが愕然としたのはそれらのことではなかった。
――あんたはわたしの『使い魔』なのよ?ご主人様の命令ならどんなことでも喜んでする……『犬』なのよ!――
……冗談じゃない。ふがくは思い出すだけで腹の立つ思いを無理矢理抑え込む。結局
お互い平行線のままふがくが窓から飛び出して――今この有様だった。
一方、鬱屈としたまま眠りについたルイズは……本来ならば心地よいはずの朝に目覚めた後
でも変わらない部屋の光景に、悲しさを覚えずにはいられなかった。
「……やっぱり戻ってない……いったい、わたしが何をしたって言うのよ……」
自覚がない、ということは素晴らしいことでもある。昨夜自分が呼び出した使い魔が飛び
出したままで半開きになった窓もそのままに、ルイズはもそもそと着替え始めた。
「……まったく、なにやってるのよ。使い魔のくせに……」
思わず口に出る。けれど、それで何が変わるわけでもなく、ルイズは重い足取りのまま
朝食に向かうことになった。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝
いたします――」
いつものように祈りから始まる朝食。卓上には大好物の焼きたてのクックベリーパイと
肉がたっぷり入った子羊のスープ。けれど、ルイズの心は晴れなかった。
理由は単純。使い魔がまだ戻らないからだ。結局アルヴィーズの食堂までの廊下でも
見つかることもなかった。
「……どこに行ったのよ、まったく」
「おはよう!ルイズ。……あら?あの使い魔はいないの?」
落ち込むルイズにかけられる声。声の方向に顔を向けると、そこにはルイズと正反対に
豊満なスタイルを隠すこともない赤い髪と褐色肌の長身の女生徒と、まだ眠いのか開いた
本を手にしたままあくびを隠さない青い髪に雪色肌の小柄な女生徒がいた。
「むっ。キュルケ……」
声の主に対してルイズは露骨にいやな顔を向ける。その様子に何か思い当たる節が
あるのか、赤い髪の女生徒、キュルケはにんまりと微笑んだまま言葉を続ける。
「昨日の様子からして、もう逃げられたの?せっかく呼び出した使い魔さえ御せないなんて、
さすがルイズね」
「ち、違うわよ!フガクは……」
そう。ヴァリエール家にとって不倶戴天の敵ともいえる、隣国ゲルマニアの有力貴族
ツェルプストー家のキュルケはどんな運命のいたずらなのかルイズの隣室なのだ。昨夜の
どたばたの一部始終を聞かれていたとしても不思議ではない。もっとも、聞きたくなくても
聞かれてしまうくらいの大声だったことにも問題はあるのだが……
「ふうん。昨日はよく聞き取れなかったけれど、『フガク』っていうの、あの使い魔。タバサの
ウィンドドラゴンもすごいけれど、フガクもかなりのものだったわね。一度競争させて
みたいけれど」
キュルケに話を振られた小柄な女生徒、タバサはそんな話には興味がないとばかりに
小さな声で言葉を紡いだ。
「朝食……早く……ちこく……」
「そうね。ルイズと遊んでいる暇なんてなかったわね。
ちょっと!お茶ちょうだい」
タバサの言葉にキュルケはルイズが座っていた席に腰を下ろして近くにいた黒髪のメイドに
声をかける。その際ルイズが何か言っていたがキュルケは華麗にスルーした。
かくしてルイズが決して綽然とした、とはいえない朝食を摂っていた頃、ふがくは、といえば――
「……うぅ。おなかすいた……」
――召喚されてからこのかた何も食べていなかったため、女子寮の屋根から落ちそうに
なっていた。
ふがくのような『鋼の乙女』は、元兵器に準じた燃料――たとえば超重爆撃機型のふがくの
場合はガソリン、中戦車型のチハの場合は軽油、戦艦型のやまとの場合は重油などの
定期的な摂取を必要とするが、それ以外にも変換効率は落ちるが普通の食事を摂ることもできる。もっともそれ以外にもオイルや弾薬など機能維持のために必要なものがあるが、
その入手方法などについて気が回せるほど、今のふがくには余裕がなかった。
「アイツ、大日本帝国のことを『田舎』なんて言ってくれたけど、トリステイン王国、だっけ、
こっちの方がど田舎じゃない。飛行機どころか自動車もないなんて、信じらんない」
ふがくは昨夜のルイズとの会話を思い出して憤るが、それがまた空きっ腹に響く。いくら
長大な航続距離を誇ってもガス欠ではどうしようもない。
そんなふがくに、下から声がかかる。見ると、昨日の頭の寂しい眼鏡の中年教師――確か
ミスタ・コルベールと呼ばれていたような――がそこにいた。
「……私に何か用?」
「おお、気づいてくれましたか……えー」
「ふがくよ。それで、何か用?」
「フガク君か。すまないが、君の左手のルーンをもう一度見せてもらおうと思ってね。
ミス・ヴァリエールとは一緒ではなかったから探していたんだ」
「私は『ふがく』よ。『フガク』なんて呼んだら承知しないわよ」
ふがくは言いつつ屋根からコルベールのいる場所に降りる。わずかな発音の違いだが、
ふがくには何故かそれを許容できなかった。またふがくの背中の翼から響く6発のエンジン音の
コーラスにコルベールは興味を引かれ最初の話もどこへやら、となりかけたが、これは
ふがくが本道へ戻す。
「そ・れ・で?私の左手が見たいんじゃなかったの?ミスタ・コルベール?」
「……いや、失礼。と、いつ私の名前を言いましたか?」
「昨日私の前でアイツが呼んだでしょう?ぼんやりとだけど覚えてたから……間違った?」
「いえ。合ってますよ。しかし、ミス・ヴァリエールを『アイツ』とは、感心できませんね」
そう言って、咎めると言うよりは諭す視線でふがくを見る。身長差からどうしても
コルベールがふがくを見下ろすことになるが、ふがくは気にも留めなかった。
「そう言われたくなければそれなりの態度を示してほしいわね」
「はは、私からも注意しておきましょう。それでは……」
そう言ってコルベールはふがくの手を取りルーンをスケッチする。そのとき、ふがくの
おなかがかわいらしい音で鳴いた。
「うぅー……」
「ミス・ヴァリエールは君に食事の用意もしていなかったのか……その様子だと私たちと
同じ食事でよさそうだね。
……アルヴィーズの食堂はもう昼の準備に入っているかな。案内するから何か作って
もらうといい」
「え?それはうれしいけど……何か裏はない?昨日とはずいぶん扱いが違うんだけど」
ふがくが言う。昨日のように人の意見を聞かない扱いであれば、そもそも地面からふがくを
呼ばないで直接屋根まで飛んできて左手をつかんでいたことだろう。それをせず、しかも
昨日と違ってふがくのことを名前で呼ぼうとしている。これだけあからさまでは何か裏が
あると思うのが普通だろう。
「あはは……いやぁ、確かに、ふがく君、という発音でよかったかな?君の持っていた杖を
始め君自身についても興味は尽きないけれど……」
「けれど?何?」
「……まず、ふがく君、君が話の通じる相手だと思っていること。そして、何よりミス・ヴァリエールが、
先ほど授業に遅れそうになるのもかまわず君を捜している姿を見ましてね。さすがに
女子寮の屋根にいるとは思っていなかったようですが、ふがく君のことをずいぶんと気に
しているようでした。その証拠に……ほら、ミス・ヴァリエールの部屋を見てご覧なさい」
コルベールはそう言って女子寮を指さす。すると、授業中で誰もいない女子寮の一室、
そこの窓だけが開いているのが見えた。
「ルイズの部屋の窓が……開いてる?」
「君がいつ戻ってきてもいいように、ですよ。ミス・ヴァリエールは意固地なところもありますが、
決して悪い人間ではありません。ですから……」
コルベールがそこまで言ったとき、どこかから大きな爆発音が響いた。
「……今のは?爆撃?」
「向こうの塔です!おそらく、ミス・ヴァリエールが魔法をしっぱ……」
コルベールが言葉を言い切る前に、ふがくは空腹も忘れてエンジン音も高らかに空に
舞い上がっていた。上空から学院を見ると、確かに中央のひときわ高い塔を囲む4つの
塔の一つから煙が上がっている。爆風が抜け破れた窓からふがくが飛び込むと、そこは
煤と埃にまみれぼろぼろになった教室。その爆心地と思われる場所に煤まみれになった
ルイズが放心状態で座り込んでいた。
「……ルイズ!」
ふがくがルイズに駆け寄る。煤まみれで服もぼろぼろだったが、体はかすり傷すら負って
いない。近くにおとぎ話の魔女のような格好をした中年女性が目を回して倒れているが、
こちらも命には別状ないようだった。
「あ?フガク?えっ……と。ちょっ……と。失敗……しちゃったみたい……ね?」
「昨日も言ったでしょ?私は『ふがく』だっ……て……?」
ルイズがポケットからハンカチを取り出しながら言う。その言葉に爆風で倒れた机から
這い出した生徒たちがふがくの言葉をかき消さんばかりに次々と口なじる。
「どこが『ちょっと』失敗だ!」
「いい加減にしろー!」
「いつだって成功の確率『ゼロ』じゃないか!」
「魔法の才能ゼロのルイズ!」
次々と投げつけられるそれらの言葉にふがくも面食らう。いったいどういうことなのか?
ルイズを見ると、顔の煤と埃を拭きながら頬を赤らめごまかすような表情をしていた。
「なんなのよ、これ……?」
ふがくの疑問に答えてくれる人間は、今この場にはいなかった。
以上です。
なお、今回のふがくの食事についてはゲームの設定に+αしています。
もともとゲーム自体が「気にするな」な箇所が多いのですが、本編でも航空機系
鋼の乙女がイカ刺し食べたり(例の移植版で話題になったCGで絡みついてるイカです)
高オクタンガソリンを餌に若手整備士にナンパされたりするシーンがあるので、
こうでも考えないと整合性取れないので...
ギーシュ戦まではあと1回くらい挟んでいけそうです。
それでは。
178 :
>>24:2009/07/22(水) 22:16:46 ID:82dYM6hf
乙です。
ところで自分もネタが出来たの初投下してみます
いたる所誤字や文法がおかしいところがあるかもしれませんが、ご了承下さい
作品は北斗の拳でケンシロウ(新・北斗の拳(OVA版)エンディング後の
)が召喚される話です どうぞ
179 :
北斗の拳・外伝 〜零の北斗七星〜:2009/07/22(水) 22:20:18 ID:82dYM6hf
北斗の拳・外伝
〜零の北斗七星〜
プロローグ
199X年、世界は、核の炎に包まれた。
文明は一瞬にして消え、海は枯れ、大地は荒廃し、あらゆる生命体は全て絶えたかに思えた。
しかし・・・・・人類は死に絶えてはいなかった! あらゆる文明、道徳が‘ゼロ‘になった今、時代は暴力、強き者が弱き者の肉を食らう、弱肉強食の世界に戻っていった。
しかし、その光無き地獄の世紀末に突如現れた一人の男の伝説によって、世界は、変わっていった。
その男は・・・・・北斗神拳伝承者にして北斗宗派の血を持つ
男
その名は・・・ケンシロウ!!!!!
北斗現るところ乱あり・・・・これはハルケギニアという異なる世界の地にて新たに語り継がれる一人のメイジと一人の平民として召喚された男、ケンシロウの新たな伝説である・・・・・
?
とりあえずsageがわからんのなら投下はやめてほしいな
>>179 sage のやりかたは
E-mail (省略可) : のところに sage と入れればOKです。
では続きをどうぞ。
1.リアルタイム執筆中
2.これで終わり
1だな、きっと
>>168 遅レスだが、代償に失った魅力だが、公式で見た感じ歌と同じ類っぽい。
DODの魔物は人間の負の心に理屈抜きに惹かれる。負の心の原動力になる感情の揺れは取り除かないぞ。
3.ただの荒らし
DODの代償って、理由が色々アレだしなw
殺戮大好き殺人狂と、かわいい男の子大好きなショタと、毛が何よりも大切な契約者達だぜ。
投下して……いいのかな?
一時間以上たってるけど。
いいんじゃないでしょうか?
ということで支援します。
下げられない奴だから構わず投下してくれて構わない
>>187 私は一向に構わんッッ!
あれだな、どうも冷やかしくさいから投下しても文句言われないでしょ
殺人狂は他者の理解を求めていたから声を失った。
ルイズも魔法より他者の理解を求めそうだから、失うのは言葉か文字になると思う。
>>191 誰かに褒めて欲しいってことで聴覚かもしえん
193 :
ジル:2009/07/22(水) 23:35:54 ID:rlQ2XsvK
じゃあ、2345時に。
ジル・ヴァレンタイン、いきます。
194 :
>>179:2009/07/22(水) 23:37:06 ID:82dYM6hf
スイマセン今リアルタイムで執筆中だったのですが強制終了になって今書き直して
います。本当にすいません・・・・・
>>194 書き上げてから推敲を数回行ってテンプレ読んで問題なかったら、改めて来い。
>>194 執筆、推敲等終わってからまたの機会に投下宣言をして投下を行ってください
>>194 せめて一話分全部書き上げて推敲してから投下する事をお勧めします
>>194 とりあえず半年とは言わないけど三ヶ月はROMれ。話はそれからだ
>>195 認めて欲しい。褒めて欲しい、慰めて欲しい…やっぱ聴覚かな
汁支援也
>>196‐198
お前らどこから湧いて出てきたwwwwwww
201 :
>>179:2009/07/22(水) 23:44:07 ID:82dYM6hf
皆様本当にスイマセン、出直してきます
202 :
ジル:2009/07/22(水) 23:46:58 ID:rlQ2XsvK
「そうだ。俺たちはあの時、モット伯の屋敷の警備をしていた。貴族の屋敷を襲うバカなんて滅多にいないから、いつも暇だった。おま
けに当時は『土くれのフーケ』って盗賊が魔法学院の生徒に討伐されたっていうから、緩みに緩んでたな」
「やれやれ、退屈だな」
モット伯邸では、門兵がぼやいていた。
「土くれのフーケも死んで、貴族に楯突こうって不届者がいなくなったのに歩哨とはな」
「そう言うな。もしもの時のためだ」
「でもよ、こうも退屈だと逆に何かあって欲しいよな、事件とか。こう、ドカーンと」
「そうだな、確かに。いいな、ドカーンと派手に」
「そう、ドカーンと」
まさにその瞬間。
ドカーンと、背後の門が爆発した。
「うおぉ!?」
「ぎゃあああああ!」
あっけなく吹き飛ばされる門扉、そして門兵。
そして風のようにそこを突っ切る何か。それは門を突破して、土煙を巻き上げ玄関前で止まった。
「じゃあ、手順通りに」
「ああ、また会いましょう」
「何がなんだか判らなかったよ。何か矢みたいなものを見た気がするが、突然門が爆発したんだ。そこを甲高い鳴き声の鉄の馬が駆
け抜けた。今思うと、コルベール重工が造ってるバイクに似てた気がする。そう言うな、フッ飛ばされて意識が朦朧としてたんだ。それ
に乗ってたのは、多分男と女、二人だ。信じられるか? 二人だけけであの屋敷を潰したんだ」
コルベール重工www
支援
204 :
ジル:2009/07/22(水) 23:49:49 ID:rlQ2XsvK
モット伯邸事件には謎が多い。
どの文献を見ても、鬼神のような男女二人組が襲撃したとある。
「ええ、そうです。彼は衛兵の手首を捻っていました。見たこともない動きで衛兵を翻弄して……そう、厨房では衛兵が山積みになってい
ました。銃を持っていたみたいですが、使ったようには見えませんでした。あ、そうです、私たちメイドにはすぐ逃げるよう言っていました」
ある証言では、そのうちの一人が後に英雄として称えられるジル・ヴァレンタインに酷似しているとあるが、定かではない。
だが、魔王や破壊神と謳われた彼女なら、一夜にして大邸宅を更地にしたとしても納得できる。ニューカッスル城を一瞬で破壊したという逸話すらあるのだ。
玄関の扉は鍵がかかっていた。無論、ラクーンシティで一般的な、ロケットランチャーに耐えうるような装甲扉でもない。少し離れてM66で破壊し、ターミネーターのように炎の中を進む。
強固な固定化の施された扉を、それも二つも破壊して、何ら疲れた様子もなく、あまつさえ杖すら持っていないその存在に、その場に
いたメイドはおろか、衛兵ですら恐怖に身を震わせた。それに加え、ジルの憤怒のオーラ。中には気絶する者も。
「シエスタはどこかしら?」
衛兵の一人の胸ぐらをふん掴まえて、同時にわらわらと湧き出てくるメイジどもをゴムスタン弾でパカパカ潰していく。逃げる者は追わ
ず、歯向かう者は無意識の闇に蹴り落とす。鮮やかなその腕前と、連発式銃の威力には、その場の誰もがあらがう術を持たなかった。
「ひっ!?」
「シエスタ。今日連れてこられたメイドよ」
「し、寝室! モット伯の寝室です!」
ジュール・ド・モット伯。この事件の最大の被害者である。
この事件で因果応報とばかりに数々の不正が暴かれ、爵位剥奪と同時にチェルノボーグの監獄で四十七年の懲役を言い渡された。
しかし、彼は意外にも取り調べに素直に応じ、発覚した容疑の全てを認め、また自白もした。まるで少しでも刑期を長くしたいかのように。
今もまだ、収監されている。
支援射撃
206 :
ジル:2009/07/22(水) 23:54:20 ID:rlQ2XsvK
「あのとき、私は寝室にいた。新しく雇ったメイドに夜伽をさせるためにね。あ、いや、雇ったというのはおかしいな、当時の私は、平民の
気に入った娘を、金と権力で無理矢理連れてきていた。今思えば、天罰だったのかも知れんな」
建造物の爆破はニコライ・ジノビエフの専売特許。誰がそう決めたのか。屋敷をあらかた制圧したら、ケイシーは財宝と不正の証拠を
四次元ボックスに回収して平民を避難させる。ジルは爆弾をそこら中に仕掛けながらシエスタをDAKKANしにいく。敵にはとことん厳し
く。住居、財産、社会的地位、全てを破壊するつもりだった。
「あの女は、まさに魔王だった。だが、騎士のようでもあった。壁がドアごと吹き飛ばされ、自慢の固定化が無意味と知った時、しかし私
はまだ諦めていなかった。いや、理解できてなかった。しょせん平民、貴族には勝てん、とね。大間違いだったよ。最初の魔法が避け
られて、次の魔法が撃てなかった時に、杖が綺麗に折られていたのを見て、予備の杖が一瞬で粉々にされたのを見て、やっと理解し
た。メイジごときが魔王に勝てるものか、とね」
シエスタは気絶していた。流石にドアを爆破するのはやりすぎたかとジルは思ったが、とりあえず後回しにすることにした。特権を持つ
人種は、徹底的に恐怖を植えつけないと後後で厄介なことになる。その場で反省したフリをして、後から権力の限りを尽くして報復、な
んてことは想像に難くない。
だからケイシーに財宝と不正書類を回収させ、財力と権力を失墜させた上でフクロにするのがベストだった。
「あなたがジュール・ド・モット?」
「伯をつけんかデ、無礼な平民」
「つける必要性を感じられないわ。そんなことはどうでもいいの。そこのメイド、シエスタを返して貰えるかしら? 今なら何も言及しないわ」
どこまでも不遜な態度をとるジルに、モット伯は問答無用とばかりに杖を抜く。ジルは呆れたように、しかし何の行動も起こさない。
「エア・ハンマー!」
「フッ」
不可視の攻撃を何らの予備動作もなく、正確にその攻撃の範囲だけ避ける。同時に遠くで爆音が轟く。
「ふん、よく避けたな。だが」
次の詠唱を始める。それが如何に致命的な隙かも知らず、その隙を突かれない意味も知らず。
「ウィンド・ブレイク!」
どこまで間抜けなのか。絶対優位にいながらトドメを刺そうとして残弾がゼロだった。そんなヤマネコのボスを見ているような哀れな
目線をジルはモット伯に送る。モット伯の手には、折れた杖がしっかりと握られていた。
「無駄な抵抗はやめた方がいいわよ」
「おのれ!」
役立たずの杖を捨て、隠し持っていた予備を抜き出した瞬間、その指先を走る熱い感覚に、だがその手から杖は落とさなかった。
何事か。そう思って杖の方を見ると、いままさに折れたばかりの杖がゆっくりと、回転しながら落ちて――――幾つかのつややかなオ
レンジ色の小さな『何か』に砕かれていった。
「なにガッ!?」
意識が一瞬ぶれる。脳が揺さぶられ、世界が回る。
「特権って、人を腐らせる最高の毒ね。さて、消毒してあげないと」
「その後……足腰が立たなくなるまで殴られて、気付いたら地面で寝ていたよ。魔法衛士隊に囲まれてな。恐ろしくて恐ろしくて、何も
聞かれていないのに全部洗いざらい喋った。今までの不正の数々。外が恐ろしかった。少しでも長くここにいたいがためにでたらめも話
したが……寿命までここにいる権利をもらえたよ。ここはいいところだ、気に入ってる」
207 :
ジル:2009/07/22(水) 23:57:17 ID:rlQ2XsvK
当時、貴族に反抗する平民はほとんど存在せず、いたとしてもささいな抵抗だった。ここまで大々的に貴族のプライドを叩き潰し、あげ
く社会的にも抹殺したのは前代未問だった。名も姿も知れぬ二人はこの事件で誰一人殺さず、平民の間で英雄として称えられたが、そ
れ以降、歴史に『魔王と鬼神』は姿を表さなかった。結局、彼らについては調べることはできなかった。だが、彼はともかく彼女の話をす
るとき、みんな心底恐ろしそうな顔をしていた。それが答えなのかもしれない。
――――『モット伯事件の真実』より
報告を読み、アンリエッタはルイズと大きな溜息をつく。
「ニューカッスル城は、本当に消えてしまったのね」
朝、無傷どころか埃すらついていないジルが戻ってきて一言、
「終わったわ」
それから遅れること一時間、魔法衛士隊の隊長が報告に来た。
「報告します! 昨日深夜、モット伯邸に賊が押し入り、全てを吹き飛ばしました。モット伯は顔の原型が判らぬほどの暴行を受け、現在治療中であります」
「判りました。あとで詳細な報告書をください」
今は寝ているであろうジルが一体何をしたのか。それだけが心配だった。ルイズは既に何かを諦めているらしく、いつも通りの生真面目な態度でいた。
そして、今。
アンリエッタに渡された報告書は予想より遥か上をいっていた。
「全壊、だそうです。固定化の施された邸宅、塀、隠し部屋、隠し通路、地下室に至るまで。あと、金銭貴金属などが全て消えているとか……」
完膚なきまでに叩き潰されていた。ここにある『書類』と、ジルが未だ持っている『戦利品』は、おそらく『金銭貴金属』だろう。ここにある
書類だけで、モット伯は数十年は塀の外に出られない。事実上の終身刑だ。無一文となってしまったモット伯は、保釈金を払うこともでき
ず、国外逃亡の夢も終えた。おそらく、彼はそんな夢は見ていないだろうが。
「モット伯に関してはよい噂はあまり聞きませんでした。これはいい機会だったと思います。不正を正すのと、ルイズ、あなたの案を受け入れるための」
魔法のない世界からの異邦者、ジル・ヴァレンタイン。それがこの結果をなしたというのなら。
「では、姫さま……」
「ええ。ルイズの話に乗りましょう」
平民の力、恐るべし。
208 :
ジル:2009/07/23(木) 00:03:12 ID:5H8oBAp+
あれ? 今回も短いな。
まあちにかく以上です。
結構時間かけてこれかよ、と思う方もいるかもしれませんが、
前期考査試験
なのです。ケニー・ロギンスの名曲が聞こえます。
まあ、それはおいといて。
今回もパロネタ山盛りです。
ドカーンなんて誰も知らないだろうけど。
アルビオン反乱軍もトリステインも大絶賛準備中です。
もう少し準備編が続きますが、もうしばしの辛抱をば。
ではでは。
209 :
ジル:2009/07/23(木) 00:05:25 ID:5H8oBAp+
うわ、打ち間違えた。
xちにかく
oとにかく
ですよ。
03はキーが小さくて
まぁ誰だって最初はやらかすもんさ
懲りずに頑張れ
俺も数年前にガ板でやらかした事を思い出すと…
あ駄目だ回線切って首吊ってこよう支援
211 :
ジル:2009/07/23(木) 00:17:57 ID:5H8oBAp+
しっかりわすれてましたが、前回投下の時のレスにちょいと反論を。
私は女帝の人とは関係ありません。
文章力がないのはすみません。リアルに力不足です。
短いのは、それに時間がないのが加算されてます。
勉強はしているんですが……
説教というより現状の認識ですね。
ミョズニトニルンにちょっと厄介な人間をセットしてますんで、
その人間の助言で戦争が一気に近代化しつつあります。
少数の魔法戦力から多数の平民戦力がものを言う時代へ。
少数精鋭のベルカは負ける訳です。
アンリエッタはジルの助言の本質を理解できず、一時的な内部調査要員としてケイシー達を登用した訳ですが、前回のルイズの助言で親衛隊を作ることになる訳です。
近いうちに貴族平民の垣根の無い「トリステイン国防軍」が組織される……かも。
ケイシーは、ライバックではありません。シエスタを妹のようなものということから同郷、すなわちタルブ出身。
タルブはストレンジャーどもの人外魔境となっています。
リボン付きやニコ・トスカーニとか急降下爆撃の魔王とか。
一時期はフランクさんも住んでいたことに。
そんな感じの設定をしています。
誰得……
セガールじゃなくても、居着いているのは同じく人外レベルなのね……
まぁギャグだろw
深く考えずに笑ったらいいよ
「反論」と解説は蛇足以外の何ものでもないと思うけど
乙でした。
...今になって投下した2話で学院の塔の数を間違っていたことに気づきましたorz
テンキーで打ったミスを推敲でも見逃してましたorz
なるほどギャグかw
……SS外で解説するのもギャグなんじゃないか?
ロストユニバースからケイン召喚
マントを馬鹿にされただけで自分からギーシュに勝負を申し込むやも知れん
実はハルケの地下にソードブレイカーが埋まってたり
218 :
ジル:2009/07/23(木) 00:56:52 ID:w486PiAD
そうですね。
解説しない方がいいかもですね。
所詮ギャグとブラックジョークの塊ですし。
若干スレチだが「百万回生きた猫」より百万回生きた猫を召喚
何度死んでも蘇るが自分にはまるで懐かない
ただしお互い愛情が芽生えると本当に死んでしまうという罠
AC5からSOLG召喚。
ルイズは失敗したと思いこむ。
ガリアに墜落。
再召喚。
そしてアークバード。
ロマリアに墜落。
せかいはへいわになった!
懐かしいなオイ
そんなら、「冒険者たち」から白イタチとかどないや
ノロイのカリスマは異常
言葉の壁がと思ったが契約すれば人語が理解できるようになるから原作より凶悪になるな。
問題は(一応見た目は)只のイタチにハルケギニアのメイジがビビってくれるかだな。
見た目はシアワセ荘のオコジョさんと似たようなもん(のハズ)だからな…
むしろ愛くるしくて皆のアイドルになるやもしれん
一応ノロイは普通に鼬鼠でしかないから
召喚できたら辺りの部類だと思うけど。
ただストーリーの主役がモートソグニルをはじめとする
学園とその周辺に住むネズミたちになり兼ねないが。
思えば、redEyesって誰もないよね?
ミルズの人外っぷりに心が踊る
実はモートソグニルがガンバ
まあ普通の白イタチだよな…
催眠術とか使うけど
じゃあここは契約なしで喋れる語りイタチのコッパを…
グレムリンからギズモを召喚したら
>>230 12時以降に夜食を食べたマリコルヌが凶暴化した上に、水を被ってマルコメ増殖・・・
DODのフェアリーを召喚して罵られ精神的に追い詰められるルイズが見たい。
もちろん愛ゆえにです。
エーテルデビルを召喚
見えないから召喚失敗と思い込む
しかも生きてるから再召喚はできない
ルイズ 1F 留年して自殺
フェアリーとルイズが契約するのにキスするシーンを想像しようとしたらフェアリーがルイズに喰われた
なにを言ってるのかわかんねーと思うが多分俺の頭がおかしくなったんだ
ジル乙
フーケのときもいきなりロケランぶっ放つし、ここまで何もかも力技でこなされると感心する。
弾薬無限でのニューゲームの感覚そのまんまだな。エルザも全面降伏して下僕になるはずだ。
DODのフェアリーの声はみやむーだっけ?
契約者のオナーるさんの声が山ちゃんで
カジさんがアスカにボコボコに罵られるんだよなw
遅まきながらプリキュアの人乙。
後日談で、ダークドリームのピンチにプリキュアオールスターズ
キュアブライト&ウィンディ薫・満バージョン及びキュアパッション
追加版参上なんてのを想像しましたが、名乗り口上だけで一レス
消費しそうですね(苦笑)
ミョズの介入で銃火器による兵士達の戦争へとシフトしていくのは脅威なんだが
ジルのワンマンアーミーぶり見てるとそれでも何かやらかしてくれると胸が躍ります。
>>225 ノロイの恐ろしさを知るガクシャやヨイショみたいなネズミがいないから
夢見が島のネズミ達と同じ末路を辿ることになりそうなんだけど。
>>240 オスマン経由でモートソグニルから助けを求められるルイズたち。
「製作会社が違うからヤ。
細目眉太のスナイパーとか左手に銃付けたのとかに頼みなさいよ」
赤カブト呼べば兵器だよ!
ぼのぼのからしまっちゃうおじさん召喚
一人…また一人と姿を消していく魔法学院の生徒たち
不安に駆られるルイズ
>>240 だが現実は学園周辺からネズミが消えてみんな大喜び
ノロイ食堂の守り神になる
いやしかし実際学園のネズミはモートソグニルが他所へ連れ出してるんでないかと
ソニックに惚れるモートソグニル
「私が学院長です」
ミヒャエルエンデのハーメルンの笛吹き男を召喚か
笛を吹いただけで鉄の門を破壊したり人の心を奪ったり魔法よりも怖いぞ
ピカチュウを召喚したら
使い魔にする以前に触れるかどうか
契約する時にルイズが黒焦げに
ピカチュウってそんな常に凄い出力で放電してんの?
比喩だろうけど雷が使えるからな
レベルの低い野生ならなんとか
10万ボルトだせるんだぜ、電流は知らないけど
ピカチュウってりんごを電撃で焼きりんごにして食べることができるぐらいに頭良いんだよなぁ
ピカは頬の赤い部分が電気袋になってて発電したのため込んでるからつついたら酷いことになるんだよな
あと電撃でインド象気絶させると聞いた
ピカチュウ:初見の物はとりあえず電撃・全力で雷クラス
ライチュウ:電撃でインド象を気絶させられる
ゴース:ガスによりインド象を二秒で気絶させられる
インド象カワイソス
そんなポケモン達の攻撃を食らっても死ぬことの無いポケモン世界の人間たち
破壊光線喰らっても意識があったりガチ超能力使ったりとホントポケモン世界の人間は恐ろしいぜ
スレが黒焦げになります><
>>256 これは、インド像=ムエタイということか……
サトシは超人だしロケット団はツボツボ並の防御力とハピナス級の体力持ってるしな
今年の映画でも命の掛かったSASUKEを難なくこなしてたからなー。>超人サトシ
まあ、ポケモンの能力は恐ろしいからなぁ。ひこうタイプだと音速で飛べる奴が結構いるし。
そんなのと長年付き合っていればただの人間も恐ろしく頑丈になるというもの。
ポケモンよびだしてもあの世界じゃ
ちょっと変な生き物呼び出しって緯度でしかないから
少なくともゼロ呼ばわりされなくなるだけじゃないかな。
ポケモン世界もだが助走なしジャンプで数M飛び上がる各種格ゲー連中や
剣や岩でズンバラリンされても少し体力が減るだけ、なサムスピ連中も異常
初代のポケモンは特にとんでも設定が多いよな
実際マッハ20で近くを飛ばれたら原型残らないだろうしそれを突風程度にしか感じない人間はそうはいまい
一番の問題は、音速で飛べるひこうタイプポケモンに「そらをとぶ」を覚えさせて、飛んでいくポケモントレーナーがザラに居るということだw
ゲームはゲームだよ
魔王を倒すまで何度でも蘇生する勇者とか
ドラゴンの体当たりをパリィで払うか細い乙女とか
マジメに考察するのもアホらしかろ?
体重129Kgのドラえもんを軽々と抱きかかえられるノビタを、一方的にボコれるジャイアン………
亜光速でツッ込んでくるガンバスター(240m)のスーパーイナズマキックを
ビームサーベルで切り払うハマーンのキュベレイ(18.4m)・・・・・・
ポケモン世界の人間は、魔術師オーフェンの地人種族のように、我々とは全く別次元の肉体を持っている可能性は無いだろうか。
ポケモン呼ぶならトレーナーの方を呼んだ方がいいよね、ヴィンダールブだかで
インフレなのは変わらないけど
関係ないけど自然なコンクラクトサーヴァントのさせ方って難しくない?
気絶してるうちにやっちゃうくらいしか自然なのを思いつかない
ふと思ったがギャロップや唯一王ブーちゃんことブースター召還したら悲劇だな
ギャロップは鬣と尻尾炎だし気に入った人間以外が乗ると高熱の炎にして燃やすはジャンプで東京タワー越えるし
ブースターは体温が千度以上.....
>>268 のびたは優しい子だから他人を殴るなんて出来ない
>273
たしかに。ドラえもんを安心させて未来に帰すため、もしくは大長編の佳境、そういった『闘わなければならない場面』以外では自分から暴力を振るう事は滅多に無かったような。
心優しい野比少年は暴力など振るわず、超科学の秘密道具で安全圏から仕返しするもんね
>>274 「結果的に怪我を負いそうな」イタズラは結構平気でやってるけどなw
虚無って例えるとしたら何タイプだろ
ノーマル?エスパー?
いつの間にかまとめWikiが3000万ヒットかぁ。
実際に読んでるのは何人くらいなんだろう。
そのうちの2000万は俺がまわした
あー、ユートピアカフェだったか。
あれの逆で民主主義の本かなんかを召喚したり。
いや、本を召喚してみるのも楽しいかも。
ルイズがメチャ影響されるの。
のび太達の戦跡はすさまじい
過去世界で密猟者と戦ったり、他の星を救ったり、異星からの侵略者を防いだり、
異世界行って危機を救ったり海底人の侵略を防いだり、天空人から地上を守ったり
魔法の世界で魔王を倒したり歴史犯罪者を潰したり。
自分で地球のピンチを招いたのも一度や二度じゃないけど
あー、ユートピアカフェだったか。
あれの逆で民主主義の本かなんかを召喚したり。
いや、本を召喚してみるのも楽しいかも。
ルイズがメチャ影響されるの。
すまん、ミスった。
ルイズ:ジュン
ジョゼフ:アカギ
テファ:コウキ
は考えたことがある。
聖地がやぶれたせかいで、シャイターンがギラティナだったり、水の精霊がUMAと関係したり
ハルケギニアとポケモン世界を繋ぐために虚無と伝説ポケの力を借りたりとか・・・。
>281
時間犯罪者の類は基本的にはお手上げでタイムパトロール登場だよ
時間犯罪者>魔王
ドラえもん未来の道具がどれだけすごいかよくわかるなw
ちょっとした手違いで時空が歪むもんな>パラレル西遊記
>>286 確か日本誕生の原作でギガゾンビと戦ったとき、
ドラ「そ、そんな、22世紀の最新型の石ヤリが……!」
ギガ「ふふふ、こっちは23世紀製なのだ!」
ドラ「うーん残念、一世紀負けてたか!」
こんなやり取りをしてたな。
ゴレイヌって誰か書いた?
一世紀って100年差くらいはあるってことだし歯が立たないのも納得いくが
22世紀から24世紀の世界の道具は持ってこれないのかな
「ドラえもん、お願い!爆弾出して!あいつを殺して僕も死ぬ!」
ってのびた君が言ってたような気がするが…
292 :
虚無と背徳の炎:2009/07/23(木) 18:44:53 ID:/8dVJehS
今から
ギルティギアのソル召喚した話投下します
ハ,,ハ
( ゚ω゚ ) お断りします
/ \
((⊂ ) ノ\つ))
(_⌒ヽ
ヽ ヘ }
ε≡Ξ ノノ `J
ヒロ・ナカムラはタイムパトロールには捕まらないの?
295 :
虚無と背徳の炎:2009/07/23(木) 19:34:31 ID:/8dVJehS
男は、消滅しようとしていた。
ある女に過去の自分を殺され。存在が消えようとしている
だが、それでも男は諦めようとはしない
目の前にあの男がいる
だが精神とは裏腹に肉体は確かにきえかかっていた
そして男の肉体が完全にこの世から消え去ろうとしていた時
男の体が光に触れ、あの男はこう呟いた
「大事なのは、今だよ、フレデリック」
男は地球から姿を消した
夏じゃのう
とりあえずsageろ。
ID:/8dVJehS君
このスレは原則的にメール欄に「sage」って入力しないと駄目なんだ。
そんなむやみにageるのは、許されないんDA☆
ドラえもんか・・・真っ先に思い出したのはアヒヒパラダイス。誰も知らないか。
地球破壊爆弾やら悪魔のパスポートやら、過去で使えば簡単に地球を滅ぼしかねない道具を売ってる未来デパートが一番デンジャラスだ。
ドラえもんよりドラミちゃんのほうがルイズには適任だろう。簡単に助けないし。
302 :
虚無と背徳の炎:2009/07/23(木) 20:21:00 ID:/8dVJehS
分かりました、有難う御座います
ツッコミ待ちなのだろうか
>>302 >>1をじっくり読んで理解できてから来なさい。
でないと叩かれちゃうぞ
>301
知らないなー。日記で車免許とって脱オタするとか書いた後に閉鎖したから普通に働いてるんじゃない?
どらえもん兵器説
奴と同じ条件で戦って奴に勝てると思う奴挙手ーー
いないよね?
ネズミごときに地球破壊という手段を取れるあの発想には勝てねえ。
さっき二回レスしてた奴ので夢がひろがりんぐ
孫子の兵法であらゆる戦闘、戦争を華麗に勝利するルイズ
ついには魔術師ルイズ(語呂悪)なんて呼ばれたり
カウンセリングの本でジョゼフの苦悩を癒したり
エンジニアの本でチェンソーの耐久が三倍になったり(違)
理科の教科書で科学に覚醒したり
いろいろできるね
今日は嵐投下が多いな
なんだっけ、ケンシロウだっけね?
そりゃもう小中学生は夏休みに入ったしな
どちくしょうめ
前期末で死にかけちょる俺の唯一の癒し、2chライフを阻害しようとは……
最近のガキは死んだらええ。
あるいは外でつばえちょきゃあええのに
アクマがこんにちは面白かった
人修羅に萌えたのは初めてだw
>310
つばきんぐ召喚に見えた。
ゴーレムもモット伯爵も仮面の魔術師もずんばらりん。
指先から伸びる糸で。
もしもボックスとスパロボSC2のオリジンユニット
21世紀は既に始祖(ブリミルじゃない)文明を超えたッ!!
コキムラが召喚されたら
裸一貫でドット〜スクウェア⇒虚無⇒エルフ・ドラゴンまで相手に勝てるようになるまで頑張っちゃうのだろうか
アゾエーブごとだったら即滅却だろうけど
そしてオリジンユニットで書き換え済みの脳に契約なんてしたら
どんな致命的エラーが発生するだろう
椿は今忙しいからな
あんちゃんでも呼ぶか
DXリプのキャラは真面目にやろうとすると《ワーディング》の設定がネック。
ダンディくらいぶっ飛んでたらそんなモンかって思えるんだが。
>312
昔の毒吐きスレだと“あんなの人修羅じゃねぇ”とか言われていたけどね。
自分も神仏魔王を滅ぼせるだけの力を持っているけど、思考回路は思春期の少年と変わらないあの人修羅は大好きだ。
そんな訳で作者さんマジで続き頼んます。
>316
閃いた。
ルイズが呼び出したもの、それは、
球形に近い形状、真鍮らしき色合い、
上部には取っ手が付き、側面には天に向けて注ぎ口がそそり立っている。
使い込まれた徴である細かな傷を無数につけたそれは――――
『ダブルクロス・リプレイ・ゆにばーさる』よりジョニー・クロームドームを召喚。
ハルケギニアには家電が無いのが痛いぞ!
>>319 というか、人修羅の人格なんてゲーム中では不明だし、アレはあれで有りでしょう。
どうも、ゲーム開始時点では本当にあの性格だったのが、徐々に壊れて行って、
召喚の際に何らかの理由で元に戻ったっぽい描写があったし。
友人や先生の態度を見ると、悪魔になる前はあんな感じだったんじゃないかと思うしな。
本編の選択肢でごめんとかあるし、悪魔会話の感じで割とお茶目なイメージあるな。
>>319 あの思考回路のおかげで、最強描写が鼻につかないんだよね
ちぃ姉さまを治すくだりも今までに無い展開で新鮮に読めたし
続きが楽しみです
「漢たる死に安らぎなし
曲折の果てに其は訪れん
人に非ずとも
悪魔に非ずとも
我が意志の逝くまま」
ゲーム中で人修羅が明確に記した言葉ってこれだけだな
デジタルデビルサーガだけど
まぁ、少なくとも口は上手いよな、間違いなく。
そのうえで、親友に出汁に使われる程度には、天然というか、自分の要領のよさを自覚していない節があるし、
かと思うと、なんだかんだで周りから頼りにされていたようでもある。
良くも悪くもマイペースな奴だったんだろうと思うな。
>>325 友達関係はやっぱり「友達」だからってのもあるんじゃないかな。なにしろお前はもう悪魔だって言われちゃったわけだし
まあ、容姿的に冷めた印象を受けるからクールキャラになりがちなのは仕方がないことだともうよ。無個性主人公の宿命さね
いつのまにか人修羅談義になってるwwwww
つーか真Vやった人多いなwwwww嬉しいwwwwww
人修羅って聞いた話、ドラクエの主人公みたく決まったキャラ付けが無いんだろ?
無駄に厨設定みたいだしオリキャラ扱いにならんの?
文句みたいに聞こえるかもしれないけど純粋に疑問なんで
でもどうせ完結しないんでしょう>人修羅
両方とも絶賛放置中
そういうのは毒で言えよ
>>328 ゲームしかやってないで細かいこととはよく判らんけど、
公式のコミックやノベライズとかを基準にすれば問題は無いと思う。
DQVの主人公とかも公式ノベルのキャラで喚ばれていた。
アルカナハートのキャラを召還。
才人と一緒に召還がやりたい。が、だ
誰とも付き合ってもロリコンになるな。
全員小学生〜15歳だし
>>328 どのルートに進むかで、性格も変わるだろうしな。
ヨスガとかムスビだと色々とややこしくなりそうだ。
>>332 てめえミルドレットをディスるとはいい度胸だ
>>331 ノベルは電波邪気眼キャラになっちゃった
そこら辺のssよりぶっとんでるぜ。最強度も。なにせイケブクロ坑道で慈母の晩餐をぶっ放すし
>>332 腹黒シスターとあんぱんは不老不死だから割と歳言ってる筈w
ルイズのひたむきな心と虚無系統はパラセのお眼鏡に叶ったりして…マテリアルにされるがw
外見エルフで四属性自在に使うからハルケギニアの魔法で見ればヤバいなw
>>336 パラセはオバスペだからあんまりなぁ。
ところで某所ではルイズ×承太郎ってのが受け入れられてるんだけど、
才人とアルカナハートキャラをくっつかせるのはアリなのだろうか?
丞太郎はなかなかだったな。
>>337 上手くやる自信があるならやれば良いんじゃない?
>>337 くっつく過程に説得力があればいいんじゃないか?
あるいはキャラじゃなくてアルカナの方を呼び出したりな。
ヴァンリーやギーァ辺りはルイズと相性良さそうだ。
>>337 基本的に、そう言う作品を越えたカップリングってのは余程うまくやらないと
受け入れられないと考えた方がいい。
やれ・・・るのか?
俺はSS初心者だから、むしろ支援イラストのほうでここで頑張りたいのだが・・・。
初めてせいぜい半月ぐらいだしどうしようかと迷ってるんだ。
>>342 俺の読解力の問題かもしれないけど、レスの時点で言ってることがスゲー分かりにくいから、止めた方が良いと思う。
>>342 本気で書きたいならラノベから離れることをおすすめする
他作品のキャラをルイズがハルケギニアに召喚するのではなく、
サイトを他作品の世界に送るのは、どう考えてもスレチだよね!
>>345 ゼロ魔キャラが○○に召喚されたようです
ってスレ無かったっけ?
支援絵を描くって話なら、板汚し呼ばわりされる落書きレベルだったり、
下手くそが短時間で適当に描いたり、微妙な絵ばっか描いて他の絵を流したりしなければ、
作者さんだけは喜んでくれるかもしれない。
そして上手ければ崇められるのは言うまでもない。
>>347 他の、過疎スレのところに投下した奴ならあるけどどうなんだろ・・・。
見本として投下したほうがいいかな?
もちろん、1P漫画だから切り抜いて投下するけど
>>348 漫画……だと……
そんな質問ばっかされても分からんし、
とりあえず、お絵書き掲示板を覗いてみれば?
>>351 スマン、俺の携帯のスペックじゃ全て見れんかったw
ほんでお詫びと言っちゃ何ですが、避難所のお絵書きスレを見た感じですと
SSに対する支援絵じゃなくても良いみたいだから、気にせんで良いんでない?
絵に関しては、支援絵ををもらった作者さんは喜んでくれるんじゃないかな。
あと、そのキャラなら何でも良いって人。
惑星のさみだれからビスケットハンマー召喚してハルケギニア粉砕
どうせならゆーくん喚んどけ
今月号のチャンピオンREDの読みきり「バスターバストマン」から
おっぱい星人を召喚
……ダメだ、変態指数が元ネタの足元にも及ばない。
何でバキの花山まだ呼ばれて無いんだ?
動かしやすそうだし
つかバキキャラが呼ばれて無いのが不思議
どうも。毒の爪の使い魔の第46話が書き終わりました。
予定その他が無ければ5分後辺りに投下開始します。
では、そろそろ投下開始します。
十日ほど続いた降臨祭は、遂に最終日を迎えた。
明日になれば再び戦争が始まる…、それは解っていた事だが、やはり名残惜しい。
それ故に人々は最終日は、それまで以上に激しく楽しく騒いだ。
――その陰で”悪夢”は静かに動き出していた。
降り続けた雪の所為で一面銀世界となった、サウスゴータの街を二人一組の連合軍の警邏兵が巡回していた。
降臨祭は終わっていないとはいえ最終日である…。
先のルイズの偵察によって、敵に出撃などの兆候は見られなかったとはいえ、油断は出来ない。
ゆえに、ド・ポワチエは複数の警邏兵にローテションを組ませ、警戒に当たらせたのだった。
「あ〜あ、…早く終わらせて次の奴に交代したいぜ」
「解るぜ、その気持ち。俺も思いっきり飲み食いしたいよ」
二人は巡回などそっちのけで、役目を交代した後の話に夢中になる。
最終日とはいえ降臨祭は終わっていない、敵も遊び惚けているのだから安心だ、
万が一攻め寄せてきても数で勝っている自分達は必ず勝つ、などと二人は高をくくっていた。
…そんな慢心から来る油断が彼らの命取りとなった。
「それでよ…、ん?」
ふと、隣を歩いていた相方が居ない事に気付く。
何処へ行ったんだ? などと考えながら兵士は辺りを見回す。
そのまま後ろを振り返る。その瞬間、兵士は息を呑んだ。
数歩分遅れた所に相方は立っていた。…正確にはその”下半身”が。
腰から下の部分が血で赤く染め上げられた雪の上に立っている。
兵士は一体何が起こったのか解らず、呆然と立ち尽くす。
グチャ…、グチャ…、グチャ…
何か、汁を吸った肉を噛むような音が聞こえた。
そこで兵士は漸く気がついた…、無残な姿に成り果てた相方の向こうに正体不明の影が立っているのを。
暗闇で気が付かなかったが、その影は間違い無く暗闇とは別の”何か”だった。
それの大きさは、目測で少なくとも十メイルは下らない。
血の臭いがする息を吐き散らしながら、腹を空かした獣の唸り声を上げている。
「あ、ああ…」
兵士はノロノロとした動作で槍を構えながら、一歩、二歩、と後退る。
と、影が何かを吐き出した。
ガチャン、と音を立てて、それは兵士の足元に落ちる。
それは血塗れの鎧だった…、相方の着けていたはずの…。
理解すると同時に兵士は半狂乱になって叫んだ。
――次の瞬間、兵士は飛び掛った影に叫び声諸共飲み込まれた。
――一方、別の場所では。
「な、なんだこいつは!?」
ロッシャ連隊の兵達が酒盛りから宿に帰って来た時”それ”は現れた。
石造りの道を突き破り、巨大な物が姿を見せたのだ。
上下に二つずつ、計四つの目を黄色に輝かせながら”それ”は兵達を見据える。
『…抹殺…、人間…全テ抹殺…』
感情の全く感じられない声が響く。
一番上の目が輝きを増す。兵達は我先にと逃げ出した…が、遅かった。
それから放たれた眩い閃光は、兵達を尽く蒸発させ、宿を容易く吹き飛ばしたのだった。
――少し時間を遡り、街の一等地に位置した宿屋の二階を丸まる利用した司令部。
ド・ポワチエにハルデンベルグ、ウィンプフェンは、明日から再開される戦争に備えて作戦会議を行っていた。
とはいえ、殆どこの戦は勝ったも同然と言える。
敵は降臨祭の最中にも何一つ行動を起こしていない。主力はロンディニウムから動かないまま。
このまま順調に行けば、ロンディニウムを容易く包囲し、勝利を得られるのは時間の問題。
敗北を匂わせるほどの不安な要素は何一つ無い。
一応、用心の為に警備を行わせてはいるが、この分では必要は無かったかもしれない。
補給物資の搬入は今夜には終わる。明日の朝は全軍を持ってロンディニウムへと攻め入り、レコン・キスタを殲滅。
アンリエッタ女王陛下を救出し、ホワイトホールに連合軍の旗を掲げればいい。
それで全てが終わる。これまでの苦労が報われるのだ。
その時、ドアがノックされた。
「誰だ? 軍議中だぞ」
ウィンプフェンがそう問うと、王室からの届け物だと外から兵士の声が聞こえてきた。
届け物は豪華な木箱だった。財務卿の押印の在る手紙も付いている。
その手紙をド・ポワチエは顔色を変え、貪る様に読みふける。
手紙を読み終え、木箱の蓋を開ける。
その中から出てきたのを見て、覗き込んでいた他の二人が目を丸くする。
それは元帥杖だった。黒檀に金色で王家の紋章が彫り込まれたそれは、顔が映るくらいにピカピカに磨き上げられている。
ド・ポワチエは感無量だった。手紙には自分の元帥昇進が正式に決まった事が記されていたのだ。
戦争事態は終わっていないが、最早勝利は確実。
ならば、最後の決戦は元帥杖で指揮させてやろうという、財務卿の粋な計らいだった。
「「おめでとうございます、閣下」」
ハルデンベルグとウィンプフェンが手を叩く。
「なに…、これで気を引き締めろ、と言う事だろう。くれぐれも油断はならぬぞ、油断は」
溢れ出る笑みを堪えきれないまま、ド・ポワチエがそう言った時である。
ズドォォォーーーーーンッッッ!!! ドドンッ!!!
巨大な爆発音が外から聞こえ、ド・ポワチエ等は怪訝な表情で窓を見る。
「何だ騒々しい?」
窓へと近づくド・ポワチエ。見れば、遠くの方で火の手が上がっているのが見える。
「もしや、アルビオン軍か?」
その時、扉が勢い良く開かれ、アニエスが部屋に飛び込んできた。
「総司令殿、一大事です!」
「何事だ、アルビオン軍が仕掛けてきたのか?」
アニエスは首を振って答える。
「いえ、アルビオンの手の者かどうかは。敵は…」
言いかけてアニエスが怪訝な表情でド・ポワチエの背後に向けられる。
その様子にド・ポワチエも釣られて振り返る。…そこで、妙な事に気が付いた。
窓の外が真っ暗なのだ。今し方、外を確認したばかりだと言うのに…。
どうしたのだ? と悩みながらド・ポワチエは窓を開けようと手を伸ばし――硬直した。
窓の外には無数の”頭”があった。
竜の頭があった。
馬の頭があった。
犬の頭があった。
猫の頭があった。
鷹の頭があった。
蛇の頭があった。
獅子の頭があった。
人間の頭があった。
様々な生き物の頭がそこにあった。
それらが、ジッとド・ポワチエを見据えている。
「な、なんだ…?」
ド・ポワチエは、やっと声を絞り出す。
それが合図となったのか…窓を突き破り、無数の頭が牙を剥き出し、ド・ポワチエに襲い掛かった。
断末魔を上げる暇すらない…。
ド・ポワチエは大きく裂けた無数の顎を脳裏に恐怖と共に焼き付けられ、その意識を絶たれた。
窓を突き破って襲い掛かった無数の獣の首に、ド・ポワチエが無残に食い千切られるのを、アニエス達は呆然と見ていた。
だが、アニエスは逸早く我に返り、ハルデンベルグとウィンプフェンに怒鳴る。
「何をしている!? 早く逃げろ!!」
「え、ああ…逃げる?」
「そうだ! 死にたくないなら逃げろ!!!」
そこで漸く二人は部屋を飛び出し、我先にと逃げだした。
アニエスの叫び声に反応したか、ド・ポワチエの肉片を貪っていた大蛇の首が飛び掛ってきた。
それをアニエスは剣で薙ぎ払い、斬り捨てる。
他の首も粗方食い終わったらしく、アニエス目掛けて飛び掛ってきた。
アニエスは二丁のマスケット銃を次々に撃つ。二発の銃撃に首達が一瞬怯みを見せる。
その隙にアニエスも部屋から脱出。
そのまま他の銃士隊の隊員達と合流し、非戦闘員の避難誘導を皆に命じた。
ウィンプフェンとハルデンベルグは街道を只管に走って逃げた。
兵士の指揮とかそう言う物は何も考えられない。
とにかく、今はあの化け物から逃れたい…。あんな風に喰われるのは嫌だ…。
助かりたいと言う生命の本能から、二人は無様に逃げ惑う。
だが、そんな二人にも死は訪れた。
とある路地裏へと入り込んだ二人の前に立つ巨大な影。
「ひぃ!?」
恐怖に悲鳴を上げそうになった二人に、影は黄色の閃光を浴びせる。
恐怖を感じながら、痛みを感じる暇も無く、二人は髪の毛一本残さずに消え去った。
『魅惑の妖精』亭の天幕では最終日と言う事もあって、夜通しの酒盛りが行われていた。
ありったけの酒を飲み、ありったけの料理を食べる、まさに暴飲暴食。
当人達にすればただの食事会なのだろうが…。
そんな様子を尻目に、離れた場所でワインを煽っていたジャンガの目付きが突如鋭くなった。
隣で料理を平らげていたタバサもその手を止める。
「オイ」
ジャンガが呟く。
「解ってる」
タバサは頷く。
二人は席を立ち、外に視線を向ける。
否、別のテーブルで一人でワインを煽ってたガンツも、腰のガンベルトから拳銃を抜いていた。
そんな三人の様子にキュルケが気付いた。
「あんた達どうしたの?」
三人は答えない。
「ねぇ、どうしたのよ?」
「来やがるゼェ…」
ジャンガは呟く。
「何が来るっていうの?」
そうキュルケが言った次の瞬間、天幕を突き破って何かが落下してきた。
轟音が響き渡り、粉塵が巻き上がる。
その突然の事に一瞬で天幕の中はパニックに陥った。
「な、何!?」
ルイズが驚愕の声を上げながら、立ち込める粉塵の方へと目を向ける。
ジャンガは油断無く爪を構える。
粉塵が徐々に晴れていき、巨大な怪物が姿を見せた。
「ッッッ!?」
それを見た瞬間、タバサの表情が凍りつく。
「なんだ、こいつは?」
怪訝な表情でジャンガが呟いた。
――姿を現したのは竜…いや、竜の姿をした化け物だった。
いや、胴体や翼には火竜としての特徴がある。
だが…それには火竜とは決定的に違う部分があった。
…それは首だ。それの胴体からは、雑多な生き物の首が無数に生えていたのだ。
火竜の他にも熊に狼、在り得ない大きさの蛙、トロール鬼やオグル鬼、老若男女の人の首まであった。
それらの首は口々に呻き声を奏で、聞く者の生理的嫌悪感と恐怖感を十二分に煽るコーラスを辺りに響かせる。
とても醜悪な…、肉のオブジェとでも言うべきものであった。
ルイズは思わず戻してしまった。
公爵家の令嬢がこんな所で戻してしまうなんて…、と本来のルイズならば屈辱に感じたであろう。
だが、今はそんな感情は微塵も浮かんでこない。
目の前の存在は、そんなちっぽけな事など考える余裕すら奪うほど、圧倒的な恐怖の塊だった。
それにルイズだけでなく、その場の殆どの者は目の前の存在に戻していた。
無理も無い事かもしれない…。このような醜悪な存在、世界の何処を探せば見つかると言うのだろう?
トロール鬼などの亜人も恐ろしい。だが、目の前の存在はそれらの恐怖とは一線を賀した物があるのは間違いない。
化け物は複数の首の目をギョロギョロと動かし、周囲を見回している。
何気ない行動も目の前の存在がすれば、十二分に不気味な物に移る。
その時、床の布が動き、その下から中年の男性が姿を見せた。
どうやら化け物が落下した際に、切り裂かれた布が覆い被さったようだ。
と、その男をギョロギョロと動いていた怪物の幾つもの目が捉える。
――誰かが何かをする暇もなかった。
次の瞬間、男は複数の首に食い千切られ、僅かな肉片と夥しい血溜まりを残して消えた。
「うっ!?」
ルイズ達は再び戻してしまった。
今のような光景を見て、どうして平然としていられようか?
気が狂いそうだ…。だが、座して死を待つなど考えられない。
「くっ、化け物…」
キュルケはコップに残っていたワインで乱暴に口を漱ぎ、杖を取り出す。
向こうではギーシュも既にワルキューレを作り出している。
ルイズも頬を叩いて気を引き締め、杖を手にした。
それに気が付いた化け物が無数の目で睨みつけ、同時に首が一斉に咆哮する。
怒りの雄叫びにも、痛苦の叫びにも、それ以外の別の物にも聞こえる物だ。
そして、化け物はテーブルを踏み潰しながら、ルイズ達目掛けて走り出す。
迎え撃つべく、ルイズは『エクスプロージョン』で吹き飛ばそうと、杖を振ろうとした。
だが、それよりも早く、巨大な空気の塊が化け物を吹き飛ばした。
化け物は天幕の外へと大きく吹き飛ぶ。それを追って、空気の塊を生み出したタバサが、
続いてジャンガとガンツが天幕の外へ飛び出す。
それを見て、ルイズ達も後を追う。
地面に横たわる化け物目掛けて、タバサは『エア・カッター』を放った。
風の刃が化け物の首を五つほど切り落とす。だが、その程度では致命傷になりえない事を、タバサは良く知っている。
化け物は倒れた巨体を起こすと、目をギョロリと動かしてタバサを見据える。その首が一斉に口を開く。
何かをしようとしているのは明白だが、タバサは怯まない。
こいつはブレスを吐く能力は失われている…、それを彼女は覚えていた。
だが、その予想は裏切られる。
大きく開いた口腔の奥に、暗闇に点った火種のような光を見て、タバサは慌てて『アイス・ウォール』を唱えた。
分厚く巨大な氷の壁が出現する。その一瞬後、化け物の無数の口腔から灼熱の炎が吐き出された。
氷の壁は瞬く間に溶け、遮る物の無くなった炎の濁流は小柄な少女に襲い掛かる。
炎に飲み込まれる寸前、横から割り込んだジャンガがその身体を小脇に抱える。
本来の目標を見失った炎は、進行上の天幕を焼き尽くしながら、広場の一角に建っている建物を直撃した。
瞬く間に建物は業火に包まれ、消し炭になっていく。
「随分な火力だゼ…」
燃え尽きていく建物を見つめながらジャンガは呟く。
そのまま、傍らで座り込んでいるタバサに視線を移す。
「テメェらしくもねェ…、竜が火を吐くのは当然だろうが? 何で油断しやがった…」
タバサは首を振る。
「ありえない」
「あン?」
「”あれ”のブレスを吐く能力は失われているはずなのに…、ありえない」
ジャンガは怪訝な表情を浮かべる。
「あの化け物を知ってるような口振りじゃネェか…。一体”あれ”は何だってんだ?」
ジャンガが化け物を爪で指し示す。
タバサは唇を噛み締め、呪詛を呟くようにその名を口にした。
「”キメラドラゴン”」
兵器として生み出された合成獣<キメラ>、その親玉の様な存在。
ファンガスの森で出会った…初めて与えられた任務の討伐相手。
彼女にとって友であり師であるジルを殺した、伯父王ジョゼフと並んだ仇と言える存在。
自分はあの時、奴に間違いなく止めを刺したはずなのだ。
ジャベリンを突き刺し、内部からバラバラにした。あの状態で生きているはずが無い…。
しかし、現にそれは生きている。自分の目の前で呼吸をし、首を動かし、あの不気味な唸り声を上げている。
…だが、どうして生きているかは不思議だが、正直な所関係無い。ただ、倒さなければならない相手がいる…それだけだ。
タバサは立ち上がり、杖を再度構えた。
「あれは野放しには出来ない。ここで確実に仕留める」
ジャンガは小さく鼻を鳴らし、視線をキメラドラゴンに向ける。
不気味な咆哮を上げながら、ブレスを吐き散らすキメラドラゴン。
それをギーシュのワルキューレやキュルケの炎、ルイズの爆発が牽制している。
だが、決定打には至っていない。傷を負っても再生しているのだ。半端では無い生命力だ。
ジャンガは唾を吐き捨てる。
「ケッ、どんな相手だろうと気を抜くんじゃネェよ。死にたくなけりゃな…」
そう言い、ジャンガは駆け出す。
タバサも無言で後に続いた。
ワルキューレの一体を噛み砕いた狼の首に、ジャンガは爪を叩き込んだ。
口から血反吐を吐き散らしながら、痛苦の叫びを上げる。
そのまま力を込め、首を両断した。だが、切断面の肉が盛り上がり、新しい頭が生えてくる。
ジャンガは舌打し、跳躍する。空中で大きく一回転すると、巨大なカッターを放つ。
カッターはキメラドラゴンの身体を容易く切り裂いたが、その傷口も瞬く間に再生していく。
連続してカッターを放つが、それらも致命的な物にはならない。
「下がって!」
タバサが叫び、ジャンガはその場から飛び退く。
杖の先には巨大な氷の槍<ジャベリン>がある。
キメラドラゴンがタバサを見ると、彼女は杖を振り下ろす。
勢い良く氷の槍が飛び、キメラドラゴンを串刺しにした…と思われた。
だが、長く伸びたキメラドラゴンの複数の首が、氷の槍に食いつき、力ずくで止める。
止められた氷の槍は噛み付かれた所から罅割れて行き、やがて粉々に砕け散った。
驚愕のあまり、タバサは両目を見開く。
あの勢いで飛んだ氷の槍を、止めた上で噛み砕くなど、凄まじいまでの顎の力だ。
おかしい…、タバサは考える。
今のジャベリンを容易く受け止め、噛み砕いた所までならば何とか納得がいく。
だが、”首が伸びる”など、先に対峙した時には一度たりとも無かった。
更にあの尋常ならざる再生力…、通常の火竜のそれを上回るブレス…、その全てが以前のキメラドラゴンとは違った。
まるでキメラドラゴンの姿をした別の怪物のようだ。
タバサは思った…、今目の前に居るキメラドラゴンは以前の個体と違うのではないか? と。
元々キメラドラゴンも他の合成獣<キメラ>と同じように、魔法兵器の実験で創り出されたものだ。
ならば、目の前のキメラドラゴンも何者かによって、新たに創り出されたものなのではないか?
それならば、あの異常なまでの能力も納得がいく。
ならば、あのジャベリンが突き刺さったとしても、昔のようにはいかなかったかもしれない。
…だとしても、引き下がるわけには行かない。
「ユビキタス・デル・ウィンデ…」
静かにルーンを詠唱したタバサの体が揺らめき、分裂する。
一つ、二つ、三つ、三体の遍在が現れる。本体と合わせて四体、手数としては十分だ。
「ジャンガ」
名を呼ばれ、ジャンガはタバサを振り返る。
「”あれ”を試す」
その言葉にジャンガはニヤリと笑う。
「ほゥ? まだ試し撃ちも出来ていないのにかよ?」
タバサは頷く。
確かに”あれ”はやり方を話し合っただけ。未だに試し撃ちすらしていない。
だが、普通の攻撃では今のキメラドラゴンには効果は無い。
現状で打てる有効打は”あれ”しかない…、とタバサは判断したのだ。
そんなタバサの気持ちを知ってか知らずか、ジャンガは笑う。
「テメェが言ったんだ…、しくじるなよ?」
「解ってる」
タバサと遍在が四方に散らばる。
それを見届け、ジャンガはガンツの方に駆け寄る。
「ガンツ坊や、奴の足を止めな。後は俺とタバサ嬢ちゃんが仕留めてやるゼ」
ガンツは含み笑いをする。
「解ったぜ。だが、言ったからにはやってみせろよ」
支援
「キキキ」
ジャンガは笑い、駆けだす。
ガンツは銃の弾倉を換え、キメラドラゴン目掛けて乱射した。
死神ファイヤーの直撃を受け、キメラドラゴンは奇声を上げる。
「オマケだぜ!」
懐から父の形見である、大型のハンドライフルを取り出し、引き金を引いた。
ハンドライフルの銃弾はキメラドラゴンの竜の頭部を粉々に吹き飛ばした。
一際大きな叫び声が辺りに木霊する。
その瞬間、ジャンガが叫ぶ。
「やりやがれ、タバサ!」
四方に散らばっていた四人のタバサは一斉に呪文を開放する。
四人分の『エア・ストーム』が巨大な竜巻を生み出し、キメラドラゴンの動きを封じて空中に巻き上げる。
そこへジャンガが無数のカッターを放つ。
同時にタバサも杖を振り、風を生み出す。
カッターはタバサの風に導かれ、次々と竜巻に巻き込まれる。
ジャンガはニヤリと笑う。
「いけるゼ…、キキキ」
ルイズの実家でその身に受けた、烈風カリンの得意とするスクウェアスペル『カッター・トルネード』。
その攻撃力をどうにか上手く使えないか? と思案し、思い至ったのがこれだ。
タバサに特大の竜巻を創らせ、それに自分のカッターを取り込ませる事で、擬似的にその攻撃力を再現する。
だが、そのままカッターを投げ入れても上手く竜巻に取り込めるか解らない。
竜巻を切り裂いて、飛び出す可能性も在るからだ。だが、威力が弱すぎても話にならない。
そこで、タバサの風を使う事にした。
例の決闘の時、タバサは自分のカッターを風を操る事で、その動きを変えていた。
それを逆手に取り、タバサに風でカッターを誘導させ、竜巻の流れに沿って取り込ませる事にしたのだ。
もっとも…、試し撃ちを一発も行っていない為、殆どぶっつけだったのだが…。
「ま、世の中都合良く出来てるもんだゼ」
ジャンガは一人呟きながら、竜巻を見上げた。
竜巻の中で翻弄されながら、キメラドラゴンは切り刻まれていく。
首が千切れ、翼が千切れ、手足が千切れ、尻尾が千切れ、…三分と立たずに細かな肉片となった。
タバサが杖を振り、竜巻を消した。
巻き上げられていた”キメラドラゴンだった物”は、赤い雨となって地面に降り注いだ。
それらが再生する気配はなかった。
タバサは大きく息を吐いた。
何とか倒せた…、安堵感が周囲に広がった…次の瞬間。
ズドォーーーン!!!
爆発音が周囲に響き渡る。
街のあちこちから火の手が上がっているようだ。
見れば真っ赤に染まった夜空を幾つもの影が飛び交っている。
それが何か理解した瞬間……タバサは呆然となった。
否、タバサだけでなく、その場の全員が呆然となった。
「そんな…」
夜空を飛び交うのはキメラドラゴンだった。その数は十や二十ではない…、百や千に上りそうなほどだ。
今しがた漸く一匹を倒したというのに…あれだけの数がまだいたのだ。
だが、どうしてあれだけの数のキメラドラゴンがいきなり現れたのだろうか?
――その疑問の答えは地面を突き破って出現した。
『…人間…全テ抹殺…』
感情の無い声でそう言ったのはボックスメアンだった。
それを見てタバサとジャンガは確信する。全てはガーレンの仕業だと。
ボックスメアンが左手を伸ばす。
タバサとジャンガはその場を飛び退き、伸びて来た左手が地面を砕く。
ジャンガは抜き打ちのように素早く懐からハンドライフルを取り出し、引き金を引いた
一瞬遅れて、ボックスメアンの頭部が吹き飛んだ。
紫電を撒き散らしながら、糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。
それをジャンガは冷めた目で見下しながら、忌々しそうに鼻を鳴らす。
「て、てめぇ、それは!?」
そんなジャンガにガンツが詰め寄る。
無理も無い…、自分の父の形見であるハンドライフルが二丁在るのだから。
「ああ、テメェは知らねェんだったか…。ま、説明は後回しだな」
言いながら、ジャンガは周囲に目を向ける。
広場の周囲の建物の陰からボックスメアンが姿を現し、空からキメラドラゴンが舞い降りてくる。
このままでは囲まれてしまうのも時間の問題だ。
他に手も無い以上、ここは強行突破しかない。
言うが早いか、ジャンガは四体に分身し、比較的数の少ない一角に突撃する。
カッターや毒の爪の斬撃、ハンドライフルの射撃でボックスメアンを粉砕した。
道が開くやジャンガは振り返る。
「オラッ! 死にたくねェ奴は、つべこべ言わずに走りやがれってんだよ!」
ジャンガの叫びに『魅惑の妖精』亭の皆も必死の形相で駆け出した。
キメラドラゴンやボックスメアンの姿が無い一角から、広場を脱出していく。
その時、後ろを走っていたシエスタが足を滑らせて転んでしまった。
痛みに顔を引き攣らせるシエスタ。
そこにボックスメアンが迫る。
「シエスタ!? 危ない!」
ルイズが叫んで引き返そうとするが、間に合いそうに無い。
ボックスメアンの無機質な目がシエスタを見下ろす。
巨大な鉤爪の付いた左手が振り上げられる。
「きゃあぁぁぁーーーー!!!」
悲鳴が上がり、ボックスメアンの腕が振り下ろされる。
――その時、ボックスメアンにキメラドラゴンが飛び掛った。
キメラドラゴンはボックスメアンの身体に爪を食い込ませ、無数の首で食いついている。
それを引き剥がそうとしてか、ボックスメアンは右手のクロスボウや左手でキメラドラゴンを攻撃する。
そんな異型同士の戦闘に呆然としていたシエスタの腕をルイズが掴む。
「早く立ちなさいよ! 逃げるわよ!」
「は、はい!」
ルイズに引かれて、シエスタも力の限り駆け出した。
必死に走りながら、ルイズは一度だけ振り返った。
広場では無数のキメラドラゴンとボックスメアンが、縦横無尽に暴れ狂っていた。
――同時刻:ハヴィランド宮殿――
地下牢に囚われの身であるアンリエッタは、外が騒がしくなってきた事に気が付いた。
その所為か、警備の幻獣も大分数を減らしている。
これは千載一遇のチャンスと思ったアンリエッタは、脱出を試みるべく行動を開始した。
まずは手を自由にするべく、石造りの壁に何度も縄を擦りつけた。
何度も擦りつけ、漸く切れた時には手首から血が出ていたが、気になるような物ではない。
次にアンリエッタは鍵を耳に引っ掛けたやりムゥを誘う。
食べ残しのパンの欠片をスープに浸し、鉄格子の隙間から出したのだ。
「ほら…、美味しいわよ?」
上下に揺らすなどして匂いを漂わせる。
ムゥの中では賢い部類に入るやりムゥだが、所詮はムゥ。
こんな単純な誘いにまんまと引っかかり、やりムゥはパンへ食らい付いた。
その隙を見逃さず、アンリエッタはやりムゥの耳から鍵を抜き取る。
すぐさま鍵を開け、牢から抜け出ると、目の前のテーブルに置かれた自分の荷物を手にした。
杖にルビーにメダル…、とりあえず大切な物は全てそこにあった。
と、パンを食べ終わったやりムゥが、牢を抜け出したアンリエッタに気が付いた。
手にした槍を振り翳し、アンリエッタに飛び掛る。
アンリエッタは素早くルーンを唱えた。現れた水球がやりムゥを吹き飛ばす。
鉄格子に激突し、やりムゥは呆気無く気絶してしまった。
それを見届け、アンリエッタは走り出した。
ハヴィランド宮殿の大ホールに居るガーレンに、ンガポコによって急報が届けられた。
「アンリエッタが逃げ出したと?」
『ハイ。脱獄したアンリエッタ女王は、現在ハヴィランド宮殿内を逃げ回っております』
「敗走する連合軍を追撃する為に兵はほぼ出したとは言え、何人かは残っているはずだ。何故捕まえられない?」
シェフィールドが苛立ちを隠しもしないで追求する。
『メイジは全員出払っておりまして、残った傭兵では魔法に対処しきれないもよう。ンガ』
「チッ、役に立たない連中だ」
忌々しそうに吐き捨て、シェフィールドは怒りに顔を歪ませる。
そんな彼女をガーレンは宥める。
「まぁいいではないか」
「何?」
「涙ぐましい努力ではないか…。ククク、全て無駄に終わると言うのに」
ガーレンはンガポコに向き直る。
「前線の全軍に伝えろ。進軍中止、速やかに引き返してアンリエッタ女王の再確保をせよ。
確保が不可能ならば殺しても構わん、とな」
『了解しました。ンガ』
ンガポコは開け放たれた窓から、夜空へと飛び立っていく。
シェフィールドは怪訝な表情で問う。
「何を考えているガーレン…、むざむざ軍を引き返させるなど…」
「これでいい。どの道、進軍は途中で止めさせるつもりだったのだ。…アンリエッタ女王をわざと逃がしてな」
「…どういう意味だ?」
「知らずともいい。…そうだな? 強いて言えば…全ては我輩とお前の主の望みの為、と言っておこう」
シェフィールドは納得のいかない表情でガーレンを見据える。
本当にこいつを信頼していいのだろうか? ジョゼフの望みに繋がると言うが…それも本当だろうか?
疑問が疑問を呼び、目の前の存在を信じる事が出来なくなっていく。
だが、自分の主――ジョゼフはこの男と協力し合っている。今の所、その考えを変えるつもりはないだろう。
ならば…自分はそれに従うまでだ。自分はこの男ではなく、ジョゼフを信頼するのだ。
そんなシェフィールドの事など目もくれず、ガーレンは窓の遥か彼方に広がる、赤く燃えるサウスゴータの町を眺めていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上で投下終了です。
キメラドラゴンは噛ませ犬としては最高ですな。
では、また次回。アデュー!
>>273 タイムマシンで開拓時代のアメリカに行ったときに数人殺してる。
あと、人間以外なら星1つ吹き飛ばしたこともある。
・・・殴ってはいないよ。殴っては。
>>368 ひょっとしてドラミと一緒のときか?
あれは初っ端の2人には怪我させたが一人も殺してないぞ
新作は見てないから知らんが殺し屋ギラーミンを殺ってる。
旧作の漫画版ではショックガンだから気絶させただけだな
映画版は知らんが
映画版は額に穴が空いてたぞw
ピクルなんてまさに異世界に呼ばれたようなもんじゃん
本人の感覚としては
開幕1レス目からレイプシーンになるけども
キュルケやマチ姐は危ないだろうが
ルイズやタバサは未成熟だとみなされ無事です。
アレって本物だとのびたが重くて持てないから当たると眠っちゃう銃でばんばんばん!ってやっつけてなかったっけ?
>>373 ドラえもんで殺人とな!?
マジ引くわー
版が下るときに地味に改稿されたりすっからな
殺しくらいはやってそうだ
えー、数分後に2レス程小ネタ投下。元ネタは米国民的アニメなアレ。
さあ戦いの始まりだ
世界的黒ネズミに喧嘩を売るのはやめて!!!
待機
シンプソンズ!
「黄色い亜人」が、どこぞの色素的に何か異常が生じているのでは、という程にド桃色ヘヤー幼女基少女に召喚されはや数ヶ月。
ハルケギニアの特にトリステイン方面の人々は、平和と言う名の滴る甘い贅肉を、それはそれはロメロ映画のゾンビが如く、
いや寧ろルチオ・フルチの芸術的な人体解体ショー並みの勢いで貪り喰らっていた。
別に皮肉ってる訳では無く、こういった贅肉は無理して搾り取る必要はあらず、なるたけ留めておくが吉だったりするのだ。
中には「平和すぎてだらけきった世の中だ許さん」とまぁお前は何処かの赤いサイバトロンかと疑いたくなるような、
血の気の多い主張する輩もいるにはいるが、そう言う奴に限って性能の悪いミサイルをぽんぽん飛ばす独立主義国には
不届き旋盤だ何考えてんだあの国はと怒るようなザ・平和ボケなので言わせて放置が適切である。
とは言えそりゃ人間社会において、ストレスとはジャンキーフードのハッピーセットに付いてくる安っぽい玩具並に、
別段欲しくも無いのに附属される厄介要素なので、それが起因で髪が薄くなるのは至極当然、
特に運良く出世したからと人を顎で使うのはともかくとして貴重な時間を割いてまで部下にいちゃもんつけるアホ上司とか
年端のいかねぇ癖にいっちょまえに批判と反論の言葉だけ覚えて大人と社会に楯突くような糞ガキと接すりゃ尚更な、
だからそう気にしなさんなコルベール先生に実は帽子で若ハゲを隠しているワルドよ。
――と、キンキンに冷えた麦酒、つまるところビールを飲んでとジャーキーをカッ喰らいながら豪語するは、
「黄色い亜人」ことホーマー・シンプソンである。ちなみに、彼の語りは文章の二行目から始まっている。多少の改編有。
今日も元気だビールが美味い、とこうして一週間の終わりを街の酒場魅惑のなんちゃらで過ごす男というかおっさん3人、
件のホーマー・シンプソンにコルベール、してもって若ハゲという衝撃的なようなそうでもないような事実が発覚したワルド、
といったメンツ。この人選には、物事には何事もきっかけがあるように、
例えばハイヒールが発明されたのが当時の汚い便所事情に原因があったように、ちゃんとした経由がある。
コルベールは、ある日至って真面目な理由でオスマン学院長と口論になり、その後腸を煮えくり返らせながら
廊下を歩いていた処を、ギーシュとの決闘でボロ負けしてフラフラと擦り寄って来たホーマーに
「どっかマシな酒が飲める所はないか、こう財布の中身が気にならないでいらんサービス料が無いとこ」という言葉を振られ、
済し崩し的にたまたま知っていたこの魅惑の妖精亭に馬車を使ってまで脚を運んで以来、周期的に訪れるようになった次第だ。
最初こそ鬱憤が溜まった勢いで酒場に出向き、我に返って少し戸惑いながらホーマーと杯を交わしたコルベールであったが、
たまたまオスマンの秘書ロングビルについての話題が挙がり、少しばかり気はあってアプローチはすれど中々うまくいかない、
とほろ酔いのついでホーマーに相談したところ、彼から返ってきた
「女が男のどの部分を見てるのか、よぉぉく考えな、結局俺達男も女も昔は原始人なんだからな」という答えにえらく感心し、
以来、コルベールはホーマーと積極的に交流を深める決意をしたのである。
ちなみに、ホーマーがルイズの使い魔であるという点には一切関心が無く、
そもそも召喚当初にホーマーの手の甲に浮んだルーン自体が、実は粘着力の弱いシールだったのでペロンと剥がれ、
ガンダールブだかガンダーロボだか判らぬままに風と共にそこいらの森の中に去ったので、最早その辺すらあやふやなのだ。
つまりともかくコルベールは、ホーマーとは頼れる人生の先輩として接しているのである。妙に気持ち悪いが。
ワルドはと言うと、こいつはまた御丁寧にルイズは俺の嫁だぞ誰にも渡さんとシラフで言うようなチト変わり者で、
しかも厄介な存在になりえた「ルイズの使い魔」がどうしようもないメタボリック万歳な黄色いおっさんだったもんだで
こいつぁ仕事が速いぜと余裕をぶっこいていたのだが、実はホーマーが召喚された際、
彼の首元にくっついて吸血最中だったがめつい雌の蚊も1匹紛れ込んでいた。
して、その蚊が何も知らずふらふらとトリステインの地平を越え、余所の国でも吸血し始めたからさぁアイカランバ、
タンカー船が運搬先の外国でばらまくバラスト水が生態系に異変を及ぼすが如く、
ホーマーの元住居地スプリング・フィールドの空気(発電所から漏れた微量の放射能付き)を
存分に浴びた蚊がばらまくは、ハルケギニア人にとってそれはそれは有害な目に見えない物質であった。
結果、運悪く蚊の餌食になった人間はマラリアだかデング熱だかも判別の付かない謎の病気に襲われ、
しかもその発祥がピンポイントにレコン・キスタの拠点であり、感染した人間の殆どがレコンキ・キスタの人間、
勿論総司令官(ほぁぁぁとは叫ばない)のオリヴァー・クロムウェル
(※オリバーと書くとカーンとかソースとか頭の良い猿みたいになるので注意されたし)もばっちり感染し、
レコン・キスタは事実上壊滅したのである。
尚、感染源である蚊は、メンヌヴィルが焼失してくれた(スピキュゥゥッル! と叫んだとか叫んでないとか)ので、
これ以上の感染拡大は静止された。そして彼が最後の感染者だった。敬礼及び合掌。
補足すると、本来蚊は生態上重力の井戸の底でしか生きていられないのだが、
例の蚊は恐ろしいタフネスの持ち主だったらしく、アルビオン渡りも何とかクリアしたと考えられる。
さてレコン・キスタが、トライポッドで侵略しようとして失敗した宇宙人ばりにあっけない最期を遂げた後、
トリステインに取り残されたワルドは、僕には帰る所が無くなったどうしようママァと母親の肖像に泣き付き、
途端にルイズへの虚無の力への欲望も途絶え、あるのはただただ虚無感のみである。
虚無に縋った私が虚無に看まわれるとはな、愚かなものだハハハ、
とつまらんジョークで己を誤魔化しているワルドの元に、
手を差し伸べたのは他ならぬホーマーであった。思わずその黄色い手をとったワルド。
彼の心に、母親ではなく父親という感情が湧いてあふれ出た瞬間であった。
私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!
私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!
私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!私は真面目に支援します!
〜生卵大安売り・お一人様につき1パックまで〜
なるスーパーの商法があるが、まぁ2、3回くらいなら知らん顔してレジに並びなおしてもバレはしないのだが、
この点だとホーマーは微妙に律儀で、この日行きつけの魅惑の妖精亭で行われた
〜魅惑の妖精亭感謝祭・お一人様につきビール1杯サービス〜
では、きちんと3人で3杯のビールを頂こうと、急遽角の隅っこで酸素欠乏症な状態に陥ってたワルドを引っ張り、
見事にビール2人分をせしめたホーマー(内訳・1杯はコルベール、2杯はホーマー。ワルドはカウントしない)。
と、こんな適当な具合に飲み仲間になったワルドであったが、こうでもならなっかたら、彼は孤独な死を選んだであろう。
それからというもの、3人は暇さえあれば酒場で落ち合い、適当にグチを漏らし、適当に酔っ払う。
そんな彼等の周辺には、彼等によって生活が変わった者も少なくない。
例えば、今しがたホーマー達の陣取るテーブルに追加の酒を運んできた、
薄緑色の薄生地ドレスを身に纏い、僅かに露出させた胸元と肩がほのかな色気を感じさせる、仏頂面のアニエス。
元はと言えばアンリエッタの親衛隊体長候補であった彼女だが、レコン・キスタが自然消滅して俄然平和になり、
それはそれは暇で暇で暇を持て余すのも持て余し、アンリエッタの計らいでトリステイン学院の特別体育講師として
学院に派遣されたのが数週間前。同じ頃ホーマーは使い魔の仕事として薬品整理を嫌々こなしていたのだが、その際、
かつて原子発電所のセクター7Gでしょっちゅうミスを起してた要領で、薬品と飲料水のそれぞれ容器を入れ違え、
その結果モンモランシーに対抗してルイズがこさえていた特製惚れ薬が、天文学的確立を突き抜け、
特別授業の後に汗をかき喉を渇かせていたアニエスの口元に渡ったのである。
遅効性だったルイズの惚れ薬、しかし効き目は覿面で、その翌日大勢の生徒の目の前で、
アニエスは半裸になって目を露骨なハートマークに変形させながら、ギーシュに求愛行動を仕掛けるのであった。
その光景をたまたま見たホーマー曰く「何考えてんだあの女は、保健体育も行き過ぎたもんだ」。
さて、薬の効果が切れたアニエス、なまじ記憶は残ってるものだから、
学院には戻れんわアンリエッタの元へは情けなくて帰れないわで、八方塞になってしまう。
見兼ねたシエスタが、しばらくは私の親戚の店で住み込んではどうか、丁度バイトを探していた、と案を提示してくれた。
接点の薄い少女からの助言に己の醜態を悔やみ、
しかし感謝しながら、アニエスはその案に身を委ねてみる事にしたのである。
ところが蓋を開けてみればそこはニューハーフな店長が仕切る、やや日頃疲れた中年男性を身も心も癒してアゲル系の店で、
しかも常連に顔見知り、それどころか辞表を提出して何処かに消えた筈のグリフォン隊元隊長がいるもんだからさぁ大変。
といってこれ以上現実から背くのも己の精神論から脱線しかねるので、ぐっと踏ん張って頑張るのだった。
運命をむっちゃらもっちゃらにした黄色い亜人に、歪んだ笑顔を振り舞いながら――
夜も更け、日付も変わる直前、大抵この時間帯に、魅惑の妖精亭に小さな客人が訪れる。
最後に、毎週末深夜に繰り広げられる、テンプレートというか、お決まりの会話を連ねて終幕としたい。
「――ちょっとホーマー! またこんなとこでアホみたいに飲んでたのね!」
「勘弁してくれよ、腹の出た中年男性から飲酒という娯楽を取ったら何が残る? なぁセンセ?」
「あー、そこで私に振るのかね。まー、これ以上のアルコール摂取は明日に響くから、んー、帰ろうか」
「ワルドたいちょ……じゃなくてお客様、いい加減ツケ払っていただけません? だいぶたまっているんですが」
「……次の職が見つかるまでもう暫く待ってもらえないかな……魔法が使える奴なら吐いて捨てる程いるって職業難でね……」
「よしルイズ、俺は今から最後の一杯を飲む、これが酒の味と別れのキス代わり」
「んなヒマ無いわよ! さっさと帰る!」
「ドオッ!」
これでこのスレッドとはお別れです。
かつてヘタレ航空参謀や古代地底怪獣、母親大好き宇宙人の凡作に支援してくださった方、ありがとうございました。
それでは。
乙
実にくだらない(褒めてます)SSですなw
>>388 乙! まさか本当にシンプソンズだとは思いしなかったぜ!
ELONAからルルウィ様召喚とかどうだろう?
もしくは『★妹の日記』をルイズが召喚して読んだりとか。
どっちも小ネタになるだろうけど。
書いてから聞いてくれ
>>369 その時で合ってる。ただし、ドラミの登場直前の、
屋根の上で数人に12発ばかり実弾を発射してるシーン。
>>393 ああ、そのシーン忘れてたわ
町長さんの後ろから迫る連中を実弾で撃ち倒してるな
まあ、タイム風呂敷使えばどうとでもなる
のび太の腕なら実弾でも相手を殺さず無力化するのも余裕
と信じたい
どこに当てればいいのかさえわかってれば余裕
それにしても、のび太ぐらいの視力であの命中率は人間業じゃないな
のび太、オリンピック選手を軽く凌ぐ腕前だしな
射撃だけならゴルゴ以上だしね
ヴァッシュといい勝負
しかし基礎は最低レベルだから±0かもしれない
銃を握ると体力あがってる気がするけどな。天然ガンダールブ?
スネ夫「のび太は大長編になると、カッコよくなるんだから」
最初の映画版でギラーミン倒したのはロップル君だぜ
大魔境でも敵の将軍と切り合うのが犬王子に変更されてたし
昔の映画版ドラは変な改変が多かった(特にのび太の活躍がカットされてる)
>>403 あぁ、そういえば映画だとのび太が狙いをサポートしてロップルが撃ったんだっけ。
昔何度も見てたが今じゃあんまり覚えてないわ
>>399 そう言えば、のび太って狙撃はどうなんだろう。
見た事無いや。
>>388 >>かつてヘタレ航空参謀や古代地底怪獣、母親大好き宇宙人の凡作に支援してくださった方、ありがとうございました。
・・・へ?も、もしかしてゴモラの人か!?
地龍に関してはまだ応援してますよ!
>>388 そうか、あの「邪魔するな、人間。降参するなら生かしてやるが、抵抗するなら――死ね」とか
「お前の仕事はお前が何を知っているかを伝えることだ!」とか
「スタースクリーム『さま』だろう?それとも――永遠に口が聞けないようにしてやろうか?!」とか
「お前に与える罰は『死』だ。理解したか?」とかいってのけた永遠のNo.2に会えないのか……
というか、完結しないで消えるなんて、残された人たちはどうすりゃいいんだぜ
>>405 TV版で名前忘れたけどカメラ取り付け、モニターに移ったものを狙撃する
(威力はショックガン程度)という道具が出たことがありました。
その際のび太は何発撃っても全く当たらなかったので狙撃に関しては全くもって無能、とみていいでしょう。
銀河エクスプレスじゃ信号弾で飛行機械に直撃させていたな
お久しぶりです。
だれも予約していないようなら10:25からシーン23の運命の扉を開きますがよろしいでしょうか?
全力を持って支援するであります
それでは大丈夫なようなのでシーン23の運命の扉を開きます。
レース越しに差し込む柔らかい光の中でルイズは目覚めた。
眠っていた部屋はトリステイン魔法学院の学生寮でも、前日逗留した宿でもない。
未だ眠りの精が支配する頭を動かして昨晩起きた出来事を何とか思い出したルイズは寝台から飛び降りると、部屋から飛び出した。
しかし、扉を開いて部屋から出ようとした瞬間、扉の前に立つ人物と衝突し、その人物に受け止められてしまった。
「ヒュー?」
春の召喚の日から最も自分の近くに居た人物の名を口にしたルイズだったが、その視線を上げた瞬間、瞳に映ったのは自分の
使い魔ではなかった。
「あ……、ワルド」
「おはようルイズ、目が覚めたみたいだね。」
ゴーストステップ・ゼロ シーン23 “ To the World / 世界へ ”
シーンカード:ハイランダー(希望 / 予期せぬ幸運。状況の好転。失敗しかけていた計画の奇跡的な進展。)
ワルドはルイズの勘違いに別段気を悪くした様子はなかったが、さりとて機嫌が良い様にも見えない。
それは、これからこの城にいる王党派の人々が辿る運命を思えば別段おかしくはないだろう。しかし、ルイズにはそれだけと
は思えなかった。
そんなルイズにワルドは視線を合わせて話しかける。
「ルイズ、少し話があるんだが。」
「ごめんなさいワルド、私用事があって……」
「君の使い魔の件もあるんだ」
「ヒューの事も?」
戸惑って聞き返すルイズにワルドは渋面を浮かべて頷く。
「ああ、それにウェールズ殿下も君に話したい事があると仰っていた。」
「ウェールズ殿下まで?」
「支度ができたら中庭にある礼拝堂まで来て欲しい、いいかい?」
「え、ええ」
ルイズの返事を確認したワルドは一足先に礼拝堂に行くのだろう、足早に去っていった。
ワルドが言ったように改めて身支度を整えたルイズは、ニューカッスル城の中庭にある礼拝堂に赴く、扉の前で身なりに乱れ
が無いか再度確認して目の前にある重厚な扉を押し開いた。
礼拝堂の中は精緻なステンドグラスから零れる美しい光で照らされており、ウェールズとワルドだけがルイズを待っている。
ウェールズを警護する為の兵が居ない事をルイズは訝しく思ったが、それ程機密性が高い話なのかと思い直して礼拝堂の中へ
足を踏み入れた。
扉が開く音でルイズの到着を知ったウェールズとワルドは、共に立ち上がって少女を迎える。
「おはようございます、ウェールズ殿下。ワルド様。」
「おはよう、ラ・ヴァリエール嬢。朝早くから呼びつけるという無作法を赦してほしい。」
「いいえ、お忙しい中、私如きを待っていただいただけでもありがたき事と存じます。」
「そういって貰えると助かる。
子爵、ラ・ヴァリエール嬢に例の物を」
ルイズと挨拶を交わしたウェールズは、柔らかかった表情を軍司令官らしく厳しいものに改めるとワルドを促す。
ワルドはウェールズに頷くと無言でルイズの前に進み、両手に持った物を恭しくルイズに差し出した。
その真紅のビロードに包まれた物が何であるか、ルイズは人に言われずとも理解する。
<始祖のオルゴール>だ。
受け取る事を躊躇するルイズにウェールズは話し始める。
「ラ・ヴァリエール嬢、貴女が<始祖のオルゴール>を受け取りたくないという気持は私も分かるつもりだ。
私も『虚無』程ではないが、『王権』という大きな力を受ける身だからね。
だからこそこう言おう、受け取るんだルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」
そんなウェールズにルイズは問いかける。
「何故、私なのでしょうか。」
ウェールズは俯いて問いかけるルイズを参拝者用の椅子に座らせると、自らもその隣に腰掛け話し始めた。
「それは私もだよ、ラ・ヴァリエール嬢。
何故、私が皇太子なのか。何故、アンがトリステインの王女なのか。幾度も始祖や父を恨み悩んだものだよ」
「答えは出たのですか?」
「生憎と未だに出せていない、情けないことにね。
ただ最近……そう、死を目前にしてこう思うようにはなった。」
「?」
「“死ぬ時には悔いなく、笑って逝こう”と……。
ならばこそ、『王権』も背負おう、愛しい姫の為に一人でも多く賊軍を葬ろうと決意したのさ。
ラ・ヴァリエール嬢、確かに『虚無』という力は大きい、いや大きすぎる物だろう。だが、それは君の意思でのみ使われる
べき力だ、自らの力を自覚する為、ひいては君の為にも力は握っておいたほうがいい。
それにこれは君の使い魔……ヒュー君からの頼みでもあるんだ。」
「ヒューからの?
そうですわ、ウェールズ殿下。アイツは、ヒューは何処にいるんですか?」
期せずして告げられた己の使い魔の名前にルイズはこの場所に来たもう一つの理由を思い出す。
そんなルイズにウェールズは少女の使い魔の行方を告げた。
「彼は昨晩、城を出たよ。彼から伝言を預かっている、聞くかね?」
ヒューが城を出たという話に衝撃を受けたルイズだったが、己を見据えるウェールズの様子に、息を呑みながらも居住いを正
して頷く。
「彼はこう言っていた。
“こういった力が表舞台に出るということは、それ相応の理由がある。
できる事ならもしもの時の為に力は持っておいて欲しい。
それでも迷う様なら<始祖のオルゴール>の中に手紙を入れているのでそれを読んでみてくれ”と。
それから、君が『虚無』の使い手だという事は決して口外しない事を杖と始祖ブリミルに誓おう。これはワルド子爵も誓っ
ていたから安心すると良い。」
ウェールズの意外な言葉に頷いたルイズは暫く考えるた後、質問を返す。
「あ、あのウェールズ殿下、お聞きしたい事があるのですが。」
「何だね?ラ・ヴァリエール嬢。」
「此度の戦で私に『虚無』を使わせたかったのでは?」
ルイズの質問にウェールズは苦笑すると肯定の言葉を返した。
「ああ、確かにね。君の『虚無』があれば一定の戦果は期待でき、その名をもって打って出れば恭順を示す者達も出てくるか
もしれない、しかし連中には<アンドバリの指輪>という鬼札がある。
かの指輪の力がどこまで及ぶのか判らない以上、そのような賭けじみた事に巻き込みたくは無い。しかもこれは我が国の問題だ、
トリステイン貴族の君を巻き込む事は憚られる。」
「でも!」
「ラ・ヴァリエール嬢、先にも言った通り、その『虚無』という力は君の意志で使うべき力だ。使う時にはよく考えて欲しい、
できる事ならその場の勢いや虚栄心を満たす為に使わない様に、ね。」
ウェールズのその言葉にルイズはヒューの言葉を思い出していた。
想像する事・考える事・情報を集めて選択肢を増やす事……それは以前、ヒューが自分に自分がアンリエッタに言った事だ。
そう、今は逃げる事しか選択肢は無いけれども情報を集めて考えれば、最上とは言わないまでも選択肢は増やせるだろう。
そして、選択肢を増やす為の情報は目の前にある小箱に入っている。
ルイズは躊躇しなかった、情報が欲しいというのもあっただろう。しかし、一番大きかったのはあの男が自分に何を残したの
か……それを知りたかった。
<始祖のオルゴール>をワルドの手から受け取ったルイズは、その中に数枚の便箋を見つけると壊れ物を扱うように丁寧に広げる。
便箋の中の文章はたどたどしく、文法も無茶苦茶だった、しかも楷書であるにも関わらず下手糞な文字で綴られていた。
“ルイズお嬢さんへ
これを読んでいるという事は『虚無』を継ぐかどうか悩んでいるのだろうと思う。
俺個人としては継ぐ事を勧めたい、その理由は3つある。
1つ目は個人的な経験だが、こういう厄介事は磁石の様な物だという事だ。
騒動に巻き込まれた時にある程度の力があれば選べる選択肢が増えるだろう?特に君が受け継ぐ『虚無』というのは普通の
系統魔法と比べると一つ抜きん出たアドバンテージがある。
政治力というヤツだ。
レコン・キスタがこれ程まで勢力を伸ばしたのは<アンドバリの指輪>の力に因る所が大きいが、それと同じ位『虚無』と
いうネームバリューが大きい。何しろ始祖のみが使えていた謎だらけの魔法だからな、あの指輪の力が『虚無』かどうか誰に
も確認できなかっただろう。それに君達ブリミル教徒に『虚無』という言葉はかなり大きな影響力があるはずだ。
政治というのは色々としがらみが増えて面倒な面もあるが、使いこなせばこれ以上ない位強力な力だ、……事によると魔法
よりも強力だ。なにしろ個人の力ではどうしようもないからな。
昨晩言っていた事(隠匿を勧めていた事)と矛盾していると思うだろう、確かにその通り矛盾した意見だ。しかし、今でも
隠匿すべしという意見を覆すつもりはない、これに関しては2つ目に挙げる理由が関係してくる。
2つ目は、君が『虚無』を受け継ごうと継ぐまいとこれからハルケギニアは混乱期に入っていく可能性が高いという事。
昨日話した『虚無』の使い手になるための条件を覚えているだろうか。
各王家の血を受け継ぐ事・王家に伝わるルビーを嵌めている事・その状態で虚無の秘宝を使用する事。
聡明な君ならもう分かるだろう。そう、『虚無』の使い手は君一人ではないという事だ。恐らくゲルマニア以外の国……
ガリア、アルビオン、ロマリア……この3国に使い手か、そうなる可能性がある人物がいるはずだ。
まぁ、少なくとも『アルビオン王家には王と皇太子しかいない』ので次世代に使い手が出てくる可能性が高い。臭いのは他
の2国だろう、下手をするとレコン・キスタと同様の理由を掲げて統一戦争なり聖地奪還戦争なり起こす可能性が高い。
特に宗教国家であるロマリア辺りが聖地奪還戦争を起こす可能性が高いと思う、そこら辺は皇太子や子爵と相談してくれ。
で、1つ目の理由と繋がる話だが、要するに奇襲効果だ。今の所『虚無』の使い手はハルケギニア全土で君を含めて四人中
二人ないし三人といったところだろう、そして現在トリステインに使い手がいる事は他の使い手にはバレていない、ならばこ
れは有効活用するべきだ、特にトリステインは他国と比べると国力に大きな差があるからな。
使う時はギリギリまで隠匿し、最大の効果を望める時に使うべきだと思う。そうすれば『虚無』という魔法の特性=呪文等
が知られていない事……から相手方もそうそう手出しは難しくなってくると思う。
それから後は政治家の仕事になるがそこら辺はアンリエッタ姫や枢機卿に期待するしかない。
そして3つ目、これが一番重要で大切な事。
3つ目の理由は、これこそが『君の魔法だから』だ。
君は物心ついてからこれまで毎日魔法の勉強をしてきたはずだ、他のメイジ達と違って普通の魔法が使えない分、より熱心
に真摯に魔法に向き合ってきただろう。
他の貴族達が戯れに魔法を使っている時でも君は失敗し続けてきた。
俺を召喚した後も毎日練習していた事は知っている、努力する方向性が違っていたとはいえ君のその日々は無駄ではない、
意味あるものだと思って欲しい。
『病める貝にこそ真珠は宿る』昔、探偵の先輩から教わった言葉だ。聞いた時はピンと来なかったが君なら分かると思う。
物事の真の価値を知るのは、それを失いかけた人・失った人だけだという話だ。確かに君は魔法を使えない・使えなかった
だろう、だけどその代わり君は他の貴族には無い大切なものをいくつも手に入れたと思う。
できることなら君の魔法は戯れや虚栄心を満たす為に使うのではなく、その大切なものを守る為に使って欲しい。
さて、便箋の余白も残り少なくなってきた。
本当なら面と向かって別れの挨拶を告げるべきなんだろうが、野暮用があるのでこの様な形で勘弁してもらいたい。
ただ、君に魔法を見つけてあげられた事をささやかな誇りとしてこの胸に抱き、君達の前から去ることを赦して欲しい。
それでは、君と友人達が立派な貴族となって領民達と末永く幸せに過ごす事を祈っている。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの忠実な使い魔
そして君の友人 “ゴースト・ステップ”ヒュー・スペンサー ”
ルイズがその手紙を読み終わった後、彼女の許可を得てウェールズとワルドも目を通す。
暫くの沈黙の後、ウェールズがルイズに話しかける。
「ラ・ヴァリエール嬢、受け取ってくれるかね?」
ウェールズの静かな言葉に対し、ルイズはただしっかりと頷き<始祖のオルゴール>と<風のルビー>を受け取った。
「ルイズ、そしてウェールズ殿下。
トリステイン魔法衛視隊……いえ、一人のメイジとして貴方方に話さなければならない事があります。」
二人のやり取りを見ていたワルドが二人の前に自らの杖を置いた後、跪いて語りかける。ルイズとウェールズはその尋常では
ない様子に息を呑んでワルドを見る。
「何のつもりかな子爵」
「私の話が終わった後、私が赦せぬとあれば殿下の刃もちて私を断罪していただきたい。」
真剣なワルドのその目にウェールズは頷き、ルイズは不安な面持ちでワルドを見つめていた。
ワルドはしばらく逡巡していたが意を決したのか、語り始めた……己が裏切り者だったという事実を。
「実は……私は貴族派、レコン・キスタの一員でした。」
「何っ!」
「嘘!」
ワルドの一言にウェールズは咄嗟に杖を構えながらルイズを庇う。庇われたルイズは信じられないといった表情を浮かべている。
しかし、ウェールズの眼光を受けてもワルドは指先一つ動かさなかった。その様子に遍在を潜ませているのかといぶかしんだ
ウェールズだったが、暗殺をするのならばとっくにしている事に思い至り、床にあるワルドの杖を取り上げて彼に話しかける。
「でした……とはどういう意味かな子爵。」
「言葉通りの意味です、かつて私は彼等の掲げる理想。
惰眠を貪る王家を廃し、心ある貴族の手によってハルケギニアを始祖ブリミルが求める姿に戻そうという理想に共感してい
ました。
しかし、ルイズが目覚めた時からレコン・キスタが掲げる理想や言葉が偽りだという事を知ってしまったのです。」
「そうか、連中が蜂起した根拠には“始祖の恩寵が王家から離れた”という大前提があったな。」
「はい、始祖ブリミルが没して6千年。ルイズが目覚めるまで『虚無』の使い手はついぞ現れないまま。
私はトリステインと王家に忠誠を誓って働いた結果、魔法衛視隊の一隊を率いるまでになったのです。しかし、地位が上が
るだけ・長く勤めるだけ、国が貴族が腐っていく様を目の当たりにしてきました。」
跪き語り続けるワルドの身体は押し隠してきた怒りからか、小刻みに震えている。
「トリステインの国力が年々その力を落としていくのを横目に腐った連中は不正を働き、私腹を肥やしていた。
そんな状況を憂いていた若い貴族達も年を経るに従って腐っていく。最も国に対して責任ある貴族である王家にしてもマリ
アンヌ王后は王の喪を理由に政を放り出し、婿を迎えるべき立場のアンリエッタ姫もこの様な不祥事を引き起こす。
気が付いたらあの国の事を最も考えているのは他国出身のマザリーニ枢機卿という体たらく。
そこに系統魔法には扱えない奇跡をもって蜂起した集団があると聞けば、始祖の恩寵が王家から失われたとも思えましょう。
聞けばその集団が掲げている大義は“聖地”の奪回と貴族の共和制による統治というものでした、その理想は始祖ブリミル
の御心に適うものだろうと思えましたし、余人に倒される位ならいっそこの手で……とも思ったのですよ。」
ワルドはそこまで言うと口を閉ざした。ルイズは信頼していた婚約者の告白に呆然とし、ウェールズは裏切りの原因の一つに
自分も関わっている事を聞かされ苦虫を噛み潰した様な表情をしている。
「なるほど、昨晩のラ・ヴァリエール嬢の目覚めとヒュー君の説明で子爵は連中の虚言を知ってしまった。
信じていた拠り所の真実・虚言を知った為、これ以上連中に服従する事ができない。そういう事だな?」
鋭い視線をワルドに注ぎながらウェールズが詰問すると、ワルドは黙したままウェールズを見返す。
その沈黙を是と取ったのか、ウェールズはルイズに向き直ると改めて話しかける。
「さて、ラ・ヴァリエール嬢。個人的には何らかの処罰を与えたい所だが生憎と子爵はトリステインの貴族だ。僕が処罰を与
えるのは筋違いというものだろう、ここはアンの女官である君の意見を尊重したいのだが。」
ウェールズからの質問に暫く考え込んでいたルイズは、ワルドに質問をした。
「どうしてここで告白しようと思ったの?黙っていれば貴方がレコン・キスタだなんて誰も信じなかったでしょうに。」
ルイズの言葉にワルドは苦笑すると「メイジのいや、貴族の……そして男としてのプライドだよ」と告げる。
「貴族と男のプライド?」
「そう、僕はねルイズ。イーグル号の中で君の使い魔と賭けをしたんだ。僕達がアルビオンにいる間にルイズ、君が魔法を使
えるかどうか……とね。
結果はこの通り、負けた以上負債は支払わなければ。それに先の手紙にも感じた事がある。」
「手紙に?」
ルイズの言葉を聞いたワルドは今まで悔恨に歪んでいた表情から一変、晴れ渡った空の様にスッキリとした表情を浮かべていた。
「『病める貝にこそ真珠は宿る』、だったか。
あの言葉でもう一度頑張ってみるのも良いかと思ったんだよ。失われたトリステイン貴族としてのプライド、貴族の責務……
いや、レコン・キスタという山師に誑かされて失われた貴族としての生き様を僕は取り戻したい、国が衰えるというのなら守り
立て直したい、貴族達が腐っていくのならその者達をどうにかしたいんだ。
一度は国を、王家を見捨てた位だからね、何だってできる。流石に今の王家に忠誠は誓えない……だけどねルイズ、僕はこ
う思う事にしたんだ。ならば、忠誠に値する王家になってもらおうとね。
王家という柱がきちんと立てば国も立ち直る、腐った者達も放逐できる。そうなれば国自体も立ち直るだろう、そう思った
ら居ても立っても居られなくなった!
それに、ルイズ。僕は何よりもまず、一人の男として君の使い魔に負けたくはないのさ。」
ワルドの表情を見、話を聞いたルイズはウェールズに向き直ると自分なりの答えを告げる。
「ウェールズ殿下。私はワルド子爵を信じてみようかと思います。」
「ほう、それは何故だね?言っておくが裏切り者はそうそう信じられるものではないと思うんだが。」
その瞳に暖かいものを浮かべながらウェールズはルイズに問いかける。
「ええ、確かに全面的に信じられるとは申しません。
ただ私は信じたいのです、子爵が言った貴族のプライドというものを……男の意地というものを。ウェールズ殿下が戦おう
としているのも男の意地というものでございましょう?
殿方がそういう言い回しをするという事は並々ならぬ覚悟があっての事と存じます、ならばこそ信じてみようと思いました。
それに、子爵がもし偽りを申していたならば、それは己が貴族である事を自ら否定するだけではなく、殿方としての価値そ
のものに関わりましょう。」
そこまで言うとルイズはウェールズを真っ直ぐに見据えて微笑んだ。
「なるほど、確かにその2つを賭けるとするならば並々ならぬ覚悟とみて良いだろう。ならば僕からは何も言うまい、ワルド
子爵、くれぐれも彼女の期待を裏切る事が無いように祈っているよ。」
ウェールズはそう言うと、持っていたワルドの杖を返すと、ルイズ達に背を向け礼拝堂から去って行く。
残された2人は何も言わずただ座っていた。
「なるほど、確かにその2つを賭けるとするならば並々ならぬ覚悟とみて良いだろう。ならば僕からは何も言うまい、ワルド
子爵、くれぐれも彼女の期待を裏切る事が無いように祈っているよ。」
ウェールズはそう言うと、持っていたワルドの杖を返すと、ルイズ達に背を向け礼拝堂から去って行く。
残された2人は何も言わずただ座っていた。
どれ程の時間が経っただろうか、外では王党派の人々が最後の戦いの為に動き回っているのか、その喧騒が礼拝堂の中にまで
聞こえてくる。
ルイズの傍に立つワルドは頃合いだと感じたのか、ルイズに脱出を促す為に話しかけようとした正にその時、ルイズは<始祖
のオルゴール>を開いた。
何事かと訝しがるワルドを無視して、ルイズは“ディアーナ”に指示を出す。
「“ディアーナ”、今から私が良いと言うまで録音してちょうだい。」
【録音のレベルは如何いたしましょう。】
「最大で、貴方が録れる範囲でお願い!」
【承知致しました、マスター・ルイズ】
それから十分程だろうか、おもむろに<始祖のオルゴール>を閉じたルイズは矢継ぎ早に“ディアーナ”に命じる。
「録音はもう良いわ。“ディアーナ”、私達の会話以外に……何と言うのかしら、何がしかの規則に則った音はある?」
【了解。サンプリングした音声からご要望に該当する周波数を割り出し音声化します、少々お待ち下さい。】
「ルイズ、一体何を始めたんだい?」
“ディアーナ”との会話が途切れた事を察して、ワルドはルイズに何をしているのかと話しかける。
問われたルイズは言葉を選びながらではあるが、ワルドの質問に答えた。
「昨日の夜、<始祖のオルゴール>を開けた時の事を覚えてる?」
「ああ、君が『虚無』に目覚めた記念すべき時だったからね、よく覚えているとも。」
「そうね、確かに私が魔法を使えるようになった記念すべき時だったわ。
だけど本当に重要なのはそこじゃないの、重要なのは“私”にだけ<始祖のオルゴール>の音が聞こえたという事実。
多分、王家のルビーは嵌める事で虚無の担い手である人物に、<始祖の秘宝>の中にある情報を伝える様にしているんだと
思う、<始祖のオルゴール>の場合は音として認識されるんでしょうね。
それと同時に、担い手の状態を確認して伝えるべき魔法を選別しているんだわ。」
「担い手の状態を?何故そんな事が分かるんだいルイズ」
そう聞き返してくるワルドにルイズは顔を向けながら昨晩の事を例に挙げた。
「昨晩、私が『虚無』の呪文を修得した時こう言っていたわ“初歩の初歩の初歩”と、ならば『虚無』にはいくつかの段階が
あるのよ。
そして、担い手がどれ位のレベルにいるかどうか判別して、伝えるべき呪文を判別しているんだわ。」
「なるほど、君が『虚無』に目覚めたばかりだという事を鑑みて、最も易しいとされる呪文を伝えたのか。
ところで伝えられた『エクスプロージョン(爆発)』というのはどういった呪文なんだい?」
「実際に使ってみるまではっきりとは言えないけれど、現在の王党派を救うだけなら十分な威力を持っていると思う。」
淡々としたルイズの言葉に真実を感じ取ったワルドは息を呑んだ、彼女の言葉が真実ならば“初歩の初歩の初歩”というレベル
の呪文でトライアングルスペルを凌駕する威力を持つ事になる、それは正しく伝説の力と言っても過言ではないだろう。
そう考えているワルドを他所にルイズは言葉を続ける。
「でね、何を始めたのかというと『エクスプロージョン(爆発)』以外の初歩の呪文を探しているのよ。」
「『エクスプロージョン(爆発)』以外の呪文?初歩以上の呪文を求めないのかい?」
「ええ、『エクスプロージョン(爆発)』がどれ位消耗する呪文なのか分からないし、初めは初心者向けの呪文を修得する事
を優先させようと思うの。
貴方だって最初はドットスペルしか使えなかったでしょう?」
ルイズのその言葉にワルドは空恐ろしいモノを感じた、普通の貴族はランクが上がった途端に使用できる最大級の呪文を連発
しようとする、斯く言う自分も昔はそうだった。しかし目の前の少女は違う、強力な伝説の力を手に入れたにも関わらず、そ
れに溺れることなく冷徹に手に入れた力を見極めようとしているのだ。
「そうすると君は王党派の援護をするつもりなのかい?」
「ええ、それに貴方も承知していると思うけど、王党派が潰されたら次はトリステインの番だわ、できるだけダメージを与え
て足を止めるべきでしょう。」
「しかし、相手には例の指輪がある。いくらダメージを与えたところで……」
「そこはヒューに任せるわ。」
いきなり出てきた使い魔の名前にワルドは疑問を抱いた、彼女の使い魔は昨晩遅く“野暮用”と言って姿を消したっきりだ、
昨晩の様子からすると二人で何かを計画していたとも思えない。
訝しげにしているワルドに気が付いたのか、ルイズは根拠になる思い出を話し始める。
「私がヒューを呼び出す少し前、彼が関わった事件があったのよ。」
「事件?」
「ええ、他人の頭の中を別人に変えてしまう魔法を使った陰謀があったらしいの、国が関わる位のね。」
ルイズのその話にワルドは言葉を失った、そんな魔法聞いた事も見た事も無かったからだ。
とっさに反論しようとするワルドを手で制したルイズは話を続ける。
「安心して、ハルケギニアの話ではないわ、あくまでもヒューが住んでいた東方の話よ。
まぁ、結果としてヒューと友人達の行動でその陰謀は未然に防がれたんだけど、犠牲者が出なかったわけじゃないの。」
「なるほど、同じ様な方向性の力を持つ<アンドバリの指輪>は彼にとってみれば、その事件と同じ様に思えるのかも知れないな。」
「ええ、上手くすればレコン・キスタをアルビオンで封じる事ができるかもしれない。」
【マスター・ルイズ、一部音声化が終了しましたが如何いたしましょう?】
ルイズが話し終わるのを見計らったかのように、彼女の左手首から“ディアーナ”の声が響く。その内容に暫く考えたルイズ
だったが、時間も無い事と割り切って音声化が終了したものを逐次聞く事にした。
「再生してちょうだい」
【了解しました、ではファイル1から順次再生いたします。】
そうして再生された呪文は『エクスプロージョン(爆発)』を含めて3つあった。
様々な幻影を作り出す『イリュージョン(幻影)』と、あらゆる呪文の効果を打ち消す『ディスペル(解呪)』である。
残りの音源は様々な旋律が入り組んでいる為、解析に時間が掛かるという。
ルイズは“ディアーナ”に以降の解析は慎重に進める様に命じると、ワルドと共に礼拝堂の扉を開け放って光差す世界へ歩き
始めた。
それは、ルイズが初めてメイジとして歩き始めた瞬間でもあった。
王党派とレコン・キスタの決戦まで後、3時間
支援ありがとうございました、以上でシーン23の運命の扉を閉じたいと思います。
本当はもう少し早く仕上げたかったんですが、煮詰まって筆が止まってしまいました……(汗)
ジャンガの人が羨ましいです。
今回、ヒューの登場は手紙のみでしたがどうだったでしょうか?
あまり手紙とか書いていなかったと思うヒューの事、きっと文字はガタガタ文法は滅茶苦茶だったに違いありません。
それでも、ルイズに贈る最後の言葉として形に残るものにしようと思い、手紙にしました。
ルイズとヒューのやりとりはこれが最後になります、後は本当にラストに向けて流れるだけ、言葉を交わさない主従がどういう
戦いをするのか、良い結末を迎える事が出来る様頑張って書き上げたいと思います。
それから、ルイズの初神業“真実”これは「使える『虚無』魔法の概要を知る」でした。個人的な解釈としては下の様な感じ
でしょうか。
1.王家のルビーは微細な魔力(or何がしかの力)を常に帯びており、ある程度『虚無』の因子を有する人物が嵌めると人間
の感覚外の情報を得る事が出来るようになる。
2.始祖の秘宝は使用する事で人間の感覚外の情報に『虚無』の情報を組み込んで放出する。
3.担い手が有する『虚無』の因子の強弱・種類に応じて『虚無』の情報を得る事が出来る。
なので、“ディアーナ”で可聴範囲以外の情報を分析してイリュージョンとディスペルを使用出来るようにしました。
後、絶対に入れようと思っていた『真珠』の話、リプレイ本編でも印象的だったのでここで使えて良かったです。
だけどリプレイでヒューをやってた人は凄いですよね、私は知りませんし思い付きもしないですこんな良い話。
それでは、次回……きっと最終回。また間が開くと思いますが気長に待っていて下さい。
それではまた。
お疲れなのです
次を期待しておりますです、はい
乙でした
ついに、終わっちゃうのか…
ヒューの人乙です。
なんというきれいなワルド。
wktkしつつ正座待機。
乙です
ワルドのクセに輝いてやがる!生意気だ
ヒューは手紙だけなのに存在感あるなぁw 格好よすぎ
最終回は見たいけど終わるのは残念と言ってみる
めっちゃ待ってた乙
ルイズ成長したなー
ディアーナで音声分析とか反則くせぇw だが許せるw
乙
なんという扱いの良いワルド…
チャージマン研でネタを思いついたけど、どう見ても「よくもこんなキチガイSSを!」ってなった
塊魂で小ネタを思いついた、が
問題は塊魂を体験版でしかやったことがない
誰かアサシンクリードのアルタイル召還を・・・
自分には技術と時間がない・・・
ここは、クレクレスレなのか?
>>428 塊魂体験版から召喚すれば良いんじゃね?
クレクレタコラ召喚か
CANAANからカナン召喚
>>428 王様が何をやらかしてハルケギニアに王子を向かわせるのか気になるな。
>>432 428〜封鎖された渋谷〜の派生とはいえ型月原作だから該当スレでやった方がいいな。
チャージマン研はあれだな。
何か起きたらとりあえずジュラル星人の仕業にするのか。
r
>>430 お前天才だな
かたまりるいず
おなじみの音楽がバックに流れるのと同時に召還
使い魔の儀式をする暇無く、塊は疾走して、魔法使いの杖や石ころなどを奪い取って
ついにはルイズを巻き込む
そこをきっかけにどんどん大きくなって・・って感じだな
>>434 アンアンも無茶な依頼してきた等の理由でジュラル認定されそう
カナン、灯台に住んでる奴らのことですね
>>437 日頃から「キチガイ装って精神病院に潜入」とか「宇宙空間で彗星を牽引」とか
「海底基地で原因不明のロボット消失を捜査」とかやらされてんだから
戦時下の同盟国に赴くのなんか容易いだろw
チャー研なら
「ウェールズ皇子、あなたは殺されたんです」とか
「よくもこんなキチガイポーションを!」とかできるな
チャージマンの場合は本当に「ジュラル星人から人々から守りたい」の一心(?)で戦ってるからな。
アニメ最終回でも「全人類の為、戦ってきます。」と言ってるから。か弱い人々を助けるためにどんな事でもするだろ。
でもボルガ博士の事に関しては酷すぎる。
時間がなかったとしても爆弾代わりにするなんて…
おっと誤字をしてしまった。
よくもこんなキチガイミスを!
>>433 ジュラル星人から人々から守りたい
↓
ジュラル星人から人々を守りたい
VS7万も同じ動作繰り返すだけで終わりそうだな
ウルトラマンネクサスから姫矢准を召喚
中盤から変身者がどんどん入れ替わる
仕事から帰ってきたらヒューきてたー!
乙、超乙
もうすぐ終りなのか・・・楽しみだが寂しいな
449 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 21:00:18 ID:Ut9VOwmN
モンハンのモンスターも面白くなりそう。
現にいくつかあるけど、ティガがよい感じだった。
フルフルが呼ばれたそうに
ジーっとこちらを伺っています
オブシダンソードでも守っとれ
アカムとかウカムとか呼び出して大惨事。二番煎じか
>>450 ゼロ魔世界でもチ○コだチン○だ言われるんだろうか
ハリーポッターを召還
ギーシュ戦
諸君決闘だ!出よワルキxyエクスペアームズ!
戦闘向けの呪文は少ないけどやっていけそうだ
アイルー呼び出したら萌えるだろうなぁ
悪魔アイルー召喚
ダブルブリッドの片倉優樹
しかし鏡を見たら避けて通りそう
>>450 左手:ご立派様
右手:ミジャグジ様
頭脳:フルフル
憚られる:アリオク様
こうですか?わかりません
>>455 ハリーはセクタムセンプラ(切り裂け)
っつうエア・カッターみたいな殺人呪文使えたりする
アイルーはキモイからチャチャがいい
>>460 なんだか「一匹」場違いがいる様な気がするんだけど
ハリポタはアブラカタブラっていうそのものズバリの死の呪文があるからなぁ。
呼ばれる人間が悪いと魔法の形態が違うから証拠も残らず完全犯罪余裕でしたになるかも。
北斗の拳より黒王号を召喚
花の慶次より松風を召喚
結果:多分乗せてくれないorルイズがちっちゃくて乗れない
質問です。
キリのいいところまで、と書き続けている内に書いた量がメモ帳で60KBを突破してしまったんですが、やっぱり『今日は前半、明日は後半』と分割して投下した方がいいでしょうか?
>>466 後半を一週間後くらい後にしてその間に次話を書く。
>>461 oh・・・
>>464 禁断の三魔法は、強い憎しみがないと威力を発揮しなかったと思うけど
ソニックシリーズよりシルバー召喚
超能力持ちで自力で飛べるけど基本的に情に脆いアホの子
ハルケの滅ぶ未来を予見してそれを変えるベくルイズの元へ
邪眼シリーズより悪魔ヴォラクを召還
部屋がジメジメする割にこれといった能力もなくてルイズ涙目
>>461 謎のプリンスの原作読む限りでは
エア・カッターとかそんな生易しい代物ではないだろ
>セクタムセンブラ
>>460 アリオク様はご立派様と違って普通に魔王してるよな、見た目以外は…
ご立派様、ミジャグジさま、アリオク様に対抗できる奴っていたかな?
ミネルヴァによって蹂躙されるトリステイン。
姉の安否を気遣いトリステインへと旅立とうと決意したテファニアが呼んだのは、見たことも無い銃を持つ老人、杣口鵜平であった、
477 :
466:2009/07/24(金) 23:07:04 ID:xsP/TjMu
大変申し訳ありません。
使っている回線の具合が突然悪くなってしまい、投下が出来なくなってしまいました。
ネットカフェなどを使って25日中には何としても投下致しますので、ご容赦ください。
>>466 君は半分に分けてみんなの反応を2回に分けて楽しんでも良いし
一度に投下して自分のすべてを出し切っても良い
一番自分のモチベーションを保てると思う選択をすると良いよ
…邪眼のミネルヴァはもういただろ?
>>474 一応ゼロ魔の魔法で敢えて一番近そうなの(?)で例えてみた
確かにエア・カッターよりかなり凶悪だけど…
マルコメが呼び出してたな
今考えると何故あのマゾ豚マルコメの使い魔が豚でなかったのかがちょっと疑問
過去スレだか設定スレだかで、
喚ばれる生き物は主に蛇、カラス、犬、猫、フクロウとかあったような覚えがあるから
可もなく不可もないものなんじゃないかな。
使い魔は魔法属性に寄るから
読んできた。最後は藤田劇場になってたなw
…とらやアシハナの人が帰ってこないかなあ
そういや忘れかけてたけどマルコヌルは風だったっけ
酒が入ると一時的にランクアップする
酒乱ということで
ボンボン坂高校演劇部より日比野真琴でも召喚してみたら・・・
コルベール先生が地面にめり込む
ギーシュが壁にめり込む
オスマンが窓ガラスを破って吹っ飛ぶ
ウェールズが船から吹っ飛ぶ
ワルドが空の彼方へ吹っ飛ぶ
七万が蹴散らされる
スカロン店長だけが無事
デルフは・・・剣だから大丈夫だろうか
オートマータ誰か呼ばれないかな
パンタローネとか好きなんだよ
女の心臓で動く生き人形でも呼んどれ
恐ろしい位に筆が進んだので投下したいのですが、予約は無いかな?
よろしければ23:50から落としたいです
投下します、おさるさんには気をつけよう
「系統魔法に、失われた五番目……、いえ、零番目かしら」
ルイズの部屋、目覚めた紅朔は窓枠に座り、足をぶらぶらと外で揺らす。
「貴族に平民、尊き血統……。 それなら……」
そう考え、妖しい笑みを浮かべる紅い少女。
ウフフアハハと哂うのは、企みを思い付いたからであった。
「正直シチューをこの世界でも頂けるとは思わなかった」
学院の厨房で九朔がいただくのはホワイトソースのシチュー。
異世界、と言うことで食文化なども大きく違うのだろうと思ってはいたが、こういったシチューなどがあるとは思っていなかった。
良い意味で期待を裏切られたと言うところか。
「美味しいですか? 九朔さん」
「うむ、これなら飲食店を開いてやっていけるのではないか?」
「料理長のマルトーさんは凄く料理の腕が良いんですよ」
如何に素材が良くともそれを生かす腕が無いと料理とは美味くならない、つまりマルトーと言う者は料理長を任せられるほど秀でた者。
「同意だ」
程よいサイズに切り分けられた野菜など、細部に渡って趣向が凝らされている。
味の追求だけではない、食べる者の事も考えられている一品。
料理に満足しながら食べる九朔に、シエスタは躊躇いながら疑問を問いかけた。
「クザクさんは、その、どうして……、使い魔になる事を選んだんですか?」
「ふむ、主殿が気になったから、だろうな」
「貴族様が、ですか?」
「うむ、それにこの世界も妙な結界が張っておるし、何かがあると思ってな」
「この世界? けっかい?」
「ああ、我らはこの世界の住人ではない。 空間を隔てて召喚された身だ」
「……えっと」
「この世界の住人ではないと言う事だ」
「……クザクさんはここじゃない所から召喚されたんですか?」
「うむ」
しかも戦闘中にだ、あの門に飲み込まれるのが速くても遅くても、あのキ○ガイから街を守れなかっただろう。
……そうなると、リベンジを狙うキチ○イが次襲ってきた時には拙いか。
戻る時は時間軸の指定をせねばならんかもしれん。
「その、どう見ても人にしか……」
「世界は無限に広がっている、この世界の人間と姿かたち全く同じ人間も居れば、人型ではない不定形の生物も居る。 この世界にも人ではない生き物は居るだろう?」
「あ、はい。 確かにそうですね」
「見も聞きも感じることもできんだろうから、想像しろと言うのも無理な話か」
「……クザクさんは平民とかじゃ、無いんですよね?」
「我等が居た世界では、貴族とは本の一握りしか居らぬ。 無論、此方の世界のように貴族であるから魔法が使えるなどと言う者は居らんと言って良い。 その点で言えば人類の9割以上が平民であろう、一国の王であっても例外ではない」
「王様でも、殆どが平民なんですか……」
「才覚、そして己の研鑽を怠らぬ者なら如何様にも出世が出来るであろうな」
「何か、クザクさんの世界って凄いですね……」
「世界が違うからな、この世界の常識と違えば何かしらに価値観の感じ方が変わるだろう」
スプーンで残りのシチューを掬い上げ口に運ぶ。
租借、飲み込み食事が終わる。
渡された布で口周りを拭き、軽く会釈をして礼を言う。
「馳走になった」
「いえ、まかないものですから」
「これでまかないか、食事が楽しみになるのではないか?」
「え、ええ……、その、重くなったりしないかなーと……」
「重く? ……ああ、加減をせねばならんな」
ふっと笑う九朔。
その笑みを見て顔を紅く染めるシエスタ。
「その、また食事が無ければいつでもいらして下さい」
「あい分かった、その時は寄らせていただく。 料理長に美味かったと伝えておいてはもらえぬか?」
「はい、確かに伝えておきます」
「助かる。 そろそろ行かねば、主殿を待たせるかも知れんのでな」
「お気を付けて」
九朔は頷き、シエスタは手を振って見送った。
「……何?」
食事を終え、厨房から食堂に戻る最中に異様な気配を感じた。
嫌な予感がする、こう、背中に何かが這うような。
その感覚を信じ向かってみれば人だかりを見つけた。
人垣、恐らくはギャラリーだろうが、その向こう側から知った気配を感じる。
そうして近づけば……。
「……しょうがない、手加減してあげようじゃないか」
「あらぁ? 優しいのねぇ、それじゃあ私は手加減しないで置いてあげるわ」
聞き覚えの有り過ぎる声が人垣の向こう側から聞こえてきた。
紅朔め、また何かしおったか。
そう考え、人垣の外枠に近づき、一度跳ねてギャラリーの中心を視界に納める。
「……何?」
居たのは紅いドレス、所々半透明の衣服を身にまとう少女。
そしてフリルの付いた、白いブラウスと深紺色のズボン、貴族の証であるマントを羽織、手には杖を持った金髪の少年が居た。
紅いドレスの少女、紅朔が右手を水平に起こし、手のひらを広げる。
「な、何だねそれは……?」
現れたのは紅くて丸い、平べったくて外周部が尖ったナニカ。
それがすさまじい速度で回転し始める。
丸ノコと言えば良いのか、人を容易く両断せしめる速度と威力を持って其処に在った。
それに慄く少年貴族。
「……一体何をしておるのか」
半ば呆れながら後ろに下がる。
一歩二歩三歩、下がりきって同じ歩数の分だけ走り出す。
そして跳躍、厚さ1メートルはある人垣を軽く飛び越え、少年貴族とギャラリーの間に降り立った。
その時には紅朔は紅い血で出来た丸ノコを飛ばしており、弧を描いて少年貴族の頬を掠らせていた。
「あ……、あ、当たらなければ意味は無い!」
飛び込んできた九朔に気が付いていないのか、外れてよかったと冷や汗ダラダラの少年貴族が大声を上げる。
周りのギャラリーは闖入者の九朔に驚き、ざわめき始めた。
さらに弧を描き、紅い丸ノコは紅朔の手元へ戻り、吸い込むかのように紅朔の掌に消えていく。
「紅朔、一体何をしている」
「あら、騎士殿。 朝餉はもう済んだの?」
「ああ、厨房でいただいた。 紅朔はまだ食べては居ないのだろう?」
「いいえ、美味しくいただいたわ」
「! 何だね君は!? まさか挟み撃ちをする気か!」
今更気が付いたのか、少年貴族が九朔に問いかける。
「我か? 我はルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、大十字九朔である」
「な、何? その平民がルイズの使い魔ではないのかね!?」
「正確には紅朔も使い魔であろうが……」
「私は使い魔になった覚えなど無いわ」
誓いを立てたのは九朔であって紅朔ではない。
そう言う意味では紅朔は使い魔ではない。
「これからとてもたのしぃ〜事をするんだから、騎士殿は邪魔をしないでね」
「楽しい? 一体何を……」
「来れぇ〜、無垢なる刃ぁ。 でもんべい〜ん」
と気が抜ける声で宣言する紅朔、指先から紅い水滴が地面に落ち、それと同時に地面の土が盛り上がり、瞬時に形作っていく。
その事に驚愕する少年貴族と、その周囲のギャラリー、それとよく見ればギャラリーの中に居た主殿までもが驚いている。
「……どう言う事だ、紅朔。 この世界の魔法は貴族しか使えないのではなかったのか?」
「れんき〜ん、っと。 ……魔法とは『血』に宿る力、ならば私に使えぬ道理は無いわ」
形作った土が紅朔の魔法により命を吹き込まれる。
それを見て紅朔は口端を上げて笑みを浮かべる。、
それは鋼鉄の人形、それは魔を断つ剣、それは無垢なる刃、それは砕けぬ最後の城壁、その名は『デモンベイン・トゥーソード』。
の模造品、要は魔法で作り上げたただの人形。
「……なるほど、汝であれば容易いか」
「簡単すぎて反吐が出そうよ」
つまりは紅朔は決闘相手の少年の血を取り込み、少年が持つ『魔法』を理解したのか。
伊達に『血液言語版』などと銘打たれている訳ではなかった。
そんな紅朔が使う魔法は少年の魔法、違うのは人形の造形のみ。
「さあ、逆転勝利のピースは揃ったわ」
「初めから圧倒してただろうが」
「泣き喚き額を地面に擦り付けながら許しを請う準備はよろしくて?」
紅朔は九朔の声を無視し、二メートルほどのデモンベイン・トゥーソードを構えさせる。
「……君がメイジだとは思わなかったよ」
「詰まらない矜持に縋り付いて威張り散らすメイジと言う醜悪な存在と一緒にしないで欲しいわね」
一息に言ってのける紅朔、それを聞いて周囲の少年少女達は怒り心頭に発する。
「……無能の使い魔はよほど知恵が足りないのか、やはりゼロの頭しか持ちえてないようだね」
「無能? ゼロォ? アハ、アハハハハッ!」
そんな物言いを聞いて、気が狂ったように大声で笑い出す紅朔。
「ゼロゼロゼロォ!? 最高じゃなァい!? 次元の壁をぶち抜きアカシックレコードにアクセスを許される程の力を“無能”だと! アハハハハハハハハハハッ!!」
空を仰ぎ、両掌を天へと向け、大口を開けて笑い続ける紅朔。
怒り心頭だった周囲のギャラリーは冷め始めた、『こいつの頭はおかしい』と見始めていた。
一頻り笑い終え、頭と腕を垂れ下げる。
「ゼロってのは良いわねぇ、魔導書でも人外でもない真っ当な人間でありながら世界を壊す力を持ち得るなんて、ねぇ?」
「ッ!」
斜めに傾けた頭、視線はルイズへと向けられていた。
血に濡れた紅い瞳、赤く朱く紅い、それは恐怖を奮い起こす視線。
「……もう良いだろう、紅朔。 汝はやり過ぎるきらいがある、これを機に直したらどうだ」
「私は私よ、例え御父様と御母様に言われようと変わらないわ」
はぁ……、と大きくため息を付く九朔。
「……ちょっと、あんたたち一体何なのよ! 本当に平民なの!?」
恐怖を押し殺したのか、ルイズが大声で叫ぶように言った。
九朔は振り返り、その問いに答える。
>>484 属性によると聞いてKOFのオロチを思い出した。
オロチはずばり「無」だし。
でもオロチ呼んじゃうと「さあ、無に還ろう・・・」で学園ごと全滅しちゃいそうだから八傑衆のがいいかな。
「主殿、昨日言った通り我等はこの世界の人間ではない。 この世界のように貴族であるから魔法が使える、と言った物は無い。 才覚があれば誰もがこの世界で言う魔法を使える、そう言う世界で生まれた存在である」
「じゃああんたたちは……」
「うむ、主殿達が言うように、元居た世界では『マギウス』、この世界で言えば『メイジ』と呼ばれる。 尤も、我等は元居た世界でも特殊ではあったが……」
両親が『旧神』と呼ばれる存在で、その片方、母が『魔導書』と言う普通では考えられない存在。
強いて言うなら、半人半書と言った所か。
「……正直に言おう、我等は生粋の人間ではない」
「人間じゃあ、ない?」
「生粋ではないとは言え、食事や睡眠、排泄も必要とする、殆ど人間と変わりない。 根源が多少人間と違うだけなのだ」
「……えっと、人間じゃないけど人間……?」
「良い得て妙な、つまり我等は──」
「騎士殿、詰まらぬ講釈なんて必要ないでしょう?」
「しかしだな、我等は『知って居る』。 主殿にも知っておいて貰っていた方が、後々煩わしい事態になりはすまい」
「固定概念に凝り固まった、頭の回転が愚鈍な奴等に言っても無駄でしょう?」
大量の毒を含む言葉、それに反応するのはやはり『貴族』。
「いい加減にしたまえ、かなり精巧なゴーレムとは言え7体の『ワルキューレ』に勝てると思っているのかね?」
「木偶の百や二百、魔を断つ剣には届かない」
言うと同時にデモンベイン・トゥーソードが大地を蹴る。
「シャンタク!」
脚部に付く、扇状に広がる飛行ユニット。
勿論魔術的要素を含まない為、ただの飾り。
そこまで凝る必要があるのか、それを広げて一体のワルキューレに飛び掛る。
「ティマイオス!」
高く上げられた右足が、一体のワルキューレの脳天に叩き付けられ一撃で潰れ壊れる。
「クリティアス!」
着地と同時にしゃがみ込み、右足を軸として水面蹴り。
強力な蹴りはワルキューレの下半身を蹴り壊す。
「ツァール!」
右掌から生え出る鋼色の剣、それを構え駆け出し振るい一閃、ワルキューレを横に両断。
「ロイガー!」
左掌から同じ様に生え出た剣、飛び上がりムーンサルト。
中空で左腕を振るい、ワルキューレの上半身を縦に切り裂く。
「切り裂け!」
落下しながらロイガーとツァールを組み合わせ、十字型に変化させる。
そのままオーバースローにて投げ下ろし、高速で飛翔してワルキューレを貫き、半ば地面に埋まり5メートルはある切れ目を作っていた。
「アトランティスぅ」
着地と同時にまたも跳躍、そして自由落下。
「ストライク!」
迎撃に槍を突き出すワルキューレを、突き出した槍ごと蹴り潰した。
自重により十数センチの凹みを地面に作り、地面を穿った右足を基点として構える。
「光射す世界に、汝ら闇黒、棲まう場所無し!」
掌を一度合わせ、何かを包む込むかのように離す。
両腕を天高く上げ、円を描きながら下げる。
「渇かず、飢えず、無に還れっ!」
一気に駆け出し、斧を構えていたワルキューレに掌底を叩き付けた。
「レムリアァ・インパクトォッ!」
この全ては魔術的要素を含まない、ただの格闘戦。
まるで滑稽、三文芝居の人形劇。
子供が描く、つまらぬ英雄<ヒーロー>が立ち回る演劇。
「……全く」
ボゴンボゴンと崩れながら転がるワルキューレ、それを見ながらため息を吐く九朔。
少年貴族は唖然としたまま、ギャラリーも唖然としたまま、ルイズも唖然としたまま。
まるで踊るように、軽やか過ぎる動きでゴーレムが駆け巡って7体のワルキューレを叩き潰した。
唖然とするのも無理は無い、戦いを始めてまだ十数秒しか経っていないからだ。
「さぁ、お楽しみの時間よぉ」
「え、あ?」
紅朔が声を掛けたのは、ワルキューレが全滅した事に理解が追いついていない少年貴族。
嘲哂う、紅朔は微笑を浮かべて少年貴族、ギーシュ・ド・グラモンを見た。
「貴方はどんな声で啼くのかしら? 耳を引き裂くような悲鳴? 耳に残り続けるような苦鳴? それとも……」
一歩、デモンベインゴーレムが踏み出す。
「泣き喚く事さえ出来ず、その生を終えるのかしら?」
拳を握ったデモンベインゴーレムが走り出す。
狙いは呆然と立つ少年貴族、青銅のゴーレムを一撃で破壊し潰す攻撃に貧弱な少年貴族は耐えられないだろう。
一撃で死に至る、それが分かりきった攻撃。
「いい加減にしろ」
そんな石をも簡単に砕く打撃を、間に割り込み左手一つで止めた九朔。
「これ以上やっても互いに禍根を残すだけではないか」
「禍根? こんな屑の死体が一つ出来上がるだけで他に何も残りはしないわ」
「汝はそうであっても、この者の家族が黙っては居るまい」
「牙を向いてくるなら悉くすり潰してあげましょう」
「先に手を出したのは紅朔であろう? ならば引くのも紅朔であらねばならん」
「驕った傲慢は嫌いなのよ、今ここで全員殺しておけばスッキリするでしょう?」
そう言って、紅朔の指先から滴る赤い液体。
それが地面に落ち、染み込み吸い込まれる。
途端に数十もの土の塊が地面から盛り上がる、同時にギャラリーから悲鳴が上がった。
「知る最強、『烈風』であの程度なら簡単じゃなぁい?」
「簡単であってもやる意味など無い! いい加減機嫌を直せ」
「騎士殿も知っているでしょう?」
「分かるがそうしようとする事には繋がらん、少し落ち着け」
「騎士殿が落ち着かせてくれるの?」
「汝が望むなら」
「……そう、騎士殿がそこまで言うなら」
生成途中であった複数のデモンベインゴーレムが崩れ、ただの土へと還る。
その数は約50体、ギャラリーの内と外、囲うように作られていた。
一斉に掛かればこの場に居る者を殺し尽くすことも出来るかも知れぬ。
だが、そんな事をしても全く意味が無い。
「……はぁ、全く。 いい加減その性格を直さんと、父上と母上に呆れられるぞ」
「御父様と御母様なら、ありのままの私を受け入れてくれるわ」
「……そうだと良いな」
苦笑混じりで九朔が返せば、優しい笑みを紅朔が浮かべる。
「ち、ちょぉぉっとぉ!! あんたたち本当に一体何なのよっ!!」
そんな似つかわしくない状況で、再度ルイズが吼えた。
「そっちの赤いのはゴーレム作っちゃうし! 九朔は軽々と何メイルも飛び上がるし! 訳分かんないわよ!!」
「ふむ、やはり主殿には話しておいた方が良いな」
「さっさと話しなさい! 訳分からなくてイライラするわよ!」
「ふあ……、私は眠いから寝てくるわぁ」
小さな欠伸を零した紅朔はフワリと浮き上がり、女子寮の方角へと飛んでいった。
「フライまで! あぁーもう!!」
「人目があるので主殿の部屋で話を、……覗き見ている者も居るのでな」
「覗き? だれよ覗いてんのは!!」
「主殿が気にする事でもあるまい、部屋へ戻ろう」
「さっさと行くわよ!」
今一要領を得ないが、話してくれるならさっさと聞いておきたい。
そう思いルイズはかかとを翻すが。
「……道を開けなさい!」
そう一喝してギャラリーをこじ開けた。
ズンズンと進むルイズについて歩く九朔、その視線は中空へ一度だけ向けられた。
エマ・ワトソンが交通事故死ってマジか
「……ガンダールヴ?」
「……恐らく」
向けられた視線、遠見の鏡で一部始終を見ていた存在。
あやふやな会話をするのはトリステイン魔法学院の学院長『オールド・オスマン』と、この学院の教師『コルベール』。
「ガンダールヴはあんな見たことが無い魔法を使うのかね?」
「ど、どうでしょうか……」
「どう見ても使い慣れてるようにしか見えんのじゃが」
「彼女の方はどういう存在か今ひとつ……」
「わからんと?」
「はい、ディテクトマジックを掛けたのですが……」
「ふむ……、ではもう一人の少年の方は?」
「同じです……」
「そちらもよく分からんとな?」
「あの少女と同様に、霧掛かったようによく分からないのです」
「寧ろあの少年の身体能力、そっちのほうがガンダールヴ向きじゃないの?」
「それはそうですが……」
左手の甲に付いているルーン、それがどちらか一人だけならまだましだった。
問題は全く同じルーンが二人に付いていると言う事、そして少女は見たことの無い魔法を使い、少年は尋常ではない身体能力を見せ付けた。
並のメイジなら簡単に片付けてしまうだろう二人、この力が『ガンダールヴ』の物なのか見当が付かない。
と言うか、先ほど見せた力はガンダールヴの力ではなく、元から持っていた力にしか見えないオールド・オスマンだった。
「詠唱中から守るって、あれじゃあ詠唱し終わる前に敵を倒し尽くしそうなんじゃが……」
「それには同意しますが、確かにあのルーンはガンダールヴの物でして……」
「なら、彼らはガンダールヴの力を使ってないと言うことじゃろう? そんな人物を召喚したのはダレじゃ?」
「ミス・ヴァリエールです」
「あーあー、あの二人の娘か。 あの二人に似て優秀なんじゃろう?」
「い、いえ……、彼女は上手く魔法を使えないようでして……」
「ふむ……、つまり彼らは虚無の使い魔でミス・ヴァリエールの属性は『虚無』って事じゃろ? 全く面倒なことじゃ、あ奴はたいそう娘たちを可愛がっとるそうじゃないか」
「やはり王宮に……」
「王宮のボンクラどもが戦争のダシに使い、公爵が激怒する事など目に見えとるぞい」
「では如何様に?」
「保留じゃ保留、下手に触って厄介な事にでもなったら堪らん。 儂が全て預かるから他言無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「はい、わかりました……」
とぼとぼと学院長室から出て行くコルベールを見送り、オスマンは盛大にため息を付いた。
「はぁー、あの見たこと無い魔法に凄まじい身体能力、どっちもやばいじゃろ……。 あれなら『メイジ殺し』も苦では無いじゃろうなぁ……」
もう一度ため息を吐くオスマン、これから来たり来る出来事を想像し、がっくりと肩を落とした。
以上で投下終了です。
乙、紅朔ったら本当に悪い子でもうw
セイバーマリオネットJからライム召喚
ボクっ娘補填に
504 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 00:50:55 ID:3ICFFkLP
投下よろしいでしょうか
予定がなければ投下させていただきます
505 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 00:52:06 ID:3ICFFkLP
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
食堂の蒙華絢燗さに驚いて、ぽかんとしているアノンに、得意げに指を立てて、ルイズが言った。
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」
「へぇー」
「わかった? ホントならあんたみたいな平民はここには一生入れないのよ。ほら、いいから椅子をひいてちょうだい。気の利かない使い魔ね」
「ああ、うん」
アノンが椅子を引いてやると、ルイズは礼も言わずに腰掛ける。
アノンも隣の椅子を引き出して座った。
「しかし、朝からずいぶん豪華なメニューだね」
テーブルを見渡して、アノンが感想を述べる。
その肩を、ルイズがぽんぽんと叩いた。
「ん?」
ルイズは床を指差した。
そこには、なにやら貧しいものが乗せられた皿が一枚。
「これは?」
「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」
まるで犬か猫のような扱いだ。
だが、使い魔とはそういうものなのかと、アノンはおとなしく床に腰を下ろした。
とは言え、皿の上にあるのは、小さな肉のかけらが浮いたスープと硬そうなパンが二切れだけ。
これではとても足りない。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
祈りの声が、唱和される。
(シソブリミルって誰だろ?)
そんな疑問を抱きながら、アノンは目をつむって祈りを捧げるルイズの皿から、鶏肉をつまみ上げて口の中に放り込んだ。
506 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 00:53:23 ID:3ICFFkLP
ルイズとアノンが中に入っていくと、先に教室にやってきていた生徒たちが一斉に振り向いた。
いつもならここで、馬鹿にした視線と、くすくす笑いが聞こえてきそうなものだが、今日はそうではなかった。
二人が教室に入ってきた途端、使い魔たちが一斉に騒ぎ始め、生徒達はルイズどころではなくなってしまったのだ。
唸り声を上げて暴れだす使い魔もいれば、怯えたように主人の影に隠れようとするものもいる。
今朝会ったキュルケもいたが、彼女の使い魔も椅子の下に頭を突っ込もうとジタバタしていたため、こちらには気づかなかった。
ルイズは不思議に思ったが、アノンは気にした様子もなく、ルイズに尋ねる。
「あの目の玉のお化けはなに?」
「バグベアー」
「あの、蛸人魚は?」
「スキュア」
ルイズは答えながら教室を歩き、席の一つに腰かけた。
アノンも隣の椅子に座った。ルイズが睨む。
「なに?」
「ここはね、メイジの席。使い魔は座っちゃダメ」
「使い魔ってずいぶん不便なんだね」
アノンは、ぼやきながら食堂と同じように床に腰を下ろした。
扉が開いて、紫色のローブに身を包み、帽子を被った中年の女教師が入ってきた。
その頃には、主たちの努力の甲斐あって、使い魔たちはどうにか落ち着きを取り戻していた。
507 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 00:56:22 ID:3ICFFkLP
「あの人も魔法使い?」
アノンはルイズに呟いた。
「当たり前じゃない」
中年の女性は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
ルイズは俯いた。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズが、アノンを見てとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。
使い魔たちだけは、凍りついたようにじっとしていたが。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
そんな声が聞こえ、ルイズは立ち上がって怒鳴った。
「違うわ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう!」
ゲラゲラと教室中の生徒が笑う。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱したわ!」
「かぜっぴきだと? 俺は風上のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないそ!」
「あんたのガラガラ声は、まるで風邪も引いてるみたいなのよ!」
マリコルヌと呼ばれた小太りの生徒が立ち上がり、ルイズを睨みつける。
シュヴルーズが手に持った小ぶりな杖を振った。立ち上がった二人は糸の切れた操り人形のように、すとんと席に落ちた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」
ルイズはしょぼんとうなだれた。
「お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけません。わかりましたか?」
「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」
くすくす笑いが漏れる。
シュヴルーズは、厳しい顔で教室を見回し、杖を振った。
くすくす笑いをする生徒たちのロに、どこから現れたものか、ぴたっと赤土の粘土が押しつけられる。
「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
(なかなか便利そうだな…)
アノンは初めて見る空を飛ぶ以外の魔法を、興味深げに観察していた。
508 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 00:58:23 ID:3ICFFkLP
「では、授業を始めますよ」
授業内容はごく初歩的な、系統の数や種類、その役割を確認するものだったが、魔法の知識がほとんどないアノンにとってはかなり有用な物だった。
(なるほど、魔法は『火』『水』『土』『風』『虚無』の五つの系統から成り立ってると。あ、でも『虚無』は失われたんだから、実質四つか。で、あの人は『土』の魔法を教える先生ってわけか)
口の中でブツブツ言いながら、真剣に授業に聞き入るアノン。
それぞれに固有のものが与えられていた能力者の“能力”とは違い、魔法とはある程度決まった技術を習得していくものらしい。
(メイジでもないのに、魔法の授業が面白いのかしら?)
そんなアノンを、ルイズは変な目で見た。
次にシュブルーズは『錬金』の魔法の説明をして、杖を振る。
すると、ただの石ころが、光る金属へと変化した。
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
キュルケが身を乗り出した。
「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの……」
ごほんと、もったいぶった咳をして、シュヴルーズは言った。
「『トライアングル』ですから……」
「ルイズ」
アノンはルイズをつついた。
「なによ。授業中よ」
「スクウェアとか、トライアングルとかって、どういうこと?」
「系統を足せる数のことよ。それでメイジのレベルが決まるの」
「それってどういうこと?」
ルイズは小さい声で説明した。
「例えばね?『土』系統の魔法はそれ単体でも使えるけど、『火』の系統を足せば、さらに強力な呪文になるの」
「なるほど」
「『火』『土』のように、二系統を足せるのが、『ライン』メイジ。シュヴルーズ先生みたいに、『土』『土』『火』、三つ足せるのが『トライアングル』メイジ」
「同じ属性を二つ足す意味はあるのかい?」
「その系統がより強力になるわ」
「なるほど。つまり、あの先生は『トライアングル』だから、強力なメイジというわけだね?」
「そのとおりよ」
「じゃあルイズのクラスは?」
ルイズは黙ってしまった。
509 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 01:00:55 ID:3ICFFkLP
そんな風にしゃべっていると、シュヴルーズに見咎められた。
「ミス・ヴァリエール」
「は、はい」
「授業中の私語は慎みなさい」
「すいません……」
「おしゃべりをする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
シュブルーズがそう言った途端、教室が騒がしくなった。
みんな口々に、やめろだの危険だなどと言っている。
その声に反発するように、ルイズは勢いよく立ち上がった。
「やります、やらせてください!」
そして、緊張した顔で、教室の前へと歩いていく。
アノンは、ルイズの魔法をまだ一度も見ていなかったので、少し楽しみだった。
隣に立ったシュヴルーズは、にっこりとルイズに笑いかけた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
頷いて、ルイズが手に持った杖を振り上げる。
その時、アノンは何かを感じた。漠然とした、形にならない感覚。
「なんか、この場所イヤな感じだなぁ…」
誰にともなく呟いて、アノンは頭を下げた。
ルイズが杖を振り下ろした瞬間、机ごと石ころが爆発した。
爆風をモロに受けたシュヴルーズが黒板に叩きつけられ、教室のあちこちから、悲鳴が上がる。
驚いた使い魔たちが暴れだし、教室は瞬く間に地獄絵図と化した。
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「俺のラッキーがヘビに食われた! ラッキーが!」
シュヴルーズは倒れたまま動かない。
もしかしたら、あれは死んでいるのかもしれない。
「ちょっと失敗したみたいね」
教室の大騒ぎを意に介した風もなく、ルイズは淡々とした声で言ってのける。
机の下で難を逃れたアノンは、ルイズヘの評価を大幅に修正した。
510 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 01:03:15 ID:3ICFFkLP
以上です
一日一投下で行こうと思ってたのに、PCに触れない日が続いてしまいました
読んでくれてる人が何人いるかわかりませんが、がんばっていこうと思います
では、また
乙!
日刊連載が目標ですか、凄いですね!
汝等の方、アノンの方、乙です!
ところで文章中に疑問を感じたんですが、九朔の方は魔術が封じられているんですか?
割合は異なっても、紅朔と同じ存在なんだから使えると思うのですが。
513 :
アノンの法則:2009/07/25(土) 01:54:16 ID:3ICFFkLP
>>511 日刊と言うよりは、すでにフーケ戦終わりまで書いてるんで
それの手直し+投下の目標と言うことです
しかしひとりでも乙ってレスがついただけでニヨニヨしてしまう…
おぉ〜、なるほど!
おまけにフーケ戦まではほぼ確実に読めるということも分かり、嬉しい限りです。
フーケ戦完結までが確実なのは良いな
確かに、たまにギーシュ戦直後に終わってるやつもあるから
もしかしたら今回も…って思ってたけどフーケ戦まであるとわかると
wktkせざるを得ないな。GJ、楽しみにしてるっ!
九朔の方、アノンの方、乙でした。
ご両人とも今の所は原作に沿って進められているようですが、これからどうなるのか楽しみにしています。
と言っても、私はほとんどテンプレ展開ですけどww
さて、
>>466および
>>477だった者です。昨日はお騒がせしまして申し訳ありませんでした。
皆様のアドバイスもあり、ウダウダ悩むよりは一気に投下し尽くした方がいいのではという結論に達しました。
よってかなりの高確率でさるさんを食らうことになりそうですが、その時にはどなたか代理をよろしくお願いいたします。
他にご予約の方がおられなければ、9:45より第40話の投下を行います。
また夢である。
……前回の仮面の男とトーホーフハイとのやり取りでネタ切れかと思っていたが、どうやらまだ何かあるらしい。
(見せてくれるって言うんなら、見るけど……)
まあ見世物としては割と面白いし、教訓めいたことも内容には含まれているので謹んで拝見させていただくことにする。
「ドロシー! もうこの戦いは無意味だ。武装解除して、降伏するんだ!」
「………」
「■■■■■■■■■さえ倒せば、平和な世界を作り出すことが出来る!」
何かの要塞らしき建物の中で、ルイズと同じか少し年下くらいの金髪の少年が、同年代の少女に向かって訴えかけていた。
しかし少女はかぶりを振ると、その少年の言葉を否定する。
「そんな世界は無意味よ……」
「!?」
「戦いのない世界なんて作り出すことは不可能。
……わたくしの父はね……わたくしを悲しませないために戦って、死んだわ! だから、わたくしも美しく戦って死ぬの!」
(美しく戦って、死ぬ……)
彼女の言い分は、ハルケギニアの貴族のあり方にどこか似ていた。
祖国のために。名誉のために。誇りのために。
華々しく戦い、見事に散る。
後にはその勇姿と、名誉が残るであろう。
(……でも……)
かつての自分であれば、それを当たり前だと感じたかも知れない。
しかし、その言葉を発した少女を見ていると……何故だか、悲しさを感じた。
「人類の全てに見せつけてやるべきだったのよ! もう戦いなんか見たくないと思わせるような、悲惨な戦争を!」
「それが……この戦争の意義だというのか……?」
「そうよ! 人類から戦争をなくすためには、兵器を取り上げるだけじゃ駄目なのよ! 人類の心そのものを変革させないと……それをしなければ、人類は……お父さまのように、滅んでしまうわ!!」
頬を涙で濡らしながら、自分の理想と心に刺さった棘とを同時に語る少女。
そんな少女と対峙する少年は、ゆっくりと穏やかに彼女に語りかけた。
「君は優しいんだね……僕以上に」
そう言いながら、少年は少女に『優しさ』の必要性を説いていく。
「……ドロシー、君はかつての僕と同じなんだ。
戦いを憎むあまり、自分の優しさを許せなくなる。……その優しさが人類に必要なんだ」
この少年の過去に何があったのか、『この部分』のみを切り抜かれて見せられているルイズには分からない。
だが、その言葉には確かな実感と言うか……重みのようなものが感じられる。
「優しくなければ、人類なんか存在する意味はないんだよ。自分だけが生き残ることを考える人類は……この宇宙には必要ないんだ……」
(……………)
これを理想論だと一笑に付すことは簡単だ。
と言うか、戦いの場でこんなことを言うなんて愚かと言われても仕方がないだろう。
……仕方がないかも知れないが、それが単なる理想論に過ぎなくても……『理想』を抱いているのならば、その心は気高いと言えるのではないか。
(『理想』……)
少なくとも、今の自分は持ち合わせていない。
それに代わる『何か』も、見つけていない。
(……何だか、自分の小ささを思い知らされてるような気がするわね……)
やや自嘲気味に苦笑しながら、ルイズは夢を見続けていく。
よしきた支援
「トレーズ、貴様の正義とは何だ? 何故、この戦いを始めた!?」
「……かつて、ボタン一つで全ての戦いに決着が付いてしまう時代があった。そして、その戦いに人間性は介在しなかった。
今でもその状況は変わらない……無人の機動兵器モビルドール、そしてデビルガンダム……人間性が介在しない無粋な兵器はこの世界から駆逐しなければならない」
今度はいきなり戦闘シーンからである。
激突する二体の鋼の巨人。
緑と青のそれは、戦いながらも問答を行っていた。
「戯れ言を! その武器は貴様らが作り出したものだろうが!!」
「戦争から人間性が失われれば、勝利も敗北も悲惨なものとなる。……神は、どちらにもその手を差し伸べてはくれない」
「きれい事をぬかすなぁぁっ!!」
緑の巨人を操る少年は激昂した様子だが、対する青の巨人を操る男はあくまで落ち着いている。
いや、男の方は少年との会話を楽しんでいる素振りすら見せていた。
……と、よくよく声を聞いてみれば、この男は確か以前に『仮面の男』と話していた男のようだが……果たしてこの男と少年の問答の中に、何があると言うのだろうか。
「貴様のために戦火が広がり、多くの人が死んでいった! 貴様が戦う相手は、俺だけで十分なはずだ!!」
「その通りだな、五飛。……君と対決した時、私はこの戦争における君たちの新たな存在意義を見出した」
「だから、あの時に俺を殺さなかったというのか!?」
「そう。数少ない私の理解者を殺すことなど……出来ない」
「ふざけるなぁ!!」
叫びと共に少年が緑の巨人を飛びかからせ、その手に持つ光の槍を突き出す。
男もまた青の巨人が持つ光の剣を振るわせて、繰り出される連撃を受け流し、時には反撃していく。
「貴様は、そうして人を見下すことしか出来ない男だ! 所詮エゴでしか戦っていない!! 貴様のために何人の人間が死んだと思っているんだ!?」
おそらくは男に対して反省や後悔を促すための少年の問いかけ。
だが、それに対して男は、
「聞きたいかね? ……昨日までの時点では九万九千八百二十二人だ」
「な……!?」
「戦いのために犠牲となった人々の名は全て記憶している……。皆、忘れられぬ者たちだ」
正確な数字を提示し、そしてそれら全ての名を記憶していると告げた。
(……凄い)
これにはルイズも驚く。
正確な死者の数字を把握し、しかもそれらの名前を一人一人記憶しているとは。
しかも『昨日まで』ということは、一日ずつそれを数えているということだろうか。
この発言が本当かどうかを確かめる術など自分には持ち合わせていないのだが、もし本当だとしたら自分には逆立ちしたって出来はしない芸当である。
「私は死者に対し、哀悼の意を表することしか出来ない。だが、彼らは決して無駄死になどしていない。
この『混乱の時代』を乗り越え、地球という名の統一国家を作り出すことによって……人類はようやく銀河系の同胞と肩を並べることが出来るのだ……」
(この人も『理想』を持ってる……)
しかもそのための犠牲を『必要』として忌避せずにいながら、決して犠牲を軽んじたり無駄にしようとはしていない。
……記憶力がどうとか言う以前に、この男のその信念が凄まじかった。
場面は変わり、今度は別の鋼の巨人……白を基調にして青と赤でカラーリングされたものと、紫と黒に染められた禍々しい印象を与えるものとが対峙している。
「やはりお前とはこうなる運命だったようだな、ヒイロ!」
「……この戦いの十分すぎる意味という奴を聞かせてもらおうか」
そして、ここでもまた問答が行われていた。
白い巨人を操る黒髪の少年と、黒い巨人を操る金髪の男。
彼らは互いに光の剣や銃弾、また銃と思しきものから発射される光の束、鞭のようなモノを交差させながら互いの意見をぶつけ合っていた。
「戦わなければ、戦いの愚かさは分からぬものだ。全人類にそれを知らしめなければならない!」
「何故、そんな役割を引き受けた?」
「サンクキングダムの王家には二人の子がいた……。
一人は王国を滅ぼしたTDFに復讐するため、あえてTDF特殊部隊OZに身を置いた。もう一人は……完全平和主義を完成させるため、人々を導く存在となった」
(……………)
『王家』や『王国』という言葉にルイズは反応した。
それはこのハルケギニアにも存在しており、また自分が属しているものだったからだ。
「だが、この戦いなくして完全平和主義の実現はあり得ない。だから私はゼクス・マーキスという仮面を被り、血塗られた道を歩むことを選んだのだ!」
ここにもまた『理想』と、そのための方法論があった。
平和を確立するための前段階としての戦争。
あのドロシーという少女も、トレーズという男も、そのために行動を起こした。
戦争に『理想』や『信念』を持ち出す、というのはナンセンスなようにも思えるが……そういうものが無くなってしまえば、先程のトレーズの言葉のように『勝利も敗北も悲惨なものとなる』のだろう。
問題は、その『理想』の中身がどのようなものなのか、だが……。
(……って、いつの間にか決着が付いてるわね)
ふと気が付くと、戦いは少年が駆る白い巨人の勝利に終わっていた。
そして、少年は男に対して諭すように語りかけていく。
「……俺はガイアセイバーズと行動を共にして学んだことが一つある。それは……地球圏が孤立した存在ではないということだ」
「……………」
「俺たちが生きる宇宙は予想以上に広い……その中では地球人類の個々の主義や大義など小さなものに過ぎない」
「主義や大義なくしてどうやって人を導くというのだ!?」
「俺たちのような力を持った者が……それを考えるべきではない。そして、これからの世界を導く者に兵器は必要ない」
「それはリリーナのことか……!?」
この少年は、自分が戦うことしか出来ない人間だと知っている。
だから『これからの世界を導く者』のために戦い、そしてそのためならば自分の命すら厭わない。
肝心なのは、それが『誰かに強制されたから』だとか『そう思い込まされているから』ではなく、自らの意思で決めて実行しているという点だろう。
……そうさせるだけの何かが、その『これからの世界を導く者』とやらにはあるのだ。
「お前とトレーズは同じだ。弱者を守るために大義を振りかざす。……しかし、それは決して弱者を助けることにはならない」
「弱者を作り出すのは強者だ! 忘れたか!? 地球という強者の存在がコロニーという弱者を作り、追い詰めていったのだ!」
「ゼクス! 強者など何処にもいない。この宇宙では人類全てが弱者なんだ。俺もお前も弱者なんだ!!」
そうして自分を弱者だと認められることこそが、既に『強い』ということの証明になっている。
ルイズだって、自分のことを弱者などとは思わない。……いや、思いたくない。
だが、ならば自分は強者なのだろうか?
(……少なくとも強者じゃないわね)
『ゼロ』と呼ばれて蔑まれ、鬱屈した思いを抱えていた自分。立派な貴族に、立派なメイジになりたかった自分。今もこうして夢に対して頭を抱え、深く悩んで考え込んでいる自分。
これのどこが強者だと言うのだろう。
(……『俺もお前も弱者なんだ』、か……)
支援
時刻は夜明け前。
「…………、はぁぁ〜〜…………」
夢の終わりと共に目覚めて、ルイズが最初にやったことは溜息をつくことだった。
……『夢の中の登場人物』と『現実の人間』を比較してもどうにもならないことくらい分かっているつもりなのだが、胸の奥から出てきてしまったものは仕方がない。
「今の夢に出て来た人たちが、誰か一人でもいいからトリステインにいてくれれば……」
まあ、トレーズとやらと戦っていた少年については少し問題がありそうだったが、それでもトリステインに対する刺激にはなると思う。
刺激した結果どうなるのかは、また別問題なのだが。
「……………」
それはそれとして、今の夢はなかなかに衝撃的だった。
メッセージ性で言えば、いつかの『救世主など必要とはしていない』に比肩するほどである。
戦争の目的。
……と言っても、あんな全世界に渡る規模の『理想』を提示されても、ルイズとしてはピンと来ないというのが正直なところだ。
今の夢に出て来た彼らは、それぞれ自分の意思で戦場に立っていたようだが……それにしたって、実際に戦うのは万単位にも及ぶ名もない兵士たちだろう。
「『理想』があるのは、羨ましくも思うけど……」
それに振り回される方の身にもなって欲しいものである。
「……はぁ」
再び溜息をつくルイズ。
だが夢の中に出て来た彼らは、その方法に問題はあっても……それこそ人々を振り回すため、最大限に良い表現をすれば人々を導くために、確固たる『理想』や『信念』を持ち合わせていた。
そういうものを持ち合わせていない自分としては、持っている人間が眩しく見えてしまう。
では、これから戦争を行おうとしている我が国の女王陛下はどうなのだろうか?
「多分、無いわね……」
つい最近まで王女としてカゴの鳥のような扱いをされ、女王に即位してからまだ半年くらいしか経っていないのだから贅沢は言えないのだが、やはり夢の中の人物たちと比べると相対評価でどうしても見る目が厳しくなる。
「……………」
アンリエッタが主導し、もはや秒読み段階に入っている今回の戦争にしてもトリステイン側としては『タルブで先に攻撃されたから、これ以上やられる前にこっちから攻撃しよう』というだけで、主義も大義も正義も道義もない。
……いや、大義名分としてはそれで十分なのかも知れないが、例の誘拐事件の背景を知ってしまっているルイズとしては穿った見方になってしまうのだ。
「まあ、わたしもタルブの時は戦いに参加したけど……」
あの時は、とにかくトリステインやアンリエッタのために何か自分が出来ることはないだろうか、と無我夢中だった。
そしてユーゼスに命じ、ジェットビートルを飛ばして(行き当たりばったりな要素もかなりあったが)『虚無』を使い、アルビオン艦隊を壊滅させた。
……あの時の自分の行為が間違っていたなどとは思わないし、そうしなければ今頃トリステインはアルビオンの占領下だっただろうが、アンリエッタに戦争を踏み切らせた要因の一つはあの一件にあるはずだ。
「……後悔すればキリがないわね」
夏期休暇が終わって、もう二ヶ月も経つ。
王軍に志願した男子生徒たちは、じきに戦地であるアルビオンへと赴くはずだ。
いや、男子生徒だけではなく、教師たちも、元から兵士だった人たちも、平民も、誰も彼もが殺し合いをするためにアルビオンへと向かう。
―――「貴様のために何人の人間が死んだと思っているんだ!?」―――
―――「聞きたいかね? ……昨日までの時点では九万九千八百二十二人だ」―――
この戦争で一体どれくらいの人が死ぬのかなど、ルイズには想像もつかない。
単純に駆り出されている人間の数はトリステインとゲルマニアとアルビオンを合わせて十一万ほどらしいが、軍人ではない者が巻き込まれる可能性は十分すぎるほどあるし、戦争が長びけば後から追加人員が投入されて死者が増えることも考えられる。
そうすると早期決着のため、自分はアルビオンに行った方が良かったのか……などと一瞬思うが、それは要するに『戦争を早く終わらせるために人を早く殺す』ことと同義なわけで。
ハッキリ言って、自分は虐殺者になんてなりたくないし。
まあ、つまるところ。
『虚無』などという規格外の力以外、政治力も経済力も軍事力も持ち合わせていない自分には、これはどうにもならない問題なのである。
「はぁ……」
三度目の溜息を吐いて、考えても仕方がないことを考えるのをやめた。
今のクロムウェルのようにトリステイン王家を打倒して自分が王になろうなんて気は全くないし、現状の王政府の不満をタラタラと並べたところで、何かが変わるわけでもない。
どうせ同じく悩むのなら、もう少し現実的で身近な問題について悩むべきではないか。
そう、例えば自分の使い魔のこととか。
「……むぅ」
夢に頻繁に出てくる『仮面の男』と自分の使い魔の関係とかは気になるところだが、先程と同じく夢の中の話を現実に持ち出すわけにはいくまい。
アレはアレ、コレはコレである。
さて。
最近のユーゼス・ゴッツォの行動を振り返ってみると、どうもルイズは自分がないがしろにされているような気がしていた。
いや、正確に言うと『姉たちに比べて対応がおざなりなように感じていた』のだ。
例えば、上の姉と下の姉は名前で呼んでいるのに、主人である自分はいつまで経っても『御主人様』呼ばわり。
例えば、エレオノールとは割と軽い口調(その『口調の違い』が分かる人間は非常に限られていたが)で話しているのに、主人である自分に対しては事務的な口調を崩さない。
例えば、『どのような人間なのか判断がつきにくい』とかいう建前(だとルイズは思っている)でもってカトレアのことは色々と自分に質問したりするくせに、主人である自分のことは何にも聞こうとしない。
―――おかしいでしょ。
そりゃ姉さまたちも大事だろうけど、それよりも大事にするべき人がいるでしょ。
だって言うのに、エレオノール姉さまとはしょっちゅう何か話をしてるし、ちい姉さまとは妙になごんだ空気を出しちゃってるし。
「…………むむむぅ」
ユーゼスは自分が召喚した使い魔なのに、最優先対象がその自分になっていないような気がする。
いや、それよりも。
「なんか……アイツって、わたしに対して変化が無いんじゃない?」
そう、それだ。
召喚してから今までそれなりに……いや、かなり色々あったはずなのだが、自分へのユーゼスの態度は全くと言っていいほど変わっていなかった。
常に一歩か二歩ほど引いた立ち位置を維持しようとして、使い魔の仕事もそれほど積極的にこなそうとはせず、主人であるルイズを試すような口振りで接する。
フェオの月に召喚してからウィンの月の現在まで八ヶ月、ずっとこんな調子なのだ。
それはつまり八ヶ月の間、ユーゼスの中のルイズの……何と言うか、順位やポジションのようなものが小揺るぎもしていないということである。
「……エレオノール姉さまや、ちい姉さまに接する態度は少しずつ変わってるのに……」
ユーゼスが自分に召喚される前のことはよく知らないが、少なくとも自分の使い魔として召喚されてからは、他の誰よりも自分がそばにいて見続けてきた。
カトレアより、エレオノールよりもだ。
だって言うのに、あの銀髪の研究バカは御主人様のことを大して気にも留めていない。
むしろエレオノールやカトレアの方に比重を置いている様子さえ見せている。
「…………っ」
何だか自分のことが軽んじられているような気がして、思わず歯噛みするルイズ。
いや、分かってはいる。
タルブ戦の直前、姉も交えて三人でやり取りした時に言われたこと。
一番最初に『アンタは使い魔としてわたしに従いなさい』と命じたのは自分で、ユーゼスは自分に対してあくまで『使い魔としてのスタンス』をほとんど崩さないだけなのだ、と。
要するにユーゼスは、ルイズとの関係を『主人と使い魔』という形で固定してしまっているのである。
それは、使い魔としてとても正しい姿であるのだが……。
「…………なんか、ムカつくわ」
そして『どうにかして今以上の関係になる方法はないものかしら』と悩み始めるルイズだったが、やがて『何でわたしはこんなことを真剣に考えてんのよ!?』という方向に悩みがシフトし……。
その悩みの原因であるユーゼス・ゴッツォが起こしに来るまで、ベッドの中で唸りを上げ続けるのだった。
士官教育終わりたてホヤホヤの予備仕官となったギーシュは、勢い勇んで首都トリスタニアの中ほどにあるシャン・ド・マルス練兵場にやって来た。
トリステインの軍隊は、大まかに分類して三つ存在している。
その時の王、今で言うならアンリエッタ直属の軍団となる『王軍』。
各地の大貴族たちが領民を徴兵して作った『国軍』あるいは『諸侯軍』。
貴族仕官や多数の水兵たちが混ぜこぜになった『空海軍』。
ギーシュのような学生仕官は、主にこの内の『王軍』と『空海軍』に配属されることになっている。……仮にも『貴族の学生仕官』を下手な貴族の下に付かせるわけにもいかないから、当然ではあるが。
そして教練仕官に書いてもらった紹介状を頼りに、ギーシュは自分が所属することになった王軍の『ド・ヴィヌイーユ独立大隊』とやらの元へと向かっていた。
二万もの兵でひしめき合う練兵場をあっちこっちにウロウロしながら、それでもギーシュの心は妙な興奮で満ちている。
……ぶっちゃけギーシュはヴィヌイーユなんて名前を見かけたことも小耳に挟んだこともなかったが、初陣ということで張り切っているのである。
何せ自分は、末席とは言え栄えあるグラモン家の一員なのだ。
この戦争にしても、一番上の兄はグラモン家の軍を預かっており、二番目の兄は空軍の艦長、三番目の兄は王軍仕官……と、家の男の全員が出征していた。
自分だけが後れを取るわけにはいかない。
ここは一つ、このド・ヴィヌイーユ独立大隊とやらで……まあ手柄を立てられるかどうかは少し自信がないが、あわよくば名前の一つも売っておきたいところであった。
「…………あれ?」
だが、その独立大隊が見当たらない。
おかしい。
いくら何でも存在しない大隊に配属されるなんてことはないはずなので、自分が見付けられないだけだと思うのだが……。
「む、むう……」
仕方がないので近くにいたコワモテの仕官に声をかけ、『戦場では“自分の隊が分からなくなりました”などと言っても誰も教えてはくれんぞ』と頭を叩かれつつも大隊の場所を教えてもらう。
何はともあれ、その教えてもらった場所に行ってみると。
「う……、む?」
宿舎のすぐそばにあるため日当たりが悪かったが、まあ、これは別にいい。
問題はそこにいる人間たちだった。
いかにも怠惰な雰囲気で宿舎の壁にもたれかかり、何をするでもなく空を見上げている者。
真っ昼間の、しかも王軍の練兵場だというのに酒を飲んでいる者。
カードで遊びながら、ツケがどうのこうのと言い合う者……いや、このくらいは別にいいのだろうか。
ともかく、そんな感じにだらけきった人間ばっかりなのである。
さすがに注意しようとするギーシュだったが、よくよく観察してみればこの場にいるのは老人兵や『やる気』という言葉をどこかに忘れてしまったような者たちがほとんどだということに気付いた。
……何と言うか、もう、色んな意味でダメな部隊だ。
そう認識すると同時に、ギーシュの胸に嫌な予感が去来する。
「ま、まさか、ここが……」
嫌な予感が外れて欲しいという願いを込めて、近くにいた老人の傭兵に向かってやや焦り気味に問いかけた。
「お、おい、兵隊」
「はあ、何でございましょう?」
「……『ド・ヴィヌイーユ独立大隊』というのは、ここか?」
「さようで」
ガックリ、とギーシュは肩を落とす。
―――「私の経験から言うと、上司や部下や同僚というものは恵まれる時は非常に恵まれるが、恵まれない時は全く恵まれないものだ」―――
とユーゼスに聞かされてはいたが、まさかここまでとは思わなかった。
周囲を見回せば、老兵や不良兵ばかり。
要するにこの大隊は、頭数を揃えるだけのカス大隊なのである。
『“独立”大隊』と銘打ってあるのは、おそらくそれが理由だろう。
トリステイン王軍は、十二個連隊の二万の兵という名目で成り立っているのだが、この『連隊』というものは(非常に大雑把な説明だが)いくつかの大隊が寄り集まって出来たものだ。
つまりどの連隊も、この大隊を自分のところで預かるのを嫌がったということになる。
「……………」
そこまで思考が及んだところでギーシュは思わず頭を抱え、絶句するのだった。
sien
「だだ、大隊長どのはどこだ?」
やや上ずった声で老傭兵にそう尋ねたら、彼は隅の一角を指差して目当ての人物の場所を教えてくれた。そしてギーシュがその指差した方向に目をやると。
「……アレが大隊長……?」
棺桶に片足を突っ込んでいそうなヨボヨボで白髪の老人が、杖を支えに立っていた。
その横には、参謀記章を肩に付けている若く太った貴族が一人。
察するに、あの場所が『大隊本部』らしい。
「も、物凄い貧乏クジを引いてしまった……」
どんよりと暗い気持ちがのしかかってくる。
こんな大隊に配属されたなんて、恥ずかしくって家族にもクラスメートにもユーゼスにも、モンモランシーにも言えやしない。
……何だか手柄を立てることはおろか、生き残ることすら難しいような気がしてきた。
「うぅ……」
だが、いつまでもこうしてはいられない。
こんなのでも取りあえずは大隊であり、自分はそんな大隊に配属されてしまったのだから。
「よ、よぉし」
何はともあれ大隊長に着任の挨拶をしなくては……ということで、ギーシュは『大隊本部』へと歩いていく。
「予備仕官ギーシュ・ド・グラモン、ただいま着任いたしましたぁ!!」
ギーシュ的には精一杯元気よく挨拶をしたつもりだったのだが、
「はぁ? 何じゃ! 何事じゃ!?」
大隊長であるド・ヴィヌイーユは小刻みに震えつつ、大声でギーシュに問い返してきた。どうも耳が遠いようである。
仕方がないので、ギーシュは大隊長の耳元まで近付いて叫んだ。
「ギーシュ・ド・グラモンであります! 当大隊の予備仕官として配属されました!! 着任許可を頂きたくあります!!」
「おお、そうか!」
ホッと息をつくギーシュ。
しかし。
「食事の時間か! 腹が減っては戦は出来んからなぁ! おぬしもしっかり食うのじゃぞ!」
結局通じていなかったことを痛感し、ズシャリと膝を地面に落とした。
そんな感じにギーシュがうなだれていると、隣にいた大隊参謀が大隊長に何かを耳打ちし……。
「な、何じゃ、配属か! だったらそう言わんか!」
……最初からそう言ってるのに。
思わず不満が顔に出そうになってしまうが、着任した瞬間に大隊長の機嫌を損ねるわけにもいかないのでグッと我慢する。
「せ、せ、せいれーつ!!」
年老いた大隊長は『自分の中の何か』を切り売りするような様子で大声を張り上げ、自分の兵隊たちに号令をかけた。
兵隊たちは、のろのろとした動きで集合してくる。
そして整列した部隊員たちに向かってド・ヴィヌイーユ大隊長はギーシュを紹介する。
「新任の、中隊長を! しょ、しょ、紹介する!」
「え?」
ちゅうたいちょう?
なに、それ?
唐突に不可解な単語が出て来たので首をひねっていると、大隊長は更に言葉を続けた。
「えー、我が栄えあるド・ヴィヌイーユ独立銃歩兵大隊に配属された……あ〜……、名前!」
「ギーシュ・ド・グラモンであります!」
「えー、そのグランデル君には、第二中隊を任せる! したがって第二中隊はこれより『グランデル中隊』と呼称する!! 中隊長に、けいれーい!!」
「いや、グランデルじゃなくてグラモンなんですけど……」
名前の間違いを訂正するが、聞き入れてもらえなかった。
いや、それよりも。
今、この爺さんはとんでもないことを口走らなかっただろうか?
えーと、確か、中隊長?
僕が?
……………………無理だぁ!!
「ちょ、ちょっと大隊長どの! 僕は学生仕官ですよ!? そんないきなり中隊長なんて!!」
面倒そうに敬礼している中隊所属の兵隊たちをチラリと見ながら、ギーシュが叫ぶ。
中隊と言えば、最低でも百人ほどの人数からなる規模である。
超即席の士官教育を終えたばかりの、新兵とも言えないような自分がそんな(ギーシュにとっての)大所帯を指揮出来るわけがない。
だが大隊長はぶるぶる震えながらギーシュの肩に手を置き、その理由を語り始めた。
「いやぁ、中隊長が今朝、脱走しおってなぁ。ちょうど後任を探しとったのじゃ」
「ええー!?」
中隊長が脱走って……斜め上の意味で物凄い大隊だが、それにしても……。
「僕みたいな新任じゃなくって、先任仕官がいるでしょうが!」
「あー、ワシと大隊参謀と各中隊長以外、この大隊に貴族はおらん。したがって、余っとる仕官は君しかおらん。よろしくな、中隊長」
学生仕官を登用するくらいだから、王軍は仕官不足なのだ。
ギーシュはそう噂に聞いていて、その話に『なるほどな』と得心もしていた。
(……でも、いくら何でもコレはないだろう……)
ド・ヴィヌイーユ独立銃歩兵大隊は、その名の通り鉄砲隊で総数は約三百五十人ほど。それが第一、第二、第三と三つの中隊に分かれている。内訳は鉄砲中隊が二つ、護衛の短槍中隊が一つ。
その二つの鉄砲中隊の内の一つである百五十名の兵を、いきなりギーシュは任せられることになってしまった。
しかも『鉄砲隊』と銘打ってあっても見かけるのは旧式の火縄銃ばかりで、新型のマスケット銃はまったく見当たらない。
(ど、どうすれば……)
さすがにユーゼスもこんな場合の対処法は教えてくれなかった。……いや、こんな場合を想定している方がおかしいのだが。
『六万分の一』の兵力のつもりでやって来たのに、あれよあれよと言う間に『六万分の百五十』をまとめるという大役を任せられてしまい、ギーシュの頭は混乱していた。
(って言うか、それ以前に……)
配属されたのが鉄砲隊、ということがまず大問題である。
何故なら士官教育を受けたこの二ヶ月というもの、ギーシュは銃についての教育をカケラほども受けていないのだから。
―――「最初から“この人間はこの隊に配属させる”と決めておいて訓練を始めるか、あるいは訓練中の成績や適性などを見て配属先を決める、というのが一般的だな」―――
そんなユーゼスの言葉を思い出しつつ、トリステイン王軍は一般的じゃなかったのか、とあらためて肩を落とすギーシュ。
『急遽大量の傭兵を集め、それをまとめるための仕官不足に苦しんでいる王軍は、混乱が尋常ではなく酷い』と聞くだけ聞いてはいた。
しかし、混乱するにも程がある。
「うぅぅう……」
懊悩するギーシュだったが、そんな彼の元に中年の男が近付いてくる。
飄々とした様子のその男は銃身の短い火縄銃を背負い、腰にはこれもまた短めの剣を差している。更に頭には鉄兜、厚皮に鉄の胸当てが付けられた上着を羽織っていた。
「よろしくでさ、中隊長どの」
「よ、よろしく。……君は?」
「中隊付き軍曹のニコラでさ。自分は副官の真似事など、やらしてもらっとりました」
「は、はあ……」
額の切り傷、日焼けした顔。更によくよく見てみれば身に付けている武具は相当使い込まれているようだ。これは『真似事』というのは控えめな表現で、実質的にはこのニコラという男が中隊を切り盛りしていたのだろう。
「いやぁ、災難ですねぇ。来て早々、中隊長をやらされるなんてねぇ。……見たところ、まだ書生さんだ」
「う、うん」
傭兵軍曹に親しげに話しかけられ、多少まごつきながらもギーシュは頷く。
「まあ、中隊の面倒は自分と仲間が見ますから。隊長殿は、ドッシリと構えとってくだせえ」
「わ、分かった」
そもそも『ドッシリと構える』ということをやった経験がないのだが、とにかくこの歴戦の傭兵が近くにいてくれれば何とかなりそうな気がしてきた。
……と、その時、遠くでラッパが高らかに鳴らされ、中隊長たちが声を上げ始めた。
「おお、将軍閣下の訓示ですな。では中隊長殿、我々も行くとしましょう」
ニコラに促され、ギーシュもまたぎこちなくはあるが中隊員たちに声をかけていく。
間もなくアルビオン遠征軍総司令官であるオリビエ・ド・ポワチエ将軍による兵たちへの訓示と激励があり、その後このシャン・ド・マルス練兵場に集合した二万の王軍は港町ラ・ロシェールに向かう。
兵たちはそこで艦に乗り込み、戦場となる浮遊大陸アルビオンを目指すのだ。
sien
ハルケギニアの暦における最後の月であるウィンの月、その第一週のマンの曜日。
二つの月が重なる日の翌日であり、アルビオンがハルケギニア地方へと最接近するこの日、トリステイン・ゲルマニア連合軍六万の兵は五百隻以上の大艦隊で次々にアルビオンへと向かっていく。
ちなみに『五百隻以上』と言ってもその内で本格的に武装を施している艦は六十隻ほどで、他の約四百四十隻は兵や補給物資などの運搬を担当している。
「……まるで、種子が風に吹かれて一斉に舞うようですな」
ラ・ロシェールの港、イグドラシル桟橋の最上部に立ったマザリーニ枢機卿が、隣に立つアンリエッタへと感想を告げた。
「大陸を塗り替える種子です」
「白の国を、青に塗り替えんとする種子ですな」
連合軍の艦隊の内、トリステインの艦が掲げている王家の旗は、青地に白の百合をあしらったデザインとなっている。
そしてアルビオンへと向かう艦隊の壮大な光景を眺めながら、マザリーニが呟く。
「負けられませんな」
「負けるつもりはありませぬ」
アンリエッタはやや硬質な声でそれに答え、枢機卿と同じくジッと艦隊を見つめていた。
そんな女王に対してどのような思いを抱いたのか、マザリーニは明るい情報を君主に提示する。
「……ド・ポワチエ将軍は大胆さと慎重さを兼ね備えた名将です。彼ならきっとやってくれるでしょう」
「…………そうですわね」
『きっと』という部分にやや希望的観測が混じっていることを感じ取るアンリエッタ。
―――ハッキリ言って、ド・ポワチエ将軍は『名将』と呼ばれるような将軍ではない。自分の国の中枢人物の評価くらいは、彼女とて知っているのだ。
だが、彼以上の人材は今の王軍に存在しない。
探すとなると、他の国か歴史上を見回すしかなくなってしまう。
こういう時にアンリエッタはトリステインの国力が低いことを感じ取るのだが……。
「するべき戦でしたかな」
やや陰鬱な心境になっている女王の耳に、枢機卿の言葉が届く。
アンリエッタはジロリとそんなマザリーニの方を向き、不満まじりに疑問の声を上げた。
「何故にそのようなことを?」
「……アルビオンを空から封鎖する、という手もありました。慎重を期すのならば、そちらが正攻とも思えます」
「何を今更。それに泥沼になりますわ」
表情を変えないままで言うトリステイン女王。
「そうですな。白黒をつける勇気も必要ですな。私はいささか年を取ってしまったのかも知れませぬ。……しかし、そうなると『虚無』を投入出来なかったのが痛く感じられますな、陛下」
『虚無』という言葉が出た瞬間、アンリエッタの顔が強張った。
今回の戦争には参加しない、と明確に記したルイズに対して、アンリエッタは物凄い勢いで『考え直しなさい』だとか『わたくしにはあなたの力が必要です』だとかの文面の手紙を合計で七通送ったが、返って来たのは言い回しは違えど全て『お断りします』という内容のみ。
「…………っ」
最後の手段として実力行使を匂わせてみたが、すると『もしそちらが強引な手段に出た場合、わたしも“持てる力の全力で”抵抗します』とまで返してきた。
持てる力の全力。
空を埋め尽くす艦隊を一瞬で全滅させるほどのそれを向けられるとあっては、アンリエッタも諦めざるを得ない。
ちなみに、この『アンリエッタとルイズの手紙越しのやり取り』についてであるが、終盤ではルイズも意地になっており、“持てる力の全力”うんぬんは勢いで書いてしまった部分がかなりあるのだが……。
当然、アンリエッタはそんなことは知らない。
「まあ、物は考えようです。我らは『虚無』を温存している、と思うことにいたしましょう」
「……本当に考えようですわね」
全く自分の言葉に従ってくれない友人だったはずの少女を思い出して苛立つアンリエッタだったが、枢機卿はそんな彼女へと一つの言葉を投げかけた。
「此度の戦、負けたら何とします? 陛下」
「……………」
それを聞いて、アンリエッタの心にあった熱が急速に冷めていった。
負けたらどうするか。
いや、どうなるのか。
―――順当に考えればトリステインはアルビオンに併合……いや完全に侵略されて『アルビオン国のトリステイン地方』とでも名を変え、自分たちトリステインの首脳陣は軒並み処刑されるか、あるいは厳重に幽閉されるか。
実際にはどうなるのか不明ではあるが、おそらくはこんな所だろう。
やがてアルビオンはその牙をトリステインに組したゲルマニアに向け、ガリアに向け、ハルケギニアの根幹を成すブリミル教の総本山であるロマリアに向け……。
「っ」
そこまで想像が及んだところで、アンリエッタは身震いした。
最も忌避したい未来予想図であるが、そうなってしまう可能性は十分に有り得る。
そしてその手始めは、まぎれもなく『自分が引き起こしたこの戦争』がきっかけとなってしまうのだ。
「この身を焼くことで罪が赦されるのならば……、喜んで贖罪の業火に身をゆだねましょう」
やや恐怖感をにじませた口調で、アンリエッタはそう言った。
今の彼女の根底にあるのは、暗く重い復讐の炎だ。
その復讐のためならばどんな罪でも被ってやろうという意気込みでここまで来たが……たまにこうして、ふと炎の勢いが弱まり、我に返る瞬間がある。
その時、自分は決まってその罪深さに苦しみ、もがく。
この戦は、決してする必要のある戦などではない。
国のためでも、民のための戦でもない。
自分の中にある復讐の炎が行き場を求めた結果、つまりアンリエッタ個人の憎しみや怨みを晴らして、恋人だったウェールズの仇を討つためだけに起こした戦だった。
そのために国中を巻き込み、隣国のゲルマニアを巻き込み、そして親友と呼んだ幼なじみを巻き込もうとしたのである。
それをハッキリと自覚しながら、しかしアンリエッタは高らかに愛国を謳って死地へと向かう軍を見送り、自分のトリステイン軍がアルビオンを蹂躙することを期待するのだ。
(……勝っても負けても、わたくしの罪が消えることは無いわね……)
だが、事態はもうここまで動いてしまった。
今更後戻りなど出来はしない。
だからこのトリステイン女王である17歳の少女は、飛び立っていく艦隊に向かってこう叫ぶのである。
「ヴィヴラ・トリステイン(トリステイン万歳)!!」
何とも……少なくともアンリエッタにとっては、虚しい万歳であった。
しかしその叫びに呼応して、見送るアンリエッタに対し艦の甲板上で敬礼し続けていた将兵たちもまた次々に万歳の声を上げ始める。
「ヴィヴラ・トリステイン!! ヴィヴラ・アンリエッタ!!」
「ヴィヴラ・トリステイン!! ヴィヴラ・アンリエッタ!!」
やがてその叫びは全艦隊に波及し、六万の将兵による圧倒的な大渦となる。
「ヴィヴラ・トリステイン!! ヴィヴラ・アンリエッタ!!」
「ヴィヴラ・トリステイン!! ヴィヴラ・アンリエッタ!!」
まるで六万の兵から一斉に責め苛まれるような万歳の声。
彼らの声によって彼女の罪の意識は深まり、悔やむ気持ちもまた増大していく。
だが―――
「それでも、わたくしは……」
その六万の声をもってしても、アンリエッタの心にくすぶり続ける復讐の炎を消すことは出来なかった。
……その感情の炎は『後悔の念』という強風にさらされ、その勢いをごく一時的に弱めながらも、再び燃え上がる時を今か今かと待っている……。
さるったか? でも10:00を越えたが?
支援
同日、同時刻、魔法学院にて。
午前の軍事教練を終えたユーゼスは、研究室でアニエスと話をしていた。
「では、あの『ビートル』というマジックアイテムは、お前でなければ扱えないということか?」
話の内容は、魔法学院の敷地の外にある平原にドーンと置いてあるマジックアイテム(だと多くの人間は思っている)、ジェットビートルに関してである。
「……それなりの期間を浪費して専用の訓練を行えば、私以外の人間でも扱えるようになるとは思いますが……今のところ『トリステインで』アレを自在に扱えるのは私だけでしょうね」
自在に扱えるも何もユーゼスに付与されたガンダールヴのルーンの最大の機能はそこにあるのだが、このアニエス相手にそれを明かしてしまうと少々面倒な事態になりそうなので、そこを隠して話を進めるユーゼス。
そしてアニエスはユーゼスの言葉を聞いて『うーむ』と唸り、質問を続ける。
「その訓練とやらに必要な期間は?」
「戦闘に使えるまでに仕込むのであれば、基礎知識から仕込んで一年は頂きたいところです」
ハルケギニアの人間に機械知識や航空力学などを説明したとして、すんなりと納得してくれるのかどうかはまた別問題だが……と、ユーゼスはこれもまた肝心な部分を隠す。
「……長過ぎる。それでは戦が終わってしまうぞ」
「私に言われても困ります」
しれっと答える銀髪の男。
まあ本当のところを言えば、自分がマニュアルや学術関連の事項をまとめて、エレオノールあたりにでも頼んで『ハルケギニア人に分かりやすいように』内容を噛み砕かせた上で編纂すればその期間を大幅に短縮出来る自信があるのだが、そこまでする義理はない。
それに……。
「では、『ビートル』を新しく造り上げるというのはどうだ?」
「それは不可能です」
……どれだけの時間を費やそうが、ハルケギニア人ではどう足掻いてもジェットビートルを使いこなすことは限りなく不可能に近いのである。
幾つかあるその理由の中でも主なものは、やはり工業技術力の低さだろう。
装甲板として使われている特殊合金どころか、内部に使われているちょっとしたネジ一本のための金属ですらまともに精製が出来ないのだから、どうしようもあるまい。
スクウェアクラスの『錬金』を使えば可能性はあることはあるが、精神力や集中力という不確定な物に左右されるこの世界の魔法では、どうやっても不純物が混ざる。
その難しさについては、王立魔法アカデミーの主席研究員であるエレオノールの『あなたの故郷の冶金技術は一体どうなってるのよ?』と言うセリフからも推し量ることが出来るだろう。
また、製鉄だけでなく金属の加工技術にも問題があった。
何せハルケギニアで最も複雑な金属の加工品である鉄砲にしても『工業製品』ではなく『工芸品』扱い、つまり手作業で作っているのである。
要するに『全く同じ物を量産する』という概念そのものが存在しないのだ。
同じ人間が作った、同じ形の銃で、同じ弾丸を使ったとしても、一つ一つがほんの僅かずつ異なっている。
これでは『工業製品』とは言えない。
しかし、これに困ったのは他でもないユーゼスだった。
ビートルに備え付けられている機銃の弾丸の補給、という問題があったのである。
……弾丸の材質については目をつぶらざるを得なかった。
どの道、弾丸は撃てば無くなってしまう物なのだし、そもそもハルケギニアでは対怪獣用の銃弾に使われる特殊合金を調達することは不可能だからだ。
よって『弾丸の材質』については、多少不純物が混ざろうが鉛なり鉄なり真鍮なりで妥協することにした。
しかし『弾丸の形状』についてはそうはいかない。
ユーゼスとしては、銃身や銃口、および弾倉などの規格と微妙に合わない銃弾や薬莢を使い続けるなどという、下手をすると空を飛んでいる途中に墜落しかねない危険な行為は避けたいのである。
無論、ユーゼスとて対策を何もしなかったわけではない。
『弾丸と薬莢の鋳型を作って、それをトリスタニアの鍛冶場に持っていき、金を払って弾丸と薬莢を作ってもらう』ということを試してはみたのだ。
だが、それも結局は『手作業』の限界にぶつかり、失敗してしまった。
……そもそもタルブ戦でアルビオンの戦艦に搭載されていたような、ごく初歩的な機銃ですらかなりのオーバーテクノロジーと言えるのである。
だと言うのに、それから更に二世代か三世代ほど発展してしまっている戦闘機の機銃の弾丸を作成、しかも厳密な『規格品』として作り上げることなど『現時点の』ハルケギニア人には不可能だということを、ユーゼスはあらためて思い知ったのだった。
そして最大の問題点である電子機器。
これはもう材質とか加工技術とかいう次元の話ではなく、完全にどうにもならないと言っていい。
ハルケギニア人にとって電気を使った機械や精密機器など、オーバーテクノロジーを通り越してブラックボックス扱いである。
……バッテリーの充電すらもマトモに出来ず、『フルに充電されている状態に“錬金”する』という離れ業を使わざるを得なかったほどなのだ。
中に使われているコンピュータなど、概念を説明するだけでも一ヶ月くらいはかかりそうである。
おまけに機体の動力として使われているプラーナコンバーターに関しては、ユーゼスですらその仕組みを『何となく』程度にしか把握していない。
『ハルケギニアの魔法』と『ラ・ギアスの魔法』は、名前だけは同じようだが中身は完全に別物であるし、何よりラ・ギアスには『錬金学』というそれ専用の学問すら存在する。
それを修得するとなると、また長い時間が必要になるだろう。
……シュウ・シラカワもビートルの動力をジェットエンジンからプラーナコンバーターに換装した際、整備用としてコンバーターの図面を残してくれてはいたが、それに書かれているのはあくまで『内部の機構』である。
決して『人間のプラーナを動力に変換する』仕組みが書かれているわけではないのだ。
その仕組みをまたハルケギニア人に説明するとなると、もうシュウ自身かラ・ギアスで錬金学を修めている人間を引っ張ってくるしかあるまい。
と言うか、非常に興味深いテーマなのでむしろユーゼスの方が説明して欲しいくらいだった。
閑話休題。
とにかく、物理法則や質量保存の法則を『魔法』によって簡単に覆してしまうようなハルケギニアという世界にとって、学術的にも技術的にも概念的にも『工業』だとか『科学』と言ったモノは異質と言っていい。
…………あくまで仮にだが、今からその科学技術を発展させようとした場合。
まずその技術が受け入れられる下地として平民や貴族の意識改革から始めなければならないし、
そうなると魔法至上主義であるハルケギニアのメイジの立場とのすり合わせがあり、
下手をすると国どころかハルケギニアそのものを相手にしなければならず、
そして技術の発展には多大な資金と資源と時間と労力が必要で……。
(―――やはり不可能だ)
無理矢理に『科学兵器を使った軍事革命』でも起こせば話は別だろうが、そのための準備にもやはり様々な障害が存在するだろう。
……そして何より、ユーゼス個人としてハルケギニアの技術発展を見過ごせない理由もある。
今のハルケギニアが初歩的にでも科学・工業技術を手に入れたとして、その源となるエネルギーは何になるのか?
風石や土石などの精霊の力の結晶体―――動力源として考えられなくはないのだが、扱いが少々難しすぎる。それに産出量も少なかったはずだ。
メイジの魔法―――まず有り得ない。それだと結局は個人の力で魔法を行使した方が効率がいい。
エルフの先住魔法―――どのような物か詳細はよく知らないが、利用するためには六千年にも及ぶエルフとの確執を解消する必要が生じる。現実的ではない。
未知のエネルギー源―――そうそう都合よく発見されはしまい。
そうなると、残った手段は必然的に化石燃料くらいしかなくなってしまうのだ。
この世界には『錬金』という比較的手軽な物質変換システムが存在するため、通常の惑星の石油のように『掘り尽くして枯渇する』ということはまず有り得まい。
そして無自覚に石油やそこから派生したガソリンなどを乱用し……結果、この星の大気や自然環境は物凄い勢いで汚染され尽くしてしまうのである。
おそらく自分一人がいくら声高に大気汚染や自然破壊を叫んだとしても、ほとんどの人間は耳を貸そうとすらしないだろう。
かつてユーゼスが愚かと蔑んだ、地球人たちのように。
―――「私は……間違っていない。私はこの星のために……あれを使ったんだ……美しい自然を守るために……」―――
―――「壊れていく……この美しい自然が……早急に手を打たなければいけなかったんだ……」―――
(…………我ながら下らん感傷だな)
昔の記憶に浸りそうになってしまったので、強引に思考を切り上げる。
未練がましく過去に思いを馳せても意味はない。
ここは地球ではないし、重要なのは現在や未来のことだ。
まあ、若干反則気味ではあるがクロスゲート・パラダイム・システムを使えば弾丸の加工も故障箇所の修復も可能なので、ジェットビートルの整備については構うまい。
言い訳としては『コレには自分にしか理解の出来ない技術が使われている』というところだろうか。……あながち間違いでもない。
今のアニエスのように技術供与を要求されても首を縦に振らばければいいだけの話であるし、強硬手段に出られたら『何処までも』逃げればいい。
仮にビートルを強制的に接収されたとしてもハルケギニア人にアレは扱えないし、扱い方だけ分かったとしても整備方法が分からなければ、いずれどこかが壊れて終わる。
ともあれ、当面の問題としては目の前のアニエスをどうにかしてやり過ごすことだが……。
「不可能です、と一言だけで言われてもな。……つまりお前の故郷で使われている技術と、トリステインの技術とではそれだけの隔たりがあるということか?」
「短く言えばそうなりますね。何でしたら詳しく解説しても構いませんが」
「遠慮しておこう。理解の出来ないことを延々と説明されても困る」
やはり腑に落ちない点が多々あるようで、アニエスは腕を組みながら自分を軽く睨みつけている。
……とは言え『あなたたちでは私の使う武器は扱えません』と言われて引き下がるくらいなら、始めから追及などはしないだろうが。
(ここは攻め方を変えてみるか)
ユーゼスは頑なそうなアニエスをはぐらかすため、話の方向性を変えるべく口を開いた。
「ところで王宮から命じられた任務は他にないのですか?」
「!」
アニエスの顔色が変わる。
思った通り、顔に出やすい人間のようだ。
「……なぜ王宮からの命令だと考えた?」
「あなた個人がジェットビートルに対してあまり興味を抱いていないことは、見れば分かります。内部構造の詳細を根掘り葉掘り聞いてくるでもなく、ただ『使えるのか』『造ることが出来るのか』を尋ねるだけですからね。
失礼ですが、あなたは自分が諜報活動や交渉ごとには向いていないことをもう少し自覚するべきです」
「……………」
そう言うユーゼスとて、それほど話術に長けているわけではないのだが。
ともあれ話は続いていく。
「おそらくあなたが請け負った任務は最低でも三つ。
一つ目はあなたが言っていたように魔法学院の生徒への軍事教練。
二つ目は男手が極端に減った魔法学院の警護役。
そして三つ目は今話していたジェットビートルについての調査……あるいは接収でしょうか」
そこで少々もったいつけて言葉を切り、アニエスの表情の変化を確認する。
……顔をしかめていることからして、どうやらそれなりに図星を突いていたらしい。
「しかし、その三つだけでは『わざわざ女王陛下直属の近衛の隊が派遣されてくる理由』として弱いのです。おそらく今挙げた三つと同等、あるいはそれ以上に重要な任務があなたたち銃士隊には課せられていると私は考えているのですが……」
「……………」
支援
アニエスは一度目を閉じて何か考える素振りを見せると、やがて意を決したようにまた目を開いた。
「なかなか鋭いな、お前は……」
溜息を吐きつつ、銀髪の男を見る銃士隊隊長。
その視線は今までとは違い、目の前の男を値踏みするかのようなものになっている。
「確かに我々は、たった今お前が言ったこととほぼ同じ内容の命令を受け……そして最後に『もう一つの任務』を与えられて、この魔法学院に来た」
「ほう」
…………半分冗談のつもりで、少しカマをかけただけだったのだが。
言ってみるものだ。
(そう言えば、ギャバンもイングラムに少し詰め寄られただけで任務の内容を話していたな……)
戦闘面においては右に出る者がいないほど優秀だったが、言葉の駆け引きや交渉ごとになると途端にからっきしになる元同僚の宇宙刑事を思い出すユーゼス。
あの男も隠し事の出来ない人間だった。
もっともそういう人間だからこそ、ユーゼスと同じく地球圏という危険極まりない宙域に『自分から志願して』来たのだろうが。
……と、また思い出に浸りそうになっている場合ではない。
「しかし、陛下から直々に賜ったその任務の内容を軽々しく明かす訳にはいかない」
「そうでしょうね」
当然の反応である。
だが、それをアッサリ喋ってしまっていたかつての友人のお人好しぷりに、40年越しの頭痛を覚えてしまった。
―――いや、別にギャバンが駄目だったという訳ではない。
仲間との信頼関係を築くためには、秘密を抱えたままではいけないだろうし。
「しかし、その任務はお前ともあながち無関係というわけでもないからな。あるいはお前にも協力してもらうことがあるかも知れん」
「『私と無関係ではない』?」
どういう意味なのだろう、と考えかけて、ユーゼスは考えることをやめた。
他人の事情に深入りするとロクなことにはならない。
それに自分から話を振っておいて何ではあるが、別にユーゼスとしてもアニエスが受けた『秘密の任務』とやらに対してそれほど興味があるわけではないのだ。
「宮仕えも大変ですね」
「全くだ」
せいぜい私に影響を与えない程度に頑張ってくれ……と心の中でアニエスにささやかなエールを送りつつ、ユーゼスは更に話を誤魔化すべく適当な話でお茶を濁していく。
……そしてそんな二人の会話を、部屋の外のドアに貼り付いて盗み聞きしようとする女性が一人。
「うぅ〜〜〜……」
トリステインでも三本の指に入る名門貴族であるラ・ヴァリエール家の長女にして王立魔法研究所『アカデミー』の主席研究員、そして今は魔法学院の臨時教員のエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールである。
「何よ何よ、二人っきりで何を話してるのよ、まったく……!」
エレオノールは歯ぎしりしながら耳をドアにくっつけて中の会話を聞こうとするが、声は何とか聞こえても詳しい会話の内容までは分からなかった。
思わず貼り付いているドアをカリカリと爪で引っ掻きそうになるが、音がして気付かれると元も子もないのでどうにか自重する。
その姿は、どうひいき目に見ても『名門貴族の長女』や『研究機関の主席研究員』には見えなかった。
「なあ、貴族の姉ちゃんよぉ」
「何よ?」
傍らに置かれていたインテリジェンスソードのデルフリンガーが、からかうような口調でエレオノールに問いかける。
「最近の貴族の女の間じゃ、こうやって平民の男の様子をうかがうのが流行りなのかね?」
「流行りなわけないじゃない」
「だったら、どうしてそんなコソコソと間諜みたいに隠れて聞き耳を立てるんだね?」
「……だって見つかったら、カッコ悪いじゃないの」
眼鏡越しにデルフリンガーを睨みつけるエレオノール。
デルフリンガーはカチャ、と鍔を慣らして呆れたように言った。
「だったらハナっからユーゼスのことなんざ気にしなけりゃいいじゃねえか。平民のすることなんか、放っときゃいいじゃねえか」
「そういうわけにはいかないの。……アイツってば……あのバカ、最近は『軍事教練だから時間がない』とか、『気分転換のためにビートルを飛ばす』とか言って、明らかに私といる時間が減ってるんだから」
「いや、お前さんとは十分に一緒にいると思うがね」
「どこがよ!? ヴァリエールの屋敷にいた時は最低でも一日の内に二時間か三時間は顔を合わせてたのに、今じゃここ一週間の平均が四十二分しかないんだから!」
「はあ」
「だって言うのに、私とはあんまり話さないのに、あんな何処の馬の骨とも分からない平民あがりの女と話なんかして……」
「別に男と女の話をしてるってワケでもないだろうに」
「そんなことは分かってるわ」
しかし『ユーゼスが自分以外の女と二人っきりの空間で話をしている』という時点で、何だか嫌なのである。
デルフリンガーに言った通りアニエスとはそういう空気が微塵も感じられはしないのだが、それでも嫌なものは嫌なのだ。
と言うか、思えばユーゼスの周囲には女の影がチラつきすぎている。
主人であるルイズは五千歩ほど譲って仕方がないにしても、あんまり接点がないはずのカトレアだとか、今こうして話しているアニエスだとか。
それに今のこの状況。
魔法学院に男がわずかしかおらず、他は女ばっかり。
これではほとんどユーゼスのハーレム状態ではないか。
いや、あの朴念仁にそんな気はサラサラないことくらいは分かっているけれども。
「やきもち」
「っ、違うわ。絶対違うんだから」
デルフリンガーの呟きが耳に入った途端に顔を赤らめ、ぷいっと顔を背けてそれを否定するエレオノール。
しかし金髪眼鏡の女性は何かに気付いたように再びデルフリンガーに目をやると、神妙な顔で問いかけた。
「ねえ、あなたって長生きだけはしてるのよね」
「……いかにも俺は六千年もの間生き続けてきた伝説の剣だが、どうしたね?」
「じゃあ、そんな無駄に長生きしてきたあなたに仕方なく尋ねてあげるわ。由緒正しい貴族であるこの私が、あなたみたいなボロ剣に尋ねるのよ。感謝しなさいよね」
「何だね?」
そしてエレオノールはわざとらしく咳払いをすると、耳まで赤くしながら、貴族としての威厳を何とかキープしようとしている声でインテリジェンスソードに質問をぶつける。
「……ルイズと、カトレアと、ついでにあのアニエスって女を比べて、今挙げた各人が私より魅力で勝ってる点を述べなさい。簡潔に、要点を踏まえ、分かりやすく」
支援・・・・ 容量的にニ分割かな?
投下が終了したら、区切りポイントと投下した容量を教えてくださると
wiki登録がしやすいでし
「…………聞いてどうするんだね?」
「あなたには関係ないわ。いいから尋ねたことに答えなさい」
「やきもち」
「だから違うって言ってるでしょ!」
カタカタ震えるデルフリンガー。どうも笑っているようである。何でこんなのが初代ガンダールヴが使った剣なのかしら、などと考えながらも、エレオノールは答えを要求した。
「で、どうなのよ?」
「年齢」
「イル・アース・デル」
端的に提示された答えを聞いた瞬間、エレオノールは杖を取り出して『錬金』の呪文を唱えた。
するとたちまちデルフリンガーの周辺が輝き、インテリジェンスソードは切っ先から柄まで綺麗に石でコーティングされる。事情を知らない人間が見れば、元から『石の剣』だと思うに違いあるまい。
アカデミーで『美しい始祖の聖像を作るための研究』に従事している、エレオノールならではの技術であった。
「……………」
そしてエレオノールは『石の剣』を放ってその場から無言で立ち去ろうとするが、その『石の剣』がブルブルと小刻みに震えていることに気付く。
たっぷり五分ほどそれを眺めた後で、エレオノールは再び『石の剣』に『錬金』をかけた。
「ぶはっ! い、いきなり何しやがる!?」
「……女性に対していきなり年齢のことを引き合いに出すような、失礼な剣に言われなくはないわね」
石の束縛から解放されたデルフリンガーは即座に抗議を行うが、抗議された側は逆にそっちが悪いのよと抗議し返す。
「…………ユーゼスはよくこんな女と毎日話が出来るね」
「どういう意味よ?」
「さて、どうだか」
お互い相手に対して色々と言いたいことはあるようだったが、ここで何やかんや言い争っても何にもならないと判断して先程の話題を続けることにした。
「で、他には?」
「顔は……まあ、好み次第だあね。お前さんはそれなりに整ってる方だが、あの貴族の娘っ子も、銃士隊の隊長も、それからカトレアって姉ちゃんもそれぞれ違った魅力を持ってるわな」
「……一理あるわね」
「つっても、ユーゼスはどうも見た目がキレイだとかいうのには、それほどこだわらねえように思うが」
うーむ、アカデミーの主席研究員は考え込む。
と、そんなエレオノールの顔色を変えさせる一言が、デルフリンガーから発せられた。
「…………だが、お前さんは他の三人に比べて持ち合わせていない武器がある」
「な、何よ?」
やや焦った様子でそれが何なのかを尋ねるエレオノールだったが、返って来た言葉は……。
「むね」
「……………………イル・アース・デル」
デルフリンガーに三度目の『錬金』がかけられた。
今度は石ではなく鉛でデルフリンガーを、しかも先程よりも厚くコーティングしたエレオノールは、下に誰もいないことを確認してその鉛の剣を窓から放り投げた。
ドスンと音がして、鉛の剣が地面に突き刺さる。
エレオノールは溜息を吐きながら、ゆっくりと20分ほど費やして下に降りてデルフリンガーの着地点へと移動した。
「……………」
ガタガタと震えながら地面に刺さっていたデルフリンガーを『レビテーション』で引き抜き、更にそれを地面に無造作に放り投げる金髪眼鏡の女性。
彼女は実に冷ややかな瞳で四度目の『錬金』をインテリジェンスソードにかけ、鉛で固められたデルフリンガーを解放した。
「……う……ううう、くらいよう、くるしいよう、さみしいよう……。……はっ!?」
何やらブツブツと独り言を呟いていたデルフリンガーだったが、自分を覆っていた鉛のカタマリが消えたことを感知するとすぐに正気に戻った。
そして再び抗議を行おうとするが、
「どうして本当のことを言ったくらいで……!! ……いや、何でもありません」
「フン」
また杖が振り上げられたので、慌てて言葉を途中で方向転換させる。また何かで固められてはたまらない。
「はあ……。難儀な女だね、まったく」
「何か言った?」
「別に」
支援・・・
一方、デルフリンガーに『難儀な女』と形容されたエレオノールは自分の胸をぺたぺたと触りながら、その『持ち合わせていない武器』について考えていた。
ぺたぺた。
……そう、【ぐにゅっ】でも【ぷにっ】でもなく、【ぺたぺた】なのである。
擬音の感じ方など人によってはまちまちだが、おそらく十人中で七人か八人くらいは【ぺたぺた】と形容するだろう、そんな【ぺたぺた】っぷりだ。
そんな具合であるから、大きく運動してみても自分の胸は小揺るぎもしない。
って言うか、揺れるものがない。
上の妹のカトレアなど、歩いているだけで(実際に音が聞こえるわけではないが)【ゆさっ】という音が聞こえんばかりだと言うのに。
「ぐ、ぐむぅ……」
しかしそのような『感覚的擬音』を自分の胸から感じたことなど、27年ほど生きてきたエレオノールの人生の中で、ただの一度もありはしなかった。
―――別にエレオノールとて、触った時に【むにゅん】とか【ぽよんっ】とか、動いた時に【たゆんっ】とか【ぶるんっ】とか、そこまでのものを求めているわけではない。いや、出来れば欲しいけど。
でも、それにしたって【ふにっ】や【ふるっ】くらいはあってもいいじゃない。
たかが擬音、と言うなかれ。
女にとっては(一部の男にとっても)、かなり重要な音なのだから。
そして見た目。
これはもう『板』と言うか、『壁』と言うか、そんな感じである。
……下の妹のルイズにだって本当にささやかながらも、辛うじて、わずかに、注意しなければ分からないが『盛り上がり』はあると言うのに、自分のはもう完全に『平面』だ。
完全なるゼロと0.1とでは、そりゃもう『無し』と『有り』ほどの差があるのである。
自分と同等の相手を探すとなると……強いて言うならあのタバサという青髪の少女くらいだったが、そんな低い次元で比較したくない。
いや、タバサの場合は見た目が小さいから許されるかもしれない。
しかし自分はどうだろう。
「……………」
何だか思考がどんどんネガティブな方向に向かって行きつつあるので、気持ちを切り替えることにする。
そうよ、胸が何よ。
あ、あんな無駄な脂肪のカタマリなんかで、女の価値は測れや……しないわ。
欲しいと、思ったことなんて……う、うう、羨ましい、と思った、こと、なん、て……。
「……う。うぅううぅうぅぅぅぅ、ぅうう……」
自己暗示に失敗し、ガクリと膝から崩れ落ちるエレオノール。
だが自分自身を説得する材料は、まだ残されている。
「そ、それにユーゼスだって、胸にはこだわらないって言うか、興味はなさそうだし……」
「まあ確かにユーゼスは、そういうの興味なさそうだわな。大抵の人間の男は、胸の大きい女が好きだっつうのに」
「そう! そうよ!! ま、まあ、私はあの男のことなんて別にどうとも思ってないけど? やっぱり、私みたくスリムで細身でスレンダーで機能的な女の良さは、分かる人には分かるって言うか?」
いや、ユーゼスは『胸にこだわりがない』ってだけで、別に『ない方がいい』ってんじゃないぞ。
機能的って、全くない胸にどんな機能があるっつうんだよ。
セリフの内容と、表情や仕草が一致してねえぞ。
『どうとも思ってない』んなら、そんなにウキウキするんじゃねえよ。
何だ、その小躍りしそうな嬉しがりっぷりは。
……などなど、言いたいことが山ほど出てくるデルフリンガーであったが、言ったら今度は固められた上に『固定化』までかけられそうなので黙っておくことにした。
「ま、それはそれとして」
上機嫌のままで、また話題を元に戻すエレオノール。
「他に何かないの?」
「え、まだ続いてたの、この話?」
「当たり前でしょう」
もういいんじゃねえのかなあ、というインテリジェンスソードの呟きを華麗に無視して、ヴァリエール家の長女は続きを急かした。
デルフリンガーは仕方なさそうに『エレオノールが他の三人に確実に劣る部分』を考える仕草を見せて……。
「あー……でもアレは他の三人って言うよりは、カトレアって姉ちゃんだけが飛びぬけてる部分だからなあ」
「ん?」
気になることを口走る。
「何よ、それは?」
「いや、何つうか……アレだな、ちょいとあやふやな言い方になっちまうが、『包容力』ってヤツだな」
「ほうようりょく?」
また抽象的な物言いである。
だが……。
「それなら私にだってあるじゃないの」
「…………本気で言ってるのかね?」
「え?」
首を傾げるエレオノール。
「だって私はラ・ヴァリエール家の長女よ。下に妹が二人もいるんだから、自分で言うのもなんだけど面倒見はいい方だと思うし、貴族としてある程度の度量はあるわ」
「いや、そういうのじゃなくてだね」
そんな彼女に向かって、デルフリンガーは『包容力』の何たるかを説き始めた。
「いいか? 包容力ってのはな、単なる面倒見とか度量とか優しさじゃなくて……いや、そもそもその優しさ自体がお前さんには今ひとつ欠けてる気がするが……ああクソ、難しいな。
とにかく、こう、何だ、『男が甘えられる女』とか、『男が最終的に帰ってくる場所』とか、『一緒にいて心の底から安心出来る』とか、そういうのなんだよ」
「むう……」
言われてみれば、確かに自分にはそういうものが欠けている……ような気が、しないでもない。
とは言え。
「どうやったら身に付くのよ、それ?」
「身に付けようと思って、すぐに身に付くくらいなら苦労しねえわな。それに少なくとも年単位は時間が必要だね」
「……………」
デルフリンガーを睨みつけるエレオノール。
しかしそんなデルフリンガーは飄々とした様子で話を続けた。
「だがまあ、お前さんにも他の連中にはない武器はある」
「え、そう?」
パッとエレオノールの表情が明るくなる。
「やっぱり、隠そうとしても隠し切れない全身から漂う高貴さとか、他の追随を許さない知的な空気とか、レディとしての余裕とか、そういうのかしら?」
「いや、違う」
そしてデルフリンガーは、自分が思いつく限りでエレオノールの最大の長所を告げた。
「お前さんは……今は『女教師』で、しかも眼鏡をかけてるじゃあないか」
「は?」
何を言われているのかよく分からないエレオノールであった。
支援
「……本日、トリステイン・ゲルマニア連合軍の六十隻の戦列艦が、ラ・ロシェールより我が国に向けて出発しました」
「うむ」
「…………これは我が軍の保有する戦列艦の数に匹敵する数、しかも向こうは艦齢の新しい物ばかりです。加えて、こちらは革命時およびタルブでの敗戦で優秀な将官・仕官の大多数を失った結果、著しい錬度の低下をきたしています」
「そうだな」
神聖アルビオン共和国初代皇帝にして、現在開かれている議会の議長であるオリヴァー・クロムウェルは、ホーキンス将軍の報告を受けて頷いた。
かつて司教だった男のそんな暢気な様子に、白髪白髭の歴戦の将軍は不機嫌さを隠そうともせずに話を続ける。
「しかも、以前より散発的に出現していた例の怪物……そこにいるミスタ・デブデダビデは『アインスト』とか呼んでいましたかな。その出現頻度が加速度的に増加しており、兵たちはその対応に追われて戦の準備もおぼつきません」
「確か、彼からアインストについての対処法は聞いていたはずではなかったかね?」
「……その対処法を実践した上で、です」
ジロリとクロムウェルの後ろに付き人として控える小太りな男を睨みつけるホーキンス。
ホーキンスは―――と言うよりこの場にいるクロムウェル以外の全員は、大なり小なりこの正体不明の男を怪しみ、訝しんでいた。
それはデブデダビデを付き人としている本人も察している筈なのだが、そのアルビオン皇帝は気にした風もなく話を続けようとする。
「暗い材料ばかりだな」
「……………」
ホーキンスは無言のままでテーブルを強く叩くと、やや語気を荒げて皇帝に問いかけた。
「で、質問です。これらの問題に対する、閣下の『有効な対応策』をお聞かせ願いたい。
……艦隊を迎え撃つのは簡単ですが、もし決戦で敗北すれば我らは裸です。敵軍を上陸させたら―――アインスト共と合わせて、もはや泥沼などという言葉ですら生ぬるい状態になります。革命戦争やタルブ戦で疲弊した我が軍は、まず持ちこたえられないでしょう」
そんなことを言う歴戦の将軍に、血気盛んな若い将軍が非難の言葉を浴びせる。
「それは敗北主義者の思想だ!!」
「……私は現実的な話をしている」
今にも言い争いになりそうな険悪な空気が漂い始めるが、クロムウェルは彼らを片手を上げて制するとニッコリと笑い、ホーキンスを諭すようにして話を始めた。
「まあ待ちたまえ、ホーキンス君。……そもそもの前提として、彼らがこのアルビオンを攻めるためには全軍を動員する必要がある」
「さようです。と言いますか、もはや全軍を動員しております。何せ、彼らには国に兵を残す必要がありませぬゆえ」
「何故かな?」
「……彼らには、我が国以外の敵がおりませぬ」
「トリステインもゲルマニアも、背中をおろそかにするつもりかな?」
「ガリアは中立声明を発表しました。それを踏まえての全軍侵攻なのでありましょう」
「ふむ」
後ろを振り返り、クロムウェルはデブデダビデと目を合わせ、互いに小さくではあるが首を縦に振った。
「その中立が、偽りだとしたら?」
「…………まことですか?」
疑わしいような喜ばしいような、複雑な顔でホーキンスが問いを重ねた。
「つまりガリアが我が方に立って参戦する、と?」
「そこまでは申しておらぬ。なに、ことは高度な外交機密であるのだ」
「……………」
途端にザワつき始める議会場。
確かにその話が本当ならば、戦況をひっくり返す心強い援軍となるだろう。
何せガリアはハルケギニア最大の国家である。直接にトリステインやゲルマニアを攻めずとも、その戦力をチラつかせるだけで連合軍は撤退を余儀なくされるに違いあるまい。
そう、例えアルビオン艦隊を打ち破り、大陸に上陸した後だとしても。
「……それがまことだとすれば、この上もなく明るい知らせですな」
「案ずることなく諸君は軍務に励みたまえ。攻めようが、守ろうが、我らの勝利は動かない」
代理行きます(最後のレス)
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クロムウェルはそこで一旦言葉を区切ると、ゴホンと咳払いをして次の議題へと移行させる。
「さて諸君。今の話を踏まえた上で、余から諸君に要請しなければならないことがある」
ザワついていた議会場が静まり、一同の注目が再びクロムウェルへと集まった。
アルビオン皇帝はその光景に満足げに頷くと、声を上げて議会場の外に控えていた男を呼んだ。
「メンヌヴィル君」
クロムウェルの口から出た言葉を聞いて、その場にいた将軍の内、何人かの顔色が変わる。
そして議会場のドアがやや無遠慮に開け放たれ、白髪の男が入ってきた。
……顔の皺からするに年齢は40ほどかと思われたが、その顔には額の中央部あたりから左頬にかけて眼を巻き込んでの大火傷の痕が生々しく残されており、一見しても年齢がよく分からなくなっている。
だが、所々に傷が見える筋骨隆々のその身体は、彼の歳を10は若く見せていた。
更に平民の剣士と見間違えるような粗雑な格好をしていたが、よく見れば腰に杖を下げている。どうやらメイジ崩れの傭兵かと思われたが……。
「諸君の中にも、彼の名前を聞いたことがある者はいると思うが……。彼が『白炎』メンヌヴィルだ」
途端に緊張感が走る。
その二つ名を耳にしたことのある人間は、この議会場でも少なくはない。
伝説のメイジ傭兵。
白髪の炎使い。
卑怯な決闘を行い、結果として貴族の名を取り上げられ、傭兵に身をやつした。
家族全員を焼き殺して家を捨てた。
彼が焼き殺した人間の数は、彼がこれまで焼いて食べた鳥の数より多い。
……そのような噂ばかりが先行しがちなメンヌヴィルであったが、断言出来ることが一つだけ存在した。
戦場では徹底的に冷酷に炎を操り、その対象に認定されれば老若男女を問わず誰も彼も『平等に』燃やし尽くす、ということである。
―――当然、そんな男と同席している将軍たちはたまったものではない。
中には額に脂汗を浮かべている者までいたが、クロムウェルは気にした風もなく話を進める。
「で、諸君。君たちが抱えている人材の中で、誰か腕利きの『風』のメイジはいないかね?」
「『風』、ですか?」
一人の将軍が、疑問の声を上げた。
「そうだ。ワルド子爵が生きていれば彼にでも頼んだのだが、死んでしまっては何を頼むことも出来ぬからな。そうなれば部下が持っている人間を使うしかあるまい」
「何のためにです?」
「……余は万全を尽くしたいのだ。小部隊とは言え、隠密裏に船で運ぶためには『風』のエキスパートが必要だ」
「……………」
今ひとつ話を掴みかねている将軍たちに向かって、クロムウェルは説明を続ける。
「『不意に現れた第三の勢力』が現れた場合、彼らが全てを占拠したとあっては何も発言が出来なくなってしまう。よって、余はせめて『そこ』を押さえておきたいのだ。仕事をしたのだ、という既成事実を多少なりとも作っておかねばならない」
やや曖昧な言い方をするが、要はガリアに対して対等な立場を維持したいのだろう……と考えたホーキンスは、皇帝により詳しい説明を求めた。
「『そこ』とは、どこなのでしょうか?」
「…………まず、防備が薄く占拠しやすい場所であること。つまり、首都トリスタニアから近すぎてはいかん。次に、政治的なカードとして重要な場所であること。ということは、逆に遠すぎてもいかん」
「『政治的なカード』、ですか?」
「貴族の子弟を人質に取ることは、『政治的なカード』としての効果を高めてくれるだろう」
ホーキンスのみならず、将軍たち全員の目が見開かれる。
そしてクロムウェルは、大げさな動作を交えながらその標的の名を口にする。
「魔法学院だ、諸君。……諸君の中の誰でもいい、手持ちの優秀な『風』メイジを使い、このメンヌヴィル君を隊長とする一隊を夜陰に乗じてそこに送り込みたまえ」
『人質を取る』という発想自体がなかった将軍たちの中で、自分から立候補してその作戦に参加しようとする者は誰もいなかった。
687 :ラスボスだった使い魔 ◆nFvNZMla0g:2009/07/25(土) 10:21:11 ID:bs.7t0BE
以上です。
……べらぼうに長いくせに7割くらいがただ原作をなぞっただけ、という事実に自己嫌悪しつつ。
スパロボに参戦している作品では戦争をしている作品が大多数ですが、特撮中心のスパヒロでは『ちゃんと戦争をしている作品』はガンダムWの方々だけだったりします。
……って言うか、スパヒロにW勢がいなかったら私のこの話もどうなっていたのか分かりませんww
何せ、そうなるとユーゼスは『本格的な人間同士の戦争』を知らないことになっちゃいますし。
でもWの登場人物って、どいつもこいつも頑固者ばっかりですから扱いに苦労するんですよねぇ。
しかし原作正ヒロインのはずのルイズが、悩んでるだけで全然ヒロインしていない……。
まあそもそも第一ヒロインがエレオノールって時点で、既に私の話は本筋から逸脱してると言えますがww
…………さぁて、メンヌヴィルを出して魔法学院に向かわせたのはいいけど、コルベールどうしよっかなぁ。
次回は8月中には投下したいと思っております。
それでは皆様、支援ありがとうございました。
----
代理終了
ラスボスさん&代理の人乙でした。
このユの字見てると昔話の『貧乏神と福の神』の貧乏神を思い出すんだよなぁ。
淫cや久保が来てもエレオノール達が庇いそうだ。
何でSS書く人には「士官」と「仕官」を間違えるのがこうも多いんだろう
歴史でもミリタリーでも少しかじったら絶対できない間違いだと思うんだが
ラスボスの人GJ!代理の方も乙
エレオノールがヒロインなのは本筋じゃなかったのかw
相変わらずこの作品の姉さまかわいいな
ただの誤変換だろう
文字として形状が近いとチェック抜けしやすい
それだけ
>>550 すみません。やっぱりにわか仕込みの知識だと、こういうケアレスミスには気付きませんね……。
wikiを修正しておきました。
何、気にする事は無い
召喚召還よりはマシ
魔方陣魔法陣よりはマシ
脳内補完できる誤字ならゆるす
意味が確定できない誤字は絶対にゆるさない
はいはいゲーメストゲーメスト
>556
魔法陣と魔方陣はまあ、「にほん」と「にっぽん」みたいなモノだと思うけどね。
>555
そこは間違えちゃいけない。サイトがハルケギニアの人間になる。
>>550 そんな単なる誤字より「軍属」を軍人という意味で使う間違いの方が深刻だ。
>>561 いいやすまん、誤植といったらゲーメストってことで.
>>561 自分のネタに誇りでも持ってるのか?つまらないのに。
>>561 まあ格ゲーマーでも知ってる人が少ないネタじゃね?
だって18年前だぜ
このスレの人たちってどれくらいの年齢層なんだろう
自分は後十年もすれば還暦なんですが
まぁ
○ハンドルを右に ○ザンギエフのラリアット
×インド人を右に ×ザンギュラのウリアット
みたいな、ぱっと見て元の文が想像できないような誤字でなきゃ脳内補完でいいでしょ。
書く方も読む方も暇つぶしの妄想遊びなんだから。
>>566 ……いや、流石にそりゃ嘘でしょう?
ご家族のご機嫌いかが?
なんだな、召喚って書くときは朝松先生に敬意を払おうという話……
え、違う?
>眼鏡で教師
デルフリンガーは良く分かってるな。
しかしユーゼスに効果があるかどうかは疑問だがwww
>>568 末の子も結婚しましたし、後は定年まで働くだけなので気が楽になりました
私がこの様な場所にいることについてですが、うちは姉女房なので露見すると小うるさくからかわれそうです
ただ妻はパソコンに疎いので下手をしない限り大丈夫でしょう
>眼鏡で教師
ユーゼスにも備わっている属性だったりしてな
…原作で教鞭をとったことは無かったはずだよな、スパヒロユーゼスは…
ラスボスの人乙
ヒロインがエリオノールだからこそ面白い。
>>571 あー。
正直“シンジラレナーイ!”って言いたくなるような年代ですな。私ゃ
多分、大半の人は「四捨五入で二十歳」なんじゃないかと
>>574 ネタだってwww
50男がルイズとかきめーわ。
四捨五入して三十歳の私は少数派だったのか……orz
四捨五入しても40代…
それはともかくラスボスの人乙&GJ!
エレオノール可愛いよエレオノール
>>575 だから信じられないと言ってるじゃないかw
万が一億が一本当だった場合を配慮して冗談めかしてみたのよ。
こんなこと書いたら意味ねっけど
579 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 13:42:50 ID:Kp88RGam
>>556 魔法陣はファンタジー用語、魔方陣は数学用語だ。全然意味が違うぞw
580 :
579:2009/07/25(土) 13:43:52 ID:Kp88RGam
おっと安価間違い。
>>560だった。
ついでにsage忘れorz
ラスボスの人乙!!
エレオノールが最近はルイズに見えてきたw
姉妹だけあって、恋愛方面の思考は似通うものなんだなぁww
こんにちは
予約が無ければ、5分後ぐらいから23話投下しようと思いますッス
お待ちしてま〜す
「ルイズ。あの場所で何があったのか、そして、その石がダネットだっていうのはどういうこと? 説明してちょうだい」
姫殿下への報告が終わった後、疲れた身体を休める間もなく、キュルケとタバサがわたしの部屋へと集まっていた。
魔法学院のわたしの部屋の中で、厳しい顔でわたしを見る二人。ギーシュは夜という事もあり、翌日、詳しい説明をするということで納得してもらった。
わたしは、じっと手に持ったダネットを見つめた後、口を開いた。
気がついたら礼拝堂の中で式を挙げていたこと、ワルドが裏切って皇太子さまを殺したこと、『声』のこと。
そして、わたしの危機を救う為、『支配』され『召喚』されたダネットのことと、負っていた傷のせいでワルドに敗れたことを話した後、一呼吸置いてわたしの中から生まれた彼女のことを口にした。
「フィーヌ……あの巨人の名前よ」
巨人の名をキュルケ達に告げると、二人は反芻するかのようにフィーヌの名を口にする。
デルフだけは無言でカタカタと音を鳴らした後、怒りとも悲しみとも取れそうな声色で、誰に言うでもなく呟いた。
「出来れば見間違いであってくれたらって思ってたんだがな」
「待って。話はまだ終わりじゃない」
タバサがデルフの言葉を遮った後、わたしを見つめる。
無言の催促に頷きだけを返し、わたしは話を続けた。
なぜ、ダネットが緋涙晶となったのかを。あの時、何があったのかを。
「死なせて……死なせてたまるもんですか!!」
まだ間に合う。あれを使えばまだ間に合う。
手が動き、口が唱え、力が巡る。光がダネットを包み、身体を変質させていく。
彼女は未練を残している。わたしを守りきれなかったと悔いている。
ならば、この術は成功するはずだ。いや、成功させる。
最後の呪文を唱え切った瞬間、今にも泣き出しそうな彼女の声が聞こえた気がした。
驚くほどあっさりと術は終了し、光が収まり、今しがたまでダネットの居た場所に、一握りほどの赤い結晶が浮いていた。
「でき……た……?」
わたしの声に呼応するように、赤い結晶はおぼろげに光ると、力を失ったかのように地面へと落ちる。
カツンと無機質な音が鳴り響く。
ゆるゆるとした動きで結晶を拾い上げ、力の無い声で問いかける。
「ね……ねえダネット……?」
わたしの声と、遠くに聞こえる喧騒以外、礼拝堂の中に音は無く、わたしの問いかけに答える声は聞こえない。
「違うの……こんな……こんなつもりじゃなかったの……」
弁解の言葉に返ってくる言葉は無く。
「ごめんなさい……許して……許して……」
謝罪の言葉に対する怒りの声も無く。
わたし一人取り残された礼拝堂だけが、静かにわたしの声を聞いていた。
どれぐらい謝り続けただろうか。いつの間にか、口から出る言葉も無くなり、遠くに聞こえていた喧騒が少しだけ大きくなっていた。
ああ、わたしはここで死ぬんだ。きっとこれは罰なんだ。
そんなことをぼんやりと考えていると、突然頬に衝撃が走った。
「しっかりしなさいルイズ! ダネットはどこ!? あの子は無事なの!?」
キュルケの声が聞こえる。我に返り周りを見ると、キュルケの他にもタバサやギーシュの姿があった。
自然と涙がこぼれた。理由は、助かったことに対する安心感ではなく。
「わたしは……メイジ失格よ……」
化け物になろうとしているわたし自身への嫌悪感と、使い魔の自由も肉体も声も奪いさったことへの罪悪感だった。
話を終えると、キュルケは溜め息を一つだけ吐き、手を振り上げた。
わたしはその手を避けず、されるままに頬で受け止めるつもりだったのだが、結局その手は下がり、もう一度大きな溜め息だけが聞こえた。
「……タチの悪い冗談じゃないのよね?」
「全部、本当の話よキュルケ。始祖ブリミルに誓ってもいいわ」
キュルケの言葉を始祖の名で返すと、眉間にしわを寄せ、目頭に指を当てた後に言葉を続けた。
「ルイズ、あんたさっき自分の事を『化け物になろうとしてる』って言ったけど、どういう意味?」
声の裏に、怒気が混じっているのがわかる。
「言ったままの意味よ。わたしの中にいるモノ達は化け物。このままじゃいずれわたしは飲まれるわ。前にダネットが言ったでしょ? 世界を破壊した――」
「待って! モノ『達』……? どういうことよ? あのフィーヌって奴以外にもいるってことは……まさかあんたの中にいるのって……」
キュルケの言葉の後、部屋が静まり返る。耳を凝らすと、カタカタとデルフが音を立てているのがわかった。
「そう。わたしの中にいるのよ。デルフの中に封印されていた、ダネットの世界を破壊した三体の巨人が」
無言でカタカタと音をたてていたデルフが鍔を鳴らすのをやめ、ぼそりと、まるで別の誰かのような声で呟いた。
「フィーヌ、ヌトラ、ラスキュラン……」
わたしはデルフの声に頷くと、ゆっくりと部屋の皆を見渡した後、自分の胸に手を当てて話を続けた。
「あの時……ダネットがワルドに刺された後、ようやくわかったの。デルフの中に封印されていたモノ達のこと」
意識が薄れていく中、一人の女性の声が聞こえた。
女性の声はかすれていて聞き取ることは出来なかったが、ただひたすらに泣いていた。
続けて、男の声が聞こえた。ただひたすらに意地汚く、ずる賢く、人の全てをあざ笑っていた。
最後に、また別の男の声が聞こえた。ただひたすらに世界を破壊することに悦楽を感じていた。
わたしは悲しかった。だから、女性の声に耳を貸した。
そして、フィーヌが姿を現した。
「デルフの中に封印されていたのは、一人じゃなかったっていうの?」
「そうみたいね」
キュルケの言葉を静かに肯定する。
「6000年前、ダネットの世界とこの世界を破壊した三体の巨人。そして、それらを使役していた『声』これがデルフの中に封印されていたモノ達なんだと思う。6000年前の誰かは、とんでもないものを封じ込めたみたいね全く」
「すまねえ……」
人事のようにわたしが呟くと、デルフが静かに呟いた。
「あんたのせいじゃないわよデルフ。それにね、今は落ち着いてるの。どうしてかはわからないけど、凄く安定してるの」
その言葉を聞いた途端、キュルケがハッと顔を上げ聞いてきた。
「『声』ってのは今も聞こえるの?」
「いえ、聞こえないわ。今は寝てるみたい。わたしが力を使いすぎたからなのか、他の原因があるのかはわからないけどね」
それを聞いてほっとしたのか、少しだけキュルケの表情が柔らかくなった。
しかし、タバサだけは表情を硬くしたまま声を発した。
「でも、いつか起きる」
部屋の全員が声を失う中、わたしはタバサをじっと見つめながら言葉を返す。
「そうね。だけど、わたしだってこのままむざむざ身体を乗っ取られるつもりはないわ。生き延びたからには必ずこいつらをまた封印してみせる。ダネットのためにもね」
ようやく納得したのか、タバサは頷くと、立ち上がって部屋を後にしようとした。
慌ててキュルケが止めようとする。
「待ってよタバサ、まだ話は――」
「これ以上はどうしようもない」
冷たい言い方だけれど、タバサの表情に硬いものを感じた。
おそらく悔しいのだろう。自分がどうやっても事態を打開できないのが。
そんな風に、以前は出来なかった考え方をする自分に少しだけ驚いて、手に持ったダネットを見つめる。
多分、彼女はきっとこんな世界を見ていたんだろう。
「タバサの言う通りよキュルケ。あなたも寝た方がいいわ」
わたしの言葉が意外だったのか、キュルケが妙な顔でわたしを見る。
むぅ、こんな顔で見られるほど意外だったとは、少し腹が立つ。
「大丈夫よ。わたしはわたし。何も変わってないわ」
上っ面の嘘八百。安心させる為の口上を吐く。
納得しきれない顔ではあったが、しぶしぶキュルケはタバサと共に部屋を出て行った。
「ふぅ……わたしも少し疲れたわ。デルフ、あんたの知ってる話は明日でもいい?」
「いや、俺の知ってるこたぁ6000年前に巨人が暴れまわってたってことぐれぇだ。娘っ子の方がよく知ってるかもしんね」
「そう。じゃあ灯り消すわね。おやすみ」
暗い部屋の中で、ダネットが月の光を反射してぼんやりと輝く。
静かな部屋の中、わたしは震える手でぎゅっとダネットを握り締める。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
大丈夫? わたしはわたし? 何も変わってない?
嘘ばかりじゃないか。
きっと今もあいつらはわたしの中でわたしを蝕んでいる。
ガチガチと歯が音をたてようとするのを、必死になって止めようとしたけれど耐えられない。
駄目だ。怖がっちゃ駄目だ。頑張るって決めたんだ。
もう嫌だ。わたしの周りの誰かが死んでいくのを見るのは嫌だ。
強く強く、ダネットを握り締めた。
ふと横を見ると、ついこの間までダネットが使っていたベッドが目に入った。
途端に、元気な彼女の姿が脳裏をよぎる。
「……デルフ、起きてる?」
「……いや、寝てる」
わたしの震える声で理解したのか、デルフは柄にも無く優しい。
だったら、その親切を素直に受け取っておこう。
きっと、彼女ならそうすると思うから。
「ふっぐ……ふぇ……うあ……」
暗い部屋の中、わたしの嗚咽が響く。
一度出てしまうと、とめどなく溢れる。
「ひぐっ……怖い……怖いよダネット……わたし怖いの……」
平和だった日常が壊れ、いつも笑いかけてくれた彼女が消え、事態は一つも好転しない。
現実が重く重く圧し掛かって潰れそうになる。
目が覚めたら、全て嘘だったと言ってくれないだろうか?
そんな絶望的な希望を胸に、嫌な夜はふけていった。
「よし! じゃあ行くわよデルフ」
「へ? どこに?」
残念ながら希望はあっけなく砕かれ、何も変わらない朝が来た。
わたしは早々に顔を洗い、仕度を済ませる。
泣いてたままじゃ何も変えられない。泣くのは昨日で終わりだ。何より――
「あんたきっと怒るしね」
手に持ったダネットに話しかけ、懐に入れる。
「いやだからよ、どこに行くってのよ?」
困惑した声でデルフが語りかけてくる。
そんなデルフを持ち、今後の予定を言って聞かせた。
「まず学院長に事情を話すわ。わたし一人じゃどうしようもないもの」
「は? 待て待て待て待て娘っ子。もし協力してくんなかったらどうすんだ?」
デルフの疑問に、明るい声で返す。
「そんなもん決まってるでしょ? 首根っこへし折ってでも協力してもらうのよ」
>>575 あながちネタとも言い切れんぞ?
40年代の特撮だのアニメだのドラマだのに対する反応がやたら高かったりするし。
ちなみに2Chの住人比率は意外にも50代が一番多いそうだ。
以上で23話終了です
ディスポ2でギグは配信されたのに、ダネットは配信されないという現実にちょっと泣きそうッス
もし配信されたら、俺ダネットのLv186000上げるんだ・・・・・・
お待ちしてくれた方、ありがとうございます。
それでは
こんにちは
予約がなければ15:10から小ネタを投下させて下さい
よろしくお願いします
592 :
1/4:2009/07/25(土) 15:11:49 ID:5u3IT3t4
すいません、全部で4レスほどいただきます。
浮気者のギーシュが、ケティとモンモランシーからワインとビンタを御馳走されるまで、ルイズはただそこに呆れた視線を向けていた。
冷めた目が次に捉えたのが、ギーシュから叱責される自分の使い魔だと知り、慌てて席を立った。
叱責の理由を聞けば、自分の使い魔がギーシュの落とした香水瓶を拾ったから、そのせいで浮気がバレたなどとくだらない理由で。
取りなす目的も忘れて、ギーシュに呆れて見せた。それに噛みついてくるギーシュに、自分のコンプレックスを笑われる。
激昂し、噛みつき返してしまいそうになった時…ルイズは隣に立つ、自分の使い魔である少女に制止された。
「あの…」
「なんだい、使い魔君。謝るのなら早くしてくれないか」
そこでルイズはハッとした。理不尽な理由だが平民である以上、この子は貴族には逆らえないんだ。
キュッと唇を噛んで、ルイズは一歩下がった。悔しいけれど、ここで大人にならなくちゃダメだ。
ギーシュに向き直った使い魔の背中を見て、ルイズはそう思っていた。だが。
「ギーシュさん、浮気してたんですか?」
一瞬場の空気が止まった。
「…なんだ、話をそらすつもりかい?」
額に青筋を立てて、あああれは怒っているなーと、一目で分かるギーシュを前に、ルイズの使い魔はキョトンとした様子で答えた。今の今まで目
の前で修羅場を見ていたのに、鈍すぎやしないか。
「ビンタした子とワインをかけた子、ギーシュさんは二人の方と付き合っていたんですよね?浮気はいけませんよ。ていうか、厚顔無恥?」
付け足された最後の言葉にルイズの口端が引き攣る。彼女の言葉はここに相応しくないけれど、その様子は話をそらそうとしているようにはとて
も思えなかった。
むしろちょっとオドオドして、確信の持てないことを恐る恐る確認するような、そんな気配がある。だけど!ええええ!?
「き、きききき君は…!!」
593 :
2/4:2009/07/25(土) 15:12:51 ID:5u3IT3t4
「ちょちょちょちょちょっとあんた!!」
ギーシュの青筋が切れる音がして、事の成行きに狼狽したルイズが慌てて彼女の腕を掴む。
「大丈夫ですよ」
だが彼女はそのどちらにも応じず、笑顔を作り鷹揚に構え、言ってのけた。
「きっと一生懸命謝れば、許してもらえます。ていうか、誠心誠意?」
その言葉と、太陽のように燦然と輝く笑顔がギーシュを襲った。
自分の起こした行動がとても幼稚なものだと分かっていた。
分かっていても、他人に自分の罪をなすり付けて、謝らせて、それで憂さ晴らしがしたいと思っていた。
自分は決して、間違っていない。間違いは愚かな平民のせいにしたかった。
でも、ルイズの使い魔の、善良で温かで清らかな笑顔と言葉が、その思いに暗雲を呼んでくる。
「そんな目で僕を見るなぁぁ!ぼ、僕は…僕はっ!なんてちっぽけで!惨めな人間なんだああああああ!!」
彼女から放たれる清浄な光に当てられて、ギーシュは自分自身の深い闇に囚われる。
負の感情を自覚させられ、絶叫とともに膝から崩れ落ちたギーシュは、両手で髪を掻き毟った。
ギーシュを怒らせる決定的な言葉を予想していたルイズは、掴んだ腕もそのままに呆然としていた。よく見ればまわりの複数の生徒も自分の胸
を押さえて悶えている。
喧嘩ばかりのマリコルヌまで、ルイズに向かって「こんなに汚い自分でごめんなさい」と謝ってくる。思わず自分の使い魔の顔を見上げる。彼女は
、ギーシュの様子に戸惑っているように見えた。
「えっと…無自覚なの?」
「?なにがですか?…それよりギーシュさんが…ていうか、千辛万苦?」
「……」
自分の使い魔をちょっぴり怖い、と思ったルイズだった。
594 :
3/4:2009/07/25(土) 15:13:36 ID:5u3IT3t4
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昔昔、ある男が突拍子もない予言をした。
1999年7か月
空から恐怖の大王が来るだろう
アンゴルモアの大王を蘇らせ
マルスの前後に首尾よく支配するために
それから何百年も経った世界で、予言は風のように人々の話題をさらい、瞬く間に「審判の日」は人々に訪れた。
滅びにわずかな期待を抱く者、終末を叫ぶ者、気にもかけず日常を過ごす者がいた中で、世界は何事もなかったかのようにその日を終えた。
…だが、そんな予言も存在しなかった世界ハルケギニアに、アンゴルモアの大王は舞い降りた。
-----------------------------------------------
「ルイズさん、こちらの月って二つあるんですねー」
不思議な杖に二人して腰掛けて夜の空を散歩中。時々吹くおだやかな風に目を細めていたルイズに、彼女の使い魔は問いかけた。
「こちらって…あんた時々変なこと言うわよね。二つあって当たり前じゃない」
「そうなんですかー…ルイズさん」
「なぁに?」
「どっちかの月、砕いてもいいですか?」
その言葉に耳を疑ったルイズが息を詰める。月を砕く?つきをくだく?
沈黙のあと、ルイズは吹き出した。突拍子もなくスケールの大きい話に、まだ彼女の事を「マジックアイテムを使える変わった平民」としか思って
いなかったルイズはそれを冗談ととったからだ。
「っ、あはははは!いっ、いいわよ、なんならこの杖で月まで行って、私の爆発魔法で割っちゃうの。…っふふ、そうね、一個あれば十分かもね」
595 :
4/4:2009/07/25(土) 15:14:29 ID:5u3IT3t4
杖の上から落ちそうになるくらい体を震わせて、ルイズは笑った。
星を落としたらすごく爽快かもしれない。それに、自分の魔法も認めてもらえるかもと、ほんの少しだけ考えながら。
「そうですね、ぜひ協力して下さい!ていうか、相互扶助?」
澄み切った瞳で答える使い魔に笑みを向けた後、ルイズは顔をあげた。二人は双子の月を見上げる。
「…元の世界に帰りたい?」
「…ルイズさん?」
「か、帰るなって言ってるわけじゃなくて、ただ、あんたの気持ちはどうなのよっ!?」
言われて答えに詰まった使い魔に、ルイズは自分の心に影が差すのを感じた。
心の震えを見せないように、目線だけは相変わらず月を見上げていたけれど。
「私は…私には、大好きな人がいます…その人の所に帰りたいなって思います…でも」
「……でも?」
「きっとこの世界に、私のやるべきことがあると思うんです。だから、それをやり終えるまでルイズさんと一緒にいます。…ていうか、今輪奈落?」
最後に付け足された言葉の意味はルイズには分からなかった。けれど、それが悪い意味な筈ないじゃない、と笑う。
使い魔も笑う。その表情に偽りなく、まっさらな気持ちを込めながら。
「ケロロ軍曹」よりアンゴル=モアを召喚
孫がいる人はマジでこないだ居たな
40代だつってたけど
以上です。途中変な所で改行が入ってしまってごめんなさい
ありがとうございました
ダメットの人乙です。
あれ、目から水が…
年齢とかスレ違いなんで、余所でやってもらえませんかね?
ラスボス世界のアンアンが死んだら間違いなくダークシグナ―になる
ラスボスの人乙です。
エレオノールはどこまでもヒロインしているなあ。
こんばんは。予約無ければ3分後に投下しますね。
54.探求者たるもの
アニエスがヴァルハラ、もしくは月影の国へ逝きかけている頃、ルイズはアカデミー近くの草原にて、
呪文を繰り返し唱えていた。爆発が起こったかと思えば辺り一面が白銀に染まり、
それに驚く間もなく、嵐と見まがう大きな竜巻がいくつも発生しだす。
「疲れた?」
「平気!」
物に釣られたルイズの精神力はあり余っている。いつだってそういう状態ではあるが、
やる気になっているからか、更に凄いのだ。
髪をかきながら、その場で錬成したイスに座っているエレオノールは、
同じく錬成した机に置かれてある羊皮紙に、何かを書いている。
伝記や伝説、特に神様がどうの、始祖がどうのといった物語にしか存在しない「虚無」の系統。
ちゃんとしたデータが全く無いので、とりあえず「虚無」の使い手はどのように系統魔法を使えるのか、
エレオノールはそこから調べることにしたのだ。
「……予想以上ね」
力をコントロールしきれていないのか、見慣れた爆発こそ起こすものの、
ひとたび成功すればその力はスクエアの遙か上を行く。
エレオノールは全く信じていない神に感謝した。
とても面白い研究対象を提供してくれてありがとう、と。
「あとは祈祷書の解析ができれば……」
祈祷書の中身が分かって、ルイズが唱えることができたなら、
「虚無」の系統は再びこの地に蘇る。
失われた系統の復活、なんと素晴らしき響きだろうか!
別に名声を得たいとかそんな理由ではない。
研究者として真理の探究をしたいと思う気持ちがエレオノールを高ぶらせている。
エレオノールは今まで妹たちのために時間を費やしてきたが、
もう自分のために時間を費やしても良いよねと思った。
もちろん、本来の仕事をほっぽり出しているのだが大丈夫。
元々スクエアクラスは、一つの国に四系統がそれぞれ二人か三人ほどしかいない。
アカデミーとしては彼らに実験の協力を願いたいことも多々あるが、
大抵気むずかしく、断られることが多い。
そんなところに全ての系統がスクエア以上に扱えて、基本的に断らない、
というより喜んでその身を貸し出す身内の妹が現れたらどうするだろう。
よろこんでその子が使えるかどうか調べといてと言うに違いない。
最後の手段として家名を出すという方法もある。アカデミーの体質が変わってから、
ヴァリエール家がスポンサーの一つになっているのだ。
「ところで、ミス……」
私は何をすればいいのでしょうか?隣の地べたに座るマーティンが小さな声でたずねた。
エレオノールはあ、と気の抜けた声をあげる。すっかり忘れていた。
研究者は、自分のこだわること以外はすぐに忘れてしまうのだ。
「え、ええ。ところで、ずっとルイズを見ていたあなたに聞きたいのだけれど」
「なんなりと」
「いつもあんな感じなのかしら?」
「いわゆるスクエアクラスの呪文以外は、大抵失敗します。
ですが、「錬金」のようなスクエアクラスに対応する呪文は、
あのように成功しますね」
黄金の草が辺りを輝かせている。エレオノールは思わず笑った。
「錬金で作られた鉱物とか宝石類の価値が暴落するでしょうね。妹ながら末恐ろしいわ」
「ですが、ルイズはそんなことをするつもりはないでしょう」
率直な感想だった。自分の力を知ってから、ルイズは自信を持てるようになった。
自分の力の凄まじさに振り回されてはいるが、決して人を不幸にするために使う気は無い。
まだ立派な貴族にはほど遠いが、その卵にはなっている。マーティンはそう考えている。
「おだてたら調子に乗る子なのだけれど。あなたのようなしっかりした人がいてくれるなら安心そうね」
自分よりずっと年上の男を見て、エレオノールはそうこぼした。
ルイズからは元々メイジで、色々あって司祭になったと聞かされていた。
なにかもめ事でも起こして俗世から身を退いたのだろう。
そう想像していたが、どうしてなかなか信頼のおけそうな人物だった。
単純にシロディール人特有の才覚がそう見えさせているだけだが、
エレオノールがそれに気付くはずもない。
「まぁとりあえず一通り呪文の効果は書き記したし、日も暮れてきたわね。
とりあえず、今日はここまでにしましょうか」
エレオノールはルイズを呼ぶ。一旦調査を終えてみんなでアカデミーに帰っていった。
「ちょっと驚いたどころの話じゃないわね。まさかあそこまで凄いだなんて」
夕食を取るエレオノールは、ニヤニヤしながら今日のことをカトレアに話している。
食堂のテーブルには姉妹三人が仲良く座っていた。マーティンとシエスタは、
使用人の部屋で夕食を取っている。
「姉さまったら、ずいぶんと嬉しそうね。ルイズが魔法を使えるようになったの、そんなに嬉しいの?」
「違うわよ。ルイズの系統が凄いって言っているの」
「ふうん……ねぇルイズ。あなたが眠っているとき、姉さまに魔法が使えるって言ったら……」
「あ、こら!」
顔を赤くするエレオノールに途中でさえぎられる。カトレアはやはりころころと笑った。
「聞いたとき、姉さまはなんて言ったの?ちいねえさま」
「それはね……」
「いや、やめて!」
カトレアはやはり笑っている。いいおもちゃを見つけたらしかった。
「姉さまがこう言っているから、本人から聞いてね」
「……つねるわよ」
ルイズは恐れおののきながら、ゆっくりと首を縦に振った。
「よろしい。まぁあなたもちゃんと貴族らしくなれてほっとしたわ。まぁ問題もあるのだけれど」
「まだちゃんと使えないけれど、たくさん練習しますわ!今までの分も」
「いや、そこじゃないでしょ……」
「へ?」
エレオノールはルイズの耳元に顔をよせた。アカデミーの使用人たちが周りにいる。
「あなた「虚無」なの。分かる?「虚無」の系統よ」
ルイズはコクリと頷いた。
「一つ聞きたいけど、このことはどれだけの人が知っているの?」
「姉さまたちとマーティンと、タルブの村の人たちのいくらかに、そこに居合わせた友達くらい。
みんな口は堅いから大丈夫よ」
エレオノールは眼鏡をあげてまたたずねる。
「学院の人たちには?」
「何も。だって、それでおべっか使われたりされたら嫌ですもの。私はメイジとして認められたいの」
「あら、まぁ。成長したのね」
マーティンの言っていたことはあながち間違いでもないらしい。
昔の妹だったら間違いなくこれを言いふらしていたに違いないだろう。
それほど、認められることに必死になっていた。
それに比べると、今はとても落ち着いているようにも見える。
妹の成長を嬉しく思いながら、エレオノールは念を押す。
「まぁ、あなたもそれの何たるかは多少なりとも知っているでしょう?
ハルケギニアの大抵の国は、始祖が神より授かった奇跡である魔法、それを使える人を貴族としているの。
そんな世界で、伝説の系統が見つかったなんておおやけになってみなさいな。
面倒なことになるわよ。調査なら私が楽しいだけだから良いけれど」
「……」
神より授かった、と言われてルイズは何とも言えない気持ちになった。
祈祷書によるとブリミルは神から力を奪ったらしい。
どうやって奪ったのかは知らないが、今のブリミル教の言葉よりも、
それが真実を語っているような気がしてならない。
いや、むしろそれを隠すために今のブリミル教やそれを信じる国々ができたのではないだろうか?
「ルイズ?どうしたの」
下を向いて深刻な顔で何か考えるルイズを、カトレアが心配そうに見つめている。
「あ……なんでもないのちいねえさま。姉さま、一つ質問していい?」
「なにかしら?」
「平民に杖を持たせたら、魔法、使えるようになるの?」
エレオノールの体は固まった。ルイズを見る視線は何とも言い難そうで複雑なもので、
とりあえず一息ついて、自分を落ち着かせて再びルイズを見る。
「……やぶからぼうにどうしたの?」
「祈祷書に書かれていたことが、今のブリミル教の言っていることと違うの。
魔法の解釈だって、ブリミル教の教えとは違う気がして」
「始祖がこの地にやってきて6000年以上経つのよ。主義主張が変わってもおかしくはないわ」
「でも、聞きたいの」
やけに真剣な眼差しのルイズに、エレオノールは頭をかいて一つため息をついた。
「とりあえず、食事を済ませてから。私の研究室で話してあげる」
これはつねって終わらせてよい話ではない。きちんと話そうとエレオノールは思った。
とりあえず、また和やかな夕食の時間となった。
アルビオンの地下奥深く、白い大理石のような石で造られた遺跡の中に足音が響く。
その足音は二つだけ。アクアマリン色のウェルキンド石に照らされているのは二人。
備え付けの燭台から放つ青白い光に、黒いローブを着たマニマルコと、
それなりに派手な格好のイザベラが照らされている。
「さっきの、すごかったねぇ。いきなりトゲトゲの付いたのがこっちに来るんだもの」
「……そうだな」
マニマルコは不愉快だった。遺跡に罠はつきものだが、
深部にたどり着くまでに、スケルトンを全てダメにされたことが腹立たしかったのだ。
私の作ったスケルトンが、ああも簡単に壊されるとは。
ぶつぶつとマニマルコは歩きながら苛立たしげに呟いていると、
自分のローブの裾をイザベラが引っ張りだした。
その表情から察するに、どうやら何度も声をかけていたらしい。
「あっち」
指をさしている方向には扉が見える。いかにも何かありそうな、他のものとは違う装飾が施されていた。
「……ふむ」
扉に手をかける。鍵はかかっておらず、すんなりと開いた先から白く輝かしい光があふれ出す。
ウェルキンド石よりも希少で、白く、そして通常よりも遙かに大きなヴァーラ石が天井から吊されていた。
ウェルキンド石と共に、古代のシロディールを支配していたエルフが使っていた物が何故ここにあるのか?
考えても仕方ない。マニマルコはとりあえず扉から辺りを見渡す。
部屋の中は密室でそれほど大きくはない。天井は少し高く、中程に立つ四つの柱で仕切られた中央に、
ヴァーラ石が吊されている。白く輝く星の石の真下には銀色の台座が備え付けられていて、
その上を人の頭ほどはある黄金の球体が浮かんでいた。
「なんだ、あれは」
マニマルコが部屋の中に入り台座に近づこうとすると、突然青い閃光がどこからかマニマルコに放たれた。
うかつだった、罠か。そう思う間もなくマニマルコの近くに閃光が突き刺さる。
稲妻は大きな音を立てて霧のように消え去った。
「マニマルコ!」
イザベラがあわててマニマルコに駆け寄った。マニマルコは無事を伝えると、
魔法が放たれた辺りをざっと見回す。何故か、懐かしい腐敗臭がした。
「……その青い髪は人か?だが、何故精霊の力が使える?」
柱の影からしわがれていて、どこか冷たさを感じさせる声が聞こえた。
マニマルコは納得したような、さらに疑問が増えたような声で呟いた。
「こんな所で同輩に会えるとは、やはりこの地はエルノフェイなのか?」
遙か昔、エルフはエルノフェイと呼ばれる大地からタムリエルに移住したと伝えられている。
いくらかのウッドエルフやハイエルフたちによると、それは神の国エセリウスのことで、
故に自分たちはエイドラに近い存在である、と主張している。
そこにはボロボロの赤いローブを纏い、大きな杖を持つミイラが浮かんでいた。
魔法力がその周りに雲散し、緑色のオーラとなって噴出している。
眼球が存在しない顔を向ける様は、大抵の冒険者を震え上がらせるだろう。
その力は強大で、冒険者にしてみれば、できれば会いたくない相手。
正しく最強のアンデッドであるリッチがそこにいた。
「汝ら去ね!例えサーシャとあの男の血を受け継ぐ者であろうとも、この地に入ることは許されぬ。
霊峰の指を無視してなお留まろうとするのであれば容赦はせん!」
激しているリッチは杖を向けてマニマルコたちを威嚇している。
マニマルコは、冷めた目でそれを見ていた。
「死霊術師が墓守か……」
それは奴隷か、愚かな古代の王共がやることだろうが。マニマルコは杖を向けて威嚇するリッチに怒りの目を向ける。
体を変えてもなお生きる彼の目的はただ一つ、真理の探究である。
メイジが善や悪といった「どうでもいいこと」を考慮して研究するかどうかを決めるのが大嫌いな彼にとって、
今目の前にいるリッチは、存在そのものが許せない。
「真理の探究を忘れた愚かな先祖よ!お前の魂は、俺が有効に使ってやる」
長い黒髪が妖艶な、美しい女性の体から魔法力がほとばしる。
それに呼応するように、イザベラが両手から炎を出しながら口をつり上げて笑う。
「最近戦いがなくて暇でさぁ……派手にいくよぉぉぉ!!」
「待て、イザベ――」
爆裂と破砕する音が辺りにこだまする。リッチに確実に当てたはずの炎の塊が、
どういうわけかイザベラに当たったのだ。全身にひどい火傷を負ったイザベラは、
叫びながら辺りを転がり回っている。
リッチとはメイジがその力を持ったままアンデッドと化した存在であり、
そのため魔法に対する耐性が非常に高く、時には魔法そのものを跳ね返してしまうこともある。
マニマルコはとりあえず魔法耐性上昇の呪文を唱えようとしたのだ。
なにせ相手は6000年前のエルフ。自分もリッチとはいえ、古代のエルフの魔法力に敵うはずがない。
強敵との戦いは、まず能力を上げる魔法を唱えることが勝利の秘訣である。
「いたい、いたい、いたい、いたい」
「哀れな」
リッチは全身に火傷を負い、肌を真っ黒に焦がしたイザベラを見て悲しそうに首を横に振った。
どうやら好戦的な性格ではないらしい。
「分かったであろう。人間の皮を被りし者よ、今すぐにその人間を連れて去ね」
「やはり、お前は愚かだ」
マニマルコはせせら笑ってリッチに答える。リッチはマニマルコに杖を向け、
脅すようにうめいた。
「いたいよう、いたいよう……」
泣いているイザベラの体が音を立てて治っていく。回復の魔法ではなく、
死霊術特有の力で自己修復している。焼けただれた皮膚があり得ない早さで元に戻っていく。
「その娘も既に俺と同じだよ」
「なんと……外道が!」
その一言に、マニマルコは怒りを露わにする。
「道を外したのはお前だろう!命題たる真理の探求を忘れ、この地で年月を無駄に過ごしたお前に言わる筋合いはない!」
「そんなものより、守るべきことがあると知った!それは――」
マニマルコが大声で笑い、リッチの言葉を遮る。
「当ててやろうか。愛か友情か、それとも憐憫の情か……くだらん、全て一時の愚かな気の迷いにすぎん!!」
「否!それこそ我が守るべき理由、この「ミョズニトニルン」があの男に従った理由なり!」
リッチの手から炎が現れる。マニマルコに向かって投げつけようとしたその時、
その腕を誰かが掴んだ。
「いたいんだけどさぁ……もの凄く痛いんだけどさぁ……」
額に青筋が浮かぶイザベラが、そのまま勢いで腕をへし折った。
リッチが驚いていると、目を真っ赤にして憤怒の表情のイザベラが叫んだ。
「いたいんだよぉぉぉぉ!」
「ぬぅぅっ!」
リッチへ次の一撃を決めようとイザベラは感情のおもむくがままに腕を動かす。
その一撃はリッチの鳩尾を砕いたが、その程度で活動を止めはしない。
「哀れな娘よ……そうまでして力を求むるか」
「あわれ、だってぇ?」
イザベラがリッチの胸ぐらをつかんだ。怒りが消える気配も無く、
素に戻って思い切り叫んだ。
「わたしはあわれなんかじゃない!!わたしはエレーヌよりも上手に魔法が使えるようになったんだ!
もう誰にもわたしを笑わせない誰にもおろかだとおもわせないだれにも……」
イザベラの憔悴しきった表情を見てようやくリッチは気が付いた。この娘は自らではなく、
そこにいる人間の体に入ったエルフによって、人間をやめさせられてしまったことを。
リッチはマニマルコに吐き捨てるように言った。
「このような、このような娘に術を施すなど……」
「質が良くなった。悪くない選択だろう?ミョズニトニルン」
自分の額が見える位置まで、マニマルコは近づいた。リッチに眼球があれば、目を丸くして驚いただろう。
「まさか、まさか!いかん、お前のような輩にこの地を、約束の地を」
リッチは力の限りもがき、魔法を放つがイザベラの力には全く効かない。
マニマルコがとても楽しそうに歌でも歌うようにささやく。
「イザベラ、もう壊してかまわん。それでは後は我々に任せてくれ。愚かしき先任者よ」
リッチの体は破砕され、その魂は天に昇ろうとする。
「ああ、聞きたいことが山ずみだった。しばらく俺の側にいてもらおうか」
だが救済が訪れることは無いだろう。蠱の王は謎の部屋と、その鍵を握る魂を手に入れた。
夕食は終わり、後は寝るだけとなったルイズたち。
エレオノールは、自分の研究室にルイズだけを呼んでさっきの話をすることにした。
「……そうね。大昔から平民への魔法が使えるかの調査は法律で禁止されているわ。
ちなみに、ゲルマニアでは建国した時から元平民が杖を所有することを原則として禁じているわね。
上の位になれたら持ってもいいみたいだけど、不可能でしょうね。
あの国は夢を売り物にしているけど、その中身は結構悲惨みたいよ?」
ゲルマニアでは成り上がって貴族になれる。とても魅力的で甘い話だが、
そんなにうまい話があるはずもない。自由に階級移動ができるということは、
自分の位を上げるよりも、下げる方が簡単だということだ。
「つまり、そういうこと」
「じゃ、じゃあ、平民も……」
「多分使えるんじゃないかしら。試したことはないけれど」
「どうして?」
男の貴族が近所のきれいな平民を囲ったりするのは、ルイズでも聞いたことがある。
そうして生まれた子供やその子供は、やはりメイジとしての能力を持つのだろうか。
「それをおおやけにすると、あなたが「虚無」だっていうこと以上に大変なことになるからよ。
いくら私が研究者だと言っても、ちゃんと分別するだけの脳みそはあるわ。
あなたのことが分かっても、まぁあなたが祭り上げられるだけで済むけど、こっちはそうはいかないの」
ルイズはきょとんとした。
「でも、平民たちが魔法を使えて便利になるだけじゃないの?姉さま」
エレオノールは頭をがくっと下げる。ここか。ここがネックか。エレオノールはルイズのダメな所をまた見つけた。
正論すぎるのだ。確かにどちらかと言えば正しいのだが。
「そりゃ、平民たちは大喜びよ。別に貴族になれなくたって、
魔法が使えるって分かれば色々な仕事が楽になるのだから。
揉めたりはするでしょうけど些細なものよ。
貴族に逆らって良いことがないのは分かっているでしょうし。
問題は地方領主とか僻地に住んでいる貴族たちや、
色々あって貴族をやめさせられたメイジよ」
ルイズはまた首をかたむけた。ああ、とエレオノールは額に手を当てる。
やっぱりこの子は知識に基づいている。現実的な悪いところが見えていない。
「いい、ルイズ。やっかいごとを起こすのは下々の人間じゃなくて、知識階級の人間よ。
みんながみんな、王家に心から忠誠を誓っているわけじゃないの。
魔法が実は誰でも使えるものでした。だなんて分かったらそんな連中が何をしでかすか分かる?」
「……わかりませんわ」
実際、さっぱり分からない。ルイズは今までずっと魔法を使いたいと思って生きてきたこともあって、
魔法の恩恵ということは人一倍理解しているが、それがもたらす影響については、
あまり分からないのだ。
「平民たちを上手く利用するでしょうね。ただの兵士にするよりも、
メイジになる方が簡単で強いし、お金もそこまでかからないわ。
それでそいつらを組織して、王家に取って代わろう、なんて奴がいると思うのは私だけかしら?
少し冷静に考えれば平民だっておかしいと思うのだけれど、甘い話には誰でも引っかかるのよね」
こほんと咳払いして、エレオノールが勇ましく歌うように口ずさむ。
「平民の魔法の使用は王家が法律で禁じていた。悪い王家は君たちを苦しめるだけだ、今こそ変革の時、
共に自由を掴もうではないか。こんな馬鹿げた話でも繰り返し聞いていると、
その内なんの疑いも持たずに信じてしまうのよ」
案外人って単純なのよ。エレオノールは真剣な表情で聞いているルイズにそう言った。
「そうして方々の平民に魔法を教えて、王家やその周りの大貴族を中心に反乱を起こすように仕向けるの。
平民たちは自分たちが世界を変えるとか思っているだろうけど、単に踊らされているだけ。
彼らだけで王軍に勝てるとは思えないし、もし反乱が成功したとしても、
王家の権利を欲した連中が平民に多少なりともそれらを渡すと思う?
最終的にそいつら同士で仲違いを起こして、ハルケギニアはさらに血にまみれるでしょうね」
理想はもろくも崩れ去り、残るは利権を貪る醜い者たちのみ。権力争いなんてそんなものである。
隙あらば牙を向ける輩は、どこにでもいるものだ。
ルイズはそんなことになるだなんて考えもしなかった。
「魔法が平民に伝わることは、ハルケギニアの各地で争いが起こるきっかけになることは間違いないでしょう。
レコン・キスタとか目じゃない規模のね。一番怖いのはロマリアよ。
魔法は神の奇跡で、選ばれし者のみが扱えるって教えていたのはあの国じゃないの。
実は嘘でしたなんて分かったら、信者が減るどころか平民が怒るわよ。
それでトチ狂って聖戦とか言い出したら、この世界終わるわね」
そこまで言われて、ルイズはようやくはっとした。でも、どうしてだろう。
なぜ本当のことが明らかになっただけで争いが起こるのだろうか。
「なにか言いたそうね」
エレオノールは自分が言いたいことは伝わったらしいと感じた。
ルイズは下を向いてたずねる。
「どうして、みんなが使えるようにしただけでそんなことになるの?便利なのに」
しょんぼりしているルイズの頭をなでて、エレオノールは呟くように答えた。
「便利な力を神様からもらった力だといって崇めさせたからよ。
今の世の中は魔法が使えるかどうかで全てを決めてしまっているの。
だから今更使えるようになりました、とか言ったらてんやわんやの大騒ぎになるの。
平民は平民として生きるのが幸せなんだから、魔法が使えなくたっていいんじゃない?
私は使える側の人間ですから、そう思いますけれどね。あなたは……」
そのままエレオノールは何か言おうとして、口を閉じる。少し間をおいて、
ルイズに優しく語りかけた。
「あなたは自分で考えなさい。
悪いと思ったら、それをどうするか考えて。ただ、魔法が使えると広めるだけなら、
今の方が誰にとってもマシということだけは覚えておくのよ」
ルイズはなんとも言えなさそうに頷いた。
国は人がいなくちゃできん。だが、上に立つ者がいなければ国にはならん。
そこまで考えて、お前は上に立つ者をやっているのかね?あの老人に言われた言葉を思い出す。
きっときれいに考えるだけでは、全然やれない。ということだったのだろう。
全く考えていないんだわ、私ったら。ルイズはとぼとぼとエレオノールの研究室から出て行った。
投下終了。マニマルコが悪党に見えてきたけど、特に悪党ではないんだよ。
単に真理の探究のためなら何を犠牲にしても良いと考えているだけの魔法至上主義エルフなだけで。
それではまた次の投下まで。
新投稿です。
「FINAL FANTASY XI」より「ブロントさん」
現在10話分書き溜めてありますが、続きを書きつつ、ちまちまと投下していきます。
取りあえず第一話投下
悪いけど、ネタがいろいろな意味で微妙なんで、避難所でやったほうが角が立たないと思うよ。
謙虚な使い魔 第1話 「ああ!奇跡の出会い!」
一人の騎士は仲間と共に巨獣と対峙していた。
騎士は仲間と連携を取り、仲間を守るために盾となって巨獣の攻撃を一手に引き受けていた。
騎士が巨獣が繰り出す凶腕の薙ぎ払いを左手に持った盾により受け止めている間騎士の仲間達は
武器を手に巨獣に向かう者、魔法を詠唱する者、呪歌を歌う者、矢を射掛ける者、傷を癒す者、と
彼ら各々に与えられた役割を果たし、「絆」で繋がれた力は一つの巨大な力となり巨獣に対し獅子奮迅していた。
追い詰められていた獣はその命の最後の灯火を燃え上がらせ
その巨大な角を突き出し荒れ狂うようにその巨大な力の中心となっていつ騎士に向かい突進した。
手にした禍々しい風貌の剣で受け流そうと体を捻らせたが予想以上の衝撃により剣は騎士の手から弾かれてしまった。
騎士は剣が弾かれた方向を一瞬だけ一瞥した後、再び巨獣に目を向け盾を構えたが巨獣はすでに息絶えていた。
仲間の魔道士の古代魔法の詠唱が完了しており、巨獣の遺体となった体は燻る火に埋もれていた。
事が終わった事を確認した騎士は落とした剣を拾いに向かった時、
剣が刺さっていた雪土の傍らに一輪の夢幻花が咲いていた事に騎士は目を留めた。
本来咲く所とは違う場違いな地に咲くその一つの花の香りは騎士の中に眠る懐かしい記憶に触れた
騎士は何気ない気持ちでその花を土ごとそっと引き抜き、腰に充てたかばんにそっと仕舞った
その瞬間、
ふと誰かに呼ばれたような気がした
―――――――――――
うしろを振り向く騎士
―――――――――きて
声を聞いた騎士
――――――はやくきて
彼を呼ぶ声を聞いた騎士
―私の使い魔はやくきて!!
少女の悲痛な声が彼を呼んでいると気付き辺りを見回し再び正面に振り向きなおした瞬間
騎士の前に突如鏡の様なものが現れ咄嗟に盾を構えたが甲斐も無く一人の騎士は鏡に吸い込まれていった。
◆ ◆ ◆ ◆
ルール違反なので、他所へ行ってください
消えろ
? ネ実はネ実板だっけ?
3次創作になるからじゃないの?
すみませんでした、避難所の方でさせていただきます。
避難所だろうと、現実とか三次創作からはNGじゃないか?
避難所も駄目です
取り合えず議論は避難所の雑談スレか議論スレで
一回練習or避難所用スレで投下したら?
まぁ ネ実板でスレ立てたら他の職人も来るんじゃね
リューさんやら内藤とか
ほう、前々からネタ的に話が出ていたブロントさんを、ついに呼ぶかね。
いや、投下はするなよ。
読みたいからいく場所を教えてくれ
現実人物とは関連性が無い「キャラ」としてのものでしたが、
ルールを良く理解できずにしてしまってすみませんでした、
投下場所はどこがよろしいでしょうか?
ここからも避難所からも消えろ
投下するに適したスレを捜して、無ければ適した板でスレ立てしてやってくれ
ネ実かVIPかVIPの派生板ぐらいかねぇ……
だからさ、何で先に投下するんだよ。
三次や現実はNGじゃないのか?
壊し屋小沢一郎はどうなんだwww
ま、とりあえず避難所いくべ
どこで投下すべきかの議論なら問題ない
絵板の絵も削除されたし、避難所でも駄目。
ここは無しだけど、
>>625みたいに読みたい人はいるから、
どこでやるかだけは教えてくれ
カスはネ実から出てくんなっつの、夏糞が
俺も読んでみたいから場所決まったら教えて
お目汚し迷惑をかけて大変失礼しました、場所決まり次第お知らせします
うぃ、楽しみにしてるぜ
糞はテメーだろうがドブ野郎>ID:yUr6044Q
あんまり遅いと、今度は流れを知らない奴にボコボコにされそうだなw
何度も推されてるネ実じゃダメな理由でもあるのかな。
なんだこれ?
531 :名無しさん:2009/07/25(土) 19:49:10 ID:VUuFuh46
FINAlFANTASY XI から「ブロントさん」召喚のSSを書いているのですが
これはどこで投下がよろしいでしょうか?
内容として:
・現実プレーヤーとは関連無し(あくまでキャラクターのアーキタイプとしてだけ利用)
・ストーリ性重視のネタ度低め
で現在10話ほどはかけているのですが
>>646 なんだこれって、相談だろう。
一番無難なのは、自分でサイト作ってやる事だろうな。
あるいはアルカディアみたいな縛りのゆるい投稿サイトとか。
>>649 >>641を最後に消えると思ったからさ。
まさかスレ違いが確定したところの避難所で聞き続けるとは思わなかったわ。
すまん俺のせいか
あーオレも一応謝っておく・・・・ スマン
ネ実や、ネ実避難所に対するスルーっぷりを見ると
「ここで良いんじゃね?」って言われるのを待ってるように見えてくるんだよな〜
小沢一郎や山下清が召喚されてるSSがあるが、ギャグやネタSSなら現実の人物もおkなのか?
あと、ネットの二次三次は問題だが、公式の二次創作アンソロジーのネタとかは可なんじゃろか。
三次創作だし信者ウザそうだしブロントとかマジ勘弁してほしいわ
「現実の人物をモデルにした創作物」のキャラとしてならOKってことじゃなかったか?
>>654 小ネタだったりすると、スルーされてるんじゃね?
PARとかあるしな。
>>656 前例とか見てみると、小ネタならOKかもしれんが
一度騒がれたやつは、どうしても色眼鏡で見られがちで、荒れる原因になるっぽいね
>>654 まあ、山下清の方は件のSSのタイトルからしても出展は恐らくドラマ「裸の大将」シリーズだろうから
ここ的には取り合えず問題なしだろうな。
立ててくれた人が告知してからって言ったんだから、そのくらいはやっても良いだろwwww
>>655 >>657 重箱の隅をほじくりかえして申し訳ないが、既にニコニコのネタとかの
三次創作SSも投下されてまとめに保管されてるわけだけど、どうすんの?
>>663 小ネタじゃなくて?
なら不味いんじゃね?
そんなにここでやりたいのかw
>>663 三次禁止がルール化される前に投下されたもの。
ルールの不遡及ってことで残されている。
>>664 小ネタなら良くて連載長編ならダメな理由は? 書き手のオナニーに成りやすいからですか?
>>667 小ネタなら笑って済むとか、そんな感じじゃね?
突き詰めたら黒になるかもしれないけど、誰か得するの?
ブロントさん専用のスレが出来たんだ
そろそろ話題の切り替え時じゃないかな?
後は、向こうでやりたいようにやるんだから
うむ。終わったことだ
やっぱオナニーになるからか………
ところで明日は日曜なわけだが
ウルトラの人来るかねぇ?
この流れで特定の作品名を出すか
ラスボスの人乙です。
エレオノールとデルフのやり取りが実に微笑ましいです。
にしても、練金でコーティングするのって鞘に入ってるのとはやっぱ違うものなのか?
デブデダビデは魔法関連だとザ・グレイトバトル3のピエロっぽいやつを思い出すなぁ。
これでは具体的にどんな姿なんだろ?
ダメットの人乙。
ダネットはこのまま不在なのか? 是非カムバックして欲しいです。
にしてもルイズがいい感じにダネット化してる…。
毒の爪の使い魔の第47話が書き終わりました。
予定その他が無ければ5分後あたりに投下開始します。
支援
では、そろそろ投下開始します。
――降臨祭最終日:ガリア王国・プチ・トロワ――
暖かな陽光に照らされる廊下を、一人のメイドが二つの膳の乗った台車を押しながら歩いていた。
一つ膳の上には、焼きたてのふっくらしたパン、色取り取りの野菜のサラダ、肉汁の垂れるローストチキンなどが乗り、
もう一つの膳の上には、暖かな粥の入った大き目の皿、塩の入った瓶、スプーンなどが乗っている。
メイドは廊下の突き当たり、このプチ・トロワの最奥に位置した豪華な扉の前に立ち、ノックをする。
「誰だい?」
中から少々生意気な感じのする少女の声が聞こえた。
「朝食をお持ちしました、イザベラ様」
メイドはそう答え、扉を開けようと取っ手に手を掛ける。すると…、
「ま、待て!? 入って来るな!!」
その言葉にメイドは怪訝な表情を浮かべる。
朝食を持ってきたのに”開けるな”とはど言うことだろうか?
そういえば…とメイドは他の召使達から聞いた話を思い出す。
随分前から、イザベラが自分の部屋に人を入れないようになったのだ。
三度の食事を届ける時だけでなく、用事を言い付ける時もわざわざ自分から部屋の外に出て話をするのだ。
部屋の掃除も、最近はペットの三匹の幻獣と一緒に自分でやっているらしい。
勿論、それまでのイザベラを知っている人からすれば、これらは異常な事態である。
高慢で我侭、非情な性格のイザベラが、自分の部屋の掃除をメイドにさせないなどありえない。
そんな事を考えていると扉が開き、イザベラが顔を出した。
「ご苦労だったね。じゃ、さっさと戻りな」
言いながらイザベラは台車を引っ掴むと、部屋の中に引きずり込む。
メイドは不思議そうな表情でイザベラに尋ねる。
「あの、イザベラ様?」
「何だい? わたしは”戻れ”と言ったはずだよ…」
イザベラはメイドを睨み付ける。
本来ならばその一睨みでメイドはこれ以上無い恐怖を味わい、飛ぶような勢いでその場を去っていただろう。
だが、不思議な事にメイドは然程恐怖を感じなかった。
…イザベラの睨みに凄みが無いのだ。いつもの相手を見下すような、憎悪するような感情が一切感じられない。
代わりに今の彼女から感じる物…、それは”焦り”だ。
何故だか解らないが、今のイザベラには余裕が無い。メイドはそれなりの人生経験からそれを感じ取った。
「どうかしたのですか?」
「いいから! 帰れ! 今直ぐに!」
イザベラの焦った叫び声が、朝のプチ・トロワに響き渡る。
メイドはそんなイザベラを見つめ、小さくため息を吐いた。
こんな態度は普段ならばしない。
今のイザベラが彼女には、癇癪を起こす小さな子供と何ら変わりなく見えたからだった。
「何かお困りな事があれば、その時に。それでは失礼します」
小さく会釈し、メイドはイザベラの前から去っていった。
イザベラは鼻息も荒く、扉を勢いよく閉めた。
「ったく…、わたしが言う事に大人しく従っていればいいのに…どいつもこいつも」
「のほほほほ、いつもと態度が変わりすぎているのですから…変に思っても仕方ないですよ」
暢気な声がイザベラに掛けられる。
イザベラは深くため息を吐き、声の主を睨み付ける。
「…誰の所為だと思ってんだい?」
「のほほほほほほ♪」
楽しそうに大笑いしたのはジョーカーだった。
イザベラの天蓋付きのベッドに横になりながら、片手をヒラヒラと振っている。
先のタルブにおけるジャンガとの大喧嘩の末に大怪我を負い、今はイザベラの部屋で療養中である。
その全身には絆創膏やら包帯やらが巻かれ、実に痛々しい。
イザベラはベッドへと歩み寄る。台車はペットのジャイアントムゥが押してきた。
「まったく……あんたが見た事無いほどの大怪我負って戻ってきた時は、わたしは本当にビックリしたよ。
あんたがそんなになるなんて考えた事も無かったからね…」
コルベールwwwww
イザベラは思い返す。
ボロボロになったジョーカーが自分の部屋に戻ってきた時、イザベラは心底驚いた。
こいつは見た目も性格もふざけているが、色んな意味で油断ならない。
こんな大怪我を負って帰ってくるような事態は今の一度たりとも無かったのだ。
慌てたイザベラはベッドに彼を寝かし、慌てて大量の包帯や水の秘薬などを取り寄せたのだ。
無論、自分の部屋で何をしているかなどは一切秘密にして。
だが、どうして秘密にするのか?
それは、使い魔ごときに献身になっている姿を見られたくないからに他ならない。
そんなのは彼女のプライドが許さなかった。
故に、ジョーカーの傷が治るまでの間、イザベラは人の立ち入りを禁じたのだった。
イザベラは台車に乗った膳の一つをベッドの横のテーブルに置く。
瓶に入った塩を粥に適度に振り掛けると、粥の入った皿とスプーンを手に取る。
粥を掬い、ふーふーと息を吹きかけて冷まし、ジョーカーの口元に運ぶ。
「ほら、食べな」
「これはどうも。では遠慮なく」
口に寄せられた粥が無くなっていく。…閉じたような口でどうやって食べてるのか、甚だ疑問である。
スプーンが空になると、次を掬って口元へ運ぶ。そんな事を繰り返していると粥は空となった。
「おかわりはいるかい?」
「いえ、もう十分ですよ」
そうかい、と呟き、イザベラはもう一つの膳を手に取り、自分の朝食を取る。
「あ、そうです。イザベラさん?」
突然、思い出したかのようにジョーカーが口を開く。
「何だい?」
「お外のご様子はどうでしょうか? 今、アルビオンの方は大変な事になっているようですが…」
その言葉にイザベラは怪訝な表情になる。
聞きたがる理由は解る。今、アルビオンに居るだろう”親友”の事が心配なのだろう。
だが、こんな大怪我を負う原因となった相手の事を未だに慕い続けるその感覚は、彼女には理解し難い物があった。
「なんだってそいつの事を心配するんだい…、もう喧嘩別れしたんだろ?」
イザベラの言葉にジョーカーは笑う。
「とんでもない!? ワタクシとジャンガちゃんは深〜い絆で結ばれてるんですよ。
それがどうして”あの程度”で切れたりしますか? いやいや、有り得ませんネ」
これほどの大怪我を負ったというのに”あの程度”呼ばわりとは…、イザベラは半ば呆れかえってしまった。
大きくため息を吐く。それを見て、ジョーカーは口を開く。
「イザベラさんだって、心配なんじゃないですか?」
「…何がだい?」
「シャルロットさんの事ですよ」
その言葉にイザベラの両目が開かれ、口元にパンを運んでいた手が止まる。
「な、何でわたしが、あのガーゴイル娘を…心配しなきゃならないんだい? あの娘は裏切り者だよ?
死んで清々はするけど、心配なんか微塵もしてないね」
そして、思い出したかのようにパンを握る手を動かし、イライラを発散させるが如く食い千切る。
それを見つめながら、ジョーカーは、ぷぷぷ、とさも可笑しそうに笑う。
その笑い声にイザベラは、キッと睨み付けた。
「何が可笑しいんだい!?」
「いやいや、イザベラさんも可愛い所が在ると思いましてネ…」
「んな!?」
イザベラは開口する。
「実の所、ワタクシ全部知ってるんですよ…、貴方がガーゴイルや人形と言って表は罵りながらも、
その裏でそんな態度しか取れない自分に悩んでいる事を。いやはや、悩めるお年頃ですか…ピュアですネ。
もう、素直に謝りたいのに謝れない…、そんな自分にイライラして周りに当たる…、そして更に落ち込む悪循環…。
いやはや、素直になれればどれだけ楽になれるやら…。
イザベラさんも本当に大変ですネ…、のほほほほほ―――ギニャァァァーーーーーーーッッッ!!!?」
響き渡るジョーカーの悲鳴。イザベラが包帯の一部を取り去り、瓶の中の塩を擦り込んだのだ。
それを行っているイザベラは無表情…、尚の事怖かった。
一通り擦り込み、イザベラはジョーカーの顔を真っ直ぐに睨み付ける。
「おい、わたしが何だって? もういっぺん言ってみろ、ええ、おいこら!?」
乱暴な口調で問い詰める。
ジョーカーは死にそうな表情で声を絞り出す。
「な、何でもないです…イザベラさん…」
「フン!」
支援
大きく鼻を鳴らし、イザベラは自分の席で朝食を再開した。
それを横目で見ながらジョーカーは呟く。
「まぁ…冗談抜きで心配なんですよネ、お互いに…。いえ…ただの杞憂だと思うんですが、嫌な予感がするんですよ…」
その言葉を聞きながら、イザベラは無言で食事を続けた。
――同日:アルビオン大陸・軍港ロサイス――
降臨祭最終日、軍港ロサイスは人で溢れ返っていた。
誰しもが恐怖に駆られた表情をし、我先にと船に乗り込んでいく。
キメラドラゴンの群れと大量のボックスメアン、その双方によってシティオブサウスゴータは壊滅的打撃を受けた。
今回の襲撃によって出た死傷者は連合軍や町の住民を含め、数万人…もしくはそれ以上とも言われている。
怪物同士の同士討ちが無ければ、あの街に居た者全てがこの世には居なかったかもしれない。
同士討ちの隙を突く形で、何とか軍港ロサイスまで連合軍や避難民は退避できた。
だが、それで全てが解決したわけではない。
退避の際の偵察の竜騎士の報告によれば、首都ロンディニウムより敵主力部隊の出撃が確認されているのだ。
タイミングから考えても、先の化け物による襲撃はアルビオン側による物だという事がよく解った。
ぐずぐずしている暇は無い。
ド・ポワチエ等首脳部の人間がいない為、臨時で指揮を取っていたアニエスは本国に退却の許可の打診をした。
だが、事情が飲み込めていない王政府からは許可は出ない。
それでいきなり怒るほどアニエスも子供ではない…、彼女にも本国の人間の考えは解った。
それまで連勝を続けていた軍が突然の化け物の乱入で壊滅し、今は敗走しているなど確かに信じ難い事だろう。
しかし、事実なのだ。このままでは座して死を待つばかり。
アニエスは半日を掛けて本国と折衝し、漸く許可を出させた。
普通の軍人ならば無許可での撤退準備などしないだろう。
アニエスは折衝と平行して撤退の準備を進めていた為、半日が経過した今でも順調に事は進んでいた。
罪を問われるかもしれない…などの考えは彼女には無かったのだ。
ロサイスに臨時で設置された司令部で、アニエスは兵站参謀と話し合っていた。
アニエスは兵站参謀に尋ねる。
「撤退の完了までどれだけ掛かりそうだ?」
「何とも言えませんが…予め進めていたのが幸を制しそうです。おそらく、今夜までには…」
「ギリギリと言ったところか…」
敵の進行速度がどれほどのものかは解らないが、今夜までにここに到達するのは不可能だろう。
折衝と撤退の準備を平行して行ったのはやはり正解だった、とアニエスは思った。
と、誰かが司令部に入ってきた。偵察に出ていたジュリオだ。
「戻ったか。どうだ、敵軍主力の様子は?」
もし、敵軍の進軍速度が予想以上に速かったら…、アニエスの脳裏に悪い予感が一瞬過ぎる。
が、その予感は大きく外れた。
「それがね、随分とおかしな事になってるみたいだよ?」
「何だと?」
アニエスは竜騎士から報告を聞いた。
「敵主力が引き返してるだ?」
ジャンガは眉を顰める。
ジュリオは、ああ、と頷く。
彼はアニエスに報告をした後、その足でジャンガ達の所へと来たのだった。
「変な話だと思うだろ? こちらは化け物達の襲撃でガタガタだ。それを見越して彼等は軍を動かしたに決まっている。
なのに、途中で引き返し始めた。絶好のチャンスを自ら放棄したんだ。変と思わない方がおかしい」
ジャンガは顎に爪を添えて考える。
何故、敵の主力は引き返したのだろうか?
キメラドラゴンやボックスメアンとの同士討ちを恐れた? いや、それなら動かす意味が無い。
こちらへの挑発行為? それも考え辛い、意味の無い行為だ。
ならば…引き返さなければならないだけの事態が起きた?
では、全軍引き返させるだけの事態とは何だ?
暫し考え――そして思い至った。
支援
「鳥篭の鳥が逃げたんだな」
「鳥?」
タバサが聞き返す。
「ねぇ、それってどう言う事? 鳥って何の事よ?」
ルイズの言葉には答えず、ジャンガは準備運動を始める。
「な、なにしてるのよ、あんた?」
「ちょっと行って来るゼ」
「行くって、何処に行く気なのよ?」
ジャンガは振り返らずに答える。
「敵主力のところだ」
一同全員驚愕する。…何を言っているんだこいつは?
「ま、待ちたまえ!? 君は本気で言っているのか? 四万はいるぞ、敵の主力は!?」
「そうよ! 引き返してくれるんだったらいいじゃないの、放っておきなさいよ!?
だいたい、途中のシティオブサウスゴータには、まだあの化け物達が居るでしょ?」
ギーシュとキュルケが慌てた調子でジャンガに言う。
それらを聞きながらジャンガは首の骨をコキコキと鳴らす。
「姫嬢ちゃんが逃げたんだよ」
「「「「「「え?」」」」」」
「だから、奴等が引き返してるのは脱走した人質を確保するためだろ。主力が出てるって事は城は殆どもぬけの殻…。
そんなんじゃ、逃げた鳥を捕まえるのは難しい。だから引き返させたんだ」
「そんなの…解らないじゃない?」
ルイズの言葉にジャンガは笑う。
「キキキ、ああ解らないゼ」
「ちょ、解らないって、あんたね!?」
「だから確かめてくるんだろ? 何かあったらこいつで知らせてやる」
言いながら取り出したのはンガポコだった。先の艦隊決戦の際、ガーレンのメッセージを届けた奴だ。
艦隊決戦の際にメッセージを届けさせたが、その後もこうした事態を想定して手元においておいたのだ。
「じゃあな、ちィとばかし行って来るゼ」
言うが早いか、返事も待たずにジャンガは風のように駆けだした。
ジャンガは限界以上の速度で走り続ける。
「相棒、敵の主力は本当に女王陛下の脱走で引き返したと考えているのかい?」
背中のデルフリンガーの声にジャンガは静かに返す。
「さてな…、正直解らねェ。今しがたも言ったがよ、だから確かめに行くんだよ」
「だがよ、脱走が本当だったら、連れて帰るのは危険じゃねぇか?」
「…だよな」
面倒くさそうな表情で、頭を爪で掻きながらジャンガはぼやく。
「ま、そん時はそん時で考えるゼ」
「行き当たりばったりだな…」
「ウルセェ…」
そんなやり取りをしている間に、あっという間にシティオブサウスゴータへとジャンガは到着した。
ジャンガは一旦立ち止まり、シティオブサウスゴータの様子を見る。
建物は倒壊し、辺りからは火災の名残である黒煙が立ち上っているが、火災そのものは収まったようだ。
デルフリンガーが鞘から飛び出す。
「如何するんだ相棒? 遠回りするか?」
「いや、突っ切る。ここまで走ってきて解った。ガンダールヴの速度なら簡単に撒ける」
そう言ってジャンガはシティオブサウスゴータの中に突っ込んだ。
ジャンガは入ると同時に、キメラドラゴンとボックスメアンの攻撃を受けるとばかり思っていた。
だが、実際はそんな事は無かった。…それ以上に驚くべき光景も広がっている。
「…寝てるだと?」
あちこちに醜悪なキメラドラゴンの姿があった。だが、そのどれもが寝ている。
いや、どんなに不気味な姿の化け物でも生物ならば寝るのは当然だ。だが、少々不自然なのだ。
普通に地面や瓦礫の上にねそべっているのもいれば、飛んでいる最中に落下したとも思える格好で瓦礫に埋まるものもいた。
更に奇妙な事にボックスメアンも活動を停止していた。
どの機体も瞳の光が消えており、操る者がいない操り人形のように地面に崩れ落ちている。
何故だ? 人間の兵は戻して、これらは何故活動を停止させる必要があった?
と、ジャンガは視界の端に気になるものを見つけた。
それは幻獣だった。無論、ジャンガの世界のである。
マジックマギ――嘗て学院でジョーカーが放った幻獣。
支援
それも一匹だけでなく、あちらこちらに何匹もいる。
何でこんな所に居るのだろうか?
マジックマギは一匹一匹がキメラドラゴンの前に立っている。
時折杖を振ると青白い雲がキメラドラゴンの頭上に現れる。
「ありゃ『スリープ・クラウド』だな。眠りの魔法だよ」
背中のデルフリンガーが呟く。
その言葉から察するにどうやら”こっち”の魔法のようだ。
何故マジックマギが使うのか…など愚問だ。
どうやら、キメラドラゴンが眠っているのはこいつ等が原因の様だ。
ボックスメアンの方は直接マスターコンピューターのスイッチが切られているのだろう。
勿論、それは”どうして眠っているか?”の理由の答えであって、”何の目的で眠らせているか”の答えにはならない。
ジャンガは暫く辺りの様子を伺っていたが、気にせず走り出した。
「いいのかよ、放っておいて?」
「構わねェよ。寧ろ、俺には大助かりだ」
「…この間と同じだな」
いつの事だ…とは聞かなかった。タバサを助けに行った時、見張りの兵隊達が眠っていた事を指しているのだ。
ジャンガはそれを行った犯人に大体見当はついていた。
だが、今回のは何故だか違うような気がする。…ならばどうして? となるが、考える必要も無い。
今はとにかく突っ切るのみだ。
息を切らせながら、アンリエッタは力の限り走った。
街の路地裏を走り、物陰に身を潜めながら周囲の様子を伺い、また走る。
ハヴィランド宮殿を脱出してからは、ずっとこんな調子だった。
そのまま連合軍がいる所まで逃げきろうと考えていたが、現実はそうそう上手く事を進ませてはくれない。
脱走した自分を捕まえるべきだろう…、前線に出ていただろうアルビオン軍がロンディニウムへと引き返してきたのだ。
軍は今、総出で街を捜索し、自分を探している。
竜騎士が空を飛び、トロール鬼などの亜人が表通りを徘徊するのが見えた。
アンリエッタは呼吸を整え、改めて外の様子を伺う。
今度は周囲に気配は無い…。アンリエッタは裏路地を走り出した。
その瞬間、肩に激痛が走った。
痛みに足を縺れさせてしまい、地面に転んでしまった。
見れば肩口にマジックアローが刺さり、傷口から血が流れている。
そこに三人ほどのメイジが現れた。アルビオン軍なのは間違い無い。
一人が下卑た笑みを浮かべながらアンリエッタの噛みを鷲掴みにする。
「あぐっ!?」
肩口の傷と髪を無理やり引っ張られる痛みに声が漏れる。
痛みに汗を流しながら、それでもアンリエッタは気丈に目の前のメイジを睨み付ける。
男は笑った。一国の女王と言えど、こうなればただの小娘だと、嘲笑った。
悔しさに唇を噛み締めながらも、アンリエッタは杖を振ろうとする。
だが、別のメイジに杖を持った手を強かに打たれ、杖を落としてしまった。
抵抗の術を奪った三人はそのままアンリエッタを乱暴に立たせる。
一人の首が落ちた。
一人の胴が裂かれた。
一人が血反吐を吐いて倒れた。
突然、命を落とした三人にアンリエッタは訳が解らず、ただ呆然と三人の屍を見つめる。
その屍の向こうに長身の影を見た時、アンリエッタは安堵感を覚えた。
「ジャンガさん…」
相手の名を呼びながら思わず涙を浮かべる。
ジャンガは特に何を思うでもなく、アンリエッタに近寄ると背負った。
デルフリンガーの鞘は多少邪魔だろうが、そこは我慢してもらう。と言うよりも、文句は言わせない。
「テメェで掴まってろよ? 俺は両手使いたいんだからよ」
「は、はい」
肩口はまだ痛むが、掴まっている事が出来ないほどではない。
ジャンガの首に回した手に僅かに力を込める。
瞬間、ジャンガは疾風のように駆け出した。
路地裏を駆け、表通りを突っ切り、立ち塞がる者は毒の爪で片っ端から切り伏せた。
そのまま街の傍に広がる大きな森の中へと逃げ込んだ。
暫く走り、適当な大木の陰で立ち止まると、様子を伺う。
遠くからアルビオン軍の兵士の声が、上空からは竜騎士の乗る竜の羽ばたきや鳴き声が聞こえてくる。
だが、こちらには気が付かない様子だ。
ジャンガはアンリエッタを背から下ろし、自分も腰を下ろした。
「やれやれ、まさかとは思ったがよ…本気で脱獄するとは思わなかったゼ。キキキ、お転婆もここまでくれば上出来だゼ」
「わたくしも必死でしたから……痛っ」
肩口の痛みがぶり返してきた。
傷を庇うように手で覆う。
「手酷くやられたもんだな…」
「…向こうも色々と余裕が無いのでしょう。貴族としての誇りも品性もなくなってきているのでしょうが…」
アンリエッタは先程の男の顔を思い出し、歯噛みする。
ジャンガはそれを見ながら息を吐き出す。
「とりあえず…現状報告しとくか」
懐からンガポコを取り出し、起動させる。
『ン、ンガ?』
目を瞬かせ、ンガポコは起動した。
ジャンガはそのンガポコを見下ろしながら言った。
「メッセージを頼むゼ、伝言ロボ。『姫嬢ちゃんは無事だ。そっちの脱出船の最終便が出そうになったらこいつで連絡よこしな』
以上だ。軍港ロサイスに居る、タバサ嬢ちゃん達に届けな」
『ンガ!』
一声大きく返事を返すとンガポコは空へと飛んでいく。
飛び去っていくンガポコを見て、アンリエッタはジャンガに尋ねる。
「あの、今のは?」
「俺の世界の伝言ロボ。お前らに解り易く言えば、伝書フクロウなんかと変わらねェよ」
「いえ、そうではなく、脱出船とは?」
「ああ…その事か。知らないのか?」
アンリエッタは首を振る。
連合軍がこのアルビオンに来ているのは知っている。
だが、脱出船とは…敗走しているのだろうか?
ジャンガは事情をかいつまんで説明した。
降臨祭の最終日になってシティオブサウスゴータに化け物が現れた事。
化け物の大暴れで連合軍はボロボロになり、避難民と共に軍港ロサイスまで退却した事。
今は撤退の真っ最中だと言う事。
自分は敵主力が後退した理由を調べに来た事。
「あの、では何故戻らないのですか?」
「お前バカか?」
いきなりバカと言われアンリエッタはムッとなったが、直ぐに怒鳴る事はしなかった。
「どう言う意味ですか?」
「今の状況考えろ。敵さんは全員お前を探す事に夢中になっている。つまり、お前が連中を足止めしているようなものだ。
実際、お前が足止めになったお陰で撤退の準備は滞りなく進んでるんだ。
このまま真っ直ぐ向こうに戻ってみろ…、敵も全員撤退中の味方の所に呼ぶはめになるぞ?」
「あ…」
アンリエッタは己の迂闊さに項垂れた。
自分は今敵に追われているのだから、ロサイスに戻ればそこまで敵が来るのは明白な事実だ。
確かに、今戻るのは危険と言える、ジャンガの読みは正しい。
「解りました。…でも、いつまでこうしていれば良いのでしょうか?」
「だから、その為にあいつを飛ばしたんだよ。撤退の最後の方で逃げられるようによ。
空に逃げれば連中も流石に追い辛いだろ」
「それはいつ頃になるのですか?」
「さてな…、とにかく待つだけだ…と。敵が此方にやって来たらまた走るからな」
そう言ってジャンガは大木に寄りかかると目を閉じた。寝てはいないだろう。
アンリエッタはため息を一つ吐き、自分も大木に身体を預けた。
今は少し休もう…、アンリエッタも目を閉じた。
以上で投下終了です。
今回はこれで、アデュー!
ラスボスさん&代理の人乙
毒の方乙です!
>>688 毒の方って書くと、印象が全然違ってみえるなww
毒の爪の人乙でした。
えー、支障なければ55分から参りたいと思います。
んじゃ支援するぜ
mission 06 The Landing
多勢に無勢の戦況において、少数の集団が狙うのは敵司令塔の撃破だ。
特に現在のレコン・キスタは、勝ち馬に乗っているだけの烏合の衆である。頭を潰すのが有効であろう事は容易く想像できる。
ただ、その頭を潰す手段が無いのが、トリステインの現状なのだ。
「それで、手があるといっていたが、どうするんだ?」
自分たち傭兵が配置された前線でアニエスが尋ねる。視線の先にはもう手の届きそうな距離にまで迫った敵の前線部隊と、空に展開した艦隊に竜騎士隊が広がっている。
上層部としては捨て駒のような扱いなのだろうが、擬似魔法を扱える彼ら傭兵部隊の方が、正規部隊より遙かに有効の筈だ。
「G.F.を使う」
「G.F.を?確かにG.F.は強力だが……」
アニエスは難色を示す。彼女が今まで見たG.F.は、オークを壊滅させたシヴァと海賊のアジトで使ったケツァクウァトルだけであるから無理もない。
「まだ見せていないG.F.がある。それで……敵の旗艦と艦隊を狙う」
スコールの目が見据える先には、レコン・キスタの艦隊旗艦レキシントン号があった。
それは全く現実感のない光景だった。
圧倒的に不利な戦況。打開策がどうといった話ではない中、マザリーニ枢機卿はおのが目を疑った。
戦場全域に響くような轟音が大地に響いたかと思うと、遙か東に突如城らしき影が現れた。そしてその城から放たれた16筋の光が弧を描きながら次々と戦場に飛来し、レコン・キスタの艦を貫いていったのだ。
続けて二派、三派と光条が降り注ぎ、艦隊は元よりその下に展開していた揚陸部隊にも突き刺さってクレーターをあちこちに作っていく。
異変はそれだけに収まらない。
上空から銀色の竜が現れたかと思うと、その口からいくつもの火球を放って艦隊を次々と火だるまにしていった。
「あ、あれは……」
「俺たちの……味方、なのか?」
本営近辺に居る兵達は皆、戸惑いの表情を浮かべたまま互いに顔を見合わせる。
(ならば……いっそ)
「諸君、見よ!」
今こそが最高のタイミングだと見切り、枢機卿は声を張り上げた。
「あの竜こそ、始祖ブリミルの使い魔、ヴィンダールヴの使役したという竜に違いない!これは、始祖の認める戦いなのだ!我らが祖国、トリステインにこそ勝利という名の栄光が相応しいと、始祖がお認めになったのだ!」
「G.F.召喚 アレクサンダー、聖なる審判」
戦場のただ中にあってスコールの与えた初撃は、レコン・キスタの左翼を強かに打ちのめした。
「トルネドっ!――城……!あれもG.F.か!?」
混乱に陥っている敵の一団を上空へ吹き飛ばしながら、巨体を見てアニエスが尋ねる。
「そうだ。まずは敵の空中戦力を掃討する」
槍兵が突きかかってくるのを皮一枚でかわしきり、返す太刀で切り伏せる。
『へぇ、G.F.ってこういう使い方も出来るんだねぇ……』
これまでは基本的に直接戦闘でばかり使ってきた。というか、バハムートやアレクサンダーを入手した後ではこうした数と数の戦いが起きなかったので、活用する間もなかったのだが。
「……態勢を整えたな」
二度三度と砲撃を加える内に、艦列を整え直し回避行動を取り始めた艦隊を見てスコールはアレクサンダーを引かせる。
「G.F.召喚 バハムート」
続けて呼び出すは王の名を冠する竜。
雲を突き抜け降下してきたバハムートが、口から放つ火球で再び艦隊を襲う。
アレキサンダーよりも遙か至近で放たれる火球に、回避運動は到底間に合わず、艦隊瞬く間に火達磨にされていく。
そこでライオンハートを下ろし、スコールの左腕は狙いを定める。
「メガフレア」
その腕の指し示す先には、神聖アルビオン帝国艦隊旗艦レキシントン号。
バハムートは深呼吸でもするかのように体を大きく仰け反らせ、ひときわ太い炎の柱を口から吐き出した。
それはレキシントン号のメインマストと甲板そして船底までを、まるで熱したナイフがバターを切るかのようにあっさりと貫通させ、更に地上へ降り注ぎ大爆発を引き起こした。
「――これが……G.F.の力……」
突如として戦場に発生した光に、手をかざして眩しさを和らげながらアニエスは呟いた。
事情を知っている彼女でこれなのだから、周りは既に混乱の坩堝だ。
だがそこで、後ろ――つまりトリステイン陣営から鬨の声が上がると共に、温存されていた500の兵が突撃してきた。
「行ける……行けるぞ!」
アレクサンダーとバハムートに痛手を負わされた敵の本陣は、回復にはほど遠く、艦隊も潰されて指揮系統も滅茶苦茶である。
「勝てる!」
「勝負を決めに行くぞ、アニエス」
メインマストを失い、浮力を維持できなくなったレキシントン号がゆっくりと降下してきていた。
「敵の頭を取る!」
レキシントン号の軌道を読んでスコールが駆け出す。
「ああ!」
アニエスもそれに続く。
艦隊が崩壊し、混乱の極みに達している戦場を駆け抜けるのはさほど難しいことではなく、敵兵の血で進む道を舗装しつつ一直線に進んでいく。
「ドロー レビテト!」
「レビテト!」
座礁した巨艦が眼前に迫ったところで、スコールは手近なメイジからドローして、アニエスは手持ちを使って体を浮かせ、斜めになった船体の上へ舞う。
「はぁっ!」
飛び込みざま、邪魔な一兵を切り伏せつつ走り続ける。
「雑魚に用はない!艦隊司令は何所だぁっ!」
後に続きながらアニエスは叫ぶ。
アニエスの気迫に押されたか、あるいは一撃で人間を真っ二つにするスコールに恐怖を覚えたか、ほとんど妨害を受けることなく二人は船内へと突入した。
「迎え撃」
「サンダー!」
「ぎゃああああああっ!」
迎撃に来たメイジに先んじてアニエスは雷を打ち込み、初撃から外れていて尚かつ冷静にファイア・ボールとエア・ハンマーを打ち込んできた連中は、スコールが前に出て全て受けきる。
そのまま距離を詰めてライオンハートが暴れ回る。
「くっ!ひ、ひけぇっ!」
そこからはスコールの提案により、意図的に距離を置いての追撃戦に移行する。防衛側は無意識のうちにその防衛網を『最も守るべき場所』へと後退させていった。
「ぐぇふ……」
「……この扉か?」
「おそらくな」
くずおれた最後の兵の向こう側には、明らかに他とは違う観音開きの扉があった。
支援
「しかし、お前の知識は役に立つな」
腰に収めている手鏡の柄をつっと指で撫でしみじみと呟く。
「単なる戦術の一つだ。……突入する」
ライオンハートで扉を叩ききり、蹴破ってスコールが飛び込む。
「ファイア・ボール!」
「ライトニング・クラウド!」
「エア・ハンマー!」
次々にスコールの体へ火の玉と雷、空気の固まりがぶつけられるが、それらは全てスコールの属性防御で阻まれる。
(今のが風のトライアングル以上が使えるというライトニング・クラウドか……雷を防御していて良かったな)
「な」
「何で効い」
「遅い、トルネドっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
続けて突入したアニエスが唱えた擬似魔法によって、待ちかまえていた三人のメイジは次々に暴風で打ち上げられ、部屋の屋根に突き刺さっていく。ぴくりとも動かないのは気絶したのか死亡したのか。
残ったのは一人の男
「貴様が艦隊司令かっ!」
……と、何故か少女が一人。
「いかにも、私が艦隊司令のジョンストンだ。よくも私が皇帝陛下よりお預かりした艦隊を、滅茶苦茶にしてくれたな!トリステインの者ども!しかも乗り込んできたのが名もない傭兵メイジとはな……だが動くなよ!動けばこの娘が!どうなっても知らんぞ!」
ブレイドがかけられているらしい杖を少女の首筋に当てる。
「は、離しなさいよっ!」
「暴れるな!無駄に傷つくことになるぞっ!」
そのあまりに奇妙な光景にアニエスは首をかしげた。
「誰だ、あの娘」
「あいつは……!」
そこで後ろから息を飲む声が聞こえる。
「知っているのか、レオンハート」
思い出さぬよう常に意識の外に置いては居たが、あの桃色の髪を彼が忘れるはずがなかった。
『あ……もしかしてこの子って……』
(あの髪の色……背格好、おそらく間違いない)
「アンタは……!」
2ヶ月ぶりにその視線が交わる。
無論彼女の方も、額に傷のあるその顔を覚えていた。
「あの時の平民!」
「この娘は、ラ・ヴァリエール公爵の三女だ!……もし貴様ら傭兵ごときのために死ねばどうなるか……!」
マントを付けていない格好から判断したか、ジョンストンは口元に笑みを浮かべて二人を見る。
「そうだ。ヴァリエール、だ」
「まさか!本物なのか!?」
「……悪いが、確証まではない。2ヶ月前、ほんの一時間ほど顔を合わせただけで、顔や細部は覚えてないんだ」
「お、覚えてないですってぇ!?」
人の苦労を知りもしないスコールの反応に、ヴァリエールは目をつり上げる。
「では偽物の可能性も……?」
「私は本物よ!」
「そ、そうだとも!」
アニエスの懸念に、ヴァリエールとジョンストンが全力で主張する。
(いや、これは……)
「……おそらくは本物だろう。彼女は魔法学院の生徒で、いわば非戦闘員だ。こんな所にいるのはおかしい」
「それでは偽物なのではないか?」
「そ、それは!私が姫様の……」
「だからだ」
ヴァリエールの抗弁は聞かずに、スコールは断じる。
「もし騙す気があって偽物を使っているのなら、もう少し信憑性の高い、戦場にいてもおかしくない人物を人質に仕立てているはずだ。予期しない窮地に陥ったため、理由は判らないが、側にいたヴァリエールを人質にした、というところだろう。
そもそもヴァリエールを知っている俺が一番にここに来たのは単なる偶然に過ぎない。知らない奴が来ていれば、躊躇もせずまとめて斬り殺していた可能性も高いだろう。ヴァリエールの姿を執るのは無意味だ」
容赦のないスコールの批評にヴァリエールもジョンストンも息を飲む。
「ではあれは本物……そうか」
ようやく合点がいったとアニエスが目を見開く。
「ヴァリエール公と王宮の仲が険悪なのは、あの娘がレコン・キスタの手に落ちていたためか!それならば納得がいく」
「ええ!?お父様が、王宮と!?」
「フッハッハッハ!何やら面白いことになっていたようだな!」
「あんた達が脅迫してたんじゃないのか」
今更ながらライオンハートを鞘に収めつつ尋ねる。
「そのような事は知らん!だが都合が良い……フネが飛べない以上、この娘の領地へ落ち延びさせてもらおう!」
「そうはさせないわ!あなた達、私に構わずこいつを切りなさい!トリステインの為に命を捨てる覚悟は出来ているわ!」
「断る」
にべもなくスコールは目を逸らしながら言った。
「あんたはそれで良いかも知れないが、見殺しにした俺たちが貴族に追われたらたまらない」
「なっ……!わかってるの!?こいつを逃がしたら……!」
「……別にどうにもならんと思うが」
こちらも剣を鞘に収めながらアニエス。
「確かに俺たちは決着を計るためにここに乗り込んできたが、艦隊が壊滅した時点で既に戦いの趨勢は決している。ここに来るまでの艦内でもかなりの数の将校を倒してきた。指揮系統も滅茶苦茶な今、あんたはただの一メイジに過ぎない。さほど重要なわけでもない」
「お、おのれ好き勝手良いおって……!っ……だ、騙されんぞ。そうして挑発させて杖をそちらに向けさせるつもりだろう!」
感情のままにスコール達に杖を向けそうになるのをすんでの所で押さえたらしい。別にそんな意図はなかったのだが。
「だがレオン、このまま逃して良いのか。外はあの通り乱戦だ。私たちが見逃しても、下手をすれば二人とも巻き込まれて死ぬぞ」
二人で扉を開けるように左右に分かれながらアニエスがスコールに言う。その台詞に司令は顔を引きつらせる。
「判ってる。非戦闘員の彼女を見殺しにするのも気が進まないし、それが原因でおかしな言いがかりを付けられたくもない。だが……」
(どうすればいい……)
貴族に対しての平民の態度がうんぬんかんぬんとヴァリエールが怒鳴っているのを余所に、スコールは思考を走らせる。
実は、全く手がないわけではない。ストップで二人まとめて時間を止めれば何の危険もなく事態は解決する。
ただし、問題がある。
現在のスコールは、魔法を自由自在に使えるという訳ではないのだ。ここ、ハルケギニアでは生態系も全く異なっているため、未だに特定の魔法はドロー出来る対象が見つかっていない。時空魔法のストップも、入手できない魔法の一つだ。
スコールは、こうした魔法の使用を制限していた。こちら側に来てからは一度として調達不可能な魔法は使っていない。魔法の使用は、ジャンクションシステムを利用している以上、微弱ながらもスコール自身の弱体化に繋がるのだ。
ラグナ達が自分たちの力を駆使していたことを思い出して、アーヴァインの持っている魔法を引き出そうとするが、
『うーん、どうも上手く行かないねぇ』
スコール自身が自前で魔法を持っているせいだろうか。
HPの書、力の書等G.F.に使用する書系のアイテムがあれば調達は容易いのだが、生憎と持ち合わせは一つもないし、流石のG.F.トンベリもエスタのペットショップをここまで呼ぶことは出来ないようだ。
(……トン……ベリ)
ハッとした表情でおもむろにスコールは懐へ手を入れると、カードの束を取り出した。
「おい、クァッド・ミストなどどうするんだ」
「まだ方法があった。ヴァリエールを無傷で助け出す方法が」
そう言うスコールが束の中から抜き取ったカードには、キングトンベリが描かれていた。
「負け惜しみを!そんなカードで何をするというのだ!」
「ケツァクウァトル、カード変化」
スコールの手の中でカードが形を変え、一本の刃物になった。
「なっ!?」
「えええええ!?」
スコールの常識外れな技能は見慣れていたアニエスですら、驚愕は隠せない。
「ナイフ?いや……これは……」
「ほうちょうだ」
…………
嫌な沈黙が場を支配する。
「……投げるのか?」
「それは効きそうだな」
モノがほうちょうだけに。
「きゃうっ!」
ジョンストンが無言でヴァリエールを高い位置まで引き上げる。頭から胸までを守れるように。
「だがこれは、こう使う。アニエス、受け皿になってくれ」
「は?」
「アレクサンダー、生命魔法精製」
アニエスに向かって掲げられたほうちょうは、見る間にその体積を減らしていき、それに伴って現れる小さな光は、全てアニエスに吸い込まれていった。
「……この魔法は……こんな魔法があったのか!?」
「あんたにとっても、役立つ魔法じゃないか?」
「!」
その言葉に息を飲む間に、スコールは腕を二人へ向けて突き出していた。
「デス」
すとん、とヴァリエールの体が床に降りる。
「え?」
振り向く彼女の目の前で、瞳孔の開ききったジョンストンの体がゆっくりと倒れていった。
「……!え?え!?ええええええ!?」
何が起きたのか理解も出来ぬまま混乱しているヴァリエール。
「よし、敵司令を討ち取り、捕らえられていた捕虜の身柄を確保した。脱出するぞ」
「あ、ああ……それはいいが、この娘、どうする?」
先程スコールが言ったとおり、非戦闘員の少女である。普通に連れたのでは足手まといこの上ない。
「……抱えるか、おぶって行くか」
「それなら私がやろう。相手は貴族だ。男のお前では何かと面倒だろう」
「頼めるか?」
「ああ、私の剣は刃こぼれで使い物にならなくなりかけてるし、私よりお前の方が強い。その方が効率的だろう。連れて行く際の援護を頼む」
「どういう……どういうことなのだこれはぁっ!」
上空でジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは激高した。
見たこともない城から放たれた光で艦隊と揚陸隊がやられ、見たことのない竜によって旗艦も落とされた。
混乱に陥った自軍は、僅かなトリステインの兵に良いようにあしらわれてしまっている。
「くそ……!」
もはや軍を立て直すのは至難の業。こうなれば、『あの力』を持つ彼女の身柄だけでも確保しておかなければならるまいと、ワルドは馴染んだグリフォンの騎首を座礁しているレキシントン号へと向ける。
その視界の先、斜めになったレキシントン号甲板上には彼が求める人影があった。
「ルイズ……!だが、何者だ!?」
その目当ての少女は、見た事のない女に背負われていて、それを庇う形でやはり見たことのない男が立っている。
支援
「トリステインの傭兵か!?くっ……」
どう行動すべきか迷う彼の目の前で、ルイズを連れた傭兵達が走り出す。その行く先を視線で辿ると
「トリステイン本陣!?奴ら、ルイズを奪還するつもりか!そうはさせん!」
グリフォンを低空へ下ろし、進路上に立ちふさがる。
「止まれ!ルイズを置いていってもらおう!」
ザッと二人組が足を止める。
「ワルド!」
背負われていたルイズが声を上げた。
「彼女は重要な人物だ。怪我をしたくなければ大人しくこちらに渡してもらおう」
グリフォンから降りたワルドは、スッとその杖を水平に向ける。
「誰があなたと一緒に!傭兵、あいつを倒しなさい!」
「言われなくとも……デスを一つもらうぞ」
不可思議な光芒を放つ剣を構えた男が、ルイズを背負った女の肩に一度手を置いて、正面に立つ。
「アニエス、先に行け」
「わかった。任せる!」
「にがさんぞ!」
駆けようとする女傭兵の足を狙ってライトニング・クラウドを放った。だが、その杖の先に男の方が割り込む。
「バカめっ!身を挺したところで、一度の盾代わりにしかっ」
嘲笑うワルドの前で、男は、何事もなかったかのように立ち続けていた。
「!?」
その間にもルイズを背負った傭兵は走り続ける。
「待て!」
「俺が相手だ」
「少々頑丈なだけで!エア・ハンマー!」
苛立たしげに杖を向け、今度は空気の固まりを放つが、この男は仰け反りもせず平然とそれを受け止めて見せた。
「貴様……!何者だ!?」
二度も自分の魔法を受けて、傷一つ見あたらない男にワルドは恐怖すら覚えた。
「俺は、バラムガーデン傭兵部隊SeeD、委員長のスコール・レオンハートだ」
「傭兵部隊……シード!」
それはワルドにとって求めていた答えではなかったが、その単語だけは記憶に刻みこまれた。
「君を認めよう。僕の名はジャン・ジャック・フランシス……」
名を名乗ろうとしたとき、空から四つの光がスコールの周りに降り注いだ。
「なんっ……だ!?」
「!?……任せる!」
意味不明の一言を残すと、スコールは踵を返して仲間とルイズを追い始めた。
「なっ……褒めたとたん逃げるか!?貴様!」
その背を彼も追おうとしたところで、先程までスコールの居た辺りの地面が盛り上がる。
「今度は何が……!」
そこでワルドは気づく。先程空から降ってきた光は、剣だった。四降りの剣だった。
二降りはよく似ている豪奢な剣で、もう二降りは片刃の剣だ。
そしてその剣に囲まれた地面が、今盛り上がっていく。否、盛り上がっているのは地面ではない。赤い布地が、まるで生えてきたかのようにワルドの眼前に立ちふさがる。
「やれやれ……いつもと違うところに繋がったと思ったら、ここでもない、か……」
その布地はばさりと一回転し、どこから現れたのか隻腕の巨漢が頭から纏う外套と化した。
「貴様……!亜人か!?」
「んん?なんだいあんた、この俺とやろうってのかい」
ワルドにレイピアその物といった外見の杖を向けられて、僅かに覗く外套の下の顔が、笑った。
「なら容赦はしないぜ!」
巨漢の片腕が、自分の周りの四降りの剣の内の一つ、カーブを描いた片刃をその手に取る。
「亜人如きに手間取るわけにはいかない!」
距離はまだ空いている。ライトニング・クラウドを放たんと杖を向けるが、亜人はその場で剣を振りかぶった。
斬
鉄
剣
斬鉄剣
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」
遙か彼方に吹っ飛ばされていくワルドを尻目に、隻腕の巨漢――ギルガメッシュは踵を返す。
「あんた、結構な腕前のようだが……あいつに比べればまだまだだ」
そう。幾たびも彼が立ちふさがり、そのたびに敗退を繰り返したクリスタルの戦士達。そのまとめ役。
「待ってろよ、バッ……」
言葉の最後は小声で聞き取れなかったが、ぐっとその手が握り拳を作る。
「どこにあるのか次元の狭間……」
誰に尋ねるという訳でもない言葉を残し、ギルガメッシュは虚空に消えていった。
――タルブ平原会戦。
侵攻してきた神聖アルビオン帝国と、トリステイン王国の初の直接戦闘において、緒線で現れた二柱の正体不明のG.F.の存在は流れを作るものでしかなかったとするのが後の戦史研究家の意見である。
トリステイン側が完全に『勝ち』を得ることができたのは、500余名の擬似魔法を収めた傭兵達の存在に依るものだとするのが通説である。
これまで何とか週一ペースを維持してきたんですが、ストックが尽きた&レポート、期末が近いのでしばらく間を空かせて頂きます。
それでは
ギルさん何しに着てるんですか 支援
乙
ビックス&ウェッジも何やっているのだろうか
乙
まさかギルガメッシュが出てきて、サイファーの断末魔をワルドが叫ぶことになろうとは。
一応次元の狭間を彷徨っているからここに出てきてもおかしくはないか
毒の爪の人、FFの人乙です。
何なんだろ今日は、凄い豊作ですなw
そんな流れに乗れるか水を刺す事になるか判りませんがディケイドの8話を投下したいと思います。
差し支えなければ5分後。
また今回も訳が必要な所があるんで後でアップローダに上げときますw
乙
ああ、やっぱりワルドが
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」
な流れだったかw。
第8話「王都トリスタニア・中編」
「凄い…凄すぎるわ!ダーリンも!ユウスケも!!」
あっという間にグロンギを打ち倒したディケイドとクウガ。
その勇姿を目の当たりにした、キュルケは二人に熱っぽい視線を交互に送って歓喜の声を上げた。キュルケを知る者達は、惚れっぽいキュルケがまた新しい男に惚れたのだと理解した。
「…アンタ、もしかしてユウスケにも惚れたの?」
「えぇ!あたし、彼に恋したみたい!痺れたわ…心の底から…!」
顔を紅潮させて満悦な表情のキュルケ。脳内で士とユウスケに挟まれて、さながら逆ハーレム状態でも想像してるのだろうか。
本当に色ボケの脳を持つ一族、節操無しも良い所だとルイズは呆れ果てた。
だが炎を背にしたディケイドの姿を見ていたら、ルイズの顔も自然と綻んでいた。ルイズ自身は決して認めないだろうが、ルイズもキュルケの事を言える立場でもない。
街を襲ったグロンギは打ち倒され、それによる安堵感が一同を包み込んでいた緊張を解きほぐしつつあった。
戦いを終えたディケイドとクウガもこちらに歩いてきたが、その途中、二人は突然足を止めた。
そしてその場で踵を返し、自分達が打ち倒したグロンギの炎の、その向こう側を見詰めた。
「…まだいる」
その気配をいち早く感じ取ったタバサが呟いた。一同に再び緊張が走った。
二人のライダーがそれぞれ見詰める炎の向こうから、二つの影が現れた。計四体の、新たなグロンギがその姿を露にした。
「よ、4体!?まだあれだけいたのか!?」
1体でも恐ろしかった敵が更に4体も。いや、全部で6体ものグロンギがこの王都に侵入していた事に、ワルドは驚愕した。
4体のグロンギは炎を乗り越えて、ディケイド、そしてクウガの前に並び立った。
『グムンド ガドラグ ダゴガセダド ビデリセダ、ラガバ クウガグ ギダドパバ』
『ゴセビ クウガド ビダジャヅグ ログパパンジビ、ジョブパバサバギグ ジャヅロ リントン ゲンギザバ』
クウガの前に現れた、鼻に大きな角を生やしたサイのグロンギ、ズ・ザイン・ダと、頭から2本の触角を生やし、首に大きなスカーフを巻いているバッタのグロンギ、ズ・バヅー・バが言い放つ。
『ザセゼ ガソグド パセサン ゲゲルゾ ジャラグスジャヅパ ザギジョグスボリ』
『ズン、ボセロラダ ゲゲルン ダボギリン パパンボザ!』
ディケイドの前に並び立つ、巨大な大鎌を携えたカマキリのグロンギ、メ・ガリマ・バと、黒髪のドレッドヘアのヒョウのグロンギ、ズ・メビオ・ダが叫ぶ。
「…追加オーダーを頼んだ覚えは無いんだがな」
2体のグロンギを前にしても尚、士は余裕の態度を崩さない。
「んな事言ってる場合かよ!…ったく、次から次へと!まるで俺の世界に戻ってきたみたいだ!」
「そんなの、襲ってくる連中を片っ端から倒して行けば問題無い。あの時よりも遥かにマシだろ?」
あの時、と言われ、ユウスケが思い出したのはディケイドと共に戦ったクウガの世界での最後の戦い。
目覚めたグロンギの王『究極の闇』、ン・ガミオ・ゼダと、奴が人間から生み出した無数のグロンギ。それを相手にたった二人だけで立ち向かい、そして勝利した時の事。
それと比べれば、相手はたかが4体、全然楽勝だ。
「…あぁ、お前の言う通りだな!片っ端からここでぶっ倒す!」
クウガが右拳を左掌に打ち付けて言った。
「そう言う事だ」
するとディケイドはライドブッカーから一枚のカードを引き抜き、ディケイドライバーにセットした。
『KAMEN RIDE!AGITO!』
ディケイドライバーから音声と共に目映い光が放たれディケイドを包み込むと、その姿を黄金の鎧を纏った姿、『仮面ライダーアギト』へと変化させた。
仮面ライダークウガ、仮面ライダーアギト、二大ライダーが背中合わせに並び立った。
「そっちの2体は任せたぞ、ユウスケ!」
両手をぱんぱんと叩き合わせて、ディケイド・アギトがガリマとメビオを見据える。
「あぁ!お前も頼んだぞ!士!」
拳と掌を打ち付けた状態から構えを取り、クウガがザイン、バヅーへと駆け出した。
それとほぼ同時に、アギトも飛び出した。
寝る前に最後に1支援
クウガはいきなり飛んで来たザインのパンチを受け止めると、そのままザインの胸にパンチを打ち返す。
その隙に背後からバヅーが襲いかかるが、それを察知したクウガはキックを打ち込んでバヅーを弾く。
バヅーに一瞬気を取られた隙にザインはクウガの手を払い除け、お返しにとクウガにフックを2発打ち込んだ。
蹌踉けるクウガをバヅーが背後から羽交い締めにしようとするが、それを強引に振りほどくと、振り向き様にバヅーの顔を殴りつける。
すぐさま背後から迫るザインに向き直ったが、一瞬遅れたため両腕を掴まれてしまう。
しかしすぐにザインの腹に蹴りを打ち込んで両腕を解放させると、クウガは2体のグロンギに挟まれた状態で再び構え直す。
向かってくるアギトにガリマは大鎌で斬りつけるが、アギトはそれを受け流すとそのままその背後に控えていたメビオを殴りつける。
ガリマは背後から再びアギトを襲うが、察知していたアギトはひらりと回避し、そのまま右のフックを打ち込む。更に一瞬蹌踉けたガリマの顔へ更に左フックを打ち込んで弾き飛ばした。
その背後からメビオが襲いかかるが、アギトは上段回し蹴りでその顎を蹴り飛ばし、更にそのままもう一発、回し蹴りを食らわせてメビオを蹴り飛ばした。
地面を転げたガリマとメビオは怒りの唸り声を上げながら立ち上がり、再びアギトへと向かう。
「いいぞ、どんどん来い!」
対するアギトも余裕っぽく両手をぱんぱんと叩き合わせ、向かってくる2体のグロンギに応戦する。
1対2と言う数で不利な条件にも関わらず、まるで臆さずに拮抗した戦いを繰り広げる二人の仮面ライダー。
ルイズ達は、その戦いぶりからまったく目が離せないでいた。
クウガがパワーで押し切り、アギトが見事な体裁きで敵を翻弄する。
魔法の力で戦うハルケギニアの人間から見れば些か原始的な、単純な殴り合いによる戦いだが、そこには何か目を釘付けにされるある種の美しさのようなものがあった。
「凄い…やっぱり凄すぎるわ!あの二人!二人掛かりの敵に負けてない!」
興奮してキュルケが声を上げた。キュルケもうずっとクウガの勇姿に酔いしれていた。
「うん、あれなら二人相手にでも勝てるわね!」
珍しくルイズがキュルケに同意する。ルイズはディケイド・アギトの方を見ていたが、気持ち的にはキュルケとほぼシンクロしていた。
だがはしゃぐ二人とは裏腹に、タバサとワルドの二人の表情は硬かった。
「…少し、旗色が怪しくなってきたな」
水を差すようにワルドが呟いた。
「…どう言う意味?」
「押されてきている」
今度はタバサがそう静かに言う。
一同は、改めてライダー達の戦いを注視した。
アギトはガリマにパンチを繰り出すがそれらは虚しく空を切った。
ガリマは大鎌を振り下ろして反撃する。アギトは一撃目を何とか回避するが、二撃目は間に合わず、仕方無く腕で受け止めた。だがそこにメビオが襲いかかる。メビオの爪がアギトの背中を切り付けた。
「がっ!」
蹌踉けるアギトに、空かさずガリマの大鎌が襲いかかるが、それは何とか地面を転がって回した。
ガリマは自身の大鎌とアギトのリーチ差を利用して巧みに攻撃を仕掛けて来ていた。
また足の早いメビオの錯乱もあって、アギトの攻撃はなかなか決まらず、徐々に追いつめられつつあった。
『ゴン ガバゼパ ゴセビパ ヅギデボセラギ!』
バヅーは軽いフットワークで右へ左へと動き回り、クウガを翻弄する。
クウガはバヅーの動きを捉え切れず、見失った一瞬の隙を突かれてパンチやキックを打ち込まれてしまう。
「ぐっ!」
腹にバヅーの蹴りが打ち込まれてクウガは身を悶えさせた。
そこを背後からザインに締め上げられ、振り向かされてその顔に左、右とフックを打ち込まれる。
フラフラになった所をバヅーに蹴り飛ばされ、民家の玄関先にあった樽を破壊して中身の水を頭から被ってしまった。
それでも尚立ち上がろうとするクウガだったが、更に追い打ちにザインが得意とする突進攻撃を受けてしまう。
「ぐあぁっ!」
まともに食らったクウガは吹っ飛ばされて道沿いの商店の中へ突っ込んでしまった。
「ユウスケ!」
思わずキュルケが叫んだ。
「2体から繰り出される絶妙なコンビネーション。あれを一人で攻略するのは非常に困難」
タバサは淡々とした口調でクウガの戦況を分析する。
「それにツカサくんの方はどうやら間合いを見切られているな。リーチのある分、敵の方が有利だ」
続けてワルドもディケイド・アギトの戦いを解説した。
「ツカサ…」
ルイズが心配そうに声を漏らした。無意識に手がぎゅっと強く握られた。
「大丈夫です!」
すると重くなっていた空気を払拭するように、夏海が声を上げた。
「士くんもユウスケも、今よりもっと辛い戦いをくぐり抜けてきたんです!こんな所で負けたりしません!」
「ナツミ…」
夏海の目は、二人の敗北など微塵も考えていないようだった。
そして夏海の言葉にルイズも自分を奮い立たせる。
そうだ、自分の使い魔を信じてやらなくてどうする。ルイズは目を瞑って呼吸を整えると、強い視線で自分の使い魔の姿を見た。
(ツカサは、こんな所で負けたりしない!)
「ちっ!」
背後のクウガの劣勢を感じ取って士は舌打ちをした。
その目の前にはガリマとメビオが薄ら笑いを浮かべて立っている。今の状況は相手方の優勢、早くも勝ち誇っているようだ。
『ログ ゴパシザ パ クウガ。ゴラゲロ ググビ ガドゾ ゴパゲデジャス』
「…フッ」
だがメビオの言葉に、士は思わず吹き出した。
「面白い冗談だが、あまり見くびらない方が良いぜ。あいつも……この俺もな!」
アギトはカードを1枚、目の前に引き抜くと、ディケイドライバーへとセットする。
『FORM RIDE!AGITO!STORM!』
ディケイドライバーから青い光が放たれ、アギトの身体に波紋が走ると、黄金の鎧の胸部と左腕が青色に変化した。左腕に至っては、形状も変化している。
左手に双刃の槍『ストームハルバード』が握られ、アギトは『ストームフォーム』へとフォームチェンジを果たした。
ストームハルバードを頭上で回転させると、その切っ先を2体のグロンギへと向けた。
『バパダダザド!?』
『ラスゼ ガゴン クウガン ジョグバ ゼンバザ!』
アギトのフォームチェンジに動揺する2体のグロンギ。ストームハルバードを手にした事により、これまでのリーチ差が逆転した。
「いてててて…」
吹っ飛ばされた商店の中でクウガがむくりと起き上がった。ザインの直撃を受けたとは言え、致命傷に至る程では無い。
外にはザインとバヅーが待ち構えている。奴らもあれだけでクウガがくたばったとは思っていないようだ。
敵は強烈なパワーと突進力を持つ奴と、素早い動きで翻弄する奴。あのコンビネーションはそう簡単には破れそうにない。
と、ユウスケは自分の足下に転がっているものに気付いた。
それは剣だった。どうやらこの店は武器屋で、さっきクウガが店の中に突っ込んだ時に積んであったものをひっくり返してしまったようだ。
「よし!これなら!」
クウガは、散らばっていた剣の中から適当に一本拾い上げた。その剣は刀身に錆が浮いてとても剣としての役目を果たせるものでは無かった。
だが、それでも良かった。要は『イメージ出来れば』それで良いのだ。
「借ります!」
店主はとっくに逃げたのか、店内には誰もいなかったが、一応断りを入れる。
「超変身!」
ユウスケが叫び、念じると、アークルに埋め込まれていた霊石"アマダム"の色が赤から紫へと変化する。それと同時に赤の鎧は銀と紫の、より重厚なものへと変化し、複眼の色も紫に変わった。
クウガは『タイタンフォーム』へと超変身を果たし、その手に握られていた錆剣も専用武器『タイタンソード』へと変化する。
『グガダゾ バゲダバ クウガ!ボンゾパ ルサガビバ!』
商店の外へと出たクウガは、悠然と歩き出した。
そこへ先程と同様にバヅーが素早い動きでその周囲を動き回って翻弄し、パンチを打ち込んだ。
だが、クウガはまるでびくともせず、バヅーを無視して歩を進めた。
ムキになったバヅーは更にパンチやキックを連続で次々と打ち込んだが、バヅーの攻撃ではクウガを揺らす事すら敵わなかった。
パワーと耐久力に優れた『タイタンフォーム』の前では、ただ素早いだけのバヅーの攻撃はまったくの無力だった。
『ゾギデソ バヅー!ゴセガジャス!』
そこにザインが突撃してくる。さっきクウガを吹っ飛ばしたあの突進攻撃である。
だがクウガは臆する事無くザインの突進攻撃を真正面から受け止め、足で地面を1メートル程擦っただけでザインを完全に静止させた。
『ダババ!!?』
「はぁぁっ!!」
そこにすかさず、タイタンソードで斬り付けた。上段から一撃、更に下段から連続で斬り上げる。
蹌踉けるザインを悠然とした歩調で追うと、体勢を立て直す余地を与えず更もう一撃斬り付けた。
『ゴセグ ギスボドゾ パグセスバ!』
その死角から果敢にもバヅーがクウガに襲いかかる。背中に何発もパンチを繰り出すが、やはりまるで効いていない。
「はぁっ!!」
クウガは振り向き様にバヅーにパンチを打ち込む。
バヅーの軽い身体はパンチ一発で吹っ飛び、さっきのクウガと同じように武器屋の中に吹っ飛ばされた。
ストームフォームとなったアギトが、メビオ、ガリマ、2体のグロンギを相手に大立ち回りを演じていた。
ガリマの大鎌とストームハルバードが交錯し、火花を散らして両者は互いの武器を弾き飛ばす。
互いに武器を構え直し、再び武器をぶつけ合う二人。今度は弾き合わず、鍔迫り合いに持ち込まれる。
そこへ別の方向からメビオがアギトに襲いかかる。アギトは大鎌と絡み合っていたハルバードの角度を寝かせてガリマごと大鎌を受け流すと、メビオの爪をハルバードで受け止める。
そしてすぐさま刃を返し、攻撃を受け止められ一瞬硬直したメビオを斬り付け、続け様に手首を返してもう一方の刃で更に斬り付ける。
『バビゾ ジャデデス!メビオ!』
不甲斐無いメビオに苛立ちつつガリマも襲いかかるが、アギトは振り向き様に振り下ろされた大鎌をハルバードで受け止める。
一瞬の鍔迫り合いの末、両者は互いの武器を弾き飛ばすが、引きを利用してアギトはガリマに一撃。
ダメージで蹌踉けるガリマよりも早く体勢を立て直し、アギトは続け様に上段からの斬り降ろし、更にその勢いを利用してハルバードを一回転させもう一方の刃でもう一撃斬り降ろす。続いて真横に持ったハルバードから横一閃、更に刃を返してもう一撃横一閃を加え、
仕上げに回し蹴りを喰らわせる。
スピードを重視した『ストームフォーム』だから出来る鮮やかな連続攻撃だ。
『ザ、ザジャギ…!』
ハルバードを振り斬った所でメビオが再度襲いかかるが、ストームフォームの風のような速さに翻弄され、メビオの攻撃はアギトを捉える事は出来ない。
『ダババ!?リバベザベゼバブ ボグリョブロ クウガド ゴバジザドギグボバ!!?』
「ふっ!」
メビオの爪を回避し、がら空きになった上半身をハルバードで斬り付ける。
更に休む間もなく横一閃、上段から一閃、刃を返して下段から斬り上げ、頭上でハルバードを回転させてから更にもう一閃斬り降ろす。
『パダギゾ パグセデバギバ!?』
メビオにラッシュを掛けるアギトの背後からガリマが大鎌を振り上げて迫る。
「誰が忘れるか!」
アギトはメビオを斬り付けるとそれとは逆の刃で背後のガリマを突きで迎撃する。
虚を突かれて体勢を崩した所を振り向き様に更に斬り付けられ、ガリマは地面をゴロゴロと転がる。
だがその背後からメビオが襲いかかる。すぐに振り向いたアギトだが、一瞬反応が遅く、メビオに組み付かれてしまう。
パワー勝負に持ち込まれるとストームフォームは分が悪く、アギトは強引にストームハルバードを奪い取られてしまい、逆に斬り付けられてしまう。
『ヅビパ ボヂサン ロボザ!』
地面を転がってメビオと距離を取ったアギト。だが既にライドブッカーから新たなカードを取り出していた。
「悪いな。こっちの弾はまだあるんでね」
カードの縁をトントンと指で叩いてから、立ち上がりながらディケイドライバーにセットする。
『FORM RIDE!AGITO!FLAME!』
ディケイドライバーから赤い光が放たれ、アギトの身体に波紋が走ると、今度は赤を基調とした姿に変化した。右腕の形状も変化し、逆に左腕はグランドフォームと同じものに戻っている。
そして右手に燃えるような炎の剣、『フレイムセイバー』が握られた。パワーと知覚を向上させた『フレイムフォーム』だ。
同時にメビオの手からストームハルバードが消える。
『!?ラダ バパダダ!?』
驚きの表情を見せるメビオに、フレイムフォームとなったアギトが斬り掛かる。
フレイムセイバーをまずは下段から斬り上げ、刃を返して更に斬り降ろす。間髪入れず横一閃、もう一度刃を返して戻しで横一閃。
『ストームフォーム』と比べてスピードで劣るが、それを強化された知覚で補っている。更にダメージが蓄積したメビオ自身の動きも鈍っていた。
アギトの絶え間無い斬撃を受けて最早立っているだけがやっとのメビオ。
そして最期の一撃を加えるべく、アギトはフレイムセイバーの柄を両手で握り、メビオに向けて疾走する。
「はあぁぁっ!!」
そしてすれ違い様にメビオを斬り裂く。
立ち止まり、アギトがフレイムセイバーの刃をスッと手で拭うと、その背後でメビオは断末魔の声を上げて崩れ落ち、爆散した。
「はぁっ!たぁっ!」
クウガの猛ラッシュが続いていた。
タイタンソードから次々と繰り出される斬撃はザインにまるで反撃を許さなかった。
「はぁぁっ!」
渾身の一撃がザインの頭部に打ち込まれた。
その一撃で、ザインの自慢の角が切り落とされた。
『ア、アァァァァ!ゴ、ゴセン ヅボゾォォォッ!!』
「たぁぁぁっ!!」
クウガは空かさず、怒り狂うザインの腹にタイタンソードを突き刺した。
『ア…アア…ア……』
タイタンソードが突き立てられた傷口に、封印の刻印が刻まれる。
クウガはタイタンソードを引き抜き、ザインに背を向けた。
封印の刻印から光の亀裂が身体中に走り、ザインは断末魔の声と共に爆散した。
クウガは続いてもう一匹のグロンギ、バヅーを追って武器屋の前に駆け込む。だがその中にはバヅーの姿は何処にも無かった。慌てて周囲を見回してみても、その存在が確認出来ない。
「何処だ!?」
「あそこよ!」
キュルケが指差す方をクウガが向くと、逃走を図っていたバヅーの後ろ姿を確認した。
クウガがザインと戦っている隙に、街の建物の屋根を飛び移りながら、もうかなり遠くまで逃げていた。
「いつの間にあんなに遠くに!?」
とてもじゃないが追いつける距離では無かった。スピードを犠牲にした『タイタンフォーム』は元より、スピードに特化した『ドラゴンフォーム』でもここまで離されては追いつく前に逃げられてしまう。
トライチェイサーであれば追いつけるだろうが、あれは今街の駅に預けたまま、バヅーが逃走しているのは駅とは逆方向である。
倒すとなると、超感覚で敵の位置を察知し、射抜く事のできる『ペガサスフォーム』だけしかない。
だが、ペガサスフォームに超変身した所で肝心の武器が無い。
ペガサスフォームの専用武器『ペガサスボウガン』は、銃など"射抜くもの"をイメージさせる物から作り出すのだ。
だが今手に持っているタイタンソードは錆びた長剣から作り出したもの。長さもあるので『ドラゴンロッド』に作り替える事はできても、『ペガサスボウガン』には無理だ。
さっきの武器屋を探せば銃とは言わずも弓矢くらいはあるかもしれないが、そうしている内にバヅーは何処かへか逃げてしまうだろう。
逃げ去ったバヅーは、また何処か知らない土地でゲームと称して罪も無い人間を虐殺する。そして誰かが傷つき、苦しみ、悲しみ、笑顔を失ってしまう。
(そんな事…させてたまるか!)
ユウスケの心が激しく震えた。
その時。
「おい!おめえ何ぼさっとしてやがる!さっさとイメージしやがれ!」
「えぇっ!!?」
突然、タイタンソードが声を発した。
いや、正確には"タイタンソードの元になった剣"が喋り出したのである。
「け、剣が喋った!?」
突然の事に戸惑うユウスケ。しかし剣の方はそんな事意に介さずに捲し立てる。
「俺の事は今はどうでも良い!さっさとしないとあの化け物に逃げられっちまうんだろ!?いいからとっととイメージしろ!」
「イメージしろって、いきなり言われても…」
「おめえはただおめえが望むものをイメージすりゃいいんだ!俺がそれに合わせる!」
「あ、合わせるって……〜〜えぇぇぃ!一か八かだ!」
剣の異様な剣幕に気圧されて、ユウスケはいよいよ腹をくくった。
「超変身!」
アマダムが緑色の光を放ち、鎧と複眼が緑色のものに変化した。クウガの『ペガサスフォーム』である。
そして言われた通りその手に持った剣に『射抜くもの』をイメージする。すると本当に『タイタンソード』から『ペガサスボウガン』に変わったのだ。
「ほ、ホントに変わった!」
「馬鹿やろう!驚いてる場合か!逃げられっちまうぞ!」
「そ、そうだった」
クウガは民家の屋根に飛び乗った。
強化された視力によって逃げて行くバヅーの後ろ姿がはっきりと確認出来る。
クウガは感覚を集中させながらボウガンの矢を引いた。ペガサスフォームの超感覚でバヅーを取り巻く環境が手に取るように判る。バヅーの現在位置、進む方向、空気の流れ、周囲の状況、バヅーの息づかい、バヅーの間接の音。
そして、それらの状況からバヅーが次に取るであろう行動を即座に予測した。
「見えた!!」
クウガがボウガンの矢を放った。高密度に圧縮された空気の弾丸が超高速で放たれた。
別の民家の屋根に飛び移ろうと、バヅーが高く飛び上がったその時、背後から何かの接近を感じ取り、振り返ろうとした。
しかしバヅーは"それ"がクウガの放った一撃だと理解する事無く"それ"に撃ち抜かれ、断末魔を上げる間もなく空中で爆散した。
フレイムセイバーと大鎌が交錯し、アギトとガリマが鍔迫り合いに入る。
「ゾグジャサ ゴラゲガンン ババラパ リンバ ジャサセヂラダダリダギザザ」
二人は互いに武器を弾いて、一旦距離を取る。
「…ゴセドロ、ゾバビロ ゴババラグ ギダシ グスンジャバギザソグバ?」
『………』
ガリマは押し黙ってしまった。だが士にはそれで十分だった。
「ゾグジャサ ゴラゲゼ ガギゴ、リダギザバ」
『ギィ〜…ッ!』
ガリマが怒りの声を上げる。
『ダドゲ パダギ パパンビンド バデデロ、ゴラゲダヂゾ ダゴギ、ゲゲルゾ ゲギボグガゲデリゲス!』
「ゴラゲサン ガジャラヂパ、ボンゲバギビ ジャデデビデロ ゲゲルゾ ドシゴボバゴグドギダボドザ!」
アギトは一気に間合いを詰めると、真上からフレイムセイバーで斬り掛かった。
ガリマももちろん大鎌で受け止めようとするが、力一杯の『面』、フレイムフォームのパワーはそのまま大鎌ごとガリマを斬り裂いた。
自慢の大鎌を真っ二つにされ、胸から腹にかけて大きく斬り裂かれたダメージで地面を転がるガリマ。
そんなガリマにアギトは背を向ける。
「地獄で反省してろ!」
ライドブッカーから最後のカードを取り出し、ディケイドライバーにセットする。
『FINAL ATTACK RIDE!A,A,A,AGITO!』
振り向いたアギトの姿が深紅のフレイムフォームから黄金のグランドフォームに変わる。
頭部のクロスホーンが展開され、足下にアギトの紋章が浮かび上がり、それが両の足へ集束する。
「はっ!」
アギトが宙に飛び上がった。
『!?』
フラフラの状態で何とか立ち上がったガリマだったが、飛び上がったアギトの姿を前にして、一瞬動きを止めてしまった。
「たあぁぁぁぁぁっ!!」
アギト必殺『ライダーキック』がガリマに炸裂する。
ガリマは後方へと吹っ飛び、大地に叩き付けられ、断末魔の咆哮と共に爆散した。
燃え盛る炎を横目に、アギトはクロスホーンを納めた。
こうして、トリスタニアを襲った全てのグロンギは、二人のライダーによって討ち滅ぼされた。
「…倒した」
クウガ、ディケイド・アギト。二人の仮面ライダーの勝利である。
以前のギーシュとの決闘などとは比べ物にならない、濃密な戦いを目の当たりにし、またそれが終わりを迎えた事で一気に緊張の糸が抜け、一同にどっと疲れが押し寄せた。
「あぁ…素敵…!最っっ高…!」
キュルケが満ち足りた表情で精神をトリップさせている。ルイズはもう突っ込む余力も残ってなかった。
「皆、まだ気を抜くんじゃない。まだ連中の仲間が現れるかもしれない」
気が抜けている一同の中でワルドとタバサだけは気を張ったまま、未だに周囲の警戒を解いていなかった。
「その心配はない」
するとそこへ士が変身を解除してこちらにやって来た。
「連中はあれで全部だ」
「…何故そう言い切れる?」
ワルドは訝しげに士の顔を睨みつけた。
「奴らに直接聞いた。ここに来たのはあの6体だけだ。もういない」
「直接聞いた?君はあの化け物の言葉が判ると言うのかい?」
「あぁ」
士はあっさりと肯定する。
ワルドは顔を顰めた。
「…君は見た所平民のようだが、あのマジックアイテムは何処で手に入れた?あの力はマジックアイテムによるものなのか?何故あの化け物の言葉を解せる?」
「一度に幾つも質問を並べるな、鬱陶しい」
「何…?」
ギリッと、奥歯を噛んでワルドが士に迫る。慌ててルイズが二人の間に入った。
「ちょっ…ワルド様、押さえてください。…ツカサも!貴族を相手にしてるんだから最低限の礼儀ぐらい正しなさい!」
ルイズに仲裁に入られ、ワルドは仕方無くその場は押さえる。士の方は不機嫌そうに「フンっ」と鼻を鳴らしているが。
「だが、これだけは答えてほしい。…キミは一体何者だ?」
ルイズは息を呑んだ。
質問をしながらワルドの手は杖の柄を握っている。もしここで士が下手な返答をすればワルドは即座に杖を抜くだろう。せっかくグロンギ騒動も収まったのに、その結末は無い。
「あの――っ!?」
何とかルイズが仲裁しようと口を開きかけたが、士に手で制される。
そして士はワルドを真正面から見据えて、口を開いた。
「俺はこいつの使い魔だ」
士はそう、真顔で答えた。
「使い魔…?」
それを聞いて、ワルドは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「ああ、そうだ。お前はこいつの使い魔を…こいつの事をそんなに信用出来ないのか?」
「む…」
ワルドは閉口した。
ただの平民であるなら何だかんだと理由をつけて強引にこの男の持つマジックアイテムを接収する事も出来るが、ルイズの使い魔と言うなら話は変わってくる。
何より、ワルドとしてはルイズの心象を損なう事はしたくなかった。せっかく見つけた可能性を、むざむざと失うわけにはいかなかった。
と、そんなワルドの心境など露とも知らないルイズは、思いっきり士の足を踏み付けた。
「…ってぇ〜っ!!!な、何しやがる!いきなり!!」
「何じゃないわよ!ワルド様をお前呼ばわりなんかして!礼儀知らずもいい加減にしなさい!!」
「だからって、蹴るこた無いだろ!」
「アンタ口で言っても判んないでしょ!だったら身体に教え込ませるしか無いでしょうが!」
「人を獣扱いするな」
「アンタは私の使い魔なんでしょ!なら獣よ獣!ケダモノよ!」
「いえ、流石にケダモノは言い過ぎだと思いますが…」
見兼ねた夏海がツッコミを入れる。
そんな三人の漫才を見て、ワルドは苦笑いを浮かべた。
「…いや、礼儀の事はもう良い。次会う時までに改善していてもらえればな」
「で、ですが…」
「思えば、僕の方も礼儀と言う点では彼と大差ない。窮地を救ってくれた相手に対する態度ではなかったな。非礼を詫びよう」
そう言ってワルドは羽帽子を取ると、士に一礼した。
「そ、そんな、ワルド様…、平民なんかに頭を下げるなんて…」
「ルイズ、たとえ平民であっても恩義を感じているなら礼節を尽くすのが貴族というものではないのかな?」
「うぅ…」
ワルドに説き伏せられ、ルイズは唸る事しか出来なかった。
「どうやら礼儀云々に関してはこいつの方が一枚上手みたいだな」
「アンタまたワルド様を…っていうかアンタに言われたくない!」
ワルドは苦笑いを浮かべながら更に続けた。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。私の名はワルド子爵。トリステイン王宮の魔法衛士隊、グリフォン隊の隊長。そちらのルイズの婚約者だ」
ワルドの口から出た最後の単語を聴いて、その場にいた士、タバサ以外の全員がブハッと吹き出した。
「こ、婚約者!!?ルイズちゃんの!!?」
「ワ、ワルド様!?そ、それは子供の頃の…!親同士が決めた事ですわ…!」
顔を真っ赤にしてルイズが抗議するが、ワルドは冗談などでなく至って真面目だ。
「確かにそうだが、僕はずっとキミの事を忘れずにいたんだよ。いつか立派な貴族になって、キミを迎えにいこうってね」
そんな真面目な顔でそんな甘い言葉を囁かれてはルイズは何も言えなくなる。耳まで真っ赤になって頭から蒸気が吹き出した。
「…まったく、あんないい男を使い魔にした挙げ句、こんないい男の婚約者までいるなんて、どこまで幸せを独り占めするつもりかしら?」
横からキュルケが恨み節のようなからかいの言葉を浴びせたが、脳みそが茹蛸状態のルイズは自慢げになるわけでもなく反論するわけでもなく、真っ赤になって指先をちょんちょんと合わせていた。
「…士くんはそんなに驚いてないみたいですね」
「ま、こんなんでも貴族のお嬢様だからな。婚約者の一人や二人、いてもおかしくないだろ」
「こんなんで悪かったわね!それに、婚約者はいても一人よ!」
そんな状態でも士へのツッコミは忘れない。それを見てワルドは微かに目を細めた。
「そう言えば、もう一人の彼はどうしたんだい?彼にもお礼を言いたいのだけれど…」
「…ユウスケ?そう言やあいつ何処行った?」
キョロキョロと辺りを見渡していると、ユウスケはすっかりボロボロになった武器屋の中から出て、こっちに走って来た。
「ユウスケ、お前何やってたんだ?」
「いや、ちょっと名残惜しいけど、お別れを、ね」
「…お別れ?誰と?」
ワケの判らない事を口走るユウスケに士は首を傾げた。
「おぉ、君!…と、ユウスケくんで良かったかな?君にも礼をと思ってね!この度は危機を救ってくれて感謝する」
するとワルドは先程士にしたようにユウスケにも一礼した。
「いや、そんな、当然の事をしたまでですよ〜」
とか口で言いながらも、頭を掻いて得意げな様子だ。
「もしかして君もルイズの使い魔なのかい?」
「いえいえ、俺は違います。俺は、こいつ。こいつと二人で世界を救うチームなんです!」
と、ユウスケは士の肩を抱いて引き寄せる。
「世界を、救う…?」
またも不可解な単語が出て来てワルドは首を傾げた。
「こいつの言う事をいちいち真に受けてちゃ身が持たないぜ」
「なんだよ、ホントの事だろ!」
「はいはい」
と、士はユウスケを軽くあしらってその手を振りほどいた。
「ところででどうだろう、これから僕は王宮へ報告に戻るのだが、キミ達も共に来てくれないか?」
「…私達を王宮に?」
ワルドが頷く。
「報告するならあんた一人で行けばいいだろ。俺達が行ってどうなる?」
ユウスケの額を指で小突きながら士が相変わらずの態度で言った。
「報告は嘘偽り無く行うつもりだ。無論、キミ達の事も報告させてもらう。君達は我がトリスタニアの危機を救ってくれた英雄だ。姫殿下もきっとお会いしたがるだろう」
「アンリエッタ姫殿下に…!」
ルイズの顔がぱあっと輝く。
てつを支援
おや?
支援ん?
さるさん?
721 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 23:38:10 ID:8YHZG/Ml
さるだぁーーっ
さるさんくらいました…。残り分の代理透過お願いします。
「少し時間を取らせてしまうが、どうかな?出来れば来てほしいのだが…」
「行きます!」
ルイズが即答した。
「おぉ!来てくれるか!ルイズ!」
「勿論です!姫様がお会いしたがると言うなら、是非とも!ツカサ!アンタも来るのよ!」
予想していた通りの命令が下り、士はやれやれと肩を竦めた。
するとそんな中、タバサが一人くるりと踵を返し、一同から離れ始めた。
「タバサ?」
キュルケが気付いて呼び止める。
「行かない」
タバサは一瞬立ち止まって短くそれだけ言うと、再び歩いて行ってしまった。
「何?せっかく姫殿下にお目通り出来るって言うのに…」
タバサの行動の意味が理解出来ずルイズは毒づいた。
と、今度はキュルケがくるりと身を翻してワルドに向き直った。
「せっかくのご招待ですが、相方があの様子ですから、わたくしも辞退させていただきますわ」
「キミもか?」
「えぇ、わたくし出身はゲルマニアですので、それを快く思わない人もいますでしょうし」
そう言ってキュルケはルイズに目線を送った。ルイズは少しだけムッとする。
たとえゲルマニアでツェルプストーでも、姫殿下がお会いしたいと言うならばそれをルイズは咎めるつもりは無い。
「それに、わたくしも彼女も、先程の化け物相手に何も出来ませんでしたわ。そんなわたくし達が英雄と呼ばれるのは、分不相応だと思いますので」
ふと、キュルケの言葉がルイズの心を微かに揺さぶった。
キュルケはそれだけ言うと優雅に一礼して、タバサの後を追って路地の向こうに消えて行った。
ワルドは肩を落としつつも、行きたくないと言う者を無理に引っ張って行くわけにも行かず、仕方無く二人を諦めた。
ワルドが手を挙げて合図をすると、上空で事態を見守っていたグリフォン隊の一人がワルドの目の前に降り立った。
「これから僕は王宮へと報告に戻る。事後処理はお前に一任する。貴族と平民の遺体の区別だけはしっかりと頼むぞ」
「はっ!」
部下が先程のワルドと同じように手を挙げて合図をすると、上空にいた騎士達が次々と降りて来、彼らに指示を伝えていた。
そんな騎士達を尻目に、ワルドに伴われて士達は王宮へと歩き出した。
「…死んだ奴ですら、貴族平民分けるのか」
ふと士は後方の騎士達を見ながら呟いた。
「仕方あるまい、貴族と平民を平等に弔えば、貴族側から不満の声が漏れるからな」
この国を取り仕切り、実質的に動かしているのは貴族である。その貴族の機嫌を損なえば国の運用にも支障を来し兼ねないのだ。
「あまり好かないな、この国のそう言う所」
「…正直だな、キミは」
ワルドは思わず苦笑いを浮かべた。
そんな二人のすぐ後ろを歩いていたルイズは、悶々としていた。
原因は、キュルケが別れ際に放った言葉。
『わたくしも、彼女も、先程の化け物相手に何も出来ませんでしたわ。そんなわたくし達が英雄と呼ばれるのは、分不相応だと思いますので』
それを言うなら、ルイズも同じだ。
自分も、グロンギ相手に何も出来なかった。そんな自分が英雄と称えられ、姫殿下から謝恩の言葉を貰って良いものだろうか。
…よくない。
例え姫殿下がそれで良いと仰ってくれても、ルイズ自身はまったく納得がいかない。
次にルイズは士の横顔を見た。
士はあの決闘があった日、魔法が使えない代わりにルイズの力になると言ってくれた。士の力、ディケイドの力はルイズの力。そしてその力は見事トリスタニアを襲ったグロンギを討ち滅ぼした。
…それでも、やっぱり納得出来ない。
ディケイドの力はあくまで士の力。士がルイズの使い魔であっても、ルイズ自身が無力なのに変わりはない。
そしてルイズは、今更ながら自分と士の間に歴然とした差がある事を思い知り、そして余りに分不相応な使い魔を召喚してしまった自分を呪った。
片や、魔法も使えない劣等生『ゼロ』のルイズ。
片や、平民とは言え、魔法衛士隊でも敵わなかった敵を倒す力を持つ『仮面ライダーディケイド』。
何故自分はこれほどまでの使い魔を呼び出してしまったのだろうか?
キュルケのサラマンダーや、タバサの風竜のように、メイジの実力に相応する使い魔を召喚するなら判る。ならばルイズは…?
ルイズが余りに魔法を失敗させるから、哀れに思った始祖が本当に強い使い魔を選んでくれたのだろうか?だとしたら何て余計なお世話を焼いてくれる始祖なのだろう。
そんな事をすれば使い魔とメイジのあまりの落差に余計に惨めに見えるのは明白だと言うのに。
なんで…どうして、こんな事になってしまったのだろう…。
「ルイズ?」
そんな悶々としていると、前を歩いていたワルドが声をかけてきた。
「どうしたんだい?さっきから難しい顔をして、何か思い詰めているようだが…?」
「いえ、その…さっきキュルケの言ってた事が、その、気になって…」
「キュルケとは、あのゲルマニアの彼女の事かい?もしかして、『何も出来なかった』と言う事を自分にも当て嵌めているのかい?だとしたらそれは間違いだ。何故ならあの化け物を倒したのはキミの使い魔である彼だ。つまりその主人であるキミが倒したも同然じゃないか」
「…そ、そうですね。はは、ははははは…」
ルイズはそう言って無理に笑顔を作って見せると、ワルドはそれで満足したのか、にこりと笑って再び前を向いた。
無論、ルイズがそれで満足出来る筈もなく、ワルドの視線が外れると、はぁと小さく溜息を付いた。
と、ルイズは士が横目でこちらを見ている事に気が付いた。
「何?」
ルイズが尋ねると、士は「別に」とルイズから視線を外した。
そうこうしている内に、ルイズ達はトリステインの王宮の前まで辿り着いた。
これからアンリエッタ王女殿下にお会いする。そして殿下から謝辞の言葉を述べられる。
そう思うと、ルイズの心にずんと重圧がのしかかった。
※
今回は以上です。
トリスタニア編三部作、ですがほぼやりたかった事はこの中編で全部やりきった感があるので、残りの後編はほとんど事後処理ですね。
今回は戦闘メインで仮面ライダーの方に比重が偏ってしまいましたが、とりあえずライダーの力を見せるのが目的なので今回だけは勘弁してくださいw
グロンギ語訳は今度もアップローダに上げておきました。
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0115.txt では今回はこれにて、再見!
ディケイドの方、乙でした。
原作で既に「仮面ライダーの必要ない世界」を描かれてしまった以上、アレとは違った切り口を出すことに苦労することになるかとは思いますが、続きを期待しています。
乙〜
さあディケイド本編もいよいよみんなのヒーロー、
ぶっちぎりチートライダーことてつをの出番だぜ!
10年間乙
ペガサスボウガン出せたのはなんでなんだろう?
>>724 チートなのはRXのほうで今度出るのはブラックじゃないのか?
スコールの人GJ!
アレクサンダー&バハムート無双そしてワルドwww
次回を楽しみに待ちます。
もやしの人GJ!
なにげにデルフ活躍
そしてクウガとアギト夢のコラボ…最高でした。
次回まで正座待機。
もやし乙
すげえよ!ユウスケが大活躍してるよ!
>>725 予告ではなんか両方出てました。
もしかして、4体同時出現かも。
ユウスケが「仮面ライダー」してるということに、なぜか違和感を感じる俺がいる
ああもう、早くアルカナハート召還物出ないかな。
出ないと先走って出ても居ない作品に支援絵を投下するハメになっちまう・・・!
もやし&ユウスケ乙
本編ではなかなか観られない、クウガ大活躍が嬉しいw
732 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:07:52 ID:Qtt9Tv6Q
やっぱり愛だよね!
ユウスケがクウキじゃないなんて!とにかく乙!
ユウスケそろそろ電気ショック受けささないと
ストロンガーあたりにビリビリさせてもらうか。
そういえばディケイドのクウガは早々に物語が解決しちゃったから
ゴウラムも(ファイナルフォームライドで出るが)ライジングもビートチェイサーも無いんだよな
ハルケギニアでライジング覚醒来ないかな
乙!
これからのユウスケの活躍に期待だwww
ファイナルフォームライドでの必殺技でンのグロンギすら倒しちゃったからなぁ。
デルフ一本でクウガの武器を賄えるのは便利そう。ディケイドには必要ないし。
>>735 姫様イベントでワの字の電撃喰らえば覚醒の可能性はある
まあディケイドのフォームライドカードにすでに入ってるだろうから先に
変身するのが士の方だったりする可能性もあるけどなwww
>>737 デルフはきっちり武器屋に返されたようです。
みなさん乙なんだぜ!
そして、この流れに続きたい……とコツコツ書きためてたんですけどねぇ……
先日、書きためてたものを保存していた外付けHDDがお亡くなりになっちゃいまして……
す、スランプだったからいいもん!また書きなおすからいいもん!泣いてなんかないもん!orz
……私の駄文をお待ちになってる皆様!申し訳ない!黒魔の続きはお待ちください!
そんな報告をするだけではアレなので、召喚シーンだけを書いて没にした物を発掘したので、
小ネタとして投下させていただきとうございます。
クロス先はまたもFF系でございますよっと。
0:50頃より失礼をさせていただく予定です。
Dカード乙!
ユウスケとデルフの相性抜群なのに武器屋に返還....流石ユウスケだ
デルフの口ぶりからすっと初代ガンダルもクウガ…?
取り敢えず次回のデルフの出番に期待です
外付けHDDってある日突然亡くなるものなのか
ぎゃーっと、俺の心に5654ダメージ。
ご愁傷様です。復旧してからゆっくり投下してください…
とりあえず小ネタ支援準備
投下開始です。
------------------
茜さす空 一陣の風 囲む焚火は 揺らめいて
もしも夕陽が 沈まぬならば ただ今だけを 笑うのに
集う者らの 沈んだ顔に 笑顔も何も ありゃしない
“最後かもしんねぇんだろ?”
静けさ斬るは 一振りの剣 文字のまんまの 錆刀
口も無ければ 顔も無く 器用に鍔で 語りだす
“だからよ、全部、話しておきてぇんだ”
耳を傾け 聞いてはくれぬか これは誰かの 物語
少し長くは なるかもしれぬ どこか遠くの 物語
虚夢の盾と剣
〜出会 -The Starting of Parting- 〜
それはいつかの 星降る夜に 大きな街で 動き出す
それはいつかの 祭りの夜で 街の灯りも 眩しくて
それはいつかの 星すら見えぬ 袋小路の 片隅で
それはいつかの 路地裏の隅 武器屋の棚の その奥で
それはいつから あったのだろう 朽ちても未だ 話す剣
“あんまりにも珍しいからよ、武器屋のオヤジが手放さなかったのよ!
ほれ、看板娘ならぬ、看板剣ってヤツ? 人気者にもほどがあらぁな!”
「まったく……客は来んし、五月蝿い剣は今日も売れ残るし、最低の一日じゃわい」
それはいつかの うらぶれ通り 店のオヤジは 愚痴ばかり
ホコリまみれの 床板きしみ 棚には立派な クモの巣が
その棚の奥 安売りの札 貼られた刀は やかましく
「グチグチ言ってんじゃねぇーよ! 営業努力もしてねぇクソが何言ってやがる!」
「うっせぇデルフ!来月も売れ残ってたら今度という今度は炉で溶かしてやる!」
「上っ等でぇ!来月までこの店が残ってたらやってもらおうじゃねぇか!来週まであったら大ぇしたもんだ!」
「言いやがったなこのサビっサビのボロ刀がぁっ!」
「おう、何度でも言ってやらぁ!ボロッボロの臭い店の店主がよぉっ!」
“とはいえ、こんな店ん中ずっといたんじゃ、『夢も希望もありません』ってなもんでよ!
とっととシャバにおん出てやりたかったわな!”
それはいつもの ののしりあいで 今日も言葉が 売り買われ
武器は売れぬが 喧嘩は売れて 買ったはいいが 益も無く
「あー!今日と言う今日は堪忍袋の緒も切れた!今すぐにでも俺が叩き折ってやる!」
「やれるもんならやってみな!腐ってもこちとら剣でぇ!てめぇの骨が折れるのがオチだろうよっ!」
人同士なら 胸倉つかみ 互いをにらめば 良いのだが
人と剣では 勝手も違い 店主が剣を つかむだけ
そんないつもの 裏路地の店 男がフラリと 立ち寄って
扉がきしみ 開いたときに 腐った風が 入れ替わる
「人間様なめんじゃねぇよこのクソボロかた……っと何か御用でしょうか?」
客とおぼしき 男が一人 入るや否や 豹変し
汚い剣は 後ろに隠し 足でホコリを 追いやって
さぁさ売るぞと 気合いも入り オヤジが客を 見た途端
寒気と言えば 最も良いか 夏の盛りに 冷や汗が
“すぐ分かったぜ。『タダモンじゃぁねぇ』ってな。
まぁ、おれっちぐれぇじゃねぇと、分からなかったろうがな!”
「な、何か御用でしょうか?」
音無くゆるり 幻ごとく 入った客の 風貌は
紅衣(くれないごろも) 腰に酒瓶 こけた顔には 黒眼鏡
左の腕は 袖に通さず 襟の元から 覗かせて
痩せてはいるが 貧相で無し 筋の通った 男前
匂う気配は 剣客の物 鋭い殺気は 本物で
「剣を、見せてもらおうか」
有無を言わさず 穿つ眼光 射抜く店主の 目は怯え
「へ、へい!お客さんほどの使い手様でしたら、こちらの大剣などはいかがでござんしょ?
これはかの有名なシュペー伯の……」
「いや、お前の後ろ。その剣だ」
意外も意外 男が指すは ギンギラ光る 太刀で無く
どこから見ても 古びているし 錆もつきたる ナマクラを
「へ?こ、このボロ刀で?いや、こいつは……」
“店主の野郎が渋りやがってさ!よっぽどおれっちを手放したくないと見えたんでね!
だからさ、自分っからアピールすることにしたのよ!”
「おれっちに目ぇつけるとはいい目ぇしてるねぇ、オッサン!気に入った!買ってけ!」
「で、デルフ、お前は黙ってろ! いやね、インテリジェンス・ソードなんざ誰が作ったんでしょうね?
ボロいは、五月蝿いわで……あ、こいつはすぐに引っ込めますから……」
「いや、それが良い」
袖の下から じゃらりと音が 店主の方に 押しつけて
開いてみれば かくも驚き 山吹光る 銭の海
「足りんか?」
「いえ、いえいえいえいえいえいえいえいえ!?め、めっそうもござんせん!?
というか多すぎでございますですよ!?ほ、本当にこのボロ刀で……」
「良い」
「おらぁ、オヤジ!良いっつってんだから良いじゃねぇか!とっととおれっちを売りつけやがれ!」
「本当に、よろしいんで?後でダメって言われましても……」
「構わん」
「そ、それでは……やいデルフ!粗相の無ぇようにな!」
「へっ!やっとおん出られてせいせいすら!アバヨっ!」
・
・
・
久方ぶりの シャバの空気は 驚くくらい 澄んでいて
賑やかなまま 互いに競う お空の星と 街の灯が
夜風に吹かれ 一人が歩き 幽霊みたく ゆらゆらと
一振りはただ 陽気に浮かれ 下品な声を ぶちまけて
「――いっやぁ〜!相棒みてぇないぶし銀の使い手に選ばれるたぁ嬉しいねぇ!
おれっちも武器としちゃ長いが、ここまで久しぶりに外出られたのはいつだろうよ?
いや全然記憶が無ぇんだけどもな?6000年ほど生きてるはずだがすっかり忘れちまって……」
「そうか」
「あ、そうそうそう!自己紹介がまだだったな?おれぁ、デルフリンガーってんだ!デルフって気易く読んでくれよ!
もちろん、『デルフ様』でもいいぜ?……っ冗談だよぉ〜!相棒に上から目線、なわけねぇじゃん!だっはっはっは!」
「そうか」
「――んでー、相棒の名前はなんてぇのよ?」
「アーロン」
「お、渋いねぇ、名前まで渋いねぇ!いいよ、渋くて!
……渋くていいんだけどよ?もうちょっと会話してこうや?なぁ?」
“正直、うかれてた。 久しぶりの外でよ、うかれてたんだ。
だからよぉ、色々気付かなかったんだなぁ。
街の灯りが、夜だってのに明るすぎるぐらい明るかったこと。
相棒の格好なんざ、ハルケギニアじゃまず見ない格好だったこと。
オマケに、街の連中の服もまた全然違う格好だったんだよな。
いくら記憶は無くてもよ、ここまで世の中、時代が変わっちまってるもんか?
そんなことに気づくのも、大分、後んなってからだった”
「なぁなぁなぁ?相棒は職業何よ?メイジって訳じゃぁねぇんだろ?あれか、傭兵とかか?
それともあれか、賞金稼ぎか?相棒のこった、たんまり稼いでやがんだろうなぁ〜!あとはそうだなぁ……」
「ガードだ」
「そうそうそう、がぁどでもたんまり稼いでいけそうだよな! ってがぁど?何でぇ、そのがぁどってぇのはよ?」
「そのうち分かる」
「つれねぇなぁ、いいじゃねぇかよ、相棒!」
「先は長い。急ぐぞ」
「急ぐってどこによ?」
「……来るぞ」
「来るって、何が? ぅぉ!?」
まるで地面が のたうつように 水面が風に 舞うように
お祭りに沸く 市民の声が 全て悲鳴に 塗り替わり
水風船の ように弾けて 瓦礫を散らす 魔天楼
街全体が 波間に落ちて 掻きまわされた ようになり
そいつはまるで 悪夢のようで 街は歪んで 崩れてく
「な、なんだなんだなんだ!?せ、戦争でもおっぱじまったのか!?」
そんなことなど お構いなしに 男はゆるり 歩を進め
夜風はぬるく ぬるりと歪み まとわりついて 満ちていく
「あ、相棒!相棒ってばおい!何がどうなってんだよ!?」
「知りたいか?」
「あぁ!?」
「真実を、知りたいか?」
試すがごとく 射抜かれる目に 流石の剣も たじたじと
「お、おうよ!し、知りたく無ぇわけねぇだろうよ!?」
「では、行くぞ」
「だぁからぁ!?どこにだっての!?」
崩れた壁を 避けて通り 男はゆるり 歩を進め
泣いてるガキに 目もくれないで 男はゆるり 歩を進め
「お、おいおい、ちょい待てよ!ストップ!ストーップってば!?何かあんぜ?おい?」
それは奇妙な 卵のようで 地面の上に 立っていた
卵と言えば ツルンとするが そいつは岩の 質感で
尺はと言えば 大人の高さ 頭一つは 出るところ
何より妙と 言うべき点は 怪しく蒼く 光るとこ
「何よ、これ? うっは、またびっしりありやがるな……」
磯辺の裏の フジツボごとく 妙な卵は びっしりと
瓦礫の岩と 蒼い光に 埋め尽くさるは 大通り
「なんっか薄気味悪ぃ…… げ、動いた!?」
卵が孵る グネリと孵る グシャリと孵る 気味悪く
中から出るは 甲羅の光る 羽の生えたる 虫のよう
そいつが吠える 音甲高く 異界の魔物に 相違なし
「う、うわぁ、なななんだよ、こいつ!」
「……お前が使えるか、試すか」
「は!?」
「前にいるヤツだけを倒して、道を切り開くぞ」
「ちょ、ちょいちょいちょいぃぃ!?あれ斬るの!?ちょっとキモくね!?」
「耐えろ」
言うが早いか デルフを背負い 構える姿 勇ましく
陣風起し 牙龍のごとく 襲う姿も 猛りたり
征伐するは 目前の敵 煌めき爆ぜる 流星の
「ふんっ!」
錆びた刀で 青竹ごとく スパンと斬るは 鮮やかに
飛び散る血色 いと青白く ぬとりと粘って 地に落つる
「おわっ!? す、すげぇ!?堅そうな甲羅一発だぜ!?」
だがそれだけで 終わりと行かず 孵る卵が 増えていく
見渡す限り 蒼い光で ひしめく虫の 禍々し
「こ、これ全っ部斬るのかよ!?」
「流石に、面倒だな」
そう言った後 衣を直し 目をつけたるは 円筒の
「焼き払うか」
「ど、どうやってよ!?」
「こうやって、だ」
斬ってしまうは 鋼の筒を 中に溜まるは 燃ゆる水
瓦礫も虫も 大通りすら 燃やし尽くすが 火炎なり
「どわぁ!?相棒!?危ねぇ!?危ねぇから!?自爆するつもりかってんだってーの!?」
燃ゆる業火に 飛ばされそうに 気づけば空が 渦巻いて
渦巻く天の そのど真ん中 白い光が またたいて
「覚悟を決めろ」
「な、何言ってやがんで――」
剣士は剣を しっかと握り 身体が宙に 浮かんでく
見れば全て 天に落ちると 星も何もが 飲み込まれ
白い光が 瓦礫も何も 飲んでくれると 口を開け
「他の誰のものでも無い」
「は!?」
「これは――お前の物語だ!」
・
・
・
“なんつーかよ?シャバに出たらいきなり街が崩れてよ?んで光る空でよ?『お前の物語』だなんて言われてよ?”
香る青草 見える青空 流れる雲は 春先の
「あ、あんたが私の使い魔!?」
「そのようだな」
“それ越えたら今度はどっかの原っぱでよ?おれっち頭がグルグルしてきちまってさぁ……”
「ルイズが……」
「人間の使い魔だぞ!」
“おれっち、こう……叫びたい気分になっちまったんだ!”
「な、なんだってんだよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「け、剣がしゃべった!?」
トリステインは 魔法学院 春風舞うは 新学期
今日と言う日に 使い魔の儀を 果たした乙女 驚いて
出会った剣と 出会った剣士 どうなることか 物語
―――― 春風や いづれ別るる 出会かな ――――
-------------
以上、小ネタでした。
FFXのアーロンさん召喚ネタを思いついたはいいけれど、ここまで書いてずっとお蔵入りしてたので。
まぁ、ついでってことで投下してしまいました。チラシ裏でどうもすいません。
続きとか無いです。むしろ、誰か、続き書いて?w
いや、すいません。本当に悪ふざけでした。
さて、頑張って黒魔道士の方の続きを書いてまいります。
どうか、また戻ってきましたら、生温かい目で見てやってください。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
追伸:中国製の外付けHDDは信用しちゃなんねぇぜ、あいつら急に変な音出して死ぬからさぁ (TAT)
乙です
あー論は、狂言回しとしては使いやすいし、オリジナル展開突き進むなら、かなり優秀なキャラだよな。
ルイズは、ひたすら振り回されそうだが。
乙でした!アーロンって作中のムービーで腋が産毛も無いつるつるで吹いた記憶がある
サイコメトラーEIJIから明日真映児を召喚
早い段階でフーケやタバサの正体を見破ったりデルフの記憶を引き出せる
ギーシュとの決闘でも先読みができる分楽勝
ついでにマリコルヌが信じられない強運の持ち主になる
>>567 ×ザンギュラのウリアット
○ザンギュラのスーパーウリアッ上
筆者のクセと、縦書き原稿と言う特性から生まれた奇跡の誤植ですょ。
ESP能力持ちは、作者の力量が問われるからな。
よほどうまく話を作らないと、ただの万能キャラになってしまう。
まぁ、高ランクのテレパスを主人公に、推理物を作った人もいるわけで、不可能じゃないんだが。
>>752 6000年もの情報をサイコメトリーなんかしたら、脳がパンクするんじゃね?
小ネタっぽいな
ちょいと古いがマインドアサシンもESPに入るのかな
あれは精神的に一撃必殺系の殺し屋だけど
>>748 乙ー
やっべ寝てた。支援しようと思ってたのにorz
黒魔さんの韻文…じゃないけど、語調をきっちり整えた文章好きですわー
]は知らぬのですが、アーロンさんかっけぇ! デルフは…カワイイw
いい小ネタでしたー。続きは黒魔完結後ですかな?w
VIIIの人来てたのか!
カード狂いなスコールさんがレアカードを!?
とか思ったけどトンベリキングは一品物じゃあなかったね
破壊者の人乙
しかし、バヅー登場か・・ってことはバダー兄さんも来てるかな
バダーはここでは何に乗るんだろ、馬・・いやここはせっかくだから竜だろ
あの肘の装飾具をシルフィードにぶっ刺して、シルフィードを操るとか(そして硬くて黒い鱗になったりして)
シャドームーンに乗られるバトルホッパーみたいだ(シルフィードはバトルホッパーやオートバジンと似た属性かも)
あと黒魔さんいつもおもしろい作品ありがとう、暑中見舞い申し上げます
>>757 強力な送信限定テレパスの一種だな。
最近だと、テレパスの送信はPKに分類するから、ESPとは違うと思う。
PKとESPの違いは……?
PKは念力でスプーン曲げとかがわりと有名な何かに影響を与える力
ESPは透視や予知、テレパシーの受信などが解りやすい超感覚
しかし破壊者の人、アギトとはよくわかってらっしゃる。乙
黒魔の人のアーロンか!
冒頭のデルフの語りを見てまた]のBGM引っ張ってきちまったぜ。OPのアレ。
けどすげぇ気になる……ハルケギニアでのシンの扱いとか。
しかしディケイドライバーはもやし以外の人間に使えるんだろうか
ディエンドライバーはチノナマコが使えてたがあれもなんかディエンドライバーに精神を乗っ取られたみたいになってたし
もやし達はいつまでルイズの世界にいるつもりなんだ?
まだ響鬼の世界までしか行ってないんだから
他の世界があることや夏みかんの世界が救われたかどうかとか知らないよね一行は
ハルケギニアを一度保留にして
他の世界を先に回り、再び帰ってくるとか?
ハルケギニア→ネガ→ハルケ→シンケン→ハルケ→ブラック→ハルケ(ry
何かほっといても大ショッカーの方が攻めてきてくれる気がし始めた今回の話。
ギーシュ、マリコルヌ、オスマンあたりが怪人に改造されてしまうのもいいな。
「ダークドリームの冒険」の番外編その3が完成しました。
「フレッシュプリキュア!」の放送終了後、9:00から投下します。
実は、ちょっと書くことが多すぎたので終わりませんでした。
とりあえず、今回は前半部分を投下して、残りは、また後で投下します。
……つか、がんばって書かないとね。
そして脳改造前に助け出されて一緒に戦うようになるけど
役回りはがんがんじいと変わらないギーシュ(モグラ怪人)ですねわかります
タバサの部屋の窓辺に、大きな青いつぼみをつけた、ひとつの鉢植えが置かれている。
『奇跡の青い薔薇』……。キュアローズガーデンには、まれに大きな『力』を持った薔薇が生まれる。
それは、愛情を持って育てた者の『想い』を受けながら成長し、花が咲いたときに『願い』をかなえる。
ダークドリームが持ち帰った鉢植えを、タバサは大事に大事に育てた。
『奇跡の青い薔薇』は力強く成長し、今、大きな『つぼみ』をつけている。
「明日には咲きそうだね」
ダークドリームは鉢植えをしげしげと眺めながら、じっと本を読んでいるタバサに話しかけた。
タバサは本から目を離さないまま、軽くうなづく。
さっき、メルポに手紙を出した。きっとみんなも来てくれるだろう。
明日は『虚無の曜日』だ。みんなでオルレアン邸に行って、タバサが本当のお母さんに会えるのを祝福しよう。
タバサは、一体、どんな顔をするだろうか?
ダークドリームがそんなことを考えていると、大きな音が空から聞こえてくる。
何事かと、窓から顔を出して見上げると、雲の間から超巨大な影が降りてくる。
そう。
それは、まさに翼であった。差し渡しは、150メイルはあろうかという、巨大な翼だった。
翼の後ろには、巨大なプロペラがいくつか回っている。
二等辺三角形の巨大な翼に、推進式のプロペラがたくさんついた飛行物体……。
雲の間から現れたそれは、そのまま高度を落とし、魔法学園から少し離れた丘の上に着陸する。
「タバサ!あれ……なに?」
目を丸くして、飛行物体を見つめていたダークドリームが問いかける。
いつの間にか窓辺にいたタバサは、静かな声でポツリと呟く。
「帰ってきたのね」
支援支援
それからしばらくして……、
魔法学院から少し離れた丘の上では、生徒たちがその強大なフネ『オストランド』号を遠巻きに見つめていた。
見るからに巨大なフネであった。翼の差し渡しは150メイルはあるだろう。
けれど、ダークドリームの視線の先にあるのは、そのフネではない。
フネの前で、オールド・オスマンと話している人物、……コルベールをじっと見つめていた。
「コルベール先生……生きてたんだ」
ダークドリームのピンチを助けるために戦い、魔法の矢に倒れたはずのコルベール。
彼が、ダークドリームの視線の先で話している。
何を言っているのかはわからないけれど、あれは間違いなくコルベール先生だ。
「久しぶりね」
いきなり声をかけられてふりむくと、そこに立っているのは懐かしい人物だった。
燃えるような赤い髪に、情熱的な目、褐色の肌。キュルケがダークドリームの目の前に立っている。
「キュルケ!?どうして」
驚くダークドリームに、キュルケはニコニコとした眼で、大きなフネを指差して言葉を返す。
「タバサのお母さんが治るんでしょ。『オストランド号』で飛んできちゃった」
どうやら、タバサとキュルケは連絡を取り合っていたらしい。
シロップとみんなを呼んで、タバサを驚かせようとしたのに、こっちの方が驚かされるなんて……。
ダークドリームは振り向いて、タバサの顔をじっと見つめる。
いつもと同じ無表情だけど、その顔はなんとなく笑っているような気がした。
その夜、タバサの部屋で、ダークドリームはキュルケと遅くまで語りあかした。
コルベールが生きていたこと、どうして彼を助けたのか……。
『鏡の国』のこと、別の世界にいる友達のこと……。
『奇跡の青い薔薇』のこと、やっとタバサのお母さんの笑顔を見られるだろう……。
夜が明けると、シロップがのぞみたちとココを乗せてやってきた。
くるみとナッツは、残念ながら用があって来れないそうだが、
久しぶりの友達を前に、ダークドリームはすっかりはしゃいでいる。
オストランド号でラグドリアン湖まで運んでくれるというので、ダークドリームたちは船室に乗り込む。
広い船室には、タバサやキュルケ、才人にルイズにシエスタまでが並んで座っている。
馬でなら半日はかかるラグドリアン湖も、飛べばあっという間だ。
みんな、楽しそうに話しながら、ひと時のフライトを満喫している。
タバサたちの一行は、オストランド号をラグドリアン湖の上空に係留し、地上に降りた。
そのまま、一行がオルレアン邸に向かい、玄関についたところで、なにやらガラスの割れる音がした。
タバサは顔色を変えると、玄関の扉を押して中に入る。
「シャルロットお嬢様、大変です!お、奥様がっ!」
館に入った一行を迎えたのは、血相を変えた執事のペルスランだった。
「裏庭の魔法人形(ガーゴイル)がいきなり動き出して、奥様をさらっていったのです。
あの魔法人形は何十年も動かなかったのに……、なぜ、こんなことに!」
ペルスランの話を聞いたタバサは、すぐにきびすを返して玄関を出る。
庭に出た彼女たちが見たのは、空に浮かぶ大きな魔法人形だった。
翼の差し渡しは10メイルはあるだろうか?その手にはオルレアン公夫人が抱えられている。
ピクリとも動かない、おそらくは強力な魔法薬(ポーション)でも嗅がされたのだろう。
「母さまっ!」
タバサは叫ぶと同時に、背後からものすごい悪寒を感じた。
振り返ると、そこには、男が1人立っていた。
薄い茶色のローブを着た、長身で痩せた男が庭に立っている。
館を出た、他のみんなの視線もその男に釘付けになっている。
「母さまをどこへ連れていく気なの?」
「行き先は知らぬ。……が、お前たちは、ここでしばし大人しくしておいてもらいたい」
タバサは男の言葉が終わらぬうちに杖を振った。『ウィンディ・アイシクル』が男の胸を襲う。
だが、タバサの氷の矢は男の胸の前でぴったりと停止した。男が魔法を唱えた素振りはない。
「そうだ、あいさつがまだだったな。失礼した」
男はそういうと帽子を脱いだ。金色の髪から……長い、尖った耳が突き出している。
「わたしは、『ネフテス』のビダーシャルだ。出会いに感謝を」
「エルフ!」
その耳を見たキュルケが思わず声を上げた。
ハルケギニアの民のとって、エルフは恐怖の象徴である。
20人以上のメイジの軍隊を1人のエルフの戦士が殲滅したなど、噂話には事欠かない。
ルイズやコルベールも、驚きで完全に動きを止めた。
才人が、ひとりデルフリンガーを抜き放った瞬間、才人の頬を何かがかすめた!
それは、小さな『石つぶて』だった。才人の頬の皮が切れて、うっすらと血が流れる。
見ると、いつの間にやらビダーシャルと名乗る男の周りには、いくつもの『石つぶて』が浮かんでいる。
「我は戦いを好まぬ。大人しくしていてくれれば、危害は加えぬ」
その穏やかな声の中には、無限の迫力があった。
何度も実戦を繰り返した才人やタバサも、今までに戦った相手とは違う、秘められた恐怖というものを感じていた。
「シロップ、タバサさんたちを連れて、すぐに追いかけて!」
短い沈黙の後、口を開いたのは、夢原のぞみだった。
その瞬間、彼女の横をいくつもの『石つぶて』が飛びぬける。
「聞こえなかったのか、娘。……次は当てる」
ビダーシャルに睨みつけられても、夢原のぞみは目を逸らさず、まっすぐに彼を見据えた。
「タバサさんはね。お母さんを助けるために、何年も1人で戦ってきたんだよ!
『奇跡の青い薔薇』を咲かせるくらい、お母さんの事を想い続けてきたんだよ!
やっと、タバサさんが本当のお母さん心を取り戻せるんだよ!
だから、こんなところで邪魔はさせないっ!いくよ!みんなっ!!」
「yes!」
シロップは、オルレアン公夫人を連れ去った魔法人形を追いかけて、全力で飛んでいた。
その背中に乗っているのは、タバサ、キュルケ、コルベールにダークドリームだ。
プリキュアたちは、ビダーシャルと戦っている。
ルイズと才人もデルフリンガーの「エルフに対抗できるのは『虚無』だけだ」という言葉に、あの場に残った。
「大丈夫かしら、あの子たち……」
心配そうに呟くキュルケにダークドリームは笑顔を見せた。
「大丈夫だよ。のぞみが、ああやって言う時は、どんな敵にも絶対に負けない!
のぞみは、言った事を、全部本当にしちゃうんだから」
強い瞳に見つめられて、キュルケは少しだけ安心した。
「今は、向こうの心配をしている場合じゃないだろう」
表情の緩んだキュルケにコルベールが話しかける。
確かにそのとおりだ、今、やらなきゃならない事は……。
キュルケは大きく息を吸って表情を引き締めた。
「見えた」
タバサの声に、ダークドリームたちは正面の空を見つめた。
魔法人形の数が増えている。どこかで合流したのだろう、全部で7体の魔法人形が空を舞っている。
「シロップ!ギリギリまで近づいて。わたしがタバサのお母さんを捕まえるから」
タバサは小さく頷く。
「わたしがサポートする。母さまを捕まえたら、暴れないように母さまを抱きしめていて。
『風』と『レビテーション』で受け止める」
「最短距離で飛んでいいわよ。邪魔をする奴らは、わたしとジャンが、全部焼き尽くすから!」
「わかったロプ!」
シロップは、そう答えると、翼をギュッと後ろに動かして滑空しはじめた。
これなら、震動もほとんどない。
タバサは、『ウィンディ・アイシクル』を唱えて、杖に『氷の矢』を纏わせる。
いつもなら、一度に使えるのは3本が限界だが、今は、5本の『氷の矢』が杖に纏っている。
タバサの感情の高ぶりが、彼女のランクを引き上げているのだ。
『風』の流れが手に取るようにわかる、研ぎ澄まされた彼女の感覚が遠くに見える魔法人形に集中する。
オルレアン公夫人を抱えた魔法人形を除いた6体が、シロップの方へと向きを変えた。
大きな爪と牙を持つ悪魔のような姿の魔法人形は、羽根をはばたかせ速度を上げる。
そのうちの1体を、キュルケの『フレイム・ボール』がバラバラにする。
1体は、『炎の蛇』に羽根を焼かれて、墜落してゆく。
次々に襲い掛かる魔法人形は、炎の魔法で焼かれ、爆発する。
焦げ臭い匂いの中、ダークドリームとタバサは、前だけを見ていた。
オルレアン公夫人を抱えた魔法人形。ただ、それだけしか見ていない。
見る必要もない、信頼できる『仲間』が、自分たちを守ってくれているのだから!
……100メイル……
……50メイル……
……20メイル……
タバサは、じっと見つめて、魔法人形との距離を測る。
ダークドリームは、シロップの上で屈んで、いつでも飛び出せる体勢のまま、魔法人形の動きを見つめる。
タバサの杖に纏った『氷の矢』のうち、2本が放たれた!
狙いたがわず、魔法人形の両肩へと吸い込まれるように命中!
その瞬間、ダークドリームはシロップの背から跳躍した!
肩の力が抜けた魔法人形から、タバサの母親を受け取り、抱きしめる。
ついで、ダークドリームは魔法人形を蹴り、自分たちから引き離す。
魔法人形の頭と羽根に3本の『氷の矢』が突き刺さる!
そのまま、魔法人形は力が抜けたように地面に向けて墜落をはじめた。
ダークドリームはタバサの母親を抱きかかえたまま、じっと顔を見た。
まだ眠っている。どうやら、相当に強力な魔法で眠らされているのだろう。
タバサの母親をぎゅっと抱きかかえたまま落ちていたダークドリームは、ふわりとした『風』に受け止められた。
顔を上げると、いつの間にやら、魔法人形は1体も残っていない。
ダークドリームたちがゆっくりと落ちるのにあわせて、シロップが旋回して近づいてくる。
そこに立っていたタバサの嬉しそうな顔を、彼女は、おそらく忘れる事はないだろう。
オルレアン邸から少し離れた丘の上で、黒いローブを着た女が顔をゆがめていた。
なんだ……今のは?
7体の魔法人形があっという間に全滅した。
まるで、何人ものスクウェアのメイジと対峙したような有様だ。
『元』北花壇騎士団の人形7号はトライアングルのはず……。
彼女がトリステインにスクウェアクラスの『仲間』がいるなど情報にはなかった。
あの鳥……あんな生き物は見たことがない。
それに、ビダーシャル卿も引いたようだ。
エルフとまともに渡り合えるなんて、『虚無』とガンダールヴはともかく、あの少女たちは何者だ?
何もかもが想定外すぎる……。
一度、戻って態勢を立て直さないといけないだろう。
黒いローブの女は、空を舞うシロップを憎憎しげに睨みつけると、姿を消した。
ちょ、キュアパッション!涙は反則だろ……というのはおいといてw
今回はここまでです。
読んでくださった方、前回感想を下さった方、Wikiに登録してくださった方、ありがとうございました。
次こそは本当の最後のエピソードになります。
なんとか今日中に投下……できればいいなぁ。
乙です
どんな結末を迎えるのかwktkですね
むう、締め切りに間に合わせるためにちょっと急ぎすぎたみたいです。
読み返してみると、色々とアラがありますね。
・ビダーシャルとシェフィールドが、なぜタイミングよく現れたか?
『スレイプニィルの舞踏会』で才人を殺せという、『仕事』の依頼書をタバサが破り捨てたエピソードが丸々抜けていました。
(初期設定では、この日はスレイプニィルの舞踏会でしたが、ややこしくなるので全カットしました)
辻褄を合わせる文章は後で考えるとして、Wikiに登録した後に、追加しておきます。
・シェフィールドがキュルケとコルベールを「スクウェアクラス」と判断している。
感情の高ぶりが、呪文のランクを云々……の説明を丸々カットしていました。
とはいえ、タバサのところで使ってしまったので、二度は冗長すぎるでしょう。
下記のように訂正をお願いします。
×:彼女がトリステインにスクウェアクラスの『仲間』がいるなど情報にはなかった。
○:彼女がトリステインであれほどの『仲間』を連れているなど情報にはなかった。
それではでは、先ほど録画した「フレッシュプリキュア!」を見ながら執筆に戻ります。
また今日中にお会い……できるといいなあ。
>>781 プリキュアの人乙です。
後日、自信満々で投入したヨルムンガント軍団がプリキュアに“投げ飛ばされ”、
“蹴り飛ばされ”、“殴り飛ばされ”た上に全滅の憂き目を見て、シェフィールド
涙目な光景が浮かんできて止まりません(苦笑)
喜々として展開予想とか頭沸いてるとしか思えない
半年ROMってろ
よし伝家の宝刀
夏だなぁ…
>>781 乙です。どうなるのかなあ…
前に別のディケイドネタ書いた者です。
リアルが色々立て込んでしまっているため、続きは8月になりそうです。
途中で投げ出す気はさらさらありませんが、どうせ書き逃げ云々という発言が前にあったので、
とりあえず生存報告。気分を悪くされた方、すみません。
ふぅー・・・先走ってアルカナハートクロスの絵を描いてしまったのはいいが、
スキャナーが事情で今日だけ使えないことに気づいたでござるの巻き
明日には投下出来そうだけど。
どうでもいいわ…
誘いうけ痛々しいです
夏か……
プリキュアの人、乙でした。プリキュアたちとすっかり仲良しなのがほほえましいです。
しかし最後まで気が抜けませんね。
次で本当に最後というのは残念ですが、完成度を第一にあせらずにがんばってください。
ところで、今週の分を投下しようと思ったのですが、容量がいつもどおりで入りきれるか少々不安なのですが、
このまま投下するべきか、それとも次スレを待つべきでしょうか?
夏だよ
おっと失礼
携帯なんで確認できないが、容量オーバーするなら新スレ立てればいいのでは
了解しました。スレ立ては初めてですが、ちょっと作ってきます。
毎週日曜は、ウルトラの日
わりと原作準拠で様式美的なものを楽しむ話
使い魔がかなり深く設定に干渉してる話
いろいろあって楽しいな
アノン4話まとめになくね?
たしかもう投下されてたよね?
>・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
携帯でスレとか見ないからわかんね
携帯でWikiを見ると文章が途切れてしまうんだが
>>803 そう?
たしかに少々見にくいけど読めるよ?
>>803 それは携帯のスペックが低いんじゃないか?
容量オーバーで途中までしか表示されないってことだろ?
そう言えばデモゼロも最新のがまとめに更新されてなかったような
当時のログもってないんで更新できんが…
>>804-805 1年前の機種だが、そうかもしれん。
文字そのものは普通に読めるが、Wikiみたいなのにはあまり向いてないのかも
partいくつくらい?
モリ余ってるからなんだったら確認するが
あれ?まだ余ってる?
容量がか?
ウルトラが向こうで流れ作っちゃったから、容量的にこっちで余裕なやつも向こうで投下してんだよな。
479KB
以下500kbまで自分の好きなハルケギニア料理をあげるスレ
ヨシェナベ
なんで蒼の使い魔は更新が途絶えたの?
信者うぜーって作者がブチ切れた
正直言って完結させる気がないなら初めから書くなって思うんだよね
蒼の人はいずれ別の場所で完結まで書きたいと言っていたはず
このスレでの俺の役目は・・・
蒼の使い魔って
やたらバージルにフンフン言わせてた作者さんだろ
そう言えば気付いたらフェードアウトしてたな
暇潰しにちょっくら読んできます……フン
480Kb超えていますので、新スレを立ててきます。
すいません、もう立ってるのに気づきませんでした。
流石にこれはない
どういうことなの・・・・・・
モルダー、あなたはつかれているのよ
まぁ、容量が480KBを超えたわけでも、スレが950まで進んだわけでも無いのに、
次スレを立てたのからしていつもと違うからな、立ってると思わないのも不思議ではないよな。
かと言って、定期更新してくれてる作者さんに次スレ立つの待ってろってのもな……。
容量的に足りる人は、こっちから使った方が良いと思うけどなw
チェックしないで立てたのが悪いとちゃいますか?
まぁ普通はスレ内を確認し、立てる時には必ず板を更新して新着順でチェックするわな。
ならば
>>820のスレはPart245として使えばよい。
一週間ぐらい経てば次スレが必要になるんだし。
笑止
御意
何だ、ただのタテジワネズミか。
いつかは我らが主役に!!
ジュエルペットのルビー召喚書こうかな……ルイズの名前自体が勇気って意味だし、意気投合しそう
そういえばサンリオキャラの話ってあったっけ?
マイメロとか強烈そうなんだが さすがに扱いが難しいかな
>>835 なんだファントムシュバルツ・シルトか
コイツ喚んだら阿鼻叫喚だよな……
シュバルツ・ブルーダー?
毎回とんでもないところから出てくる使い魔とな?
どこにいるかと思ったら頭の上に乗ってたりな
かべのなかにいたり
そういえば他人の影の中から出てきたことがあったな
ギャグマンガだとレインの影の中から「白!」とか言いながら出てきてたな
シュバルツ・ブルーダーってさ…考えてみれば、変な仮面を被った怪しいオッサンなのに、何故かカッコ良く見えるんだよなw
Gガンってダメな人ばっかだから個人個人のダメな部分が気にならないんじゃねw
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / l从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄ | イ
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj ∨ ヒソj .l ヽ\| / / | / !
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ . \ / / \ / l
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入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V ヽ \ ,. '´
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ヽ _>-ヶ--∧_} ノ j /` 7 ̄ ̄ ̄{ (  ̄ ̄`ー‐^ーく_〉 .ト、_>
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V 人__/ / | /  ̄{ ̄ >‐ ァ-、 \ 〉ー} j
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<ヽ__ /し / < )__ \ _r‐く___/ / < ) \ {__ノ /
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/イ /:/ | : : fチテ` ´ l´: `: :/l}ィオ ヽ _l_ `メ / !
レl :|: :| : : :i`¨ .fチ}〉:./ ,'l `′ ´ト'ミy′/-─ァ ',
V|l、:', : : l. r‐ 、 ¨./:イ / .ト、 、_ `7′/==イ l ',
/^Y^ヾヘ : :|ヽ__ ',. ィ: :/,==、 ヽ.. ィ′ / .| l '
> ,-イ ハ: :lエユ レ|:./,匁,斗} | ,/ //_ 、 | i ',
{_/:.:弋¨{ V,/(0)ヽ.|イ | l/ .::/ | / /´ `i \l | ,
/.:.:.:.:.:.:.:〉'{ < >┴| :{:‐-'´| ./ ィ′ \| ,
. /.:.:.:.:.:.:.:.:ゞ、}'´.:`ヽ /o | :/l: : : ,'レ' ,' ヽ ',
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|{ !ィ爪 ∨\ ! _」_// / 人リ ;
!ヘ ヽ ヽ| V,ィ≠ト ヽ ! {f イ|∨/ \ +
| \| \__∨|{__,イ}. 弋rリ イ ヽ :
/ ! \弋_rり  ̄::: { } | ;
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|/| | ハ ヽ r _ア , イ // リ i 今スレもお疲れ様でした
|! | ト、 ト、 > 、 _ ィi | /!/ 次スレでもよろしくお願いいたします
\! メ::::\!\ }ー-rく{ } | |-- 、__ あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part244
 ̄ >ー-へ |_::| |:: :||:::!\从::::::::::::ヽ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1248590519/ 人 /::::::::::::::::::∨:::r----r‐rr‐<_::::ヽ::::::::\ 人
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>>846 見るたび思うのだが下のサイトがかわいい
/ __ 丶ヽ `ヽ、
/  ̄  ̄\ /∧ /ヘ\
, -―¬7 ―‐==>ーー┤ /ヽ∨/ !ヽヽ
/ / ー-―ァ''´ l | ``"´´| ハヘ
/ {ミ 、_ / l | j / }!
\ /ヾ三三{ \ ヽ{ // リ
ヽ、 / 勹! ! 、__ `ーヾ 'イ_ 〃
l/ヾ\ / ,′ l ‐千f天圷 テzァk/
/ ヾ:/ / ', ゞ-┘ Lソ/ハ
/ / ∨ ミミハ .:.::::::::. 、::::.:. {∧ 次スレですわ
/ \ /ヾ、l ! ′ j │ あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part244
. / ヾ \/ | l\ _ , .イi:小
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1248590519/ / /ミ: 、 | ミ≡= l `ヽ、 ´ .ィ个彡 iヘ
. / / ミミ:| l`ー- 、`ーォ< l彡| |:∧
/ミミ / /^ー| l ヽ 〈 /l`ヽ| |彡ヘ
. / ミ/_,r'´:::::::::::|ミミ 、 | /^∨イ | ::::|: =彡|! ∧
/ `ヽ、/::::::::::::::::::::::| ミミ│ ∧ / │ | ::::|≡三|ニ二 ヘ
r彳云ヽ、
, -イ。弋ソ__ 二ミヽ/\ 人
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|{ !ィ爪 ∨\ ! _」_// / 人リ ;
!ヘ ヽ ヽ| V,ィ≠ト ヽ ! {f イ|∨/ \ +
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/ ! \弋_rり  ̄::: { } | ;
/ , { \::::: ` 人. //|.| _!_
|/| | ハ ヽ r _ア , イ // リ i
|! | ト、 ト、 > 、 _ ィi | /!/
\! メ::::\!\ }ー-rく{ } | |-- 、__
 ̄ >ー-へ |_::| |:: :||:::!\从::::::::::::ヽ
人 /::::::::::::::::::∨:::r----r‐rr‐<_::::ヽ::::::::\ 人
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リ ヽヽヘ ヽ、 // ノ ,イ:ハ!
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l `ヽ ヽ-‐ ''て( {
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/ / ヽ 、 \
/ | | | ヽ ヽ ハ
/ |,斗 ミ 弋T ト、 | |i i |
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