あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part240
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part239
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1245801085/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
乙です
>>1乙
お前はもう用済みだ
、人 ' ;’, ,
( ^p^) iニ二@ ´ ( ^o・)・ 、
) ⌒〜(__) ,Y` ゝ ( ` ´ .
/ ィ,-─ ̄ /⌒
>>1 )
はい、こんばんわ。所謂一つのろくでなし。鋼の人でございます。
ただいまタバ冒から引っ張ったネタで中篇を書いているのですが、あの人があの人っぽく書けてないようで不安です。
誰のことかは今は言いませんが……。
では早速投下予告。少し遠いですが、きり良く2130から。
ああ、ありますよね〜。らしく書けないんだけどどう書いたら良いのか判らないっ!て。
「こいつは参ったな……」
駅場に到着して周囲の風景を見渡し、ここにいないルイズの使い魔ギュスターヴの口から出たのはその一言だった。
ギュスターヴ、モンモランシー、ギーシュの三人がたたずんでいるのは、厩と馬車を引き込むひさしが付随した駅場の建物だ。石畳の街道に面しているのだが、
石畳が先5リーグくらいから地面に沈み込んでいるのが見える。街道を挟んでいる耕地も畦が崩れて泥濘に塗れていた。
「ラグドリアン湖が広がって周囲を浸食し始めているという噂は事実だったみたいね」
陥没を免れている石畳の上もじっとりと濡れ、嫌そうに投げ出した鞄に腰掛けたモンモランシーが言った。
「手はずではモンモランシーの血を与えたロビンを湖に放って、水の精霊を呼び寄せるってことだったけど、岸辺が殆ど湿地なんじゃなぁ……」
そういうギーシュは大きな鞄を用意したモンモランシーとは対照的に、袋一つの荷物を身体に縛り付けていた。
「嫌よ私、泥濘を歩いていくなんて」
「も、モンモランシー。わがまま言える立場じゃないんだよ?僕達」
「いや、足を取られるような場所を歩いていくのは危険だろう。そうだな……」
と、思案に耽ろうとしたギュスターヴの視界に、駅場の端で青果を広げている露天商が見えた。
ふむ、とギュスターヴの目に不敵な光が宿る。
「なんか思いついたみてーだね、相棒は」
忘れず持参したデルフがギュスターヴの腰元で嬉しそうな声を上げた。
「ちょっと待っててくれ」
「どうかしたかね?」
「買い物に行ってくる」
「ハァ?道草食ってる暇なんてないのよ」
呆れ返るモンモランシーの声を無視して、ギュスターヴはうなだれる露天商に向かい合った。
「景気はどうだい?」
「さっぱりでさ。村が湖に沈む前は結構儲かってましたがね。近頃はとんと」
話す露天商は疲れた目でギュスターヴを見上げる。ギュスターヴは、なんて事の無い客のように並べられている青果をためつすがめつしながら、懐をまさぐって
一枚の銅貨を取り出して露天商に渡し、林檎を一個受け取った。
「この辺で湖に面した岸辺がありそうなところってあるかな」
「この辺で……ていいますと、トリステイン側でですかい?」
「んん?」
少し要領を得ない返事をしながら、ギュスターヴは林檎にかぶりつく。しなびた皮が切れ、口の中に呆けた味が広がった。
「トリステイン側はごらんのとおりの有様ですがね、ガリア側に行けばまだマシな岸辺や村があるみたいですよ」
「越境はしないのかい?こんなところで商品を広げるよりも旨みがあるだろう」
「ほっといてくだせぇ。関所を通るには身分証明がなきゃあ時間が掛かるんですよ。それこそ貴族の方じゃなきゃすぐには通れませんぜ」
「ふぅん。そうか……」
林檎を平らげてから、ギュスターヴは再び懐をまさぐる。そして一枚の金貨と厚紙の紙片を取り出し、露天商に投げて寄越した。
「ちょ、ちょっと!こんなにもらえませんよ」
「いいからとっておけ。それと、王都に出て仕事をする気があるんなら、そこに書いてある所に行ってみるといい。ここで呆けてるよりは身の立ち様があるだろう」
「あ……ありがとうございます……」
いきなりの事態に身を固めて動転する露天商に手を振ってギュスターヴは離れた。
二人のところへ戻ってみると、モンモランシーに睨まれ、ギーシュからは苦い笑いを返された。
「あんた本当に私らに解除薬作らせる気あるの?やけにのんびりしているような気がするんだけど」
「考えるより動いてた方がマシな口でね。……さて、問題はタバサとキュルケの居所だが……」
「そのことなんだけど、ギーシュ。ヴェルダンテ呼べる?」
突然の問いにギーシュは一瞬、首を傾げたが、次には未舗装の地面に降りて杖先で地面を軽く突いた。
すると瞬く間に地面が盛り上がり、その下から動物の黒い鼻が突き出てきた。
ぐもぐも。
「おお、ちゃんとついて来てくれたねヴェルダンテ」
ぐもぐもも。
ギーシュの声に応えるようにヴェルダンテは穴から這い出る。大型犬ほどに大きな土竜である。
「で、僕のヴェルダンテに何をさせるつもりなんだい?」
「ちょっと待って……あった。この匂いを探させて。ヴェルダンテに手紙を持たせてね」
モンモランシーは小瓶を取り出し、ハンカチにしみこませてギーシュに手渡す。
「『ブルー&ルージュのマジックキングダム』は特徴的なフレーバーだからすぐに分かると思うわ」
「ブルー&……なんだって?」
「キュルケのつけてる香水よ。私も興味が有ったから少し持ってるわ」
よくわからないな、とギュスターヴは頭を掻いていた。そうしている間にもギーシュはヴェルダンテに紐で手紙を括りつけ、ひくつく鼻先に香水を嗅がせていた。
「いいかいヴェルダンテ。この匂いのする人を探すんだ。その人に手紙を渡すんだよ」
ぐもも。
応えたヴェルダンテは出てきた穴を戻って地面の中へ消えていった。
「さて、これで多分彼女らが迎えに来てくれるだろうね」
「多分ね」
提案しながらモンモランシーは不安気に言う。
「あとは水精霊に会う方法だが、水に侵されてない岸辺がいるんだろう?」
「そうよ。水精霊と交渉するには彼らをこっちに呼び寄せなきゃいけないんだけど、その時彼らに触れないようにしなければいけないわ。湿地に踏み込んで
会おうものなら一瞬で精神を取り込まれるわね」
「け、結構危ないんだね水精霊って……」
青い顔でギーシュは遠くに見える湿地帯を見る。
「ま、礼を尽くせば大概怒ったりしないわよ」
「そうか。しかし……どこにいるんだろうな、タバサとキュルケ」
しっとりと温む風の吹く景色を一望してギュスターヴは言った。
「参ったな……」
『巨湖の主、ここに』
「で、あなた達も『水精霊の涙』欲しいから来たってわけね」
シルフィードから降り立ったキュルケはモンモランシーとギーシュを一瞥してそう言った。
「必要なんだからしょうがないでしょう」
「私とタバサが取って来てあげるから高く買ってくれる?」
タバサに荷物運びを頼んでいたギュスターヴはそれを聞き、渋い顔をしてキュルケを見た。
「冗談ですわ。……人手は多い方がいいわね。ラグドリアン湖は今こんな有様だし」
陽が昇り切った頃合で、日照が水気を曇らせ蒸し暑さを感じる。ラグドリアン湖周囲の湿地帯が現状、如何に人の住みづらい場所か、そのようなことをギュスターヴも
考えていた。
「あんた達、水精霊の涙を取ろうとしてここに居るんなら、今まで何やってたのよ」
いかにもキュルケたちの手を借りるのが不満気というモンモランシーだった。
「それはまぁ、ね。タバサに水中歩行【ウォーターウォーキング】をかけてもらって湖の中に入ってみたりしたけど。それらしい影も見当たらなかったわ」
「当然よ。人に見える形で漂ってたりなんかしないわ」
ふふん、とモンモランシーが小鼻で笑うと、キュルケは髪をかきあげて視線をそらした。
どこか剣呑な空気が漂いそうになったところで、ギュスターヴが切り出す。
「トリステイン側には湖に接する適当な陸地がなさそうでな。出来ればガリア側に渡りたいんだが」
そういうと、キュルケはさりげなくタバサの顔を窺った。いつもの無表情が少し落ち着かない様子なのが気に掛かった。
「タバサ、どうするの?」
「……頑張る?」
疑問符がつく返事をしたのは、タバサが使い魔の風竜に聞いたからだった。シルフィードは鱗の煌く首を縦に振って、細く鳴いた。
きゅい、きゅるるる。
「重たいけど頑張るって」
「だそうよ。よかったわねー、モンモランシー」
「どういう意味よ?」
「さぁ?」
険悪な雰囲気を作る二人の間に立っていたギーシュは言葉も出せずに苦しそうに喘いでいる。
「キュルケ……」
「冗談ですわ」
ラグドリアン湖上空を突っ切り、一同が降りたのはトリステイン側の岸辺にあった村の廃墟から、ちょうど向かい側と思われる岸の一角だった。石や岩が多く、
波止場や船着場に適さないために放置されているような場所である。
「ここでいいだろう。あとはモンモランシーが水精霊を呼び寄せるそうだ」
「あら、そんなことが出来たのね。期待してるわ」
シルフィードの背から荷を降ろしていたキュルケの声に、モンモランシーの背中がピクリと震えた。
(……気にしちゃ駄目。いちいち反応してたらきりが無いわ)
息を大きく吐いて深呼吸し、モンモランシーは気持ちを切り替えた。水精霊は人とはまるで違った存在で、気を抜くとなにが起こるかわからない。
「さ、出番よロビン」
モンモランシーの一声で、荷物の中から黄色と黒の斑模様の蛙が飛び出す。べたり、と湿った音を立ててロビン……モンモランシーの使い魔の蛙は主の足元に
擦り寄った。
「ふふ、いい子ね。いい?ロビン。貴方達の支配者、旧ぶるしき一族と、私は対話を希望するわ」
そういって、モンモランシーはいつも提げている道具袋から片手に乗る程度の小さなナイフを取り出した。鞘に収まったそれはとても古そうで、抜き身にすると
刀身の輝きは、長く見ている者におぞましい恐怖に駆られて発狂させるのではないかと思うほど、複雑な反射をしていた。
皆が見守る中で、モンモランシーはロビンの上でナイフの切っ先を手のひらに当て、一息で切り裂いた。
「モンモランシー?!」
「黙っててギーシュ。……っ……ロビン、私の名代。かの旧ぶるしき者達に、交渉者の一族の到着を告げなさい。名の記されぬ昔よりの契約に従い、私達の前に
現れてくれるように伝えなさい」
ロビンに血を降りかけながら、モンモランシーは時折、記すに難しい発音の古い言葉を何度か唱え、最後にロビンの背中にルーンを一文字指で書いた。
ロビンは主人の要望を心得たと見て、湖に飛び込んでいった。それを認めてモンモランシーは血の止まらない手のひらにハンカチを当てた。
「ふぅ。これであとはロビンが水精霊をつれてきてくれるはずよ。それまでは待機ね」
静かな湖畔を眺めながら一同は何もない岸辺に屯する事になった。キュルケは『水精霊の涙』を受け取る為の鍋を抱えており、タバサはシルフィードの横腹に
寄りかかって本を開いていた。モンモランシーは湖が気になるらしくじっと湖を見ていた。ギーシュとギュスターヴは、荷物の中から干し肉と保存食用のワインを取り出して
軽い食事を取っていた。
「んーっ、この旅行用のワインは何度飲んでもきついね。喉が焼けそうだ」
唾液を欲してそう言いながらギーシュは干し肉をがしがしと齧りはじめる。旅人が携帯する場合、ワインには度数の高い蒸留酒の一種が混ぜられるのだ。
一方ギュスターヴは短剣で干し肉を丁寧に削いで、腰掛けた場所から全員の様子を観察していた。モンモランシーから、キュルケに対する漠然とした
警戒感が漂っているように、ギュスターヴは感じた。
「なぁギーシュ」
「ん?なんふぁい?」
干し肉についていたオリーブに手をつけながらギーシュは振り返る。
「モンモランシーはお前にとっての何だ?」
「ぶふっ?!」
いきなり噴出したギーシュに女性陣の視線が一瞬集まる。
「ゆっくり食えよ。……あまり大きな声でしゃべるなよ」
「げぇっほ、げっほ……な、なんだい藪から棒に」
「ことの発端は、モンモランシーがお前に幻覚剤を使ってでも同衾を願ったことだ。そうだな」
「ん……まぁ、そういう、こと、だね」
口重そうにギーシュは応える。
「照れるなよ、いい男が。……で、だ。前々からそういう関係を強固に願われていたわけだな?お前は」
「う、うむ……」
ギーシュとモンモランシーとケティがちょっと昼間には明言できない爛れた関係『らしい』、と学院で噂されていることくらいギュスターヴも知っている。
「そこで、老婆心ながら思うのだが、お前は一体モンモランシーをどう捉えたいのかと俺は気になるのさ」
「む、……そ、そうだね……」
口重く、ワインに口をつけながらギーシュはぶつぶつと呟く。
「も、勿論、僕はモンモランシーを愛している。そこに揺るぎはないけどさぁ、もっとこう、さぁ……」
「だらしのない。男なら受ける愛情くらい受け止めたらどうなんだ?半端に袖にしてるからこういうことになったんだろうが」
「うぅ……」
ぐうの音もでないギーシュは口寂しいのかかっぱかっぱとワインを飲んでいくが、最後の一瓶をギュスターヴはギーシュの手元から掏り取った。
「あ……」
「お前は女性は受身で待っているものだと決めて掛かってないか?女性は強い。男はそれを受け止めるものだ」
ぐっと一気にワインを飲み干し、ギュスターヴは立ち上がってモンモランシーのところへを歩いていった。
「……はぁ」
水精霊に会う前に、なんだかすっかり疲れてしまうギーシュだった。
じっと湖を見ているモンモランシーの隣にギュスターヴが立つと、アルコールの香りがモンモランシーの鼻に臭った。
「臭いわね」
「それは失礼。……ところで聞きたいんだが、そもそも『水精霊の涙』というのはどういうものなんだ?まさか本当に涙なんてことはないだろうしな」
「当たり前でしょ。……水のメイジが使う図録や調合書などでは“水精霊の体の一部”とされているわね。入手には私みたいに交渉を行える資質があるか、或いは
能力の高いメイジが水精霊と交渉して手に入れるか、水精霊から直接切り取ってみるしかないわ。もっとも、水精霊と戦うなんて、無謀と勇気を履き違えているとしか
思えないけど」
「そんなに強いのか、水精霊というのは」
「そうね……水精霊に触れると、人はその精神を冒されて廃人になるとされるわ。それに普段は水に同化しているからどこにいるのかわからないし、火か風の魔法でも
ないと大した攻撃は出来ないはずよ。ま、大丈夫よ。敵対者でなければ攻撃しては来ないし、貴方達は待っていれば良いわ」
そう話している間に、ギュスターヴはふと湖の気配が微妙に変わったことに気付いた。潮騒が引いて自然音がしなくなっているのだ。風が木々を揺らす音も消えていた。
岸辺から10メイルほど先の水面が黒く濁っている。かと思えばぼこぼこと沸き立ち、水面が盛り上がり始めた。液体のはずの湖面がジェリーのような実体感を伴い、
高さにして5メイルほどまで立ち上がった水の塊は、その奥に不気味な光を孕んで岸辺を覗いているようにも見えた。
支援
視線が上を向いていたその時、不愉快な破裂音のような鳴き声が足元より聞こえる。ロビンがモンモランシーの元へ戻ってきていた。
「おかえりロビン。いい子ね。……古ぶるしき一族の者よ。血と契約を覚えていて感謝するわ。願わくば私達に理解できる姿と声でもって言葉を返してもらいたいわ」
モンモランシーの声に応じて盛り上がった水塊……水精霊は、日光を乱反射しながら変形を始めた。それはまるで透明な泥団子を捏ね回しているようであり、その形を
引き伸ばすたびに布を引き裂くような悲鳴の如き音を立てた。耳を貫くようなその音は、脳裏をたやすくかき乱すに足るもので、平然と立つモンモランシーを除いた
全員が強烈な不快感に襲われていた。ギーシュにいたっては酒と干し肉を詰め込んだ胃がひっくり返ったようで顔を真っ青にしてうずくまっていた。
水精霊の変形は音をたてつつも徐々に収まっていき、最終的にその形は、全長5メイルになる漠然とした人型になって納まった。中に湛えた光を頭にして、幼児が
殴り書いたような、辛うじて人の形を模しているのだろうと判断できる姿であった。
「覚えているぞ、外つ者。貴様と最後に会ってから、月の光は五十と二、交わった」
粘着質の泡を吐き出すような音を混じらせながら水精霊は応えた。
「応えてくれて感謝するわ。早速で悪いのだけど、貴方にお願いがあるの。貴方のからだの一部を分けてくれないかしら」
モンモランシーの言葉を受けて、水精霊はまた変化を始める。今度は形を変えず、体の表面を細かく波打たせていた。その振動が空気を伝えるようで、低く呻くような
音が広がっていた。
「ほんの少しでいいの!お願いだから分けてくれないかしら……?」
低い音が聞こえる中でモンモランシーは懸命な呼びかけをした。ここで断られたら立つ瀬がないではないか。キュルケの嘲笑、ギーシュの失望、そして学院に
禁薬作成を知られて家名を汚したとして多くのものから屈辱を浴びねばならなくなる。
「お願い!お願いだから……」
だが、水精霊は感情なき声で応えた。
「ならぬ。外つ者」
「どうして?!」
「我は今、我が領域を広げることに身を砕かねばならない。“契約にて縛られぬ”今、我はそれこそが全てである」
「ちょっと待って!……契約に、縛られないって……?」
「契約は月が三十ばかりまじわる昔、『アンドバリ』を外つ者の一人が外したゆえ、すでに解かれている。我は今、血に応じて貴様に見えたまで。『血』のみで我を御すること
ならず」
ウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ
聞こえる低重音がその音量をどんどんと上げ始めていた。見下ろす水の人型がまるでモンモランシーを睨みつけるように、中に孕んだ光を強くしていた。
「契約なき未熟な外つ者よ。我を斯くの如きことで呼び出したなるは、報いを受け取りてその身を果てよ」
「はっ?!」
モンモランシーが確とした敵意を認識した時、既に水精霊は行動を済ませていた。巨大な水塊が伸びてモンモランシーの頭上を迫っていたのだ。
そして“一人を除いた”その場の全員が呆然と水精霊とモンモランシーのやり取りを見つめ、モンモランシーが水塊に叩き潰されてしまうのを見届けてしまった……
はずだった。
砂砂利の岸辺をすり抜ける、不均等な人影がギーシュの視線の脇によぎる。
「自分の大事な人くらい、いの一番に守れるようになれよ、少年」
はっとして振り返ったギーシュのすぐ横に、モンモランシーを抱えて空いた手にデルフリンガーを握るギュスターヴが立っていた。
「よっと……」
「あうっ」
モンモランシーを無造作に降ろすと、腰の抜けたらしいモンモランシーから頓狂な声が上がった。
「さて……」
一旦デルフを鞘に戻し、ギュスターヴは湖に振り返る。人型成す水精霊は全身を激しく震わせて空を割るような咆哮さえ上げて明らかな敵意をこちらに向けていた。
「ミスタ。どうなさるつもり?」
「交渉は失敗した。だが俺達は水精霊の涙が欲しい。となれば方法は一つしかないな」
「あ、あんたたち。戦うっていうの?!す、水精霊と」
腰立たないままモンモランシーはキュルケとギュスターヴを交互に仰ぎ見て言った。
「モンモランシー、あんたはそこで見てていいわよ。戦いになったら邪魔だから」
「な?!」
空の鍋をほっぽり出して身体を解し始めるキュルケは杖を抜いてゆるりと構える。それに呼応するようにタバサも杖を握り、シルフィードの横腹を叩く。
シルフィードは主の意図を察したかのようにばさりと空に上がっていった。
「ぎ、ギーシュ、あんたはこんな馬鹿な真似に加わったりしないわよね?!」
そう言われて、とっさに杖を抜こうとしていたギーシュが応える前に状況は更なる変化を起こし始めた。
「来るぞ!」
ギーシュとモンモランシーがギュスターヴの声に反応した時、水精霊の人型が巨大な波となって岸辺へと押し寄せてきていたのだった。
----------
ここまで。
はぁ、ルイズが出てないと、ゼロ魔でもサガフロ2でもないものなのではないかという不安は拭えませんね。
しかし二次創作SSなんてそんなものなのか?所詮自己満足なのだろうかと悩んだり。
ともかく、支援の声尽きぬ限り、「鋼の使い魔」の終焉まで書きたいものです。
では。
鋼の人乙。そういえばロマサガ2には深きものが水棲系モンスターで出てきたなあ……。
GJでした
胃が痛いなww
ギーシュ頑張れ、頑張れギーシュ!そんなに気分になったw
鋼の人乙でした続き楽しみに待ってます
19 :
プリキュアの人:2009/07/01(水) 22:49:39 ID:WVKT1wlO
鋼の人、お久しぶり&乙です。
一緒に「1日2回更新」とかやってから、もう1年ですね。
わたしはあの後すぐに完結させましたが、まだ続いているのは素直に凄いと思います。
1年ぶりにプリキュアで長編を書こうと思って帰ってきました。
(この1年に、タバサ3を読んでネタかぶりで挫折したのが1本と小ネタを数本投下はしていますが)
【題名】:ダークドリームの冒険
【召喚元作品名】:映画・Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険
【召喚キャラ】:ダークドリーム
【解説】
映画の敵役『シャドウ』が『鏡の国のクリスタル』を使ってプリキュア5をコピーした『ダークプリキュア』の1人。
ダークプリキュアの中では一番最初に生み出されたが、それゆえに自分の存在について思い悩んだ。
「わたしはシャドウ様に『お前を倒せ』といわれたんだ!わたしは、それしか知らない!
楽しくて笑っちゃう……とか、
一人が寂しい……とか、
大好きな人が大切……とか、
そんなの、まだ習ってないよっ!!」
以上の設定で22:55ごろ投下しますがいいでしょうか?
漆黒のドレスを身に纏った少女が、『プリンセスランド』の大きな建物の前で佇んでいた。
その視線の先では、5人の女の子が怪物と戦っている。
彼女の名前はダークドリーム。
彼女は鏡の国の『クリスタル』を使い、キュアドリームをコピーした存在。
彼女が作られたのは、『鏡の国』の宮殿の中。
彼女が作られたのは、『プリキュア』を倒すため。
彼女が作られたのは、ほんの少し前。
彼女の創造主の名前はシャドウ。
彼女を作り出したのは、望みを叶える『ドリームコレット』を手に入れるため。
彼女を作り出したのは、ドリームコレットを守る『プリキュア』を倒すため。
彼女は、他の『ダークプリキュア』よりも、少しだけ早く作られた。
『プリキュア』の力を量り、ドリーム以外の4人のプリキュアのコピーを生み出すために。
彼女の視線の先ではプリキュアが戦っている。
その戦いの様子は、彼女の掲げる『鏡』によって鏡の国に送られ、『クリスタル』に蓄積される。
戦いが終わる頃、4つのクリスタルには、それぞれ人の影が浮かび上がっていた。
「プリキュアの姿とクリスタルの力がひとつとなり、今、このシャドウ様の忠実なる僕が揃う!
我が元に集え!闇のプリキュアたちっ」
「はい、シャドウ様!」
ダークドリームはきびすを返すと、近くにある大きな鏡の前に手をかざした。
なぜ、彼女は気づかなかっただろう?
目の前の鏡に開いた『ゲート』が、来た時のものと違う輝きを放っていたことに……。
『ゲート』をくぐった先は、抜けるような青空の広がる平原だった。
黒いマントの下に、白いブラウスをつけ、大きな『杖』を持った青い髪の少女がダークドリームをみつめている。
少し離れて、同じようか格好をした人間たちが大勢、彼女を物珍しそうに見ている。
……ここは、どこ……?
私は宮殿に帰るはずだった。いや、そもそも『鏡の国』にこんな場所はないはず。
『ゲート』が別の世界に開くなんて、ありえない……。
ダークドリームは呆然と立ち尽くしたまま、辺りを見渡した。
目の前にいる青い髪の少女が、涼しげな眼をしたまま、事も無げに彼女に近づいてくる。
奥にいる生徒達が、ざわめいた。クスクスと小さく笑ったり、さすが私生児だねと小声で陰口を叩いているのだろう。
だが、青髪の少女は何も聞こえないかのように、ダークドリームの前に立った。
……なに、こいつ……?
ダークドリームは動かない。いや、動けなかった。
青髪の少女の涼しげな眼の奥にある、底知れぬものに押されて身動きがとれない。
わたしがその気になれば、こんな少女くらい簡単に吹き飛ばす事もできるはず。
『伝説の戦士プリキュア』と戦えるだけの力をシャドウ様にもらったのだから。
でも……、なぜ、睨まれただけで体が動かないの?
困惑するダークドリームの前で、青髪の少女は呪文を唱えて唇を重ねた。
「ミス・タバサ。コントラクト・サーヴァントは成功したようですね」
禿げ上がった頭の男が頷く。タバサと呼ばれた青髪の少女は、それ以上興味がないようにぷいっと後ろを向いた。
「あなた!わたしに何をしたのっ!?」
タバサが後ろを向いて歩き出すのと同時に、ダークドリームが叫んでタバサの肩をつかんだ。
タバサは、相変わらず無表情のまま、もう一度振り返る。
一触即発の雰囲気に、禿げ頭の教師がこほんと咳払いをした。
「他の生徒の『使い魔召喚の儀』が残っています。ここで騒いでは、他の生徒の迷惑です。
『使い魔』として人を召喚するのも珍しいことですし、ミス・タバサは先に帰って説明してあげなさい」
「ここはどこなのっ!」
「トリステイン魔法学院の寮にある、わたしの部屋」
魔法学院の寮の一室で、黒いドレスを着た少女は青い髪の少女に叫んだ。
興奮気味の黒いドレスの少女が詰め寄っても、青い髪の少女は座って本から目を放さないまま答えている。
「なんで、こんな世界にいるのよ!」
「あなたが『サモン・サーヴァント』のゲートをくぐったから」
「違うっ!わたしは『鏡の国』に帰るゲートを開いたのよ!」
「あなたは、わたしの召喚に応じた」
「こんな世界に来るゲートは開けてない!すぐにわたしを『鏡の国』に返してっ!」
「それはできない。わたしは『鏡の国』なんて知らない」
「冗談じゃないわ!わたしはプリキュアを倒すためにシャドウ様に作られたの!!」
黒いドレスをまとった少女の名前はダークドリーム。
桃色の長い髪に、触れれば折れそうな細い手足、怒気を含んだ声を上げながらも、どこか無表情な顔。
まるで血の通っていないような白い肌に黒いルージュをひいた姿は、まるで人形のようだ。
青髪の少女の名前はタバサ。
17歳にしては小柄な体つき、こちらもダークドリームとは別の意味で無表情な顔だ。
まるで、感情そのものが欠落したかのように涼しげな顔でダークドリームの怒声を受け止めている。
彼女は、今日の『使い魔召喚の儀』でダークドリームを呼び出したのだ。
魔法学院の寮でわめく彼女の手のひらに浮かんだルーンを指差して、タバサはぽつりと告げた。
「コントラクト・サーヴァントは成功した。契約が成立したということ」
「そんなの知らないわ!あんたなんか相手にしている時間はないの」
ダークドリームは、タバサに背を向けて部屋の隅にある鏡台の前に立った。
そのまま手をかざすと、黒い少女が映った鏡が光を放ちはじめる。
次の瞬間には、ダークドリームの姿はなかった。
「消えた?」
タバサの眉が少しだけ動く。彼女はずっと読んでいた本を閉じて鏡台の方へ顔を向けた。
支援
「もう、どこなのよ。この世界は?」
ダークドリームはトリスタニアの路地裏にいた。
あれから、何度試しても『鏡の国』へのゲートが繋がらない。
どの鏡を通っても、見たことのない町にでてしまう。
『真夜中の2時に合わせ鏡にゲートを開く』のも試してみた。
ふたつの月が昇る、この世界の時間がわからないので一晩中『合わせ鏡』の前でゲートを開き続けた。
それでも、ゲートは繋がる気配すらない……。
そうこうしてるうち、空が白んで朝が訪れる……。
彼女は、明るい空を恨めしそうに睨んで、どこへともなく歩き始めた。
見たことのない文字。
見たことのない町並み。
見たことのない格好をした人々。
そもそも、ダークドリームは生まれて1日しかたっていない。
彼女が知っている場所は、『鏡の国』と『プリンセスランド』の2つだけだ。
彼女が教えてもらったのは、プリキュアと戦う事だけだ。
こんな世界のことなんて、何も知らない。
今、自分はどこにいるんだろう?
今、自分になにが起きているのだろう?
「こんなの……シャドウ様に教えてもらってないよ……」
ダークドリームは途方にくれて、道端に座り込んでしまった。
「どうして……帰れないのよ」
しばらくして、泥だらけになったスカートを払いつつフラフラと立ち上がる。
「シャドウ様……わたし、どうすればいいんですか?」
彼女に、生まれてはじめて芽生えた『焦り』という感情が心を覆っていくのを止めるすべはなかった。
きょろきょろと周りを伺いながら、不安げに歩く彼女に一人の紳士が近づいてきた。
卑しからぬ格好の中年男性である。
「お嬢さん。シャドウ様の所へ帰りたいのかい?」
「シャドウ様を知ってるの!?」
「ああ、知っているとも。ついておいで」
ダークドリームがついていくと、そこは街の外だった。
紳士は人気のない森の端まで彼女を連れて行く。そこには一台の馬車が止まっていた。
「お嬢さん。この目隠しをしてもらえるかな」
「目隠し?なんで」
「シャドウ様の所へ行く道を知られるわけにはいかないだろう」
「大丈夫、わたしはシャドウ様の下僕よ」
「残念ながらそれは私には確認のしようがない。シャドウ様の居場所を敵に知られる危険がある」
確かに慎重なシャドウ様のことだ。それくらいの用心はしているかもしれないと、彼女は目隠しを受け取った。
目隠しをした彼女の後ろで、誰かが呪文を唱えた。
すると、ロープがいきなり彼女に巻きつき縛り上げる。
「え?、なにっ!?」
声を上げた彼女の身体を、いきなり数人の人間が持ち上げて、固い床の馬車の荷台の上に放り投げた。
どすん!と音を立てて身体が投げ出され、その衝撃で目隠しがずれた。
荷台には、彼女と同じように縛られた女の子が何人も泣いている。
「なに?いったい……どういうことなの」
未だに事情が飲み込めていないダークドリームは、そんなことをつぶやいた。
「あなたたち、どうして泣いているの?」
隣の、黒髪の少女に尋ねてみた。
「おうちに帰りたいよぅ……。うぇ……、えっぐ、ひっく」
「帰るんでしょう。シャドウ様のところへ」
「帰れないよぅ……だって、さらわれちゃったんだもの」
「さらわれた!?」
一人の男が荷台に乗り込んできた。マスケット銃と酒の瓶を握り締めている。
「こら!娘どもっ!泣くんじゃねえ!」
「なによ、あんたたち!」
「なんだ?ああ、さっきの娘か」
「これはなによ!シャドウ様のところに行くんじゃなかったの!?」
男はがっはっはと豪快に笑った。
「行くわけねえだろっ!俺たちゃ、見ての通りの人さらいよ。今からおめえら、ゲルマニアのお得意様に売られるのさ」
「わたしを騙したのねっ!」
「ありゃ傑作だったな。今どきあんな手に引っかかる奴なんてお前さんくらいしかいねえよ。
こんないい服を着て、どこの嬢ちゃんかしらねえけど、世間知らずにも程があるぜ!」
こ、こいつら……許せない!
絶対に許せない!!ダークドリームは怒りで身をふるわせた。手をぎゅっと握り締めて、全身に力を込める。
その力はプリキュアと戦うために与えられたもの。違う世界で戦うために与えられたものではない。
だが、ダークドリームには何の迷いもなかった。
『怒り』の炎が全身を包み、魔法のロープを焼き焦がし、彼女のドレスを焼き尽くす。
「な、なんだこのガキっ!」
男の前にいるのは黒い戦士!
ピッタリと体にフィットした黒い服をまとい、冷たい目をしたダークドリームが立ち上がる。
その目を見た男は、反射的にマスケット銃を構える。
だが、その指を引金にかけようとしたときには、もうダークドリームは目の前にいた。
彼女の掌が男の胸に触れた瞬間、衝撃波が走り、男は馬車の外まで吹き飛ばされた。
そのまま彼女は馬車から外に飛び出した。
男の仲間らしき奴らは5人ほど。怒りのまま手近な奴を叩きのめすために彼女は馬車から飛び降りる。
だが……彼女は戦いは素人だった。
確かに、戦い方はシャドウに作られたときに組み込まれている。
でも、それはあくまで『キュアドリーム』という1人の敵を相手にするためのものである。
多人数と戦う時の方法は、教えられていない。ましてや、異世界の『メイジ』を相手にするなど考えたこともなかった。
御者台にいた二人のメイジが、背後から『蜘蛛の糸』と呼ばれる魔法を放った。
粘々と絡みつく糸が、あっという間にダークドリームの自由を奪う。ゴムのような弾力をもつ『蜘蛛の糸』は、ダークドリームが暴れようがわめこうが、千切れない。
「このガキ、メイジだったのかっ!」
「でも……、こいつ『杖』をもってませんぜ」
「大方どっかに隠し持ってるんだろうよ」
どうやら、人さらいたちはダークドリームの『力』を魔法と勘違いしているようだ。
「これ以上暴れられると厄介だ。殺しちまえ」
うそ……わたしが!?こんなところで……
シャドウ様のお役に立てずに……?
なんで、この糸が千切れないの!?
どうして?わたしが……、伝説の戦士と同じ力を持っているわたしが……
こんな奴らに?……殺される!
ダークドリームは、無我夢中で暴れ、手足を震わせた。
だが、蜘蛛の糸はどんどん絡み付いて彼女の自由を奪ってゆくだけ。
実は、彼女の力を持ってすれば『蜘蛛の巣』を焼ききる事など造作もないことだ。
けれど、彼女にはそんなことすら判断できるだけの冷静さすら残っていなかった。
……焦り……、
……怒り……、
……後悔……、
……恐怖……、
そして……、絶望……。
彼女がはじめて知る『感情』が津波のように押し寄せて、彼女の平常心を奪ってゆく。
まるで、自分の膝ほどの浅瀬で溺れる子供のように、ただもがくだけ……。
彼女の視界に男たちが『杖』を掲げるのが見えた。
だが、自分を襲う魔法の代わりにダークドリームが目にしたものは……。
杖を掲げた二人のメイジを巨大な竜巻が吹き飛ばすところだった。
メイジたちは立ち木に衝突してそのまま気を失った。激しい砂埃の中、ゆらりと小さな影があらわれる。
それは、この世界にダークドリームを呼び出した青髪の少女、タバサ。
相変わらず眠そうな目だが、その小さな体からは並々ならぬオーラが立ち昇っていた。
ダークドリームが目を丸くしている前で、タバサはあっという間に5人の人さらいをのしてしまった。
人さらいたちを警邏の騎士に引渡したあと、タバサは手近にあった切り株にダークドリームを座らせた。
なにやら瓶を取り出して布を浸し、ダークドリームの体や髪を拭き始める。
「『蜘蛛の糸』のネバネバは、魔法薬を使わないと、なかなか取れない」
ダークドリームはうつむいたまま、何も喋らず、ただタバサのされるがままになっている。
そこへ、数人の少女達が歩いてくる。人さらいに捕えられていた子達だ。
少女達はふたりの前までくると、深々と頭を下げた。
「騎士様、危ないところを助けていただいて、ありがとうございます」
タバサは少しだけ顔を上げた。
だが、ダークドリームはうつむいたまま動こうともしない。
ふと、少女達のうちの一人、黒髪の女の子がダークドリームに駆け寄ってその手をとった。
「ありがとう!」
まだ『蜘蛛の巣』がへばり付いてネバネバしている手を握り締められて、ダークドリームは顔を上げた。
「ありがとう!あなたが戦ってくれなかったら……私たちゲルマニアに売られてた。
二度とおうちに帰る事もできなかった。あなたのおかげよ!本当にありがとう」
後ろにいる子達も次々と感謝の言葉を口にしている。
ダークドリームは、なにか熱い感情がわきあがるのを感じていた。
さっきの『怒り』とは違う、不思議な感情……なんだろう……。
小さく震えるダークドリームの体を、タバサは、ただ拭き続けていた。
少女達が何度も頭を下げながら去っていった後、ダークドリームは小さく口を開いた。
「どうして……ここに……?」
「あなたの視界をわたしも見ることができる。今のあなたとわたしは一心同体。
トリスタニアの街外れにいるのがわかったから馬で駆けつけた」
おそらくは、昨日の『契約』の効果なのだろう……
でも、今、わたしが聞きたいのは。
「あなたを、この世界に呼んだのはわたしの責任。だから、この世界にいる間、あなたはわたしが守る」
タバサの口調は今までと何も変らない。
でも、その言葉はダークドリームの中に間違いなく新しい『感情』を呼び起こした。
その正体はわからないけれど、彼女は、この世界に来てはじめて、体の力が抜けていくのを感じた。
ダークドリームの体を拭き終わったタバサは切り株から腰を上げた。
そのまま、桃色の髪の少女へと手を差し伸べる。
彼女には、森を抜ける木漏れ日を背にしたタバサが、まるで光り輝いているように見えた。
そして、タバサの小さな手はとても暖かかった。
今回はここまでです。
読んでくださった方々、どうもありがとうございました。
一応、全部で10話ほどを予定していますが……どうなりますことやら。
それでは、これからもよろしくお願いします。
乙です。ダークドリームが今後どうなるか楽しみです
乙!
数少ない完結SS書き手さんだから安心して読めるぜ
毎回思うけどプリキュアって作品への愛がすげぇと思う
アクマがこんにちわの続きが見たく申し上げ候
拙者も同意見で御座る
俺は狼と虚無のメイジの続きを待ってるんだぜ
俺は寝太郎と我狼の続きを待ってる....
寝太郎はエレア出て来ないかなー、原作出番無さ過ぎる上に最終決戦で出番ハブry
俺はズバットと熊の爪とアプトムと北野君をずっと待ってるんだぜ
頼むから続き書いてくれねーかなぁ…
他にはとある〜の続きも見たく申し上げ候
虚無のパズルの続きを待ってるんだぜ
カービィ…
蒼い使い魔…
ていうか帰ってきて欲しくない書き手は居ない
多すぎて上げられないけどいつまでも待ってる。2chが閉鎖するまで
避難所の応援スレにも書こうぜ!
スレより流れにくいし、作者さんも見てくれてるみたいだぜ!
>>39 避難所読んで続き書くのやめました
極一部だと判っていても悪意に耐えられない程僕が弱いのが悪いのですが・・・
書き手の皆さんは強いと思います
興味本位で毒吐きを見るなってだけの話だろ?
>>41 もしかして、避難所は避難所でも毒吐きですか?
今スレは〜闇に抱かれ〜
その書き手を〜待ち続ける〜
釣り耐性なさ杉ワロタ
45「あなただまされましたね。あいつの話は釣りですよ」
俺「良かった。筆を折ったの作者さんはいなかったんだ…」
書いているうちに飽きてきた。
やる気が起こるまで待つこと数ヶ月。
完結するまで投下しないのが一番だな
といいつつはや1MBやりすぎたぜ
一回の投下で二スレ消費か…ゴクリ…
サイバーもへったくれもない世界で某メスゴリラ少佐はどこまで活躍できるか
>>53 循環系の液補できねーから持って数ヶ月・・・
少佐ってメンテ一切なしでどれぐらい生きてられるんだ?
あ、デブ少佐じゃなくって素子様のほうね
シャア少佐ならがんばれる
ウルベ少佐なら見よこの体
ガイル少佐ならソニックブー
バンコランは来ているな
エーベルバッハ少佐なら?
>>55 たぶん脳髄液の補給ができねーのが一番きついんじゃねーかな
フィルターである程度濾過は出来るだろうけど足りなくなったらマジで死ぬ
メスゴリラも無理だな
鋼の人、乙です
強敵(ボス)を前にして「来るぞっ!」ってセリフにスクウェア臭を感じますな
飛行機の燃料とどっちが楽なんだろうか
脳髄液とかどういう風に錬金するんだ・・・
飛行機、特にゼロ戦時代のプロペラ機の燃料なんて結構粗悪な混ぜ物入りでも飛ぶって
紫電改と秋水を開発したじっちゃが言ってた
>
>>64 じゃあストライカーユニットも飛び続けれるな
これでノボル作品クロスが出来る!
人体を錬金で壊せるなら脳髄液も作れるんじゃね
黄金の何倍も難しいだろうが
>65
だがストライカーユニットだけでは攻撃ができない
>>67 シールド張ってタックルしよう
それっきゃない
>>68 バレルロールですねわかります
STG的に
テファがストライカーユニット装備したらそれだけでハルケギニアの七割は制圧できてしまいそう
(残り三割は貧乳スキーとか幼女スキーとか)
少なくとも俺はテファがぷるんぷるんとアレを揺らしながらあのカッコで空飛んでたら
前かがみで戦闘力たったの5、ゴミ扱いになる自信がある
>>70 おっぱい星人宮藤のおっぱい祭が始まる
宮藤はノボルキャラじゃないけどな
ストライカーユニットでマッハを超えるには巨乳が最適
回復や治癒は人体を錬金していると言えないこともないよな
ただ等価交換の法則が…
鋼の世界は人が埋まってるから錬金術ができて、
人の体作るとあの法則が発動するんじゃないの?
>>73 もしできるなら、ってこと
日本語足りなくてすまん
固定化で死体を保存とかはやってそうだが
>68
音速でそれやられたら人間なんてゴミクズのように爆散するw
爆散どころか血煙しか残らない気がする
それとも挽肉レベルですむかな?
>>人体を錬金で壊せるなら脳髄液も作れるんじゃね
>>黄金の何倍も難しいだろうが
それに近い事して脳移植した人いたなミノタウロスで
脳髄液は水魔法で作るんだよ
>>80 ≫それに近い事して脳移植した人いたなミノタウロスで
ト、トリケセ…トリケセ…
そんなもん信じられるか!!
俺は自分の部屋に帰るぜ…!!
光の速さで歩け
>>85 お前を信じろ
お前が信じる俺でもない
俺が信じるお前でもない
お前が信じるお前を信じろ!
ねだるな、勝ち取れ
>87
横島「この世に自分ほど信じられんものが他にあるかぁぁぁぁ」
つ松岡修造
信じてるけど、越えてみたいんだ
デモンベインを信じろ
……あれは人の為の鬼械神だ
>>88 さすれば与えられん!
エウレカセブンから召喚してゼロ魔世界で
活躍しそうな奴はいるのか?
中盤以降のレントン&エウレカとかを引いたら
ルイズがストレスで倒れる光景が浮かぶ…
質問なんですが、微細な場面転換のときはどのように表現すればいいんでしょうか?
ここで聞かずに、技法関係のスレで聞けば?
>>97 スレチでしたね
そうします。忠告ありがとうございます
Louise and Little Familiar,s Orderの作者さん続きをお願いします!
ミーちゃんとルイズの仲が修復する展開に話を向かわせてください!
このSSを読んでから僕は夜になるとミーちゃんの悲鳴の幻聴まで聞こえてきて夜も眠れません。
どうかお願いします!
>>100 別にここでもいいが避難所にSS作者の応援スレがあるからそちらの方がオススメ。
結構作者さん達もそこを覗いてると思うから。
ゲッターを信じるんだ
>55
スネーク見たく電脳空間にダイブ中に喚ばれてハルケ世界で受肉実体化でインジャネ?
ついでに妖しい幻術(ハッキング)使える仕様でw
104 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/02(木) 19:55:55 ID:LzHvoUVO
もういっそ、TOW2の
人工バランの子でも呼ぼうぜ!
>>103 むしろ、ハルケギニアは実はネトゲの世界でルイズ達はもちろんそれを自覚してない。
ブリミルの正体はゲーム会社の社長で、虚無の魔法は文字通りのチートだった!みたいな星々の大海3作目的な驚愕の事実が(ry
なるほど、真実を知ったジョセフは狂って玩具の世界は玩具のように壊すように動くんですね分かります
ブリミル=ブラックノワール、なんてのも思いついた。
ケロロ小隊を呼び出して地球の前にハルケ制圧の夢を
あなたがえらぶベスト・オブ・ギーシュ戦
あなたがえらぶベスト・オブ・フーケ戦
あなたがえらぶベスト・オブ・ワルド戦
>>105 書き上げられたら面白そうだな。俺には無理だけど
>>105 えっと…マトリックスだっけ? キアヌが主演したアレ。
こんばんは、問題なければ50分から投下始めたいと思うのです
お待ちしておりました。
m(..)m 支援
やった〜!支援するぜぇ〜ぃ
「さて、何から話そうか?」
壁にもたれかかる暁の前に四人の少年少女がいる。
ルイズ、タバサ、ギーシュ、キュルケの――
「何であんたまでここにいるのよ!」
ごく自然に輪の中に加わっていた赤毛の少女の存在にようやく気付き、ルイズが吼えた。
「面白そうだからに決まってるじゃないの」
悪びれた様子もなく、余裕の表情でキュルケが答えを返す。
その態度を挑発と受け取ったのか、ルイズのこめかみに青筋が浮く。
「堅いこと言ってるとそれ以上背が伸びないし胸も大きくならないないわよ」
「背も胸も関係ないじゃない!」
どうもルイズにとっては背も胸も、魔法が使えないこと並に――下手すればそれ以上に――コンプレックスであるらしい。
顔を真っ赤にしてルイズがキュルケに食って掛かる。
ルイズは相当キュルケのことを嫌っているらしく、このままだと取っ組み合いの喧嘩になりかねない雰囲気であった。
二人の様子をギーシュはオロオロしながら見、タバサは我関せずといった感じで視線を向けようとすらしない。
どうやら暁しか止める人間はいないらしい。
(ボーと関ってからこういう役回りが多い気がするんだが……気のせいか?)
暁は目の前で口論している二人と、今はここにいないとてもやかましい相棒のことを頭に浮かべ、大きなため息を吐いた。
「よー、話はいいのか?」
うんざりした声音で二人に言葉を投げかける。
その声に反応し、キュルケからは苦笑が、ルイズからは恨みがましい視線がそれぞれ暁に向けられる。
ルイズは何事か――おそらく文句の類だったのだろうが――を言わんとして口を開きかけたが、それを遮るようにタバサが言葉を発した。
「あなたの世界について」
唐突であまり現状にそぐわない言葉に暁は一瞬首をかしげる。
だがそれが彼の最初の問い、『さて、何から話そうか?』に対する返答であると察し、苦笑した。
どうやらこのタバサという少女は必要以上に言葉を発しないようだ。
……メイジというのは基本的に変人なのかもしれない。
「んじゃあそれから話すとしようか」
それでいいか、と視線でルイズとキュルケに問いかける。
ルイズは渋々といった様子で、キュルケは特に問題はないといった様子でそれぞれ頷いた。
「私は構いませんわ。えーっと、ミスタ・アカツキイワオ?」
とても妙なアクセントでキュルケが暁のフルネームを発音する。
「こっちで通じるように名前を並べるならイワオ・アカツキだ。暁でいい、ミスタはつけないでくれ」
とりあえずの訂正を入れた後、暁は語りだした。
暁が語ったことはおおむねルイズに向けて語ったことと変わらない。
どんな場所で、どんな物が存在し、人々がどう生きているか。
そして魔法やそれに近いことをできる人間がほとんどおらず、魔法が無い事での不便性が存在しないこと。
だが、聞き手の反応が以前話した時とは明らかに違った。
「その……師匠は本当に魔法をつかえないんだね?」
非常に困った表情でギーシュが問い掛けてくる。
同様の表情をキュルケも浮かべていた。
決闘の際にボーが『魔法は使えない』と断言したのだが、やはり納得できなかったのだろう。
タバサはいつもと変わらない無表情だったが、ほんの少しだけ――落胆に近い色が窺えた。
「分身の術に関して言うならあいつはただ速く動いてるだけだ。
あいつが何人もいるように見えたのはただの気のせいであって、魔法じゃない」
「『ただ速く動いてるだけ』と言われて納得しろという方が無理よ」
ルイズが憮然とした表情で言い放つ。
「まぁそうなんだが、そこは『ボーだから仕方ない』と思ってあきらめてくれ」
正直なところそれに関しては暁としても同意見なのだが、彼としてはそれ以上説明しようが無いのも事実だった。
ついでに言うならボーに説明させるのも無理である。
おそらく、いや間違いなくボー自身が一番理屈として分身の術を理解していない。
「異世界というのは信じられませんが、色々と理解できないことが多い場所からいらしたというのはわかりましたわ」
そう言ったキュルケは苦笑いを浮かべていた。
当然の反応だろう。
暁にとってこの世界――ハルケギニアは御伽噺の世界でしかないのと同様に、ルイズたちにとって暁の世界は理解しようがない場所なのだろう。
「アカツキも彼――ミスタ・ブランシェのように強いんですの?」
暁も苦笑を浮かべながら頭を掻いた。
そしてルイズの方を見る。なぜか彼女は不機嫌そうな表情を浮かべていた。
自分がキュルケとほぼ同じ質問をしたことが嫌なのかもしれない。
「速さに関してはあいつの方が俺より数段上だね、そういう意味では俺はあいつのようには強くない。
逆に俺にできてあいつにできないこともあるから、比べても劣ってはいないと自分では思うな」
それにしても――と暁は思う。
ルイズに説明している時も思ったことだが、他人の強さを語るのはまったく問題ない。
だが自分の強さを語るとなると話が変わってくる。
なんというか、恥ずかしい。
特に今回の場合、雇い主への売り込みでもなんでもなく、少年少女に自分の強さを語って聞かせている。
ボーであれば何の恥ずかしげもなく自慢げに語るのだろうが、暁はそんな変な感性は持ち合わせていない――つもりである。
そのため、暁としてはこの辺で話題を切り替えたかった。
トライデント支援
「見せてくださりません?」
だが、願いとは裏腹に暁が自分の強さを説明しなくてはならない時間は続く。
彼の心情を知ってか知らずか、要求を口に出したキュルケは微笑を浮かべていた。
「そうだな……ボーほど派手なことはできないんだが……」
暁は苦笑を浮かべつつ考える。
やる以上は、何か強く印象に残ることをやってやりたかった。
だがボーのように『魔法じみた動き』が暁にできない以上、どうやっても地味になってしまう。
それが嫌なあたり、暁はよっぽどな負けず嫌いである。
(これが手っ取り早いか……)
手元にあるL字型の鉄の塊――彼の世界の『銃』に目を落とす。
「ギーシュ、ちょいと錬金で的作れるか?」
「的?」
「お前さんの作れる範囲の金属でいいから、薄い板作ってそこの窓に置いてほしい。できれば固定してな」
わかった、と頷きギーシュが窓の方へと向かう。
そして窓を開き、窓枠に向かって薔薇を振るった。
花びらが舞い、それが窓枠に根を張った金属板へと変化する。
「あらギーシュ、まだ青銅しか錬金できないの?」
「うるさいな、僕はメイジとしてはまだこれからなんだよ」
キュルケがギーシュをからかい、顔を赤くしながらギーシュがそれに反論する。
どうやらギーシュの錬金で作り出された青銅は、メイジの実力としては低レベルに位置しているようだ。
暁としては魔法が使える時点で評価に値すると思っているが、どんな世界でも実力によるランク分けはなされているらしい。
(お嬢さんは――『ゼロ』か)
改めて思う、『ゼロ』と言う二つ名に込められた意味は強烈な侮蔑であるのだと。
魔法などというものをまったく使えない暁にとっては、ルイズの起こす爆発も十分に魔法であるが、それを言うことにおそらくは何の価値もない。
それに、気安く彼女を励ます理由も意味も暁にはないのだ。
そういう類のことは――おそらくボーの方が適任だろうから。
(参ったね、たった一日で情でも移ったか)
なんだかんだでルイズを気にかけている自分に呆れつつ、銃を拾い上げ暁は立ち上がった。
「それのどこでもいい、適当に印をつけてくれ」
「印かね?……ルイズ、筆を借りるよ」
「いいわよ」
ルイズの同意を得、ギーシュは机から拝借した羽ペンで金属板に控えめに丸印をつけた。
「これでいいかね?」
「ああ、すまんな。さて――」
暁は的が備え付けられた窓とは反対側の壁際に立った。
そしてルイズたちの方に銃をかざす。
「とりあえずこれが俺の世界の銃なんだが」
「……そんな小さいのが?」
彼女たちの反応は暁にとっては予想通りのものだった。
怪訝そうな、疑いのまなざし。
おそらくこの世界の銃は、中世ヨーロッパ程度の技術力の銃なのだろう。
まだここまでの小型化はなされていないようである。
「とりあえずこいつを三発くらい、その印に向かって撃つ。
一応印に当てられる自信はあるが、全部命中したら拍手してくれ」
「こんな小さい丸にかね?」
自分が金属板につけた小さな丸と離れた位置に立つ暁、二つを見比べながらギーシュが尋ねる。
ああ、と暁は頷いた。
「強いところを見せろ、と言われても俺はボーほど派手なことはできないんだよ。
だから俺ができることの中で一番わかりやすいことをやる、地味だが。
ついでにこっちの世界にないもの――まぁ、銃自体はあるんだろうが、それが見せられて手っ取り早いかと思ってな」
苦笑しつつ暁が説明する。
地味だが、の部分に若干力が込められているあたり、気にしているのだろう。
「んじゃ、撃つぜ。やかましいから耳塞いだ方がいい」
勧めに応じ、ルイズたちは耳を塞ぐ。
それを確認し、銃を的に向けたところで――暁は何か違和感のようなものを感じた。
(……なんだ?)
奇妙な感覚だった。
銃を標的に向け、狙いを定める。
幾度となく繰り返してきたはずの動作に感じた微妙なブレ。
そして――何かを誇示するかのように光る、左手に刻まれた契約のルーン。
それらの違和感に眉をひそめながらも的――その中心の小さな印に狙いを定め、引き金を引いた。
銃声。
銃口からは弾丸が、上部からは薬莢が飛び出す。
硬い音がし、銃弾が印に命中したのを目に留め、再度違和感を感じながらも銃を構えなおし、もう一度引き金を引く。
銃声。
腕に響く反動がいつもより緩い。
そしてやはり構え、狙うという動作に感じる若干のブレ。
それでも銃弾は印に命中した。まるでそれが当然のことであるかのように。
最後にもう一度、引き金を引く。
銃声とともに飛び出したその銃弾もまた、金属板に描かれた小さな丸印へと吸い込まれた。
そして薬莢が床に転がる硬い音が響き、部屋に数秒間の沈黙が訪れた。
ルイズはゆっくり、恐る恐る耳から手を離す。その目には涙が浮かんでいいた。
銃から弾丸が発射された際の雷に似た爆音は、耳を塞いでいたにもかかわらず鼓膜を大きく震わせ、
ベッドに腰掛けていた体が数サント浮き上がるほどの驚愕を彼女にもたらしたのだ。
要するに、今現在ルイズは銃声にびっくりして涙目になっていた。
さて、結論から言うならば、暁の銃から放たれた三発の銃弾は全て的――それもギーシュがつけた丸印の中に収まっていた。
三度立て続けに発射された弾。
そしてそのすべてが小さな丸の中に当たったと言う事実。
実際に銃というものを見たことのないルイズには、彼女の世界と暁の世界の銃の違いなどわかろうはずもない。
だが、少なくとも今暁がやったことがすごいことだというのは容易に理解できる。
「……すまん、思った以上に地味だった」
数秒の沈黙の後、自分が一番失望したと言わんばかりに暁が肩をすくめた。
「いやいやいや、十分すごいと思うけどね!?」
間髪いれずにギーシュがそれを否定する。
キュルケとタバサも頷き、彼に同意した。
彼女たちの視線はどちらかといえば暁の持つ銃に注がれてはいたが、おそらく先程の技を評価している事実は変わらないだろう。
「ボーの野郎に比べるとどうしてもなぁ・・・・・・。やらなきゃよかったぜ」
それでも納得できないのか、暁は難しい顔で眉間を押さえながら大きなため息を吐いた。
ボーという男が身近にいると、こういう妙な部分でも苦労するようである。
「……ところで、聞きたいことがあるんだが構わんか?」
もう気にしても仕方ないと悟ったのか、再度ため息を吐きつつ暁は問いを口にする。
「何よ?」
「銃を持つとこの――使い魔のルーンだったか?これが光るんだがこれはなんなんだ?」
言いながら暁が左手をルイズたちの方へとかざす。
見ると確かに彼の言うとおり、使い魔のルーンが光を放っていた。
「何それ?なんで光ってるのよ?」
「いや俺が聞いてるんだが、お嬢さんがたでもわからないか?」
ルイズはしばし考え込んだものの見当がつかず、わからないと頷いた。
他の面々もそれに同調する。
そもそも人間を使い魔にした例が過去に存在しないのだ、わかれという方が無理な話である。
ふとルイズの脳裏に、トリステイン王室直轄の研究機関であるアカデミーに問い合わせればわかるかもしれないという考えが浮かんだ。
しかしその思考は一瞬で頭の中から追い払われる。
アカデミーに暁やボーのことを報告すれば、アカデミーはおそらく彼らを実験材料として扱うだろう。
暁はもちろん嫌がるだろうし、ルイズとしてもそんなことは御免であった。
「うーん、先生方や学院長であるオールド・オスマンならわかるかもしれませんわ。お会いになる機会があれば聞いてみるとよろしいのでは」
ルイズとしてはキュルケに同意するのは癪だったが、おそらくそれが妥当だろうと納得した。
特にとても永い時間を生きていると言われる偉大な魔法使い、この学院の学院長であるオールド・オスマンであれば何か知っているかもしれない。
機会があれば自分も聞いてみようとルイズは心に決めた、やはりキュルケの発言に従う形になるのが少し癪ではあったのだが。
「そうだな……そうさせてもらうか。ありがとよ、キュルケお嬢さん」
「いえいえ、何かわかるとよろしいですわね」
ところで、とキュルケは言葉を続ける。
その視線は再び暁の銃へと向けられていた。
「その銃なのですけど、弾はいつどうやって込めているのでしょう?そのような動作は見られなかったのですけど」
ハルケギニアの銃と暁の銃の構造は根本的な差異が存在する。
つまるところ弾込めと点火、その動作なくしてハルケギニアの銃を撃つことはできない。
それは実際にはその存在を見たことのないルイズでも、知識として知っていることだった。
暁が銃を撃つ際、その行動は一切省略されていた。
「ああ、元々入ってるんだよ。ほれ、これだ」
手馴れた動作で暁が銃の部品、剣の柄のように見えるものを抜き出す。
そしてその中に入っているモノを取り出し、キュルケたちの方にかざした。
「ごごご、ゴールド!?」
キュルケが目を見開き、驚愕の声をあげる。
取り出されたそれは、黄金色に輝く獣の牙のような物体だった。
「いや、金じゃない」
彼女の放つ雰囲気に若干気圧されながらも、暁は銃弾について説明する。
「とりあえず火薬と弾丸がこんな風にまとめられてて、もう何発分か中に入った状態ってこった。
詳しい理屈は面倒だしたぶん聞いても面白くないだろうから、この辺で勘弁してくれ」
暁は部品を再び銃の中に戻していく。
その様子をルイズたちは皆、興味深げに眺めていた。
「へぇ、面白いですわね。その弾はハルケギニアでも作れますの?」
「作ろうと思えば作れるかも知れんが、俺は作り方なんて知らない。
だからこっちの世界に持ってきてる分撃ち尽くしたら、この銃はただの鉄の塊に早変わりだ」
暁は苦笑しながらその場に腰を下ろし、窓――正確には窓に作り出された金属板に目を向ける。
的は正確に三発分、穴が穿たれているにもかかわらず、彼の表情はどこか納得がいっていないようだった。
「ありがとなお坊ちゃん。それ外しておいてくれ」
「ちゃんと外しなさいねギーシュ。跡残ったら引っ叩くわよ」
「わ、わかったよ。わかったからそんなに睨まないでくれルイズ」
明らかに自信なさそうな表情でギーシュが金属板を取り外す為、錬金の呪文を唱え始める。
ルイズはとりあえず乗馬用の鞭がある場所はどこだったかを思い出しておくことにした。
「ところでこっちの世界で一般的な武器ってどんななんだ?」
「えーっと、剣に槍、あとは弓矢ですわね」
問いに答えながらあごに手を当て、何か考え込んでいたキュルケだったが、不意に何か思い浮かんだように笑みを浮かべた。
暁に向けられたその笑みはどうしようもなく意地悪な、ルイズにとっては何か不安な気持ちになる表情だった。
そして、その不安は的中する。
「もしよろしければ、私が武器を買って差し上げましょうか?」
予想外の言葉だったのだろう、暁が不思議そうな表情を浮かべる。
ルイズはと言うと、あからさまに嫌そうな表情を浮かべていた。
そしてそんな彼女の表情を見たキュルケは満足そうに頷き、言葉を続ける。
「アカツキは今後、何か武器を必要とすることがあると思いますの。でもルイズはケチだから、きっと使い魔には何も買い与えませんわ。
面白いものを見せていただいたお礼です、私が貴方に何か名剣をお贈りさせていただきたいのですが、いかがでしょう?」
『ルイズはケチだから』と『名剣』の部分を強調し、わざわざルイズのほうにも笑顔を向けてキュルケが言い放つ。
暁もルイズも呆然とキュルケを見た。
タバサは我関せずと本を読み耽り、ギーシュは錬金に四苦八苦している。
「ま、まぁそりゃありがたいんだが」
「決まりですわね、次の虚無の休日に一緒にトリステインの城下町までまいりましょう」
ルイズはキュルケの目的を悟った。
彼女はルイズから暁を奪いたいのだ。
キュルケの家系であるフォン・ツェルプストー家はトリステインの隣国ゲルマニアの貴族であり、その領地はヴァリエールと隣り合わせである。
そのため、戦争のたびに両家は多くの血を流してきた、いわば因縁の間柄だった。
その上ヴァリエール家はほぼ代々と言っていい頻度でフォン・ツェルプストー家に恋人や婚約者を奪われ続けているのだ。
そして今、キュルケはルイズの使い魔を奪おうとしている。
ルイズは――いや、誰だってそんな歴史の一ページに自分の名前が載るのは嫌である。
「私が買ってあげるわ」
いまだ苦戦し続けているギーシュ以外の人間の視線がルイズに集中する。
「私がアカツキの武器を買ってあげるわ。今度の虚無の休日、城下町まで付き合いなさい」
決意表明のようなルイズの言葉。
すかさずキュルケが心底楽しそうな表情でそれに反応する。
「あら、無理しなくていいのよルイズ?」
「無理じゃないわ!武器くらい買ってあげられるわよ!」
顔を真っ赤にして、ルイズが吼える。
この瞬間、彼女はもう後には引けなくなった。
そして――
「やったよ!成功した!」
ギーシュの空気をまったく読んでいない歓喜の叫びが響いた。
今回は以上です。。
にしてもアカツキは地味ですね、傭兵としては規格外もいいところのスペックなのにw
そして銃の表現難しいです、一回勉強のために撃ってみたいんですが日本では無理な相談ですね
とりあえずやっとデルフです、デルフですよ奥さん
ではまた次回に、支援どうもありがとうございました
マシンナーズプラトゥーン支援
ライバルキャラなのに地味てw支援
って終わってた。
世界最強コンビの人乙&GJ!
つかギーシュ空気嫁w
>>105 バルドとか.hackみたいなもんか。
けどどっちもクロスあったな
どうしてもタカツキイワオと読み間違えてしまうぜ乙!
最強コンビの方、乙です。
確かにAMスーツが無くなって以降の戦い方は地味になりましたしねw
ARMSじゃ、あんなにハッチャけていたのに……って、一字違いの別人でしたww
サラリーマン高槻さんは一種のデウスエクスマキナだから
出した時点で物語は終わりになっちゃうんじゃないかと。
最強コンビ乙!
>>54 草薙素子は原作2で霊的な存在になり、いくつもの精神と
融合しているオカルティックなキャラクターになってたから、
ハルケギニアに召喚されても活躍できるんじゃないの?
どうやって?
幽霊的ならなおさら活躍できなくね?ハルケギニアにネット環境を構築してから召喚するの?
ハルケギニアの真実がスターオーシャン世界と同一だったら――なんて事を考えたこともありました。
何しろ、あまりにも無茶苦茶な魔法がまかり通る世界ですし。
>>105 アバタールチューナー思い出した
喰らえ!
>>133 原作2じゃネット世界のみならず、人間の精神界らしき世界にも存在していることが登場する霊能力者達によって確認されているし、
現実世界において肉体を持った何人もの人間が草薙素子と融合済みだったり、その同位体だったりするからネットが無くてもおk
>>124 実銃か・・・エアライフルなら何とかなるぜ
火薬を使うとなると2〜3年ぐらい掛かるけど
クレー用のショットガンなら、講習会に行けば直に撃てるぜ
後は韓国に行くのも手かな
日帰りなら大体1万以内で行って帰ってこれる
>>132 霊的な存在になんかなってないってw あれは自分のアレンジ付きコピーをネットにばら撒いただけ
>>136 マジレスすると攻殻2は普通に面白くないからあれ準拠で書くのは辛いのでは
>>138 霊視によるあのワケワカメなビジョンは何なんだ………
>>140 あれはあくまで環が見ているもの、しかもリアルタイムで
スピカorアンタレスに干渉されてる可能性の極めて高いもの
やっぱりネットがないと無理か……
>>135 ゲイルならまだしもヒートを呼んだ日にゃ学院が血の海になりかねん
アルスラーン戦記からだと誰が面白そうかなあ……ラジェンドラ陛下あたりが一番
使い魔ライフに順応できそうだがwサームやシングはこれ以上宮仕えをさせるのがかわいそうな気もする。
世界最強コンビ乙!
そういやスプリガンにも魔法使いが出てくるけど
最強コンビは面識無かったっけ?
>>147 ボーは聖杯編で暁は聖櫃編でティア・フラットと面識がある。
ティア・フラットが一番の化物な気がする
最強コンビの人乙でした。
地味な暁の為に宝物庫の“破壊の鎧(AMスーツ)”の登場キボンですw
スプリガン世界の棒状の強力な武器というと
マジで魔法の杖だったりしかねないからな。
強力な雷を放出するヴァジュラなんてあるし。
>>148 ボーの頭じゃ会ったことを忘れてないか不安だな。
>>149 不老不死、次元幽閉とガチで戦ったら触れることさえできないだろうな。
故、デルフリンガーさんの出番に期待
だれかととモノ。で作ってくれねぇかなぁ・・・
・・・でも主人公がどれになるか分からないから無理か・・・
「ダークドリームの冒険」の第2話が完成しました。
23:40から投下したいのですが大丈夫でしょうか?
ウィズ系とかあの手のはオリジナルキャラと変わらんからなぁ……
ウィザードリーのエルフビショップが呼ばれる話は結構どうしようもなくて楽しかったが中断してるな……
「ごめん!もう言わないから、俺のエサ返してっ!」
「ダメ!ぜーったい!ダメっ!!『ゼロ』って言った数だけ、ご飯ヌキって言ったでしょ!!」
アルヴィーズの食堂の片隅で、騒がしい声が上がった。
甲高い声の主は、タバサの同級生ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールだ。
桃色のブロンドを振り乱し、目を吊り上げて口泡を飛ばしている。
怒られている少年は、彼女の使い魔、平賀才人。
ダークドリームが召喚されたのと同じ日に、彼も『サモン・サーヴァント』のゲートをくぐり、ルイズと契約した。
それから、彼女達が食事に来るたびに毎回こんな騒ぎなのだ。
他の生徒達もすっかり慣れてしまい、彼女達のほうを見ている者すらほとんどいない。
タバサも、そんな生徒の一人だった。
ルイズ達のほうを向く事すらなく、黙々と食事を口に運んでいる。
タバサの後ろには、メイドの服を着たダークドリームが立っているが、彼女も才人達の騒ぎには関心を向けていない。
ダークドリームがタバサと魔法学院に帰ってから、6日ほどが経っていた。
タバサが最初にした事は、ダークドリームの話を聞くことだった。
『鏡の国』で作られたなど、にわかには信じがたい話だが、タバサはその話を信用した。
そして、その話は自分達の秘密にするように求めた。
ルイズが呼び出した、平賀才人という少年と同じ『平民』だと、正体を偽る事にしたのだ。
『ゼロ』とも揶揄される彼女が、平民を呼び出したのはかえって好都合だ。
彼に紛れる事によって、ダークドリームの正体に関心を払うものは少なくなる。
タバサにも、彼女にも、やらなければならない事がある。目立たずに過ごせるなら、それに越した事はない。
だから、ダークドリームに『人間のフリをする』ようにいくつか指示をしている。
例えば、彼女が着ているのは、学院のメイドが使っていた古着だ。
タバサが、とりあえず着るものをと、適当に貰ってきた衣装である。
着ている本人も、それの出自など全然気にしていない。
勝手に動いて、この間のような面倒ごとに巻き込まれるのが嫌なので、タバサの言うとおりにしているだけだ。
そのうちに、タバサが食事を終えて口を拭いた。
食堂の隅の方では、まだルイズが才人にむかってぎゃあぎゃあ喚いている。
なんでも、才人のほうは何日か前に生徒の一人と決闘して負かしたなんて話も聞いたが、そんな感じは全くしない。
あの少年にできるならわたしにだって……と言いたいが、ダークドリームはちょうど同じ時間に人さらいのメイジにコテンパンにやられてしまった。
そんなわけで、彼女は騒ぎを起こしている人のことは気に留めないようにしていた。
タバサも、そんな騒ぎは気にもせず、テーブルに残してある1つのパンをハンカチで包んでダークドリームに渡した。
「図書室で調べものをする……先に部屋に帰って」
ダークドリームが頷いたのを確認して、タバサは大きな杖を手に食堂を後にした。
「ダークドリームは『作られた』存在……」
図書室で、魔法人形(ガーゴイル)の本のページをめくりながらタバサは呟いた。
……鏡の国にいるシャドウという人物によって作られた……
……鏡の国の太陽とも言える、クリスタルを使って作られた……
……伝説の戦士プリキュアの1人、キュアドリームをコピーした存在……
彼女の話が本当だとすれば、タバサには思い当たる節がある。
『スキルニル』
古代の魔道具(マジックアイテム)で、血を吸った人物とそっくり同じ姿になる。
その身体能力や技もコピーする事ができ、使い手の魔力で命令どおりに動かせる魔法人形だ。
タバサは、『スキルニル』のことが載っているページを眺めながら、自分の使い魔のことを思い浮かべていた。
……あの子は、自分の意思を持って、自分で考えている。
確かに『スキルニル』は、使い手の魔力で操る魔法人形だ。
だが、自律するゴーレムは珍しくない。優れた『土』の使い手なら、物に自我を吹き込む事も可能だ。
現に、自分の意思を持つ剣や斧など『インテリジェンス・アイテム』は、町に行けばいくつも売っている。
もし、あの子の創造主が優れた『土』の使い手なら、不可能ではないはず。
……あの子の手は温かい。
これも、優れた『土』の使い手なら、体温を再現することも可能だ。
死んだ恋人を魔法人形で再現した伯爵なんて寓話もあった。
その『恋人』は、温かい手を持ち、胸の鼓動を刻み、伯爵と一緒に年老いたという。
あれは、あくまでも寓話だけど……、才能にあふれた使い手が充分に時間をかければ。
……あの子は食事をしない。
あの子は「クリスタルの力で作り出された存在だから、食べる必要はない。疲れることもない。眠る必要もない」と言った。
『スキルニル』は、あくまで使い手の魔力で動かすもの。
でも、もし魔力を供給できる先があるなら……。
伝説の『アンブランの星』のように、強大な『土』の力で作られたとしたら。
……だけど、
あの子の『鏡と鏡をつなぐ』能力だけは、どんな文献を読んでもわからない。
あの子の服やアクセサリー、そして、あの子のセンスそのものがハルケギニアのものではない。
そして何より、わたしとあの子には『コントラクト・サーヴァント』が成立した。
魔法人形との契約が成立するはずがない。それに、あの子には『ディテクト・マジック』も反応しない。
タバサの思考はここで止まった。
「違う世界の『スキルニル』……」
結局、ダークドリームの言う事を、そのまま信じるしかないのだろう。
タバサは、眺めていただけの魔法人形の本を閉じた。
わたしだけじゃない。おそらくルイズが召喚した男の子も……。
だとすれば、過去に似たような召喚の事例があるかもしれない。
目の前に積んであった本を棚に戻し、タバサは次の書架に向かって歩き出した。
タバサが図書室に向かった後、すぐにダークドリームは食堂を出ていった。
彼女の手にある、ハンカチに包まれたパンは『人間のフリ』だ。
鏡の国の太陽とも言えるクリスタルによって作られたダークドリームは、その中に膨大なエネルギーを内包している。
そのため、彼女には食事をする必要がない。どんなに激しく動いても疲れることもなく、眠る必要もない。
けれど、『人間』としては、それは不自然だ。
だから、ダークドリームは『自分が食べる分のパン』を部屋に持ち帰っている。
実際は夜にタバサが3食分を食べるので、そんなに大きなパンではない。これで目立たずいれるなら簡単なものだ。
廊下を歩くダークドリームを、食堂の方から一人の少年が追いかけてきた。
青いパーカーとジーンズを身に着けた姿、さっき食堂で騒いでいた少年だ。
「ったく!ルイズの奴、結局晩メシ抜きにしやがんだもんなぁ……」
その少年、才人はぼやきながらダークドリームの横を歩いて、彼女の顔を覗き込んだ。
「何か用?」
抑揚のない声で、ダークドリームが答えると、才人は彼女の前に回りこんだ。
「なあ、君、食堂でもずっと食べてないだろ?食事、どうしてるんだ」
「部屋で食べる」
真顔で才人に聞かれたダークドリームは、手に持ったハンカチを開いて中身を見せる。
掌に収まるようなパンを見た才人は、目を開いて声を上げた。
「そんなちっちゃなパンじゃ、全然足りないだろ!」
「え?」
こんな反応は考えてもいなかった。
予想外の返事に呆然とするダークドリームに、才人はにんまり笑って声を潜めた。
「いいところ紹介するよ。ついてきて」
支援
>>151 ヴァジュラで鬼神童子ZENKI思い出した
ダークドリームが連れていかれたのは、食堂の裏にある厨房だった。
大きな鍋や、オーブンがいくつも並んでいる。コックや、ダークドリームと同じ格好をしたメイドたちが忙しそうに働いている。
「よう!『我らの剣』じゃないか」
才人が厨房に入ると、40過ぎの太った親父が嬉しそうに出迎えた。コック長のマルトー親父だ。
丸々と太った体に、立派なあつらえの服を着込み、厨房を一手に仕切っている。
マルトー親父は才人の後から入ってきたダークドリームに目を止めた。
「この子は?」
「ほら、この間言ってただろ。俺と一緒にこっちに来たって子だよ。この子も一緒に食べてもいいかな?」
「おう、こんなもんでいいなら好きなだけ食べてきな!」
マルトー親父は、ダークドリームの方を見て人懐っこく笑った。
才人に手招きされるまま、厨房の隅にあるテーブルに腰掛けると、黒髪のメイドが鍋からシチューをよそって二人の前に出してくる。
「シエスタ、見てよ。この子の晩メシ、こんなパン1個だけなんだぜ」
シエスタと呼ばれたメイドは、ダークドリームがテーブルに置いたパンを見て目を丸くした。
「貴族の方々にお出しする余りモノで作ったシチューですけど。よかったら、お代わりもありますから、好きなだけどうぞ」
湯気の上がるシチューを見ながらダークドリームは困惑していた。
……どうして、こんなことになったんだろう。
……わたしはシャドウ様に作られた存在だから、食べる必要なんてないのに。
……でも、目の前にあるこれは口をつけなきゃいけない気がする。
……でないと、『人間』のフリとしては不自然だ。
……いや、そうじゃなくて、わたしがこの食べ物を食べたいと思ってるのかもしれない。
座ったまま、じっと皿を見つめるダークドリームに才人が声をかけた。
「遠慮すんなよ。冷めないうちに食べようぜ」
才人の声に促されるように、ダークドリームはスプーンを手に取った。
温かいシチューをすくい、そのままゆっくりと口に運ぶ。
シチューを一口食べたダークドリームの動きが一瞬止まった。
口の中に味が流れ出して、頭に幸せな感情が流れ出してくる!
それはそのまま、お腹の中へ流れ込み、体温が上がっていくのがはっきりとわかる!
彼女がはじめて口にしたシチューは、彼女の脳髄を直撃したのだった。
そのまま、二口、三口と夢中でスプーンを動かす。
「どう?」
才人に聞かれて、ダークドリームはシチューをすくいながら顔を上げた。
「おいしい!」
それは、『プリンセスランド』でプリキュアたちが言っていたのと同じ言葉だった。
あのときは、プリキュアが何を言っていたのか判らなかった。
今なら、少しくらいは判るようになったのかもしれない。
……が、当の本人は、なぜ自分からそんな言葉が出たのかにも気づいていない。
ただ、一心にシチューを口に運び続けている。
「そうか、うまいか!」
才人達の近くにいたマルトー親父が、満足げに首を振った。
「よっぽど、腹へってたんだなー」
「嬢ちゃん、腹が減ったらいつでも食べにきな。俺たちが食ってるのと同じもんでいいなら、好きなだけ出してやるよ」
マルトー親父が、朝の仕込みがあるからと厨房の奥に引っ込んだ後、才人はダークドリームの皿をとって鍋からお代わりのシチューをよそった。自分のさらにもシチューをすくい、テーブルに並べる。
ダークドリームが、皿を自分の前に引き寄せたところで、才人は声を潜めて彼女に語りかけた。
「君、どこから呼ばれたの?」
顔を上げたダークドリームに対して、才人は言葉を続ける。
「俺は、『日本』って国からこの世界に来たんだけど、知らない?」
「『日本』……知ってる」
そこはプリキュアのいた国だ。彼女の知っている2つの国のうちのひとつ……いや、今は3つの国を知っているのか。
「やっぱり!君も地球から来たんだ!」
才人が立ち上がって、ダークドリームの方へ顔を近づける。
「よかったーー。この世界で、地球人は俺一人だけかと思っちゃったよー」
え…?なに……、わたしを『プリキュアの世界』の人間と勘違いしているの?
わたしは『鏡の国』で作られた……、いや、言っちゃいけない。
困惑するダークドリームの前で、才人はただ感動している。
「えーと……、あ、そうだ。名前を聞いてなかった。俺、才人、平賀才人」
「名前は…えと……ダークドリーム……」
ずずいと顔をにじり寄せてくる才人に、ダークドリームは少し引き気味で答えた。
はい?……だーくどりーむ?……英語!?
才人は目の前にいる桃色の髪の少女の顔を覗き込んだ。
透き通るほど白い肌に、はっきりとした目鼻立ちは外人に見えないこともない。
でも、『ダークドリーム』って、人の名前にしては変すぎる?
英語じゃないんだろうか。インド辺りの言葉で発音だけ英語っぽいのかもしれない。
けど、インドにしては肌が白いし、目が桃色だし。
……ん?目が桃色!?と、とりあえず、日本人じゃないのだけは確かみたいだけど。
そこまで考えて、才人はダークドリームが不審げに自分を見ているのに気づいた。
「ご、ごめん!他にも地球から来た人がいると思ったら、つい嬉しくて」
そういいながら、才人は自分の椅子に座りなおした。
ダークドリームも椅子を直して、スプーンをシチューに浸した。
「なあ、ダークドリームも、あの鏡みたいな『ゲート』を潜ってこの世界に来たんだろ?」
「うん。帰る『ゲート』が開かないの」
「それ、ルイズも言ってた。ひっでー話だよな、呼ぶだけ呼んどいて帰る手段がないなんて」
「知ってる方法は全部試した……けど、ダメだった。今はタバサが、本で帰る方法がないか調べてくれてる」
「じゃ、じゃあさ!地球に帰る方法がわかったら、俺も一緒に連れてってくれないかな」
「……もし、『ゲート』が開いたら……」
ふたりは、シチューを食べながらばそぼそと話した。
シチューの皿が空になる頃、才人はダークドリームににっこりと笑いかけた。
「でも、よかった。『仲間』がいてくれて。正直、こんなファンタジーの世界で一人きりなんてゾッとしてたんだ」
才人の言葉に、ダークドリームの表情が一瞬だけ変わる。
……『仲間』……
シャドウ様は、プリキュアは『仲間』に頼っているから弱いと教えてくれた。
わたしが見たプリキュアは、『仲間』と一緒にずっと笑っていた。
才人と、わたしは、『仲間』……?『仲間』だから、この場所を教えてくれたの?
「あ、そうだ!ここの事は絶対ナイショな。ルイズにばれて、ここに来るのを禁止されたら、俺、本当に餓死しちゃうよ」
頭をかきながら笑う才人の顔を、ダークドリームはじっと見つめていた。
そして……
次の日から、ダークドリームは普通に食事を食べ始めた。
タバサに頼んで、『アルヴィーズの食堂』で普通に食事を取り、スープ一滴残さずに食べるようになった。
その後、厨房に行って才人と同じ量を平らげ、「よく食うなー」と呆れられたのは、また別の話。
今回はここまでです。
読んでいただいた方、支援を下さった方、前回感想を下さった方、まとめに登録してくださった方、ありがとうございました。
そういうわけで、才人の登場です。
全体としては、今回のような感じで『ゼロの使い魔』の時間軸どおりに物語が進む中で、ダークドリーム達の視点から面白そうなエピソードを切り取っていくつもりです。
ダークプリキュアが食事を取るシーンは本編にはありません。
でも、なにせ『あの!』夢原のぞみのコピーですから……こんな感じなんじゃないかな…っと。
乙です
才人とのやり取りも見てて楽しいですね。実に微笑ましいww
>>151 ある妖精にだけ効果のある(卒業証書の入った)筒とか
なんとか高校卒業できたというのに、
今度は大学の単位にヒィヒィ言う生活が始まるのか・・・・・・
スプリガン・・・
ムーンライトソードの出番だな!
それかショット・ウェポン
誇ってくれ・・それが手向けだ
ルイズに代わって、お仕置きよ!
感情の高まりで、強くなるならオルソンが召喚されたら強そうだなぁ……
制御不可になりそうだけどw
マテパのバカなんかテンションあがり始めたらどこまでパワーアップするのか検討もつかんな
ROからヴェルゼブブ召喚して魔法学院を名も無き島状態にしたい
勇者シリーズから召喚したら面白いかなぁと思ったが、
シリーズに出てくる連中のほとんどが人間同士の争いに介入しなさそうだし、
ジョゼフに合うのはゴルドランくらいだけど、そうするとガリアをほっぽって一緒に冒険に行っちゃいそうだから断念した。
そこはそれ。
勇者シリーズから主役を召喚するんじゃなくて、敵を召喚しちゃえば良いんだよ
ジョゼフにダイノガイストとかルイズにセブンチェンジャーとかテファにエースのジョーとかヴィットーリオにジェノサイドとか
ジョセフ「ぼーけんがはーじまーる♪ドキドキーがーはじーまるー♪」
ゴルドラン「勝手に冒険を始めるな!(王国はどうするんだ的な意味で)」
ですね判ります
>>175 アーク星人とかジェノサイド、機界31原種も捨てがたいな
>>177 ゾンダーに取り込まれたら虚無はやばいね。
負のエネルギー総量が凄まじいし。
ブラックガインとかカゲロウもよさげだが
呼んで面白そうなのはワルターかもしれない
オーボス様襲来
隊長に選ばれたルイズが「伝説の力」を見出さないとハルケギニア終了のお知らせ
しかし、勇者達は馬車とか大八車とかに憑依するのか?ひょっとして
あとは、勇者シリーズじゃないけどライジンオーからアークダーマかワルドランを
「魔法なんて迷惑よ!」「メイワク、メイワク、マホウハメイワク」
オセッカイザー召喚
物語を盛り上げるために「主役に求められるキャラクター性」は似通ってますが、それ以上に『悪の魅力』も高いですからね。
ハガレンで言うなら「ブリミル=ホーエンハイム」「お父様=王家の始祖」とか、そういう国そのものが敵というのも捨てがたいかも。
>178
よく考えたら際限なく負のエネルギーが増幅されまくって凄まじい威力の虚無魔法乱発の上に、相乗効果で短時間で一気に成長して機界昇華完了しちまいそうだな
184 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/03(金) 10:43:03 ID:glmaBYR3
>>173 隔離された環境じゃないからあそこまで悪化する前に発覚しないか?
関係ないけどNARUTOって日本版ハリーポッターと評価されているそうだ
やっぱり西洋は魔法使い、東洋は忍びなのかね
物語の都合上か、登場する貴族の多くが平民を搾取対象としてしか見ていない様に見えてしまう。
これだと、平民の誰かにゾンダーメタルが取り付けられたら……ハルケギニアは何日持つのか。
サスケぇ・・・
精神に暗い物を・・・・・というと
ルイズが「記す事すら憚られる」白面の御方様を召喚
で、ジョゼフが「神の左手」たる槍の使い手と槍を
教皇が「神の右手」たる金色の獣を召喚
>>187 ♪ くるぞ くるぞ くるぞ くるぞ てーごわーいーぞー
ゆけよ ゆけよ ゆけよ ゆけよ まーけるーなーよー
>>183 ルイズとジョゼフならそう掛からんだろうが、テファはどうだろうな…
ルイズをゾンダーにさせっぱなしにするのがまずければシエスタを護か戒道の子孫に据えるという発想も出てくるが
>>186 ただ、オリジナルはGGGがいたから結局は撃退されているんだけれども
>190
あの化け物おっぱいがすげええええと言われるたびに羞恥心が負の方向にぎゅんぎゅん大暴走
ダグベースごとダグオンたちを呼べば整備とかの問題が一気に解決するだろうけど、
人数が7人と多すぎる上にマトモに使い魔やりそうな奴が一人もいなかった……。
ノーブラボイン打ち
>>192 シンなら「女の子のお願い」で聞いてくれそう
>>189 光あるところに影がある
まこと栄光の影に数知れぬ忍者の姿があった
命をかけて、歴史をつくった影の男たち
だが人よ、名を問うなかれ
闇にうまれ 闇に消える
それが忍者のさだめなのだ
『サスケ お前を斬る!』
>>194 ゲキも人情に厚いいいやつだから、話の持って行きようでは可能かも。
ルイズは嫌がるだろうがww
>>190 浄解可能な奴が居ると、それはそれで虚無連中は困るんだよな。
負の感情が全部昇華されちまう上に、性格がストレスのたまりにくい穏やかな物に変わってる例が多数ある。
正の感情、勇気で虚無を操る新しい虚無の担い手の誕生だ
ジバクくんの話でもしてるのかと思ったが別にそんなことはなかったぜ!
勇気で虚無を操るを羞恥で虚無を操るに脳内変換してしまった…
って事でマイティーハートを……って能力的にはルイズにぴったりだがテファに喚ばれそうだよなぁ
(主に肉体的な意味で)
遠い昔、三重連太陽系の崩壊に伴いハルケギニアに落ち延びたソルダート師団の一人が
小さな村にもたらした一人の少年
それがシエスタの曽祖父であった。
ゾンダリアンの襲来に立ち向かうため、眠りについていた「竜の羽衣」キングジェイダーが目覚める!
>感情の高まりで強くなるなら
エアマスターから長戸とか
で、ルイズが「ナガトのように超激情」と相手の首に噛み付いたり
まぁ、金次郎から引き離された訳だからルイズガ噛み殺されそうな気もするが
一部呼び出すと即、ルイズが殺されかねないのがいるからな
深道呼んで深道クエストUでもするか
>>201 『竜の羽衣』と呼ぶならジェイアークの方が良いんじゃね?
とか言ってみるテスト。
メガ! フューーージョン!!! とう!
酷いくらいルイズが空気になりそうだな
ゾンダーは虚無と同じく負の感情がエネルギー源だけど肝心の機械が無いに等しいから機界昇華は難しそうだ。
まあ無機物であれば何でもいいみたいだけど。
Jアークを召喚・・・したがESウインド使って、とっとと還ってしまいました。
>>206 原種編で、万里の長城をベースにゾンダー化してた気もするからもはや何でもありかと。
・・・・・・・・・・アルビオンそのものと同化して空の覇王ゾンダーと化したウェールズ王子・・・・・
レキシントンのゾンダー化…ゴクリ
>210
紫のショタコン忍者と張り合うんですね
わかります
負の感情がエネルギーと言えばベガのサイコパワーもそんな感じなんだよな
意外とヴィットーリオ辺りが既に体乗っ取られてシャドルー結成してたりして
80センチ列車砲ドーラをゾンダー化したときが一番燃えたな。
>>210 赤城を取り込んだネウロイを思い出したよ。
無機物に取り付いて操るならスフィアも可能だな。
まだまだ先の話になるとは思うんですが、本来は名無しの脇役だった人物に名前を与え、登場人物の一人として扱うのって大丈夫なんでしょうか?
そのキャラが主要人物になるわけではなく、ハルケギニアの群像の一人として登場させたいのですが。
どうしても性格等はオリキャラになってしまうと思うので、やめておいたほうが安全でしょうか?
モブキャラならありなんじゃないの?あくまでモブキャラなら。
やめた方がいいとは思うね
>>214 そりゃやめておいた方が安全だと思いますよ。
主要人物にならないなら別に大丈夫なんじゃないか
了解です、やめておくことにします
バブリーズのパラサを召喚したら、さぞやうざいだろうなあ……
こんばんはッス
予約がないようなら、25分辺りから投下しようとおもいます
ルイズだったモノが、部屋をぐるりと見渡す。
動くものが一つ、動かないものが二つ、世界が一つ。
今、彼女に残っている感情は二つ。
一つは、全てに対する憎しみ。そしてもう一つは、殺意にも似た――
「……喰いたい」
――食欲。
「これがきみの力だというのか……?」
小さな身体の目の前にいる食べ物が、当たり前のことを言っている。
当たり前? 何が? なんだっけ? なんだろう?
何か大切なことがあったはずなのに、よく思い出せない。
「ダ……ト……」
そうだ、思い出した。お腹が空いてるんだ。
じゃあどうしよう? どうしよっか? どうするの?
「何を言っているんだ? もしや、意識が無いのか? ならばこのチャンス逃しはしない!!」
小さな身体の前にいる食べ物が、こっちに走ってくる。
右手をこっちに突き出してる。
これ、邪魔だ。
「が……あああああああっ!! 俺の……俺の腕が!! くっ……! いいだろう、目的は一つは達した。ここは引こう。その力も惜しいが、『レコン・キスタ』の軍勢に斬りさかれて死ぬがいい!!」
どこいくの? 駄目だよ。逃がさないよ。
どうせ……大きな身体からは逃げられないんだからね。
「冗談でしょ……?」
巨人へと近付くにつれ、その大きさに冷たいものを感じてたあたし達は、更に信じられないものを目の当たりにした。
「あんなもん喰らったら一巻の終わりだぞ青い髪の娘っ子! かわせ!!」
「駄目、近付きすぎている」
「ひぃぃぃっ!!」
「きゅいきゅいきゅい!」
皆が口々に叫ぶ。
タバサの言った絶望的な言葉が、足元からぞわりと押し寄せ、全身の力を奪う。
だけどあたしは、まだ死ぬ気なんて更々無い。
「やってみなきゃわかんないでしょタバサ!! 絶対に諦めちゃ駄目よ!!」
「……」
言葉なく頷くタバサを見て、少しだけ皆の顔に血の気が戻るも、事態は何一つ解決してない。
巨人の中心から漏れる光は、明らかにあたし達、いや、この辺り一帯を狙ってる。
巨人の大きさと、光の巨大さから考えて、例え風龍だろうとかわしきれないと頭ではわかってる。
「だからって、これで諦めるようじゃ、これから先あんた達をからかえなくなるでしょ……待ってなさいルイズ、ダネット。あたし達は絶対に死なない。こんなとこで死んでたまるかってのよ!!」
誰かが呼んでます。誰かを呼んでます。泣きながら私を呼んでます。
「ダ……ネ……」
あいつが泣いてます。お前は昔から泣き虫です。
大丈夫ですよ。私はここにいます。だから泣き止んでください。
この隠れ里にいる皆は、とても優しいんです。
きっとお前も、この里が大好きになりますよ。
「…………ト……」
まだ泣くんですか? うー……。ああもう、仕方ありませんね。じゃあ、お前に教えてもらったあの歌を歌ってあげます。
だからもう泣かないでください。
私は、ずっと、お前と一緒です。
「……メァ……ラー……リー……ソァ……」
何か聞こえる。これはなんだ?
わたしが、俺が、何か思い出す。
「ファー……ス……ラー……」
唄だ。ずっと昔、わたしが、俺が、聴いていた子守唄。
「シーフォー……ミ……オ……」
誰だ? 誰がこれを唄ってるんだ?
わたしは、俺は、いつこれを聴いていた?
「フィーメァー……ローサー……マレー……」
助けて、ここはとても暗いの。
助けて、わたしはこんなとこにいたくない。もう戻りたくない。
「……ソァ……フェー……ナー……」
「ダ……ネッ……ト……」
わたしは、俺じゃない。
ダネットの主人、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。
「絶対に寿命が5年は減ったわ……この代償はいつか払ってもらいましょみんな」
あたしの軽口に、タバサとギーシュが頷く。
さっきまで光を溜め込んでた巨人は、なぜか風のように消え去り、さっきまでの光景が嘘だったようにも思える。
「でも、一体あれは何だったんだ? 君は知ってるのかい?」
「……」
ギーシュの問いかけに、デルフは沈黙で返す。
まあ、その辺の話は後でじっくりと聞くとして、今は。
「タバサ、頼むわよ!」
「わかった」
返事をすると同時に、速度が増したのがわかった。
「さっきので死んでたりしたら、承知しないわよ二人とも!」
「駄目よダネット! 勝手に死んだら許さないわよ!!」
「えへへ……お前は……怒って……ば……かり……です……」
ダネットの歌で我を取り戻したわたしは、必死にダネットを治療していた。
しかし、治療と言っても、わたしに水の系統の魔法が使える訳でも無く、ここには水の秘薬もないので、出来ることといったら傷に布を巻いて止血することぐらいだ。
「血が止まらない……どうして!? 止まんなさいよ! 死なせない! 絶対に死なせないんだから!!」
「ごほっ! げほっ!!」
ワルドの一撃で開いた胸の穴からはとめどなく血が溢れ、当てた布をすぐさま真っ赤に染め、咳をする度に口からも血が溢れる。
ふと、所々血で濡れたダネットの手が、わたしの手に触れた。
その手は、驚くほど冷たく、嫌でも彼女の命が燃え尽きそうなのがわかった。
「ダネット……」
「お前……私を……置い……行き……なさ……い」
ダネットの提案に、わたしは首を横に振って抵抗する。
「優し……ですね……お前は……」
そう言って、ダネットは少しだけ微笑んだ後、悲しそうな顔になって口を動かす。
「すみ……ませ……ん……最後……でまもれ……なくて……」
まただ。また謝られた。
違うでしょ、謝らなきゃいけないのは、あんたを突然呼び出して、こんな目にあわせたわたしでしょ?
第一、わたしは約束したじゃないか。
『だけど、もし……もしあんたの話が本当だとわかったら、わたしは心からあんたに謝ろうと思う』
あんたと最初に出会ったあの日の夜、わたしは約束したじゃないか。
今ならわかる。あんたの言ったことは真実だったと。
「あんたがわたしを守るなら、わたしだってあんたを守るの!! だから……だから死なないでよダネット……」
わたしの言葉を聞いたダネットは、心底申し訳無さそうな顔をした後、静かに目を閉じた。
「ダネット!! ダネット!!」
死ぬ。ダネットが死ぬ。魂が抜けていく。
駄目だ。死んじゃ駄目だ。死なせちゃ駄目だ。
「死なせて……死なせてたまるもんですか!!」
巨人のいた場所に当たりを付け、小さな礼拝堂を見つけたキュルケ達一行は、礼拝堂の中のルイズを見つけて安心すると同時に、一つの不安が胸をよぎっていた。
理由は、探してた二人のうち、一人しか見つからなかったから。そして、見つけた一人が血だまりの中で立ち尽くしていたから。
自分達を目の当たりにしても虚ろな目をしたルイズに不安を覚え、キュルケがデルフへと問いかける。
「怪我は無いみたいだけど……『アレ』はルイズよね?」
「……多分な。少なくとも正気はあると思うぜ」
その答えを聞き、安心したキュルケはルイズへと近寄り、呆けたままのルイズの横顔を平手で叩き、肩を掴んで怒鳴るように問いかける。
「しっかりしなさいルイズ! ダネットはどこ!? あの子は無事なの!?」
衝撃で我に帰ったのか、ルイズは目に光を取り戻した後、キュルケを前に涙をこぼした。
「わたしは……メイジ失格よ……」
キュルケ達に助けられ、トリステインへと戻ったルイズは、アンリエッタの居室にてアルビオンで起きたことを報告していた。
報告の中で、アンリエッタはワルドの裏切りに驚き、皇大使の最後を聞いた後、ルイズの渡した『風のルビー』を握り締め涙を流す。
こうして、長いような、短いような旅の報告を終えた。
巨人と、一人の使い魔のことを除いて。
「それでルイズ、ダネットの姿が見えないようですが、もしや酷い怪我をしたのではありませんか?」
先ほど、転げるように王宮の中庭へと入ってきた一団の中に、ダネットの姿が無かったことで、もしやと思い口にする。
ルイズは、アンリエッタの言葉に、俯いたまま首を横に振ることで答える。
「まさか……いえ、そんな訳……」
嫌な想像を、頭を振って消し去る。
そんなアンリエッタの姿を見たルイズは、ぐっと唇を噛み締めた後、搾り出すように告げる。
「ダネットは……生きています……」
そして、ふところから一つの結晶を取り出す。
「ルイズ……? この赤い石はなんですの?」
意味がわからず、アンリエッタが問いかける。
その問いかけに、ルイズは堪えきれず一筋の涙を流した後、使い魔の末路を伝えた。
「これが……この『緋涙晶』が……ダネットです……」
>>203 マキと出会う前のジュリエッタを呼んで、ルイズをジェニーとする話をちょっと考えたけど、即レイプでした
以上で22話終了です
ようやく終わりましたアルビオン編
小説で言えば2巻分な上、色んなとこを切ってるのに22話って・・・
もうちょい要領よくなれればなぁと思う今日この頃です
それでは
乙
更新してなかったら投下に気付かなかった、失礼した。
お前乙です。続きが気になって首根っこへし折れそうです。次の投下も待っててやるです。
レイズナーからゴステロ様を呼んだら
台詞がほとんど笑い声になりそう
まとめ派なんですが、
東方キャラたちが面白かったんでGJしたいんだけど、どこですればいいの?
ここでいいの?
ダメット死んじゃったの?
原作知らないけどスゲーショックだ
>>232 避難所に応援用のスレがあるからそこに書き込むのがいい
>>232 避難所の応援スレがオススメです。
こちらと違って応援レスのみ+スレが埋まるのも緩やか。
お前が使い魔やれよ
嫌だよ!お前がやれよ
しょうがない俺がやる
なら俺がやる
じゃあ俺がやるよ!!
どうぞどうぞ
的なノリなのがあったっけ?
237 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:21:25 ID:MFdyuiLz
お前の使い魔さん、お疲れ様で…ダメットぉぉおおお!!!
というわけで、特に予約がなければ八時半あたりから
投下を行いたいと思いますがよろしいでしょうか。
238 :
232:2009/07/03(金) 20:23:38 ID:+usXN86x
239 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:30:17 ID:MFdyuiLz
ほいだら、ぼちぼち投下しますね
――――――――――――――――――――――――――
トリステイン魔法学院、その図書館。食堂のある本塔の中に在り、見上げるばかりに大きな本棚が、壁際にずらりと並ぶ。
此処には、始祖ブリミルがハルケギニアに新天地を築いて以来、およそ六千年の歴史が、詰め込まれている。
その中の、教師のみが閲覧を許される『フェニアのライブラリー』にて、昨日使い魔召喚の儀式でルイズらに立ち会っていた教師、コルベールが、浮遊の魔法を使い数々の書籍を漁っている。
昨日、ルイズが召喚した少年の左手に刻まれたルーン。淡く光るそれが、気になって仕方なかったのだ。
それについて、何か記録がないか調査いるうちに、ここまで来てしまった次第である。
黙々と続けるうち、コルベールはついに目的のものを探し当てた。
その書物には、ハルケギニアの文字で『始祖ブリミルの使い魔たち』と題されている。
書いて字のごとく、始祖ブリミルが使用した使い魔について記された古い書物である。
その中に記された一説に、彼は目を見開き、自分のスケッチと見比べる。
彼はあっ、と声にならない呻きを挙げた。浮遊の魔法『レビテーション』の集中が途切れ、床に落ちそうになる。
降り立った途端、本を抱えると、慌てて床を走り出す。向かう先は、学院長室であった。
使い魔の達人 第四話 使い魔カズキ
本塔の最上階にある学院長室では、魔法学院の長を務めるオスマンが、秘書のロングビルに嗜好品の水ギセルを取り上げられていた。
雑務のほとんどはこの優秀な秘書が片付けるし、この見事な白髭を持つ老人に仕事が回ってくることはほとんどない。
要するに暇を持て余しており、日常でのささやかな楽しみすらも、健康上の理由から奪われる。
「のぅ、ミス。こういう平和な時間を如何に有意義に過ごすかが、今のわし等に与えられた重要な問題だと、わしは考えるのじゃが…」
書き物を黙々と進めるロングビルの傍に立ち、諭すように言う。その顔に刻まれた幾多の皺が、彼の過ごしてきた歴史を物語っている。
百歳とも、三百歳とも言われ、その年齢は誰も知らない。本人すら知らないといわれるほど。
そして、その口から放たれた言葉は、何よりも今、皆の生きるこの平和な一時を大事にしたいと、誰もが魂で理解するものであった。
「オールド・オスマン」
理知的な女性。ロングビルは、羊皮紙の上を走らせる羽ペンから目を離さずに言った。
「なんじゃ?ミス…」
「暇だからといって、私のお尻を撫でるのはやめてください」
オスマンは口を半開きにしたまま、よちよちと歩き始めた。
「都合が悪くなるとボケた振りをするのもやめてください」
どこまでも冷静な声で、ロングビルが言った。オスマンはため息をついた。深く、苦悩が刻まれたため息であった。
「真実はどこにあるんじゃろうか。考えたことはあるかね?ミス…」
「少なくとも、私のスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」
オスマンは顔を伏せると、どこまでも悲しそうな声で呟いた。
「モートソグニル」
すると、ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現れた。オスマンの足から肩までを駆け上がり、首を傾げる。
ポケットからナッツを取り出して見せてやると、ちゅう、と喜んだ。そのまま与えてやる。
「気を許せる友達はお前だけじゃ。モートソグニル」
寂しい老人が呟く。ネズミはナッツを齧り終えるとちゅうちゅう、と鳴いた。
「そうかそうか、もっと欲しいか。よろしい。くれてやろう。だが、その前に報告じゃ。モートソグニル」
ネズミが三度ちゅうと鳴くと、オスマンは機嫌良く頷き
240 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:31:29 ID:MFdyuiLz
「そうか、白か。純白か。うむ。しかし、ミス・ロングビルは黒に限る。そう思わんかね。可愛いモートソグニルや」
そこでようやく、ロングビルの眉が動いた。
「オールド・オスマン」
「なんじゃね?」
「今度やったら、王室に報告します」
「カーッ!王室が怖くて魔法学院学院長が務まるかーッ!」
目を剥いて怒鳴るオスマン。とても百歳を超える老人とは思えぬ迫力である。
「下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな!そんな風だから、婚期を逃すのじゃ。はぁ〜。若返るのう。ミス…」
オスマンは、ロングビルのお尻を堂々と撫で回し始めた。ロングビルは席を立ち、しかる後、無言で上司を蹴り回した。
「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに」
オスマンは、頭を抱えて蹲る。ロングビルはしかし、荒い息で美脚を振るい続けた。
「あだっ!年寄りを、きみ。そんな風に。こら!あいだっ!」
ロングビルが内心だんだん楽しくなってきた、そんな平和な時間は、突然の闖入者によって破られた。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?」
ロングビルは、何事もなかったように机で書き物をしていた。
オスマンは、腕を後ろに組み、闖入者―ドアを勢いよく開けて飛び込んできたコルベールを迎え入れた。
「たた、大変です!」
「大変なことなど、ひとつもあるものか。すべては小事じゃ」
「ここ、これを見てください!」
コルベールは、オスマンに先ほど読んでいた書物を手渡した。
「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。まーたこのような古臭い文献など漁りおって。
そんな暇があるのなら、たるんだ貴族たちから学費を徴収するうまい手をもっと考えるんじゃよ。ミスタ……、なんだっけ?」
「コルベールです!お忘れですか!」
「そうそう、そんな名前だったな。どうも君は早口でいかんよ。で、コルベール君。この書物がどうしたのかね?」
「これも見てください!」
コルベールは、カズキの手に現れたルーンのスケッチを手渡した。
それを見た途端、オスマンの表情が変わった。目が光り、厳しい色になった。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
ロングビルは言われるままに立ち上がり、部屋を出て行く。その退室を見届けた後、オスマンは口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」
ルイズとカズキは、荒れた教室の後片付けをしていた。
騒動の二時間ほど後、目を覚ましたシュヴルーズに教室の掃除を言い渡されたのだ。
罰として、魔法の使用は禁じられていたが、魔法をまともに使えぬルイズにはあまり意味のないことであった。
言いつけられたのはルイズだが、カズキはルイズの使い魔なので、自然手伝うことになる。
他の生徒は手伝う素振りも見せず、出て行ってしまった。
先ず、割れた窓ガラスや、机の破片を集めなければならない。主に下段に激しい損傷が見られるが、
他の段でも使い魔が暴れたために、ところどころ欠けたり汚れていた。カズキは箒を手に取り、上から掃いていく。
窓の外に飛び出た分は、教室の片付けが終わった後に回収することにした。
ルイズは先ほどの騒ぎのままの身なりで、雑巾と水の入ったバケツを手に取ると、煤に塗れた机を拭い始める。煤自体は大分上の方まで来ていた。
ルイズは、手を動かしながら、ちらりと下段のカズキを見る。黙々と自分の下の段で、箒をのたくたと動かしていた。
あの騒動から二時間と少し。その間、カズキはほぼ無言だった。掃除を手伝わされていることを、ぶつくさ言う様子もない。
作業の打ち合わせで、二、三言葉を交わしただけであった。
「ねえ」
「ん、なに?」
声をかけられたカズキは、ルイズにキョトンとした目を向けた。それがあまりに自然体すぎて、ルイズは思わず目を逸らした。
「…なんでもない」
それきりルイズは黙ってしまった。カズキは疑問符を浮かべながら、しかし掃除を続けた。
241 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:33:08 ID:MFdyuiLz
やがて破片やゴミもあらかた掃き終わると、次は窓や机を取り替えなくてはならない。
ルイズに場所を聞こうと近寄れば、ルイズは重たそうに口を開いた。
「…あんたも」
「?」
「あんたもどうせ、わたしのこと、バカにするんでしょ?」
「は?」
突然何事かと思い、間抜けな声を挙げる。しかしカズキは、ははぁと合点した。
ルイズは、自分にも笑われるのでは、と思ったのだろう。
「まさか」
「魔法ひとつ、満足に使えない『ゼロ』」
カズキの言葉を遮り、ルイズはつらつらと言葉を放つ。
「…レビテーションも、アンロックも!発火だって爆発する『ゼロ』!」
頭を振りながら自分の中で鬱屈したものを吐き出し始める。
一度決壊した其れは、自ら塞ぐ術を持たない。
「昨日あんたを喚び出す前だって、何度も何度も爆発したわ!
煙の中からあんたが出てきたときなんか、みんな今までで一番笑ってた!」
昨日から幾度も目にした、皆からのルイズへの嘲笑。
“今までで”
ルイズはこれまでも、あのように笑われていたのだろうか。そしてその度に、肩を震わせていたのだろうか。
「それに今、錬金の魔法だって…あんたのとこの‘錬金術'の方が、きっといくらかマシに決まってるわ!
わたしはそれ以下!どう?これがあんたの知りたがってた『ゼロ』って二つ名の意味!
きっとあんたも、そんなわたしのこと、今も心の中でバカにしてたんでしょ!」
カズキに指を突きつけ、目尻に涙を滲ませながら、悲痛な声でルイズが言い放つ。
そんなルイズを見ながら、しばし間をおき、カズキは静かに言った。
「バカになんかしない」
その言葉を真正面から受け、ルイズは一瞬怯むがしかし、尚も首を振って
「くっ、口でならなんとでも言えるわ!貴族だけじゃない。学院の平民だって、陰で笑ってるもの!
貴族のくせに、魔法一つ満足に使えないって!」
カズキはシエスタを思い返した。今朝、何かを言い淀んだときの表情。なるほど、とカズキは思った。だが…
「オレは、笑わないよ」
カズキは力強く断言した。
「…っ!なんで…?」
ルイズはわけが判らなくなっていた。ルイズにとってカズキは使い魔。平民以下の扱いである。
そんな扱いをするに足る、資格が自分には要り、責任が自分には在る。
が、魔法を満足に使えぬルイズは、そのどちらも満たせていない。
唯一の成功は、サモン・サーヴァント、コントラクト・サーヴァントが一回ずつ。どちらも、目の前の少年が関する魔法だ。
その成功例であるカズキは頭を掻きながら、困惑したように言う。
「なんでって…まずオレ、こっちの人間じゃないしなぁ」
その言葉にルイズは、一瞬呆気にとられた顔になり、次いで顔を赤くして、更に落ち込んだ顔になった。
カズキにはこちらでの、貴族における魔法の重要性について、まるで理解がない。今更ながら、それに気付く。
けれど、それは今だけだ。今は笑わなくても、いずれは…それは、ルイズには余計に辛いことのように思えた。
「それに」
そう一泊置いて、カズキは続ける。
「なぁ、ルイズ」
「…なによ。聞きたくないわ。黙りなさい」
ルイズは顔を背けた。これ以上カズキの顔を見ていたくなかった。しかしカズキは続けた。
「ルイズは、あんな風に笑われて嬉しいのか?」
「黙りなさい」
「悔しいんだろ?オレだったら、悔しい。きっと悔しがると思う。だからオレは、ルイズを笑わない」
「っ…そんな同情、要らないわよ。使い魔のくせに、何様のつもり?」
カズキを睨みつける。しかしカズキは怯む素振りも見せず
242 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:34:29 ID:MFdyuiLz
「何様だっていいだろ」
そこで一つ呼吸を置いて、やはりカズキは続けた。
「…うん。正直オレ、ルイズにどうしていいのか、なにができるのか、わからない。
笑ったってルイズが傷つくだけだし。力になってあげたくても、魔法のことはオレにはわからない。
一緒に頑張ってあげたくても、オレにはたぶんそれができない。
…だから、とにかくオレは、ルイズを嘲笑(わら)うようなことだけは、絶対にしない」
それがおそらく、今自分にできることだろうから。
ルイズは目を見開いて、黙ってしまった。
いったいなんなのだ、この少年は。同情にしたって、ここまでまっすぐ、面と向かって言われるのは初めてだ。
生徒、教師、平民。この学院にいる、どんな人間とも違う、異世界から来た使い魔の少年。
故郷の家族を思い浮かべる。何故だろう、どこか自分の一つ上の姉に似ている。そんな気がした。
しばらく沈黙を続けた後、ルイズはそっぽを向いて口を開いた。
「しゅ、主人を笑わないなんて、使い魔として当然よ!そこはその、褒めてあげるわ!」
紡がれた言葉に、カズキは口元を綻ばせた。恥ずかしがり屋なんだな。そう思った。
「まったく、時間を無駄にしちゃったわ。とっとと片付けるわよ!」
「ああ」
カズキは替えの備品の場所を訊くと、机やガラスを交換していく。
ルイズは無事な机を拭き終えると、やがてそれを手伝いだした。
「…そういえば」
ふと、カズキが思い出したように言う。
「実はオレ、ルイズの爆発を見たとき、知り合いを思い出たんだ。で、ちょっと考え事してた」
ルイズは眉をひそめた。だからずっと無言だったとでもいうのか。
「…なによそれ。貴族の失敗からなにかを連想するなんて、不敬にも程があるわよ、あんた」
「うん、ごめん。けど、ちょっとそいつの話になるんだけど…」
思い出すのは、ある一人の、自分が一度殺した男。誰よりも生に執着し、誰よりも透明だった一人の男。そして――
「そいつは、ある不治の病気に冒されて、どの医者からも、もうどうしようもないと言われてたんだって。
けれどそいつは、諦めずに助かる道を探した。…結局そいつが選んだのは間違った道だったし、
その際悲しいことが起こった…けど、結果そいつは生き長らえたんだ」
ルイズは一瞬、詰め寄りそうになるのをこらえた。脳裏には、やはり一つ上の姉が浮かんでいた。
「…ちょっとその話、詳しく聞きたいんだけれど、まぁいいわ。それで?」
「ん?…そいつに言われたことなんだけどね。なんだったっけな…
『選択肢は他人に与えられるものではなく、自分で作り出していくものだ』…だったかな」
――そして、自分との決着を、そのための選択肢を、最後まで諦めなかった男。
「…で?」
「で、ルイズの爆発からその言葉を思い出して、オレもただ化物になるのを待つんじゃなく、もうちょっと。
あと数日間だけど…やっぱり足掻いてみようかなって、そう思っただけ。で、そう。ルイズもまぁ、諦めず頑張れってことで」
ルイズは呆れた。とことん呆れた。なんかついでに励まされたことに、むしろ怒りも沸く。
「はぁ、なに?わたしが嫌いな魔法の失敗が、随分と遠回りにあんたの励みになっちゃったわけ?
そもそも、なんで爆発がそこへ繋がるのかわかんないんだけど」
「まぁ、そいつも爆発を使うやつだったからね」
「へぇ…って、あんたんとこ、魔法ないんでしょ?なに、爆弾魔なの?」
「あぁいや、そういう‘錬金術'の‘力'を持ってるってだけ。なんだっけ、黒色火薬?」
「ふーん。‘錬金術’ねぇ…ち、ちなみに、どうやってそいつはその、病気から治ったの?」
適当な相槌の後、気になる方向へ話をずらす。ルイズにとって、今一番気になるのはこの件である。
カズキはルイズを見ると、言いにくそうに返す。
「…ホムンクルス。人食いの化物になったんだ」
あの夜の惨劇が浮かぶ。一夜にして二十人が消えたあの夜。偽善者と言われ始めた、あの夜。
ルイズは衝撃を受けた。人を捨てることで、命を永らえる。そんな外法が在って良いものか。
カズキの話を疑うわけではないが、信じられるものではない。
「…っ!そ、そう。で、あんたももうすぐ、それになると。どうするの?」
「いや、それがさっぱり」
両の手を掲げて、苦笑する。そもそも考えることは苦手な人間だ。
243 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:36:15 ID:MFdyuiLz
「あんたね…ったく、そんな無責任なこと言ったやつの顔が見たいわ」
カズキはどこからか折りたたんだ画用紙を取り出し、広げた。かつて斗貴子と、彼の男を捜すために作った似顔絵である。
大きな蝶の仮面がやたらと印象的な、凛々しい男の顔がそこにあった。
「こんなヤツ」
「それヘンタイよ!」
「そうかなぁ。マスクだけなら結構オシャレじゃない?」
「あんたのオシャレ、間違ってるわ!」
妹に続きルイズにも指摘され、カズキは首を傾げた。
そうこうしていると、昼休みの時間になってしまった。授業終了を告げる鐘が鳴り響く。
「わ。もうこんな時間じゃない。どうしよう、まだ終わりそうにないわ」
教室を見渡せば、窓の交換が終わる頃だ。が、見れば床や壁にも煤が目立つ。
それに、終わってもルイズは一度部屋へ着替えに戻らなくてはならない。
流石にあちこち破れた今の姿で食堂へ赴くのは勘弁したい。
「良いよ、あとやっとくから。先行きなよ」
カズキは残りをあっさり請け負った。ルイズは思わず尋ねてしまう。
「良いの?」
問われると、なにやらポーズを取りながら自信満々に宣言した。
「大丈夫!何を隠そう、オレは掃除の達人!」
にっこり笑うカズキ。よくわからないが、任せてもよさそうだ。
「そ、そう。それじゃ、頼んだわね」
ルイズが教室から出て行くと、カズキはよし、と一つ頷いて、残りの作業に取り掛かった。
机を替え、窓を替え、煤だらけの教室を拭い、ゴミを片付けて、ようやく掃除は終わった。
カズキは食堂へ向かい、ルイズを探した。貴族の連中が何人かこちらに視線を送ってくるが、一言二言ひそひそと言葉を交わすと興味がなくなったのか見てこなくなった。
ルイズを見つければ、着替えも済んだのか食事を取っていた。そちらへ向かう。
「お待たへー。あっちは終わったよ」
「ご苦労さま」
「で、オレの昼食は?」
ルイズは視線を下げる。そこにあるのは朝と同じメニューだった。みるみるカズキの顔に落胆の色が混じる。
「なによ。わたしも来たら、もう用意されてたんだもの。無駄にできないでしょ?」
あのやり取りの後にこれである。流石にルイズにしても、人間として、いやさいち貴族として、それはどうか、と思い始める。
「で、でも。主人を気遣う使い魔に対して、思うところがないわけでもないのよ?
…その、次からはもうちょっとマシなのにしてあげるから、今は我慢なさい」
カズキは顔を明るくした。ころころ表情の変わる使い魔だ。ルイズは思った。
二人が食事を取っていると、既に他の生徒は食後のデザートの頃合のようだ。給仕がトレイを持って近くを通りかかった。
それを見たルイズは、何事か思いついたのか、声をかけた。
「ちょっと、そこのあなた」
「は、はい!?」
呼ばれた給仕は、突然声をかけられて驚いたようだ。拍子にトレイ上のケーキを溢しそうになったが、なんとか留まった。
応えた給仕はシエスタであった。なにか粗相をしただろうかと、びくびくしながらルイズを伺った。
「な、なんでしょうか。貴族様」
「こいつに、あなたたちの賄いで良いから少し与えてくれないかしら。
言っておいてなんだけど、この量はちょっとこいつには足りないみたいなの。
今後も、そうね。もう少し量を増やしてお願いできるかしら。裁量は任せるわ」
カズキを親指で示しながら、シエスタにそう頼む。カズキはルイズを見上げて
「良いの?」
「良いわよ。とっととそれだけ食べたら、厨房にでも行ってらっしゃい」
もともと、主人と使い魔という絶対的な主従関係を意識させるための一環である。が、それは今は不要と考えたのだ。
あまり意識してる態度は見られないが、先ほどの一件はルイズの考えを改めさせるには足りたようだ。
「畏まりました、以後その様に」
「…ありがとう、ルイズ」
「な、なによ。主人が使い魔のことを考える。当然でしょ」
気恥ずかしそうに、ルイズ。カズキは笑った。シエスタも、使い魔の少年のことを気にしていたのか。安心したように微笑んだ。
244 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:37:33 ID:MFdyuiLz
「それでは、厨房に向かいましょうか。コック長に話を通さないと…あぁでも、まだ配膳の途中でしたわ」
「あ、じゃあそれはオレがやるよ。シエスタさんはその、よろしくお願いします」
カズキは立ち上がり一礼すると、手を差し出した。
「まぁ、悪いですわ」
「まぁまぁ、任せて。何を隠そう、オレは配膳の達人だから!」
「あんた、そればっかりね」
ルイズが呆れた調子で笑った。言外に黙認した様子。
シエスタも少し迷ったが、ではお願いしますとトレイを渡すと、厨房へと向かった。
「そういえばあんた、あの平民の名前知ってたわね。いつの間に仲良くなったの?」
同じような黒髪だからすぐ仲良くなったのだろうか?そんな風に考えたルイズにカズキは神妙な面持ちで
「それは秘密」
「なんでよ」
「その方がカッコいいから――!」
ルイズは呆れた。なによ、どうせ大したことでもないんでしょうに。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
カズキはそう言うと、次々とケーキを配っていった。なかなか様になっていた。
「…っていうか、なんであのメイドやツェルプストーはさん付けで、あたしは呼び捨てなわけ!?」
今頃ルイズは怒り出した。ケーキを怒り任せに口に放る。甘くて美味しかった。
「なあ、ギーシュ!お前、今誰とつきあっているんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
テーブルの一角で、数人の貴族が談話していた。一人を囲み、何事か冷やかし混じりに問い詰めている様子。
話題の中心らしき彼は、金髪の巻き髪に、フリルの着いたシャツを着た、気障なメイジだった。バラをシャツのポケットに挿している。
そんなギーシュと呼ばれたメイジの身なりに、カズキは教室で話題に上った男をふと思い出す。
曰く、‘このまま舞踏会に駆けつけられる程素敵な一張羅’だったか。あれに負けず劣らずな装いだと思った。
するとギーシュは、すっと唇の前に指を立てた。
「付き合う?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
自分を薔薇に例えている。随分な自信家のようだ。顔立ちは悪くないし、その自信にも、頷けるものがあるが。
そんな風に考えたカズキの視界で、ギーシュのポケットから何かがこぼれるのが見えた。
見ると、ガラスでできた小壜だ。中で紫色の液体が揺れている。
何気なく拾えば、ギーシュに話しかける。
「キミ、落し物だよ」
しかし、ギーシュは振り向かない。話に夢中なのだろうか?
ならば仕方ないと判断し、そのうち気付くだろうと、テーブルに置いておく。
しかしギーシュは、苦々しげにカズキを見つめると、小瓶を押しやった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
ギーシュの友人たちが、その小壜の出所に気付いたのか。大声で騒ぎ始めた。
「おお?その香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」
「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「そいつがギーシュ、お前のポケットから落ちてきたってことは、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている。そうだな?」
突如始まった推理ショー。犯人はお前だ。追い詰められたギーシュは、しかし弁解を始めた。
「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが…」
始めたところで、後ろのテーブルに座っていた茶色のマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かって歩いてきた。
栗色の髪をした、可愛い少女だった。茶色のマント…一年生だろうか。
「ギーシュさま……」
そして、ボロボロと泣きはじめる。
「やはり、ミス・モンモランシと……」
「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ……」
しかし、ケティと呼ばれた少女は、思いっきりギーシュの顔を引っ叩いた。
「その香水があなたのポケットから出てきたことが何よりの証拠ですわ!さようなら!」
すると、遠くの席から見事な巻き髪の女の子が立ち上がった。カズキはその子に見覚えがあった。
確か、カズキがこの世界に呼び出されたときに、ルイズと口論していた子だ。
245 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:38:56 ID:MFdyuiLz
いかめしい顔つきで、かつかつかつとギーシュの席までやってきた。
「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで……」
首を振りながら言うギーシュ。冷静な態度を装うが、冷や汗が一滴、額を伝っていた。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪ませないでくれよ。
僕まで悲しくなるじゃないか」
モンモランシーは、テーブルに置かれたワインの壜を掴むと、中身をぼどぼどギーシュの頭の上からかけた。そして……
「うそつき!」
そう怒鳴ると、去っていった。
沈黙が流れた。
ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。そして、首を振りながら芝居がかった仕草で言った。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
すっかり傍観していたカズキは、あれだけの修羅場の後にそんな態度を取れるギーシュに、どこか感心した。
そして、これ以上は当人の問題だろうと、その場を離れようとしたが…
「さて…待ちたまえ」
ギーシュの声。どうやら自分を呼び止めているようだ。振り返ると、ちょうどギーシュが椅子の上で身体を回転させ、すさっと足を組んだところだ。仕草は決まっているが、さっきの修羅場で印象が良くないなとカズキは思った。
「君が軽率に、香水の壜なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「え、オレ?」
自分を指差し、カズキは素っ頓狂な声をあげた。いやいや、確かに軽い気持ちで小壜は拾ったけれど。
「そう、君だ」
真犯人はお前だ、と断言するように、ギーシュも念を押す。
が、流石に小壜を拾ったぐらいで言いがかりをつけられてはたまらない。カズキはギーシュの目を見て
「いやその、言いにくいんだけどさ。女の子に二股してたキミが悪いんじゃない?」
周りの友人たちが、どっと笑った。
「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」
ギーシュの顔に、さっと赤みが差した。
「いいかい?給仕君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。
話を合わせるぐらいの気転があってもよいだろう?」
「って言われてもなぁ。二股っていつまでも隠し通せるもんでもないだろうし」
カズキは頭を掻いて、無茶苦茶言う奴だと思った。ひょっとして、こっちの貴族は初対面の人間にはみんなこうなんだろうか。
「ふん……。ああ、君は…」
ギーシュは、バカにしたように鼻を鳴らした。
「確か、あのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。平民に貴族の気転を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」
カズキは眉を顰めた。が、すぐに自然な態度で
「別に良いけどさ。キミも、あの二人にちゃんと謝っときなよ。特に、泣いてた子の方」
女の子を泣かせたのはギーシュの責任。慰めないといけないからと、つい善意からの助言をした、のがまずかった。
周りがまた笑うのに、ギーシュは気を悪くしたのか。
「君に言われるようなことじゃない。というか君、今ひとつ貴族に対する礼を知らないようだな」
「まぁ、貴族のいない世界から来たからね」
「よかろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうど良い腹ごなしだ」
ギーシュは立ち上がった。カズキは頭上に疑問符を浮かべた。なんだ?何を始めるつもりなんだ?
「貴族の食卓を平民の血で汚すわけにもいかないな。ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終わったら、来たまえ」
そうカズキに告げて食堂を後にする。ギーシュの友人たちが、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。
一人はテーブルに残った。カズキを逃さない為に、見張るつもりのようだ。
「む、ムトウさん!?」
「あ、シエスタさん。なんか呼ばれちゃったんだけど」
青い顔をしたシエスタがすっ飛んできた。突然の騒動に、今の今まで外野で見ていたようだ。
「ムトウさん、殺されちゃう…貴族を本気で怒らせたら……」
ぶるぶると震えながらカズキに言うと、やがて耐えられなくなったのか。来たときと同じ速度ですっ飛んでいった。
なんなんだよ、とカズキは呟いた。未だに状況についていけてないらしい。
そうか、あいつ怒ってたのか。ちょっと考えが足りなかったな。そんな風に考えていると、後ろからルイズが駆け寄ってきた。
246 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:40:42 ID:MFdyuiLz
「あんた!何してんのよ!見てたわよ!」
「あ、ルイズ」
「あ、ルイズじゃないわよ!なに勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」
「へ?」
沈黙が流れる。ルイズは、果てしなく訊きたくないことであるが、意を決して尋ねた。
「…あんた、わかってなかったの?」
「なにが?」
ルイズはその場に膝を着いた。手も着いた。とことん崩折れた。
「…ルイズ?」
心配そうに、カズキ。ルイズは立ち上がると、痛む頭を押さえながら、ため息をついて。
「謝っちゃいなさいよ」
「なんで?」
「怪我したくなかったら、謝って来なさい。今なら許してくれるかも知れないわ」
「うーん、なんか納得できないなぁ。そもそも…」
「いいから」
ルイズは強い調子でカズキを見つめた。しかし、カズキは首を捻る。
「あのね?もしこのまま決闘したら、あんたがたとえ戦うことに慣れてても、絶対に勝てないし怪我するわ。
いいえ、怪我で済めば運が良いわよ!」
「いや、そもそも決闘する気もないんだけど」
「じゃあ、なおさら謝んないと!」
「…良いけどさ。確かにちょっと考えも足りてなかったし」
カズキは頬を掻いて、先ほどの自分の行動を振り返った。
そもそも、女の子に謝るのはギーシュ自身の問題で、自分が口を挟むことでもなかった。そこは謝ろう。そう思った。
ルイズはわかってくれた、と安堵の息を吐いた。
「じゃ、行きましょうか。心配だから着いてってあげるわ。ありがたく思いなさい」
「なんだ、決闘はなしか。まぁいい、着いて来い」
残った一人が立ち上がり、促す。が、カズキはそれに
「ちょっと待った」
「なんだ、考えが変わったのか?」
貴族の少年が嬉しそうに訊いて来る。ルイズも訝しげな目を向けてきた。
「いや、あいつも言ってたろ。ケーキ、配り終えてないんだ。すぐ終わるから待ってて」
トングをカチカチと鳴らしながら、カズキが言った。
そういえばギーシュも確かに、ケーキを配り終えたら来いと言っていた。律儀な奴である。
ルイズと貴族の少年は、呆れて何も言えなかった。
ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある中庭である。
西側にある広場なので、そこは日中でも日があまり差さない。決闘にはうってつけの場所である。
ルイズとカズキが赴いた頃には、噂を聞きつけた生徒たちで広場は溢れかえっていた。
「なんか、大事になっちゃってるなぁ」
周りの人垣を見ながら、カズキが呟いた。ルイズもまた、心配そうに頷く。
「そうね、早いとこ謝っちゃいなさい」
「諸君!決闘だ!」
そんな二人をよそに、ギーシュが薔薇の造花を掲げた。うおーッ!と歓声が巻き起こる。
カズキは吃驚して、見回した。主に騒いでるのは男子生徒のようだ。みんなが荒事が好きなんだろうか。
「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」
誰かが叫ぶ。腕を振り、歓声に応えるギーシュ。これはいけないと思ったのか、ルイズがずいと前に出た。
「待ちなさいよ、ギーシュ!」
「やあルイズ。悪いが、君の使い魔をこれからちょっとお借りするよ!」
「いい加減にして!ほら、あんたも!謝るんでしょ!」
247 :
使い魔の達人:2009/07/03(金) 20:42:32 ID:MFdyuiLz
ルイズに引っ張られて、カズキも前に出る。ギーシュはカズキに造花を突きつけた。
「なんだね?よもや今頃、先ほどの非礼を詫びようとでも言うのか?」
「非礼っていうか。さっきはオレも、ちょっと考えが足りなかったよ。ごめん」
カズキはあっさり頭を下げる。場が、静まった。皆、唖然としている。
ギーシュは口元に造花を当て、肩を揺らしながら言う。
「ふ…ふふ……これは、拍子抜けだな。いや、君が平民なれば、有り得ないことでもないか。むしろ頷ける。
まったく、最初から素直に、そうしていれば良いものを。変に口ごたえするからこうなる。
見たまえ。君のような平民のおかげで、貴重な昼休みの時間を棒に振らされた貴族が、これだけいるのだ。
その責任、どう取るつもりだね?」
外野の連中を造花で指し示しながら、問うてくるギーシュ。カズキの言葉一つで、大分気が大きくなっている様子。
連中といえば、ギーシュの指摘のとおり、どこかがっかりした顔をしている。
カズキにしても、流石にそれは知ったことじゃない。
「まぁ、君のような平民にそこまで望むほど、僕もやぶさかではない。よって…」
ギーシュはその視線を、カズキからルイズに移した。
「使い魔の不始末は主人の不始末。ルイズ。ここは君が謝るのが筋だと思うのだが、どうかね?」
「はぁ?なんでよ。そもそも、この決闘はあんたが言い出したことじゃない!」
「あぁ。だがそこまでの経緯は、今しがた君の使い魔が、自分の責任だと認めたばかりだ。
ならば、いらぬ決闘騒ぎでここに集まった皆に詫びるのもまた、彼、もしくは君の責任じゃないかね?」
薔薇の造花を、手の上で弄りながらギーシュは言葉を紡ぐ。カズキは、そこまで認めたわけじゃないと思った。
「まさか。君は貴族としての礼儀すら、『ゼロ』なのかね?」
おどけた調子で言うギーシュを、ルイズは睨め付けた。誰をつかまえて、そのような戯言を…!
「そうだそうだ!謝れよ、ゼロのルイズ!」
「ついでに、日頃からの魔法の失敗についても一言欲しいな!いい加減、皆ウンザリなんだよ!」
周りから野次が飛ぶ。そうだそうだ、と同調の輪が広がっていく。ルイズは振りかかる其れを、黙ってその身に受けた。
ぎゅうと拳を握り、肩を震わせる。胸の奥から、どんどん悔しさが湧いてくる。
ふと、隣の使い魔を見た。彼は、どんな顔をしているのだろうか。気になった。
使い魔は、上半身ごと下を向いていた。
「ごめんなさい。オレのせいで、昼休みを無駄にさせてすいませんでした」
つらつらと、カズキは謝辞を述べた。ルイズは愕然とした。
主人の代わりに率先して謝る使い魔。それは、主人の非も認めたことになるのではないか。
さっきの言葉は、嘘だったの…?
「…ふん。随分物分りが良くなったじゃないか。ルイズ。『ゼロ』の君にしては、良い使い魔を召喚したものだね」
その言葉に、周りの連中も笑い出す。ルイズは、その場から逃げ出したくなった。
「けれど」
カズキは上体を起こす。温厚そうな彼には珍しく、その眉は攣り上がっていた。
「謝るのは、そこまでだ。ルイズは何も悪いことをしていないし、謝る必要なんかない」
静かに、カズキは言葉を続ける。その声には、僅かに怒りが混ざっていた。
「今度はお前の番だ、ギーシュ」
目の前の男に指を突きつける。そして、宣告した。
「ルイズに、謝れ」
――――――――――――――――――――――――――――――――
以上です。ヱヴァ序楽しみですね
お粗末
wktk
カズキらしくていいね。乙
かなり後のことだろうけど、ヴィクター化が今から楽しみでなりませんよ。
249 :
名無しんぼ@お腹いっぱい:2009/07/03(金) 21:10:56 ID:DdtXBnQl
空気読まずに強欲のグリードの召喚を祈ってみる。
確かにそれもホムンクルスですな。
って、確かハガレンは別スレがあったと思うからそちらで祈っていて下さい。
達人の人乙。
原作読んだことないけど楽しめるね
カズキの人乙
ギーシュが「謝るなよ偽善者」とか言わなくて良かったw
ハガレンの別スレ結構前から落ちてないか?
ドラクエモンスターズ+が打ち切りじゃなかったら今頃ここに書かれていただろう
ルイズがドラクエ世界からモンスターを召喚したら……LVは幾つくらいが適当なんだろうか。
ダメットの人乙&GJ。
ダメットォー!(ToT)
達人の人乙&GJ!
おぉ、和月絵で再生されたぜ。
ギーシュイ`w
>>256 無双したいならMax。
ルイズと共に成長させるならレベル1で始めるのも面白いかも。
モンスターによるけどね。
くさったしたいとか召喚したらどうだろうか。
基本はスライム属。
ルイズの自尊心を満足させるならドラゴン属。……ボス類はアウトかなぁ。
>>260 間違いなくその日にタバサは転校します。
>260
ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ の「執事子ネタ」がそれに相当するのでは?
>>263 ルイズ「死体とどうやって契約するんですか、ミスタ・コルベール!」
コッパゲ「いや……ですが動いてますよ?」
ルイズ「余計に気味が悪いですよ!!」
コッパゲ「しかし春の使い魔召喚の儀式のルールは、あらゆるルールに優先して……」
ルイズ「ルール、ルールって、この世界にはルール以上に大切なものがあるでしょう!!?」
↓
なんやかんやでキス契約
↓
ルイズ「うっ、うぐぇ……」
……何か美少女ヒロインにあるまじきシーンになっちまった。
>265
ギーシュ「ああっ、ルイズが泥水で口をすすいでいるぞ!」
と、ジョジョ風に?
フレディVSジェイソンでジェイソンに人口呼吸しようとして吐きそうになるシーンを思い出す
>>265 死体より酷いものとキスしてたりもするから安心しろ
チ○コとか言うな!ご立派様と言え!
使い魔の達人の人GJです。
カズキの愚直さがかっこいい。
こんばんは。
よろしければ30分より投下したいと思います。
聖樹さんきた!!!
これで勝つる!!!!!支援
聖樹、ハルケギニアへ―5
「オオオオオオオオオールドドドドオ、オス、マン!
早く!早く見つけてください!」
「ええい!静かにせんかい!気が散って見付けられるものも見つけられんわい!」
エクスデスがギーシュを掴んで姿を消したころ、学院長室では二人の男が大騒ぎしていた。
といっても、主に騒いでいるのは教師のコルベールで学院長のオスマンは彼に揺さぶられる様にされているだけだが。
「しかし・・・お主の見間違いじゃないかのう?」
「いいえ!見間違いではありません!ほら!この通り!間違いないでしょう!」
ずい、とライブラリから持ってきた本に記されたルーンとエクスデスの手に浮かんだルーンのスケッチをオスマンの前に突き出す。
「ああもう!鏡が見えんじゃろう!」
言いつつも二つのルーンを見比べる目は真剣だった。
「ミス・ヴァリエールの使い魔のあのまも・・・いえ、彼は「ガンダールヴ」です!
とんでもないことですよ!伝説の復活です!」
(伝説の使い魔ガンダールヴ・・・あの異形の者がのう・・・)
「ところで見つかりましたか!?」
思考を大声で遮られオスマンは眉をしかめるが、まずは探査に集中することにした。
ミス・ロングビルの報告で当の使い魔ことエクスデスが学園の生徒と決闘するというかと思えば突然コルベールが駆け込んできて大騒ぎしそうになり、慌ててミス・ロングビルにその場を外してもらった。
「眠りの鐘」の使用も考えたが、グラモン家のバカ息子はともかく、エクスデスに果たして通用するか考えたのだ。
使い魔召喚の日、一人一人の生徒の使い魔達を鏡を使って見ていたのだが、最後にやってきたエクスデスを見ているとき、ふと、こちらを見ているように見えたのだ。
いや、あれは間違いなく自分の存在を知覚していた。
遠見ごしに殺気を感じるなど、長い間生きてきたが初めてのことだった。
それもただの殺気ではなく、まるで暗い穴に飲み込まれるかのような感覚。
あんな気を放つ相手とは自分だったらなんとしても対決を避けようとしただろう。
しかしそれは長年の勘が警告する物。
まだ年若いギーシュでは感じなかったかもしれない。
だからこそ、合意の上の決闘とはいえ万が一を考え見張っていたが、まさかこんなことに
なるとは。
(何事も起きていないでくれれば良いんじゃが・・・)
オスマンは再び鏡の捜査に集中し、見あたらない学園のあちこちの探査をやめ、手掛かりを見つけるために消失現場であるヴェストリの広場をもう一度映した。
「・・・・・・・?」
エクスデスに肩を掴まれて何をされるのかと咄嗟に目を閉じ、手で簡単に庇う姿勢は取った。
が、あれから何かをされる気配がない。
てっきり殴られるか斬られるかされるかと思ったが、一瞬体が浮いた感覚の後に肩を掴んでいた手が離れるのが分かった。
なんで離したのかは分からないが、それから何をされるのか。
正直どう動けばいいのかさっぱりでギーシュは防御体勢が崩せない。
「・・・・・・・・・」
しかしいつまでもこうしている分けにもいかないので、意を決して恐る恐る目を開けていく、手の防御態勢は崩さないまま。
「ようやく動く気になったか?」
「!」
聞き覚えのある声を耳にして正面を見る。
その先にはエクスデスが刃を下に向け、柄に両手を置きながら立っていた。
「くっ!一体何のつもりなんだ!」
エクスデスの雰囲気、また先の圧倒的な実力差を思い出して押されそうになるがギーシュはこらえて精一杯力んで見せた。
だが正直恐ろしさは隠しきれない。
握った手や足が微妙に震え、堪えようとしても堪え切れなかった。
「特に何をした、ということはない。
あの広場では喧しくなりそうでな、少しばかり話をしたいと思ったまでだ」
「ぼ、僕に話は無い!」
そんなギーシュの様子にエクスデスは満足気にふむ、と小さく頷いた。
「最初に見たときはただの気取り屋かと思ったが・・・。
なかなか肝が据わっているようだな」
「え・・・?」
まさか褒められるとは思っていなかったのでギーシュは驚いた。
「一つは力の差があると分かったであろう相手にも再び吠えつく度胸。
>>262 タバサが怖いもの苦手なのはフェイクなんだぜ
聖樹支援
もう一つは・・・」
「もう一つは・・・?」
「突如こんな場所に連れてこられても全く動じないところ、と言ったところか」
「へ?」
エクスデスの言ったことが一瞬理解できなかったが、
「こんな場所と言ってもここは広場に決まって・・・・」
辺りを見渡したギーシュの時が止まった。
真っ青な空、地面も無い大空の真っただ中、雲がとても近い、いや自分の体を包むように通り抜けていく。
近いという問題ではない。
触れた。
そんな自分は白く輝く円の上にいる。
不思議な模様の描かれた不思議な円で術の類の陣にも見える。
円の下、遥か真下のほうに見える小さな建物は学園だろうか。
風が吹いてばさばさっとマントが翻る。
エクスデスのマントも同じように翻る。
「・・・・・・・・・・・」
大空の真っただ中。
レビテーションは使っていない。
というより、杖が無い。
なのに自分は浮いている、というより、空中に立っている。
「では聞こう。 おま」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ギーシュ・ド・グラモンは後に語った。
あんなに大声を出したのは今まで生きてきてあの時だけだったよ、と。
ギーシュがこの世の終わりのような魂の叫びを上げている一方その頃、決闘の場だったヴ
ェストリの広場は大混乱になっていた。
「いない!やっぱりどこにもいないぞ!」
「消えちまった!ルイズの使い魔もろともギーシュが消えた!」
「どうやったら一瞬で消えるなんて出来るのよ!魔法!?」
「あいつは芸人だろ!?手品か何かじゃないのか!?」
「手品や芸にしては凄まじすぎるだろ!」
ただの貴族による平民への制裁のはずが、予想を大きく外れる展開に多くの生徒が付いて
いけなくなり、大騒ぎとなっていた。
二人を探して右往左往する者、未だに放心状態で固まっているもの、騒ぎに刺激され暴れ
だした自分の使い魔にノックアウトされる者。
平和なはずの学園の広場はお祭りの前日のような慌ただしさとなっていた。
「ど、どうするのよルイズ!」
「わわわ、わたっわたしにどうしろってのよ!」
その喧騒に紛れてルイズとキュルケが言い争いをしている。
「どう見てもあなたの使い魔がやったとしか思えないじゃないの!」
「そ、そうかもしれないけど!
あんなことが出来るなんて聞いてないわよ!」
(エクスデス!あいつ何やってるのよぉ!)
キュルケに肩を掴まれて揺さぶられながら、心の中ではルイズは泣きたいぐらいだった。
「ルイズ・・・・」
そこへモンモランシーがやって来た。
「待って、待って!今取り込みちゅ・・・・・・」
今これ以上の問題はお断りしようとしたモンモランシーの顔を見たルイズは言葉を失った。
表情は険しく、不安と焦りが入り混じってように青冷めているのだ。
キュルケもその様子にルイズを揺さぶる手を止める。
「・・・・ルイズ」
「な、なに」
不意近寄って来たと思えば急に手を掴まれたのだ。
そのまま膝を折ってルイズを見つめる。
その目には涙が浮かんできていた。
「・・・お願いルイズ!ギーシュを許してあげて!」
(ええっ!?)
「確かにギーシュは勝手だけど! ただ変にプライドが高いだけなの!
あなたの使い魔に当たり散らしたのは本当に、本当にごめんなさい!」
(い、いやちょっとわたしに謝られても!というよりなんでモンモランシーが謝るのよ!)
「本当に悪気があったわけじゃない!だから・・・だから命だけは助けてあげて!」
「わたしにそんなこと言われても!落ち着いて!」
モンモランシーの涙ながらの助命嘆願が加わりルイズの頭の中はぐっちゃぐちゃだ。
(あああああ!エクスデス!早く!早く戻って!・・・・・)
「さっさと戻ってきなさいよ!ばか―――――――っ!!」
ルイズは空に向かって叫びあげた。
(ルイズに呼ばれたか?)
そんな気がしたが、今声が届く距離に居るわけがないので気のせいだとしておくことにし
た。
そんなエクスデスは白い陣の上に胡坐をかくように座っている。
その前ではギーシュが正座をしてうつ向き気味に座っていた。
(ようやく落ち着いたか)
というのもさっきは自分すら驚く程の大声で叫んだ挙句、こっちに向かって飛びついてき
たのだ。
流石に顔にしがみつかれた時は参った。
引きはがすのにもどこにこれだけ力があるのかと思うほど手を焼いたのだ。
「それで僕に・・・話というのは?」
「それなのだが・・・」
攻撃される気配は無いので安心はしているものの、何を言われるか分からずゴクリと唾を飲み込む。
「お前はモンモランシーとケティという娘のどちらを好いているのだ?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
「いや、お前の様子からするに他にも声をかけた者はいるか。
訂正する、誰を好いているのだ」
「キ、キミには関係ないことだろう!」
予想だにしなかった質問にギーシュは慌てふためく。
内容は同じだが、友人の男子生徒達に茶化される様に聞かれるのと一対一で真面目に聞かれるのでは感じがまるで異なる。
前者は適当にあしらえばいいが、こういった場合は想定していなかった。
急用のふりをして逃げようにもここから飛び降りるなど出来るわけがない。
いや、その前に正面に鎮座するエクスデスが逃がしてはくれないだろう。
「いや、大いにある!
私はその問題に巻き込まれた揚句にお前と決闘することとなったのだからな」
「ぐ」
そう言われると弱い。
今になって考えてみると食堂の時の自分の行動が情けなくなる。
半ば八つ当たり気味に決闘を行い、エクスデスを叩きのめしてもやもやとした気持ちを晴らそうとした結果がこれだ。
「それで先程の質問だが、特定の相手はいないのだな?」
「・・・・」
「沈黙は肯定ととるが」
何と言えばいいか分からず黙ったままになってしまう。
「安心したぞ。
それならばあの娘達を私の物にしようともなにも問題は無いな。
そうだな・・・あの金髪の娘はなかなか悪くない」
「!」
エクスデスの言葉にギーシュが立ち上がる。
「モンモランシーは渡さない!」
考える前に言葉は出ていた。
きっとエクスデスを強い意志で見据えている。
「・・・ほう」
ギーシュの怒気をはらんだ言葉にも動じることなくエクスデスは構えて、
「私より弱いお前が止められると思うか?」
若干語気を強めて尋ねる。
「それでもモンモランシーは渡さない!」
ギーシュも臆することなく言い張った。
そのままお互いにらみ合いになりそうだったがそうはならなかった。
「ファッファッファッファッファッ!」
「!?」
突然の大笑いにギーシュはびくっとなる。
エクスデスは行動がまるで読めず、一挙一動にこちらが驚かされるばかりだ。
「いるではないか、 好意をもっている相手が。
高らかに名を叫ぶほどの」
「!い、いや今のはそのあの・・・!」
ギーシュはまんまとエクスデスの誘導尋問に引っ掛かってしまったのだ。
(適当に名を挙げてみただけなのだがな・・・)
エクスデスとしては一発目で当たるとは思っていなかった。
おたおたとするギーシュに座るように言う。
「だがギーシュよ、 それ程思う相手ならば何故他の娘にまで手を出す?
一人では満足出来ないとでも言うか?」
「そ、そんなことは!」
「ならば私が言いたいことは分かるな?
モンモランシーにその正直な気持ちを伝えるがいい。
お前は今のままでいいかもしれないが、あの娘がどう思っているやらな。
それと、他の手を出した者たちに詫びを忘れないことだ」
(このままで続ければ、嫉妬の感情を芽生えさせる者も出てくるであろう。
そうなればまたいらぬ諍いに巻き込まれる者がでるやもしれんしな)
正論だ。
言い返すことなどまるで出来ず、その場に力なくへたり込んでしまった。
「僕は何をやっていたんだろう・・・」
ギーシュの様子にエクスデスは満足した。
これで問題は片付いたか。
高度があるので強い風を魔力で抑えていて、吹きつけてくる風はそよそよと心地よい。
(思ったより長居をしてしまったか)
エクスデスは立ち上がるとギーシュに手を差し出した。
「そろそろ下に待っている者がしびれを切らすだろう、戻るとしよう」
「ところでタバサ。
さっきから空を見上げてるみたいだけど何かあるの?」
「・・・・・・・」
タバサはエクスデスとギーシユがいなくなった後、しばらくしてから不意に空を見上げだしたのだ。
キュルケもつられて見てみるが青空と雲ばかりでなにも他にはないように見える。
「まぁ、この騒ぎから目を背けたい気持ちも分からないでもないけど・・・」
「来る」
「え」
何が来るのだろう。
タバサは視線を下ろし、立ち上がるとルイズとそれにしがみ付いているモンモランシーの所に近づいていく。
「そこは危険。 離れたほうがいい」
「これ以上何が起こるっての―」
やっとモンモランシーを引きはがしたルイズがタバサに向きなおった瞬間。
白い光と共にその場にエクスデスと、お姫様だっこにされているギーシュが現れた。
「今戻った」
「えっえええっ!」
いなくなったはずの二人が突然現れてキュルケは何がなんだか分からない。
他の生徒たちも一様にポカンとしている。
モンモランシーも何が起こったのかという顔をしていたがギーシュの姿を見てすぐさま駆け寄ってきた。
「ギーシュ!」
「モンモランシー!」
ギーシュもすぐさま駆け寄ろうとするが、足がどうにもおぼつかない。
「無事で良かった!」
「心配してくれていたのかい!?
ああ、僕は間違っていたよ!
君にはいろいろと謝らなくちゃならない」
もういつもの調子に戻ったようだ。
ギーシュはその場その場の適応が早いのかもしれないとエクスデスは思った。
「ギーシュ」
エクスデスは腰元の紫色の小さな球体を一つ取るとギーシュに渡した。
「これは?」
「これを水にでも溶かして飲むがいい、失われた魔力を少しは回復させるだろう。
あとは寝て休むがいい」
ギーシュの体を支えているモンモランシーがその球体をいぶかしげに見つめる。
「毒・・・とかじゃない?」
「それはない。 命を奪うなら二人だけの時にもう実行しているはず」
ギーシュがそれはないよと言う前に、タバサがそれを否定した。
「そういうことだ」
エクスデスもそれに合わせる。
「いろいろとすまなかった。 後日改めて謝罪させてもらうよ」
そういうとギーシュはモンモランシーに支えられながら学園のほうへと歩いて行き、
それを数人の生徒も追いかけていった。
見送ったエクスデスは隣にいるタバサにそれとなく話しかける。
「上空にいることに気づいていたか」
「・・・・・」
タバサは無言で小さく頷く。
「お前とも一度話がしたいのだが」
「私もあなたに聞きたいことがある」
「ではこのあとにで、もうっ!?」
エクスデスは膝の裏側に衝撃をうけて崩れそうになる、がなんとか堪えて後ろを振り返る。
そこには、
「あんたねぇ・・・・!
勝手にいなくなった挙句、戻って来たとたんにご主人様をぶっとばすとか・・・」
磁場転換に巻き込まれて吹き飛ばされて顔から地面に突っ込んだのだろう。
服は所々汚れ、顔には土が付いている。
髪の毛もぼさぼさだ。
青筋が額に浮いているようにも見える。
「待て!これには訳が!
「問 答 無 用!!!あんたには徹底的な調教が必要!」
「タバ・・・」
タバサにも説明をしてくれるよう求めようとしたが、当の本人は既にその場から離脱していた。
ルイズの杖がバチバチ音を立てて閃光を放った。
「ファ―――――――!!!」
爆発にエクスデスは直撃を受けて学園の方に飛んで行った。
「・・・・・・
一体なんだったのかしら今日は」
当事者達でもないのにキュルケはどっと疲れた気がした。
考えても仕方がないので、今日は早めに休もうと思うだけにした。
「はぁ〜〜〜〜〜〜良かった・・・本当に」
べちゃりとコルベールが崩れ落ちる。
オスマンも髭をなで下ろしてふうと息を吐く。
「まさか上空にいるとは思いませんでしたよ。
生徒の一人が空を見ていなかったら考えもしませんでしたね」
「約束を守って傷つけるような真似はせず、説教だけですませたようじゃ。
ミスタ・コルベール?
少し疑い過ぎたようじゃな、彼を」
「はい。
ミス・ヴァリエールに彼を信じろと言ったのに、わたしは疑ってしまいました。
・・・情けない限りです」
「現にあの娘と今のところはうまくやっとるようじゃしな」
「はい・・・・」
項垂れるコルベール。
唯でさえ冴えない顔がさらに暗くなっている。
「うむ、まぁそれでこの話は終わりじゃが・・・。
君は今回の彼の力はガンダールヴの物じゃと思うかね?」
「・・・正直分かりません。
ですが、彼がガンダールヴに関する知識を既に承知していてその力をふるっているとは思えないのです。いくらなんでも早すぎます。
代理行きます
それにあの慣れたような戦い方は、彼が昔から身につけていた実力のような気がします」
「同感じゃ」
「ガンダールヴは千人の軍隊をものともせずにうち破るとは聞いていますが・・・」
「今日のあれでも全く本気じゃなかろう。
もし本気を出したら千人、いや万の軍勢でも一捻りかもしれん」
元の実力でそれならば、それにガンダールヴの力が加わったら・・・
「ミスタ・コルベール。
この一件はワシが全責任を持って預かる。
他言無用じゃ。二人だけの秘密にする。
特に王室などにこの件がばれたら・・・」
「発覚すれば・・・」
「たちまち王室のボンクラどもが各国に宣戦布告をするかもしれん。
彼はおろか主である彼女、ミス・ヴェリエールも最前線送りになるじゃろう」
「はい。それはなんとしても避けなければならないことです!」
(彼に戦いを強要したり命令することをしたならば逆鱗に触れるかもしれない・・・!)
「うむ」
(彼とは一度ワシからも話をしておいたほうが良さそうじゃな)
オスマンは目を閉じた。
神の左手ガンダールヴ
勇猛果敢な神の盾
左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる
了
制限がかかりました。
どなたか代理をお願いします><
代理投下ありがとうございました。
お時間と御手間取らせましたが、これで終了です。
ご支援ありがとうございました。
エクスデスの人乙〜
随分と毒気が抜かれてるなぁw
タバサの勘が良すぎることが気になったが乙
聖樹と聞いたら超魔神英雄伝の人を思い出す
そういや向こうで龍神丸呼べるかな?
パレロチュパレロチュチュパレロ だっけ
ホロレチュチュパレロはグランゾートな
じゅっじゅっじゅ呪文ハートの引力ひきつけろ、ボクのことが好きになるように だっけ?
グランゾート懐かしす
293 :
Na-I-N:2009/07/04(土) 02:54:44 ID:HamGfFhH
「the Five Star Story」からダグラス・カイエン及びその他を召喚。
ってことで今細かなストーリー考えてるんだけど……
やっぱり駄目かな?キャラの強さ的に。
ジョジョと型月キャラ以外はスレ的には問題はありませんよ。
叶えてプリーズ今すぐプリーズ プリーズ プリーズ プリ〜〜〜〜〜ズ
ただしsageでお願いします
それと、キャラの強さなんてのは描写や展開次第で気にならなくなるモンだと思うぞ
俗に言うテンプレ展開って奴だと分からんがね
297 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 03:09:47 ID:HamGfFhH
>>296 わかりました。近日中にupしたいと思います。
>>297 来なくて良いよ
来ないで下さいお願いします
カイザーナックルのジェネラルを召喚したら面白そうじゃね?
「女性の身で決闘とは、感心しませんな 近頃の女性はやんちゃで困る」
「女性の身で怪盗退治とは、感心しませんな 近頃の女性はやんちゃで困る」
「女性の身で怪盗とは、感心しませんな 近頃の女性は…(ry)」
…こんな感じでw
ガンダム00のせっちゃんを召還しようと思ってるんですが、さすがにGNドライブと融合させてエヴォリュダーよろしくガンダム人間ってえのはまずいですかねえ
301 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 04:54:29 ID:/65LTis+
>>>ガンダム人間
そこは一つ、“MS少女”系で逝く所でしょう?ww
ageんな……。
>>286 ハルケギニア=ゼロの使い魔の物語の主な舞台
ハルキゲニア=古生代カンブリア紀前期-中期の海に生息していた動物
生き物の方を何か意味を込めて持ってきているなら問題ないが
勘違いでタイトルにつけているのなら間違いがただでさえ多いのに
さらに広がるので修正してくれ。
>>162 ダークドリームのモデルになった夢原のぞみは間違いなく日本人なはずなのに
サイトには彼女がちっとも日本人に見えないというw
問題なければ45分から投下します
進級試験にあたる使い魔召喚の儀式。学院の一年生であるルイズも当然それを受けなければならなかった。
順番は監督のコルベールが勝手に決めて、彼女は最後だった。
始まるまではクラスメイト達の嘲笑を虚勢で張り飛ばしていたが、時間が過ぎていくうちにゆっくりとだが、彼女の胸の中を、呼吸を阻害するような劣等感が苛み始めた。
嘲り、哀れみが多くなっているのではなく、減っている事が原因だった。
召喚、契約に成功したものたちは自分たちが呼んだものへの、これから一生を共に過ごしていく使い魔たちへと興味が移っている。もう、ルイズにいつもの罵倒を浴びせる事すらしなくなっていた。
それを見ていて、ルイズは、自分には出来ないかもしれないという不安に押しつぶされそうだった。
しかし、時は誰にも平等で、彼女にもその瞬間は訪れてきた。
監督のコルベールが言うままに、ルイズはやけに大きな心臓の鼓動を耳にしながらゆっくりとクラスメイト達と同じ場所に歩んだ。
草原の上、天を仰げば、暖かな光を注ぐ太陽が目にしみた。彼女にはそれすらも、自分を嘲るものであるように思えた。
「始めなさい」
低い声がルイズに命令した。彼女はしばし目を瞑り、深呼吸をした。
家柄、父、母、二人の姉、どれも優秀である。自分だけが、自分だけが、違う。メイジとして、生まれてきていない。そう思えるほどの、無能。失敗の二文字が彼女の頭をよぎる。
けれども、心の奥底で、あまりにも淡く、儚い、愚かな希望を抱いてもいる。何かとてつもない、この不安を、己を殺してしまいそうな劣等感を吹き飛ばしてくれるようなものが使い魔として出てくるんじゃないか、と。
ルイズは、極度の緊張状態でありながらも、コルベールに再度促される前に、呪文を唱えた。願いを込めて、自信を助けてくれるものが現れることを望んで。
そうして、出てきたのは、小さな小さな光だった。
ルイズは戸惑いながらそれを見つめていると、あることに気付いた。徐々に、だが、確実に質量を増していっているのだ。
やがて小さな太陽とも思えるほどの熱を発し始めていた。魔法を使うといつもは爆発なのだが、こんな現象は生まれて初めてだった。
ルイズはいつまでもこうしてはいられないと恐る恐る手を触れてみた。
その瞬間、大気を揺るがす轟音と、それに伴って衝撃破が発生し、彼女はぶっ飛ばされた。
草原の上をごろんごろんと転がり目が回ってしまったがそれでも持ち前の意地で顔を上げた。と、そこにはもはや光は無く、代わりに真っ黒な人間が倒れていた。
髪が黒かった。被っている帽子も黒かった。マントをつけているがそれも黒、ズボンも黒、靴も黒。黒ずくめの少年だった。
意識はあるようで、彼は手に持っていた白い木でできた棒を杖代わりにして立ち上がろうとしたが、よろよろと生まれたての子鹿のように震えている。
よくよく見れば、顔には新しい、深い切り傷があり、そこからだくだくと滝のように血液を流していた。マントにはどういうわけか焦げ跡が残ってもいた。まるで、敗走した兵士のようだ。
それでも目に宿る光は強く、射殺すような鋭い目つきで周囲を見回した。
そして最後に天を仰ぐと、またばったりと倒れてこう呟いた。
「ここは、どこ、だ」
少年の意識はそこで消えたのか、目を閉じてしまった。しんと静まり、この状況に誰も口が開かず、風だけがそよそよと変わらず吹いている。
一番に、正気に戻ったのは監督のコルベールだった。彼は急ぎその怪我をしている少年に駆け寄った。が、それを止める者がいた。
誰でもない。それは、少年の影に伏せていた、これまた真っ黒い猫だった。
その猫は毛を逆立て、その場に居るもの全員に向かって警戒心を露にして、どきそうになかった。
しかし、ぐいっと、彼の小さな体を抱き上げる者がいた。ルイズだった。
「先生! 早く!」
「わかりました! 治癒が出来るものたちも手伝いなさい!」
コルベールの一声で生徒の何人かが男のもとに向かった。猫はルイズの腕で暴れている。
爪で引っかき牙で齧りついたが彼女はその手を離さなかった。その間にコルベールたちは少年の呼吸、心拍を確かめて治癒の魔法を施した。
それで流れ続けていた血は止まったが、コルベールの顔は青いままだ。
「ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
「私は急ぎ、この彼を学院に連れて行きます。思った以上に危うい状態です。あなたはその猫をつれてあとで来てください!
他の方達も、学院へ戻ってください!」
コルベールはふわりと浮かび、空を飛んでいった。クラスメイト達も同じく、空を飛んでいく。
ルイズはこの基礎的な魔法も使えないので徒歩で彼らのあとを追っていった。
腕の中の猫が目と口を大きく開けてぽかんと間抜けな表情をしている事には気付いていなかった。
学院につくと、門前でコルベールがルイズを待ち構えていた。
その姿を発見すると、彼女は全力で走り出した。相当な距離を歩いている為に疲労はあったが、そんなものは関係なかった。
猫がぎゅうと絞められて暴れている事も気になっていなかった。
途中途中で何度か足を止めてしまいながらも、コルベールのもとにたどり着くと、すぐさまルイズはたずねた。
「あの、あの男の容態は、どうだったんですか!」
コルベールは微笑を浮かべて答えた。
「安心しなさい。命に別状はありません。今夜は難しいですが、数日中には意識を戻すでしょう」
「数日……そんな怪我をしていたんですか?」
「うん。身なりからして平民だろうが、どうもね。顔には斬られた傷があるが、衣服には明らかに魔法を受けた跡がある。それもなかなかに強力な。
それに、属性も多種多様だったから、相手は一人ではないんだろうね。これは驚きだよ。けど、彼は非常に頑丈な体をしている。鍛え方が尋常じゃ
ない。どれも命を落すようなものではなかった。ただ、気になる事はあったがね」
「気になる事?」
「ああ。けど、それはそのうちに、自分で気付いて、君が彼から教えてもらいなさい。これから先、君と彼はメイジと使い魔、一生の友となるんだから」
「……」
ルイズは、言葉を発さず、手元の猫に目を移した。
コルベールが声をかける。
「どうしたんだい?」
「いえ、その、やっぱりあの男の方なんですよね。私の使い魔は」
「そうだね。この猫は、彼に引っ付いてきた形だ。契約はこの猫としてはいけないよ」
「わかってます!」
ルイズは必要ない大声を出した。コルベールはやや驚いたが、すぐさま男が眠る部屋を教え、そこへ向かうように言った。
医務室、治療の為にか衣服を外された姿の男が眠るベッドに着くと、ルイズの腕から猫が飛び出した。
猫は男の横に座り、じろりと咎めるような視線をルイズに向けてきた。彼女はまるで自分の心が見透かされているような気がした。
コルベールに契約をしてはいけないよと言われた時、彼女の心はひどく痛んだ。
思いもしない事を言われたからじゃない。思っていた事を、かすかにでも思ってしまった事を言われたからだ。
この猫と契約すれば、家族たちに顔向けが出来る。飛びぬけていい使い魔だというわけではないが、普通だ。
落ちこぼれが普通になる事が出来るのだ。恐ろしく、飛びつきたくなってしまいそうだった、甘美なものだった。
けれども、けれどもそれは違う。メイジがどうとかではない。貴族としてでもない。ルイズとして、ちっぽけな彼女の矜持が許さなかった。
越えてはいけない一線なのだ、それは。
だから、耐える。奥歯をかみ締めて、涙をこぼしながらも、彼女は耐えていた。
しばらくそうしていると、とんとんと誰かが扉をノックした。ルイズは慌てて涙を拭って中へ入ることを了承した。
そうして、やってきたのはクラスメイトの一人だった。青い髪に眼鏡をかけた小さな少女だ。治癒を手伝ってくれた一人でもある。
彼女はちらりと、少年を見てからルイズに尋ねた。
「契約、どっちとするの?」
「……人間のほうよ」
「そう。なら、いい」
それだけ言って、少女は部屋を後にした。
ルイズはやはり、胸が痛んでいたが、それでも嘲りや咎めるようなものが含まれていなかったのでそんなに深く傷つく事はなかった。
もう少し経つと、またしてもノックがしたので、ルイズは中へ入るように言った。今度は先ほどの少女とは対照的な人物だった。
髪は燃えるように赤く、肌も真っ黒、体つきも出ているところは出ていてと、十分立派なものだった。ルイズはあからさまに嫌な顔をした。
「なによ、折角様子見に来てやったのにそんな顔しないでよ」
「うっさいわよ。で、何しに来たのよ」
「別に。ただ、あんたが呼んだのがどんなのか気になったのよ」
彼女、キュルケは鼻歌を唄いながら興味深そうに横たわりながらも学帽を被ったままの少年を眺める。
そして、実に自然な動きで身をかがめ、ぐうっと顔を近づけていく。
「なにしてるのよあんた!」
唇が触れ合う寸前でルイズが止めに入った。体格差をものともせずに羽交い絞めにして、無理矢理離した。
「惜しかったわ」
「惜しかったわじゃないわよ! あんた一体なにしてんのよ!」
「いやぁね、見たらわかるでしょ」
「わからいでか! そうじゃなくて、なんでそんな、キキ、キ、キスしようとしてんのよ!」
「だってえ、見なさいよ。彼。いい男じゃないの」
「ええ?」
ルイズはキュルケから目を離し、男を見た。
確かに、鋭く尖ったモミアゲが特徴的であったが、御伽噺にでてきそうなほどに端正な顔立ちをしていた。
この地域では珍しい黒い髪というのもあって、不思議な雰囲気をかもし出している。
呼吸音も静かであり、まるで人形のようでもあった。
「そういうわけで、させてもらうわよ」
「――んで、そうなるのよ!」
「いいじゃない。どうせあんたは先にやってるんだから」
「してないわよ!」
キュルケはあっさりと身を引き、ルイズを見下ろして言った。
「じゃあさっさとしなさいよ。いまなら眠ってるんだから、簡単でしょう?」
うっと、ルイズは即座に言葉を返せなかった。
キュルケのそれは正論。相手が眠っていようが起きていようが、どのみち使い魔にせざるを得ないのだ。この人間を。
起きて、体が治ってしまえば抵抗される可能性は大いにあるので、いまのうちにやっておかねばならない。
「あ、あんたの目の前でやることないじゃないのよ!」
「いいの? だって、そこのお邪魔さんをどうにかしないといけないじゃない」
キュルケは己の杖で黒猫を指した。
言葉が通じているわけではないだろうが、男を護るように二人を無言で威嚇している
「もしかしたらゼロだもの。猫に邪魔されて失敗するかもしれないものね」
「……わかったわよ! やってやるわよ! したらいいんでしょうが!」
ルイズは憤然としながらも男の枕元に近づいた。猫が身を屈めて、飛び出そうとするが、その身がふわりと宙に浮かび上がった。
猫は全身をばたばたとさせるが落ちてくる気配はない。キュルケが浮遊の魔法をかけたのだ。
すうっと深く息を吸い、男の寝顔をルイズは改めて見下ろした。けれどもさっきのように注視はしない。
できるわけがない。これでも乙女だ。恥じも照れもある。眠っている男の唇を奪うなんぞ、とてもではないが考えられない。
だが、これは儀式。儀式である。だからノーカウントだ。
誰にでもなく自分に言い訳して、ルイズは呪文を詠唱し、静かに、心の中で言い訳をして、接吻をした。
相手の目を見る必要がなかったのは恩の字である。
時が止まったかのように静かな時間。ルイズは顔を上げて、袖で唇を拭った。
「コントラクト・サーヴァントは一回で成功。よかったわね」
「どういたしまし……」
『なんだその、こんとらくと・さーばんとというのは』
ルイズはどこからか低い声が聴こえたので周囲に視線を向けた。キュルケ以外に誰もいない。
少年はまだ目覚めてもいない。
「ツェルプストー、なにかいった?」
「なにを?」
どうやら違うらしい。そもそも契約、コントラクト・サーヴァントについて彼女が尋ねてくるわけがないので当然だった。
では、一体誰なのか。この場にいるのは自分とキュルケと少年、だけである。
『しかし、いつになったら下ろしてくれるのだ? 落ち着かんぞ』
今度ははっきりと聴こえた。低い、男のものだ。
方向もわかったのでそちらに目をやると、ぷかぷかと浮いている黒猫の姿があった。
「さっき喋ったのって、もしかしてあなたなの?」
『……ん、なんだ。我か? 我に言っているのか?』
また声がした。やはり、その黒猫から発せられていた。
「そう、そうよ。あなたよ。あなた、喋れたの?」
『本来ならば、デビルサマナー以外には我の言葉は理解できぬはずだが、こっちの女はわかっているのか?』
「ツェルプストー、あなた、この猫の言葉はわかる?」
その質問に、キュルケは首を横に振った。
「なによ。あなた、わかるようになったの?」
「そうなのよ。なんで? なんでかしら」
『考えるのはいいのだが、早く下ろしてくれるように頼んでくれんか』
「……ツェルプストー、下ろしてやって」
キュルケはあっさり魔法を解いてやった。急に重力が戻ったので猫は驚いていたが、しっかりと着地して見せた。
尻尾を揺らしながら猫はルイズの目の前にまでやってくる。
『質問、してもいいな』
一旦キュルケに外へ出てもらい、二人と一匹だけになってから話を始めた。
『まずは名乗っておこう。我はゴウトだ』
「ゴウトね。あなた、あの男のなに? 使い魔?」
『いいや、違う。我はあやつのお目付け役だ。もっとも、必要だったのかどうかはともかくな。というかな、まずは私に質問させろ』
「ぐ……わかったわよ」
ルイズはおとなしく了解した。これは彼女にとって珍しい事であった。
ルイズは自身が位が高い貴族だという自覚を持っている。そのために、プライドだけは異様に高い。
そのために、頻繁に同じこの学院のものたちと諍いを起こす事がある。
仮に、見ず知らずのものにこのような態度を取られたら、自身がどこの誰であるかを大きな声で宣言し、無理矢理にでも頭を下げさせるだろう。
しかし、この目の前の黒猫、ゴウトからは不思議なものを感じている。ただの猫、見掛けはそうであろうが、とてもそれだけとは思えない。
それに、喋る猫がともにいることから、相手はもしかしたら、そう、メイジかもしれないのだ。杖は持っていないのだが。
『とりあえず、ここはどこだ。何故我らはここにいる』
ルイズはこの場所、魔法学院だということを教え、トリステインという国についても教えてやった。
サモン・サーヴァントという魔法で呼び出し、先ほどの接吻で契約したということも。
ゴウトは頭を抱えているようで、いくらなんでもそんなむちゃくちゃなものがあるかと言っていた。
魔法、それについても質問されるだけの事は教えてやった。四系統に、どうして魔法などというものを使えるようになっているのか。
始祖ブリミル、かいつまんだ歴史も話した。
『まあ、こちらとしてもちょうどよい機会だったからな。かまわん。ライドウ、そこな少年には我が説明する。一応、命の恩人にはかわりないのだから感謝もしよう』
「そう。じゃあ、私の使い魔になるってのには納得してくれるのね」
『さてな。できるかどうかはわからん。ルイズよ、お目付け役がいるということは、wれらの立場が少々特殊なものであるという事はわかるであろう』
「な、なによ。帰らせろっていうの? 言っておくけど、そんな魔法ないからね」
『いいや、帰るつもりはない。まだな」
「まだ? じゃあ結局、そのうち帰るつもりなんじゃない」
『恐ろしく長くなり、もしかしたら歴史に残るような大事になるかもしれん。うぬの使い魔とやらの役目は果たせるであろう』
いまいち、信じきる事ができないルイズであったが深く追求するのはやめておいた。
とりあえず話はここらへんにしておいてから、この試験の監督であったコルベールにこのことを伝えに向かおうと部屋の扉を開ける。
と、目の前に三人の男女が立っていた。
教員であるコルベール、外へ出てからすぐに彼を呼びに行っていたのであろうキュルケ、それと、彼女よりも先に様子を見に来ていた青髪の少女である。
「なにをしてるんですか、先生……」
「あーやー、これはだね。ミス・ヴァリエールが私の見ていないところで契約したとミス・ツェルプストーに教えられて飛んできたら、なにやら黒
猫と話し込んでいたので、その内容が気になっていたんだよ」
「私は、まあ、おもしろいものでも聞けないかしらと思ってね」
コルベールとキュルケは素直に口を割った。
別段立ち聞きされていても困らない、自分しか人の言葉は喋っていなかったので、内容はほとんどわからなかっただろうからどうでもいい。
そして、もう一人、
「それで、えーと、あなた」
「タバサ」
「タバサはなんでまたここにいるのよ」
「人間の使い魔が気になった」
カチンと来た。この少女は立派な風竜を呼んでいたのだ。
「なによ。わざわざからかいに来たって言うの?」
「違う。どんなルーンが刻まれるのか、どこに刻まれるのか、それが気になった。人間の使い魔は、記録に残っていない」
「ふむ。それもそうですね。いやいや、ミス・タバサは勉強熱心なことです」
コルベールは嬉しそうに何度も頷いた。ルイズとしては、やはり馬鹿にされているだけにしか思えなかったが。
入り口で話していると、ゴウトがやってきて、ルイズの肩に飛び乗り、話しかけてきた。
『聞いてもらえぬか。この男がつけていたマント、及び道具はどこにある』
「わかったわよ。先生、えと、この猫、ゴウトが、私の使い魔が身に着けていた道具がどこにあるのかって言ってます」
「ああ。あれですか。いや、どうもマジックアイテムらしきものもありましたので、私の部屋で厳重に保管してありますよ。
無造作においておくわけにもいきませんからね」
『服はともかく他の道具は大事なものだ。返してもらってくれ』
「先生、その他の道具はとても大事らしいので、返してくれてかまいませんか。いざとなったら私が保管しておきます」
「そうですね。かまいませんよ。そうですね、明日にでも渡します」
コルベールは一旦その場を離れた、だが、キュルケとタバサは帰らない。
「あんたたち、戻りなさいよ。授業があるでしょ」
「別に一度サボった程度でどうもしないわよ。でもまあ、残っていても仕方ないのは確かね。私の使い魔もお披露目してあげようかと思ったけど、
またの機会にしてあげるわ。タバサはどうするの?」
「私は、見てみたい。使い魔を」
そういって、じっと彼女はルイズを見つめる。断る理由もなく、会話もしたことがないので嫌いだとかの感情もないので了承した。
二度目なのに何故だろうかと疑問には思ったが。
タバサは少年に近づくと、なぜかこれだけは取られなかった帽子をややずらして額を見る。そこにはなにもない。
次に、毛布を捲り上げて、彼の右手を持ち上げる。その手の甲に、文字が刻まれていた。
「そんなに気になるの? 人間の使い魔が」
「いや、もういい。わかった」
タバサは毛布を直し、ルイズに頭を下げて部屋を出て行った。
『なんだったんだ? あれは』
「わかんないわよ」
以上で投下は終わりです。
久しぶりすぎて一行何文字ぐらいで切ったらいいかわかんなくなってました。
クロス元は葛葉ライドウで、超力やアバドン王の事件を解決したすぐあとってわけじゃあありません。
それではどなたか代理お願いします。
代理の方乙でした。
しかしライドウと人修羅は人気有るね…キョウジ好きの自分ちょっと嫉妬。
なんでこの時期にタバサを出した?
ムハンマド・イブン・アブドゥッラーフ召還→ハルケギニア一夫多妻へ、
炉利が尊ばれる社会に
そいやメシアっつーかヒーローや他のデビルサマナーやたまきちゃん呼ばれたことはないな
ハザマとかは・・・どうなんだろう
彼にしてみればルイズなんかまだ恵まれてる部類だろうし、ある程度共感しても同情するほどじゃないだろうな・・・
ロウヒーローはどう考えたって教皇に召喚されるな
あ、いっそのこと相馬小次郎でも・・・
個人的にはデビルサバイバーのアツロウとか好きなんだけどなぁ。……主人公はデフォルトネームが無いし、ユズは胸の存在感でルイズにストレスがかかるから除外の方向で。
ピアスの少年を誰も書いていない
寂しいわ
っていうか、遅れましたが聖樹さん乙
エクスデスの成り立ちをすっかり忘れてしまいそうですなぁ
てっきりデジョンかと思ったら磁場転換でしたか
ディシディアだと隙がでかくてでかくて・・・
召喚時のインパクトで想起したら
ゴトウ一等陸佐を想像してみた
土煙が晴れた瞬間、あの姿勢で爆心地に現れるゴトウ・・・
「平民だ!ルイズが下着姿の平民を召喚したぞ!!」
323 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:43:56 ID:gbYQ1Pvp
休日になりましたので投下しますー
ゼロ大師・第3話です
324 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:44:38 ID:gbYQ1Pvp
「……」
聞仲は豪奢な椅子に座りながら、思考に耽っていた。
この世界に呼ばれてから、これで一日。
たった一日だというのに、新しい環境で、久々に人間と過ごした時間はかなり濃密だった。
まるで数十年前に戻ったかのような感覚、かつて若き紂王に師事して居た時の。
彼の主となったのは、小さき体にコンプレックスを閉じ込めたような少女。
昨日の申公豹との話を聞いていて感じ取った事は、彼女からひしひしと伝わってきた。
おそらくは努力が実らず苦悩しているのだろうと。
優れた才覚を持っていても、それが発揮されない者というのは非常に多い。
仙人でも、人間でもそれは同じである。
軍師という立場、仙人の永遠の時間を持っていた聞仲は、そうした人々を知る機会を十分持っていた。
場所のせいで発揮できない者、誰かの為に発揮できない者、発揮する機会を与えられない者。
自分も通天教主が来なければ、あそこで体が腐り落ちるまで鍛錬をしていたのかもしれない。
もしくは将軍として殷王家に仕え、朱氏を守っていたのかもしれない。
幾多の分岐の中選び取った今の自分だが、それでも聞仲は仙人となった事を悔やんだり、恨んだりすることはなかった。
殷王家代々に仕え、幾人もの王の誕生と最期に立ち会う事が出来た、その経験。
そして、最高の友人である黄飛虎との出会い。
「分岐……か」
自分が通天教主と出会ったように、おそらく彼女も運命と出会う日がやってくる。
一気に疲れが出たのか、ベッドですやすやと眠る彼女を見ながら思った。
一人の人間が成長するのに費やす時間は未知数である。
「……まあ、この任務もそれほど早く終わるわけもないがな」
聞仲は懐かしい感覚を感じながら、目を閉じた。
◆
325 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:45:20 ID:gbYQ1Pvp
次の日。
朝陽が差し込み、部屋の中がわかる程には明るくなっている。
そこに立つ長身の男が一人。
「朝です」
「……」
返事はない。
「朝です」
「……」
返事はない。
しかし聞仲の呼び声は絶えない。
「何時だと思っているのですか!もう使用人達も起き出して働いていますぞ!」
「……んー」
「嘆かわしい……支度と、睡眠と、どっちが大事なのですか!」
ルイズはもぞもぞと動きながら布団にくるまり、薄ぼんやりと目を開ける。
そこに立つ聞仲の姿を捉えたものの、頭が重くて瞼が落ちた。
「…………すいみん」
聞仲の第三の目が、くわっと見開かれる。
同時に椅子が吹っ飛び、カーテンは桟から外れんばかりに煽られ、家具ががたがたと音を鳴らす。
これで宝貝を使ったら、おそらくは寮ごと吹っ飛ぶことだろう。気合いである。
頭の隅で浮かんでいたビジョンが現実となり、ルイズは跳ね起き……毛布に潜った。
「ひいっ! こ、殺されるぅぅぅっ!!」
「どうしたのルイズ!……って、部屋の中ぐちゃぐちゃじゃない」
扉が吹っ飛んで開きっぱなしになった入り口から、一人の女性が顔を覗かせた。
余程焦って出てきたのか寝間着の上から布団を羽織っただけのような恰好をしている。
326 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:46:22 ID:XeEpSFjA
「貴方……ルイズの使い魔」
「……」
聞仲はその少女を記憶の中から捜し出す。
召喚時、周りを取り囲んだ人間達の中で目立っていた少女だ。
目立っていたというのは彼女の髪が燃えるような赤をしていた事。
そしてその横にいた同じく目立つ青い髪色の少女も相まって際立って見えたのだ。
当学院の正常な男子生徒なら、「もっと見るべき場所があるんじゃないの」と憤慨するところだが、聞仲は仙人の上に生真面目な性格である。
特徴の一つとして捉えていたかもしれないが、別段取り上げたりもしない。
「ルイズに何をしたの?」
「起きない上に寝所から出ないと言うから、叱ろうとしたまでだ」
「まだ叱ってないのに、これ、ね……」
ルイズはベッドに丸くなってガタガタしている。
赤い隣人はそれを眺めた後で、悪ふざけを思いついたように笑みを浮かべると聞仲に向き直った。
「ヴァリエールは朝は弱いから、勘弁してあげてちょうだい。使い魔さん」
「なんと情けない……これこそ惰眠というものです」
「ま、まあ、その内起き出してくるんじゃないかしら……。 それで、貴方のお名前は?」
「聞仲と申します」
この世界では、名前と家名が非常に長い。
その為どちらかを呼ぶのが標準的であるようだ。
聞仲自身どちらかを名乗る機会もあまりなかった為、フルネームで通す事にしている。
「ブン・チュウ……お名前はブン、と言う事ですか?」
「いや、聞は家名。聞大師とも呼ばれますが、聞仲で結構」
「聞仲ね。私は」
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。私の家の敵よ」
いつのまにか戸口に立っていたルイズが口を挟んだ。
何故かまだ枕が未練がましく握られ、まだ寝たいという意志がひしひしと伝わって来る。
「あら、ヴァリエール。もう起きたの?もう少しお話させてくれてもよかったのに」
「いくらあんたが男好きだからって、朝から盛ってるんじゃないわよ」
「言うじゃない。ガタガタ震えてたくせに」
「あれは……仕方ないのよ。起きるくらいなら寝たいじゃない」
327 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:47:23 ID:XeEpSFjA
「「ふぅ……」」 二人同時に溜め息を漏らす。
聞仲は甲斐甲斐しくも家具を直しに部屋の中へ入っていった。
今はデカイ甲冑を外している為、いやにテキパキと動いているように見える。
それを見ながらキュルケはルイズに囁いた。
「それにしても貴方の使い魔、マントと仮面を外せばすごい美男よね」
「そう? 意識した事もないわ……っていうか仮面はずしてないわよずっと」
「え、だって一緒に寝たんでしょ? 現に朝に同じ部屋にいたわけで」
「ちょっと、語弊のある言い方しないでよ!」
「男と女が同じ部屋にいればする事なんてそんなに無いわ」
朝からくねくねするキュルケに対し、眠気が尾を引いているルイズは冷ややかな目でそれを見る。
「……発情してるわね、ツェルプストー」
「なによ。そういうあなたは浮いた噂の一つでも無いのかしら?」
「……あれが使い魔になった時点で、まともに付き合いとかしようと思う人なんているのかしら」
「なに、堅物なの? それとも周りが萎縮して寄ってこない的な意味かしら」
「……両方よ」
「さあ、主人よ。部屋は片付いた。着替えはどこだ」
「……」
「先に扉を直しなさい!この馬鹿!」
爆風にむせぶキュルケを横目に、聞仲は平然としていた。
まずは貴族としての所作から学ばせる必要があるのかもしれない……と感じながら。
ちなみにこの後「貴族なのにはしたない」と、二人は説教を食らった。
◆
新仙人界。
新しい本拠地が出来た事で使わなくなった崑崙山Uは改造され、下半分は太乙のラボと化していた。
上半分は巨大な吹き抜け構造になった会議室となっている。
中心にはこれまた巨大な机が据えられており、今は十数人の仙道が席を埋めていた。
空中に映し出された映像には、聞仲に付いている宝貝からの情報が並んで居る。
「聞仲は普通に使い魔をやっているようですよ」
「そうじゃのう……あれも長年王を育ててきたわけじゃし。家庭教師根性じゃな」
「元始。悠長にしている場合か?」
今にも机を叩きそうなその人物は、かつての金鰲の教主、通天教主である。
328 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:48:12 ID:gbYQ1Pvp
「そうは言っても、通天教主。彼等をこちらへ送り帰す方法を判明させなければ」
「まあまあ太乙よ。確かに早急に手を打つべきではある……しかし、不確定な事が多すぎるのじゃ」
「たしかにそうですが……世界軸自体はもうすぐ固定できますよ」
「こちらから聞仲という神を一人送ったのだ。もう少し悠長に待てば良い」
「しかし燃燈師兄。これ以上消える者が増えれば……」
「神隠し騒ぎは落ち着いている。人間界でも特に何もないようだし、しばらく暇なのだ」
「だからしばらくはいいだろう、と?」
「容認する形ではないが、しばらくはいいじゃろうとも思うがのう」
「元始まで……」
「正直な話、神も暇なんだ! 魂魄体じゃなくなったから今はこうして筋トレしてるけどね!」
「……確かにな」
「……!!…げーんーしーてーんそーんさまぁぁぁあああああああああ!!!!」
直上から飛び込んできたのは、スープ-に乗った武吉だった。
もちろん数キロ先で聞こえそうな大声を出していたのも武吉である。
「元始天尊様、大変です! 烏文化が暴れ出しました!」
「結局普賢の説得も無駄じゃったか……」
「余裕ぶってる場合じゃないッス! 神界の西地区が壊れるッス!」
「……ここはお開きじゃのう」
「仕方あるまい。定期的に情報が聞けるだけまだ救いがあるというものだ」
「じゃあ僕はモニターに戻るよ」
円状の廊下からバルコニーへ出た天化は煙草を一本取りだし、火を付けた。
口から吐かれた白い煙は、穏やかな風に流されてやがて消えていく。
それと同時に、近くででかい炎が上がっているのが見えた。
「……それにしても平和さ」
また山が吹っ飛んでいるのが見える。
おそらくはナタクあたりだろう。あの浮いている赤いのは間違いなく宝貝人間だ。
神がこちらへ来る機会はあまり無い為、わかりやすい形で力を示されるとどうしても腕が疼く。
天化は手すりを飛び越え、久々に腕を振るおうと走り出した。
◆
学院内を見て回るという事で、早朝から二人は外に出ていた。
あちこち指し示しながら、ルイズは未だに欠伸をしている。
「……ふぁ……まだ眠いわ」
「寝過ぎです」
329 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:48:55 ID:XeEpSFjA
「あんなに早く起こされて寝過ぎとか、あんたは睡眠時間無いの?」
「頭を回転させるには早く起きる必要があります」
「だからって……こんな早くに起きたって誰も起きてないわよ」
「あれを見なさい。使用人はしっかりと起きて働いています」
目の先ではとてててと走っていくメイドの姿があった。
「平民なんだから仕方ないじゃない……」
「その考え方がまず問題です。貴族とて従えるのは平民。ならばその平民を考えないでどうします」
「ム……」
「彼等は彼等で、自分の務めを果たしているのです。軽んじてはいけません。」
「そ、そうね」
「いいですか、人の上に立つ者はそれなりのプライドというものがですね」
「そ、そうよね、大事よね!」
「真面目に聞いているのですか!? 立派な貴族になりたいなら」
「……って、ち、近いのよ聞仲!! メイドが見てるでしょ!」
「メイド……奉公人の事か」
「そうよ! と、とりあえず離れるか怖い顔やめるかして!」
「あら?」
まだ日が昇るか昇らないかという時間だというのに、メイド以外の人間が起き出しているとは。
しかもそれは女生徒で、横に大柄な男を連れている。
こんな取り合わせは学内で噂になっているヴァリエール嬢と使い魔しかいない。
「お、おはようございます……」
説教中だとはいえ、挨拶の一つも無しに通り過ぎてしまっては、何を言われるかわからない。
シエスタはぺこりと頭を下げて過ぎようとする―――が。
「彼女達はこんな朝早く起き出して仕事に従事しているのです。それをなんですか眠い眠い……」
「それが仕事なんだから仕方ないじゃない」
「重要なのは姿勢です。貴族の役目が国防や統治ならば、それを担う者として自覚を持って」
「え、ちょっと」
「他の貴族に演説ぶちかましなさいよ……私はわかったってば」
「自分の主人が歴とした態度をしていなければ示しがつかないので」
「あのー……」
330 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:49:55 ID:fqewvq2d
「そんな事いったって、戦争とかもないし実際力を見せる機会なんて無いわよ」
「確かに、それが一番ですが。そうなればあとは統治力を見せるしかありません」
「……すみません!」
「む、なによメイド」
「ああ、失礼した。通れなかったか」
「は、はい。すみません……」
「! そうよ、このメイドに案内してもらえばいいじゃない」
「駄目です」
「なんでよ」
「何の為の早起きですか。大体、働いている最中の奉公人を捕まえて仕事を押しつけるなど」
「わ、わかったから怖い顔しないで」
「まあ、何はともあれ聞仲は他の使い魔と違って人間なわけだから、食事が必要よね」
「仙道に食事はあまり必要ない。なまぐさも食えんしな」
「なまぐさって、肉とか魚とか? 菜食主義者なのね」
「そうだ。そこのメイド……名前は」
「シエスタですが……」
「ではシエスタ。そういった食事を少量でいい、用意しては貰えないだろうか」
「大丈夫だと思います。賄いも一気に作っちゃうので数は足りますし」
「じゃあよろしく。食べたら授業だから、その辺で待っていてね」
と、まあそうやって別れたわけだが。
ルイズは隣に座っていた二人の女生徒をみてげっと声をあげた。
「なによヴァリエール。嫌いな物でも入ってたのかしら?」
「嫌いな物なら目の前にいるわよ」
「……」モグモグ
「そういえば使い魔はどうしたのよ?」
「……裏で食べてるわ。さすがに目立つから、メイドに頼んで」
「……」モグモグ
タバサは黙々と食べていたが、隣の二人の話が使い魔の話になって少しだけ視線がそちらに傾いていた。
ゼロのルイズの使い魔は一体何者なのか―――学院の生徒達の中でもその話は一番人気だった。
「それにしても凛々しくて素敵だったわ」
「……朝から発情期? 忙しいわねツェルプストー」
「何よ。この身を焦がすような感覚が分からないの?」
「……まあいいわ。むしろいつもと変わらないわね」
「いつになく大人しい……そういえば朝弱いのね」
「……」モグモグ
331 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:50:41 ID:fqewvq2d
「早朝にたたき起こされたらそうなるわよ」
「ま、いいけどね。そろそろ行くわよタバサ。何皿食べてるの」
「……わかった」
タバサという少女、体の割には大量の料理を平らげていた。
ちなみにこれはまだ朝飯の話である。
朝からこの食欲、これが料理長であるマルトーの対抗意識を十分に生み出しているのだが、特に関係ないので省略する。
一方、聞仲は。
「わざわざすまなかった」
「いえ、別にいいんですよ。配膳から片付けの間の時間でしたし」
シエスタに用意してもらった食事を食べ、主人を待ちに向かう所だった。
仙人は不老不死である上、燃費が非常に良いので菜食で少量でも十分ことたりる。
用意してくれた本人にはそれを若干ぼやかして伝えてある。
「では、主人の所にもどるとしよう」
「はい。また何かあったらお申し付けください」
「……やけにおっかねえ客だったな、シエスタ」
「そうですか? 怒ってる時は怖いらしいですけど」
「なんというか、纏ってるオーラというか……」
後に残ったシエスタと様子を見に来たマルトーは、聞仲の背中を見ながら話していた。
「まあいいか。あんくらいの量ならいつでも用意できるしな」
「そう、ですね」
「さてシエスタ、そろそろ生徒が掃け始めるころだ。片付けに入るぞ」
「はいっ」
◆
ちなみにその後の授業でルイズをからかう命知らずに対して聞仲が説教を始めようとしたところを
ルイズが静止しようとして揉めているところを運悪くも担当教師に発見され魔法をやるハメになり
教壇から半径10mを爆破しかけたところを聞仲にブロックされて何とか一命を取り留めたりした。
それによって命知らず=マルコリヌが態度を改めたり聞仲が一転して英雄視されたりしたのだが、
長くなるのでここで報告しておくに留める。
332 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 10:51:56 ID:fqewvq2d
今回はここまでです。
>305
それは原作の違いなんじゃ…
サイトがアタシんちのみかん見たら「こんな頭身の日本人いねーよ!」ってなるだろw
>318
左手 → 人修羅
右手 → ザイン
憚る者 → ルイ・サイファー
頭 → アリス(赤・黒叔父さん付き)
でハルケギニア終了…
>>332 GJ!しかしルイズのママンと聞仲は少し似てますな育てる対象への愛情と厳しさとかw
>若き紂王に師事して居た時
これだと、「聞仲が紂王に教えを請うてた」って意味になっちゃいますよ。
若き紂王を教導していた頃 に訂正された方がよろしいかと。
337 :
ゼロ大師:2009/07/04(土) 12:10:39 ID:XeEpSFjA
太子乙!
久々に色々来る日で嬉しいっすね
>烏文化
確か頭に花寄生してた奴でしたっけ・・・
再生したらまた開花させなきゃならんのですな・・・
>>334 そこまで極端にならんでも・・・w
左手:羅喉or神取(罰)
右手:ヒトラー
頭 :時間城伯爵
憚る:偽橿原or偽タっちゃん
一人呼ばれるだけで十分オワタ展開に!! なーんて更に極端化してみる
旧Uのダークヒーローなんて呼んだらどんな目で見られるだろう
と、考えてついでにLIVE A LIVE原始編からざき召喚したら更にどうなるだろうと思った
流石にキュルケでもアレに手をつけ・・・るだろうか
一応かなりのイケメン部類ではあるが
>338
女子生徒並びにロングビル女史への捕食フラグが立ちました。
使い魔の失踪する事件が多発しています。
敵としてメタル・マミーとかグレートマザーとか出てくるんですねわかります
とはいえ母親キャラって烈風ママンとオルレアン夫人くらいしかおらんのだけどな
メガテンといえば、少し前のレスに相馬小次郎の名前があったな・・・
マイナーコミックの主人公が出てくるとは。
>>341 それも私だ
送信した後でオールド・オスマンがロングビルとシュヴルーズと三身合体中にレオナルドにされる光景が脳内再生されましたが
即ゴミ箱にポイしました
僕の名はエイジ、トリステインは狙われている
>>343 ラストはルイズとのキスで締めですね・・・ん?アニメ一期も一緒か。
侍の使い魔帰ってこないかなー。
あのフリーダムな銀さんならそのうち杉田の歌も歌いそうだ。ラ・ロシェールの酒場辺りで「どんだけ!巨乳の天使」を、タバサの合いの手入りで。
>>343 火の時代の粛清装置が動き始めているんですねわかります
と、TRPGリプレイネタを振ってみる。こっちのエイジは現在所在不明だから好き勝手に扱えるな
太師の人乙。聞仲は好きなキャラなんで今後も期待。
ルイズにはこういう保護者的な使い魔が抜群に相性がいいと思うのは俺だけか?
あと、聞仲の口調がコロコロ変わるのが気になったんだが・・・全部喋ってるの聞仲だよね??
>>345 想像して見た・・・・カオスww
もしくは、キャプ翼のOPの方とか
太師乙です。自分も聞仲好き^^
ココで召喚された事あるのって、太公望、聞仲、超公明、天化(変則)
の四人ですっけ?
>>341 それより更にマイナーな部分融合召還者なダンテとか……
塚本新ターンと申したか。
ソウルハッカーズの主人公は公式で逆行キャラなんだぜw
逆行したって未来は大して変えられないけどなww
スープーで思いだしたけど、ポルシェでナンパする人もいるな
太上老君も小ネタで来た
一瞬スプーに見えた。
ハルケギニアに悪魔が・・・
スープーってはいだしょうこの化物だっけ?
違うよ。全然違うよ。
じゃあ奴隷化させられた日本人か?
あれとゼロ魔の同人はアンチを生み出す要因でしかないが
>358
それヤプー
あと蛸壺屋はいつもなんなのだから放置するよろし
○×スレ見てたら、鋼鉄の膝枕を召喚すると言うのが浮かんだ。
多分、何の事やらさっぱりな人ばかりだろう。流石に。
>>360 目の前に置いてあったドロッセルお嬢様を見て、ゲデヒトニスの膝枕という発想になった
ビバップ号を召喚したら
誰も操縦法を知らないから置物にしかなりません
>>360 はて、その単語からシャドウランリプレイを思い出したがそれだけだ
>>359 昔コミックボンボンで連載してたような
なんか粉みたいなのを液体に溶かして飲んだら変身してた
ポドールイ伯の城の地下で聖杯を守っている死人ゴケの・・・
ルイズの使い魔はマゾじゃなきゃ勤まらないということで、ガチマゾのカッキー組長召喚。
垣原「待っていた。オマエのような変態(ツンデレ)を!」
でなきゃマゾにしてサドな殺人サンタクロースのアルバート・フィッシュでも召喚するしかない。
カウボーイビバップ
最近の若いもんは沼正三も知らんらしい。
>>368 >アルバート・フィッシュでも召喚するしかない。
ルイズ逃げてえええええええええええええ
渋いハゲのおっさん、ジェットブラックを召喚
鋼鉄ジーグ召喚
頭で戦うしかないのか…
サイボーグ状態でも十分強いけど、悪党っぽいしなぁw
七英雄ラスボスVerを召喚して阿鼻叫喚の地獄絵図
>>374 サイボーグだから宙単体でもそれなりに強い。「鋼鉄神」仕様なら宇宙も問題無し。
ハルケ各地に存在する、鋼鉄の魔神の腕脚が………とかの設定でボディ用意すりゃ良いんじゃね?
青銅のギーシュめ!死ねぇ!
エスカフローネとバァンを召喚
ジーグが本気になれば、体長差が数百倍の敵でもサバ折りで倒せる!!
>364
良かった、一人でもわかる人がいてくれて……
殺がこの世界に来たら、まず契約の時点でびっくりしてルイズを突き飛ばして……
ま、今書いているのはシャドウランじゃないけどね。
>>382 宇宙怪獣をサバ折りするジーグさんマジパネェ
宇宙怪獣が一匹でも呼ばれたら終わりだな。そいつを呼び水に次々とワープアウトしてくる。
>>386 たしか3分あれば火星から月まで行けるんだっけ
トップ(初代)は戦闘力が惑星破壊できて当たり前、雑魚ロボットも出力は太陽並が当たり前な世界だからなあ………
グレートアトラクタ―の意思で宇宙進出した地球人類を襲ってるだけなので
何の関係もない星系にやってくるような事は無さそうだが
進路上にある恒星は巣になるんじゃね?
後は、召喚の扉とか世界扉からヴァニシングウエーブが検出されたらアウトだし。
シャドウランかぁ、モノフィラメントウィップ所持のフィジカルアデプト作って中ニ病ごっこしたのもいい思い出
>>386 曾祖母の遺言に従い、タルブに鎮座する【鋼鉄の巨神】を起動させるシエスタとジェシカ。
しかし鋼の精神と肉体を持たぬ彼女達では、必死の抵抗も虚しく兵隊級の数に追いやられることになる。
暗雲が立ち込めるハルケギニア上空。二つの月が重なるその時、機体に遺された曾祖母のメッセージが……!
【トップを狙え!外伝〜二人の思いが重なる時〜】
ブリミル暦6242年ウルの月上映予定!
ロジャー「出来れば話し合いで穏便に済ませたかったのだが
決闘を申し込まれた上レディを泣かせた以上は仕方がない
ビッグオ−、ショウターイム!」
21:40ころから 第3話投下させていただきます。
よろしいでしょうか?
Misson 03「不可知決闘域」(前編)
僕は、薔薇だ。
薔薇を見る女性は 微笑んでいる。 そうでない娘にも 微笑ませる魔力がある。
僕も そうなりたい。 なって見せる。 ならなくちゃ いけない。
幼い日に 僕の尊敬する祖父は、教えてくれた。
「全ての民を愛せよ。
『博愛』こそが 武人の根幹である。」と。
だから 僕は誓った。
「全ての女性を愛する。
全ての女性に 笑顔を!」と。
だから 僕は、薔薇になろうと決めた。
僕は ギーシュ。ギーシュ・ド・グラモン。
トリステイン魔法学院2年生。武門の誉れ高き グラモン家の四男だ。
残念ながら、今の僕には 父や兄程の『武の力』は無い。
それは まだ本格的な訓練を受けていないからだ。
後期からの選択授業で 武術訓練を受ければ 僕だって…
それに、魔法技術だったら かなりの所まで迫っていると思う。
兄さんの巨大ゴーレムとは方向性が違うけど、僕は 複数の等身大青銅ゴーレムを同時に作成して操作することが出来る。 ドッ
トメイジの段階でこれが出来たのは 国中でも そう多くないはす。
先生方も「将来有望」と 太鼓判を押してくれた。
加えて 僕は顔もイイ。
『世界一』 なんて戯言を吐く気は無いが、『十人並み』と言えば それも嘘になる。
始祖は 僕に二物も三物も与えてくださった。ならば 僕はそれに応えなければならない。
家柄・才能・美形。これだけ揃った男を、女性が放って置ける訳が無い。
薔薇の花に集う 蝶々の様に。
そして僕は 『博愛の薔薇』。
彼女達の笑顔の為に 誰にでも分け隔てなく愛を与える 大輪の薔薇。
僕の愛は 全ての女性の為の物。不公平があってはならない。
だから 『二股』だの『不誠実』だの言われることは 心外だ。
決して『浮気』などではない。
祖父への『誓い』であり、神に対する『義務』なんだ。
だのに…
ねぇ モンモランシー。
何故君は 僕を許してくれないのぉ〜?(泣)
事の発端は、先日の昼食時だった。
食事を終えたギーシュと その友人達は、そのまま食堂で たわいも無い会話を楽しんでいた。
こんな時 一番盛り上がるのは やっぱり『オンナ』の話。とは言え、
「○○を××へ誘ったら OKしてくれた」とか
「△△とデートして手を握ったけど 拒まれなかった」
等という ホホエマシイ話で「ウオォォォ!」と唸ってしまうのが 童貞少年達の限界。
このグループ内では 一応 『女性にモテる』ギーシュは
「オレ達のトップを切って アレをするんじゃないか!」
と思われているが、実際は五十歩百歩である。
今も 下級生を乗馬の遠乗りに誘った話をしながら、右手をズボンのポケットに入れて 同級生のモンモランシーから貰ったプレ
ゼントの香水を 大事そうに撫でている。
当然 どちらともキスすらしていない。
ちなみに 日頃から『博愛』を公言している割に、『本命』はモンモランシーと心の中で決めているあたり、何をか言わんや で
ある。
「ギーシュ この間頼まれたヤツ。手に入ったぜ。」
マリコルヌがテーブルの上に置いたのは、数本の花だった。
モンモランシーに 「香水の素材として使うから」と頼まれていた物で、産地がたまたまマリコルヌの実家の近くだったので 手
配を依頼したのだ。
「ありがとう、このお礼は近いうちに 必ずさせてもらうよ。」
「なに いいってことさ。
だけど こんなサエない花 何に使うんだ? 誰かに送るったって ショボ過ぎるだろうに。」
「フッ、この花の価値が判らない様じゃ 君もマダマダだね。
詳しいことは 結果が出たら話すことにするよ。」
ギーシュはポケットから手を出して 花束を受け取った。この時 香水の壜が転げ落ちたことに気づかなかった。
「じゃっ そろそろ行こうか。」
ギーシュ達のグループは 食堂を出て行こうとした。が、
「お待ち下さ〜い!」
駆け寄ってきたメイドに呼び止められた。
「ふうっ 追いつけて良かった。
あの こちらを落とされたようでしたので、お持ちしました。
香水ですか? 綺麗ですね。
蓋は外れなかったみたいなので、こぼれてはいないと思います。
はい どうぞ。」
その手には 紫の小瓶が捧げ持たれていた。
元気なメイドだった。
名前は シエスタ。よく声の通る少女だった。
食堂中の かなりの視線が そこに集まった。
落とし主の貴族様に確認して頂く為に、壜を持つ手は 顔の辺りまで上がっていた。
周りからも はっきり見える位置だった。
…ざわ ざわ ざわ…
(おい あれ、『モンモランシーの香水』じゃね?)
(ああ それも いつもより高級な壜に入ってねぇか?)
(あれ、男性用だよな。)
(てことは、ギーシュが誰かにプレゼントする為に作ってもらったってことは?)
(ない!ぜってーねー。 ありゃ アイツがモンモランシーから贈られたモンだ!)
【結論】
『ギーシュは モンモランシーと 付き合っている!』
「やるな、さすがギーシュ。」
「よっ もてるね色男。」
「ヒューヒュー。」
男性陣からは 好意的な冷やかしの声が掛けられたが、
『ガタンッ!』
栗色の髪の女生徒が 椅子を激しくひっくり返す勢いで立ち上がると、ギーシュに向かって歩み寄って来た。
「ひどい…酷いですわ、ギーシュ様!」
小柄な少女。茶のマントを着用しているところを見ると、中等部から高等部へ進級したばかりの一年生のようだ。
「やっぱり モンモランシ先輩と お付き合いなさってらっしゃったんですね。
あの森の中で、私を『愛している』と言ってくださったのは、偽りだったのですね!
差し伸べてくださった手も 瞳の中の輝きも、みんな みんな嘘だったなんて……」
どうやら 香水の贈り主と この少女は別人らしい。
突然始まった愛憎劇に、周りの生徒達は観客と化した。
「違うんだケティ、誤解、誤解だよ!
僕が君を悲しませるような事、する訳が無いじゃないか。」
駆け寄るケティを抱き留めようと 両手を開くギーシュ。
二人の視線が絡み合う。
「ケティ。」
「ギーシュ様
……
なんて どゎぃっ嫌い〜!!!」
カウンター気味に ケティの平手打ちが炸裂。助走の勢いを腰の回転に乗せた、見事な一撃だった。
吹っ飛ぶギーシュ。
前方の障害物を力ずくで排除したケティは、泣きながら食堂を去った。
「ふっ、
どうやら彼女は、恋愛の奥深さを知るには まだ幼な過ぎたようだね。
ケティ。早く大人になって 僕の元へ帰っておいで。
薔薇は 何時までも君を待っているよ…」 格好つけて呟くギーシュ。
だが、食堂のテーブルの上に仰向けに倒れたまま、ソースやケチャップ塗れでは、何を言っても説得力が無い。
「貴女のランチを台無しにしてしまい、申し訳ない。」
食事中だった生徒に詫びを入れようとした。そこに座っている人物と 視線が合う。
・・・『不運は 偶然を装いながら、何処までも人を追い詰める』…
ギーシュは凍りついた。
そこにいたのは、モンモランシーだった!
「あーらギーシュ、謝るんなら 私より先に、あの一年生にじゃないの?
それとも、私にも謝らなければならないような事が あったのかしら?」
言っている内容は冷静だったが、口調は 押さえ込まれた怒りで爆発寸前だった。
(まっ まずい!)
この 人生最大のピンチを脱する為、ギーシュは持てる知識を総動員して考えた。
しかし 有効な策を思い付くには 人生経験が20年程足りなかった!
彼は最早『蛇に睨まれた蛙』だった。テーブルに仰向けのまま、逃げる事も 動く事すら出来なかった。
モンモランシーは 近くにいた給仕の銀盆からワインボトルを手に取ると 杖を出して呪文を唱えた。
「ご自慢のお顔が 随分と汚れているみたいですわね。いま 綺麗にして差し上げますわ。」
ボトルをギーシュの顔の上で逆さまにすると 魔法を発動させた。
流れ落ちるワインは 容赦なくギーシュの口や鼻に入り込み 呼吸を妨げた。ギーシュは テーブルの上で『溺れた』。
それだけではなかった。ボトルが空になる頃を過ぎても ワインは流れ続けた。むしろ その勢いを徐々に増していった。
最後には滝の様な水量になり 割れた皿やひっくり返った料理と共に ギーシュを押し流していった。
流石 水メイジ、『洪水のモンモランシー』(違〜う:本人談)
「ごめんなさいね。
ワインを少し こぼしてしまったみたい。大変かもしれないけど、後始末 お願いするわ。
それと、床に落ちた『クズ』も 適当に処分しちゃって!」
先ほどの給仕にボトルを返し、気絶した『クズ』を一瞥して、彼女も食堂を後にした。
「大丈夫ですか グラモン様。」
ギーシュが目を覚ますと、一人のメイドが心配そうに寄り添っていた。香水を拾ってくれた少女 シエスタ。
よく見れば 黒髪に黒い瞳という 希少価値の高い少女だった。
これで 平民でなければ、普段のギーシュなら 速攻で口説きにかかっていたかもしれない。
だが ギーシュにとって 平民は恋愛の対象外だった。さらに、今 ギーシュは生贄を必要としていた。
突然、女性二人に振られ 大勢の前で恥をかかされた。 誰のせいだ?
(僕じゃない僕じゃない僕じゃない僕は悪くない僕は悪くない僕は僕は僕は僕は・・・・・・)
では 誰だ。 ケティか? モンモランシーか?
(違う。彼女達じゃない。女性に罪を着せてはいけない。彼女達は悪くない。)
ならば、
(そうだ、あのメイドだ。あの平民が香水を拾わなければ・・・僕に届けたりしなければ・・・皆に見せたりしなければ!)
そう それが求めていた答。(ミンナ コイツガ ワルインダ!)
びしょ濡れのメイジは、己の中に渦巻くドス黒いモノを、薔薇を模した杖と共に 自分を心配してくれていた少女に突き付けた。
「なんて事をしてくれたんだ!
君の不躾な行為の為に 二人の乙女が涙に暮れることになってしまったじゃないか!」
いや、モンモランシーは泣いてなかった様な気がするが・・・
「もっ 申し訳ございません グラモン様!」
貴族と平民。明確な身分社会であるトリステインにあって、その違いは絶対。
如何に理不尽であっても、平民は貴族に逆らってはならない。六千年掛けて形成された この社会の掟。
シエスタは 震え上がって平伏した。それ以外に、出来る事も 為すべき事も無かった。
「ふん。これからは、もっと気を使って働くんだな。
今日のところは許してやるが、二度は無いぞ!」
貴族少年の安っぽい自尊心は、自分より弱い者の惨めな姿を見るだけで満たされた。
だが 彼の行動が、メイド仲間の中でのシエスタの立場を悪くした事は間違いない。
(あの娘と仲良くしていると、あの貴族様に目を付けられてしまうかもしれない・・・)と。
平民と貴族の間では ありがちな事件。
ある者は記憶の片隅に留め、多くの者は忘れていった。
なんか改行がおかしいぞ
支援
手直しして見ました。これで大丈夫かな?
トリステイン魔法学院 とある平日の午前中。
一時間目の授業が早めに終わり、次の授業も同じ教室なので移動の必要も無い、中途半端な空き時間。
こんな時 女子生徒は 仲良しグループで集まって、恋の話に花を咲かせたりする。
つい先日まで 心の壁を作っていたルイズ、色恋沙汰に一切興味を示さないタバサの二人は 当然その集団には入らない。ではキュルケは?
恋に憧れ 愛を夢見る 普通の女の子達は、恋愛肉体派・百の夢よりナマ一発!なキュルケを毛嫌いするかと思いきや、そうでは無かった。
自分には 越えたくても怖くて中々越えられない一線を 軽々と飛び越え、それを楽しげに語るキュルケは、乙女達にとって
『その道の先達』なのだ。
キュルケ本人は 群れる事を好まず 積極的にグループに入る事は無いが、アドバイスを求められたりした場合 普通に参加している。
今日の話題は、「モンモランシーとギーシュ」だった。
「神様って 女心がお分かりにならないのかしら?
顔 家柄 魔法の腕前、かなりイイモノを集めて作った男子に、なんで『浮気性』なんて致命的な性格も入れちゃうのぉ!」
「そうそう アレさえなければ、学年じゃ一番の上物なのよねぇ。」
「おまけに 四男だから、お嫁に行っても さほど家に縛られるって事も無いし。」
「経済観念ユルそうだから、プレゼントなんか高いの買ってくれるわよ、きっと。」
…少女といっても 女はオンナ。意外としっかりしている。って言うか 俗っぽすぎね?!
「で、モンモランシー。ホントの所、どうだった? 付き合ってみて。」
「まぁ 大体みんなの言う通りだったわ。
付け加えるなら、優柔不断で自己チューで 周りは全然見えてないし、無駄にプライドだけ高い癖に臆病だし、食べ物の好き嫌いは激しいし、
お父様にもお兄様にも頭が上がらないみたいだし…」(延々と続く)
「…ボロクソに言うわね。
てことは もう 吹っ切れたって事?」
「それが そうでもないのよね。
みんなには黙ってたけど、私とギーシュって 昨日今日の付き合いじゃないの。幼馴染って言ってもいいくらい。
ほら 私の家がイロイロあって 疎遠になっちゃったけど、この学校で再会してからは…」
「じゃ ヨリ 戻すの?」
「………」悩めるモンモランシー。
「ギーシュの事 嫌いじゃないわ。
でも 私も女の子なんだし、恋人は もっとグイグイと私を引っ張って行ってくれる様な人が…」
「甘い!甘いわ、モンモランシー!!」
そう言ったのは それまで黙って聞いていたキュルケだった。
「貴女を引っ張っていける男? そんなヤツ いるかしら。
第一 ソイツのセンスが最悪だったら どうするの。
そんな奴の考えたデートに引っ張りまわされるなんて、アタシならゴメンだわ!」
(『愛の伝道師』モード、キタァー!)
(今日は どんな「お言葉」が?)
皆 身を乗り出して聞き入る。
「古の昔から、大事を成した男、英雄と呼ばれた男には、必ずイイ女が付き従っていた。
だけど 本当はそうじゃない。男なんて 皆 バカばっかり。
煽てて 宥めて その気にさせて、影から支えた いいえ、裏から操ってたのは 女の方よ!」
男尊女卑の思想や 良妻賢母と言う『お題目』を蹴っ飛ばす、強烈な物言い。これが 恋愛アドバイザー キュルケ・ツェルプストーの真骨頂。
「イイ男が欲しかったら、探すんじゃなくて 育てるの!
気に入らない所があるんなら、ガンガン 作り変えちゃえばイイのよ!」
「優柔不断? ジコチュー?、いいじゃないの。躾の仕甲斐があるわ。
『自分の事より 恋人が大事』って 骨の髄まで叩き込んでやりなさい!」
「『無駄にプライドが高い』って?
プライドなんて 男の『操縦桿』みたいなモノよ!
ギュッっと握ってしまえば、相手を右に向かせるのも 左を向かせるのも、自由自在!」
(『操縦桿』って 何かしら? )
(判らないけど・・・殿方の身体で『握る』所と言えば・・・まさか、アレ?)
(キャッ! 恥ずかしい! でも 昔見た弟のアレって、『握る』って言うより『摘む』ってカンジだったけど?))
(貴女、お父様のを見たこと無いの?)
(そうよ、大人になると アレがムクムクと・・・って、何を言わせるのよ!)
やっぱり みんな思春期のオンナノコ、妄想し始めると 止まらない。
「確かに ギーシュはサイテー男だけど、素材としてはイイほうだと思うわ。
どうする、モンモランシー。『調教してみる』?
やるって言うなら、あのバカに お灸を据える計画があるんだけど、乗らない?」
「面白そうね。 それ、詳しく教えてくれる?」
その日の放課後、ギーシュは 意外な人物に呼び止められた。
「・・・手紙
読んで。」
そう言って封筒を差し出す 同じクラスの少女。
(誰だっけ?)すぐには思い出せなかった。
そうだ、確かタバサ…(ギーシュの脳内データ:いつも本を読んでいて ほとんどしゃべらない。近づき難い雰囲気を纏っている為、クラス男子の
『恋人にしたい娘ランキング』 圏外。)
これでは ギーシュが覚えているはずも無い。
だが、自分にラブレターを届けに来てくれた女性を 邪険にするような男でもなかった。
「ありがとう。
君が心を込めて書いてくれた手紙、今晩ゆっくり読ませてもらうよ。
返事は 明日でいいかな?」
「・・・勘違い。
それは、ルイズの手紙。
あと 『恋文』では無い。」
ギーシュは 訳が判らなくなった。よりによって あのヴァリエールからだって!
ラブレターじゃないってのは、まあいい。ゼロのルイズからのラブレターなんて こっちから願い下げだ。
でも そうすると、この手紙は何だ?
「ここで読んで。
返事を聞きたい。」
表情一つ変えずに催促するタバサに気押されて、ギーシュは封筒を開けた。
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『果し状』
貴殿は日頃より自らを「薔薇」と称し 表面上女性を称えている様に見せて、その実 己が欲望の儘
女性の人格を蹂躙することに 何ら問題意識を持たぬご様子。
かような悪行に対し 拳はおろか抗議の声すら挙げられぬ 全ての乙女に成り代わり、我
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、貴殿に決闘を申し込むものなり。
当方は、我と我が使い魔にて御相手いたす。
なお 決闘はご法度ゆえ、余人に申し伝えること ご遠慮願う。
よもや お逃げになるとは思いませぬが、さような事あらば、「武人にあるまじきこと」として
全校女性に貴殿の行状が知れ渡るものと思われたし。
今宵 人皆寝静まりし刻限 召喚場にてお待ち申し上げる。
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支援
ギーシュは、事態に付いて行けずボーっとするアタマで こう思った。
(『想像の斜め上』っていうのは こういうのを言うんだろうなぁ…)
「ねぇ 君。タバサ だっけ、
ルイズは、『本気』なのか?」
「本気。」
……即答され、黙り込むギーシュ。……
「もう一度 聞くよ。
あいつは、『正気』か!」
「…判らない。」
(この娘も どこかしら普通じゃないな。)
「ちょっと待てよ、どう考えたってオカシイだろ、コレ!
なんで僕とルイズが『決闘』しなきゃならないんだ?!」
「…そこに書いてある通り。」
「貴族同士の決闘は、禁止されてるし!」
「…だから、こっそりやる。
それに 戦うのは、ルイズの使い魔と 貴方の『得意技』。
どちらも貴族本人じゃない。言い訳は出来る。」
あれこれ理由を付けて断ろうとするが、タバサは応じない。
元々 タバサはルイズの代理として 手紙を渡しに来ただけで、決闘を中止する権限はない。
(どうやら、逃げ道は無さそうだ。)
ギーシュは覚悟を決めた。
もし この決闘から逃げたとしたら、半年位は 学校内の全ての女性達から総スカンを喰らうだろう。
彼は、女性の『噂話』の恐ろしさを よく知っていた。
(とりあえず、頭のオカシクなった同級生を 2〜3発ブン殴って正気に戻してやるのも、貴族の務めって事にしておこう。)
「決闘の件、『承知した』と伝えてくれ。」
「了解。 伝える。」
「ところで、ルイズの使い魔って あの空飛ぶ瓢箪みたいなヤツだろ。
あんなモノで、どうやって僕の『ワルキューレ』に勝つ気なんだ?」
「・・・また 勘違い。
間違いとは言い切れない。でも違う。
あれは、使い魔の ほんの一部。
……
ルイズの使い魔は、『召喚場の怪物』」
数日前から 噂があった。
曰く、
「召喚場に何かが居る。」
「不気味な唸り声を聞いた。」
「巨大な影が 火を吐きながら飛んでいった。」
「コルベール先生が、ドームを作って何かを隠している。」
「確かに見た! 竜でもワイバーンでも無い『幻獣』がいた。」
未だ正体不明のソレは、『召喚場の怪物』と呼ばれるようになった。
草木も眠る丑三つ時(という表現がトリステインにあるかどうかは置いといて)ギーシュは召喚場に現れた。
そこに待っていたのは、ルイズ・キュルケ・タバサの三人。
街の大通りのような幅で、照明の炎が2列 延々と灯されている。
「よく来てくれたわ。ギーシュ。」
大量の照明で十分な明るさがあるとはいえ 揺れる炎に照らされて 仁王立ちするルイズには、妙に迫力があった。
「決闘を挑まれて臆するような男は 貴族とは呼べないさ。
それに、噂の怪物にも 会ってみたいしね。」
(噂ってのは、尾ヒレが付くもの。怪物と言ったって、所詮 ゼロのルイズの使い魔。
でも その怪物を倒せば、モンモランシーも 僕を見直してくれるに違いない!)
ギーシュが薔薇の杖を振る。花弁が舞い、7体の等身大女性兵士型青銅ゴーレム『ワルキューレ』が出現する。
これがギーシュの得意技である。女性兵士型で、かつ無駄にディテールが細かいところが彼らしい。
飛行能力のある相手を想定して、投擲用の槍か 弓を装備している。
7体というのは、ギーシュが同時に展開できる最大数である。
敵戦力が不明の為『自軍兵力の逐次投入は危険』と判断したのなら まだ評価できるが、実際は『自分の周囲に置いて
盾代わりにするため 頭数を揃えただけ』なのが情けない。
「こっちの準備は整った。
それで、君の使い魔は 何処に居るんだい?」
ルイズは黙って空を指差す。(雪風、ギーシュの頭上を 超低空でフライパス!)《RDY》
高度5000からパワーダイブ。100まで降下してアプローチ。降下続行。
《マスター:対風防御 OK or NOT?》(OKよ!)
滑走路上空 対地高度3メイル。目標上で加速し通過。
ルイズが指し示す先を見つめるギーシュ。小さな星が天から降るのを確認。流れ星?いや、違う!
それなら もっと高い位置で消える筈。なのにアレは、地表スレスレまで降りて消えた。
だが 光が消えただけだ。おそらく 水平飛行に移ったんだろう。
足元に並ぶ照明の列。その延長上 遥か遠くの空から、謎の唸り声が聞こえた。
それは、真っ直ぐに 一瞬にして飛んで来た!
何かが見えた と思ったのと、それが頭上を通り過ぎていったのが同時だった。
目の前を 自分の何倍もあるような大砲の弾が掠めていったら、こんな感じなのかもしれない。
(なんて 冷静に考えられるようになったのは、だいぶ後の事)
轟音で 鼓膜が破れるかと思った。怪物の『炎の尾』で、髪の毛がチリチリと炙られた。
でも そんなのはどうでもいい。凄かったのは 風だ。
身構えていても 吹き飛ばされないようにするのがやっとだった。
指示を送れなかったワルキューレ達は 全員薙ぎ倒された。
魔法が掛かっている様子は無かった。
アレは ただ通り過ぎただけで、ウインドブレイク並みの風を起こしたって言うのか!
(雪風、今度は着陸して。停止位置は 尻餅をついてるバカの前。)《RDY》
今度は 比較的静かに降りて来る 雪風。 早めにランディングし ゆっくりと近付いて来る。
ルイズは、頃合を見計らって 雪風とギーシュの間に立つ。雪風のライトで ギーシュから見ると逆光になる。
「どう、お待ちかねの怪物と対面した気分は?
これが 私の使い魔 『雪風』よ!」
ギーシュから返事は無かった。 リアクション芸人としては、失格である。(オイオイ!)
無言のギーシュに 更にルイズから声をかける。
「ギーシュ、ごめんなさい。 先に 謝っとくわね。
・・・・・・
果し状なんて送り付けたけど、『決闘』は 貴方を呼び出す為の口実。
本当は、貴方とモンモランシーに 仲直りしてもらいたい。それだけだったの。」
「なっ なんだって〜!」
意外な展開の連続に 既に冷静な判断など不可能なギーシュ。
「私の雪風は、ご覧の通り空中戦に特化した使い魔よ。空でなら 誰にも負ける気はしないわ。
でも 地上戦は苦手(出来ないワケじゃないけど)。
貴方のワルキューレは、地上戦を得意とするゴーレム。
この対決 ハナから噛み合ってないのよ。
だから 『引き分け』って事にしましょ。」
ギーシュ、ブンブンと縦に首を振る。
ルイズが一歩下がり 代わりにキュルケが前に出る。
「で、ここからが本題。
貴方 あの食堂の事件の後 モンモランシーに謝った?」
「もっ もちろん!」
話題が自分の得意分野になったので、勢い込むギーシュ。
「いいえ。 貴方は謝ってない。
あれは『言い訳』。自分の体面を保つ ただそれだけのもの。」
「何を言う、僕は!」
「言い訳としても 最悪だったわね。
あの時 貴方がすべきだったのは、『下級生と別れ、モンモランシーだけを愛する』と誓うことだったのよ!」
「悪いが それは出来ない。僕の愛は『博愛』。全ての女性に捧げる愛だ。
僕はモンモランシーを愛している。だが、彼女の為に 他の多くの女性を泣かせる様な事は出来ない。
それは 祖父の教えに、僕の信念に反する事だ。僕の生きる道ではない!」
カッコイイ事を言っているようだが、実のところ『浮気はヤメナイよ!』宣言である。
本人に迷いが無いせいか、それなりに説得力もあったが、目の前の相手には通じなかった。
「ギーシュ! アンタは根本的に間違ってる!
『博愛』とは、『広く 深く愛する事』よ。
『広く 浅く』は 博愛ではないの。そう、愛が浅くては、愛とすら呼べないわ!」
「キュルケ・ツェルプストー、君に『博愛』を批判されるとは。
フッ、やはり君の『男漁り』は 愛では無かったという事か。失望したよ。」
「では 貴方は、『誰よりも深い愛』『真実の愛』を知っているというの?
アタシは知っている。…悲しい思い出と共にね。」
一瞬見せた キュルケの憂いを含んだ表情に、言葉を返せないギーシュ。
「失ったものは 二度と戻らない。ならば 探すしかない、新たな真実を!
だから アタシは自分を開くの、何人もの男達に。もっと もっと!
でも ギーシュ、貴方は まだ知らない。
だから、学びなさい。真実の愛を。その奥深さを。
運命の人に 自分の全てを捧げなさい。二人で 愛を育みなさい。悩み 苦しみなさい。
その人が誰なのか もう判っていますね。
博愛は その先に在ります。」
混乱する頭に 畳み掛けるような論議。ギーシュは陥落寸前だった。
それでも 最後の砦が かろうじて踏みとどまっていた。
「ああ 愛とは、真実の愛とは、一体何なんだ…
モンモランシー。君と、君と、君と〜。
愛の奥深さ、奥深く、モンモランシーに 奥深く…深くぅ〜。
でも 僕は薔薇。蝶達に蜜を、僕の蜜、皆に与える 舐めに来るぅ〜。
僕の愛は 皆のモノォ〜。美しい女性は 誰も皆 みぃんな僕のモノォ〜〜〜」
なんという筋金入りの『浮気魂』!
その様子を見て、ルイズがキれた。
「アンタねぇ… (雪風、Set GUN. ターゲット ワルキューレ)
オトコだったら、 《RDY》
一人に決めなさ〜い(Fire!)!!!」
雪風 機首をわずかに振りながら ギーシュ後方のワルキューレを攻撃。
《20mmバルカン砲 掃射時間 2.3秒。目標 完全破壊。》
【キュルケとルイズのアイコンタクト】
(馬鹿ルイズ!何て事するのよ。
『ギーシュに花を持たせつつ 釘を刺して、モンモランシーと仲直りさせる』って計画でしょうが!)
(しょーっがないじゃない、ギーシュがグダグダ言って ちっとも反省しないのが悪いのよ!)
この時 森の陰からギーシュに駆け寄る人影が!
「ギーシュ もうやめて。貴方は充分に戦ったわ!」
モンモランシーだった。
【モンモランシーとキュルケのアイコンタクト】
(これだけやってもらえば十分よ。後は私が!)
(任せるわ。頑張って!)
「私 怖かった。貴方が私を嫌いになったんじゃないかって。
でも 貴方もそうだったのね。ごめんなさい。私が 貴方を不安にしてしまったのね。」
「君じゃない…僕が、僕が悪かったんだ。大切な人に そんな思いをさせていたなんて。」
「私達 二人とも、判ってなかったのよ。『真実の愛』が。」
「いつか 僕達にも判る日は来るのかな。」
「大丈夫 掴めるわ、二人なら。貴方と 私なら!」
「あぁ モンモランシー!」「ギーシュ〜ゥー!」
ひしっと抱き合う二人。(でも モンモランシーは、ルイズ達の方を向いて 会心の笑みを浮かべている。)
「まさに、『雨降って 地固まる』ってヤツね。おめでとう、ギーシュ、モンモランシー。」
「そんな二人に、取って置きのプレゼントがあるんだけど。」
「…星空の、デート。
二人っきり。」
(いい 雪風、判ってるわね!『遊覧飛行』だからね!急加速・急降下・急旋回なんかしちゃ、ダメよ!!)《RDY》
おっかなびっくりのギーシュとモンモランシーをコクピットに押し込んで、雪風は離陸して行った。
整備が進む滑走路を一杯まで使って ゆっくりと浮き上がる。あれなら イキナリ失神する様な事は無いだろう。
「いろいろと 予定外の展開もあったけど、とりあえず上手く行ったわね。
ところで ルイズ、雪風って あんな銃も積んでたの!」
「まぁ 雪風は、異世界の『兵器』なんだから、武器の一つや二つ あって当然でしょ。」
「それにしても…間違ってもアレで ヒト撃っちゃダメよ!」
もしギーシュに当たっていたらと思うと・・・
キュルケでさえ かなりショックだったようだ。
タバサも ボソリと言った。
「…当ったら、『ミンチより酷い』。」
「判ってるわよ!(雪風の戦闘記録で、モロにそのシーン見ちゃったんだから、思い出させないで!)
それよりキュルケ、貴女の『真実の愛』の相手って誰なのよ?
貴女が一人だけの男にイレ込んでた事なんて あったっけ。」
「そんなコト 有る訳無いじゃない。
あーいう時は、舌先三寸、その場のノリで、言ったモン勝ちよ!」
こんな女が 恋愛アドバイザーなんて呼ばれてて イイんだろうか…?
雪風が戻ってくる。
降りてきた二人は、案の定 興奮していた。
「すっごいわ〜 もう 星に手が届きそうなんだもの!
こんなの 生まれて初めてよ。」
「僕ら二人で 星空を独占してるみたいだったよ!
また 乗せてもらえるかな?」
食いついてきた!
そこで、航空燃料の話を切り出す。
同級生の中でも優秀な 土メイジと水メイジのカップルは、快く協力を申し出てくれた。
「ねぇ、どうだった。」
二人が召喚場を去ってから、ルイズは 森の中に隠れていた もう一人の人物に声を掛けた。
ギーシュに八つ当たりされたメイド シエスタだった。
「こんな真夜中に呼び出して ゴメンね。でもちょっと 溜飲が下がったでしょ。」
「はい。ありがとうございました。ヴァリエール様。」
でも よろしいんですか こんな事して?」
「私のことはルイズでいいわ。
心配しなくても 大丈夫よ。でも 今夜の事は秘密にしてね。
さ、早く帰って寝ておかないと 明日キツいわよ。」
「はい!」
ルイズと別れてから、シエスタは呟いた。
「ルイズ様の使い魔の名前、『雪風』だった。
タバサ様の二つ名も、『雪風』だけど…
うん 間違いないわ。
曾お爺ちゃんが探してたのは、ルイズ様だったのね!」
〈続く〉
第3話 終了です。
対ゴーレム2連戦の予定でしたが、まずは前半戦だけ。
『雪風VSワルキューレ』、悩んだ結果 こうなりましたが、どうでしょうか?
ちなみに 決闘の場面で定番の「ルーンの発動」描写がありませんが、雪風のルーンは常時発動しています。
自分自身が兵器ですから。その代わり 心が無いので、ほとんど効果はありません。(役立たず?)
後編は『VSフーケのゴーレム』ですが、あっさり決着しそうです。
短すぎるようなら、デルフ購入あたりまで行くかもしれません。
(書き上がるのは いつになるのか…気長にお待ちください。)
20mmバルカンなんて当たったらミンチより酷いことにwwwと思ったらタバサが言ってくれた。
ルイズの意外な打算。しかしこういう細かいところがいいねー。
VSフーケはあっさりしてもしょうがない。
乙!
乙でした!
>>373 ロックなデブおっさん、ジャック・ブラックだって?
雪風さん乙でした。夜空のデート、気持ちよさそうっすね。
他にいらっしゃらなければ、55分から参ります。
『操縦桿』に、上手い、と思うと同時にワロたw
では、参ります。
misson 04 Ride on
ゲルマニアへの遠征の後、ほとんど間を置かずアルビオンの戦乱が終結したという情報がスコール達の耳に入った。もちろん、優勢であったとかねてより聞いていたレコン・キスタ側の勝利で。
そして今現在、次に攻めてくるのはトリステインかゲルマニアかと、緊張が地上の国に蔓延していた。
「まぁ、十中八九トリステインだろうな」
厳しい表情を浮かべながらアニエスは呟いた。
「ゲルマニアもトリステインも地理的にはほとんど変わらない。ならば、国力の低い方を攻めるのが定石だろう。そのために、此度の同盟も行われるのだし……」
「王女が輿入れするんだったか」
「ああ。まさに形振り構わず、だ」
朝。
下宿の台所で屑野菜と肉の欠片のスープを煮込むスコールの背中と、じゃがいもの皮を剥きながらアニエスは話していた。
初めて会った頃は、男なのにそつなく料理をこなすスコールにアニエスは驚いた物だが、スコール曰く「野営は傭兵の基礎修得事項。火を使うのも同じ事」とのことだ。
「確か、この結婚に関してレコン・キスタ……アルビオン側から何か言っているんだったか」
「なんでも幼少の頃の王女殿下が別の相手に充てた恋文だそうだが……」
流石にアルビオンの方もそんなバカバカしい事で同盟の不成立化が出来るとは思わなかったらしく、あくまでも会談上での当て擦りとして言っただけらしい。
それでもこうしたゴシップは容易く世間を巡るもので、王女が文を宛てた相手が誰なのかとちょっとした話のネタにはなっている。
「まぁ、もうしばらくはにらみ合いが続くだろうというのが目下の情勢か。それよりも今問題なのは、ラ・ヴァリエール公爵家だな」
「……?」
どうもどこかで聞いた名前のような気がしたが、思い出せない。ともかく、
「その公爵家がどうかしたのか?」
鍋が煮立ったので火の上からどかし、竃の中の薪を分散させて灰をかける。
「どうも最近王宮との仲が険悪らしい。王宮への出仕も拒んだとのことで、反乱でもたくらんでるのではないかとな」
「アルビオンに続いて、こちらでもか」
器二つにスープを盛ってテーブルに置き、アニエスが貯蔵用の壺からパンを出す。
「レコン・キスタが攻めてくるより、そちらの方が早いかもしれんぞ」
「その場合、あんたはどうするんだ」
スコールの問いに、ぴたりとアニエスのスプーンが止まる。
「なに?」
「どちらに付く。公爵側か、王宮側か」
「……まだ、決めていない」
少し考えた末に答えて、またスプーンを動かし始める。
「そうか……」
「そう言うお前はどうする?」
「俺は、あんたに付き合う」
「人に任せっきりか?全く……お前にも無関係では無いんだぞ。ここに住んでいる以上な」
アニエスとしては責める意識はなく、話の上での言葉だったが、それを言うとスコールは本気で考え出してしまった。
「あー……いや、そうだな。お前としては、最悪故郷に帰ればいいか」
スコールの雰囲気を和ませようとして言葉を発したが
「……帰れないんだ。俺は……」
そう返したスコールの言葉に、ますます空気は重たくなり、結局食事が終わるまでの間無言で過ごすこととなった。
その日はほとんど言葉を交わすことなく居心地が悪いままだったが、二人で組んでいる現状別行動になる筈もなく、タルブ村へ向かう途中の野宿で、やっぱり居心地の悪い沈黙が訪れた。
(これは……やはり一度聞くのがすっきりするのだろうな……)
「その……レオンハート」
「……!何だ」
ぼーっと焚き火を見ていたらしいスコールは、一拍おいて反応した。
「朝言っていた、帰れない、とはどういう事なんだ?良ければ……聞かせて欲しい」
「ああ、その事か……いつか話そうとは思っていたが……俺は、メイジに使い魔として召喚されたんだ」
一瞬間を置き、は?とアニエスは間の抜けた声を上げた。
「使い魔?お前が?人間、だろう。お前は」
「ああ、人間が呼ばれるのは珍しいと言っていたな。だが事実だ。訓練施設で触った鏡に喰われて、気が付いたら俺はハルケギニアにいた。使い魔になれと言われたのを拒んで、あんたに会ったんだ」
「……う〜ん……いや、待て。それで、どうしてお前は帰れないんだ?」
衝撃の告白にすっかり忘れていたが、話がずれていた。慌てて根本の疑問に戻る。
「ここは、元々俺の知らなかった場所だ。あんたも、バラムを知らないだろう。ガルバディアも、エスタも。知らない場所同士を行き来することは出来ない。メイジ達にも聞いたが、俺を元いた場所に帰す方法は無いそうだから、俺は、まだ帰れない……」
ようやく、アニエスはスコールが自身の故郷に関する文献を捜していた理由がわかった。
道を捜していたのだ。ハルケギニアと、故郷とをつなぐ道を。
「……そうだ!ロバ・アルカリイエに行ってみろ!あそこのことは、ハルケギニアでもほとんど知られていない。ひょっとすればお前の故郷の話も……」
聞けるかもしれないぞと言うより先に、スコールが黙って首を振った。
「いや……ここで関連する書物が見つからなければ、どこでも大して変わらない」
その態度に、カッと怒りがこみ上げた。
「なんでそう簡単に諦めるんだ!まだ行きもせずに!」
立ち上がりそう詰め寄ると、スコールは視線を空に向けた。
「俺の居たところは、月が一つしかなかった」
「月が……一つだけ?」
「多分、俺の故郷はこの地上に存在していない。異世界という奴だろう」
視線が再び焚き火に向けられる。
「……まるでおとぎ話だ」
おとぎ話でももう少し信憑性のある話だろう。
「別に信じる必要はない。これは俺の問題だ」
「い、いや、私は信じるぞ!」
慌ててスコールに訴える。
「そもそもお前の持っているライオンハートからしてあり得ないような武器だし、擬似魔法やジャンクションシステムなど、同じ大地の上にあったものとは思えない。
そう、そちらの方が納得がいくという物だ」
一気にまくし立てるアニエスを見上げ、フッとスコールは穏やかな笑みをこぼした。
「……ありがとう。一ヶ月前、あんたに会えて俺は幸運だ」
それは、ハルケギニアに来て初めてスコールが心安らいだ瞬間だった。
「あ、ああ……それは私もだ。こうして、本来なら手に入れられなかった力を得たのだから」
つい、と目線を逸らしながら再び丸太に腰を下ろしつつそう返す。顔が赤いのは、炎に照らされているからというだけではないのだが、それはスコールには判らなかった。
(こいつが言っていた、「まだ話してないこと」はこれだったのか……)
確かに、それなりの信頼関係がなければ、話したところで一笑にふされる類のシロモノだ。話したがらなかったのも判る。では――
(今度は……私が話す番か)
胸中に滾る復讐の炎。そろそろ、自分も話すべきなのかもしれない。
ベッドの上で、申し訳なさそうにエルオーネはうつむいていた。
「ゴメンね、みんな……私が倒れちゃって……」
「良いのよ、今までが無理しすぎだったんだもの。ドクターにも言われたでしょう?しばらくは『接続』しないで、ゆっくり静養していてね」
安堵の表情でキスティスが述べる。
「でも……スコール、大丈夫かな」
不安げに弟妹達を見る。
「大丈夫だって!あのスコールがそうそうどうにかなったりするもんか!」
あっけらかんとゼルは言ってみせる。
「そりゃ、G.F.を持ってるスコールが簡単にやられる訳は無いけど、そうじゃないよね?お姉ちゃんが言いたいのは」
アーヴァインが尋ねてみるとこくりとエルオーネは頷き、心配そうにセルフィは呟く。
「スコール……寂しくないかな?私たちがいかなくって」
「寂しいって……スコールに限ってそりゃ無いだろう」
ゼルが首をかしげながら反論するが、セルフィは不安げなのは変わらずに言う。
「だってだって、あんな異世界に居るんだよ?スコールは。アニエスさんみたいに信用出来る人と一緒には居られるけど、それまでずっとあった接続が無くなったりしたら……。
私なら、不安でたまらないよ〜」
「そ、りゃあ……」
ゼルも言葉が続けられなくなり、しん、と医務室が静まりかえる。
「……やっぱり私……」
何か意を決したように顔を上げて、ベッドから降りようと被っていた毛布に伸ばされたエルオーネの手を、リノアが掴む。
「大丈夫ですよ、エルオーネさんが無理しなくっても、あいつは大丈夫。ちょっとの間目を離したって大丈夫。連絡が取れなくても仲間がいるって、あいつには信じられるから」
「リノアちゃん……」
「だから、休んでてください。ね?」
リノアに言われて、エルオーネはゆっくりと体を倒した。
(あいつ、大丈夫かな……)
だが、この中で一番心配しているのはリノア自身だ。
スコールの弱さまで知っているのはリノアだけだ。時間圧縮現象の終盤、スコールが過去を失い、未来を思い描けなくなり、一人だけ迷ってしまった。
その事は、誰にも言っていない。
(忘れるなよ。スコールには私たちが居るんだぞ?)
それだけを忘れなければ、スコールは平気なはずだ。
翌日、タルブへ向かう道中、スコールの額には普段より皺が寄っていた。
「れ、レオンハート?どこか痛むのか?」
「いや……何でもない。気にしないでくれ」
アニエスに指摘され、パンと顔を一つ張りいつも通りぐらいのむっつり顔に戻す。
(……やはり、『繋がって』ない……)
昨日からずっと、エルオーネの『接続』が感じられない。ちっとも頭の中がざわざわしないのだ。
なお、実は昨日スコールの纏う雰囲気が重かったのはアニエスとの会話と言うよりこちらの方が主な比重を占めていた。朝のやり取りなど、トリスタニアを出た頃にはすっかり忘れていた。
一瞬自分が見捨てられたのかとも思ったが、考えてみればこの一月余りの間エルオーネは一日も休まずにスコールに『繋ぎ』っぱなしだったのだ。
『接続』がエルオーネにどのような負担を強いるのか聞いたことはなかったが、過労でぶっ倒れるぐらいのことはあるだろう。
「無理はするなよ。お前は私の相棒なんだからな」
「ああ、判っている」
アニエスの言葉に頷き返しつつ、内心頭を抱えた。
(無理をしたのは俺じゃなくエルお姉ちゃんだ……)
昼過ぎには着いたタルブの村は、農園が広がるのどかな村だった。
代表に任務の内容を確認したところ、討伐して欲しいオークの住処は探っているとの事だった。
「竜の骸?」
「ああ、何でも60年ばかり前、村の東にでっかい竜が落っこちてきたみたいでな。ぴくりとも動かないんで、死んでから落ちたのか、落っこちてから死んだのか……王都からメイジ様方が調べに来たが、結局何も判らなかったそうだ。
まぁとにかく、その竜の骸をオーク共が住処にしちまってな。最近じゃ村も荒らしに来るんで困ってたんだ。
しかし、こんな低料金で引き受けてくれるんならさっさと話を付けに行けば良かったぜ」
嬉しそうに、男はしきりに何度も頷いた。
「よし……それでは早速出向くとするか、その竜の骸とやらに」
「ああ」
スコールとアニエスはくるりと踵を返すと、東へ向かう。
「お、偵察かい。仕事熱心で助かるねぇ」
満足げに手を振る。
「いや、このまま攻略に向かう。早いほうが良いだろう」
「なぁんだ、もうお仲間も来てたのかい?」
そりゃあ良いと、尚機嫌が良い。
これを言ったら、どんな表情をするかな、と少し楽しく思いながらアニエスはきっぱりと言ってやる。
「私たちはコンビだ。他に仲間はいない」
「……へ?」
「では、その竜の骸とやらの大きさにも寄るが、日が暮れる前には仕事を終えてこよう」
完全に虚を突かれた顔の男を放って、二人はそのまま歩を進めた。
先を歩いていたアニエスは、スコールよりも先にそれを見ることが出来た。
「あれか?竜の骸というのは」
木々の間に見える巨大な紅い……翼、だろうか。
「あれは……」
アニエスの言葉に促されてスコールもそれを見上げる。
「ここでああも見えるとは……大きいな」
感心したような呆れたような気分でつぶやく。
しかし、60年も前に死んだ竜の骸と言う割に全く朽ちているようには見えない。その事に疑念を抱きつつも、相棒と共に歩を進める。
辿り着いた竜の骸の腹の下辺り、竜の外皮がべろんと垂れ下がっている辺りにオークが一匹いる。
「あれが歩哨なら、入り口はあそこだな」
近くの茂みに隠れて、鞘から剣を抜きながらアニエスは呟く。
「……どうかしたのか?さっきから口数が少ない気がするが」
「いや……正面から仕掛けよう。どうせ俺たちの目標はあいつらの殲滅だ」
「わかった。前衛は任せる」
ここに近づくに連れて無口になっていった相棒が少々気がかりだったが、問題は無さそうだったのでそのまま仕掛ける。
ライオンハートを振りかぶりながらスコールは駆け出し、オークが慌てて斧を振り上げるより先に切り伏せた。
ガンブレードの爆発音が森の中に響き渡る。
「このまま突入する」
スコールの後に従って、アニエスも竜の骸の内部へと突入した。
「……何だここは?」
自分は竜の骸の中に居るはずなのだが、周りはどう見ても人工物であった。鉄とも違う何か硬質な金属であるらしい床、壁、天井、そして扉らしき凹み。その扉の上にある明かりはぼうっと光っていて、火ではないようだ。
「進むぞ」
「進むって……ドアノブもない扉だぞ?」
困惑するアニエスには何も告げずに、スコールは進入方向右の扉の前に立つと、シュッと音を立てて扉が壁の中に隠れる形で開いた。
「!?」
反射的に剣を構え直すが、扉の向こうには何もない。スコールも慌てた風はなくそのまま歩いていく。
「お、おい!……どうなってるんだここは!?」
毒づきながらその後に続くと、今度はオークが二匹。
「はっ!」
すぐさまスコールが一匹を切り伏せる。
「サンダー!」
アニエスも雷を一撃食らわせて怯んだ隙に目から頭を一突きにした。
「おい、レオンハート」
どさりと倒れるオークの死体は捨て置き、不満を露わにしながらアニエスはスコールに近づく。
「お前、ここが一体何なのか知っているな!?」
「ああ」
あっさりと、こともなげに頷いてみせる。
「そうならそうと先に言え、全く」
「すまん。話すのが少し躊躇われた。こいつが動かなければ、俺は嘘つきのおおぼらふきになってしまうからな」
「動く?この竜がか」
「そうだ」
首を縦に振って、スコールは柵に囲まれた一段高い場所に上る。そこで壁を何かいじる。
〔正体不明ノ生命体ガ繁殖中。安全ノタメぶりっじヘノ立チ入リハ制限サレテイマス〕
「な、なに!?」
突然部屋に響く音に辺りを見回すが、その音を生み出したとおぼしき物は見あたらない。
「今のは……声、か?」
「俺が居た辺りの言語だ。オークが居るせいでこの上に上れないらしい」
一度上を見上げると、くるりと向き直る。
「オーク達を早く片づけよう」
どうも今日のスコールはおかしい。
口数はいつもより少ないのだが、その割にかなり機嫌は良いような。
あの後も勝手に開く扉や、椅子がたくさん並んだガラス張りの部屋など明らかに竜の体の中とは思えない箇所を回り、一通りのオーク達を駆逐した。
「レオンハート、これは一体何なんだ?村人の言うような竜の骸とはとても思えないが……」
「骸なのか、まだ生きているのかは判らないが、これは飛空艇……ハルケギニアの概念で言うのならフネだ」
「フネだと?これが?……帆も見あたらなかったが……」
外観を思い出すが、どう思い描いてもそんな物は覚えがない。いや、覚えがあるのならアニエスも竜の形をしたフネだと判っていただろう。
「とりあえずこいつが生きているのかどうかを調べてみよう。先程の上に通じる道が今は開けるはずだ」
再びあの柵に囲まれた場所を訪れる。
「ここに立ってくれ」
スコールが道が開くと言うものだから、てっきりアニエスはこれまでのように横にスライドして扉が開くのかと思っていた。が、今度は立った床その物が上に昇り始めた。
「うわっ!何だ!?」
予想だにしなかった動きに、片膝を着く。
天井に空いた穴に床ごとすっぽりと入り、気が付けばまた見晴らしの良い部屋の中だった。
「こ、今度は何だ……?」
先程のガラス張りの部屋よりは椅子の数は少ない。
その内の一つに、迷うことなくスコールは腰を下ろしてぺちぺちと目の前の板を叩く。
ピピピ、とアニエスがこれまで聞いたことのない様な音が響く。少し気持ち悪い。
〔自己診断もーど開始〕
また先程のように声らしき物が聞こえ、スコールが椅子から立ち上がる。
「何をしてたんだ」
ようやく立ち上がりながら尋ねる。
「これが動くかどうかを調べていた」
「……ダメだったのか?」
ちっとも動く様子のない竜の骸に、そう尋ねる。
「いや、多分動くが、動かすにはもう少し時間がかかる。今の内に村の方に一度戻ろう」
オーク退治終了の知らせを持って行くと、タルブ村の者は目を丸くしていた。
「ほ、ホントに、あんた達二人だけなのかい?」
証拠にと持ってきたオークの鼻の山を見ながら、そう尋ねる。
「ああ、見ての通り、斬ったばかりの鼻だ」
「それは信じるが……はぁ、とんでもねぇな、あんた達」
呆然とした顔つきでスコール達を見る。
「ともかく、これが成功報酬だ」
アニエスが受け取って中身を確認する。
「確かに」
一度頷くと、スッとスコールが前に出る。
「いくつか話があるんだが、良いか」
「あ?なんだい」
「あの竜の骸が落ちてきたとき……中から誰か人が出てきたりはしなかったのか?」
「人が?……いや、そんな話は聞いたことがないな。竜の中から人が出てきたんならそれなりの話にはなるはずだろうし……」
そうか……、と呟いて少し考えた後スコールは彼に尋ねた。
「相談がある」
「うん?相談?」
「ああ。あの竜の骸は、この村の物なのか?」
「へ?あ、ああ。まぁな。あんなんでも落っこちたときにはいろいろと見物人も来たんでな。一応この村の名物として扱ってたこともあったそうだぜ」
「そうか……出来れば、あれを譲って欲しい」
「あれを?……うーん、流石に俺の一存じゃ決められないな。少し待っててくれないか」
代表の男が立ち去ったところで、アニエスがスコールに振り向く。
「竜の骸……本当に動くのか?出たときに改めて見たが……羽もないだろう」
「あれで俺たちは世界を飛び回っていたんだ。飛べる」
待つことしばし。
「村長達にも確認をとってきたぜ。条件があるそうだ」
「依頼料の内俺の分……半分までなら返却出来るが?」
「いや、そうじゃない。ほっとけば今回みたいにオーク達の住処になるようだし、あんた達にくれてやってもいいが、あれをどかして欲しいんだとよ。かなりでかいが出来るか?」
「すぐにでも動かそう。ありがとう」
一つ礼を述べると、くるりと踵を返して竜の骸へと向かった。
最初にこの席に着いたのは、第二次魔女戦争の最中、宇宙に出たときだった。
宇宙の漂流者となりかけた自分とリノアの前にラグナロクが流れてきて、必死にそれにしがみついて、そして地上に戻るためにここに座った。
(これは……別の機体だが……やはり思い入れは深いな)
一つ郷愁のため息をついて、ラグナロクを立ち上げていく。
(主砲の荷電粒子ビーム砲は使用不能のままか……見たところ完全に土に埋まっているようだから、着陸時に砲身自体が歪んだか……)
何故これがここにあるのかは判らない。それも、60年も前に落着したようだが……。
(こいつも、俺と同じように迷い込んだのかもしれないな)
同じ境遇のモノに、シンパシーを覚える。
「……正直未だに信じられん」
困惑顔でコクピットを見回しながら、アニエスが呟く。
「座っていてくれ。少し揺れる」
スコールの言葉に従い、隣のシートに腰を下ろすアニエス。
「いくぞ」
操縦桿を引いて艦首を上げ、フットペダルを踏み込み、メインエンジンの出力を上げる。艇体に絡み付いた蔦がぶちぶちと千切れ始める。
「発進する」
ラグナロク――神々の黄昏――が、ハルケギニアの空に舞い上がった。
本日はこれまで。
意図的に、短編でも本編でもシエスタの名前は出さないようにしてました。
外伝でなんでラグナロクがあったのか不思議だったけど、こういうことか。
アレは一機だけの試作品じゃなかったものね。同機種はあるよな。
乙。
SeeDの人、乙であります。
>>422 アデルを打ち上げるシーンでは3機確認されています。
スコールとリノアが乗って帰ってきたのはそのうちの1機です。
そうなんだ、なるほどねー。
たしかマーキングが違う機体が三機ある
雪風の人乙です。
操縦桿とミンチより酷いに吹いたwww
俺の麦茶を返せw
スコールの人乙です。
もうラグナロク手に入れたか…オラwktkして来たぞ。
このまま独自ルートで突っ走ってほしいものだ
乙!
スコールもこれで少しは気が楽でしょうかな
しかし・・・使い魔不在のルイズ、ある意味虚無エネルギーは溜まりまくってることだろうけれど
良い方向には迎えなさそう・・・
しかもビッグス&ウェッジが擬似魔法マニュアルばらまいてるし
ひょっとしてルイズも・・・
擬似魔法覚えた平民の革命とかジョゼフが腹抱えて喜びそうな事だもんな
そう言えばルイズサイドはどうなってるんだろうか。
フーケはどうにかするとしても、才人にあたるキャラがいないワケだからそのままワルドごとレコン・キスタに合流とか?
退学だろ
一応「召喚」には成功しているから、と
オスマンあたりがイキな計らいをしてくれて退学とはなっていなさそうだ。
・・・だけど使い魔に逃げられたと生徒達から嘲笑されたりして
もはや精神的に限界になって自主退学していそうな気が。
精神的に追いつめられたルイズが……ケフカみたいになったり……。
リリカル・トカレフ・キルゼムオール
的な呪文を編み出しているに違いない
塊魂から塊を召喚
何故オスカル様の名が出て来ない
アライグマ?
それはラスカル
ヘクトパスカルは禁止な
ラスカルというと「うぉぉおおおおお!ラブリィィイイルイズゥウウ!鞭でビシバシだぁああああ」という印象が
スカル・・・スカル小隊
α外伝トリビュートではかなり逞しく荒廃した未来世界を生き抜いてらっしゃったなぁ
頭数揃って飛べて動ける限りは大抵負けないだろうな
弾薬無いのはこの際問題にならなそうだし
アルビオンまでも直通できそうだし
タルブにはYF-21があるってことで
シエスタ?ええ、皆様の想像通りってことで
バルキリーって大気圏内なら無限に飛べるんだよな……しかもAVFならピンポイントバリア完備。弾薬無しでも無双可。
>>441 整備は固定化でいける……のかねぇ?
機械部品ならともかく、電子系統とかエネルギー変換装甲も固定化できるん?
ヒント:一人産業革命
>>442 電子系統固定化したらまずくないか?
可動部の潤滑系と融合炉の燃料切れるまではマジで無双だな
>444
『固定化のかかった剣は錆びない』ってのは 公式設定でしたっけ?
だとすると 酸化(化学反応)の停止→金属分子間の電子移動の停止→電子回路作動不能
で コンピューター系を固定化したまま使うことは 出来ないと思われます。
「ダークドリームの冒険」の第3話が完成しました。
フレッシュプリキュア!終了後の9:00より投下します。
なんか、1年ぶりに『帰ってきた』って感じですw
固定化ってのはきっと「対象の機能を維持する」魔法なんだよ!
というご都合主義
アルヴィーズの食堂では、今日も生徒達が昼食をとっている。
制服姿の生徒に混じって、1人だけメイド服を着た桃色の髪の少女が席についていた。
その少女ダークドリームは、同じテーブルの生徒達を気にも留めず、目の前の皿に盛られたマスのムニエルと格闘している。
ダークドリームの隣では、青い髪の小柄な少女がボウルに盛られたサラダをもしゃもしゃと平らげていく。
「ねえタバサ、あなたに聞きたいことがあるんだけど」
タバサと呼ばれた少女の隣に座っている赤い髪のキュルケが語りかける。
彼女はタバサとは全く反対の容姿を持っていた。
長い、腰までかかるような赤い髪。座っている今でも、タバサより頭ひとつぶんは高い身長。
彼女はグラスの水に口をつけると、自分の系統『火』を象徴するよな赤い髪をかきあげ、もしゃもしゃとサラダを口に運ぶタバサに再び問いかけた。
「あなた、寂しくないの?あなたって、いつも本を読んでて……あたし以外の人と口をきいているの、見たことないんだけど」
タバサは首を振った。
「寂しくない」
「そう」
再び訪れる沈黙。キュルケは、タバサの向こう側にいるダークドリームにちらりと目を向けた。
「あの子とも、あんまり喋ってないわよね」
タバサはダークドリームの方をチラリと見た後、今度は首を縦に振った。
「そういえば、どうして急にあの子も食堂で食べるようになったの?」
「お金を払った」
数日前に、ダークドリームが才人に厨房に連れられた後、彼女はわたしも食事すると言い始めた。
部屋で待っている間にパンを食べたら美味しかったからと言っていたが、何かあったのだろう。
次の日の朝、タバサは管理課に申し出てダークドリームの食事を出してもらうように申請した。
予想外の出費だったから、多分、本を2・3冊は諦めなければならないだろう。
けれど、『異世界のスキルニル』が食事をしたいといい始めた。
どんな本にも載っていないであろう事に、興味を引かれたのがあっさり認めた理由の半分。
残り半分は……、タバサはもう一度隣へ視線を移した。
ダークドリームは『マスのムニエル』を平らげて、皿に残った小さな欠片をとろうとフォークでカチャカチャと格闘している。
すっかり夢中になってる。どうやら、とても気に入ったらしい。
「音を立てちゃダメ。迷惑になる」
タバサに声をかけられてハッと顔を上げるダークドリームに、今度はキュルケが話しかける。
「そういうときはね、ナイフとフォークを寝かせてすくったらいいわ。……それに、迷惑なのは他にいるわよ」
そういって、キュルケは食堂の隅の方へ顔を向けた。
「あんたは昨日、3回も『ゼロ』って言ったわね」
「そ、そんなに言ったかな」
「本来なら、今日は3食とも食事ヌキにするところだけど……、始祖のたまもので作ってもらったスープを無駄にするわけにもいかないわ。今回だけは特別よ」
「ありがたいことでございます。お嬢様」
ルイズは目の前にある、パンが山盛りに盛られたバスケットから一番小さなパンに手をかけた。
そのままちょっとだけ手を止めて…デザートのゼリーを食べているダークドリームの方を見る。
もう、なんで急に『使い魔』の教育方針を変えたのよ、こっちまでやりづらくなるじゃないの。
ルイズはふんと鼻を鳴らすと、隣の一回り大きなパンをスープの入っている皿と一緒に、床にいる才人に手渡した。
才人は恭しくスープとパンを受け取ると、パンをちぎってスープにつけた。
見ているのは、やはりダークドリームの方だ。
いつの間にか、こっちより待遇良くなってるし、なんだかなぁ。
俺は、この後、やっぱり厨房に行くつもりだけど……、ダークドリームも、また来るんだろうな。
ま、いいか。と才人はちぎったパンを頬張った。
翌日……
タバサはトリステイン魔法学院の自分の部屋で本を読んでいた。
ダークドリームは部屋で椅子に座ったままピクリとも動かない。
学院のメイド服を着ているが、真っ白な肌に黒いルージュとアイシャドウをひき、目を閉じたその姿は、本当に『人形』のようだ。
タバサにとってこの時間は至福のひと時である。
しかし……、猛烈な勢いでドアがノックされる。『サイレント』の呪文をかけて音を消したが……、訪問者は遠慮なく飛び込んできた。
誰かと思えば、キュルケである。
タバサは仕方なく『サイレント』の呪文を解いた。
いきなりスイッチを入れたオルゴールのように、キュルケの口から言葉が飛び出した!
「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度をしてちょうだい」
キュルケはタバサの手から本を取り上げた。
タバサは短く簡潔に自分の都合をキュルケに述べた。
「虚無の曜日」
それで充分であると言わんがばかりに、タバサは本を取り戻そうとした。
キュルケは本を高く掲げた。背の高いキュルケがそうするだけで、タバサは本に届かない。
「わかってる。あなたにとって虚無の曜日がどんなものなのか。でも、今はね、そんな事言ってられないの。恋なのよ!恋!」
タバサは首を振った。どうしてそれで自分が行かなければならないのか、理由がわからなかったのだ。
「そうね、あなたは説明しなきゃ動かないのよね。あたしね!恋をしたの。
でね、その人が、あのにっくきヴァリエールと、馬でトリスタニアに出かけたのよ!!
だから、今すぐ追いかけて、ふたりがトリスタニアのどこにいくのか確かめなきゃならないの」
タバサは首を横に振った。まだ理由がよくわからないからである。
すると、話を聞いていたダークドリームが立ち上がって、部屋の隅の鏡台の前へ歩ていった。
「『トリスタニア』に行けばいいのね」
タバサがハッとした表情になった。だが、止める間もなくダークドリームは鏡台に手をかざす。
次の瞬間、3人は暗い倉庫の中にいた。倉庫の中には、大小さまざまの鏡が置いてある。
目を丸くしているキュルケを後にして、ダークドリームとタバサは倉庫の入口へ歩いていく。
あわててキュルケが追いかけると、倉庫の外はトリスタニアの裏通りだった。
「ど、どうなってるの!?」
「あの子は、『鏡』と『鏡』をつないで移動できる」
「ええっ!」
声を上げたキュルケに対して、タバサが口に指を当てる。
「これは、絶対に秘密」
キュルケが首を縦に振るのを見ると、今度はダークドリームの方へ顔を向けた。
「次からは、人がいる前では絶対に使っちゃダメ」
言った後に、タバサは、今までこの能力を使う事を禁止するのを忘れていた事を思い出した。
そういえば、仕事のときに何度か使ったくらいだ。
基本的に学院から出ない生活をしているから、使う機会がなかっただけなのだろう。
「あー、びっくりしたー。けど、ちょっと早く着きすぎちゃったわね」
時間はまだ早いが、『虚無の曜日』ということで、早めに開けている店もちらほら見かける。
キュルケは町を歩きながら、タバサとダークドリームを交互に見つめた。
タバサの部屋に駆け込んだのは、半分はタバサと一緒に町に行きたかったからだ。
早馬で追いかけても、おそらくヴァリエールには追いつけないだろう。
なら、単に無駄足するより、親友と町を回る方がいいと思ってキュルケはタバサの部屋に足を運んだ。
まさか、こんな展開になるなんて……というか、好都合よね、これは。
「ねえ、ダークドリーム。あなた、いつも学院のメイド服着てるわよね」
ダークドリームは頷いた。他に、この世界の服は持っていないのだ。
「それって、よくないわ。食堂でも給仕しているのと同じ格好の人が席についてるの、不自然よ」
確かに、食堂でも給仕のメイドたちが座っているダークドリームをチラチラ見ている。
だが、本人達は全然気にしていなかった。……というか、食べるのに夢中で気づいていなかったようだ。
「それに、その服あちこち擦り切れてるじゃない。女は見栄えよ、頭は二の次。
そんなボロボロの服を着てたら、せっかくのかわいい顔が台無しじゃない」
確かに、ダークドリームの着ているメイド服は、学院でもう着なくなったものを安値で譲ってもらったものだ。
けれど、食費を2人分払い込んだために、今月はもう余分なお金はない。
「この近くにいい店があるの。ここまで連れてきてくれたお礼に、服の1着くらいプレゼントするわ」
キュルケは2人を連れて、トリスタニアの大通りにあるブティックに足を運んだ。
「いらっしゃいませ。……これはこれは、ツェルプストーのお嬢様じゃありませんか」
品の良い服に身を包んだ妙齢のマダムが、両手を挙げてキュルケを迎える。
「ご無沙汰ね。マダム」
「今日はどのようなご用件ですか、そういえば、明日は『フリッグの舞踏会』でしたわね。
この間のドレスに似合うアクセサリーでも」
「そうじゃなくて、今日は、あの子に服をプレゼントしにきたの」
「まあ、こちら、可愛らしいお嬢さんですこと。学院のメイドさんでいらっしゃいますか」
キュルケは首を振って、タバサの横に立ち、会話を続けた。
「あたしの親友の従者なの。トリステインに来たばっかりで、いい服がないのよ。
だから、その辺に吊ってある奴、適当に持ってきて」
トリスタニアでは、貴族や、その従者が着るような服は、基本的に採寸して仕立て屋が仕上げるオーダーメイドが主流だ。お金のない人は、古着を探して自分でサイズを補正している者も多い。
だが、この店は、半分まで仕上げたいくつもの服を用意してある。客は、その中から気に入ったものを選んで、自分のサイズに仕上げてもらう、いわばセミオーダータイプの店だ。
オーダーメイドで仕立てるよりも、はるかに安くつく上に、古着を探すより自分好みのものが見つかりやすい。
そういうわけで、キュルケはこの店の常連だった。
それから、ダークドリームは試着室で何度も着替えさせられた。
「こちらのドレスはいかがでしょう?」
「うーん、ちょっと動きにくそうね……、平服のつもりだから」
「でしたら、この服なんてどうです?」
「悪くないわね……でも、ちょっと違うかな」
5回目に着替えたのは、タバサの髪と同じ青色のシャツにスカートだった。
「今までの中じゃ一番いいけど……なんか、しっくりこないのよね」
「こちらのお嬢さんは、髪の色からすれば、暖色系もお似合いでしょうけど、
今は、ルージュが黒ですので、こういった寒色系のほうがお似合いかと思いますよ」
「あ、そうか!アイシャドウがきつすぎるのよ。マダム、メイクもお願い」
「はい、かしこまりました。では、こちらのメイクルームへどうぞ
そうそう、この服と同じデザインでピンクがありましたわね。」
キュルケとマダムは、ダークドリームを文字通り『着せ替え人形』のようにして楽しんでいる。
タバサは手近な椅子に座って、先ほどキュルケに取り上げられた本の世界に没頭している。
マダムは黒いアイシャドウとルージュを落とし、代わりにナチュラルなリップを施した。
磁器のような白い肌には、ほんのり紅がさすようなファンデーションを塗り、目元は黒いながらも目の形を強調するだけのアイラインを描いている。
「さあ、できましたわよ」
ピンクの服に着替え、鏡の前に立ったダークドリームは息を呑んだ。
……これが、わたし……?
『鏡』の中には、見覚えのある少女がいた。
夢原のぞみ、プリキュアに変身する少女だ。『プリンセスランド』で見た彼女が『鏡』に映っている。
もともと、ダークドリームは夢原のぞみをコピーした存在である。面影があったとしても何の不思議もない。
だが、鏡に映った少女は、ダークドリーム自身が一瞬間違えるほどに夢原のぞみに似ていた。
そして、次の瞬間、ダークドリームは奇妙な違和感に包まれた。
何かが違う……。プリンセスランドで見た夢原のぞみと比べると、何かが足りない。
自分でも、夢原のぞみでもない少女が鏡の中にいる……。
なんだろう、この違和感は……。
「良くなったじゃない!雰囲気変ったわよ」
「はい。ぱぁっ!と華やいだ感じが出てきましたわ」
ダークドリームの困惑を知ってか知らずか、キュルケとマダムは後ろで目元がどうのリップの色がどうのと語っている。
「ただ、ちょっと表情が硬いのよね。ねえ、ダークドリーム、笑ってみて」
「え?」
キュルケの言葉に、ダークドリームが思わず振り向く。
……あのとき、夢原のぞみはずっと笑ってた……。
「ほら、やってみて」
目が合ったキュルケは、にっこりと微笑み返す。
ダークドリームは鏡に向き直って、笑顔を作ってみる。
けれど……、何かが違う。夢原のぞみのような顔にならない。
「うーん、ちょっと強張ってるわね」
「貴族のお嬢様に服をプレゼントしてもらえるので、緊張しているんですわ。きっと」
「もうちょっと、肩の力を抜いてみて。好きな男の前にいるみたいに。『情熱』的にね」
……そうだ……。
……夢原のぞみは、ずっと『ココ』って男の人と一緒にいた……。
……自分が食べているものを分けたりもしていた……。
……だから、笑っていたの……?
ダークドリームが『鏡』の前で、色々と表情を作っていると、ふいに鐘の音が響き渡った。
「いけない、もうこんな時間!そろそろヴァリエールが着く頃だわ」
キュルケは慌てて叫んだ。
「マダム、これでお願いするわ!」
「はい、かしこまりました」
「ダークドリームも急いで着替えて」
タバサが、ずっと読んでいた本を閉じて立ち上がる。
「では、明日の昼までには仕上げておきますわ。お支払いの方はどうしましょう」
「今するわ。服は、明日あの子に取りに来させる」
キュルケは懐から小切手を取り出し、ちらりと鏡の前で名残惜しそうにしているダークドリームに目をやった。
「そうそう、今日使ったメイク道具と同じものを一式で付けといて」
それを聞いたダークドリームが思わずキュルケの方を向いた。
「ついでよ。その代わり、帰りもお願いね!」
ダークドリームがタバサの方へ視線を向ける。
すると、彼女は小さく首を縦に振った。
ダークドリームの顔が光が差したように華やいだ。
「ありがとう!」
彼女は気づいただろうか……
今、『鏡』には、本当に夢原のぞみとそっくりな少女が映っていることに。
今回はここまでです。
読んでいただいた方、前回感想を下さった方。Wikiに登録してくださった方、ありがとうございました。
>>305 >>333 あのシーンは「ダークドリームなんてDQNネーム、さすがに日本人じゃないよな」というつもりでした。
読み返してみたら、どうみても書き方が悪かったようですので、あとで訂正しておきます。
また「桃色の瞳」に関しては、作画によっても違いますがこういう感じですね。
夢原のぞみ(変身前):瞳の大半が黒、部分的に桃色
キュアドリーム(変身後):瞳の大半がピンク、部分的に黒
ダークドリーム:瞳のほぼ全てがピンク
それではでは、またよろしくお願いします。
乙です
服も変わって気分一新
次回も楽しみです
それにしても、キュアパッションには一体誰がなるんだろう…!
スレ違い失礼
プリキュアの人乙です。
ダークドリームに萌えた件。
なんかいいな悪役のほのぼの。
乙です
食事1人前に厨房でも食うとか食欲に目覚めすぎだろw
使い魔の成長にニヤニヤ
もう帰らないでこのままでいいんじゃね?とか思ってしまうな
唐突に宵闇眩燈草紙から操&由貴彦さんを喚んだらどうなるか考えてみた
…真っ先に、シエスタに変装した由貴彦さんにモットがバラされる姿が浮かんだんだ
後コッパゲがいらない子に
I can fly
you can fly
we can fly
モット モット伯爵
先住魔法に
「ものは下に落ちる」
「世界には真実しかない」
「惑星は南を下とする」
っていうのはないんだろうか
なんでないと思ったんだ?
終わりのクロニクルに出てきた概念なんだよ、これ
あったら派手だなぁとw
終わクロの世界観に組み込むと恐ろしく長大な世界が出来そうだw
誰もいなければ15:15あたりから投下したいんですが、いいですか?
久しぶりに来たらネタが被ってたorzまあみんな考えるわな。しかも来週の本編のネタとさえ被りそうな悪寒・・・。
そう思ってここ数カ月の妄想を一気にまとめてみた。
というわけで「ゼロと世界の破壊者」の作者さんとは別に、自分が考えたゼロ魔×仮面ライダーディケイドの冒頭です。
あくまでも「ディケイドのエピソード」として考えてみた(つもり)なので、あえて少々極端な設定改変をしており、
また分割はしていますが一応前後編で完結するように構成しているため、展開が急です。そういうの嫌いな方々は
「十年紀の使い魔」をNG設定お願いします。
なお時系列的にどのあたりのエピソードかは不明。剣編以降ならどこでもいいように書いてます。
>>462 ♪ おいでかもんかもんかもん、暗い眼をしてー
と、いふワケでお待ちいたしておりますのですよー
世界の崩壊を防ぐため、数多の世界を巡る旅の最中の光写真館一行。
順調な旅を送っていた彼等は今、思わぬ不可解な事態に直面していた。
「あれぇ?」
写真館のオーナー・光栄次郎が毎回偶然下ろす背景ロール。
いつもならそこには次の世界を象徴する絵が描かれているはずだが…。
「鏡…?」
「また龍騎の世界か?」
一行の眼前に現れたのは楕円形の、身の丈ほどの『鏡』が一枚。
イラストなどでは到底再現し得ない怪しい輝きを放つそれは、明らかに実体を伴った物体のように見える。
栄次郎の孫・夏海や『クウガの世界』の住人・小野寺ユウスケ、
「何だこりゃ…?」
そしていつもならすぐさま次の世界を言い当てる破壊者・門矢士も、これには困惑の色を隠せない。
「なんかこれ、あのオーロラに似てません?」
鏡を睨み、鏡の中の自分に睨み返されながら夏海が呟く。
なるほど、確かに謎の男・鳴滝が移動したりライダーを召喚するときに現れるオーロラのような次元の壁に似ていなくもない。
唐突に現れては意味深な発言(主に士の悪口)を残していく鳴滝に、夏海はあまり良い思い出がない。
それでなくてもクウガの世界を始め、何かと異変の前触れとして現れるオーロラ。
そしてそのたびに士は他のライダーの力を借りなければならないほどのギリギリの戦闘を強いられる。しかめっ面も当然だ。
「うわ、士、この鏡、手が突き抜けるぞ!」
「ユウスケくん、あんまり触るものじゃないよ。昔から鏡は世界の境界とか言われる、神聖なものだったんだからね。」
「世界の境界、ね。あれ、でも確か龍騎の世界のライダーかディケイドでないと鏡の中って入れないんじゃなかったっけ?」
「…ということは龍騎とは違う世界のルールが働いてるってことか。何だ、せっかくこの凶悪犯をつき出してせいせいできると思ったんだがなあ。」
「…むっ」
しかしそんな思いをよそに男性陣の会話は進み、士は軽口をたたく。
かつて夏海は『龍騎の世界』で殺人の濡れ衣を着せられ、留置所にぶち込まれたことがある。
なんやかんやで夏海自身はそのことを覚えてすらいないのだが、何となく自分への悪口は分かるもの。
士のために顔をしかめているのに、これはさすがにあんまりな発言である。怒って踵を返し去る…
「光家秘伝・笑いのツボ!」
「ぶッ!ひ、ははは、おい夏、っぷあっははは…」
…と見せかけ、彼女はすれ違いざまに士の首の中ほどを親指で思いっきり突いてやった。
途端に少々苦しそうに笑い出す士。栄次郎と夏海の必殺技、笑いのツボをつかれた人間は、自分の意思に関係なく大笑いしてしまうのである。
笑顔が苦手な士が調子に乗ったときの制裁のほかにも喧嘩の仲裁や雰囲気の転換、更には偽者の判別にも使える意外に便利なツボだが、今回はそれがアダとなった。
「くはっ、あはははは!!…ひーっ、ひーっ!はは…おわっ!?」
笑い過ぎて呼吸困難になり思わず体を折った士は、ロールの鏡に頭を突っ込んでしまったのである。
鏡は割れることなく士の体を受け止め、そして飲み込んでいく。
「士くん!?」
「士!!…ふごッ!?」
慌てて後に続こうとする二人だが、あっという間に士が吸い込まれた瞬間、鏡は掻き消えるように消滅してしまった。
勢い余ったユウスケは背景画に激突。ロール自体は布製だが、後ろには壁があるのである。
鈍い音を立ててうずくまるユウスケ。一応ライダーなのにこの扱い、なんというか毎度御愁傷様。
「ってぇ?!!…って、あれ?」
「わあ…」
「あら、素敵♪」
鼻を押さえて立ち上がるユウスケと、寸でのところで留まった夏海、そして謎のキバット族・キバーラの目に飛び込んできたのは、
鏡が消えた後に残った、絵。4本の塔がそびえるまるで西洋の城のような、そして、
二つの月が世界を照らす。
―世界の破壊者・ディケイド。いくつもの世界を巡り、その瞳は何を見る―
十年紀の使い魔
前編 十のツカサ・1
支援します
二つの月が世界を照らす。
大地のすべてをねめつける眼のように、すべてを平等に。
王宮も、城下町も、貴族の邸宅も、平民の村も、武器屋もパン屋も、
そして魔法学園も。
その学園領内、掘立小屋の窓から、少女の顔がひとつ覗いていた。
年のころは15、6。桃色がかった髪に華奢な体躯。育ちの良さが伺えるその相貌や体格とは裏腹に、
身につける衣服はせいぜい多少は余裕のある平民程度。
その目に映るは空の月。しかし今彼女はそんなものを見てはいない。
月が眼下の大地を見るなら、少女の瞳は何を見る?
「ミス・ルイズ。資料の編纂は終わったかね?」
「…」
「ミス・ルイズ?」
「…」
建物の中、研究室然とした一室から、この部屋の主であろう冴えない眼鏡の中年風の男が呼びかける。しかしその耳には届かないのか、少女はただ茫と夜空を見上げるだけ。
「…」
「……」
「…」
「………ミス?」
「…」
「…………ミス・ルイズ。」
「…」
「……………おほん、ミス・ルイズっ!」
「ひゃっ!!?」
痺れを切らした咳払いに、さすがに我に返った少女は慌てて振り返り、直立不動の姿勢をとる。
「もっ、申し訳ありませんミスタ・コルベール!何か御用自で!!」
「いや、さっき頼んだ今日のサモン・サーヴァントの結果の報告資料のまとめなんだが…」
「あ、それならこちらですわ。」
そう言ってルイズと呼ばれた少女は小さな事務机の隅にリボンで丁寧にまとめて重ねられた羊皮紙の束をそろえ、中年男―教師ジャン・コルベールに手渡した。
別にルイズは仕事をさぼっていたわけではない。窓際の机での作業が終わった解放感から伸びをしたとき、
ふと目に入った双月の輝く夜空を見上げ、物思いにふけっていただけである。
相変わらず迅速かつ丁寧な仕事だ、と内心コルベールは舌を巻く。
ルイズ。元々はこのトリステイン魔法学院の生徒であったが、故あって数ヶ月前から彼の秘書兼助手を務めていた。
座学の得意だった彼女は、持ち前の勤勉さによりこう見えても秘書として有能であった。
…持ち前の無器用さで研究の助手としてはまだまだだったが。
「目次はこちらに。例年と比べると、苦戦した生徒の数が多いように思います。」
「ふうむ、君もそう思うかね。今年の生徒の平均成績が特別悪いわけでもないし、授業の質が落ちているのかな。」
「使い魔になる生き物の繁殖状況が悪いんじゃないでしょうか?ラグドリアン湖の増水のような異常気象もありましたし。」
「なるほど、その線もあるか…」
気になった点を議論する。年齢、性別、育った環境、何もかもが異なるルイズの目線からの意見は、彼にとってはいつでも新鮮である。
彼女自身中々頭が回ることもあり、おかげでついつい話が弾んでしまうのは、すでにお馴染の光景であった。
実はこの苦戦率は次元の崩壊の副次的な影響なのだが、誰もそんなことは知らないし、別にさして重要なことでもない。
「うむ。彼女が召喚したドラゴンの種類については、追々調べておこう。…ところで話は変わるが。」
「はい。」
「ミス・ルイズも召喚してみないかね?」
「…はい?今、何と?」
資料の内容について二人でひとしきり分析した後コルベールが提案した内容に、ルイズは思わず聞き返す。
「せっかくの機会だ、君もサモン・サーヴァントをやってみるといい。ちょうど君はその学年でもあるし、いないよりはいたほうが何かと便利だからね。」
「ですが、ミスタ…」
「…私はもう、貴族を追われた身ですわ。今更使い魔など……」
予測できた返答だったのか、コルベールは淀みなくルイズを諭す。
「…ミス・ルイズ。君のご実家が不幸により、家名も地位も財産も、何もかもを失くしてしまったことは私もよく知っている。
しかし、だね。それでも、いやだからこそ、自分の力で世界を渡っていかねばならないからには、自分を鍛えることを怠ってはいけない。
体も頭も、魔法だってそうだよ。使わなければどんどん鈍っていくからね。現に君は仕事の合間に勉学を続けているじゃないか。」
コルベールだけではない。元は侯爵家であった彼女の家庭事情を知らぬものなど、学園内では一人としていないだろう。
貴族位を剥奪され、学費も払えず行き場を失った彼女に手を差し伸べたのは、他ならぬコルベールであった。
彼女の努力を無下にするのは惜しい。しかし生徒でもない者を学園にいさせるには何か仕事が必要である。
いきなり平民のように雑用をやらせるわけにもいかないが、秘書として元貴族を雇うことには現校長オールド・オスマンという大きな前例がある。
前からルイズを気にかけていた彼は、校長と彼女自身を説得してルイズを今のポストにつけ、せめてこの学園に留めてやることに成功したのだ。
もちろんオスマンもいきなり退学にする気はなかったようであるし、裏では彼女の幼馴染であるアンリエッタ姫の口利きがあったことも忘れてはならないが。
「…単なる未練ですわ。それに、その魔法だって生まれてこの方一度だって成功したことがないのに、ですか?」
「む、それは…」
ルイズの皮肉に、さしもの彼も言葉を詰まらせる。
彼女が秘書となって数ヶ月、その有能さに思わず忘れていたが、おかしなことに彼女は魔法が全く使えないのである。
王族の傍流である彼女の血と努力があれば、トライアングルクラスの実力があってもおかしくないはずであるとコルベールは常々思っている。
しかし初等呪文であるロックで鍵をかけようとしても、ファイア・ボールで物を焼こうとしても、
何をやってもただ対象が爆発するばかり。これはこれで少々興味をひかれる現象ではあるが(実際彼がルイズに興味を持ったきっかけはそれだ)、
貴族社会では結果がすべて。出来そこないの烙印を押された彼女は『ゼロのルイズ』などという不名誉な二つ名をつけられていた。
ルイズは貴族の地位を失うと同時に魔法もすっぱりとやめてしまったため、こちらは今では誰もが記憶の片隅に追いやったことである。
そんなわけで当てつけるようになるので、実際の召喚の儀式には彼女は立ち会わせなかった。
この資料編纂も本当は彼女にはやらせたくなかったのだが、どうしても外せない用事がありやむなく任せたのだ。
何でもない顔をしていても、そのストレスは確実に溜まっているはず。あえて魔法を使わせることには、それを適度に発散させようという意図もあった。
「まあ、おっしゃることもごもっともですわ。ちょっとやってみましょうか。」
その思いが通じたか、恐らくはただの気まぐれであろう、ルイズは召喚に同意した。コルベールの反対側に移動し、スペルを唱え始める。
「我が名はルイズ・フラン…。ルイズ。宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ…」
学生のころにその大体の文言だけは習ったし、今の今まで散々使い魔についての資料編纂にいそしんでいたのだ。嫌でも頭に入る。
何も言わず、その様子を見守るコルベール。家名がかかわらない今更、彼女は失敗してもさらに鬱憤を貯めることはないだろう。そのコンプレックスはすでにふっ切っている。魔法が使えずとも、もう誰も彼女を馬鹿にはしないのだから。
「…我が導きに、応えなさい!」
最初詰まったものの朗々と唱えたスペルが完成し、ルイズはその憂鬱を全て乗せるように遠慮なく杖を振るう。
瞬間、見事なまでの中規模爆発が、そう広くはない研究室の中で炸裂した。
ルイズ自身は手加減したつもりだが、しばらく魔法を使っていなかったために精神力が溜まりに溜まっていたせいだ。
もうもうと煙が立ち込める中爆風を受けた棚が倒れ、乗っていたものが落下する。秘薬の瓶は割れて中身が床にぶちまけられ、
学術書や書類が散乱し、教材として作ったからくりがいくつも音を立てて砕けていった。
「ほら、こんな具合に絶好調ですよ。」
くるりとコルベールに向き直り、自虐的な笑みを浮かべるルイズ。
「……」
ここまで盛大に爆発するとは思わなかったのだろうか、コルベールはあんぐりと口を開けたまま固まっている。
「先生がお勧めになったのですよ。後片付けはもちろんご自分でおやりになってくださいね。」
「……」
無反応。了解と受け取ってルイズは勝手に話を進める。
「それから私に秘薬の代金を払えるような蓄えはございませんわ。生活だけでもかつかつなもので、今月分は空っぽですの。」
「……」
「あと薬棚の修理ですが、私に任せたらどうなるか、分かっておいでですよね?」
「……」
「ちなみに明日には授業がありますが、そのときの教材のヘビくんが木端微塵です。」
「……」
「火の秘薬が燃えています。はやく消火しないとこの小屋全焼しますよ?」
「……」
「…あの、ミスタ・コルベール?」
ザ・無反応。先ほどとまるっきり逆の状態に苦笑しつつ声をかけるが、それでもコルベールは固まったまま。
不審に思ってルイズが目の前で手を振り、コッパゲ頭を杖でぺちぺち叩き、
眼鏡を外してひっくり返してかけ直したところでようやく彼が絞り出した言葉は。
「……ミス・ルイズ…その、ひ、人が……!」
「ひと?」
こんな時間、こんな場所にお客かしら?メイドを起こしてお茶でも出させないと。などとどこまでもズレたことを考えつつ
秘書として早速行動に移すべく振り返るルイズだが、その必要は皆無だった。そして瞬時に沈黙の意味を悟り、彼以上の困惑を覚えることになるのであった。
異世界からの『お客』はルイズの眼前、煙が晴れた爆発の中心で、口の端を笑うようにピクピクと痙攣させたまま気を失っていたのだから。
ミス・ヴァリエールでは(ry
いや、まぁいい
とりあえず支援しとく
今回は以上です。改行ミス失礼しました。
・・・大丈夫かな、続くかな?
>>471 貴族でなくなったので、家名では呼べなくなりました。
乙です。
面白い出だしで、今後が楽しみです。
言い忘れてたが、乙
前後編で終わるってのは短編ってことだよね
ドンくらい分割してるのかな
乙
ゼロの使い魔の異世界か…感情豊かなタバサや男が嫌いなキュルケがいたりするんだろうか
ゼロ魔の世界をリ・イマジネイションしてるわけね
>>477 タバサ「キュルケ、あなたはもっと男に対して積極的になるべきよ!手始めにギーシュとかいいんじゃない?馬鹿だけど顔は良いしホイホイ釣られそうじゃない。」
キュルケ「そんな・・・男なんてみんなケダモノよ!特にギーシュ!みんな私の胸ばっかり見るのよ!特にギーシュ!露骨に3回連続で見つめてくる・・・いやらしい・・・!」
タバサ「いいじゃない!あるんだから!あるんだから!!」
キュルケ「タバサ落ち着いて!」
こういう感じか
・・・アリだな!
>>479 アリだなっ!
で、イザベラがいぢめられっ娘なんですね
仮面ライダー電王シリーズが観たいな
誰か書いてくれないだろうか。保管庫にあるやつは途中で終わってるし
サイトを弟子にする響鬼さんは見たい気がする
フーケが盗ったのがアームドセイバーだったり
なんでJさんの名前が出てこない
誰一人として、てつをを書いた人間がいない
つまり誰も書いてない今が好機
>>481 小ネタなら割と面白いのがいくつかあった
日本に数多ある「異世界召喚もの」のキャラと「時空超えもの」のキャラをとことん出す小ネタなんてよさそうだなw
ルイズが一人召喚したら、それがまた一人呼んでそいつがまた…
というハルケ大パニックでござるの巻き
>>483 Jは以前呼ばれてたがまとめから消えてるな……
>>479 ギーシュ「心外だね。僕が心奪われた人はたった一人しかいないよ。……ああ、マリコルヌ!」
イザベラ「ああ!イレーヌ!イレーヌ!!クンカクンカ!!」
タバサ「ちょ、おま、やめろ!!」
>>484 俺はバイオライダーになって抗体を作ることが出来る!
でタバサママ解毒という展開が浮かんだ
てつをなら単独でヨルムンガンド殲滅できそうな気がする
たとえBLACK時代のてつをが呼ばれても未来からRX達が駆け付けてくれる気がする
その時奇跡が起こった!ルイズは魔法が使えるようになった!
その時奇跡が起こった!タバサママの病気が治った!
その時奇跡が起こった!ウェールズは生き返った!
その時奇跡が起こった!7万の大軍は消え去った!
その時(ry
ルイズ「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」
4コマ漫画からの召喚とかもありなんだろうか?
それだけじゃわからん。
あるならフルカラー劇場のララァとか呼ばれそうだ
あの人…もとい、あのMA何気に何でもありだしwww
4コマってーと、柴田亜美の勇者とかか?
こんにちは、皆さん。今週分の55話、アルビオン行き本編にようやっと戻して、話を進めたいと思います。
それからプリキュアの人、乙でした。こういう心温まる話は好きなので、前作からもファンでした。私のほうは
いまだに終わる気配が見せられませんが、応援しています。
さて、今回のレス数は10です。
開始時刻は例によって00狙いで17:45よりお願いします。
ゲーム関係の4コマとかだと雑魚キャラとかも個性豊かになってたりするんだ
原作じゃ一切喋らない主人公がボケに突っ込んでたり、攫われて改造されて自我失った挙句廃棄されたような奴がラブコメってたり
おおー来ました、ウルトラ支援
4コマ自体二次創作な気がするが…
>>472 成る程、ディケイドでのゼロ魔の世界か。
ユウスケがディケイドでのクウガであるように。
電王だけ電王の世界のまんまなんだよなwww士役の井上の兄ちゃんは電王が好きだったから嬉しかったらしいけど。
第55話
大怪鳥空中戦!! (前編)
始祖怪鳥 テロチルス 登場!
長い夜が明けて、翌日、一行は帰りにまた必ず立ち寄ることを約束し、タルブ村を旅立った。
ラ・ロシュールはタルブ村から三時間ほどかけて山を越えたところにある港町だった。人口はおよそ三百人ほど、
街としての規模では大きなものではないが、港町だということで、常にその一〇倍以上はある人数でにぎわっている。
だけれど、ここにたどり着いたときに才人が得た感想はそういうことではなかった。
「山の中にある港町なんて、初めて見たぜ」
見渡す限り、町の周囲は切り立った山肌で覆われていて、海の姿などはどこにも見えない。それもそのはず、
ここは風石によって浮遊する空中船のための港であり、古代の世界樹と呼ばれていたらしい数百メートルはある
巨大な枯れ木を桟橋代わりにした、役割としては空港に近いものだったからだ。
一時期は、アルビオン王党派とレコン・キスタの戦争で出港数が減っていたが、今はまた行き来する回数も増えて
町は非常なにぎわいを見せている。一行は、そんな活気のある街中を潜り抜け、港湾事務所でちょうどこれから
出航する予定の客船の切符を七人分買った。
「家族割りとか団体割引とかありゃいいんだけどな」
料金は一人当たり四〇エキュー、全員合わせて二八〇エキューで、才人のぶんはルイズが、アイのぶんはロングビルが
出して、シエスタのぶんは旅行中の貴族三人の世話代としてルイズ、キュルケ、タバサが少しずつ持っていたのだが、
片道だけでのこの料金の高額さに、いいかげんこちらの世界の金銭感覚も身についてきていた才人は、どうにも
居心地の悪さを感じていた。ちなみに、平民の一年間の生活費は平均一二〇エキューほどである。
「なに? その家族ワリとか団体ワリビキとかって?」
平然とした様子で金貨で支払いをしていたルイズが、聞きなれない単語を聞きつけてたずねてきた。
「家族でとか、一定以上の人数で買い物をすると料金が安くなるシステムのことさ。他にも、特定の曜日とか、
ある数字のつく日には安売りをするってサービスもあったな」
旅行会社のCMや、スーパーやレンタルビデオのポイント制など、地球では客寄せのために様々なシステムが
ちまたにあふれていたが、ハルケギニアではまだ経済そのものが未成熟なようで、同じものでも店によって
金額が大幅に違ったり、法外な値段がまかり通っていたりとけっこう苦労したものだったが、どうやら上級貴族の
ご令嬢であるルイズにはよく伝わらなかったようだった。
「へーえ、で、それがなんなの?」
「なんなのって……そりゃお前、どうせ買うなら安いほうがいいだろ。そういうシステムがあれば、もっと安く船に
乗れるのにって思ったんだが」
「はーあ、平民はこれだからね。いいこと、貴族はそんなさもしいことはしないで、常に最高のものを求めるの、
わずかばかりのお金にこだわるなんて、ほんと恥ずかしいったらないわ」
胸を張って、貴族のあるべき姿というやつを講釈するルイズだったが、才人は大きくため息をついただけで
肯定も否定もしなかった。いや、返事をする気も失せていたというほうが正解だろう。わずかばかりの金だと
偉そうに言うが、それだけあれば何日食っていけるか、そういえば前にギーシュの家は戦場で見栄を張って
目立つために、いまや借金まみれで成り上がりのクルデンホルフに頭が上がらないと聞いたことがあった気が
するが、なるほど実例が目の前にいるとよくわかる。しかも、こちらは後ろ盾の財源がギーシュなどに比べて
莫大であるために、金と湯水の区別がついていない上に悪意がないのでなお性質が悪い。
テロチルスとはまた強いんだか弱いんだか分かりづらいものを支援
けれど、才人が返事をしないのを肯定だと受け取ったのか、ルイズはさらに自信を増して、傲然といえるほどに
居丈高に才人に命令してきた。
「いいこと、あんたもこのわたしの使い魔なら、そんなつまらないことは考えないで、もっと優雅にふるまうことでも
考えていなさい」
どうも久しぶりに、ルイズにはじめて会ったとき以来の胸のむかつきが蘇ってくるのを才人は感じていた。
価値観がまったく違うゆえのすれ違いはこれまでもあった。ただしルイズなりの譲れない矜持に関わるものには
才人もある程度の理解を示せていたが、こればかりは一パーセントも同調できない。
「なによ、なんか文句があるの?」
本人には自覚はないだろうが、貴族の傲慢さをそのまま表に出して命じてくるルイズに対して、才人は言い返そうか、
それとも形だけは従って要領よく済ませようかと考えたが、彼と同じように顔をしかめているロングビルとシエスタの
顔が目に入って意を決した。
「優雅、ね。別に、お前がどうふるまおうと勝手だが、その金はお前が汗水垂らして稼いだ金じゃないだろ。
それで優雅な生活をしようなんて、ねえ」
「……っ! な、なによ。わたしがわたしのお小遣いでどうしようと当然のことでしょ」
「ああ、そりゃお前のお父さんやお母さんが頑張って領地の人たちのために働いて、収めてもらった税金だろ。
お前の両親が使うなら当然だけど、お前何もしてないじゃん」
「……っ!」
ルイズは何も言い返せずに沈黙した。効果的な反論など、できるはずもなかった。才人とても、洗濯やら
掃除やらの雑用をこなして毎日を食わせてもらっている身分だから、今のルイズに対して遠慮する気は
まったくなく、的確にルイズの急所を射抜く言葉を放っていった。
「もし、お前のお母さんに、働かずに優雅な生活をしたい、とか言ったらなんて言われるかね」
それが、とどめになった。特に深く考えなくても、あのカリーヌにそんなことを言えば、どういう反応が返って
くるかは目に見えているからだ。ルイズは悔しさと恥ずかしさのあまりに顔を赤く染めて、脂汗を流してうなだれている。
けれど、才人はまだ言いたいことはあったが、それ以上ネチネチ言うのはやめておいた。説教など柄ではないし、
今回はとりあえずルイズに、まだ自分が両親の背中に背負われていて、乳母車の上からドレスを着てパーティに
出ようとしていることを思い知らせれば十分だった。シエスタとロングビルもすっきりしたようだし、逆ギレされても
面倒なので、ざまあみろ程度で引き下がっておこう。
けれども、そう思った矢先にルイズはいきなり自分の財布を全額才人に押し付けてきた。当然才人は何を
するんだと押し返そうとするが、ルイズは強引に財布を押し付けて怒鳴った。
「その財布は、あんたが持ってなさい!! あたしが持ってると、その……無駄遣いしちゃうから……だけど!
勘違いするんじゃないわよ! 万一にも帰りの旅費が無くなっちゃわないように、それまで、預けとくだけだから、
あんたを信頼して渡すとか、そういうんじゃないからね!!」
「……了解」
財布をパーカーの内ポケットにしまいこみ、才人はそれっきりそっぽを向いてしまったルイズを見て苦笑した。
まったく、理解力は充分に備わっているはずなのに、表現が不器用だったらない。だがそれでも、お金の
大事さを少しでも理解してくれたならそれでいい。なお、キュルケも今だ親に食わせてもらっている身分には
違いないので、今回ばかりは他人事とは思えずに、化粧する回数を減らそうかなとひそかに考えていた。
その後、一行はのんびりとレリアに用意してもらったブドウジュースなどを飲みながら乗船時間を待っていたが、
やがて荷役用のドラゴンを使ったコンベアで空中を運ばれて、馬車ごと一隻の大型客船に収容された。
「でっかい船だなあ」
才人は乗り込んだ大型船の甲板を見渡して感嘆とした。姿かたちこそ中世的なガレオン型の帆船だが、
全長一五〇メイル、全幅二〇メイル、四本マストの威容は自分がボトルシップの中に紛れ込んでしまったように思える。
「ふふーん、それは当然よ。この『ダンケルク』はトリステインの誇る最大の豪華客船だもの! 本当ならあんた
みたいな平民は、最下層の船底でネズミ退治しながらでもやっと乗れるかどうかってとこなのよ」
ルイズの鼻高々な自慢話も今回は素直に聞けてしまう。無駄なく作りこまれた船体構造と、美しく飾り付けられた
装飾や、船首の女神像などはド素人の才人でもかっこいいとしか表現できない。収容能力も乗客を馬車ごと
積み込めることから、いわゆるカーフェリーの機能も有していると見え、さらにシルフィードなどの大型使い魔も
世話する施設もある。なんとまあファンタジーの世界もたいしたものではないか。
が、そうして才人の尊敬する眼差しを気持ちよさそうに受け止めていたルイズを、キュルケの一言がしたたかに
打ちのめした。
「そりゃ当然よ。だってこの船は元々ゲルマニアで建造された客船『シャルンホルスト』をトリステインが
買い取ったものですもの、出来がいいのは当然よ」
「な、なんですって……?」
「あら? 知らなかったの、冷静に考えてごらんなさいよ。トリステインにこんな大船を建造できる技術があるはず
ないじゃない。入れ物だけもらって飾り立てはしたみたいだけど、やっぱ素材がよくないとねえ」
ルイズの機嫌が目に見えて悪くなっていくのを、才人はペギラのせいで凍り付いていく東京の風景のように見て、
ここで爆発でも起こされて退船を命じられては大変と、話題を変えることにした。
「まあまあ、ところでロングビルさん、俺達の船室は?」
「あっ、それならデッキ下の二等船室を三部屋取ってありますから、お好きなときにお休みになってください」
しかし、それがなおルイズの機嫌を悪くすることになった。
「二等船室? わたし達は中流貴族なんかじゃないのよ、なんで一等船室をとらなかったのよ」
ラ・ヴァリエールのルイズは、当然一等船室が与えられるものと思っていたが、それと比べるとかなり風格の
落ちる二等船室には我慢できないようだった。さっきのことがあったばかりだが、やはり身についた習慣は
そう簡単には変われないようだ。もっとも、二等でも一流ホテル並みの様式はあるし、料金も平民が数ヶ月は
遊んで暮らせるだけはあるのだが。
「はぁ、それが実は一等船室は全部貸切状態でして、申し訳ありません」
「貸切? このご時世にどこの金持ちだか知らないけど豪勢なものね」
自分のことはすっかり棚に上げてえらそうに弾劾するルイズの姿を、キュルケやシエスタなどはおかしそうに
見ていたが、急にその一等船室のあるマスト直下のトップデッキから聞きなれた声がして、一同はそろって振り返った。
「ん? 聞きなれた声がすると思えば、ラ・ヴァリエール嬢にサイトではないか」
「おお、本当だ。おーい、ルイズ、ぼくのルイズ」
そこにいた、青髪の女騎士と、口ひげを生やした長身の貴族を見て才人とルイズは目を丸くした。
「ミシェルさん」
「ワルドさま!」
なんと、ここでこの二人と会うとは思っていなかった一行は、お互いに顔をつき合わせて驚きあった。
話を聞いてみたら、先日話したアルビオンへの特使としてこれから王党派の元へと向かう途中だという、
一行はそういえばそんなことを言っていたなと思ったが、まさか同じ船に乗り合わせるとは予想外だった。
「また会いましたねミシェルさん、お元気でしたか」
「おかげさまでな、今じゃ銃士隊は入隊希望者続出で大忙しさ。どうだ、お前も入ってみる気になったか」
すでに気心の知れた仲である二人は、王女の魔法学院来訪以来の再会を素直に喜び合っていた。だが、
その一方でルイズとワルドは。
「ワルドさま、少しおやつれになりましたか?」
「ああ……あの怪獣との戦い以来、君のお母様が教官についてくれてね。【『烈風』カリンの短期修行コース・
初級編】というのをやらされていて、連日オーク鬼の巣に放り込まれたり、素手でコボルドと戦わされたり、
目隠しして弓矢や魔法を避けさせられたりと、しかもそれが精々基礎体力作りだっていうんだから、せっかくの
一等船室でも疲れがなかなかとれないよ」
肉がげっそりと落ちたワルドの姿を見て、一行は『烈風』カリンは現在でも絶好調だと確信した。今頃は
残ったグリフォン隊の隊員たちがしごかれているだろう。『烈風』、いまだ衰えず。
こうして、思いもかけない再会を果たした一行を乗せた『ダンケルク』号はラ・ロシュールを出航した。
目指すはまだ見ぬ北の国、帆を揚げろ! 取り舵一五度! とぉーりかーじぃ!! 船乗り達の勇壮な叫びが青空に
吸い込まれていく。そこで待つものは何か?
速度を上げて、浮遊大陸アルビオンのある北の空に飛び去っていく『ダンケルク』号の姿は、遠くタルブ村
からも一望できていた。
「行きましたわね。私たちの子供達が……」
村はずれの、ガンクルセイダーを収めた寺院のそばの墓地から、レリアは娘の乗っているであろう船を
見送っていた。この墓地には、彼女の祖父、佐々木が今は眠っている。そこへ、木陰から青いローブを
まとって姿を隠した長身の人物が現れた。
「すまなかったなレリア、面倒な役目を押し付けてしまって」
「いいえ、ようやくずっと話したくて話したくてうずうずしていたことをしゃべれたんですもの、楽しかったですわ。
けど、あなたの娘にくらいはご自分でお話すればよかったのではなくて?」
レリアに、誰もいませんよと呼びかけられると、その人物はローブのフードを脱いで、長く伸びた桃色の
ブロンドの髪を頭の後ろでまとめて、鋭いながらも今は穏やかな光をたたえた素顔をさらした。
「こんな恥ずかしいこと、面と向かって言えるわけがあるまい。それに、子供に甘い顔は見せられん」
「あらあ、娘が宮廷に上がるときには始終使い魔をそばで見張らせて、魔法学院に入学してからも、うちに
来るたびに心配だ、心配だとうわごとのように言っていた人が甘くないですって?」
「うっ……ぜ、絶対にそのことはあの子には言ってはいかぬぞ」
「あらあら、最近の貴族様は、人にものを頼むときの態度もご理解してはいらっしゃらないのかしら?
それなら、軽薄な平民のお口はかるーくなってしまうかもしれませんわね」
思いっきりにこやかに、しかし目だけは全然笑っていない作り笑顔をレリアに向けられて、彼女はシエスタに
胸の大きさでやり込められたときのルイズのような表情を一瞬浮かべると、仕方なさげに、いないはずの
人の目を改めて確認して頭を下げた。
「お願いします。このことはどうか内密にしてくださいませ」
「よろしい。よくできました」
もし、誰かがこの光景を見ていたとしたら、自らの目を疑ったことは疑いようもないだろう。それほどに、
今一平民に頭を下げている人物の一般的なイメージは強烈なのだ。
けれど、貴族に思いっきり卑屈な態度をとらせたことで、いたずらにも充分満足したレリアは再び空のかなたの
船に目を向けると、感慨深げにつぶやいた。
「それにしても、二日前に急にあなたがここにいらして、突然娘がそちらに行くから、あのときのことを話して
やれと言ってきたときには驚きましたよ。なにか、あったんですか?」
「……お前も薄々は気づいているだろう。今、この国は……いや、ハルケギニアは激動の時代を迎えようと
している。ヤプールの襲来以来、凶暴化する亜人たち、どこからともなく現れる異形の者たち」
「ええ、まるで三〇年前のときのように、この世界中がなろうとしているのかもしれません」
国を問わずに巨大な怪物が現れ、侵略者の手先が跳梁跋扈する。すでに、このタルブ村もコボルドの群れに
襲われ、平穏な場所ではなくなっている今、レリアにも時代の変化は十二分に感じられていた。
「そんななか、私の娘が召喚した使い魔が、ササキやアスカと同じ黒い目と髪を持つ少年だったことは、
もはや単なる運命のいたずらとは思えない。これから、あの子の存在がこの世界の存亡に関わってくると
思ったのは、考えすぎだろうか」
「いいえ、私も、あの少年がガンクルセイダーを簡単に動かしたときは、アスカさんが戻ってきたのかと
思いましたもの。そこに、また私の娘も関わってくるなんて、よほど縁があるんでしょうね」
「だからな、あの子たちが運命に飲み込まれてしまう前に、私から託せるものは全部与えてやりたいと思うのだ」
「親バカですわね」
「お互いにな」
顔を見合わせて微笑みあう二人の顔は、貴族でも平民でも、ましてや戦士でも農婦でもない、ただの母親の顔だった。
やがて、彼女たちの血を分けた子供たちを乗せた船は、ゆっくりと遠くの山のかなたへとその姿を消していく。
その旅路の先に、何が待っているのかは神ならぬ彼女たちには知りようもない。しかし、一人の人の親として
願うのは、ただ無事に帰ってきてくれということだけ。
そして、空の果てへと消えていく船影を最後に望み、二人は静かにつぶやいた。
「娘をよろしく頼みますよ、異世界の少年……今度は、我らの子供たちが往く……」
…………
けれども、当の異世界の少年は、そんな母親たちの期待とは裏腹に、おのぼりさん全開で豪華客船『ダンケルク』号の
乗り心地を楽しんでいた。
「いやあ、いい眺めだなあ」
当初乗船料金の高さに遠慮していたが、いざ乗ってみると甲板から下界を眺める風景はまさに絶景だった。
昔修学旅行で九州へ行ったときに乗ったジャンボから見た風景とはまた別の趣がある。そんな彼の隣には、
ミシェルが並んで手すりに腕を置き、常は見せない穏やかな顔をしていた。
「はっはっは、田舎者まるだしだぞサイト、もっとしゃきんとしろ、仮にも公爵令嬢の使い魔だろう」
「いんですよ、そんなもの。使い魔はしゃあないとしても、俺は奴隷でも下男でもないんだから」
実際、才人はルイズに仕えてはいるが、才人もルイズに保護されているということを自覚しているので、
二人の関係は初期のいがみあったものから、今では表面上はともかく二人の信頼関係は相当なものといっていいだろう。
「ふむ、しかし平民のお前が貴族たちばかりの中で、よくそんなに自由にしていられるな」
「そうでもないよ。ま、最初は大変だったけど、付き合ってみたら貴族の中にもいい奴はいっぱいいるし、王女様も
優しい人だし、今じゃトリステインもけっこういい国だと思ってるよ」
「そうか、トリステインがいい国か……」
なぜか自分の国がほめられたというのに、ミシェルは表情にかげりを浮かべていた。才人はそれを、船酔い
でもしたのかなと気楽に思っていたが、彼女は遠くの空を寂しげに眺めながら、軽く息をついて語りだした。
「なあサイト……私は今でこそ銃士隊の副隊長なんて職務を預かっているが、数年前まではそれはひどい
暮らしをしていてな。それこそ、生きるためにはなんでもやったものさ」
じっと、才人はミシェルの昔話に耳を傾けた。
「幼い頃に、それなりに裕福だった実家が没落して、後は天涯孤独、父の昔の友人が後見人になってくれる
までは、それこそ今日を生きるのが精一杯だった」
「……」
ぽつりぽつりと、懐かしさとは程遠い思い出を語るミシェルに、才人はなぐさめの言葉をかけはしなかった。
このハルケギニアでは、そのぐらいの境遇は珍しくないし、彼女もそれを求めてはいないとわかっていたからだ。
「人買いの元を転々としたこともあったし、売られた屋敷から着の身着のままで逃げ出したこともある。
盗みも騙しも殺しも、あのころの私は人間ですらなかった」
アイの境遇と似ているなと、才人は心の中で二人を重ね合わせた。両親を失ったアイは幸いにも、
ミラクル星人やロングビルという引き取り手にめぐり合えたが、全体からすればほんの一部なのだろう。
「それで、今になって思うことがあるんだ。こんな悪党がのさばり、平気で安穏とすごし続ける国とは、
いったいなんなんだろうって」
「でも、お姫様はそんな国を変えようとしていますよ」
才人は政治のことはよくわからないが、先日魔法学院でアンリエッタが見せた手腕だけでも、彼女が
非凡な才覚の持ち主だということはわかる。
「ああ、確かにこの国は変わりつつある。けれど、いつまでも姫様が統治していられるというわけでも
あるまい。今アルビオンで反乱を起こしているレコン・キスタというのは、王族によらずして、政治を
おこなう改革をハルケギニア全土に広め、エルフから聖地を奪還することを目指しているそうだ、
私は立場上、彼らと戦わねばならないが、王権から脱した新しい政治体制には興味を引かれなくも
ない……お前はどう思う?」
そう言われては、政治に興味がなくても返答しなければならない。正直、社会科の成績はあまり
よくなかったが、あごに手を当てて考える仕草を数秒見せた後、才人は自分なりの考えを披露した。
「……少なくとも、トリステインには必要ないんじゃないかな」
「なぜだ?」
「俺も、ルイズからざっと聞いたことがあるけど、レコン・キスタって言ってみれば、『王様になりたい奴ら
連合軍』だろ。聖地がどうたらこうたら以外には、別段これといった改革も聞きゃしないし、第一平民の
ほとんどはそんなこと望んでないよ」
国民の中に現体制への不平不満を持つ者はそれはいる。しかし、それは地球でもどこの国でも
同じであり、日本、アメリカ、ヨーロッパ、孤児もこじきもなく政権に不満を持たれない国家など存在しない。
才人が比較対照にしたのは、中学の授業で出たフランス革命だったが、重税に耐えかねた民衆が
自発的に起こした革命とは明らかに様相が違う。それに、無理に共和制にしなくても、地球にだって
まだ王国は数多く残っている。
「そんな、単なる王様のとっかえっこごっこをしたところで、今よりよくなるとは思えないしね。むしろ、
能力があれば平民でもどんどん取り入れられていくっていう、ゲルマニアのほうがいいんじゃないか?」
それは才人の率直な意見だった。今あるものが悪いからといって、新しいものがそれよりよいものだと
いう保障などはどこにもなく、それは願望という色眼鏡をかけて見える虚像に過ぎない。
「だが、アンリエッタ姫の退位後、また政治が乱れたらどうする?」
「そんときは、あらためて革命だのなんだの起こせばいい。どっちみち、いいことでも押し付けられた
ことは、定着しやしないよ」
他者から押し付けられた秩序には必ず反発が来る。仮に、宇宙から地球人よりはるかに優れた
宇宙人がやってきて、「愚かな人間を、我らが統治して永遠の平和と完璧な秩序を与えてやろう」と、
言ってきたとして、それはすばらしいと諸手を上げて受け入れるだろうか? 答えは簡単、余計なお世話と
言うだけだ。たとえ善意でも、押し付けではそれは侵略と変わりない。明治維新、アメリカ独立など、
どれもきっかけは外圧だが、当事者たちが自発的に起こした結果である。
「で、俺の結論だけど、今のトリステインに革命は必要ない。少なくとも当分は」
「それでも、今のトリステインには自らの利権ばかりを求める薄汚い奴らが大勢いる。お前はそれらを
なんとかしたいとは思わないのか?」
「そりゃ、俺も嫌いな奴はいるよ。けど、毛虫がついたからって木を切り倒しては、若木を植えなおしても
実が生るまですごい年月が必要になる。面倒でも、ついた虫を駆除していかないと、やってくる小鳥まで
迷惑する。木を植えなおすのは、木自体が老いて倒れたときでいい」
我ながら下手な比喩だと思うが、ミシェルの言う国を手術して一気に治す方法に対して、才人は投薬や
リハビリで長期的に治す方法を提示してみせた。だがそれ以上に、才人はハルケギニアを手術しようと
しているというレコン・キスタという医者が信用できなかった。国を食いつぶす寄生虫を追い出したとしても、
後に戦争好きのガン細胞が住み着いては迷惑この上ない。
才人は言いたいことをしゃべり終わると、彼にその問題を出した相手の顔をのぞき見たが、その顔色が
彼女の髪の色にも似て青白く見えて、自分がとんでもなく愚かなことをしゃべったのではと急に不安に
なって、慌てて説明を求めた。
「あの、俺なんか変なこと言いましたか?」
すると、ミシェルは残念そうに目じりを落とし、作り笑顔で答えた。
「いや、お前も貴族に虐げられている身分だから、反王制の革命を望んでいるかと思ったのだがな。
正直、私にとっても色々と考えさせられることがあって、有意義な話だった。だが、お前は平民のくせに
ずいぶんと博識だな、その歳でもう政治評論ができるとは」
「まあ、俺の国じゃ誰でも一応は学校に行けたから、それくらいはね」
そこだけは誇らしげに才人は語った。
「なるほど、お前はずいぶんと住みいい国にいたみたいだな」
「そうでもないさ」
それも、才人にとって偽らざる本心だった。住めば都というわけではないが、地球を懐かしいとは思うが、
トリステインに比べて天国だったなどとは思わない。どちらも所詮人間が集まったものである以上、
自然破壊やすさんだ人間の心など、問題は数多い。
正時またぐから最後まで行けるか? 支援
「それよりも、なんでそんな話を俺に?」
「……そうだな、そういえばなぜだろう?」
「はぁ?」
ミシェルが本気で不思議そうに首をひねるので、逆に才人のほうが面食らってしまった。
「強いて言えば、これから重大事に臨むにあたって、誰か信頼できる人物に愚痴を聞いてもらいたかった……
サイト、お前だからかな」
「えっ!?」
そのとき、気恥ずかしげに微笑んだミシェルの顔が、やけに可愛らしく見えたので、才人は思わず
息を呑んで、その顔を失礼にもしげしげと見回したのだが、彼の心臓が下手なダンスを踊りだすころには、
彼女はすでにいつもの人を寄せ付けない孤独な表情に戻って、空の果てに視線を差し向けていた。
気のせいだよな……才人は意味もなく高鳴った鼓動を抑えながら、一瞬持ち上がった考えをありえないと
脳内のダストシュートに放り込んだ。ミシェルの見る空の先には、いったい何があるのだろうか……
アルビオンは、まだ影も形も見えない。
そこへ風魔法を使った船内放送が流れてきた。
"ただ今より、トリステイン・ゲルマニア・アルビオン連合護衛艦隊が合流します。一般のお客様方に
つきましては、航海の安全を保障するものですので、どうかご安心ください"
甲板から身を乗り出して見ると、『ダンケルク』に追いつくように、多数の砲門を構えた戦闘用帆船が何隻も追走してくる。
「なんだあ? あの艦隊は」
「なんだ、知らないのか? このところ、アルビオン航路の船が何隻も消息を絶つ事件が相次いでいてな、
戦争に便乗した空賊の仕業とする説が強くて、こうして厳重に防備しているってわけさ。なにせ、乗せている
ものは我々だけでなくて、王党派への膨大な物資もある。同盟締結を望むゲルマニアも念を入れて艦艇を
派遣してきているくらいだ、見ろ」
ミシェルの指差した先には、中型の船体に外からでもよくわかるくらいに大きな砲を無理に取り付けた、
ややアンバランスな印象を受ける艦が飛行しており、彼女はそれらも合わせて艦隊の概要をざっと説明してくれた。
まず、前述の二隻はゲルマニアの砲艦『メッテルニヒ』『タレーラン』といい、小型でありながらその火力は戦列艦に
匹敵するという。
別のほうを見渡せば、護衛艦隊にはトリステイン空軍の四隻の巡洋艦と、その後ろには戦列艦並の船体の
艦首から中央にかけてだけ砲門を揃え、艦尾側には竜騎士を搭載するスペースを備えた奇妙な艦、今度実戦配備
されることになる新鋭の『竜母艦』という艦種の実験艦、無理矢理艦種を定めるならば『戦列竜母艦』とでもいうべき
恐らく最初で最後の一隻になるであろう孤高の、『ガリアデス』が巨影を浮かべ、さらにその艦隊先頭には、
アルビオン王国が今回の使節への礼として送り込んできた大型戦艦『リバティー』がその堂々たる威容を浮かべている。
これらの艦隊が『ダンケルク』号をはじめ、貨物船『マリー・ガラント』『ワールウィンド』『ラングレー』を
囲んで堂々たる輪形陣を組んでいた。
しえーん
「大艦隊だな」
単純に感想を述べた才人は、漠然とだが、この同盟にトリステインや他の国がどれだけ注目しているかを
感じた。もしこの同盟が正式に締結できればレコン・キスタに対して各国連合軍は圧倒的な戦力で挑むことが
できるが、万一失敗すれば、孤軍で戦っている王党派に対してレコン・キスタにも勝ち目が出て、アルビオンが
制圧されてしまう恐れがある。
「まあ、これだけの護衛がついていれば空賊など恐れるに足るまい。安心しておけ」
「ああ」
特に考えもなく答えた才人だったが、その言葉ほどには安心してはいなかった。何か根拠があったわけでは
ないが、何かこの先から漂ってくる風にはいい感じがしない。杞憂であればよいのだが……
しかし、悪い予感というものは往々にしてよく当たり、それは空賊などという生半可なものではなかった。
「敵襲ーっ!!」
陸地から洋上へ艦隊が出たとたん、けたたましい鐘の音とともに響いてきた声に、才人たちは船室から
メインデッキに駆け上り、そこで護衛艦隊の砲火を悠然とかわしながら飛んでいる巨大な鳥の姿を見た。
「巡洋艦『トロンプ』大破! 墜落していきます!」
その巨鳥の体当たりを受けて、船体の半分を失って沈んでいく帆走巡洋艦の姿を、一行は呆然と
見つめていた。そいつは、あの『烈風』カリンのラルゲユウスにも匹敵する巨体を持ち、真っ赤な頭と鋭い
くちばしを持った姿は、伝説のロック鳥を思わせる。そんな悪夢のような存在が今、甲高い鳴き声をあげながら、
撃沈した船の乗組員をついばんでいた。
「始祖怪鳥、テロチルス……多発する遭難の原因はこいつだったのか!?」
巡洋艦を体当たりで沈めながら、かすり傷ひとつ負わずに飛び続ける巨影を間近に見て、才人はこれなら
空賊のほうが百倍よかったと、会った事もない空賊たちに何で来てくれなかったのかと理不尽な怒りを向けた。
かつて帰ってきたウルトラマンでさえ一度はとり逃した、白亜紀に生息していた凶暴な肉食の翼竜……
空中戦においては絶大な戦闘力を誇り、MATの主力戦闘機マットアローもまったく歯が立たなかった。
ましてや、球形の砲弾を撃ちだすしかできないこの艦隊の火力など考えるにも及ばない。
「サイト!」
「ああ、テロチルス相手じゃこの艦隊の武装じゃ歯がたたねえ!」
見ると、テロチルスは艦隊の砲撃を意に介さずに、悠然と艦隊の前面に回りこもうとしている。戦艦
『リバティー』が大口径砲での攻撃をかけているが、テロチルスは新マンのスペシウム光線さえ跳ね返した
相手だ、そんなもので撃墜できるはずがない。戦列竜母艦『ガリアデス』からも竜騎士が緊急発進しているが、
速度が違いすぎて追いつくことさえできず、逆に追い詰められてぺろりと平らげられてしまう始末だ。
今、この艦隊を全滅から救えるのは自分達しかいないと、才人とルイズは無言で視線を合わせた。
しかし、そうしているうちにもテロチルスの攻撃は続く。
"上甲板のお客様! 危険ですからすみやかに船内へご避難ください、大丈夫です。本船は強力な
護衛艦隊が防御しています。必ずや敵を撃退してくれますので、どうか落ち着いてご避難ください!"
ぜんぜん大丈夫ではない。才人はそういえば昔見た何かの映画でも、絶対大丈夫とかえらそうなことを
ぬかしていた割には、あっさり空賊に用心棒を撃ち落されて拿捕された豪華客船があったなと思い出した。
>かつて帰ってきたウルトラマンでさえ
>新マンのスペシウム光線さえ
確か以前の話でジャックって呼んでたような気がするが、呼び方が一定しないな。
しかし、確かに上甲板にいても振り落とされる危険がある。ここは洋上、貴族なら落ちても『フライ』で
助かるかもしれないが、陸地まで精神力が持つまい。ただし、こちらには別に方法がある。
「タバサ、シルフィードを放しましょう!」
「急ごう」
タバサとキュルケは、急いでシルフィードを解放しようと、使い魔用の檻のほうへと走っていった。
残った面々のうち、ロングビルとシエスタはすでにアイを連れて船室へ避難していき、才人とルイズは
船内への扉の前まで行ったところでUターンして、舷側に走りよった。
「リバティーが、燃えてる……」
テロチルスの攻撃の前には、巨大飛行帆船もまったくの無力だった。これまで堂々たる威容を
見せていた巨大戦艦は、まだ沈んではいないものの、マストの一本をへし折られ、左舷から砲弾の
炸薬の引火によるものと思われる黒煙を噴出している。
さらに、奴はリバティーに体当たりをして離れる際に、またその巨大なくちばしに、何人もの白い
水兵服の人間をくわえていた。
「野郎……もう許しちゃおかねえ!」
必死に手を振りながらテロチルスののどの奥に消えていった人影を見て、ついに才人の怒りも
頂点に達した。
「ルイズ、いいよな!」
「ええ、ここでこの船が沈められたら、ハルケギニア全体が戦禍に飲み込まれる危険もあるわ。
行きましょう!」
そのとき、二人の思いに呼応するように、二人のその手のウルトラリングも輝いた。艦隊前面で
再襲撃の機会を狙っているテロチルスを見据え、その手を上げて、同時に振り下ろす!
「ウルトラ・ターッ……!?」
「きゃあっ!?」
だが、二人の手のひらが重なりかけた瞬間、突如二人を強烈な爆風と衝撃波が襲い、二人は
甲板に叩きつけられてしまった。
「ぐぅぅ……大丈夫かルイズ?」
「なんとかね……それよりも、今のは?」
才人の手を借りて立ち上がったルイズは、船尾方向から真っ赤な光が『ダンケルク』を照らしてくるのを見た。
"弾薬輸送船マリー・ガラント、爆沈!!"
何が起きたのか理解できなかった二人に、明確な答えを与えたのは、右舷にいた砲艦『メッテルニヒ』
から流れてきた放送だった。艦隊の最後尾にいた輸送船、王党派に渡す予定だった大量の火薬を積んでいた
『マリー・ガラント』号は、その全身から火炎を吹き上げながら、目的地を海底へと変えてまっ逆さまに墜落していく。
あれでは、生存者は誰もいるまい。
しかし、二人は燃え盛る『マリー・ガラント』を見て思った。
「なんで!? 怪獣は正面にいるのに」
「まさか……」
そうだ、艦隊の真正面にいるテロチルスが、最後尾にいた『マリー・ガラント』を攻撃できるはずがない。
そして、才人の悪い予感は再び最悪の形で実現することになった。燃え盛る『マリー・ガラント』の断末魔の
炎の中から、テロチルスのものとは違う野太い鳴き声が『ダンケルク』をはじめとする全艦に響き渡ったのだ。
「おい……」
才人は、その声に聞き覚えがあった。忘れもしない、ウルトラマンメビウスが地球に来てあまり経たないころ、
テレビのニュースでは、三三年ぶりに噴火を始めた大熊山のことが報道されていた。はじめこそ、単なる
火山噴火のニュースかと思われていたのだが……
「うそだろ……」
黒煙の中から、その巨体を現す黒い影、真っ赤なとさかと槍のようなくちばし、その下に垂れ下がった毒袋。
輸送船を一撃の体当たりで撃沈させ、なおも恐ろしげな鳴き声とともに飛翔を続ける極彩色の巨鳥。
かつて、二人のウルトラマンを死に追いやった恐るべき空の悪魔が、今そこにいた。
続く
乙。
とうとうエースのあのカンキリみたいな頭が燃える時がやってきたか……。
支援、皆様今週もどうもありがとうございました。
最近はゼロの花嫁に影響されて瀬戸の花嫁を観始めて(というかはまりだして)、いつか人魚の出る話でも
書こうかなと考えてたりします。ほかにもこのスレのSSの影響で見始めたアニメなんかは色々あるので、
私も少しでもこのスレの発展に貢献できるように頑張りたいと思います。
さて、原作ではウェールズ登場のところですが、この作中では王軍が健在で空賊になる必要がないので、登場は
先送りになりました。
今回は政治談話など、やや才人らしくないことをしゃべらせてしまいましたが、原作才人よりもハルケギニア
生活が長いので、そのへんの違いと了解ください。
>>518 すいません、私もそれはけっこう悩んでまして、才人視線で言うときや完全な第三者視点でいうときなど、
少々考えたいと思います。
では、来週は久々にウルトラマンAの登場です。
ウルトラの人乙です。
あの怪獣が来たということはファイアーなフラグがたちましたね。
ウル魔の人乙です。
・・・うわぁ、まさかあの怪獣まで出るとは。
と言う事は今度は二対を相手にですか、どう挑むのか気になります。
次回も楽しみです。
円谷の四月馬鹿ネタで、ぼくらのゾフィー兄さんをミスターファイヤーヘッド呼ばわりしていたアイツか!!
ウル魔の人乙です。
か、勝てるのか?支援がないときついだろうなぁ・・・
次回が気になる。
もの凄く間が空いてしまいました。
多分誰も待ってないでしょうが。
投下予告。
他に予約がないようなので、19:57ぐらいから。
サモン・サーヴァントという事で巨人の星から左門豊作を召喚
プロ野球選手だから体力に関しては問題もなく
洞察力もあって人情もある
ある種理想の使い魔だ
第4話
朝の光と小鳥のさえずりで目が覚めた。
その程度のことで目が覚めたのは、非常に寝にくい環境だったからか。
起き上がって、どうするべきか考える。
――自分自身には、特にすることはない。
が、ルイズにはあるかも知れない。
此処は学校だと、コルベールという教師も言っていた。ならば、授業もあるだろう。
起こしても咎められることはあるまい――休日なら話は別だが。
ルイズが寝ているベッドまで歩いていくと、
肩に触れて、体を揺らす。
「朝だぞ、起きなくて良いのか」
「うーん……あと五分……」
何というか、非常に典型的な「そのまま寝入ってしまう人」のセリフを聞かされて、
彼は一応聞いておくことにした。
「今日は休日ですか?」
「ん……え?んー……違う……けど、まだ早いし……寝るわ……」
「休日じゃないんだな」
それだけ聞くと、彼は空にサッと指を走らせた。
まさに空に文字を描くように、光が指の軌道をなぞって宙に刻まれる。
それを書き終えて、彼が何をしたわけでもないが、淡い光があふれ出して、ルイズを包み込む。
その光はルイズに染み入るようにして消えた。
外見上は何の変化もないが、ルイズが布団に寝そべったまま、きょとんした顔で目をぱっちり開けている。
べつに、淡い光で目が覚めたわけではない。
それで起きるぐらいなら、窓からの光で起きれていただろう。
「……何したの?」
「起こした」
彼女の目は覚めているのは間違いなかった。
彼はそれを確認すると、ルイズから離れていって、部屋のドアノブに手をかける。
「ちょ、ちょっと何処行くのよ?」
外に出ようとしていたのだが、ルイズの呼びかけに振り向く。
――考えて見れば解りそうなものなのだが。
「昨日も言いましたが――他人の身支度を覗くような趣味はないし、常識も弁えてるつもりです」
「え?……いや、まぁ、そうだけど」
「部屋の前に居る」
返事を聞く前に、彼は外に出た。
外に出て、ドアから数歩離れた場所で欠伸を上げる。
やはり、床の上ではろくに眠れはしない。
目が覚めていないわけではないが、少しばかりの疲労感と眠気があった。
まぶたを擦る。
空に、指を動かし始めようとして、近くでドアが開いた音に振り向く。
何処かで見たような気がする女性――少女と言うには、少々違う印象を抱いた。
「……あら、ルイズの使い魔だったかしら?」
「ああ……ええ、昨日は助かりました」
「あら、礼なら昨日言われたと思ったけど?」
「何回言われて困る物でもないだろう」
「それもそうね――へぇ、昨日は夜で良く見えなかったけd」
「何してるかこんの万年発情女ァーッ!」
叫び声が聞こえてきて、女は少しだけ後ろに下がった――居た位置はルイズの部屋の扉の前である。
女が逃れた頃に、ルイズが飛び出てきた。
呼吸を荒立てて、半分ほどだけ整えられた髪や、
ボタンを掛け違えられた服、角度が曲がったマント留めなど、「急いでました」と言われればあっさり信じられる風体である。
「ルイズ、もうちょっと慎みという物を持った方が良いんじゃない?」
「あんたにだけは言われたくないわッ!あんたも何でキュルケなんかと話してるのッ!?」
「……何かまずいことでも?」
「何もないわね」
「大ありよッ!」
「よくわかりません」
ルイズはキュルケというらしい、その女を威嚇でもしているのか、唸りながら睨みつけている。
キュルケはその視線を特に不快な様子も見せず、むしろ笑って受け止めている。
「恋の炎が燃え上がるのは場所を選ばないという事よ」
「場所を選びなさいって言ってるのよ!少なくともわたしの周りでは許さないわ!」
「そんなんだから浮いた話の一つもないんじゃない?」
「そんなもの必要ないわよ!」
「つまんない人生ねー、人生の9割9分を無駄にするようなものよ」
キュルケは冗談にしか聞こえないような台詞を吐いたが、
それは真剣に言っているように聞こえて、どこか恐ろしいものがある。
少なくとも、全くの無表情――別に感情が無いというわけではないが、
特に何の表情も浮かべずに言うものだから、
それを見ているルイズと彼は、少し引いた。
「しかし、こうしてみると――」
キュルケはルイズに向けていた視線を、彼の方に向ける。
何というか、敵意を感じるわけでも、そもそも不快というわけでもないが、
どこか居心地の悪くなるような視線だった。
横で少しばかり黒いオーラを立ち上らせている少女のせいかも知れないが。
「あんまり似合ってないわね」
にやにや――何となくそういう風に感じた――笑いを見て、
彼は少しばかり嘲りの類を読み取った。彼へではなく、ルイズへのものだったが。
かといって、それでどうこう思うほど、ルイズに感情移入はしていない。
「どういう意味よ?」
「そのまんまの意味だけど」
「何が、どう似合ってないのかを聞いてるのよ」
「雰囲気があってない気がするのよねー、
あと背丈にも差があるし、そこの彼の方が魔法使いっぽいわね。むしろルイズって魔法使いぽくないわよね。
それはそうとしてあなたもしかしてメイジ?」
「そんなわけ無いでしょうが!というか、何言ってるのよ!」
「メイジ?――…………いや、違う」
彼の使う『術』のいずれも『魔法』ではない――とは判ぜなかったが、
少なくとも、未開のリージョンであろう此処に彼の扱う術があるとは思えないし、
その逆もまたそう思える。
ならば、彼はメイジ――恐らく、ハルケギニアの術士の事だろうが、それではない。
「今の間は何?」
「メイジではないが、他のことなら出来る」
「他の事?まさか先住とか?」
「だからっ!いつまで話してるのよ!」
至近で叫ばれて、思わず彼は耳を手で覆う。
叫ばれたあとなので無意味になるかと思えたが、普通に頭が少し痛くなったので、そのまま手を当てておく。
間近でないキュルケも眉をしかめるほどなので、相当大きい声だったのかも知れない。
耳がに響くような音が聞こえ続けていていまいち解りづらいが。
片耳がいまいち聞こえない、が、もう片方の耳で声を聞き取ることは出来た。
「別にそれは構わないが……お前ももう少し静かにしてくれ」
「なによ、私がうるさいとでも言うの?」
「否定の余地がないな」
「全くね」
「…………」
何とかして言い返そうとして言葉を探したのか、
或いは単に冷静になって顧みた結果の沈黙か。
どこか遠くで足音や話し声が聞こえてくる。
ここが何処であるのかを彼は思い出して、
出来ればさっさと去りたいという気分が浮かんできた。
「そ、それはそうとキュルケ。人の使い魔に手を出さないでくれる?」
「別にあなたの使い魔に手を出してるわけじゃないけど?」
「じゃあ何だってのよ」
「魅力的な殿方に声をかけてるだけよ。
あなたの使い魔であるかどうかなんてどうでも良いことだと思わない?」
「……魅力……的……?」
聞き慣れない言葉かのように、呟く。
少なくとも、自分に向けられるような言葉ではないと思っていた。
美的感覚が欠如しているわけでなく、単純に彼の周りに居た者達が基準なだけである。
路地裏の医者とか、ニートとか。
つまるところ、比べる相手が悪い――とはいえ。
彼の周りにいた「魅力的」な人物は彼らぐらいであり、逆に彼の「魅力的」の基準もそれらに準ずる。
何とはなしに両手に目を落とす。とくに跡がついていたりはしない。
「……そうか?」
「……そうなの?」
疑問の声が重なって響く。
彼はほぼ同時に言葉を発したルイズの方に目を向けると、彼女も同じようにこちらを見返していた。
「朝っぱらから人前で見つめ合うなんて……召喚したのは昨日じゃなかったかしら?」
「ち、違うわよ!」
「……何が違うんだ?」
その言葉は、本当に、ただ純粋な疑問から放たれたものだったのだが。
言ってしまえば、他にも言葉はあるだろうと、そう思えるほどに状況にそぐわなかった。
どうしようもなく状況に合っているとも言える。
「あら、冗談のつもりだったのに……これはツェルプストーとしては本気を出さなくてはいけな」
「出さなくて良いわよ!というより、そもそも違うってば!あんたも何言ってるのよ!?」
「何かまずいことでも?」
「大いにあるわよ!」
「よくわからないな」
「わからないって……いや、わからないならわからないで良いわ……」
額に手を当てて、うめくようにルイズは言う。
はぁ、と深く息を吐くと暗い表情のまま、キュルケの方に向き直る。
「とにかく、ツェルプストー。
私はあんたみたいに部屋に誰かを連れ込んだりしないの」
「あたしだってそんなことあなたに出来るとは思ってないわよ?」
「だったら黙ってなさいっ!」
そう言う――いや、叫ぶと、ルイズはキュルケを押しのけて、廊下を去っていく。
彼とキュルケはそれを立ちつくして眺めている。
その影が小さくなるほど廊下は長くなかったが、少なくとも細部を捉えられないほど遠くまで行った頃に、
ルイズが立ち止まって、こちらを振り返った。
「ブルー!何してるの!さっさと来なさい!」
「呼ばれてるわよ」
とりたてて感情のこもってない声で言われて、
彼も特に感情を入れずに、聞こえることも期待せずに呟いた。
「……昨日言っていた事、何となく分かった」
「分かってるなら早く行った方が良いわね」
理解した、と言うには少々どうしようもないことなのかも知れないが。
少しばかり知ることが出来た自らの主人の後を、彼は追った。
久しぶりだね。SIEN
「それで、何処に行くんだ?」
「食事よ」
ルイズは大股で歩き、彼は落ち着いて歩いていたが、
先に進んでいく内にその差はそんなに無くなっていた。
食事、彼はこちらに召喚されてから――と言うより、『故郷』に帰ってから一度も食事をしていない。
何度か酒はラッパ飲みしたが。
そう、食事。生きるのに必要な行動である。歩みは止めない、思考をしながら歩き続ける。
「仕事とか換金所のあてはないか?」
「は?何言ってるのよ」
「手持ちがない」
「だからなによ」
「いや、だから手持ちがないんだが」
「よくわからないわ」
「……いや、もう良い」
どうやら、本気で分からないらしい。
貴族がどうこう言っていた気もするが、少なくとも相当な世間知らずであるのは間違いなさそうだった。
――さしあたって重要なのは、手持ちがないと言うことだ。
次いで、収入がないことがまずい。つまるところ食費がないし、住む場所もない。
ルイズの部屋の一角も一時的に借りれているだけに過ぎないだろう。
もしかしたら、使い魔の身分というものはそう言ったあれこれを保証してくれるものなのかも知れないが。
前を行く、自分との比較でなくともちいさい少女を見る。
――つまるところ、そうだとしても、こんな少女に養われるのは、流石に気が引ける。
食事に自分を連れて行くと言うことは、そう言うことなのかも知れないが。
最悪の場合は、それも受け入れるしかないだろうが。
「もしかして、食事の心配をしてるの?そんなの――……あ」
「……はぁ」
少女の上げた声の意味をどうしようもなく理解して、彼はため息をついた。
この少女が今のところ予想を裏切らないことがない。
それに等しく、期待も裏切られているのだが。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「学院だから当たり前では」
「……メイジはほぼ全員が貴族なの」
「貴族じゃないと学費を出せないとかか」
「…………『貴族は魔法をもってその精神となす』のモットーの下、貴族足るべき教育を」
「実力至上なのか血統至上なのかいまいち解らないモットーですね」
「うるさいわねっ!」
彼の右に立つルイズは彼の方を見上げて叫ぶ。
何となく叫ぶのを予測できていた彼は、予め指で右耳を塞いでおいた。
予測していてわざわざ言ったのは、何となく気が立っていたからである。
空腹なのかも知れない。
「いちいち人の言うことに口を突っ込んで!
主人に対する礼儀って者を知らないの!?あんたなんかご飯抜きよ!」
「抜きも何も、用意してないんじゃなかったか?」
「そ、それは……とにかく抜きったら抜きよ!」
ぷいとこちらから視線を放すとルイズは自身の席へと向かっていく。
ルイズに連れられていった食堂の入り口で、彼は立ちつくした。
――通行の邪魔にならないように目立たない場所に移動してはいたが。
無駄なほどの装飾で飾り立てられているテーブルには
更に蝋燭や花、色とりどりの果実が置かれて、
配膳係だろうか、何人ものメイド達が料理ののったトレイを持って、
歓談している生徒達にそれを配っていく。
それらの、景色を見る限り、少なくともA定食だのB定食だのは存在していないことは確かだろう。
仮に手持ちがあったとしても、食事を得ることが出来るかどうか判らない。
恐らく、この食堂は単純に生徒と教師と職員のためにあるものだろうから。
此処で食事を得るには、そのいずれかの立場を得れば良いのだろうが、そのあてはない。
客人でも大丈夫そうだが、少なくとも彼は使い魔という立場らしいし、それも一生徒のだ。
もし仮にルイズが教師か何かなら、恩恵に預かれたかも知れない。
――恥や外聞をかなぐり捨てれば。
ブルーは目を閉じて思い悩む。
すると、脳裏に自分と同じ顔が浮かんできて、笑顔でこうささやきかけた。
『あそこのぽっちゃりにパワースナッチでおk』
『いや、ダメだろそれは』
『――それはつまり、どうせやるなら可愛い女の子が良いと……?』
『もっと違う 』
まさしく自問自答して、どうでもいい答えを捨てる。
残念な気持ちが自分の中に残る。
何故かは解らない――とは言えず、理由が分かるのがより残念な感じがした。
そんな考えすら押さえ込んで、ひとまず目を開ける。
「……おはようございます」
「おはようございます――おや、ミスタ・ルージュ、ここでなにを?」
タイミングが良すぎるような気がしないでもない。
丁度目を開けたときに、眩しい光景が飛び込んできていた。
「コル……ミスタ・コルベール?食事をどうしようかと」
「……すいません、用意するのを忘れてました」
「用意して貰えるのか?」
「客人にもてなしの用意をするのは当然のことでしょう」
「使い魔は客扱いなのか?」
「あなたは人でしょう。
少なくとも、使い魔達……動物たちと同じような食事をさせるわけにはいきません」
「別に貰えればいいんですが、それだって贅沢でしょう」
「腹壊しますよ?多分火も通っていませんし」
「……頼む」
コルベールに連れられて、彼は食堂を横切る。
途中、何人かの疑問と好奇の目と、少しばかりの囁き声が耳に聞こえてくる。
気分の良い物ではない、気にならないと言えば気にならないという程度のものだったが。
見回してみて、その視線の中の一本、その先にルイズが居るのを見て。
彼はなんとなく笑ってしまった。
調理場であろうその場所で、コック帽をかぶった男達と、メイド服を来た女達が動き回っている。
密度としては先ほどの食堂と大差ないように見えるが、全員が止まる事なく忙しなくしているせいか、食堂より窮屈に見えた。
「大分忙しそうに見えるが、大丈夫なのか?」
「うぅむ……確かにそうですね」
「後で出直した方が良さそうですが……」
「構いませんか?」
「抜きになる所だったんだ、それよりは待つ方が良い」
そう言いながらも少し残念な表情を見せて彼は振り返り、コルベールもそれに続こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってくださいッ!?」
その刹那に、声がかかって振り向き直す。
恐らく、というか間違いなく此処で働いているメイドの一人だろう、黒髪の少女が慌てた様子でそこにいた。
「あなたは、シエスタさん……で良かったですかな?」
「あ、はい。なんで知ってるんですか?」
「覚えていただけです。それで、何か用ですか?」
「ミスタ・コルベールがご用があって来られたのではないのですか?」
「はい?あ、ええ、彼の食事を用意して貰おうと思ったのですが。忙しそ――」
「食事一人前ですね。マルトーさーん!」
「なんだー!?」
シエスタというらしいその少女は振り返り、調理場の何処かにいるであろうマルトーという誰かに呼びかける。
慌ただしい調理場ではマルトーが誰なのかは分からなかったが、叫び声は帰ってきた。
「食事一人分追加です!
――失礼しました、暫くお待たせするかも知れませんが、大丈夫でしょうか」
少女はどこか熱の抜けた笑顔でこちらにそう言ってくる。
詰まるところ、仕事での笑いと言うことなのだろうが。
「頼んでから聞くことか?」
「ダメでも捨てる量が少し増えるだけじゃないですか」
「それはそれで問題がないか」
「まぁ、貴族なんてそんな物ですよ、ミスタ・ルージュ」
声に少し視界をずらすと、コルベールが苦笑いを浮かべていた。
その意味するところを、『貴族』という物がない自分の世界の、捏造されたイメージと結びつける。
「贅沢と自慢が好きだと?」
「慣習もですね」
その返しに、少しばかり口端を歪める。
視線を戻すと、シエスタとか言う少女が黙ってこちらを見つめ続けていたのに気付く。
「……ああ、別に待つのは構わない」
「わかりました、それでどちらにお運びすればいいでしょうか」
少女からの質問の答えに悩んで、視線でコルベールに流す。
コルベールは少しの間、考えるように頭に手を当てて、放した。
「食堂に席が在るはずもありませんね……わたしの研究室にきますか? 汚いですけど」
「いいんですか?」
「聞きたいこともありますし」
メイドの少女は会話を聞くと、短い了承の言葉を口にして仕事場へ戻っていく。
それをのんびりと見ていたが、コルベールが隣からいなくなっているのに気付いて、少し慌てて調理場を後にした。
コルベールの研究室は、研究室と言うには少し違う物だった。
学園に来たばかりで場所的な物は良く解らないが、
その研究室は少なくとも独立した建物であった。とはいえ、その規模はあまり大きくなかったが。
あえて言うのなら、研究小屋とでも言うのかも知れない。
そんな言葉があるのかは分からなかったが。
その研究小屋に入って、彼がまず最初にしたことは、顔をしかめることだった。
「掃除したらどうだ?」
「え? 整理はしてますよ?」
彼の言うとおり確かに整理はされていた。
本は棚にきちんとしまわれて、器具の類もちゃんと種類別に置かれているようだ。
ただ、埃や塵がつもり、金くずなどが散乱し、淀んだ空気で窓から差し込む光が目視でき、
それらと、棚に置いてある薬品だろうか、そのあたりの色々と混ざった形容しがたい臭いがこもっている。
「換気は?」
「すると苦情が来るんですよ」
「……贅沢は言えないな」
タンザーや下水とまでは行かないまでも、
思わずそれと比較してしまう程度には酷い。
鳥の鳴き声が聞こえて、思わず身構えてしまったのは、多分そのせいもあるのだろう。
その先にいた鳥は籠に囚われていて、襲いかかれるような状況ではなかったが。
「この前聞いた話では、『火』の研究をしているという話でしたが」
「いえ、勿論私は『火』のメイジですから、本分はそれですが、それだけではありませんよ」
そう言いながら、コルベールは一角にある机の下からイスを二つ引っ張りだすと、
片方のイスに手を向けた。恐らく、座れと言うことだろう。
そこまで歩いていって、椅子に座ると、コルベールに声を掛けた。
「それで、何が聞きたいんだ?話があるという事でしたけど」
コルベールも席に座ると、笑いながら返してきた。
「この前聞かせていただいた話ですが――非常に興味深く、そして有益でした」
「……有益だった?」
話したのは昨日だったはずだが。
それとももう内容を検証したとでも言うのだろうか……と、思ったら、目の下に隈ができていた。
「……睡眠は取った方が良いと思いますよ」
「普段は普通に寝ていますよ?
ええ、非常に有益でした」
何がどう有益だったのか、それを聞こうかと思ったが、
視界の端に何か見のがしてはいけない物があったような気がして、それを見る。
それは何というか――部品というか、分解された重火器と言えば適当だろうか。
「……ミスタ・コルベール?」
「はい、なんでしょう?」
「対装甲ロケット砲が分解されてるように見えるんだが?」
コルベールがとっさにこちらから目を逸らした。
彼から一度視線を逸らして、そこらを見てみると、所々に自分の荷物があった。
幾つかは分解されている――元に戻せるかどうか解らないぐらいに。
「い、いえ、調べたら返そうと思っていたのですが……
戻せなくなったものについては弁償しますので」
「なら、別に構わないが」
正直なところあそこに転がっているようなものは必要のないものばかりだ。
と言うより、このコルベールという男が興味を持ちそうな物のうち、価値が高い物や、危険物は仲間に残していった。
精々が、あのロケットぐらいだろう。
「それはそうと聞きたかったのですが、ミスタ・ルージュ。
あなたが使えるという『術』。実際にはどのような物なのですか?」
そう言われて、前にルイズに問われたときのように悩む。
話を逸らされてる気はしたが、どう言ったものか?
両手を広げて、指を一つ一つ折り曲げたり、或いは伸ばしたりする。
その度に、名前とその説明が頭に浮かび上がる。
それを読み上げる。
「光の力を操る陽術」
「それはどのような――」
「影の力を利用する陰術、アルカナの力を借りる秘術」
「は?あの」
「ルーンの力を引き出す印術、時間を……何か?」
「いえ、多くありませんか?」
「確かに俺が扱える術は普通の術士よりは多い。
――ああ、ここには『魔法』とやらの一つしかないのでしたか?」
会話をしていると、トントンと何かが叩かれる音が聞こえた。
言葉を切って、そちら――ドアの方へを顔を向ける。
「ミスタ・コルベールの研究室はこちらでよろしいでしょうか?」
「はい、此処であってます。鍵は開いてますので、どうぞ」
支援ぬ
立て付けが悪いのか、床と擦れる音がしてドアが開く。
ドアが空いた瞬間その時に、先の少女の姿は無かったが、
すぐにお盆を持った少女の姿が覗く。
部屋に入って、少しばかり顔をしかめたのは気のせいではないのだろう。
それでも、少女は自然に見える笑顔を浮かべて、お盆をこちらに持ってきた。
机の上に置かれたパンの皿を見てから、少女の方を向いて言う。
先ほど食堂で自分たちの相手をした少女だ。
会話を途切れさせられたことに少々の不愉快な気分はあったが、本当にごく僅かだ。
「ごくろうさま」
「え?あ、はい」
何故か少女は驚いたようにして、わたわたとドアへと走っていった。
そして、少し経ってお盆に別の皿を乗せて戻ってきた。
「話の続きをしましょうか」
「えーと……そうですね、『先住』と呼ばれる亜人や幻獣の用いるものもありますが、
私達メイジが扱うのは『魔法』ただ一つです――
いや、『先住』の力を使うことの出来るマジック・アイテムの類も存在しますが」
「俺はただ単に幾つもの術の系統を会得しているだけだ。
とはいえ、術士と呼ばれるような者なら複数の系統の術を会得しているのは普通のことだが」
少女はスープの皿を持ってくると机の空いてる上に置き、再びドアへと小さく走っていく。
机の上のパンに手を伸ばして、それをかじる。
なかなかに美味しいものだと思える。良く解らないが。
「術の系統、ですか?それは『火』や『水』と同じような物なのでしょうか?」
パンを咀嚼して、飲み込む。
質問について考えるが、魔法とやらについての知識を全く持ってないため、
答えられそうにない。だから、質問することにした。
「魔法について何も知らないから何とも言えないな」
「……そうでしたな」
「ただ、違うとは思う。火と水と『土』と『風』だろう?」
「おや?あってますが……言いましたかな?」
「言ってませんが……お約束というか……
とにかく、それらの術――魔法の仕組みは同じ物ではありませんか?」
「たぶんそうです」
「多分?」
「魔法の『なんたるか』、等という研究は主ではありませんし、
場合によっては弾圧さえ受けるのですよ」
「妙な宗教じゃあるまいし」
「事実、そのような扱いですよ。
『始祖の御業たる魔法をそのように使うとはなんたることですか』、と」
何処か遠い目で窓の外を見ながら、コルベールが言う。
やたらイントネーションが具体的だったが、実際に言われたことがあるのかも知れない。
皿からスプーンでスープを掬い上げ、啜る。
「始祖とやらが神ですか」
「そんなものですね」
深く質問しない方が良いのだろうな、これは。
以上です。
なんというか、自分が致命的までに遅い事に気がつきました。
乙です
自分のペースでやれば良いと思いますよ
どうなっていくかが楽しみです
乙。
しかし、コルベールに対する口調が言い切り方なのか敬語なのかハッキリしてほしい。
投下が早いのと遅いのどちらが悪いか…
投下しないことが悪い
乙乙
途中消滅してなかったことが分かっただけでも嬉しいっすよ
投下しなくなると言うならそれはそれで仕方ないと思うが、一言あると助かるんだがなぁ
投下されるのかされないのか分からないまま待つのが一番辛いわ
同感だ
>>542 双子が混ざった状態だから、その演出として曖昧にしてあるんじゃないか?
ゲーム中で混ざった後に曖昧だった箇所はなかったような気もするけど
因みにブルー(ルージュ)のシャドウサーバントは
どっちかの姿を取る
>>547 ヒューズのクレイジー捜査日誌では分裂症とか言われてましたっけねぇ
言われたのは融合前のルージュだけど
>>548 マジでか
初めて知りましたよ
ブルー編のボス戦がいきなりああなってバグかと思った
GJ
シャドウサーバントで片割が出てきたときはマジで燃える
ブルー篇はブルーが強いから楽な方だったなあ
クーン篇は最悪だったがw
ブルー編はなあw とりあえず、時術さえ取得すればずっと俺のターンができるからな。
>>552 最後にレッドでクリアして開発室に行ったらアルカイザーに変身出来なくて涙目だったぜ
ルージュ戦でいきなりルージュが塔使ってきてウーロン茶吹いた記憶がある
ゼロ魔とのクロスでも、『ゼロの使い魔』ではなくクロス先の作品がメインな話になる場合、スレ違いになりますよね。
避難所用SS投下スレも逆召還可だったっけか
どう使い分ければいいのだろうかね
SSであるか否かで区別?
あぁ既に
>>559に書かれてたか
ちょっと吊ってくる・・・
>>559 もしここに作品が投下された場合
ここの作品もまとめwikiに投下でいいの?
あっちで話し合いとかしなくて大丈夫なのかな……。
あと、まとめwikiは投下というより登録じゃない?
>>561 避難所なら逆召喚は可能なの?
俺のIDがグッジョブだw
>>563 別スレだから基本的にダメなんじゃね?
まぁ、その辺は運営議論スレででの話し合いの結果如何だろうけど
基本 別世界→ハルケギニア だよね
小ネタ「虚無使いと少年」みたくルイズが異世界に行くような良作もあるんだし
その辺あんまこまくなくていいんでね?
小ネタだから許されてるんだと思うけどな
571 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 11:45:07 ID:/Ib7DhRo
PARとかも小ネタだからこそ許されているようなネタだろうな
ぎゃー、申し訳ないageてしまいました。
したり顔でageるとかバカ過ぎる、どうみても最後に(キリッ)が入ってるわ……。
まあ個人的には
「するなと言う気はないし、してもかまわないとは思うけど気にする人がいる以上控えたほうが無難」
PARとかも小ネタだからこそ許されているようなネタだろうな(キリッ)
個人的には逆召還ものは話があまり膨らまないような気がする。
小ネタだから許されるというより小ネタにしかなりようがないのではないかと。
小ネタや短編や姉妹スレなんかでは、ルイズが一時的に召喚したキャラの世界に行ってる場合もあるけど、
ほとんどの場合、物語のの閉めに使ってる感じがあるな……
ハルケじゃ得られない概念や技術を学んで帰ってくるとか。
>>576 テイルズ・オブ・ファンタジアのミントさんや東方の紫を召喚したやつはそのパターンだったな。
578 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 13:28:18 ID:sEe6t7Ai
パブリックコメント
「通信・放送の総合的な法体系の在り方<平成20年諮問第14号>答申(案)」に対する意見募集
に、マスコミに対する不満を送れ!
例えば、寄生虫の息のかかっていない政府のTV局を作って、
そこで偏向でないニュースを流すなど。
(1週間に1本作って、それを1週間の間延々と再放送する。
つまり、24×7=168回再放送する)
こんな感じで!
>>576 提督では最後ルイズたちがまとめてイゼルローンに行ったし、男たちのでは事故でルイズが男塾に送られた。
薔薇乙女や水の使い魔では行き来自由だし、ラスボスみたいに他の世界をのぞき見ているのもある。
案外クロス先の世界も含めてからんできてるのは多いぞ。
「例外的な事項としてみれば」という条件でなら多いだろう。
けどあくまでも例外事項の範囲であって、それが常態と思われては困る。
ここで逆召喚ネタでくる勇者はいないか
ギャグ召喚?
スレ違い行為は勇者でもなんでもないだろ
ギャグ?勇者?
つまり魚屋を呼べと?
サモン・サーヴァントで開いたゲートに手を伸ばして、逆にルイズを引きずり込むってのも面白そうだが、
恐ろしく高い技量を要求されそうだな。
流石に手の届く位置にはいないだろw>ルイズ
アニメの描写を見る限りでは好奇心にかられた対象がゲートに手を伸ばすっていう感じだからなぁ
ヨガの人なら手がとどくだろう
>588-589
お前ら・・・
鉄雄・・・・じゃなかった、K9999でもいけるような
ルフィに連れ込まれて気付いたら海賊の一員やるハメになったルイズとか
宇宙忍者ゴームズこと、Mr.ファンタスティックでも可能さっ!
ところでサイコキネシスやトラクタービームなんぞを使用した場合
向こう側から引っ張り込むって出来るんだろうか
>>584 読みてぇ。チャブタイでも良いから読んでみてぇ
ティセもブロッケンもネクロもジョナサン・ジョースターもバルディエルも可能だぜ
ネ実FF11のメンツ・・・ブロントさん、LSブーメランの内藤、糞樽、通風、召喚・・・
うん、想像しただけでもカオスだ
カタストロフは良い作品だった
むしろ王様を召喚しても面白いんじゃねーかと思う程度にはみんなキャラも立っていた
暴動だー!
ビッグボルフォッグだーっ!
というかあの作者の漫画はどいつもこいつもキャラ立ち過ぎ
主人公よりチョイ役のほうがインパクト強いってどうかと思う
アンリエッタもあの姫様をちったぁ見習え・・・・・・いややっぱ止めてお願い
最近見かけないけどどうしてるんだろう?
ちょっと前はスパロボアンソロジー書いてたけど
>>584 何故か某八百屋を思い出したぞ
生粋の突っ込みで鍛えられてるし
戦隊マニアだからかなりきると馬鹿強くなるしデルフ持たしておけばなんとかなりそうだ
問題は戦隊が見れないから自殺しかねないってのと勝手に戦隊を組織しそうなところか……
ハルケギニアで海鮮戦隊シーレンジャー(全員青)とか武士道戦隊ブシレンジャーネタが…
パトレイバーから後藤さんを召喚したら?
>>599 漫画家やめて実家に帰ったらしいよ
ところであの姫様ってどれだ?ファットマンのときのお姫様?
>アンリエッタもあの姫様をちったぁ見習え・
お城もらってご満悦の魔神のことかー
何気にロボモノの引用多かったが、最近になってようやく気付いたネタが多い・・・
MS系は分かったがカメラがATとか自然すぎて分からんわ!!w
小ネタだとハチ召喚だったが
ズック召喚だと江戸っ子気質で貴族への反発凄まじいことになるんだろうな
「この気持ち、まさしく愛だ!」の先駆けの大帝王じゃないダイ・バザール呼んだら
確かにガンダールヴではあるが・・・ズックもゲイツも居ない世界に彼が生きる意味をどれほど見出し動いていけるか・・・
普通に帰るために足掻くんだろうな
王様だったらとりあえず、学長と一緒に熱帯雨林やってる姿だけは明瞭に脳内表示された
「ダークドリームの冒険」の第4話が完成しました。
20:55から投下しようと思いますがかまいませんでしょうか?
かまわんよ
>漫画家やめて実家に帰ったらしいよ
マジすか・・・超ショックだ・・・絶望した・・・
orz
勇者カタストロフと聞いてなぜか松沢夏樹思いだした自分。…なんでだ?
まあいいやもういっそパステリオン+Dアーネ様召喚しようぜ。
テファ以外ふるぼっこにされそうだけどさ!
真面目にやるんだったら華の神剣組から犬崎高丸かなぁ。
よっし支援します。
トリステイン魔法学院に二つの月が優しい光を送り込んでいた。
『アルヴィーズの食堂』の上の階は大きなホールになっている。
そこでは『フリッグの舞踏会』が催されている。
才人はバルコニーの枠にもたれ、華やかな会場をぼんやりと見つめていた。
中では、着飾った生徒や教師達が、豪華な料理が盛られたテーブルの周りで歓談している。
才人は外からバルコニーに続く階段をここまで上ってきて、料理のおこぼれにありつき、ぼんやりと中を眺めているのだった。
バルコニーにはもう一人の『使い魔』がいる。
髪と同じ桃色の服に身を包んだダークドリームが、シエスタが持ってきた肉料理の皿をパクついている。
多分、才人と一緒で、場違いな気がして中に入れないのだろう。
「ダークドリーム、お前って、強かったんだな」
「サイトだって凄いよ。あんな大きなゴーレムを一撃で壊しちゃうなんて」
「あれは、俺の力じゃなくて『破壊の杖』のおかげだよ」
「でも、あれを使えたのはサイトだけだったんでしょ」
「うん、あれは地球の武器だった……、俺も使い方なんか知らなかった。なんとなくわかっちゃったんだよ」
「ふーん。なんでだろ」
「オールド・オスマンは、これのせいだって言ってたけどな」
ダークドリームが見せた『力』は地球人とは思えなかった。
あれも、ルーンのせいなんだろうか?
才人は手の甲に刻まれたルーンを見ると、ワインの瓶に手を伸ばした。
「サイト、さっきから飲んでばっかりだね」
手酌でワインを注ぐ才人を見ながら、ダークドリームは枠に立てかけたデルフリンガーに話しかけた。
「そういう嬢ちゃんは食ってばかりじゃねーか」
「うん、これ、おいしいんだよ」
「しゃーねーな。相棒、あんまり飲むと体に毒だぜ」
相変わらず、口の減らない剣である。だが、根は陽気で楽しい奴なので、今みたいな気分の時は気分がいい。
「あの『破壊の杖』は、地球のものだったんだ。せっかく帰る手がかりが見つかったと思ったのに。
こっちに来ちゃった兵士が持ってて、その人はもう死んだって……思い過ごしだ。これが飲まずにいられるかよ」
さっきまで、綺麗なドレスに身を包んだキュルケとタバサがここにいて、なんやかやと話していたが、パーティが始まると中に入ってしまった。
ホールの中ではキュルケが何人もの男に囲まれて笑っている。
キュルケは才人に後で一緒に踊りましょと言ったが、あの調子では何人待ちになるかわからない。
タバサはテーブルの上の大きなハムやサラダと格闘している。
それぞれにパーティを満喫しているようだ。
>604
ハチ……ハチベエか八兵衛か八五郎か……
ハチベエならハカセとモーちゃんも付いてくるな。
三人纏めて契約して、大冒険の末に稲穂市に帰る『それいけズッコケ使い魔』か……
八兵衛は……アレで結構場慣れしてるしなぁ。
八五郎……「お嬢様てぇへんだてぇへんだ!」と駆け込んで、シェスタも含めて三人で事件を解決……
いや、シェスタいないとハルケギニアの庶民感覚がつかめない。
支援
ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿をあらわした。
門に控えた呼び出しの衛士が、ルイズの到着を告げた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおなーりーー!」
才人は息を飲んだ。ルイズはルイズは長く桃色がかった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティドレスに身を包んでいた。
肘までの長い手袋が、ルイズの高貴さを嫌になるほど演出し、胸元の開いたドレスが、ルイズの小さな顔を、宝石のように輝かせている。
主役が全員揃っている事を確認した学士達が、小さく、流れるような音楽をかなで始めた。
ルイズの周りには、その姿と美貌に驚いた男たちが群がり、さかんにダンスを申し込んでいた。
ホールでは貴族たちが優雅にダンスを踊りはじめた。だが、ルイズは誰の誘いをも断ると、バルコニーに佇む才人に気づき近づいてきた。
ルイズは、酔っ払っている才人とダークドリームの前に立つと、腰に手をやって、首をかしげた。
「楽しんでるみたいね」
「別に……」
才人は眩しすぎるルイズから目をそらした。酔っていて良かったのかもしれない。顔の赤さが気取られない。
「ルイズ、すごく似合ってるね」
ダークドリームが素直に感想を言うと、デルフリンガーが「馬子にも衣装じゃねえか」と茶化す。
「うるさいわね」
ルイズは剣を睨むと、腕を組んで首をかしげた。
「お前は踊らないのか?」
才人が目をそらしたまま言う。
「相手がいないのよ」
ルイズは手を広げた。
「いっぱい誘われてたじゃんかよ!」
才人が言うと、ルイズは答えずに、すっと手を差し伸べた。
「踊ってあげてもよくってよ」
目を逸らし、ルイズは少し照れたように言った。
いきなりのルイズの台詞に才人は戸惑った。いきなり何を言うのだ、と思ったら、照れて仕方なくなった。
「踊ってください…じゃないのか?」
少しの沈黙が流れた。
「いきなよ。サイト」
ダークドリームが小さく背中を押す。
顔を上げた才人とルイズの目があった。
ルイズは軽く笑うと、ドレスの裾を両手で恭しく持ち上げ、膝を曲げて才人に一礼した。
「わたくしと踊ってくださいませんこと、ジェントルマン」
才人はふらふらとルイズの手をとり、ふたりは並んでホールへ向かった。
ごめん、リロードとか忘れてた。支援。
ホールの中では、タバサは一人で黙々と料理と格闘していた。
「あなた、踊らないの?」
燃えるように赤い髪の女性が、そのボリュームたっぷりの肢体の魅力に釣り合う数の男子生徒を引き連れて現れた。
キュルケである。
タバサは親友の方を見ようともせずにコクリと頷いた。
「まったく!今日の主役はフーケを捕まえたこのあたしたちなのよ!なのに、楽しまないでどうするの」
昨日、タバサたちは「土くれのフーケ」と呼ばれる盗賊メイジを捕まえたのである。
その功績により、学院長のオスマンから『今日の主役は君たちじゃ』とお墨付きをもらっている。
「この会場にいる誰より、この舞踏会を楽しむ権利があるって言うのに!
ほら見て御覧なさいな、あの堅物のルイズだって踊ってるわ。相手は自分の使い魔だけど」
キュルケは会場の一角を指差した。
そこでは、桃色の髪の少女と黒髪の少年が頬を染めながら踊っている。
黒髪の少年は不器用なステップを繰り返すが、桃色の髪の少女は文句をつけるでもなく、少年の踊りに合わせて体をゆらしている。
「いいこと、これは親友としての命令よ。とにかく、あなたも、たまには舞踏会を満喫しなさい。
今、あなたのパートナーを探してあげるから、ちょっと待ってなさいな。
それに、あなたの使い魔もね。サイトだけ踊って、あの子は踊らないなんてのは無しよ。」
キュルケはタバサの肩に手を回してそう言うと、人ごみの中に消えた。
その後を、取り巻きの男子が追う。
ふたたび一人になったタバサは、サラダの皿へ手を伸ばした。
そのとき……
舞踏会の喧騒の中、から一羽の伝書フクロウが飛んできた。
灰色のフクロウは、まっすぐタバサの元へやってくると、その肩に止まった。
二つの月がホールに月明かりをおくり、ロウソクの火と混ざって幻想的な雰囲気を醸しだしている。
楽士たちは軽やかな音楽を奏で上げ、色とりどりに着飾った貴族たちがステップを奏でる。
そんな様子をバルコニーから眺めていたデルフリンガーが、こそっと呟いた。
「おでれーた!」
ダークドリームも、今は、料理の皿を置いてぼうっとホールの中を見つめている。
「主人のダンスのパートナーをつとめる使い魔なんてはじめて見たぜ」
踊る相棒とその主人を見ながらおでれーた!を繰り返すデルフリンガーにダークドリームがそっと視線を移す。
「ねえ、デルフ。あなたはいつ作られたの?」
「はあ?」
いきなり真顔で問いかけたダークドリームに、デルフリンガーは気のない返事を返した。
「あなたは、何をするために作られたの?」
「なんだ、嬢ちゃん。変な事を聞くなぁ」
「答えて!」
少しの沈黙が流れた。沈黙を破ったのはデルフリンガーの方だ。
「忘れた……、な……」
「忘れたっ!?」
「随分と昔の話だ……。俺が作られたのがいつかなんて、もう覚えちゃいねえ。
何のために作られたのか……?、何かあったのかも、なかったのかもしれねえ……。
何か理由があって忘れようとしたのかもしれねえ……。でも、そんなことも、全部、忘れちまったよ。」
ダークドリームは呆然と目を見開いてまま、デルフリンガーに問いかける。
「それで、いいの!?」
「さあな。何千年も前の話だしな……」
「だって、作られた目的を果たすのはっ!」
言葉に詰まるダークドリームに、デルフリンガーは優しい声で語りかけた。
「母親から生まれてくる人間や動物にだって、『目的』なんてねえだろ。
俺にも、最初は『目的』なんてもんが、あったのかもしれねえよ。
でも、こちとら寿命なんてもんも、ねえんだ。何千年も『意思』を持ち続けてる。
もう、『目的』を果たしちまったのかも知れねえ。もう、果たせないのかも知れねえ。
『忘れた』ってことは、俺の中で、それが、大した問題じゃなくなったんだよ」
「そ、そんなの……」
「俺は、つい、こないだまではこの世に飽き飽きしてたんだ。
武器屋の中で、いつ来るとも知れない客を待って……買った客はいつか俺を置いて死んじまう。
そして、野盗が俺を見つけて武器屋に売って……その繰り返しだった。
でも、あの相棒は気にいってるぜ。見たことねえよ、あんな使い魔。
そして……、お前さんもな。俺に、『作られた目的』なんて聞いた奴はじめてだぜ」
すっかり黙り込んでしまったダークドリームの顔を二つの月が照らす。
その顔に、小さな人影がかかった。
ホールのほうを向くと、タバサが立っていた。
黒いパーティドレスに身を包んでいるが、その瞳は、強い、諸々の感情がこもった光が宿っている。
「仕事」
小さくダークドリームに告げると、タバサはバルコニーから外に繋がる階段へと歩いていく。
ダークドリームも、続いて階段を降りる。
「タバサ!候補を見繕ってきたわよ。ダークドリームも」
ダンスの相手の候補を10人ほども連れて、キュルケがバルコニーへと姿をあらわす。
もう、タバサとダークドリームの姿はない。そこには、枠に立てかけられたデルフリンガーしかいなかった。
「どこいっちゃったのかしら?」
キュルケが辺りを見回した。
「もう、ここにはいねえよ」
デルフリンガーの言葉を聞いて、キュルケは息を漏らした。
「もう!あの子達ったら、すぐにいなくなるんだから」
今回はここまでです。
読んでくださった方、支援を下さった方、前回感想を下さった方、ありがとうございました。
>ウルトラ五番目の人
ありがとうございます。こちらも毎週楽しみにさせてもらっています。
こちらの場合は、『完結』を前提にエンディングから逆算して『使えるシーン』をピックアップして作っていますので、手法が全然違うと思います。
丁寧に物語を続けた上で、毎週きっちり投下されているのは素直に頭が下がりますね。
乙です。
やはりタバサは任務に行っちゃうのね
せめてダークドリームと楽しんで欲しかったけれど、もう十分楽しんだんでしょうか
次回も楽しみです
乙でした。
デルフが渋い雰囲気でかっこよかったです。さて、この微笑ましい主従を待つのはどんな任務なのか楽しみです。
岩本版ロックマンXからゼロを召喚
オスマンにお下げをいじられてゼットセイバーで叩き斬ろうとしたり
タバサの裏切りで壁に拳を打ち付けてバスターを使えなくしたり激情家の面が目立ちそう
タルブの村にはミサイルごとオストリーグがやって来てるんですね
誰も居ないのでしょうかね?
とりあえず、毒の爪の使い魔の第43話が書き終わりました。
ので、何も無ければ0:25辺りにでも投下します。
かまわんよ
では、投下開始します。今回はいつもよりは少々短めです。
ガレンビートルとガレンヴェスパの群れと砲撃の嵐の中、ジャンガとタバサを乗せたシルフィードは飛んだ。
目指すは艦隊の最奥に一隻だけ浮かぶ、他よりも一際大きな敵艦だ。
その行く手を阻むかのように、艦隊から砲撃が加えられ、無数の小型メカが体当たりを仕掛けてきた。
シルフィードは高速で飛行しながら、巧みにそれらの攻撃をかわしていく。
「キキキ、やるじゃねェか! その調子で突っ切りな!」
風で帽子が飛ばないように押さえながら、ジャンガが声を上げる。
かなりの高速飛行の為、カッターも上手く使えない。
振り落とされないようにしがみ付いているのが精一杯なのだ。
普段乗りなれているタバサも、かつて無い高速飛行と激しい回避運動に、しがみ付く事に必死だった。
もっとも”頭”を制圧する為にも精神力は無駄に出来ない。
よしんば反撃できたとしても、結局はしがみ付くしかなかっただろう。
数分後…、シルフィードは艦隊を突っ切る事に成功した。
目の前には無防備で晒される”頭”の姿が在った。シルフィードがやや速度を落とす。
ジャンガとタバサは立ち上がり、敵艦に飛び降りるべくタイミングを計る。
シルフィードが敵艦の真上へと到達した。ジャンガとタバサは頷き合い、シルフィードに声を掛ける。
「あのクソガキのお守りは任せたゼ」
「後はお願い」
「了解なのね。お姉さま達も頑張るのね、きゅい!」
その言葉を聞きながら、二人はシルフィードの背から飛び降りた。
二人が無事に甲板に下りたのを確認し、シルフィードは急いで味方の艦隊へと引き返した。
敵艦へと降り立ったジャンガとタバサは辺りを注意深く見回す。
…特に敵の姿は見当たらない。艦内に居るのだろうか?
いや、それ以前にジャンガには気がかりな事があった。
「オイ…」
「何?」
ジャンガに声を掛けられたタバサが静かに返す。
「変だと思わなかったか?」
「何が?」
「…これだけの規模だってのによ、この艦隊…殆ど”無人”だったじゃネェか」
ジャンガは怪訝な表情で言った。
――そうなのだ。この艦に到着するまで多くの戦艦とすれ違ったが、
それらに乗っていたのはガーゴイルらしきものや、ムゥの様な幻獣ばかり。人の姿は一切見かけなかった。
「ミョズニトニルンやガーレンの奴が向こうに居るからな。それらが使われるのは変じゃネェ。
だが…、全てをそれらに任せているってのは、どうにも腑に落ちないゼ」
培われた勘や経験などは人間の方が圧倒的に高いはずだ。
前哨戦ならばともかく、こんな水際付近で行う戦いにあんな連中を送り込むなど、どう考えてもおかしい。
事実、最初は不意打ちで苦戦していた連合軍も戦いの錬度で勝っている為か、
今は五分五分位にまで押し戻している様子だ。
これがちゃんとした人間ならば押し切っていたはずなのだが…。
「…今はどうでもいいか」
考えている時間は無い。今はとりあえず、目的を果たす事だけを考えればいい。
”頭”を探すべく艦内に潜入しようと歩を進め――
ビュンッ!
風を切る音がして、何かが飛んできた。
ジャンガとタバサは同時にその場を飛び退く。何かが甲板に突き刺さる音がした。
離れた場所に降り立った二人は一瞬前まで自分達が居た場所を見る。
そこには巨大な”矢”が突き刺さっていた。
それを見て、タバサは一瞬トロール鬼でも居るのかと思った。…だが、それは違っていた。
矢の飛んで来た方向へと目を向けると、そこには得体の知れない物が立っていた。
大きさは約五メイルほど、左手はカギ爪の生えた手、右手はクロスボウとなっており、
全体的には箱を積み重ねたような姿をしている、それは実に奇怪な物だった。
ガーゴイルかゴーレムだろうか? と考えた――いや、そうとしか考えられない。
あんな姿の幻獣などハルケギニアには存在しない。
――”存在しない”…そう思ってタバサはジャンガを振り返る。
「…”あれ”も?」
タバサの言葉にジャンガは苦笑いを浮かべてみせた。
「ムゥンズ遺跡のロボットか…、随分とまた厄介な物を引っ張り出しやがるゼ」
『ボックスメアン』――ムゥンズ遺跡の最奥に配置されていた戦闘ロボット。
箱を積み重ねたかのようなユーモラスな外見が特徴だが、その戦闘力は並みの幻獣よりも高い。
有線式のロケットパンチとなっている左手や、同じく有線式で伸ばす事が出来る右手の巨大なクロスボウ、
頑丈な箱状の胴体を飛ばして攻撃する『ボックスメラン』などの武器を持つ。
無数の機体が存在し、数で相手を圧倒する戦術も得意とする。
自立判断が出来るほど優秀な人工知能を持ち、その全てが一台のマスターコンピューターによって操られている。
「あれの厄介なところは数だな。…この船にどれだけの数がいるか解らネェがよ…」
『シンニュウシャ カクニン、タダチニ ハイジョスル』
ボックスメアンは機械音を響かせながら動き出す。
『ムダナ テイコウハ ヤメロ。ムダジャナイ テイコウモ ヤメロ』
「どうする?」
タバサが尋ねると、ジャンガは笑う。
「なら、お前はどうするんだ?」
「抵抗する」
「俺もだ」
言うが早いか…、二人はボックスメアンへと飛び掛った。
まずはジャンガが仕掛けた。毒の爪を振り回し、ボックスメアンに一撃を食らわせる。
硬い物がぶつかり合う音が響く。亀裂が走ったが、一撃破壊には至らない。
舌打ちするジャンガにボックメアンは左手を伸ばす。
それを見て、すぐさまその場を飛び退く。勢い良く突き出された左手は甲板を打ち砕いた。
そこへタバサが『ウィンディ・アイシクル』を放つ。
無数の氷の矢がボックスメアンを襲ったが、それは尽く跳ね返されてしまった。
続けざまに『ジャベリン』を唱える。
巨大な氷の槍が生まれ、相手を串刺しにせんと飛ぶ。ジャベリンはボックスメアンを捕らえる。
だが、頑丈な装甲を貫通する事は出来ず、粉々に砕け散ってしまった。
それを見て、タバサは再度呪文を唱えようとしたが、突然衝撃が体に走った。
何かが彼女に体当たりをしてきたのだ。
短く呻き、タバサは床に倒れこむ。その彼女に黒い何かが大量に群がってきた。
それは瞳の無い黄色い目をした小人のような生き物だった。
『ウニョ』――ボックスメアンの影から現れる、謎の生命体。
黒い小人のような姿をしており、敵に向かって捨て身の体当たりを仕掛ける。
たった一撃で消えてしまうほど脆弱だが、次から次へと際限無く現れる厄介な存在である。
タバサはウニョを蹴散らそうと、杖を振り回す。
一振りするだけでウニョ達は簡単に跳ね飛ばされて消えていく。
だが、ウニョ達は吹き飛ばされる量を上回る数で、休む事無くタバサに群がる。
ウニョの排除に手間取り、身動きが取れない彼女にボックメアンは顔を向ける。
その両目が徐々に輝きを増していく。
辺りを照らす光に気が付き、タバサは顔を上げた。
輝きが頂点に達し――
「オラァッ!」
ジャンガがボックスメアンの頭部を蹴り飛ばす。衝撃で顔を背ける形になる。
直後、ボックメアンの両目から眩い輝きのビームが放たれた。
狙いの逸れたビームは船体の一部を破壊する。
ジャンガは四体に分身し、ボックスメアンの腹部にダース単位で蹴りを叩き込んだ。
止めの一撃を放つと、ボックメアンは吹き飛び、壁を粉砕した。
「案の定、強化済みか」
今のビームのような武器は本来無かったはずだ。ガーレンによって改造されているのだろう。
装甲の厚さや他の武器の威力などにも梃入れが感じられた。
ジャンガがボックスメアンの相手をしたお陰で、ウニョの増援が無くなり、タバサは漸く自由の身となった。
「助かった、ありがとう」
立ち上がったタバサはお礼を述べる。
「礼言う暇があったら反省しとけ。足手纏いは要らネェからな?」
振り向きもせずにそれだけ言う。
冷たい言葉…とはタバサは思わなかった。
本当に必要が無いのなら最初から自分一人で来ればいい。
なのに、自分を連れて来たのは認め、信頼している証拠。
その信頼を裏切り、足手纏いになりかけたのだから、今のような事を言われても仕方ない。
自分の不甲斐無さを恥ながら、タバサは杖を握り締めた。
瓦礫を跳ね除けながらボックスメアンが立ち上がる。
左手と右手を伸ばし、箱状の胴体をブーメランの様に飛ばす。
ジャンガとタバサは同時に駆けだした。
ありとあらゆる角度から矢を飛ばす右手、鋭い爪を振り翳しながら伸びる左手、風を纏わり付かせながら迫る胴体。
それらをジャンガは分身で同時に撃破する。
しかし、ボックスメアンは冷静に対応し、両目から先程のビームを放とうと両目を輝かせる。
だが、その両目を『ブレイド』を掛けたタバサの杖がなぎ払う。
横一文字に亀裂が走り、ショートして火花が散る。
タバサはボックメアンの手足の付いた一番下の胴体を蹴り、その場から飛び退いた。
――直後、響き渡る砲撃音。
ボックスメアンの胴体が吹き飛び、巻き起こった巨大な爆風は頭部をも飲み込んだ。
タバサは音の方を振り返る。そこにはジャンガがハンドライフルを手にして立っていた。銃口からは硝煙が立ち上っている。
おそらく、タルブでヨルムンガントを破壊した例のやつだ。
完全にボックスメアンが消滅したのを確認し、ジャンガはハンドライフルを懐にしまう。
「よし、邪魔者は消えた。とっとと指揮官様を探すぞ」
「解ってる」
タバサは頷く。――その直後だった、凄まじい爆発音が背後から響き渡ったのは。
振り返ると、連合軍と戦闘を行っていた艦隊が一隻残らず炎に包まれて落下していた。
撃沈されたとは思えない…、そんな事が出来るぐらいならばとっくにそうしている。
では、何が起こったのだろうか?
すると、黄色い卵の様な形をした物体が、空から悩んでいる二人の元へと舞い降りてきたのだ。
それはガーゴイルのようだった。あまり見ない容姿の物だったが、タバサはそれに見覚えがあった。
そう…、確か学院での事件の翌日に自分の部屋へとメッセージを届けた物だ。『ンガポコ』とか言ったか?
ンガポコはジャンガの目の高さに静止すると、喋り出した。
「ンガ、ジャンガさん、シャルロットさんにメッセージがあります。ンガ」
「ホゥ?」
メッセージの届け主が誰かなど考える必要は無い。
このタイミングで自分達にメッセージを届けるような相手は一人しか思いつかない。
『ようこそ、我がアルビオンへ』
聞こえてきた声は予想通りの相手の物だった。
「ガーレン…」
タニアリージュ・ロワイヤル座での事が脳裏を過ぎり、タバサは苦々しい表情で呟く。
メッセージは続けられる。
『どうやら無人駆逐艦隊の指揮官であるボックスメアンを倒したようだな。
何故解るか…などとは聞かないでくれたまえ。反応が消えたのだから解るのは当然だ。
とは言え、見事だ…賞賛に値する。その褒美と言っては何だが、アルビオンへと下りる事を許可しよう』
ジャンガとタバサは顔を見合わせる。
どう言う事だ? と言葉の意味が理解出来ていない事を、互いの表情が物語っている。
『なに…罠などではない。と、言ったところで信じてはもらえんだろうがな…。
…艦隊の自爆を見たとは思うが、それは我輩がやったのだ。勝者は君たちなのだから、敗者は潔く下がるものだ。
それでも信じられぬと言うのであれば…そうだな、具体的な褒美として軍港ロサイスを君達に提供しよう』
「何?」
『君達が侵攻の足掛かりとして欲しているのは設備も充実しているロサイスだろう?
だから、それを提供するというのだ。嘘ではない証拠としてロサイス付近の部隊は引き上げさせる。
代わりにダータルネスの防備を固めるがな。後は諸君等で確認し、判断したまえ』
二人は黙ってメッセージに耳を傾ける。
『…そうそう、忘れるところだった。シャルロット君…、今一度我輩達に協力する気は無いかね?』
支援
タバサの眉が、ピクリと動く。…今更こいつは何を言うんだ?
『我輩はメイジとしての君の優秀な才能が惜しい…、このまま手放すのは勿体無いと思うのだ。
今ならばまだ便宜を図れるのだが…』
ふざけた事を言う。今更、協力などする訳が無いだろう?
『「母さまを助けた後…、あなた達の首を貰う」か』
聞き覚えのある台詞にタバサは目を見開く。
『んー、君の家族を…母を思う気持ち、我輩も非常に心を打たれた』
今しがたの台詞…、自分がジョゼフとジョーカーに向かって目の前のガーゴイルに持たせたメッセージだ。
「…あの時の?」
『父は亡くなり、母は未だ心を病んだまま……それだけではないが、これ以上”自分の所為”で家族を不幸にしたくはないだろう?』
ギリギリと音がする位、タバサは強く歯を噛み締める。
ふざけるな…、自分がいつ家族を不幸にしたというのだ?
『正しい判断を下すよう、心から祈っているよ…。これ以上”自分の身の安全の為”に家族を犠牲にしたく無いならね…』
ブチッ、とタバサの中で何かが切れた。
「伝言しゅ――ンガぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!?」
ンガポコの台詞は最後まで続かなかった。
タバサの杖の痛烈な一撃が、ンガポコへと叩き込まれたのだ。
派手に吹き飛ばされたンガポコは、床を跳ねながら壁にぶち当たった。
荒くなった呼吸を整えながら、タバサは杖を握っていない方の拳を強く握り締めた。
「…許せない」
憎悪の籠もった声で小さく呟く。
――今の境遇を自分が望んでいたとでも言うのか?
――自分はそんな事は望んでいない。
――不幸は全て伯父や伯父を支持する者の所為だ。
――自分は親を…家族を犠牲にしたりはしない。
激しい怒りに身体を振るわせるタバサをジャンガは静かに見ていた。
「怒るのは勝手だがよ…、冷静さ欠いてると死ぬだけだゼ?」
「…解ってる」
静かに、大きく深呼吸をし、タバサは気を落ち着かせた。
それを見て、ジャンガは床に転がるンガポコへと歩み寄る。
ンガポコを拾い上げる彼を見て、タバサは声を掛ける。
「どうする気?」
「タバサ嬢ちゃんよ…、シルフィードはどうしてる? 使い魔と主人は視界を共有できるんだからよ、確認は簡単だろ」
「ちょっと待って」
タバサは目を閉じた。
暫くそのままの状態でいたが、やがて静かに目を開ける。
「まだ船の上にいる」
「そうか、そりゃ好都合だ」
ジャンガはンガポコを乱暴に振り回し、無理矢理覚醒させる。
「ン、ンガ…」
「ヨォ、伝言ロボ。パシリになってもらうゼ」
「ンガ?」
ンガポゴに届けさせたメッセージによってやって来たシルフィードに乗り、ジャンガとタバサは艦隊へと帰艦。
ルイズ達に事の次第を説明し、その後『ヴュセンタール』号の総司令部に居るド・ポワチエら首脳部の人間にも同じ事を伝えた。
無論、首脳部は当然として、ルイズ達も最初は信じなかった。
あれほどの艦隊が一隻残らず自爆し、残った旗艦もあっさりと落とされた。
加えて、わざわざ設備の整った軍港ロサイスを明け渡すと言う。
出来すぎてるといえば出来すぎている…、信じられないのも無理は無い。
だが、百聞は一見にしかず。実際に見て確かめた方が早いと、偵察部隊が出される事となった。
その結果――
支援
「ロサイス付近はも抜けのから…か」
第一竜騎士中隊の一騎士からの報告を受け取ったド・ポワチエは呟く。
偵察部隊が到着した時、ロサイス付近のアルビオン軍は既に撤退した後だったのだと言う。
それも、一隻の戦艦、一人の兵も残さない徹底したもので、まさに”来てください”と言わんばかりだったそうだ。
「ダータルネスの方の報告はまだか?」
ダータルネスの方は第三竜騎士中隊が担当のはずだ。
その時、唐突に扉が開いた。
「そんなに慌てなくても、今報告に参りました」
とても綺麗な美声でそんな事を言いながら、部屋へと入って来たのは長身で金髪の少年だった。
その少年を見たルイズは目を奪われた。
とんでもない美形なのだ…、一瞬見ただけでは女性と間違えてしまうかもしれないほどの。
その少年の目は左右で色が違っている。光の加減などではなく、本当に色が違う…月目だった。
「君は確か…第三竜騎士中隊の隊長だったか?」
「ジュリオ・チェザーレです、ド・ポワチエ将軍」
ジュリオと名乗った少年は、騎士の様な格好とは裏腹の優雅な仕草で一礼をする。
ド・ポワチエは怪訝な表情でジュリオを見つめる。
「何故直接ここに? 第二竜騎士大隊隊長のギンヌメール伯爵には報告をしておらんのか?」
「いえ、勿論ギンヌメール伯爵には報告済みです。ですが…」
そこで言葉を切り、ジュリオはゆっくりと部屋の中を見回す。
そしてその視線がジャンガに向けられる。
「きみが噂の使い魔のジャンガリアンくんだね?」
直後、その胸倉をジャンガは掴み上げる。
「…舐めてんのかテメェ? ジャンガ…『毒の爪のジャンガ』様だ! よく覚えとけ、ガキ!」
純粋な殺気を叩きつけるジャンガ。しかし、ジュリオは涼しい顔だ。
「いやいやすまない、失礼したよ。ぼくはロマリアの神官、ジュリオ・チェザーレだ。以後お見知りおきを」
胸倉を掴まれながらも平然とした態度で謝罪し、一礼をするジュリオにジャンガも毒気が抜かれたか、
つまらなさそうに鼻を鳴らし、胸倉を掴む爪を放した。
「ありがとう。まぁ、色々と活躍しているとか…きみの噂は絶えないからね、一目会いたいと思っていたんだ。…おや? あなたは」
隣のルイズに気が付き、ジュリオはそれまでの表情を一変させ、満面の笑顔でルイズの手を取った。
「あなたがミス・ヴァリエール? 噂どおりの美しさだ」
そして、ぽかんと口を開けて佇むルイズのその手に、彼は優しく口付けた。
それを見て、ジャンガは”新たな気障ガキ”と言う印象を彼に密かに抱いた。
ルイズは満更でもないのか、されるがままだ。
そこへド・ポワチエが口を挟んできた。
「ミスタ・チェザーレ、報告は大隊隊長から受け取るものだが…、君が直接来た理由は何かね?」
ジュリオはルイズの手を離し、先程のような優雅な仕草でド・ポワチエを振り返る。
「いえ、ただの挨拶ですよ。噂の使い魔とその主人、どちらも興味がありましたのでね。
本当ならば着艦したその日に挨拶をしたかったのですが、何しろ連れが酷い船嫌いでしてね…。
慣れさせるのに精一杯で、挨拶が出来なかったのですよ。ですから、丁度いい機会だったというわけです」
ふむ、とド・ポワチエは特に何も感じさせない表情で髭を弄る。と、再び扉が開いた。
「おい…いつまで、この船…に居やがるんだ…? うっぷ…」
まさに死にかけ……そんな感じのする弱々しい声だった。…その声にジャンガは聞き覚えがあった。
扉の方へと目を向けると、声の主がヨロヨロとした足取りで入って来るところだった。
入って来たのは亜人(おそらく少年)だった。見た感じでは狼の様な感じがする。
金と黒のコントラストが光る毛並みをしており、赤いジャケットに黒いライダースーツ、
黒いブーツと白い手袋を身につけている。
背の高さはジュリオと同じ位、年も近いのかもしれない。
ルイズとタバサは声が出なかった。
ジュリオは亜人の少年を振り返り、柔らかな笑みを浮かべる。
「やぁ、すまない。少し話し込んでしまったよ。もう終わったから帰るとしよう」
「…つってもな、…結局は船…だろうが…、う、ううう…」
可也気分が悪くなってきたのか、彼は口を押さえながら膝を付いた。…今にでも戻しそうな感じだ。
「ええい、ここでやられてはたまらん! ミスタ・チェザーレ、君の連れならば責任を持って連れて帰りたまえ!」
流石にここでやられてはたまらないと感じたか、ド・ポワチエは苦々しい表情でジュリオに言った。
ジュリオは少しも表情を崩さずに一礼をする。
「解りました、それでは失礼させていただきます。立てるかい?」
「…なんとか、な…」
ジュリオに肩を貸してもらって、彼は何とか立ち上がった。
「相変わらず船は苦手か…、キキキ…そこはまだまだガキだねェ〜?」
ジャンガがそんな事を言った。
亜人の少年の肩がピクリと動く。
ゆっくりと背後を振り返り……ジャンガと目が合った。
「て、テメェ…」
「キキキ…」
彼の両目は大きく見開かれ、驚愕の表情が浮かんだ。
「テメェ……ジャンガ!!?」
「こんなとこで会うたァな…。懐かしいじゃネェか…ガンツ坊や?」
亜人の少年=ガンツを見ながらジャンガはニヤニヤ笑いを浮かべた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
以上で投下終了です。
ボックスメアンのビームはオリジナル。まぁ、ロボット系のキャラはどれもが目からのビームと複数の同型機による物量作戦がお約束ですし。
ロボカイとか、メカヒスイとか、フォボスとか、…ってどれも格闘ゲームだな(汗)
ガーレンのメッセージお届けの部分は原作の月面のイベントから。あのシーンでのパンゴさんブチ切れは実に素晴らしい。
で、ガンツ登場。ロマリア側だけど一応ジュリオも。思うんだが、ジュリオはそれほどヴィンダでいる必要がないように思う。
だって竜使ってる場面は殆どないし、やってる事も大抵口八丁手八丁で済ませてるからな…。
なんていうのか…サイトやシェフィールドと比べて、活用してる場面があんまり思いつかないな。
あ、あとガンツの船苦手は原作のですが、飛行機は大丈夫らしいです。
まぁ、形が船だから多分駄目だろう、みたいに考えてます。
では、また次回。アデュー♪
乙です
ガンツきたあああああああああああああああ
レスが一つしか空いてないがいいのだろうか、とかいいつつ3時40分頃から投下します
未知の場所を訪れるにあたってまず重要な事。それは情報収集。
そんな訳でルイズに連れられてトリステイン魔法学院に辿り着いた柊達は、ルイズにこの世界がどんな場所なのかを聞いた。
当然それに返って来るルイズの反応は懐疑と憤懣ばかりだった訳だが、召喚直後の興奮状態からは幾分落ち着いたのか何とかまともに話をする事ができた。
そしてわかったのはこれらのこと。
この世界はハルケギニアという世界であること。
その住人は貴族と平民に分類されていること。
系統魔法と呼ばれる魔法があること。
……要するに、ハルケギニアはごくごく普通の中世風ファンタジー世界であること。
異世界に来るのが初めてになるエリスは一つ一つ興味深げに聞いていたが、すでにそういった世界を経験している柊にとっては別段驚くような事はなかった。
重要なのはこのハルケギニアが『異世界』である事の確認だ。
これが柊の知る異世界……ラース=フェリアやミッドガルドの何処かの地方であったなら話は早かったのだが、残念ながらそう上手くはいかないようだ。
ともあれ、そんなハルケギニアの話を聞いていれば次にルイズが尋ねて来るのが、柊達の素性だ。
まっとうな反応としてとんでもない田舎者と思っている彼女に、とりあえず正直に異世界の人間だと打ち明けた。
ファー・ジ・アースと呼ばれる世界。
侵魔と呼ばれる敵対者。夜闇の魔法使い(ナイトウィザード)。
一般的に『地球』と呼ばれる世界の事情に関してはあえて深くは語らなかった。
人々の認識によって形成される『世界結界』の効果で表向きは魔法だの侵魔だのの存在しない世界とされていること。
その裏側でウィザードと侵魔の闘いが行われているのだ――などと一から説明し始めればややこしくなってしまい時間がかかるためだ。
それに、ハルケギニア――『魔法がある世界』からすれば『魔法のない世界』と説明されるよりはまだしも理解の範疇だろう。
……根本的に『異世界』という事がルイズ達の理解の範疇を越えているだろうが。
そして話を一通り終えた後で返って来たルイズの反応は、
「……あんた達、頭大丈夫?」
だった。
「ほ、本当です!」
「……まあそう来るよな、普通」
初めて異世界に召喚された人間としては当然なエリスの声と、もう慣れきった柊の嘆息が重なる。
柊の態度を見てルイズは僅かに眉を怒らせたが、一方でエリスの必死で懸命な視線を受けて小さくため息をつく。
「信じられる訳ないじゃない。ハルケギニアとは別の世界があるとか、侵魔だとかウィザードとか……」
そして彼女はテーブルに頬杖をついて、いかにも話半分といった調子で口を開く。
「そこまで言うなら、証拠を見せて」
「しょ、証拠……ですか?」
「そうよ。私が話してあげた事は実際ここがハルケギニアだって事が証明してるわ。
でもあんた達の話は今の所ぜんぶ妄言。自分達が異世界の人間だって証拠、見せてよ」
「……先輩」
返答に困ってエリスは柊を不安げに見やった。
柊の方はといえば、ルイズの言葉に困るどころかその言葉を待っていたとばかりに大きく頷いた。
「証拠なら見せてやるよ。この世界じゃ絶対に作れないものをな」
自信満々に言い放ち、柊は懐から地球の文明の利器とも言える携帯電話――もっとも柊の使っているモノは『0-Phone(レイ−フォン)』と呼ばれる
魔法的な技術の加わった更に高性能なモノだが――を取り出、
「…………」
「……? 何よ、いきなり固まって」
――取り出しかけて、踏みとどまった。
紫煙!
くたばれ☆地獄で懺悔しろ☆
柊はこの光景とやり取りに見覚えがあった。
それは初めて異世界――ラース=フェリアを訪れた時の事だ。
その時に出会った仲間……の内の女性二人もやはり当初は柊が異世界の人間だ、という事に少々懐疑的だった。
ラース=フェリアもまたハルケギニアと同じような世界であったため、柊は彼女等に0-Phoneを取り出して見せ付けてやったのだ。
それを見て彼女等は僅かに目を見開き、言った。
『あら、これは魔導電話ですね』
『うむ、魔導電話だな』
『こんなもん持ち出して異世界人とか、ひーらぎ胡散臭いにょー』
『胡散臭いのはてめえらの方だ!? 魔導ってつけば何でも許されるとか思ってんじゃねえぞ!?』
「………………ハルケギニアに魔導電話は……いやなんでもない」
「? 何なのよ、一体」
「せ、先輩……?」
訝しげにみつめるルイズと不思議そうに見やるエリスの前で、柊はくっと呻いて顔を逸らした。
とはいえ動いてしまった以上何かしないといけないので、予定変更。
「異世界の人間の証拠だったよな。だったらこれから俺達の世界の『魔法』を見せてやるよ」
「魔法……?」
柊のその言葉を聞いて、ルイズは僅かに目を細めた。
そして彼女は椅子に背を預け、嘲りを含んだ微笑を柊に向ける。
「随分とふいてくれるじゃない。杖も持たずに魔法だなんて、さすが平民は言う事が違うわね」
「……杖?」
「そうよ。メイジが魔法を使うには杖が必要……はったりをきかすなら、せめてそれくらいの常識は知ってなさい」
勝ち誇ったようにふふんと鼻を鳴らすルイズだが、当の柊はまったく堪えなかった。
むしろ望外の収穫を得て心の中で喝采をあげるほどである。
なぜなら、これから柊が見せる『魔法』と同じような事がこの世界の魔法でできるなら何の証明にもならないからだ。
だがこの世界の魔法行使にそんな条件があるというのなら、問題はまったくない。
ぐうの音も出ないように見せ付けてやるだけだ。
「てことは、俺が杖なしで魔法を使えば異世界の人間だって認めるんだな」
「ええ、いいわよ。その代わりできなかったら契約して使い魔になってもらうからね」
「いいぜ、好きにしろ」
即答にむっとするルイズをよそに、柊はほくそ笑んでから立ち上がる。
そして彼はテーブルの上に乗っていた一輪挿しを手に取り、ルイズの目の前に差し出した。
見世物を見物するかのような、そんな余裕綽々の彼女の目と鼻の先で一輪挿しが二・三度揺れ動き――唐突にそれが薄れて"消えた"。
「……!?」
ルイズの表情が固まる。
僅かに身を乗り出して凝視するが、柊の手に握られていたはずの一輪挿しは影も形もない。
目を離した訳ではない。布が被せられた訳でもない。
目の前にあったはずのモノが、霞のように消えたのだ。
「先輩、それって……」
小さく声を上げかけたエリスを、柊は人差し指を立てて静止する。
実際の所彼がやったのはただ単に一輪挿しを月衣――ウィザードが纏う個人用の結界で、その中に様々な物品をしまう事ができる――の中に収納しただけ。
厳密に言うならこれは『魔法』ではないのだが、知らない人間からすれば同じようなものだろう。
現にルイズは何が起こったのか理解できていないらしく、食い入るように柊の手を睨みつけていた。
「どうだ?」
何も持っていない事を示すように手をひらひらさせながら、柊はルイズに声をかけた。
すると彼女は悔しそうに歯をかむと、
「な……何よ、魔法じゃなくてただの手品じゃない。こんなので……」
「疑り深いな……ならもう一回見せてやるよ」
とはいうものの、柊としてはそれなりに予想通りの反応だ。
百聞では絶対に信じないし、一見でもまず信じない。
それなら二見でも三見でもするだけだ。
柊は椅子に座る二人を促して立ち上がらせた。
そして今まで三人が囲んでいたテーブルを両手で抱えると――今度はそれを月衣に収納して見せた。
身の丈を越える長大な箒でも楽に収納できる月衣だ、この程度のものは造作もない。
「な――」
手の中に納まる一輪挿しならまだしも、両の手に抱えるテーブルまで消失してしまってはルイズも絶句するしかなかった。
テーブルがあったはずの場所に手を伸ばして確認しても、空を切るばかり。
部屋の中をどう見回してもテーブルは存在しない。
今日初めて出会い、初めて招き入れた室内に仕掛けがあるはずもなかった。
つまりこれは――
「あ、あんた達……」
驚愕に身を震わせながらルイズは二人を凝視する。
ようやく信じてもらえたようで柊とエリスは顔を見合わせ頷きあい、そしてルイズを向き直ると――
「……まさか、エルフ!?」
「え?」
「はあ?」
数歩後ずさって呻いた彼女に、二人は間の抜けた声を漏らした。
「エ、エルフ?」
「だ、だって、こんな魔法知らないわ! しかも杖を持たずに魔法を使うなんて、先住魔法しかないもの!」
「お、おい、何言ってんだ? 俺達は――」
慌てふためくルイズに柊が詰め寄ろうとすると、彼女は更に後ずさって距離を取る。
彼女は絶望感に震えながら頭を抱えた。
「ど、どういうこと? 耳だって普通なのに……まさか外見を変えてるの!?
そんな、よりにもよってエルフを召喚しちゃうなんて……こんな事他の人に知られたら……!!」
「お、落ち着いて下さい!」
「お前人の話を聞いてたのかよ!? 俺達は異世界の人間で、さっきのは異世界の魔法だって言っただろ!」
「き、聞いてたわよ! いいからちょっと落ち着きなさい!!」
「まずお前が落ち着け!?」
※ ※ ※
試演!
はわ! はわわわわ! はわ!
「……確認しとくわ」
約十分後。
ようやく落ち着きを取り戻したルイズはテーブルを挟んだ柊とエリスに静かに言った(ちなみにテーブルは再び月衣から取り出した。その時もルイズは驚いた)。
彼女は神妙な表情で二人を順に眺めやった後、おそるおそるといった風に語りかける。
「……貴方達はエルフじゃないのよね?」
「はい。正真正銘の人間です」
「異世界の、だけどな」
二人の返答を受けてルイズは小さく頷き、そして息を吐き出した。
「わかった。信じる」
「……随分簡単に折れたな」
「いいの。異世界の人間ならちょっと変な奴で片付くから。『実はエルフでしたー』とか言われるよりずっといい……」
どうやらこの世界でのエルフは相当に曰くのある存在であるらしい。
ルイズは妙に悟ったような表情で呟くと、テーブルの上で組んだ手に額を当てて大きくため息をついた。
気まずい沈黙がしばし流れた後、彼女はやおら立ち上がり二人に目を向ける。
「今日は色々あって疲れたから、もう寝る」
「……は? おい待て、本題はまだ――」
「どの道先生たちの協議が終わるまでは私の一存じゃどうにもできないもの。だから話があるなら明日」
食い下がろうとした柊を無視してルイズはクローゼットへと足を向けた。
呆然とその動きを見つめる二人の前で、彼女はクローゼットの扉に手をかけた後思い出したように振り向く。
「そんな訳だから、あんた……ヒイラギだっけ? 出てって」
「あ?」
いまいち状況を飲み込めない柊は眉を寄せる。
しかし彼女は一向に構う事無く言葉を続けた。
「あんた、私の使い魔じゃないわよね?」
「当たり前だろ」
「ここは女子寮、男子禁制。で、あんたは男。出て行くのは当然でしょう? あ、そっちの子……エリスは特別に泊めてあげるわ」
「え……あ、ありがとうございます……?」
「な……っ」
訳のわからないままとりあえず礼を言うエリスの横で柊が立ち上がった。
「じゃあ俺はどこで寝るんだよ。行くアテなんてねえぞ」
「野宿でもすれば?」
「お前、勝手に呼び出しといて何っ……!」
「――大声出すわよ」
柊の訴えを切って捨てるようにルイズが目を細めて呟いた。
二人のどちらが正論かと言うなら、議論の余地などあるはずがない。
柊は悔しそうに身体を震わせると、蹴るようにして踵を返して部屋の入り口に歩き出した。
「覚えてやがれ!」と負け台詞を残して柊は部屋の外へと消えていく。
ルイズはふんと鼻を鳴らして彼を見送った後、呆然と立ち尽くしているエリスに目を向けた。
「ホントは平民が貴族の部屋に泊まるなんて有り得ないんだけど……特別なんだからね」
「は、はい……」
おずおずと答えるエリスに小さく頷くと、ルイズは改めてクローゼットからネグリジェを取り出して着替え始めた。
エリスは人目をはばからずに服を脱ぎ捨てていくルイズを呆然と見つめている事しかできなかった。
状況の変化に追いつけない、ということもあるが、何しろ唐突にこの世界に召喚されたため荷物などあるはずもない。
どうしようかと立ち竦んでいると、ルイズが薄い布をエリスに差し出してきた。
「そのままで寝るの? 貸してあげるから着替えなさい」
「え、あ、はい」
言われるままにそれを手にとって広げて見ると、エリスは目を丸くした。
ルイズが今来ているものもそうだが、今手渡されているネグリジェは生地が薄く仄かに透けており、まさしく貴族が羽織っているような代物だった。
「どうしたの? 早く着替えなさい」
「あ、はいっ」
ルイズに促されてエリスはあわてて服を脱ぎ始める。
ブラウスとスカートを脱いで下着姿になり――
「……あの」
「なに?」
エリスは僅かに頬を染めて声を出した。
「その、じっと見られると恥ずかしいんですけど……」
ちらりとルイズに目を向けて呟く。
既に着替えを終えていたルイズがベッドに腰掛け、まるで観察するように見つめていたのである。
「女同士じゃない。気にしないで」
「はあ……」
とりあえず納得する事にしてエリスは着替えを続けた。
ルイズは下着も脱いで着用していたようだが、流石に下着までは脱げなかった。
ネグリジェを羽織り、腕を通す。
エリスはルイズよりもやや背が高いが、どうやらこれはやや大きめの採寸のようで窮屈さは感じない。
エリスは胸のボタンを留めようと手を伸ばし――
「……あの」
「なによ?」
「…………ちょっとサイズが小……っ、なんでもありません」
寒気が走って口を噤んだ。
しかし遅すぎた。
「だったら脱いで裸で寝なさいよ! 似たり寄ったりの体格の癖に調子乗ってんの!?
大体なんなのよその胸当てはぁ! 強調してアピールでもしてるつもり!?」
「ごめんなさい! ごめんなさいっっ!!」
飛び掛ってネグリジェを剥ぎ取ろうとするルイズに、エリスは縮こまって必死に謝ることしかできなかった。
※ ※ ※
(……はあ。これからどうなるんだろう)
灯の消えた薄暗いベッドの上。
隣で眠っているルイズに背を向けて、エリスは窓の向こうに映る二つの月をぼんやりと眺めていた。
よくわからないが何故か既視感を覚える双月を見やりながら、彼女は小さく息を吐く。
かつてはウィザードとして日常の外側に身を置いてたが、その力を失った今になってまたこんなことになるとはまったく思わなかった。
それも異世界に召喚される、などというとびっきりだ。
そういう類の物語ではよくある事だが、やはりエリスもそうなってしまった今思い浮かべるのは元の世界の事だった。
向こうでも今は夜なんだろうか、とか。明日は学校に行けないなあ、とか。
家族――はいないが、お世話になっている赤羽家の人達はもうこの事を知っているのだろうか。
召喚された時にアンゼロットもいたので説明はされているのかもしれない。
不安があるか、と言われれば当然あると答えるのだが……彼女に悲壮感の類は一切なかった。
なぜなら、異世界に召喚されたのは彼女だけではなく、柊 蓮司も一緒だからだ。
三月の初旬、紅い月の下で初めて柊 蓮司と出逢って以来、彼は一度として志宝エリスの信頼を裏切らなかった。
それどころか彼女の側から彼を――彼と、彼と彼女の仲間と、世界総てを裏切った時でさえ柊 蓮司は志宝エリスを信じ続けた。
心の裡の小さな匣の中で重ねた指の温もりを覚えている。
心の裡の茨の檻から乱暴に引き摺り出され、けれど優しく抱きとめられた時の暖かさを覚えている。
そんな彼がエリスに「大丈夫だ」と言った。
ならばそれは彼女にとって、どんな不安や苦痛にも勝る絶対の言葉だった。
「……ねえ、エリス」
「……はい?」
背中から届いた声にエリスは現実に引き戻された。
彼女は振り向こうかと身を捩らせたが、次いで響いたルイズの声で身体が硬直した。
「あのヒイラギって奴。どういう関係?」
「え、っ」
心臓が跳ね上がり、顔に熱が帯び始めるのを感じた。
部屋は暗いので見られる心配はないのだが、エリスはルイズを振り向けないまま身を丸めボソボソと囁くように言う。
「え、えっと。どんな関係って、柊先輩は学校の先輩で……」
「……特別な関係じゃないの?」
「と、特別っ!?」
エリスは思わず上ずった悲鳴を上げて、身体を震わせた。
焼けそうに熱い頬に両手を当てて、動悸した心臓を落ち着かせようと深呼吸する。
特別な関係、とはどういう事なのか。例えば……恋人だとか。
その単語が頭の中に浮かんだ瞬間、エリスは頭を抱えて閉じこもるように身体を丸める。
そして脳内に駆け巡る妄想を振り切るように、しかし多分の期待も込めて、囁く。
「そんな。柊先輩と特別なんて……そんなのないです。だって……」
「ふぅん……」
納得したのか、それとも寝る前の単なるお喋りなのか、さほど興味もなさそうな声でルイズが返した。
そして部屋が沈黙と暗闇に包まれる。
エリスはどうにか平静を取り戻したあと、小さく息を吐いて手を胸に当てた。
(だって、柊先輩には……)
彼女は感触のいいベッドに顔を沈ませて、口の中で呟く。その先の言葉は、口の中でさえ呟くことはできなかった。
何故かちくりと胸が痛む。その理由は――半ばわかってもいたが、考えたくはなかった。
早く寝てしまおうと目を閉じると、僅かな衣擦れの音と――
「……?」
背中にルイズの手を感じた。
※ ※ ※
ルイズが柊達の事を異世界の人間であると信じたか、と言うと。
もちろんそんなことはなかった。
とはいえ、目の前で納得し難い『魔法』を見てしまったのは事実。
実は彼らはエルフである、という可能性はおそらくない。
最初にそう思い至った時は気が動転していたが、よくよく考えれば二人が召喚されていた時から耳は普通だったのだ。
鏡をくぐる前から擬態していたとは思えない。というか考えたくない。
召喚時は日中であったので吸血鬼、という可能性もない。
では他の先住魔法を使う亜人種は――と考えたとき、天啓のようにとある可能性が思いついたのだ。
少なくとも彼女が知識として知っている系統魔法ではああいう事ができる魔法は存在しない。
だが、彼女は『知らない』が、『思い当たる』系統魔法は存在する。
――失われた系統とされる『虚無』の属性。
モノを虚空へと消し去り、モノを虚空から出現させるなど、虚無の名にふさわしいではないか。
柊がその『魔法』を使う時に杖を使わなかったが、そもそも虚無の魔法自体どのようなものか全くわからないモノなのだ。
四つの系統魔法を使う時には杖は必要不可欠だが、虚無もそうであるとは限らない。
杖が必要ないとも限らないと言われれば確かにそうだが、仮定としては『アリ』だろう。
つまり、柊 蓮司は虚無の魔法を使うメイジである。
そう考えると、彼と共に志宝エリスが召喚された事も説明ができた。
エリスは柊の使い魔ではないのだろうか?
使い魔を持たないルイズは当然実感する機会などないが、一般にメイジと使い魔は一心同体とも言われている。
ならば柊が召喚されるのにあわせて使い魔であるエリスも一緒に召喚されてもおかしくはない。
仮説が前提の論理とはいえない代物であるが、一応は筋が通ってしまった。
柊に直接確認するのは怖かった(なにしろ事実なら彼は始祖ブリミルの再臨、という事になってしまう)ので、ルイズは先にエリスの方に矛先を定めた。
柊を追い出し、エリスに着替えさせたのだ。
エリスが柊の使い魔ならば、身体のどこかに使い魔の証であるルーンが刻まれているはず。
注意深く観察してみたが、身体にルーンらしきものはどこにもなかった。
しかしベッドに入った後"それとなく"柊との関係を尋ねてみると、彼女は目に見えて動揺したのである。
明らかに怪しい。 何かを隠しているのかもしれない。
そういえば、着替えの時にエリスの身体を全部確認した訳ではない。
ショーツ……は置いておくとして。彼女が身に着けていた妙な胸当て。
胸の形に沿って身体を覆っている布のようなモノ。コルセットにも似ているが覆っているのは胸の部分だけ、というのは奇妙だった。
怪しすぎる。
ついでに、年はあまり変わらなさそうなのにエリスのソレは明らかにルイズよりも大きかった。
何か秘密があるに違いない。
ルイズは確信した。
※ ※ ※
「ねえ、エリス……」
「は、はい……?」
背中に触れられるルイズの手のひらに何故か悪寒を感じながら、エリスは呻くように言った。
細くしなやかなルイズの指が背中から肩に伸び、ゆっくりと肩先を撫で上げる。
「ちょっとお願いがあるんだけど……」
やさしく宥めるようなルイズの声がエリスの耳朶を打つ。
悪寒が更に強くなった。
そういえば、彼女はやけに唐突に柊を部屋から追い出していたような気がする。
更に、着替えの時には彼女の食い入るような目線を感じていた。
加えて、今まで少し棘のある態度だったのに、何故かいきなり優しい。
なにか。
とても。
嫌な予感がする。
「あ、あのっ……その、私」
「大丈夫。これは秘密にしておくから」
(何を!?)
と、エリスは叫ぼうとしたが、口から出す事はできなかった。
ルイズの手が肩から二の腕に降りてきたのだ。
ぞくぞくと駆け回る悪寒に硬直してしまったエリスをよそに、ルイズの手は彼女の身体を撫でてあげていく。
二の腕から胴体に、そして抱きすくめるように胸元へと――
「……わ、私用事を思い出しましたっ!」
そこが限界だった。
吹っ切るように叫んでエリスは身を起こし、逃げ出そうとする。
「ま、待ちなさい!!」
だがそこにルイズの腕が伸び、エリスを捕まえた。
二人はベッドの上でもみ合いになり、ルイズを払いのけたエリスがベッドから飛び降りるように逃げ出した。
しかしルイズとしては逃がす訳にはいかない。
逃げるエリスの背中にタックルを仕掛けるように飛び掛ると、彼女を押し倒した。
再び床の上で押し合いへし合いが始まり――そして勝ったのは、ルイズだった。
「はぁ、はぁ……逃げる事ないじゃない」
床に倒れたエリスに馬乗りになり、荒れた呼吸でルイズは語りかける。
だが、落ち着かせるために言った彼女の言葉にエリスはびくりと震えた。
「大丈夫、痛くしないから……すぐ終わるわ」
「ひぅっ……!」
揉み合いに勝利した事で薄く笑んだルイズの表情に、エリスは涙目になった。
そしてルイズの手がゆっくりとエリスの胸へと伸びていく。
胸を覆う布――要するにブラジャーに触れた瞬間、エリスの中で何かが弾けた。
「い……いやぁっ!!」
「あいたぁ!?」
思いっきり振り回した腕がルイズの側頭部に直撃し、ルイズはもんどりうって倒れこんだ。
拘束を振り払ったエリスが這うようにして(腰が抜けていて立てなかった)ドアへと辿り着き、カギを開ける。
「待ちなさい! 待ってってば!!」
「待てと言われて待つ人はいません……っ!」
背後から響く静止の声を無視して、エリスは廊下へと飛び出した。
隣の部屋から響く騒音で睡眠を中断されたキュルケ・ツェルプストーは酷く不機嫌だった。
艶やかな焔髪を苛立たしげにかきあげると、彼女は文句を言うために自分の部屋を後にする。
そして廊下に出た彼女が見たのは、
「うるさいわねー、何やってんのよヴァリエー……る?」
「!?」
見覚えのない、紫髪の少女だった。
彼女はこの寮にいる女生徒全員の顔を知っている訳ではなかったが、少なくとも目の前にいる少女はこの階の寮生ではない。
しかも少女は酷く怯えた顔をしており、着ているネグリジェも少しサイズが合っていないような気がした。
おまけに彼女が出てきたらしき、たった今すごい勢いで閉じられたのはルイズの部屋のドアだ。
全く訳がわからなかった。
そんな風にキュルケがぽかんとしていると目の前の少女が、
「た、助っ、助けてくださいっ!!」
いきなり縋り付いてきて、
「――待ちなさい、エリス!!」
ルイズが物凄い形相で廊下に飛び出してきた。
ルイズはキュルケの姿を確認すると驚きの表情を浮かべ、次いで彼女の身体に隠れるようにしているエリスを見て、キュルケに視線を戻して肩を震わせる。
「ツェルプストー! その子をそっちに渡しなさい!」
何を怒っているのかわからないが、初っ端からそんな態度では当然キュルケとしては気に食わない。
何事かを言い返そうとして口を開きかけた瞬間、自分に縋り付いている少女が震えているのに気づいた。
よくよく見て見れば、その少女が纏っているのはルイズのネグリジェだった。
しかも、服装や髪が少し乱れていた。
ルイズに再び視線を戻すと、彼女もやはり少し髪と服が乱れている。
「……………あ゛ー」
キュルケは『納得』した。
これでルイズの『お相手』が顔見知りであったなら大いに煽ってやる所だが、それが見知らぬ少女――しかも怯えている――では流石に茶化す訳にはいかなかった。
なのでキュルケは普段の彼女からは想像もできないほど優しい声でルイズに語りかける。
「ルイズ……ルイズ・フランソワーズ。独り身で寂しいのはわかるけど、いくらなんでもそれはよくないわ」
「な……独り身ですって!?」
ルイズが眉を吊り上げ、怒りに身を震わせる。
普段と違う生暖かい態度もそうだが、『独り身』という言葉は聞き逃せない。
おそらくキュルケは昼ごろに行われた『使い魔の儀式』が成立しなかった事を聞いているのだろう。
既に使い魔を得ている彼女が自分を揶揄しているのだ、とルイズは思った。
「あんたには関係ないでしょ!! これは私とその子の問題よ!!」
火を噴くような勢いでルイズは叫んだが、一方のキュルケはやはり生暖かい表情でうんうんと頷いた。
「そうよね、お互いの合意は必要よね」
そして彼女は僅かに頬を染めると、恥ずかしそうに告白した。
「その、正直言って私も”そういうの”に興味がないって訳じゃないけど……ほら、やっぱり非生産的な事なわけだし……ね?」
「は? そういうの? 非生産的? あんた何言っ――」
いい加減話の雲行きがおかしい事に気づいてルイズが眉をひそめた。
そしてキュルケの態度と、エリスの表情と、これまでの行為を反芻して――ようやく状況を悟った。
瞬間、ルイズの顔が真っ赤に染まる。
「ち、違っ! そうじゃない、そんなんじゃないの! 私はただその子に……!!」
「うんうん、わかってるわかってる。だから部屋に戻って……いえ、私の部屋においでなさいな。
一旦落ち着いてゆっくり話し合いましょう?」
キュルケはまるで赤子をあやすようにそう言うと慌てふためくルイズの腕を掴み、脇にいるエリスを促して二人と共に自分の部屋に歩き出す。
「だから違うんだってば!! もう何なのよぉおおおぉぉぉ!!」
夜の静寂を切り裂いて、ルイズの悲鳴がとどろいた。
※ ※ ※
「……もう、何だってんだよ……」
ルイズの部屋を追い出された柊は、女子寮の扉の前で大きくため息をついた。
勢いに任せて外に出てはみたが、ルイズに言った通り行くアテがある訳でもない。
幸い気候は暖かいので野宿してもどうにかなるということはなさそうだが、やはり気が滅入る。
「こんな事ならエリスの時のテント一式、貰っときゃよかったぜ……」
彼女の住むマンションのベランダでのテント生活を思い出して柊は息を吐き出し、夜空に浮かぶ二つの月を見上げた。
ルイズから聞いたハルケギニアの話は特に驚くような事はなかったが、話す内に日が暮れて二つの月が浮かんだ時は目を見張った。
というのも、ほんの三ヶ月程前に関わった事件で空に二つの月が浮かぶ、という現象が起きたためだ。
とはいえこの世界では二つの月が昇るのは普通の事であるらしい。それなら何も心配はなかった。
「何者です」
「……!」
と、そこで不意に誰何の声が上がり柊ははっとして声の主を探した。
女子寮の入り口から少し離れた場所、薄暗がりの中に、ローブに身を包んだ人影があった。
フードに隠されていて顔立ちはよく分からないが、声の高さから恐らくは女。
そして友好的な雰囲気でないことはわかる。
「ここは名のある貴族の子弟が通う魔法学院。たとえ偶然とはいえ平民が足を踏み入れて良い場所ではありませんよ」
剣呑な響きでその女性は言うと、懐からルイズが持っていたようなタクトを取り出した。
それで柊はこの世界の魔術師――メイジが魔法を使う時には杖が必要だという話を思い出す。
恐らく彼女はメイジで、取り出したアレは『杖』なのだろう。
柊は慌てて両手を上げると敵意がない事を示す。
「ま、待ってくれ! 俺は……あー、その、ルイズって奴に召喚されて……!」
言いかけて柊は心の中で舌打ちした。 明らかに怪しすぎる言い訳だ。信用されるはずがない。
だが、相手の反応は違った。
「召喚? まさか、貴方が件のミス・ヴァリエールの……?」
「そ、そう! それ!」
「……なるほど」
女性は小さく息を吐くと剣呑な空気を収め、手にした杖を懐に戻した。
あっさりと信用した事にむしろ柊の方が驚いていると、女性はくすりと笑みを零す。
「昨日今日の出来事ですから、むしろそれらしい言い訳をするよりは信憑性があります」
普通の人間ならそんな事は言いませんしね、と言いながら女性はフードを払った。
そして彼女は青い髪を揺らして僅かに首を傾げ、温和な表情で眼鏡越しに柊を見つめる。
「それで、こんな所でどうしたのです。ミス・ヴァリエールと一緒ではないのですか?」
「あ、いやー。それが、なんでかわかんないけどいきなり追い出されまして……」
「……はあ」
「それで泊まるアテもないんでどうしようかと……」
「……」
柊の言葉を受けて女性は指を顎に当て、しばし黙考した。
そして僅かに顔を俯けると、探るように尋ねる。
「そういえば貴方と……もう一人いたんでしたか。契約を拒否した、と聞きましたが」
「あ、そうっす」
「今後も契約をするつもりは?」
「ありません」
そこははっきりと断言した。
すると彼女は何故か納得したように頷くと、ちらりと周囲を見回した後で柊に歩み寄り心持ち低めの声で言う。
「……ならば、連れの人と一緒に今すぐここを離れた方がいいでしょう」
「え?」
女性の提案に柊は僅かに驚いて目を見張る。
しかし女性はまっすぐに柊を見つめ、言葉を続けた。
「貴方達に対する処遇は明日先生方の協議で決定されます。……が、まず間違いなく結論はこうでしょう。
――無理矢理にでも貴方達……あるいはいずれかを契約させる」
「な……なんだよそれっ!?」
「使い魔の儀式は『彼等』にとって神聖な儀式です。やり直しなど認められません。
ましてヴァリエール公爵家はトリステインでも三指に入る程の名門……その御息女が使い魔に拒絶された、などという事になれば彼女自身の風評はおろか学院の名にも傷がつきます。
『彼等』は彼等の名誉にかけて貴方達を認める訳にはいかないでしょうね」
「……無茶苦茶だな」
「……あの方達は『貴族』ですから」
女性は僅かに目を逸らした。 その表情と、その言葉の響きに一瞬だけ陰鬱なものが混じる。
その変化に柊はひっかかりを覚えもしたが、他人の事情に深く踏み込んでいる場合でもなかった。
柊は顎に手をかけて少しだけ黙考し、女性に向かって問いかける。
「ここ以外に召喚……魔法について詳しい所ってありますか?」
「魔法、ですか? ロマリアを除く各国にも魔法学院はありますが、規模と資料なら恐らくここが一番ですね。
もっとも、平民の貴方では他の魔法学院に行ったところで敷地に入る事もできないでしょうが……」
「そうか、そうなるか……」
柊は返答に難しい顔をして顔を俯ける。
確かに身の危険は差し迫っているかもしれないが、ここが元の世界に戻るための手がかりに最も近い場所には違いないようだ。
……ちなみに同じ頃、エリスには別の意味で危険が差し迫っていた訳だが、それを柊が知る由もない。
ともかく、そんな柊の表情を察したのか、確認するように女性が言った。
「……ここを出る気はないようですね?」
「はい。元……あー、元いた場所は普通じゃちょっと行けない場所にあるんで。魔法を使わないとちょっと……」
「そうですか……一応忠告はしましたから」
「すいません、ありがとうございます」
頭を下げる柊は女性は僅かに口の端を歪めると、踵を返して歩き始めた。
遠ざかっていく彼女の後姿を見ながら改めて今夜の寝床をどうするかと考えていると、女性が立ち止まって声をかけた。
「こちらへ」
「?」
柊の返答を待たず再び歩き始めた女性に、柊は首をかしげながらもとりあえず後を追った。
彼女に先導されて少し敷地内を歩きやがて何かの建物に辿り着くと、彼女はドアを軽くノックする。
ややあって扉が開かれ、姿を見せたのは寝着を纏うやや年のいった女性だった。
彼女はローブの女性を見るや驚きに目を見開き、どこか慌てた風に口を開く。
「ミ、ミス・ロングビル!? どうなさったのですか、こんな時間に!」
「少々事情がありまして……たしか先月、部屋が一つ空きましたわよね?」
「え、あ、はあ。それはそうですが……」
「簡単で構いませんので、部屋の用意をして下さい」
「え……よ、よろしいので?」
「構いません。許可は後ほど私が学院長に取ります」
「……かしこまりました」
寝着の女性は一度柊を訝しげに見やった後、堂の入った仕草で恭しく一礼すると建物の中に姿を消した。
そしてローブの女性――ロングビルは後ろで控えていた柊を振り返ると、
「今夜はこちらに泊まるといいでしょう」
「あ、ありがとうございます……でも、本当にいいんですか?」
「構いませんよ、事情が事情ですしね。……ただし」
「ただし?」
「空き部屋がここしかなかったのでやむを得ませんでしたが、ここは使用人達が詰める女子宿舎です。くれぐれもみだりに出歩きませんよう」
「あ……はい、それは」
気恥ずかしくなって頭をかくと、ロングビルはくすりと笑みを零した。
柊は思い出したように背筋を伸ばした。
「あ、俺、柊 蓮司って言います」
「ロングビルと申します。この魔法学院の学院長の秘書を務めさせて頂いてます」
「げ……ということは結構上の人……」
「肩書きだけですわ。教鞭をとっている訳でもありませんしね」
気まずそうに眉をしかめる柊を見てロングビルが可笑しそうに笑みを零す。
学院長の秘書がなぜこんな時間に外を出歩いているのか気になりはしたが、尋ねるのをはばかっている内に部屋の準備を終えた女性が戻ってきてしまった。
「すいません、色々と世話になっちゃって」
「貴方も大変でしょうが頑張ってください」
頭を下げるとロングビルは人のいい笑みを浮かべて会釈を返し、再び夜の敷地内へと歩いていった。
それを見送った後、柊は多分に不審そうな表情が入り混じった女性に連れられて与えられた部屋へと向かうのだった。
建物から十分に距離を取ったのを確認した後、彼女は大きく息を吐いて肩を落とした。
再びフードを被って顔を隠すと、いささか疲れた様子で小さく呟く。
「……やれやれ。夜になってまでイイヒト演じなきゃなんないとはね……」
誰に言うでもなく零したその言葉は、やはり誰に聞かれるでもなく夜闇の向こうに消えていった。
以上です
ハルケギニアの基本設定はもう今更過ぎるし無駄に量増えるだけなんでばっさりカット。というか余裕がない
投下後に何人かが言ってた月衣について。
本来なら作中で語るべきなんでしょうが解説できそうな場面が相当先になるので先に言ってしまいます。
月衣は異世界では常識無効化能力は発揮されず、収納能力のみしか使えません。
というのも、
・月衣の厳密な性能は「『世界結界』の影響を遮断する」ものである
・『世界結界』によって定められている常識(の一つ)が「総ての現象は科学的な物理法則によって成り立つ(=魔法だの何だのは存在しない)」である
・よって月衣を纏うウィザードは科学的な物理法則を無効化できる
(本来の順序は逆、そういう世界結界ができたからそれを潜り抜けるために月衣が生まれた)
でありますので、そもそも『世界結界』が存在しないファー・ジ・アースの外では月衣は意味がないのです
高いところから落ちれば当然死傷しますし、極論してその辺の村人と喧嘩して負ける事もありえます
ちなみにこれはルールブック(ソースブック・ラビリンスシティ)に明記されている公式設定でもあります
・・・が、これを厳密に参照した場合原作(TRPG・アニメ共に)においてすら描写に矛盾が多々見られるのが現状
本作内でもその辺はワリと適当に扱うつもりですが、
真面目にやってるときに「月衣があるから効かないぜ!」とか「月衣がなければ即死だった」みたいな使い方はしませんのでご了承ください
待ってたぜ乙ー
>真面目にやってるときに「月衣があるから効かないぜ!」とか「月衣がなければ即死だった」
NWは黒神子しか読んだことない(しかもルールはS=Fだったよなアレ)けど、
きくたけならやりかねんと言わざるを得ないw 神社をカバーリング→ダメージ無効化を認めた男だしw
遅だが、カタストロフの作者・・・そうだったのか。
かなりショックだ。
乙
支援遅れたorz
投下、お疲れ様ですー。
通ったあとには、折れたフラグが無数に転がる不毛の荒野が広がると言われた天性の女たらし、柊連司。
まさかとは思うが……おマチさんまでその毒牙にかかるのだろうか(遠い目
>月衣
2nd環境下なら月衣を利用して飛行可能……の割には、今のところ小説版で言及されているくらいですねぇ。
>描写に矛盾
最たるものが、柊家長女の柊京子ですよね……ウィザードじゃないのに柊連司にダメージを与えますし。
だがしかし、NWはそのあたりのぬる〜い点がウリでもありますからねぇ。
それでは次回の投下を楽しみ待っています、頑張ってくださいな。
シャイターンとシャイマールの百合か…
>>590 力が勝手に・・・!
ヨーガヨガヨガヨガヨガ
焼きたて!!ジャぱんの河内召喚か
ふむ……つまり……
ダルシムズとジャぱんのリアクションで全ハルケギニアダルシム化計画ということか
亀だけど更新GJ。エリスかわいいよエリス。
アンソロノベルだと柊が好きという描写されてたっけ。まぁ、アニメ見れば
あれは惚れるよなー。
ここで言っていいものか分からんがカタストロフの作者(牧野だっけ?)によく似た絵柄のエロマンガ家を最近見たんだが……
もしかして本人なのだろうか?
気になって検索かけたらニコニコ動画に牧野が書いたアイマス見つけた
超うれしかったので今書いてる作品そっちのけで小ネタを書こうと決意した
珍しく、天気が良い七夕の夜。いかがお過ごしでしょうか?
お願い事はしましたか?
私の願いは……読んでくださる皆さんさえいれば、もう何もいらないです。
あ、後文才とセンスと根気と彼女とFF9のリメイクと……(以下108ぐらい続く)
まぁ、それはともかく、星降る夜に投下いたしたいと思います。
19:55頃より、お邪魔いたします。
ヒャッハー!ビビだー!
ガンダ=東和馬
ヴィンダー=荒岩一味
ミュニ=喰いタン
記憚=山岡史朗
食の使い魔
投下開始でございます
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アニエス先生が着替えるのはものすっごく速かった。
店員さんの服装も似合ってるけど、やっぱり、アニエス先生は鎧姿の方が見慣れてる感じがする。
今はもう鎧姿でチュレンヌとその部下さん達を連行するところだ。
「ほら、キリキリ歩けっ!――いいか?本当の本当に秘密だからな?」
しつこく、ルイズおねえちゃんに念を押すアニエス先生。
うーん、別に、アニエス先生の場合はしっかりと任務のためなんだし、
秘密にする必要は無いと思うんだけどなぁ……?
「しつこいわねぇ!貴族に二言は無いわ!」
「――ふむ、貴族がどうかは知らんが……まぁ、お前達ならまだ信用できるだろうな」
アニエス先生はちょっぴりと笑って、チュレンヌの腕の縄をもう一回きつくひっぱった。
うん。ルイズおねえちゃんはその辺信用していいと思うんだ……ときどき、ウッカリしてるけど……
「それでは、わたしは帰ってこいつの尋問――あぁ、そうだ。これは店の修理代にでも当ててくれ」
ドシャッと大きな音を出してルイズおねえちゃんの腕に押し付けられたのは、おっきい布の袋。
ルイズおねえちゃんが赤い紐をひっぱって中身を開けると、金貨がこぼれそうなぐらい詰まっていた。
「え?こ、こんなに沢山、いいの?」
「全部こいつの有り金だ。少しは本来あるべき場所に戻さねばなるまい?」
コツンとチュレンヌの頭を叩くアニエス先生。
こんなにお金持ちなのに、お店でお金払ってなかったんだ……やっぱり、チュレンヌは悪い人だったんだなぁ……
「 ――さて、行くぞ!ほら、足並みが遅い!左右!左右!左、左右!」
行進の合図のように、縄で縛られたチュレンヌ一味を連れていくアニエス先生。
流石に、軍人さん達は足並みが揃って綺麗に歩けてるけど、チュレンヌは足がもつれてうまく歩けないみたい。
「わ、わたたも、もっと優しくしてはくれませぬか……ぬひょぉっ!?」
つまずく度に、アニエス先生にお尻を蹴り上げられるチュレンヌ。ちょっと痛そうだなって思った。
……ちょっと、チュレンヌの声が嬉しそうなのはなんでだろう……?
「――んんっ!すごいわルイズちゃん!」
「あのチュレンヌの顔ったら無かったわ!」
「胸がすっとしたわ、最高っ!」
お店に帰ったら歓声の渦がボク達を巻き込んだんだ。
みんな、とっても良い笑顔だった。
そういえば、咄嗟のことで忘れてたけど……
「特にルイズちゃん!すごかったわねぇ〜!」
「あ」
ルイズおねえちゃんが魔法を使われてるとこ、しっかり見られてるんだよねぇ……?
おねえちゃんが貴族って、秘密だったんだけどなぁ……
「……ま、バレるときゃバレるわなぁ」
デルフはこう言うけど、バレるたら色々問題になると思うんだけどなぁ……
「いいのよ、別に。あんた達が何者だろうと」
「え?」
店長さんの言葉は、思いもかけず、優しい物だったんだ。
「バレバレなのよ、最初っから!」
店員さんがニコニコ笑いながら、その後のセリフを続ける。
……バレバレ、だったんだ……
ちょっぴり、ガックリってなっちゃって、帽子をぎゅっとかぶりなおした。
ボクも、ルイズおねえちゃんも……役者さんとしての才能は無いのかなぁ……?
「こちとら、何年酒場やってると思ってるの?人を見る目だけは一流よ。
安心しなさい、ここには仲間の過去の秘密をバラす子なんていないんだから」
この言葉は、ちょっぴり嬉しかったんだ。
あんまり、お店の手伝いもできてないけど、『仲間』って言ってくれたことが、なんか嬉しかった。
店長さんの男らしい顔から覗く白い歯が、すごく頼もしく見えた。
「ここにいる子は、みんなそれなりにワケあり――まぁ、銃士隊って子ははじめてだったけど――
ま、ともかく!安心して、これからもチップを稼いだり、お皿洗ったりしてね?」
「うん!」
ハルケギニアに来て思ったこと、そのままなんだけど、
こっちの人って、ほとんど良い人だなぁって思うんだ。
一緒に働いたり、一緒に暮らしたりするのが、とっても気持ちよくなるぐらい、良い人達ばっかり。
「さて、お客さんも全員帰っちゃったし、今日はもう閉店!チップレースの結果を発表しまーす!」
……あと、こっちの人って、ほとんどノリが良い人ばっかりだなぁて思うんだ。
店員さん達の歓声と拍手によどみが少しも無くて……なんか、すごい。
「ま、数えるまでもないわよね?」
つかつか、と店長さんが軽やかな足取りで歩み寄ってきて……
「優勝!ルイズちゃん!」
ルイズおねえちゃんの手を、高々と挙げたんだ。
「え」
「ほぇ?だ、だってこれはお店の修理代……」
片手でたっぷり金貨の詰まった袋を重そうに持ってるせいで、
ちょっとバランスが悪い格好になりながら、ルイズおねえちゃんが驚いていた。
「ノンノンノン!これだけありゃお店を新装してもお釣りが来るわよ!余りはとっときなさいな!」
「っかー!粋だねぇ!」
デルフの言うとおり、店長さん、なんかカッコいいなぁって、思うんだ。
「というわけで、『魅惑のビスチェ』をここに贈呈しま〜す!はいみんな拍手ぅぅ〜!!」
「ま、まぁ貰えるものは貰っとくわ!」
包まれるような拍手の中、黒い包みを受け取って、ルイズおねえちゃん、まんざらでも無さそうな顔をしていた。
ほんの軽い、お店の羽扉が開く音が、終わらない拍手の隙間を縫って聞こえてきたんだ。
「あ、ゴメンなさい、今日はもう閉店で……」
お店の中でもベテランさんになる店員さんが、応対する。
「あぁら!折角来たお客を返そうってわけ?」
それは、どこかで聞き覚えのある声だった。
「ギーシュ!あんたなんでこんな店知ってるわけ?」
それは、どこかで聞き覚えのある名前だった。
「ご、誤解だよ!ぼ、ボクはマリコルヌから噂を聞いていただけで……ん?」
それは、間違い無く見覚えのある顔だったんだ。
「え」
「お?」
「ゲ!?」
「あらあら」
「こら、ギーシュ、話を逸らさないで――あら?ルイズじゃない、どうしたの?」
……ギーシュに、モンモランシーおねえちゃんに、キュルケおねえちゃん……なんで、こんなところに?
ゼロの黒魔道士
〜第五十一幕〜 Under The Stars
「た・し・か・に!ギーシュの言うとおり、ここはいいお店だわ〜♪オホホホホホホ!」
キュルケおねえちゃんが、高らかに笑う。
「だ、だだ誰のここここことでございましょうかしらんらら……」
ルイズおねえちゃんは、それに比べてかなり青い顔になっちゃっている。
……なんか、どもりすぎて、むしろハミングみたいに聞こえてしまうなぁ……
「隠したってもう遅いわよ――あ、ビビちゃん、役に立たちそうにない店員さんの代わりに、メニュー持ってきてくれる?」
「あ、う、うん……」
厨房に走りながらも、震えるルイズおねえちゃんの様子が気になって、ついつい耳がそっちに向いてしまう。
「いや〜……しかし……案外似合うものだな、うん」
これは、ギーシュの声。どうやら、ルイズおねえちゃんの服を見て言っているらしい。
似合うよね、やっぱり?嫌がっている理由、ボクにはよく分からないんだけどなぁ……?
「ギぃぃいシュぅぅぅうう!やっぱりあんた、そういう目的でこの店に!」
こっちはモンモランシーおねえちゃんの声。
……うーん、女の人と男の人で、“趣味が違う”、とかそういうことなのかなぁ?デルフの言葉を借りるんだったら。
「ち、違うよ!ほら、普段学院では制服姿しか見ないから!」
「辛うじて色気が出たってところね。学院でもそっちの服着てたら、ルイズ?」
これは、キュルケおねえちゃんの声。
色気とかそういうのは、ボクには良く分からないけど、学校だったら学校の服を着た方がいいんじゃないかなって思う。
学生さんらしい格好をしていた方が、なんか、勉強してるなって感じがするし。
「だ、だから、ですから、私はルイズじゃありませせんですからだからから……」
これは……ルイズおねえちゃんの声、でいいんだよね?
なんか、あんまりにも震えてるから、別の人の声に聞こえてしまう。
……うーん、何とかしてあげたいけど……どうすればいいんだろう?
「っへぇ〜……――例えば、の話だけどさぁ?
ドピンク頭のツルペタ娘が趣味の良い服来た裏通りのお店で働いてた、なんて噂。どれくらいで学院中に広まるかしらねぇ?」
「っ!?や、やめなさいよっ!?ほんっとの本気でやめなさいよ!?」
「あらぁ?ルイズじゃない貴女がどーしてそこまで学院でのお噂なんてお気になさるのかしら?」
「グ」
……どう考えても、口でキュルケおねえちゃんに勝てることなんて、できそうも無いって思ったから、
ともかく、早くお水とメニューを持って行った方がいいなって思ったんだ。
「あぁ、ビビちゃん、ありがと♪じゃ、これ、全部――もちろん、貴女のおごりでね、ルイズ♪」
メニューを運ぶなり、キュルケおねえちゃんがそう言う。
……全部って……かなり、料理の種類があるよ?それを全部食べるのかなぁ……?
「ななななんで私が――って私はルイズじゃなぁぁぁああい!?」
ルイズおねえちゃん……なんか、口を開けば、自分から泥沼に入っていってしまってるような気がする。
「そうねー、私の実家のお隣へ噂が流れちゃうってのもありそうな話よねー♪ついうっかり、みたいな」
「っ――ろ、ロクな死に方しないわよ、あんた!!!」
「えぇ、よくそう言われるわねぇ♪」
キュルケおねえちゃんの笑顔と、ルイズおねえちゃんの怒り顔が、丁度光と影みたいに、真反対で印象に残ったんだ。
……えっと、二人とも、友達、なんだよね?
……こういうのも、友達、ならではなのかなぁ……?
ちょっと、よく分からなくなっちゃいそうだった……
・
・
・
「そういえば、今日はタバサおねえちゃんは?一緒じゃないの?」
お肉料理の5品目を持って行っても、まだ最初のサラダが残っているのを見て、ふと思い出した。
タバサおねえちゃん、サラダとか大好きだから真っ先に食べるんだ。
……今日は、一緒じゃなかったのかなぁ?
「あぁ、そういえばそうだなぁ。タバサ君も数少ない居残り組だったような?」
居残り組って言うのは、夏休み中魔法学院に残っている学生さんのこと。
ほとんどの学生さんは、夏休み中実家に帰ったり、どこかに旅行に行ったりするから、
ギーシュ達みたいに夏休み中学院に残りたがる学生さんって珍しいらしいんだ。
(ちなみに、ギーシュの残っている理由は半分が訓練したいってことで、もう半分がデートしたいってことらしい。
真面目なのかなぁ、そうじゃないのかなぁ……?)
「……あの子もねぇ、実家には帰らないけど……色々あるのよ、用事とか……」
キュルケおねえちゃんが、お酒をチビりと飲みながら、少し哀しそうな言い方で言った。
いつも仲良しで一緒にいるから、余計に寂しいのかなぁ?
「そういう、あんた達は?夏休み始まってから、ずっとここ?」
「あ、えーと……う、うん……」
……流石に、お姫さまの任務のことは言えないし、それ以上に、お金を使い果たしたってことなんて言えない。
うっかりして余計なことを言っちゃいそうだったから、ゆっくり考えながら返事をするしかなかったんだ。
「ほうほぅ……なるほど、麗しい妖精達と一つ屋根の下で過ごす夏休み、か――いたただだ!?も、モンモン、痛いよっ!?」
「ギーシュっ!あんた、本当っに反省しなさいっ!!」
……ギーシュとモンモランシーおねえちゃんって、本当に仲良しだなぁって思うんだ。
きっと、モンモランシーおねえちゃんは、いつもギーシュのことが心配なんだろうなぁって思う。
だから、一緒のときはいつもつねったり、手をつないだり、とにかく、ギーシュに触れていようとしてる。
……こういうのを、“恋人同士”って言うのかなぁ?ちょっと、分かるような、分からないような……
「――は〜い、『卵ふわふわのメイプルシロップのパンケーキ』のお客さまぁ〜……っても、あんた達しかいないか」
ルイズおねえちゃんの態度が、明らかにチップレースのときのものとは違った。
なんかこう……目に光が無いって言うか……なんていうんだっけ?『魚みたいな目』、だっけ……?
「……ビビちゃーん、この店員さん愛想悪い〜!」
「る、ルイズおねえちゃん、『ニコニコ笑顔のご接待!』……だよ?」
体中から、元気ってものが抜け出てしまったような感じがする。
やさぐれてるって言えばいいのかなぁ、こういうのって……
「疲れてる上にお客が知り合いだけだったらやる気も出ないわよぉ〜……」
「そういえば、いつもはもっと賑やかなんだがなぁ、この店は……」
ギーシュが、辺りをキョロキョロと見回して言う。
「いつも?やっぱり、ギーシュ、あんたって人はここに通いつめて――」
「ち、ちがうちがうちがう!?ま、マリコルヌだよ!アイツがそういう噂を……」
「そういえばちょっと散らかってる?ルイズ、あんたちゃんと掃除したの?」
散らかってるのは、しょうがないなって思うんだ。
ルイズおねえちゃんが吹きとばしたり、アニエス先生が投げ飛ばしたりしたから……
後で、お掃除しなくっちゃなぁ……
「っさいわねぇ〜……今日は色々あったのよぉ〜……」
「ふむ。時間も遅めだし、今日は僕らが最後のお客かな?」
「あら、そんな時間なの?学院に帰るのもめんどくさいわねぇ〜……ビビちゃ〜ん、泊・め・て♪」
「え、あ、えーとその……」
あの屋根裏部屋には、壊れたベッドが1つきりっしか無いから、ボクとルイズおねえちゃんが寝たらぎゅうぎゅうなんだけどなぁ……
「断ぁぁあるっ!!」
ルイズおねえちゃんが、さらにベッドが狭くなるのは嫌なのか、大声で反対したんだ。
「えー。ケチ〜。 じゃ、代わりに朝まで飲み食いしましょっか♪もちろん、ルイズのお金で……」
「い、いい加減にしなさぁあいっ!」
『ちょっと、あなた、どうしたの!?』
「ん?」
「あら?」
「外かな?」
どう転んでも、ルイズおねえちゃんが口喧嘩で勝てることは無いなって改めて思ってたら、
外から店長さんのおっきな声が聞こえたんだ。
シーエーン
『そんな格好で――誰かに襲われたの!?』
『きゅ、きゅいぃい……』
「誰か倒れてたみたいねぇ?」
微かな、泣くような声が聞こえる。
……確実に、何かあったみたいだ。
『こんな夜中に女の子が素っ裸で、なんて!』
「――よし、僕が見て来よう」
ギーシュの顔が、ものすごく輝いていた。
夜空にまたたく、お星様ぐらいに。
「ギーシュ、ちょっとそこに座りなさい」
モンモランシーおねえちゃんは、それに対して静かに怒っていた。
……背筋が凍ってしまいそうなぐらい、冷たい怒り方だった。
「ビビ、見てきて?」
「う、うん……」
何かあったらいけないから、デルフを背負って外に様子を見に行くことにしたんだ。
・
・
・
「きゅ、きゅいぃ……大丈夫なのね……ワタシは、やらなくちゃならないことが……」
外にいたその人は、本当にひどい状態だったんだ。
青い長い髪の毛で、服とか何にも着て無い状態だった。
「その怪我では無理よ!じっとしてらっしゃい!」
白い綺麗な肌のあちこちに、痛々しいまでの傷がまばらについていた。
まるで、剣の嵐の中をつっきってきたような、そんな傷の痕……
「だ、大丈夫?」
駆けよって、その女の人の横に膝をつくと、
その女の人は、ボクの顔を見て安心したような笑顔を浮かべたんだ。
「……っ……! ビビちゃん……やっと、会えたのね……」
そして、そのままデルフごとボクに抱きつく女の人……
「え?ぼ、ボク?」
なんで、この人、ボクの名前を知っているんだろう……?
「おん?この姉ちゃん……」
デルフも、不思議そうな声を出している。
「ちょ、ちょっとあなた!?し、しっかり!? ビビちゃん、お医者さん呼んできて!通りの外れから2軒目のっ!」
「う、うんっ!」
店長さんに言われた場所に急いで行こうとしたけど、傷だらけの女の人がボクの服の端っこを引っ張って、離してくれなかった。
「……お、お医者さんは必要無いのねぇ〜……むし……ろ……呼ばないでほし……いのね……」
そう、髪の毛と同じラピスラズリのような青い目で訴えることに、ちょっと困ってしまう。
「安心しなさい。口の堅い、その筋専用の医者だから!水メイジほどってわけにはいかないけど、腕は立つわよ」
でも、お医者さんを呼ばないと、酷い怪我だし……あ、そうだ!
「も、モンモランシーおねえちゃんが中にいるから頼んでくるっ!水メイジだし、優しいから、きっと……」
「だ、だから……そ……じゃなく……て……」
グゥゥゥゥゥゥキュルルルルルルルルルルルルルクゥゥゥ〜〜〜
すっごい音が鳴った。
ラッパの音のようでもあり、猛鳥が叫ぶ声のようでもあった。
でも、一番こういう音に近いのって言えば……
「ん?」
「えっと……」
「腹の音、か?」
「お腹すいた……のねぇ〜……」
……酷い怪我なのに、まず心配するのがご飯のことって言うのに、ちょっと呆れてしまったんだ……
・
・
・
「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
まるで、ちょっとした手品を見ているみたいだったんだ。
ここにあるお皿は、それこそタネも仕掛けも無い大盛りのお肉の乗ったお皿。
ボクが運んできたから、それは間違いない。
それも、さっきから何度も。
「たんとお食べなさい!おかわりはいくらでも――」
「おかわりなのねっ!!」
なのに……3つ数える暇も無いほどに、お皿の上のお肉が綺麗さっぱり消えてしまっている。
これって、何かの手品だと思うんだ……
「早っ!? いやいや、嬉しくなるわねぇ!何年も商売してるけどここまで食べる女の子はそう無いわよ!」
ごってりかかっていたはずのソースも、綺麗に添えてあった緑の野菜も綺麗に無くなっている。
それもこれも、目の前の青い髪の女の人1人だけでだ。
今、女の人は、髪の毛や目の色と同じ、青い店員さんの服を着ている。(店長さん曰く、スペアなんだって)
こうして見ると、モンモランシーおねえちゃんに応急処置してもらったとはいえ、
さっきまで大けがで弱々しく倒れていた人と同じ人とは思えないんだ。
……もし、本当に手品だったら、後でタネ明かししてほしいなぁ……全然分からないから……
「んぐんぐんぐ……プハーッ!生き返るのねっ!!」
「すごいね……」
さっき、キュルケおねえちゃん達が無理やり頼んだ全てのメニューが、綺麗さっぱり消えていた。
後に残るのは、埋まっちゃいそうなぐらい高いお皿の山。
……これ、お皿洗うのはいいんだけど、どうやって運んだらいいんだろう……
ボクの背より高くなってしまっている……
「呆れるしか無いわ」
ルイズおねえちゃんも、同じ感想みたいだ。
天井近くまでそびえたお皿の山頂を見上げて口をぽかんと開けてしまっている。
「同じ性別の同じ生命体とは思えないわね……」
モンモランシーおねえちゃんは、それを食べ挙げた女の人を目をまん丸にして見ている。
……うん、多分、違う種族とか、じゃないかなぁ?
……ちょっと、普通の女の人がここまで食べるって、信じにくい。ク族、とかかなぁ?
「タバサ思い出すわねぇ〜。髪の毛といい、食べっぷりといい……」
キュルケおねえちゃんは、ちょっと困ったように笑っている。
……え、っていうか……タバサおねえちゃんも、ここまで食べるんだ?
……黙々とサラダを食べている印象しか無いから、あまり量については記憶に無いや……
「〜〜っ!?そうなのね!こんなことしてる場合じゃないのねっ!!タバサお姉さまが大変なのねっ!!!」
タバサおねえちゃん、の声を聞いて、愛おしそうにしゃぶってたあばら肉の骨を口から離して、おねえさんは急に立ち上がった。
「わ、わたたたた……タバサおねえちゃんが大変?」
衝撃でお皿の山が崩れそうになるのを、必死に抑え止めながら、聞く。
タバサおねえちゃんが、大変?
「? 貴女、タバサの知り合いなの?」
キュルケおねえちゃんが当然のような疑問を口にする。
「う、うぐっ、そ、そうだけどそうじゃなくそのえっと……」
しどろもどろになる女の人。なんだか、その……すごく、怪しい。
「タバサ『お姉さま』って……君の方が年下には見えないが……」
普段は鈍いはずのギーシュまで怪しそうに見ているから、これはもう間違いなく怪しいんだなって思うんだ。
「えーとあのその……きゅいいい!説明するのもまどろっこしいのね!!」
しどろもどろになった挙句、その女の人は、ボクの襟の後ろっ側をひっつかんで、連れて行こうとしたんだ。
「うわわっ!?ちょ、ちょっとちょっと!?」
引きずられるっていうより、引きちぎられるって感じがするぐらい、ものすごい力だった。
ベヒーモス、いや、それ以上かもしれない。
こんな細い腕のどこからそんな力が出るんだろうって、不思議に思ってしまった。
「ビビっ!? きゃぁぁああ!?」
ルイズおねえちゃんが、ボクの身体をつかむけど、ルイズおねえちゃんごと引きずられる。
この女の人なら、てつきょじんだって素手で投げ飛ばせちゃうかもしれないと思った。
「ちょ〜っと、貴女?私の知り合いにどういうつもりかしら?」
店の扉の前に、キュルケおねえちゃんが立ちはだかった。
杖を抜いて、戦う気満々だ。
……さっきの今で、お店がこれ以上痛むのはやめてほしいけどなぁって、心のどこかで思ってしまったんだ。
支援をするのに理由がいるかい?
「あぁ、もう!こっちの事情は外で言うのね!だからあばずれ女は黙ってついてくればいいのねっ!」
「あばずっ……ちょっとお痛がすぎるようね?」
……?“あばずれ”って、どういう意味なんだろう……?
「お痛でも歯痛でもいいのねっ!こっちには時間が……」
そして、この女の人の事情って、何なんだろう?
タバサおねえちゃんって、大変って何なんだろう?
……あと、ボクはいつ離してもらえるんだろうなぁ……?
少なくとも、最後の疑問は、すぐに解けた。
「あら、もうお帰り?おかわりできたけど……」
店長さんが両手に抱えるようにしたお皿の上の、香ばしいお肉の焼けた匂いと共に……
「きゅいっ!?」
「あうっ!?」
「あたっ!?」
ルイズおねえちゃんと仲良く並んで振り落とされた。
……美味しそうな湯気を上げるお肉のローストを見て、青髪の女の人はすごく困っていた。
「……きゅ、きゅいぃぃ……」
急いでるけど、食べたい。うん、こればっかりは分かりやすかった。
本当に、人ってお腹がすいたりするとヨダレを垂らすんだなぁ……
「――急いでるなら、テイクアウト用に包みましょうか?」
「きゅ、きゅいっ!?そ、そんなことできるのね!?」
店長さんの提案に、目がランッと輝いて嬉しそうにする、女の人。
……それにしても、まだ、食べるんだ……
「ミ・マドモワゼルに不可能は無いわっ! ただ、300数えるまで待っててね。量が多いから……」
「――300数えるまで待ってやるのね!そしたら外に行くからキリキリ準備するのねっ!!」
「な、なんなのよ、まったく……」
ルイズおねえちゃんが、さっきぶつけたらしい頭をさする。
「さっさとするのねこのピンク頭!1〜、2〜……」
「あ〜、今日はもう怒る気力も無いわ……」
今日は本当に色々あったから、大変なのは分かる。疲れているのも、分かる。でも……
「……でも、準備した方が、良さそうだよ?」
なんとなく、そんな気がするんだ。
「どうしたのよ?あの女、あんたの知り合い?」
「違うけど……知ってるような気もするけど……なんか、必死だし……助けてあげなくちゃって感じが……」
それに、なんか悪そうな人には見えないと思うんだ。
だから、とにかくまず話を聞きたい。
「う〜ん……」
ルイズおねえちゃんは、それでも迷っていた。
「出かける準備、した方が良さそうだぜ」
「デルフ?」
「……ちょいと、おもしろくなってきそうだからな」
……デルフのこういう勘って、不思議なほどよく当たってしまうんだ。
……おもに、悪い方向に……
「78〜、79〜……まだ包めないのね?」
「あんまり慌てない〜!テイクアウトの品も芸術よ!」
「きゅ、きゅいぃ〜……えーっと、いくつまで数えたっけなのね……」
こんな風に子供みたいに料理が包み上がるのを待っている人は、どんな事情を抱えてしまっているんだろう……?
・
・
・
「よし、早速出発なのねっ!!」
青髪のおねえさんの両手には、持ち切れないほどのお肉の包みが盛り上がっていた。
(と言っても、これでも最初に店長さんから渡された量の半分にはなっていた。歩きながら食べてたから)
「出発、じゃないわよ!こんな街外れまで連れてきて!」
街の灯りも届かないほど、遠く。
森を少し抜けた街道の脇の丘の上。
今夜は、こぼれそうなぐらいの、星空だった。
手を伸ばせば、光に届きそうな気がするぐらいに。
ルイズおねえちゃんの準備は、案外アッサリしたものだった。
服装は学院の服に着替えて、ほとんどの荷物は、
ホコリまみれの部屋に出すのが嫌だったみたいでカバンに入れっぱなしだったから、
適当にあとは詰め込むだけで用は足りてしまったからだ。
「名乗っても無い女にあばずれ呼ばわりされて、黙ってられるほど人間できて無くてよ?結局、あなた何なの?」
キュルケおねえちゃんがギロリと女の人を睨みつけた。
「きゅ、きゅいぃ……わ、わたしは……」
その視線を夜空に泳がすように逸らす女の人。
よくよく見ると、なんか不思議な目の輝きだった。
空に吸い込まれていきそうな、そんな感じの……
「すっとぼけた態度でゴマかそうってのは関心しねぇな、韻竜の姉ちゃんよ」
「きゅ、きゅいっ!?」
「いんりゅー?」
……“あばずれ”に続いて、また全然聞きなれない単語だったんだ。
ギーシュも、この単語は知らなかったみたいで?一緒に首をかしげている。
「おうよ、竜よか賢い、先住の魔法ってぇのを使う高度な生き物だな。触られたときにハッキリしたぜ。それに、あの食いっぷりだしな……」
ってことは……この女の人ってドラゴンなのっ!?
「まさか……だって、韻竜はずっと昔に絶滅したはずじゃ……」
ルイズおねえちゃんと、モンモランシーおねえちゃんは、その意味を知っていたみたいだ。
「そこにいるんだから絶滅なんかしてねぇんだろうさ」
「きゅ、きゅい、ち、違うのね。わ、わたしはイルククゥって言って……」
ドラゴンに全然って言っていいぐらい、見えない女の人が、必死にこれを否定する。
だけど、デルフは、もうこのおねえさんが“いんりゅー”って言うものって当然のように、言葉を続けたんだ。
「なあ、韻竜の姉ちゃんよ。おそらく主人から『正体を明かすな』とでも言われてるんだろうが……
さっきのお前さんの発言からすっと、お前さんの主人が危ないってぇことだろ?え?シルフィードさんよぉ」
「し、シルフィード?」
確かに、タバサおねえちゃんの使い魔は、あの優しいドラゴンのシルフィードだけど……
このおねえさんと、全然似て無いよ?
似てるとすれば、目の色ぐらいで……
「おいおい、まさか、タバサの使い魔が……」
ギーシュまで呆れてしまっている。
デルフって、ときどきいい加減なことを言うから当てにならないなって思うんだ。
「きゅ、きゅいぃぃ……ハウ……」
と、そのおねえさんが、観念したようなため息をついて、大きく息を吸ったんだ。
「我をまとう風よ。我の姿を戻したまえ」
青い、渦巻き。目にはそう見えた。
肌から感じる魔力の流れで言えば、それは風の力だった。
空に眩く光る星よりも、青く白く輝いた光が、やがて大きくなって、そしてその光が消えたとき……
「!?」
「う、うわぁっ!?」
「シルフィード!?」
目の前に、紛れもなく、タバサおねえちゃんの使い魔のシルフィードがそこにいたんだ。
……さっきのおねえさんが着てた服は、見事にボロボロになっていた。
「あぁ、後で絶対お姉さまに怒られる!絶対秘密って約束してたのに!きゅいいぃぃいい!」
「ちょ、ちょっとちょっと、これ、本当に!?」
みんな、慌ててる。ボクは、呆然とするしかなかったんだ。
「あぁ、もう!かくなる上はお姉さまを大急ぎで助けに行くのね!!おしかりは後でたっぷり受ける覚悟なのね!!!」
「ま、待ちなさいよ!タバサが?タバサに何かあったのね!?」
「キュルケ?」
「キュルケおねえちゃん……?
……ただ1人、キュルケおねえちゃんだけは、こんなことが起こるっていうのを、半分予想していたかのように、冷静だったんだ。
「そ、そうなのねっ!お姉さまが、お姉さまが!大変!大変!大変なのねっ!!!」
……タバサおねえちゃんに、何があった
---------------
本日は以上でおます。
そういえば、FF9が発売されて、今日がちょうど9年目ということで。
あぁ、あれからもう9年経っちまったのかなぁという気がします。
あのころなりたかった自分に、私はなれたのでしょうか?
……ちょっとおセンチになりつつ失礼いたします。
お目汚し、失礼いたしました。
うぉ、最後なんかミスってる……
「……タバサおねえちゃんに、何があったんだろう?」
が切れてるよ、コピペミスだよ。
もう、ね。ボロボロでごめんなさい。本当に。
黒魔さん乙でした〜
おお、9も九周年目か
黒魔さん乙!
>>663 中華一番がないことに絶望した
>>678 マオ、だっけ? 田中真弓が声当ててたやつ
>678
作風に美味しんぼを期待していたのに、放送されたのは味っ子だったあのマガジン作品ですか。
アレは格闘漫画だろう……
682 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:07:15 ID:Vkg+6uHS
OH!MYコンブがいないとは
684 :
魔導書:2009/07/07(火) 22:15:11 ID:ofNxH7KO
おひしゅうございます皆様。
ようやく外伝が完成したので他の人の予定が無ければ22:20より投下したいと思います。
タルブの村には元祖グルメマンガwの味平ですな?
じゃあスーパー食いしん坊で
687 :
魔導書:2009/07/07(火) 22:17:05 ID:ofNxH7KO
……すいません、投下宣言しておきながら、スレ容量的になんか投下しきれないみたいです……
32kbあるものですから……、ちょっと出直してきます……orz
ザ・シェフがないとは
470kb なんと微妙な・・・
あぁ〜 どうする? 次スレ立てるべきか?
水面浮切りッ!
島抜けた…orz
鉄鍋のジャンはどうしたあああああ!!
クカカカカカカッ!
「ダークドリームの冒険」の第5話が完成しました。
20kbくらいのはずですので、このまま23:40から投下させていただきたいのですがいいですか?
スレたては、すみませんがどなたかお願いします。
そうだジャンはどうしたーーー!!
クッキングファイター好も忘れんなーーー!!
グルマンくんを知らんのかーー!!
コココ…キキキ…カカカ…っ!
お前らなぁ、建ててくるぞ。テンプレ変更無しでいいな?
『フリッグの舞踏会』の最中に呼び出された、タバサの仕事はコボルト退治だった。
ガリア南部の山地の中にある『アンブラン』という村。
三方を山で囲まれた陸の孤島のような場所に、タバサとダークドリームは馬で向かった。
『鏡』は、一度いった場所でなければうまく繋げない。めくらめっぽうにつないでもどこに出るか判らないからだ。
リュティスの城なら、食堂でも更衣室でも思いのままだが……こればかりはどうしようもない。
到着した村では、ユルバンという戦士が町の警護をつとめていた。
どうしても、コボルト退治についてゆくというユルバン。
依頼主のロンバルド男爵夫人は、依頼の条件に『ユルバンを連れて行かない』ことをつけてきた。
「ねえ、タバサ。この村……なんか変だよ」
タバサは小さくうなづく。この町の住人には、なにか違和感がある。
コボルトに襲われそうだというのに、あまりに恐怖する気配がない。
「ここの料理、味が薄いし」
タバサは、また、うなづいた。
夕食の時にダークドリームは、一口食べて「味が薄い!」と文句を言ってしまった。
男爵夫人は「年寄りの味付けだから」と、塩と胡椒の瓶をもってきてくれたのだ。
次の日、タバサたちはベッドからおきだすとすぐに支度を整えた。
食堂に向かうと朝食の用意ができていたので、遠慮なくいただく。
ゆっくり食べていると、焦った顔のロンバルド男爵夫人が駆け込んできた。
「騎士どの、今朝、ユルバンを見かけませんでしたか?」
「みてない」
「おお、なんということでしょう。先ほど様子を見に行ったところ、姿が見えないのです!
おそらく、コボルト退治に出かけたのでしょう!」
ロンバルド男爵夫人は頭を抱えてしまった。
もし、そうだとするならば……手遅れにならないうちに駆けつけなければならない。
馬で30分ほど駆けた所に、その廃坑はあった。
山の中腹に、木枠で囲まれた穴が見える。そこがコボルトの巣らしい。
入口の様子を見て、タバサは不安を覚えた。
コボルトは夜行性で、基本的に昼間は眠っている。
だが……、臆病で用心深いコボルトは、必ず潜んだ場所の入口に、見張りを数匹置くのが常である。
その見張りがいない、ということは……。
「タバサ!」
ダークドリームが入口近くの岩陰を指差す。そこには、見覚えのある槍が転がっていた。
昨日、ユルバンが持っていた槍だ。おそらく、彼は見張りのコボルトに捕まって連れて行かれたのだろう。
コボルトの戦士は棍棒を好む。また、コボルトはよく人間を捕え、儀式の贄に使ったりもする。
コボルトの巣の奥まで連れて行かれたとしたら……。
コボルトの群れだけなら、戦う方法はいくらでもあった。
煙を炊いて燻りだし、出てきたところを『ウィンディ・アイシクル』で一匹づつ串刺しにすればいい。
日の光の中なら、コボルトごとき百発百中で命中させる自身はあった。
それにダークドリームもいる。たとえ10匹が相手でも、彼女なら楽勝だろう。
……ただ、それは日の光の下なら……の話だ。
ユルバンが捕えられているのなら、煙で燻りだす手は使えない。
暗い廃坑の中で、コボルトと戦わなければならない……。
地の利は向こうにある。それに、暗闇で戦うための『暗視』の呪文は、タバサの精神力を削る。
簡単なはずだったコボルト退治が、急激に危険を伴い始めた。
それから、しばらくして……
タバサは、ユルバンとコボルトの祭壇の前で倒れていた。
タバサをかばう様にして立つダークドリームの顔には、明らかに『焦り』が見て取れる。
暗い廃坑の中は、祭壇のところどころに灯る蝋燭だけが唯一の明かりだった。
彼女達の前に立っているのは、コボルトの神官……、人語を喋り、精霊声を聞く……
つまり、先住魔法を扱う事ができるのだった。
「やめておけ、おろかな人間よ!ここは我が精霊と契約している場所だ。
お前が動く前に、無数の石つぶてがお前を襲うだろう。そして、お前が避ければ後ろの人間達は死ぬ」
コボルトを次々と倒してここまで来たタバサたちだが……このシャーマンがいたのだ。
不意打ちを受けたタバサは倒れ、ダークドリームも暗い中で四方八方から来るつぶてを前にどうしようもなかった。
歯噛みするダークドリームに、コボルト・シャーマンはゆっくりと語りかけた。
「お前は、二つの未来を選ぶ事ができる。
まずひとつは、そこで転がっている人間と一緒に我らの神に捧げられるか……、
それとも、お前達の群れがもつ『宝』を我によこすかだ」
「宝?」
「そうだ、お前達の族長の持つ『宝』だ!かつて、我はお前達の群れからそれを奪おうとしたのだが失敗してしまった。
ふたたび群れを大きくするのに20年もかかってしまった。
それを、お前たちは、またほとんど滅ぼしてくれたわけだが、それは不問にしよう。
お前が『土精魂』を、お前たちが『土石』と呼ぶ宝をここに持ってくればな」
コボルト・シャーマンの話を聞いたダークドリームは困惑した。
そんな宝、聞いた事もない……。
それに、わたしがここから離れて、タバサが無事だって保証もない……。
迷うダークドリームに、タバサの声が聞こえた。
「行って」
ダークドリームは小さく歯噛みすると、わかったと頷いて廃坑の外へと向かった。
「あの土石の結晶……『アンブランの星』を持って来いと言うのですか。そうすれば、ユルバンを返すと……」
「お願い。わたしにそれを貸して!タバサとユルバンさんの命がかかってるの」
ダークドリームは男爵夫人にすがりつくような目で懇願した。
あれから、すぐにダークドリームは村に引き返して、男爵夫人に事の顛末を報告したのだ。
「あのコボルトの群れを率いていたのは、20年前にこの村を襲ったコボルト・シャーマンだったのですね……。
なるほど、なぜ、かつてコボルトに襲われたのか、やっと合点がいきました。
あの廃坑は、かつて『土石』を掘り出すためのものだったのです。鉱山で掘り出された毬ほどの大きさのある結晶。
掘り出されたときは、大きな噂になったと言います。……まさか、コボルトにまで、その噂が届いていたとは」
それきり、ロンバルド男爵夫人は黙ってしまった。
「お願い!あとで絶対に取り返すから、今だけわたしに貸して!」
食いつかんばかりに、近寄って叫ぶダークドリームに、男爵夫人は力なく首を振った。
「『アンブランの星』は、……もう、ないのです」
「ない!?」
ダークドリームは当惑した。
「そうです、使ってしまったのです」
精霊石は精霊の力の結晶である。何かの魔法に用いれば、目減りして、ついにはなくなってしまう。
『アンブランの星』と呼ばれた巨大な結晶も、その精霊石のひとつだった。
ダークドリームはじっとロンバルド男爵夫人をみつめた。
どう見ても、『嘘』をついているようには見えない。
「でも、ユルバンはなんとしても助けなければなりません」
「うん!タバサも絶対に助ける!」
だけど、どうやって戦えばいいんだろう……。
あの暗い洞窟の中は、コボルト・シャーマンの先住魔法の契約とかを施しているらしい。
四方八方、壁も天井も、命令ひとつで石つぶてが飛んでくる。
わたしの『力』は強力すぎて、あそこじゃ全力で戦えない。
下手に必殺技を使ったりしたら、坑道全体が崩れかねない。
それに……、タバサとユルバンさんは怪我をして動けない。
坑道が崩れたりしたら、絶対に助からない……。
あのコボルト・シャーマンは不利になれば、命令ひとつでタバサたちを殺せる……。
……どうすれば、タバサを助けられるの?
ダークドリームが悩んでいると……男爵夫人は立ち上がり、部屋を出てゆく。
再び戻った時は、大きな人形を抱えていた。
真っ白な、絵描きがデッサンに使うような形をしている。どさっと、テーブルにそれを置いた。
「これは?」
「あなたは『スキルニル』をご存知ですか?」
ダークドリームは首を横に振った。
「古代の魔道具(マジックアイテム)のひとつで、血をたらすと、その人をコピーして、同じ姿、同じ能力を取ります」
ダークドリームの顔色が変った。
「私は得意な土系統の魔法を用いて、魔法人形(ガーゴイル)の研究を行っていました。
この人形も、『スキルニル』と同じようなもの。血をたらすと、あなたとそっくりの姿になります。
これを使ってみてはいかがでしょう。少しくらいはコボルト・シャーマンを欺けるかもしれません」
男爵夫人の話を聞いたダークドリームは、静かに首を振った。
「だめだよ……、わたしも、この人形と同じなの。
シャドウ様によって作られた『プリキュア』のコピーだから、体を切っても血は出ない」
その告白を聞いた男爵夫人は、残念そうに肩を落とした。
ダークドリームが冷静なら『人間でない』と言う話に、全く驚く風がない姿に違和感を感じたのかもしれない。
だが、彼女の頭の中は、タバサを助ける方法を考えるだけで精一杯だった。
「そうだ!あなたの血をちょうだい!!あなたの姿なら……」
今度は、ロンバルド男爵夫人が静かに首を振った。
「わたしも、魔法人形です」
「あなたも!?」
「わたしだけではありません。この村に住む者は……、ユルバンを除いて、全員が魔法人形なのです」
「えっ!?」
ロンバルド男爵夫人の姿をした者は、ゆっくりと語り始めた。
20年前に、この村に起きた悲劇を……
このアンブラン村は、コボルトの群れに襲われた。
そして、ロンバルト男爵夫人とユルバンを残して皆殺しにされたのだった。
最後は、男爵夫人の魔法によって撃退する事ができたのだが、ユルバンは意識を失い、夫人も傷ついていた。
男爵夫人が考えた。自分が死んだら、一人だけ生き残ったユルバンはどれほど悲しむだろうか?
責任感が強い彼が、自分が守るべき村が全滅したと知ったら?
何十年も使えてくれたユルバンは、彼女にとってもはや家族とも言える間柄だった。
そして、彼女は『アンブランの石』を使い、自分の命と引き換えに、多くの魔法人形を生み出した……。
「わたしも、その……魔法人形なのです」
ダークドリームは、男爵夫人の目をじっと見つめたままその話を聞いていた。
「年の移ろいと共に、見た目はちゃんと老います。体温も、鼓動も再現されている。
でも、ただの作り物です。血を『スキルニル』に垂らす事はできない」
話を終えた男爵夫人の手にダークドリームが手を重ねた。
「あなたたちは、ユルバンさんを見守るために作られたのね」
男爵夫人が小さく頷く。
「わかった。絶対に助ける!ユルバンさんも……、タバサも……」
現れたダークドリームを見て、コボルト・シャーマンは犬が息をするような笑い声を上げた。
コボルト・シャーマンの隣にはタバサとユルバンが縛られたまま転がされている。
「『土精魂』を持ってきたか?」
ダークドリームは、持ってきた籠をコボルト・シャーマンに突き出して見せた。
そこにはキラキラと光る大きな岩石が入っていた。
ダークドリームが近づこうと、一歩を踏み出したところでコボルト・シャーマンは杖を前に出すような形で制止した。
「それ以上近づくな!わたしの足元へ投げろ」
ダークドリームは少し歯噛みして、持っていた籠を投げる。コボルト・シャーマンの足元でその中身が転がりだした。
「む?」
コボルト・シャーマンは、それがただに水晶だという事に気づいた。
「貴様……」
その瞬間、ダークドリームは、前に向かって一目散に駆け出した。
だが、コボルト・シャーマンの方が早い!
「我が契約せし『土』よ、つぶてとなって敵を討て!」
単純な、口語の調べがコボルト・シャーマンの口から漏れた。
無数の石つぶてが散弾のようにダークドリームを襲う!
だが、ダークドリームは勢いを殺さずに、そのままコボルト・シャーマンに抱きついた!
このままでは、自分が石つぶてに当たってしまうと術を解いたコボルト・シャーマンを、そのまま後ろへ押し込む。
ダークドリームの目的は、後ろの祭壇に飾られている『鏡』だ。
組み合ったふたりが『鏡』に映った瞬間、その姿は光となって消えた。
ダークドリームとコボルト・シャーマンが着いた先は、廃坑の近くにある森外れの開けた場所だった。
傍らの木に立てかけてある大きな『鏡』は、先ほどダークドリームが持ってきて置いたものである。
「ここなら、おもいっきり戦える……、
タバサやユルバンさんにも手出しできない……、
もう!あんたなんかに、絶対負けないっ!!」
コボルト・シャーマンは、自分を睨みつけるダークドリームを呆然と見ていた。
なんだ、この術は……人間どものけちな魔法に、このようなものがあるなど聞いた事もない。
それに、なぜあの女は動ける……?
どのように鍛えた人間とて、生身で石つぶてを10も浴びれば、動く事などかなわぬはず。
そこまで考えて、コボルト・シャーマンは気づいた、目の前の女が、傷ついてなどいない事に。
その体は、石つぶての土で汚れているだけだった。骨が折れるどころか、血の一滴も流れていない。
所々に避けた皮膚は、泡のようなものに覆われてすでに治癒しかかっている。
「き、きき、貴様!?何者だっ!まさか、あの村の者たちも、お前と同じ『化け物』なのか!?」
桃色の髪をした黒い戦士は、静かに口を開いた。
「わたしの名前はダークドリーム!シャドウ様によって作られた『闇のプリキュア』!!」
そのまま、コボルト・シャーマンに向けて足を踏み出す!
「つ、つぶてよっ!」
地面にある石が浮かび上がり、つぶてとなってダークドリームに襲い掛かる。
だか、ここは明るい。数も少ない。そして何より、地面からしか攻撃が来ない!
ダークドリームは飛び掛る石つぶてを軽々とかわしてコボルト・シャーマンの目の前まで接近する。
「こ、このっ、『化け物』がぁっ!」
ダークドリームの掌打が、コボルト・シャーマンに触れた瞬間、空気が震えた!
辺りに轟音が鳴り響き、地面が小さく震動する。
煙が晴れたときには、コボルト・シャーマンの姿はなかった。
「わたしも、村の人たちも、『化け物』じゃ……ないよ」
そこには、独り、返り血を拭くダークドリームだけが立っていた。
ベッドに横たわり、寝息を立てるユルバンを前にして、ロンバルド男爵夫人はタバサとダークドリームに礼を述べた。
「ありがとうございます」
ユルバンの頭には包帯が巻かれていた。
タバサの肩にも包帯が巻かれている。タバサの拙い『治癒』では怪我を完全に治すことはできなかったのだ。
執事が巻いてくれた包帯からは血がじんわりと滲み出しているが、命に別状はなさそうだ。
タバサもロンバルド男爵夫人の姿をした魔法人形から事の顛末を聞いていた。
ダークドリームが、じっとだまっているタバサの方をチラリと見たとき、ユルバンの目が開いた。
「う……、ここは」
どこまでも優しい声で、ロンバルド男爵夫人の姿をした魔法人形は、ユルバンに告げた。
「お屋敷です。あなたは無事に助け出されたのですよ」
「不覚……、一度ならず、二度も、このような失態を犯すとは……、もはや詫びの言葉もありませぬ」
「何を言うのです!あなたが無事だった。これ以上の成功がありますか」
目頭を押さえたユルバンの手を、男爵夫人の姿をした魔法人形が握り締める。
「ねえ、ユルバンさん」
ダークドリームが静かに老戦士に話しかけた。
「ユルバンさんは、村のために戦ったんだよね」
「ですが、不覚にも……一匹のコボルトを倒す事さえかなわず」
「違うよ!ユルバンさんは、何十年もずっと村を守ってきたんだよ。
ユルバンさんがいたから、村のみんなは安心して暮らしてたんだよ。
だから……ユルバンさんが死んだら、みんな悲しむよ……」
ダークドリームにじっと見つめられて、ユルバンは黙ってしまった。
「次からは、村が危なくなったらいつでも呼んで。
タバサとわたしが飛んでくるから……、一緒に村を守ろうよ」
「『ガリア花壇騎士団』は、そのために存在する」
タバサが小さいが力強い声で念を押す。
「ユルバンさん、早く元気になってね。ユルバンさんが寝てる間に、村が襲われたら大変だよ」
「そう……じゃな。騎士様と従者様の言うとおりです……、
……まさか、自分の孫にもなりそうな年の娘さんに説教されるとは……
さすがに名高いガリア花壇騎士様と、その従者様ですな。」
ユルバンがいる部屋から出た後、ダークドリームは大きく伸びをした。
「あーあ、ほっとしたらお腹すいちゃったな」
「では、食事の用意をさせましょう」
タバサはチラリとダークドリームの方を見た。
「わたしは、『魚のムニエル』がいいな。
ムニエルはね、最初に塩を溶かしたワインをかけて、しばらくおくと、おいしくなるんだって。
しっかり『下味』をつけるのがコツだって、マルトーさんが言ってたよ」
「では、そのように申し付けておきましょう」
ロンバルド男爵夫人は軽く笑って言った。
タバサは、そんなダークドリームをじっと見つめていた。
タバサは、男爵夫人の姿をした魔法人形の話を聞いた時、とても『哀しい』と思った。
男爵夫人の愛情は本物だろう、でも……どこか『虚しい』と……。
ダークドリームは、どう思っているのだろう?
彼女には、自分と違うものが見えているのだろうか?
それとも、同じものが見えていて、気づかないフリをしているんだろうか?
タバサには、どうしてもわからなかった。
今回はここまでです。
読んでくださった方、前回感想をいただいた方、Wikiに登録してくださった方、ありがとうございました。
この第5話で話数的に折り返しになります。
(少し増えそうな気もしますが…)
…さすがにここからは毎日更新はきつそうかなー。
投下乙。
>>697が建ててないようなので、次スレ建ててくるね。
, -─‐ 、 __ .. .._
,.ィフ´ _,... 、 \ ,.ィ´ `ヽ、
. /r‐' ,.ィ´ : : : : :`ヽ ヽ / , ヽ. ヽ
/ { /´: : :__: : : : :./ :\}/ /{ │ l ',
/:/ Y : : l´: :/`:,.イ _: : :ヽ '´/ ! | 、 ! l l
/イ /:/ | : : fチテ` ´ l´: `: :/l}ィオ ヽ _l_ `メ / !
レl :|: :| : : :i`¨ .fチ}〉:./ ,'l `′ ´ト'ミy′/-─ァ ',
V|l、:', : : l. r‐ 、 ¨./:イ / .ト、 、_ `7′/==イ l ',
/^Y^ヾヘ : :|ヽ__ ',. ィ: :/,==、 ヽ.. ィ′ / .| l '
> ,-イ ハ: :lエユ レ|:./,匁,斗} | ,/ //_ 、 | i ',
{_/:.:弋¨{ V,/(0)ヽ.|イ | l/ .::/ | / /´ `i \l | ,
/.:.:.:.:.:.:.:〉'{ < >┴| :{:‐-'´| ./ ィ′ \| ,
. /.:.:.:.:.:.:.:.:ゞ、}'´.:`ヽ /o | :/l: : : ,'レ' ,' ヽ ',
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 ̄`ヽ.:.ゝ.:_/.:.:.:.:./ V ソ l /:.ヽ、! l |
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\ // \ 〉イ |/: : : : : :`lノ :)ノノ
ヽ/.:./ | !: : : : : : : :`丶:. : :`ヽ
_,. -‐='二.ノ / j |:l'´ : : : : : : : : .: : : :' .
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AAで埋めるのは板の負担になるからやめよう。 な!
プリキュアの人乙&GJ!
あれ、目から水が…
>704
乙です
濃いなぁ、話の内容が濃い
起承転結を詰め込んだ、1話30分のTVアニメを彷彿しますた
元ネタ見た事ないけど面白かったです GJ!
712 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 07:09:19 ID:veJMNko1
ギーシュのワルキューレがメダロットな
クロス
>>712 プリティプラインかギャラントレディあたりか
ギーシュの使い魔がワルキューレが爆竜大佐のクロス
ギーシュがこち亀のバクニュー大佐を召喚しただと…!?
貴様らにそんな玩具(魔法)は必要ない
飛竜にガンダールヴ……ゴクリ。
あー東方の人、「コンタクト」(接触)じゃなくて「コントラクト」(契約)な。wikiなおしておいた方がいいぞ。
ああ、ストライダーだったのか
愛で空が落ちてくるケンちゃんだと思ってました
私の場合は竜というと・・・・・・廬山昇竜波?
四兄弟は色々騒ぎ起こしそうだな
下二人はともかく上二人はルイズに従いそうもないし
長男は笑って受け流しそうだが次男呼んだりしたら・・・・・・とりあえずルイズとギーシュとワルド逃げてェ!
あとアンリエッタも危険がピンチだ!
煤塗れのνガンダムと脱出ポッドが学院上空から落ちてくるのを幻視した
亀だがダークドリームの人乙です。
ところで今回の話、何か元ネタとかあるんですか?
>>720 エドワゥさんが来たとなると・・・・・・
手を出しそうなのはキュルケ(甘えさせて欲しがる)にタバサ(幼女スキー)
あとは難儀な女ホイホイって事でアンリエッタとルイズかな?
結局手当たりしだいかよ
そういえばキュルケは肌の色がララァに近いな
……もうちょっとスレンダーなら赤い人のストライクゾーンだが
んでキュルケの方が白い死神の方に興味を示せば修羅場だなw
赤い人 「貴様はまた私から母代わりの女性を奪う気か!?」
白い人 「……知るか! それに俺は気の強そうな出来る女性、学院長の秘書のような女性が好みなんだ!!」
>>724 白い髭「やりはせんっ! ミス・ロングビルはやりはせんぞぉっっ!!」
>>721 タバサの冒険の一番最近の巻に収録されている話だなあ。
元の話も切なくてよかったよ。
確かにおマチさんはアムロの好きなタイプだろうな
アムロが自分から関係持ったのっていろんな意味でデキル女タイプだし
他だとアニエスかルイズママンだなw
……肝心のルイズ相手だとどうなるだろ?
一見女の扱いには慣れてて大人っぽいけど、実際は子供な赤い人と
シャア板住人からは冷たい優しさ(特別扱いしない)を持っていると称される白い人では
ニュータイプ+ガンダなら攻撃という攻撃全てよけれるな
ルイズはクエスみたいなもんじゃないかと思うんだが
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/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
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いっそシロッコを召喚したほうがルイズとエレオノールは幸せになれるぞ。
ヤツほど貴族口説きで違和を感じない奴はいない
>>712 ギーシュのワルキューレがゴッドエンペラーと申したか
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part241
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1246978253/l50 ,.ィフ´ _,... 、 \ ,.ィ´ `ヽ、
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