あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part209

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part208
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232894176/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 01:52:33 ID:MANj3Xlg
テンプレ終了
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:04:32 ID:iZzO8OXZ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:06:52 ID:gIZov+Gv
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:19:53 ID:2QNaeJpE
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:24:24 ID:wmh9iNji
>>1乙
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:37:06 ID:Wi6ugw6R
1乙!
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 02:57:12 ID:QiGWye4I
>>1
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 05:19:04 ID:Mxs3e0oz
02
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 11:52:40 ID:BWoCv4xQ
>>1
11ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 11:54:47 ID:uNllOirE
だれも予約ないのなら12:00から、シーン12の扉を開きます。

ようやくアンアン登場。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 11:56:21 ID:BWoCv4xQ
アン様が来るか
支援
13ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:00:18 ID:uNllOirE
では、シーン12の運命の扉を開きます。


フーケに盗まれた<破壊の杖>を奪還し、フリッグの舞踏会が催された日から数日経過したある日、教室ではミスタ・ギトー
による授業が行われていた。

「さて、最強の系統は知ってるかね?ミス・ツェルプストー」
「虚無じゃないんですか?」

キュルケのその言葉に、ギトーはやれやれとばかりに肩をすくめた。

「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているのだよ」

引っかかる言い方をするギトーにキュルケは少しだけかちんと来たが、不敵な笑みを浮かべ言い放った。

「さあどうでしょう、使う人にも拠るんではないですか?」
「何を聞いていたのだね?私は系統の話をしている。使う人間という事柄は外して考えたまえ。」

しかし、ギトーは執拗に系統に拘る。キュルケはもう面倒になってきたが、我慢しながら話を続ける。



ゴーストステップ・ゼロ シーン12 “Princess letter”

    シーンカード:カリスマ(啓蒙/宗教、あるいは世俗的権力の介入。権力。罪の恩赦。)





「そうですわねぇ。私としても、風と言ってあげたいのは山々ですが…」
「何?」

彼の目論見としては、風以外の魔法を扱う生徒に己を攻撃させて、それを華麗に打ち返し、風最強を証明しようと思ったのだ。
しかし、この女生徒は可哀想なモノを見る目で自分を見ながら、全く予想もしない話を続けている。

「それが揺らいでしまったのです。そう、この間の事件で…、フーケがこの学院を襲撃した事件ですわ。」

まずい、それは非情にまずい話題だった。

「確か、あの時フーケが繰り出した30メイル級のゴーレムを前に、当時警備していた…」
「いや、もういい!黙りなさいミス・ツェルプストー!」
「あら、そうですか?」

白々しく意外そうな表情を浮かべるキュルケに、苦々し気な顔をして着席を命じたギトーは講義を続ける。

「ん、んんっ。
 さて、諸説あるだろうが、私は対人戦闘において最強の系統は風であると考える。
 確かに、土や水の様な質量は無い、火の様に純粋な破壊力も無いだろう。だが、対人戦ではそもそも、そこまで過剰な力
は必要ない。必要なのは確実に命中させる事、それが肝要だ。
 その点において風は突出している、見え難いために対象の回避は困難、しかも!風には先日ミスタ・グラモンとミスタ・
スペンサーの決闘で使われた遍在という切り札もある!」
「「ぷっ」」

ギトーが高らかに言い放ったその時、図らずもルイズとキュルケが吹き出したが、幸いというか、自分に酔った教師には聞
こえなかった様で、彼は滔々と持論を繰り広げる。

「そう遍在こそ、対人戦闘において風が最強と言われる所以なのだ。」
14ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:02:17 ID:uNllOirE
さらに、ギトーの風最強講演会が続こうかという時、いきなり教室の扉が開かれる。
何事かと教室中の視線が集まると、そこには光り輝く黄金の髪の毛が…もとい、金髪の派手なカツラを被った、コルベールが
立っていた。

「何事ですか、ミスタ・コルベール。今は授業中なのですが…」
「うおっほん!本日の授業は全て中止であります!」

教室から歓声が湧き上がる。
コルベールが歓声を抑えるかのように両手を振り、喧騒が静まった事を確認すると、言葉を続けた。

「皆さんに大事なお知らせですぞ。
 本日はトリステイン魔法学院にとって、喜ばしい日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日と言っても良い
でしょう。
 恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の白百合、アンリエッタ姫殿下が
本日、ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に一日逗留されます。」

教室がざわめき揺れた。

「従って、粗相があってはいけません。
 急なことですが授業は中止、今から全力を挙げて、歓迎式典の準備を行います。生徒諸君は正装し、門に整列すること。」

生徒たちが緊張した面持ちで一斉に頷いた。


そんな時、ヒューは何処にいたかというと…、図書室にいた。
最近、ヒューはハルケギニアの文字を修得しようと悪戦苦闘している。そもそもニューロエイジでは、基本的にニューロタン
グさえ出来れば、意志の疎通は問題なく出来ていた。特殊な言語でも、翻訳ソフトを<IANUS>に放り込むだけという、
ある意味羨ましい世界だ。
しかし、ここハルケギニアではそんな便利な小道具は無い。幸い召喚魔法の影響か、会話する分には問題は無いのだが、こと
読み書きという段階になると、地道な学習が必要になる。

文字は重要だ、様々な情報は文字という形で流れていく。文字が読めない書けないという事は、その情報を見逃し、掴んだ
情報を渡せず、失う可能性があるという事だ。
かつて、情報が命に関わってくる世界に生きていたヒューにとってみれば、それは自分の生命を放棄する事と同義だろう。
確かに消えかけている命ではあるものの、好き好んで捨てたいとも思わない、使えるのなら、出来るだけ使おうとヒューは
思っていた。それはかつて、立ち直る切っ掛けになった事件で仲間だった、イヌへの義理立てであり、出会った少年への意地
でもあっただろう。
幸い(と言っていいものか大いに疑問だが)、今つきあっている御主人サマは、中々に厄介な星の元に生まれているらしい。
とりあえず、自分が死ぬまでに何とか自立できる様になって欲しいものだ…と考えていた。

そんなヒューが勉強している、静かな図書館の扉が乱暴に開け放たれた。
何事かと見てみると、彼の御主人サマが乱入してきたのである。
15ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:04:21 ID:uNllOirE
王女アンリエッタは憂鬱に溜め息を吐いた。
齢十七、晴れ渡った空の様なブルーの瞳と通った鼻筋の美少女は、美貌に相応しくない影を纏わせていた。見るものが見れ
ばこの姿にも魅力を見出せるだろうが。やはり、この年頃の娘には明るい笑顔が似合う、というのが常識だろう。
彼女の白く繊細な指が、メイジの証しである杖を所在なげにいじっている。誰がどう見ても、深い悩みを内に秘めているのが
明白だった。

「王族たるもの、民衆が見ている前で溜め息を吐くものではござりませんぞ。」

前の座席に座るのは、髪も髭も白い、痩せているというには些か無理がある、初老の男だ。
服装は僧侶の格好なのだが、漂う雰囲気は政治家に近いものがあった。彼こそが、今現在このトリステイン王国を事実上、
取り仕切っているマザリーニ枢機卿である。
年齢は40代、実際の年齢と外見に食い違いが出ているが、これは彼が年齢を詐称しているとかではなく、彼の仕事の厳しさ
故の事だった。

実はこのトリステイン王国、先王が崩御した後、誰も王位についていない。先王の王妃は喪に服するとして、頑なに即位を
拒み、実際は王女がお飾りとして玉座にいる状態だ。
そして、その皺寄せを受けているのが。彼、マザリーニ卿を始めとする文官達だった。

ヒューはその事を、マチルダやマルトーから聞いた時に思わず「なんとも、のんびりしてるじゃないか」と苦笑した。

しかし、「のんびり」させてもらっている方は、彼等に対して感謝の気持を持つ事も無く、我が身が迎える不幸な未来に対
して嘆くだけだった。
そう、彼女は別に物見遊山でゲルマニアへ行ったのではなかった。彼女は婚姻を結ぶのだ、ゲルマニアの皇帝アルブレヒト
三世と。

しかし、これは仕方が無い事でもあった。今、隣国アルビオンでは内戦が起こっている。
自国内でその騒動が収まれば、いかにマザリーニとて、そこまで焦って政略結婚を進めようとは思わなかっただろう。
だが、内戦を起こしている、所謂“貴族派”は、ハルケギニアの統一と、エルフが治める“聖地”の奪還を高らかに謳って
いた。そう、彼等は自国の王家を滅ぼした後、他国も併呑しようと企んでいるのだ。
なればこその政略結婚だった、今のトリステインにゲルマニアと取引できる材料など“始祖から受け継がれた王権”位しか
ないのだ、これならばゲルマニアも乗るだろう。実際、都市国家の集団であるゲルマニアの皇帝にとって、“王権”は自らの
地位を確立する為、喉から手が出るほど欲しいものである。
結果、皇帝と王女の婚姻による軍事同盟は締結される運びとなる。そして、その婚姻は王女の少女時代からの想いとの惜別
も意味していた。

目の前に座っている枢機卿から目を逸らし、窓の外を見た王女の瞳に、魔法学院の尖塔が見えてくる。

「そういえば、殿下のご友人が学院にいらっしゃるとか。」
「ええ、ヴァリエール公爵家の末姫で、昔はよくやんちゃをしたものですわ。」
「なるほど、殿下もゲルマニアからの長旅でお疲れでしょう。今夜は、学院にて一晩逗留する予定となっております。一度、
その公爵家令嬢と気晴らしもかねて、会われるのも良いかもしれませんな。」
「そうですね、ではその様に。」
「は。」

王女と枢機卿を乗せた馬車は魔法学院の門を潜り抜けていった。
16ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:06:22 ID:uNllOirE
「トリステイン王女、アンリエッタ姫殿下のおなーりー!」

出迎えのため整列した教師生徒達は、その口上と共に杖を一斉に掲げた。
杖を掲げた生徒や教師達の間に敷かれた、緋色の絨毯の上を、マザリーニ枢機卿に介添えされたアンリエッタが粛々と歩いて
いく。
キュルケやタバサ、そしてヒューは、生徒達の列とは離れた場所で、その光景を見ている。

「ふぅん、結構美人じゃない。」
「だな、しかしまた物々しいな。」
【そりゃあ、しょうがねえよ相棒。何たって一国の王位継承者だ、万が一、何かあったら事だからな。】
「ま、そうだがね。やれやれ、ただ出迎えるだけなら図書館にいさせて欲しかったよ。」
「ご愁傷様。」
「それに関してはしょうがないわね。一応、貴方の主人のルイズは公爵家令嬢だもの、その使い魔が王族の出迎えほっぽいて
図書館で勉強していたなんて、赦される事じゃないわよ。」
「そんなもんかね。」
【しょうがねえさ、それがハルケギニアってもんだ。】

さて、御主人サマはどうしているかと思いながら、アンリエッタを歓迎する生徒達の中にいるルイズを探してみると、妙な
表情をしていた。顔は紅潮し、視線は歓迎しているはずのアンリエッタを通り過ぎている。
その視線を辿ってみると、ハルケギニア独特の動物“グリフォン”に騎乗している美丈夫に、釘付けになっていた。

(ほほう、御主人サマの好みはああいったタイプか)

等と益体もない事を考えていると、正面玄関で待ち受けていたオスマンとアンリエッタが何やら言葉を交わしていた。
アンリエッタ一行と、オスマン等教師陣が学院内に入っていった事で、一応式典が終わったのか、集まっていた生徒達は解散
していった。



その日、アンリエッタを交えた晩餐も終わり、学生達はそれぞれの部屋で気侭に過ごしている。
そんな中、ヒューはルイズの部屋ではなく、食堂にいた。
最近、ヒューは厨房でマルトーやマチルダと飲みながら、最近の世間話に花を咲かせるのを常としているのだが、今日明日
は、マルトーがいつもより多くの仕事をこなさないとならない為、今日は食堂の片隅で1人飲みながら本を読んでいた。
そんなヒューの視界の隅をローブに身を包んだ人影がかすめていく。

(また夜這いか…、昨日も行っていたのにギーシュもマメな事だ。)

最近、付き合いのある少年の頑張りを微笑ましく思いながら、ワインをまた一口喉に流し込む。
と、そこでまたもや不審な…いや、見知った人物が目の前を横切っていった。
先程、通り過ぎていったはずのギーシュである。何のつもりか、壁に身をくっつけたり、柱の影に隠れたりしながら廊下を
進んでいる。

「いかんな、そこまで飲んだつもりは無いんだが。少し酔ったか…。」

頭を振って、酒肴を片付けた後、マルトーに肴の感想と礼を言って、ルイズの部屋へと戻って行く。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 12:10:17 ID:naeeq2T3
支援
18ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:11:51 ID:uNllOirE
のんびりと、魔法学院の女子寮の廊下を進み、そろそろルイズの部屋に着こうかという時、ヒューの目に妙なモノが映る。
今頃はモンモランシーの部屋で楽しく過ごしているはずのギーシュが、扉の傍で蹲っているのだ。背中をこちらに向けて耳を
扉につけている。見ようによっては、中の会話を盗み聞きしているようなその姿を見て、訝しく思いはしたが、身体の調子
を悪くして座り込んでいるのだろう…、と好意的に解釈したヒューは、とりあえず声を掛けてみるべく近付いていった。

「むむむ、何という事だ!」
「トリック・オア・トリート。よう、ギーシュ。ここはモンモランシーの部屋じゃあないぜ?」
「ひっ!ヒ、ヒュー?」
「モンモランシーの部屋はもう少し向こうだ。夜更かしして明日遅刻なんてしないようにするんだぞ。」

ギーシュにそういった後、ヒューは彼を扉の前から退かせて、部屋の扉を無造作に開ける。
そこには、互いを抱きしめ合っている、御主人サマと姫殿下の姿があった。何故か2人の頬は紅潮している。
ふと、ヒューとルイズの視線が交錯した。

2人の間に何とも言えない空気が流れていく。ヒューは気まず気に視線を逸らすと、一言。

「失礼した、ごゆっくり」

と謝罪の言葉を告げて、扉を閉じる。が、その扉は再び、勢い良く開かれた。

「ちょっと待ちなさいヒュー!アンタ何か妙な事考えて無い?」
「いや、別に?人の性癖は色々だからな、恥じる事は無いさ。」
「ちょ…!それが勘違いだって言ってるのよ!そもそも私には」

果てしなくテンションが上がっていくルイズ。しかし、そんな彼女に麗しい声が掛かる。

「ル、ルイズ。そのような大声を出しては…。」
「そうでした、申し訳ありません姫様。ヒューとりあえず入って頂戴、それと何でいるのか分からないけどギーシュも。ほら、早く!」
「あ、ああ。判ったよルイズ。」

ルイズの言葉に大人しく従うギーシュ、ヒューは何故、姫殿下がここにいるんだ?と思いながら部屋に入っていく。
部屋に入ったギーシュとルイズは、アンリエッタの前に跪いていた。ヒューは扉に体重を預けるようにして立っていたが、
当然ルイズから怒声が飛ぶ。

「ヒュー、アンタ何してるの、早く跪きなさい!」
「はいはい、分かったよ。」

ルイズの剣幕に呆れながらも、一応は指示に従う。3人が跪くのを待っていたのか、アンリエッタが話し始める。

「ねぇ、ルイズ。こちらの殿方は?」
「あ、あの。お恥ずかしい話ですが、私の使い魔でヒュー・スペンサーといいます。」
「まあっ。では貴方がオールド・オスマンが仰っていた、遠い国からいらっしゃったメイジなのですね?」
「え・・・、いえ、姫様。」
「いいえ、分かっておりますルイズ。あの盗賊、“土くれ”のフーケから盗まれた物を、貴女達と共に怪我を負うことなく
取り返したと聞きました。
 今までその様な事、誰もなしえなかったのです。もっと自分の使い魔を誇ってもよいのですよ?」
「は、はぁ…」

アンリエッタの感歎したような声に、ルイズは恥じ入りながら訂正しようとしたが。続くアンリエッタの言葉に飲み込まれて
しまった。

「確か、ミスタ・スペンサーといいましたね?」

ルイズの後に控えていたヒューは、ただ黙って頭を垂れる。

「メイジという身で、ルイズの使い魔となっていただいた事には、私も感謝いたします。
 ルイズは私のただ1人の親友、どうぞこれからも力になって下さいまし。」

この言葉にもヒューは特に何も言わず、ただ頭を垂れて了承の意を表した。
会話が途切れるのを待っていたのだろう。ルイズの隣に控えていたギーシュが身を乗り出しながら、アンリエッタに嘆願の声を上げる。
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 12:15:27 ID:ONWobtbd
神業扱い支援!
これで残った神業は《暴露(エクスポーズ)》だけだっ!
20ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:17:13 ID:uNllOirE
「姫殿下! 先程、ミス・ヴァリエールに命じられた困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンにも仰せつけますよう!」
「グラモン?貴方はまさか、あのグラモン元帥の?」
「息子でございます、姫殿下。」
「あなたも、わたくしの力になってくれると言うの?」
「はっ!武門の血を継ぐ者として、このような任務の一員に加えて頂けるのなら、これはもう、望外の幸せにございます。」

ギーシュの言葉に、アンリエッタはトリステインの華と呼ばれるに相応しい程、可憐に微笑んだ。

「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるのね。ではお願いしますわ。 ギーシュさん。」

その言葉と微笑みだけですっかりギーシュは舞い上がり、頭に血が上ったのか。

「おお、姫殿下が!姫殿下が僕の名前を呼んでくださった!トリステインの可憐なる白百合が!麗しの君が僕に!この僕に微笑んでくださった!」

そのままギーシュは立ったまま気絶していた、その顔は幸せそうな笑みを浮かべたままである。ヒューは器用だなと思い、ルイズはもはや呆れ返って溜め息を一つ吐くと真剣な声で言う。

「では明日の朝、私達はアルビオンに向かって出発することにします。」
「王室の方々はアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます。」
「了解しました。幼少の頃、姉達とアルビオンを旅したことがございますので。地理にはいささか明るいかと存じます。」
「どうかくれぐれも油断無きよう。アルビオンの貴族派たちは、貴女方の目的を知ったらどんな手を使ってでも妨害しようとするでしょうから。」
「承知しております。」

ルイズの言葉を聞いたアンリエッタは、机に向かうと羽ペンと羊皮紙を使って手紙をしたため始めた。そうして手紙を書き終えると、封をして祈りながら胸に抱いた後、ルイズに差し出す。
ルイズはその手紙を、じっと凝視した後。いきなりヒューとギーシュを部屋から追い出しにかかる。

「お、おいおい、何事だ?ルイズお嬢さん。」
「いいから、少し出てなさい。」

そう言うと、ルイズは2人を部屋から追い出して扉を閉じる。

「ル、ルイズ。いきなり何を?」「姫様!」
「は、はい。」
「不躾でではございますが、もしやウェールズ殿下と姫様は…」

ルイズが言葉を濁しつつ聞くと、アンリエッタは少し躊躇いつつも頬を染めて頷いた。

「な、何という事、では取り返すべき手紙というのは。」
「ええ、貴女が思った通りのものです。」
「では、姫様。一つ質問がございます。」
「何かしら。」
「例えば。そう、例えばの話です。もし、今の姫様のお姿とお声を殿下に届けられるとしたら如何なさいます?」
「出来るのですか!?」
「お答えを、姫様。」

驚くアンリエッタに、ルイズは表情を硬くしながら質問をする。

「出来るのであれば。ええ、出来る事なら声や姿だけではありません、今この場からあの方の元へ飛んで行きたい位です。」
「判りました。ただ一つ、いえ二つ条件があります。それを呑んで頂けるのであれば、お姿と声をお届けしましょう。」
「その条件とは?」
「一つ、いまから見ることを他言無用にする事。例え大后陛下でも。二つ、この事について詮索しない事。これから後、2人きりの時でもです。出来ますか?」

そのルイズのあまりにも真剣な表情に、アンリエッタは息を呑む。幼馴染の彼女でさえルイズのこんな表情を見たのは初めてだったのだ。
そして、その条件について暫し考えた後、答えを返す。

「判りました。その条件、呑みましょう。」
「感謝いたします。では、“ディアーナ”起きてちょうだい。」
【お疲れ様です、マスター・ルイズ。ただ今の時刻、午後10時34分です。ご用件をどうぞ。】
「ル、ルイズ。今の声は?」

突然響いた、可憐な声に驚くアンリエッタ。その声をよそにルイズは動画記録の準備を整えた。ルイズは、自分の手から外した<ウォッチャー>を机に安置して、アンリエッタに説明を始める。
21ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:19:28 ID:uNllOirE
「姫様、これは“ディアーナ”と申しまして、私のもう1つの使い魔の様な存在です。この子には絵と音を保存する能力があるので、これならば殿下に姫様のお姿とお声を届ける事ができましょう。」
「まぁ、こんな小さなブレスレットが…」
「では、私は暫く出ております。始められる時と終わる時にはその旨、その子にお伝え下さい。では」

そう言って、ルイズは部屋を出て行く。彼女は王女が何を言ったのか、何を言おうとしていたのか聞こうとは思わなかった。

時間をほんの少し巻き戻し、所を僅かに移して…ここはルイズの部屋の前。
ここにいるのは、部屋を追い出されたヒューとギーシュである。

「ところでギーシュさっき何か言っていなかったか?」
「ん?何の事だね?」
「いや、任務がどうとか、言ってただろう。 ルイズお嬢さんの口ぶりじゃあ、どうも俺まで人数に入っているみたいだったからな。気になるのさ。」
「なるほど、確かにヒューは聞いていなかったからね。仕方ない、説明しよう。」

そうしてギーシュは、今回受ける事になる任務の詳細をヒューに話し始めた。いささか脚色や演出過多な面はあったが、何
とか聞き出せた話はとんでもないものだった。
要約するとこうである。今度、隣国ゲルマニアと結婚をすることになったトリステインのアンリエッタ姫だが。どうもその
婚姻を妨げる手紙が内戦中のアルビオンにあるらしい、他人にその件を漏らしたくないお姫様は悩んだ挙句、手紙の回収を
ルイズに託した…

「…と、こんなところで間違いは無いんだな?」
「うむ、概要はその様な所だろう、おや?どうしたねヒュー?」

ギーシュがヒューを見てみると、何やら頭痛を堪えるような表情をしていた。

「どうしたもこうしたも無いだろう、ギーシュ…、君はこれがどういう事か分かっているのか?」
「当然だろう?ヒュー!これは名誉な事だよ。麗しの姫君の悩みを解決してさしあげる…。あぁ、なんと名誉ある事か…。」

きつかった頭痛は、さらに痛みを増した。
これは何だろう、自分がおかしいのか?それとも<IANUS>が何がしか変調をきたして聴覚に障害でも起きているのか?

そんな時、ルイズが部屋から出てきた。…ルイズだけが。丁度いい、ルイズにも訪ねてみよう。

「ルイズお嬢さん、さっきギーシュから信じられない話を聞いたんだが?」
「何のこと?」

ルイズが不思議そうな声で聞いてくる、ああ何だやっぱり聞き違いか。と半ば安心したヒューだったが、頭痛が再発するの
にそんなに時間は要さなかった。

「いやね、馬鹿らしい話さ。内戦中の国に潜入して、劣勢の王軍から手紙を回取してくるとか…。」
「ちょっと、ヒュー!姫様直々の任務を馬鹿らしいとはどういう了見よ!」

「は?」
「いいこと?この任務はね、トリステインの未来に関わる重大なものなのよ?それを馬鹿らしいとか!」
「いや、待ってくれ、頼むから待ってくれ。ルイズお嬢さん。」
「何よ?」

ヒューは何度か深呼吸を繰り返すと、響く頭痛を堪えつつ話を始めた。

「今現在のアルビオンの状況は判るな?」
「レコン・キスタとかいう、恥知らずな貴族達が反乱を起こしているんでしょう?知ってるわよそれ位。」
「王軍がもはや風前の灯火っていうのは?」
「知ってるわ、始祖から繋がる王権の一つがこれで失われてしまうのは、本当に残念だけどね。」
「まぁ、王権云々は置いておこう。
 じゃあ、今までの事を整理しようか、とりあえずギーシュも聞け。」

いきなり不機嫌な声になったヒューに、ギーシュは怯えながら頷く。
22ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:24:53 ID:uNllOirE
「内戦で政情不安になっている国に、隣国から貴族の子女が渡って来る。言うまでもない事だが君達の事だ。
 さて、この隣国は反乱軍の貴族派にとってみれば、敵軍の友好国の一員。さすがに殺されはしないだろうが、捕まって尋問位はされるだろう。」
「ふん!あんな連中に話す事なんて何もありはしないわ!」「そうだとも!」
「魔法や薬を使われても?」
「う!」「そ、それは…」
「少なくともこれはまだいい方だ。最悪なのは拷問で情報を吐いた挙句、殺されるっていう事かな?」

ヒューが何でもない事の様に口にした、拷問や殺される、といった言葉にルイズとギーシュは顔を青くした。

「ま、まさか。私達は隣国の貴族よ?それを殺すだなんて…。」
「連中は自国の王を殺そうとしてるんだぞ?他国の貴族に遠慮する理由はないだろう。それに、自分達が殺したと教える必要はない。」
「どういう事だい?」
「いや、アルビオンは空に浮いているって話じゃないか。杖を取り上げて、高空から落とせば遺体なんて残らないしな。万が一、生き残れても下は海だからほぼ間違いなく死ぬし、遺体は魚が処理してくれるだろう。
 とまあ、ここまでは君達自身の話だ。実はこれにはまだ続きがあるけど。」

ヒューは「どうする?」とばかりに2人に尋ねる。とまどうルイズとギーシュだったが、話を聞く事にしたのか、ヒューに頷いてみせた。

「じゃあ次はトリステイン内部になる。殿下が他の人間は信用ならないと言っている以上、恐らく国内にもレコン・キスタがいるんだろう。」
「なんですって?」「なんと!」
「そいつらに連絡が入るのさ、≪ヴァリエール家の娘とグラモン家の息子が、王女からの蜜命を受けてアルビオンに潜入していた、殺しておいたから≫ってね。で、そいつらはその情報を受けてどうするか…。一番考えられるのは、両家と王家の離間工作だ。」
「そうか。」
「なるほど、私の家とギーシュの家が王家に対して隔意を持てば、それだけで対トリステインの戦略としてはかなりのモノだわ。」
「加えて、君達の任務も失敗しているという事だから。例の手紙も公表されて、殿下の婚姻も破棄、名誉も失墜してるだろうからな。遠からずトリステインは滅びるだろう。」

淡々としたヒューの分析に、ルイズとギーシュは顔を青くしたまま俯いていた。

「け、けど。失敗するって決まったわけじゃないでしょう?」
「そ、そうだとも!僕達が力を合せれば!」
「成功率は限りなく低いがな。」
「貴方でも無理なの?」
「情報もバックアップも現地のコネも無い、ついでに足も無い、無い無い尽くしさ。これで大丈夫とか言える君等が羨ましいよ。」
「けどヒュー、手紙を取り戻せなかったら…結局同じ事なんじゃない?」
「かもな、一番あって欲しいと思うのは、件の皇太子殿下が、気を利かせて手紙を処分しておいてくれることかな?」
「そうね、だけど。もう受けてしまったんだもの、私は行くわよ。」
「う、うむ。確かに無謀だったし、怖いけどトリステインの貴族として、これは受けなければならない使命だと思う。」

震えながらも決意を告げる、2人を見てヒューは苦笑して告げた。

「分かっちゃいたけどね。まぁ、俺も使い魔として、できるだけの事をしよう。」
「ごめんなさいヒュー。この間、色々教えてくれていたのに…。」
「いいさ、人間は失敗から学んでいくものだからな。これで生きて帰れて、ルイズお嬢さんが成長できるのなら何よりだ。」
「うん。」

ヒューはそうルイズを慰めると、逆に質問を始める。

「で?ルイズお嬢さんはどうして出てきたんだい?」
「姫様に伝言を入れてもらっているの…」
「そうか。」
「怒らないの?」
「あれはルイズお嬢さんに遣った物だ、どう使おうがお嬢さんの勝手。俺が言ったのはただの忠告。人は自分が持っていない
ものを欲しがるからな、お嬢さんにも分かるだろう?」
「ええ。」

2人がそこまで話した時、ルイズの部屋の扉が再び開く。
23ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:27:47 ID:uNllOirE
「あ、終わったみたい…姫様?!どうなされました!お顔が真っ青ですわ!」

扉から出てきたアンリエッタの顔は、蒼白を通り越して白蝋の様になり、身体は極寒の地にいるかの如く小刻みに震えていた。

「ご、ごめんなさい。ルイズ…ルイズ・フランソワーズ。そんな大変な、恐ろしい事だとは思わなかったのです…。」

アンリエッタはそこまで言うと、倒れ伏し、泣き崩れるのだった。まともに立つ事すら、困難なアンリエッタを伴って、一行はルイズの部屋に戻った。
ルイズが介添えしながら飲ませた酒精で、アンリエッタは一応の落ち着きを取り戻したのか、幾分顔色も戻った様である。

「ルイズ、それにギーシュさん。本当にごめんなさい…、今からでも遅くはありませんわ、断っても構わないの」
「何をおっしゃいます、姫様!例え行かなかったとしても、トリステインの危機には間違いございません。ならば、何としてでも件の手紙は取り戻さねば。」
「そうですとも。確かに僕やミス・ヴァリエールは未熟です、ですがトリステイン貴族としての誇りは十分以上に持っております。」
「ありがとう、本当にありがとうございます。愚かな私が犯した愚行の為に、貴方方の様に立派な貴族を、危険な目に合わせてしまい、何と詫びればいいのか…。」
「姫様、どうかお嘆きにならないで下さいまし。私達は死地に赴きますが、死ぬと決まったわけではありません。きっと、きっと生きて手紙を取り戻してまいりますわ。」
「ええ、そうね、分かりました。だけどルイズ…、死なないで、死んではだめよ?きっと生きて帰って来てちょうだい。」
「はい、大丈夫ですわ、レコン・キスタなどという恥知らずな連中なんて、お母様に比べたら可愛いものです。」
「ふふっ、そうね。でも、いけませんよルイズ、お母様の事をそんなに悪く言っては。」

自責の念で泣き崩れるアンリエッタを、ルイズとギーシュが慰めた後。2人は再び任務を受ける旨を伝え、生還する事を誓う。
アンリエッタはルイズと抱き合ったまま、顔をヒューへ向けて話し始めた。

「ミスタ・スペンサー。どうかルイズの事を守ってくださいまし、貴方の様な力と見識を持つ方が共にいれば、きっと助かる可能性もありましょう。」
「ああ、できるだけの事はするつもりだ。ところで、アンリエッタ姫。一つ聞きたい事があるんだが?」
「何でしょう?」
「優先順位はどうする?」
「どうする、といいますと?」
「要するに、≪ルイズお嬢さん達の命と手紙。どっちを優先するか…≫っていう話だよ。」
「な!」

アンリエッタはヒューからの問いに凍りついた。何という事を聞いてくるのか…。一瞬、この男に対して殺意めいたものが湧く。…しかし、元を糺せば自分が原因なのだ、自分の愚行が親友を殺し、この国にいる全ての人々を殺すのだ。
ルイズを己の腕から解き放ち、ヒューに身体ごと向き直ったアンリエッタは考えた。ルイズという個を取るか、それとも王族として自らが治めるべきこの地を取るのか。

「手紙を…、手紙の回収を。無理ならば、なんとしても処分をしてください。」

僅かに戻っていた顔色は、再び白蝋の様になっていた。しかし、彼女に先程の今にも折れそうな、弱々しさは見えなかった。
アンリエッタはもしかすると今、やっと王族になったのかもしれない。
24ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:31:28 ID:uNllOirE
「おや、いいのかい?確かルイズお嬢さんの家は、かなり大きい所なんだろう?」
「かまいません、元は自らの不明で犯した罪です。この件でルイズが死んだのであれば、その罪を償う覚悟はあります。幸い、
ヴァリエール家は王家の血を継いでいます。私1人死んでもトリステインは無くなりませんわ。」

毅然とした口調で言い放ったアンリエッタは、ルイズの手を取って言葉を続けた。

「ごめんなさい、ルイズ。だけどこの国を統べる者として、今は何としてもゲルマニアとの同盟は必要なの。」
「分かっております。姫様、姫様は王族なのですもの。ならば国をいいえ、力なき民を1人でも多く生かす事こそ、その勤めですもの。」

謝るアンリエッタを、ルイズは逆に励ましていた。

「不躾で悪いんだけどな。姫殿下、死んで詫びようなんて勘違いもいい所だぞ?」
「!」
「ヒュー!控えなさい!」

ヒューの真剣な声に、ルイズとアンリエッタはヒューの方を向いた。
ルイズから怒号が飛んだが、ヒューの言葉は続く。

「そりゃあ、死んだら一応責任取ったように見えるだろうさ。
 けどな、それは結局逃げているだけだ。」
「で、ではどうしろと言うのです!ルイズとギーシュさん、それに貴方を死なせておいて、のうのう生きろとでも?」
「死んだらどうなる?ゲルマニアとの同盟は貴女あってこそだぞ。まさか、それすらもヴァリエール家に押し付ける気か?
 確かにルイズお嬢さんの上には2人姉がいるからな、どちらかは出せるだろうさ。けどそれを先方が受けるかは微妙だな。軽く見られている、とも取られかねない。
 それに、のうのうと、なんて言ってないだろう。
 姫殿下、貴女は生きなきゃならない。生きて王族としての責任を果たすんだ、死ぬ時は王族としての責任を取る為に死ぬべきだ。それが貴女の為に死ぬ連中に対する…いや、
今まで貴女を生かしてきた平民を含めた人達に対する勤めってものだろう。」

アンリエッタはヒューの最後の台詞に驚いた。この男はよりにもよって“平民に対する勤め”があるから生きろ、と言っているのだ。確かに平民を導き治めるのは自分達メイジ
の務めだ、しかし、この男の口ぶりは、まるで平民がいなければ、自分達は死んでしまうと言っているかのようではないか。

「お、おかしな事を仰るのね、ミスタ・スペンサー。貴方の口ぶりだと、平民がいなければ私達メイジは死んでしまうという風に聞こえてしまうだけれど?」
「その通りだろう?」
「な、何を馬鹿な…。そのような事はありえませんわ。」
「じゃあ、何から何までメイジだけで出来るとでも?」
「そ、それは。無理…ですけど。」
「そう、貴族の生活基盤には平民の存在が必要不可欠だろう。もちろん平民にも貴族の魔法は必要だ。馬車の両輪の様に、メイジと平民、どちらも互いが必要なんだよ。」

そこまで言うと、もう話す事は無いと言いたげにヒューは口を閉ざした。


ルイズとアンリエッタは、宿泊所へと続く魔法学院の廊下を並んで歩いている。ルイズの部屋から続く沈黙を破ったのは、意外にもアンリエッタだった。

「驚きました。」
「姫様?」
「ミスタ・スペンサーが仰った事です。確かに死んでしまっては、己が犯した罪から逃げてしまう事になりますもの。それでは、責任から逃げてしまっては、お母様と同じになってしまいます。」
「ひ、姫様?いきなり何を。」
「聞いてちょうだい、ルイズ・フランソワーズ。
 私ね、お母様が嫌いなのよ。」

ルイズは驚いた、いきなりアンリエッタがとんでもない事を言い出したのだ。

「い、いけません!大后陛下をそのように言うなど。」
「いいえ、お母様がちゃんと王妃としての責務を果たしていれば、せめて男の世継ぎか、姉妹がいれば…。いえ、そうね止めましょう、仮定の話をしてもしょうがないわ。
 けどね、あの方が仰った事に驚いた事は事実よ。今まで考えもしなかったもの…、私達と平民の関係なんて、支配する者とされる者、位にしか思ってなかった。
 馬車の両輪…、確かにそうです。彼等が作る作物がなければ、日々の食事にも事欠くでしょう。それに、彼等から納められる税があってこそ、私達は生活できるのです。」
「それは、私もです。私も以前言われました、反論しても悉く論破されましたし。」
「まぁ、どうやらとんでもない方のようね。」

しょげかえったルイズの様子を見たアンリエッタは、ころころと玉の様に笑った。
25ゴーストステップ・ゼロ:2009/01/29(木) 12:33:29 ID:uNllOirE
「はい、色んな知識を持っています。それこそ私には想像も出来ないくらいの…」
「まぁ、そんなに?」
「はい、ヒューは仕事で身についただけ。と言っておりましたが、きっとその下地にはとんでもない知識があるのでしょう。
 姫様、私この間の舞踏会でヒューに言われた事があります。」
「聞かせてくれるかしら。」
「ヒューはこう言ってました。
 ≪私達は人間だ、獣と違って優れた肉体はない。だけど、考え・想像するという力を持っている。だったらそれを使うべ
きだ。
 そして、想像し考える為には情報がいる。なるべく真相に近く、そして多くの情報が。それさえあれば対策も選択肢もよ
り多く用意できる≫と。
 そして姫様。私は今日、想像する事を怠って姫様の任務を受けました。いえ、後悔はしておりません、これは誰かがやら
なければいけない事ですもの。多分想像し、考えたとしても受けていたでしょう。
 姫様、考えてくださいませ、想像してくださいませ。そうする事で未然に防げる事もあるはずです、難しいのなら勉強すれ
ばいいんです、人は誰しも完全ではありえませんもの。人に教えてもらう事は別に恥ではありませんから、習い覚えた知識で
より良い治世を行えばより多くの人が幸せになるはずです。」
「まだ、間に合うかしら。」
「間に合いますとも、その為に私達はアルビオンに向かうんです。力なき民が長く平穏を享受できるように。」
「そうね、頑張りましょう。そして貴女の使い魔を見返してやらなくちゃ。」
「はい!わたしもヒューの主として相応しいメイジになってみせます。」

2人の少女は夜空に浮かぶ双月を見ながら、未だ見ぬ未来に想いを馳せていた。


支援ありがとうございました。これで、シーン12の扉を閉じたいと思います。

何というか、今回はつまらないというか、妙にヒューが上から目線だったような…、もう少し上手くなりたいです。
けどまぁ、このイベントは入れないとね、アンアンには頑張って欲しいものです。
実の所、ポケットロンやウォッチャーを出したのは。アンアンとウェールズの手紙イベントに、こういったスパイスを入れた
かった、というのもありました。

そうそう、ふと思ったんですけど。
何故、ハルケギニアの王族連中は子供が少ないんでしょうね?魔法に関するコンプレックスがあるジョゼフはともかく、トリ
ステインとアルビオンは両方とも一粒種って…。という事も含めてアンアンにあんな事を言わせてみました。
…ちょっと反省してます。

それではまた、次回はとうとうワルド登場です。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 12:34:54 ID:BWoCv4xQ
投下乙です
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 12:39:00 ID:ONWobtbd
投下乙でしたー。
ポケットロンとかウォッチャーとかが小粋に生かされてて良いですなぁ。
次回、ヒューとワルドの陰険漫才を楽しみにしています。<陰険漫才確定か

さて、最後に残った《暴露》は何処に使うべきか…。
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 12:41:36 ID:HiD2TMBA
他言無用だって言われたのに早速ワルドにばらすのかよアンアンはw

29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 14:12:03 ID:941gmsKH
投下乙なのですよー


エドワゥ・マス召喚

・・・・・・・・・・キュルケとアンリエッタは(多分)安心だが
ルイズとタバサがぴんちだな
シエスタも危ないしティファニアなんか大大大大大ぴんちなのである
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 14:22:58 ID:wBXV5Gmi

熱い展開、台詞回しだな
好きだぜこういうの
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:30:44 ID:1r7sC503
おつかれヒュー格好良いよヒュー

すげくどーでも良い事だけど、よくネタ武器として魚を武器にするとか有るが、腐敗防止に魚に固定化とかかかるんだろうか?
ついでに言うなら固定化がかかったら、魚を武器としてガンダールヴは認識してくれるんだろうか?w
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:32:25 ID:P5mZ8ArU
>魚を武器としてガンダールヴは認識してくれるんだろうか?
そんな奴はダイナマイト刑事しかいませんw
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:35:49 ID:VNUAcYYJ
SSWに所属してる奴なら大丈夫じゃね?
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:36:47 ID:GWE7X66K
SSWと新SSWがアップを(略
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:43:35 ID:h6CE6ARl
マジレスすると冷凍マグロは立派な鈍器
ネタレスすると魚がありなら石ころでもフォークでも武器扱いじゃまいか
36名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:56:18 ID:uNllOirE
冷凍マグロ>
デッドライジングのフランクさんなら認識するんじゃなかろうか
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:56:19 ID:q7OtvzT9
昔、電撃には冷凍した魚を使う暗殺者がいたなぁ
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 15:59:37 ID:wyA48m9z
冷凍マグロを鈍器として作成すればガンダールヴも有効だろう
石ころはダメだが石器ならOKだ
当然殺人に使う予定で凍らせたブロック肉も武器判定される
ただしそれを解凍して作ったステーキには反応しない

とか無理があることを考えてみた
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:02:23 ID:xQlvu9K8
魚は武器になるよ。骨とかすんごいとんがってるし。
ゲームによく出てくる魔物のスケルトンなんかは骨を投げて攻撃してくるしね。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:04:05 ID:1r7sC503
新SSWの魚って生きてるんじゃなかったか?ますます複雑な事になるんだけどw
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:05:39 ID:zg1r79/Q
>>38
そこまで行くともはやミステリの世界だな
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:07:32 ID:q7OtvzT9
てかSSWは、どっちも冷凍してなかった気がするw
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:08:39 ID:q7OtvzT9
すまん、sageしてなかった
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:09:05 ID:941gmsKH
テファの革命は紛う事無き武器ですがガンダールヴは認識してくれますか?
また武器として使う際はアレをワシ掴みせねばなりませんか?
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:16:46 ID:QJgPAmNc
まあ、マジレスしちゃうと
「他者に対する致死致傷または行動の阻害を目的として用いられる物体」がガンダールヴの能力範疇の「武器」というカテゴリだと考えてるけどね。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:16:50 ID:wyA48m9z
鷲掴みにしてはなりません
鷲掴みにするとテファの革命の威力をあなたがまともに受けてしまうからです
武器として使う場合あなたの敵にテファの革命を押しつけてやりましょう
ただし敵がテファの革命に触れてしまうことにあなたが耐えられればの話ですが
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:19:20 ID:1r7sC503
てかアレを武器として認識した場合、ガンダールヴは武器としての使用方法をご教授してくれるんだが…
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 16:26:24 ID:VNUAcYYJ
つまりテファにガンダールヴのルーンがあれば、
傾国の美女ってレベルじゃねーぞ!な人間兵器が出来上がるわけですね、わかります
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:03:39 ID:XKYzWGGx
先住魔法おっぱいビーム
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:04:45 ID:P5mZ8ArU
熱い……灼けるようだ
体はおろか心までも……
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:30:57 ID:IBIs328Y
おっぱいびんたが浸透剄になる漫画があろひろしにあったな。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:34:01 ID:sgqsruWd
>>39
ダツなんか光に向かって突っ込む習性があるから
漁師の眼に刺さって失明なんていう事故がよくあったとか聞いたな
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:36:17 ID:N3Mf+KdL
すると、召喚ゲートが夜の海上などに開いてしまった場合…
こう、ドスッと
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:42:57 ID:XKYzWGGx
50万トンのタンカーが降って来ると。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 17:57:58 ID:EAOqQgQB
金田中佐の50万トン戦艦とか。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:11:15 ID:0JJLZwtv
50万トン級戦艦というと、超超ド級戦艦土佐や不沈要塞播磨を召喚ですか?
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:14:49 ID:941gmsKH
>>54
ゴドラ星人?
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:20:58 ID:wBXV5Gmi
>>39
シャドウハーツっていうゲームで冷凍マグロとかサボテンとか街頭においてある人形を振り回す奴がいたような
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:25:30 ID:8taJp811
>>58

呼んだっちか?
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:28:58 ID:XKYzWGGx
・・・そういえばお前も吸血鬼だっけなあ。
冷凍マグロが吸血鬼専用の撲殺武器だと言ってもルイズ達は信じるまいて。

ところでダーククロニクルでも冷凍マグロは冷却属性付きの撲殺武器だ。
武器としては割とポピュラーなんじゃないか?
61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:38:42 ID:sgqsruWd
吸血鬼と撲殺武器と聞いて丸太がそっちを見つめている
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:39:55 ID:/F+TQnFd
>>60
カプコンのモンハンとBASARAにも武器として存在してるしねw
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:45:08 ID:WhF0Scio
ギャグ武器として割と見かける気がする、冷凍マグロ
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:45:21 ID:QiGWye4I
モンハンはカジキマグロだが。
骨を再利用して弓にもしてるし。

使ったこと無いけど両方とも結構使えるとか。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 18:50:19 ID:HJuuXV9Z
モンハンの冷凍マグロはネタ武器だったけど
レイトウホンマグロとかレイトウギンマグロとかレイトウキンマグロとか上位版が実装されて普通に使える武器になったな

まあ以前からもレイトウマグロでラージャン討伐してる変態ハンターもいたけど
66名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:00:42 ID:Tq4P1nur
学院の宝物庫には『破壊の冷凍マグロ』があるんですね。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:01:53 ID:muzcOMI5
「破壊のバールのようなもの」
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:03:10 ID:QiGWye4I
ガンサーとしては『爆撃の大モロコシ』のほうが。
69名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:04:03 ID:wc4BeFOJ
>>61
そのシャドハのキャラは丸太も武器にしてた気がw
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:08:34 ID:r5GOyqJG
破壊の長老
破壊の王様
破壊の魔王
71ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:12:04 ID:09dMC7jt
番外編の投下予告させていただきます。
19時20分を予定しております。
今回はある少女のお話です。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 19:13:08 ID:8cmAJ5jA
丸太は吸血鬼を撲殺するのに適した武器である。
73ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:20:45 ID:09dMC7jt
ゼロの騎士団−外伝 「伝説の少女K」

少女は恋をしていた。
「大丈夫ですか?」
相手は自分を心配する。
「ええ大丈夫です。」
少女が身を起こす。
「・・・貴方は?」
誰よりも名前が聞きたかった。
「私は、タバサ殿使い魔剣士ゼータです。
そういえば、以前どこかでお会いしましたね、貴方のお名前は?」
名を聞かれた時、今まででいちばん、息が止まっていた。
「ケティ・ド・ラ・ロッタです。ケティと呼んでください」
「では、ケティ殿、私はこれで」
彼女を立たせた後、彼は去っていた。
「・・・素敵な方だわ、ゼータ様」
「人じゃないけどね・・」
隣にいた彼女の友人である、ミリーナ・ド・エンベルファスが今の出来事を冷静に分析していた。
74ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:21:45 ID:09dMC7jt
アルヴィーズ食堂
二人の少女達が先ほどの出来事に、会話の花を咲かせていた。
「いや、普通おかしいから」
ミリーナが先程のケティの言動を否定する。
「おかしくないわ!愛という物は常に人に祝福されないものよ!」
ケティが自らの正当性を主張する。
「つか、何で彼なの?ギーシュ様に振られたのがよっぽど精神に来たの?」
つい、こないだまでこの手の話の対象であった金髪の優男を思い浮かべ、ミリーナが原因を聞く。
「ギーシュ様の事は言わないで!あれはあの方の一時の気の迷い。
 強引、傲慢なモンモランシー様に一時的に嫌気がさして、私という一輪の花に止まっていただけの事。
 そう全ては、泡沫の夢だったのよ!」
ケティが大仰にありもしない光を求める。
(まぁ、確かにこの娘は可愛いんだけどね)
守ってあげたくなる様な、ケティの容姿をミリーナは否定しない。
(ただ、好きになる男がねぇ・・・あれって性別あるの?)
ゼータを思い浮かべ、ミリーナは彼女のここ最近の出来事を振り返る。
社交界などで、同年代の男子と会う機会はあっても、一般的に貴族の娘は箱入りが多い。
だから、この魔法学園にはいって、初めて男子と触れ合う機会を得るという娘も少なくない。
当然、年頃の娘達にとって男子は興味の対象であり、
親の目から解放という事もあり、人目を忍んでの逢瀬も珍しくない。
また、この機会に地位の上の貴族と関係を持とうと、娘にそれを期待する親もいない訳ではない。
ミリーナも興味がないわけはない。ただ・・・
(まだ入って、1か月もたってないのよ)
ミリーナとケティは1年であり数週間前に学院に入ったばかりである。
だが、ケティはある男に目をつけられた。
ミリーナから見てギーシュは面はいいけど、気障過ぎて恋愛の対象には見えなかった。
しかし、ケティは何が嬉しかったのか、あっさり親密な仲になってしまったのだ。
「ミリーナもいつか分かるわ、殿方とは都合の良い女性を求めるものなのよ!」
「少し付き合った位で先達気取りかい・・・で、話戻すけど何で彼なの?」
ミリーナが呆れながら、話を戻す。
「あれはそう、ギーシュ様との悲劇があってから数日後、ある殿方が声を掛けて来たのです。」
ギーシュとの一軒で、ケティは良くも悪くも有名人になっていた。
(その殿方とやらが、振られたこの娘をチャンスとばかりに言い寄ってきた所を、
彼が助けたって言うのかな)
自身の単純な想像力で考えながらも、ミリーナが続きを促す。
「私は傷心してて、とても殿方の事など考えられなかったわ!
だから、その話をお断りしようとしていたの!」
(この展開は、ひょっとして・・)
自身の回答が正解に近づいている事に、ミリーナは焦り出す。
「そしたら、怒って逆上しだしたの!その時よ、ゼータ様が颯爽と表れたの。」
(まんまかよ!)ミリーナが頭を抱える。
「あの方は、颯爽と相手の杖を切り落とした!まるで疾風の様だったわ」
話の続きがなくなったのは、ケティが過去へと旅立っていったからだ。
(この娘って、ある意味幸せね)
ケティの幸せそうな表情を見て、ミリーナは溜息をついた。
75ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:22:27 ID:09dMC7jt
「・・で、私達は何でここにいるの?」
厨房の前、二人はそこに立っていた。
「それは、もちろんあの方へのプレゼントの為よ!」
ケティが連れて来た訳を簡潔に述べる。
「プレゼントはいいけど、何で私まで居るの?」
「手近なメイドへ、あの方の好みを聞いてきて!」
 協力の絶対を、ケティが断言する。
(そんな事だとは思っていたけどね。)
ミリーナが理由に納得する。
「はぁ、まぁいいわ・・・そこのあなた、少し聞いていい?」
「はい、何でしょうか?」
それは、ケーキを配り終えたシエスタだった。
「ここによく来る、ミス・タバサの使い魔の彼、彼はいったい何を食べるの?」
ゼータの姿を思い浮かべ、ミリーナがシエスタに尋ねる。
「ゼータさんですか、あの人たちは私達と同じものを食べますよ。」
「パンとかシチューとか?」
それはミリーナには驚きであった。
(草とか、鉱石かと思った。)
ニューが聞いたら、またかと思うような事をミリーナは考えた。
「はい」
「彼の好きな物ってわかる?」
「はぁ、それは少し・・聞いてきましょうか?」
シエスタが厨房に入ろうとする。
「いや、いいわ、ありがとね」
「はい、また、御用があったら申しつけください」
社交辞令を返し、シエスタは去っていく。
遠巻きにいたケティが近寄ってくる。
「何が好みだって?」
「メイドも分かんないって、ただ、私達と同じ物を食べるみたい。
適当なお菓子でいいんじゃない?」
「駄目よミリーナ!適当だなんて、適当という響きが特に駄目よ!」
ケティが、力強くミリーナの案を否定する。
「じゃぁ、どうするの?」
「私の情報によると、ゼータ様は朝、
一人で訓練するそうよそこで聞きましょう・・主にあなたが。」
指を指して、次の命令を告げる。
「はぁ・・わかった、もう少し付き合うわよ」
(幸せって、人の苦労で成り立つのね)
彼女は貴族の無理難題に付き合わされる、平民の気持ちが少し理解できた。
76ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:22:53 ID:09dMC7jt
翌朝、二人は朝早く近くの森に来ていた。
「・・ちゃんといるわね」
情報通り、ゼータが朝の鍛錬をしている。
「ゼータ様、訓練している顔も凛々しいですわ・・」
ケティはまだ寝ぼけているようだ。
「私が聞きに行けばいいのね」
そう言って、直接近づこうとする。
「待って!」
ミリーナの腕をつかみ、ケティが強く止める。
「どうしたの?」「あれを見て!」
見るとゼータは座り込んで剣を見ている。
「あれが何か?」
少し表情が暗いが、ケティが様子を見るが止める意味が解らない。
「あの憂いを持ったお顔も素敵」
「帰るわよ、私」
そう言って、学院に戻ろうとする。
「・・・石が欲しい」
その声は、ミリーナにもはっきり聞き届けられた。
「そう・・そうだったのですね」「何が?」
意味が分からず、ケティの確信を持った表情にミリーナが本気で疑問を抱く。
「ゼータ様は・・石が食べたかったのよ!」
「昨日の私の話聞いてたの!?」
ミリーナが的外れな意見に声を荒げる。
「解ってないわね、本来ゼータ様は石食なのよ、
けど、無理をして私達の食事を食べているのだわ!」
「石食なんて、初めて聞いた単語なんだけど」
(誰か、彼女を正常に戻して・・・)
ミリーナが本気で心配する。
「こうしては居られないわ!じゃあね、ミリーナ」
そう言って足早に去っていく。
「・・石なんか食べる訳ないじゃ「どうしたのですか?」あひゃぁ!」
いきなり声をかけられ驚く。
振り向くといつの間にか訓練を終えたゼータがいた。
(あちゃぁ・・どうしよう)
「・・・えっと、私、ケティの友人でミリーナと言います。」
ミリーナは、とりあえず自己紹介をする。
「ケティ殿の友人ですか、私はタバサの使い魔のゼータと申します。どうかしましたか?」
「あの、ゼータさん、さっき石が欲しいって言ったじゃないですか?あれどういう意味ですか?」
この際だと言わんばかりに、ミリーナが質問する。
「石?ああ、砥石の事ですか。」「砥石?」
ミリーナが意外な単語を反芻する。
「はい、手入れをしたいのですが、よい石が見つからなくて・・」
彼の持つ剣は、実際に少し歯が潰れている。
「そう言う事だったんですか、ありがとうございます。では私はこれで」
何も言わせず立ち去るミリーナ。
「ん?何だったのだ一体?」
「ゼータさん、どうしたんですか?」
事情が読み込めないゼータに、たまたま、近くにいたシエスタが声をかける。
「今の方、ミス・エンベルファスですよね?」
「ああ、実は・・・」
先程の簡単な事を話す。
「昨日、私のところにも来ましたよ」
「本当かい?」
「ええ、ゼータさんの好きな物は何か聞きに、ちなみに、ゼータさんの好きな物って何ですか?」
シエスタが、昨日の事を思い出し聞く。
「特に好きな物は・・しいていえばぶどう酒かな」
「へぇ、意外です。お酒飲めるんですね。」
「あまり強くないのだがな」
そういって、二人は学院に戻って行った。
77ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:23:26 ID:09dMC7jt
その日は午前中からニューとタバサの二人だけであった。
「あなたの魔法」
ひと段落ついたタバサが、ニューに話題を振る。
「ん、魔法がどうかしたのかい?」
「病気は治せる?」
ニューが少し考えて、回答する。
「風邪とかなら、治せるけど、重い病気は治せない。回復魔法も治せるのは傷と痛みだけだ」
「そう・・」
その解答を聞いて、少し顔を暗くする。
(タバサは少しやりずらいな、ルイズみたいにもう少し分り易ければいいのだが・・・)
ニューが主が聞いたら、憤慨しそうな事を考える。
「タバサ、ゼータとは上手くやっているかい?」
「・・・あなたはどう?」
話題を振って、質問を質問で返される。
「まぁ何とか、ルイズは子供っぽいけど解りやすい。
最近では、何かあったらクックベリーパイを与えて機嫌を取る事を覚えた。」
ニューが自身の成長を語る。
「ゼータは・・・ゼータは何が好きなの?」
「ゼータ?あいつは確かぶどう酒が好きだったな、必要がないのによく飲んでいた。」
ニューは自身の回復用の物を飲まれて、喧嘩になった事を思い出す。
「そう・・・」
それだけ言って、立ち上がる。
「ルイズ達のところに行くか「その必要はないわよ!」ルイズ!」
気のせいか、ルイズは少し怒っていた。
「アンタが、私にクックベリーパイを持ってきてくれる理由が分かったわ!それに私をどう思っているのかも・・・
私の事をとっても理解してくれるのね、嬉しいわ、嬉しいからアンタの昼食は抜きにしてあげる!」
怒りの理由を述べながら、それでも尚収まらないのか罰を申しつける。
「ルイズ、酷くないかそれは、私は好物を食べている嬉しそうなお前の顔が、
犬みたいだなと思ってあげているのに!」
「尚更、悪いわ!この馬鹿ゴーレム!」
ルイズの鉄拳により、図書室の静寂は終わりを告げた。
78ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:23:58 ID:09dMC7jt
昼食の時間、厨房の入口の前にミリーナがいた。
手には、手近なお菓子を持っていた。
(ケティが暴走する前に、事情を話そう、そして、ケティにも石の事説明しよう)
今度の虚無の曜日に砥石を買いに行けばいい。
そう思った時ちょうどゼータが出てきた所だった。
「あの、ゼータさん」
「ミリーナ殿、どうしました?」
ミリーナに声をかけられゼータが振り向く。
「あの、実は「ミリーナ!」あちゃー・・」
喉から出るような叫びの主は既に分かっていた。
「ミリーナ、何をしているの!?その手に持ったお菓子は何!?もしかして、あなたまさか!!」
手に意志を持ったケティが勝手に自己完結する。
「・・ケティ聞いて、ゼー「ゼータさん、最低です!!」」
シエスタがケティと同じく何かを自己完結している。
「最低です。・・ゼータさんが・・二股をしているなんて!!」
「なんだってー!!」
シエスタの叫びが周りの注目を一気に集める。
「シエスタ!?何を言ってるんだ!「私、見てました。」」
ゼータの声もシエスタには届かない。
「昨日、ミス・エンベルファスが私にゼータさんの好きな物が何か聞かれました!
 そして、今朝もゼータさんに何かを聞こうとしてたじゃないですか!!」
「ミリーナ・・・まさか、そんな・・」
「あんたが頼んだんでしょうが!!」
ミリーナが理不尽さもあって声に怒りが混じる。
「みんな、何を言ってるのかわからないのだが・・「なら、私が教えてあげましょうか?」!!!」
冷ややかな声と共にそこには、今、最も会いたくない五人がいた。
「ゼータ、お前・・・」
信じられないといった顔のダブルゼータ。
「・・・自業自得だ」
何かを悟った様な顔のニュー。
「・・・最低」
言葉とは反対に、無表情のタバサ
「あなたって、意外と手が早いのね・・」
嬉しそうなキュルケ。
「ほんと、大した色男ねゼータ様」
キュルケとはまた違った意味で、嬉しそうな表情を浮かべるルイズ。
「使い魔君、みっともない真似はよしたまえ」
外野から、ギーシュがゼータの行いを批判する。
(お前が言うなよ!)
その場の全員が、同じ感想を抱く。
「みんな、誤解だ、そもそも私にも「言い訳は聞きたくないわ」」
話を最後まで聞くと言う、ルールがなくなりつつある状況でルイズがゼータに杖を指す。
「決闘よ!今の私達にその言葉以外は要らないわ!広場で待ってるわよ!」
本当にそれしか言わずに、ルイズは去っていく。
「さて、行くぞ・・」
「・・・後で、リバイブをかけてやるぞ・・・」
二人がゼータの腕をつかみ、広場に引きずっていく。
「まて、二人とも、私は何もしていない!なぜ無言なのだ、なんとか言え!おい!」
ゼータの声が奈落に落ちたかのようにミリーナの耳から遠のいていく。
「ゼータ様が、そんな人だったなんて・・・」
ケティの中で、もはやすべてが終わった事らしい。
(死なないで、ゼータさん)
ミリーナはそれだけしか言えなかった。そして、彼の無事を誰かに祈った。
しばらくして、遠くから爆発音と理不尽に対する断末魔が聞こえたが、
ミリーナは忘れる事にした。
79ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:24:40 ID:09dMC7jt
夜 タバサの部屋
ルイズの魔法で吹き飛ばされ、蘇生したゼータが戻ってきた。
「・・・おかえり」
珍しくタバサが声をかける。声に怒りは含まれていない。
「ただいま」
マントどころか、装備すらもボロボロになったゼータが力なく声を返す。
そんなゼータにお構いなく、タバサは近づく。
「・・・プレゼント」
そう言って、包装された瓶を差し出す。
「これは?」
開けてみるとそれは、ぶどう酒であった。
「・・好きなんでしょ?」「え?」
自分の好きな物を知っている事にゼータは驚く。
(いつ、聞いたんだ?)
「・・飲まないの?」
タバサが片方のグラスを差し出す。
「いや、頂くとしよう」
ゼータがグラスを受け取る。
「・・乾杯」
そう言って、タバサがグラスをあおる。
「大丈夫かい、そんないきなり飲んで?」
ゼータが心配する。
「・・大丈夫」
だが、彼女の顔は明らかに赤かった。
タバサはゼータに近づく
「痛っ!何をするんだ、タバサ」
「お仕置き・・・私はあなたのご主人様、私の言う事聞いて・・・」
そう言いながら、近づき、ふらついて倒れそうになった所をゼータが支える。
「今度、武器を買いに行く・・」
用件を伝えて、タバサはそのまま、眠りに就いた。
「・・・やれやれ、わかった」
どこか嬉しそうなタバサを、ゼータはベッドに運び自身も床に就いた。
80ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:25:04 ID:09dMC7jt
少女は恋をしていた。
「大丈夫ですか?」
相手は自分を心配する。
「ええ大丈夫です。」
少女が身を起こす。
「・・・貴方は?」
誰よりも名前が聞きたかった。
「私は、3年のラヴァン・ド・ベンフィカスだ。君の名前は?」
名を聞かれた時、今まででいちばん、息が止まっていた。
「ケティ・ド・ラ・ロッタです。ケティと呼んでください」
「では、ケティ、僕はこれで」
彼女を立たせた後、彼は去っていた。
「素敵な方だわ、ラヴァン様」
「あなたって最高だわ、ケティ」
隣にいた彼女の友人である、ミリーナ・ド・エンベルファスが本気で彼女に称賛を贈った。

後に、恋多き物の名前として、ケティ・ド・ラ・ロッタの名前がある事をここに記しておく。

「17.5ゼータ様がそんな方だなんて・・・」
学院生 ケティ
男運がない
MP −200 (相手のHPを半分にする)

「18.5あなたって最高だわ」
学院生 ミリーナ
モブキャラA
MP 200
81ゼロの騎士団:2009/01/29(木) 19:26:04 ID:09dMC7jt
以上で投下終了です。
ミリーナは適当なモブキャラAだと思ってください。
9話は前後編になりそうです。
ありがとうございます。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 20:30:58 ID:MdT9eePb

ゼータ災難すぎるw
そういやケティって原作でも騎士隊の追っかけと化してたな…
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:22:38 ID:NEoYyXiP
武器扱いになるか判らんが男には腰についた大砲が………
いや………何でもない忘れてくれ。


>>67
ゴードン・フリーマンでも挿入するおつもりで?
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:40:15 ID:cI9wu4IX
乙、
騎士団の方のケティは鬼帝様の素質有りですねw
ぶっそうな二つ名持ちにふさわしい活躍でした
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:44:51 ID:qsRt0XX6
14巻だかでサイトが「武器無いですか?棒切れとかじゃ駄目なんで」(要約)って言ってるんだよね。
つまり、「武器として使える」だけじゃガンダールヴ発動しないんだろう。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:48:55 ID:jXxPLKcI
>>83
となると、ご立派様は全身武器そのものという訳か(笑)
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:53:47 ID:nKr/J+aW
騎士団乙
さりげにニューひどいw
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:58:12 ID:SGij0LQ9
>>86
男は平均一億発の弾が撃てるが
ご立派様は地球の人口よりも多く撃てると思う
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 21:59:09 ID:8cmAJ5jA
というか、シュペー卿作の飾用の剣でガンダ発動してたっけ、原作?
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:02:04 ID:qsRt0XX6
>>89
シュペー卿の剣が飾り用ってのは二次創作設定。

多分、してる。
してなきゃゴーレムパンチを剣で受けるなんて出来ないだろう。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:07:29 ID:gIZov+Gv
破壊のバアルのようなもの
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:07:30 ID:4jP38D+p
発動したけど折れなかった?
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:08:17 ID:Tq4P1nur
>>89
原作では発動しただろう。
アニメではしなかった気がするが。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:09:51 ID:nKr/J+aW
>>90
アニメでもそういう設定だったよ
オリジナルのモット伯邸殴り込みんときガンダ発動するとまずいから
原作ではシュペー卿の剣でもガンダ発動してる
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:11:43 ID:qsRt0XX6
>>92
折れた。でも、あれは折れて当然。
攻城用ゴーレムのパンチ受け止めて折れるだけで済む辺り、剣も、そしてサイトもどえらく頑丈だwwww
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:14:19 ID:qsRt0XX6
>>94
おお、それは知らんかっとってっちんとんしゃん。
アニメは見てなかったもんで。
知ったかぶりになってしまったorz
せんきゅー。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:29:08 ID:XLTvCN/g
騎士団おつですー
ミリーナがなんか好きだ大好きだw

>>85
なるほど。つまり「人を殺せる本」とかは駄目なのだな。強いのに
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:36:00 ID:uPFpp4Fl
月刊鈍器のことですね

そういえば最新号はページ数のうち1/10がマテパの作者の作品だったとか
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:36:55 ID:OKMwgJ5O
対象を殺害可能というだけだと、武器を持つ必然性がない。
包丁どころか素手でも人は殺せるわけで。

レコードの呪文の応用で、「目標物の想定された用途」だのなんだのを
読み取って発動するというのはどうかな?
これだと某赤い弓兵みたいだが。
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:39:39 ID:MY12rX9F
>>85
あれはサイトというかガンダールヴになっている者が

武器だと認識できないと発動しないんじゃね?

ゼロ魔世界の人間がガンダになってもゼロ戦を武器だと認識できないから
発動しないと思うしな

まぁ逆に言えばサイトが宇宙人の武器を手に入れても武器だと認識できないと
棒と変わらんのだろうな
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:44:20 ID:gIZov+Gv
プロボクサーの場合は、拳を握ったら発動するよね?
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:45:39 ID:n1tjZHWf
ハニワや潜水艦やビルディングでもガンダは発動するんだろうか・・・
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:46:36 ID:Tq4P1nur
>>100
認識できないと発動しないんならロマリアにある戦車とか、ガンダが地球人じゃないとせっかく保管してあってもただのガラクタになるんじゃ……。
104名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:48:51 ID:TGprFLqJ
>>103
多分戦車は現地住民が「大昔にガンダールブが使ったありがたい武器」って説明すれば
仮にハルケギニアの人間がガンダになって戦車そのものを知らなくても武器と認識できるのでは・・・
無理があるか
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:50:39 ID:EJzF6+Nf
ルーンもしくはサイトのどちらかが武器と認識すればOK
とか大雑把なこと考えてみたり
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:53:51 ID:qsRt0XX6
武器そのものに込められた「武器としての魂」がルーンに呼応するんだ!
という考えで一本かいてみる。
           抜
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:54:08 ID:zRmg6nE+
もともと同じような能力
もってたらどうなんのかな?

龍視とか
108名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 22:58:19 ID:0sZ2CYQ8
作った人がどう思ったかが重要な気がする。
タングステンのワイヤーはきっと反応する。
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:01:50 ID:qsRt0XX6
鋸。
木を切るための道具じゃ。
じゃがな、この一番下の刃は鬼切り刃というてな……
(民話「牛鬼」より)
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:02:15 ID:MY12rX9F
>>103
だからガンダ用に地球人が召喚されるんじゃねぇの?
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:02:35 ID:8cmAJ5jA
>>93
読み返してみたが、はっきりと発動したとは書いてないな。
発動してたかもしれんし、してないのかもしれん。

ゴーレムの拳を剣で受け止めた→折れた→なまくらじゃねえか
という流れだったが・・・

よく考えれば、馬鹿でかいゴーレムの拳受けて、剣が折れてサイトは無事という結果を考えると、充分すごい剣といえるな。
なまくらってのはサイトの感想だし。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:08:33 ID:Wb43hmpM
極端な話、人間その気になれば手に持てるもの全て武器に…

ルーンは製作者が武器として作ったものに反応
使用方法は製作者や前の使用者の考えや経験の記憶を読み取ってるってのはどうだ?

虚無の魔法でモノから記憶を呼び出すのがあったしさ。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:08:36 ID:N3Mf+KdL
「殺人鬼が使っていた木材伐採用チェーンソー」
「武器とするために冷凍されたマグロ」
「バールのようなもの(鈍器)」
などでは発動するだろうか
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:09:34 ID:qsRt0XX6
>>111
柄だけになったシュペー剣握って高速ダッシュ&鳩尾打ちのコンボやってなかったっけ?おマチ姉捕まえるとき。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:12:34 ID:Wb43hmpM
>114
それだと
「過去に武器だったモノ」でも反応するのかw
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:18:14 ID:J287RnmA
俺の武器を〜知ってるか〜い♪
「こしょう」「モップ」「柱時計」
117名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:21:23 ID:TGprFLqJ
ダイナマイト刑事にかかれば倒したワルキューレの残骸だって武器になるな
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:25:22 ID:8eLv12EN
フォークやナイフは勿論、リンゴやケハブといった食料まで武器に
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:26:00 ID:OKMwgJ5O
>>99>>112の理論だと、>>115はありだな。
読み返したけど、確かに折れたシュペー卿の剣で当て身をしてた。
直前のフーケの台詞「折れた剣を捨てろ」「武器を握っているとすばしこくなる」
から考えるに、折れた後も剣は握りっぱなしでルーンの効果が発動していたようだ。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:27:35 ID:UpMuca0C
戦国の世じゃウンコも立派な武器だったからな
刀に塗りつけて相手斬れば傷口から細菌が入って
逃げられても数日のうちに病気が発祥して追い詰められる
天然の細菌兵器だ
121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:28:06 ID:ZNit+f46
そろそろ設定スレでどうぞ。

というか、設定スレでループしてる話題だけど。
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:41:23 ID:TK/SP2Py
>>113
チェーンソーは立派な神殺しの武器
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:43:02 ID:n1tjZHWf
結論としては「書き手しだい」ってことでおk?
124狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:43:11 ID:chS/LARS
予約等なければ23:50頃から投下したいです
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:50:08 ID:0gGTxfvk
お待ちしておりました
m(__)m支援
126狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:50:51 ID:chS/LARS
では、投下します

第十九話



「……それにしても、君があれほどまでとは思わなかったよ」

黒いマントを纏った長髪の男、ワルドが、目の前を走る男の背中に向かって声を投げかけた。
ボサボサの金髪に蛇柄の服、そして古びた大剣を背負った男、浅倉は、その驚きと呆れの入り混じった一言に少しも反応することなく、ただひたすらに夜道を走り続けていた。

「次からはもう少し周囲の反応を気にしてくれると嬉しいんだが……」
「知るか」

ワルドの忠言を、浅倉は振り返ることなく一言で斬り捨てた。
適当にあしらわれたワルドは、その顔に思わずむっとした表情を浮かべ、なおも詰め寄ろうとする。
しかし、それは桃色の髪をした少女、ルイズによって遮られた。

「ごめんなさい、ワルド様。彼はああいう性格だから……」
「だが、ルイズ……」

ワルドが問いかけようとするも、ルイズは黙って首を横に振るのみであった。
見れば、隣を走るキュルケやギーシュも呆れたような表情をしている。
タバサは相変わらずの無表情だ。



(彼の奔放さにはうんざり、か……)

彼女らが姫様から受けた任務の最大の障壁は、もしかしたら彼なのではないだろうか、と思うワルドであった。
127狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:52:24 ID:chS/LARS
 
ラ・ロシェールのとある宿で突然起こった傭兵の襲撃事件は、何処からともなく現れた謎の人物によって、これまた突然の解決をみた。
奇妙な鎧らしき衣装を纏ったその人物は、何十人といる傭兵たちを驚くべき力で一掃すると、
宿に泊まっていた数人の客とともにいずこへと消え去ったのである。

このことは人々の間で噂になり、しばらくの間町の至るところで囁かれ続けたという。



一方、当のルイズたち一行は、もはやこの町にはいられないというワルドの判断により、予定よりも早く船のある桟橋へと向かうことになった。
これ以上目立つのを避けるため、ルイズたちは馬はおろかタバサのシルフィードにも頼ることができず、
自身の足で目的地へ向かうことになってしまったのだった。

夜道という不意打ちにはもってこいの状況の中で、ルイズたちは再度襲撃されるかもしれないと辺りをしきりに警戒していたが、
結局何者にも遭遇することなく、無事に桟橋へとたどり着いたのであった。



巨大な樹をくり貫いてできたと言われるその桟橋は、あちこちから生える枝の先にそれぞれ船が停泊しており、
まるで巨大な樹が果実を生やしているかような外観を形作っていた。

不可思議な光景であったが、浅倉は少しも物怖じすることなく、ルイズたちとともに樹の中にある階段を駆け上がっていった。
128狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:53:57 ID:chS/LARS
 
階段を昇り終えた一行は、目の前に続く大木の枝を駆け抜けると、泊まっていた一艘の船に乗り込んだ。
甲板にいた船員たちが、飛び込んできたルイズたちに仰天し、一斉に顔を向ける。

「だ、誰なんだあんたら一体……?」

一人の船員が、呟くようにして訪ねた。心なしか滑舌が悪い。
ワルドはそれに答えることなく、逆に訪ね返した。

「船長はいるか? 話がしたいのだが……」
「船長はこの私だ」

そう言って船長室と思わしき部屋から出てきたのは、黒髪の中年の男であった。
ワルドは声のした方を向くと、船長を名乗る男に向かって話を続けた。

「訳あって早急にアルビオンへ向かわなくてはならないのだが、今すぐ船を出してもらえないかな?」

ワルドの要求に、船長は首を横に振って答えた。

「……残念だが、今は船を出すことができない。風石の量が足りないんだ。
だが、私は謝らない。出港は明日だから、その時に来てくれれば乗せてあげられるだろう」
「こんな肝心な時に……風石ぐらい余分に置いときなさいよ!」

何の悪びれもなく話す船長に、キュルケが悪態をつく。

「こんなところで、もたもたしている暇はない。足りない風石の分は私が補おう。私は風のスクウェアだ」
「き、貴族だったんですか!?」

先ほどと同じ船員が、再びワルドに問いかける。

「そうだ。私は魔法騎士隊隊長、ワルド子爵。
もう一度言う。今すぐに船を出してもらおう。代金ならいくらでも出す。嫌とは言わせん」

ワルドの強引な説得に、船長は渋々応じると、船員たちと共に出港の準備を始めた。



こうして、ルイズたちは無事にアルビオン行きの航路を確保したのであった。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:55:35 ID:Wi6ugw6R
支援!
130狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:56:21 ID:chS/LARS
 
船が夜の闇へと飛び立ってから、数時間ののち。
疲れからかぐっすりと眠っているルイズたちのすぐ隣で、浅倉は船のへりに寄りかかり、ぼんやりと夜風に当たっていた。

「それにしても、楽しみだな」

浅倉がふと、へりに立て掛けているデルフリンガーに向かって話しかけた。

「何がだよ?」
「このガンダールヴとかいう面白い力を使って、何千人といる奴らと戦えるんだ……。考えるだけで心が騒ぐ」

にやり、と浅倉は不敵な笑みを浮かべる。
その表情は、夜の闇と相まって一層不気味であった。

「……そんなに戦いたいのかね?」
「当たり前だ。堂々と人を殺していいなんて事は、生まれて初めてだ。
最高だな? 戦争ってのは」

デルフリンガーの問いに、嬉々として答える浅倉。
恐ろしいことをさらっと言ってのける彼の性格に、デルフリンガーは改めて呆れさせられていた。

「今まで色んな人間を見てきたが、初めてだよ。純粋に人を殺したいって奴は。
……ま、やりたいなら思いきりやればいいと思うがね」
「思いきりやらせてもらうさ。言われなくてもな」

そう言って、浅倉はその場に座りこむと、へりに体を寄りかからせ、ゆっくりと瞼を閉じた。
131名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:56:55 ID:N3Mf+KdL
支援ブルン宮殿
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:56:59 ID:Wi6ugw6R
支援
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/29(木) 23:58:29 ID:EJzF6+Nf
サバじゃねえ支援
134狂蛇の使い魔:2009/01/29(木) 23:59:02 ID:chS/LARS
 
喧騒とともに目を覚ました浅倉は、船に見慣れない男たちがたむろしているのに気がついた。
その数2、30人といったところである。それぞれが武装しており、中には杖を持った者も混じっていた。

浅倉はへりに寄りかかっていた体を立ち上がらせると、近くにいたルイズたちの元へと歩きだした。

「一体何がどうなってる」
「見てわからない? 空賊よ空賊」

今頃起き出して、とキュルケが呆れたように浅倉の問いかけに答える。
賊と聞いて、浅倉は立て掛けておいた剣を取ろうと、寝ていた場所を振り向いた。
が、剣がない。

「あんたの剣なら、私たちの杖と一緒に取り上げられちゃったわよ」

浅倉が口を開くよりも早く、キュルケが再び彼の疑問に答えた。
軽い舌打ちとともに、浅倉がイラついた表情を見せていると、数人の空賊がこちらに近づいてきた。

「何をくっちゃべってやがる。いいか、お前たちは捕らわれの身なんだ。下手な抵抗はするなよ?
わかったならついてこい」

空賊の一人がそう言うと、彼らの乗る船へとルイズたちを先導していく。
後方に控えていた空賊が一列になるよう促すと、ルイズたちの後をついていった。



(誰かに捕まるのも久しぶりだな……)

かつて幾度となくやりあった警察と、一人の弁護士のことを思い出しながら、浅倉は空賊の船へと乗り込んだのであった。
135狂蛇の使い魔:2009/01/30(金) 00:00:13 ID:XNFqUOCA
 
空賊たちの乗る船へと連行されたルイズたちは、船の荷物が置かれている船倉へと閉じ込められた。
部屋の唯一の出入口である、丸いガラスの窓がついた扉には鍵がかけられていて、生身のルイズたちでは開けることができない。
更に、扉の前には見張りが一人立っているのが見える。
一見、脱出は不可能そうに見えるのだが。

「まあ、アサクラの力があればどうってことはないでしょう。なんせ、百人の傭兵を軽く蹴散らしたくらいなんだから」

もう少し寝させろ、と言って再び眠り始めた浅倉を見ながら、ルイズが余裕の表情で言った。ギーシュもうんうんと頷く。
しかし、キュルケとワルドの表情は曇ったままであった。

「残念だが、そう簡単にはいかないだろう。空賊の中にはメイジが複数いる。彼の粗暴な戦い方では、一撃が強力な魔法を受ける前に全員を倒すことは無理だろう。
メイジのいなかった傭兵たちと戦うのとは、わけが違う」

確かに、とルイズが呟く。

「それに、空賊たちを死なせてしまえばこの船が墜落してしまう。ある程度の手加減が必要になるが、かといって相手に余力を残してしまうと、今度は戦う者の身が危ない。
第一、彼にそんな器用なことができるとも思えん」

言われてみれば、と納得したルイズとギーシュは、同時に脱出する術がないことを悟り、ため息をついたのだった。

彼が戦い始めたが最後、立ちはだかる者は皆、容赦なくねじ伏せられてしまうだろう。例え、それが船の運航に必要な人物でも。
空賊の船が落ちれば、当然の如く同行している船も落ちるだろう。そうなれば逃げる方法はない。ゲームオーバーである。

(タバサのシルフィードでも、船員さんたちは助けられないし……)

そう考えた瞬間、ルイズはあることに気づいた。



「そういえば、タバサはどこ?」
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 00:00:19 ID:2J/VaYlK
支援
137狂蛇の使い魔:2009/01/30(金) 00:01:13 ID:XNFqUOCA
以上です。船員の言葉は脳内変換でお願いします。
ディケイドでも大暴れする王蛇を拝めればいいんですがね……出てほしいなぁ。
では、支援ありがとうございました!
138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 00:07:16 ID:/EEUQsOl
王蛇の人乙です。
朝倉が朝倉してて面白いです。奴なら自分から戦場に突っ込みそうだしww
タバサがどこまで黒くなるかwktkして正座待機。
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 00:43:17 ID:RGXGxhQr
BOAD乙ですwww

140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 01:17:12 ID:G7PnmdoV
所長何やってんすかwwwいや船長か?
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 01:21:30 ID:AgI1+oMd
セリフと活舌の悪さから剣崎クンか?
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 03:42:25 ID:aWZniaww
現在短期間連載してる作品達が、てぃふぁにあちゃんのおっぱいダンスが出てくるとこまで継続しますように
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 03:54:46 ID:qq2UB9Y3
正直完結してない作品のSS書くのって怖くない?
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 05:13:50 ID:H2tuQM6j
完結したら熱が醒めて風化しちゃうよ
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 07:14:24 ID:ogFGPbsm
>>141
滑舌かな?
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 08:34:20 ID:+89s8MtC
おはようございます。予約がなければ8:45頃に小ネタを投下したのですが、
いいでしょうか?
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 08:43:58 ID:ONQtj8VM
だめ ぜったい
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 08:46:38 ID:19T2SbFA
元ネタ表記しろよ
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 09:03:24 ID:BfNRMEZN
なんでそんなやたら攻撃的なの?
sageてるし時間も問題なくね?

>>146
遅いかもだが俺はいいと思うよ
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 09:11:59 ID:BZuvb41y
別に攻撃的ではないだろ
軽い冗談と注意なんだし……
つまり投下OKって事だよ
さあカモン!
151名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 09:44:49 ID:yAQsOq4P
なんで投下して駄目なの?
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 09:52:22 ID:+89s8MtC
ちょっと混乱しちゃっているので小ネタ投下はまた、今度にします。では、
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 09:55:49 ID:aMBZtc3t
小ネタが駄目なら長編を投下すればいいんじゃね?
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 10:39:56 ID:0Ub913QG
>>138
黒くなればなるほど死亡フラグが強固になっていくような気が……
155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 10:47:51 ID:KZBmpDnr
というか、仮面ライダーになる事そのものが死亡フラグだからなぁ
原作のライダーは全員死んだし・・・
156ゼロのルイズと失望の使い魔:2009/01/30(金) 11:17:29 ID:NVHyNmZJ
お久しぶりでございます。
予約が無ければ、今すぐ投下を始めたいのですがよろしいでしょうか?
157ゼロのルイズと失望の使い魔 03:2009/01/30(金) 11:25:25 ID:NVHyNmZJ
 ゆさゆさと身体を揺らされている。
 それはとても懐かしい記憶、カトレア姉さまに優しく起こされる。眠い目を擦り虚ろに写る視界からゆっくりと覚醒をすると、大好きな優しい笑みが写る。
「あるじさま、あるじさま」
 聞き覚えがあるけど、誰だったっけ?
 覚醒をしない頭で考える、そういえば昨日召喚した使い魔の子に朝起こしてくれるように頼んだんだっけ? 一瞬で覚醒した。
「フフ、ありがとうヘリオン、いい朝ね」
 よく前が見えない。 
 半開きであろう目に力を入れて、優しく微笑んでみると、ヘリオンは一瞬ひきつった笑みを浮かべたように見えたが、よく見えなかったみたいだ。
 私自身が気がついたときには、人懐っこい笑みを浮かべていた。
「はい、とてもいい朝ですね」
「よく眠れた?」
 自分の部屋は私以外にベッドのスペースがないので、知り合ったばかりの使用人の部屋で世話させることに決めた。
 私は身体を起こし、ふっと髪をかきあげた。
 ヘリオンは使用人としても優秀で、言う前に制服を用意してくれた。
 褒めると彼女は笑いながら、そういうレクチャーを早朝に受けたと教えてくれた。
 なので少し意地悪をしてみることにした。
「今日の最初の授業は何なのかしら」
「ミセス・シュヴルーズの練金の授業ですね」
 廊下を歩きながら私は驚いていた。
 なぜそんなことを知っているのかしら、もしかして誰かに聞いたとか? 私は感心した。
 それからしばらく歩いて、教室に着く直前で見たくない顔を見て顔をしかめた。
「あら、ミス・ヴァリエール、ごきげんよう」
「おはようございます、ミス・ツェルプストー。それ、あなたの使い魔?」
「そうなの、火山渓谷のサラマンダーよぉ、好事家に見せたら値段を付けられないほどの」
 ふん、と鼻を鳴らしたら心配そうなヘリオンの顔が見えた。自慢できない使い魔だと思っているのだろうか。そんなことはない朝はきちんと私を起こしに来てくれたし、知らないと思ってた知識も把握していたし。
「好事家かどうかは知らないけど、その使い魔は話し相手にならないでしょう?」
 私の反論が予想外であったのか、キュルケはむっとした表情になった。
 ふんと胸を張って横を通り過ぎる。
「あるじさま、私のことは気になさらないでいいんですよ、ちっちゃいのは確かですし」
「ちっちゃいって、別にそんなことは気にしてないわ」
 教室の中にはたくさんの使い魔がいた。中には、教室に入りきらないのもいるので、そういうのは窓からのぞき込んでいたりする。
 確かにもっと強そうであったり、巨大な使い魔に憧れない気持ちはないけど、なんといっても私は公爵家の三女、戦いにおいて前線に立つこともないし、将来は素敵な旦那さまをたてて過ごすのだろう。
 その際に私を世話してくれる使い魔がいれば便利だし、助かるだろう。
「このシュヴルーズ、この時期はとても楽しみにしているのですよ」
 そういって老齢の女性の教師は教室を見回した。ヘリオンを見たときに、
「中には、とても珍しい使い魔を召喚した方もいるようですね」
 そういって微笑んだように見えたけど、周りからは野次が沢山上がった。反論しようとして振り返ると、ヘリオンが肩をぐっとおさえた。
「いいですから、私のことで怒らないでください」
 そうと言われてしまえば我慢せざるを得ない。
 私が座っていると、声が止んだ。見てみると口うるさい生徒の口に赤土が放り込まれていた。
「あるじさまをお守りするのが、私の役目ですから」
 ヘリオンは柔らかく微笑んだ。
158ゼロのルイズと失望の使い魔 03:2009/01/30(金) 11:26:14 ID:NVHyNmZJ
 授業時間は滞り無く過ぎていったが、私の起こしたとある事件がきっかけで、掃除をする羽目になってしまった。
 割れたガラスを箒ではいて片づけたり、煤で汚れた机を雑巾で拭いたりするが、そこでもヘリオンはよく働いてくれた。
「ふう、案外早く終わったわね」
「はい、ところであるじさまにお怪我はありませんか?」
 その言葉に応える前に、私は持っていたハンカチでヘリオンの鼻を拭いてあげた。
 照れたように笑う彼女に向かって、
「平気よ、それよりヘリオンは大丈夫だったの?」
「だいじょうぶですよぉ、ちゃんと避けましたから」
 避けた? 
 まあ、気にしないことにしよう。
 爆発の瞬間に他生徒の使い魔が暴れ回って、食われただの怪我しただの悲鳴が聞こえてきたものだから、確かにすばしっこそうな外見もしてるし、ね。
 掃除用具を片づけて外にでると、テラスで食事をしている生徒たちの姿が目についた。
 そっか、もうそんな時間になるのか、授業一つ分もつかって罰掃除をしたってことになる。
 少しばかり恥ずかしいところを見せてしまったかもしれない。
「そろそろお食事の時間のようですね、ご用意して参りましょうか?」
「ちょうど良いわ、一緒に食べましょう?」
「それはとても嬉しいお誘いなのですが、そういうわけにはいかないのです」
 ヘリオンは伺うようにこちらを見ていたかと思ったら、急にぴんと胸を張った。
「あら、どうして?」
「実は仕事を言付かっているのです、昨日お世話になったシエスタさんの手伝いをしようと」
「ああ、なるほど」
 確かに、ヘリオンが自主的に志望したのかもしれないし、彼女の顔に泥を塗ってもかわいそうだ。
 私は了承した。
「そ、それでは手伝いをしに行ってきますね」
 食堂へと続く道でヘリオンと分かれる。走ってる姿を見たけれどずいぶんと早い、まるで飛んでいるようにも見えたけどおそらく見間違いだろう。
 さて、私は一人になったけれど食事の目的を果たすことには変わらない。
 空いている席に適当に座り、他の生徒たちの雑談に少し苛つきつつ、食事が来るのを待っていた。
「おい、ギーシュ。今は誰とつきあってるんだよ」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ、僕が節操無しみたいじゃないか」
 事実節操無しの癖にギーシュときたら。
 まあ、そんなことはどうでも良いや。食事もちょうど良いところに来たしね。
 手をつけようとしたところで、床に転がっている小瓶が見えた。
「あら、綺麗な紫色ね」
 何気なく呟く。
 ただ、関心はしても興味を示す代物ではなかったので、次の瞬間には瓶の形すら記憶してなかった。
 サンドイッチを食べ終わり、ハーブティーを飲んでいると食堂が不意に騒がしくなった。
 それと同時に強めの花の香りが鼻に届く。
「これは、香水ね?」 
 出所を探してみると、先ほどの小瓶が割れて中身が飛び出していることに気がついた。
159ゼロのルイズと失望の使い魔 03:2009/01/30(金) 11:26:45 ID:NVHyNmZJ
 食事時でほとんどの人間は無視を決め込んでいるみたいだけれど、
「なんだかギーシュが青くなってるわね?」
 もしかして彼自身の物だったとか、あれほど匂いが強い香水を付けている風には見えなかったけど、外出する際に利用をするのかもしれない。
「まあ、いっか」
 残っていたお茶を飲み込んで、私は席を立った。
 食堂を抜けて午後の授業がある教室へと向かう。少しばかり到着が早かったのかそこには誰もいなかった。
 そこで前の生徒が忘れでもしたのか、厚い本が見つかる。
「水系統の発展と心に与える影響について?」
 著者は、聞いたこともない人物だ。
「うーむ、難しい」
 読んでて何分かで飽きてしまった、興味が引かれないわけではなかったが、文章が堅すぎる。
 私は本を閉じて、元の場所に戻した。
 しかし、いつまで立っても誰も来ない、教室を間違えたのかなと思って辺りを見回してみる。誰かが隠れているというわけもなく、隣の教室まで見に行ってみても誰もいなかった。
 耳をすませてみる。
 なんだか外が騒がしすぎる気がする。
「なんだろう? 争ってる声かしら?」
 それは貴族同士の喧嘩か言い争いか。
 ただ、授業もそっちのけになってしまうのだから大事かもしれない。
 窓から地面を探ってみると驚いた、確かに人だかりができている。その間にいたのがギーシュとヘリオンだったので二度驚いた。
「な、ななぁー!」
 私は叫んだ、どういうことだ、誰か私に説明をしてほしい。
 ギーシュのワルキューレが繰り出す攻撃をヘリオンが必死に避けて見えることだけを確認し、私は教室から抜け出た。
 教室から広場までの距離がこんなにも長く感じてしまうなんて。
 あわてて人混みの中へ駆け込むと、ぐっと肩を引かれた。身体が誰かに倒れ込む。
「はぁーいルイズ、ごきげんよう」
「キュルケ、いや、あなたに関わってる暇はないの、今すぐ止めないと」
「あなたが止めると、別のメイドがあの対象になるわよ」 あの、というのはワルキューレに襲われているヘリオンのことだろう。
「どういうこと?」
「人づてに聞いた話なんだけど、使用人の一人がギーシュの小瓶を不注意で割ってしまったらしいの」
 私の認識が正しければ、あの小瓶は床に落ちていたはずだ。給仕の仕事で忙しくしていた使用人が踏んでしまっても文句は言えまい。
「それで注意されてた娘をあの子が庇って」
「虐めってわけぇ?」
「貴族のプライドって、このトリステインでは安っぽいのね」
 キュルケの雑言は気にしないでおいて、なるほど、ここは地味に止めない方がいいか、できれば騒ぎに気づいた先生たちが何とかしてくれると良いんだけど、辺りを見回すと見てるばかりで手を出そうとはしていない。
「ギーシュの気を晴らす? 人の使い魔に手を出しておいて? そんな悠長なことでいいの?」
 そういえば以前ヘリオンは戦うこともできると言っていた。あの身体能力から察するにワルキューレの攻撃が当たるようには思えない、となれば彼の気も晴れない。
 なら、逆に倒してしまう? しかし私が乱入をしてしまうとややこしいことになる。貴族同士の喧嘩は巻き込むものが多すぎる、いつもの口げんかとは違うのだ。
 私は人混みをくぐり、なんと構えにでるとヘリオンに向かって声をかけた。
「ヘリオン、逃げて、あなたの身体能力ならできるはずだわ」
「あ、す、すみませんあるじさま、できればご迷惑をかけないようにと思っていたんですが」
「私のことは気にしないで良いわ、さ、こっちへ」
 だが、その瞬間ワルキューレが目の前に現れた。
「邪魔させてもらうよ、ゼロのルイズ」
「ちょっと、女の子いじめて楽しいの? ちょっと大人げないわよ」
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 11:26:57 ID:CHqaQgoT
支援するのでございます
161ゼロのルイズと失望の使い魔 03:2009/01/30(金) 11:27:48 ID:NVHyNmZJ
「何を言っているんだい、躾のなっていない使い魔に教育をするのは当たり前だろう、感謝こそされ怒られる道理は無いね」
 確かに、こちら側の意見こそ排除されるべきかもしれない。何はともあれギーシュの感が触るようなことをしてしまった非はあるのは間違いない。
 ヘリオンにも勝手な事をして、と怒鳴る事は出来ない。
「使い魔の非礼は私の非礼、私が謝罪するわ」
「ほう、僕の小瓶を割ったメイドの分まで謝ってくれるのかい?」
「それは別よ」
 ギーシュの顔色が変わった。
「ふん、謝罪すると言っておいて情けないね」
「情けないのはそっちよ、そんな大事なものなら落とさずに持っておきなさいよ」
「んな!?」
 私は確かに見た……ほんの一部分だけど。
 証拠はまったく無いし、落ちていたのがギーシュの小瓶だったかどうかも分からない。
 しかし、私の言葉に慌てる彼の姿を見る限り、想像は当たっているに違いない。
「落としたってどういう事、ギーシュ?」
 人込みからモンモランシーの声がする。
 そういえば彼女は香水作りが得意だ、私には興味が無いので購入したことは無いけど。多くの生徒達に人気がある事を知っていた。
 モンモランシーからギーシュに贈られた物だとすれば……ははん、読めたぞ。
「そう、落とした物を踏ん付けて割った使用人に責任転嫁って訳、やるわねギーシュ、プレイボーイの名に恥じないわ」
「い、いわれないのない中傷を許す気はないよ、ゼロのルイズ」
「慌てちゃって、モンモランシーは付き合いが長そうだし、ギーシュの態度で分かるんじゃないの?」
 場の空気が固まった。
 ……あれ? 今のそれなりに決め台詞だったんだけど?
「あ、あるじさま、付き合っているにしろ、いないにしろ暴露されて気分の良い方はいないと思います……」
 ヘリオンの控えめな訂正が入って、ようやくはっとした。
 救世主だったモンモランシーの声はまったく聞こえなくなり、変わりに多くの生徒の雑談が一瞬の間のあとに響き渡る。
「へぇー、やっぱりギーシュはモンモランシーか」
「じゃあ、前に連れてた下級生は浮気か?」
 でも、これはチャンスだ。 
「へ、ヘリオン、逃げるわよ!」
「は、い、了解です!」
 ありがとう、そしてごめんなさいモンモランシー。
 私はエアーリーディング能力を身につける事に決めました。
 あと、名前も知らない使用人さん。
 夜眠るときに香水の匂いがきつくて大変だと思います。
162ゼロのルイズと失望の使い魔:2009/01/30(金) 11:29:39 ID:NVHyNmZJ
投下終了です。
時間がかかり過ぎで大変申し訳ありませんでした。
支援もありがとうございます。
また、近いうちにお会いできる……って、これは死亡フラグのような。

最後に、一言。
ポメラ便利すぎワロタ
163名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 16:31:40 ID:QFYURXUj
風の魔法エアーリーディング!!
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 17:47:11 ID:7roXsvXq
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 17:58:43 ID:iloiP8h0
タツモリ家のバルシシア・ギルガガガントスとか召還しても面白そうだな
無敵すぎて小ネタにしかならなさそうな気はするけどw
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:05:55 ID:Bou2nzQV
「風のユビキタス(遍在)……。風は遍在すr「黙れッ!!」
「…そして聞け!!」
BGM:悪を断つ剣

どうにもならんね、これはw
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:08:31 ID:0Ub913QG
>>155
そのせいか"狂蛇の使い魔"は主要キャラ全員(ルイズ・キュルケ・ギーシュ)に死亡フラグらしものが見え隠れしてる感じがするよ
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:08:43 ID:aMBZtc3t
ジェロニモって土のメイジに対してすごい強いよね
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:12:49 ID:P3/t4HhG
酋長怪獣ジェロニモンがどうしたって?
170約束は次元を超えて:2009/01/30(金) 18:15:18 ID:k+/+1TNN
どれだけ考えても文章が膨らまないのでそろそろ諦めて投稿としますorz
また短くなってもーたわぁ・・・

予約がなければ18:20スタートで。
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:17:32 ID:19T2SbFA
005か…。渋い所を突いてくる御仁よな。
172約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:20:07 ID:k+/+1TNN
では投稿開始します。



 嬉しかった。
 今までずっと失敗だと思ってきたわたしの爆発を、推論とは言えフィアースが説明して、認めてくれた。その話をタバサもあのキュルケも否定しないで聞いて、キュルケなんか今も考え込んでる。
 それに、あの爆発をわたしの魔法だと思えばいい。あの爆発にはその力がある。そしてその力は誰かを守ることができる力だ、とも言った。
 正直、そんなこと今まで一度も考えたことがなかった。それはまぁ、今までずっと失敗だと思ってたんだから仕方ないとは思うけど。
 だけど、できることがあるなら。
 わたしの魔法で、できることがあるのなら。
 わたしは、立ち止まってなんかいられない。
 何をどうすればいいのかなんて分からないけど、それでも。
「……駆け出さなきゃ、始まらない」
 小さくつぶやく。
 わたしの声にキュルケが顔を上げて、わたしを見た。
「あら、スッキリした顔してるじゃない」
「えぇ。わたしの魔法でできることがあるなら、うつむいてなんていられないわ」
 わたしの返事が予想外だったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするキュルケ。
「でも、じゃあどうするの?」
「わからないわよ、そんなの。でも、『未知のものに前例はない。なら、道を作ればいい』。
 わたしだって何をどうすればいいのかなんて、さっぱり分からないわ。でも、できることから始めれば、道なんてそのうち見えてくるわよ。そうでしょ?」
 その言葉に、キュルケはフッと笑った。
「じゃ、せいぜい頑張りなさい」
 キュルケはそう残してタバサたちの稽古の方を見に行った。

 さて、キュルケに大見得を切ってみたのはいいけど、実際のところどうしようかしら。
 とは言っても、もちろん四大魔法しか勉強してないというかそれ以外の魔法を使えるメイジなんていないから、他にどうやればいいのかなんて思いつくはずもないんだけど。
 さてここで問題です。
 問.何もわからない状態で今ある力を活かせるようにするには、どうすればいいでしょう。
 答.持てる力をコントロールできるようになればいい。
 冴えてるじゃない、わたし。
 今までの爆発は、ただわけも分からず爆発を起こしていただけ。
 どうすればどのくらいの爆発を起こせるのか。効果の出せる範囲はどれくらいなのか。それを把握しなきゃね。
 それじゃあ、先ずは距離から調べて見ましょうか。


   ◇◆◇


 稽古を始めてまだ数日だが、タバサの動きは確実によくなってきている。
 恐らく、もともとそれなりに動ける体だったのと合わせて、目的をもって稽古をしていることが成長の要因だろう。
 俺が振るう木の棒を、手にした杖で弾き、捌く。
 今やっているのはウェポンブロックの基本概念、武器の衝撃を食らわないようにする訓練だ。
 タバサは小柄だから、力で受け止めたり押し返したりするよりはこちらの方が扱いやすいだろう。
 これができるようになるだけで、選択肢は格段に増える。近距離にもぐりこむことができれば、相手に打撃を与えやすいからだ。
 もちろん相手にとっても近距離は打撃を与えやすい間合いである。特にメイジでないものはそうだろう。そういった手合いにもぐりこまれた際のリスクをつぶす訓練にもなる、というわけだ。
 カン、カンと木を打ち付けあう音が響く。
173約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:23:06 ID:k+/+1TNN
 その時。
 ドォォォーン!
 不意に、ルイズの魔法による爆発の音が響いた。
 俺とタバサの手が止まる。
 ルイズを振り返ってみると、吹っ切れたような、そして何か目的を見つけたような顔をしている。
 ドォォォォーン!
 今度は、先ほどよりもう少しこちら側で爆発が起こった。
 俺たちが自分の方を見ていることに気づいたか、稽古の音が聞こえなくなったから気づいたのか、ルイズがこちらに目を向けた。
 そして一つ頷くと、また杖を振り下ろす。
 ドォォォォーン!
 今度は、俺たちの後ろで爆発が起こった。
 なるほど、これは距離を測っているのか。先ずは自分の能力の把握に努めることにしたらしい。今持っている自分の力を確認しておくことは重要な事項であることに、ルイズはきちんと気づいているようだ。
「……続き」
 タバサはあまり表情が変わらないので何を思っているのかはよく分からないが、続きを促してくる。
「あぁ」
 返事をして、また木の棒を振るう。
 その時。
「あっ!」
 ルイズのあわてたような声が響き、その直後に。
 ドォォォオオーン!
 学院の本塔の壁に爆発が起こった。
「やっちゃった……」
 どうやら目測を誤ったらしい。何かに気を取られでもしたか?
「どうかしたか?」
「何かが動いた気がしたのよ。それに気を取られちゃって……」
 その時。何かに気づいたのか、キュルケが突然振り返った。
「な、なにこれ!」
 キュルケの声に、全員の視線がそちらを見る。
 そこには、巨大な土のゴーレムがいた。しかも、ズシン、ズシンと音を立ててこちらに歩み寄ってくる。
「みんな、散るぞッ」
 一声発してから、俺もそのゴーレムの進行方向から逃げる。タバサもキュルケも大丈夫のようだ。ルイズはもともと少し離れた位置だったため、大丈夫だったようだ。
 というよりは、もともと賊はこちらのことなど眼中にないように見えるほど、学院へと一直線だった。
 しかし。
「一体誰が」
 ルイズと合流し、疑問を口にする。
「……もしかして、昼間に武器屋が言ってた盗賊じゃない?土くれって言うくらいだから土のメイジでしょうし」
 王都を荒らすメイジの盗賊の話か。
「しかし、学院に何の用だ?」
「わたしが知るわけないじゃない。でも、あの場所は多分宝物庫の辺り……ってことはそこが狙いなんでしょうけど」
 話をしている間にもその巨大なゴーレムは本塔に近づき、そしてその腕を振り上げて、先ほどルイズの魔法で爆発した辺りの壁にたたきつけた。
 轟音と共に壁が割れる。すると、どこからか現れた人影が腕を伝ってその中へ入っていくのが見えた。
「学院の壁は固定化の魔法も強力なのがかかってるはずだから、あんなに簡単に壊れるはずないのに」
 不思議そうに言うキュルケの言葉には、誰も答える言葉を持っていなかった。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:23:22 ID:VQfQ4PnU
しえーん
175約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:26:05 ID:k+/+1TNN
 そうこうしていると。
「あッ、出てきた!」
 再び穴から、何かを持って黒いローブを纏った影が現れ、ゴーレムの肩に乗った。同時にゴーレムが動きだし、学院の外へと歩き出す。
「ちょッ、逃げるわよ! 追いかけなきゃ!」
 ルイズがあわてて後を追おうとする。
 だが。
「落ち着くんだルイズ! 今追いかけてもできることは少ない!」
「だって、賊を目撃したのにみすみす捕り逃すなんて!」
 悔しそうな声で反論してくる。
 気持ちは分からないでもないが、相手の実力が未知数な上に夜の闇に紛れられたら、守りきれる自身がない。
「逃げられた」
「もう行っちゃったわよ」
 タバサとキュルケが、冷静に事態を見ていた。
 見ると、ゴーレムはその姿を土の山へと変えていた。賊が魔法を解いたのだろうか。
 ルイズは悔しそうな表情を崩さず、ゴーレムが消えた方向をにらみつけていた。
 ひとまずはみんな無事だったようで、よかったが……


 次の日。
 学院は朝から蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。
 宝物庫が破られ、秘宝である『破壊の杖』と『破壊のメダル』が盗まれたらしい。
「あの壁は、やはり丁度宝物庫のところだったようだな」
「そうみたいね」
 宝物庫には学院中の教師が集まり、壁に空いた大穴を見てあんぐりと口をあけていた。
 そして壁には、犯行声明が刻まれている。
『破壊の杖ならびに破壊のメダル、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
 あの武器屋で聞いた賊で間違いなかったようだ。
「あんなゴーレムを作れるとは、相当な腕だろうな」
「でしょうね。トライアングルか、もしかしたらスクウェアクラスかも……」
 ルイズの反応からしても、相当な腕のようだな。昨日追わなかったのは正解だったか。
 そのうち集まった教師たちが、やれ衛兵が悪いだの、やれ平民は当てにならないだの、サボっていた当直が悪いのと責任の擦り付け合いを始めた。
「情けないわね」
「見苦しい」
 キュルケとタバサの感想とその騒ぎ立てる教師たちの様子に、ルイズがうつむいて唇をかみ締めている。
「騒ぐでないわ、見苦しい。結局、ここにいる全員が油断しておったということじゃ。責任なら誰かではなく、ここにいる全員で負わねばなるまいよ」
 オスマン老の言葉に、騒いでいた教師たちが沈黙する。
「さて、犯行の現場を見ていたのは誰じゃ?」
 すると、コルベールが前にでてルイズたちを指差して言った。
「この三人です」
 ルイズ、キュルケ、タバサで三人か。普通は使い魔は人数に入れないのを、他の教師に気を使ったのだろう。
「ふむ……君たちか。詳しく説明してくれたまえ」
 ルイズが進み出て、昨日の状況を話しだした。
「大きな土のゴーレムが突然現れて、壁を殴りつけて壊したんです。そして肩に乗っていた黒いローブのメイジが穴から入り込んで何かを持ち出し、ゴーレムと共に壁を越えて歩き去りました」
「それで?」
「そのあとゴーレムは崩れちゃって、土しかありませんでした。肩に乗っていた黒いメイジは、影も形も」
 ルイズの説明に、オスマン老はひげを撫でる。
「ふむ、後を追おうにも手がかりは無しか……」
 そして、ふと何かに気づいたように顔を上げて教師たちを見回してから、コルベールに問いかけた。
「時に、ミス・ロングビルはどうしたのかね?」
「それがその、朝から姿が見えませんで……」
176約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:29:04 ID:k+/+1TNN
 と、丁度その時。ロングビルが宝物庫へと現れた。
「申し訳ありません、朝から急いで調査をしていましたもので」
「調査?」
「えぇ。朝から大騒ぎじゃありませんか。この通りフーケのサインを見つけたので、これが国中を騒がせている大怪盗の仕業と知って、すぐに調査をいたしました」
 仕事が早いな。
「して、結果は?」
「はい。フーケの居所が掴めました」
 その言葉に、周囲が一気にざわつく。コルベールも素っ頓狂な声を上げている。
 その中で、オスマン老が冷静に訊いた。
「誰に聞いたんじゃね? ミス・ロングビル」
「はい。近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていく黒ずくめのローブの男を見たそうです。恐らくそこが、フーケの隠れ家ではないかと」
 ロングビルの言葉に、ルイズが反応する。
「黒ずくめのローブ? それはフーケです! 間違いありません!」
「そこは近いのかね?」
 ルイズの声を受けて、心持ち鋭い目つきでオスマン老が問う。
「はい。徒歩で半日、馬で四時間といったところでしょうか」
 そのロングビルの言葉に、違和感を感じた。朝から調査をして、そんな時間のかかる場所に行って戻ってこれるだろうか?
 素早く移動できる魔法でもあれば話は別なのだろうが、そこは俺には判断できない。あとでルイズたちに訊いてみるとするか。
「すぐに王室へ報告を……」
「ばかもの! 報告なんぞしてるうちにフーケは逃げてしまうわ! その上、身に降りかかる火の粉すら払えぬようでなにが貴族じゃ! 学院の問題は、我らで解決する!」
 驚いた。オスマン老はこういう迫力も出せる人物だったのか。いつもの様子からは想像もできなかったが、最初の直感は間違っていなかったようだ。
 ふとロングビルの方を窺うと、なぜか微笑を浮かべている。その表情に、先ほどの疑念がさらに強くなっていくのを感じた。
 オスマン老が、咳払いと共に有志を募った。
「それでは、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」
 しかし、顔を見合わせるだけで誰も杖を掲げない。
「おや、どうした。世間を騒がす盗賊を捕まえて、名を上げようという骨のあるものはおらんのか?」
 オスマン老は発破をかけるが、それでも何も変わらなかった。
 しかし、しばらくうつむいていたルイズがすっと杖を掲げた。それに続いて、キュルケとタバサも杖を掲げる。
「あなたたちは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか」
 シュヴルーズだったか? 教師の驚いた声にも冷静に反論するルイズに、彼女は何も言えなくなる。
「ふむ。それでは頼むとしようか。彼女たちは賊を目撃しておるし、その上、ミス・タバサはシュバリエの称号を持つ騎士だと聞いておるが?」
 オスマン老の言葉に、またもざわめきが広がる。
「本当なの? タバサ」
 驚くキュルケに、頷きを返すタバサ。
 ふむ、騎士の称号を持っていたのか。動ける体をしているわけだ。
「ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身も優秀な火のメイジであろう」
 その言葉に、機嫌よく髪をかき上げるキュルケ。
「ミス・ヴァリエールも優秀な家系で将来有望なメイジであるし、その使い魔は先の決闘騒ぎでも実力を知るものも多かろう。この四人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」
 誰も動かない。その様子を見て、オスマン老がこちらに向き直る。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
 その言葉に真剣な表情になった三人は、直立すると「杖にかけて!」と唱和した。そして、スカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
177約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:32:05 ID:k+/+1TNN
「では、馬車を用意しよう。それで現地へ向かい、魔法は目的地に着くまで温存するのがよかろう。ミス・ロングビル!」
「はい、オールド・オスマン」
「彼女たちを手伝ってやってくれ」
 オスマン老の言葉に、ロングビルも頭を下げる。
「もとよりそのつもりですわ」


   ◇◆◇


 善は急げということで、すぐに出発することになった。
 わたしが大急ぎで準備を終えて馬車に向かうと、タバサとキュルケはもう来ていた。けどミス・ロングビルはまだ来ていないみたいね。
「お待たせ。あ、そうだフィアース。クラスチェンジしておかなくていいの?」
「ふむ」
 フィアースはしばらく考え込んでからARMを取り出した。そして。
「アクセス」
 そう言うと、例のクラスチェンジの光がフィアースを包み込んだ。
「これでいいだろう」
 まぁ外見が変わらないから、わたしたちには何がなんだか分からないんだけどね。
「決闘の時の」
「あぁ、あの時の光ってそれだったのね」
 そっか、二人は話を聞いただけで、実際にクラスチェンジするところは見てなかったんだっけ。
「あぁ」
 そうこうしている間に、ミス・ロングビルも現れた。
「お待たせしました。それでは出発しましょうか」
 いざ往かん。待ってなさいフーケ!

 馬車に揺られること2時間。雑談を続けようにも流石に話題が途切れちゃった。
 妙な沈黙が降りる。
 ……あれ、フィアースが御者台を気にしてる。どうしたのかしら。
「ミス・ロングビルがどうかしたの?」
 わたしが訊くと、フィアースはわたし達に集まるようにジェスチャーをしてきた。
「何よ?」
「ロングビルは怪しいと思っている」
 は!? いきなり何を言うのよこいつは!
「ミス・ロングビルはオールド・オスマンの秘書よ? 怪しく思うなんて変よ」
「今朝の話だ。ロングビルは朝起きて騒ぎを聞きつけ、馬で四時間かかる農民に聞き込みをしたと言った。だが、そうすると往復で八時間かかる。八時間前はまだ夜中だ」
 あ、そう言われれば。
「長距離を素早く移動する魔法でもあれば可能かもしれないが、それは俺にはわからない。意見を聞きたい」
 そんな魔法、聞いたことないわよ?
「タバサ、そんな魔法知ってる?」
「知らない」
「シルフィードみたいな使い魔でもいれば別なんでしょうけど」
 ということは……
「ミス・ロングビルは、嘘を吐いている?」
「その可能性は高いと思っている。なぜかは分からないが」
 フィアースの言葉に、三人して黙り込む。
「フーケと繋がってる?」
 まさか、と笑い飛ばしたいタバサの言葉も、この状況だと勘繰りたくなちゃうわね。
「決め付けるのは早計だが、気に留めておいた方がいいだろう」
 なるほどね。
「わかったわ」
178約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:35:04 ID:k+/+1TNN
「話が途切れてからヒソヒソ話ばかりしてるとちょっとアレだから、あたしが適当に話をしておくわ」
 キュルケがそう言うと、御者台のミス・ロングビルに話しかけた。
 何か、雲行きが怪しくなってきたわね……変なことにならなきゃ良いんだけど。
 そうこうしているうちに、馬車は鬱蒼とした深い森に入っていく。
「昼間だってのに、薄気味悪いわね」
 キュルケの言葉ももっともだ。わたしだって、普段ならこんなところに来たくないもの。
「ここから先は徒歩で向かいましょう。道も細いようですので」
 見ると、ミス・ロングビルの言葉通りに、馬車で通るには少し細い道になっている。
「こんな薄気味悪いところを徒歩で通るなんて……これっきりにしたいわね」
 思わず出たそんな感想にタバサが少し青い顔で頷くのが、いつもの彼女とのギャップのせいで妙に印象的だった。

 そのまましばらく歩くと、急に開けたところに出た。
 学院の中庭くらいの広さに、廃屋が一軒建っている。
「わたくしの聞いた情報ですと、アレが隠れ家らしいということです」
 ボロボロで、誰もいそうに無いけど……でも隠れ家ってそんなものかしら?
 と、タバサが座るようにジェスチャーしている。
「作戦会議」
 そういうと、タバサが地面に絵を書き出した。
 誰かが偵察に行って、フーケがいなければそのまま中を捜索。もしフーケがいたらおびき出して、出てきたところを全員で攻撃、ね。
「魔法は大丈夫なのか?」
「土のメイジなら、小屋の中では強力な魔法は使えない」
「家から出てすぐなら、大きなゴーレムを呼び出す時間を与えなければいい、ってところね」
 タバサとキュルケの返答に、フィアースはふむと一つ返してから頷いた。
「で、誰が偵察に行くの?」
 わたしの問いに、フィアースが答える。
「俺が行こう」
 すると、タバサが反論した。
「素早い方がいい」
「あぁ。だから、こうするんだ……クイック」
 光が集まり、円形に回転する。
「これで、素早く動ける」
 このバカ! 事情を知ってるキュルケとタバサはいいとしても、ここにはミス・ロングビルがいるのに!
 わたしの危惧も知らないままに、フィアースは物陰を利用してするすると小屋に近づいていった。
「……素速いわね」
 キュルケも呆れている。
 小屋にたどり着いて、しばらく様子を見ていたフィアースがわたしたちを呼んだ。フーケがどこかで見てるかもしれないから、静かに、でも素早く小屋に近づく。
「誰もいないようだ」
「罠も無いみたい」
 タバサが杖を振ってから、ドアを開けた。
「それではわたくしは、周囲の偵察に行ってきますね」
「じゃ、あたしは見張りをしておくわ」
 ミス・ロングビルとキュルケがそれぞれ言って、外に残った。
 タバサ、わたし、フィアースの順で中に入る。
 そして中を調べていると、チェストが置いてあった。
「破壊の杖」
「間違いないわね。わたしも見たことあるし」
 中には以前宝物庫で見たことのある破壊の杖が入っていた。変な形よね、持ち手がこんなに細くて、先に羽みたいなトゲみたいな飾りのついたワンドなんて。
 タバサが無造作に手にとって、わたしたちに見せる。
「……ッ!? なぜ、それがここにある!?」
179約束は次元を超えて1-6:2009/01/30(金) 18:36:54 ID:k+/+1TNN
「どうしたのフィアース。破壊の杖がどうかしたの?」
 いつになく動揺しているフィアースに、思わず訊ねる。
「それは、破壊の杖ではない」
「どういうことよ?それは確かに、破壊の杖って名前で学院の宝物庫にあったものよ?」
 わたしの反論に、フィアースが思わぬ事実を告げた。
「それの本当の名は、魔王の剣、アレイアドレキス……ッ!」



とりあえず今回はここまでです。
支援してくださった方、ありがとうございます。
あまり代わり映えのしない作ですが、のんびりとやっていこうと思います。
とりあえず次で1巻は終わるかな〜……
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 18:57:11 ID:0Ub913QG
投下乙です
ところで午後7:00からラティアス召喚とミー召喚の代理の投下をしようと思いますのでよろしく
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 19:00:48 ID:HNQJ+C3u
投下乙&代理投下支援
では行きます。

ゼロの夢幻竜 第三十六話「真実」

ルイズは夢を見ていた。夢の舞台は懐かしい自分の実家であった。過去の回想が絡まってでもいるのか主人公であるルイズは幼かった。
そのルイズは必死に何かから逃げ隠れている。何に怯えているというのだろうか?

「ルイズ!ルイズ!何処ですか?!お説教はまだ終わっていませんよ!出て来なさい、ルイズ!」

原因は母であった。夢の中の幼いルイズは母によって魔法の覚えの悪さを出来の良い姉達と比べられていたのだ。
そして我慢出来なくなったルイズは遂にその場から逃げ出したのである。
身を隠すのに丁度良い植え込みの近くにいると、今度は使用人達の声が聞こえてきた。

「そちらは見つかった?」
「いいえ。こちらにもいらっしゃられませんよ。」
「そう……それにしても相変わらずルイズお嬢様だけはどうにもならないねえ。」
「ほんに。上のお嬢様達とはまるで違うんですから……悪い意味で。」

それを聞いたルイズは本当にどうにもならなくなった。平民の召使いにまでいい様に言われているのである。悲しさ、悔しさ、恥ずかしさではち切れそうになった胸を押さえながらルイズはその場を離れた。
やがて彼女は誰も近付かなくなった、中庭にある東屋の着いた小島付きの池にとぼとぼと近付いていった。
それらは嘗て家族の者達が小船遊びをするために作られた物であったが、両親も、姉達も忙しくなった今となっては誰も使用する者がいないだけに、使用人達によってしっかりと整備されているものの静かである。
その場所をルイズは安全な場所として有効に……つまり家族の者に叱られた時の逃げ込み場として使っていた。小船に入るとルイズは用意してあったボロに近い毛布に頭から包まる。
すると濃い霧の向こう側から若い男性の声が響く。

「泣いているのかい?ルイズ。」

ルイズは反射的にさっと顔を隠す。それは近所の領地を相続した頃のワルド子爵であった。今と変わらない格好の良い羽根つき帽子とマントを纏っている。
顔が見えないのが残念だったが、泣いているというみっともないワンシーンを見られないのであればそれはそれでまだマシというものだ。

「子爵様、いらしていたんですか?」
「おやおや、君は気付かなかったみたいだね。今日はね、君の父上に例の件の事で呼ばれたんだよ。」

耳元で囁くような声で言われたのでルイズは顔が忽ち真っ赤になる。

「それは本当なのですか、子爵様?」
「勿論だとも。僕の小さなルイズ、君は僕の事が嫌いなのかい?」
「いえ、そんな事はありませんわ。ただ……私はまだ小さいですし、もっと先の事なのでしょう?」
「あっという間に来るよ。雛鳥という物は瞬く間に親離れをしていくものだからね。君もその内に大きくなって、僕と吊り合う美しいレディになることだろう。さ、涙を拭いて。そろそろ晩餐会が始まる頃だ。」
そう言ってワルドは自身の手を差し伸べる。ルイズもそれに答えるように手を差し出すが、直ぐにそれを引っ込めた。それを見たワルドは優しく微笑んで続ける。

「怒られたのかい?安心したまえ。僕が御家族の方達との間をとりなしてあげよう。」

それを聞いたルイズは小さく頷いて、子爵の手を取ろうとする。しかしそれは不意に何処からか聞こえてきた声によって遮られた。

「御主人様ー!!駄目ですー!!」

その声は紛れも無くラティアスの物だった。しかし霧が遠くまで濃く張っているために、何処から発せられているのか全く見当がつかない。
ルイズが辺りを見回している内に小船は急速に子爵の近くを離れ、どんどんと遠くに流されていく。
そしていつの間にかルイズ自身も現実と同じ姿、十六歳の姿になっていた。ルイズは訳も分からず必死に叫んだ。

「ラティアスー!何処なのーっ?!何処にいるのーっ?!!」

答えは何処からも聞こえて来ない。そしてそのままルイズの視界は強い光に包まれていった。
時間はそろそろ正午を差そうかという時、ワルドは小瓶を片手にルイズのいる小部屋へと向かっていた。
事は急がないというのはワルドのモットーである。しかし、今回初めてそれを破る事になりそうだ。
それもこれもルイズの使い魔のせいであった。そもそもアルビオンへの旅はもっと長くなるはずだったし、貴族派とて予定を繰り上げてまで攻城する必要性も無かったはず。
なのに、あの使い魔のせいで予定という予定が全て狂ってしまった。
ルイズの心を掴むにはもう少しの要因が必要だというのに時間が圧倒的に足りない。昨晩、振り向かせる事は出来ないだろうかとアタックもしてみた。
しかしルイズは使い魔と仲間の事を心配するばかりである。それならば。

「僕だ。入るよ、ルイズ。」

数回のノックの後、ワルドはルイズのいる部屋に足を入れる。中はかなり質素な部屋で、ラ・ロシェールで泊まった一室と良い勝負をしているかもしれない。
ルイズはそこに落ち着かない様子で座っていた。

「髪が少し乱れているね。何かあったのかい?」
「えっ?ああ、ごめんなさい。昨日よく眠れなかったから、ついさっきまでここで寝てたの。」
「そうか。使い魔と仲間の事が気になるかい?」
「ええ。」

ルイズはまだ雰囲気的には上の空だ。ワルドは余程結婚の話を切り出そうかと思ったが、すんでの所で今はまだそのタイミングではないと心を落ち着かせた。
自制心を失って焦ってしまえば、せっかくこれから効かせようとしている保険が気を待たずして水の泡となってしまう。
上層部は三つを手に入れろと注文してきた。一つでも二つでも三つのある物を手に入れろといってきたのだ。そのどれか一つとして欠けるわけにはいかない。

「彼らもそのうち来るだろう。皇太子殿下が自らの将兵をスカボローまで遣わしたそうじ
ゃないか。ここは殿下を信用するべきではないのかね?」
「そうだけど……やっぱり心配だわ。」
「君の気持ちも分からんでもない。だが任務が半ば終わっている今、出来る事は待つ事じゃないかな?」

そう言いながらワルドは、近くにあったキャビネットから市場に出回れば100エキューは下らない程度の古いワインを取り出した。ついでにグラスも二つ隣の食器棚から取り出す。
これで小道具は全て相整った。あとは小瓶の中身を使うのみである。
ワルドは両方のグラスにワインを入れると、ルイズに見えないようにして片方のグラスに小瓶の中身を入れる。するとグラスが薄明るくぼうっと光った。これで取り敢えず保険は完成である。

「確証はあるの?皆が無事にここに来るっていう。」
「君がそう信じていればそうなるだろう。さ、今はとにかく落ち着くんだ。ワインの一杯でも飲まないかね?」
「それこそ君が始祖に見初められたメイジという証だと僕は思う。お互いがお互いの存在を呼び合い、そして共鳴したのだろう。なあルイズ、君は誇りに思っていいんだ。
自分にとってこれから進むべき道を決めるというこの大事な時に、あの使い魔を召喚したという事実を。君は今に歴史へ名を残す素晴らしいメイジになるだろう。
その力を、その能力を存分に駆使して……勿論、その隣には君を支える僕がいる事を忘れてはいけないよ。」

ワルドはそっと微笑むがルイズは彼の言ったある言葉を考えていた。‘自分にとってこれから進むべき道を決めるというこの時’。
ルイズは十六歳でもう子供ではない。大事な事、自分にとって益のある事かどうかは自分の心で判断をつけなくてはならない歳である事は確かだ。
そこを考えてみると、ワルドは昨晩から自分は婚約者なのだからルイズに結婚を迫ってきているが、ルイズの中ではもう答えは出かかっていた。ただ上手く表現出来ないだけである。そこでルイズはワルドに質問をしてみせた。

「ねえワルド。あなた、私と私の使い魔だったらどっちを取る?」

それは正しく女の殺し文句である。多少の動揺も見せれば動く余地もあるというものである。だがワルドは動揺なぞおくびにも出さずさらりと言ってのけた。

「何を言っているんだい、ルイズ。僕にとっては君の方が大切だよ。使い魔は二の次さ。まあ尤も、君に相応しいのならば僕は両方大切にするつもりさ。」
「両方大切に、なんて幻想よ。私はどっちか一つに決めてほしいの。」

その時ルイズは自分の瞼が徐々に重くなりだしているのに気付いた。昨晩きちんと眠っていなかったからだろうか?目の前にいるワルドは尚も優しい調子でルイズに質問を返す。

「ルイズ、一体どうしたっていうんだい?さっきから少し考えれば分かりそうな事を質問して……?」
「どうしてかですって?それこそ考えれば分かる事よ。
私、昨日から不思議に思っていたの。あなたはどうしてそんなに私との結婚を急ぐんだろう、どうして私の結婚の話なのに私の有りもしない力の事や使い魔の事ばかり気にかけているんだろうって。答えは簡単極まりない事だったわ。」

その時ルイズの意識が一瞬遠退きかける。危うくテーブルに勢い良く突っ伏してしまうところだった。
そしてルイズには見えなかったのだが、ワルドはその時懐からすっと杖を抜いていた。ルイズは眠気に負けじと少し大きめの声を出して続ける。

「あなたが愛したいのはこの私じゃなくて、あなた自身がでっち上げた私の中に眠っているっていう有りもしない力と、この世に二匹といない私の使い魔じゃないの!そんな目的で私と結婚するだなんて滑稽もいいところだわ。死んでもお断りね!」
「ほう、そうか……だがもう抵抗出来る気力も残っていまい。」

威勢良く啖呵を切ったまでは良かったが、その先は最早長文を言う力はルイズに残っていなかった。ワルドは得意そうに立ち上がりルイズの側に近寄った。その表情はどこまでも冷めていて鋭い。
「ワルド、あなた……やっぱり、ワインに薬を……」
「ルイズ。本当はもっとスマートにやりたかったんだが、君の使い魔が尽くこちらの計画を乱してくれてね。少々手荒だが手段を選んでいては任務の遂行は出来ないのだよ。
まあ安心したまえ。今ここで君の命を取っても、我々の陣営には何の益も齎さない事はこの僕でも分かる事だ。
君はクロムウェル閣下の持つアンドバリの指輪によって新たな人生の出発を迎える事になるだろう。ハルケギニアを一つとし、聖地をエルフの手より奪回する我ら『レコン・キスタ』の旗頭としてね。」
「嫌よ……そんな、の……」

ルイズは薬の力に対して強固な意志で抗おうとするが、もう限界が近くなっていた。頭上では楽しげなワルドの声が未だに響いていた。

「そうは言うがね、事は既に動いているんだよ。僕は眠る君と共に君が手に入れたという手紙を携え本陣に戻る。ウェールズの首もその時の手土産にすることとしよう。」

駄目だ。もう瞼が言うことをきかない。蚊の鳴く様な小さい声でルイズは呻いた。

「た……助けて、ラティアス……」

それきりルイズは深い眠りの底へ落ちていった。その様子を見ながらワルドはこれから起きる自分の出世劇を夢見ていた。
上手くいけば副将の地位だって得られるかもしれない。いや、もっと高い地位すらも……
とにかく今は任務を遂行する事に専念せねば。目を開けずに軽い寝息を立てるルイズに向かって、ワルドは冷たく呟いた。

「ルイズ、君はもう少し聞き分けの良い子だと思っていたんだがね。僕としては非常に残念でならない。」

それから力なく首を振ってルイズを抱き上げようとしたその時、ワルドの後ろにあった扉が爆音と共に勢い良く吹き飛んだ。ワルドの身はそのまま宙を舞い、隣室との壁に大穴をあけて漸く止まった。
煙で視界がよく利かない中、ワルドは扉があった辺りに目を凝らす。すると煙の中から杖を構えた五つの姿と剣を構えた一つの姿が揺らめきながら現れた。

「残念だが手土産は元の持ち主から離れる事を拒むそうだ。」
「私の好敵手の一人をダシにした事、後悔してもらうわよ。」
「裏切り者。」
「ル、ルイズは僕達の、な、仲間だ!子爵!ルイズを、か、返してもらうぞ!」
「そ、そうよ!」
「よくも御主人様の思いを利用して踏み躙りましたね……子爵様、黙ってあの世に行ってもらいます。私達の手で!」
それは、ウェールズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシー、そして人間態になったラティアスの姿であった。部屋の隅に転がった未だに眠っているルイズを横目で見やりつつワルドは質問した。

「何故ここが分かった?」
「僕の使い魔がニューカッスルまでの道を拓いてくれた。でもルイズは直前に動いたらしく、ここに着けたはいいが彼女のいる部屋が分からなかった。途中でお会いした皇太子殿下も何処へ行ったか分からないって仰ったからね。」
「その時私の左目があなたとこの部屋を映し出したんです。最初は殿下と一緒に中に入ろうとしましたけど、そうしなくて本当に正解でした。入っていれば最後まであなたを信用していたでしょうね。」

ギーシュとラティアスが澄ました様に答える。ワルドは次に勝算を見込みながら訊いた。

「どの辺りから聞いていた?」
「昨日の事はもう決心が着いたかな、からです。」
「成程。全てお見通しというわけか。」

ワルドは自らの勝利をはたき出した勝算から確信した。人数の上では相手の方が勝っているが、質に関して言えば大きく生徒側の一部に対して偏りが見られる。更にあの風魔法を使えば何という事は無いだろう。

「宜しい。ならば最早語るまい。風魔法最強の呪文を持ってお相手しよう。」

ワルドは短めに、小さい声で呪文を唱えて完成させる。するとワルドの体がいきなり四つに分身する。そして本体と合わせて五体となったワルドの一人は、ルイズを抱えて隣の部屋から別の廊下へ逃走して行った。
あまりの速さにラティアス達一同は呆気に取られ、気付き追いかけようとした時には既に四人のワルドが前に立ち塞がっていた。ワルドは完全に相手の事を見下したような声で慇懃に続ける。

「風のユビキタス。君達を迎え撃つには最高の魔法だ。それにこの状況。はっきり言って僕は君達に対して全力を出すほど愚鈍でもなければ、手段を選んでいられるほど紳士でもいられないのでね!」

すると分身の一つが、素早く『ウィンド・ブレイク』の魔法を完成させて放つ。狙われたのはモンモランシー。

「モンモランシー!!」

ギーシュは咄嗟に彼女の前に身を投げ出して守ろうとしたが、如何せんスクウェアクラスのそれに二人の細身が耐え切れるはずも無く、二人は背中の方にあった扉を吹っ飛ばして、その先にある家財道具の山に体の彼方此方を嫌というほどぶつける。

「ギーシュ!モンモランシー!」

キュルケ達が駆け寄ると、どうやら二人ともショックで気絶したのか、息こそあるがピクリとも動かない。そんな彼女等の様子を見たワルドは厳しい口調で言う。

「幾ら弱い存在でも頭数は潰しておいた方が有利になる。感謝するが良い。戦いを知る者からの戦力外通告だ。さあどうした君達!これで一対一だ。かかって来ないか!」

と、その時。遍在の内一体が一瞬にして掻き消えた。ワルドの顔からはそれと同じ早さで余裕が消えていく。そして一体のワルドが消えたそこには輝くデルフリンガーを構えたラティアスの姿があった。
突然出来たての様に光り輝きだしたデルフリンガーを見てラティアスも驚く。何がどうなったのか全く分かっていない様子だった。
「デルフ。あなた一体……?」
「いやぁ、お前さんがガンダールヴだって分かった時に何か忘れてると思ってたんだが、今更になって思い出すとは俺っちもお前さんの事どうこう言えねえな。
まあ六千年も前の話しだし、ずっとつまらねえ連中につき合わされまくってりゃ、あんな錆び錆びの姿に変わりたくもなるわなあ。本当懐かしいねえ。」

だが話の趣旨に行かない内に、ワルドが再び呪文を唱え始める。今度は『エア・ストーム』を放つつもりらしい。が、完成する直前にデルフが叫んだ。

「相棒!俺っちを構えろ!」

言われるがままにラティアスはデルフリンガーを正面に構える。するとワルドの杖先から起きた猛烈な竜巻は見る見る内にデルフリンガーの刀身へと吸い込まれて行った。

「凄い!デルフ凄い!」
「嬉しいねぇ、そう言ってくれると。まあいい。こっからはちゃちな魔法は全部俺っちが吸い込んでやるからよ!」

デルフの変わりようと性能にワルドも多少なりと驚いたが、直ぐに取り澄ました様に話し出した。

「ほう。只の錆びた鉄塊では無いというわけか。面白い。だが今自分の置かれている状況を冷静に察するんだね。
何の役にも立たない手負いが二人、実力者の一人はその二人の治療に追われ、残りは未だに一対一を余儀なくされている。そしてルイズは手紙と共に最後の僕の手で貴族派の本陣へ向かった。さあ、どう動く?!」

ワルドはあくまで余裕の態度を崩そうとしない。ラティアスは考えた。
今直ぐにでも主人の元へ飛んで行って救出に向かいたいが、そうなるとこの場が若干とは言え手薄になってしまう。どう動くべきか……?
その時、キュルケがラティアスにだけ聞こえるようそっと耳打ちをした。

「ラティアス、ここは私達に任せて。あんたは先にルイズの元に行きなさい。」
「キュルケさん!でもそうしたらここは……」
「遍在は術者の意識が切れれば全て消える事から考えて、ラ・ヴァリエール嬢をここから連れて行ったのはほぼ間違いなく彼、子爵の本体だろう。
我々はその時まで持ち堪えておくから君は急いで外に逃亡した子爵を追うんだ!君が子爵を何らかの形にせよ討った時、ここにいる遍在たちは消えていくだろう。」

迷うラティアスの背をウェールズの言が押す。

「早く行きなさい!あなたは誰の使い魔なの?!ルイズでしょ!危ない目に会おうとしているルイズをあなたが真っ先に助けに行かなくて、一体誰がルイズを助けるのよ?!」
キュルケのそれが決定的な一言になった。ラティアスは小さく頷いた後、竜形態に変化し、強力な風を起こしながら部屋から飛び出していく。
三体の遍在がそれを撃ち落とそうとすかさず『エア・ストーム』を唱えたが、後ろから『ファイヤーボール』と『ウィンド・ブレイク』を喰らわされ不発に終わった。

「あなた達の相手は私達よ。間違えないでね。」
「例え遍在であっても全力でお相手しよう。それが貴族なりの流儀という物だ。」

キュルケとウェールズは遍在のワルドをしっかと睨みつけ杖を向ける。その様を見て一人のワルドが哄笑した。

「それが君達の結論か!いいだろう、命を賭けてかかって来い!」


夢幻竜は以上です。続いて5分後からLFO投下します。
190代理:2009/01/30(金) 19:17:11 ID:0Ub913QG
自分の独断で名前欄にタイトルとカウント付けたら数え間違えて失敗しました orz
LFOの方は7:30に代理投下します
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 19:31:20 ID:4tZH7ofM
代理乙。
さるさんを考えると00からの方がいいかもしれない。
192代理  Louise and Little Familiar’s Order-09 01/05:2009/01/30(金) 19:34:37 ID:0Ub913QG
ではLFOの方行きます。

ルイズが食堂に着いた頃、内部はすっかり怒号と野次の飛び交う凄惨な場と化していた。
確かに内部の様子は酷いものだった。
美しい皿などはほぼ全てが床の上で粉々になっており、テーブルクロスは喰い散らかされた食べ物のせいで染みの無い所を探す方が難しいほどになっていたし、スープ類は全て引っくり返され、歩けば軽く水音が立つほどにもなっていた。
そしてその中心にはミーとヒメグマがいる。その周りをレイナール等数名の男子生徒が、逃げる事が出来ないようぐるっと取り囲んでいた。全員怒り心頭の表情をしている。
ルイズは大きく息を吸い全員に向かって叫んだ。

「私の使い魔を返しなさい!」

瞬間、一切の声が止んで静かになったものの、直ぐに元の雰囲気をぶり返す。
レイナールは人混みの中からルイズの姿を見つけるや否やつかつかと歩み寄り、かなり冷淡な声で話しかけた。

「返しなさいなんて誰に向かって言っているつもりだ?君はまた随分と偉そうな物の頼み方をするんだね。この惨状を見たまえ。君の使い魔のペットがやらかしたんだぞ。
そのおかげで僕らは今晩夕飯抜きというひもじい思いをせざるを得なくなった。まあ容姿を気にする御婦人方にはちょっとした助け舟かもしれないが……
ともかくだ!君が時たま言うように使い魔の失態は主の失態でもある。当然の事だが君は彼女の主として然るべき罰則を先生方から受けるべきだと僕らは思っている。
僕らも寄って集って君や彼女や彼女の獣を私刑にするなんて事は公正でない点と紳士的でないという点から考えてしたくないからね。ん?ああ、お噂をすれば!」

レイナールが感嘆の声を上げた先から、オールド・オスマンとコルベール先生を中心にした何人かの先生方が食堂に上のロフトを通してやって来た。
いつまでもざわめきが治まらない事にオスマン学院長は嘆息し、魔法で声を拡大して叫ぶ。
あまりに大きいので天井の埃がパラパラと落ちて来るほどだった。

「静まりなさいっ!!貴族の子女ともあろう者が大声で騒ぎ立てるなぞ恥ずかしいとは思わんのか!諸君等の食事の代わりはもう既に手配しておる!全員即刻寮塔に戻るように!
ミス・ヴァリエールとその使い魔の処遇に関してはわし達教員がこの場の合議の上で決める!諸君等生徒の出る幕ではない!
この一件に関してはこれまでとする。異議のある者はこの場に残り、無い者は踵を返して寮で食事を取るべし!分かったかな?!」

学院長の言葉を受けて何人かはブーブー言いながら、それ以外の大半の者は素直に寮塔へと向かった。後に残されたのは当事者ルイズとミーとヒメグマ、オスマンと諸先生方、そしてキュルケ、ギーシュ、タバサであった。

Louse & Little amiliar's Order「Midnight duel with unbreakable pride」
ルイズ以外に残った三人の生徒を見てオスマンは怪訝そうに訊ねた。

「君たち三人は何か意見があるのかね?」

すると先ずキュルケが口を開いた。

「はい。今回の件で多くの物が損壊いたしました。学院長は全ての弁償費用をヴァリエールに御負担させるおつもりでしょうか?」
「うむ。彼女の家格や今回の出来事の度合いを考えると、残念じゃがそういう事になるかのう。ミセス・シュヴルーズはチャンスを与えては如何かと言ったが、ミスタ・ギトーを始め多くの先生方が首を縦には振らなんだじゃった。」

ルイズは心にとてつもなく重い何かがズシンと乗るような気持ちに襲われた。一体幾らほどかかるのだろう。少なくとも今日の昼間自分が使った額より多いのは確実である。
こんな事情があったからお金を送って欲しいなんて手紙に書いたら親は何と言う顔をするだろうか。賭けても良いが褒めも喜びもしないだろう。
その時、俯くルイズを横目にキュルケがとんでもない事を言った。

「そこで、学院長先生に折り入って御相談があるのですが……私とヴァリエールで費用を折半させていただけませんか?」

突然の事に学院長は目を丸くし、ルイズも驚きのあまり意識が数秒吹っ飛んでしまった。
やがてキュルケが何を言ったのか飲み込んだルイズは烈火の如く吼えた。

「あんた馬鹿じゃないの?!やめてよね!どんなに窮していようが、あんたの所からは豆の一粒だって恵んで貰いたくないんだから!恩を売るつもり?貸しを作るつもり?そんなの絶対許さないんだから!」
「ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストーの提案を許可するかしないかについての権限は君にではなく我々にある。少し静かにして判断が出るのを待ってはくれんかの?」
193名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 19:36:52 ID:uW8OE0MV
ここのさるさんってどのくらいで出るんだっけ?
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 19:44:20 ID:ICDX4RCO
ここのさるさんは甘め
アニメ板だとテンプレを貼るのすら辛い
気になるのならbe垢がオススメ
オスマンの言を受けてルイズは小さく「はい。」とだけ言って押し黙った。すると今度はギーシュがさっと立ち上がった。彼の希望もまた驚く物であった。

「学院長先生!僕からもお願いがあります!惨状を呈したこの食堂、ミス・ヴァリエールとその使い魔が掃除をしなくてはならないという事になっているのであれば、是非この自分にもさせていただけないでしょうか?」
「ギーシュ!あんたまで何寝惚けた事言ってるのよ!これは私と使い魔の問題なの!手出しをしないで!」
「ミス・ヴァリエール!その提案を決める権限も我々にある!君も、もう子供ではないと自分で思っているのであれば我々に何度も同じ事は言わさずに辛抱強く静かにしていたまえ!」

ミスター・ギトーが鋭い口調でルイズを黙らせる。再びルイズは肩を落として先生方の言葉を聞く側に回った。
静かになったのを見計らい、学院長は最後に残ったタバサに質問をする。

「では最後はミス・タバサ。君は他の二人の様に何かわしに頼む事があるのかな?」

その質問にタバサは眉一つ動かす事無く無表情のまま簡潔に一言で答えた。

「協力。」
「協力……とは、君もミス・ヴァリエールの後片付けに協力するということかね?」

タバサは浅く頷くだけで他に何も話そうとはしない。しかし学院長はそれで十分とばかりに深く二度三度頷き、直ぐに先生達と話し合いだした。
話し合いが行なわれている間、ルイズはあれこれと色々考えていた。キュルケを始めとする三人とは入学してからというもの親しくしたなんて事は無い。寧ろどちらかと言えば仲が悪い方だった。
キュルケは言わずもがな、ギーシュにしてもさほどしょっちゅうではないがゼロのルイズと言われて笑われていた。タバサに至っては話した事どころか面識さえもあったかどうだか怪しい位である。
そんな三人がこうも綺麗に揃ってルイズを庇おうとしているのだ。何か得体の知れない感情が煙の様に立ち昇るのをルイズは感じた。
ミーはと言えば先程から終始目を潤ませながら小刻みに震えている。一方、ヒメグマは少しも悪びれる事無く興が冷めたと言わんばかりにルイズを睨みつけていた。負けじとルイズも悪魔が風邪を引きそうなほどに冷めた視線をくれてやる。
その時、オスマン氏の咳払いが食堂中に響き渡る。彼はそれから一呼吸間を置いて話し出した。

「では、ミス・ヴァリエール。君の処分を発表する。先ず損壊した食器等の弁償費用じゃが君とミス・ツェルプストー、7:3の割合で請け負うという事になった。
尚、先程確認した所、弁償の額面はしめて3160エキューであると分かった。間違えること無く負担しあうのじゃぞ。
それからミスタ・グラモンとミス・タバサ。君達についてはミス・ヴァリエールとその使い魔が行う清掃への協力を認めるとしよう。その点はここにおる各教師が評価しておる。」

ギーシュは俯いていたが、その顔には明らかに「やった!」という表情が浮かんでいた。ルイズの使い魔の手伝いが出来、おまけに先生方から自己犠牲的な精神を褒められたので、さぞや御満悦なのだろう。
ルイズにとっては見ていて胸元の気分が悪くなる様な物だった。オスマン氏は更に続ける。

「ミス・ヴァリエール無碍に協力し合う事を否定してはならんぞい。か弱き力も十重二十重になれば様々な困難に打ち勝つ素晴らしく、そして無二の力となる可能性を秘めておる。
君は困難な状況にいる君を助けんと参じた三人の思いに感謝をせねばいかんぞ。それを忘れれば君は今後この学院で得る物は無いじゃろう。何一つとしてじゃ。
よいかな?何時か三人の誰かが困難や絶望の淵を彷徨うという時、君は誰よりも率先して彼らを擁し救い出すのじゃぞ。……わしからは以上じゃ。さあ、早く清掃作業に取りかかりなさい。」
食器の欠片を集めてから床を拭き、シーツをメイドと一緒に洗い、テーブルを並べなおして、食べ物の滓を捨てる。作業を始めたのが七時頃だったにも拘らず、そこまで済んだ時には既に時計は午前三時を差そうとしていた。
キュルケは時々椅子に寄りかかってうつらうつらとし、ギーシュに至っては欠伸を連発しながら作業をしている。ただ、タバサは黙々と欠伸も居眠りもするわけでも無く作業に当たっている。
そしてルイズは重くなった瞼を必死に開けながら重いテーブルと格闘していた。ふと目を動かすと、椅子に座りテーブルに突っ伏しているミーが視界に入った。
欠食と疲れから苛々が最高潮に達していたルイズはそこに近付くと、ミーの服の襟を持ち、ガクガクと乱暴に揺さぶった。

「ルイズ!!」

直ぐにそれを見咎めたキュルケが声を荒げてルイズを呼ぶが、そんな事はもうルイズにとっては知った事ではない。隣の椅子で鼻提灯まで出して寝ていたヒメグマも箒の柄で叩き起こした。

「人が眠たいの我慢して片付けてるのにあんたは無視を決め込んで夢の中って訳?い、いい気なものねぇ。
この際だから訊くわ。あんた、私を困らせる事がそんなに楽しい?私を惨めにさせる事が嬉しい?この場でちゃんと答えて。じゃないと私、あんたへの罰に何するか分からないから。」
「御主人様。そんな事はありません!あの……寝ちゃってごめんなさい。また頑張りま……」
「言い訳する気?呆れたものね。見なさい!あんたが眠りこけている間に、もう作業は殆ど終わりかけているのよ!」
「そんな……ミーは、ミーは御主人様の役に立ちたくて……」
「へぇ、そう。よくもまあそういけしゃあしゃあと言えるわね。本当にそう思っているの。それにしてもやってる事が随分とちぐはぐしてるじゃない。
それとも何?あんたは私に掃除や謝罪の練習をさせたくてその子熊を暴れさせたって言うの?」

ルイズの声が次第にぞっとする雰囲気を増していった。まるで黒板を尖った爪で引っかくような調子である。

「何が御主人様の為になるか、よおく考えるべきよねぇ?まったく、ここに鞭が無いのが残念だわ。あれば子熊諸共百叩きはしていたのに。」

ミーは完全に震え上がった。側ではヒメグマが箒で叩き起こされた事に文句を言っている。しかし、ルイズは一瞥しただけで完全に黙らせた。勿論ありったけの恐ろしさ込みで。

「黙りなさい。あんたが一番働かなきゃならないのに呑気に寝てるんじゃないわよ。煮て食べるわよ?」

その時、ルイズは後ろから肩を掴まれ無理矢理に振り向かされる。

「何よ!まだ話は終わって……」

パシッ!!乾いた音が食堂に響き渡り全ての動きを静止へと導いた。ルイズは赤くなった右頬を手で押さえながら前にいるキュルケをキッと睨みつけた。
しかし当の彼女はそんな視線は何処吹く風という様な涼しい表情をしている。耐え切れずにルイズが叫んだ。
「いきなり何するのよっ!」

それでもキュルケは表情一つ崩さない。あくまでも涼しい顔を保っている。

「今まで私に出来る範囲でやんわりと対処してきたけど、正直言ってあなたが使い魔にする事、もう限界だわ。その子にとっても良くないし私達にとっても良くないわ。
まあ、幸い片付けはあなた一人でもあと少しで済みそうだし……そこでよ。」

ルイズに向かって一本の杖がヒュッと向けられる。という事はつまり。

「片づけが終わったら本塔前の中庭に来なさい。そこであなたの使い魔を賭けて決闘しようじゃないの。
あなたが勝てば私は金輪際あなたの使い魔に対して手出しはしないわ。その代わり、もし私が勝ったらあなたから暫く使い魔を引っぺがす事になるからそのつもりで。」

しかしルイズは臆する事も無くはっきりと言い返した。

「いいわ。乗ってあげようじゃないの、その決闘。誰があんたなんかに渡すものですか!」
「ただの決闘じゃないわ。魔法で決闘をするのよ。あなたそれでも良いの?」

キュルケは小馬鹿にしたように言い放つ。魔法、という言葉にルイズはたじろいだが、相手が相手だけにそう簡単に引き下がる訳にもいかない。

「あんたからふっかけられた戦いを断ったらご先祖様に顔向け出来ないわ。受けて立とうじゃないの!」


「まったく、やってらんないねぇ。あのハゲ、物理衝撃が弱点だなんてヌかしてたのに何だい、この壁の厚さは?」

双月の光は本塔の壁を照らし、またそこに立っている一つの人影を映し出していた。その人影こそ土くれの二つ名で知られている怪盗フーケであった。
王室付きの衛士達に対し、読めない行動パターンを駆使して城下にいる貴族達から鮮やかに値打ちのありそうなお宝を奪取、憎たらしく挑発する様なメッセージを残して華麗にオサラバする。
しかも只の怪盗なのではない。多くの人々に因る推定ではあるがトライアングルクラスの実力を持つメイジの怪盗なのだ。
そんなフーケが今宵狙うのは魔法学院本塔五階の宝物庫に収められている『鉄拳の箱』。
正直言って何が治められているのか全く想像出来ないが、貴族が仮にも宝物と呼ぶ代物であるならばフーケの攻略対象にならない訳が無い。
しかし、とある筋から有力な情報を仕入れてから、いざブツを手に入れようとすると思いの外デカい障害にぶち当たった。それが固定化の呪文のかかった塔の壁なのである。
ざっと脚から来る感触を頼りに調べても厚さはかなりあるし、固定化の魔法もかなり強力な術者が何重にもかけたらしく、猪口才な魔法ではどうにもなりそうに無い。

「固定化以外は魔法はかかって無さそうだけど、私のゴーレムを使ったって怪しいもんだね。あのジジイもあのジジイだよ。『鉄拳の箱』以外は碌な物が無いってのに何もここまでする事は無いんじゃないのかねぇ?けどここで『鉄拳の箱』を諦めるわけにはいかないよ。」

それからフーケは腕組みをして、どんな突破口があるのか考えようとする。しかし、そうしようとした刹那、誰かが本塔から出て来るのに気づく。そこで近くにあった茂みに隠れ、暫く様子を見ることにした。


「やっと来たわね。じゃあ始めましょうか?先攻はあなたで、どんな魔法を使っても良いわ。それぐらいのハンデはあげる。」
「何時でも良いわよ。絶対にやっつけてやるわ。」
食堂内の片付けを全て終えたルイズは憎々しげにキュルケに向かって杖を向けた。キュルケの顔色はさっと変わり、至って真顔で返事をする。

「言っておくけど私の炎は強力よ。対象をただ燃やすだけじゃなくて燃やし尽くすの。でも私はその人にとっての一番は取らないつもりだから……」
「御託並べる暇あるんならさっさと攻撃すれば?それがあなたの決闘におけるモットーなんでしょ?」
「……言ってくれるわね。警告は一応したわよ?」
「そっちこそ。手元が狂っても知らないから。」

殺気立つ二人を交互に見ながら、キュルケと一緒に外に出て来たギーシュははらはらしていた。一方タバサは結果がどうなろうと意に介するつもりは無いとばかりに読書に耽っている。
そして……勝負は一気に始まった。ルイズは短くルーンを唱え試しにファイヤーボールを撃ってみる。
しかし杖の先から火の玉が出る事は無く、代わりに本塔の壁が学院中の人間を起こしかねない勢いで爆発した。煙が晴れると壁は五階辺りの所に大穴を晒した状態でそこにあった。
間一髪、レビテーションで爆発をやり過ごしたキュルケは、ルイズに向かいながらファイヤーボールを繰り出す。
ルイズは次に、水の魔法を出そうとして呪文を唱えつつ杖を振るが、起きるのは爆発のみでまともにメロンほどもある火球を消す事も出来ない。

「きゃあ!!」

ファイヤーボールはルイズからそれ程離れていない所に着弾し、ルイズの体を熱風で包む。加えてその勢いはルイズをその場からコロコロと動かすほどに強かった。
様無く小石ですっ転び仰向けになったと思った瞬間、ルイズは喉元に違和感を覚える。ゆっくりと目を開けると、そこには杖を突きつけるキュルケが目と鼻の先にいた。
その場にいた誰にとっても、あまりにも呆気なく早い幕切れだった。
かなりゆっくりと自分は負けたと言う感覚がルイズの心を襲う。次いでそこはかとなく悔しくなってきた。次第にルイズの視界は涙で潤み、まともに見えなくなる。
自分の杖は少し離れた所に転がっているし、取ろうにも手首はキュルケによって踏みつけられている。泣きじゃくり始めるルイズを冷たく見ながらキュルケは同じ調子で言い放った。

「様が無いわね、ヴァリエール。ま、いいわ。命を取るつもりなんて無いし。私の勝ちで良いわね?」

約束は約束だから守らなければならない。泣こうがどうしようが今更状況が好転する訳ではないのだ。考えれば全部ルイズの身から出た錆である。
ミーに今まで辛く当たっていたのも、周囲の人間とぎすぎすした関係を続けていたのも、冷静になって状況を察しようとしなかったのも、何もかも他人に聞けばこう言うだろう。「同情の余地は無い」と。
そう思うと余計に悲しくなってきた。少しして、キュルケは杖を懐に収め話を続ける。

「分かったんなら立ちなさい。そうね、どれぐらい離すかはまだ決めてないけど、せめてあなたがもう少し使い魔に対する接し方に気をつけるようになった頃に……」
「な!なんだありゃぁっ!」

キュルケの話はギーシュによって遮られる。何かと思って振り向いたキュルケは全く同じ台詞を口にした。

「な、なにあれっ?!!」

何故驚いたのか。そこには身の丈30メイルはありそうな巨大土ゴーレムが、そこにいる全ての者を威圧する様に立っていたからだ。

「逃げるわよっ!!」
「言われなくてもっ!」

キュルケが叫ぶとルイズがそれに反応した。脇に逃げ遅れかけたミーをしっかと抱えながら。

以上で投下終了します。
まだ入院中に書いた話のストック自体はあるのですが、パソをしょっちゅう使わせてもらってはいないので後々にここで投下させていただきます。
長い場合はどちらか一方ずつでも構いません。
それでは長くかかりましたが、本日はコレまでにします。
それではまたいつかお会いしましょう。
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:03:00 ID:HfYG8IV3
乙。真性のクズだなこのルイズ。
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:09:32 ID:0Ub913QG
>>191
忠告に従っておくべきだったよ orz

>>198
代理の代理感謝

>>199
前々回からのキュルケの良かれと思ってしたフォローがかえってルイズの逆鱗に触れちゃった感じだと思う
(代々の敵の家系で尚且つ最近は使い魔の扱いで妙に説教臭く、しかもそれが自分でも正しいと思うから尚更)
それにしてもカッとなりやすい性格はどうにかならんかと思うけど
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:16:38 ID:/DOAoU5F
GJ
今まで誰も描かなかったルイズを書いているこの作品は
最も注目しているものの一つだ
困難なストーリーかもしれないけど、無理せず頑張って欲しい

俺も負けてられないな
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:32:45 ID:tsIpCWBT
cod4のプライス大尉とかOKかなぁ。
ソープがザカエフに引導を渡したのを見届けてから
死を覚悟して目を閉じて、騒がしいので目を開けたらルイズさんでしたよ
みたいな。
203ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:40:13 ID:V0THJROB
他に投下が無ければ20:50から投下を開始します
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:46:37 ID:/EEUQsOl
支援
205ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:51:01 ID:V0THJROB
ゼロの花嫁14話「ケンカ」



ルイズも峠を越したという事で、キュルケは自室へと戻って行った。
ドアを閉め、椅子に腰掛けると大きく息を吐く。
深夜で皆寝静まっているせいか、普段は気にもならないような風の音が煩わしい。
窓の建て付けが悪いという訳ではない。
許容範囲内であるはずの風が窓を揺らすか細い音が、気に障って仕方が無いのだ。
イライラしながらカーテンを閉め、音が少しでも聞こえないようにしてみる。
音は止まない。
風が強くなってきている。
カタカタ、から、ダンダンと打ち付けるような音に変わる。
キュルケはテーブルの上にある壷を手に取り、怒りに任せて窓へと投げつけようと立ち上がる。
途端に音が止んだ。
訝しげに耳を澄ませると、再び小さな、カタカタという音が聞こえてくる。
壷を投げつけるなどと、一体自分は何をしているのか。
そんな自問と共に椅子に座り、深呼吸を一つ。

ようやく気付けた。この音は、窓の音何かではない。私が震えている音だ。

そう自覚した瞬間、全身が痙攣でも始めたかのようにガクガクと震え出す。
まともに立つ事も出来ない。転倒を避ける為、必死に椅子の背もたれにしがみつく。
しかし体重の預け方を誤ってしまい、椅子ごと大きく引っくり返ってしまう。
木の床の冷たさを、むき出しの腿と腕に感じながら、丸まって震えが収まるのを待つ。

『恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い…………』

目を閉じる事も出来ない。
そんな真似をすれば、脳裏に焼きついたあの風景、視界一杯に広がった死の壁を思い出してしまう。
たった一つ判断を誤っただけだ。
それだけで、決して逃れえぬ死がキュルケに襲い掛かってきた。
あの壁は、どれだけ魔法の訓練を重ねようと、体を限界まで鍛えぬこうと、人の身で回避する事は適わぬ。

私は死など恐れてはいない。
そのはずだ。だからどんな危険な事に顔を突っ込んでも平然としていられたのだ。
だが、今回の死は違った。
そもそも私は本気で死を意識した事などあったのだろうか。
上級生に氷の矢を打ち込まれた時は、怪我はすると思っていたけど、本当は死ぬ何て想像だにしていなかったのではなかろうか。
だから初めて死を他人から強要された今、こうして無様に打ち震えているのではないだろうか。
貴族の誇り、平民にはない覚悟を、表には出していないが自分も持っているつもりになっていた。
何と哀れな事か。
本当の死も知らず、自分は命を賭けて戦えるつもりになっていたとは。

いや、違う。おかしい、これはおかしすぎる。
戦場には数多の兵が居る。
彼等は皆こんなとてつもない恐怖と戦っているのだろうか。
ありえない。こんな恐怖に打ち勝つなど、そんな人間が居るなんて信じられない。
とっくに危機は脱しているにも関わらず、私はこんなにも震えてしまっているというのに。
私が見落としている恐怖の元が、何処かにあるはずだ。
206ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:51:34 ID:V0THJROB
それを見つけ出して取り除かなければ、私は二度と戦えなくなってしまう。

しかし、必死に考えるも原因は見つけられなかった。



どれだけ床で震えていただろう。
部屋をノックする音が聞こえてきた。
マズイ、こんな所を誰かに見られる訳にはいかない。
時間が経っていたせいか、無理をすれば何とか普段どおりの顔も出来そうだ。
みっともなく乱れ跳ねる髪を手櫛で整えドアを開く。
薄暗い照明に照らされ、顔の半ばが影に隠れてしまっている人物がちょこんとドアの前に佇んでいる。
「……こんばんわ」
挨拶をしてくるなんて珍しい。そんな失礼な感想を友人である来客、タバサに持ってしまう。
「どうしたの?」
良し、声も震えていない。これなら何とか誤魔化せる。
「少し、いい?」
良く無い。と即答したかったが、断る理由もすぐに思いつかず頷いてしまった。
一応引っくり返した椅子も元通りにしておいた。
タバサは本を片手にベッドの側まで行くと、ぽふっとベッドに腰掛ける。
用も無く部屋まで来る何て事、タバサにはありえない。
「何かあったの?」
そんな風に話を振ってやる。何時もならこれで用件を切り出してくるはず。
しかしタバサは何も答えず、じっとこちらを見つめるだけだ。
「……タバサ?」
再度促し、漸く口を開いたタバサは、信じられない言葉を口にした。

「恐いの?」

息が止まる。
「……な、何言ってるのよ……」
幾ら吸っても、呼吸が出来ない。
「震えが止まらないの?」
何で、貴女がそれを知っているのよ。
「ふ、震えて、何て、無いわよ。何言って、るのタバサ、ってば」
タバサは、すっと立ち上がって、
「もう恐くない」
私をぎゅっと抱き締めてくれた。



あー、もう、どうでもいいわよ。
こんな大泣きしたの久しぶりだし、しかもそれを他人に見られるなんて初めてだし。
はいー、私は怯えてましたー、超が付くチキンですー、貴族だのなんだの名乗る資格無いですー。
「……何でバレたのよ」
少し恨みがましい声になってしまったかもしれない。
「何となく」
何となくで人の一生の不覚を見抜かないで欲しい。
この際だ、考えてもわからなかった事タバサに聞いてみよう。
何でかタバサはこういうの恐くないような気がするし。
207ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:52:04 ID:V0THJROB
「ねえ、こんなに恐いなんておかしくない? ほら、戦争行って殺し合いしてる人なんてたくさん居るじゃない。なのにこんな恐かったら、みんな逃げ出しちゃうじゃない」
「大半は誤魔化してる。特にメイジは直接武器を交える事も少ないから」
む、言われてみれば確かに。自分が死ぬと思わなければ結構な無茶も出来るのは自身で証明済みだ。
「でも、誤魔化すったって何時までもそんなの通用しないでしょ?」
タバサは少しもの悲しそうな顔をした。
「軍には誤魔化す為のやり方がたくさんある。でも、それだけじゃ通用しない部分もあるから、逃げる兵も常時出てくる」
なるほど、それを防ぐ為に逃亡兵は極端なぐらい不名誉な烙印を押されるって訳ね、納得。
「じゃあその誤魔化し方を覚えればいいのね? 何かこう簡単に出来るようなのってない?」
「教えたくない」
おい。
「誤魔化してしまったら、自分の力を発揮出来なくなる。だから、覚悟を決めた人以外はそもそも戦場に出るべきじゃない」
タバサは私を抱き締める力を強くする。
「どんなに誤魔化しても、タイミング悪く戦場で震え出したら助からない。だからキュルケは戦場に出ちゃ駄目」
心配してくれるのは嬉しいわ。でも、引くに引けない時はどうすればいいのかしら。
「死ぬ事を受け入れられなければ、そういう結果も有り得ると覚悟を決められなければ、どんなに誤魔化しても結局は一緒」
痛い程に抱きしめる腕の強さが、きっとタバサが私を心配してくれてる強さなんだと思う。
でも、その暖かさ以上に、恐ろしい事を今タバサは言った。
「……じゃあ、戦場に出るには、この恐いのを受け入れなきゃ駄目って事? 勇敢なメイジはみんなこんなに恐いのを我慢して戦ってるって事?」
「そう」
即答が耳に痛い。
私は、どうしても確認しなければならない事を、タバサに訊ねた。
「……ルイズも?」
「多分」
全力でタバサを突き飛ばす。
もう何が何だかわからない。とにかく、今はタバサの話なんて聞きたくない。
「帰ってよ!」
「…………わかった」
タバサがこんなにも憎らしいと思えた事はない。
理由はわからないが、どうしてもタバサを許せない。
部屋を後にするタバサを見て、せいせいしたとしか思えない。
苛立ちに任せて机の上の小物を全部手で払い落とす。

「何でよ! 何でルイズはこんなに恐いの平気なのよっ!? 嘘でしょ! 私は信じないんだから! こんなに……こんなに差があるなんて絶対認めないわよ!」

ヤケになりながら、もう一度あの風景を思い出してみる。
何度も何度も思い出してみる。
気分が悪すぎて吐き気をもよおしてきた、頭がガンガンする。何も見えない。
見たくない、二度とあんな思いしたくない、近づくのも嫌、ゴーレム何てこの世から消えてしまえばいいのに。

ダメ、もう私おかしくなる。



土砂に埋もれて意識を失っていたルイズが目を覚ましたのは、翌日の朝であった。
ベッドの側にある椅子に腰掛けたまま、ベッドに身を乗り出すようにして寝ている燦を軽く揺すって起こす。
昨日の事を燦に確認すると、やはりあれは燦の歌による力で「英雄の詩」というものらしい。
心の繋がりが必要である為、今まで家族にしか出来ないと思っていた英雄の詩がルイズにも通じた事を素直に喜ぶ燦。
しかしルイズはそんな燦の機嫌を損ねない程度に、強くこの歌の使用を禁じる。
尤もらしく、歌っている間は燦が無防備になってしまう事を理由に挙げ駄目出しをしたのだが、真の理由は他にある。
記憶にある自身の絶頂に有頂天な様は、正直、思い出したくもない。
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:52:09 ID:SOBVubox
ルイズはツンデレ云々よりも先にすぐにカッとなって暴力を振るう性格だからな

支援!
209ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:52:35 ID:V0THJROB
歌を聞く事で精神が高揚するせいだ、と燦は言っていたが、高揚どころではないだろうと心底思う。
あの時の自分は明らかにおかしかった。
とにかく戦いたくて戦いたくて仕方が無かったのだ。
それにもう一つ理由が出来た。
「ルイズちゃん顔が劇画調のまんまじゃなー。めっちゃ男前でかっこええよ」
鏡を見たら顔面神経痛みたいな顔をしていた。正直勘弁して欲しい。
とにかく授業には出ないといけない。
さっさと準備を済ませると、教室に出向く。くぅ、お願いだから早く顔元に戻ってよー!

「あら? キュルケは?」
ルイズは隣に座るタバサにそう聞いてみるも、返事は無い。
燦と顔を見合わせた後、土砂掘り起こして筋肉痛でも起こしたかと、さして気にしない事にした。
そして授業が終わって昼休み。
タバサは用があるといってそそくさと何処かに行ってしまった。
キュルケは未だに姿を現さず。
ルイズと燦は二人っきりで中庭に出て昼食を取る。
食堂に行こうとした所、ルイズの姿を見るなり生徒達が一斉に回れ右をして居なくなってしまったので、仕方無くバスケットに詰めてもらい中庭に出たのだ。
「……何か前よりヒドクなってない?」
「あ、あはははははは」
昨日の一件が原因であろう事は燦にもわかっているので、何とも言いようが無い。
時折そんな話をしながら黙々と食事を取る二人。
次の日も、その次の日も、キュルケは表れず、タバサも用があると断ってきた為、食事は二人っきりで取った。
二人に付き合えと強要する程子供でもないが、ルイズも燦も、凄く寂しかった。



オールドオスマンは、学長室で一人頭を抱えて居た。
教師達に集めさせ、コルベールに盗難品と回収品のリストを作らせたのだが、どう見ても足りない。
彼等がネコババした可能性まで考慮に入れて調べたのだが、やはり足りない。
実際に盗まれた物がある以上、これを城に報告せねばならないのだが、幾らなんでもこう続いて不祥事が起きてはそれも難しい。
一番の問題は、事件の前後から行方不明となっているミス・ロングビルの存在だ。
ワルド子爵からの手紙にも、ミス・ロングビルがゴーレム使いだとの話があった。
だとしたらもう確定だ。ミス・ロングビルは土くれのフーケであったのだ。
彼女を雇ったのは他ならぬオールドオスマンである。酒場で適当に見繕ったなんて、とてもじゃないが報告出来るわけがない。
王家からの預かり物もあるこの宝物庫から宝物が盗まれたなどと、どう言って報告すればよいのか。
校内には緘口令を布いてあるし、実際に宝物が盗まれたと知っているのはコルベールのみだ。
誤魔化す事はまだまだ出来ようが、実際に宝物が失われているままではいずれ城にもバレる。
今回に関しては、あの問題児達のお手柄だ。
連中が居なければ宝物の被害はあんな程度では済まなかっただろう。
ルイズ・フランソワーズと使い魔サンに話を聞いた所、どうもサンには不思議な力があるようで、あの戦いはそれ故との事。
厄介事が増えたような気がするが、とりあえず不思議な力は濫りに使わぬよう釘を刺して、この件は後回しにしておく。
胃の痛くなるような苦悩の日々を過ごすオールドオスマンに転機が訪れたのは、事件から二日経った日の事である。

学長室のゆったりしたソファーを勧めると、ワルド子爵は軍人らしいきびきびとした態度で席に着いた。
オールドオスマンはにこにこと上機嫌でワルドを迎える。
「実はこうして参りましたのは、妙な話を小耳に挟みまして……」
彼の話はこうだ。
表に出せない商品を扱うオークションを調査中、会場に潜入させた部下の報告によると、本来学園で管理しているはずの宝物が出品されていた。
こうした場に出てくる贋作など珍しくも無い。
しかし、目利きでもある部下曰く、何処からどう見ても本物にしか見えなかったというのだ。
210ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:53:06 ID:V0THJROB
これ程の精度の贋作が出てくるなど由々しき事態だ。
贋作には作者が居る。その者を突き止める為、部下はその商品を落札した。
越権にも程がある行為だが、ワルドはそういった部下自身の判断を尊重している。
その部下の勇み足を褒め称え、落札金額は全てワルドが持つから調査を開始するよう命じた。
ところがその商品を手に入れ、隅から隅まで調べたのだが、やはりそれは本物にしか見えなかった。
不審に思ったワルドが保管元である学園の周辺をそれとなく調べた所、数日前に何やら騒ぎがあった事が判明する。
「……といった次第なのですが。もしよろしければ宝物庫を確認させてはいただけませんか?」

はい、ワシ死んだー。
幾らなんでもワルド子爵優秀すぎじゃろ。
おかしいて、トリステインの犯罪捜査能力はバケモノかー。
というか何でそんな闇オークションの場所とか掴んでおるのじゃ。どんだけ手が広いんじゃこのヒゲは。
盗まれた事も知らぬのに、どーやって二日で盗品見つけて学院にまで乗り込むなんて芸当出来るんじゃ。
お前若手なら若手らしく仕事なんぞしとらんと女のケツでも追っかけてろ。ワシが若い頃はそーしたぞ。
あれか? 嫌がらせか? ワシをイジメる為に新王が遣わしたジジイ専のドS魔人か?
そもそも軍人だったら戦争だけしとればいいのに。役割分担というものを理解せぬか。
あー、今すぐコイツ心臓止まって死んだりせんかなー。
……ともかく愚痴は後回しじゃ。ワシも伊達にトリステインの老害、エロ師匠と言われてはおらぬ。
このワシの灰色(時々ピンク気味)の脳細胞を駆使すればこの程度の危機、さくっとずばっとチャンスに変えてくれるわ。
「ふむ。その話をする前に一つ、折り入って子爵に相談があるのじゃがな」
「私に……ですか?」
その瞬間、子爵の目が光ったのをワシは見逃さなかった。
よーしよーし! コヤツめ! ハナからワシに恩を売る気で来おったな!
「実は……」

よしよしよしよしよしよしよしよし、これなら何とかなるかもしれん。
むしろこいつの手の広さが役に立つ。宝物全てを買い戻す事も可能かもしれんぞ。
くっくっく、ワシの時代は終わらぬさ! 何度でも蘇ってくれるわ!
ふん、小僧ごときが粋がった所でこのワシを自在に操れるなどと思うなよ?
でもお金なら出すし、ちょっとぐらいなら言う事聞いてやってもいいぞ。
いやホント、今回ばっかりは洒落にならんのじゃからワシ……もう泣きそうじゃて。

この小僧が宝物を盗み出す手引きをした可能性も大きいだけに、ここは一つ乗せられたフリをしといてやるわい。



非常に大人なやりとりの後、オールドオスマンの依頼を受け、ワルド子爵は預かった盗品リストを手に学長室を後にした。
「トリステイン魔法学院学長、オールドオスマンに貸しを作ってみんか?」
との言葉を、ワルド子爵は粛々と受け入れたのだ。
城には秘密で盗品を買いなおし、その代金はオールドオスマンが負担するという事で話はついた。
全ての盗品が揃うとも思えないが、これで今回の件は隠密裏に収める事が出来そうだ。
ワルドは鋭い男だが、襲撃がゴーレムで行われた事、そしてミス・ロングビルが不在である事を彼は知らない様子だった。
それとなくロングビルと話をしていくか、と振ってみた所、ワルドはミス・ロングビルの軍への異動を口にした。
シュバリエ叙勲を振りかざし(功があろうと軍役に就かぬ者に叙勲はなされない)、貸しを早速返せといった口ぶりであったが、当人にその意思が薄いと告げると残念そうに引き下がった。
謁見の間での出来事は仔細漏らさずルイズに報告させてある。
211ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:53:36 ID:V0THJROB
貴族位剥奪を免れ得ぬ婚約者の為に尽力するなど、中々骨のある青年だとは思っていたが、今回の件を見るに底なし沼のような宮廷での立ち回りも心得ているようだ。
「優秀な者には相応のトゲがあるものじゃが……さて、奴は野心と道義と、どちらを優先させる男なのか……もう少し見極めてみぬ事には解らぬか」



帰路に着いたワルド子爵は、自らの読みの鋭さに笑いが止まらなかった。
ルイズの件で新女王の信頼を得たワルドは、グリフォン隊隊長のみならず、既に幾つかの役職を兼任している。
前任者は間抜けかと思う程仕事をしていなかったので、ワルドにとって兼任も苦にならなかった。
実際自分が動くでもなく、部下達が動きやすいよう環境を整えてやっただけだ。
それだけで彼等は、水を得た魚の様に動きが精彩を増した。
グリフォン隊だけでは手が足りず、歯噛みしていた闇オークションや人身売買の現場を確保する事にも成功している。
軍人は軍務だけしていればいいなどと、ワルドは考えていなかった。
有事の際はそれでよかろう。しかし、これ程の武力をそれ以外の時も遊ばせておくなど無為也、の一言でワルドは斬って捨てた。
使える手駒は着々と増えている。
早速かのオールドオスマンに貸しを作れるなど、幸先が良すぎる。

は? アルビオン? 馬鹿か、あんなふよふよ浮いてるだけの反乱一つで引っくり返るような国に興味など失せたわ。

反乱軍から繋ぎの使者が来てそろそろ行動に移れとか抜かしたので、斬り捨てて埋めてやったわ。
はっはっは、連絡が付かなければ文句の言いようもないだろう。
連中には私が味方だと思わせておけばいい、いっそグリフォン隊引き連れて本陣を強襲してやろうか。
奴等の行動指針からするに、アルビオンを落とした後トリステインへと牙を剥くだろう。
その為に私に声をかけたのだろうが、ふん、ならばアルビオンが落ちた瞬間こちらから仕掛けてくれる。
アルビオンの王族さえ確保しておけば、侵攻の大義名分も立つ。
出兵自体にぐだぐだと文句を付けて来る者も居ようが、あの小娘を操ってやればどうとでもなる。
私は、この国で、私の欲しい全てを手に入れて見せる。

ワルドは気付いていなかった。
これが実は自身も気付かぬ言い訳に過ぎず、ワルドは単に楽しくて仕方が無かっただけなのだと。
評価はされていたが、自分にはそれ以上の力があると常日頃から思っていた。
それを存分に発揮し、成果が上がっていく今の立場が、この上なく愉快であったのだ。



学園の周囲を10週。これはルイズと燦が毎日こなしているランニングと同じ量である。
最後の一、二週はもう、走ってるんだか、歩いてるんだか、彷徨ってるんだか、解らない有様だ。
それでも最後まで走り抜き、むき出しの地面にでれーんとぶっ倒れる。
「あー、少し動かないと、逆にキツイわよアレ」
「そうじゃなあ、それにそもそもあの量はキュルケちゃんには厳しいと思う」
しばらくそうしていた後、がくがく震えながら立ち上がる。
学園をすっぽり包む壁にもたれるようにして体を支えながら、呪文の詠唱を始めた。
放たれる炎の弾は、森の木々をすり抜けて奥の一本に命中。
それを何度も繰り返す。
「あ、わかった。体が回復するまでの間に、魔法の精度練習をしてるのね」
「ほへー、考えてるなーキュルケちゃん」
何度も何度も繰り返し、決めてた数を終えたのか、次のトレーニングに移る。
「次は筋トレね。……いや、キュルケ。アンタにその回数は絶対無理だから。腕取れるわよそれ」
「何か最初の頃のルイズちゃん思い出すなあ」
ルイズと燦が何をやっているかというと、日一日とやつれていくキュルケを心配し、その動向を盗み見ていたのだ。
ゴーレムと戦った日以来、キュルケは授業もそっちのけで何かわからぬ事をしており、そのせいで一日ごとに差がわかるぐらいにやつれていったのだ。
遂に極度の疲労からか森の中に嘔吐するキュルケ。
手馴れた様子で土を被せて処理すると、すぐにトレーニングへと戻る。
「……死ぬわよアレ本気で」
「止めよルイズちゃん。あれじゃ後三日も保たんて」
二人が監視していた城壁上から降りようとすると、その前にタバサが立ちはだかっていた。
212ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:54:03 ID:V0THJROB
「あれでいい」
何時の間に来ていたのか。どうやら二人のやりとりは聞いていたようだ。
ルイズは、キュルケは明らかにオーバーワークだと思っていたので、タバサの言葉に納得出来ない。
「良い訳無いでしょ。あれじゃ体が慣れる前に頭がおかしくなるわよ。物凄い苦しいのよ、ああいうのって」
ルイズが言うととても説得力があるような無いような。
しかしタバサは首を横に振る。
「キュルケにとってはあの方が楽。多分、ああでもしないと眠れないんだと思う」
ハードトレーニングを重ねるキュルケを、辛そうに見つめるタバサ。
「……逃げればいいのに。だからって誰も責めたりしないのに……」
そしてちらっとルイズを横目に見る。
「バケモノの相手をしようなんて考えるからああなる」
何処となく責めるような口調にルイズはカチンと来たが、キュルケも、それを見守るタバサも、本当に辛そうだったので我慢してやる事にした。



巌の様に盛り上がった筋肉、特に両の腕が凄い。
タバサの腰回りと変わらぬ太さを誇る腕の筋肉を、これ見よがしに誇示するように上半身裸のまま、男はタバサを見下ろす。
「一つ、何でも言う事聞くって話。確か何だろうな魔法学院のお嬢ちゃん」
怯えが顔に出ぬよう苦心しながら小さく頷くタバサ。
筋肉男はぎょろりとした目で、タバサを射すくめるように見つめ依頼する。
「じゃあ今すぐ頼む。助けてくれ」
家の外から怒声が聞こえてくる。
「おんどりゃああああああ!! 金返さんかいボケェェェ!!」
「てめぇの自慢の腕へし折られてえかクソがあああああ!!」
「オラ出て来いや! この辺の顔役に話通してあんだ! てめえに逃げ場はねえぞゴルァァァ!!」
借金取りらしい彼等の怒声を聞いたタバサは、筋肉男に向き直る。
「お金は無いから、頼み事にした」
「そう言うなよおおおおおおお、アンタ学院の生徒なら魔法使えんだろおおおおお、たああすけてくれよおおおおおおお」
「お金を作る魔法何て無い」
「アイツ等ぶっとばしてくれるだけでいいんだって! 出来れば二度と俺に手出しする気無くなるぐらいの勢いで」
殊更に酷薄な口調でタバサは告げる。
「なら、あの人達死ぬけどそれでいい? 私は後始末をする気無い」
「殺すって、いやそこまでする事ぁ……」
タバサは筋肉男との会話を勝手に切り上げ、玄関前に居るだろう男達に向かい、ドア越しに魔法を放った。
十本の氷の矢が玄関をぶち破り、男達に襲いかかる。
この不意打ちに、男達はこけつまろびつ玄関前から避難する。
そこに、杖を翳したタバサがぬっと現れる。
男達が何事かとタバサの言葉を待つが、タバサは彼等に宣告すらせず次の魔法を唱え始める。
「ば、ばかっ! 本気で殺す気か!?」
大慌てで後ろから筋肉男が飛び出してきて、タバサの肩を掴んで止めようとするも、タバサは詠唱を止めない。
無機質に、作業を行うように、淡々と呪文を唱え続ける。
筋肉男は借金取り達に向かって怒鳴る。
「バカヤロウ! さっさと逃げねえか! てめえら殺されるぞ!」
その声が合図になり、借金取り達は退散していった。
筋肉男は怒りに震え、タバサの襟首を掴む。
「てめえ! どういうつもりだ!」
無表情のままタバサは答えた。
「頼んだ物が出来るまで私はここから学院に通う。これなら多分作業期間中は貴方の身の安全は保障されると思う」
男の手首を捻る事であっさりとその手を振り払い、すたすたと家の中に戻っていくタバサは、男に背を向けながら言った。
「人殺しは私も好きじゃない。さっきのは良いアシストだった」
213ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:54:31 ID:V0THJROB
そう動くよう仕向けたのはタバサだが。
見事引っ掛けられた男は、このちびっ子は見た目以上に大人であると理解する。
「はっ、そういう事ね。ああ、わかった。アンタの依頼受けさせてもらうぜ」
鍛冶屋を営む筋肉男は、そう言うとタバサの後を追い作業場へと向かう。
「で、依頼の槍? 杖? の贋作作れって話だが、もう少し形状を詳しく聞かせてくれよ……」

迷槍涅府血遊云(めいそうネプチューン)。トリステイン魔法学園宝物庫保管NO.897、身体の異常を浄化する力を持つ、らしい。
トリステイン魔法学院生徒改め、盗賊見習いへとクラスチェンジしたタバサの最初で最後のターゲットである。
ミッションプランはこうだ。
コルベールの作業を手伝う事で信頼を得、この度の事件でごちゃごちゃになった宝物庫の整理を共に行えるようになる。
その間に、ターゲットの複製を用意しておき、隙を見てこれをすりかえる。
手に入れるなり帰郷し、狂気の薬にて正気を失っている母に試し、すぐに学園へと戻って返還する。
その間だけ誤魔化せればいい。
問題はこれが効果を発揮した場合だ。
正気に戻った母を、ガリア王がそのままにしておくはずもない。
その場合タバサは、母を連れて逃げ出すつもりであった。
幸いシルフィードという足もある。
本気で逃げれば追いつかれる心配もあるまい。
正気にさえ戻っていてくれれば、母も竜の上で暴れるような真似はしないだろうから。
タバサの本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアンといい、ガリアの王族の出だ。
王位継承に関わるトラブルに巻き込まれ、心を狂わす毒を飲まされそうになった所、母がタバサを庇い、代わりに毒を飲んでしまった。
それ以来、タバサは身動き取れぬ母を人質に取られ、ガリア王の命ずるまま危険な任務を数多こなしてきた。
任務の無い時は、こうして外国に留学という形で厄介払いされる程、現王に疎ましく思われているのだ。
王宮の中にはそんなタバサ達に同情的な人間も少なくない。
現王のやりようを批判する者達は、いつの日にかタバサの復権をと願い、心苦しい想いを抱えながら現状に甘んじている者も居る。
タバサがガリアから逃げるという事は、そんな彼等を見捨てる事にもなろう。
それもわかってはいるが、これ以上こんな事に振り回されるのは御免だと、タバサは心底思っていた。
タバサの願いは、あの優しい母との日々を取り戻したい、ただそれだけなのだ。



一週間も経つと、キュルケもまともに授業に出られるようになった。
痩せこけた頬、青ざめた表情からは妖艶さが漂う程の美しき面影など微塵も見られない。
しかしそれをツッコメる猛者は生徒にも教師にもおらず、授業は淡々と進む。
一週間も授業をサボっていたのに誰一人文句をつけようとはしなかったのだ。当然といえば当然の反応であろう。
コルベールを除く教師陣は既に問題児四人に関わる事を放棄していた。
生徒でも彼女達に話しかけられるのはギーシュとモンモランシーぐらいで、後はメイドのシエスタのみ。
触れたら炸裂する弾頭のような扱いである。
ちなみにゴーレムの一件以来、ギーシュからルイズへの挑戦は滞っていた。
恐れをなしたのもあるが、それ以上に切実な理由がギーシュにはある。
前回負けたので決闘含めちょうど99回目。
記念すべき100回目の戦いは何としてでも勝利で終わらせたいと、秘策を練っている最中でもあるのだ。
モンモランシー曰く、平民が槍一本持って王城に攻め込むようなもの、だそうであるが。

ルイズ、キュルケ、タバサの三人は学園始って以来の問題児ではあるが、授業は真剣に聞いている。
他の生徒にはない集中力を発揮する彼女達は、そういった面ではとても模範的な生徒である。
キュルケも遅れた分の内容はきちっと復習してきているようで、スムーズに授業を聞く事が出来ている。
時折行われるテストも、それが筆記であるのなら三人共学年で常に上位を保ち続けている。
実践では常にルイズが失敗しているのだが、その際に馬鹿にする者もキュルケぐらいで、他の皆はじーっと下を向いて気まずい雰囲気をやり過ごしにかかっている。
当のルイズはあっけらかんとしたもので、
214ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 20:55:03 ID:V0THJROB
「すみません、又出来ませんでした。これ以上は授業の妨げになるので、やり直しは後日という事でよろしいでしょうか」
と言いくるめさっさと席に戻ってしまう。
悔しさは当然あるだろうが、心の余裕の様な物が大きく、以前とは又違った対応も出来るようになっていた。

ルイズは燦に命じ、それとなくキュルケにトレーニングのアドバイスをさせる。
体を壊しては元も子もない。
魔法で治すにしても、より効率的なやり方をルイズと燦の二人は確立していたのだ。
何となくだが、直接ルイズが言ってはキュルケは聞いてくれなそうな気がした。
こうしてキュルケも授業に出てくるようになったが、やはり食事は別、一緒に居る時間も授業中のみ。
時折敵意に似た視線をルイズに投げかけ、何かを問いたそうにするも言葉には出さず、去って行ってしまう。
何か誤解があるのだろうかとルイズは思い悩む。
様々な事を共有してきた悪友、他の誰に解らない事でもお互いの間でなら通じる、そんな間柄だと思っていた。
だからこそ、ルイズは何も言わずに待つ。
友が自ら悩みを口にしてくれる時を。
本当に必要な時は、きっと頼ってくれると信じて。



夢中だった。
どうしようもない程に、他の何も目に入らないぐらい。
追いかければ、同じ道を走り抜ければ、きっと辿り着けると信じて。
それでも、やっぱり恐いのは無くなってくれなくて。
ただ毎日疲れ果て泥の様に眠るだけで。
そうしないと眠れない。体の中を暴れまわる言葉に出来ぬ感情が大人しくしてくれない。
だからやっぱり次の日も、目が覚めたら同じ一日を繰り返す。
半月程そうしていて、不意に気付いた。
必要なのはがむしゃらに走る事ではなく、単純に、時間が必要だっただけなんだと。
あの頃どうしようもないぐらい猛威を振るっていた激情は、最近では鳴りを潜めており、あるのはあの時の恐怖のみ。
結局それも恐くなくなったりする事はなくて、恐いままで、何とかやってくしかないんだって。
生まれながらに勇敢で、死を恐れぬ人間も居るかもしれないが、そんな人間に決して自分はなれないんだと思い知らされた。
「ごめんタバサ。私は誤魔化し誤魔化しやってく事にするわ」
ここには居ない友人に向かってそう呟き、キュルケは無茶を止めた。
衰弱死寸前で、ベッドに横になりながらそんな事を考えると、不思議と晴れやかな気分だった。

「こんのバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ大バカーーーーーーーーーーッ!!」
ベッドの脇でルイズが絶叫する。
「こんなバカ見た事無いわ! 死ぬ気で頑張るんじゃなくて、死ぬつもりで特訓するバカが何処に居るのよ! アンタ本気で死ぬ所だったのよ! 魔法も効かないとかどんな状態よ一体!?」
一人でトレーニングをしていて倒れ、発見されたのは数刻後の事だ。
基本的に魔法は怪我や病気を治す手段であり、失われた体力を蘇らせる効果は薄い。
である以上、衰弱が原因で死に掛けたキュルケに魔法はほとんど通用しなかったのだ。
そんな事魔法を学んでいる者なら誰でもすぐに解ろうものだ、だからこそルイズは激怒しているのである。
突然病室のドアが音高く開かれる。
汗だくになって血相変えて現れたのはタバサだ。
横たわるキュルケ以外何も見えないといった様で、ベッド脇に駆け寄りキュルケの手を取る。
乾きひび割れた皮膚、かさかさの肌はいつでも肉感的なキュルケのソレとは到底思えない。
「あはは、ごめん。ちょっと無理しちゃった」
覇気もなく、弱々し気にそう語るキュルケ。
二人がこうしてすぐ近くで触れ合ったのは、あの晩、キュルケがタバサを突き飛ばして以来だ。
「……タバサの言う通りだったわ。どうやら私には無理みたい。ごめんねタバサ」
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 20:58:54 ID:w3GWgiKB
しえん
216ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 21:00:06 ID:V0THJROB
生気に満ち溢れ、煌々と輝いていた瞳は色褪せ、薄く濁った灰色の目をか細く見開いている。

全部私のせいだ。
キュルケはここまでやれないと思ってた。
こんなになる前に、きっと諦めると思っていた。
ルイズを止めてまで好きにやらせたのは、私が目を光らせているから大丈夫、そんな意味でもあった。
だが実際はどうだ。
自分の事で手一杯で、他に目をやる余裕も無くて、大切な友人を見殺しにしてしまった。
あそこまで追い詰められていたキュルケならこんな事になってもおかしくないと、そう考えられたはずなのに。
自分の都合を優先して、キュルケを蔑ろにした結果がコレだ。

余りに申し訳無さ過ぎて、自分が情けなくて、まともに顔が見られない。

キュルケの手を握ったまま、俯いて静かに嗚咽を漏らすタバサ。
ルイズはタバサの様子を見て、キュルケの有様を見て、何かがズレて来ていると感じた。
それは小さいズレだとも思う。
だが無視していいものじゃない、このまま行ったら四人にとって致命的な何かが起こってしまう。
まだ言葉に出来ぬ言い知れぬ不安といった段階だが、解決せねばならない何かであると、二人を見てルイズは思ったのだ。



絶対安静を言い渡されたキュルケに、燦とシエスタの二人は交代で付きっ切りの看病を行う。
キュルケの事だ、余りに退屈すぎると病室から抜け出しかねないとの判断からだが、その判断を下したのが学院における病室からの逃亡回数歴代一位のルイズなのでどうにも説得力に欠ける。
いや、凄く納得は出来るのだが、つまりお前が言うなという事である。
しかし予想外にキュルケは大人しくしており、また燦やシエスタの看護が良かったのか、キュルケは見る見る体調を取り戻して行く。
ある時、見舞いに来たルイズにキュルケが訊ねた。
「ねえ、ルイズは戦いが恐くないの?」
ルイズは即答する。
「何で私がそんなもの恐がらなきゃならないのよ」
馬鹿馬鹿しいとばかりに言い捨てるルイズに、キュルケは尚も問う。
「相手は本気で殺しに来てるのよ? 何処かで自分がミスしたら本当に死んじゃうのよ?」
キュルケの問いたい事が何なのかわかったルイズは、窓の外を見ながら気まずそうに頭を掻く。
「あー、そういう事ね……そりゃ、まあ、恐いといえば恐い、かも…………でもねっ、そんな事よりもよ!」
キュルケに向き直って強く主張する。
「もっと恐い事色々あるじゃない! そう思えば別に大した事なんて無いのよ! ええ、私は全然恐くなんてないわ!」
「もっと恐い事って、例えば?」
「そりゃ……」
即答しかけて言いよどむ。
そして本気で悩み出す。
「……何だろ?」
「いや聞いてるの私だし」
あーでもないこーでもないと頭を捻ってみたが、やはりうまい言葉は見つからなかった模様。
「と、ともかくそういう時があるのよ! あるったらあるの!」
「はいはい」
面倒になったのか、キュルケは追及の手を止める。
『もういいわ。この不可思議生物はもう、そういう生き物だと割り切るしかないわねぇ』

翌日、キュルケは同じく見舞いに来たタバサに同じ質問をぶつけてみた。
「……恐いし嫌い。でも他に選べないからそうしてるだけ」
ルイズと違い、重苦しい雰囲気を漂わせるタバサから、それ以上の事を聞く事は出来なかった。
仕方が無いのでルイズが戦える理由を聞いてみると、タバサなりの考えがあったようだ。
217ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 21:00:31 ID:V0THJROB
「元々大貴族の娘。そうやって育てられて来たはずなのに、学院では魔法が使えず劣等生扱い。
 普通なら一週間と保たない。でもルイズは逃げなかった。その理由はわからないけど……
 プライドと体面と自身の能力のバランスが著しく欠けた状態で、一年間踏ん張った。
 あれは、とてもじゃないけど真似出来ない。私はその一年こそが今のルイズを形作る大きな要因だと思う」
キュルケは、まださほどルイズとも付き合いが深く無かった去年一年間を振り返る。
今でこそわかるが、確かにあの状況でヤケにもならず、歪みもせずにルイズがルイズのまま頑張り続けられたのは奇跡に近い。
「……何かといえば馬鹿にしてきたけど、良く考えると私もタチ悪い事してたわねえ」
「キュルケが本気で馬鹿にしてたのは最初だけ」
フォローが入るとは思って無かったキュルケは、きょとんとした顔をした。
「キュルケは意識してなかったと思うけど、ルイズを認めてたから事ある毎に構ってた。
 ルイズにとっては他の馬鹿にしてくる人達と同じに感じられただろうけど、
 キュルケ自身は本気で馬鹿にしてたとは思えない。むしろ色々気にかけてたと思う」
半分呆れ、半分照れたような顔になるキュルケ。
「別にフォローはいらないわよ」
「私はそう思ってただけ。実際どうかはキュルケとルイズにしか解らない」
突き放すような口調は、真面目すぎる話にタバサも照れているからであろうか。
キュルケはぐでーっとベッドに横になる。
「あー、もうわかんない事ばっかりね。自分の馬鹿さ加減が嫌になるわ」
「うん」
ここでトドメを刺すか、と思いタバサの瞳を見つめると、どうやらその「うん」は自身に向けての言葉だったらしい。
少ししんみりとしてしまった空気を変えるべく、キュルケは話題を逸らす。
「でも、今回の件でわかった事もたくさんあるわよ。ありがとねタバサ、何時も私の事見ててくれて」
「私は……」
それが出来なかったからキュルケがこんな目に遭っていると思っているタバサは、その言葉を素直に受け取れない。
しかしキュルケはそんなタバサの事情などお構い無しだ。
「私に出来る事と出来ない事、タバサはわかってたのよね。私あんなヒドイ事言ったのに、それでも心配して病室に飛び込んで来てくれたの嬉しかったわ。本当にありがと」
少し俯き加減のタバサは、ぼそっと呟く。
「……私も一つ解った事がある」
「ん?」
キュルケにしかわからぬ表情の変化、それは、やっぱり照れくさそうだった。
「ゴメン、より、ありがとう、と言われる方が嬉しい」
暖かい何かが胸の中に流れ込んで来て、顔が自然と笑みを形作る。
「それ、私の知る中でも一番の大発見よ」



くすぐったいような感覚は、けど不快では全然無くて。
部屋を出て一人になってもその感じは続いてくれて。
シルフィードに乗ってトリスタニアに辿り着いて。
人混みに紛れて下町を歩く足は自然と軽やかで。

でも、やっぱり私はどうしようもない存在だと、鍛冶屋に着くなり思い出した。

彼に悪意がある訳では無論無い。
これでいいか、そう訊ねながら私が依頼した贋作の杖を突き出して来てるのも、一生懸命さの現われだ。
だから彼は悪く無い。
悪いのは、みんなの信頼を裏切ろうとしている私。
218ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 21:00:55 ID:V0THJROB
例え誰にも見つからず完遂し得たとしても、多分私はもう、彼女達の仲間にはなれない。

あんなに綺麗な人達の側に、私みたいな薄汚いモノが居るなんて、私が許せない。

でも、例え裏切り者と謗られようとも、彼女達がかけてくれた言葉は決して忘れない。
これが終わったら、私はみんなの為に影に潜もう。
きっと色んな困難を迎えるだろう彼女達の力になれるように。
もう私に笑ってくれなくていい。今までにもらった分できっと一生生きていけるから。

でも、彼女達はそんな私の思惑何てお見通しだったみたい。

盗み出した杖を手にシルフィードの待つ森へと駆ける私の前に、私の大切な友達が立っていたのだから。



どうして、とは口に出来なかった。
始祖ブリミルが私のような卑怯者に相応の罰を下しただけだろう。
正直、この二人に責められるのが、一番堪える。
キュルケはまだ回復しきってない体を引きずるようにして、悲しそうに私を見ている。
ルイズは噴火寸前の活火山のようだ。しかし爆発を堪え、涙目になりながら睨みつけて来る。
サンは口をへの字に結んでじっと見ているだけ。
みんな私が何かを言うのを待っている。
だから私は、極力想いが口調に出ぬよう自制しながら話した。
「……コレ、必要だから持っていく。邪魔……する?」
すぐにルイズが激発した。
近くの壁に力任せの拳槌を叩き込む。
「何でよ!? 何で私がタバサの邪魔するのよ! ねえ教えてよ! 私が! タバサの邪魔をするの!?」
鬱屈していた物全てを吐き出すようにルイズは叫ぶ。
「ねえ! 何でよ!? サンも! キュルケも! そして貴女まで! 何で何も言ってくれないのよ!
 困ってるなら声かけてよ! 辛いなら手を貸すよう言ってよ! 私は……私は……」
怒鳴りながら、歩み寄ってくる。
「貴女達の為ならどんな死線だって潜り抜けて見せるわ! 危ない橋だろうと怪我だろうと恐くなんて無い!
 もしも、どうしても貴女達が死ななきゃならないような事態になったら! 私も一緒に死んであげるわよ!」
目の前まで来たルイズが崩れ落ちる。
「……だからお願い、教えてよ。辛いって、困ってるって……
 ……口に出してくれれば、私何だってやってみせるから……
 私馬鹿だから、言ってくれなきゃわかんないの……ごめんタバサ、私気付いてあげれないの……」
私にすがり付きながら泣き崩れ、それ以上言葉に出来ずにいる。
キュルケは、すたすたと歩み寄ってきて、私の両頬をその両手で包み込む。
ルイズもぐずりながらキュルケを見上げている。キュルケは、笑っていた。
うん、顔は笑ってるけど、全然笑ってない。

ごんっっっっ!!

……頭突きは予想外だった。
痛い、凄く痛い。
「ほら、ここで騒いでちゃ見つかっちゃうでしょ。こっちよ」
私もルイズも、キュルケに引きずられるように一室に隠れた。
片手で頭を押さえてる私を見て、キュルケは見た目は怒った顔をしてたけど、実は笑ってたと思う。
何でこの人は、こんなに私の事をわかってくれるのだろう。
219ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 21:01:23 ID:V0THJROB
私自身にもわかっていなかった私がして欲しい事を、事も無げにやってくれるのだろう。

ごめんなさい、私もう無理。他の誰は騙せても、この人達を裏切る何て事、出来ない。したく、ない。



つい先日一人で暴走してぶっ倒れたキュルケは、バツが悪そうに頭を掻いている。
「……とりあえず、この場で話進める資格あるのってルイズだけっぽいわね」
同じく単身敵地に乗り込んだサンも小さくなってしまっている。
当然タバサも、観念したのか大人しく言いなりである。
涙目のまま、ルイズは三人を睨みつける。
「アンタ達がいっつも勝手な事ばっかするからねえっ!」
すぐさま降参とばかりに両手を上げるキュルケ。
「ああもう、わかってるってば。私達が悪かったからとりあえずそれは置いておいて、タバサの話」
まだまだまだまだまだまだまだまだ全然言い足り無そうにしつつも、今は時間が無いのはルイズも理解している。
「で、どういう話なのよ? 偽物作ってそれ盗み出したのはいいけど、どっかで使いたいからそうしたんでしょ?」
タバサは静かに語り始める。
自分がガリア王家に連なる出自である事、毒により気を狂わされ人質にされている母の事、
王に疎まれ危険な任務をこなしている事、飲まされた特殊な毒を治す方法を探している事……
全てを語り終えると、ルイズが得心したように頷く。
「……つまり、私達の敵はガリア王って訳ね」
キュルケが即座にツッコむ。
「飛躍しすぎよ! 普通にタバサのお母さん助けて解決にしときなさいって!」
燦は、何故か涙を溢していた。
「……私な、こんな事言うたらイカン思うけど……タバサちゃんがやっぱりええ子じゃったってわかって、ホント嬉しいんよ……タバサちゃんは絶対悪い事嫌いだって……本当良かった……」
それは皆の意見を代弁してもいたのだろう。
ルイズ、キュルケと順に燦の肩を叩いて落ち着かせる。
そしてルイズは肩を鳴らして腹を据える。
「んじゃ、行くとしましょうか。キュルケは留守番、コルベール先生見張って盗んだ事バレるようなら何とか誤魔化しておいて」
不満そうではあったが、まだ完調からは程遠いキュルケは仕方なくその役割を受け入れる。
抜き足差し足忍び足で外に出ると、確認までにとタバサは燦に槍の使い方を問う。
燦は少し自信無さ気であった。
「うーん、確か思いっきり投げればええと思うけど……何か込めるとか言うてた気もするんよ……」
槍の強度は持っただけでわかるので、投げても大丈夫だろうと思い、試しにタバサは槍を両手で掴んで肩に背負う。
タバサが片手で持てるような重さではなかったのでこうしたのだが、少し持ちずらい。
これで母が本当に治るのか。
半信半疑であったのだが、タバサの、母に元気になって欲しいという願いは、数年かけて積み上げた想いは、槍に力を与えた。
「こう?」
そう言いながら走って勢いを付け、槍を放り投げる。
非力なタバサには一瞬槍が宙に浮かぶ程度しか出来なかった。
すぐに重力に引かれ落下する。ほんの1メイルも飛んでいなさそうだ。

その槍が突如閃光を放ち、轟音と共に空へとかっ飛んで行く。

ルイズもキュルケも、そうしろと言った燦までもが、余りの光景に言葉を失う。
ぺたんと座り込んでしまっているタバサは、燦に向き直る。
「……これで、いいの?」
燦は既に光の点と化した槍を見つめながら、それでもタバサを元気付けるよう明るく言い放つ。
「多分大丈夫じゃきに!」
「多分抜いて、お願い」
やはり安堵からは程遠いタバサは、すぐにシルフィードに乗って成果を確認に向かおうとする。
220ゼロの花嫁14話:2009/01/30(金) 21:01:59 ID:V0THJROB
ルイズも燦も余り自信の無い後ろめたさから、焦るタバサを止めようともせずシルフィードの背に飛び乗り、早速ガリアへと向かうのであった。



ガリア国、オルレアン領。
その一角に不名誉な印を押された屋敷があった。
立派な造りであり、広大な屋敷であったが、住人はたったの二人。
ベルスランと言う名の忠実な執事と、その主、オルレアン大公夫人。
毒により狂った主人を、それでもと甲斐甲斐しく面倒を見てきたベルスランは、その日、雷が落ちたような大きな音を聞く。
それが臣下の責務であると信じる彼は、全てをさておき夫人の下へと駆けつける。
結果的にそれは最も効率的な行動となった。
ノックの音にも返事が無い事を訝しみながら扉を開けたベルスランの眼前に、信じられぬ光景が広がっていた。
天井からぱらぱらと土砂が落ちてきており、欠けたレンガは窓際にしつらえてあるベッドの上に降り注ぐ。
そう、部屋に入った人間が、十人中十人注視するだろう、今の常と違うベッドだ。
痩せ細り骨ばった夫人の口が限界を超えて大きく開かれ、瞳は中空にある何かに抗議するかのようにぎょろっと見開かれている。
ベッドに寝ている全身が腹部を中心にくの字に折れ曲がり、その中心には、どうやら天井をぶちぬいてきたと思しき一本の槍が突き刺さっていた。

「奥様ああああああああああああ!!」

ここ数十年出した事もないような大声で絶叫を上げるベルスラン。
まさかこの槍を投げたのが遠くトリステインの地にいるもう一人の主人、シャルロットであるなどと想像だにしないだろう。

血相変えて近くの医師を呼びに向かい治療を行うと、見た目より遙かに怪我が小さかった事がわかり心底安堵する。
そして一つの事に気付いた。
『……ぬいぐるみを手に持っておられぬのに……何故奥様はあのように落ち着いていらっしゃるのか……』





以上で投下を完了します。又先に投下した分におきまして誤字のあった
「侯爵→公爵」「英雄の歌→英雄の詩」の二箇所は後でwikiを修正したいと思います
感想の所でさりげなく指摘してくださった方、ありがとうございました
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 21:10:08 ID:HfYG8IV3


ってタバサ母!?
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 21:11:17 ID:eP1np8jl
>202
書くのを止めるつもりは無い。ただ、面白ければどうとでもなるさ。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 21:13:22 ID:SOBVubox
乙です!

タバサママに当たってたら(破片とか)とか考えなかったのかなw
続きに期待!
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 21:51:36 ID:0Ub913QG
つーかワルドがいい意味で黒いというか一流の悪役っぽいw
225ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:11:13 ID:lT3jWWdh
ゼロの花嫁さん乙です。
では、9話前編を投下予告させていただきます。
22時20分を予定しております。
よろしくお願いします。
226ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:20:24 ID:lT3jWWdh
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン9 前編

虚無の日 トリステイン魔法学院
学院内の広場にいつものメンツが集まっていた。
「いい天気ね、町までは遠いから、雨とか降らないと本当に助かるわ」
キュルケが、同意を求める訳でも無くつぶやいた。
「本当ですね」
私服姿のシエスタがキュルケに応える。
「アンタ達が居なければ、もっと良かったんだけどね、何でシエスタもいるのよ・・」
ルイズが、予定より増えた人数に不満を言う。
「いいじゃないかルイズ、シエスタも今日が休みだと言うのだし、皆で行っても構わないだろう。」
ニューが問題ないと言う風に、ルイズに応える。
「シエスタはいいけど・・これだけの人数の馬は、どうやって借りるのよ!」
「・・・有料なのか?」
ダブルゼータが金銭に関わるかを問う。
「アンタって、何かそればっかりね・・・さすがに7人となると無理よ」
大人数の行動の難しさに頭を抱える。
「・・大丈夫」
タバサが、可能性を提案する。
「どうするのだタバサ、二人で一つの馬にするのか?」
ゼータの答えに首を振る。
「・・・友達を呼ぶ、シルフィード」
タバサが名前を呼ぶと、遠くから、風の音とともに巨大な竜が飛んできた。
「すごいじゃないタバサ、これ風龍よ!」
キュルケが興奮する。
「すごい・・・」
ルイズも近くで見る、見事な風龍に言葉を失う。
(私も、こんなのが使い魔なら良かったのに・・)
「ルイズ、私も、こんなのが使い魔なら良かったのに・・なんて考えてないか?」
「なっ、考えてる訳ないじゃない!」
(・・・図星だな)
ルイズの考えが的中し、ニューは少し肩を落とす。
「成程、全員でこれに乗る訳か」
ゼータが納得する。
「違う、あなた達は別、定員オーバー」
タバサがニュー達三人を見る。
「きゅいきゅい」
そうだと言わんばかりに同意する。
「仕方ない、我々は馬で行くか・・・」
シルフィードに乗りたいのを少し我慢しながら三人は厩舎に向かった。
227ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:20:50 ID:lT3jWWdh
トリステインの首都、トリスタニアは学院から馬で普通に行って約3時間で行ったところにある。
騎士の国アルガスでもある三人は、当然、馬の扱いにたけている。
おかげで、2時間で着いてしまった。
「2時間で着くとはねぇ・・・」
ルイズが3人の乗馬技術、特にゼータの腕を感心する。
「私だけなら、もう少し早く着く事が出来る。」
ゼータが当然と言わんばかりに応える。
「しかし、龍とは早いものだな」
自分達を追い越して、先に待っていた。
ニューはルイズ達を見て、更に乗りたい気持ちを強くした。
「ペガサスがあれば、俺達も空を飛べるのにな・・・」
ダブルゼータが事も無しに呟く。
「ペガサスって、ニューさん達の国っているんですか!?」
「実際に乗っていたよ、この世界にはないのかい?」
「いないわよ!どこにいるのよ、そんな伝説生物」
「たしか、アルガスの厩舎にいたような・・・」
ユィリィ姫が乗ってくる際には、そこに置いておく事をおぼろげに思い出す。
「なんて言うか、あなたの国ってすごいのね・・・」
ペガサスに対する扱いにキュルケも驚く。
「アンタ達の非常識は今に始まった事じゃないものね・・・武器屋に行くんでしょ?こっちよ」
ルイズが、自身が行く秘薬屋の近くの武器屋に向けて歩き出す。
少女達に付いていく、しゃべるゴーレム達を通行人達が物珍しそうに見ていたが、
ルイズ達は慣れてしまった為にそれに気づかなかった。

「ここが武器屋よ、私も初めてはいるけどね」
「いらっしゃいませ、これは貴族様、どういったご用件で?」
胡散臭い風貌の店主がルイズ達を見るなり、態度を変える。
「この者達に、武器を買いたいの」
ルイズが貴族らしく、三人を紹介する。
「これは珍しい方で、どうぞ店内をご自由にご覧ください。御用の際には一声おかけ下さいね」
そうして、三人と少女達は店内を見回し始めた。
「店主よ、杖はないのか?」
ニューが店主に問う。
「お客さん、杖なんか、うちで販売したらお縄になってしまいますぜ」
「本当か?ルイズ」
「本当よ、杖は後で専門の店に行くわ、そこで注文するわ」
ルイズがそう答える。
「けど、杖は高いわよ、お金はどうするの?」
キュルケが、ルイズの支払い能力に疑問を示す。
「仕方ないから、家で払ってもらうわ、必要経費だし」
ルイズは、仕方ないと言った表情をする。
「あなたも結構大胆ね・・・ダブルゼータは、どんな奴にするの?」
キュルケが隣にいるダブルゼータに問う
228ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:21:33 ID:lT3jWWdh
「斧がいいな、出来れば片手の奴があればそれでいいのだが、良さそうな物はないな」
店に置いてある斧を手に持って、不満を示す。
「片手で扱うにしては、軽すぎる、親父、もっと重いものはないのか。」
「ダブルゼータさん、それ片手で扱うのじゃありませんよ」
長さは片手用には少し大きいくらいだが、明らかに両手で扱うはずの斧を軽々振り回す光景に、シエスタが指摘する。
「それを軽いと言われますと・・これなんかどうでしょうか」
「何これ・・・使えるの?」
ルイズがそれを見て感想を口にする。
片刃の斧であり先程のサイズは変わらないが、柄の部分まで金属であり、刃の長さと厚さが2倍近くある。
重厚という形容がその斧の存在を表していた。
「この前偶然手に入れたのですが、ただでさえ人気のない斧なのに、
そんな物、扱える奴なんかそうはいないと思ったのですが・・
お客さんなら問題ないでしょう、500エキューでお売りいたしますよ」
店主が具体的な値段を掲示する。
「確かに、こんなの普通は使わないわよね、けど高くない300くらいで負けてくれない?」
キュルケが、妖艶な態度で店主に迫る。
「いっ、いやぁこちらも商売なので、450ですかねぇ」
店主を相手に、キュルケが交渉を始める。
「ゼータさんはどんなのにするんですか?」
シエスタがゼータの要望を聞く。
「盾はこれでいいかな、後は剣だな・・・正直、良い物があまりないな」
剣を見ながら、自分の期待に、応えられる剣がないかを探す。
手には以前、自分の愛用していた物と似た盾と同じ形状の物を手に持っていた。
「ちなみにタバサ、予算はいくらだい?」
「必要経費だから、大丈夫」
タバサにしてみれば、仕事の危険を考えれば剣の予算くらいはこだわらない。
「大した物がねぇとは、てめぇの目は節穴か!」
「誰だ、でけぇ口叩く奴は!」
売り言葉に相手も確認せず、ダブルゼータがそれに応じる。
「ここだよ、木偶の坊!」
声の方を見回すと、そこには古びた一本の大剣が置いてあった。
「デルフ、てめぇは散ったぁ黙ってろ!」
「うるせぇ、てめぇみたいなヘボにはそこのヘボ客がお似合いだよ!」
「ずいぶん口の悪い、インテリジェンスソードね・・・」
そのやり取りを聞いて、ルイズは呆れる。
「インテリジェンスソード?何だい、それは?」
「意志を持った剣、マジックアイテムの一種」
ニューの疑問に、タバサが答える。
「このナマクラ、ここでへし折ってやる。」
ダブルゼータがデルフと呼ばれた剣をつかみ取る。
「ん!なんだテメェは、ゴーレムでも人間でもねぇ「うるせぇ」痛っ、何しやがる。」
端と端を掴んで、ダブルゼータが本当に二つに折ろうとする。
「やめなさいよ、そんなの弁償したくはないわ」
ダブルゼータの蛮行に、キュルケが呆れて制止に入る。
229ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:22:13 ID:lT3jWWdh
「痛ぁ、テメェ、訳分からねぇ力はあるけど「使い手」じゃねぇな、
そもそも、武器なんてデリケートな物てめぇには似合わねぇよ!
てめぇみたいな馬鹿力は、その辺の木でも振り回してろ!その方がお似合いだ!」
デルフが、ダブルゼータに噛みつく。
「もう、振り回したけどね」「確かに、振り回していましたね」
ルイズとシエスタが、その姿を思い出して呻く。
「コイツの力で折れないなんて、なかなか丈夫そうだな」
ゼータが興味を持ち、デルフを握る。
「なんだ、おめぇもこいつと同じかよ、おめぇさん「使い手」じゃないが、
かなりの腕だな、しかも、アイツと同じでよく分からねぇ何かを感じる。」
デルフリンガーがダブルゼータの時とは違い高評価を下す。
「「使い手」とは何だ?」ゼータがデルフに聞く。
「俺もイマイチ思い出せねぇんだ・・・けど、おめぇさんなら問題ねぇ俺を買え!」
デルフがゼータに購入を薦める。
「そんな物買うの、もっと良いのがあるんじゃない?」
口の悪さと見た目から、キュルケが否定的な意見を口にする。
「切れ味は後で磨くとして、それほど悪くはないだろう、親父、いくらだ?」
ゼータが購入を決意して、値段を聞く。
「それでしたら、200エキューで結構です。そいつはうちの厄介者ですから」
「なら、もっと安くしてよ」
タバサに変わり、キュルケが自身の買い物を含め交渉を再開する。
「そいつはまけて150ですねぇ、うちも商売なので」店の親父も食い下がる。
「ふむ、親父試し切りついでに賭けをしないか?この石を空中に投げて、
デルフで切れたら先程の斧と含めて、500で売ってくれ」
そう言って、森に会った練習用の石を渡す。
「これをですか、まぁ実際できればすごいですけどね、出来なかったら700で買って下さいよ。」
グレープフルーツ程の大きさの石を見て、勝算を確信したのかその賭けに応じる。
「タバサ、キュルケ殿、それでよろしいか?」
「面白そうだし、いいわよ」
キュルケが認め、タバサも頷く。
「どうせなら、ただ切るんじゃなくて、アレをやれよ」
「そうだな、見世物なんだ、客を喜ばしたらどうだ」
観客が、ゼータに芸を要求する。
「アレか・・・まぁ、いいだろう」そう言って、石を上に放り投げる。
「ゼータ乱れ彗星」
それは、名の通り彗星群の雨であった。剣が彗星となって、石に降り注ぐ。
バラバラになった石が地面に零れ落ちた。
「さすがに少し重いな、親父これでいいか?」
ゼータは、デルフが完璧に馴染んでないのか自信の出来に納得しない。
(本当に、すごい・・・)
自身の使い魔の腕を見て、タバサが改めて評価を上げる。
「いや、凄いもんだ、どうぞ500で結構、いやぁ、すごい物を見せてもらった。」
かなりの戦士を見てきただけに、店主が本気で感心している。
「大したもんだ、俺はデルフリンガーだ、デルフでいいぜ相棒」
「馴れ馴れしい奴だ、私は剣士ゼータだ」
新しい主の腕に満足なのか、デルフが嬉しそうに自己紹介する。
そうして、500で砥石と武器を購入しルイズ達は店を出た。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:22:23 ID:Zu5n65Qb
支援
231ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:22:50 ID:lT3jWWdh
一通り店を周り、全員は昼食をとっていた。
「アンタ達って、本当に非常識よね」
「ルイズ、この町で俺はまだ何もしていないぞ!」
ダブルゼータがルイズの言葉に文句を言う。
「違うわよ、一人でいろんな魔法を使えたり、木を振り回したり、
剣で石を粉々にしちゃうなんて、アンタ達って本当に非常識だわ。」
これまで見てきた三人の能力を見て改めて思う。
最初は自分だけが当りだと思っていたら、どうやら三人とも当りだったらしい。
「たしかに、皆さんすごいです。」
シエスタも同意する。
「そう言えば、あなた達の団長がいるって言ってたけど、やっぱりあなた達みたいなの?」
キュルケが興味本位で聞く。
「アレックス隊長は魔法が使えないが、ダブルゼータの力と、ゼータの技を併せ持っていた。
我々三人で互角といった所だ、ナイトガンダム殿にも引けを取らん」
誇らしげに、ニューが説明する。
「一人でアンタ達三人と互角だなんてどんな非常識よ、しかも、それが二人もいるなんて」
彼らのいた世界の凄さを、改めてルイズは感じた。
「午後はニューと杖を買いに行くから、アンタ達はここら辺にいてね」
「おう、解った」
ダブルゼータが、立ち上がったルイズ達に返事を返す。
「何で一番分からなそうなアンタが答えるのよ、シエスタちゃんと見張ってね」
「はっ、はい」
(それは無理だと思います。)
ルイズの申しつけだが、自身がその任をこなす事は無謀な事に感じた。
「行くわよ、ニュー」
ルイズが、ニューを連れて大通りに歩いて行った。

「ルイズはもう少し、俺達を信用してくれてもいいのにな」
ルイズが居なくなった後、ダブルゼータが信用の無い事に愚痴をこぼす。
「私達じゃなくて、あなただけよ、ルイズじゃないけど衛士に見つかると面倒よ、あなた達は珍しいんだから」
キュルケが間違いを指摘する。
「テメェは見るからに、トラブルメーカーだもんな」
デルフが鞘から口を出す。
「何だと、このナマクラ!」
「そんな事だから、信用ないのよ」
デルフにつかみかかろうとするダブルゼータを見て溜息をつく。
「あの皆さん、少し寄りたい所があるんですけどよろしいですか?」
会話が切れた後、シエスタが行動方針を示す。
「私の母方の従妹がやっている店で、今日は休みだから顔を出そうかと思っていたんです。」
「どこなの?」
「ここからすぐ、近くなんです。」
「じゃあ、行きましょ」
キュルケが立ち上がる。
「でもニューさん達は、いいんですか?」
「問題ないでしょ、どうせ、しばらくは帰ってこないし。」
ウェイトレスに伝言を頼み、全員が歩き出した。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:23:16 ID:aqozC/4m
遅くなったけどミーの人と代理の人乙!

彼女の境遇を考えれば、こうなるまでストレス貯まっちゃっててもおかしくないんよね。
子供が好きじゃなく、ミーの立場も弱い。悪気はないとはいえ、神経を逆撫でしちゃってるのは確かだし。
自身の余裕がない状態だし、ぶっちゃけ保護者の器じゃないルイズはまだ接し方が分からないだけ。
いつかここまでの悪い対応を覆えして、無償の愛をミーに注ぐルイズさんが見れると期待しています。

書き溜めてるという言葉に感涙がながれた。
233ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:23:31 ID:lT3jWWdh
シエスタの言っていた店は、大通りをまたいだ少し裏通りにあり
『魅惑の妖精』という名前の大衆酒場件宿屋であった。
「これは・・・」
「すげぇな、こりゃぁ」
ゼータとダブルゼータが感想を述べる。
「ジェシカ、この人たちが私がお世話になっている人達よ」
「あなたが、シエスタの言ってた人達ね、私はジェシカよろしくね」
黒髪の活発な印象の少女が自己紹介をする。
彼女の格好はフリルのついたエプロンドレスのウェイトレスの制服であったが、
ルイズやタバサには出来そうにない胸の谷間があった。
「貴族の方々も、むさ苦しい所ところですが、どうかお寛ぎ下さい。」
「そんなに、硬くならなくていいわよ、私はキュルケ、こっちはタバサよろしくね」
フランクにキュルケがジェシカに自己紹介をする。
「いいわ、今は準備中なの、聞いたけどシエスタを助けてくれたのって、あなた達?」
「違うわ、あれはフーケの仕業よ」
キュルケが知らないと言った素振りで否定する。
「まぁ、そう言う事にしてあげる、こちらに座って」
奥の方の空いた席に案内し、全員が談笑する。

約1時間後、準備中の門を開ける者がいた。
「すいません、今はまだ準備中です。」
ジェシカが客に準備中である事を伝える。
「徴税官が訪れたのに、もてなしも無いとは、この店も偉くなったなジェシカ」
小柄な男が皮肉をこめて、不満を漏らす。
「チュレル様、店長は不在でして・・・」
「なら、スカロンが帰るまで、ここで待たせてもらうとしよう」
そう言って手近な椅子に腰かける。
234ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:24:03 ID:lT3jWWdh
「誰、アイツ」
店の奥にいたキュルケが隣のシエスタに聞く。
「この辺りの徴税関だそうです。役人だから、だれも逆らえないんです。」
シエスタがキュルケの問いに答える。
「気に入らんな」
「だからって暴れないでね、ルイズじゃないけど役人に捕まるのは嫌よ」
キュルケがゼータとダブルゼータを制止させる。
「ごめんね、アイツの相手は私がするから」
ジェシカがチュレルに酒とツマミを運ぶ。
「先程は申し訳ありません、私がお相手いたしますわ」
そう言って、隣に腰かける。
「ジェシカはやっぱりいい娘だな、徴税関に対する態度が分っておる。」
近づきながら肩に手を回す。
「あの野郎・・・・」
硬く拳を握りながら、ダブルゼータが歯を食いしばる。
「やめてください、ここで暴れたらジェシカにも迷惑がかかります。」
シエスタが二人を制止させる。
「お前がいつも可愛い態度だと私も「お待たせいたしました」」
チュレルの声を、褐色の肌のウェイトレスが遮る。
「何やってんだ、あいつは・・・」
「キュルケ様・・・」
ダブルゼータとジェシカもそのウェイトレスに驚く。
それは、ここの店の制服に包んだキュルケと同じ格好をしたタバサであった。
「氷アイスお持ちしました。」
やはり、いつも通りの無表情でタバサが器に入った氷を置く。
「私達もチュレル様のお相手をさせて戴きますわ」
そう言いながら、腕に抱きつき自身の胸を押し当てる。
「ここの店は教育が行き届いてるのぉ、これはどの様なメニューだ」
喜色の顔を浮かべながら、出された料理の食べ方を聞く。
「それは、こうですわ」
そう言ってキュルケが、あいた方の手で、チュレルの顔を氷の器に押しあてる。
「何をする、冷たいではもごあこあ」
「当店自慢のサービスです。」
もう片方の腕をキュルケと同じように、タバサがロックする。
「もがはがあ・・・お前たちこんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
杖を取り出し、魔法の詠唱をする。しかし、杖は手元から先がなかった。
「デルフ、切れ味もなかなかだ」
「そう言ってもらえると嬉しいぜ」
切断した杖の断面を見ながら、ゼータがデルフを褒める。
「貴様ら、こんな事をしてただで済むと思うなよ!私には「見つけたわよ!アンタ達!」」
扉をあけ、ルイズとニューが中に入ってくる。
「何だ小娘ひっこ「アンタは黙ってなさい!」」
ルイズが気迫で黙らせる。
「あれほど問題を起こすなと言ったのに、早速居なくなって、現在進行形で問題起こして!」
気のせいか、ルイズの髪が逆立っているようにも見える。
「小娘、私は徴税関のチュレンヌだぞ!」
無視されて、チュレンヌの矛先がルイズに向く。
「私は、ヴァリエール侯爵家の三女、
ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
ルイズが自分の身分を淀む事無く言いあげる。
「ヴァ、ヴァリエール!も、申し上げございません、失礼しました!」
名前を聞いて、脱兎のごとく逃げ出す。
それには目もくれず、ルイズは店内に視線を固定する。
「さて、アンタ達また問題起こして・・・・」
大団円とはならず、ルイズの説教が20分ほど店内に響き渡った。
235ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:24:36 ID:lT3jWWdh
「ありがとう、シエスタ、みんなもまた来てね」
夕方になり、ジェシカがルイズ達との別れを惜しむ。
「騒がせてごめんね、ジェシカ」
「ジェシカ、あの服、また着たいわ」
キュルケはあの格好を気に入ったようだ。
「私は、もういい」
タバサはお気に召さなかった。
「ジェシカ、また来るぜ」
「ジェシカ殿、お元気で」
二人も別れの言葉を告げる。
「アンタ達、帰るわよ。日が暮れるわ」
ルイズが、帰宅を促しジェシカの店を離れた。

「あー、面白かった。」
シルフィードの上でキュルケが伸びをする。
「きゅいきゅい」
自分も連れてって欲しかったと言わんばかりに、不満の声を上げる。
「楽しかったじゃないわよ!言ってるそばから問題を起こして!」
ルイズが声を荒げる。
「すいません、ミス・ヴァリエール・・ところで、ニューさんの杖は見つかりました?」
シエスタがルイズの話題の矛先を変える。
「無かったわ、あの馬鹿ゴーレム、やたらと注文が多くて・・・後、
シエスタ、そんない堅苦しくしなくていいわ、ルイズでいいわよ!」
「じゃぁ・・・はい、ルイズ様」
少し間をおいて、シエスタが答える。
「ルイズも寛大になったわね」
「アイツらよりも、シエスタの方が遥かにいいわ」
(あのトラブルメーカー達と会ってから、何かしら問題ばかり起こっている気がするわ)
さすがに、今日はもう何も起きないだろう・・・
「あら、学園が騒がしいですね」
音に気づき、シエスタが学園に目を向ける。
そこには、巨大なゴーレムが学園の塀を超える所だった。
236ゼロの騎士団:2009/01/30(金) 22:25:03 ID:lT3jWWdh
「なによ、あれ・・・」
ルイズ達とほぼ変わらない高さの目線のゴーレムを見て、ルイズは唖然とした。
「多分、土くれのフーケ」
タバサが特徴から推測する。
「フーケってあの?」
自身が借りた名にキュルケが聞き返す。
「どうするのよ!逃げられちゃうわよ!」
ルイズが杖を向けて吠える。
「どうもできないわよ!あなたは飛べないし、シエスタもいるのよ」
キュルケがルイズの無謀な行いを制止させる。
迂闊に近づく事が出来ず、周辺を飛び回るのが、関の山である。
「ちっ!厄介なのに見つかったね」
(アイツ等が、帰ってくる前に完了したかったんだけどね)
心の中で、自身の手際の悪さに、土くれのフーケが舌打ちする。
学園を出た所で、自身のゴーレムを元の土に戻す。
「今よ!あれだけのゴーレムそう何度も作れないわ、
見つけ出すのよ!ダバサ、シルフィードを下げて」
キュルケがダバサとシルフィードに指示を出し、降下させようとする。
「だめ、砂ぼこりで視界が見えない、迂闊に降りるのは危険」
大量の土が崩れ落ちて、周囲に多大な量の砂埃が舞う。
「魔法を戻すと同時に、着地した。おそらく、探す事は不可能」
タバサが、安全な少しは離れた路道に、シルフィードを降下させる。
「タバサ、大丈夫か」
「ゼータさん、土くれのフーケが現れたんです。」
シエスタが、状況を説明すると遅れて二人がやってくる。
「遅いわよ、ニュー!」
「ルイズなに八つ当たりしているの、ニューのせいじゃないでしょ!」
八つ当たり気味なルイズの罵声に、キュルケも怒りを覚える。
「とりあえずは、学院に戻りましょう、明日になれば、今日の事を聞かれるわ」
キュルケが学院に戻る事を提案し、みんな無言で戻って行った。
(私、何もできないのに、ニューに酷い事を言っちゃった・・・)
自身が何も出来ず、挙句、ニューに当たってしまった、ルイズの表情は誰よりも暗かった。

「秘宝の一部、確かに領収いたしました。怪盗 土くれのフーケ」
壁が壊された宝物庫から見える。その文字は学院にとって何よりも屈辱だった。


「17おめぇ、使い手じゃないな」
魔剣 デルフリンガー
魔剣Xとは関係ない
HP +200 (攻撃力が上がる。)

「18いらっしゃいませ、魅惑の妖精にようこそ」
町娘 ジェシカ
今回、急遽出演する。
HP 50 (相手の動きを止める)
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:32:32 ID:aqozC/4m
ぐあ、投下中に失礼したorz
……吊ってくる
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:40:59 ID:SOBVubox
騎士団の人、乙です!
今回はイベント満載の話でしたね
まさかシルフィードが出てくるとは思わなかった
どうやって『友達』になったのか気になりますね
次回も楽しみにしております
239代理:2009/01/30(金) 22:42:26 ID:meUcuiBE
以上で投下終了です。
1部はあと2話で終了の予定になります。

すいません最後の投下終了だけ、猿さん食らいました。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:50:41 ID:wZzDACbi
乙ガス騎士団

・・・ぬぅ、OVAは一通り見たはずなのに、アレックス隊長がとんと記憶にない。
つーかガンレックス=アレックスとばっかし思ってたぜw
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:55:29 ID:19T2SbFA
そう言えばGガン編に入ったら、シャッフル騎士団とかいうのが出てきてたな。
キングガンダムU世と、ゼフィランサスと、ネオガンダムと、ゼロガンダムだったっけ?

機甲神編は好きだったなぁ…。ガンジェノサイダーがカッコよかった…。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 22:55:37 ID:kXLq2VES
>>240
3章のアレックスは封印としてチョバムアーマー着せられてほとんど何もやらせてもらえなかったしなぁ
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:04:17 ID:kXLq2VES
>>241
ロードエルガイヤー、ロードガンレックス、ロードドラグーン
の奴か
キングガンダムU世はロードヴァトラスという機体に乗ってるらしい

そういえばクラウンナイトガンダムのときに一番最初に手に入れた剣はヴァトラスの剣だっけ
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:21:59 ID:19T2SbFA
>>243
円卓の騎士編は、センチネルとかの重箱の隅をつつくようなガンダムが出て来てたなぁ。
まあ、その頃は武者もそんな感じだったが。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:27:51 ID:DzpuTFpK
聖機兵だったけ?巨大ロボのデフォルメキャラが巨大ロボに乗るという・・・
あれが終った辺りから、掲載誌の購読やめちゃったから、その後の話題はまったくついていけないが・・・
Gガン編とか聞くと、読んどけばよかったなあと今更ながらに思ったよ。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:32:02 ID:kXLq2VES
>>245
たしか
聖機兵(いろいろごちゃ混ぜ?)

機甲神(ネオガンダム・ゴッドマーズ・セーラームーン)

黄金伝説(Gガンダム)

って流れだったような
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:34:04 ID:C6FTOYFQ
>>246
ゼロガンダムが抜けておりますです。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:39:18 ID:eP1np8jl
フルカラー劇場のSDガンダムたちは召喚されて無いね
ガンダムがスプーンを持つと何故かルーンが反応したり

ガンダム「武器はスプーン!」
ルイズ「そんなのでどうやって戦うの!?」
ガンダム「これで敵の目玉を抉り出す!」
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:39:46 ID:19T2SbFA
騎士ガンダム編〜サイコゴーレム編〜アルガス騎士団編〜スペリオルドラゴン編(これは一くくりと考えてよい)

円卓の騎士編(アーサー王伝説にセンチネルなど)

聖騎兵編(このあたりからワケが分からなくなっていく)

ゼロガンダム編(アサルトバスターがラスボスに)

Gガン編(スペリオルドラゴンがデビルガンダムとして扱われる)

鎧闘神編(ヒイロとミリアルドが兄弟で天使でガンダムに変身して巨大化する)

こんな感じだったな。
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/30(金) 23:43:36 ID:19T2SbFA
しまった機甲神編を抜かしてた。
聖機兵編の後ね。
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:16:00 ID:QtMYpKSr
アルガス「家畜に神はいない!」
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:37:07 ID:HFSbtKBl
そのアルガス違う!
253名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:45:13 ID:8x+33TJn
でもそのアルガスが召喚されたら貴族と平民の間に壁があって
貴族が絶対的な強者として君臨するハルケギニアは理想郷かも
彼個人の実の振り方がどうなるかは興味ないが
254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:46:27 ID:QtMYpKSr
>>253
いきなり平民扱いで鬱ったりして
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:53:06 ID:7Kx3CTrj
まとめでゼロの伝説読んだんだが、
「魔法力はあるが術の方は駄目だ」って言わせてるが、
トワプリのリンクはで正統ゼルダシリーズ至上唯一魔力の無いリンクだぞ?
マジックアーマーもルピーを魔力に換えてるって設定なのに。
さらにトワプリ世界に杖を持って魔法を使うキャラは居ない。というか、魔法使える人間はガノンドロフのみ(他はミドナとザントだけ。ゴロンやゾーラに魔法を使う奴は居ない)。
ゼルダ姫も魔法を使わん、
後、ネタバレ注意だが、リンクはラストでクリア時の服のまま旅立っただろーが。村の服に戻ってる描写は無し。

作者はトワイライトプリンセスをプレイした事が無いのか、意図してオリジナルを混ぜてるのか。
どっちだ?
ゼルダからって事で応援はするけどさ〜。本編やらずにウィキペと攻略サイト見ながら書いてるってのは気分が悪いよね〜。
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:58:34 ID:VO+e0X6w
ドク・ハキイケカス[Dr.Haqiicecus]
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:59:25 ID:4CvFZnyh
>>254
PSP版のデスナイト(笑)のゾンビアルガス呼べば問題ないw
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 00:59:30 ID:nPt5PaRW
まあ、作品によってはゼロの使い魔の根本の設定が作者オリジナルというのは
よくあるが…元ネタにもオリジナル設定があるにはあるけど。
違いすぎたら…どうなんだろ?
う〜ん、オリジナル設定はどこまでならいいんだろ?
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:01:28 ID:8x+33TJn
伝説といえばブロリーの人は音沙汰無しだなぁ
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:02:00 ID:QtMYpKSr
>>257
あの顔色悪いほうか
あれってPS版じゃいないんだっけ?
261Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:06:42 ID:UhHsbCaO
ちょっと久し振りで皆さん乙です

大学の内定も決まったことだし、書き溜めていた話の修正も進んだことだし
ここらで第六話投下しますね

予約なければ、5分後位に投下させていただきます
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:11:07 ID:r9Gxv5IO
>>261
おめでとうございます

待機
263Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:13:28 ID:UhHsbCaO
Zero May Cry - 06


 昼食を食べ終えたルイズはネロを探しに庭を歩いていた。そんな彼女の口から漏れるのは不満の言葉。

「もう、私が折角ご飯あげようと思ったのに……」

 ふと、ルイズはあるものを目にする。

 生徒達の集団だ。中には「決闘」「見物」といった単語を口ずさんでいる者もいる。
 ルイズは彼らに歩み寄り、何があったのかを問いただした。

 そして。

「何考えてんのよーーーーー!!!! あの馬鹿犬ーーーーーーー!!!!」

 怒り冷めやらぬルイズの絶叫が辺りに響いたのだった。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 一方その頃ヴェストリの広場。

「逃げずに来たようだね。その勇気だけは誉めてあげよう」
「そりゃどうも。貴族の坊ちゃんに褒めてもらって光栄だぜ」

 慇懃に言われつつも、ギーシュは冷静を装ってネロの右腕をみやった。ギプスで覆われている件の右腕だ。
 その右腕を眺めながらギーシュはやれやれと頭を振った。

「右腕を怪我してる体で、よくもまぁ決闘を受ける気になったものだよ君は」

 小さく鼻を鳴らすネロ。

「ハッ、坊ちゃん相手には片腕で十分だって分からないか?」

 相変わらず不遜な態度のネロにギーシュはご立腹の様子だ。当のネロと言えば、楽しそうな笑みを崩さずにいる。
 そしてそんな二人の周りには彼らを囲むように生徒達の輪が出来上がっていた。その中には怯えた瞳でネロを見つめるシエスタの姿もある。おそらく彼らの殆どが期待しているのはギーシュがネロのことを痛めつけるシーンなのだろう。

 そのギャラリーの輪からやや外れた所に燃えるような赤い髪の女性と、それと対照的な青い髪の少女が佇んでいる。青い髪の少女は、先程の授業でネロの目に付いた少女だ。大きな杖を持っている。
 赤い髪の女性は面白そうな目でネロを見つめながら、隣の少女に尋ねた。
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:15:01 ID:m8Bp4XI7
OVAでアレックスがやった事と言えばハープ持ってきたくらいしか無いんじゃないか
ムーア界でもあんまり活躍してなかったし・・・
265Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:15:15 ID:UhHsbCaO
「ねぇタバサ。あの平民……ギーシュに勝てると思う?」

 タバサと呼ばれた青い髪の少女は手に持っている本から視線を逸らさずに答えた。その口調も見た目通りに大人しい。

「………分からない」

 そう言いながら、タバサは眼鏡越しにネロの方をちらりと見やった。勿論視線を送っただけだったが。
 そんなタバサの心境を知ってか知らずか、赤い髪の女性はネロに視線を送りつつ笑みを浮かべる。

「それにしても彼、何があんなに楽しそうなのかしらねぇ。自分のいる状況が分かってないのかしら」

 そう語る女性――キュルケの視線の先のネロは、確かに心底楽しそうな笑みを浮かべている。これから起こることが楽しみ楽しみで仕方ないといった風だ。
 しかし彼を見つめるキュルケの思惑も、「中々いい男じゃない」と、そんな場違いなものであったが。




「それじゃあ始めるとしようか。覚悟はできたかい、平民!」
「さっさとしろよ。こっちはまだ朝飯前なんだ」

 どこまでも不遜な態度なネロに言われたギーシュは、その手に持っていたバラの花を模した杖をを高く掲げ―――

「やめて!!」

 ―――突然広場に響いた声にその手の動きを止めた。

 ネロとギーシュ。二人分の視線の先には肩で息をするルイズの姿が。
 彼女はそのまま凄い剣幕でネロに歩み寄ってくる。

「もう何考えてるのよ! この馬鹿!」
「別にいいだろ? ちょっとしたお遊びさ」

 相も変わらず不敵な笑みでそう言うネロに、ルイズはさらに声を張り上げて彼を説得しようとした。

「遊びじゃ済まないわよ! 平民のあんたが貴族に勝てるわけないでしょ!」
「笑えない冗談だな、そいつは」

 ルイズから視線を逸らし、ギーシュを挑発するように彼に向かって笑うネロ。
 そのネロの態度にギーシュの怒りも頂点に達したのか、ギーシュはネロの隣りのルイズに向かって叫んだ。

「ルイズ! 早く離れたまえ! もう決闘は始まっている!」
「ギーシュ! あんたもいい加減にしてよ! 大体、決闘は禁止されているのに……!」
「それは貴族と貴族の場合だ。彼は平民だろう? 問題は……ないはずさっ!」

 言い終えるや否や、ギーシュは杖を横薙ぎに振るった。そこからこぼれた花びらが地面に落ちる……と、それは眩い光を発して人の形を作った。
 その光景を見ていたネロは唇を尖らせて「ヒュウ」と口を鳴らした。
「僕の名は『青銅』のギーシュ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手致そう」

 眼前に現れた甲冑を目にして、ネロの脳裏に魔剣教団が生み出した鎧の人造兵士がよみがえる。
 ネロは唇を皮肉に歪めると、ギーシュを大きく手招きするようにして言った。

「鎧の相手はもうたくさんだが、ヤッてやるぜ。来いよ!」
266Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:16:25 ID:UhHsbCaO
 ネロの挑発に乗る様にしてギーシュは彼にゴーレムを向かわせる。
 その動きは確かに普通の人間から見れば速い。それこそ、何もする事ができずに腹部にその拳を叩き込まれてしまうほどに。


 ―――だが、今ギーシュの前に立つ男は、断じて『普通』の男ではなかった―――

「フン!!」

 己に迫った拳にカウンターを取るようにしてネロの左拳が繰り出される。
 動きはでたらめな我流とも言えるそれだが、そこに秘められた一撃の重さだけは本物だ。

 ぐしゃりと、異様な音と共にゴーレムの背中からネロの左拳が突き出た。

 その瞬間、広場は暫くの間静寂に包まれていた。
 青銅の鎧を拳で貫く―――普通の人間ではあり得ないことだろう。常識では考えられない事態を前にして、生徒達は一様に銅像のように固まってしまっていた。

「邪魔だ」

 短く言って、ネロは己に寄りかかるようにして倒れ来たゴーレムを蹴り飛ばした。さらに頭部が吹き飛ぶゴーレム。
 頭部を失った、胴体に穴の開いたゴーレムが足下に倒れ込み、それまでの呆けた表情を驚愕の表情に一変させてギーシュはネロを見やった。

「どうした、終りか? これじゃ遊びにもならないぜ?」
「クッ! 舐めるな! 行けぇっ!!」


 今度は同時に六対のゴーレムを作り出すギーシュ。そしてそれを一斉にネロへ向かわせる。ギーシュにとって、これが己にできる最高の攻撃方法だった。
 しかしそれでも、先程よりも圧倒的な不利な立場に追い込まれつつも、ネロはにやりと、より一層に剣呑な雰囲気の笑みを作ってゴーレムの集団へ自ら突っ込んだ。


「ハアッ!!」


 繰り出した左ストレートに正面のゴーレムが砕け散る。続けて放った同じ左腕でのボディーブローにその隣の一体が打ち抜かれた。
 両腕ならともかく、片腕だけでこれだけの威力とスピードを秘めた連携を繰り出せる人間がどこにいるだろうか。この広場の誰もが完璧にはネロの動きを見切れてはいなかった。

「ネリヤァ!!」

 さらに奥の一体目掛けてハイキックを繰り出す。たったの一撃でそのワルキューレは上半身が吹き飛んだ。驚異的な破壊力だった。

「C'mon!」

 下半身だけになったゴーレムの近場にいた別の一体はそのまま流れるように繰り出された蹴りの連打を受けて全身をバラバラにされる。その一連の動きにも無駄や淀みは全くない。

「イィヤアッ!!」
267Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:17:33 ID:UhHsbCaO
 続けざまに放たれた二連続の回し蹴りが、五体目のゴーレムを弾き飛ばした。
 普通に見ただけではただの回し蹴りだったが、ゴーレムの胴体が吹き飛んだのを見ればそこに秘められた威力も自ずと知れることだろう。

「Be Gone!」

 そしてネロは最後の一体目掛けて地面すれすれから凄まじい勢いを乗せた左アッパーを繰り出した。その動きも、並の人間が捉える事の出来る速度を超えている。
 そんな強烈な一撃を受けたゴーレムはまるで紙くずのように四散しながらその体の破片を宙に散らした。広場へその破片が降り注ぐ。
 六対のゴーレムがネロへ襲い掛かってきて、彼がそれを全て打ち倒すまでの時間は、おそらく十秒にも満たないであろう。

 ネロは己のゴーレムの残骸を見つめながら呆然とするギーシュへ視線を移し、不適に笑って言った。

「Not play,huh?《遊びじゃないのか? ハッ》」

 その一言を受けてギーシュは我に返る。
 悔しげに歯がみしたギーシュだが、実際に自分にはもう戦う力は残されていない。怪物のような強さを持つネロと真っ向から向き合う強さなどギーシュにあるはずもない。

「手品はお終いかい、坊ちゃん?」
「うぅ……!」

 そう判断したギーシュはバラの杖を握る手をゆっくりと降ろしてネロから視線を逸らしつつ言った。

「……悔しいけど……僕の負けだ………」

 ギーシュの言葉に、ネロは満足したように薄く笑ったが、しかし内心では彼が満足していたかどうかは怪しい。
 命令でもなければ攻撃する意志のない者を痛めつけるのはネロの好むところではない。彼がこれ以上ギーシュを攻撃することはないだろう。
 しかし一方でネロにはまだ戦い足りないという思いもある。要は―――ギーシュではネロを満足させるにはほど多かったということだろう。
 どこかくすぶった思いを抱えながらネロは呆けたように驚いているルイズの方へ歩いた。
 対して周りの生徒達は、一瞬の決着に呆気に取られて喚声すらあげる事ができずにいる。
 その生徒達に混じってこの決闘を見ていたシエスタは胸に手をあて安堵の息を吐き出し、遠巻きにこの決闘を見ていたキュルケは熱のこもった視線をネロに向けている。
彼女の隣のタバサは同じようにネロの方を見つめながらこの少女にしては珍しい驚きの表情を見せていた。とは言っても、他の者から見れば殆ど何時もと変わらぬ表情に見えるだろうが。





「あ…あんたって何者なの? 素手で青銅を殴り壊すなんて聞いたことないわよ……」
「そうか? 別にどうってことねえよ」

 あれほどの動きを披露しておきながらネロの息が切れた様子はない。無論、その余裕のある表情も変わらない。
 ネロは短くそれだけ言うとそれ以上の会話を拒むかのようにルイズに背中を向けてどこかへ歩き出してしまった。慌てて追いかけるルイズ。

「ちょっと! どこ行くのよ!」
「もうここに用はないだろ。退屈しのぎも終わったしな」
268Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:19:30 ID:UhHsbCaO
 退屈しのぎ―――今の決闘がネロにとっては退屈しのぎ程度のものであることを悟り、ルイズは改めて自分の使い魔のデタラメな強さを思って眩暈を覚えた。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 時刻はネロとギーシュの決闘が終了する前に戻る。

「決闘?」
「ええ。ヴェストリの広場で生徒達による決闘が行われているらしいのですが……」

 ロングビルからそう報告を受けたオスマンとコルベールは部屋の中に置かれている鏡に広場の様子を映し出すと、それに見入った。

「止めなくてよいのですか?」
「子供の喧嘩じゃろう。少し様子を見て、それから判断すればよい」

 ロングビルの問いにそう答えたオスマン、そしてコルベールは金髪の少年、ギーシュと対峙する白髪の青年を見て目を見開いた。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:23:28 ID:r9Gxv5IO
支援
270Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:29:04 ID:UhHsbCaO
「彼は! オールド・オスマン! 今すぐ止めるべきです!」
「まぁまぁ落ち着きたまえ、ミスタ・コルベール。彼が本当に“そうなのか”、見極める良い機会じゃ」

 ロングビルはオスマンが口にした言葉に思わず首を傾げたが、それが何なのかは問わなかった。

 やがて始まるネロとギーシュの決闘。
 だが、それは十秒も経たない内に終わりを告げた。

「フム……強いな、彼は」

 ネロの戦いぶりを見ていたオスマンが口を開く。

「彼は己の武器を使いもしませんでしたね……。それに、彼は右腕を怪我していますし……」

 ギーシュがネロに胸倉を掴まれた辺りで平静を失いそうになっていたコルベールも辛うじて口を開いた。

「やれやれ………。とんでもない使い魔を召喚したもんじゃのぅ、ミス・ヴァリエールも」
「全くです。彼の全力がどんなものなのか……想像もつきませんな」

 ため息混じりに呟くオスマンとコルベールの話を耳にして、すぐ側にいたロングビルは顔を蒼白にしていた。








―――to be continued…….
271Zero May Cry:2009/01/31(土) 01:37:03 ID:UhHsbCaO
以上で投下終了です
なんか妙に間が相手しましたが自分のPCのせいです;;

それではまた次よろしくお願いします
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 01:49:28 ID:bWb8DEye
遅レスで申し訳ないが>>234の誤字報告、ヴァリエールは侯爵ではなく公爵っす。
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 02:42:06 ID:GuyVDJKk
ルイズが仮面ノリダーを召喚

「恐怖!閃光男」との対決

「はーい、偏在のみなさん、整列ー! のっりっだぁぁぁ…海ー!」
偏在全滅
という電波は既出だろうか?
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 02:50:08 ID:dumWbBpY
ノリダーのとどめは高いところからの落下死だから、アルビオンから突き落とすのかな?
ぜひエルザやフーケにはよい子になれビームを使ってほしい。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 02:53:39 ID:MM0C/kYN
ビダーシャルをスーパーノリダーちょいで撃破
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 03:07:11 ID:8x+33TJn
7万の兵を相手に
「ノリダ〜・・・み〜んな纏めてホイッ!」
で一撃
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 03:11:58 ID:CDhTLT76
そうか、このスレは俺と同年代ばかりだから居心地がいいのか
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 03:27:41 ID:pBFQHRN7
「何じゃ御主はっ!?」
『うわあぁぁぁぁっ! オールド・オスマンが二人になったぁぁぁぁっっ!?』

「そりゃこっちの台詞ぢゃっ!?」
『うわあぁぁぁぁっ! 大官寺長官が二人になったぁぁぁぁっっ!?』

ルイズが愚連艦隊を召喚したようです。
……てーか、海は何処だw
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 03:34:17 ID:dUeETS9L
宇宙を救った愚連艦隊が召喚されるわけですね
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 04:37:20 ID:0RVUS+8n
>>279

ル「やったわ!」
シ「どこだここは!」
ヨ「アンチスパイラルの罠?」
シ「まあいい、飛ぶぞ!」
――バシュン!
ル「え、え? あれ? あの船はどこにいったの?」

そしてそのまま螺旋力のワープで消えていくんですね。
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 09:14:45 ID:DlcB+JdT
月クラスのサイズの船を召喚するとな
282名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:03:17 ID:eNCp8m0q
流石に月サイズの船だとハルケギニアが滅ぶので、地上への移送船代わりのアークグレンではないかと思われます。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:16:43 ID:KfLy3kTK
>278
リリなの×ゼロ魔×愚連 超次元大決戦!ですね、わかります
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:29:17 ID:3d357VeN
>>254
遅レスだけどそうなりそうだよな
貴族だと言っても没落貴族なんだから、ゼロ魔世界の貴族達からは魔法が使えない上に貴族の地位を奪われた
まさしく『ゼロ』の使い魔だと嘲笑され、平民達からは言動のせいで嫌われて誰にも相手されずに孤立しそうだ

理解者がルイズとフーケくらいしかいそうにないんで、凄く欝な展開になるのは間違いない
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:32:40 ID:MgQA+G1T
ゼロ魔側でなくアルガスの成長物語になるんだな
286名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:44:30 ID:3d357VeN
フーケ戦辺りで手柄を立てようと真っ先に突っ込むアルガスとそれを止めようとするルイズという展開とかね

ルイズ 「あんた、何考えてんの!? 
      いくら剣の腕が立つからってあんなでかいゴーレムに立ち向かうなんて自殺行為よ!!」
アルガス 「うるさい! 俺がフーケを捕まえて手柄を立てるんだ!!
        あのタバサとかいう小娘のようにシュバリエになって学院の能無し貴族や豚共を黙らせるんだ!!」


アルガスの成長物語であると同時に奴を反面教師として成長するルイズの物語
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 10:46:11 ID:VuO4ySr/
支配されるという特権を与えてもらったりするのか
288I feel COKE!(1レスのネタ):2009/01/31(土) 11:08:35 ID:JVXM/4Ea
         錬金の授業中           

シュヴルーズ「さぁ、錬金する物を思い浮かべるのです」
ルイズ   「この石ころよ…我の求めに応じてその姿を変えよ…」
 
          ドカーン!

キュルケ  「ちょっとルイズ!あんた何回目の失敗よ!」
ルイズ   「うるさいわね!ちょっと爆発しちゃっただけじゃない!」
ギーシュ  「君たちいい加減にしないか!みんなイライラしすぎだぞ」

シエスタ  「みなさ〜ん、この辺でコークでも飲んでリフレッシュしませんか?」
シュヴルーズ「わたくしはどうも、色々出てる最近のコーラには馴染めませんわ」
シエスタ  「そんなミス・シュヴルーズにはスタンダードな赤い缶のコーラ」
ルイズ   「わたし最近ダイエットしてて、コーラはちょっとね〜」
シエスタ  「ミス・ヴァリエールのようなお方にはカロリーゼロのコカコーラ・ゼロ」
キュルケ  「う〜ん、コーラだとどうしても栄養が偏るのよ」
シエスタ  「ご安心ください、ビタミン添加で体にいいコカコーラ・プラス」

         プシュッ

ルイズ   「んぐんぐんぐ…ぷっはぁ〜、ゲフッ…さぁもう一度頑張るわよ!」  
キュルケ  「YEAH!」

              ドカーン

シュヴルーズ 「素晴らしいミスヴァリエール、純金を錬金するなんて」
ギーシュ   「まさにコカコーラ級の大成功だな!」                            
 
                   I feel coke
                    コカコーラを召喚    
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 11:23:01 ID:4iG5y+UI
よくわからんがその手のネタなら、フリスクのほうがよくね?
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 11:52:55 ID:Z/eRSFn6
ペプシマーン
シュワー
を思い出した
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 12:00:09 ID:beFvLDG6
>>289
結局失敗じゃねえか!
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 12:20:23 ID:bDWqwVtk
タブクリアとジョルトコーラは何処に消えたのやら…
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 12:27:00 ID:cK3W3Rye
>>279
グレン団が救ったのはあくまで自分の星と螺旋族だけで、
今後宇宙が守れるかどうかは明示されていない上に、
「宇宙を救う」という観点だけで見ればアンチスパイラルを滅ぼした分だけ危機に陥れてる気もするぞ。

べ、別に宇宙を救った紅蓮艦隊と言えばマップスのガッハ艦隊が真っ先に浮かんだからいちゃもんつけてるわけじゃないんだからね!
294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 12:28:12 ID:cK3W3Rye
アンカミス、>>280
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 12:34:58 ID:vOP85MJS
近年のペプシコーラは迷走してるよなぁ
キューカンバーとか白いのとか
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:00:43 ID:uKJtFhtq
ボトルギャップ付きのペプシを見ないな
00が出ると思ってたんだが
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:03:34 ID:1ueRpcX8
ゲッター線におかされてしまえ
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:05:30 ID:A+I0O2M3
>>278-279
宇宙編の愚連艦隊の装甲も「紙」で出来てそうだよな……
それはそうと羅門の作品だと「天軍戦国史」の方がゼロ魔とは合いそうだ。
コルベールと異常に相性がいいし。
299名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:32:29 ID:4wX6ZI7u
>>227
亀だけど騎士団の人ー! ゼロ魔の世界にペガサス居るからー!
ロマリアの聖堂騎士団で使われてるからー!
300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:35:14 ID:YqFVLuXV
騎士団のゼロ魔の世界にはペガサスはいないという方向で
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:38:29 ID:sprJwU5c
ペガサスか

食ったら鳥っぽい味がするのか馬っぽい味がするのか興味深いところだ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:55:08 ID:psHa3Icj
「これは本物のペガサスじゃない」
「なんだとぉぉ!?」
「一週間だ。一週間後に、本物のペガサスを食わせてやる・・・」
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 13:56:51 ID:uKJtFhtq
天馬は神話の存在だろ?
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:04:58 ID:yKKqy1er
だが所詮はブロンズ
305ゼロの恋姫 1:2009/01/31(土) 14:11:32 ID:0tbdk1IX
 これはゲーム恋姫?無双のハーレムエンドの一刀をルイズが召喚した設定です。
一応、全員出す予定です。
これは無印なので“真”のキャラは出て来ません。


 佐慈達を倒しこの外史を救うため奉山へと向かい戦った俺達。
そこで俺がこの世界のに来た原因である鏡を手に入れた。しかし、
その途端激しい揺れが起こった。そしてそこでおれの意識は途切れた。

 ハルケギニア大陸にあるトリステイン魔法学校そこでは使い魔を召喚
するための儀式が行はれていた。
ドッカーン  ドッカーン
先ほどから何度も爆発音が響いていた。
「おい!まだかよ」
「いい加減、諦めたらどうだルイズ」
周りから中心にいる少女“ルイズ”に向かって小馬鹿にした声がしていた。
「ミス・ヴァリエール、今日のところは一旦止めて
また明日行ってはどうかね?」
教師らしき男がルイズに向かって言った。
「そうよルイズ、私まだなんだから早くしてよね」
赤く長い髪の少女が言った。
「っく、ミスター・コルベールあともう1回もう1回だけやらせて下さい
それでダメだったら今日は諦めますから」
ルイズの必死の願いに教師は
「わかった。では後1回だ。それでダメなら今日は諦めるんだよ。」
「ミス・ツェルプストーそれで良いですね?」
「ええ、構いませんわ」
ドクン ドクン
ルイズはこれまで以上に集中して呪文を唱えた。その結果
ドッカーーーン
今まで以上の爆発が起こった。
「ケホッケホ、私の使い魔は?」
爆発の中心を見るとそこには1人の少年がいた。
「痛たた、今度のはかなり激しいな。」
「ここはどこだ?」
少年が周りを見るとそこに1人の少女がいた。その少女は少年を見るなり
「あんた誰?」
と問いかけて来た。
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:16:38 ID:1ueRpcX8
そんなことよりペルソナは何時復活するんだ?
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:21:41 ID:nWpZSvIx
sageてない、投下予告無いってことで荒らし認定でOK?
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:31:06 ID:YouT94Ae
うん荒らしだな
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:32:23 ID:CedVDA+i
小ネタ投下したいんだがいいかい
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:34:48 ID:3d357VeN
どの作品のどのキャラを召喚か宣言してからの方がいいと思う
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 14:36:17 ID:1ueRpcX8
ついさっきも来てたし
312サイン・オブ・ゼロ:2009/01/31(土) 14:42:46 ID:CedVDA+i
まあさっくり1〜2レスくらいで終わると思うので さっくりと


ルイズが召喚したのは、やたらと小さい、ぷにゅぷにゅとした白いネズミだった。
大見得を切った挙句、何十回という失敗の末、やっと出てきた使い魔がコレとは……
しかしこの魔法魔術学校の学長であるオールド・オスマンも、ネズミを使い魔にしているのだ。
みんな内心しょぼいと思いながらも、口に出して言うことはなかった。

さて暴れるネズミのコントラクト・サーヴァントを済ませたところで、はたとルイズは気がついた。
てゆーか、ネズミって空飛ばないわよね?
だがこの白いネズミは、背中にある指先ほどの大きさの羽を使って、器用に飛んでみせるのだ。
そして気づいたときには、教科書をがりがり齧っていた。
「ってコラ何やってんのよこのバカネズミーッ!?」
「ガガガーッ!?」
何とか引っつかんでそのまま窓の外へと放り投げる。そしてはたと気づいた。
てゆーか、ネズミってガガガって鳴くっけ?
とか思っている間に、そのネズミが高速マッハで部屋に飛び込んできた。まるで風魔法の弾丸のような勢いだった。
「ガガ、ガガガ! ガガー!」
よく見ればグローブをつけてる手をぶんぶん振りながら、ネズミは抗議した。ようだった。
「ガガガじゃわからないわよ! ご主人様の教科書に齧りついたアンタが悪いのよこの駄ネズミ!!」
「ガガガガガーッ!!」
「だからガガガじゃわからないってば!!」


結局のところ、その白ネズミの真価が発揮されたのは、土くれのフーケから「白きトーチ」と呼ばれる宝物を奪い返したときだった。
頭に浮かんだその呪文を唱えると、トーチの中に白ネズミが吸い込まれ、そして。
吹き抜ける風と共に現れたのは、真っ白な身体に立派な翼を持った、巨大な風韻竜だったのだ。
実のところ、この世界の基準で考えれば、大当たりの使い魔だったのかもしれない。

「おい……お前、俺のことさんざん馬鹿にしただろ」

――多少、性格がヤンキーなところに、目を瞑れば。


何処とも知らない暗闇で、彼は笑った。シロン、と白き風韻竜の名を呼んで。
「そうか、お前もこの世界に来ていたのだな……シロン。んふふふふ……」
暗闇の中に、怪しげな狂気を孕んだ笑い声が響いた。
「…………しかし、来たところで…………どうすれば、いいんでしょうかねえ。これから」
彼はため息をついた。
実際のところ、彼らは風韻竜ではない。地球ではレジェンズと呼ばれていた。
地球が文明に傷つけられたとき、それを滅ぼしてバランスをとる……のが、彼らの役目だった。
だがしかし。ここは地球じゃないし、文明の黄昏時というには文明レベルが低い。
風も水も土も炎も何もかも綺麗だ。ぶっちゃけ戦う理由は全然まったくちっともなかった。

「…………とりあえず、誰か私をリボーンしてくれませんかねぇ……」

そう言って、白ネズミそっくりな黒ネズミ……ランシーンは、ため息をついた。
313サイン・オブ・ゼロ:2009/01/31(土) 14:48:30 ID:CedVDA+i
というわけでレジェンズよりシロンとランシーンでした
タイトルはたまたま手元にあったGBA版から
ぶっちゃけあいつら地球の化身だから召喚されないんじゃないかと思ったけどそれは置いておく
スレお借りしました
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:03:35 ID:4icPy4gu
もうどうにも乙が止まらない
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:15:27 ID:EXMAAONq
ああ、ねずっちょかw

アニメしか見てないけどレジェンズは結構好きだったな。
316ゼロの恋姫 2:2009/01/31(土) 15:49:19 ID:0tbdk1IX
「あんた誰?」
目が合うなりいきなりそう聞かれた。
「えっと、俺の名前は北郷一刀っていうんだけど君の名前は?」
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール それよりあんた一体何なのよ!」
「え?だから本郷・・・」
「名前を聞いてるんじゃないわよ。なんであんたみたいな平民が召喚されるのよ」
「さすがはゼロのルイズ平民を召喚するなんてな」
周りからまた小馬鹿にした声が聞こえてきた。
「ミスター・コルベールもう1度召喚させて下さい」
「それはできないよミス・ヴァリエールこの召喚はとても神聖なものだやり直しはできない」
「そんな・・・」
「あのー、一体何が何なのかよくわからないんですけど」
キッ! とルイズがこっちを睨み
「感謝しなさいよ普通の平民だったありえないんですからね
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
呪文を唱えるとルイズは一刀にキスをした。
「!!!」
何人ものかわいい女性とキスをした一刀もいきなりの事に さすがに驚いた。
「えっと、あの、今のは一体・・・」
一刀が聞こうとすると左手に鋭い痛みを感じた。
「っぐ、あああ!  ハァハァ、何だったんだ今の痛みは?」
「大丈夫よただ使い魔のルーンが刻まれただけよ」
「使い魔の?それって一体・・・」
「ふむ、コントラクト・サーヴァントは1回で出来たようだね」
「え?あの、だから一体何が・・・」
「いいから後で説明してあげるからこっち来なさい」
一刀はルイズに強引に引っ張られて行った。
317ゼロの恋姫 2:2009/01/31(土) 15:50:08 ID:0tbdk1IX
「あんた誰?」
目が合うなりいきなりそう聞かれた。
「えっと、俺の名前は北郷一刀っていうんだけど君の名前は?」
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール それよりあんた一体何なのよ!」
「え?だから本郷・・・」
「名前を聞いてるんじゃないわよ。なんであんたみたいな平民が召喚されるのよ」
「さすがはゼロのルイズ平民を召喚するなんてな」
周りからまた小馬鹿にした声が聞こえてきた。
「ミスター・コルベールもう1度召喚させて下さい」
「それはできないよミス・ヴァリエールこの召喚はとても神聖なものだやり直しはできない」
「そんな・・・」
「あのー、一体何が何なのかよくわからないんですけど」
キッ! とルイズがこっちを睨み
「感謝しなさいよ普通の平民だったありえないんですからね
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
呪文を唱えるとルイズは一刀にキスをした。
「!!!」
何人ものかわいい女性とキスをした一刀もいきなりの事に さすがに驚いた。
「えっと、あの、今のは一体・・・」
一刀が聞こうとすると左手に鋭い痛みを感じた。
「っぐ、あああ!  ハァハァ、何だったんだ今の痛みは?」
「大丈夫よただ使い魔のルーンが刻まれただけよ」
「使い魔の?それって一体・・・」
「ふむ、コントラクト・サーヴァントは1回で出来たようだね」
「え?あの、だから一体何が・・・」
「いいから後で説明してあげるからこっち来なさい」
一刀はルイズに強引に引っ張られて行った。
318ゼロの恋姫:2009/01/31(土) 15:51:59 ID:0tbdk1IX
すいません。間違えて同じのを2回連続
で貼ってしまいました。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:52:47 ID:1ueRpcX8
スプリンガルドからバネ脚ジャックが呼ばれたようです

手足の長い跳ねる怪人の噂が魔法学校に木霊する…
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:53:35 ID:eTzqtmt6
ガガガーで勇者王を連想してしまった。アレ召喚したらやばいなw

サムスピのいろは召喚。
従順だし妖であるから使い魔としては上出来だとは思うんだが、ルイズがあの胸に耐えれるかが問題だ。
321ゼロの恋姫 3:2009/01/31(土) 15:54:44 ID:0tbdk1IX
ルイズが終わり今度は赤く長い髪をした少女が召喚の呪文を唱えた。
そしてそこには身の丈ほどもある青竜偃月刀を持った黒く長い髪の少女がいた。
「ここはどこだ?確か私はあやつらと戦っていて急に地震が起こりそれから・・・」
考え込む少女をよそに周りはざわめいていた。
「あのキュルケが平民を召喚した?」
「ウソだろ、確かトライアングルのメイジだろ・・・」
「いや待て、でもあの平民かなりかわいいぞ」
「ああ、確かにそれに武器を持ってるってことはどこかの兵士か?」
周りの騒がしさにようやく周りに気付いた。
「ん?何だこ奴らは」
「ふーん、あなたが私の使い魔なのね」
「使い魔とはなんだ?」
「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
キュルケで良いわあなた名前は?」
「私は姓は関、名は羽。字は雲長。北郷軍一の家臣だ」
「軍?って事はあなた軍人なの?えっと・・・」
「関羽だ。それよりここはどこだ?」
「ああ、ここはトリステインの魔法学校よ。それは私の使い魔として召喚したから。
というわけでさっさと コントラクト・サーヴァントを済ませるわね。」
「何?ちょっと待て何だその、こんとらくと何とやらは・・」
「我が名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そう言いルイズと同じようにキスをした。
「なななっ!い、いきなり何をする」
そう言って偃月刀をキュルケに向けた。しかし、
「っく、何だこれは」
背中にルーンが刻まれた痛みに少しよろめいてしまった。
「大丈夫よルーンが刻まれただけだからすぐに痛みは引くわ」
「だからその使い魔というのは一体・・・」

その時
「・・・愛紗?」
「え?」
自分の真名を呼ばれ振り向くとそこには一刀が居た。
「愛・・・?あんた何言ってるの?」
ルイズの声が聞こえないかのように一刀は愛紗も見ていた。
「ご主人様?」
もう会えなくなると思っていた大切な人が目の前に居た。愛紗はただそれが嬉しく一刀の方に向かって走り出した。
それは一刀も同じなのか愛紗に向かって走り出した。
「ご主人様ーーー」
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:55:41 ID:eTzqtmt6
てか恋姫の人sageれ
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:56:40 ID:1ueRpcX8
>>320
やっぱりそれは連想するよなww
ゾンダー乱入も面白そうだが
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 15:58:16 ID:5FlrAtf/
ゾンダーは機械と融合する性質があるからなぁ、ハルケギニアはちと難しい。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:00:43 ID:5/GeCvkh
>320
鶴の化身だっけ?
しかしいろはは罠に掛かったところを助けてくれた旦那さまにぞっこんだぜ

むしろ琉球出身の褐色娘をですね(ry
アイヌ娘でも可だが
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:04:03 ID:eTzqtmt6
同時にパルパレーパをジョゼフが召喚とか…

>>325
助けてくれたご主人様=プレイヤーって解釈らしいよ
このプレイヤーって所をルイズに置き換えれば(胸以外の)問題は無いじゃないか
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:14:19 ID:8cnHHfPT
>>325
琉球出身の子は零EDがひどかったな(欝的な意味で)、首切りバサラも大概だけど
アイヌ娘は妹の方は天下だとくぎゅだったな
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:18:43 ID:frYcbMcf
真エンド後の一刀さん召喚とか本人にとっちゃBADENDも甚だしいな
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:21:18 ID:50q+tUEQ
>ガガガ
メンテの問題でハードル高いんだよな。
フルスペック出せない分ガガガ強杉にはならないけど、逆に持味も出しにくいしサイボーグ・ガイだと死にかねん。

過去だと超竜神とピッツァあたりが呼ばれてたっけ?
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:31:12 ID:5FlrAtf/
エヴォリュダーでも特徴が出しにくいしな。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:33:06 ID:gNqWTHv4
EI01を呼び出して、開幕直後にルイズ瀕死→魔法メインのサイボーグに!!という展開も面白そうだが、
完全にストーリーがオリジナルになるな。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:40:37 ID:nIyVKFYy
恋姫は専用スレがあると思うけど

>>327
「いただきまーす」とかも大概だよなw
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:44:32 ID:3d357VeN
wikiで調べてみたら……いいのかこんなキャラ出して orz
あと破沙羅は確か亡霊だよな?
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:45:24 ID:afNwNI19
乱馬1/2から呪泉郷を召喚
というか広場がまるまる呪泉郷になっちゃう。
泉と契約しようとしたルイズが落ちたり、ほかの生徒が不注意で落ちたりして大混乱。

そして乱馬たちは呪泉郷が無くなって涙目に。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:49:58 ID:eTzqtmt6
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我が使い魔とn…「いだだぎまぁず 」
(省略)
「ごぢぞうざまでぢだぁ」

こうですか?解りたくもありませんw
336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:55:18 ID:nIyVKFYy
>>335
それ以上派生の使用もないネタだw
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:58:14 ID:3d357VeN
>>335
今まで色んな化け物が召喚されたが(タイラントとか△頭とかエイリアン)ある意味一番最悪な奴の召喚だな
そのゲームやったことない俺でも欝になる
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:03:53 ID:eTzqtmt6
あとサムライスピリッツのキャラでネタになりそうなのは

「よかろう君に礼儀を教えてやる。ちょうどいい腹ごなしd…「ウゴハァ!!」
「ああっ!!右京さんが血を吐いた!!」
「謝れギーシュ!!右京さんに謝れ!!」
とかかな?w
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:06:35 ID:TtrrZLBi
サムスピなら黒子を召喚だ。
特技に蘇生(灰やバラバラ肉片からも可)や見た技を覚えるとか。
武器の復元もできる。

キュルケが炎邪を召喚というのもありかな。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:10:38 ID:8cnHHfPT
>>337
ゲームだとEDで娘を喰ってるからなぁ。
破沙羅は斬紅朗に恋人も一緒に殺された人間で、その恨みから亡霊に。
零だとパラレルながらも恋人を殺したのは……、詳しくは自分で調べてね。
でも、零作った会社が今はアルカナだもんなぁ、驚きだぜ
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:37:14 ID:eTzqtmt6
>>339
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ〜。フレイムー」
「ンドゥオッッゴルルァラアァァァァ!!」
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:44:04 ID:pFoRgh0G
聖闘士星矢LCの、箱舟に向けてガルーダフラップで飛ばされてる途中のバイオレートを召喚
ゲートから凄い勢いで地面に着弾して地面が割れて近くにいたルイズやコルベール、かなり遠くにいたはずの生徒達までまとめてウギャー
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:55:46 ID:E21mguQ/
ガガガ召喚の流れでタバサがボルフォッグ召喚、
「ビックボルフォッグd(ry」な流れを連想したけどキャラが違い過ぎる……

実際ボルフォッグ召喚したらパトカー形態で高速移動、
ホログラフィックカムフラージュで使い魔は見た!とか
他にも科学捜査まで単独で出来てしまう高機能っぷりで逆に動かし辛そうだな……
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 17:57:46 ID:XwWc6gFk
まあ、ナコルルか覇王丸、シャルロットあたりが1番ベーシックだろうねぇサムスピ勢なら。
幻十郎喚んだらギーシュが性的な意味でやばいことになるなww
あと同じSNKの剣劇格ゲー、月華の剣士のことも思い出してやってください><
345虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:00:19 ID:dH+ctaK0
18:05から投下させてください
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:00:40 ID:4JRzjh8Z
>>340
零の首斬り破沙羅のED見て来た…

本流じゃないことが唯一の救いだな。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:02:50 ID:OoFVlTAi
>>334
ルイズが双子になって虚無の担い手が増えました。

>>339
小ネタでシエスタが黒子の子孫ってのがあった気がw
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:03:54 ID:CedVDA+i
>>343
ボルフォッグがヘッジホッグに見えたので妄想
ソニック……一箇所に留まるわけがない ルイズ含めて現地妻作りまくり あっさり問題解決して去っていく
シャドウ……全く従わないかヤンデレのどっちか ガンダールヴなくとも普通に色々使える カオスコントロール危険
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:04:58 ID:8cnHHfPT
>>344
月華の剣士はサムスピに比べるといかんせん地味なのが……
350虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:05:36 ID:dH+ctaK0
ルイズの部屋は、貴族相手の宿『女神の杵』亭でも特に上等な部屋で、かなり立派な作りであった。
ワルドがワインとグラスを持って部屋にやって来ると、二人はテーブルに付き、ワインを開けた。
それぞれの杯にワインを注ぐと、ワルドはそれを掲げた。
「再会に」
ルイズはちょっと俯いて、杯をあわせた。かちん、とグラスが触れ合った。
「……心配なのかい?」
考え事をしているルイズの顔を、ワルドが覗き込んでいた。
「無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」
「……ええ。大任だもの。わたしなんかにやり遂げられるかどうか……」
「大丈夫だよ。きっと上手くいく。なにせ、ぼくが付いてるんだから」
「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね。あなたは昔から、とても頼もしかったもの。……それで、大事な話って?」
ワルドは遠くを見る目になって言った。
「覚えているかい?あの、お屋敷の中庭……」
「あの、池に浮かんだ小舟?」
ルイズは夢で見た光景を思い出す。ずいぶんと昔のことなのに、今でもよく覚えていた。
「きみは、いつもご両親に叱られたあと、あそこでいじけていたね。まるで捨てられた子猫みたいに、うずくまって……」
「ほんとに、もう。ヘンなことばっかり覚えてるのね」
「きみの魔法はいつも失敗ばかりで、出来の悪い子だなんて言われてた」
「……意地悪。今だってそうよ」
ルイズは頬を膨らませた。
「違うんだルイズ。きみは失敗ばかりしてたけど、誰にもないオーラを放っていた。それがぼくにはとても魅力的に見えたんだ。今だってそうさ。きみには、他人にはない特別な力が宿ってる。ぼくはそう信じてる」
「まさか」
「まさかじゃない。そう、例えばきみの使い魔」
「ティトォのこと?」
「そうだ。彼の額のルーン……、あれは、ただのルーンじゃない。『ミョズニトニルン』の印さ」
「『ミョズニトニルン』?」
ルイズは怪訝そうに尋ねた。
「『ミョズニトニルン』は、あらゆるマジックアイテムを自在に操ったと言われている」
ルイズははっとなった。フーケを捕まえたとき、ティトォが誰にも扱えなかった『禁断の鍵』の力を引き出し、フーケのゴーレムを倒したことを思い出した。
ワルドの目がきらりと光る。
「心当たりがあるみたいだね。そう、『ミョズニトニルン』は、まさに伝説の使い魔だ。誰もが持てる使い魔じゃない。きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ」
「信じられないわ」
ルイズは首を振った。ワルドは、冗談を言ってるのだと思った。
確かにあのティトォたちは、不老不死の人間だ。三人の魂を一つの身体に宿し、異なる理の魔法を操る彼らの存在は、伝説の使い魔と言われても信じられる。
でも、自分はゼロのルイズなのだ。落ちこぼれ。ワルドが言うような力が自分にあるだなんて、とても信じられない。
伝説の使い魔を呼び出したのだって、何かの間違いだろうと思った。
「きみは偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、歴史に名を残すような素晴らしいメイジになるに違いない。ぼくはそう予感している」
ワルドは熱っぽい口調で、ルイズを口説いた。
「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」
「え……」
いきなりのプロポーズに、ルイズは息を呑んだ。
351虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:06:41 ID:dH+ctaK0
「ずっとほったらかしだったことは謝るよ。婚約者だなんて、言えた義理じゃないのも分かってる。でもルイズ、ぼくにはきみが必要なんだ」
「で、でも……わたし、まだ……」
「もうきみは16だ、子供じゃない」
ワルドはルイズを見つめる。
「で、でも!でも!だって!」
ずっと憧れていたワルド……。再会した彼は、昔のままに優しくて、凛々しくて。
結婚してくれと言われて、嬉しくないわけがない。でも……
「だってわたし、まだ、あなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし……もっともっと修行して……」
ルイズは俯いた。
「それに、突然すぎよ。再会も突然で、プロポーズも突然。それに、今は姫殿下の任務の最中なのよ。わたし、そんなにいっぺんに色々考えられないわ……」
ルイズは混乱していた。思えば春の使い魔召喚儀式から、いろいろなことが起こりすぎていた。
おまけに『いろいろなこと』はいつも決まって突然起こるのだ。
ワルドは小さくため息をついた。
「すまないルイズ、急ぎすぎたね。分かった、取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この旅が終わったら、君の気持ちはぼくに傾くはずさ」
ルイズは小さく頷いた。
「それじゃあ、もう寝ようか。疲れただろう」
それからワルドはルイズに近付いて、唇を合わせようとした。
ルイズの身体が一瞬、こわばる。それから、すっとワルドを押し戻した。
「ルイズ?」
「ごめん、でも、なんか、その……」
ルイズがもじもじとすると、ワルドは苦笑して、首を振った。
「急がないよ、ぼくは」
ルイズはふたたび俯いた。
と、そのとき……。
ふいにワルドが緊張した顔になった。
「ワルド?」
ルイズの問いかけには答えずに、ワルドは窓に近寄って、静かに外の様子をうかがった。
ワルドは小さく舌打ちした。
「まずいな。囲まれてる」


ギーシュとティトォの男子部屋は、とても静かであった。
野郎二人で他愛もない話で盛り上がるでもなく、ワインを持ってタバサとキュルケの女子部屋に突撃するでもなく、
二人とも、ふたつ並んだベッドに同じようにうつぶせになって死んでいた。
一日中走り回って疲れきった二人の身体は、ひたすら休息を必要としていたのだった。
しかし突然、ティトォがむくりと起き上がった。静かな部屋の中、ティトォは耳をすませた。
「足音……、10……20……50……、いや、もっと?」
ティトォはギーシュを揺さぶり起こした。
「ギーシュ、なんだか変だ」
「ふが?」
寝ぼけるギーシュをうながし部屋の外へ出ると、キュルケとはちあわせた。
「ダーリン!」
キュルケが驚いたように言う。隣にはタバサもいた。
よく見ると『女神の杵』亭の宿泊客たちも、揃って廊下に集まっていた。
アルビオン帰りの商人や貴族の客たちが、不安そうに話をしている。
ただならぬ様子に、ギーシュも目を覚ました。
「いったい、なにが起こってるんだね?」
「囲まれている」
タバサが答えた。例によってパジャマ姿だが、杖を携え、油断のない雰囲気である。
352虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:08:35 ID:dH+ctaK0
ティトォが窓から外を見やると、暗闇の中、鎧を着込んだ一団が『女神の杵』亭をぐるりと取り囲んでいた。
「装備から見て、傭兵。おそらく狙いは……」
「ルイズってわけ。あの子の請け負った密命とやらを、邪魔しにきたんでしょうね」
「バックにアルビオン貴族がいるってことか……」
ティトォが呟いた。窓の外をうかがっていたギーシュが、あわてた声を出す。
「まま、まずいぞ!連中、宿に踏み込む気だ!」
傭兵たちが宿の入り口ににじり寄ってくる。
と、突然、宿の入り口から小さな竜巻が吹き出して、傭兵たちを吹き飛ばした。
「『風』の魔法!ワルド子爵か!」
それを見て、ギーシュ、キュルケ、タバサ、ティトォは、すぐさま宿の一階、玄関口に位置する酒場に向かった。


降りた先の一階も、修羅場であった。
ワルドは床と一体化したテーブルを折り、それを立てかけ盾にして、魔法で傭兵たちに応戦していた。
ワルドの側には、ルイズもいた。
歴戦の傭兵たちは、こちらにメイジがいると分かると、緒戦で魔法の射程を見極め、射程外まで下がると、そこから矢を射かけてきた。
暗闇を背にした傭兵たちに地の利があり、おまけにラ・ロシェール中の傭兵が束になってかかってきているようで、多勢に無勢。さすがのワルドも、手に負えないようだった。
酒場で飲んでいた貴族や商人の客たちは、カウンターの下で震えている。
でっぷりと太った店の主人が、必死になって傭兵たちに「わしの店が何をした!」と訴えかけていたが、
矢を腕にくらってのたうち回った。
キュルケたちは、テーブルを盾にしたワルドとルイズの元に、背を低くして駆け寄った。
「参ったね」
ワルドの言葉に、キュルケが頷く。
「連中の狙いは、やっぱり?」
「ああ、ルイズだろうね」
ワルドは『ルイズの持つ手紙』などと、うっかり口を滑らせるようなことはしなかった。
「襲撃のタイミングが早すぎるわ。夕方の連中、ただの物取りじゃなかったみたいね」
キュルケが忌々しそうに言った。
馬に乗っていたギーシュたちと違って、グリフォンや風竜に乗っていても、一日中飛び続けていたことには違いないので、ワルドもキュルケもタバサも疲れていた。
おまけにラ・ロシェールに到着する直前に、夜盗……今考えると、おそらくこれも傭兵だったのだろうが……と戦っていたので、魔法を使うための精神力も心もとなかった。
こちらが消耗しているのを見計らって、連中は襲撃をかけてきたのだった。
一人、カウンターの下に身を隠していたティトォが、ワルドたちを手招きした。
「みんな、こっちへ」
見ると、ティトォのそばでは、店の主人が驚いて口をぽかんと開けていた。
腕にくらっていた矢は抜けて、傷も跡形もなく消えていた。
「回復してあげるよ。万全の体調にしておかないと」
ワルド、ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュが背を低くしながらティトォの元へ行くと、ティトォは手に持ったライターで、キュルケたちの身体に次々と火をつけた。
「マテリアル・パズル ホワイトホワイトフレア!」
ティトォの魔法が発動し、炎が一気に全身を包むと、キュルケたちの身体から疲労がすっと抜けていった。
力が戻って、消費した精神力までもが満タンの状態まで回復していた。
しかも、ティトォはこの回復をティトォ自身を含め、6人同時に行ったのだった。
これには、ワルドもさすがに驚いた様子だった。
「自分で受けたのははじめてだけど……ホント、すごいわね。これ」
キュルケが思わず呟いた。
「でも、どうする?いくら回復できても、ここにいるかぎりジリ貧よ。奴らはちびちびとこっちに魔法を使わせて、精神力が切れたところを一斉に突撃してくるわ」
「ぼくのゴーレムでふせいでやる!」
すっかり体力を取り戻したギーシュが、勇ましく言い放った。
しかし、ギーシュの『ワルキューレ』では、せいぜい一個小隊あたりを相手にするのが限界だった。
相手は手練の傭兵たちであり、おまけにどう見ても中隊規模の人数であった。
353虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:10:06 ID:dH+ctaK0
それでもギーシュは立ち上がり、呪文を唱えようとしたが、ワルドがシャツの裾を引っ張って、それを制した。
「いいか諸君」
ワルドは低い声で言った。ティトォたち5人は、ワルドの言葉に傾聴した。
「このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、成功とされる」
その言葉に、タバサはワルドの顔を見て頷いた。
タバサは自分と、キュルケと、ギーシュを杖で指して「囮」と呟いた。
それからタバサは、ワルドとルイズとティトォを指して「桟橋へ」と呟いた。
「時間は?」とワルド。
「今すぐ」答えてタバサ。
「聞いての通りだ。裏口へ回るぞ」
「え?え?ええ!」
ルイズは驚いた声を上げた。
「今からここで彼女達が敵を引きつける。せいぜい派手に暴れて、目立ってもらう。その隙に、ぼくらは裏口から出て桟橋へ向かう。以上だ」
「で、でも」
ルイズはキュルケたちを見た。
キュルケは自慢の赤髪をかきあげ、つまらなさそうに、唇を尖らせて言った。
「ま、しかたないかなって。あたしたち、あんたたちがなにしにアルビオンに行くのかすら知らないもんね」
ギーシュは薔薇の造花を確かめはじめた。
「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下とモンモランシーには会えなくなってしまうな……」
タバサはティトォに向かってうながした。
「行って」
ティトォは少し不安そうに、タバサとギーシュとキュルケを見つめた。
「大丈夫なの?」
「あら、甘く見ないでくださる?わたくしこれでも、『火』系統の優秀な家系、フォン・ツェルプストーのトライアングルですもの」
キュルケはにっと、野性的な笑顔で答えた。
「いいから早く行きなさいな。帰ってきたら……、キスでもしてもらおうかしら」
それから、ルイズに向き直る。
「ねえ、ヴァリエール。勘違いしないでね?あんたのために囮になるんじゃないんだからね」
「わ、わかってるわよ」
ルイズはそれでも、キュルケたちにぺこりと頭を下げた。
ルイズたちは、頭を低くして、テーブルの陰に隠れながら酒場の厨房へ向かった。途中、矢がひゅんひゅんと飛んできたが、ワルドが風の魔法で軌道を逸らせた。
『女神の杵』亭の出入口は玄関と、反対側にある非常口だけなのだが、どちらも傭兵に囲まれている。
しかし、厨房にも材料などを運び込むための通用口があるのだった。
ルイズ達が通用口にたどり着くと、酒場の方から大きな爆発音が響いてきた。
「……始まったのね」
ルイズが呟く。
ワルドは通用口のドアに耳を寄せ、外の様子をうかがった。
「誰もいないようだ」
どうやら傭兵たちは、玄関口での騒ぎに、そちらへ向かったようだ。
ドアを開け、三人は夜のラ・ロシェールの町へ飛び出した。
「桟橋はこっちだ」
ワルドを先頭に、三人は走った。
後ろから二度目の爆発音が聞こえてきて、ルイズは思わず振り返った。
『女神の杵』亭の玄関口から、巨大なのたうつ炎と、竜巻が吹き出ていた。
ルイズは頭をぶんぶんと振って、キュルケたちのことを考えないようにしながら、ワルドの後を必死で追いかけた。
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:10:21 ID:XwWc6gFk
マテリアル・パズル!支援三獄!!
355虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:11:11 ID:dH+ctaK0
裏口の方へルイズたちが向かったのと同じくらいに、傭兵の一隊が突撃を仕掛けてきた。
タバサが素早く杖を振るうと、入り口付近の土が、風の刃に切り裂かれて宙を舞った。
ばらばらと土が傭兵たちの鎧に降りかかる。
傭兵たちはひるんだが、すぐにこけおどしと見て、突撃を再開した。
タバサは続けざまに風魔法で土を巻き上げ、傭兵たちを翻弄した。
ギーシュは『錬金』でワルキューレをつくり出し、緊張した顔で突撃に備えていた。
キュルケは胸元から手鏡を取り出し、化粧を直しはじめた。
「こんな時に化粧をするのか、きみは」
ギーシュが呆れた声で言った。
「だって歌劇の始まりよ?主演女優がすっぴんじゃ、しまらないじゃないの」
キュルケは化粧道具をしまうと、今度は杖を取り出した。
ギーシュの袖を、タバサがくいくいと引っ張った。
「なんだね」
「錬金」
タバサはぽつりと一言、ギーシュに命じた。
その言葉に、ギーシュははっとした顔になった。


土まみれの傭兵の一隊が宿の玄関に近付いたとき、そこには女が待ち構えていた。
燃えるような赤い髪と、グラマラスな身体。褐色の肌のゲルマニア美人、キュルケであった。
キュルケが杖を構え呪文を呟いているのを見て、矢が射かけられたが、タバサの風魔法が矢を吹き飛ばした。
突然、傭兵の鎧に浴びせられた土がぬらっとなにかの液体に変化した。
油の臭いが立ちこめる。
彼らの身体にまとわりついた土が、『錬金』の魔法によって油に変化させられたのだ。
傭兵隊の隊長格の男は、あわてて叫んだ。
「まずい!撤退……」
「遅いわ」
キュルケは凶暴な笑みを浮かべると、呪文を完成させ、杖を振るった。
瞬く間に油に火がついて、突撃を敢行した傭兵の一隊が、炎に包まれのたうち回った。
後方の傭兵たちにも、どよめきが起こる。
「名もなき傭兵の皆様がた。あなたがたがどうして、わたしたちを襲うのか、まったくこちとら存じませんけども」
キュルケは、優雅な仕草でふたたび杖を掲げた。
「この『微熱』のキュルケ、慎んでお相手つかまつりますわ」


「ったく、金で動く連中は使えないわね。あれだけの炎で大騒ぎじゃないの」
突撃した傭兵たちが、炎に巻かれて大騒ぎになっているさまを見て、フードを目深に被った女が舌打ちした。
傭兵集団の後ろに控え、指示を出している女。
それは誰あろう、土くれのフーケであった。
その隣には、白い仮面と黒いマントを身に付けた貴族が立っている。
「あれでよい。戦力は分散した、それが目的だからな」
「あんたはそうでも、わたしはそれじゃ気がすまないね。あいつらには恥をかかされたからね」
しかし、マントの男はそれには答えず、立ち上がるとフーケに告げた。
「俺はラ・ヴァリエールの娘を追う」
「わたしはどうすんのよ」
「残った連中を足止めしておけ。なんなら殺してしまってもかまわんよ。では、合流は例の酒場で」
男はそう言うと、暗闇に消えた。
素早い動きはまるで風のようで、それも、ひやっとする北風のようだった。
「ったく、勝手な男だよ」
フーケは苦々しげに呟いた。
男たちの悲鳴が上がる。
見ると、『女神の杵』亭の入り口で燃えさかる炎が、建物の中から吹き出す風の魔法にあおられて、暗がりに潜む弓兵たちをあぶりはじめたのだ。
「頼りにならない連中ね!」
フーケはそう吐き捨て、杖を取り出すと、長い長い呪文を詠唱しはじめた。
356虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:12:55 ID:dH+ctaK0
酒場の中から炎を操り、キュルケとタバサは外の傭兵たちをさんざんに苦しめた。
矢を射かけてた連中も、タバサの風が炎を運ぶと、弓を放り出して逃げて行った。
「おっほっほ!おほ!おっほっほ!」
キュルケは勝ち誇って、笑い声を上げた。
酒場のカウンターに隠れていた客たちが、誰ともなくぱちぱちと拍手をはじめた。
「お見事!」
「素晴らしい炎だ!お嬢さん!」
「麗しき火のメイジに、乾杯!」
あちこちから喝采が飛び交った。
気をよくしたキュルケは、大量の矢が突き刺さったテーブルに飛び乗ると、優雅に『観客』に向かって一礼した。
気分はまさに舞台女優である。
テーブルの上で愛想を振りまくキュルケを見て、タバサとギーシュは小さくため息をついた。
「まったく……」
ギーシュは鼻を鳴らした。
「ぼくの『錬金』の力のおかげで、炎が燃え上がったってこと、忘れてないかね!」
そう叫ぶとギーシュもテーブルにひらりと飛び乗った。そして、観客たちに向け笑顔で腕を振りはじめた。
拍手はますます大きくなり、口笛が飛び交った。
お調子者ばっかり、とタバサは呆れた目で騒ぎを見つめていた。
そのとき突然、建物の入り口が吹っ飛んだ。
ギーシュとキュルケは轟音に身をすくませ、後ろを振り返った。
酒場の客たちは、怯えた顔をしながら、入り口にもうもうと立ちこめる土ぼこりの中にある巨大な影を見上げていた。
土煙が収まると、そこには巨大な岩で出来たゴーレムが立っていた。
こんな巨大なゴーレムを操れるのは……。
巨大ゴーレムの肩に、誰かが乗っている。その人物は長い髪を、風にたなびかせていた。
「フーケ!」
キュルケが叫んだ。
「あんた、牢屋に入っていたんじゃ……」
「親切な人がいてね。わたしみたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
フーケはうそぶいた。
「フ、フーケ?『土くれ』の!」
フーケと初めて会ったギーシュはうろたえた。
「フーケ!冗談じゃない、悪名高い大泥棒じゃねえか!」
「盗まれちまう!大切な商売道具を盗まれちまうよ!」
フーケの名を聞いて、酒場にいた商人たちは、自分たちの荷物が置いてある宿の中へ我先へと駆け出した。
そんな騒ぎを見下ろして、フーケは薄い笑みを浮かべた。
「安心なさいな、今回は盗みが目的じゃないの」
そう言って、フーケはキュルケたち三人を見下ろした。
「素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いに来たのよ!」
フーケの目が吊り上がり、狂的な笑みが浮かんだ。
フーケの巨大ゴーレムの拳がうなり、酒場を粉々にぶち壊した。
キュルケとタバサとギーシュは、間一髪のところで建物の中に逃れた。
建物の中、廊下で三人はようやく一息ついた。入り口の方から、巨大ゴーレムの足だけが見えていた。
「出てきていただけませんこと?ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。さもないと……」
フーケはミス・ロングビルの丁寧な口調で言った。
「わたしのゴーレムで建物をぶっ壊して、宿の客もろとも生き埋めになってもらうことになりますわよ?」
フーケの言葉に、客たちはパニックに陥った。
我先にと後方の非常口へ殺到したが、そこには傭兵が見張っていて、逃げ出すことはできなかった。
ギーシュはパニックに陥り、何事か喚きだした。
「うぬ!卑怯な!人質を取るとは、何たる卑怯!盗賊フーケ許すまじ!父上、見ていてください!姫殿下の名誉のため、ギーシュは薔薇と散ります!」
ゴーレムに向かって駆け出したギーシュの足を、タバサが杖で引っかけた。ギーシュは派手にすっ転ぶ。
「何をするんだね!行かせてくれ!今こそトリステイン貴族の意地を見せるとき!」
「あのねギーシュ。相手はトライアングルで、あんたはドットなのよ?」
キュルケは淡々と戦力を分析して、言った。
ぐ、と喉を鳴らしてギーシュは黙ってしまう。
357虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:13:35 ID:dH+ctaK0
「でも、参っちゃったわね」
キュルケが入り口から覗く巨大ゴーレムの足を見て、大きなため息をつく。
あのゴーレムはとても強力だ。前回、キュルケの魔法も、タバサの魔法も、ゴーレムを傷付けられなかった。
『禁断の鍵』の力がなければ倒すことはできなかったのだ。
「どうする?」
キュルケはタバサの方を見た。
タバサは両手を広げると、首を振った。お手上げということだ。
「それでも、行かないわけにはいかないんでしょうね」
キュルケはまた一つため息をついて、玄関へ歩き出した。タバサも後について行く……
と、今度はギーシュがキュルケたちを呼び止めた。
「待ちたまえ!」キュルケとタバサが振り向く。
「あんたはいいわよ。あちらさんはあたしたちをご指名なんだから」
「確かにぼくの『ワルキューレ』では、あの巨大ゴーレムに踏みつぶされるだけだろう。でも、きみの炎だって、ゴーレムの表面をあぶることしかできないし、タバサの風も、あの重たいゴーレムを吹き飛ばすのは無理だろう」
「そりゃね」
ギーシュはちらりと、廊下で震えている客たちを見て、それからキュルケたちを見つめた。
「でも、力をあわせれば。皆の力を借りることができれば。あのゴーレムを、やっつけられるかもしれない」
キュルケははっとして、ギーシュの顔を見た。
ギーシュは、今まで見たこともないほど、真剣な顔をしていた。
何か、作戦があるというの?
キュルケとタバサは、ギーシュに注目した。
「だからぼくに………、貸してくれ」
ギーシュはまっすぐ二人を見つめながら、言った。
「ぼくにお金を……、貸してくれ」

「…………………………はあ?」
キュルケは思わず、間の抜けた声をあげていた。
358虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:14:37 ID:dH+ctaK0
フーケが待つ中、宿の入り口からあらわれたのは、ギーシュであった。
ギーシュは薔薇の造花の杖と、大きな革の鞄を持っていた。
ギーシュはゴーレムの前にその鞄を置くと、フーケに向かって鞄を開ける。
中には、大小さまざまな大きさの宝石が、たくさん並べられていた。
それを見て、フーケは鼻を鳴らした。
「なによ、贈り物?そんなことしたって、見逃したりしないからね」
フーケは小馬鹿にしたように言った。
「レディ。石には強い魔力を持つものがある。特に光り輝く宝石には、精霊が宿りやすいとご存知か?」
ギーシュがそう言うと、鞄の中の宝石たちが、突然強く輝きはじめた。
まばゆい光に、フーケは思わず目を庇う。
「なにを──!」
ギーシュは、1年前に出会った精霊使いの男との会話を思い出していた。
(しかしね、きみ。精霊の声が聞こえるようになったとして、どうすれば友達になれるんだい?)
(なに、簡単さ。名前を付けてやれ。そんで、呼んでやればいい)
(そんなことでいいのかね?)
(精霊には、個を表す名前がねえからな。名前を付けてやると、とても喜ぶのさ)
ギーシュは、すさっ!と立ち上がると、格好を付けて薔薇を振った。
「さあ行くぞ皆!ロードナイトの精、ミック!」
光り輝くロードナイトの石から、三本角の精霊が飛び出した。
「ホークスアイの精、ロニー!」
ホークスアイの石から、額に石を付けた精霊が飛び出した。
「ルビーの精、キース!」
ルビーの石から、赤ほっぺの精霊が飛び出した。
「クラプトン!ジミ!ミッチー!ノエル!ジャック!ジンジャー!ディラン!ベック!ペイジ!ピーター!ポール!ジョン!ジョージ!リンゴ!
 レミー!バディ!ビリー!サンタナ!マーク!ボウイ!トム!ジョーイ!スティーヴン!ペリー!ロバート!デイヴ!スラッシュ!リッキー!
 えーと、ひできーーーーーーーーーーーーーー!!」
鞄につまった宝石から、精霊たちが雨あられと飛び出し、ゴーレムに殺到する。
そして精霊たちは、ものすごい勢いでゴーレムの周りをぐるぐる回りはじめた。
精霊の体が光の尾を引いて、ゴーレムは幾重もの光の輪に取り囲まれるような形になった。
何をしている?
フーケは思わず、ゴーレムを後じらせた。
すると、光の輪に触れたゴーレムの背中が、ガリガリガリ!と、ものすごい勢いで削り取られた。
フーケの背筋に冷たいものが走った。
やばい!と、フーケはあわててゴーレムの肩から飛び降りる。
精霊たちはどんどん回転する輪の幅を狭めて、まるでミキサーのようにゴーレムを削り取った。
ぎゅるぎゅるぎゅると回り続ける妖精たちは、どんどん小さな光の渦になって、やがてその中心からどすんと重たい何かが落ちた。
地面にめり込んだそれは、信じられないほどの密度に圧縮されたゴーレムの身体であった。30メイルはあったゴーレムが、人の頭ほどの大きさのぴかぴかの球体になってしまっていた。
ぐるぐる回っていた精霊たちは、自分たちの仕事に満足すると、ふたたび宝石の中へ戻って行った。
自分たちの雇い主が敗北したのを見届けると、蜘蛛の子を散らすように傭兵たちは逃げ去っていった。
フーケを倒した実感がわかず、しばらくの間呆然としていたギーシュは、キュルケに背中を叩かれて我に帰った。
「やったわ!ギーシュ、すごいじゃない!勝ったのよ!」
勝った。そうだ、勝ったんだ。その言葉に、ギーシュの心が強く震えあがっていく。
「かかか、勝ちました!ぼくは勝ちましたよ、父上!姫殿下!ぼくの『精霊使い』の力で勝ちました!」
ギーシュは興奮して、キュルケと手を取り合ってぐるぐる回りだした。
いつの間にやら、宿の客や従業員、酒場の店主なども建物の外に出て、口々にギーシュの健闘を讃えだした。
そして、そんな観衆の中に一人、ほくほく顔で銭勘定をしている男がいた。
その姿を目の端にとらえると、興奮で茹で上がったギーシュの頭の片隅に、冷たく冷えきった部分ができてしまった。
男は『女神の杵』亭に宿泊していた宝石商であった。
そう。ギーシュはこの宝石商の男から、あのたくさんの宝石を買い付けたのだった。
359虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:15:51 ID:dH+ctaK0
宝石の精霊と会話するためには、宝石が『自分の物』である方がやりやすい。
精霊使いとしての技量が高ければ、借り物の宝石であっても精霊を呼び出すことができるが、ギーシュは駆け出しであるので、『自分が所有している』必要があったのである。
もちろんあれだけの宝石を集めるにはギーシュの手持ちだけでは当然足りず、キュルケとタバサの手持ち金を全部借りて、ありったけの宝石を購入したのであった。
(ああ……丸々一年分の小遣いを使い切ってしまった)
(おまけにキュルケとタバサに金まで借りて……)
(しかしなんともまァ、二人ともたくさん持ってるもんなんだなァ……)
(フォン・ツェルプストーは有力な家系だし、タバサの実家も、きっと名のある貴族なんだろうなァ……)
かくしてギーシュは、同級生に莫大な借金を作ってしまったのだった。
しかしギーシュは、努めてそれを考えないようにした。
ああ、今くらいは。そうさ、今くらいは。
こうして勝利の美酒に酔っていたいんだ。ぼかァ。
ギーシュはいつまでもいつまでも、朗らかに笑い続けた。


熱狂する観衆を、タバサは少し離れたところで見つめていた。
タバサはギーシュの精霊使いの力に驚いていたが、同時に別のことも考えていた。
それは、フーケのゴーレムを倒すための作戦である。
先に傭兵たちを迎え撃ったときに使った、あの戦法。身体に土を浴びせ、それを錬金で油に変えて、火を付ける。
あれを使えば、ひょっとしたら精霊の力を借りずとも、ゴーレムを倒すことができたんじゃないだろうか。
以前ティトォが似たようなことをやっても効かなかったが、あれは油の量が足りなかっただけの話だ。
あれだけの大きさのゴーレムに土を浴びせるのは難しいから……、例えば、大量の薔薇の花びらを『錬金』させて……、
それを自分の『風』でゴーレムに吹き付けて……、さらに『錬金』で、花びらを油に……
そんなふうに色々考えていたが、せっかくの勝利の高揚に水を差すのも野暮であるので、
タバサは黙ってギーシュに拍手を送った。
ちなみにフーケは、精霊の力を恐れ、傭兵たちと一緒に逃げ出していた。
360虚無のパズル ◆taPEIAkisc :2009/01/31(土) 18:19:26 ID:dH+ctaK0
以上です。
今回のお話の中で、ティトォが6人同時回復してますが
ティトォの最大同時回復人数は特に明言されてませんけど
月花ヨマ戦で5人同時強化・回復やってたから、もう一人増えるくらいいいかなと思いました。
途中の支援ありがとうございます
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:20:17 ID:9RjX2qj/
セクシーコマンドー外伝すごいよマサルさん!!から
マサルさん

「これは変わり身の術!」
ウェールズを殺した筈が、何故か煙が噴出し謎の着ぐるみが入れ替わっていた

「ふぅ、マサルさんに教えてもらわなかったら死んでいたところだったよ・・・」
着ぐるみのジッパーをあけ爽やかに笑うウェールズ
「刺さってるぅ(ガビーン)」
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:23:45 ID:t1qK5XBv
パズルの人乙
ひできーーーーーー!はこの時のために取っといたのかw
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:26:00 ID:iXo0ekv1
ティトォの人乙です。
ギーシュw活躍したのに借金王ww
次回にwktkせざるを得ない。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:32:04 ID:CedVDA+i
姐さんがいつ出てくるのか気になるぜ乙
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:48:53 ID:kNbNOp/Z
マテパの人乙です
ギーシュが完全にバケラッタークスになってしまったw 敵が来るといなくなってしまわなくてよかったけどw
しかし姐さんはやっぱりクライマックスまで取っておくのか?
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:49:44 ID:dumWbBpY
恋姫の人、けっこう面白そうだから続きに期待します。
ですが、ここのルールは守って、ちゃんとsageて下さいね。
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:53:33 ID:w5R5bd7G
ハルケギニアには天国とか地獄っていう概念あるのかね?
地獄少女を召還、とか妄想してみたり
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:54:45 ID:66r0YBZK
つーかこっちでやってくれ

恋姫†無双のキャラがルイズに召喚されました
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1221997053/
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:55:02 ID:k5kBxcs4
確か、原作で誰かが台詞で「地獄」って言ってた。タバサだったかな。
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 18:56:48 ID:+9ETHbm5
プリセラはワルドどころか7万の大兵団を全滅させかねんからなぁ。
出しどころが難しいよな。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:02:43 ID:ttUHCywX
>>363
おまけに「お前はフーケを倒すのに宝石の精霊の力がいると思っているようだが……別になくても倒せる」という

>>370
原作でプリセラ初登場したときマテパのスレで
「もうプリセラだけでよくね?他の2人いらなくね?」とか言われてたなw
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:15:28 ID:Y8RXsqob
恋姫の登録は無しだろう
全部ageてるし荒らしと変わらない
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:22:22 ID:nWpZSvIx
投下予告もないしな
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:23:40 ID:a0rApz5J
本人出てきて釈明があれば聞いてやろう
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:24:06 ID:HFD975Pu
内容もゴミだしな
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:25:09 ID:+2uoTfIy
>>374
聞く必要なんか無い
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:25:39 ID:G4guw11R
そうやって構うから荒らしが蔓延るんだよ
少しは自重って物を覚えろ
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:32:38 ID:8yyL+PSb
パズルの人、乙です。

ギーシュ、心配するこたぁない。
ツェルプストー家の全財産を借りつくす勢いで借金をするといい。
そうすれば、君が破滅して共倒れにならないよう、ツェルプストー家が
万全のバックアップ体制を敷いてくれる。
彼のカエサルも、クラッススに天文学的な借金をしていたんだぜ。
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:33:36 ID:FYJ4Hc49
閻魔あいは自力で地獄と現世を逝ったり来たり出来るからな
呼ばれても何時の間にかいたりいなかったりかな

ちなみに派生作品では地獄の他に悪魔とか魔女とか棲んでる「魔界」が地獄少女の世界には存在する
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 19:54:38 ID:W/pC9woC
>>360
アレはジルさんも中に混じってたから
普通の人間ならもっといけると思うから問題ないと思うよ!
その前にジルさん強化してコルクマリー戦やってたしね
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 20:35:13 ID:GOj4b0U3
壬生義士伝内の新撰組から、斎藤一を召喚します
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 20:42:07 ID:nWBD2Mfu
>>381
何時に投下ですか?
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 20:49:58 ID:YLuBa7dY
>>341
遅レスだが、めっちゃ笑ったwうるさくて仕方がないだろうな炎邪w
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:32:56 ID:zpUWmTjt
「宇宙をかける少女」からレオパルド召喚

いかん、これじゃコロニー落としだ
トリステイン湾ができちゃう
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:42:08 ID:b6ZYwhq+
DEAD SPACEのIsacさん

なんて誰も知らないですよねー……
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:50:56 ID:tsMjiPpz
○○を召喚
駄目だ、○○なシーンしか思い浮かばない

こういうレス見るのも飽きてきたな……独り言は自分の日記にでも書いてろ
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:54:09 ID:YcE2Wzw5
そうカッカすんなって
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:54:59 ID:/uej2NGS
>>385
そんなことより俺の芝刈り機を見てくれ……こいつをどう思う?

まあマジレスすると喋らないしどういう性格か描写があんまりないからな
RPGの人格ない主人公と同じでハードル高いと思われ
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:59:10 ID:RanuuLGq
普通は人間なんて召喚されないのに……などとハルケギニアの人間が訝るのを聞いて、
俺ってやっぱり人間じゃないのか?と落ち込むようなハーフだの出生に秘密があるだののキャラ
だと誰が面白そうだろうか。
390ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:03:38 ID:BlL3CtiU
9話後半投下予告させていただきます。
22時10分を予定しております。
さるさんくらうかもしれません。
よろしくお願いします。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:04:08 ID:fdpjUCKX
>>386
あんたも飽きないねえ
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:08:45 ID:VuO4ySr/
>>389
スフォルツェンドあたりのアニメ版ハーメルとかか

>>390
支援
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:10:12 ID:3hkDIvUz
支援するぜ!
394ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:10:17 ID:BlL3CtiU
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン9 後編

学院より離れた森の中の小屋
その小屋の中で、フーケは戦利品を眺めていた。
「今回は大量だねぇ、さすが天下のトリステイン魔法学院だよ」
手に入れた物は小物が多く、近くの箱に入れながらフーケは顔をにやける。
「しかし、固定化の壁にヒビが入るなんて、大した馬鹿力だよ」
自身が宝物庫の周りを調べて、ダブルゼータがハリマオスペシャルを叩きつけた部分に、
ヒビが入ったのをフーケが見つけたのは行幸とも言えた。
「さて、問題はこれだね・・・」
最大の目玉である百獣の斧を見つめる。
フーケが手に持つだけで、何かしらの力がある事を感じる。
しかし、フーケが斧を振ってみるが何も起こる様子がない。
(コイツがすごい物だってのは分かる、しかし、使い方が分からないなんて)
このように、いろいろ試してみるが、効果があるとは言えない。
「せっかくこれが貴重な物でも、使い方が分からないんじゃ買い叩かれるし・・・」
(一番高く売れそうな相手も、ああなった事だしね)
自身の名を借りての蛮行を受けた相手に商売もするわけにはいかない。
「どうせ、教師の中から追撃隊を選ぶだろうから、その中の奴に聞けばいいか・・」
コルベールやキトーの顔を思い浮かべ、自分の勝利を確信する。
「さて、戻るかい・・あいつ等の顔が早くみたいしね」
深刻な顔の教師達を思い浮かべ、フーケは学院に戻る事にした。
(早く、あの子達の所に帰らなくちゃね・・・アイツばかりに任せておけないしね)
そう考えている、フーケの顔はロングビルとの顔ともまた違っていた。
395ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:11:00 ID:BlL3CtiU
翌日 トリステイン魔法学院
フーケ襲撃を受け、オールド・オスマンの部屋には教師達が緊急で集められていた。
その中で三人とその使い魔達も昨夜の状況を報告するため、オールド・オスマンの部屋に集められた。
「では、君たちが見たのは土くれのフーケで間違い無いと言う訳じゃな・・・」
ルイズ達の報告を聞いて、起こってしまった事実に、オールド・オスマンは考え込む。
「オールド・オスマン急いで王国に報告して、追撃隊を編成してもらいましょう。今ならまだ間に合います。」
全員を代表して、コルベールが常識的な判断を上げる。
「ミスタ・コルベールそれは、まずいのぉ、管理体制の甘さと我々の無能を教える物では無いか、
何より盗まれたものの中には「神の雫」まであるのじゃぞ!」
(神の雫?・・・・そんな物あったけ?)
自分の戦利品を思い浮かべながら、その中に、それほど重要な物があったとはロングビルも気づかずにいた。
「たしかに、神の雫が盗まれたのは問題ですね・・・」
コルベールが事の深刻さに、渋い顔をする。
「オールド・オスマン、神の雫とはなんですか?」
キュルケが興味を持ったのかオスマンに問う。
「詳しくは言えんが、神の雫は特殊な飲み物で、
アンリエッタ王女が婚約の際には嫁入りの道具として、それをお持ちになる筈の物なのじゃ」
(そんな物があったなんて・・・私も運がいいね)
自分が思いもよらずに、当たりを引いた事にロングビルは仕事の成功を感じる。
「オールド・オスマン、土くれのフーケはここから馬車で3時間ほどの距離にある、
森で姿を消したそうです。その様子を平民が見ていたようです。」
ロングビルがあたかも、調べたようにフーケの居場所を報告する。
「ありがとう、ミス・ロングビル。
さて、我々の不始末は我々自身でつけなければならない、誰か勇気のある物はおらんのか?」
さほど期待せず、オールド・オスマンが教師の顔を見回す。
しかし、その顔には勇気や勇敢とは程遠かった。
(やはり、コルベールにでも頼むかのぉ・・・)
お自身が信頼する教師の名を、オスマンの頭の中で思い浮かべる。
(誰も手を上げないなんて、それでも貴族なの?)
分かってはいたが、その様子を見て、ルイズは心の底から失望する。
(やはり、私が行くしかないのだろうか・・・)
オスマンの視線を感じ、コルベールが自身の出陣を確信し始めていた。
(さて、誰が来るかね・・・私は誰でも構わないけどね)
教師の顔を盗み見ながら、ロングビルは挑戦者の名乗りを待つ。
しかし、彼女は甘かったのかもしれない・・・
様々な思惑が交る中、静寂は打ち切られた。
「オールド・オスマン、フーケ討伐わ「私にその任務をお与え下さい、オスマン殿」」
ルイズの弱々しそうな意志を遮り、今までで一番強い声が上がる。
(まぁ、こうなるわね・・・)
キュルケは目をつぶりながらも、誰であるかを確信していた。
「お前さんは、ミス・タバサのゼータじゃったな」
意外な名前に、オールド・オスマンも戸惑いを隠せない
「ちょっと、ゼータ「騎士が目の前の賊を逃がすとは何たる失態、
このゼータ、土くれのフーケを捕えその首をオスマン殿の御前に捧げましょう。」」
王に命令を受ける騎士のように、ゼータが前に出て剣を掲げる。
「頼もしいねぇ相棒」
嬉しそうにデルフが金属音を鳴らす。
396ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:11:55 ID:BlL3CtiU
(ちょっと、勝手に人の首を捧げるんじゃないよ!)
自身の首の裏を抑え、ロングビルは名乗り出たゼータに先程の余裕を無くす。
「首って・・・お前さんはミス・タバサの使い魔じゃろぅ何も「先にも述べた通り!」」
ゼータにオスマンの言葉は要らない。
オスマンは取りあえず、もう一度説得する。
「土くれのフーケはトライアングルのメイジじゃぞ、幾らなんでもお前さん一人じゃ無理じゃろう」
「なら私達が参加すればいいじゃありませんか!」
「おいっ!ルイズ、何を勝手に決めているのだ!」
私達が自分である事を感じ取り、ニューは声を荒げる。
「私達は貴族です。賊に臆病風に吹かれて逃げ出すなんて私には出来ません。」
「ルイズ、貴族以前にお前は「私は何も出来ませんでした」!」
ルイズの言葉に、ニューが続きの言葉を無くす。
「私は未熟です、自分が何も出来ないのにパニックになって、
挙句にニューに当たってしまった・・・私はそんな自分が許せないんです!」
ルイズが、誰とも問わず自分に向けてその言葉を言う。
(ルイズ・・・)
ニューがその言葉を聞いて、ゼータと同じように前に出る。
「オールド・オスマン、私もフーケ討伐に参加させて下さい」
「ニュー・・・」
自身の使い魔の参戦に、言葉は少ないがその声には嬉しさが表れていた。
「使い魔の私が未熟なルイズ一人に任せるわけにはいきません、
それに自分達はこの様な危険な事をするのは初めてではありません。
足手まといにはなりませんので、ルイズ共々お願いします。ルイズ、君も当然参加するのだろう?」
「あっ当たり前でしょ!保護者面しないでよね、アンタは私の使い魔なんだから、
嫌といっても連れてくわよ、馬鹿ゴーレム!」
ルイズが、先程までの泣きそうな顔を誤魔化そうとする。
「参加が自由意思なら、私も参加しますわ」
キュルケが、話の流れに一息つくのを待ってから杖を上げ宣言する。
「・・・心配」
その横では、タバサが杖を上げる。
「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、あなた達は留学生なのですよ、何かあったら」
(この子娘どもが参加するって事は、当然アイツらも参加するってことじゃない)
自身にとっての流れの悪さに、ロングビルが抑制を促す。
「大丈夫ですわ、私の使い魔は荒事は慣れてますから、ねっ、ダブルゼータ?」
「俺にやっと声をかけたな、こんな楽しそうな喧嘩、行くなって言われても参加するつもりだぜ!」
買ってきた斧を振り回し、一番嬉しそうにダブルゼータが前に出る。
「ふぅ、この中で彼らに反対する者はおるか?」
オスマン自身が解りきった答えを聞く。
誰も彼らに異議を挟む者はいなかった。
「決まりじゃのぉ、お前さん達の活躍に期待する。」
「杖にかけて!」
緊張した面持ちで、三人が杖を掲げる。
「待っていろ、土くれのフーケ」
「巨大なゴーレムなんて、面白そうじゃねぇか、けど、まずは飯だな」
「お前達、少しは緊張感を持て、遠足に行くのではないのだぞ」
反対に、その使い魔達は緊張感など皆無の様子で部屋を出ていく。
(どうすればいいのよ・・・)
自身の言葉を取り消したいロングビルであった。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:12:01 ID:XuWEmBLO
支援!
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:12:10 ID:bDWqwVtk
支援
399名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:12:28 ID:HFD975Pu
>386
まぁ、確かに脳内召喚して自己完結とか見ててイラッとするぜ

支援
400ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:12:39 ID:BlL3CtiU
「ロングビル殿も行くのですか?」
「ええ、道案内と御者くらいしかできませんが」
馬車の準備が整い、6人とロングビルが行く事になった。
「ミス・ロングビル御者なんかやらなくていいですよ、
こいつ等にやらせればいいじゃないですか?それに顔色も悪いですし」
ルイズが顔色の悪いロングビルを見て心配する。
「そう思っても、大人は言わない物だぞ、全てが未熟なルイズ様」
ニューがそう言って、ルイズの平面を意識して視線を送る。
「私のどこが未熟なのよ、この馬鹿ゴーレム!」
そう言って、ルイズがニューに掴み掛かる。
「馬鹿、ルイズ落ちるだろ、こらっ」
「落ちて、頭でも打ちなさい、そうすれば少しはご主人様への態度の取り方が分かる利口なゴーレムになるでしょうね!」
そう言って、ルイズが落とそうとする。
「体の一部が特に未熟なルイズ、暴れるのはやめなさい」
「だれがよ、私が未熟なのは心だけよ!」
「ルイズ、その体で成熟と言ったら、希望がゼロだぞ」
「殺すわ、このクズゴーレム!」
馬車の上で乱闘が始まったので、ロングビルの顔色の悪さを心配する者はいなくなった。

学園の窓からコルベールとオスマンはその様子を見ていた。
「大丈夫ですかね、オールド・オスマン」
コルベ−ルが心配そうに尋ねる。
「あの使い魔達の様子を見るに大丈夫そうじゃろぅ」
オスマンが馬車を見つめている。
「彼らには気負いがない、おそらく、彼らは多分もっと凄い相手と戦ってきたに違いない」
(モット伯の家に、殴り込みをかけるなんて真似を平気でするような奴らじゃし)
貴族の家に、当たり前の様に殴りこんで平然と彼らは帰ってきた。
自分達にとっての脅威を脅威と感じない三人に、オスマンは彼らの実力を信用していた。
「ミスタ・ニュー達が居るから大丈夫ですかね・・・」
頼りなさげに、コルベールが窓を覗くが馬車はすでに見えなかった。
401ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:13:16 ID:BlL3CtiU
数時間後、フーケの潜伏先である森にたどり着いた。
「あれがそうね、どうするの?」
ルイズが、誰に問わず行動の方針を聞く
「まずは、ダブルゼータ、入口まで行って中をのぞいてきてくれ」
考えがあるのか、ニューが指示を出す。
「なんで俺なんだ?」
ダブルゼータが疑問を示す。
「お前が一番勇敢だからだ、それに、フーケを殴る一番の権利をやる」
「おう、まかしとけ」
そう言いながら、ダブルゼータが歩き出す。
(勝手にそんな権利与えるんじゃないよ、あんなのに殴られたら首が飛んでじまうよ!)
心中で、ロングビルが抗議の声を上げる。
「なんで、ダブルゼータなの?普通、こう言うのは注意深い人間がやるんじゃないの?」
ルイズがニューの人選に疑問を抱く。
「まぁ、そうだな、だが、ダブルゼー「ぐおっ!なんか刺さったぞ!」奴は丈夫だからな」
「・・・納得」
足元にあった罠を作動させ、弓が刺さったダブルゼータを見ながらルイズも納得した。
「ニュー、テメェ何てことしやがる!」
「大丈夫か、ミディ」
ダブルゼータが痛みを忘れて駆け寄るが、ニューは冷静に傷を癒す。
「こう言った時は、一番生存率が高そうな奴が行くべきだろう」
「てめぇなら、槍の雨が降っても死なねぇよ」
ニューが当然と言った面持ちで答え、デルフがそれに追従する。
「ふざけるな、死んだらどうするんだ!」
それを聞いて、ダブルゼータが憤慨する。
「アンタなら、大丈夫よ・・で中に誰かいる?」
ルイズが、ダブルゼータの結果を聞く。
「あぁ、はっきりとは分からないが多分居ないぜ」
「これだけ、騒いでなにも反応無いんだもの」
今のやり取りに呆れながら、キュルケが小屋を見つめる。
「とりあえず、ロングビル殿はここにいて下さい、
中に行くのと、外の見張りの半分に分けよう」
ゼータが提案する。
「私が中に行く、あなた達じゃ、盗まれた物が分からない」
タバサが、突入のメンバーに志願する。
「なら、盾になりそうなゼータとダブルゼータを連れていくがいい」
ニューが二人をタバサに差し出す。
「誰が盾だ!キュルケ、主としてコイツになんか言ってやれ」
ダブルゼータがキュルケに援軍を求める。
「ここは私が見張るから、いってきなさいよ、タバサの盾1号」
キュルケは、そのつもりがないらしい。
「先に使われるのは確定かい!・・・まぁ行ってくる」
ダブルゼータが諦めたのか小屋に向かって歩き出す。
「タバサ、ゆっくり行った方がいい」
「なんで?」
ルイズがタバサの変わりに聞く。
「小屋の中にも罠があるかもしれない・・・」
最後の方の声は、ドアを開けたダブルゼータが何かに刺された声でかき消された。
「・・・魔法で調べればよかった」
一番の解決策を、タバサが今更ながら口にした。
402ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:14:28 ID:BlL3CtiU
「誰もいないみたいだな」
魔法で中を調べた後、一番に入ったゼータが辺りを見回す。
「おうゼータ、こっち見てみろよ宝箱があるぜ!」
質素な造りながら、頑丈そうな箱を見つけて、ダブルゼータが嬉しそうに声を上げる。
「勝手に開けるなよ、罠かもしれないぞ タバサ魔法を頼む」
ゼータが、タバサに確認を頼む
「・・・大丈夫」
調べがついたのか、開封のタバサが許可を出す。
「オッケー、なら開けますか」
ダブルゼータが箱を開ける。
「・・・タバサ、これが盗まれたものか?」
ダブルゼータがタバサに盗品であるかを確認する。その顔には明らかに驚きの声が交っている。
「そう、それが神の雫と百獣の斧」
「それは、獅子の斧じゃないか!なんでこんなところにあるんだ!」
ゼータが、本来この世界にないはずの物に驚きの声を上げる。
「それも驚きだが、何でこんな物まであるんだ?」
神の雫を見て、ダブルゼータの顔にも驚きが浮かぶ。
「二つとも、知っているの?」
「獅子の斧は俺が愛用していた物だ、神の雫は」
説明の途中を屋内に響く轟音で遮られる。
「何があった?みんないったん出るぞ!」
盗まれた秘宝を持て出して、三人は外に出た。
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:14:32 ID:ttUHCywX
支援
404ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:15:24 ID:BlL3CtiU
「キュルケ、何があった!」
「あなたの殴りたい人間のお出ましよ!」
キュルケが焦りながら、その方向に指をさす。
そこには、10メイル程の巨大な土のゴーレムがいた。しかも、3体程
「あれが、土くれのフーケのゴーレムか・・・」
昨日ほどではないが、それでも相変わらずの大きさにゼータも言葉を失う。
「どうするの!?」
「討ち取るまでの事、ニュー、ダブルゼータ行くそ!」
ゼータがデルフを抜いて駆け出す。
「オレを忘れるなよ、相棒」
デルフが存在をアピールする。
「ルイズ、これ持っとけ!」
ダブルゼータが神の雫を渡す。
「馬鹿!普通、いったん退却するでしょ、ここは!」
ゼータの即断に、ルイズも戦う意志を忘れそうになる。
「バズレイ」
ニューの爆発が、ゴーレムの一体の上半身を吹き飛ばす。
「うぉぉ!」
ダブルゼータが、また違う一体の足を自身の斧で薙ぎ払う。
「デルフっ!」
「おう!」
ゼータの掛け声とともに、デルフが別の一体の腕を斬り裂く。
しかし、ゴーレムは一体も倒れなかった。
「だめだわ、再生が早くて、完全に倒せてないわ!」
少し離れた所で、キュルケが冷静に分析する。
本来はどれも致命傷であるが、再生力の高いゴーレムには致命傷を与えられない。
「このままじゃっ!」
「あなたが、行ってどうするのよ!」
かけ出そうとするルイズを、キュルケが腕を掴んで止める。
「せっかく来たのに、これじゃまた私、役立たずじゃない!」
(私は闘う為に、ここに来たのに)
ルイズが悔しさから、唇をかみしめる。
「私達の戦い方がある。」
タバサが二人の間に入る。
「私達はメイジ戦い方が違うだけ、ウィンディ・アイシクル」
あらかじめ、詠唱を終えた魔法を唱える。
ゼータが相手をしているゴーレムに当たる。
「ゼータ、今」「わかった」
凍った、ゴーレムをゼータが一刀両断する。
ゴーレムは二つに割れて地面に倒れた。
405ゼロの騎士団:2009/01/31(土) 22:26:27 ID:BlL3CtiU
「やっと一体ね、けど、どうするの?私達じゃ水と氷の魔法なんか使えないわよ」
タバサの魔法は、キュルケが不得な分野の魔法であった。
(どうすればいいの・・・水・氷・あっ!そうだ)
「あ!分かった、水を使えばいいのよ!」
ルイズが、何かを閃く。
「簡単に言わないでよ、それが出来たら苦労しないじゃない!」
キュルケが、ルイズの閃きに落胆する。
「大丈夫よ!ニュー、あいつ等に何時ものアレを使って、私が失敗した時に使う魔法よ」
ルイズが、戦闘中のニューに声をかける。
「アレ?」
「火傷を治す奴よ!最強威力で!」
「ああ、あれか ウォーター」
本来火傷を直す為の水をニューがゴーレムにかける。
(ん?何をやっているんだい?)
近くに潜伏して様子を窺うロングビルも、ニューの魔法の意味が解らなかった。
「ルイズ、何であんな魔法使うの?」
「今に、わかるわよ!」
何かを確信したかのようにルイズが答える。
それは、すぐに分かった。
強い水流を浴びたゴーレム達が崩れていく。
「あ!ゴーレムが崩れていく!」
「水を含んだから、泥になって重さと強度が耐えられないのよ!」
(そう言う事かい!)
舌打ちしながら、崩れ落ちるゴーレムを何とか一つにまとめようとする。
「まとまり始めたわ、今よタバサ」
ルイズが指示を出す。
「ウィンディ・アイシクル」
タバサがルイズの作戦に気付いたのか、巨大になった泥のゴーレムを襲う。
「しまった!」
ロングビルも意図に気づき思わず声を上げる。
「みんな、今よ!」
ルイズが総攻撃の合図を出す。
「メガバズ」
「ゼータ乱れ彗星」
「くたばれぇぇっ!」
「フレイム・ボール」
「ファイヤー・ボール」
それぞれの一撃が、巨大なゴーレム突き刺さり、
ゴーレムは白いダイヤモンドダストの様に粉々に散った。
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:32:20 ID:lR1DfcmB
sien
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:33:07 ID:Hkn8qSqO
支援
408ゼロの騎士団 代理:2009/01/31(土) 22:33:34 ID:VuO4ySr/
「ふぅ、終わったわね」
ルイズが、呟く。
「ルイズ凄いじゃないか、こんな作戦思いつくなんて」
珍しく、ニューが最大級の賛辞を送る。
「私なりに、出来る答えを見つけただけよ」
ルイズが、ニューの言葉を思い出しながら呟く。
「そうか・・・」
何かを感じたのか、ニューはそれ以上言わなかった。
「皆さん、ご無事ですか?」
茂みに隠れていたロングビルが心配そうにやって来る。
「こっちは大丈夫です、ミス・ロングビルの方はお怪我はありませんか?」
ルイズが、ロングビルに気づく。
「はい、隠れていましたので、盗まれた物は無事ですか?」
「はい、こちらです。」
ルイズが神の雫を渡す。
「そう、良かった」
そう言って、ルイズの腕をからめ捕り、首筋にナイフを押し当てる。
「えっ!ロングビル殿・・」
そう言いながら、ゼータが近寄ろうとする。
「動くんじゃないよ武器を捨てな、そうしないとこの娘はこの世とサヨナラだよ」
皆が知っている声とはまた違う声で、ロングビルが警告する。
「ロングビル殿まさか、あなたが」
「そう、私が土くれのフーケだよ」
ニューの言葉を待たず、フーケが正体を明かす。
「まったく、せっかく考えて3体に分けたのに、この小娘にやられるなんてね。」
ニュー達が武器を手から離すのを見ながら、フーケが感心する。
「本当はコルベール辺りがくればよかったけど、
アンタがその道具の使い方を知っているなら好都合だよ、
さぁ、百獣の斧の使い方を教えて下さいな、ダブルゼータさん」
ロングビルの声音で、ダブルゼータに使い方を求める。
(どうしたらいいんだ、魔法ではルイズに当たってしまう。)
ニューも迂闊に動く事は出来ない。
「・・・いいぜ、使い方を教えてやるよ」
409ゼロの騎士団 代理:2009/01/31(土) 22:34:09 ID:VuO4ySr/
「ずいぶん殊勝だね、どう使うんだい」
フーケが使い方を教えるように促す。
「これはな・・・」
ダブルゼータが、落とした斧をもう一度拾う。
「ちょっと、誰が動いて「こう使うんだよ!」」
拾った斧をそのまま、フーケに投げつける。
「ばか、なんてこ」
言い終える前に身の危険を感じたのか、ルイズを離して身をひねる。
ギリギリのところで、投げられた斧が空を切る。
「今だ、ガン!」
隙が出来たことで、ニューがフーケに魔法を放つ。
フーケは反応できずに、光弾に1メイル程叩きつけられる。
「獅子の斧は、力を強化するもので、俺みたいな怪力が持たないと意味ないんだよ」
斧を拾いに歩きだしながら、聞こえるはずもないフーケにダブルゼータが説明する。
「おう、ルイズ怪我はないか?」
ダブルゼータが斧を拾いながら、ルイズを心配する
「アンタ・・・」
ルイズが恐怖からか顔を俯く
「おう、よかった無事そうで」
「アンタ!なんて事するのよ!当たったらどうするの!?」
ルイズが、涙目になりながらダブルゼータの胸倉をつかむ。
「いや、フーケが多分避けると思ったんだよ」
「避けなかったら、当たったらどうするのよ!」
ルイズが、胸倉をつかむ力をより一層込める。
「大丈夫だって、多分ニューがどうにかすると思ったし、実際に無事だったじゃなねぇか」
「殺す、絶対殺すわ!このクズゴーレム」
そう言いながら、獅子の斧を両手で奪いダブルゼータに襲い掛かる。
「うおっ、ルイズあぶねぇじゃねぇか!」
「だまりなさい、このクズゴーレム!ここで土に埋めてあげるわ!」
紙一重で避けて逃げるダブルゼータを、ルイズが斧を持ったまま追いかける。
「まぁ、無事でよかったよ・・・」
その様子を見ながら、ニューは唯そうつぶやいた。
410ゼロの騎士団 代理:2009/01/31(土) 22:34:40 ID:VuO4ySr/
「・・う・・一体どうなっているんだい」
「あなたは捕まっているのよミス・ロングビル。いや、土くれのフーケさん」
キュルケが回復したフーケに応える。
しばらくして、フーケが目を覚ますと杖を取り上げられて、ロープで縛られていた。
「はぁ、まさか獅子の斧は投げて使う物だったとはね」
「いや、あんな使い方をするのはアイツだけだ」
ニューが獅子の斧の使い方を否定する。
「ロングビル殿・・・」
ゼータもそれ以上の言葉を続けられない
「私の負けだよ、好きにしな」
ロングビルは降参の合図を出す。
「しかし、百獣の斧があなた達の世界の物だったなんてね」
キュルケが追いかけまわし疲れて、倒れているルイズの持つ手を見る。
「あれは、三獣の武具と呼ばれる伝説的な力を持つ物だ、
しかし、何故あれが宝物庫に有ったんだ?」
ニューが疑問を口にする。
「それは俺も思ったんだが、ニュー、神の雫もすごいぞ、これを見ろ」
懐から、神の雫を取り出す。
「これが神の雫?ダブルゼータ、あなたこれが何だか知っているの?」
キュルケが神の雫を見ながら、ダブルゼータに聞く。
「これも私達の世界の物で」
(・・・ごめんね、テファあたしはもうあなたを守る事が出来ないよ、
あなたの使い魔のアイツに守ってもらいな・・・)
フーケの顔は何かを諦めている顔をしている。
アイツなら、あの子たちを守ってくれる。
「たのんだよ、ガ「マチルダ、無事か!」」
フーケのつぶやきは突然聞き慣れない声により遮られた。
「誰!」
ルイズが杖を持ち警戒する。
「え!アンタ!・・・・」
その声の主を知っているのはフーケだけであった。だが・・・
「まったく、心配になって来てみれば無茶しやがって・・・」
森の中から声の主が姿を現す。
「うそ・・・」
ルイズも声の主を見て声を失った。
「冗談でしょ?」
キュルケとタバサもそれ以上声は出なかった。
「あなたは・・・・」
ゼータ達もその姿に驚き、かろうじて声を出す。
「何だ、お前達は!?」
声の主もゼータ達の姿を見て驚く。
「あなたは・・・ナイトガンダム殿・・・」
ニューはかろうじてその名を呼んだ。

そこには、彼らがかつて共に戦った戦友の姿であった・・・・

「19あたしが土くれのフーケだよ」
土くれのフーケ
本名は不明
MP 700

「20巨大なゴーレムが地響きとともに現れた。」
フーケのゴーレム
土でできている。
HP 1800(3体で)
411ゼロの騎士団 代理:2009/01/31(土) 22:35:12 ID:VuO4ySr/
以上で投下終了です。
次で1部は終了となります。
ありがとうございます。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:40:07 ID:3hkDIvUz
ナイトガンダムだと・・・!!
これは凄い!大好きだぜ
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 22:45:35 ID:QQ8UIh8E
遅ればせながらマテパの人、騎士団の人乙です。

>>364-365
バックボーン的に考えると最後の場面の仕打ちに一番怒るのは姐さんだろうし盛り上がりそう
姐さん結婚式とかに憧れてそうだし
414名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 23:09:44 ID:5/GeCvkh
>385
アイザックさんじゃなくてマーカーを召喚してですね…
ハルケがTウィルスが蔓延するよりもヤバい状況になっちゃうか
ネクロモーフとかトラウマ級にグロいよ…

バイオハザード4よりジャック・クラウザーを召喚ってどうよ?
銃火器の扱いはもとより、ナイフ格闘術やコンバットアーチェリーにも長けてる
本編じゃなくてマーセナリーズ版で寄生体は自由に引っ込められるという事にすればいい
もしくは寄生される前の綺麗なクラウザーとか
レオンとコンビを組んでた頃はいい人みたいだったらしいが
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 23:12:09 ID:AG7hbnOb
百物語By Y.O.K.O.ネタで執筆中。
資料が無いッ!
古本屋やら当ってるんだけど、手にはいらねえ・・・・・・
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 23:13:11 ID:W/pC9woC
騎士団の人乙

それにしてもナイトガンダムか
あれ?ジークジオンに止めさした時点で召喚されたんだからスペリオルドラゴンになってるはずじゃないのか
そこらへんの事情にwktk


>>413
姐さんの強さの理由を聞いたルイズのリアクションも楽しみだ
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 23:15:05 ID:mBTiEzPv
フーケのゴーレムが三体でHP1800だから一体につきHP600だとすると…
さりげなくマッドゴーレムより強えwww
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 23:22:28 ID:FYJ4Hc49
>古本屋やら当ってるんだけど、手にはいらねえ・・・・・・
もしかして単行本が無いのか
無謀な奴だ……

アマゾンのユーズドで探したらどうだ
419415:2009/01/31(土) 23:34:34 ID:3TA3l178
>>418
持ってたんだが、どこ探しても見当たらぬ……引越しのときに捨てちまったかなあ……

と思って、今ヤフオク見たら出品されてた。

むう、三千円か……
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:07:19 ID:wnMT1tiO
さーて、今日も残すところあと23時間52分40秒かぁ……。
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:10:39 ID:35SnBsTB
そう言われると長いはずなのに、短く……感じねぇよw
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:12:18 ID:5MDY8UhK
騎士団の人乙です。
ナイトガンダムキターーッ!
ヤベェwktkが止まらない。
423 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:14:47 ID:wjTr16ST
0:20から投下していいですか?

元ネタはデビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王からです。
誰が召喚されるかは、1行目でばれるので今は伏せときます。ついでに言うと、タイトルでもモロばれ。
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:15:09 ID:QCRlfnDk
ハルケギニアの数字ってやっぱこっちの数字とは違うよね
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:19:44 ID:FwNLCIsE
>>424
数字といってもアラビア数字とかローマ数字があるぞ。
ハルケギニアはどちらかというと、ローマ数字に近いのでは?
426超力ガーヂアン1 1/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:21:41 ID:wjTr16ST
 
「アタシは 疾風属モー・ショボー。
 わ、ステキなサマナーさん!」

 春の使い魔召喚の儀で私が呼び出したのは、可愛い女の子でした。
 とは言っても、何処か普通の人間とは違う雰囲気を感じる。
 女の子は、ここいらでは見かけない珍しい造りの服に身を包み、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回している。
 その愛嬌のある仕草が微笑ましく、私は女の子をさらに観察する。
 既に春だというのに、革製のブーツとミトンの手袋を嵌めている。服の襟元と袖口にはフカフカのファーが付いる。柔らかそうな毛は、さわり心地がよさそうで、保温性も高いだろう。
 肌寒い日もあるとはいえ、防寒具を身につけるほどではない。つまり女の子は、ここよりも寒い地方から呼び出された事になる。
 女の子の茶色の髪は、光の加減により赤くも見え、背中を覆う程に長い。
 長い髪は背中で大きく広がり、まるで翼のようだ。さらに言うと、頭には鳥の顔のように見える帽子を被っている。
 その所為だろうか? 女の子が少し浮いているように見えるのは。比喩的な意味ではなく、物理的な意味で。
 それにしても、ひと目見て素敵だなんて、なかなか見る目があるじゃない。ふふん、まあ当然ね。
 ……ところで、サマナーってなに?
 頭を捻って今まで学んだ知識を掘り起こすが、聞いた覚えがない。 

「こういうキモチ、なんていうんだっけ?
 え〜と、え〜と……」

 改めて女の子を見やると、彼女も何やら頭を捻っている。
 けれどそれも束の間。
 直ぐに顔をあげると、無邪気な笑顔を浮かべ、小首を傾げてこう告げてきた。

「……サツイ?」
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:21:53 ID:SW8cOXYL
デビルサマナー支援
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:22:15 ID:kTpD0S2e
漢数字だってあるんだぜ!支援
429超力ガーヂアン1 2/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:22:40 ID:wjTr16ST
 



                   超力ガーヂアン1 前編

      〜デビルサマナー(仮) ルイズ・(中略)・ヴァリエール 対 青銅兵団〜




 そういえば、自己紹介をしていなかったように思う。
 私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 この国‐始祖ブリミルの息子の1人が築いたとされるトリステイン王国‐の公爵家、その3女としてこの世に生を受けた生粋のレディよ。
 公爵家っていうのは王家に継ぐ権力を有していて、私はそこのお嬢様というわけなの。おわかり?
 さて、今日はトリステイン魔法学院の風物詩、毎年恒例の使い魔召喚の儀式が行われる日だ。
 わかりやすく言うと、運命の使い魔を呼び出す儀式で、メイジにとって一人前への登竜門。ついでに、2年次への進級試験も兼ねている。
 その儀式に則り、使い魔を召喚をしたはいいものの、出てきたのは私よりも年下に見える女の子。
 どうなるのかしら? 留年だけは避けたいのだけれど、コッパゲ先生がどう言うか分からないのが不安だわ。

「ううむ…… まさか、女の子が召喚されるとは、このコルベールの眼をもってしても見ぬけませなんだな……」

 コッパゲ先生というのは、使い魔召喚の儀を取り仕切っているミスタ・コルベールの事よ。でも、みんな陰ではコッパゲって呼んでるわ。
 で、そのコッパゲ先生はというと、私が召喚した女の子を舐めるように観察している。少し犯罪者臭い。
 暫く女の子をジロジロと見てから、コッパゲ先生は両手を打ち鳴らした。

「まあ、よろしい。
 では早速、契約を。ミス・ヴァリエール」
「はあ、いいんですか?」
「使い魔召喚の儀はメイジにとって神聖な儀式なのです。故に、例外は許されません。
 この儀式が平穏無事に終わればそれで良いのです。そう、何も問題はありません」
「……わかりました」

 ……ド外道な事を言われた気もするけど、進級がかかっているのだから、わたしも文句は言えない。
 いざ契約すべく、キョロキョロと辺りを見回している女の子に声をかける。

「ねえ」
「なあにぃ?」

 女の子は何も分かっていないようで、無邪気に微笑みかけてきた。
 思わず可愛いと思うが、ここで躊躇ってはいけない。こういうのは、勢いが大事だ。
 有無を言わせず両肩を掴み、契約を敢行する。

「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生ないんだから……」

 この時、少し俯き加減で眼を逸らし、頬を赤らめるのがコツだ。
 普段ツンツンしていれば、効果覿面。けれど、素人にはお勧めできない。
 これで操縦できない異性はないと、いつの日だったか、ちいねえさまに教わったのだ。
 ちいねえさまには、感謝してもし足りない。ありがとう、ちいねえさま。後で手紙にも書かなくっちゃ。

 ……ん? 異性? この子、女の子じゃないの!
 恐る恐る顔色を窺ってみると、案の定、女の子はキョトンとした表情を見せていた。全然効いちゃいない。

「……人間はアタシとけいやくしたいの?」
「へっ? そっ、そうよ」
430名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:23:03 ID:QCRlfnDk
>>425
ローマ数字か……機械系にローマ数字は微妙かな…

まぁそれはさて支援
431超力ガーヂアン1 3/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:24:15 ID:wjTr16ST
 ぐわっ、タイトルミスった。前編は無しにして。


 なんにも分かってないようでも、契約が何かは分かるのね……
 まあ、説明する手間が省けて、好都合だと思う事にしましょ。
 こうなったら、如何にかしてだまくらかして、さり気なく使い魔の契約を結ばなくっちゃ!
 はてさて、どうやって丸めこんだものかしら?
 そんな風に考え込んでいると、女の子が無邪気に問いかけてきた。
 
「ねえねえ、人間にしつも〜ん。『あくま』といったらな〜んだ?」
「えっ? えっと、いじわる?」
「キャハッ! 『いじわる』ってほめことばなんでしょ?
 わ〜い、ほめられちゃった! ほめられちゃった!」

 咄嗟に答えたけど、変な質問する子ね? 悪魔だなんて……
 まあいいわ、喜んでるみたいだし。この調子で丸めこみましょうか。
 女の子は無邪気な笑顔のまま、さらに質問を投げかけてくる。

「ねえねえ、人間のせかいってどんなところなの?」
「……博愛の息づく大地よ」

 自分で言っておいてなんだけど、さぶいぼが立つわね。
 流石にこれは失敗だったかしら?

「アイってな〜に?
 人間といっしょにいれば、アタシにもわかるのかな?」

 女の子は愛の意味が分からないらしく、小首を傾げている。
 愛を知らないなんて、とんだお子様ね。ここはひとつ、私が一肌脱いであげましょうか。
 そう、愛っていうのは…… ええと…… あぁと……
 ……愛ってなにかしら? 正直、私にも良く分からない。
 愛ってどういう意味? 耳触りは良いが、その言葉に込められた本当の意味はなんだろう?
 その実像は朧気に霞み、輪郭を掴むことすらままならない。
 愛、アイ、あい、ai…… 意味をなさない単語の羅列が頭に渦巻く。
 しかし、女の子には、大して意味のある質問ではなかったようだ。

「ねえねえ人間。人間はアタシとけいやくしたいんだよね?
 アタシ、人間のこときにいったから、けいやくしてあげてもいいよ?」

 まさか、向こうからそう言ってくるとは思わなかった。
 望んでいた申し出に、パッと顔を上げる。

「ほんとうに? 今なら引き返せるわよ?」

 せっかくの獲物をみすみす逃がすわけではない。さも心配そうな言葉を掛ける事で、逃げ道を潰すのだ。
 何が何でも契約するわよ。呼び出された使い魔に拒否権があるなんて思わないことね。
 いざとなったら、無理矢理にでも……

「人間はアタシのことキライ?」

 女の子は小首を傾げ上目遣いに見つめてくる。少し逆効果だったようだ。
 この子、結構単純そうだし、搦め手じゃなくて直球でいったほうがよさそうね。
 ここはやんわりと否定しておく。
432超力ガーヂアン1 4/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:25:21 ID:wjTr16ST
 
「そんな事ないわ」
「キャハッ! じゃあ、けいやくしよ?」
「ええ。ぜひお願いするわ」

 かかったわ! もう逃がさない……
 心の中でニヤリとほくそ笑む。

「じゃあね、アタシのおねがいもきいてくれる?」

 お願い? 使い魔にそんな権利があると思ってるのかしら?
 けど、物で釣っておけば手荒い真似はせずに済みそうだし、飴を与えておきますか。

「……何が欲しいの?」

 何かが欲しいと言われたわけではないけれど、こう言っておけば、さり気なく選択肢を狭められる。
 長く続くような約束を言われたら困るけど、物だったら与えればそれで終わりだ。
 我ながら奸智に長けていると悦に入る。

「230円、ほしいな〜」
「はっ? なにそれ?」

 女の子はそう言って、手の平を差し出してきた。
 ニヒャクサンジュウエンってなに?
 流石に知らないモノをあげられるほど、私は器用じゃない。
 咄嗟に聞き返すと、女の子は不思議そうに小首を傾げた。

「お金をしらないの?」
「ああ、お金ね……」

 参ったわね。エンなんて通貨単位なんて知らないわ。
 とりあえず、懐から財布である革袋を取り出して中身を確認する。
 エキュー金貨が3枚とスゥ銀貨が8枚、それにドニエ銅貨が10枚ほど。
 その中からスゥ銀貨を2枚とドニエ銅貨を3枚取り出し、女の子の手に握らせる。

「これでいい?」
「みたことないコバンだけど、キラキラしててきれい〜」

 女の子はスゥ銀貨を太陽に翳し、光が反射する様を見てはしゃいでいる。
 気にいってくれて何よりだ。
 これで心置きなく契約が出来る。
433超力ガーヂアン1 5/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:26:39 ID:wjTr16ST
「それじゃあ、早速契約を……」
「人間のいのちのチカラ…… ちょっとだけすわせてよ」
「まだ何か要るの?!」

 これには、渋い顔をせずにはいられない。
 あれだけあげたのに、まだ何か欲しいだなんて、まったく図々しい子だ!
 それに、命の力ってなによ? 全然意味が分からないわ。
 こうなったら、無理やり契約をするしかない。
 ふんっ! 契約さえすれば、泣こうが喚こうがこっちのものよ!
 スカートのポケットから引き延ばし式の杖を素早く取り出すと、何度も練習した呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」
「? アタシは疾風属のモー・ショボー、よろしくね」

 何を勘違いしたのか女の子が名乗るが、そんな事は無視して呪文の先を続ける。
 唱えるのは『コントラクト・サーヴァント』。『サモン・サーヴァント』で呼び出した生物を使い魔として従属させる魔法である。
 呼び出してから別の魔法を唱えなきゃいけないなんて、とんだ2度手間だ。しかも、契約方法は接吻ときたものだ。
 もう少し、効率とかを考えて魔法を作って欲しいものだわ。まったく。
 湧きあがってくる感情を抑え、女の子ににじり寄る。後から思えば、コレがいけなかった。

「5つの力を司るペンタゴン! この者に祝福を与え、我の使い魔と……!」
「それじゃあ、いただきま〜す」

 呪文を唱え終わるのとほぼ同時、私は唇を奪われた。
 嗚呼、初めてだったのに…… いや、契約するんだから結局するんだけど、自分からでなく相手からされるなんて……
 貴族が奪う側でなく、奪われる側になるなんて、到底許容できることではない。
 突き放すべく手を伸ばすが、その拍子に女の子の髪に触れた。
 ……あっ、なんか気持ちいい。まるで極上の羽毛のようなフカフカツヤツヤした感触が手に馴染み、次の動作を鈍らせる。
 そうこうしていると、唐突に、急激な眠気が襲ってきた。と、いうよりも、むしろ体から力が抜けていく……
 四肢はだらしなく脱力し、脳幹が痺れるような酩酊感を覚え思考がうまく働かない。

「ごちそうさま〜」

 底無しの闇に落ちていくような浮遊感が心地よく、睡魔に身を委ねる。
 私が最後に聞いたのは、どこまでも無邪気な女の子の声だった。



 ◆◇◆
434超力ガーヂアン1 6/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:28:16 ID:wjTr16ST
「人間、あさだよ〜」

 誰かに揺さぶられて私は目を覚ました。
 なんだか全身がだるい。
 どうにかして重い瞼を押し上げると、窓から射し込んでくる朝日が目に痛く、思わず布団の中に潜り込む。

「あと5分〜」
「おきないと、ノウミソすっちゃうよ〜?」

 は? 脳みそを吸う? 何言ってるの?
 寝起きで朦朧とする頭で聞こえてきた言葉の意味を反芻するが、意味が分からない。
 しかし、それは直ぐに理解することになった。他でもない、私自身の体でもって。

「痛い痛い痛い痛い!?」

 唐突に脳天が割れるような激痛が奔り、一瞬にして目が覚めた。
 布団を跳ねのけ飛び起きる。

「あ、おきちゃったの〜? ざんね〜ん」

 さも残念そうな声を上げたのは、見知らぬ女の子であった。
 口元の涎を服の裾で拭いながら、辺りを見回す。
 見慣れた天井、見慣れた家具、そして優しく体重を支えてくれるベッド。間違うはずもない、私の部屋だ。

「おはよう人間」
「誰よ、アンタ?」

 さも当たり前のように部屋に居座り、挨拶を投げかけてくる女の子に怪訝な表情で問い返す。

「わすれちゃったの? きのう、人間の仲魔になったモー・ショボーだよ」
「昨日? 仲間? ……ああ、召喚した使い魔だっけ?」

 そういえばそうだ。よく見れば見覚えがあるような気がする。
 昨日のことだというのに、いまいち記憶がはっきりとしない。いやぁねぇ…… 若年性健忘症かしら?
 女の子は昨日と変わらぬ格好で、こちらに微笑みかけてきている。

「それじゃあらためて、コンゴトモヨロシク。キャハッ!」
「ええよろしく。
 先に言っておくけど、私が主人でアンタは使い魔なの。
 だから、私のことはご主人様と言いなさい。わかった?」
「うん、わかった〜。人間はゴシュジンサマ〜」

 正確に理解しているとは思えないが、逆らわないのならそれで良いわ。
 物事を深く考えるような子にも見えないし、なし崩し的に刷り込んでいけば何も問題はない。そう、問題はないはずだ。
 自分にそう言い聞かせると、モー・ショボーに向き直り、人差し指をピンと立てる。
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:29:23 ID:Vy8ZqCY0
脳みそ吸われてるwww支援
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:29:38 ID:AddYkIy3
いっぺんに投下するのに、ちと長くね?支援
437超力ガーヂアン1 7/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:30:05 ID:wjTr16ST
 
「さて、手短に使い魔の心得ってやつを教えてあげるわ」
「なになに〜?」
「先ず第一に、使い魔は主人の目となり、耳とならなければならないわ。
 ……でも駄目ね。何にも見えないもの」
「偵察はとくいだよ!」

 モー・ショボーは得意げに胸を反らす。
 とてもじゃないが、信用できない。できないが、そう急く事もない。
 実際にやらせてから結論を出そう。今は深く追求すまい。

「……まあいいわ。次に、主人の望むものを持ってくるのよ。例えば秘薬ね」
「イロイロひろってくればいいんだね?」
「そうよ。でも、役に立たないモノを拾って来ても駄目だからね」
 
 これも期待できなさそうだ。小枝とかを拾ってくる光景が目に浮かぶ。
 次のも期待できそうにないが、ダメでもともと、一応言っておこう。

「最後に、これが一番重要なことなんだけど…… 主人を守ることが使い魔の一番よ。
 その能力で主人を外敵から守るのが一番の役目ってわけ!
 でも、アンタじゃ無理よねぇ…… 私より弱そうだもん」

 大仰に肩をすくめてみせる。
 とてもではないが、この子に戦いが出来るようには見えない。
 五感の共有も駄目、秘薬の採取も駄目、戦いも駄目となれば、とんだ貧乏くじを引いたものだ。我が身のことながら、恨めしく思う。

「サツリクすればいいんでしょ? かんたんだよ!」
「そ、そう? それは頼もしいわね……」

 予想外に物騒な単語が飛び出した事に、動揺を抑えつつ流しておく。
 所詮、子供の言う事だ、気にする必要はない。
 どうせ、意味も分からずに使っているんだろう。……きっとそうだ。

「とりあえず、何処にルーンが刻まれたか確認しないとね。
 ……脱がして確かめるのが手っ取り早いわね。そういうわけだから、脱ぎなさい」
「ひだりてにしるしができてるよ?」
「……本当?」

 心の内で舌打ちをしつつ、モー・ショボーの左手を掴んで観察する。
 直ぐにルーンは確認できた。けど、これって本当にルーンなのかしら?
438超力ガーヂアン1 8/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:31:47 ID:wjTr16ST
 
「ねえ、聞いていい?」
「なぁに?」
「これ、本当に使い魔のルーンなの? そうは見えないんだけど?」

 手の甲にあったのは、円に波線が引かれた図形であった。
 当然、こんなルーンは見た事が無い。

「しらな〜い」
「はぁ…… まあいいか……」

 首を横に振るのを見て、溜息を吐く。
 どうやら聞いても無駄なようだ。まあ、後でコッパゲ先生にでも聞いてみればいいか。
 話はココまでと切り上げ、ベッドから腰をあげて手早く服を脱ぐ。
 制服のまま寝ていたお陰で、皺が付き放題だ。下着も寝汗を吸って少し気持ち悪い。
 私は躊躇せず下着も脱ぎ捨てると、おもむろにモー・ショボーに声を掛ける。
 さっそく使い魔に命令だ。

「ちょっと、着替えを取ってちょうだい。そこのクローゼットの下の段に入ってるから」
「は〜い」

 モー・ショボーは素直に頷くと、軽い足取りでクローゼットまで飛んでいく。
 ……ん? 飛んでいく?
 眼を擦って良く観察する。
 モー・ショボーはクローゼットの引き出しを開けると、そこに入っている下着類を手にとり、物珍しそうにマジマジと見た後、適当に下着を鷲掴みにして浮かびあがった。
 そう、浮かび上がったのだ。
 そのままフヨフヨと目の前まで飛んでくると、掴んだ下着を無造作に渡してくる。

「はい! 人間、もってきたよ!」
「と、と……」

 下着をぞんざいに扱うモー・ショボーの無神経さに怒る事も忘れ、私は目を丸くして馬鹿のひとつ覚えように、1つの単語を呟き続ける。
 他人から見ると、私は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているのだろう。モー・ショボーが不思議そうに見つめ返してくる。
 わけが分からない。
 私なんか、どれだけ努力しても『レビテーション』すら使えないというのに、何故ごく当り前のように飛んでいるのだ?
 私への当てつけか? 当てつけなのか?
 私は深呼吸をして、動転している気を落ち着かせてから、力の限り声帯を震わせる。

「飛んどるーーーっ!」

 モー・ショボーに指を突き付け、私は力の限り絶叫した。全裸で。



 ・
 ・
 ・
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:32:19 ID:nBcCSc1E
数字そのものより数体系が気になるという雑談交じりの支援
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:33:03 ID:bfOyUPT0
ちなみにモーショボーは美しい少女の姿になって自分の近くを通る男の旅人を誘惑する。
旅人が油断して近づいた途端に顔を鳥にし、その鋭い嘴で旅人の頭蓋骨を割り、脳髄を啜るとされる。

BY wiki

支援
441超力ガーヂアン1 9/21 ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:33:04 ID:wjTr16ST
 ひとしきり叫んでから、自分が全裸でいる事に気が付き、手早く着替えを済ませてからモー・ショボーに問い質した。
 モー・ショボーの口から語られた話は、到底信じられるものではないが、一応心に留めておく。
 彼女は、自分が疾風属の悪魔『モー・ショボー』だと名乗った。けれど、外見は人間の子供と変わらず、悪魔などと信じられるはずもない。
 どうせ、翼人などの亜人の一種で、人間からそう呼ばれているだけだろう。悪魔だなんて、馬鹿馬鹿しい。
 とりあえず、人と同じ姿をしているが、人間ではないのだと理解した。
 いくら私が『レビテーション』や『フライ』が使えないからといって、鳥を憎んだりはしない。なぜなら、彼等は魔法ではなく翼で空を飛んでいるのだから。
 私は空を飛びたいのではなく、魔法を使えるようになりたいのだ。そこを履き違えはしない。
 なるほど、よく観察すると、背中で大きく広がった髪は翼のよう、ではなく、真実、翼の役割を果たしているようだ。
 一通り質問を繰り返した後、私のお腹にいる小鳥さんが可愛い悲鳴を上げた。考えれば、昨日の昼から寝ていたので何も食べていない。
 自覚してしまえば単純なもので、私の興味はモー・ショボーから朝食のメニューへと移っていった。
 話を切り上げ、部屋を後にする。

「はぁい、ルイズ。お目覚め?」
「げっ」

 朝一でこの女の顔を見る破目になるとは思わなかった。
 この女の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。私の宿敵だ。
 キュルケは唇に人を小馬鹿にしたような笑みを口元に浮かべ、赤く燃えるような長髪をかき上げる。その際、ブラウスをこれでもかとばかりに押し上げている脂肪の塊が揺れる。
 だらしなくはだけられたブラウスの胸元からは褐色の肌が覗き、下品な色気を周りに撒き散らしている。
 ふんっ、なによ。あんな醜悪な脂肪の塊を2つも吊り下げちゃって、みっともないったらありゃしないわ。
 私は僻みで言っているのではない。あえて言おう、貧乳はステータスだ! 希少価値だ!
 ……惨めになんかなってないわよ! ほっといて!

「モー・ショボーもおはよう。よく眠れたかしら?」
「…………」

 キュルケはモー・ショボーに笑顔を向けるが、当の彼女は私の背中に隠れてしまった。
 モー・ショボーは私の背中から少し顔を出し、キュルケに警戒した様な眼を向けている。
 ……ふ、ふふ、ふふふっ!
 ざまぁないわね、ツェルプストー! 私の使い魔がアンタなんかに懐くわけがないでしょう?
 バーカ、バーカ!
 心の中で目一杯嘲笑しておく。

「あらら…… 嫌われちゃったかしら?
 まあいいわ、懐かれてて何よりじゃない。良かったわね、ヴァリエール?
 さっ、フレイム、もう行きましょ」

 憎たらしいゲルマニア女は、少しも悔しそうな素振りも見せず、肩を竦めると、さっさと曲がり角の向こう側へと消えていった。その後を、トラほどの大きさの火蜥蜴が追う。
 ……悔しい。
 何が悔しいって、あの高慢ちきなデカ女が、自分の使い魔を自慢もせずに去っていったことが、だ。
 あれは、間違いなく火竜山脈のサラマンダーだ。しかも、あの体格の良さと、見事なまでに鮮やかな炎の尻尾から判断すると、相当強力な個体だ。
 それを自慢もせずに去るという事は、モー・ショボーと比べるべくもないという事か。
 あの火蜥蜴の立派さは認めるが、私の使い魔だってそう劣るものではないわ!
 やり場のない怒りをモー・ショボーにぶつける。

「ちょっと! なにビビってるのよ! おかげで私が恥をかいちゃったじゃない!」
「うぅ…… でも、弱点じゃなくても火はこわいよぉ」
「……むぅ」

 誰にだって苦手なモノはある。私だってカエルが大嫌いだ。将来の夢はカエルを絶滅させることだと、固く心に誓っている。
 だから、強気で責める気にはなれない。だが、軽く釘を刺しておくのは忘れない。

「まあ、いいわ。次から気をつけてよね」
「は〜い」
「……ところで、キュルケのヤツ、アンタを知ってるようだったけど、何かあったの?」
「きのうね〜 お部屋をおしえてもらったの。アタシが人間のこと、はこんであげたんだよ。
 カンシャしてよねっ! キャハッ!」
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:34:51 ID:QCRlfnDk
>>440
うぉお…えげつない…
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:39:13 ID:0zIJwfXU
さる喰らったみたいだな
避難所での投下が終わったら代理行くか

610 名前:超力ガーヂアン ◆kjjFwxYIok 投稿日: 2009/02/01(日) 00:36:46 ID:gK4euKac
さるさん食らいました。何方か代理投下をお願いします。
444名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:39:33 ID:QCRlfnDk


さるさんか?
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:39:52 ID:szhZv5O2
TAREさんと当たったんだぜ……
無モスだったんで森に拠点張って序盤はいけると思ったんだけど、見事にまくられた
まあ最後はテレキでどかされたミゴールを元の位置に戻すと達成されそうだったんで見送ったら、HWXで直に取られてそのままリコールされたんだけどw
次があれば何とか勝って見せるんだぜ!
446超力ガーヂアン1 10/21 (代理):2009/02/01(日) 00:40:12 ID:0zIJwfXU
 そういえば、昨日草原で気絶したのよね。誰が運んでくれたのかと思ってたけど、この子だったとは。
 ……そういえば、なんで気絶したんだっけ?
 う〜ん、思い出せない。
 思い出せないという事は、大した理由じゃなさそうね。貧血かしら?

「ほらほら、ほめてほめて?」
「ええ、ありがとう」
「キャハッ、ほめられちゃった〜」

 少し大袈裟にはしゃぐその姿は、人間の子供と同じだ。
 本当に自称悪魔なのかしら? 欠片も信じられないわ。
 まっ、なにはともあれ、先ずは食事だ。
 早いところ行かないと、何時もの席が埋まってしまう。
 私はテーブルの端っこがいいのよ。端っこじゃないといやなの。

「ほら、朝ごはんを食べに行くわよ。ついてきなさい」
「わーい、ゴハンだゴハンだ」

 モー・ショボーは嬉しそうに私の背中を追ってくる。
 足早に廊下を進み、寮を出て、本塔へと続く通路を歩きながら何気なく訊ねた。

「ねえ、モー・ショボーは何が食べたい?」
「なんでもいいの?」
「ええ、何でもいいわよ」

 まあ、昨日部屋まで運んでくれた事のお礼だ。
 本当は、質素な食事を与えて上下関係を教えてやろうかとも思ったが、尽くしてくれた使い魔に報いぬほど、私は冷酷ではない。
 今日ぐらいは好きなモノを食べさせてあげようではないか。
 モー・ショボーも優しい私に感激して、きっと、より一層尽くすようになるに違いない。
 使い魔と上手くやっていくには、飴と鞭を上手く使っていかないと、ね?

「えっとね〜 じゃあね〜 MAG(マグネタイト)がいいな〜」
「はっ? MAG?」

 MAGってなんだろう? 聞いた事がないわね。
 そんな食べ物があるのかしら? どんなのだろう?
 初めて聞く言葉に、頭の中で疑問符がラインダンスを踊る。

「MAG(マグネタイト)、イッパイほしいな〜」
「うっ……」

 まずいわね……
 自分から言った手前、今更ダメだともいえないし、どうしたものかしら?
 MAGが何なのかを聞くのは、恥ずかしくて出来ないし……
 う〜ん。
 頭を捻ること数秒。私の素晴らしい頭脳は、素晴らしい答えをはじき出した。
 あるモノを探して辺りを見回す。

 …………

 居た……!

「ちょっと、そこの貴女! 待ちなさい!」
「は、はいぃっ!?」

 私は洗濯籠を抱えている黒髪のメイドを呼び止めた。
 黒髪のメイドは上擦った声でアタフタし、見っともないったらありゃしない。
 私はさも不機嫌そうに鼻息を鳴らしてから、頬に絆創膏を貼っている黒髪のメイドに命令を下す。
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:40:50 ID:QCRlfnDk
なんだ、さるさんか
448445:2009/02/01(日) 00:41:04 ID:szhZv5O2
>445誤爆です、すみません
449超力ガーヂアン1 11/21 (代理):2009/02/01(日) 00:41:17 ID:0zIJwfXU
「この子の食事を用意して頂戴」
「えっ、えっ? お、お食事……ですか?」
「そうよ。私の使い魔に食事を用意して頂戴」

 そう、私の考えた解決策とは、全てメイドに任せればよいというものであった。
 これならば、私ではなく、MAGのことを知らないメイドが悪い事に出来る。我ながら、ナイスなアイディアであると悦に入る。
 にしても、何をキョドッてんのよこのメイドは。
 メイドなら、何時如何なる時であろうと、貴族の命令を聞く心構えを作っておかないといけないでしょうが。
 まったく、緩んでるわね…… 頭に行く栄養が、む、胸にまわってるんじゃないの?

「使い魔……ですか?」
「あによ? 私の言う事がきけないって言うの?」

 黒髪のメイドは、キョトンとした眼をして呟く。
 嗚呼もう、血の巡りの悪い子だ。
 それに何か? 私の使い魔にケチを付けようってぇの?
 上等! いびり倒してやるわ。

「め、滅相も御座いません!
 ……それで、何をご用意いたしましょうか?」
「MAGを上げて頂戴」
「え、えっ? MAGをですか? どうしてそんなモノを……」

 オロオロとした仕草で、黒髪のメイドは口元を押さえる。
 メイドの顔に浮かぶのは困惑。しかし、私が予想していたものとは少し違っていた。
 どうにもこのメイドは、MAGが何であるのかを知っている様子だ。
 偶然といえど、利用しない手はない。

「そうよ、MAGよ。まさか分からないなんて言わないわよね?
 モー・ショボー、このメイドについて行きなさい」
「そしたらMAGをもらえるの?」
「ええそうよ。
 そういうわけだから、あとヨロシク」

 モー・ショボーを黒髪のメイドに押し付け、私はマントを翻してアルヴィーズ食堂への道を急ぐ。
 長話をしていたせいで、お腹と背中がくっつきそうだ。
 しかし、はしたなく走ったりはしない。あくまでも、早歩きで、だ。

「えっ? あっ! まっ、待って下さい!」
「貴女、名前は?」

 呼び止めてくるメイドに振り返ると、先手を打って名前を問う。私は急いでいるのだ。メイドの意見を聞いている暇などない。
 しかし、このメイドは使えそうだ。名前を覚えておいて損はないだろう。

「えっ? シ、シエスタと申します」
「そう、じゃあシエスタ。その子のこと、よろしく頼むわよ。じゃあね」

 シエスタというのか。そういえば、ここいらで黒髪というのは珍しい。何処の出身だろうか?
 今後、モー・ショボー関連で困ったことがあったら、全部押し付けよう。そうでなくても押し付けよう。
 うん、それが良い。なにより、私が面倒臭い事をしなくて済むのが良い。
 いい拾い物をした気分だ。私は意気揚々と中庭の通路を抜け、本塔へと入っていった。



 長いっていう意見もあるし、さるさんも食らったのでここで切ります。
 前編はココまで。

=====
以上、代理投下終了
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:42:14 ID:kTpD0S2e
>>440
早くもワルド戦wktkです支援
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:44:29 ID:9Waa6+TQ
乙でした

ライドウというより、マニアクスより?
つか、MAGは生きてる人間から吸い取るもんじゃね?
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:46:15 ID:5MDY8UhK
モーショボーの人乙です。
てかモーショボー怖いよモーショボー(ガクガクブルブル)
とりあえずギーシュ逃げてー!
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:46:55 ID:zXV2gRt/
中々面白かったからこのまま続けてくれても一向に構わんのだけどな
昔から今投下された分量以上のものもそこそこあったんだし
454名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:49:45 ID:bfOyUPT0
うんうん。
別に長くても一向にかまわなかったのに。

というか、避難所に投下してくれれば代理でうpしとくのでぜひ書き込んでおいて欲しい。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:49:46 ID:oHjURj+4
乙です
性格がアレなルイズが悪魔との交渉を成功させるとは
オレサマオマエマルカジリになるとばっかりw
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:50:01 ID:AddYkIy3
おつかれー
何故か440の解説見てネウロが頭に浮かんだのですがw
457超力ガーヂアン ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 00:50:35 ID:wjTr16ST
ならお言葉に甘えて、5分後から投下再開したいと思います。
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:51:51 ID:oHjURj+4
支援する
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:53:56 ID:QCRlfnDk
支援用意
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:54:08 ID:0zIJwfXU
正時またぐならさるさんもリセットだったな 支援
461名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:54:43 ID:AddYkIy3
支援支援
 
 嗚呼、全く! 忌々しいったりゃありゃしない!
 昼下がりの食堂にて、私は午前の授業のことを思い返していた。
 テーブルに片肘をついてイライラとしながら、フォークで料理に八つ当たりをする。
 思い出しただけでも腹立たしい。
 少し失敗したからといって、その後始末を私1人に押し付けるなんて、明らかに教育システムの不備を感じる。
 そりゃあ、ミセス・シュヴルーズに怪我をさせたのは申し訳ないと思うけど、ちゃんと粛々と謝ったし、反省もした。
 それなのに、あのおばさんときたら罰だなんて言って、私に講義室の後片付けをさせたのよ。全く、器の小さいおばさんだ。
 モー・ショボーは遊びながらやるから無駄に時間がかかるし、お陰で服も汚れちゃったわ!

「あっ……」

 気づくと、皿に盛られた料理は無残な姿へと変貌していた。 
 取り替えてもらおうかとも考えるが、別に味は変わらないのだから気にする必要はない、と思い直す。
 それに、こんなにイライラしていては、料理の盛りつけを楽しむどころではない。
 何時までも不機嫌にしていたところで、時間が過ぎていくだけだ。
 既に昼休みも半分以上が過ぎている。ノロノロしていると、午後の授業に差し支えてしまう。
 力任せにテーブルを叩くと、皿が音を立ててスープに波紋が踊る。
 しかめっ面でソレを見つめながら、気持ちを落ち着かせる。
 ナイフで平目の香草包みを食べやすい大きさに切り分けると、フォークで突き刺し口へと運ぶ。
 うん、美味しい。馥郁たる香草の香りが食欲を増進させ、怒りを忘れさせてくれる。料理は偉大だ。
 ふと、頭上に小さな影が落ちた。
 咀嚼しながら見上げてみると、そこには給仕のエプロンを身につけたモー・ショボーがいた。
 何をやってるのだろう?
 たしか、食堂に入る前にシエスタを見つけて押し付けてきたはずだが、どうして給仕の格好をしているのだか分からない。
 怪訝に思いながらも、嚥下してから問いかける。

「なにしてるの?」
「えへっ、たんていゴッコ! コレあげるー」
「何これ?」

 手渡された物を目の高さまで持ち上げて、よく観察する。
 それは、紫色の液体が入った小壜であった。
 栓を開けてみると、素晴らしい香気が私の鼻をくすぐる。
 どうやら香水のようだ。それも、上々の代物である。

「どうしたの、これ?」
「そこでひろったの」

 どうにも、落し物のようだ。
 それにしても、誰が落としたのだろうか? しばし、黙考する。
 もしかしたら…… と、心当たりに気がついた。
 『香水』のモンモランシー、私の同級生で香水の扱いに長けた少女である。
 そういえば、この香りは彼女が調合した物と良く似ている気がする。
 態々落し物を届けるなんて面倒臭いが、少しくらいは努力してみてもいいだろう。
 食堂の中を見渡す。
 ……いた。私と同じ列の席に腰掛け、何やら難しい顔をしている。
 落し物を届けるのに遠慮をする必要もないだろう。
 私はモー・ショボーに香水の小壜を突き返すと、モンモランシーの方を指差して告げる。
 
「落し物みたいだから、向こうに居る金髪の子に渡してきなさい」
「はーい」

 能天気な返事をすると、モー・ショボーはモンモランシーの方へとフヨフヨと空中を歩いていった。
 さて、昼休みも後残りわずかだ。しっかりと腹ごしらえしておかないと、ね。
 残りの料理に取りかかる。
 スープは既に冷めてしまっているが、それでも美味しく平らげられる。料理長の腕前は確かだ。
 白パンを一口大に千切って頬張る。柔らかいパンはほんのりと甘く、麦の味が良く分かる。
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 00:57:58 ID:oHjURj+4
支援
「…………!?」
「…………っ!」

 ……それにしても、周りが騒がしい。
 こう騒がしくては、オチオチ食事も摂れやしない。
 傍にあるワインの瓶を取る。
 ……空だ。逆さに振ってみても、グラスに赤紫色の水滴が落ちるだけで、一口分も残っていない。
 さっきまでは半分以上残っていたというのに、意地汚い奴もいたものだ。
 私の断りもなくワインを飲み干すなど、断じてあってはならないことだというのに。
 全く困ったものだ…… あまり私を怒らせない方がいい。

「ルイズ! おいこら『ゼロ』のルイズ! 無視するんじゃない!」

 『ゼロ』と呼ばれて大人しくしていられるほど、私はおおらかではない。
 険のある目つきで、『ゼロ』と言ったヤツを睨み返す。

「どうしてくれるんだ『ゼロ』のルイズ!
 君の使い魔の所為で、2人のレディの名誉が傷ついてしまったではないか!」
「はぁーん?」

 頭に血が昇った真っ赤な顔でそう捲し立ててきたのは、『青銅』のギーシュであった。
 何を言っているのか分からないが、二度も『ゼロ』と言った罪は重い。
 如何してくれようか、このスケコマシは?
 とりあえず、言い訳だけは聞いてやろう。

「……何を怒ってるのよ? お腹空いてるの?」
「そんな訳ないだろ!
 君の使い魔が軽率にも香水を届けたりするものだから、2人の乙女に涙を流させてしまった!
 どうしてくれるのかね!?」

 何を言っているのか欠片も見えてこないが、どうせコイツのことだから、女絡みだろう。
 2人の乙女がどうとか言ってる所から、二股でもばれたのだと予想する。
 そんなもの、二股を掛けている方が悪い。
 だからこう言い返してやる。

「そんなの、私が知るわけないでしょ?
 二股掛けてたアンタが悪いんだから、床に頭擦りつけて謝ってきなさいよ」
「そうだギーシュ、お前が悪い! 今回ばかりは『ゼロ』のルイズが正しいぞ!」

 ギーシュの周りの奴等がドッと沸きたつ。
 今『ゼロ』っていった奴、顔は覚えたわよ。後で見てなさい……
 それよりも今はギーシュのことだ。これで、大人しく引き下がれば良いのだけれど。

「け、け、け……」
「け?」

 ここで大人しく引き下がるヤツだったら、二股なんて掛けてないか。
 にしても、何を言うつもりだろうか?
 『け』から始まる言葉ねぇ……
 
「決闘だーーっ!」

 ギーシュは私に指を突き付けてそう叫んだ。

「…………」

 ……は?
 唐突過ぎて、目が点になってしまった。
 あれだけ騒がしかった周りの連中も、1人残らず言葉を失い、ギーシュに視線を集中させている。
 
「何馬鹿なこと言ってるの? 決闘なんて、今日日流行らないわよ。それに、貴族同士の決闘は禁止されてるでしょ」

 言うに事欠いて決闘とは…… なんともはや。
 まさかそんな世迷い言を言う程に、追い詰められているとは思わなかった。
 まあ、だからといって、同情する気にもならないが。

「ふっ…… 誰が僕と君で決闘をするなんて言ったかね?
 決闘をするのは、お互いの使い魔同士だっ!」

 使い魔同士?
 確かにそれなら、貴族同士の決闘にはならないが、モー・ショボーが戦えるとは思えない。
 ギーシュの使い魔が何なのか知らないけれど、向こうから勝負を振ってきたのだ。戦いが得意な使い魔に決まっている。
 圧倒的に私が不利だ。
 そもそも、決闘をしなければならない理由が見当たらない。

「話をすり替えようとするんじゃないわよ。アンタが二股掛けてた子達に謝るのが筋ってもんでしょ!」
「ええい、うるさいっ! やるのかやらないのか、どっちだ!」
「やる訳ないでしょ、常識的に考えて」

 こんな決闘、私には何の利益もない。ギーシュのちっぽけで、薄っぺらなプライドを増長させるだけだ。
 そう易々と、ギーシュの目論見などに乗るものか。

「ああ……、怖いんだな?
 どうせ、『ゼロ』の使い魔だ。負けるのが怖くて逃げてるんだろ。このっ、腰抜けめ!」

 コイツ…… 言うに事欠いて『腰抜け』ですって?
 そんな事、誰にも言わせないわ……っ!
 背中を見せない者を貴族と呼ぶのよぉぉぉ!?

「言ったわね!
 目に物見せてやるわ! 後で吠え面かくんじゃないわよ!」
「そっちこそ、吐いた唾は飲めないぞ!
 ヴェストリの広場にて君を待つ。怖気づかなければ来るがいい!」

 ギーシュはそう捨て台詞を吐くと、マントの裾を翻して食堂から去っていった。
 私も周りの話しかけてくる奴等を置き去りにして、モー・ショボーを引き連れて食堂から出ていく。
 そのまま本塔から中庭に出て、木陰で一休みする。
 ……嗚呼、しまった。つい勢いで喧嘩を買ってしまった。
 後になってから、後悔だけが押し寄せてくる。
 一縷の望みをかけて、隣にいるモー・ショボーに聞く。

「ねえ、モー・ショボー? アンタ、喧嘩とか得意?」
「ぼうりょくなら、けっこうとくいだよっ!」
「はぁ……
 ああそう? それは良かったわね……」

 溜息しか出てこない。
 よしんば、モー・ショボーの言う事が本当だとしても、子供の喧嘩程度の役にしか立たないだろう。 
 とてもではないけれど、使い魔同士の戦いで勝利をもぎ取ることなど出来はしない。
 はたして、どうしたものだろうか。



 ◆◇◆
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:00:06 ID:oHjURj+4
展開速ッ支援
467名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:00:36 ID:AddYkIy3
ヴェルダンテ逃げてー支援
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:00:57 ID:FjexA/Ce
ヴェルダンテがかわいそうだ
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:01:59 ID:bfOyUPT0
ヴェルダンテに死亡フラグがw
「諸君! 決闘だ!」

 ギーシュが薔薇の造花を頭上に掲げてそう宣言した。
 それと同時に、一斉にブーイングが巻き起こる。

「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの使い魔の幼女だ!
 全人類の至宝を傷つけるなどもってのほか! ギーシュに死を!」
「「ギーシュに死を!」」

 目を血走らせながらそう力説するのは、同級生の…… マルッコイノだ。
 彼が腕を振り上げるのに合わせて、周りの幾人かが唱和する。
 視線を戻すと、ギーシュは造花を掲げた格好のまま硬直していた。いい気味だ。
 結局、何の解決策も見いだせず、このヴェストリの広場までやってきたが、これなら何とかなりそうだ。
 確かに、傍から見れば、ギーシュは小さな女の子を痛めつけようとする悪役にしか見えない。
 この声がさらに大きくなれば、ギーシュも無視できず、決闘騒ぎはお流れになるだろう。
 これはしめたものだ。
 ここで出ていき、ギーシュの悪辣非道さを涙ながらに力説すれば周りは私の味方だ。
 そう考え、大きく一歩を踏み出し、ギーシュへと向かう。モー・ショボーは能天気な笑顔を浮かべながら、私の後を追ってくる。

「むっ! 『ゼロ』のルイズが来たぞ!」

 こいつも『ゼロ』と言いやがりますかこんちきしょう。
 だが、我慢だ。ここで抑えなければ企みが水泡に帰す。
 私に気がついた野次馬の群れが左右に割れ、ギーシュへと続く道が出来上がった。
 その道を肩で風切って歩んでいき、広場の真ん中でギーシュと対峙する。
 私の登場にホッとしたのか、ギーシュは大仰な仕草で私の方へと造花を突き付け、叫ぶために息を吸い込んだ。
 しかし、その息が吐き出される事はなく、再びの怒声が上がった。

「もう1人の下手人の登場だ!
 『ゼロ』のルイズは、自分の使い魔だからといって、無理矢理幼女を戦いに追いやる冷酷な女だ!
 この非道を断じて許すまじ! ルイズに死を!」
「「ルイズに死を!」」

 ……これは予想外だ。
 野次馬からしてみれば、決闘を受けて立った私もギーシュと変わらないという事か。
 チラリとギーシュの方を見やと、セリフを言うタイミングを奪われ、またまた固まってしまっている。しかも、なぜか造花を咥えたまま。
 マルッコイノに扇動されるがままの野次馬を無視して、ギーシュへと詰め寄る。
 そして、咥えられた造花を引ったくって投げ捨てると、シャツの襟元を鷲掴みにして顔を引きよせた。
 ギーシュは目を白黒させているが、そんな事などかまってはいられない。
 このままだと、ギーシュ共々株が暴落し、共倒れだ。それだけは、どうにかして避けねばならない。
 ここはひとつ、口裏を合わせてこの事態を乗り切ろう。

「ちょっとギーシュ、どうすんのよ?
 このままだったら、私等2人とも悪役よ。これから先、肩身の狭い思いをするのは御免だからね」
「う、うむ。こんな展開、僕だって望んでない。ここは、お互い力を合わせて乗り切ろう」
「ええ、そうしましょう」

 どうやら、ギーシュも同じ考えだったようで、協力体制はすぐに築かれた。
 さて、どうやって事態を収拾したものかしら?

「ねえ、どうしたらあいつ等を黙らせられると思う?」
「そうだな……
 マリコ……ヌル達は、君の使い魔にご執心のようだ。だったら、適当に戦って君の使い魔を勝たせればいい」

 マルッコイノではなく、マリコヌルだったか。
 これも何だか間違っている様な気もするけど、大した問題じゃないわね。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:03:09 ID:oHjURj+4
土竜って言うくらいだからそこそこ……いやダメだろうなw
「八百長というわけね。
 で、アンタの使い魔は何なわけ?」
「ふっ……
 僕の使い魔は、ジャイアントモールのヴェルダンデさ」
「ジャイアントモール……」

 ジャイアントモールとは、平たく言うと巨大モグラのことだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 一日に体重の半分の餌を食べ、地中で暮らしているため眼は小さく退化し、代わりに嗅覚が異常に優れているという、あのモグラの大きい版だ。
 地面を掘り進むために鋭い爪をもっているが、戦闘力が高いというわけではない。

「アンタ…… それでどうして決闘なんて吹っかけてきたのよ?」
「いや〜、勢いって怖いね。気がついてたら、口が勝手に動いてたよ」
「大体モグラがどうやって戦うっていうのよ?」
「ふっ、モグラだといって侮ってもらっては困る。勝算もなしに決闘なんか挑まないさ。
 ヴァルダンデの穴を掘るスピードは尋常じゃないのだよ。
 だから、落とし穴を作って、そこに獲物が落ちれば勝利は確実さ!」
「……あの子、宙に浮かんでるのよ? 落とし穴なんかに落ちる訳ないじゃない」
「あっ……」

 今、言われて気がついたようで、ギーシュは口を半開きにして、ポカンとした表情を見せた。ホントに馬鹿だ。
 それにしても困った。モグラが相手では、戦いにすらならない。
 勝つとか負けるとか言う以前に、まともに戦えないだろう。
 片や地中、片や空中だ。どちらにも有効打がない以上、勝負はつかないだろう。

「もうどうでもいいから、さっさと呼びなさいよ」
「うむ。そうしたいのは山々なのだが、お昼寝中みたいで起きてくれないのだよ。困った困った」

 コイツ…… 使えない。本っ当に使えない。
 馬鹿で役立たずだなんて、最悪ね。馬鹿と鋏は使いようというが、生憎私には、コイツの有効な使い方が分からない。

「じゃあどうすんのよ!
 決闘なんか嘘でしたって言う? そんなみっともない真似なんかできると思うの? これだけ事態が大きくなってて!」

 とてもではないが、なにもせずにお開きというわけにはいかない。
 なにか、取り敢えずの決着をつけなければ、それこそ顰蹙ものだ。

「まあまあ、落ち着きたまえ。考えはあるから、聞きたまえ」
「当てにしていいんでしょうね?」

 やけに落ち着いた様子のギーシュに、僅かながら期待したいと思う。
 普段なら、絶対に信用したりはしないのだが、事情が事情だ。
 藁にもすがる思いでギーシュの提案に耳を傾ける。

「勿論だとも。大船に乗った気でいてくれていい。
 いいかね? 僕が錬金でゴーレムを作り出して適当に戦わせるんだ。そして、態と隙を見せるから、その時に僕の杖を奪ってくれたらそれでいい。
 どうだい? いい作戦だろ」
「ええ、それで良いわ。
 ……ところで、アンタが素直に負けるなんてどういう風の吹回し?
 見栄っぱりのアンタが態と負けるなんて、ちょっと信じられないわ」

 以外にまっとうな筋書きに、ギーシュの評価を上方修正する。やればできる子みたいだ。
 しかし、こうも素直に負けようとする姿勢に疑問も湧いてくる。
 いくら自分に非があるのを認めようとも、こうも素直になるものだろうか?
 何かよからぬ事を考えているのではないかと邪推してしまう。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:03:59 ID:QCRlfnDk
モグラ虐殺を回避できるんだろうか
「そうかい?
 まあ、相手が同年代の礼儀知らずの平民の男なら容赦はしないんだが、相手は亜人といえ、まだ小さい女の子じゃないか。
 子供に勝ちを譲るのは別に構わないさ。
 ……言っておくが、君に負けるわけじゃないぞ。そこは勘違いしてくれるなよ?」
「はいはい、分かってるわよ」

 先ほど上方修正した評価を改める。
 どうやら買いかぶりだったようだ。こいつは、女の子なら誰でもいいらしい。
 そんな風に呆れていると、不意にマントの裾が引っ張られ、そちらへ振り向く。

「ねえねえ、まだあそばないの〜?」
「ああ、ごめんね。
 って、なによそれ?」
「あぶらみのおおい人間にもらったの。人間にもわけてあげる〜」

 そう言って手渡されたのは、アーモンド製の柔らかな2枚の生地の間にジャムを挟んだお菓子、マカロンであった。
 話している間、どうにも静かだと思っていたら、マリコヌルからお菓子を貰っていたらしい。あいつ、生粋の変態紳士みたいね。
 手渡されたマカロンを食べる気にはなれず、だからといって捨てるわけにもいかない。
 モー・ショボーは親切でくれたのだろうけど、正直持て余してしまう。
 とりあえず、スカートのポケットに放り込んでおく。

「モー・ショボー、聞きなさい」
「なぁに?」
「いまから、あのお兄ちゃんが遊んでくれるから、アンタはアイツが持っている杖を取り上げるのよ。
 いい? 分かった?」
「つえをとりあげれば、い〜いんだね? かんたんだよ!」
「そうよ。本気で行きなさい」
「はーい」

 モー・ショボーは元気よく返事をしてギーシュへと向き直る。
 既にギーシュは距離を取り、杖を構えていた。
 間合いは10メイル程だろうか、ギーシュは投げ捨てたはずの造花をまた口に咥えていた。ちゃんと拭いたのかしら?
 そして、何事もなかったように先程の口上を叫ぶ。

「諸君! 決闘だ!」

 薔薇の造花を突き付けてくる。
 またマリコヌルがいきり立っているが、それは無視して進める。始まってしまえば手出しはしてこないはずだ。
 ギーシュは気障ったらしく、花の香りを嗅ぐ仕草をしながら告げてくる。

「とりあえず、逃げずに来た事は誉めてあげようじゃないか」
「それはどうもありがとう。でも、泣きを見るのは貴方の方よ?」

 我ながら、白々しいやり取りだと思うが、他に手はない。
 互いに睨みあう。

「ねえ人間。まだやっちゃダメなの?」
「もう少しだから我慢しなさい」
「もうっ、はやくしてよねっ」

 モー・ショボーは頬を膨らませてむくれる。既に焦れてきているようだ。
 野次馬連中も、いつ始まるのかとブーイングを飛ばしている者も出てきている。
 ここいらが潮時か……
 早いところ始めて、とっとと終わらせましょ。そう、ギーシュに視線を送る。
 私の言いたい事が通じたのか、ギーシュはコクリと頷くと、薔薇の造花を構える。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:06:27 ID:oHjURj+4
支援
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや、文句はあるまいね?」

 薔薇の造花から花弁が落ちる。そして、それが見る見るうちに膨れ上がり、甲冑を着こんだ女戦士の像が生まれ出た。
 手には槍を持ち、もう片方の手には小盾を持っている銀色の女戦士だ。おそらく、彼の二つ名通りの青銅製だろう。
 私はモー・ショボーの小さな背中に、小声でどう動いたらいいのかを伝える。

「モー・ショボー、あのゴーレムは無視して、ギーシュの持っている薔薇の造花を奪いなさい。
 アンタなら、上を飛び越えられるでしょ?」
「え〜? それじゃつまんないよ〜」
「言う事を聞きなさい!」
「むぅ〜」

 私の指示にモー・ショボーは不満の様だ。
 アンタのために言ってるんだから、我慢しなさい。後でお菓子あげるから。
 そうこう言っている内に、ギーシュがワルキューレに号令を放つ。

「行けっ! ワルキューレ!」
「その決闘待ったーっ!」
「いいや! おもいっきりやっちゃえっ!」

 ワルキューレが突進してくると同時、横手からマリコヌルが飛び出してきた。
 そのままモー・ショボーの前で手を広げて盾になる。しかし、ワルキューレはそのまま真っ直ぐ突進し、勢いは緩まない。
 モー・ショボーは慌てもせず、両手を重ねて前へと突き出した。翼の様な髪の毛が、目一杯に広がる。
 何をやるつもりだろうか? なんだか、首筋がチリチリする。

「やっちゃうよー? しんくーじんっ!」

 そう叫ぶと同時、モー・ショボーを中心として凄まじい衝撃波が巻き起こった。
 それは真っ直ぐに、ギーシュへと伸びてゆく。音速で迫るソレを避ける術などない。
 当然それは、射線上に居るマリコヌルとワルキューレをも巻き込んだ。
 衝撃波は凄まじく、地面を抉り、巻き上げられた小石を粉々に砕く。
 まさに、圧巻の一言に尽きる。それ以外の言葉が出てこない。

「ぬわーーっっ!?」
「僕の名前はマリコルヌだーーっ!」

 ギーシュとマリコヌルは断末魔の悲鳴をあげて吹っ飛んでいった。何かを叫んでいたようだが、轟音で聞き取れなかった。
 余りにも予想外の出来事に、誰も言葉を発することができずにいる。、
 そんな雰囲気の中、モー・ショボーは破壊の跡を悠々と進んでいき、落ちていた薔薇の造花を拾い上げた。
 そして、無邪気にはしゃぐ。

「もうおわり? もっとあそんで!」

 うわょぅι゛ょつよい。



 ◆◇◆
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:06:45 ID:5MDY8UhK
モグラ虐殺回避支援
 我が輩は業斗童子である。なに、そう畏まる事もない。気軽にゴウトと呼んでくれればそれでよい。
 今は訳あって猫の姿に身をやつしているが、我の過去に犯した罪を慮ればしようがない事であろう。
 そう、業斗童子とは、サマナーの禁忌を犯した罪人に与えられる罰であるのだ。
 たとえ、この身が砕けようとも死ぬことは許されず、再び新たな体を与えられ、罪を償うべく苦界を彷徨うであろう……
 おっと、話が逸れたな。
 今、我はとある人物のお目付け役を担っている。
 その人物はとは、14代目葛葉ライドウ。葛葉宗家に仕える四天王が1人である。
 彼の人物は、まだ少年といえる年齢であるが、ライドウを襲名したとあり、なかなかどうして、見どころのある奴だ。
 我も葛葉の先達として、将来有望な後輩が育っている事は、素直に喜ばしい。
 そして、ライドウと我に与えられた任務とは、超国家機関ヤタガラスと協力し帝都を守護すること、なのだが……

「……葛葉ぁぁぁ!
 おぬしという奴は実に感心な男だな! その底無しの合体欲には畏怖すら覚える!
 おぬしの何度でも悪魔合体に挑む姿が、我が輩の研究者魂をすっかり熱したわ!
 ……今回の合体に限り、出血多量の大サービスを施してやろう!」

 この有様だ。
 顔色の悪い白衣を着た男が、頭を掻き毟りながら叫んでいる。
 場所は、主人曰く『帝都随一の古物商』金王屋。その地下に作られたDr.ヴィクトルの研究施設である。
 薄暗い地下に立ち並ぶ機械類は用途が知れず、余人には到底理解が出来まい。
 地下なので空は見えぬが、時は夜。今宵は、真円を描く月が天頂で妖しく輝いている。

「葛葉よ……
 クランケ…… いや、誕生する悪魔がどうなっても良いと、同意してくれんか?」

 先程から狂態を晒している顔色の悪い白衣の中年がDr.ヴィクトルだ。
 Dr.ヴィクトルの研究とは、自らの手による生命創造だそうだ。
 その研究過程において、人とは異なる強靭な生命を持つ悪魔に目をつけたわけである。
 それにより編み出された悪魔合体の秘儀は、我らサマナーにも有益である。
 我らは悪魔合体でより強力な仲魔を得る事が出来、Dr.ヴィクトルは研究材料である悪魔を得る事が出来ると、両者は持ちつ持たれつの関係というわけだ。

「よし、決まりだ!
 ……オペレーションの幕開けと行こう!」

 そうこう言っている内に、何やら妙な事になっている。
 Dr.ヴィクトルがおかしいのは何時ものことだが、今日はいつにも増して様子がおかしい。
 龍脈を利用した瞬間移動装置によって、より利用しやすくなったのは喜ばしい事であるが、こう入り浸られては帝都守護の任務に差し支えはしないだろうか? それが心配である。
 そもそも、14代目の考える事は我にはいまいち理解が出来ぬ。
 八方美人の気があるのは、金髪の青年に言われたとおりだが、それ以上に解せぬ所がある。
「まず…… アレをこうして、ソレをどうして…… うんぬんかんぬん……
 そうか! オニキスの魔性が我が輩の理論を奇跡の高みへと導くか!
 ……おい葛葉! オニキスを1個くれぬか!?」

 Dr.ヴィクトルが手を差し出すが、ライドウは無言で首を横に振る。
 これだ。ライドウは口数が非常に少ない。それ故に、あらぬ誤解を招くこともあるのだが、改める気はなさそうだ。
 まあ、必要な時は口を開くので、さしたる害はない。
 解せぬのは、鋭く尖ったモミアゲ……
 ……そうではなく、何を考えているのか、だ。

「……そ、そうか。
 では、別の理論を模索しよう……」

 今回の事にしてもそうだ。
 オニキスなど、仲魔からの譲与品で腐るほどあるというのに、渡さない意味が分からぬ。
 我には及びのつかない、何か深遠な考えがあってのことなのか、それとも、ただ単に何も考えていないだけなのか……

「……ん? ……んんん!? そうきたか! そうきたか!
 ……おい葛葉、今度はアクアマリンだ! 近い…… 近いぞぉ!
 おぬし、何をボサっとしている! アクアマリンを1個よこせ!」

 目が血走っている。流石の我も、この剣幕にはたじろぐしかない。
 ライドウはどうであろうと見上げてみると、何と驚くべき事に、再び首を横に振ったのであった。
 この肝の据わり様だけは、さすがの我も素直に舌を巻く。

「……のわっ! 手がすべった! 想定外…… 想定外だぞ、葛葉ぁ!
 ……気を取り直そう。もう少しで奇跡を目撃できるのだから!」

 一体全体どういうつもりなのか?
 仲魔をより強力に出来る機会があるのならば、逃すべきではないだろう。
 我の見立てでは、ライドウがそれをみすみす逃すことはないのだと思っていたのだが、これでは評価を改めなければならぬようだ。

「……おおおおお!? 現代科学が引っくり返る発見だ!
 ……頼む葛葉、これが最後だ! 我が輩にルビーを1個くれ!」

 Dr.ヴィクトルが三度吠える。だが、ライドウの反応は相変わらずだ。
 全く困ったものだ。いったい何を考えているのやら……
 我はもう、あれこれ口を挟んだりはせぬ、どうにでも好きにするが良い。
 椅子の上で丸まり傍観を決め込む。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:09:59 ID:AddYkIy3
嘘ん…ライドウやったこと無かったから知らなかったけど、若い頃のヴィクトルってこんな人なの?orz
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:10:05 ID:oHjURj+4
テンポいい支援
「……葛葉ぁぁぁぁっ! おぬし、吾輩の研究の邪魔をする気か!?

 …………

 ……すまん。大人げなかったな……」

 そもそも、造り出そうとしている悪魔が悪魔だ。今更こんな悪魔を作ったところで、戦力になるとは思えない。
 それにもかかわらず、ライドウは苦楽を共にした強力な仲魔を材料にして御霊を作り出したのだ。さらに、素体悪魔に希少な魔力の香まで与える入れ込みようだ。
 ……仲魔を見た目で選ぶのも良いが、程度というものがあるだろう。

「……よしっ!
 いくぞ? いくぞ? いくぞ?
 運を信じて、ともに祈ろうではないか!」

 Dr.ヴィクトルが指をワキワキさせながら叫ぶ。怪しいことこの上ない。
 そして、おもむろに装置のレバーを倒すと、1体づつ仲魔を入れた2つの鉄格子の檻が上昇していく。
 刹那、凄まじいエネルギーが発生し、2体の悪魔が融合し1体の新たな悪魔が生まれ出る。

 ……筈であった。

 しかし、轟音と共に落下してきた檻には、悪魔はおろか、何者の影すら存在していなかったのである。
 一体何が起きたというのだろう?
 合体事故といえば、出来そこないの悪魔、スライムなどが出来るのが相場である。
 しかし、今回は全くの異例中の異例、悪魔そのものが消滅してしまったのだ。
 Dr.ヴィクトルは合体の余波を受け所々焦げているが、命に別状はなさそうである。
 ライドウの方をチラリと窺う。今回のことは、流石に平静ではいられない筈だ。
 しかし、ライドウの表情はピクリとも動かず、能面のようだ。
 だが、我には明らかな怒りを感じられる。その証拠に、我の髭がピリピリと震え、尻尾の毛が逆立つ。
 これは、バナナの皮ですっ転んだ時に匹敵する怒り様だ。我は気づかれぬように、そっと椅子の上から飛び降りる。
 だが、逃げられはせぬようだ。ライドウは静かに振り返ると、おもむろに懐から恐るべき凶器を取り出し、我に差し向けてきたのであった。
 
「ぬぅ……
 合体事故が起きたからといって、我に八つ当たりをするのは、いささかお門違いというものだぞ、ライドウ?
 だから、それを懐に戻すのだ。今なら、我も穏便に済ませよう」

 しかし、ライドウは我の説得には耳を貸さず、学帽を目深に被り直し、視線を合わせようとしない。
 くっ……! どうしてもやるつもりか。だが、我とてタダでやられるわけにはいかぬ。存分に受けて立とう。

「…う、うぉ? く…くくぅ…!
 首からくるのか? お、おぉ…う…ぉ!」



 ・
 ・
 ・



 ルイズは仲魔から更なる忠誠を得て、称号が『ゼロ』から『新進気鋭』に変化し、『新進気鋭のルイズ』と呼ばれるようになった。




 ‐了-
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:15:16 ID:5MDY8UhK
モーショボーの人乙です。
モグラ虐殺回避に安心した俺ガイルw
幼女強いよ幼女
484名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:16:15 ID:bfOyUPT0
乙でした。
しかし、真空刃持ちのモーショボーかw

怖すぎw
485超力ガーヂアン ◆kjjFwxYIok :2009/02/01(日) 01:16:30 ID:wjTr16ST
 投下完了。

 支援してくれた人、代理投下してくれた人、どうもありがとうございました。
 全3話予定で、第2話は既に書き上がり、第3話も4割方出来ています。
 第2話は第3話を書き上げてから投下したいと思います。

 それではお休みなさい。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:20:41 ID:zvyGkAhK
なんて素晴らしいテンポなんだ。久しぶりの良作短編期待
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:22:58 ID:AddYkIy3
おつかれー原作未プレイなんだけど、この幼女って通常より強化されてるって事かい?
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:25:43 ID:zvyGkAhK
たぶん。特技の厳選、思い出厳選、ミタマ・アイテムドーピング、レベル高くらいじゃないかな?
ゴウトにゃんの話を聞く限りでは
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:25:53 ID:wjTr16ST
ものごっつい力でビルドアップされてます。ゲーム中でも再現可能。
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:28:20 ID:FjexA/Ce
>>487
普通に強くなるように合体させていたら真空刃持ちのモーショボーはできないと思う。
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:31:02 ID:xVkaMS0w
つまりそんなに幼女を超強化させてる筆者はロリk・・・おっと誰か来たみたいだ
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:31:41 ID:AddYkIy3
趣味>実益って事か把握した。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:33:22 ID:R23GcA6R
違う、趣味を実益に発展させるんだ
494名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:34:02 ID:oHjURj+4
ドーピングょぅι゙ょ拉致なんてルイズうらやま
ヴェルダンデ惨殺回避とは言え出番無いのも寂しいと思ったり
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:51:05 ID:Svf2EfOX
モーショボーの人乙
しかし何故俺ガイルのだろう>ょぅι゛ょドーピング
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 01:56:16 ID:fDQSU4yi
誰でも通る道
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:01:35 ID:bfOyUPT0
そういやモーショボーは朝青龍と同じ国出身の悪魔なんだよなあ
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:03:40 ID:A2pAROLs
あの国というとモンゴリアンデスワームを思い出す
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:17:21 ID:xVkaMS0w
モンゴリアンと聞くとあの男しか思い出せなくなる
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:19:48 ID:8jY8Vx/c
モンゴルマンか

U世でラーメンマンがトライアングルの中に消えた直後、ルイズの召喚によってハルケギニアの大地に立つ!
・・・あ、だめだマスクしてない
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:26:25 ID:oJ+3zI5U
>>499
キラー・カーンですね、わかります
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:46:39 ID:uqQ86rTu
>>497を読んで、タバサがモーニングブルードラゴンを召喚するのを想像しちまったw
異世界に召喚されてどうしようかと思ってたら、何故か現役横綱が居て驚くサイトの顔が目に浮かぶw
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:47:21 ID:LYtdkaG2
>>500
出て来た時にさも当然のようにマスクをしてるんだよ
何でかって?
だってゆでだから……
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:49:05 ID:uQhO9x00
ゆでなら仕方ないな
505名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:52:48 ID:8jY8Vx/c
マスク問題の次は破壊の杖・・・は、闘龍極意書で良いか
506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 02:58:31 ID:uqQ86rTu
ベアクローでトラウマ発動とか、ロビンんとこのアロアノの杖とか、
タッグでは相棒のバッファローマンのロングホーンとかもあるぜ!
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 03:01:26 ID:oJ+3zI5U
ワルド戦は何故か金網デスマッチでトラウマ発動
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 03:06:50 ID:8jY8Vx/c
>>507
トリステインからアルビオンに向かう道中に既にルイズから的の弱点が金網デスマッチである事を知ったワルドは
ウェールズ殺害後ラーメンマンとの戦いを金網リンで戦えと要求
ルイズはそんなの聞くこと無いわ!と言うが正義超人は苦手な試合場でも挑まれたからには受けなくてはならないのだった!!

っていうかバーニングコートデスマッチとか明らかに金網だよね・・・ケンダマン&スクリューキッド戦だけで完全に克服できたのか?
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 03:27:45 ID:aQXESF9G
ゆで魔法:設定のド忘れが超絶炸裂したに50ナチグロン
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 04:08:03 ID:dLuoxia4
やつにとってはバーニングコートデスマッチであって、金網デスマッチとは別物なんだよ。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 04:15:23 ID:IZF1InFH
>>508
ヘル・ミッショネルズ戦で克服しただろ。
…その後、新しいトラウマが出来そうな負け方したけどサ。
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 05:42:37 ID:cVnK0dFF
>>506
ただのロングホーンじゃつまらないから極悪超人特製の黒いロングホーンにしようぜ
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:09:46 ID:G7hJKdi6
メイジを一人倒すごとにブリミルから一万パワーを貰えるのですね、わかります。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:15:55 ID:zS5fnsBh
2本のベアークローで100万パワー+100万パワーで200万パワー!
いつもの2倍のジャンプが加わって
200万×2の400万パワーっ!!
そしていつもの3倍の回転を回転を加えれば
400万×3の1200万パワーっ!!
さらにゼロのルイズを加えれば
1200万×0の・・・
0パワーだ――っ!!
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:21:46 ID:cVnK0dFF
>>514
光速で動けるのですね。

アレを召喚してしまった場合
「使イ魔ツマラナイ…血…スキ オレモ…血デ遊ビタイ…」
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:33:20 ID:SE5tUNZJ
しかし王位争奪戦編でバイクマン相手に金網デスマッチしかけられて苦戦してなかったか?ラーメンマン
確か勝ったはずだけど。

それはそうと遅レスですけど、超力ガーヂアンの人おつですー。
自分はモー・ショボーもですがアリスをひたすら強化してます。
四色ビーム持たせてー、見覚えの成長と経験豊穣も持たせてー、
他にも色々もたせて連れ歩いてます。
517名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:36:09 ID:gsGLjZGK
>>416
きっとアルガスの魔童子編設定なんだよ。
【んなわきゃねえ】
518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 07:47:04 ID:DYvetIkc
久方ぶりにまとめWikiで自分の作品読み返したら最初の話の辺り、一行ごとにやっていたのかあまりにも改行が多すぎで、それらを全部修正していったらワード3〜4枚分位しかなかった。
一話と二話、或いは三話を全て纏めて一話に編集し直すってのはありなのかな。
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 08:08:20 ID:q+O99FAI
うおおおショボー来てる乙
それにしてライドウ…このロリコンめ!
4連ビームアリス作ってるから人の事いえないんですけどね
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 08:28:56 ID:9Waa6+TQ
このショボーは…
思い出特技「破壊神のゆえつ」「気まぐれカポーテ」「豪傑の転心」「魔弾の射手」を全部持ってるに違いないなw
あと、「火炎半減」で弱点を潰しているようだが…
ショボーは何気にアクション性能も耐性も継承可能特技も優秀だから困る
体も小さいから当たり判定も小さいし
521名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 09:35:21 ID:N/LkKmaG
帝国海軍駆逐艦「雪風」を召喚

WWUクラスの駆逐艦なら、浮遊させられると思うんだが、どうか。
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 09:44:08 ID:ZRPNojeA
というかシエスタどうなったんだろ?
マグネタイト吸い取られて失神?
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 10:19:46 ID:TBrzLhfR
>>521
乗員付き?乗員無し?中国に取られた後?
停泊中にゲートが動いて召喚?
移動中にゲートに突っ込んで召喚?
特に最後のはルイズ他全員の命が危ない、ゲートからそれなりのスピードで巨大な鉄の塊が飛び出してくる
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 10:37:31 ID:1IbGWkkG
戦闘妖精雪風から深井中尉を召喚
525ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:40:35 ID:shdvIHba
こんにちは、予約なければ50分頃目安に投下します。

前回の誤字脱字
×「はあ、まったくなんであんたなんかと巡り合っちまったのやら。土くれのフーケ一生の不覚だわ。とりあえず、怪盗フーケは捕まえられず、代わりに神の槍は奪還成功ってシナリオかい。そんで私は目出度くあんたの小間使いかい」

○「はあ、まったくなんであんたなんかと巡り合っちまったのやら。土くれのフーケ一生の不覚だわ。とりあえず、怪盗フーケは捕まえられず、代わりに破壊の槍は奪還成功ってシナリオかい。そんで私は目出度くあんたの小間使いかい」

×つながったDとルイズの影は

○つながったDとルイズの影はどこまでも優雅に踊り続ける。

 他にもありましょうが、特に目立ったものを。
526名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 10:46:03 ID:6yH002Te
シエスタはおっぱいの中にあったマグネタイと吸われて
すっかり無乳になっちゃいました
527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 10:47:10 ID:FtOxvy7V
>516
逆転の発想だ。

バイクマンが召喚されるんだよ。
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 10:50:33 ID:lQZwBi5l
>>526
なんと ルイズが 同類を見る笑顔で こっちを 見つめている
529ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:50:53 ID:shdvIHba
では投下します。後半グロめな描写ありです。お気をつけください。

ゼロの魔王伝――18

 華やかな舞踏会も終わり、教師達やませた学院の生徒達の相手に疲れたフーケは、一人自室でドレスから寝巻きへと着替えていた。さらさらと肌を撫でて行く生地の感触が心地よい。
 幾度か口にしたアルコールの所為か、体が妙に火照っていた。部屋の主の合図によって灯るランプ以外には、窓からそっと差し込む月光のみが部屋の光源であった。
 白く輝くランプの光が、ゆるゆると動いて着替えるフーケのシルエットを艶めかしく部屋の壁に刻々と描いている。
 それなりに豊かな胸元と引き締まった尻とを繋ぐウェストは、思い切りよくくびれていて、潤いに満ちた瑞々しさとゆっくりと熟しだした果実の、甘い香りの様な色香を匂わす体であった。
 ルイズの様な、未成熟であるが故に見たものに危険な衝動を覚えさせる、背徳さと可憐さという、相反するものが同時に存在している魅力とも、キュルケの様なこちらが圧倒され、押し流されてしまう堂々たる色香に満ちているのとも違う。
 かすかに浮かべた微笑みの下に、毒を塗った刃の様に危険な何かを秘めたまま男とベッドを共にし、嬌声が絶えたその時には、男の首筋にナイフが突き刺さっていてもおかしくはないような、危うさを秘めた魅力であった。
 眼鏡を外し、ベッドに横になったフーケはそっと自分の左の頸動脈を指でなぞった。人差し指の先に触れるうじゃけた二つの傷跡。
 忌々しい、呪いの証である筈のそれを指が撫である度に体が熱くなるのは何故か。
 決まっている。それをフーケの体に刻んだ男の顔が脳裏に蘇るからだ。正確を期するなら、フーケはDの姿形を明確に思い描く事は出来ていない。
 鼻の形、目の形、唇の形、それらの配置の妙。いずれも記憶に留めるには美しすぎた。
 記憶する事も出来ないほどの青年の姿かたちは、ただただ、美しいという印象のみとなり、心の中を支配するのだ。
 フーケは行為を終えた後の虚しさを悟りながら、自分の太ももの間へと手を伸ばした。触れるかどうかという加減で、自分の指が太ももの内側を撫でさすり、右手は乳房を強く揉みしだいていた。
 ああ、とフーケの唇を割って零れた吐息は、桃の色を帯びていそうなまでに淫らな熱を持っていた。
 揉み潰した乳房の肉が指からはみ出し、指だけでは物足りなくなった太ももはゆっくりと上下に動き始めていた。
 フーケの脳裏で像を結ぶDの美貌。それを思い描いた時、フーケの手は動く事を忘れ、しばし静止していたが、切なげな溜息と共に伸ばした手は戻されて、フーケは寝返りを打った。

「反則だねえ、火照った体を慰める気にもなれないなんてさ」

 突き抜けたDの美貌が、フーケの中の淫らな火をそれ以上燃え盛る事を許さなかった。あまりにもレベルが違い過ぎて、性的な欲望を覚える事さえできないのだ。
 敬虔な信徒が自らの崇める神に欲情する事が無いように、Dという男の美貌とはある種の宗教的荘厳さに通ずる領域にまで達していた。
 フーケは、今宵一晩は眠れそうにないと覚悟しつつ、眼を瞑った。
 闇に閉じた部屋の中、開かれたままのカーテンからは淡紅とぼうと霞む蒼の月光が忍び入っていた。
 月光は知っていた。寝間着から覗くフーケの首筋の雪肌に、うじゃけた傷跡など一つもない事を。フーケの指先に触れた傷跡や、鏡に映して見た傷跡の全てはフーケ自身の目と指とにしか存在を感じられぬ幻であると。


 Dとの時間にすればたった一曲分の舞踏を終えたルイズは、Dに支えられるようにして部屋へと戻った。
 あまりに感動し過ぎ、また嬉しすぎて言動に支障を来しているらしい。Dの思いがけぬ行為が生んだ弊害であった。
 声を掛けても曖昧な返事しか返さないルイズに、Dはそれでも変わらずいつもどおりの声で告げた。

「着替えて寝ろ。おれは廊下で眠る」
「……うん」

 ルイズが返事をしたのは十秒ほど経ってからの事だ。Dの声だけは一応耳に入っているらしく、ルイズはDがさっさと部屋から出るのに合わせて、視線を虚空に彷徨わせつつ、のろのろと純白のドレスを脱ぎ始めた。
 下手をしたら一週間位はこのまま過ごしそうなほど、ルイズの全身からは幸福という名の粒子がまき散らされていた。
もし、ルイズが何らかの理由によって突如落命したならば、これまでの人生でもっとも幸福な気持ちのまま永遠の眠りに就いた事だろう。
530ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:52:39 ID:shdvIHba
「やれやれ、せーっかく相棒がサービスしたってのに、これじゃ逆効果だあね」
「まったくじゃ。普段から紳士然と振る舞うように心がけておけば、お嬢ちゃんの度肝を抜かんでも済んだろうに」
「そうそう。相棒、顔はいいんだからよ、心根をもっと清く正しくしていれば靡く女には困らんね。おれ、剣だけどそう思うもの」
「ま、今さらこいつのねじくれた根性と品性を矯正する事なんぞできはせんわい。期待するだけ無駄じゃぞ、デル公」
「おれより付き合いの長いお前さんがそう言うんならそうかもしれんね。黙っているのも素敵、とか言ってくれる相手を待つこったね、相棒。
 なあに、長い人生惚れてくれる娘っ子の一人二人きっといるさね。なんたって顔がいいかんね、相棒は」
「もっともあのお嬢ちゃんがお前の事を独占しようとして、近づく女共に歯を剥きかねんがの。そのうち、決闘沙汰が起きても仕方あるまい。ふえふえふえ、『おれの為に争うな』、と割って入る練習でもしといたらどうじゃ?」

 ルイズの部屋から出たとたんコレである。Dは、相乗効果を発揮して喧しさを増して言う左手とデルフリンガーの言葉を悉く無視して、廊下を進み、月明かりが射しこむ所で足を止めた。
 月光の落とす影よりもなお濃い漆黒の人型と見えるその姿は、やはり昼の世界に生きるよりも夜の闇の中の方こそが似合いと見えた。

「しっかしよ、相棒。お前さん、血を吸いたくなるってんならあの桃髪の娘っ子といつも一緒に居るのは、けっこう不都合なんじゃねえの? これからはどうするんだね? 結局お前さん、フーケの血だってホントは吸ってねえじゃねえか。
 お前さんが左手を額に乗せたら、とたんに目をとろんとさせちまったんだもの。あん時に何かしたんだろ? 
 フーケ本人は血を吸われたと思い込んでいるだろうが、相棒の腹は膨れてないまんまなんだろ。突然娘っ子の首筋にガブ、てのは勘弁だぜ」
「なに、血を吸わんでも一カ月位なら他の食いもので代用も可能じゃ。それに血の確保も宛ては作っといたでの」

 血の宛とは無論、メフィストに依頼していた乾燥血漿の事である。Dがルイズ達と共にフーケの後を追っていた間にメフィスト病院から使いの者が訪れて、乾燥血漿をおよそ三ヶ月分置いて行っている。
 手元に置いておいた分と合わせて半年くらいは保つだろう。白い医師が本拠地としているアルビオンは騒乱の只中にあるというが、あの医師の事だ。王軍と反乱軍の戦闘の真っただ中も、必要とあらば突っ切って、Dとの約定を守るに違いない。
 場合によっては、その過程でアルビオンに戦乱を巻き起こしている要因の全てを冥府に送る事も厭わぬに違いない。
 その精神も尋常ではないが、問題なのは個人でそれを可能とする力を持っている事だろう。Dもメフィストの実力を目の当たりにしたわけではないが、彼ならばこのハルケギニアの国など容易く滅ぼせると理解していた。
 それは、D自身もまた同等の魔人であるが為だ。
 これまで鞘に納められていた鬱憤を晴らすべく、デルフリンガーはここぞとばかりに饒舌であった。
 カパカパと開閉する根元の金具の音はひっきりなしに続いている。夜のしじまを掻き乱す甲高い音は、いささか無粋であった。

「でもよ、なんでホントにフーケの血を吸わんかったのよ? 実は、血を吸ったらフーケは屍食鬼になっていた、とか、そういうのが理由かい?」
「まあ、こやつが吸血鬼ハンターだから、というの一番かの」
「ふうん、憎たらしい親と同じ真似はしたくない、てとこかね?」
「そう思うておけ。実際、吸血鬼ハンターになるダンピール共の主だった動機はそれじゃ。忌わしい吸血鬼の血を引く子供として幼い頃から石もて追われれば、否応にもそんな運命を与えた親を憎みもするわな」
「そこらへん、人間と変わらんのな」
「それが、あいつらにとっても厄介な所じゃろうなあ」

 感慨深げな左手の声が耳に届いているだろうに、Dはわずかな反応も見せずに窓越しに双子月を見上げていた。
 夜に生きる吸血貴族の血が活性化した今、Dは降り注ぐ月光の色を見、夜を渡る風の歌を聴き、蕾から覗いた花の香りを嗅いでいるのだろうか。
 夜に溢れる幾多の生命の息吹を感じ取っているのだろうか。
 陽の光の届かぬ夜の世界にもまた、命の輝きは無数に輝いている事を、夜に生きる者達の遺伝子を受け継いだこの青年は知っている。
 合唱を行っていた小さな蛙達も、ほう、ほうと鳴く梟達も思わず息をする事を忘れる様に美しくどこか厳かなDとは正反対に、左手とデルフリンガーはDの分までしゃべるかの様にぺちゃくちゃカパカパと続けている。
531ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:54:26 ID:shdvIHba
 せっかくの静かな夜が台無しな事この上ない。Dの姿を目撃し、胸に突如湧いた理解出来ぬ悲しみと感動に頬を濡らす者がいたら、眦を釣り上げて睨みつけるに違いない。

「フーケめが吸血鬼に血を吸われるという事に対して動揺してくれたのは幸いだったわ。おかげでわしの暗示がすんなりと効きおった。
自分自身で血を吸われた、逆らえないと思っておるからの。もうわしらの言いなりよ、けっけっけ、骨の髄までしゃぶっちゃるわい」
「お前さんがなんかまじないでもかけたのかい? へえ、便利だねえ。でも相棒の顔の効果もあったんだろう? 
すごいやね、でもおれっちももうちょっと使ってくれよ。おれ、剣としてまともに使われたのって一回だけだぜ?」
「なに、ナマ抜かすか。お前を使う機会なんぞ、三度しかなかったろうが。ゴーレムで二回、フーケで一回。三分の二も使われたのじゃ」
「いやま、そうだけどね。最初のゴーレムん時はともかく、二度目は一回しか振るわれていないのよ? 剣の価値低くね?」

 本当に、この左手とボロ剣は騒がしい。Dは、割と本気で縁を切る事を考えたかもしれなかった。


 ルイズが十六年の人生で最も幸福な夜を過ごしてから何事もなく数日が経った。
 意外というか、ルイズは幸福故の廃人化から見事一晩で復活を果たし、以前にもまして精力的に授業に身を入れて、勉学に勤しんでいた。
 Dと過ごす日々で、より一層、この使い魔に相応しい主人にならなければ、と心胆により深く刻み直したようだ。
 もとより座学では上位五位に必ず名を連ねていた秀才だ。実技さえ伴えば学院が誇る優秀な生徒となるのは間違いない。
 もっとも主人の方が使い魔に相応しい者になろうと努力するというのは、長い歴史を誇るトリステイン魔法学院でも初めてのことだったろう。
 お日さまがぽかぽかと心地よい日であった。洗濯物を干す手を止めて、ふっと微笑みを浮かべるとともに、太陽を見上げたくなるような、心まで暖かくなるようなお昼の時刻。
 そんな中、なんだかなあ、と喉に魚の骨でも刺さったみたいな声が、厨房の裏庭で長く尾を引いていた。

「いやさ、確かにもっとおれを使えと言ったよ。うん、言った。認めるよ」

 南天で輝く太陽の光を、刃自体には錆の浮いていないデルフリンガーが銀に染めて反射し、Dの右手に握られたまま大上段に振り上げられた。
 大地に深く、広く根を張った大樹の如く不動の足。たわめられた筋肉が解き放たれた時の膂力は、想像するだけで背筋に寒いモノを感じさせる。
 Dが無造作にデルフリンガーを振り下ろした。描かれる縦一文字の銀筋。いかな達人の眼にも一瞬の光としか映らぬ一撃は、かっ、という音を断てて刃を振り下ろした先の薪を、きれいに真っ二つにした。

「だからってよ、薪割り用の鉈代わりってどうよ? ちょっと、ねえ? どうよ? ねえってば?」

 割った薪を、土台代わりの切り株の横に積んだDが、縦に薪を五本ほど重ねて乗せた。ゆるゆると切っ先が半円を描いて再び大上段へ。
 ギーシュの操った青銅のゴーレムを、達人が名刀で薄紙を斬ったかのように切り捨てた斬撃が、今一度振り下ろされた。

「あ、無視? 無視するんだ? ひでえ、おれは傷ついたね。傷ついたよ。でも我慢する。なんたって相棒だかんね。相棒だから、多少ひどい事されても我慢してやる」

 Dがまた、割った薪を切り株の脇に積んだ。以前、決闘騒ぎに関わった事で、厨房の皆から好感をもたれたのを機に、シエスタから時々上等なワインや食事などを奢られ、その礼代りに行っている薪割りである。
 他にも、小麦粉やら食材の仕入れの時の荷物持ち変わりをしたりと、日常の中での手伝いもしていたりする。前述した事もあったが、日常の雑事ならほぼ完璧にこなせるスキル持ちなのだ。
 顔に問題がありすぎて直接厨房に顔を出す事はないが、受けた恩は忘れないらしい性分と、決闘騒ぎの一件もあってDはなかなかに厨房や学院で働く平民達には人気が高い。
 その顔を見た場合は、平民も貴族も関係なく虜になってしまうのだが。
 今日の分の薪を割り終えて、ぶうたれるデルフリンガーを鞘に収めたDの背に、朗らかな声が掛けられた。
 純粋な友好の意と善意のみが込められた声は、Dにとっては聞き慣れぬ類の音だったろう。

「Dさん、そろそろお昼を持っていきましょう」
「いつもすまんな」
「いいえ、私が好きでやっている事ですし、マルトー料理長からのお許しもありますから」

 そう言って純朴な笑みを浮かべて、手に持った籐の籠を持ち上げてみせたのは、シエスタである。
532ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:56:18 ID:shdvIHba
 肩口で切りそろえられた鴉の濡れ羽色の髪と雀斑の浮いた健康そうな肌、親しみやすい雰囲気を持った女の子だ。
 しかし通常の食事を必要としないDに対し、どうやら食べ物を入れた籠を掲げて見せて、持っていきましょうとは、どういう意図であろうか。
 あまつさえ、Dが礼らしき言葉を口にしている。
 二人は肩を並べてその場を後にした。
 魔法学院の周囲に広がる草原の一角で、ここ連日鳴り響いている爆発音が、ちょうど合計で三百回目を数えた。
 青々と生い茂る草原の、その一角だけが見るも無残に抉られて、地面の中身を盛大にぶちまけている。大地という生物の肉体を突如奇禍が襲い、臓腑をまき散らされたようにも見える。

「十メイルだと、精度は……」

 となにやら呟きながら持参したノートにメモしているのは、桃色ブロンドと、はっと息を飲む美貌、そして悲しいかな周囲に広がる草原と同じようになだらかな胸元が特徴の、Dのご主人様(たぶん)、ルイズである。
 以前にDと話をした時、爆発を練習してみてはどうか? と言われ、どうせ爆発するならば、と思い直し、こうして授業の合間などに爆発魔法の練習を始めている。
 フーケのゴーレムとの戦いでも、この爆発魔法のお陰で助かったという事実もあってか、熱心にルイズは毎日毎日爆発を起こしていた。その成果もあって、ルイズは概ね自分の爆発魔法の規則性を把握しつつあった。
 やはり、失敗であるにせよ爆発は魔法の一種であるらしく、威力は精神力、すなわち感情、気力に左右されるという事。
 ギーシュの操るゴーレム戦でゼロ距離からならば必中させられた事から、推測時実証した結果、自分から遠ざかれば遠ざかるほど狙った部位に魔法を起こす事は出来ない事。
 唱える呪文に関係なく爆発は発生し、仮に詠唱に失敗して爆発は起きる事。
 最初から起こしたい爆発の規模と場所を鮮明にイメージして詠唱すれば、精度が飛躍的に伸びる事などが判明した。
 確かに鮮明にイメージを思い描く事は大切だった。最初から爆発を克明に脳裏に描いて唱えれば、より爆発の精度は増すのだ。炎の球を思い描きながらウィンディ・アイシクルを唱える者はいないだろう。

「う〜ん、魔法の種類を問わず魔法を行使すると爆発につながるのよね。ライトでもフライでもレビテーションでも、挙句の果てにはスペルしか知らないカッター・トルネードでもジャベリンでも爆発だし。
 コモン・マジックでもドット・スペルでもスクウェア・スペルでも爆発に帰結する……私って無節操なのかしら?」

 四系統のあらゆる魔法、それもクラスを問わず唱えても発生する爆発に、ルイズは首を捻る他なかった。
 極めて嫌なのだが、ひょっとして自分はどんな魔法でも爆発という現象に変えてしまう特異体質なのだろうか?
 いやいやいや、贅沢は言わないからせめて普通の貴族並みには魔法が使えたい。なんでもかんでも爆発しか起こせないメイジなど前代未聞だ。
 そもそも、誰も彼も、ルイズに魔法を教えて来たメイジ達は、あの爆発を魔法の失敗と断じてきたのだ。
 どれだけ爆発を使いこなそうとも、それではメイジとしては認められぬままだろう。
 はあ、と溜息をつき、ルイズは周囲を見渡した。練習を始めたころはとにかく魔法を唱えて唱えて唱えて唱えまくり、精神力を使いはたして気を失っていた所をDに発見された。
 失敗と烙印を押された魔法の練習をしている所を見られるのが恥ずかしくて、Dに内緒で練習していたのが裏目に出たのだ。
 本当にかすかに、呆れた様な感心した様な微妙な影が、目を覚ましたルイズに気づいたDの顔によぎったのを、ルイズは今も憶えている。もう恥ずかしいやらなんやらで、ルイズは穴があったら頭から潜り込みたい気分だった。
 とりあえず、それ以来Dが付きっきりというわけではないが間を置いて様子を見るようになり、ルイズの魔法練習は一人きりではなくなった。
 また、ルイズの魔法練習にはいつしか練習相手もいるようになったのである。う〜ん、とノートを手に首を捻っているルイズの背に歩み寄ったのは、キュルケやタバサではなく、あの金髪にフリル付きシャツの少年ギーシュであった。
 黙って壁際に背を預けて佇めば、頬を染める少女の一人二人はいそうな顔立ちに浮かぶ気障ったらしさは変わらぬが、件の決闘前よりもはるかに友好的な光が、瞳に浮かんでいた。
 ルイズとは文字通り拳を交わした仲だ。夕日を背景に土手の上で殴り合ったわけではないが、ギーシュがルイズに対し好感を抱くには十分であったらしい。
 ちなみに、ルイズに動く的および人間大の的として吹き飛ばされたギーシュのワルキューレの破片が散乱している。
533ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 10:57:20 ID:shdvIHba
 いずれも一撃で上半身や頭を吹き飛ばされ、ルイズの爆発の威力を物語っている。爆発をコントロールし始めたルイズ相手に決闘をしたら、ぶっちゃけ勝てないんじゃなかろうかと、ギーシュは本気で悩んでいる。

「すごいな、ルイズ。ドット・スペルでもこうまで連発して詠唱するのは、トライアングルでも難しいじゃないか? 言っておくが嫌みなんかじゃないぞ」
「まあ、確かに詠唱回数と詠唱速度はピカ一なのは事実ね」

 その二つが対人戦闘ではどれほど強力な武器となるものか、ルイズは分かっているのだろうか。
 個人戦においてすこぶる強力な風系統以上の詠唱速度、さらに前兆と過程が無く、遠隔地に突如発生する爆発は、回避も防御も困難だろう。
 自分が爆発専門メイジなのかと思い悩むルイズに対して、ギーシュの評価はかなり高く見積もられているようだ。
 Dの召喚以来、これまでになく感情の起伏に富む経験を経た所為か、ルイズは魔法に費やす精神力の制御を、感覚的にではあるがコツや流れといった形で把握し、理解していた。
 ドットメイジであるギーシュが精神力の消費が少ない最初歩の魔法を唱えても、ルイズと同じ回数の魔法を行使する事は出来ないだろう。
 ギーシュは足元の直径十サントほどの穴と、視界の端っこにある直径十五メイルの大穴を見比べた。
 どちらも最近になってコツを掴んだルイズが最大と最小の爆発の威力を比較すべく穿った穴であった。
 もしルイズが爆発しか起こせないとしても、完璧に使いこなして見せるようになれば、名を馳せる事とて難しくはなさそうだとギーシュは思った。むろん、武闘派としてだが。
 武闘派として名が知れ渡る、というにはルイズは望むまいが、軍人の家に生まれ、そうなるべく育てられ、その宿命を受け入れて誇りにしているギーシュは、自然とルイズの爆発魔法を、戦闘・戦争においてどのように利用できるかを考えてしまう。
 友人(と思う様になった)をそのように考えてしまう自分に気づき、卑しい自分の心根に恥を感じながら、ギーシュはそろそろ休憩にしようと提案した。腹具合でお昼頃だと判断したらしい。
 懐中時計、太陽時計様々あれど軍人である以上正確に時刻を把握する特技は役に立つだろう。まあ、一日の三食の時間しかわからないのだが。

「ほら、君の使い魔も来たよ」
「あ、D!!」

 ギーシュがそう言って薔薇の杖で指示した方向から、陽の光が全て吸い込まれてしまいそうな闇の人型と、その隣に居るにはあまりにも普通すぎて逆に安心できるメイド姿がある。
 Dの隣に自分がいない事に嫉妬の炎が熾火のようにささやかな、しかし密度でいえば超重力の奈落の穴、ブラックホールにも匹敵するレベルに一瞬で到達し、それをかろうじて抑えて、ルイズは愛用の杖を握った右手を、Dに向けてぶんぶん振った。
 その動作に紛れて爆発魔法を唱えて、Dの隣のシエスタを爆殺する気じゃないだろうな、とギーシュは頬を引くつかせた。
 ルイズはまるで長い事家を出ていた大好きな兄に再会した妹の様な無邪気さだ。Dの隣で、飛ぶ鳥も睨み殺しそうな嫉妬の炎を向けられているとは知らぬシエスタは、そのルイズの様子に、故郷の弟妹を思い出した様でにこにこと笑みを浮かべている。
 その様子がまた仏頂面で生まれてきたようなDと相反していて妙に絵になるものだから、ルイズの笑顔の背後にゆらゆらと揺れる不可視の嫉妬の炎は一層、粘度を増して不気味に揺れている。傍に居るギーシュは背筋を流れる汗の冷たさに慄いた。
 タバサやキュルケが味あわされた、魔王とでも形容すべきルイズの異様な迫力の一欠けらである。
 ギーシュは足元の名もない草や花が、ルイズの迫力に撃たれて枯れ果てているのではないかと錯覚した。
 ルイズの周囲の大小様々無数のクレーターを一目見まわしてから、Dは自分のご主人様(おそらくは)を見た。
 相変わらず何を考え、どんな感情で相手を見つめ、どのように見えているのか分からない瞳であった。
 ルイズは、そんな事は慣れたのか気にするだけ無駄と悟ったのか、うっすらとほっぺを桜色に染めて、たた、と小走りした。
 いやあ、まるで愛玩動物とその主人みたいじゃないかね、とギーシュは、犬の尾があったら目一杯左右に振っていそうなルイズの後ろ姿を見て、しみじみ思った。
 とりあえずあの主従の関係は良好らしい。時折、いや、かなり頻繁にDの方が主人で、ルイズの方が使い魔なんじゃないだろうかと見えてしまうのが問題と言えば問題だろう。
534ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 11:00:54 ID:shdvIHba
「今日も精が出るな」
「もちろんよ! 少しでも早く一人前のメイジになりたいんですもの。一秒だって無駄にできないし、私にできる事なら何だってするわよ!」
「そうか」

 そのままルイズはDの右隣に並び、最近お昼を食べる場所として利用している一本の大樹の下まで歩いて行った。
 シエスタがテキパキと手に持っていた籠からワインや水、スープを淹れた陶器の壺や瓶、サンドイッチと軽めの食事を並べていった。
 まだ焼きたての熱が残るオムレツを口に運び、ルイズは魔法の行使ですり減った精神力を、空腹が癒されるのと同時に高揚してゆく感情で補充した。
 本来の歴史の、今よりもさらに未来にてルイズの魔法は嫉妬や怒りといったいわゆる『負の感情』とされるものを源とし、糧とする、と推測される事となる。
 しかし、本筋から外れた正統ではない時間が流れ始めたこの世界、この瞬間、ルイズはあらゆる感情を魔法行使の糧としていた。
 嫉妬も、憎しみも、怒りも、喜びも、憂いも、嘆きも、ありとあらゆる人間の持つ感情が、ルイズの魔法の糧となる。徐々に徐々にルイズは、本来のルイズとは違うものに変わろうとしているのかもしれなかった。
 Dやメフィスト、妖姫、幻十、にせD――異世界からの異物を招いた何かの思惑とはそれであろうか。異邦人の存在が起こす波紋は、はたしてこのハルケギニアという水面をどのように乱すのであろうか。
 最も、当のルイズには自分が本当の自分とは違う者になりつつあるのだとは、微塵も知らぬ。そも、眠れる自分の資質を知らぬのだから無理もないのだけれど。
 Dとルイズとギーシュとシエスタの四人での昼食も、ずいぶん慣れたものだ。シエスタもギーシュに対して怯えた素振りは見せず、にこにこと皆の食事の様子を見守っていた。
 あの決闘の時の怯えぶりはどこへやら、ひょっとしてあの時の自分への恐怖の表情は、演技ではなかったのではないかと、ギーシュは思っていたりする。
 未だに学院のあちこちで見かけた者が気絶する現象を頻発させるDの美貌や、常に纏う尋常ならざる冷たい雰囲気にも動じた様子を見せていないのだ。これだけで只者ではないと分かる。
 そんな風にギーシュに見られているとは知らず、給仕である事を弁えているシエスタは自分自身は料理に手を着けずワインの代わりを注ぎ、空になった皿を片づけている。
 Dはあまり料理に手を着けてはいない。平均的な成人男性の半分ほどの量で済ませている。
 ダンピールという出自故に通常の食物の摂取の必要性が乏しいからなのだが、それを知らぬルイズらからすれば、意外と小食なんだ、と実にあっさり納得していた。なんでもありの人物だと思っているから、細かい事を気にしなくなっているらしい。 
 お腹もこなれ、そのまま眠りたい気分になるのを堪えてルイズは立ち上がった。ギーシュもつられる様にして立ち上がる。そろそろ学院に戻って授業の準備をする事が必要だろう。

「ん〜〜〜! 今日もずいぶん爆発させたものね。我ながら感心するわ」
「なんちゅうかお嬢ちゃんをナメとったと最近思う様になったわい」

 Dの左手から零れた呆れた声も無理はないだろう。今日までさんざかルイズが爆発させた光景を思い返してみれば、魔法学院を跡形もなく吹き飛ばすのも一日あれば事足りそうである。
 一個人が魔法のみで成すには極めて困難な事だろう。Dのご主人様は思ったよりも大物なのかもしれない。時折Dがやたらとしゃがれた声を出すのにも慣れたのか、シエスタとギーシュは気にしていない。
 加えて、左手の老人の声同様にルイズが、ゼロとただ馬鹿にされるだけのメイジで終わらないだろうと思い始めている事も大きい。
 あれだけ魔法を乱発しながら、こうしてけろっとした顔でいるのだ。尋常ならざる精神力といえた。ドットとしては優秀と判を押せるギーシュも、ルイズの練習に付き合いだしてから、改めてこの少女の秘めた才覚を感じて評価を改めていたのだった。
535ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 11:02:13 ID:shdvIHba
 壮麗なプチ・トロワの宮殿を、青い髪の小柄な少女が歩いていた。小柄と言うよりも幼いというべきかもしれなかった。
 まるで数年前のある日以来成長する事を止めた様なその姿は、いわずもがなタバサであった。
 ハルケギニアでは犬猫やペットに着けるような名前であるタバサという、あからさまな偽名を名乗る少女は、今日も今日とて命を落とす事を暗に期待された過酷な任務を終え、その報告を終えた帰りである。
 父同様にメイジとして優れた才能を有するタバサへの嫉妬と、簒奪者と罵られる現王を父に持つ従姉妹のイザベラは生来の気性以上に、それらのコンプレックス故にタバサへと向けた厭味や嫌がらせは限度を知らない。
 任務を受けに行く時と報告を告げる時にいちいち突っかかってくるイザベラは、気持のよい存在ではなかった。
 まあ、最近は父王が召喚した使い魔の顔のお陰もあって、ぽう、と遠いどこかを眺めて居るきりなので、辛辣な対応はされずにいるが。
 何度も通い慣れた廊下を歩いていたタバサは、忽然と目の前に立つ小さな影を認めて足を止めた。
 ソレは、まだ五歳かそこらの小さな小さな女の子であった。金糸の様な髪を肩口で整え、向日葵の様な笑みを浮かべてタバサに笑い掛けてきた。
 『雪風』の二つ名通りの白い肌のタバサに負けず劣らず、いや、むしろ血が流れていないのではと思うほど白い肌が、印象的だった。
 宮廷詰めの官僚達の子供だろうか。身に着けているドレスは瀟洒な紫サテン生地の、一目で高価と知れる上品なものであった。
 少女に対して笑い返そうとしたタバサは、しかし凝と顔を強張らせた。その、陽光の祝福を受けて輝く笑みを浮かべる顔は、かつて月光の下で四肢を落とされ、目に見えぬ魔糸の贄とされた少女ではなかったか。
 吸血鬼が昼歩む不思議も、落とされた筈の四肢が元通りになっている不思議も忘れ、タバサは咄嗟に杖を身構えた。その小さな体の中で鳴り響く危険を告げる警鐘の音を魂が聞いていたからだ。
 ぞわっと肌が泡立つ。ぶわっと汗が噴き出た。血が熱を忘れて冷たくなる。心臓の鼓動がひどく遠い。
 幻十と相対した時を除けば、かつてない程の脅威――魔王ルイズが目の前の少女に匹敵する恐怖を湛えているのが無駄に凄いと、タバサは心の片隅で思った。

「初めまして、お姉ちゃん。サビエラの村で会ったのは回数に入れないでおきましょう。私はエルザよ。お姉ちゃんのお名前はタバサというのでしょう?」

 にこやかに、風貌には似合わぬ大人びた物言いをするエルザの笑みに、タバサは強張った顔の筋肉をほぐす事が出来なかった。目の前のアレは、バケモノだ。タバサは、すでにエルザをアレ、ソレ、と人間以外の形容で呼んでいた。
 エルザが近づいてきた。一歩目、二歩目を刻む瞬間を見たと思ったのと同時に、エルザの姿が狭霧の如く霞んで消えた。

「!?」

 ひた、とひどく冷たい手がタバサの首筋を撫でた。椛の葉のように小さな手は、エルザのものであろう。
 しかし、どう考えてもタバサの首筋にエルザの手が届くわけもない。ましてや、恋に胸を焦がす少女の如く熱く濡れたエルザの声は、タバサの頭上三メイルの高みから降り注いでくるではないか。

「ああ、お姉ちゃんの体はあったかいね、冷たい眼をしているけど、やっぱり、人間の体って温かい。血は熱いんだよね。
 ああ、いいなあ、私はね、体の芯から冷たいままなの。心も冷たいのよ、魂が凍えているんだよ。それをね、血を吸う時だけ忘れられるの。お姉ちゃん達人間はね、その為だけに生きて、増えて、そして血を吸われればいいのよ。私に」

 エルザの言葉の一語一語が、ぞわりぞわりとタバサの肌を削いで行くかの様。
 幻十の魔糸によって斬りおとされた四肢は、どのようなおぞましい処置を受けたものか、タバサに触れる指は氷の如く冷たく、ずり、ずり、と蛇が巨体を這いずるような音がタバサの周囲で旋回している。
 タバサは滾る陽光が不意に輝きを失い闇の帳が落ちたような錯覚を受けた。だんだんと、確かに開いた筈の瞼が異様な重さを持ち、閉じはじめる。
 ああ、タバサの頭上で爛と輝く二つの輝きはエルザの猫目であった。タバサに笑いかけ、タバサもまた笑い返そうとしたその一瞬で、タバサの瞳を見つめたエルザの瞳が仕掛けた催眠術であった。
 ぼう、と霞を帯びるタバサの青い瞳。しゅうしゅう、と氷雪を交えたかの様なエルザの吐息がタバサのうなじを撫ぜ、エルザの唇が這いまわった。
 十二、三歳の少女としか見えぬタバサの体を、わずか五歳程度の少女が嬲る光景は背徳に満ちた官能の光景であった。エルザの顔は確かに欲情に濡れ、タバサの肉体を嬲り、心を犯し尽す行為への歓喜に満ちている。
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 11:02:30 ID:63EOxcPF
支援
537ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 11:03:06 ID:shdvIHba
 意識を朦朧とさせたタバサの喉笛に、わずかに唇から覗いたエルザの牙が突き刺さり――広大な絶対凍土の冷たさと美しさを凝縮したかのような声に止められた。

「エルザ」

 雷に打たれたかのように硬直したエルザ。タバサの首筋に牙をむけたまま、視線を正面へと向け直した。
 タバサの目の前に突如出現した自分の様に、超知覚能力を与えられた自身の様に気付かない間に姿を見せた絶対の主君を。
 漆黒のインバネスが翼を閉じた魔王の如く映るのは何故か。
 吹きすぎた風は腐臭を纏いながらも、恍惚と地に落ちるのは何故か。
 こちらを見つめる瞳に映る自分の姿が、鮮血の海の底に沈んでいるように見えるのは何故か。まるで、瞳の主にそこに落とされるのだと運命が告げる様に。

「ゲント様」
「エルザ、彼女を離せ」
「はい」

 幻十の命令は鉄の掟なのであろう。それまでの恍惚の顔を恐怖一色に変えて、エルザは両手の中に捉えたタバサの体を開放した。
 流れる血潮に対する欲情の炎も、幻十の瞳の冷たさの前では燃える事を忘れ、エルザはその場で膝をつき頭を垂れた。
 生命も心も奉げる事を誓った神を前にした信徒の様だ。しかし吸血鬼の幼女が崇めるこの神の瞳のなんと冷たい事。なんと美しい事。
 幻十の右の人差し指が十分の一ミリ動いた。一度だけ。それだけで伏せていたエルザの面は上がり、四肢は縄に十重二十重と巻かれたように緊縛された。
 いかなる苦痛が与えられているのか、エルザのあどけない顔が浮かべるのは地獄の獄卒に責められる罪人の苦悶であった。

「エルザ」
「は……い……」

 舌を動かす事さえも新たな激痛を生む緊縛地獄の中でなお、エルザは幻十に答えた。いかなる状況にあっても、自らの問いに答えぬ従僕を許す様な青年ではなかった。
 サビエラ村の住人が皆殺しにされ、エルザもまた四肢を落とされた夜から何があったものか、エルザは心底からの恐怖と忠誠を、幻十に捧げているようだった。

「それはぼくのおもちゃだ。壊されては困る」
「もうし、わけ、ありま……せん」
「昼歩む肉体となった事にはしゃぎ、この宮殿の者達や城下町の人間の血を啜った事は僕も許そう。
 しかし、ぼくの意に沿わぬ事をするとなれば話は別だ。ぼく自身が手を下す仕置きはこれだ。後はお前自身の手でするのだ。今、ぼくの目の前で、主たるぼくの機嫌を損ねた罰を自分自身で下すがいい」
「はい」

 千分の一ミクロンの魔糸による緊縛と骨を直に削られる拷問から解放されたエルザは、折りそうになる膝をかろうじて保ちながら、自分の右目に伸ばした左手の人差し指と中指を突っ込んだ。
 ぐちゅりと、濡れた音がする。簡単に掌で包みこめてしまう小さなエルザの手は、一切停滞する事もなく、自分の右の眼窩へと指を潜り込ませた。
 その様子を顔色を変えるでもなく、自身の命じた事を忠実に実行するエルザへの感嘆の様子もなく、幻十は当たり前だとばかりに見つめていた。
 エルザの眼窩の中で、指が曲げられた。丸い眼球を掴み、一息に抉りだす。ぶちぶちとい視神経や筋繊維の引きちぎれる音が頭蓋の中に響き渡り、溢れる血潮が頬を流れドレスの生地を赤く染めて行く。
 凄さまじい激痛に襲われる中、エルザは残る左目に映る幻十の氷の彫像のように冷たく微動だにしない姿に恍惚と酔いしれ、唇の中に流れ込んできた自分の血の味に体を震わせた。
 右目を抉りだすという言語に絶する苦行の中、エルザは飲み下した自分自身の血の味と冷たさ、そして半分になった視界に映る幻十の美貌に陶然と蕩け、激痛と喪失の恐怖をはるかに凌駕する幸福を感じていた。
 エルザの催眠瞳から解放されたタバサが、柔らかいモノを抉る音と、むわ、と鼻を突いた血の匂いに明確に意識を覚醒させる。
 いつ動いたものか、タバサの背後に居た筈のエルザは、幻十の前に立ち、左手の掌の上に抉りだした自分の右の目玉を見せていた。右の眼窩からはすでに赤い滴りは止まり、廊下やドレスの胸元を濡らす事もない。
 エルザ自身の手で抉りだされたその目玉を冷たく一瞥していた幻十の指が、再び風に揺れる羽毛のように繊細な動きを見せた。同時に光の速さで空を切った魔糸が、エルザの眼球を微塵に切り刻み、跡形もなくす。
 エルザの掌の上にはかつて眼球だった肉片と、それから零れた血潮が残された。それを、エルザは黙して見守り、ドレスのポケットに収めた。
 言葉もなくし、何が行われていたか想像し、生きた心地というものを忘れ果てたタバサへ、幻十は妖しく笑いかけた。魂を握られるようなおぞましい悪寒が、タバサの背筋を流れた。
538ゼロの魔王伝:2009/02/01(日) 11:05:28 ID:shdvIHba
「すまなかったね。ぼくからよく言い聞かせておくよ」
「…………」
「エルザ」
「はい、ゲント様」

 廊下に膝を着いていた姿勢から立ち上がり、ドレスの裾をふわりと翻してエルザがタバサを振り返った。万物に等しく降り注ぐ太陽の光のカーテンの中に翻るエルザの金の髪と、紫サテンのドレスの裾は、それら自体が光を放つかの様に美しい。
 しかし、まだ五歳くらいにしか見えぬエルザの右目にあるべき眼球はなく、真っ赤に濡れた空洞がぽっかりと開き、花の蕾が開いて笑い返しそう笑みを浮かべる顔は、流れた血に濡れて、もはや死人の色だ。
 艶やかさの中に上品さを併せ持ったドレスにも赤いまだら模様が描かれているではないか。
 エルザは幼い淑女の様にスカートの裾を摘み、深く頭を垂れた。伏せた顔から、ぽたぽたと廊下に血の球が落ちて弾ける。

「申し訳ございませんでした」

 心からの謝罪の言葉を口にするエルザが、再び折った腰を戻して顔を挙げた時、すでに右目には網膜が張られ水晶体が再生し、白い物体が泡立つ様にして空っぽになった右の眼窩を埋めようとしていた。
 目の前で徐々に再生してゆくエルザの右目に、息を呑むタバサにからかうようなウィンクをして、エルザはすでに廊下の彼方を歩いていた幻十の後を追った。
 幻十の魔手に落ちたあの夜から、浪蘭家に伝わる呪術・魔術と<新宿>で幻十が身につけた妖技術によって肉体をどのように改造されたものか、わずか数秒で失った眼球が元に戻っているのだ。
 すでにタバサの事も、自分の眼球を抉りだした苦痛も忘れたと、走り去る背中で語るエルザと幻十を、タバサは色を失った顔で、長い事見続けていた。


投下終了。D以外の菊地系キャラが出てきたらグロくなるようです。ようやく二巻目、アルビオンのエピソードに入ります。支援ありがとうございました。ではお邪魔しました。
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 11:10:48 ID:5MDY8UhK
魔王伝の人乙です。
なんというエロスwおマチさんエロイよおマチさん
wktkが止まらない。
540名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 11:22:33 ID:ZRPNojeA
投下乙
よく考えたら吸血鬼とそれを使役してる存在なら、金さえあればD雇って始末できるな
541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 12:16:20 ID:bfOyUPT0
おマチさん、いいなあ・・・
ちと避難所にそのシーンの絵を投下してくる
542541:2009/02/01(日) 12:19:08 ID:bfOyUPT0
・・・・と思ったけどやはり止めておく。
掲示板そのものが消されたりしたら嫌だし。
すいません
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 12:44:21 ID:uLFt2uVv
チャンピオンREDレベルくらいの絵なら・・・!
544魔導書が使い魔:2009/02/01(日) 12:52:28 ID:35SnBsTB
こんにちは。魔導書作者です。

なんとか書き上がりました!
でも……なぜか長くなってしまい合計50kbとかになってるので、2つに分けて、もう1つは夜に投下する予定です。

※外伝@で出たザビエラ村の特産品は「ハシバミ草」ではなく、「ムラサキヨモギ」だと、原作を読んで判明しました……orz
ご迷惑をかけます……。


13:00から投下したいと思います。
545魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 12:59:32 ID:35SnBsTB
高度3000メイル。
真夏でさえ肌寒いと感じる高さで全力で飛ぶ風竜の背には、凍てつくような風
が流れる。
吹き荒び、体を吹き飛ばさんと耳元で轟音となる風に晒されながらタバサは耐
えていた。
そしてその轟音にも負けないようにシルフィードが声を張り上げる。
「それで、あの村には精霊が少しも居ないのね!」
タバサはそれを聞き入る。
「それはものすっごく! おかしいのね! たとえ死の象徴と言われている砂
漠の大地でも! 精霊はいるのね! でも、あの村は精霊どころか、気配の欠
片すらなかったね!」
語られるのは先ほどの村の事実。
「でも! 確かに精霊がいた気配はあったのね! そして……あそこの空気に
は死の香りがぷんぷんしてたの! だから、シルフィードは精霊が死んだと思
ったのね!」
「……そう」
静かにタバサは呟いた。
ザビエラ村へシルフィードを急がせる反面、先ほどの『精霊死んでいる』と言
うことへの説明を聞いたのだが。
「あの香りはとても嫌なものなのね! あれをいっぱい吸っちゃったからお姉
さまが倒れたのね!」
シルフィードの話を聞き終えタバサは考え込む。
荒廃した死体の無い村、古くない血痕、死んだ精霊。
どれ1つ繋がることはなく、まるで“混沌とした状況こそが正しい”と言って
いるようである。
ぐるぐると回る思考はそんな答えへたどり着こうとしていた。

時間にして数十分。
「お姉さま! ザビエラ村が見えたのね!」
タバサが再び目にした村は――死を振りまいていた。
「――」
どこからか燃え移ったのか、一部の家々が燃え上がり、その炎を見ても誰も反
応しない。ではあの徘徊する人影はなんなのか、そして村に無数にある血痕は。
シルフィードが村の上空で旋回を始めたとき、タバサは立ち上がる。
「あなたは上空で待機してて」
「きゅい?」
言うが早いかタバサはシルフィードの背から飛び降りた。
下から吹き付ける風がタバサを乱暴に撫でる。
「『レビテーション』」
タバサが静かに詠唱をすると、その体は速度を緩和した。
ゆっくりと地面へ降り立つ。
木々が燃える臭いと、血の臭い……そして軽い腐敗臭。
見回し目に付いたのは、燃え上がる家、大量の血痕と――
――あ、ぅあぁぁ……
――ぉおぉおお……
徘徊していた人影が炎に照らされその姿を現す。
「……グール?」
自分で呟いて違うとタバサは思った。
吸血鬼が操る死した人間。その姿は生前と変わらず人に擬態するもの。
だが、目の前のものは完全に死体のソレである。
そして吸血鬼につきグールは1体だというのに、その数は目に見える範囲では
20体以上。
吸血鬼の団体という単語も浮かぶが、あまりにも馬鹿らしかった。
ふと、タバサは昔読んだ『イーヴァルディの英雄』に出てくる怪物と目の前の
それが符合した。
死してなお未練怨念を振り切れず彷徨う悲しき死体。
「……ゾンビ」
迫り来るゾンビたちを前に、タバサは杖を構えた。
「邪魔」
546魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:03:37 ID:35SnBsTB
詠唱と共に横薙ぎに杖を振る。
「『エア・ハンマー』」
空気の塊に叩きつけられ吹き飛ぶゾンビ。
「…………」
大きく転がったそれは、しばし沈黙していたが。何事もなかったかのように起
き上がろうとして、扱けた。
よく見ると足がもげかけている。
だが、それでも死体はそのもげかけた足で進もうと、立ち上がろうとする。
それを見たタバサは、物理攻撃はあまり効果がないと判断した。
幸いにも余り動きは速くない。
ゆっくりと迫るそれに背を向けるとタバサは走り出す。
――嫌な予感がした。
広がる血痕、数々のゾンビ、飛び火していく火事。
それらをかわしながら、タバサはようやく村長の家へとたどり着く。
半開きになった玄関から呻き声が聞こえた。
「――っ!」
ためらいも無くタバサはそこへ踏み込む。
そこには、頭から血を流し倒れ伏す村長と、今にも襲い掛かろうとするゾンビ
がいた。
「イル・ウィンデ」
風が刃となり、ゾンビの腕を切り飛ばす。
ゾンビが攻撃されたことで標的を変えたのか、こちらへと振り返る。
だがその時にはタバサはゾンビの背後へと回り込み、杖を突き出した。
打撃音。
ゾンビはゴロゴロと扉を転がり出て行った。
タバサは扉を閉めると、椅子とテーブルを扉の前に倒す。
これで少し時間は稼げるだろう。
ばんばんと叩かれる扉に気を配りながら村長へと近づき、口元へと手を翳す。
息はある。タバサは村長を軽く揺すった。
頭を怪我した場合、あまり動かさない方がいいのだが……時は一刻を争う。
しばし揺すっていると、村長の目が開いた。
「ん、んん……き、騎士様」
状況を掴めていない村長にタバサは話しかける。
「何があったの」
「わ、私は騎士様を見送った後、レオンが来て世間話をしていたのですが……」
お茶を入れようと席を立ったとき、急に背後から頭に衝撃があり。そこから今
にいたると。
「そう……」
タバサが頷く。
「騎士様。いま、なにが起こっているのですか!」
説明を終えた村長に、今度はこちらが見た村の様子を伝える。
「お、おお……そんな、村が……」
聞き終えた村長は静かに涙を流した。
だが現状はそんなことをしているヒマは無い。
「あの子は?」
「エルザでしたら、奥の部屋にいるはずです」
それを聞いたタバサが立ち上がる。
「連れてくる、あなたも逃げる準備を」
背を向けたタバサに村長が言った。
「多分エルザは不安がっています、どうか慰めてやってください」
こくりとタバサは頷き、奥へと歩いていく。

部屋は奥まった暗い場所にあった。
扉を叩く。
返事はない。扉に手をかけると容易くそれは開く。
そこは、窓がない物置のような部屋であった。
簡素な衣装棚と質素なベッド。日が浅いためか私物のような物はほとんどなく、
部屋全体に古臭い埃と真新しい家具の臭いが混ざり合い漂う。
その部屋の片隅、暗闇の中にその少女はうずくまっていた。
547魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:06:57 ID:35SnBsTB
「ひっ!」
タバサが近づくと、エルザは怯えたような声を出した。
杖を持っているのがいけないのかと思ったが、エルザの目はこちらへ向けられ
ていない。
ただ震えるエルザへタバサは近づき。
「立って、ここから逃げる」
その言葉にエルザは嫌々と首を振る。
「どうして?」
エルザは首を振るばかり。
「教えて、どうして嫌なの」
タバサは杖を床に置くと、エルザの震える手を取り包んだ。
「…………」
ただ無言で向かい合う2人。
やがて、エルザの震えがわずかに治まる。だが、見上げられた顔には色濃い恐
怖が刻まれている。
それを少しでも溶かそうとタバサは話しかける。
「ここは危険。わたしはあなたを守りたい。でも、ここにいたら守りきれない
かもしれない。お願い、ここを動けない理由を教えて」
エルザはぼそぼそと話し始める。
「あ、あいつが……前の村をおそった仮面の怪物が……」
(仮面の化け物……?)
疑問となる認識名称だが、話の腰を折るわけにはいかない。
「前の村で……仮面の怪物が……いきなり、現れて……いっぱい殺されて……」
話している内にエルザの体の震えが大きくなっていく。
「そしたら、殺された人が……いきなり、おき上がって……それが、また人を
おそってっ」
一際震えが大きくなり声に湿りが帯び、タバサはエルザを抱きしめた。
「わたし……いっしょうけんめい、逃げて……っ」
「もう、いいから」
とんとんとエルザの背中を叩く。ぐずぐずとエルザはタバサの胸に顔を埋める。
そうしている中でタバサの脳内では現在の状況と対策が整理されていく。
――無人となった村を襲ったのは仮面の化け物。
――そいつが殺した人間は表のいたゾンビへと姿を変える。
――無人の村の様子では、ゾンビに殺された者もゾンビとなる可能性がある。
――ゾンビに関して元より死んでいる相手、物理攻撃の効果は薄い。
――四肢を分断するか、立ち上がれないほどの欠損を与えるか。
――仮面の化け物に関しては現在のところ不明。
エルザがもしも早めにこのことを話してくれたなら。ザビエラ村から離れるこ
とはなく、なにかしらの対策を取ったのだろうが。
「ひっ……ひくっ」
この怯えようでは責めることはできず、今は責める時でもない。
タバサは胸元を涙で濡らすエルザを強く抱きしめると、ゆっくり引き剥がす。
「……っ……っ?」
しゃっくり上げるエルザに向き直ると、意志を込めて語りかける。
「ありがとう、話してくれて。でも、今は危険なのはわかる?」
こくりとエルザが頷く。
「ここは危険。だから、一緒に逃げよう?」
そう言うと、タバサはエルザの頭を撫でた。
エルザは、こくりと頷いた。
――バカンッ!
その時、なにかが壊れる音が響いた。
びくりとエルザが怯む。
タバサは立ち上がると杖を右手に持ち、左手をエルザへ差し出す。
一瞬、エルザは杖と左手を見比べたが。
その手を取った。
タバサは頷くと、急ぎ足で部屋を出る。

戻ると、そこには扉を突き破り侵入しようとするゾンビ達と、それを体で押し
止める村長がいた。
548魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:10:32 ID:35SnBsTB
「ひっ!」
怯えるエルザ。
「っく」
魔法を唱えようとタバサは杖を構えるが、このままでは村長に当たってしまう。
「そこをどいて」
それに村長は笑顔を浮かべた。
「騎士様! そのままエルザを連れてお逃げください!」
「なにを言ってるの。あなたも逃げる」
「そ、そうだよ! いっしょに逃げようよ!」
エルザが叫んだ。
ゾンビがその腕に噛みつき、その体を掴みへし折ろうとする。
それでも村長は笑みを絶やさない。
「老い先短い身でも伊達に山育ちではありません、ここを押さえることはでき
ます!」
腐りかけた爪が、がりがりと胸板を抉る。
「だめ。そこをどいて」
杖を構え続けるタバサに村長は諭すように話しかける。
「いくら騎士様でも、これら全てを相手できますまい」
村長の頭上越しに、集まりつつある無数のゾンビたちが見えた。
「でも……」
言いよどむタバサに、必死に見詰めるエルザに、
「騎士様、エルザを頼みます」
村長はくしゃりと笑った。
「――っ!」
「突き当りにある裏口を通ればすぐに森に出られます!」
さらにゾンビ達が狭い扉へと群がり、窓を突き破ってくる者もでてくる。
それに村長は向き直ると、必死に扉へしがみつく。
見詰めるエルザ。
「あ、ああ……」
それを見てタバサは背を向ける。
「お、おねえちゃん?」
不安と共に見上げるエルザに、タバサは静かに言った。
「このまま逃げる」
「でも!」
エルザの見る先には引っかかれ、噛み付かれ、掴まれても堪え続ける後姿があ
る。
「彼の行為を無駄にしない」
「……でもっ!」
タバサがエルザを引っ張った。
「あ……」
下から覗くその顔は、なにかに堪えるように僅かに歪んでいた。
手を引かれるまま、エルザは振り向く。
「お――おじいちゃんっ!」
その目から涙が零れた。
最後に見たのは、ひどく小さく、ひどく勇敢な背中だった。



背後から気配が消えた。
今にも押し出されそうな圧力を感じ、彼はうなる。
「やれやれ。ちと、辛いな」
いくら山育ちで鍛えたといっても、もう現役を引退してかなり立つ。
子供も出来ず、妻も随分と前に先立たれ、生まれ育った村はもはや死に絶えた。
すでに体は限界で、心は折れかけ、今にもこの両腕を離し楽になりたい。
腐った爪に引っかかれ、腐臭を放つ歯に噛み付かれ、様々な手に引っ張られる。
抉れる肉、流れる血、折れる肋骨。
先ほどから痛みも感じなくなり、流血により片目は塞がっている。
このまま押し止めることはできないとわかっている。あまり長く持たないのも
わかっている。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 13:13:17 ID:VLPSoJ0y
支援
550魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:14:13 ID:35SnBsTB
だが。
「……おじいちゃん、か」
ひっそりと呟き、笑った。
その想いを糧に、萎えかけた腕に、再び力を入れる。
まだ、折れるわけにはいかない。
「人生、最後の大仕事だ」
いつもまでも……笑みは絶えなかった。



蹴破るように扉を開けると、そこには薄暗い森が広がっていた。
空を見上げる。木々の枝葉が多すぎてシルフィードは呼べない。
なら、自ら上昇して拾ってもらうだけである。
幸いにもゾンビはいない。
「飛ぶから、しっかりしがみついて」
タバサの言葉にエルザは体にしがみつく。
しっかりとエルザが抱きついたことを確認すると精神を集中させ。
「イル・フル――っ!」
詠唱を中断し、エルザを庇いながら杖を構えた。
その杖の先に広がるは静寂を守る暗い木々の闇。
「――誰?」
五感は何もないと告げているが、いくつも死線を潜り抜けたタバサの第六感が
何かがいると警鐘を鳴らす。
『ふふ――』
声が響いた。
小鳥どころか虫さえも騒がぬ静寂を貫き。妖しく、甘く、まるで毒のような笑
いが響く。
まるでカーテンの裏から出てくるように、何も無かったはずの影から――抉り
抜いたような白い笑みが現れた。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げるエルザ。
それは鋭い三日月を組み合わせて作ったかのような目と口を持つ仮面。
その仮面が影から浮かび出ると、どこからともなく黄色の布が現れる。ばさり
と布が翻りローブとなる。そこには実体を持った存在がいた。
薄暗い森の中、黄色いローブと白い嘲笑の仮面が浮かび上がる。
「ふふふ……よくわかったわね」
その声質から女だと判断する。
仮面の女は腕を組むと2人へ顔を向け、恭しく礼をした。
「始めまして、小さなメイジ様。私はメイガス、または道化師と名乗っている
者でございます」
声をかけられただけで、タバサの背筋に冷気が伝う。自らを道化師と名乗る女
が現れてから脳内の警鐘はうるさいほどに鳴り続けている。
「あ、ああ、あ……っ」
先ほどからエルザの震えが大きい。
強くエルザを抱き寄せると、抱き返してくる。
それが目に入ったのか、道化師はエルザを見ると。
「おちびちゃん。どこかで会ったかしら?」
含み笑いをしながら聞いてきた。
「……っ!」
エルザが声にならない悲鳴を上げる。
それを見て気分がよくなったのか、道化師は楽しげに笑いを漏らす。
「んー、どこかで見たような気がするんだけど。おちびちゃん、もしよければ
教えてくれないかしら?」
その声は優しいがゆえに、まるで子猫や子犬に語りかけるような。己より格下
のか弱い存在を愛でるような傲慢さがあった。
粘つくような視線がエルザに絡みつく。それだけで、蛇に睨まれた蛙……いや、
蛇に“呑み込まれている蛙”のような思いに駆られる。
「いやぁっ!」
がたがたと震え怯えるエルザを感じながら、タバサは目の前から視線を外すこ
とが出来ない。
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 13:17:30 ID:SE5tUNZJ
村長かっけーよッ!村長!支援
552魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:18:59 ID:35SnBsTB
杖を握る手に汗が浮かぶ。
一通り笑うと仮面の女はタバサへと視線を戻す。
「なんとまあ、勇ましいことね」
普通、メイジに杖を向けられて平然としていられない。杖とはメイジの命にし
て、貴族の証、そしてなにより絶対的な力を意味する。
だが目の前にいる存在は動じない。
逆にともに死線を潜り抜けてきたこの杖が、今は小枝のように心細い。
「そんな物騒な物を人に向けたら駄目よ。危ないじゃない」
道化師が冷笑するかのように口元に手を――沿えた。
タバサはその瞬間、相手の呼吸の虚をつくように密かに唱えていた魔法を解き
放つ。
「『ウィンディ・アイシクル』!」
空気中の水分を凝結し、無数の氷の刃が出来上がる。
刃は視界を覆いつくすように、一斉に相手を切り裂かんと飛翔した。
それを前にして道化師は。
「無駄な足掻きね」
腕を一振りする。
いつのまにか現れた巨大な鉤爪によって、刃は1つ残らず粉砕され粉雪と化した。
だがその時には、タバサはつないだ手を握り締め、結果も見ずに背を向けて走
り出している。
「まあ、追いかけっこかしら?」
背後では楽しげな声が聞こえる。
付き合う道理はない。
再び詠唱を開始する。
一刻でも早くこの場から、あの危険な存在から離れるために。
「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ――」
エルザを抱え込む。
風が体を包みこみ、足が大地から切り離される。
走る勢いを殺さず、さらなる加速をしながら体は浮き上がり一気に上昇する。
「空を飛ぶのはいいけど――危ないわよ?」
悪寒が走るのと回避は同時だった。
「――っ!!」
回避した空間を弾丸のように黒い影が通過する。
かわされベチャリと音を立てて、向かいにあった大木へと衝突した。
それは猿に似ていた。だがなにか交わってはならない強烈な違和感が、あれは
違うと訴える。
――きっききっ……きーっ!
それは血を衝突の際に撒き散らしながらも、木にしがみつくとこちらへと顔を
向けた。
「ひぃっ!」
何度目かわからない悲鳴をエルザは上げる。
それは、猿の体に人の顔を持った異形であった。
人面猿は力を溜めると、勢いよくタバサたちへ跳躍する。
「……くっ!」
それをなんとか回避した。
確かに小回りは利くが、単体では脅威になりえない。
タバサは瞬時にそう判断し、追撃がこない内に急いで上昇しようとその先へと
目を向け――絶句した。
「なっ!」
見上げた先。空を覆う枝木に無数の光る目が待ち構えている。
頭のあるはずの部分に花のように手を生やした蛇、翼の代わりにぬめる触手を
持つ烏、全身から無数の目玉を覗かせる鼬、ほかにも形容しがたい姿すらある。
その尽くが生命を冒涜したかのような異形の獣たち。
――▼%$ぐおjがう;・ッ!
音に成らない咆哮が上がる。
「ほら、縄張りを荒らされて怒ってる」
そんな声を合図に、次々と枝からこちら向かい異形たちは跳躍した。
急激に高度を下げて多くをやりすごすが、1匹避けきれず、こちらに迫り。
「がっ!」
553魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:22:59 ID:35SnBsTB
直撃を食らい、天地が逆転した。
がつん、という衝撃が体に走り、手が柔らかい腐葉土に触れ握り締める。
それで地面に叩き付けられたのだとわかった。
「お、おねえちゃん!」
腕の中でエルザが叫ぶ。
咄嗟に庇い背中から落ちたのだが。声からして大きな怪我はないと判断し、タ
バサはほんの少し安堵した。
このまま、眠ってしまいたい誘惑に駆られるが。
「いつまで寝てるのかしら?」
そんなに悠長なことをしている時間は無い。
視界の端には白き仮面。
右手に力を込める。杖は手放していなかった。
痺れるような痛みを発する背中に徐々に感覚が戻ってくる。
一度エルザを解放すると、うつぶせになる。杖を地面に突き刺し、無理矢理に
立ち上がった。
びきびきと体中から亀裂が奔るような感覚がしたが、今は無視する。
「おねえちゃん……」
その声に応える余裕はなかった。
頭上では不愉快な声が響くが、領域を侵さない限りは襲ってこないようだ。
よろけながらも前を向く。
「ふふふ……頑張るわね」
それを嘲笑う声。
「でも――」
どこからか、なにか腐乱した臭いが漂ってきた。
がさがさと茂みが揺れる音、ずるずると何かを引きずる音、怨念の篭った呻き
声。
「そろそろ終わりになるかしら」
とうとうゾンビたちが追いついてきたのだ。
呻き、苦しみの声を上げるゾンビたちの先頭。
エルザが息を呑み、その光景に愕然とした。
「お、おじいちゃ――っ!」
そこには変わり果てた老人の姿がある。
「……いや……いやぁ……おじいちゃん」
力を失ったようにエルザが膝をつく。
「あらあら、どうしたのおちびちゃん」
優しくかける声が白々しい。
だが目の前の光景を目にしてもタバサは無言だった。
「…………」
――あ、ぅあぁぁ……
――ぉおぉおお……
――gクァウ■g;●3クァq!
上空は異形に支配され、地には大量のゾンビが這い進む。
痛みで熱を持つ体とは裏腹に、タバサの脳内は凍るように冷めていく。
全身の筋肉を強張らせてみる。まだ背中に違和感があるが、先ほどと比べると
随分ましになっている。
まずは――
軽く横目で場所を確認すると、視線は前方に向けたままゆっくりとしゃがむ。
空いている左手で、エルザの手を掴んだ。
「……おねえちゃん?」
呆然と見上げてくるエルザに、タバサは視線も向けず。
「離れないで」
――生き残ることが先決だった。
小刻みに揺れる杖を固く握り直し、右手を向ける。
「ラグーズ・ウォータル……」
息を吸う度に、息を吐く度に、言葉を紡ぐ度に肺腑が痛み、咳き込みたい。
「無駄だってことがわからないの?」
嘲る声、向けられる嘲笑の仮面。
それは大きな余裕と油断。ならばそこを使わない道理はない。
「イス・イーサ――」
溢れんばかりの魔力が杖に宿る。
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 13:26:35 ID:ZRPNojeA
支援
555魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:27:43 ID:35SnBsTB
そこで道化師が始めて怪訝な声を出す。
「……なにをするつもり?」
だがもう遅い。
「――ハガラース」
詠唱が完成する。重ねる属性は水風風。
空気が渦を巻き風となり、風が空気中の水分を凝結させ氷の刃となす。
風と氷が杖を中心に回転し、その勢いを増していく。
「っち!」
初めて道化師に動揺が奔る。
タバサは荒れ狂う氷の嵐を解き放った。
「『アイス・ストーム』」
暴虐の嵐は、進行方向にあるものを風で薙ぎ払い、氷の刃で切り裂いていく。
巻き込まれたゾンビが身体を引き裂かれ、バラバラとなり風で撒かれる。
その勢いは止まらず、道化師へと迫り。
「――」

暴風が吹き止み、辺りは風と氷の洗礼により静まり返る。
木々は鋭く抉られ凍り、周囲には切り裂かれ凍りついた数々の死体。
冷気が漂う静寂の中で、パキリと音を皮切りに、凍りついた一角が崩れた。
張り付いた氷が落ちると、そこにあるのは黄色の布で遮られた空間。
風も無いのに布がはためいた。
それは独りでに翻ると、中心へと巻き込まれていく。
布が手を、足を、胴を、頭を、全身を包むと。
「さすがに、少し危なかったわね」
道化師は何事も無かったのかのようにそこにいた。
そして首を巡らせて気づく。
「逃げ足が早いこと」
先ほどまでいた2人の姿はそこにはなかった。
頭上を見上げる。
木々の上で待ち構えていた異形どもの姿はない。後を追ったのだろう。
背後へと視線を向けた。そこには未だ大量のゾンビたちがいる。
「まあいいわ」
嘲笑の仮面の下で笑みを浮かべ――
「――っ!」
びくりとその身体が震える。
「あんたは、黙れ……っ」
ドス黒い殺気がローブの隙間から漏れた。
それは地を這うと草が一瞬にして枯れ果て、近くにいたゾンビが急激に腐敗し
崩れ落ちる。
殺気はその濃度を増し。
「私は……私だっ!」
絶叫のような叫び森へと響く。
すると殺気も途切れ、道化師は荒く息を吐く。
「……っはぁ……」
そして顔を上げると森の奥へと歩き出した。
「さぁて、気を取り直して――ウサギ狩りでもしましょうか」
声を残し道化は死体を伴って森の奥へと消える。
後に残るは円形に広がる、死した木々。
時は、夜へと移ろうとしていた。



「――大丈夫。あなたはわたしが護る」

あれからどれだけの時間が過ぎただろう。
走りながら、タバサは何度となく浮かぶ自問をした。
慣れない森を、歩きづらい腐葉土の上を走り、ひたすら逃げ惑う。
何度ゾンビと遭遇し、魔法を使い、足止めし、逃げてきたか。
すでに日は落ち辺りは暗く、それによって余計に歩き辛くなり。暗くなればな
るほど心は焦り。自覚していても精神的な疲労も溜まる。
556魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:31:01 ID:35SnBsTB
限界が近いのだろう。先ほどから視界が揺らぎ、気を抜けばふらつき、体の感
覚はふわふわと頼りない。
「――お――え――」
だがそれでも右手の杖の硬さと、左手の小さな熱、そして少女と交わした誓約
が意識を繋ぎとめる。
「――ねえ――ん」
朦朧とする意識の中、ただ走り続けようとするタバサは。
「おえねちゃん!」
その大声でようやく、立ち止まった。
「…………」
左手にある熱。無言で声のする方へと向く。
それはいつもの自ら言動を制限した無言ではなく、純粋に喋るための労力が割
けないための無言である。
そして視線の先には、少し息を切らせたエルザがこちらを見上げていた。
「ちょっと、やすもうよ」
その言葉で、タバサは先ほどから走り通しだったことに気が付いた……いや、
思い出したと表現した方が正しいだろう。
タバサの止まっていた思考が回復しはじめ、自身とエルザの状態を考える。
数時間にも及ぶ強行軍。
連続して使った魔法。
想像を超える事態。
もう精神的にも肉体的にもピークに達しようとしていた。
それでも危険はこちらへ向けて確実に迫っている。
休む暇はない、そういう考えに至ろうとしたが。
「――おねえちゃん」
そしてタバサはエルザの向ける視線に気が付いた。
それは自身ではなく、他人の身を案じるものである。
「……10分だけ」
一言だけで、かなりの力を使った。
エルザの顔が安堵に染まる。
タバサはエルザと繋いでいた手を離すと、倒れ込むように後ろの木へもたれか
かった。
すでに体は限界だったのだろう。
一度腰をつけると、体が鉛のように重くなった。
全身が火照る。息は熱っぽく、肺は空気を貪欲に求めた。
冷たい木肌が火照る体を癒し、忘れていた痛みを呼び戻す。
だが、口は喘ぐように酸素を求めるばかりで、痛み呻く余裕はなかった。
精神力も、連続して使った『エア・カッター』と『錬金』によりほぼ空に近い。
それでなくとも、道化師と相対した時に大きな魔法を2回も使っていたのだ。
1番ランクの低い魔法と言えど、精神力を大きく圧迫していた。
頭上を見上げる。
木々の枝葉に紛れるは無数の光る目。
それは騒ぎもせずに、ただ黙々とこちらを観察する。
タバサはそれを見て目を細めた。
木の上の異形たちは逃げている間、決して離れることなく頭上を渡りついてく
る。
何度か振り切ろうとも思ったが、魔法を使わずに振り切るのは困難であり、か
といって相手は高い位置にいる。生半可な魔法は届かず、近づこうとすれば攻
撃をおこなってくる。
制空権が奪われるのは痛いが、逆に近づかなければ向こうからは何もしてこな
い。
思い切ってタバサは無視することにした。
この森には無数のゾンビが徘徊している。それに対応するのに魔法を使う方が
効率がいいのだ。
タバサは杖を引き寄せると、抱き込むように杖へとすがる。
山風が森を吹き抜け、体を撫で体温を奪っていく。
ゆっくりと目を閉じた。
疲れた頭に浮かぶは、救いの無い現状。
徘徊するゾンビ。その数はザビエル村の被害だけを考えても約300体前後。近隣
の村のことを考えると500は下らないだろう。
557魔導書が使い魔-タバサと怪異-03:2009/02/01(日) 13:35:13 ID:35SnBsTB
頭上の異形。単体ならば脅威とはならない。だが、集団かつ高い位置にいるこ
とから制空権は取れない。
そして最後に浮かぶのは――死体を操る道化師。
その危険性はタバサの生涯でも群を抜く。
そもそも、あの道化師はどうやって死体をゾンビに仕立て上げているのだろう
か。
メイジの魔法ではありえない。では先住魔法か。だが、それにしては数が多い。
なによりあれは精霊とは無縁な感覚がする。
伝説級のマジックアイテムということも考えたが、大抵の書物を読みふけった
タバサが知らないほどマイナーでもあるまい。
確か道化師は自らをメイガス(魔術師)とも名乗っていた。メイジ(魔法使い)
とは違う。
そうなると――
「魔術……?」
思い出されるはルイズの使い魔が使った魔法。
だが、それともこの現象は少し違う気がする。
タバサは息を吐く。
先が見えず、繰り返す生者と死者と異形と道化の鬼ごっこ。
目を開いた。
果たして自分は生き残れるのか?
素朴な疑問が胸を梳く。
純粋な疑問は体を、風の冷気とは別の冷たさを染み渡らせる。
脳裏に浮かぶは、刻まれた家紋、壊された女、無邪気に笑う男。
全ての瑣末が――死によって無為になるのだ。
じわりじわりと染み込む冷たさは、タバサから動く力を奪っていく。
杖を持つ指先が震えていた。
その震える指先を止めようと力を込めようとして、目の前にエルザがいること
に気がついた。
「……どうしたの?」
極力疲労を隠しながら問いかける。
だが、それにエルザは応えずに無言で抱きついてきた。
「――」
なにもできないタバサにエルザはゆっくりと息を吸うと、旋律を上げた。

――ねむれや わが子 ねむれや わが子

――くらい夜がきても こわい夜がきても

――わたしはあなたのそばにいる

――ねむれや わが子 ねむれや わが子

――くらい夜には 星をはなそか

――こわい夜には 歌をうたおか

――ねむれや わが子 ねむれや わが子

――愛しいぼうや かわいいぼうや

――ねむれや わが子 ねむれや わが子

それは静かで、緩やかで、拙くて、そして優しい歌であった。
じんわりとエルザの熱が凍えそうな体を温めていく。
耳元では愛しさと優しさと悲しさと懐かしさとを、全てが混ざった顔がある。
震えは止まっていた。
静寂の森に拙い子守歌が染み渡る。
ゆっくりと目を閉じた。
伝わる鼓動を心地よく感じながら、タバサは眠りの淵へと堕ちる。
558魔導書が使い魔:2009/02/01(日) 13:37:08 ID:35SnBsTB
1つ目はこれで終わりです。
残りは夜の投下となります。

支援してくれた方ありがとうございます。
また夜にお会いしましょう。

>>551
それを言って欲しくてあの場面は書いたのだ!
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 13:38:53 ID:SE5tUNZJ
GJっしたっ!
…猿はあれだよね、タバサが消耗し尽くすのを待ってるよね、絶対…。
そしてエルザに死亡フラグが立っているように見えて仕方がありません。
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 13:50:16 ID:xePpx/GO
そしてそのうち外伝が本編を超える分量に
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 14:08:11 ID:KS7q7o2A
その上に外伝が先に完結してしまい、その後に本編再開。
しかし時系列的にトリステインにいないはずのタバサがいたり、既にタバサの母を助けるために死んでいるはずの改心イザベラが普通に生きてて腐った卵をタバサに投げつけさせているんだな。
これを「ゲェー!ジェロニモが二人にィー!現象」と……
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 14:10:29 ID:u64eocBP
ハルケ版ティベの夜、明ける日はいつか……

明けることがそもできるのかw
作者さんドンマイ♪
563魔導書が使い魔:2009/02/01(日) 14:38:55 ID:35SnBsTB
はっはっは!

ほんまや……本筋の分量超えてまう……
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:09:19 ID:wnMT1tiO
作者的には本編より外伝の方が書いてて楽しいという罠ですね、分かります。
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:12:11 ID:wnMT1tiO
sage忘れ失礼。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:33:40 ID:jGO4TxSW
もうゼロ魔も終わりそうだし、新規SSの投稿はもう無いかな?
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:36:26 ID:SxqduHpG
終わってからが本番と思ってたが
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:39:58 ID:NmXVdSAK
終わりそうか?エルフとか砂漠とかそのあたりの扱いがw
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:44:59 ID:5n82iaNa
分からんぞ、もしかしたらゼロ魔も最後虚無るかもしれん。
虚無るの意味は石川賢信者に聞け!
570名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:46:15 ID:HgQp42kt
アークの続き…
571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:47:58 ID:994xlue2
エルフ・東方・教皇があるから、完結まで最低でもあと3巻は必要だろう
ついでに言うとテファの使い魔の件もまだだし、
6000年前のイグジスタンセアとヴァリヤーグの話もあるし……
まだまだ終わらなさそうじゃね?
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:48:12 ID:oCKvBnLe
ガリアの戦後処理と新しい虚無の担い手(イザベラ?)と、
ロマリアの事情と聖地関連、過去のブリミル関係が未解決だな。
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:50:39 ID:uaQxvhwG
>>516
あれね・・・
金網怖い、金網はダメだあと喚いて、トラウマ克服してないと見せかけて、実は演技でしたというあれだな。
つまり、本人はトラウマ克服してたけど、周囲はそう思ってなかったと・・・
いう考察もこの一言の前には意味がない

だってゆでだもん。
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:53:23 ID:994xlue2
イグジスタンセアが舞台の話は、シャナ10巻みたいに一冊丸ごと番外編にでもしないと語りきれなさそうだ
あれだけ現在のハルケギニアの常識と違ってるとなあ
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:54:48 ID:VoOm8XB8
教皇と聞いてサンクチュアリを真っ先に思い出してしまった俺
デスマスクあたりが召喚されないかな
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:56:38 ID:NmXVdSAK
どこぞの漫画みたいにキャラ出し過ぎて収集つかないって事にはならないけど
それなりに時間かけて一つずつ書きあげて行かないと終わらないよな
577名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:57:00 ID:NmXVdSAK
あげてしもた
578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:57:31 ID:lQZwBi5l
教皇がガチホモなのか狂信者の男装お姉さまなのかが問題だ
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 15:59:10 ID:0odhsOwU
終わりがないのが終わりのゴールドEレクイエム状態になられても困るし
せいぜいあと1年かなと思ってるんだが
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:00:16 ID:83kV2sNN
るろ剣の斉藤一を呼んだらタルブ村名物は掛け蕎麦になるんだろうなぁ
「好きなんですよ掛け蕎麦(ずーるずーる)」
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:01:45 ID:5n82iaNa
>>570
つ飛焔
582名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:04:29 ID:zsMQqF6O
>>574
一冊丸ごと番外編はいいな
主役不在になっちゃうけど、ブリミルとサーシャの漫才だけでも十分おもしろそうだ
583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:10:35 ID:LYtdkaG2
>>582
タバサの冒険で既に近いものがあるから問題ないんじゃね?w>主役不在
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:13:51 ID:jGO4TxSW
まだゼロ魔は終わらないって聞いて安心した、近い内にSSを投稿するよ。
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:18:57 ID:hrJVn8ES
でたなヴァリヤーグ

ゼロの使い魔 第一部 完
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:24:57 ID:pDUHBFSy
あー、このスレ見てやっと気付いたけどハルケギニアだからイグジスタンセアなんだな
6000年前の過去の幻想じゃなくて向こうこそが実在なのか
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:25:49 ID:ok8Q40fP
>>581
残念ながら飛焔はアークに繋がって居ないんだわこれが

飛焔は真ゲッターとネオゲッターの中間みたいなもんでゲッター炉に火も入ってない状態だった

アークは真ゲッターが消えた後の話でまあ飛焔はパラレルワールドみたいなもんだと思われる
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:36:44 ID:wnMT1tiO
つ ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1232706531/421

そう言えば「フロシキを畳みきれない」とか、「決着を付けられるのはAランクまでだ」とかいう話もあったなぁ…。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:36:45 ID:um1+72Fo
>569
真の虚無りは、作者自らがゲッターの意志とひとつになることで完成するんだぜ…
590名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:38:08 ID:SFnv3ify
>>575
意外とデスマスクは黄金十二人の中ではマトモな方。
弟子の育成にかけては間違いなく一番。

セージ教皇を召喚した場合、彼を「平民」呼ばわり出来るのだろうか。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:42:58 ID:1zYEoCA5
あー、アンアン、ワルドのDとの接触が地味に楽しみだ
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:52:02 ID:OAm03JNh
ブリミルとサーシャの会話が浜田賢二と高山みなみで再生されて困る
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 16:57:08 ID:8ZwhUtTX
>>575 奇遇だな、俺もだ
>>590 みたいね。趣味と口調が悪いだけでww
>>592 何と言うガンダムww @3分です
そう言えば、サーシャって平野だっけ?
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 17:32:57 ID:VoOm8XB8
>>590
弟子って誰だっけ?

そういえばまとめで見た趙公明はちゃんと貴族扱いされてたなw
595ウルトラ5番目の使い魔:2009/02/01(日) 17:44:56 ID:1Kkd/xfU
こんにちは皆さん、えーと、それでは予約等が無ければ、第33話の投下を開始しようと思います。
時間は10分後の17:55からで、使用予定レス数は14です。
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 17:51:39 ID:pDUHBFSy
>>594
だって彼見るからにゴージャスだし…子安だし…
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 17:55:05 ID:wnMT1tiO
規則正しく日曜日に投下するのは尊敬するぜ支援。
598ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (1/14):2009/02/01(日) 17:57:33 ID:1Kkd/xfU
 第33話
 怪獣は、時空を超えて
 
 ウルトラマンメビウス
 ウルトラマンヒカリ
 凶獣 姑獲鳥
 ラグストーン・メカレーター 登場!
 
 
「ただいまーっ!」
 夏に入って強さを増す陽光を浴びながら、トリステイン魔法学院に才人の声が響き渡った。
 水の精霊の涙を得て、あれから丸一日、ようやく一行は懐かしき学び舎に帰還していた。
「おお、懐かしの学院よ。そして僕の愛でる花達よ、わずかばかりとはいえ、君達を寂しくさせてすまなかったね」
「モンモランシーに聞こえるぞ」
「ぎくっ! そ、そうだった、自重しよう」
 ギーシュもまた、はしゃいでいたところをレイナールにツッこまれて冷や汗をかく。
 だが、元気さを増す男子連中と違って、ルイズやモンモランシーはぐったりと疲れきった様子で、近づいてくる
学院の尖塔を見上げていた。
「はーっ、やっと帰ってきたわね……」
「まったく、男ってどうしてああ冒険が好きなのかしら」
 それは男にしか分からないだろう。二人の馬は男達に遅れてゆっくりと学院に歩いていた。
 とにかく、今は風呂にでも入ってぐっすり眠りたい気分だが、ルイズはともかくモンモランシーはこれから解毒薬の
調合にかからなければならない。まあ、自業自得で文句も言えないが、もう安心とばかりにはしゃいでいる
ギーシュの能天気ぶりを見ると腹が立ってくる。
「ほんとに、あれが水の精霊に土下座までした男とは思えないわね。けどまあ、またとない経験には違いないか」
「同感、濃い体験だったわね……そういえば、タバサはあれっきりどうしたのかしら」
 タバサの素性については、まだルイズ達は知らない。ふっと姿を消して後、キュルケから用事があって実家の
ほうへ帰ったと聞かされて、そのキュルケもタバサの実家に寄っていくと、あの後別れてきていた。
 ま、たった二人で怪獣に挑むほどの実力者だし、まず大丈夫だろうと楽観的に二人は思った。
「タバサはともかく、キュルケがいないと学院が静かでいいわ。ところでルイズ、あんたの使い魔、水の精霊に
アンドバリの指輪を取り戻してくるって簡単に約束しちゃったけど、大丈夫なの?」
「知らないわよ! まあ、期限は死ぬまででいいっていうし、そんなご大層な道具、使えばどっかで形跡くらい
残るでしょ。見込みが無いわけじゃ無し、見つかればラッキーと思っとけばいいわよ」
 実質期限は無いようなものだし、水の精霊に恩が売れるならそれも悪くはないだろう。もし盗んだ奴が見つかったら
気晴らしに盛大に吹き飛ばしてやろうと、ルイズは物騒な企みを抱いていた。
「ところで、その解毒薬ってのはどのくらいでできるの?」
「急げば数時間、これ以上疲れたくないんだけど、しょうがないわよねえ、彼も待ってることだし」
 モンモランシーはそう言って平原の一角を指差した。なんでもない原っぱが微小に揺れ動いている。もちろん
その下にヴェルダンデがいるためだ。
「あの子のためにも、急がないとね。なにせ、命の恩人ですもの」
 スコーピスにエースが追い詰められたとき、ヴェルダンデが勇敢にスコーピスに隙を作ってくれなかったら、
彼女達は今頃ここにはいられなかったかもしれない。本当にギーシュには過ぎた使い魔だ。
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 17:58:52 ID:ZRPNojeA
支援します
600ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (2/14):2009/02/01(日) 17:58:54 ID:1Kkd/xfU
「ギーシュをあきらめて、ヴェルダンデと付き合ってみたら?」
「……それもいいかもしれないわね。ヴェルダンデが人間だったら、本気でプロポーズしてたかも。そこいくと
あなたはいいわよね。使い魔を恋人にできるんですもの」
「……なっ!?」
 冗談を思わぬ形で返されて、ルイズの顔が瞬時に真赤になった。
「ななななな、何言い出すのよ。つつ、使い魔を恋人!? そそ、そんなことあるわけないでしょ、あいつは所詮使い魔、
そう、犬、犬っころでしかないんだから!!」
 ここにキュルケがいたら大爆笑しただろう。本当に感情を隠すのが下手な子だ。
「でもさ、考えてみたらサイトも中々いい線いってるんじゃない? そこそこ強いし、頭も悪くないし」
「そりゃ買いかぶりすぎよ。ほっといたらすぐサボるし、面倒ごとは持ち込むし、な、なによりメ、メ、メイドとすっごく
楽しそうにいちゃついて、あたしのことなんか……」
 本当に分かりやすい。知らぬは当人ばかりなり、モンモランシーは恋愛上手だと自分を評価してはいなかったが、
上には上がいるものだとしみじみ思った。
「ふーん、わかったわ。けど彼、そのメイドとさっそく逢引してるわよ」
 モンモランシーに言われて見ると、先に走って行っていた才人が見覚えのあるメイド服の少女と早くも仲良しげに
話しているのを見つけて、ヴァリエール製瞬間湯沸かし器にスイッチが入った。
「あの犬、性懲りも無くまたあのメイドと!! こらぁ!! あんたにゃ溜まった仕事が山ほどあるでしょうが、戻ってきなさーい!!」
 鞭を風を切る音がするほどに振り回し、馬上から般若のごとき、牙でも生えてるんじゃないかと思えるくらいに、怖い
顔でルイズは怒鳴った。
「ぐっ!! ごっ、ごめんシエスタまた後で……とほほ、今日から掃除洗濯、雑用、召使い。んでもって使い魔生活か」
 苦笑しながら才人はぽつりとつぶやき、冒険の間に汚れたルイズの服を受け取ると、洗濯するために水場に駆けて行った。
 
 そして、かっきりと3時間後……待望の解毒薬は完成した。
「できたわーっ!! はーっ、疲れた」
 精魂尽き果てた様子で、モンモランシーはるつぼに入れたままの解毒薬をギーシュに差し出した。
「できたんだね!! よくやってくれたモンモランシー、ではさっそくヴェルダンデに持っていこう」
 待ちわびた解毒薬を受け取ったギーシュは、喜び勇んで学院の外壁の下で待っているように言ってある
ヴェルダンデの元へと飛んでいった。それにしても、せっかく苦労したんだから、行く前にもう少し何か言うことは
無いのだろうかと、いまいちモンモランシーは不満だった。
 しかし、モンモランシーには一抹の不安もあった。ヴェルダンデを巨大化させたのはあくまでも調合に失敗した
惚れ薬、それを解除するのに元の解毒薬で大丈夫なのかと。もし駄目だった場合には、今度こそ打つ手はない。
 けれど、それもしばらくたってギーシュが大はしゃぎしながら戻ってきたときには杞憂だったと分かった。
「成功したのね!?」
「そうとも! もう外にいるのは元の小さくて可愛いヴェルダンデさ、やっぱり君の調合の技術は本物だったよ。
さあ、この喜びを共に分かち合おうじゃないか」
「ち、ちょっと!!」
 すっかり舞い上がったギーシュは両手をいっぱいに広げてモンモランシーに飛びついていく。その後ろはベッド。
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:00:23 ID:wnMT1tiO
支援
602ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (3/14):2009/02/01(日) 18:00:48 ID:1Kkd/xfU
 しかし!!
 
「いやーっ!!」
 
 一瞬の詠唱の差、このときモンモランシーはスクウェアクラスに匹敵するんじゃないかというくらいの速さで、
『レビテーション』のスペルを完成させてギーシュの体を浮き上がらせると、そのままウルトラハリケーンばりの
大回転を加えて窓の外に吹っ飛ばした。
「あーれー……」
 ドップラー効果で小さくなっていく悲鳴を残しつつ、ギーシュは空のかなたへ飛んでいき、そして消えていった。
 そんな光景をギムリとレイナールは女子寮の外から見上げていたが。
「愛に生きた男、ギーシュ・ド・グラモン、星となって消ゆ」
「女ったらしの星、ギーシュ1等星の誕生だね」
 と、呆れ果てた様子で言って帰っていった。
 まあ、杖を持ったままだから墜落する前に助かるだろう。スペシウム光線で追撃をかけられなかっただけ、ましというものだ。
 だが、ギーシュが消えていった空を見上げながら、モンモランシーは顔を赤くしてうなだれていた。
「ばか……もっと、ムードってものを考えなさいよね」
 どうやら彼女も、ルイズのことを笑えないようだ。
 
 
 だがそのころ、世界の混迷の度合いは様々な場所で深まっていっていた。
  
 トリスタニアの中心にそびえ立つトリステイン王宮の会議室、通常なら数十人の貴族を集めて議論が交わされる
べきそこに、たった二人だけの人影があった。
 壇上から、提出された書類に薄く青い瞳を向けている人物はトリステイン王女アンリエッタ、そして王女の目の前の
テーブルには長身の眼鏡をかけた金髪の女性が、王女の前だというのにまったく気負った様子も無く、自分が
提出した書類をアンリエッタが読み終わるのを待っていた。
「この報告……ある程度予測はしていましたが、こうして見るとあらためて驚愕せざるを得ませんわね」
 アンリエッタが読み終えた書類をたたみ、憔悴の色をわずかに感じさせる声で、感想を短く述べると、その眼鏡の
女性は立ち上がると、高くよく通る声で話し始めた。
「姫殿下のご推察通り、以前回収されました超獣の死骸と、王宮を襲ったゴーレムの残骸、ともに我々王立魔法アカデミーの
一同がほぼ1ヶ月をかけて研究しました」
 これは、以前エースに倒された超獣ホタルンガと、四次元ロボ獣メカギラスのことである。
「回収したサンプルの移送には大変手間がかかりましたが、まあこれはいいでしょう。アカデミーにて、あらゆる方面から
研究しました結果、超獣の皮膚はトライアングルクラスの火、水、風、土のどれもほとんど傷をつけられず。ゴーレムの装甲は、
いかなる方法を持ってしても破壊は不可能、内部に残っておりました砲弾を起爆してみたところ、スクウェアクラスの
土ゴーレムを一撃で粉砕する威力。結論から言いまして、敵の戦力は我々を大きく上回るということです」
 一気にまくし立てられた説明に、アンリエッタは目の前が暗くなりそうなのを、ぐっとこらえて話を続けた。
603ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (4/14):2009/02/01(日) 18:02:09 ID:1Kkd/xfU
「そう……それで、敵に関する分析結果は、あなたの目から見てどんな具合なのでしょう。ミス・ヴァリエール」
 ヴァリエールと呼ばれた彼女は、眼鏡を指で押し上げると、アンリエッタに目を合わせた。
 彼女のフルネームは、エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール、名字からも
分かるとおり、ヴァリエール家の一員、つまりはルイズにとって姉にあたる存在である。容姿はあまり似ていないが、
これは彼女が父親似、ルイズが母親似だったせいだ。
 現在はトリスタニアにある王立魔法アカデミーの筆頭研究員を務めており、その道で彼女の名前を知らない者はいない。
「私も、ゴーレムの分解調査には加わりましたが、内部構造は恐ろしく複雑、精密な部品が緻密に組み合わされてできており、
歯車やピストンなどにいたっても、トリステインのいかなる冶金技術を持ってしても複製は不可能なほどの高精度。
また、魔力が検出されなかったために魔法以外のなんらかの手段を動力としていたのは明白ですが、その内部構造は
用途不明な箱や紐がぎっしりと、しかし一定の規則にそって配置されており、私の見ましたところ、その原理を解明するには
昼夜を問わずに研究し続けて200年、同じものを製造するにはさらに200年を必要とすると判断します」
「つまり、トリステインはヤプールに対して、最低でも400年の遅れをとっているというわけですね」
「端的に言えば、そのとおりです」
 王女相手に、トリステインは遅れた国ですと平気で言えるのは、何も考えてない馬鹿か、王家と対等に渡り合えるだけの
実力と胆力を備えた者のどちらかでしかない。そして、明らかにエレオノールは前者ではなかった。
 それにしても、地球でさえまだオーバーテクノロジーである宇宙人の技術を、理解できなかったとはいえここまで
分析した彼女と彼女の研究班はたいしたものである。
「それにしても、これほどの超技術を有するヤプールとは、いったい何者なんでしょう……」
「彼らは自らを異次元人……異なる世界の住人だと名乗っています。それが真実かどうかは分かりませんが、
空を割って超獣を送り込んでくる手口といい、人間技とはとても思えません」
 彼女は書類には載っていなかった自身の考察も含めて、アンリエッタに説明を続けた。
「アカデミーには、過去にエルフを始めとする亜人との戦いで蓄積された先住魔法に関する記録や、太古の文献
などが保存されていまして、それらとも照らし合わせましたが、合致するものは特にありませんでした。ただ……」
「ただ、なんです?」
「過去のアカデミーの記録に、空から落ちてきた謎の乗り物に関する記述がいくつかあったのです。年代は
数百年から2千年くらい前まで様々ですが、それらは銀とも金とも違う不思議な金属でできていて、とてつもなく
頑丈で、中には複雑な機構がぎっしり詰まっていたと記されています。さらには、中に亜人のような生き物の
死骸が残されていたこともあったそうです」
 それはまさしく、過去になんらかの理由でハルケギニアに墜落した異星人の宇宙船のことだった。
 地球でも、怪獣頻出期が始まる前からバルダック星人やオリオン星人、ボーズ星人が隠れ潜んでいたこと
からも、ハルケギニアにもたびたび異星人が来訪していたとしてもおかしくは無い。第一、一般には知られて
いないがミラクル星人という実例がすでにある。
「それでは……」
「どこか遠く離れた場所に、エルフのようにハルケギニアなど……いえ、エルフ達すら及びもつかないほど
高度な文明を持つ種族がいるのかもしれません」
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:02:22 ID:ZRPNojeA
しかしヴェルダンデは元に戻さないほうが戦力になって良かったんじゃないかね?支援
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:03:04 ID:t9GE2i0h
ヴェルダンデは実は大当たりな使い魔支援。
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:03:21 ID:wnMT1tiO
二代目の着ぐるみはブヨンブヨンのデロンデロン支援。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:04:00 ID:U9ODH85h
待ってました 支援!!
608ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (5/14):2009/02/01(日) 18:04:00 ID:1Kkd/xfU
「それは、本気で言っていますか?」
 アンリエッタの疑問ももっともだった。ハルケギニアの人間にとって、世界とは半島状になっている4国と
アルビオン、それからエルフのいるという東方が全てで、その先など想像もできない。
「そうですわね……姫様、例えばアリの巣を思い浮かべてください。アリも、女王を基準とした人間に似た
社会を形成する生き物です。ですが、アリは自分達の頭の上にいる人間が自分達より高等な社会構造を
有するものだとは知覚できません」
「我々は、アリだと……?」
 その例え話に、さすがにアンリエッタも眉を少ししかめた。だが、エレオノールの言葉がある意味で
正鵠を射ていることも認めざるを得ない。彼我の文明レベルの差はそれほどあり、かつてクール星人は人間の
ことを昆虫のようなものだと評したこともあるのだ。
「姫殿下、頭の固い将軍や貴族連中には、どうせ怒らせるだけでしょうので発表していませんが、敵はその気に
なればトリステインを、いえハルケギニアを簡単に滅ぼせるほどの強さがあるということを覚えておいてください」
「ならば、なぜ彼らはすぐにそれをしないのですか? 我々をいたぶって楽しんでいるとでも!?」
「それもあるでしょう。不愉快ですが、敵のやり口は破壊や殺戮そのものをゲーム感覚で楽しんでいるふしが
あります。最初のベロクロンの襲撃の際は、まさにそうでした。けれど、その後彼らのやり口は慎重に策を
練っておこなうものに転換してきています。その要因は……」
 エレオノールが言葉をそこで切って一呼吸おくと、アンリエッタはたった一つだけ浮かんだヤプールに敵対
できる存在の名を口にした。
「ウルトラマン……エース」
「はい、彼の存在がヤプールに対してかなりの抑止力になっているのは間違いないでしょう。なにせ、唯一
超獣と戦い、倒すことのできる存在ですから」
 アンリエッタとエレオノールの脳裏に、初めてエースがベロクロンと戦ったときの様子がありありと蘇ってきた。
 トリステイン軍の全戦力をあげても揺るがすことも出来なかった怪物と、彼は互角以上に戦い、そして倒した。
「いったい、彼は何者なのでしょうか?」
「それに関しましてはまったくわかりませんとしか言いようがありませんわ。どこから来て、なぜヤプールと戦うのか、
また、どこへ飛んでいくのか」
「世間一般では、始祖の化身だとか、神の使いだとかまことしやかに噂されているようですが、わたくしは、
そのようなことは信じません。ただし、彼の行動を見る限りでは、少なくとも人間の敵ではないと思います。
彼は魔法学院を守り、炎上するトリスタニアを救ってくれました」
「はい、まだ断定はできませんが、彼の行動は我々と敵対するものではないと思います。ですが期待しすぎるのも
危険でしょう。彼もまた、戦えば傷つき、倒れることもあるようです。世間ではウルトラマンがいれば軍は不要だ
などと楽観する者も少なからずいるようですが、我々はあくまでも独力でヤプールの侵略を排除すべきです」
「もちろんです。相手が何であろうと、民を守るのが王家と貴族の生まれたときからの責務です」
「姫殿下の平和への信念の強さには敬服するばかりです。我々は彼についても、研究を続けていく所存ですが、
あの力の秘密の一端でも解明できれば、それは我々にとって大きな戦力となるでしょう」
 彼女の眼鏡がそのときキラリと光ったように思えた。
 力というのは、それを持たない者にとって何よりも甘美な麻薬、禁断の果実の味を持っている。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:06:07 ID:ZRPNojeA
このおねーさんに才人の存在を知られたらヤバいな支援
610ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (6/14):2009/02/01(日) 18:06:26 ID:1Kkd/xfU
「よろしくお願いします。貴女方の研究が、トリステイン、いえハルケギニアの命運を左右するかもしれませんわ」
 アンリエッタの言葉に、エレオノールは優雅に会釈して応えた。
「では、わたくしはこれで、新しい発見がありましたら、逐次報告いたします」
 報告を全て終えたエレオノールは、退室しようと扉に向かった。
 けれど、扉に手をかける前に、その扉が先に開き、そこで入室しようとしていた人物と鉢合わせすることになった。
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン、参上つかまつりました」
 入室したアニエスは、まずは壇上にいるアンリエッタに礼をすると、続いて自分に目を向けていたエレオノールと
視線を合わせた。歴戦の戦士と、冷徹な学者の鋭い視線が交差して、部屋の温度が一気に下がる。
 それから数秒間、互いに言葉を発さずに沈黙が続いたが、先に口火を切ったのはエレオノールだった。
「お初にお目にかかるわね。アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン殿、貴女と貴女の隊の勇名はかねがね聞いておりましたわ」
「光栄のいたり。ですが、エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール殿、貴公こそ、
軍を問わずに貴女と貴女の研究チームの名はとどろいておりますぞ」
 二人とも、にこりともせずに初対面だというのに相手の名を言い合った。国家の中枢にあっては、それだけの知名度を
有する者同士であるが、それは必ずしも友好を意味しない。
「いいえ、全員平民出身の部隊でありながら、魔法衛士隊を敗退させた敵を撃破し、貴族の称号を王女殿下からいただくなど、
昨今無かった出世ぶりですわ。まったく、最近のトリステインの貴族達の質の低下ぶりには常々嘆いていましたが、
腑抜けの男共に見習わせたいものですわ。淑女をモットーとするトリステインの貴族女子にはとてもできませんからね」
「過分な評価、恐れ入ります。ヴァリエール殿こそ、若くしてアカデミーの筆頭研究員……新型のポーションや
マジックアイテムの開発数では群を抜くとか。貴族夫人とは着飾り、男の前で踊るだけの者達ばかりではないのですね」
 一見すると、相手の業績を称える言葉にも聞こえるが、二人ともそれぞれ言外に。
 
"剣を振るうしか能のない平民あがりが"
"舞踏会しか出番のない箱入り娘が"
 
 そう、相手を侮蔑する意思が込められていた。
 もちろん、アンリエッタ王女の手前、はっきりと無作法な言葉を発するようなことはしないが、二人の氷のように冷たい
目線がそれを何よりも表していた。
「貴公のような実力に溢れた新貴族がいるのであれば、トリステインも安泰でしょう。これからも、どうぞよろしく」
「こちらこそ、貴女のような人とは長く付き合っていきたいものです」
 二人はそうして、どちらともなく手を差し出し合い、握手をかわした。
 アニエスの硬くタコだらけになった手と、エレオノールの薬品と冷水でざらついた手が重なり合う。
 すると、二人の目じりが少しだけ振れて、握る手に力がこもった。
611ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (7/14):2009/02/01(日) 18:07:25 ID:1Kkd/xfU
「……貴公の強さ、これからの戦いに、少なからぬ力となるでしょうね」
「そのときは、是非貴女の魔法薬での助力をお願いしたいものです」
 ほんの少しだけ、敬意を表した目を向き合わせた後、エレオノールはあらためてアンリエッタに一礼すると、
会議室を退室していった。
 
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン、ね。貴女が男だったら、バーガンディ伯爵のような軟弱者の相手をせずに
すんだかもしれないわね」
 誰もいない廊下を歩きながら、エレオノールのつぶやいた独り言を、耳にした者はいない。
 
 そして、エレオノールと入れ替わりに入室したアニエスは、書簡をアンリエッタに提出すると、その前に
跪いて、アンリエッタが書簡に目を通すまで、微動だにせずに待った。
「……獅子身中の虫とは、まさにこのことですわね」
 そこには、アニエスらが独自に調査した。あの人身売買組織の行動の詳細から、その背後で手引きをして、
代わりに私腹を肥やしていた者達の名が記されていた。
「彼らの強欲のために、これまでこれほどの数の子供達が犠牲に、とても許しておけるものではありません」
 アンリエッタは歯を食いしばり、悔しそうに言った。
「すでに捕らえた者達は裁判を終え、それぞれにふさわしい罰を負わせました。しかし姫殿下、この事件は
それだけでは終わりません」
 内に秘めた思いを込めて、アニエスは言った。
 権力を利用して犯罪組織と結託して私腹を肥やす者は別に珍しい存在ではない。しかし、その書簡には
まだ続きがあった。
「ええ、組織から流れた金の行方の、その半分が消失しているというのは尋常ではありませんわね。これに
関しては書類も残っていない。彼らにとって、最重要機密ということなのでしょうね」
「ですが、だからこそ推測も立てられます。奴らの後ろ盾になっていたこの男、奴の屋敷の使用人に金を
つかませて得た情報ですが、最近アルビオンなまりを強く残す客が増えたとか……アルビオンにおいて、
大量に金を必要とし、なおかつトリステインの中枢の人間と手を組めるような勢力は二つ、ひとつはアルビオンの
王家ですが、彼らはトリステイン王家と友好関係にある以上、このようなことをする必要がありません。
そうなると必然的に残るのは」
「レコン・キスタ、ですね」
 現在、浮遊大陸を二分して、王家と戦っている貴族連合の名を、忌々しげにアンリエッタはつぶやいた。
「奴らは国境を超えたる貴族の連盟と聞きます。しかし、現在は王党派の反撃を受けてシティオブサウスゴータまで
押し返され、均衡状態が続いているといいますので、戦力増強のために戦費はいくらあっても足りないのでしょう」
「誇りのない人達は、自分達のためならどんなに弱い人達が苦しもうと、何も感じないのでしょうね」
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:08:35 ID:wnMT1tiO
アニエスとエレオノールの組み合わせって怖いぞ支援。
613ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (8/14):2009/02/01(日) 18:09:16 ID:1Kkd/xfU
「奴らは、元々王家に反逆を起こした不忠者ども、自分が王になりたいだけのならず者の集まりに、誇りなど
あろうはずがありません。この男、お裁きになりますか?」
「いえ、まだ証拠が足りません。しばらく泳がせて、尻尾を出すのを待ちましょう……それにしてもアニエス、
あなたは本当によくやってくれています。心から、お礼を申し上げますわ」
 アニエスは、あのツルク星人を倒した日からアンリエッタによって預けられた、王家の百合の紋章のつけられた
マントを握り締めた。
「私は、姫殿下にこの一身を捧げております。姫殿下は卑しき身分の私に、性と地位をお与えくださいました」
「いいえ、あなたはその地位に等しい武功を挙げました。当然の栄誉を受けているだけです。ですが、平民は
決して卑しき身分ではありません、あなたはご自分の部下や守るべき大勢の民衆を貶めるつもりですか?」
 アンリエッタの厳しい言葉に、アニエスは自分の失言を悟って、深く頭を下げた。
「申し訳ありません!! 私としたことが、知らないうちに自分の得た身分に自惚れていたようです。どうか、
お許しくださいませ」
「顔をお上げなさいアニエス、分かってくださればそれでよいのです。常に誇りを持ち、身分ではなく精神の
高貴さで人を判断すれば、あなたは誰よりも貴族らしい貴族になれるでしょう」
「はっ、肝に銘じておきます」
 壇上から降りて、跪いているアニエスの肩を、アンリエッタは優しく抱いた。
 そして一瞬だけ遠い目をすると、思い切ったようにアニエスに特命を下した。
「アルビオン王家との同盟強化を、急がなければならないようですね……アニエス、それに対してレコン・キスタから
どのような妨害があるかわかりません。あなたはこの男の監視を続け、他にも怪しい人物がいないか、目を光らせて
いてください。そして、彼らが焦って行動を起こしたときこそ」
「かしこまりました。姫殿下のご期待に副えますよう、全力を尽くします」
 この宮廷内に潜り込んでいる寄生虫の数が分からない以上、一匹をつぶしても残りの多数を潜伏させてしまう
だけだろう。リスクは大きいが、ここはこちらも気づいてない振りをしての化かし合い合戦だ。
 それに……アニエスには、"その男"に個人的にどうしても聞き出したいこともあった。
「では、私はこれで失礼いたします。最近トリスタニアで奇妙な事件が起こっていると聞き、我らにも応援要請が
ありましたので、その指揮にあたります」
 命を懸けて仕えるべき主君に深い敬意と感謝を込めて、アニエスは一礼すると退室しようとした。
 その背中にアンリエッタの言葉がかかる。
「くれぐれも、ご自分を大切にね」
「姫殿下のために死すべき日まで、私は死ぬ気はありません。姫殿下も、どうかご自愛くださいませ」
 アンリエッタの優しい瞳を目に焼き付けて、アニエスは会議室の重い扉を閉めた。
 
 
 
 そして、時空を超えた場所でも、運命の歯車は一時も止まりはしていない……

 地球、日本アルプスの山岳地帯にCREW GUYS JAPANは出動していた。
614ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (9/14):2009/02/01(日) 18:10:57 ID:1Kkd/xfU
 日本でもこの季節は夏、アルプスの峰峰も草花に覆われて、自然の息吹を満喫している。
 しかし、そんな美しい自然の空気を乱す者が、今この空に舞っていた。
「ミライ、そいつにビームは効かねえぞ!! 気をつけろ」
 ガンウィンガーのコクピットからリュウの声が、地上で戦うメビウスに響く。
「ヘヤッ!!」
 メビウスの上空を、一羽の巨大な怪鳥があざ笑うような鳴き声をあげながら飛んでいる。
 そいつは、『凶獣、姑獲鳥(こかくちょう)』、天空を飛翔し、人間に不吉をもたらすという半人半鳥の姿を持つ妖鳥だ。
 接近してくる姑獲鳥を見据え、メビウスは左手のメビウスブレスにエネルギーを集中させた。
「テヤァ!!」
 この怪獣はどういうわけか、ガンウィンガーのウィングレッドブラスターを吸収してしまう。メビュームシュートでは
効力がないと判断したメビウスは、それならば光線ではなく、直接エネルギーをぶつけてやろうと考えた。
 稲光を伴う強力な電気エネルギーがメビウスブレスに収束される。そして、敵の突進に合わせて、メビウスは溜め込んだ
エネルギーを零距離で叩き付けた。
『ライトニングカウンター・ゼロ!!』
 密着しての高電圧エネルギーの解放は、雷鳴の数十倍の輝きを持って姑獲鳥の体に吸い込まれていく。
 しかし、奴はそれさえも飲み込んでしまった。姑獲鳥は電離層に住むプラズマ生物のために、電撃やビーム攻撃の
類は吸収されてしまうのだ。
 エサをもらったに等しい姑獲鳥は、さらにパワーをあげてメビウスを跳ね飛ばした。
「ウワァ!!」
「ミライ!」
 メビウスを吹っ飛ばした姑獲鳥は、あざ笑いながらまた上空へと駆け上っていく。
 しかし、その前に青い閃光が立ちはだかった。
「セヤアッ!!」
 ウルトラマンヒカリのナイトビームブレードの一閃が、姑獲鳥の左の翼を切り落とす。
 翼を失ってしまえば、鳥はダチョウかペンギンでもない限り、行動力のほとんどを失う。この姑獲鳥も例外ではなく、
きりもみしながら山中の平原に落ちていった。
「ようし、とどめだ!」
 墜落のダメージは意外に大きかったらしく、頭から落下した姑獲鳥は転げまわってもだえている。
 今がチャンスと、リュウはメテオール、スペシウム弾頭弾の発射準備をしようとした。
 だがその直前、フェニックスネストからの緊急連絡が彼の手を止めた。
〔隊長、その地点の上空に新たなワームホール反応、さらに大型の熱反応も検知、怪獣が出てきます!」
「なんだと! またか」
 リュウが空を見上げると、青い空にぽっかりと空いた黒い穴から、まるでラグビーのボールに手足がついたような
怪獣がまっさかさまに落ちてくるのが見えた。
 そして怪獣は、頭から岩肌に落下し、盛大に土煙を上げたあと、ゆっくりと起き上がってきた。
「こいつも……どっかの宇宙から飛ばされてきた奴なのか……?」
 リュウは怪獣を見下ろしながら、苦々しげにつぶやいた。
615ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (10/14):2009/02/01(日) 18:12:25 ID:1Kkd/xfU
 地球は、ここのところ新たな怪獣頻出に悩まされている。以前戦った、新たなレジストコード・レイキュバスを始めとして、
突然開いたワームホールから見たことも無い怪獣が出現してくる事態が多発していた。先日も、突然次元の歪みから
子供の書いた恐竜みたいな怪獣が出てきて、ようやく倒したばかり。この事態に、メビウスとヒカリも遂に積極的に
参戦し、GUYSと協力して事態の収拾に当たっていた。かくいう、この怪鳥も日本アルプス上空に突然開いた
ワームホールから出てきたのだ。
 新たな怪獣は、体の中央に赤く光る一つ目がついていて、よく見れば体のあちこちが機械化されている。
どこかの星の怪獣兵器の類かもしれないが、ともかく放っておくわけにもいかない。
 この怪獣、彼らは知らないことだが、名をラグストーンと言い、リュウの予測したとおりに怪獣兵器の一種で、
別の世界から時空のかなたに飛ばされて、ここにたどり着いたものだ。
「ミライ、セリザワ隊長、気をつけろ!!」
 すでに姑獲鳥との戦いに時間を食って、二人のウルトラマンのタイムリミットはあまりない。
 ラグストーンは、二人のウルトラマンの姿を見つけると、ラグビーかフットボールの選手が突進するときのような
前傾姿勢をとり、頭から猛然と突進してきた。
 メビウスとヒカリは、これ以上戦いが長引くのは不利と判断して、ラグストーンの正面からそれぞれの必殺光線で
迎え撃つ。
『メビュームシュート!!』
『ナイトシュート!!』
 二乗の光線は狙い違わずにラグストーンに命中した。しかし、ラグストーンはそれらの光線が直撃したにも関わらずに、
平然とそのまま突進してくるではないか!!
「ショワッチ!!」
 二人のウルトラマンは、正面から受け止めるのは無理と、ラグストーンの頭の上をジャンプして飛び越えた。
 勢い余ったラグストーンは、そのまま慣性の法則に従って突き進み、その先には不運なことにようやく起き上がってきたばかりの
姑獲鳥がいた。もちろん、ダンプカーのごとく突進するラグストーンは止まることはなく、正面衝突した姑獲鳥は盛大に
吹っ飛ばされた。
 さらに、跳ばされた姑獲鳥が墜落したところに、なおも止まらないラグストーンが駆けて来て……
 グシャッ!! 擬音にすればそういう表現がぴったり来るような見事な音を立てて、姑獲鳥はラグストーンに踏み潰されて
あえなく最期を迎えた。
 だが、残るラグストーンは手ごわそうだ。
「俺達の同時攻撃が効かないとは、なんて頑丈な怪獣だ」
 普通の怪獣ならば木っ端微塵、少なくともダメージは与えられる攻撃に、この怪獣はビクともしない。
 姑獲鳥を踏み潰したラグストーンは回れ右して、再び突っ込んでこようとスタートダッシュの体勢をとっている。
 すでにカラータイマーも赤く点滅を始めて、光線技をあまり連射することはできない。けれど、メビウスはそんなことで
闘志を折ったりはしない。
「ヒカリ、僕があの怪獣の防御を破ります。その隙に光線を撃ち込んでください」
「あの怪獣の防御を破る術があるのか……よし、任せたぞメビウス」
 ヒカリを後ろに残して、メビウスはラグストーンに向かって跳んだ。空中高く跳びあがり、右足を突き出してのジャンプキック攻撃だ。
616ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (11/14):2009/02/01(日) 18:14:47 ID:1Kkd/xfU
「テヤァーッ!!」
 真正面からまるで銀色の矢のごとく、メビウスのキックはラグストーンの赤いモノアイ部分に命中した。
 けれども、頑強なラグストーンの体は目の部分でもメビウス渾身のキックに耐えられるほど硬く、その衝撃にも傷一つなく
平然と受け止めきってしまった。
 が、メビウスの狙いはここからだ!!
「テイヤァァーッ!!」
 メビウスの体がラグストーンのモノアイにキックを打ち込んだ姿勢のまま、まるでドリルのように高速回転を始める。
それはあまりの回転速度のために空気との摩擦で炎を起こし、さらに大地を抉り取る竜巻のようにメビウスのキックに
通常の何十倍もの力を与えた!!
 
『メビウスピンキック!!』
 
 ラグストーンのモノアイが、とうとう耐え切れなくなり、貫通されて爆発を起こす。
 これこそ、かつていかなる光線技も通じなかったリフレクト星人を倒すために、ウルトラマンレオ、おおとりゲンの教えを
受けてメビウスが独自に編み出した必殺キック、その威力はあのレオキックにさえ匹敵する。
「セリザワ隊長、いまだ!!」
 ラグストーンはモノアイを破壊されて、火花を吹き上げてもだえている。あそこならば、光線技が効く。
 リュウのかけ声を受けてヒカリは腕を十字に組んだ。
『ナイトシュート!!』
 青い閃光が吸い込まれるように、ラグストーンのモノアイの亀裂に飲み込まれていく。
 ラグストーンの外殻は確かに硬い、しかしその反面内部からの圧力も外に逃がすことができずに、電子レンジに
入れられた卵がはじけるように、内側から粉々の破片になって飛び散った!!
「ようっしゃあ!!」
「ショワッチ!」
「シュワッ!!」
 新たなワームホールが開く気配はもう無い。
 2大怪獣を撃破し、ガンウィンガー、メビウス、ヒカリは揃って飛び立った。
 
 そして、勇躍してフェニックスネストへ帰還した3人を、サコミズ総監やトリヤマ補佐官、それにミサキ女史が温かく出迎えた。
別の隊員達は他の任務で出かけているが、それだけでも充分疲れは吹き飛んだ。
「ご苦労様、おかげで市街地に被害が出る前に怪獣を倒すことができた」
「いいえ、これが俺達の仕事ですから」
 サコミズ総監のねぎらいに、リュウはすっかり隊長らしくなった様子で答えた。
 そしてミサキ女史が、同じようにねぎらいの言葉をかけると、脇に抱えていた茶封筒から数枚の用紙を取り出して
ミライとセリザワに渡した。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:15:42 ID:wnMT1tiO
おお、焼き芋キックだ支援
618ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (12/14):2009/02/01(日) 18:16:14 ID:1Kkd/xfU
「ご苦労様。さっそくだけど、あなた方が出かけている間に異次元調査の途中経過の報告が来たから、目を通してみて」
「はい、ありがとうございます」
 それはGUYSが独自に調査した、ウルトラマンAと異次元人ヤプールについての資料だった。
 二人はそれにざっと目を通し、やはりエースが消えたとされる日に、木星の観測ステーションが異常な時空間の
歪みを観測していたことが証明された。
「やっぱり、エース兄さんはどこか異次元……別の宇宙へとさらわれたんでしょうか……あれ? これは」
 ミライは、その資料をめくるうちに、最後のページに奇妙な記事があるのに目を止めた。
「平賀、才人?」
 なんと、そこに記されていたのは才人の名前、そのものであった。
「ミサキさん、なんですかこれは?」
「読んでの通りよ。エースが消えたのと、ほぼ同時刻に地球上でも同じような時空間の歪みが観測されていたの。
こっちはかなり小さいし、すぐに消えちゃったんだけど……その日からその少年が行方不明になってるの」
「行方不明者って、それは警察の仕事では?」
「ところが、警察が聞き込みをしたところ、彼らしき人物が宙に浮かんだ光る鏡みたいなものに吸い込まれて、
そして消えてしまったと目撃者の証言を得たのよ」
 それはまさに、才人がルイズのサモン・サーヴァントによって召喚された、その瞬間のことだった。
「まさか、ヤプールの仕業だと?」
 過去にもヤプールは奇怪な老人に姿を変え、世界中の子供達を異次元へとさらっていったことがある。その
事件はドキュメントTACに、メビウスの輪を利用した異次元突入作戦によって異次元空間へ飛び込んだ北斗星司隊員の
活躍で解決されたとなっているが、真実はもちろんウルトラマンAによってヤプールが倒されたのである。
 しかし、ミサキ女史は首を振った。
「いいえ、この異次元ゲートからはヤプールエネルギーは感知されていません。それに、事象はこの一回だけで
他には観測されていません。しかし、ゲートの性質はエースが消えたときのものとほぼ同質です」
 GUYSの調査結果を読み、セリザワ=ヒカリも首をひねった。
「ならば、ほかの何者かの仕業か。しかし、この才人という少年、いったい何のために……?」
 資料には才人のパーソナルデータも記されていたが、素行に問題は無く、補導暦もない。かといってこれといった
表彰もされたことはないが、交友関係もそれなりにあり、彼を悪く言うような者もいない、いたって普通の高校生を
絵に描いたような少年だった。
 まさか、使い魔にするために異世界から魔法で呼ばれたなどとは想像できる者がいるはずもない。
「じゃあ、エース兄さんはいったいどこに……」
「メビウス、エースは異次元戦闘では兄弟一のエキスパートだ。きっと、どこかの宇宙で戦っていることだろう。
我々は、一刻も早くエースが消えた次元を探し出して、彼を救う方法を考えることだ」
 セリザワは気落ちしそうなミライの肩を叩いて、そう励ました。
 また、サコミズもミライに告げた。
「ミライ、そのためにこそ我々GUYSがいるんだ。焦るな、我々が希望を捨てない限り、希望も我々を裏切ったりはしない」
 サコミズの、この落ち着いた声と穏やかな人柄に、これまで何度救われてきたことか、ミライは元気を取り戻して
気合を入れた。
「はい! 頑張ります。エース兄さんを必ず見つけ出してみせます」
 この前向きさがミライのいいところだ。
「それにしても、この平賀才人って奴はなんなんだろうな。エースと同時刻に消えてる以上、事件とまったく無関係とは
思えねえし。ヤプールが目をつけそうなところはなさそうだけどなあ」
 ただし、この少年に関してはまったく分からなかった。元々深く考えるタイプではないリュウは首をかしげるばかり。
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:21:18 ID:wnMT1tiO
614 :ウルトラ5番目の使い魔:2009/02/01(日) 18:20:22 ID:e1KBiNVQ
申し訳ありません。投下中、やっぱりさるさんになってしまいました。
あとあとがきも含めて3レスなので、どちらか代理をお願いいたします。


では、代理を行います。
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:21:59 ID:hrJVn8ES
483kbしえん
621ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (13/14) 代理:2009/02/01(日) 18:23:21 ID:wnMT1tiO
 だが、分からないことが重なるなど宇宙人がらみの事件にはありがちなことだ。
「まあとにかく、この混乱に乗じてヤプールにつけこまれないように警戒することも肝心だ。この少年……案外彼が
事件の鍵を握っているかもしれんな」
「じゃあ、彼の消えた場所から再調査してみましょうか? えーと、消えたところは、東京の秋葉原」
「よーし、それじゃあ行くぞミライ!!」
「はい、リュウさん」
 どんなときでも、決してあきらめない。
 知らず知らず、彼らは真実に一歩一歩近づいていっていた。
 
 ちなみに……
「なあ、マル……わしもいるんだけどなあ」
「補佐官、今回は空気を読まれたんですよ。次はきっと、補佐官の出番がありますって」
 と、いじける二人がいたことを一応付け加えておく。
 
 
 しかし、まさか自分の存在がGUYSで取り上げられているなどとは夢にも思っていない才人は、あっという間に
元の雑用中心の使い魔生活に戻って毎日を平和に過ごしていた。
 ラグドリアン湖から帰ってきてから、早くも今日で6日、心配していたタバサとキュルケも2日後には学院に戻ってきて、
明日は週に一度の虚無の曜日の休日だ。
「よいしょ、よいしょ……っと」
 学院のヴェストリの広場で、才人は風呂の準備をしていた。
 この学院にも一応風呂はあるのだが、貴族用の大風呂には才人は入れず、かといって使用人用のサウナ風呂は
日本人の彼にはなじめないものだったので、食堂でもらってきた大釜を五右衛門風呂に仕立てての手作り風呂を
作り上げたのだった。
 えっちらおっちらと、薪や水桶を抱えて何往復もする。疲れる作業だが、風呂に入らない不快感を味わうよりは
ましだし、第一臭いとルイズに叱られては寝床がなくなる。まあ、いざとなったらデルフを片手に持ってガンダールヴの
力でスピード運送という手もあるが、無駄な手間をかけてこそ出来上がりが楽しいということもある。
「いよーっし、準備オーケーと」
 釜に水を張り終えて、薪に火をつけるためにポケットに入れておいた火打石を取り出そうとごそごそとしていると、
太陽に変わって顔を出してきた月明かりの中から、誰かが近づいてきた。
「誰だ?」
「あたしよ」
 返事が返って来るのと同時に、月明かりに照らされて、そのシルエットが浮き上がってきた。桃色がかったブロンドの
髪の色に鳶色の瞳、見間違えようもない、ルイズだ。
622ウルトラ5番目の使い魔 第33話 (14/14) 代理:2009/02/01(日) 18:25:14 ID:wnMT1tiO
「どうしたんだ、こんなところに?」
 このヴェストリの広場は学院の主要施設や通路から離れているために、生徒は滅多にやってくることはない。
そのため才人にとっても風呂に入るには都合のいい、憩いの場所だった。もちろん、ルイズが尋ねてくるなど
はじめてのことだ。
「あんたこそ、何よこの大釜? 料理でもしようっていうの?」
「違うよ。これは俺専用の風呂、学院のサウナ風呂はどーも性に合わなくてな。自作してみたんだ」
「はー、妙なことするわねえ。まあ、別にいいけど清潔にはしときなさいよ。それより、あんた宛に手紙が来てるの」
「俺に?」
 意外な用件に才人は一瞬ぽけっとした。見ると、ルイズは指に白い封筒を挟んで掲げている。
 しかし、なんでルイズが持ってくるんだ? と、才人は不思議に思った。こういうものは、普通ならシエスタあたりが
持ってくるだろうに。
「わたしの部屋に伝書ゴーレムで直接届けられたのよ。誰からだと思う?」
「えーと、特に心当たりはないが……あっ、アニエスさんからだ」
 ルイズから受け取った封書の裏には、確かにあの銃士隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランの名で差出人の
フルネームが書かれていた。
「なーんであんたに直接手紙が来るのよ。こういうことは主人であるわたしを通すのが筋でしょうに、まったくこれだから
平民あがりはいやなのよ……」
「余計な手間をかけるのを嫌う人だからな、まあ大目に見てやれよ」
 自分がスルーされてぶつくさ文句を言うルイズをなだめると、才人は手紙を読みやすいように月明かりにかざした。
「久しぶりだな、あの人とはツルク星人のとき以来か……でも、わざわざなんだろうな……年賀状でもあるまいに、
もしかして俺に惚れた? ラブレターとか、ぐふふ」
 手紙の封も切らずにあり得ない妄想に身をよじらす才人を、ルイズは汚物を見るような目で見て、その股間に
蹴りを入れてやろうかと思ったが、足を振り上げた時点で、ピーンともっとよい方法を思いついた。
「あっ、そう。じゃあ今度わたしからアニエスさんに丁寧にサイトが好きですかって聞いておいてあげるわ」
 それはまったく、死の宣告に等しかった。
「さっ、さあ馬鹿なこと言ってないで、中身を見ないとな!」
 この瞬間、拷問台のフルコースを味わわされたあげくに火あぶりに処せられる自分の姿を見たのは、単なる
幻覚ではあるまい。
 滝のように冷や汗を流して、才人は震える手で封筒のふちをビリビリと破いた。
 そして、恐る恐る手紙を開いて、そこに記されていたものは……
「なんて書いてあるんだ?」
 実は才人はまだハルケギニアの文字が読めなかった。
「仕方ないわねえ、貸してみなさいよ。えーと、『ヒラガ・サイト殿、至急知恵を借りたし、明日銃士隊詰め所まで
来られたし。銃士隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン』……ですってよ」
「へ……?」
  
 
 続く
以上です。たくさんの支援、ありがとうございました。心から感謝しています。
今回エレオノールが初登場でしたが、一応王女の前ですので彼女らしい台詞使いがあまりできなくて、
少々不完全燃焼になりました。まあ、彼女も一応貴族なので……
  
さて、ハルケギニアと平行して地球での話もときたま入れていますが、リュウ以外の隊員達は、それぞれの分野で
頑張っているので、まだちょっと寂しいです。
ですがそのうちジョージ、マリナ、コノミ、テッペイも出してCREW GUYS全員集合させたいです。
なお、なんでGUYSがレイキュバスの正しい名前を知っていたのかというツッコミはなしの方向でお願いします。
また、おおとりゲンの名前については『おゝとりゲン』の表記では難しいので、作中ではこの形で呼ぶことにいたします。

では、次回からはまた新たな展開で頑張りますので、よろしくお願いします。




ウルトラの人、乙でした。
次回あたりからは、またエースが登場するのかな?
624名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:45:55 ID:5MDY8UhK
ウルトラの人乙です。
次回に超期待せざるを得ない。
625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:53:05 ID:uqQ86rTu
480kbを超えていることだし、
次スレを立てに行ってくるんだぜ
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:56:54 ID:uqQ86rTu
ダメでしたー、良かったらテンプレ使ってくだせえ

もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part209
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1233161486/

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。

.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

ということで、次スレ任せたんだぜ!↓さん!
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 18:58:23 ID:1zYEoCA5
ちりーん
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:00:27 ID:1zYEoCA5
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part210
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1233482365/

人呼んでスレ立ての名無しです
>>628
乙。
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:04:47 ID:wnMT1tiO
名無しに戻してなかったorz

ではAAで埋めるのも何なので、避難所の雑談スレにあったヤツでも貼っておく。



各巻よりセリフ抜粋・デルフリンガー

1巻「おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
2巻「懐かしいねえ。泣けるねえ。そうかぁ、いやぁ、なんか懐かしい気がしてたが、そうか。相棒、あの『ガンダールヴ』か!」
3巻「こいつは『武器』だろ? ひっついてりゃ、大概のことはわかるよ。忘れたか? 俺は一応、『伝説』なんだぜ?」
4巻「そりゃそうさ。勘違いすんなよガンダールヴ。お前さんの仕事は、敵をやっつけることでも、ひこうきとやらを飛ばすことでもねえ。『呪文詠唱中の主人を守る』。お前さんの仕事はそれだけだ」
5巻:セリフなし
6巻「いやぁ、相棒。すんごいお久しぶり。ほんとに寂しくて死ぬかと思った」
7巻「そりゃ、どう贔屓目に見たって、あのロマリアの神官のほうがかっこいいさ。顔はもう、そりゃ比べものにならねえよ。空飛ぶ生き物のレベルでいえば、ハエとフェニックスだよ。地を這う生き物でいえば、オケラとライオンだよ。水の生き物でいえば、ミジンコと白鳥だよ」
8巻「相手してよ」
9巻「おれは六千年も変わらずにやってきた。退屈だったが、それなりに幸せな時間だったのかもしれねえ。お前さんたちの歴史とやらも同じさ。なにも無理に変えるこたぁねえ。そのままにしておくに、越したことはねえよ」
10巻「もう。俺に話しかけるの、こういうときだけじゃねーか」
11巻「あんだよ。もうほんと、聞きたいことがあるときだけ呼ぶんじゃねーよ。切りたいものがあるときだけ抜くんじゃねーよ。もう俺に飽きたんだろ?」
12巻「相棒……、遅いよ……」
13巻「だってよう……、ずっと鞘に入りっぱなしでイライラしてたし……。第一おりゃあこの国がきれえなんだよ。この国をつくったフォルサテって男が、そりゃもういけすかないヤツで……」
14巻:セリフなし
15巻「やあ相棒。もう、俺が寂しいと言っても、誰にも届かないんだね」
631名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:05:34 ID:uqQ86rTu
俺に出来なかったスレ立てを平然とやってのけるッ!
そこにシビれる!あこがれるゥ!

(・ω・`)乙 これは乙じゃなくて、死髪舞剣なんだからねッ!
632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:06:06 ID:wnMT1tiO
各巻よりセリフ抜粋・ギーシュ

1巻「確か、あのゼロのルイズが呼び出した、平民だったな。平民に貴族の機転を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」
2巻「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下とモンモランシーには会えなくなってしまうな……」
3巻「んー、きみはあれだな、ろくでなしだな」
4巻「なあに、ぼくなんか今学年は半分も授業に出てないぞ? サイトが来てからというもの、なぜか毎日冒険だ! あっはっは!」
5巻「白! 白かった! 白かったであります!」
6巻「ちょ、ちょっと大隊長どの! ぼくは学生仕官ですよ! そんないきなり中隊長なんて!」
7巻「……む、武者震いと言いたいが……、恐いだけだな。うん」
8巻「きみは平民だが、ぼくは友情など、抱いていたんだよ」
9巻「理想の自分っていうのかね。まぁ、ぼくは自分が理想だけどな! なんてったって、ぼくは世界一美しいからな! あっはっは! ああ! 何人ぼくの姿になるんだろう! ああ! ああああ! あ!」
10巻「きみってやつぁあああああ! ああああ、捕まっちまったじゃないかよぉ……! よりによって敬愛する女王陛下にぃいいいいい!」
11巻「ぼくはね、きみを友人だと思う。だからこそ、こうしたほうがいいと思うんだ」
12巻「なんというかね……、きみのいた国はどうか知らないが、こっちにだって可愛い女の子はいるし……、貴族にだってなれたじゃないか。もしルイズに放り出されるようなことがあったら、ぼくの領地に来ればいい。きみ一人ぐらい、養ってやるぜ」
13巻「まだ未完成の花束だ。最後の一本は……、キミダヨ」
14巻「笑って見送っておくれ。ぼくは貴族なんだよ」
15巻「そうだな。そうかもしれん……。でも、見ろサイト。ここに集まったロマリア、ガリア両軍の姿を! ここで一発格好いいところ見せてみろ! ぼくと水精霊騎士隊の名前は、子々孫々まで語り継がれるようになるぜ!」
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:06:11 ID:Ia60sKzS
デルフせつねぇwwwww
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:06:50 ID:uqQ86rTu
500だったらウルトラの父がガイルの短編が投下
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:07:05 ID:wnMT1tiO
セリフ抜粋書いてくれた人、他のキャラでも作ってくれないかなぁ…。
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:09:21 ID:wnMT1tiO
500KBだったら、シエスタのセリフ抜粋を俺が作ってみる。
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:13:01 ID:Ia60sKzS
500kbだったら>>636が全キャラセリフ抜粋作成
638名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:14:43 ID:wnMT1tiO
>>637
無茶言うなww
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:15:50 ID:U9ODH85h
ウルトラの人乙でした
すごく面白かったです、次回も楽しみです
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:19:31 ID:uqQ86rTu
500kbだったら、ゼロ魔を読んでいる時に出た俺の呟きを
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:20:55 ID:Ia60sKzS
がんばれwnMT1tiO!お前ならできるさ!
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:22:09 ID:B+jZJR9Y
500kbだったら、豪血寺一族のお梅召喚を書く。
643名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:25:10 ID:sWXbAUSN
>>638
マジ期待してます。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:29:02 ID:e7eOL5/o
500kbだったら、ビブリオテーク・リヴよりニコ・アージェントを召喚。
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:30:22 ID:+7RA5hlk
500だったらGS美神から小竜姫さまと老師召喚。
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:32:54 ID:PUJIG+MN
500だったらストライクウィッチーズからエイラーニャ召喚してハルケギニアからズボン消滅
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:41:33 ID:wfarm37v
500だったら血+のハジ召喚
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:42:51 ID:f+2F4+VZ
まだいけるか
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:43:09 ID:cVnK0dFF
500だったらウメーウメーなヤツを呼ぶ
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:44:39 ID:h7ayxF2F
500ならエルサガからアースムンド様召喚
651名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:45:56 ID:b/6SoDXY
石川作品から何か呼びたい
652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:47:05 ID:B+jZJR9Y
>>649
すんごく見てみたいから書いてくれwwww
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:47:38 ID:lz41dHsp
500なら少年ケニヤ召喚
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:48:58 ID:xJFEk06Y
500KBだったらwnMT1tiOががんばってくれる
655名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:49:42 ID:+GagmvGb
ウルトラの方、グッジョブでございます。
毎度毎度、物凄く楽しみにしているSSの一つでございます。
しかしアン様がカッコイイなあ……。
何で特撮系のクロスSSになるとアン様はこんなにもカッコイイのか……
656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/01(日) 19:49:49 ID:wnMT1tiO
ごめん、ちょっと席を外してる間に、俺がセリフ抜粋書くこと決定になってない?
657名無しさん@お腹いっぱい。
                                          ○________
                               なぎはらえー     |:|\\:::::||.:.||::::://|    /イ
                                              |:l\\\||.:.|l///|  .///
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  ト、     ,.    ̄ ̄Τ 弋tァ―   `ー /  l从 |メ|_l  l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ ̄ ̄ ̄ フ  ̄ ̄    |                  イ
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   ヽ  ∠____vvV____ヽ   <   ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐  . \   / /         \           /   l
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       \!      |   / 入_.V/|      >-ヘ  \:::∨::∧  ∨ ∠二 -‐ .二二 -‐ ' ´ /        /   / l.  l
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      <ヽ__      /し /        < )__ \   _r‐く___/  /    < ) \     {__ノ /
        Y__>一'    /         ___r―、_\ >'   `ー' ,.  ´       >.、 \__ノ    {
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