あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part195
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part194
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1228615261/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
ダブったため196として再利用されます
一応保守
「貴様がバディムの首領か! ここであったが100年目だ、覚悟しろ!!」
「どうやら予定より少々長居してしまったようだな……。……また会う機会があったら、その時は相手をしてやろう……」
かつて志を同じくした男が、あの時のまま―――自分だけが40年の時を経てしまったので当然だが―――真っ直ぐな視線
で、男を射抜く。
男は諦観と、覚悟と、そしてほんの僅かの寂寥を覚えながら、その場を後にした。
「ウルトラ族を倒すには、ウルトラ族の力が必要だ。ETFのおかげで彼らの力を解明することが出来た。
ご苦労だったな、メフィラス」
「……わ、私を……ETFを……ウルトラ族の戦闘データを取得するためだけに利用していたというのか!」
それはお互い様だ、と男の傍らに立つ赤い異形が答える。
……この存在は確かに優秀だったが、その野心と我(ガ)が強すぎた。
男が造った組織に、二人も長は要らないのである。
「凱聖クールギンよ……準備は整った。我らが千年王国の誕生は近い」
「………」
「さあ、来い。私の世界へ……」
銀の鎧でその身を包んだ剣士を勧誘し、男の陣営に引き入れた。
これで磐石―――とは言えないが、それなりの人材が揃ったことになる。
……それでは、残りの人材を集めに動くとしよう。
「……………」
覚醒する。
始めは戸惑った奇妙な夢も、今となってはもう慣れた。
しかし、この『舞台』に出て来る『男』がどのような心境なのか―――それに関しての理解が出来ない。
「……って、たかが夢に、ここまで考え込むこともないわね」
所詮、夢は夢だ。
それに毎日この夢を見るわけでもないから、特に脳裏をよぎることもない。
気にせずに、今日も一日を過ごそう。
「ふむ、こんなものか」
オールド・オスマンに机と本棚を頼んでから10日ほど経過した日の夜、ようやく机や本棚の設置が完了した。
机の上にはペンとこれまで書いた数稿のレポート、そして鞘に収まった二本の剣と鞭以外は何も置かれてもおらず、本棚
には一冊の本も収納されてもいないが、それはこれから徐々に増やしていけば良い。
では取りあえず、隣の御主人様の部屋に戻ろうか……とドアに向かって歩くと、
「おお、なかなか立派な部屋じゃないか!」
「……ミスタ・グラモン?」
ノックもせずに、ギーシュ・ド・グラモンが入室してきた。
支援するのも私だ
「何の用だ?」
「おいおい、せっかく君の研究室の完成―――と言うのとは違うか、とにかくそれを構えたことを祝いに来たのに、その
言い草はないだろう」
「……………」
怪訝そうな顔でギーシュを見るユーゼス。
「本当の目的は何だ?」
「う゛……い、いや、僕は本当に祝いに……」
「お前がそこまで殊勝な人間だとは思えん」
「な、何だか、けなされているような……。……ええい、分かったよ! 本当の用件を言うよ!」
ギーシュは観念したのか、半ばヤケになって語り始めた。
「実は、君に僕のワルキューレの」
「断る」
「まだ最後まで言ってないじゃないか!!?」
はあ、とユーゼスは溜息をついて椅子に腰掛けた。……なかなか悪くない座り心地だが、椅子が一つしかないというのは
少し問題がある。あとで2、3個ほど取り寄せよう。
「お前のゴーレム……ワルキューレの強化方法なり、効果的な運用方法なりを聞きに来たのだろう?」
「う、うむ、まあその通りだが」
「……それを考察し、お前に教授したとして、私に何のメリットがあるのだ?」
「い、いや、それを言われると……」
言葉に詰まるギーシュ。
普通、貴族が頼めば―――と言うか、命令すれば平民はホイホイ言うことを聞くものなのだが、この男に限ってそれは
例外のようだ。
確かにユーゼス自身に得はほとんどないだろうし、興味も動かないらしいし。
……脅しても効果は無いだろうから、ここは『別の付加価値』を考えなければならないだろう。
(価値、価値……う〜〜ん……あ、そうか、『価値』か!!)
突っ立ったままアレコレ考えたギーシュだったが、この偏屈な男を動かすナイスなアイディアが天啓の如く頭に閃いた。
「か、金を出そう!」
「……む?」
ピクリ、と反応するユーゼス。
「この部屋にある本棚の大きさと数を見るに、かなり大量の本を購入するつもりらしいが、その本の代金だって馬鹿にな
るまい? 悪くない条件だと思うがね?」
確かにそれは魅力的だ。事実、ユーゼスには金がないのだから。
「分かった、引き受けよう」
「即決か。……現金な男だな、君は」
「現実的と言ってもらいたい」
(論文を売却……いや、『原稿』を売却するようなものだな)
本を買うなり、研究機材を揃えるなり、服を買うなり、食糧を買うなり、その他の費用なり……とかくある程度以上の
文明レベルを誇る星で生きていくためには、その星の通貨が必要なことは間違いない。
「それでは、値段の交渉に入ろう」
「うむ、では100エキューでどうだね?」
「安すぎる。500だ」
あの錆びたインテリジェンスソードと同額とは、自分の価値を安く見るにも程がある。
「……吹っかけすぎだろう、それは。せめて200で」
「400」
「…………250」
「350」
「……………………300」
「良し。交渉は成立だな」
ガックリとうなだれるギーシュ。『うう、しかし背に腹は……』などと呟いている。
「料金は先払いだ」
「ぐっ……、結構シビアだな、君」
しかし、300エキューともなればそれなりの大金であり、学院内でそうそうサイフなどは持ち歩いていない。
(仕方ない、明日にでも金を渡して、その後にユーゼスの意見を聞こう……)
はあ、と溜息をついてユーゼスの研究室を後にしようとトボトボ歩くギーシュ。
「それじゃあ、明日にお金を……」
しかし、その時。
「邪魔するわよ!!」
「……今度はミス・ツェルプストーか」
何かイライラした様子で、キュルケが研究室に入ってくる。
驚くギーシュを気にも留めずに、キュルケはビシッとユーゼスを指差して、
「あなた、火系統で風系統に勝てる方法を考えなさい!」
いきなりそう命令した。
「なぜだ?」
「……今日のミスタ・ギトーの授業を見てたでしょう?」
「成程」
教師であるギトーが風系統の優秀さを証明するため、キュルケの火球をアッサリと掻き消した一件のことを言っているの
である。
……ことプライドの高さにかけては、ルイズにも匹敵するキュルケだ。何とかして意趣返しをしたいのだろう。
「納得したなら考えなさい、今すぐに!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、キュルケ!」
その時、無視されていたギーシュが慌ててキュルケを止めに入る。
「ユーゼスへの相談なら、僕の方が先約だ! わざわざ金まで払って頼んだんだぞ!」
「お金? いくらよ?」
「300エキューもしたんだ。……ハッキリ言って痛手だが……」
「あたしは1000エキュー出すわ」
「……君の依頼が最優先だ、ミス・ツェルプストー」
「おい、ユーゼス・ゴッツォ!!」
ユーゼスはアッサリと約束の順番を入れ替える。
怒るギーシュだったが、『お前が私の立場なら、どちらを優先する?』と聞かれてしまっては、沈黙するしかない。
……どの道、料金は先払いなので、この男の話を聞けるのは支払いをする明日以降になる。
仕方がないので、今日は引き下がろう―――と、ギーシュはやはりトボトボと退室しようとドアの前まで歩き、
「……ん?」
隣の部屋から、女性の声が聞こえてくることに気付いた。
(この声は……ルイズ? いや、もう一人……)
隣はルイズの部屋なのだからルイズの声が聞こえてくるのは当然だが、ユーゼスがこの研究室にいる以上、誰か話し相手
がいることになる。
ルイズには大声で独り言を喋るクセなどなかったはずなので、その予想は十中八九当たっているはずだ。
「うぅむ……」
気になる。
『ルイズ以外の声』が、どこかで聞いた覚えがあるような気がすることが余計に興味を掻き立てる。
「よし、覗いてみよう!」
「?」
「はぁ?」
犯罪スレスレの行為を決意するギーシュと、脈絡もなく唐突にそんな決意をされて困惑するユーゼスとキュルケ。
……ちなみに『スレスレ』とは『擦れ擦れ』とも書き、つまり軽く接触していることを指す。
しゃがみ込んで、ルイズの部屋のドアの鍵穴を覗き込むギーシュ。
「どれどれ……」
そんなギーシュの様子を見て、ユーゼスは思わずキュルケに目配せする。
ユーゼスの視線を受けて、その意味するところを察したキュルケは、ふるふる、と首を横に振った。
「「……はぁ」」
そして二人で同時に溜息を吐く。
二人がギーシュを放って研究室の中に戻ろう、と踵(キビス)を返した時、
「やや、あれはアンリエッタ姫殿下ではないか!」
「え?」
ギーシュが驚いて漏らした声に、キュルケが足を止めた。
「アンリエッタ姫? トリステインのお姫さまが、なんでこんなところにいるのよ?」
「その口ぶりからすると、姫殿下とやらがここにいるのは異常な事態らしいな」
「……あのね、普通お姫さまは学院寮なんかに来ないの」
「私は『遠く』から来たからな、ハルケギニアの『常識』が今ひとつ分からないのだ」
「―――あなたがどこから来たのか知らないけど、あなたの出身地じゃお姫さまがいきなり学院寮に来たりするの?」
「……そんな訳が無いだろう。『常識』で考えろ」
「……………」
ユーゼスとキュルケがそんなやり取りをしている間にも、ギーシュはルイズの部屋を覗き続け、聞き耳を立て続ける。
「な、何!? トリステインとゲルマニアの同盟を反故(ホゴ)にしかねない物が、アルビオンに!?」
「はー、そりゃ大変ねぇ」
他人事のように呟くキュルケに、ユーゼスが問いかける。
「……アルビオンが内乱中で、改革派―――『貴族派』だったか? それが勝利を目前にしていることは知っている。
貴族派が勝利し次第、ゆくゆくは標的をトリステインやゲルマニアに向けるであろうこともな。
その改革後のアルビオンに対抗するためには、トリステインとゲルマニアが同盟を組んだ方がやりやすいのではない
か?」
その同盟が結ばれない、ともなればゲルマニアにとっても痛手になりかねないのに、ゲルマニア出身のキュルケが涼しい
顔をしているのが疑問だったのである。
「……あなた、ゲルマニアの国力を舐めてるでしょう? 一国だけでも、改革が終わったばっかりで基盤がしっかりして
ない国になんか負けるはずない―――とは言い切れないけど、少なくとも後(オク)れを取ることはないわよ」
「ならば、なぜトリステインと同盟を?」
「ゲルマニアには国土も軍事力も人材もあるんだけど、『歴史』がないのよ。だから、無駄に歴史の長いトリステインを
取り込もうってわけ」
あたしに言わせれば『歴史』なんてどうでもいいんだけど、とキュルケが付け加える。
(……国が抱えるコンプレックス、か)
トリステインとしては、アルビオンとの戦いに備えて国土と軍事力と人材が欲しいわけだから、互いの利害が一致して
いることになる。
だが、仮に同盟を結んだとしても、国民の意見のまとめと調整、主導権の行方(ユクエ)、資金や資材や兵糧や軍備の
配分、下手をすると併合にもなりかねないので、そのための処理―――などなど、問題は山積みだ。
(政治という物はややこしいな)
どう考えても畑違いの分野なので、自分はおそらく一生関わることがないだろうが。
「ええい、こうしてはおれん!」
フン、と荒く鼻息を出すと、ギーシュは勢い勇んでルイズの部屋の中に入った。
「お待ちを、姫殿下!!」
「えっ!?」
「ギ、ギーシュ!? アンタ、今の話を立ち聞きしてたの!?」
仰天するルイズと、黒いマントの女性。
―――ここまで接近して見るのは初めてだが、おそらくはあれがアンリエッタ王女なのだろう。
なお、ルイズとアンリエッタの注目はギーシュに集中していて、ユーゼスとキュルケにまで意識が回っていないよう
だった。
「……面白そうだから、私たちはドアの外から成りゆきを聞いてましょ」
「そうだな。ゲルマニア出身のお前が参加すると、ややこしくなりそうだ」
部屋の中からドアの外を見ると、かなり視界が限られる。
つまり身を隠すだけなら、簡単なのである。
「こっ、このっ! 姫さまの……いえ、女の子の部屋を覗くなんて!」
「あだっ! 叩かないでくれたまえ、ルイズ!」
「……どうしますか、姫さま? 極秘事項を聞かれてしまったわけですが……」
「そうね……、今の話を聞かれたのは、まずいわね……」
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」
「グラモン? あのグラモン元帥の?」
「息子でございます、姫殿下」
「あなたも、わたくしの力になってくれると言うの?」
「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
「ありがとう。あなたのお父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしま
すわ。この不幸な姫をお救いください、ギーシュさん」
それを聞いて『姫殿下が僕の名前を呼んでくださった!』と叫びながら喜ぶギーシュ。
……声だけしか聞こえないが、大体の状況は理解が出来た。
おそらく、ルイズの使い魔である自分も、その『任務』とやらに同行するのだろう。
だが……。
(……『不幸な姫』、か)
自分で自分のことをそう呼ぶとは、あのアンリエッタ姫にはどうも自己陶酔の傾向があるようだ。
あの年齢の姫君となると、ユーゼスとしては真っ先にリリーナ・ピースクラフトが頭に浮かぶが、彼女とはかなりの違い
が見て取れる。
(……私が口を出すことではないな)
何にせよ、明日からはアルビオンに行くことになる。
エレオノールから『話があるから、至急アカデミーに来なさい』という文面の手紙が来ていたのだが、先送りするしか
ないようだ。
『何についての話』なのかは、大まかな想像がつくが―――国にとっての一大事となれば、こちらを優先するしかあるま
い。
ユーゼスはやれやれ、と呟くと研究室に戻る。
(取りあえず、剣と鞭は持って行くか)
荒事にならなければ良いのだが……と思うのだが、戦争中の国に忍び込むのだから、その可能性は低そうだった。
「……面白そうじゃない?」
キュルケがニヤリと笑ったが、取りあえず無視しておくこととする。
支援
明けて、翌日の早朝。
馬を前にして、ユーゼスは悩んでいた。
「……確認するが、中継点のラ・ロシェールまでかかる時間は……」
「早馬で2日、途中で馬を乗り継ぎして、ノンストップでどんなに飛ばしても14〜15時間ほどかかるだろうね」
「……………」
ギーシュの話を聞いて、沈黙するユーゼス。
先のトリスタニアまでかかった時間から考えると、自分が馬でラ・ロシェールに向かった場合、最短でも24時間以上かか
る計算になってしまう。
ハッキリ言ってユーゼスにそんな体力は、無い。
どうすれば、と長い時間をかけて考え込んでいると、いつの間にか巨大なモグラが現れてルイズにジャレ付いているのが
見えた。
「おや、その指輪が気に入ったのかい、ヴェルダンデ? 君は宝石などのキラキラ光るものが大好きだからね」
「……モグラが光を好む?」
ギーシュのセリフを聞いて、ユーゼスの顔に疑問符が浮かぶ。
通常、モグラの目は退化していて視力がほとんどなく、光などは感じられないはずなのだが……。
(この世界のモグラは違うのか)
異世界、ということで納得する。世界が違えば、生物の能力も違って当然だ。
「ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を、僕のために見つけてきてくれるんだ。土系統のメイジの僕にとって、この上もない
素敵な協力者さ」
「ほう、それは確かに優秀だな」
「そうだろう? ハッハッハ、もっと僕やヴェルダンデに対して、惜しみない賞賛の嵐を浴びせても良いのだよ?」
フフン、と自慢げなギーシュ。
すぐ調子に乗る男だな、などとユーゼスが思っていると、
ヒュゴッ!!
「フゴッ!」
「ああっ、ヴェルダンデ!!」
突然、風のカタマリが飛んできて、ルイズに抱きついていたヴェルダンデを吹き飛ばす。
「誰だっ!? 僕の、僕の使い魔に……!!」
「……すまない。婚約者がモグラに襲われているのを、見て見ぬ振りは出来なくてね」
ギーシュの怒りの声に答えるように、朝もやの中から羽帽子をかぶった長身の男が現れた。
(……貴族か)
マントを羽織っているし、何よりさっきの風は魔法だろう。
「姫殿下より、君たちに同行することを命じられた。君たちだけでは、やはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務で
あるゆえ、一部隊をつけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名された……というわけだ」
帽子を取り、長身の貴族は丁寧に礼をする。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ」
ワルド子爵の自己紹介を聞き、文句を言おうとしたギーシュは沈黙した。相手が魔法衛士隊の隊長では、さすがに文句を
言うわけにもいかない。
「ワルド様……!」
倒れていたルイズが起き上がり、驚いた様子でワルド子爵に語りかけた。
「久し振りだな! ルイズ! 僕のルイズ!!」
「お久し振りでございます……」
顔を赤らめながら、ワルドに抱きかかえられるルイズ。
「そう言えば、婚約者と言っていたが……」
「つまり、あのワルド子爵はルイズの婚約者か。……うーむ、さすがはヴァリエール家、将来有望そうな男に目を付けて
いるものだなぁ」
ギーシュが使い魔を攻撃された怒りを押し止めつつ、それでも感心した様子で呟く。
一方のユーゼスは『名門貴族らしいから、婚約者がいても不思議ではないな』などと、あまり興味がなさそうであった。
そうやってルイズとワルドを見ていると、そのワルドがこちらに歩み寄ってくる。
「君がルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな」
(……人間が使い魔であるというのに、あまり驚いた様子がないな)
コルベールにしろ、キュルケにしろ、エレオノールにしろ、必ず何らかの疑問なり驚きなりのリアクションを起こしたの
だが、この男にはそれがない。
(……まあ、婚約者の情報ならば、常に収集しているのだろうが)
考えても仕方がないので、ユーゼスも挨拶をする。
「僕の婚約者がお世話になっているよ」
「……御主人様の婚約者とあらば、我が主人も同然。何か御用がありましたら、何なりとお命じください」
「は!?」
「ええ!!?」
うやうやしく頭を下げるユーゼスを見て、ルイズとギーシュが仰天する。
その彼らの様子を見たワルドが首を傾げるが、取りあえずユーゼスに返答した。
「うむ、その時はよろしく頼もう。君はなかなか博識と聞いているから、その知識を発揮される所を見たくもあるからね」
「は……」
頷いてルイズの元へと戻るワルドと、控えめにギーシュの元へと下がるユーゼス。
ギーシュは怪訝な顔でユーゼスに問いかける。
「ど、どういうことだね、ユーゼス!?」
「……『取りあえず』恭順しておくべきだと判断した。人間的にも実力的にも、まだ掴めない部分が多いからな」
「掴めない部分って……」
それに、敬語の練習を試す良い機会でもある。
「外面で大人しく従っていても、内面では何を考えているのか分からない―――ということもあると覚えておくのだな、
ミスタ・グラモン」
「……そういうものかぁ」
色々あるのだなぁ、とこれもまた取りあえず納得するギーシュ。
だがユーゼスは、このワルドという男の言動をじっと分析していた。
(……私に関しての情報も持っている……。この男……)
婚約者が心配で、情報を集めていた。そう言われてしまえば、それまでである。
……少なくとも優秀ではあるようだ、とユーゼスは評価を下した。
ワルドはそわそわした様子のルイズを見て微笑むと、口笛を吹く。
すると、ワルドがそうだったように朝もやの中からグリフォンが現れ、2人の前に着地した。
そしてグリフォンに颯爽とまたがり、ルイズに手を差し伸べる。
「おいで、ルイズ」
「……は、はい……」
しばらくモジモジしていたが、やがておずおずとワルドの手をとり、グリフォンにまたがるルイズ。
「では諸君! 出撃だ!!」
「あっ、ちょっと……」
「どうしたんだい、ルイズ?」
早速出発しよう、と意気込むワルドだったが、ルイズに制止されてしまった。
「あの、私の使い魔は、乗馬が凄く下手で……」
「そうなのかい?」
ワルドに問われて、ユーゼスは正直に告げた。
「はい。ですが、私には構わず先に進んでいただいて結構です。一刻を争う任務なのでしょう?」
「……ふむ、君はなかなか冷静だな。普通なら『追いついて見せます!』などと息巻くものなのだが」
「虚勢を張っても意味がないでしょう」
「確かに。……では、置いて行っても構わないのだね?」
「その方が効率が良いのであれば、そうするべきかと」
「ちょ、ちょっと、ユーゼス!?」
自分の記憶にない態度を取り続ける使い魔に対して、ルイズが文句を言おうとするが、構わずにワルドはグリフォンを
飛び立たせる。
そして、ユーゼスとギーシュを置き去りにしたまま、ルイズとワルドはラ・ロシェールに向かったのだった。
まさか途中でサボる気かw支援
「行ってしまったな」
「……『行ってしまったな』じゃあないっ!! 君は何を考えているんだね!!? 置いていかれてしまっては、手柄を
立てることが出来ないじゃないか!!」
激昂するギーシュを見つめながら、ユーゼスは相変わらず考え込んでいた。
「……私の乗馬技術が低いのは本当だぞ」
「しかしだね、追いついた時には既に任務が完了していました……などとなっては、間抜けもいいところじゃないか!!」
「別に手柄がなくても、死ぬわけではあるまい?」
「手柄や名誉というのは、貴族にとってはある意味で命よりも重いものなんだよぉ!!」
ギーシュが悲痛に叫ぶ。そんなに手柄が上げたかったのだろうか。
「む?」
ギーシュの文句を聞き流していると、青い風竜が飛んでいくのが見えた。
「あれは……ミス・タバサのシルフィードか?」
よく観察してみると、その背にはキュルケも乗っている。
そう言えば、昨日の話は彼女にも聞かれていたことを思い出す。
「……御主人様たちの後を追うつもりだな」
「だから、何で君はそんなに冷静なんだね!? 手柄を取られるかもしれないんだぞ! しかも彼女たちはゲルマニアと
ガリアの留学生だ!! トリステインの危機を外国人が救ったとなれば、笑い話にもならない!!」
「少し落ち着け、ミスタ・グラモン」
ユーゼスは黙考する。
……さすがに何もしない、というわけには行くまい。
かと言って、通常の移動手段では彼女たちに追いつくのは無理だ。
と、なると……。
「……やむを得んな」
逡巡の末、一つの決断を下す。
「ミスタ・グラモン」
「何だね!?」
「……お前を貴族と見込んで、頼みがある」
「ん? ど、どうしたんだい、改まって」
「これから私が使う『移動手段』を、絶対に口外しないで貰いたい」
「え?」
唐突にそんなことを言われたので、ギーシュは困惑するしかない。
「……口外したら、あらゆる手段を使ってでもお前の存在を『抹消』する」
「お、穏やかじゃないね……」
この男がそこまで言うのだから、きっと凄いことなのだろうな……などと思ったが、一体何をするつもりなのだろうか?
「お前の使い魔も連れて行くぞ」
「え、いいのかい?」
「定員以内だからな。……それに同じ使い魔として、主人に置いて行かれるのを見るのは忍びない」
「おお……」
「フゴ……」
ヴェルダンデを指差すユーゼスに、ギーシュとヴェルダンデは感激したようだった。
(そう言えば、ミス・ツェルプストーは使い魔を連れて行ったのだろうか)
ふと学院寮の方―――キュルケの部屋のあたりを見ると、一匹のサラマンダーがこちらにジッと視線を注いでいた。
「……あれも連れて行くか?」
「うーん、しかしキュルケの使い魔を勝手に連れて行くのはな……。よし、ちょっと待っていてくれたまえ」
言うと、ギーシュはヴェルダンデを抱えたまま『レビテーション』でキュルケの部屋の前まで移動し、何やらフレイムと
コミュニケーションを取り始めた。
少しすると、ギーシュはまた戻って来る。
「……幻獣と話が出来たのか?」
「まさか。ヴェルダンデに通訳を頼んだのさ。
……結論から言うと、彼は行かないらしい。どうやらキュルケに留守番を頼まれたようだね」
「そうか」
まあ、無理強いは出来まい。
ジュワッ!
支援
「では、少し移動するぞ。どこに目があるとも限らんからな」
そして、一向は少し歩いて森の中に入った。
「……誰もいないな?」
「随分と慎重だね。……と言うか、本当にその『移動手段』とやらはあるんだろうね?」
「少なくとも、私が馬で移動するよりは早く到着するはずだ」
言って、脳内のクロスゲート・パラダイム・システムを起動させる。
次の瞬間、ユーゼスとギーシュ、そしてヴェルダンデは虹色をした立方体のエネルギーフィールドに包まれた。
「う、うわ、わわわわわ!!? なん、ななななな、何だね、これは!!?」
「フゴーーー!?」
「暴れるな。……ラ・ロシェールはこちらの方向で合っているな?」
「あ、ああ」
方向を確認し、ユーゼスは座標を設定する。
「距離は―――馬の最高時速は瞬間的には100キロを超えるが、平均となると……取りあえず、800リーグほど移動するぞ」
「は、はっぴゃくリーグ!?」
驚くギーシュを尻目に、空間転移を開始する。
―――その後も微調整を繰り返し、結果としてユーゼスとギーシュとヴェルダンデは30分ほどでラ・ロシェールに到着
した。
「……と言うか、始めからこれでアルビオンまで行けば良いのでは?」
「なるべくなら、これは秘密にしておきたいのでな。しかし分かっているだろうな、ミスタ・グラモン?」
「任せてくれ、僕はこう見えても口が堅い男だ。……まだ死にたくもないし」
「フゴフゴ」
一方、学院長室ではアンリエッタが出発する一行を見送っていた。
「彼女たちに加護をお与えください、始祖ブリミルよ……」
祈るアンリエッタの横では、オールド・オスマンが暢気(ノンキ)に鼻毛を抜いている。
「……見送らないのですか?」
「ほほ、見ての通り、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますでな」
「……………」
なぜこの老人は、ここまで余裕の態度なのだろう……とアンリエッタは疑問に思う。
「既に杖は振られたのですぞ。我々に出来ることは、ただ待つだけ。違いますかな?」
「そうですが……」
「まあそこまで心配せずとも、彼ならば道中どんな困難があろうと、やってくれるかも知れませんでな」
「『彼』? あのグラモン元帥のご子息が? それともワルド子爵が?」
オスマンは首を横に振って、アンリエッタの言葉を否定する。
「……まさか、あのルイズの使い魔とかいう男が? 彼はただの平民という話ではありませんか!」
「ただの平民……そうですな」
自分も最初は、あの男―――古い友人のことをそう思っていた。
「時に、姫は始祖ブリミルの……いえ、『快傑ズバット』の話はご存知ですかな?」
「はあ、少しは。……しかし、あれは平民が作ったおとぎ話なのでしょう? 実際の戦果は、ほとんどあなたと当時のマン
ティコア隊の隊長である『烈風』カリン殿が成し遂げた……と聞きましたが」
「まあ、当時の王室の面目を保つために、そういうことになってはおりますな」
「……もしや、彼はその血を引いているとでも?」
さすがに30年も前の話である。あの若い外見からすると、本人であるとも思えない。
「もしかしたら、再来となるやも知れない……私はそう思っております。同じ異世界から来た、彼ならば」
ユーゼスが聞いたら、確実に『無茶を言うな』と言うだろうセリフである。
「異世界?」
「そうですじゃ。ハルケギニアではない、どこか。『ここ』とは違う世界。そこからやって来た彼ならば、かつてあらゆる
危機を涼しげな顔で片づけた我が友のようにやってくれると、この老いぼれは信じておりますでな。
余裕の態度も、そのせいなのですじゃ」
「『ここ』とは違う、異世界……」
いまいちピンと来ていないようだったが、アンリエッタは微笑んでオスマンに同意する。
「ならば祈りましょう。異世界から吹く風に」
そいつは彼の敵ですよ〜
支援
「……ところで姫、もうしばらくこの部屋にいてはくれませんかな?」
「はい?」
さてそろそろ自分が滞在している部屋に戻ろうか、と思ったら、いきなりそんなことを頼まれてしまった。
「いや、秘書のミス・ロングビルが『勤め先が決まったことを家族に報告する』とか言って、休暇を申請しましてな。女性
の華やかさが足りぬと思っていたところでして」
「は、はあ」
「どうか、この寂しくも老い先短い老人に、若くみずみずしい女性の、こう、何と申しますかオーラのようなものを浴びせ
ていただければ……」
「……こ、ここは魔法学院なのですから、若い女性はたくさんいらっしゃるのでは?」
「なにをおっしゃいますか! 姫とその辺にいる貴族とでは、身体から醸(カモ)し出される高貴さが違うのです!」
「……そ、そうですか……」
どうやってこの状況を乗り切ったものか、と悩むアンリエッタであった。
ラ・ロシェールに到着したユーゼスとギーシュは、中の中の上程度の宿に泊まることにした。
本当は最上級の『女神の杵(キネ)』に泊まりたかったのだが、そんな金は持ち合わせていない。
……実際には、ユーゼスはキュルケとギーシュからの依頼料である1300エキューを持っていたのだが、常日頃から床で
寝起きしている彼にとって、たかが宿程度にそこまで金額をかける気は起きなかったのである。
そしてそこにデルフリンガーを置き、もう一本の剣と鞭を持って古書店へと向かった。ギーシュは観光である。
ちなみに、なぜデルフリンガーを持ってきたのかと言うと、出発の準備をしている最中に誤って鞘から出してしまい、
「つ、連れてっておくれよぅ……剣として扱っておくれよぅ……かまっておくれよぅ……もう火で炙(アブ)られたり、
水に漬けられたり、氷で冷やされたり、金槌で叩かれたり、『ふむふむ』とか言われながら撫で回されるのは嫌なんだ
よぅ……」
と、呪詛のごとき懇願を受けたため、夜な夜な怨み言を呟かれても困るので、やむなく持参したのだ。
ともあれ、使うつもりは全くないが。
「ふむ」
それはともかく、本の物色である。
魔法学院の図書館も良いが、このような市井(シセイ)の本屋も悪くはない。
それにラ・ロシェールは港町なので、トリステインにはない本も期待できた。
ユーゼスは目ぼしい物を見つけると、その重さにフラつきながらも、それを店主の所まで持っていく。
「この5冊を貰おう。これをトリステイン魔法学院の、ユーゼス・ゴッツォまで届けてくれ」
「へい、それで運賃の方は……」
「無論、出す」
金は使うときは使うべきなのである。
よかったなデルフ、たくさん「使って」もらえてるじゃないかw
支援
しかし主より先に目的地に着いているってのも珍しいw
そして勘定を済ませたユーゼスは別の古書店に行こうと出口に向かい、
「……………」
「……………」
一人の男と、出口で鉢合わせした。
―――外見はどちらかと言うと長身。紫がかった髪をしており、その眼光には常に余裕の色が見て取れる。服装は、自分
と同じような白衣だった。
……どこかで見た覚えがあるが、明確な記憶が無い。
(これは―――ハルケギニアに召喚される直前に受け取った、『別のユーゼス・ゴッツォ』の記憶か?)
男は、興味深げに自分を見る。
「ほう……。アインストの物とは違う転移反応を検知して来てみれば、面白い人間に会えましたね……」
「……アインストと、転移反応だと?」
聞き捨てならない単語が、男の口から出て来た。そして、男は更に聞き捨てならない言葉を喋りだす。
「あなたはイングラム・プリスケン……いえ、クォヴレー・ゴードンですか?」
「何!?」
後者の名前には心当たりすら無いが、前者の名前には心当たりがあるどころではない。
ユーゼスは、反射的に男から飛び退いた。
「これは警戒されたものですね。少なくとも、今はあなたと事を構えるつもりはありませんよ。……申し訳ありませんが、
お名前を教えてはいただけませんか?」
「……ユーゼス・ゴッツォだ」
「…………なんと。まさかこのような形で再び……。しかも私の存在を知らない、となると……」
男の目が見開かれる。……どうやら驚いたようだが、つまりそれは自分の存在が予想外だった、ということでもある。
「お前は何者だ?」
「……これは失礼を。相手に名を問うのであれば、先に自分から名乗るべきでしたね」
そうして、男は丁寧に自己紹介を行った。
「私の名はシュウ。シュウ・シラカワと言います。……以後、お見知りおきを」
グリリバが追ってくるぞw
支援
以上です。
さて、スパヒロユーゼスとシュウ・シラカワで、どのような化学反応が起こるのでしょうか。
……正直な話、私もまだ分かりませんww
いや、私の場合は最初にプロットやら構想やらを作ってそれに沿って書くんですが、書いてる途中でフッとアイディアが
浮かんで、それを執筆中の話に盛り込むことがよくあるんでww
……それにしても、ルイズが空気だ……。
それでは、支援ありがとうございました。
正真正銘、利用してはいけない人がキター!
乙。
オスマン自重しろ。w
いやあ、昨日からすごい投下ラッシュですね。
では私もウルトラ5番目の使い魔、その第26話を投下したく存じますので、今のうちに予約を入れておきます。
なお、先週投下した後で思いついたことがありましたので、前回の予告とは内容が違ってしまいましたので、
先におわび申し上げます。
今回は久々に超獣が登場しますよ。
投下開始時刻は19:00です。
うひゃあ、「ウルトラ族を倒すには、ウルトラ族の力が必要だ」とかいう文章を投下した直後に、ウルトラの人が来ていただけるとは!
支援いたします!!
シュウはもともとファンタジー世界の住人だから逆に違和感なさそうだ。
そして次はエース・ザ・リッパーに期待!
シュウはもともとファンタジー世界の住人だから逆に違和感なさそうだ。
そして次はエース・ザ・リッパーに期待!
銀河連邦の赤い切り裂き魔支援
>>27 30分って遠くないっすか?
……30分番組だから!?
第26話
悪夢を砕く友情の絆
夢幻超獣 ドリームギラス 登場!
物語の時系列は、ここで才人達がラグドリアン湖へと向けて出立した、その一週間前に遡る。
二つの衛星を従えた、大宇宙に青く輝く美しい星をめがけて、宇宙のかなたから2つの怪しい影と、
それらを追って、1つの紅く輝く光が近づいてきていた。
2つの影はその後ろから追撃してくる光から逃げようと、すさまじいスピードでこの星系に突入してきた。
しかしいくら逃げようと、その光はぴったりとくっついてまったく振り切ることはできない、それでも二つの影は
進路上の邪魔なアステロイドやスペースデブリを砕きながら猛烈な勢いで飛び回り、まるで何かに
引き寄せられるように、一直線にその美しく輝く星へと迫り、この星、地球を宇宙に輝くエメラルドとすれば、
いわばサファイアのように生命にあふれたこの星を見るやいなや、その根源に刷り込まれた本性に従い、
凶悪なうなり声をあげて、その惑星の特に強烈なエネルギーを発生させている北半球の半島状の地方に
進路を向けた。
だが、彼らは本能に従うあまり、自らが追われる立場にあることを忘れていた。
星に降ろしてなるものかと、急追してきた光から、一方の影に向かって光弾が放たれ、油断していた
その一方は直撃を喰らって半島のほうへと墜落していったが、先行してかわしたもう一方は、自分を呼ぶ
何かが存在するであろう半島の北方に浮かぶ浮遊大陸に進路を向け、追ってきた光もそのあとを追っていった。
それは誰も知らない宇宙でのできごとであった。
それから6日後。
まだ才人達が平穏な日々を満喫しているころ、学院にまだ昼間だというのに、一羽のフクロウが飛んできた。
それは、学院の上空にやってくると、何かを探しているかのようにしばらく旋回を続けていたが、やがて
ある一室の窓に向かって真っ直ぐに舞い降りていった。
その数時間後、学院から二人の生徒が姿を消したころから、この事件はもう一つの顔を見せ始める。
やがて太陽が山影に姿を隠し始めるころ、トリステイン国境をガリアに向かう飛竜の上に二人の姿はあった。
「ねえタバサ、もうすぐあなたの実家よね。あなたの実家がガリアにあるって、はじめて知ったわ」
「……」
それはキュルケとタバサの二人だった。乗っている飛竜はもちろんタバサの使い魔のシルフィードである。
昼間、タバサの部屋に遊びに行ったキュルケは、彼女が実家に帰るために旅支度をしているのを見て、
強引に彼女にひっついてきたのだった。
「ね、なんでまたトリステインに留学してきたの?」
しかしタバサは答えなかった。ただじっとひざの上の本に視線を落として見つめ続けている。そしてキュルケは
そんなタバサの様子を見て気づいてしまった。彼女が魔法学院を出て以来、開いていた本のページは最初から
一枚もめくられてはいない。
キュルケは、尋ねるのをやめるとシルフィードの上に腰掛けなおして、夕焼けに染まりつつある景色に目をやった。
支援
どうもいつもと違う雰囲気を感じてついてきたが、何かただならぬことがこの先の彼女の実家で待っているのかも
しれない。ならば無理に聞き出さなくても、時が来ればおのずとわかるだろう。
性格から趣味趣向全てがコインの表と裏のように違う二人が友達になれたのは、磁石のSとNのように不思議な
相性のよさがあるからだけではない。聞かれたくないことを無理に聞いたりしないから、安心しあえるのだ。
「大丈夫よ。なにが起こったって、このあたしがついてるんだから」
キュルケの、楽天的だが母親のように優しい声が、広い空に短くこだましていた。
そして、夏の長い太陽も山影に姿を消し、二つの月と無限の星空が天空に瞬くころ、シルフィードはタバサの
実家に到着した。
そこは、古い立派なつくりの大名邸、さらに、門に刻まれたガリア王家の紋章を見てキュルケは息を呑んだ。
しかし、よく見るとその紋章は大きく傷つけられ、その称号を奪われていることが読み取れた。
屋敷に着くと、たった一人のペルスランと名乗った執事に出迎えられ、二人はホールにまで案内された。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「……」
タバサは答えずに、キュルケに「ここで待ってて」と言い残すと屋敷の奥へと去っていった。
キュルケは、タバサが去っていった後の扉をじっと見つめていたが、ペルスランが紅茶と茶菓子を運んでくると、
思い切って老執事に尋ねてみた。
「この屋敷、見受けたところ王弟家のものと思いますが、どうして不名誉印などを飾っておかれるのかしら?」
「……あなた様は、シャルロットお嬢様のお友達でいらっしゃいますね。よろしければ、お名前をうかがわせて
いただいてよろしいでしょうか」
「ゲルマニアのフォン・ツェルプストー。ところで、シャルロットと言われましたけど、それがあの子の本当の
名前なのね。ああ、わからないことだらけだわ、タバサったら、何も話してはくれないから」
キュルケのその言葉を聞いて、老執事は悲しげにうつむくと、やがて静かに語りだした。
「そうですか、お嬢様はタバサと名乗っておいでで……わかりました。お嬢様がこの屋敷にお友達を連れて
こられるなど、長年絶えてなかったこと、お嬢様が心許すお方なら話してかまいますまい。ただし、愉快な話
ではありませんぞ」
「ええ、わたしも少しは察しがついてるわ。お願いしますわ」
「……では、お話しましょう。オルレアン家の神にも見放された歴史を……この屋敷は牢獄なのです」
そのころ、タバサは屋敷の一番奥の部屋を訪れていた。
この部屋の主がノックに応えなくなって、すでに5年が過ぎている。そのころタバサはわずか10歳だった。
扉を開け、中に入ったタバサを、殺風景な部屋と、この5年間、何十、何百回と繰り返してきた出来事が
彼女を襲うとき、その胸の奥に渦巻く冷たい雪風と、煮えたぎるような憎しみを知るものは、これまで
あの老執事一人しかいなかった。
「継承争いの犠牲者?」
ペルスランから、タバサの家の秘密を聞かされ、キュルケは驚きを隠せずにいた。
>>32 作品投下後の感想タイムとかもあるからじゃないの。
支援でジュワッチ
ドリームギラスとはまた特徴的なものを支援
タバサが本当はガリアの王族であり、本当の名前はシャルロットということ。彼女の父上のオルレアン公は
現ガリア王の弟で、人格・能力ともに次期国王として確実と目されていたが、それゆえに悪意の対象となり謀殺され、
残された力のない彼女の母は娘の身の保障と引き換えに毒を仰いで心を病み、シャルロットもタバサと偽名を
名乗り、言われるがままに北花壇騎士として国の汚れ仕事をさせられていると知った。
考えてみれば、タバサとは随分ふざけた名前だ。遠方から来たという才人は気にしなかったようだが、
ハルケギニアでは犬猫につけるような名前、貴族で自分から名乗る者など普通はいない。
「そうだったのね……」
想像をはるかに超える壮絶なタバサの過去に、キュルケはそれ以上の言葉を失った。
タバサとは、彼女の母親がシャルロットに買い与えた人形の名だという、それを自らの偽名に使い、
憎い敵に手紙一枚で命がけでこき使われる彼女の心境は想像に余りある。
ここに来る前に、ページをめくらぬ本を見つめ続けていたときも……
重苦しい沈黙がしばらくホールを支配した。
だがやがて扉が開き、タバサが戻ってくると、ペルスランは一礼して王家からの、差出人はあのイザベラからの
手紙を彼女に手渡した。
「明日とりかかる」
タバサは一読すると、読み始める前と変わらぬ態度で短く言った。
「了解いたしました。使者にはそう取り次ぎます。ですが今回の任務の場所ですが、1週間ほど前に星が落ちた
とかで、最近は近辺の住民にも不吉な噂が流れたりしております。くれぐれもお気をつけください。ご武運が
あらんことをお祈りいたしております」
ペルスランはそう言い残すと、一礼して静かにホールを立ち去っていった。
タバサはキュルケに向き直ると、口を開こうとしたが、それより一瞬早くキュルケの言葉が彼女の口を塞いだ。
「これ以上は来るなって、そう言いたいんでしょ? でもね、悪いけどさっさの人に全部聞いちゃったの。
だから、わたしも着いていく。いやとは言わせないわよ」
「危険!」
少しだけ動揺を見せて制止しようとしたタバサだったが、肩を優しく抱いてキュルケは言った。
「だったらなおさらよ。わたしを、あなたを一人で行かせて黙ってられるような、そんな女だと思ってるわけ」
タバサは何も答えない。ただじっと下を向いてうつむいていた。
その夜、二人は同じベッドでいっしょに寝た。
タバサは気を張り詰めて疲れたのか、すぐに寝息を立て始めたが、キュルケはそんな彼女のあまりにも
あどけなく、もろく儚げな寝顔を見ていると、中々さっき聞かされた話が頭をよぎって眠れなかった。
「安請け合いしちゃったけど、こりゃ大事ね」
ぽつりと、独り言をキュルケはつぶやいた。ガリア王家がタバサを体よく始末しようとして送りつけてくる
依頼、もしかしたら死ぬかもしれなかったが、それでキュルケの決意が変わるわけはなかった。
そんなことより、彼女にはこの小さな友達のほうがなにより大事だった。仮にこの任務を無事に終える
ことができたとしても、それで終わることは無く、王家は次々に困難な依頼を送りつけてくるだろう。
それから、果たして自分はタバサを守ることができるだろうか……
「母さま……」
タバサが寝言をつぶやいた。キュルケはぴくりと反応し、彼女の顔を覗き込んだ。
「母さま、それを食べちゃだめ。母さま」
寝言で、何度も何度もタバサは母を呼んでいた。額にはじっとりと汗がにじみ、息はぜん息の患者のように荒れている。
"父さま、母さま……"
夢の中で、タバサは10歳のころに戻っていた。
優しかった父、美しかった母、輝くような幼い日の思い出が走馬灯のように通り過ぎていく。
しかし、ある日突然父の訃報が届いたときから、光は漆黒に塗りつぶされていく。
"父さま、なぜ父さまが死なねばならなかったの? 父さまがどんな悪いことをしたっていうの?"
父の死から程無くして呼ばれた宮中で、自分と母を待っていたのは父を追い落とし、玉座を奪った父の兄と
名乗る男の冷たい視線だった。
"この男、この男が父を殺した!"
タバサの心に、その男の顔が浮かぶたびに、抑えきれぬ憎悪がその胸を焼く。
その当時、幼かったタバサにはそれはわからなかったが、彼女の母は今のタバサと同じ気持ちだったろう。
「この子は勘当いたしました。わたくしと夫で、満足してくださいまし」
毒の料理を前にして母が言い放った言葉に、その男は口元を歪めてうなづいた。
"母さま、それを食べちゃだめ。母さま"
夢の中で、タバサは何度も母に訴えたが、その声は過去に届くことはなかった。
そして、その日から彼女は母を失った。
それからの人生は、茨の道を素足で歩くのと等しいものであった。
屋敷に残されたのは心を失った母と、たった一人だけ残留を許された老執事のみ。
与えられたのは、シュバリエの称号とガリア北花壇騎士という年端もいかない少女にはふさわしくない身分。
「仇を討とうなどとは考えてはなりませんよ」
母は最期にそう言い残した。
しかし、一度にすべてを失った幼子が自己を保つには、憎しみにすがるより他に術はなかった。
"あなたをこのようにした者どもの首を、必ずここに並べに戻ってきます"
病床の母の前で、幾百と繰り返してきたその言葉。
あるときは高山に巣食う巨大竜退治。
またあるときはリュティスの闇世界に潜む悪徳賭博組織の壊滅。
任務の難易度は回を越すごとに増していった。
"寒い、熱い、痛い、苦しい"
頼れるものも、すがれるものもなく、ずっと一人だった。
そんな月日が始まって、いつの間にか4年が経ち、子供から少女へと成長した彼女はトリステイン魔法学院への
留学を命じられる。
それが、4年経ってもなお、いかな困難な任務にも生還し、ますます実力に磨きをかけてきた彼女を
体よく遠くて、なおかつ目の届く場所に置いておこうという魂胆によるものだということは明らかだった。
学院に入学してからも、最初からタバサは他人と関わる気はまったくなかった。
いつ死ぬかわからない世界で生きている自分には、もはや友など必要ないし、関係ない人間を危険に巻き込む
ことはできない。そうして、タバサは他人との一切の交流を絶って、無言のまま学院を生きてきた……はずだった。
あるとき、タバサはプライドだけは高くて、ほかの一切がともなわない貴族の悪い見本のような生徒達に
因縁をつけられ、同じくそれらの生徒達とトラブルを起こしていたある生徒と、つまらぬたくらみによる謀の
ために決闘をすることになった。
結果は、引き分け。
そして、誤解が解けたあと、その相手といっしょに首謀者の生徒達を散々痛めつけてつるし上げたときは、
何年ぶりかの愉快さを感じたものだ。
「本くらいなによ、あたしが本の代わりに友達になってあげるわよ」
ラスボスさん、乙でした〜
しかし、一番最初に接触するのがシュウとは
間違っても利用しようとしてはいけない人間だよなぁ、彼
そのとき言われた言葉は、今でも強く心に残っている。
それが、タバサが沈黙のままに友情を認めた最初の相手、キュルケとの出会いであった。
それからの1年は、学院はタバサにとって悪い場所ではなくなった。
命がけの任務は相変わらずだったが、かたときの平穏に勝手にずかずかと入ってきて、飽きずに大きな声で
周りを騒がすかけがえのない存在がいるようになった。
そして、2年生に昇級してからは、また驚きの連続であった。
使い魔として学院の授業で呼び出した韻竜のシルフィードはキュルケに負けず劣らずよくしゃべり、さらに
時には命をかけて自分を助けてくれる二人目の友になった。
ゼロのルイズ……1年のころは気にも止めていなかったが、様々な事件を通じて共に行動するようになって、
その勇気と、誇り高さはまぶしいくらいだ。
本当にシャルロットは明るい子だな……幼いころ父によく言われていたことが、彼女を見ていたら思い出す。
さらに、その使い魔のサイト……人間が使い魔として召喚されるとはどういうことだと思いもしたが、
それほど気にしていなかったおかしな服装をした平民の少年。
しかし、普段はとぼけていながら、いざというときの勇気と、優しさは太陽のようだ。
いつの間にか、タバサの心には大勢の人が住むようになっていた。
だが、それでもタバサの心には決して拭い去ることのできない暗い闇が根付いていた。
今もまた、死ねとばかりの任務を送りつけてきた男の顔が浮かぶ。
"憎い"
そいつと結託し、寄生虫のように権力と富を欲しいままにしている連中の顔が浮かぶ。
"いつまでもそうしていられると思わないで"
これまで退治してきた怪物達、始末してきた悪党や王家の敵達の憎しみに満ちた声が蘇ってくる。
そのとき、タバサの心に憎んでもあまりあるあの男の声が響いた。
「お前は死ぬまで、おれの飼い犬さ」
カッと、タバサの心に怒りと憎悪がひらめいた。
モロボシダン支援
しかし、その声は夢の中で黒い手となってタバサの心の中のわずかな光を握りつぶそうとしてくる。
まるで、お前にはそんなものは必要ないさといわんばかりに。
父と母との思い出の光景が、任務の中で出会った人々とのわずかな心の交流の思い出が、次々と
塗りつぶされて消えていく。
"やめて! やめて!"
タバサは叫ぶが、体は凍り付いてしまったかのように動かない。
さらに、闇の手に、これまで倒してきた敵の姿が加わり、嬉々とした歪んだ笑みを浮かべて、タバサの
部屋、母からもらったドレスを引き裂き、仲のよかった使用人達を追い回して食らってゆく。
"やめてやめてやめて!!"
必死の叫びも、その者達に邪悪な喜びを与えるばかり。
そして夢のビジョンは現代、トリステイン魔法学院の風景に移り、闇は一つに凝縮していき、一個の
巨大な怪物の姿、夢魔となって具現化した。
それは、真っ赤な全身に崩れたタツノオトシゴのようないびつな頭を乗せた超獣!
タバサ自身の心の闇が生み出した悪夢の化身、夢幻超獣ドリームギラスが現れたのだ。
ドリームギラスはその巨大な体で魔法学院を破壊しはじめた。
強固な外壁も超獣の力にはかなわず、砂の城のようにもろく崩されていく。
"やめて! やめなさい!"
生徒や教師達が逃げ出していくが、ドリームギラスは口から強烈な水圧の水を吐き出して逃げ惑う
人々を打ち据え、地面に叩きつけていく。
調子に乗ったドリームギラスは、そのまま勢いに任せて、タバサの住んでいる寮、キュルケ達と
ともに学んだ教室、安住の場所の図書室を次々に破壊していく。
"やめて、壊さないで!"
学院が一撃崩されるごとにタバサの心は強く痛んだ。
そのとき、学院からシルフィードやキュルケ、ルイズやサイト、彼らが飛び出してきて勇敢に
ドリームギラスに挑んでいった。
"やめて! 逃げて!"
必死に彼らに叫ぶが、タバサの喉は石になってしまったかのように音を発しない。
剣が、魔法が巨大な敵に挑んでいく。だが、悪夢はあくまで残酷だった。
ドリームギラスが口から高圧水流を吐くと、彼らはまるで紙細工のようにもろくつぶされていった。
"あ……ああ……これ以上、わたしから何を奪おうというの……"
仲間も、友も失い、絶望の声がただ流れた。
しかし、ドリームギラスはタバサの心を嬉々として破壊し続けていく。
そして、奴はついにタバサのもっとも触れられたくないものを破壊しにかかってきた。
夢のビジョンは再び変わり、風景は見慣れた自分の屋敷になった。
ドリームギラスは門のところから、ゆっくりとこれ見よがしに庭の木々を踏み潰しながら屋敷のほうへと
進んでいく。
"まさか! それだけは、それだけはやめて!"
奴が何をしようとしているのか、それに気づいたタバサは血を吐くような絶叫をあげた。
あそこには、病床の逃げることすらかなわない母がいる。
"母さま! お願い逃げて! 逃げて、逃げて逃げて!"
のども裂けんばかりに叫ぶタバサの声は、まるでガラスケースに閉じ込められてしまったかのように、
誰にも届かない。
それに手も足も動かない。
魔法も使えない。
誰も助けに来てはくれない。
モウワタシニハナニモノコッテイナイ……
"母さま……あなたを失ったら、わたしは本当にからっぽになってしまう……"
タバサの手が、悪夢の空をむなしくきった。
かに思えたそのとき……
空を掴んだかに見えたその手を、誰かがしっかと握り締めた。
"!?"
一瞬、幻覚かと思ったが、それは確かにタバサの冷たく冷え切った手を握り、暖かさが伝わってくる。
そして、彼女の心に忘れることのできない、熱く、それでいて優しさのこもった声が響いてきた。
「大丈夫、あなたは決して冷たくなんてない。この微熱が、全部あっためて溶かしてあげる。それに、
あなたには強い味方が大勢いる。困ったときは、必ず誰かが助けに来てくれるから」
冷たい世界が、次第にぬくもりへと変わっていく。
闇に日差しが、光が差し込んでくる。
その光景に、悪夢の化身は驚き、慌てていく。
だがドリームギラスはタバサの心のもっとも弱い部分を切り崩すことで、一気に再びその心を闇に
閉ざそうと、タバサの母の眠る屋敷に向かってその腕を振り上げた。
"母さま、逃げて!"
タバサが叫ぶ。もう止められない、間に合わない。
希望はこのまま絶望に変わってしまうのか。
「大丈夫、お姫様がピンチのときは、ヒーローが必ず来てくれるから」
ドリームギラスの手が今まさに屋敷にかかろうとしたその瞬間。
突如、その眼前にまばゆい光が走り、ドリームギラスを吹き飛ばした!
あの光は!! タバサはその力強い光が何であるのか知っていた。
やがて光は集い、ひとつの姿を形作っていく。
そう、闇を照らせる唯一のものは光、その光の化身こそが、強く輝く銀色の巨人!!
今こそ輝け、ウルトラの光!!
心で叫べ、正義の使者のその名を!!
"ウルトラマンエース!!"
人の心を自ら生み出した闇が染めるなら、それを祓うのもまた人の生み出した心の光。
屋敷を守るように立ちはだかり、光の戦士が光臨の雄叫びをあげる!!
「ショワッチ!!」
今、タバサの心の光に答え、悪夢を砕くべく夢の世界にウルトラマンAが光臨した!!
「ショワッ!!」
エースはドリームギラスへと真正面から立ち向かっていく。
気合一閃!! 必殺チョップが腹を打ち、メガトンキックが巨体を揺さぶる。
「デヤァッ!!」
首根っこを掴んで力の限り投げ飛ばし、悪魔の巨体が宙を舞い、大地に激しく叩きつけられる。
一人で何度もやって意味があるのか分からんけど支援
支援
とりあえず支援
しかし、ドリームギラスは起き上がると、口から真っ赤な水をエースに吐きつけてきた。
"危ない!"
だが心配は無用、そんなちょこざいな手など効きはしない。
エースは体の前で両腕を回転させ、光の壁を出現させた!
『サークルバリア!!』
赤い水は全てバリアにはじかれてボタボタとこぼれていく。
水が尽きて悔しがるドリームギラス。
それで終わりか! ならばこっちの番だ!
エースは天空めがけて大ジャンプ、天の光を背に浴びて、流星のごとくドリームギラスめがけて急降下キック!
「トォーッ!!」
顔面直撃、ドリームギラスはひとたまりもなく吹っ飛ばされる。
"やった!"
思わず歓声をあげるタバサ、それに答えてエースは額のビームランプに両手を揃える。
『パンチレーザー!!』
青色破壊光線が超獣の額に命中、いびつに歪んだ顔面をさらに黒こげに染めていく。
けれど、こんなもので終わりはしない。
エースはドリームギラスに向けて猛然と突進していく。
"がんばれ! エース!"
いつの間にか、タバサは幼子のように声を張り上げてエースを応援していた。
そのとき、タバサの肩を誰かの手がぽんと叩いた。
「言ったでしょ、ピンチのときには必ず誰かが助けてくれるって。正義の味方はどんなところにだって来てくれるのよ」
振り返ると、そこにはいつものように元気いっぱいな笑顔を浮かべているキュルケがいた。
それだけではない。
「もー、お姉さまはシルフィがついてないとほんとダメなのね。だからぜーったい離れないのね。きゅい!」
翼を元気よく羽ばたかせたシルフィードが頬をすり寄せてくる。
「あんたにはいろいろ借りがあるんだから、簡単に死んでもらっちゃ困るのよ。べっべつに心配してるわけじゃ
ないんだからね!」
顔を膨れさせたルイズが。
「おいおい、何度も助けられてその言い草はないだろ。やれやれ、ところでさ、こないだ乗せてくれたシルフィードの
背中さ、すっげえ気持ちよかったから、また乗せてくれよな」
大剣を背負ってるくせに、間の抜けた顔をしたサイトの姿が。
見渡せば、ほかにも偉そうな態度でギムリやレイナールに指示しているギーシュ。
ロングビルに蹴りを入れられているオスマンを呆れ顔で見ているコルベール。
ほかにもシエスタやペルスラン、任務の先で知り合った人々、ミラクル星人やアイの姿もある。
いつの間にか、タバサの周りは大勢の人々で埋め尽くされていた。
短い間に、知らないうちに、いや、気づこうとしなかったのに、タバサの心には数え切れないほどの人が住み着いていた。
"キュルケ……あなたの言ったとおりね"
もう、何も怖くはない。
何人であろうと、この記憶を奪い去ることはできない。
さあ、消え去れ悪夢よ!!
夢の世界を包む光によって、もはや死に体のドリームギラスに、エースは一度大きく体を左にそらせ、
投げつけるようにとどめの一撃を放った!!
『メタリウム光線!!』
光の鉄槌が邪悪な超獣を叩きのめす。
ドリームギラスは断末魔の叫びを短く残すと、大爆発を起こして塵一つ残さず消し飛んだ!!
"やったあ!"
闇を、悪夢を粉砕し。光が、平和が訪れた。
「よーし、お姫様を胴上げよ!」
支援
支援
支援
代行いきます
キュルケの宣言に、全員が「おーっ!!」と答えてタバサを取り囲んだ。
"えっ? ちょ、ちょっと"
だが、大勢の人々によってあっというまにタバサの小さい体は持ち上げられて、みんなの頭上へと放り投げられた。
ばんざーい! ばんざーい!
なにがなんだかわからないけど、タバサが一回宙を舞うごとに、みんなの笑顔が眼に飛び込んできて、
悪い気分ではなかった。
小さなころ、母に読んで聞かせてもらった『イーヴァルディの勇者』の物語では、竜にさらわれた少女を助けに、
勇者イーヴァルディが駆けつけてきてくれる。子供向けのおとぎ話、そんなことはありはしないと思っていたが、
イーヴァルディはいつもすぐそばにいてくれているのかもしれない。
そのうち、人々の中に、笑顔を浮かべる生前の父と、在りし日の母の姿を見つけて、タバサはこれが
夢なんだなあと悟った。
けれど、こんないい夢はずっと見たことがない。
現実には決してありえないけど、夢を見るのに制限もルールもありはしない。
せめて今くらいは……
何度目かの万歳のあと、母の胸のような心地よさに包まれて、タバサは優しい眠りのうちへと抱かれていった。
「……落ち着いたみたいね。まったく寝顔は妖精みたいに可愛いんだから」
月明かりの差し込むベッドの上で、タバサの小さな体を優しく抱きしめながら、キュルケは小さくつぶやいた。
あのときから、うなされているタバサを見かねて、冷えた彼女の体を自分の体温で温め、おびえるタバサの耳元で、
子守唄のように彼女を励まし続けていたのだった。
「ゆっくりおやすみシャルロット。今夜はずっと、あたしがそばについててあげるわ」
まるで母と娘のように暖めあう二人を、双子の月と星達だけが見ていた。
翌日。
屋敷の門の外で、透き通るような青空に小さな声と明るい声の二つが響き渡った。
「……じゃあ、行ってくる」
「うーん! いい天気ね。こりゃ、吉兆ってやつじゃない」
背伸びをしながらキュルケが陽気に言った。
門の外にはシルフィードが待っている。これから死地に赴くというのに、天気晴朗、風は穏やか、まるで
ピクニックにでも出かけるようだ。
「んじゃあま、さっさと済ませちゃいますか。なーに、このあたしがついてるんだから、どんな難問でもちょちょいのちょいよ!」
「うん、頼りにしてる」
「え?」
思いもよらぬタバサの返事に、キュルケは一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
だが、タバサはいつもどおりの無表情、さっきの台詞などどこふく風。さっさとシルフィードに乗り込んでしまった。
「早く乗って」
しかし、そのときキュルケは気づいた。いつもなら、「乗って」とは言っても非常時以外は「早く」とはつけない。それは、
1年間ずっといっしょにいたキュルケでしか気づけなかったほどの小さな変化だったが、タバサの心境がいつもとは
よい意味で違う方向に向いていることを示すものだった。
「ははっ、どうしたのタバサ、今日はなんか機嫌いいみたいじゃない」
するとタバサは、キュルケに背を向けたまま、ぽつりと。
「ちょっと、いい夢みたから……」
と、答えて、それを聞いたキュルケは爆笑した。
「あっはっはっはっ、それはよかったわね。それで、ね、ね、どんな夢だったの?」
「秘密」
「ふーん、まあいいわ。でも、そんなに印象強い夢ならひょっとして正夢になるかもよ」
「……」
「あはは、冗談冗談。さっ、そろそろ行きましょうか。任務は『ラグドリアン湖北西にて、原因不明の森林の立ち枯れと
急激な砂漠化が始まっている。早急にその原因を究明し、原因を排除せよ』だっけ? どうせどっかのアホ貴族が
失敗作の魔法薬でも不法投棄でもしたんでしょ。そんなのあたしの炎で焼き尽くせば即解決よ。今回はつよーい味方が
いるんだから、どんと安心しなさいって、ね」
日差しの強い夏空へ向けて、二人を乗せたシルフィードは飛び立った。
だが、その先に待つものの恐ろしさを、まだ彼女達は知らない。
それでも、このパートナーがいればどんな困難でも乗り越えられる。そう思わせる何かを、二人は手にしつつあった。
続く
代行つまったのか?
一応投下は終わってるみたいだが後書きを投下
432 :ウルトラ5番目の使い魔 あとがき:2008/12/14(日) 19:35:30
今週はここまでです。
ユーゼスの方やほかの皆さん、数多くの支援どうもありがとうございました。
今日は朝から投下を期待してくれる人までいて、作者冥利につきる思いです。
今回は、友情の強さでなら作中もっとも強いタバサとキュルケについて書いてみました。
原作でも読み返すたびに思うんですが、キュルケってゼロの使い魔の登場人物のなかでも一番優しいんじゃ
ないでしょうか。姉のような母親のような、トラブルメーカーのところはありますが、なんだかんだ言って助けに
来てくれる、ルイズに対しても生徒の中で蔑視していなかった唯一の人物でしたし、マイナス思考の多いなかで
彼女の前向きな姿勢はほんとまぶしいです。
タバサは感情を表に出さないキャラですが、夢の中では誰でも心が裸になるので、おもいっきりはじけさせてみました。
また、タバサにはヒロイン願望もあるみたいなので……そこのところも。
さて、この話のなかでタバサにとってのイーヴァルディは誰になるのでしょうか。
この二人はルイズと才人とは好対照なので書いていて楽しいです。
今後もタバサの冒険の話はいくつか考えてますので、アルビオン編の前にはさもうかと思っています。
次回はラグドリアン湖に到着したルイズたちと、任務のために飛び立ったタバサたちのお話です。
だが、そこで待ち構えていたものは……
では、また次回で。
今週はここまでです。
ユーゼスの方やほかの皆さん、数多くの支援どうもありがとうございました。
今日は朝から投下を期待してくれる人までいて、作者冥利につきる思いです。
今回は、友情の強さでなら作中もっとも強いタバサとキュルケについて書いてみました。
原作でも読み返すたびに思うんですが、キュルケってゼロの使い魔の登場人物のなかでも一番優しいんじゃ
ないでしょうか。姉のような母親のような、トラブルメーカーのところはありますが、なんだかんだ言って助けに
来てくれる、ルイズに対しても生徒の中で蔑視していなかった唯一の人物でしたし、マイナス思考の多いなかで
彼女の前向きな姿勢はほんとまぶしいです。
タバサは感情を表に出さないキャラですが、夢の中では誰でも心が裸になるので、おもいっきりはじけさせてみました。
また、タバサにはヒロイン願望もあるみたいなので……そこのところも。
さて、この話のなかでタバサにとってのイーヴァルディは誰になるのでしょうか。
この二人はルイズと才人とは好対照なので書いていて楽しいです。
今後もタバサの冒険の話はいくつか考えてますので、アルビオン編の前にはさもうかと思っています。
次回はラグドリアン湖に到着したルイズたちと、任務のために飛び立ったタバサたちのお話です。
だが、そこで待ち構えていたものは……
では、また次回で。
代行終了
>>57はウルトラ5番目の使い魔 第26話 (13/14)となります。
失敗して申し訳ありませんでした。
冬の超獣ギロチン祭乙
63 :
ゼロの騎士:2008/12/14(日) 19:45:39 ID:wgF1mc+J
ウルトラ5番目の使い魔さん乙です
次予約がなければ投下してもよろしいでしょうか?
投下の予定などない!
待機
では投下します
第六話
「街へ行くわよ。」
ラムザがこの世界にきて四日目。
前日にやっと図書室への入室が認められ、この日も籠もるつもりだったラムザにルイズは言った。
「今日は授業は無いのかい?」
「今日は虚無の曜日だから授業は無しよ。あなたの剣を買いにいくわ、ふぁー…」
休みの日にいつも通り起こされたからかラムザに対して大きく欠伸をしながら答えるルイズ。
「そんな、悪いよ。」
「あら、あなた騎士なのに剣をもたないの? 自分で騎士っていうのにそれじゃ格好がつかないわ。気にしないでいいから。それに他にも必要なものもあるでしょ? 今日は街へ行きましょ。」
遠慮するラムザにルイズが言う。
街で情報を仕入れる。
冒険者達の必須事項だ。
イヴァリースへ帰る手がかりを探す為ラムザもOKを出し二人の街行きが決まった。
そして馬を借りてきて街へ向かう
「あなた馬に乗れるのね…。」
「一応ね、馬よりチョコボの方が得意だけど。」
「チョコボ?」
「あぁこっちにはチョコボはいないのか。騎乗に適した鳥なんだけどね、馬ほどじゃないけどなかなか早く走るんだ。戦闘能力に関しては馬の比じゃないけどね。」
「走る鳥? 鳥は飛ぶものじゃない。」
「チョコボの中には飛ぶ種類もいるけどだいたいの種類のチョコボは羽が退化していて飛べないんだ。かわりに脚が進化していて速く走るんだ。」
「ふーん。」
ラムザの説明にルイズが怪訝そうな顔をする。
「…ところでさぁ。」
「なあに?」
「なんで一頭の馬に二人で乗ってるの?」
「え? あ、あの、べ、べつに、その…あんたが乗れないかと思って…。」
ラムザの問いにどもりながら答えるルイズ。
それを見てラムザは微笑みながら言う。
「ふふ、僕も一応武門の出だからね、ある程度の事はできるよ。でも僕の事を考えてくれたんだね、ありがとう。」
「ち、ちがう! ただあんたが乗れなかったら街に行くのに不便だし! そう! 別にあんたの事を考えてやったわけじゃないもの!」
「うん、でもありがとう。」
「な、なにがよ!」
「ふふ。」
「ちょっとラムザ! 何笑ってるのよ!」
「いや、なんでもないよ。」
「なんでもないことないでしょ!」
二人が馬で街に向かっているちょうどその頃
………………………
学園内女子寮
「ダァーリン! …あら?」
学内で禁止されているはずの魔法アンロックを唱えルイズの部屋に勢いよく飛び込んだキュルケ。
しかしそこには目的の人物はおろか部屋の主さえいなかった。
「あらあら…どこいっちゃったのかしら…」
少し辺りを見回した後ふと窓の外を見る。
「ふーん…。」
窓の外に目標を見定めるとキュルケは踵を返し部屋の外に出た。
…………………………
学園内女子寮 タバサの居室
一般的に学生にとって休日は自分のしたい事ができる貴重な時間だ。
好きなだけ眠るもよし、意中の相手をデートに誘うもよし。
そんな中でこの部屋の住人もこの貴重な休日を思う存分堪能していた。
窓から差す日差しで本を読む少女。
これが彼女にとっての至福の時だった。
しかしその至福の時は突然の来訪者によって打ち壊された。
「タバサ! 出かけるわよ!」
「………。どこへ?」
勝手に入ってきておいての第一声がこれだ。
これがキュルケでなければ魔法によって閉め出されていただろう。
「ダーリンがルイズと馬に乗っていったわ! それを追うの!」
「…。わかった。」
そういうとタバサは本を開いたまま窓を開け自身の使い魔を呼んだ。
風と共に青き風竜が窓の外に現れる。
「さすがタバサ! 頼りになるわ!」
「いい。乗って。」
支援
うっはw ラムザ来てるーw
SS書き始めたきっかけ支援
キュルケの調子のいい声にいつもどおりの調子で応える。
一見不機嫌なように見えるがそうではないことをキュルケは知っていた。
二人を自らの背に乗せると風竜は学園を背に大空へ羽ばたいていった。
……………………………
王都のメインストリートブルドンネ街の大通りにはたくさんの人がごった返していた。
そんななかをルイズとラムザも歩いてゆく。
「うわぁ、大きな街だね。」
見える限り人に埋め尽くされた道を見てラムザが感嘆の声をあげる。
「ここはトリステイン最大の街ですもの。当然だわ。」
ルイズの言葉にラムザはイヴァリースの街を思い出す。前大戦時彼の国を渡り歩いた彼もこれほどにぎわう街を両手で足りるほどしか知らなかった。
もっとも戦時中であったため人通りが少なかったというのもあったのだろうが、それでもさすが首都だけあり人波に酔いそうなほどの盛況ぶりである。
「まずは剣を買いに行きましょう」
そういうルイズに連れられ剣をかたどったであろう看板のかかった店に入る。
「いらっしゃ…うちは貴族様に目をつけられるような事はしてませんぜ。」
開口一番の店主の発言がこれだ。この世界で貴族が武器を買うことはよっぽど珍しいのだろう。
そして貴族と平民の間にはこれほどの軋轢があるということだ。
「客よ、剣を買いに来たの。」
「いやはや、お客様ですか。これは失礼しました。今日はどのようなご用で?」
ルイズに対して店主が手をもみながら話す。
「そうねぇ…。この店で一番いい剣をちょうだい。」
ルイズの要求を聞いた店主が剣を出しながら話す。
「一番いい剣ですか?ならばこちらはどうでしょう、ゲルマニアのメイジが鍛えた最高級の剣になりますが…」
剣を出す一瞬に店主が含みのある笑い方をしたのをラムザはみていた。が、ルイズはそれには気づかず話を進める。
「…いいじゃない。おいくら?」
「新金貨で2000エキューです。」
「2000!? 庭つきのお屋敷が買える値段じゃない!」
「お客さん、これだけいい剣ならこれくらい当たり前ですよ。」
「そ、そうなの? でもいくらなんでも2000は…」
押し問答を続けるルイズと店主との間にラムザが割って入る。
「ルイズ、僕はそんな立派な剣は必要ないよ。僕は…この剣がいいな。」
そういうとラムザは隅の樽に差してあった古ぼけた剣を抜いた。
「な、何言ってるのよ! そんなきたない剣じゃなくてもっといいものを買ってあげるわ!遠慮なんていらないのよ。」
「ルイズ…、僕はこの剣が欲しいんだ。」
「欲しい…ってこれが?」
「うん。」
ラムザの言葉に肩すかしを食らったような気分だったルイズだがここは素直に彼の要求を呑んだ。
「そ、そこまで言うなら…。店主、これはいくら?」
「へ、へぇそれなら新金貨で150ってとこです。」
「じゃあこれを貰うわ。」
「ま、まいどあり。」
店を出る二人を見送る店主は少し悔しそうな目をしていたのをラムザはみた。
…………………………
その頃ラムザとルイズを追いかけてきた二人も街にたどり着いていた。
「さぁて、ダーリンはどこかしら?」
「…あそこ。」
タバサの指差した先にはちょうど武器屋から出てきたルイズとラムザがいた。
「あら、流石タバサ、もう見つけたのね。
ん? ダーリンが剣をもっているわ。
そうか、ヴァリエールはダーリンにプレゼントを買いに来ていたのね、タバサ私たちもうかうかしてられないわ! 行くわよ!」
……………………………
「本当にその剣でよかったの?」
「この剣が、よかったんだよ。これはあの店で唯一の騎士剣だったんだよ。僕は槍も剣も斧も使えるけどやっぱりこれが一番しっくりくるんだよね。」
「ふーん、あなたがそれでいいならいいけど。」
ラムザの言葉になんとか納得したようでそれまで不満気だったルイズは上機嫌な様子で歩き出した。
支援
「他に必要なものはない?」
「そうだなぁ、特にないかな。」
「そう、じゃあ次は仕立て屋に行くからついてきてくれる?」
なにげない会話をしつつ歩いていく。
二人の関係は最初ほど悪いものではなくなっていた。
そんな二人に背後から迫る影があった
「ダァーリンッ!」
「うわ!」
ラムザの背中に何者かがとびつぎバランスを崩す。
なんとか踏ん張り倒れはしなかったものの危うく大通りの真ん中で見事なヘッドスライディングをきめるとこだった。
「あ、あんたツェルプストー!! それにタバサ! どうしてここに!?」
「あら、ルイズじゃない。」
「ルイズじゃないじゃないわよ!
あ! あんたつけてきたわね!?」
「やあねぇ、つけてきただなんて人聞きの悪い。私とダーリンの愛の力が巡り合わせたのよ。」
ラムザの背中にタックルをきめそのまま抱きつき続けているのはキュルケであった。
「あんたこそダーリンと二人きりでなにしてたのぉ?」
「わ、私はラムザが騎士だっていうのに剣も持ってないから買いに…」
「あら、ダーリンにプレゼントをして気に入られようってからとかしら?」
「な、な、そ、そんなんじゃないわよ! わ、私は自分の騎士が剣の一つももってないのはどうかと思って…」
顔を赤らめしゃべるルイズの声がだんだんとほそくなっていく。
「あらそうなの? じゃあもう剣は買ったみたいだしこの後ダーリンに予定はないわけね? じゃあダーリン私に付き合ってくれない?」
「だ、だめよ! ラムザはまだこれから私と仕立て屋にいかなきゃならないんだから!
っていうかあんたは早くラムザから離れなさいよ!」
先ほどからラムザにしがみつき続けるキュルケを引き離そうとルイズがやっきになる。
キュルケとルイズが口論している間も一緒にきたタバサは一言も喋らずただやりとりをみているだけだった。
「とりあえずキュルケ離れてくれないかな?」
「あら、ダーリン。私と一緒にいるのはいやなの?」
「いや、そういうことじゃなくて…」
ラムザの願いも聞き入れられることなく二人の言い争いは続く。
その二人を止めたのは意外にも
「ぐ〜」
ラムザの腹の音だった。
「お…おなか、すいたね…はは」
一行はそのまま近くのレストランに入ることになった。
「おなかを鳴らすダーリンもかわいいわ!」
「いやいい年してお恥ずかしい…」
キュルケの言葉に顔を赤らめるラムザ。
それをみて憮然とするルイズと何も言わず黙ったままのタバサ。
「ていうか、なんであんたたちも一緒なわけ?」
「いいじゃない、私もダーリンと一緒に食事したいのよ。そんなつまらない事ばかり気にしてるからあんたはいつまでも胸が小さいままなのよ。」
「な、なんですってぇ!?」
再び口火を切った二人の喧嘩を後目にタバサは無言を貫きラムザは二人を宥める。
しかしそんなに簡単に収まるのであれば苦労はない。
ラムザが諦めかけたその時。
「あーあーさっきからピーチクパーチクうるさいったらありゃしない。」
誰もいない空間から声がした。
「誰だっ!?」
俺だよ、ワリオだよ
支援
それまで喧嘩していた二人も喋るのをやめる。
「誰? 誰だって? あんた自分で俺を選んでおいて誰とは失礼だねぇ。」
「剣が…喋った…?」
驚くラムザ、それに反してルイズ達も驚いてはいるがラムザほどではなかった。
「インテリジェンスソードだったの?」
「おうよ! 俺の名前はデルフリンガー! ひとつよろしくな!」
キュルケの言葉に剣が反応してまた喋る。そのやりとりを聞いたラムザが怪訝そうな顔をする。
「ラムザはインテリジェンスソードを見るのは初めて? インテリジェンスソードっていうのは魔法によって命を吹き込まれた剣のことよ。まぁそうそうお目にかかれる代物ではないけどね。」
ラムザの疑問にルイズが答える。
「へぇ」。
これはムスタディオが見たら喜ぶだろうな。
そんな事を考えながらデルフリンガーに手をかけた。
その瞬間デルフリンガーは驚きの声をあげた。
「おでれーた、相棒、お前使い手か!」
「使い手?」
またラムザにとって未知の言葉が出てきた。
そこでルイズが口を開く。
「使い手ってなによ?」
だが今度の言葉はラムザだけでなく全員にとって未知の言葉だったようだ。
「使い手っていやぁ、お前、えっと…なんだったかな?」
デルフリンガーの言葉に一同ズルッと音がしそうな見事なリアクションで答える。
「長く生きてるといろいろ忘れっぽくなっちまうのよ! まぁ気にするな! 改めてよろしくな相棒!」
「あ、あぁ、僕はラムザ、ラムザ・ベオルブだよ。それであっちのピンク色の髪の娘がルイズ、赤の髪の娘がキュルケ、水色の髪の娘が…」
「タバサ」
一瞬いい淀んだラムザにすかさず言葉を継ぐタバサ。
「うん、タバサ。ってごめん。僕達も自己紹介してなかったね。」
「いい。」
きまずそうに答えるラムザにいつもどおりの調子のタバサの声が返る。
「あぁ、あんまりあれだったんでつい口をはさんじまったがおれっちの事は気にせず話をすすめてくれ。」
そういうとデルフリンガーは鞘にきっちりと収まり静かになった。
「まさかインテリジェンスソードだったとはね、ラムザ本当にこの剣でよかったの?」
「え? あぁうん、喋る剣とはおもしろいね、いろいろ聞いてみることにするよ。」
ルイズがラムザの答えを聞いたちょうどその時料理が運ばれてきた。
それによって一時会話が中断された。
もうルイズとキュルケの争う気も削がれたらしく料理を食べながらなにげない会話が始まる。
それでも二人が多少喧嘩腰なのはご愛嬌。
そんななかラムザは言った。
「あぁそうだ、僕は少しよりたいところがあるからこの後は少し一人になってもいいかい?」
しかし間髪いれず戻ってきたルイズ達の答えはNOだった。
「だめよ、どこか行きたいところがあるなら私も一緒に行くわ。」
「そおよ、せっかく街にきたんだから一緒にみてまわりましょうよダーリン。」
「ちょっと一人で行きたい所なんだけど…」
少し困った顔をするラムザの言葉にルイズが反応した。
「なに!? 私達が一緒じゃ行けないような所に行きたいって…、ふ、ふ、不潔よ! ラムザ! 見損なったわ!」
そう言うとルイズは店から出て行ってしまった。
どうにも大きな誤解をもたれたようなラムザだったが誤解している当人がすぐに居なくなってしまい弁解の余地もなかった。
「ちょ、ルイズ! キュルケ、タバサ、ごめん! ちょっとルイズを追いかけてくるからあとは頼んだよ!」
「あ! ダーリン! もう!」
キュルケが引き留める間もなくラムザはルイズを追いかけて行ってしまった。
その後ルイズはラムザの制止を聞かず先に学園に一人で戻ってしまいラムザは用事を済ませたのち再び出会ったキュルケとタバサに頼み風竜で共に連れ帰ってもらうことになった。
そしてその夜もラムザはルイズの機嫌とりをすることになるのであった。
第六話end
支援
騎士さん乙
乙です
81 :
ゼロの騎士 :2008/12/14(日) 20:06:55 ID:wgF1mc+J
以上です。前回から間があいてしまいもうしわけありません。
今回分は実は以前の投下時に書き上げていたものを消してしまっていまして・・・
その消したもののバックアップを発見したので加筆して投下させていただきました。
また次回分書きあがったら投下しに来ます。拙い文に支援ありがとうございました。
乙です。ラムザ苦労人w
いかん、FFTやりたくなってきた
支援!
84 :
谷まゼロ:2008/12/14(日) 20:20:15 ID:aJ1KNejN
ショワッチ!!
予約がなければ、 20時25分から投下させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
余談ですが、もう何回『島さん』って書いたかわからない……。本人出てきてないのに。
85 :
83:2008/12/14(日) 20:21:46 ID:Sn/UD8ge
…と思ったら終わっていました!恥ずかしぃ…。
ゼロの騎士様乙です。
チョコボと言えば未だチョコボ召喚はお目にかかっていないですねぇ。
騎獣チョコボか海チョコボはやはり飛べる黒チョコボか…どれがいいんでしょう?
しえん
チョコボの不思議なダンジョン仕様は?
モーグリ付きで。
だけど普通にアタリの使い魔になるよね
おっと谷支援
89 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:25:12 ID:aJ1KNejN
なんとか谷を厨房から引き離すことができたルイズは、谷を連れ自室に戻って来ていた。
日はとうに暮れている、今日という日は、朝から晩までドタバタ続きの一日であった。
「つまりこういうことね」
ルイズが、谷から聞いたことを要約した。
「あんたは『チキュウ』って世界から来て、そこは魔法なんて全くない世界。
しかも、月が一つしかないですって……?なんというか、ある程度想像はしてたけど、
本当に別世界だったなんて、……信じらんないわ」
ルイズの言葉を聞いた谷は疑っているような視線をルイズに向けていた。
「っう……。ちゃんと送り返す方法は探すわよ。約束しちゃったし、見つかるまで探すわよ。
だからそんな表情で見るんじゃないわよ……っていうか表情なかったわね」
谷は四六時中、白い仮面をつけている。だがら当然として表情はわからない。
だが、感情を表に出す方法が欠如しているわけではない。
むしろ、その辺に居る普通の人間よりもその表現力は上かもしれないなかった。
ただし、それは『島さん』が関係した時に限ることではあるが。
ルイズはベッドの上で体育座りをして、谷について改めて考えていた。
初めて会ったとき感じた、あのガッカリ感。でも、学院の壁をブチ破るほどの馬鹿馬鹿力。
そして、この世界を自分の夢の世界だと信じ込んでいたお間抜けな性格。
だけど、島さんを思うその気持ちだけは、天を貫くほどに力強くて。
自分の世界に帰れないことがわかると、死刑宣告を受けたような落ち込みよう。
そして、何もかもを悲観した谷とギーシュの決闘。
そこで放たれた誰もの心を揺さぶる魂の咆哮。
少しなりでも、谷という人物がわかってきたルイズであった。
もっとも、谷の性格がそんなに複雑かと言われれば、甚だ疑問ではある。
何故なら、ある一点だけを押さえていれば、谷という人物像はすべて説明できるからである。
『谷はどうしようもなく島さんが好き』
それさえわかっていれば、ほぼ10割わかったようなものである。
だが、その島さんの好きさ加減を知るのには、なかなか難儀するかもしれないが。
ルイズはその点もある程度理解しているつもりであった。
そして、谷のあの直情的な愛情表現に少しばかり興味を抱いていた。
もじもじと指先同士で遊びながら、ルイズが谷に言った。
「ね、ねえ……。タニはどうやって……その、シマサンに『告白』するの?」
『告白』という言葉を聞いて、谷は戸惑い、体をのけ反らせた。
谷にとって島さんに『告白』することは、最重要事項であり、
今まで何度も試みようとしたものの、その手前で踏ん切りがつかず足踏みをしている状態である。
島さんのためなら、誰でも殴り飛ばすような、ある意味積極的な面は持っていても、
いざ島さんを前にすると、萎縮してしまって何を話せばいいかわからなくなるほどあがってしまう始末であった。
つまり、谷にとって『告白』とは越えなければならないハードルではあるが、
それは同時にデリケートな問題でもあった。とてもじゃないが素の状態で向き合って告白できるとは思えなかった。
良く言えば、谷は純情なのであった。
おぉラムザの人お久しぶりです。
次回にwktk。
そして谷仮面キターッ!支援
支援
92 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:28:16 ID:aJ1KNejN
「っな、なんでそんな事を、オマエに聞かれなきゃなんねェんだ?関係ねェだろ!」
まさしくその通りであった。だが、ルイズは食い下がった。
「確かに関係はないわよ……でもあんたまともに告白なんてできるの?」
痛いところを突かれた谷であった。谷は女性と付き合ったことがないし、
女性に興味を持ったのも島さんが初めてであるからして、恋愛については何もわからないに等しい。
ルイズは人差し指を立て、自分も異性に告白なんてしたこともないのに、
まるで練達者のように、どこか偉ぶった態度で谷に言った。
「と、とりあえず、女の子に告白するには、どこでどうやってするのかが重要よ!タニはそこらへん考えてるの?」
「そんなの当たり前だ!いいか……オレが島さんに告白するなら……」
谷は今まで頭の中で何度も繰り返し繰り返し、シミュレーションしてきた、
自分の理想の告白について、どこか浮ついた調子で語り始めた。
……場所は波浪の穏やかな湖。花が咲き乱れる湖のほとりに立つ男女二人は、何気なく湖面を見つめている。
静かに波打つ湖面に、羽を休めるためにやってきた渡り鳥たちが集い、まるで二人を祝うかのように囀っている。
寄り添うように立つ男女は、まだその内なる思いを言葉にして伝えたわけではない。
だが、お互いの気持ちはすでに通じ合っているのだった……後は確認しあうだけである。
二人とも、この今という瞬間が二人の新しい関係の幕開けになることを知っているのだ。
辺りの静けさのせいか、相手の心臓の鼓動が高鳴る音が聞こえてくる気がした。
ここには二人しかいない、邪魔する者もいない二人だけの空間。
爽やかな風が二人の間を駆け抜け、彼女の髪がまるで絹のように煌めき揺れる。
彼女は、その白磁のような透き通るような肌をした手で髪をかきあげた。
男は、彼女のそんな動作の一つ一つでさえ、とても愛おしく思えた。
やはり、彼女こそが自分の生涯の伴侶としてなくてはならない存在だと再認識する。
男は自分の思いを伝えることに躊躇していた。だが、勇気を持ってして踏み出さねば何も始まらない。
これから始まる幸せを告げる鐘を鳴らすため男は意を決し行動に出た。
男は女に真剣な顔を向け、簡潔にそして、自分の心からの言葉を暖かく相手を包み込むように彼女に伝えた。
『島さん……好きです』
『え……』
湖面の渡り鳥たちが、一斉に大空へと向って飛びたった……。
支援
94 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:30:29 ID:aJ1KNejN
「オーレーは!!こうっ……なんというかっ!!一見切なく見えるような雰囲気溢れるシチュエーションで!
かつ、さりげなくだな……!!!なるべくっ、なるべくこんな告白を夢見てんだ!!!!」
「あ、……あ、ああそう……よかったわね……うんホント」
どこが、さりげなくよ……。思いっきり願望マル出しじゃない。
長々と自分の妄想を垂れ流しにした谷であったが、対するルイズはちょっと目が点になっていた。
興奮冷めやらぬ谷は、今までにないほどルイズに突っかかった。
「湖でイイだろ!?」
「い、いいんじゃない?言ってたみたいに出来ればの話だけど」
「っな、なに」
「いきなりやろうとして出来るもんだと思ってるわけ?」
ルイズに言われて谷は思い悩んだ。
確かにそうかもしれないし、だけどそうならば、いったいどうすれば自然に告白できるのか?
と谷は腕を組んで、問題の答えを探すために考えを巡らせていた。
そんな様子を見ると、期待していたものが到来したかのように、どこか嬉しげな表情をしたルイズは、
頬を少しばかり赤らめながら言った。
「そ、その……わわわ、わたしが練習相手になってあげてもいいわよ?」
「……?……なんでだ?」
「あっ!え、えーと!何事も場数よ!どーせあんたシマサンを目の前にしたら、
緊張して、しどろもどろになっちゃうんでしょ。そんなんじゃ成功しないわよ?
物は試しよ!わ、わたしを『シマサン』だと思って告白してみなさい!」
谷は、言われてみればそういう気がしないでもないな、というぐらいに話を聞いていた。
島さん関連の話については割と意欲的に聞く谷であった。
「それもそうだな……っよし」
谷はルイズの前に立った。大きく深呼吸し、島さんの姿を頭の中でイメージした。
彼の脳内には、女神のような笑顔を自分に投げかけてくれている彼女の姿がはっきりと映し出されていた。
意を決して、告白の言葉を口にしようとする。
「しっ、島さん……その、あの、オレは」
95 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:33:12 ID:aJ1KNejN
やはりいざとなると、練習であっても緊張してまともな言葉にならなかった。
そうなると谷は気の高ぶりが抑えられずに暴走し始めた。
「お、おお、おオレは島さんが!!!島さんのことが!!!」
もうすでに、頭のネジが吹っ飛んでしまったのか、
谷は目の前にいるのが練習相手のルイズであることを忘れていた。
ルイズの両手を手で取り、握りつぶすのではないかと危機感を覚えるほどしっかり握ると、
仮面をつけた顔を近づけて、ルイズの鼓膜が破れるかと思われるほど大きな声で言った。
「オ、オレ島さんのことが好きなんです!!!!世界中の誰よりも!!!!誰よりも一番絶対に好きなんです!!
島さんはオレが守ります!!!一生守らしてください!!!そのためだったらなんでもします!!
だ、だから!!そばにいてください!!!!おっ、オレそれだけで生きていけるんです!!!」
谷の強烈までの愛情表現である言葉がルイズの胸を穿つ。
ルイズの目はグルグルと周り、顔は真っ赤になっていた。
「あわわわわっわわわわ……あのわたわたわたしわたたたわたしは……」
谷の言葉は、ルイズには刺激すぎた。視界が歪み、頭が茹る様に熱くなる。
自分が、何を口走ろうとしているのかすらも、わからなくなっていた。
そんな混沌極まる状況の中、我に帰ったのは谷が先だった。
「っし、しし」
谷はルイズから飛びのいて叫んだ。
「島さんじゃねェ!!!!ふざけやがって!!!」
「なっ!!?それは最初からわかってることでしょ!?ふざけてるのはどっちよ!!」
そのけたたましいまでの喧騒は、谷が昨晩開けた壁の穴を塞ぐ応急処置の布地を軽く通り越し、
隣の部屋にいる住人の耳まで届いていた。
「あーうるさいこと。こっちに筒抜けってことわかってやってるのかしら?あの二人」
そう言ったのはベッドに寝転がっているキュルケであった。
「わかってない」
キュルケの言葉に応えたのは、青みがかった髪とブルーの瞳を持つ少女であった。
ベッドのそばで椅子に座って本を広げている。
見た目に幼さが残っているこの少女の名前は、タバサといった。
友人であるキュルケの部屋に遊びに来ているのだった。
タバサは、キュルケがつまらなそうな顔して天井を見つめているので気になっているようだった。
どこか心配そうな顔をしているタバサに気がつくとキュルケは何でもないという風に軽く手をヒラヒラと振った。
だが、タバサはキュルケに視線を送り続けた。
あまり喋らない友人が何を言いたいのかキュルケはわかった。
96 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:35:08 ID:aJ1KNejN
「タニのことはいいのかって言いたいんでしょ?もういいのよ」
タバサはキュルケが谷に対して猛烈にアプローチをかけるものとばかり思っていた。
決闘が終わったあと、谷ついてタバサに熱く語っていたからだった。
だが、今は火が消えたように、谷に対しての興味を失っているようであった。
未だに疑わしげな視線を送るタバサに、キュルケは説明を加えた。
「確かに、あたしはタニ『惚れられたい』と思ったわよ?それは確かなこと。
あれだけ力強い愛情に包まれてみたいと思ったことも確かなこと。
でもね。どー考えても手に入らないってわかったのよ」
タバサは首を傾げた。ことに恋愛関係については熱しやすく冷めやすいキュルケではあったが、
今回は何か様相が異なっているとタバサは感じたのだった。
タバサの感じている違和感は次のキュルケの言葉で全て溶けて消えていった。
「タニが誰かから好意を寄せられて、すぐに乗り換えちゃうのなんてのは……そんなのタニじゃないのよ。
だったらどうやってあたしは誘惑すればいいの?って話じゃない。手に入れた瞬間それは欲しかったものじゃなくなる。
ああ、なんて矛盾かしら……。あーあぁ、どこかに居ないかしら?まだ手付かずのタニみたいな男」
さすがにそうは居ないのでは?と思ったタバサであった。
タバサは直接谷を見たわけでもないが、そのしでかした出来事を伝聞で知っただけでも、
異質な存在だと理解できていた。
タバサが頭の中で、そんなことを考えていると、ふとキュルケが思い出したように言った。
「ルイズもね。あんなことやってるけど、別にタニに惚れているわけじゃないはずよ。
そうねぇ。例えるなら、気になって官能小説を読んだはいいけど、内容の過激さに顔を真っ赤にして慌てふためいて、
本を閉じたり開けたりしてる生娘ってところかしら?まあ、本人がそれを自覚しているかは甚だ疑問だけれども」
良くわかったような、わからないような例えであった。
だがタバサにも、ルイズにとって谷が刺激物であることは理解できた。
「あーでも羨ましいっ!」
そう言うとキュルケはベッドから飛び起きた。
「?」
「いやね。少しぐらい味わっておこうかしらって思ってね」
キュルケはルイズの部屋へと通じる布地で塞がれた大穴に向って得意の火の魔法を放った。
布が燃え落ちるか否か、キュルケはルイズの部屋に飛び込んでいった。
「タニタニィ!ルイズだけにじゃなくて、あたしにも、その暑苦しー愛の言葉を頂戴っ♪」
「な、ななななに言ってんのよ、この色ボケ女!!!」
ルイズの部屋は、今までにない以上の賑わいをみせた。
97 :
谷まゼロ七話:2008/12/14(日) 20:37:37 ID:aJ1KNejN
夜空に浮かぶ、巨大な二つの月が、五階に宝物庫がある魔法学園の本当の外壁を照らしている。
二つの月の光が、壁に垂直に立った人影を浮かび上がらせていた。
『土くれの』二つ名で呼ばれ、トリステイン中の貴族を恐怖に陥れているメイジの盗賊、
土くれのフーケであった。その盗賊が今宵、学院を徘徊しているのであった。
フーケは、宝があると聞けば、どこへでも馳せ参じ、自身のメイジとしての能力を遺憾なく発揮し、
貴族達相手に盗みを働く、神出鬼没の大怪盗。
今度の目標は、フーケが好んで狙う、強力な魔法が付与された高名な宝、所謂マジックアイテムのひとつであった。
フーケは足から伝わってくる、壁の感触に舌打ちをした。
「さすが、魔法学院本塔の壁ね……。私の『錬金』が効かないのは実証済みだったけど……、
ッチ……『あんなこと』があったから、コルベールは『物理衝撃が弱点』っていってたのにも納得がいってたってのに、、
こんなに厚かったら、ちょっとやそっとの魔法じゃどうしようもないじゃないの!私のゴーレムも通用するかどうか……」
足の裏で、壁の厚さを測っている。『土』系統のエキスパートであるフーケにとって、そんなことはぞうさもないのであった。
「確かに、『固定化』の魔法以外はかかってないみたいだけど……。どうしたもんかねぇ……」
フーケは、腕を組んで悩んだ。
「『破壊の杖』は諦めるには惜しいし……まったく、学院をボロボロにするなら宝物庫を狙ってくれればいいものを……」
そこまで自分で言った瞬間、あることが頭によぎった。学院が何故ボロボロになっているか思い出したのだ。
待ちなさいよ……もしかしたら。
フーケは、ぐるりとその場を見渡した。すると、暗闇の中でもはっきりとわかるような派手さを振りまいている、
学院の壁に突き刺さっている銅像が目に入った。それは谷がしでかしたことを表す爪痕であった。
その銅像を見るとフーケはニヤリと笑った。
確か学院の女子寮の壁の穴を塞ぐための修繕要求の書類が、こっちに回ってきてたわね。
あれもヴェストリの広場と同じように、あの使い魔が壁をブチ抜いたのだとしたら……十分試す価値はありそうだね。
何故フーケが学院の事情に詳しいか、それには理由があった。
その理由とは、実は『土くれ』のフーケは、学院長の秘書であるミス・ロングビルと同一人物だからであった。
つまり、フーケはミス・ロングビルに扮装し学院に潜り込み、『破壊の杖』を奪うために、
秘書という立場を利用し、学院内を嗅ぎまわっていたのである。
であるからして、当然として谷がしでかした事も、そして、その使い魔の主がルイズであることも知っていた。
さて、可能性があることがわかったから……次はどうやって利用するかだね……。
悪事を企む際の特有の高揚感が、フーケの胸の奥から沸き起こる。
闇夜に、艶麗で、そして不敵な笑みが浮かんだ。
98 :
谷まゼロ:2008/12/14(日) 20:38:53 ID:aJ1KNejN
投下終了です。ありがとうございました。
申し訳ないと思ったのですが、デルフの出番はありません。
デルフは、島さんの声真似くらいできないと、出しようがなかったりするわけで……。
色々と乙ー
今日もすごい投下ラッシュだな
谷の人乙です。
次回にwktk。
師走だから投下ラッシュが続いているな
乙でふ
遅れましたが、ウルトラの方と谷の方、乙でした。
>>ウルトラの方
なんか希望が見えて良い感じですな。アルビオンに向かった光の正体も気になります。
>>谷の方
ルイズの恋愛講座にニヤニヤさせていただきました。VSおマチさん戦は……どうなるのか想像が出来んw
シズママン出ないかなあ
……すいません、騎士の方を忘れてました。
原作は知らないのですが、何だかラムザって苦労人っぽいですな。
冗談でムスタディオを殺したくらいだしあんまり苦労はしてないよ
>>105 関連性はさっぱりわからんがとにかく凄い説得力だw
谷仮面の方、お疲れ様でした!
近々にゴーレム戦がるのでしょうが、怒った谷ならゴーレムをキック一発で隣国まで蹴り飛ばしてしまう気がw
次回も期待してます!
苦労人かどうかはともかく、時代にほんろうされた人ではあるな。
ティータの死をもうちょっと別の形で受け入れていれば、もっと幸せになれただろうに。
苦労人ではあるが、
それ以上にシスコンなイメージが強いかわいそうな人
結局アグリアス様とはどうなったんだか>>ラムザ
あれ?最終決戦でラムザとアルマ以外死んだんじゃないの?
ただ単にムービーで全員出すと容量足りないからって噂もあるが
PSP版はしらん、つーかFF12にモブキャラでベオルブ出てたのね
>>109 ムスタディオがアグリアスに口紅を上げるイベントがあるんで、
アグリアスはムスタディオとくっついたっぽいぞ。
納得いかんが。
ムスタかよ!?
やっぱPSP版やらねぇとなぁ
シズナマン呼んだら長戸も愛のパワーで来ちゃうYO
そうなると後フリーは剛剣な彼女とラファくらいか…
影うすいな〜w
103の言ったシズナマンは多分オリジナルの方だな
>>114剛剣な彼女
メリアドールと名前で呼んであげて……
ラファはもう中古だしな
えーっ!?やだ、こわいよー!
>>117 あの人は思い込みが激しいから、結婚したら苦労しそうだなぁ。
妹と一緒に世捨て人になって、インモラルな展開でいいんじゃね、この際
シエスタの祖父は労働八号・・・?
>>119 ぎゃーー、間違えた
ちょっとインドで修行してきます
>>124 悪いことは言わないから、正露丸を持っていけ
>>111 嘘だろ条太郎!!
納得いかん…。
そして谷まGJ
谷の妄想っぷりが谷らしいぜ。
コルベール先生の頑張りに対するご褒美――ルイズが『大江戸ロケット』の面々を召喚しました。
コルベール先生相手だったら、
いっそ話があうようにバック・トゥ・ザ・フューチャーのドクをだな…
>>129 うっかり成原成行を呼んでしまいました。
最後にはゼロ戦改造した世界移動機に乗って地球に帰ってくるんですね
FFTからダーラボン先生を
>>128 錠前屋の銀さんで宝物庫の鍵を開けるんですね?
ルイズがクッキングパパ
から荒岩誠を召喚。
>>128 ルイズ「宝物庫が壊されちゃったじゃないのよ!」
キュルケ「アニメだから描けば良いのよ」
タバサ「バンクもたくさんある」
FFTといえば雷神シドにはお世話になったなぁ。
バランスブレイカーという単語を聞くと即座に思い浮かぶぐらいに。
スパロボZからジ・エーデルを召喚してしまったら…
凄く喜びそうだな、ジ・エーデルが
2chが今チョンに攻撃されてるとかなんとか
>>121 正確には「セイブザクイーンを剥ぎ取られる人」だw
PSPはともかく、PSだと本当に引換券だったよな・・・
141 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 22:49:41 ID:3YWSjZm8
>>136 その次に浮かんだバランスブレイカー……
サガフロのDSC
単体で2万超えのダメージはおかしい。
ageしまったorz
sageとく
>141
ごめん、DSCを見た瞬間DCS(ドーピングコンソメスープ)と間違えた。
今から書いてみようかと思うんだけど、
練習用の投下ページってある?
初投稿ですが、5分後からよろしいでしょうか? 5レス消費です。
ドラクエ5から主人公(ED後)、名前は便宜上、一番広まってると思われる小説版の『リュカ』で。
ゲーム主人公を選ぶとはチャレンジャーだな。
キャラ造けいは至難だぞ支援。
特に支障はないと思います。
>>148 支援する!
…随分前に投下されたリュカの人は帰ってこないのかなー。
ありがとうございます。ゼロ魔やドラクエでSS書くのは初めてで、ここに投下するのも初めて。結構心臓バクバク言ってます。
では投下。タイトルは『日替わり使い魔』で。
「あなたはどなたですか?」
ルイズは言ってから、気付いた。自分はなんで、こんな目上に対するような丁寧な言葉を使ったのか、と。
彼女の目の前にいるのは、ボロボロのターバンとマントを身につけた青年だった。ターバンとマントは共にブルーベリーのような青紫。マントの下には白い貫頭衣。腰には剣を差し、手には杖を持っている。
そのいずれもボロボロで、はっきり言ってみすぼらしい――杖とマントという組み合わせからメイジであると予想はつくが、黒髪黒目の貴族など聞いたこともないし、そもそもこんなボロを纏った人物が貴族であるはずもない。
だが、そのみすぼらしい姿をはっきりと確認する前に、なんとなく感じ取ってしまった。目の前の青年は、高貴なお方なのだ、と。……どうやら、ただの勘違いだったみたいだが。
「ゼロのルイズが平民を呼び出したぞ!」
「しかも聞いたか? 『あなたはどなたですか?』だってよ!」
「いくら魔法が使えないからって、平民にへりくだってちゃ貴族としておしまいだよな!」
周囲の野次が耳に入り、ルイズの額にピキ、と青筋が浮かぶ。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
反射的に振り返り、怒鳴る。
そう――間違えただけ。間違えただけだ。『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してしまったのも、その平民に敬語を使ってしまったのも。
ならば、間違いは正さなければならない。そもそも人間を使い魔など、聞いたこともない。
「ミスタ・コルベール! もう一度召喚させてください!」
と、その間違いを正すべく、監督していた教師に要求する。脳天がとっても眩しいこのナイスガイなら、きっとわかってくれるだろう。
が――その要求に対する彼の答えは、ルイズの期待を裏切るものだった。
いわく、これは神聖な儀式なのだから、やり直しはきかない。いわく、伝統なのだから例外は認められない。
……ナイスガイなんてとんでもない。このコッパゲ使えねぇ。頑として首を縦に振らない彼に、ルイズは胸中で吐き捨てた。
「……なんか不当な侮辱を受けた気がしますが?」
「気のせいですわ」
何かを感じ取ったのか、ピクピクとこめかみをヒクつかせるコルベールに、ルイズはしれっと返した。
「……コホン。さて、では儀式を続けなさい」
コルベールは場を取り繕うかのようにコホンと咳払いし、ルイズに儀式を続けるように言った。
やり直しはきかない上、自分のせいで授業が押していると言われてしまえば、ルイズとしてもこれ以上駄々をこねるわけにもいかない。本当に……ほんっとーに渋々と、契約の儀式をするためにその青年の前に立つ。
彼はいまだ、状況を把握できていない様子だった。物珍しそうにキョロキョロと周囲を見回しては、何事か考えている。
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
「え?」
ルイズの言葉に、青年はその意味を理解しかねて呆けた声を上げた。だがルイズはそれには取り合わず、早口で契約のルーンを唱えて杖を青年の額に当て――そして、唇を重ねた。
「んっ……」
青年が何かを言おうとしていたが、塞がれた唇では言葉にならない。小さなうめき声一つ残し、驚愕に目を見開いたまま、されるがままになっていた。
それからすぐに、ルイズは唇を離してコルベールに向き直った。「終わりました」と顔を真っ赤にしながら、それでも平静を装っているのか、淡々とした口調で報告する。
そして――
「ぐっ……!」
青年が、短く苦悶の声を上げた。使い魔のルーンが刻まれているのだろう。その表情は苦しげに歪んでいる。
が、それもすぐに終わる。青年の表情から苦悶の色が消えた頃、その右手の甲に見たこともないルーンが浮かび上がった。
「な、何が……?」
「ふむ……」
自身の右手に刻まれたルーンを見て、目を白黒させる青年。彼の混乱をよそに、コルベールはそのルーンを興味深げに観察した。
珍しいルーンだな、とつぶやき、青年の右手に浮かんだルーンを手早くスケッチする。それが終わると、彼は生徒達に向き直り、教室に戻るよう命じた。
すると彼らは、口々にルイズを嘲笑しながら、思い思いに飛び去って行った。唯一ルイズだけが飛ぶことなく、悔しげに唇を噛み締めてそれを見送っている。
やがて――ルイズはおもむろに、自身の使い魔となった青年に顔を向けた。彼は物珍しそうに、飛び去って行った連中の背を見送っている。
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。あんたの名前は?」
「……リュカ」
彼女の問いかけに、青年――リュカは、その澄んだ黒曜石のような瞳をルイズに向けた。
秋茄子は
支 援 !
リュカ懐かしいな……
ピエールも……
5は小説版がかなりの良作だから主人公のキャラづけにもそれほど苦労しないと思う。
ただ、主人公よりも脇キャラの方が個性が際立っているのは否めないがw
さるさん?
――妙なことになった。
彼の本名は、リュケイロム・エル・ケル・グランバニア。こんなナリでも、れっきとした一国の王である。
彼の一家が大魔王を倒し、世界に平和をもたらしたのは一年ほど前。当時全てを終え、国に戻った彼を待ち受けていたのは、国を挙げての盛大なパーティーと、国を留守にしていた間に溜まりまくっていた政務であった。
物心ついた頃から旅人としての生活に身を浸していた彼にとって、本来は国政など門外漢もいいところだった。
叔父のオジロンの助けも借りながら、慣れない政務に悪戦苦闘すること一年――自分の仕事がどういう成果をもたらしたかをその目で見たい、と言い出したのは、ほんの数日ほど前だった。
もちろん、その提案は政務に対するやる気を引き出すのに、悪くない話であった。オジロンの了解を得て、リュカは身分を隠すために旅人時代の格好になり、一人で国を回っていた。
ちなみに普段着ている正装であり最強の武具でもある『ドラゴンの杖』『王者のマント』『太陽の冠』『光の盾』は、身につけているだけで身分がバレバレなので、宝物庫にしまっている。
で――ひととおり国内を見て周り、城へと帰ろうとしたところで、コレである。
目の前に妙な鏡が現れたかと思ったら、気付いたら見知らぬ場所。異常事態には慣れているので騒ぎはしないが、いつまでも事態を把握できずにいるままなのはよろしくない。
というわけで、リュカはルイズの部屋で情報交換をすることとなったのだが――
「グランバニア? そんな国、聞いたことない」
「僕だって、トリステインはおろかハルケギニアすら聞いたことないよ」
まず最初にわかったのは、リュカもルイズも、お互い聞いたことすらないほど遠く離れた場所の住民であったということだ。
といっても、リュカは早々に、ここが異世界であることに気付いている。二つの月など、元の世界ではついぞ見た記憶がない。
……まあ、妖精界や魔界などといった異世界に足を運んだことのある彼にとって、異世界がもう一つ二つ増えたところで驚きはしないのだが。
その後も、情報交換は続く。
この国は魔法が使えるメイジが貴族となり、魔法を使えない平民を支配している貴族社会であること。メイジはその象徴として杖とマントを身につけること。リュカの身なりを見て、最初は没落貴族か、メイジの真似をしている平民であると思ったこと。
それに対し、リュカも自分の国――というよりは自分の世界のことについて語る。
だがその多くは、ハルケギニアの常識に凝り固まったルイズには、まったく信用に値しないものであった。
特に貴族平民関係なく魔法の素養ある者は魔法が使えるというあたりは、『貴族はメイジであることをもって平民の上に君臨する』というトリステイン貴族の意識の根幹に根付く思想からすれば、決して認められることではなかった。
(……参ったね、これは)
リュカの話のほとんどを信用しようとしないルイズに、リュカは早々に説得を諦めた。それに、このハルケギニアで自分の世界の常識を語っても大した意味はない。彼は話題を切り替えるため、『使い魔』について尋ねる。
そして返ってきた答えは、まず一つ目が、リュカがルイズの使い魔として呼び出されたこと。先ほどのキスが使い魔の契約だったこと。そしてリュカの右手に刻まれたものが、使い魔のルーンであること。
次に、使い魔の役目。一つ、主人の目となり耳となること。二つ、秘薬の材料を取ってくること。三つ、主人の身を守ること。
が――どうやら一つ目の感覚の共有とやらは、出来ていない様子であった。
「秘薬の材料ってのが何だかわからないけど、どういうものか、どこにあるのかを教えてもらえば取りに行けるとは思う。ルイズの身を守るってのは……ま、問題ないか」
なにせ、大魔王を倒した一家の大黒柱である。よほどのことがない限り、遅れは取らないだろう。
だが――
「……あ」
そこで、リュカははたと気付いた。
「どうしたの?」
ルイズが眉根を寄せると、リュカは「あちゃーっ」と顔を手で叩く。
「……これでも僕、多忙なんだよ。城――じゃなかった。家に帰れば仕事が山積みだから、帰らないことには家族が心配するし皆にも迷惑をかける」
「なによそれ? つまり、私の使い魔をやってる暇がないってこと? ……でも残念ね。『サモン・サーヴァント』は使い魔を呼び出すだけで、戻す魔法は存在しないわ」
言いながらも、ルイズは内心で苦虫を噛み潰した気分になっていた。
今、彼は『家族』と言った。彼女の意図したことではないとはいえ、彼をその家族から引き離し、あまつさえ帰すことはできないのだ。これはほとんど、拉致と言っても過言ではないだろう。
彼の言うグランバニアという国は、ハルケギニアの国々とは互いに存在すら知らない国ではあるが――これがもしハルケギニア内の国の人間であったなら、相手の身分次第では確実に国際問題になる犯罪だった。
無論のこと、由緒あるラ・ヴァリエール家の三女がやって良いことではない。
が――そんなルイズに対し、リュカは。
「あ、大丈夫。自分で帰れるから」
などと、事も無げに言ってくれた。
その意味するところをすぐには理解できず、ルイズは一瞬、「え?」と口に出してキョトンとする。その間にもリュカは窓へと向かい、窓を開け放って縁に足をかけた。
「ちょっ……あんた、何を!?」
「今夜は子供達と一緒に妻の手料理を食べる約束をしていてね。そろそろ帰らないと時間がやばい。使い魔の仕事は、明日の朝にでも誰か代理の者を連れてくるから、それで勘弁して欲しいな」
「そーゆーことを聞いてるんじゃなくて……!」
色々と聞き捨てならないことを言われた気がするが、それよりも帰ることと窓から身を乗り出すことに何の因果関係があるのか。そもそもどうやって帰るつもりなのか。
だが、そんなルイズの困惑をよそに――
「ルーラ」
リュカが呪文を唱えると、途端にその体が空高く舞い上がり――すぐに見えなくなった。
唐突にいなくなった自分の使い魔。開け放たれたままの窓からは夜風が吹き込み、ルイズの頬を撫でるばかり。
「リュカって……妻子持ちだったんだ」
いまだ事態の理解が追いつかずに呆然とするルイズが口にできたのは、そんなズレた感想のみだった。
「――ってことがあってね」
それから一時間後――グランバニアの王宮に戻って来たリュカは、妻子と囲む食卓で、ハルケギニアに召喚されてからのことを語っていた。
「あらあら。それは大変でしたね」
「お父さん、そこって面白そう? ボクも行ってみたい!」
「ダメだよお兄ちゃん。明日は習い事があるじゃないの」
「ま、そのうちにね」
小さなテーブルを囲んで妻の手料理を食べる一家の姿は、一国の王族には似つかわしくないほど庶民的であった。
ルーラ……一度行ったことのある町や村に飛んでいく呪文。消費MP8。
一度行ったことがあるなら、妖精界だろうが魔界だろうがひとっ飛びである。
もちろん、異世界ハルケギニアも例外ではなかった。
ちょwwwそこは不思議な力でかき消されろよw
支援
以上、投下終了。お目汚し失礼しました。
「魔界も妖精界もひとっ飛びなルーラなら、グランバニア−ハルケギニア往復も可能かな?」って発想から出てきたネタです。
妻が誰かというのは、まあ口調でバレバレだと思います。
色々リアルで多忙なので、続きがいつ書けるかはわかりませんが、できれば続けたいなぁ。
えーと、ファンタスティックな展開ですな。
ほのぼのといってほしいなwww
乙
好きなときに行き来できるってのは新鮮だw
投下乙。
だからそのタイトルなのかw
次は誰が来るのやら
ごめん、流石に吹いたwwww
確かに魔界からだってルーラでひとっ飛びで帰れるからねw
リュカの人乙です。
あ、なるほど。それで日替わりかw
新しい展開に超wktk。
投下乙。そしてルーラチートすぎ吹いたwww
タイトル見たとき、ふと日帰りクエストを思い出したよ。
>151
俺もずっと待ち続けてる。確か契約したとこで止まってたんだっけか?
日替わりのタイトルに偽りなしですかwwwwww帰るなよwwwwww
激しく乙!
これまでに無いパターンwww
って事は……
ピピンとかサンチョも活躍する……かもしれない
ドラクエ5が来たなら7とかもそろそろ来てもいいころじゃないか
ルーラ失敗して窓から落ちるのかと思ってたんだがw
ところで、作者氏は我が同志と思って間違いないのだろうか?
>>171 ゼロの使いだっけ?
アレは漫画版7じゃなかったっけ?
いや、嫁談義はやめといたほうが……戦争が勃発するw
とりあえず乙でした。先の展開が読めなくて続きが楽しみです
デボラ……おしとやかになったなあ……
【馬鹿は現実を見ていない】
とりあえず一人目(一匹目?)の使い魔が誰かwktkしながら続きを待っておくぜ!
そういや娘のデフォ名はタバサだったっけか
投下乙です。
ルーラで即行帰還に、思い切り噴いたw
契約解除もザギ→ザオリクで足りるな
>>173 魔物じゃなくて主人公勢(というか人)のことだよ
メディルの使いは(原作的に)地味目だから…
ドラクエ3からはゾーマだし5からは王様来ちゃうし…1は竜王様だし…
有名どころが欲しいな〜って
そうだ!言われてみれば奥さんは誰なんだッ!
仲間モンスターも呼ぶなら凄いカオスだが面白くなりそうだな
アルヴィーと間違われるさまようよろいとかゴースト呼んでガクブルなタバサとか
ゆめがひろがりんぐ
様式美で言うとルドマン
これでゴレムス来たら対フーケで夢の ゴ ー レ ム 対 決 が!!
俺は
「メ……」
と言うたびに周囲が無人になるゴロゴロ転がるやつが……
七万のアルビオン兵相手にメガンテ
>>183 しかしメガンテが何かを知らないハルケギニアの連中を前にすれば、
「メ……」で始まる台詞しか喋らないアイツも周囲のリアクションが薄くなるw
鳥山風味のドラゴンを見たら
「この竜、なんだか変じゃない?
妙に太いというか…」
はぐれメタルがあらわれた!
逃げ出した!
ルイズ「・・・」
そして伝説へ
日替わり使い魔というがチェンジは何回まで可能なんだ?
3回ぐらいチェンジすると怖いお兄さんが来たりはしない?
>>187 おさんぽルイズ思い出した。
良い話だ……
ウェールズの為にメガザルを唱えるメガーザとか
シルフィードと意気投合するシーザーとか
ネタは豊富だが作者の技量が試されるな
あとキングスかわいいよキングス
>>188 どこのデリヘルだ
……や、使ったこと無いけど
ふと思ったんだがDQの法則やアイテムとか入れ捲るとゼロ魔側が大変な事になるな
直ぐ思い付くのでタバサママン(方法敢えて記述せず)とか湖の件で乾きの石とか
そういや踊り系を使うモンスター大量に連れて行けば七万人が踊り狂う異常事態も可能なのか、恐ろしい....
代わりの使い魔としてスミスを連れて来られても困るよな
そこでただの可愛いスライムですよ
いざとなったら、触っただけで服だけ溶ける謎の分泌液を出す設定を付加すればいいんだバーニィ!
>>193 初期パーティーからいるスライムだったら・・・
ギーシュとは誰が戦うんでしょ
ちょっと作品を間違えてマダンテを
ネレウス「ギーシュの奴いっつもナンパしおって
フン、色男か、かっこいいつもりか!気に入らない、ひとこと言ってやる!」
ルイズ「あ、ネレウス
貴方まだいたの?貴方との契約だけは解除しちゃったからもう来なくていいわ」
ネレウス「えーーーーーッ!!!」しゅぽーん!
どんな仲間なのか小説準拠でもない限り自由だからな。
キラーマシンとかはぐれメタルも押さえたコレクターかもしれない。
199 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 00:43:11 ID:sepri83Z
そういえば、PS版からだと仲魔に出来るモンスターの種類も増えたっけ。
>>195 恐ろしいことに小説版ではデモンズタワー時点でスラリンLV99。
日替わりでギーガやエミリー、ライオウが来たら涙目だな。
今、恐ろしいことに気づいたんだが、
トリステイン魔法学院だよな?
町じゃなくて学院だと、ルーラに登録されないかも?
登録されてなかったら……。
踊る宝石でキュルケ大歓喜キラーマシンでコッパゲ大歓喜ですよ
>>198 PS2版だと、はぐれメタルはマジで強いからな。
素早さ&身の守り&運のよさ255+全属性完全防御は反則だと思う。
PS2だと、レベル最高まで上げればHPも200ぐらいまで行くし。
>>201 修道院やらネッドの宿屋やら北の教会やらエビルマウンテンやらが登録されるんだから、問題ないんじゃね?
……なぜか山奥の村は登録されないけど。
>>199 仲間になる上限もとっぱらわれたから、70種×3体+イベント仲間4種の実質214体仲間に出来る。
DS版だとあと2種類増える。
……普通に世界征服できる軍隊だな。
何故かマドハンドが召喚され、ネズミ算式に仲間を読んで増えていく
大体一日でルイズ達の世界よりも重くなるくらい増えるんじゃないかな
207 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 00:57:29 ID:40JYBwdg
>
>>191 踊り系を使うモンスター大量に連れて行けば七万人が踊り狂う異常事態も可能
ついつい七万人の“スリラー踊り”を想像してもたww
インドで実写映画化しても同じ結果になるな!
>>207 超MITEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
ポゥ!
チューヤン召喚
「ちゅじゅいてわぁ〜」
orz
>>212 実在の人物はアウト。
何?江頭2:50ネタはだと?
奴はリアルレジェンドだからいいんだよ!!!
アルフを召喚
テレビも雑誌もないハルケギニアじゃ嫌がるだろうなあ
食事は誰かの使い魔を食べるから問題ないな
使い魔に猫がいたっけ?
ロボットならいたかと思ったけど、タヌキだったわ
ああ、アオダヌキの…
ガンパレードマーチのブータがいるよ
>>214 江頭さん、ルイズに床で食べろって言われたら「あ、はい・・・・・」って言って大人しく聞いちゃいそうな気がする。
>>218-220 いや、アルフが使い魔を食うと言っていたんで、ほかの生徒の使い魔に、猫はいたかなぁと。
メルマック星じゃ爬虫類も普通に食用なのよ
すぐ隣の部屋に食いでのありそうなのがのたくってらぁ
>>222 かと思いきや、ギーシュとの決闘や対フーケ、ワルド、七万ではミラクル連発ですね、分かります
もちろんルーンの位置は胸ですね、分かります
>>223 スマン、そういうことか
知らん
ネコ以外にもネズミも食べるよ
初投稿ですが予約がなければ5分後位に投下よろしいでしょうか?
緊張しますが。
>>227 投下しようがしまいが君の自由だが
その前にネタを聞こうじゃないか
支援
快傑ズバット/早川健です。
みなさま宜しくお願いします。
もう寝るので一度しか支援できないのが残念支援!
何度失敗しただろう… ようやく現れた使い魔に対して始めは平民だし外れクジを引いたと思った。
しかしその使い魔はとんだ日本一いやハルキゲニア一だった…
ここはハルキゲニア大陸のトリステイン王国という小国。
トリステイン王国にあるトリステイン魔法学院、敷地内で生徒の1年生が2年生へと昇級する為に
必須とされる使い魔召喚の儀式が行われていた。
実際に必須と言っても魔法を使う貴族には失敗のしようも無い程の事なのだが…
学園の教師であるコルベールには、召喚に失敗しないとは言えない生徒が気がかりだった。
生徒達はうんざりしながら、コルベールは祈りながら一人の成功を待っていた。
「何度失敗したら気が済むんだよ!ゼロのルイズ!」
「何度目で成功するか賭けようぜ。」「成功なんてしないんだから賭けにならないよ。」
罵りや嘲笑の言葉から湧き上がる怒りの感情を押し殺し、
ゼロのルイズと呼ばれる少女は自分の使い魔が現れる事を信じ杖を振るった。
「(お願い!贅沢は言わないから、小さな虫でもいいから来て!)」
無常にも結果は爆発ばかり…
ギャロップ支援!
一向に成功の兆しの見えない生徒に対し見かねたコルベールは
「ミス・ヴァリエール、今日は日が悪いみたいなので後日改めてと言うことでいかがですか?」
と提案する。一人の生徒にばかり時間を割く訳にもいかずコルベールは提案する。
「先生!お願いします。待ってください・・・あと一回、あと一回だけお願いします!」
ここで出来なければ留年は確実だろう。失敗は出来ない・・・
「わかりました。ミス・ヴァリエール・・・もう一度だけですぞ。」
ルイズにあと一度だけのチャンスをコルベールは与えた。
生徒達からは
「どうせ失敗するんだし、もういいじゃないか?」
「使い魔の召喚も出来ないなんて本当にゼロだな!」
「あと一回なんて、お約束のヒーロー物語じゃないんだから、成功しないのが世の常だな。」
「ルイズのダメっぷりはハルキゲニア一だよな。」
と嘲笑われ今まで我慢していたルイズが切れた。
「見てなさいよ!あんた達の使い魔なんて目じゃない位、すっごい使い魔召喚してやるんだから!」
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
呪文を唱え杖を振るうと、今日一番の大爆発が起き辺りは土煙で覆われた。
「何だよ!やっぱり失敗じゃないか!」
「僕の使い魔が失神しちゃった。どうしてくれるんだゼロのルイズ!」
自分達に被害が及べば文句の一つでも出るのは当たり前である。
その様子を少し離れた所から見ていたクラスメイトのキュルケ
「やっぱり失敗しちゃったみたいね。」
キュルケと一緒にいたタバサは
「何かいる…」
土煙が晴れていくとそこに何か影が。
「えっ?じゃあ成功したって事?」
「現れた使い魔、只者じゃない。」
爆発が起こった中心には奇妙な格好をした男が一人たっていた。
男の格好は黒いウェスタンルックに身を包み、白いギターを背負っていた。
そんな萩原流行みたいな格好はハルキゲニアでは奇妙な格好としか取れない。
作者の周りでも十分変な格好には違いないのだが。
「おい。ルイズが変な格好した平民を呼び出したぞ。」
「でも、何かカッコいいわよ。」
「杖持ってないから平民だよな?」
一方ルイズはその男の前へと歩み寄り訪ねた。
「あんた誰?」
変な格好の男は
「俺は私立探偵、早川健だ。」
ここから物語は始まる
短いですが以上です。
まだ駄文しか書けないですが、皆様のご指導ご鞭撻お願いします。
こいつなら、魔法の腕も日本一だろう。
さすがに魔法はチートすぎるので、使えない方向で行こうと思います。
あと、ズバットスーツの制限時間が5分と短いのでどうしようかと、
乙!
ズバットスーツの制限時間>
別に5分でも問題なしだろう、素の状態でも十分強いし。
ガンダのルーンとデルフさえあれば普通に7万殲滅できるんじゃないか?
そういや改めて言われてみると
小ネタ以外で7万殲滅した作品ってあったっけ?
そこはあれだ大胆に調理するんだ
小ネタで、マーダーライセンス牙から板垣総理召喚する話考えてたら眠れなくなった
ズバット召喚したんだしズバット無双でいいんじゃね?
>237
召喚しただけで満足する作者が多いんですよ、ぜひ頑張って欲しい。
どうも、夜分遅くですが第19話書きあがりました。
予定その他が無ければ3:50に投下しますね。
時間になりましたので、投下行きます。
タバサの実家の旧オルレアン公邸。その屋敷の一室にキュルケはいた。
何をするでもなくソファに座って肩肘をつき、窓の外を眺めている。
ふぅ…、と小さくため息を吐く。
彼女は先程から夕食を終えて直ぐに、任務で出て行った友人の事を気にかけていた。
タバサが任務で出かけると言った時、キュルケもまた付いていくと言った。
彼女の事情を知ったが故の気遣いだったのだが、タバサはその申し出を頑なに拒否。
何でも”任務で会わなければならない者がいる”との事。
流石に自分以外の人間を会わせるのは何かと不味いと考えたのだろう。
その後も粘り強く説得したが、タバサは決して首を縦に振らなかった。
「その気持ちだけで十分……ありがとう」
タバサの言葉にキュルケはこれ以上無駄だと言う事を理解し、この屋敷で待つ事にしたのだった。
「でも…」
ポツリと呟き、窓の外を見る。何処までも続く綺麗な夜空に、無数の星と二つの月が踊っている。
「やっぱり、無理にでもついていくんだったわ」
仕方なかったとはいえ…心配は消えなかった。
窓から目を離し、ため息を吐く。
ふと、窓から差し込む月明かりが消えた。何だろう、と思い窓の方を見る。
窓の外に何かが居た。巨大な何かが窓の外にいて、月明かりを遮っている。
それが何か解った瞬間、キュルケは慌てて窓に駆け寄っていた。
「シルフィードじゃないの!?」
窓を開け、外に座っているシルフィードに驚きの声を上げる。
タバサと一緒に任務に向かったはずのこの竜が、何故ここに?
「きゅい〜…」
困惑するキュルケを見下ろしながらシルフィードは悲しげな声を出す。
その様子に何事か理解したキュルケは尋ねる。
「…タバサに何かあったのね?」
「…きゅい」
短く鳴きながら首を縦に降る。
少し待ってて、と言いキュルケは部屋の奥に行く。
暫くし、寝巻き姿からいつもの学生服姿に着替えたキュルケが戻ってきた。
ブーツを履き、窓から身を乗り出すとシルフィードの背中に乗る。
キュルケが乗ったのを確認し、シルフィードは翼を羽ばたかせ、夜空へと舞い上がった。
――トリステイン魔法学院:正門前――
魔法学院の周囲に広がる草原。
その草原も、正門前は今や一つの小さな戦場と化していた。
地面に穿たれた拳の形をした無数の穴、地面に突き刺さった融けかけている無数のジャベリン、
生えている草ごと吹き飛んだり切り刻まれている地面。
それらは巨大化したジョーカーの二メイルほどもある拳や、タバサの魔法で出来た物だ。
そんな中、ジョーカーとギーシュは睨み合っていた。
「アナタ…以外とがんばりますネ〜?」
「モンモランシーの前で無様な姿は晒せないからね…」
「のほほほほ、その気持ちは解りますよ。
それにしても、アナタのゴーレム…ワルキューレでしたか?」
自分の目の目に立ち並ぶ”十体”のワルキューレを見る。
「驚きましたよ…。ジャンガちゃんとの決闘では七体で打ち止めだったそれ…、十体も作れるなんてネ。
しかも…、と呟きジョーカーは自分の身体を見る。
身体に付いた無数の痣…、それはワルキューレに殴られた後だ。
「殴る時に拳を鉄にできるなんて、本当に聞いてませんよ。…どうしてですかネ?」
ギーシュは自嘲気味に笑う。
「いや…大して特別な事はしていないさ。ただ、普通に勉学に励み、特訓をしていただけだよ」
あの決闘での敗北…、そしてモンモランシーとの約束…、
それらは自身の無力さを痛感したギーシュを変えていた。
あまり真面目に聞いていなかった授業も真剣に受けた。
毎日図書館にも通った。
夜遅くまで特訓も続けた。
それらの努力の目的は一つ――”強くなる事”ただそれだけ。
…そんな彼の想いと必死の努力は、自然に自身のメイジのランクを一段上げていた。
ギーシュは目を閉じ、造花の杖を顔の前に寄せる。
「今の僕は『ライン』だ。まぁ、それであの亜人に勝てると自惚れるつもりは無いさ。
ただ…今モンモランシーを守ってあげるには十分だ」
片手で口元を覆い、さも可笑しいといった表情を浮かべるジョーカー。
「勇ましいですネ〜。しかも…ジャンガちゃんには勝てなくても、ワタクシには勝てると?
…お笑いですネ。まァ…彼女の前でいいカッコしたいと言う気持ちは解りますよ。
ですが…ワルキューレの方はそろそろ限界が来てると思いますがネ?」
確かにワルキューレは誰の目にも明らかに限界なのが解った。
青銅の身体は至る所がへこみ、傷が無数に付いており、
かわしきれなかったジャベリンが突き刺さった物もいる。
それでもギーシュは笑った。
「最後の最後まで引くつもりは無いさ」
その言葉にジョーカーも笑った。
「のほほほほ、それでは彼女の前で徹底的にボコってへこませて上げましょうかネ?」
ジョーカーはワルキューレ目掛けて、連続して拳を繰り出す。
そのワンツーパンチを、ワルキューレは巧にかわす。
「むむむ?ボロボロなのに、ちょこまかと…」
イライラしながら、左手を繰り出す。
その左手をワルキューレが六体係りで受け止めた。
そして、残る四体のワルキューレはジョーカーの目の前に迫る。
「へ?」
呆然とそのワルキューレを見詰めるジョーカーの顔面に、ワルキューレ四体の鉄になった拳がめり込む。
「あれーーー!?」
素っ頓狂な声を上げ、ジョーカーは後ろに吹き飛ぶ。
当然頭の上のタバサは宙に放り出されたが、全く動じずに『レビテーション』を使い、優雅に着地した。
吹き飛んだジョーカー目掛けて十体のワルキューレは一斉に突撃する。
その突撃に反応し、タバサが杖を振った。氷の壁<アイス・ウォール>が地面から迫り出す。
突如現れた氷の壁に、ワルキューレはその行く手を遮られる。
元々笑っているような形の口の端を更に吊り上げてニヤリと笑い、
ジョーカーは右手を大きく振りかぶり、氷の壁を殴りつけた。
一瞬で氷の壁は叩き割られ、氷の欠片が飛ぶ。
氷の欠片は散弾の威力を持ち、ワルキューレを飲み込んだ。
ハリネズミの様に全身を串刺しにされ、ワルキューレは一体残らず地面に倒れて消滅する。
それだけで終わらず、氷の散弾の幾つかは更にギーシュとモンモランシーへと飛ぶ。
モンモランシーが慌てて杖を振ると、水の壁が二人の目の前に現れる。『ウォーター・シールド』だ。
しかし、氷の散弾はその程度では止まらない。水の壁を突き破り、二人に襲い掛かる。
その光景にモンモランシーはおもわず目を閉じた。…しかし、氷の欠片が飛んでくる様子は無い。
どうしたのだろう?…そう思い、恐る恐る目を開けるモンモランシーは驚愕に目を見開く。
「ぐっ……」
「ギーシュ!?」
自分の前で仁王立ちとなり、その身で氷の欠片を受け止めたギーシュの姿が在った。
苦痛に顔を歪め、地面に膝を付く彼にモンモランシーは慌てて駆け寄る。
酷い怪我だ、早く治療しなければ…。
モンモランシーは急いで『治癒』を掛けようとした。
「伏せるんだ、モンモランシー!」
「きゃあ!?」
ギーシュがモンモランシーに覆い被さり、強引に地面に伏せさせる。
次の瞬間、二人の頭上を物凄い勢いで何かが過ぎ去り、後方で轟音が響いた。
パラパラと土の欠片が降り注ぎ、二人を顔を上げる。
轟音はジョーカーの右手が地面を強かに殴り付けた物。
降り注ぐ土は、地面を殴り付けた勢いで宙に舞い上がった物。
モンモランシーは恐怖に身体を振るわせた。…今のパンチをまともに受けていたら。
恐らくは紙のように吹き飛ばされ、良くて大怪我…悪ければ……、想像したくない。
「おんや〜?惜しかったですねェ〜…」
呑気な声に二人はジョーカーへと視線を戻す。笑っていた。
その態度に恐怖心を押さえ込むほどの怒りを覚え、モンモランシーは声を荒げる。
「随分と卑怯な真似をするじゃないの!?」
「卑怯?いや〜そんな言葉が飛び出すとは思いませんでしたネ〜。
今、ワタクシ達がやっているのは、アナタ方が暇潰しにやるような決闘ごっことは違うんですよ?
純粋な”殺し合い”です…。傷付いた相手の治療を大人しく待ってあげる訳無いじゃないですか〜、のほほ」
「くっ…」
もっともらしい意見だが、言っている奴がああでは納得がいかない。
モンモランシーは杖を掲げ、ルーンを唱える。
空気中の水分が凝縮し、子供の頭ほどの大きさの水球が生まれる。
次いで杖を振り下ろすと、水球はジョーカー目掛けて飛んだ。
高密度に凝縮された水球は鉄の硬度を有し、ジョーカーへと襲い掛かる。
しかし、その水球をジョーカーは片手で難なく受け止め、握り潰した。
拳の隙間から水がポタポタと零れ落ちる。
「のほほ…ワタクシの相手をしたいのであれば、ジャベリンの一本ぐらい作ってほしいですねェ〜…」
片手で口元を押さえ、余裕タップリの調子で嘲笑うジョーカー。
対してモンモランシーは悔しそうに唇を噛む。
争い事が嫌いな彼女は、攻撃の呪文に関しては殆ど学んでいなかった。
せいぜいギーシュのお仕置きに使っていた水攻めと、今放った水球ぐらいだ。
『治癒』が使えても今目の前の幻獣が言った通り、それを相手が許してくれたりはしない。
今この場での自分の無力さを思い知らされ、モンモランシーは更に強く唇を噛み締める。
「さて…そろそろ終わらせるとしましょうか。ジャンガちゃんも意外とてこずっているようですし、
お手伝いに行かなければなりませんからねェ〜…」
そう言ってジョーカーはタバサを見る。
「と、言う訳で…シャルロットさん?仕事をちゃんとしたと言う事実も必要でしょうから、
アナタに止めは譲りますよ。ちゃっちゃと終わらせちゃってくださ〜い♪」
タバサは相槌を打つでもなく、ただ黙ってモンモランシーとギーシュを見つめる。
どこまでも感情を窺えない碧眼…、その威圧感にモンモランシーは圧倒された。
同じ魔法学院の学生……そんな風に思っていたが、今の彼女は違う。
なんと言ったらいいのだろうか…?
自分達とは根本的に生きる世界が違う者…、そんな雰囲気が今の彼女にはあった。
そう言えば、先程からあの幻獣は彼女の事を『シャルロット』と呼んでいる。
『タバサ』という名前に常日頃、疑問を感じていたが、やはり偽名だったのだろうか?
なら偽名を使っているのは何故?留学と関係があるのか?
唐突にタバサは杖を振りルーンを唱える。
彼女の杖の動きに合わせて二本の氷の槍が生まれ、彼女の周囲を回りだす。
その様子にギーシュはモンモランシーのマントを掴んだ。
「ギーシュ?」
「モンモランシー……逃げてくれ」
その言葉にモンモランシーは表情を凍りつかせる。
「バ、バカ言わないでよ!?そんな事、死んでもお断りよ!
何?私さえ無事なら自分は死んでも構わないって言う訳?バカ!
私が生き残れたって、あんたが死んだら…死んだら…、目覚めが悪いじゃないの…」
「……」
涙ぐむモンモランシーを見て、言葉が無いギーシュは俯く。
その光景を見てジョーカーは笑う。
「のほほほほ、美しいクライマックスですねェ……だが、どうやら観客は悲劇をお望みのようだ…」
そう言って上空のガーゴイルを見上げる。その視線に答え、ミョズニトニルンの声が響く。
”そうだねぇ…愛する二人が互いに庇い合い、そして死んでいく…。最高のシチュエーション――悲劇じゃないさ”
実に楽しそうな声だった。その楽しそうな声にルイズは心底怯えた。
こんな…殺し合いに、命が奪われるかもしれない事に、どうしてここまで楽しげな声が出せるのだろう?
異常だと思った。そして、こんな奴らが自分をどう利用するのか…と考えた。
と、ジョーカーの声が響く。
「では、シャルロットさん……やっちゃってくださーーーい!」
その声にルイズは我に返った。
眼下のタバサを見据え、声を張り上げる。
「タバサ!やめてーーー!!!」
ルイズの叫びも空しく、タバサは杖を振り下ろした。
タバサの周囲を回っていた氷の槍がギーシュとモンモランシーに向かって飛ぶ。
槍が迫る。
敵わないと解っていても、モンモランシーは水球を作るべく杖を振ろうとする。
槍が迫る。
ギーシュはそんなモンモランシーを、ボロボロの身体で庇うように覆い被さる。
槍が迫る。
モンモランシーは叫んだが、ギーシュは動かない。
槍が迫る。
モンモランシーは涙の溢れる目で槍を睨みつけた。
――次の瞬間、氷の槍は突如飛んで来た炎の球に跡形も無く溶かされた。
突然の事に、一瞬…その場の誰もが目を疑い、呆然と立ち尽くす。
唯一、タバサだけは平然としていた。
ジョーカーは困惑の表情を浮かべる。
「な、な、なんですか!?いきなり、横槍を入れるなんて…誰ですか!?」
辺りを見回す、…が誰もいない。
”闖入者は上だよ…”
「なんですと?」
ミョズニトニルンの言葉にジョーカーは慌てて上を向く。
そこにはガーゴイルとケイジィ…、そしてタバサの使い魔のシルフィードがいた。
そのシルフィードの背中に見慣れない人影が見えた。
シルフィードは急降下し、モンモランシーとギーシュの横に降り立つ。
背中の人物は優雅な動きで、二人の横に降りた。
「随分と大変な事になっているわね…」
「「キュルケ」」「ツェルプストー」
モンモランシーとギーシュ、そしてルイズは異口同音にその人物の名を口にした。
キュルケは二人を見て小さく頷き、タバサを見た。
タバサは無表情だったが…内心は驚きを隠せなかった。
まさか、シルフィードが彼女を連れてくるとは、彼女でも思いもよらぬ事だった。
無言のタバサを見つめながらキュルケは悲しそうな表情をする。
「…これが、あなたの今度の任務?」
「……」
頷く事すら出来なかった。自分の事情を知った彼女に見られたのはとても辛かった。
微動だにしないタバサをキュルケはただ黙って見つめる。
彼女はただ…手伝いに来ただけのつもりだった。
家の事情は気になるが、危険な任務で自分の友人が危ない目にあっているのであれば、助けたい。
それは彼女との長い友人としての付き合いからくる純粋な思いだった。
しかし…来てみれば、彼女の思い描いていた光景とは、まるで状況が違っていた。
学園前の草原でタバサが共にいるのは、ガーゴイルと巨大な道化師のような幻獣。
そして、カゴの様な幻獣に捕らえられたルイズ、そして傷付いたギーシュとモンモランシーだった。
タバサのジャベリンが二人に向かって飛んだので、キュルケは咄嗟に『ファイヤーボール』を唱えたのだった。
支援、しかし眠い…
「いきなりの横槍……感心しませんねェ〜?」
突然掛けられた声にキュルケは前を向く。
巨大な幻獣が自分を見ている。
「あなたは?」
「あ、ご紹介が遅れました。ワタクシ、ジョーカーと申します。以後、お見知りおきを…。
もっとも…再びお会い出来るかどうか解りませんがネェ?」
そう言って口元に手を添え、さも可笑しいといった表情をする。
キュルケはそんな相手の態度には微塵も関心を示さず、ただ黙って杖を突きつける。
「答えてもらうわ。タバサに一体どんな任務を命じたの?」
「ふむ〜ん?事情を知っていらっしゃると…。他人のお家の事情に首を突っ込むなんて……マナーがなってませんよ?」
「答えなさい」
キュルケは脅しを含めた口調でジョーカーに命令する。
「おお、怖い怖い。…まァ、率直に言ってしまえば、あのケイジィちゃんに入っている可憐な少女…、
あの子を連れ帰るのがワタクシ達の目的でして。
シャルロットさんには今回の一件の目撃者の”始末”を頼んだしだいでして…。
それに、今回の任務の報酬は…な〜〜〜んと!”母親の心を戻す薬”なのですよ!」
キュルケの目が見開かれる。
「…なんですって?」
「のほほほほ、いやいや…報酬の内容にシャルロットさんも素直に従ってくれましてネ。
此方としては嬉しい限りで……て、ひょおっ!?」
悲鳴を上げ、ジョーカーは飛び退る。
キュルケの放ったファイヤーボールが彼の居た場所を破壊する。
「これはこれは……随分と気が短いですネ?」
「…あの子をどこまでいい様に使えば気が済むの、貴方達は!!!」
キュルケの怒声にその場に居た全員が息を呑んだ。
彼女の身体から立ち上る怒りのオーラは今や、何者をも飲み込み燃やしつくさんとする炎のようだ。
ジョーカーは多少気圧されたが、直ぐに調子を取り戻し笑う。
「ふむ…、大分お怒りのご様子ですね。まァ…どの道、この場を見られたからには見過ごせませんよネェ〜?」
楽しそうに笑うジョーカーはタバサを振り向く。
「シャルロットさん、あの炎使いのメイジ…始末してくれませんか?」
タバサの目が驚愕に見開かれ……次いで殺意に近い敵意の含まれた目でジョーカーを睨む。
そんなタバサの視線も何処吹く風…、ジョーカーは涼しげな表情で受け流す。
「おんや〜?その目はなんでしょうかネ……ひょっとして”嫌だ”とでも?
いけませんネ…、任務には忠実に、それが北花壇騎士のモットーのはず。
それに薬……ほしくないんですか?」
ジョーカーの言葉にタバサは更に強く歯を噛み締める。
確かに薬は欲しい……母親の心の病は何時戻るとも知れない重い物だ。
これを逃せば次は何時機会が訪れるか分からない。
…それに、自分はもう後戻りの出来ない道を選んでしまったのだ…。
今更、友人に呼ばれても…道を引き返す事はできない。
タバサは覚悟を決めた。
「それがあなたの答え…ね」
杖を構えたタバサにキュルケは悲しくなった。
シルフィードも悲しげな声で鳴いている。
恐らく、シルフィードが自分をここに連れてきたのは彼女を止めて欲しかったからだろう。
…自分だって、止められるならば止めたい。
「ねぇ、タバサ……どうしてもやるの?」
「…私は母さまを戻したい…」
キュルケは悲しげに首を振った。
タバサの頑固さは彼女が一番良く知っている。恐らく、言葉では止まらないだろう。
ならば――
「…少し手荒に行くわよ、タバサ?」
「……」
対峙した二人は、互いの友情の始まりになった仕組まれた決闘を思い返した。
ズドーーーーン!!!
「な、何!?」
「うわ!?」
「きゃあ!」
「ひょーーー!?」
突如響き渡った爆音に全員は一様に悲鳴を上げる。
そして、爆音の方向に顔を向ける。
「何よ…あれ?」
キュルケは呆然と呟いた。
巨大な炎の塊が本塔を挟んだ、学院の裏側から立ち上っている。
あれだけの巨大な炎をキュルケは未だ嘗て見た事がなかった。
呆然としていると、ジョーカーの声が響いた。
「…あれは、あのツルツルさんですか…」
キュルケはツルツルと聞き、コルベールを思い浮かべた。
「ジャンガちゃん…大丈夫ですかネ?むむむ…心配です」
そう言ってジョーカーはキュルケに向き直る。
「ゆっくりと見物するつもりでしたが……どうやら、その暇は無いようですネ。
しかたありませんネェ……ここまでするつもりはありませんでしたが、いいでしょう。
ワタクシのキュートなパワー、お見せしましょう!!」
叫んだ瞬間、ジョーカーは再び闇のベールに包まれ、その形を変えていく。
「のーっほほほほほほほほ!ジャンガちゃんが心配ですのでネェ…。
ワタクシのキュートなこの姿…『フラワージョーカー』で軽く捻り潰すとしましょう!」
闇のベールが取れ、花のような姿に変身したジョーカーは高らかに笑った。
支援
以上で投下終了です。
え〜何というか…、今回ジャンガ出てませんね(爆)
ルイズも殆ど空気だし…。…主役なのに、二人のこの扱いは一体…(汗)
いや、勿論活躍しますよ?ええしますとも!
次回こそはジャンガとコルベールの対決をお送りします、はい。
では、今回はこれで…アデュー!
>>258 乙です
コルベール先生の活躍が早く見たいw
>>182 >>これでゴレムス来たら対フーケで夢の ゴ ー レ ム 対 決 が!!
見てえ!超見てえ!
5分後、第11話を投下させていただきます。
よろしい、ならば支援だ!
「閣下。ただいま、兵の準備が整いました。」
「いつもながら仕事が速いな。どこかの花火とは大違いだ。」
「全てはレコン・キスタの悲願成就のため、ひいては閣下のため。」
「どうだかな。君は所詮、あの方の命で余の部下になっているに過ぎない。
役に立たぬと判断したら、忠義者の仮面を脱ぎ、反逆者へとはや代わりするのであろう?」
「・・・」
「まあよい・・・少なくとも君如きでは余に指一本触れることは出来ぬのだから・・・」
「仰るとおりで。」
「では始めるか・・・我らが目的・聖地奪還の第一歩となる・・・聖戦を・・・」
閣下と呼ばれた男の右薬指にはめられた指輪が、禍々しく輝いた・・・
トリスタニア宮殿に凶報がもたらされたのはそれから間も無くの事であった。
「アルビオン王国が神聖アルビオン共和国と名を変え、我が国に出撃!
恐ろしい数と速度で、まっすぐこのトリスタニアを目指しているとの情報です!!」
「な・・・何だと・・・」
「すぐに姫とミスタ・メディルに連絡だ!それと軍の高官を緊急招集!!」
「皇太子殿は、申し訳ありませんが、地下牢へお隠れを。」
「我ら二人がお供します。」
「かたじけない。」
三人に、情報が伝わったのはその十分後だった。
「そんな・・・幾らなんでも早すぎるわ・・・」
「恐らくグレートライドンが一枚噛んでいるのだろう。」
「そうか・・・あの技で兵をかき集めて・・・」
「とにかく、王室へ戻りましょう。」
王室へ戻ると、そこには気位ばかり高そうな高官達が雁首揃えて待っていた。
「状況は?」
「敵軍到着まで、残り2時間程かと。」
「奴ら・・・布告も無しに仕掛けるとは・・・貴族の魂を捨てた外道め・・・」
「戦にルールなど無い。あるのは殺すか殺されるかと言う真実だけだ。」
「貴様、何を・・・」
「布告があって挑まれるのなら満足か?ルールの下殺されるならそれでいいのか?
戦などと言うものに、正当性を求める方がどうかしている。」
「黙れ!!一貴族の使い魔の分際で!!」
「口を慎め!!ミスタ・メディルはこの戦局を左右し得る、最重要人物の一人なのだぞ!!」
マザリーニが一喝し、先程の高官を黙らせる。
「しかし、不思議だ。幾らなんでも敵の到着が早すぎる。」
彼らは知るはずもないが、敵軍は異世界の加速魔法を使い、速度を限界まで上げていたのであった。
「誰か、ミスタ・コルベールの元へ行ってくれませんか?彼の研究がこの国を救うことになるかもしれないのです。
本意ではありませんが、いざとなったら強行手段に出ることを許可します。」
「分かりました。すぐに部隊を編成します。」
と言って、高官の一人が退室する。
「ミスタ・メディル、勝算はありますか?」とマザリーニ。
「あの魔法を試す格好の的だ。」
その場の全員がメディルの物言いに戦慄を覚えた。
彼の言葉がハッタリではなく本心だと言うことは子供にでも分かるほどだ。
夥しい数の軍勢を試し撃ちの的呼ばわりとは・・・
「陛下、お願いがあるのですが。」
「何でしょう?」
「念の為、魔力・・・否、こちらでは精神力か。それを回復する薬を用意していただきたいのです。」
「あんたが精神力の残量を心配するような魔法ってどんだけよ・・・」
ルイズは未だかつて、メディルが精神力切れを起こした所を見たことが無かった。
90分後・・・
レコン・キスタ進軍に備え、学生を除く(ルイズは例外)、国中のほぼ全てのライン以上のメイジと兵士が配備されたが、その数は数千とあまりにも頼りなかった。
一応メディルが召喚した魔物もいるが、その数は100匹ほどだった。彼とて僅かな時間で大群を用意する事は無理なようだ。
「全てはメディル殿の双肩にかかっていると言うわけか・・・」
「コルベールの協力次第では、頭数くらいは埋められるはずだがな。」
その頃、魔法学院のコルベールの研究所の表では派遣された部隊とコルベールがもめていた。
「貴殿も分からぬ人だ!!今は非常時なのだぞ!!」
大声で怒鳴るのは、この部隊の女隊長アニエス。剣と銃の扱いにおいて、彼女の右に出るものはそういないと評される人物だ。
「いかに国民を守るためとはいえ、あれを戦に使用すれば、将来その何倍もの人が血を流すことになる!!
こんな簡単な事が何故分からないんだ!!」
「拒むのならば仕方が無い。貴殿を国家反逆罪で逮捕・処刑するがそれでも良いか!?」
「やれるものならやってみなさい。この『炎蛇』、一度は戦場を退いたとはいえ、そう簡単には・・・」
言いかけてコルベールは後方へ跳んだ。
派遣された部隊が一瞬で炎に包まれ、消し炭と化した。
「流石に勘がいいな。炎蛇。会えて嬉しいぞ」
燃え盛る炎の奥に見えたのはオークやオーガ等を50程侍らせた筋骨隆々とした白髪の男だった。
それはコルベールの見知った人物だったが、その人物ではあり得ない特徴を持っていた。
「メンヌヴィル・・・貴様・・・どうして・・・」
彼の名はメンヌヴィル。『白炎』の二つ名を持つ元下級貴族の火の傭兵メイジで、かつてコルベールの隊で副官を務めていた者だ。
「どうして?決まってるだろ隊長殿。お前の肉が焼ける臭いを嗅ぎたいからだ。」
「そうではない・・・貴様の両の眼は確かにこの私が奪ったはず。それが顔の火傷諸共消えているのはどういうわけだと聞いている!!」
コルベールの問いに、メンヌヴィルは笑いながら答えた。
「知りたいか?簡単な事だ。俺はレコン・キスタの守護神に魂を売ったのさ。
お陰で顔の傷も両目も元通り。低賃金のトリステインを裏切った甲斐があったというものだ。」
「貴様・・・」
怒りに燃えるコルベールを見ても、依然態度を変えぬまま、配下に指示を出した。
「お前達、手出しはするな。代わりに学院の生徒共を好きなだけ可愛がってやれ。
ここはお前達のために用意されたバイキングだ!」
「させるか!!」
「それはこっちの台詞だ!!」
白炎が炎蛇に向けて炎を放つが、容易く防がれる。
「邪魔をするな!!」
「もう手遅れだ。」
「何!!?」
「既に亜人達の小隊が学院の中にいくつか侵入している。オールド・オスマンも終わりだ。」
「そう簡単に彼を討ち取れるとでも?」
「取れるさ。奴の担当は間抜けな亜人共ではない。
レコン・キスタで最も恐るべき、最凶最悪の部隊・・・その名も・・・」
オールド・オスマンはまだ気づいていない。学院の中に亜人が入り込んだことに。
学院長室の窓から射す日差しの下でのんびりと昼寝している。
彼は気付かない。部屋の扉が音も無く開いたことに。
誰も気付くはずがない。誰もいないようで、実は音も無く部屋に入った者がいることになど。
オスマンはまだ眠っている。音も無く見えない刃が振り下ろされようと言うのに。
しかし、斬られたのは彼が座っていた椅子だけだった。
そして見えない敵の真横から強烈なファイアボールがヒットし、そいつは音も無く倒れた。
「どんなに姿や音、殺気を隠しても、このわしを暗殺するなど到底無理な話じゃ。年じゃからちと反応は遅れたがの。」
「ほう・・・流石だな・・・遅ればせながら自己紹介と行こう。我らはレコン・キスタに仇なすものを影から消し去る、
沈黙と闇の軍勢・・・その名も・・・」
「レコン・キスタ暗殺剣士隊だ!!」
解説
レコン・キスタ暗殺剣士隊
光を屈折させる魔法のかかった鎧・ステルスメイルをまとい、レコン・キスタの邪魔者を暗殺するだけでなく、
時として裏切り者や失敗者の処刑を行う本作オリジナルの軍団。
剣等の武器も同じ魔法がかかっている。
武器・鎧にはサイレントの魔法がかけてあり、移動や暗殺の際に音が出ない仕組み。
また風の魔法が内部にかけてあり、隙間の無い鎧の着用者には絶えず酸素が供給されている。
隙間が無いのは、敵に気付かれないようにするため。
兜にも隙間が無い構造だが、マジックミラーの様に内部からは外の光景が見えるし、鎧を着けた者同士も見えるようになっている。
隊員達は一筋の光も射さない闇の中でも獲物を殺せるよう、殺気を最大限に隠せるよう訓練を受けている。
メイジは魔力を察知されると言う理由で入隊は不可能である。
彼らに狙われた者は犬のように臭いで追うか、蛇のように体温で追うか等して、彼らの存在を知り、
返り討ちにしない限り次の朝日を拝むことは出来ない。
なお、サイレントのかかった鎧を着用しているのに、どうして声が出せるのかは突っ込んではいけない。
フィクションにご都合主義は付き物である。
投下終了です。オリジナル設定が出ましたが、そんなに重要でもなければ出番も短いです。
家臣が吹っ飛んだのに淡々とすますウェールズ・・・まあ、どの道翌日には散っていた命ですし。
>>毒の爪の人
乙、フラワージョーカーのウザさはマジ異常。
必殺技会得した三人がかりでもレベルとかしっかり上げないと簡単返り討ちされるし。
「霊魂鬼珠太暗殺剣士隊……」
「知っているのか、雷電」
「うむ……
>>265 乙です
ふとした疑問
wiki登録時には、解説まで入れてもらえるんですか?
wiki派の人も解説欲しいかなぁというか、
自分がスレで見逃したら解説も欲しいなぁと思いましてw
う〜ん・・・感想に困ると言うか・・・
2ch見てる人のためのまとめなんだからwiki派とか考慮する必要なし
見逃したなら過去ログあがるの待つか誰かからdatでももらおう
そうだな
まとめはあくまでも2ちゃん住民のためのものだよな
タツノコ系キャラを召喚したらやっぱりルイズに二号的な格好をさせて戦わせたほうがいいのだろうか
タツノコ系召喚は考えたことある
最後に爆発して三人乗り自転車で逃げたりオシオキされたりするのは
ジョゼフ、イザベラ、シェフィールドか、キュルケ、ルイズ、タバサか
>>270 そっかぁ
でも、本文で説明し切れなかった分の補足なんだろうし、入れて欲しいなぁ
>272
ゆりね召喚してルイズを鴉に
ぎゃくにルイズがゆりねでサイトを鴉にするというのも
>>275 つーか、本文で説明仕切れなくて、後付けで解説付けるなんて下の下だろう。
あくまで本文で説明するべきことじゃないのか。
そうでもないと思うが。本文で説明するほどでもないが何となく気になりそうなこともあるし
クロス元がマイナー作品の場合は、その作品の解説くらいは載せてもいいのでは、と思います
せいぜい数行の文章入れるか入れないかにそこまで排他的にならなくても
281 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:10:12 ID:T48dOuEP
…ところで、今はあまり人がいらっしゃらないようで
14:20くらいに第九話を投下しても、よろしいでしょうか?
282 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:20:31 ID:T48dOuEP
許可いただけておりませんが、投下開始いたします
馬鹿力のルイズ
盗賊・土くれのフーケの捜索隊に志願した
ぱからんぱからん、馬車に揺られて、フーケが目撃された場所へと向かう
キュルケとタバサも一緒に、ロングビルの案内で、ぱからんぱからん、進んでいく
馬車の上を、タバサの使い魔・シルフィードが飛んでついてきて
ちゅうちゅう、いつの間にやら紛れ込んでいたモートソグニルも加わって
四人と二匹、フーケの隠れ家に向かっていく
「…忘れないでー。俺の事忘れないでー」
一応、デルフも持ってきているが、これは人数に数えていいものか
がさがさ、森の中進んでいく
もう少しで、目撃証言のあったフーケの隠れ家
四人は、次第に緊張していく
「……あそこ、です。あの小屋に、フーケが入っていくのを見たという証言があります」
暗い暗い森の奥
小さなボロ小屋を見つけたルイズたち
あそこに、フーケが入っていったらしい
と、なると…悪魔の種も、あそこにあるのだろうか?
せめて、フーケが見付からなくとも、悪魔の種だけは取り戻したい
それが、オールド・オスマンが出した答えだった
……とにかく、小屋の中を確認しないと
と、その前に、念のための確認を
「悪魔の種って、確か宝石だったわよね?」
「宝石と言いますか…宝石、のような見た目をしていますね」
悪魔の種
魔法学院の宝物庫に収められていた、用途不明のマジックアイテム、と言う事になっている
と、言う事になっている、と言うのは…そもそも、マジックアイテムではないらしいのだ
詳しい事はわからない、しかし、それは悪魔の種と呼ばれており
ディレクト・マジックの魔法に反応はないものの、何か特殊な力を秘めていると言われていた
もっとも、誰にも使い方がわからない為、ただの宝石もどきとしか認識されていないのが現実だが
一度だけ見た悪魔の種を、ルイズは思い出す
確かに、あれは宝石みたいな見た目をしていた
特別綺麗だったかどうか、までは覚えていないけれど
283 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:21:46 ID:T48dOuEP
まずは、タバサが小屋の中の様子を窺う事になった
シルフィードには、すぐ傍で待機しているよう指示を出し、タバサはそっと、小屋に近づいていく
「………?」
「ルイズ、どうかしたの?」
「いえ…別に」
…何だ?
先ほどから…森の中に入った辺りから、妙な感覚を感じていたルイズ
よくわからないけれど…体の内側から、妙な感覚が湧き上がってくる
感覚?
いや、これは
(…私の、中で…何か、が)
何かが、意思を伝えようとしている
…使い魔が、何かを感じ取っている?
その感覚の意味がわからず、ルイズは小さく首をかしげる
………と、タバサが、合図を出してきた
…小屋の中には、誰もいなかったようだ
「ミス・ロングビル。私たち、小屋の中で悪魔の種を探してきます」
「わかりました。私は、ここでフーケが現れないか見張っておきますね」
無理はしないでください
そう、心配そうに言ってきたロングビルに、わかりました、と頷くルイズとキュルケ
ちゅちゅう
ロングビルの肩にちょこん、と乗ったモートソグニルも、心配そうにルイズたちを見つめてくる
「ミス・ロングビルこそ…無理をしないでくださいね。いざとなったら、すぐに逃げてください」
「あなたたちを置いて、逃げるわけには行きませんよ。それに、私も没落した身とは言え、メイジなんですよ?」
杖を見せつつ、微笑んでくるロングビル
それでも、相手は土くれのフーケ
あの巨大なゴーレムを前にしては、並の魔法では太刀打ちできまい
…あの巨大ゴーレムの片脚を両断してしまったルイズが異常なのである。ありとあらゆる意味で
ルイズはそっと、デルフを鞘から抜いて手に持つと、キュルケと一緒に小屋に向かっていく
「デルフ、ちょっと静かにしていてね」
「わーってらぁ。いくら俺でもそれくらいは空気読む」
かたかた、小さく音を立てながら、ルイズに答えるデルフ
小屋の付近で待機していたタバサと合流し…三人と一振りは、小屋の中へと入っていった
「………」
小屋に入っていく三人の背中を見送って…ロングビルは、小さくため息をついた
ミス・ロングビル
それは、偽名
オールド・オスマンの秘書は仮の姿
彼女こそが、土くれのフーケ
巷を騒がせる貴族しか狙わない盗賊・土くれのフーケ
そんな彼女は、今、少し憂鬱を感じていた
…魔法学院から、悪魔の種を盗み出した時…キュルケとシエスタを、危険な目にあわせてしまった事だ
あの日、あの時
ルイズが、宝物庫の壁を、爆破してくずしてしまった、その瞬間
支援
285 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:22:38 ID:T48dOuEP
…チャンスだと思った
どうやって突破したらいいものか、悩んでいた宝物庫の強固な固定化
それを解いてしまった、ルイズの爆発魔法
原理や理屈なんて、どうでもいい
とにかく、チャンスだったのだ
固定化がかけ直される前に、中の悪魔の種を頂く
すばやくゴーレムを作り出し、さらに壁を崩しにかかった
…夢中になっていたため、気づかなかった
ゴーレムの足元に、キュルケとシエスタがいただなんて
シエスタは平民だし、キュルケも貴族とはいえ、まだ少女
その二人を、危険な目に合わせてしまった
土くれのフーケと呼ばれて、大悪党と呼ばれる彼女
しかし、根っからの悪党ではない
貴族の屋敷から色々と盗み出す時だって、なるべく怪我人は出さないようにしていたし、死人なんて持っての他
…人殺しになどなってしまったら、故郷で待たせている妹に、顔向けできないから
そうだと言うのに、目先の宝に意識を奪われ、二人を危険な目に合わせてしまった
ルイズが、信じられない程の身体能力を見せ付けずにいたら、二人は間違いなく死んでいた
どう、詫びたらいいのかわからない
いや、詫びる事などできないのだ、正体を知られるわけにはいかないから
せめて…せめて、悪魔の種はこのまま返そうか、フーケはそう考えていた
いざ手に入れた悪魔の種、しかし、フーケもその使用方法はわからなかった
宝石として売りさばく事もできるだろうが…大した値も、つきそうにないし
(…まぁ、あれを無事持ち帰れば、あの子たちも評価されるだろうしね)
それが、せめて自分に出来る詫びだろう
フーケは、三人が入った小屋を見つめながら、そう考えた
…そうだ
このまま、三人が悪魔の種を持って小屋を出てきて
後は、魔法学院に帰ればいい
ただ、それだけでいいのだ
…そう、考えていたのに
「…ちゅ!?ちゅ、ちゅちゅ!!」
「……ん?」
ちゅうちゅう
フーケの肩に乗っていたモートソグニルが、警戒するように辺りを見回しだした
そして、フーケに、必死に何かを伝えようとしている
「…どうしたんだい?」
「ちゅちゅーーー!!」
鼠の言葉などわからない
一体、何を伝えようとしているのか
フーケは、首をかしげ、直後…
「………!?」
背後に生まれた、殺気に
杖を構え、急いで振り返った
286 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:24:43 ID:T48dOuEP
…時を少し、巻き戻して小屋の中
悪魔の種は、あっけなく見付かった
悪魔の種が収められた箱は、蓋をあけたまま放置されていたのだ
中には、きらきら、悪魔の種がころころと、いくつも収められている
「間違いない、これだわ」
宝石のような見た目のせいか、キュルケが明確に、その見た目を覚えていた
ルイズのおぼろげな記憶とも、一致する
「ん〜?なんだこりゃ。これのどこが種なんだ?」
「さぁ?でも、一応悪魔の種、なんて呼ばれているのよね」
ひょい、と何気なく、ルイズはいくつかの悪魔の種のうちの一つから、少し大きめの物を手に取った
…瞬間
ルイズの頭に、流れ込む情報
「……え?」
「ルイズ?どうかしたの?」
何?
何だ?これは?
「ガルム…ハンマー?」
「は?」
ルイズが呟いた言葉に、キュルケもタバサも首をかしげた
口にしたルイズ自身も、その意味はよくわからない
ただ、情報だけが、頭に流れ込んできて
(え…?これが、武器だって言うの?)
頭に、とめどなく流れてくる情報
それは、この悪魔の種が武器である、と伝えてきていた
この宝石のような物の、どこが武器なのだ?
不思議に思い、ルイズは他の悪魔の種にも手を伸ばした
刹那
「え?」
287 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:25:42 ID:T48dOuEP
悪魔の種が、ぽう、と光を発した
大きめの悪魔の種と、小さめの悪魔の種
そのどちらもが、光りを発して
光が収まった、その瞬間
「……えぇえ!?」
ルイズの手の上に乗っていたはずの、悪魔の種
それが、忽然と消えてしまった
「え?ど、どうなってるのよ!?」
「…消滅、した?」
慌て出すキュルケ
タバサも、どうやら困惑しているようだ
…そんな、中
ルイズは一人、妙に冷静だった
悪魔の種は、消えてしまった?
いや、違う
「…私の、中、に?」
自分の中
具体的に言うと、腕の辺りに…悪魔の種が、入り込んできたような
そんな感覚が、したのだ
へ?と、デルフも間の抜けた声をあげる
「…なんだぁ?相棒の体ん中に、何か入ってきたみてぇだぞ?」
「え?ルイズの体の中に?どう言う事よ?」
うぅ、どう答えたらいいのだろう
ルイズが答えに悩んでいると…
……っぞくり
全身を、駆け抜けた悪寒
体の中の使い魔が、何かを伝えようとしてきている
その、伝えようとしている内容を…ルイズは、ようやく理解した
テキガチカヅイテキテイル
タタカエ、タタカエ、タタカエ!!!
「な……に……?」
何?
この感覚は、何なの!?
パニック状態に陥りそうになるルイズ
敵?
土くれのフーケの事!?
ざわり、ざわり、体中を走りぬける衝動
内側から、何かが湧き上がってくる、そんな気がして
己の体に起こっているこの事態を、理解するよりも、前に
小屋の外から、ロングビルの悲鳴がルイズたちの耳に、届いた
私怨
さらに支援
290 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:28:16 ID:T48dOuEP
以上で第九話投下終了です
ようやく投下に慣れてきたと思ったら、改行多すぎで二度引っかかる
油断大敵とはこの事でしょうか
通常、共生武装は勝手に同化できない気がしますが、演出という事でおおめに見てくださるとありがたいです
支援してくださった方、ありがとうございました!
専ブラ使ってないのかな?
専ブラだと改行多すぎるのは書き込む前にわかるよ。
292 :
デモゼロ:2008/12/15(月) 14:38:25 ID:T48dOuEP
>>291 かちゅ〜しゃを使用させていただいております
いまだ使い慣れていないので全ての機能を使いこなせていないのですが、かちゅ〜しゃにもそのような機能ありましたっけ?
293 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 15:04:07 ID:2msYptH9
デモゼロ氏GJ!
しかし改めてルルブを見返すとキュルケやモートソグニルの行動について
「あれかなー?これかなー?」と想像してしまいますが、そこはデモゼロ氏の
本編にて明かされることを楽しみにしてます!
ageごめん
>>292 そうか、専ブラと言ってもいろいろあるんだった。うかつな事を言ってゴメン。
Jane Styleだと、書き込みウインドの下部に「Bytes: 305/ 4096 Lines: 6/ 60」とか表示されて、
行数やバイト数がオーバーすると赤く表示されるんで、
他の専ブラにもそういう表示があるのかと思ってた。
壷使いの俺参上!
firefoxでbbs2chreader使ってる俺もいる
名前とかさえ記録してくれない困った子
乙!
うちに来てガチムチアネラスとロリウォーコイトにファックされてもよろしい!
専用ブラですか
インテリジェンス・ブラジャーな作品というと横田順彌氏のどマイナー作品くらいしか思いつきません
乳帰る……
302 :
ナイトメイジ:2008/12/15(月) 17:29:42 ID:byOOUlas
35分から投下させてください
シエーン
304 :
ナイトメイジ:2008/12/15(月) 17:36:29 ID:byOOUlas
うららかな昼下がり、ルイズは自室にて机の上を見下ろしていた。
「これね」
その隣にいるベルもまた腕組みをして机の上を見下ろしている。
「これよ」
もちろん机が珍しいわけではない。
2人が視線を注いでいるのは机の上に置かれた300ページほどの古びた一冊の本。
皮で装丁はされているが、時の経過には勝てず表紙はぼろぼろで茶色く変色しているといった有様だ。
「でも、これがこれが本当の始祖の祈祷書なの?聞いてた以上に偽物っぽいわね」
ベルは祈祷書を摘んでぴらぴら振り回す。
「乱暴に扱わないでよ!」
それをルイズが奪い取って机の上にバンとたたきつける。
強く叩きすぎて天井からホコリがぱらぱら落ちてきた。
「何か、こうドキドキするわね。これに私が使える魔法が書かれているかも知れないのよね」
「多分ね」
「どんな魔法が使えるようになるのかしら」
「そうねー」
しばし沈思黙考。
指先で肘を叩いていたベルがかすかに笑った。
「足がクサくなる」
「は?」
「鼻から怪光線」
「ちょっと何よそれ」
「月を見るとマグロに変身」
「何でよりにもよってマグロなのよ」
「すっとこどっこいになる」
「もはや魔法でも何でもないわね」
「じゃあ、魔法っぽく脳みそがスライムになる」
「魔法っぽいけどいやよそれは」
「だったらトコロテン」
「脳みそが変わるのはもういいから」
「ばるばる」
「意味わかんないわよ」
「耳から赤外線」
「方向性が最初に戻ってる」
「赤外線ですか。いいですねそれ」
そこにベッドのシーツを取り替えに来たシエスタが口を挟む。
今まで喋らなかったのでわからなかったが、実は最初からこの部屋にいたのだ。
「赤外線は良いですよ。お芋が美味しく焼けますから」
「芋?焼くの?てゆーか赤外線ってなに?芋を焼くためのものなの?」
「さあ」
「さあって・・」
「それよ、ルイズ!」
頭を抱えるルイズの鼻先にベルの指先が突きつけられた。
おまけに無意味な迫力まである。
「そ、それ?」
「赤外線よ、赤外線。美味しい焼き芋が食べられるようになるって最高じゃない」
「いいですよね。焼き芋。わたし、ミス・ヴァリエールが赤外線出せるようになったらお芋、たくさん持ってきますね」
「あ・な・た・た・ち!」
ベルとシエスタの口が止まる。
何か声にそこはかとなく殺気がこもっていたようだ。
「どんな魔法が出てくるかなんてわからないじゃない。まずは、これをみてからよ」
「そうよね。早く見なさいよ」
「わかってるわよ」
釈然としない気分になったものの、ルイズは椅子を引いて始祖の祈祷書の前に座る。
風のルビーの嵌っている手を意識した。
これも魔法に関係するはず。
ルイズはその手を滑らせ祈祷書に触れた。
その途端、風のルビーと始祖の祈祷書が輝きだす。
胸が押さえつけられないほどに高まる。
305 :
ナイトメイジ:2008/12/15(月) 17:40:12 ID:byOOUlas
光を浴びながら、震える指でルイズは祈祷書を開いた。
まず最初のページ。
──姫様はこの祈祷書は白紙だと言っていた
なのに、なのに、ルイズの目には確かに古代のルーン文字で書かれた文章が飛び込んできたのだ。
「ベル、見てよ!ほら、これ、ちゃんと書いてあるわよ」
「どこに?」
「どこってここよ」
ルイズは指先で文字をなぞってベルにどこに文字が書いてあるかを教えてやるがベルは目をすがめて首をかしげ、要領の得ない顔をするばかりだ。
「シエスタ、あなたはどう?」
諦めたのかベルはシエスタを呼んで祈祷書を見せる。
「白紙……ですよね」
シエスタも同じで白紙としか見えていない。
「私は読める。でもベルやシエスタには読めない。じゃあ、これって」
「本物みたいね」
そう、本物。
本物の祈祷書。
胸の鼓動はどんどん早くなり、体が熱くなってくる。
動いてもいないし、暑くもないのに汗が出てきそうだ。
「それで、なんて書いてあるの?」
「えーと……」
古代の文字ではあったが、文法も文字の種類も授業で習ったとおりだ。
ルイズはそれを現代語に直し、少しずつ口に出して読んだ。
序文
これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、「火」「水」「風」「土」と為す。
神は我に更なる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、更に小さな粒より為る。
神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。
我が系統は更なる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四に非ざれば零。
零即ちこれ「虚無」。 我は神が我に与えし零を「虚無の系統」と名づけん。
これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐ者なり。またそのための力を担いしものなり。
「虚無」を扱うものは心せよ。 志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし「聖地」を取り戻すべく努力せよ。
「虚無」は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。
時として「虚無」はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。
たとえ資格無き者が指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は「四の系統」の指輪を嵌めよ。
されば、この書は開かれん。
ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ
「虚無?虚無よ!ねえ、ベル。私の魔法は伝説の虚無なのよ」
ルイズはこれほど興奮したことはない。
ゼロと言われていた自分の系統は、伝説の系統なのだ。
オルゴールの歌を聴いた時に薄々はそうかもしれないと思っていたが、確証はなかった。
それが確信に変わった。
感動で体が震えそうになる。
「わかったから次」
「次は……次」
以下に、我が扱いし「虚無」の呪文を記す。
次だ。
いよいよ次から虚無の魔法の呪文が記述されるているのだ。
涙まで出そうになりながらルイズはページをめくった。
次のページは白紙だった。
306 :
ナイトメイジ:2008/12/15(月) 17:41:40 ID:byOOUlas
「あ、あれ?」
慌ててさらにページをめくる。
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
白紙のページはまだ続く。
そうしていると、待ちくたびれてきたのかベルはシエスタとお喋りを始めた。
「赤外線じゃなくてもマイクロ波でもいいわね。ごはん温め直せるし」
「マイクロ波って怪力線のことですよね。ごはん食べられなくなりませんか」
「怪力線って……よく知ってるわね。そんなこと」
「ひいおじいちゃんが昔、言ってたんです」
「どんな人なのよ」
「2人とも静かにして!!」
後ろで野次馬と化していた2人が静かになったところでルイズはさらにページをめくり続ける。
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
残りのページがどんどん少なくなる。
さっきまで興奮で汗ばんでいた手は逆に不安でかさかさになりページがめくりにくくなっていた。
そしていよいよ最後のページ。
ぱら、ぺらり
最後のページは
白紙だった
「なんで?なんで?なんで?どうして?ここまで書いておいて呪文は無し?」
「本物なのは確かなんだし、読み進めるのにまだ条件があるんじゃない?」
「条件?どんな?」
「知らないわよ」
「そーーーんーーーーなーーーーー」
その声は誰が聞いても哀れみを誘うものだった。
合掌
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
今回はここまでです
暇をもてあましているのがいるみたいです
>>276 >そしてルイズ鴉に
いや、それやっちゃうとゆりねとの契約か何らかの形で解除されるまでルイズが昏睡状態に
なっちゃうからなぁ。
つーか、ゆりね自体がまともに召喚出来る、と言うか応じるかどうかすら怪しいし。
と、失礼。
支援。
309 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 18:13:00 ID:usTy5nrj
きくたけチャートナツカシスw
なんだろう?
このキャラメイクだけして終わった感は……。
聖地にはバラーが眠っているんですね、わかります
邪眼の ってやつだっけ
>>311 騎士団「「「うわー、もうだめだー!!」」」
GM「レコンキスタ部隊7万は壊滅した」
こうですかわかりません
こんばんはでございます。
予約無ければ投下いたします。
1940時頃、失礼いたします。
投下開始ですよ
――
「――かかってきたまえ、風こそが最強であるということを証明しようではないか」
今日の授業はギトー先生、風の授業。
どの先生もそうだけど、自分の属性が一番って言うんだ……
ハルケギニアの魔法使いの人たちって、あんまり仲よくないのかなぁ?
回復や防御の魔法だって大事だし、植物みたいなモンスターが相手なら炎が効くと思うけど……
「よろしいですわ、火傷してもしりませんわよ?――『フレイム・ボール』!」ボウッ
キュルケおねえちゃんがおっきな炎の球を打ち出す。
「ぬるい!その程度かね?」フォッ
ギトー先生がそれを風で弾き返して、キュルケおねえちゃんの机に炎の球が返ってきて弾ける。
うーん、危ないなぁ……こんな授業やってて机とか燃えちゃわないのかなぁ?
「さて、諸君、わたしは“疾風”のギトー!すべての属性を圧倒し、すべてを葬る魔法をお見せしよう!『ユビキタス・デr』」
……ギトー先生が最終形態にでも変わっちゃいそうなセリフを言って魔法を唱えていると、
突然教室の扉がガタッと開いて、コルベール先生が、入ってきた。
「諸君っ!授業は中断ですぞっ!!」
……貴族の人ってやっぱりどこか変なのかなぁ?
服のセンスとか……ついていけないや……
―ゼロの黒魔道士―
〜第十七幕〜 真夜中の芝居
ゴッテりとした服に、目がチカチカするぐらいの色づかい、
それでもいつもより目に優しい気がするのは……カツラ、かなぁ……?
金色で、クルクル巻いてて……うーん、舞台衣装だったらこれぐらいの方が目立つんだろうけど……
「なんですかな、コルベール先生。今は私の授業中ですが?」
ギトー先生があからさまに、不満そうにコルベール先生を下から頭のてっぺんまで移したところでプッと吹き出しそうになる。
あ、やっぱりおかしいって思うんだ……ボクだけじゃないんだ。
「あぁ、すいません!しかし、当学院に喜ばしい事態が――」ファサッ「あ」
コルベール先生の頭から毛の塊が落ちて、キラキラとまぶしい光があたりにこぼれる。
教室はもう笑いに包まれる寸前みたいで……
「滑りやすい」
タバサおねえちゃんの一言、それがトドメになっちゃったんだ。
教室が笑いの渦に包まれる……
……あ、そっか、コルベール先生、笑いを取るためにワザワザあんな格好を?芸人さんだなぁ……
「えぇい!静まりなさい!静まりなさい!静まれぇっ!」
……やっぱり違うのかなぁ?
「――それで?『喜ばしい事態』とは?コッパg、コホン、コルベール先生?」
あのぶあいそうなギトー先生まで頬がピクピクしてる……なんか、すごいなぁ、コルベール先生……
「あんた今絶対コッパゲって……えぇい、ままよろしい!諸君!本日、アンリエッタ姫殿下がゲルマニアご訪問からの帰りに、学院に行幸なされます!よって本日の授業は全て中止!」
今までの笑い声とはまた違うざわめきが、教室にザザザって広がっていく。
お姫様かぁ……やっぱり、きれいな人、なのかなぁ?ダガーおねえちゃんを思い出してそう考える。
「ということで、諸君達は直ちに身だしなみを整え、お出迎えの準備をして玄関前に集合すること!」
教室が慌ただしくなる……身だしなみかぁ、ボクこれしか服無いし、どうしよっかなぁ……
「きゅきゅきゅい〜♪」
「し、シルフィード?も、もうちょっと低く飛んでいいからね?うん、そんなに高くなくていいよ?」
ルイズおねえちゃん達は玄関前に集合だけど、ボク達使い魔は別にいいって言われた。
でも、お姫様の姿をいっぺん見てみたかったから、シルフィードに乗って見ることにしたんだ。
……正直、何度乗っても怖い……
でもこうしないと、あの人の多さだったら背伸びしても見れなかったと思うからしょうがない、かなぁ?
「あ、シルフィード、あれがお姫様かなぁ?……綺麗な人だねぇ……」
「きゅい!」
シルフィードがコクンって頷く。
アンリエッタ姫は、ダガーおねえちゃんとおんなじぐらい綺麗な人だった。
ちょっと遠くて分かりにくいけど……
「すいえばルイズおねえちゃんは……あ、いたいた……」
ルイズおねえちゃんは、他の人が拍手したり、歓声を上げている中、じーっと何かを見ていた。
お姫様を見てる……?うーん、それにしては向きがちょっと違うような……
「きゅいきゅいっ!」
「え?どうしたの、シルフィード?」
「きゅい〜……」
シルフィードが首でさししめした方向、そっちには髭のおじさんがいて、ボクたちの方を睨みつけているみたいだった。
「う……ぼ、ボクたち、悪いことしてないよね?」
「きゅい〜!!」
「え?ちょ、ちょっと待って!うわ、うわぁぁぁぁっ!?」
……シルフィードは、その視線が気持ち悪かったのか、その場から逃げてしまった……
おかげで、ボクは……う〜、やっぱり高い所は怖いなぁ……
「ルイズおねえちゃ〜ん?どうしたの?……具合でも悪いの?」
今日のギーシュとの特訓を終わって、ルイズおねえちゃんの部屋に戻ってきても、
ルイズおねえちゃんがなんかボーっとベッドに座って、全然ボクに反応してくれなかったんだ。
あんまりにも様子がおかしいから、今日のお話し会は中止になっちゃったんだ。
(タバサおねえちゃんが珍しくガッカリした顔をしてたなぁ……)
キュルケおねえちゃんが言うには、
「大方、お姫様の付き人の誰かにでも一目惚れたんじゃない?確かに、そこそこの粒は揃ってたものね〜」
ってことらしい。うーん、分かるような、分からないような……
「デルフ、分かる?」
「おれっちに聞かれてもなー?まぁ、ほっといても大丈夫じゃね?」
「うーん、そうかなぁ……?」
こういうときに、見てるしかできないってちょっと悲しい気がするなぁ……
コン、コン、コンコンコン
そんなルイズおねえちゃんが、ノックの音にハッとする。
こんな夜中にお客さん?キュルケおねえちゃんが忘れ物でもしたのかなぁ?
「はーい、今開けます……」ドンッ「わたたたっ!?」
ドアを開けようとしたら、ルイズおねえちゃんに突き飛ばされちゃったんだ。
どうしたんだろう?いつもはドアを開けるのもボクの仕事なのに……
入ってきたのは黒いローブを着た怪しい人、
その人は入ってくるなり杖をふって光の粒を出す……あ、前に見た『ディテクト・マジック』かな?
「どこに目が、耳が光っているかわかりませんからね」
怪しい人がローブを脱ぐ。綺麗な女の人だった。
綺麗だけど……どこかで会った気もする、どこだったかなぁ……?
「姫殿下!」
ルイズおねえちゃんが慌ててひざまずく。
あ、そっか、お姫様か。それでどこかd……え?おひめさ……
「えぇぇぇっ!?」
「おいおい、娘っ子の部屋になんだってお姫さんが来やがんでぇ?」
びっくりした。ものすっごくびっくりしたんだ。
まさか真夜中にルイズおねえちゃんの部屋にお姫様が来るなんて……
「ルイズ、そんなかしこまらないで、私と貴女の仲でしょ?」
「姫殿下…」
「それよりも、そこの方々はどちら様?お人形さんにしては……よく動いてますけど?」
ぼ、ボクたちのことかな?う、うーん、どうしていいか分からない……
「この子は私の使い魔のビビと申します……こら、ビビ!姫殿下に挨拶っ!!」
「は、は、はじめましてご、ごごごごきげんうるわしゅー?」
ものすっごく緊張する。偉い人、なんだもんね?お姫様なんだし……
「ふふ、そんなにかしこまらないでいいですわよ、貴方も……しかし、使い魔、ですか?」
「は、はいっ!」
あれ?結構優しそうな人だなぁ……
「ルイズ、貴女昔から変なところがありましたけれど、おもしろい使い魔を召喚しましたわね?」
「お、お恥ずかしい限りですわ……」
「あら、私は何もそんな意味では……個性的で可愛らしい使い魔さんだと思いますわよ?ビビさん、これからもルイズをよろしくお願いいたしますわね?」
「は、はいっ!!」
そう言って、にっこり笑うお姫様……あ、そっか、お姫様ってことはダガーおねえちゃんやエーコと同じなんだ。
ん〜、じゃぁ優しくて綺麗なのも当たり前、なのかなぁ?
「ほら、ルイズ、もうここには枢機卿も、母上も、友達面した宮廷貴族もいないのですから、頭をおあげなさいな!私たちは友達、でしょ?」
「姫殿下、まだ私めを友達、と?」
「もちろんですわ!幼い頃、一緒に遊んだではないですか!」
「姫殿下……もちろん覚えておりますもの!あれは――」
そこからは長い長い昔話のはじまりだったんだ。
お姫様と、その友達であるルイズおねえちゃんのおしゃべり。
どこかお芝居でも見ているような感じがする。
おもしろいんだけど、何か、普通の会話じゃないって気がするのは、なんでなんだろう……?
「――『アミアンの包囲戦』!あぁ、もう懐かしいですわ!昔は、良かったですわねぇ……」
「えぇ、本当に……あの、姫殿下、どうなさいました?」
お姫様が悲しそうな笑顔を浮かべる。どうしたんだろう……?
なんか、本当にお芝居でも見ている気分だなぁ……
「――ルイズ・フランソワーズ。結婚するのよ、わたくし」
「…おめでとうございます」
あれ?結婚するっていうのに、二人とも悲しそう……どうかしたのかなぁ?
「――ゲルマニアに、嫁ぐことになりました」
「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
あ、キュルケおねえちゃんの国だったっけ?
……うーん、じゃぁそんなに悪くないと思うんだけどなぁ……?
「そうよ。でも仕方ないの。同盟を結ぶためなのですから」
「同盟、ですか?」
あ、“せいりゃくけっこん”ってことかなぁ?『君の小鳥になりたい』も似たような筋だったっけ……
ホントにこういうのあるんだなぁ……
「えぇ、アルビオン王朝が貴族派の手に落ちるのはもう時間の問題だそうです。そうすると、次に狙われるのはほぼ間違いなく我がトリステイン……」
「そんな!貴族は王あってのもののはず!アルビオンの貴族は一体何を!」
……戦争か、ハルケギニアにもあるんだ……
ちょっとボクは悲しくなった。
「悲しいことに、最早アルビオン王朝に味方する貴族はごくわずか。私は、侵攻が予想されるアルビオン貴族派の防波堤として、ゲルマニアと同盟を結ぶため、結婚せねばなりません……」
「そうだったんですか…」
「いいのよ、ルイズ。物心ついたときから覚悟はしていました」
……なんか、悲しい話だなぁ……悲劇のお芝居って、本当にあることなんだ……
「あの、姫殿下?その……私の部屋に参られたのはゲルマニアへの婚姻の話のためだけですか?」
「あら、どうしてそう思われるの?ルイズ……」
「いえ、姫殿下……その、私は、姫殿下の友達です!隠し事をしていらっしゃるというときの癖は知っております!ですから、どうか隠し事などせずに……」
「い、いけませんわ、ルイズ!その大切なお友達にそんな危険な目に合わせるなんて!」
なんか、話が変な方に広がっていくなぁと思ったんだ。
「姫殿下!ご報告が上がっているとは存じますが、私どもはこれでも、かの“土くれ”を捕まえた実力を持ちます!ですから、危険な目など!」
……ルイズおねえちゃんが何か張り切ってる……すっごく嫌な予感がしたんだ……
「あの“土くれ”を?ルイズ、貴女が!?……分かりました、それでは……話しましょう、ですが、くれぐれも他言無用ですわよ?」
その後、お姫様が話した内容に聞き入っちゃって、全然気付かなかったんだ……
他にも、この話を聞いている人がいるなんて……
それも、何人も……
ピコン
ATE ―月なきみそらの役者たち―
「この程度の酒場にしては、なかなかの味だね!特に蜂蜜焼きの香ばしさといったら、天使達が天界の暮らしを忘れ口に舞い降りたかのようだよ!」
銀髪の男はいつもこうだ。水が流れるように芝居がかった台詞を長々と続ける。
マチルダはこの男が嫌いだった。
余計な言葉を紡ぐ男は大抵、虚栄心の塊だと知っているからだ。
その上で女性のような所作を見せ、自己愛の独白をさせればキリが無い。
しかし仮面の男の助言で(むしろ命令や脅迫とでも言うべきものだったが)、
ラ・ローシェルの安酒場をこの男と転々としているといった次第だ。
はぁ、とまた一つ大きなため息を。
己の所業のツケとはいえ、悔いずにはいられない。
「おやおや、マチルダ君、君は食べないのかい?命は短いよ、大いに楽しまなくては!」
この銀髪の男、クジャと言ったか。
レコン・キスタとやらの正式な構成員では無く、『ガリアやゲルマニアで暗躍する異国の武器商人』という触れ込みだ。
それもどこまで本当だか、と男にしては妖しく艶やかすぎる顔を見ながらそう思う。
いっそそういった特殊な趣味を持つ貴族相手の“ウリ”でもやってると言われた方が信じやすいかもしれない。
「あたしゃ結構だよ。さっきの店でたらふく飲んだし、まだ気分が悪い」
さっきの店、とは傭兵達のたむろする、ここ以上の安酒場。
ご丁寧にも「殴るときは椅子で」などと荒くれ共の溜り場であることを主張する店だった。
そこにたむろしている傭兵共を雇ったはいいが、そのときに言い寄られたことですこぶる気分が悪い。
いい女とでも思われたのはまだいいが、それが「いい女2人づれ」と思われたのがまた腹立たしい。
しかもこの男に言い寄られた数では負けたというのが、わずかにある女心に傷を与え、ついつい酒をあおってしまった。
だから、実際に契約した際はクジャに任せっぱなしだった。
そのとき初めてクジャが男と分かった傭兵共の顔が実に実に滑稽だったのがわずかな慰めである。
「そうかい?ならいいさ。籠から出て、主の目が届かぬ今、せいぜい羽根を伸ばすのが正解だと僕は思うけどね!」
そういってこの店では上等の部類に入るワインをクイっと飲み干す。
嫌らしいくらい優雅で様になっているその姿に、また少し気分が悪くなる。
「で?その主様はどうしたってんだい?私達にこんなに雑用させてさ、仮面のダンナは高みの見物かい?」
皮肉の1つも言いたくなる。報酬と言えば自らの秘密の隠蔽ぐらい。
この男といるだけで苦痛というのに、割に合わない仕事にもほどがある。
「フフフ、焦ることはないさ。所詮、浅知恵の仮面舞踏。その準備を真面目にやったところで仮面はすぐ舞台に散るだろうしね……」
毒をもった美しい蛇、それが楽曲として表現されるのであればこのようなものになろうか。
そういった響きを持つクジャの言葉。
それは紛れも無い協力者に対する裏切りの言葉。
しかも主と呼ぶべき相手に対し、さも天上からでも見物するかのような物言いだ。
自分は全てを知っている、そうだとでもいうのか?
「……あんた、ホントに何者だい?」
何度もしたこの質問。
いつだって答えは違っていて、いつもマチルダを惑わせる。
だが聞かずのはいられなかった。
「ボクは博徒だよ。最も、赤が勝とうが黒が勝とうが、利を得るような賭けをする、とびっきりの博徒だけどね……フフフ」
今日の答えは「博徒」ときたもんだ。
昨日は何だった?「演出家」か?「指揮者」か?もはや何でもいい。
問題は、この男、「博徒」と名乗るならば何を賭けるつもりなのか。金か?それとも?
「待たせたな、マチルダ……」
仮面の男が突然背後に現れる。嫌なタイミングで登場するもんだと常々思う。
「おやおや、僕には挨拶無し、かい?君も出世したねぇ?恋愛劇の主役になる目処でも立ったのかい?」
クジャが額の羽根飾りをいじりながらつぶやく。
額全てを覆うように布が巻かれてあり、その上に色とりどりの羽根をあしらったもので、この男の妖しさをより引き立てる。
「黙れ、クジャ。貴様如きに我等の理想は分かるまい!」
仮面の男が怒気を隠そうともせず言葉を紡ぐ。この男は心底クジャを嫌っているようだ。
マチルダはこの男も嫌いだった。
怒りすら制御できない器の小さな男。
仮面で自分を隠したつもりの愚かな男。
人を脅迫し、自らは理想の為などと嘯く、感じの悪い男。
嫌いになる条件は揃っている。
「あいにく、理想なんて不確かなものには頼らない主義でね。僕は常にテーブルに上がったカードしか見ないのさ!」
両手を必要以上に広げて、ますます舞台役者といった風情だ。
この男、あらゆるものを見下しているとしか思えない。
それがまた仮面の男の感情を逆撫でる。
「フン、言っていろ。ターゲットの動きが変わった。予定を繰り上げ、明朝に状況を開始する。傭兵共の準備は?」
「できてるさね、当然」
もうこの男達に付き合うのはゴメンだ、とばかりにマチルダがため息をつく。
この仕事が終われば、アルビオンにでも渡って故郷に帰ろうか、などと考える。
「よし、ならば手はずどおりにやれ。裏切りは、許さんぞ、クジャ」
仮面の奥から怒気が漏れ出る。
「フフフ、分の悪い賭けはしないさ。お手並み拝見と参りましょうか、今は貴方が主役なのだから……今はね」
二人の男の狭間にて、マチルダはまた、ため息をつく。
こいつらと付き合っていたら命がいくつあっても足りやしない。
賭け金だけ回収してすぐ逃げよう。そう誓いつつ麦酒をちびり。
二人の男と一人の女。
恋愛劇とはほど遠く、不協和音の狂想曲がもうまもなく。
――
投下完了。なんか、ビビよりクジャの方が動いてくれるんだぜ?
お目汚し失礼しました
支援する
ナイトメイジの人GJでしたー。
いっそルイズはフレア覚醒表で7を選んでみるのもいいかもしれないんだ。
ナイトメイジの人、ビビの人、共に乙でしたー
きくたけチャートはホント変なのばかり出るよなぁ…、暗い所で目が光って周囲を照らすとか
それでGMの思惑一個潰しちゃったことが。ダイス目は仕方ないよね!
>>322 ハッタリ仕事しろ
つ 【フレア】
(注:カオスフレア覚醒表の7は『両性具有』である)
ルイズがふ○なりってbehindmoonの同人かよ
連投はありがたいけど、多すぎて感想が少なくて淡白になってるな。
いまさらながらラスボスの人乙です。
ギーシュの貧乏貴族ぶりに吹いた。
しかし「無茶を言うな」か……
ラスボスにそんなセリフ吐かせる操作可能キャラって一体……
つかスーパーヒーロー作戦って途中で挫折したから分からないんだが、ゲーム中のユニットとしてのズバットってどの位の性能なんだ?
他の連中と変わらないくらい? それともバランス崩壊級のチートキャラ?
327 :
双月の女神:2008/12/15(月) 21:53:57 ID:jlmos7Fa
どーもです。覚えていらっしゃる方はいますでしょうか?
ようやく13章の第一部、書き上げ完了です。
22時に投下いいですか?
>>326 性能自体は変わらないんだけど、日本一の技を披露する時、
「お前さん、日本じゃあ二番目だ」、「チッチッチ(クイっと自分を親指で指差す」の際に、当時の映像が使われている。
それと、なぜかクロスゲート・パラダイム・システムの仕組みを、ある程度ではあるが独力で看破していた。
329 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 21:57:30 ID:40JYBwdg
ス〜パ〜支援〜タ〜イムッ!!!
双月さんまでおいで下さるとは♪♪
それとエンディング後、ギャバンやキカイダー、デュオなんかはみんな記憶を失ってたのに、早川健だけハッキリ覚えてた。
ともかく双月の人支援。
331 :
双月の女神:2008/12/15(月) 22:00:20 ID:jlmos7Fa
支援感謝の極みです!では、逝かせていただきます。
「なんと・・・。」
ミカヤからの告白に驚きを隠せないオスマン。
しかしながら良く見れば、かつて出会った麗人と眼前の淑女には共通点があった。
「その金色の瞳は血縁のものであったか・・・。」
「はい。オルティナとエルランの血を引く者のみに出るものだと妹からは聞いています。」
「どちらもミス・ミカヤが仰っていた、『テリウス』の古の英雄が一人でしたな。」
初日に聞かされた話を思い出しつつ、オスマンとミカヤの話にそう相槌を入れるコルベール。
正と負の双女神が争う混迷の時代を駆け抜け、大陸全土を巻き込んだ争乱を終結へと導いた四人の英雄。
―――勇猛なる獣牙の王、翠獅子ソーン。
―――大陸最強たる賢王、黒竜デギンハンザー。
―――慈悲深き呪歌謡い、黒鷺エルラン。
―――そして双つの神剣の担い手、女剣士オルティナ。
ミカヤとサナキはその内の二人の血を引いていた。
オスマンは心を決め、話を切り出すことにした。
「あのお方が無事にお帰りになったのか、ずっと胸の内に引っかかっておってな。
今日はそのことを伺うのと合わせてミスには是非、話さねばならぬことがあるのじゃ。
無論のこと、宝物庫にも関わりがある。」
「サナキと出会った経緯、その後何があったかも聞かせていただけますか?」
ミカヤからの問いに頷いたオスマンは深く椅子に腰掛けながら、その時の出来事を語り始めた。
「さて、何から話したものかのぅ・・・。」
やりはじめたら眠れない♪
支援!
333 :
双月の女神:2008/12/15(月) 22:02:35 ID:jlmos7Fa
ファイアーエムブレム外伝 〜双月の女神〜
第一部 『ゼロの夜明け』
第十三章 『真実と追憶(オスマンの章)』
「わしがまだ恐れを知らぬ若造であった頃、30年も前の話じゃ。
紅と蒼の双月が満ち、紫の光が照らす森で散策をしていた。その時に出会ったのがミス・サナキ。
深蒼の長く真っ直ぐな髪と金色の瞳が実に魅力的なお方じゃった。」
その時に一目で惚れ込み、声をかけたと言うオスマン。
「ミス・サナキとの出会いへの感謝の意を込めての声かけに、「初対面の女性を口説くと言うのか?
軟派な奴じゃ。」、と苦笑されたものじゃ。」
年甲斐も無く頭を掻きつつ、オスマンは苦笑いを浮かべて語る。
サナキとの語らいを思い、思わず口許を綻ばせるミカヤ。
「失礼を詫び、互いの自己紹介を済ませた後は森を共に歩きながら語らった。
その時に『テリウス』の帝政国家「ベグニオン」の生まれであることをうかがった。
その時は旅の魔道士であると仰っていたがのぅ。」
サナキが見たと言う夢現の話を反芻しながら、オスマンの追憶話に耳を傾けるミカヤ。
「暫く共に森の散策を続けておったが、突如飛竜の吼え声が聞こえてきてな。そのうえ襲われているであろう
人の叫び声。二人で急ぎ駆けつけた。」
>326
いつのまにかペガッサ星人を単独で倒してたり、当然のように異次元に侵入してたり脱出できたりしてな…。宇宙刑事達が専用マシンでやることを、鞭1本でやってくれるんだぜ?
そしてゲーム上で日本一の技を競う相手は、人間じゃなくて怪人だ。
335 :
双月の女神:2008/12/15(月) 22:04:18 ID:jlmos7Fa
その時を悔いるような、苦い表情で続けるオスマン。
この老メイジの様子を見て、思考を辿るだけでミカヤは察してしまう。
駆けつけた時点で既に手遅れであったことを。
「あのお方の助力もあって難なく撃退出来たが、襲われていた方は既に虫の息。
ハルケギニアでは見ぬ変わった形をした鉄製の兜と服は飛竜の爪で無残に斬り裂かれ、
秘薬でももはや治せぬ程の重症を負っていた。」
サイトがこの場にいたならば自身の世界の軍隊が装備する防具―――鉄兜を想像しただろう。
その話を聞いたミカヤの脳裏には、テリウス大陸以外からも来訪者がいるのでは、との思いが浮上する。
「ミス・サナキが「このような時に杖を使えていれば。」と嘆いておられていたその時、周りへの警戒を疎かに
していた為に気付かなんだ。もう一頭の飛竜が襲い掛かってきたのじゃ。
危ういところであったが彼の者は死に体でありながら『破壊の杖』を使い、飛竜を吹き飛ばした。
命を救っていただいたが、そのまま倒れてしまわれた。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
その人物の最期の力を振り絞っての行動だったのであろうことを読み取り、表情を曇らせるミカヤ。
コルベールもまた同様の表情になる。
「せめて遺言だけでもたまわろうと訊ねたのじゃが、「此処は何処だ?元の世界に帰りたい。」とうわ言のように
繰り返し言っておった。そしてそのまま・・・、命を落とされた・・・。」
自分と同じようにこの世界へと、恐らく自身と違い事故で呼び出されて帰らぬ人となった者への哀悼の念を抱きつつ、
ミカヤはオスマンに訊ねる。
「・・・その『破壊の杖』というのは?」
「銃を小さな大砲のようにした形状をしていてな。その方が所持されていた物のもう一つを、
遺品として貰い受けたのじゃよ。銃口と後部から火を吐き、爆炎でもって飛竜を仕留めたことからわしが名付けた。
しかし、一度しか使えぬのか使われたものの中は空になっておった。」
騎竜の洗礼を受けていない野生の飛竜とは言え、最上位武官の洗礼を受けたベオク、経験を積んで悟りを開いた
ラグズでも一撃でもって仕留める事は難しい。
それを可能にした銃器の威力を測りかねるミカヤはオスマンの話に再び聞き入る。
支援
337 :
双月の女神:2008/12/15(月) 22:06:34 ID:jlmos7Fa
「それともう一つ、何れミス・サナキにお返ししたいと思っていたもの。『ルドルの宝珠』じゃ。」
そう言いながらオスマンは懐から『古代語』の文様が刻まれる金細工を王台にした、手の平に乗る程の大きさを持つ
紫褐色の球状結晶を取り出し、ミカヤに渡す。
「・・・間違いありません。本物の『ルドルの宝珠』です。」
妹のかつての忠臣にしてミカヤとサナキ二人の先祖であるセフェランことエルランから、今際の際に譲り受けた
守護の力を持つ宝珠。
手渡しされた右の手の平に乗る宝珠を見たミカヤは、驚愕しつつもそれが紛れも無く本物であると確信した。
「何故、これがオールド・オスマンの手元に?」
オスマンに訊ねるミカヤ。
「『破壊の杖』を引き取った後、ミス・サナキは御身体から放たれた淡い光と共に消えてしまわれた。
その間際に「なんとも現実身のある、寝覚めの悪い夢じゃ。」と漏らされながら、
三度危険があるやも知れぬが共に行けない故、せめてそれを護符にとわしに渡して下さったのじゃ。」
「・・・・・。」
それを聞き、ミカヤは暫し黙考する。
武器屋で手に入れたテリウスから流れ着いた魔導書に、一時的な転移によってサナキが経験した泡沫の一時。
そして自らが体験した、使い魔としての召喚。
偶然では無い、運命に近いものを感じずにはいられなかった。
ふと自身の、神の頭脳のルーンが刻まれたサークレットをつける額に左手で触れる。
「・・・そうじゃな、ミス・ミカヤのその額のルーンについても話さねばなるまい。」
「ええ、ミスにならばお話ししても良いでしょう。」
ミカヤが額に触れたことでオスマンとコルベールはもう一つの話を切り出してきた。
「私だけではなく、ミス・ヴァリエールにも関わりがあるんですね?」
「そうじゃ。それもハルケギニアの失われし、古の伝説に関わるものの一つ。
それをミス・ミカヤとミス・ヴァリエールが内包している。
今、それを話そう。」
自らが召喚されたもう一つの理由を話そうとしている二人の思考を感じ、そう切り返したミカヤに、
オスマンは真実を語り出した。
――――オスマンとコルベールから語られる虚無の伝承。失われた筈の過去の再来は何を意味するのか?
338 :
双月の女神:2008/12/15(月) 22:08:32 ID:jlmos7Fa
以上です。短いですがルーンの説明は次回で。
長らくお待たせしてごめんしてください。
次の投下は来年以降になるかと思いますが今後ともよろしくです。
では失礼をば。
双月の人、乙でした。
あんまり焦っても良い物はできないので、自分のペースで書き進めればいいと思いますよ。
340 :
MtL:2008/12/15(月) 22:18:42 ID:kXMy7MsU
お久しぶりです。
暫く間が空いてしまいましたが、予約等なければ30分から投下したいと思います。
うおっ、MtLの人が降臨!? 支援します!
342 :
MtL:2008/12/15(月) 22:31:20 ID:kXMy7MsU
マジシャン ザ ルイズ 3章 (51)冥界の門
空に浮かぶアルビオン、対して地に構えるゲルマニア。
アルビオンに玉座があるように、ゲルマニアにも勿論玉座があった。
かつてはこの地を治めていた皇帝が腰を降ろしていたその王座に、今はフードを目深に被った男が座っている。
男の前には全身を映してあまる大きな鏡が置かれており、そこには戦場の光景が映し出されていた。
それを、ウィンドボナ上空で繰り広げられる空戦の様子を眺めながら、男は嘆息した。
なんと弱い、なんと脆弱
鏡の中では、あまたの生命が無惨に命を散らしている。
その悲劇的な光景を見ても、男の中には失望以外の感情は浮かんでこなかった。
「人間という生き物は、なんと儚い生き物なのだろうか」
思ったことをそのまま呟く。
すると、彼は自分の内面で燻っていた暗い情念に、ぱっと火灯るのを感じた。
「いや、人間だけではない……。生命というものはとにかく脆い、脆すぎるのだ! 何故神はこのような不完全なものを生み出したのだろうか!?」
火は徐々に燃え広がっていく。
最初は弱く、次第に強く。
ヒートアップしていく己を抑えることなく、男は狂ったように雄叫びを上げた。
「そうだ! 世界は変わらなくてはならないっ! そう、誰かが変えなくてはならない!」
誰が?
――決まっている。
「この我がだ!」
静寂の中、彼にだけ聞こえる歓声に応える為、男は両手を上げた。
手を上げた拍子に、男が纏っていたローブの紐がちぎれ床に落ちて、中から男の裸体が現れた。
そしてもう一度叫ぶ。
「我が!」
全裸となった男は、床にたたまれていた装束を持ち上げた。
事前に用意していた、この身に相応しい衣装だ。
それにゆっくりと、勿体つけた様子で身につけていく。
最初に緋色のガウン。
「我が……」
次に美しい宝石がちりばめられた装飾類。
「我が」
次に黄金に輝く王冠。
「我が!」
最後に金色のマント。
「我が変えるっ!!」
まるで一つ身につけていくたびに、新しい自分へと生まれ変わっていくような得も言われぬ感覚を覚え、男はそれに酔いしれる。
全てを身につけて体を震わせていた男はふと、目の前の鏡に映し出された自分の姿に気付いて、注視した。
そこにあるのは不要なものを全て排除した、完全体の自分自身。
美しく、純粋で、無垢で、それでいて力強い己の姿。
その理想的な姿を前に、思わず唾を飲む。
「嗚呼……! 完璧過ぎる!」
なんでこんなハイテンションなの、しかも全裸ww支援
344 :
MtL:2008/12/15(月) 22:35:41 ID:kXMy7MsU
そう叫ぶと、男は興奮のあまりに両手を広げて周囲を走り回った。
そしてドタバタと全身を使って飽きるまで喜びを表現しきると、今度は鏡に向かって指を突き出し、ヒステリックなまでの大声を上げた。
「準備は整った! 『大鏡』よ。我の尊身を奴らの前に映し出せ!」
何の前触れもなく、その巨体は現れた。
巨大な人影。戦場で火を交える者達は、突然現れたその大きな男の姿に驚いた。
全長三千メイル。
雲を突き抜け現れたのは、けばけばしい金のマントと緋色のガウンを纏い、その下には何も身につけていない巨大な痩身。
頭上には台座となる頭に対してあまりにアンバランスな大き過ぎる王冠が乗せられ、首からは煌びやかな宝石が鏤められたネックレスを無数に下げ、手の十指全てには黄金の指輪をはめている。
特徴のない顔にあって異彩を放つぎょろりと大きな目が、今はせわしなく動いている。
ある種の珍妙さを漂わせる異様な男の出現に、無数の目が彼に釘付けとなった。
そして、男は自分に向けられたその視線を期待と受け取ったのか、聖者のような喜びに溢れた満円の笑みを浮かべた。
『諸君ッ!我はオリバー・クロムウェル! 理想国家アルビオンの皇帝にして、この世界の救世主である!』
「醜悪な……」
狩りを楽しんでいた赤と青の鱗を持つ竜は、行いを一時中断し、遠くに映し出されたクロムウェルの幻影を目にしてそう呟いた。
人間とは違う独特の美的観念を持つ彼から見ても、クロムウェルのセンスは褒められたものではなかった。
だが、彼にとっては美醜などよりも気に掛かることがある。
「ワルドはこの暴走に気がついているのか……?」
抑えて唸り、目を眇めて天空を見やる。
双眸の視界には小さくとしか映らなかったが、魔力的な視覚ではそこで強大な魔力を持った者達がぶつかり合っていることを感じ取れた。
その光景には、先ほどから何も変化が見られない。
「……ふん。もう既に下々のことなど気にならぬということか」
竜は再び視線を降ろし、演説を垂れているクロムウェルの映像を見た。
『疑うな! さすれば寛大な我は貴様たちにも正しき道を示さん!』
クロムウェルは神にでもなったつもりなのか、頬を紅潮させて興奮した様子で身振り手振りを交えながら何かを語っている。
それ自体は実にたわいのない狂人の繰り言だ。意に留める必要すら感じられない。
「……目的さえ果たすことができれば、どのような過程であろうともかまわんがな」
竜はそう言って再び狩りの喜びに戻っていった。
『今、第十一次元的物質界に捕らわれた生命は、より高度な進化を促進する――これ
は超時空連続体的マクロな視点でのみ観測される――次元結晶体を必要としているの
である。これそのものは神の定められた定理に基づいて運用されることが不可欠であ
り、それは神が人を作り出したことの意味を考えれば、必定の措置であるのだ!
我々神の子は生命という殻を脱ぎ捨て、エントロピーの海からの果敢な航海の果てに
黄金の理想としての自分を体得し、同位次元にありながら高次元の個を有する――こ
の個とはパラグラフの上での流動体的な混沌の意を示すところではない――ことにつ
ながり、強いては多次元構造体――ディメンジョンではなくプレーンであることに注
意されたい――で形作られたこの世界において、選ばれた構造物としての地位を確立
するに至るのである。その広がりを持ってすればついには来たるべき終末に対して―
―』
345 :
MtL:2008/12/15(月) 22:39:37 ID:kXMy7MsU
という演説、あるいは狂説。
先ほどから延々と繰り返されているそれは徐々に混迷の色を深め、今はもう意味不明という他ない域に達している。
最初は動揺と攪乱の狙った新手の戦略かと疑っていたアンリエッタも、今はただ理解不能という思いしか抱いていない。
「アルビオンの首魁は、ワルド子爵では無かったのですか……?」
それはこれまで集めてきた情報や、ウェザーライトUに乗り合わせた者達の証言を合わせても明確なはずだった。
少なくとも集めた情報に、クロムウェルの名前は一度として浮かび上がっていない。
当初、クロムウェルを指導者として『レコンキスタ』を名乗った叛徒達が、チューダー王家を滅ぼし、アルビオンの実権を握った時期があったのは確かだ。
しかし、ニューカッスル城落城の直後から、ワルドは『レコンキスタ』の支配を推し進め、クロムウェルはその最初の犠牲者になったはずだった。
クロムウェルを屠ったワルドは、マチルダに己の力を見せつけるために彼を動く屍体として黄泉返らせたのだという。
つまり、今、視界の先で興奮しながら捲し立てているアレはワルドの傀儡なのだろうか。
だとしても、あのような格好をさせて意味不明な言動を取らせる真意が分からない。
「……本当に何なのでしょう、アレは……」
思わず口に出された言葉は、多くの参謀や文官が思っていることを代弁していた。
どれだけ考えてみたところで、つまるところは何が何だか分からない≠ニいうこと。
アンリエッタや参謀達が不測の事態に混乱し、指揮を鈍らせる中、やはり対応が早かったのは経験豊富な将軍達だった。
戦場では理解を超える物事が時折起こる。そのようなことに対して、一々考えを巡らせていては命取りになりかねない。
こういった変事には、まずは落ち着いて目下の問題に全力で当たるのがセオリー。それはこの場合、それは目の前に展開している敵の撃破に相当した。
将軍達は参謀達が口を出してくるより速く、戦闘続行命令の指示を飛ばした。
結果としてその判断は正しく、ただ喧しく騒ぎ立てるだけの実害がない男の幻影を無視する戦闘続行命令は、実に理に適った選択であったと言える。
参謀達が同じ結論に達し、各部に命令を伝えてくるまでの数分間、されど貴重な数分間は、こうして歴戦の猛者によって支えられたのである。
一方、その光景を目にして面白くないのはクロムウェルである。
説法を終えて注意を向けてみれば、人間達は何事もなかったかのように戦いを再開している。
神託にも等しい自分の言葉を無視して、
温情にも等しい自分の言葉を無視して。
それは到底許されるべきでは無い罪深い行為だった。
一瞬腹の中からかっと熱いものがこみ上げたが、すんでの所でクロムウェルはそれを飲み込んだ。
むしろ次の瞬間、哀れみの涙を流して全てを許した。
『良い、無礼を許す。人間達よ。無知は恥だが罪ではない。言葉を介さぬ獣に語りかけても理解は得られぬ』
突然ぼろぼろと涙を流し始めたクロムウェルに多くの者がぎょっとしたが、皆すぐに戦いを再開した。
『全ては君たちがまだその段階に進んでいない故のこと。私と同じステージにまで進化すれば、私の語る全てが理解できるようになる』
その声と重なるようにして、低くぐもった地獄から聞こえてくるような呪文の詠唱が、戦場に響き始めた。
『私は慈悲深い、君たちに救いの手を差し伸べよう』
呪文の完成。宣言と共に現れたのは、銀に輝く無数の鏡。
『さあ、受け取り給え』
そこから這い出てきたのは何匹もの巨獣。
召喚の呼び声に導かれて現れた多数のドラゴン。
ほとんどは鮮やかな赤い鱗を持っていたが、中には黒、白や黒、金属や瑪瑙、その他様々な色や材質や質感を持ったものもいる。
それら一様に共通するのは、誰もが息をのむ威風を備えていること。
巨大で力強い四肢に、見事なまでに美しい翼。残忍な爪、そして獰猛な瞳。
火竜山脈に生息する最大級の竜に相当する無数の竜達が、一斉にその顎を開けて
『オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ―――――――― 』
空に吠えた。
支援
347 :
MtL:2008/12/15(月) 22:44:00 ID:kXMy7MsU
いたるところから出現した無数の竜は、ガリア空軍が展開する宙域にも出現していた。
敏捷に飛び回る赤い岩の鱗を持った竜や、溶岩のブレスを吹き付けてくる竜を相手に、ガリア艦隊も苦戦を強いられている。
その中で最大級のフネであるシャルルマーニュ号も、当然ながら敵の標的となっていた。
「ふざけるな! 敵を討て! 空飛ぶトカゲ程度、恐れることはない!」
ブリッジではそう檄を飛ばすイザベラの姿。
勇猛な言葉だが、対象がドラゴンでは相手が悪いとしか言いようがない。
明らかにブリッジの中は浮き足立っていた。
そんな中、杖を手にイザベラの横に立っているシャルロットは微動だにしていない。
無表情、無感情に外を眺めていた。
それに気づいたイザベラが声をかけた。
「……ふん、そんなに気になるのかい?」
イザベラはもう知っている。彼女のそれは無表情でも、無感情でもない。
表に出るものが乏しいだけなのだ。
他の者には分からないその些細な変化を、イザベラは心持ち強く握られた杖から読み取った。
「さっきも言ったとおり、どことなりとも行けばいい」
必要以上に冷たく、突き放した声色でイザベラは言った。
しかし、イザベラがシャルロットの微妙な感情を読み取ったように、シャルロットもその言葉に『姉』の微妙なニュアンスを読み取った。
それは「気遣い」と少々の「負い目」だ。
意地悪に笑うのも、冷たく言い放つのも、横柄に笑い飛ばすのも、全ては彼女なりの不器用な心配り。
そういう風にしか接してこられなかった彼女の、精一杯のコミュニケーションなのだ。
あの事件以来、人との関わりを極力経ってきた『タバサ』だからわかる、否、『タバサ』にしか分からない微妙なシンパシー。
シャルロットにはそれが嬉しく、また、彼女の思いを無駄にしたくないと思った。
シャルロットはイザベラが座っている指揮官席の前に立つと、正面からその顔をじっと見据えた。
「な、なんだ……? べ、別にお前が邪魔だと言ってる訳じゃないぞ。この程度のこと、この私一人で十分だと言ってるんだ」
見つめられることに居心地の悪さを感じたのか、イザベラは目線を斜めに逸らして口早に言った。
そんな子供じみた苦しい言い訳を聞きながら、シャルロットは更にその顔をイザベラの顔に近づけた。
「お、おい……」
顔を茹で蛸のように真っ赤にしたイザベラから抗議の声が上がるが、それすら無視してなおも近づける。
やがて、イザベラのおでこに、シャルロットの額がこつんとぶつかった。
「必ず、帰ってくる」
正に触れ合う距離、お互いの吐息も分かる距離。
そんな近さで、シャルロットはイザベラに力強く決意を口にした。
その言葉を聞いて、イザベラの胸に去来するものがあった。
昔、まだ自分には隠されたすごい魔法の才能があると思っていた頃のこと。
ある日気まぐれに城を歩いていたイザベラは、自分に魔法の才能がちっともないと侍女達が噂しているのを耳にした。
彼女達がそう噂していることは、イザベラも薄々気づいてはいた。だが、実際に直接耳にすると、やはり強いショックを受けた。
しかしショックを受けたものの、すごすごとその場を辞するイザベラではない。
彼女はその場で侍女達の前に姿を現し、堂々とこう宣言したのだ。
『使える! 私は絶対にすごい魔法が使えるんだ!』
結果としてそれは、後の惨めな思いを一層強くしだけだったのだが、そのときに感じたものを、イザベラはシャルロットから感じたのだ。
額と額を突きあった状態で、イザベラは両手で挟み込むようにしてシャルロットの頭をがしりと掴んだ。
そして力のこもった眼差しでシャルロットを見ると、こう言ってやった。
「大丈夫だ。お前は絶対に帰ってくる、私が保証してやる。絶対に……絶対にだ、お前は帰ってくる」
イザベラは言い切った、祈りの言葉を断言に変えて言い切った。
348 :
MtL:2008/12/15(月) 22:47:42 ID:kXMy7MsU
「……ありがとう」
シャルロットにとっては、何の保証もないそのイザベラの言葉が今は何より嬉しく、緊張して強ばっていた顔が、かすかに弛んだ。
「ふん。お前がいないうちに、こっちはぱぱっと片づけてやるさ」
得意げにそう嘯く頬は、まだほんのりと赤かった。
シャルロットが甲板に出ると、既にそこでは竜の姿をしたシルフィードが、座って主人の到着を今か今かと待ちかねているところだった。
「遅いのね! 遅いのねっ! いつまで人を待たせるつもりだったのかしらねっ!」
「……今まで」
やかましくわめくシルフィードもなんのその、シャルロットは一文節の言葉を投げ返すと、ひらりと軽業のように身を翻して、その背に跨った。
「このちびっ子ったらもうっ! ……それじゃあ、かっ飛ばして行っちゃうのね!」
「……ごー」
ばさりばさりと羽ばたき音。
風を打って浮き上がった風の申し子である風竜とその主人は、混迷を深める戦場へと、躊躇うことなく飛び込んでいった。
「う、うわあああああぁぁ!?」
突然戦場に響き渡ったドラゴンの咆哮を耳にして、ブリッジの窓から外を観察していたギーシュが上ずった声を上げた。
人間の中にある原初の恐怖を呼び覚ます咆哮。
心の底から震えが来るような獣の叫びだ、取り乱すのも無理はない。気の弱い人間が聞いたなら、それだけで錯乱しかねない。
「お、落ち着きなさいよっ! ただ獣の吠えただけじゃないっ!」
そう気丈に言うモンモランシーも心なしか腰が引けている。
戦闘艦ウェザーライトUの中にあっても、クロムウェルの演説は聞くことができた。
『クロムウェル』と名乗った珍妙な格好をした、天を突くような巨大な男の語りを物見遊山気分で聴こうと前に出ていたギーシュは、続いて召喚されたドラゴンの咆哮をはっきりと耳にしてしまったのだ。
驚き戦き、ギーシュは少しでもその場から離れようと一歩、足を下げる。
と、そのときブリッジが強く揺れた。
何事かと思うが同時、更なる恐怖がギーシュを襲った。
『ギュォ! ギギギギ! ギャギャギャギャギャギャ!』
その揺れの原因がギーシュの視界一杯に突然現れたからだ。
耳障りな鳴き声と共に現れたのは、無数の尖った牙を備えた鮮やかな朱、竜の口。
現れた赤竜の一匹が、護衛艦隊の迎撃を超えて、ウェザーライトUにとりついたのである。
「馬鹿! 早くそこを退きなさい!」
ルイズの警告、だがそれは一瞬ばかりか遅かった。
『ギャッ、ギャギャギャギャ――!!」
金切りの声をまき散らしながら、竜がその前足をウェザーライトUのブリッジにぶつけたのである。
強烈な振動が艦を襲い、鉄の裂ける恐ろしい音が周囲に響き渡った。
そして、紛れるように耳に届いたのは
「わあああああああああああああああああっ!?」
ギーシュの悲鳴。
『ギーシュッ!?』
折良くルイズとモンモランシーの声が重なる。
二人が目にしたのは、長い舌を出した蛇のような赤い竜の、鋭い爪の生えた四つ指に握られて、後生大事そうに大剣を抱えたまま足を振ってじたばたともがくギーシュの姿だった。
幸い船から掴み出されただけで、すぐに握りつぶされるということは無かったようだ。
だが、その命運が風前の灯火であることは誰の目から見ても明白だった。
ましてや、彼を捕らえた竜が鋸のような凶悪な歯が上下に生えた口を開いて、一飲みにしようとしているとあっては尚更に。
349 :
MtL:2008/12/15(月) 22:51:51 ID:kXMy7MsU
「ギーシュを離しなさい!」
立つことの出来ないルイズが、精一杯の声を張り上げる。
同時に懐に手を伸ばし、愛用のタクト型の杖を取り出そうとした。
しかし、そこで思わぬ出来事が起こり、彼女の口から「あっ、」という声が漏れた。
懐から取り出そうとした杖が、震える指先から逃げるように床に落ちたのだ。
ルイズは床に転がった杖を見て、二の句が継げないでいる。
こんな考えに時間を割いている余裕はない、一刻も早く級友を助けねばならない。
だが考えずにはいられない。
萎えた両足、震える指先。
既にルイズの四肢は思い通りに動かすことすらままならない。
それは見た目が綺麗なだけの肉細工だ。
あの、己の全てをかけたエクスプロージョンを放った日を境に、急激に症状を進行させた彼女の病、ファイシス症。
確かにルイズはあのとき、自分の全てをかけてでも『アレ』を止めなくてならないと思った。
だからその後、トリスタニアで目を覚ましたとき、彼女は生き残れた幸運に感謝した。
内から肉体が腐り果てる病によって、体が多少不自由になったものの、それでもまだ誰かの役に立てる機会が残されているのならと、始祖に感謝した。
しかし、今、彼女の現実を苛む圧倒的な無力感。
床に転がり落ちて、這いつくばって杖を掴み、呪文を唱え、ギーシュを救う。
あまりに長い道のり。
それらを完遂する前に、必ずや級友はあの恐ろしい巨竜の餌食となってしまうだろう。
どうやっても助けられない。
ルイズは絶望を、現実として突きつけられた。
だが、ここで気勢を上げたのは意外な人物であった。
「まだよ! 私が……私が助けてみせるんだからっ!」
いつの間にかモンモランシーがルイズとドラゴンとの間に割って入って叫んでいた。
彼女はルイズの前に立つと、左手で大振りな本を持って広げ、右手の杖をドラゴンに向かって突き付けた。
竜の攻撃でブリッジの一部が損傷したために入り込んだ風が吹き荒れ、バサバサとページが捲られる。
それでも元々開いていたページの内容は覚えてしまっているのか、戸惑うことなくモンモランシーは呪文を唱え始めた。
奇しくも、その姿は始祖の祈祷書を手に呪文を詠唱するルイズと驚くほど似ていたのだが、それをこの場で指摘するものはいない。
「イル・ウォータル・ウィアド・エオー・スーヌ……」
普通のスペルに比べてやや長い詠唱が始まる。
よく通るモンモランシーの声で呪文が紡がれると、ルイズの顔に驚愕が浮かんだ。
彼女の唱えているスペルは確かにルーンのもの、それは間違いない。
しかし、そのルーンの中に、いくつかの聞き慣れないルーンが混じっている。
それは古代のルーンだ。
虚無の詠唱の中にも含まれている、あの古代のルーンだ。
「モンモランシー……」
モンモランシーの唱えている呪文は虚無ではない、水の系統に属する呪文である
それは彼女の詠唱を聴けば明らかだった。だが、ただの水系統の呪文ではないこともまた、確かだった。
モンモランシーは呪文を唱え終わると、大声でそのスペルを叫んだ。
『送還/Unsummon』
そうして私は『僕を食べたいなら食べるが良い! だが覚悟しろ! 僕の魂はお前の中からお前を焼き尽くすだろう!』と叫んだ。
すると、それを聞いた巨大なドラゴンはたじろいだ様子だった。
―――ギーシュ回顧録第四篇
しえん
351 :
MtL:2008/12/15(月) 22:57:22 ID:kXMy7MsU
以上で投下終了です。
久しぶりの投下ですが、相変わらず被召喚者出番無し。
避難所やスレで応援レスを下さった皆様、ありがとうございます!
次回以降も頑張ります。
あと
>>345の
「ほとんどは鮮やかな赤い鱗を持っていたが、中には黒、白や黒、金属や瑪瑙、その他様々な色や材質や質感を持ったものもいる。」
という文の「「黒、」が余計でした、削り残しです……
MtLの方、乙でした。
なんか登場人物が全員ハイテンションなような気が……w
文章の校正ミスって、よくありますよねー。
乙です。
このクロムウェルさんはただちにテヴェシュ・ザットさんに「Sssss Silence!」されるべき。
おぉっ出遅れた
MtLのヒト、乙でした
続きが読めて本当に良かった
・・・正直、地球皇帝様しか絵が浮かんでこなかった
俺的にこのクロムウェルはガングロ決定
MtLのかた、乙でございます
予約がなければ、23:40より投下させていただきたいと思います
クロスネタは、おがきちか先生の『ハニー・クレイ・マイハニー』より
MtL待ってましたよー
ずっと楽しみにしてたんだ
(はて……)
ミッシェルは、その若者の顔を見た時、一瞬誰であるのか、わからなかった。
どうもどこかで見たような顔なのだが、名前が出てこない。
どこかの客人、であるということは、まずない。
確かに、何度も見たことがある顔なのである。
答えはすぐそこまで出かかっているのだが、なかなか出てこない。
(誰だったか……。確かに、この城のかたに間違いないんだが……)
ミッシェルはヴェルサルテイルの厨房で、コック長として勤めている。
城の人間の顔は、王からメイドまで、よく見知っているはずなのだが。
煩悶としているところへ、鈴の音を転がすような声が響き、ミッシェルの思考を中断させた。
「ご主人様、お茶の用意ができました。召し上がっていただけますか?」
一人のメイドが、若者のそばへパタパタと寄っていく。
格好は城のメイドたちと同じものだが、顔に見覚えがない。
(新しく入ったメイドか……)
十五か、十六ほどの、ぱっちりとした瞳の可愛らしい少女だった。
体つきは細身で、髪も瞳も真っ黒という、ガリアではずいぶんと珍しい容姿なのである。
顔つきも、明らかに異国人のそれだった。
しかし、表情はふんわりとして柔らかく、優しげな眼差しをしていた。
内面の暖かさが、その顔に表れているらしい。
城内の格好ばかり着飾った貴婦人連中にも、是非見習ってほしいくらいだ。
(……ふうん。これはいい娘らしいな)
ミッシェルはひと目で、このメイドに好感を抱いた。
(それにしても、ご主人様? そんな風に呼ばれる、こっちのかたは……)
と、ミッシェルは若者のほうへと視線を移した。
「……前から言ってるが、その、ご主人様というのはやめてくれ。どうも、勝手が悪い」
若者は赤面しながら、小さい子供にでも言って聞かせるように、メイドに言った。
「は、はい。それじゃあ、ジョゼフ様」
メイドは少しどもりながら、言い直した。
「ああ、そっちのほうがいい」
若者はほっとした口調で笑った。
それに釣られるように、少女もニッコリと笑った。
(ジョゼフ様?)
と、もう一度若者を見やり、ミッシェルは驚いた。
(これは……確かに)
よく見れば、確かにかのジョゼフ王子に間違いはなかった。
しかし、メイドと対するジョゼフの顔は、明らかにミッシェルの見たことのない顔であった。
ミッシェルの知るジョゼフは、王子にふさわしい美男子でありながら、どこか暗く、険を含んだ表情をした若者だったからだ。
いや、ミッシェルだけのことではない。
およそ、ジョゼフという若者を知るほとんどの人間は、同じような感想を抱くのではないか。
それが、メイドと接する彼の顔は、丸く柔らかく、少年のようでいて、しかし、<男>の顔なのである。
ミッシェルは、王子の無表情な仮面の下に、美しく輝く素顔を見たような気がした。
(あんなにも、変わるものかな。人間の顔というやつは……)
ああしていると、ごく普通の若者である。
普通というには、少々顔の造作が良過ぎるけれど。
二人の間柄はどうやら、王子とメイドというわけではなさそうだが、それをどうこういうのは野暮というものだ。
(昔から、別にない話でもないしな)
ミッシェルは微笑をたたえて、そっとその場を離れていった。
ガリアの第一王子ジョゼフについて、<妙な>噂が流れ始めたのは、春の祭が終わってしばらく後のことであった。
ジョゼフに、一人の愛人ができたという噂である。
若い王子のことであるから、別にそういった<夜伽>の相手がいることなどおかしくはない。
その相手というのが、平民の娘らしいということも、存外珍しくはなかった。
容姿の良いメイドなどが奉公先で主人の手つきになることは、よくある話だからである。
何が妙なのかというと、ひとつはその愛人というのが、ガリアの人間ではないらしい……ということだ。
それもトリステイン、アルビオン、あるいはゲルマニアといった近隣諸国の者というのではなく、遠方の地からきた蛮族の娘であるというのだ。
ジョゼフは、悪い意味で有名な男である。
王族でありながら、生まれてこのかた、まともに魔法が使えたことがないのだ。
魔法大国ガリアにあって、これは致命的ともいえる欠陥だった。
いや、ハルケギニアであれば、どこの国であっても同じことだろう。
当然民衆の支持や人気はない。
弟のシャルルが、百年に一人という天才であったこともそれに拍車をかけていた。
ある意味で、その噂は<好意>を持って流れ、伝えられていた。
無能王子と、蛮族の娘のラブ・ロマンスとして。
茶を飲みながら、ジョゼフはぼんやりと花壇を見つめていた。
そばでは一人のメイドがつきっきりで給仕をしてくれている。
メイドの視線は、ジョゼフと同じく庭先の花壇へと注がれていた。
ジョゼフと違い、その瞳には言うに言われぬ感動の輝きがあった。
彼女の生まれ育った地では、ああいった情景はなかったらしい。
そう、ジョゼフは考える。
花の育ちにくい、痩せた土地だったのだろうか。
ジョゼフにとって、あの花壇の花は見慣れたものでしかなかった。
むしろ、嫌いであったとも言える。
見事に咲き乱れる花々は、機嫌の悪いときにはまるで自分を嘲笑っているように思えたほどだ。
けれど、この少女と一緒にいると、この花壇も何だか優しいものに見えてくる。
(勝手なもんだ……)
自分自身呆れる他ない。
しかし、こうやって落ち着いて花を見るなど、今まであっただろうか。
思い返してみれば、そんな余裕はなかった。
(花だけじゃあない)
ほっと落ち着いた時間といったものが今まであったであろうか。
ようく考えてみれば、それもないのである。
我がことながら、何ともはや薄ら寒い思いがした。
(俺は今まで、薄暗い氷室のようなところにいたのか……?)
それはいささか大げさであるとしても、まるっきり的外れというわけでもなかろう。
内心で冷や汗をかきながらも、横の少女を見ると氷の棘も溶けて消え去るような気がした。
太陽の香りを持った少女だった。
彼女という存在。
それが人間ではないというのが、未だに信じられない。
花壇の花を見ながら、ジョゼフは彼女を己がもとに召喚した時のことを思い出す。
世間は、すでに冬を忘れ、春の陽気で浮かれ気味であった。
伝統行事である春の祭が近いことも、理由のひとつであるかもしれぬ。
けれども、そういった世間の浮かれ様とは裏腹に、ジョゼフの心は暗く沈んでいた。
そも、この若者の心が明るく弾んだ日などあっただろうか?
ジョゼフ・ド・ガリア。
目の覚めるような美男子である。
まだ少年の面影があるけれど、日頃馬術や武術で鍛えこんだ肉体は、見事な形を成している。
今年で十八になるガリアの王子は、広いヴェルサルテイルの中、人気のない小部屋にいた。
ジョゼフの前には、一個の小さな人形が転がっている。
貴族の令嬢が遊び道具とするようなものではなかった。
土をこねて焼き上げたのであろう、まったく原始的な土人形なのである。
極めて素朴な、埴輪のようなものだった。
こんな王城の中にあるより、古い古代の、それも蛮族の石室にでも置かれているほうがふさわしい。
何故、このようなものがここにあるのか……。
ジョゼフが、持ちこんだからである。
もっときちんと説明するならば、ジョゼフがサモン・サーヴァントによって召喚したためだ。
「は、ははは……」
ジョゼフは顔を引きつらせ、何とも言えぬ、ある種の狂気すら感じさせる笑みを浮かべていた。
全身が、微かだけれど瘧にかかったように震えている。
「これが……こんなものが、俺の使い魔か?」
喉を痙攣させるように、ジョゼフはつぶやいた。
深い絶望のこもった声であった。
主のつぶやきにも、土人形は答えることなく、床に転がったままだ。
「ふふ、ふふふ。なるほど、確かに俺に相応しい」
ジョゼフは自虐的な笑みを浮かべて、土人形を拾い上げた。
メイジの実力をもっとも如実に表すのが、使い魔である。
それゆえに、使い魔召喚の魔法は神聖なものだ。
メイジと使い魔は、ある意味で夫婦や恋人、親子以上に密接な絆で結ばれる。
文字通り、死が両者をわかつまで、その絆は途切れることはないのだ。
「……コモンすらまともに扱えぬ俺が、まがりなりにも使い魔を召喚できたのだ。それだけで、十分なのかもしれんな」
ジョゼフは自嘲をこぼし、土人形を見た。
大国ガリアの王族、それも本来なら世継ぎとなるべき長兄に生まれながら、魔法が使えぬ無能者。
それがジョゼフという人間だった。
平民ならば、たとえば腕力が弱くとも、それを補える知恵があれば決して無能などとは呼ばれまい。
算盤が苦手でも、手先が器用ならば職人としての道もあろう。
何から何までこなせるという人間のほうが、むしろ少ないはずだ。
しかし、魔法は違う。
貴族の証である魔法が使えぬ貴族など、貴族とは呼べまい。
言うなれば、算盤の使えぬ商人、武術も馬術も心得ぬ戦士のようなものだ。
それでもなお、貴族であるというのなら、それはもはや単なる紛い物である。
(紛い物の王子には、お似合いの使い魔か……。それもいい)
ジョゼフは濁った目で土人形を見つめ、契約の呪文を唱える。
「我が名は、ジョゼフ・ド・ガリア。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
古より伝わる儀式にのっとり、ジョゼフは人形にくちづけた。
その一瞬後、ジョゼフがまったく想定していない事態が起こった。
小さな爆発音にも似た音が響いたのである。
ジョゼフはまた失敗して、いつもの爆発が起こったのかと思ったが、そうではなかった。
土人形が人に変わったのである。
黒い髪をした、人間の少女へと変化したのだ。
「うわ……!?」
ジョゼフは叫ぶが、その叫びは少女が発した悲鳴によってあっさりとかき消された。
「うわっちちーーーーーーーーーーー!!」
声をあげる中、少女の胸には使い魔であることを示すルーンが刻まれていた。
つまり、コントラクト・サーヴァントの魔法は成功したことになる。
(なんだ、こいつは……?)
ジョゼフは妖怪でも見るように、いきなり現れた少女を見る。
年齢は十五、六か、あるいはもっと幼いかもしれぬ。
少女は自分の胸のルーンを確認すると、すっとジョゼフを見つめた。
「お前は……誰だ?」
そうジョゼフが問いかけると、少女は床に平伏をした。
「額への口づけと、乳房に所有の証の焼印をいただいてしまいました。今より私は、あなた様の奴隷でございます」
何でもないように、そう言った。
土人形が人間に変わる。
まさか、マジック・アイテムだったのだろうか。
そういえば、血を吸わせた人間とそっくりの姿と能力を得る魔法人形の話を古い書物で読んだことがあった。
この少女も、そういった魔法人形の一種なのであろうか。
しかし、話を聞くとどうにも頓珍漢であった。
少なくとも、このハルケギニアとは異なる文化圏の者であることは間違いないようだ。
未開の地の蛮族、というのが一番適当なのか。
「私は土地の首長の、八人目の娘でございました」
彼女の自己紹介はこんな台詞から始まった。
「ある時山向こうの村に攻められて父が死に、季節が四回巡って年頃になった私を新しい首長が十一番目の妻にしてくださいました」
(一夫多妻か)
ハルケギニアの貴族にも、実質そんな生活をしている者もいるが、あまりおおっぴらにすることはない。
一応世間体というものがあるのだ。
「私が妻になってすぐに首長は死にました」
「また戦で?」
「いいえ、天寿でございます。首長は生涯に四十一度も春を巡ったそうでございます」
簡単にそう述べる少女に、ジョゼフは文化の違い、育った環境の違いの大きさというものを感じた。
彼女の部族は、極端に寿命が短いのか。
(そうとばかりも言えないか……)
ものの本によると……。
過酷で原始的な生活を送っている辺境の地に住む人間は、体は極めて頑強だが、その分寿命も短く、老化も早いということだ。
平均寿命もせいぜい三十歳ほどだったという。
(すると、彼女らの感覚からすれば、四十一というのはかなり長生きの部類になるわけか……)
ジョゼフは一人で考え、納得をする。
「首長は私にとてもよくしてくださったので、私は心をこめて冥土での奴隷となる土人形を造りました」
「それが、あの人形か?」
「はい」
少女はうなずいた。
「でも、私は不器用で……。うまく作れなくて、他の妻たちに反対されてしまい、首長の室に入れてもらえませんでした」
少女が恥ずかしげに言うのを、悪いと思いつつジョゼフは苦笑しそうになった。
確かに、あれはひどく出来だった。
そこらの子供のほうが、よほどまともなものを作るだろう。
「けれど、あきらめきれず、一人でこっそりと首長の室に入ったのです」
「それで……」
なるほど、すると土人形には製作者の想念ともいうべきものが宿っているのか。
では、人形を作ったというこの娘は?
ジョゼフが未知への恐怖と好奇心をない交ぜにしながら、少女の言葉を待った。
「横たわった首長のお顔を見ていたら、悲しくて涙が止まらなくなりました」
そう語る少女の視線は、ずっと遠く、おそらくは遥か遠くのものとなった首長の顔を思い返しているのだろうか。
少女の顔はひどく綺麗で、悲しそうだった。
よほど、その男のことを愛したに違いない。
他人事であるはずのジョゼフの胸にも、何かしらジンとくるものがあった。
そして、次に出てきた言葉は、
「……そのままうっかり眠りこんでしまって、そのうち室が閉じられて、息がつまって私は死にました」
こういったものであった。
悲惨な話だが、恥ずかしそうに赤面する少女の顔を見ると、今ひとつ重大さというものが感じられない。
ジョゼフとしても、反応に困るものだった。
さすがに笑う気にはならないのだが、大変だったなと肩を叩くのも、何か違うように思う。
「私の魂は人形に宿り、新しいご主人様をお待ち申し上げておりました」
少女はそう締めくくって、
「よろしくお願いいたします」
両手を床について、嬉しそうな顔でジョゼフに言った。
こんなことが信じられようか。
とはいえ、信じる信じないに関わらず、少女は目の前にいるのだ。
はっきりと手に触れることのできる彼女は、幻でも妄想の類でもない。
結局、ジョゼフは少女を受け入れることにした。
自分の召喚によって、はるばる遠くからやってきたのだから、今さらいらんと言うわけにもいかぬ。
それに、
(一度コントラクト・サーヴァントを交わしたメイジと使い魔は、死によってしか離れられぬ、というしな)
能力的には平民の少女そのものだが、考えようによっては、そのへんの犬や猫よりも高等と言えよう。
しかし、対面的なことを考えると、恥ずかしくもあるし、ややこしいことでもあるので、使い魔ということは伏せておくことに決めた。
少女にシェフィールドという名前を与え、一応自分が専属として雇ったメイドということにしたのである。
さすがに奴隷と公言してもらっては困る。
いくら無能王子と呼ばれる自分でも、その悪名に加えて、鬼畜王子などとは呼ばれたくない。
シェフィールドは、もとが素焼きの土人形でもあるにも関わらず、何事にも早く順応した。
王宮内での作法はもとより、十日もしないうちに、簡単な文字の読み書きもできるようになったのである。
(もしかすれば、俺なんかよりも、ずっと頭がいいな)
根が素直なので、知識の吸収や消化も早いのだろう。
また、のんびり屋だが決して愚かではない。
甲斐甲斐しくなんでもこなしてくれるので、ジョゼフのほうも、
(可愛いやつ……)
と思わざるえない。
本人たちは、お互いに納得し、仲良くやっていたわけだが。
巷に、シェフィールドの噂が流れており、当然王宮内ではとっくに知れ渡っていた。
使用人たち、ことにメイドたちはその手の噂を絶やさなかった。
ある日突然に、どこの国の人間とも知れない相手が<同僚>となったのだから、無理もない。
シェフィールドはジョゼフの直属なので、メイド長をトップとするメイドとしても異端であった。
さらに、ジョゼフの部屋のすぐそばに個室を与えられ、メイドとしては破格の待遇だった。
「なんなの、あの田舎者。うまく取り入って」
「私たちがさんざんこき使われてるに、ジョゼフ様のお世話だけしてればいいなんて、楽なもんよね」
「あんなとぼけた顔して、どーやってたらしこんだんだか」
と、まあこういった陰口がメイドの間で、ひそひそと飛び交っていた。
支援
支援
さるさんかな?
しえん〜
ある意味でプラスに働いたことは、ジョゼフが平民たちからも蔑まれる<無能王子>であったことだ。
これが天才の誉れも高く、人気者のシャルルではあれば、どんな嫌がらせをされたか、わかったものではない。
いくら王族に生まれても――
日陰者でもあることが確定している<無能王子のお気に入り>という地位など、女たちにとっては魅力のあるものではなかったのだ。
そうして、すっかりシェフィールドとの暮らしにもなじんだ頃……。
(いっそ、ここを離れてどこか、田舎のほうにでも引っこんでしまうか……)
ジョゼフは、半ば本気でそう考え始めていた。
実は今までも、そういったことを考えたことはあった。
あるにはあったのだけど、それはすぐさま自分自身で否定していたのである。
(このまま引っこんでたまるものか)
どこで、そんな意地があったためである。
はっきり言って、このヴェルサルテイルにジョゼフの居場所などない。
いや、ここばかりではなく、貴族社会そのものに、ジョゼフがいるべき場所はないのである。
それはむしろ、わかりきっていたことだった。
メイジたちの、貴族の社会に、魔法の使えない者が座れる席はない。
まったく当たり前の話だった。
それを今まで頑なに拒んできたのは、やはり王族に生まれた者としての誇りがあったせいかもしれない。
(いつか、俺を馬鹿にしてきた奴らを見返してやる!)
そういう気概もあった。
今は駄目でも、いつかという期待のせいでもあったのかもしれぬ。
あるいは、明日への希望という幻想にすがって、自分を保ってきたのだろうか。
だが、それも今では風に吹きつけられた砂の城のように崩れつつある。
寂しいことは寂しいが、ほっと安心することもできた。
(もう、このへんでいいだろう)
まだ十八歳の若者にふさわしからぬ、さめた思いがあった。
ジョゼフは、己が真っ当な人間であるとは思ってはいなかった。
長年人から蔑まれてきたためか、歪みねじれた心の持ち主なのである。
それに関しては自覚もあったし、あまりにも日常的なことなので、いい加減で嫌でも慣れてくる。
だが、それでもなおちっぽけな自尊心というやつは消えることなかった。
悪いこともあったが、そればかりでもない。
安い自尊心は、苦痛をもたらすが、気力というやつを与えてくれた。
魔法が使えないという欠損を埋めるように、知識を深め、肉体を鍛える。
そのおかげか、体は頑丈になり、肉体は健康そのものだ。
もしも普通に魔法が使えれば、こうまではならなかっただろう。
また、例え自分にトライアングルクラスほどの才能があったとしても、あまり問題は解決しないだろうと思えた。
こう考え出したのは、最近のこと、シェフィールドを召喚してからだ。
それまでは、せめてドットでもいい、魔法が使いたいと願い続けていた。
もしそれがかなえられるなら、すぐさま死んでもいいと思ったことさえある。
しかし、死ぬの生きるのは別として、たとえトライアングルだろうがドットだろうが。
シャルルという最高の存在がいる限り、おそらくは何も変わらない。
いや、なまじトライアングルなどであれば、今頃はシャルルを暗殺していたかもしれない。
トライアングルクラスのメイジとて、スクウェアに及ばなくても、貴重な存在に間違いはない。
そこまで到達するにはよほどの才能と、それプラス努力が必要なのである。
魔法というのは基本天性のものだが、いくら才能があろうと、努力をしない者に花は開かない。
けれど、トライアングルの秀才も、スクウェアどころか稀に見る天才の前に立てば、それはただの凡才に成り下がる。
それは間違いない。
そんな比較は愚かだと言えるのは賢者のみのことで、ジョゼフを含め世間一般の俗人というのは、比較の中でしか物事をはかれないのだ。
(もしもだ……)
もしも自分がトライアングルになれるとして、さらに大甘に見積もって十代半ばでトライアングルになれるとして……。
そこまでいくため、どれほどのものを犠牲にせねばならないか。
血を吐き、茨の道をひたすら歩み続けて、それでようやく宝物を手にしたとする。
だが、そのすぐ横で自分よりもずっと立派な宝物を手にした弟が人々の賞賛を浴びている。
自分はといえば、所詮凡人として引き立て役になっているだけ。
想像することさえ辛いものだった。
<無能>に生まれついたことが幸運とは思えない。
さりとて、普通の才能を持って生まれたとしても、似たようなものではないか。
そこから脱するには、シャルル以上の魔法の才能を持って生まれるしかなかった。
(馬鹿らしい)
そこまで考えて、シャルルは失笑した。
生まれたことがもはや結果なのである。
それを、ああだこうだと思い煩ってみたところで、それが全体何になるというのか。
大いなる無駄というものである。
「どうか、されました?」
ふと、横のシェフィールドが振り向いた。
「いや」
ジョゼフは首を振った。
シェフィールドと話す時は、あんな薄暗い感情など引きずっていたくはなかった。
気持ちを切り替えようと、ジョゼフはシェフィールドに笑いかけた。
「なあ、シェフィ、お前はこれからどうしたい?」
「ええとですねえ……。洗濯物をとりこんで、それから……」
「違う、って。そうじゃないんだ」
つらつらと家事の予定をのべようとするシェフィールドを、ジョゼフはあわてて止める。
「だからな、将来の夢とか」
「そーですね。うーーん……」
シェフィールドは、しばらく視線を宙に泳がせた後、ぽわっとした笑顔を見せて、
「ご主人様と同じお墓に入りたいです♪」
と、言った。
ジョゼフはしばらく二の句が告げなくなった。
とんでもないことを、さらりと言ってくれる。
(これじゃあ、まるで……。プロポーズじゃないか)
もともと、死者の供養のための人形である彼女にすれば、それは当然の発想なのかもしれぬ。
だが、言われたジョゼフは、一時的ながら肉体的にも精神的にも、麻痺しそうになった。
しばらくたって、それが溶け始めた頃、
(王族なんぞ、やめちまおうか……)
そんな思いが浮かび上がってきた。
王族であること、まず王冠を受け継ぐなどありえないだろうが、一応は次なる王位継承候補者であること。
少なくとも、今までジョゼフが支えとしてしがみついてきたものではあるが……。
それらに固執していることが、どうしようもなく馬鹿らしく、恥ずかしく思えてきた。
仮に、王になったところで、
(無能王子が、無能王になるだけのことだ)
そう考えると、あまりのくだらなさに泣きたくなる。
ついでに吐き気まで催しそうだった。
シェフィールドの横顔を見ていると、今までの自分がどれだけの阿呆か痛感させられる。
(花か)
ジョゼフは唐突に思いついた。
そういえば、シェフィールドは花が好きだ。
ヴェルサルテイルの花壇も見事だが、野に一面に咲く花畑というのは、まだ見せたことがない。
近いうちに、彼女に広い花畑を見せてやりたい。
ジョゼフはそう思った。
そればかりではなく、いっそ……。
(いっそ、本当にこの城を出るか)
弟のシャルルがいれば、国も宮中もうまくことは運ぶであろうし、心配することなどあるまい。
リュティスを離れ、もう少し静かで環境の良い場所にいくのもいいではないか。
ジョゼフはそんなことを算段しながら、シェフィールドの頭を撫でた。
シェフィールドは子犬のようにそれに身をまかせ、微笑んだ。
以上で、投下完了です。
〜/5 となってましたが、ミスです。ほんとは6でした
さるさん食ったのは初めてですので、焦りました
一応SSは完成してるんで、年内には残り全て投下できるかと思います
――――――――――
以上代理投下終了
乙
素晴らしい作品だ。
イザベラが生まれなくなりそうだけど、まあいいや。
乙!これは次回も期待
ジョゼフ考古学者ルート?
乙
こりゃ展開が気になるぜ
「愛しのシェフィ」は長編ではなく中編(数話の小ネタ)かな?
次の投下を楽しみにしております
予約入っていますか?いないようでしたら5分後に
日本一の使い魔 2話を投下しようと思うのですが
支援
それでは投下します。
「あんた誰?」
「俺は私立探偵、早川健だ。」
「お嬢さんは?ってここは何処だい?」
ルイズは早川の問いかけを無視し
「杖も持っていないから貴族では無いわね。
それにしてもシリツタンテイ・ハヤカワケン?変な名前の平民ね・・・」
そこでルイズは自分の召喚したものがどんなかに気付き
「ミスタ・コルベール!も・も・もう一度召喚させて下さい!」
あわててコルベールに声をかける。
しかしルイズの願いは聞き入れられずに、首を横に振った。
「ミス・ヴァリエール…残念ながら、一度召喚した使い魔を反故にしやり直し
なんて認められない。使い魔召喚の儀式は神聖なもの。さあ、続きを。」
周りの生徒達は平民だ平民だとはやし立てているが、当のルイズはコルベール
の言葉を拒絶した時の事を考えていた。
きっと落第は間違いないだろう。落第した事が実家に判れば…
ルイズは名をルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと
いいヴァリエール公爵家の三女である。ヴァリエール家はトリステイン王国で
有数の貴族であり、貴族というものは体裁を気にする訳で。
「(落第が実家にばれたら…それだったらこの平民を使い魔にした方が)」
ルイズは決意したと言うよりも腹を括り
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そっと口づけをした。
日本じゃ2番目の支援
とっさの口づけに早川は口笛を吹き
「ヒュー♪最近のお嬢さんは積極的だねぇ。だが俺は根無し草、惚れちゃいけないぜ。チッチッチ」
と人差し指を左右に振りながらルイズに声をかける。
「だ・誰があんたなんかと!使い魔契約の儀式だから仕方ないでしょ!
それとあんたは私の使い魔になったんだからご主人様と呼びなさい!
次からはお嬢さんなんて呼んだらタダじゃおかないから!」
と真っ赤な顔をして、捲し立てた。
そこでルイズは違和感を感じ早川に
「あんた、使い魔のルーンが刻まれているはずなのに何ともないの?」
と尋ねる。
「ああ、これの事かい?ちょっと痛むけど、あの時の痛みに比べればこれ位な
んて事ないさ…」
左手の皮手袋を外しルイズに使い魔のルーンを見せる。
ルイズが急にシリアスになった早川に戸惑っている所、空気が読めないコル
ベールが
「人間を召喚するとは珍しい。それにしても、珍しいルーンだ。私も見たこと
がない。スケッチしてもよろしいかな?」
と早川の左手に刻まれたルーンをスケッチし始めた。
早川はコルベールと呼びかけられた男がこの場の責任者なんだろうと判断し
「別に構わないぜ、俺は早川健。なぁコルベールさんとやら、あんたはこの場
の責任者なんだろ?教えてくれ。ここは何処なんだい?それに使い魔って?」
急な召喚で混乱しているのかと思ったコルベールは丁寧に
「ここはハルキゲニア大陸のトリステイン王国にあるトリステイン魔法学院の
敷地です。トリステイン魔法学院では1年生から2年生へと昇級する際に使い
魔の召喚儀式を行います。その儀式であなたは、そこにいるルイズ・フランソ
ワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールに使い魔として召喚された訳です。
使い魔の仕事についてはミス・ヴァリエールに聞くといいでしょう。」
聞きなれない単語のオンパレードに早川は
「(ここは外国のようだが?使い魔?魔法?飛鳥、俺は夢でも見ているのか?)」
色々考えているうちに周りの状況が動き出す。
ヒュー♪
ハッハッハ
支援
俺の支援は日本一だw
「ではこれにて、春の使い魔召喚の義は終了とします。各自、次の授業に向かうように。解散。」
コルベールから解散の掛け声が掛かると教師と生徒は召喚したばかりの使い魔を連れ学院ほ方へと飛んでいく。
「ルイズ!お前はフライどころかレビテーションすら使えた試しが無いんだから、さっさと歩いて来いよ!」
「その平民と仲良く歩いてくるんだな!」
馬鹿にする生徒達を睨みつけ、怒りの感情を押し殺していた。
ルイズと同じ方向を見つめていた早川は呟く。
「ヒュー、なんてこった。まるで異世界に来たみたいだな。」
取り残されたルイズに向かって早川は
「何か判らないが、改めて自己紹介だ。俺は早川健。よろしくな。
ってここは外国だった。俺はケン・ハヤカワだ。お嬢さん。」
またお嬢さんと呼ばれたルイズは怒りの矛先を早川へと向け
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール!
さっきもご主人様って呼べって言ったでしょ!何よ平民の癖に!」
「おいおいおい、ご主人様はないだろ?じゃあルイズって呼ばせて貰うぜ。
ところで、ルイズは行かないのかい?みんな行っちまったみたいだが?」
痛い所をつかれさらに怒りは増す。
「飛べないの!判ったらさっさと帰るわよ!付いて来なさい!」
ルイズは学院へ向けトボトボと歩き出す。
>>382 確かに見事な支援だ。だがどうやら日本じゃ二番目だ。
かぶりそうな日本一の支援
「ヒュー♪チッチッチ。女性を歩かせる訳には行かない。こいつに乗りな。」
早川の指す方には真っ赤で線が描かれた奇妙な形の馬が付いていない馬車があった。
(もちろん、何処から現れたかなんてツッコミを入れてはいけない)
「なによ、この馬車?馬がいないじゃない?」
「こいつはズバッカー!俺のダチが残してくれたものだ。」
そういいながら二人ズバッカーに乗りこむとエンジン音を轟かせ走り出す。
「な、な、何よこれ?」
驚くルイズをニヤリと笑い、おもむろに叫びだす。
「フライスイッチ!オーーーーーン!!!」
早川がボタンを押すと羽が開きズバッカーは空へと飛び立った。
興奮して何を言っているか判らないルイズを助手席に乗せズバッカーは先に出発したコルベールや生徒達をぶち抜き学院へと向かう。
「なぁ今の…ルイズとさっきの平民だったよな?」
「何だあれ?」
「凄いですぞ!何ですかあれは!是非とも是非とも!」
興奮して汗をかくコルベール。光る頭自重。
以上です。
お目汚し失礼しました。
ストロングパワースタイルでも許せてしまう支援
一応、ツッコミを入れちゃいけないヒーローなもんで
好き勝手やってみようと
>>388 ぜひ好き勝手やってください!
ツッコミ所満載でであってこそのズバット!
非常に期待してます!
日本一、投下乙です。
どうぞ、好き勝手やって下さい。
ルイズが使い魔にどんなツッコミを入れるのか、楽しみw
乙です
「人呼んで、
流離の……ヒーロー!!
解決!! ズブァアッットッ!!」
ベベン♪ ベンベンベベン♪
アレをどう表現するのか、そしてどんな日本一?が出るのか楽しみです。
MtLすげぇな……送還ときたよ
青き呪文の初歩の初歩、しかし戦局を逆転すらさせうる初歩だぜ……
乙!しかし文章ではあのズバット最高の盛り上がりポインツである
「かいけつ〜……ズ、バァァァッット!!(デレレレデレレレデンデレレレレン、デン、デレレレレン)」
(BGMと共にカメラを切り替えながら連続高速ズームアップ)
が表現できないではないか!
ズバットは5分しかなれないけど大丈夫なのか?
いざとなればベルトの風車で変身したりクルリと回って転換したりカプセルに入って変身すれば済む話だが
>>394 大丈夫!
ズバットスーツなんて無くてもはっやかっわさ〜んは無敵に素敵さ!
>>391 うむ、どうしてもツッコみたい。
「解決」ではなくて「快傑」だ。
いや、分かってるんだろうとは思うが、どうしても気になる・・・・・・
まさかハニークレイマイハニーから来るとは思わなかった。
乙です。
エビアンワンダーとかも召喚されたら面白そうだけど
メインの3人引き離したら可哀相すぎるからな…
>>394 行動隊長はカプセルに入らないんだぜ?
ガオレンジャーVSスーパー戦隊だと花を掲げて変身してた
なんだか最近の投下ラッシュ凄すぎない?さっぱり乙が追いつかねぇ
とにかく作者方全員乙!!
乗るしかない、このビッグウェーブに
早川さんはズバットスーツ着ない方が強いんじゃね? という意見があってだな……。
>解説入れてもらえますか?
wiki登録は読者(推定)の何方かがやって下さっていますので、
解説を入れるかどうかはその人次第ということになります。
5分後、投下させていただきます。
確かどうせ早川さんなら誰が相手でも勝つし
時間制限がつく分、ズバットスーツなしの方が相対的に上かもしれんwww
「奴らに狙われて、次の朝日を拝んだ者はいない。どうだ、納得したか?オスマンは終わりだと。」
メンヌヴィルの挑発に、コルベールは冷静に答えた。
「貴方がその暗殺部隊を評価するように、私もオスマンを評価している。彼は絶対に負けない。」
「ほざいてろ。今回の隊長はかつてアルビオン王家が飼っていた三人のスクウェアメイジを仕留めた実力者だ。」
「たとえ、相手が神であろうとも、私は彼の勝利を信じる。そして・・・」
コルベールはかつての部下に、強力な火炎魔法を見舞った。
「我が学院の生徒の誰一人の命も貴様らには渡さん!お前を殺し、私が助ける!」
コルベールが2発目の発射体勢に入った瞬間、我が目を疑った。
あろう事か、メンヌヴィルは今の魔法を美味そうに吸い込み、軽くゲップをした。
「ククク・・・元隊長殿の炎・・・実に美味いな・・・俺が光を失ったあの日を思い出す味だ・・・」
「貴様・・・まさか・・・」
コルベールの顔に戦慄が走る。メンヌヴィルは下卑た笑いを浮かべながら答えた。
「ああそうだとも。売ったのは魂だけじゃない、奴らのお陰で俺は生まれ変わった!!
人類を遥かに超越した新しい血肉を、力を得たのだ!!」
「あの頃からそうだったが、救い様の無い悪党だな。お前は。」
「それ、学院長に引導を渡せ!!」
指令を受けた10程の不可視の剣士が音も無く突撃する。
しかし、オスマンが自分の周囲に発動させた炎の壁に、焼かれてのた打ち回る羽目となる。
「確かに、君らの暗殺者としての能力は高い。じゃが姿や音、殺気は消せても、
物が動くときに必ず発生する微かな風までは消せなかったようじゃの。並の者ならともかく、わし相手では部が悪いようじゃの。加えて・・・」
オスマンが天井に向けて、錬金を放つ。瓦礫が降り注ぐが、先の火炎を避けた男達は平然と立っていた。
それがわかるのは彼らに降り注いだ粉塵を被った事によって姿が丸見えになっていたからである。
「これで誰の眼にもお前達の姿が分かるようになった。そして・・・」
部屋に炎の嵐が吹き荒れ、室内に残っていた暗殺隊員達はその場に崩れ落ちた。
「その鎧、先程より砕けたり溶けたりせぬ所を見ると、かなりの強度と耐熱性を持つようじゃが、
内部に熱を伝えやすい性質があるようじゃな。鉄鍋と同じ原理で中の人間は丸焼けじゃて。
一発で仕留められなかった時点でお前さん達の負けは確定じゃ!」
言いながら今度は廊下にまだいるであろう敵に向けて、炎を放つ。立て続けに暗殺隊に炎の嵐を叩き込んだ所で、さしものオスマンもゼエゼエと息を切らした。
「やっぱり年は取りたくないのう。」と愚痴をこぼしながら、部屋を出る。
「やってくれるな。俺の部下を瞬く間に全滅とは。」
咄嗟に距離をとって、炎の嵐をかわしたのだろう他の者とは明らかに別格の気が近付いてきた。先程からの声の主だ。
「お前さんが透明人間の親玉か。」
「いかにも。俺は暗殺剣士隊隊長、コードネーム・レイヴン。噂に違わぬ実力、見事といいたい所だが。配下をうまく使う俺を仕留める事は出来なかった様だな。」
その言葉が意味することは簡単だった。彼は部下達を矢面に立たせ、先程の炎を凌いだのだ。
「何という事を・・・自分の部下を・・・」
「俺は自らを高めるだけでなく、同僚や部下をうまく使うことで名を上げてきた。
だがまだ足りない。オールド・オスマン、貴様の首で、俺は更なる高みへ達する!!」
学院の一階で、教師と生徒達は亜人達と決死の攻防を繰り広げていた。
幸い、侵入してきた連中の殆どが力は強いが、頭が弱い連中だったため、簡単なトラップで撃退することが出来た。
ギーシュを筆頭とする土のメイジ達が落とし穴を作り、水のメイジ達はその穴を強力な酸で満たす。
これを至る所に設置した結果、面白いように侵入者の体はドロドロに溶かされ、
穴を飛び越えたり、全部溶ける前に脱出した者にはキュルケら火のメイジが止めを刺す。
風のメイジは火のメイジの援護に回っていたのだが、その代表たるタバサは白目を向いて気絶していた。
彼女は元々、幽霊の類が大の苦手で、かつてキュルケが闇の中、
蝋燭で現代人・・・つまり我々が懐中電灯でやるような事をして見せた時も股間に洪水を発生させたほどだ。
そんな彼女が群れに混ざっていた死霊の騎士やキラーアーマー(異界の魔物ゆえ、当人達は名を知らない)
を見れば気絶するのは当然であった。
しかし、敵もそれなりに知恵が働いた・・・のではなくその嗅覚で人間の匂いが最も強い場所を探り当てた。
それは食堂であった。そこは学院のメイジ達の本拠地であり、学院で働く平民達の避難所でもあった。
数に物を言わせ、幾重にも仕掛けられた落とし穴を仲間を橋代わりにして渡り、魔物の群れは食堂へたどり着いた。
だが、そこで亜人達がいぶかしんだ。部屋は蛻の殻だったのだ。
部屋に次々と亜人が雪崩れ込み、満杯になった瞬間、突如天井がひび割れ、崩れ落ちてきた。
逃げようとするが、鮨詰め状態になった彼らは身動きがとれず、天井の下敷きとなった。
「やった!」
「大成功ね、ギーシュ。」
全てはこの二人が発案した作戦だったのだ。
まず、ギーシュの使い魔・ヴェルダンデが穴を掘り脆弱なメイジと平民達を遠くへ逃がし、
『香水』のモンモランシーが速攻で調合した人間の体臭がする香水を食堂に大量にぶちまけた。
案の定、臭いに釣られてやって来た連中をギーシュら穴を作り終え、手の空いた土のメイジ達が
力を合わせて食堂の天井を崩し、押し潰す。
タイミングはヴェルダンデの視界をギーシュが共有することで計り、彼女は崩れる寸前に地に潜って逃げた。
落とし穴はただの時間稼ぎに過ぎなかったのだ。
「さあ、結構片付いたと思うけど、他にもいるかもしれないから、狩の続きと行こうか。愛しのミス・モンモランシー。」
「はいはい。」
ついにレコン・キスタの軍勢が見え始めた頃、学院襲撃の知らせが入った。
しかし、今は目の前の大軍を抑えなければ大勢の民が犠牲になるため、泣く泣く女王は救援を突っぱねた。
「これは・・・想像以上だな・・・」
「本当に勝てるのか・・・?あれに・・・」
兵士達が不安になるのも無理は無い。
空を埋め尽くすような大量の軍艦と竜騎士隊。数は五桁は下らないであろう。
大してこちらは長い平和ゆえに、すっかり衰えた寄せ集めの兵が数千と百の魔物。
メディル以外のこの場の者にとって、それはこの世の終わりとも思える絶望的光景であった。
「メディル、まだ!!?」
焦りと恐怖で身を震わせたルイズが、メディルにきつい口調で問う。
「騒ぐな。恐れるな。心を静めろ。戦の最大の敵は、焦燥と恐怖。焦った者、恐れる者は必ず死ぬ。」
百戦錬磨どころの次元ではないメディルの言葉には、絶対的説得力があり、ルイズを黙らせ、震えを止めた。
「初めて撃つ呪文だからな。出来る限り引き付けて、そしてこちらが巻き込まれぬギリギリの距離で撃つ。」
「そんなに凄い物なの?」
「あの書物が真実ならばな。」
「あらかた片付いたわね・・・」
この期に及んで生き延びていた手負いのトロールを火葬したキュルケがぼやく。
「そうだね。うんざり・・・するぐらいの・・・数だったけど、何とかなって・・・良かったよ・・・」
今七体のワルキューレを駆使し、虫の息のオークを成仏させたギーシュが、息も絶え絶えに言った。
「あれ?タバサは?」
キュルケの傍で気絶していたはずのタバサがいつの間にかいなくなっていた。
「動く鎧や骸骨は数が少なかった分、全滅するのが早かったから、目を覚まして獲物でも探しに行ったんじゃないの?」
「幾らタバサでも、この状況下での単独行動は危険よ。」
「しょうが・・・ないなぁ・・・レディを・・・救う役は・・・僕・・・」
言いかけて、ギーシュは昏倒した。精神力が尽きたからだ。
「タバサ探しはあたし達がやるから、あんたはそこで寝てなさい。」
「そろそろやるか。」
呟くや否や、メディルの体から絶大な魔力が放出された。ルイズを始めとした、トリステイン軍全員が固唾を呑んだ。
「超高密度魔法言語・りゅうせい!」
すると、メディルの叫びに応え、天が無数の星を投げて寄越した。
星は、次々と敵軍に降り注ぎ、掠めただけで戦艦は大破し、
一発目をすんでの所で交わした竜騎士が2発目の直撃を喰らい、海の藻屑となる。
それでもなお、隕石は降り続け、星の嵐が止んだ時には類稀な強運で回避した僅かな竜騎士が残っているだけだった。
その光景に、トリステイン軍は息を呑んだ。
「凄ぇ・・・敵軍が・・・一瞬で壊滅だ・・・」
「まるで、神か悪魔がほんの一時、俺たちに味方したようだ・・・」
まんざら間違った比喩ではない、とルイズは心の中で思った。
「皆の者!メディル殿のお陰で、敵は壊滅状態です。残党を一気に・・・」
「いや、待て!!」
軍に命令を下そうとするアンリエッタの言葉を、メディルが遮った。
「どうしたの!?」
ルイズの問いに、メディルは信じられぬ答えを返した。
「これを見ろ。」
突如目の前の何も無い空間に巨大な画面が現れた。先程海中に送り込んだ魔物の視界を共有した映像だが、そこでは信じられぬ現象が起こっていた。
海底に横たわっている星に押し潰された者の体が風船のように膨らんでいき、粉々になった肉体は吸い寄せられるように復元して行った。
海面からは次々と、撃ち落された竜が飛び立ち、何事も無かったかのようにそれぞれ進軍を再開した。
この世ならざる光景に、寄せ集めの兵の恐怖は最高潮に達し、軍は阿鼻叫喚の騒ぎとなった。
平民の兵はまだしも、事もあろうに貴族の身分も誇りも忘れて敵前逃亡する輩まで出る有様だった。
「どうなってるの!!?」
「何かの魔法がかかってるのは気づいていたが、よもや不死身の魔法とはな・・・だが問題ない。」
言うが早いか、メディルは再び先程の様な魔力を放出した。
「超高密度魔法言語・ひょうが!」
先程の魔法と比べると、いささか見劣りするが、これも凄まじい威力を発揮した。
まるでそこにだけ氷河期が訪れた様に、不死の軍隊は海ごと氷漬けになった。
「なるほど殺せないなら、動きを止めてその間に大元を・・・」
ルイズは言いかけた台詞を止めた。あのメディルが・・・ガクリと膝を折り、ゼエゼエと息をしていた。
「メディル!大丈夫!!?」
「流石は・・・古の魔神が使用したという魔法・・・大した消耗だ・・・この私でも2発が限界とは・・・」
言いながら、メディルはアンリエッタからもらった魔法薬を一瓶取り出し、一気に飲み干す。
見る見る魔力が回復するが、完全ではない。
「八割という所か・・・だが、ぐずぐずしてはおれん。すぐに次の手を・・・」
「おい、あれを見ろ!!」
場に残っていた兵が声を上げた。地響きと共に、次々と大爆発が起こっていた。これでは、せっかくの氷も形無しだ。
「まさか・・・ワルドを爆発させた・・・」
「ルイズ、ここからは二手に分かれよう。」
「何ですって!?」
「奴らの大元の居場所は分かっている。奴らの体から細い糸の様な魔力が同じ方向に伸びているからな。
ルイズ、お前はここに残り、連中を食い止めろ。」
「無茶よ、そんなの・・・私、あんな連中を止める方法なんて・・・」
「私の考えが正しければ、私かお前の技でしかあの連中を殺すことは出来ない。
そして、大元の場所へ飛んでいき、それを抹殺するのは私にしか出来ん。」
「でも・・・」
不安のあまり、メディルの主君は涙目になっていた。
「お前は曲がりなりにも私の主君だろ。主君なら、主君らしくしろ。」
「・・・わかったわよう・・・やればいいんでしょ、やれば!!」
吹っ切れたルイズは涙を袖でぬぐい、杖を構えた。
「言っとくけど、止められなかったらごめん。」
「私にとっては関係の無いことだ。」
「そうだったわね。」
そんなやり取りが終わり、メディルは魔力の大元の居場所・・・現・神聖アルビオン共和国へと飛び立った。
「さあ、女王陛下。メディルの働きを無駄にせぬためにも!」
「ええ、わかっています。」
かつてニューカッスル城の存在した荒野に、白面の魔導師は降り立った。
「どうやらルーラは使えるようだ。・・・それにしても、準備がいいな。」
メディルの周囲には、数百の兵と、髑髏の騎乗兵がいた。
そいつはメディルの知る、ここで初めて出会った彼であって彼ではない「何か」になっていた。
「君とは、またこうして出会うことになると思っていたよ。」
「奇遇だな。私もだ。」
「この姿を見て驚いただろう。ウェールズ殺しの褒美に、更なる力を授かったのさ。」
「大方、そんな事だろうと思ったよ。」
「者共かかれ!!」
死神君主の号令と同時に、周囲の兵が一斉に襲い掛かってきた。
「そいつらは不死身ではないようだな。生憎と時間が無いので、一気に行かせてもらう。」
言いながらメディルは、左に旋風・右に冷気の魔法を発動させた。
「氷刃嵐舞・マヒアロス!!」
突如、氷の嵐が吹き荒れ、メディルに斬りかかった40程の兵が一瞬で凍りつき、砕け散る。
メイジ達が火や風の魔法を放ったが、彼のマホカンタに返され、事態を理解出来ぬまま冥土に旅立つ。
殴りかかるオーガやオークの息の根をザラキーマで止め、間髪いれずにイオナズン3発を敵陣に叩き込む。
メイジ達は攻撃魔法が効かぬと悟り、補助魔法を肉弾戦を担当する戦士や亜人にかける。
だが、それも無駄なあがきに終わった。
「最後はお前だ。」
気が付けば、数百の兵は全て息絶え、残ったのは指揮官のグレートライドンだけだった。
「その様だな。」言いながら、冥府の騎士は槍を構える。
投下終了です。
ゼロの初めてのお使い
とかどうか?
異魔神の専用?魔法使っちゃうのかぁ……
アレはヤバすぎるw
ふと思ったんだが対ワルド戦でモシャス使ったら十人のワルドが殺し合う事に成るんだろうか?
>>397 ビッグワンなら仕方ねえや
そういや早川健ってマシンガンの弾を鞭で捌いていたな
恐らく魔法に対しても鞭で
ゼロの使い氏、投下乙です。
りゅうせい食らって肉片が残ってるだけでも大したもんだw
>>410 剣道の試合が出来そうだねw
先鋒:ワルド対ワルド
次鋒:ワルド対ワルド
中堅:ワルド対ワルド
副将:ワルド対ワルド
大将:ワルド対ワルド
ワルドしかいねえぇぇぇぇぇww
ドキッ!ワルドだらけの決闘大会!〜腕ポロリもあるよ!〜
>>401 入れるにしろ入れないにしろ、作者が指定すればその通りになるだろうw
本文で説明仕切れなかった部分を後書きで補足してるなら、お願いした方が良いんじゃね?
いくら分裂しようといずれ消えゆく定めのワルド。
しかしドラクエ独特のパラメータである『かっこよさ』で計るとゼロ魔のキャラはどうなるんだろう?
男性陣はともかく女性陣の基準は…やはりアレの大きさか?
>>413 モツがポロリに決まってんだろJK
ツカイマグルイの人、お待ちしておりまする・・・・。
日本一の使い魔、怪傑のうてんきか懐かしいなあ
やっぱ姉妹作の「愛国戦隊大トリスティン」も
偏在 → 修行 → 二倍の効果! → 大した奴だ……
ワルドの腕は犠牲になったのだ……犠牲の犠牲にな
キュルケェ!
次鋒を召喚して対ワルド戦でエアニードルを見てトラウマ発動って電波を受信した
ウメーウメー
羅将神ミヅキ召喚の人まじで長編で活躍してくらないだろうか
切に願うぜ
『もののけもの』から龍だましを召喚。
「え、あんたドラゴンじゃないの!?」
「最近の娘は横文字ばかり使いおって!
ドラゴンじゃなくて龍だと何度言えば(龍でもありません)」
「どうしてくれるんだね、君のおかげで−
「も、申し訳ありません!」
「MOTTAINAI!MOTTAINAI!(こぼれたデザートを拾い食い中)」
このスレでの悪奴はドラクエでの初期ボス扱いだなw
アイツはもっと…もっと格好良くて強いに決まってる…!
流石に魔人やシスの暗黒卿相手には勝てないけど。
>>425 そうだよな。マントーや牛松、
スカンクスや陰呼大仏ぐらいには格好良いよな。
428 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 19:51:45 ID:ktuFiYTI
理想郷が落ちているのでここに投下してあげます
ガンダムシードのアスランXキラです。
>>428 /\___/\
/ / ヽ ::: \
| (●), 、(●)、 |
| ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
| ,;‐=‐ヽ .:::::|
\ `ニニ´ .:::/ NO THANK YOU
/`ー‐--‐‐―´´\
.n:n nn
nf||| | | |^!n
f|.| | ∩ ∩|..| |.|
|: :: ! } {! ::: :|
ヽ ,イ ヽ :イ
お断りします
ハハ
(゚ω゚)
/ \
((⊂ ) ノ\つ))
(_⌒ヽ
丶 ヘ |
εニ三 ノノ J
>>428 ガンダムキャラは旧シャア板にスレがあるのでそちらへどうぞ。
ハ,,ハ
( )
/ \ すましり断お
((⊂ ) ノ\つ))
((_⌒ヽ
ヽ ヘ }
ε≡Ξ ノノ `J
∧∧ ∩
( ゚ω゚ ) /
ハ_ハ ⊂ ノ ハ_ハ
('(゚ω゚`∩ (つ ノ ∩´゚ω゚)')
ハ_ハ ヽ 〈 (ノ 〉 / ハ_ハ
('(゚ω゚`∩ ヽヽ_) (_ノ ノ ∩´゚ω゚)')
O,_ 〈 〉 ,_O
`ヽ_) (_/ ´
ハ_ハ お 断 り し ま す ハ_ハ
⊂(゚ω゚⊂⌒`⊃ ⊂´⌒⊃゚ω゚)⊃
(( n n )) (( n n ))
(ヨ ). ハ,,ハ ( E),、 , (ヨ ) ハ,,ハ ( E)
\\ ( ゚ω゚ )/ / ヽ、,,./ ヽ、\( ゚ω゚ )//
ヽ <∞> / .\ <∞> /
__/ <V>/ ○ ○ \<V> \__
/⌒ヽ 。゚ 。゚/ \゚。 ゚。 /⌒ヽ
く __Y ヽ__/( (__人__) 丿\__/ Y__ノ
⊂____) \ \ / / (____⊃
> ) (. <
(\ / )) (( ヽ/)
く_⊃ ⊂_ノ
ふと思ったんだが、カービィ召喚したらカービィ無敵だよな
何人もカービィに吸い込まれるけど
うちの店はBLあつかってないよお客さん
>>435 カービィならまとめWikiにあるぞ。ルイズに溺愛されてる。
つか呼ぶならどちらか一人にしろよ
複数召喚でおもろいの見たことないぞ
>>435 そのピンクのなまものは既に喚ばれている。
○かいて、おめめが二つ、おむすび一つ
あーっというまに、ほしのカービィ
なーんでも、育てたー!
BGM:マルク戦
>>426 使い魔を塩漬けにしろ!
ですね、わかります
>>444 ピクル召喚か
契約するために近づいたら即レイプされるルイズ
ギーシュと決闘する事になってギーシュを食べるピクル
ルイズじゃ雌として認識されないんじゃないかな・・・・
キュルケが危ない!・・・か?
餌どうすんの?自分に向かってくる「遊び相手」以上じゃないと喰わないよ彼
ワルドの遍在喰わしておけば良いんじゃね
>>449 外見的に餌とそっくりなフレイムとキュイキュイで数日はもつよ
ダイエットフードよりも更に栄養なさそうだなw<遍在
マジレスすると現実の現代よりはハルケギニアの方が「危険な野生生物」ははるかに多いから
わりとどうとでもなると思うぞ。
オーガの方がまだコミュニケーション取れるからマシ・・・なのかなぁ
でも「平民は貴族に逆らっちゃ、めっ!なのよ!」とか言っちゃった日にはルイズが女子供といえども・・・
ちょっとした飛竜ぐらいなら勝ちそうだな。
下手すりゃ大人の火竜とやっても勝てそうな気が。
フレイムがやばいかな?
・・・・となると30年前にオスマンを助けたのは勇次郎か?
そもそも、オーガを前にそんな口を聞けるのだろうか?
>>456 普通に生きてそうですね。
レコンキスタにでも交じって戦争してるんだろうか……
パンチ一発で、地震止めたり地球のカーナビ狂わせる奴らばっかりだからなーw
ここは真摯な花山を召還だな
>>459 地震は勇次郎一人で、カーナビは勇次郎とオリバとゲバルの三人だけじゃね?
>>458 このスレのルイズはバージルのような危険な悪魔から谷のようなおかしな奴までHEIMIN扱いなんだ
杖もマントもないバキキャラじゃ生意気な口を出すのはありえない事ではない
リュウの強さを見抜けないようではオーガの強さを見切るなんて無理な事だ
>>463 何も知らない一般人が、肉食動物の間合いに入ってしまった草食動物のようになるオーガでも?
……無理かもなぁw
平民にしか見えないし、この時のルイズは色々とテンパってるだろうしなぁ……
最初の「ミスタ・コルベール!もっぺんチャンスおくれ!」「ダメ。コレで我慢なさい」の会話で蚊帳の外にされた時点で大暴れの危険もあるからなぁ
>>465 喚ばれたばかりの使い魔達が暴れ出したり逃げだそうとしたりとか。
>>462 面倒臭いから服の切れ端とか・・・・
鬼神の布とか適当な名前つけて。
ふとこの流れで思い出す。
いわゆる「知力」「体力」「時の運」、
「知力」自慢、「体力」自慢はしょっちゅう召喚されるが、
まだ「時の運」ってのが無いよな?
ラッキーマン召喚とかどうよ?
カメレオンの矢沢さん、破壊王のノリタカさん、およびです
>>468 実はサイトがそうなんじゃないかという気もせんでもない。
>>466 歴戦のグラップラーであるコルベール先生なら、ルイズの抗議を無意識のうちにスルーして
全神経を集中して勇次郎を警戒するんじゃね?
始めは睨み合うも、はらりはらりと抜け落ちていくコルベール先生の頭髪に
興が削がれた勇次郎が割と優しく場所を訊ねて一安心
>>468 「時の運」を無意識に片っ端から右手で消してるヤツは召喚されてたけどね。
ほんとは召喚そのものとか使い魔の契約もキャンセルする右手なんだけど。
473 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 21:25:15 ID:QpdPJ2QC
思いつきのネタ「ゼルダの伝説」からリンク召喚
リンクが現れた→うわぁ、エルフだ!!(魔法発砲)→とりあえずミラーシールドで反射=地獄絵図
そしてはねっかえりの生徒たちを十秒で殲滅
最近の勇次郎はずいぶん丸くなったからむしろ生きのいいガキだと気に入るかもしれない
魔法が絶対の世界で魔法なしで意地張ってるなんてのは彼の好みだろう
>>469 ヤザワは中身が真性のクズだから初日にルイズレイプとかやりかねないぞw
でも何やかやで勘違いされてのしあがっていくんだろうな
頭良いわけじゃないけどサポートタイプのキャラとか
話し作るの難しそうだ・・・
思いつきの流れに便乗してもう1ネタ
「塊魂」シリーズから王様召喚。
一昔前にあった蹂躙議論をも巻き込むぜー!フーハハー!
なんか30年前にワイバーン対勇次郎を目撃したオスマンの話が、
シロクマぶちのめす勇次郎目撃した猟師の話っぽい内容に変換された。
>>468 「ああっ女神さまっ」の蛍一は女神お墨付きの幸運の星に護られた男
理系知識豊富でルイズに似たスクルドにも寛容だけど、たまに不運の星が頭上に来る
>>478 そう考えると、破壊の杖は破壊されたワイバーンの剥製にでもなりそうだね。
>>471 やたらマッチョなコルベールが脂汗ダラダラたらしている図と
例の笑顔でやさしくハゲに手を置くオーガが容易に想像つくな
>>475 意地どころか、破壊力だけなら魔法を優に超えてしまう
飛べるし
ワの字が倒せる可能性は果たしてあるのか?
>>482 素直にコケにされて散ってもらおう
それが彼の役目だ
偏在がラーニングされるか、女子供の護身技呼ばわりされるのか
>>481 マッチョになるんですねw
>>479 K1なんか読んだらノルン三姉妹が即座に突撃してくるよw
連中は全次元を管理してるから。
変わりの不思議生物を召喚して帰る気がする。
486 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 21:41:17 ID:QpdPJ2QC
風が最強とかほざいてた教師も可愛そうなことになりそう
見える……見えるぞ! 勇次郎の毒笑が!!
京四郎と永遠の空からかおんを召喚してだな…
ああ駄目だ俺には書けん。神無月の巫女のパラレルとはいえあの二人を引き裂くなんて!
というか、勇次郎より息子のほうが来たら厄介だぞ
勇次郎がいない世界だと戦う気力完全になくしてニート化しそうだ
>>483 ここでヘイト扱いされるような能力の持ち主や武器にも平気で勝つんだから
偏在やエアニードルで何とか出来るとも思えんなぁ
大丈夫だよ、バキなら早朝の広場でスーパーシャドウ格闘やって、みんなから生暖かい目で見られるから
「おわっ!」「くっ!」「キュルケ!そんなところを!」とか叫びながら一人で吹っ飛んで血を流してるよ
バキ対範馬の血を引くシエスタ
お決まりの魔改造で梢江化したシエスタ
バキが絡むと……大魔法峠ではないが、ブリミルが残した真の虚無は『肉体言語』かと思えてしまう。
ワ「平民が! 調子に(ry」
勇「調子こかせて(ry」
そういえばクロスでジュリオって全然出てこないよね
基本的に彼が出てくるような場所まで進むのが少ないってのもあるけれど、それでも殆どみたこと無い
嫌われてるのかな? 俺は好きじゃないが
ジュリオ・ゲバル
だってキャラつかみにくいからいじりにくいし
ロマリア関係はまだ不明な点が多いしガチホモだし
オーガ対ワルドをやるとなると
ルイズの前での手合わせ
ワルドをM字開脚の体制で持ち上げて「し〜っしっしっし・・・出直せい!」ぐきゃ
仮面戦
ライトニングクラウドでちょっと火傷→「面白い・・・喰うぜ!」偏在瞬殺
結婚式場でのバトル
「風の最強たるゆえんを見せてくれるわ、偏在の術!」「何人居ようと俺にとっては4人だ!」全滅
タルブの村上空にて(この時点まで生きてる可能性は低いが)
風竜を駆るワルドに対して相変わらず素手で生身の勇次郎
上を取って圧倒的有利かと思ったらジャンプで竜の上に乗られて竜を一撃でくびり殺された後、ワルドも死ぬ
タルブまで進んだらフライとか余裕でラーニングしてるよ!
>>497 あらゆる獣を右拳ひとつで従えるという、ルーン関係ない展開を期待
戦闘欲>>越えられない壁>>性欲・常識その他だからなあの世界のグラップラーは
>>496 全然って、せめてまとめWikiくらい目を通してから言ってくれ
憚れる勇次郎、
>>501のゲバル、頭脳派オリバ
そして武器と言ったら、この男!
環境利用闘法の使い手ガイア!
あれ?
こんばんは。
他に投下の予定がないようでしたら、22:15から第13話の投下を行います。
それにしても、会社でルーズリーフにアイディアやらセリフやらを箇条書きするって、ドキドキしますよね。
ガイアもガイアで相当ヤバイぞ
隠密能力はほとんど魔法並みだし
どっからでも武器調達できるうえに
身体能力がサイトとは比べ物にならないからガンダ化したら凄い事になる
>>506 いや、もちろんハルケギニアではやっていけると思います。
仰るとおりサイトとは比べ物になりませんからね。
でも、他の使い魔が……
取り敢えず事前支援
無論、支援させてもらう
では支援
>>505風に言えば、オーガと二分するという触れ込みだった使い魔支援
一応支援
乙です。
仕事中にネタ考えてる支援
支援
トリステインとアルビオンを繋ぐ港町、ラ・ロシェール。
峡谷に挟まれて日当たりの悪いこの町の、更に日当たりの悪い路地裏の一角に『金の酒樽亭』という居酒屋がある。
「私たちの話をこのハルケギニアの人間が理解出来るとも思えませんが、万が一……ということもありますからね」
「……密談に適している場所とも思えんがな」
その中では、お世辞にも品が良いとは言えない傭兵やガラの悪い男たちが、騒ぎながら酒を飲んでいた。
「むしろこのような雑然とした空間の方が、機密情報のやり取りには向いています。覚えておいた方が良いですよ」
「そんなものか」
ユーゼスはシュウに誘われるまま『金の酒樽亭』に入り、店内の隅の一角に腰掛けることになった。
……正体不明の人間について行くなど、普通であれば考えられない。だがこの男が発した言葉は、無視をするにはあまり
にも意味がありすぎた。
―――イングラム・プリスケンの存在を知っている。
これだけで、自分にとって無関係ではあり得ない。
おそらくどこかの並行世界からやって来たのだろうが、そこにはイングラム・プリスケンが存在したのだろう。
そして、ユーゼス・ゴッツォも。
イングラムが存在するのならばユーゼスが存在し、ユーゼスが存在するのならばイングラムが存在する。
因果の鎖で縛られた、互いの鏡像。
『ユーゼスとイングラム』は、真の意味での運命共同体である。接触するかしないかの『ユーゼスとラオデキヤ』程度の
関係ではないのだ。
もっとも、『自分』と『自分の鏡像のイングラム』との決着は既に付いているので、『このユーゼス・ゴッツォ』と『そ
れから生み出されたイングラム・プリスケン』との因果の鎖は、切れているのだが。
……そこまで考えたところで、ふと店内に気になる点を見つけた。
白い仮面を被った黒いマントの人物が、こちらに視線を向けているのである。
まあ、明らかにこの店の雰囲気にそぐわない白衣を着た男二人がいるのだから、ある程度の注目は集めて当然なのだが。
取りあえず気にせず、シュウとの会話を始める。
「……しかし、仮面の下の素顔がそれだとは思いませんでしたね」
シュウは薄く笑いを浮かべながら、ユーゼスの顔を見る。
そんな意見に対して、ユーゼスは無表情に答えた。
「お前の知っているユーゼスと『私』は別人だ。素顔が同じとも限らない。……現に、私は一度顔を変えているからな」
「ふむ、人に歴史あり……というやつですか」
言いつつ、ワインと軽いツマミを頼むシュウ。
「あなたもどうです?」
「遠慮しておく。酒は思考を鈍らせるからな」
「たしなむ程度には、覚えておいて損はありませんよ」
ワインとツマミが運ばれて来ると、シュウは早速グラスを傾け始める。そんな仕草にも、なぜか気品と言うか優雅さの
ような物がにじみ出ていた。
(……この男、底が見えんな……)
只者ではないことは一目で分かるが、その『本質の読みにくさ』に関しては、先程会ったワルド子爵などと明らかにタ
イプが異なる。
ワルドが本質を『厚く重い布で隠している』とするならば、シュウは『恐ろしく深い湖の底にある』とでも表現すべき
ような……。
「……やはり警戒は解けませんか。まあ、無理もありませんね」
ユーゼスの様子を見て、シュウは仕方なげに息を吐く。
「それでは、まず『お互いの世界』について情報を交換しましょうか」
支援
支援
支援
「『互いの世界』だと?」
「ええ。あなたの存在した世界と、私の存在した世界―――それらが異なることは確実ですが、『世界を構成している要
素』については共通部分がある可能性があります」
「ふむ……」
確かに自分は様々な世界を取り込んだ、新たな世界を作ったが……。この男の世界もそうだと言うのだろうか?
ともあれ、何にせよ反対する理由はない。
「良いだろう」
「感謝します。では……『クロスゲート・パラダイム・システム』という単語に聞き覚えは?」
「私が開発したシステムだ。因果律の把握と操作、時空間の移動などが主な機能だが……やはり『ユーゼス・ゴッツォ』
が存在する以上、それも存在しているか」
「世界が違おうと、同じ人間は同じような行動を取りますからね」
サラリと言うシュウ。まるで実際に見て来たかのような口振りである。
「では次は私だな。『ガイアセイバーズ』を知っているか?」
「……新西暦50年代に、そのような名の特殊部隊が存在したことは知っていますが、さすがに詳細までは知りませんね」
「ふむ……。では『バディム』は?」
「そのガイアセイバーズによって壊滅させられた組織だと聞いています。同じく詳細は不明ですが」
「成程、『新西暦』という点では共通しているな……」
この男が存在していた世界が、おぼろげながら見えてきた。
―――つまり『自分の行動が生み出した結果』、ということだろうか。
「次に移りますか。『サイコドライバー』…………いえ、少々お待ちを」
「?」
言うなり、シュウはワインとツマミを一口ずつ口に入れて、直後に懐(フトコロ)から素早く一枚の紙と一本のペンを
取り出した。
そしてかなりのスピードで、その紙に文字を走らせていく。ユーゼスも知っている、地球の文字だった。
『この字が読めますね? YESならばテーブルを一回叩いてください』
ユーゼスは指で軽くトン、とテーブルを叩く。
『私たちの会話に、注意を払っている人間がいます』
(……何?)
思わず振り向こうとするが、シュウにペン先を顔に突きつけられた。
仕方なく、視線を紙に戻す。
『下手にリアクションは起こさないように。悟られてしまっては、あなたにとっても私にとってもマイナスになりかねませ
ん。ここは全く関係のない話をしながら、筆談を行うべきです』
「……………」
理には適っているので、ユーゼスもシュウにならって懐から紙とペンを出す。
「……二流品ですね、ここのチーズは。ワインも質が悪い」
『あの聞き耳を立てている相手に、心当たりは?』
「たかが酒とツマミに、こだわりすぎだ。そもそも店構えを見た時点で、味の方も想像しておくべきだろう」
『無い。私に質問するということは、お前も無いのか』
「案外、このような店が『隠れた名店』であることも多いのですが……」
『はい。しかし、筆談では効率が悪いですね』
「外見で店を判断するのは間違い、ということだ。やはり頼りになるのは他人からの情報だな」
『私の世界の座標を教える。並行世界を覗き見ることは可能か?』
「しかし、他人の味覚と私の味覚は違いますからね。……結局は、自分で実際に足を運び、口に入れてみるしかないという
ことですか」
『可能です。しかし、よろしいのですか? あなたの世界を見るということは、あなたの人生をそのまま見ることになって
しまいますが』
「時間と手間を惜しまなければ、の話になるがな。難しい問題だ」
『構わん。見られて困る物でもない』
「そう構えることでもないのではないですか? 取りあえずは食べたいものを食べてみる。これが大事だと思いますが」
『それでは、私のいた世界の座標もお教えしましょう。少しばかり次元境界線がややこしいことになっていますので、混線
しないように気をつけてください』
「確かにな」
『了解』
そして二人は、互いの『世界の座標』を書き記し、紙を交換する。
支援
支援
支援
筆談を切り上げ、二人は席を立った。
「……さて、なかなか面白い時間でした。今度はもっとゆっくりとお話がしたいものですね」
「全くだな」
勘定を支払い、『金の酒樽亭』を後にする。
そして外に出て、後ろに誰もいないことを確認すると、
「……あの仮面の男でしたね、私たちの様子を窺っていたのは」
視線を鋭くして、シュウは『金の酒樽亭』を見る。
「分かるのか?」
「『気配を読む気配』が消しきれていませんでしたからね。周囲の空気の流れが不自然にスムーズでしたから、どうやら
風のメイジのようですが……」
「……………」
なぜ分かる、と聞いて良いのだろうか。
「それでは、これを渡しておきましょう」
言って、シュウは笛のような物をユーゼスに手渡した。
「これは?」
「エーテル通信機と言います。地上とラ・ギアス―――異なる世界間でも通信が出来る、便利な物です」
「ほう……」
興味深げにエーテル通信機を眺めるユーゼス。
「何か私にご用がありましたら、それを使って連絡を。私から連絡があるかも知れませんがね」
「分かった」
(始終、この男のペースで話が進んだな……)
どうもこのシュウ・シラカワという男は、自分と『格』が違うらしい。
「最後に、一つだけ聞かせて欲しいのですが」
「何だ?」
「……あなたは因果律を操作し、神に近い存在なりたいと思っていますか?」
「―――神、か」
それと似て非なる存在になろうとしたことは、確かにある。しかし。
「今更そんなモノになったところで、意味はあるまい? それに私は一度失敗している。もう一度挑戦する気力など無い
よ」
そのユーゼスのセリフを聞いて、シュウの表情が驚きとも感心ともつかない物に変わった。
「……どうやら、本当に私の知る『ユーゼス・ゴッツォ』とは違うようですね。安心したような、拍子抜けしたような気分
ですが……」
「気を張る必要が無くて良いのではないか?」
「気を許しても良い、と判断したわけでもありません。
……それと、一つだけ忠告しておきます」
スッと、シュウがその身にまとう空気が一変する。殺気を放つでもなく、威圧するでもなく、凄みを利かせるでもな
く―――しかし、個人から発せられる『圧力』のようなものが段違いに増していた。
「……………」
「間違っても、私を利用したり操ったりしようなどとは考えないことです。その場合、『それ相応の報い』を受けていただ
くことになりますので」
「……覚えておこう」
気圧されつつも答えるユーゼス。
……自分が汗をかいていると気付いたのは、シュウと完全に別れて数秒ほどした後だった。
シエン・シラカワ
支援
「へえ、それじゃトリステインの魔法学院で働いてるの?」
「ああ。……さすがに『マチルダ・オブ・サウスゴータ』と名乗るわけにはいかないから、偽名を使ってるけどね」
マチルダ・オブ・サウスゴータ―――トリステイン魔法学院ではミス・ロングビルと名乗っている女性は、妹のような娘
のようなハーフエルフの少女に、現在の自分の職業を語る。
「まあ正直、今までは酒場の給仕とか『あまり褒められない仕事』で食いつないで来たんだけど……」
もちろん『あまり褒められない仕事』の詳細は秘密だ。
「それでわたしが仕事を聞いても、教えてくれなかったの? もう、別にそんなことで姉さんを軽蔑なんてしないのに」
……この優しい子は、自分の所業を聞けば悲しむだろうから。
「私にもプライドって物があったからね。……ところでティファニア」
「なに、マチルダ姉さん?」
可愛く首をかしげる少女―――ティファニア。首を動かした拍子に、その長く美しい金髪と、少々……いやかなり常識外
れなサイズのバストが動いた。
マチルダは『相変わらずだねぇ』などと心の中で呟きつつ、あらためてティファニアに賛辞を送る。
「使い魔の召喚に成功したみたいじゃないか。おめでとう」
言って、窓の外を指差す。
そこには、子供たちとたわむれる青い鳥が一羽いた。
「きゃははっ! ほらほらチカ、こっちおいでー」
「わ、キレイな羽〜」
「うりゃうりゃ! 僕を引っ張って飛んでみろー!」
「ほらほらチカちゃん、これ食べてー」
「ああもう、何でこの私がこんなガキ共の面倒を……あ、こら、やめなさい、鳥(ヒト)の羽をむしらないで、足を掴まな
いで、得体の知れない虫をモガガガガガガ」
(……たわむれるって言うか、玩(モテアソ)ばれてるような気もするけど)
ともかく、あの鳥がティファニアが召喚した使い魔なのだろう。
「しかし召喚して間もないだろうに、もう喋ってるとは……なかなか優秀じゃないか?」
「あ、あの、えっと……」
「?」
賞賛の言葉を送るマチルダだったが、どうもティファニアの様子がおかしいことに気付く。
まるでバツが悪いというか、自分の手柄じゃないのに自分の手柄のように褒められていると言うか……。
「その……マチルダ姉さん、あの子は実はわたしの使い魔じゃないの」
「は?」
「ちょっとややこしいんだけど、わたしが使い魔として召喚した人が連れてた使い魔、じゃなくてファミリアで……」
「……どういう意味だい?」
一度聞いただけではよく分からないので、もう一度聞きなおす。
「えっとね? わたしが『サモン・サーヴァント』で呼び出したのは―――」
それに答えてティファニアが順序立てて説明を行おうとすると、
「戻りましたよ、ティファニア。……おや、お客様ですか?」
いきなりよく分からない男が、家の中に入ってきた。
しまった!支援のネタに利用しt
しえん
(……何だ、この男?)
物腰と身にまとう空気からして『普通の人間』ではないことは分かる。
だが軍人ではない。訓練された人間ならば、どうしても身に付けてしまう『画一さ』がないからだ。
傭兵でもない。ああいう連中が放つ独特の空気というか、殺気がない。そもそも武器らしい武器を持っていない。
メイジでもない。マントも杖も『イザとなれば杖をいつでも取り出す』空気すらも見当たらない。
―――では、何だと言うのか。
マチルダは杖に手を伸ばし、注意深く男を見ながら出方を窺う。
(ティファニアに何か怪しい真似を……指一本でも触れたら、その時は……)
即座にこの家の敷居を跨(マタ)いだことを後悔させてやる―――と息巻いていたのだが。
「あ、おかえりなさい、シュウさん!」
「えっ?」
そのティファニアは嬉しそうに立ち上がり、ててて、と男の元へと駆けていった。
そして親しげに会話などを始めてしまう。
「『気になることがある』って言ってましたけど、どうだったんですか?」
「なかなか面白い人物に会うことが出来ましたよ。少なくとも無駄足ではありませんでした」
「ネオ・グランゾンは見つかって……ないです、よね?」
「『かくれみの』は、このような時には便利ですからね。このハルケギニアでは常に張っていなければならないのは、少々
面倒ですが」
(うっ、ティファニアがあんな顔を……!?)
これまでのマチルダの知識には無い表情を、ティファニアは見せていた。
……何だかんだ言って、自分とティファニアとの付き合いは長い。
サウスゴータ地方の太守だった父(もうその名前も土地も剥奪されて久しいが)との繋がりで、アルビオン大公の娘だっ
たこのティファニアと初めて会ってから……いや、本当にいつ出会ったのか覚えていないほど、昔からの付き合いなのであ
る。
最初はエルフということで怖がりもしたが、誤解が解けてからは良い関係を気付くことが出来た。
幼なじみでもあり、妹代わりでもあり、ティファニアの母のエルフが殺害されてからは母親代わりでもあった。
だが。
今のティファニアの顔は、友人でも妹でも娘でも、孤児たちに見せるような姉でも母親でもない。ある時期から自分に
対して向けるようになった『尊敬の眼差し』とも違う。
(『女の顔』……ってほどじゃないね。『恋する瞳』ってやつか)
よく見ると顔は赤らんでいるし、態度もどこかソワソワと言うかモジモジしている。
(……………)
これが普通の男(少なくとも自分の審査をパスしない限り許すつもりはないが)であったら、まあ微笑ましい目で見ら
れるのだが……どうにもタイプが特殊すぎると言うか、何と言うか。
「私からの報告はこんなものですね。……では、そこの方に紹介していただけませんか。何やら私のことを警戒している
ようですので」
「あ、はいっ」
男に言われて、ティファニアは少しはにかみながら紹介を始めた。
「この人は、私が『サモン・サーヴァント』で召喚したシュウ・シラカワさん。今は一緒に住んでるの」
「はあ!?」
一緒に住んでいる―――いや、それも確かに聞き逃せないが、それ以上に聞き逃せない言葉が出て来た。
(人間を召喚した、だって?)
それは、あの少女と同じく―――
「で、この人はマチルダ・オブ・サウスゴータさん……って言うんですけど、今はその、貴族の名前を取り上げられちゃっ
てて……」
「サウスゴータ……以前お話ししていただいた、太守の娘の方ですね。そう言えば、この家の生活費などを仕送りしても
らっているのでしたか」
「はい。わたしの恩人で、憧れの人です」
言ってくれるセリフは嬉しいのだが、いきなり色々な情報が出現しすぎて、マチルダの頭は混乱し始めていた。
夜もすっかり暮れて、もはや夜中と言える時間帯。
ユーゼスとギーシュは、ラ・ロシェールの入り口でルイズたちを待っていた。
「うーむ、しかしルイズと子爵は驚くだろうな! 何せとっくに置いてきたと思っていた僕たちが、先にラ・ロシェールに
着いているんだから!」
ギーシュからはどう自慢してやろうか、という様子がありありと見て取れる。
「……言っておくが、私たちがここで御主人様たちを待っているのは、出迎えるためではないぞ」
「え!?」
そんなギーシュに、ユーゼスは釘を刺す。
「もし『どうやって移動した』と聞かれたら、お前は何と答えるつもりだ?」
「そ、それは……えーと、し、新種の幻獣で」
「ほう、その幻獣は今どこにいる?」
「こ、ここに」
指差した先には、白衣を着込んだ銀髪の男がいる。
「……『消す』ぞ、ギーシュ・ド・グラモン」
「ご、ごめん、何されるのかよく分からないが、ホントごめん。じょ、冗談だよ、冗談! わはははは!」
「……………」
「……すいません」
ふう、と溜息を吐くユーゼス。……どうもこの少年といると、溜息の回数が増える。
「私たちは、御主人様たちが到着した1時間ほど後に、改めてラ・ロシェールに入る。それならば怪しまれはすまい」
「移動方法は、どう説明するんだい?」
「それに関しては、口裏を合わせてもらおう」
そしてルイズとワルド、予想通りについて来たキュルケとタバサがラ・ロシェールに到着してから、きっかり1時間後。
「いやぁー、ようやく着いたよ!」
「なかなか面白い道のりだったな」
『只今到着したばかりです』という風を装って、ユーゼスとギーシュは『女神の杵』亭に顔を出した。
なぜ真っ先にこの宿に向かったかと言うと、『御主人様とミス・ツェルプストーは、とにかく見栄を張りたがる傾向が
あるからな。ワルド子爵とミス・タバサが反対しなければ、ここに行くはずだ』というユーゼスの意見を聞いたためであ
る。
「……ヤケに早いわね。明日の夕方頃にならないと着かないんじゃないか、って話してたんだけど」
「私たちもそう思っていたのだがな。ちょうど魔法学院を出てすぐの辺りで、飛竜に乗った一団がいた」
「飛竜?」
「旅芸人……いや曲芸団とか言ってたね。町から町、国から国を流れて芸を披露していくそうだよ」
「ふーん?」
そんなのがいたんだ、と初めて得る知識に頷くルイズ。
「私が乗馬で四苦八苦している時に、ちょうどその一団の目に留まったらしくてな。事情を話したら、ここまで乗せて
行ってくれた」
「え? ……それじゃ、お礼を言っておかないと! 使い魔がお世話になったのに、主人が礼の一つも言わないなん
て……」
慌てて外に出ようとするルイズを、ユーゼスが止める。
「彼らなら、もう行ってしまったよ。何でも『東に向かう』とか言っていたが……」
「そう……。残念ね、その一団っていうのを見てみたかったんだけど」
と、そこでタバサが無表情にユーゼスに問いかける。
「竜酔いは?」
「酔い止めの水魔法とやらをかけてもらったのでな。何とか途中でリタイアせずに済んだ」
「……あれ、そんな魔法あったかしら?」
「一般には知られていないが、あのように長距離を渡る者の間ではポピュラーらしいぞ」
(……よくもまあ、ここまで嘘を並べられるものだなぁ……)
疑問を浮かべるキュルケに、これもまたサラリと存在しもしない魔法を語るユーゼス。そんな彼に、ギーシュは舌を巻い
ていた。
「道中、ミスタ・グラモンが竜を操る女性を口説こうともしていたな」
「……あっきれた。親切にも乗せてもらってるってのに。モンモランシーが聞いたら何て言うかしら?」
「なっ、バ、バラの存在の意味というのはだね……!」
いきなり話を振られたので慌てるギーシュ。だが、他の面々はそれを『モンモランシーに告げ口されることで慌てた』
と解釈する。
そして100%嘘だらけの話をさも本当のように二人で語った後、明日の打ち合わせをし、『さすがに疲れたから、町の入り
口のすぐ近くの宿を取ってしまった』と言い残して、その場を別れたのであった。
明けて、翌朝。
ユーゼスは、ギーシュとの相部屋をノックする音で目覚めた。
「……む?」
隣にいるひとまずの同居人は、熟睡しているようである。
ルームサービスか何かだろうか……などと考えながら、ドアを開ける。
「おはよう、使い魔君」
「……おはようございます」
そこにいたのは、ワルドであった。早朝だと言うのにバッチリと目が覚めているらしい。
「何か?」
この男がわざわざこんな所に来る理由が本当に分からなかったので、ユーゼスは短く質問した。
「君は伝説の使い魔、『ガンダールヴ』なんだろう?」
「………」
ワルドに対する警戒度合を高める。
どこからその情報を探り当てたのか。
なぜ、このタイミングでそれを聞く必要があるのか。
なぜ……『ガンダールヴなのかい?』という疑問系ではなく『ガンダールヴなのだろう?』という確認なのか。
そんなユーゼスの雰囲気を感じ取ったのか、ワルドは少し慌てて言葉を発する。
「その……あれだ。『土くれ』のフーケの一件で、僕は君に興味を抱いたのだ。昨日、グリフォンの上でルイズに聞いた
が、君は『ハルケギニアではないどこか』からやって来たそうじゃないか。おまけに伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそ
うだね」
「……御主人様には、私が『ガンダールヴ』だということを話した覚えはありませんが」
「……………いや、その特徴的なルーンから、魔法学院ではかなり初期から当たりをつけていたそうだよ?」
「魔法学院で当たりをつけた情報を、なぜあなたが掴んでいるのです?」
「ん、ああ、この任務に就くに当たって、事前に魔法学院の学院長と話をしていてね。そこから得たんだ」
「オールド・オスマン氏は『ガンダールヴを王室に知られてはいけない』と言っていましたが」
「いや、……トリステインの存亡に関わる事態だからね。戦力の把握は重要だろう? 私がどうしても、と頭を下げて頼ん
だんだよ」
「……………」
怪しい。
後から言いつくろった感が、かなり出ている。
そもそも見るからにプライドが高そうなこの男が『自分から頭を下げる』という光景を、どうにも想像が出来ない。
「と、ともかく、だ!」
ゴホンと咳払いをして、ユーゼスの追求を打ち切るワルド。
ますますユーゼスの疑念は膨らんでいく。
「僕は歴史と、兵(ツワモノ)に興味があってね。学院長に話を聞いたときに君に興味を抱き、すぐさま……魔法学院の
図書館で、『ガンダールヴ』について調べたのさ。
……伝説に謳(ウタ)われたその実力、そして君が持つ知識。その実力がどの程度の物なのか、僕は知りたいんだ。ちょ
っと手合わせ願いたい」
「お断りします」
ユーゼスは即答した。
やはり面白い、支援
そら断るわな
支援
タバサが何かに気づいているようだ
支援
「……怖気(オジケ)づいたのかい?」
挑発するような口調で言うワルドだったが、ユーゼスは構わず『戦わない理由』を言う。
「あなたのメイジとしてのクラスは?」
「スクウェアだ」
「……私はドットクラスのメイジと引き分ける程度の実力です。スクウェアのあなたに勝てるわけがないでしょう」
「何?」
思わず拍子抜けしたような声を出すワルド。
「それにあなたは……素人目に見ても、かなり鍛えられている。私はこのハルケギニアに来るまで、ほとんど戦闘の訓練も
経験もゼロでした」
「……それでよく、ルイズを守れるね」
「御主人様は、私にそのような役割を期待していないようですから」
これは本当である。
フーケの一件以来、ルイズは自分と競うようにして知識を漁(アサ)り始めた。しまいには『アンタとわたしが同じ量を
勉強してたら、わたしがアンタに追いつけないでしょ!』とまで言われる始末。
……どうにも本格的に『越えるべき壁』として認定されたようだ。
「いや、しかし―――そう、実力だ。任務を遂行するためには、仲間の実力を知っておく必要もある」
「ですから、ドットクラスのメイジと同程度だと……」
「まあまあ、実際の実力など戦ってみるまでは分かるまい! ともかくお互いの腕試しと行こうじゃないか!」
そうして、半ば強引にワルドと戦うことになってしまった。
朝食を済ませ、身支度を整え、『デルフリンガーだけ』を持って、かつて使われていたという練兵場に辿り着く。
……『デルフリンガーだけ』という時点で、ユーゼスのモチベーションの低さは理解が出来るだろう。
「昔―――と言っても君には分からんだろうが、かのフィリップ三世の時代には、ここでよく貴族が決闘したものさ」
「はあ、そうですか」
「おおおおお……、よ、ようやく、ようやく俺を剣として使ってくれるんだな、兄ちゃん!? しかも貴族との決闘だっ
て!? そんなここ一番に俺を使ってくれるなんて……!!」
「ああ、そうか」
……ワルドとデルフリンガーは勝手に盛り上がっているが、ユーゼスのテンションは下がりっぱなしであった。ハッキリ
言って、やる気が起きない。
「王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った、古き良き時代……。名誉と誇りをかけて、貴族たちは魔法を唱えあった。
でも、実際は下らないことで杖を抜きあったものさ。―――そう、例えば女を取りあったりね」
「はあ、そうですか」
「よ、よぉし、俺はやるぜ、兄ちゃん……いや、相棒! なあに、ちょいとくらい身体を動かすのが苦手だろうが、この
デルフリンガー様がキッチリと手助けしてやるぜ!!」
「ああ、そうか」
なぜ、この連中はこれほどまでにモチベーションが高いのだろう……と本気で疑問に思い始めていると、
「……ワルド、来いって言うから来てみれば、何をする気なの?」
物陰から、ルイズが現れた。
うん、そりゃ断る
支援
即答www支援
支援
「彼の実力を、ちょっと試してみたくなってね。介添え人と言うか、見届けてもらいたい」
「もう、そんなバカなことは止めて。今は、そんなことをしている場合じゃないでしょう?」
「そうだね。でも、貴族というヤツは厄介でね。強いか弱いか……それが気になると、もうどうにもならなくなるのさ」
「いや、間違いなくあなたの方が強いと思いますが」
「……意外と、彼はその実力を隠しているのかも知れないしね」
ユーゼスの言葉をはねのけて、ワルドは決闘を開始しようとする。
「―――やめなさい、ユーゼス。これは命令よ?」
「了解した」
言うと、ユーゼスはデルフリンガーを鞘に仕舞って、宿屋に戻ろうとする。
「お、おい、相棒!?」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!」
慌てて引き止めるワルドとデルフリンガー。
「せっかくの見せ場だってのに、ここで引き下がるのかよ!?」
「そのインテリジェンスソードの言う通りだ。君とてルイズに『弱い』と思われたままでは屈辱ではないかね?」
「いえ、別に」
「……だって、みんなそう思ってるものねぇ?」
『ユーゼス・ゴッツォが弱い』というのは、ラ・ロシェールにいるワルド以外のメンバーにとって、共通認識である。
今更それを覆そうなどという気は起きないし、そもそも覆し方が検討もつかない。
「……ええい、ならばルイズの婚約者として命じる! 私と戦いたまえ!!」
「?」
イライラした様子で、ワルドは強くそう言った。
「君は私と会った時に、『御主人様の婚約者とあらば、我が主人も同然』と言ったな!? いや言った、確かに言った!!
ならば主人の命令を聞くのは当然!!」
「はあ」
その言葉に間違いはないので、取りあえず頷く。
「よし、その態度は了承と受け取る!! ならば戦おう!! いざ!!」
腰から杖を引き抜き、構えるワルド。
仕方がないので、自分もデルフリンガーをどうでもよさげに構える。
ルイズがなおもワルドに向かって抗議するが、ワルドは『下がっていてくれ』というばかりで取りあおうとしなかった。
(……手早く負けるか)
自分からそれなりに攻撃すれば、反撃を受けて負けられるだろう。
そう判断したユーゼスは、作戦も分析も思案も考察も過去の知識から照らし合わせることも、一切行わずに真正面から
ワルドに向かった。
そして馬鹿正直に縦一文字にデルフリンガーを振るい、ワルドは杖でその一撃を受け止める。
わずかに火花が散った直後、自分から後ろに下がってシュッ! と驚異的なスピードで杖を突いてくるワルド。
「ぐっ!」
数箇所ほど刺され、ダメージよって後ろに下がるユーゼス。
「……魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるだけじゃない。詠唱さえ、戦いに特化されている。
杖を構える仕草、突き出す動作……、杖を剣のように扱いつつ詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本さ」
―――面白い話だったが、出来ればもっと穏やかな状況で聞きたかった。
生返事支援
なんというロウテンションw
支援
その後、斬られて突かれて叩かれて殴られて蹴られて投げられて踏まれて、トドメに魔法で吹き飛ばされて、ユーゼスは
積み上げられていたタルに激突した。
「……、っ、あ」
全身が、物凄く痛い。
そんな痛む身体とは別に、ユーゼスは冷静にワルドの行為を考える。
(…………なぜ、ここまで痛めつける必要がある?)
これほどの実力者なら、最初に自分の攻撃を受けた時にその実力を見抜けそうなものである。
だと言うのに、まるで見せ付けるかのようにして自分に攻撃を重ねた。
(……婚約者に自分の実力をアピールでもしたかったのか?)
それにしても、少々やり過ぎなような気もする。ただ実力を見せるだけならば、戦争中のアルビオンでその機会はいくら
でもありそうなものだが。
「勝負あり、だ」
分かりきっていることを、もったいつけて宣言するワルド。
「分かっただろう、ルイズ? 彼では君を守れ―――」
「っ、ワルド!!」
ルイズに向けてユーゼスの無能ぶりをアピールしようとするワルドだったが、他でもないそのルイズの怒鳴り声によって
それは遮られた。
「……どうしたんだい、ルイズ? そりゃあ、使い魔を傷付けられて怒るのは分かるが」
「わたしはね、コイツが傷付こうがボロボロになろうが、別に構わないわ……」
かなり酷いことを言ってのけるルイズである。
「でも、わたしは昨日、グリフォンの上であなたに言ったわよね? 『ユーゼスにわたしの存在を認めさせて、“自分の
御主人様は立派な人で立派なメイジです”、って屈服させること』だって」
「ああ、だから本当にそれに値する人間か調べようと……」
「違うわ! わたしはね、わたし自身の力で、『人間として』、そして『メイジとして』コイツを屈服させたいのよ!!
むやみやたらに痛めつけるんじゃなくて!!」
「……………」
その剣幕に、思わずワルドはたじろいだ。
「あなた自身も言ってたでしょう? コイツの本当の価値はね、知識や発想にあるの。それを……ユーゼス自身も拒否して
たのに、あなたはムリヤリ……」
「……待ってくれ、ルイズ。どうやら誤解が……」
「しかも―――『わたしを守る』、ですって? 知識で……頭脳の面で言えば本当に尊敬が出来る人なのに、この上『わた
しを守らせる』? 冗談じゃないわ!! 自分の身ぐらい、自分で守ってみせる!!」
「ル、ルイズ……」
「それとも何? わたしはこんな実力的に弱いヤツに守られなきゃいけないほど、弱く見えた? 乗馬も出来ない、飛竜に
乗れば酔う、剣もほとんど振れない、こんなヤツに守ってもらうほど?
……これ以上ない侮辱だわ!!」
(―――私は褒められているのか、それとも貶(ケナ)されているのか……)
嬉しいような惨めなような、複雑なユーゼスである。
そしてルイズはもう一度ワルドを睨みつけ、
「……行きましょう、ユーゼス。手を貸すわ。確か、近くに秘薬屋があったはずだから」
「く……っ、ああ、分かった」
痛む身体をルイズに支えてもらいながら、その場を後にする。
―――小柄な少女の助けを借りると言うのは……なかなかプライドが痛む光景だったが、そんな何の得にもならないプラ
イドなどユーゼスは持ち合わせていない。
「……なぜ、だ……」
後には、呆然とするワルドだけが残される。
「お、俺の……剣としての、俺の……」
なお、あるインテリジェンスソードは、鞘の中で自分のアイデンティティについて深く考え込んでいた。
ラスボスなのに皆から弱いと思われる使い魔支援
ワルド………まぁ、可哀想と想ってあげるべきなのかw
支援
ワルド無様!
・・・圧倒的な実力者にボコられるのよりよっぽど悲惨すぎて支援せざるを得ない
以上です。
……いや、私はワルドやデルフは嫌いじゃないんですよ?
特に、デルフはまだ『錆びたインテリジェンスソード』ですから。
さて、シラカワ博士が登場しましたが(本格的に物語に参入するかどうかは別として)、ここで「なんでシュウを主人公
にしなかったのか?」と疑問を持った方がおられると思います。
その理由は、小ネタに既にあるから―――だけではなく、このキャラクターには主人公として致命的な欠点があるので
す。
……そう、『欠点らしい欠点がない』、という欠点が。
頭脳明晰、常に余裕で沈着冷静、起こった事件は全てお見通し、精神力も高く、人格的にも取り立てて問題なしで、グラ
ンゾンやネオ・グランゾンのような(作中の設定では)バケモノのような機体を乗りこなしているわけですから身体能力も
おそらく高い。
これほど主人公として扱いにくいキャラも珍しいです。何せ、つけ入る隙が無いんですから。
シュウを主人公に据えて物語を展開するとなると、私の技量では無理です。
EXでシュウが記憶喪失になったのは、おそらくこの完璧超人に何らかの欠点を作るためなのではないか、と考えています。
……いや、まあ、それでもかなり好きなんですけどね。何せ小学生の頃から「おお、こいつカッケー」と思ってきましたか
ら。
やはりシュウ・シラカワは『ライバル』、あるいは『ジョーカー的な存在』としての立ち位置が適切だな、と判断して、
このようにしてみました。
ちなみに、おマチさんとテファの関係の詳細については、私のオリジナルです。
それでは、支援ありがとうございました。
初志貫徹といえば聞こえがいいが、戦略はともかく、現場現場の戦術は相手に合わせて変えるべきだぞ、ワルドw
ワの字・・・
そりゃー傍目にイタい行動だものなぁ
支援
あぁ、やっぱりw支援
乙ー
確かにシュウは強敵か、見方サイドなら主役じゃなくてジョーカー的なポジションの方がいいな
スーパーヒーロー作戦で言う所のズバット
GJ!
たしかに完璧なキャラは主人公に向かない
まだダークブレインを主人公にした方がw
ラスボスの人GJ!
ワルド大人気ねぇwww
次回に超wktk。
ユーゼスの人乙
魔法って基本的に暴力だよなー
555 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/16(火) 22:40:56 ID:QpdPJ2QC
ガンダムファイターや悪魔も泣き出す兄弟との決闘以外で
ワルドを可哀想と思ったのは初めてだわw
なるほど、ユーゼスがやたら運動力不足を強調してるのは、欠点を強調することで親近感を持たせる意味もあってなんですね。
フラストレーションがなしでカタルシス得ようとしたら、ヘイトっぽくするかしかないもんなあ。
更新乙です。
しかしユーゼスの敬意を払える所とそうでない所を分けて考えられるようになった辺り、このルイズは大人だなー
シュウも意外とそそっかしかったりもするんだけどね
転送装置落っことしたりルオゾールに操られたり
落とし穴に落ちてHAHAHAとか言ってた時期もありました
>>558-559 ヒーロー戦記ですな。
あの頃のシュウはまだキャラが全然固まってませんでしたねぇ……。
「あぶない!」とか言って攻撃を避けさせますし。
ちなみにヒーロー戦記ではシュウは仲間に出来るようだ。
ワルド…
なぜ、だ…って、わかれよw
>>560 あのシュウはマサキに思い込みだけで追い掛け回されてたよな
グランゾン盗まれてなかった?
しかしこのワルド、あきらめずに結婚を申し込むのだろうかw
ユーゼスの人乙です。
しかし、なんという俺Yoeeeeeeな使い魔w
おマチさんもいい感じに腰落ち着けたし、先が気になってマジwktk。
でも、おマチさん今後テファが心配でしょうがないだろうなぁw
オリジナルイングラムや久保さんやギリアムのように、並行世界唯一というわけじゃないので、
シュウ=シラカワも、いろんなシュウ=シラカワがいるのでしょう。
オリジナルイングラムは、並行世界を憑依しながら自滅し続けているので、唯一といっていいのかどうか知らんが。
スパロボ繋がりでふと思ったんだけどもしルイズがジョッシュ召還したとしたらエレオノール姉様に春が訪れるんだろうか?
(ツンデレキラー的な意味で)
そういやスパロボにはルイズの敵(胸囲的に)が大勢いるんだよね
誰かテッドブロイラー様喚んでよ。ピチピチブラザーズでもいいけど。
ラスボスの人乙!!
‥‥しかし、何気にルイズがデレたなw
(「頭脳の面で言えば本当に〜」のあたり)
この事を指摘されて恥ずかしがるルイズに既にwktkしている俺。
ホント今更だが、キリコが乗ってたのはスコタコのターボカスタムだよな?
あれってレッドショルダー向けに少数生産されただけのカリカリチューンナップ機体なのに、
コールドスリープから目覚めた32年後でも手に入れられるのかね?
>>569 数は少ないが朋友と呼べるのもいるぞ。
赤毛の負け犬とか、義理の姉妹(予定)に負けている双子の片割れとか。
そういえばOGって12体の謎ロボットのバトルロワイヤルになろうとしているんだっけ。
ラスボスの人乙ー。
ここまでルイズから「アンタちょっとセコいよ!」的に言われるワルドも珍しいw。
>>568 ジョッシュの場合、エレオノールよりタバサの方に行きそうだけど。
原作のパートナーのイメージ的に。
ユーゼスだってエレオノール姉さまやタバサ、ルイズとフラグを立てる可能性もあるさ
シュウは条件を満たすと現れる隠しボスみたいな者だと思うよ。
主人公には向かないよね。
だから見てみたい。
レコンキスタの艦隊にブラックホールクラスター撃ち込むのを。
むしろ縮退砲をだな・・・
>>576 グラビトロンカノンでもオーバーキルだww
ワームスマッシャーにしとけw
>>342 見てみたいけど、そんなことするとまた蹂躙だの言う奴等が出てきそうだな。
ていうか、蹂躙とか言ってる奴等もどこまでが蹂躙て分かってるのかな?そもそも蹂躙って何だろ。
キャラが双方立ってて、それに強さも両方尊重する必要があるっていうなら「これぐらいはできないと不味いだろ」
って線はクロスキャラにだってあるわけだし、そういったラインを保っての俺TUEEEEEEなら問題ないと思うけどなあ。
あ、無論話の展開の面白さも考えなきゃ不味いけど。単に俺TUEEEEEだけじゃ面白みが無いし。
>>570 幼き日のトラウマの一つだ……デッドブロイラー……
もし喚ばれたらギーシュは確実に炭にされる
>>572 PS2ソフト特典のガイドブックで、テイタニアのオーデルバックラーはターボカスタム化されているとあったから、
規格が違うパーツでも使ってあるのかもしれない。
ベルゼルガ・イミテイトもあるし…ウロス行きにすべきなんだろうな、スマン
なあに、適当な所に適当にターボくっつけりゃ今日から君もタボカスさ
ボトムズ的に考えて
アーマードコア4からAC「だけ」召喚
それによって起こるドタバタ劇
>>582 残念ながら、ATM-09STTCと明言してしまっていたぞ
>>584 おいおいおいおい
あんな動く原子炉みたいな汚染兵器召還したら
置いてあるだけで放射能でドタバタ人が死ぬだろ!
ラスボスの人乙です
ユーゼスもやる気ある頃はシュウどころかゴッドネロスや大帝王クビライ、ヤプール人、
トレーズに東方先生と渡り合ってたんだが、完全に燃え尽き症候群だなぁ
>>584 r-t-ェ-i
|:lVl:| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<ニヽ_/ニ>、 ニl百iニ <召還するなら私たちだろ?
(⌒` ⌒ヽ |.|_ <常識的に考えろ
ヽ ~~⌒γ⌒) r'⌒ `!´ `⌒) \___________
ヽー―'^ー-' ( ⌒γ⌒~~ /
〉 | `ー^ー― r'
/ | | l ト、
i ● ,} / ● i
/ `X´ ヽ / 入 |
>>588 帰れ!
ここはお前たちのようなヤツらが生きていてはいけないんだ!!!
>>572 難しいんじゃないかな?スコタコ自体はあるみたいだが
RSCタイプよりも異端編で使ってたバーグラリードッグの方がチューンしやすいと思う
対装甲車用長距離射撃砲と言うスコタコでは威力高の大砲持ち出しね
まあベルゼルガBTSじゃ無い分いいんじゃないか?ww
あとラビラトリードッグとかストライクドッグじゃ無い分
>>572 キリコが自分で組んだんじゃない?ザラスで普通にジャンクからくみ上げてたし、
30年たってもあんまり技術が進歩してないみたいだし、普通に手に入れようと思えば手に入ると思う
蹂躙とは何か?
とりあえずベルゼルガ物語の3冊目以降を読むんだ。
アレが原作蹂躙ってもんだ。
>>594 あぁ、ケインとテスタロッサが召喚されるプロットを考えていた時期もあったさ
ギーシュの顎が素手で粉砕されてエレオノールがテスタロッサ欲しさに
インサニティ構えたケインと睨み合って破壊の杖がヘビィマシンガンだったり
ワルドが左頬に切り傷付けたりルイズが走るテスタロッサの上でゲロ吐いて
ルイズが副流煙に悩まされる蹂躙な展開しか思いつかなかった
地面をパイルバンカーで叩き割って敵ATの大軍団を地割れに落して全滅させるあれか
何がともあれやっぱスパロボじゃないのがボトムズでしょ
AT自体、腕と足の生えた戦車なんだからたいしたものでもないしな
特注か乗り手の腕が良いかでしか性能が代わらんところが良い・・・
どこぞのスパロボよろしく超常現象起こせるほどのウルトラパワーじゃないからこそ
リアルロボのいいところでしょうな
まぁ、正直トライアングル以上なら普通にAT壊せそうだしね。
ヘビィマシンガンとかどうやって防ぐのって話ではあるが
何気に目が覚めたらラスボスの人来てた 乙
シュウにベタボレぽいティファ、普通に考えたらサイトよりも
頼れるお兄さん系のシュウ(内面はアレだけど)にティファは惹かれるのが自然だと思う。
でも、シュウに思いを寄せる人は多いけど、巧くいった例が無いんだよね
むしろシュウになら使い捨てられても本望ってのが多かった気がする。
ティファがんばれ。
女難の相だが難は違わず女のほう、てか。
毒の爪の使い魔の第20話前編が書き終わりました。
またこんな時間ですが、予定その他が無ければ3:50から投下します。
では、時間になりましたので投下開始します。
――タバサとキュルケの対峙から約20分前――
――トリステイン魔法学院:火の塔の裏――
そこは既に散々足る状況だった。
草原は所々が炎で焼かれ、風のカッターで深く抉られている。
戦場の一部を切り取ってきた…と言われても納得のいく光景だ。
そんな中、対峙する二つの人影。
ジャンガとコルベールは互いに距離を取り、相手を見据え、構えを取ったまま動かない。
お互い、相手の手の内は大半を知るところとなったが、まだ全てではない。
それゆえに下手に動けないでいるのだ。
――唐突にジャンガが動いた。
無数の分身を生み出し、突撃する。
分身は複雑に動き、相手をかく乱しようとするが、コルベールは動じない。
分身が飛び交い、コルベールとすれ違う。
その背後からジャンガは爪を振り下ろす。
それをコルベールは杖で受け止め、そのまま流れるような動作でわき腹に当身を食らわせる。
痛みに、ぐっ、と呻くジャンガの頭を雲状の霧が覆う。
『スリープ・クラウド』…既に詠唱の完成していたコルベールの眠りの呪文が発動する。
襲い掛かる猛烈な眠気に意識が遠退きかけ、ジャンガはふらつく。
「…クソが!」
叫び声を上げ、強引に眠気を振り払う。
そのまま、コルベールの腹を蹴り飛ばそうと足を振り上げた。
しかし、それもコルベールは杖で受け止め、後ろへと事前に飛び退く事で蹴りの威力を緩和した。
距離を離したコルベールの杖の先端から炎の大蛇が生まれる。
大蛇は口を広げ、ジャンガへとかぶりつこうと伸びる。
舌打ちをし、ジャンガはカッターを大蛇に向かって放つ。
カッターに切り裂かれ、炎の大蛇は無数の小さな火の粉に変わる。
間髪入れず、ジャンガは三体の分身を生み出す。
分身は三方向からコルベールを襲う。三対、十二本の爪が真紅の軌跡を宙に描く。
それをコルベールは容易く受け流していく。
三本を杖の片側で受け止め、もう片側で別の三本を受け止める。
別の方向から六本襲い掛かれば、大地を蹴り、杖を軸として跳ぶ。
そのまま、分身の一体の背中を蹴り、別の一体にぶつける。
折り重なって倒れた分身二体に炎を放つ。瞬く間に燃え上がり、分身は消滅した。
残る一体の分身がコルベールに躍り掛かるが、再び放たれた炎の大蛇に絡め取られ、燃え尽きた。
ぎりり、と歯を噛み締めるジャンガ。
自分の切り札たる”実体を持った分身”が容易くあしらわれたのだ…、無理も無い。
そんなジャンガを静かに見つめるコルベール。
「ジャンガ君、お願いだ。これ以上は止めたまえ」
「…るせェ、その言葉は聞き飽きた」
忌々しそうに吐き捨てる。
先程からこうだ…、目の前の男は自分を殺さずに済ましたいと考えている。
大層な威力の魔法を使えるくせに、争いを良しとしない。
あまつさえ、自分のような悪党の命すら奪いたくない様子だ。
…ふざけるな、こんな甘ちゃんに嘗められっぱなしじゃ我慢がいかない。何より――
(”あいつ”と似すぎているのがイライラする…)
あの目…、口調…、考え…、何もかもが”あいつ”を思い返す。
そう…、嘗ての相棒…『金色の死神』を…。
(…もう、ウンザリだ…)
ジャンガは目の前の男を何としてでも消したかった。
そうしなければ、嫌な事を何もかも思い出しそうだから…。
しかし、身体の調子が微妙だ……いつもの様な軽さが感じられない。
正直に感想を述べれば、半分も出せてない気がする。
「何で身体がいつもの調子じゃねェ?」
そのジャンガの呟きに答えたのは、背中のデルフリンガーだった。
「そいつは、相棒…お前の心が震えてないからだ」
「あン?どういう意味だ?」
「ガンダールヴってのはな、心を震わせる事で力をより強く発揮するんだ。
怒り、悲しみ、喜び、何だっていい…とにかく感情を高めればガンダールヴは力を増す。
…ま、その分活動時間は減るんだけどな…」
「…じゃ、何か?今の俺はやる気が無いと?」
「違うのかい?…正直に言えば、俺も相棒はやる気が無いように感じるね。
いや……”迷ってる”って言った方が正しいか?」
「チッ…」
バツが悪そうにソッポを向き、舌打ちをする。…デルフリンガーの言うとおりだった。
自分は今、迷い…悩んでいる。タバサの事もそうだが、自分自身の事も。
先程は元の悪党に戻ると考えたが……未だに決めかねている。
本当にこのままでいいのか…、後悔は無いのか…、自問自答を繰り返していた。
ジャンガはイライラし、蹈鞴を踏む。
「クソッ…、クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソッッッ!!!」
呪詛のように、そう吐き捨て、ジャンガはコルベールを睨みつける。
コルベールもまたジャンガを真っ直ぐに見つめる。
「ジャンガ君…私はもう人を、それがどんな悪人であろうと殺めたくは無いのだ。
頼む、降参してくれ…。この通りだ…」
いいながらコルベールは膝をつき、頭を下げる。
その光景にジャンガは更に歯噛みする。
「ふざけるな……俺は死んでもごめんだな!テメェのような甘ちゃんに、降参なんざな!
殺せばいいじゃねェか……殺せばよ!それだけの力があるんだろうが、テメェにはよ!?
大体、テメェは俺にはいい印象は持ってなかったじゃねェか!」
「確かに、あのミスタ・グラモンとの決闘騒ぎの時から、私は君を可也危険視していた。
だが、少なくとも…今の君は違う。それだけは確実に言える。
何があったか…、何が君を変えたのか…、解らないがね」
あくまでも穏やかな表情で話すコルベールに、ジャンガはイライラをつのらせる。
「ふざけんな……ふざけんなーーー!!!」
そして絶叫。
その様子にコルベールは悲しげな表情をする。
「どうしても……どうしてもだめなのかね?」
「…ウゼェ。やるんなら、とっととやりやがれ!?…来ねェなら、俺がテメェを殺してやる!
その後で、テメェの可愛い生徒も纏めて刻んでやらァ!!それでもいいのかよ!?」
ジャンガは半ば、自棄になって叫んだ。
情けなんか掛けられたくない。哀れみなんか必要ない。
自分は悪党だ、毒の爪のジャンガだ。
怨み辛みを受け、他人の悲しみ苦しみを見て、喜びを得る……それが俺だ。
――ジャンガはとっても優しいよ――
桃色髪の少女の笑顔が浮かぶ…
――お前とはいいコンビでやっていけるな、ジャンガ――
金色の毛を持った狼の亜人の男の笑顔が浮かぶ…
ズキンッ!
「ぐぅッ!?」
左手が痛んだ。ジャンガは反射的に左手を押さえた。
その様子にコルベールは思わず声を掛ける。
「ジャンガ君?」
「……来ねェなら」
呟きながら、ジャンガは爪を構える。
顔を上げ、コルベールを睨みつける。
――死ぬも生きるも、これしかない。もとより、これ以外の道は無い。
「こっちから行くゼェェェーーー!!!」
叫び、大地を駆け出す。
しえn
コルベールは悲しげに首を振った。
そして杖を構える。
爆炎は間に合わない…、ならば…。
コルベールが杖を振る。
空気中の水蒸気が水に戻る。
大きな水溜りができ、空気中を霧のような水滴が漂う。
それにジャンガは気付いたが、構わず水を踏みしめながら疾走する。
次いで杖を振ると辺りに油の匂いが充満する。
ネットリとした感触にジャンガは目を見開く。
三度、コルベールは杖を振る。
「相棒!!」とデルフの声が聞こえた。
小さな火が灯った。
――その瞬間、ジャンガの視界は白い閃光で塗り潰された…
支援
以上で投下終了です。
今回のジャンガは原作9巻のタバサ戦でのサイトをイメージして書いてます。
そしてコルベールが使ったのはオリジナル魔法です。
さて、悩み多きジャンガはどうなるのか?
では、今回はこれで。アデュー!
支援
ラスボスの人キテター!!ユーゼス弱すぎて逆にルイズに庇われてますなw
いやはや、かつてここまでワっさんを別ベクトルから不様な目に遭わせた使い魔がいただろうか…w
寝る前にこのスレ見たもんだから強姦未遂やらかしたピエロを追って
おもちゃ屋の床にうつ伏せで爆睡してたワルドと一緒に地下通路探索する夢を見ちまった
>>598 >>どこぞのスパロボよろしく超常現象起こせるほどのウルトラパワーじゃないからこそ
キャラはそうもいかんがな
特にキリコ
因果律というかご都合主義的な意味で
だからこそこのスレでもかつて何度か名前が挙がっていたのよね
ルイズがナタもって雛見沢を歩き、笑いながらワルドの腕を切る夢を見ました。おはようございます
異能生存体は知ると興ざめするよな
なんでラスボスさんの感想には「珍しい」とかいうものが多いのかねぇ。
第13話。5分後に投下させていただきます。
いつも登録してくださっている方へ。
真にお手数お掛けしますが、第11話後の暗殺剣士隊の解説も登録していただけないでしょうか?
面倒くさい(物書きとして正しい)話の進めかたしてるからじゃね
一次であれ二次であれ勢いだけで書いてると楽な方にいきがちだからね
俗に言うテンプレ展開にテンプレキャラ
「悪党はお互い様じゃないか?隊長殿。」
その言葉に思い当たる節があるのか、コルベールは顔をしかめた。
「まあ、村一つ焼いた程度の事で戦場から身を引く程度じゃあ、俺のが悪党としては上か・・・」
言いながら、メンヌヴィルの姿が変容していった。
盛り上がっていく肉体が身に着けていた衣服を引き裂き、全身は赤い体毛に覆われ、額が裂けて目玉が現れた。
変容が終わった時、そこに立っていたのは2メイル程のグリフォンを直立させたような炎のように赤い化け物である。
彼が元は人間だったと言われたとして、信じる者は皆無であろう。
「さあ隊長殿、あんたが焼ける匂い、たっぷりと嗅がせてもらうぜ。」
言い終わると、化け物は息を大きく吸い込み、激しい炎を吐いた。
先程同様、魔法で相殺しようとするがドラゴンのものに勝るとも劣らぬそれを受け止めるのはいかに彼とて無理な注文であった。
やがて炎が直撃し、その場に倒れてしまった。
「おいおい、こんなに簡単にくたばっちまうのかよ?」
拍子抜けしたメンヌヴィルがゆっくりとコルベールに歩み寄り、彼の襟を右手で掴み、持ち上げる。
「焼き加減は・・・レアか?ミディアムか?・・・聞くまでもなくウェルダンだよな!!」
止めを刺そうと息を吸い込む彼を、気絶したかに思われていた『炎蛇』が突如睨んだ。
「慢心は・・・あの頃のままだな!!爆炎!!」
その瞬間、コルベールとメンヌヴィルの周囲の酸素が見る見る減少していった。
「なるほど・・・範囲内の生物を窒息死させる魔法で道連れにしようって寸法か・・・だが残念。俺に空気は必要ない。」
魔物が再び火を吹こうとする。コルベールがニヤリと笑うが、魔物は嘲るように言った。
「バックドラフト・・・と言ったか?それを狙ったとしても無駄だ。炎の扱いに慣れてる俺が、そんな馬鹿な真似をやるとでも思ったか?」
呪文の範囲外まで飛んでいってから焼き殺すことにした魔物が翼を広げる。
だが、飛び立とうとした瞬間、彼の後頭部に大きく重い何かが直撃した。
魔物は衝撃でコルベールを落とし、同時に、辺りの空気が元に戻った。
「ゴホゴホ・・・爆炎は囮だ。本当の狙いはその斧だ。」危うく窒息死しかけたコルベールが咽ながら言った。
「な・・・に・・・」と血を吐きながら呟きつつ、彼は斧の飛んできた方向を見た。その先には研究所の破れた窓から顔を覗かせている青い鎧の様なものが立ち尽くしていた。
「彼女の名はエリー。私の思念で動き、争いに関する命令を一切受け付けないからくり兵の試作品で、僕の助手だ。」
「ふざ・・・けるな・・・おれに・・・こう・・・げき・・・を・・・」
「私はただ、斧を拾って僕に投げてくれと命じただけだ。命令を実行したら、お前が斧の軌道上にいただけのことだ。
貴様の炎を受けたのも、倒れる場所も計算ずくだった。」
「ぐ・・・やっぱ・・・つえぇな・・・せめて・・・サシであんたと・・・やりたか・・・た・・・」
言い終わる前に、人であることを捨てた男は息絶えた。その瞬間、死体が塵芥となって消え失せた。
「お前が人のまま私に挑んで来たら・・・そうしたかもな・・・」
彼は生徒達の救出に行こうとしたが、どうやらかなりダメージが大きいらしく、動くことは出来なかった。
支援
SSの書き方ぐらいググってから書けばいいのに
先手を取ったオスマンが老骨に鞭打って、見えざる最後の敵に放った炎の嵐は突如発生した竜巻によって弾かれた。
風の魔法かとも思ったが、魔力を感じることは出来なかったので、恐らく体を超高速回転させて炎を防いだのだろう。
無論、常人にはそのような事は出来ないが、先程からの発言等から彼が相当の猛者である事は間違いないし、
ひょっとしたら、身体能力を向上させる何らかの魔法薬を使っているのかもしれない。
と、不意にオスマンは思考をやめ、しゃがんだ。
回転しながら後方へと飛んで来る物体の『風』を感じたからだ。
続いて、オスマンは後方へと飛び、さらに100を超える老人とは思えぬ華麗な動きを披露し、不可視の剣を避ける。
「手裏剣でわしの注意を引いた後、接近戦に持ち込み、詠唱をさせぬ魂胆じゃろうが、甘いの。
そんな事ではご大層な肩書きが泣く・・・」
オスマンは最後まで台詞を言えなかった。
背中に3つの刃が深々と突き刺さり、その痛みに気をとられた隙を突き、不可視の剣がオスマンの体に大きなX字を刻んだ。
「油断したな。俺が投げたのは手裏剣ではなく、ブーメランだ。」
剣に付着した血を拭おうとして血が付いてない事に気づいた時、目の前のオスマンの姿が煙のように消え、同時に背中から強烈な炎を浴びせられた。
レイヴンは叫びを上げることも無く、床にその肉体を横たえた。
その光景を見届けたオスマンが飄々とした口調で言った。
「先の攻撃の際に、念の為と偏在を作っといたのが幸いしたわい。油断したのはお前さんの方じゃよ。」
オスマンは部屋へ視線を移した。
愛用していた椅子は真っ二つにされ、天井は崩落、内装の殆どは黒焦げ。
おまけに床に転がった見えない刺客共の死体で足の踏み場も無い状態だった。
そこまで行って、彼は深い溜息をついた。
「何という事をしてくれたのじゃ全く。これならいつもの書類整理や、
在りし日のロングビルの折檻の方がよほどかマシじゃわい・・・」
半分以上は自分がやった事などと言う事実は棚に挙げて、学院長は侵入者に愚痴を零した。
と思いきや、突如入口に炎の球を投げつけた。
炎球は何も無いはずの空中で爆発し、死んだ筈の人間・・・レイヴンに止めを刺した。
「確かに致命傷を負わせたはずなのに大した執念と生命力じゃ。じゃがの、そんなに殺気を漲らせては寝ている子供にも気付かれてしまうぞ。」
オスマンは無益な殺生を好む人間では無い。
この老体はうすうす、敵が息を引き取っていないことに感付いていたが任務を諦め、退散するなら見逃すつもりでいた。
ふと、彼は妙案を思いついた。
この見えない鎧や剣をアカデミーに差し出せば、謝礼として部屋や内装品の修理代が出るかも・・・と。
今、ニューカッスル跡ではメディルが予想外の苦戦を強いられていた。
開戦早々、敵は予想外のスピードでメディルの懐に飛び込み、嵐の様な槍捌きで彼を攻め立てた。
辛うじて、直撃は避けてはいるが、いつまでもそれが続くかといえば答えはNOとなる。
いかにあらゆる魔法に精通したメディルとはいえ、疲労の概念はある。
対して、敵であるグレートライドンはアンデッド故に疲労の概念は無い。
肉体を破壊されない限り、何年でも戦い続けることが出来るのである。
この世界の詠唱を必要とする魔法に比べれば、メディルの魔法は言葉だけで繰り出せる分相当速い。
しかし、それをもってしてもこの状況下での反撃は無理だった。
メラゾーマが槍で弾かれることは以前のやり取りで明白だったし、至近距離でイオナズンやベギラゴンを使えば自身もただではすまない。
マホカンタはあくまで、他者の魔法を跳ね返すので、自分の術を防ぐのは無理だった。
かといって、距離を置こうにも敵の方がこちらより素早く、八方塞な状態であった。
「どうした!?いかなる雑魚が相手でも、逃げるだけでは勝てぬぞ!?」
と、不意にグレートライドンの体が傾いた。いつの間にか、地面が凍らされており、乗っていた馬が足を滑らせたからだった。
すかさず、メディルが距離をとってベギラゴンを放つ。
しかし、呪文は凍える吹雪・・・単なる乗り物だと思っていた馬の吐き出した冷気のブレスによって防がれた。
その上、流石は魔界の馬というべきか、転倒すると思ったメディルの思惑を裏切り、
馬はすぐに体勢を整え再びメディルの懐に飛び込んで来た。
不意を突かれたメディルの胸に、吸い込まれるようにランスが突き刺さった。
槍の主は殺ったと言わんばかりの笑みを浮かべるが、すぐに驚愕に染まった。
突き刺さった筈の槍に、ヒビが入っていき、粉々に砕けた。
次いで、二発のメラゾーマが彼の胴体と馬を粉微塵に吹き飛ばした。
普段なら槍で、距離さえあれば馬の吹雪で防げた技だった。
「何故・・・槍が砕けたのだ・・・どうやって・・・そんな真似を・・・」
凍らされた様子は無かった。にも拘らず、得物が砕けた理由が理解できぬ彼はおもむろに言った。
「先程脱出する際にかけたスクルトのお陰だ。」その問いに、仮面の魔術師はいつもと変わらぬ口調で答える。
「いかに体を硬化させたとはいえ・・・槍を脆くでもしない限り・・・」
言いながら、彼は何かを思い出した。彼の知る限り、武器を脆くする術は無い。
だが、似た効能を持つ術ならば知っていた。
「ま、まさか・・・」
「そう。先程の攻撃の中で槍にルカニをかけておいたのだ。本来防具を脆くする術だが、
武器に使えるよう改造されたものがこちらの世界に来て読んだ書物に記されていた。
考案者は術の名前まで考えてはいなかったようだから、あえてルカニと呼んでいる。」
「ははは・・・いるものだな、そういう凡人の知恵の及ばぬ事をする奴が・・・完敗だよ・・・」
「お前は凡人ではなかった。世が世なら、私の下で有能な部下として召抱えられていただろう。」
「・・・そうだな・・・お前の様な奴が上司なら、私も喜んで仕えただろう・・・
さらばだ・・・最後に良い冥土の土産が出来たよ・・・」
メディルという偉大な魔族の名という土産がね・・・
と言い終える前に最後に残された頭蓋骨が、塵となって消えた。
それを見届けると、メディルは飛翔呪文を唱え、軍と繋がっている魔力の根源を目指して飛んでいった。
投下終了。ルカニ武器バージョンはここのオリジナルです。
新作投下が速くてつまらないSSよりも、多少遅くても面白い方が支持されるよね
乙だけど
オリジナル魔法とかはあまり出さない方がいいかも
こんなことも有ろうかと、的な事やるんならなんか前フリが無いと・・・
やっぱ小説の方も読んだほうが良いよ、なんか薄いと言うか・・・
そろそろ俺キャラ最強にしたいだけに見えてきたぞ
自分に都合のいい改変魔法とか典型だし前回のりゅうせいも反動あるから使ってもいいなんてこたぁない
原作でも魔王の竜王が使わなかったんだしな
乙。無機っ娘大好きな自分としてはエリーという名前だけできゅんきゅんおっきでゴザル
「運が良かったな勇者、今回の私はFC版のようだ」
「それ以前に1にとくぎはないな」
>>597 人それぞれではあるがわたしはアレ「青の騎士ベルゼルガ物語」は面白いと思ったぞ
まあ確かに万人向けではないが
>>630 全2巻完結だったと思えば名作なんだがなぁ
後半暴走しすぎ
>>631 まあキリコ・キュービーの冒険と同一の世界でない、パラレルワールド的な
ものだったらあそこまで拒絶されなかったろうな、とは思う
でもレグジオネータは悪役としては一級品だと思うぞ
邪神兵、オーバーデビルとならんで実に見事な悪だ
>>625 詠唱時間短縮魔法や万能っぽくなった「解呪」を考えたけど……ダメですか
>>633 書いた本人でない人物になって読んでみるといい
兄弟や友人など完全な他人に読んでもらうともっといい
その内容に説得力があると感じるなら(あると言って貰えるなら)
投下するのが良いと思うのよ
兄弟や友人などに見せる前に、試しに投下するのがここじゃないかと思うわけだが。
オリジナル魔法はよほど説得力がないと出さない方がいいと思う
>>632 そうだ、ヴァン・ヴィールを喚ぼう
整備する人も洗脳して量産してしまえばいい
マッシュの左腕の電力はコルベールとタバサに何とかしてもらおう
そしてマリコルヌはもりもり痩せて
ルイズはますます胸が減る
オリ%
メディルの人乙
個人的なだけど、出来れば台詞は誰が誰だか判る表現にして欲しい
同じ口調のキャラが会話したら色々混乱する
あと、アニメじゃないので無理に説明台詞で状況を説明しなくてもいいと思う
オリジナル魔法やオリキャラは作品の質を落とすだけ
そういうのは理想郷でやれ
乙と言いたいけど、オリジナル設定はほどほどにな
クロスとはいえ二次創作なんだから原作にある材料で勝負してくれ
ただでさえ強すぎて久保化寸前なんだから
最低野郎共自重しろ
まだ決闘イベントも終わってないんだぞ
騒ぐのはタルブでベルゼルガを発見して、シエスタがクエント人の孫と判明してからだ
いや、ここは発見されるのはレグジオネータ(休眠中)で、シエスタとタルブの村人は
全員ダブワンの子孫なんだ、きっと
おまえら本当にボトムズ好きだな・・・
ってか、放映年代どころか世代が違うだろ、おい
青騎士語れる人多すぎだろ
読みたいけど何処にも売ってないよ…あと最低野郎の聖典ボトムズアライブも
じゃあ最低野郎おいといて、来年の干支にちなんで牛キャラを・・・・・
ここではアルデバランとか出すべきなのに「エレメンタルジェレイド」のシスカが
思い浮かんでしまうのは何故だぁ・・・・・・・・
牛キャラ…魔導物語やぷよぷよシリーズからミノタウロスとか
バッファローマンだろ牛的に考えて
「とっぱら」から白沢佐久夜をティファニアが召喚で
ここでZOIDSのディバイソンが出てくるのはちょっとどうかと自分でも思う。
実は背中に砲手用コクピットがあるんだぜディバイソン。
651 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 14:03:29 ID:cWLke8ia
牛ならブルホーンがいるじゃないか
・・・・・・・・さっきアレデバランとかシスカとか言ったけど
牛キャラでミサトとかテファとかが思いついたのです
・・・・・・なぜ牛ときいてあれらなんだろ
予約が無ければ15分から投下するッス
蓬莱学園から一月の名物「牛追い祭り」の牛召喚。
2001年以降はミノタウロス共が一杯混じってるんだよなあ……
元ネタ知らんですが全力を持って支援させてもらうッス
牛ならばGガンダムからマタドールガンダムのガンダムファイター、カルロス・アンダルシアを!
ヒロイン曰く「凄い必殺技」、レッド・フラッグ・カモンがハルケギニアでも炸裂するぜ!
原作では噛ませ犬だが、ガンダムファイターという時点で力量は折紙付、
正義感の強さも魅力的だ(正義感が強い割に主人公じゃなかったので爆弾テロで途中退場させられたが、まぁ後で復活したし)。
なにより巨大な牛の頭にガンダムの頭と手足をつけただけ、というこれ以上無いほど「牛」なマタドールガンダムは来年の干支にふさわしいだろう。
・・・いやマジでそう言うデザインなんだって。
657 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:12:12 ID:DnQrhIau
支援準備させていただきます〜
お前の使い魔様の投下が終わりましたら、その15分後に第十話投下させて頂いてもよろしいでしょうか?
タバサの風竜とワルドさまのグリフォンのお陰で、早馬なら二日はかかるであろうラ・ロシェールへの道をわたし達は一日で移動し、その日の夜には、街で一番の上等な宿である、女神の杵へと到着できた。
空路を使った為に身体を使っていないせいか、力の有り余っている一行は、船の出る桟橋へと交渉に行ったワルドさまを除く全員で、一階の酒場でくつろいでいた。否、大騒ぎしていた。
「おひゃへー、これおいしいれすよー」
「はあ? うわ、酒臭っ! ちょっと誰よダネットにお酒飲ませた奴!!」
「まさかワイン一杯で酔うなんて思ってなかったのよ」
「キュルケ! あんたどう責任とうわあっ! ちょっとどこ触ってんのよダネット!!」
「おまへはぺったんこですねー。もっと食べないとらめれすよー」
「コイツ……! あんたご主人様に向かってなんて口をひいいぃっ!!」
「いい眺めだ……」
「鼻血」
「男の性ってやつだよな」
口々に好き勝手なことを言う面々をよそに、わたしが必死になってダネットを引き剥がそうとしていると、複雑な表情をしたワルドさまが戻ってきた。
「ルイズ、まさか君にはそんな趣味が?」
「ありません! こらっ! 離しなさいダネット!」
ワルドさまの誤解を解き、船の出港について聞いてみると、とても残念な返事が返ってきた。
明日の夜は、月の重なる『スヴェル』の夜の為、早くとも明後日にならないと船は出せないというのだ。
しかし、月の動きばかりはどうしようもない為、わたし達は今日と明日、ラ・ロシェールに宿泊し、明後日の朝にアルビオンへと向かおうということになった。
「さて、本日の部屋割りだが……」
そう言って、ワルドさまが懐から鍵束を出し、各自の部屋割りを発表しようとしたその時。
「えろひげはキザおとこと一緒の部屋れす」
起き上がったダネットが、真っ赤な顔でワルドさまを指差して言った。
ワルドさまは渋い顔をしたが、ジト目で見続けるダネットに耐えかねたのか、肩をすくめて了承し、わたしはダネットと同室ということになった。
「じゃあ、今日は遅いし寝るとしようか」
ワルドさまはそう言って、鍵を手に部屋へ向かおうとする。
すると、途中で立ち止まり、わたしの方へ来て耳元でそっとつぶやいた。
「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」
支援支援っと
ひぐらしからフリーのカメラマン召喚したらどうなるだろうなぁ
とりあえず被写体には不足してないよなw
酔いつぶれたダネットをベッドへ寝かせ、デルフを置いたわたしがワルドさまの部屋へ向かうと、ワルドさまは自分の部屋の前でわたしを待っていた。
「こっちへ」
ワルドさまは短く言い、わたしを促す。
付いていくと、ワルドさまは一室の前で立ち止まり、鍵を開けて中へと入っていった。
「実はもう一室部屋を取ってね。使い魔の彼女には内緒だよ?」
おどけた顔で言うワルドさまを見て、わたしは思わず小さく笑う。
「おや、使い魔くんに遠慮する僕が情けなく見えてしまったかな?」
「違うの。ワルドさまはやっぱりワルドさまだなって思って」
わたしの言った意味がわからなかったのか、彼は不思議な顔をする。
そんな顔も昔と変わらない無邪気なものに見え、自然とわたしの肩の力は抜けた。
わたし達は部屋へと入り、ワルドさまが用意していたワインで乾杯し、喉を潤した。
「それで、話というのは?」
「その前に、頼みごとを聞いてくれるかいルイズ?」
「頼みごとですか?」
ワルドさまの頼みというのは、わたしの話し方だった。
よそよそしい話し方ではなく、昔どおりの話し方をして欲しいということだ。
「なんせ、きみは僕の婚約者なんだからね」
「え、ええ。わかったわ。じゃあ……ワルド、話っていうのはこれなの?」
「いや、実は本題は別なんだ。きみは自分が特別な力を持っているということには気付いているかい?」
心臓がどくんと跳ねた気がした。
特別な力と聞いて、わたしの頭に、以前聞いた不思議な声が思い出される。
『あるじゃねえか。上等な力がよぉ。ソレは生かすことも殺すことも出来る力だぜ?』
上等な力、特別な力、わたしの中にある何かとてつもないもの。
30メイルもあるゴーレムを、まるで紙くずのように破壊できる力。
「もしかして身に覚えがあるのかい?」
ワルドの声に我に帰ったわたしは、慌てて否定する。
「ま、まさか。わたしは魔法の使えない駄目なメイジよ」
しかし、ワルドはわたしの返事に肩をすくめ言う。
「まさかじゃない。例えばきみの使い魔……」
支援です
>>659 ひぐらしからの召喚は色んな意味で危険では
と み た け
フラァアアアアアアッシュ!支援
ワルドはダネットがガンダールヴだということを知っていた。
そして、わたしが偉大なる始祖ブリミルのようなメイジだと、熱っぽく語る。
しかし、わたしは不安ばかりが胸に募った。
きっとワルドは知らないのだろう。わたしの中にあるという力の恐ろしさを。怖さを。どす黒さを。
「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」
「え……」
身体がかっと熱くなり、顔が赤くなる。しかし、同時に背中に氷を入れられたかのような悪寒が走った。
身体の反応に困るわたしを見て、ワルドは恥ずかしがっていると思ったのか、更に熱く語り始めた。
そして最後に、わたしの目を見つめながらこう言った。
「僕にはきみが必要なんだルイズ」
わたしはうつむいたまま立ち上がり、席を離れようとした。この場所から離れたくて仕方が無かった。
そんなわたしの背中に、ワルドの声が投げかけられる。
「急がないよ僕は」
部屋を出たわたしは、急いで自分の部屋へと戻り、ベッドへ飛び込んだ。
「どうした娘っ子、変なもんでも食ったか?」
「黙りなさいボロ剣。なんでもないわよ」
語りかけてきたデルフに冷たい返事をし、わたしはぎゅっと目をつぶって、さっき聞こえた声を拒絶しようとしていた。
聞こえなかった。絶対に聞こえなかった。あんなの認めない。違う。絶対に違う。
『こいつはお前を愛してなんかいない』
認めない。聞こえてなんかいない。認めてやるもんか。
わたしは、悶々としたものを抱えながら、意識を無理矢理に夢の中へと埋没させていった。
翌日、わたしが起きると、ダネットのベッドがカラになっていた。
デルフにダネットがどこへ行ったか聞くと、ワルドが部屋に来て連れ出したらしい。
「何でかしら?」
「しらね」
考えていても仕方ないので、わたしは服を着替え、デルフを持って部屋を出て、朝食でも取ろうと一階へ降りていった。
すると、宿の店員から、ワルドより伝言があると言われた。
なにやら、中庭にある練兵場に来て欲しいとのことだ。
「そんなとこで何があるのかしら?」
「娘っ子と組み手でもしたいんじゃねえのか?」
まさか。そんなことある訳ない。でも、練兵場ってからには……あ。
支援
「も、もしかしてダネットとワルドが!?」
慌てて向かうと、わたしの予想通り、中庭ではワルドとダネットが向き合っていた。
「ちょっと二人ともなにやってんのよ!」
「うー……あんまり大きな声を出さないでください。頭に響きます」
わたしの怒声に、ダネットは頭を押さえて返事をした。どうやら昨日のお酒で二日酔いのようだ。
そんなダネットの代わりに、ワルドが返事をする。
「君の使い魔くんの実力が知りたくてね。彼女も身体を動かしていた方が楽だと言って了承してくれたんだよ」
「そういうことです。うー……じっとしてたら頭が割れそうです」
無茶苦茶だこいつ。というか、二日酔いだから組み手をしたいとかどこの蛮族だ。
「では、ルイズも来たし始めようか」
「ええ。では行きます」
わたしが止める間もなく、二人は構え、組み手を開始する。
「やめなさいダネット! 命令よ!!」
「諦めろ娘っ子。ああなったら終わるまで止まんねえよ」
デルフの言う通り、二人は全く止まる気配が無い。
まあ、ダネットの手にあるのが短剣ではなく、どうも練習用の小さな木刀のような物なので、大きな怪我はしそうにはないが、それでも何が起きるかわからない。
「後でお仕置きだからね!」
「まあまあ。ところでよ、あの嬢ちゃん何もんだ? ありゃよっぽどの修羅場をくぐってきてんぞ」
デルフの言う通り、ダネットの動きは凄いの一言だった。
手から足から、その全てがともかく早い。
ワルドの動きだって早いのだが、それを上回っているのが見ていてわかる。
あれで二日酔いとか冗談にしか聞こえないぐらいだ。
「おでれーた。あの距離でかわせるもんなのか」
至近距離からのワルドの突きを、ダネットはあっさりとかわして、更に飛びのくどころか懐へと入り木刀を打ち付けようとする。
ワルドは懸命にそれを杖で防ぎ、素早く距離を取ろうとするも、ダネットはぴったりとくっついて離れようとしない。
「どうやら嬢ちゃんの勝ちだなありゃ」
いや、まだだ。ワルドはまだ術を使っていない。
あれなら、簡単な術で距離を取った後、広範囲の術を放ち、かわしている隙に近づいて叩き斬る。
「お、魔法を使ったぜあの貴族」
そうだ。術で距離を取れ。じゃないと死ぬぞ人間。
ああ駄目だ駄目だ。あんな術じゃかわしてくれって言ってるようなもんだ。
ほーらかわされた。言わんこっちゃない。
「どうやら僕の負けのようだね」
「いい勝負でした。またやりましょう」
え? あれ? いつの間にかダネットの木刀がワルドの首にかかってる。
「いいもん見れたな娘っ子。ん? どうした娘っ子?」
「あ、ううん。なんでもないわよ。ちょっと立ちくらみしただけ」
わたしは頭を振り、二人に近付いてダネットの頭をはたく。
「いったあ!! なにするんですか!!」
「やかましい! このっ! このっ!」
「怒鳴らないでください! あう、自分の声でも痛いです……うー……気持ち悪いです……」
「ちょっと、まさか吐くの!? やめてよね!」
「うー……」
「トイレ! トイレどこ!? ワルド、早くダネットを連れていかなきゃ!」
「わ、わかった。彼女をこっちへ」
「うっ、げ……限界でず……うっぷ」
「い、いやああああっ!!」
最低だ。最低の朝だ全くもう。
「だいぶ楽になりました」
「あっそ。全く……ご主人様に二日酔いの看病をさせる使い魔なんて聞いたことがないわ」
あれからダネットはベッドで唸り続け、わたしが看病をして夜を迎えた。
すっかり暗くなってしまった外を見ながら、わたしは静かにダネットに語りかけた。
「あのね、ワルドに結婚しようって言われたの」
わたしの言葉に、ダネットはベッドから起き上がって言葉を返す。
「お前はあのヒゲが好きなんですか?」
ダネットの言葉を胸で反芻する。
わたしはワルドをどう思っているんだろう? 彼が婚約のことを覚えていたと知った時は嬉しかった。それは間違いない。でも、好きとは何かが違う気がする。
「わからないわ。でも、父さまが決めたことだもの」
「…………」
そうだ。父さまが決めたのだ。だからわたしはどっちみち彼と結婚しなきゃいけないんだ。貴族として。平民を守るものとして。
それが早いか遅いかの違いなんだ。
「わたし……結婚す」
「それでいいんですか? 本当にお前はそれでいいんですか?」
わたしが言い終わるよりも早く、ダネットが強い口調で遮る。
視線を外からダネットに向けると、彼女はわたしを真っ直ぐ見ていた。
「わたし……」
わたしは言葉を詰まらせ、ダネットを見ることしかできなかった。
ふと、ダネットの瞳が動き、見開かれる。
「危ねえ! 伏せろ娘っ子!!」
デルフの声に、わたしの体が固まる。
そんなわたしを引き倒すようにダネットが抱きかかえ、覆いかぶさった。
直後に響く轟音。そして破壊される部屋。
「大丈夫かおめえら!」
デルフの声が聞こえる。そして、上にかぶさるダネットの体温を感じる。
「い、いや……」
わたしの脳裏に、以前の光景が蘇る。
真っ赤なダネットの血と、真っ赤な景色。
「お前、しっかりしなさい! 逃げますよ!!」
呆然としていたわたしを、起き上がったダネットの腕が引き起こす。
「あ、あんた無事なの?」
「ちょっとすりむいたけど大丈夫です。それより早く!」
見ると、ダネットは少しだけ腕から血を流していたが、傷自体は確かに浅いものに見えた。
安堵したわたしは、気を取り直して急いでデルフを引っつかみ、ダネットと共に部屋を飛び出した。
「あの石の化け物がいるってことは、泥んこ盗賊がいるってことですか!?」
「知らないわよ!」
早口で話しながらわたしとダネットが一階に下りると、そこも凄いありさまだった。
傭兵と思わしき奴らの姿と、必死に防戦するワルドやキュルケ達が見える。
「ルイズ、こっちへ!」
ワルドにうながされ、わたしとダネットはみんなが隠れている机の陰に移動する。
「凄い音がしたけど大丈夫だったのルイズ?」
「なんとかね。ゴーレムが部屋を攻撃してきたの。もしかしたらフーケがいるのかもしれない」
「はあ!? あのオバサン捕まったんじゃないの?」
「わたしが知るわけないでしょ!」
キュルケと話している間にも、矢やこちらの放つ魔法が飛び交う。
短剣しか持たないダネットは攻撃手段が無いため、しばらくじっとしていたが、耐えかねたようにキュルケに向かって言った。
「こうなったら私が飛び込みます! 援護を!」
「バカ言ってんじゃないわよ! あんな中に飛び込んだら死ぬわよアンタ!」
「じゃあどうしろって言うんですか! これじゃらちが明きません!」
「あーもううるさい! とりあえず今はふせときなさい! 邪魔よ!」
キュルケにあっさり却下され、ふてくされたかのようにダネットは伏せたが、ダネットの言う通りこれじゃらちが明かない。
見かねたワルドが、魔法の手を休めて、わたしとワルドとダネットの三人で桟橋へ行き、残りはここで敵を引き付けるというおとり作戦を提案した。
わたしやダネットは反論したが、結局、任務最優先という皆の意見に押されて渋々納得させられた。
「死んだら許しませんよ」
「死なないわよ。それより、ルイズをよろしく頼むわねダネット。ルイズもしっかりやってきなさい」
「わ、わかってるわよ」
ダネットの言葉におどけて返し、わたしに一言向けるキュルケにわたしは言葉を返し、わたしとワルドとダネットの三人は宿の裏口から桟橋へと向かった。
「桟橋はこっちだ!」
先を行くワルドに促され、わたしとダネットが追いかける。
しばらく進み、桟橋へ向かう階段へたどり着くと、ダネットが不思議そうな顔で言った。
「ところで、海はどっちですか? 山の向こうですか?」
「違うわよ。海に浮かぶほうの船じゃなくて、空に浮かぶほうの船に乗るの」
「空ですか? はー、こっちはそんな船があるんですね。びっくりです」
こんな状況なのにのんびりした会話をしているわたし達に、一言なにか言おうとしたのかワルドが振り向くと、その目が大きく見開かれた。
「危ない!!」
「え?」
ワルドの声の直後にわたしの耳に入ったのは、横を走っていたダネットから聞こえた大きな破裂音だった。
目を向けると、背中から煙をあげ、ゆっくりと倒れるダネットの姿が目に入った。
後ろには杖を構える仮面を付けたメイジの姿が見える。
「『ライトニング・クラウド』か!? おい、しっかりしろ嬢ちゃん!」
デルフの言った魔法の名前に、わたしの背筋が冷える。
『ライトニング・クラウド』。風の系統の強力な呪文だったはずだ。
そんな魔法の直撃をダネットは背中に受けた。つまり……
「ダネット! ダネット!!」
煙をあげ、ぴくりとも動かないダネットを必死にゆするわたしを、ワルドの腕が掴み上げた。
「離して! 離してよワルド!!」
「駄目だ! 早く逃げるんだルイズ!」
「嫌よ! ダネットを置いて行ける訳ないじゃない!!」
「くっ……! すまないルイズ!」
暴れるわたしのお腹に衝撃が走った。
わたしの意識は、ワルドに当て身を受けたんだと理解した時には、深い闇の中に落ちていた。
支援
以上で17話終了ッス
支援ありがとでした!
ssと無関係ですが、前回の投下の際に、このスレでの箱○ユーザーが以外に多くてびっくりッス
ウフコックの人、今度どっかでお会いしたら語り合いましょうッス!
では、デモゼロの方、おまたせしました。
それでは
671 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:30:57 ID:DnQrhIau
投下、乙でした〜!
酔っ払いダネット可愛いです
そしてワルド…何故でしょう、彼の背後に死亡フラグが見えそうな気がしないでもないのは
それでは、14:40頃から投下させていただきますね
乙
またエロヒゲって言ったww
んー、やっぱりひぐらしは危険かハルケギニアでのソウルブラザー勧誘とか面白そうだったのだが
ダネットのひと乙でしたー
自分にも見えるぜ、ワルドの立てた死亡フラグが!
あとダネットもなにげに牛(っぽい)娘だよね。
さて、アームドパラサイトは武器に数えていいものかどうか…
いや武器なんだけどね?(w支援
674 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:39:31 ID:DnQrhIau
それでは、投下開始させていただきます
馬鹿力のルイズ
フーケの隠れ家で悪魔の種を取り返した
しかし、どうした事だろう
悪魔の種は、ルイズの手の上で消えてしまった
………否
ルイズの中に、吸収された
そして、聞こえてきたのはロングビルの悲鳴、それと
獣のような、何者かよくわからぬ、雄叫び
「…ロングビル!?」
ただ事ではない、この悲鳴
…まさか、フーケが現れたのか!?
ルイズたちは杖を構え…ルイズだけは、デルフリンガーを逆手に持って…小屋から飛び出した
そこに広がるのは、目を疑うような状況
囲まれている
この小屋が…見たこともないような化け物に、囲まれていた
人間を歪に肥大化させ、裂けた皮膚から筋肉繊維が露出しているような、醜い化け物
鋭い牙や爪をもったその姿は、まるで人を傷つけるために、食らうために存在しているように見えた
それが、ざっと四、五体
「っつ……」
ぽたり
その化け物共を睨みつけ、杖を構えるロングビル
ぽたり
左肩の服が破け、血に染まっていた
右肩の上では、モートソグニルが必死に肩に掴まって、そこから化け物たちを睨みつけている
「ミス・ロングビル!こ、これは一体…!?」
「わ、わかりません…気がついたら、もう、囲まれていて…」
キュルケの問いに、荒く息を吐きながら答えるロングビル
見た目ほど酷い怪我ではないようだが…とにかく、早く治療するべきだろう
…だと、しても
まずは、この化け物共に囲まれているこの現状だから、脱出しなければならないのだが
「な、何よ、あれ…あんな化け物、見た事もないわ…」
「……初めて見た」
勉強熱心で、様々な魔物に関する知識も持ち合わせているルイズも
図書室の本は、学生が読むことを許可されている物ならほぼ読み終えているはずのタバサでさえも、初めて見た化け物
こちらに向けてきているのは、敵意、殺意
剥き出しのその殺意に、ルイズはぞくりと体を振るわせた
「あ、悪魔の、種は?」
油断なく化け物たちを睨みつけ、杖を向けたまま、尋ねて来るロングビル
化け物たちは、こちらの様子を窺っているのか…ひとまず、飛び掛ってくる様子はない
「そ、それが…消えて、しまって」
「え?」
「相棒の体ん中に、入っちまったんだよ!!」
うまく答えられないルイズに変わって、デルフリンガーが叫ぶ
な、とロングビルは、驚愕の表情を浮かべた
「は、入ってしまった、って…」
「わかりません。でも、私が手に持ったら…消えて、しまって。でも…わかるんです。悪魔の種が、私の体の中に、入ったって」
第二次支援を敢行するのでありまするー
676 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:40:38 ID:DnQrhIau
そうだ
ルイズは、今もその存在を感じる事ができる
…あの、悪魔の種は
ガルムハンマーとやらは、自分の中にある
そして…自分は、それを「使える」のだと、漠然と理解できた
だが、何故だ?
何故、そんな物が自分の中に入ってきて
それを、扱う事が、できるのだ?
わからない、わからない、わからない、わからない
理解しているはずなのに、理解できぬ現状に、ルイズの思考は混乱していた
「…とにかく、この場は逃げるべきね。タバサでも正体のわからない化け物がこんなにいるんじゃあ。私たちじゃ、対処しきれないでしょうし」
「私も、そう思います。あの化け物…恐ろしい怪力です。油断したら、私たちなどあっと言う間に粉みじんでしょう」
キュルケとロングビルの声で、思考の渦から引き上げられるルイズ
タバサが口笛を吹いて、待機していたシルフィードを呼び寄せようとした
きゅいー!と声をあげ、シルフィードがルイズたちの頭上まで飛んでくる
幸い、シルフィードが隠れていた辺りには、化け物たちがやってこなかったらしい
とにかく、シルフィードに回収してもらって…
「え?」
ルイズの、視界に
何かが、シルフィードに向かって、跳び上がったのが…見えた
「っ駄目、逃げて!!」
「きゅい!?」
がし、と
跳び上がったそいつは、シルフィードの背中に張り付いた
きゅいいいいーーー!?とパニックに陥ったのか、シルフィードは暴れ出す
「きゅい!きゅいぃーー!」
ぶんぶんぶん!!
必死に振り落とそうとしているが、そいつはしっかりとシルフィードの背中にしがみ付いているようで、離れない
遠めだからよく見えないが……あれは、タコ?
いや、違う
タコのように見えるのは上半身だけで、下半身は人間のように見えた
どちらにせよ、あれも見た事もないような化け物だ
空から逃げる、と言う選択肢が…失われた
嫌なのねー!ぬるぬるして気持ち悪いのね、離れるのねー!!とか聞こえてくるような気がするが気のせいだろう
シルフィードは韻竜ではなく風竜なのだから喋るはずがない、混乱しているせいで、変な幻聴が聞こえてきているようだ
「…どうしましょうか」
「………」
す、と
タバサが、決意した表情で杖を構える
それを見て、キュルケもまた、杖を構えた
ロングビルも、構えた杖を下ろそうとしない
「相棒、覚悟決めるしかないんじゃねぇのか?」
「……そうね」
あぁ、そうだ
もう、この選択肢しか、ないではないか
すなわち…この化け物共を、倒して
ここから、生きて帰る
それしかないじゃないか
杖を、デルフリンガーを、握り緊める
よろしいならば支援だ
678 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:42:33 ID:DnQrhIau
タタカエ
タタカエタタカエタタカエタタカエタタカエ!!
頭の中で響く声
煩い、わかっている
言われなくたって、もう、戦うしかないのだから
「ファイヤーボール!!」
キュルケが発した火球が、化け物たちに向かってまっすぐに飛んでいった
シャギャァ!と奇声をあげて、化け物たちは火球の直撃を避けるべき動き出す
爆音と共に、一体が吹き飛ばされ、二体が直撃を避けて横に跳ぶ
タバサの放ったエア・ハンマーがその片割れを吹き飛ばしたが、それらの攻撃で、相手もまた、動き出した
奇声をあげながら、地を蹴り、こちらに向かってくる
グロテスクな化け物が、迫ってくる恐怖
しかし、ルイズはその恐怖を押し殺す
震えている場合ではない、恐怖している場合ではない
…戦わなければ!
「ファイヤーボール!」
どごぉん!!
キュルケのように魔法を放とうとして、しかし、発生したのは爆発
が、その爆発はむしろキュルケの火球以上に圧倒的な威力を持って化け物を吹き飛ばした
吹き飛ばされた化け物が、太い木の幹に激突し、動かなくなる
「…っ走りますよ!」
ロングビルの掛け声を合図に、四人は走り出す
この化け物共相手に、律儀に相手をする必要はない
逃げ出し、魔法学院に、この事を報告しなければ
シルフィードを置いていくのは心が痛むが…無事に生き延びてくれる事を祈るしか、ない
逃げ出そうとするルイズたちの姿に、化け物が咆哮をあげる
びりびりと空気を振るわせる、まるで遠吠えのような声
まるで、その咆哮を聞きつけたかのように…新たに、化け物たちがルイズたちの目の前に立ちふさがった
「っく…まだいるの!?」
再び魔法を放とうと、杖を構えるキュルケ
しかし、魔法は放たれること、なく
「………っ!?」
「…キュルケ!?」
声にならない悲鳴をあげるキュルケ
キュルケの魔法で吹き飛ばされた化け物が、何時の間にか背後まで近づいてきていて
その鋭い牙が…キュルケの右肩に、深く、食い込んでいた
「っこの!」
助けなければ!
左手に構えていたデルフリンガーを、化け物に振り下ろすルイズ
しかし、化け物は即座にキュルケを放し背後に飛びのき、デルフリンガーは宙を切る
ぱ…と、キュルケの肩から噴出した血が、ルイズの視界を埋め尽くす
「キュルケ…キュルケ!」
「…だい、じょうぶ」
気丈に声を絞り出すキュルケだが…血は、とどまる事なく溢れ続ける
ロングビルが受けた傷よりも、ずっと深い
「タバサ!」
「…水の秘薬がないから、簡単な治療しか、できない」
いつもの無表情ではなく、苦虫を噛んだ表情で答えながら、タバサが呪文を唱え、杖を振るう
とにかく…とにかく、出血だけでも止めなければ、命が危ない
荒く呼吸をするキュルケを、ルイズはじっと見つめた
出勤前の支援ッス
今日は仕事やすみだからたっぷり支援できるぜぇ〜?支援
681 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:44:02 ID:DnQrhIau
…許さない
許さない!!
内側から湧き上がる怒り
フーケが、キュルケとシエスタを危険な目にあわせた時と同じような
いや、それ以上の怒りが、ルイズの内側から湧き上がってくる
ざわり、ざわり
怒り、だけではない
体の内側から、何かが湧き上がってくるような衝動
びき、と…爪が伸び始めている事に、ルイズは気づいていない
「ちゅ……」
…そして
キュルケが負傷した、その姿を、見て
っとん、と
ロングビルの肩から、モートソグニルが、飛び降りた
次の、瞬間
四人の目の前で、目を疑うような光景が映し出された
ロングビルの肩から飛び降りたモートソグニル
その姿が掻き消え…代わりにそこに現れたのは、端整な顔立ちをした青年
質の良さそうな服に身を包んだ青年は、き、とルイズたちを囲む化け物たちを睨み付けた
刹那…化け物の一体が、シャギャ!?と何か恐ろしいものでも見たような悲鳴をあげ、後ずさる
「…ここから、逃げるのでちゅ!
青年に、そう声をかけられても
思考が、追いついてこない
「早く、早く逃げるのでちゅ!ここは僕に任せるのでちゅ!」
青年は叫ぶ
じゅる、と、その青年の服の袖口から、植物の蔦のような…
いや、一言で言うならば、触手のようなものが現れ、すぐ傍の木に向かって伸ばされる
……ぼごっ
触手が木を引っこ抜き、化け物たちに向かって投げつけられる
一体が逃げ遅れて押しつぶされ、ギャアと悲鳴をあげた
「早く!早く、逃げるのでちゅ!」
…逃げる?
何を、言っているんだ
こいつらは、ロングビルを傷つけたではないか
キュルケを、傷つけたではないか
…逃げる?
冗談じゃない!!
私は、こいつらを絶対に許さない
この手で……ギッタンギッタンにしてやる!!
682 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:46:22 ID:DnQrhIau
「…ルイ、ズ?」
ざわり
ルイズの髪の毛が、ざわざわと、逆立っている
何かの比喩などではなく…本当に、逆立ってきているのだ
びき、びき、と
杖を、デルフリンガーを掴む手の、爪も、伸び始めていて
「相棒…おい、どうなってんだ、相棒!?」
デルフリンガーの叫びは…果たして、ルイズの耳に届いているのだろうか?
メキメキ、と聞こえてきた音は、何の音だ?
出血のせいか、視界が霞む中…それでも、キュルケは必死に、目の前のルイズを見つめていた
許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!!
怒りに染まる思考
内側から湧き上がる衝動を、ルイズは抑えようとしなかった
衝動に任せ…体に起こる変化に、途惑いながらもそれを止めようとはしない
めきめきと音をたて、筋肉が肥大化していく
服がそれに耐えられなくなったのだろう、ビリビリと裂けていくが、気にもとめない
体中が毛で覆われていっている、爪が、牙が伸びている
顔の形も、変わっているような気がした
タバサは、目の前で起きている光景を、信じられない、と言った表情で見つめていた
目の前で、ルイズの姿が変化していっている
それは、まるで人狼が、人の姿から元の姿へと変わっていくような変化
…しかし、桃色の毛並みをした人狼など、果たして存在するのか?
モートソグニルは、あぁ、やっぱり、と思った
やはり、彼女は自分と同じようになっていたのだ、と
何故、もっと早く彼女に伝えなかったのだろう
何故、もっと早く気づけなかったのだろう
後悔しても遅いのだ
変化を終えて…ルイズは、吼えた
二つの月が見下ろす下、吼えるルイズの姿は
彼女が夢の中で見た桃色の毛並みの獣人、そのものだった
ちょ、青年かつでちゅ口調って…
すごいの振ったな!支援
<馬鹿はダイス振って特徴を決めたと思っている
684 :
デモゼロ:2008/12/17(水) 14:48:58 ID:DnQrhIau
以上で、第十話投下終了です
当初からモートソグニルが変身してなおかつ「でちゅ」口調なのは決まっていたのですが
ショタにするか、青年にするか、中年にするかギリギリまで迷った結果青年にしました
…オスマンの使い魔なんだから老人じゃないのかって?
老人で「でちゅ」口調は書いてる私が悶え死にます
それでは、たくさんの支援、ありがとうございました!!
子安声で美青年で「でちゅ」はロザバンで既出だ支援
乙でしたー
どこかにカルトロップ・トリブルスが存在してそうだなー…
モツですがモートソグニルは素っ裸なんでチュか?
17:25分から 新作を投下したいと思います。
召喚元はワールドヒーローズ2から召喚します。
出オチキャラなので今はこれだけしか言えません。
まぁ取り敢えず支援
投下させて頂きます
ゼロの使い魔様は根腐れしてやがる!!
それは春の使い魔召還の儀に突然やってきた。
何度も失敗しても諦めなかったルイズの召還に答えてやって来た。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・
それは天に悠々とそびえ立っていた。
「ゼロ・・・のルイズが・・・」
誰かが呟いた。その声に嘲りと多少の哀れみを込めて、
「う・・そ・・・」
ルイズは泣きそうな顔で目の前の現実を否定しようと、教師であるコルベールに涙目で訴える。
だが、コルベールはなんとも残念な表情で冷たく重い一言を言い放つ
「残念ながらやり直しは出来ません」・・・と、
そしてルイズは召還されたモノに対峙した。
学友であるはずの男子からは蔑みの言葉が飛び交い、女子からは哀れみの視線が突き刺さる。
だが、彼らはまだ、その雄雄しくそびえるソレが彼らの想像しているものよりも
ずっとやっかいで危険なモノだとは誰一人気がついていない。
だからルイズの心を深くえぐる様にヤジを飛ばすのだ。
「ゼロのルイズがゴミバケツを召還した!!」と、
ルイズは自分の事が情けなくて心がはち切れそうだった。様々な思いを持って臨んだ召還の儀、
何度も、何度も失敗しては馬鹿にされてそれでも諦めずに挑んで、
やっと成功したと思ったら召喚されたのはゴミバケツ・・・しかもそれに契約しろと言う。
私が何か悪い事をしたのかと心で毒づき、後で全員ふっ飛ばしてやると不穏な事を考えながら
件のゴミバケツに意を決して契約のキスをしようと近づいたその時!!
ワールドイロモノズからの出オチ・・・・ラスプーチンかマッドマン?
支援
ガポオォン!!
「がっふああ!?」
唐突にゴミバケツの蓋が飛び上がり、ルイズの顎を見事に打ち抜いた。
見事なアッパーを喰らって宙に舞うルイズ、そして・・・
「な、なんだ!!ゴミバケツから人が沢山出てきたぞ!?」
そう、ゴミバケツからなんと5人もの人が出てきたのだ。
出てきた人々は皆、一様に白い服に首元にリボンをつけており、個人で違った眼鏡をかけていた。
そのうち4人は額に何かしらの文字らしきモノが掘り込んであり、唯一、髪の毛を生やした男がどうやら彼らの長のようだ。
「いやぁ、よいしょっと」
ゴミバケツから華麗に空中トリプルアクセルを決めながら地面に着地する謎の集団の長
「みぎゃああ!!」
その足元にはお約束の如く、ルイズが・・・そして次々に飛び降りる面々
「よっと」
「ぎゃああ!!」
「ほっと」
「ゆだあああ!!」
「おっと」
「いたあああ!!」
「おいしょ!!」
「ぐあああああ!!」
もう最後の方は名門貴族の子女なんかみじんも感じさせない悲鳴で悶絶するルイズ、
そしてあまりにも現実離れした事態に唖然となる一同、それらを見渡して男たちは・・・
「博士、目的地とは違う場所に出ましたよ?」
「ふむ、A君、これはどういう事だろうね」
「博士!!なんかタイムマシーンの設定がめちゃくちゃになってます」
「むむ、と言う事はC君、先ほどの時空の揺れが原因で別世界に飛ばされたかもな」
「あー、そこの髪の毛の薄い方、2週間程でふさふさに戻る壷買ってみませんか?」
「なんと!!おいくら程で!?」
お前ら!!人の上でいつまで雑談してるんだぁ!!」
華奢な体のどこにそんな力があったのか踏みつけていた5人(+コッパゲ)をぶっ飛ばして復活するルイズ
「あ、あ、あ、ああ、あんた達!!きききき貴族にこんな事してただで済むと思っているの!?」
怒り最高潮でマトモに呂律も回らないし、吹っ飛ばされても平然としている5人に、
ルイズのテンションは更にヒートアップ
「大体あああ、あんた達は一体誰なのよ!!それとなんでゴミバケツから出てくるのよ!!」
一気にまくし立てるルイズを見ても尚、その男たちの長らしき男はマイペースにゆったりと起き上がる
その様子を見ていた小太りの男子が笑いながら大声で叫んだ
「ゼロのルイズ!!平民に馬鹿にされてんぞー」
大笑いが起こったと思った瞬間にその小太りにどこからとも無くスパナが飛んできて顔面直撃!!
そのまま轟沈、白目を剥いてその場に倒れてしまった。
いったい何処からと皆が首をかしげる中、謎の博士と呼ばれた男は咳をして、名乗った。
「私?私めは科学者 根腐軸盆です」
「助手Aです」
「助手Bです」
「助手Cです」
「助手Dです」
ここにハルケギニアの歴史を塗り替える(悪い意味で)使い魔が召喚されたのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・
・
「はい、んじゃあとっとと契約済ませといて、先生ミスタ・Bと話あるから」
生徒の進退よりも自分の生え際の進退を気にする男、コルベールのおざなりな説明と
ルイズの熱心な説得(自分勝手な意見を延々と喋っただけとも言う)により今、まさに
契約の儀が執り行われようと・・・
「我の使い魔となせ・・・」
ぷちゅうう・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
・
「ねぇ、この生物は?」
「人喰いゾリラのゾーリンちゃんです」
がぷ
「ぎゃあああああ!!」
やっぱ召喚されてねぇかも・・・
以上で1話目、終了です。
マンガ ワールドヒーローズ2(雑君保プ版)から根腐博士とその一行です。
ありがとうございました
・・・・・・・・・・・・・こいつぁあらゆる意味で予想外だった
どいつ呼んでも話成り立つくらい(あらゆる意味で)キャラ立ってっからなぁ
あのゲームは
まあとにかく負けたです
しかし今時雑君保プなんて知ってる人間どの程度いるのだろ
ワーヒー全巻もってるぜ!<雑君保プ
やっぱあの漫画は博士と助手の寸劇こそが一番面白かった
あとキャプテンラブはいいゲームですぞ
乙ですー
…やられたっ!(w。いやまじでこれにはやられたわーw。
懐かしいなぁ、コミックゲーメスト。ギース・ボヒョー・ハワード…<それか
あとコンティニュー?も好きだった、うん。
>>697 桜瀬琥姫とか描いてたよな、コミゲ。
誤植「桜瀬王虎姫」が懐かしい。
おっとっと、根腐博士の人、乙です。
まさか雑君ネタでくるとは。
牛の話題で毒午頭とその嫁が出なくて驚いた
あとは低級修羅神とかバッファローマンとか風鈴寺美羽とか
>>698 なまじゲーメストだったので「王虎(ワンフー)」かよと、馬鹿笑いした記憶が。
そして根腐のひと乙
根腐博士の人
喰っていいのサインで支援してやれば良かったな
なんという斜め一歩上w
ドラゴンロアーズから飛鳳召喚…駄目だ「先手必勝…」でギーシュが死ぬw
あと途中から使役竜が乱入してルイズがエライことにw
おマチさんやワの人やジョゼフも勝手に自滅して説教食らいそうな希ガスww
>>704 ジョゼフ「ふ・・礼を言うぞ・・・俺は誰かに止めて貰うことを望んでいたのかもしれぬ・・・」
飛鳳「自覚してるんだったら自分でやめんかぁっ(ばきっ)!」
ジョゼフ「げぶぅおはぁっ!?」
シェフィールド「ジョゼフ様ーっ!?」
こうですか! わかりません!
>>694 やっぱりあの愉快な英雄達もチョイ役で出てくるんだろうなぁw
その方が嬉しいんだけど
足止めにしか過ぎん自分を少しは恥じんかー
と言ってしばかれるのは誰になるんだろう
こんばんはでございます。
何気に今日が誕生日の黒魔道士です。
1940時ごろから投下しようと思います。
よろしくお願いいたします。
事前支援
誕生日支援
投下開始ですよ。
―――
「――つまり、その手紙が?」
「はい、その手紙が敵の手に渡ってしまいますと――あぁ、私はどうすれば!!」
お姫様が困っているのは、アルビオンの王子様が持っているお手紙のことらしいんだ。
何か、とっても大切なことが書かれてるみたいで、奪われると同盟がどうこう……
っていうのはややこしくて分からないけど、とにかく大変なことになってしまうみたい。
うーん……そんな手紙、なんでアルビオンの王子様が持っているんだろう……?
「分かりましたわ!私、この命に代えてでも、その手紙を取り戻して参りますわ!!」
「あぁ、ルイズ!あなたこそ私の真の友達ですわ!!」
「ビビ!あんたも使い魔として、キリキリ手伝うのよっ!!」
「え、あ、は、はいっ!!」
その手紙を取り戻す、か……うーん、ルイズおねえちゃんが危ない目に合わないようにしないとなぁ……
「よぉよぉ、三文芝居中恐縮なんだけどよぉ?おれっちの話ちーっと聞いてくんない?」
「!? 他に誰かいるのですか?」
あ、すっかりデルフのこと忘れてた……
「姫殿下、御安心ください!あれは私の使い魔の持つインテリジェンス・ソードで――」
「デルフ?どうしたの?」
「いやよぉ、こういった話って、やっぱ秘密、なんだよなぁ?」
デルフがカチャカチャとしゃべる。お姫様がそれをじっと聞く。
「え、えぇ、もちろんですわ、インテリジェンス・ソードさん!このことが敵に通ずる者に知られては――」
「そんじゃぁよ?ドアの向こうのお客さん、どうする?」
……ドア?
デルフをベッドに立て掛けて、音がしないようになるべく急いでドアに向かったんだ。
そして、ドアを思いっきり開けると……
「うわぁぁっ!?」ドッゴロゴロゴロッ
……転がって入ってきたのは……ギーシュ!?
「いたたたたっ――ひ、姫殿下っ!!ご機嫌麗しく!姫殿下の御尊顔をこの眼に焼き付けることが叶いましたことを心より感謝いたしますっ!!姫殿下の美貌はまさに薔薇の華やかさも凌ぎ、佇まいは百合の清純さをも超えっ!!今この私ギーシュ・ド・グラモンの心は天にも――」
……転がってるのに、よく噛まずにそれだけの挨拶ができるなぁ……ってアレ?
「秘密、なんだよなぁ?この兄ちゃん、どうするよ?」
……どうしよう……
―ゼロの黒魔道士―
〜第十八幕〜 あの丘を越えて
「――ぎ、ぎ、ギ〜シュ〜!?あ、あんたまさか今までの話を!?」
ルイズおねえちゃんがギロリとギーシュをにらむ。
「――この栄誉こそまさしく我が一生の――あ、る、ルイズ、いたのかい?」
……ギーシュ、周りが見えてないんだなぁ……ボク以上にうっかりしてるや……
「こ・こ・は!私の!部屋!!!! っていうか、あんた聞いてたわけ!?今の!!今までのっ!!秘密のっ!!」
……ゴメンね、ギーシュ……ルイズおねえちゃんがここまで怒ったら、ボクにはもう……
「う、うわわ、ぼ、僕はたまたま姫殿下が真夜中に共の者を連れずに外出なさったのを見て、これは大事があってはいけないと、陰からお守りしようと――」
「そ・れ・で!? ストーキングの次は盗聴っ!?あんた、本当にもう死刑にされても文句は――」
……どうしよう、止めるべきなのかなぁ?
あぁ、でも今ルイズおねえちゃんを止めようとするのは、ボムに油入り瓶を投げつけるようなものだし……
「る、ルイズ?ルイズ?も、もうそのぐらいにしてあげてください――」
……お姫様、勇気があるなぁ……やっぱり、お姫様って、このぐらい勇気が無いとダメなのかなぁ?
「しかし、姫殿下っ!この者は我々の話を――」
「よぉよぉ、娘っ子?もうちっと静かにしねぇといけねぇんじゃね?秘密、なんだろ?」
ムグッと口を慌てて抑えるルイズおねえちゃん……
そっか、こういう言い方なら、ルイズおねえちゃんも止まるんだ……
勉強になるなぁ……
「それに、えぇと、そこのあなた、グラモンとおっしゃいましたか?もしや、かのグラモン元帥の――」
「は、はいっ!不肖の四男坊にございますっ!!ど、どうか、姫殿下っ!先ほどの任務、この私めにも――」
「ちょ、ちょっとちょっと、ギーシュ!!あんた図々しいにもほどがっ!」
ルイズおねえちゃん、まだ、かなり声が大きい。
ボクは急いでドアを閉めにいったんだ。
「まぁ!それでは、あなたのお父上も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいますのね!それでは是非あなたにも――」
「も、もったいなきお言葉っ!!このようなお声をかけていただけることは末代までの誇りっ!必ずや一命に代えてでも――」
「姫殿下っ!?」
……どうやら、ギーシュもついていくことになるみたいだ。
うーん……まぁ、ギーシュも、1対1なら強いし、大丈夫、かなぁ……?
「よぉ、相棒?ちょいときっつい旅になりそうじゃね?」
デルフが、ちょっと嬉しそうに言うのが気になる……
「……デルフ、嬉しいの?危険なのに……」
「へっ!俺様は武器よ!使ってもらってなんぼっつぅ武器よっ!相棒、遠慮なく危険な目にあいなっ!!」
……できれば、危険な目は遠慮したいなぁ……
sien
「――と、いうわけで、いざ出陣よっ!!」
次の日の朝早く、ルイズおねえちゃんは珍しく自分で起きたんだ……だけど……
「うん、それはいいんだがね、ルイズ?つかぬことを聞くけど――」
「何よ?大体、この任務を仰せつかったのは、このわ・た・し!!だから、私が仕切るのよ、文句ある!!」
「えーと……ルイズおねえちゃん?その荷物は……?」
……ルイズおねえちゃんが部屋から出そうとした荷物は、どう考えてもボクとギーシュの体重を合わせたぐらいの量があると思うんだ……
「ん?お小遣いに、雨が降ったときの傘、あとは替えの服がいくつかに、枕が変わるとちょっと寝にくいから――」
うーん……なんか、1度荷物を開いたら2度と綺麗にしまい直せそうにない量だなぁ……
「ルイズ、軍閥の貴族として意見を言わせてもらうが、行軍の際の荷は必要最低限に――」
「ルイズおねえちゃん、あんまり、荷物があっても、しょうがないよ……?」
「そーだぜ、娘っ子!こんなんじゃ馬がすぐ疲れちまわぁ!!」
「そ、そんなに1度に言わないでよっ!!貴族としての嗜みじゃないっ!!」
……ルイズおねえちゃん、危険な所に行くって意識、あるのかなぁ……?
「ルイズおねえちゃん、とりあえず、全部置いてっていいと思うよ……?必要な物は、現地でお買いものすればいいし……」
あ、でも、お店ちゃんとやってるのかなぁ……?やってるといいなぁ……
「う、わ、分かったわよ!あー!もう!折角荷造りしたのにっ!!」
……大丈夫かなぁ、ホント……
「出発が遅れてしまったわ!さっさと出陣よっ!!」
……ルイズおねえちゃんのせいな気もするけど、言わないでおこう……言ったら、また長くなりそうだもんね?
「あ、ところでルイズ?ちょっとお願い事があるんだけど――」
「何よ?リーダーは私!これに変更はありえないわよっ!!」
なんか、また長くなりそう……?
「いや、できれば、僕の使い魔を連れていきたいのだが、いいかな?」
「使い魔?連れてってもいいけど、それならさっさと連れてきなさいよ!時間が一刻でも惜しいのっ!」
……うーん、ルイズおねえちゃん、張り切ってるのはいいけど、落ち着いた方がいいと思うなぁ……
「いやいや、もう来ているよ?」
? 周囲を見渡しても、ボクと、ギーシュと、ルイズおねえちゃんと、デルフと、馬が2頭だけだど……
「え……ギーシュの使い魔って、目に見えないの……?」
『バニシュ』でも使っているのかなぁ……?
「どこにいるってのよ?」
「いやいや、ほら、ここさっ!!」ボゴッ
「モグー!」
土が突然盛り上がって、地面の底から出てきたのは、巨大な毛のボールだったんだ……
「おぉぉ〜!ヴェルダンディ、今日も君は素晴らしいね〜!美貌はまさに薔薇の華やかさも凌ぎぐし、佇まいは百合の清純さをも超えているよっ!ご飯はもう食べたのかいっ!?あぁ、もう君はなんて可愛いんだ、まさしく君は僕の太陽だ光だ、僕の存在そのものだ――」
……貴族の人って、やっぱりどこか変なのかなぁ……?
「ジャイアントモールだったのね、あんたの使い魔って――でもどういう感性なのよ、それが美しいって――」
あ、良かった。ルイズおねちゃんもボクと同じ感想だった。
可愛いって言うんならまだ分からなくも無いんだけどなぁ……?
「な、何を言う!この目を見たまえ!どんな宝石をもってしてもこの純然たる輝きを超えることは決してないだろう!さらにこのひくひく動く鼻は世界中のいかなる花々をもってきたところで、この可憐さに敵うことは決してないと言えるだろうね!
さらに加えてこの毛並みだよ!見たまえ、この輝き!この艶!そして触ってみればその柔らかさに君は驚嘆の色を隠せないことうけあいだよ!この毛並みではいかなる最高級の絨毯をも――」
……な、長くなりそうだなぁ……
「すげぇな、全然つっかえねぇでこれだけ語れるってのぁ――俺様おでれーた!」
デルフに、すっごく賛成する。
「モグモグモグ〜!」ガバッ
「キャァァッ!?ちょ、な、何するのよっ!このエロモグラッ!?」
「る、ルイズおねえちゃんっ!?」
ヴェルダンディが、突然ルイズおねえちゃんに抱きついたんだ……えっと、可愛さをアピール、かなぁ……?
「主人に似てエロなの!?離しなさい、離せーっ!!」
「――その速度はいかなる馬、いや龍をも超え――おや、どうしたい、ヴェルダンディ?」
「し、知らないわよっ!!あんた、自分の使い魔も制御できないのっ!?やめ、離れ、離れなさいっ!!」
「モググ〜!」
ヴェルダンディは、ルイズおねえちゃんの手に対して、鼻をヒクヒクさせていたんだ。
……ルイズおねえちゃんの手、そんなにいい匂いがするのかなぁ……?
「あぁ、なるほど、昨夜姫殿下から預かった『水のルビー』だね!」
あ、そういえば、昨日の夜、「困ったときはこれをお使いなさい」ってお姫様が指輪をルイズおねえちゃんに渡してたっけ……
うーん……なんで『ルビー』なのに青いんだろう……?
「ヴェルダンディの鼻は宝石に反応するのだよ!まったく、美しい物は美しい物を選ぶというが、その通りだと思わないかね!?あぁ、ヴェルダンディ、君こそが僕の女神であり美の化身であり薔薇の化身だよ!その魅惑的な声を一度聞けば――」
「な、長ったらしい話してないで、離させなさいよっ!!!こ、このっ!このっ!!」
ど、どうしよう?魔法を打ったら、ルイズおねえちゃんも怪我しちゃうよね……?デルフで傷つけるわけにもいかないし……
そうやってどうしようかオロオロしちゃってたときだったんだ。
ヒュォォォォォォッ「モグーッ!?」
突然、強い風がヴェルダンディめがけて吹きつけたのは……
「え、わ、うわわっ!?」
突然の風に慌てて帽子を押さえるだけのボク。
「あぁっ!?ヴェルダンディ!?風に舞うその姿も素敵だーっ!?」
……相変わらずちょっと変な方向に物を言うギーシュ。
「た、助かった〜……うー、洋服泥だらけじゃない……」
……また着替えに戻ろうと言いかねないルイズおねえちゃん。
「ほぉ〜、こりゃ風魔法だなぁ」
一番冷静だったのは、意外にもデルフかもしれない。
「だ、大丈夫かい、ヴェルダンディ!誰がこんなことをっ!!」
次に冷静になったのはギーシュだったんだ。
自分の大切な使い魔を吹き飛ばされて、かなり怒ってたんだ。
「いやいや、すまないね。婚約者が襲われているのを見過ごすわけにはいかなくてね。」
それはさっきの風ぐらい突然だったんだ。
「だ、誰だお前h「ワルド様っ!?」わ、ワルド?」
髭のおじさんが学院から出てきたのは。
……婚約者?
「え、えーと、おじさん、誰ですか……?」
「お、おじ……いやいや、失礼。これは名乗り遅れた。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。君は、ビビ君だね?」
「え、ど、どうしてボクの名前を……」
なんだろう、この人、ちょっと怖い感じがする……
「ワルド!?ま、まさか魔法衛士隊のワルド子爵であらせられますかっ!?」
「ほぅ、僕をご存じかい、グラモン家のギーシュ君!これは光栄だねぇ。お父上にはお世話になってるよ!」
「は、はいっ!こ、こちらこそ憧れの魔法衛士隊の方に名を知られていることは身に余る光栄であり――」
「あ、あの、どうしてボク達のことを……?」
「ワルド様っ!!」
「おぉ、ルイズ!僕の小さき婚約者よっ!!あぁ、相変わらず君は羽のように軽いね!」
……ルイズおねえちゃんと知り合いなのかn……え?今、確か……
「こ、こ、こ、婚約者ぁぁっ!?」
「ヴァリエール家は公爵の地位を持つからね、縁談があってもおかしくは無いが……」
き、貴族の人って、そんなのがあるんだ……なんか、やっぱり、すごいなぁ……
「あ、あの、ワルド様?今日は何故こちらに?」
「あぁ、姫殿下から、君達の任務の補佐を頼まれて、ね!」
……え?何で、この人、任務のことを……?
「あ、あの、ワルド子爵!つかぬことをお聞きしますが、何故任務のことを……」
「ハハハ!簡単なことだよギーシュ君!昨夜の姫殿下の夜の散策、気づかぬようでは部下として劣ってると言わざるを得ない!後でそのことを問いただした、という次第さ!」
……お姫様、うっかりしてるなぁ……
秘密でも何でもなくなっちゃってる気がする……
「え、それでは、ワルド様も一緒に?」
「あぁ、もちろんだとも!僕の可愛いルイズ!」
そう言って、ワルドおじさんは指笛を吹いたんだ。
「ケェー!」
すぐに、おっきな空飛ぶモンスターがやってきたんだ。……これも、使い魔なのかなぁ?
「よし、ルイズ、行こうか!」
そう言って、ワルドおじさんはルイズおねえちゃんをそのモンスターに乗せる……え、これに乗るの?
「え、あ、ビビも、私の使い魔も一緒に……」
「すまないが、グリフォンは2人乗りでね」
……ちょっと、ホッとする。空を飛ばなくてすみそうだ。
「あ、いいよ、ルイズおねえちゃん。」
「え、でも……あんた1人じゃ馬に乗れないでしょ?」
「あ、うん、大丈夫、ギーシュと一緒の馬に乗るから……よろしくね?ギーシュ?」
「あ、う、うん、もちろんだとも!」
ギーシュはワルドおじさんを見てポーッとなってる。
……かっこいいから、かなぁ?でも、なんか怖い感じがするのはどうしてだろう……?
「よし!それでは出陣だ!グリフォンは速いからな、遅れを取るなよ、ギーシュ君!」
「は、はいっ!!」
こうして、ボク達の旅は始まったんだ……
ホントに、どうなるのか分からない旅が……
ピコン
ATE ―龍は見ていた―
「きゅいきゅいきゅい〜♪」
グリフォンの飛ぶよりもはるか上空、
青い龍が一行の出発を見送った。
「ふぅ、やっとご出発のようね。全く、何をチンタラしてるのかとイライラしちゃったわよ」
「手際が悪い」
青い龍だけではない。背中にいるのはいつもの2人。
「さーてと、やっぱりあの方向だとアルビオンのようね!こんな面白そうなこと、ルイズに独り占めさせてなるものですかっ!」
「きゅいきゅい〜♪」
こちらはもう既に準備万端。
旅慣れた様子のタバサと、最低限の装備で自らを魅せる方法を知るキュルケだ。
シルフィードの調子も上々、
この調子なら、1足も2足も先にアルビオンへ到達できそうだが。
「グリフォンと馬1頭ずつ。食べちゃだめ」
「きゅい〜♪」
あくまでも今回はついていくだけ。
何もそんなに慌ててアルビオンに行く用事は2人には無い。
しかも、2人はトリステインにとって外国人。
昨夜、隣室から盗聴した内容を考えれば、ついていくだけでも国際問題になりかねない。
しかし、それでもなおついていくのは、友が心配だから。そして何より、
「おもしろい旅のはじまりね!」
好奇心は何にも勝るのだ。
「きゅいっ♪」
ふいに、シルフィードが空を首で指し示す。
「虹?」
それは龍の航行高度をはるかに超える高さに広がる帯状の虹。
「あら、いい兆候じゃない!『帯虹を見るとき幸せあり』よ!ますますいい旅になりそうね!」
天候は晴れやか、行く手にやや雲あり。はるか真上には虹が広がる。
絶好の旅日和になりそうだった。
――
投下完了です。アルビオン編、どうケリつけさせようかなぁ…
つかギーシュのセリフ長すぎて1回弾かれたんだぜ。
お目汚し失礼いたしました。
cyan
モートソグニルはショーテルだろうしな。
アレの変身って幻覚みたいな感じじゃなかったっけ?
デモゼロの人乙です。
いよいよ「ヴィシャス」登場ですが、結構な数が現れるという事は、ひょっとしてどこかに「エキドナ」がいるんでしょうか? もしかしてテファがそうだったりしたら……。
それにこうなると、他の三人も感染するのだろうか? とすると、キュルケは「クレイモア」しかないし、タバサは「ファランクス」かな? マチルダは、テファの状態からすると、とっくに感染していておかしくないし……。
>>687 >>720 >>722 デモンパラサイトの設定によると、身体は本当に変化しますが服は幻覚ですよ。
724 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/17(水) 21:29:29 ID:hG0okK/W
ビビの人乙! そして誕生日乙!
おじさん呼ばわりされるワルドに地味に吹きました
こいつは自演くせぇwww
>>723 エキドナと言うとぺらぺらな人達と戦った絶対死なない魔物…
…って、TRPG違いか
>>723 エキドナが蔓延し雨で沈没する魔法学院からの脱出ですね
わかります
蛇をパンツがわりに腰に巻いた変態ダークエルフ女だろ
エキドナ
東京ディスティニーランドだろ>エキドナ
>728
召喚されたのはエマットの研究をしていた変質者ですね、わかります
フリーの記者(足に障害)もどっかにいるのですね、わかります
732 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:18:05 ID:FSfRnBhS
ストックが切れちゃってペースダウン甚だしい虚無の闇ですこんばんは
前方進路OKなら23:30ぷんより投下したいと思います
しえーん
734 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:29:43 ID:FSfRnBhS
「助けてー!」
夕暮れの村に響いたのは甲高いエルザの悲鳴だった。牙をむき出しにしたアレクサンドルが森から飛び出し、村を歩いていたエルザをさらったのだ。
それにやや遅れて桃色髪の少女が猛追をかける。杖を振りながら地上ギリギリをフライで駆け、隙を見ては氷の矢を飛ばした。だが地面に無数の穴が開くばかりだ。
エルザを盾にするグールに積極的な攻撃は仕掛けられず、逃げ回る彼を追いかける事しかできない。何人もの村人が悲鳴をあげ、慌てて彼らの進路上から逃げ出した。
「見つけた!」
そこに颯爽と現れたのは、村で待機していた雪風のタバサ。先回りしてグールの行く手を遮り、逃げ回る足元へ掃射する。一発が右足を抉り、逃げ場を失った大男はついに足を止めた。
この連携によって必然的に挟み打ちの形となり、アレクサンドルはエルザを突き付けながらも必死に周囲を見回す。二人はジリジリと歩み寄っていく。
「グオオォォォ!!! オ前ラゴトキニイイ! 撤退ダ!」
アレクサンドルは空へ向って大きくエルザを投げ、ルイズたちは慌てて受け止めに走った。気を失ったのか、ぐったりしている体を優しく地面へと横たえる。
その隙にグールはマゼンタ婆さんの家へと逃げ込んでいた。メイジ両名は矢のようなフライで空を駆け、入口から出ようとした彼の胸へと無数の矢を突き立てる。
獣の咆哮をあげながらアレクサンドルはよろけ、逃げ場は無いと見て篭城しようと決めたのか、扉を破壊しかねない勢いで閉ざした。しかし魔法によって扉は一瞬で破壊され、ルイズたちも部屋の中へと入り込む。
「や、やっぱり! あいつがグールだったんだ!」
村人の一人が恐怖に駆られて悲鳴を上げた。小さな家の中からは物凄い破壊音が幾度となく響き、薄い壁を突き破って巨大な氷塊が飛び出しさえした。
狭い家の中で繰り広げられているだろう死闘を想像するも、メイジではない彼らは固唾を飲んで成り行きを見守る事しかできず、ただ少女たちの無事と吸血鬼の討滅を祈る。
胸の前で腕を組んで祈っていた人々は、響き渡る野獣の咆哮に身を竦ませた。果たしてあれは勝鬨であったのか、それとも断末魔だったのか。
「で、出てくるぞ!」
やがて二人の人影が飛び出すと、吸血鬼の根城はメラメラと炎上を開始した。熱で窓が砕け、穴の開いた壁からは炎が噴出す。大量の煤と煙が高々と立ち昇った。
ごくりと生きを飲んだ村人の顔が、次々に笑顔に染まっていく。天から始祖ブリミルが光臨なさったように、人々は尊敬の眼差しを持って出迎えた。
壊れた扉から出てきたのはグールと吸血鬼ではなく、あの騎士たちだ。所々汚れてはいるが、膨らんでいく希望に答えるように笑顔を浮かべている。
蒼い髪の方、つまりタバサは不安そうに居並ぶ村人たちを見回し、杖を掲げながら宣言した。
「吸血鬼とグールは、討伐された」
ハッキリと響く声に、村人たちは大歓声をもって答えた。
その後は村を挙げてのお祭り騒ぎとなった。今まで眠気を誘わないようにと、飲みたくとも飲めなかった酒を浴びるほど飲みまくる乱痴気騒ぎ。
打ち付けていた窓をこれでもかというほど開け、長らく篭っていた淀んだ空気を換気する光景が村のあちこちで見られた。薪の節約のために最低限にされていた火焚きも、明日からは制限される事は無い。
長老も村が救われたと大喜びし、任務は終わったと出発しようとする一行に縋りつかんばかりの勢いで引きとめた。そこまでされては悪いと、一晩だけ止めてもらう事になる。
735 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:31:16 ID:FSfRnBhS
「いやあ、助かりましたぞ! 騎士様! まさかあれが演技だったとは知らず、とんだご無礼を……!」
「気にする事は無いわよ。敵を騙すにはまず味方から、ってね」
豪華な食事を振舞われながら、ルイズは得意げに言った。タバサは黙々とニガヨモギのサラダを食べているし、シルフィードは苦い物以外を片っ端から口に詰め込んでいるため、必然的にルイズが話役になっている。
タバサは相変わらず無表情だが、キュルケが見れば悩み事があると看破しただろう。事実タバサは、マゼンタ婆さんを吸血鬼として生贄に捧げたことを後悔していた。
しかし彼女を救う方法などなかったのだ。もとより吸血鬼だと疑われていたし、息子のアレクサンドルは本当にグールだった。一人で生活する事が出来ないのだから、もう彼女の未来など決まっている。
息子の死を嘆きながら不便な生活を送り、その中で孤独な死を迎えるよりはいいとルイズは言った。タバサはそれを覆すだけの考えが浮かばなかった。
ルイズのベホマによって一時的には動けるほどに回復したグールだが、擬似的な生命活動しかしていないのが仇になり、完璧に治癒させる事は出来なかった。エルザを襲わせた時はかなり無理していたから、いつただの死体に戻ってもおかしくなかったのだ。
恐慌状態の村人ではなく、最愛の息子の手で逝けたのだから、感謝されても良い位だと笑う。本人はもうこの世に居ないのだから、どちらが幸せなのかは永遠に謎のままだ。
「それで、エルザなのですが……。引き取り手に、心当たりがあります。任せてもらえないでしょうか?」
「おお、それは素晴らしい! こちらからお願いしたいほどです! ……エルザを、よろしくお願いします」
グールに誘拐されたのがショック療法になったという事で、エルザはルイズたちに懐いていた。30年以上も生きている彼女の演技だけあって、付き合いのある長老もころっと騙されている。
ダメだといわれれば勝手に連れ帰る予定だっただけに、堂々と村を出れるのは後腐れがなくてよかった。いつの間にか椅子の隣に立っていたエルザの頭をルイズは優しく撫でる。
事情を知る者にとっては後味の悪い、知らない者にとってはせめてもの歓迎だった夕餉。上っ面だけは砂糖とクリームでデコレーションされた場だった。どす黒い内側を知っているタバサの表情は硬い。
頃合を見て切り上げ、食べすぎでダウンしてしまったシルフィードを運びながら部屋に戻る。
「任務は成功、それでいいじゃない」
ベッドの上で変な唸り声を上げるシルフィードに回復呪文をかけながら、ルイズは大げさに肩を竦めた。どうやら食べ過ぎまで治せるほど便利ではないようだ。
シルフィードの自棄食いはルイズが原因だった。吸血鬼を連れ帰るのはまだしも、マゼンタ婆さんを犠牲にしたのが許せなかった。タバサの説得によってどうにか理解はしたものの、納得はしていなかった。
それでもきゅいきゅいと騒ぎ立てないのは、タバサが珍しく感情を出してお願いしたのと、約束どおりお腹一杯食べれた事、そして普段のルイズにはなんとなく逆らえないから、らしい。
やがてドアがノックされ、エルザがしきりに周囲を見ながら入ってきたときには、シルフィードは鼻提灯をつくっていびきをかいていた。
「さっきは偉かったわよ、エルザ……」
「はっ! は、はい、ルイズ様っ!」
扉を閉めるなり、エルザはガタガタと震えださんばかりだった。人を騙し命を奪う吸血鬼からは考えられないほどの弱気だ。
完膚なきまでに心を砕かれ、魂にまで楔が打ち込まれている。もはやエルザは、眠っているルイズを前にしても毛筋ほどの反抗を見出せないだろう。
万が一にも起きて来ないようにシルフィードへ眠りの呪文をかけさせ、タバサがサイレントによって音を遮断した。これでルイズたちの会話を聞くものは居ない。
「さて……、エルザ。貴方の役目は、うちの学院長をグールに変える事よ」
ルイズの口から紡がれるのは恐ろしい計画だった。優秀なメイジとしても名を馳せたオールド・オスマンを操ろうというのだ。
最高責任者である彼を傀儡と化せば、学院では限りなく自由に動けるだろう。一生徒では知りえない情報も無数に得られるし、300年の時を生きたとも言われているオスマンの知識だけでも、両手に余るほどの黄金と同じ価値を持っている。
「それは……」
「あら? どうしたの、タバサ」
自分の複雑な事情を知ってもなお自分を生徒として受け入れてくれた恩人を、グールにするという最悪の形で裏切る事は良心の呵責を感じるようだ。無駄とは思いながらも説得するタバサの口調は重い。
支援
737 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:32:58 ID:FSfRnBhS
「絶対に彼である必要は無いけれど……。タバサ、本当にいいの?
フェニアのライブラリーには、貴重な書物も数多くあるというわ……。貴方のお母様を治す薬の情報だって、見つかるかもしれない。
それどころか、彼なら解毒剤そのものを持っている可能性だって有るわ。そうではなくても、手に入れるコネがあるかも。
私の魔法だって万能では無いから、解毒できない毒という物も存在している……。貴方の目的を達成できる手段は、一つだって多いほうがいいんじゃない?」
タバサの心は激しく揺れ動き、深く俯きながら杖を硬く握り締めている。タバサの持っている優しさと、目的を達成したいという欲望が戦っているのだ。
ルイズとて心を完全に操る事などできはしない。ただ甘い甘い毒を注ぎ続け、心のありようを少しずつ変えて行く事なら可能だった。
「タバサ、よく考えてみて……。オールド・オスマンは名前の通り老人よ? 明日にでも老衰してしまってもおかしくないわ。
あなたのお母様は、少なくとも彼よりは長く生きるのは間違いないでしょう? 必要な犠牲なのよ。
それどころかグールになれば、吸血鬼が生き続ける限り死ぬ事は無いわ。人助けといっても過言じゃないぐらいよ」
「……でも」
ようやく顔を上げたタバサだったが、その瞳には深い迷いが刻まれている。心中の童謡はよほど激しいのだろう。
人形であるという封印、そして作り上げた鎧にヒビが入っていた。その隙間から更なる魔が入り込む。
「それに、新たに摂取しないでも何年も効き続ける毒だなんて、よほど強力な物に違いない。
アルコールを飲み続けた人がどうなるか、タバサだって知っているでしょう? その先にあるのは死か、それに近いものだわ。
今ならまだきっと治せる。そう、今なら間に合う。まだあなたのお母様は手の届く所に居るのよ。間違いないわ。
でも、1週間、1ヶ月、1年。未来は誰にもわからない。永遠に手が届かない場所まで、毒に侵されてしまうかもしれない……」
人は誰しも悪魔になりたい訳ではない。ただ欲望と倫理観の秤が一方に傾いた時、そこに悪人と善人が生まれるだけだ。
タバサに染み込んで行く毒は少しだけ、そう、ほんの少しだけ、そのバランスを崩す役割をする。
「それに……」
「やって」
言葉を止めたルイズが再びタバサの瞳を見つめる。あの澄み切っていた瞳は間違いなく、ほの暗い濁りを持ち始めていた。
「オールド・オスマンをグールにして欲しい」
その声は吹雪のように響き、雪風の名に相応しい冷気を纏っていた。
イザベラ・ド・ガリアは恐怖を感じていた。今度こそ間違いなく死ぬだろうと思っていた人形娘が、衣服の乱れさえ無く帰ってきたからだ。
その報告を聞いた時、彼女はあまりに驚いたので嫌がらせを思い浮かべる暇さえなかった。侍女たちがシャルロットと呼んでいる事を咎めるのも忘れたほどだ。
淡々と報告をするシャルロットの目に感情の二文字は無く、布の塊であるヌイグルミのほうがよほど暖かいと断言できるほどの、冷たくて無機質な眼でイザベラを睨んでいる。
その瞳はこれまでになかった何かを孕んでいるようで、目を合わせてしまったイザベラは恐怖で叫びだしたくなった。必死のプライドで悲鳴を押しとどめ、精一杯の虚勢を張った。
738 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:34:34 ID:FSfRnBhS
「も、もう、用はないよ! 下がってな! ガーゴイル!」
去り際のタバサの顔は底知れないものを感じさせ、イザベラは全身を冷や汗で濡らした事を否定できず、もはや任務を言い渡すことさえ恐ろしいと思った。
怒った顔を見ればあいつだって人間だと安心できるはずだったのに、あんな顔をされたら、とても人間だとは思えないではないか。
侍女たちへ部屋で休むと怒鳴りつけながら、イザベラはただ背筋を襲う寒気に身を震わせた。
何も言われなかったことに少々の困惑を覚えつつも、プチ・トロワを後にしたタバサは、適当に書店を回った後で待ち合わせの場所へと向かった。
ルイズに言われたような珍しい本は無く、タバサが欲しい本も無かった。少なからず落胆したが、これから食事だとおもって気を取り直す。
タバサが数ある店の中から選んだだけあって、かなりレベルの高い店だった。大通りから一本内側へと入った所にあるお陰で落ち着いて食事ができるし、舌の肥えた貴族をして味も良いと評判のお店である。店主がハシバミ草の愛好家だというのもタバサの琴線に触れた。
苦味を抑えつつも独特の風味を生かしたハシバミ草のパイから、店主お勧めだが常人では苦すぎるニガヨモギとハシバミ草のサラダなど。オープンして間もないが、すっかり常連となっている。
「エルザ、パイを切るときは、こう、横にして……。あ、おかえり」
店に入るなりルイズがエルザの分のパイを切り分けているのを見てしまい、タバサは思わず硬直してしまった。生地の上に載せればミートパイだと言い張れるほど酷い事をやった割には、妹にやるような対応の仕方だ。
エルザの方はまだ思いきり腰が引けているが、日差しの降り注ぐ真昼間から貴族用の店でパイを食べた経験など吸血鬼には無いようで、慣れない手つきでパイをつついては美味しいと目を見開いている。
普通にみれば和む風景だけれども、あれを見てしまったタバサからすれば違和感があった。ここで目を覆うような事をやられても困るのは事実だけれども、オーク鬼がドレスを着てダンスを踊っているのを見たような気分になる。
「あら、私はとっても優しいわよ?」
タバサの顔をみて何を考えているのを察したようで、ルイズは自分のクックベリーパイにナイフを入れながらのたまった。
そのナイフをいつエルザに突き立てるのではないかと不安に思うタバサだったが、自分のお腹が小さく音を立てたのを聞いて、頬を赤らめながら席に座る。シルフィードも今頃は王宮で食事を貰っているはずだった。
メニューを真剣な眼差しで眺め、ハンターが獲物をねらうように品定めする。やってきたウェイターが常連客であるタバサに気づいたのか、よければ開発中の新商品の味見をすればいいと言い出し、タバサは当然のようにそれを加えたハシバミ草のフルコースを頼んだ。
他に客の少ないお陰か料理がやってくるスピードはかなり速く、あっという間にテーブルの上には所狭しと皿が並べられる。3人分と言われても頷ける量だったが、タバサは料理を取ってはひたすらに口に運ぶという作業を続け、見事に完食して見せた。
「相変わらず凄い食欲ね……」
「普通」
至極当然と言い切るタバサだったが、先ほどのウェイターがやってきて「流石はハシバミ草大食い大会の優勝者だ!」と褒め称えると頬を赤くする。
対照的にエルザは、ルイズが頼んだクックベリーパイを1切れ食べただけだった。人間用の食事は喉を通らない訳ではないが、ほとんど栄養には出来ならしい。長年に渡って人間の演技をしてきたから、味覚は似ているようだが。
幸いにも店を出て書店を巡っている途中、人気の無い裏道でいかにもチンピラといった男が居たため、それがエルザの昼食となった。
男の首がへし折られ、物陰へ引きずり込まれるのを見ていたが、タバサは何も言わなかった。
太陽が赤銅色の光を放つ頃、一行はラグドリアン湖のほとりにあるオルレアン公の屋敷へと降り立った。
歴史を感じさせる立派な門にはガリア王家の家紋が刻まれていたが、それは斜めに大きく切り裂かれ、王家でありながらその権利を剥奪された事を示している。
シルフィードの背中に乗って上空から見た限り、屋敷の周辺だけは庭の手入れもされていたが、それ以外の部分は雑草が伸び放題になっている場所も多々あった。
739 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:37:01 ID:FSfRnBhS
ほぼ完全に手入れが行き届き、美しい庭園をいくつも抱えているヴァリエール領からすれば、あまりに無残だ。それでも客人が通るような道だけは、失礼にあたらないように手入れがなされている。
玄関前の馬周りまでタバサたちが歩いて行くと、屋敷の中から一人の老僕が息を切らせて飛び出してきた。
「おお! お嬢様……! よくぞ、よくぞご無事で……!」
興奮で顔を赤くした彼の目じりには涙が浮かんでいる。吸血鬼を一人で討伐して来いと命じられたのだから、もうタバサは帰らないものと思っていたのだろう。
それでも良くできた執事の本能で、主人たるタバサに抱きつくようなまねはしなかった。ただ深々と腰を折り、3人を恭しく屋敷へと招き入れる。
豪華な外見に負けないほど内装はどれも美しく、掃除も完璧に行き届いていたが、邸内を居間まで歩いても誰ともすれ違わない。葬式でもやっているような静けさだった。
「このぐらいの人数なら、どこかに隠れるというのも容易そうね」
いずれここを逃げ出す事を考えれば、使用人が少ないのは好都合だ。このサイズの屋敷を管理できるほどの少数精鋭ならば、有能であることは疑いようもない。
ルイズは柔らかいエルザの体を膝に乗せる形で抱き抱え、無意識的に肌を撫でている。抱かれているエルザの表情は場違いなほど歪んでいるが、抱き心地が悪いと耳元でささやかれて以来、命令に反して体を硬直させるという自殺行為はしていない。
タバサはこの吸血鬼の少女に少しだけ同情した。あれがよほどのトラウマになったのか、ルイズが命じれば例え火の中だろうが刃の中だろうが構わず突撃していきそうだ。
だが完全に地獄というわけでもなく、ルイズは基本的にはエルザに優しい。二人ともリュティスで購入した貴族用の服を着ているから、見ようによっては姉妹のように見える。購入費用はルイズのポケットマネーだった。
ルイズが自分の血を飲ませているのを見た事があったし、彼女にとって今の生活とメイジに追われる生活のどちらが幸せなのか、タバサには判断できなかった。
「お母様を見てほしい」
先に連絡用のガーゴイルを使って手紙を送ったものの、基本的には使用されない浴槽を稼働させるにはかなりの時間が必要だった。ただでさえ人手不足であるから、尚更だ。
お風呂の用意が出来るまでの時間を使って、タバサは母の治療を頼むことにした。先住魔法を使えるエルザとルイズのコンビは、そこらの水メイジを十人単位で掻き集めるより有能だろう。
それでもつらい現実を突きつけられるのが怖いのか、タバサの表情は普段よりも輪をかけて無表情に見えた。杖を握る腕にも力がこもっている。
「タバサ、安心して。あなたのお母様は、絶対に取り戻すわ」
その胸のしこりを解きほぐすように、絶妙のタイミングでルイズが優しい言葉をかけた。愛を失って砂漠のように乾いていた心に、麻薬の溶けた水が染み込む。
タバサは溺れてはいけないと思いながらも抵抗できず、エルザにやるように頭をなでるルイズの腕を振り払えなかった。慈愛と優しさが手の平から流れ込んでくるように感じ、顔が少し赤くなる。
「……こっち」
やがて頬の熱を自覚したのか、気恥ずかしいとばかりに振り返ったタバサの後に一行は続く。ニヤニヤと生暖かい眼差しを送るルイズを直視しかねたのか、タバサはたまに視線を送ってはすぐに逸らした。
相変わらず人気のない屋敷の中を歩き、母が捉えられているという部屋の前まで来た。何度かノックしたタバサがドアを開くと、中から響いてきたのはヒステリックな女性の声だ。それを聞いたタバサは苦虫を噛み潰したような表情になる。
部屋はどんよりと薄暗く、この屋敷では考えられないほど物が散乱している。まともに掃除もできないのか、部屋の隅には蜘蛛が巣を作っていた。
「王家の回し者め! シャルロットを亡き者にする気ですか!」
投げつけられた香水の瓶を、タバサは避けもせず額で受けた。避けた皮膚から一筋の赤い川が流れ、それを見たルイズが顔をしかめる。
手元にある小さな人形をシャルロットだと思い込んでいるようで、タバサの母は人形をわが子のように抱きしめていた。彼女にとってはあれこそがシャルロットなのだろう。
伸び放題の髪とやせ細ったその姿が合わさって、横にいるエルザなどよりもよほど吸血鬼じみて見える。人間をこうも狂わせる毒となれば、かなり恐ろしい物だといえた。
最愛の娘を前にして人形を抱き続け、娘を守るための言葉が刃となってタバサを切り裂く。彼女はエルザの先住魔法によって深い眠りに落ち、部屋にはようやく沈黙が戻った。
無害とはいえ魔法を使うのは心が痛むのか、タバサは涙を隠すように俯いて押し黙った。
740 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:38:43 ID:FSfRnBhS
「これほどまでとはね……。エルザ、どう思う?」
右手に霧を集めながら弛緩した肉体の上で手を滑らせていたルイズは、大きく溜息を吐いてエルザへと向き直る。
あわよくば霧に吸収させる事も出来るのではないかと踏んだのだが、そこまで軟な毒ではなかったようだ。下手に刺激しては人格が壊れる可能性がある。
不機嫌な主に指名されたことで体を震わせた少女は、殆ど何も分からなかった事におびえながら、それでも必死に思いついた事を並べた。
「は、はい……。その、水の先住魔法みたいな、感じが、しました……。グールとは、またちょっと、違くて……」
「やっぱり、毒というよりは呪いって感じね……。キアリーではなく、シャナク、か……。ありがと、エルザ」
タバサの額の傷をホイミで癒しながら、ルイズはよほど強力なものでない限り毒は消せるだろうとタバサの耳元で囁いた。少なくともエルフが作れる薬程度のものなら、まず間違いないと。
そしてそのためには、ルイズだけが使える魔法の情報を集めなければならないと言った。オスマンをグールにすれば、その情報も見つかるかもしれない。
すでにタバサの中でオスマンをグールにする事は決定事項であり、母が取り戻せる可能性が大きいと聞いて、抑えがたい期待に胸を膨らませた。
「今はまだ、これぐらいしか……。できないけれど」
憑き物が落ちたように眠り続けるタバサの母をベッドに運び、ルイズはできる限りのベホマを唱える。温かな光が全身を包み、ほんの気休めだが、それでも少しは血色がよくなった。
これ以上ここに居ても出来る事は無いと、ルイズとエルザは一足先に浴場へと向かった。扉が金属音を立てて閉まると、薄暗い部屋には微かな寝息だけが響いている。
独り残ったタバサは、安らかに眠る母の胸に縋りついた。暖かい体温を貪るように顔をうずめ、涙を零しながら宣言する。
その顔は幼子のように脆く、老人のように硬く、少女のように純粋で、暗殺者のように淀んでいた。噛み切られた唇からは一筋の血が流れ落ち、純白のシーツに無数の花を咲かせた。
「貴方の夫を殺し、貴方をこのようにした者どもの首を、いずれ必ず、ここに並べに戻って参ります。
かの簒奪者を骸を引き裂き、オーク鬼に食わせ、魂を永遠の煉獄へと送りこんで見せます。尽きることのない地獄を見せてやります。
その日まで、貴方が娘に与えた人形が仇どもを欺けるようお祈りください」
心を満たし、ついには溢れ出た憎悪は、人形の顔を恐ろしい悪鬼へと変貌させていた。
支援
742 :
虚無の闇:2008/12/17(水) 23:42:26 ID:FSfRnBhS
以上で投下終了になります。病んでるタバサも可愛いよタバサ
何度も見直したのに投下中に誤字が結構見つかって悲しいです……
虚無の闇の人乙
タバサも黒くなるのね。
キュルケとの関係は、この先どうなるんだろう。竜王みたく敵だろうか。
予約などなければ、投下させていただきます
「リュティスを離れたい、と?」
「はい、違う土地へいって、見聞を広めようかと思います」
「そうか……」
ジョゼフの言葉に、王は否ともよしとも答えなかった。
「知識を深めるだけながら、城の書物だけも十分すぎるほどではないのか?」
長い歴史を誇るガリア。
その王宮に保管されている書物の量は尋常のものではない。
「いえ、確かにそれも修養にはなりますが、実際に見聞きするのとは違いましょう」
「一理あるのう」
王はそう言って、顎を軽く撫でた。
「じゃが、本当のところは、どうなのだ?」
王はジョゼフの目を見ながら、そうたずねた。
ぴしりと、のんびりとしているけれど、強い圧力のある声であった。
「かないませんね」
ジョゼフはきまりが悪いと風に、笑ってみせた。
その笑みを見て、王の眼が微かに細められる。
「正直なところ申し上げますと、隠居したいのです」
「ほ、そりゃまた……」
王は肩をすくめるようにして、驚きの声をあげた。
「城の生活には、飽きたということですか?」
王の横に陣取る王妃は、どこか棘のある口調でそう言った。
口調のみならず、その視線も刺々しかった。
「そんなわけではありませんが」
攻撃的な母親に対して、ジョゼフは笑うよりない。
事実、別に飽きたわけではないのだ。
そのほうが、良いように思えるから、そうしようというだけである。
単純な話であった。
「私は、別に止めませんが」
王妃は何か釘でもさすように、王を見ながら扇で口元を覆った。
「まあ、あなたがいても、王家の恥になりこそすれ、不足になることはありませんからね」
「母上もお口が悪い……」
「事実でしょう」
王妃は切りつけるように言って、視線をそらした。
「ただでさえ出来の悪いお前が、その上素行まで悪くすれば、まったく救いようがありません」
「私は、真面目にやっておるつもりですが」
はて、とジョゼフはとぼけた顔をして見せた。
「おだまりなさい。私がただの案山子と思っているのですか」
王妃はぱちんと扇を閉じて、ジョゼフに向かって突きつけた。
「聞いていますよ。最近、どこぞの平民の娘を拾ってきて、囲い者にしているそうですね」
「囲い者とは……」
やはり他人からみれば、そのように見えるらしい。
「参りましたな」
ジョゼフは困った顔で、頭を掻く。
「田舎貴族ならばいざ知らず、それが仮にもガリアの王子のすることですか!」
「いささか、誤解があるようですが」
ジョゼフは内心で怒りを覚えはしたが、ここで怒っても仕方ないと、口調も柔らかに弁明する。
「確かにメイドを一人雇っているのは確かですが、別にやましいところはありません」
「よくもまあ、ぬけぬけと……」
王妃は憎々しげにジョゼフを睨みつける。
それにしても、この母は何故ここまで怒っているのか。
ジョゼフが立腹するよりも困惑するよりなかった。
まさか、息子におかしな虫がついたので、怒ったり、妬いたりしているわけでもあるまい。
お気に入りのシャルルならばまだわかるが。
あるいは言葉通り、王族としての体面というものを気にしているのかもしれぬが。
のらりくらりとしたジョゼフの態度に、次第に王妃は興奮を強めてきているようだった。
ヒステリーを起こした女性、ことに権力を持った女性がそうなると始末が悪い。
(面倒なことになりそうな……)
ジョゼフが適当な言葉を考えると、
「ま、良い。好きにせい」
間
王妃を無視するように、王は言った。
「お前がそうと決めたのなら、それも良かろう」
「ありがとうございます」
父王の助け舟を、ジョゼフはありがたく受け取ることにした。
どっちにしろ、このまま母と話していても建設的な会話にはなるまい。
「あなた……」
王妃が抗議しようとすると、じろりと王の視線がそれを遮った。
「ただしな、ジョゼフよ? いったん隠居してしまった以上、次の王になる資格は失うぞ?」
「次の王は、シャルルでは?」
別に今さらあれこれ審議する必要性など感じられぬ。
(何を今さら……)
ジョゼフは苦笑するだけだった。
「それは、わしの決めることだ」
「そうですか。出すぎたことでした。申し訳ありません」
確かに、その通りではある。
ジョゼフは父王に頭を下げる。
「うむ……」
それから、隠居の許可をもらったジョゼフは足取りも軽く退室していった。
「あなた、どういうおつもりです、あんなことを……」
ジョゼフが出て行った後、王妃は咳きこむように呼吸をしながら、王に食ってかかった。
わずかだが、眼が血走っていた。
「どうもこうも、出て行くというのだから仕方あるまい。まさか、軟禁でもせよというのか?」
「そうではなくって……。あんな許可を出せば、どうせ田舎で羽目をはずして、ろくでもないことになるに決まっています!」
王妃は叫び散らした。
「ははは。女遊びに夢中になると心配か? ま、母親としては複雑だろうが、若いうちは女に精気をしぼられるのも勉強だ。ほっておけ」
王は呵呵大笑するばかりであった。
「……そのせいで、ガリアの家紋に傷がつくとは思いませんの!?」
「傷か。魔法が使えん無能王子だ、これ以上の傷など今さらどうということはないわ。お前もさんざん言っとるだろう」
王の言う通り、王妃は今まで、魔法の使えぬジョゼフに冷たく当たってきた。
「お前など、生まれてこなければ良かった!」
と、憎々しげに言い放ったことは一度や二度ではない。
「……ですが、ですか」
「かまわんさ。ほっとけ」
さすがに王妃はそれ以上何も言わなかったが、その顔は明らかに不服そうだった。
(隠居か。まさか、あのジョゼフがなあ……)
王はジョゼフの出て行った扉を見つめながら、ため息をつく。
(急に<良い顔つき>になったと思ったら、その矢先に自分から王位を投げ捨ておった。ま、これも運命というやつだ……)
横では、王妃はまだ何やらぶつくさと言っている。
(やれやれ、法界悋気というやつか。まったくもって、女というやつは……)
不出来な息子の行動が気に入らぬ、というわけであろうか。
王の口から漏れるため息は、いつしか苦笑へと変わっていった。
「シェフィ、いるか?」
ジョゼフは何度かドアをノックしてみたが、返事は返ってこなかった。
生活パターンとして、今の時間は大体部屋にいるはずだから、どこかへ出かけているということはないだろう。
「……留守か?」
ジョゼフは、ノックする手を止めて、しばらくじっとしていたが、やがてハッとしてドアノブをつかんだ。
鍵はかかっておらず、あっさりとドアは開く。
シェフィールドは、机に頭を乗せて寝息を立てていた。
机の上には、児童向けの絵本が開かれたままになっている。
文字を読む勉強をしていて、つい眠りこんでしまったらしい。
ジョゼフは起こさぬよう、そっと少女を抱き上げ、ベッドに運んでやった。
(眠っていても、人の姿のままか……)
最初の頃は、彼女は眠る時には人形に戻っていた。
あるいは、ひどい失敗などをして落ちこんだ時も、人形に戻ってしまうことがあった。
けれども、そういったことは、もうほとんどなくなっていた。
彼女が最後に人形に戻ったのは、一体いつだったろうか?
「私がこの姿でいられるのは、ご主人様が気にかけてくださっている証」
いつか、シェフィールドはそう言った。
支援
それがどういうことなのか、未だにわかるようなわからぬような、なのだが。
(もう、人形じゃないのかもしれんな……)
そっと毛布をかけてやりながら、ジョゼフは愛しい少女の寝顔を見る。
(もう、ではないか)
寝息をたてるシェフィールドの唇を見ながら、ジョゼフが足音をたてないようベッドから離れる。
人の魂を、心を宿して。
同じ土に還る命を持って。
きっと、彼女は最初から生きていて、
(人と、俺と同じ……なのだろうなあ)
ジョゼフはぎゅっと拳を握り締めた。
部屋を出ようとした時、部屋の隅っこに置かれた、古ぼけたチェストが目に入った。
シェフィールドの個室となる以前、この部屋は物置代わりに使われていた場所だった。
この古いチェストは、その名残のようなものだ。
一見ただのチェストに見えるけれど、魔法で中が三倍ほどの広さになっている特殊なマジックアイテムである。
幼い頃、ジョゼフはかくれんぼの時にここへ隠れたことがあった。
(ここなら見つからんと思っていたが、シャルルのやつはディテクト・マジックで簡単に見つけてしまったな……)
今からすれば、懐かしい思い出だった。
弟はとっくに忘れてしまったかもしれないが。
そんな時だった。
ジョゼフの耳に、誰かの泣き声が聞こえたような気がした。
(シェフィ?)
しかし、シェフィールドはすやすやと寝息をたてているだけだ。
(気のせいだったか?)
疲れているのかもしれぬと思いながら、ジョゼフは今度こそ部屋を出ようとして、愕然とした。
部屋の隅に何か小さなものがいる。
(賊か!?)
反射的に杖を手にしたが、それが存外に小さいものだと気づいて、やや心を落ち着けられた。
そもそも、賊がしくしく泣いているというのも、おかしな話である。
(何者だ?)
声をかけようと、静かに近づいてみた。
それは小さな子供だった。
壁に拳を叩きつけるようにして、声を殺して泣いている。
身なりからして、使用人の子供ということはない。
明らかに貴族階級の子供である。
(まさか、迷子か? しかし、こんなところに……)
どうにも、その泣き方が尋常とは思えない。
その青い髪から察するに、どうやら王家の血筋、少なくとも流れをくむ者であることは確からしい。
「おい……」
どうしたのだ? そう話しかけようと思った矢先、ジョゼフは声を失った。
泣いている子供はジョゼフとそっくりだったからである。
(なに……?!)
まさか、父の隠し子であろうか。
少なくとも、自分に身に覚えはない。
仮にあったとしても、この子供は見たところ七つか八つだ。
仮にジョゼフの子供だとすれば、ジョゼフが十歳の頃の子ということなる。
そんなことは、まずありえない。
「おい、お前……」
触れようと手を伸ばした矢先、子供はふっと消えてしまった。
まるで、幻か何かのように。
ジョゼフは唖然として、しばらくそこを動けなかった。
(なんだ、俺は、一体何を見たんだ?)
幽霊か、それとも妖精の悪戯だろうか。
怖いとか、不気味というのではなく、何か不思議な気分だった。
この世の秘密の一端を、図らずも覗いてしまったのではないか。
しばらく呆けたままでいたところ、
「んん……」
シェフィールドの声に、我にジョゼフは返った。
「ジョゼフ様……?」
シェフィールドはまだ寝ぼけ眼なのか、とろんとした表情でジョゼフを見ている。
「ああ、すまないな。起こしてしまったか?」
ジョゼフは何だか気恥ずかしくなり、わざとおどけるように言ってみせた。
「いいえ……」
シェフィールドはベッドから降りて、すたすたとジョゼフに寄ってくる。
「――どうした?」
「あの……」
シェフィールドはちょっと困ったような、そしてどうしたわけか気遣うような優しさの宿る目で、ジョゼフを見上げた。
「うん、どうかしたのか?」
ジョゼフはドギマギとして、少しだけ顔をそらす。
「夢の中で、小さなジョゼフ様が泣いていらっしゃいました」
シェフィールドは、妙なことを言う。
「俺が……?」
ジョゼフはさっきの幻を思い浮かべた。
(あれは、やっぱり俺自身だったのか。しかし、なぜあんなものを見たのだ?)
シェフィールドの夢にも出てきたということは、この部屋に何かあるのか。
部屋の中を注意深く見ながら、ジョゼフは色々と考えてみた。
まさか、幽霊というわけでもあるまい。
それから、先ほど幻を見たあたりへと近づき、壁などを調べてみる。
けれど、別に怪しいものはないようだった。
(ここに、何か?)
壁に手を触れながら、ジョゼフは顔をしかめた。
不機嫌になっているわけではなく、思考を深くしているためである。
(ふふ、こんなことをするのも、ずいぶんと久しぶりだな。子供の頃は時々こうして……)
この時、だった。
ジョゼフの心の中で、がちゃりと鍵がはずれる音がしたようだった。
(ああ、そうだったか)
ジョゼフは目を見開き、大きく息を吐いた。
「ジョゼフ様、どうされました?」
シェフィールドがあわててジョゼフのそばに走る。
「……なあ、シェフィ。お前の、その夢の中に出てきた、小さな俺は」
そこまで言って、ジョゼフはシェフィールドの顔を見る。
いつもの、邪気のない少女の顔がそこにあった。
「いや、何でもない。少し、子供の頃を思い出した」
笑って立ち上がり、シェフィールドの肩を抱いた。
「……♪」
シェフィールドはジョゼフの表情にほっとして、心地良さそうに、胸に頬をつけた。
(そうだった。子供の頃、よくここへ隠れては泣いていたものだ……)
魔法が使えぬことで、何度味わったかしれない悔しさや悲しさ。
誰とも会いたくなくなった時、ジョゼフは物置だったこの部屋で、涙を流していた。
一体何度そんなことを繰り返したのか、思い出したくもなかった。
このことは、誰も知らない。
弟のシャルルでさえもだ。
(すっかり忘れた……。いや、忘れたような気持ちになっていたが……)
ジョゼフはそっと壁を撫でてみた。
何もないようだが、ここにはジョゼフの暗い涙が染みついているのだろうか。
(そんな場所を、シェフィールドの部屋にするなんて、まったく俺という男は……)
つくづくと、自分で自分が情けなくなってくる。
思わず、苦笑が漏れた。
夢の中のことをたずねた時、シェフィールドが見せた表情。
それで、全てわかったような気がした。
この少女が、コンプレックスとか、絶望という暗い想念で潰れそうになっている幼い頃のジョゼフを、どうしてくれたのか。
そこから先は、口に出す必要はなかった。
出すのは野暮というものである。
誰もしてくれなかった、あるいはジョゼフ自身が、してやらねばならなかったことを、彼女はしてくれたのだ。
(もしも、もう一度<あいつ>と、いや<俺自身>と会うことがあったのなら……)
その時は、今度こそジョゼフ自身がやらねばならぬ。
できるかどうか、ではなく、やらなければならないのだ。
(いや、絶対にできるし、絶対にやる)
ジョゼフはそう決心して、シェフィールドの顔を見た。
彼女には、まったくどれだけ感謝していいのかわからない。
それなのに、また感謝せねばならぬことを増えてしまった。
嬉しい反面、ひどく情けなくもある。
「シェフィ……」
「はい」
「お前がいてくれて、良かった」
ジョゼフがそう言うと、シェフィールドは花のようにパアァ……と微笑んだ。
ガリアの第二王子、シャルルが兄であるジョゼフのもとを訪れたのは、その日の昼下がりのことだった。
シャルルは、普段あまり見せることのない険しい表情をしており、そんな王子を侍従たちは何事かという表情で見送る。
その時ばかりのことではない。
シャルルは、ここ最近あまり機嫌がよろしくなく、宮廷の人々は少々緊張気味であった。
一方で、ジョゼフのほうは、引越しの準備・下調べに忙しく、ドタバタと落ちついていなかった。
それは別にジョゼフばかりではなく、ヴェルサルテイル、特にその中心グラン・トロワは若干浮ついた空気が流れていた。
その空気は、城内ばかりか、リュティス全体に広がっていた。
理由は、ハッキリとしていた。
「次の王は、シャルルとする」
そう国王が正式に発表したためである。
確かに大ニュースではあるけれども、格別ショッキングという種のものではなかった。
むしろ、大方の予測通りであったことだからだ。
幼少時から、大天才だ、神童だと称えられてきたシャルルである。
誰しも、次の王はこの少年に間違いないと思っていた逸材なのだから、当然のことだった。
王はまだまだ健康・健在であるし、この発表は単純に<おめでたいこと>として、国民は受け取っていた。
「めでたい、めでたい」
「やっぱり、シャルル様だねえ」
「これでガリアは次代も安泰だ」
このことは、ジョゼフにしても喜ばしいものだった。
周囲の注意が一斉にシャルルに集まるので、その分準備が淀みなく行える。
とどのつまり、この騒ぎに乗じてとっと城から出てしまおうということなのだ。
(まさか、父上が気をきかしてくれた、わけでもないだろうが……。良いチャンスだな)
そう考えているジョゼフのもとに、シャルルがやってきた。
ちょうど、部屋で書物の整理をしている時だった。
いずれも暗記するほどに読み返したものばかりである。
だが、孤独だったジョゼフを慰めてくれた友人のような存在であり、城に置いていくのは嫌だったのだ。
「兄さん……」
シャルルが顔を蒼白にして、ずかずかと部屋に入ってきたのである。
「おう、シャルルか。何か用か?」
二人きりだ、気さくにおめでとう、がんばれよとも言ってやるか。
そうジョゼフは思ったが、どうもそんな言葉をかけられる雰囲気ではなかった。
「どういうこと、城を出るって」
シャルルは唇を震わせ、噛みつくように言った。
「いや、いい加減でここでの暮らすのも疲れた。田舎にでも引っこむことにしようと思ってな」
「父上から、聞いたよ」
シャルルはジョゼフを睨むように、いや、睨んだ。
「兄さんが、王位を辞退したって……」
「おい、まるで俺も<王様候補>だったような言いかただな」
ジョゼフは持っていた一冊を置いて、シャルルのほうを向き直った。
「当たり前じゃないか!?」
「建前上はな? だが、その実あってないようなもの、いや……事実なかったものだと思うぞ、俺は」
「兄さん!」
シャルルはきっとなって、ジョゼフに詰め寄った。
「兄さん、何考えてるんだよ……。兄さんは、王子じゃないか!」
「一応はな……」
「それが、いきなり変なメイドを連れて隠居するなんて、どうかしてるよ!」
シェフィールドを揶揄されて、ジョゼフは少しムッとするが、そこはどうにか流して、
「おい、落ちつけよ? 王子だろうが、お姫様だろうが、いい年になれば、結婚して、城を出るのは当然だろう?」
ジョゼフは興奮している弟に、優しく諭すように言った。
「兄さんは結婚もしてないし、父上はまだまだ元気じゃないか」
「それは、そうなんだがな……」
ジョゼフはさて、どう言おうかと、頭を悩ませる。
「お前も、正式に次期の王に決まったことだし、いい機会だと思うぞ?」
「ちょっと待って、兄さん…! 落ち着いて考えよう?」
口から泡を飛ばさんばかりの勢いで、シャルルはジョゼフの肩をつかんだ。
爪が肉に食い込み、痛いほどの力であった。
「おい……」
ジョゼフは痛みに顔をしかめつつ、シャルルの様子がおかしいことに気づいた。
落ち着けと言う、お前のほうこそ落ち着けと言いたい。
顔つきがどこか曇っており、眼の光が尋常のものではなかった。
(シャルルは、こんな顔だったか……?)
長年共に暮らしてきた弟の顔が、何か見知らぬ他人の顔のように思えてならなかった。
何故、弟はこんなにも乱れているのか、さっぱりわからぬ。
思い当たることと言えば、王位継承のことだが、弟がそれに不服を感じたと思えなかった。
時には、魔法の使えぬ兄ジョゼフを気遣って、わざと魔法に失敗するようなこともあった。
だが、同時にガリアでも最高クラスの魔法の使い手という自負もあったはずだ。
(……あるいは、いきなり次期王に指名されて、戸惑っているのか?)
いくら王族といえと、まだ十五の少年にとって、大国がリアの玉座は、確かに重いものであるかもしれない。
(しかし、今日明日にでも即位するというわけじゃあるまいし……)
父が急死でもすれば別だが、王としての教育はこれからじっくりとやっていけばいいではないか。
おそらく、父もその腹づもりであるはずだ。
混乱しているシャルルには、そのへんのことがわかっていないのかもしれぬ。
王に指名されたことで取り乱し、兄にすがってきたということか。
そう考えると、弟の態度も可愛く思えてくる。
考えてみれば、シェフィールドがきてから、シャルルと話らしい話をしていなかった。
今後は、あまり会えなくなるのだから、今のうちに色々と語り合うのも悪くないかもしれない。
「まあ、そう取り乱すなよ」
ジョゼフはシャルルの手をやんわりとはずしながら、努めて穏やかに言って聞かせた。
「父上は後で揉めないように、今から取り決めておいたのだろうさ。別に、今すぐお前に王になれという話じゃない」
「だから、兄さん! どうして、急に出ていくんだよ!」
シャルルは、目を血走らせて叫んだ。
「……」
どうも、おかしい。
会話が噛み合っていないようである。
シャルルの態度も、こちらの言葉がきちんと伝わってくるのか疑わしいものだった。
口ぶりからすると、ジョゼフをここに留めておきたいようにも思える。
何かが<妙>であった。
シャルルという人間から、ネジが何本か抜け落ちてしまったような気配なのである。
どうしてそのようになったのか、理由らしい理由がジョゼフにはわからない。
「お前、少しおかしいぞ?」
「おかしいのは、兄さんのほうだ!!」
今にも杖を抜かんばかりの勢いで、シャルルは絶叫した。
「おい……」
「ここ最近の兄さんは、変だ、変だと思ったけど、本当におかしくなったのかよ!?」
「自分じゃ、そんなつもりはないがな……」
そのように言いながらも、ジョゼフは自分が以前とは違っていることに自覚的だった。
少なくとも、以前の自分が、どうしようもなく愚かだったことはわかっている。
シェフィールドと出会う前の自分が、何とも惨めで救いがたい男だったことは理解しているのだ。
(救いがたいというところは、変わっていないがな……)
それが、どう変わっているのかは自分自身では明瞭にはわからぬが。
「やっぱり、あの女のせいなのかい……」
シャルルは急に声を落として、ジョゼフを睨んだ。
それは、いつも人々から愛され、称えられていた少年には、あまりにも不似合いな、暗い目つきだった。
ジョゼフは背筋に薄ら寒いものをおぼえた。
「シャルル……」
どうにか声をかけようとしたが、シャルルの声がそれを打ち払ってしまう。
「忠義面して、兄さんに擦り寄ってるけど……。そんなので、骨抜きにされたのか、兄さんは!」
「おい!」
その言い草に、ジョゼフもついに大声を出したが、シャルルは怯まない。
「どうせ、王族って肩書きに釣られて、いい顔をしてるだけだ。そんなこともわからなんて……」
「いい加減にしろ、シャルル! 俺のいい、魔法の使えん無能者だからな。だが、シェフィのことは悪く言うな!」
あれは、そんな娘ではない。
大体、<王族>の肩書きに、表面だけへつらう人間など、どれだけ見てきたことかわからない。
そんな連中と、シェフィールドを一緒くたにするなど、許しがたい侮辱だった。
自分自身を含めたこのガリアに、あの娘のような善良さと優しさを持った者がいるものか。
しかし、シャルルは不快そうに顔を歪めるだけだった。
その顔つきは、ジョゼフに蔑んだ眼を送る母親そっくりであった。
たまらない不快感がジョゼフの心にへばりついた。
「本当に……どうしようもなくなっているんだね、兄さんは」
「何が言いたい……」
「あんな女! どうせ、兄さんのことなんかこれっぽっちも考えちゃいないんだ!! わかっちゃいないんだ!!」
「ふざけるな、お前のほうこそ、何もわかっちゃいない!」
「わからないの? 兄さんは、王族なんだよ……?」
噛んで含めるように、シャルルは言う。
「それが、どうした……」
「あんな卑しい女と、一緒にいちゃいけないんだ! どうしてわからないんだよ!!!」
シャルルの言い分に、ジョゼフは舌打ちをしたくなった。
このハルケギニアにおいて、貴族と平民の区分は絶対だ。
しかし、弟は平民をこうも見下すようなことはなかったはずである。
それがこうも悪し様に言うとは。
(これがこいつの、本音か?)
そうは、思いたくはなかった。
何度その才能を妬んだかわからない賢弟だが、憎むようなことは一度たりともなかったのだ。
だが、これ以上話をしたくもなかった。
これ以上言い争えば、どうにもならなくなるように思えたのだ。
ジョゼフが黙ると、シャルルはさらに追い討ちをかけてきた。
「目を覚ましてよ、兄さん! あんな下卑た女に惑わされてさあ、おかしいよ!!」
もはや、限界だった。
ジョゼフは力まかせに、シャルルの顔を殴りつけた。
魔法では絶対的に劣るものの、その分肉体を鍛えこんできたジョゼフの腕力に、シャルルは床に叩きつけられた。
シャルルは何が起こったのかわからぬという顔で、呆然となって兄を見上げている。
ジョゼフは怒りの形相のまま、弟を睨みつけていた。
握り締めた拳が、震えていた。
二回目の投下完了です
支援のかた、ありがとうございました〜
GJ!
愛されていない分ルイズより悲惨だなぁ
これはいいジョゼフ
GJです!!
あぁ楽しみなSSが一つ増えたぜ
乙。
シャルルもまた悲しみを背負う男!
おおう。
シャルルはヤンデレだったのか。業の深い兄弟だなぁ。
シャルルはともかく、何故王妃がああもジョゼフ隠遁に憤るのか…?
続きをwktkして待ちます。シェフィの人乙。
このシャルルは何だか妙な説得力があっていいな
ギアスのロロを思い出したわw
闇の人とシェフィの人乙!
ところで、竜王の人はもう来ないのだろうか・・・
出来れば近況だけでもききたいぜ
愛しのシェフィ乙!!
シャルルのヤンデレっぷりといい、ジョゼフの青臭さといい、久しぶりに正統派の青春小説読んだ気がするw
これは続きが楽しみだぜw
作者の皆様乙です。
予約は入っていますか?誰もいらっしゃらないなら3時位にでも
投下を始めようと思います。
それでは投下します。
ここはトリステイン魔法学院内女子寮にあるルイズの部屋。
他の生徒達は授業中なのだが、ルイズの場合は平民とは言え人間を召喚し、
使い魔にしてしまったと言う事で特別に授業を免除された。
「あんた、どこから来たの?それに…ずばっかーだっけ何なのあれ?マジックアイテム?」
自分の疑問を解決しようと質問で捲くし立てる。
「そう慌てなさんな。ズカッカーは元は宇宙探検用に開発された車でね。
マジックアイテムってのは良く判らんが、恐らくルイズの言っている物とは違うだろう。」
「それと、どこから来たかって?俺はさすらいの私立探偵だから・・・日本って国から来と
でも言えばいいのかな。」
知らない単語にどんどんルイズの機嫌が悪くなる。
「さすらいって難民みたいなもんなの?さっきも言ってたけど、私立探偵って何よ?
それに宇宙ってどこの国?トリステインでは聞いたことないから、ガリア?ゲルマニア?」
「おいおい宇宙も知らないのかい。それに・・・」
かつて宇宙犯罪組織とも戦い、宇宙一の男とも言われた早川ですら聞いた事も無いような
国名に、先程自分で口にした異世界という単語が冗談では無かったのかと考えてしまう。
「(魔法…)」
「なあルイズ?さっきトリステイン魔法学院って言ってたが、まさかここは
魔法使いの学校なのか?」
「メイジよ!メ・イ・ジ!あんたもしかしてメイジも知らないの?」
ルイズは自分の呼び出した使い魔が、メイジすら知らぬ田舎物だと思いハルケギニアに
おいて一般常識とも言える事を教える。
早川の順応性・理解力も日本一である事を知らないルイズは、意外に
自分の使い魔の健は素直なのかと思い得意げに説明を続ける。
後に判る自分の魔法とツッコミの才能はこの早川がきっかけで知らされる事とは知らずに。
俺の支援が日本で2番目だと!?
そうこうしている間に時間は過ぎ、メイドが持ってきた夕食を食べながら早川は自分の
冗談が本当の事だと知らされる。
「月が二つ…飛鳥・・・本当に異世界に来ちまったみたいだ。」
赤い夕日に〜 燃え上がる
君と誓った 地平線〜♪
「うるさい!夜中になに大声で歌ってるの?早く寝なさい!あんたはそこ!」
着替えながら怒鳴るルイズが指差した先はただの床。
「ヒュー。男の前で恥じらいも無く着替えるなんて、レディのする事じゃないね。
チッチッチ。おいらはこっちで寝させてもらいますぜ。ご・主・人・様。」
早川は椅子に座るとテーブルに足を置き、テンガロンハットを顔に乗せ、
子供の戯言に付き合いきれないとばかりにそのまま寝ようとする。
「何よ!使い魔に見られて何か思うわけ無いでしょ!」
自分の優位性を示そうとしたが当てが外れ、自分の立場の方が上と言わんばかりに
「それ洗っておきなさいよ!」
早川は手をヒラヒラさせ見向きもしない。
翌朝、早川は昨日言いつけられた洗濯物を済せるためギター片手に校舎内を歩いていた。
「(困ったな。でも妹と暮らしていればこんな感じなのだろな。)」
早川は夜桜組との一件で出会った妹と母の事を思い出していた。
自分を捨てた母との別れ、そして再開。新しい生活を壊したくない母は…
そして妹との出会い。そして別れ…さらば瞼の母よ。
「(ガラにも無いや。さてと手の掛かるご主人様の言いつけこなしますか。)」
早川が洗濯場を探して曲がり角に差し掛かった時、
「キャッ!?」
「おっと!危ない!お嬢さん怪我はないかい?」
とっさにぶつかった女性を抱き止める。
「あ、私は・・・申し訳ございません。大丈夫ですか?」
「こっちこそ考え事をしていて悪かったね。」
メイド服を着た女性を起こし荷物を拾っている早川にメイドは
「あの?もしかしてミス・ヴァリエールが召喚したって噂の平民ってあなたですか?
あっ拾ってもらってありがとうございます。」
「そうみたいだね。俺は早川健、こっちじゃケン・ハヤカワって言う私立探偵さ。よろしく。ところでお嬢さんは?」
「よろしくお願いしますね。私はこの学院でメイドをしているシエスタといいます。」
自己紹介をし合うと、共に同じ目的と判り洗濯場へと二人で向かう。
是非にというシエスタに洗濯物を頼み、朝食の時間と言う事でルイズを起こしに部屋へと
帰る事にする。
行きは戸惑ったが早川である。帰りは迷うはずも無く部屋と向かう。
そこで、
「あら?あなたは昨日ヴァリエールに。昨日は大変みたいだったわね?」
そこには赤毛で褐色の肌にスケスケのネグリジェを着た女性がこっちを向いていた。
「(ルイズとは…)」
「ああ、ケン・ハヤカワ。よろしく。子供のお守りってのは大変なもんさ。
それより、朝から素敵な女性に会えるなんて今日はツイいてるね。」
「あらお上手ね。私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。
呼ぶ時はキュルケって呼んでね。それにしても子守って、ハハハ。」
バタンと音がするとそこには地獄竜が、いやルイズがいた。
「ちょっと!子守ってどういう事?それよりも素敵な女性ってなによ!?
私にはお嬢さんって!しかもツェルプストーと仲良く話しているなんて!」
「あらケンは正直者じゃない?正直者の使い魔でよかったじゃない。目もいいみたいね。」
地獄竜が首領Lになった。
「キィィィィィィ!!行くわよケン!早く来なさい!」
やれやれと早川はテンガロンハットのつばを下げる。
部屋に帰る様子をキュルケは、
「ケン後愁傷様。それよりも、また退屈しないで済みそうね。」
と見ていた。
以上です。お目汚し失礼しました。
あと支援ありがとうございます。
支援
日本一の作者お疲れ様でした。
次回も楽しみにしていますよ。
日本一の作者様GJでした。
地獄竜のルイズが首領ルイズに変わったのは笑った。
超高密度魔法言語に関しては2発しか撃てない以外に対処はしてあります。
ルカニに関しては厳密にはオリジナルというより既存呪文の発展です。
「防具が脆く出来るのなら、武器も脆く出来たっていいじゃないか」という考えから生まれました。
まあ、超高密度魔法言語にしろこのルカニにしろ作中で使うのはどの道、1度きりですがね。
>>無理に状況説明しなくていい。
以前、状況説明をするよう指摘を受けたのですが・・・
>>小説読んだ方がいい
小説読むことも考えはしましたが、あまり財布に余裕が無いもので・・・
どうせあと少しで完結ですし。
それではいつものように5分後に投下させていただきます。
魔力を辿って行った先にはレコン・キスタの本拠地と思われる建物が建っていた。それが軍港施設ロサイスであることを異界の住人である彼が知る術はなかった。
幸運にも、本陣が攻め込まれるなどとは思ってなかったらしく、守備兵は全てまともな生き物だった。
本陣だけあって、かなり腕の立つものばかり、蟻の様な数で押し寄せたが、古代呪文とマホカンタの前に虚しく散っていくだけだった。
魔力を辿った先にある部屋の前に着くと、トリステインに攻めてきた連中と同じ魔力を漂わせたオーガが突っ込んできた。
その棍棒の一撃を交わしたメディルは、メラゾーマとマヒャドをそれぞれ発動させ胸の前でそれを合成した。
合成された二つの呪文は光の弓となり、第二撃を加えるべく向かってきたオーガはその矢に飲まれ、壁ごと消滅した。
先ほどの連中とは違いそのオーガは再生しなかった。
極大消滅呪文・メドローア。古代の大魔道師が編み出したとされるこの呪文はあらゆる物質を消滅させる最強の魔力を発射する。
メディルはこの術の性質を利用し、死者を操る魔力ごと消滅させたのだ。
今攻め込んでいる連中にも無論有効だが、この術も超高密度魔法言語ほどでないとはいえ、かなり消耗する。
大軍に向けて使うには適さなかった。
「君がメディルの使いかね。噂は聞いているよ。」
部屋の中では、総大将と思しき細い男がこちらを見ていた。
メディルは、ただの男に過ぎない筈の彼に言いようの無いものを感じた。
「貴様がここの・・・」
「いかにも。余がレコン・キスタ総司令官、オリヴァー・クロムウェルだ。」
高らかに自己紹介する彼の指に嵌められたものからは、メディルが追っていた魔力の糸が伸びていた。
「その指輪が不死身の秘密か。」
「いかにも。グレートライドンが呼び出した死者に、このアンドバリの指輪の魔力を与え生前の姿と不死性を与えた。
すべては我らがレコン・キスタの守護神が・・・」
悦に浸って喋り続ける、総大将の台詞をメディルが遮った。
「守護神だと、笑わせる。奴は私の世界にいた『死神貴族』と言う魔物に酷似していた。
貴様の背後にいるのは、異世界から来た私と同様の魔族か魔物。違うか?」
メディルの問いに、彼はクククと笑いながら答えた。
「その通り。あの方は神じゃない。恐ろしく邪悪なオーラを漂わせていたからね。
だが、神にも勝る力を持っておられる。だから余はあの方の下、この組織を興し、この世界を丸ごとあの方に献上しようとしたのだ。
この指輪はあの方が水の精霊から奪った物を改良したと言っていた。」
「そこまで話すということは、覚悟は出来たようだな。」
メディルの右手の指に灯った五つの炎を見たクロムウェルは手にした指輪を飲み込んだ。
改良されたためか、指輪の効果は外しただけでは消えぬらしく、彼の口からはトリステインに向けて魔力の糸が伸びている。
「ああ。余自ら手を汚す覚悟をね。」
「ほざくな。五指爆炎弾!」
放たれた5発のメラゾーマが彼を焼き尽くした――かに思えた。
だが、どういう訳か呪文は彼に命中したと思った瞬間、踵を返し、メディルに向かってきた。
咄嗟にマヒャドで相殺するが、判断が遅れればかなりの痛手を負っていた。
何が起こったのかメディルは把握できなかった。マホカンタがかかっているならば
並みの者はともかく彼ならば一発で見切る事が出来、他の呪文が発動したようにも見えなかった。
やがて、クロムウェルが不敵な笑みを浮かべ、話し始めた。
「どうやって呪文を返したか疑問に思っているようだから教えてあげよう。
余は何の魔法も使っていない。ただそういう体質だっただけの事さ。このような・・・」
突然、目の前の男の肉体がメキメキという音と共に大きくなっていき、見る見るうちに面影一つ残らぬ姿に変わり果てた。
そいつは青白い鱗に全身を覆われ、両手から30サントはある長い爪を生やし、瞳孔の無い血の様な真紅の眼を持つ
3メイル程の身長の蜥蜴と人間を混ぜたような魔物だった。
ここへ来て、ようやくメディルは最初に感じた奇妙な感覚の真実を悟った。
「魔法を弾き返す鱗を持ち合わせた崇高な存在に生まれ変わっていただけの事さ。
我らが守護神であるあの方が授けてくれた『進化の秘法』によってな!!」
言い終わる前に、クロムウェルはその巨体からは想像出来ぬほどの速度でメディルに爪を振り下ろした。
間一髪でかわすが、爪が下ろされた瞬間、散弾銃のように無造作にばら撒かれた無数の三日月形の風の刃の一つが左肩口を掠めた。
「どうだね?我が風刃の爪の味は。避け続けられるなら、やってみろ。」
第2、第3の爪がメディルに襲い掛かる。爪そのものの回避は容易だったが、軌道の予測が不可能な風の刃が少しずつ、だが確実に彼の体を傷つけていた。
だが、敵はあまり気の長いほうではないらしく、爪では簡単に死なぬと判断したのか、口を大きく開け、全身を震わせ冷たく輝く息を吐いた。
咄嗟にフバーハを唱えて身を守るが、そうしなければ銀世界と化した部屋の風景にこの上なく溶け込んでいたであろう。
「どうだね。君は余に傷一つ負わすことが出来ない。唯一、不死の兵を殺せる君がこの場にいて、私を殺せないということはトリステインの敗北が確定したということだ。
だが、君ほどの男をここで殺すのは惜しい。どうだ、余の・・・」
「笑わせるな。」
「そうか・・・残念だ。」
「何を勘違いしている?まだトリステインの敗北は二つの理由で決まっていない。」
「何・・・!?む・・・!?」
武器を脆く→攻撃力を下げる
そんな魔法はドラクエには存在しない。発展どころか完全オリジナルだということに気づけ低脳
クロムウェルは体内のアンドバリの指輪を通じて異変を感じ取った。
死なないはずの兵の数が減っている。
化け物がメディルを睨み付けて言い放った。
「何をした・・・?」
「私は何もしてない。やったのは・・・私の主だ。」
「いっそ死んだ方がマシだわ・・・」
何本目か数えるのも止めた魔法薬を飲み干し、ルイズがぼやいた。
彼女は虚無の爆発を連発して辛うじて意識を保っている状態だった。それでもなお、海の中からは続々と敵軍が出てきたが。
「命を司るという虚無の力なら不浄の命である彼らを滅ぼせるかもしれない。」と敵陣に赴く前、使い魔が言っていた。
その言葉通り、爆発を僅かでも受けた敵兵は人も亜人も竜も、音も無くその場に崩れ落ちていった。
威力も想像以上で、一発撃てば数え切れぬほどの兵を滅ぼすことが出来た。
虚無特有の長い詠唱時間はこの期に及んでも逃げ出さぬ真の軍人達とメディルに化けた10体のモシャスナイトがその身を擲って時間を稼ぎ、
本来なら一発目で尽きたであろう精神力は気絶する前に使い魔から分け与えられた魔法薬で回復させる。
回復中はルイズに化けた残り90のモシャスナイトが一体ずつ爆発を唱え、魔力が尽きれば本来の姿に戻って軍人達と共に詠唱時間を稼いだ。
正直彼女の身体的・肉体的疲労は当の昔に限界を遥かに超えていた。
それでもなお、立って呪文を唱えられるのは貴族としての誇り、
ゼロと呼ばれ続けた自分が初めて本物の貴族らしく働いている事への喜び等もあるが、
最大の理由は自軍の兵と共に詠唱の時間を稼ぐ無二の親友とここまで導いてくれた使い魔に報いるためであった。
「こんな大仕事私に押し付けて・・・なんて言ってる場合じゃないわね。」
使い魔への愚痴を止めて、ルイズは再び詠唱に入った。
「と言うわけだ。」
「ぐ・・・」
クロムウェルが奥歯を噛み締めた。
レコン・キスタの兵はグレートライドンが呼び寄せた亡者を除けば全員、虚無と偽ってきたアンドバリの指輪の力で集めたものだ。
偽りの虚無が本物の虚無に滅ぼされるという皮肉な状況に、さしもの彼も不快感を顔に出さずにいられなかった。
「そして、もう一つの理由。それは―」
メディルは言った。まっすぐ、目の前の魔法を跳ね返す化け物に向かって。
「貴様を殺す算段が今ついたからだ。」
投下終了。絶大な威力を持つ「いかずち」はマホカンタで防がれました。りゅうせい等を防げる描写はありませんが、可能性は十二分にあります。
要するにこれが前述の対処です。マジャスティスで解除というオチはありませんのでご心配なく。
余談ですが、ゲームのメディルの使いは仁王立ちとマホカンタで嵌められるそうです。やったことはありませんが。
当初、1レス目ラストでは双五指爆炎弾(ダブル・フィンガー・フレア・ボムズ・・・両手から10発のメラゾーマを撃つ)
という魔法(技?)を使う予定でしたが、指摘されたのでやめました。
使いの人、投下乙。
あ、480KB超えたので新スレ立てますね。
スレ建て乙。
>776は理解力がどうしようもないな
>625>627>634>638>641が優しく言うのも悪い
ダメなものはダメとハッキリ言わないからこうなる
あー、ええとね
「」の最後の部分では 。はいらないんだよ
>「貴様を殺す算段が今ついたからだ。」
じゃなくて
「貴様を殺す算段が今ついたからだ」
こうだったような気がする
あと … じゃなくて …… だったような
三点リーダは二連続で書くものだった気がする
三点リーダの方は慣例でしたっけ?
他にも、明確に文法とされる物でなくとも、慣例で『こうした法外異』って書き方があったはず。その手のサイト、一度目を通すといいですよ。
……私も読んだあと、大いに落ち込んだクチですし。あんな物を人様の目に晒したなんて、と。
毒吐きスレでどうぞー。
IP出るからなんとなく避難所はもう使いたくない
よく言われるけど
「〜からだ。」
「〜からだ」
どっちも正解だってばー
三点リーダは二つらしいけどね
この流れが2chらしくていい
厳しい批判にも負けずに投下し続ける作者の魂は素晴らしいよ
俺は応援してるから頑張れ
個人的には「〜〜だ」の方が見慣れているし、自然に感じるけど、別に「〜〜だ。」が間違いって訳じゃない。
この用例自体が比較的新しく出来た出版業界での約束事みたいなものだし、ちょっと古い書籍だと後者も結構見る。
それなのに、鬼の首を取ったかのように騒ぎ立てる池沼は何なの?馬鹿なの?死ぬの?ていうか氏ね。
鬼の首を取ったようにの使い方間違ってね?
……っていうか今はもう大した議論してないし、避難所はホスト表示を止めるべきだと思うんだ
>>783が実際どうかは知らないけど、
やましいことしてたってわけじゃないけど、なんとなく書き込みたくない
って言う人も少なからずいるんじゃないかなと……。
>>789 思いっきり遠慮がちに言ってるように見えるんだが
避難所に投下したことのある作者だと毒が吐けないよね
前はすぐに決めたせいで失敗したから慎重になってるのかしらんが、もうほとんど書き込みが無いんだから、臨機応変にいけばいいのに
個人的な意見ではSSを書くなら原作は読んでおくべきだし、例え読んでいなくとも、それを言うべきではないと思う
まあアニメ版基準ですというならそれはそれだし、原作にも結構適当というかでたらめというか、そういう感じの設定とか描写ってあるから……
まあゼロの使い魔の世界が好きな訳じゃなく、ただ好きなキャラが自由に動ければそれでいいというのなら止めはしない
代理投下でホスト晒してるのに他作品の毒吐いちゃってる作者も何人かいるな
吐いちゃってるって…別に吐いちゃいけないわけじゃないんだから構わんだろ
原作は読んだ事ない
ゼロ魔は好きでも嫌いでもない
ただ、お前らの書くSSは好きだ
べっ別にあなたのために書いているんじゃないんだからね///
闘神2のカーツウェルさんって需要あるかな?ていうか知ってる人いるかな。
闘神では偉く不憫な人なので、こっちに召還したいんだけど。
明確に悪いところを指摘されて直らない作者はゴミなのは確定的に明らか
ただ、俺TUEEオリ主最強プロット無し性格内容改変途中放棄モノに概してなり易い場末で書いてる作者が
自分の作品と毒を吐いた対象の作品、grandmaレベルの過去作品らと比較されるのを覚悟の上で毒吐いてるんだろ
個人的には尊敬していいと思うな
明確に悪いところなんてのもだいたい主観だ
テンプレに書いてあること以外で明確に悪いことなんて基本的にない
毒吐いてる人のエゴ。
あれ……久しぶりに理想郷で黒騎士読んでたんだけど
あそこに東方とのクロスでパチュリーがくるSSって無かったっけ?
久しぶりに読もうと思ったのに見当たらないぜ。運命の使い魔と大人たちでも読んで来ようか
ここの作品だと皆は何を読んでいるんだい
はい釣り針来ました
もしくは場所を考えないバカ
あーそろそろ埋めておいたほうがいいんじゃないだろうか?ということで埋め。
>>800 理想郷にあったパチェ召喚モノは
作者が自サイト立ち上げる、とか言ってたから
サイトが完成→作品を移転→理想郷のは削除
って感じになったんじゃない?
あと、面白い作品は自分で探すのをオススメする。
>>800 確か作者が前のを消して改稿して完結させたと思うけど覚えてないな
理想郷はゲテモノの中に読めるものを発掘するという楽しい作業に向いてる鉱山(ここも大差ないのは暗黙の了解)
埋め
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なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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一応 刀金 憑依物?テスト 死出から の3つでも薦めるので完結まで半月に1回ぐらい読めばいいんじゃね
20kbってなかなかでかい
みんなやさしいなぁ
500KBならワンピースから処刑寸前のエースを
キュルケが召喚する話を書く