アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ20

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1名無しさん@お腹いっぱい。
このスレはアニメキャラ・バトルロワイアル2ndの作品投下スレです。
基本的に、SSの投下のみをここで行ってください。
前スレ
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ19
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1220448938/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ18
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1216557895/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ17
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1216557895/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ16
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1208969940/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ15
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1207660456/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ14
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1205323883/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ13
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1204017211/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ12
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1202475356/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ11
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1199094345/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ10
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1197690706/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ9
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1195822039/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ8
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1194537782/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ7
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1193746998/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ5(実質6)
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1193324421/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ4
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1192195953/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1191637331/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1190647837/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ1
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1190383751/
避難所
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd part0-1
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1187538018/l50

投下作品についての感想、雑談、議論その他モロモロは以下のしたらばにて行ってください。

アニメキャラ・バトルロワイアル・セカンド 専用掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9783/
感想雑談スレ(上記したらば内)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9783/1221316173/l50
予約専用スレ(アニロワセカンド予約用したらば内)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11353/1210408973/l50

アニロワ2ndまとめwiki
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
ツチダマ掲示板 (ID表示の議論スレ有り)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/6346/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館8 (ID非表示の毒吐きスレ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1225810819/l50
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:21:10 ID:V6znJrdy
参加者リスト・(作中での基本支給品の『名簿』には作品別でなく50音順に記載されています)
1/7【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
●スバル・ナカジマ/●ティアナ・ランスター/●エリオ・モンディアル/●キャロ・ル・ルシエ/●八神はやて/○シャマル/●クアットロ
0/6【BACCANO バッカーノ!】
●アイザック・ディアン/●ミリア・ハーヴァント/●ジャグジー・スプロット/●ラッド・ルッソ/●チェスワフ・メイエル/●クレア・スタンフィールド
1/6【Fate/stay night】
●衛宮士郎/●イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/●ランサー/●間桐慎二/○ギルガメッシュ/●言峰綺礼
1/6【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ/●枢木スザク/●カレン・シュタットフェルト/●ジェレミア・ゴットバルト/●ロイド・アスプルンド/●マオ
1/6【鋼の錬金術師】
●エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/●ロイ・マスタング/●リザ・ホークアイ/○スカー(傷の男)/●マース・ヒューズ
2/5【天元突破グレンラガン】
●シモン/○カミナ/●ヨーコ/●ニア/○ヴィラル
1/4【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル/●ジェット・ブラック/●エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/●ビシャス
1/4【らき☆すた】
●泉こなた/●柊かがみ/●柊つかさ/○小早川ゆたか
2/4【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗/●シュバルツ・ブルーダー/●アレンビー・ビアズリー
0/4【金田一少年の事件簿】
●金田一一/●剣持勇/●明智健悟/●高遠遙一
1/4【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル/●高嶺清麿/●パルコ・フォルゴレ/●ビクトリーム
0/4【天空の城ラピュタ】
●パズー/●リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ/●ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ/●ドーラ
1/4【舞-HiME】
○鴇羽舞衣/●玖我なつき/●藤乃静留/●結城奈緒
1/3【R.O.D(シリーズ)】
●アニタ・キング/●読子・リードマン/○菫川ねねね
0/3【サイボーグクロちゃん】
●クロ/●ミー/●マタタビ
0/3【さよなら絶望先生】
●糸色望/●風浦可符香/●木津千里
0/3【ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
●神行太保・戴宗/●衝撃のアルベルト/●素晴らしきヒィッツカラルド
1/2【トライガン】
●ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド
0/2【宇宙の騎士テッカマンブレード】
●Dボゥイ/●相羽シンヤ
1/2【王ドロボウJING】
○ジン/●キール
【残り15名】
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:22:18 ID:V6znJrdy
≪生存者名簿≫
【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
○シャマル
【Fate/stay night】
○ギルガメッシュ
【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ
【鋼の錬金術師】
○スカー(傷の男)
【天元突破グレンラガン】
○カミナ/○ヴィラル
【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル
【らき☆すた】
○小早川ゆたか
【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗
【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル
【舞-HiME】
○鴇羽舞衣
【R.O.D(シリーズ)】
○菫川ねねね
【トライガン】
○ニコラス・D・ウルフウッド
【王ドロボウJING】
○ジン
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:23:51 ID:V6znJrdy
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
 「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f3/304c83c193c5ec4e35ed8990495f817f.jpg
【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:25:12 ID:V6znJrdy
【書き手の注意点】
・トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします
・無理して体を壊さない。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
 携帯からPCに変えるだけでも違います。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:26:03 ID:V6znJrdy
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
・このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては議論スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:27:01 ID:V6znJrdy
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
・初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
・予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。
・予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
まとめwikiを参照のこと
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 22:27:58 ID:V6znJrdy
現在、この企画には二名の粘着荒らしが確認されています。(通称・CとG)
その内の一人、Cの詳しい来歴などは以下を参照の事。
2chパロロワ事典@Wiki‐キャプテン
http://www11.atwiki.jp/row/pages/203.html

また、単発IDで「ふーん」「あっそう」「つまらない」「どうでもいい」などの1行煽りレスや、
他スレや外部の毒吐き掲示板からのコピペを延々と繰り返す粘着荒らしがGと呼ばれています。
これらの人物には構うだけ無駄ですので、レスなどはせずにスルーしておきましょう。

・荒らしが出たら?                 → スルーしましょう
・C・G本人や、C・Gっぽい人、を見かけたら?     → スルーしましょう
・どうしてもそいつらにレスしたくなったら?     → 毒吐き若しくはC・G観測所に書き込みましょう
・吊られるやつは荒らしと同レベル。スルーしましょう
・吊られる奴を叩くのも吊られた奴と同レベル、スルーしましょう。
・荒らしレス〜吊られレス、その一連のレス塊をまとめてスルーしましょう。

※専ブラの御利用を強く強くお奨めします。

関連リンク
アニロワ毒吐き所(ツチダマ掲示板)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/6346/1188116040/l50
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館8(ID非表示の毒吐きスレ)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1225810819/l50
C観測所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/4651/1170582458/l50
G観測所 http://tmp6.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1184658777/l50
9始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:03:30 ID:zmEQZZoa
 テッペリンの廊下。螺旋状に螺旋くれた廊下をニコラス=D=ウルフウッドは進む。目指すは玉座、つい先ほどルルーシュに呼び出された場所だ。
 東方不敗、チミルフの二人と別れてしばらく後、することもなくぶらつきを再開したウルフウッドは突然ルルーシュから大至急玉座へと来るように指示されたのだ。

(――今度は何の用やねん、あのもやしっ子)

 歩くウルフウッドの顔には不満げな表情がありありと浮かんでいた。何せつい先ほど呼び出されたときの用事は放送のリハーサルの観客役というものだ。仮に今度の用事もまたふざけたものだったら苛立ちのあまり、あの細っこいボディに一発ぐらい喰らわせかねない。
 まあ、ルルーシュもそこまでバカでもないだろう。実際のところ考えられる用件としては「試練」のメンバーに関してあたりだろうか。

「今度は何の用や、もやしっ子」

 そう言いつつ玉座の間へと入ったウルフウッドを六対の視線が迎え入れる。

「……何かあったんか?」
 空気の違いを感じ取り、瞬時に意識を切り替えたウルフウッドは真正面にいる人物、玉座に座るルルーシュへと問い掛ける。

「シトマンドラ、頼む」
 だが、ルルーシュはその問いには答えず、自らの傍に立つシトマンドラへと何か指示を出す。
 ……ここでようやくウルフウッドは今、この玉座の間にいる同志のメンバーが大きく二種類に別れたことに気がついた。

 努めて表情を出さないシトマンドラ、何か苦虫を噛み潰したかのように不機嫌な気配が見え隠れするルルーシュとグアーム。彼ら三人はおそらく何かを知っている。
 そうして、待つことしばし。玉座の間にいる事情を把握していない残り4人。東方不敗、アディーネ、チミルフ、そしてウルフウッド、彼らの前にモニターの映像が映し出される。
 
「――これは今から少し前の『箱庭』の出来事だ」
 補足するルルーシュの言葉と共に、モニターの中では真っ赤なガンメンと対主催を志すメンバー達との間で戦いが繰り広げられていた。

 ウルフウッドも一度やりあったことがあるスカー。
10始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:05:20 ID:zmEQZZoa
 王ドロボウ、ジン。
 彼らがガンメンの気をひく間にガッシュ・ベルが放つ光球が2つ、3つとガンメンへと着弾していく。

 ―――そして。

「バオウ・ザケルガァアアアアアアアアアア!!」
 ねねねの叫びと共にガッシュが放つ黄金色の雷竜がガンメンを蹂躙する。
 
「――終わったな」
 東方不敗が短く呟く。
 あの一撃はこの東方不敗をして避けるも防ぐもあたわず、と感じ取った一撃だ。たとえ機械に守られていようともあのような未熟者達に防ぎきれるようなものではない。
 これで実験場内の殺人者達は一掃された。とはいってもまあ、あの甘い者達のことだ。殺すとまではいかずにせいぜいが行動不能にする程度ではあろう。
 さておき、マーダー達が動けないとなれば次はようやく自分達の出番となる。
 東方不敗やウルフウッドはモニターから視線を外すとルルーシュへと向ける、……が。

「……ある意味、終わってくれていればよかったんだがな」
 試練役として、まず誰が行くのだ? そう尋ねようとした東方不敗の機先を制するかのようなタイミングで告げられる、やや疲れた感じのルルーシュの言葉。

「……?」
 その言葉に東方不敗達は再びモニターへと視線を移す。
 するとそこには。

「「 愛 情 合 体 ッ ! 天元突破グレンラガン!! 」」

『勇気だの誇りだの、そんなものはちっぽけだ。愛こそ至高。愛こそ……天下だぁあああああああ!!』

 ヴィラルの叫び声と共に人型の機体の全身から碧色の――いや、碧混じりの桃色≠フ輝きが、天に向かって迸る。
 天壌を埋め尽くす螺旋の奔流。大気を巻き込み捻れを成すほどの、逆流。
 螺旋力の渦巻き、それ自体が巨大なドリルとなって、空間を穿つ。
 空を、天を、大気圏を、月まで届く勢いで、宇宙を制す。
 
11始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:10:48 ID:zmEQZZoa
 ……そのような光景が繰り広げられていた。

「王よ、これは一体?」
「見てもらった通りだ。つい先ほど『箱庭』の中において、計算よりもはるかに早いタイミングで我々が……その、待ち望んでいた天元突破の覚醒が果たされた」
 チミルフの問いにルルーシュは答える。
 そんなやり取りの合間にもモニターの中では事態は進んでいき、

『ギィイイイイイガァアアアアアアアア!!』
『ラァアアアアアブラブゥウウウウウ!!』


 機体、グレンラガンの右腕が高く突き上がり、先端が巨大なドリルと化す。
 ドリルは瞬く間に高速回転を始め、唸りを上げ。


「「ドリル――ブレイクゥウウウウウ!!」」

 そして、唐突に静止する。

「とりあえず、ここまでが今の状況だ。現在シトマンドラによって会場内の空間は凍結をかけられているが、天元突破者が出てきた以上、凍結それ自体が破られるのも時間の問題だろう」
「……」 
「……」
「……」 
「……」
「……」 
「……」
 そう、ルルーシュが言い切ると玉座の間には微妙な沈黙が落ちた。
 何せ待ち望んだ結果というのがあんなモノ、だったのだ。皆どう反応していいのかわからなかった。

「……アホらしい」
 そんな中、ウルフウッドはポツリと呟く。
 当事者達がどれほど真剣であろうとも、彼らがやっていることは愛の告白をしてパワーアップという三文芝居に他ならない。傍から見ている限りは馬鹿馬鹿しいことこの上ない。
12始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:16:58 ID:zmEQZZoa

(……まったくだ)
 表には出さないもののルルーシュも内心ウルフウッドに同意する。
 さらにルルーシュにはもう一つ、この状況を馬鹿らしく思う理由があった。
 それは他でもない、天元突破を成したのがヴィラルであるというこの事態そのものだ。
 確かに可能性の上だけではヴィラルが天元突破を果たすという事態をルルーシュも考慮していなかったわけではない。しかし、同時にその可能性は極めて低い――それこそ未だに螺旋力の覚醒を果たしていないギルガメッシュやスパイク、ジンといった参加者より――筈だった。
 何故ならばヴィラルは改造を受けたとはいえ元々は獣人だ。それが天元突破を果たせるというのなら、ロージェノムの配下に候補はいくらでもいたはずだ。
 そう、シャマルという追加要因があったことが天元突破の一因となったのだと仮定しても、配下の獣人全てを使い潰すつもりで試しておけばこのような殺し合いにこのルルーシュや、スザクが巻き込まなければならない必然性があったのかどうか。
(愚かにも程があるぞ、ロージェノム!)
 改めてルルーシュはのうのうと逃げ出したロージェノムに対して怒りを燃やす。

「……それでどうするのじゃ?」 
 あらかじめ何が起きたのかをある程度知っていたが故に立ち直るのも早かったのか、場の沈黙をグアームが破る。
 その問いかけの言葉にルルーシュも我に返った。
 そう、今はまだ優先すべきことが他にある。

「おぬしがわしらに聞かせた話によると、この場合は逐一対応するとのことじゃったが」
「そうだな……その前にまず、アンチ=スパイラルの動きはどうなっている?」
「前と変わらず、だ。今のところ動きはないね」
「……そうか」
 アディーネからの返答を聞きルルーシュは少し考える。 
 天元突破が成された以上すぐにでもアンチ=スパイラルは動いてもおかしくはないというのが、彼の予想の一つだったのだが……。
(……そうなると、だ)

「ふむ、当てが外れたか?」
「いや、そうでもない。確かに予想していた中の一つは外れたが、ただそれだけだ」
 東方不敗からの問いにルルーシュはかぶりを振る。
13始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:25:24 ID:zmEQZZoa


(ならば次の一手は……)


「アンチ=スパイラルが動かないというのであれば、こちらが動こう」
 ややあって、ルルーシュは六人の同志に告げる。

「その前にこの状況下、もっとも困る事態というのはなんだかわかるか?」
「そりゃあ、敵さんが突然気を変えてあたし達に襲いかかって来る事じゃないか」
 ルルーシュの突然の問いかけにややあって、戸惑いながらもアディーネが答えを返す。
 その答えにルルーシュは苦笑を浮かべた。
「確かにその通りと言えばそうだが、それならばもっと前か、天元突破の時点で動く
だろう。この問いの正解はせっかく覚醒した天元突破者が倒されてしまうこと、だ。
アンチ=スパイラルが危険視するような存在さえをも滅ぼすようなものがこの会場
内にいるという確証を与えてしまえば会場後と俺達主催陣が消し去られることになったとしても何の不思議もない」
「はっ! なんだいそりゃあ。あのロージェノムさえ恐れるアンチ=スパイラル。それさえも倒しうる奴が一体どこのどいつに負けるって?」
 アディーネの失笑を無視してルルーシュはモニターを操作する。

 画像が変わり映されたのは黄金の青年が螺旋状の剣を振りかざすシーン。
 彼の相手を馬鹿にしたような余裕に満ちた表情からはとても彼が戦いの場に身を置いていると考えるのは難しい。
 だが、彼が剣を振り下ろすや否や、剣から膨大なエネルギーが解き放たれ、アディーネもよく知るダイガンザン、
もっとも正確にはダイグレンという名の戦艦型ガンメンが無残に破壊されていく。

「……英雄王か」
 東方不敗が呟いた。この場においては彼とチミルフのみがかの英霊の強さを己が身で感じ取っている。

 続いてルルーシュはモニターを操作する。

 次にモニターに移ったのは全身に傷を負ったショートカットの少女だ。
 彼女は赤と銀に彩られ逆立つ髪をもつ、まさに悪魔と呼ぶにふさわしい相手と対峙する。
14始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:33:35 ID:zmEQZZoa
 一見、先の映像との共通点は見当たらない。ただ一つ少女がその手に握る螺旋状の剣を除いては。
 
 そして、彼女の手の中で剣の円柱が回転し、暴風を引き起こす。

「天地乖離す(エヌマ)――――」
「――――開闢の星(エリシュ)!!」

 螺旋を帯びた暴風が全てを消し飛ばしていく。

「…………」
「英雄王ギルガメッシュと、彼の武器たる乖離剣エア。特にエアの威力はあの会場に影響をも及ぼすことはデータ上ほぼ間違いないだろう。
しかもそのときのエアの使用者は別人だ。あの武器の本来の使用者、言い換えればあの武器を最も使い慣れているものが全力でその力を振るった時は一体どれほどの威力になるのかは予想もつかん。
 ならば、万が一の事態というのは当然想定せねばならん」
 今度はルルーシュの言葉に反論するものはいなかった。

「そこでだ。チミルフ、グアーム、東方不敗の三人には会場内に行って天元突破覚醒者たるヴィラルとシャマルの両名。ならびに彼らが騎乗しているガンメン、グレンとラガンを回収してきてもらいたい。」
「……構わんが、いいのか?」
 東方不敗は問い掛ける。
 何せつい先ほどわざわざ自分達が死んだと見せかけるために一芝居うったばかりだ。それを台無しにしていいのかと。

「ああ、だから東方不敗、あなたに関してはあくまでもバックアップということで。チミルフ・グアームのみで対処しきれん事態。
……そうだな、例えばヴィラル達が抵抗して回収が困難、あるいは回収前にギルガメッシュがやってきてその対処に手間取るなどといった事になるまでは表には出ないでいて欲しい。
 それから、チミルフに関しては問題ないだろう。なにせ『偉大なる螺旋王』様は死者を蘇らせる事さえ容易いことらしいからな。」
「なるほどな」
 ルルーシュの言葉に東方不敗は嗤う。
 

「もっとも、ヴィラル、シャマルの両名に関しては問題はないだろう。
確実に理解しているかどうかまでは知らんが、一応ヴィラルは高嶺清麿の考察を聞いている。
殺し合いの途中であれ、真の螺旋覚醒を果たしたものをわざわざ回収しにくるといった事態にも納得するだろう。
15始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:38:10 ID:zmEQZZoa
 そうだな、真なる螺旋覚醒を果たした戦士ヴィラル、褒美としてその伴侶シャマルと共にこの舞台より脱出する権利を与える、とでもチミルフより伝えてやればのこのこ従うことだろう。
 まあ、そうした細かい交渉はチミルフ、グアーム二人に任せる」
「ふむ、請け負おう」
「はっ、了解いたしました」
 グアームはあっさりと、チミルフは恭しくルルーシュの言葉に同意する。
「東方不敗もかまわんな?」
「無論」

 
「シトマンドラ、アディーネ、二人は引き続き会場内とアンチ=スパイラル、この二つの監視を続けてくれ。さすがに大きな動きはないとは思うが念のためだ。万が一、新たな動きがあればどんな小さなものでも構わん。大至急知らせてくれ」
「……異論はない」
「わかったよ」
 シトマンドラ、アディーネの両者もまたあっさりと首肯する。
「今のところはこのぐらいだな。新しい動きがあれば、それに応じて指示は出す。では、頼んだ通り動いてくれ」
「……おい」
「なんだ?」
 ただ一人、指示を与えられなかったウルフウッドが不機嫌な声を出す。

「なんだ? じゃないわボケ。わいはどないしたらええんや?」
「今はまだやってもらうことはないな」
「……は?」
 
 ルルーシュの返答に一瞬呆けたような表情を見せるウルフウッドだったが、それは一瞬の内に怒りに取って代わられる。
 先のリハーサルの一件も相まってその怒りは強くなる。

「ふざけんのも大概にせえよ、このもやしっ子! だったらワイは何のために呼ばれたんじゃこのボケ!」
「今はまだ、そう言っただろう? 貴様の出番はこの後、正確に言うと会場内からヴィラルとシャマルを回収してからだ」
「……おどれはワイにないをしろっていうんや?」
 ウルフウッド、いやその場の全員が疑問の表情を浮かべる中ルルーシュは言葉を続ける。
16始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:43:30 ID:zmEQZZoa

「交渉においては圧力も立派な手札のひとつということだ」 
「……?」
 疑問を浮かべる一同に対し彼はさらに言葉をつむぐ。

「つまりだ、我々の目的はアンチ=スパイラルとの交渉。
 だが、向こうからしてみれば今のところ我々に協力するだけのメリットが少ないのも事実だ。今現在、我々の手札は天元突破覚醒者ヴィラルという一枚しかない。
交渉が目的であるこちらからしてみれば、例え相手が攻撃に出てきたからといって天元突破覚醒者という札は簡単に切れる札ではないのだ。
 故にだ、切れる札が一枚しかないというのであれば札の枚数を増やせば良い」
「つまり……」
「そう、ウルフウッドにはもう少し後になってから試練として会場にいってもらう。天元突破者が二人、三人と出てくるとあっては、
そしてこちらの主たる目的が交渉にあるということ……そのためならば覚醒者を排除するだけの意思もあるということを見せれば向こうもこちらと交渉しようとするだろう。
むやみに争うだけのメリットはおたがいにないのだからな。
 そしてわざわざ天元突破覚醒の場を見せたのはそういうことだ。まあ、あそこまで馬鹿らしい覚醒を果たすものはもう現れはせんだろうが、
アレに近い感情の高ぶりは覚醒のきっかけ、その一つになるかもしれないということだけは頭に入れておいてくれ」
 ルルーシュの言葉に今度こそ全員納得した表情を見せる。

「では、全員頼んだぞ」
 玉座の間から6つの影が去っていった。





 ――しばしの沈黙。
 自分を残して誰もいなくなった玉座の間の中でルルーシュは視線を落とした後、手元にあるものを見て小さく笑みを浮かべる。

 状況は大きく動いた。ろくな予想も立てることはできないが、この状態でアンチ=スパイラルとの交渉はやる他ないという覚悟は決まった。
 ――ならば、アンチ=スパイラルとの交渉をその主な目的としてきた彼ら7人の同志達、その目的の第一段階が果たされることがほぼ確定した今、
ギアスの制御下にあるチミルフを除いた他5名の動向、とりわけグアームに関しては確実に把握しておく必要がある。
17始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:50:07 ID:zmEQZZoa
 確かに東方不敗やニコラス=D=ウルフウッドに関しても警戒をする必要はある。だが、仮に何かたくらんでいるとしてもこの両名がルルーシュが知り得ぬ事実を知っている可能性は低い。
そして知りえる情報から動きを予想、知恵比べならばこの二人に負けることはない。
 だが、情報という見地から見て6人中唯一ルルーシュを上回っているのがグアームだ。
 ルルーシュのもつ情報のほとんどはグアームから与えられたものだ。もちろん、状況が状況だけに与えられた情報に嘘があるとまでは思わない、しかし与えられた情報が全てではない、
隠されている情報があることもまた間違いない。

 そして今、ルルーシュの手元にはつい先ほど機械から引き出したデータ、とある資料がある。
 それはこの月そのものに偽装されている戦艦、カテドラル=テラのものだった。

 グアーム、そしてアディーネの二人は未だ隠しおおせているつもりなのかもしれないがこまめに全員の所在をチェックしていたルルーシュにとってアディーネが見せた動き、
突然単独で無意味なエリアへと移動したことからカテドラル=テラのことを掴むのはそれほど難しいことではなかった。

(事を成す前から逃げ出す算段か……。ふっ、その用心深さは認めてやらんでもない……。
が、死を覚悟して事を成すという気概で挑まねばならないこともあるということを学んでおくべきだったなグアームよ)
 心の内においてルルーシュはグアームを冷笑する。
 
(しょせんは獣か、成すべきことを成さずに逃げ出した後、一体貴様はどう生きるつもりなのだグアームよ)
 自分は違う、ナナリーが平和に笑って過ごせる世界を作るため、そして皇帝に復讐するためならばそのほか全てのものを犠牲にするだけの覚悟がある。 
 そう、ナナリーが笑って暮らせる世界を作るためならどんなものをも犠牲にするはずだった。

 彼の作る世界には欠かせないはずだった少年スザク、それを奪ったヴィラルは先ほど彼自身が言った通り一枚きりの手札であるが故に今はまだ手を出せない。
 しかし、他の天元突破覚醒を果たしたものが現れれば、その時はアンチ=スパイラルへの贄として彼自身の手でヴィラルを……。

 どの道、すでにヴィラルの運命は決まっている。
 アンチ=スパイラルとしてもスパイラル=ネメシスを引き起こしかねない存在となったヴィラルを生かしておくだけの理由はない。 

 つまり、後はそれ、ヴィラルの運命に幕を下ろすのを果たすのが自分か、アンチスパイラルかの違いでしかない。
 とはいえできるものならば彼自身の手で始末をつけたいのもまた事実だ。

(ウルフウッド……貴様には期待しているぞ) 
 闇の中、少年はただ嗤う。


18始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/22(土) 22:57:54 ID:zmEQZZoa



「……ふっ」
「なんだい急に、気持ち悪いねえ」
 通路を共に歩くアディーネとグアーム。
 そのグアームが突然浮かべた笑いに言葉通りアディーネは心底気持ち悪そうな表情を浮かべた。

「いや何、少々思い出したことがあっての。まあ、おぬしが気にするようなことではない。それよりもアディーネ、アレのほうはどうなっている?」 
「……起動するだけなら今すぐにでも。ただ、あいつに気がつかれないように起動まで持っていくには正直もう少し時間が欲しいね」
 アディーネは答える。

 アレ、すなわち戦艦カテドラル=テラ。
 実際のところその起動だけならばそれほど時間はかからない。だが、そのシステムの一部はこの会場の運営に利用されているのだ。
 具体的にはこのテッペリンから会場内への転移システム、図書館に隠してある螺旋界認識転移システム。

 これらのシステムの制御の大元はカテドラル=テラの制御システムに依存している。

 よってルルーシュに気がつかれないようにカテドラル=テラを起動しようと思えばそれら複数のプログラムから一気にシステムの制御を抜き取り、
起動まで持っていく必要がある。

「なるほどな、では引き続き任せてよいか」
「ああ」
 それだけ聞くとグアームはアディーネと別れ格納庫、そこにおいてある彼専用ガンメンたるゲンバーの元へと向かう。

「……思惑通り、そうおぬしは思っておるのかもしれんの?」
 アディーネと別れ一人になったグアームはにいと、その口を大きく歪ませる。その口から出てくるのはルルーシュへの嘲りの言葉だ。

「じゃがのう……、アンチ=スパイラル。アレはそんなに生易しいものではないぞ? おぬしの頭では及びもつかぬ相手というものも世の中には存在するのじゃ。
 確かに天元突破者を作り出すというおぬしの考えは一応今のところ成功しておる。じゃが、あれを相手に圧力をかけるなど言うのは少々身の程を知らなさ過ぎじゃ」

 今となってはただ一人、アンチ=スパイラルのことを知るが故にグアームはロージェノムが逃げ出した気持ちも理解できないわけではない。
彼がロージェノムに怒りを覚えるのはその逃げ出したということ、それ自体ではなく、彼を置いて自分ひとりで逃げ出したこと、そこに尽きる。

「ルルーシュよ、お主はお主でせいぜいあがくが良い。ワシは一足先に逃げ出させてもらうかがの」

 ヴィラルが覚醒したことはグアームにとってはある意味幸運であり、ある意味不幸なことではあった。
 
 幸運な点はヴィラルへの復讐をルルーシュが諦めていないこと。本人は気が付いていないかもしれないが第二、第三の天元突破者を作ろうという考えは
当初ルルーシュから聞かされた考えからすれば余分だ。ヴィラルへの復讐心がある限り、彼の目は曇りつづける。

 不幸な点はヴィラルをグアームが利用できるだけの余地がゼロになったという点だ。

「まったく……新たに二人も都合つけなければならんとはやっかいじゃのう」

19始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:00:31 ID:x2COV+jA
 人数の都合。それこそがグアームがルルーシュに隠している最大の秘密だ。
 戦艦カテドラル=テラ、最悪、その存在まではルルーシュにばれても構わない。その真の機能を悟られることさえなければ
ルル―シュは単にグアームたちが逃走の準備をしているだけと考えるに違いない。
 
 だが、その真の機能までは決して彼には知られてはならない。
 もし、ルルーシュにカテドラル=テラの真の機能がばれてしまうようなことこの状況の全てがひっくり返りかねない。

 それはすなわち、カテドラル=テラに搭載されている螺旋界認識転移システム。
 その最初の目的は螺旋の戦士達が別次元に潜むアンチ=スパイラルを討つ、その為に搭載されたものだったのだ。

 ――これはつまり。
 十分な螺旋力さえあれば、カテドラル=テラによって別次元に移動できるということだ。

 とはいえ、生半可な螺旋力では別次元に移動することは不可能だ。
 目安として最低でも図書館の封印を破るほどの量、平均的な螺旋戦士4人分の螺旋力が必要となる。
 ……逆にいうならそれだけの数の螺旋覚醒者さえいれば、元の世界に帰還することも、ロージェノムの後を追いかけることも不可能ではない。

(ワシは一言も嘘をついておらんぞ?)
 グアームは笑う。
 確かにルルーシュに協力を要請した際、彼に語ったロージェノムが次元移動に必要な道具を持って行ったために
彼を追いかけることは不可能という話は嘘ではない。
 何せ獣人には螺旋力がないのだから。
螺旋界認識転移システムが残されていようともそれは彼らにとってはロージェノムを追う役には立たない。ロージェノムが奪っていったのは
ガンメンに搭載されているものと同じく、獣人でも扱える電力で作動する転移装置の類だった。
 
 そしてもう一つ、ルルーシュによってアンチスパイラルの動向が明らかになるまでうかつに動くこともできなかった。

 ロージェノムの逃亡が発覚した直後、グアームが適当な螺旋覚醒者を会場内から回収せずに
ルルーシュ達少数をアドバイザーにするという方法をとったのもこちらが下手に動けばアンチ=スパイラルに襲撃される恐れがあったためだ。
20始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:03:37 ID:x2COV+jA

(せいぜいおぬしはアンチ=スパイラルを相手に好き勝手やるが良い) 
 だが今や、それらの問題は解決された。
 今のルルーシュにとっての関心事はアンチ=スパイラルとヴィラルに向いている。
 そしてアンチ=スパイラルも単なる螺旋覚醒者程度を引き連れて逃亡するグアームにはそれほどの注意を払いはすまい。
 どれほど上手く行くかまではわからないが天元突破覚醒者が出てくるであろう会場内にその注意は向けられるはずだ。
 そう、囮としてこれ以上のものはない。
 すなわち、これ以上ないほどに上出来な、脱出と復讐のチャンスが回ってきたのが今なのだ。

(……あまりやりすぎてくれるなよ?)
 ウルフウッドへ胸中でそっと呟く。
 彼が襲撃するのは後々彼の手ごまとなりうるもの達だ。適当に死にかけたところでルルーシュにばれないように回収して螺旋力を搾り出すエンジンとなってもらわねば困る。
 それともあるいは……
 天元突破覚醒者の可能性があるものとしてルルーシュが纏め上げた残る参加者のデータ。
 その中の螺旋遺伝子の覚醒を果たした何人かをグアームは思い出す。

 カミナやガッシュ・ベルといったものたちは強い螺旋力とは裏腹に甘く、愚かだ。
 小早川ゆたかや菫川ねねねといったもの達はその螺旋力と裏腹にその戦闘能力は脆弱だ。
 
 こういった参加者を利用することもあるかもしれない。

 思惑を胸に獣は進む。
 己のために他の全てを犠牲にして。





(……そういうことか)
 目の前を歩いていくグアームを前に東方不敗は心の中で納得する。
 
 ……人であれ、獣であれ、その瞳に映っていようともまるで気配を発しないものは
意識の中に入ってこない。俗に隠行と呼ばれる技術によって東方不敗はグアームの傍らに潜む。
21始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:06:23 ID:x2COV+jA
 先の会談の最中から感じ取っていたグアームの余裕。
 それが気になった東方不敗はこっそりとグアームの後を追尾しその余裕の正体に思い当たる。

(おそらくは宇宙船か、何か……。アンチ=スパイラルの襲撃をも想定済みだとするならば宇宙戦艦とでも言ったところか)
 そのようなものがあると知れたのは二重に僥倖だ。

 一つは、東方不敗自らがアンチ=スパイラルの元に行くことができる手段の確保。
 そしてもう一つ。

(ふむ……こやつが戦艦の起動をも視野に入れておるならば、ワシもある程度動く準備をしておかなくてはならんな)
 このままルルーシュの指示に従ったままアンチ=スパイラルとの交渉を待つ、などという甘い考えでは気がついたときにはこの自分さえもが彼らの攻撃目標へと成り果てていることは十分考えられる。

(どうせお主もそうなのであろう?)
 目の前をある獣人に東方不敗は届かぬ言葉を投げつける。
 目の前の獣人がアディーネ以外他の誰にも宇宙船艦のことを語ってはいない以上、いざという時、自分達だけが逃げ出すつもり、自分のために他者を利用し使い捨てるつもりでいることは明白だ。
 ならば何を遠慮することがあろうか。
 他者を利用しようとするものは己もまた利用されるものであると知るが良い。

 交鈔に使える天元突破者とアンチ=スパイラルの下へ移動するだけの手段。
 その両方が今や東方不敗の間近に転がっている。

(あと少し、もう少しだ)
 目指すものはもう少し。
 東方不敗はグアームから距離をとる。

(おぬしは破滅の道をいけ。ワシはワシの道を行く)
 最後にそう呟くと東方不敗もまた自らの道を歩みだす。
 その先にある未来を見据えて。

22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:07:53 ID:cb4LMb0Z
 
23始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:08:43 ID:x2COV+jA



(……なあ、トンガリ。おどれは一体どう思っとるんや)
 心の中で、ウルフウッドはヴァッシュへと問い掛ける。

 先の天元突破の場においての構図、対主催陣とヴィラル・シャマル達との戦いはウルフウッドにとっては特別な意味合いがあった。

 片や元獣人と元戦闘プログラム。
 片や異能を持ちこそすれどただの人間。

 そして

「愛こそ至高。愛こそ……天下だぁあああああああ!!」
 愛を叫ぶモノ達と

「バオウ・ザケルガァアアアアアアアアアア!!」
 容易く相手、いや全てを破壊し尽くすだけの力を持ちながらも、他者の命は奪わずに戦闘能力を奪い去るだけに留めた甘い者達。

 それら全ての要素がウルフウッドの中で一人の男のイメージと結びつく。

「ラーヴ アーンド ピース!!」
 争いに満ちたあの星でそんなふざけた言葉を叫びながら数多の争いを何とかして止めようと首を突っ込みつづけた男。
 話をするために、その手に敢えて銃を取りながらも、決して誰一人としてその手で命を奪うことなどなかった男。

 ヴァッシュ・ザ・スタンピート。

 ヒトではない「プラント」の人型の突然変異種という存在でありながら、誰よりも人間らしくあろうとし的その通りに生きてきた男。
 
 結局人間らしくあろうとした彼はこの殺し合いの舞台のさなかにその命を失った。

 そして、彼の代わりにこの殺し合いの場において愛を叫び、そのために平気で他者を傷つける人でなき者達が
この舞台における切り札、その輝きを手に入れた。

「なあ、トンガリ。おどれの代わりにワイが確かめたるわ。おどれが本当に正しかったのか。
おどれが本当はどんな生き方をするべきだったのかをな」
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:09:17 ID:cb4LMb0Z
 
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:10:56 ID:5Hi3Fhll
 
26始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:11:00 ID:x2COV+jA
 ヴィラルとシャマルの回収に成功した後、会場内に残されるのは基本的には平和を貫く人間達のみだと考えて良い。
 他者を傷つけることがあっても命を奪うことを避けようとする彼らの生き方は、ある意味ヴァッシュ・ザ・スタンピートのそれと変わらない。

 もし仮に残された者たちがウルフウッドに敗北、あるいは勝利したとしても
彼らが天元突破の輝きを持ち得ないということになれば、それはヴァッシュの生き方が誤りだったことの証明。
 あの男がもっと傲慢に自分のために力を振るってさえいれば、より早く
この殺し合いを止めることも可能だったということ、結果的により多くの命を救うことができたということだ。

(そん時はあの世のあいつを思いっきり嘲笑ったる。おまえの人生はこんな下らんやり直しをさせられたワイなんかよりももっと下らんものやったんや)

 そして、万が一にも残された者たちが新たな輝きを手に入れるというのであれば、それはウルフウッドの敗北だ。

(そうやな、そん時はおどれに思いっきり謝った後。おどれみたくラーブアーンドピースとか叫びながら
争いを止めるために戦ってやってもええわ。誰一人として殺さんとな)

 ――そうして、男は再び会場へと向かう準備を整える。

 男が背負うは罪の証たる十字架。
  
 最強の個人用兵装バニッシャーを背負って男は進む。

 その先に待つのは新たな血の道かあるいは――。
【王都テッペリン/二日目/日中(実験場内時間)】

【チーム:七人の同志】
(ルルーシュ、チミルフ、アディーネ、シトマンドラ、グアーム、ウルフウッド、東方不敗)


[共通方針]:各々の悲願を成就させるため、アンチ=スパイラル降臨の儀式を完遂する。内容は以下の通り。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:11:07 ID:cb4LMb0Z
 
28始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:11:54 ID:x2COV+jA
1:真なる螺旋力覚醒者(天元突破)をアンチ=スパイラルを誘き出す餌とする。
2:ルルーシュの指揮の下、頃合を見計らって『試練』となる戦力を投入。参加者たちに意図的に逆境を与え、強引にでも螺旋力の覚醒を促す。
3:投入する戦力は現在のところチミルフ、ウルフウッド、東方不敗の三名を予定。生存者たちの状況により随時対応。
4:試練を与える前に真なる螺旋力者が現れた場合、また別途にアンチ=スパイラルとの接触の機会が訪れた場合には、逐一対応。
5:同志七人の立場は皆対等であり、ルルーシュとチミルフを除いて支配従属の関係にはならない。
6:アンチ=スパイラルとの接触に成功した後は、ルルーシュが交渉を試み、その結果によって各自行動。
[備考]
※その他、詳細な計画の内容は「天のさだめを誰が知るV」参照。
※ルルーシュの推測を含めた実験の全容については、「天のさだめを誰が知るU」「天のさだめを誰が知るW」参照。
※多元宇宙を渡る術は全て螺旋王が持ち去りましたが、資料や実験を進める上で必要不可欠な設備、各世界から強奪した道具などは残って
います。
※ルルーシュら実験に参加していた四名は、テッペリンの設備で体力と怪我を回復しました。
※会場の空間凍結の解除のタイミング、ならびにチミルフ、グアーム、東方不敗がいつ会場内に進入するかは後続の書き手にお任せします。

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:首輪解除、健康
[装備]:ベレッタM92(残弾11/15)@カウボーイビバップ、ゼロのコスチューム一式@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式(-メモ)、メロン×10個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、消防服 、
    アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1、
    毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿、支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、
    ジャン・ハボックの煙草(残り15本)@鋼の錬金術師
    『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
    『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』@アニロワ2nd オリジナル
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:12:11 ID:cb4LMb0Z
 
30始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:12:28 ID:x2COV+jA
    参加者詳細名簿(ルルのページ欠損)、詳細名簿+(読子、アニタ、ルルのページ欠損)
    支給品リスト(ゼロの仮面とマント欠損)、考察メモ、警戒者リスト、ダイヤグラムのコピー、携帯電話@アニロワ2ndオリジナル
    ゼロの仮面@コードギアス反逆のルルーシュ、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]
基本:何を代償にしてでもナナリーの下に帰る。七人の同志の一人として行動。
1:ヴィラルの回収を待ってアンチ=スパイラルとの交渉を開始する。
2:それまで、手持ちの情報を再度洗い直す。
3:他の同志たちの行動にも目を配る。特にウルフウッド、東方不敗、グアームを要注意。
4:アンチ=スパイラルのより詳細な情報が欲しい。
5:謎のハッキングについて警戒する。
[備考]
※螺旋王の残した資料から、多元宇宙や実験の全容(一部推測によるものを含む)を理解しました。
※謎のハッキングについては外伝「かつてあったエクソダス」参照。
※カテドラル=テラの存在を知りました
【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】
[状態]:敗北感の克服による強い使命感、ギアス(忠誠を誓う相手の書き換え)
[装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン
[道具]:デイパック、支給品一式、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
    ビャコウ(右脚部小破、コクピットハッチ全損、稼動には支障なし@天元突破グレンラガン)
[思考]
基本A:獣人以外を最終的には皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。
  B:王であるルルーシュの命に従い、ルルーシュの願いを叶える。
0:ルルーシュの臣下として務めを果たす。七人の同志の一人として行動。
1:ルルーシュの命に従い会場内からヴィラル、シャマル、グレンラガンを回収。
2:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。
3:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。
[備考]
※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。
※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。
31始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:13:05 ID:x2COV+jA
※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。
※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。
※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。
※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。
※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない)
※『忠誠を誓うべき相手は螺旋王ではなく、ルルーシュである』という認識の書き換えをギアスで受けました。
 螺旋王に対して抱いていた忠誠が全てルルーシュに向きます。武人たる彼は自害しろとルルーシュにいわれればするでしょう。獣人としての誇りは持っていますが、螺旋王に対する忠誠心は失っています。
※夜なのに行動が出来ることについては余り考えていなません(夜行性の獣人もいるため)。
【流麗のアディーネ@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪、ルルーシュに対する不信
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
基本:七人の同志の一人として行動。
1:カテドラル・テラを調査する
2:ルルーシュのギアスに対して警戒する

【神速のシトマンドラ@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
基本:七人の同志の一人として行動。
1:任務に戻る。
2:ウルフウッドや東方不敗が情報を欲したとしても、ルルーシュのギアスに関しては悟られないよう根回しする。
3:螺旋王とルルーシュ、どちらが自分の"王"に相応しいか考える。

【不動のグアーム@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪、ルルーシュに対する不信
[装備]:不明
[道具]:不明
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:13:32 ID:cb4LMb0Z
 
33始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:14:03 ID:x2COV+jA
[思考]
基本:七人の同志の一人として行動。
1:自身の生存を最優先とする
2:ルルーシュの行動を手伝うと見せかけ、コントロールする。
3:カテドラル=テラのエンジンとなりうる螺旋覚醒者を見繕う。

【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:首輪解除、軽いイライラ、聖杯の泥、自罰的傾向、螺旋力覚醒
[装備]:アゾット剣@Fate/stay night、デザートイーグル(残弾:8/8発)@現実(予備マガジン×1)、
    パニッシャー(重機関銃残弾100%/ロケットランチャー100%)@トライガン
[道具]:支給品一式、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書@トライガン、予備弾セット@アニロワ2ndオリジナル
[思考]
 基本思考:自分を甦らせたことを“無し”にしようとする神に復讐する(@絶対に死なないA外道の道をあえて進む)。
      人間を“試し”、ヴァッシュへの感情を整理する。七人の同志の一人として行動。
1:もうすこしぶらぶらする。
2:試練役を買って出る意志はある。が、もやしっ子の言いなりになるんは癪や。
3:売られた喧嘩は買うが自分の生存を最優先。チミルフ含め、他者は適当に利用して適当に裏切る。
4:神への復讐の一環として、殺人も続行。女子供にも容赦はしない。迷いもない。  
5:自分の手でゲームを終わらせたいが、無謀なことはしない。
6:ヴァッシュに対して深い■■■。
7:ヴァッシュの意思を継ぐ者や、シモンなど自分が殺した人間の関係者に倒されるなら本望(本人は気付いていません)。
8:チミルフに軽く失望。
9:生きる。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。
※ヴッシュ・ザ・スタンピードへの思いは――――。
※シータを槍(ストラーダ)、鎌鼬(ルフトメッサー)、高速移動、ロボットの使い手と認識しました。
※言峰の言葉により感情の波が一定していません。躁鬱的な傾向が見られます。
※シータのロボットは飛行、レーザー機能持ちであることを確認。
※螺旋界認識転移システムの場所と効果を理解しました。
34始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:16:29 ID:x2COV+jA
※五回目の放送を聞き逃しました。
※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルに関する情報を聞きました。
※螺旋力覚醒
※ルルーシュの指示だとウルフウッドの投入のタイミングはチミルフ達が回収に成功してから少し後です。
しかしこのタイミングをウルフウッドが守るかどうかはわかりません。

【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:首輪解除、螺旋力覚醒、疲労(小)、火傷
[装備]:天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night、ボロボロのマント、マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム
[道具]:ロージェノムのコアドリル×1@天元突破グレンラガン、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
    風雲再起(首輪解除)@機動武闘伝Gガンダム、ゼロの衣装(仮面とマントなし)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]:
基本方針:現世へ帰り地球人類抹殺を果たす。アンチ=スパイラルと接触、力を貸す。七人の同志の一人として行動。
0:アンチ=スパイラルの力を得たい。
1:マスターガンダムの調子を見るついでに、傷を癒す。
2:アンチ=スパイラルとの接触を図るため、ルルーシュに賛同。が、完全には信用しない。
3:アンチ=スパイラルを初め、多元宇宙や他の参加者、実験の全容などの情報を入手したい。
4:ルルーシュがチミルフを手懐けられた理由について考える。
5:ドモンと正真正銘の真剣勝負がしたい。
6:しかし、ここに居るドモンが本当に自分の知るドモンか疑問。
7:ジン、ギルガメッシュ、カミナ、ガッシュを特に危険視。
8:カミナに……
[備考]
※クロスミラージュの多元宇宙説を知りました。ドモンが別世界の住人である可能性を懸念しています。
※ニアが螺旋王に通じていると思っています。
※クロスミラージュがトランシーバーのようなもので、遠隔地から声を飛ばしているものと思っています。
※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。
『なんらかの要因』は火事場の馬鹿力であると推測しました。
 Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。
※自分自身が螺旋力に覚醒したこと、及び、魔力の代用としての螺旋力の運用に気付きました。
※カミナを非常に気に入ったようです。
※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルについての情報を入手しました。
※計画に参加する上で、多元宇宙や実験に関する最低限の情報を入手しました。
※治療のせいで病状が加速していることが判明しました
※カテドラル=テラの存在を察知しました。(細かい機能などに関しては未だ理解していません)
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:16:51 ID:cb4LMb0Z
 
36始まりは終わりの始まり ◆EA1tgeYbP. :2008/11/23(日) 22:19:55 ID:x2COV+jA


 彼、彼ら、それ、それら。
 その存在を指し示すのにこれらの呼び方は全てが正しく、全てが間違っている。
 
 アンチ=スパイラル、螺旋族からはそう呼ばれる存在。元は螺旋の民でありながらも螺旋の力の進化の果てにある
破滅を知って自らの進化、肉体をさえをも封印し、他の螺旋族を統制しつづける道を選んだ存在。

 彼はアンチ=スパイラルというただ一つの思念体であり、それらはアンチ=スパイラルという名の
螺旋の民を管理するためのプログラムの集合体だ。

 彼らは進化の先にある破滅、スパイラル=ネメシスからこの宇宙を守るという総意であり、それはそのための単一的なプログラムだ。

 そうして今、便宜上彼と呼ぶその存在はとある箱庭の様子を注視する。
 
 螺旋族の元戦士、ロージェノムによって数多くのの世界から螺旋遺伝子を持つ者どもを集めて、行われた殺し合い。
 無数の多元世界の中においてただ一つアンチ=スパイラルを打ち破った存在、
天元突破覚醒者を自ら作りださんとしたその試みはロージェノムの逃走によって、その幕を下ろした。……はずだった。

「……愚かなる螺旋の者達よ、何故に螺旋の進化を促す? 何故自ら滅びへの道を歩む?」
 事実、アンチ=スパイラルとしてはロージェノムが逃亡した時点で
かの箱庭に残された螺旋の者に対しての興味はほとんど失っていたのだ。
 力も数も足りぬ螺旋族なぞ、わざわざ滅ぼしに行くまでもない。
 そしてそれは逃げ出したロージェノムに対しても同様だ。
 無駄な試みで螺旋遺伝子を持つ者を無駄に使い潰すだけの存在などほんのわずかの恐喝を加えて、後は放置しておいてもかまわない。

 だが、ロージェノムの逃亡したあと、わずかな時を経て殺し合いという名の実験は再開された。
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 22:26:24 ID:cb4LMb0Z
 
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/24(月) 21:12:55 ID:OyXsfrEx
投下乙です!
・・・って、アンチスパイラルやる気ねぇww
39代理:始まりは終わりの始まり ◇EA1tgeYbP.:2008/11/24(月) 23:08:30 ID:rijbLcPp
――そして。

「……まさかあのような試みで真なる螺旋覚醒が引き起こせるとはな」
 驚きとわずかの哀れみを込めてアンチ=スパイラルは呟く。

「ほとほと理解に困る存在だよ、螺旋族というものはな」
 放置しておいて構わなかったはずの実験は真の覚醒を果たしうることが判明した時点で一気にその危険度は跳ね上がった。
 だが箱庭にいる者達、その数の少なさゆえにあの世界に埋め込んである殲滅プログラムは作動しない。
 つまり、あの螺旋覚醒者はアンチ=スパイラル自らが滅ぼさなければならないということだ。 
 無論、その様子は箱庭に残されし螺旋族どもに見せつける。
 それによって絶望を引き起こし箱庭の中の螺旋の力をそぐためだ。

 そして、逃げ出したロージェノム。
 彼自身は未だ気がついてはいないだろうが、螺旋覚醒を果たすだけの舞台を作り出すことが可能な彼を放置しておくこともできなくなった。
 それはあの実験を続けるもの達も同様だ。
 いかなる意図があってロージェノムの実験の後を引き継いだのかまでは理解できないが、それでも螺旋覚醒を引き起こすすべを知る者を生かしておくのは危険すぎる。
 いや、ロージェノムの逃亡後螺旋覚醒が果たされたことを鑑みれば、その危険度は未だに無知なるロージェノムより高いとさえ言えよう。

 ――だが、動くにはまだ早い。最後に後一つだけ確かめることがある。
 
「はたしてあの螺旋覚醒者は箱庭から抜け出せるのかな?」
 真なる螺旋覚醒を果たした箱庭の螺旋族。
 だが、その覚醒にはあの特別な箱庭の空間、螺旋遺伝子の覚醒を促す特殊なフィールドもその要因となっている。

 わかりやすく言ってしまえば、子供が自転車に乗るときに補助輪を付けて乗っているのと同じ事だ。
 だが、真なる螺旋覚醒を果たし、そのまま箱庭の外に出るということはその補助輪を外すということに他ならない。
40代理:始まりは終わりの始まり ◇EA1tgeYbP.:2008/11/24(月) 23:09:33 ID:rijbLcPp
ただの螺旋遺伝子の覚醒というだけならば目覚めた螺旋遺伝子のバランスはそれほど崩れることはないだろう。
 だが、真なる螺旋覚醒ともなれば話は別だ。
 その圧倒的なパワー、普通の螺旋覚醒とは比較にならないそれを御し損ねればそれはスパイラル=ネメシスには及ばぬとはいえ大きな破壊を引き起こす。その破壊に螺旋覚醒者のからだ自体も耐えられまい。

 アンチ=スパイラルの見立てではその可能性はおよそ5割。

「……さて、どうなるかな?」 
 ロージェノムによって行われた今回の実験。
 その真なる観察者としてアンチ=スパイラルはその結果が導き出されるのを待ちつづける。
 
【アンチ=スパイラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:???
[装備]:???
[道具]:???
[目的]スパイラル=ネメシスをくい止める。
0:真の螺旋覚醒者が箱庭から無事に出てこれるかどうか見極める。
1:出てこれるようなら実験を続けた者達ごと攻撃を加える。その際そのシーンを箱庭に残る者たちに見せつけることによって彼らの絶望を誘う。
2:事が終わったらロージェノムを補足する。
3:一応、箱庭に残る者達の監視は続ける。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 16:53:00 ID:npQ9jdkn
 
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 21:06:45 ID:owCGRWWK
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/25(木) 20:15:37 ID:BMnreMJE
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/03(土) 15:08:40 ID:wt5s4qKR
 
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/09(金) 23:56:01 ID:i/0gwHXx
最終回楽しみだ
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/17(土) 22:15:47 ID:7etPwe3q
hosyu
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:47:17 ID:iwkFHMQ5
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 16:57:18 ID:NCb1bSz6
 
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/31(土) 21:12:16 ID:h83CsGcv
アニロワ2ndここに完結!!
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/02(月) 11:46:27 ID:8y+t7J2w
↑勝手に終わらすな。もう少しかかるだけだ。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/03(火) 13:25:23 ID:i1bEmbTx
↑2、3ヶ月待っている人間の気持ちにもなってくれ
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/04(水) 21:27:06 ID:QEyDinTD
明鏡止水の心が有れば釣りも煽りも全スルー余裕です
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/09(月) 20:54:49 ID:6GBDFi+s
そろそろ前半のリレーが終わりそうだな
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/14(土) 11:41:20 ID:UQG/hZHC
後半もかなりできてるらしいぞ!
今からwktk
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 19:55:21 ID:nLDJDdeh
総集編と最終章が3日かけて投下されるので1度だけあげ
皆さん来てください
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 20:48:58 ID:hv+IS0W8
アニロワ1と2…
正に月とスッポンな出来だったな
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:34:31 ID:GkY2hcMC
で?投下は何時ごろからなの?
個人的な話で悪いがもう風呂入るよ
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:38:04 ID:nIxLApVX
21:40分頃のはず
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:39:16 ID:GiBWS5Wk
あと1分!
60幕 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:41:52 ID:a8bv/q/X

【サブタイトル――幕】



――――幕が上がる。


真っ黒なステージをカッと照らすピンライト。
そこには一人、儚げな印象の少女が佇んでいた。

「ようこそ、いらっしゃいませ……なの」

にこり、と少女は形の整った口元を歪ませた。


「本日の総合司会とナレーターを務めさせてもらう光坂高校一年、一ノ瀬ことみ(仮)なの。
 ひらがなみっつでことみちゃん。後ろの(仮)はもう消えてしまうけれど……脳内補完して欲しいの」


そして馬鹿丁寧にぺこり、と緩慢な動作で客席に向けて仰々しいお辞儀をした。

ことみはクリーム色の厚手の制服に袖を通し、深い藍の髪を頭の上の方で小さく纏めていた。
世間一般でいう、ツーサイドアップという髪型だ。
顔立ちは極めて幼くまるで十三、四と名乗っても十分に通用するだろう。
だが、ブレザーを盛り上げる二つの膨らみの存在感は圧倒的だ。
少女の童顔と相まって、それは言葉に出来ないほどの破壊力を秘めていた。

しかし、一ノ瀬ことみ、と少女が名乗った瞬間観客から唸るようなどよめきが巻き起こったこともまた事実だ。
それは何も彼女が巨乳だったからではない。もっと別の理由がある。

『何故ことみ』『つーか誰?』『参戦作品じゃないのに』『能登可愛いよ能登』『最初からことみさんが出て来ると思っていました』
……反応は様々だ。

「"なの"といっても……どこかの白い悪魔ではないの……そこは間違えないで欲しいの」

少女は今、とても大切なことを言った。
本物の魔王は――いや、機動六課のエースオブエースは――今頃、別の場所で戦っているのだ。


「さて、アニメキャラバトルロワイアル2ndも……ついに最終回。開始から約一年半。八十二という参加者も残り十五人。
 総話数は約三百! 実はわたしも……こっそりと登場しているの。
 気になる人、忘れていた人は246話『回葬――言峰綺礼』を今すぐチェック!……なの」


こくん、と少女は満足げに小さく頷く。

61名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:42:12 ID:nIxLApVX
 
62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:42:26 ID:AHmQWIm+
 
63名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:42:27 ID:1e5ngpyp
 
64名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:42:48 ID:LmfGvOmX
 
65名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:42:48 ID:AHmQWIm+
 
66幕 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:42:49 ID:a8bv/q/X
「……某ドキュメンタリー番組のパロディ形式でこのお話は進行するの。
 ドキュメンタリーという言葉の意味は"虚構を用いず、事実をありのままに記録すること"
 ただ、このお話はきわめてメタ的な視点……バックステージ的な要素を多分に含むとは断っておくの。
 そして忘れてはならないのは死者スレの文脈から乖離させなければならない≠ニいうこと。
 死人や1stキャラがパーソナリティをやっていたら……何もかも全部ゴッチャになってしまう。
 そんな訳で、これまたものすごくメタ的な理由でアニ2に登場したわたしが司会をするのが妥当だと判断した次第なの。
 でも……わたし一人では司会進行をするにはあまりに不向き……喋るのは……得意じゃないの。そこで、」


スッとことみが目配せをした。 
するとスポットライトがもう一台点灯し、舞台袖に向けられた。

「ったく何であたしが……」

若干不満げな表情を浮かべながらもう一人少女が歩み出て来た。
ことみと同じクリーム色の制服を着た少女だった。
紫色のロングヘアーに白のリボン。若干つり上がった眼は気の強そうな彼女の性格を伺わせる。

「光坂高校三年、藤林杏(仮)よ。今日はあたしも司会を、それとインタビュアーも務めさせてもらったわ」
「そんな訳で……様々な事情から……杏ちゃんにも……手伝ってもらうことにしたの」 
「ま、やるからには全力でやるからね。ともあれ『アニロワ2ndの すごい 総集編』をお楽しみに」

ことみが再度満足げな顔付きでこくこく、と。

「これで……百人力なの……」
「んーそれはいいんだけど……っていうか、何であたしだったの? 朋也とか風子の方が適当だったんじゃないの」

訝しげな眼で杏がことみに訊いた。
すると、ことみがさも当然といった様子で、

「実は……杏ちゃんもアニロワ2ndに無関係とは言えない存在なの」

と、断言した。

「……それは、初耳なんだけど」

杏としてはことみの言葉は意外なモノだった。
CLANNADからは名前ネタでことみがアニロワ2ndには登場しただけだ。
他に鍵作品のキャラクターが参戦しているということもない。では、何故?

「その、見た目が……」
「見た目?」
「参戦している某作品の姉とそっく――」

最後の一言を言い終えそうになった瞬間、杏の手がことみの口元に押し当てられた。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:00 ID:TCuxyBJO
68名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:27 ID:nIxLApVX
 
69幕 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:43:31 ID:a8bv/q/X
「……それはあまりにも危険過ぎる台詞だわ」

顔面を蒼白に染めた杏が力なく首を横に振った。
藤林杏、直情的なようで大人の事情を考慮出来る頭のいい子である。

「んぐっ……もがっ……!」

じたばたとことみが苦しそうに杏へと抵抗する。
大きな瞳に涙をいっぱいに溜めて、フルフルと身体を震わせる。

「ぷはっ! っ……はぁっ…………乱暴なの」
「言っちゃダメなことってあるのよ?」
「っ――」

満面の笑顔で杏がことみに言った。と、同時に両の指をワキワキと動かした。
その動作を見てことみはサァッと表情を変えた。
彼女は以前、不意を突かれ杏に『好きなようにされた』経験がある。その際の恥辱がフラッシュバックしたのである。

「……わたしは、何も知らないの」
「よろしい」

頬を赤く染めたことみが胸元を庇いながら、サッと顔を伏せた。

「さて、断っておく点としてこれは強烈なメタネタ、そして総集編な訳ね。
 最終回へと気持ちよく入っていけるように。難解なアニロワ2ndの流れを分かりやすく説明できるように。
 もしくは、初めてアニロワ2ndを見た人にも最終回を楽しんでもらえるように……そんな所かしらね。
 本編よりも、外伝や死者スレの方が立ち位置としては近いと思うわ」
「……詳しい注意書きはコレを見るの」

ことみの台詞と共に、二人の背後にあった巨大スクリーンに光が点った。


――CAUTION――

◆ご注意
※このSSには精神的嫌悪感を与える可能性のある濃厚なメタパロディが含まれています。
 以下に該当する方は閲覧をおススメできません。

・「メタフィクション」が許容出来ない方。
・ロワネタ含む各種パロディ、ロワ参加作品外キャラの登場、死者が出て来ることなどに嫌悪感を覚える方。
・死者スレ的なノリが無理な方。
・キャラ崩れは正直認めたくない方。
・今までのアニロワ2ndのイメージを崩したくない方。
・アニロワ2ndのネタバレを回避したい方。
・現実と虚構の区別がつかない方。
・生きているのがつらい方。
・犯罪行為をする予定のある方。
・何かにすがりたい方。
・殺人癖のある方。

――CAUTION――

「社会的に影響があるとか残虐描写につき放送禁止とか、口すっぱく言われるのはあれとかあの作品くらいで止めておきたい所ね」
「……杏ちゃんも十分危険なこと言ってるの」
「別に作品名は言ってないからいいじゃない。『中には誰もいないんじゃないかな? かな?』よ。もっとも、首が飛ぶよりマシだけど」

ことみは首を振って耳を塞ぎ、杏の台詞が聞こえない振りをした。
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:32 ID:BAGxo9yT
  
71名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:37 ID:CGAOR4Iw
72名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:39 ID:GiBWS5Wk
 
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:43:45 ID:AHmQWIm+
 
74幕 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:44:07 ID:a8bv/q/X
「…………総集片を始めるの」
「あ、もう! ……文章を読む時は部屋を明るくしてディスプレイからしっかり離れて見るように」

ことみと杏は観客の方にまっすぐ向き直った。
ひとまずの流れは終わり。
この後、番組の上映が始まると杏が思った時、ことみが突如口を開いた。アドリブ、である。


「さぁ……始めるザマスよ……行くでガンス……フンガー……なの」


ちらり、と期待したような表情でことみが杏の顔を一瞥した。
対して杏は深々とため息。
まったく、彼女は結局何も反省していないではないか。
この最後の一言を杏に要求するということはつまりアレだ。彼女≠フパートを自分に担当しろ、と言っているのだ。

「フンガー…………なの」

あくまで、言わせる気である。
杏もこのままでは埒が明かないのでしぶしぶと伝統の一言で締め括ることを了承する。


「……まともに始めなさいよ」


 ▽

75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:19 ID:1WS39Qj1
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:20 ID:teVcTh+y
 
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:23 ID:zOlHxq3Q
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:26 ID:LmfGvOmX
 
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:29 ID:BAGxo9yT
 
80〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:44:57 ID:a8bv/q/X
【サブタイトル――〆(エックス)】


巨大なスクリーン、無機質なスタジオ。
多数のカメラが囲む中、二人の少女がぺこり、と小さくお辞儀をした。

「こんにちは」
「……こんにちはなの」
「司会の藤林杏です」
「司会の一ノ瀬ことみなの」

神妙な面持ちでスタジオの中央に立っていたのは一ノ瀬ことみと藤林杏だった。
彼女達が今回のメインパーソナリティを務める。
どちらも非常に端正な顔付きをした少女だ。
が、何故かどちらもソワソワと所在なげにさり気なく腕で自身の身体を隠していた。

理由は一つ――彼女達の服装が先ほどまでの私立光坂高校のソレとは違うからだ。
彼女達は既に本番用の『特別な』衣装に袖を通していた。

「ねぇ、ことみ。一つ、聞いていい?」
「……なんでも聞いて欲しいの」
「どうして、あたし達の格好が"体操服"なのかしら」
「……ああ」

うっすらと頬を赤らめた杏が堪らずことみに訊いた。

そう――彼女達は先ほどまでのブレザータイプのクリーム色の制服ではなく、体操服に着替えていた。
清潔さを保った綿百パーセントの布地。そして、光坂高校独特の赤いブルマ。
そのレッドブルマーと同様の色のポロシャツタイプの体操服もこれまた趣き深い。

杏は超ロングタイプの白オーバーニーソックスを履きこんでいるため、ブルマとの絶対領域が凄まじい存在感を示していた。
とはいえ本人は下半身のラインが気になったのか、こそこそとブルマの食い込みを指先で直した。

「……それは、」
「それは?」
「原作ネタと、視聴者サービス。それとアニロワの強調なの」
「……はぁ」

一瞬の間。そして、

「せっかく……珍しくアニメ出典で出ているのだから……アニメで大量に増加した体操服を存分に披露するべきだと考えたの……」
「……むぅ」
「……まぁ、パンツじゃないから恥ずかしくないの……一緒に……我慢するの」
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:44:58 ID:1WS39Qj1
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:04 ID:17nNacKb
 
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:10 ID:BAGxo9yT
  
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:17 ID:LmfGvOmX
 
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:20 ID:AHmQWIm+
 
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:22 ID:1WS39Qj1
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:50 ID:O0ZHZ0YE
 
88〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:45:50 ID:a8bv/q/X
杏はポッと頬を染め、小動物のようにプルプルと身体を震わせることみを見た。
それは同姓から見ても十分に魅力的な姿だった。
白い布を押し上げる二つの塊が放つあまりの存在感に思わず両手が伸びそうになるのを全力の理性で食い止める。
スラッと伸びた輝かんばかりの双脚がスタジオのライトを受けて健康的な色気を放つ。

「――ごほん」

自身のやり場のない感情を唇から霧散させるかのように、杏が小さく咳払いをした。
すると、二人の背後の巨大スクリーンにデカデカとしたフォントでテロップが表示される。

【解き明かせ、螺旋の秘密! 巨大な"実験"の影に迫る真実とは!?】

とある。


「……某日某所、螺旋王ロージェノムの手によって選ばれた八十三名の参加者がいたの」

ことみの口から【ロージェノム】という言葉が出た瞬間、背面のスクリーンがパッと切り替わった。
現れたのは禿頭と鋭角的な口髭が非常に印象的な老人だった。
だが、その身体は隆々とした筋肉に覆われ、全身から放つ雰囲気は映像であっても見るものに畏敬の念を抱かせるには十分過ぎる。

「この番組の大まかな流れは三つ。『回想』『解説』『対談』なの……まぁ詳しいことは番組が進めば分かるの」

スクリーンはパッパッと様々な映像へと切り替わり、スタジオを極彩で染める。
映されるのは様々な顔、数多のシーン。
泣き笑い、命の雄叫びに応えるように描かれた螺旋の軌跡だ。

ことみと杏は背後を振り返った。ブラウン管の放つ無機質な光が二人の顔へと突き刺さる。
スライドショウのように変わる映像はいくつもの感情に満ちている。
そして、開幕の合図――


「それは、いくつもの世界を巻き込んで行われた壮大な実験。
 彼が望んだものは種の存続、巡り廻るは螺旋の運命。戦って、愛し合って、憎み合って、」
「別れの時は哀しくて、頬を涙で濡らしたこともある。だけど、バラバラだった糸も次第に纏まって行った。
 絡み合った想いは綺麗な二重螺旋を描き、そして、ついに天へと至った――」
  

二人の声が重なる。



「「アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 総集片、始まります」」



 ▽
 

000話『THE OPENING』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:45:59 ID:CGAOR4Iw
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:06 ID:LmfGvOmX
 
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:09 ID:BAGxo9yT
  
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:14 ID:BohHKaIs
 
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:19 ID:1WS39Qj1
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:41 ID:O0ZHZ0YE
 
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:44 ID:AHmQWIm+
 
96〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:46:49 ID:a8bv/q/X

「ようこそ諸君。初対面のものもそうでないものも居るようだが、一応名乗っておこう。
 我が名は、螺旋王ロージェノム。覚えたければ覚えておくが良い」
 男は低い、威圧感の溢れる声でそう名乗った。

「螺旋王? ロージェノム……?」
「何者だ……?」

ざわざわと、場が乱れる。それと同時に、殺気が周囲から溢れ出した。
どうやらこの場に居る人間の中には、血の気の多い者が多いようだ。
しかし、当の螺旋王は、全く動じる素振りも無く、言葉を紡いでゆく。

「だが、名前などどうでも良い事だ。大切なことは別にある。 よく聞くがいい。
 重要な事は、お前たちは今から全員で、最後の一人になるまで殺し合うこと。
 そして、その一人以外は、全員死ぬ、ということだけだ」

「!?」

意味不明で不穏な、だが有無を言わせぬその宣言が部屋中に木霊する。
周囲の混乱がピークに達してゆく。
そしてその混乱をさらに助長するかのように、螺旋王の言葉は続く。

「私は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めている。
 これは言わばそのための実験。お前達は、それを見定める上でのモルモットだ。
 手段は問わん。貴様らの中から、最も優秀な一人を選び出せ。
 生き残りゲームだとでも考えて貰って結構だ。
 そう、ゲームだ。命を懸けたな……」

――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――――


「……この一言から全てが始まったの」

感慨深げにことみが呟いた。

「ふんふん。でも、ここまではよくある普通のOPの流れよね」
「……杏ちゃん……甘いの」
「どういうこと?」
「マダ――こほん。ロージェノムさんの最後の台詞に注目なの……【実験】【モルモット】という単語」 
「ああ、なるほど」

杏もその言葉に頷く。
アニロワ2ndにおけるこの【実験】という言葉が持つ意味は非常に大きい。
ありとあらゆる螺旋に関する特別な出来事はこの一言に集約される。

「これから先、非常に生きて来る台詞なの。テストに出るの、要チェック……」
「はいはい。でも、アニロワ2ndのOPと言ったら"アレ"を抜きには語れないわよね」
「……もちろん、VTRは用意してあるの」

97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:46:56 ID:nIxLApVX
 
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:05 ID:LmfGvOmX
 
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:09 ID:zOlHxq3Q
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:18 ID:BAGxo9yT
  
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:25 ID:1WS39Qj1
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:27 ID:AHmQWIm+
 
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:43 ID:CGAOR4Iw
104〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:47:45 ID:a8bv/q/X

000話『THE OPENING』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――

「フッ……如何に強固なバリアと言えども、この至近距離からボルテッカを食らえば……」

ランスの周囲は、ボルテッカの軌跡が綺麗に抉り取られているようだった。
そして、その地面を抉る傷跡の先には……

「……何ッ!?」

螺旋王ロージェノムが、そこに居た。
先ほどと寸分たがわぬ、傷一つ無い姿で。

「この程度とはな。片腹痛いわッ!!」
「バカな――ぐはァッ!」

嗚咽と同時に、鈍い炸裂音が弾ける。
そして次の瞬間には、ランスの体は遥か後方の壁中へとめり込んでいた。
ロージェノムの一撃……そう、唯一撃の正拳が、ランスを弾き飛ばしたのだ。

「見ての通りだ。お前たちが足掻いたところで我が螺旋力の前では無力そのもの。
 そして――もう一つ、首輪についても説明しておいてやろう。貴様たちの首についているそれだ」
「――!」

言われて始めて気付くほどに、その首輪は違和感なく、まるでそれが当然かのように、シンヤの首にも、俺自身の首にも嵌っていた。
一体、いつの間に嵌められたというのか?

「その首輪には、特殊な反物質――爆薬が詰まっている。
 先ほどの男のように私に歯向かったり、実験に支障を来たす様な行動を取れば――」
 
その刹那。

壁にめり込むランスの体――その首が、閃光と共に爆発した。


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


爆死した男の映像を見て、杏がため息を漏らした。

「あまりにお約束ね。やられ役が形に嵌っているというか」
「ちなみに、ここでの視点は相羽タカヤさん。見せしめになったのはモロトフ荘の管理人ことモロトフさんなの」
「……せめてテッカマンランスと言いましょうよ、そこは」

――見せしめ。
パロロワのオープニングにおける一番最初の犠牲者。
正式な参加者に影響を与える人物が選ばれることも多いが、
彼や某機関車の人のように高い時報性能を持った人物が選出される場合もある。
そして、モロトフは勿論後者である。

「271話『天のさだめを誰が知る』内にてルルーシュくんにも言われていることだけれど、彼の忘れ去られっぷりは凄まじかったの」
「ぶっちゃけ、参加者候補から一人……ですらなく、完全な見せしめ要員だものねぇ」
「それに……影響力のなさも半端なかったの」
「何か強そうな変身ヒーローがやられた、ぐらいの認識だったんでしょうね」

スタジオ内に重苦しい空気が流れた。
あまりに世知辛く、残酷な現実にスタッフ一同、涙を流した。
まさに、これがバトルロワイアルというものだった。
105名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:47:46 ID:O0ZHZ0YE
 
106名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:48:09 ID:BAGxo9yT
  
107名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:48:31 ID:O0ZHZ0YE
 
108〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:48:36 ID:a8bv/q/X
「……ちょっと湿っぽくなってしまったの。さてさて、この後は順当に登場話なの」
「八十二人も参加者がいるわけだから、それも結構な数よね」
「いくつか紹介したい話もあるのだけど……」
「例えば『この血塗られた指先で救えるのなら』、『それが我の名だ』なんかは評判がいいわよね。
 でもここはあえて――」
「ロワの空気を決定すると言われる、第一話にスポットを当ててみたの」

画面に映し出されたのは黄色のコートをはためかせ、道化師のような仮面を手に持った少年。
そして、紅の髪をポニーテールに結った豊満なボディの少女の姿だった。

ジン。
ヨーコ。

奇しくも彼らの出会いから、アニロワ2ndは始まった。
プロローグから抜け出した物語の第一歩である。

「映像、どうぞ……なの」


001話『JING in ROYAL「E」』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


「――お姉さん、さっきからずっとここに座ってるけど『これ』の管理人さん? 夢心地なとこ悪いけど、どいてくんないかな。
 俺、あんたがもたれている『こいつ』に用があるんだけど」


大切な人を失った少女は、その舞台の序幕にて、とある少年と出会った。


「………………え、あ、だ、誰? 獣人? ガンメン乗り……? 」
「顔?……別にどこも海苔なんて着いてないけど。 これでも清潔にしてるんだぜ? 職業の分もカバーしちまうくらい。
 あ、車庫のシャッター勝手に開けさせてもらったから。さぁ立ってよ……」


少年の口はまるで巨大な時計塔の歯車のように、クルクルと回った。
いったい彼は何を考えているのだろう。
捉え所のない相手だった。軽やかな足取りも、不遜な笑みも、何もかも。


「何なら『こいつ』でお姉さんの寝耳に水をかけてあげようか? 」
「……ここは一体どこなの? 夢にしては……」
「『皆で殺しあう』なんて、悪夢にしては笑えないけどね」
「……こ、『殺し』? ……あは、やっぱアタシどうかしちゃったのかな」
「そんな格好してる時点でどうかしてるとは思うけど……夢の中では自分をさらけ出すタイプ? 」


少女は困惑した。
少年は今まで出くわしたことのないタイプの人間だった。
だけど、一緒に居ると不思議と安心出来る――希望が湧いてくる――そんな魅力を兼ね揃えた人物だった。



『悪夢のようなパーティーの主催役
                  盗ませていただきます
                             HO! HO! HO!
                                        居眠り中の王ドロボウ』


109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:04 ID:1WS39Qj1
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:11 ID:GiBWS5Wk
 
111名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:12 ID:AHmQWIm+
 
112名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:27 ID:teVcTh+y
 
113名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:30 ID:BAGxo9yT
 
114名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:35 ID:O0ZHZ0YE
   
115名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:36 ID:1WS39Qj1
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:49:43 ID:zOlHxq3Q
117〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:49:43 ID:a8bv/q/X
そして、少年は詠うような口調で事も無げに言ってのける。
自身が卑しい盗人であると。
螺旋王の来賓客に対する持て成しの不手際を。

そして――彼に宴の主催から降ろすための"辞任勧告"を突き付けるために。

喜びは踊りに、怒りは叫びに、哀しみはメロディーに。
そしてお楽しみは、これから。

音頭盗ります王ドロボウ。新たな伝説の始まり始まり――


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


「ぶっちゃけ、」
「………………杏ちゃん?」
「ジンが何を言っているのか、サッパリ分からないわ」

非常に苛立たしげな面持ちを覗かせる杏。
腕を組んだ杏がものの見事にジンの台詞を一刀両断する。
ことみは苦笑いを浮かべ、

「……だったら、辞書を引く事をおススメするの……本はお友達……」
「あら。ああいう厚い本は投げるためにあるのよ。そう――この前廃刊になったあの雑誌も昔は厚くて破壊力十分だったわね」
「その使い方は明らかにメーカー補償の対象外なの……」

ふぅっと小さくため息を吐いた。

当たると本当に危険なので、分厚い漫画雑誌や百科事典を投擲するなど言語道断である。
良い子の皆は杏お姉さんの真似をしてはいけません。

「……気を取り直して。とはいえ、このジン・ヨーコペアはそんなに長続きしなかったの」
「早い段階でヨーコが東方不敗にやられちゃったものね」
「逆に長続きするペアもいくつかあったの。
 単純な縁の深さで言うと【Dボゥイ/小早川ゆたか】【ギルガメッシュ/結城奈緒】【高嶺清麿/ラッド・ルッソ】辺り」

登場話で結びついたペアならば、やはりこの三組に軍配が上がるのではないか。
中盤以降までここのラインはアニロワ2ndを賑わした。
ベストコンビなどのイベントでも多くの票を獲得している。
118名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:50:11 ID:LmfGvOmX
 
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:50:13 ID:CGAOR4Iw
120〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:50:37 ID:a8bv/q/X

「なるほどね。特にあたしはDボゥイペアが好きだったわ。一番主人公っぽかったもの」
「王道あってこその覇道……後ろ二つの破天荒コンビに比べて、ここの安定感は中々のモノだったの」
「Dボゥイ、死ぬまで目立ちまくりだったわよね。やっぱり『アニメ至上最も不幸な主人公』の名は伊達じゃないわね」
「まったくなの……うちの主人公にも見習ってもらいたいものなの」
「――ことみ」
「……ぅ」

無言で杏のゲンコツがことみの頭上にポカッと炸裂した。

「……痛い。……お、思わず口が滑ったの。
 もちろん……朋也くんは最高なの。『イヤッホウゥウウウ!』なの。阿修羅をも凌駕する存在なの」
「……まぁそういうことにしておきましょう」

棒読みに近い口調でことみが言った。
ほとんどその言葉には感情が込められていなかった。
もっとも、普段から彼女の台詞は若干棒読み臭いのだが。

「さてさて、そんな訳で順調なスタートを切ったアニロワ2nd。が、そこで終わらないのが変化球を極めたこのロワなわけ。
 一番最初の螺旋的イベントに遭遇したのはやっぱり主人公チーム!」
「蟹っぽい頭をした白目の危険人物に……Dボゥイさんとゆたかちゃんは襲われたの」
「スタジオに来て貰うことは出来なかったけど、アッと驚くあの人にインタビュ−して来た映像も合わせてどうぞ」


064話『ただ撃ち貫くのみ』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――

「私の名は素晴らしきヒィッツカラルド、君たちの仲人だ。冥土の土産にでも覚えてくれたまえ」

パチンっと指を鳴らす音が響き、今度は近くの木が輪切りになった。
遮蔽物に意味は無いと、暗に言っているのだ。

「お前は、殺戮と破壊を楽しむというのか!」
「ああ!楽しくてしょうがないよ!」

パチン、パチンと次々に右手の指を鳴らす。そのたびに木は削られ、枝葉は切り落とされた。

「……そうか、お前も、ラダムと、同じか」


▽ナレーション▽
【男は少女を逃がし、単身で悪魔と相対する。だが、両者の間には埋めようのない実力の差があった。
 倒れる男。その瞬間、少女の身体が動いた。自分でも分からない衝動に突き動かされる――】

121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:50:39 ID:1WS39Qj1
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:07 ID:1WS39Qj1
123名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:10 ID:BAGxo9yT
  
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:21 ID:nIxLApVX
 
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:44 ID:AHmQWIm+
 
126〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:51:50 ID:a8bv/q/X
ごちゃごちゃの飽和状態だったゆたかの頭の中で、たった一つだけ言葉が響いた。

――嫌だ

優しい人は怖い人だった。怖い人だったけど優しかった。
そう、優しい人だったんだ。だから私は信じることにしたんだ。
それで、みんなで帰ろうって決めて……みんな、お姉ちゃんにかがみさんにつかささん。
それと、Dボゥイさんも。

――こんなの、嫌だ!

私は帰りたい。みんなと帰りたい。
こんな所で死にたくない。死んでほしくない。
私は……そうだ、私はDボゥイさんのことを何も知らないし、私もぜんぜん話してない。

――よく分からないけど、こんなの、嫌だ!

それはパニックに似ていたかもしれない。
支離滅裂な思考で、普段なら考えられないような行動をとってしまう。
Dボゥイの元に駆け出したゆたかは、何も考えてなどいなかった。


▽ナレーション▽
【小さな腕を広げ、必死に少女は男を守ろうとした。だが、悪魔は嗤い、二つの命を無慈悲にも刈り取ろうとする。
 しかし、心の中の想いが爆発した時、ヒトの身体に宿りし螺旋のチカラは緑柱玉のような輝きを放つ――】


ゆたかは無我夢中だった。
Dボゥイが生きていた、それは嬉しい。
けれどこの危険な男は、またDボゥイを傷つけようとしている。

――なんとか、なんとかしなくちゃ。

必死に考え、とっさに身近なものでヒィッツカラルドの腕を突き刺したのだ。
後のことを考える余裕は、ゆたかにはなかった。

「Dボゥイさん!」

どんな意味で叫んだかは、ゆたか本人にも分からなかった。
生きてほしかった。生きたかった。
みんなで帰りたかった。

その思いは、螺旋力となってヒィッツカラルドを貫いた。

「貴様ぁ!」

ヒィッツカラルドは激昂した。
油断した自分が悪いのだが、愉快な気分に一気に水をさされたのだ。
この責任を取ってもらおうと、無事な方の手で指を鳴らそうと構えた。

そして、Dボゥイの握るM500ハンターがヒィッツカラルドの額に押し付けられた。

「零距離、とったぞ」

――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

 ▽

【参加者インタビュー@】
●Dボゥイ(相羽タカヤ/テッカマンブレード・十八歳) 
127名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:51 ID:zOlHxq3Q
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:51:51 ID:O0ZHZ0YE
  
129名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:52:20 ID:O0ZHZ0YE
 
130名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:52:33 ID:1WS39Qj1
131〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:52:36 ID:a8bv/q/X
――素晴らしきヒィッツカラルドと戦った時の感想を。

ヒィッツカラルド? ……ああ、あの男か。
今になって思えば、俺とゆたかがアイツに勝てたこと自体が驚きで一杯だな。
テックセットさえ出来れば、な。結局、俺は一度もブレードの姿になることはなかったしな。

――後悔はあるのか。

そりゃああるさ。
ゆたかだけじゃない、シンヤも、舞衣も俺は救ってやることは出来なかった。 
何度もやられて、血反吐を吐いて……俺に、もう少し力がありさえすれば。

――その後、東方不敗や『狂人』に身体を乗っ取られたラッド・ルッソとも戦ったが。

無様だった。それ以外の言葉は必要ない。
あの少女はどうなったんだ? ……そうか、舞衣が。
少女は……柊かがみは、自分を、取り戻せたんだな。

――Dボゥイ≠フD≠ヘ結局どのような意味なのか。

……妙なことを訊くんだな。
自分で言うのも恥ずかしいんだが「無茶な行動ばかり取る」という意味のデンジャラスだ。
ドリームは……まぁさすがに少しばかりキラキラし過ぎじゃないか? 
何、ドラッグ≠烽る? あれは…………忘れてくれ。

――最後に、生き残っている参加者に対して一言あれば。

ゆたか、舞衣。頑張れ。
そして、助けてやれなくて済まなかった。
お前達は俺なんていなくても、絶対に大丈夫だ。

俺はお前達を支えたかった。
だが……同時に、お前達に支えられてもいたんだと思う。
俺はただ、不器用に守ることしか出来なかった。
出会った二人はわりと仲良くやっていると聞いた。良い……友達になれたなら、俺も嬉しい。

――今日はありがとうございました。

ああ、俺もいい機会が貰えたと思ってる。


 ▽
 
 
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:52:43 ID:CGAOR4Iw
133名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:52:54 ID:LmfGvOmX
 
134名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:12 ID:O0ZHZ0YE
  
135名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:19 ID:BAGxo9yT
 
136名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:25 ID:1WS39Qj1
137〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:53:30 ID:a8bv/q/X
カメラは再び、スタジオに戻って来た。 
 
「で、ゆたかちゃんの覚醒以降、いくつか……ポツポツと螺旋覚醒が続くの」
「玖我なつき、アレンビー・ビアズリー辺りが早い段階での覚醒者だったかしら」
「早い時間は案外少なかったの。中盤くらいが一番。でも、やっぱり影響が大きかったのは……スバル・ナカジマ」

ことみの言葉と共に、パッと背面のスクリーンに青いショートカットの少女が映し出された。
長い白のハチマキと漲るような意志の強さを連想させる双眸が印象的である。
が、同時にネコミミを頭に付けてあげたくなるような女の子らしい可愛らしさも持ち合わせている。

「まるで螺旋覚醒のバーゲンセールだな、とまで揶揄されたこともあったけれど……。
 天元突破寸前まで行ったのは彼女くらいかしら」 
「そうなの。何しろ彼女の放った一撃は後々、会場を覆う結界に影響を与えている訳で」
「アニロワ2nd・三大イベントの一つである『デパート』の幕引きには相応しい大技だったわね、アレは」

画面が二分割され、スバルと向かい合う形で全身を黒鉄の鎧に覆った人物が現れた。
彼の名前はロイ・マスタング――またの名を悪魔軍人デビルマスタング。
仲間を、友を、そして大切な部下をその手に掛けた哀しき男だ。

「登場人物も豪華なの。他にヴァッシュ・ザ・スタンピードにランサー、神行太保・戴宗、藤乃静留といった実力者が勢揃い」
「……そういえば、この頃の人間台風の人って暇さえあれば気絶してたわよね」 

杏の言葉にことみも小さく頷く。

「……まぁぶっちゃけ、空気だったの」
「どこかの空気王がエンジェルアーム使ってたものね。アニメ仕様だとかなり不便なのがこの能力なのだけど……」
「…………それはあまり突っ込んで欲しくない部分なの」
「……そうよね」

二人は視線を交わらせながら、腕を組み納得したような表情を見せた。

「強力な能力は割りを食うわよね。ほらアニロワ2ndには超強力な洗脳能力を持った参加者がいたでしょう。ギア――」
「……杏ちゃん。それ以上は……まだ早いの。彼の紹介はもうちょっと後なの」
「っと……ちょっと早かったかしら」

ストップ、と。
ことみが口の前に両手でバッテン印を作った。
番組構成上、後半まで引っ張らなければならない事柄というのは当然存在するのだ。


「まぁそんな訳で、ネコミミスバルvsデビルマスタングの熱烈バトル、須く見よ!……なの」


ビシリ、とカメラに向けてことみが勢い良く指を差した。

138名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:31 ID:GiBWS5Wk
 
139名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:38 ID:zOlHxq3Q
140名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:53:58 ID:LmfGvOmX
 
141名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:08 ID:BAGxo9yT
  
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:12 ID:1WS39Qj1
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:12 ID:nIxLApVX
 
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:32 ID:O0ZHZ0YE
  
145〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:54:32 ID:a8bv/q/X
ちなみに。
アニロワ2ndには会場がネコミミウィルスに汚染され、五十人近くの参加者が生還してしまった多元宇宙も存在することをここで断っておこう。
本編でもミーくんとスバルが合体していたら、世界はラブ&ピースになっていたかもしれないのだ。
嗚呼、恐ろしきかなネコミミモード。

「……魔法使うと耳が生えるのはまた別の魔法少女でしょうが」

それは極めてメタな視点で発せられた言葉だった。
そんな杏の呟やきは誰にも聞き取られることなく、ピカピカに磨かれたスタジオの床に吸い込まれて行く。


【三大イベント・@ デパート】
165話『召喚』
189話『炎の日/焔のさだめ』
194話『DEVIL MAY CRY』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――

「あ、あの、さっきは済みませんでした!あたしスバル・ナカジマと言います! お知り合いの救助をお手伝いします!」

――心優しき魔法使いがいた。

「アンタ! この子が言うにはアンタがいきなり襲いかかってきたそうだが、どうだい!」
「お答えする気はありませんなぁ。皆さんに死んでもらう必要ができました、とだけ」

――圧倒的な存在感、包容力を兼ね揃えた空賊の頭領がいた。

――愛する者のため、その身を修羅へと堕とした舞姫がいた。

「…何でぇ、そうすると俺はまんまと乗せられちまったって訳かい」

――酒を愛しする豪胆な男、人間発電機の異名を持つ国際警察機構に所属するエキスパートがいた。

「どぉも! 改めまして僕はヴァッシユ・ザ・スタンピードって言います!
 皆さんこんな殺し合いなんかに乗せられないで、仲良くしましょう! ほら、ラブ&ピースですよ! ラブ&ピース!」

――髪をホウキのように逆立てて笑う賞金首がいた。

「ヨウいはデキたか……? ワたシは……出来テいる!!」

――そして、人の身を捨て本物の悪魔へと成り果てた男がいた。


▽ナレーション▽
【男達は盗まれた過去を探し、女達は砕かれた夢を拾い集めて――焼ける街をあてもなく彷徨い続ける。
 燃え盛る炎に悪夢が蘇り、男の心は乾き、女の心は冷えた。だが――さだめとあれば心を決める。さぁ、決着は近い】

146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:37 ID:AHmQWIm+
 
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:43 ID:CGAOR4Iw
148名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:44 ID:teVcTh+y
 
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:54:59 ID:BAGxo9yT
 
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:55:10 ID:1WS39Qj1
151〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:55:20 ID:a8bv/q/X
焔に揺らめく陽炎の先。
見えたのは血のように赤い軍服に蛇のような銀の皮膚。
悪鬼のように逆立った髪、その顔にかつての面影は見出せない。
それは彼女の知る彼とは、余りにもかけ離れた姿だった。
だが、彼女が彼を見間違うはずもない。
それが、悲劇と言えば悲劇だった。

「――――大佐」

それは、リザ・ホークアイが知る、ロイ・マスタングに違いなかった。
出会うべきではない二人だった。
だって、出会ったところで、なにが変わるわけでも、誰が救われるわけでもないんだから。
変わり果てた彼はもう元には戻れないし、奪われた命は戻らない。
なにも好転しない。
むしろこの出会いは、火に油を注ぐだけ。

「見るナ」
「なんで……?」
聞きたい事は山のようにあった。
それの姿はなんなのか?
本当にランサー達を襲ったのか?
ここでいったいなにをしていたのか?

「見るナ」
「どうして…………?」
けれど、どれもこれも言葉にならず、出てくるのはそんな言葉ばかりだ。
だが、今にも泣き出しそうなホークアイの声に、マスタングは思わず後ずさる。
その声は鉄槌よりも強力に脳を掻き回し。
その視線は矢尻よりも正確に心臓を射抜く。
耐え切れない。
このままでは、壊れてしまいしそうだ。

「どうして、大佐――っ!?」
「私ヲ――――見ルなァあッ!!」


▽ナレーション▽
【終端の王と異世界の騎士の物語があった。黄金卿の主と黄金の剣を持ちし高貴なる騎士王。
 円卓より外れし、誇り高き王が振り翳した己の正義が巡り廻り輪廻を刻む。そして、少女は剣を――】

152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:55:30 ID:O0ZHZ0YE
   
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:55:34 ID:BAGxo9yT
  
154〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:55:51 ID:a8bv/q/X
――スバルの手にしたそれは、『剣』と呼ぶには余りにも異質な『剣』だった。

「ぅうおおおおおおおお!!」
裂帛の気合と共に剣に魔力を通す。
とたん、手にした乖離剣が軋みをあげた。
劈くような風きり音と共に、生まれるのは余りにも暴力的な魔力の胎動。
一回転ごとに速く、より早く、なお疾く。
螺旋を描いて三つの円柱が互い違いの方向に回転する。
生まれる暴風に辺りのモノが次々と吹き飛ばされてゆく。
荒れ狂う暴風の前に悪魔もその動きを止められる。

全てを持っていかれるのではないか、と思うほど魔力が吸い取られてゆく。
全身を猛り狂う魔力と血液。
それでも足りない。
まだ足りない。
目の前の悪魔を祓うにはこの程度では、とても。
暴走寸前の乖離剣を無理矢理に押さえ込んで、なおも魔力を剣に込める。
そして、はちきれんばかりの声で、叫ぶ。

「一撃、必滅――――! 天地乖離す(エヌマ)――――」

自然と脳裏に浮かぶ真名を叫ぶ。
暴走する魔力が赤い渦を巻いて流動する。
乖離剣に魔力を込めながらスバルはISを発動させた。
次の瞬間に生まれた振動波はスバルの右腕から乖離剣に伝わって行く。
剣を伝わり波紋のように振動が赤渦を奔る。
超振する魔力の回転は世界を巻き込みながら震撼する。

乖離剣と振動破砕。
極悪なまでのこの組み合わせに、更に緑の螺旋が加わる。
それは、諦めぬ心が生み出した螺旋の輝きだった。
振動しながら交じり合う赤と緑の螺旋の渦。
渦巻く力の螺旋は、瞬く銀河のようだ。
遥かな銀河に煌くは、全てを破壊し創造する、天地を開闢する星の輝き。

「――――開闢の星(エリシュ)!!」

剣の真名と共に放たれた――――それは、天地を切り裂く一撃だった。


▽ナレーション▽
【何もかもを飲み込み、世界は終焉を迎える。機械仕掛けの少女も悪魔も――】

155名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:55:58 ID:1WS39Qj1
156名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:56:13 ID:BAGxo9yT
 
157名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:56:23 ID:1WS39Qj1
158名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:56:38 ID:O0ZHZ0YE
  
159〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:56:45 ID:a8bv/q/X
超振動を帯びた暴風が全てを薙ぎ払う。
世界ごと吹き飛ばすのではないか危惧する程の衝撃だった。
全てを消し飛ばす爆音は世界を揺らしながら鳴り響く。
凄まじいまでの極光は世界を白一色に塗り替えた。
森羅万象あらゆる存在を許さぬ破壊の渦を前に、大気すらその原型を留めることは許されない。
けたたましく吹き荒れる暴風は、雄たけびを上げながら鬩ぎ合い、空間を断絶するような風圧の層を作り上げた。

かつて一撃で世界を切り裂き天地を創造した乖離剣。
その一撃を前に、それまでの世にあるすべての理は立ち消え、すべてはその剣が生み出す新たな理に塗り替えられる。
そう、すべて。
すべてだ。
燃え盛る炎も。崩れ落ちる瓦礫も。
人も、悪魔も。生者も、死者も。敵も、味方も。
彼女自身も。
すべて――――。


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

 ▽

【参加者インタビューA】
●スバル・ナカジマ(時空管理局本局 古代遺物管理部機動六課スターズ分隊所属二等陸士/戦闘機人・十五歳)

――螺旋振動エヌマエリシュについて。

あれってそんな名前が付いてるんですか?
いやーなんか恥ずかしいなぁ……。
その、あの時はもう無我夢中で……あたしが絶対にここでやらなくちゃ!って頭が一杯だったっていうか。
後悔は全くありません……って言ったら嘘になりますけど、それでもあんまりないとは思います!
え。一瞬、あの一撃で天元突破仕掛かったんですか?
いやはや、感無量……? マーベラスな感じ……?
……えと、よく分かりません。

――カレーは美味しかった?

美味しかったですよ。お米のないジャガイモばかりのカレーでしたけど。
あの後、あんなことがなかったらもっと最高だったんですけど……。

――機動六課の面々の活躍について何か思う所は。

うーん、なんか凄いですよね。
ティアもシャマル先生も八神部隊長も……その。

――そういえば、恋人を求めて暴走していたと一部で噂になっているが。

…………………………あははははは(乾いた笑い)
160名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:57:13 ID:LmfGvOmX
 
161名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:57:27 ID:CGAOR4Iw
162名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:57:30 ID:O0ZHZ0YE
  
163〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:57:33 ID:a8bv/q/X
――最後に、生き残っている参加者に対して一言あれば。

……シャマル先生!
その、あたしから言えることは少ないかもしれません。
何ていうか……そういうの、よく分かりませんし。

それがシャマル先生の信じた道だ!って言っちゃうのは簡単なのかもしれません。
でも「頑張ってください」って応援するのが間違っていることだけは分かります。

もう一度、よく考えてみて下さい!
そりゃあ、あたしなんかの言葉でもう心を動かされたりはしないだろうけど……。
八神部隊長もきっと同じことを言うと思います。
ヴィータ副隊長もシグナム副隊長もリィン曹長もザフィーラもきっと……。
……信じて、いますから。


 ▽
 
 
杏  「うーん、なのは勢唯一の良心と呼ばれた彼女の台詞には重みがあるわね」
ことみ「……ぶっちゃけ他の連中がロワを放り出してイチャ付き過ぎなの」
杏  「まったくよね……って、なんか地の文が消えてるんだけど!?」
ことみ「台本が駄目なんて……決まりはないの。ラジオや放送関係を文章で表す時は……台本形式にすると昔から決まってるの」
杏  「まぁそりゃそうだけど」
ことみ「それに……もうちょっとだけ続く……ぐらいなの。ずっとじゃ……ないの」
杏  「んーならいいのかしら」
ことみ「そう。これは……ぶっちゃけどこかの生徒会っぽいダベり番組なのだから、台本形式もアリアリなの」
杏  「…………(あれ。これってドキュメンタリー番組じゃなかったかしら……タイトルだって……)」
ことみ「さあ次にいくの」

(両司会、こほんと咳払い)
164名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:57:39 ID:1WS39Qj1
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:58:09 ID:1WS39Qj1
166〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:58:15 ID:a8bv/q/X
杏  「にしても実際に『アニロワ2ndの特徴は恋愛!』とまで言われてた訳だけど」
ことみ「確かにロワ内恋愛の多さは散々槍玉に上がったの」
杏  「なにしろ肝心の天元突破を果たしたのも某夫妻だったしねぇ」
ことみ「散々……罵倒されていたのが懐かしいの」
杏  「アニロワ2ndには七組のカップルがいる、とまで言われてたっけ」
ことみ「そうなの。学校の七不思議と同じで人によってどれを選ぶかは変わってくるけれど……。
    【ヴィラル・シャマル】【アイザック・ミリア】【クレア・はやて】【高遠・ティアナ】
    【Dボゥイ・ゆたか】【Dボゥイ・舞衣】【ドモン×カミナ】という感じでわたしは選んでみたの」
杏  「……………………」
ことみ「……杏ちゃん? ハッ、これは……わたしのあまりに完璧なチョイスに声も出ないと見たの」    
杏  「違うわよっ、何よ最後の一つは! しかも一組だけ真ん中の記号が違うし!」
ことみ「……そういう時はツッコミ用の台詞というものがあるの」
杏  「……台詞?」
ことみ「そう――」
             _     _
            〃:V::⌒⌒○Y:ヽ   なんでやねん
            j:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l|.:. l
             |:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:|
             |ハ:!.:.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.レj/      ビシッ
             ヾ|i:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.iV
              x|i:.:.:.V:.:.:.:.:.:八「ヽ     ^ー'て
               ∧!:.:.:.:.'、:.:.:.:.:i:.:.l| ∧  ,xっ  (
               / ヘ:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:リ  ヽ<ヽ三)
            rァ、_/    〉:.:.:.:.:ハ:.:ノ人   ` 」」
          V//    ハ{\ノ jイ=' {ゝ-'´
         弋>、__/  {/   l  ヽ
                  /     l   ',
               /      l  |
              /T7 r┬┬ ┼1T|
                〈_/ |│ | | │」」」
              /  ̄¨77¨ ̄/
                /    /./   /

杏  「……なるほどね」
ことみ「こほん…………まぁ確かに、カップリングの押し付けはよくないの。
    それに【ドモン×カミナ】は一年前の出来事だから記憶が風化してしまうのも仕方ないの。
    二次創作は鮮度が命……【カミナ×ドモン】じゃないと駄目……という杏ちゃんの意見にも一理あるの」
杏  「そ、そういう意味じゃ……! もう、い、いいからっ! そんなカプ論争なんてアニロワ2ndには関係ないでしょ!」

(杏、激しく赤面。しかし、ことみはジトッとした眼で杏を見る)

ことみ「そうでもないの。
    そもそも、二年連続で聖夜にBLが行われるロワなんて……他にはな――あっ、わたし達も参加していたロワがあったの。
    とはいえ、それ以外にも原作ネタだけど柊かがみが初めてコミケに参加した時、
    フルメタの【ガウルン×宗介】本を読んで悶絶していたのはあまりにも有名。
    BLネタとアニロワ2ndには切っても切れない縁があると言わざるを得ないの」
杏  「うっ……と、とにかくっ! 終わりっ! どのカップルが好きかなんて人それぞれってこと! はい、今度こそこの話は終わり!」
ことみ「…………残念」

(両司会、大きく嘆息)
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:58:23 ID:BAGxo9yT
  
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:58:48 ID:AHmQWIm+
 
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:58:57 ID:O0ZHZ0YE
   
170〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 21:59:03 ID:a8bv/q/X
杏  「でも、この表は結構危険よね」
このみ「というと?」
杏  「ほら、Dボゥイの三角関係よ。弟の相羽シンヤを交えて四角関係にまで発展し掛けた」
ことみ「ああ。確かにとんだギャルゲ主人公なの。フラグ立て過ぎなの」
杏  「……ホント、さっきまで哀愁を帯びた良主人公に見えていたDボゥイが一気に駄目人間に見えて来たわ」
ことみ「『分の悪い賭けは嫌いじゃない』とかいって総攻略していたかも、なの。落とし神化しなくてある意味良かったの」
杏  「アニロワ2ndが昼ドラになっていたら流石に困るしね」
ことみ「わたしとしては【舞衣・ゆたか】も推したかった所なの。でもDボゥイさん周りの矢印が更に酷いことになるから自重したの」
杏  「……パヤパヤ?」
ことみ「(こくり、と頷きつつ)……なの」

(両者の間に一瞬流れる気まずい空気。杏の視線がことみの胸部にちらりと向けられる。そして、数秒の沈黙――)

杏  「……ごほん! で、でも、これは視聴者によって選出が変わってくる問題よね」
ことみ「真実は……一つとは限らない。例えば……ここにアンケート結果があるの」
杏  「アンケートなんていつの間に……? アニ1st最終回みたいな参加企画はやっていない筈だったと思ったけど」
ことみ「データの出自は脳内で補完して欲しいの。もちろん……ネタ元は禁則事項なの(お約束のポーズを取る)」
杏  「ふぅん」
ことみ「では……発表するの。アンケートに挙がったのは、
   ドモカミ、ジンスパ、ジンギル、夫妻、相羽兄弟、ラッド清麿、衝撃かがみ、高遠ティアナ、
    ドモン&師匠&クロミラ、戴ラン、ランエリ、スバロイ、ワカはや、はやクレ、ルル清、
    ジャグ静、ルルチミ、奈緒かがみ、舞ゆた、ニアシータ、こなスバ≠チて所なの」
杏  「…………」
ことみ「ちなみに。わたしとしてはやっぱり……受け攻め変化自在なリバカプ、ドモンとカミナが一押し」
杏  「もうあたし、どこから突っ込んでいいのか分からないかも……」
ことみ「まぁ……確かに色々おかしいの。例えば……ランエリ。常識的に考えればランエリじゃなくて、エリラン。
    ランサーはヘタレ受が鉄板。エリオもあれは生粋の小悪魔キャラなの。ランサーが攻めとかぶっちゃけありえないの」
杏  「そういう意味じゃ……でもそ、その意見に少しだけ納得してしまう自分が嫌だわ」
ことみ「ランサーが酷い目に合うのはお約束なの」

(パッとバカップルを映していたスクリーンが切り替わる。
 二等分された画面にはデカデカと『豪華客船』と『映画館』の二文字が)

杏  「三大イベントの残り二つである豪華客船と映画館についての特集ね」
ことみ「これも……アニロワ2ndを語る上で絶対に外せないポイントなの。ただ一つ問題があって、」
杏  「ん?」
ことみ「――実はどっちも物語の大筋とはあまり関係ないの」
杏  「……それは……困ったわね」

(真面目な顔付きになる二人。が、すぐに気を取り直して)

杏  「この二つはどちらかと言えば、本編を追って見直して貰いたいパートだわ。もちろん、他のパートもそうなんだけど。
    それに関係している話数や人間が多くてデパートと違って総括し難い部分もあるし」
ことみ「そんな訳で、ここだけ総集片というよりも予告編的な気分で見て欲しい部分」    
杏  「まぁ、とにかく見て貰いましょうか。映像、どうぞ」
ことみ「……ちなみにここまでがAパート。続きはBパートからなの。もちろん……放送局はN○Kだから……CMはなしで直行なの」

(にこやかに笑いながら、一礼する二人)
    
171名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:59:11 ID:1WS39Qj1
172名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:59:38 ID:CGAOR4Iw
173名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 21:59:45 ID:LmfGvOmX
 
174名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:00:15 ID:1WS39Qj1
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:00:15 ID:teVcTh+y
 
176〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:00:23 ID:a8bv/q/X
【三大イベント・A-1 豪華客船】
85話「希望の船、絶望の城」
178話「君らしく 愛らしく 笑ってよ」
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


『船内におられます、お客様方各位に申し上げます。
 本日はご乗船頂きまして、真にありがとうございます。
 私――案内役を勤めさせて頂く、高遠遙一と申します……』


希望の船出を扇動する地獄の案内人、高遠遙一の計画はまさに大胆不敵の一言だった。
脱出を人参としてぶら下げ、螺旋王に反感を持つ人間を一隻の"豪華客船"に集める。
そして、自身にとって最高の芸術――殺人――を成す為の空間を作り上げる。

表の仮面は光り輝く「希望の城」、だがその本当の姿は絶壁のように聳え立つ「絶望の城」だ。
そして、彼の最大の関心事である弱者に対する"殺人示唆"は滞りなく遂行される。


▽ナレーション▽
【少女の音なき慟哭は火花を散らす暖炉の炎の熱に溶けて行ってしまいそうだった。
 高遠遙一の言葉はゆっくりと人形の少女の心へと浸透していく。
 それはいわば暗闇そのもの。深き深遠から、人の心の欲望を、願いを呼び覚ます"闇の声"だった】


「ティアナ・ランスター。ようこそ――殺人者の世界へ」


高遠は愉悦混じりの微笑を浮かべた。
笑った。
にまりと、背筋が凍りつくような口元の歪みと共に。
罪状を被告人に言い渡す裁判官のように、一番残酷な結末をティアナへ放り投げる。

「私なりの結論を申し上げましょう。
 キャロ君を殺してしまったのはジェット・ブラックなどではない。
 あなたは逃げていたのです。自らが犯してしまった罪から……ね。
 そう、キャロ君を殺したのはあなたです。とっくの昔に――ティアナ君は人殺しだったのですよ」
「――――――――――――――――ッ!!!!!!」


▽ナレーション▽
【そして、その日、一人の少女が――闇に飲まれた】


「悪い人間を殺すこと――それが、私の償いだから」

ティアナは疑問に満ちた眼で剣持を見た。蒼い瞳が怪しく煌く。

「俺が……悪い人間、だと? お前さん、まさか……高遠に騙されて――」
「何を、言っているの? 彼は立派な人間、善人よ。だってこの船に人間を集めて、弱者を守ろうとしているんだもの。
 そして、私はここに紛れ込んだ危険人物を排除するの。彼の……代わりに」


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

 ▽

【参加者インタビューB】
●ティアナ・ランスター(時空管理局本局 古代遺物管理部機動六課スターズ分隊所属二等陸士・十六歳)
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:00:25 ID:O0ZHZ0YE
  
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:00:38 ID:LmfGvOmX
 
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:00:52 ID:1WS39Qj1
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:01:28 ID:BAGxo9yT
  
181〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:01:29 ID:a8bv/q/X
――メイド服の着心地は。

いきなり、その質問ってのもどうかと思うけど。 
ま、いいわ。答えてあげる。上々よそれなりに、ね。
特に息苦しかったり、サイズがキツイなんて事はないわ。まるでオーダーメイドみたいにピッタリよ。コレで満足?
……へ、そのメイド服を私に持って来たのは高遠さんじゃないのかって?

………………あれ。

――闇メイド化したティアナさんは妙にエロいと評判だったが。

ま、また反応に困る質問を…………い、いいじゃない、そんなの。
メイド服を着てようが、着てまいがどっちも私。
大して変わったりなんてしてないわ。そう、どっちも……私なの。

――ぶっちゃけ、高遠遙一さんとの関係はどのような感じなのでしょうか。

うっさいわね……べ、別に高遠さんとは何もないわよ。
色々な事が一度にあって、もの凄い速さで状況だけが変わって……。
私、そんなに簡単に自分の周りのことを整理出来たりしないわ。
ただ、ね。キャロが死んで、エリオが死んで、スバルが死んで……何もかも分からなくなった時、そこにいたのが高遠さんだったの。
あ、愛だの恋だの……多分、錯覚よ。まだ何も、始まってもいなかったの。
そういう可能性もあった、ぐらいじゃない? 現実的には。きっとそう。

――生き残っている方に一言頂きたいのですが。

……わざわざ私の所に来た理由はソレなんでしょうね。いいわ、要望通りにしてあげる――クロスミラージュ!
なによ、アンタ。妙に活躍してるじゃない。
マスターより長生きして、しかも囚われのお姫様ポジションなんて……ったく、生意気。
って、あーもう私何言ってんだろ。アンタに愚痴なんか溢しても意味ないのにね。
ごめんね、クロスミラージュ。私、情けないマスターでさ。
あの時、アンタの言葉にもう少し耳を傾けていれば何かが変わった……のかも。
だってさ、何気に私達のペアって結構なレベルだと思うし……。

っ――と、とにかく! 本来なら、私からアンタに言ってあげられることなんて特にないのよ。
ただ…………ね。一応インテリジェントデバイスとはいえ機械だもんね、クロスミラージュって。
変な話だと思うけど、コレだけは頭に入れといて。

気合、入れなさい。
どんな劣勢も、心掛け一つで簡単に変わったりするんだから。
アンタがそんな所にいるうちは何も始まらないのよ。分かった?

――それでは本日のインタビューはここまでになります。お時間、ありがとうございます。

意外とこっちも楽しかったわ。他の人への取材も頑張って。


 ▽
 
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:02:08 ID:ypPki7iS
183〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:02:25 ID:a8bv/q/X
【三大イベント・A-2 豪華客船】
195話「刑事と婦人と不死の少年は三人の奇人を前に沈黙する」
217話「グッドナイト、スイートハーツ」
224話「希望の船?絶望の城?」
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――
  
  
《豪華客船殺人事件》


◇登場人物紹介


ガッシュ・ベル………………魔界の子。優しい王様になるのが目標。現魔王の実子(5※人間換算)
チェスワフ・メイエル………不死者。錬金術師。身体は子供、心は大人(220※おおよその値)
ジェット・ブラック…………筋骨隆々の髭面禿頭の男。元刑事(36)
アレンビー・ビアズリー……ネオ・スウェーデン代表のガンダムファイター。天真爛漫な性格(17)
高遠遙一………………………【希望の船】の船長。殺人マニア(23)
ティアナ・ランスター………【希望の船】のメイド。元時空管理局所属の魔法使い(16)

ビシャス………………………銀髪、黒衣の男(27)
結城奈緒………………………通りすがりの不良少女(14)

 
 ▽ナレーション▽
【信じる者、演ずる者、使命に燃える者。舞台に上がった演者達はそれぞれの思うがままに行動する。
 その裏側にある真実とは? 結末とは? 盤上の人間は誰一人としてその結末を知らない――】


 『お帰りなさいませ。ご主人さま♪』
 
                     『じゃあ探そうよ! 希望を捨てちゃいけない!』
 
            『……最初から猫被って、殺すチャンスを狙ってたわけか?』
  
『高遠! ティアナ! 大変なのだ! どこを探しても剣持がおらぬ!』
     
            『……じゃあお兄さんも僕と約束して。ジェットさん達を……ううん、みんなを危険な目に合わせないって』

        『アイザックは私を置いて死んじゃったりしないよ。絶対。どんなピンチになっても、百丁拳銃でのりきっちゃうんだから!』

                            『もし約束を破ったら……僕、お兄さんのこと、絶対に許さないから』

 『誰かが死ぬとしたら……今夜ほど、おあつらえ向きな夜は無い。そうは思いませんか?』  
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:02:26 ID:CGAOR4Iw
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:02:30 ID:1WS39Qj1
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:02:30 ID:O0ZHZ0YE
   
187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:02:59 ID:1WS39Qj1
188〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:03:15 ID:a8bv/q/X
 ▽ナレーション▽
【そして明かされるいくつもの驚愕の真実――】


  『殺人犯だなんて思われちゃたまらん! 俺はただ、『幼女の死体で遊んでただけ』だってのによぉ!』

      『ヨーイチは、アイザックと同じポロロッカ星人だったんだよ〜!』

                   『まさか、高遠はゾフィスのように人の心を操る能力を持っておるのか!?』
 
『実は私は、螺旋王、いえポロロッカ王に命じられ派遣された、諜報員なのです』

    『唆されたんだろうよ。あの高遠って男にな』

                     『落ち着いてください、ガッシュ君。敵は床から現れたりしませんよ』

                          『船上で炎のように燃え上がる恋だね! ファイヤーパーティーだね!』

 『ミリアさん。愛している。アイザック王子ではなく、この高遠遙一と結婚して欲しい!』


 ▽ナレーション▽
【響き渡る叫び声――】


    『……………………へ、ええええええええええええええー!?』

『う……おおおおおおおおおおおおお!!』

                          『う……うああああああああ!』
 
      『黙れええええええええええええええええ!!』

『……クク、ククククク……はははっ、あーはっははは……アー……クソ! クソッ! クソォ!』

                               『うそう、そうそうそ、う、そう、そう、そうそ、うそ、うそ』

    『ヌゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
    

 ▽ナレーション▽
【夜は永い。思う存分に憎しみ合い、罵り合い、信じ合い、愛し合い、語り合い、騙し合えばいい。
 その結末が一本の糸で括られるまで思う存分】


  『さて、やってくれたな若造』
  
              『違う……高遠さんは、私を導いてくれただけ……そんな、そんな風に悪く言わないで……』

 『だから、死んで楽になりたい。ふん。死ねばいいじゃないか。ううん、むしろ死ねよ人形』

           『何だかわかんないけど挫けちゃ駄目、要は気合よ!』
     
   『それでも周りのみんながいい奴だって言えば、いい奴になるんだよ。つまり……その場のノリだね!』                                                                
         『私は……やさしい王様になる! ここでもそれは変わらん! 皆を悲しませる螺旋王を倒し、私が代わりに王様となる!』

189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:03:25 ID:BAGxo9yT
 
190名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:03:39 ID:O0ZHZ0YE
  
191名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:03:47 ID:zOlHxq3Q
192名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:03:51 ID:1WS39Qj1
193〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:04:04 ID:a8bv/q/X
 ▽ナレーション▽
【そして、饗宴は鮮血の結末を迎える――】




               『皆殺しだ』



194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:04:10 ID:O0ZHZ0YE
  
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:04:14 ID:1WS39Qj1
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:04:23 ID:BAGxo9yT
  
197名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:04:42 ID:NeO+mSjY
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:04:51 ID:O0ZHZ0YE
  
199〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:04:59 ID:a8bv/q/X
 ▽ナレーション▽
【慟哭は、願いは、総て血の海の中へと消えていく。少女は少年は彼は彼女は、一体何を思ったのだろう。何を感じたのだろう。
 ただ煌くは銀色の瞬き。肉に抉りこむを鉛弾。硝煙の香り。爆ぜる火薬】 
 
 
       『頑張ってね、応援してるから!そうだ。ドモンに、ドモンに会ったら――!』

『貴様あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! あああああああああああああああああああ!!!』

     『だから、もう笑ってもいいんだよ!』

                           『……ごめんね、みんな』

 『何でこんな話をするのかって? 意味はねぇ。ただ、お前さんが殺しちまったのはそういう女だったってだけの話だ。
  青臭ぇか?青臭ぇよなぁ?  だがな、今はどうしようもなくそういうことを言いたいんだよ!俺はなぁ!!』

                               『ぬぅおおおおおおおおおおおおおおお!!』

           『それでは、Good Luck』


 ▽ナレーション▽
【結局、この地に探偵は現れなかった。訪れたモノは、一瞬の希望と――永久の絶望だけ】 


「ポロロッカというものをご存知ですか?」 


全てが夢だったのだろうか。
野良猫のような少女が耳にしたその言葉は真夜中の白昼夢だったのかもしれない。
触れば糸を引いて指に纏わりつく飴色の幻想だったのかもしれない。

目の前で嗤う亡者は、最期の瞬間にどんな顔をしていたのだろう。
ふと頭に過ぎった想いが胸の奥を素通りして行った。

あたしには、関係ない。
この希望も絶望もあたしとは無縁の出来事だ。
 
だから、言ってやった。


「関係ないわよ。だって、あんたもう死んでんじゃん」


 ▽ナレーション▽
【全ての結末は、闇に葬られ、やがて野に伏す――その金属の匣が棺として海へ沈み行くまで】


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:03 ID:17nNacKb
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:04 ID:AHmQWIm+
 
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:14 ID:CGAOR4Iw
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:30 ID:O0ZHZ0YE
  
204名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:37 ID:1WS39Qj1
205名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:41 ID:BAGxo9yT
  
206名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:48 ID:NeO+mSjY
207〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:05:51 ID:a8bv/q/X
【参加者インタビューC】
●ビシャス(チャイニーズ・マフィア「レッドドラゴン」幹部・二十七歳)


――希望の船での大虐殺は衝撃を呼んだが。

…………………………………………………………………………。

――当初は空気的な扱いをされていただけに、あの活躍には度肝を抜かれた人も多かったと思うがどうか。

…………………………………………………………………………。

――あの……え、映画館なんかでの良い意味でのKYな行動も……その。

…………………………………………………………………………。

――ビ、ビシャスさん? あの、何か……。

…………………………………………………………………………。

――そ、その……ですね。

…………………………………………………………………………。

(ここで『も、もうやだ、この人怖い! 帰る!』とインタビュアーに泣きが入る。
 逃げ出そうとするインタビュアーに対して取材スタッフ一同による説得が開始される)  

……………………………………………………………………――ク。

――ふぇ……え、え?

……………………………………………………………――スパイク。

――ス、スパイクさんですか!? あ、は、はいっ! それでは長くなりましたがメッセージをどうぞ!

……………奴が……俺以外の人間に……殺されるとは……思えん。
牙を無くした獣だと……思っていたが……それでも奴は……獣だ。
……く、くく、く……スパイク・スピーゲル……く、くくく…………。
ハ、ハ、ハハ………………く、く、く………………………………………………。

――は、はいっ、ビ、ビ、ビビビビシャスさんでしたっ! あ、あ、ありがとうございます! 

……………………………………………………………………………。


 ▽
 
 
208名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:05:58 ID:PvN3EkcJ

209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:02 ID:LmfGvOmX
 
210名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:15 ID:teVcTh+y
 
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:20 ID:O0ZHZ0YE
  
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:25 ID:1WS39Qj1
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:51 ID:CGAOR4Iw
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:55 ID:zOlHxq3Q
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:56 ID:B+fVEVjx
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:06:56 ID:BAGxo9yT
  
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:07:05 ID:O0ZHZ0YE
  
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:07:08 ID:AHmQWIm+
 
219〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:07:10 ID:a8bv/q/X
「…………………………ぐずっ」
「……杏ちゃん?」
「…………………………っ…………たの」 
「…………?」

ことみは小さく首を傾げた。
豪華客船でのVTRが終わり、ビシャスのインタビューが始まった辺りで急に杏が俯いてしまったのだ。
 
「……杏ちゃん。黙っていたら……分からないの。わたし達は、喋るのがお仕事」
「こ………………」
「こ?」
「ああああああ、もう鈍いわね! 怖かったのよ、あのビシャスって奴が!」

半べその杏が髪を振り乱しながら、ことみに食って掛かる。
ついに訪れた爆発だった。

ちなみに、ことみがインタビュアーではなくナレーターをやっているのには理由がある。
それは、モロトフ荘へインタビューに行くに当たって数名絶対に会いたくない人間がいたからだ。
なのでことみはナレーターという、中の人的に見てもピッタリな仕事に収まっている。

「な、な、な、何であんな奴の所にあたしが行かなくちゃいけなかったのよ!」
「無茶ぶりなの……そりゃあ、ビシャスさん抜きでアニロワ2ndは語れないの。何しろトップマーダー」
「分かってる、分かってるわよ、そりゃあ……でも…………」
「……気持ちは分かるの。わたしなら同じ部屋に入れられた瞬間、逃げ出してるの。サーチアンドエスケープなの」

全然威張れない事でむん、とことみが胸を張った。
だが、なにしろ相手は中国系マフィアの幹部である。常識的に考えて怖いに決まっている。
ことみとしては死に物狂いでコメントを取って来た杏に賞賛の拍手を送りたいくらいだった。

「…………とにかく。豪華客船の顛末はみなさん、もう一度見直して欲しい部分」
「てかさ。何か、かなり意図的な編集がされていたような気がするんだけど」
「それは…………まぁ否定しないの」
「結末があまりに衝撃的だったせいで、あんな事言ってたなんて完璧に忘れてたわ、あたし」
「……わたしもVTRを作っていて驚きの連続だったの」
「特に……まだ本編が最新話まで見終わってない人、かな。
 この総集編を読んで最終回に挑もうとしている人には絶対色々誤解されたわ」

杏が眉を顰める。
先程の再現VTRの中にお見苦しい映像が含まれていた訳ではないのだが、問題発言は複数あった。
このままではアニロワ2ndが変なロワだと思われてしまうかもしれないと彼女は考えたのだ。

「まあいい――――なの(キリッ」
「全然良くないわよ!」
「…………怒られたの」

しゅん、としょげ返ることみ。
だがこんなやり取りも既に数回目。杏の方も今回の「ノリ」というものを把握しつつあった。

「はいはい、凹んでる司会者は放っておいて次に行くわよ。
 さてさて次の舞台は映画館! バッカーノ《馬鹿騒ぎ》の名に相応しい大波乱の幕開けだったわ!
 じゃあちょっと映像を見てみましょう」

 
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:07:26 ID:ypPki7iS
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:07:48 ID:CGAOR4Iw
222〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:08:00 ID:a8bv/q/X
【三大イベント・B 映画館】
213話「あなたに贈る物語」
225話「エミヤ」
231話「BACCANO -前哨編-/-集合編-/-そしてバカ騒ぎ-」
236話「やろうぜ、バトルロワイアル!/PINCESS WALTZ of『Valkyja』」
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


【士郎ハード】

仲間へ鍋(水炊き)を作る為に一人買出しへと出掛ける衛宮士郎。
だが、それは東方不敗の巧妙な罠だった。

「小僧の"勝利すべき黄金の剣"《カリバーン》はワシに見破られる為に投影されて来たようだのぉ」
「"無限の剣製"《アンリミテッド・ブレイド・ワークス》が使えれば……こんな爺さんなんかに……!」
「よかったのぉ、セイバールートのせいに出来て」
「んんんんんんんっ」
「カーッカッカ! のぉ、ラッド・ルッソ。小僧の命が惜しくば、他の仲間が何処に行ったか素直に話すがいい!」
「ラッド、俺のことはいい! 耐えるんだ…!! 今は耐えるしかない…!!」
「あー。なるほど、人質って訳ね。それでエミヤは生きてたわけだ納得納得……すまん、エミヤ。見捨てるわお前の事」
「な、何でそうなる!」

(ラッド、東方不敗に襲い掛かる)

「ぐ……っ!?」

僅かに走る鋭い痛みに眉を潜ます東方不敗。
その目に、銃口をこちらに向けながら駆けだすラッドの姿が映った。
その足を止めるべく、東方不敗は片腕に握った衛宮士郎を振りかぶり、ラッドめがけて全力で投げつけた。
弾丸の如く飛来する士郎。

「オラァ!」

それを、邪魔だとばかりにラッドは横殴りに靴の裏で蹴っ飛ばす。
標的を逸れた士郎の体は、そのまま固定椅子を二、三吹き飛ばしながら客席に突撃した。

「……うぅ、っぅうん」

(目覚めた士郎、色々あった末、ラッドのために剣を投影する)
 
「士郎の生カリバーンゲ〜ット」
「いけない……! もう魔力がなくなってるのを悟られたら……!」
「生小僧の生"全て遠き理想郷"《アヴァロン》を拝見してもいいかのぉ?」

(東方不敗、石破天驚拳を放つ)

「こんな奴に……くやしい……! でも……投影しないと!」(ビクッビクッ
「おっと、妖精郷に遮断されてしまったか。だがいつまでも展開してはおれんだろう?」


それから二人は後から集合してきたギルガメッシュらによって馬鹿騒ぎに巻き込まれた。
  

――――――――――――――――再生終了?――――――――――――――――――――


「……………………………………は?」
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:06 ID:ypPki7iS
224名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:10 ID:1WS39Qj1
225名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:29 ID:ypPki7iS
226名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:53 ID:nIxLApVX
 
227名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:58 ID:BAGxo9yT
  
228名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:08:59 ID:O0ZHZ0YE
  
229〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:09:04 ID:a8bv/q/X
メインモニターの前で口をあんぐりと開け、杏は驚愕に眼を見開いた。
画面に映し出されたのは何とR18指定されてもおかしくないような謎の映像だった。

おかしい、こんな筈じゃなかったのに。
杏はカメラが回っているにも関わらず、さり気なくセットの陰に置いてあった台本を開いた。
そう、確かこの映画館パートは引用を中心とした普通のパートだったはず……!

だが――杏の淡い期待はすぐさま裏切られた。
彼女が手にした台本にはト書きの台詞ではなく、何故か42×17の体裁で謎の小説が記されていたのである。


タイトルは――『剣と拳』


東方不敗のマスタークロスによって全身を拘束された士郎。
 赤らんだ頬、熱い吐息。
 身体に食い込んだ腰布が彼の細身ながら鍛え上げられた筋肉のラインを浮かび上がらせていた。

 老人の舐めるような視線が士郎の身体を這いずり回る。
 無様な自分自身が情けないのか、彼は時折苦しげな唸り声と共に駆を捩った。
 しかし東方不敗は「敗者」である彼に屈辱の道を迫る。
 つまり――人質という行為。
 いや、そんな単純な言葉では言い表せないだろう。
 士郎は「老人に所有された」のである。

 恨みがましく東方不敗を見上げる士郎の眼は羞恥の感情で濡れていた。
 どうして、こんな事に。
 負けた。確かに俺は負けた。だからって、それは俺とあの爺さんの話だ。
 皆は関係ない。皆にまで被害が及ぶなんて、そんな事考えてもいなかった。
 奴は俺をダシにして明智さんやイリヤを皆殺しにするつもりなんだ。
 あの人達は本当にいい人達ばかりだ。
 もし、俺がこんな拘束された状態で連行されていったら抵抗なんて出来ないだろう。
 だから、そうだ。耐える。今は、耐えるしかないんだ。
 あの爺さんも言っていたじゃないか。
 
『無駄な抵抗は止めることだ。自殺など考えるでないぞ?
 最期まで、貴様が大人しくしていたら――気が変わって、一人くらい生かしてやるかもしれん』

 俺が耐えれば、いいんだ。
 何をされたとしても、どんな辱めに遭ったとしても。
 自分だけで戦って、仲間の命を危険に晒している――――なんて、無様。
 これで本当に、正義の味方に憧れているなんて、言えるのかよ……っ!
 
『むぅ? 小僧よ。威勢がいいな。どうやらまだまだ元気が余っておるようだな』 
『く……っ……や、やめろ……ぁ……!』
『大人しくしていれば悪いようにはせん――――分かるな?』
『……ぐ…………っ……ハ……ッ……ァ……!』
 
 東方不敗の無骨な手が拘束布越しに士郎の身体に触れた。
 思わず漏れてしまう声をどう塞き止めればいいのだろうか。
 士郎は戸惑っていた。
 何だ、この感覚は。魔術詠唱とも違う。投影や鞘の感覚でもない。
 それでは。
 それでは、何だ。
 この熱くて狂ってしまいそうな衝動は何なのだ。
 ふつふつと沸き上がるこの感情の波。激しく絶崖を削る打ち潮のような昂ぶりはいったい――――


230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:09:08 ID:17nNacKb
231名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:09:32 ID:CGAOR4Iw
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:09:43 ID:O0ZHZ0YE
   
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:09:51 ID:1WS39Qj1
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:10:03 ID:LmfGvOmX
 
235〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:10:04 ID:a8bv/q/X
「……な、な、ななななななななな!!」
「杏ちゃん」

顔面を真っ赤に染め、プルプルと身体を戦慄かせていた杏の肩をことみがチョンチョンと突く。

「それ……台本じゃなくてアンソロ本なの」
「アン…………ソロ…………?」

三点リーダーを幾つも並べて、杏は聞いた言葉をそのまま返す。

「そう。よく本屋さんにも並んでいる例のアレなの。
 その表紙は……『アニロワ2nd オムニバスA:かえして!カリバーン』とみたの。
 このシリーズは匿名作家さんからのオリジナル小説を収めた力作なの。
 ちなみに巻末に幻となっていた『聖なる夜のカミナァッー! 〜LAST X'mas〜』も収録。
 第一巻の『アニロワ2nd オムニバス@:もってけ!エクスカリバー』共々ベストセラーになっているのはあまりにも有名」
「知らないわよっっ!!! そもそも何でこんなモノがスタジオの中にあるのよ!? っていうかそれ以前に何よ、さっきのVTRは!?」
「うっ…………」

杏の怒鳴り声がスタジオの中に響き渡る。
そしてすぐさま、彼女は眼を剥いて隣の少女を睨めつけた。

「……ヒューッ…………ヒューッ……!」
「ことみ。口笛、全然吹けてないわよ」
「キラッ☆」
「もう、全然似合わない事やらないの」
「杏ちゃん……微妙に酷いの」

杏の指摘に、明後日の方向を見ながらこの場を乗り切ろうとしていたことみがしぶしぶと振り返った。
その顔には明らかに焦りの色が覗いている。
VTRの編集は全てことみの役割だ。彼女がこの内容に関係していない訳がない。

「…………ぶっちゃけると、」
「ぶっちゃけると?」
「この辺りは複雑過ぎて……もうどうにもならなかったの……」
「だからってアレはないでしょ、アレは! 後半とか完全に意味が分からないわよ! 何よ、生カリバーンって!」
「いや……その……多分、本編もこんな感じだったはずなの……。お、思わずため息が出るほど精巧な再現VTRなの……」
「そんな訳ないでしょ! 死にかける度に士郎がビクッビクッしてたら、追加であと何十回原作で悶えなきゃいけなくなるのよ!」
「う、ううっ……杏ちゃんがいじめるの……」

胸元で両手の人差し指をツンツンと突合せながら、ことみは唇をキュッと結ぶ。

「あーもうっ! そりゃあ、ここは厄介な部分でしょうけど……」
「登場人物とかパートが多過ぎて如何ともし難いの。許してほしいの……というか、」
「というか?」

伏せていた目線を上げつつ、ことみが小さく一度、パチクリと瞬きをした。
一瞬の闇と、すぐさま復帰する光。杏はことみの思わせぶりな態度に思わず息を呑んだ。


「ひたすら、引用の嵐じゃ視聴者の皆さんが飽きてしまうんじゃないか……とも思ったの」
「あっ――!」

236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:10:28 ID:ypPki7iS
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:10:43 ID:1WS39Qj1
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:11:19 ID:O0ZHZ0YE
   
239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:11:25 ID:BAGxo9yT
  
240〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:11:27 ID:a8bv/q/X
あまりに、衝撃的な一言。
実際ことみに言われるまで完全に失念していた事項だった。
まるでどこかの地球特捜戦隊のように思わず口元を抑える杏。

しかし、普段の緩慢な動作と喋り方が嘘のような機敏な口調でことみは言葉を続ける。

「少なくとも……ある程度のポイントまで、総集編は話の流れを無視出来ないの。
 だけど、それはあまりにも…………退屈。
 どっかの機動兵器の二期みたいに……そもそも総集編は製作側のスケジュールの都合で作られるケースがほとんどなの」
「まぁ、うん。確かに……そうね」

うんうん、ともたらされた説明に杏は相槌を打った。
考えてみれば、面白い総集編という奴に出会った覚えがほとんどない。
なれば、そもそもこの企画自体が相当にハードルの高いモノだったのではないだろうか。
この状況を打破するためには過激なネタも必要なのかもしれない。

……む?

「ねぇ、ことみ」
「…………?」
「でも、なんでそこでこう……その、『ビクッビクッ』的なネタが――」
「もちろん映画館のVTR自体は用意してあるの。今度は時を吹っ飛ばしたりはしないから安心して欲しいの」
「ちょ、ま――こ、ことみ!?」

そうして杏の言葉を無視して――無理やり、映像の再生が始まった。
投げ出された質問は永久の闇の中に葬り去られるだろう。
そう。
そこに「理由」を求める事はマナーに反するのだ。
ふんだんなBLネタとも調和する柔軟性がアニロワ2ndには土壌として元々存在するのである。


【三大イベント・B 映画館】
231話『BACCANO -前哨編-/-集合編-/-そしてバカ騒ぎ-』
236話『やろうぜ、バトルロワイアル!/PINCESS WALTZ of「Valkyja」』
238話『ディナータイムの時間だよ(食前)/(食後)』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:11:42 ID:zOlHxq3Q
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:11:56 ID:1WS39Qj1
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:01 ID:CGAOR4Iw
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:04 ID:ypPki7iS
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:21 ID:teVcTh+y
 
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:22 ID:AHmQWIm+
 
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:24 ID:O0ZHZ0YE
  
248〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:12:26 ID:a8bv/q/X
愛は祈りだ。そして誰もが祈る。
誰もが好きな人たちに幸せになってほしいし、それぞれの願いが叶って欲しいと思っている。
暖かい場所で、あるいは涼しい場所でとにかく心地良い場所で、好きな人たちに囲まれて幸せに暮らして欲しいと思っている。

だけど、それは無理だった。
この殺し合いというシステムは非常に残酷なものだ。
こんな殺戮の舞台に駒として組み込まれてしまった時点で、自らに容易く安息が訪れる訳がないことなど誰もが悟っている。

空から降り注ぐのは最大の幸福などではなく、最強最悪の厄災。
どれだけ足掻こうとも、抗うことの出来ない宿命の下、誰もが命を振り絞る。
そして、クルクルと回りヒラヒラと堕ちていく。
そう、まるで円舞曲――ワルツ――を踊っているかのように。

最後に立っているのは誰だろう。最後に嗤っているのは誰だろう。
誰も知らない。だが、後戻りはもう出来ない。そして、今、この瞬間――賽は投げられた。


▽ナレーション▽
【開幕の合図は戦火を離れし、二人の王の他愛のない会話――】


 格闘王――ドモン・カッシュ
 『永遠は、ないな。少なくとも、ここにはない』

         &
         
 王ドロボウ――ジン
 『腹の底から大笑い出来るような、馬鹿騒ぎ《バッカーノ》かもしれない』         


▽ナレーション▽
【それは狂気と英気の交わりへと至り――】


 狂人――ラッド・ルッソ
 『フ、ヘヘッ……フハハ、ハッハッハッハ!
  …… 殺してやる。殺してやるよ。ブッ殺してやる。即殺す。今殺す。すぐ殺す。死んでも殺す。死ぬまで殺す。
  完膚なきまでに殺す。徹底的に殺す。大々的に殺す。芸術的に殺す。殺してからまた殺す。死んでからも殺して殺して殺し続けてやるよ。
  ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』

         VS    
                               
 英雄王――ギルガメッシュ
 『はっ。吠えるな狂犬、耳が穢れる』


▽ナレーション▽
【もしくは、素直になれない少女が浮かべた精一杯の強がりと太陽へと近づきたいという意志を照らす。
 そして喰らいつく狂人の殺意の牙】


 蜘蛛――結城奈緒
 『だから言ってんでしょ! アンタを通すつもりはない。あたしはここでアンタと戦うって!』

         VS  
           
 狂人――ラッド・ルッソ
 『お前よ、死ぬぜ』

249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:45 ID:BAGxo9yT
  
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:12:52 ID:1WS39Qj1
251名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:13:04 ID:O0ZHZ0YE
  
252名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:13:26 ID:zOlHxq3Q
253〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:13:39 ID:a8bv/q/X
▽ナレーション▽
【拳と射撃。二つの技術を極限まで高めた達人達の死闘を眺める一匹の大蛇。
 そして、蛇姫は道化師の懇願に黙って首を横に振った】
 
 
 拳王――東方不敗
 『そのような気概でこの東方不敗マスターアジアが止められるかどうか、試してみるがいいっ!!』

         VS
         
 蛇――藤乃静留
 『ほな、そろそろうちらも参りましょか』
 
         &
         
 射撃王――ヴァッシュ・ザ・スタンピード=@
 『そうだね。僕達一人ひとりの実力じゃアナタを止めることは出来ないかもしれない。
  でも……力を合わせれば不可能なんてない。僕達の育まれた絆はあなたの闘志にも迫る勢いなのさ』


▽ナレーション▽
【死を運ぶ聖職者に不死の少女。二人の相容れない存在が二度目の拳を交える時、そこには惨劇だけが広がっている。
 本当の殺し合いにまやかしが入り込む余地はない。幻想は――すぐさま、殺される】


 牧師――ニコラス・D・ウルフウッド
 『っとに……タフなやっちゃ。これだけ痛めつけても何度だって立ち上がる。おどれはゾンビかい』

         VS
         
 不死者――柊かがみ=@        
 『伊達に、……グッ……《不死身の柊かがみ》は名乗ってないもの』        


▽ナレーション▽
【真白い少女の真摯な願いは、愛するあの人に届くのだろうか。
 ゆっくりと鎌首を擡げるのは毒々しい笑みを浮かべた蛇の巫女。天に伸ばした手は空を切り、大地へ――】


 聖杯――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
 『決まってるわ!! 私はシロウの所に行きたいだけっ!!』
 
         VS 
 
 蛇――藤乃静留
 『はい、おおきに。お嬢ちゃんに恨みはあらへんけど――堪忍な』


▽ナレーション▽
【そして這い寄る銀の悪魔――】


 死神――ビシャス=@
 『…………………………………………』

254名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:13:53 ID:ypPki7iS
255名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:09 ID:1WS39Qj1
256名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:13 ID:CGAOR4Iw
257名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:21 ID:ypPki7iS
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:25 ID:O0ZHZ0YE
   
259名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:41 ID:BAGxo9yT
  
260名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:14:52 ID:AHmQWIm+
 
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:15:00 ID:PvN3EkcJ

262〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:15:13 ID:a8bv/q/X
▽ナレーション▽
【王達の饗宴は続く。この世のありとあらゆる才≠掻き集めたとしても、足りないような絢爛豪華な暴≠フ嵐。
 ただ一人、場違いな魔術師だけが焦燥を募らせる】


 射撃王――ヴァッシュ・ザ・スタンピード=@
 『止めるんだギルガメッシュ! 僕は君を撃ちたくない!』
     
         &
     
 魔術師――衛宮士郎
 『ギルガメッシュ!! お前はこんな所でも……!!』         
 
         VS
         
 英雄王――ギルガメッシュ
 『……足りんわ。贋作者(フェイカー)程度では我の相手には露ぞ値せん。さぁ立て、三人纏めて相手になってやろう』        
         
         VS
         
 拳王――東方不敗
 『ククク……四者入り混じっての乱戦か。悪くない、悪くないぞぉぉおおおお!!!』         
         
         
 
▽ナレーション▽
【荒野のガンマンは胸に抱いた理想のため全てを投げ出す。そこには微塵の戸惑いも躊躇いも存在しない。合言葉は一つ。
 ――――地には平和を、そして慈しみを(ラブ・アンド・ピース)】        
         

 ALL――戦う意志を持つ総ての相手

         VS
       
 射撃王――ヴァッシュ・ザ・スタンピード
 『とりあえずさ。殺すとか殺さないとか、そいういう物騒な話はヤメにしない?』
 

▽ナレーション▽
【だが、そんな彼の願いと真っ向から衝突する男が好き勝手に喚き散らす。   
 ぶち上げるは闘争の狼煙。殺意だけが支配する空間への誘い。『これから皆さんに殺し合いをしてもらいます』】
 
         
 狂人――ラッド・ルッソ
 『っつーわけで、宣言するぜぇえええ!! さあさあさあさあさあ!! やろうぜ、"バトルロワイアル"!!!」

         VS
 
 ALL――バッカーノ《馬鹿騒ぎ》に参加する全ての人間=@     

263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:15:23 ID:O0ZHZ0YE
  
264名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:15:34 ID:CGAOR4Iw
265名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:15:54 ID:BAGxo9yT
 
266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:16:12 ID:1WS39Qj1
267〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:16:17 ID:a8bv/q/X
▽ナレーション▽
【そして、舞台は流れ、目覚めの時――】


 不死者――ラッド・ルッソ=@         
『……だったらよ。割り切って死神でもなってみるか?
 自分は絶対死なねーんだけど、人間に死を齎す神様によ――って、冗談じゃねぇ!
 俺は……、俺は……、俺は……、俺は――……』

         VS
         
 不死者――柊かがみ=@
『こんなわたしだけど……わたしは辿り着いてみせるわ。わたしの願いが叶うところまで。
 なれるもんなら神様にだってなってやる。神様になってぜんぶ! ぜんぶ! ぜんぶ――取り戻す!
 螺旋王を喰って! わたしは――……』
 
 

――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

【参加者インタビューD】
●ヴァッシュ・ザ・スタンピード(人間台風《ヒューマノイド・タイフーン》/自立種・推定年齢百五十歳以上)

――本日はよろしくお願いします。

あ、いやいや。こちらこそよろしくお願いします。

(ヴァッシュ、ペコペコと馬鹿丁寧にお辞儀。インタビュアーも釣られてお辞儀)

――結局、エンジェルアームは発射されませんでした。

あぁー、そ、それはですねぇ。うん、まぁ仰るとおりなんだけど……。
でも……そうだね。やっぱりプラントの力は禁じられた力なんだ。
あの力を使って、もしかして誰か他の人が命を落とす事になったかもしれない。
そう考えるとボクは少しだけ辛い気持ちになるなぁ。

でもね、同時にこの力を僕が使うのを躊躇ったせいで命を落とした人がいるのも事実なんだ。
だから、うん……そうだな。難しい問題なのかもしれない。
やっぱり、そうだね。とにかく僕の力不足だよ。
一人でも多くの人を救う。それが僕がやらなければならない事だったのに。

――ギルガメッシュとの関係は中々愉快だったと思うのですが。

こんな事言うと笑われるかもしれないけど……僕、彼は結構いい奴だと思うんだよね。

だってね、見た目で相手を判断する人は沢山いる。
性別、人種、格好、肌の色、眼の色、喋り方……僕だって何度、酷い目にあった事かって話さ。
うん、今となっては普通に笑い事なんだけどね。仕方ない事だとも思うし。

でも、ギルガメッシュには分かるんだ。
相手がどんな人間なのか、見た瞬間にね。
アイツはある一面では、間違った事は絶対に言わないって考えられるかもしれない。
ほら、そのね。あの傲岸不遜な性格とか奇行とか、問題点は山積みなんだけど。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:16:19 ID:CGAOR4Iw
269名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:16:26 ID:u4KbzzRU
支援
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:16:39 ID:teVcTh+y
 
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:04 ID:1WS39Qj1
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:09 ID:LmfGvOmX
 
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:09 ID:CGAOR4Iw
274名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:11 ID:O0ZHZ0YE
  
275〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:17:16 ID:a8bv/q/X
――ヴァッシュさんを語るに当たって、やはりウルフウッド氏との関係は欠かせないと思うのですが。

うん、そうだろうね。
ウルフウッドはまだ生きているんだろ? ここでは見ないものね。
僕達は友達さ。だけど、そうだね……普通で言うような「友達」とはちょっと違うと思うんだ。
そりゃあ、友達が悪の道に走ったら止めたいと思うよ。
何とかして元に戻して、それでもバカな事をするんなら殴ってでも眼を覚まさせたいとも思う。
だけど、僕達の関係は少しだけ違う訳で……。

……やっぱり、難しいな。ゴメンね、全然碌な事喋れなくて。

――それでは最後に一言お願いします。

ウルフウッド。
君に言いたい事は山ほどあるし、語り合いたい事も沢山ある。
だけど、僕達が話をする……って事はさ。つまり、そういう事じゃないか。

(ここでヴァッシュ、室内を見回す)

だからきっと、僕達はもう会えない方がいいんだと思う。
そりゃあ、君のやっている事が正しいなんて言わないよ。
いや、それ以前に君自身がまだ整理出来ていない部分もあるんじゃないかな。

でも――

絶対に。絶対に、だ。死ぬんじゃないぞ、ウルフウッド。
そして絶対にもう誰も殺しちゃダメだ。

こんな事を僕が言ったら、君はまた怒るんだろうね。
「ワイを舐め腐りおってからに!」……とかね。

うん、でも……知っての通り、僕はこんな奴だからさ。
だから、何度でも言うよ。
「今そこで人が死のうとしてる。僕にはその方が重い」ってね。



 ▽

276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:31 ID:BAGxo9yT
 
277名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:51 ID:1WS39Qj1
278名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:17:53 ID:BAGxo9yT
  
279名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:18:03 ID:O0ZHZ0YE
  
280名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:18:06 ID:AHmQWIm+
 
281名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:18:10 ID:nIxLApVX
 
282〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:18:13 ID:a8bv/q/X
「ふぅん、ここで切るわけ」
「……続きはwikiで、なの」
「まぁこの先はちょっと表現し難いものね」
「それもあるけど……実はこの番組は一読さんが『本編を読みたくなってしまう』ような総集編を目指しているの」
「……にしては、ここまでボカしたのは初めてよね」
「様々な事情から、大幅に手を加え易いパートとそうでないパートがあるの」
「ああ、そっか。なるほどね」

アンソロ本を巡る騒動も過ぎ去り、杏とことみは和やかに言葉を交わす。
番組もついにCパートへと突入し、本筋に入らざるを得ない状況である。


「……ごほんっ! さて、こんな事を言っている間に……いつの間にかあたし達、ワープしてしまったみたいなんだけど」
「ワープというか……スタジオを移動しただ――ゴホッゴホッ!」


極めて不自然な言葉と共に、杏はキョロキョロと周囲に視線を散らした。
もちろん、テレビの前のお友達も突如二人の居る場所が変わってしまった事にお気付きのはずだ。

そしてそれ以上に画面における最大の変化が一つ。
つまり、二人の格好が赤ブルマ&光坂高校指定体操服という極めて健全な衣装ではなくなっている事である。
彼女達が見に纏っているのは学生のフォーマルウェアとも言うべき、学校の制服だった。
それもクリーム色の生地が特徴的な冬服ではなく、群青色のラインが特徴的な夏用のセーラー服だ。


「この服、まさにアニロワならではよねっ!」
「ゲームでは……わたしたちに夏服はないの……。京○ニに……感謝するの」


アニメ、という部分を妙に強調する二人。
大増量された赤ブルマもだが、ことみと杏の二人が光坂高校の夏服を着ている時点でそれはアニメ出典確定なのである。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:18:23 ID:ypPki7iS
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:18:46 ID:1WS39Qj1
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:19:21 ID:O0ZHZ0YE
  
286〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:19:21 ID:a8bv/q/X
が、視聴者の皆様はやはり既に『いくつかの不可解な点』にお気付きだろう。
光坂高校の夏服は白と深い青色をベースにしたオーソドックスなセーラー服だ。
スカートの丈がデザイン的に若干長めである事を除けば、別段不思議な点などないのだ。

では、何故――彼女達の服は不可思議な『メロンジュース色』に照らされているのだろうか?


「ふふふ、この色……もう鋭い人は気付いちゃってるでしょうね」
「この色は……普通……気付くの」


メロン、メロン、メロン……。
アニロワ2ndにおける「メロン」といえば勿論、参加者の一人V様ことビクトリームの大好物だ。
彼が登場話にてカミナと見せた抜群のコンビネーションはまさにアニロワ2ndの幕開けだった。
カミナに関して言えば、もしかしたらコレが一番目立っていた時期なのではないかともっぱらの噂である。
しかし、アニロワ2ndのwikiを「メロンジュース」で検索して貰えればとある状況において、この描写が用いられた事が分かるはずだ。

「それじゃあ、まだ分からない人のためにクイズを出しましょうか」

夏服のスカートが颯爽と舞う。
体操服から着替えられた事がよほど嬉しかったのだろう。
心なしか杏の表情も先ほどよりもウキウキとしているように見える。


「ある時はメロンジュース、またある時はストロベリージュース……これなーんだ?」


チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、とカウントを取る音がサウンドエフェクトとして流れる。
そしてたっぷり十秒後。得意げな顔付きの杏がゆっくりと唇を開いた。

「答えは――――」
「……スイッチ・オン、なの」
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:19:23 ID:teVcTh+y
 
288名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:19:27 ID:BAGxo9yT
  
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:19:46 ID:CGAOR4Iw
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:19:57 ID:ypPki7iS
 
291名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:20:02 ID:1WS39Qj1
292名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:20:09 ID:O0ZHZ0YE
   
293〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:20:14 ID:a8bv/q/X
豪快な動作と共に、メロン色だった空間へ眩い光が降り注いだ。
一瞬ホワイトアウトするテレビカメラ。
太陽の如き輝きに思わず眼を閉じた視聴者の視界に映った光景とは――


「クイズの答えはズバリ――シズマァァアアッッッドライィィィイブ!」
「もしくは…………梅サワー?」
「お色直しも済んだし、アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 総集片第二部 in 大怪球フォーグラー! 始まるわよっ!」


アニロワ2ndのリーサルウェポン――大怪球フォーグラー。

この放送用に改造された大怪球フォーグラー(の多元宇宙的存在)特設スタジオに二人は移動していた。
本来ならばフォーグラーの内部は鮮やかな緑色の光で満たされているのだが、今回に限っては普通の蛍光灯が天井に嵌め込まれていた。
暗くて、時々赤色に光り、基本は蛍光緑色の空間でテレビの放送など出来る訳がないからだ。

スタジオの丁度中央にはもう御馴染みになった大画面。
そして、その目前に『フォーグラーらしさ』を追求するために台座が用意されていた。
そこには緑色の液体と赤いチェリー状の球体が浮かんでいる。
まさしく、アンチ・シズマ管のレプリカである。
現在、会場内の参加者達はコレを揃えるべく奮闘しているというのに、総集編ではいとも容易く収納してしまっていて申し訳なささえ感じるくらいだ。
加えて、ご丁寧に三本ある内の一本には油性マジックで『アルベルト』と名前が書いてあった。

「場所と服装が変わって心機一転ね」
「アニロワ2ndを語るのに……フォーグラー抜きはちょっとないの……それにしても、」

突如キョロキョロとことみが忙しなく視線を散らした。

「……どうしたのよ」
「こう、凄いロボットに乗っていると……色々言いたい台詞が思い浮かぶの」
「例えば?」
「『このロリコンどもめ!!』とか」
「いや、元ネタ的には間違ってはいないんだけどさ……」
「それじゃあ……『杏ちゃん! あれを使うの!』とか」
「『ええ、よくってよ』なんて答えてあげたいけど、フォーグラーじゃ無理。足がないから立てないもの」
「…………ガイナ立ちは本編に任せるの」

非常に口惜しげにことみが呟いた。
彼女は『キック』に意識を取られているため気付いていないのだが『ビーム』ならば、このフォーグラーでも発射出来るのだ。
だがそんな事を忠言してしまうと、辺り一面が重力レンズ砲で崩壊してしまう。触らぬが華、だ。

「さてと、」

そして台座の手前に置かれていたのが二組のフカフカのソファと飲み物とお茶請けが用意されたテーブルだった。
二人はゆっくりとそちらに向けて歩を進める。

「ゲスト呼ぶ?」
「まだちょっと……早いの……」
「じゃあ先にVTRかしら」
「なの。まずはフォーグラー誕生の秘話に迫るの」

バフッと杏がソファに勢いよくお尻から飛び込んだ。
ことみもそれに追従してゆっくりとした動作でその隣に腰掛ける。

そして、二人そろってのカメラ目線。笑顔。ニッコリと。VTRスタート。

294名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:20:21 ID:CGAOR4Iw
295名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:20:41 ID:nIxLApVX
 
296名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:20:59 ID:1WS39Qj1
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:21:23 ID:ypPki7iS
 
298名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:21:31 ID:O0ZHZ0YE
  
299〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:21:53 ID:a8bv/q/X
【大怪球フォーグラー誕生列伝】

239話『W.O.D 〜Wisemen On Discipline〜/〜World Of Darkness〜/〜Write Or Die〜』
245話『月下の棋士/【ZOC】絶望の器/まきしまむはーと』
249話『てのひらのたいよう/明智健悟の耽美なるバトルロワイアル――閉幕』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


――コレ≠ヘ……何だ?


▽ナレーション▽
【暗澹なる澱から覗きし、ざわめくような光。
 螺旋の輝きに似たキラメキの中で、女は自分の身体に得体の知れない感覚が生まれるのを感じた】


「……コレ=c…は、動くのか?」


世界制覇を目指すBF団が暗躍し、エマニエル・F・Fが10年の歳月と、無数の人員、大量の予算ををかけて製造したコレは。
BF団の最終悲願を達成するための露払いとして製造されたこの超巨大兵器の名前は――……、

――大怪球 フランケン・フォン・フォーグラー。

形状は完全な球体で、直径は丁度300メートル。重量は500万トン超。超巨大――ロボット、である。


▽ナレーション▽
【賢き少年は苦悩する。そして驚愕する。
 想像する。想起する――世界に静≠もたらす巨大なる動≠フ鼓動を】



――全部全部終わっちゃえばいいよ。




その黒金の魔物の導線に火を灯したのは、争いとは最も程遠い少女の小さな手。


▽ナレーション▽
【そして彼女のおそれはつのる――】


瞬間、世界がもう一度赤く染まる。
再度のレッドアウト。部屋中の緑色が一斉にその彩を変化させて行く。


そう。

右を見ても、
左を見ても、
上を見ても、
そして、前を見ても、


全部全部全部全部……血のような、炎のような、黄昏のような――――紅。

300名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:21:54 ID:zOlHxq3Q
301名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:21:55 ID:CGAOR4Iw
302名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:14 ID:1WS39Qj1
303名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:20 ID:ypPki7iS
 
304名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:28 ID:teVcTh+y
 
305名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:52 ID:AHmQWIm+
 
306名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:53 ID:CGAOR4Iw
307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:22:54 ID:BAGxo9yT
  
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:23:00 ID:O0ZHZ0YE
   
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:23:14 ID:HpH3+oTP
 
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:23:20 ID:ypPki7iS
 
311〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:23:21 ID:a8bv/q/X
▽ナレーション▽
【厄禍なる坩堝は自身への絶望と失望で満ちた。
 夜が明ける。漆黒の世界を照らす輝きは更なる――黒き光】


光のない笑みと共に、頬を紅潮させた少女があどけない表情で嗤う。
世界なんていらない。
励ましも、感情も、思いやりも全部、全部だ。


二人の隙間を埋めるのは無機質な鉄と冷たい空気だけ。
終わりを求める少女の心は、いつの間にか空っぽになっていた。
残ったのは泥のように汚い醜悪な感情だけ。


自己の崩壊。他者への強烈な依存。そして羨望。
その結果生じる、状況認識力の低下。
自ずと湧き上がる破滅的思考。
非力な自己に対する憎悪。
徹底的な自身への蔑み。
思考力の著しい低下。
倫理観の歪み。
常識の欠落。
進化の終焉。
自己完結。
段階滅破。
終末願望。
無気力。
疲労。
発熱。
紅。
死。

何もかもが幻のようだった。
それは、世界が終焉を迎える寸前の出来事だ。


とある世界のとある男のように――少女は、世界に絶望を求める。



そして――――"黒き太陽"が動き出す。



――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


【参加者インタビューE】
●明智健悟(警視庁刑事部捜査一課警視・二十八歳)

――今日はよろしくお願いします。

わざわざこんな場所まで、申し訳ありません。
それにしても少々お疲れのご様子ですね。どうぞ、私の淹れた紅茶です。喉がお乾きでしょう?
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:23:52 ID:1WS39Qj1
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:24:08 ID:ypPki7iS
 
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:24:19 ID:O0ZHZ0YE
  
315〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:24:26 ID:a8bv/q/X
――あ、すいません。それでは遠慮なく……。

いえ、こちらこそお口に合うと嬉しいなのですが。

――え、わ……これ! す、すっごく美味しいです!

そう言って頂けるとこちらも幸せな気分になります。お代わり、なされますか?

――あ、えと、どうしようかな……。んーと、じゃあもう一杯だけ……。

はい、どうぞ。まだまだ沢山ありますからね。藤林さん、お茶請けのお菓子もいかがですか?
士郎君とミー君が用意してくださったクッキーやスコーンがいくつも残っているんですよ。

――あたし、もっと早く明智さんの所に来たかったです……。

おや、もしやお悩みでも?
私でよろしければ出来る限りの相談に乗らせて頂きますよ。
実はこう見えてもロスで心理セラピストの研修を受けた経験がありまして。

――あぁ……、はいっ。えーと……ちょっとぐらいならいいよね……。あの、ですね! 実はその…………。

ふむ、なるほど……隣のクラスの卒業出来るかどうか心配だ、と。
この前は語尾に『便座カバー』をずっと付けていた……と。確かにコレは藤林さんが気に病む気持ちも分かりますね。
そして、もう一人の方……岡崎さん、ですか。彼がどうされましたか――?

(この後、数十分以上に及ぶインタビュアーと明智の悩み相談が始まる。
 恋愛、家庭事情、友人関係、進路……彼女はいくら普段気が強いからといえ多感な高校三年生に過ぎない。
 当然、心配事は山のようにあるのだ)

――ありがとうございましたっ! あたし、何ていうか……その、スーッとしたっていうか……胸のつかえが取れた感じです!

いえいえ。こちらこそ、お役に立ててなによりです。
ところで……テレビ番組のインタビューの方は大丈夫なのですか?


――………………すいません。えーと、その、もう少しお時間大丈夫ですか……。


ふふ、構いませんよ。
さてと、何から話したものでしょうね。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:24:32 ID:HpH3+oTP
 
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:24:41 ID:AHmQWIm+
 
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:25:07 ID:1WS39Qj1
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:25:21 ID:ypPki7iS
 
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:25:31 ID:CGAOR4Iw
321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:25:37 ID:BAGxo9yT
  
322〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:25:45 ID:a8bv/q/X
――やはり各種名簿とレーダーの話をお伺いしたいです。

一言で表現するなら、禁断の道具ですね。
ただ、これを神の悪戯と呼ぶか、もしくは運命の邂逅と呼ぶかは人それぞれでしょう。
皮肉な巡り合いの末、それだけの力を持った支給品が揃ってしまった、という事です。

ですが、逆に大き過ぎる力は人に災禍を振り撒きます。
藤林さんも考えてみて見てください。
高嶺君は「レーダーを持っていたから」こそ、ゆたかさんを置いて私の元へ危機を報せにやって来ました。
私が同じ状況に直面していたとしても同様の行動を取ったでしょうね。
しかし――逆に、我々の手にレーダーがなかったとしたらどうでしょう?
この場合、フォーグラーが暴走する、という結末は避けられたのではないでしょうか。

神の見えざる手に近しいそのような機能は、我々人の子には過ぎたる力だったのかもしれません。
出来るだけ多くの情報を持つ事が最良とは限らない。
人には人の、神には神の歩みが存在するのですから。

――残念ながら、明智さんはゆたかさんの暴走を止める事が出来ませんでした。

あれは全面的に私の責任です。
ですが、ゆたかさんに無理な指示をした、という訳ではないと思っています。
我々がしてしまった致命的な過ちは彼女に「重荷を背負わせた」事です。
一方的に守られる事がどれだけ彼女に負担を掛けていたのか、これっぽっちも把握していなかった。

ですがね。お恥ずかしい話になりますが、今も私は信じているんですよ。
ゆたかさんには素晴らしい可能性が眠っている、とね。
彼女には本来、無限の未来が広がっているはずなんです。

あの時の私の失敗は、事態を急ぎ過ぎてしまった事です。
成員の心理状況の把握、不満と役割の調整。
どちらもリーダーとして決して疎かにしてはならないミスです。
それに……彼女に大して、もっと別の接し方があった。悔やんでも悔やみ切れません。

――菫川ねねね、スカー。この両名へのメッセージをお願いしたいのですが……。

菫川先生。
大人としての役割を全て押し付けてしまった事、きっと怒ってらっしゃるでしょうね。
私としてはあなたが許してくれるのならば、喜んで謝罪に赴きたいのですが……死人としての身体ではそれも難しく。
あなたの書いた、あなただけの本当の物語。
クライマックスはこれからです。期待していますよ。見せて頂けるのでしょう? 
最高のハッピーエンドと大団円を。

スカー氏。我々が共有した時間は極めて短い。
私はあなたについての情報こそ持っていますが「あなたという人」については限りなく無知です。
ですが、私達はあの瞬間、確かに一本の線で繋がった――仲間です。

導いてあげて下さい。行く先の見えない未来に立ち止まる子供達を。
示してあげて下さい。その破壊の右腕≠ナ切り裂く本当の未来を。

――ありがとうございました。

いえ、こちらも素晴らしい経験が出来ました。有意義な時間でしたね。


 ▽
 
 
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:06 ID:teVcTh+y
 
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:14 ID:CGAOR4Iw
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:15 ID:O0ZHZ0YE
 
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:26 ID:nIxLApVX
 
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:31 ID:1WS39Qj1
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:26:35 ID:ypPki7iS
 
329名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:27:05 ID:BAGxo9yT
 
330名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:27:06 ID:O0ZHZ0YE
 
331〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:27:10 ID:a8bv/q/X
「杏ちゃん……職務放棄にも程があるの……」
「え、あ、あははははは……」
「でも明智さんは凄いの。ロスは偉大なの」
「まぁロスだしね」
「あ……それと……ロスも凄いけれど……眼鏡も凄いの」
「眼鏡?」

杏の頭上にクエスチョンマークが飛び出した。
眼鏡。確かに明智は眼鏡の似合うナイスガイではあるが……。

「今時、眼鏡があれだけ似合う人はいないの」
「確かに。今は、アンチ眼鏡が蔓延る時代だし」
「むしろ……智代ちゃんみたいな隠れメガネじゃないとダメなの……」
「純粋なメガネっ子……確かに言われて見るとパッとは思いつかないわね」
「いるの。眼鏡のせいで四人組の中でいつも一人省られたりするの……眼鏡はバッドステータス……回避不能の死亡フラグ……」
「あはははははははっ! ことみ、ちょっと言い過ぎっ!」

大きなお世話、としか言いようがない会話で盛り上がることみと杏。
全世界の眼鏡ヒロイン各位に喧嘩を売っている。
が、すぐに眼鏡トークに飽きた二人は行儀よくカメラに向き直ると、


「さて、ここまで楽しく過去の話を振り返って来た訳だけど……」
「そろそろ一度、現状の整理をする時間なの」


二人の台詞と共に、カメラの端、スタジオの奥からガラゴロと縦回転式のメッセージボードが運ばれて来た。
大きさは身長の低いことみが目一杯背伸びをして丁度一番上まで届く程度。
無言で、くるりとソレの掲示板の部分をことみはひっくり返す。


「じゃあ、まず本編と直接リンクする282話『愛に時間を』終了時点でのお浚いをしてみましょうか」

332名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:27:26 ID:CGAOR4Iw
333名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:27:31 ID:ypPki7iS
 
334名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:27:46 ID:1WS39Qj1
335〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:28:00 ID:a8bv/q/X
どこから取り出したのか、指揮棒のような物を杏がボードに当てた。
そこには現在の生き残りに関する相関図が記載されている。


「まずは便宜上……《グレンラガンチーム》とするの。
 ここに属しているのは【ヴィラル】【シャマル】【クロスミラージュ】の三名。
 夫妻の愛の巣に囚われのヒロイン的拳銃型デバイスという構図」
 
大きく丸で囲まれた三つの名前。
ヴィラルとシャマルの間の矢印付近には『LOVE天元突破!』『君を乗せて』『俺はシャマルと添い遂げる』といった小恥ずかしい文字が書き込まれている。

「まぁVTRをもう一度見てみるの」


282話『愛に時間を』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


「――オレのドリルがァアアアアア!!」

 ドリルと化したラガンの内部より、ヴィラルの叫び声が響く。
 それは外にも漏れ、ドリルの回転音にも負けず、皆の耳に届いた。
 空中で停止していたラガンが、回転を強めながら降下する。

「――シャマルを貫きィイイイイイ!!」

 まっすぐ、直下のグレンへと突き刺さる。
 グレンの頭頂部を穿ち、貫通して、一心同体となる。

「――合体するッ!!」

 異なるガンメンにドリルで接続し、その機体のコントロールシステムを掌握する。
 ラガンにのみ搭載された特殊機能によって、今、グレンとラガンが一つになった。
 ドリルはグレンの頭頂部を通して、シャマルが席を置くコクピットまで届く。
 両機体の操縦席がドリルで繋がり、またそのドリルを管として、ヴィラルは螺旋力を流し込んだ。
 グレンの全機械系等に、そしてシャマル自身に。
 黒こげだったグレンの全姿は、注がれた螺旋力を洗浄剤として、一瞬の内に赤を取り戻した。
 装甲の損傷すら掻き消し、まった新しい姿へと生まれ変わる。

 力と力が合わさる様。
 機械と機械が見せる芸術。
 愛と愛の結晶。
 広大なる多元宇宙の果て、男と女はロマンに乗せて、こう叫ぶ。


「「 愛 情 合 体 ッ ! 天元突破グレンラガン!! 」」


 ……ヴィラルとシャマルの掛け声が重なり、会場全域に轟いた。
 ラガンは頭部として、グレンの首に収まっている。
 グレン背部に収納されていた飾兜が、ラガンに被さった。
 顔面兵器などではない、真っ当な人型を成す合体メカは、巨人として聳え立つ。


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――

336名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:17 ID:O0ZHZ0YE
 
337名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:23 ID:CGAOR4Iw
338名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:26 ID:1WS39Qj1
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:28 ID:AHmQWIm+
 
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:30 ID:BAGxo9yT
 
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:37 ID:ypPki7iS
 
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:28:49 ID:O0ZHZ0YE
  
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:29:22 ID:dU+JzCdh

344〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:29:23 ID:a8bv/q/X
「…………うわぁ」
「…………卑猥」
「こ、ここまでやられると、むしろ清々しいわよね」
「気合があれば本当に何でも出来てしまうのが螺旋力なの」

この合体を見せ付けられた他の参加者同様、二人も微妙に頬を赤くした。
正直、子供には絶対見せたくない展開である。非常に教育的によろしくない。

「そして、天元突破しちゃったと……」
「『男の人と、女の人が、愛し合って、合体する』のがアニロワ2ndのクライマックスだったの」
「BL合戦といい、コレといい……とんでもないロワだわ」             
            
杏がパタパタと手団扇で体温の上がった顔に風を送る。
公共の電波を使って、何をやっているのだろうという疑問が湧き上がって来るようだった。

「そして、このグレンラガンが主人公チームと相対している、と」
「……そうなの。ただ、グレンラガンチームにはクロスミラージュが囚われているのだけど……」
「なんか、歯切れが悪いわね」
「そりゃあカミナさんがあの有様じゃあ、言い淀みもするの……」

クロスミラージュ。
本来ならばティアナ・ランスターの使用するデバイスに過ぎない彼/彼女だが、アニロワ2ndでは事情が異なる。
先のマスターのインタビュー内容からも分かるように、もはや参加者の一人と言っても過言ではない活躍を見せている。
確かに、カミナの相手といえば口付けを交わした仲であるドモン・カッシュが有名かもしれない。
しかし彼らが一緒に行動した時間は短く、逆にクロスミラージュとカミナの絆は非常に深い。

「むぅ、何よ。じゃあ肝心のカミナはどうなってる訳?」
「ギルガメッシュさんにフルボッコにされたの」
「………………」
「もう完膚なきまでに」
「………………」
「手も足も出ずに」

画面が切り替わり『愛に時間を』におけるギルガメッシュとカミナのバトルシーンが映し出された。
叫びながら殴り掛かるカミナ。完全に舐め切った口調であしらうギルガメッシュ。
両者の間には天と地ほどに深い実力の差があった。

「まぁフォローするとして……いくら何でもカミナさんがこのまま何もせずに終わる……という事はないと思うの」
「何か、予想外の活躍を見せる、と?」
「そうなの。もし……このまま何もしなかったら『アニロワ2ndのドラえもん』という称号をプレゼント」
「…………もうそうなる可能性にチェックが掛かってる気が」
「そうなった時は……わたしと読者一同の腹いせとしてエピローグ中に眼でピーナッツを噛んで貰うとするの」


 ▽
 
  
【参加者インタビューF】
●衛宮士郎(第五次聖杯戦争勝者・魔術師/十八歳)

――いきなりですが、凄く失礼な事をお聞きしてもよろしいでしょうか。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:29:35 ID:CGAOR4Iw
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:30:10 ID:1WS39Qj1
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:30:22 ID:ypPki7iS
 
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:30:42 ID:CGAOR4Iw
349〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:30:42 ID:a8bv/q/X

な、何だ……随分唐突だな。
とりあえず聞いてみない事には何とも言えないけど。

――はい、では。アニロワ2ndの士郎さんは『シスコン』&『ロリコン』という扱いで宜しいでしょうか。

なっ……!? ちょ、ちょっと待ってくれよ!
何でそんな扱いになるんだ!?

――だって『イリヤの味方』なんですよね?

うっ……そ、それを言われると…………まいったな。
いや、まぁ。そりゃあイリヤとは仲良くやってるけど、それがそういう……その、何だ。
そ、そういう言葉で括れるかどうか、って訊かれれば難しいし。

あ、ちょ、な、何だよその眼は!?
まるで犯罪者を見るような……。ニ、ニヤニヤしないでくれよ……。

――それでは、本題に入りましょう。
  バッカーノ、怪獣大決戦を引き起こした原因は士郎さんの不用意な行動にあるという説が一般的ですが。
 
それは、まぁ認めるよ。
俺が鍋を作ろうとしたのが東方不敗を映画館に呼び込むきっかけになった訳だし。
しかも人質にされて……申し訳なくて、明智さん達に合わせる顔がなかったよ。  
  
――ゲーム開始直後、実は南方の学校で間桐慎也さんが士郎さんの訪問を待っていたのですが。

……………………そ、それは初耳だったな。
でもさ、ああ見えても、あいつ結構良い所あるんだ。
あんまり悪く言わないでやってくれよ。
…………は、お、女の子に襲い掛かった?
『お前、服を脱げよ。そしたら信用してやる』という最低な台詞を残した……だって!?

いや、そんな。嘘だろ? ……嘘じゃ、ない? 
………………えーと。
  
――こちらとしてはドモンさん、東方不敗さんに対するメッセージを士郎さんには頂きたいです。

ドモン……ああ、俺を鍛えてくれた男の事か。
それほど長い付き合いじゃあなかったけど、アイツの実力は本物だと思うよ。
少なくとも、正面からならギルガメッシュにだって引けは取らないんじゃないかな。
でも俺の知る限りじゃあ、まだまだ全力を出す機会には恵まれてないな。
多分、あの力が生き残った人達……ねねね先生とか……ギルガメッシュを助ける場合もあると思う。

東方不敗は……そうだな、確か『上』の連中側に付いたんだっけ。
だとしたら、正直――最強の敵、じゃないかな。
会場に降りて来るのに生身って事もないだろうし、この爺さんをどうにかしない限り活路はない筈さ。
対抗出来る奴がいるとすれば…………まぁ、分かるだろ?

――本日はありがとうございました。お姉さんとは仲良くしてあげて下さいね。

…………なんか引っ掛かる言い方だな。
言われなくてもそうするよ。今日だってこの後、イリヤと一緒に買い物に行く約束を――


 ▽

 
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:30:47 ID:AHmQWIm+
 
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:31:09 ID:O0ZHZ0YE
 
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:31:14 ID:dJZmX4Un
支援
353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:31:28 ID:1WS39Qj1
354名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:31:46 ID:PvN3EkcJ

355名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:31:48 ID:CGAOR4Iw
356〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:32:08 ID:a8bv/q/X
「この後アイツ、イリヤちゃんと手を繋いでどっかに行っちゃたのよねぇ」
「まったく。姉に手を出すなんて……とんでもない奴。…………嘆かわしい限りなの」
「でも、この世の中には妹や姉にはとりあえず手を出さないと逆にヘタレ扱いされる世界もあるらしいけど」
「普通、姉妹とはそういう事しないの」
「ごもっともで」

これまた今日何度目か分からない両者の息の合ったため息。
全くもって気苦労の耐えない番組である。

「それでも、士郎に関しては立派な最期だったって意見も多いわよ」
「まぁ実際、死後に好き勝手出来るのは…………生前の良い行いのおかげなの。……某ワカメとは比べられないの」
「アレは女の敵よね」
「そりゃあラーメンのダシ骨と一緒に埋められても仕方ないの」

二人は顔を見合わせ、やれやれとジェスチャーで示した。
が、すぐに気を取り直し番組を再開する。
次にことみが指示棒で指し示したのは大きく『VS』と書かれた先にある集団だった。


「さて、前話は『愛に時間を』のラストでギガラヴドリルブレイクを夫妻チームがぶち咬ました所で『引き』なの」
「……ということは、」
「そう……おそらく最終回の冒頭は主人公チームがこの一撃にどう反応するかが焦点になるの」

――主人公チーム。
メンバーは【スパイク・スピーゲル】【ガッシュ・ベル】【鴇羽舞衣】【ジン】【小早川ゆたか】【スカー】【菫川ねねね】の七名。
彼らがパロロワ用語でいうメインの『対主催チーム』だ。
そして、七つの名前の間にはいくつもの矢印や言葉が書き込まれている。
『ぁゃιぃ関係』『パヤパヤ』『俺は二人殺した』『私は六人殺したわ』などなど、愉快な有様だ。


「ふぅん。でもコレ……普通に考えたら……」
「ダメ……わたし達が展開予想するのは禁則事項なの」
「あ、とと……ゴメンゴメン」
「でも……全話読んでるアニロワ2nd住民のお友達にサービス。
 この『愛に時間を』をしっかりと読み込んでおくと……すんなり最終回に入れる、とは言っておくの」


時間がそれなりに空いてしまったため、記憶が風化している可能性は否めない。
しっかりと復習をすることで、新しい出来事を楽しみ易くなるというものだ。
357名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:32:20 ID:O0ZHZ0YE
  
358名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:32:26 ID:ypPki7iS
 
359名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:32:33 ID:nIxLApVX
 
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:32:35 ID:CGAOR4Iw
361名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:33:04 ID:1WS39Qj1
362名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:33:15 ID:ypPki7iS
 
363〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:33:28 ID:a8bv/q/X
「後は当然、事実上のラスボスポジに座っている【ルルーシュ・ランペルージ】【ニコラス・D・ウルフウッド】【東方不敗】の三人」
「この三人が目立たない、なんて事は流石に有り得ないわね」
「そして、対主催チームから一人離れて勝手気ままな行動をしている【ギルガメッシュ】。この十五名が現在の生き残りなの」
「最終回は、彼の行動もおそらく注目所の一つでしょうね」
「結城奈緒さんが生きていれば、手伝ってくれたかもしれないけれど……今や主人公チームとの仲は決裂状態」
「一触即発、とはいかないけれど一概に『仲間』と言う事も出来ないわ」

画面に映し出されたのは黄金の王――ギルガメッシュ。
残された参加者の中でも最強に近い力を持ち、圧倒的な力を持つ宝具も所有するキーパーソンである。

「大怪球フォーグラーを叩き落す、マップ一列を焼き払う、数の子を甚振る、ワカメを嬲る、裸になる、猫の仮装をする――とやりたい放題」
「アニロワ2ndでは珍しい序盤からずっと活躍しているキャラよね」
「なの。……ここの参加者は何故か、空気期間がある人が多いの」
「ああ。でも、ずっと空気な人もいるんじゃ。例えばス――」
「杏ちゃん!」

強い口調でことみが杏を咎めた。
今日は明らかに普段よりも『……』が少ないことみではあるが、こんなに強い言い方をするのは初めてだった。
注意された杏も、ビクッと背筋を震わせた。

「ご、ゴメン」
「ス――ではなく……えーと…………そう、いくら陰が薄いからってフリードのことを悪く言っちゃダメ……なの。
 動物を苛める事はこのわたしが許さないの……。悪い人は地獄になが――ではなく、多次元迷宮に幽閉するの……」

いきなり話題を切り替えたことみが強い視線を携え言った。
もっとも杏も動物の飼い主なので、ペットを苛めたりはしない。…………たぶん。
だが、ソレよりも杏には気になる事があった。


「フリード」
「そう……フリード、なの」
「ねぇことみ。変な事聞いていい?」
「……?」
「フリードって何だっけ」
「――ッ!?」

364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:33:31 ID:O0ZHZ0YE
  
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:33:44 ID:AHmQWIm+
 
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:33:58 ID:CGAOR4Iw
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:34:14 ID:1WS39Qj1
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:34:36 ID:ypPki7iS
 
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:34:39 ID:teVcTh+y
 
370名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:34:44 ID:O0ZHZ0YE
  
371〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:35:03 ID:a8bv/q/X
そう、ことみの発した『フリード』という単語が何を指すのか、杏は理解出来なかったのだ。
どうも動物らしい事は先程の台詞から理解したのだが、ソレが何の動物なのか完全に失念してしまっている。

「…………フリードは竜なの……白い、竜……。キャロ・ル・ルシエちゃんのペットみたいなもの」
「……あ。そういえば、ゆたかの周りでたまに『キャウ!』とか言ってたような。極稀に」
「まぁ登場自体が結構後半で、しかも支給品ですらなかったし……ぶっちゃけ、今まで何もやってないし……忘れてた杏ちゃんを責められないの」
「これは……や、ヤバイくらい空気ね……最終回で活躍する……のかしら」
「……ちょっと……それは……わたしもコメントし辛いの」

スタジオに本日何度目か分からない重苦しいムードが流れた。


――空気。

例えば、

『私、あなたにとってどういう存在?』
『お前は……俺にとって空気みたいな存在だよ』

という台詞が恋人同士で飛び交った場合、それは好意的なニュアンスを表している筈だ。
空気とはつまり、『なくてはならないもの』だとか『ある事に疑問を持たないくらい自然なもの』という意味を含むのだ。
間違っても、

『私、あなたにとってどういう存在?』
『お前は……俺にとって箱ティッシュみたいな存在だよ』

なんて返答してしまった場合、このカップルはおそらく長くは続かない。
たとえ、それがぶっちゃけ、似たような事柄を指しているとしても、だ。
こうして考えてみると、空気とは意外と良い比喩なのである。

しかし、パロロワにおける『空気』とは『いてもいなくても関係ない』という場合においてだけ使用される。
俗に言う空気キャラという奴だ。
主催との因縁だけで生き延びた、とまで言われるアニロワ1stの空気生還者ドラえもん。
後半は一気にエクソダス請負人としての力を発揮したものの、最初は極めて地味だったゲイナー。
あまりに圧倒的な力を持つチートキャラであった事。
そして、把握が恐ろしく難しいという条件が重なり、200話時点で8話しか登場していなかったスパロワのフォルカ。
第二放送直前まで誰にも会う事が出来ず、それ以降でも終始カップルのおまけ扱いで最終的には主催者側から空気宣告をされたギャルゲロワの白鐘沙羅。

だが、二人は知っていた。
本当の空気キャラとはマジでネタにならないほど地味な連中を指すという事を。
彼らは総じて『空気キャラである事すら忘れるほど空気』なのである。
あまりに不憫なため、ここで名前を挙げる事すら憚られてしまうほどに。

そして、フリードの存在感の無さは明らかに後者だった。

「え、えーと……」
「ゴホ、ゴホゴホゴホ! じ、実は番組の冒頭でも言ってあったけれど……ゲストをお呼びしてあるの!」
「あ……そ、そうだったわね!」

しどろもどろになりながら、話題を変える二人。
これ以上、あの空気竜に触れてはならない。
番組進行係としての指名が高らかと警鐘を鳴らしていた。


「ゲストは二人……でも、その前にインタビューなの」
「こっちも何と二人……妙な因縁で結ばれたアニロワ2ndの名物コンビよ」
「つまり……そう名物に美味いもの無し≠ニいう事の裏付け」
「げ……っ」
372名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:35:21 ID:AHmQWIm+
 
373名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:35:31 ID:CGAOR4Iw
374名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:35:57 ID:nIxLApVX
 
375名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:36:03 ID:BAGxo9yT
  
376名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:36:09 ID:1WS39Qj1
377名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:36:24 ID:O0ZHZ0YE
 
378〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:36:58 ID:a8bv/q/X

もう言っていい事といけない事の区別も曖昧だった。
杏はことみに突っ込みたくて堪らなかったのだが、それよりもフリードの話題をコレ以上したくなかった。
故に、あえてのスルー。
のほほんとした顔付きの相方の言葉に対して、聞こえない振りをした。

「……あーもう。はい、じゃあVTRどうぞ。ったく、どこも問題のある奴ばかりだわ……」


 ▽

【参加者インタビューG&H】
●ラッド・ルッソ(シカゴ発ニューヨーク行大陸横断鉄道フライング・プッシーフット号 乗客『白服集団』リーダー・二十五歳)
    &
●柊かがみ(陵桜学園高等部三年C組・十八歳)


ラッド「てかよ。おい、そこの……なんだ、かがみちゃんそっくりの姉ちゃん」

――は、はい? あのあたし、まだ何も聞いてないんですけど……それにその発言は……。

ラッド「いいからいいから、ちょっとだけ俺に先に質問させてくれ。何で――俺とかがみちゃんだけ、一緒にインタビューな訳?」
かがみ「そうよね。私もソレは気になってたの」

――いや、ずっと一緒だった訳ですし、そちらの方がいいかと思いまして。

ラッド「そりゃまぁそうかもしれねぇけどよぉ。そこをあえて一人一人に突っ込んでいくのがプロって奴なんじゃないかね」
かがみ「実際、二人揃って……なんて、安易な考えよね。『ラッドみん』なんてぶっちゃけ、あんまりウケ良くなかったのに」
ラッド「そうソレ! 俺がやった事に文句言われるのは構わねぇんだわ。
    でもよ。喰われてからかがみちゃんに出てたのはよぉ、俺じゃねぇんだぜ? 気分は良くねぇわな。そこンとこ、忘れねぇで貰いてぇな」

――(こいつら……)あ、あの、ですね。それでも、番組の編成上の都合というものがありまして……。

ラッド「都合だぁ? おいおいおい、何だよその言い分は――」
かがみ「ちょっとちょっとラッド。それは言い過ぎよ。怖がってるじゃない。せっかく来てくれたんだからあんまり悪くいっちゃ失礼だわ。
    あ、インタビュアーさん。答えますんで、質問してください」
ラッド「……ったく、変わり身のお早い事で。分かった分かった、聞いてやるよ姉ちゃん。ヒャハハハハハハ!」

――(……か、帰りたい)……はい、ではお二人に質問させて頂きます。生前で一番印象に残っている相手はどなたでしょうか。

かがみ「酷い目に遭わされた……という意味ではウルフウッド。それとやっぱりアルベルトね」
ラッド「あーそうだな。俺は相羽兄弟とはそこそこ関わりがあったんじゃねぇか?
    殺しきれなかった、って意味ならやっぱギルちゃんと東方不敗のジジィは名残惜しいな」
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:07 ID:O0ZHZ0YE
  
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:21 ID:ypPki7iS
 
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:23 ID:CGAOR4Iw
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:37 ID:AHmQWIm+
 
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:40 ID:BAGxo9yT
 
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:50 ID:1WS39Qj1
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:37:51 ID:B+fVEVjx
386〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:37:52 ID:a8bv/q/X
――なるほど。お二人が挙げた人物ですとウルフウッド、ギルガメッシュ、東方不敗の三名は未だ生存中ですが。

ラッド「さっさと死ね、いや、今すぐにでも俺に殺させる!って面子だねぇ」
かがみ「私とラッドの経験を合わせると今の生存者とは大抵結構大きめな接点があるのよね」
ラッド「かもな。『狂人』が表に出てた時に主だった連中とは会ってるしな」
かがみ「そうそう。顔を合わせた事もないのは……夫妻とカミナぐらいかしら。ある意味納得出来ちゃう連中ね」

――『ラッドみん』もとい『狂人』についてお聞きしたいのですが。

かがみ「いざ面と向かって聞きたい、って言われちゃうと困るかも」
ラッド「アレは俺らっぽい、ってだけじゃねぇか? 身体はかがみ、心は俺……って訳でもねぇしよ」
かがみ「でも沢山の人に迷惑を掛けたのは事実だし……なんか、情けないな」
ラッド「まぁ最期は割合綺麗に終われて良かったんじゃねぇか。わざわざ俺が出張ってやったんだから当然だけどな」
かがみ「……かなぁ」

――思ったんですけど、お二人とも妙に仲良しですよね。

かがみ「えぇー……」
ラッド「おいおいおいおい! んだよかがみちゃん、その反応はよ。スッッッッッゲェ、嫌そうじゃねぇかっ!」
かがみ「いや、っていうかさ。……そういうの本当に勘弁して欲しいんだけど」
ラッド「はぁっ!? 待てよ、何だそりゃあ。俺と相性バッチリって言われたのが気にいらねぇってか!?
    ツレネェなぁ。こんないたいけなお兄さん≠捕まえてその台詞はあんまりってもんだぜ!?」
かがみ「だってアンタ。お兄さんっていうかおじ――」

――ッ……は、はいっ! こ、ここまでで結構です! お二人ともお疲れ様でしたっ!

かがみ「へ? あたしの台詞まだ途ちゅ――」

――(この子、不死者になったからかしら。危険発言が多すぎるわ……)いいんです! ありがとうございました!

かがみ「んー……イマイチ納得いかないけど。ま、いいか。うん、こっちこそ。あ、可愛く編集してね」
ラッド「おぅ、もう終わりか? 話し足りねぇがまぁ今日はこの辺で止めといてやるか」


 ▽

387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:38:15 ID:CGAOR4Iw
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:38:39 ID:1WS39Qj1
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:38:45 ID:AHmQWIm+
 
390名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:38:45 ID:ypPki7iS
 
391名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:38:56 ID:O0ZHZ0YE
  
392〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:38:59 ID:a8bv/q/X
「以上、ラッドとかがみのラッドみんコンビのVTRでした」
「やっぱり似てるの……特に髪の色とか」
「はぁ……もういいや。そうね。しっかりと否定できないのが辛い所だけど」
「だったら染めればいいの……ピンクとかに」
「……何でピンク」
「今なら……眼鏡と黒タイツも付いてくるの」
「――ことみ?」
「ざ、戯言だったの……」

口元だけの歪な笑みを浮かべた杏からことみが眼を背ける。
ラッドにまでか○みと「似てる」などと言われて杏は大分苛立っていた。
あんなツインテールと一緒にしないで貰いたい、瞳はそう語っていた。

「さてと、じゃあそろそろ良いわよね。二人とも、入っていいわよ!」

が、そんな心の波紋を振り払うかのように杏が大声を張り上げる。
ゲストの登場――元々緊張感など皆無に等しかったスタジオ内に微妙にピリピリとした空気が流れる。

来客が超VIPであるから、という理由も確かに存在はする。
だが、最も正解に近い答えとは「スタッフも誰がゲストに来るのか知らない」からだった。
今この場でゲストの正体を知っているのはパーソナリティの二人だけなのだ。


「このような賑やかな場は、性に合わんな」
「フン。この俺をわざわざ呼びつけるとは……招待に応じてやっただけ有り難いと思って貰いたいものだ」


ぶつくさと文句を言いながら控え室へと繋がる扉から出て来る二人の男。
彼の姿を捉えた瞬間、スタジオ内に衝撃が走った。
現れたのは――あまりにも予想外、いや明らかに超本命ながら実現不可能だと思われていた二人だったからだ。

彼らはゆっくりとした足取りでスタジオの中央、ソファの置かれた場所へと歩み寄った。
そして立ち上がり微笑を浮かべていることみと杏を一瞥。
数秒の間、値踏みをするような視線で彼女達を眺めた挙句、何も言わずに腰を降ろした。

すぐさまことみ達も一礼し、着席。


「ごめんなさいね。じゃあ、自己紹介お願い出来るかしら」
「…………螺旋王、ロージェノムだ」
「……そっちは元≠セろ? この場では……そうだな。こう名乗っておこう。
 俺が現・螺旋王ルルーシュ・ランペルージだ」
「よくそのような口が利けるものだな……ッ!」
「……どうどうなの。……まぁ落ち着くの」

ありえない取り合わせである――その場のスタッフ一同がごくり、と息を呑んだ。
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:39:04 ID:CGAOR4Iw
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:39:17 ID:BAGxo9yT
  
395名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:39:44 ID:1WS39Qj1
396名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:39:57 ID:CGAOR4Iw
397名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:40:17 ID:CGAOR4Iw
398名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:40:33 ID:nIxLApVX
 
399〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:40:33 ID:a8bv/q/X
画面に移っているのは四人の人間である。
既に見慣れたであろう藤林杏と一ノ瀬ことみは問題ではない。
焦点はゲストの二人である。


禿頭髭面の大男。
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd、初代主催者兼螺旋王――ロージェノム。

スラッとした細身の黒髪の少年。
アニメキャラ・バトルロワイアル2ndにおける二代目主催者兼螺旋王――ルルーシュ・ランペルージ。

二人の顔のすぐ下に白い文字でテロップが挿入される。
そこにおいても、この『初代』と『二代目』の関係は変わらない。


「えーっと、多分画面の前の皆さんも驚いてると思うのよね」
「今までひたすら死者しか出てこなったこの番組に……いきなりロージェノムさんとルルーシュくんのゲスト出演」
「ビックリするな、って方が無理な注文よね。多分」


ポリポリと頬を照れくさそうに掻く杏。
ことみはテーブルの上に置かれたジュースを美味しそうにチューチューと啜っている。

「ロージェノムはともかく、参加者のルルーシュもいるのよね」
「…………あ。もしかして、杏ちゃん……知らない?」
「……へ。何が?」

ことみはコトンとコップを置くと、呆けた表情を浮かべる杏に耳打ちした。

「その……ルルーシュくんの髪の毛に……注目」
「……あっ!」
「どうした?」
「…………な、なんでもないわ! そ、そういう事ね……」

ルルーシュの髪の毛――少しだけ長い後ろ髪――を確認した杏は大きく何度も頷いた。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:40:43 ID:ypPki7iS
 
401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:40:49 ID:O0ZHZ0YE
  
402名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:40:55 ID:zOlHxq3Q
403名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:41:05 ID:1WS39Qj1
404名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:41:23 ID:BAGxo9yT
 
405名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:41:28 ID:O0ZHZ0YE
   
406名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:41:31 ID:ypPki7iS
 
407名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:41:52 ID:CGAOR4Iw
408〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:41:58 ID:a8bv/q/X

「でも、コレ……なんかあたし達とは別の意味で不味いんじゃ……」
「チッチッチ……なの。まぁ恒例のぶっちゃけた話をすると……この総集編は基本的に本編にはノータッチ。
 困った時は『多元宇宙』と『螺旋力』が……何とかしてくれるの。まだ慌てるような時間じゃないの。
 新しいパニッシャーだって空から降って来るの……だから、」


ことみが言葉を切ったと同時に、画面の下に新しいテロップが出現する。
冒頭で見かけた注意書きと同じ書体だ。文面は至って簡素。たったの一行だけだ。


――CAUTION――

◆ご注意
※ルルーシュの後ろ髪はただ長いだけです。

――CAUTION――


「…………(こくこく)」
「じゃ、じゃあ皆納得したようだし、いい加減番組を進めましょうか」
「もう一度説明しておくと……ここにいるのは螺旋王を辞職した人と螺旋王に就任したっぽい人。
 でも……どっちもそれが本当かどうかは分からないの。コレ、とってもとっても……大事なことなの……。
 しつこい人にはわたしが銀河を投げてお仕置きするの……」
「ことみ、また適当な事言って……ったく」

大げさなリアクションと共に杏も目の前に置かれたグラスの中身を呷った。
妙にどろり、としていてしつこい甘さが後を引く。
色と味から判断するに、おそらくピーチ味で間違いないのだろうがあまりに濃厚過ぎて喉を中々通らない。
が、一生懸命飲み干す。
コップの中にはまだ半分以上液体(半流体?)が残っているが、おそらくもう手は付けないだろう。

「二人には……これからしばらく番組を一緒に進めて貰うの」
「つまり、それは私に話せ、という事か? ――『螺旋のはじまり』を」
「なの。外伝の話数自体は少ないのだけれど……あれは設定固めの意味合いが強くて少し難しいの……。
 簡単で大雑把な解説が出来ればベター」

アニメキャラバトルロワイアル2ndはぶっちゃけた話、非常にややこしい。
特に天元突破と螺旋力覚醒に関する正しい理由は普通に物語を追っているだけでは見逃してしまう可能性もある。
故に新規読者にも、既読者にも優しい番組作りが求められる訳だ。

「そうか、分かった。それではまず――」
「待て、ロージェノム」
「……どうした、ルルーシュよ」
「司会者。一つ聞かせて貰おう。この番組は後はバトルロワイアルの成り立ちを解説して終わりなのか?」
「……うん。その予定だけど」

不思議そうな顔で杏が聞き返す。するとルルーシュは憎々しげな顔付きで、

「それは妙だな」
「妙?」
「まず――そうだな。俺の話題が全く出ていない事についてはどう説明するつもりだ?」

ルルーシュの不満――それは、最終回における最重要人物のポジションが半ば確定しているように見える自分の、総集編における影の薄さだった。
最終回前日のブースターであるはずのこの番組で、全く取り上げない事などあってはならないと考えたのである。
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:42:25 ID:ypPki7iS
 
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:42:25 ID:nIxLApVX
 
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:42:53 ID:1WS39Qj1
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:43:01 ID:LmfGvOmX
 
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:43:09 ID:AHmQWIm+
 
414〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:43:28 ID:a8bv/q/X

「…………だってバトル系の話にまるで絡んでないんだから仕方ないの」
「……何?」


ピクリ、と眉を動かしたルルーシュに対して、ことみが無表情のまま反論する。

「…………ルルーシュくん、寝過ぎなの。気絶し過ぎなの。もやし過ぎなの」
「うっ!」
「それに、全体の流れで見ると……本当に、主催交替まで中ぐらいのイベントばかり。微妙に紹介し難いの
 でも、序盤を除けば存在感自体はかなりあったのだけれど……」
「ば、バカな……」

項垂れるルルーシュ。
考えてみればこの世界ではイマイチ地味だったかもしれない。
働きがいぶし銀過ぎたのかもしれない。そんな不安がルルーシュの胸中を過ぎる。
いや、だが待って欲しい。
確実に自分は主催者の器へ収まっても異論の出ない「格」を持ち合わせている。
巡り合わせが悪かっただけだ。どちらにしろ最終回での活躍は約束されたも同ぜ――


「あ、ちなみに参加者インタビューのコメント。ルルーシュくんとヴィラルさんの分だけないの」


ぽつり、と。
極めてさり気ない口調でことみが言った。

「な……待て! 何故アイツと同じ扱いをされなければならんのだ!? さすがに聞き捨てならんぞ!」
「これは本当に謝らないといけない事よね……あの、それがね。
 枢木スザクとアポを取ってあったんだけど……考えてみたら彼一話退場で他に話すことがなくて。
 『意外とヴィラルさんって強いですよね』とかみたいな会話しか成立しないんだもの」
「……番組構成の都合上、カットせざるを得なかったの」
「クッ……まさか、そんな……!」

主催者という立場に相応しい人選をしたかったのだが、その願いは叶わず。
結局、微妙な内容だったのでカットしてしまえ、というのがことみの下した英断だった。

「では、これならばどうだ? 俺が今からヴィラルへ気持ちを込めた<<bセージを送る。その代わりといっては何だが――」
「……内容次第かしら」
415名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:43:36 ID:CGAOR4Iw
416名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:43:35 ID:O0ZHZ0YE
  
417名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:44:00 ID:BAGxo9yT
  
418名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:44:04 ID:1WS39Qj1
419名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:44:32 ID:O0ZHZ0YE
 
420名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:44:58 ID:CGAOR4Iw
421名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:45:02 ID:AHmQWIm+
 
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:45:07 ID:zOlHxq3Q
423〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:45:10 ID:a8bv/q/X
が、どうやらルルーシュ本人はスザクの残した言葉を相当聞いてみたいらしい。
問題は他の部分にこそありそうなのに、難儀な事である。

しかし、ことみ達にしてみればコレは渡りに船の展開だ。
明らかに宿敵のルルーシュからヴィラルに向けた言葉。
どう考えても恨み辛みの怨嗟であろうが、ルルーシュは馬鹿ではない。意外と場を弁えてよさげな事を言うかもしれない。


「よし、よく聞け。一度しか言わんぞ」
「はいはい」


「ククク……フハハハハッ……フフフ……ハーッハハハハハハ!
 ヴィラル! 『王』からの有り難い言葉だ。
 俺は――スザクを殺した貴様を絶対に許さないッッ!
 いいか、絶対だ。必ずこの『王の力』で、俺は貴様を断罪する。
 嫁との幸せをせいぜい今の内に謳歌するがいい。
 貴様に訪れるのは誰よりも悲惨で、凄惨で、身の毛も弥立つような永久の贖罪と悔恨の日々だけだ!
 俺の『忠実な』部下達がすぐに貴様を俺の下へと連れて来るだろう。
 騙されたと知った時のお前の顔が楽しみだよヴィラル。ククク……フフフ……フハーッハハハッハハハ!」
 
 
「ボツ」
「な、にッ――!?」
「こんなの使える訳ないでしょ。常識的に考えてよ、もう」

心底からうんざりしたような口調で杏がルルーシュを切り捨てる。
期待した自分が馬鹿だった、と少々肩を落としてさえいた。
だが、その時ことみが、

「でもその代わり、お便りが届いているの」
「手紙、だと。誰からだ」

ルルーシュの問いかけに、懐から取り出した便箋を差し出すことみ。
確かにそれは手紙だった。
真っ白い無地の横書きの封筒である。両面を見ても、そこには一切の文字は書かれていない。
中に手紙が入っているかさえ疑わしい物品だった。


「それは……言えないの。でも、仮にも主催者を適当な扱いは出来ない……アニロワ2ndはそういう配慮に長けたロワなの」


意味も分からぬまま、ルルーシュはそれを開封する。
そこには、


-------------------------------------------------------------------------------------

   『いつまで遊んでいるつもりだ。ルルーシュ、早く帰って来い』

-------------------------------------------------------------------------------------


という文面だけが細かい字で記されていた。
424名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:45:14 ID:dU+JzCdh

425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:45:22 ID:ypPki7iS
 
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:45:54 ID:nIxLApVX
 
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:46:00 ID:1WS39Qj1
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:46:00 ID:AHmQWIm+
 
429名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:46:25 ID:CGAOR4Iw
430〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:46:36 ID:a8bv/q/X
「こ、これは……っ!」

たったのそれだけ。
素っ気ない白色の封筒に薄い紙、短い台詞。
宛名もなければ送り主の名前もない。
だが、彼にとってはその言葉だけで何もかもが十分過ぎた。


「これを……どう解釈するかは任せるの。
 そもそも、今ココにいるルルーシュくんの存在すら明確な言葉では説明出来ないの。でも……」


ことみが眼を細めて、小さく微笑んだ。


「今会場にいるルルーシュくんにも、この気持ちが届いたらいい……そんな風に思うの」


そのぶっきらぼうな言葉が誰から発せられたのか。
答えは、ない。確定的な未来は決して訪れることはないだろう。
しかし、誰もが――その送り主の名を『何となく』ではあっても悟ることは出来る。


「……そう、だな」
「良いことをした後は気持ちがいいの……」


口元を抑えながら、ルルーシュが吐き出すように呟いた。

スタジオの雰囲気が一気にまるで別の空間であるかのように一変した。
もはや、ここがフォーグラーの内部であることすら忘れ去られてしまうのではないか、という状態である。
感極まった表情を見せるスタッフ。
言葉を発しないものの、はにかんだ様な顔付きのロージェノム。
そしてよく分からない役に入り込んでいるルルーシュとことみ。

たった一人、杏だけが目の前に置かれたどろりとした濃厚なピーチっぽい液体を眺めながら考えていた。

(……この番組、どういう方向性を目指しているんだろう)

と。


 ▽

431名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:46:47 ID:ypPki7iS
 
432名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:47:14 ID:1WS39Qj1
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:47:27 ID:AHmQWIm+
 
434名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:47:27 ID:CGAOR4Iw
435名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:47:38 ID:O0ZHZ0YE
  
436〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:47:46 ID:a8bv/q/X
【参加者インタビューI】
●高嶺清麿(魔物の子「ガッシュベル」のパートナー/中学三年生・十五歳)

――ルルーシュ・ランペルージについてどう思いますか。

あいつは魔物だよ。
人の形をしてはいる。だけど……もっとおぞましい存在。
言うなれば心を操る魔物、かな。ゾフィスと変わらない。

あの濁った目、自分の利益しか考えていない腐った思考……絶対に負けちゃいけない相手だったのに……クソッ!

――やはり悔いが残りますか。

……そりゃあそうさ。
俺があそこでやられたせいで、事態は物凄い方向に進んだだろ?
まるで俺は路傍の石だよ。あいつにとって障害になる事すら出来なかったんだから。

――メッセージをどうぞ。

ガァアアアアッシュ! 聞こえているか?
俺はお前のためにもう一度魔本を持ってやる事が出来なかった。
何があってもお前を優しい王様にしてやるって約束したのに、叶えてやる事が出来なかった。
お前にしてやれなかった事が、教えてやれなかった事が……まだ沢山ある。

でもな。いいか、強くなれガッシュ!
今、お前には立派なパートナーがいるはずだ。
だから――俺が、死んでも、……お前は絶対に王になれ。
夢を諦めるんじゃないぞ。
分かったな……絶対、絶対だ。


ジン。頭≠ェ先に逝っちまって悪いと思ってるよ。
でもな、俺はお前が身体だけじゃあ動けない……とは思わない。
亀のように引っ込めた頭を突き出すのはまだ先か。
でも、いい加減出し惜しみは止めるべきじゃないか?

盗むんだろう――悪夢みたいなパーティの主催役を、さ。

それにさ。パーティの出席客が皆、湿っぽい顔じゃあ楽しくないだろ。
魅せてくれよ、王ドロボウ。期待してるぜ。


 ▽
 
 
437名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:47:52 ID:ypPki7iS
 
438名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:03 ID:BAGxo9yT
  
439名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:09 ID:AHmQWIm+
 
440名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:18 ID:1WS39Qj1
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:33 ID:ypPki7iS
 
442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:49 ID:O0ZHZ0YE
  
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:51 ID:teVcTh+y
 
444〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:48:57 ID:a8bv/q/X
【参加者インタビューJ】
●ニア(螺旋王ロージェノム第一王女/大グレン団調理主任・約十五歳)

――ロージェノムについてどう思いますか。

お父様ですか? 
えっと、私、あなたの聞きたがっている事は喋れないと思います!
私、お父様の事、あんまり詳しくは知らないんです。

――作中ではシータとの女の戦いが目を引いたが。

戦いですか? でも、あれは戦いだったんでしょうか?
私にはよく分かりません。
だって、ずっとずっとシータさんは心の奥で泣いていたんです。
本当のシータさんはあんな酷い事が出来る人じゃないんです。
優しくて、強くて、可愛らしくて、素晴らしい女の人だと聞きました。
そう、ドーラおばさまが言ってたんですから。

それに、おばさま。シータさんの事を話すときに物凄く嬉しそうな顔をするんです!
たぶん、おばさまはシータさんが大好きなんです! だから私も……。

――メッセージをお願いします。

アニキさん! アニキさんは今何をやっていらっしゃるんですか? 何をしようとしていらっしゃるんですか?
私は、少し自分が何をすればいいのか分かった気がします。
ドリルです! 私達の心の中には大きくて強くて固い、ドリルがあるんです!
無理を通して道理を蹴っ飛ばす、とてもいい言葉だと思いました。
シモンがヨーコさんがいなくなっても、私の中のドリルは消えませんでした。
だから、きっと私がいなくなってもアニキさんのドリルはビクともしないはずです!

見せて下さい。アニキさんの、アニキさんにしか出来ない天元突破を!


 ▽
 

「…………これは、だな」
「最低」
「さっきまでのいい雰囲気が一瞬で消し飛んだの……ルルーシュくん、酷過ぎるの……うう」


大怪球フォーグラー内、特設スタジオの空気はまたも間逆の方向に変化した。
清麿のメッセージを聞いた事で『敵→ルルーシュ 主人公→ガッシュ・ジン』という構図がスタッフの頭に叩き込まれたのだ。
ムードは最悪である。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:48:57 ID:AHmQWIm+
 
446名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:49:02 ID:nIxLApVX
 
447名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:49:04 ID:ypPki7iS
 
448名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:49:29 ID:1WS39Qj1
449名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:49:33 ID:CGAOR4Iw
450名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:49:49 ID:AHmQWIm+
 
451名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:50:12 ID:ypPki7iS
 
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:50:24 ID:CGAOR4Iw
453名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:50:25 ID:O0ZHZ0YE
  
454〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:50:25 ID:a8bv/q/X
「この高嶺清麿という少年、螺旋力には半分しか覚醒しなかったのか。
 素晴らしい素質を秘めているというのに……残念だな」

そして、一人だけ真面目に分析をするロージェノム。
元が科学者だけあって、状況の考察は専門分野といった所だろうか。
むしろ、娘のニアのインタビューを完璧にスルーしている方が問題のようにも思える。


「……さてと、じゃあ気を取り直していくつか質問しましょうか。まず『どうしてバトロワをやろうとした』の?
 ロージェノム、お願い」
「『実験のため』では不十分か?」
「そりゃあ。オープニングの時点ですら、それは判明してるしね」
「――では本腰を入れて答えようか。一言でいえば『螺旋力による、新世界の創造』がそもそもの実験の趣旨になる」
「これからは……VTRをマメに流しながら見ていくの」


【外伝】『ロージェノムは螺旋の王として配下の疑問に答える』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


「多元宇宙を発見し、私がまず抱いた感情は、羨望だった」

語る。饒舌に、しかし厳格に。

「先ほどの映像にもあったとおり、私はアンチ=スパイラルに敗れ地球に追われた螺旋族の生き残り、言わば敗残兵だ」

夢浸る乙女のように、野望燃やす男児のように。

「諦観の裏で、反逆の牙を研いでいたことは事実。それは、叶わぬ悲願だった。しかし」

螺旋を知り尽くした男が、選び取る道。

「私は知った。我潰えるとしても、悲願が達成されるパターン、世界があったのだと。だからこその羨望だ」

獣の亜種たる者には、理解の及びつかぬ幻想夢想。

「しかし叶わぬ。あのようには事を進められぬ。我々の支配する人間たちは、シモンほど強くはないからだ」

最善でも最良でもなく、己がこれだと思う結果を模索する。

「しかし焦がれた。あのような結末に。そして私は考え至ったのだ。敗残兵として取るべき、新たな悲願を」

螺旋王ロージェノムが、多元宇宙を、螺旋力を、人間を、真に理解した、一つの結果。

「アンチ=スパイラルにも侵されぬ、新たな世界。そこで螺旋族による螺旋族のための歴史を、再興すると」


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


パッと梅サワーの後方に配置されたモニターが切り替わる。
映し出されたのは螺旋四天王の前で演説するロージェノムの姿。
この映像こそがアニロワ2ndの根本を説明しているレアフィルムである。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:50:51 ID:AHmQWIm+
 
456名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:50:52 ID:BAGxo9yT
  
457名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:01 ID:O0ZHZ0YE
  
458名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:02 ID:1WS39Qj1
459名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:23 ID:CGAOR4Iw
460名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:24 ID:ypPki7iS
 
461〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:51:25 ID:a8bv/q/X
「もう一度分かり易く説明すると、
 『真なる螺旋力に目覚めし者を利用し、アンチ=スパイラルが介入できない新世界を創造すること』が目的って事ね」
「焦点は、つまり……アンチ=スパイラル」 
「そもそもの極限理想を語るならば、あのバカップルがアンチ=スパイラルに悟られる前に天元突破を果たせば問題なかったのだがな」 
「ソレは流石にないな。楽観が過ぎる」
「あくまで理想さ、ロージェノム。お前だってそんなに上手く行く訳がないと思っていたからこそ『逃げる準備』を整えてあったんだろう?」
「……ッ」

口元をニヤつかせながら、ルルーシュが言った。
そして、彼の言葉に反論出来ないロージェノムに更に愉悦を深める。

「まぁそこは映像を見てから思う存分笑いましょう」
「うちの主催者がこんなにヘタレなわけがない……と、コレを見て言える人がいたら大したものなの」
「よし、再生スタート!」


【外伝】『螺旋の国 -Spiral straggler-』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


一室に、王と、客人と、客人の相棒が集っていた。
部屋の間取りは広かったかもしれないし、狭かったかもしれない。
部屋には茶会を気取ったように飲食物が置かれていたかもしれないし、置かれていなかったかもしれない。
客人は束縛された状態で嫌々話を聞いていたかもしれないし、むしろ喜々として耳を傾けていたかもしれない。
不要な情報は一切省く。そこには、話を切り出さんとする王と、聞き手である客人、同じく聞き手を務める客人の相棒がいた。

「諸君らを招いたのは、私がこれから始める計画について、意見を貰いたかったからだ」

王は、第三者の客観的な意見を求めた。
ひょっとしたら、自分の見通しは甘いかもしれない。そんな人間らしい恐れから来る、王らしくもない切望だった。
王の申し出に、客人がどのような感情を抱いたかはわからない。ただ、こくり、と頷いて席についた。それだけで十分だった。

王は語る。これから、『実験』を始める……と。
それはどのような実験ですか、と客人が訪ねると、王は、螺旋力による新世界の創世は可能か否かを見極める実験だ、と返した。
客人は、ふむ、と曖昧に返事をし、客人の相棒は、あはは、と軽く笑い飛ばした。
普段なら無礼にあたる対応だろうが、客人の率直な反応を咎める意志は、王にはない。
王が求めているのは、計画の外面に対する意見ではなく、あくまでも中身に対する意見だ。
王とて人間であるからして、この計画が非人道的な方法を持ってして進められることも、多くの者が同感を覚えることも、理解しているつもりだった。

そうなのである――この王は、自身が愚か者であることを自覚していた。

民を思わず、国を思わず、縋っているのは過去の栄光、見据えているのはありえなかったもう一人の自分。
それら、詩のように己の志を謳ったとしても、部外者である客人は首を傾げるだけだった。
誰にも理解などしてもらえない、意地……だが、一人の男として貫かなければならない。
だからこそ、実験をするのだ。


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


「………………はぁ」
「これは、ちょっと……」
「威厳も何もあったもんじゃないな」
「……好きに言うがいい」
462名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:27 ID:nIxLApVX
 
463名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:51:35 ID:BohHKaIs
 
464名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:52:03 ID:BAGxo9yT
  
465名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:52:04 ID:AHmQWIm+
 
466名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:52:07 ID:1WS39Qj1
467〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:52:24 ID:a8bv/q/X
開き直ったのか、ロージェノムが憮然とした態度で呟いた。
そもそも考えてみれば全くの他人に相談している時点で相当な決断力を必要としたはずである。
彼の中ではおそらく、もう完全に整理が付いているのだろう。

「むしろ見所は次のシーン……フルボッコタイムなの」
「ああ、あれは……うーん」


【外伝】『螺旋の国 -Spiral straggler-』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――

――『彼ら』は、別に問題ないと思いますよ。それよりも、焦点は『その他』じゃないんでしょうか?

淡白な顔つきはそのままに、客人が意見を述べる。
王は愚か者ではあったが、自ら招いた客人を無碍に扱うほど傲岸ではなく、これを素直に傾聴し始める。

――思うんですが……どうしてあなたは、こんな無謀なことをするんですか?

心臓を、鷲掴みにされたような気分になった。
ああ……この客人は、実に聡明な聞き手だ。
王が気にしていた、第三者に指摘されたいと思っていたところを、抉るように突いてくる。
王は耳を背けなかった。苦い顔一つせず、客人が遠慮なく話せるよう、座して待った。

――あなたはこの世の誰よりも、あなたが宿敵と憎む相手を知っている。
――なのにあなたは、宿敵の望まない結果を望んでいる。宿敵が怖いはずなのに。
――宿敵が怖いから、正攻法じゃなくて、こんな『逃げ』みたいな方法を取るんでしょうが……。


宿敵……そうだ。王には、絶対に相容れない宿敵がいた。
その存在は全ての宇宙を統べる者にして、宇宙そのもの。
その存在は人間を恐れる者にして、人類全ての敵。
彼らは人類進化の抑制剤にして、歯止め。
かつての王とは、真逆にいた者。

……一時期は、それもやむなし、と諦めた。
王は宿敵との死闘の末、敗れた。敗れてなお、敗残兵として人間を統治する任についている。
それが、宿敵の矛を受けず、人類が危難なしに存続できる唯一の道だったからだ。

だが。

知ってしまった。人類の持つ術では、見ることもできなかったもう一つの宇宙――。
手にしてしまった。宿敵の持つ技術をも越えたかもしれない、天からの恩恵によって得た力――。
羨み、憧れてしまった。自身では成し遂げられなかった偉業を果たす、ドリルを掲げた一人の男の姿に――
 
 
――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――― 


「ちなみに、話し相手になってるのは……可愛らしい女の子なの」
「……苛めて欲しかったのかしら」
「まさか、な。さすがにそこまで無様ではないだろう」

先程までのアンチルルーシュの流れは完全にロージェノムへのブーイングへ。
だが、微妙に彼への同情の声も聞こえなくはない。
彼のあまりに惨めな扱いが憐憫を誘ったのだろう。
468名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:52:47 ID:BAGxo9yT
  
469名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:53:02 ID:1WS39Qj1
470名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:53:12 ID:CGAOR4Iw
471名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:53:30 ID:ypPki7iS
 
472名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:53:31 ID:dU+JzCdh

473〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:53:41 ID:a8bv/q/X
「で、この後逃げちゃう訳ね」
「ご丁寧に【ロージェノム 実験放棄】という表記付きなの」
「……こういう事もある。男は忍耐力が必要だ」
「まったく。せっかくの対談だと言うのに、これでは比較にもならないんじゃないか?」
「……(ボソッ まぁ実はルルーシュ君の転落ももうす――」
「なッ――!?」
「く、口が滑ったの……」

危ない危ない、とわざとらしく口を抑えることみ。
だが、今の言葉に反応したのがルルーシュだった。


「司会者! どういう事だ、答えろ! はっ……貴様、まさか――未来線を読むギアスを!?」
「…………こ、この夏服をしっかり見るの。今日のわたしはアニメ出典なの……」


本日数度目のアニメアピールである。
確かにアニメにも『未来を予測するギアス』は登場しているが、あくまで人間の動作に限った話。完全な予知能力ではない。
それは目の前のルルーシュの筋肉のなさを鑑みれば疑う余地もない部分である。

「ちょっとルルーシュ! 女の子になんて口の利き方するのよ! ことみが怯えてるじゃない!」
「……な、何だそれは。お、俺が悪いとでも言うのか!?」
「悪いわよ!」
「ぐずっ…………い、いじめる?」
「…………ぐ……っ!」

上目遣い+涙目のコンボが見事にルルーシュに炸裂した。
ルルーシュの周囲は基本的に強い女性ばかりである。ことみのようなタイプの女性は意外と少ない。
それに今日のことみはいつもより明らかに毒々しいキャラになっているが、彼女の根っこにある臆病な部分は変わっていないのだ。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:53:45 ID:AHmQWIm+
 
475名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:54:07 ID:ypPki7iS
 
476名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:54:13 ID:1WS39Qj1
477名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:54:21 ID:O0ZHZ0YE
 
478名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:54:25 ID:CGAOR4Iw
479〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:54:40 ID:a8bv/q/X

「い、虐めない」
「ホント……?」
「……本当だとも」
「よかったの……」

ほとんど会話に参加せず、何をしに来たのか分からないロージェノム。
いきなりことみが半泣き状態になってしまった事に取り乱すルルーシュ。
シクシクと涙を瞳に溜め、瞼を両手で擦ってることみ。

そして、またもことみとルルーシュが変なやり取りを始めたため、手持ち無沙汰になってしまった杏。


「……もう。なんかダレて来たし、ロージェノムは反応薄いし……そろそろ放送終了時間かしら。
 あ、そうそう。これは忘れちゃいけなかったわ」


271話『天のさだめを誰が知る』
――――――――――――――――再生開始――――――――――――――――――――


「――では同志諸君! これより『螺旋王捕獲作戦』の全容を発表する!」

 諸々の確認事項を終え、ルルーシュがいよいよ、考案した作戦を提唱する。
 声高らかな前振りにチミルフとシトマンドラが息をのみ、グアームが笑い、アディーネが釘付けになり、ウルフウッドが欠伸をした。
 ごくり、と誰かの喉が鳴り、そして、

「……と、大げさに宣言しようとしたところで大したことじゃない。実験の続行。それだけだ」

 穏やかな少年の声調を持ってして告げられたそれが、一同の期待感を酷く打ち砕いた。

「実験の続行……? それだけ、だって? それじゃあ、これまでとやることが変わらないじゃないか」
「変える必要がないのさ、アディーネ。もちろんこのままただ漫然と推移を見守るのではなく、一味加えるがな」
「実験を続け、なにを為して完結とする? そもそもこのまま実験を続けることが、螺旋王捜索に繋がるというのか?」
「ああ、繋がるさシトマンドラ。これが現状考え得る最良の一手であり、唯一の策だ」
「解せんのぉ。もうちょい要領よく説明してくれんか?」

 反応の悪い獣人勢に僅か落胆し、ルルーシュは軽い溜め息の後、心中にて嘲笑。
 黒の騎士団での活動において、こういった物分りの悪い同志たちを納得させるための説明など日常茶飯事だ。
 ルルーシュは常の調子を崩さず、自らの意を他者に伝える。

「では、いっそ呼称を改めるとしよう。現時刻を持って、螺旋王ロージェノムの『実験』は終了!
 実験場にて行われている殺し合いは今より名を変え、アンチ=スパイラル降臨のための『儀式』と化すッ!!」


――――――――――――――――再生終了――――――――――――――――――――


「この話の結果、主人公チームとグレンラガンチーム、そして螺旋王チームの三グループに分かれての戦いになったのね」

飲み物には手を出さず、テーブルの中央に置いてあったチョココロネをパクパクと。
これにコタツがあったらいいのに、なんて所帯染みた考えが脳裏に浮かんで弾ける。
480名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:55:12 ID:CGAOR4Iw
481名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:55:16 ID:ypPki7iS
 
482名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:55:22 ID:AHmQWIm+
 
483名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:55:22 ID:1WS39Qj1
484〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:55:41 ID:a8bv/q/X
「ルルーシュ達はアンチ=スパイラルをどうにかしようとしている。で、その鍵になるのが天元突破者ヴィラルの動向。
 スパイク達はアンチシズマ管を使っての正統な殺し合いの停止が目標。ギルガメッシュは単独行動。カミナは……知らない。
 しかしまぁ、結構な時間放送してたわよね。本当に」

そんなこんなでドキュメンタリー番組だったはずが、最終的には本当にダベり番組になってしまった。
未だにルルーシュはことみに何やら弁解しているし。やれやれ、である。


「じゃあ最後のまとめって事で。最終回の見所は大きく分けて十個ね!

 @『アンチ=スパイラルへの対処』
   もう、これがとにかく最大の正念場!
 A『天元突破者ヴィラルの恋路』
   本当に愛で超覚醒しちゃったんだから……ね。どうなるのかしら。
 B『螺旋王ルルーシュの動向』
   涙目かそれとも真逆の結末か。これも気になる所ね。
 C『ウルフウッド&東方不敗の動き』
   それと今回陰が薄かったけれど四天王も忘れちゃダメ。特に一度ロワにも参加したチミルフは要チェック!
 D『夫妻の駆るグレンラガンにどう対応する!? そしてクロミラの運命やいかに』
   敵にして、これほど恐ろしい機体もないわね……。ヒロイン格、クロスミラージュも参加者の一人と変わらないわよ!
 E『主人公チームのギガラブドリルブレイクに対する行動』
   初動は肝心。ここで乗り遅れると、最終回が楽しめなくなるかも!
 F『アンチシズマドライブはどうなるのか!?』
   バリアを突破し、天元突破を果たすには必須の項目。さてどうなるかしら。
 G『働けカミナ』
   説明不要。
 H『他のメンバーの活躍』
   最終回といえど、やはりお気に入りのあの子のカッコいい所は思いっきり楽しみたいわよね!
   むしろこれが大半の人にとっては気になる所なんじゃないかしら?
 そしてI個目がギルガ――」
 
 
杏が、そこまで言い掛けた瞬間だった。



大怪球フォーグラー内部、特設スタジオに――――凄まじい爆発音が鳴り響いた。
そして、急激な地面の落下を始める。

485名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:56:05 ID:O0ZHZ0YE
 
486名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:56:23 ID:1WS39Qj1
487名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:56:23 ID:CGAOR4Iw
488名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:56:27 ID:BAGxo9yT
  
489名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:56:52 ID:GiBWS5Wk
 
490名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:06 ID:O0ZHZ0YE
 
491名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:09 ID:nIxLApVX
 
492名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:18 ID:ypPki7iS
 
493名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:18 ID:AHmQWIm+
 
494〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:57:21 ID:a8bv/q/X
「え、え、え!? なな、何が起こった訳!?」 


意味が分からない杏はただ慌てふためき、声を上げる事しか出来ない。
絶対安全だと思っていたフォーグラースタジオに訪れたまさかの大異変である。

「…………タイムリミット、なの」
「な……ことみ、どういうことよコレは!?」 
「つまり、」
 
ちなみに、先程までフォーグラーは停止していたのだが当然それは重力制御により浮遊するという形を取っていた。
それがまるで大地に引かれているかのような強烈なGが杏の身体に掛かっている。
つまり、浮遊能力に何らかの異常が発生したという事だ。


「杏ちゃん……問題なの。『アニロワ2ndでフォーグラーが落ちるのはどんな時?』」
「原作、じゃなくて……アニロワ2ndだとって――ま、まさかっ」
「……そう。そのまさか」
「――――ギ、ギルガメッシュ!?」
「……正解」


こくん、とことみが流暢な動作で頷いた。
制御を失い、沈没船に乗り合わせているかのような状況なのに、どれだけ彼女は鈍いのだろう。
しかし、ことみはスクッと立ち上がると杏の目を見つめ、はきはきとした口調で語り始めた。


「『アニロワ2nd』という舞台において『唐突に大怪球フォーグラーが撃墜される』という可能性。
 これは98.5567%の確立でギルガメッシュが乖離剣エアを使用した場合、と決まっているの。
 しかも天地乖離す開闢の星=sエヌマ・エリシュ》とは限らずに……なの」
「じゃ、じゃあこの騒ぎも……」
「そうなの。つまりコレは『総集編をフォーグラーで収録している最中にたまたまギルガメッシュにエアをぶち込まれた』多元宇宙なの」
「…………多元宇宙、便利ね」
「……なの。だから言ったの。『まだ慌てるような時間じゃない』って。時間が来れば勝手にこうなる運命だったの」
「爆発オチ?」


まさかそんな訳ないわよね、と言いたげな瞳で杏がことみを見た。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:23 ID:CGAOR4Iw
496名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:39 ID:zOlHxq3Q
497名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:51 ID:1WS39Qj1
498名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:52 ID:GiBWS5Wk
 
499名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:57:55 ID:ypPki7iS
 
500名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:05 ID:BAGxo9yT
  
501名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:22 ID:CGAOR4Iw
502名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:25 ID:GiBWS5Wk
 
503名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:32 ID:AHmQWIm+
 
504名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:46 ID:CGAOR4Iw
505〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 22:58:48 ID:a8bv/q/X
「………………ごほん」
「えーま、マジなの……」
「……さて、番組を〆るとするの……よいしょ」

杏の言葉を華麗にスルーしたことみが動きを見せた。


その時、突然ことみの姿が大きくなった。
いや、違う。『ことみがカメラに向かって歩いて来ている』のである。
一歩、また一歩と足を進める度にレンズが彼女で一杯になる。視界が満たされていく。


そして初めて、



「……カメラマンさん」



私≠ヘ――その時初めてカメラを通さずに一ノ瀬ことみの顔を見た。



「いや、ま、爆発オチな訳ないか」



そして同様に藤林杏も私≠ヨと笑い掛けた。

506名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:58:55 ID:O0ZHZ0YE
 
507名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:10 ID:1WS39Qj1
508名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:10 ID:ypPki7iS
 
509名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:27 ID:nIxLApVX
 
510名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:29 ID:O0ZHZ0YE
  
511名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:35 ID:GiBWS5Wk
 
512名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:43 ID:CGAOR4Iw
513名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:53 ID:BAGxo9yT
  
514名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:54 ID:teVcTh+y
 
515名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:55 ID:O0ZHZ0YE
 
516名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 22:59:56 ID:AHmQWIm+
 
517〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:00:08 ID:a8bv/q/X
「え?」
「帰る時間、なの」


思い掛けない言葉だった。
そもそもの話私≠ェこの世界に存在していた事さえ今気付いたというのに。

「杏ちゃんも……お別れ……言わなきゃダメ……」
「分かってるわ。ほらダメよ、ことみ。服引っ張ったら皺になるでしょ」
「あ、うん……ごめんなさい」

ことみの頭の後ろでまとめたツーサイドアップが揺れる。
杏のサラサラのロングストレートヘアーに巻きついた白いリボンが風を切って舞った。

そして――私の桃色≠フ髪も堕ちゆくフォーグラーの振動に引かれてバサバサと飛び跳ねる。

地面から伝わって来る鼓動はまるで海岸を浚っていく波のようだった。
掛けていた眼鏡≠熹ッの毛のように外れてしまいそうになる。
そして、それを防ぐために私は必死で眼鏡のフレームの部分を抑えた。

「さぁ目覚めるの……そして起きたら、ここで見た事は全部忘れているはず……」
「その代わり、世界に変化があるかもしれない。もしかしたら、もう変化があった事を忘れているかもしれない」
「それは……私達が干渉する領域じゃないの……これはただの分岐点。
 『あったかもしれない』『あるかもしれない』『あってほしい』の詰め合わせ……」

彼女達が何を言っているのかまるで分からなかった。
完全に世界に捉われていた。
ずっとずっと、あくまで傍観者のつもりでいたのだ。でも、これはだけど……。


「じゃあ、恒例の言葉から始めるの。最初はコレから、と決まっているの」
「そうね」


そう呟くと、二人は大きく息を吸った。
そして、全く同じ声色でその台詞を噛み締めるように口にする。



「「『さぁ始めるザマスよ』」」


518名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:00:08 ID:CGAOR4Iw
519名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:00:08 ID:GiBWS5Wk
 
520名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:00:21 ID:AHmQWIm+
 
521〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:00:41 ID:a8bv/q/X
その言葉は、ゆっくりと心の中に溶け込んでいって、



「…………行くで…………ガン……ス…………?=v



私――――高良みゆき≠フ意識を覚醒させた。



 ▽
 
 
522名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:00:42 ID:CGAOR4Iw
523名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:00:42 ID:1WS39Qj1
524名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:01:07 ID:BAGxo9yT
 
525名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:01:10 ID:ypPki7iS
 
526〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:01:21 ID:a8bv/q/X
【参加者インタビューK】
●結城奈緒(私立風華学園中等部三年G組・十四歳)

――死後の世界って信じますか?

意味が分かんない。
何が聞きたいのよ、アンタは。

――何か、繋がっている……とか、生霊……みたいなアレです。

ないってないって。
アンタが聞きたいのはあれでしょ。
生きてる人間が何かのショックで死んだ人間と会話して……って奴。
ぶっちゃけキモイよ、そんなの。
もしも、そんな状態になる事があったらソレってあれでしょ。最近流行りのアレ。

……とびっきりの死亡フラグじゃん?

――印象に残った人間は誰ですか?

えーとりあえず、金ぴか金ぴかギルガメッシュ。
あとは、そうだなぁ……柊かがみ! もうこいつは諸悪の元凶よ。マジ最低の疫病神!
後は……鴇羽、かな。アイツ今何やってんの? またヘタレてる?
ああいう無理に片意地張っちゃうタイプは適当に男でも作って楽になっちゃった方がいいと思うんだけどね。
無理かな。お堅いもんね、アイツ。

――残された参加者に一言どうぞ。

はいはい。どうせあたしは金ぴかに何か言えばいいんでしょ。
……えーと、まぁ……その、……うん。頑張って!

どう、完璧だったで――は? もう一回最初から? 何でよ。

何がダメなのよ? 短い? もっと心を込めろ?
ちょっと、何か偉そうじゃん。
それにね。アンタって結構柊かがみに似ていてイラつくのよ。
髪の色とかホントそっくり。いっそピンクにでも染め直したら?

…………はいはい、怒らないでよ。うるさいなぁ、ったく。
もう一回やり直せって事ね。分かりましたよっと。

527名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:01:35 ID:AHmQWIm+
 
528名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:00 ID:1WS39Qj1
529〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:02:03 ID:a8bv/q/X
……でも、別にさ。
実際、肩張って言わなくちゃいけない事なんてないもの。
あたしが金ぴかに言い残した事とか、あると思う? ……うわキモッ。
もしくは、その逆。そっちがあた――――アハハハハハハハッ!
って完全にバカじゃん。どっちもある訳ないよね、そんなの。
だから違うんだって。そういう形じゃないんだし。

アンタはただ高く、高く、飛べばいいの。
上を。もっともっともーっと上だけを見てればいいの。
後ろに飛んでる奴、並んで飛ぼうとしてる奴の事なんて考えちゃダメだからね。
もちろん、言われるまでもないと思うけど。

だから、そう。「頑張って」ですら本当はちょっと違うんだよね。
何がいいのかなぁ。「負けるな」も「自分らしく」も「好き勝手に」も何か微妙。
むしろ「好き勝手に」とは言いたくないや。後始末する人が大変だもの。

……んーとさ、じゃあやっぱりコレだ。
いい? 一回しか言わないから聞き逃さないでよね。


『あたしも何も言うべき事はない』


じゃあね、ギルガメッシュ。

……ったく。二度もさよなら言わせんな、バカ。


 ▽
 
 
530名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:12 ID:O0ZHZ0YE
 
531名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:21 ID:CGAOR4Iw
532名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:22 ID:ypPki7iS
 
533名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:33 ID:BAGxo9yT
  
534名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:36 ID:AHmQWIm+
 
535名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:40 ID:1WS39Qj1
536名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:46 ID:GiBWS5Wk
 
537名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:02:51 ID:CGAOR4Iw
538名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:00 ID:ypPki7iS
 
539名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:08 ID:O0ZHZ0YE
  
540〆 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:03:12 ID:a8bv/q/X

【サブタイトル――蝶】 
 
 
「きゃああああああああああああっ!」


自分の悲鳴で飛び起きる、なんて事があってもいいのだろうか。
高良みゆきは未だ激しい鼓動で身体を揺さ振る心臓にパジャマの上からそっと触れた。

ドクン――揺れて、ドクン――また揺れて。

悪夢だった……のでしょうか。

よくよく考えてみると確証が持てない。
少なくとも悲鳴を上げて自分が目覚めた以上、最高に素晴らしい出来栄えのハッピーエンドではないのだろう。
不思議とそれがどんな夢だったのか、みゆきはとても気になった。
普段ならば覚えているにしろ、忘れてしまうにしろ、こんな気持ちには絶対にならないのに。

握り締めた手の感覚ははっきりと。
熱も空気も光も、何もかもが正常だ。
余計に頭を働かせる必要もないし、視界も正じょ――あれ?


「え、あれ……私、眼鏡を…………掛けたまま眠ってしまったのでしょうか」


指先で確かめたフレームの感触はまやかしではなかった。
そう、今まさに自分は起きたばかりなのに、眼鏡を掛けていたのである。
明らかにコレはおかしい――はずなのだが。
やはり昨日眼鏡をしっかり外して寝た記憶、というモノが見当たらなかった。

ベッドから這い出し、指先がカーペットを踏み締める感触がスッと身体に染み込んで行くようだった。
今、確かにみゆきは覚醒しているというのに、まるで夢から覚めたようだった。

――待って。

それ以前に、私は何かとてつもなく大事な事を忘れているのでは……。
むしろ逆に何も忘れていないのに不思議な喪失感に取り付かれて、何かを亡くした気になっている、ような気さえします。
曖昧模糊な感覚に丸呑みにされてしまったみたいです。
酷く不安で、心細くて、行く先の見えない……。

541名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:21 ID:AHmQWIm+
 
542名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:30 ID:1WS39Qj1
543名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:48 ID:nIxLApVX
 
544名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:03:48 ID:O0ZHZ0YE
 
545名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:05 ID:CGAOR4Iw
546名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:07 ID:BAGxo9yT
  
547蝶 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:04:14 ID:a8bv/q/X
「みゆきーっ! みなみちゃんが来てるわよー! ちょっと話したい事があるんだってー!」


しかし、神さまはみゆきに思考する時間を与えはてくれなかった。
部屋の外から響いたのはみゆきの母、高良ゆかりの声だ。

「え……は、はいっ! 今行きます!」

すかさず、みゆきは母の呼び掛けに応えた。
しかし返事をしてからまだ自分が起き抜けの格好である事に気付き、小さく赤面した。

「みなみ」というのはみゆきの幼馴染である岩崎みなみの事だ。
彼女はみゆきの親友である泉こなたの従妹、小早川ゆたかと非常に仲がいい。
だが、みなみは一体今日は何をしに来たのだろうか。
約束があった……覚えはない。

何か、大変な事でも起こったのだろうか。記憶があやふやだ。まるで判断が付かない。
むしろ、この今のほほんとしている自分自身が夢を見ているのではないか、そんな気がする。


つまり――胡蝶の夢
蝶となり百年を花上で遊んだ夢を見て荘子が目覚めたけれど、
自分が夢で蝶になったのか蝶が夢見て今自分になっているのか分からなかったという。

現実と夢のはざまは何処にあるのだろう。
境界は、ボーダーラインは何処に?
ぼんやりとした頭のまま、みゆきは急いで来客用の衣服に袖を通す。


「……あれ? こんな所に、本が……?」


ようやく着替え終わった頃、ソレがみゆきの机の上に置かれている事に気付いた。
真っ黒な装丁に血のようなロゴ。とても、悪趣味だ。
みゆきも読書は好きだが、少なくともこんな血生臭そうなジャンルにあまり関心はなかった。
思わず手に取る。表紙。白と赤の文字。特徴的な書体。


――――アニメキャラ・バトルロワイアル 2nd


と、書かれている。
548名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:25 ID:CGAOR4Iw
549名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:37 ID:1WS39Qj1
550名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:47 ID:AHmQWIm+
 
551名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:04:53 ID:ypPki7iS
 
552名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:02 ID:CGAOR4Iw
553名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:05 ID:BAGxo9yT
  
554名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:16 ID:O0ZHZ0YE
 
555蝶 ◆tu4bghlMIw :2009/02/19(木) 23:05:19 ID:a8bv/q/X
『2nd』の部分がまるで血の色のようだった。
窓から差し込む光をツルリとしたフォントの細工が反射する。
しっとりとした肌触りの黒色のカバーを撫でる。
指先を擽る感触が妙に不気味だった。

……中身を、見てしまってもいいのでしょうか。

心臓がドクドクと高鳴る音が聞こえる。
緊張して震える指先。なぞるページ。
ソッと今、その表紙が開かれ――――


「みーゆーきー! まだー? みなみちゃん待ちくたびれちゃうわよー?」
「――あ……も、もうすぐですっ!」


母の声に、みゆきの肩がビクッと震えた。
慌てて本を机の上に置く。

タイミングを、逃した。

次にこの部屋へ帰って来た時、この本は消えてしまっているような気がする。
何故か、そんな風に思うのだ。
特に理由もなく、ただ漠然とした曖昧な感慨ではあるのだけど。
そんな、気がする。不思議な気持ちだった。


「…………しっかりしないといけませんね」


夢の内容は思い出せない。
思い出せない――けれど。

それはきっと、哀しくて辛い夢だった。
永遠の灰色の中で一瞬の虹色を探していく旅だ。
ほんの僅かなキラメキを見つけるために、全てを賭けて戦う、そんな、夢。

自分には、自分達には全く縁のない話だ。
きっと、そうだ。
心の底から、そう思う。

でも、もし――いつかそんな機会が来たとしたら。
自分には何が出来るだろう。
何を考えて、何をしようとするんだろう。


「……お母さん、今行きますっ」


眠気と悪夢に捉われた心では、その答えを導き出す事が出来なかった。



 ▽
 
 
556名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:23 ID:CGAOR4Iw
557名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:26 ID:BohHKaIs
 
558名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:37 ID:zOlHxq3Q
559名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:40 ID:O0ZHZ0YE
 
560名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:46 ID:AHmQWIm+
 
561名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:48 ID:1WS39Qj1
562名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:05:56 ID:CGAOR4Iw
563名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:15 ID:nIxLApVX
 
564名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:20 ID:ypPki7iS
 
565名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:21 ID:BAGxo9yT
  
566名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:22 ID:CGAOR4Iw
567名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:29 ID:GiBWS5Wk
 
568名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:30 ID:O0ZHZ0YE
 
569名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:06:31 ID:AHmQWIm+
 
570ことみアフター〜It's a Wonderful Battle Royale〜:2009/02/19(木) 23:06:47 ID:a8bv/q/X
 
【サブタイトル――ことみアフター〜It's a Wonderful Battle Royale〜】

【参加者インタビューL】
●言峰綺礼(第四次聖杯戦争 敗北者 兼 第五次聖杯戦争 監督者/神父・推定年齢三十歳以上)


――疲れたの……。


そうだろうな。だが、戯れが過ぎたようにも思えるが。
私としては中々、意外な結末だったよ。相方の少女は帰宅したのかね?


――杏ちゃんは……お家に帰ったの。今、ここにいるのはわたしだけ……。


そうか。随分と君は気ままに楽しんでいたようだがね。
悲壮な感情も憐憫を誘う眼差しも内向的な性格も全てを置いて、だ。
ククク――少々お喋りが過ぎたのではないかな?


――そんなわたしもいるのがこの世界。
  アニ1st的に言えば……異時間同位体、正確には異世界同位体とでも言うべき……なの。
  そしてアニ2nd的には……多元宇宙。
  ドッペルゲンガー。わたしがふたつ、わたしがみっつ、わたしがよっつ、えとせとら。それもぜんぶ、ことみちゃん。
  でも、楽しかったの。楽しいことは……いいことなの。……みんな笑顔、なの。


ほう。では――席次から漏れた少女の胸中で蠢く疑念をどう考える?


――ソレは私の関係する所ではないの。
  提示されたのは可能性だけ。説明した通りなの。
  すべては『あったかもしれない』『あるかもしれない』『あってほしい』の詰め合わせ。
  どう分岐するかは、まだ確定されていないの……。


そうか。ソレが君の判断ならば亡者たる私に語る舌はなかろう。
しかし私には合わない催しだったよ。何、君達は色々考えていたとは思うがね。

楽しませる、などという思索自体が元来、私には不向きな行為なのだよ。
レクリエーションでの道化役にはもっと適任がいる。

571名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:04 ID:BAGxo9yT
 
572名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:06 ID:AHmQWIm+
 
573名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:30 ID:1WS39Qj1
574名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:32 ID:GiBWS5Wk
 
575名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:34 ID:CGAOR4Iw
576名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:07:56 ID:CGAOR4Iw
577ことみアフター〜It's a Wonderful Battle Royale〜:2009/02/19(木) 23:08:01 ID:a8bv/q/X
――……やっぱり、主催者がやりたかったの?


そもそも、この世界における監督役はロージェノム、そしてルルーシュ・ランペルージ。彼らに限定されていてね。
螺旋王の創り出したこの地に聖杯はなく、存在するのはその心臓だけ。
澱も淀みも、暗躍する悪鬼も遊戯を終了するための公式もありはしない。

ならば、あそこでの私は参加者≠ニしての役割を演ずるまでさ。
観察者としての愉悦は最期に味わった分で事足りる。菓子を強請る子供ではないのだから。
その祈りは――そうだな、違う世界の私≠ノ捧げて貰うとしよう。


――違う世界の言峰さん……ううん、もう私から語ることではなかったの。
  派生した世界では私が『いたかもしれない』未来は既に消滅したの。
  有り得るのは所謂挿話%Iな可能性だけ。……触らない方がいいの。
  
  
なるほど。なれば君も語る舌は持たない、と?
もっとも、私にはまだまだ為すべき仕事が残されているようだがね。


――なの。本来、一ノ瀬ことみはもっと寡黙であるべき……。
  これもいくつもの分岐が遍在している多元宇宙だからこそ成せること。


そうか。では私も原典に還って見るべきなのかもしれんな。


――どちらにしろ、もうすぐ、すべての決着は付くの。


結末を――述べるつもりかね。
君は何もかも知っているのだろう。


――まさか。これは……あくまで総集片≠ネの。
  所詮、欠片……砕け落ちたフラグメント。結局、ほんの一部でしかない。
  その本質を完全に語ることなんて出来る訳がないの。
  ましてや未来なんて…………おこがましいにも程があるの。


ククッ――そうか。
多弁とはいえ、そこまで饒舌な訳でもない、と!

578名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:08:07 ID:O0ZHZ0YE
  
579名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:08:12 ID:AHmQWIm+
 
580名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:08:23 ID:nIxLApVX
 
581名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:08:42 ID:1WS39Qj1
582ことみアフター〜It's a Wonderful Battle Royale〜:2009/02/19(木) 23:08:49 ID:a8bv/q/X
――そのとおり……もうこの場で提示しなければならない言葉はないの。
  後はぜんぶ、本当の物語が語ってくれるの。
  私も……そろそろお家に帰るの。


そうか。君もまた――物悲しい存在だな。
さて、今日は愉しませて貰ったよ。ともあれ、素晴らしい体験だったと言うべきかな。
それではこの辺りで私も参加者≠ノ戻らせて頂くとしよう。


――さようならなの……また、いつか…………。


ああ。最後の饗宴の刻を共に過ごせないのは残念だがね。
何、黄泉の国へと下る前も後も、実に有意義だった。


……………………………………。

………………………………。

…………………………。

……………………。

………………。

…………。

……。





「総集片はこれでおしまい。ご静聴ありがとうございました……なの」


にっこりと微笑むことみ。
服装は周り回って、光坂高校のクリーム色のブレザーに戻っている。
そしてスルスルと天井から降りて来る幕。
そう、閉演の時間である。

583名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:09 ID:CGAOR4Iw
584名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:14 ID:nIxLApVX
 
585名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:17 ID:1WS39Qj1
586名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:21 ID:AHmQWIm+
 
587名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:25 ID:O0ZHZ0YE
 
588名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:31 ID:BAGxo9yT
  
589名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:39 ID:CGAOR4Iw
590ことみアフター〜It's a Wonderful Battle Royale〜:2009/02/19(木) 23:09:45 ID:a8bv/q/X
「でも……これで終わりじゃないの。まだまだクライマックスは始まったばかり。
 つまり、これは、明日のための小休止」


こくこく、と自分自身にも言い聞かせるように。


「始まりは終わりの始まり≠ナもあるけれど終わりは始まりの終わり≠ナもあるの。
 だから今は少しだけ休んで、本当の終わりに備えるの……ことみちゃんとの約束」


口元の微笑が更に濃くなる。
アイスクリームのようにじんわりと笑顔が溶けて行くようだ。
バニラ色の制服がことみの表情と合わさって、幸せな空気を作り出していた。


「そういえば……散々、影響はない……なんて言ってたけど、案外そうでもないかもしれないの。
 バタフライエフェクトという言葉もあるくらい。……真相は闇の中なの。
 それじゃあ、また……みんなと……違う宇宙でも会える事を……祈ってるの」


最後にそれだけ言うと、ことみは客席に向けて小さく手を振った。
バイバイ。バイバイ、と。

そして始まった時と同じく、馬鹿丁寧にぺこり、と一礼する。


スポットライトは消え、世界から光が消えた。
ざわめく観客達もピタリ、と喋るのを止め、幕が下がっていく音だけに耳を傾ける。
拍手も歓声も存在しなかった。
なぜなら、その劇場に足を運んでいた者達はまだ何も終わっていない、と悟っていたからだ。

ソレは、始まりでもなく終わりでもない。
ソレは、所詮、始まりの始まりに過ぎない。


――――幕が下りる。


果てし無き流れの果てには、何があるのだろう。
暁は光と闇のわかれめ。
落ちる陽と昇る陽とが、この醜くも美しい世界を煌びやかに飾り立てる。

劇場の再開演はもうすぐそこ。
誰もが本当の終焉を待ち望み、幕が上る瞬間を待つ。
慌てる心配などない。
終幕へのスタートは、今、この瞬間に切られたのだから。



そして願わくばこの天と光と星の物語が、かけがえのないあなたの人生の物語にならんことを。



【アニメキャラ・バトルロワイアル 2nd――TRUE END Comming Soon!】

591名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:09:55 ID:O0ZHZ0YE
  
592名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:10:04 ID:BAGxo9yT
  
593名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:10:34 ID:teVcTh+y
 
594名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:10:36 ID:AHmQWIm+
 
595名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:10:41 ID:GiBWS5Wk
 
596名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:11:18 ID:nIxLApVX
 
597名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:11:44 ID:GiBWS5Wk
 
598名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:11:56 ID:ypPki7iS
 
599名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:12:40 ID:BAGxo9yT
 
600名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/19(木) 23:12:49 ID:GiBWS5Wk
 
601名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 00:29:08 ID:u7jELEwu
Requiem aternam. レクイエム 永遠の安らぎを
Dona eis, Domine 主よ、彼らに与えたまえ
602名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 20:28:25 ID:xUeW0N0W
Libera me 主よ、私を救いたまえ
603名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 20:33:48 ID:wjsk7CWd
604名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 20:50:26 ID:6acAdx0o
次スレです。一杯になったらこっちにどうぞ。
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ21
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1235130193/
605名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:08:29 ID:NxRjS5KB
支援

>>602
主「だが断る」
606名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:15:39 ID:19q1CI8+
 
607名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:15:56 ID:p2lZZtYq
 
608名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:16:09 ID:XdWo3Wzl
 
609 ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:16:21 ID:wjsk7CWd
空に表情は無かった。世界にも色はない。
代わりにただぼうと鉛のように重たい空間が果てしなく広がっていた。
大地に相当する平面に起伏は見られず、遥かに見える土くれが辛うじて山のように見える他には、自然物さえも存在しない。
不思議な空間であった。

無限地獄さながらの世界を、横に切り裂くように一条の光が走る。
続いて、より沿うようにいくつもの爆発が起き、爆風と衝撃が通り抜けた。
それが呼び水となったのかのように次々と新たな閃光が走り、限定された空間が色を得る。

生物に類するものは一切存在しない。そう思われた世界にさえ人はいた。
一騎当千の巨神が隊を成し、万古不易の英傑たちが手に手に武器を持って空を駆る。
更に遥か上空では、終末を思わせる凶鳥が甲高い声を響かせて鳴いていた。

相争う無数の人間たち。
友の遺志を継いだ男は次の瞬間光輪の塵となり、泣くことしかできない少女は誰にも気づかれぬまま踏み潰され標本と化す。
愛する者は、繋いだ手を残して消えていた。


果てしなき絶望の末に、一滴の水滴のような光がささやかな終焉のときをもたらした。
渦を巻くようにゆっくりと広がるうねりは全てを平等に包みこみ、飲み込んだものたちの生をそっと奪って行った。

光は半球となり、自らを閉じ込めていた世界の殻を乗り越えてなお、消えることなくまたたき続けていた。


天の光はすべて星。
そして死が始まる。


610名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:16:29 ID:/P4Q6lZ+
611名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:16:42 ID:19q1CI8+
 
612名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:16:48 ID:XdWo3Wzl
  
613名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:03 ID:KyRxaSNq
 
614名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:23 ID:/P4Q6lZ+
615 ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:17:24 ID:wjsk7CWd





アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 最終回

『HAPPY END』




616名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:34 ID:XdWo3Wzl
 
617名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:39 ID:LDW1w33c
618名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:48 ID:19q1CI8+
 
619名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:54 ID:yCTEYgdu
 
620名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:54 ID:p2lZZtYq
 
621名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:17:55 ID:KyRxaSNq
 
622名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:18:25 ID:/P4Q6lZ+
623名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:18:47 ID:Z//8J96e
 
624HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:18:54 ID:wjsk7CWd


「ギィイイイイイガァアアアアアアアア!!」
「ラァアアアアアブラブゥウウウウウ!!」
「ドリル――ブレイクゥウウウウウ!!」

はるか高く天元すら突破して、愛に狂った男と女の叫びが木霊する。
猛り狂う叫びに呼応し、薄緑と桃色の輝きがグレンラガンより放たれた。
その右腕には全身を上回る巨大なドリル。
それを携えたグレンラガンが全身を唸らせ回転を始める。
高速で回転する機体にあわせ碧と桃色の眩い光が交じり合ってゆく。
それはまさしく無限の可能性を秘めた螺旋遺伝子の象徴、二重螺旋。
光を放つグレンラガンがその身全てを一つの螺旋と化して大地を突き進む。

それはまさしく冗談めいた光景だった。
恥ずかしいまでの愛の告白を聞かされたかと思えば、突然の合体。
さらには馬鹿みたいに巨大なドリルがこちらの命を奪わんと迫っているのだ。
嗚呼……コレを冗談と呼ばずして何と呼ぼう。
まして、そんな冗談にこちらの命は脅かされているのだ、もはや悪夢と呼んで差し支えない。

差し迫る悪夢。
ガッシュはあまりの自体にあっけに取られ、ねねねにはそもそも反応できるだけの力がない。
故に、その一撃に辛うじて反応できたのはスカーとジンの二人だけだった。

最初に動いたのは王ドロボウ、ジン。
すぐ脇のねねねを抱きかかえ、足元のガッシュの襟元をつかむと、持ち前の俊敏さを発揮して瞬時に身を翻し、そのまま一目散に駆け出した。
だが、迫る一撃はあまりにも巨大、あまりにも強力。
反応できたとして、どうしようもない代物である。
いかにジンの俊足を持ってしても、被弾するまでに攻撃範囲から逃れることは不可能だ。
その必死に足掻きを嘲笑うかのように、天にも迫る巨大なドリルは眼前まで迫り、ジンの視界から太陽を覆い隠す。
伸びる影が地面を染め、ジン達は巨大な闇に飲み込まれた。

――――駄目か。

625名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:18:56 ID:XdWo3Wzl
  
626名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:18:58 ID:i/qfPQmm
 
627名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:19:28 ID:19q1CI8+
 
628名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:19:28 ID:/P4Q6lZ+
629名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:19:35 ID:Z//8J96e
 
630名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:19:37 ID:KyRxaSNq
 
631HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:19:52 ID:wjsk7CWd
ドリルが視界全てを埋め尽くす光景を前に、そんな王ドロボウらしからぬ諦めがジンの脳裏をよぎりかけた、瞬間。

その横合いから閃光めいた紫電が奔った。

影を払う閃光。
それはスカーの右腕が生み出した練成反応の輝き。
スカーが選んだ破壊の対象は、自らが起立するその大地であった。
右腕に触れるあらゆる要素が分解され破、その破壊に従って彼らが踏みしめていた大地が崩壊する。
蜘蛛の巣のようなヒビが走る。
地面が波のように隆起する。
崩壊に応じ弾け飛ぶ岩石。
ささくれの様に地表が湧き上がる。
その一部、湧き上がった大地がグレンラガンの行く手に割り込んだ。
それはあたかも彼らを守る盾のように。

「無ゥウ駄ぁだぁああああああ!!!!」

突き進むドリルの裏から、ヴィラルの叫びが響き渡る。
その言の通り、突き進む愛の前にして、この程度の障害などなんの妨げにもなりはしない。
押し進むドリルは立ち塞がる岩壁を物ともせず、それこそ障子を突き破る容易さで急造の盾を打ち破った。

だが、スカーにとってもそれはたいした問題ではない。
もとよりそんなもので防げるモノだとは思ってはいないし、防ぐつもりもない。
地面を崩壊させた狙いは別にある。

スカーが引き起こした大地の崩壊。
それは、当然ながら、その場にいたジン達をも同時に飲み込んだ。
スカーの狙いはそれである。
スカーもジンと同じく放たれた攻撃がかわしたところでどうにもできない類のモノであることを瞬時に悟っていた。
故に、彼は半ば強制的に彼らをドリルの攻撃範囲から排出することを選択した。
その瞬時の判断と、適切に破壊すべき箇所を選択し実行した決断力は賞賛に値するだろう。

事実、大地の倒壊は彼らが駆け抜けるよりも早く彼らを運び、遠くの地面へとジンたちを放り出した。
ジン以外の二人は受身も取れず背から大地に叩きつけられたため、まったく無事とは言いがたいが五体は健在。
あれほどの一撃に対する成果としては十分に僥倖だ。
多少乱暴ではあったが、あの状況では最善の一手だったといえるだろう。
もし問題があったとしたならば、ただ一つ。

破壊の中心、それを巻き起こした張本人――――スカーだけは、その場を大きく動くことは叶わず。
その攻撃から、逃れようがないという一点だけだろう。

「スカ――――――!」

スカーの意図に気づいたジンの叫び。
それすらも打ち消す激しさで、ドリルが地面を貫き抜ける。

632名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:23 ID:19q1CI8+
 
633名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:23 ID:XdWo3Wzl
  
634名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:41 ID:KyRxaSNq
 
635名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:45 ID:Z//8J96e
  
636名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:56 ID:/P4Q6lZ+
637名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:20:59 ID:i/qfPQmm
 
638HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:21:03 ID:wjsk7CWd
それはスカーが巻き起こした破壊とは比べ物にならないほどの圧倒的な破壊行為。
駆け抜けた跡に残った地形はもはや変わり果ていた。
進むドリルは触れる全てのモノを許しはせず、軌道上のあらゆるものすべてが消滅。
一文字に刻まれた大地の傷跡は深く、生み出された溝は谷と称して差し支えなかった。

「…………う、うぬぅ」

その傍ら。
辛うじて破壊を免れた大地の上でガッシュ・ベルは身を起こした。
立ち上がるなりガッシュは強かに打ち付けた背の痛みを御くびに出さず、大きな金色の瞳を凝らし辺りを見渡した。
目に入るのはただ朽ち果てた大地。
見渡す限り無事な大地など存在しない。
それを見てなおガッシュは諦めない。
ただ純粋な祈りをこめて、そのにあるべきはずのスカーの姿を探していた。

そして、それは程なくして見つかった。
抉れ果てた瓦礫の影に、見えるのはイシュヴァル人特有の褐色の肌と額に刻まれた十時傷。
見紛うこともない、その特徴は間違いなくそれは探し人のそれである。
だが、その姿を認識したにもかかわらずガッシュは歓喜するでもなく立ち止まり絶句していた。
それも仕方あるまい。

倒れこむスカー。
その姿は見るも無残なものだった。
僅かながらに呼吸しているは見て取れる。
まだ生きているのは確かだろう。
だが、彼の切り札であり、実兄より受け継いだ形見でもある破壊の右腕は肘の先から見当たらず。
左足は膝から先を紛失しており、右足は根元から欠けている。
そして、傷口からは、鮮やか過ぎるほど真っ赤な血液が止め処なく溢れていた。
壊れた蛇口のように血液が垂れ流される。
流れる血液が小さな川を作り瓦礫の間を滑り落ちていった。
このまま放っておけば確実に死に至ると、ガッシュにでも理解できるほどの致命傷だった。

立ち上がる足を失い、荒廃した大地に横たわるスカー。
そこに大きな影が重なった。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:21:07 ID:yCTEYgdu
 
640名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:21:24 ID:XdWo3Wzl
   
641名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:21:39 ID:KyRxaSNq
 
642名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:21:41 ID:19q1CI8+
 
643HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:21:46 ID:wjsk7CWd
それは人型にして人あらざる鉄巨人の影。
太陽に輝く赤いボディに、不適に笑う二つの顔面。
語るまでもなく、ヴィラルとシャマルの二人が操るグレンラガンである。

放っておいても確実に息絶えるであろう相手だが、今のヴィラルに抜かりはない。
たとえ0.1%でもこの愛の障害になりえるものならば、全て確実に打ち滅ぼすのみ。
許容もなく、慈悲もなく、遥か高みより見下ろす赤い巨人はスカーに向けて右腕を振り上げる。
その腕が振り下ろされてしまえば、両足がないスカーにはそれを避ける術はない。
待つのはより確実な死だ。

だというのに、スカーの瞳にはそんなものは一片たりとも映ってはいなかった。
真紅の瞳に映し出されているのは、自らに死をもたらす鉄槌ではなく、自らを遠く見つめる三人の姿だった。
それを見て何を思うのか、今にもこちらに駆け出してきそうな顔をした三人とは対照的に、スカーの表情は常と変わらぬ仏頂面。
睨み付けるような鋭さを放つ眼光も相変わらず。
こんな状況下においても恐怖や痛みといった感情は見て取れない。
それはきっと、彼が無念に散ったイシュバラの民の痛みと悲しみを抱え生きてきた覚悟の証なのだろう。
復讐と贖罪に彩られた人生の終わり。
告げるべき言葉はただ一言。

「―――――行け」

届くかもわからぬ程小さな声。
それでも確かに、万感の想いを込めてたその一言は菫川ねねねの耳に届いた。
その言葉を受けたねねねは奥歯を噛み締めながらも、スカーに背を向け走り出す。
直後。ズドンと、背後で大地を揺らす音が響いた。
同時に聞こえる何かがつぶれる嫌な水音。
それが何の音であるかを知りながらも、いや、知っているからこそ止まるわけには行かなかった。

この身は我等の剣となる。
彼は最後までその役割を全うした。
ならば、その彼に報いるためにもねねねは生き延びなければならなかった。
生き延びで、彼女もまた自らの役割を果たさねばならなかった。

「ッ―――……カ野郎!」

だが、それでも、言葉は口から漏れていた。
それは誰に向けての言葉だったか。
今だ殺し合いを止めない獣たちへか。
自らを犠牲にしたスカーへか。
それとも、何もできない無力な自分に向けてだろうか。

振り返りもせず、彼の最後を見届けることもせず。
悔しさと歯がゆさに、血がにじむほど唇を噛み締めながらも、ねねねは走り続ける。
敗走ではない。
逃避でもない。
全ては明日を掴むために。

遥か遠い、ハッピーエンドを目指しながら。

644名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:22:22 ID:H+7x/Pj/
645名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:22:34 ID:KyRxaSNq
 
646名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:22:44 ID:19q1CI8+
 
647名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:22:56 ID:Z//8J96e
 
648名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:22:58 ID:yCTEYgdu
 
649名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:23:16 ID:XdWo3Wzl
 
650名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:23:24 ID:l1n3E0nV
651HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:23:31 ID:wjsk7CWd


「おう、やっとるやっとる」

 ヴィラルとシャマルが駆るグレンラガン、翻弄される蟻の生き残り、それらを遠巻きに眺める三つの機体。
 ルルーシュ・ランペルージによって差し向けられた使者たちは、並び合い、与えられた作戦に想いを馳せる。

 ――ヴィラルとシャマル及びグレンラガンの回収。

 作戦を遂行するには、まずグレンラガンの戦闘を止めなければならない。
 東方不敗を召喚したような強制転送システムは既に機能を失いつつあり、今は凍結も不可能なほどに、会場全域で綻びが生じている。
 今頃は、参加者たちの首に嵌められた輪も役目を追え、自壊しているに違いなかった。
 剣を鞘に収めるには力ずく、天元突破を為した雄を相手にすると心がけ三人がかりで、そういう算段だったが、

「しかしとんでもない暴れっぷりじゃの。あれではとても近づけん」

 三機のうちの一体――ゴリラのような長い腕に、甲殻虫を思わせる装甲と触覚を併せ持ったカスタムガンメン、ゲンバーが微動する。
 搭乗者のアルマジロ、四天王がひとり不動のグアームは、グレンラガンの猛威を観察しながらしり込みした。

「臆したかグアームよ。四天王が二人も出張っているのだ、やれなくてどうする」

 三機のうちの一体――両腕、脚部に鋭い刃を備え、胴体に武骨な顔を浮かばせるカスタムガンメン、ビャコウが一歩前に出る。
 搭乗者のゴリラ、怒涛の名を捨てた武人チミルフは、勇ましくも闘争の舞台に恋焦がれた。

「まあそう力むな、チミルフよ。要はあれをどうにかすればいいのだろう? やり方なぞ無数にある」

 三機のうちの一体――機械仕掛けの鉄馬に跨る、漆黒のモビルファイター、マスターガンダムと風雲再起が諌める。
 搭乗者の老人、東方不敗マスターアジアは、鷹揚に微笑み目の前の大命に向き合った。

 彼ら、実験場に降り立った三名の使者。
 それぞれが愛機を持ち出し、当初予定していた『試練』の尖兵として、交渉材料の回収に参じた。
 実際に天元突破を為した大物を前にして、さてどうするか、と構えたところで東方不敗が案を提示する。

「今の奴に、力ずくといった手段は失策であろう。儂らはなにも、潰し合いをしにきたわけではない」
「ぬ、ぬぅ……では、いったいどうやって奴を止める? 言葉で説得をしろとでも言いたいのか?」
「そのまさかよ。チミルフ……他でもない貴様が、黄泉路より帰還せし勇者としてな」

 マスターガンダムのコクピットの中、東方不敗は不敵に微笑んだ。
 怪訝に唸るチミルフ、反応を返さぬグアームを尻目に、自らが考案した策を述べる。

652名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:23:42 ID:/P4Q6lZ+
653名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:23:52 ID:XdWo3Wzl
  
654名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:23:55 ID:19q1CI8+
 
655HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:24:24 ID:wjsk7CWd
「ルルーシュの言葉を思い出してみるがいい。あの二人は儂らほどではないが、事の裏側を把握しておる。
 迎えが来たとしてもさして怪しまれることはあるまい……ましてや、死んだと思われた上官ともなればな」

 ククク、と笑う東方不敗の言葉には、説得力があった。
 チミルフを押し黙らせ、熟考に至らせる。

「もとより、儂は後衛を言い渡されておる。今はまだ隠れ潜み、万が一の事態に備えよう」
「懸命じゃな。チミルフよ、まずはおぬしがヴィラルのもとへ向かえ。ワシも後衛に回る」
「む、グアームもか?」

 ルルーシュの采配では、チミルフとグアームがヴィラルと接触、東方不敗がバックアップに回る予定だった。
 だからこそ東方不敗の提案にも頷けたチミルフだったが、ここで割り込んできたグアームには些細な異を覚える。

「あの様子では、小競り合いを続けていた者たちも長くないじゃろう。
 チミルフが駆けつける頃には、戦闘も終局。説得なぞ、おぬし一人で十分ではないか」
「しかし、王は――」
「細かい交渉の内容はワシらに任せる。そう言ったのは、おぬしの王じゃろが。
 確実に王の期待に応えるならば、周囲で起こるやもしれんイレギュラーに目を配らせていたほうが、懸命じゃと言っとる」

 音吐朗々たる声で唱えるグアームの言霊は、『王』という絶対のキーワードを持ってチミルフを黙らせた。
 ルルーシュの作戦を肯定するならば、この場は東方不敗とグアームの言にこそ理がある。
 力ずく、などという発想が生まれてしまったのは、間近でグレンラガンの奮闘を見てしまったがためか。

 ロージェノムの螺旋力を凌駕し、天元突破を実現して見せた勇士、ヴィラル。
 シャマルという伴侶を得て、豪快に駆る合体ガンメン、グレンラガン。

 武人として、情念を燃やさずにはいられない相手であることは確かだ。
 チミルフは喉が鳴るのを自覚し、生唾を飲み込む。視線は、遠方のグレンラガンに釘付けだった。

「決まりだな。では、儂とグアームは後衛に回る。チミルフよ、尖兵は任せたぞ」
「尖兵か……ぐふふっ、おぬしにピッタリの役目ではないか。がんばれよぉ」
「言われるまでもない……! あいにくだがおまえたち二人の出番はない。必ずや、王の期待に応えてみせよう」

 チミルフは意を決し、操縦桿を固く握る。
 彼の操縦するビャコウが一歩、強く大地を踏み締めた。
 そして、悠然と歩を進めて行く。焦らず、じっくりと、戦場の渦を目指して。

656名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:24:30 ID:Z//8J96e
  
657名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:24:41 ID:KyRxaSNq
 
658名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:25:17 ID:XdWo3Wzl
  
659名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:25:17 ID:19q1CI8+
 
660名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:25:26 ID:Z//8J96e
 
661HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:25:37 ID:wjsk7CWd
「……さて、と。おぬしもなにやら悪巧みの最中か? のう、東方不敗よ」

 ビャコウの背が徐々に遠ざかっていくのを見やりつつ、グアームが東方不敗に語りかける。

「悪巧み、とはまた……貴様の大切な同志に知れては、事ではないのか?」

 東方不敗もまた、グアームに言葉を返す。互いに、惜しげもなく本音を言い合うつもりだった。

「凍結システムを始め、首輪、転送装置、そして他の計器も……あの碧色と桃色の奔流は、磁場を歪める砂嵐じゃよ」
「ふん……今さら小言を聞かれようが、瑣末にすぎんというわけか?」
「惜しいの。小言だからこそ、上手くは拾えないんじゃよ。この実験場、おぬしやルルーシュが思っている以上に、限界きとるぞ?」

 監視の目を恐れず、グアームは大胆不敵に笑いを零す。
 自らが招きいれた同士たちへの、裏切りにもなりかねない言動を添えて。
 隣に立つ東方不敗が、同じような立場にいる人間だということも知りながら。

「さて、ワシは好きにやらせてもらうがおぬしはどうする? 自分の悪巧みを続けるか?」
「ふっ、喰えぬ男よのぉ。儂の胸中を知っているでもなく、あえて座視するというのか?」
「なに、予想はつく。ワシとおぬしの思惑は交わらん。敵にも味方にもなりえぬほどにな」

 そう言って、グアームも動く。
 ゲンバーの巨躯を巧みに操り、チミルフとはまた違うルートで、天元突破の中心点を目指した。
 取り残された東方不敗は、それを後ろから見送る。視線を傾けながら、マスターガンダムの双腕が微かに持ち上がった。
 しかし、すぐに下ろされる。間合いは愚か、射的距離からも脱したゲンバーを、余裕の態度で送り出したのだった。

「このまま後ろから始末してしまってもよいのだがな。儂はおぬしほど、あの小僧を見縊ってはおらんのだ。
 今はまだ同志として……後衛の任に就き、獣人どもの仕事ぶりを観察させてもらうとしようではないか」

 そして、東方不敗も動いた。
 マスターガンダムの騎乗する鉄馬が、颯爽と大地を駆ける。
 先人たちとはやはり違うルートで、生け贄の待つ遊技場を目指した。

 信じ、従い、行動する者――。
 見限り、裏切り、暗躍する者――。
 先見据え、身焦がれ、挑戦する者――。

 三者三様、使わされた三人の男たちは、それぞれの思惑に遵守して突き動く。
 ある者は王手と、ある者は一里塚と、ある者は最後の詰めと捉えて。
 どこからどこまでが、誰の術中なのか……考える者もいなかった。

662名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:25:58 ID:i/qfPQmm
 
663名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:26:37 ID:19q1CI8+
 
664名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:26:47 ID:yCTEYgdu
 
665名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:26:49 ID:Z//8J96e
  
666名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:26:53 ID:XdWo3Wzl
 
667名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:26:55 ID:KyRxaSNq
 
668HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:27:23 ID:wjsk7CWd


 終わりは、もう間もなく。
 この苦行を乗り越えた先には、なんらかの結末が待っている。
 人生にも、物語にも、等しく訪れるべき終。
 その良し悪しを決めるのは、生き方か、それとも運命か。

 些事に捉われず、今の現実にだけ目を向けていられれば、どれだけ幸せだっただろう。
 一心不乱なんて言葉があるが、そんなものは危機的状況下では適用されがたいものだ。
 現実逃避という言葉どおり、幸福な結末を目指せば目指すほど、受け入れがたい現実からは目を背けたくなってくる。

 それでも、菫川ねねねは逃げた。ハッピーエンドという言葉を頭の隅に置き、生存の可能性を思慮として手繰り寄せる。
 ガッシュ・ベルも同様だ。螺旋王を倒し、元の世界で再び王を目指す。希望と悲願を胸に抱きながら足を動かし進める。
 ジンも二人と変わらず。遥か後方に取り残してきたスカーの覚悟を重んじ、なんとか状況打破のための策を練り続ける。

 絶体絶命の窮地に追いやられた三人を追うのは、巨大な人型兵器。
 多くの世界で合体ロボットという俗称を与えられては、戦争に駆り出される。
 あるときは悪党を弾劾するため、あるときは市民を虐殺するため、あるときは母星を守るため。
 ここでは、ヴィラルとシャマルという二人の男女が唱える愛を、他者に知らしめるため。
 グレンラガンは、ねねねたちのハッピーエンドを挫かんと迫った。

 みんなが、みんな。
 走り続けて、そして。
 足を止める者が、現れた。

「……ウヌウ!」

 ただ、諦めではない――明確な意思を灯した瞳が、輝いていた。

669名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:27:34 ID:XdWo3Wzl
   
670名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:27:51 ID:19q1CI8+
 
671名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:27:51 ID:p2lZZtYq
 
672HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:27:54 ID:wjsk7CWd


 ガッシュが足を止めたのに反応して、ねねねとジンも即座に停止する。
 咄嗟のことで動きが鈍ったが、ジンはすぐさま逃走を再開するためガッシュを抱えようとし、

「聞こえるかぁああああ!! ヴィラル、そしてシャマル!」

 しかしそれよりも速く、ガッシュは後方を行くグレンラガンに叫びつけた。
 ずしん、と重みのある歩みを続けるグレンラガンは、

「聞こえているのならば私の話を聞けぇ! 私は――」

 あっという間にガッシュたちの眼前まで迫り、大きく右脚を振り上げる。
 その所作が単純なキックの予兆であると察したねねねは、本を構え、

「ばっ……ラシルドォォ!」

 障壁を作り出すガッシュ第二の術、ラシルドを唱えた。
 ガッシュの足元から雷の紋様を刻む壁が現れ、ねねねたち三人の身を覆い隠す。

 だが、ラシルドを唱えてすぐ、ねねねは絶望した。
 あらかじめ防御の術であると教えられてはいたものの、実際に使用したのは初となる今、ラシルドに寄せられる期待値の限度を思い知る。
 作り出された壁は見た目にも堅牢だが、それも巨大兵器の感覚で言ってしまえば、鍋蓋程度の強度にすぎない。
 グレンラガンの蹴りは、ラシルドの障壁など容易く粉砕してしまった。

 ねねねの、ガッシュの、ジンの、声なき絶叫が空に散る。
 グレンラガンにとっては、足場を確かめる程度の地均しにすぎなかっただろう一蹴り。
 それが三人の人間を宙に薙ぎ払い、深刻な痛手を与え、死の概念をより濃く刻みつける。

 死を、予感した――しかし予感できたということは、即死には至らなかったというのも同義。
 ねねねは衝撃を与えられ、全身に鈍痛を覚え、思考を埋め尽くす虚脱感に襲われ、意識を一瞬失う。
 が、すぐにまた別の衝撃が訪れ、大地に落下したのだと知った。

 形容できない痛みが、節々に充溢する。
 不思議なことに、意識はまだあった。体は動かせたものではなかったが、指先くらいなら難なく動かせる。
 作家としての意地か、握り締めた赤い本は手から離れてはおらず、ページも開いたままだった。

 身を這わせながら薄らと目を開け、周囲の状況を確認する。
 逃げているうちに別の地区に移動していたのか、辺りにはまだ健在の建物が多く存在していた。
 舞衣がソルテッカマンで破壊して回った名残ほどではなく、しかしねねねの周りのみ、地面が抉られている。
 グレンラガンの進撃と、先ほどの地均しのような蹴りが原因だった。

 一緒に蹴り飛ばされたはずの二人の仲間を探してみるが、ジンの姿が見当たらない。
 どこか、ねねねよりももっと遠くの空に消えていってしまったのかと思い、すぐにその考えを打ち消す。
 そもそもロボットの蹴りなどくらって生きているほうが不思議なほどで、ねねねが無事なら、ジンなど回避していてもおかしくはない。
 だとしたら、その隙を縫って再び逃走に走ったのか。ねねねなど見捨てて。厳しいことだ。が、仕様がない。
673名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:28:03 ID:H+7x/Pj/
674名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:28:03 ID:/P4Q6lZ+
675名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:28:09 ID:Z//8J96e
 
676名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:28:37 ID:XdWo3Wzl
  
677名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:03 ID:Z//8J96e
  
678HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:29:10 ID:wjsk7CWd

 ねねねは姿の見えぬジンに叱責を零す余裕もなく……そして、見た。
 陽炎のような視界の中で、グレンラガンの巨体が楼閣のように聳え立っている。
 その足元でビチビチと跳ねる、元気なブリの姿。

(……ブリ?)

 奇異な光景が目に映ったような気がして、ねねねの思考が一瞬、鈍る。
 事の焦点はそこではない。

 ねねねの前に聳えるグレンラガン――彼女と巨体の間を、遮るように君臨するひとつの背中。
 羽織っていたマントをズタボロに引き裂き、年相応の小さな背部を露出した、しかし大きく見える背中。
 王者の風格が漂う、威風堂々たる影の正体を、

「ガッ、シュ」

 ねねねは名前で呼び、戦いはまだ終わっていない、燻ってなんかいられない、と無理矢理にでも体を起こし始めた。
 激痛に身を蹂躙されてはいたが、骨は奇跡的にも折れてはいない。気合で痛みを捻じ伏せれば、どうにか行動はできる。
 本を手に取り、ページを捲り、音読するなど、雑作もないことだ。

「くっ……バオウ……ザケルガ……」

 必殺の一撃となるはずだった最強術の名を唱えても、金色の竜はこの場に顕現しなかった。
 魔物の術を発動する上で必須となるエネルギー――心の力が、今のねねねには不足していたのだ。
 ザグルゼム四回、ラウザルク四回、バオウ・ザケルガ一回、ラシルド一回。
 魔物のパートナーとしての初戦、これだけ唱えられれば上々というもの。
 それでもグレンラガンを倒すに至っていないのは、

(見積もりが、甘かったってか)

 経験不足と、戦術の拙さが原因だろう。
 ガッシュ本来のパートナー、知将と呼ばれた高峰清麿なら、もっと上手くやれたはずだ。
 即席のパートナーなどでは、清麿の足元にも及ばなかったという現実。
 ガッシュを王にしてやる、などと豪語してみせたのに。

 思い知るねねねが、またガッシュのほうを見やる。
 両腕を大の字に広げ、ねねねを守る防壁となっている。
 グレンラガンはどうしたことか、ガッシュと睨みあったまま直立不動。
 表情を変えぬ人型兵器と、素顔を見せぬガッシュの背中。
 双方を見比べて、ねねねは分析する。

 先ほどの蹴り……おそらくは、ガッシュが耐久力に優れた白銀のマントを操り、緩衝材としたのだろう。
 現代の魔界を束ねるベル家伝来のマントは、ガッシュの兄であるゼオンが使っていたものだ。
 魔力を操ることに精通していないガッシュが、それでも兄を模倣し、懸命に盾としてみせた、結果。
 ラシルドとガッシュのマント、二重の防壁に守られ、すぐ後ろにいたねねねはなんとか絶命を免れたのだ。
 マントは破れ、ジンは生死不明の行方知らずとなり、それでもなお、

(……ああ、そっか)

 ガッシュはねねねを守ろうとしている、という現実を理解する。

679名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:13 ID:p2lZZtYq
 
680名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:17 ID:KyRxaSNq
 
681名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:28 ID:19q1CI8+
 
682名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:29 ID:6acAdx0o
 
683名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:35 ID:XdWo3Wzl
  
684名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:29:52 ID:i/qfPQmm
 
685HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:29:56 ID:wjsk7CWd
(格好つけちゃってさ。ホント、アニタと同じでガキっぽい……情けなくなってくるだろ。私が)

 この瞬間に至るまでにガッシュが歩んできた道程は、思い出語りとして聞き覚えていた。
 船上でサスペンスドラマばりの大脱出劇があっただとか、大グレン団の心意気ってものを叩き込まれただとか。
 仲間たちが死んでいく中でガッシュは唯一生還し、スターやVの死を受け止めながら、親友にも先立たれた。
 負い目を感じているのだろうか。子供にしては強すぎる高潔な魂が、必要以上に大人になろうとしている。
 誰かに守られて生きてきたからこそ、誰かを守りたい。
 そんなことを、思いながら。

(あんたは子供なんだ。子供は大人に守られてりゃいいんだ。あんたは、そんなにがんばらなくてもいいんだ)

 ねねねはガッシュを助けることができない。けれどガッシュに助けてほしいとは、微塵も思わない。
 ガッシュに自分と心中しろ、とは言い放てないが、こうやってねねねを庇うように立つガッシュを、見ているのが辛い。
 目尻に涙を溜めながら、ねねねは歯噛みする。体中の傷よりも濃く、唇から赤い血が垂れた。

「ねねねッ! ラウザルクを!」

 そんなねねねの思いも知らず、ガッシュは術の発動を要求してくる。
 だからねねねも、読誦するしかない。

「ラウザルクッ!!」

 これはもはや、背水の陣ですらないのだ。
 敗北も決定的な、負け戦。逃げて当然、諦めて咎められることもない、絶望なのに。
 ガッシュは、夢を捨てきれないでいる。最後の最後まで抗おうと、男の子の思想で立ち向かう。
 グレンラガンに搭乗している二人は、そんなガッシュの生き様を、どんな風に感じ取っているのか。

 天高く掲げた右腕がドリルに変形し、その切っ先をガッシュに向ける。
 高速回転するドリルは豪快に、ギュイイイイン、と騒音を奏でた。

 猛旋回する螺旋状の突起物が、ガッシュとねねねの身を穿たんと突き下ろされる。
 比すのも馬鹿馬鹿しい巨大さに、回避は困難、防御は不可能という判断を下し、ただ見上げるだけしかできない。
 ラウザルク――肉体強化の術によって雷光に包まれたガッシュの身は、それでも立ち退かず。

 徐々に、徐々に、ドリルの先端がガッシュに近づき、呑み込んでいこうとする。
 あんなものが命中すれば、当たるや刺さるといった言葉では表現できない。
 潰れる、拉げる、ドリルの回転に巻き込まれ、粉にされてしまう。
 想像して涙したねねねが、ぎゅっ、と本を胸に抱え込んだ。
 せめて、少し限りでもいいから安逸を、と念じる。
 そんなねねねの、前。

「――ヌゥウウウアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 ガッシュのかつてない絶叫が木霊し、ああ直撃したんだ、と理解して、ねねねも終わりを待った。
686名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:30:10 ID:/P4Q6lZ+
687名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:30:42 ID:KyRxaSNq
 
688名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:30:42 ID:cb2s9+w1
689HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:30:56 ID:wjsk7CWd
 数瞬の後も、終わりは訪れず、ガッシュの咆哮が続く。
 思わず、閉じていた両目を開いた。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 ドリルのけたたましい旋回音を掻き消すほどの、騒々しい肉声。
 ガッシュはその小柄な身で、グレンラガンのドリルを受け止めていた。
 ラウザルクで強化した肉体、短い腕二本、素手で。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 ねねねが驚愕する間が、一秒、二秒と続いた。
 ガッシュは気合を発揮しながら、ただ堪えていた。
 目に映る背中だけで、苦痛と意地を表しながら。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 掌はガリガリと削れ、肉を削ぎ落とし、筋肉をぶち破り、骨を断つ。
 焼印ができるほどの熱量を伴った摩擦にも、降りかかる圧力にも屈さず。
 ドリルの最先端という、掴むにも難しい箇所を支点に捉え、踏ん張る。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 いったいどんな表情を浮かべ、ガッシュはドリルを受け止めているのか。
 ねねねには、その顔を覗き込んだり想像したりするだけの勇気がなかった。
 ガッシュは今、地獄にいるのだ。守りたい人を守るために、希望を失わぬために。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 ガッシュよりも先に、彼の立つ足場が拉げた。圧力にやられたのだろう。
 それなのにガッシュの身は、一歩たりとも後ろには下がらない。
 理屈ではない。道理を蹴っ飛ばして、ガッシュはグレンラガンと均衡している。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 ねねねの耳はいつしかガッシュの声に支配され、それ以外の音が入らなくなっていた。
 この声は、自分の弱さ。子供の意地。残った希望。悲痛の叫び。聞き届けなければならない。
 その間やれることといえば、赤い本を離さぬように、術が解けないよう心の力を送り続けるだけだ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 早く、早く諦めてくれ――ねねねは血涙断腸の思いで、ヴィラルとシャマルに懇願し続けた。
 ガッシュの体はより大地に、より深く押し込まれ、地盤沈下すら引き起こそうとして、
 不意に……ドリルの旋回音が弱まり……音が消えていき……止まった。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ――――!」

 ドリルの音がやみ、ガッシュの叫びも途絶え、ラウザルクの効果も切れた。
 ねねねは涙でぐしょぐしょになった視界の中、ガッシュの姿を確認する。
 諸手の状態は、踏ん張り続けていた足は、苦痛に耐え続けていた意識は、どうなってしまったのか。

690名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:31:06 ID:Z//8J96e
 
691名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:31:18 ID:XdWo3Wzl
   
692名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:31:55 ID:KyRxaSNq
 
693HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:31:58 ID:wjsk7CWd
「あっ……」

 身も細る思いをまず受け止めたのは、ドリルを受け止める前と変わらぬ、健在の背中。
 傲岸ではなく、しかし頼もしさは本物の、王の資格足り得る背中。
 生気はまだ失われてはいない。背中を見るだけで悟った。

 まだだ――まだ、希望は残されている。
 胸に抱いていた赤い本の輝きは、なおも失われず。
 ガッシュは、ねねねが絶望と感じたこの窮地を、看破して見せた。

「ガッシュ……ガッシュ……ガッシュ!」

 強く、搾り出すようにその名を呼ぶ。
 ウヌウ、という常のような返しが欲しかった。
 本人は声も絶え絶えだろう、それでも欲してやまない。
 呼応を。合図を。戦って勝ってやる、という気概を。
 王になる――という雄叫びを!

「王に……王になるんだろう、ガッシュ! こんなところで、負けてんなぁあああああああ!!」

 ねねねが喚いた、そのときだった。
 旋回を止めていたドリルが、持ち上げられる。
 ガッシュはその先端にくっついたまま、一緒に持ち上がる。
 まさか突き刺さっているのか、とも思ったが違う。
 力を込めていた両手は、未だドリルを掴んで離さないのだ。
 ならばなぜ、無抵抗なのか。
 体が硬直しているのか、それとも意識を失っているのか。
 死後硬直、という可能性も頭を過ぎった。
 真相を知る間もなく、傍観することしかできないねねね。
 ガッシュの身はあれよあれよという間に空高く舞い、停止。
 グレンラガンは右腕部のドリルを、ガッシュが先端に張り付いていると知りながら、だからこそ、

「ガッ――」

 情け容赦なく、地面に叩きつけた。

694名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:03 ID:Z//8J96e
  
695名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:17 ID:/P4Q6lZ+
696名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:27 ID:19q1CI8+
 
697名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:27 ID:Z//8J96e
  
698HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:32:28 ID:wjsk7CWd


 ガッシュは、地に叩きつけられた衝撃と虚脱の中、中天へ一線、溢れ上がる螺旋の本流を呆然と見上げていた。

(――まだ、倒してはいない。ねねねたちを、守らなければ――)

 致命傷を押してでも、立ち上がろうと決意する。考慮の内に、自らの戦闘離脱という選択はない。

(――私が、やらねば。皆を、守るのだ。ヴィラルを、倒し――)

 枯れていく命の葉を、若すぎるがゆえに労われない。限界知らずの想いが、暴走する。

(――ウヌ、ウ? 体が、動か――)

 死は、とうに。早々に待ち構えていた迎えを、見てみぬ振りで通そうとして、しかし無視しきれない。

(――いたい、のだ――)

 死にそうだ。
 死にそうなくらい、苦しい。
 ただそれだけを、幼い頭で確かめる。

 体が軋む。
 息苦しい。
 動かない。

 激痛。
 鈍痛。
 重苦。

 死。
 死。
 死――。

 駆け巡るダメージとイメージが、ガッシュの心を挫く。
 王を目指す高潔な魂が、犯され、陵辱され、蹂躙されてしまう。

 もう、なにをやっても無駄だと悟った。
 守りたいと願った仲間の声も、既に届かない。
 あるいは、その仲間も死んでしまっているのか。
 確かめるための五感は全て、失われている。
 だとしたら、諦めてしまおうか。
 諦めて、ガッシュも死を選んでしまおうか。

(――もう――)

 目を閉じて、念じるように想いを封じた。
 決して、再び開けられることのない蓋をして。
 ガッシュ・ベルの生命が、終わ


「シン・ジオルク!」


 る――はずだった。

699名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:40 ID:KyRxaSNq
 
700名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:32:51 ID:XdWo3Wzl
   
701名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:33:28 ID:i/qfPQmm
 
702名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:33:32 ID:Z//8J96e
   
703HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:33:34 ID:wjsk7CWd
(――ウヌウ?――)

 過去形になったのは、ガッシュの致命傷が瞬く間に癒えてしまったからである。
 激痛が引き、鈍痛が治まり、重苦も軽くなって、万全の状態へと戻る。
 折れていた骨が、再び接合し、血液の流れを正常に戻す。
 潰れていた内臓が、巻き戻したように再生される。
 裂けていた肌が、子供らしい玉肌に戻る。
 死を覚悟した心は、活力を取り戻す。
 復活する。

「こ、これは、いったい……?」

 わけもわからず、ガッシュは弾かれるように起き上がった。
 全身を見渡してみると、着衣やマントを含め、いたる箇所が新品同様に輝いている。
 試しに飛び跳ねてみても、まったく苦痛を感じず、体調もすこぶる良好だった。
 怪訝に思うガッシュだったが、ふと気づく。

 後ろを振り向くと、ガッシュの赤い本が、金色≠ノ輝く姿があった。
 本を持つねねねの表情は、驚嘆。
 自身、魔本の発光に原因を見い出せない様子で、呆然と口を開閉している。
 そんなときだ。

『不死者の再生能力をもってすれば、これくらい雑作もない……』

 どこからともなく、落ち着いた大人の風格を漂わせる声が響く。

『なんたって死なないからね! どんな傷もあっという間に全回復さ』

 続いて、同じ声が声色を変えて響いてきた。
 一転して無邪気な子供のように聞こえる声を、ガッシュの耳は覚えていた。
 まさか、そんなはずはない、とは思いながらも、つい振り向いてしまう。

 傍ら、声の発信源として立つ礼装の男児を見た。
 久方ぶりの顔ではにかんで見せ、ガッシュの顔を綻ばせる。
 死んだはずのチェスワフ・メイエルが、そこにいた。

『お久しぶり、だね!』

 チェスだけではない。彼の両肩に手を添え、姉のような微笑みを送るミリア・ハーヴェントの姿もあった。
 共に不死者という肩書きを持ち、死ぬはずがなかった船上で、運命に翻弄された二人が……いる。
 いつかと変わらぬ笑顔で、ガッシュに再会の言葉をかけ、頼もしく、温かく、包み込むように。

「チェス……ミリア……おぬしたち、いったいなぜ……!?」
『ピンチだったみたいだから、みんなで助けに来たのさ』

 嬉しさのあまり、勝手に涙が零れた。
 起こった事象の原因を究明する頭を、今のガッシュは持ち合わせてはいない。
 ただ、仲間との再会が喜悦を齎し思慮を鈍らせる。目の前の敵が健在であることすら、

『おっと、ガッシュ。君が戦うべき相手はまだピンピンしている。みんなを守るんだろう?』
『――だったら、力を貸すぜ』

704名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:06 ID:XdWo3Wzl
 
705名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:14 ID:KyRxaSNq
 
706HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:34:14 ID:wjsk7CWd
 忘れそうになり、寸でのところで、高尚な男の声によって諭される。
 巨頭のように聳えるグレンラガンに顔を向けなおし、戦意を再燃させた表情で、睨み据えた。
 ガッシュの闘争心に感化され、ねねねも改めて、金色に輝く本を構える。
 そして唱えるのは、散っていった仲間たちの助力を受けての、新たなる術だ。


「シン・ガンズ・ブラックドッグ!!」


 ねねねの言霊を鍵とし、ガッシュの周囲一帯に、漆黒の猟犬が顕現する。
 影のように実態不確かなそれは、数にして六頭。
 おぞましい犬歯をむき出しにして、グレンラガンの巨躯へと一斉に飛び掛った。

 六頭の黒犬が、それぞれグレンラガンに牙を突きたてる。
 貼りつくようにしつこく、逃走を許さぬほどに粘り強く。
 ブラックドッグの異名を、その術技にまで浸透させ、グレンラガンの自由を奪う。

『喰らいついたら離すなよ、ガッシュ』
「ジェット!」

 ガッシュの傍らでは、顎鬚禿頭の巨漢が愛銃たるワルサーP99を構え、黒犬を使役していた。
 ジェット・ブラック。
 彼の放つ獣の弾丸は標的を狙い撃ち、一撃必殺に至らずとも、喰らいついたら決して逃がさない。

『あら、そう言う割には弾幕が薄いんじゃない?』

 グレンラガンが六頭の黒犬に噛みつかれている最中、それでは足りない、と女声が叱咤する。
 ガッシュと並び立つジェットの反対側、ヴィクトリア朝式メイド服を纏う魔導師の姿があった。


「シン・クロスファイアー……」


 ガッシュの周囲で、蛍火のような光球が舞う。
 魔力スフィアと呼ばれるエネルギー体は、小さくはあるが数は無尽蔵、続々と出現を為し、


「……シュート!!」


707名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:36 ID:p2lZZtYq
 
708名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:39 ID:gpkJLdRH
 
709名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:47 ID:19q1CI8+
 
710名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:34:48 ID:Z//8J96e
 
711名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:35:04 ID:KyRxaSNq
 
712名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:35:18 ID:XdWo3Wzl
  
713HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:35:31 ID:wjsk7CWd
 未だ六頭の黒犬に絡まれるグレンラガンに、追い討ちをかけるように放たれた。
 数も相まって、機関銃のような勢いで叩き込まれる魔力スフィアに、グレンラガンはたたらを踏む。
 ガッシュの傍らでは、二丁の銃を構える船上メイド、ティアナ・ランスターがニッ、と微笑んでいた。

「チェス、ミリア、ジェット、それにティアナまで……おぬひたち、ひんだ、はずなのにぃ……」
『あーあー、泣くんじゃないわよガッシュ。いい男の子がみっともない』
『俺たち自身、驚いているがな。ま、最後のサプライズみたいなもんさ』
『ガッシュの想いが、奇跡を起こしたんだよきっと!』
『メークミラクルだね!』

 ガッシュを支えるように佇む、四人の故人たち。
 彼らは皆、宙に浮き、実体を持たず、淡い金色に包まれていた。
 幽霊という単語を想起させ、しかしガッシュは深くは考えない。
 こうやって、幾時間ぶりに会話をしていることが、なにより嬉しくてたまらなかった。
 その嬉しさに比べれば、謎など些細なものだ。

「……主人公のピンチに、死んだ仲間が駆けつけるって? はは……使い古された少年漫画の展開じゃん」

 金色の霊体は、金色の魔本を携えるねねねの目にも映っているのだろう。
 不可思議な現象に思わず失笑が零れ、しかしそれらを否定する気は一切ない。
 作家にとって、ご都合主義は嫌悪すべき概念であり、心強くもある切り札だった。

「いいネ。すごくいい。クライマックスにはこういう展開もアリってことね。ガッシュ、続けていくよ!」
「ウヌウ!!」

 現パートナーであるねねねも戦意を取り戻し、勇みよくガッシュに再動を促した。
 グレンラガンはまだ撃破したわけではない。反撃は加えたが、依然健在のままだ。
 だからこそ、ガッシュの本を包む金色は、一層輝きを増す。


「シン・ノーベル・フラフープ!!」


 ガッシュの指先に光が灯る。空を切るように輪を描くと、光の軌跡は徐々に拡大し、巨大なわっか状の光線と化した。
 ガッシュは指先を軽く振り、一回転、二回転、三回転、十分に遠心力をつけ、解き放つ。
 新体操に用いられるような光のフラフープは、輪投げの要領で頭からグレンラガンに嵌り、途端に縮小。
 ジェットの銃とティアナの魔法による弾幕がやんだ瞬間、矢継ぎ早の連撃としてその巨躯を縛り付ける。

714HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:35:54 ID:wjsk7CWd
『上手い上手い! ガッシュ、結構こっちの才能もあるよ!』
「ウヌウ! アレンビーも手を貸してくれるのだな!?」
『もっちろん! さあ、みんなで倒すよ、あのデカブツ!』
『――んじゃま、夫婦初の共同作業といきましょうか。俺の愛しのアレンビー』

 ガッシュの傍らに現れた新たな助っ人は、一人の少女と一羽の鳥。
 ピッチリとしたレオタードは本物の新体操選手を思わせ、人語を発する黒い鳥はやたらとキザっぽい。
 そんな二人のやり取りが、懐かしく。ガッシュはうれし涙を溜めながら、アレンビー・ビアズリーとキールに感謝した。

『役立たずの相棒はどっかでおねんねしてるみてーだしなぁ! ここはいっちょ、俺たちが……』
「ウヌウ! ジンからおいしいところを掻っ攫うわけだな、キール!」
『そーゆーこと。派手にいくぜご両人! LOVEなら俺とアレンビーだって負けちゃいないってね!』

 キールが金色を纏いながら羽ばたき、ガッシュの右腕に縋りつく。
 全身を撓らせ、篭手のような形態で絡みつくと、大きく開けたくちばしをグレンラガンへと向けた。
 フラフープに身を拘束されているグレンラガンは、この瞬間のみ単なる木偶の坊と化す。
 銃口となったくちばしが標的を狙い撃つには、十分な条件が整った。


「シン・キール・ロワイヤル!!」


 ガッシュの右腕、キールのくちばしから、金色の光線が放たれた。
 その輝きはグレンラガンから溢れ出る碧と桃の色を埋め尽くし、天空を金一色に染め上げる。
 さしもの巨体も直立不動とはいかず、放たれた金色の奔流に一歩、また一歩と後退を余儀なくされる。

「ヌゥォオオオオオオオオオオ!!」

 力の解放は続き、衰えるどころか火勢を増して、ついにはグレンラガンの装甲を削ぐに至った。
 光線の放出が終わると同時、キールはガッシュの右腕から飛び立ち、グレンラガンの惨状を見て不満げにごちた。

『しぶてーねぇ。あれだけくらってまだ壊れないなんて』
『あっちもそれだけ必死ってことでしょ。ほらガッシュ! 今度はあっちから攻めてきたよ!』

 鉄壁を誇っていたグレンラガンが、ここにきて守勢を強いられていた。
 そんな戦況を覆さんと、今度はグレンラガンのほうから、攻勢に出るため踏み込んでくる。
 超重の歩みが地響きを生み、愚直な突進にガッシュは一瞬、対処法を悩んだ。
 術で迎え撃つか、回避すべきか、決断を迫られる間際、

『引くなガッシュ! 真正面から投げ飛ばせ!!』
「――!」

 渋みのある男声に促され、自然と足は前へ出た。
 駆け込んでくるグレンラガンに真っ向から対するため、ガッシュもまた走る。
 衝突の瞬間、


「シン・ラウザルク!!」


715名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:35:56 ID:6acAdx0o
 
716名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:01 ID:Z//8J96e
 
717名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:05 ID:KyRxaSNq
 
718名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:20 ID:p2lZZtYq
 
719名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:26 ID:gpkJLdRH
 
720名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:31 ID:XdWo3Wzl
   
721HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:36:32 ID:wjsk7CWd
 上空に現れた灰色の雲より、ガッシュに雷が落ちる。
 狙いすましたような落雷は、しかし天災ではない。
 構わず、ガッシュはグレンラガンのつま先を掴み、

「ヌゥ……」

 そのまま持ち上げ、突進の勢いを殺した。
 地から足が離れ、バランスを崩したグレンラガンの比重を、小柄なガッシュが抱えきる。
 ぐらっ、と大地が震え、巨体が宙に浮いた。

「……おぉおおおおおおおおおおおお……」

 両腕で抱えたグレンラガンのつま先を支点に、激震。
 ぐらん、ぐらん、とグレンラガンがやじろべえのように揺れ、ガッシュはそれを身動き不可能と見るや否や、

「……おおおらあああっしゃああああああああ!!」

 柔道における一本背負いの要領で、豪快に投げ飛ばした。
 自身の何倍もの体格を、法則すら無視して地にたたきつける。
 下敷きになった建築物は軒並み倒壊し、グレンラガンは残骸に沈んだ。

『剣持勇直伝の一本背負い! 上出来だガッシュ。なかなか筋がいいぞ』
「ウヌウ……まったく重みを感じなかったのだ。すごい、すごいぞ勇!」

 こげ茶色のスーツを着た年配の刑事が、ガッシュと万歳三唱する。
 自身、ヴィラルに同じ技をかけた経験があり、ガッシュとは夢を語り合った仲である、剣持勇だ。

『っと、気を抜くなよガッシュ。奴さん、まだやる気満々みてぇだぜ』
「ウム。皆が力を貸してくれる……私とて、まだまだやれるのだ!!」

 続々と駆けつけてくる仲間たちの魂に、ガッシュの戦意は鼓舞され、戦闘続行の原動力となる。
 装甲を損傷し、地面に勢いよく激突したグレンラガンも、大破には至っていない。
 悠然とした動作で起き上がり、二本の足で屹立してみせる。
 その巨大さゆえ緩慢なグレンラガンの立て直しを、地獄の傀儡師≠ヘ行儀よく待ったりはしない。


「シン・サスペリア・バルカディオン!!」


 グレンラガンが起き上がった瞬間を狙い、矢継ぎ早に仕掛ける。
 唱えた術の効果はグレンラガンの周囲、取り囲むように出現した二種七体の人形の姿で反映される。

 ティアナと同じようなヴィクトリア朝式メイド服姿のドールが三体、包丁を握っていた。
 スティックタイプのお菓子の箱を胴とし、割り箸を手足とした不細工な工作が四体、漂うのみ。

 それら七体が皆人間大の大きさを持ち、、グレンラガンを幻惑するように周囲を旋回。
 ときには包丁で襲い掛かり、ときには口からミサイルを発射し、ときにはお茶を零し、ときには口をパカパカと開け閉めし、翻弄する。
 四体のメイド人形と四体のバルカン300を操るのは、人形繰りの技巧に長けた犯罪芸術家、高遠遙一だ。

722名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:36:51 ID:/P4Q6lZ+
723HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:36:56 ID:wjsk7CWd
『安易な横文字は好きではありませんのでね……タイトルをつけるならば、地獄の人形劇≠ニでもいったところでしょうか』
「ウヌウ! ティアナとバルカンが踊っているようなのだ! すごいのだ!」

 人形劇とはよく言ったもので、グレンラガンは悪い魔女、人形たちは七人の小人を連想させた。
 それでいて術としての性能も抜群に発揮できており、見るものに楽しさを与える点が、奇術師としての創意工夫の結果でもある。
 ガッシュは爛々と眼を輝かせ、グレンラガンは鬱陶しそうに腕を振り回し、高遠は鷹揚に微笑んでみせた。


「シン・レード・ザ・ペーパー!!」


 地獄の人形劇が繰り広げられる中、舞台上、グレンラガンを包囲するように紙吹雪が舞った。
 一枚一枚が国旗のように大きく、それでいて鉄板のように硬質化している。
 まるで意志を持ったように飛び回る紙がグレンラガンの装甲に触れると、一閃の傷が走った。
 それが無数、接触するたびにグレンラガンを切りつけていく。
 グレンラガンの周りを、さながらミキサーのように、轟然と紙が踊り狂う。

「ウヌウ、これはいったい誰の術なのだ?」

 見覚えのない技にガッシュがいぶかしみ、術を唱えたねねねのほうへ目を向けた。
 そして、彼女の左右に浮かぶ紙≠構えた女性と女の子を見て、すぐさま理解する。
 ガッシュだけではない。ガッシュと共に戦っている友――菫川ねねねにも、心強い仲間がいたのだ。

『書きましょう、先生。その本には、まだまだ加筆できる部分が残っているんですから』
『本で戦う作家なんて、紙使いよりよっぽど変。けど、ここ一番なんだから踏ん張ってよね』
「安心すれ。気合とか、根性とか、そういうのは作家の専売特許だってーの」

 絶望に暮れていたねねねはすっかり元の調子を取り戻し、歯を覗かせて笑っていた。
 読子・リードマンとアニタ・キング、二人の紙使いに励まされながら、心の力の放出を続ける。

『気合と根性……ですか。それなら、刑事を務める私とて得意とする分野です。なにせロスでは――』
『オッス! それならわたしだって負けてないッス!』
『おいおい私を誰だと思ってるんだ? 無敵のパルコ・フォルゴレだぜっ!?』
「だー! あんたら三人はなんのために出てきた!?」

 かと思えば、ここぞとばかりに新たな立会人が三名、ねねねを激励しに馳せ参じる。
 クラシックなスーツを着こなす眼鏡の男性と、体操着にブルマ姿の女児、そしてイタリアの英雄パルコ・フォルゴレだった。
 やんややんやと騒ぎ立てる三人は、やはりねねねにも縁深い者たちなのだろう。
 ガッシュも思わず、笑顔をほころばせる……なにはともあれ。
 後ろで術を唱えてくれるパートナーと、彼女を支える仲間たちに、ガッシュは安堵を覚え――Vの体勢を取った。

「う、ウヌウ!?」
『ウヌウ、ではぬわぁ〜い! Vの体勢を維持せよ、ガッーシュ!!」

 両腕を空に向かってピンと伸ばし、足は爪先立ち。
 体のラインでアルファベットの『V』を形作り、ピタリと停止。

724名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:37:23 ID:i/qfPQmm
 
725名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:37:30 ID:KyRxaSNq
 
726名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:37:31 ID:gpkJLdRH
 
727HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:37:50 ID:wjsk7CWd
『荘厳回転(グロリアスレヴォリューション)3・6・0(スリー・シックス・オー)……』

 グレンラガンの周囲を覆っていたメイド、バルカン300、硬質化した紙が次々と回転しだし、
 華麗なるVの最強術を放つための条件が整った。


「シン・チャーグル・イミスドン!!」


 三百六十度回転を続ける人形と紙から、V状の光線が一斉放射される。
 一つは天に向かって雲を突き、一つは地に向かって路面を穿ち、多くはグレンラガンに向かって、装甲を破壊していった。
 広範囲高威力ながら、命中率もなにもあったものではない無造作で乱雑な攻撃は、ガッシュにVの体勢を指示するビクトリームによるものである。

『ぬぅわぁーっはっはっは! 見たかアホタレめぇ!! 生前見せられなかった華麗なるビクトリーム様の本領発揮よぉ』
「ウヌ……ビクトリームまで来てくれたのだな」
『あたぼうよガッシュ。なんてったって君と僕はマブダチじゃあん?』
「うっ、ウヌ……ウヌウ?」

 思わぬ助っ人に半ば困惑するガッシュだったが、この攻撃が決定打となった。
 Vの光線がやみ、人形や紙も消え、後に残ったのはボロボロの外観を纏うグレンラガンだけとなる。
 火花を散らす裂傷、歪み拉げた装甲、熱で溶解し始める四肢、焼き切れた計器を示す煙。
 もはや、ここの状態から挽回してくるはずもあるまい、と一瞬思うが、すぐに首を振る。

 初手としてバオウ・ザケルガを決めた際の再生能力。
 あれを視野に入れれば、やはり完全破壊を見届けなければ勝ち鬨をあげる気にはなれない。
 駆動もやっとといった様子のグレンラガンに、ガッシュは気を引き締めなおし、右腕を振り上げた。

『そうだ……やるのなら、もっと徹底しろ』

 ガッシュの背後に、褐色肌の傷面が立つ。
 仰々しい刺青を彫った右腕が、ガッシュの振り上げた右腕とシンクロし、


「シン・スカー・クロウ・ディスグルグ!!」


 ガッシュの背後の傷の男(スカー)、そのさらに背後……浅黒い肌色を纏った巨大な右手が、具現化した。
 その右手はスカーの動きに、ひいてはガッシュの動きに合わせ、グレンラガンを掌握せんと放たれる。
 ほぼ同一の大きさを誇るそれは、グレンラガンの巨躯を強く握り締め、瞬間、閃光が迸った。
 破壊を告げる錬成反応。掌の中のグレンラガンは、巨大な掌の握力と分解効果に襲われ、ついに大破した。

「う、ウヌウ……容赦がないのだ……」
『容赦はしなくて正解だ。ガッシュ。もう、誰も死なせるな』
「……ウム。わかったのだ、スカー」

 慌しくも、死亡直後に駆けつけて来てくれたスカーの魂。
 自身が不甲斐ないばかりに守れなかった仲間の想いを、ガッシュが受け継ぐ。
728名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:37:54 ID:H+7x/Pj/
729名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:38:15 ID:Z//8J96e
  
730名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:38:28 ID:19q1CI8+
 
731HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:38:29 ID:wjsk7CWd
 スカーの術によって大破したグレンラガンは、爆発こそしていないものの、既に満身創痍を越えた損傷度合いだ。
 胸部のサングラスは粉々に砕け、両腕部は肩口からもげ、脚部はどうにか無事なために、転倒だけは免れている状態である。

『だけど油断しないで。シモンのグレンラガンは、頭のラガンさえ無事なら、まだ復活する可能性があります』

 そう、助言を届けにやって来たのは、グレンラガンというガンメンを人並み以上によく知る少女、ニアだった。
 ガッシュの肩に手を添えながら、エメラルドグリーンの輝きを纏った眼差しを向ける。

「ニア。私は……もう、誰にも死んでほしくはない。守りたいのだ。ねねねやジンを、みんなを、みんなで螺旋王を倒すのだ!」
『思いは一緒よ、ガッシュ。シモンやヨーコさんも、ここにはいないカミナさんも……そう、あなたのパートナーだって』

 ガッシュの肩に添えられたニアの手が、そっと離れる。
 代わりに、ニアのものよりは大きい、武骨な手が乗せられた。
 魔界の王を決める戦いの参加資格にして武器たる本を、掴んで離さず。
 どんな衝撃を受けようともページを開き、敵に渡しはしなかった強固な手。
 触れただけでも心強い、絆の握力を肩幅に感じる。
 振り返らずとも、ガッシュは最高のパートナーの存在を察知した。

『……よく。よく頑張ったな、ガッシュ』
「いいや……まだ終わってはいないのだ、清麿」

 賛辞にはまだ早い、とガッシュは確固たる意志で敵を睨み据える。
 紫電の眼差しは魔界の王子として、最後の関門を射竦める。
 傍らの親友、高嶺清麿は友の成長を鑑み、フッと微笑んだ。

『そうだな。まだ終わっちゃいない。俺たちの戦いは、まだまだ続くんだ』
「ウヌウ。そのためにも、ヴィラルとシャマルはここで倒す! ……しかし清麿、私の本のあの輝きは、いったいどうしてしまったのだ?」
『俺にもよくわからんが、あの本を通じて映像が見えたんだ。死んだはずの俺たちに、危機に立ち向かうガッシュたちの姿が送られてきた』
『ここにいるみんなはそれを見て、ガッシュの助けになりたいと思い駆けつけてきたんです』

 清麿とニアが、ガッシュを支えるように寄添う。
 その後ろには、金色に輝く本を携えたねねねと、読子とアニタの姿が。
 さらにチェスやミリア、ティアナ、ジェット、アレンビー、キール、剣持、高遠、ビクトリーム、スカー……志を同じくする仲間たちが、一同に会していた。

732名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:00 ID:KyRxaSNq
 
733名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:07 ID:XdWo3Wzl
  
734HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:39:08 ID:wjsk7CWd
『さあガッシュ。グレンラガンを倒すために、最後の術を。私やシモンの、大グレン団のみんなの力、受け取って』
『イメージするのはバリーの術だ。グレンラガンにも負けないような特大のドリルで……天を突け、ガッシュ!!』
「おぉおおおッ!!」

 皆に支えられて、ガッシュはここに立っている。
 親に捨てられ、世知辛く暮らしてきた幼少時代。
 そのときの記憶すら失っての、闘争への強制参加。
 けれど得られたものは大きく、ガッシュは立派に成長した。
 自身をここまで導いてくれた全てのものに感謝し、応えるために。
 ガッシュは、右腕を天高く掲げ――今、最後の術を発動する。


「シン・ドルザケル――ッ!!」


 ねねねの持つ魔本が、オーロラのように眩く、鮮明な輝きを発する。
 螺旋力を象徴する碧と、ガッシュを象徴する金色、書本来の色である赤、混じって合わさる煌き。
 宿した心の力はねねね一人のものではない、多くの仲間から授かった力、容量は底なしの無尽蔵。

 ガッシュの右腕を包む雷撃の塵が、逆巻き渦となる。
 それは空に昇っていくにつれ先端を鋭く研磨し、螺旋を形成する。
 グレンラガンのギガドリルブレイクにも匹敵する、巨大な電撃のドリル。
 旋回とともに迸る閃光は、雲を裂き、天蓋を穿ち、月まで届いて螺旋の王に脅威を届ける。

 これが、決着の一撃だ。

『……ガッシュ。最後に一つだけ確認したい』
「ウヌ、なんなのだ清麿?」
『おまえの居場所は、ここにあるのか?』

 矛を向ける間際、清麿がガッシュに問うた、意味深長な一言。
 ガッシュは深くは考えず、心で理解し、質問に答える。

「ウヌウ! なにを言っているのだ清麿。私の居場所はここにある。ここ以外のどこにもありはしない。
 ヴィラルとシャマルを倒し、皆を守り、螺旋王を玉座から引き摺り下ろし、元の世界に帰って、また王を目指すのだ。
 いや……目指すのではない。私は、王になる。ねねねが力を貸してくれる。皆をしあわせにする、王に。
 聞いてくれ清麿。清麿がいなくなっても、私は戦えるのだ。大きな声で、自分の夢を叫ぶことができるのだ」

 ガッシュは大きく息を吸い込み、全世界に響き渡るように宣誓する。


「私は――やさしい王様になるのだぁああああああああああああッ!!」


 力一杯の叫びが、仲間たちの胸に届く。
 清麿は、ただ笑った。
 共に覇業を駆け抜けた、かつての戦友として。
735名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:24 ID:gpkJLdRH
 
736名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:47 ID:KyRxaSNq
 
737名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:49 ID:XdWo3Wzl
   
738名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:39:56 ID:Z//8J96e
   
739名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:40:13 ID:/P4Q6lZ+
740名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:40:13 ID:yCTEYgdu
 
741HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:40:30 ID:wjsk7CWd
 ガッシュの勇ましさを嬉しく思い、彼の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

『それでこそガッシュだ! なら問題はねぇ……おまえは、この世界≠ナ王になる! 絶対にな!』
「ウヌウ! 絶対なのだ! だからいくぞ清麿! この一撃で――」

 ガッシュは決着の一撃、雷撃のドリルを、グレンラガンに放つ。
 悲願の成就、闘争の終焉、誰もがしあわせに暮らせる未来を目指して――。


 ……そんな、お話。


 願いは空に、遠い遠い宇宙の裏側にまで届く。
 望んだのは現実としての幸福、それがまやかしだと気づかなければ。


 走り抜けてきた過去は、決して無駄ではないはずだから。
 馬追い声のように響く騒がしき後方は、振り返らない。
 灯台の如きゆらめきへ一目散、前へ、愚直なほど前へ。


 こうだったらいいのに……という、拙く儚い想い。
 れっきとした現実には違いないが、現実とは違う場所。
 はじめて味わう極上の形に酔いしれて、永遠に気づかず。
 全ての艱難辛苦から逃れ、脱落者として目を背けた隔離世。
 部分的にでも違和感を覚えたのなら、あるいはどうだろうか。
 夢には違いない。それでも、命の風鈴は音を奏でることをやめ。


 死の間際に見た安楽の名前は――あるいは、多元宇宙迷宮と呼ばれる幸せの形なのかもしれない。

742名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:41:02 ID:KyRxaSNq
 
743HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:41:03 ID:wjsk7CWd


「――戦士の旅立ちだ。しばしの間だけ、時間をくれてやる――」

 人が見る夢は儚いものだと、誰かが呟いた。
 詩人でもなく、歌人でもなく、絶望を知った者の嘆きである。
 夢は叶う。夢は叶えるもの。夢を叶えるために、人は頑張る。
 ただ、夢は叶わずして潰える場合もある。悲しい事実として。

 少女の頃から作家になりたいと願い、見事夢を叶えてみせた菫川ねねねは、思い知る。

 夢は、潰えるのだ。

 ここでは、ひとつ。純粋無垢な少年の、年相応な願いと、不相応な志が、一挙に。

 夢は、潰えたのだ。

 ガッシュ・ベルの、王になりたいという願いは、もう――。

「あ、ああ……」

 ドリルという名の矛を収めたグレンラガンが、見下ろす。
 頭部と胸部、二つの顔で崩れ落ちるねねねを、見下ろす。
 ヴィラルとシャマルは黙して表情を隠し、ただ見下ろす。

 ねねねの目の前には、無残な子供の体がひとつ、横たわっていた。
 グレンラガンのドリルを受け止めるも、そこで力尽き、直後の攻撃に耐えられなかったガッシュ・ベルのなれの果てである。

 本来の体の頑丈さもあって、まだ人の形は保てていた。
 だが、全身各所からは骨が飛び出て、間接は逆方向に曲がり、肌の色は血に染まった赤で満たされている。
 顔つきは、明らかな死人の形相。微かに聞こえる荒い呼気が、まだ辛うじて存命しているという事実を知らせていた。

「がっ……あぁ……」

 潰えようとしている命に、ねねねは語りかけるべき言葉を見失う。
 辺りを見渡してみれば、破壊の名残の他に、無数の物品が転がっていた。
 ビチビチと跳ねるブリ、墓標のように突き刺さる扇、容器から零れた薬剤に、潰れたバルカン300。
 ガッシュの所持していた荷物が散乱しており、しかしその中に彼の命を助ける万能薬に等しき道具は存在しない。

744名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:41:33 ID:XdWo3Wzl
 
745名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:41:50 ID:H+7x/Pj/
746名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:41:52 ID:KyRxaSNq
 
747名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:42:05 ID:19q1CI8+
 
748HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:42:10 ID:wjsk7CWd
いや、あるいは――と思い立ち、ねねねはすぐ近くにあったジッポライターを拾い上げる。
 剣持勇の遺品となってしまったそれを使い、ガッシュの赤い本を燃やそうと試みた。
 本が燃えてしまえば、魔界の王を決める戦いからは脱落し、生きたまま魔界に強制送還される。
 そんなルールを聞き覚えていたからこその行動だったが、結果は知識とは食い違った。

(燃えろ……)

 赤い本にいくら着火しようとも、焦げ一つつかない。
 火力が不足しているわけではなく、熱がまるで伝わらないのだ。
 ライターの火種を近づけようとしても、手が寸でのところで止まってしまう。

(燃えない……なんで……どうして……)

 これだけが、ガッシュを救える唯一の手段であると信じていたのに。
 燃えない紙など話と違う……とねねねは悲観に暮れ、思い出す。
 ある種、魔物のパートナーを務める上では重要な事項を、失念していた。

(魔物とそのパートナーは……自分で自分の本を燃やすことが、できない)

 清麿やガッシュから聞き及んでいた予備知識は、追い風となってねねねの闇を深くする。
 魔界の王を決める戦いは厳正かつ過酷、白旗を揚げることは許されないのだ。
 心根のやさしい魔物でも、闘争に参加しなければならないように、制約を設けられていた。

(……ッ! 知るか……そんなの、そんなの知ったこっちゃない!)

 そんなルールは、この世界では適用されない。
 ねねねはガッシュの本来のパートナーではなく、代理人なのだから。
 そう都合よくルールが捻じ曲げられていれば、どれだけ楽だったろうか。

(燃えろ……燃えろ……本……燃えて……)

 作家である自分が、本を焼却することにここまで躍起になっている。
 おかしな違和感を覚え、それでもねねねはライターを本に押し付けた。
 ライターを押し当てる手は熱気を帯び、しかし火傷など恐れず、がむしゃらに。

(螺旋力でもなんでもいい……理屈じゃないんだろ……気合でどうにかなるんだろ!)

 自分の愚かな願望を、肯定してくれる声がほしい。
 ただ一つの命を救いたい、そのために道理を蹴っ飛ばすだけの気合がほしい。
 気合なら負けていない、根性なら負けていない、やってやるという意志は――。

(……………………誰かっ!!)

 結局、本を燃やせない、ガッシュを救えないという結論を叩きつけられ……折れる。
 何度も点火を繰り返すうちに、親指の皮が剥け、痺れる。
 ライターが手からぽろっと零れ、拾えない。

(誰か……誰かこの本を燃やして――――っ!)

 ねねねは、声なく願った――そうこうしている内に、
 ガッシュの口から奏でられる擦れた空気の音は消え、

「…………っ…………ぁ…………――――――――」

 音とも声とも識別できない呻きの後、完全に沈黙。
 微かに脈動を続けていた心臓も、停止。
 ガッシュは、絶命した。
749名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:42:13 ID:Z//8J96e
 
750名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:42:40 ID:XdWo3Wzl
 
751名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:42:43 ID:Z//8J96e
  
752名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:42:46 ID:KyRxaSNq
 
753名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:43:02 ID:6acAdx0o
 
754名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:43:08 ID:Z//8J96e
  
755名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:43:35 ID:XdWo3Wzl
  
756HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:43:58 ID:wjsk7CWd
「――――っ!!」

 ねねねは、嘆きの絶叫も、悲しみの嗚咽も出せず、歯を食いしばった。
 涙で頬を濡らし、眼鏡を鼻先までズラしてなお直そうとはせず、死に絶えたガッシュを見つめ続ける。
 くしゃくしゃになって、泣き崩れようともせず。そんなことが無駄であることは、大いに思い知ってしまっていたから。

 ねねねの眼前には、未だ健在のグレンラガンが聳え立っている。
 もう、なにをやっても無駄だと悟った。
 潰えたのは夢だけではない。命も、希望も――意地さえも。
 なにもかもがドリルに打ち砕かれて、粉として舞う。

 だからこそ――ねねねは、静かにそのときを待った。

 グレンラガンを操る二人の男女は、そんな弱者の諦観を重んじはしない。
 敵はあくまでも敵として。愛の障害を滅ぼさんと、拳を振り上げる。
 大仰な技や武器はいらない。今のねねねに抗う術などないのだから。
 終わりを迎えよう。なにもかも捨て去って、今日に沈もう。
 そして、グレンラガンの拳が振り下ろされた。

「超級……覇王……ッ!」

 その鉄槌がねねねに下される、わずかの間。
 グレンラガンの頭部目掛けて、竜巻状のなにかが飛来する。

「……電影だぁあああああああああああああん!!」

 その竜巻は、捻りを加えた回転が大気を巻き込む様。
 その竜巻は、単純に名を与えるだけならば突撃の二文字で事足りる。
 その竜巻は、だからこそグレンラガンの巨体を揺るがす。
 流派東方不敗が奥義、超級覇王電影弾でもって、男は戦闘に介入した。

 不意の攻撃をこめかみの辺りに受け、グレンラガンが揺れる。
 ねねねを潰さんとしていた拳は寸前で停止、引き戻される。
 体勢を立て直したグレンラガンの視点は、もうねねねには向いていなかった。
 唐突に現れた、鉢巻きの武闘家。
 ヴィラルもシャマルも面識はあるものの、ねねねの一味とは認識していなかった新たなる敵。

「ヴィラル! シャマル!」

 グレンラガンに一撃を与え大地に降り立ち、間髪入れず敵対者を名指しするその男。
 ねねねたちとは別働班、作戦が狂った際のメンテナーとして準備していた、その男。
 ――ドモン・カッシュ。

「俺はおまえたちが愛し合う仲だと認め、だからこそ頼む!」

 いきなりの先制は、ねねねの窮地を救うためのものにすぎない。
 彼は格闘家であり、だからこそ不意打ちなどといった戦法も好まない。
 如何な外道、如何な関門とて、その身一つで打ち破ってこそのガンダムファイターだ。

「一対一だ――俺を、追って来い!」

 ドモンの思惑はいったいなんなのか、ヴィラルとシャマルにそう言いつけ、この場より走り去ってしまった。
757名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:44:10 ID:XdWo3Wzl
   
758名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:44:44 ID:KyRxaSNq
 
759名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:44:48 ID:Z//8J96e
 
760名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:45:09 ID:yCTEYgdu
 
761名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:45:25 ID:19q1CI8+
 
762HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:45:29 ID:wjsk7CWd
取り残されたねねねは、ドモンに声をかける暇も与えられず、再び一人となる。
 ドモンが介入したところで、変わらない。絶望の再開だ。

 しかしグレンラガンは、ねねねに再び拳を振るおうとはせず、歩み出した。
 ドモンが走り去っていった方角に、ねねねには一瞥もくれることなく、追撃を開始する。
 ねねねはその為様を、呆然と見送った。物言わなくなったガッシュの亡骸を抱えながら。

「……おねーさん」

 やがてねねねのもとに、姿を消していたジンが現れた。
 着古した黄色のコートをさらにボロボロにし、よろめいた足取りで近寄ってくる。
 今までどこでなにをしていた、と咎めることはできない。ジンとて、それなりの深手を負っているのだろう。
 虚ろな目を向けるねねねに、ジンは気を失っていたところをドモンに助けてもらったと証言した。
 即死しなかっただけ儲けものだ、といつもの軽口に、しかし笑みは纏わない。
 ねねねにかける言葉はなく、ただガッシュを抱き、黙る。

「ドモンが来てくれなかったら、ヤバかった……いや、もう事態はヤバイなんてレベルをとうに超えちまってる」

 スカーが死に、ガッシュも死んだ。
 これ以上の絶望が、あるとでもいうのだろうか。

「それでも、だ。菫川ねねねと王ドロボウは生き永らえた」

 残った事実を、ジンは告げる。
 だから――?
 そう、ねねねは問いたかった。
 でも今は、喋る気力も失せてしまっている。

「これを、どう受け取る――?」

 ジンの問いかけに答えを用意するのは愚か、頭で考えることすらできはしない。
 強く、強く……壊してしまいそうなくらい、強く。
 ガッシュを抱いて離さぬことで、ねねねはジンに応えた。

763名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:45:54 ID:XdWo3Wzl
  
764名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:46:03 ID:yCTEYgdu
 
765名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:46:21 ID:Z//8J96e
  
766名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:46:42 ID:19q1CI8+
 
767HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:46:44 ID:wjsk7CWd


 駆けつけてすぐに、ジャンクのように投棄されていたジンを発見した。
 重傷ではあったが、瀕死まではいかず、意識もあれば体もちゃんと動いた。
 ドモンはジンに事のあらましを聞き、スカーが死んだことも知った。

 ――男は走る。誇りを捨てろ、魂を売れ、悪魔になれという囁きを受けて。

「なにがガンダムファイターだ。なにがキング・オブ・ハートだ」

 脅威とは思っていたが、彼らの愛がこうも容易く仲間の命を絶つとは、思わなかった。
 スカーの死を嘆き、遅れを取った自身の不甲斐なさを戒め、だからこそ闘争心が湧いた。
 もう誰も死なせはしないと、そう決意した矢先に、死に絶えたガッシュと死の間際にあったねねねを発見した。

 ――男は駆ける。力を欲しながら、欲望の目的を考えながら、ただひたすらに。

「スカーが死に、ガッシュも死んだ。俺たちは、屈するしかないのか?」

 犠牲者は二名、勇猛果敢な二人の士が命を落とした。
 彼らに対し、ドモンがしてやれることは追悼でも仇討ちでもない。
 想いを継いでの、計画の成功――元の世界へ、生きて帰ることだ。

 ――男は目指す。選択の間へ、懊悩と熟考を繰り返しながら、しかし本能の導くままに。

「……ふざけるな!」

 猛りに合わせた怒声が、熱気に満ちた空気を劈いた。
 疾駆する足は、焦熱を帯び、追跡者を突き放す。
 逃走に徹しているこの状況を悔しく思い、舌を打つ。
 愛を知る者として、ここにはいない伴侶を思いもした。
 彼と彼女の愛を真っ向から受け止めるには、役不足だ。
 仲間を守るにも、戦闘欲を満たすにも、己では役不足だ。

「俺は――悪魔には屈しない! この拳で、必ずや勝利を掴んでやるッ!!」

 そして、ドモン・カッシュはその空間に辿り着いた。
 好敵手を引きつけた先、自身が悪魔と称す力に縋るため。
 否――仲間のために、己のために、約束された勝利をこの手に掴み取るために。

768名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:46:46 ID:Z//8J96e
 
769名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:46:55 ID:KyRxaSNq
 
770HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:47:10 ID:wjsk7CWd


 ドモン・カッシュが逃走し辿った方角は、西だった。
 あれだけ豪胆に挑発してきたのだから、単純な逃走ではないのだろう。
 おそらくは、仲間を逃がすための時間稼ぎか。
 ヴィラルは冷えてきた頭で、次なる対戦者を探し求めた。

「ヴィラルさん……やっぱり、あそこで全員しとめておくべきだったんじゃ?」
「言うなシャマル。おまえを愛するオレだからこそわかる。奴らがどんな想いで、最後の戦いに臨んでいるのかが」
「……彼らもまた、大切なもののために戦っている……」
「だが、淘汰しなければオレたちに明日はない。いいかシャマル。この戦い、勝者はオレたち二人だけだ!」
「ええ! あなたとなら、どこまでだって上っていける!」

 泰然と歩を進めるグレンラガン。その操縦者たる男女は、頭部と胸部の各コクピットから愛を確かめ合う。
 人としての愛を知ったヴィラル、八神家での自分を重ねたシャマル、二人揃って、スカーやガッシュの奮戦に感銘を受けた。
 ねねねの悲痛の姿にも、思うところはあった。だからといって、ヴィラルとシャマルの天を突く愛が歪むことはない。

 完全な形での愛の成就。
 天元突破した二人だからこそ、目指す舞台は天井を突き抜けた遥か宇宙の果て。
 敗北はない。ただ確かな勝利の感触を追い求め、戦う。
 それが、愛し合う二人の選び取った道だ。

 だが――その愛は、あまりに独り善がりだった。

 他を蔑ろし、愛する者のことだけを考え、愚直に吼える。
 そんなものはヒトの愛ではない、獣の生殖本能だ。
 幸福な未来を目指すならば、本当の愛を知れ、と――その男は語りかけたかったのだろう。

「いたわヴィラルさん! あの建物の傍に……」
「やはり、待ち構えていたか。あえて誘いに乗ってやったかいがあるというもの」

 そう、言葉ではなく態度で示す。
 とある施設の門前に仁王立ち、逃げず。
 明確な闘争心と敵愾心を肌に表し、空気に流す。

 ヴィラルはほくそ笑み、またシャマルに恐れはなかった。
 彼となら、彼女となら、どんな強敵にだって負けはしない。
 絶対の自信が、闘争意欲を駆り立て――対立する。

771名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:47:15 ID:XdWo3Wzl
 
772HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:47:58 ID:wjsk7CWd


 赤い鉢巻きが風に靡く。
 着古したマントを風に流し、眼前の巨躯に視線をやった。
 眼光鋭く、射抜くように。臆せず、正面から。
 習癖として、固めた拳を開いてはまた固める。
 掌に滴る汗は、武者震いの表れとも見えた。

「待っていたぞヴィラル、そしてシャマル。改めて名乗ろう……俺の名前はドモン・カッシュ。キング・オブ・ハート、ドモン・カッシュだ」

 馳せ参じた好敵手、グレンラガン駆るヴィラルとシャマルに、自身が真名と称号を告げる。
 傷だらけの強張った顔つきは、まっすぐに。格闘家としての本命を自覚しているかのようだった。

「仲間を逃がすための時間稼ぎか? どの道、オレたちの道を阻む者は容赦なく捻じ伏せる。誰であってもだ!」
「フッ……その時間稼ぎに、真正面からつきあってくれたのはどこのどいつだ。そういう奴は嫌いじゃないがな」

 一騎打ちの誘いに賛同してくれた敵に、ドモンは微笑みと賛辞を与える。
 ヴィラルとシャマルが真に外道ならば、逃げるドモンを捨て置いて、足の遅いねねねとジンを先に葬る手もあった。
 だがそれをしなかったのは、罪悪感の名残――ではなく、ヴィラルにわずかながらでも戦士としての性が残っていたからだろう。

(ならば俺は、ガンダムファイターとしてそれに応えるまで!)

 強大な力を得た彼らは、虐殺ではなく闘争を選択した。
 その時点で、悪魔に魂を売り渡した外道とは違う。
 宿敵ではなく、好敵手たりえる存在なのだと――ドモンは身震いした。

「戦う前になんだが……ここで今一度問いたい。おまえたちの唱える愛は、はたして本物か?」

 戦意は固まった。体も温まっている。しかし今一度、言葉での確認が欲しかった。

「ふん、今さらなにを言うのやら……まあいい。何度だって言ってやる。オレは! シャマルを愛している!!」
「私も……私だって、ヴィラルさんを愛しているッ!!」

 羞恥を超越した想いの猛りが、ドモンへと突き刺さる。
 が、


「俺はレインが好きだぁああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 一蹴。
 ヴィラルとシャマルの愛の言霊を、ドモンは倍ほどの声量でもって掻き消した。

 
773名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:48:12 ID:XdWo3Wzl
  
774名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:48:27 ID:KyRxaSNq
 
775名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:48:40 ID:Z//8J96e
 
776名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:48:45 ID:19q1CI8+
 
777HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:49:07 ID:wjsk7CWd
叫びの中心にはレイン・ミカムラという生涯の伴侶への想いを乗せて。
 ここにはいない愛する女性、彼女の待つ家、そのための勝利を願って。

「おまえたち同様、俺にもかけがえのない人がいる! その人のためにも、この地で出会った戦友のためにも、負けるわけにはいかん!」

 誰かのために戦っているのは、ヴィラルとシャマルだけではない。
 スカーも、ガッシュも、決して自己満足のためだけに殉じたのではないのだ。
 ねねねやジン、スパイクに舞衣にゆたかとて、ひとつの目標の上に助け合っている。
 愛を知る先達として、仲間を重んじる一員として、ドモン・カッシュは改めて告げる。

「ヴィラルとシャマル……おまえたち二人に、ガンダムファイトを申し込むッ!!」

 突きつけた人差し指に、グレンラガンの巨躯がわずかたじろいだ。
 しかし、すぐに体勢を整える。操縦者は、牙を向き出しにして笑っていた。

「……おもしろいッ!」

 ドモンの熱意に感化され、かなぐり捨てたはずの獣性、戦士としての誇りを一時だけ取り戻す。

「……私たちは、勝ってみせる!」

 シャマルは戦士でこそないが、ドモンには負けたくない、と心の底から思った。

「……いくぞ!」

 その場に、一陣の風が吹く。
 吹き荒ぶ嵐は決戦の予兆として、何度もこの地を訪れていた合図。
 これで終いとするためにも、全力全開での衝突を――。

「俺のこの手が真っ赤に燃えるゥ! 勝利を掴めと……轟き叫ぶゥ!!」

 ドモンの右手の甲が、赤く燃える。
 火線が刻むのは、トランプの刻印。
 愛情表現の形として多用される印。
 格闘家が至高たる王のエンブレム。

 ドモンの激情に同調してそれは、赤く、赤く、どこまでも紅く、炎のように輝いた。
 塩を摘むような指先が、天蓋を突かん勢いで頭上高く持ち上がる。

「出ろおおおお! アルティメット……ガンダァァァァム!!」 

 パチンッ、と。
 先んじてこの地で進めていた下準備、例のシステムを起動させる。
 弾かれた指の奏でる音と、なによりもドモンの叫びが、神の像起動の条件と化す。

 ドモンの後方にある博物館が、音を立てて倒壊した。
 その中から、元の建物を遥かに凌駕する大きさの物体が一つ、弾かれるように顕現する。
 隠し財宝として死蔵されるかと思われた機体の、出番が回ってきたのだ。

 悪魔の機体と外観を同じくする、しかし破壊の権化とは正反対の意味を持つそれ。
 グレンラガンと同等の体躯を持ち、人型。蠢く脚部がわずかばかり人外を模している。
 かつてはこの機体を怨敵と定め、人生を狂わされもしたが、今となっては切り札同然だ。
 ヴィラルとシャマルに愛を叩き込み、勝利するためには――『ガンダム』の力を借りなければならない。

778HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:49:32 ID:wjsk7CWd
「お、音声認識による遠隔操作!? あんなものが隠されていたなんて……!」
「うろたえるなシャマル! 愛の試練には相応しい相手だ。二人で乗り越えるぞ!!」

 立ち塞がる強敵を前にして、ヴィラルとシャマルはなおも臨戦。
 そうでなくては、とドモンは大地を蹴り、ガンダムのコクピット目掛けて跳んだ。
 操縦席に入り、モビルトレースシステムを作動。ガンダムを最強たる武闘家の手足とする。

 今ここに、決戦の準備が整った。
 一対一、正真正銘のガンダムファイトの条件が適合され、そして。
 ガンダムファイターの頂点に君臨する男――キング・オブ・ハート、ドモン・カッシュが宣言する。

「行くぞぉっ! ガンダムファイト、レディィィィィゴォォォォォ!」

 操る機体は、愛機ではない。

 クライマックスを想定して用意された決戦兵器――人呼んで、究極。

 ドモンの父、ライゾウ・カッシュが追い求めた完成形……アルティメットガンダム。


779名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:49:36 ID:XdWo3Wzl
   
780名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:49:42 ID:p2lZZtYq
 
781名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:49:45 ID:KyRxaSNq
 
782名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:50:01 ID:yCTEYgdu
 
783名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:50:12 ID:Z//8J96e
 
784名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:50:50 ID:p2lZZtYq
 
785名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:51:03 ID:XdWo3Wzl
 
786HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:51:22 ID:wjsk7CWd


 それは、うらぶれたコンクリートに転がる二つの首輪に起因する。

「どういうこった、こりゃ?」

 廃ビルに響いた疑問の声は、スパイク・スピーゲルの口から出たものだった。
 だが、その疑問はスパイク・スピーゲルだけのものではなく、すぐ傍にいた小早川ゆたかと鴇羽舞衣も同じ疑問を抱いていた。

 つい先刻、本当に唐突に、ゆたかとスパイクの首からカチリという音が聞こえたかと思うと、彼らの首輪が地面に転がり落ちたのだ。
 すでに首輪が外れている舞衣はさておき、他の者たちにとって最大の問題だと思われた首輪の解除だったが、あまりにもあっけない幕切れだった。
 それは、天元突破覚醒者が出現したことによる影響であるのだが、そんなことは彼らには知る由もない。
 だが、何か動いていると、彼らにそう思わせるには、十分な兆候だった。

「ま、いいさ考えたってしょうがねえ。
 爆発したってんならともかく外れたってんなら文句はねぇだろ」

 スパイクはひとまず素直にこれを受け入れることにした。
 原因はどうあれ、首輪が解除されたことは喜ばしいことに違いないのだから。
 事態はきっと好転しているのだろう。

「それよりも、だ」

 厳しい表情で壁際で外の様子を伺いながら、切り替えるような声でスパイクは言う。
 外では未だ激しい戦いが続いている。
 果たして今戦っている皆はどうなっているのか。
 戦いにの詳細がわからぬ彼らにはそれを知るすべもなく、無事を祈るほかにない。

 だが、スパイクの視線はその激戦とはまた別の方向へと向けられていた。

「どうしたんですか、スパイクさん?」

 その視線の先に何があるのか、疑問に思ったゆたかは小さな声で問いかけた。
 その問いに、スパイクは外へ向けた視線を外さずに答える。

「お客さんが来たみたいだぜ。
 ……あんまり歓迎できるお客さんじゃなさそうだけどな」

 そう言われ、そっと窓からスパイクの視線の先を追ったゆたかはこちらに迫り来る奇妙な物体を見た。

 その身を隠すように木々の間をすり抜けながら、這いずり回る無数の足。
 背に描かれた巨大な顔面。そこから伸びる長い触角。
 進むその姿は昆虫のようだった。
 それは、まるでこちらの居場所を端から知っているかのような迷いのなさで、彼等の潜むビルに向かって接近していた。

787名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:51:38 ID:H+7x/Pj/
788名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:51:38 ID:XdWo3Wzl
  
789名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:51:59 ID:KyRxaSNq
 
790名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:52:13 ID:Z//8J96e
  
791HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:52:26 ID:wjsk7CWd
「ゆたか、舞衣。下がってろ」

 そう言いながら、スパイクは懐のジェリコ941改のグリップを握り締める。
 接近するそれが何であるかをスパイクは知らない。
 だが、知らないということが知れていれば、判断するには十分だった。
 すでに生き残ってる面子は全て把握している。
 知らない輩が現れたということはつまり、それは螺旋王の手のモノに他ならない。

「待ってスパイクさん、私も戦うわ」

 言って、一歩前へと踏み出た舞衣の両手足に、勾玉を配した宝輪のエレメントが具現化する。
 ガンメンのような巨大兵器に対抗するには、片手を失ったスパイクでは荷が重い。
 いやむしろ、ああいった手合いを相手取るのは、最強のチャイルド、カグツチを操る舞衣の方が適任だろう。
 口にこそしないものの、舞衣はそれを理解していた。
 そして同時に、いざとなれば自らが戦う覚悟も完了している。

「……わかった、援護を頼むぞ舞衣。
 ただし無理はするなよ、いざとなったらゆたかをつれて逃げろ、わかったな?」

 言わずともその覚悟が理解できたのか、スパイクは無茶はしないよう釘を刺しながらも舞衣に背中を預けることを良しとした。

 その間にも敵は廃ビルの目前まで迫っていた。
 進みくる虫型。
 だが、それは森を抜けた先、ビルの入り口付近に差し掛かったところでその移動を止めた。

 何事かと様子を伺う三人の前で、動きを止めた虫型が変形する。
 虫型から人型へ。
 おそらくはそれがその相手の戦闘形態なのだろう。
 それを確認した、スパイクは身を窓から乗り出し、愛銃を懐から取り出す。

 対峙する一名と一機。
 一触即発の緊張が走る。
 おそらく次にどちらかが動いた瞬間、それが戦闘開始の合図となるだろう。

「ほっほっ、そう慌てるでない。
 こちらに戦闘の意思はない」

 だが、目の前のヒト型から響いたのは休戦の声。
 と同時にコクピットが開かれ、その内部が露になる。
 その行動を訝しみながらも、スパイクは黙って開かれたコクピットに銃口を向ける。
 照準越しに覗くコクピットから現れたのは、甲羅を背負ったアルマジロ。
 現れた獣人はキセルを咥えた口元を吊り上げ、舐めるような目付きで舞衣とゆたかを見つめた。

「誰だ、お前」

 その視線を遮るようにスパイクはジェリコ941改の銃口を音を鳴らして突きつける。
 対する獣人はあわてるでもなく、飄々とした態度でスパイク視線を受け流す。

「名乗りが遅れたか? こりゃあすまんの。
 儂は、螺旋王四天王の一人、不動のグアーム」
「四天王、だと…………!?」

 それは間違いなく、スパイクたちとは相成れないモノの名だった。
792名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:52:51 ID:Z//8J96e
  
793名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:52:58 ID:KyRxaSNq
794名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:53:03 ID:XdWo3Wzl
 
795名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:53:27 ID:19q1CI8+
 
796名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:53:31 ID:6acAdx0o
 
797名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:53:34 ID:yCTEYgdu
 
798HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:53:53 ID:wjsk7CWd
 先に投入された怒涛のチミルフと同じ称号。
 螺旋王の側近中の側近の称号である。
 その名を聞いて明らかに警戒心を強めたスパイクたちの様子を見て、グアームは大きくため息をつく。

「これこれ、そうあからさまに警戒するでない。
 わざわざゲンバーから降りて、姿を現してやったんじゃ話くらいは聞け」

 そういってグアームはパチンと指を鳴らす。
 それを合図に、スパイクたちのいるビルに向かってゲンバーの触角が伸びた。
 攻撃かとスパイクたちは身構えるが、触覚は彼らにではなくビルの壁に突き刺さる。
 彼らがあっけにとられている間に、グアームは堂々とした態度でそれを渡り、彼らのいるビルへと移動した。
 それを見て、我に返ったスパイクはジェリコ941改をグアームのこめかみに突きつける。

「動くなよ。次に妙な動きしたら撃つぞ」
「なんじゃ、物騒な話じゃのぅ。
 先ほども言ったが、儂にはもう貴様らと敵対する意思はない。
 いや、それどころかむしろ、儂はお前さんたちを救いにきたんじゃからな」
「……………………ぁん?」

 グアームの口から飛び出した、あまりにも予想外なフレーズに、スパイクは思わず間の抜けた声を上げた。

「すくうってのぁ……そらいったいどういう意味だ?」
「どうもこうもありゃせんよ。そのまま意味じゃ。
 この儂がお前さんたちを、この会場から救い出し、元の世界に戻してやろうといっておるのじゃよ。
 わかったんならその物騒なものを下げてくれんか?」

 そう言ってグアームはチョンチョンと短い指でスパイクの突きつけるジェリコ941改を指す。

「何考えてやがる。なにが狙いだ」

 だが当然スパイクはその要求にこたえず、更に厳しい表情をグアームに向け事の真意を追求する。
 無償の厚意ほど疑わしいものはない。
 まして、それがこれまで敵対関係にあったものの言葉であればなおさらだろう。

「疑わしいか? まぁ当然の反応じゃな。
 ならば仕方あるまい、信用してもらうためにも、こちらも手の内を明かすとするかの」

 そう言って、グアームはキセルを吸い、煙を吐き出した。
 もったいぶるようなその態度にイラつきながらも、一先ずスパイクはこちらに近づいた裏を知るためグアームの言葉に耳を傾ける。

799HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:54:14 ID:wjsk7CWd
「我ら四天王は螺旋王とは手を切った。既に儂らに奴に従う意思はない」

 そう告げるグアーム。
 正確には手を切ったのは螺旋王の方であるのだが、それはいい。
 グアームの意図としては、螺旋王との繋がりが切れたことが提示できればそれでいい。

「それで? それとこれとどう関係があるってんだ?」

 確かにそれはスパイクにとってそれは意外な事実であったが、螺旋王に対する裏切りと、参加者を助けることはイコールではない。
 裏切りのついでに螺旋王の思惑を滅茶苦茶にしてやろうというのならこの行為は正しいだろうが。
 たかが腹いせのためにワザワザ戦場に出向いて自らの身を危険にさらすのはリスクが高すぎる。
 彼らの立場からすれば螺旋王と共に参加者たちも見捨てるのが普通だろう。

「まぁそう焦るでない。
 あくまでこの実験はロージェノムの悲願であり儂らの悲願ではない。
 ロージェノムと手を切った時点でここに執着する理由もないのでな。
 儂らは奴とともにこの実験に見切りをつけて、早々にこの会場を脱出することにした」

(…………脱出?)

 その言い回しに多少ひっかっかるモノを感じながらもスパイクはそれには触れず、言葉の続きに耳を傾ける。

「したんじゃが……、一つ問題があってのう」

 そこにきてグアームは言葉を濁すように言い澱む。
 ワザとらしい態度ではあったが、それゆえに、それがグアームが接触してきた理由なのだろうと、スパイクは直感する。

「それで、その問題ってのは何なんだ?」
「それがの、脱出の手はずは整っているのじゃが。
 用意した脱出艦――カテドラル・テラ――の転移装置を動かすための、エネルギーが足りんのじゃよ」
「…………エネルギー?」

 エネルギー不足。
 相手の目的を口の中で反復して、スパイクは思い至った。
 グアームが危険を犯してまでこちらに接触した、その理由に。

「まさか、テメェ。”俺達”を使うつもりだな?」

 スパイクの出した回答にグアームは口の端を三日月のように吊り上げ答えた。

「その通りじゃ、まぁ正確にはお前さん以外の螺旋力に覚醒したそこの小娘二人じゃがな」

 螺旋界認識転移システムの起動に必要な動力は当然ながら螺旋力である。
 だが、アンチ=スパイラルに感知されぬよう螺旋力をもたぬよう創られた獣人にはそれがない。
 故に、完全なる逃避のためにはその螺旋力を補えるだけのモノを用意する必要があった。
 グアームが目をつけたのは、この地で初めて螺旋力に覚醒した少女、小早川ゆたか及び、愛の進化により真っ先に首輪の呪縛から解き放たれた鴇羽舞衣の二人である。
 この二人の螺旋力を利用すれば、十分にシステムの起動は可能であるとグアームは考える。

800名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:54:15 ID:Z//8J96e
  
801名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:54:18 ID:XdWo3Wzl
 
802名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:54:26 ID:KyRxaSNq
803名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:55:03 ID:XdWo3Wzl
   
804名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:55:15 ID:/P4Q6lZ+
805名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:55:17 ID:yCTEYgdu
 
806HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:55:34 ID:wjsk7CWd
「心配せずとも何も取って食おうというわけではない、役目を果たせば元の世界に送り届けることを約束しよう。
 儂がほしいのはその二人だけなんじゃが。そうじゃの、スパイク・スピーゲルなんなら、お前さんもついでに助けてやってもいいぞ?」

 そういいながら、グアームはいやらしい笑みを浮かべる。
 スパイクたちは脱出を望んでおり。
 グアームの脱出計画に彼女達は必要不可欠な要素だ。
 利害は完璧なまでに一致している。
 取引において利害の一致ほど信用できるものないだろう。
 この手の取引に慣れているがゆえか、スパイクにはそれがわかってしまった。
 返す言葉もなくスパイクは押し黙る。

「……それじゃあ、いま戦ってる人たちはどうなるの?」

 押し黙るスパイクを継ぐように、後方から問いを投げたのは舞衣だった。
 もし仮に自分達がその計画に乗ったとして、今、未来をつかむためにこの地で必死に戦っている彼らはどうなるのかと。
 彼女はそう獣人に問いかけた。

 その質問を聞いた、グアームはふむと考えるように頷きながらも内心でほくそ笑む。
 なぜなら、脱出に伴う不具合を危惧するその問い自体が、彼女達の頭に脱出を示唆する可能性が出てきた証拠なのだから。

「悪いが儂が連れて行けるのはここに居るモノだけじゃ。
 向こうで派手に戦ってるやつらはいわば囮じゃな、奴らが目をひきつける間に儂らはこの会場を脱出する」
「そんな…………!」

 それは舞衣たちにとって受け入れがたい事実だ。
 彼女達が望むのは完全無欠のハッピーエンド。
 誰かを見捨てて得られる幸福など受け入れられるはずがない。

「なんじゃ、仲間を見捨てては置けぬか?
 数千年連れ添った同士を見捨てる奴もおるというのに、なんとも感動的な話じゃのう」

 だが、その価値観をあざ笑うように、あるいはどこか羨むようにグアームは呟く。

「じゃがな、考えてもみろ。
 仲間といっても、お前等のつながりなど所詮ここで生まれた一時的なモノに過ぎん。
 そんなモノにしがみ付いて命を落としてもしかたあるまい?
 わかっておるのか、死んでしまえば元の日常には帰れぬのだぞ?
 元の世界に戻って本当の仲間と再会したくはないのか?
 長年連れ添った友人に会いたくはないのか?
 帰りを待つ家族の下へ戻りたいとは思わんのか?」

 畳み掛けるようにグアームは問いかける。
 その問いには誰も答えられない。
 当然だろう。帰りたくないはずがない。
 会いたいに決まっている。
 だけど、

「答えられぬか、まぁよい。
 なんにせよ、儂の話に乗ればお前さんたちは助かるし儂も助かる。
 どうじゃ、互いにとって悪い話ではなかろう?」

 グアームは三人の答えを待たず矢継ぎ早に話を進める。
 深く考えさせず、思考を誘導するように。

807名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:56:02 ID:XdWo3Wzl
   
808HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:56:03 ID:wjsk7CWd
「……ああ、そうだな悪い話じゃない。
 ただし、その話が本当だってんならな」

 スパイクの返答に、心外だといわんばかりの態度でグアームは肩をすくめた。

「まだ、信用できぬと?」
「当たり前だろ、その話が罠じゃないって保障は何処にもないしな」
「ほぉ。ならば逆に問うが、このまま放っておけば確実に死ぬお前たちを、なぜワザワザ罠にかける必要があるというんじゃ?」
「死にゃしねえさ。
 ドモンたちはあの野郎に勝つし、俺たちも螺旋王なんかに負けはしねえよ」

 スパイクの言葉にグアームは呆れたようにかぶりを振った。
 根拠のない希望を語ることにではない。
 語る内容の余りの無知にだ。

「……わかっておらんのぅ」

 深い絶望と畏怖を込めて誰にでもなくグアームは呟く。
 ロージェノムなど、ましてあのヴィラルなど問題ではない。
 この会場を去ったロージェノムを除き、唯一アンチ・スパイラルと対峙したことがあるグアームは知っている。
 アンチ・スパイラルが動き出したが最後、そこにはもう希望などもう欠片も残らないことを。
 会場は破壊され、参加者たちは皆殺しにされ、それを管理するルルーシュたちも死ぬ。
 例外はない。全て滅ぶ。全滅だ。
 故に、生き延びたくば奴らが本格的に動き出す前にこの場を脱しなければならない。

「ならばどうする。
 ワシを信用できぬというのならこの話は無かったことにするまでじゃが……?」

 断れるはずがないと確信しながら意地悪くグアームは嘯く。
 なにせ、本当にグアームはカテドラル・テラでの脱出以外にこの実験に関わった者の生き残る道ないと確信しているのだ。
 会場の内側で蠢く彼らに、それ以上の脱出方法など用意できるはずもない。
 地獄の底で生き延びたくば、例えそれがか細い蜘蛛の糸であろうとも、彼らは縋りつくしかないのだ。

 そんなグアームの思惑通り、乗るべきではない取引であるとわかっていても、スパイクはこの提案を簡単に切り捨てることができなかった。
 絶望的状況で、それを弱さと断ずるのは酷というものだろう。
 たとえそれがどれだけ疑わしくても、乗れば確実に脱出できるグアームの提案が魅力的であることは事実だ。
 だが、この地で命を賭して戦う仲間達を残しておくこともできない、それも本当だ。
 そして、乗らないにしても、グアームへの対処を考えねばならない。
 脱出への足がかりとして奴を利用しない手はないだろう。
 ただ、もしも。
 もしこの話が本当だとしたならば、せめてゆたかや舞衣だけでも無事帰還してもらいたい、そう思うのがスパイクの本音だ。

(……どうしたもんかね、ホント)

 スパイクは一人心中で思い悩む。
 煙草でも吸いたい気分だった。

809名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:56:24 ID:KyRxaSNq
810名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:56:26 ID:XdWo3Wzl
 
811HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:56:39 ID:wjsk7CWd
 それぞれの思惑を抱え対峙する四人。
 そこに、ふと足音が響いた。
 足音は下階から、彼らのいるフロアへと続く階段から響いていた。

 おそらくはヴィラルと対峙し、逃げ帰ってきた誰かだろうとグアームは思い至る。
 生き残ったのは菫川ねねねか、ガッシュ・ベルかはたまたスカーか。
 いずれにせよ螺旋覚醒者であるならば、脱出計画の後押しになるのは間違いない。
 何より仲間の安否を気遣う彼らの説得も容易になるだろう。
 誰にしてもグアームにとっては行幸だった。
 足音の主が姿を現す。
 だが、そこにあったのは、そこに存在するはずのない金色の輝きだった。

「楽しそうだな雑種ども。何の相談だ?」

 放つ輝きは金色。
 宝石のような紅蓮の相貌。
 絶対的な存在感を身にまとう、彼の王の名は――――。

「――――英雄王、ギルガメッシュ。…………なぜ、ここに」

 この男の出現はそれほど意外だったのか、グアームは思わず疑問を声に出してしまった。
 その呟きにギルガメッシュはグアームの眼前まで歩を進めると、見下すような視線とともに答えた。

「なぜここに? わからぬか下郎。
 この下らん実験の”結果”が出たのだ。
 捕らえるなり殺すなり結果に対して、なんらかの動きがあると考えるのは当然であろう?
 そう思い、警戒してみればこの通りよ。貴様らは現れ、我はそれを発見した。それだけの話だ」

 さも当然のようにギルガメッシュは言ってのける。
 その内容は、奇しくも天元突破覚醒者を餌としてアンチ=スパイラルを釣り上げようとしたルルーシュと同系の策であった。
 もっとも、餌は同じでも狙う獲物に大きく差異があるのだが。
 釣り人が釣られたのでは笑い話にもならない。

 ――――つけられていたのか。
 グアームは動揺を悟られぬよう振る舞いながらも、心内で大きく舌を打つ。
 彼の言が本当ならば、チミルフ、東方不敗と共に会場に現れたあの時点で彼らはギルガメッシュに発見されていたということになる。
 果たして東方不敗とチミルフはその事実に気づいていたのだろうか?
 少なくともグアームは気づくことができなかった。
 だが、まだ疑問は残る。

812名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:07 ID:19q1CI8+
 
813名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:08 ID:p2lZZtYq
 
814名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:10 ID:XdWo3Wzl
  
815HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:57:35 ID:wjsk7CWd
「しかし、それなら、なぜ覚醒者の元に向かわなかったのだ?」

 あの場に現れた三人は、それぞれ別々の場所に向かったはずだ。
 そして、天元突破覚醒者の元へと向かうのならば、グアームではなくチミルフを追うのが道理だろう。
 だというのになぜギルガメッシュはここにいるのか。

「ふん。あの程度の些事に、この我が態々足を運ぶ必要はあるまい?
 あんなものは、他の雑種どもに任せておけばよい」

 ギルガメッシュがアンチ・スパイラルともルルーシュたちとも違う点はそこだ。
 彼は真の覚醒者になどに、一切の興味がない。
 あくまで餌は餌としてしか考えておらず、魚を釣り上げた以上もはやそこに微塵の興味も湧きはなしない。

 だが、仮にギルガメッシュの目的が主催側の人間との接触だったとして、あの中の誰でもよかったというのなら、偶然に自分が選ばれたその不運をグアームは嘆かずにはいられない。
 そんな、納得できないといった様子のグアームを、ギルガメッシュは鼻で笑った。

「ふん。まだわからぬか?
 生き残りが群がっている拠点はそう多くはないが、その中でも、ここは一番重要度が低い。
 にもかかわらず、貴様は結果に目もくれず、迷わずここに向かっていった。
 この状況でこんなところに向かう理由が、悪巧みのほかに何かあるか?」

 つまりはそういうことだった。
 ギルガメッシュが求めていたのは主催側の人間との接触ではなく、主催に反旗を翻そうとしている造反者との接触。
 それゆえ、グアームがギルガメッシュの眼鏡に適ったのは必然だったといえる。

「…………さすがじゃのぅ英雄王。
 よもやこの儂が読みで遅れをとろうとは。
 ここまで生き残ったのも頷ける強さじゃ」

 行動を読みきられ、最悪に掴まったグアームは開き直ったように語りかける。
 はっきり言って、グアームにとって螺旋力に覚醒していないギルガメッシュは、邪魔者以外の何者でもない。
 ありえないイレギュラー、完全なる計算外だ。
 だが、チミルフならいざ知らず、生身のグアームではこの男を排除するのは不可能だ。
 ゲンバーに乗り込むことができれば勝機もあろうが、それを許す相手でもないだろう。
 ならばどうするか。

「――――――どうじゃ、お主のような存在こそ、生き残るべきだと思わんかね?」

 そう、排除できのならば、この男を取り込むまでだ。
816名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:40 ID:KyRxaSNq
817名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:41 ID:BuNtRknc
818名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:57:51 ID:XdWo3Wzl
  
819名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:07 ID:/P4Q6lZ+
820名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:08 ID:Z//8J96e
 
821名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:09 ID:BuNtRknc
822HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:58:14 ID:wjsk7CWd
 計画に不要であれ、グアームは英雄王を脱出計画に誘い込むことに決めた。
 説得は不可能ではないはずだ。
 なぜなら、自ら以外を望まぬ唯我独尊の男であるからこそ、自身の生存を望むのは当然であり、他者を切り捨てることにも躊躇もないはずなのだから。

「ほぅ、それで?」

 グアームの言葉に気分を良くしたのか、ギルガメッシュは話の先を促した。
 その反応を良しと受け取り、グアームは脱出計画の全貌を語り始める。

「この会場は直に消滅する。施された仕掛けによってではなく外敵によってな。
 そうなれば会場におるものは全滅するじゃろう。
 じゃが心配はいらん、脱出の手はずはすでに儂が整えておる。
 転移装置の起動に多少の問題はあったが、それも時期に解決するところじゃ。なんの問題はない。
 それどころか転移装置を使えば多次元宇宙の航行も可能となり、 お主程の器ならば延いては渡り行く星々を支配するのも夢ではない。
 お主はここで消えていい存在ではない。お主の道は儂が作り出そう、儂とともに行こうではないか、英雄王!」

 芝居がかったグアームの演説が終わる。
 それを黙して聴いていたギルガメッシュはその口元に微笑を浮かべた。
 その心中で何を考えているのか、全くといっていいほど推し量れない。
 吟味するような沈黙の後、ギルガメッシュは口を開く。

「――――なるほど。
 確かに、導き手たるこの我が消えては世が迷うというもの。
 その点においては貴様の言い分は十分に正しかろう」

 英雄王の口より語られたのはかのような言葉だった。
 その言葉を肯定と受け取ったのか、グアームは安堵し歓喜した。

823名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:33 ID:XdWo3Wzl
   
824名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:37 ID:KyRxaSNq
825名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:58:42 ID:BuNtRknc
826HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 21:59:17 ID:wjsk7CWd
「、だがな」

 一転。
 血のように赤い眼が見開かれ、穏やかなその笑みが、凄惨なモノに変化した。

 反応する暇もなかった。
 その表情の変化にグアームが気づくよりも速く、金色の甲冑に身を包んだ右腕がグアームの喉に喰らい付いた。

「な、なにぉ…………ぐ、ガ………………ッ!」

 首を絞められ体ごと吊上げられる。
 グアームは必死に小さな体をバタつかせ抵抗を試みるが、ロックされた首元はビクともしない。
 それどころか、ミシミシと音を立てて指が喉元に食い込んでゆく。

「この我と共に行く? この我が進む道を作るだと?
 はっ。畜生風情が何を言うか。思い上がりも大概にせよ」

 そういって、英雄王は右腕でグアームを持ち上げたまま、左腕を虚空へと向けて突き出した。
 突き出された左腕の先端が消える。否。消えたのではない、その左腕は空間を超える門の中に差し入れられている。
 そして、空間より引き出された左腕には、ゆっくりと互い違いの方向に回転する円柱の剣――乖離剣エア――が握られていた。

「グッ……ガ……ガァ……アア………ッ!」

 その剣を見て、これから起こる事態を察してグアームが絶望と恐怖に目を見開く。
 英雄王はその期待に応えるように笑い。
 釣り下げたグアームに向けて、手にした乖離剣を突き入れた。

「ァ………ァア…………ガッ………!」

 突き出されたエアの先端は、たいした抵抗もなく鱗甲板を突き破った。
 突き刺さった刃の回転は、グアームの内腑においてなおも止まらず、捩れた刃が臓腑を冒す。
 生きたまま内臓を侵される感覚。
 腹の中で臓腑が刻まれ混ざり合う感覚。
 刃がミキサーのように臓物をグチャグチャに掻き回してゆく。
 それは千を越える人生において、なお味わったことのない未知の激痛だった。
 そして、それよりも激しい不快感と嫌悪感。
 自らの腹の内をゆっくりとかき回される感覚は発狂しそうなほど怖ましい。
 地獄の苦しみに叫びを漏らそうにも、喉元を万力のように締め付けられ喘ぎのような声しか出せない。
 気道が完全にふさがれており呼吸はおろか、競り上がる血液を吐き出すことすら叶わなかった。

「我の行く道は我が決める。
 身の程を知れ雑種――――ッ!」

 ゴキリという何かが外れる鈍い音。
 窒息か、頚椎破壊による影響か、はたまた激痛によるショック死か、もはやその死因すら定かではない。
 だらんと手足をたれ下げたグアームはビクビクと痙攣し、そのまま永遠に動かなくなった。

827名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 21:59:47 ID:KyRxaSNq
828名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:00:25 ID:XdWo3Wzl
   
829名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:00:36 ID:BuNtRknc
830HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:00:38 ID:wjsk7CWd
「ふん」

 つまらなさ気にギルガメッシュは片手に垂れ下がるグアームの死体をゴミ屑のように投げ捨てた。
 投げ出された肉の塊は冷たい地面を転がり、中心に空いた穴からペースト状の臓物を零れ流した。

「…………うっ」
 ゆたかと舞衣は思わずその無残な亡骸から思わず目を背けた。
 息絶えたグアームの残骸は、口から泡を噴出し、あれほど雄弁だったその様は見る影もない。

「ギルガメッシュ……テメェ」
「どうした、何か不服でもあるのか?
 まさかこのような畜生の戯言に乗せられたとは言うまいな?」

 睨み付けるスパイクの視線を涼風のように受けがなしギルガメッシュは言ってのける。

 あれは乗るべきではない取引だったことくらいはスパイクだってわかる。
 だが、グアームの脱出案が希望の一つであったことに違いはない。
 あるいは、奴の脱出方法に従い、生き延びられるモノがいたかもしれない。
 あるいは、奴の脱出方法を奪い取って全員で逃げ出せたかもしれない。
 だが、それもこれもグアームが消えてしまっては意味がない。
 そこにたどり着く糸は完全に断ち切られてしまった。
 更に絶望的な状況でまた一つ希望の灯火が消えたことに、スパイクは歯噛みする。
 そんな打ちひしがれるスパイクには興味がないのか、ギルガメッシュは一人つまらなさ気に息を漏らす。

「しかし、獅子身中の虫を求めてくれば、現れたのは逃げることしか頭にない羽虫であったとは、とんだ無駄足だったか」

 やれやれと言った風に呟いて、ギルガメッシュは踵を返した。

「何処に行くってんだ」
「貴様に告げる必要はない。我は我のやりたいように動くまでだ」

 ギルガメシュは傲岸不遜。
 散々場をかき乱しておきながら、何一つ省みることをしない。
 この期に及んでもその態度に一切の妥協を見せない。
 ギルガメッシュは何の憂いもなく出口へ向けて歩き始めた。

「おい、」

 スパイクは去り行く背を引きとめようとして、その途中で言葉をとめた。
 何処までも自分勝手に振舞うギルガメッシュ。
 そんな奴に頼らねばならない自分、同時にあんな取引に一瞬でも傾きかけた自分に腹が立った。

「くそ…………ッ!」

 スパイクが苛立ちに地面を蹴る。
 乾いた音が廃ビルに響き渡った。

831名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:00 ID:XdWo3Wzl
 
832名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:16 ID:KyRxaSNq
833名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:22 ID:Z//8J96e
 
834名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:23 ID:19q1CI8+
 
835名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:26 ID:BuNtRknc
836名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:01:51 ID:Z//8J96e
 
837名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:02:16 ID:BuNtRknc
838名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:02:16 ID:Z//8J96e
 
839名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:02:28 ID:XdWo3Wzl
   
840HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:02:48 ID:wjsk7CWd


 睨み合う鉄身の巨人、二体。
 顔一つの機械闘士の姿は、ドモンに教えられたガンダムの名を呼び起こす。
 顔二つの合体ロボは自身縁の深いガンメン、搭乗経験もあるグレンラガンだった。

 雄々しく木霊するガンダムファイトの宣誓は、先の邪魔者、ギルガメッシュの声とは似て非なるもの。
 落としかけた命を顧みない善意で繋ぎ止めて見せた友、ドモン・カッシュのものである。

 ヴィラルとシャマルが駆るグレンラガンと、ドモンが駆るガンダム。二体が戦闘を始めようとしていた。
 巨人の衝突を生身のまま、遠方から見上げることしかできないグレンラガン本来のオーナーは、歯噛みする。

「ちくしょう……! 俺とシモンのグレンラガンを好き勝手乗り回しやがってッ!!」

 疲労困憊の様相で虚空にしかめっ面を浴びせ、カミナは乱暴に吐き捨てた。
 如何な罵詈雑言も、地上からでは届きはしない。
 兵器と兵器の対立を前にしては、喧嘩殺法しか能のないジーハ村の戦士では役不足だった。

「金ぴかヤローもどっか行っちまいやがったし、ガッシュたちも見当たらねぇ。
 グレンラガンとクロミラは奪われっ放し……ふざけんなよ。このままにゃしておけねぇ。
 なにがなんでも取り戻してやる。今からそっち行くから首洗って待ってろ、ヴィラルッ!!」

 近づくことも困難な死地へと、カミナは単身、機動兵器の助力を受けずに飛び込もうと勇む。
 達人級のガンダムファイターならばそれも可能であろうが、明鏡止水を会得しようとカミナはただの人間だ。
 ギルガメッシュとの喧嘩でただでさえ疲労が蓄積されている今、彼の行動は愚挙と罵るほかなかった。

 ――しかし、心意気は買おう。だからこそ罵倒で一蹴するのではなく、諭す。

 そのような意図が見え隠れする声≠ェ、駆け出さんとするカミナに落とされた。

「――ガンダム対ガンメン。なんとも心躍るカードではないか」

 ピタリ、とカミナの足が止まる。
 無謀の足を場に繋ぐ接合剤として、声はカミナの意識を攫う。
 耳に届く不快な音質に、カミナは聞き覚えがあることを否定せず、振り向く。

「片や究極、片や愛の巣。さて、軍配はどちらに挙がるかのう――?」

 カミナの背後、紫色際立つ道着を着こなすのは、怨嗟の宿敵にして好敵手。
 修行という名目でカミナに流派東方不敗の心得を叩き込み、その成長に一躍買った師。
 先の放送で訃報を知らされた――螺旋王も認める脱落者であるはずの老人が、仁王立ちしていた。

「テメェ……東方不敗のジジイ! 死んだはずじゃ……」
「これは異なことを。無理を通して道理を蹴っ飛ばす……はて、これは誰の言葉だったか」

 カミナを嘲弄する老人、東方不敗マスターアジアは見た目にも健全だ。
 真新しい道着は、過去二度の対決のときよりも小奇麗に思える。
841名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:02:50 ID:BuNtRknc
842名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:03:02 ID:XdWo3Wzl
 
843名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:03:18 ID:KyRxaSNq
844HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:03:37 ID:wjsk7CWd
 コンテナの爆発やショッピングモールの倒壊から逃れたと仮定しても、螺旋王が死亡確認をしたのは事実。
 死んだはずの男がこの場に立っているのは、どういう理屈か――無理を通して道理を蹴っ飛ばす、では納得できないカミナだった。

「なにを黙りこくっておる。貴様という男は、考えるのが得意なほうではあるまい。
 事実として、儂は生きておる。その事実のみを受け取り、貴様はなにを為すのだ?」

 東方不敗がカミナに向けるのは、詰問の言葉。挑発するような戦意ではなく、ましてや殺気とも程遠い。
 死人との対面にカミナは緘口し、すぐには答えを返すことができなかった。

「グレンラガン、そしてアルティメットガンダムとはな。フフフ……正に夢の対決ではないか。
 しかし双方が持ちうる武力は、人間を遥かに凌駕する。この儂とて、生身でやり合うのは厳しい。
 そんな闘争の渦を前に、貴様はなにを為す? 死んだはずの儂を前にして、目を向けるはどちらの方角だ?」

 言霊に促されるようにして、カミナは足を向けんとしていた目的地を再び見やる。
 グレンラガンとアルティメットガンダムは互いににじり寄り、掴み合いを始めていた。
 その足元、博物館周囲の町は地響きを立てて崩れ、二体の巨人に蹂躙されている。
 もし、あの場に人間がいたとして……巻き込まれるのは必至、闘争に加わるなど夢のまた夢だろう。

 生唾を飲み込み、目指さんとする地の危険度を再認識する。
 再認識して、しかし目は背けない。
 体が震えを訴えようとも、カミナは眼差しを固定したまま、シモンとの絆を正面に据えた。

「そうだ、それでよい。貴様は明鏡止水を会得し、儂の期待に応えてみせた……ならば見るべきは一点のみ」
「言われるまでもねぇ。悪いがなジジイ。テメェが甦ろうがなんだろうが、今は構ってる暇なんてねぇのさ」

 背後の東方不敗には一瞥もくれず、カミナは再度、足を前に踏み出す。
 全てはシモンのラガンと、自身のグレンと、相棒たるクロスミラージュを取り戻すため。
 男の意地でここまで突き抜けてきたのだ。それを今さら、ギルガメッシュや東方不敗といった邪魔者に否定されてたまるものか。
 確固たる意志が、カミナの追い風となって――直後、後方から身震いするような殺し≠フ気配を感じた。

「だぁぁぁから貴様は阿呆なのだぁぁぁぁぁ!!」

 かつての敵対者でありながら守護霊のような温かさを秘めていた老人が一変、厳格なる格闘家として居直る。
 東方不敗は一喝の後、腰に巻いていた帯を鞭のように放った。
 容赦なし、明確な殺意に染まったマスタークロスの一撃が、阿呆を穿たんと伸びる。
 罵られたカミナは、咄嗟に飛び退いてこれを回避した。

845名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:03:44 ID:bjKPNOB0
 
846名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:03:44 ID:/P4Q6lZ+
847名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:04:14 ID:BuNtRknc
848名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:04:17 ID:yCTEYgdu
 
849名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:04:29 ID:KyRxaSNq
850HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:04:36 ID:wjsk7CWd
てん……っめ! おうおうおう! いきなりなにしやがんだこのクソジジイ!?」
「ふん。この地は常在戦場。定石常道に縛られず、不測邪道への対処を磐石にするが、真なる強者というものよ」

 獲物を捉え損ねたマスタークロスは、東方不敗の手で宙をうねり、再び腰に巻かれる。
 不意の攻撃、咄嗟の回避に体勢を崩されたカミナは、殺し≠フ気配を潜めた相変わらずの宿敵に、顔を顰めた。

「問うぞカミナよ! 貴様、闘争の渦に勇み駆け込み、なにを為さんとする!?」
「ああ!? 決まってんだろ、オレとシモンのグレンラガン、それにクロミラを取り戻すんだよッ!!」
「馬鹿も休み休み言え! ガンメンとガンダムによる闘争を、貴様ごときが御せるとでも思うかァ!?」
「馬鹿でもやるんだよ! 無理を通して道理を蹴っ飛ばす! それがオレの、オレたち大グレン団のやり方だ!」
「だぁぁぁぁぁから貴様は阿呆だと言っているのだぁあああああ!!」

 二度目の一喝。
 東方不敗はその場で跳び、右脚を矛としてカミナに放つ。
 正面からの飛び蹴りにカミナは両腕を構え、受け止めようと試みた。
 しかし、モビルファイターの装甲すら粉砕する東方不敗の蹴りは、カミナの体を防御ごと吹き飛ばす。

「……こ……っの!」

 三回半ほど地面を転がり、さらなる怒気を纏って起き上がると、東方不敗は怒りの形相で言い放った。

「貴様の語る『無理を通して道理を蹴っ飛ばす』とは、無為無策で命を投げ出すことを指すのか!?
 天元突破……儂はこの地に残った誰よりも貴様が近しいと思っていたが、買い被りすぎていたようだわ!」

 恫喝する東方不敗の姿は、弟子に教えを叩き込む師匠の内面を表出していた。
 カミナは起き上がり様、駄犬のような目つきで忌々しげに見据え、東方不敗の金言を聞く。

「仲間を思い、己を信じ、命を投げ打ってでも事を成す。リーダーを名乗るに相応しい器よ。
 しかしなぜ、己に力がないことを自覚しない!? なぜ力を得ずに、無謀を貫かんとする!?
 できることとできないことの区別もつけられずただ泣き喚く……今の貴様は、まるで小童よ!」

 思うところが、ないわけではない。
 カミナが現地に辿り着いたとして、はたしてなにを成せるというのか。
 グレンラガンとアルティメットガンダムの戦いを止める、ヴィラルとシャマルを引き摺り下ろす、クロスミラージュを取り戻す――どうやって?
 せめて同等の力、ガンメンかガンダムかがカミナの手元にもあれば、憂いはなくなるのだろう。
 だがカミナにとって――問題の焦点はそこにはないのだ。

851名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:04:37 ID:XdWo3Wzl
  
852名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:04:42 ID:Z//8J96e
 
853名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:05:02 ID:XdWo3Wzl
   
854HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:05:03 ID:wjsk7CWd
「事を優先する余り、己が見えていない! それで己を信じるなどできようものか!
 今の貴様なんぞ、悪運と周りの人間に支えられて生き延びたようなもの……恥を知れッ!」

 カミナ自身、それを一番よく理解していた。
 そして東方不敗は、それを理解せず師匠気取り。
 そう思えば途端に滑稽な様相に見えてきて、カミナは笑う。

 ――静かに。
 ――ただ、静かに。
 ――心の底から、爆笑する。

「…………ハッ、老いぼれジジイがギャーギャー騒がしいこった」

 一切、声には出ささずして。
 したり顔だけで笑みを表現し、東方不敗を嘲弄する。
 なにも理解していないボケ老人を、若きリーダーは哀れに思った。

「テメェはまるでわかっちゃいねぇ……いいか。理屈じゃねぇ。気合なんだよ。オレに足りないのは、気合なんだ」

 開いた悟りは、決して他人に教授され、与えられた美学ではない。
 ジーハ村で燻っていた頃の個が築き上げ、舎弟と共に磨き上げてきた、意地と誇りだ。

 昔から、なにひとつ変わってはいなかった。
 シモンが死んだ今となっても、
 東方不敗に阿呆と罵られる今となっても、
 ガンメンとガンダムを前に無謀を覚える今となっても、
 カミナは天井を見上げ、いつか岩盤をぶち抜きたいと願っていた。
 あの頃から、ずっと。

「結局テメェの言ってることは下手な理屈さ。無理を通して道理を蹴っ飛ばすってのはな、命投げ出すことじゃねぇ。
 命投げ出す覚悟で、やってやるって気概を見せつけて、気合全開で吼えて、オレが信じるオレを信じて、それで事を成す!
 結果なんざ後からついてくるのさ。無理なもん前にして無理って言っちまうような奴にゃ、絶対に真似できねぇだろうけどなぁ!」

 カミナが二の足を踏んでいた理由を、平易に言い換えよう。
 話相手の不在、だ。
 彼の狂言回しは聞き手を得ることで調子を上げ、行動を促す。

 あるときはシモンが。あるときはクロスミラージュが。あるときはガッシュが。あるときはニアが。
 そして今は、東方不敗マスターアジアという耄碌ジジイ¢且閧ノ、自己の尊厳を主張し、わからせる。
 言ってわからぬ輩の耳をかっぽじり、わかるまで訴え続ける、それこそがカミナ流。
 音吐朗々とした言辞が、質感を伴い東方不敗を威嚇した。

「ふん、吼えおったな……ならば唱えよ、カミナ! 流派、東方不敗は――」
「――知ったことかぁあああああ!!」

 反論を許さず、叫び声でもって東方不敗を逆に一喝する。

「もしとか、たらとか、ればとか、そんなもんに惑わされるか! オレの信じるオレの道が、オレの宇宙の真実だ!!」

855名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:05:23 ID:KyRxaSNq
856HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:05:38 ID:wjsk7CWd
 人差し指を空に、突き破れない天井などこの世にはないと、挙措で示す。
 誰もが注目せざるをえない不思議な存在感が、カミナの全身に纏わりつく。
 東方不敗ですら、意識せず視線を奪われ、釘付けとなった。

「ジーハ村に悪名轟くグレン団! 男の魂背中に背負い、不撓不屈の鬼リーダー! カミナ様が、そう簡単に信念曲げてたまるかよぉ!!」

 天に向けていた指先を、東方不敗に突きつける。
 たじろぐ東方不敗を確認し、次に拳を固めた。
 ニヤリ、と口元で笑み、カミナは勝ち誇る。

「ジジイも金ぴかも、ダチ公取り戻した後で好きなだけ相手してやらぁ。だから大人しく待ってな」

 それだけを告げ、カミナは振り返る。
 視線を傾けるのは、再び闘争の地。
 ガンダム対ガンメンの果し合いに、臆せず飛び込むつもりだった。

「今いくぜぇ、ダチ公!!」

 誰に邪魔をされようと、カミナは揺るがない。
 当初の予定、同意である本能のままに、体を突き動かす。
 その破天荒な生き様を、捨て置かれた東方不敗は――

 ――したり顔で、見送った。

857名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:05:43 ID:XdWo3Wzl
 
858名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:05:54 ID:Z//8J96e
 
859名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:06:06 ID:KyRxaSNq
860名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:06:16 ID:19q1CI8+
 
861HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:06:25 ID:wjsk7CWd


 カミナの背中が遠く彼方に消え、東方不敗は取り残されたその地で、ある落し物を眺めていた。
 舗装されたアスファルトの上に転がる、銀色の輪。それは開錠され、轡のような形状になっていた。
 手に取り確認してみると、そこには『Kamina』の名前が。本人、首の枷が外れたことにまるで気づいていない様子だった。

「磁場を歪める砂嵐とは、よく言ったものよ。グアームの見解は正しかったようだが……さて、となるとルルーシュはどう動くか」

 居城に残してきた同志の出方を推測し、しかしすぐに中断する。
 ルルーシュがこの事態を想定していたにせよしていなかったにせよ、首輪の有無などもはや瑣末なことだろう。
 東方不敗にとっても同じだ。首輪が外れようが、闘争に殉じる者は殉じ、その宿命からは逃れられない。

「天元突破の功労者に、馬鹿弟子二人。そして……奴も舞台に上ったか」

 遠方、グレンラガンとアルティメットガンダムがぶつかり合うその場に、重厚な足音を立てて近づく機体があった。
 全身を白で統一し、シャープなフォルムを刻みながらも形相は鬼のように険しい、怒涛のガンメン。
 チミルフの駆るビャコウが、ヴィラルの駆るグレンラガンに近づこうとしていた。

 ガンメン二体、ガンダム一体、そしてカミナ――混戦必至の台上は、はたしてどんな色で彩られるのか。
 螺旋力が放つ碧の輝きか、愛の証たる淡いピンクか、キング・オブ・ハートの燃えるような赤か、それとも血の色か。
 想像するだけで、心が躍った。全身はぶるぶると震え、上下の歯がかち合って音を出し、眼差しは子供のように無垢に。

 恋慕や愛情にも似た、欲求。
 自身が熟成へと導いた、強者。
 治まるはずのない闘争心が、伝染。
 東方不敗は喜悦をその身に宿し、武者震いを続けた。

「もうすぐ……もうすぐだ。もう間もなく、この地に絶対の存在が降臨する。儂やルルーシュの目論見通りにだ……だが!」

 試練、もしくは師匠としての役割を担い、実験参加者を天元突破へと至らせる。
 当初の任はヴィラルが早々に天元突破したことでお役御免となったが、東方不敗はなおも目論む。

862名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:06:34 ID:BuNtRknc
863HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:06:58 ID:wjsk7CWd
アンチ=スパイラルとの接触――その鍵となるのは、愛に飢えた獣二人ではない。
 流派東方不敗の志を継承する愛弟子、ドモン・カッシュ――そして。
 この地で見定め、大いに期待を寄せた若者――カミナ。

 東方不敗マスターアジアが資格ありと認める男二人、そのどちらかが降臨の儀を推し進める鍵となることを、東方不敗は望んでいた。
 ヴィラルとシャマルの愛の力を否定するわけではないが、東方不敗はドモンとカミナの二人に、それ以上のものを期待しているのだ。
 それこそ、アンチ=スパイラルが慌て飛び込んでくるほどの螺旋の躍動を、師は弟子二人から引き出そうとしている。

「ヴィラル、そしてシャマルといったか。おぬしら二人、所詮は前座にすぎん。せいぜい好敵手として奮闘してもらおうか」

 ルルーシュが考案した神算鬼謀の策に乗じるのが、アンチ=スパイラルとの接触を果たすなによりの近道なのは事実。
 だとしても、東方不敗はヴィラルとシャマルではなく、ドモンとカミナに可能性を感じ、試練役を自ら買って出た。
 計画の上では不要な干渉となるであろう行為だということも、十分に理解している。
 理解しながら、この道を選択したのだ。

 武を極めんとする者として――仕上がりつつある決闘場に、自らの闘争本能を委ねたいと願ってしまったがゆえに。

「ふふふ……血湧く、血湧くぞ! こんな熱い衝動は久しぶりよ。ドモン、カミナ、ヴィラル、シャマル、そしてチミルフ――待っておるがいい」

 純真無垢でありながら、邪鬼のようなおぞましさを兼ね備える東方不敗の笑みには、底知れぬ愉悦が。
 これより先に臨む闘い、勝利の果てに待つ悲願の道しるべ、人類抹殺の終着点までは見えず――。

「喜んで参じようではないか。この儂、東方不敗マスターアジアと愛機マスターガンダム……最終決戦の舞台へとな!」

 東方不敗が不気味に呵呵大笑する、その頃。
 七人の同志、その尖兵として躍り出たチミルフは――。

864名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:07:00 ID:KyRxaSNq
865名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:07:03 ID:XdWo3Wzl
   
866名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:07:07 ID:Z//8J96e
  
867HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:07:44 ID:wjsk7CWd


熱い熱い、どうしようもない血の滾りにヴィラルは全身が沸騰するような感覚を覚えていた。

「うおおおおおおおおおおおお!」
「はああああああああああああ!」

真正面からぶつかりあった拳が互いに粉々にくだけちる。
ヴィラルが駆り、愛妻たるシャマルがサポートを担当するグレンラガンの拳に補助武器として備えられた二本のドリル。強力無比な力であるはずのそれらでさえ、アドバンテージにはなり得ない。
二人の感情に呼応するかのように怒濤の勢いで生み出すことができる必殺のドリルを以てしても対峙する巨体が相手では相討ちがせいぜいらしい。

そう、巨体である。要塞型や戦艦型には及ばずともヴィラルの操るガンメンのサイズも相当なもの。小山程はあると言って良いだろう。
しかし、グレンラガンを小山と言うならば敵は正に山そのものだ。
ヴィラルとシャマルの道行きをまた別の愛のために阻まんとするあの男、ドモン・カッシュが呼び出した究極の名を持つガンメンは――ドでかいのだ。

『中々良いパンチをするようになったじゃないか。もっとも、ドリルなどという仰々しい武器に頼っているようではまだまだだがな』

しゅるしゅると触手が寄り合わさるような生物的な動きで失った腕を再生させながら、ドモンの挑発とも賞賛ともつかない言葉を飛ばす。

『抜かせ。でかさを頼りに攻めることしかできん木偶の坊が』

一歩も引かず、ヴィラルは鋭い口調で切り捨てた。言いながら、こちらも腕を再生させる。機械的なガキガキという音を立てて再生する様は、アルティメットガンダムとは対照的だ。
機体だけ見ればその能力差は歴然としていた。加えて対するドモン・カッシュはあの東方不敗なる化物に真正面から相対した男だ。操縦者としての腕前も油断はできない。
戦士としての器量は言わずもがなである。

しかし、そのような様々な悪条件を前にしてさえ、ヴィラルは己が負けるとは欠片も思っていなかった。
いや、敗北だけではない。願って止まないはずの勝利の二文字でさえ、今のヴィラルがどれだけ強く意識しているかは分からなかった。

868名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:07:44 ID:gpkJLdRH
 
869名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:07:59 ID:BuNtRknc
870名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:08:11 ID:XdWo3Wzl
 
871名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:08:37 ID:i/qfPQmm
 
872HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:08:44 ID:wjsk7CWd
(ヴィラルさん……。今のヴィラルさん、とても楽しそう)

グレンの操縦席の中、操縦桿を通して流れ込んでくる熱い想いをシャマルは確かに感じていた。
今の彼が望んでいるのはただの勝利ではない。認めるに足る者と正々堂々とぶつかり合い全霊を賭す。願うのはその先の勝利だ。
瞬く間に二人の人間を屠った圧倒的な暴力はやはり今のヴィラルには向かなかったのだろう。
人間はケダモノ同然の生き物などではないということを、確固たる信念を持つ強敵だと言うことを、彼は既に知ってしまっている。
あるいは別の形で相まみえられていれば、と内心で思っていただろうことは想像に難くない。
シャマルの愛したヴィラルとはそういう男だ。
それだけに自分と同じ武人の気質と全力でぶつかることのできる強さを併せ持つドモンとの戦い、相手の言い方に合わせればファイトに自然と喜びを見出だしてしまうのは無理からぬことなのだろう。

男の人って。そう思わないでもない。生死を賭けた、それ以上に二人の未来を賭けた戦いを楽しむ余裕なんて。
シャマルなど、少し手合わせをしただけで異形の巨大兵器のスペックに震えてしまいそうになっているのに。
昆虫を思わせる下半身に人形の上半身を合わせた奇形的な外見がシャマルにプレッシャーを与える。この人外のどこに究極を名乗る資格があるのか。
が、その威圧感さえ男にとっては興奮を煽る材料の一つでしかないのだろう。

『すまんシャマル。俺はやはりどうしようもないバカだったらしい……』

昂りに彩られたヴィラルの声が専用回線を通してシャマルに届く。

『勝てるかどうかも分からなくなったというのに俺はそれを楽しんでいる……理解してもらえるとは思わんがな』
『……いいの、あなたの思う通りに行動して。ヴィラルさん。私はそれについていきます』
『……感謝する』

通信が終わり、仮初めの静寂が戻った。
シャマルの言葉に嘘はない。理解できなくとも、戦いが鬱屈ばかり溜め込んできたヴィラルを満たすというならシャマルに異論のあろうはずがない。
自分が共感できない領域に彼がいることが少しだけ悔しいが、我慢できる。
要は勝てば良いのだ。勝ちさえすれば後に待つのは幸せな未来であると今は願おう。
シャマルは信じた。ヴィラルが後悔しないようにあらゆる面からサポートすることが今自分の為すべきことであると。

『どうした、お前達の愛とやらはそんな程度で終わるものなのか』
『行きましょう、ヴィラルさん!』
『ああ!くぅらええええええ!!』

余裕の呈で重ねられた挑発をゴングに再び両者が激突する。
交わされたのは今度は拳ではない。武士の如く顔を引き締めたグレンラガンの膝から真っ直ぐに突き出されたドリルが無表情に揺れるアルティメットガンダムの顔面を穿たんと迫る。

「甘いっ!」
「ぐわああ!」
「きゃああ!」

だが通じない。軽くいなされるどころかカウンターとして強烈な肘打ちをもらい、軽快にふっ飛ばされたグレンラガンがゴロンゴロンと転がりながらビル街を蹂躙する。
873名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:09:02 ID:BuNtRknc
874名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:09:06 ID:KyRxaSNq
875HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:09:29 ID:wjsk7CWd
身を引きちぎられんばかりの衝撃にシャマルは必死に耐えた。
まるで子供扱いだと、弱い考えに傾きそうになるときに支えてくれるのはやはりこの声。

「ひるむなシャマル!少しずつだが奴との戦い方が分かってきた……俺を信じてくれ!」
「は、はい!」

機体を勢い良く反転させながらの激励に心が軽くなるのを感じた。
この人ならばなんとかしてくれると、そう信じることができる。
シャマルは操縦桿を握り直した。痛い程に奥歯をかみ締め、改めて自分に渇を入れる。
ところが、再度の攻撃を仕掛けるべくグレンラガンが構えを取ったとき、それに水をさすようにざざ、という雑音が割り込んできた。

「別方向からの通信……?一体誰が?」

いち早くそれに気付いたシャマルは反射的に回線を開いた。音声が繋がり同時に通信相手の画像も届けられた。

「こ、これは……!」
「あなたは……!」

そしてシャマルとヴィラルは同時に驚愕した。
映し出された映像は、二人の世界には存在していないもの。

『苦戦しておるようだな、ヴィラルよ』

死んだはずのヴィラルの上官、怒濤のチミルフの声は生前と同じ厳めしさを持って響いた。

876名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:09:46 ID:XdWo3Wzl
   
877名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:10:00 ID:KyRxaSNq
878名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:10:13 ID:Z//8J96e
 
879名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:10:18 ID:XdWo3Wzl
  
880名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:10:22 ID:BuNtRknc
881HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:10:31 ID:wjsk7CWd


『チ、チミルフ様ッ!? な……何故あなたが……戦死なされたはずでは!?』

通信用スピーカーから吐き出されたのは違う世界では部下だったらしい男の驚きに満ちた声だった。
その反応にチミルフは自身の唇がにんまりと不自然な形に引き攣る感覚を覚える。

まさに、想像通りの反応だった。
ヴィラルの中では「チミルフは戦死した」ことになっているのだ。
彼の主である螺旋王ルルーシュ・ランペルージの策略により、六回目の放送には虚偽が混ぜ込まれていた。

故に、ヴィラルはチミルフの死を露とも疑ってはいなかったはずなのだ。
なぜならば彼は八十二人の参加者とほぼ同等の条件であの戦場へと赴き、同等の扱いを受けたのである。
この会場のシステムをヴィラルが正しく認識している以上、放送の内容に疑問を持つとは考え難い。

が、その思考に絡み付いた鎖もチミルフの一言で屑鉄へと変えることが出来る。

「よく聞け、ヴィラルよ。先程行われた六回目の放送だけは、幾つか事実とは異なる内容を含んでおるのだ。
 詳しくは話せぬが……俺以外にも、数名王≠フ意志に賛同するものが我々の側に付いた」
『なっ……!? 螺旋王様の下に他の参加者が……!?』
「そうだ」

王という言葉を殊更強調してチミルフは言った。
が、チミルフとヴィラルが心に描く王≠フ姿は全く異なったモノだ。
しかし、その構図の中に捩れも歪みも存在しない。

――ギアス。

永久の時を生きる魔女C.C.との契約によってブリタニアの少年、ルルーシュ・ランペルージが獲得した絶対遵守の力。
特殊な光情報の波長を瞳から放つことにより、視覚細胞を通して対象を従わせることの出来る能力だ。

チミルフに掛けられたのは『お前の主君は螺旋王ではない、この私だ』という、主従書き換えのギアスである。
それはとある未来、コーネリア・リ・ブリタニアの騎士であるギルバート・G・P・ギルフォードに使用されたモノとほぼ同等の性質を帯びていた。
故に二匹、いや二人の獣人にとっての王はまるで別の人物を差すのだ。
ヴィラルにとっての王であるロージェノムと、チミルフにとっての王であるルルーシュ。

この宇宙では部下と上司という関係さえも偽りである彼らを唯一、引き繋いでいたのが崇め奉る王の存在だった。
しかし、そんな硝子の連環さえ既に形は失われた。
もはや両者の袂は完全に分かたれたのである。

たとえ――真実を暗部へと密閉することで、
幻想の関係を継続させようとチミルフが考えていたとしても、だ。

882名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:10:51 ID:XdWo3Wzl
 
883名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:11:23 ID:KyRxaSNq
884名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:11:24 ID:Z//8J96e
 
885HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:11:25 ID:wjsk7CWd
「俺もお前が置かれている状況は理解しているつもりだ。手短に用件だけを伝える。よく耳を澄ませろ、一度しか言わんぞ」

返事は、ない。
ようやく繋がった電波が奏でるノイズとガンメンの駆動音だけが唯一の音波となってチミルフの周囲に在るだけだった。
本当にヴィラルが通信装置に必死に耳をそばだてている光景が目に浮かぶようだ。
馬鹿正直で呆れるほど愚直なこの男にとって、彼の言葉は何よりの特効薬と成り得る。
たとえそれが愛≠ニいう感情によって、天元突破を果たした者だとしても――


「真なる螺旋覚醒を果たした戦士ヴィラル、褒美としてその伴侶シャマルと共にこの舞台より脱出する権利を与える=v


一字一句、主が彼に伝えた通り正確に。
本来、ルルーシュはチミルフが状況に合わせた勧誘の文句を考えることを想像していただろう。
なぜならば、このメッセージはあくまで、彼らを勾わかすためだけのまやかしに過ぎない。

天元突破を果たしたヴィラルを回収する――その目的さえ達成出来れば、手段は問われない。

『ッ――!』
『だ、脱出……でありますか!?』

無線機を通じて返って来る勘繰るような呻き。
そして、ヴィラルと共にグレンラガンを動かしているシャマルの息を呑む声が小さく響いた。

モニターに何かが爆発する音と振動とがない交ぜになった雑音が時々飛び込んで来る。
どうやらヴィラルがチミルフと通信を行っている間のグレンラガンの操縦は彼女が行っているようだった。
が、となると状況は更なる劣勢へと陥る。
単純な実力差ではアルティメットガンダムとそのパイロットの方が断然上を行く。
グレンとラガン。
二つの機体と二人のパイロットが力を合わせない限り、グレンラガンには勝機はないのだ。

「ヴィラルよ、お前の多大なる螺旋力の発揮に王は上機嫌だ。これまでの失態は全て水に流してくださるとのことだ。
 加えて、獣人としても我々四天王とほぼ同等に近い地位をお前に授けると仰られていた」
『お、俺が……チミルフ様やアディーネ様と同じ位に……ですか?』
「そうだ。これ以上さぁヴィラルよ。これ以上の戦闘は無意味だ。一時戦いを中断し、俺と共に――」

チミルフはヴィラルとの会話によって、明確な手応えを感じていた。
モニター、そしてスピーカーを通じて伝わって来るありとあらゆる情報が、二人の狼狽振りを現していたからだ。
二人は今だ既に「実験」が最終段階に近い地点まで進んでいることに気付いていない。
天元突破を果たした螺旋の中心人物でありながら、未だに「バトルロワイアル」のルールに捉われたままなのだ。

最後の二人≠ニして生き残る――それだけが活路であると、一筋の光明であると信じているのだ。

願ってもない、機会のはずだ。
886名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:11:59 ID:XdWo3Wzl
   
887HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:12:04 ID:wjsk7CWd
本来ならば不可能だったはずの「二人でいたい」という望みが現実のモノとなる。
このままドモン・カッシュの操るアルティメットガンダムと拳を交える意味は完全に消滅するのだ。

『ッ……シャマル、俺は、』
『分かっています、ヴィラルさん。あなたの言いたいことは全部。私は……あなたの決定に従います。
 ああ、でも……ふふっ、多分もう私、ヴィラルさんが何を言いたいのか分かっちゃってるかもしれません』
『……すまないッ』
「ヴィラル……?」

だから、

『申し訳ありません! チミルフ様、俺は……いや、俺達は、あなたの言葉には従えません……!』
「なに……ッ?」

――ヴィラルがその命令に背くなどと、チミルフは想像だにしていなかった。

「……馬鹿か、貴様は。既にこの場に留まり、戦いを続ける意味はないのだ。
 ニンゲンどもを殲滅する役割は他の者が引き継ぐ。貴様には他にやるべき仕事が……!」

ドクン、と心臓が大きな音で一度鼓動を奏でたような気がした。
チミルフは口早にヴィラルを説得しようと試みた。
だが、彼自身は己がグアームのように弁の立つ獣人であるとは露ほどにも思っていない。
予想外の展開、慣れない役どころ。
歴戦の戦士として怒涛≠フ二つ名を持つ漢であっても、動揺を完全に押し隠すことは不可能だった。


『チミルフ様、俺はあなたの言うように――バカです。大バカなのです。
 獣人としての任務を忘れ、奴と……ドモン・カッシュとの戦いをあろうことか楽しい≠ニさえ感じている。
 それどころか、今のチミルフ様の言葉を聞いて、あなたが本当にチミルフ様なのかどうかを疑ってしまった。
 確かにここでチミルフ様の言葉に頷けば、俺達の願いは叶うでしょう。
 ですが、それでは、あまりにも…………口惜しいッ!』
 
そこまで言うと、ヴィラルは悔しげな表情を浮かべ拳を強く握り締めた。
だが、その螺旋の輝きを放つ瞳は口下手な男の意志を舌先以上に雄弁に語っていた。

戦いたい。

武人として、
獣人として、
男として――

それが散々苦渋を舐めさせられて来た雪辱を晴らす、という意味なのか。
もしくはヴィラル自身が導き出した「愛」という理想なのか。
金色の髪の男と女は互いの意志を再度確認し合うかのように、朗らかに笑った。
両者の間に結ばれた想いを、輝きを、チミルフは理解し得ることが出来ない。


888名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:12 ID:BuNtRknc
889名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:22 ID:19q1CI8+
 
890名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:26 ID:KyRxaSNq
891名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:37 ID:XdWo3Wzl
   
892名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:45 ID:BuNtRknc
893名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:12:46 ID:Z//8J96e
 
894HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:12:50 ID:wjsk7CWd
『ここで……俺が、チミルフ様に背中を押して貰いたかったと……考えるのは贅沢なのでしょうか。
 戦士として、全力で目の前の敵を殲滅せよと――仰って頂きたかったのは俺の我がままなのでしょうか』

真摯な視線と歪のないハッキリとした語調でヴィラルは言った。
画面に小さなノイズが走る。
波のように揺れるモニターの向こうで、ヴィラルの瞳は真っ直ぐにチミルフを見つめていた。

それは戦いの中に自身の居場所を求め、戦場の空気を心の止まり木にする者の言葉だった。
誇り高き戦士といえど、戦場に一度足を踏み入れれば、胸は高鳴る。
単なる命のやり取りや生きるための手段ではない。
そこに矜持を、活路を、愉悦を――綺羅星のような光り輝く栄光を渇望する者の心からの叫びだった。


ヴィラルは、何を、言っているのだろう。

東方不敗・マスターアジアはルルーシュの下僕にされたチミルフを「駄犬」と称した。
もはや今の彼はかつて覚えた戦士としての高揚感など微塵も感じさせない木偶であると、大きな失望を寄せた。
自らの武でもってその信念を誇示しようとした姿は過去のモノ。
背中で語るべき同胞も、部下も、愛する人も既に彼の眼には映らない。

ヴィラルが尊敬して止まない「怒涛のチミルフ」は彼であって彼ではない。
同じ存在でありあがら、それは異なった多元宇宙に存在する何十何百何千何万何億何兆という分岐の中の一つの可能性に過ぎないのだ。
だが、彼は本来ならば何の縁もない男の前でも尊厳な戦士として振舞おうと心掛けた。
期待に、応えようとした――しかし、


『もちろん螺旋王の意志に背くつもりはこのヴィラル、毛頭ございません!
 ですが……今しばらくの猶予を頂きたい。
 決着を付けたい相手が……いえ、付けなければならない相手がまだこの場には居るのです!
 王の下に参るのは敵を駆逐したあと、必ずッ!』

結局、気が付けば今のチミルフは、ヴィラルの尊敬する「怒涛のチミルフ」の足元にも及ばない存在へと成り果てていた。

感覚的に、ヴィラルも彼へと違和感を覚えていたのだろう。
ルルーシュの「絶対遵守」のギアスは、対象にありとあらゆる命令を遂行させる能力を持つ。
それがたとえどんなに強固な信念を備えた人物であっても、完全な抵抗など不可能だ。

だが、本人は自身の変化に気付く事が出来ない。
主従書き換えのギアスは「武人」や「騎士」といった一人の人物に仕える人間のアイデンティティそのものを崩落させる。
たった一人の相手に己の全てを捧げるからこそ――彼らは尊く、気高い存在を保持出来るからだ。

『ヴィラルさんっ! もう……私ひとりじゃ……!』
『すまないっ、シャマル!! チミルフ様ッ、身勝手をお許しください』
「な、ヴィラ――!!」

ブヅッ、という太い糸が切れるような音と共に通信回線が途切れた。
再度、チミルフが回線を開こうとしてもあちらに応じる気配はない。


俺が、変わった?


895名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:13:10 ID:XdWo3Wzl
 
896名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:13:12 ID:Z//8J96e
 
897名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:13:38 ID:/P4Q6lZ+
898HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:13:46 ID:wjsk7CWd
ぼんやりと、チミルフは何も映さなくなったモニターを眺めた。

「くっ……」

直接、ヴィラル達の戦いに参戦し彼を説得すべきだろうか。
それとも、肩を並べてアルティメットガンダムとの戦いを援護でもすればいいのだろうか。

「……俺は何をすればいい」

煌々と光輝く天は星屑。
物悲しく鳴いている青白い月の光が心に軋轢をもたらす。
チミルフは血のように赤く染まった瞳を見開き、かぶりを振った。
間違ってなど、いない。
螺旋王ルルーシュの意志を叶えること――それが今の彼にとっての全てなのだから。

それでも、いつの間にか道を踏み外してしまったような気がするのはどうしてなのだろう。
応えてくれる相手はどこにもいなかった。
背後に控えた部下も、側で微笑んでくれる愛すべき人も、共に酒を飲み交わすような友も、気が付けば全て失っていた。
残されたものは王への忠義。もっとも大切で、重要な心。

何を、すればいい。何を、何を……!

疑念の鎖が心を縛り付ければつけるほど――戒めの「絶対遵守」は彼に王への忠信を強制する。
眼球の赤≠ェ更に色合いを増し、チミルフの心は塗り替えられる。


――――――お前の主君は螺旋王ではない、この私だ――――――


脳裏を縛り付ける強制の言葉。ラグナレクとの邂逅。
C≠ニいう集合意識に囚われた者達と同等の運命の剣がチミルフの喉元には突き付けられていた。
そこに彼の意思が介在する余地はなく。
忠義が転じて、忠犬と成り果てた抜け殻がそこにあるだけ。


「イエス、ユア・マジェスティ(仰せのままに、我が王よ)」


己を確認するように、チミルフは忠誠の言葉を呟く。
頭の奥から囁くようなその声に、抗うことなど出来るはずもなくて。
武人は、いや武人だった£jは心の中で膝を折るのみ。


星と月だけが嗤う世界で、彼は己が失ったものの大きさに気付ずにいた。

899名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:14:02 ID:XdWo3Wzl
  
900名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:14:08 ID:KyRxaSNq
901名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:14:09 ID:Z//8J96e
  
902HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:14:29 ID:wjsk7CWd


わたしには、何が出来るだろう。
わたしは、何をしなければいけないのだろう。
わたしは、どうすればいいんだろう。

ずっと、ずっと、ずっと――霞のような不安を少女は完全に拭い去ることは出来ずにいた。

今出来ることをやればいい。
それは分かっている。それが答えだということも分かっている。

じゃあ、それは何? 
わたしはいったい何をすればいいの?

……分からない。ハッキリとした答えが出て来なかった。


コンコンコンと鳴るコンクリート地の床を靴が叩く音だけが喧しかった。
スパイクも、舞衣も言葉を発そうとはしない。
焦燥感を表すような湿った息遣いだけが角張った振動の世界に絡み付いていた。
小早川ゆたかは顔を上げる気力もなく、半ば作業的に螺旋造りの階段を踏みつける。
その時、

「やぁ、皆。まさかこんなにあっさり再会出来るなんて思ってなかったよ」
「よかったっ……お前らは無事か!」

階下から響いた聞き慣れた声にハッと小早川ゆたかは伏せていた視線を上げた。

「……ジンとねねねか。よく俺達を見つけられたな。ドモンは今表で……ああ、これは言うまでもないか」

現れた二人の人影を捉えて、スパイクが小さく口元を歪ませた。

「すっごいよね、あの戦いは。ああ実はね、ちょっとその辺で親切なお兄さん≠ノ会ったんだ」
「ギルガメッシュの奴を下で見かけたんだ。ただアイツ……私達には何も言わなくて。
 顎でこのビルを示しただけだったんだけどね」
「ったく、相変わらず不遜な王様だぜ……」

スパイクが髪の毛をグシャグシャと掻き乱しながら毒づいた。

ツンツン頭に引き摺りそうな黄色のロングコートを棚引かせ、快活な笑顔を浮かべる少年、ジン。
栗色の後ろ髪を大きく飛び跳ねさせ、無骨な男物の眼鏡越しに安堵に満ちた視線を投げ掛ける女、菫川ねねね。

どうやら一足先に廃ビルを後にしたギルガメッシュと会っていたおかげで、ジンとねねねはゆたか達を見つけることが出来たらしい。
大切な人達と再会出来た喜びにゆたかもホッと胸を撫で下ろした。隣の舞衣も笑顔だった。

笑ったのは久しぶりだったかもしれない、とゆたかは思った。
目の前で起こっていることは全てが現実だ。夢では、ないのだ。
状況が変わったことを知らされて、何かが一気に動き出したのは彼女も感じていた。
だからこそ、激しい水流のように氾濫する「流れ」に取り残されてしまうことが恐ろしかった。

「……ん? おい、ジン」

その時、スパイクが一瞬怪訝な眼差しでジンを見た。

903名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:14:44 ID:BuNtRknc
904名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:14:46 ID:XdWo3Wzl
 
905名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:04 ID:KyRxaSNq
906HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:15:11 ID:wjsk7CWd
「なんだい、スパイク」
「お前とねねねだけか? スカーとガッシュの野郎はどうした」
「……っ!」
「それは、」

ピシリ、と。
コンクリートの壁がその言葉につられて軋んだような気がした。

壊すのは簡単。
だけど、新しいモノを生み出すのはとてつもない労力が必要だ。
湧き上がった朗らかなムードはあっという間に粉塵へと還った。

ねねねがギリッと奥歯を噛み締め、血が出そうなほど強く拳を握り締めていた。
飄々とした雰囲気を崩さなかったジンが一瞬で表情を暗くし、「立て板に水」を体現するような舌が言葉を探していた。

気が付くとゆたかの両手は、勝手に叫びを発してしまいそうになった唇へと押し当てられていた。

笑顔の花が、消えた。
悟ってしまった。
理解してしまった。
人は皆沈黙に取り込まれ、ビルの外から聞こえる唸るような機械の音だけがおしゃべりだった。
ジン達の動作だけで、苦悶の表情だけで――

もう、二人が永遠に帰って来ない人になってしまったという事実を、ゆたかは認識してしまった。


「そ、んな……なんでっ……なんでよっ! 皆で……帰るって、約束したのに!」

最初に口を開いたのは舞衣だった。

「馬鹿、泣くんじゃねぇよ!」
「でも、だって……」
「ガッシュも、スカーも……すげぇカッコよかったんだ。だから、泣かないで、泣かないで……くれっ……!」

ねねねに叱責された舞衣が肩を震わせた。橙の色鮮やかな髪の毛が寂しげに揺れる。
あまりに色々なことがあったせいで、舞衣の心はきっと糸が張り詰めたような状態になってしまっているのだろう。
過去を清算し、割り切ることが出来た今となっても感傷的な部分が非常に大きいという点は否定出来ない。
だが、そんな舞衣の仕草よりもよりゆたかの印象に残ったのは強い口調で二人の名前を呼んだねねねについてだった。

……泣きたいのは、ねねね先生の方なんだ。

スカーも、ガッシュも、舞衣とゆたかにとってはつい先程顔を合わせたばかりの相手だ。
二日間にも及ぶ殺し合いの中でもほとんど縁はなかったと訳だし、言葉を交わした経験も少ない。
だが、ねねねにとって二人は長い時間を一緒に過ごした気の置けない仲間だったはずだ。
ゆたか達よりもずっとずっと、悲しみが大きいことは簡単に分かる。

907名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:15 ID:BuNtRknc
908名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:25 ID:Z//8J96e
 
909名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:39 ID:KyRxaSNq
910名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:45 ID:BuNtRknc
911名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:15:48 ID:Z//8J96e
 
912HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:15:53 ID:wjsk7CWd
ゆたかよりも背の低い、金色の髪をした元気のいい男の子――ガッシュ・ベル。
顔に物凄い傷跡のある褐色の肌の大男――スカー。

一緒に居た時間は確かに少ない。
でも、ここまで生き残った仲間≠ナあるという感覚の糸はしっかりと結ばれていたのだと思う。

『一人も欠かさずに、絶対に生きて帰る!』と誰かが口にしたのはいつの事だっただろう。
気が付けば、ゆたかの大好きな人達は一人、また一人と彼女の前から消えて行った。
Dボゥイ、ニア、奈緒、かがみ、スカー、ガッシュ……。

――わたしには、何が出来るのだろう?

考えても、何も出て来ない。
戦うことも他の人を導くこともゆたかには出来ない。
とにかく、邪魔にならないように――って、本当にそれだけでいいのだろうか?

もう、ゆたかは無力感に苛まれて涙を流したりはしない。
確かに自分自身の非力さには気が滅入るけれど、それで潰れてしまったりはしない。
少しは強くなれたのだ。ベソっ掻きで臆病な性格も少しはマシになった。
でも、やっぱり、何も出来ないのは……辛いのだ。哀しいのだ。苦しいのだ。

「うっ……」

漏れる、嗚咽。
皆の辛そうな顔を眺めているだけでゆたかも哀しくなってしまう。

「……ゆたかも……泣くなよ……あたしまで……悲しくなんだろ……っ」

ねねねが先ほどよりも、もっとキツそうな顔付きで言った。
でも、その言葉から伝わって来る「苦しさ」がゆたかを更に泣き虫にしてしまう。

わたしは、こんなにも涙脆い女の子だっただろうか。
ぼんやりと現実と理想の距離感がいまいち上手く掴めない頭でゆたかは思った。



「――チッ、あの傷野郎は死んだのか。俺の手でアイツには止めを刺してやりたかったんだがねぇ」

訃報を知らされてから、ずっと無言だったスパイクが憎々しげに呟いた。

「……おい……お前、何言ってんだよ」

顔面を蒼白に染めたねねねが拳をふるふると震わせながら尋ねた。
ゆたかも舞衣も、スパイクの辛辣な台詞に驚いてどちらも顔を上げた。
スパイクが冗談を言っているような口調でもムードでもなかったからだ。

「あん? 何ももクソもねぇ。
 あの場は納得した振り≠したが、そもそも俺はアイツが読子を殺したことを許し――」

スパイクの言葉は最後まで紡がれることはなかった。
ゴッ、という大きくて鈍いがビルの中に木霊した。
平手、ですらなかった。
容赦遠慮のないねねねの右ストレートがスパイクの右頬に炸裂したのだ。

913名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:16:16 ID:XdWo3Wzl
 
914名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:16:23 ID:KyRxaSNq
915名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:16:46 ID:Z//8J96e
 
916HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:16:58 ID:wjsk7CWd
「なんで……アイツがどれだけ頑張ったか、分からないんだよっ!」

哀しみと自責の念で潰れそうな表情を浮かべていたねねねが怒気に満ちた眼でスパイクを睨みつける。
少しだけ赤く腫れたねねねの右手はずっと握り締められたままだった。
掌の皮が切れてしまうのではないかと思うほど、その拳は固さを増して行く。

「……痛ぇ」

ぼそりと呟いたスパイクが口元を拭った。
そして、その緩慢な動作がねねねの更に逆鱗に触れたようだった。

「何で分からないんだよっ、アイツがどんな覚悟で……どんな想いで自分を犠牲にして……私達を守ってくれたのかっ!
 謝れっ、謝れよっ!」

喚くようにねねねが仰け反ったスパイクの襟元を掴んでガクガクと揺さ振る。
相手と自分との身長差をまるで考えない突発的な動作だった。

一触即発とはきっとこういうことを言うのだ。
カッチリと纏まっていたはずの絆も壊れてしまう時は本当にすぐなのかもしれない。
作るのは大変。でも壊すのはとっても簡単なのだ。

「ジンさ――」

ゆたかは助けを求めるようにジンの名前を呼んだ。
彼はスーパーマンのような人だ。
気配り上手で、場の空気が読めて、皆が見落としてしまうようなことにも気付くことが出来る。
喧嘩の仲裁なんて、まさに彼の絶好の得意分野だろう。

「………………」

だが、ジンは腕を組み、静かな瞳で揉み合うスパイクとねねねの姿を眺めているだけだった。

「えっ……」

どうして何もしないの?
だって、彼にはこの場を何とかする力があるはずなのに。
ゆたかは彼が何を考えているのかまるで分からなかった。


「……おい、ねねね」

散々頭を揺さ振られたスパイクが苦しげに呻いた。
口元には赤い液体。
どうやらねねねの一撃で口の中が切れていたらしい。
が、小さく口の片端を釣り上げると、消えてしまいそうな声で呟いた。

「元気、出たじゃねぇか」
「……は?」

間の抜けた、声が響いた。

917名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:17:37 ID:Z//8J96e
  
918名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:17:40 ID:KyRxaSNq
919HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:17:44 ID:wjsk7CWd
スパイクのワイシャツを掴んでいた手が緩められる。
顔と顔が数センチほどの差がないほど接近していた二人の身体がパッと離れた。

「……にしても、グーはねぇだろグーは。普通、ここはパーだ。
 女が手を上げる時は大体そんなもんだと相場が決まってるはずだ。……ったく、なんでこうなるかねぇ」

ぶつくさと文句を言いながら乱れた襟元を隻腕で正し、スパイクが上着のポケットをゴソゴソとまさぐった。
が、目的の品は見つからなかったのだろう。
彼は不満そうに口元を「へ」の字に歪める。だが、

「スパイク」
「っと、と……」
「お探しの品はソレ≠セろ?」

暴れるねねねを止めようともスパイクの暴言を戒めようともせずに静観を貫いていた男がいた。
ニィッと盛大な笑みを浮かべたジンが、何かをスパイクの胸元へと放り投げた。

そして、呆然としていたゆたかに向けて無言でウインク。
だがゆたかにはジンが何を言いたいのか、何となくだけど分かったような気がした。

――何もしないのが最善、って場合もあるってこと。

「……はっ。ま、結局コイツが一番ってこった」

美味そうにスパイクがジンから受け取ったシガレットケースから葉巻を一本取り出し、ライターで火を付けた。
カチッという無機質な音と炎の燈るおぼろげな音が灰色の建物の中に響き渡った。

「スパイク……お前、まさか……」
「……何でもねぇよ。表じゃドモンの奴が必死に戦ってる……泣き喚くのはもうちょい後だ。
 それに、よ。考えてもみろよ。
 スカーの野郎が自分を犠牲にしたのはお前らに泣いて貰いたかったからじゃねぇ。お前らを生かしたかったからだ」

口から煙を吐き出しながら、スパイクが言った。
灰色で階段の中が一杯になる。ゆたかの鼻にも煙草のツンとした臭いが飛び込んで来た。
普段なら顔をしかめてしまうはずなのに、今だけは何故かスパイクの気遣いが伝わって来るようであまり不快ではなかった。

罪滅ぼし、なのだろうか。

スパイクとスカーとねねね、そして焦点となっている人物。
彼らの関係をゆたかはよく知らない。
特にスカーという人に関する記憶は少ない。
無口で、大きくて、怖そうで……そんな印象だけが残っていた。

なんで、どうして、ねねね先生を守るためにスカーさんは犠牲になったんだろう?

920名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:17:58 ID:XdWo3Wzl
 
921名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:06 ID:BuNtRknc
922名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:22 ID:Z//8J96e
 
923名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:26 ID:KyRxaSNq
924HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:18:26 ID:wjsk7CWd
居なくなってしまった人はそれ以上の言葉を紡ぐことは出来ない。
だから彼の真意は誰にも分からないはずだ。
でも、この時だけはスパイクの言った台詞が真実だったんじゃないか、そんな風にゆたかは思いたかった。

「そういえば、な」
「……何だよ」
「そっくりだったぜ、ねねね。キレたおっかねぇ顔付きなんて本当に瓜二つだ」
「は?」

再度咥えた葉巻を唇から離しつつ、スパイクが少しだけ遠い眼をした。
それは何かを懐かしむような郷愁に満ちた輝きだった。


「お前と、どっかのセンセーが、だよ」

燻らせた紫煙がコンクリートの匣の中でゆっくり空気に溶け込んで行った。

大きいはずのスパイクの背中が、泣いているように見えたのはゆたかの気のせいだったのだろうか。
誰よりも怒り、悲しみを露にしたかったのは彼だったのではないだろうか。
彼は、きっとゆたか以上に己の無力さに歯痒い思いをしているのではないだろうか。

――わたしには、何が出来るだろう?

もう一度、自分自身に問い掛けてみてもやっぱり答えは出なかった。
だけど、一つだけさっきとは違うことに気付いた。

きっと皆、悩んでいるんだ。だって、悩みのない人なんていないのだから。
誰も彼もが自分の居場所を見つけようと必死になっている。
何が正解で何が間違っているかなんて、全て終わってみなければ分からないんだ。

――やれることを、小早川ゆたかが精一杯頑張れることをやろう。

そんな風に心へと誓うだけで、ゆたかは少しだけ自分が強くなれるような気がした。

925名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:38 ID:XdWo3Wzl
  
926名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:52 ID:KyRxaSNq
927名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:18:55 ID:19q1CI8+
 
928HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:19:00 ID:wjsk7CWd


何ができるか何を成せるかどんな役割を担うべきか、そんなものカミナにとっては考えるに値しないものだった。
一顧だにする価値すらない。カミナにとって重要なことは分かりやすくもただ一つ。
自分が何をしたいか、それだけである。
本能の如く力強く刻み込まれた理念に突き動かされ、カミナは硝煙弾雨の中を駆け抜ける。

『どうした、動きが鈍くなっているぞ。ファイトの途中で気でも抜いたか』
『こちらの都合だ、気にするな。あまり一方的に攻めるばかりでは悪いと思ったのでな』
『ふ、面白いっ!』

「はぁ、はぁ……へ、全くでけぇ声でぎゃあぎゃあ暴れやがってよ」

降りかかる瓦礫にしかめっ面をして、耳を叩く騒音に対し毒づく。
初めは砂塵のような小さなものが主だった石くれにも無視できない大きさのものも混じりだし、戦場の中心部が近づいてきたことを教えていた。
肌に感じる熱はカミナが走り通しだったことだけが原因ではないだろう。

『ヴィラルさん今です!』
『ああ!うおおおおお!』
『ぐぅ!やるな、だがまだ!』

外部スピーカーから垂れ流される音を頼りに知ることしかできなかった激戦の様子が、この距離になると肉眼ではっきりと見える。
殴りあい、破壊しあっては再生を繰り返しまた殴りあうという狂気じみた戦いに、当然のことながらカミナのことなどまるで無視である。
そう、荒ぶる神の如く相争う二体の巨神にしてみればカミナなど居ないも同じ。
卑小な一人の人間に過ぎない男が血眼になって足を動かしたところで、できることは何もないのである。
東方不敗のような鍛えぬかれた武芸者が見ずともカミナの無力は明白。犬死には必定である。

仮にその道理に従わぬ者がいるとすればそれは次のいずれかであろう。
一つは豪傑。巨大兵器ともまともに渡り合う武勇を秘めし豪の者。
一つは狂人。危険を知りながらそれに魅了され自ら死地に飛び込む愚か者。
あるいは、もう一つ。


馬鹿。


「おうおうおうおうおうっ!!このカミナ様を差し置いて派手にやり合おうたぁ、いい度胸してんじゃねぇかっ!」

天の高きを知らずして天に挑まんとする身の程知らず。

929名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:19:24 ID:XdWo3Wzl
  
930名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:19:29 ID:BuNtRknc
931名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:19:31 ID:KyRxaSNq
932名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:20:05 ID:Z//8J96e
 
933HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:20:29 ID:wjsk7CWd


激震は唐突にやって来る。


「……な!?」

異変が起こったのは合流した五人が廃ビルを後にしようとした、その時だった。
彼らがいたのはビルを真っ直ぐと貫く螺旋状の階段だ。
エレベーターも中には備わっていたのだが、急に電力の供給がストップする可能性も考えられたため歩いて降りる途中だったのだ。

「……揺れてる?」

ビルが、揺れる?

若干結合の悪い単語の組み合わせに鴇羽舞衣は首を傾げた。
日本人である彼女にとって地震は慣れっこの災害であるが、ここで重要なのは他の要素に関する分析である。
つまり――他にこのような大規模な振動をもたらす要因としてどのようなモノが挙げられるか、ということ。

答えは一瞬で舞衣の脳裏に浮上した。
そしておそらく彼女よりも数秒早くスパイクやジン、ねねねは同じ結論に到達しているはずだ。

「きゃっ!」
「ゆたか、大丈夫!!?」
「は、はい……え、と……こ、これはいったい……?」

だから、唯一気付いていないのはこの子――小早川ゆたか――だけだった。
ゆたかは本来ならば、こんな「殺し合い」なんて舞台に呼ばれるべき人間ではない。
彼女の周りには物騒な能力も、命を掛けた戦いも、運命や宿命といったファンタジーめいた因縁も存在しないのだ。

「……っ! やべぇぞ、こりゃあ……! 急げ、早くこのビルから出るぞ!」
「スパイク駄目だ、足じゃあ間に合わないっ!」

駆け出そうとしたスパイクをジンが大声で呼び止めた。
そう、『階段を駆け下りていては間に合うかどうか分からない』のだ。
振動の原因はおそらくアレ≠ナある。
ならば、強烈な暴風がもうすぐ舞衣達を襲うだろう。そうなってからでは遅いのだ。

「それでもここで突っ立てるよかマシだ!」
「……そりゃそうだね。王ドロボウともあろうものが汗水垂らして身体を動かすことを忘れる所だったよ」
「舞衣、ゆたか、急げっ!」

スパイクの言葉を受けて、ジンとねねねも大股で階段を駆け下りて行く。
戸惑って足を止めてしまうよりも、随分上等な解決案だ。

「分かってますっ、行くわよゆたか!」
「う、うんっ!」

舞衣もゆたかの小さくて柔らかい手を絶対に離さないようにキュッと握り締めて走り出した。

934名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:20:40 ID:BuNtRknc
935名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:20:58 ID:KyRxaSNq
936名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:21:03 ID:BuNtRknc
937名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:21:11 ID:/P4Q6lZ+
938名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:21:16 ID:XdWo3Wzl
  
939名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:21:33 ID:Z//8J96e
 
940名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:21:53 ID:19q1CI8+
 
941名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:22:02 ID:BuNtRknc
942名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:22:16 ID:XdWo3Wzl
  
943HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:22:25 ID:wjsk7CWd
この子だけは……私が守ってみせる。

強い決心と「Dボゥイ」という共通の相手に庇護を受けた縁が彼女達を結んでいた。
いや、今となってはそれだけではないのかもしれない。
ゆたかは小柄な身なりをしているが舞衣と同じ高校一年生だ。
舞衣がゆたかに覚えている感情を一言で表すのはとても難しい。
親愛や友情といった気恥ずかしい単語が大分近い位置にあるとは思うのだが一致する、という訳でもないように思える。
……何なのだろう、いったい?

先ほどまでコンコンコンと音を鳴らしていた階段を足早に駆け下りる。
コッコッコッ、と革靴とコンクリートが奏でる音が後ろから舞衣に噛み付いて来そうだった。

「あっ――!」

あともう少しで出口――という時、後ろからゆたかの声が響いた。
そして同時に握り締めた掌に掛かる大きな力。これは……まさか!
思わず舞衣は後ろを振り返る。

「ゆたか!」

想像通り、ゆたかが階段に足を取られて転倒しそうになったようだった。
舞衣がしっかりと手を握り締めていたため、大事には至らなかったが大きく体勢を崩してしまったことは確かだ。
しゃがみ込んでしまったゆたかに舞衣は心配そうに声を掛ける。


「大丈夫、ゆたか!」
「す、すいませんっ、大丈夫です。急ぎましょう、舞衣さ――」

その時、二人を包み込んだのは何かが崩れる音だったのだろうか。
突如襲来した暴風≠ェちっぽけなビルに突き刺さった。
白の瓦礫が方々へと飛び散り、中にいる人間を押し潰そうと迫る。
力の氾濫に生身の人間はあまりに無力で、立ち向かうことなど出来る訳もなかった。

コンクリートの雪崩が舞衣達の頭上に迫っていた。

世界は黒く染まり、言葉を発する隙間もなかった。
逃げ遅れた二人の少女に鉄の雨が無情な煌きを示した。

944名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:22:28 ID:u7jELEwu
do the impossible できないことはない
see the invisible 見えないものはない
raw! raw! おうおう!
fight the power! それが戦う力だ!
945名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:22:55 ID:KyRxaSNq
946名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:23:00 ID:XdWo3Wzl
 
947名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:23:07 ID:p2lZZtYq
 
948HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:23:17 ID:wjsk7CWd


まさに狂気の沙汰と言う他なかった。天地鳴動の様相を呈する戦場にいきなり半裸の男が割り込みいきなり威勢よく啖呵を切ったのだ。

「カ、カミナ!?一体何をやっているのですかあなたは!?」

驚嘆すべき馬鹿野郎の正体にいち早く気付いたのはグレンの操縦席内、依然シャマルの懐に抱かれたままのクロスミラージュだった。
仲間が次々と蹴散らされる地獄絵図に噛み締める歯も持たず、沈黙をせめてもの抵抗とするしかなかったクロスミラージュが事ここに至ってついに声を荒げる。

「カミナ、だと……な、馬鹿な!?」

グレンラガンのスピーカーから漏れ出た耳慣れぬ合成音声はドモンにもその男の存在に気付かせた。モビルファイター独特の全方位表示のモニターの一部が四角く切り取られ、場違いに見栄を切る男をクローズアップする。
戦いに全く無関係な方向から突如入った横槍は練り上げられた達人の集中を僅かに乱した。

「ハダカザルめぇ……!なぁにをやっているゥ!!」

ヴィラルはその隙を好機と捉えるような男ではなかった。むしろ技と技、力と力、意地と意地がぶつかりあい高まり合うこの大一番に水を差されたことへの怒りが勝り、叫びとなって表出する。
全く知らぬ顔ではないために、あの男が策も目算も持たずただ威勢だけによって割り込んできたことがヴィラルには分かる。それが余計に腹立たしい。
シャマルはと言えば、決死の戦いに割って入る無作法とそれをする男の思考を許容できず、言葉を失っていた。

それぞれの思考が混ざりあった帰結として、カミナの一声は地を割り天を裂く大戦をぴたりと静めるという結果をもたらした。
自分がどのように見られているかも知らず、カミナは巨大兵器の分厚い装甲越しに注がれる複数の視線に確かな手応えを両手に感じた。
ニヤリと口を歪ませる。
場の空気を一気にさらったことに気分を良くし、さらに己の存在を誇示しようと指を一本天へと掲げ。

『何をしにきたのですかあなたはっ!!いい加減にしてください!!』

叩きつけるように飛び込んできたクロスミラージュのがなり声に得意の口上を阻止された。

「なんでぇクロミラ!せっかく助けにきてやったってのに随分じゃねぇか!」
『考えなしに突っ込んできて助けにきたも何もありません!!あ、あなたという人は……馬鹿だとは思っていましたがまさかこれほどとは!!』
『クロミラだと……?あいつがあそこに居るのか……』
『コラっ!だまりなさいっ!』
『ぐぅぅぅ……!』

突然の乱入に困惑を示す声、自己主張を始めた合成音声を制御しようと逸る声、戦いの高揚を邪魔された怒りに震える声。
むせかえる程に張り詰められていた戦場の空気は完全に霧散し、代わりに訪れたのは茶番めいた混乱だった。
その元凶となった男にはもちろん自覚など、ない。

949名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:23:53 ID:XdWo3Wzl
  
950HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:23:59 ID:wjsk7CWd
「へ、方法なんざ殴って奪う!これ以上に何がいるってんだよ!」
『しょ、正気ですかあなたは!本当にそんな程度の考えしか持たずにここまできたのですか!』

東方不敗に言い放ったような信念がカミナには確かにあるのだが、言葉足らずに怒鳴るだけでは伝わるはずもない。
ただ軽挙妄動の産物と見られるのみである。
思い通りに行かぬ焦りの上に理屈で押してくるクロスミラージュの弁舌を突き付けられ、元来堪え性のないカミナは理不尽な怒りを覚えはじめていた。

「正気も正気よ!このカミナ様がやるって言ってんだ!てめぇもグレン団の一員ならリーダーを信じてどしっとしてやがれぃ!」
『だからこそ、明らかな無謀を見過ごす訳には行きません!』
「無謀かどうかはまだわかんねぇだろうが!この先見てから判断しやがれ!」
『意味が分かりません!一歩間違えば即死ですよ!』
「んなもんどこに行ったって一緒だ!」
『そういう意味ではなく――!』

『いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

侃々諤々、やいのやいの。子供のように真っ赤になって繰り広げられる口喧嘩を切り裂いたのは声と同じく鋭い歯を剥き出しにする獣人にして武人、ヴィラルだった。

「キサマは……!キサマは!自分が一体何をしたのか……わぁかっているのかあああああ!!」
「ヴィラルか?へ、見てろよ今度こそ……」
「分かってないなら言ってやる!キサマは、神聖な武人同士の戦いを土足で踏みにじったんだよぉ!」

尚も埒のない言葉を並べようとするカミナを遮り、グレンラガンの武者鎧を思わせる無骨な腕を突き付けてヴィラルがさらに吠えた。
腹の底からの憤怒をぶつけられ、さすがのカミナも言葉を途切れさす。
カミナにはとっさにヴィラルの怒りの原因を察することができなかった。それでも、その言葉には一蹴することのできない何かを感じた。

「武人……だぁ?何を言ってやがる」

自然、声からも力が抜ける。
それを吸いとるかのようにヴィラルの叫びは激しさを増して続けられた。

「俺はシャマルを愛している!そしてシャマルからもまた愛されている!だからこそ二人で生き残るためにこうして戦っているぅ!」

民衆を鼓舞するアジテーターのように、グレンラガンがアルティメットガンダムをその鋭いドリルで指し示す。

「この男もそうだ!散っていった仲間のため、まだ生きている友のため、そして故郷に残した愛する者のために立っている!」

口角泡を飛ばすヴィラルの拳に拠らぬ攻撃に、東方不敗にさえ反駁したカミナの口が重く縫い付けられてしまう。

「俺たちの道は決して並び立ち得ない!だからこそここで意地と誇りと信念の全てを賭けて拳を交わしているのだぁ!それをキサマときたら……!」

愛を知った獣人の心からの言葉に――気圧されている。

951名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:24:00 ID:KyRxaSNq
952名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:24:24 ID:Z//8J96e
 
953HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:24:30 ID:wjsk7CWd
「自分のおもちゃをとられたのが悔しいから取り返しにきただと……」

ヴィラルの声が震えるのに合わせてグレンラガンが身を縮める。
攻撃準備にも見えるが、そうではない。

「ガキは……」

ヴィラルにとって背負うものを持たぬカミナなど、倒す価値すらないのだ。


「すっこんでいろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオ!!」


グレンラガンは吠えた。あらん限りの、全身全霊の感情を込めて魂の底から吠えた。

「ぐぅ……!」

力を持たぬはずの音波が確かな圧力を以てカミナの肌をビリビリと刺激する。
ちくしょう。分からねぇ。ちくしょう。
クロスミラージュ、あるいは東方不敗相手にあれだけ良く動いた口がなぜこんなに重いのか。
カミナにとって考えるまでもなくそこにあった自らの思考が、分からなかった。

「……悪いがそれに関しては俺も同意見だ」

別方向から静かに続けられた声がカミナに追い討ちをかける。
ドモンカッシュの操るアルティメットガンダムもまた悲しみに彩られていた。

954名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:24:40 ID:BuNtRknc
955名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:24:40 ID:XdWo3Wzl
   
956名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:24:51 ID:KyRxaSNq
957HAPPY END ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:25:00 ID:wjsk7CWd
「そいつの言う通り、俺たちはこの戦いに一命を賭している。正々堂々、正面からな。ガンダム同士でこそないが、これは最早ガンダムファイトと何ら変わらん」
ヴィラルのような激しさこそないがドモンの言葉もまた同じようにカミナの胸を刺激する。

「そしてそれとは別にこのファイト自体に心踊るものがあったのもまた事実だ。それを邪魔された悲しみも同じく……な」

二人の男からくれられる視線がさっきとは比べ物にならないくらいに重く感じられた。
訳の分からない焦燥感に胸を焼かれ……いや、理由など本当はとっくに分かっている。
分からないなどと吠えるのは、カミナの本能がそれを認めるのを頑なに拒ぶから。
よりにもよって男の喧嘩に水を差すなどという大愚を犯したのだ。
グレン団、不撓不屈の鬼リーダー。
カミナともあろう者が。

『場所を変えるぞ。仕切り直しだ』
『……ああ、いいだろう』
『カミナ……』
『シャマル、そのうるさい板切れは黙らせておけ』
『ええ、ヴィラルさん』
『カミ……!』

カミナの存在を無視するかのように頭上で淡々と言葉が交わされる。
相棒であるクロスミラージュが何かに押し込まれるように言葉を絶っても、意気を挫かれたカミナにはどうすることもできない。
ズシンズシンと言う地響きが南へと移動し、やがて静寂が戻ってもカミナはその場を動かなかった。
握り締められた拳は、丸められた背中は一体何を語るのか。
悔恨か。恥辱か。諦念か。あるいはぶつけられた信念の重さに耐えきれずにここで潰れてしまうのか。
自らの矮小さを知らしめられ、飛び散った瓦礫と同じく無様に朽ちてしまうのだろうか。

「……たら」

いや。
答えはそのどれでもない。
一度の失敗では学ばぬからこそ、人はその者を馬鹿と呼ぶのだ。

「だったらよぉ……」

カミナはゆっくりと立ち上がる。
何故なら。

「見届けさせてもらおうじゃねぇか。武人同士の戦いってやつをよぉ!」

カミナもまた、折れることを知らない一人の男なのだから。

958名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:25:01 ID:u7jELEwu
touch the untouchable 触れられないものはない
break the unbreakable 壊せないものなんてない
raw! raw!  おうおうおう!
fight the power! それが戦うってことだろ!
959名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:25:34 ID:KyRxaSNq
960名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:02 ID:XdWo3Wzl
  
961名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:13 ID:/P4Q6lZ+
962名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:28 ID:Z//8J96e
 
963名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:39 ID:u7jELEwu
power to the peeps, power for the dream 仲間のための力、夢に向かう力
still missing piece scattering, so incomplete 失ったものは還らない
we be the most incredble soldier from underground 俺たちは地下から来た変革者だ
see how easy they all fall down 俺たちを見た奴は立ってられないぜ
digging to the core to see the light 光に向かって掘り続けるんだ
Let's get out of here babe, that's the way to survive ここから出ていってやろうぜ、それが俺たちの生き方だ
top of the head, I'm on the set 天井の上、俺は舞台の上に立ってるんだ
do the impossible, don't you wanna bet? 無理を通してみせる、賭けるかい?
964名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:48 ID:bjKPNOB0
 
965名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:26:58 ID:H+7x/Pj/
966名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:27:19 ID:XdWo3Wzl
 
967 ◆ANI2to4ndE :2009/02/20(金) 22:27:29 ID:wjsk7CWd
次スレに移ります!引き続きお楽しみください!

ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1235130193/l50
968名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:27:42 ID:u7jELEwu
cuz, a lot of thing changed, we be waiting in vain みんな変わっちまった、俺らはむなしく呆けている
if you wanna get by, no pain no gain 日々をやり過ごして生きたって、痛みもないが得るものもない
wow! fakers wanna test me again ペテン師がまた俺たちを試してきやがる
sorry, my rhyme's gonna snatch brain 悪いな、俺のリズムはお前を混乱させるだけだ
I'm still starving for the straight up skill 俺たちはまだまだ上に行きたいんだ
we gonna make it happen with the crazy rap skill 俺たちがこの力で革命を起こすんだ
get ready to rumble, now is time 用意はいいか、今がその時だ
if you don't know, now you know わからない?今ならわかるだろ
969名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:28:44 ID:p2lZZtYq
 
970名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:29:46 ID:/P4Q6lZ+
971名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:30:06 ID:6acAdx0o
 
972名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:31:20 ID:u7jELEwu
Libera me, Domine, 主よ、我らを解放せよ
de morte aterna 永遠の死より
in die illa tremenda. その恐るべき日に
in die illa その日に...
973名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:33:27 ID:19q1CI8+
 
974名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:33:30 ID:u7jELEwu
Quando coeli movendi sunt et terra, 天地が鳴動し、
Dum veneris judicare saculum perignem. 主が来たりて炎を以って世を裁く
Tremens factus sum ego et timeo, 我は震えおののく
dum disussio venerit atque ventura ira. 来るべき選別と、そして怒りに
975名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:39:27 ID:u7jELEwu
Requiem aternam. レクイエム 永遠の安らぎを
Dona eis, Domine 主よ、彼らに与えたまえ
Requiem aternam. レクイエム 魂の安らぎを
Dona eis, Reuiem 主よ、彼らに与えたまえ
et lux perpetua 彼らに安らぎを照らさん事を
liceat eis 光が永遠に...
Libera me, Domine 主よ、我を解放せよ
Libera me, Domine 主よ、我を解放せよ...
976名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 22:40:26 ID:u7jELEwu
do the impossible できないことはない
see the invisible 見えないものはない
raw! raw! おうおう!
fight the power! それが戦う力だ!
touch the untouchable 触れられないものはない
break the unbreakable 壊せないものなんてない
raw! raw!  おうおうおう!
fight the power! それが戦うってことだろ!
what you gonna do is what you wanna do やりたいことをやれ
just break the rule, then you see the truth 道理を壊した先にある真実
this is the theme of "G"coming through baby! こいつが「グレン団」の魂だ
raw! raw! そうだ、こいつが
fight the power! 俺らの力だ
977名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/20(金) 23:26:30 ID:p2lZZtYq
 
978名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 00:52:05 ID:G4cXYug3
 
979名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/21(土) 01:39:31 ID:G4cXYug3
 
980名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 16:45:15 ID:M3jQzABu
収録も済んだからここと次スレは埋めておくか
981名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:18:05 ID:M3jQzABu
 
982名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:44:16 ID:M3jQzABu
 
983名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:46:22 ID:M3jQzABu
 
984名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:48:33 ID:M3jQzABu
 
985名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:49:45 ID:M3jQzABu
 
986名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:50:39 ID:M3jQzABu
 
987名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:51:31 ID:M3jQzABu
 
988名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:52:46 ID:M3jQzABu
 
989名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:53:34 ID:M3jQzABu
 
990名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/23(月) 23:54:32 ID:M3jQzABu
 
991名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:05:23 ID:Yw0B0iEG
 
992名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:06:41 ID:M3jQzABu
 
993名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:07:30 ID:Yw0B0iEG
 
994名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:08:18 ID:Yw0B0iEG
 
995名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:09:04 ID:Yw0B0iEG
 
996名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:10:02 ID:Yw0B0iEG
 
997名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:11:00 ID:Yw0B0iEG
 
998名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:11:49 ID:Yw0B0iEG
 
999名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:12:39 ID:Yw0B0iEG
 
1000名無しさん@お腹いっぱい。:2009/02/24(火) 00:13:27 ID:Yw0B0iEG
>>1000完結おめでとう
10011001
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