アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ1

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1名無しさん@お腹いっぱい。
このスレはアニメキャラ・バトルロワイアル2ndの作品投下スレです。
基本的に、SSの投下のみをここで行ってください。


避難所
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd part0-1
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1187538018/l50


投下作品についての感想、雑談、議論その他モロモロは以下のしたらばにて行ってください。

アニメキャラ・バトルロワイアル・セカンド 専用掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9783/
感想雑談スレ(上記したらば内)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9783/1190297542/l50
予約専用スレ(同上)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9783/1190297091/l50


アニロワ2ndまとめwiki
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
ツチダマ掲示板 (ID表示の議論スレ有り)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/6346/
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館2 (ID非表示の毒吐きスレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1189927987/l50



テンプレは>>2-8辺りに


※ 現在、この「アニキャラ総合」板において大量の「アニメキャラバトルロワイアル」の名を冠したスレッドが存在していますが、
  これら全ては一人もしくは複数の乱立荒らしが立てた物であり、当企画とは全く何の関係も無い事をここに明記しておきます。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:10:12 ID:OQo5DVuR
・参加者リスト・(作中での基本支給品の『名簿』には作品別でなく50音順に記載されています)

7/7【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
○スバル・ナカジマ/○ティアナ・ランスター/○エリオ・モンディアル/○キャロ・ル・ルシエ/○八神はやて/○シャマル/○クアットロ
6/6【BACCANO バッカーノ!】
○アイザック・ディアン/○ミリア・ハーヴァント/○ジャグジー・スプロット/○ラッド・ルッソ/○チェスワフ・メイエル/○クレア・スタンフィールド
6/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○ランサー/○間桐慎二/○ギルガメッシュ/○言峰綺礼
6/6【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○カレン・シュタットフェルト/○ジェレミア・ゴットバルト/○ロイド・アスプルンド/○マオ
6/6【鋼の錬金術師】
○エドワード・エルリック/○アルフォンス・エルリック/○ロイ・マスタング/○リザ・ホークアイ/○スカー(傷の男)/○マース・ヒューズ
5/5【天元突破グレンラガン】
○シモン/○カミナ/○ヨーコ/○ニア/○ヴィラル
4/4【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル/○ジェット・ブラック/○エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/○ヴィシャス
4/4【らき☆すた】
○泉こなた/○柊かがみ/○柊つかさ/○小早川ゆたか
4/4【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗/○シュバルツ・ブルーダー/○アレンビー・ビアズリー
4/4【金田一少年の事件簿】
○金田一一/○剣持勇/○明智健悟/○高遠遙一
4/4【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル/○高嶺清麿/○パルコ・フォルゴレ/○ビクトリーム
4/4【天空の城ラピュタ】
○パズー/○リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ/○ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ/○ドーラ
4/4【舞-HiME】
○鴇羽舞衣/○玖我なつき/○藤乃静留/○結城奈緒
3/3【R.O.D(シリーズ)】
○アニタ・キング/○読子・リードマン/○菫川ねねね
3/3【サイボーグクロちゃん】
○クロ/○ミー/○マタタビ
3/3【さよなら絶望先生】
○糸色望/○風浦可符香/○木津千里
3/3【ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
○神行太保・戴宗/○衝撃のアルベルト/○素晴らしきヒィッツカラルド
2/2【トライガン】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド
2/2【宇宙の騎士テッカマンブレード】
○Dボゥイ/○相羽シンヤ
2/2【王ドロボウJING】
○ジン/○キール

【残り82名】
3名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:11:23 ID:OQo5DVuR
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
 「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f3/304c83c193c5ec4e35ed8990495f817f.jpg

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24
4名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:12:24 ID:OQo5DVuR
【書き手の注意点】
・トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします
・無理して体を壊さない。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・完結に向けて決してあきらめない

書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。

書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。

書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
 携帯からPCに変えるだけでも違います。
5名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:13:31 ID:OQo5DVuR
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。

【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては議論スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
6名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:15:35 ID:OQo5DVuR
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。

【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
・初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
・予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。

・予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手

【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
まとめwikiを参照のこと
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
7名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:16:37 ID:OQo5DVuR
現在、この企画には二名の粘着荒らしが確認されています。(通称・CとG)
その内の一人、Cの詳しい来歴などは以下を参照の事。

2chパロロワ事典@Wiki‐キャプテン
http://www11.atwiki.jp/row/pages/203.html

また、単発IDで「ふーん」「あっそう」「つまらない」「どうでもいい」などの1行煽りレスや、
他スレや外部の毒吐き掲示板からのコピペを延々と繰り返す粘着荒らしがGと呼ばれています。
これらの人物には構うだけ無駄ですので、レスなどはせずにスルーしておきましょう。


・荒らしが出たら?                 → スルーしましょう
・C・G本人や、C・Gっぽい人、を見かけたら?     → スルーしましょう
・どうしてもそいつらにレスしたくなったら?     → 毒吐き若しくはC・G観測所に書き込みましょう
・吊られるやつは荒らしと同レベル。スルーしましょう
・吊られる奴を叩くのも吊られた奴と同レベル、スルーしましょう。
・荒らしレス〜吊られレス、その一連のレス塊をまとめてスルーしましょう。

※専ブラの御利用を強く強くお奨めします。

関連リンク
アニロワ毒吐き所(ツチダマ掲示板)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/6346/1188116040/l50
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd毒吐きスレ・別館2(ID非表示の毒吐きスレ)http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1189927987/l50
C観測所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/4651/1170582458/l50
G観測所 http://tmp6.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1184658777/l50
8THE OPENING:2007/09/21(金) 23:17:41 ID:OQo5DVuR
 闇が広がっている。
 漆黒の闇だ。

 俺は闇が好きだ。
 闇は、自分を、自分の過去を、自分の宿命を、全て飲み込んでくれる。
 闇の中に生きる俺に、闇だけが俺に安息を提供してくれた。

 俺は、まどろみの中、夢と現の境を漂っているのだと思っていた。
 その声を聞くまでは。

「そこに居るのかい、兄さん」
「……シンヤか」
 朦朧としていた意識が、急激に覚醒する。


 徐々に目が慣れてくると、周囲の様子がおぼろげに浮かび上がってくる。
 どうやら、此処は広い部屋の中のようだ。
 そして、この場には俺とシンヤ――テッカマンブレードとテッカマンエビルの他にも、多数の人間が居る様だった。
 最初は衣擦れの音と呼吸音が、そして段々と人の声――不安げな会話音が場を満たす。
 遠くでなにやら怒鳴り散らす声も聞こえるようだ。どうやらここは相当に広い空間のようだ。
 だが、それ以上は分からない。
 それらのことに気を裂く余裕は、俺には無かった。
 最も危険で最も重大な存在は、既に俺の目の前に立っているのだから。
「コレは何だ? いつの間に俺を連れてきた? これもお前達ラダムの仕業か?」
「フフ、僕達にこんな真似が出来るのならば、とっくの昔に実行に移しているさ。兄さんを殺すためにね……」
 その言葉には妙な説得力があった。
 だが、ラダムの仕業で無いならば、一体これは……!?

 そう思った、次の瞬間だった。

 突然、目も眩むほどの光がその場を満たした。
 地面が、円柱状のその部屋の壁が眩い光を放っている。渦巻きのような模様で……
「こ……これは!?」
「兄さん、あそこだ!」
 シンヤが示すその先には……一つの椅子が、それも玉座と呼ぶべき大層な代物が聳え立っていた。
 そこに鎮座する一人の男を誇示するかのように。


「ようこそ諸君。初対面のものもそうでないものも居るようだが、一応名乗っておこう。
我が名は、螺旋王ロージェノム。覚えたければ覚えておくが良い」
 男は低い、威圧感の溢れる声でそう名乗った。

「螺旋王? ロージェノム……?」
「何者だ……?」
 ざわざわと、場が乱れる。それと同時に、殺気が周囲から溢れ出した。
 どうやらこの場に居る人間の中には、血の気の多い者が多いようだ。
 しかし、当の螺旋王は、全く動じる素振りも無く、言葉を紡いでゆく。

「だが、名前などどうでも良い事だ。大切なことは別にある。
よく聞くがいい。
重要な事は、お前たちは今から全員で、最後の一人になるまで殺し合うこと。
そして、その一人以外は、全員死ぬ、ということだけだ」
9THE OPENING:2007/09/21(金) 23:18:43 ID:OQo5DVuR
「!?」
 意味不明で不穏な、だが有無を言わせぬその宣言が部屋中に木霊する。
 周囲の混乱がピークに達してゆく。
 そしてその混乱をさらに助長するかのように、螺旋王の言葉は続く。
「私は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めている。
これは言わばそのための実験。お前達は、それを見定める上でのモルモットだ。
手段は問わん。貴様らの中から、最も優秀な一人を選び出せ。
生き残りゲームだとでも考えて貰って結構だ。
そう、ゲームだ。命を懸けたな……」

「そこまでにしておくんだな、思い上がった虫ケラめ!」
 突如、何物かの声が響いた。
 いや、俺はこの声を知っている。この声は――
「お前は――モロトフ!!」
 そう、ラダムのテッカマンにして指揮官。
 憎むべき俺の宿敵の一人、テッカマンランス・モロトフだ。
「ほう、貴様も居たのか、出来損ないのブレード。
好都合だ。貴様もあの世に送ってやろう……この虫ケラの次にな……!」
 そう言うと共に、モロトフはロージェノムの元へと向かう。
 他の人間達も、モロトフに続かんとばかりにいきり立っている者が多数居るようだ。
 早くもロージェノムとやらの計画は破綻しかかっているかに見えた。
 だが……

「ふむ、異星生命体に改造されし螺旋生命体か。
しかしサンプルは既に2体居る。
このまま一参加者の目に余る行動を見過ごすのも実験の妨げになるな……」
 当の螺旋王は、さも当然とばかりに落ち着き払っている。
 さながら。これも計算の内と言わんばかりに。
「まあよかろう。特別に貴様はこの螺旋王ロージェノムが相手をしてやろう。かかってくるが良い。
ああ、そういえば貴様達はコレが無ければ話にならんのだったな? そら、くれてやる」
 そう言うと、ロージェノムはモロトフにあるものを投げよこした。

 この光煌く結晶は……テッククリスタル!
 そう、この螺旋王とやらは、わざわざ没収していたテッカマンにとっての核とも言える存在を、敢えてその持ち主へと返したのだ。
 そして、ゆっくりと立ち上がるロージェノムの仕草は、面倒な仕事に望むかのようにすら見える。
 絶対的な優位を確信した者の見せる、余裕だった。
 そして、それがモロトフの苛立ちを臨界点に押し上げる。

「……言いたいことはそれだけか? 
良いだろう! 宇宙の塵となって自らの過ちを悔い改めるが良い!! テーック、セッターーー!!」
 次の瞬間、完全に臨戦態勢となったテッカマンランスが、ロージェノムへ向かって突進する。
「死ねぇ――――ッ!!」
 そして、激しい衝撃音が室内を轟く。

 しかし――
「ちぃッ! バリアかッ!!」
 ランスの攻撃は、ロージェノムの目前で、淡い緑の壁によって遮られ、届かない。
「螺旋力を利用したバリアーだ。その程度の攻撃では私には指一本触れられんぞ?」
「ほざけッ、ならばコレでどうだッ!!!」
 そういうや否や、ランスのプロテクターが開き……不味いッ!!
「危ないッ!! 全員伏せろ―――ッ!!」

「ボルテッカァァァ―――――ッ!!!」
10THE OPENING:2007/09/21(金) 23:19:48 ID:OQo5DVuR
 ランスの絶叫と共に、凄まじいまでの爆音と衝撃が室内に充満する。
 砕けた床や壁の破片が、もうもうと立ち込める。
「クッ、これでは他の人間に被害が……!」
「いや、そうでもないみたいだよ兄さん」
「何!?」
 シンヤに言われて改めて周りを窺う。
 確かに、凄まじい衝撃の割には、周囲の人間は皆無事……それも、無傷に近いようだ。
「馬鹿な……あの爆発に巻き込まれていながら……!?」
「それだけ、あのバリアが高性能ということなんじゃないかな?」
「……では、まさか……!」

 土煙が晴れてゆく。それと共に、ランスの姿が浮かび上がる。
「フッ……如何に強固なバリアと言えども、この至近距離からボルテッカを食らえば……」
 ランスの周囲は、ボルテッカの軌跡が綺麗に抉り取られているようだった。
 そして、その地面を抉る傷跡の先には……
「……何ッ!?」
 螺旋王ロージェノムが、そこに居た。
 先ほどと寸分たがわぬ、傷一つ無い姿で。
「この程度とはな。片腹痛いわッ!!」
「バカな――ぐはァッ!」
 嗚咽と同時に、鈍い炸裂音が弾ける。
 そして次の瞬間には、ランスの体は遥か後方の壁中へとめり込んでいた。
 ロージェノムの一撃……そう、唯一撃の正拳が、ランスを弾き飛ばしたのだ。

「見ての通りだ。お前たちが足掻いたところで我が螺旋力の前では無力そのもの。
そして――もう一つ、首輪についても説明しておいてやろう。貴様たちの首についているそれだ」
「――!」
 言われて始めて気付くほどに、その首輪は違和感なく、まるでそれが当然かのように、シンヤの首にも、俺自身の首にも嵌っていた。
 一体、いつの間に嵌められたというのか?
「その首輪には、特殊な反物質――爆薬が詰まっている。
先ほどの男のように私に歯向かったり、実験に支障を来たす様な行動を取れば――」
 その刹那。

 壁にめり込むランスの体――その首が、閃光と共に爆発した。

「こうなる。
まあ、爆発自体は内向的なものだから他への影響は少ないが、本人は確実に生命活動を停止するだろうな。
それと、実験の円滑な進行の為に、禁止区域に侵入してもこの首輪は爆発する。肝に銘じておくことだ。
そして――」

 淡々と、その『実験』についての説明を続けるロージェノムの言葉を遮るものは、最早存在しなかった。
 その時には、もう既にロージェノムの声だけが、その場を支配していた。
 爆煙の中に残ったランス――モロトフの変わり果てた姿が、そうさせていたのだ。
「貴様らの中には、先ほどの男のように私に挑みたいものも居るだろうが……生憎と、貴様ら全員を相手にしていては実験にならん。
まあ、最後の一人に残ったならば、また私が直々に相手をしてやろう。爆弾だのバリアだのの小道具を抜きにな。
それだけではない。栄誉ある最後の一人は、私にとっても貴重な個体だ。
その者が望むことを何でも叶えてやることにする。億万長者にでも不老不死にでも、なんにでもしてやろう。
その栄冠を得るために、殺し合え。死力を尽くしてな……!」

 その場の人々は、怒りとも、悲しみとも、諦めともつかない混沌とした感情で沸きあがっていた。
 だが、目の前の男――シンヤの感情は、その中でも一際異質で、その向けられる先も異なっていた。

「望みを叶える……? フフ、あの男は何を言っているのやら。僕の望みは、もう殆ど適ったも同然なのにね。
兄さんと命を賭けて戦える、このステージを用意してくれただけで僕はもう満足さ。
さあ、兄さん。始めようか?
僕が必ず兄さんを殺してあげるよ……」

 目も眩むような闇が、その空間を侵食してゆく。
 ドス黒い、憎しみという忌むべき闇が……
11名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:22:06 ID:+JsZfrnn
 
12名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/21(金) 23:22:45 ID:BEUS0h/9
 
13名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:03:49 ID:V7AWXkvI
   
14 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:04:27 ID:G7HNe0RL
投下します。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:04:59 ID:V7AWXkvI
      
16名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:04:59 ID:XEK28AVk

17名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:05:28 ID:iqjhsG3e
 
18名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:07:00 ID:9houBmO+
 
19名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:07:06 ID:YA9sUGWJ
              
20JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:07:07 ID:i49A+mUq
その昔 若き穴掘りがいた
思いのまま進む穴掘りがいた
   (中略)
地を貫き 天に近づき
無理を通し 道理を蹴っ飛し
やがて穴掘りはあっけなく死んだ
恋人と約束をした日に死んだ
いくばくかの涙が流れ
葬送がとり行われたが
穴掘りのドリルはまだ動いていた

彼を慕う人々の心に
穴を掘りつづけていた

■ ■ ■
21名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:08:16 ID:DVXdG3O4
22名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:08:36 ID:BEUS0h/9
 
23JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:08:42 ID:G7HNe0RL

【C-7】に位置する消防署の車庫。
その中に、一人の女性が座っていた。
豊満なボディに赤い長髪。纏う服装の大胆さは男を惑わすショーガールのようだ。
彼女は大グレン団一のスナイパー、ヨーコ。
遥かな未来の世界。多くの人々が地中で暮らす中で、彼女は少数派――いわゆる地上で暮らす女だった。
彼女が大グレン団に入るキッカケになったのは、ある人物との邂逅。
自分の住む村に毎日のように襲い掛かる敵・ガンメンとの戦いの最中で出会った男。
逃げない、引かない、振り向かない、常に前を見続ける漢・カミナだった。
気がつけば……ヨーコは大グレン団の専属スナイパーとして活躍し、カミナと愛を紡ぐ仲になっていた。
それだけ、彼には人を惹きつける何かがあった。
しかしそれも彼女にとってはもう昔の話。
ヨーコのいた「世界」のカミナは、螺旋王ロージェノムの部下の襲撃を受けて戦死したのだから。

「……10倍返しって言ったのに……心に10倍穴を開けてどうゆうつもりよ……馬鹿カミナ」

そう、ヨーコは大グレン団によるカミナの葬儀の真っ最中に、螺旋王によってこの世界に招かれたのだ。
突然の情景の変化、未知なる戦士と螺旋王の衝突。
目の前で起こるほとんどの情報は、恋人の死で思考が停止していた彼女に受け入れられる事はなかった。
彼女は気づいていなかった。そこに死んだはずのカミナがいたという事実さえも。

「……アタシ……夢でも見てるのかな。何が……何だか……」
「――お姉さん、さっきからずっとここに座ってるけど『これ』の管理人さん? 夢心地なとこ悪いけど、どいてくんないかな。
 俺、あんたがもたれている『こいつ』に用があるんだけど」

彼女は気づいていなかった。自分の目の前に、さっきからずっと少年が立っていたことも。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:09:16 ID:R9lfQV/Z
25名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:09:40 ID:YA9sUGWJ
         
26名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:09:55 ID:AsSqWZo9
 
27名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:09:59 ID:XEK28AVk

28JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:10:01 ID:G7HNe0RL
「………………え、あ、だ、誰? 獣人? ガンメン乗り……? 」
「顔?……別にどこも海苔なんて着いてないけど。 これでも清潔にしてるんだぜ? 職業の分もカバーしちまうくらい。
 あ、車庫のシャッター勝手に開けさせてもらったから。さぁ立ってよ……」

少年はため息をつきながら、ヨーコの体を支えて立ち上がらせる。
突然のエスコートにヨーコは赤面して声をあげたが、少年は構わず彼女を『それ』から離れさせる。
そして右手から鍵を出して『それ』の『扉』に差し込み、錠を開けた。

「何なら『こいつ』でお姉さんの寝耳に水をかけてあげようか? 」
「……ここは一体どこなの? 夢にしては……」
「『皆で殺しあう』なんて、悪夢にしては笑えないけどね」
「……こ、『殺し』? ……あは、やっぱアタシどうかしちゃったのかな」
「そんな格好してる時点でどうかしてるとは思うけど……夢の中では自分をさらけ出すタイプ? 」

皮肉交じりに笑いながら、少年は扉を開いて『それ』の中に飛び乗り『エンジン』を吹かす。
この時ヨーコは、初めて自分が今まで背もたれに使っていた物体に気がついた。
箱のようなフォルム。全身に塗りたくられた血のような赤色。足元には黒い輪。
グルグル巻きにまとめられた長い管。前方についたブタ鼻と妙な角。
世間一般に知られている形とは若干異なるものの、それはまさしく『消防車』。
彼女に世界にはない、火消しの仕置き役。

「これ……『ガンメン』!? 」
「じゃあね。お姉さん」
「あ、ちょっと、待ちなさいよ! 」

慌ててヨーコが消防車に付いていた梯子に飛び乗り、そのまま外回りを伝って助手席まで移動する。
そして少しづつスピードを上げていく消防車に振り落とされないように気をつけながら、彼女は助手席の窓から車の中へ侵入した。
こっそり少年が助手席の窓を開けていたとも知らずに。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:11:00 ID:R9lfQV/Z
30名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:11:06 ID:V7AWXkvI
       
31名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:11:50 ID:UJ0FNzZG
 
32名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:11:55 ID:XEK28AVk

33JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:12:17 ID:G7HNe0RL
「ね、ねぇ! これあんたのガンメン? あなた人間じゃないの? 」
「正真正銘夢見がちなお年頃の少年でーす……ちょっと普通じゃないけどね」

少年は左ポケットからピッと一枚の紙を取り出す。そこには流れるような文字でこう書かれていた。


『悪夢のようなパーティーの主催役
                  盗ませていただきます
                             HO! HO! HO!
                                        居眠り中の王ドロボウ』


「ど、泥棒……あんたその歳で泥棒なの!? 」
「ビンゴ! ちなみにこいつは宴の不手際を取っちまった主催者サマへの“辞任勧告”。
 これだけ集まった来賓客を『悪夢』で持て成そうなんて“事前通達”がなってないぜ。
 さっさと居場所を見つけて、あの螺旋王とかいう爺さんのネジを締め直しに行ってやらないと。
 そうだ……ついでに謝罪(目覚まし時計)と賠償(気持ちのいい朝)でも要求しようかな」
「は、はは……何がなんだか……」
「悪いけど発車時刻は過ぎちゃったから、このままお姉さんを乗せて行かせてもらうよ。
 なんてったってコイツは……夢の世界から現実という終点まで連れてってくれる、極上の特急列車だぜ? 」

少年はアクセルを思いっきり踏んで、消防車を驀進させる。
彼にとって人生は祭りだ。
喜びは踊りに、怒りは叫びに、哀しみはメロディーに。そしてお楽しみは、これから。


音頭盗ります王ドロボウ。新たな伝説の始まり始まり……。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:12:53 ID:R9lfQV/Z
35名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:14:01 ID:XEK28AVk

36名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:14:21 ID:V7AWXkvI
       
37JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:14:36 ID:G7HNe0RL
【C-7/消防署の外/1日目-深夜】

【ジン@王ドロボウJING】
 [状態]: 健康。HO! HO! HO!
 [装備]:鈴木めぐみの消防車@サイボーグクロちゃんを運転中。
 [道具]:デイバッグ、予告状のメモ、支給品一式(ランダムアイテムがあと1〜2つあります)。
     鈴木めぐみの消防車の鍵と運転マニュアル@サイボーグクロちゃん
 [思考]
  基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
  1:どこに行こうかなっと。
  2:キールはそのうち会えるだろうから今はいいかな。
 ※ジンの参戦時期はアニメ本編終了後です。
 ※鈴木めぐみの消防車@サイボーグクロちゃんの機能説明の情報等はマニュアルに書いてある模様。
  貯水量は現在(100/100)。ちなみにゲル○グには変身出来ません。

【ヨーコ@天元突破グレンラガン】
 [状態]:健康。しかし精神が不安定
 [装備]:無し(隠し武器のかんざし、超伝導ライフルは没収されました)。
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(詳細不明なアイテムが1〜3つ入っています)
 [思考]
  基本:混乱。早く夢から覚めなきゃ……。
  1:あんた何者なの?
  2:成り行きで彼のガンメン(消防車)に乗ってしまったわ!
※ヨーコの参戦時期はアニメ第8話のラストから。(つまりカミナ死亡後)です。
※ヨーコは最初の螺旋王の説明をまるで聞いていません。カミナがいたことすら気づいてません。
38JING in ROYAL『E』  ◆hNG3vL8qjA :2007/09/22(土) 00:16:04 ID:G7HNe0RL
投下完了。支援感謝。
消防車については勝手ながらとある方のアイディアを拝借させていただきました。
39 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:25:36 ID:T+/BwfDZ
それでは投下入ります。
タイトル『この血塗られた指先で救えるのなら』
テッカマンブレードOP2、永遠の孤独の出だしのパロ。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:26:03 ID:EmYkYGG1
41名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:26:26 ID:XEK28AVk

42名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:26:32 ID:G7HNe0RL
  
43名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:26:37 ID:R9lfQV/Z
44この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:28:31 ID:T+/BwfDZ

 自然公園に植えられた林の中、姿を隠すように彼女はそこにいた。
 いや、実際に隠れているのだ。
 彼女が最初に居たのは川のすぐそば。向かい側にはデパートが見えていた。
 だが、橋を渡って向かい側に行く事はできなかった。橋の上には障害物がなく、そこを行く事がたまらなく恐かったからである。
 そして逃げるように、けれども遠くまで逃げる気力もなかったため、障害物の多いここに身を隠したのだ。

「おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん……!」

 体の震えが止まらない。唇は、助けを求めるように同じ言葉を紡ぎ続けている。
 小早川ゆたかは、幹に背を預けながら、大粒の涙をこぼしていた。
 ……最初、夢かと思った。
 おねえちゃんたちの他に、漫画やアニメのキャラクターみたいな服装をした人たちが、沢山いたあの場所。
 事実、あのおじさんが変身した瞬間、「おねえちゃんから借りた漫画で、こんなシーンあったかな?」などと考えてしまったほどだ。
 だけど――
 あの赤は、
 あの爆ぜる音は、
 あの――錆びた鉄のような嫌な臭いは。
 転んだ時などに、傷口から滲み出る、血ではなかったか……?
 がくがく、がくがく、体が震える。先程よりも激しく、現実を理解したが故に。
 ゲーム、殺し合い。そういえば、昔、そんな設定の映画があったような気がする。

「……そうだ、支給品」

 ふと、気づいた。
 言っていたじゃないか、殺し合いのために、道具を支給する、と。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:28:47 ID:V7AWXkvI
    
46名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:29:03 ID:XEK28AVk

47名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:29:13 ID:AsSqWZo9
 
48この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:29:46 ID:T+/BwfDZ
(なにがあるの、かな)

 一秒でもいいから、この現実から目を逸らしたい――そんな思考があった事を、ゆたか本人も気づけなかっただろう。
 中には、水と食料、地図に方位磁石といった基本の道具。
 他には、と思い奥に手を伸ばすと、ちゃり、という感触。

「これ、ペンダント?」

 取り出したのはアクセサリー――少なくともゆたかにはそう見えた――であった。
 小さな尖った石に、くるっと細い金属がらせん状に巻きついている。
 シンプルだけど、ちょっとかわいいかも、と思い首にかけ、もう一度デイバッグを探す。
 すると、固い感触。武器かな、と思い若干背筋が寒くなったが、実際は違った。

「えっと、なんでバッグの中に」

 それはカバンであった。見間違いようのない、取ってのついた長方形のカバンだ。

「なんかマトリョーシカみたいだね」

 もっとも、この場合丸いマトリョーシカから四角形の人形が出てきたくらいの奇妙さはあるのだが。
 少しだけ和らいだ気分で、それを開き――絶句した。
 まず、最初に目に付いたのは『遺書』、と書かれた封筒だ。すぐ近くに、筆と紙もある。 
 他にも、ロープ、練炭、睡眠薬――その他、様々なモノが収納されている。

「こ、これって……」

 もし、『遺書』と書かれた封筒が無ければ、もっと別の解釈ができたのかもしれない。
 そう、不眠症の冒険家さんのカバンなのだと。ロープは崖を降りるときに、練炭はキャンプの時にでも使うのだと、強引に理解させる事ができたかもしれなかった。
 けれど、その封筒が告げる、これらの道具の意味は――
49名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:30:41 ID:XEK28AVk

50この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:30:56 ID:T+/BwfDZ
「自殺の、道具なの?」

 なんで、こんなものが。そう思ったけれど、すぐに思い至った。
 ああ、きっとわたしみたいな人の為だ。
 体が弱くて、殺しあうなんて怖くって――殺されたくなくて。
 そんな人が使う道具なのだと思った。
 寒気と共に手が震え、ほとんど無意識にカバンを投げ捨てた。
 がしゃん! と散乱する道具。その中に一つ、見慣れない、けれども知識としては知っているものが見えた。
 カバンを投げ出した時にひっかかったのだろうか? そこには、鉄の塊が転がっていた。
 否。それを鉄の塊などと表現するわけにはいくまい。
 殺戮という概念を圧縮し、二つの手で握れるようにしたモノ、とでもいうべきか。
 M500ハンター。
 米国スミス&ウェッソン社が開発したそれは、頭のネジが一本どころか全て外れつつも部品と部品が引っ掛かってなんとか形を保ってる――そんな、発案者は気が違ってるとしか思えない大型拳銃である。
 威力は高いが反動が凄まじく、大の男ですら手に余るような代物だ。それを、こんな少女に支給するなど、あの男も発案者と同じく正気ではない。
 人どころか、猛獣すら十分に殺戮しきる威力を内包したそれを、ゆたかはそっと持ち上げた。

(重い――拳銃ってこんなに重いんだ)

 ……実際はこの銃が特殊すぎるだけなのだが、ゆたかにそれを知る術はない。いや、彼女の身体能力からすれば、一般的なサイズでも同じ感想を抱くだろうか?
 ともかく、理解できた事は一つある。
 自分が――こんなモノを使って戦う事など、不可能という言葉では生ぬるいほどに無茶苦茶だという事だ。
 寒気と吐き気が絶妙に交じり合った最悪の気分の中、散乱した道具を拾い集める。
 それは、考えた行動ではなく、「散らかしちゃだめだよね」という、日常にしみこんだ反射のようなものだ。
 一つ一つ、道具をカバンに仕舞い込む。
 だが、片付けるという行為は、物を見て、それを仕舞わねばならない。
 そう、睡眠薬を、練炭を、遺書と書かれた封筒を。
51名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:30:57 ID:V7AWXkvI
       
52名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:31:58 ID:G7HNe0RL
  
53この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:32:20 ID:T+/BwfDZ
(……睡眠薬とかなら、苦しまずに死ねるのかな?)

 暗く、重い泥が胸に溜まっている。
 思考はひたすらネガティブになり、生きる希望は薄れ、自殺という選択肢ですら「それもいいかも」とすら思ってしまう。
 いや、今の彼女には、それが最も優れた手段であると思えた。
 どうせ、このまま居ても、誰かに殺されてしまうだけだ。それはきっと苦しくて、痛くって――想像の中ですら気が狂いそうになる。
 筆を取り、紙にさらさらと字を書き記す。筆なんて習字や美術の授業でしか使った事がなかったので、少し手間取ってしまったけど、なんとか書き終えた。
 それを膝の上に置くと、ざら、と睡眠薬を掌に載せる。そういえば、睡眠薬の致死量ってどのくらいなんだろう、とも思ったが、とりあえず沢山飲んでしまえばいい、と思いなおす。
 ごくり、と唾を飲む。さあ、これを飲めばこんな場所に居なくても済む。誰かに、殺されたり、殺したりしなくても済む。
 そう、飲めばいい。すぐに逝ける。楽に逝ける。
 飲めばいい。
 飲めばいい。
 飲めばいい――のに。

「う――ぅぅぁ」

 なのに、なんでそれだけの事ができないんだろう?
 腕が小刻みに震え、掌から睡眠薬がこぼれ落ちていく。それと同時に、つい昨日まで続いていた日常があふれ出した。
54名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:33:24 ID:Nj7WKDAq
 
55名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:33:27 ID:mO1ruzbw
 
56この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:33:33 ID:T+/BwfDZ
 ――そう、中学の頃は病気がちで、学校の行事とかもあんまり参加できなくて、友達もあんまりいなくて。

 ――だから、みなみちゃんと友達になれた時は、すっごく嬉しくて。

 ――それから、パトリシアさんと田村さんと友達になって、賑やかで、毎日がすごく楽しくて。

 ――そう、そうだ。この前の文化祭。みんなでチアリーディングをやったんだ。

 ――すごく緊張したけど、みんなと一緒に一つの事をやりとげたのが、本当に、嬉しく、て――――
57名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:34:10 ID:5dPidO/4
 
58名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:34:14 ID:V7AWXkvI
        
59この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:34:48 ID:T+/BwfDZ
 気づいたら、涙は止まらなくなっていた。
 そう、学園祭も終ったんだから、もう少ししたら冬休み。クリスマスにお正月があって、それが過ぎたら春。
 おねえちゃんたちが卒業して寂しくなるけど、それを覆い隠すくらい楽しい日々が続いている――はずなのだ。
 死にたくない。死にたくない。死にたくない!
 まだ、おねえちゃんたちと一緒にいたい。みなみちゃんたちと一緒にいたい。友達と一緒に、いたい。

「やだよぉ、みなみちゃぁん、おねえちゃぁん――」
 あるいは、その呟きが引き金だったのか。
 がさり、と茂みが揺れた。

「おねえちゃ――!?」

 彼女の希望が具現化した言葉、だが、目の前の人影は、「断じて否」とそれを否定する。
 男の人。がっしりとした体つきで、頬に切り傷がある。瞳は鋭く、自分の柔肌なんて、視線だけで切り裂かれてしまいそうだ。

「あ――あ、あ」

 その姿は、漫画で見た悪役に見えた。
 がちがち、がちがち、白いカスタネットが鳴り響く。
 その人影は、ゆっくりとこちらに――

「や、だ」

 頭が真っ白になる。その真っ白な世界に、赤い色が張り付く。変身したおじさん。弾け跳んだおじさん。
 赤赤赤赤どす黒い赤色。その恐怖心は濃厚なワインの如く。アルコールが回るかなように思考を犯す。
 自分もああなるんじゃないか、と思うと、平静ではいれらるはずもない。

「こないで! こないでください! おねえちゃん! 助けて、おねえちゃん、おねえちゃん!」

 知ってる。助けなんてこない。ここは、きっとそういう世界だ。
 男の人がすぐ近くまで来ている。殺される。殺されちゃう。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:35:55 ID:V7AWXkvI
             
61この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:35:59 ID:T+/BwfDZ
(……あれ?)

 けれど、怖れた衝撃は訪れず、体を包む、固い、けれどもどこか柔らかい肉の感触。抱きとめられたのだ、と理解した彼女に、男はそっと告げた。

「大丈夫だ、俺はこんなゲームに乗ってはいない」

 呆然と、その言葉を聞き終え――涙をこぼした。
 それは恐怖ではなく、安心から流れるモノ。黒い泥を洗い流す、心の洗浄液であった。

     ◆     ◆     ◆

 自己紹介を終える頃には、ゆたかはようやく落ち着いた。
 
「ご――ぐすっ、ごめんなさい、えっとDボゥイ、さん? いきなり失礼な事を言っちゃって」
「構わない」

 そう答えながらも、彼、Dボゥイこと相羽タカヤは内心で自嘲していた。
 ――始め、通り過ぎるつもりだった。
 自分の目的は相羽シンヤ――ラダムのテッカマンを殺す事。ならば、こんな小さな娘、一緒に居てもなんのメリットもない。
 だというのに、なぜ。
 なぜ、自分はここにいるのか。
 なぜ、この少女と共にいるのだ。
 ……なにを馬鹿な。考えなくても、そんな事は分かっている。

「お姉ちゃん、か」
「え? どうかしましたか?」
「いいや、なんでもない」

 ――お姉ちゃん。
 その言葉が、心に引っ掛かったから。
 その言葉が、妹という単語を連想させたから。
 一度引っ掛かってしまうと、彼女の姿が自分の妹の――ミユキの姿と重なってしまい、見過ごせなくなってしまったのだ。
62名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:36:37 ID:XEK28AVk

63名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:37:05 ID:R9lfQV/Z
64名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:37:07 ID:G7HNe0RL
  
65この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:37:15 ID:T+/BwfDZ
(いや、それだけじゃない)

 知り合いがいない、殺し合いのゲーム。
 故に、戦う事に躊躇いはない。ない、と思っていたというのに。

「あの――」

 しばらく黙り込んでいたためか、少女は躊躇いがちに呟いた。
 小さな、小さな姿。小早川ゆたかと名乗った、少女。

「そ、その――あのっ、この参加者名簿なんですけど……タカヤさんの知り合いはいますか? わたしは――」

 初めて出会った知り合いとの絆を必死に繋ぎ止めるように、言葉を連ねている。
 泉こなた、柊かがみ、柊つかさ――その三人を、わざわざどんな人間なのかと、若干支離滅裂ながらも口にしていた。

(――あの日、ラダムの手によってテッカマンにされたあの日に、今の現状が似ている)

 そんな、気がしたのだ。
 自分の意思とは無関係に大切な物が、人が、場所が奪いさられた、あの日。
 ――このまま放っておけば、この少女もきっと、同じような道を辿ってしまう。

「……考えなかったのか?」
「え?」
「俺が、安心させてからお前を殺そうとしていると、考えなかったのか?」

 一瞬、びくりと体を震わせたが、うーん、と数秒考え込み、

「それはないですよ。Dボゥイさん、そんな悪い人にはみえませんし」

 純真な笑み。疑いのシミ一つ垣間見えない、処女雪のような笑みだ。
 そうか、と答え、空を見上げた。
 空は未だ月が支配している。その月明かりを隠すように、掌を差し出した。
66名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:38:04 ID:UJ0FNzZG
 
67名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:38:13 ID:XEK28AVk

68この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:38:24 ID:T+/BwfDZ
(俺はもう戻れないのかもしれない。けれど、この子は、まだ助かる。まだ、救えるはずだ)

 この少女に、自分と同じ永遠の孤独を味わせる事は、許せない。

(そう、この血塗られた指先で救えるのなら――)

 だが、と思う。
 もし自分がシンヤと相対したら、ゆたかを守るという意志を保っていられるだろうか?
 ――それは難しいだろう。
 相羽タカヤという存在は、例えテッカマンになれずとも、復讐の鬼と化し、戦いに狂うはずだ。
 そう、ラダムは一匹残らず、根絶やしにする。その決意は、微かにも揺るがない。
 
     ◆     ◆     ◆

 Dボゥイ、そう名乗った青年の隣で、ゆたかはぺたりと座りこんでいた。
 自分よりもずっとずっと大きくて、その上、明らかな偽名を使っている青年。本来なら恐がってしかるべきなのだが――

(ぶっきらぼうだけど、悪い人じゃないよね)

 そう考えると、胸の奥から力が湧いてくるような気がした。
 そうだ。なにも全員、こんな殺し合いをしようなんて考えてるわけじゃないんだ。
 だって、みんなだって、殺し合いなんてしたくないはずなのだから。
 ここに呼び出されたみんなにも、自分と同じように日常が存在してるのだから。
 地面に落ちた封筒を見る。遺書、と書かれたそれを掴み――破り棄てた。
 その行動が意味するは決意。こんな馬鹿げた手段は用いない、という宣言。

「どうした?」
「ううん。なんでもないです」

 怪訝そうに問うDボゥイに、両手を振ってなんでもないというアピールをする。

(そうだよ。みんなで――みんなで帰ればいいんだ)
69名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:39:03 ID:G7HNe0RL
  
70名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:39:22 ID:R9lfQV/Z
71名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:39:50 ID:Nj7WKDAq
 
72名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:39:51 ID:csjii6AO
 
73名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:39:55 ID:V7AWXkvI
            
74この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:40:15 ID:T+/BwfDZ
 ぐっ、と胸元にあるペンダントを握り締めた。それは勇気を搾るように、希望を掴むように。
 ――ゆたかは知らない。そのペンダントが、微かに――そう、真の闇の中でしか確認できないほど微かに――明滅している事実に。
 それはコアドリル。遠い異世界に存在するロボット、ラガンの起動キーにして、螺旋力を力に変換させる装置。
 そう――彼との出会いよって生まれた生きようという『想い』が、ネガティブをかき消した彼女の『気合』が、コアドリルを介して螺旋力となったのだ。
 されど、それは雀の涙にも劣るほどに弱く、ちっぽけなモノ。あってもなくても大差はない、その程度の量だ。
 けれども、進化を促す螺旋の力は、確かに彼女の胸の内に存在していた。
 それが、このゲームに風穴を空ける希望の光になるか、それとも、ロウソクの火のように掻き消えてしまうかどうかは――まだ、誰も知らない。
 

 
【E-7の自然公園/1日目/深夜】

【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:泣き続けた事により若干疲労
[装備]: なし
[道具]:支給品一式
 コアドリル(天元突破グレンラガン)
 糸色望の旅立ちセット(さよなら絶望先生)『遺書用の封筒が欠損しています』
 M500ハンター 弾数5/5(現実)
[思考・状況]
1:参加者みんなで脱出したい
2:タカヤさんはいい人だよ
3:泉こなた、柊かがみ、柊つかさを探す
[備考]
 :最終話終了後からの参戦
 :コアドリルが僅かながら反応しています。
 :相羽シンヤとDボゥイとの関係は聞いていません
 :テッカマンランスがDボゥイに対し『ブレード』と言った事に気づいていません。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:41:01 ID:G7HNe0RL
   
76名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:41:03 ID:XEK28AVk

77この血塗られた指先で〜  ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:41:24 ID:T+/BwfDZ
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康
[装備]: なし
[道具]:支給品一式。(支給品は次の書き手の方にお任せします)
[思考・状況]
1:テッカマンエビル、相羽シンヤを殺す
2:それを果たす為なら、下記の思考は度外視する可能性あり
3:この子を守る
4:相羽シンヤ以外と戦うつもりはない、が襲ってくるなら別
[備考]
 :どの時期からの参戦かは次の書き手の方にお任せします。
 :泉こなた、柊かがみ、柊つかさをゆたかの知り合いと理解しました。


*自然公園内部の林の中、破り捨てた遺書が散乱しています。
*さして細かく裂いたわけでもないので、断片だけでもそれが遺書である事は理解できるはず。
*だが、破片一つでは誰が書いたか特定できない。名前が書かれた部分、もしくは泉こなたなら筆跡で分かる可能性も?
78 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/22(土) 00:42:30 ID:T+/BwfDZ
投下終了です。
支援をしてくださったみなさん、本当にありがとうございました。
79嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w :2007/09/22(土) 00:47:41 ID:ud/Xh42O

 糸色望は、混乱していた。
 突然連れて来られた異様な空間。
 目の前で見せ付けられた、突然で不条理な人の死。
 そして、強制的に参加させられた、己の命を賭けたゲーム。
 その全ての状況が、望の精神を蝕んでいた。

 だが、このままここで茫然自失としているわけにはいかない。
 この世界に連れて来られたのは、自分だけではないのだ。
 最初に連れて来られた部屋。そこには、見覚えのある生徒達の姿も見て取れた。
 そうだ。自分は教師なのだ。
 彼女らと合流し、なんとしてでもこのふざけたゲームから生還する。
 そらが、聖職者たる自分に課された使命なのだ。

 望は与えられたデイパックの中を改めて調べてみることにした。
 与えられた支給品を確認し、地図で現在地を確認するためだ。
「ふむ、どうやらここから西へ行けば駅があるようですね。
人の集まるこの場所に行けば、生徒たちとも合流できるかもしれない」
 そう呟くと、望は駅へと向かって歩き出した。
 最愛の生徒達を、絶望の魔の手から守るために……







「……って、なに状況に流されているんですか私は――――っ!!!」
80名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:48:45 ID:mO1ruzbw
 
81嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w :2007/09/22(土) 00:48:50 ID:ud/Xh42O
――アレ、先生?
「大体、こんな状況に放り込まれた人間がそう簡単に状況を把握できる筈が無いでしょうが!!
人が死んだとか言っても知ってる人じゃないし、そもそもアレ人なの?ってカンジだし、
正直『え? 何? ドッキリ??』って反応が関の山ですよ!!
それを素直に事実だと受け入れるだけでも大したものですよ! ええ、私には到底無理ですよ、無〜理!!
大体、地図を一目見ただけで現在地と方角が分かるとか、どれだけ方向感覚に優れる人間なんですか! 普通迷いますよ!!」

――先生、それ以上は自重……(天の声)
「ハッ、いけない、流石に取り乱してしまいましたね(違う方向に)。
ですが、このように状況に流されるのは非常に危険なのです!
過去を振り返っても、状況に流された故の悲劇が、歴史には多数刻まれているのです!
・断り切れないまま10年ローン契約成立
・みんなが飲んでいるからと飲酒運転して取り返しのつかない事に
・出来ちゃった婚のそれから
・なんとなく辞意表明を先延ばし
・でもやっぱり辞意表明しちゃう
・偶然ロボットのパイロットになって宇宙の命運を左右する運命に
・本当は男だといいだせずにラブコメ
・気が付けば世界を救う勇者になっていた
・いつの間にか記録的長期休載
・本命は受かると踏んでのボーダー投票の流れにのってしまって涙目
この様に、状況に流されるがままになってしまうと、とんでもない結末を迎えてしまうものなのです!
いけません!! このまま流れに身を任せてしまっては、私もとんでもない結末を迎えてしまいますよ!!」



……
「・・・・・・。」2分ほど時間が流れた。

「むう……どうにも、突っ込み役がいない状況というのは収まりが悪いですね……
やはり、建前はどうあれ他の誰かと合流したいところですね……一人だと流石に物騒ですし……
ああ、そうだ。念のために与えられた荷物をキチンと確認すべきでしょうか……って、やっぱり流されてる私!? 
でもそれも仕方が……ああっ、でも!!」

……と、糸色先生が悶絶しながら荷物の中から取り出したそれは、一式の衣類でした。
「いや、衣類というかこれは寧ろ……ん? なにやら説明文が……」

『支給品:ゼロの仮面とマント。コレを着れば、貴方もゼロに早代わり!!』

「って、思いっきりコスプレ衣装じゃないですか――――!! 
何なんですかこの悪ふざけは!こういうのは藤吉さんにでも支給するのが筋ってモンでしょうが!!
大体、この仮面とか、こんな構造じゃ前が見えるワケが……おや?
ふむ、この仮面、思ったよりも高性能ですね。内側にモニターのようなものが取り付けてある。
ほうほう、内側からはキチンと外が見えますよ。最近のコスプレはハイテクなんですねえ。
このマントも、実際に着てみれば思いのほか動き心地が……って……」

「いつの間にかバッチリ着ちゃってるじゃないですか―――!!」
82嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w :2007/09/22(土) 00:49:56 ID:ud/Xh42O
 糸色先生がノって参りました。
「まったくもう、ここまで自分が流れに乗りやすい性格だったとは……
しかし、人間というものは、案外流れに乗りやすい性質を持っているものですからね……
・行列があると並んでしまう
・人だかりができていると覗いてしまう
・投票があると投票してしまう
・王道展開
・気が付けばトップマーダー
・ニート生活今年ではや10年
・いつの間にか夏休み終了。宿題? テスト? なんのことです?
・さすが社会人だ、夏休みなんか無いぜ。
矢張り私も日本人。右にならえ文化が骨身に染み込んでいるのでしょうか。
そう考えれば、この『流れ』というものから逃れるのは中々困難なのかも知れませんね。ハァ……」
 そして、ひとしきり絶望して満足した糸色先生が、コスプレを脱ごうとした、まさにその時です。

「ゼロ!! ゼロなんですね!!」
「……へ?」
 突然発せられた声に驚いた糸色先生が振り向くと、
 そこには見知らぬ一人の少女が、自分の元へと駆け寄って来るではありませんか。

「えっと……どちら……様でしょうか?」
「何言ってるんですか、カレンですよ!! 
でも、まさかゼロもこの異常事態に巻き込まれていたなんて……これも貴方の作戦の一環なのですか?」
「え? いや、私も何がなにやら……」
「では、これはブリタニアの陰謀か……奴等、日本人相手だと思って悪趣味な真似を……!」
「…………」

 もう皆様お分かりの通り。
 これはつまり、このカレンという少女が、糸色先生のことを、
 コスプレ衣装の持ち主こと『ゼロ』本人だと勘違いしてしまっている、ということなのでした。
(ヤバイ!! これはまた、完全に状況に流されてますよ!! こ、このままズルズル行ってしまっては、本当に取り返しが付かなく……)
「ゼロ? どうかしましたか?」
「え? いえ、何でもありませんよ、なんでも!!」
「そうですよね、こんなの、何てことありませんよね!」
「え、ええ……」
「私、ゼロならきっと何とかしてくれるって信じてますから!」
「は、はあ……」
「せめて、ここから生還するまでは、ゼロは私が命に換えてもお護り致します!」
「まあその……何と言うか……宜しくお願いします……」

 こうして、糸色先生は、このレジスタンスの少女、カレンと行動を共にすることになったのでしたとさ。
 絶望先生の明日はどっちだ!?



「 絶望した!!! 流されるままの人生に絶望した!!! 」


「……? ゼロ、何言ってるんですか……?」
83嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w :2007/09/22(土) 00:51:03 ID:ud/Xh42O
【F-6西部 一日目 深夜】
【糸色望@さよなら絶望先生】
[状態]:絶望
[装備]:ゼロの仮面とマント
[道具]:荷物一式(支給品の残り数、内容不明)
[思考]
1: 絶 望 し た ! !

【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:普通
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(詳細不明)
[思考]
1:ゼロを守る
84嗚呼川の流れのように ◆P2vcbk2T1w :2007/09/22(土) 00:52:10 ID:ud/Xh42O
以上っス
85名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 00:54:02 ID:UJ0FNzZG
 
86名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 04:48:29 ID:aSG9gpTP
つまんねwww
87保守ついで:2007/09/22(土) 05:45:26 ID:9z5s6Si8
:やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 00:53:41 ID:???0
>>398
おいおい、それじゃ忌憚のない意見の方が表に出ちゃった場合、結局毒吐きのが盛んになっちゃうじゃんかよw
まぁ、したらばという道を選んだ以上こればっかりは文句言っても仕方ないかと。
それに、過疎ロワに比べりゃ全然多いほうだぜ?……チクショウッ
407 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 00:55:40 ID:???0
>>406
益々分からん。
感想スレは褒め一色、毒吐きは引かれるほど毒、
ってのが1stのころからの伝統じゃん。
それに関しては、2chの時と何も変わらんぜ。
408 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 00:56:32 ID:???0
つか、なんで今になって感想スレの処遇に危機感感じてんだよみんなw
昨日一昨日とあれだけ問題性挙げられたっていうのに……
409 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 00:58:17 ID:???0
まあ別に褒めなくてもいいけどな。多少の指摘や意見は全く問題ない。
毒はホントに罵詈雑言や根拠言わずに非難みたいなもんが書かれるところだぜ、
今の>>406の根拠不明なしたらばスレ設置非難みたいなさ。
410 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 00:58:49 ID:???0
危機感感じているのは極少数と思われる。
411 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:00:59 ID:???0
つかこの現状でなんでそんなテンション低いんだよお前らw
でも毒が陰鬱な空気なのはソレはソレでい良いことだと思います。雑談したい人が寄り付かなくなるから。
88保守ついで:2007/09/22(土) 05:45:44 ID:9z5s6Si8
412 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:02:39 ID:???0
>>406
それこそ何を今さら。
超極端な例え話。
超有名書き手が、トリつきで超駄作を数レスくらいに渡って褒めちぎったとする。
だが毒吐きでは、これ明らかにNGだろwとか感想つけてるヤツバカじゃねwとか笑われてたりする。
その場合、そのトリつき書き手はどんな気持ちになるだろうか。
実際にトリをつけてなかったとしても、管理人はIPという形でその感想の主が誰かわかるわけで。
とまぁ、気にしてる人はこういう点で気にしてんだと思うよ。いろいろと。
こればっかりはわかる人にしかわからない。
413 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:06:04 ID:???0
そんな極端な例は考えなくてもよいし、その場合毒にいるヤツがくず乙的になるだけだろ。
NG議論は議論スレだからな。
すくなくとも今までまともな議論として2chに感想スレたてることが、
荒らし避けのメリットを超える説得力をもって示されたことがないことからも、
多数派は現状がいいと思っていると解釈するしかないでしょ。
414 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:06:12 ID:???0
>>412
いやだから、褒め感想のレスを管理人に知られたからなんだって言うわけ?
そりゃ毒の方を管理人に知られるとさすがに気まずいが、
毒はこうしてアニロワとは独立した板にあるでしょ?
お前が一体何を気にしてるのか意味不明だよホントw
89保守ついで:2007/09/22(土) 05:46:24 ID:9z5s6Si8
やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:07:04 ID:???0
>>412
その例はおかしいぞ
416 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:10:04 ID:???O
釣りか毒はきから雑談したい人を追い出す高度な作戦なんだよきっと。
ところで議論スレ立てなくていいのか?
417 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:11:20 ID:???0
逆に、ソコまで妙な事を気にするってことは、何かしら心に疚しいことでもあるんじゃないかい?
うん、アンタの口調は覚えた。今後注意する。
418 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:12:36 ID:???0
>>402
したらばは管理人権限でいろいろ弄れる。
要望スレで言ってみれば?
419 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:13:16 ID:???0
要はあれだ、自分の部屋が監視されていたとして、その映像を見ているのが、
「身内で自分に興味関心がある人」と「他人で自分に興味関心がない人」、どっちが自由にのびのびできるかって問題だろ。
発言内容とかの立場的な問題じゃなくて、気分的な問題なんだから、わからない人には理解できないし気にすることでもない。
ってか、それなら別に「毒吐いてないで感想書こうぜ」なんてここで促す必要もないだろ。
神経質な人に構ってないで、感想スレ盛り上げるよう努力すればいいじゃん。
気になる人や面倒な人は書かないし、その結果感想スレが衰退したとしても、誰が悪いわけじゃないさ。
420 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:16:11 ID:???0
また極端な例だな。
書き込みを部屋での生活ほどにみているなんてどんなひっきーだよ。
しかも身内でもなんでもねー。
自分ならわかっているんだろうが、それ気にしているのあなただけだから。
421 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:17:06 ID:???0
>>419
全然「要は」になってないというか、本当に意味不明だな。
だから何で誰かに見られてたら、のびのび褒められないわけ?
お前まさか、感想スレで毒吐くつもりだったってこと?
そりゃただのルール違反だよ。
>ってか、それなら別に「毒吐いてないで感想書こうぜ」なんてここで促す必要もないだろ。
企画を存続させるための至極まっとうな意見だと思うけど。
90保守ついで:2007/09/22(土) 05:47:11 ID:9z5s6Si8
422 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:24:17 ID:???0
>>421
あのさぁ、だからさっきから「分かる人にしか分からない」と言ってるだろうに。意識的な問題なんだから。
人の性格なんて千差万別なんだから、細かいことを気にする人、大雑把な人、物事をポジティブ・ネガティブに捉える人、いろいろいるのは当たり前だろ?
発言の内容が褒めちぎりだとか毒だとか、そういう問題じゃないんだってば。曲解しすぎ。
そもそもこの話の発端分かってるか? 感想書こうぜ!だぞ?
それに対して個人的意見述べただけで、別にしたらばが悪いとも言っていない。
それだけで個人の一性格を非難ですか。ルール違反呼ばわりですか。なら、テンプレに「作品読んだら絶対に感想を書くこと。嫌なら読むな」とでも追加しとけ。
ごめん、後半ムシャクシャして書いた
423 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:25:59 ID:???0
こういう人が居るから、キチンと監視しないといけないって言う例になりつつありますよ、貴方。
ところで、しょっぱな投下の出足が鈍いのは、
やっぱ予約合戦で負けるカモ……とかみんな思って筆速が鈍ったからか!?
つか、残り物キャラの中にも書きたいキャラめっちゃ居るんですけど。24時間後の再予約合戦はどうなるか!?

424 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:26:29 ID:???0
>>422
もういいから、しつこい馬鹿はほっとけ、な?
お前まで荒らしになっちまうぞ。
425 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:28:31 ID:???0
24時間後の再予約って・・・今のところやる人3人しかいないし
それぞれ時間もずれるんだから合戦にはならんだろ
426 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:28:49 ID:???0
ん?
投下後書き手は24時間は予約できない、じゃなかったっけ?
だったら24時間後の予約合戦もクソもないとおもうんだが。
確か作品修正要求も24時間の期限付きってだけだから別に明日の今頃集中して賑わうことはなかろう。
427 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:31:00 ID:???0
>>422
あんたの性格はどうでもいいが読解力はつけたほうがロワ企画は楽しめるぞ。
いやマジで。
428 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:32:34 ID:???0
>>423
少数派の意見ぶちまけただけで排除されるんじゃ、毒の意味、ないじゃん
明日が土日ってのもあるかもね。
今週は書き溜めておく時間がなかったんだとポジティブに捉えておこうぜ。
91保守ついで:2007/09/22(土) 05:49:09 ID:9z5s6Si8
やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:35:05 ID:???0
よくも悪くも毒だからなあ。毒に対する毒も当然OKで、どんどん毒ためになっていくのさ。
430 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:37:28 ID:???0
じゃあ1つだけ毒を
新人で書きなれてないのは分かるが、「――」を多様する傾向は良くない。
テンポが悪くなるし、ここ一番の引きが弱くなる。
これSS書き始めた人がよく陥る癖なんだよね。
431 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:37:38 ID:???0
つか、急激に本スレから人が居なくなってる気がする!
予約とれて安心した書き手達が必死にSS書いてるんだなきっと。
432 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:38:37 ID:???0
というか眠いんだ
俺ももう寝る
433 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:41:58 ID:???O
>>427
読解力ないのはその上だろ?
まぁ>>429が真理ということで。
ところで質問というか確認なんだが、携帯からの予約ってオーケーだっけ?
434 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:46:53 ID:???0
>>433
本スレでやりな
435 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 01:47:49 ID:???O
って、したらばでちょうど同じような話題出てたわ……スマソ
436 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:01:13 ID:???0
今気づいた。
まさか、あのおふた方が引き続きこの企画に参加してくれるとは……しかも仕事早すぎるw
つーか、あの人の書くGガンキャラやGロボキャラが想像できないw
ところで、B0氏は今回参戦しないのかな?かな?
437 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:02:58 ID:???0
早速2ndのMADをニコニコに転載した奴は何なの?
1stのを転載したアカウントとはまた別みたいだけど……
438 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:04:39 ID:???0
>>433
毒吐かれて火病起こしてたのはお前だろw
439 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:11:02 ID:???0
ところで投下スレってどこだあああああああwwww
マジで一週間ほど留守にしてたらなにこの急展開
440 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:11:15 ID:???0
>>438
もうやめろって。
引っ込みがつかなくなってる奴を追い詰めるのはよくない。
441 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:12:10 ID:???0
>>439
2chのアニメキャラ総合板
スレ名は「アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ1」だぜ
92保守ついで:2007/09/22(土) 05:49:24 ID:9z5s6Si8
442 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:13:12 ID:???0
>>439 ここだああああああああwwww
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1190383751/l50#tag85
443 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:15:18 ID:???0
予約に関する話題でも予約スレで話し合ってどうすんだよ。トロい人が多いなー。
444 :439:2007/09/22(土) 02:17:16 ID:???0
>>442
ありがとおおおおおおおう!

445 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:37:19 ID:???0
ま、何にしても快調な滑り出しでよかったよかった。
446 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 02:37:25 ID:???0
新人(新トリ)が多いのも嬉しいけれど、
よくよく見たら、前回の書き手氏が三名も続投してるんだな。
面白くなりそうでwktkするのは俺だけか?
447 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 03:19:22 ID:???0
>>437見てきた。
……ちょw MAD投下から24時間も経ってないのに転載とか不自然すぎるだろwww
前転載してた人2人は既に終了した企画だから悪気はなかったのかもしれないが、今回は間違いなく愉快犯。削除申請……通らないよなぁ、理由が理由だし。
>>438
釣りかわからんが、おまえ致命的なとこ見落としてるぞw
448 :やってられない名無しさん:2007/09/22(土) 03:39:01 ID:???0
>>436
その辺もふくめてこの先が楽しみだ。個人的にはR.O.Dキャラに期待www
>>446ミートゥー!
93書き手一覧:2007/09/22(土) 05:59:54 ID:lHYN1pfa
◆hNG3vL8qjA
◆oRFbZD5WiQ
◆P2vcbk2T1w
94名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 06:04:00 ID:jEQinJDN
>新人で書きなれてないのは分かるが、「――」を多様する傾向は良くない。
>テンポが悪くなるし、ここ一番の引きが弱くなる。

>>81

95名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 06:24:38 ID:7bf477Cp
>>90らへんの内ゲバの方が面白い
すげーくだらねーwww
96名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 07:46:47 ID:c6cAUhKw
>新人で書きなれてないのは分かるが、「――」を多様する傾向は良くない。
>テンポが悪くなるし、ここ一番の引きが弱くなる。

>>◆oRFbZD5WiQ
97人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:34:02 ID:V6hp1m8u
月明かりだけが辺りを照らす、薄暗い森の中。そこに、一人の男が立っていた。
その男に、名前は無い。代わりにあるのは、『組織』より与えられた偽りの名。
「………随分大胆な事をする人間もいたものだ」
その男――――BF団十傑集が一人、コードネーム・素晴らしきヒィッツガラルドはそう呟いた。
「我らBF団に手を出すだけではなくこの十傑集を拉致し、あまつさえこんなくだらん物を付けるとは…」
そういいながら、そっと自分の首を撫でる。鉄特有の冷たさをその手に感じながら、ヒィッツガラルドは顔を歪める。
全く、忌々しい…こんな物が無くとも、この『うまい話』を自分が見逃す事は無いというのに。
ククククッ――思わず小さな笑い声が漏れる。
あの奇妙な男……螺旋王ロージェノムとやらが望むのは人間達による殺し合い。
常人ならば眉を潜め、嫌悪感を露にするようなその『ゲーム』を、ヒィッツガラルドは喜んで受け入れた。
集められた数十人の参加者。
その者達と、出会い、戦い、追い詰め、悲鳴を聞きながら真っ二つにし―――破壊する。
「素晴らしい……!!最高のショーだと私は思うぞ……!!」
最早小さく笑うだけでは飽き足らず、喜色満面の笑みを浮かべながら暗い喜びに浸るヒィッツガラルド。
迷いなど微塵も無い。自分はこのゲームを全力で楽しむだけだ。
「さぁ、せいぜいイイ悲鳴を聞かせてもらおうか……まだ見ぬ参加者達よ!!」
夜空の月を見上げながら、歓喜の叫びを挙げたヒィッツガラルドは―――

ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ。

「………………は?」
森の中を歩く、奇妙な『V』に思わず目を留めた。



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98名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:35:08 ID:QXBNdyf6
 
99人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:35:51 ID:V6hp1m8u
薄暗い。まず最初に感じたのはそれだった。
陽の光の届かぬ、冷たい石畳に囲まれた部屋。
円形に作られた部屋は天井も高く、広い。
その中心部は高く盛り上がっており、そのさらに中心には四角い石の箱……棺が見て取れる。
出入り口は二つ。棺の右手側と左手側に向かい合うように作られたそこからは、これまた薄暗い通路が覗いている。
照明用として辺りに取り付けられた、松明の心許ない光だけが辺りを照らす。
この中途半端な明るさが、自分の大嫌いな故郷や、旅の途中で訪れた忌々しい村を思い出させて―――。

「……クソッ……飛ばすんならもっとマシな所に飛ばしやがれ」

苛立ちながら、特徴的なサングラスを掛けた男―――カミナは毒づいた。
「最悪な気分だぜ、ったくよ……何がどうなってやがるんだ?」
せめて気分を紛らわせようと、今の自分の状況を確認する。
獣人の拠点、戦艦ダイガンザンを相棒・シモンの機転で撃退し、
その後、各地から駆けつけた荒くれどもと大グレン団の旗を掲げ、ダイガンザン奪回作戦を建てたのが昨夜の事。
そのままその日は大グレン団の仲間たちと騒ぎながら眠りに落ち―――――
気がついたら、あの場所にいた。

「何が『殺し合い』だよ、クソッタレが……!」
紛らわせるどころか、より一層気分を悪くしながら、カミナは元凶の人物を思い浮かべた。
螺旋王ロージェノム。
宿敵、獣人どもの親玉であるその男は突然この理不尽なゲームの開催を宣言し―――
そのまま、表情を変えずに人を殺した。
思わず自分の首に手を伸ばす。硬く、冷たい感触がそこにはあった。
「畜生、気色の悪いモンつけやがって…」
怒りとともに、もう一つの『重要な事』に考えを巡らせる。
あの場所にいたのは、自分だけでは無かった。
シモンとヨーコ。故郷にいた頃から一緒だった自分の弟分と、共に旅をしていた少女。
カミナの大切な仲間であるこの二人も、この最低最悪の『ゲーム』に巻き込まれているのだ。
「あいつらの事だ、そう簡単にくたばる様な事は無ぇだろうが……」
巨大ガンメンに、生身のままライフル一本で果敢に立ち向かうほどの度胸のあるヨーコ。
普段は気弱だが、いざという時の根性は人一倍にあるシモン。
カミナ自身が認めた人間である彼らは、これぐらいで命を落とす程に柔ではない。
だが―――――。

「すぐにまた会えりゃいいんだけどよ……お?」
その時、カミナは自分の足元のあるディバックに気づいた。
そういえば、先の説明で参加者に支給品がどうこうと……。
「あの野郎からってのが気に食わねえが、遠慮をする気もさらさら無ぇしな」
ひょいとディバックを持ち上げ、中身をあさる。
ハナから名簿やら紙やらコンパスやらには興味は無し。
というより、文字の読み書きが出来ないカミナにとってはそんな物はただの荷物でしかない。
100人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:37:01 ID:V6hp1m8u
「ビクトリー「ん、なんだこりゃ?」
ディパックの中のある物がカミナの目にとまる。
それは、ビニールパックされたパンのようだった。
「飯か?なんだよ少ねぇな…しかもマズそうじゃねえか」
一瞬取り出しかけた味気ない不味そうなパンを再び押し込み、物色を再開する。
自分が今欲しいのはこんな物ではない。
「ちっ、暗くてよく見えねえな………」
松明の心許ない照明だけでは、ディバック内部を完全に見る事が出来ず、カミナが苛立った声を上げる。

「ビクトリー「お、こいつは!?」
思わず歓喜の声を上げながら、ディバックの中からそれを引き抜く。
明らかにディパックの容量以上の長さを見せるそれは……巨大な剣だった。
「いいねえいいねえ!この俺にこいつを寄越すっつー事は、あのロージェノムって野郎もちょっとは見る目があるって事か。
 ま、だからっつってタダで済ます気はさらさら無ぇがな……よっと」
ぶんぶん、と何度か剣を振り回す。普通の剣よりも多少長いが、普段から扱っている刀を考えるとこれぐらいの方がちょうどいい。
「さて、武器はこんだけか?他にもまだ何か


「ビィィィィィィィクトルィィィィィィィィィィィィム!!!!!」


「……っ!?」
突然の絶叫。カミナの背後から上がった特徴的な野太いその声は、石室の中を山彦のように反響しながら遠ざかっていく。
「敵かっ!!」
持っていたディパックを投げ捨て、剣を持ち直し、すぐに体を反転させる。
振り返ったカミナが目にしたのは――――――!!


出入り口の前に立つ、『V』、だった。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:37:10 ID:T+/BwfDZ

102名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:37:44 ID:QWoFdeBZ
103名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:38:28 ID:T+/BwfDZ

104人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:38:28 ID:V6hp1m8u
「…………………は?」
さすがのカミナも目の前の異形、もしくは『V』としか説明しようがない物体に思わず気が抜ける。
「ぐぅ、ぐぬぅぅぅぅぅぅぅぅ……!!!ブルァァァァァァ………!!!」
当の物体は見るからに怒りを露にし、こちらへの敵意を隠そうともしない。
「チッ…見た目は妙でもやる気はマンマンって訳かよ…面白ぇ!!そのケンカ買った!!」
『V』の様子を見て気を取り直し、剣を構えるカミナ。
だが………カミナの脳裏に、ある大きな疑問が浮かぶ。

………何だよこれ?

「てめぇ、一体何者だ!?獣人…じゃねえか…ガンメン…にしちゃあ顔だけじゃねえし…!?」
いつ襲ってきても対応できるように警戒しながら、カミナが奇妙なVに叫ぶ。
「ブルァァァァァァ!!貴様!!なぁぁぁにをブツブツ言っている!?」
つい先ほどから苛立ち続けている様子のVは一人悩んでいるカミナが気に入らないようで、怒りを込めた野次を飛ばしてくる。
「うるせぇ!!てめぇが妙ちくりんな格好してっから何が何だかわかんねえんだよこのっ……」
ここまで言い返した所で、カミナの声が止まる。

何だ。どう言えばいいんだ。どう罵倒すればいいんだこのVは。
カミナは考える。この無機質な体、Vをベースにした鋭角的なボディ、どう考えても人には見えない。
というか生物にも見えない。生物ではないという事はガンメンか。
しかし、カミナの知るガンメンとは、『巨大な顔面に手足が生えたタイプのロボット』。
このVには顔だけではなく、きっちり胴体まで存在している。生意気じゃねえかこの野郎。
人でもなく、生物でもなく、かといってガンメンでも無く…だから何なんだよこれは!?
どちらかといえばガンメンに近く、だが致命的に別物で、しかし他に近い物も無く……。
ここまで思考したところで、カミナの脳裏にある言葉が閃く。
これだ。この言葉しかねえ。迷うことなく、カミナは閃いた言葉をVにぶつけた。



「この…………『ガンメンモドキ』がッ!!!」
105名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:39:34 ID:QXBNdyf6

106人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:39:42 ID:V6hp1m8u
「も、もど、モドキィ!?ベリィィィィィィィシィィィィィィィィット!!!」
よし、効いた!
予想以上に取り乱した相手を見て、心の中でほくそえみながらガッツポーズを取る。
「この唯一無二!!絶対無敵!!究極V字な華麗なるビクトリーム様に向かって、モドキだと……!
 散々この私を無視した挙句、その罵倒の言葉……ちくしょう…ちくしょぉぉーーーーー!!!
 もうよい!!貴様など優しくするフリすら必要ないわぁぁぁぁぁ!!!!」
どうやら偽者を表す言葉に甚だ自尊心を傷つけられたらしく、こちらに対する敵意を更に高めるVことビクトリーム。
「御託は良いからとっとと来やがれ!!タイマン勝負だったら喜んで受けてやらぁ!!!」
売り言葉に買い言葉、更にテンションを挙げながらカミナがビクトリームを挑発する。

が、予想に反して、その言葉を聞いた瞬間、今まで怒りの表情だけを見せていたビクトリームの顔が変わった。
「タイマン……今、タイマンと、一対一だと言ったのか貴様?」
そういいながら、ビクトリームはニヤリと笑顔さえみせる。
突然の敵の豹変に、思わずカミナの眉が寄った。
何かが、何かがある……?
「クククククッ……ブァァァーーカがぁ!!私のような魔物の子が、一度出会ったパートナーとそう簡単に離れる訳があるまい!!」
「パートナーだと……っ!まさかてめぇ、仲間がいるのか!!」
「ブルァッハッハッハッハァァ!!もう遅いわぁ!!もう一人いるのだよ!!」
笑い声と同時に、ビクトリームがカミナへ右手を突きつけた!

「さぁ、来るが良い!我が最高のパートナーよ!!!」
「チィッ!!」
2対1の戦闘、こちらの武器は剣一本。状況はかなりマズイ。
しかし…それでもカミナは諦めない。
「増えるってんなら両方叩く、来るってんなら迎え撃つ!!相手になってやろうじゃねえかこの野郎!!」
威勢良く啖呵を切りながら、気合を入れなおす!

だが、しかし。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:39:56 ID:T+/BwfDZ

108人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:40:52 ID:V6hp1m8u
…………………………………………………………………………………………………………静寂。


「………さぁ出て来い!我が究極のパートナーよ!!」


…………………………………………………………………………………………………………静寂。


「……おーい、モヒカン・エース?どーこ行ったんだわさ「うぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
全く反応の無いパートナーを心配して、思わず後ろを振り向いたビクトリームへ、カミナが気合と共にジャンプしながら距離を詰める!
これだけの隙を見せた相手を見逃すほど、この男は甘くは無い!!
「思いっきり隙だらけだこの大馬鹿野郎斬りぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
即興で考えた技名と共に、右から左へ真一文字に切りつける!だが――――
「ブ、ブルァァァァァ!?」
カミナの攻撃に気づいたビクトリームが思い切り上体を逸らした為、紙一重で剣が空しく空を斬った。
気合を入れるために絶叫と共に近づいたのが仇となり、一瞬早く相手に攻撃を気づかせてしまったのだ。
「クソッ、避けやがったか!!」
即座に追撃しようとするカミナだが、慣性が付いた長剣を引き戻すのに手間取り、敵に時間を与えてしまう。
「この……卑怯者がぁ!!」
逸らした上体を持ち上げる力を利用して繰り出したビクトリームの右腕が、カミナの腹に決まった!
「ぐっ……野郎ッ!!」
予想以上の威力の一撃に息が詰まるが何とか持ちこたえ、カウンターの要領で足を繰り出す!
「ブルァァァ!?胴体ダメージ18!!モヒカン・エース!いないのか、モヒカン・エース!?早く術を使えぇぇぇ!!!」
キックがヒットし、叫びながら吹き飛ばされるビクトリーム。
自分のパートナーの名前を呼ぶも、帰ってくるのは山彦ばかり。


それもそのはずだ。彼のパートナーであるモヒカン・エースは、この会場には『存在しない』のだから。


「ぐっ、ぐぅぅぅぅ…ええい、もういい!!こうなれば予定変更だ!!」
体制を立て直しながら、パートナーの不在にようやく気づいたビクトリームが叫ぶ。
そのまま、距離の開いたカミナの所へと全力で駆け出した!
「貴様のようなザコなど、術無しでも私の華麗なるキックで沈めてくれるわぁ!!」
「真っ向勝負たぁいい度胸だ!!きっちりガンメンらしくしてやるから覚悟しやがれ!!」
カミナも、威勢良く叫びながら剣を振り上げ、自分からも全速力でビクトリームへと向かっていく!
そのまま二人の体が交差する―――――と思われたが!?
「針路変更!!左カーブ35°!!そのまま……Vの体勢で飛び上がれぇぇぇぇ!!!」
突如、ビクトリームが斜め方向へと大ジャンプし、カミナの脇をすり抜けた!
「なにぃ!?」
衝突覚悟で突進していたカミナは突然のビクトリームの行動に対応ができず、見送ってしまう。
「てめぇ、逃げる気か!?」
「だまらっしゃい!!腹立たしいが、貴様を倒すのは我がパートナー、モヒカン・エースと合流してからだ!!
 今は……最初の目的を果たすのみよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そう叫ぶビクトリームが目指す物は……先ほど投げ捨てた、カミナのディバック!
「取ったぁぁぁぁぁぁ!!!」
ビクトリームの手がディバックを掴み、そのまま内部をあさり始める。
「ここだぁ!!ここに……私の求めている物がああぁる!!」
歓喜の雄たけびを上げながら、ディバックの中を覗き込むビクトリーム。
だが、それを黙って見ているカミナではない。
「野郎ッ!!この俺から荷物を盗もうとはいい度胸じゃねえか!!」
幸いな事に、ビクトリームはディバックを持って逃げ出すより先にこちらに背を向け物色を始めている。
逆を言えば、そこまでして手に入れたい程に重要なアイテムが存在しているという事。
何故この妙ちくりんな生物(仮)が自分のディバックにそんな物があるのを知っていたかは謎だが、そんな事を考える暇は無い!
109名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:41:14 ID:T+/BwfDZ

110名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:41:20 ID:QWoFdeBZ
111人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:42:12 ID:V6hp1m8u
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
カミナが全力でビクトリームの所へ駆け出し…………!

「おお、見えた!!見えたぞ!!これこそが……!!」
ビクトリームが、ディバックの中から目的の物体を見つけ出し……!

「さぁぁぁせぇぇぇぇぇぇるぅぅぅぅかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カミナが剣を振り上げ…………!

「これこそ、これこそが………私の追い求めていた……!!」
ビクトリームが、ついに見つけ出したそれを……ディパックからとりだし掲げ挙げる!!


「これこそが……私の最高の宝!!ベリーなメロンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うっだらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


どう見ても普通のメロンです。本当にありがとうございました。
あまりにもあんまりなオチに、流石のカミナも脱力し、勢いそのままにこける。
「ああ、芳しきこの香り…正に最高のメロン!!かの伝説の『夕張・ベイリー・メロン』にも勝るとも劣らない…!!
 さぁ愛しの我がベリーなメロンよ!!今すぐに味わって…」
いざメロンを食そうとしたビクトリームだが…
「待ちやがれコラァ!!」
「ブルァ?」
思わず、背後からの声にメロンを抱えたまま振り返ってしまう。
そこに立っていたのは早くも脱力から回復したカミナ。
「何勘違いしてやがる……俺の攻撃はまだ終わっちゃいねえぞ!!」
そう叫ぶと同時に、ビクトリームの抱えてるメロンを両手で捉える!
「ブルァァァ!?なぁにをするかぁぁぁ!!私からメロンを奪う気かぁぁ!?」
対するビクトリームも負けじと、抱えたメロンを全力で引き返す!

「うるせぇ!!こいつは元々俺のモンだ!!テメェに食わせる道理はねぇ!!道理があっても蹴っ飛ばす!!!」
答えるカミナの顔は本気である。
最初のディパック確認にて、支給された食料が非常に不味そうなパンだという事は確認済み。
そこに降って湧いた、カミナの目から見ても美味そうに見えるメロンの存在。
今後の豊かな食生活の為、このメロンは何としてでも手に入れる!
実際には、ディパックの中にはまだ幾つものメロンが入っているのだが、それを知ったとしてもカミナは手を離さないだろう。
何故なら、『メロンが食いたいから』という理由だけでは無く……
『こんなガンメンモドキがいい思いするのがすげぇ気に入らねぇ!!』という何とも言えぬ感情が含まれているからだ。

「ベリィィィィシィィィィィットォォ!!私のメロンに対する愛情の深さをなめるなぁぁぁぁ!!!」
ビクトリームの方は、最初から本気も本気、超本気である。
妙なワープで森の中に飛ばされ、その後に偶然見つけた古墳への入り口から
忘れもしない愛しいメロンの香りが常人では気づかないほどに微かに漂ってきた時の喜びは筆舌にしがたい。
そのままパートナーの存在も忘れ、古墳の中を歩き回り、ようやく目当てのメロンを持つ男に出会えたと思えば
無視された挙句に罵倒され……苦難の連続の末にようやく手に入れたメロンなのだ。
そう簡単に手放す気は――――全く無い!

「ブルァァァァァ!!ベリーメロン!!ベリィィィィィメロォォォォォォン!!!」
「オオォォォォォ!!お・れ・を・だ・れ・だ・と・お・も・っ・て・や・が・るゥゥゥゥゥゥ!!!」

たかがメロン。されどメロン。
メロンを求める二人の男の戦いはどこまでも熱く……そしてどこまでも馬鹿馬鹿しかった。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:42:22 ID:T+/BwfDZ

113名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:42:56 ID:QXBNdyf6

114人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:43:29 ID:V6hp1m8u
「オラァァァァァァァァァァ!!!」
カミナが引く。
「ムダァァァァァァァァァァ!!!」
ビクトリームが引き返す。
「ドラァァァァァァァァァァ!!!」
カミナが引く。
「ブォォォルァァァァァァァ!!!」
ビクトリームが引き返す………。

数分が経過しても、男と男の意地と食欲のぶつかり合いは拮抗状態を保っていた。
「この野郎ぉぉぉ……!」
思わずカミナが唸りを上げる。
ビクトリームの腕力は、見かけに反して妙に強い。これもメロンへの愛情が成せる技か。
武器を使って攻撃しようにも、カミナが使用していた剣は1m程離れた所に放置されている為に不可能。
つい先ほどの一件で、カミナの手から滑り落ちたのだ。
何より、今はメロンから片手でも離せばその瞬間に……カミナは負ける。それだけは、何があってもカミナのプライドが許さない。
その為、彼は何が合ってもこの物体と全腕力のみで戦い続けなければならないのだ。
共に全力でメロンを引き合い続ける不毛な戦い………。

だが、その戦いは意外な形で終わりを告げる。


「醜い争いだな………手伝ってやろうか?」


突然、石畳の部屋の中に響いた『第三者』の声。
「なっ!?」
「何者ぉッ!?」
思わず、カミナとビクトリームが声のした方向…つい先ほど、ビクトリームが入ってきた出入り口へと視線を向ける。


「…………ただし、真っ二つだ!!」
―――――――――――――――――――――――――パチン!!


奇妙な音が二人の耳に入った次の瞬間、彼らの腕の中にあったメロンが刃物で斬られたかのように『真っ二つ』になる!
引っ張り合っていた物体が二つに分かれた反動で、逆方向へと吹き飛ばされるカミナとビクトリーム。
「くっ……敵かッ!?」
カミナは体勢を立て直すと、即座に自分の手に残った半分のメロンを投げ捨て、放置されていた剣を取りに向かう!
対するビクトリームは―――――
「おお!!メロンよ!!我がベリーなメロンよぉ!!Vの体勢で齧り付けぇ!!!!」
同じく吹き飛ばされながらも、ただただ喜びのまま奇妙な体勢でメロンにむしゃぶりついていた。
そんなビクトリームを無視し、(実際は汚いメロンの咀嚼音が聞こえる為不快極まり無いが)
通路を見据え、奥にいるであろう敵を見極めようとするカミナ。

「ブハァァァァァ!!最高だぜーー!!ミュージックゥスタート!!」
メロン食い終わったら歌って踊りだしやがったよオイ。うぜぇ。後で絶対ボコる。

そんなカミナの独白を他所に、暗闇の中からある男が徐々に姿を現し始める。
………何故かこちらも踊るように指を鳴らして歩きながら。
(どいつもこいつもバカばっかりかよこん畜生がぁ!!)

だが、即座に嘆いている場合では無いという現実が、カミナに突き付けられる。
115名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:43:40 ID:T+/BwfDZ

116人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:44:39 ID:V6hp1m8u
パチン!!
「なっ!?」
指パッチンの音がした瞬間に、自分のすぐそばの地面が割れたのを見たカミナが驚愕の声を上げた。
その間にも音は響き、その度にあちこちの壁や地面が切断される。
「あの野郎、ありゃ踊りじゃなくて攻撃か!?」
あまりにも意外すぎる攻撃方法に、カミナは驚きを隠せない。まるで見せ付けるかのように、音と破壊は更に続いていく。

―――――――――――――――――――――――――パチン!!
棺、切断!

―――――――――――――――――――――――――パチン!!
壁画、分断!!


―――――――――――――――――――――――――パチン!!
「おぉぉぉくちにとろけるぅぅぅぅ!!ベリィィィィィィメブルァァァァァァァ!!???」
 華 麗 な る V 、 『 真 っ 二 つ 』 ! ! !
「………………」


一瞬だけ、頭部と胴体が二つに分かれた状態で吹っ飛び、動かなくなったビクトリームを確認すると、
(正直、奇妙な歌と踊りが消えたので大分すっきりしたが)
目の前に現れた敵を睨み付ける。
クリーム色のスーツを着た、白目が特徴的過ぎる奇妙な男はただニヤニヤとカミナを見ているだけだ。
「………てめぇ、一体何者だ」
最大限の威嚇も込めて、低い声でそれだけ尋ねる。
今さっきまでそこにいたガンメンモドキとは、何もかもが違う。
奴は(非常にムカツク奴ではあったが)、ここまで気分が悪くなるような邪気は纏っていなかった。
容赦なく人を殺せそうな……しかも、その『過程』を最も楽しみそうな……最低な気配。
「私は、BF団十傑集の一人…素晴らしきヒィッツカラルド…
 ……しかし驚いたな…ここを簡単に破壊する程の私の力を見ても、怯まずにいるとは」
「何だと………オウオウオウオウオウ!!俺を誰だと思ってやがる!!」
ヒィッツガラルドの言葉を聴いたカミナが、啖呵を切りながら剣を肩に担ぎ上げ、胸を張りながら不敵に笑う。


「暗ぇ場所にゃあ似合わねぇ、光り輝くいい男!!
 ガンメンなんかは目じゃねえし、ガンメンモドキもぶっ倒す!!
 大グレン団団 「ベェェェェェリィィィィィィシィィィィィィット!!!」 んだとぉ!?」


カミナ渾身の口上に割り込んできた奇っ怪な叫び声、そして物理的にも二人の間に割り込んできた物体を見た瞬間、

「は、はぁ!?」
「ぬぅ…?」

流石の二人も、この時ばかりは全く同じ感情を抱いていた。

「なぁぁぁにが『素晴らしきヒィッツカラルド』じゃぁぁぁぁぁ!!」
ヒィッツガラルドに前面を向けたビクトリーム…『頭部だけとなり、完全にVその物となった』ビクトリームの叫びが木霊した。


…………一体何なんだろう、この『V』は。
117名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:44:47 ID:QXBNdyf6

118名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:44:53 ID:T+/BwfDZ

119人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:45:52 ID:V6hp1m8u
「貴様にいい事を教えてやろう!!我が名はビクトリーム!!『華麗なるビクトリーム様』だ!!
 わかるかぁ!?『様』がついてる分貴様よりも偉いわぁぁぁぁ!!!」
「……………」
「……………」
Vその物が宙に浮かんで喋りだすという、あまりにもシュールな光景に声を失うカミナとヒィッツカラルド。
先に我を取り戻したのはカミナの方だった。僅かながらもビクトリームと関わっていた為に、耐性が出来ていたのかもしれない。
丁度フリーになっていた方の手を見つめ、ゆっくりと、力を込めて握りしめる。
よし。行ける。


「人の名乗りを邪魔するんじゃねえこのガンメンモドキがパァァァァァァンチ!!!!」
「ブルァァァァァァ!?頭部ダメージ25!!」


カミナの拳が直撃したビクトリームが、転がっていた胴体の所へと吹き飛ばされる。
もちろん、ただ転がっていただけの胴体が頭部を受け止められるはずも無く……。
「着地失敗!!我が身体に直撃!!追加ダメージ22!!耐えるのだ我が体よ!!そして私よぉぉぉぉぉ!!」
連続したダメージに悶えているビクトリームを、カミナが冷たいまなざしで見る。
なんで首がもげてるのに生きてるんだよアレは。やっぱアレか、モドキでもガンメンって事か。
つー事はもしかしてああ見えて中に操縦者が―――ッ!?

「チィッ!!」
突然の殺気を感じ首を逸らした瞬間に、今まで掛けていたサングラスが『見えない何か』に吹き飛ばされる。
「余所見をするとは感心しないな…まぁ、よく気づいた物だと言っておこう」
指を突き出した格好のまま、ヒィッツカラルドがカミナに告げる。
「うるせぇな…ついさっきの俺のセリフ、聞いてなかったのかよ?
 あのガンメンモドキの所為で中途半端になっちまったが、肝心の部分はきっちり言ったんだがな」
スッと目を細め、顔だけをヒィッツカラルドに向けた状態で睨み付ける。
「ほぅ…そうだったか?私からしてみれば、その肝心の部分が丁度邪魔されたように思えたが」
「ケッ、鈍い野郎だなてめぇは…じゃあもう一回言ってやるから、今度は聞き逃すんじゃねえぞ」
そう言った直後……カミナの目がカッと見開かれ、そのまま全力でヒィッツガラルドへと飛び掛った!!


「俺をッ!!誰だと思ってやがるぅぅぅぅぅぅぅッ!!!」


大上段から、脳天を目掛けて全力で剣を振り下ろす!!
だが、対するヒィッツカラルドの動きも素早かった。
パチン!!
左手を上に向け即座に指を鳴らす事でカマイタチを生成し、それがカミナの剣に直撃する!!
「ぐぅッ!!」
その衝撃により、剣が後ろへと押し戻され、両手を挙げた無防備な体勢を取ってしまう。
「ボディががら空きだぞ?……終わりだ」
余った右手がカミナの胴体へと向けられ……再度、指が鳴らされる!
その攻撃に対しカミナは、そのまま後ろに倒れこむ事で回避運動を取ろうとする。
しかし……間に合わない!!
「なん、のぉッ!!」
苦肉の策で、体を捻り致命傷だけは避けようとするカミナ。
果たして、胴体への直撃へは回避できたものの……カマイタチは左肩を掠めた!
そのまま、重力に従い右肩から石畳へと叩きつけられる。
「かっ……野郎ッ…!!」
地面に倒れながら、左肩へと目を向けて傷口を確認する。
今の衝撃で軽く血が噴き出したが、まだ動かせないほどではない。
「おやおや、どうした?結局は隙だらけのままだぞ?」
安堵する暇も与えないかのように、ヒィッツカラルドが言葉を掛ける。
そのまま起き上がる時間も与えずに、連続でカマイタチが発射された!
カミナは、それを地面を転がる事で回避する!
傷ついた左肩が体の下へ回る度に体に痛みが走るが、構ってはいられない。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:46:34 ID:T+/BwfDZ

121人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:47:05 ID:V6hp1m8u
「ククククッ、粘るねぇ……」
ヒィッツカラルドの嘲笑と共に、カマイタチの雨が止んだ。
その隙に、カミナはすぐに体勢を立て直す。しかし…………。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
カミナの荒い息、そして肩から流れ指先からポタリポタリと零れ落ちる血の音が、辺りを支配する。
剣を地面に突き立て、片膝で座るカミナからは、疲労の色が感じられた。
「随分とお疲れのようだな?まぁ、それも自明の理か…君の武器はその重そうな大剣。
 その上、君自身も随分とムダに体力を消費するタイプのようだ…対する私は」
そこで一旦言葉を切り、手を横に向け、指を鳴らす。
「攻撃に必要な行動はこれだけ…常識的に考えてみたまえ。消耗が激しい君が私に勝てるかね?」
ガラガラと石の壁が崩れるのを聞きながら、ヒィッツカラルドが馬鹿にしたように尋ねる。
ギリ、と歯を食いしばる音が響いた。


「ゴチャゴチャうざってぇ事言ってんじゃねぇぞ……」
剣を握る手に更に力を込め、地面へと突き立てる。
「常識?道理?そんなんが一体何になんだよ?」
そのまま、地面に両足を付けゆっくりと立ち上がる。
「無茶を通して………道理を蹴っ飛ばす……」
地面から剣を抜き、両手で構え、ヒィッツカラルドへと突きつける。

「それが……俺たち大グレン団なんだよッッッッ!!!!」
俯いていた顔を上げ、まっすぐに目の前の敵を睨み付ける!!
その目に、絶望や恐怖などは一欠けらも無い。
あるのはただ勝利への渇望、枯れない戦意、さらに……溢れんばかりの強い怒り!!


そして……溢れんばかりの強い怒りを持つ者がここにも一人。

「ブルァァァァァ……許さん、許さんぞあのグラサンがぁぁ……!!」
ようやくダメージから立ち直り、胴体と合体したビクトリームが怒りに震える体で呻く。
しかし、その怒りは今までの怒りよりも深く、重く、熱い。
その理由は…………


「だが、それ以上に許せんのはぁぁぁぁぁ!!!我がベリーメロンを邪魔しおったあの白目よぉぉぉ!!!」


ベリーメロン。それは神聖な踊り。
ベリーメロン。それは至福の一時。
ベリーメロン。それは誰も侵してはならない、唯一無二にして最優先事項の重要な儀式。
心を掴む、最上級のメロンに出会った時にのみ行われる、メロンへの感謝と最大級の賛辞を持って行われるそれを妨害する事は、
ビクトリームに取って、何よりも許せない『罪』なのである。


「てめぇは!!」
倒すべき邪悪な敵に向かい、カミナが吼える。


「ぜぇっっっったぁぁぁいぬぃぃぃぃぃぃ!!!」
許せぬ罪を犯した敵に向かい、ビクトリームが雄たけびを上げる。


『ブッ倒してやるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
同じ敵への怒り。同じ敵への戦意。
二つの同じ言葉が一つになった時…………それは起きた。
122名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:47:49 ID:QXBNdyf6

123名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:48:10 ID:T+/BwfDZ
  
124人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:48:17 ID:V6hp1m8u
「な、何だ!?何が起こった!?」
突如起きた『異変』に、ヒィッツカラルドが辺りを見回しながら驚きの声を上げる。
「何だこりゃあ……」
カミナも、ただ呆然とこの部屋の中に起きた『異変』を見守るばかり。

松明の光だけが辺りを照らしていた薄暗い石畳の部屋は……今や、眩いばかりの空色の光に包まれていた。
そして、その光の出所は…………ビクトリームの持つディバックの中!

「……ッ!?おい、ガンメンモドキ!!てめぇ一体何しやがった!?」
何か、妙な支給品を使ったのか……だが、誰よりも驚いているのは他でも無い、ビクトリーム自身だった。
「まさか……まさか……まさかまさかまさかまさかむぁすぁくぁぁぁぁぁぁ!?
 貴様がッ!!貴様がそうだと言うのかグラサンよぉ!?」
信じられないという様子で、ビクトリームがカミナを見る。
まさか。ありえない。なぜなら、本来『その役目』にいるべき人間はここにはッ!?
「ブルァァァ!?」
ビクトリームの思考はそこで途切れ、即座にディバックを持ったまま駆け出した。
つい先ほどまでビクトリームが立っていた場所に亀裂が入る。
「何が起きているのかはわからんが、貴様を残しておくのは厄介そうだ!先に始末させてもらう!!」
ヒィッツカラルドが標的をカミナからビクトリームへと変更し、攻撃を仕掛けたのだ。
その直後、連続でビクトリームへと飛来するカマイタチ。
「ブルァァァ!!ブルァァァ!?ベリーピィィンチ!!ベルィィィィピィィィィンチィィィ!!!」
あちこちを全速力で駆け回りながら、必死で攻撃からディパックを守る。
そうしなければならない、なぜならこの中には……。

「えぇぇぇぇぇい!!もうこうなりゃヤケッパチよぉぉぉぉぉ!!!」
走りながらディパックの中を漁り、目当ての物を見つけ出したビクトリームは、それをカミナへと放り投げた!!
「受け取れぇぇぇぇぇ!!!」
「うぉぉお!?」
突然の事態に慌てながらも、どうにかそれを受け止める。
投げられたそれは……空色に輝く奇妙な本!!
「おいコラ!!いきなりこんなゴミ渡してんじゃねえぞこの野郎!!」
どう見ても武器には思えない物を投げられたカミナが非難の声を上げる。
「ええい、そんな事はどうでもいい!!早く、早くその本を読めぇぇぇぇ!!」
カミナの声に答えている間にも、カマイタチはビクトリームへと次々に襲い掛かる!
「はぁぁ!?バカ言ってんじゃねぇ!!俺は『文字』とかは読めねぇんだよ!!」
「ベリィィィィィシィィィィィット!!良いから読め!!早く読むのだぁぁぁぁぁぁ!!」
125名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:49:19 ID:T+/BwfDZ
  
126人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:49:28 ID:V6hp1m8u
(……こいつらは何を話している?)
休まずにビクトリームに攻撃しながらも、ヒィッツガラルドは現状を考察する。
この『異変』の正体が、あの奇妙な本である事はおそらく間違いない。
だとすれば、あの本こそが何かしらの武器である事は間違いないはずだが……?
「だから『文字』は読めねぇっつってんだろうが!!なのにどうやって読めってんだバカ野郎!」
「こぉぉぉのニブチンがぁぁぁ!!いいから読め!!読めばわかる!!」
つい先ほどから噛み合わない会話を続けるこの二人。
普通に考えれば、あの本が武器だったとしても『文字』を読めないこの男には扱えぬ物のはず。
(問題は無いか…?)
自分と本を持つ男の距離は5m程。もし攻撃に転じたとしても、十分に迎え撃つ事ができる。
(ならば…詳しい事情を知っているであろうあの物体を先に仕留める!!)
さらに素早く指をかき鳴らし、ビクトリームを追撃する!!
「何も、問題は無い…貴様達二人は、ここで何も出来ぬままに死ぬのだよ!!」

「読め読め読めってなぁ、人をバカにするのもいい加減にしやがれ!!」
一体何なんだあの野郎は。ついさっきから自分が文字を読めないと何度も叫んでも、読めの一点張り。
本気でバカにしてやがるのかこのガンメンモドキ。いいか?本ってのは文字が書いてあるもんだ。
だからこうやって開いた所で、文字が読めない俺には何も……何も…ッ!?


何だよこれ………『読める』………ッ!?


いや、違う…この感覚は、読んでるんじゃねぇ……読めなくても、頭で理解できる!
この一番上にある文字、これは………!!

「よぉぉぉやくわかったかこのバカ者がぁ!!!」
本を開き、それを黙って眺めているカミナに気づいたビクトリームが動きを止め、ヒィッツガラルドに向き直る。
「ここまでだ、白目男よ!!今からこの華麗なるビクトリーム様の真の実力を見せ付けてくれるわ!!」
「何……?」
様子がおかしい…何故、こいつの『実力』だと?
本を持っているのはあのサングラスの男の方…いや、だがこれではっきりした事がある。
それは……『攻撃を行うのがこの物体』である事!
「面白い…この十傑集、素晴らしきヒィッツカラルドに勝てるというのか!?」
連続で指をかき鳴らし、発生した無数のカマイタチがビクトリームへと襲い掛かる!!
「ふん、どんな攻撃かは知らんが、これだけのカマイタチを受ければ……」

その時………辺りを包む空色の光が、より一層眩く輝いた!!
127名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:50:22 ID:QXBNdyf6

128名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:50:28 ID:T+/BwfDZ
  
129人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:50:42 ID:V6hp1m8u
「なっ……!?」
思わずヒィッツカラルドが、その光源へと目を向ける。
そこにあるのは……さらに強い輝きを見せる本を持ち、不敵に笑うカミナの姿。
「………マグルガァァァァァァァァ!!!!」
本を持ったカミナの絶叫に呼応し、ビクトリームの頭部に光が集まる!!
「ブルァァァァァァァ!!!」
ビクトリームが雄たけびを上げた瞬間、彼の頭部からV字型の光線が発射された!!
その光線は、次々とカマイタチを相殺しながらヒィッツガラルドへと向かってゆく!!
「馬鹿なッ……!?チィッ!!」
仕方なく、十傑集ならではの強靭な脚力を用いたジャンプにて回避行動を取る。
目標を失った光線はそのまま壁へと衝突し、巨大な穴を残して消えた。
「おお…我が勝利を暗示する華麗なるVの傷跡よ…素晴らしい…ベリーナイス!!
 さすがは我が術!!あまりの強さに私自身が恐ろしくなるわぁ!!!」
満面の笑みを浮かべながら、ビクトリームは本を持つカミナの所へと向かう。
「良いかグラサンよ!!もっと『心の力』を込めて術を唱えろ!!
 あらゆる感情を詰め込んで、気合いを込めて叫ぶのだぁ!!」
「俺に指図するたぁいい度胸じゃねえかガンメンモドキ…だがなぁ…今はてめぇよりあの野郎のほうがムカついて仕方ねえ!
 気合いを入れろだぁ?俺を誰だと思ってやがる!!気合いだったら誰にも負けねえ、それが……俺だぁぁぁぁ!!!」
カミナの持つ本の輝きが、更に強くなっていく!!
「マグルガァァァ!!」
移動したヒィッツガラルドに向かって、再度放たれるマグルガ!
何とかかき消そうと連続でカマイタチを放つも…心の力を込められた術を消すには至らない!!
「くっ、ならば……ッ!!」
もう一度回避を行うヒィッツガラルド。
だが、まだカミナとビクトリームの攻撃は終わらない!


「マグルガ!!マグルガ!!マグルガ!!マグルガ!!マァァァグゥゥゥルゥゥゥガァァァァァァ!!!」
「ブルァァ!!ブルァァ!!ブルァァ!!ブルァァ!!ブゥゥゥルゥゥゥウァアァァァァァァァァ!!!」


畳み込むように、連続でマグルガを放つ!
だが、対するヒィッツカラルドも次々に移動を行い、光線を回避していく!!
攻撃ラッシュが止んだ後、再び二人と対峙したヒィッツカラルドの額には、汗が光っていた。
「おいおいどうしたよぉオッサン…今度はテメェが疲れてるんじゃねぇのか?」
その様子を見て挑発するカミナだが、ヒィッツカラルドの様子に変化は無い。
「……ふむ……君は、私がただ逃げていただけだと思っているのかね?」
「はぁ?」
ヒィッツカラルドの言葉の意味を掴みかねたカミナが気の抜けた声を上げた瞬間……天井からの妙な破裂音が耳に入った。
「なっ……!?」
「君達のその攻撃は確かに強力だ…だが、いささか強力すぎたようだな…この古墳の壁では、耐えられなかったようだ」
思わず天井を見上げたカミナを眺めながら、ヒィッツガラルドはゆっくりと手を上へ向けた。
「真っ二つに出来ないのは残念だが…これで、最期だ」

―――――――――――――――――――――――――パチン!!

カマイタチの一撃が呼び水となり、天井の亀裂が縦横無尽に走り出し…ついに限界を迎える。

「てめぇ、姑息な手ぇ使いやがって!!」
「ベリィィィィィィシィィィィィィット!!生意気にぃぃぃぃぃ!!!」

崩落の轟音と二人の非難の声を背中に、ヒィッツカラルドは背後の通路から全速力で古墳出口へと向かった。



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130名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:51:33 ID:T+/BwfDZ
  
131人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:51:51 ID:V6hp1m8u
「ふむ……まぁ、こんな物か……」
古墳出口から飛び出し、森の中へと到着したヒィッツガラルドが、背後を振り返りながら呟く。
そびえ立つ古墳を見上げると、中央部分に崩落した穴が見受けられる物の、全壊には至っていない。
思ったよりも、この施設は頑丈に出来ていたらしい。
「これでは、きっちりと生き埋めになっているかどうかはわからんな……」
まぁ、その時はその時だ…そこまで考えたところで思考を一時中断し、ディパックの中の支給品を取り出しかけ……やめた。
「………そこまで消耗をしたわけではないか…いくら効果が微量と書いてあるとは言え、そう簡単に使う必要も無い」
そう言いながら彼が覗いているディパックの中には、光り輝く石が数個入っているビンが有った。

『月の石のかけら』、という物らしい。

それを胸に当てる事で、体の傷や体力、『心の力』なるものを僅かながら回復する事ができるとの事。
が、空気に触れ続けると効力を失ってしまうため、ビンから出した状態ですぐに使用しなければ効果は得られない。
また、ビンの中に保管していても、24時間程でただの石ころのようになってしまう……と、説明用の用紙には記されていた。
「思ったよりも、使いどころが難しそうだな……ん、待てよ…」
『心の力』。用紙を見たときには意味がわからなかったが、今戦ったあのVがそんな事を言っていたような…。
「……まぁ、全てはあの二人が生きていれば、の話か…そういえば、結局名前を聞きそびれたな」
ヒィッツガラルドの脳裏にV字型の謎の白い物体と、カミナが掛けていたV字型のサングラスが浮かぶ。
「まだ獲物は沢山いる…もし生きていたとしても、今は君達を深追いしないでおこう。
 だが……次にあった時は今度こそ真っ二つだぞ……『Vの男』よ」
そう呟くと、素晴らしきヒィッツカラルドは新たな獲物を求め、森の中を歩き出した。



【D-8 古墳北出入口付近の森・1日目 黎明】
【素晴らしきヒィッツカラルド@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:体力小消耗
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、月の石のかけら(5個)@金色のガッシュベル!! ランダム支給品(0〜2個)
[思考・状況]基本・ゲームに乗り、破壊と殺戮を楽しむ。
      1・ひとまず人の多そうな場所へ向かう。
      2・『Vの男』(カミナとついでにビクトリーム)に再び会えれば、今度こそ殺す。
      3・『心の力』というのが何なのか、ほんの少し気になる。


【補足】
・月の石のかけらについて
使い捨て回復アイテム。月のような光を放つ不思議な石のかけら。
ビンの中から取り出し、胸に当てる事で傷や魔物の子の術を使うのに必要な『心の力』を回復する事ができる。
一人用という訳では無く、中心に置いて焚き火のように皆で手を向ける事で複数人を回復する事も出来る。
人数が多いほどに回復能率が悪くなる、という事はありません。
ビンから取り出すと十数秒で光が消え、ただの石ころになってしまうので取り出しは手早く行うように。
また、ビンに入れたままでも空気に微妙に触れてしまうため、24時間後の2日目・0:00分には全ての石の回復効果がなくなります。



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132名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:52:39 ID:T+/BwfDZ
  
133人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:52:58 ID:V6hp1m8u
「チッ………これじゃああの野郎を追っかけたくても出来ねぇか……」
目の前に立ちふさがる瓦礫の山を見ながら、カミナが毒づく。
どうにか生き埋めは免れたものの、つい先ほどの崩落によって部屋の半分が分断され、片方の出口へ抜けられなくなってしまったのだ。
ヒィッツカラルドが逃げた通路があるのは、この瓦礫の向こう側。流石のカミナでも、ここを通り抜ける事は出来ない。
「ったく胸糞わりぃ……次あったらただじゃおかねえぞ……っと」
ふと、部屋に差し込む暖かい光に気づき、上を見上げる。
ぽっかりと穴が開き、すでに天井としての意味を失ったその場所からは……綺麗な満月が覗いていた。
「…………へぇ……そうか……」
なんとなく、今までの苛立ちが癒されていく感じがした。

こんな訳のわからん野郎どもがいる訳のわからない場所にも、月は出るのだ。

――――俺たちもいつか、あの月ってとこまで行ってみようや。
そう、自分の大事な弟分と誓いを立てたのはいつの日だったか。
…………さて……その誓いを現実にする為にも、だ。
「一先ずはシモンとヨーコと合流して……グレンラガンを取り戻して…そんで、あの螺旋王とかいう奴をぶっ飛ばしてからだな!」

「ビクトリーム!」

「つってもどこにあんだろうなぁグレンラガン…どっかの誰かが持ってりゃ良いんだが」

「ビクトリーム!」

「シモンとヨーコもどこに居やがるんだか……まぁあいつらの事だし、そこまで心配はいらねえだろうが


「ビィィィィィィィクトルィィィィィィィィィィィィム!!!!!」
134名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:53:34 ID:QXBNdyf6

135名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:53:48 ID:T+/BwfDZ
  
136人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:54:18 ID:V6hp1m8u
ついさっきまでのいい気分も跡形も無く吹き飛ばすような、野太い声がカミナの耳をつんざく。
うんざりとしながらも、声の方を見てみると、またもや怒りに打ち震えるVがいたわけで。
「………いたのかテメェ」
「いたのか〜じゃないわこのタワケがぁぁぁぁぁぁ!!ベルィィィィィィスィィィィィット!!!
 まぁぁぁたこの私を無視しおってぇぇぇぇ!!!」
はぁ、と深いため息が思わず出てくる。
ついさっきは止むに止まれず共闘したものの、やはりこのガンメンモドキとはウマが合わない。
「勝手にキレてろ。俺はやらなきゃやらねぇ事があるからよ…どこへなりとも行きやがれ」
そのままビクトリームを無視し、後ろの通路からこの古墳への出口へ向かおうとする。
「ちょぉぉぉぉぉっと待ったらんかぁぁぁぁぁい!!!」
が、即座に通路の前にビクトリームが立ちふさがり、カミナの進路の邪魔をする。
「………何だテメェ。やっぱ俺に喧嘩売りてぇってのか?」
「ふん!!私だって貴様の事は気に入らんわ!!」
だったら早くどけってのこの野郎。
しかし……次にビクトリームの口から飛び出したのは余りにも意外な発言。


「だが、そうも言ってられん……私と貴様は……『パートナー』になっているのだからなぁ!!」


「………………はぁ?」
パートナー?俺とこのガンメンモドキが?何でだよこのヤロウ。こっちから願い下げだっての。
「えええぃ!!そこまで露骨に嫌がるなぁ!!私だってなぁ、モヒカン・エース以外の人間をパートナーにするのは気が進まん!!
 だが……仕方ないのだ!!貴様がその本を読める事がその証拠!!」
「本ぅ?」
そこまで言われて、ふとまだ自分が先ほどの本を片手に持っている事に気づくカミナ。
そのまま、なんとなくパラパラともう一度本をめくってみる。
「良いか?我ら魔物の子が人間の世界で術を発動するには、パートナーの存在が必要不可欠だ!!
 パートナーがその本を持ち、『心の力』を込めて術を唱える事で、初めて私は術を使える!!
 そしてその本を読めるのは、ただ一人のパートナーのみ…のハズなんだが…
 まぁ細かい事を言っても仕方あるまい!!モヒカン・エースがいない今、本を読めるお前こそが…」


「………………読めねぇぞ」


「そう、読めないお前こそがなぁぁぁぁぁぁんばしょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!???」
唐突にカミナが放った一言に、ビクトリームが思わず素っ頓狂な叫びを上げる。
読めない!?何故に!?どうして!?さっき思いっきり術を使っていたのに!?ベリーミステリー!!
「いや、だからもう読めねぇんだっての…こうなりゃもうタダのゴミだな」
そういいながら、カミナが興味を失ったようにポイと本を放り投げる。
「ブ、ブルァァァァァ!?なぁぁぁぁにをするかぁぁぁぁ!!!」
地面につく直前に、ビクトリームが滑り込む形で本をキャッチする。
「き、貴様ぁ、わかっているのか!?この本がもし無くなれば、私は魔界へ強制送還されてしまうのだぞ!?」
その言葉を聴いた瞬間、ピクリとカミナの耳が動いた。
「ほぅ、そりゃ良い事聞いたぜ……つまりその本をバラバラにすりゃあ…テメェともおさらばって訳かぁ!!!」
片手に持っていた剣を突きつけ、今にも襲い掛かりそうな勢いでカミナがビクトリームを見る。
だが、そう簡単に怯む程にビクトリームは柔な性格ではない。
「バカモノがっ!!残念だがなぁ!!魔本はパートナーには燃やされないようになっている!!
 今は貴様は本を読めないようだが、つい先ほどは確かに本を読んでいただろう!?
 すなわち、貴様はどうあれ私のパートナーである事に変わりはなぁぁぁい!!!」
逆にカミナの方を睨み付け、こっちから啖呵を切ってやる。
正直な話、『本を読めないパートナー』など聞いたことは無いが、自分は『千年前の魔物』というイレギュラーな存在。
もしかしたら、モヒカン・エースこそがパートナー違いである可能性もあるのだ。
もしそうだとしても、この男よりもモヒカン・エースの方が何倍もまともなパートナーだったと言えるが……。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:54:53 ID:T+/BwfDZ
  
138人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:55:27 ID:V6hp1m8u
「……ったく、メンドくせぇな……」
興味を無くしたのかやる気がそがれたのか、剣の矛先はビクトリームから外れた。
そのままカミナはビクトリームに背を向けると、つい先ほどの戦闘で落としたサングラスを拾い、掛けなおす。
「ぬぅ……ぐぅぅぅぅぅぅ……!!」
「……おっ、さっきのメロンが残ってるじゃねえか…ラッキー♪」
「ブルァァァァァァ!!!ベリィィィィィィシィィィィィィット!!!」
ビクトリームは自分のディパックの中に魔本を放り込むと、溜まりに溜まった怒りを爆発させた。
何なんだこの男は!何故こんな傍若無人でソリの会わない男が自分のパートナーなのだ!!
モヒカン・エースはどこに行った!!そしてメロンを寄越せ!!ちゃんと本を読め!!それとメロンだ、メロンを持ってこぉぉぉい!!
やや意味不明で支離滅裂な感情を湛えながら、ビクトリームはついにカミナにその言葉をぶつける。


「貴様!!一体何様のつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


カミナの動きが、止まった。
「………俺が何様のつもりだって?」
そう言うやいなや、バッとマントを翻して勢いよく振り返る!!

「オウオウオウオウオウオウオウオウオウオウオウオウオウ!!!俺を誰だと思ってやがる!!」

片手に持った半分のメロンをビクトリームへつき付け、不敵に笑い…

「暗ぇ村から飛び出して、喧嘩ばかりのぶらり旅!!」

そのまま、手に持ったメロンをひょいと空中へ放り投げた!!

「荒くれどもを纏め上げ、獣人どもをぶっ飛ばす!!」

即座にもう片方の手に持っていた剣を翻し…浮いたメロンを二つに切り裂く!!

「大グレン団団長にして、不撓不屈の鬼リーダー!『カミナ』様たぁぁ……」

勢いそのままに剣を背負ったディバックの中に突っ込んで、素早く落ちてきたメロンを両手でキャッチし……

「俺の!!事だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

大見得を切りながら、カミナは高らかに自分の名を宣言した!!
139名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:56:07 ID:QWoFdeBZ
140名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:56:18 ID:SUugj7AG
141名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:56:21 ID:T+/BwfDZ
  
142名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:56:41 ID:V6hp1m8u
…………………………………………………………………………………………………………静寂。


常人であれば、居た堪れなさの余り赤面してしまいそうな静寂が辺りを包んだ。
先ほどまで怒りを露にしていたビクトリームも、メロンを求めるのも忘れ、ただ黙ってカミナを見ている。
だが……カミナという男は、良くも悪くもこんな程度で怖気づく人間では無かった。
「……………カミナ?」
「へっ、どうしたガンメンモドキ!俺の名乗りを聞いてビビリやがったか!?」
ビクトリームの様子を見ても、自分の口上に引いているとは微塵も感じていない。
実際の所、確かにビクトリームは『カミナの口上に引いている』訳ではないのだが……。
「………そうか……なるほど……そういうことか……」
一人、納得したようにビクトリームが呟く。
長らく抱えている悩みが、ようやく氷解したような晴れやかな表情をして。
「あ?なんだてめぇ?何か文句でもあるってのかこの野郎!?」
ビクトリームの態度が気に入らず、思い切り不満をぶつけるカミナ。
不満をぶつけられた瞬間…ビクトリームの表情が烈火の如く燃え上がった!!
「おぉぉぉぉぉぉぉぉおありよぉぉぉぉぉぉ!!!貴様!!」
ここまで吼えた所で一呼吸置き、再び息を吸った所でビクトリームが吼えた。


「貴様の名前がダサすぎるから私の本が読めんのだぁぁぁぁ!!!」


「な………!!」
余りにも予想外のビクトリームの言葉に、カミナの体が硬直する。
「ハンッ!!カミナなど下らん名前!!全く、ようやく本が読めん理由がはっきりしたぞ!!
 そんなダサイ名前のパートナーでは、私の魔本もやる気を出さんわ!!
 ついさっき本が読めた事こそが間違いだったのよぉう!!」
魔本に意思など無いというのに、まるでそれが正解であるかのように答えを出すビクトリーム。
「な………な………!?」
カミナはまだ我を忘れている。
「だが、問題がはっきりしたのならばもう解決は目前!!
 喜べ!!貴様にはこの華麗なるビクトリーム様じきじきに名前をくれてやろう!!
 そう、貴様は今日から………」
「…………………………」
カミナは何も答えない。
そんなカミナの様子になど意に介さず、ビクトリームは嬉々として『カミナ』への命名を行った。






          「貴様は今日から!!『グラサン・ジャック』として生きていくのだぁ!!!」





143名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:57:26 ID:T+/BwfDZ
  
144名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:57:37 ID:mO1ruzbw
 
145人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:57:53 ID:V6hp1m8u
「……………………………」
カミナが、自分の両手を見る。
今、そこには半分になったメロンが乗っている。ゆっくりと、その一つに齧り付く。
………甘い。瑞々しい香りが口の中に広がる。どうやら、『ベリーなメロン』という名は伊達ではないらしい。
なにやら目の前でガンメンモドキが騒いでいるが、気にしてはいけない。今はまだ。
そのまま、一つのメロンを食べ終わると、皮を後ろへ放り投げる。
よし。これで片手が空いた。



「…………人の名前をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………」
ゆっくりと、しかし確実に片手に力を溜める。
今自分がされようとしている事にようやく気づいたのか、ガンメンモドキが慌てているが、もう遅い。

「変えんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

カミナ渾身の右ストレートがヒットし、ビクトリームの体が大地に転がった。






「ブルァァァァァァァ!!??痛い!!痛いぞぉグラサン・ジャックよぉぉぉぉ!?
 どうしたのだ!?何が不満なのだ!?いい名前では無いかグラサン・ジャァァァァァァァァック!?
 ブルァァ!?やめろ!?こっちに来るな!!落ち着くのだグラサン・ジャック!!
 ビクトリーム!!ビクトリーーーーブルァァァァァ!?やめてくれぇぇ!!馬乗りはやめてくれぇぇぇ!!
 ああ痛い!!痛い!!痛いってのよぅ!!こ、この痛みを和らげるにはメロンしかない!!
 さぁグラサン・ジャックよ!!私にメロンをブルァァァァ!?もぐな!!無理やり首をもぐなぁ!!
 いいからメロンだ!!今ならメロンを寄越せば許してやる!!ギブミーメロン!!プリーズメロォォォォン!!
 ブルァァァァァァァァァァァァ!!グラサン・ジャァァァァァァァァァァァァック……………」





146名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:58:32 ID:T+/BwfDZ
  
147人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 12:59:23 ID:V6hp1m8u
【D-8 古墳内部(安置の間南方面)・1日目 黎明】
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:体力中消耗・左肩に中程度の裂傷(激しく動かすと痛みが走るが、我慢できないほどでは無い)
[装備]:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん・四分の一サイズのメロン
[道具]:支給品一式、ベリーなメロン(14個)@金色のガッシュベル!!(?)
[思考・状況] 1・このガンメンモドキ(ビクトリーム)を気の済むまでボコる。
         2・シモンとヨーコとさっさと合流したい。ついでにガンメンモドキとは別れたい。
         3・グレンとラガンは誰が持ってんだ?
         4・もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!

※参戦時期は第7話終了直後です。
※グレンとラガンも支給品として誰かに支給されているのではないかと思っています。
※ビクトリームをガンメンに似た何かだと認識しています。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。


【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:カマイタチによる小程度のダメージ 現在進行形でカミナの攻撃による中ダメージを受けている
[装備]:なし
[道具]:支給品一式・ランダム支給品(1〜3個)・魔本
[思考・状況] 1・やめるのだグラサン・ジャック(カミナ)!!いいからメロンを寄越ブルァァァ!?
        2・正直な所グラサン・ジャックと気が合いそうに無いが、モヒカン・エースと合流するまでは一緒に行動する。
        3・モヒカン・エースと再会したら目に物見せてくれるわぁ!!ああ!?股間の紳士をいじめないでぇ!!

※詳しい参戦時期は次回以降の書き手さんにお任せしますが、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後です。
※会場内での魔本の仕組みに気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
 また、耐火加工についても気づいていません。
※モヒカン・エースがゲームに参加していない事にも気づいていません。
 また、メロンの事で頭が一杯になっているため、名簿確認や支給品確認の必要性にも気づいていません。

※D-8の周囲5マスに、古墳崩壊の轟音が響き渡りました。



【補足】
・なんでも切れる剣
ご存知、クロちゃんとミーくんの愛用武器。普段は彼らの盲腸の辺りにしまわれている。
なんでも切れる剣、といいつつも切れない物も普通にある。
ロワ内では普通の大剣、という扱いです。

・ベリーなメロン
一見なんて事無いごく普通のメロン。
だが、一口食べればその瑞々しい甘さと柔らかな口どけで僕らの心を掴んでくれるはず。
といってもただのおいしいメロンなので、特別な効果は一切ありません。

・魔本について
カミナが一時的にビクトリームの魔本を読めたのは、
彼ら二人が「ヒィッツカラルドを倒したい」という同じ強い想いを抱いたからです。
戦闘が終わり、その目的が失われた瞬間には既に魔本が読めなくなっています。
もしこの先この二人が「〜〜をしたい!」という同じ強い想いを抱けば、
再び『その時に限り』魔本を読み、呪文を唱える事ができるでしょう。
これはあくまで『気の合わない人間でも寸分たがわぬ非常に強い想いを一緒に抱けば一時的にだが本が読める』という事実であるだけで、
もし参加者の中に、ビクトリームと気の合う人間が存在したならばその人物は何の障害も無く本を読む事が出来るでしょう。

・古墳について
北側と南側に一つずつ出入り口があり、これら二つはは古墳内部の「安置の間」を通りつながっています。
ですが、カミナ達の戦闘により「安置の間」は瓦礫の山で分断され、実質の袋小路となっています。
また、内部の通路には幾つかの道があり、「安置の間」以外にも部屋が存在しているようです。
148名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:59:37 ID:T+/BwfDZ
  
149名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 12:59:41 ID:SUugj7AG
150人の名前を変えんじゃねえ!!  ◆WcYky2B84U :2007/09/22(土) 13:00:26 ID:V6hp1m8u
投下終了です
ニアが目を覚ましたのは、緑あふれるキャンプ場の近くだった。
「綺麗なところ……ここは一体どこでしょう? テッペリンの中ではなさそうですけど」
彼女がかつて住んでいたテッペリン宮殿にも緑のある場所はあったが、そことは違う。
まるで見たこともない草花が、月明かりの下に美しく咲いている。
「それに、なぜ私はここにいるのでしょう?」
ニアは首をかしげる。
さっきまでダイグレン(足の生えた地上戦艦)の中で、大グレン団のみんなにお昼ご飯を作っていたはずだった。
それが気がついたらここにいた。
「早く帰らないと……シモンや他の皆さんがおなかを減らして待っているわ」
そう呟いて立ち上がると、ニアはダイグレンを探して周囲を見渡した。
だが、ダイグレンのあの特徴的なフォルムは、(暗いからでもあるが)どこを見ても見当たらない。
しばらく待っていれば皆が探しに来てくれるかと思い、じっと待ってみるが、辺りは静かで誰も来る気配がない。
そうしているうちに、ニアは首の辺りの違和感に気がついた。
『それ』は、首輪だった。
「……もしかして、あれは夢ではなかったのですか?」

実の父である螺旋王ロージェノムが、大勢の人を集めて殺し合いを強要するシーンが思い返される。
首輪に気づくまで、ニアはそれを夢だと思っていた。
なぜなら、ニアはとっくの昔にロージェノムに捨てられて、今はシモンたちと行動を共にしているはずだったから。
しかし。この首輪こそが、先ほどの光景が夢ではなかったことの証だった。

これが現実だと気づいたニアは、まずシモンの心配をした。
「シモンも同じように殺し合いをさせられているのでしょうか?」
ニアは思う。
シモンは強い。だが、それは心の話であって、肉体的には普通の少年とあまり変わらない。
強い心と気合以外、特殊な能力など持ってはいない。
そしてニア自身はと言えば、多少人より運動ができるというだけの、ただの子供だ。
意味もなく他人と争うのはイヤだし、まして殺し合いなどできるはずもなかった。
「……お父様をどうにかして止めないと。でも私ひとりではどうにもならないし、とりあえずシモンを探そうかしら」
ニアは再びキョロキョロと辺りを見回すと、夜の森の中を歩き始めた。

 ※

ふいに、背後の茂みがガサガサと動いたかと思うと、何かが飛び出してきた。
そしてニアは、瞬く間に押さえつけられてしまう。
「!? な、なんですか!?」
「おっと、動くんじゃないよ」
聞こえてきたのは、やけに迫力のある女の声。
その女はニアの背中にしっかりと跨っているようで、身動きひとつできないうえに凄く重い。
「あ、あの……重いです……」
「動くなって言ってるだろ。お前、名前は?」
「は、はい。私、ニアと申します」
「ニアか、悪くない名前だ。さてと……」
女はニアに跨ったまま、その身体を器用にまさぐり始めた。
「きゃあ! な、なにを……!?」
「よーし、危険な物は持ってないようだね」
それは別に変な目的があったわけではなく、武器を持っていないか探るためだったようだ。
女はニアの身体をまさぐっていた手をどけると、さっきよりは少し優しく声をかけてきた。
「いいかい? 痛い目見たくなかったら抵抗するんじゃないよ。わかったね」
「は、はい」
ニアは素直に頷いた。
なにしろ、誰か探そうとしてた丁度その時に、その『誰か』に会えたのだ。
脅すような言動をする相手とは言え、とりあえずは顔を見てみたい。
「よし、いい子だ。今どいてやるよ」
重量級の肉体が背中から離れ、ニアは大きく息を吐いた。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:42:04 ID:FTw+TnaL
 
154名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:43:20 ID:fNpbNfDS
 
155名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:43:25 ID:ES91BfU1
支援

 ※

声だけでなく、見た目もやけに迫力のある初老の女は、ドーラと名乗った。
その手に持った刀をニアに向けたまま、彼女が持っていた荷物を奪って中を調べるドーラ。
中に入っていたのは、基本的な支給品の他に小さなカプセルが3つ入った袋と、釘を打ち付けたバットだった。
「この棍棒はともかく、こっちのカプセルはなんだい?」
勝手に荷物をあさり、中身を調べ始めるドーラに、ニアは言葉も出ない。
「ん、説明書きがあるね。『毒入り。飲むと死にます』……か。ま、これなら女の子でも人を殺せるかもしれないね」
毒入りカプセルを手の中でもてあそびながら、ドーラはニアをじろりと睨む。
「さて、ニアって言ったね。お前はこの『ゲーム』に乗っている……ようには見えないね。聞くだけ無駄か」
それまではおろおろしていたニアだったが、ドーラの問いに対しては臆することなく、毅然とした態度で答えた。
「はい。殺し合いなどするつもりはありません」
「こうやって殺されそうになってもかい?」
刀を突きつけてくるドーラ。しかしニアは怯まない。
「はい。私はお父様を止めなければなりません!」
この状況で全く怯えていないその態度と、なにより発言の内容が、ドーラのニアに対する興味を駆り立てた。
「お父様を止める? 何のことだい?」
「螺旋王ロージェノム……あの人は、私のお父様です」
「な、なんだって!?」

ドーラの顔があまりの驚愕に歪む。
無理もない。ただの小娘にしか見えない少女が、敵の娘だというのだから。
それでも、ドーラにはニアが嘘をついているとは思えなかった。
伊達に50年生きているわけではない。嘘をついているかどうかはすぐに分かる。
ドーラの頭の中に、ニアを人質にしてロージェノムを脅し、ここから脱出する算段が即座に浮かぶ。
そして、次の瞬間にはそれを自ら否定した。
実の娘を殺し合いに放り込むような親だ。交渉の余地などないだろう。
157名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:44:35 ID:V6hp1m8u
  
ドーラは目の前のニアを見つめ直す。王の娘を名乗るだけあって、確かに高貴な雰囲気が感じられた。
「螺旋王、とかいうあの男の娘か。じゃあ王女様なんだね?」
「はい。でも今は違います……私はお父様に捨てられましたから」
少し悲しげな瞳で答えるニア。
「捨てられた?」
「はい。私は眠ったまま、箱に詰められてゴミ捨て場のようなところに捨てられていたそうです」
それを聞いたドーラは大きくため息をつくと、ニアに哀れむような眼差しを向ける。
「ふん、ちょいと同情するよ。あたしら海賊でさえ家族を大事にするって言うのにねぇ」
だがニアは、ゆっくりと首を振る。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。今の私には、大切な仲間がいますから」
しっかりとした口調で、真っ直ぐな瞳で答えるニア。
その様子にドーラは少し感心する。
よほど信頼している人物がいるのだろう、その人物がどうにかならない限りこの子は大丈夫だろう、そう思った。

「それにしても、殺し合いに参加させるほど実の娘が憎いかねぇ? 捨てるだけじゃ足りないってのかい?」
「お父様は何か目的があると言っていました。私が参加させられたのも、意味があってのことなのでしょう」
「(そう言えば、螺旋がどうとか言っていたねぇ。意味はよく分からなかったがね)」
「……ですが、その手段が殺し合いというのは間違っています。私が止めなくてはいけません!」
ニアのその決意に、ドーラは大きく頷いた。
声には出さなかったが、心の中でニアを少し気に入り始めていた。
159名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:45:46 ID:fNpbNfDS
         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ      >お父様
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i

ドーラは海賊だから、金品を奪うために殺しをしたことはもちろんあった。
しかしそれは、あくまでも『金品を奪う』というはっきりとした目的があってのことだ。
意味も分からず殺し合えと言われて素直に従うつもりはない。
それに親が子を殺し合いに参加させるというのは胸糞が悪かった。
だがそんな事よりももっとドーラの心を動かしたのは、ニアの言動から感じ取れた芯の強さだ。
それはシータに感じたものと近いものであったのかもしれない。

「お前、あたしと一緒に来るかい? お前みたいな女の子が独りでいたんじゃあ何かと物騒だろう」
「よろしいんですか? 私がいたら、ドーラさんの邪魔になるのではないですか?」
「なに、あたしの目的はこんな腐った『ゲーム』から脱出することだ。だがそのためには、この首輪を
 どうにかしなけりゃならない。それには少しでも情報や人手があった方がいいからね」
それに、螺旋王の娘であるこの少女は、何かの鍵になるかもしれない。
言葉には出さないものの、ドーラは心の中でそう付け加える。
「ありがとうございます。ドーラさんっていい人ですね!」
ペコリトお辞儀をしながらのニアの言葉に、ドーラは笑って答えた。
「いい人はやめておくれ。体がくすぐったくなる」

 ※
二人で行動を共にすることが決まったので、ドーラはニアに荷物を返してくれた。
そして、その場に腰を下ろして話し合う。
「ところでお前は、誰か探したい人はいないのかい?」
月明かりを頼りに名簿を見ていたニアは、知り合いの名前を見つけると嬉しそうに話し始める。
「えーと、シモンという男の人と、ヨーコさんという女の人を探しています。シモンはこの位の背で、穴掘りが得意です」
「穴掘り? なんだいそりゃ」
「本当に上手なんですよ。故郷では『穴掘りシモン』って呼ばれてたそうです」
そんな特徴を説明されても困る、と言わんばかりのドーラだったが、ニアはそれに気づかず説明を続ける。
「ヨーコさんはシモンより少し背が高くて、その、ぷろぽーしょん、って言うんですか? ……が素晴らしいです」
「ふん、あたしだって若い頃はね……」
と、昔語りを始めそうになるドーラに構わずにニアは名簿を見続けていたが、やがて顔を上げる。
「あとは……いませんね。その二人だけです」
実はもうひとり、気になる名前があった。

――カミナ
「(この『カミナ』という名前、確かシモンが言っていたアニキさんの名前だわ。同名の別人でしょうか?)」
そのカミナは死んだはずなので別人の可能性が高いが、万が一という事もある。
どちらにしても、今はまだはっきりとしないことなので、ニアは黙っておくことにした。
一方のドーラも、どこからか眼鏡を取り出して知った名前がないか探し始める。
「シャルルたちはいないようだねぇ。全く、どいつもこいつも肝心な時に役に立たない、情けない子たちだよ。
 おや、シータとパズーがいるのかい。それに……それにムスカだって?」
「その三人がお知り合いの方ですか?」
「あぁ。あ、いや。シータとパズーは知り合いと言うか身内みたいなもんだね。だがこのムスカって奴は……」
ドーラは三人について簡単に説明した。
シータとパズーの特徴。そしてムスカについては少し詳しく。
シータを狙っていたこと。ラピュタを支配しようとしていたことなども付け加えた。
「まぁ、あたしらもお宝を拝借しようとしてはいたがね、ムスカはもっとろくでもない目的があったようだよ」
「では、そのムスカという方は、悪い人なのですか?」
「海賊のあたしが言うのも変だが、かなりの悪人だね。でも外面は良さそうだから、騙される奴もいるかもしれないねぇ」
「そうですか……」
162名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:49:07 ID:fNpbNfDS
   
163名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:49:09 ID:V6hp1m8u
 
シモンが騙されたりしないか少し心配なニアだったが、彼女は基本的にシモンを全面的に信頼しているので、
「シモンなら大丈夫」と小さく呟いて頷くと、それだけで気持ちは落ち着いた。
ドーラは「さて」と言って立ち上がると、コンパスと地図で方向を確かめ始めた。
幸い、すぐ近くにキャンプ場の看板が見えたので、現在位置は特定できる。
「とりあえずは互いの知り合いを探すことにしようかね」
ニアもスカートの裾を払いながら立ち上がると、ドーラの後ろから地図を覗き込んだ。
「……よし、それじゃあ出発するよ」
「はい!」

 ※

出発した二人は、ドーラの提案でまず街の方へ向かうことにした。
なにか役立つものが手に入るかもしれないし、街の方が人が多いだろうというのがその理由だ。
もちろん危険も増すが、危険を恐れて人気のないところに隠れていても事態は好転しないだろう。
「あの、それでひとつ聞いてもいいですか? 先ほどはムスカさんの事が気になって訊けなかったのですけど……」
「なんだい?」
「ラピュタって一体なんですか?」
「ん? そうだねぇ。簡単に言えば、空に浮かぶ島だね」
「空に浮かぶ……島、ですか?」
ニアが思い浮かべたのは、ロージェノム配下の四天王のひとりが所有する空中戦艦。
島と言うからにはもっと大きいのだろうが、ニアには想像もできなかった。
「詳しい話は後だ。歩きながら話してもいいんだが、お前の甲高い声は辺りに響くからねぇ」
「す、すみません。私、あまり喋らない方がいいですか?」
「そうだね。いつ襲われるか分からないよ。あたしは簡単にやられるつもりはないがね」
そう言って、ドーラは手に持った刀を振るってみせる。
その姿はなかなか様になっていて、ニアは少し安心する。
ニアもまた釘バットを握り締めると、空に輝く月を見上げ、どこにいるかも分からないシモンへ心の中で語りかけた。

「(私はドーラさんという親切な人と出会えました。シモン、あなたはどうしていますか?)」
165名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:50:28 ID:FTw+TnaL
 
166名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:51:11 ID:fNpbNfDS
  
167名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:51:12 ID:V6hp1m8u
 
【G-7/キャンプ場の近く/1日目/深夜】
【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式 毒入りカプセル×3@金田一少年の事件簿
[思考]:1.ドーラと行動を共にする。まずは街へ行って、落ち着いたら情報交換
    2.シモン、ヨーコ、シータ、パズーを探す
    3.カミナの名前が気になる(シモンの言うアニキさんと同一人物?)
    4.お父様(ロージェノム)を止める
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。

【ドーラ@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康
[装備]:カミナの刀@天元突破グレンラガン
[道具]:支給品一式 不明支給品×1〜2
[思考]:1.ニアを連れて行く。まずは街へ行って、落ち着いたら情報交換
    2.シータ、パズー、シモン、ヨーコを探す
    3.ムスカを警戒
    4.ゲームには乗らない。ニアに付き合うが、同時に脱出手段も探したい
※シータ、パズーを仲間に入れた後〜ラピュタ崩壊前のどこかから呼ばれています
 詳しい時期は後の人にお任せします。
※※シータとムスカは、正式な名前ではなく普段の名前で名簿に記載されています。

・毒入りカプセル
服用した場合、常人ならほぼ即死。また、毒に耐性があっても重傷は免れない。
どうやって飲ませるかが課題。

・カミナの刀
カミナが故郷の村長から奪った刀。日本刀に似ている。
特殊な能力などはないが、わりとよく斬れる。
169 ◆XzvibY6nJE :2007/09/22(土) 13:52:26 ID:QXBNdyf6
投下終わりです。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 13:52:44 ID:fNpbNfDS
  
171それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:15:07 ID:ebmP0jLM
あたし、結城奈緒は走っていた。そりゃあもう全速前進ってな具合に。
バサバサ自慢の赤色の髪が乱れるし、制服には汗が滲むし。
ニーソックスが少しずり下がって来たような気もするけど気にしない。

突き動かすのはとある本能的な衝動。
とはいえ命の危険を感じ逃げ惑う子羊のソレでも、狩りに没頭する狼のソレでもなかった。


――ふざけんな、糞オヤジ。


ソレがあの厳ついオッサンに『殺し合え』と言われた時、一番最初に思った事だった。
殺し合い? 優秀な個体を集めるための実験場? 
『はぁ? アンタ馬鹿じゃないの?』と、心底文句を言ってやりたい気分だった。
……まぁ、変身ヒーローみたいな格好をした変な男がボコボコにされるのを見て、さすがに声に出すのは止めておいたけど。

大体、そういう"最後の一人になるまでの潰し合い"みたいなシチュエーションは、とっくに間に合っている訳で。
と言うかもうお腹一杯、みたいな。
正直"蝕"の時みたいに積極的に恨みを晴らして回るだとか、喧嘩を売りまくる気分にはまるでなれなかったのだ。


つまりあたしを動かしている燃料は、ずばり長年磨き上げられた倦怠感。これだけだった。
だるい、面倒くさい、帰りたい。
そんなまぁ現代の女子中学生としては極めて普通の感情。
そりゃあ"本当に"一般的な女学生だとしたら、いきなりこんなゲームに放り込まれたら死ぬほど取り乱すだろうけど。
まぁ一応似たようなイベントの経験者でもあるし、慣れてるっちゃ慣れてるから。
それにあたしって厳密にはふつーじゃないし。

 
 ■


Highly-advanced Materializing Equipment、通称――HiME。

HiMEとは要するに……まぁなんか爪だとか銃とか、様々な武器を具体化できる能力者の事だ。
名簿を確認した限り、あたし以外にもこのゲームには三人のHiMEが参加している。
玖我なつき、鴇羽舞衣、藤乃静留……よりにもよってどうしてこの三人、と嘆かざるを得ない最悪の面子。
明らかに頼りにならないヘタレ、コイツは既に論外。
加えて明るさと胸の大きさだけが取り得のバカ、そして最悪と言うか災厄としか表現できないぶぶ漬け女。
役に立たない事この上ない。

支給品、とやらにも一通り眼を通してみたものの完全にハズレとしか表現の出来ないものばかりだった。
中には明らかにあたしが"あんな体験"をした事を示唆する物までご丁寧に突っ込まれていた。
どう考えても嫌味、もしくは皮肉。正直ムカつく事この上ない。

「さてと……どうしたものかしら」

ある程度走って目の前に飛び込んできたのは大きな工場地帯だった。
モクモクと煙を吐き出す無数の煙突とゴウンゴウン唸るコンベアの音がやけに印象的だった。

糸を使い高速移動する事も可能だがとりあえずソレは控える。
エレメントには特別な制限が掛かっていないようで問題無く運用できるのだが、あまり露骨に使っている所を見られるのはマズイ。
森の中や路地裏などの戦い慣れた場所ならともかく、市街地にはどんな人間がいるのか分からないのだ。
とりあえず休め場所を探して、そこでゴロゴロしながら先のことを考えるか。
172名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:15:21 ID:2pdAppQw
 
173それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:17:29 ID:ebmP0jLM



――ッ!?


突如、背筋に突然得体の知れない衝撃が走った。
それは肉体的な何かではなくて、精神的なもの。
大脳、もしくは脊髄が作り出した人工的な電気信号。そして本能的な叫び。

振り向く。つまりターンだ。
ワン、ツー、スリー。
それはまるで、隣でダンスの教師が手拍子でも叩いてるようにゆっくりとしたスピードだった。
勿論わざとではない。
というか自分としては"反射的に振り向いた"つもりだったのだ。
だけど出来なかった。
それだけの行為に丸々三秒の時間を使ったのは生まれて初めての経験だった。


何かが、来る。


圧倒的な存在感。
大気が、空が、木々が震えている。
命を持たないはずのコンクリ詰めの道路やペラペラな石で作られた石垣まで一緒に呼応しているような。


「……ほう。最初に出くわしたのが子供、とはな」


工業地帯の遙か奥、一番近い工場の入り口付近からその男は現れた。
金色。
ソレが第一印象だった。

逆立てたどこかの国の国家金庫から盗み出してきた金塊から抽出したような見事なまでの黄金色の髪。
全身を覆い尽くすやけに趣味の悪い金ぴかの鎧。だけど何故か不思議なくらい似合っていた。
そして肩に背負った見事な黒色の大剣。あたしはソレに見覚えがあった。

「……それ、命の……?」
「……この剣の事を知っているのか、雑種」
「――ッ!! まあ……ね」

思わず"命"と口に出してしまった。そう、この場には存在しないあの剣の持ち主の名前を。
『ヤバッ』と自らの無用心を呪っても時既に遅し。
もしもあのままダンマリを決め込んでいたなら、この男はあたし目の前から消え去っていたかもしれないのに。
そう、現実は常に過酷なのだ。

男の目つきが変わった。気高く、何者にも侵されない絶対的支配者の瞳。
大空にも似た青い視線が絶対的なオーラと共に皮膚を這い回る。

「ふむ。少し、話を聞かせて貰おう」
「……もしも、あたしが断ると言ったらどうする?」

とりあえず距離を取るため男を睨み付けたまま軽く返答。
退却を前提に少し後ろに後退、したつもりだった。
だがそんな行動も相手にとってはお見通しらしく、あたし達の距離は"全く"変わらない。
そう、おそらくだが……一センチの誤差も無く、だ。

男は笑った。
そして狂おしいほどの残酷な笑みを口元に携え、一喝する。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:17:39 ID:2pdAppQw
 
175名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:18:58 ID:OidraeEc
 
176それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:19:06 ID:ebmP0jLM


「雑種、我を失望させてくれるな。――まさか、我との絶対的な"差"が分からぬ程貴様は腑抜けなのか?」
「はッ、まさか!! あたしをそこら辺の餓鬼共と一緒にしないで貰いたいね!!」


場に流れる険悪な空気。
ヤバイ。
とりあえず啖呵は切ってみたものの、全身の器官が総動員でとある指令を伝えて来る。
つまり"逃げろ"だ。
反対しているのはもはや脳だけ。
つまりこの状況で逃げ出したらどうなるか、冷静に判断出来る唯一の体内器官だけという訳だ。

てか……いきなりこんな化け物と出会っちゃうなんてあたし、大ピンチって奴?


「さぁ応えろ、雑種。選択する権利はくれてやる。もっとも、我としてはどちらでも構わんがな」


男が一歩、前に出た。
固定された距離が破られる。ソレは審判の時。

考えろ、結城奈緒。いくら何でもこの男は危険過ぎる。
何が危険ってまぁ全てだ。何もかもがヤバ過ぎる。というか反則だ。

いくら自分に多少無鉄砲な所があるとはいえ、コイツに向かっていく勇気はさすがに無い。
ジュリアを呼び出しても、まるで勝機が見出せないのは気のせいだろうか。
勝つ見込みがあるとすれば、藤乃と鴇羽のチャイルドがそれぞれ全力でぶつかった場合ぐらい。
……もしも男が全力を出せばソレでも足りないかもしれない。

ではとりあえず命のエレメントの情報を与えるべきなのか。
だが正直、それは"最もしてはならない選択"な気がしてならない。
なぜなら――情報を教え終わった後用済みになったあたしがどうなるのかまるで保証が無いから。


沈黙。数秒の空白。
男はつまらなそうな表情でぽつりと呟いた。

「仕方ない。では、直接身体に聞くか」

その言葉と共に男の左腕がすっと持ち上がる。
何が起こる? 何だ、とてつもなくヤバイ予感しかしないのは気のせいだろうか。
駄目だ、チャイルドを呼ぶ事を躊躇っている場合ではない。
即座にエレメントを発動、そして――


「――砲撃、開始」

「ジュリアッ!!!!」
177名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:19:32 ID:2pdAppQw
 
178それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:20:05 ID:ebmP0jLM



…………。


……。



「……やはり無理か」
「ジュ……リア?」


数秒の間。
ジュリアは現れなかった。
そして男が"呼び寄せたはずのもの"も同じく。
この空間に新たに出現したのはあたしの両手を覆う爪型エレメントだけ。


「中々面白い力を持っているな、雑種。今"何処から"ソレを出した?」
「……さぁね。まずはアンタの軽そうな脳味噌使って考えて見たらどうよ?」
「……くくく、弱い狗程良く吼えるとはこの事か」


やはり、簡単に挑発に引っ掛かる程相手は愚かではなかった。
それどころか命のエレメントに加えて、あたしのエレメントにまで興味を持たれてしまったらしい。
最、悪。

「――なれば、今宵は剣兵の真似事に興じよう」
「なッ!?」

そのスピードは常軌を逸していた。
音……よりはさすがに遅い。
だが、その呟きと共に大地を蹴った男の姿は次の瞬間には数十メートルはあったはずの距離を数メートルまで縮めていた。
視界が金色で一杯になる。男が大剣を振るう。


「やらせないッ!!!」
「――ッ、雑種が……!!」

瞬間、両手の十本の指からワイヤーを発射。
現時点で優先すべきはこの男の迎撃よりも一刻も早い撤退だ。
右手の五本は隣に立っていた電柱の上方部、塀の上へ。そして左手の五本は反対側の電柱へ。
左手の方は巻きつける程度では済まさない。
柔らかな血肉を切断するが如く、石で出来たその柱を軽々と切り裂き、男の目の前へ――落下させる。


トンネルでダイナマイトを爆発させたような鈍い音が辺りに木霊した。
吹き上がる粉塵。だがあたしと男はそんな些細な事象など気にも留めずに睨み合う。
突進を回避された男は驚いた顔をしながら後ろに大きく跳躍した。
それだけで立ち位置は最初の"固定"されていた距離に戻る。

男はおそらく殺しても構わない、その程度の気持ちで剣を振るったのだろう。
エレメントの話を聞きたい、と言う気持ちに偽りは無いはず。
ソレと同時にこの一撃を受け止められないのならば、生かしておく価値も無いと判断したのかもしれない。
だが、その慢心にこそ付け入る隙があった。
正直男の"全力の"突進であったならば、あたしにソレを制止出来ていた自信は無い。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:20:11 ID:22yr/4jo
180名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:20:11 ID:csjii6AO
 
181名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:20:36 ID:2pdAppQw
 
182それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:21:14 ID:ebmP0jLM

ここから、どうすればいい?
さぁ、困った。もしここで男が"全力"を出してきたら間違いなく死ねる。
ならばこの機会に逃げ出すのが得策と言うもの。
ワイヤーを使えば、更に移動する事が可能。
男の身体能力がいくら化け物染みているとはいえ、障害物があれば追跡には限界が生じる。それに賭けるしかない。



「…………なるほど」

……ん?
待て、男の様子がおかしい。
明らかに先ほどまでのあたしに向けていた表情とは違う。
何と言うか……言葉にし難い妙な感じだ。

「――気が変わった」
「……はぁ?」
「貴様、その手を覆っている武具について説明しろ」


男があたしの指先、つまりエレメントを指差しながら命令する。
やけにその態度が型にはまっていて、きっとコイツはいつも部下に指図ばかりしていたんだろうな、と思った。
だって自分より高い所にいる人間に話しかけるのが凄く嫌そうだ。

武具ってまぁ、武器っちゃぁ武器だとは思うけど。
でもそこまで大げさに言うほど、大層なものでも無い気はする。


「その突然現れた武器についてだ――殺しはしない。さっさと喋るがいい」


 ■


「つまり金ぴか、アンタはあのオッサンをブッ殺すのに武器が欲しいって訳?
 それも出来るだけ沢山」
「蜘蛛女、王への侮辱は万死に値するぞ。それに恥じらいが足りんな。言葉遣いもまだまだ乳臭さが抜けん。
 加えて礼節も気品も、女としての魅力が何もかも欠けている」
「……下品で悪かったわね」


男が積み上げられたコンテナの上で踏ん反り返りながら、そうあたしに駄目出しをする。
道のど真ん中、と言うのも何なので少し移動した。大きな音に反応して誰かがやって来る可能性もあったし。
183名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:21:38 ID:2pdAppQw
 
184それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:22:38 ID:ebmP0jLM

やって来たのは工場前の開けた空き地。
地面がコンクリート張りである以上、昔は何かが建っていたのかもしれない。


それにしても……おかしい。
いつの間にか呼称が"雑種"から"蜘蛛女"に変わっている事はまぁ良しとしよう。
逆によく分かったと賞賛に値するくらいだ。普通はどっちも相当失礼なんだろうけど。
だがなんだ、このまるで『子供を相手にしている』ような話しっぷりは。

「この"巳六"という大剣もその爪も、エレメントと言う種別の武器なのだな」
「まぁ、ね。その剣はずっと出っ放しな辺り、あたし達のとは大分タイプが違うはずだけど」

男はその漆黒の大剣を片手で軽々と持ち上げながらそう確認した。
この辺りに男の化け物染みた強さを感じる。
確かこの剣、巳六はあの命でさえ両手で持たなければ扱えなかった。正式な持ち主であるはずの命でさえ、だ。
それを片手で扱う圧倒的な膂力。今なら確信出来る。
あの時男がもう少し本気になっていたら、あたしは真っ二つになっていたはずだ。


「面白い……宝具にも匹敵するこの力、是非とも我が手中に収めたいものだ」
「……言っとくけど、無理よ。あたしのだって外そうとしても外れないんだから」
「……所詮は雑種か。例外があるかもしれんだろう。この空間は妙だ、何が起こっても不思議ではない。
 しかし、我の財が薄汚い雑種どもの手に渡っている可能性が高いと言う事か……耐えられんな」

「まぁね」と軽く相槌。
今の発言に軽くブチ切れ無かった辺り、何だかコイツとの付き合い方が分かって来た気がする。

そう、確かに金ぴかの言う事はもっともかもしれない。
例えば、何しろ命が持っていたはずの巳六がこうしてココにある時点で何かがおかしい。
それにジュリアが出せないのにエレメントは使える矛盾。
この時点で他のエレメントが支給品としてこの島に集められている可能性だって無くはないのだ。
HiME不在のエレメントが存在出来るかどうかは別として。


「そうだ、貴様の支給品には宝具に値する武器は無かったのか?」
「…………見た方が早いわ。ハズレもハズレ、大ハズレよ」

そう自嘲気味に呟くとあたしは背負っていたデイパックの中身をコンクリートの上にぶちまける。
ちょっとキレ気味なのは昨今のゆとり教育がどうこうとか、そういうのは関係ない。
ただちょっと思い出しただけなのだ。例のあの糞ムカつく道具の事を。

「……この紙は?」

金ぴかが立ち上がり足元に転がる道具のうち、数枚の紙の束に視線を落とす。
もちろん支給されたメモ帳などではない。
これまた何の役にも立たないハズレ支給品である。

「あれでしょ、悪人の手配書。名前も書いてあったはず……確か"ヴァッシュ・ザ・スタンピード"だったかしら?」

WANTEDと書かれたボロボロの紙切れ。
中央にプリントされたのは金ぴかと同じような鮮やかな金髪を重力に逆らうように逆立てた男の顔だった。
しかし……どうしてこんな目茶目茶笑顔の写真を使っているのだろう。あまりにも内容と不釣合い過ぎる。

「……ふむ、コレはいらんな」
「な……ッ!?」
185名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:22:48 ID:2pdAppQw
 
186名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:23:31 ID:V6hp1m8u
 
187それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:23:46 ID:ebmP0jLM

そう呟くと金ぴかは、仮にもあたしの支給品であるその手配書を無遠慮に後ろにぽいっと放り投げた。
――しかも、間の悪い事は続くもので。

非常にタイミングよく吹いた強風が、
非常にタイミングよくその手配書をふっ飛ばしてしまった。
そして非常にタイミングよく紙束があっという間に見えなくなってしまったのは言うまでも無い。


「ちょ、ちょっと!!! アンタ、何て事すんの!?」
「その男が邪魔ならば捻じ伏せるだけ。我にとって雑種が指定した悪の基準など意味を持たん」
「……呆れた」


訂正する。この男はあたしを子供扱いしていると言うよりもむしろ"自身が子供に近い"のだ。
ただコイツに純真無垢という言葉を当てはめるのはあまりに不適当。
まぁ、あたしもだが。
とにかく横暴で自己中心的、きっと子供の頃はわがままを言って玩具屋の前でブレイクダンスをするような人種だったに違いない。


「蜘蛛女」
「何よ」
「この眼帯のようなものは何だ?」
「う……」

男が最後に指差したのは……黒い、まるで海賊が付けるものに似た特徴的なアイパッチだった。
つい最近まで似たようなものを眼に付けていたあたしにとってコレは最悪の支給品。
玖我の豆鉄砲によって傷付けられた左目。ソレを隠すためにずっと眼帯をしていたのだから。

「これもどこかの物好きの愛用品よ、きっと」
「ふむ、妙な品物ばかりだな。本当に主催者が殺し合いをさせる気があるのか図りかねる」
「そうね。そういえばさ……アンタはゲームに乗ってない訳? 普通に襲い掛かって来たけど」

あたしがそう問い掛けると男はピクリと身体を震わせ、露骨に不愉快な顔をした。

「我が? この馬鹿げた殺人遊戯にか? 蜘蛛女、愚問だな。
 与えられた環境で狩りに身を窶すのは我の性に合わん。
 所詮この地は宝具を集めてあの男の元に乗り込むための踏み台に過ぎん」
「乗り込むって――あのオッサンの所へ!?」
「当然だ……王は一人で十分。つまり英雄王たる我の存在こそが"螺旋王"とやらと相反するのだ」

自信満々に、不敵な笑みを浮かべながら男はそう断言した。
マジだ。このゴールデンバカ、どう見ても本気だ。
王、ねぇ。まぁ確かに威風堂々とした雰囲気はあるけど。
どっかの国の王様、ってことなのかしら。

「さて、そろそろ出るか。蜘蛛女、早くそこに散らばったゴミを仕舞うがいい」
「……は?」
「貴様も我と共に来るのだ――エレメントとやらの力、みすみす見逃す術は無いだろう?」
「ちょ……ッ!?」

当たり前のように言い放つ金ぴか男。
どうもエレメントがその宝具って奴と並び得る強力な力を持った武器だと認識しているらしい。
HiMEの身体から離れたら存在できるかも分からないって言ってるのに。
コイツ、人の話を全く聞いていない。
188名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:23:57 ID:OidraeEc
 
189名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:24:10 ID:2pdAppQw
 
190それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:24:53 ID:ebmP0jLM

ただ男の戦闘能力は驚異的だ。
妙な連中、つまりはゲームに乗った過去の藤乃のような人間が現れても、この金ぴかならあっさりと片付けるだろう。
かったるいからあまり戦いたくない身の上としては同行者がいるのは好都合。


「その眼帯と携帯電話は貴様に預けておく。しっかりと身に着けておけ」
「……一応、コレあたしの支給品なんだけど」
「臣下の財、それすなわち王たる我のもの。これは管理や支配における常識であろう」
「……はいはい」

嫌々ながら黒いアイパッチを手に取り身につける。
こうでもしないと納得しなさそうなのだ、この男は。
目上の人間からの恩赦は必ず受け取るべきもの、そういう感じだろうか。
不思議なくらい左目にフィットするソレに違和感を覚えつつ、その時あたしはすっかり忘れていた一つの重大事項をようやく思い出した。


「ねぇ……金ぴか」
「何だ、蜘蛛女」
「あたしは結城奈緒、どうせアンタは呼ばないだろうけど。で……そっちの名前は何て言うの?」
「我か、我は――」

どこかの推理漫画の主人公が推理する時のポーズのように男は顎元に手を当てる。
そして自信満々に、威厳に満ちたその眼で、こちらの瞳を見つめながら言い放った。



「王の中の王――ギルガメッシュ、それが我の名だ」



あたしの受難はまだ始まったばかりだ。




【2-G 工業区 一日目 深夜】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:健康、眼帯を外したい
[装備]:エレメント(爪)、衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x1
[思考]
基本思考:面倒なのであまり戦いたくない。ヤバくなったら真面目にやる。
1:とりあえず金ぴかと一緒に行動する
2:攻撃してくる人間を殺すのに躊躇いは無い
3:藤乃にはあまり会いたくない

[備考]
※アイパッチの機能に奈緒は気付いていません。
※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書@トライガン が2-Gを中心に二枚吹き飛ばされました。
 海に落ちるのか、それとも誰かに拾われるのかは分かりません。
※奈緒は原作の蝕の祭の結果が全部ナシになった辺りから参戦。
191それが我の名だ ◇tu4bghlMIw:2007/09/22(土) 16:26:58 ID:ebmP0jLM


【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:巳六@舞-HiME 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x1
[思考]
基本思考:妥当、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】【王の財宝】の入手。
1:宝具、それに順ずる道具を集める
2:目障りな雑種は叩き切る
3:エレメントに興味

[備考]
※参戦時期は未定。

[補足]

【衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日】
アルベルト愛用の黒いアイパッチ。レーダーや通信機能を内蔵した高機能眼帯。
見た目は海賊が付けるアレ、そのまんま。

【ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書@トライガン】
600億$$(ダブドル)の賞金首「人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)」ことヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書。
プリントされているのは間抜けな笑顔の写真。

【巳六@舞-HiME】
命が肌身はなさず持っている大剣。オーファンやチャイルドを両断できる力を持っている。
命以外の人間が持つと在り得ない重さになる。
剣を地面に突き刺すと、無数の剣を地中から飛び出させることができ、少し距離の離れた敵を地中から串刺しにする。
この能力を一応あらゆる武具を"扱う"事の出来る我様が使えるかは不明。

【黄金の鎧@Fate/stay night】
魔術的な力もかなりあると思われる大鎧。金ぴか。
192ラピュタの雷  ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 16:54:20 ID:mxHdY/hk
「チッ、くだらねえ」
エドワード・エルリックは憤りながら一人病院内を歩いていた。
彼は命を奪い合い最後の椅子を求める殺人ゲームで、無事に帰してもらえると思うほどお人よしでもなければ
八十人もの人間が殺されるのを黙ってみていられる人間でもなかった。
ならばどうすればいいか? 決まっている、あのハゲを倒してしまえばいい。
だから進む、名前が名簿に載っていた弟たちと協力するために。お互いの無事を確かめ合うために。

(でも、なんであの人の名前が載っていたんだ?)

エドは歩きながらも考える。なぜ、ヒューズ中佐の名前が載っていたのだろうか?
人体練成は禁忌であると同時に、絶対に成功しない錬金術のはずなのだ。
死んでしまったマース・ヒューズの名が生者の列に加わっているはずがない。

(でも、それを言ったら俺はどうなる?)

エドワード・エルリックは死んだ。ホムンクルスに心臓を貫かれ意識が途絶えたはずだった。
なのになぜか生きている。あれは夢か幻だったのだろうか?
それとも今の状況が、ホムンクルス達の罠なのだろうか?
そこまで考えエドは思考を止めた。考えたところで結論などでない悩みである以上は、どうしようもない。
それに現実的に考えれば、マース・ヒューズはただの同姓同名の別人なのだろう。
エドはそう考えつつ玄関を通り、草木の生える外にでた。

「ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

すると頭上から、突然哄笑が聞えてきた。
エドは慌てて頭上を見上げると、病院の屋上に人がいるのが見えた。
いったい誰なのだろうか?
暗くて確認はできないが、声の感じからして自分の知り合いではないのだろうが。
エドは目を懲らしながら、遥か頭上にいる人物をさらに観察した。
だが、月は出ているものの地上から屋上にいる人物を確認できるほどの光量はないため、葛篭のような物を背負った男性とまでしか確認できない。
とはいえ、エドには相対した相手が誰かなど確かめる必要などなかった。相手の方から近づいてきたのだから。
193名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:56:11 ID:2pdAppQw
 
194名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:56:14 ID:V6hp1m8u
 
195ラピュタの雷  ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 16:56:15 ID:mxHdY/hk
「高い所はいい。まるで人がゴミのように見える」

そう言うと人影は膝を曲げたかと思うと、

「とう!」

そんな掛け声と共に、屋上から飛び降りた。それを見たエドは慌ててその場から離れる。
自殺志願者か何かは知らないが、巻き添えを喰らい押しつぶされてやるつもりなどはない。
だが、エドがその場から離れる必要などなかった。

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「なっ!?」

なんと男は重力に逆らい、光る爪先を下に、頭を上にして宙からゆっくりと落下したのだ。
そして男はエドの目の前へと、正確な距離で表すならば10mほどの所へと降り立った。
突発的な事態に内心かなり驚愕しつつもエドは状況を整理する。
男の格好は高級そうなスーツを着ており屈強そうにはみえず、さらに眼鏡を掛けているのが拍車を掛けている。
だが師匠により手ほどきを受けたエドには分かる、眼前にいる人物は格闘技を習っているか軍属の人間だと。
その証拠に、重そうな葛篭を背負っているというのに、腰を曲げている様子などない。
そして、宙に浮いていた以上は、相手は錬金術を学んでいるはずである。
宙を浮く錬金術など聞いたことはないが、ホムンクルスが存在する以上は常識など通用するとは思えない。

(ありえない、なんてことはありえない、か)

とりあえず、敵か味方かは分からないが話しかけてみることにする。
このような場所で最初に出会った人間である以上は、出来る限り穏便にすませたい。

「……え〜と、大丈…」
「跪きたまえ! 君の目の前にいるのはラピュタ神なのだよ」

エドの心配などよそに、邂逅一番に男はそう言った。
厚顔無恥。そういった言葉が似合う人物だとエドは思った。
ついでに言えば典型的な悪役だと直感する。このような台詞は悪役しか吐かない。
なので、エドは問答無用でぶっとばすことにした。オートメイルで出来た右手で握りこぶしを作り、拳闘の構えを取る。

「ラピュタ神か何かは分からないが」

そう言うと同時にエドは駆け出し、

「殺し合いに乗っているのなら、ぶっ飛ばす!」

男に対していっきに間合いを詰める。
196ラピュタの雷  ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 16:58:08 ID:mxHdY/hk
だが男の方もただ黙ってやられるつもりはないのか、葛篭についていた突起物を右手で引き抜いた。
なんらかの武器だと直感しつつも、素早さに自信のあるエドは勢いを落とさずに懐につっこむ。
自分に突撃してきたエドに対し男が右手を振るう。その刹那、男の右手が持っているものが光り、突然光る剣となった。
男の狙いは突然発生させた剣で、相手を貫くことだったのだ。

(甘え!)

だがエドはそれを予想していた。剣だと具体的に考えていたわけではないが、武器だと検討を付けていた以上は避わすことなど雑作もない。
エドは横に飛び光の剣の軌道から逃れ、男の顔面に右拳を叩きつけようとした。

「!?」

突然エドの右肩に鋭い痛みが走った。そしてエドに隙が生じ、男が返す刀で切りかかってくる。
しかし、エドの方が男よりも素早いため光の剣を後ろに跳ぶことにより避わし、大きく間合いを空ける。
いったい自分の右肩に何が起こったのか? 右肩から先を動かそうとしても、まったく反応がない。
焦るエドに対して男が余裕のある声で挑発する。

「ふん。小さくて当てにくいな」
「誰がチビだ! 手前、俺の右腕に何をした!」

エドは男の言葉に憤りながらも、疑問を投げかける。
だが答えの代わりとばかりに別のものが返ってきた。

「見せてあげよう、ラピュタの雷を!」

男の体に光が生まれ、エドに向かって一直線に伸びる。その光が危険だと直感したエドは、避けるために真横に跳んだ。
だが、そのときエドにとって予想外のことが起こった。なんと光がエドの回避した先へと曲がったのだ。
金田一一は、先ほど眼前で起きた理不尽きわまる死に憤りを覚えながらも、一人立ち尽くしていた。
祖父から受け継いだ探偵としての宿命なのか、一はこれまで多くの事件現場に関わった経験がある。
そしてその中で、犯罪に手を染めてしまう沢山の加害者達の姿をも、彼は幾度となく目にしてきた。
殺人に暴行、強盗――。それらが決して赦される行為でないことはよくよく分かっている。
だがそれでも、彼が見てきた犯罪者達の心中には常に、何らかの悲しい理由が、行き場のない苦しみが存在していた筈だ。
恋人を無残に奪われた者、愛する我が子を救う為に必死だった者、母を亡くし復讐に生きた者――――。
彼らのやり方は、確かに間違っていたのだろう。どんな悲惨な理由であれ、人を殺すなどというのは最低最悪の罪悪だ。
けれど逃げられない苦悩の中に囚われ、最後の手段として殺人という禁忌を犯してしまった人々のことは、まだどこかで理解できる。
彼がそれ以上に許せないのは、何の切たる理由もなく他人を殺害して喜んでいるような相手だ。
先刻の男のように、人の命を自由に弄べる玩具か何かだと考えている人種、――それが彼には、何より許容し難かった。
先ほど、まるで喜劇のワンシーンのように呆気なく行われた唐突な死の瞬間を、思い出す。
笑いながら首輪を爆発させた男と、その結果周囲に血と脳漿を撒き散らして死んでいった青年のことを。
死体は、嫌になるほど見慣れている。人が死ぬ瞬間そのものですら、もう何度もすぐ側で目撃した経験がある。
けれどそれでも、人間が打ち上げ花火のように爆散しながら死亡する光景には、言い得ぬほどの恐怖を感じた。

……恐い、恐い、嫌だ、俺はあんなふうに死にたくない。

そう思えば思うほど、何度も何度もあの瞬間の映像が脳内でリピートされ、背筋が強張っていく。
ヤツの命令に反し正面から歯向かえば、今度は自分がああなるかもしれない。
そのことが一の精神に怯えと不安を与え、普段は豪快な筈の肝玉をぎゅうぎゅうと縮み上がらせていた。
あんな相手の言いなりになることなど、絶対にしたくはない。
だがだからと言って、ヤツに立ち向かうことが果たして自分に出来るのだろうか。
いくらこれまで、そこそこの修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、自分は所詮平均的な高校生に過ぎない。
小龍のような中国拳法でも使えれば別かもしれないが、そんな技術も体力もどこを探したって出て来ないというのに。
自分の実力を再認識し、一はさらに怖気付きそうになる。
細く長い溜息をつきながら、数メートル先に建っていた灯台を見上げるようにして天を仰いだ。
瞬間、女性のものらしい小さな人影と、その人物の手にしているある『道具』が視界の端を横切る。

「ん……? って、おい!!」

ガラス窓の向こうに見え隠れするその人物が、規則正しい歩調で螺旋状の階段を上っていく。
おそらく最上階へと向かっているのであろうその相手が、これから何をするつもりなのか――、思い当たった一は驚愕に目を見開いた。
うじうじと考え込んでいた内容は、頭の中から一瞬にして霧のように消え去る。
ただ、焦る想いばかりを胸に、その場から灯台の根元へ向けて一直線に走り始める。
もっとよく状況を考えてから動くべきだ、そう頭の中が警鐘を鳴らしたのは、既に駆け出した後だった。
表面に赤錆の浮いた灯台の入り口を、蹴破るようにして内側へと押し開ける。
支給品のランタンを出すのも煩わしく、ろくに目の慣れない暗闇の中を手探りで進んだ。
上階へと繋がる無骨な階段が奥にあるのを発見し、慌ててそちらへ駆け上る。

罠かもしれない、と思う。
よほどの馬鹿でもない限り、『あの道具』をあんな安易に使用する人間はそういない筈だ。
それを考えれば、自分のしようとしている事はただの徒労かもしれないし、最悪、自殺行為の可能性すらある。
もしそうだったならば、自分は正義漢面した大馬鹿者として、朝基あたりに末代まで笑われ続けることだろう。
――けれどそれでも、じっちゃん譲りの探偵としての矜持が耳元で囁いているのだ。
殺人者かも知れないからと相手のことを勝手に恐れて、ここであのコを見捨ててしまっていいものなのか。
たとえそれで自分が惨劇を回避し生き残れたとしても、後悔せずにいられるのか、と。
そして一にとって、結局のところ答えなんてものは最初から決まりきっていて。

「くそっ……、間に合えよ!」
198名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 16:58:35 ID:2pdAppQw
 
199ラピュタの雷  ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 16:59:18 ID:mxHdY/hk
突然のことに驚愕したエドに光を回避する時間などなく、容赦なくオートメイルの左足に直撃する。

「ガッアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

エドの左足を通り、全身へと衝撃が走る。そしてエドは気付く、光の正体を。
この光は金属に引付けられる性質があるため、金属で出来たオートメイルに反応し腕の神経を麻痺させ、避けた先へと追いすがる性質のある特性と、
光が発生する磁場を応用すれば宙に浮かぶぐらいなら可能な特性を持つ存在。


それの名前は、電磁気である。だがエドはそれに気付くのが遅すぎた。


全身を駆け巡る痛みがだんだんと薄れていく。だが、電撃は容赦なく体を貫き全身を駆け巡っている。
それは体の感覚がなくなっていくと言うことであり、死が近づくということである。
それが分かっていても何もできない。電流に翻弄される体は指一本すらも思い通りに動かせない。
口惜しくとも、誰に対しても何もできない。

「…ご……ん……ア……」

その言葉を最後にエドワード・エルリックの意識は光の中へと消えた。


          ※          ※          ※

200ラピュタの雷  ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 17:00:29 ID:mxHdY/hk

「ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ、通称ムスカ大佐は笑っていた。
焼け焦げた死体の前で笑っていた。

「見たかね、私の力を?」

視線をエドに合わせ、そして彼は初めて気付く。自分が金髪の少年を殺したことに。
そしてムスカは気落ちした。死体に命乞いをしろと言ったところで、意味などないではないか。

「やれやれ、この程度では私の力を試せないではないか。つまらん」

彼が引き当てた支給品は、『ヒラガゲンナイという人物が作ったエレキテルという葛篭』であった。
体力的なものを消費すれば、誰にでも電気や磁気の操作が可能なよう、螺旋王が改良したものである。
ムスカはこれを引き当てたときに思った。この道具はラピュタの王に与えられるものだと。
神しか仕えぬ雷撃を操る力は、自分が持つに相応しい。
故に眼下で目に付いた金髪の少年で力試しをした。その結果は目の前の黒焦げステーキである。
この力さえあれば、自分の野望の邪魔をしたあの憎き小僧供を苦しめて殺すことができる。
このことはロージェノムとやらに感謝してやってもいいかもしれない。

「だがな、螺旋王とやらよ!」

ムスカは頭上を仰ぎ、叫ぶ。

「私を差し置いて王と名乗った罪。そして、私を愚民どもと同じ舞台へと招いた罪。その二つの罪は神となった私が裁いてやろうぞ!」

そしてムスカは笑う。激しく邪悪に口を歪めながら笑う。天上にいる神にも聞えると思うほどに。


【D-6/総合病院玄関前/1日目/深夜】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:哄笑を上げている、若干の疲労
[装備]:平賀源内のエレキテル@R.O.D、
[道具]:基本支給品、支給装備(0〜2)、
[思考]:
基本行動方針:すべての生きとし生ける者に、ラピュタ神の力を見せつける。
第一行動方針:パズーらに復讐する。
最終行動方針:最後まで生き残り、ロージェノムに神の怒りを与える。

[備考]:ムスカの支給品がエレキテルだけかどうかは、以降の書き手さんに任せます。
      体力的な物を消耗すればエレキテルは操作可能です。

【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 死亡】

[備考]:病院の玄関先に黒こげのエドの遺体が転がっています。彼の支給品の詳細は以降の書き手さんに任せます。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:00:51 ID:2pdAppQw
 
202 ◆5VEHREaaO2 :2007/09/22(土) 17:01:37 ID:mxHdY/hk
投下終了。

……もうちょっと頑張らないといけないなぁ。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:01:39 ID:ROizO0zS
 
204名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:02:41 ID:FTw+TnaL
 
金田一一は、先ほど眼前で起きた理不尽きわまる死に憤りを覚えながらも、一人立ち尽くしていた。
祖父から受け継いだ探偵としての宿命なのか、一はこれまで多くの事件現場に関わった経験がある。
そしてその中で、犯罪に手を染めてしまう沢山の加害者達の姿をも、彼は幾度となく目にしてきた。
殺人に暴行、強盗――。それらが決して赦される行為でないことはよくよく分かっている。
だがそれでも、彼が見てきた犯罪者達の心中には常に、何らかの悲しい理由が、行き場のない苦しみが存在していた筈だ。
恋人を無残に奪われた者、愛する我が子を救う為に必死だった者、母を亡くし復讐に生きた者――――。
彼らのやり方は、確かに間違っていたのだろう。どんな悲惨な理由であれ、人を殺すなどというのは最低最悪の罪悪だ。
けれど逃げられない苦悩の中に囚われ、最後の手段として殺人という禁忌を犯してしまった人々のことは、まだどこかで理解できる。
彼がそれ以上に許せないのは、何の切たる理由もなく他人を殺害して喜んでいるような相手だ。
先刻の男のように、人の命を自由に弄べる玩具か何かだと考えている人種、――それが彼には、何より許容し難かった。
先ほど、まるで喜劇のワンシーンのように呆気なく行われた唐突な死の瞬間を、思い出す。
笑いながら首輪を爆発させた男と、その結果周囲に血と脳漿を撒き散らして死んでいった青年のことを。
死体は、嫌になるほど見慣れている。人が死ぬ瞬間そのものですら、もう何度もすぐ側で目撃した経験がある。
けれどそれでも、人間が打ち上げ花火のように爆散しながら死亡する光景には、言い得ぬほどの恐怖を感じた。

……恐い、恐い、嫌だ、俺はあんなふうに死にたくない。

そう思えば思うほど、何度も何度もあの瞬間の映像が脳内でリピートされ、背筋が強張っていく。
ヤツの命令に反し正面から歯向かえば、今度は自分がああなるかもしれない。
そのことが一の精神に怯えと不安を与え、普段は豪快な筈の肝玉をぎゅうぎゅうと縮み上がらせていた。
あんな相手の言いなりになることなど、絶対にしたくはない。
だがだからと言って、ヤツに立ち向かうことが果たして自分に出来るのだろうか。
いくらこれまで、そこそこの修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、自分は所詮平均的な高校生に過ぎない。
小龍のような中国拳法でも使えれば別かもしれないが、そんな技術も体力もどこを探したって出て来ないというのに。
自分の実力を再認識し、一はさらに怖気付きそうになる。
細く長い溜息をつきながら、数メートル先に建っていた灯台を見上げるようにして天を仰いだ。
瞬間、女性のものらしい小さな人影と、その人物の手にしているある『道具』が視界の端を横切る。

「ん……? って、おい!!」

ガラス窓の向こうに見え隠れするその人物が、規則正しい歩調で螺旋状の階段を上っていく。
おそらく最上階へと向かっているのであろうその相手が、これから何をするつもりなのか――、思い当たった一は驚愕に目を見開いた。
うじうじと考え込んでいた内容は、頭の中から一瞬にして霧のように消え去る。
ただ、焦る想いばかりを胸に、その場から灯台の根元へ向けて一直線に走り始める。
もっとよく状況を考えてから動くべきだ、そう頭の中が警鐘を鳴らしたのは、既に駆け出した後だった。
表面に赤錆の浮いた灯台の入り口を、蹴破るようにして内側へと押し開ける。
支給品のランタンを出すのも煩わしく、ろくに目の慣れない暗闇の中を手探りで進んだ。
上階へと繋がる無骨な階段が奥にあるのを発見し、慌ててそちらへ駆け上る。

罠かもしれない、と思う。
よほどの馬鹿でもない限り、『あの道具』をあんな安易に使用する人間はそういない筈だ。
それを考えれば、自分のしようとしている事はただの徒労かもしれないし、最悪、自殺行為の可能性すらある。
もしそうだったならば、自分は正義漢面した大馬鹿者として、朝基あたりに末代まで笑われ続けることだろう。
――けれどそれでも、じっちゃん譲りの探偵としての矜持が耳元で囁いているのだ。
殺人者かも知れないからと相手のことを勝手に恐れて、ここであのコを見捨ててしまっていいものなのか。
たとえそれで自分が惨劇を回避し生き残れたとしても、後悔せずにいられるのか、と。
そして一にとって、結局のところ答えなんてものは最初から決まりきっていて。

「くそっ……、間に合えよ!」
206名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:05:53 ID:ES91BfU1


207名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:06:04 ID:2pdAppQw
 

吐き捨てるようにそう呟いたところで、上体のバランスを崩して前方へとつんのめった。
前へ踏み出しかけていた右足が幅狭な階段上を右往左往し、今にも転倒しそうになる。
無理やり身体を捻って何とかしようとするものの、変に大きな動きを取ったのが逆によくなかったらしい。
そのまま顔面からコンクリートの階段へダイブし、鼻先を盛大に擦り剥かせる。
それでも痛いなどと文句を言っている余裕はなく、一はすぐさま立ち上がって歩を再開する。
予想以上に長い階段の全長に、両足の付け根ががくがくと小刻みに震え出し普段の運動不足を大いに痛感させる。
息が切れ切れになり、呼吸が荒く乱れているのがよく分かったが、足を止めるわけには行かなかった。
何とか最上階までの階段を上り切り、金属製の扉を力任せに横へとスライドさせる。
半分転がるようにして足を踏み入れた灯台の最上部には屋根がなく、代わりに一面の星空が頭上を覆っていた。
広がる星屑の海は息を呑むほどの美しさだと言えなくもなかったものの、そんなことに気を取られている余裕はない。
視線を左右へ泳がせ、先ほど確かに地上から見かけた筈の、人影の残滓を探す。

どこだ!? どこにいる?
いくらなんでもアレはまずい。あんなものを使ったら自分がどうなるか、あのコは分かってないのか!?

薄暗い灯台内を見回していた一が、柱の影に背を凭れさせた少女の姿を目に留める。
その少女が今にも、例の道具を使用せんとしているのに気付き、大急ぎで駆け寄った。
けれど一瞬遅く、彼女は大振りのラッパを思わせるその機械を手に、大声で叫び始める。

『アイザック、どこー!? わた……』

静寂の満ちる夜の闇の中に、場違いなほど拡大された声が大きく響き渡る。
選挙演説にでも使うような拡声器――、それを掲げた少女の声が、虚空へ向けて盛大に広がっていく。
数秒後、漸く彼女の背後まで辿り着いた一が、引っ手繰るようにして少女の腕から無理やりその機械を引き離した。
大急ぎで手元のスイッチを切ると、そのまま空いた左手で彼女の掌を取り、今来たばかりの階段へ向けて一目散に走り出す。
戸惑ったような顔で恐々と自分を見上げる相手に、首だけ後ろへ捻って慌てた声で叫ぶ。

「おい、逃げるぞ!」
「へ?」
「いいから早く!」

何が何だか分からないと言いたげな少女を引っ張って、殆ど強制的に長い階段を駆け下りる。
恐らくここだけ見れば、誘拐犯が幼女を連れて逃げ回ってでもいるかのように周囲には映る事だろう。
とはいえ、周りからどう見られるかなんて構っている余裕はこちらにはない。
いや、むしろ誰かにこの光景を見られていたら、それだけでマズイことになるかもしれないのだ。
急ぎ足で開け開いたままだった入り口から外へ出て、周囲にあった小さな東屋のような家屋へと身を隠す。
殆ど使用されていないのか、中は殆ど廃屋に近く、ひどく埃っぽかったが、贅沢は言っていられない。
肺に入り込んだ砂埃にゴホゴホと咳き込みながら、床に座り込んでから、漸く目の前の少女に話しかける。

「アンタ、何やってんだよ!?」
「だって、アイザックを探そうと思って……」
「アイザック……?」

そう聞き返してから、それが先ほど彼女の口にしていた名前だと分かった。
どうやら彼女は本当に、ただ純粋に知人を探そうとしていただけらしい。
そのことに軽く安堵を覚えながらも、同時にひどく脱力する。
いくらあの場から逃げてきたとは言え、放送を耳にした危険人物がこの界隈へやってくる可能性も皆無ではないというのに。

「あのなぁ、馬鹿言うなよ。
 こんなもの使ったら、自分から、居場所を殺人者に教えるようなものじゃねーか」

呆れたように告げた一の言葉に、少女は不思議そうに首をこくんと斜めに傾げる。
次の瞬間、彼女は両目を目一杯に見開くと、驚愕したように高い声を上げて手を前へ伸ばした。
そうして一の両手を握り締め、フォークダンスでも踊るかのようにぶんぶんと上下に振り下ろす。
尊敬する人物を目の前にしたかのようなきらきらと輝く瞳で一を見上げ、嬉しそうに彼女は告げた。

「本当だ! すごいね、あなたホウムズみたい! 名探偵になれるよ!!」
「名探偵って……、いや、そのくらい誰でも分かるだろ……?」
209名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:06:48 ID:10MjLyeX
似たような話ばっかだな
210名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 17:07:11 ID:2pdAppQw
 

その言葉に、千切れないか心配になるほど激しく頭を左右に振って、少女は嬉しそうに返す。

「そんなことないよ! だって、私があそこに居るのを見てすぐ、何をしようとしてるのか分かったんでしょ!?
 エラリィだって、ブラウン神父だって、きっとそんなにすぐには見抜けないよ! 
 知ってる? だってあの人たち、お話が最後になるころじゃないと全然答えが分からないんだもの。ダメダメだよね。
 それなのにあなたは、見てすぐ分かったんだもん! それってすっごぉぉいことでしょ!?」

マシンガンの弾丸もかくやという超ハイテンションでそこまで一息に口にされて、対する一は目を丸くする。
どうにも言っていることが掴み辛いが、一応は感謝されているらしい。
それは嬉しいのだが――、いくらなんでも彼女は無用心すぎやしないだろうか。
先ほどの放送は勿論、今の状況だって客観的に見れば非常に危なく映ることだろう。
薄暗く人気の無いあばら家で二人っきり……、仮に一がよからぬ考えを持っている相手だとしたら一瞬でお陀仏だ。
なのにどうして、彼女はこんなにも平気な顔をして笑っていられるのだろうか。
それが、一にはすごく不思議に感じられた。

「なぁ、君は恐くないのか?」
「え?」
「あんな……人が死ぬ瞬間を見せられてさ、しかも殺し合えだなんて言われたんだぜ。
 普通、もっと恐がったり、人を疑ったりするもんだろ? なのに、どうして……」

そう問いかけた一に、少女は一瞬だけ考え込むように指先を顎に当てると、すぐに笑顔になった。
その表情にあまりにも邪気が無かったので、一は何故か、妙に居たたまれない気持ちになる。
長い金髪の少女はこちらの瞳を真っ直ぐに見返すと、事も無げに一へ返答する。

「でも、あなたはいい人だったよ?」

口にした彼女には、一切の衒いも恥じらいも無い。ただ淡々と、それでも弾ける様なリズムで告げる。
心底当然のことだとでも言うように、少女は一へ向けて言葉を続けた。

「私の姿を見て、無視してもよかったのに、わざわざ上まで上ってきて危ないことだって教えてくれた。
 一番最初に会えたのが、こんなにいい人なんだもん。きっと、悪い人なんてそんなたくさん居るはずないよ」
「それは……」

それは違う。自分だって、ついさっきまでひたすらに怯えていた。
自分一人があの男に反抗したところで何が出来るだろうと、恐がり、諦めかけていた。
彼女を助けようとしたのは確かに正義感がゆえだけれど、それだって恐怖心でずっと固まっていた。
心に巣食う自分の弱さを思い、頭を抱えたくなった一は、けれど次に彼女が発した言葉に驚いて顔を上げた。

「それに、前にアイザックが言ってたよ。ホウムズにはすっごく強い力があるんだって!
 だからホウムズ以上の名探偵のあなたなら、恐がることなんてなんにもないと思うの!!」
「力……?」
「そう!」

笑顔でそう言う彼女の言葉に、どこか心癒されるものを感じる。
そしてそ同時に、一は己の腹の奥底に熱い炎が音を立てて点火したことに気付いた。
それは、理不尽な殺し合いの主催者に対する怒りと憎しみ。
そして、自分が持っていた確かな『力』へのしっかとした自信だ。
――そうだ、確かに、体育の成績ですら人並み以下な自分に、まともな戦闘能力などありっこないさ。
けど、俺にはあったじゃないか。誰にも負けない『力』、じっちゃん譲りのこの頭と推理力が。
何が出来るかは分からない。けれど、きっと何か出来る。

金田一一は、心に決める。
この殺し合いを、必ず止めてみようと。
自分が誰より尊敬する人物――名探偵と呼ばれたじっちゃんから受け継いだその『力』で。

     *     *     *

「ところであなた、名前は? 何て言うの?」
「あっ、そう言えばまだ言ってなかたっけ。俺は……」

――名探偵の名を継ぐ少年と、名泥棒の片割れを担う少女は、夜深い闇の中でこうして出会った。
我知らず人々に幸福を齎す少女は一人の少年に勇気を与え、彼に己の持つ力を気付かせる。
けれどこれが何かの引き金になり得る行為なのか、答えが出るのは未だ先のこと。
なにせゲームは、まだまだ始まったばかりなのだから。


【D-2/灯台周辺の東屋/1日目-深夜】

【金田一一@金田一少年の事件簿】
 [状態]: 健康
 [装備]:
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム1〜3つ) 
 [思考]
  基本:殺し合いを止める
  1:ミリアと情報交換
  2:ミリアの放送を聞いて集まってくるやつが居ないか心配
 
【ミリア・ハーヴェント@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康。
 [装備]:拡声器
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム0〜2つ)
 [思考]
  基本:アイザック達を探す
  1:金田一と情報交換
  2:金田一と一緒にいる?

[備考]:D-2の灯台周辺から周囲1マス程度に、ミリアの放送が流れました。 
但し、途中で金田一に遮られたせいで実際に流れた内容はごく僅かなものです。
 
整備が行き届いた高速道路。だが、車が通ることなどない。
その架橋の下。地図と名簿を確認した衛宮士郎は、怒っていた。
怒りの対象は、既に犠牲者を出してしまった自分。
迷いは無い。彼の行動指針は決まっている。在り得ない名前を見た程度で、その指針は揺るがない。

……慎二が生き返っているかもしれない?言峰が?だからどうした。
自分が死なせた、殺した、斬り捨てた一を拾いなおすチャンスだ。
衛宮士郎の行動は変わらない。そうだ。衛宮士郎のすることは決まっている。
助けないといけない。守らないといけない。セイバーと誓った。切嗣と誓った。
全てを助けるなんてできない。聖杯戦争でもそれは実証されていた。
だから多くの人を守るために、言峰という一人を殺した。
それでも諦めず、全ての人を助けるという理想を目指さないと。
例え理想でも下らない夢でも他人に語れなくても、それをやりとげるのが正義の味方なんだから。
そうしないと、あの教会で見捨てた、言ったことが嘘になる。無意味になる。
多くの人を助けないといけない。正義の味方ではない衛宮士郎は、ただの――

周りに誰もいない。ならすることは決まっている。
また地図と名簿しか確認していないが、早くイリヤを、守らないといけない人々を探さないといけないのだ。
支給品の確認は歩きながらでも……

「甘い! 甘いぞ!!!」
「!?」

突如響いた声に、慌てて夜空を見上げる。そこには、月を背に空から降ってくる人間が一人。
格好は……全身タイツに、覆面。ライダーやランサーを遥かに上回る怪しさ爆発のとんでもセンスだ。
色んな意味で呆然とした士郎の隙を突き、その男は士郎を投げ飛ばした。
地面に叩きつけられる寸前、それでもなんとか受け身を取る。幸い、怪我をしてはいないようだ。

「くそ、やる気か! なんだよお前!」
「名はシュバルツ・ブルーダー!」
「っ……!? なんなんだコイツ!」

本当に名乗ってきたことには驚いたものの、すばやく夫婦剣・干将莫耶を投影し斬りかかる。狙いは肩、もしくは足。
だがシュバルツと名乗る覆面の男は動くことなく、額につけていたアンテナ(?)を手に持っただけ。
いったい何のつもりだ――その答えは、すぐに出た。

「なっ……!?」

剣が流れ、体勢が崩れる。いや、流されて崩された。
投影したものとはいえ、仮にも干将莫耶は宝具だ。ただの金属ならあっさりと両断してみせるだろう。
それを額につけていたアンテナ(?)で受け流すなど、色んな意味でまともな人間がすることと思えない――!
そのままシュバルツと名乗る謎の男はアンテナを額に戻し、一瞬のうちに高速道路の上へと飛び移っていた。
214名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 19:24:39 ID:ROizO0zS
 

「所詮道具頼りで体が追いついてはいない……
 だが何よりその心の有り様だ。そんなものでは自分も守るべきものも守れはしない。
 ましてや螺旋王打倒など無理の一言!!!」
「何だと……!」
「なぜそれほどの業物がこの程度の飾りでいなされたのか……よく考えてみろ!」

腕組みしたままそう告げると同時に、謎の男は消え去った。
残された士郎はあまりの事態に呆然とするしかない。
どうやら殺しに来たわけではないらしい。だけど、だったらなんでいなくなるんだ?
いったいあの男が何をしたかったのかさっぱり分からないまま、溜め息を吐いて。
……士郎は、投影した剣の様子がおかしいのに気付いた。

「魔力が漏れ出してる……?」

本来、士郎の投影する剣はずっと残っているのが特徴だ。
大抵の人間ならば今、この剣が何か異常をきたしているようには見えないだろう。
だが士郎には、少しずつ霧散していくのが感じ取れていた。
おそらく30分。それで、この剣はただの魔力に戻るだろう。

「投影だけには頼れないってことかよ……!」

思わず、歯を噛み締める。
だが投影抜きの自分ではサーヴァントには勝てない。いや、投影込みでさえ勝てない。
そして、さっきの男にも……

「……だからって、立ち止まるわけにはいかないんだ!」



支給品の確認を開始した士郎。
それを物陰から見つめる人物がいた。言うまでも無くシュバルツ・ブルーダーである。
シュバルツにとって、この程度の隠行は容易い。少なくとも士郎には彼を発見することはできないだろう。

――首輪が吹き飛んだ瞬間。
たまたま士郎のすぐ後ろにいたシュバルツには、彼が立ち上がろうとするのが見えていた。
死体に対して驚きもせず、まず「悪」に対しての怒りを見せる。少なくとも「死」には慣れているのが見て取れた。
もっともシュバルツには、その行動が考え無しのそれにしか思えなかったのも事実だが。
こうしてたまたま遭遇したのを幸運と、確かめるために少しばかり突っかかってみればやはり感じた通りの性格。
それに資質、経験、共にドモンに遠く及ばず。だが……

「…………」

無言のまま、シュバルツは覆面の額に取り付けてあるものに手を当てた。
彼には飾りと言ったが……元々これはブーメランであり、武器として活用できるものだ。
無論、シュバルツも実力差を思い知らせ自重を呼びかけるため、あの剣を切り裂くつもりであった。
しかし……実際のところ受け流しはできてもあの剣は無事。
いや、それどころか逆にブーメランの方が僅かに軋んでいるという事実。
つまり彼が作り出した剣はただの剣ではない、ということである。

「……フッ」
216名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 19:25:51 ID:ROizO0zS
 

思わぬ拾い物ににやりとする。
別に「剣を作れる」程度のことに疑問を抱くシュバルツではない。
そもそも、ガンダムファイターである自分達の方がよっぽどおかしな事をしている。
シュバルツが着目するのは彼の可能性。
名剣を作れるあの少年と組めば、動きが鈍くなっているハンデを打ち破れるかもしれない。
ガンダムファイターは、ちょっとした道具でさえ20m程度の人型兵器を破壊できる凶器とするのだから。
螺旋王という男の実力はまだ不明だ。だがそれを倒すための一助とはなりえる。
それにドモン程ではないが、彼もそれなりに見所があるようだ。
問題は、明鏡止水の境地から遠すぎる精神だが……。

「……さて」

地図を開きながら、シュバルツは思考を切り替える。
彼が士郎に着目しているのは、単なる興味からだけではない。戦略の面からもだ。

(真っ向から死地に飛び込むということは、注意を引くということ。
 彼が真正面から飛び込めば、隠れている者は簡単に奇襲できる。
 また……地図を見る限りこの会場は広い。
 ドモンの奴なら各地の喧騒に首を突っ込むはず。それは、あの少年も同じ)

要するに、士郎を囮にしシュバルツがゲームに乗った者に奇襲をかける……
そして闇雲に動き回るよりは彼を泳がせた方がドモンに遭遇できる可能性が高い、という理論だ。
ドモンは困った時、一人になりたがる。今回も、他人と徒党を組むかどうかは不確実。
ならば「この男を知らないか」と聞き歩いても効率が悪いだろう。
もちろん、出会う前にドモンが死ぬ可能性は依然として存在するが……
シュバルツはドモンがそうそう簡単にやられるとは思っていない。
もはや全てを伝えきったのだ。マスターアジアとの決着も、ドモン自身が勝利と言う形で付けるはず。
むしろ問題は……なぜこの身が五体満足でここにあるのか、だろう。これもまた、些細な問題に過ぎないが。

(もし螺旋王という男が修復したのだとしても……私が恩に着ることなどない。
 奴を倒すべく動くだけだ)

士郎が歩き出したのに合わせ。
シュバルツは完全に気配を消したまま、追跡を開始した。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 19:27:35 ID:pYG6iyRt
  
219名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 19:28:02 ID:ROizO0zS
 
【A-4中心部/ 一日目・深夜】
【シュバルツ・ブルーダー@機動武闘伝Gガンダム】
 [状態]:健康
 [装備]:いつも通りの覆面スーツ(ブーメラン付き)
 [道具]:赤絵の具@王ドロボウJING、自殺用ロープ@さよなら絶望先生
 [思考]
1.このファイトの破壊、犠牲者を最低限に食い止める(悪人には容赦しない)。
2.士郎を隠れて見張る。命に関わる時は助け、必要に応じて叱咤し教育する。
3.ドモンと合流。ただ、それほど焦る必要はないと感じている。
※制限には薄々感づいているようです。
※電流爆破金網時限デスマッチでドモンと戦った後、もしくはデビルガンダムと共に吹き飛んだ後から参戦。
 後続の書き手の方が書きやすいほうを選んでください。
※完全に気配を遮断しているため、よほどの達人でない限り感づかれることはありません。
 
【衛宮士郎@Fate/stay night】
 [状態]:魔力小消費
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム1〜3つ)
 [思考]
1.殺し合いを止める。
2.イリヤの保護。
3.できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は――
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。
真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。

【ブーメラン@機動武闘伝Gガンダム】
シュバルツの覆面の額に、まるでガンダムのアンテナのごとくついてあるアレ。
武器は没収とはいえこれがないと間抜けな感じなので本人支給。変な格好には変わりないが。

【赤絵の具@王ドロボウJING】
血を使って作り上げられた赤い絵の具。

【自殺用ロープ@さよなら絶望先生】
絶望先生がよく首吊ってるアレ。すぐ木の枝に巻きつけられてすぐ首を吊れます。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 19:28:38 ID:pYG6iyRt
   
>>213修正
>色んな意味で呆然とした士郎の隙を突き、その男は士郎を投げ飛ばした。

色んな意味で呆然とした士郎の隙を突き、その男は投げつけてきたロープで士郎の足を巻き取って投げ飛ばした。

>>217修正
>もはや全てを伝えきったのだ。マスターアジアとの決着も、ドモン自身が勝利と言う形で付けるはず。
>むしろ問題は……なぜこの身が五体満足でここにあるのか、だろう。これもまた、些細な問題に過ぎないが。

もはや全てを伝えきったのだ。マスターアジアとの決着も、ドモン自身が勝利と言う形で付けるはず。
それに、いざとならばシュバルツ自身が士郎を上手く誘導することも可能である。
支給品として与えられた絵の具は血から作られているという。彼のことだ、こんな赤には確実に反応することだろう。
むしろ問題は……なぜこの身が五体満足でここにあるのか、だろう。これもまた、些細な問題に過ぎないが。
223ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:39:12 ID:CjI4cFdE
「殺し合い…」

口に出して呟いてもその言葉に現実味は無かった。
───どうしてこんなことになっちゃったんだろう…。
男の人が変身してビームを放って、跳ね返されて…わけが分からなかった。
まるでこなちゃんやお姉ちゃんの好きな漫画の世界みたい。
漫画の世界───最初に居た所から何時の間にか森に飛ばされた事を考えても、これが現実とは思えない。
そういえばゆたかちゃんのお友達に漫画描いてる人がいた。
もしかして私は漫画の登場人物で、本当の私は私が出てくる漫画を読んでるんじゃ?
そう考えれば全てに辻褄が合うような気がしてきた。
螺旋王…安直といえば安直だけど、いかにもな悪役、という意味では悪くないネーミングかも知れない。
テッカマンランスという人も、負けちゃったけど如何にもヒーローっぽい名前だ。

そんなことを延々と考えながら歩いていたからだろうか。
私は観覧車を見上げている女の人を見つけたとき、挨拶もせずいきなり、こう聞いてしまった。

「すいません。これって現実じゃないですよね?」

言ってから“しまった!”と思った。
いきなりこんな事を聞くなんて変な子だと思われてしまう!
それどころか相手が危ない人だったら殺される!?
いくら漫画の世界とはいえ痛いのや怖いのは嫌だ。
それにもしこれが現実だったら───?
女の人が振り向いた時怯えで一瞬体が固まってしまった。
殺される?
そう思った直後、女の人が最高の笑顔でこう答えた。

「嫌だなぁ、殺し合いなんて現実に起こるわけ無いじゃないですかぁ」
224名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 23:39:56 ID:ROizO0zS
 
225名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 23:40:38 ID:V6hp1m8u
 
226名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 23:42:05 ID:ROizO0zS
 
227ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:42:50 ID:CjI4cFdE
その人の笑顔はあまりにも眩しく、その人の言葉は私の胸にストン、と入り込んできた。
さっきまで半信半疑だったとは言え、もしかして現実かも?なんて思っていた自分が恥ずかしくなってくる。
悪い人じゃななさそうだし、自己紹介して一緒に行動して貰おう、そう思ったとき女の人が言葉を続けた。

「螺旋王さんはポロロッカ星の王様ですね。この殺し合いの儀式はポロロッカ星に入国するための試練なのです。」

え?ポロロッカ星?何を言ってるんだろう。
女の人は良く分からないことを言いながら鞄から何か取り出している。

「この聖剣で皆さんを現実に送り返した時こそポロロッカ星に入国できるのですね。分かりました。私、頑張って見ます!」

そしてその剣を私に向けて構えて───?

「と言うことで、えいっ!」

気の抜けた掛け声と共に突き刺してきた。
え?
イタイイタイイタイイタイ。
剣が引き抜かれ、返り血が女の人にかかる。

「大丈夫ですよ。ポロロッカ星人さんは悪い人たちじゃありませんから。貴方は現実に戻るだけです」

女の人の笑顔は本当に無邪気で…私は、ああ、そうなのか。
と素直に納得した。
そういえば痛みもだんだん薄れてるし…もうすぐ現実に戻るのかな。
どうせならもっと活躍してみたかったけど、まあいいか。
それと───
ポロロッカ星人って誰だろう?

そんな事を思いながら少女、柊つかさは死亡した。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/22(土) 23:43:59 ID:FTw+TnaL
 
229ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:44:05 ID:CjI4cFdE
■■■■■■

柊かがみは手にしたレーダーを見ながら観覧車に向けて急いでいた。
支給されたレーダーは説明書によると、同エリア内にいる人物の名前と位置が分かるという便利な道具だった。
B-2に入ったとたんにつかさの位置が表示されたのは幸いだった。
つかさのことだ、きっとどこかで怯えて隠れているんだろう。
その証拠にさっきからレーダーに表示されてる位置が全く動いていない。
(つかさ…私が行くまで死ぬんじゃないわよっ!!)
最初の広間に居たラノベの世界から出てきたようなびっくり人間相手に私が居てもどうにもならないかもしれない。
でも、少なくともつかさのそばにいて励ましてあげることは出来る。

そう思っていたのに…。
レーダーの指し示す地点にあったのはつかさの死体だけだった。

「つか…さ?」
小さな声で呟いても、もうつかさは返事してくれない。
「つかさ?つかさ!」
大きな声で叫んでも、何も変わらない。
なんで?どうして?
(私がもっと急いでいれば…)
レーダーにつかさの名前しかなかったということは、自分がB-2についたときにはつかさはもう死んでいた。
理屈では分かっていても納得できない。
(私はお姉ちゃんなのに…)
妹を守れなかった。こんなにも近くに居たのに、間に合わなかった。
230ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:45:15 ID:CjI4cFdE
ひとしきり泣いた後、私はつかさの荷物が丸々残されているのに気付いた。
その中に入っていたのは…サブマシンガンと軍用ナイフ、防弾チョッキだった。
ご丁寧に説明書までついていて、これなら何とか私にも扱えそうだ。
それにしても…つかさを殺した人物は何故こんな強力な武器を置いていったのだろう?
そこでふと、最初の広間での事件を思い出した。
そう…あんな変身ヒーローのような能力を持った人間?ならこんな武器も防弾チョッキも必要としないだろう。

まるでライトノベルの世界から出てきたような、超能力者。
この世界にはそんな人物が、確かに存在するんだ。
『その者が望むことを何でも叶えてやることにする。億万長者にでも不老不死にでも、なんにでもしてやろう』
あの螺旋王の言っていることが本当かどうかは分からない。
でも不老不死に出来るのなら、死者を蘇らせることもできるのかもしれない。
だから私は賭けてみようと思う。
レーダーのほかにもう一つ私に支給されていた物。
不死の酒。
飲めば不死に成れる、という冗談みたいなお酒だ。
説明書によると、偽名を名乗れなくなる等の弱点もあるし、効果は制限されていて、完全な不死には成れないらしい。
もし、もしもこのお酒を飲んで、仮初でも不死になれるなら、螺旋王の力の片鱗が確認できたなら。
私はつかさの為に───

お酒を飲んで、手首を切ってみた所その傷は忽ちに治ってしまった。

殺し合いに乗る、と決めたらまずはつかさの仇をとろう。
少し時間はたってしまったけど、まだこの近くに居るはずだ。
そして仇をとったら戻ってきてつかさを埋葬する。
その後は───
つかさの為に私はこなたも殺すのだろうか?
考えても答えは出なかった。

【柊つかさ@らき☆すた 死亡】
231ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:46:16 ID:CjI4cFdE
【B-4/西部 一日目・深夜】
【風浦可符香/@さよなら絶望先生】
 [状態]:健康
 [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム1〜2つ)
 [思考]
1.優勝してポロロッカ星に入国する
※制服は返り血に濡れてます。

【B-3/観覧車前 一日目・深夜】
【柊かがみ@らき☆すた】
 [状態]:不死(仮)
 [装備]:UZI 50/50(サブマシンガン) 防弾チョッキ 軍用ナイフ
 [道具]:デイバッグ、レーダー、支給品一式
 [思考]
1.つかさの仇をとる(B-3へ)
2.戻ってきてつかさを埋葬する
3.つかさのために優勝する

※つかさを殺したのは武器を必要としないくらいの強者だと思っています。
※かがみの不死はBACCANOのアイザック、ミリア等と同じものです。
※かがみに支給されたレーダーは同エリア内のキャラ名と位置が表示されます。
232ブレブレブレブレ ◆umwdy9coMs :2007/09/22(土) 23:48:41 ID:CjI4cFdE
つかさの思考の
1.つかさの仇をとる(B-3へ) は1.つかさの仇をとる(B-4へ)の間違いです。
233名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 00:39:15 ID:jQIzQdhC
ここまで人気キャラが死ぬと「今回の作品は気に入らないから、3rdで今回と同じ規制になった時のために自分の好きな作品のメインキャラは全員ころしてしまおう」と思っている人がいると邪推してしまうぜ
それか早く全員殺して3rdに移行させようと考えている人とか
脇キャラばかりになったら、書く人がいなくなって2ndが終わらなくなるって事は肝にめいじといたほうがいいかもね
それが嫌なら普通に進行な
234Cat Blues  ◆P2vcbk2T1w :2007/09/23(日) 01:22:07 ID:0QJ5jE5S

「…………」

 とりあえず、自分の頬を抓ってみた。

「……痛え。最近の夢は痛いんだなあ……」


 正直、ワケが分からない。
 良く分からない内にテーマパークか何かに迷い込んだのだろうか。
 何やら変身ヒーローのアトラクションがあって……発破も派手だし、出来も中々なモノだったが。
 で、ハゲのオッサンが何やら言ってたが、特に興味も無かったので聞いていない。
 ゲームとかなんとか言っていたので、やっぱりアトラクションの一環なんだろう。きっと。
 さもなくば夢だな、夢。

 ぼんやりと辺りを見渡す。
 どうやら海岸沿いの波止場のようだ。潮風が生温い。
 夜の海を灯台の光が照らしている。
 だからどうだ、ということも無いんだが。

 とりあえず煙草……とポケットを探ったが、無い。
 いや、煙草だけじゃない。
 銃も、携帯端末も無い。知らない間に無くなっている。
「チッ……気の利かねえ夢だな……」
 そこでふと、足元の荷物が目に止まる。
 そういえば、あのオッサンが何かくれるとか何とか言っていたような気がする。
 まあ、只でくれるっていうんなら、貰ってやらなくも無い。
 折角なので、一応中身を改めてみる。
 入っていたのは、食料と、筆記用具等の雑貨と……一丁の拳銃。
 古い型だが、使う分には問題無さそうだ。
 どうせなら使い慣れた愛銃の方がよかったが、まあ良しとする。
 後は……
「なんだこりゃ?」
 最後に出てきたその物体。
 重い。
 最初はレンガだと思ったが、どうやら材質が違う。
「こりゃあ……紙? 百科事典か何かか?」
 それは、やたらと分厚い、一冊の本だった。
 ペラペラとページを捲ってみるが、どうも辞典でも無さそうだ。
 びっしりと文字で埋め尽くされてはいるが。
 どうやら日本語で書いてあるようだが……正直、読む気には到底なれない。
「鈍器か弾除けに使う……にしても、もうちょいマシなもん使うわな、普通」
 ということは、だ。
 これは、鈍器にも弾除けにも使えない、ただ重いだけの紙の塊は、つまり。

 ゴミだ。

 ふと、顔を上げる。
 目の前に広がる、暗く広い海。
 なんだか、見ているだけで吸い込まれそうだ。
 その海に向かって。
 そのまま右手を。
 無造作に右手を。
 ぽーいと、右手を。
 右手を。



 右手……を……
235 ◆5VEHREaaO2 :2007/09/23(日) 01:22:47 ID:888pqZ7d
読子キター?
236名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:23:16 ID:XsCXIUyK
 
237Cat Blues  ◆P2vcbk2T1w :2007/09/23(日) 01:23:18 ID:0QJ5jE5S
「で、アンタ誰?」
 何時まで経っても動かない右手に、いつの間にか一人の女がしがみ付いていた。


「アンタ、何してんの?」
 しかし、俺の言葉が聞えているのかいないのか、女は俺の右手に夢中だ。
 いや、正確には俺の右手の中の『ゴミ』に、だろうか。
「こ、これは○極○彦先生の小説じゃないですか! まだ読んでなかったんだ〜!」
 いや、そんなことは聞いていない。
「ちょっと、おたく、耳聞こえてる?」
「いつか読もうと思ってたけど、中々見つからなかったんですよね〜」
 完全に聞いちゃ居ない。電波系って奴か?
「もしも〜し?」
「まさか、こんなところで巡り合えるなんて……コレはもしや、運命!?」
 幾ら呼びかけても応答のない女。
 というか、こっちの顔を見ようともしない。
 一体どんな顔をしているのかと、そいつの顔を覗き込もうと顔を近づけた。
 ソレがいけなかった。

 急に女が顔を上げた。
――ガンッ!!
「痛でぇッ!」
 女の後頭部が俺の顎に直撃。石頭。
 こ、このアマ、女だと思ってやりゃあ……!
 そして、痛みにもんどりうっている俺に更なる追い討ちをかけるように、女が俺に向かって、はじめて話しかけてきた。
「ぶしつけで申し訳ないのですが……、ちょっとこの本貸していただけませんか? 
大丈夫、汚しませんから、ただちょっと読むだけですから!」

「っ痛つつつ……って、この本を? アンタに?」
「ハイ! ちょっと読むだけですから、ね、ちょっとだけ!」
 言うが早いか、と言うよりも言いながら、女が本に擦り寄ってくる。
 指の僅かな隙間からでも本を読みかねない勢いだ。
 なんというか、必死すぎ。
 とりあえず女を振りほどいて、女のせの届かない高さに本を持ち上げる。
「ああ〜本〜、まだ読んでない本〜」
 届かない本に向かってぴょこんぴょこんとジャンプするその姿は、
 まるで猫……というよりは、麻薬中毒者のソレに見える。
 よっぽどだ。
 しかし、自分にとってはゴミ同然のモノに、ここまでの執着を見せる人間が居ようとは。
 世界は広い。……というか、実はコレ、意外と値打ち物だったりするのか、もしかして?
「なあアンタ、そこまでしてコイツを読みたいのか?」
「はい! なんでしたら代金をお支払いしますから!」
「金、ねえ…… 幾らでも?」
「幾らでも!」
238名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:23:20 ID:WK1wLbsi
 
239名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:23:31 ID:n9E5N+a8
 
240名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:24:07 ID:888pqZ7d
支援
241Cat Blues  ◆P2vcbk2T1w :2007/09/23(日) 01:24:22 ID:0QJ5jE5S
 決まりだ。
 世の中には物好きが居る。
 こんな紙束を札束と交換したいって奴も、探せば居るようだ。
 まあ、ホントは只で拾ったモノなんだからくれてやっても良いような気もするが、ソコはソレ。
 今やコイツは俺のモノだし、見ず知らずの奴にくれてやる義理はない。
 あと、顎が痛いのも追加な。
「お支払いは現金でもカードでも……ってアレ? お財布が無い??」
「なんだ? 幾らでもってのは嘘か? じゃあまた今度な」
「ああっ、ちょっと待って下さい! あ、そうだ!
さっき貰ったこの荷物の中で、もし気に入ったものが有ったら差し上げますから!
取替えっこ、ということで、ね?」
「取替えっこ、ねえ……」
 正直、ソレはソレでアリだ。ゴミと引き換えに何かしらイイモノを貰えれば文句は無い。
 わらシベチョージャ、って奴だな。
……と思っていたが。


「んん? この石っころは……うん、ただの石ころだ。
こっちの古臭い瓶は……酒? ビンテージにしてもこんな飲みかけじゃあ価値ねえなあ。
んで、コレは……こりゃあまた偉く旧式な……」
「……ど、どうでしょうか……!?」
「あー……」
 正直、少しは期待していたが……残念。
「ダメだな。揃いも揃ってガラクタだらけだ。アンタの財布が見つかったらまた連絡してくれ」
 そう言い捨てると、俺はぶらりと歩き出す。
「古本屋、そのへんに開いてねえかなあ……」
「ちょ、ちょっと待って〜!」
 置いていくつもりなのだが、女が纏わり付いてくる。
 正直、ウザイ。
「ちょっとだけですから〜! 減るもんじゃないんですから〜!」
「うるせぇなあ、アンタも諦めろっての!」
「そこを何とか〜」
「ダメっつったらダメ! コレは俺のモン!」
 正直、最後はもう意地だけになっていた。
 タナボタで見つけた値打ち物(?)を、顎の恨みのある女にくれてやるのは忌々しい。
 ここで根負けするのはシャクだ。
 ただそれだけ。
 だが、意地ってモンがあるだろ、男の子には?
 まあ、要はそういうこった。
 決して俺が特別ガメツイってワケじゃないからな。
 いいな?



 アレ、そういや俺、なんでココに居るんだっけ……?

 ココ、どこだ……?

242名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:24:33 ID:/Lg7nF1k
  
243名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:25:15 ID:n9E5N+a8
 
244Cat Blues  ◆P2vcbk2T1w :2007/09/23(日) 01:25:30 ID:0QJ5jE5S
【G-1 一日目・深夜】
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
 [状態]:顎が痛い
 [装備]:デザートイーグル(残弾8/8、予備マガジン×2)
 [道具]:デイパック、○極○彦の小説
 [思考]
1.古本屋を見つけて本を売り払う。
2.本は俺のモノ


【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック、飛行石@天空の城ラピュタ、不死の酒@バッカーノ、拡声器
 [思考]
1.なんとしてでも○極○彦先生の本を読ませて貰う。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:25:31 ID:888pqZ7d
 
246名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:25:42 ID:HZCjomV1
  
247名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:25:42 ID:WK1wLbsi
 
248名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:26:39 ID:888pqZ7d
投下乙です。あとすいません。トリ付きで支援してしまいました。
249 ◆P2vcbk2T1w :2007/09/23(日) 01:26:54 ID:0QJ5jE5S
以上です
250主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:36:29 ID:/qVpAoVX

脳裏に焼きついたまま消えることのない記憶。全てを失いかけたあの日のこと。
邸内に侵入した何者かの襲撃によって母を目の前で亡くし、足の自由と光さえも奪われた妹ナナリー。
父に求めた救いの手は容赦なく払われ、代わりにこの手が掴んだのは日本へと向かう切符。
当時地下資源を巡って関係が緊張化していた日本に、俺とナナリーは人質として送り込まれたのだ。
だから、母に一つの誓いを立てた。
俺がナナリーの目となり足となって傍で支え護り抜くと。

一年後。
俺とナナリー、そして俺たちが日本で出会い友情を培った少年の三人は揃って廃墟の中にいた。
かつて都市だったものは瓦礫の山となり、昨日生きていた者はゴミのように辺りを埋め尽くしている。
ブリタニアは。父は。俺達のことなど最初からいなかったかのように日本に戦争を仕掛け、勝利した。
日本はブリタニアの属領エリア11として再生され、俺達兄妹は死んだことになった。
俺は、俺自身に誓いを立てた。
弱者が生きていくことを認められない、そんな世界を是とするならば。
ブリタニアをぶっ壊す、と。


それから7年の月日が流れ……俺は今、ここにいる。
真に弱者が生きることを許されない世界。
殺し合いの舞台に。
251主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:37:32 ID:/qVpAoVX

クソッ、どういうことだこれは。
耳障りな音のない月夜の静寂にあって、俺はひとり愚直にも怒りで身を震わせていた。
光力を最小に設定したランタンを利用し目を通した名簿に、意外な名前が記載されていたためだ。
何故スザクまでもがこんなろくでもないバカ騒ぎに巻き込まれなければいけない。
優しすぎて戦いには、ましてや殺し合いなど全く不向きな男だぞ、スザクは。
苛立ったところで俺にはどうすることも出来はしない。
出来るのは、名簿の先を読み進めることだけだ。

俺にとって数少ない幸運は、名がランペルージ姓で記載されていたこと。
そして何より、ナナリーを巻き込まずに済んだことだ。
広間で見渡した限り俺の知人など一人も見当たらなかったが、その際に女子供の姿をいくつか視認している。
あの中にはゲームを遂行するための潤滑油として呼ばれた者もいるかもしれない。
生贄としてはもちろんのこと、参加者が戦う理由を作ることすら含めた役回りとして。
それに、ナナリーが選ばれる。考えただけで不可視の手に心臓を掴まれたような気分だ。
実現していたならば首輪の影響力などまるで比較にならない恐怖が全身を支配しただろう。
気に入らないが、それだけでもマシだ。まだ俺は平静を取り戻すことが可能なのだから。


あの広間のことを思い出すと、今でも悔いが残る。
俺はこの首輪とやらを爆破されぬギリギリのラインまであの男、ロージェノムを問い詰め、出来うる限りの情報を引き出すべきだった。
慎重に場の観察を行った。そう言い換えれば聞こえはいいだろうが、結果的には流されるまま座していたに過ぎない。
一人になればどうとでもなると慢心した時点で俺は負けていたのだろう。
確かに自信を持つだけの切り札はあった。
俺の左眼に宿る能力。下した命令を強制的に従わせる“絶対遵守の力 ―ギアス―”。
同じ相手には二度と通じないため機会は只一度。命令のやり直しは効かず、撤回も不可。
そして能力の発動時に対象が俺の左眼を覗き込む必要がある。つまり基本的には向き合っていなければ効果を得られない。
これらの制限もあるが、適切に行使する限り絶大な効力を発揮する力。

――故にあの場では使えない切り札が。

ギアスを使うにはありとあらゆる情報が不足していた。
集められた人員の出自。選考基準。手段。
螺旋王ロージェノムとは。その背景とは。目的である螺旋遺伝子とは。
ロージェノムを制せばこの茶番は本当に終わるのか。
そもそもギアスは通用するのか。
通用しなければ、俺のギアスはタネが割れている手品に成り下がる恐れがある。
それでなくとも余計な注目を全員から集めてしまうことになるのだ。それではまずい。
推測になるが、おそらくギアスはロージェノムに対して効力を発揮することはないだろう。
少なくともあの場ではギアスを無効化する何らかの手段を施している筈だ。
ロージェノムに渡されたクリスタルを用い全身を鎧で包んだあの男。
原理はともかく強さは本物だった。サザーランドを凌駕する性能を持つナイトメアフレーム、あの白兜を以ってしても奴には敵うまい。
それ程の相手をロージェノムは平然と利用した。
己の力を十二分に誇示した上で、首輪という強制力まで見せ付ける。
実に効果的なオープニングだ。
それだけにギアス一つで潰せるほど甘い計画ではないという証左となる。
252主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:38:34 ID:/qVpAoVX

情報整理だ。
まずは『名簿』から名を知っている者だけを抜き出す。
枢木スザク。
俺の仮面の一つであり、反ブリタニア組織である黒の騎士団を率いるリーダー“ゼロ”。
ブリタニア軍に所属するスザクは、ゼロの立場であったならば俺の敵となる。
だがルルーシュとしてならば、全幅の信頼を寄せられる唯一無二の友だ。
偽りのランペルージ姓ではなく、ブリタニア皇族ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという
素性を知る数少ない人間でもある。
その事実に若干の懸念が無い訳でもないが、まず心配はいらないだろう。
スザクが秘密を漏らすとしたら状況はかなり限定される。
俺が死に瀕していて、ブリタニア皇族の名前を出せば助かるといった類のな。
フン、まず有り得ないことだ。

ジェレミア・ゴットバルト。ああ、あのオレンジ君も居たか。
以前この男に仕掛けたギアスが有効ならば文字通り取るに足らない男だが……どうだろうな。
ロージェノムがギアスに干渉可能であれば、決して崩れることのない優位性を保たせたままというのも疑わしい。
仮に持続していたとして、それがゼロに適応されてもルルーシュ・ランペルージに適応されるかは不明瞭だ。
実例がないのが残念だが、こればかりは軽々しく実験する訳にもいかないしな。
まあ放っておいても簡単に自滅するタイプだ。コイツのことは気にする必要はないだろう。
出会うことは無いと思うが、立ち塞がるならばギアスの力に頼らずとも再び踊らせてやるだけだ。

ロイド・アスプルンド。直接の面識はないな。
ブリタニアの有能な科学者であるというデータ上で得た知識があるだけだ。
それだけにこの男の扱いについては慎重を期するべきだろう。
敵とさえしなければ、最低限クリアするべき障害の一つを片付ける上で重要な存在と成り得る。
首に宛がった手の甲に伝わる冷ややかな感触の原因。
生殺与奪を握る忌々しい枷。これを除去しない限り俺達にはロージェノムの走狗となる道しか残されていない。

カレン・シュタットフェルト。
彼女は表向きは病弱な貴族の令嬢。裏では黒の騎士団の一員という俺に似た事情を抱えている。
黒の騎士団にとってカレンの価値は高い。
卓越したナイトメア乗りという点でもそうだが、黒の騎士団の前身となった旧レジスタンス初代リーダーの妹。
ゼロが組織のトップとして君臨していられるのは、俺の手腕だけでなく彼女の協力によるところも大きい。
何も知らない彼女が忠実で優秀な駒となるのは、俺がゼロである場合のみ。
ルルーシュ・ランペルージは同じ学園に通うクラスメイトでしかない。
ギアス、又は類似する精神支配による影響を受けていない限り、正体を明かし信じさせることは容易い。
それだけの状況証拠はいくらでも用意できる。
しかし秘密は内に秘めてこそ秘密となる。徒に綻びを生むような真似は愚者のやることだ。
決定的な理由が生まれない限り、彼女とはルルーシュの立場で接することが望ましいだろう。

以上4名を除けば残るは未知の相手のみ。その数、総勢77名。
途方もない数だが、一人に付き一人の情報しか得られない訳ではない。
他の参加者とて情報交換の必要性は感じているはず。
上手くいけば直接の接触者が10人に満たなくともほぼ全員の情報を得られる。
その分、不確かな情報の取捨には迫られるだろうが。
253主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:39:40 ID:/qVpAoVX

螺旋王ロージェノム。
奴にブリタニアの息がかかっている可能性については類推するしかないが……
あの広間での出来事から判断するならば、これは著しく低い。
弱者に生存権が認められない世界。まるでブリタニアの思想を体現したかのようだが、これだけで結びつけるには飛躍が過ぎる。
ならば残るEU、中華連邦が関与しているというのか? 論外だ。
これだけの技術力が一国にあればブリタニアを筆頭とした三大国のパワーバランスなど形骸化している。
人材と資源、時間が有限であるが故に成り立っている現在の情勢など砂上の楼閣に等しい筈だ。
現時点で最も高い可能性を類推する上で、鍵となる存在に心当たりがないわけでもないが。
内に秘める思惑を何一つ晒さず常に不敵な笑みを浮かべ、俺を困惑させることを楽しんでいるようにしか見えない変人。
日常と引き換えに、俺に世界を変革する超常の力を与えた謎の女。
C.C.。彼女が関与しているならば或いは……ないな。
ロージェノムと彼女では同じ異能者であっても、色が違い過ぎる。

やはり答えに至るピースがまるで足りていない。思考を進めるには時が必要だ。
俺は確かにあの広間で聞いた。未知の者に対するそれではなく、明確な意思を持ってロージェノムと叫ぶ声を。
この舞台の背景を探るには声の主と接触する必要がある。検証はその後でいい。


ただ、このゲームについての仕組みならば現時点ではっきりしている。
ロージェノムの望むがままに戦い続け、念願の“最後に立っていた者”になったとしよう。
約束通り勝者は願いを叶えて貰い、何事もなく解放される。めでたしめでたし、か。
フン、馬鹿な。そんな訳がない。
俺達をモルモットと言い放った者に期待できることではないな。
良くて文字通り飼い殺し、悪ければ同じような舞台に再び投げ込まれるのが見え透いている。

ならばロージェノムを排除する以外に選択はない。
そのためには、三つの条件を満たすことが最低限必要となってくる。
1.首輪を解除する。
2.ロージェノムを打倒するだけの戦力を集める。
3.ロージェノムの元へ辿り着く方法を見付ける。

2は最悪ギアスで賄えるかもしれないが、残りは糸口すら掴めていない。
絶望的なスタートラインからの出発となるが、それも当然のこと。
肝心なのは、覚悟して一歩を踏み出せるかどうかだ。
今は前に進む意思。ただそれだけがあればいい。
事態の推移が早すぎてはロージェノムの手によって参加者が“追加”されないとも限らない。
そしてそれがナナリーでないとは言い切れない以上、計画は極秘裏に進める必要がある。
254主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:40:44 ID:/qVpAoVX

地図、コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、時計。
基本支給品は全て確認を終え、ランタン以外はデイパックの横に並べてある。
残るは戦力差を埋めるべく無作為に支給されるという道具のみ。
意を決して腕をデイパックへと伸ばす。
現れたのは全身を網目状の線で張り巡らしているフレッシュグリーンの球状物体。
見落としていた食料の一部と判断し、デイパックの横へと移す。
その途中ひらひらと何かが舞い落ちた。紙だ。
拾い上げて確かめると、視界に到底受け入れ難い一文が飛び込んできた。
『お口にとろけるベリーメロン! 一口食べればあなたも踊りだすおいしさ!』
なんだこれは。ふざけているのか。しかも全11個だと?
確認してみたが、説明に偽りなく本当に11個も入っている。
……頭が痛くなる話だ。
今の事態を酷く悪辣な冗談だと一笑に付すことが出来るほど俺は強くも愚かでもないが、
これでは悪い夢だと思い込みたくもなる。
どの程度の品物が出回っているかは知らないが、紛れもなくこれはハズレの部類だ。
非常食としては有益である事実は認めよう。だが、それが何になる。メロンで命が護れるものか。
大体ナイフの一つも付けないというのはどういうことだ。割って食べろというのか。

――待て。
余りの馬鹿馬鹿しさに見落としてしまったが、説明には重要な単語が混入していた。
試しに一欠片でも口に含ませてみれば真偽を確かめることは出来る。出来るが……
やはり止めておくのが懸命だろう。

「テックセッター! 鉄仮面ゼロ!」
ククク……これはいい。入手を検討する余地は大いにあるな。
生身での戦闘力は有って困ることはない。ギアスと合わされば俺は無敵の変身ヒーローだ。
見ていろ白兜! あの水晶さえ手中に収まれば――
255主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:41:47 ID:/qVpAoVX

地図、コンパス、筆記用具、水と食料、名簿、時計。
基本支給品は全て確認を終え、ランタン以外はデイパックの横に並べてある。
残るは戦力差を埋めるべく無作為に支給されるという道具のみ。
意を決して腕をデイパックへと伸ばす。
現れたのは全身を網目状の線で張り巡らしているフレッシュグリーンの球状物体。
見落としていた食料の一部と判断し、デイパックの横へと移す。
その途中ひらひらと何かが舞い落ちた。紙だ。
拾い上げて確かめると、視界に到底受け入れ難い一文が飛び込んできた。
『お口にとろけるベリーメロン! 一口食べればあなたも踊りだすおいしさ!』
なんだこれは。ふざけているのか。しかも全11個だと?
確認してみたが、説明に偽りなく本当に11個も入っている。
……頭が痛くなる話だ。
今の事態を酷く悪辣な冗談だと一笑に付すことが出来るほど俺は強くも愚かでもないが、
これでは悪い夢だと思い込みたくもなる。
どの程度の品物が出回っているかは知らないが、紛れもなくこれはハズレの部類だ。
非常食としては有益である事実は認めよう。だが、それが何になる。メロンで命が護れるものか。
大体ナイフの一つも付けないというのはどういうことだ。割って食べろというのか。

――待て。
余りの馬鹿馬鹿しさに見落としてしまったが、説明には重要な単語が混入していた。
試しに一欠片でも口に含ませてみれば真偽を確かめることは出来る。出来るが……
やはり止めておくのが懸命だろう。
256名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:42:43 ID:UisHpMYK
 
257主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:43:05 ID:/qVpAoVX

さて、どうする。
立ち止まることに意味はないが、だからといって闇雲に移動するというのも思慮に欠けた話だ。
漠然としたものではない、確固とした当面の目標を立てる必要がある。
そうだな。ここはスザクとの合流を優先させるか。
あのお人好しのことだ。放っておけば誰を疑うこともなく、どんな危険にも平然と首を突っ込みかねない。
一刻も早く見つけ出して保護してやる必要があるだろう。まったく、手のかかる奴だ。

スザクの立場――俺をルルーシュ・ランペルージという一生徒としか認識していないならばどう動く。
刑務所、古墳等は真っ先に除外できる。赴く理由も留まる理由もない。
デパートやモール、及びこれに類する人が集まる条件が整った場所。目に留まるのはまずこの辺りか。
しかしこれでは候補となる施設の数が多く、一つずつ虱潰しする他はない。
当然ながら擦れ違う危険性も高くなる。
ではどうするか?
指標となる拠点を選び抜けばいいだけのことだ。
地図上の北東部と南西部に位置し、俺が身に着けている服装とも間接的な関わりのある施設。
そう、学校が適している。
スザクが俺を最優先で探すことは間違いないが、学友であり生徒会の仲間でもあるカレンも対象の一人だろう。
ならば、二人に共通して関連している場所である学校に目が行くのは当然のこと。
加えて地理的な面に於いても学校は最適な立地条件にある。
二つの学校は下水処理場近くを走るモノレールを利用することでほぼ一本道と見做すことが可能なためだ。
モノレールが使えない、ということはないだろう。
俺が主催者であるならばそういった手段は必ず用意しておく。
交通手段を設置する利点は大きく分類して二つ。
一つは従来の製造目的と同様に移動時間の短縮を図るためだ。
もう一つは参加者同士による接触の機会を増やすことにある。
メリットとデメリットを内包する後者は差し詰め運命の分かれ道といったところか。
258主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 01:44:21 ID:/qVpAoVX


俺はスザクと共にこのゲームをぶっ壊す。
絶対に。
ああそうだ。絶対にだ。





だから心配せず待っていてくれナナリー。




【H-5/1日目/深夜】

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、メロン@金色のガッシュ×11
[思考]
1:スザクとの合流を果たすべくまずは学校(H/2地点)へ向かう。
2:このゲームをぶっ壊すための駒と情報を集める。
※ルルーシュの参戦時期は第13話「シャーリーと銃口」以前。
 スザクがランスロットの搭乗者であることは判明しておらず、マオについては存在すら知りません。

【メロン@金色のガッシュ】
※普通のメロンです。
 本当に踊りだす人も二名ぐらいはいるかもしれませんが、基本的にはただのメロン。

投下終了です。>254は無かったことにorz
259名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 01:47:23 ID:3feMYazR
これって最初のバトルロワイアルで死んだ人もでてるから、
最初のバトルロワイアル終了後のさらに未来とかそういうのではないんだよね?
260 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 02:58:51 ID:oVX30zDC
G-4の歩道の上をクロはデイパックをずるずる引きずりながら歩いていた。
「ミーくんにマタタビねぇ・・・。ま、こいつらなら放っといても大丈夫だろ」
名簿をながめながら呟く。どうやら知り合いはクロと同じサイボーグ猫であるミー、生身でありながら戦闘面では二人に引けをとらないマタタビの二匹だけのようだ。もしじーさんばーさんの名前でも載っていたときには今頃全力で探し回っていたところだがその心配はないようだ。
それが分かっただけでクロの心は大分軽くなった。
「わざわざ誰がいるのか教えてくれるなんざ親切なこったぜ。他には何かねーのか?」
名簿を戻しデイパックを探る。ごそごそと中を漁るとクロの手が金属の硬い感触を捉えた。
「お、い〜ねい〜ねぇ。あのヒゲ親爺わかってんじゃねーか」
出てきたのは一振りの日本刀だった。刃物なら普段から扱いなれた武器の一つだ。
クロは早いとこ試し切りをしてみたいと言わんばかりの凶悪な笑みを浮かべて刀を鞘から抜き放った。
「ってボロボロじゃねーか!」
本来なら月光を反射して美しく光ったであろう刀身は錆びだらけで、刃こぼれもかなりしている。これでは新聞紙一つ満足に切れまい。
「・・・ま、いーや。オイラにゃ自前の剣がある。武器はやっぱ扱いなれたもんじゃねーとな」
それでも一応デイパックに完全には戻さず柄だけ突き出しておいていつでも使えるようにしておく。切れずともぶん殴ることくらいはできるだろう。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 02:59:05 ID:XsCXIUyK
  
262 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:00:17 ID:oVX30zDC
「にしても、殺し合いね。オイラの周りにゃどーしてこうイカレたやつが多いかねぇ」
異世界やら宇宙人やらジャングルの怪獣やら異常事態には慣れているが、いきなりさらっておいて「殺しあえ」というのは今までと比べても極めつけの部類に入るだろう。
だが、そんな状況にあってもクロは不敵な笑みを絶すことはない。
「お荷物連中はいねーんだし、殺さねぇにしても帰る前にちょっと大暴れしてくぐらい別に構わねーよなあ?どーせならこの会場丸ごとぶっこわしちゃおっかなー」
荒事はクロの大好物だ。命がかかっているというならなおさら暴れ甲斐がある。
「せいぜい骨のあるやつを用意しとけよ?ザコばっかじゃ退屈しちまうからなあ。・・・っても」
そこでクロはそれまでの攻撃的な雰囲気から一転真剣な表情で首もとをさすった。
冷たく光る首輪の感触が伝わる。ご丁寧に溶接までしてあり、普段は自由に着脱可能な首から取れないようになっている。
「この首輪だけは気に入らねーね・・・。オイラ達をどっかに繋ぎ止めておこうなんざ考えるだけムダだぜ」
無理やり強制されたことには反発する。それがクロ達のような猫が生まれ持った性分だ。そのような生き方を貫いた結果が今の機械の体であるとも言える。
「あの髭親爺にもそいつをたっぷり教えてやらねーとなあ。あ、そーだ。ボコボコにしたついでに帰り方も聞きゃいーじゃねーか」
今後の方針は決まった。適当に大暴れして、飽きたら髭親爺をぶっとばして帰る。首輪に関してはミーくんにでも外してもらおうと気楽に考えていた。
「コタローか剛の野郎でもいれば確実なんだけとな。お・・・?」
今まで何もない景色がただ続くだけの歩道の向こうに人影が見えた。
263名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:00:30 ID:XsCXIUyK
 
264名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:01:03 ID:V/5xa9mH
支援
265 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:01:27 ID:oVX30zDC
道の脇にぽつんと置かれたベンチに腰掛け、真剣な表情で持ち物のチェックをしている。見た目は二十代前半の茶色のスーツに身を固めた若い女だ。
(やべぇやべぇ・・・。いきなり猫が喋って歩いてるとこ見せたら驚かせちまうからな)
今までを振り返ってみると初対面で喋って二足歩行している自分を見ても意外とあっさり受け入れる奴が多かった気もするが、やはり用心はしておくべきだろう。驚かない奴らが変なのだ。
「にゃお−ん」
四足歩行に切り替えいかにもただの猫、という風情を装って通り過ぎようとする。首輪とデイパックだけでまさか自分が人間と同じように行動できるとまでは思うまい。
女の目の前を通りこのまま何事もなく通り過ぎれるかと思ったところで女が手をとめクロをじっと見つめた。
「にゃ、にゃお〜ん・・・」
不審に思われているようだが構わない。このまま歩き去ってしまおう。そう考え、あくまでただの猫の振りを続けるクロの背中に女の柔和な声が響いた。
はっきりと、クロを対象にして声をかけていると分かる声が。
「かくさんでもええよ。しゃべることくらいはできるんやろ?猫の使い魔さん」
「・・・・・・」
ただの猫の演技を続けたままクロは凍り付いたかのように動きを止めた。顔中に大粒の汗がいくつも浮かび心中では「どうしてわかった!?」と疑問の嵐が吹き荒れる。
「何で分かったんや、て感じやな。ふふ、まさか私と同じ首輪付けてデイパック持ってるのにただの猫ちゃんてことはないやろ?」
(だからってそれでなんでオイラが喋れるってことになるんだよ!普通は「猫が参加者?」くらいで流すだろ−が!)
「私の家族や友達にも動物に変身できる子が何人かおってね。だから君みたいな子は見慣れてるんよ。な、お話聞かせてくれへんか?」
(さらっとメチャクチャ変なこと言ってる!?頭おかしいんじゃねえのか、おい!)
「信用してくれへんか?あ、それならも一つ。君、私が声をかけてから固まりっぱなしやんか。私の言ってることを理解してる証拠や。これも条件に追加やな」
(うぉ、しまった!?)
予想外の事態に気が動転してさっきからずっと同じポーズのままだ。確かに声を
かけられて立ち止まるなど普通の猫ならばありえない。
266名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:01:55 ID:XsCXIUyK
 
267 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:02:33 ID:oVX30zDC
(しゃあねぇ・・・オイラの負けだ)
言ってることからはそこはかとなくヤバげな匂いがするが頭が切れるのは確かなようだ。クロは観念のため息を一つつくとただの猫の振りをやめ、二本の足で立ち上がった。
「お、やっと私と話す気になってくれたか!」
女の喜ぶ声を聞きつつクロはゆっくりと向き直る。そして、女に向かって自らを誇るかのように名乗りを上げた。
「オイラはクロ。オメーの言うとおりただの猫じゃねぇ。だが、使い魔ってやつでもねぇ。・・・サイボーグだ。よっく覚えとけ」
口の端をつり上げて、皮肉げに笑った。


「サイボーグのクロちゃんか。そこは外れやったね。失礼しました」
女はクロの正体が自分の予想と全く違っていたにも関わらずそのことを気に留めた様子もない。それどころか律儀にぺこりと猫であるクロに頭を下げた。クロ正直この女の考えてることがよく分からなかった。
「オイラは名乗ったぜ。オメーの名前は?」
「私?私の名前は高町なのは。よろしくな、クロちゃん」
女は爽やかにそう名乗った。
268名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:03:33 ID:XsCXIUyK
 
269 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:03:54 ID:oVX30zDC
(高町なのは、ね・・・)
「ところでな、そのデイパックから飛び出してる刀、クロちゃんの支給品か?」
クロのデイパックを指差してなのはが聞いた。
「あぁ、そ−だぜ」
「武器を貰えたってことは当たりやった訳やね」
「・・・そうだな。ピカピカに磨かれてっからな。鉄でも何でも斬れちまいそうだぜ」
何となく、嘘をついた。
「へぇ〜いいなぁ。私もそういう役に立つ武器が欲しかったわ。刀なら私の趣味にも合うし」
「刀振り回せるようには見えね−がな」
「振り回したりせぇへんよ。眺めるだけ。私、刀剣のコレクションが趣味やねん」
実際今も輝いた視線をデイパックから突き出した柄にそそいでいる。
その目は弟子である鈴木が熱中しているプラモの何とかと言うシリーズに向けるものと同じに見えた。
嘘はないように見える。一見。
「な、おねがい!」
両手を合わせてクロを拝む。その様子は好きなものを目の前にした子供そのままだ。
「別にい−ぜ」
「ほんまか!?」
ぐいと喜色満面の顔をクロに近付ける。
「おーよ。ったくマニアってのはどこにでもいるもんだねぇ。そんなに見てぇな
ら」
その熱意に負けた、といった様子でやれやれと首を振りつつクロはデイパックに手をかけた。
270名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:04:45 ID:yk5q4EmX
 
271 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:05:05 ID:oVX30zDC
「好きなだけ拝みやがれ!」
そしてそれを思い切りなのはと名乗った女の顔面に投げ付けた。
「わぷ!?」
視界を奪った一瞬の隙に左手の愛用マシンガンを取り出す。
「あんまりオイラをなめんじゃねぇぞ!なのはなんて名前は名簿にゃねぇ!怪しすぎんだよてめぇは!!」
叫び一気にマシンガンを発射する。弾丸の嵐が女に降り注ぎあっという間に蜂の巣に。
「あれ?」
しない。弾は一発も発射されていなかった。
「あれ?あれ?」
左手を見る。そもそもマシンガンが無い。
「え?マジかよ?オイラの剣は?ミサイルは?」
試しに腹の中を探って見たがどこを探してもいつも使っている剣がない。全身のミサイルの発射口を開け閉めするが弾は一発も装填されていない。
「手持ちの武器は全部没収されてるみたいよ?」
「うお!?」
武器を探してあたふたしてる間に立ち直っていた女からやんわりと声をかけられた。クロは慌てて身構えたが女は何をするでもなくそれでどこらか両手を上げて降参のポーズを取っている。
「まいった。降参や。まさかミサイルまで持ってるとは思わんかったわ」
「何なんだよオメーはよ・・・」
武器を奪おうとするかのような言動をしながら隙だらけのクロに何もしない。それどころかあっさりと降参する。本当に訳がわからない。
クロが混乱していると女がさらにそれを助長するような事を言った。
「騙すような事をして悪かった。謝ります。私本当は八神はやてと言います。時空管理局本局、古代遺物管理部機動六課の部隊長をしていまった。」
「はあ?」
混乱の極みに達したクロに構わずはやてはクロ両脇から抱え上げた。
そして、意志の強さを感じさせる瞳で真っ直ぐクロの目を見て言った。
「クロちゃんのその度胸と能力を見込んでお願いがある。私と一緒に主催者を逮
捕するための仲間になってほしい」
272名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:06:42 ID:yk5q4EmX
 
273名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:07:57 ID:GaEjJMvh

274 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:08:43 ID:oVX30zDC


「つまりオメーはオイラがさっきみてぇな嘘にほいほい騙されちまうような奴か試したって訳か」
混乱を脱しはやてから懇切丁寧な謝罪と解説を受けたクロはようやくそこまで理解した。
「そう、そうしてクロちゃんがどの程度用心深く頼りになる人物か見るつもりやった」
クロが悪趣味だぜと呟くとだから悪かったって言ってるやんと笑顔で返された。
確かに謝罪の言葉はさっきいやというほど聞かされてがクロにはそれすらも計算ずくのように感じられる。
「もしオイラがコロっとだまされてたらどうしてたんだ?」
「そのときはお説教の後でクロちゃんを保護してたな。知らない人の言うことを簡単に聞いちゃいけませんよって」
「よく言うぜ」
「ちなみにさ、どの辺りで怪しい思った?」
クロの皮肉をまるっきり無視してはやてが顔を向ける。ちなみ今は二人並んでベンチで歓談中だ。
「そりゃ、名簿に無い名前聞かされりゃだれだって怪しいと思うだろ−よ」
「あ、もう名簿を把握してるんか。さすがやね」
「刀好きが嘘ってことまでは分かんかったけどな」
「ほんま?私の演技力も捨てたもんじゃないな〜。でもクロちゃんも中々やった
よ。私すっかり騙されてたもん」
言いながらはやてはクロの支給品の刀を鞘から取り出す。もちろん刀身はぼろぼろ
だ。
「そ−かい。オイラのえんぎりょくもすてたもんじゃね−な」
はやての言うことを平たく言うとはやての仕事は色々な世界の管理と取り締まり、ということになる。
そしてそこでの規則に明らかに抵触しているあの髭親父を逮捕し、この事態を収拾するためにクロ協力しろという。
もちろん犠牲者は最小限に留める形で。
はやての言う魔法や使い魔についての説明も受けたが「そーいう力がある」程度しか理解できなかった。
異世界移動の経験があるクロにしてみれば七信三疑といったところだ。
ただもしそんな組織の存在がが本当なら焚き火にミサイルをくべただけで移動してしまうような緩い世界管理は止めてくれと思う。そう不満を述べたときの絶句しながら「ご、ごめん…」と言ったときのはやての顔は少し見物だったが。
「それでや。さっきの話に戻るけどどうや?私達の仲間になってくれへんか?」
「・・・・・・」
クロは答えずにベンチからぴょん、と飛び降りた。
思案顔でウロウロと歩き回りたまに頭をぼりぼり掻く。
そのような行動をしばらく繰り返した後クロははやての真正面でぴたりと立ち止まった。
275名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:09:36 ID:/qVpAoVX
276 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:09:49 ID:oVX30zDC
「一つ聞かせろ」
「何?」
クロが指を突き付けながら告げ、はやても真剣な表情でそれに応える。
「さっきオイラは割とマジにオメーを撃つつもりだった。そういう風にしなきゃこっちの命が危なくなるような生活が長かったんでな。ま、そいつはオイラが間抜けだったせいで失敗しちまった訳だが」
一息つく。はやては神妙な面持ちでクロの言うことに耳を傾けている。
「それはそれとしてだ。つまりオイラが言いたいのは、オメーが最初に声をかけたのがオイラよりもっととんでもねぇ奴だったらオメーは殺されてた可能性もあるってことだ。そんときゃオメーはどうするつもりだったんだ?」
クロはそこで顔を上げ、ほとんど睨み付けるかのように細められた目ではやてを見据えた。
「えぇ?もしオイラがミサイルの雨を降らしてたとしたら、オメーは一体どうしてたんだ?」
低い声。恫喝するかのような調子でクロははやてに質問した。
「そのときは」
はやてが答える。
277名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:10:29 ID:GaEjJMvh

278名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:11:20 ID:/qVpAoVX
279名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:11:40 ID:yk5q4EmX
 
280 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:15:03 ID:oVX30zDC
「そのときは私は、木っ端微塵になってたやろうね」
何の誤魔化しも衒いもなく、はやてはそう答えた。危険を侵してでもやらなくてはならないことがある、はやての顔はそう言っていた。
「・・・・・・」
クロはその答えを聞き。
「・・・・・・っ」
しばらくは黙っていられたのだが。
「・・・・・・ぷくく」
やがてだんだん我慢できなくなり
「ぶひゃーーーはっはっは!ひゃああーーーはっはっは!ちくしょ〜、腹いて〜〜!!」
ついには大笑いしながら転がり回った。
「ちょ、ちょっと。人が真面目に答えてるのに笑うことないやろ!?」
「い、いやこれが笑わずにいられるかよっ!いいねぇ、いいねぇ!女はやっぱそれくらいの度胸がなくっちゃあなぁ!あ〜〜っはっはっは!」
地面を叩き腹をかかえて涙を流しながら、クロはたっぷり十分ほどそうして笑い続けた。
281 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:16:54 ID:oVX30zDC


「あ〜疲れた。いや、本当にナナの奴にも見習わせたいくらいだぜ。あ、何かまたおかしくなってきた、ぷぷ」
「クロちゃん笑いすぎ!」
再び笑い始めたクロをはやてが叱った。多少照れているようにも見えた。
「と、とにかく。OKしてくれたって事でいいんやな?」
「おうよ。つまりはあの髭親父相手に派手な喧嘩をおっぱじめようってんだろ?好きだぜ〜、そういうのはよ」
クロはこれから起きることが楽しみで仕方がないといった様子である。
「帰り道も確保してくれんだろ?」
クロははやてからここがクロのいる世界とは違う可能性が高いという話を聞いていた。
「もちろん。脱出に成功したらみんなは私達時空管理局が責任をもって家まで送りとどける」
じゃあ、とはやてが手を差し出した。
「これから私たちは志を同じくする仲間や。よろしくな、クロちゃん」
「おう」
クロも手を出し二人は互いの手を打ち鳴らした。
パンという軽快な音が響いた。
282名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:18:03 ID:GaEjJMvh

283名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:18:05 ID:yk5q4EmX
 
284 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:18:14 ID:oVX30zDC


その後の情報交換は滞りなく進んだ。
「え〜スバル、ティアナ、エリオ、キャロが部下。シャマルがはやての・・・守護騎士ってのか?それ兼家族。・・・にしてもはやての部下って殆ど子供なのな」
「それを言われると心苦しいとこもあるんやけど、皆誰かに言われたからじゃなく自分の意志で私についてきてくれてる。年齢は関係ないよ」
「ふ〜ん、若ぇのに立派なもんだ」
「全くや。じゃ、クロちゃんの知り合いはミー君とマタタビ君の二人やね。ミー君はクロちゃんみたいなサイボーグでちょっと青みがかってる。マタタビ君は片目の無いトラネコ。これでええか?」
「・・・オイラの方が覚える量多いな」
まぁマタタビがサイボーグではなく、大工達に飼われる間に言葉と大工仕事を覚えただけのただの猫だと聞いたとき一瞬浮かんだはやての「・・・何それ」という表情でちゃらにしておく。
そこでクロは、はやての支給品について何も聞いていなかったことを思い出した。
「私?私のは何か派手なマスクが一つだけ」
見せてもらうと黒赤黄の三色に鋭角的な触角のようなものを付けたマスクだった。
「ほんと派手だな・・・」
「やろ?説明書には『レイン・ミカムラ着用のネオドイツのマスク』って書いたるだけやし」
「そのレインって奴の趣味を疑うぜ・・・。それにどの辺がネオなんだよ」
「この触角のあたりちゃうかな?」
285名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:18:26 ID:NZ2v9w+D
 
286名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:18:30 ID:/qVpAoVX
287名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:19:44 ID:muf4fJNA
    
288名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:19:47 ID:/qVpAoVX
289名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:20:05 ID:yk5q4EmX
 
290名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:20:17 ID:GaEjJMvh

291 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:20:23 ID:oVX30zDC


今後の行動方針を決めるに段になって、クロから一つ提案をした。
「別行動をとる?」
「ああ。今決めたオイラ立ちの方針は、お互いの知り合いを探す。
協力してくれる仲間を増やす。
戦ってるやつらがいたらよっぽどでなけりゃ止める。
この三つだ。オイラ達はもう互いの知り合いは分かるしろくに武器の無いオイラ達じゃ一人でも二人でも戦力的には大差ねー。あるのはクソ度胸だけだ。なら別々に行動した方が仲間も増えやすいだろーぜ」
「・・・確かに、危険を覚悟の上で可能性を増やすっていう意味なら一理あるかもしれん。」
「そりゃオメーの得意技だろ?」
茶化し口調でクロが言うとはやてはむっとしたように頬を膨らませた。
「からかわんといて。でもそれやったら合流場所はどうするん?」
「いらね−よ」
「え?」
「こんな狭い会場で同じ目的持ってドンパチやらかすんだぜ?派手にやってりゃいやでもその内合流するって」
地図を広げてクロはどうだと言わんばかりにニヤリと笑った。
はやてはその大雑把な提案に苦笑しつつ一方で納得もしていた。
「確かにこんな状況じゃ正確な時間と場所を決めてもトラブルが起きて辿り着けん可能性は高い・・・。せやったらこうしよう」
地図をベンチの上に広げ二人して覗き込む。
「私はこの神社からH-4の神社からこのベンチに来たんや。せやから今私たちがいるのはG-4の南部やと考えられる」
地図上の地点を指差しつつはやてが説明する。
「そこで私はこれから西回りでB-2の観覧車を目指す。クロちゃんは東周りで同じく観覧車を目指す。寄り道は自由。会えへんくても臨機応変に対応する。どや?」
クロの意見を柔軟に取り入れた提案に不満のあるはずもない。
「おっけ〜。へへ、一人なら思いっきり暴れられるぜ。勢い余って誰か殺っちまうかもな〜」
「あかんよ」
はやてはクロの額を指でピン、と弾いた。
292名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:21:22 ID:NZ2v9w+D
293名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:21:52 ID:/qVpAoVX
294名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:22:10 ID:0QJ5jE5S
 
295名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:22:18 ID:yk5q4EmX
 
296名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:22:21 ID:muf4fJNA
   
297 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:22:54 ID:oVX30zDC


そして最後に、どちらかが互いの知り合いにあったときに、クロとはやての二人が仲間であることを証明できるように。互いの名簿の裏にメッセージを記した。
はやては『この猫さんは私達の心強い仲間です。六課の隊員は彼と協力するように』
と書いて署名した。
クロは『このね−ちゃんに協力すれば愛しのゴーのとこに帰れるし、うまいもんもたらふく食えるぞ−』と書いて手形を付けた。
「これでよしっ、と。じゃ、後もう一つだけ決めとこうか」
メッセージを書き終えるとはやてはそう言った。
「なんだよ。まだ何かあんのか?」
「これで最後や。例えば私の仲間になった人が私とはぐれた後でクロちゃんと会ったとする。でもクロちゃんにしてみればその人がほんまに私の仲間かわからへんやろ?そんなときのために合言葉を決めておこう」
「『クロちゃんサイコ〜!』とかじゃ駄目なのか」
クロが面倒くさそうに言った。
「う〜ん、まぁそれでもええんやけど・・・。もっと直接私達とつながりのないような言葉がええかな」
苦笑いしつつ何か無いかとキョロキョロ辺りを見回す。
さっき支給品を確認したときから出しっぱなしにしていた派手なマスクが目についた。
「これにしよう!」
はやては手を打つとマスクを手に取りクロの目の前にずいと突き出した。
「これって・・・この趣味のわりーマスクがどうしたんだよ」
怪訝そうな顔ではやてを見上げる。
「このマスクの事は私達しか知らん。せやからこれにちなんだ合言葉にしよう。ん〜、そやなぁ・・・」
はやて先程のクロのように考え込んだ。だが程なくして何か閃いたのか顔を輝かせた。
「そや!『ネオドイツの女』にしよう。今から私達は『ネオドイツの女』や。ええやろ?」
「・・・まぁ、いいんじゃね〜の。それっぽい気がする気がしない訳でもねーし」
クロは正直微妙なラインだと思ったが他に代案もないので黙っておくことにした。
298名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:23:47 ID:yk5q4EmX
 
299 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:24:06 ID:oVX30zDC


全ての準備を終え、二人はそれぞれの方向へ歩き始める。
はやては決意に引き締められた凛とした表情で。
クロはこの先の困難を待ち望むかのような挑発的な笑みで。
「それじゃ、また後でな。クロちゃん」
「おう。オイラより遅れんじゃね−ぞ、はやて」

別れの言葉は、それだけだった。
300名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:24:32 ID:GaEjJMvh

301名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:24:34 ID:/qVpAoVX
302 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:25:38 ID:oVX30zDC
【G-4 歩道脇のベンチ 1日目 深夜】
【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:良好 少しハイになっている。
[装備]:錆びた日本刀@機動武闘伝Gガンダム
[道具]:支給品一式
[思考・状況]1.はやてとの約束を守りつつ東回りに観覧車へ
2.せいぜい楽しませてもらうぜ〜
※クアットロを除く【魔法少女リリカルなのはStrikerS】の参加者の容姿と概要、及び時空管理局、なのは世界の魔法に関する(クロの理解の範疇での)知識を得ました。
※全身の武器は全て没収されています。
※参加時期は本編終了後

【G-4 歩道脇のベンチ 1日目 深夜】
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:良好 強い決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 レイン・ミカムラ着用のネオドイツのマスク@機動武闘伝Gガンダム
[思考・状況]1.クロとの約束を守りつつ西回りに観覧車へ
  2.必ず主催者を逮捕する。
※【サイボーグクロちゃん】の参加者と容姿と概要に関する知識を得ました。
※参加時期はクワットロの名前を知る前(本編24話以前)、ということ以外不明です。
303 ◆10fcvoEbko :2007/09/23(日) 03:26:49 ID:oVX30zDC
以上で投下終了です。
深夜にも関わらず支援してくださったみなさん、ありがとうございました。
304名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 03:32:02 ID:oVX30zDC
 
305主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 03:33:00 ID:/qVpAoVX
>>252->>253の中間に入ります。

この名簿の内訳には奇妙な特徴がある。
氏名から日本人と思しき者の割合がおよそ三割を占めている。これは世界中から集められたにしては異常な数だ。
これだけの舞台を整えた者が特定民族に意味もなく偏りを持たせたとは考えにくい。
日本全土から租界・ゲットーを問わず特定の条件を満たす者を掻き集めた、とするならば辻褄合わせにはなるか。
まあいい。同じ憶測ならばそれよりも参加者についてだ。
俄かには信じ難いが、異星生命体とやらに関連がある人物が少なくとも二名。螺旋生命体だったか。
ロージェノムの口振りから、両名ともモロトフと呼ばれていた鎧の男に匹敵する存在と見ていいだろう。
紛れもない化け物達だ。勝者を決める戦いなど無意味に思える程に圧倒的。
鎧を纏うには特殊な結晶体を必要とするらしいことだけが付け入る隙か。フン、運任せな話を。
早期に条件を満たされたならば一方的な虐殺が待つだけだ。
それではゲームにすらなりはしない。ロージェノムもそのような結果は求めていないだろう。
ならば、必ず対抗し得る力を持つ者も参加者に含まれている筈。
そのような力の強い者達の中で話の分かる者を見極め、一人でも多く味方に付けるのが得策だろう。
ブレードと呼ばれていた赤いジャケットを着た黒髪の男もそういった候補の一人だ。
名簿にはブレードという名は記載されていなかった。
どうやらブレードとは奴らの間だけで伝わるコードネームみたいなものらしい。
残念だ。ブレードさえ載っていれば、ランサーが残りの一人であると確定したようなものだったのだがな。


しかし衝撃のアルベルトに素晴らしきヒィッツカラルド。
クロ、ミー、マタタビ、ねねね……か。
まるでマジックショーでも行いそうな面々だな。まず偽名だろうが。
306主催者打倒宣言! ◆s1y9vYGV9k :2007/09/23(日) 03:35:23 ID:/qVpAoVX
以上です。二度も不手際申し訳ありませんでした。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:34:25 ID:V/5xa9mH
308 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:34:52 ID:WxPkRwrn
それでは投下行きます。
タイトルは「私にしか出来ないから」
309「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:35:58 ID:WxPkRwrn
 ジェレミア・ゴットバルトには向かい風が吹き続けていた。
 そう、あの日から。なんらかの手段によってゼロに惑わされ、オレンジと揶揄される日々。それは、今までとのギャップも相まって、非常に苦痛な日々であった。
 だが――だが!
 それでも、取り返しのつくものである。そのような汚名は、ゼロを討ち取る事によって晴らせばいいのだから。
 けれども、これはなんだ!?
 ロージェノムと名乗る初老の男性。そして、殺し合いをしろ、という一方的な宣言。
 馬鹿らしい。馬鹿らしいのだけれども、この首輪がそれを強制する。
 然り。汝はコロセウムの剣奴であると。我に逆らう事など出来ぬと。
 
(ふざけるな!)
 
 あの一件によって爵位を落とされたとはいえ、自分は誇り高きブリタニアの軍人なのだ!
 それを、イレブンと混じって殺し合いだと? ふざけるにも程がある!
 ロージェノムと名乗った男を睨み据える。けれども、ジェレミアとロージェノムの視線は最後まで交わる事無く、世界は闇に包まれた。

「ぐぅっ……!? なんだ、これは!?」
 
 視界は不明瞭。ぐにゃりぐにゃり、と勢いよく拳を叩きつけた後の水面のように荒れ狂う。
 だが、それも長くは続かなかった。視界は徐々に明瞭となり――開けた。
 一瞬、その眩しさに瞳が眩んだ。

(着いたか。殺し合いの舞台に)

 その事実に、若干、心臓が萎縮する。
 いかにブリタニアの軍人とはいえ、単身で、それもナイトメアなしでどこまでやれるのか? その疑問が、彼の心に恐怖を刻み付ける。

(つ――だが、この程度で)

 この程度で怯んでいてはゼロ打倒など夢のまた夢! そう心に言い聞かせ、そっと、瞳を開き――
310「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:37:04 ID:WxPkRwrn
「……は?」

 ――お馬さんと目が合った。
 そう、それはメリーゴーランドの定番とも言える馬だ。リアルさと可愛さを両立しようとし、どちらも失敗したような珍妙な瞳が哀傷を漂わせ、こちらを覗きこんでいた。
 ……彼は、きっとその瞬間まで気付けなかっただろう。
 テレポートされた瞬間、彼は宙に浮いていた事に、
 テレポートされた場所が、テーマパーク内に設営されたメリーゴーランドの中であった事に、
 自分が万有引力の摂理に従い、落下していた事に、
 そして――お馬さんは、与えられていた仕事を忠実に遂行していた事に。
 ぐじゃり、と嫌な音がした。
 落下と回転する木馬。それらが紡ぎだす破壊の二重奏は、ジェレミアの顔面に収束した。

(なんたる不か――ぐ)

 すう、と意識が闇に包まれていく。
 ジェレミア・ゴットバルトはこの戦いにおいて、戦うわけでも知略に貶められたわけでもなく、木馬との正面衝突という形を以って意識を失った。


 顔面が酷い痛みを放っている。
 俺はこんなに酷い目にあってるのに、お前はなんでそんなところで寝てるんだこのヤロウ。そう、額に糾弾されてる気がした。

(なんて間抜けだ、私は)

 なぜだろう。オレンジなどという蔑称を払拭しようとすればするほど、自分は堕ちて行っている気がしてならない。
 瞳をカッ! と見開く。おそらく、眼前でその役目を忠実に果たしている木馬を睨みつけようとし、

「あ、気づかれましたか?」
311名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:38:07 ID:yk5q4EmX
 
312「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:38:10 ID:WxPkRwrn
 美女の瞳が飛び込んできた。
 薄いパープルの瞳に、肩にかかるくらいに伸びた艶やかなブロンドの髪。柔らかそうな耳たぶには、派手さのない金色のリング飾りがついたピアスが揺れている。
 身に纏っているのは――どこか、自分の知らない部隊の制服だろうか? 普通のOLとは違い、若干硬いイメージを漂わせる茶のスーツ。タイトスカートからは、黒のストッキングに包まれた細い脚が伸びている。
 そして、それらの上に白衣を一枚、羽織っていた。
 なんっ、と思わず起き上がろうとして、そっと掌で止められる。柔らかなそれが額にあたり、童貞ボウヤのように赤面してしまう。

「頭を打たれたみたいなので、今はあまり動かない方がいいです。施設内でよかったですね、具合を悪くしたお客さんを寝かせておく施設はあるみたいです」

 本当は病院で検査を受けた方がいいんですけど、状況が状況ですから、と女性は苦笑気味の笑いを漏らした。
 その一言で、彼はようやく、この女性も参加者なのだと気づいた。
 見れば、その細い首筋を遮る、不粋な金属のリングが、あるのが分かった。
 それを理解した瞬間、脳髄を赤熱の怒りが駆け抜けた。
 
「ふざけるなっ!」
 
 この女性、容姿を見るにブリタニア人であろう。それも、軍属などなさそうなか弱い女性だ。到底、容認できる事ではない。
 ぎり、と拳を握りしめる。瞳は烈火の炎で彩られ、唇は憤怒に歪んでいる。
 女性は、唐突な怒声に驚いたのか、こちらを覗きこんだままきょとんとしている。
 
「なぜ、なぜ貴女のような女性が殺しあわねばならないのだ!」
 
 ブリタニアの軍人がすべき事はなんだ?
 それは制圧、それは保護。他の領地を瞬く間に奪い去り、純血の民を保護する。それが、我らの役目ではないのか?
 
「……あの」
 
 おずおず、と。女性が声をかけてきた。
 なにか自分に不手際があっただろうか? そんな思考を抱いているのだろうか、若干、すまなそうに俯いている。
313名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:38:12 ID:1+doqiJ2
314「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:39:17 ID:WxPkRwrn
「すまないレディ、驚かせてしまったようだ。私はジェレミア・ゴットバルト。安心しなさい、ブリタニアの軍人だ」
「は、はあ」

 ――彼は知らない。
 彼女がブリタニアなどという国を知らぬ、その現実を。
 
「ええっと、私はシャマルっていいます。その……とあるところで医務官を勤めさせて頂いています」
 
 こんな服装ですし、分かるかもしれませんけどね、と言って小さく笑う。
 だが、彼はその笑いに追従する事無く、ぼう、とこちらに視線を向けていた。

「あの、もしかしてまだ頭が……」
「貴女は、言わないのですね。オレンジと」

 心配そうに問うシャマルと名乗った彼女に、そう問いかける。
 オレンジ。ゼロというテロリストによって着せられた汚名。
 ゼロ。黒の騎士団を率い、正義の味方を騙る忌まわしきイレブン。
 ……いや、実際は彼も正体を知らぬのだが、エリア11でブリタニアに歯向かう者なのだから、イレブンであると考えて間違いはあるまい。
 ともかく、曲りなりにもブリタニアに歯向かう者として、あの男の知名度は凄まじいモノとなっているのだ。
 ならば、その初陣を、ブリタニア軍から枢木スザクを奪い返した事件が広まらぬ道理もない。
 故に、彼はシャマルという女性も、かの『オレンジ』を知っているはずだと、そう思っていた。

「オレンジ……ですか? そんな気はありませんけど」

 故に、その言葉は彼にとって祝福のエールのようなものであった。
 ああ、そうか。私をまだ信じている民もいるのだ、と。
 
     ◆     ◆     ◆
315名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:40:08 ID:/Lg7nF1k
 
316「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:40:35 ID:WxPkRwrn
 ジェレミアが感動している最中、シャマルは首を捻っていた。

(オレンジ……ジェレミアさんの世界での蔑称、なのかしら)
 
 ほら、イエローモンキーとかそんな類の。
 ――今だからそのような間の抜けた事を考えているが、数時間ほど前の彼女は、ひどく混乱していた。
 公開意見陳述会の為の準備を進め、少し休もうか、と思い横になった――そして、目覚めたら殺し合えだ。急転直下にも程がある。
 いや、自分だけならまだよかったのだ。
 自分が作った穴も、きっと他の守護騎士たちが埋めてくれる。主、八神はやてを守ってくれる。そんな絶対の信頼が、彼女にはあった。
 けれど、参加者名簿に目を通し……後頭部を強打されるような衝撃が襲い掛かってきた。
 八神はやて……彼女たちに生きる意味を教えてくれた、絶対に守りたい主が、こんな世界に放り込まれているという現実。それが、彼女の心を乱したのだ。
 はやてちゃんが殺される。
 その仮定を思い浮べた瞬間、背骨そのものが氷と化したかのような寒気がした。 
 魔導師としては天才的な彼女だが、デバイスを取られれば一般的な女性でしかないのだ。そんな彼女が、生き残れるはずがない。
 ……もし冷静さを取り戻せなければ、彼女は外道に堕ちていたのかもしれない。
 十年前。『闇の書事件』と呼ばれるそれと全く同じ、いや、それよりなお人道に外れた行動を取ったかもしれなかったのだ。
 そう、支給された禍々しい武器を以って、誰かを刺し貫いていてかもしれなかった。
 けれども、

(精神を落ち着けるには、普段からやってる事をすればいい、って聞くから)
 
 殺し合いのステージで初めて出会った人間。それが、メリーゴーランドの木馬の足元で倒れている男性などという、今時コントでも見られない間抜けな姿だったのが救いであった。
 その効果は絶大で、自分が非常に殺伐とした世界に居る事を忘れ、「あ、とにかく手当てをしないと!」と、思い、実際にベッドに寝かしてしまったほどだ。
 実際、手を動かす事に集中すると意識は明瞭となり、今までの思考の恐ろしさに気づけた。
 そう、自分はまたあやまちを犯すところだった。

(感謝しなくちゃね)

 ネガティブの空を打ち砕いた遠い世界の軍人さんに、心の中だけで礼をする。
 それは正気を取り戻させてくれた事に対して、それと

(それに、あんな風に怒ってくれたこと)
 
 ゲームと言う名の殺し合い。それに、自分も参加させられたと言ったら、あの怒りようだ。
 それに――その、なんというか。あのように熱烈な言葉、八神はやての元に来てから一度も言われた事がない。
 貴女のような女性、のくだりで思わず赤面しそうになる。そんな言葉、はやてが中学時代に見ていたドラマくらいでしか聞いた事がないというのに。
317「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:41:46 ID:WxPkRwrn
「あっ、名簿は見ましたか? もしかしたら、知り合いの方がいるかも」
「その心配は無用です、ミスシャマル。私が救うのは、このような茶番に付き合わされたブリタニア人、全てですから」
 
 いや、けれど――と前置きをした彼は、ペンをデイバックから取り出し、なにやら名簿にチェックを入れだした。
 不思議に思い覗きこむが……なんてことはない、名簿に書かれた名前に、いくつかバツ印を記入していっているだけだ。
 そう、それが問題なのだ。

「……え?」

 ジェレミアがバツ印をつけた名前。そこには、見知った名が存在していた。
 同じ部隊に所属するフロントアタッカー、スバル・ナカジマ。
 そして、自分が絶対に守りたいと願う主、八神はやて。
 その名を、まるで否定するようにインクの刃が切り裂いている。

「あの、これは?」

 見れば、漢字で表記された名前には全てバツ印が書き込まれている。
 対し、他のカタカナで表記された名には一切手を加えられていない。
 いや、でも、スバルはカタカナだけで手が加えられている……?
 
「ああ、これですか」

 ぴらり、と名簿をこちらに向ける。
 そう、八神はやてを切り裂いたそれを。

「ブリタニア人と思われる人物と、薄汚いイレブンとを分けていたのです」

 分からない。シャマルには、彼がなにを言っているのか分からない。
 
「ブリタニア国民は聡明だ、すぐさまこのような行為の無意味さに気づくでしょう。だが、ヤツラは違う。浅慮で、愚昧で、やる事なす事、全てがブリタニアに劣るクズどもだ。
 そいつらがこのゲームに乗り、ブリタニア国民を殺すことなど、あってはならない。だから、」

 ジェレミアは先程と同じ、真摯な眼差しで言う。
 そう、それが当然だというように。
 そう、それが摂理だというように。
 そう、それが真理だというように!
 一瞬たりとも躊躇する事無く彼は、

「そうなる前に、イレブンどもを排除するのですよ」
 
 そう、言い切った。
318「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:42:52 ID:WxPkRwrn
「おっと、ミスシャマルが手を汚す事はない。その掌を、下賎な血で汚す必要などないのです」

(……下賎な、血?)

 ぎちり、と軋む音が聞こえた。
 それは、自分自身がパイプイスから立ち上がった音なのだが、彼女は認識していなかった。
 そっと、ジェレミアに寄り添う。その動作は、今から性交でも始めそうなほどに淫靡。ジェレミアは、予想外の行動に赤面し瞳を逸らしている。

(貴方の言うその下賎な血には、はやてちゃんも入っているの――?)

 そう、考えた瞬間の事だった。
 
「がッ!?」

 シャマルの腕は、ジェレミアの首を絞めつけていた。
 ぎりぎり、ぎりぎり、軋む音が響く。
 
「み――シャマ、なに、ぐ――」
「貴方が、貴方がはやてちゃんを殺すっていうなら」

 だが、身体能力に特化した騎士でないシャマルが、訓練された男を押さえつけておく事など不可能だ。
 衝撃。胸元に掌が叩きつけられ、短い放物線を描く。
 臀部を強かに打ちつけたシャマル。けれども、その瞳にあるモノは鈍らない。
 
「私が先に、貴方を殺すわ」

 ――そう、純粋な殺意がそこにはあった。
 
「げほっ……落ち着きたまえ、ミスシャマル。貴女は、このような現状に戸惑っているだけで――」
「うるさいわね」

 彼の言葉を叩き潰し、デイバックに手を突っ込む。
 そこから出現したのは、禍々しい赤を纏った長槍。その槍先が、ジェレミアに向けられる。

「くっ!」

 それに危険を感じたのだろう、ベッドから跳ね上がり、窓に――
319名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:43:25 ID:/Lg7nF1k
 
320「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:43:58 ID:WxPkRwrn
「刺し穿つ(ゲイ)――」

 朗々と、その名を告げる。
 魔力を消費する武具。最初はデバイスかと思ったが、真実は違うようだ。
 ギミックなど皆無だというのに、まるでバキュームのようにシャマルの魔力を吸い上げていくそれは、きっと別のなにかだ。
 だが、それが一体どんなモノなのか、シャマルに興味はなかった。
 先程までは、殺し合いに乗らぬと誓っていたから。
 そして今は、

「――死棘の槍!(ボルク!)」
 
 ――相手を殺せるのなら、どんなモノであろうと構わないと思ったから。
 彼女の手によって放たれた一撃。だが、それは酷くお粗末なものだ。
 それも然り。彼女の役目は後方支援。武器を持って戦うなど、本来の役目ではないのだ。
 故に、この攻撃は軽く避けられてしまうはずなのだ。事実、ジェレミアは既に回避動作に移っている。
 けれども、

「な――!?」

 それは、普通の槍であるという前提があって、初めて成立する仮定なのだ。
 そう、因果を逆転させる魔槍。放った時点で『既に心臓を貫いている』という因果を相手に与えるそれを、反射神経で避ける事は不可能。
 そんな化物めいた代物なのだが、担い手がシャマルである事、そして、この会場において能力をある程度制限されたその槍――ゲイボルクは、せいぜい『一度だけ心臓に近い向きに方向転換する』くらいの力しかない。
 だが、ベッドから床へ、という限られたルートしか選べなかったジェレミアには、その程度でも致命的だ。
 すう、と。音もなく左胸に槍先が飲み込まれていく。
 
「が――は、ぁ。ぐ、ぅ」

 ぼたぼた、ぼたぼた、傷口からは多量の血がこぼれ落ちている。
 唇からも、この声こそが血液なのだ、というように苦痛の声音が漏れている。
 それを遮るように、槍を横薙ぎに振るった。斬、と叩き切られた首から、多量の血液が吹き出す。
321「私にしか出来ないから」 ◆oRFbZD5WiQ :2007/09/23(日) 04:45:03 ID:WxPkRwrn
「……楽に、逝けたかしら?」
 
 苦しめるのは本意ではない。
 殺すにしても、出来る限り楽に死んでもらいたい。それが、機動六課の医療スタッフにしてヴォルケンリッターの湖の騎士が抱く願いであった。
 シャマルは血に染まった白衣を脱ぎ捨てると、物悲しげな表情で呟く。

「……はやてちゃん、ごめんなさい。私、また同じ過ちを犯します」

 けど、仕方がないじゃないか。
 あんな風に、なんの殺意もなく、なんの悪意もなく、ただ殺そうと思える人間がいるのだ。そんな人間が、彼一人だとは到底思えない。
 きっと、もっといるはず。普段は仲間と笑い合うような存在でも、殺す事をためらわない人間が。
 そんな人間からはやてを守るのは、自分しかいない。
 だって、ここには烈火の将はいない。
 鉄槌の騎士はいない。
 盾の守護獣は存在しないのだ。
 
「私にしか出来ないから」

 やり通さねばならない。
 
「六課メンバー以外、みんな――――」

 ……これまでのシャマルの思考には、一つ誤りがある。
 それは、ジェレミアとの出会いに『感謝』した事だ。
 もし、シャマルが彼と出会わねば――ああ、確かに殺人者の道を選んだかもしれない。
 だが、時の流れは人を冷静にさせる。固まった決意も、揺らぐ可能性もあったのだ。
 けれど、ジェレミアの言葉が呪いとなり、この心優しい湖の騎士の心を縛っている限り、
322名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:46:44 ID:yk5q4EmX
 
323名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:47:39 ID:FqvAQDSL
324名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:48:27 ID:yk5q4EmX
 
325名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 04:51:35 ID:FqvAQDSL
326「私にしか出来ないから」 ◇oRFbZD5WiQ:2007/09/23(日) 04:55:52 ID:yk5q4EmX
「みんな、殺すわ」

 殺人者の衣が脱げる可能性は、限りなく低い。
 
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】

【F-1/テーマパーク内の医務室/1日目/黎明】
【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:極度の疑心暗鬼 魔力消費 中
[装備]:ゲイボルク@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(その他、ランダム支給品が0〜2)
[思考・状況]
 1:八神はやてを守る
 2:六課メンバー以外、全て殺す
 3:けれど、なるべく苦しめたくない
[備考]
 *15〜16話からの参戦
 *宝具という名称を知りません
 *ジェレミアのバックの中身はまだ漁っていません。


[ゲイボルク@Fate/stay night]
 放った瞬間、既に心臓を貫いているという結果を相手に与える武器。
 けれど、たとえ制限無しだったとしても、運がよければ避けられる。
 現在は制限と使い手の技量のため、せいぜい心臓の方向に槍先をずらす、程度の能力。
 本来の使い手、または武具の扱いに慣れた者が使えばある程度マシになるかも。


 *テーマパーク内の医務室には、ジェレミアの死体と白衣が存在しています。
327「私にしか出来ないから」 ◇oRFbZD5WiQ:2007/09/23(日) 04:57:39 ID:yk5q4EmX
投下終了、あと、投下中に気づきましたが、

>>312
>この女性、容姿を見るにブリタニア人であろう。それも、軍属などなさそうなか弱い女性だ。到底、容認できる事ではない。
  ↓
>この女性、容姿を見るにブリタニア人であろう。それも、軍属経験などなさそうなか弱い女性だ。到底、容認できる事ではない。

です。
支援をしてくれた人、ありがとうございました。
328立つ鳥後を濁さず 1/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:00:08 ID:/xMHXwrb
その舞台に被験者達が放り込まれ、最悪の実験が開始されたと同時に彼女は目覚めた。

時刻はきっちりと――0時丁度。

睡眠から覚醒。それをON/OFFのスイッチを切り替えるように一足飛びにすると、
彼女はかけられていた布団を持ち上げ、上半身を起こす。
そして、彼女特有の神経質さでその異変に気付いた。

目の前に壁に開けた薄いガラスの窓。そこから暗い夜空に真丸なお月様が見える。
つまりはまだ夜だ。布団の脇に置かれた目覚まし時計を見れば、まだ0時過ぎ。
彼女の中のルールでは、就寝時間は夜8時から朝6時までと決まっている。
なので、彼女は再び身体を横たえ眠りの中に入ろうとして――気付いた。

「私、制服のまま寝ているじゃない!?」

今の彼女の身を包んでいるのは、彼女が通う学校の指定制服であるセーラー服。
こんなものを着たまま寝ていてはシワになってしまう。
それでなくとも、寝る時にきっちりと寝巻きを着ていないのは許せない。
そして、布団を跳ね除け改めて身を起こした時――やっと、彼女は気がついた。

「……ここはどこかしら?」

自身の中のルールには抵触するが、知らない場所で眠り続けるというのも気持ちが悪い。
木津千里は布団の上に立ち上がると部屋の中を見渡した。
どうやら、古いアパートの一室らしいと分かる。まったく知らない場所だ。

「さっきのは夢じゃなかった……の?」

白く細い指先が自身の首へとのびる。
そこには先刻、螺旋王と名乗る人物から説明をうけた首輪がきっちりと嵌っていた。
つまりは……夢ではなかった。


にわかに青褪める彼女の名前は木津千里。
人よりも、はっきりしないことが苦手なだけの、少し神経質で几帳面な女の子だ。
329名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 07:00:37 ID:/Lg7nF1k
 
330立つ鳥後を濁さず 2/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:01:13 ID:/xMHXwrb
 ◆ ◆ ◆

木津千里が目覚めてより1時間。つまりは丁度午前1時。
その時、彼女は目覚めた部屋の掃除をしていた。……その汚さが我慢ならなかったからだ。

床に散らばっていたゴミともそうとも解らぬ物を片っ端からゴミ袋に放り込み、
本棚の中に乱暴に詰め込まれたコミックスを巻数を揃えて並べなおすと、
今度は壁に貼られたポスターをきっちりと角度を調整して貼りなおし、
続いて布団とテーブルを仕舞おうとした所で、押入れの中に乱雑に物が詰め込まれているのを発見し、
そこから押入れの中の整理整頓に発展。
彼女の額に汗が浮かぶ頃にやっとそれは終わり、さぁ雑巾掛けをしようという所でキッチンの惨状に気付く。

ここまでに丁度1時間。
しかし、まだ彼女の孤独な戦いは終わらない。

食べたままに食器が放り込まれ、浮かんだ油が固まっているシンクを丁寧に洗い。
そこで改めて溜まっていた食器を洗浄する。
さらに、紙パックやビニール、発泡トレイも綺麗にした上で、リサイクルに出せるよう分別する。
さらにさらに、油落としを使ってコンロの周りの掃除に取り掛かり、
長年放ったらかしになったままで真っ黒な換気扇の油汚れもきっちりと落とす。
食器棚も冷蔵庫の中も綺麗に整頓し終わる頃には、よい汗が流れていた。
ピカピカのキッチンに満足すると、雑巾を片手に床磨きへと戻る。

この時点で彼女は、自分の置かれている状況を半ば忘れていた。
しかし、まだまだ彼女の孤独な戦いは続く……。

長らく陽に当たっていなかった白い畳を丁寧に磨き上げると、
ついでにばかりと窓枠にも手をかけ、窓掃除を始める。
椅子の上にのって埃を被って灰色だった電灯も真っ白に磨き上げ、次は洗面所へと向かった。
汚れがこびり付き、いやな色のクラデーションを見せていた洗面台を時間をかけて磨き、
毛先の広がったハブラシをゴミ袋に放り込み、仕舞われたままの真新しい石鹸を卸す。
一緒に取り出した新品のハブラシを拝借して、朝の歯みがきを済ませると次はバスルームへと向かった。
濡れないように脱いだ制服と下着を籠の中に放り込むと、生まれたままの姿でユニットバスの中に入り
角に転がっていたブラシを取って、便器から磨き始める。

彼女の長く続いた孤独な戦いが終わったのは、目覚めてより3時間。つまりは丁度午前3時のことだった。
331立つ鳥後を濁さず 3/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:02:19 ID:/xMHXwrb
 ◆ ◆ ◆

シャワーの暖かいお湯で、汗と埃を流し終えると木津千里はバスルームの扉を潜り、
あらかじめ用意しておいた真っ白なバスタオルで、身体の上を滑り落ちる水滴を拭き取る。
彼女が後にしたバスルームは、まるで施工された直後のように綺麗で、残った水滴がキラキラと光を跳ね返していた。

身体をきっちりと拭き終わると、先程磨き上げたばかりで曇りのない鏡の前に立ち髪を乾かし始めた。
彼女はそのことをほとんど口外しないが、本当はすごい天然パーマで普段の美しい黒髪ストレートは
毎朝の努力の賜物なのである。そして、彼女はその努力をここでも繰り返した。

きっちりと伸ばしきった黒髪を、最後にこれも綺麗にセンター分けに整えると
彼女は脱いでおいた下着と制服に改めて身体を通し、自分が起きた場所へと戻った。

……もう4時だった。そう、部屋の片隅に収まっている目覚まし時計が訴えていた。


 ◆ ◆ ◆


そして、ようやく彼女はゲームのスタートラインへと辿り着いた。

蛍光灯の白い光の下、黒いデイバックの前にきっちりとした正座の姿勢で座り、彼女は考える。
互いに殺し合わせ、生き残る者を探し出す実験……そう聞いたときっちり記憶している。
その記憶の鮮明さが、改めてあれが夢ではなかったことを確信させた。

どうしたものか? ……とりあえずは目の前のバックを改めてみる。
開いた口の中に手を差し込んで一番最初に出てきたのは、地図とコンパスだ。
物事は何でも一つ一つきっちりと……。木津千里は窓際により、目立った建物がないか探してみる。
ボロアパートの2階の角部屋1ルーム。トイレバス付き家賃は不明。唯一の窓は南向き。
そこから見えたのは高速道路と、その先に月光を跳ね返す静かな海面。
そして、目を凝らせば南東の方に観覧車としか言いようのない円形のシルエット。
それらを総合して考えるに、自分のいる場所は地図上でA-1とされる所だと彼女は判断する。
……A-1。Aの1。最初のアルファベットと最初の数字。少なくとも彼女のストレスになるものではなかった。

次に出てきたのは複数の色違いのペンと、分厚いメモ帳だ。
とりあえずは試し書きにとメモ帳の表紙に自分の名前を書き込み、
きっちり所有権の表明とペンが使用できることの確認を併せて済ます。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 07:02:44 ID:/Lg7nF1k
 
333立つ鳥後を濁さず 4/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:03:25 ID:/xMHXwrb
その次に取り出されたのは、一つの時計だった。
飾り気のない簡素なデザインで、デジタル表示にて時刻を表している。
体内時計はきっちりしているが、時間がきっちりと表されることはよいこと。
木津千里はそれを左の手首に巻いた。

そして、さらに取り出されたのはランタンと、大きなカレーの缶詰に水の入ったペットボトル。
畳の上に並べると非常用品のように見える。
ランタンは液体燃料を内蔵するタイプで、火力つまみとシャッターで明かりを調整できた。
カレーの缶詰は業務用だろうか、1つの缶詰で1キログラムもあり、それが3つ入っていた。
幸いにことにプルトップ式で、缶切りは必要としない。
しかし、カレーのルーばかりでライスがないというのはバランスが悪く、きっちりしてるとは言えない。
炊かれたお米が必要だがこの部屋にないことは、今現在この部屋を一番知る彼女には解っている。
どこかでお米を調達しないといけない。そう考えると彼女はペットボトルを手に取った。
これも大きい。カレー缶の倍、1本2リットルのペットボトルが3本入っていた。
はっきりはしているが、どうにも味気ない。籠の中の実験動物にはこれが適当という判断だろうか?
いずれは栄養バランスもきっちりしないといけない。そう考えて、木津千里は再びバックに手を伸ばした。

次に取り出されたのは、ある意味最も重要な支給品――名簿だった。
一枚の紙の上に並べられた名前の羅列。その上に木津千里は目を走らせる。
そして、最後まで目を通して彼女は感嘆した。
……きっちり、あいうえお順で名前が並んでいる。あのおじさんとは気が合うかもしれない。
そしてもう一つ気付いたのは、名簿の中に知っている名前があること。
「糸色望」と「風浦可符香」の二人。
風浦可符香の方がペンネームであったことが気に掛かったが、他にもとても本名とは思えない名前が
多数並んでいたので、おそらくはそういうものだと判断した。
そもそも自分も彼女のことを本名で呼ぶことは滅多にない。

――ともかく、少し驚き、また他の誰もがいないことに少し安堵した。
生と死――危機的状況――吊橋効果――既成事実――願ってもない好機かも知れない。
風浦可符香さえうまく排除できれば、遂に糸色望との関係をきっちりしたものにできる。
しかし生き残れるのは一人だけ、そうだったと思い出す。
最後の二人……ではなく、最後の一人ときっちりと決まっているのだ。
これには彼女も困った。そして、この実験の趣旨が殺し合いであることを意識する。

どちらが生き残るか?
それを脳内の天秤で量りながら、最後の支給品を取りにバックへと手を伸ばす。
最後に出てきた物。生き残るために必要な武器。それは――、
334名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 07:04:54 ID:XsCXIUyK
 
335立つ鳥後を濁さず 5/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:04:56 ID:/xMHXwrb
「……ムラサーミャ? ……コチーテ?」

――二振りの日本刀だった。くっついていたメモにはその名前――ムラサーミャ、コチーテが書かれている。
日本刀につけるには珍妙な名前に木津千里はいぶかしむが、すぐに気付くとペンを取り出した。
そして、メモに書かれていた名前の上に二本の線を引き、「村雨」「虎徹」と訂正した。
物事がきっちりしたことに少しうっとりすると、彼女は鞘から刀身を抜き出し――、

「これはよく斬れそうね……」

――と、またうっとりした。

何故、女子高生である彼女が刀を見ただけでその切れ味を判断できるのか、それは誰にもわからない。
何故、下着の中にアサシンナイフを仕込んでいたりするのか?
何故、人を殺める事に厭いがないのか?
何故、革命や粛清、戦争やゲリラ戦という言葉に明るいのか?
それは誰にもわからない――わかりたくもない――わかってはいけない。


 ◆ ◆ ◆


チンという音を立てて刀を鞘に収めると、それを畳の上に置き他の支給品と合わせて見てみる。
と、そこで彼女のきっちりレーダーが反応した。
「……? おかしいわね?」
明らかに取り出した物の容量がバックの容量を超過している。
特に二本の刀の長さが明らかにバックの全長を超えていた。
どうにもおかしいが、入っていた事は事実。とりあえずは再び支給品をバックに戻してみる。
「………………」
普通に入ってしまった。明らかにオーバーしているはずなのに綺麗に入ってしまった。
「………………」
また取り出す。そして入れなおす。
「………………」
意を決してバックの中を覗き込んでみる。
「………………エッシャー?」

バックの中には綺麗に整頓されて支給品が並んでいる……が、何かがおかしい。
目には不自然に映らないが、物のスケールがおかしいと脳内の理屈が訴えている。
まるで騙し絵のようなそれに木津千里の頭がグラグラと揺れ始めた。

バックの中に大きさを無視して物が入る事は理解した。
しかしそれが気持ち悪く、彼女には我慢ならない。
入るのか入らないのか。入るけど入らないのか。入らないけど入るのか……。


そろそろ白け始めてきた広い空に、
「うな――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!」
という奇声が鳴り渡り、電線の上で休む鳥たちを一斉に追い払った。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 07:05:10 ID:/Lg7nF1k
 
337立つ鳥後を濁さず 6/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:06:05 ID:/xMHXwrb
 ◆ ◆ ◆

東の向こう、山の尾根からのぞく朝日に向かって木津千里は道を真っ直ぐに歩いていた。
広いおでこで光を跳ね返す彼女の腰の左右には二本の刀が佩かれている。
西部のガンマンが使うガンホルダー、その刀版とも言える物が刀と一緒にあったのだ。

そして、彼女の背負っているのは支給されたデイバックではない。
あれは彼女がこのゲームが始まって一番最初に斬ったものとなった。
その成れの果ては彼女が左右の手に握るゴミ袋の中。

ゴミ捨て場に着くとそこに黒いゴミ袋を捨て、再び東へと真っ直ぐに進む。

「……全部、きっちりすればいいのよ」

それが四角い目をした彼女の、この実験に対する結論だった。
曖昧なものをはっきりさせ、きっちりとした結論を出す。
誰だってそうする。だから、私もそうするのだ……。

二本の刀が彼女の歩みに合わせてきっちり規則正しく揺れる。
まずはきっちりと実験場を踏破するため、彼女はA-1からA-8に向けて進む。

人と出会えば――「きっちり」――する。

そして、最後まできっちりできればあの王様に「正しい世界」を作ってもらおう。



きっちりきっちりと歩みを重ねる彼女の名前は木津千里。
人よりも、はっきりしないことが苦手なだけの、少し神経質で几帳面な女の子だ。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 07:06:44 ID:XsCXIUyK
 
339立つ鳥後を濁さず 7/7  ◆AZWNjKqIBQ :2007/09/23(日) 07:07:15 ID:/xMHXwrb
 【A-1/市街地/1日目-早朝】

 【木津千里@さよなら絶望先生】
 [状態]:健康
 [装備]:ムラサーミャ&コチーテ@BACCANO バッカーノ!
 [道具]:普通のデイバッグ、支給品一式(食料-[1kg.のカレー、3缶][2リットルの水、3本])
 [思考]:
  基本:きっちりと実験(バトルロワイアル)を終了させる。
  1.きっちりと端から端まで舞台を捜索する。
  2.糸色望先生と出会ったら、彼との関係もきっちりとする。
  3.食事(カレー)をする前に、どこかでお米を調達したい。


 ※支給品について

 【ムラサャーミャ&コチーテ@BACCANO バッカーノ!】

 ガンドールの用心棒マリアが愛用する二振りの日本刀。
 名前の由来は村雨と虎徹だが、村雨は実在する刀ではないので
 おそらくはマリアが勝手に名づけたものだと思われる。
340鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o :2007/09/23(日) 08:17:13 ID:XsCXIUyK

(怖い)

ティアナは転送された街灯の明かりから外れた路地裏で膝を抱え座り込み、心の奥底から込みあがってくる恐怖に震えていた
ロージェノムに食って掛かったあの時の男の攻撃。あれは以前資料映像で見た自分たちの教官、高町なのはのスターライトブレイカーさえ超える破壊力はあっただろう
だというのに、(バリアがあったとはいえ)攻撃を受けた当のロージェノムはまるでそよ風でも受けたかのように平然としていたのだ
しかも襲ってきた男を一撃で倒すほどの圧倒的な力の差。戦闘機人三人と戦い殺されそうになったときでさえ、ここまで絶望的な気持ちではなかった
そもそも、このゲームの参加者の中にもあのランスと呼ばれていた男ほどのとんでもない戦闘力を持った者が複数居る可能性も充分にある
その震える手にしっかりと握られているのは支給品のオートマチック銃、コルトガバメント
実弾のずっしりとした重さが、それ以上の重圧に怯える心に更に重くのしかかり、そのまま押しつぶされそうになる
だが、諦めるわけにはいかない。生きて執務官になる夢をかなえるためにも

「そうだよね、スバル」

自分を勇気付けようと友の顔を思い出し、手に握った銃に力を込める。それだけで手の震えは多少収まった
真っ白な月光を地上に降り注がせる満月を見上げ、まずは機動六課の面々と合流しようと立ち上がろうとし

「――!!」

その時、背後から足音が聞こえた。足音はティアナのほうに向けてどんどん近寄ってきている
明らかにこちらに自分が居ることに気づいた誰かがこちらへ向かい駆け寄ってきているのだ

(もしゲームに乗った人間なら、こんなところに座ってたらいいマトだ、隠れなきゃ)

そう思い座り込んでいた状態から立ち上がりバッグを抱えあげ、ビルの曲がり角の向こうへ駆け抜けると息を潜めて隠れる
近づいてくる誰かが殺し合いに乗っていたときに備え手早く銃のセーフティを外しスライドを引く
緊張に息が詰まり、嫌な汗がじっとりと銃のグリップに纏わりつき、思わず指が白むほどに力が篭る
鼓動は早まり、一瞬が永遠にも長く感じられ、渇いた喉へ無意識のうちに唾液が飲み込まれる

(大丈夫、大丈夫……だから)

心を落ち着かせようと自分に言い聞かせながら、飛び出すタイミングを見計らい
そして

(今だ!)

足音がすぐ近くまで来たときに、路地から飛び出し銃を突きつけ

「止まりなさ」
「ティアナさんっ!!」

その誰かを牽制しようとしたティアナの耳に響く聞き慣れた声
次の瞬間、ティアナは体が突き飛ばされるような衝撃を感じた
同時に、銃を持った右腕が跳ね上がるような反動と、闇夜のビル街に反響し長く響く銃声
地面に尻餅をつきながら、その魔力弾とは違う初めて撃つ実弾の銃の衝撃に思わず目が閉じられたのは、まばたきほどの一瞬

「……え?」

そして再び開いた目に映る、街灯の明かりの中で背後へ血の花を咲かせながら、ゆっくりと仰向けに倒れる桃色の髪の少女の姿

「キャロ…?」

少女――キャロ・ル・ルシエの胸には一点の黒い穴が穿たれ、そこからは少し遅れて鮮血が溢れ出しはじめた
その小さな体は、一度小さく地面を跳ねた後、枯れ葉でも落ちるような軽い音を立てて地面へ倒れ落ちた

「キャロ、しっかりして、キャロっ!!」
341名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 08:18:13 ID:muf4fJNA
   
342鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o :2007/09/23(日) 08:18:32 ID:XsCXIUyK

ティアナは這うようにキャロに近寄ると、血に塗れるのも構わずその体を抱き上げる
背中から鮮血を溢れさせるキャロの口が小さく開き、血を吐きながら何かを呟くが、それは言葉としては意味をなさないほど小さく
ティアナの耳には、それがまるで自身への呪詛を呟いたように聞こえた

「違うの!私、撃つつもりなんかじゃ、撃つ…っ!!」

涙ながらに言い訳するティアナの腕の中から、ずるり、と血でぬめったキャロの体が滑り落ちて

「あ……」

目に映った、血で真っ赤に染まった両の腕が

「違う」

その手に硬く握られたままだった銃が

「私」

銃口から立ち上る硝煙の残滓が

「私じゃ…」

最後に、血だまりに落ちて末期の痙攣をするだけになったキャロの体が

「私、が…?」

自分がこの幼い同僚を撃ったのだと、そうティアナの心に告げた
ティアナの顔が恐怖と絶望に凍りつく

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

髪を振り乱し絶叫を上げながら、ティアナは一心不乱に駆け出し、あっと言う間に入り組んだ路地裏へ消えていく
後には、キャロの死体と、二つのデイバックだけが残っているだけ
――それだけのはずだった



「あらあらざぁんねん、一人逃げちゃいました」

レミントンM700の暗視用スコープから目を離し、照準を覗き込むため額にずらしていた眼鏡をかけなおして、クアットロは腹ばいの体勢から立ち上がった
ここは二人が居た場所を見下ろす場所にあるビルの屋上
そうティアナはキャロを撃ってはいない。本当はこのクアットロがティアナを殺すつもりで狙撃したのである
だがその時に、どうやってかは知らないがその意図に気づいたらしいキャロが飛び出してきて、ティアナへの狙撃は失敗してしまったのだ
しかもボルトアクション式のこの銃に二発目を装填しようとまごついて居る間に、ティアナは逃げ出してしまっていた

「やっぱりこういう直接的な肉体労働は私には似合わいませんわねぇ」

肩をすくめて体についた土ぼこりを鬱陶しそうに払い、デイバックの中にライフルを押し込む
結果としては幸運にも一人を撃ち殺すことに成功したわけだが、それは本当に幸運以上の何者でもない
だが
343名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 08:20:45 ID:muf4fJNA
    
344鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o :2007/09/23(日) 08:20:47 ID:XsCXIUyK

「逃げていくときのあの子の顔……うふふ、これはこれで面白いことになるかもしれませんわぁ」

街灯に照らされ、遠目でも判るほどに恐怖がべっとりと塗りたくられたティアナの顔、ビル街に響き渡った怯える声を思い出し、クアットロは、くっと小さく笑った
あの怖がり方はただ狙われたというだけではない、恐らく自分が撃ってしまったとでも勘違いしたのだろう
血に塗れ恐慌に震えた、あんな状態で他人に会えばどうなるか。想像しただけでも愉快な気分になってくる
出来ることなら追いかけてその顛末を見てしまいたかったが、今から追いかけたところで間に合いはしないだろう
しかも誰かが先ほどの銃声に気づいてこちらに向かってくる可能性もある。ならば面倒ごとを避けるためにも――もしくはその近づいてくる誰かに取り入るためにも――何時までもここに留まっているわけには行かない
そう判断するとクアットロは浮遊しながら屋上から飛び降り、キャロの死体に近づいていく

「貴女も馬鹿ですよねぇ。仲間なんて見捨てていればもうちょっとだけ長生きできたのに」

すでに冷たくなり始めた少女の傍らに置かれた二つのデイバックから支給品を頂戴しながら、愉快そうに笑い呟いた
そう、この少女のように、殺しあえと言ったところで下らない良心を振りかざす人間は出てくる
そんな自称「善良な人間」達の中に紛れ込み、「仲間」の数が多くなったところで、でたらめや誇張で疑心暗鬼を煽っていく
いざとなれば自身のIS(インヒューレントスキル)『シルバーケープ』でそれらしい幻影を見せてでも
最後には膨らんだ疑心暗鬼で「善良な人間」達は殺しあうだろう。そう想像するだけで心が騒ぎだす
その末に自分が生き残った暁には自分たちやドクターの理想の世界を創造してみろとふっかけてみるのもいいだろう
もしくはそれほどの力があるならば、いっそ利用してやるのも面白いかもしれない

「感謝しますわぁ、螺旋王ロージェノム。こーんなに、皆さんを躍らせがいのある舞台に私を招いて頂いて」

そうクアットロは夢想し半月状の笑みを浮かべながら、手ごろな獲物を探すべく闇夜の中を歩き去っていった




転送され、仲間たちの姿を探していたキャロが、ティアナが狙撃されようとしているのを発見できたのは本当に偶然でしかなかった
深夜の町を駆けて、街灯の横に隠れるように座るティアナの姿を見つけたキャロは嬉しさの余りそこへ駆け寄ろうとした
だがその時、月明かりに照らされたガラス質の何かの輝きと、それを身につけた人影が目に映った。一瞬の思考の後、そこに誰かが居て路地裏に隠れたティアナを狙っていると気づき
躊躇うよりも先に体は動き、ティアナを突き飛ばした次の瞬間、胸から背中へ衝撃が貫くのをキャロは感じた
仰向けに倒れこみ、暫く遅れて焼き尽くすような激痛が全身を走り、すぐに消えて行く
胸から、背中から溢れ出して行く真っ赤な鮮血を見て、もう自分は助からないと、そう心が告げていた

(ティアナ、さんは……)

ならばせめて、ティアナだけでも、と最後に地面を掴み立ち上がろうとするが、もう腕に力は入らない
だが倒れ付した自分をティアナらしき人影が自分を抱き起こすのを感じる

(よかっ、た……ティアナ……さん……無事……だった……)

そう呟こうとした唇からは言葉の代わりに鮮血が溢れ出す
血がどんどん失われ、目がはっきり見えない。ティアナが何か言っているが、耳もすでに聞こえない

(にげ、て)

そんな状況になっても、キャロはティアナが撃たれないことだけを祈る
その思いが通じたのか、ティアナであろう人影は自分を放って駆け出していくのを感じた

(にげて、くれた……)

安堵の中、末期の血が口から吐き出される
意識もどんどん遠くなり、視界が真っ黒に染まっていく
345名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 08:22:36 ID:VQ1CyXO1

346鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o :2007/09/23(日) 08:22:47 ID:XsCXIUyK

(フリード……ヴォルテール……ご……めん)

薄れ行く意識の中、大事なパートナーへ、生きて帰れないことを謝り

(はやてさん……シャマル先生……スバルさん……ティアナさん……エリオくん……みん……生……き……)

このゲームに放り込まれた仲間達への思いを胸に、心優しい少女はそのまま永遠に覚めない眠りへ落ちていった


【C-5/映画館近くの路地裏/1日目/深夜】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:恐慌、混乱、血まみれ
[装備]:コルトガバメント、残弾6発
[道具]:なし
[思考]:1.キャロを殺してしまった。それだけで他のことを考える余裕はない
※参戦時期はゆりかご事件で戦闘機人三人と戦って以降のどこかです
※一応西に走り出しましたが、混乱のためでたらめに走っているので、どこにたどり着くかはわかりません


【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM700残弾4発、暗視用スコープ
[道具]:支給品一式、不明支給品×1〜3
[思考]:1.勝ち残り、ドクターの元へ生きて帰る
    2.善良な人間の中に紛れ込み、扇動してお互いを殺し合わせる
    3.出来る限り自分は肉体労働しない
    4.手頃な善人や利用し易い人間を探すために南下、D-5へ
※呼ばれた時期は不明、他の書き手にお任せします
※キャロ殺害の真犯人です

【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】

347名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 08:23:47 ID:muf4fJNA
  
348 ◆t2vl.cEw/o :2007/09/23(日) 08:27:59 ID:XsCXIUyK
投下完了しました、支援ありがとうございました
349名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:28:07 ID:uv95H+Gt
350名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:33:43 ID:muf4fJNA
  
351 ◆AaR9queMcU :2007/09/23(日) 09:34:15 ID:dpbJCYAn
薄暗い映画館、白いスクリーンの目の前。
最前列のシートに座る黒服の男、ニコラス・D・ウルフウッドは天井をみつめていた。

「わい、まだ死んでへんのか」
ウルフウッドは死んだはずだった。
師であるチャペル・ザ・エバーグリーンの銃弾に倒れ、教会で事切れたはずだった。
なのにあの時広間に居た。
みょうちきりんなカッコした奴が首を吹っ飛ばされたあの広間に
夢か、そんな訳あるかい。
じゃあなんでわいはここに居るんや。
ウルフウッドはそこで思い出す。
あのロージェノムいうジジイ・・・・・ラセンなんちゃらを集めとるとか言うとった。
もしかしたらその何某ゆうのを参加者全員がもっとってそこに集められたっちゅうことか・・・・・・

まあ、そんなわけの解らんことはどうでもええわ。確証もない、推論や。
それよりも。

─お前たちは今から全員で、最後の一人になるまで殺し合うこと。
そうや、あのタコジジイそんなこともほざいとったな。

「殺し合いか・・・・・・こんな胸糞悪い地獄からワイは抜け出せれんちゅうことかいな、神さんよ。」
彼はとある暗殺者集団の一員、こんな状況になど腐るほど経験し、切り抜けてきた。
そんな自分がこの殺し合いのゲームに参加させられた、というのは分かる。
だが、そうではない人間もあの広間にはいた。女子供、問わずだ。

「殺し合いさせるんやったら、レガートやらナイヴズやら呼んだったらええやん、手ぇ叩いて喜んで参加してくれるで、ほんま」
デイバッグの中に入っていた名簿に目を通しながら呟くと
ある男の名前をウルフウッドは見つけた。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:34:19 ID:XsCXIUyK
 
353名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:34:44 ID:uv95H+Gt
354名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:35:12 ID:muf4fJNA
   
355 ◆AaR9queMcU :2007/09/23(日) 09:35:46 ID:dpbJCYAn

─ヴァッシュ・ザ・スタンピード

世間からは人類初の局地災害指定を受けるほどの超危険人物といわれているガンマンであり、
その実は馬鹿がつくぐらいのお人好しで、ドがつくほどの平和主義者。
一度決意したことは迷うことはあれ決して曲げないかなりの頑固者でもある。

「トンガリ・・・お前は他のもんのために駆けずり回るんやろな」
体に幾つもの『代償』をつけながら、心に幾多の傷を負いながら。
どんなクズのような悪党でも、すぐそこまで来た死を迎える者にまで
必ずその手を差し伸べる、傷だらけのその手で。

じゃあわいはは何をつかむんや?
この血塗れに汚れたこの手で。
幾つもの銃を握ったこの手で。
幾つもの命を絶ったこの手で。

ウルフウッドはは支給品であるヴァッシュの銃を握っていた。

「殺れいうんか、これで殺し続けろいうんか。
 他の奴らを皆殺しにして醜う生きていけいうんか、この手をまだ血で汚せいうんか。」

なあ神さんよ、そうせなわいは生きていけんのか。
356 ◆AaR9queMcU :2007/09/23(日) 09:37:02 ID:dpbJCYAn



なんでもかんでも、あっさり見限ってる。
心が悲鳴をあげてるくせに無理矢理鬼になってる・・・・・・そんな風に見えるぜ・・・・・・


そんなことをふと思い出した。
あのアホウにわいを撃たせようとしたときや。
何でいまさらこんなこと思いだすんねやろ、アホか。

人間は、変われるもんと違う。
引き剥がそうとすればするほど骨身を剥ぎ取っていくねん。
奇麗事なんか入ってくる隙間はあらへん。
外道は死ぬまでド外道や。

せやからここにおんねんな。
抜け出しとうても抜け出せれん地獄いう舞台や。
けどな、いつかは終わらせなあかん。

「せやったら・・・・・・幕引いたろうやないか、大根役者・・・・・・」
そう一言口にすると彼は出口へと向かった。




【C-5/1日目/深夜】

【ニコラス・D・ウルフウッド @トライガン】
[状態]:健康
[装備]:ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃@トライガン 弾数×六発
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x1
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:自分の手でゲームを終わらせる
2:敵には容赦しない


[備考]
※参戦時期は教会での死亡直前あたりから参戦
※どうすべきか少し迷っている所もあります







357名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:37:23 ID:XsCXIUyK
 
358 ◆AaR9queMcU :2007/09/23(日) 09:39:08 ID:dpbJCYAn
投下終了しました。
支援ありがとうございました。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 09:39:44 ID:uv95H+Gt
360:2007/09/23(日) 10:25:53 ID:cgN8VSDX
なのはから3人出す意味ねぇじゃん
361破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:35:38 ID:PCyUROIO
見渡せば、そこには広大な水面が一面に広がっていた。
さらにその向こうには何の意図があってそのようなデザインで建てられたのかよくわからない、球状の屋根をした建物も確認できる。
一体、あの妙な形状にすることで何の利便性があるというのだろう。
額に痛々しい十字傷の痕を負った……その特徴から軍部により<傷の男>、すなわちスカーと呼ばれる男はそう思わざるを得なかった。
今は長袖のコートを着ているため判断しにくいが並大抵の相手四、五人ほどならばその身一つで一瞬にして沈黙させてしまうだろうことを想起させるほどにひきしまった身体。
褐色の肌に、目には彼の民族独特の遺伝による赤い瞳を隠すためのサングラス。
そんな彼が夜中の、コンクリートで舗装された海沿いの道に立っているというこの光景はどことなく昔のハードボイルド系の映画を連想させる。
もっとも、今彼が考えていることはハードボイルドとは程遠いのだが。

(そもそもあのように綺麗に描かれた曲線を作ることなど、現在の技術で可能なのか?)

いくら世界が広いとはいえ、もっとも技術の進んでいると言われているアメストリスの中央でさえあのような形の建物は見たことが無い。
……いや、そんな建物のことはどうでもいい。
頭を何度もよぎるその手の疑問を取り払うため、スカーは一度大きくかぶりを振った。
たとえどんなわけのわからない構造をしていようと、とにかく今目の前にある以上はそれを作る技術が存在して、かつ設計者の趣味が悪いのだろうという一言でとりあえずは自分の中では解決できるからだ。

だが……そんな簡単な言葉では解決できないのが、その建物の手前、自分の眼前に広がるこの巨大な湖だ。
一応元いた国でも湖という概念そのものは存在したし、地下を通る水脈があるということも知っている。
なにせマンホールから入って何度も利用させてもらった通路だ。あの臭気と暗闇は今でも覚えている。
だが、ここまで大きな湖というのはまったくもって見たことも聞いたこともない。

(……いや、待て。これはもしかすると、『海』というものではないか?)

ふと思い出す。
そういえばかつて故郷イシュヴァールがまだ比較的平和だった幼少時、兄が話してくれた記憶がある。
イシュヴァールはほとんど草木の生えぬ砂漠の地。
法も中央などと比べればとても整備されているとは言い難く、歴史的に昔から内部での小競り合いが絶えたことはない……数年前の、あの忌まわしき事件が起きるまでは。
そのため生き残るためには各々が武装していくしかなく、年月と共にその慣習が積み重なっていった結果、自分を含めたイシュヴァールの武僧は強者揃いとして大陸中にその名を馳せた。
そんな中、武僧にもならずずっと部屋に引きこもって錬金術を研究していた男が自分の兄だった。
あまり鍛えないために他の男どもよりもかなりひ弱で、そんな兄のことを密かに腰抜けと馬鹿にする者もいたが、その代わりに彼は誰よりも博識な人だった。
ある日そんな兄が子供だった自分に、『海』という、ここから遠く遠く離れた場所に巨大な湖のようなものがあると教えてくれたのだ。
その大きさは今お前がなんとなく想像しているそれよりもはるかに桁違いで、全ての生き物はそこから生まれてきたのだと兄は語った。
ついでに、もしもいつか世界を巡る時が来るならば一度見たほうがいい、とも。
……かといって、兄自身がその海を実際に見たことがあるかといえばそれはないのだろうが。
362破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:37:03 ID:PCyUROIO
ともあれ、これがその海というものであるならば、今は亡き兄の言葉を一つ果たせたことになる。
あの時はいくら海というものの壮大さを克明に語られたところで、現物を見る機会がすぐ側にないためろくに想像すらしなかったのだが、たしかにこれは大きい。
果たしてこの海がどこまで広がっているのか、皆目見当もつかないほどに。
状況がもう少しまともであればしばしその感動の余韻に浸っていたかもしれない。

……だが、今はそうもいかない。
ここでようやくスカーは海から目を離し、地図上でいうところの中央へ向かうために足を踏み出す。
何にせよ、ここは殺し合いの場なのだ。今までとはわけが違う。
元々追われる身であった以上、さして状況はここに来たところで変わっていないと、端から見ればそう言う輩もいるかもしれない。
たしかに人を殺すという行為そのものは変わらないが、その対象が少し変わってくる。
ここに来るまでに殺していたのは、あくまで国家錬金術師とあとは自分の邪魔をしてくる者だけなのだ。
邪魔さえしなければ……路地裏で休んでいるところに紛れ込んできたキメラという例外はあるものの……無関係の者にまで手を出すことはなかった
つまり人を殺すか殺さないか……傲慢な言い方であることは自覚しているが、まだ生殺与奪の余地が残されていたと言っていい。
しかしながら、この現状ではそうもいきそうにないということをスカーは十分に理解していた。
今のところこの場から脱出する方法は、殺すにしろそうでないにしろあの螺旋王と名乗る男と再び対峙することしかないのだ。
何でも願いを叶えてやるなどと言っていたが、それを頭から信用するほどお人よしではない。
まあ、たとえ仮にそれが本当だとしても、自分の願い……全ての国家錬金術師の殲滅という悲願にロージェノムの力を借りるつもりなどはさらさらない。
あくまでも自身の力によってのみ、それを成し遂げてみせる。そうでなければ意味がない。そうでなければ、イシュヴァールの民の怨念は、自分の怒りは、決して晴らせない。
ゴキリ、と音をたてて拳を握り締める。
そのためにはまずこの場から脱出して元いた国、アメストリスへ戻らなければならない。
だからこそ、ここで自分の取るべき行動とは、同じくこの場に紛れ込んできているらしい鋼の錬金術師と焔の錬金術師の他、全ての参加者の皆殺しだ。
生殺与奪などという甘いものではない。生を奪い殺を与えることはあれど、生を与えることは決してないのだから。
誰であろうと見つければその場で殺す。それだけだ。実に簡単な話ではないか。
363破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:38:06 ID:PCyUROIO

「そう……」

呟くとスカーはおもむろにその場にしゃがみこみ、舗装されたコンクリートの上に右手を置いた。
熱の失った、ひんやりとした冷たさが伝わってくる。
……が、それも一瞬のこと。

「簡単な話だ……ッ」

電撃のようなものが飛び散ったかと思うと、次の瞬間にはきれいに舗装されていたはずの地面が隆起し、弾け、まるでドミノが倒れていくかのごとく歪な曲線を成してスカーの右手前方にある小さな建物……倉庫か何かだろうか……に向かっていき、容赦なく破壊した。
ガラガラと音をたてて崩れ落ちてゆく建物。中に誰かが入っていたのならまず間違いなく瓦礫に潰されて一巻の終わりのはずだ。

「そこに潜んでいても無駄だ。貴様はその殺気を隠しきれていない」

完全に崩壊していて、土煙がもうもうと立ち込めている。それにより、人影は見えなかった。
ただそれが見えなくても普通に考えれば誰でも、潜んでいた者は崩落に巻き込まれて潰されたのだと判断するだろう。
だが、スカーは今の一撃で標的を仕留めきれたとは微塵も思っていなかった。
なにしろ……先ほどよりも殺気が強まったのだ。それと同時に、問答無用の威圧感すら感じられるようになる。
怯むわけではないが、先ほど建物の中でこちらの隙を窺っていた人間は只者ではないということがこの時点でわかった。
というよりは無理矢理にでもわからされたというほうが正しいか。

「なに……潜んでいたというわけではないさ」

予想通り……とはいえあまりにもあからさまなため予想とすら言えないが……土煙が晴れない内に、その中から男の声がした。
向こうからすれば予測できない突然の攻撃だったはずだが、その声に驚嘆や怯えの色というものは一切見受けられなかった。
まるで長年の友人に話しかけているような……それでいて独り言を呟いているかのような、そんな二律背反した印象を受ける口調だった。

「ただ、あの場所から飛ばされてきたのがここだったのでな……貴様がもう少し近くに来るまで待っていただけだ」

そして土煙から、ようやくその姿を現す。
その男の印象を一言で表すならば、黒。
言葉というものはやれ漆黒だの永遠の闇の色だの一つのものを表現するのに多くの言い回しがあるが、それでも真に黒を見た場合、それを表現するのに適した言葉といえばこの端的な一言がもっとも最適であるとスカーは瞬間的に思った。
黒のコートを着込み、刃のような鋭い眼光を有し、殺気……そう呼ぶにはあまりにも禍々しいオーラを放ちながら男は一歩ずつ、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
そのコートのせいで暗闇に紛れて姿を判別できにくいかといえば案外そうではない。まるで闇の中それだけが光り輝いて浮いているかのような、きれいな銀髪をしている。
そのギャップがとても不釣合いで、そのくせとても似合っていた……薄ら寒さを覚えるまでに。
その男の名は、ヴィシャス。
364名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:38:12 ID:HoNUXSc8
 
365名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:38:34 ID:IOFjOZ2m
       
366破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:39:49 ID:PCyUROIO
スカーは、男の姿を確認すると同時に理解した。
先ほど殺気を『隠しきれていない』と言ったが、それはとんだ間違いだ。
この男は、最初からそんなものを隠そうとなどしていない。
ただただ身から凄まじいまでのそれを放出し続けている……それも意識してではなく、無自覚に。
一見してすぐに、他人と友好関係を結ぼうなど全く考えていない、生粋の『破壊する側』だとわかる……自分と同様に。

「名乗りはいるか?」

ヴィシャスは刀を居合いの型に構えながら、スカーにそう問いかけてきた。
根拠はないが、相手の返答をあらかじめ知った上で聞いているかのような。スカーはそんな気がしてならなかった。

「いらん。己れは既に名を捨てた……それに、これから死に逝く者に名乗ったところで意味はない」
「同感だよ、傷の男」

相手の男は笑ったようだった。といっても、顔に笑みという名の表情を貼り付けただけという印象だが。
直後、一迅の風がスカーを通り抜ける。

「!?」
「さすがにこのくらいでは終わらんか」

手応えがあまりなかったことを確認し、ヴィシャスはスカーに向き直った。
風と思ったのはヴィシャスの尋常ではない速さの移動による風圧で。そしてその刀には血がついていて。

「ぐぅ……ッ」

そこでようやく、スカーは奴に己の左の脇腹が斬られたのだということに気づいた。
反射的に身体をひねったことで大した傷には至らなかったが、それにしたって狙ってひねったわけではない。
これまでの彼の戦いの経験が、無意識の内に脳神経に危険を告げていたからこそできた芸当だ。
左手で脇腹を押さえるが、浅いとはいえ血が止まらない。
侮った。
苦々しいことだが、スカーはそう思わざるを得なかった。
どれだけの殺気を持とうが所詮は錬金術も使えない、銃すら持っていないただの人間だと思っていた。
多少体術が使えたところで、イシュヴァールの武僧であった己に適うはずがないと思っていた。
なるほど球状の屋根の建物といい、どうやらこの世界は思っているよりもはるかに広いらしい。
男が再度刀を構え、告げてくる。

「だが、次で仕留める」

恐らく、この男に対して距離を置くということはさして意味のないことだ。
スカーは脇腹を押さえながらそう冷静に分析する。
ある程度の距離ならば一瞬で詰めてくるほどの身体能力をこの男は有している。
だが、逆にいえば刀を使った戦闘スタイルであるが故に接近戦しかできないと見える。
ならば……こちらに止めを刺そうと近づいてきたところを迎え討つ!
367名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:39:58 ID:i103BBmW

368名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:41:13 ID:HoNUXSc8
 
369名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:42:04 ID:8+zb9RVI
370破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:42:11 ID:PCyUROIO

「来い」

自分の成すべきことをはっきりと見定め、骨を鳴らしてスカーもまた右手を構える。
一触即発の状況……何が引き金となって爆発するかわからないくらいに、不安定な空間。
夜風が舞い、波が揺れる。ザザァ……と規則正しい周期で波の音がする。
心なしか、その中で異音が紛れ込んだような気がしたがそちらに神経を傾けている余裕はない。
今はただ、互いに相手の隙を窺い続けるしかない。

ヴィシャスの肩と、スカーの右手の指が微かに動いたのはほぼ同時だった。
常人ならばとても気づかないそんな軽い動作。だが両者共にそれに反応した。
全身の筋肉が、躍動する――!


「いやあまいった! 変なとこから飛ばされてきたと思ったらいきなり海の上なんだもんなあ! あやうく溺れちまうところだったよ」


「「…………………………………………………………………………………………………………」」

突如、この張り詰めた空気の中で弛緩しまくった大声が鳴り響いた。
その声に思わず互いに動きを止めてしまう。
反応する速度も一緒、動きを止める速度も一緒、そしてこの場に現れた闖入者に顔を向ける速度もまた、スカーとヴィシャスは一緒だった。
そこには……パンツ一丁で全身ずぶ濡れになったどちらかというとやせ気味の、先ほど溺れかけたと言った割にはかなり気楽そうにからからと笑っている金髪の男がいた。
なんといおうか……自分で言うのもなんだがチンピラ同士のいさかいの最中に、空気も読めず乱入してくる酔っ払いのオヤジをスカーは連想した。
空気の読めなさは恐らくその酔っ払いと同等かそれ以上だと思われるこの男は、ペタペタと裸足でこちらに向かってきながらなおも笑って続ける。

「あ、でも聞いて驚けよ? なんと俺は海に落ちてから百メートルくらいは着衣したままクロールで泳ぎ続けたんだ! まあそのあとはやっぱ服脱いで犬掻きで頑張ったんだけどな。
 多分犬掻き選手権でもやったら上位に食い込むくらい今回のことで泳ぎが上達したと思うぜ! 金メダル……は本家の犬に譲るとしてもそれ以外の生き物には絶対に負ける気がしないね! 余裕の銀メダルさ!
 それにしても犬ってすごいな! あんな疲れる泳ぎしかできないのに不平不満の一言も言わないんだからさ! なああんたらもそう思わないかい?」

「…………」

最初に動いたのは、ヴィシャスのほうだった。
素人相手だからか刀をろくに構えもせず、抜き身のままぶら下げた状態でゆっくりと乱入者に近寄っていく。
殺気は相変わらず放出させているはずだが、このパンツ一丁の男はまったくそれに気づいていない様子である。
というかさらに馴れ馴れしくなった。近づいてきたのが理解の印だと思ったのか無遠慮に彼の肩を叩いている。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:43:25 ID:i103BBmW

372破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:43:33 ID:PCyUROIO
「ん? あんたもやっぱりそう思うの? なーに大丈夫さ、今度犬と競う時までにはこのアイザック・ディアン様がラッコ泳法をマスターして」
「少し黙れ」

ずぶり、という生の肉に刃物を突き立てる生々しい音がした……いや実際にはスカーの位置からはそれは聞こえてこなかったのだが、そのように感じるほど容赦なく黒い男の突き立てた刀が、このアイザックとかいうらしい男の腹部に突き刺さった。
アイザックはなす術なく、口から血を吐いてヴィシャスが刀を引き抜くと同時にその場に崩れ落ちる。
そしてさっきまでの軽口が嘘のように静かになり、やがてあまり動かなくなった。
ゴホッ、と咳き込んでいるあたりまだ辛うじて生きているようだがそれも時間の問題だろう。

「邪魔が入った。さあ、続きだ」

刀についたアイザックの血を拭うと、ヴィシャスはもう彼の方には見向きもせずにスカーと対峙する。
スカーもまた、もはやアイザックに対する興味は失せ、これから瞬歩で間合いを詰めてくるであろうヴィシャスに備えようとする。
……その時、彼は異変に気づいた。

(……なに?)

血が。
つい数秒前にコンクリートについたアイザックの血が。
まるでそれ自身が意思を持っているかのごとく動き始めたのだ。まるで毛虫が這いずるかのごとく。
そしてそれは、アイザックの体内へと舞い戻ってゆく。
青白い顔をしていたアイザックの顔に血色が戻っていったのが見てとれた。
その光景を見ていたスカーは、驚愕と共に一つの可能性に行き着いた。

(この男……ホムンクルスか!)
「どこを見ている」

ヴィシャスの角度からはアイザックの様子が見えなかったのだろう。
急に隙を表したスカーに対し妙な印象を受けつつも、決してそれを見逃すような男ではない。
一秒掛かるか掛からないかの内に、スカーの懐に潜り込んでいた。

(しまっ……)

ヴィシャスの刀が、今度こそスカーの身体を真っ二つにせんと切り上げてくる。
コートが破れ、シャツが破れ、皮膚から食い込み、筋肉が切れ、骨まで到達する……!
373名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:44:36 ID:HoNUXSc8
 
374破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:44:42 ID:PCyUROIO

「ぐ、おおおおお!」

瞬間、スカーはヴィシャスに向けていたはずの右手を彼本人ではなく、刀に向けた。
指が千切れそうになることも覚悟の上で強くそれを握り締めると、錬金術を発動させる!
兄の遺したこの右腕の刺青が光り、なおもスカーの命を刈り取ろうとする刀を分子レベルで解体してゆく。
その速度は一瞬。解体してゆくといっても、その過程を見ることはできない。
切り上げられようとしていた刀はあっという間に、なんとかスカーの致命傷に至る直前で雲散霧消していった。

「なん……だと?」

場違いではあるがここでようやく、相手の男の驚いた顔を見られたのは爽快ではあった。
得物を失くし、何が起こったのか理解できず動きの止まった男を、思い切り左足で蹴り上げる。
相手は突発的に後ろに跳ぶことで衝撃を幾分か和らげてはいたものの、たしかに手応えはあった。
ゴロゴロとコンクリート上を転がり、すぐに起き上がる。顔には出していないが、ダメージはあるはずだ。

「逃がさん!」

この機を逃さず追い討ちをかけようと、傷ついた身体を無視して右手を地面につけ、再び隆起、粉砕の繰り返しの破壊の行進をヴィシャスに浴びせる。
それに対し、彼は……避けようとせず、むしろ自分に向かってくるその破壊に向かって全速力で駆けた。
これにはスカーも面食らう。一体何をするつもりだ。

「ふっ!」

掛け声と共に、ヴィシャスは跳躍する。
それは常人の跳躍力をはるかに超えていたが、それによって破壊をも飛び越えてスカーのほぼ眼前まで着地した。

(…………っ!)

もう少し手を伸ばせば届きそうな距離だが、身体が激しい動きを拒否してくる。
それにたとえ伸ばせたところで、すぐに逃げられて終わりだろう。そのため何も行えなかった。
スカーとヴィシャス。互いに攻撃、防御の動作を行わず、ただ相手の目を睨み合うだけの対峙。
やがて、ヴィシャスの方からその口を開いた。
375名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:45:36 ID:i103BBmW

376破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:46:16 ID:PCyUROIO

「なるほど……最初に俺のいる建物を破壊したのは、それか。くだらん手品を使う」
「くだらないかどうかは、先ほど試してやったはずだがな」
「ああ、おかげで丸腰だ。劣勢の戦というのも嫌いではないが……あまりにも分が悪すぎる」

存外素直に認めたヴィシャスを少々意外に思いながらも、スカーは一歩前に踏み出して言った。

「逃げる気か? 己れが貴様を逃がすとでも思うか」
「無理はするな傷の男よ。今にも倒れそうなのだろう」
「黙れ……」
「安心しろ。ここにいる参加者を殺し続けていれば……いずれまた会える」

その言葉を最後に、ヴィシャスはゆったりとした歩みでスカーを通り過ぎるとそのまま真っ直ぐに歩き去ってしまった。
追いかけたかったが、もはや体力の限界に近い。
死にはしないだろうが、ひとまず休まなければとても参加者を皆殺しなどできそうもない。

(だが、その前に……)

残った体力を振り絞って、スカーはアイザックを……国家錬金術師と同じく自分の敵、ホムンクルスを討たんと彼を探してあたりを見回した。
……が、どこにもいない。

(逃げたか……)

舌打ちをして、その場に座り込む。
この程度の傷ならば、しばらく休んでいればどうにか動けるくらいまでには回復できるはずだ。

「鋼の錬金術師……焔の錬金術師……他の参加者……黒の男……そして、ホムンクルス……!」

殺さなければならない相手を次々と口に出し、その度に心中に怒りが溜め込まれていく。
だがいずれ来るであろう激戦に備え、今はその爆発しそうな怒りを膨れ上がらすだけに留めなければならない。
なにせ、世界は広いのだから。あの男以上の者がいないとも限らない。今は、回復に努めるべきだ。
もどかしい心持ちで、傷の男……復讐者は朝を待つ。


【B-1/海岸沿い/1日目-黎明】

【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】】
 [状態]:左脇腹と右脇腹、右手の親指を除いた四本それぞれ損傷中。多大な疲労。
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式(ランダムアイテム不明)
 [思考]
  基本:参加者全員の皆殺し、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
  1:皆殺し
  2:回復したら中央へ向かう
377名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:47:05 ID:i103BBmW

378破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:47:31 ID:PCyUROIO



「予想以上にやる……なかなか楽しめそうなところだなここは」

スカーの元から去り、道路を歩いている黒い男がいた。
その口元には微かな笑み。表情を貼り付けただけとは違う、たしかな笑み。
……その方向性は歪んでいるが。

何にしても今は丸腰だ。確実な武器が見つかるまでは不用意な戦いは避けた方がいいのかもしれない。
それを考えると、実にあの男に刀を破壊されたのは痛かった。
なまくらではあるがまさに自分に最適な武器だったといえる。

(まあ、高い授業料だと思えばいい)

螺旋王とかいう奴の他にもあの傷の男のように、素手にも関わらず何やら怪しげな術で闘うような輩がここには存在するということがわかった。
あの男も相当な強さだったが、あれ以上の者も存在するかもしれない。
それを考えると思わず武者震いがしてしまう。
なに、武器ならいくらでも調達できるはずだ。
この殺し合いという場において、武器がなければそれは成立しないのだから。

ヴィシャスの目的……それはまさしくスカーと同じ、ここからの脱出だった。
彼の願いとは自分の所属しているチャイニーズマフィアの組織、レッドドラゴンの頂点。
螺旋王の力を借りる間でもない。己本人の力で成し遂げてみせる。
だからこそ、彼はこのようなところで足踏みしている暇はない……のだが、彼自身がかなり好戦的、かつ残虐な性格なため、どうせなら最大限にこの殺し合いという空間を楽しみたいという誘惑が彼の中に存在していた。
そして何よりも、ここにはあのスパイクが来ているらしい。
元親友で、今は憎しみ合う仲という最高の好敵手が。

「いい機会だ……この場で決着をつけようじゃないか、スパイク」

そうこの世界のどこかにいるであろう男に呟くと、ビシャスはもう一度、嘘偽りのない微笑みを浮かべた。

【B-1/道路/1日目-黎明】

【ヴィシャス@カウボーイビバップ】】
 [状態]:少し蹴られた時のダメージ有
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式
 [思考]
  基本:参加者全員の皆殺し、元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
  1:皆殺し
  2:武器の補充
  3:スパイクと決着をつける
  4:強そうな相手とは勝負を楽しみたい
 ※カミナの刀は破壊されました
379名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 12:48:34 ID:8+zb9RVI
380破壊者二人と仮装泥棒  ◆ARkjy9enog :2007/09/23(日) 12:48:34 ID:PCyUROIO



「こここここここ怖かったあ……! ちっくしょーあいつら絶対にマフィアかなんかだよな。カモッラはフィーロとかエニスとか良い奴ばっかりだから、きっとマフィアに違いない! くっそー今度会ったら……会ったら……思いっきりぶってやるからな!」

アイザック・ディアン……本人は気づいていないが不死者と呼ばれる男は相も変わらずパンツ一丁のまま道路に沿って走り続けていた。
ミリアと共にそれなりに『仮装泥棒』として名を轟かせただけあって、逃げ足の速さだけは大したものである。
刺されたはずの腹は既に傷跡すら残ってなく、きれいなものだった。
不死者とはその名のごとく何をしても死なない人間のことを指す。何をしても……窒息させても、毒をもっても、八つ裂きにしても、感電させても。
不死者を殺すには、同じ不死者が右手を相手の頭の上に乗せ、『食いたい』と念じることでその中に吸収されることによってのみ可能である。
……ただ、この状況下ではどこまで不死の恩恵が与えられるかは怪しいものなのだが……
ともあれ、そういった点ではたしかにスカーの知るホムンクルスと似たような性質を持っているが、断じてそれらとは関係のないただの馬鹿。
それがアイザックだった。

「それにしても、あの俺を刺したように見せた人、すごい手品師だなあ。まさか痛みまでリアルに再現してくるなんて。マフィアなんかよりそっちを本業にしたほうが儲かりそうなのになあ」

本来ならば有り得ない結論なのだが、それを大真面目に下してしまうのがアイザックのアイザックたるゆえんである。
一度殺されかけたにも関わらず何の疑問も持っていない。

「にしても、このバッグの中に入ってたこれ、何なんだろ。ダイヤモンドかな?」

と、アイザックは走りながらも事前に自分に支給された品……赤く光っている石を右手に持ってぼんやりと眺めた。
妙にきらきらしていて、おそらく宝石の類だろうと判断するがそれにしたってこんな形状のは見たことがない。きっと新種の宝石なのだろう。
強くそれを握り締めると、アイザックは走っていた足の速度を速め、元気いっぱいに叫んだ。

「よっし! これはミリアにプレゼントしてやろうっと!」


【A-2/道路/1日目-黎明】

【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ!】】
 [状態]:いたって健康。走行中。
 [装備]:パンツ一丁
 [道具]:支給品一式(あと1つか2つランダムアイテム有り)
     ずぶ濡れのカウボーイ風の服とハット(本来アイザックが着ていたもの)
     賢者の石@鋼の錬金術師
 [思考]
  基本:ミリアと合流
  1:ミリアにこの宝石をプレゼントする。
  2:さっきの怖いマフィアたちから逃げる。
 ※アイザックの参戦時期は1931年のフライング・プッシーフット号事件直後です。
381名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:29:44 ID:NZ2v9w+D
382線路の影をなぞる者(レイルトレーサー):2007/09/23(日) 13:29:47 ID:06E3HvbZ
トンネル入り口付近。
リザ・ホークアイ中尉は、この異常な状況下において、冷静に活動を始めようとしていた。
名簿と地図は確認を済ませている。当初の目的は、ロイ・マスタング大佐、マース・ヒューズ中佐、エルリック兄弟 と合流することだ。
自分ひとりでは、螺旋王と名乗る存在に対抗するのは不可能だが、錬金術師なら、なにかつけいる隙がみつかるかも知れないという一縷の望みにかけた。
しかし、今この現状では、彼らの所在を掴むことは出来ない。いまのところは偶然出会う確率にまかせるしかない。
だから、自分にとって必要な物資が調達できそうな警察署に行くことにした。
射撃を得意とする彼女にとって、銃器の調達はなにより急務である。調達できそうな場所は警察署ぐらいのものだ。距離はだいぶ離れていて、しかも調達できるかどうかかなり望み薄だが、行ってみる価値はあると彼女は判断した。

今、彼女の手元に銃器はない。支給された武器は、真っ黒な細身の刀剣が数本。
あまり剣は好みではないし、頼りないが、とりあえずコレを使用するしかない。
説明書きには黒鍵(こっけん)という名称のみが示されている。黒鍵を1本ずつ両手に持ち、振り回してみる。
思ったより、手にしっくりとなじんだが、やはりだいぶクセのある武器のようだった。
 (やっぱり銃がないと不安だわ……)
ため息をついた。

383名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:30:23 ID:888pqZ7d
 
384名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:31:09 ID:NZ2v9w+D
385名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:31:28 ID:yk5q4EmX
 
386名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:35:46 ID:888pqZ7d
 
ちょうど、一通り所持品の確認が済んで出発しようと思ったときだった。
カツーン、カツーン。
トンネルの奥から、誰かの足音が聞こえてきた。
 (わたしの他にもこの場所に人がいたのか)
用心のため、ホークアイはデイパックと黒鍵を持って、トンネル入り口近くの物陰に隠れる。
カツーン、カツーン、カツーン。
足音がだんだん近づいてくる。
しかし、足音がトンネルの出口にさしかかったところで、急に止まった。

 (わたしの存在に気づいた?)
一瞬迷ったのち、ホークアイは、姿をあらわすことにした。たとえどんな相手にせよ、遅れをとるつもりはない。
黒鍵を持ってトンネルの入り口の前に立つ。
相手の姿はトンネルの暗闇に紛れてよく見えないが、彼女に気づいている気配はあった。

 「申し訳ありませんが、答えてください。あなたは、この殺し合いに乗っていますか?」
話しかけた。
だが、影は応えない。
 (唐突すぎたかしら……)
もう一度話しかけようとすると、相手は急に前に歩き出した。ホークアイは身構えるが、相手はかまわず近づき、そのまま彼女の脇をすり抜けていく。
そして、
相手がトンネルの外に出たとき、はっきりと相手の姿が見え、初めてソイツの異常さに気づいた。

388名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:36:25 ID:i103BBmW

389名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:37:23 ID:yk5q4EmX
 
390名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:38:27 ID:888pqZ7d
 
391名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:40:36 ID:888pqZ7d
 
392名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:40:56 ID:Yloc4L+h
 
393名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:41:00 ID:yk5q4EmX
 
394名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:42:27 ID:888pqZ7d
落ち着いて60秒数えるんだ。
395名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:43:36 ID:Yloc4L+h
 
(――なに――これ)
常に沈着冷静なはずの彼女の顔が、ゆがむ。

トンネルの奥からやって来たのは、ヒトの姿をした、全身が真っ赤なナニカだった。
全身からつよい血の臭いを放ち、彼女に吐き気を催させる。
少し歩いて急に立ち止まったソレは、ゆっくりとホークアイのほうに顔を傾ける。その動きは、彼女に逆に恐怖を感じさせた。
そして彼女は覗き込んでしまった。その真っ赤なベトベトで覆われた顔の中の、憎悪と憐れみと蔑みが内面に満ち満ちた真っ黒な目を。

身震いと嫌悪感を抑えることができず、
「怪物……」
ホークアイは、我知らずつぶやき、無意識に攻撃姿勢に移っていた。

その言葉と行動に応えるように、「怪物」は、ニヤッと笑う。
そして、意外なほど俊敏な動きで、ホークアイに近づいた。
「怪物」は両方の手で、ホークアイの両腕を無造作に掴む。激痛が走り、あっさりと、ホークアイは黒鍵を取り落とした。

さらに「怪物」は、ホークアイの右腕と左腕を掴みあげたまま、信じられないくらいの怪力で軽々と投げ飛ばした。

「がはッッッ!!!」
あまりの不意打ちに、ホークアイの身体は無防備に地面に激突する。

そして「怪物」は起き上がろうとしたホークアイに、黒鍵を2本とも拾って投げつけた。
ブンッッッ!!!ブンッッッ!!!
黒鍵は両頬をかすめ、均等にかすり傷をつくって、ホークアイのすぐ後ろの地面に突き立つ。

 (強い)
ホークアイは考える。
この「怪物」はいつでも自分を殺せる。
まだ状況が把握しきれていないこの状況では、勝ち目の薄い相手との戦闘は避けたほうがいい。
それにこの「怪物」はまだ、自分の力を誇示しているだけのように見える。本気をだしていない今しか逃げられない。
彼女はあっさりと撤退することを選んだ。
幸い、投げ飛ばされた場所は、彼女がデイパックを置いた場所。
身構えながら、地面に突き立った黒鍵2本とデイパックを冷静に回収する。それを目にしつつも、相手は動かない。
そのまま彼女は後ろを振り向いて逃走した。

――「怪物」が追ってくることはなかった。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:44:29 ID:888pqZ7d
 
398名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:46:01 ID:888pqZ7d
  
399名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:46:53 ID:i103BBmW

 (そうだ、逃げろ)
「怪物」は笑う。
こんなところに呼び出されて、俺のスケジュールは滅茶苦茶だ。だいぶ気分が悪かったんだが――なかなかの美人だったな?少し楽しくなってきた。
ガンドール兄弟との待ち合わせに遅れたら……まあ、主催者に帳尻を合わせてもらおう。ヤツには高過ぎる代償を支払ってもらうことになる。

ゆっくりと歩き出す。目的地はとくに定めていない。あの女を追いかけるのもいいし……まあいい。
すでに「怪物」は、目覚めてしまったのだ。
その「怪物」の名は、

『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』

401名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:48:27 ID:888pqZ7d
  
402名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:48:48 ID:yk5q4EmX
 
403名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:50:15 ID:i103BBmW

404名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:51:45 ID:888pqZ7d
 
405名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:54:00 ID:888pqZ7d
 
406名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:57:00 ID:or7kO67T
 
407名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:58:01 ID:888pqZ7d
 
408名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:58:53 ID:PCyUROIO
どした?
409名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 13:59:52 ID:GaEjJMvh

410名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 14:00:16 ID:888pqZ7d
……イデ(データ紛失)発動?

もしくは、状態表だけミスった?
【H-7/トンネル入り口付近/1日目-黎明】

【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
 [状態]: 両頬に細い傷跡。両腕に痺れ。
 [装備]:黒鍵×数本@)@Fate/stay night
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(詳細不明なアイテムがあと0〜2つあります・本人は確認済み)。
 [思考]
  基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない。
  1:ロイ・マスタング大佐、マース・ヒューズ中佐、エルリック兄弟 と合流する。
  2:怪物から完全に逃げ切る。
  3:警察署で銃器を調達する。
 ※リザ・ホークアイの参戦時期はアニメ本編15話辺り。 そのため彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ生存中です。
 ※道路沿いに北上中。
 
 【黒鍵(こっけん)@Fate/stay night】
 外見は剣状でありレイピアに近いが、斬るのではなく投げつけて使用する。刃渡りは80〜90cm、重量は1kg程度で重心が投擲に向くような位置にある。十字架を模していて、扱いが難しいうえ威力もなく、霊的干渉力に重きが置かれている。

412名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 14:03:46 ID:888pqZ7d
   
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康。全身血まみれ。
 [装備]: なし
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(詳細不明なアイテムが1〜3つ入っています)
 [思考]
  基本:優勝して『フライング・プッシーフット』に戻る。
  1:殺しを楽しむ。
  2:リザ・ホ−クアイに興味(名前は知りません)。
※クレアの参戦時期は『フライング・プッシーフット』の『車掌二人』を殺害後です。

414名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 14:04:32 ID:PCyUROIO
 
415雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜(1/5) ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:44:06 ID:hJab3zeI
『……その栄冠を得るために、殺し合え。死力を尽くしてな……!』
男……螺旋王ロージェノムのその言葉を最後に、辺りが闇に包まれていく。
そうして、気がつけば。
隣で震えながら僕の手を握っていたはずのキャロの姿は、何処にも見えなくて。
僕はただ、一人で冷たい床の上に転がっていた。



薄暗い部屋の中には、粗末な寝台が一つだけ。目の前には錆の浮いた鉄格子。
……ドクン。
脳裏にフラッシュバックするのは、過去の記憶。
猿轡を噛まされて、全身を拘束具で雁字搦めにされて、まるでモノを見るような視線に晒され続けた、研究施設での日々。
……吐き気が込み上げてくるのを、どうにか堪える。
そんな時だった、空中に通信ウィンドウが浮かび上がったのは。

『成る程、ここに転送されたのはお前だったか。初めましてと言っておこうかの、エリオ・モンディアル?』
「…………あなたは、一体誰なんですか? どうして、僕の名前を?」

ゆっくりと立ち上がり、画面に映っている煙管を咥えたアルマジロをジッと見やる。

『おお、これは失敬。自己紹介がまだじゃったなぁ。
儂は螺旋四天王の一人、不動のグアームだ。お前さんに少々頼みがあっての、それでこうやって話をしておるわけだ』
「『螺旋』って……まさか、あなたも螺旋王とかいう人の仲間なんですか!?」

その言葉に、瞬時に身体に緊張がはしる。
この殺し合い――螺旋王は『ゲーム』とも、『実験』とも呼んでいたけれど――の関係者が、僕に『頼み』があるという。
どう考えても、悪い予感しかしなかった。
そしてそれは、最悪の形で的中することになる。

『おお、そうだとも。儂もこの『実験』のスタッフの一人として参加しておる。
それでの、頼みというのはな……』



   儂の指示に従ってこの『実験』を円滑に進める手助けをしてくれんかの?


416雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜(2/5) ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:45:10 ID:hJab3zeI
「……な……」

思わず、絶句する。
彼の指示に従う?『実験』を円滑に進める手助けをする?
……それは、つまり。


            僕に、人を殺せというのか?

「……断ります!僕だって時空管理局の局員だ、人殺しなんて絶対に……!」
『ふむ、やはり断るか。ま、仕方なかろうて。最初から大人しく言うことを聞いてくれるとはこちらも思っておらんからの。
……じゃが、これならどうかな?』

画面の向こうのグアームが、ニタリと口角を釣り上げた。
……一体、何を…………



……嘘、だ。こんなの……だって、そんな…………



『キャロ・ル・ルシエとかいったかの?残念ながら、もうその子は生きてはおらんよ』



唐突に浮かび上がったもう一枚の通信ウィンドウ。
そこに映っていたのは、血溜まりの中に沈んだ一人の少女。
時空管理局 本局古代遺失物管理部 機動六課 ライトニング分隊所属。コールサイン、ライトニング4。心優しき竜召喚師。



――キャロ・ル・ルシエ。僕の、大切なパートナーの変わり果てた姿だった――


417雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜(3/5) ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:47:06 ID:hJab3zeI
「あ……ああ、あああ…………!」

ガクリと膝から力が抜けて、思わずへたり込んでしまった。
頭の中がグチャグチャになるのが分かった。そんな、まさか、なんで、どうして……疑問詞ばかりが浮かんでは消えていく。

『可哀想にのう、将来有望じゃったろうに……』

通信ウィンドウの向こうで、あいつが何か言っている。……キャロの死を、惜しんでいる?
今度は、視界が一気に真っ赤に染まった。バチ……と、紫電が爆ぜる音が右手の方から聞こえた気がした。

「お前が……お前たちがキャロをこんな殺し合いに参加させなければ、こうはならなかったのに!
それを棚に上げて、そんな事を言うなあああああ!!!」

胸の底から沸き上がる衝動に任せて、紫電を纏った右手をあいつの顔面に向かって叩きつける。
けれど、渾身の一撃はにやにや顔をすり抜けるだけ。当たり前だ、通信ウィンドウ越しに殴ったって、相手が当たるはずがない。無意味だ。
……そう、意味がないことは分かっていた。そんなことをしても、あいつには届かない。あいつは、全然痛くない。
けど、そんなことは関係なかった。ただ、目の前の存在がどうしようもなく……許せなかった。

『おっとっと……やれやれ、これだから野蛮な人間は困る。人の話は最後まで聞くものじゃ。
お前、螺旋王が言っておったことを覚えておるかの?
『その者が望むことを何でも叶えてやることにする』、とな。
勿論、死者の復活とて例外ではない』

……その言葉は、怒りに染まった僕の思考に、何故かストンと綺麗に収まった。
つまり、全員殺して、螺旋王に「キャロを生き返らせてくれ」と頼めば、



          もう一度、キャロに会える?


418名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 15:47:13 ID:Yloc4L+h
 
419名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 15:47:25 ID:vP6mpLyt
 
420雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜(4/5) ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:48:13 ID:hJab3zeI
『死者の復活を疑うというのなら、何故お前が『今ここで生きている』のかを考えてみることだの、エリオ・モンディアル。
プロジェクトFとかいう前例がある以上、他に死者復活の技術があっても不思議ではあるまい?ん?』

……確かに、その通りだ。僕は本物の『エリオ・モンディアル』に似せて創られた存在だとはいえ、ある意味では『蘇った死者』に他ならない。
僕の育ての親……フェイトさんだってそうだ。
それに、見つかっていないだけで他の世界には死者復活の技術が確立している世界があるのかもしれない。
そしてその世界の技術を、螺旋王が持っているかもしれないという可能性……限りなく少ないけど、それでも完全に否定できるものじゃない。

『何を迷うことがある?もう一度あの子のに会いたいのだろう?
その手段は目の前にある。躊躇う必要などない……後は、その手を伸ばして掴み取るだけじゃの』


『あの、すみませんでした。
エリオ・モンディアル三等陸士ですよね?
初めまして、キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります』

――僕は。



『せっかく会えたんだし、これからもっと……仲間として、コンビとして。
仲良くしていけたら嬉しいな、って……』

――――キャロに。





『私とエリオ君、これからもっといいコンビになっていけるかなあ?』



――――――――もう一度、会いたい――――――――



『……ふむ。どうやら、腹は決まったようだの』


421雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜(5/5) ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:49:19 ID:hJab3zeI
なのはさん……せっかくの教導を、殺し合いのために使ってしまいます。ごめんなさい。
シグナム副隊長……以前教えてもらった騎士の誓い、守れそうにありません。ごめんなさい。
スバルさん、ティアさん、シャマル先生、八神部隊長……それに、他の、この殺し合いに参加させられている皆さん。
これから、あなた達を全員殺します。ごめんなさい。
……フェイトさん……これから、とても危ないことをします。ごめんなさい。
許してくれなくて構いません。こんな事してもキャロは喜ばないっていうのも分かっています。
でも、たとえそうだったとしても。僕は、もう一度キャロに会いたいです。
だから…………一度だけ。一度だけ、我が侭をします。
これが、僕の最初で最後の我が侭です。
僕は、この殺し合いを勝ち抜いて……キャロを、取り戻します。



『ご協力に感謝するぞ、エリオ・モンディアル。
……そうだ、ささやかながら援助をさせてもらおうかの。きっとお前の役に立つことじゃろうて』

そういってウィンドウの向こうのグアームは何やらごそごそと作業を始めた。
なんとはなしにその様子を見ていると……ガシャン、と何かが落ちる音。
振り向けばそこには……見覚えがあるなんてレベルじゃない、とても馴染み深いものが転がっていた。
『閃光の戦斧』、バルディッシュ・アサルト。フェイトさんのデバイスだ。

『餞別だからの、取っておくといい。こちらとしても、お前に簡単にやられてもらいたくはないのでな』
「……そちらの思惑なんて知りません。けど、これを渡してくれたことには感謝します」

拾い上げたそれを、二、三度試し振りをして勝手を確かめる。ストラーダと同じ、長柄の武器だからだろうか。
インテリジェントデバイスであるか、アームドデバイスであるかという差異はあるにしても、バルディッシュは不思議と僕の手によく馴染んだ。
……これなら、やれる。

「キャロ……少しだけ、待ってて。
僕が、絶対に君を助けるから……」
《Barrier Jacket.》

身に纏うは騎士甲冑。
手にするは漆黒の戦斧。
胸に秘めるは決意。

少年は走り出す。どこまでもどこまでも、ただひたすら、真っ直ぐに――――




『キャロ……少しだけ、待ってて。僕が、絶対に君を助けるから……』
「……ふむ。『仕込み』は上手く機能しておるようだの」



――――故に、隠された悪意に気付けない。


422名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 15:50:44 ID:vP6mpLyt
 
423雷光、堕つ〜Fallen Lightning〜 ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 15:50:51 ID:hJab3zeI
【B-7/刑務所/一日目-黎明】

【エリオ・モンディアル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康、強い決意
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのはStrikerS(残カートリッジ:6/6)、バリアジャケット
[道具]:支給品一式、不明支給品(残0〜2)
[思考]:
基本行動方針:優勝を狙う、ただし自身の生存を最優先
最終行動方針:この殺し合いを勝ち抜いて、キャロを生き返らせる
[備考]:
※バルディッシュ・アサルトには管理者サイドが若干の細工を施しました。
現在分かっているのは以下の通りです(これ以外にも細工が施されている可能性もあります)
・盗聴機能

※不明支給品の内訳、及びこれからの移動先などは後続の書き手に一任します
424 ◆QcxMJGacAM :2007/09/23(日) 16:30:00 ID:hJab3zeI
状態表にミスを発見したので修正を入れておきます

(訂正前)
[備考]:
※バルディッシュ・アサルトには管理者サイドが若干の細工を施しました。
現在分かっているのは以下の通りです(これ以外にも細工が施されている可能性もあります)
・盗聴機能



(訂正後)
[備考]:
※バルディッシュ・アサルトには管理者サイドが若干の細工を施しました。
現在分かっているのは以下の通りです(これ以外にも細工が施されている可能性もあります)
・盗聴機能
・監視機能
はいはーい、今週もサイボーグミーくんの時間がやってまいりました!
気がつけば広い広い部屋に連れ込まれていました。
なにがなんだか分からないままイッカツーイおっさんが出てきましてー。
なんと! 最後の一人になるまで殺しあえというではありませんか!
これには流石のミーくんもびっくり。
その後ガ○ダムみたいなロボット特撮物にでてきそうな奴が出てきてイッカツーイおっさんに突っ込んでいったのですが。
どこぞの宇宙人のようにぶっとばされて首が跳ねられてしまいました。
そして今っ! ミー君は冷酷非道な殺人鬼が多数潜む殺し合いの現場にいるのです!
果たしてミー君はクロ、マタタビと出会い。この惨劇を食い止める事ができるのか!
ハチャメチャサイボーグファンタジーコメディ編! 始まるよぉ!

「って違あああああああああああああああああう!
 まずタイトルから違あああああああああああう!」
いや、そこらへんを筆者に突っ込まれましても。
「ってゆーか! 少年向け漫画雑誌的に考えて殺し合いってどーよ!
 昨今の編集部は何を考えてんのぉぉぉぉ?!」
いや、だから編集部とか関係ないんですってば。
人気ですよ、人気のなせる技です。喜ぶべきことだと思いますよ。

と、なんだかんだでミー君の冒険は始まる!後半ヘぇ! 続くぅぅっ!
「始まらねええええええええ!! というかもう後半かよ――――!!」




「と、まあとにかく面倒なことに巻き込まれちゃったなあ……」
ミー君は頭をポリポリと掻きながら地図と名簿を眺める。
辺りにはトンネルしかない、まずはここをくぐることになりそうだ。
しかし地図を見てもここが何処だか見当もつかない、日本っぽいといえばそうなのだが……?
差し詰め人工的に作られた空間だとかそんなところだろう、そこらへんはゴーくんの出番なのだが。
「名簿を見る限りゴー君は居ない。代わりにクロ、マタタビかぁ」
クロ、憎みそして愛すべきライバル。アイツのことだからほっといても死にはしないだろう。
というか、殺せる奴がいるならそれはそれで見てみたい。
マタタビも……どうだろう、まあ死なない奴だって事は分かるかな。

それより問題がある。
彼にとっての最重要次項、ゴー君の所へ戻ることである。
大前提として自分の生存、これは絶対である。
自分の体内にある武器を使えば生存は容易いだろう。
……では殺し合いに乗るかどうかである。答えは勿論。
「絶対にノゥに決まってんだろォッ!」
ここでお人形のように皆殺しをして願いをかなえてもらって世界征服達成!
ゴー君の元にも帰れてめでたしめでたし。
そんな事は望んじゃいない、人から与えられた世界征服なんてそんなものに価値はない。
世界征服は望みだ、愛しのゴー君の追いつづける叶えるべき夢。
しかし、それはゴー君自身の手で掴んでこそ価値がある。
だから、意地でも帰る必要がある。
問題になってくるのはこの首輪だ。
首を外せば取れるかと思ったがどうやら溶接されているようだ。
……逆に言えば溶接できるような設備があれば解除できるかもしれない。
相当高度な技術が必要だと思われるが。
それになんとも悪魔のチップの動きが鈍い、まだ試していないから何とも言えないが明らかに性能が落ちていそうだ。

「……ま、このトラブルを抜ける為に。まずはクロと合流しますか」
そうして、自らの体内に手を突っ込み。
巨大剣をスルッと抜き出し――――。

抜き出し?
「あ、あれ?」
そう、いつもならスルーっと愛用の剣が出てくるはずなのだが。
「無い! 無い! 無い! 僕の大切な剣が無い!
 心臓のほうにも盲腸のほうにも肝臓の辺りにも無い!」
一大事だ、巨大剣だけではなく武器といえる武器を片っ端から抜かれているようだ。
どこぞのうっお―――っ!! くっあ―――っ!! ざけんな―――っ! と言いながら暴れまわり戦車をぶち壊す武闘家じゃあるまいし。
素手での戦闘にはそこまで自信はない。
「……頼りにならなそうだけど、一応見てみるか」
すっかり意気消沈したミー君は、自分のデイパックを見てみることにした。
ガン○ムに出てきそうな巨大剣でも入っていればラッキーだったのだが、真っ先に出て来たのは店長と書かれた赤い帽子。
だけど何故だか無限大の熱気をこの帽子からは感じる。
とりあえず被ることにして、次のアイテムを探す。
自分の体内と違って構造がいまいち分からない。
そこで少しプッツンと来たミー君は一気に中身をブチまけることにしたのだ。
他に出て来たのは水やらコンパスや時計等。
ご丁寧な事にサイボーグ用の燃料まで入っていた。
そして、伝説の剣宜しく地面に突き刺さったセラミックス製の包丁に……。
「おお、おおおおおおおおおおお!!」
料理人なら、一度は夢見たであろう。
世界中の料理人が認める、まさに究極の食材。
この食材たちの味を引き出すには相当な腕が必要だが……一度は挑んでみたいと思っていた。
「……と、いけない。今はそれどころじゃないな」
料理したい衝動を頑張って押さえつけ、ミー君は食材だけを支給品の入っていたデイパックに入れる。
そして残った食料やらコンパスを自らの収納スペースに入れ、食材の入った袋も収納スペースに入れる。

「さて、それじゃあクロの奴に会いに行きますか」
帽子を被りなおし、片手に包丁を握り締め。
猫型サイボーグミー君は進む。

「待っててねー! ゴーくーん! とびっきりのお土産と一緒に帰るからねー!!」
ゴー君のところへ帰るために、ゴー君に最高の料理をご馳走してあげる為に。
何が起こるかは分からない、死と隣り合わせのいつも以上にスリリングな冒険が始まったのだ。

ぅんむぁて次回!
【H-8/南東側の端っこ(禁止地区ギリギリ)/1日目-黎明】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:セラミックス製包丁@現実、アニメ店長の帽子@らき☆すた
[道具]:支給品一式、世界の絶品食材詰め合わせ@現実
[思考]:待っててねーーー!! ゴーくぅーーーーーーん!!
基本行動方針:殺し合いには乗らず、ゴー君の元へと帰る。
第一行動方針:現状を打破する為クロに会う。
第ニ行動方針:襲われた場合は容赦しない……と言いたい所だが武器が欲しい。
第三行動方針:絶品食材を調理してみたい?
[備考]:
※武器が没収されているのに気がつきました。
※悪魔のチップの性能の悪さをなんとなーく感じ取っているようです(気のせいレベル)
※食材詰め合わせの内約はご自由にどうぞ。
430状態表修正 ◆hsja2sb1KY :2007/09/23(日) 17:55:09 ID:06E3HvbZ
状態表修正。とりあえず、ネタバレ回避度をぎりぎりまで上げてみました。

(修正前)
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康。全身血まみれ。
 [装備]: なし
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(詳細不明なアイテムが1〜3つ入っています)
 [思考]
  基本:優勝して『フライング・プッシーフット』に戻る。
  1:殺しを楽しむ。
  2:リザ・ホ−クアイに興味(名前は知りません)。
※クレアの参戦時期は『フライング・プッシーフット』の『車掌二人』を殺害後です。

               ↓

(修正後)
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:??????
 [装備]: なし
 [道具]:デイバッグ、支給品一式(詳細不明なアイテムが1〜3つ入っています)
 [思考]
  基本:??????
  1:積極的に動くつもりはないが、自分に攻撃してくる者に対しては容赦なく反撃する。
  2:リザ・ホ−クアイに興味(名前は知りません)。
 ※クレアの参戦時期は『フライング・プッシーフット』の『車掌二人』の死亡後です。


ここは【B-4】のほぼ中央に位置する巨大な図書館。
どこぞの蔵書狂ならば思わずふらふらと入って行ってしまいそうな、そんな建物の中にその男はいた。
しかし彼はわざわざ本を読む為に図書館へ通うような勤勉な人間ではない。
仮に本人がそうだと言っても、赤いハチマキを頭に巻きつけ、同じ色のボロボロのマントを纏ったその姿では信用されないだろう。
彼は、かつて数多の強豪を打ち倒し第十三回ガンダムファイトで優勝したガンダムファイターにして、
人類の歴史を裏から支え続けた武道家集団シャッフル同盟の長、『キング・オブ・ハート』ドモン・カッシュその人である。


「……信じられん」
薄明るい非常灯のみが光源となっている図書館の中でドモンはそう呟いた。
確かにまともな精神状態では自分の置かれている状況が事実である等とは思えないだろう。
しかし、ドモンはそのような意図からその呟きを放ったのではない。
「あの男の変身、この場へのワープ……どれも現在の技術では実現不可能なものばかりの筈だ」
そう、ドモンが信じられぬと呟いた対象はあの部屋で見せ付けられた数々の超現象だ。
何の変哲もない男がクリスタルを掲げ、光に包まれたと思えば全身に鎧を纏ったかのような異形と化し、
圧倒的な破壊力を持つのであろう破壊光線を撃ち放った。それだけでも十分に驚愕に値する事だが、
あの螺旋王と名乗った初老の男はそれを防ぎ、更にドモンを初めとする複数の人間をこの殺し合いの会場までワープさせてみせた。
最早魔法と言っても差し支えの無いほどに高い技術レベルを誇る未来世紀の世ですら、そのような技術は開発されていない。
(……だが)
そう、だがひょっとすれば世界の誰も知らない闇の中で、そのような技術を開発した者が居るのかもしれない。
事実、ネオジャパンで彼の父が開発していたアルティメットガンダムもまた、とても信じられぬ超技術の塊だったのだ。
では、もしあの男や螺旋王が秘密裏にそのような技術の開発に成功した人間、或いは組織のメンバーだと考えるなら……。
「……だとするなら、捨て置けん。あのような超技術を操り、
 そしてそれを殺し合いのゲームなどという下らんものに使う悪党を野放しにする事は出来ん」
例えそうでなくとも、複数の人間を拉致監禁し、挙句殺し合え等と言う悪党を見逃すつもりは無い。
となれば一刻も早くこの地を抜け出し、螺旋王を打ち倒さなければならない。
そう結論を出し、ひとまずこの図書館から出て行こうとドモンが足を動かした、正にその時。
ドモンの後方の本棚が――正確にはその中の本が――崩れてきた。



「……ッ!」
咄嗟にドモンはそちらを振り返り、身構える。
……が、次の瞬間ドモンが見たものは本の山の上で寝転がり、「うにゃ〜?」等と声を上げる子供の姿であった。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:13:00 ID:r8rcZr1o
 
433名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:13:46 ID:888pqZ7d
 「……?? ここは何処でしょ〜?」
その子供がキョロキョロと周囲を見渡しながらそう言い放つ。
しかし、視線の定まらないこの子供の様子を見る限りそれはどうやら目の前のドモンに問いかけているのではなく、
独り言のようなものらしい。その様子に多少呆れながら、ドモンは子供の質問に答えてやる。
「……ここは見ての通り図書館だ。それよりもお前、名は何というんだ?」
「んにゃ? エドはエドだよー」


 エドと名乗ったこの子供、ボサボサの髪は赤茶色で、肌は浅黒い。歳は精精十代の前半だろう。
着ている服はよれよれの白いTシャツ一枚と、黒いスパッツのみ。何とも貧相な格好である。
「ふむ、エド……か。しかしお前、何故またこんな所から出てきたんだ?」
御尤もな疑問である。状況から考えるに、エドはあの本棚の中から本を押し分けて飛び出てきたことになる。
仮にそうだとするなら、一体どうやって本棚の中の本を片付けることなく本棚の中に入り込んだのか。
「えぇー…………エドはビバップ号でアインと一緒に寝てたんだけど、起きたらこんなトコに居ましたー」
上に伸ばした右手をぷらぷらさせながら答えるエド。うん、元気でよろしい。
アインやビバップ号というのが何なのかは分からないが、おそらくエドは今の今まで眠り続けていた、という事なのだろう。
つまりあの空間から居眠りしたままの状態でワープさせられ、いきなり本棚の中にすっ飛ばされたというワケだ。
それだけ聞くと、何とも間抜けな話である。しかし、その話を聞いてドモンは沸々と怒りをたぎらせていた。
「エド、ひとつ聞きたい……お前は自分が今、どのような状況に陥ってるか分かっているか?」
「ん? ん〜〜〜〜」
首を捻り唸るエドだが、やがて返ってくる答えは「分かんにゃ〜い」というもの。
そのエドの答えによって、ドモンの怒りは密かに沸点を超えた。無論、怒りの矛先は眼前の子供へ向いてはいない。
その矛先が向かうのはこのゲームを仕組み、このような何も分からぬ子供までもを巻き込んだ螺旋王、そして……自分自身だ。


 (螺旋王とやらがこの世のものとは思えない超技術を持っている……? だからどうしたというんだ!
 そんな事はどうでもいい! 今確かにある現実は、目の前のエドのように多くの人々がこのゲームに巻き込まれているという事!
 だというのに俺は奴らの技術に驚き呑まれ、このような場所で時間を空費していた!
 今、この時にも無残に殺される罪無き者や、恐怖のあまり外道に堕ちてしまう者が居るかもしれないというのに!!)
だとするならば、今自分が成すべき事は何か? ……考えるまでも無い。
(この殺し合いのゲームの中、自衛の為に武器を取る者はいても、望んで殺し合いをするような者はそう居ない筈だ……。
 ならば、そのような者達が道を踏み外させないためにも、弱者を保護し、守り抜かねばならん……!
 シャッフル同盟のキング・オブ・ハートとして!!)
435名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:14:24 ID:r8rcZr1o
 
 ちなみにドモンが一人黙考していた際、エドは「ところでお名前なーんでーすか〜」と聞いてみても返事が無かったので、
周囲を見渡したり、本を摘み上げたり、上半身をぐにゃぐにゃさせる妙な踊りを踊ったりして暇をつぶしていた。
……が、突然ドモンに首根っこを引っ掴まれ、そのまま担ぎ上げられた事により、その踊りは中断させられる。
「にゃ?」
「兎も角、善は急げだ……エド! 俺の名はドモン・カッシュ! ネオジャパンのガンダムファイターだ!!
 今、お前が……いや、俺たちがどのような状況に巻き込まれているかはこれからの道中で説明する!
 少々揺れるかもしれんが我慢しろよっ!」
そう叫ぶや否や、ドモンはエドを担いだまま、疾風の如き速さで走り出す。
ほんの数秒で図書館の外へと飛び出し、そのまま道沿いに走り続ける。


「うひゃおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜っ!」
「待っていろ螺旋王……! 俺は必ずやこの殺し合いを阻止し、貴様を倒す! キング・オブ・ハートの名にかけてぇっ!!」












『さて皆さん、皆さんはバトルロワイアルというものをご存知でしょうか。
 バトルロワイアル。それは即ち、殺し合い、殺し合い、最後の一人となるまで殺し合い抜く、恐怖のゲームです。
 そしてそんな殺し合いの場へと我々もよく知る一人の青年が召還されます――そう、「キング・オブ・ハート」ドモン・カッシュ!
 果たしてドモンは、この恐怖のゲームの中、どのような人々と出会い、心を通わせ、拳を重ね合わせるのでしょうか!?
 そして…………自らのよく知る二人の漢、
 今は亡き人となった筈の二人の漢の存在を知った時、ドモンは一体どうするというのでしょうか!?
 さぁ、それではいよいよ始まります!!
 ガンダムファイト特別編! アニメキャラ・バトルロワイアル2nd!! レディィィーッ! ゴォーーッ!!』
437名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:15:23 ID:or7kO67T
 
438名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:16:50 ID:888pqZ7d
【C-4/図書館付近/1日目/深夜】
【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:健康。疾走中。
[装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ)
[道具]:なし
[思考]
基本:他の参加者と共にバトルロワイアルを阻止し、螺旋王をヒートエンド
1:他の参加者を探しつつ、エドに現状を説明する。
2:弱者や、望まずゲームに乗っている人間を(場合によっては拳で)説き伏せ、保護する。
3:喜んで自らゲームに乗るような者は容赦なく鉄拳制裁。
 ※本編終了後からの参戦。
 ※参加者名簿に目を通していません。


【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:健康。ドモンに担がれている。
[装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ)
[道具]:なし
[思考]
1:ドモンの疾走のスピードに大喜び中。
 ※OP中爆睡していたため、自分の置かれた状況を把握していません。
440名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 20:19:10 ID:888pqZ7d
441 ◆/eRp96XsK. :2007/09/23(日) 20:31:06 ID:uv95H+Gt
ってミス発見orz
>>439

>【C-4/図書館付近/1日目/深夜】
を、
>【B-4/図書館付近/1日目/深夜】

に修正します。
442 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:32:45 ID:EDH2XTXp
言峰とパズーを投下します。
443最凶で最低で最悪の災厄 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:37:22 ID:EDH2XTXp
言峰綺礼、彼が気がついた場所は神社だった。
「クク。この神父が神社か。中々に皮肉が利いている。……さて、とりあえずギルガメッシュの奴を探す「おいあんた!シータを知らないか!」とする……」

言峰の独白は不意に一つの言葉に途切れる。
そこに居るのは一人の少年だった。
「……子供か。どうした?この私に何か用か。残念だが私は神父でね。仏なら宗教違い「そんなんじゃねえ。女の子を!シータを探しているんだ」

再び言峰の言葉を遮る。
男は酷く焦っている。それは言峰にも容易に見て取れた。

「……残念だが私はお前が始めてだ」
「……そうか。………じゃあな!」
「だが貴様が神に祈ると言うのなら、伝言を受け持つぐらいはしてやろう」

背を向けて走り出そうとする少年に、言峰は一言声をかけた。
444最凶で最低で最悪の災厄 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:39:36 ID:EDH2XTXp
「えっ」
「これでも神職でな。神に祈る者の願いを無碍にするわけにもいかん」
言峰の言葉は、少年にとっては予想外の物だった。
「えっ。ありがとう。俺はパズーだけど……シータに会ったら『必ず助けてやる。だから心配するな』って言ってくれ」
「必ず助けてやる……そうか。分かった。もし私がシータに出会えば必ず伝えてやろう」
「サンキュ。じゃあ行くぜ」
「待てっ!」
シータを探しに走り出すパズーを再び止める。
それにはパズーも足を止める。そのパズーに言峰は話しかける。
「必ず助けるといったな。それはつまり、『シータ以外の全てを殺す』と言う事か」
「えっ?」
言峰の言葉に、パズーは一瞬凍りつく。
しかし、言峰は構わず続ける。
「そうだろ。私達は最後の一人になるまで殺し合う。そして、お前はシータを生かすという。それはつまり、私や、あの場にいたシンヤという男。
いやそれだけじゃない。あの場には年端も行かぬ少女も居たが、それを全て殺すということだ。
何の罪もない、ただこの最凶で最低で最悪の災厄に巻き込まれたただの被災者に過ぎぬ者に一切の情を省みず、
自らの手で、苦痛に歪み、命を請う少女の胸に、容赦なく刃をつきたてる。返り血を浴びたまま殺し続け、最後には自分自身すらをも殺す。
この場で誰かを『必ず助ける』と言うのはそういうことだ」
「ちっ、違うっ!俺はみんなを助けるんだ!絶対に、そしてあの殺し合いを仕掛けた奴を倒すんだ」
「……全てを救う。全く持って綺麗な言葉だ。……なら問おう。お前はその信念を捨てずに最期の時まで全てを救うを誓うか。一切の後悔無く、
自身の誇りを捨てず、プライドを捨てず、理想を捨てず、絶望に墜ちようが前を向くと誓うか」
「……当たり前だっ!シータを救う為に他の人は殺すなんてしない!俺は絶対にシータもだけど、みんなを助けるんだっ!それに絶望なんてしないッ!!」
「……言い切ったな………………ならこれを渡そう。……私には要らぬ物だ」
445名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 21:40:19 ID:q4WVJYKU
 
446名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 21:40:29 ID:bjq02J0L
 
447名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 21:40:45 ID:uv95H+Gt
448最凶で最低で最悪の災厄 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:43:04 ID:EDH2XTXp
言峰の言葉に負けず、強く反論をしたパズー。
そんなパズーに言峰はあっさり過ぎるほどあっさりと退き、一本の短剣を投げ渡した。
「餞別だ。貴様がそういっても、必ず悪というものは存在する。その悪を殺さぬにしても、跳ね除ける武器は必要だ」
「……ありがとう」
「礼など要らぬ。さっさと行け。シータと言う女が殺される前にな」
「って、あんたの話が長いからだろっ。じゃあなっ!」
その言葉を最後に、パズーは夜の闇に姿を消す。


「必ず救うか。その気持ちを忘れるな。感情を捨てるな……愛する人など、死してからでは気持ちなど永遠に分からぬのだから。
触れ合う事など永遠に出来ぬのだから」
自らもバックから一本の槍を取り出し構え、言峰も一人夜の闇へと姿を消す。

パズーが持つ剣は皮肉にも、魔女が持つ契約破りの短剣。
言峰が持つ槍は皮肉にも、正義を貫く少年の槍。
二人の持つ武器は、あまりにも本来の所持者とは別人過ぎた。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 21:44:08 ID:uv95H+Gt
450最凶で最低で最悪の災厄 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:45:03 ID:EDH2XTXp
【H-4 市街地 一日目 深夜】
【パズー@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:荷物一式 未確認支給品1〜3
[思考]
1:とにかくシータを一刻も早く探す
2:言峰の言葉が気になる。だけど人は殺さない

【H-4 森 一日目 深夜】
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式 支給品0〜1(本人確認済)
[思考]
1:殺し合いの動向を様子見しつつ、ギルガメッシュを探す。
2:シータに会えばパズーの伝言を伝える。
451 ◆WyVk2HGxbg :2007/09/23(日) 21:46:28 ID:EDH2XTXp
投下終了です。
452名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 23:26:22 ID:AdjfQjlo
どれもしらね。
なんなのこれ?
453名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:06:40 ID:cszWwmT0

454 ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:06:42 ID:ouN6Cfds
 殺し合いの為に用意された街、その南西部にある学校。
 教師も生徒もいない校舎は暗闇と静寂に包まれていたが、つい数分前、一階の職員室に灯りが点いた。
 それからずっと、その部屋の中だけが絶え間ない騒音に晒されている。
「糞っ、何なんだよこれは! ふざけやがって……!」
 騒音の元は、バトルロワイアル開始と同時にここに転送された、間桐慎二だった。
 彼は虚空に罵声を吐き続けながら、周囲にある様々な物に苛立ちをぶつけている。 
 腕を振って机の上に積まれたプリントを散らしたかと思うと、側にある棚を思い切り蹴り付けて凹みを作った。
 ある程度整頓されていた職員室も、今では嵐が通ったかの様な有様だ。
 癇癪を起こした子供の様に暴れる慎二の姿は、余りに醜く無様である。
 これが、普段は色男の顔をして多くの女性に囲まれている彼の、本質の姿であった。
「なんで、なんで、僕がこんな目に!」
 しかし行動はともかく、慎二がパニック起こすのも止むを得ない事ではあった。
 ほんの短い間に起こった様々な出来事を受け止める程には、彼の精神は強くなかったのだ。

 あの膨大な閃光は、今でも脳裏に焼き付いている。
 高層ビルの屋上から天へ伸びた力の奔流は、慎二が従えていたサーヴァントを一瞬で滅ぼしたのだ。
 その凄まじい光景は、慎二に恐慌を起こさせるに充分だった。 士郎に見つかり、必死で非常階段を駆け下りる。
 有り得なかった。 悔しかった。 そして恐ろしかった。 少しでも足を止めれば、後ろからあの光に焼き尽くされると思った。
 転がるようにして階段を降り切ると、今度は目の前に巨大な影が現れた。 その時点で意識が途絶え──
455名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:06:53 ID:ikNCKp1U
 
456名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:07:10 ID:2lFesc7n
457名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:08:41 ID:cszWwmT0

458friend ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:08:59 ID:ouN6Cfds
 気が付けば、大勢の人間に囲まれていた。 ロージェノムが姿を現したのはすぐ後のことである。
 聖杯戦争の最中であるというのに、全く別の殺し合いに放り込まれてしまった。
 しかもその中には、今や慎二にとって最も恐ろしい存在となった衛宮士郎もいるのだ。
「畜生、どうしろって言うんだよ……!」
 士郎と戦うということは、あの反則じみたサーヴァント、セイバーをも相手にするということだ。
 人間がアレに勝つ方法など、何一つ思い浮かびはしない。
 さらに士郎以外にも、それこそ宝具に匹敵する閃光を放った、あの鎧の男の様な存在がいるかも知れない。
 これから始まる戦いは、もはや人間の力を超越したレベルで行われることだろう。
 そんな中で、何の力も持たぬ"一般人"でしかない慎二が、どうやって生き延びろというのか。
 他者と戦うことすら出来ず、一方的に踏み潰されるだけではないのか。
「なっ…… 違う、僕は……!」
 もはや思考さえ纏まらなくなった。 何の力も持たぬという一瞬前の考えを、首を振って打ち消す。
 間桐慎二は力を持っているのだ。 間桐ならば力を持っていて当然なのだ。 ところが当然あるべきその力が、慎二にはない。
 力が必要なのだ。 間桐慎二が間桐慎二である為に。
「……そうだ、バッグを」
 そこで初めて、自分の隣に置いてあったデイバッグを意識した。 中を改めれば、生き延びる為に有用な何かが見つかるかも知れない。
 それは慎二が恐慌の果てにようやく取った、生存へ向けた前向きな行動だった。
 サーヴァント相手でも通じる武器があれば……などと考えながら、ファスナーを開けて手を突っ込む。
 地図、名簿、ペン、メモ帳、缶詰、水── 色々と出てくるが、どれもいま慎二が欲しいと思う物ではないので、個々の物品をいちいち確認はしない。
 さらにバッグを漁ると、何か尖った物が手に当たった。
「痛っ! 何だ……!?」
 もしかすると武器かも知れない。 今度は用心してその硬質な物体に触り、ゆっくりとバッグから取り出してみる。
 しかし期待と異なり、それは慎二の力となる様な物ではなかった。
「なんだこりゃ。 水晶……?」
 それはまさしく水晶だった。 加工された物であろう、やたらと棘棘しく、形状は綺麗に左右対称で、紅い光をその内に留めている。
 観賞用だろうか? 何にせよ、大して役に立つ物とも思えなかった。
 仮に魔力などが籠められたアイテムだったとしても、慎二は魔力を感じ取ることが出来ないので、判断は不可能だ。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:10:00 ID:cszWwmT0

460名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:11:01 ID:88ckKL0g
  
461friend ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:11:30 ID:ouN6Cfds
「ったく、もっと良い物入れとけよ……! 他には無いのかよ」
 無用の長物として放り捨てられた水晶は、乾いた音をたてて床の上を滑ってゆく。 それを見もせず、慎二はさらにバッグの奥を探った。
 その腕がまた何かに触れる。 今度は先程の水晶よりも遥かに大きな物体だ。
 今度こそは当たりかと、期待を滲ませながらその何かを引き摺り出してみるが……
 突然、"それ"が重くなった。
「うわっ!?」
 "それ"はゴトンと音をたてて床に落ちた。
 咄嗟に手を離せたのは奇跡的な事で、一瞬でも遅れていれば指を潰されていただろう。
 慎二は鼓動を早めながら、バッグからはみ出した"それ"をまじまじと見詰めた。 
 まだ部分的にしか露出していないが、"それ"は明らかにバッグの容量を越える大きさを持っていた。
 見える部分だけなら、太い直方体の様な感じだ。
 表面は完全に白い布で覆われ、さらにその上から黒いベルトを巻き付けてある。
「何だこりゃ……?」
 至極当然の疑問だった。 どうやってバッグに入っていたのかも気になるが、やはりそれよりもこの物体の正体が知りたい。
 答えを得るべく、慎二はさらに"それ"を引き摺り出そうとするが、持ち上げようとしても結構な重さがある。
 面倒なので、バッグの方を持って剥がすようにしていった。
 程無く、"それ"は全容を現した。
 "それ"は余りに特徴的かつ印象的な形状をしていて、慎二の目は強く引き付けられた。
 この時、バッグの中から一枚の紙が床に落ちたが、それには気付かなかった。
「十字架……?」
 慎二が呆然と呟いた、その通りだった。
 それは白い布と黒いベルトで包み込まれた巨大な十字架だった。 全長は慎二の背丈を裕に越え、重量もそれ相応になる筈だ。
 慎二はその威容を暫く眺めていたが、やがて、忌々しげに顔を歪める。
 脳裏に浮かんだのは、自らが磔になる為の巨大な十字架を背負って歩く聖者の姿だった。
「なんだよ、懺悔でもしろってのかよ。 ふざけやがって……!」
 懺悔する事など何もない。 神の救いを乞うている訳ではない。 慎二は横たわる十字架を思い切り蹴り付けたが、爪先が痛くなるだけだった。
 他に役立つ物はないかとさらにバッグを覗き込むが、もう何も入っていなかった。 慎二の支給品は、紅い水晶と、巨大な十字架だけだった。
462名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:12:32 ID:88ckKL0g
  
463friend ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:12:59 ID:ouN6Cfds
「糞ッ! どうしろってんだ、武器も無しに生き残れってのか……!」
 空のバッグを床に叩き付けて、慎二はまた喚いた。
 何もかもが上手くいかない。 自分がこんな目に遭う理由が解からない。 理不尽だ。
 激情のままに荒い息を吐いていた慎二だったが、やがてそれも治まる頃には、気の抜けた様な顔になっていた。
 もう独りで怒る事にも疲れていた。
 散らかされた床に座り込み、そのまま仰向けに寝転がる。 ぼんやりと天井の照明を眺めた。
 もう考えるのも億劫だったが、それでも死ぬのは嫌だった。
 聖杯戦争に勝って叶えるつもりだった幼い頃からの悲願、それを果たすまでは絶対に死にたくない。
 では生き延びる為にはどうすればいいのか、それが判らない。
 人外の域に達した者達の足元を潜り抜け、しぶとく生き抜いていくには何が必要なのか。
 武器が欲しかった。 しかし無い。 あるのは紅い水晶と巨大な十字架だけ。
 防具が欲しかった。 しかし無い。 食料の缶詰が盾になって致命傷を防ぐなど、映画でも有り得ない展開だ。
 戦力が欲しかった。 しかし無い。 自分に武器はいらないから、せめてライダーの様に思い通りに動かせる誰かがいれば……

「────!!」
 がばと跳ね起きる。
 それは、まさに天啓の如き思い付きだった。
(そうだ…… 人を使えばいいんじゃないか!)
 今の間桐慎二には戦う力は無い、それは悔しいが認めよう。 しかしそれは戦う術が無いという事とイコールではない。
 では、誰を使うのか。 この殺し合いに参加する数十人の中で、慎二が最も操り易い人物とは。

 それは、衛宮士郎に他ならない。

(あいつだ、あの馬鹿なら盾にできる!)
 ライダーを倒された直後であるから殊更に恐れていたが、考えてみれば、この戦いは聖杯戦争とは全く別のものなのだ。
 ならば、敢えて士郎と敵対関係を続ける意味など無い。
 そして、士郎が馬鹿でドが付く程お人好しな性格であることは、今更言うまでも無いことだ。
 大方、この殺し合いを止めようと今も無駄な努力をしているのだろう。
 そこに取り入れば良い。 こちらに敵意が無いことを示せば、まさかあの士郎が問答無用で襲い掛かりはしないだろう。
 セイバーの方が気がかりだが、幾らなんでもサーヴァントを失い完全無防備な相手を殺そうとする事は…… 多分、無い。
464名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:14:27 ID:2lFesc7n
465friend ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:14:39 ID:ouN6Cfds
 そうして協力の姿勢を見せ、士郎の信頼を得て行動を共にする。 そうすればセイバーに守られているのと同じ事だ。
 あの宝具があれば大抵の敵は返り討ちに出来よう。 
 やがて用が済めば、愚かにも油断している士郎を後ろから殺してしまえばいい。 マスターを失ったセイバーは、時間がたてば消滅する筈だ。
(ハハ、そうだ、それだよ衛宮! 僕がわざわざ苦労する必要は無い、むしろライダーを消しやがったお前には僕を守る義務があるんだ!)

『やあ衛宮、久しぶりだね。 突然だがお前とは一時休戦することにしたよ。 力を合わせてこの難局を乗り越えよう!』
『おお、さすが慎二だ! そういう風に言ってくれると信じてたぞ! 持つべきものは友達だな! 抱いて!』
『お待ち下さいシロウ! その者はライダーのマスターであって聖杯戦争における敵同士! 馴れ合うべきではありません!』
『そう言うなよセイバー! 慎二は信頼できる漢だぞ!』
『そうさセイバー、僕の目を見るんだ。 この目のどこに疚しい心が見える?』
『おお、なんという澄み切った瞳だ! 貴方のような方が嘘偽りを申す筈が無い! いや、むしろ貴方が私のマスターだ! 抱いて!』

 脳内シミュレートは完璧だった。
「よし待ってろよ衛宮、すぐ行くからな──!」
 長い煩悶の果てに、ようやく見つけた希望である。 目標が定まれば行動は迅速にすべきだ。
 先程散らかした支給品をさっさとデイバッグに積める。
 水晶をどうするかと迷ったが、持ち帰って女にプレゼントする程度の価値はあると思い、やはりバッグに入れた。
 そして照明も消さぬまま職員室を飛び出し、校舎の入り口まで一直線に走る。
 自転車でも置いてないかと考えながら、靴箱の列を抜けて──

 目の前に、闇が広がった。

「…………」
 別に、完全なる闇という訳ではない。
 無人の街でありながら街頭などはそこら中で灯っているし、学校を出て移動する上では何の問題も無いだろう。
 それでも慎二は、多くの殺人者がうろついている闇夜の中に、一人で歩み出す勇気を持たなかった。
「……やっぱり、あいつの方から僕を探すのが筋ってもんだよな」
 わざわざ声を出して自分を納得させると、くるりと踵を返して職員室に戻った。
466名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:14:43 ID:cszWwmT0

467friend ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:15:49 ID:ouN6Cfds
【H-2 学校内 一日目 深夜】 
【間桐慎二@Fate/stay night】 
[状態]:健康 
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料:缶詰)/テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考] 
1:とりあえず学校に居座る
2:衛宮、早く来ないかな
3:死にたくない、絶対生き延びる
[備考]: 
※参戦時期はアニメ12話直後、バーサーカーと遭遇した瞬間。
※名簿も地図も確認していません。
※士郎と一緒にセイバーがいると思っています。
※クリスタルをただの観賞用の水晶だと思っています。
※十字架が武器であることに気付いていません。

[パニッシャー@トライガン] 
 十字架の形をした「最強にして最高の個人兵装」。 ウルフウッドが使用していた。
 縦棒の長い方が12ミリの重機関銃、反対側の短い方がロケットランチャーとなっている。
 中央部にはドクロを思わせる形のグリップがあり、機銃とランチャーを切り替えて操作する。
 普段は白い布に包まれ、さらにその上から取っ手を兼ねた黒いベルトを幾重にも巻き付けている。

※パニッシャーは職員室に放置。
※職員室の散らかされた床にパニッシャーの説明書が落ちています。
468名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 01:15:55 ID:cszWwmT0

469 ◆4XfkJ/Yphc :2007/09/24(月) 01:17:08 ID:ouN6Cfds
以上です。
>>454で忘れてしまいましたが、タイトルは「friend」です。
 「ほぇ?」

 藤乃静留は踏みしめる大地がないことに戸惑って思わず疑問の声をあげて落っこちた。

 「うわぁあぁご、ごめんなさい!」

 ジャグジー・スプロットはいきなり目の前であがった水柱にいつものよう泣いて怯えて謝った。

 ■

 落ちた高さがそれほどではなかったためだろう。会場に飛ばされた直後に水面に叩きつけられるという手荒い歓迎を受けるはめになった静留は、不幸中の幸いというか全身ずぶ濡れになっただけで済んだ。

 「いやほんまにありがとうございます。」
 「い、いえその、ええと・・・・・・たいしたことはしてませんし。」

 ジャグジーの言ったことは謙遜でもなんでもなく事実である。静留は自力で泳いで岸に渡ってきたし、ジャグジーがしたことはせいぜい海から上がる時に手を貸したぐらいだ。
 それから軽い自己紹介をして今に至る。

 「ところで、スプロットはんはこのゲームに乗るつもりで?」
 「ぼ、僕ですか?」

 ジャグジーは静留の質問で自分が殺し合いに強制的に参加させられていることを思い出した。
 現実感がなかったし、バトルロワイヤル開始直後に水難事故未満に遭遇したこともあってすっかり忘れていたのだ。
 ひょっとしたら、忘れようとしていたのかもしれないとジャグジーは思った。そこで思考が別の方向へ行きそうだったので、頭を振って改めて考えてみる。
 自分は螺旋王だとか名乗った主催者の言われた通りに殺し合いをするか。
当然、答えはNOだ。ジャグジーはフライング・プッシーフット号に戻って『線路の影をなぞる者』と黒服の連中を撃退しなければならない。
あそこには大切な仲間たちが、友人と呼べるほど親しくなった人たちがいる。ジャグジーはその人たちを守るため戦うと誓ったのだ。
471名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:11:38 ID:SFWWrHSB
         
472名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:12:25 ID:2lFesc7n
 「僕は血を見るのが嫌いだし、骨が折れる音を聞くのも本当に怖いから、その、だから、殺し合いなんてしたくないです。あの、ごめんなさいすいません。」

 そこでなぜか泣いて謝るのがジャグジーがジャグジーたる所なのだろう。
 静留は頭を下げるジャグジーをじっと観察する。
なんというかあまりにも情けない。顔に刺青をしていることからギャングか何かかと思ったが、そういった裏社会で生きていける人間にはどうしても思えなかった。
 だから、少し意地悪な質問をすることにした。

 「もし、ゲームに乗った人が襲い掛かってきたらどうなさいはるん?」
 「えと、その、説得します。」
 「説得に応じなかったらどうしますえ?」
 「そ、その、に逃げます。」
 「逃げても追いかけて来たらどうしますえ?」

 ジャグジーは考えた。説得しても逃げても追いかけてくる追跡者を。
 その場合はきっと追跡者は凶暴か凶悪なやつだ。そいつはきっと僕や、僕以外の人たちも殺そうとするだろう。
 ジャグジーは一回深呼吸をして、なけなしの勇気を振り絞る。次の自分の言葉が怖くて目からまた涙があふれてきた。

 「どうしても駄目だっていうなら、殺します。藤乃さんや、他の戦えない人とか、そんな人たちのために。」

ジャグジーは人殺しをしたことがある。間接的ではあったが、自分は殺人者なのだ。
だから人殺しは自分がする。できるだけしたくないが、犯罪者でもなんでもない一般人を、特に静留のような普通の人を殺人者にはしたくなかった。
ジャグジーはそんな自分の偽善者っぷりに嫌悪しながら言葉を重ねる。
 
「こんなことを仕組んだ螺旋王って人にも、抗います。殺し合いなんて間違ってると思うから。」

 ジャグジーは嫌われたと思った。自分は最悪の場合、人殺しをすると告白したのだ。
 静留がいったい今どんな顔をしているのかが怖くて、ジャグジーは顔を上げることができなかった。

 そして、そんなジャグジーの目の前に急に刃物が『出現』した。
 ビビッて驚いて顔を上げると、その刃物を持っていたのは静留だった。
474名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:14:11 ID:Dbwysa0G
 
「ふ、ふふふふふっ、藤乃さん!?」
 「う〜ん、なんでか清姫は呼び出せへんなぁ」

 何時の間にか静留の手には薙刀に似た武器―――エレメントが握られていた。
 静留は調子を確かめるように数回エレメントを振ると、『出現』させたのと同様にエレメントを『消失』させた。

 「え、ええええええええ!?ななななななななななな、なんですかソレェェェェェェ!」
 「ただの手品どすぇ♪」
 「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 つい先ほどまでの決意は何だったのか。ジャグジーは腰を抜かしてまた泣いていた。
 静留はオホホホホと口を手で隠しながら笑っている。予想した通りのリアクションにご満悦のようだ。

 「まぁ詳しい話は道すがらでどうどすか?正直この格好のまんまだと風邪を引いてしまいそうなんどす。」
 「え、ええその、そ、そうですね。」

 返事をしてから、ジャグジーは静留が水浸しのままだったということを思い出した。
 静留が近づいてジャグジーに手を差し出す。ジャグジーは戸惑ったものの手を取って立ち上がった。
 綺麗な手だと、ジャグジーは思った。

 「そんなに見つめられると照れますなぁ。」
 「あ!いえそのごめんなさいすいません!」

 空いているほうの手を頬に当て、静留はいかにも私は照れてますといったポーズを取る。
 一方のジャグジーは顔を真っ赤にしながら顔を横に振っている。泣きながらすごい勢いで顔を右へ左へと振る姿は実に健全で微笑ましい。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:14:57 ID:88ckKL0g
  
 「さて、そろそろ出発しますえ。ホンマに風邪引いてしまいそうやわ。」
 「出発って、どこに。」
 「そこ。」

 ジャグジーの疑問に対し、気軽に静留が指さした先はジャグジーにとって予想した通りのものだった。
 気がついてはいたが、あえて無視していたものである。

 「あの、すごい怪しいですよ」
 「でも他にめぼしい所は見当たりまへんし、行くだけ行ってみましょっか。スプロットはん。」

 それだけ言って静留は歩き始めた。
 ジャグジーも遅れないように慌てて歩を進める。

 「絶対怪しいだよなぁ、あれ。」

 再度呟いたジャグジーの目には見事にライトアップされた豪華客船が写っていた。
 平時ならば歓声を上げて喜んだだろうが、今の状況を考えると怪しくて近づきたくないのがジャグジーの本音である。
 しかし静留の着替えのことを考えると、確かに豪華客船以外めぼしい所は見当たらない。
 と、そこでジャグジーはある事に気づき静留に声をかけた。

 「あの、藤乃さん。」
 「はい、なんどすか?」
 「僕のことはジャグジーで結構です。その、呼び捨てでいいですよ。」

 ジャグジーの友人たちはジャグジーのことを呼び捨てにするし、ジャグジー自身そちらの方が気が楽だった。
 静留に限らず、スプロットさんとか呼ばれるのはなんとなく小恥ずかしいのだ。

 「分かりましたえ。でも呼び捨てやと恥ずかしいんで、ジャグジーはんで堪忍なぁ。」
 「あ、はい。分かりました。」

 ジャグジーは少し嬉しそうにうなずくと、静留の後について豪華客船へ向かった。
 その刺青の入った顔にはまだ涙の痕が残っていたが、悲痛な決意を告白した時の危うさは消え去っていた。
478名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:16:17 ID:2lFesc7n
479名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:16:25 ID:88ckKL0g
  
480名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:18:33 ID:2lFesc7n
【E-3/豪華客船付近/1日目/深夜】
【ジャグジー・スプロット@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康。
[装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ)
[道具]:なし
[思考]:
基本思考:主催者に抗う。
1:静留と一緒に行動する。
2:できるだけ殺したくない。
3:2が無理の場合、自分が戦う。
[備考]:
※ 参戦時期はフライング・プッシーフット号事件の最中、ラッド・ルッソと出会った直後あたりで
※ 参加者名簿、地図、支給品にはまだ目を通していません
482名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:19:56 ID:88ckKL0g
  
蝕の祭とはルールが違う。
主催者を倒し、首輪を外せばこのゲームから脱出することは可能なのだ。

 だから、今はまだこのゲームには乗らない。
 一刻も早くなつきと合流して、なつきを守る。なつきの姿は、螺旋王とやらが広間でルールを説明した時に見つけた。
余談だが、静留にはなつきが包帯でグルグル巻きのミイラ姿になっても見つけることができる。

 そしてなつきを守れなかったら、その時こそこのゲームに乗る。
 螺旋王は億万長者にでも不老不死にでもすると言った。ならば死者の蘇生も可能かもしれない。
 しかし死者の蘇生については確信がない。可能かもしれないだけで、事実可能かどうかなど確かめようがないのだ。
 だから、今はなつきを探す。

 それが藤乃静留が修羅にならなかった理由である。

 「くしゅん。」
「だ、大丈夫ですか!」
「おおきに、少し急ぎますえ。」

 何はともあれ着替えは必要であった。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:23:30 ID:Dbwysa0G
 
485名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:25:30 ID:UPngwTi4
 
486名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:26:37 ID:To2MIRFY
487名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 02:27:29 ID:cszWwmT0

【E-3/豪華客船付近/1日目/深夜】
【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:健康。(ただしずぶ濡れ)
[装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ)
[道具]:なし
[思考]:
基本思考:なつきを守る。
1:なつきを探す
2:なつきを傷つけるのは許しまへんえ
3:着替える
[備考]:
※参戦時期は奈緒に合わせて蝕の祭の結果がナシになった所ぐらいを意識しましたが、他のタイミングにも対応できるようにした(つもり)なので後続の書き手さんにお任せします。
※参加者名簿、地図、支給品にはまだ目を通していません
489名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 03:57:38 ID:p/n/rM74
 
490名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 03:59:32 ID:BjQS0Nii
491光を求めて影は ◆ZJTBOvEGT. :2007/09/24(月) 04:00:47 ID:qf6HhZnA

「どうしろってのよ」
前方に広がる昏い川を見下ろしながら、鴇羽舞衣は嘆息した。
どんな望みも叶えてやる…あの男はそう言っていたが、だからなんだというのか。
そんなものは、すでに失ったというのに。
腕の中から巧海が消えてなくなった瞬間に、たったひとつ抱き続けた願いは消え失せたのだ。
母に託された分まで、弟に幸せを。
欲しいものはそれだけだった。
だからもう、なにもないのだ。
自分には、なにもない…

(お姉ちゃんの、本当に欲しいものは、なに?)

「なんにもない、なんにも、ないよ」
望むもの、欲しいもののために殺し合え。
今更、そんなことを言われたって。
戦う理由も、生き抜く理由も、今の舞衣にはなかった。
歩き出す。どこに行く気か、自分でもわかりはしない。
なにをしていいのか全然わからないし、考えることも億劫だった。
とにかく今は歩きたい。雨の中、ついさっきまでそうやっていたように。
その途中いきなり意識が途切れたと思ったら、こんな所に飛ばされて、
濡れた制服もそのままに舞衣は今ここに立っている。
そういえば、殺し合いの説明を受けたときにも、たくさんの人がいたっけか。
あの人達は一体どうするのだろうか…殺し合いに、乗る? 乗らない?
乗っている人間が近くにいたら、自分はきっと殺される。
わかっていても、それをどうこうする意志がこれっぽちも湧いてこない現実。
もしかしたら、死んでしまうのもそれはそれでいいかも知れないとすら思ってしまっているのだ。
巧海は死んだ。命も、殺した。
自分だけ生きているのは、おかしい。
この思考に脈絡はない。ただ、そう思ってしまうだけだ。
鴇羽舞衣は致命的な空っぽに侵されつつあった。
だから、出会い頭にナイフを突きつけられたとて、大して驚きもしなかった。

「う、うわぁぁぁっ」
路地裏の曲がり角で出くわした少年はひきつった悲鳴を上げ、
持っていたナイフを突き出してきたのだ。
上半身裸の上に薄汚いジャンパーを羽織った少年。

「う、う、動くなよ、本気だぞ」
年下か。背は舞衣よりわずかに低い。
がちがちと奥歯を鳴らしながら目玉をひんむき、上目づかいで見上げていた。
まったく、ひどい顔である。
従わない理由も思いつかないので、舞衣は素直に動きを止め、
少年の次の言葉を待つことにする。

「き、きみは、殺し合いに、乗っているのか?」
「…乗ってないわよ」
正直な答えである。
もう、乗る意味がないのだから。
というか、どうでもいい。
492光を求めて影は ◆ZJTBOvEGT. :2007/09/24(月) 04:02:32 ID:qf6HhZnA

「そ、それじゃあ、見せてよ」
「なにをよ」
「乗ってない証拠だよっ。
 カバン遠くに捨てろよ、武器入ってんだろぉ」
言われてみれば、そんなものもあったか。
いつの間にか持たされていたデイバッグの存在を思い出し、
やたらめったら怒鳴り声を上げる少年の指示に従い、脇に放り捨てる。

「これでいい?」
「ああ」
少年はうなずいた、が、ナイフを下ろさない。
突きつけた姿勢のまま、一分ほど経過してしまう。

「用がないなら、あたしは」
「ま、待て」
威嚇するように、ナイフで刺すような仕草を見せる少年。
だがその腕もがたがたと震え、いまにも舞衣を制するそれを取り落としてしまいそうな有様。
見ているうちに頬から、鼻から汗が垂れ、呼吸の乱れも始まった。

「まだ武器を隠してたら…隠し…隠してるだろ。
 出せよ、武器…出してくれよ」
冷めた頭で舞衣は思う。
ああ、こいつは同じだ。
Hime同士の戦いに追い込まれ始めた頃のあたし達と同じだと。
誰かが誰かを狙ってると思ったら安心できなくなる。
そう、こいつの場合、たとえるなら…菊川雪乃と同じ。
考えてみれば当然も当然。
今ここがまさに、最後の一人になるまで戦わされる殺し合いの舞台なのだから。
ここにいるということは、イコール、例外なく自分達と似たような境遇にあるということ。

「あんた、この殺し合いを、どうしたいの」
ふとした興味で聞いてみる。
いきなりこんなところに放り込まれて、
どういう答えを出して、何をしようとしているのか。
答えることなく、少年は激昂した。

「武器を出せって言ってるだろぉ!」
「もう、ないわよ」
カグツチとエレメントのことは、説明したところで仕方あるまい。
どうせ手渡すこともできないし、使って抵抗する気もとくにないのだ。
もう、いろんな意味でつかれきっているのである。

「どうして出さないんだよ。
 武器、出せよ…おれ、本気だぞ。
 出さなかったら、おれ、あんたを」
「殺せばいいじゃない」
そこでついつい言ってしまった舞衣のなにげない一言は、少年を滑稽なほどにうろたえさせた。
目玉などは、ほとんど飛び出していたと言っていい。
勢いがつきすぎたしゃっくりのあまり、一人で呼吸困難におちいって死んでしまうかと思われた。
それでもナイフは放さない。放せないのか。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:02:50 ID:BjQS0Nii
494名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:03:44 ID:KZvZCa2W
495光を求めて影は ◆ZJTBOvEGT. :2007/09/24(月) 04:04:21 ID:qf6HhZnA

「うっ、ぐっ、ひぐっ…」
「あたしを殺せば、それっきりじゃない。
 それで安心じゃない」
早く死ぬか、後で死ぬか。
今の舞衣にとっては、所詮その程度の差でしかないこと。
戦わないなら死ぬだけで、そして、今の自分に戦う意志はないのだ。
ただ、武器を出せだの、隠してないかだの…
聞きたいのは、そんな言葉じゃない。
だから、重ねて同じ問いを投げかけた。

「あんた、この殺し合いを、どうしたいの」
「…ぶっつぶすんだよ。
 こんな、こんなくそったれた戦いなんか。
 あ、あに…兄貴なら、絶対そうする」
やっと、答える気になってくれたらしい。
呼吸を少しずつ整えて、一言一言、確かめるように言葉をつむいでいく少年。

(あたしが聞きたいのは、あんたの答えよ)

そう思った舞衣ではあったが、
ひとつの単語に反応せざるをえなかった。
彼女の今日までの人生がそうさせたのだ。

「あにき?」
「そうだ、兄貴だ。
 螺旋王に殺された、おれの兄貴だ」
「ラセンオウ…あいつに? じゃあ、最初に殺された、あの変な白い…」
「違う、あんなのと一緒にするな!」
「…ごめん」
少年が目の色を変えた。
舞衣も思わず謝ってしまう。

「兄貴は、おれに空を見せてくれたんだ。
 ひとりじゃなんにもできないおれを、いつも笑ってはげましてくれたんだ。
 だから、おれ、兄貴のぶんまで兄貴にならなきゃ」
怒りの余韻のままに吐き出されていく想いの羅列は、
舞衣の脳裏に否応なく一人の少年の姿を描き出させていく。

(いつだってあたしは、あの子のために笑顔でいた)

「兄貴は絶対、願い事なんかにつられて誰かを殺したりしない。
 願い事は自分でつかむ、兄貴なら。
 みんな助けて、みんな仲間にして、みんな大グレン団に引き入れて、
 螺旋王をぶん殴りに行くに決まってるんだ…なのに」
想いはそのまま、少年にとっては涙となった。
くやしい涙か。かなしい涙か。

「おれ、こわいんだよ。
 戦わなきゃ、戦いを止めなきゃ、仲間を作らなきゃ…
 あんたを信じなきゃいけないのに、おれ、こわいんだ」
いまだナイフは突きつけたまま、うつむいてぽろぽろとアスファルトを濡らす、
弟と同じくらいの年頃の少年の姿は、舞衣に。
496名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:05:20 ID:BjQS0Nii
497名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:05:38 ID:KZvZCa2W
498光を求めて影は ◆ZJTBOvEGT. :2007/09/24(月) 04:06:05 ID:qf6HhZnA

(お姉ちゃんが、重いんだ)

巧海の姿を、重ね見させた。
守りきれず、目の前で天に散っていった弟、巧海の姿を。
…それでいいのか?
自分は今、この少年を弟の代用品にでもしようとしているのではないか?
巧海とすごしてきた日々は、そんなにも安っぽいものだったのか?
今見たものは、巧海にとっても、少年にとっても、侮辱そのものではないか?
多数の否定的見解が頭の中を右から左へ去来する。
これ以上、関わらないで去ってしまえ。
思考の世界では最終的にそれが支配的となったが、
わずかな少数派の掲げた主張が、舞衣の動きを決定づけた。

「鴇羽、舞衣」
「え?」
「あたしの名前。あなたは?」
「…………」
「信じてもいいよ、あたしのこと」
少年が自分に対してやったようなことを何度も繰り返し続ければ、
彼は間違いなく死ぬ。殺される。それも遠からずだ。
今の自分になら、それを止めてやることができる。
彼自身も明らかに誰かの助けを求めていて…
なにより、自分自身、少しでも弟の姿を重ねてしまった相手が死ぬのは絶対、嫌だ。
だから、舞衣は。

「…シモン」
シモンの決意に乗ることにした。





499名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:06:36 ID:BjQS0Nii
500名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:06:59 ID:KZvZCa2W
501名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 04:07:52 ID:vZ1Z8Avu
502光を求めて影は ◆ZJTBOvEGT. :2007/09/24(月) 04:09:55 ID:qf6HhZnA

【A-6 警察署付近 一日目 深夜】
【シモン@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康
[装備]:フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム0〜2つ)
[思考]
 基本:兄貴のように大グレン団を結成し、螺旋王を倒す
 1:まず舞衣と話し合う

[備考]
※カミナの死後から、それを乗り越える直前までの時期のどこかから参戦しています。
※かなり疑心暗鬼気味ですが、舞衣はある程度信用したようです。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。


【鴇羽舞衣@舞-HiME】
[状態]:精神的消耗、ずぶ濡れ
[装備]:
[道具]:デイバッグ、支給品一式(ランダムアイテム1〜3つ)
[思考]
 基本:シモンを手伝う
 1:まずはシモンと話し合い

[備考]
※巧海が死に、自分が命を殺したと思い込んだ直後(黎人に会う前)からの参戦です。
※「巧海を生き返す」ためゲームに乗るという手には、まだ思考が及んでいません。
※カグツチが出せないことに気づいていません。
503手山梨花:2007/09/24(月) 08:58:04 ID:waWPWuix
にぱ〜☆ みなさん、頑張れなのです……
みぃ☆、ボクも応援しているのです。
504復活のマオ ◇XzvibY6nJE (代理):2007/09/24(月) 10:55:50 ID:2eW5504u
「やぁお嬢さん。おっと、逃げないで。ボクの名前はマオ、怪しいものじゃない」

そうとも、逃げられてたまるか。ひとりでも多くの持ち物を確認しなければならないのだから。
それもあの螺旋王ってヤツの所為だ。まさかボクのヘッドホンを奪うとは……
これじゃあC.C.の声が聞けない! 周りのヤツらの心の声が入ってきちゃうじゃないか!
ボクの荷物の中にヘッドホンが入っていないかと念入りに探したけれど、それらしき物は入っていなかった。
だから、もしかしたら誰か別のヤツが持っていたりするのだろうかと思って、こうして人と接触することにした。
ヘッドホンが手に入ったら……その先はその時になってから考えればいい。
ボクとしてはゲームに勝ち残るのでも、螺旋王とやらを倒すのでも、あるいはゲームから脱出するのでも、
この際なんでも構わない。だが、全てはヘッドホンを手に入れてからの話だ。

だからボクは、目の前の少女に語りかける。
ボクの『ギアス』を使って、相手を引き込むために。
「あぁ、このバイザーかい? ちょっと目が不自由でね……でも大丈夫、よく見えているよ」
確かに不自由だ……聞きたくもない心の声が聞こえてしまうという不自由。
それでも、同時に相手の知られたくない弱みなどを知ることもできるから、一長一短だけどね。
さてと、そんなことよりも……始めようかな。

「ところで、お嬢さんはパズーという男の子を捜しているよね? あぁ、ドーラという女海賊のことも」
うん、まずはこちらに興味を持ったようだ。
知らない人間であるボクが、自分が探している相手を知っている。誰でも少しは興味を持つはずだよ。
「もちろん彼らの事は良く知っているよ。パズー君は勇敢にも、軍隊に追われているキミを助けてくれた少年だ。
 そして海賊のドーラ。キミとパズー君を追っていたけど、今はキミたちと行動を共にしている。
 それにムスカというのかい? 彼がラピュタで何をするか心配だ。飛行石を奪われてしまったからねぇ。
 そうだろう? リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ……リュシータ王女さん」
おっと、こちらに不信感を持ち始めたようだ。
それはそうだろう。探し人の名を知っているだけならまだしも、名簿に載っているそれとは違う自分の本名や、
『飛行石を奪われた』などの具体的な事柄を言い当てられれば、誰でも変に思う。
ラピュタとか飛行石とか、僕の聞いた事のない言葉ばかりだけど、今はそんなことはどうでもいい。
警戒して逃げ出してしまう前に、もう少し話してみないとねぇ。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 10:56:39 ID:4qQdO/Rw
506名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 10:56:56 ID:JNUHV358
 
507名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 10:57:13 ID:17cKm9g3
508復活のマオ ◇XzvibY6nJE (代理):2007/09/24(月) 10:58:41 ID:2eW5504u
「逃げるかい? それでもいいけど、キミはパズー君にどんな顔をして会うんだい?
 キミはパズー君に負い目を感じているようだ。自分の所為で危険なことに巻き込んでしまった、と思ってるんだろう?
 おっと、否定してもダメだよ。キミの心がそう言っている。『パズーを危険な目にあわせたくなかった』ってね。
 なのにキミは、パズー君を利用して軍の手から逃れたばかりか、彼を海賊の仲間にしてしまった……。
 いや、それよりももっと以前、キミがパズー君の元に降りてこなければ、彼は鉱山で平和に暮らせていたのにねぇ。
 でも今さら手遅れだよ。彼は海賊になって、危険な目に会い続けるだろうねぇ。そう、キミを助けるために」

効いてきたようだね。
無理もない。殺し合いをしろといきなり言われ、人が死ぬところを目の前で見せ付けられ、
そして、次に出会ったのが心を読む人間ときた。混乱して当然だよ。
もっとも、そうなってもらわないと僕が困るわけだけどね。
さて、もう少し弱みを突きたいところだけど、どうも深層意識が上手く読み取れないなぁ。
無理に意識を集中すると頭痛が……くそっ、あの螺旋王って男の仕業なのか分からないけど、妙な事をしてくれるよ。
……おっと、この情報は使えるかな?

「キミを助けたと言えば、ロボットの兵隊がいたっけ。そのロボットはキミが目覚めさせてしまったんだよねぇ。
 あのロボット、かわいそうにキミを守るために働いて、破壊されてしまったね。キミが呪文を唱えなければ、
 ロボットは目覚めなかったのにねぇ」

どうかな? 『助け』という言葉から、パズー君の他に連想したモノを突いてみたけど……
このお嬢さんはロボットがかわいそうだったと思ってるみたいだから、これも少しは効くだろうね。
……けっこうけっこう、思ったとおりだよ。
509名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 10:59:18 ID:17cKm9g3
510名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 10:59:54 ID:JNUHV358
 
511復活のマオ ◇XzvibY6nJE (代理):2007/09/24(月) 11:00:18 ID:2eW5504u
「パズー君も、ロボットの兵隊も、親方も機関手も、みんなキミに関わって不幸な目にあっているわけだ。
 いや、彼らだけじゃないね。ドーラって人もそうだろうねぇ。海賊船が壊されて、軍隊に捕まっちゃったんだっけ。
 息子たちも一緒にね。海賊は縛り首だよ、かわいそうに。みんなキミに良くしてくれたのにね。
 掃除や炊事を手伝ってくれたり、楽しく食事をしたりしたよねぇ?」

読み取った事を突きつけてやれば、人はそこからさらに別の思い出を、勝手に思い浮かべてくれる。
そして楽しかった思い出も、今の彼女にとっては苦いものを連想させる材料にしかならない。
ほら、もう少しだよ。

「うーん、ボクが思うに、キミはみんなと会わないほうがいいんじゃないかな? 日常生活ならまだしも、
 現状ではキミという不幸の種が一緒にいることは、彼らを危険に晒すことになりかねない。そう思わないかい?」

ふふ、迷っているようだね。
冷静に考えれば、この程度の弱みで迷う必要などないはずなのにねぇ。
殺し合いという現状で、自分ひとりしかいないということで、よほど心が弱くなっているようだ。

「さて話は変わるけど、ボクはこの殺し合いを止めたいと思っている。だけどボクひとりでは力が足りない。
 そうだろう? 誰だって、ひとりだけでは大したことはできないものだ。だが、ここにキミという女性がいる。
 キミが力を貸してくれれば、ボクはボクの持つ『力』を使って、殺し合いを早く止めることができるんだ。
 もちろんその過程で、ムスカから飛行石を取り戻すことができるかもしれないし、そうすればラピュタも悪用されない。
 そして全てが終われば、キミはパズー君と一緒に日常に帰る事だってできる」
512復活のマオ ◇XzvibY6nJE (代理):2007/09/24(月) 11:01:24 ID:2eW5504u
さて、もう一押し。

「キミが嫌だというならば無理強いはしないよ。でも、どうするのがいちばん良いか、よく考えて欲しいんだ。
 パズー君に会いたいという感情を優先させて行動し、また彼を不幸に巻き込んでしまうか、
 このゲームを止めるために行動し、彼を幸せにするか……どちらが賢い選択かをね」





……よし。上手くいった。思わず手を叩いてしまったよ。
もっとも、心の奥底までは突くことができなかったから、もしかしたら考え直してしまうかもしれないねぇ。
まぁ、その時はその時。いくらでも手の打ちようはある。
このお嬢さんに死んでもらって、それを利用してパズー君を……とかね。


さて、少々頼りないけれど手駒が手に入ったよ。
次はヘッドホンだ。あれさえ手に入れば、C.C.と一緒にいられるし、余計な雑音を聞かずに済む。
そしてその後は……その後はルルーシュだ。
ボクを酷い目に合わせてC.C.を横盗りして……C.C.は本当はボクのことが好きなのに!
だから、ここでキミを消してあげるよ、ルルーシュ。
C.C.を手に入れるためにね
513復活のマオ ◇XzvibY6nJE (代理):2007/09/24(月) 11:03:14 ID:2eW5504u
【C-1/ドーム球場/1日目/深夜】
【マオ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式 支給アイテム(1〜2個。マオのヘッドホンは入っていない)
[思考]
1.ヘッドホン(C.C.の声が聞ける自分のもの)を手に入れたい
2.ギアスを利用して手駒を増やす。手駒は有効利用
3.ゲームに乗るか、螺旋王を倒すか、あるいは脱出するか、どれでもいいと思っている
4.どれを選ぶにせよ、ルルーシュに復讐してからゲームを終わらせ、C.C.を手に入れる
[備考]
マオのギアス…周囲の人間の思考を読み取る能力。常に発動していてオフにはできない。
意識を集中すると能力範囲が広がるが、制限により最大で100メートルまでとなっている。
さらに、意識を集中すると頭痛と疲労が起きるため、広範囲での思考読み取りを長時間続けるのは無理。
深層意識の読み取りにも同様の制限がある他、ノイズが混じるために完全には読み取れない。
※死んだ後からの参加。ただし怪我は完治。

【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:迷い
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給アイテム(1〜3個。マオのヘッドホンは入っていない)
[思考]
1.ゲームを止めるという言葉を信じて、マオについていく
[備考]
マオの指摘によって、パズーやドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
※海賊船に乗った後〜ラピュタ崩壊前のどこかから参加。

【マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ】
本人支給。何の変哲もないバイザー。
光の透過率が悪くなるので、ルルーシュのギアスは無効化される。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:03:18 ID:17cKm9g3
515名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:03:48 ID:JNUHV358
 
516魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:05:16 ID:2eW5504u
「な……これは、一体……!? 」

地図に書かれたラインに分けられているエリアの半分近くを走る高速道路。
そのマスの一つ、【E-3】に枢木スザクは立っていた。
ところどころに黄色をあしらった白いスーツが夜の闇で一際目立つ。
彼の表情は困惑気味だ。

(落ち着け……確か俺は……そうだ。式に呼ばれていて……剣を、渡したんだ)

これまでの経緯を彼は思いだす。
エリア11の副総統、ユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士受勲の為の式に出席した自分。
騎士受勲の形式の一環として彼女の御前で跪き、自らの剣を差し出した自分。
なぜか、いつまで経っても物を言わぬユーフェミアに違和感を抱き、顔をあげた自分。
その先に映っていたものが、螺旋王という男と、素性もわからぬ民衆がいる部屋になっていた事に驚く自分。
そして次の瞬間、この高速道路の路上に立たされていた自分……。

(あの男は実験と言っていたが……殺し合いだなんて非現実的すぎる。第一、ここはブリタニアなのか!? )

スザクは急いで自分の身の回り、そしていつの間にか持たされていたバッグを調べる。
持っていた剣はもちろん。およそ自分の物と言える物は全て無くなっていたおり、
バッグの中からは、とても入りきらないと言える程の物品の数々。名簿に記された友人と上司たちの名があった。

(ルルーシュ、カレン、ジェレミア卿、ロイドさん……知っている名は4つ。
 その他の名前には……これといってブリタニアに関係しているとは思えない。気になるのは――)
「おーいそこのあんた、高校生か!? 俺の話を聞いてくれ! 」

■ ■ ■
517名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:05:52 ID:17cKm9g3
518名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:06:13 ID:9syjyzln

519魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:06:17 ID:2eW5504u

高速道路の壁にもたれながら、2人の男が横並びになっている。
片方の年配の男が吸う煙草の煙が夜の闇と、彼らの上空にある備え付けの高速道路用電灯で一層映える。
男は青年に煙草を勧めるが、青年は自分が未成年であることを理由に、丁重に断った。

「――なるほど。お前さんの知り合いや、その関係、世界は大体わかった。とりあえず全部信じてみよう。
 つまりお前さんの世界では、日本という国はあって無いようなもんなのか」
「ええ……7年前の降伏宣言で日本はブリタニア領となった。今ではイレブンと呼ばれています」
「それで最初に俺の出身地を確かめてきたんだな?
 まぁ俺もいきなり日本語で話しかけちまったし、そこらヘンはちょっと間抜けだったか。
 それにしても……全く違う世界の人間なんて俺には想像がつかん。頭も痛くなってきた。
 クルクル君もその年で軍人だしな……知らない親父に突然話しかけられても、全然怯まない度胸は大したもんだ」

バツの悪そうに頭をかきながら、スザクのことを『クルクル』と呼ぶこの男の名は剣持勇。
日本の警視庁刑事部捜査一課の警部であり、設定年齢40代。乙女座のO型。
彼もまた、突然この世界に招かれたことに不安を覚え、高速道路を移動していたのだ。

「いや、剣持さんには申し訳ありませんが、本当はちょっとビックリしてたんですよ。それと僕の名前は枢木(クルルギ)です。
 剣持さんが乗ってきたそれ、僕の友人が乗っているタイプと全く同じ『BMCのRR1200』なんです。
 僕の知り合いでこれに乗っていた人は皆……いい人ばかりでしたから」

スザクは剣持の隣に駐輪してあるサイドカー付きバイクを指差す。
それはスザクと同じアッシュフォード学園に通学している生徒会書記、リヴァル・カルデモンドの物だった。
スザクはリヴァルとこれのチューニングがきっかけで仲良くなった経緯があり、
またスザク自身にとっても、このバイクには大切な思い出があった。

「ほー……それで自分と同じ世界の人間だと勘違いしたんだな? ハハハすまんクルクル君。
 こいつは俺の『支給品』とかいうやつらしい。カバンにメモが入ってたんだ」
「え……!? 」
520名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:06:25 ID:JNUHV358
 
521名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:06:59 ID:17cKm9g3
522名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:07:22 ID:To2MIRFY
523魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:07:25 ID:2eW5504u
剣持はバイクをポンポンと叩きながら笑うが、スザクはつられて笑わない。
瞬く間に彼の顔は豹変し、勢いに身を任せて剣持を突き飛ばした。
しかしそれは、いつまでも『クルクル』と呼ぶ剣持に業を煮やしたわけではなかった。

「な……何をするんだクルクルくっ…………な!? 」
「急に……足元に、電灯に……影が出たから…………何者だ………ぐっ」
「フッ、やるな人間。よく気づいたな」

■ ■ ■

「大丈夫かクルクル君ッ! おいてめぇ何者だ! 何てことしやがる! 」
「俺の名か? 人間掃討軍極東方面部隊長……ヴィラル! 」
「人間掃討軍だと!? 」
「2ついいことを教えてやろう。
 1つ、地上に出た人間は我われ掃討軍が殲滅する。2つ、お前達は私の獲物だ。大人しく死んでもらう」

後腹部を刺されて息を荒くするスザクを、抱えながら叫ぶ剣持に対して、ヴィラルが動じる様子はない。
どこか人間のようで人間ではない雰囲気を持ち、余裕な態度を見せ付けながら笑う男の歯は、鮫のように独特で、
よく見れば、両手も人の物とは言えぬ形をしていた。

「シャァッ!……ほう」

ヴィラルが右手に持っていた巨大ハサミを剣持たちに刺し向けたが、その刃は一本の刀に弾き返された。
怪我をおして立ち上がった枢木スザクの持っていた、支給品でもある1本の日本刀によって。
スザクは好機とばかりにそのまま踏み込みながら、上段、中段、下段とあらゆる方向から斬りかかる。

「中々やるが所詮素人の剣。訓練された兵士にかなうと思うかァァァァァァ!! 」
524名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:08:06 ID:JNUHV358
 
525魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:08:59 ID:2eW5504u

だが、ヴィラルも負けじとばかりに巨大ハサミの刃、握り手、指入穴でスザクの剣を受け止める。
その剣舞のような果し合いに、冷えた夜の空気が響という名の合いの手を加える。
紙一重の攻防に、電灯が2人に舞台のスポットライトを当てる。
だが、勝負は意外にもあっさりと決着がついた。

「剣持さんとの会話……聞いてなかったのかい? 僕もこう見えて軍人なんだよ!」
「ふん、その強がりが死を呼……な、なんだとッ!」

スザクの手首による捏ね回しによって、ヴィラルの巨大ハサミが宙に飛ばされ地面に刺さり、彼の顔が青ざめる。
ヴィラルが巨大ハサミを拾おうとした時には既に、首にスザクの刃が当てられていたからだ。
天才という言葉は、彼の為にあるのかもしれない。
剣道を含めた武道全般における技術において、公ではないが、スザクは幼少の頃から比類無きものだと評価されていた。

「ま、まさか……この俺が……剣で一本とられっ!? う、うおおッ!?」

だがヴィラルの災難は終わらない。
スザクからの敗北を受けたと認識する前に、今度は彼の体が宙に飛んでいたからだ。

「どっせぇぇぇぇい! 」
526名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:09:01 ID:17cKm9g3
527名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:09:18 ID:To2MIRFY
528名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:09:20 ID:JNUHV358
 
529名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:10:41 ID:17cKm9g3
530名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:10:52 ID:SJhxpXq4

531魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:10:58 ID:2eW5504u
メタボリックに悩まされていそうな中年太り、みっともない無精ひげ、若干の禿頭を備えた男、剣持勇。
ヴィラルは彼の180cmを越える体格から放たれる一本背負いによって、地面に叩きつけられたのだ。
今でこそ面影は見られないが、剣持は高校時代、全日本で16のタイトル取った『鬼』だった。
黒帯5段でもあるその実力は、警察官となった今でも衰えてはいないのである。

「ふー……これで仮は返したぜ。クルクル君、怪我の具合はどうだ、歩けるか? 」
「大丈夫でっぐぅ……!」
「無理をするな。傷は見てみんとわからんが、腰をやられているかもしれんぞ。
 このバイクで病院に行こう。君はサイドカーに乗ってくれ。それとこの、『何とか隊長』は……」
「……………………………………………………………………………………」
「……ま、ほっときゃいいだろう。懲らしめてやりたい所だが、今はクルクル君の救助が先だ」

こうしてヴィラルは人間の男たちに剣道、柔道でそれぞれ一本をとられたのだった。


■ ■ ■


バトルロワイアル前日、いつもと変わらぬ螺旋王の部屋に彼はいた。
彼は跪き、目の前にいるカリスマに頭を降ろす。

「螺旋王、お呼びでございますか」

彼はこれまで王の前では一度も出したことの無い疑念のトーンで話しかける。
極東方面を任されている彼が上官の螺旋四天王を介さずにして、
最上級の上官にあたる螺旋王に単独で姿を出すことが、どれだけ異例なことであるか重々承知していたからだ。
螺旋王の口が開く。

「ヴィラル……お前はこの私の為に命を捧げてもらう事となった」
「…………死ねとおっしゃるのならば、甘んじて受けましょう」
「そうではない」

螺旋王の問いかけに、彼は即答する。
螺旋王もまた、彼の返答に即答する。

「ヴィラルよ……私はこれから優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を探す為の実験をしようと考えている。
 80名を越える特定の生命体を一同に集め、その中から、最も優秀な一人を選び出す実験だ。
 選ばれた被験者たちは自分たちの力で手段を問わず、命を懸けて生きる術を見出すしかない。
 いわば生き残りゲームのようなものだ」
「その実験に……私も入っているのですね」
「察しがいいな。お前も彼らと同じ条件の下で、実験を受けてもらう。
 どう動くかは好きにしろ。お前の自由だ。お前が最後の1人になれば褒美もやろう」
「なぜです! 私が実験に参加することに異議を唱えるつもりはございません!
 しかし! 選ばれた他の生命体は螺旋エネルギーを持っている……それは即ち人間ではありませんか!
 獣人である私が実験に参加すれば、最後に生き残るのは奴らより優れた自分であることは明ら――」
「ヴィラルよ! 」

螺旋王の思わぬ咆哮に、彼は絶句する。
532名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:11:23 ID:JNUHV358
 
533名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:11:54 ID:To2MIRFY
534名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:11:56 ID:17cKm9g3
535名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:12:08 ID:SJhxpXq4
536魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:13:18 ID:2eW5504u
しかし、彼はまだ納得をしていなかった。

「大変な失礼を致しました。螺旋王……このヴィラル、実験には喜んで参加させて頂きます」
「気にするな……お前の意見も一理ある。私とて結果のわかりきった実験をするつもりはない。そこでだ。
 私はお前の体を『人間に近い状態』に改造しようと思う」
「わ、私が……人間に!? 」
「何も全てを人間と同じ体にするわけではない。それにこの実験の間だけだ」
「この……私が…………に、人間の……体…………」
「人間に近い状態と化した獣人のおまえがどんな実験結果をもたらしてくれるのか、私は期待している。まあそう悲観するな。
 その代わり……睡眠による細胞の蘇生システムの制約から『時間』と『場所』という条件を外してやろう。
 これでお前は昼夜問わず好きな時間に睡眠を取る事が出来、生命維持ユニットに入る必要はない。
 ついでに識字能力も与えてやる。意味は考える必要はない。じきにわかる――」

螺旋王の説明に彼が答えることは無かった。
それほど彼にとって、『人間に近い体』になるという事はショックだった。
獣人である自分より劣っている存在に近づくという先入観が、彼のプライドを傷つけた。
しかし彼は気づいていない。
睡眠に『時間』と『場所』の概念を必要としない事が、人間にとってみれば極々当たり前のことである真実。
螺旋王から持ちかけられた睡眠による蘇生システムの制約解除こそが、人間に近づく事であるという真実。
そして、何より獣人こそが人間よりも劣った存在であるという真実。

こうして、真実を知らぬ彼……人間掃討軍極東方面部隊長ヴィラルはバトルロワイアルに参加した。
やり場の無い苦しみと共に。

「チクショォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!! 」


■ ■ ■

「!? 剣持さん……今、何か聞こえませんでしたか? 」
「ん? いや俺には何も聞こえなかったぞ?
 きっと誰かがやり合ってるんだろう……くそ、こんな殺し合い、さっさと止めないととんでもない事になるぞ。
 ちゃんとサイドカーに乗ったな? じゃあそろそろバイクを発進させるぜクルクル君! 」

剣持はグリップを握りフルスロットルでバイクを走らせる。
バイクのスピードはぐんぐん上がり、高速道路に相応しい速度まで達しようとしていた。

――――はずだった。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:13:35 ID:JNUHV358
 
538名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:13:42 ID:To2MIRFY
539名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:13:45 ID:17cKm9g3
540魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:14:39 ID:2eW5504u

突然バイクは手綱が外れた暴れ馬のように回転し、そのまま高速道路の外壁に衝突した。
剣持は暴走するバイクに振り落とされて道路のアスファルトに打ち付けられ、
スザクには容赦なく衝突によるダメージが襲い掛かった。
スザクは背中の傷を抑えながらもサイドカーから降り、少し離れた位置にいる剣持に声をかける。
しかし、頭を強く打ったのか剣持は完全に気絶していた。

「だめだ……意識が無い! ぐぐ……さっきの衝撃……やっぱりだ。サイドカーのタイヤがパンクしている!
このタイヤの刺さった刃物……どこかで見たような……ハッ! 」

スザクは後ろを振り返る。
彼は後悔する。あの時なぜ無理にでも奴を動けないようにしておかなかったのだと。
彼のバッグだけを回収する事ばかりに気をとられ、地面に刺さった巨大ハサミを引っこ抜かずに放置したことを。
自身の怪我のせいで忘れていたとはいえ、結果よりも過程を重視する彼にとってこの事実は落胆を招いた。

「この俺を傷つけるとはな……本当ならもう1度奇襲してやっても良かった。だが奇襲は奇襲にすぎん。2度目はない」

巨大ハサミの支えを壊し『刃物』を作って、一本をタイヤ目掛けて『投げナイフ』として使い、
もう一本を即興の『ポケットナイフ』として持っているヴィラルがそこに立っていたのだから。
しかしスザクは無理をきかせて再びバッグから日本刀を取り出し、斬りかかる。
ところがヴィラルは難なくこれをかわし、壁蹴りをしてバイクが衝突した高速道路の壁の丁度真上に飛び乗った。

「そのスピードと技術はともかく……貴様の動きはワンパターン、まだまだだな。
 さっきの戦いでお前の動きは全部わかったんだよ。最初の一撃は正面から。フェイントは無いって事もな! 」
「よくも剣持さんをッ! 結果ばかりを追い求めて! 他人の痛みが分からないのか!」
「お前にわかるか……? 成りたくもない人間にさせられた気持ちが。
 忠誠心と憎しみとの間で、やり場のない感情に苦しめられる俺の気持ちがァァァ!! 」

スザクはヴィラルの叫び声に怯みながらも、ジャンプして彼に斬りかかろうとする。
だが、既に決着はついていた。


「ピッ」

541名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:15:15 ID:JNUHV358
 
542名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:15:23 ID:17cKm9g3
543名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:15:39 ID:To2MIRFY
544魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:15:56 ID:2eW5504u
――光、爆音、炎。
爆発に必要な3つの要素が大きく絡み合い、スザクとバイクを飲み込んでいく。
全てはヴィラルの支給品の一つ、『ネオロシアのガンダムファイター、アルゴ・ガルスキーの小型爆弾』のせいであった。
断っておくが、このバトルロワイアルにアルゴ・ガルスキーは参加していない。
しかし囚人であるアルゴを大人しくさせる為にネオロシアが彼に取り付けたスイッチ式爆弾はこの世界に存在していた。
ヴィラルはスザクと剣持に襲い掛かる前に、自分の支給品を全てチェックしていた。
彼は剣持に一本背負いをかけられた後、気絶したフリをしてチャンスを待っていたのだ。
彼らが、爆弾によって爆死するタイミングを。
最初に爆弾のスイッチを押さずにハサミでバイクをパンクさせたのは、
奇襲を良しとしないヴィラルなりの美学の現れでもあった。
結局、彼のバイクへの一撃は、剣持への奇襲につながってしまった事は言うまでもないのだが。
バイクの衝突した壁の真上に乗ったのも、確実に爆弾の被害をスザクに加えるためであった。
ちなみに、これはヴィラルも知らないことだが……爆弾による被害はバイクの燃料が加わったので更にアップしていた。
ゆえに爆発の威力は彼が想定していた以上の威力を持っており、その威力は高速道路に壁を壊すまでになっていた。

つまり足場を無くしたヴィラルは、高速道路から落ちた。

(……くそ、小型じゃなかったのかよ。これじゃあ……奴が死んだかどうかわからねぇじゃねぇか……。
 あいつら……確か……『クルクル』と『ケンモチ』だったか……次こそは……必ず……! )

そして、海に落ちた。

■ ■ ■ 
545名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:16:37 ID:9syjyzln

546名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:16:47 ID:JNUHV358
 
547名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:16:52 ID:17cKm9g3
548魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:17:15 ID:2eW5504u

(海……に、飛び……こまなくちゃ……火を……消さないと……)

ヴィラルが海に落ちたほぼ同時刻、高速道路上では大きな炎が轟々と燃え盛っていた。
その炎のプレゼントが1人の青年の全身に祝福をするかのように包み込む。
威力が大きくなる炎に対し、彼の命の灯火は消えようとしていた。

(でも…………このまま……じゃ……剣も……ちさんが……)

一体なぜ爆発が起こったのか、彼自身はいまだにわからぬまま。
彼にわかっていることは、このままだと自分が死んでしまうこと。そして、剣持が気絶したまま取り残されてしまうこと。
スザクは自分の持っていた刀を全力で投げ飛ばす。
刀はスザクの狙い通り剣持の余裕のある額に当たり、そのまま剣持から少し離れた場所に転がった。
スザクは剣持がかすかに『うう……』うめき声をあげたのを確認するとそのまま180度振り返った。

(頼みます……起きてくださ……い……剣持……さん! )

剣持が目覚めることを祈りながら、スザクは破壊された壁の穴を目指して這いずる。
ゆっくり、ゆっくりと穴に近づいてゆくスザクだが、そのスピードは遅い。
549名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:17:17 ID:To2MIRFY
550名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:18:37 ID:JNUHV358
 
551名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:18:47 ID:17cKm9g3
552魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:19:13 ID:2eW5504u
(……みっともなく……足掻いて……生き延びようと、している…………醜いな、俺は。
 ルルーシュ……これ、も、一つ、の……結、果、な……の……か………………………………………? )

結局、枢木スザクは海に落ちることはなかった。
彼の右手は高速道路の穴につかみかかっていたが、
剣持に刀を投げつけた分の体力が彼をゴールにたどり着く余力を奪った。
ブリタニアの騎士、枢木スザク。
人を殺す事を望まずして軍に所属し、イレヴンの為を思うのにブリタニアに属す男。
矛盾を自覚し、そうした葛藤に苛まれ続けた彼の人生は17年という短さでここに終わった。


彼が生み出した過程によって残された者たちの価値は、果たして。







【E-3 高速道路路上 一日目 黎明】
【剣持勇@金田一少年の事件簿】
[状態]:背中強く打撲、頭を強く打った為気絶(目覚める寸前?)
[装備]:スパイクの煙草(マルボロの赤)@カウボーイビバップ。
[道具]:支給品は全て燃えました
[思考]
 基本:殺し合いを止める
 1:気絶 (目覚める寸前?)

[備考]
※高遠遥一の存在を知っている時期のどこかから参戦しています。
※スザクの知り合い、その関係について知りました。(一応真実だとして受け止めています)
※スザクの事を『クルクル』と呼んでいたのは「金田一一」に対する「キンダニ」と同義です。
※彼の側には少し燃えているビシャスの日本刀@カウボーイビバップが落ちています。
※E-3の周り8マスに爆音が響き渡りました。
※E-3の高速道路の壁の一部分のエリアが、爆発により破壊されました。ここから海に飛び込めます。
 なお、その側には燃えているリヴァル・カルデモンドのBMCのRR1200@コードギアス 反逆のルルーシュがあり、
 サイドカー側のタイヤには巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJINGが刺さっています。
※剣持の支給品は煙草とバイクの2つでした。
553名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:19:45 ID:JNUHV358
 
554名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:19:47 ID:To2MIRFY
555名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:20:17 ID:17cKm9g3
556名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 11:21:23 ID:To2MIRFY
557魔人 が 生まれた 日 ◆hNG3vL8qjA :2007/09/24(月) 11:22:22 ID:2eW5504u
【E-3 高速道路下の海 一日目 黎明】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:体力消耗、ずぶ濡れ
※螺旋王による改造を受けています。
@睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
A身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
B人間に近づく改造が@、Aであることに気づいていない。
[要約]
人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。
単純に『何となく人間っぽくなった』としか認識してない。

[装備]:巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
[道具]:全て燃えてなくなりました。
[思考]
 基本:ゲームに乗る。人間は全員殺す。
 1:とりあえず海から脱出する?
 2:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
 3:人間になったことへのやり場のない怒り。

[備考]
※アニメ第3話のカミナ達と一戦交える日の前日の夜からの参戦です。つまりシモン達を知りません。
※枢木スザクを『クルクル』という名前だと勘違いしています。
※剣持とスザクがどうなったのかを知りません。
※ヴィラルのランダムアイテムは巨大ハサミとアルゴ・ガルスキーの小型爆弾@機動武闘伝Gガンダムの2つでした。
※巨大ハサミ@王ドロボウJINGの出展は本編第13話、ザザの仮面舞踏会編です。
※枢木スザクの支給品は全て燃えてしまいましたが
 ランダムアイテムはビシャスの日本刀@カウボーイビバップの他に1〜2つある可能性もあります。
 バイクの火事にあっても無事なランダムアイテムがあるかもしれません。
 


【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ  死亡】
558勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 20:33:38 ID:+LPmGtp4
ここはF-3エリアの路上。敷き詰められたアスファルトのベッドに一人の少女。
その少女が目を覚ますと、その視界には先ほどの部屋とはうって変わり、一面の星空が広がっていた。
少女は自分が仰向けになってることに気づくと、ゆっくりと上半身を起こす。
茶色を基調とした機動六課の制服を身に纏うその少女の名はスバル・ナカジマ。機動六課スターズ分隊のフォワードを務める魔導師である。

スバルは自分の隣にデイバックが置かれていることに気づく。それを見て、先ほど起こった出来事を思い出す。
突如現れた螺旋王ロージェノムと名乗る初老の男。彼は優秀な人間を選ぶために、あの部屋にいた人間に殺し合いをしてもらうと言った。
それに反抗して無残に散っていったランスと呼ばれた男。
見覚えのない魔法だったが、強力に見えたランスの攻撃をあっけなくバリアで防ぎ、首輪を爆発させた。
スバルは自分の首を手で触り、首輪の感触を確かめると、ため息をついた。
先ほどの広間で起こったことが夢ではないかという淡い期待を抱いていたが、どうやら現実のようだ。

再び、あの男の発言を思い返す。たしか武器を没収すると言ってたような、そう思ったスバルはデバイスが没収されているかどうか確認しようとする。
「マッハ・キャリバー!」
スバルは愛用のデバイス『マッハ・キャリバー』に声をかけるが、返答はない。
やはりデバイスもあの男に没収されていた。
その代わりに渡されたのが足元のデイバックというわけである。

「あっ!そうだ、ティアは…」
先ほどの部屋には確か、相棒のティアがいたはず。
スバルは魔導師のスキルのひとつである念話を使用して、参加者の1人である、ティアナ・ランスターに交信を試みる。
しかし返事はない。その後、他の六課のメンバーにも念話による交信を試してみたが結果は同じであった。
きっとあの螺旋王によって念話が使えないように制限されているのだろうと考え、スバルは念話による交信を諦めた。

気持ちを切り替え、とりあえず支給品を確認してみようと思い、スバルはデイバックを漁る。食料、飲料水、ペン、コンパス、ランタン、地図…。
この殺し合いで行動するのに最低限必要であろうものが出てくる。
スバルが次に手にとったものは一枚の紙。その紙には参加者の名簿が記されてあった。
ランタンに明かりをつけ、その名簿を読むと、そこにはよく知った名前があった。
「エリオにキャロ、シャマル先生にティア。それに八神部隊長まで!」
六課のメンバーが5人もこの殺し合いに参加させられている事実に驚きを隠せずに、思わず大声を出してしまった。

559名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:34:14 ID:MM0ZUptr
560名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:35:25 ID:ieOytZRW

561勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 20:35:36 ID:+LPmGtp4
一方ここはF-3エリアの道路。ここにもこの殺し合いに巻き込まれた者がいた。
「おいおい、勘弁してくれよ…。家で妻と娘が待っているっていうのによ」
青い軍服らしきものを着たその男はアスファルトの道を歩きながらそうぼやくと舌打ちをした。
男の名前はマース・ヒューズ。アメストリスの軍法会議所に所属する中佐であり、極度の親バカ・愛妻家である。
「ビックリ人間の万国ビックリショーに俺みたいな一般人を巻き込むなっつうの」
あの螺旋王ロージェノムとやらも、それに刃向かったテッカマンランスという名の男も明らかに一般人と言えるような人間ではなかった。
名簿にもエルリック兄弟やロイ、そしてスカーの名前まであった。
きっとこの舞台には、ビックリ人間ばかり呼ばれているんだろう。
ヒューズがそう考えてながらあるいていると、近くから女の子の声が聞こえた。
「他の参加者か!?ちっ、とりあえず様子を見るか」
ヒューズは支給品である銃を手に、声のした方向へ向かう。
建物の陰に隠れ、声の主の様子を伺う。月の光がほどよく当たってるため、声の主の姿はある程度確認できた。
エドと同じぐらいの年代の少女が(身長は彼よりひと回り高いが)、支給された名簿らしきものを読んでいてこちらには気づいてない。
(女の子か。とりあえず… 接触してみるか)
ヒューズは念のために銃を腰とベルトの間に納め、制服の上着で隠れて見えないようにする。
そして少女のいる方向へと歩きだす。

「おいおい嬢ちゃん。こんなところで大声出したら危険だぞ」
スバルが後ろを振り返ると、1人の男が立っていた。驚いたスバルは立ち上がり、戦闘体勢をとる。
しかし男はデイバックを地面に置き、両手を挙げてからスバルに向かって話しだす。
「おいおい、待った待った。俺の名前はマース・ヒューズ。この趣味の悪い殺し合いなんかに付き合う気はまんざらねえよ。嬢ちゃんはどうなんだ?」
スバルは一瞬困惑したが、とりあえず戦闘体勢を保ったまま男の問いに答える。
「あっ、あ…あたしも、殺し合いなんてする気はまったくありません!」
突然現れたヒューズに動揺していたのだろうか、スバルの口調は安定してなかった。
「そうか、良かった。とりあえず色々と聞きたいことがあるんでね。協力してくれねえか?」
スバルはヒューズを完全に信用したわけではないが、あからさまな敵意は感じないし、見た目は悪そうな人ではないのでとりあえず話をしてみることにした。
562名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:36:54 ID:FLA9MTnU
その時、北の彼方から地響きとエンジン音が聞こえた

トランスフォーマーの襲来だ

多い 途轍もなく多い
563勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 20:37:07 ID:+LPmGtp4
まずは自己紹介を簡潔に済ませる。
そして次に互いの知り合いについて情報交換をした。
「あたしが知っているのは、エリオ、キャロ、シャマル先生、ティア、八神部隊長、それとこのクアットロっていう人の6人です。」
スバルは名簿を指さしながらヒューズに情報を伝える。
「クアットロ以外は機動六課のメンバーでいい人で、頼りになります。それで、このクアットロっていう人なんですけど…。
あたしたちの上官のなのはさんが逮捕した人で、危ない人だと聞きました。とにかく要注意人物です」
スバルはクアットロという人物について思い返す。たしか、ゆりかごに突入した時にはやてさんが逮捕した人物だ。
あの事件後に得た情報を整理する。彼女は自分たちと対峙したナンバーズの指揮を務め、ヴィヴィオとなのはを戦うように仕向けたという話も聞いた。
どっちにしろこのクアットロという人物は警戒するべきであることは確かだ。
クアットロについて話し終えると、次は仲間の外見や能力などを簡潔に話す。
ヒューズは自分の名簿を見ながら、スバルの出した名前に印をつけて確認する。
「次はこっちの番だな。俺の知り合いはエドっていうチビ錬金術師、そいつの弟アル。
そしてロイ・マスタングっていう、まあこいつとは腐れ縁だ。それにこいつの部下のホークアイ中尉。
こいつらは頼りになる奴らだ。あと1人、知っている奴がいる。このスカーっていう顔に傷がある野郎なんだが、こいつは危険な奴だ。
国家錬金術師を何人も殺害している。殺し合いに乗りかねない野郎だ」


次にお互いの住んでいた場所について簡潔に話す。
2人の話を合わせて明らかになったことは、2人の住む場所はまったく別の世界ということだ。
スバルの世界ではミッドチルダ以外にも他の世界があるということは常識であるので、ヒューズが別の世界の人間だということについて理解するのは容易だった。
逆にヒューズがスバルの住む世界について理解するのは難しいことであった。
ましてやその世界には魔法という錬金術よりも信じがたいものがあるという話まで聞かされては、 さすがに頭のキレるヒューズも混乱してしまう。
「魔法ねえ…。 まあ俺の周りもビックリ人間ばかりだけどよぉ」
ヒューズはそう言うと、この殺し合いにも参加しているロイやエドのことを思い出して苦笑した。
とりあえずスバルの住む世界や魔法については考えてもどうしようもないので、とりあえず彼女の言うことを信じることにした。


「そういえば支給品は確認したか?」
そういうとヒューズは腰から何かを取り出す。
「俺はとりあえずこの銃が支給品だ。他にも支給品はあったが、役に立ちそうじゃあなかったぜ。スバルちゃんの支給品はどうだったんだ?」
「ええと、あたしはまだ… その確認してなくて… エヘヘ、すみません。今から見てみますね」
スバルはデイバックの中を探る。
まず最初に取り出した支給品と思われるもの。それは手袋だった。
「手袋…です。これはハズレですね」
たしかにスバルにとってはハズレアイテムなのだが、ヒューズにとっては見覚えのあるものだった。
そう、ヒューズの親友であるロイ・マスタングの発火布製の手袋だった。
「スバルちゃん、悪いけどその手袋必要ないのならくれないか?俺の親友の大事なものなんだ」
「ええ!?そうなんですか?あっ、そのハズレとか言ってすみません。お譲りします」
スバルはそう言うとヒューズにその手袋を渡す。ヒューズは手袋をデイバックをしまい、代わりに何かを取り出す。
「使えるかどうかは知らんが、代わりにこれでも貰ってくれねえか?」
そう言うと、ヒューズはスバルに自分の支給品を渡した。その支給品はグローブの形をしている、スバルには馴染み深いものであった。
「これは、ギン姉のリボルバー・ナックル!?」
スバルの姉であり、魔法の教育をしてくれたギンガ・ナカジマ。
彼女もまた、六課のメンバーと同じく、スバルにとって大事な存在であった。
そのギンガが愛用していた左手用のリボルバー・ナックル。ゆりかごに突入したときに、自分の右手用のリボルバー・ナックルと共に使用したこともある。
それが今再び自分の手に渡った。それは単なる偶然か、何かの運命か。
564名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:37:51 ID:6KAmtpuA
565名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:38:36 ID:uI4lT7gv
 
566名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:39:15 ID:HcVQeXLQ
567名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:40:07 ID:6KAmtpuA
568勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 20:41:12 ID:+LPmGtp4
情報交換が終わると、ヒューズは地図を見ながら現在地を確認する。
「そこに『空港まで南に約1km』という看板があるからここは大方F4辺りだな。さぁて、これからどうするかだ」
「あたしは早く仲間を見つけることが大事だと思います。六課のメンバーはみんな強くて頼りになるし、ヒューズさんの話してくれた仲間たちも頼りになりそうですし」
「ああ、それも大事だが…」
ヒューズは途中で言葉を切り、首輪を指差す。
「残念だが、俺にはこいつを外せるような知識は持ってねえ。だから外せそうな知識と技術を持った奴を探したい」
「あ!確かにそうですね。シャマル先生か八神部隊長なら首輪の構造を解析する魔法を使えるかもしれません」
スバル自身はそういった魔法は使えないが、補助系魔法を得意とするシャマルや、レアスキルを持つはやてならそういった魔法を使えるかもしれない。
スバルはそう考えた。


「さて、どう動くか…」
ヒューズは考える。この状況では何より情報が大事になる。できる限り多くの情報を収集したい。それには他人との接触が必要不可欠だ。
他人と接触するためには人が集まりそうな場所に行けば良い。しかしそれは殺し合いに乗った危険人物に遭遇する恐れもある。
ヒューズは軍人であり、それなりに戦闘をこなすことはできる。
しかし、ロイのような錬金術師やスバルが話していた魔導師のような『ビックリ人間』が相手だった場合はどうだろう。
いくらこっちが銃を持っていようが、勝てる気がしない。
それでもこのバカげた殺し合いを止めなければならない。だが死んでしまっては元も子もない。それが無駄死にならなおさらだ。
どうするべきか、悩んでいるヒューズにスバルが問いかけてきた。
「ヒューズさん、あたし駅に行こうと思います。駅なら人がきっと集まると思うんです。知り合いにも会えるかもしれませんし。ヒューズさんはどう思います?」
「確かに駅には人が集まりやすいかもしれない。だがそれは殺し合いに乗った危険な奴に出会うかもしれねえってことにもなる。それでも行くのかい?」
「はい、行きます。あたしは泣いてばかりは嫌だと思って、強くなるって決めたんです。強くなって誰かを守れるようになるんだって。
きっとこの殺し合いでも、助けを求めてる人だっているはず。あたしは誰かを助けたり守ったりするために自分の力を使いたい。あの時のなのはさんのように」
そう語るスバルの瞳に、ヒューズは彼女の強い意志を感じた。
(エルリック兄弟といい、スバルちゃんといい… ったく最近のガキは若いくせして無理しすぎだぜ)
「しょうがねえなあ。俺もついていく。だけどいいか?無理はするなよ。若い奴は無理する奴が多いからよ。それで死んでもらったら困るからな」
「えっ!?あっ、はい、わかりました。ありがとうございます」
「よし、じゃあ行くぞ」
ヒューズは地図とコンパスを手に、駅に向かって歩きだした。それに続いてスバルも歩きだした。


(ティアに、エリオとキャロ。それにシャマル先生と八神部隊長もいるんだ。こんな殺し合いもきっと止められるよ。
それにきっとなのはさんやフェイト執務官も他の六課のメンバーもこの状況に気づいてすぐに出動してくれる。
それまではあたしがみんなを守るんだ。そのために強くなったんだから、それに…)
スバルは左手のリボルバー・ナックルを見る。
(きっと母さんとギン姉もあたしを見守ってくれているよね。今度はあたしが守る番なんだ。
六課のメンバーもヒューズさんとその友達も、誰一人として死なせない!)
闇夜に浮かぶ満月を睨むかのように見つめ、スバルはそう決意した。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:41:59 ID:6KAmtpuA
570勇気の意味を知りたくて ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 20:42:22 ID:+LPmGtp4
【F-3/道路付近/1日目深夜】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6)
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ数12発
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。仲間や殺し合いをしたくない者を守る。ヒューズと行動。
1:機動六課のメンバー、ヒューズの仲間との合流
2:首輪解除の方法を探す
3:1のために、人の集まりそうな駅を目指す
※ヒューズの住む世界と錬金術、エド、アル、ロイ、リザ、スカーについての情報を得ました。
※ジェイル・スカリエッティ事件後からの参加です。
※スバルはジェイル・スカリエッティ事件後の調査などでクアットロについて多少の情報を得ていると思われるので、クアットロを『要注意人物』と判断しました。
※左手用のリボルバー・ナックルのカートリッジの装弾数は公式には設定されてませんが、右手用のリボルバー・ナックルが6発であること、
もともとリボルバー・ナックルは両手で使われていたことから、右手用と同じ6発としました。


【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:S&W M38(弾数5/5)
[道具]:支給品一式、ロイの手袋@鋼の錬金術師、S&W M38の予備弾数20発
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。スバルと行動。
1:情報収集(できれば首輪関連の情報を得たい)
2:1のために他の参加者と接触
3:エド、アル、ロイ、リザ、及び機動六課のメンバーと合流
4:駅を目指す
※スバルの住む世界、魔法についてヒューズのわかる範囲で理解しました。
※機動六課からの参加者の情報を得ました。また、クアットロを要注意人物と認識しました。

571名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 20:42:24 ID:cszWwmT0

572ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:06:41 ID:2DA8j1NV

友の銃を手にした哀れなガンマンが、血道を行くことを決意し、ここを後にしたとき
映画館の中の別シアターには、未だ決意定まらぬ一人の男が存在していた。



――むせび鳴くようなファゴットの音色が薄暗い劇場の中を満たしていた。
静かに始まった木管の旋律は物悲しく、だが、どこか終末への予兆を感じさせる。
スクリーンには、物語の舞台らしい巨大な建造物が大映しにされていた。
どうやら、これがラストシーンのようだ。

その輝く銀幕を、一人の男が見るともなく見つめていた。



この映画館らしい場所で目を覚ましてから、もう結構になる。
だが、俺は赤いビロード張りの客席に腰掛けたまま、この場を動けないでいた。
浮かんでは消えていくいくつもの思考。
正直、俺はこれ以上ないというくらいに混乱していた。

スパイクの野郎がこの間の捕り物でぶっ壊した諸々の賠償額を計算し終わり
そのあまりの赤字にない毛が抜ける思いをしながら、俺は確かにビバップ号で眠りに着いたはずだ。
それがどうしてこんなことになっちまったのか。
もしかして、全部タチの悪い夢なんじゃないかと思って確かめてみたんだが……残念ながらハズレらしい。
つねられた頬の痛みも、つねった義手の冷たさも、夢にしてはあまりにシャープすぎた。
つまるところ、全ては現実のようだ。
ビバップ号から拉致されたのも、どことも知れない映画館で見たこともない映画を見てるのも
ついさっき起こった胸糞悪い殺戮ショーも、俺が意味不明な殺し合いのゲームに巻き込まれちまったのも
……全部、ままならない現実ってわけだ。
573名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:06:48 ID:17cKm9g3
574名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:07:21 ID:6KAmtpuA
575名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:07:27 ID:bqq+ucRB
576ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:08:21 ID:2DA8j1NV



――背後に流れていた音楽は終末への予兆を徐々に確信へと変え、盛り上がりを見せていた。
その隆盛と示し合わせたように、白衣の男がスクリーンに浮かび上がり、演説を始める。
「――未来は、現在の我々に栄光の光を与えてくれた!
 そう!ついに全ての恐怖を克服できる時がやってきたのだ!
 太古には木々をこすり合わせ炎を熾し、あるときは鯨から生命を奪い、またある時は石油を戦い、争った!
 そして原子力。何時の時代も危険との隣り合わせだった!
 だが、これからは違う!何の恐れもない夜。我々は手に入れたのだ!
 今度こそ、美しい夜を!それは幻ではないッ!」
見たとおり男は科学者のようだった。彼は語る。自らの生み出した安全で害のないエネルギーのことを。
そのエネルギーがもたらす美しい夜のことを。その語調には、心なしか狂気が宿っているようにも思えた。



「クソッ!何で俺がこんなことに巻き込まれなきゃならん!」

悪態をつき、隣の客席に軽い八つ当たりの拳を見舞いながら俺は考える。
何をかって?決まってる。これからどうすればいいのかってことをさ。
こんなクソッタレな殺し合いに付き合って、殺戮者になるつもりは毛頭ないが
だからと言って『みんな仲良くおてて繋いで』でどうにかなると思うほど甘くもない。
できりゃあ、こんな腐れた遊技場からはさっさとおさらばして、気晴らしに飲みにでも出たいところだが……

感覚の残っている方の手を首元へと遣る。
指先が、汗ばんだ首の上にあるスベスベした首輪の触感を捉えた。

この忌々しい拘束具が嵌ってる限り、そう簡単におさらばってわけにもいかんだろう。
まず、こいつを何とかしなくちゃならん。
だが、仮にこいつを何とかできたとして、それだけでここを脱出できるかといえば、それも怪しい。
何せ、全く気取られず、あれだけの人数を拉致できる技術と組織力を持っているのが相手だ。
うまく逃げ出せたとしても、奴らを放っといたままなら、また同じ方法でさらわれるのがオチだ。

そもそも、あの螺旋王って野郎は何者なのか?
賞金首をとっ捕まえて飯を食い、元々はI.S.S.Pにいたこともある身の上だが
あんな奴は見たことも聞いたこともない。
火星あたりのテロリストか?それとも地球出身の宗教家か?宇宙人ってセンもアリかもな。
どちらにしろ、厄介な敵には違いない。

それから、螺旋王に向かっていったあのパワードスーツの男、モロトフとか言ったか。
あいつも謎だ。
短い時間だったから、十分に観察できたとは言いがたいが、それでも言えることがある。
あいつのパワードスーツは異常だ。
掛け声一つで装着できる利便性、螺旋王に迫ろうとしたときの敏捷性、そして放った光線の威力……
どれ一つとっても、俺の知ってる技術の範囲を超えている。
あんなのとやりあったら、ハンマーヘッドだろうがソードフィッシュだろうが一瞬でスクラップだろうぜ。
そういえば、螺旋王はあいつのことを『異星生命体に改造された云々』と言ってやがったが……
……まさかな。SFじゃあるまいし。

「でもって、この殺し合いの目的は『螺旋遺伝子』か……ち、情報が足りなすぎる」

次から次へと出てくる謎、また謎に嫌気が差した俺は、目をスクリーンから下げ、ガックリとうなだれた。
そう、必要なのは情報だ。この事態を何とかするためには、ともかく情報が不足している。
何かいい手は――?
事態の打開を求めて顔を上げた俺の目に、放りっぱなしのデイパックが飛び込んできた。
577名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:09:28 ID:HcVQeXLQ
578名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:09:35 ID:17cKm9g3
579名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:09:41 ID:6KAmtpuA
580名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:09:52 ID:bqq+ucRB
581名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:09:59 ID:To2MIRFY
582ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:10:12 ID:2DA8j1NV



「しかし、博士にはこれ以上任せてはおけない」
「そうだ!止めろ!フォーグラーを止めろ!」
「彼は暴走している!」
「引き離せ!彼をアレに近づけるなぁっ!」
朗々と演説を述べていた科学者の周りに別の男4人が群がり、彼の演説を阻止せんと躍りかかる。
科学者の前には巨大な装置。彼はそれを起動させようと男達に必死の抵抗を試みた。
「何かも失敗かッ!」
「そうだ。この実験は完全ではなかった!無謀すぎる!」
「もう遅い!」
科学者は鬼気迫る勢いで男達を振りほどく。



俺はあの螺旋王が“ゲームの参加者”全員に支給したんであろうデイパックの中身を広げそして
……新たに増えた悩みの種に脳を締め付けられていた。

まず一つ目の悩みの種は、白い紙に印刷された参加者名簿を確認したときに生まれた。
――エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世
――スパイク・スピーゲル
よく見知った同居人の名前を見つけてしまったのだ。
正直、こういう事態を考えてなかったわけじゃない。
俺がビバップ号から拉致されたってことは、奴らの部下が何らかの形で侵入したってこったろう。
だとすりゃあ、他の奴らも俺同様、巻き込まれてたって不思議じゃない。
フェイがいないのが気になるが……まさかあの女、俺たちを売りやがったのか?
あの金の亡者のことだ、報酬に目が眩んで、それくらいのことはやりかねない。
まあしかし、それは今言っても仕方のないことだ。本当にそうかどうかも分からんしな。
ともかく、今の問題はあいつらだ。
スパイクは腕が立つし、エドも何だかんだでネットの業は一流だ。
あいつらの性格なら後ろから刺されることもまずないだろうから、合流できれば心強い。
……だが、残念なことに、落ち合うために役立ちそうな手がかりが何もない。
バッグに入ってた地図によれば、この殺人ゲームの会場は、およそ8キロ四方の正方形。
闇雲に探し回ったところで、合流するのは至難のわざだろう。
そう易々とくたばる奴らじゃないから、放っておいてもそのうちどっかで再会できる気もするが
……モロトフのこともある。
何だかんだで一緒にやってきた仲間だからな。心配でないと言やあ、そりゃ嘘だ。
だが……あーくそっ、どうすりゃいい!
583名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:10:27 ID:ieOytZRW

584名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:11:07 ID:6KAmtpuA
585名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:11:19 ID:9MMdaaN9
586ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:11:24 ID:2DA8j1NV

知り合いのことで悶々とする俺に追い討ちをかけるように
二つ目の悩みの種が零れ落ちてきた。
俺がバッグに足をぶつけちまった拍子に、そいつはコロリと転げ出てきたのだ。
それは、鳥の姿を模したようにも見える、青いクリスタルだった。

「こ、こいつはっ!?」

クリスタルを見た瞬間、俺は思わず声を上げちまった。
何故かって?俺はそいつに見覚えがあったからさ。
確かめるように、もう一度記憶を辿ってみる。

――ああ、そういえば貴様達はコレが無ければ話にならんのだったな? そら、くれてやる
――良いだろう! 宇宙の塵となって自らの過ちを悔い改めるが良い!! テーック、セッターーー!!

……間違いない。あのモロトフがパワードスーツを装着するために使った水晶体だ。

正直、こいつが出てきたときは、こんなことになって以来初めて「ツイてる」と思ったよ。
何せ、あのパワードスーツの威力はさっき目の前で見せられたばかりだったしな。
何でも腕っ節で解決するようなやり方は好きじゃないが、強力な武器があるにこしたことはない。
それに、これ自体、俺が欲しかった『情報』そのものだ。
うまくいけば、スーツに付属のマニュアルなりガイダンスなりにアクセスできるかもしれん。

「やっと、少しはマシなことが起こってくれたかね」

そうと決まれば、やることは一つ。
まずはこいつを起動させんことには話にならん。

「確か、あいつはこう、手に持って、こんなポーズになってから……」

俺はモロトフのやり方をよく思い出し、できる限り忠実に再現しそして……

「テック、セッタァァーー!!」

叫んだ!
587名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:11:35 ID:17cKm9g3
588名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:11:38 ID:To2MIRFY
589名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:12:21 ID:6KAmtpuA
590名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:12:46 ID:bqq+ucRB
591名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:12:54 ID:17cKm9g3
592名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:12:58 ID:/KVZk+dR
 
593ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:13:03 ID:2DA8j1NV



「ぐあっ!!」
科学者は何かに突き動かされるがごとく、自分に組み付いていた最後の一人を殴り飛ばす。
彼は、もはや妨げるもののいなくなった道を進み、装置の起動スイッチの前に立った。
「私はこれとともに生き、ともに死す!今更何の躊躇いがあろうかッ!」
科学者の手には細長い何かが握られている。おそらくは起動のためのキーであろう。
彼はそれを頭上高く掲げ、誇るようにして弁を続ける。
「今となっては我々はこの場を放棄する!」
組み付いていた4人の男達は、そう言い放つと、一目散に場面を去った。
「よろしい!貴様らに夜の創造者となる資格はない!だが私には見える!美しい夜が見える!」
科学者は昂揚に押されるまま、起動のキーをさらに振り上げそして――



「………………あ″?」

……だが、何も起こらなかった。
あの広間では確かに水晶から放たれていた光は、いつまでたってもその頭すら見せない。
当然、そんな有様だから、俺にパワードスーツが装着されているはずもないわけで
……何だか恥ずかしくなってきたぞ。
大の大人が、密室で、一人、ポーズを取りながら、絶叫。
これはもう、どう考えてもイカれてる。誰か聞いたりしてないだろうな?
いや、ここは映画館。防音設備はバッチリのはずだ。多分。きっと。

そのあと俺は、水晶を撫でたり、引っ張ったり、押し込んだりしてみた。
だが、どうやっても、あのパワードスーツが現れることはなかった。
結局、ここに来てから初めてツキだと思えたモンも、蓋を開けりゃあ、ただの厄介モノだったわけだ。
だってそうだろう?
こっちは使いこなせないのに、使いこなせる誰かに盗まれないよう気を使わなきゃいけない兵器なんぞ
厄介モノ以外の何者でもねえ。

説明書が入ってないもんかと、一縷の望みを込めて、バッグを漁った俺の指先に何か固いものが当たった。
どうやら、まだ何か入ってたらしい。

(今度こそ、いいもんが入っててくれよ)

そんな願掛けをしながら、俺はそいつを一気に引き出した。
――するとそこには、緑色に光る、謎のガラス管があった。
長さ50〜60cmのガラスの筒で、中には蛍光グリーンの液体が詰まっている。
その中ほどには何だかよく分からない赤色の球が一つ浮かんでいた。

「あーくそっ!またよく分かんねえブツかよ!……ん?」

ここに来てもう何度目か分からない悪態をついた俺は……同時に何かしらの引っ掛かりを感じた。
この緑のガラス管、確かに俺がよく知っているものではないが……どこかで見たことがある。
どこで見た?ガニメデ?金星?それともビバップ号の中か?
どれも違う気がする。
じゃあ、ここに来てからか?
俺はもう一度、あの広場でのことを思い出す。螺旋王のこと、モロトフのこと、首輪のこと……
だが、その記憶の中にこのガラス管はない。
……見たことがあるというのは、俺の気のせいなのか?
いや、そんなことはない。確かにどこかで……


ある一つのことに思い当たった俺は、顔を上げ、スクリーンに焦点をあわせた。
そして、予想した通り、それは、そこにあった。
594名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:13:40 ID:6KAmtpuA
595名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:14:00 ID:17cKm9g3
596名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:14:05 ID:To2MIRFY
597ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:14:50 ID:2DA8j1NV



科学者は昂揚に押されるまま、起動のキーをさらに振り上げそして――
「私はここに誓おう。いつの日か再び、さらに美しい夜を人々にもたらさんことを!
夜の恐怖に立ち向かい、打ち勝たんがために!」
――起動装置に向かい振り下ろした!
起動装置には、既に科学者が持っているのと同じキーが二つセットされている。
そう、この装置は、起動キーが3つ揃ったそのとき、始めてその真価を発揮するのだ!
完全無公害!無限リサイクル可能なエネルギー!それが美しい夜を永遠に――

――だが、科学者の実験は失敗だった。

科学者が3つ目のキーを差し込んだ瞬間、装置は暴走を始めたのだ。
人類の希望となるはずだったエネルギーは瞬く間に炉心を食い破る黒い悪魔となった。
悪魔の膨張は留まるところを知らず、あっという間に舞台だった建物を崩壊させたかと思うと
黒い衝撃波を撒き散らしながら周り一帯の地域を飲み込みそして……
一つの国をこの世から完全に消滅させた。

これが起こった世界に住むものなら誰もが知っている大破壊。
人々はこれを『バシュタールの惨劇』と呼んだ。

そして、その光景をスクリーンの前で見ていた男、ジェット・ブラックは恐怖した。
何故ならば、彼が握っている緑のガラス管こそが、惨劇を呼んだ悪魔の鍵
装置を暴走させた、起動キーそのものだったのだから。

598名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:14:51 ID:/KVZk+dR
 
599名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:15:14 ID:6KAmtpuA
600名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:15:24 ID:17cKm9g3
601名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:15:40 ID:To2MIRFY
602ディシプリン・コンチェルト ◆RwRVJyFBpg :2007/09/24(月) 21:16:29 ID:2DA8j1NV
映画がすっかり終わって、シアターの照明が点いたときには
俺はもうすっかり、気持ちを固めていた。
青い水晶と緑のガラス管。
今の俺には使いこなせないが、強力な力を持ったこの2つのアイテムが、俺の心を決めさせた。

クリスタルとガラス管それから螺旋王のことを中心に情報を集め、脱出の糸口を掴む。
これが俺の決めた答えだった。

確かに、スパイクやエドのことは気になるし、心配だ。
だが、手がかりが何もない以上、あてずっぽうに探し回ってもきっと無駄足に終わるだろう。
それならば、何か目的を持って動き回った方が、得るものはある。
それに、情報を集めに向かったその先であいつらと会える可能性だってゼロじゃない。
あてもなく探し歩くのも、他の目的でうろつきまわっているところでバッタリ会うのも
確率的にはそう変わらんはずだ。

ん?情報を集めるあてはあるのかって?……まあ、一応な。
あのガラス管のことを教えてくれた映画がヒントになった。
俺に支給された品物についての情報が、映画館で映画として上映されていた
ってことは、他の施設でも、何かしらこのゲームに関する情報が拾えるんじゃないだろうか?
例えば、図書館には、青いクリスタルについて書かれた本があるかもしれん。
例えば、博物館には、螺旋遺伝子についての研究成果が展示してあるかもしれん。
例えば、警察署には、あの螺旋王の過去の犯罪について、捜査資料が残ってるかもしれん。
この会場を主催者が用意した以上、少し虫のよすぎる考え方かもしれんし
あのガラス管は実はただの玩具で、俺は踊らされてるだけって可能性もないではないが
このままここで唸っていたって事態は進展しないからな。

それから、クリスタルとガラス管の扱いについちゃあ、ちょっと注意する必要があるだろうな。
こいつは確かに脱出の鍵にもなりうる強力なアイテムだが、使い方を間違えるとエライことになる。
例えば、使い方を知ってる悪党に奪われた時とかな。
スパイクやエド以外と接触する時は、慎重にいったほうがいいかもしれねえ。

まあ、いつまでも考えてたってしょうがねえし、そろそろ行くか。
随分のここで時間を浪費しちまったからな。時は金なりだ。

「スパイク、エド、すまんな。無事でいろよ……」

俺は、後回しにすることにした仲間たちに軽く侘びを入れると
デイパックを背負い、シアターの出口へと向かった。




【C-5 映画館 一日目 黎明】
【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム0〜1つ 本人確認済み)
    テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
    アンチ・シズマ・ドライブ@ジャイアントロボ THE ANIMATION
[思考]
 基本: 情報を集め、この場から脱出する
 1:種々の情報を得るため、図書館or博物館or警察署に向かう
 2:スパイクとエドが心配
 3:初対面の人間には用心する

[備考]
※テッカマンのことをパワードスーツだと思い込んでいます
603名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:16:47 ID:/KVZk+dR
 
604名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:17:18 ID:HcVQeXLQ
605名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:38:25 ID:uI4lT7gv
 
606『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE :2007/09/24(月) 21:39:22 ID:8ZWwDj8Y
「さて」
潮の香の強調される風の中、ホテルの屋上を囲う鉄製のフェンスに手をつき、高遠遥一は誰にとも無く呟いた。
眼下に広がる運河を挟んだ対岸には、周囲を細く、しかし強く照らす灯台が立ちすくむ。
景色のほとんどは夜の闇に覆いつくされ、その全容を見ることは叶わない。
だが、どうやら、バトルロワイヤルの舞台となるこの場所は、見慣れぬファンタジーワールドなどではなく
自分のよく知る世界のそれとほとんど同じ『もの』で造られているようだ。

あまりに突然の展開。異形の者たち。そして、見たことも無い超常の力。
自分が、自分たちの居た世界で、それなりの修羅場も不思議なものも見てきたという自負はあったが、
この一連の展開は、そんな彼の生きてきた世界の常識さえも易々と破壊するものだった。
「………」
あるいは、これは、『その割には』拍子外れとでも言うべきか。

対岸よりの風が前髪をゆらした。とりあえず、見下ろす視界の内に人影は無い。
そもそもが、大部分が、油のように黒くのっぺりとした水面で占められてはいるのだが。

人が死ぬ、あるいは、人を殺す、ということにさしたる抵抗は無い。
むしろ自分のこれまでの人生は、それを奨励する『伝道師』としてのものであったすらといえよう。
しかし
(思ったより、腹が立つものですね)
それを、人から強要されるということは。
(さりとて、少なからず存在するであろうこのゲームを不服とする者達の中から、信頼できる『仲間』を募り
 主催者の意図をも超えた脱出に尽力する、などというのも)
正直、まるで興味が湧かないことだ。
「ふむ…」
大体、それはそれで、主催者の影響を、逆の形であれもろに受け、踊らされていると、そういうことでもあるだろう。
こんなところに放り込まれたからといって、簡単に『いい人』に鞍替えして
誇りと自負に満ちていた過去の『悪行』を捨て去る未来図など、背筋のあたりに怖気さえ走る。
(………)
そうだ。主催者の鼻を明かしたいだけなら、このバトルロワイヤルに優勝し、主催者への望みを「自殺せよ」とでもしてやればよいのだ。
あるいは、機嫌を損ねた主催者に自分は殺されるかもしれないが
自らが決めたルールすら守れなかったその瞬間、彼らは、そのゲームマスターとしての誇りも矜持も失うことになる。
死後の世界など、もちろん信じてはいないが
(悪くない。いや、最後の瞬間まで大笑いできる死に方でしょうね)
そんな風にも、思う。
607名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:40:21 ID:Dbwysa0G
 
608名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:40:42 ID:/KVZk+dR
 
609名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:41:24 ID:uI4lT7gv
 
610『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE :2007/09/24(月) 21:41:40 ID:8ZWwDj8Y
結局自分の『地獄の傀儡師』としての誇りは
「いつも通り、ですか」
そうあることでしか守られない。
人を欺き、操り、災禍を呼ぶことでしか。

それが、たった数分間の思考で、高遠遥一の出した結論だった。

(さて…そうなると、やはり一番の難題はこれですか)
支給されたデイパックの中から、一枚の用紙を探り出す。
このゲームの参加者の名簿。
『地獄の傀儡師』を鼻で笑うようなセンスの賜物だろう名前がてんこもりだが
そんな中でも、高遠の目を一際引きつけるのは、やはり、ここ。
(金田一 一……)
様々な事件において自分の前に立ちはだかった、自分にとっての、おそらくは終生のライバル。
このゲームに自分が更なる扇動を加え、よりいっそうの混沌を呼ぶにせよ、
この手を直接血で汚すにせよ、どちらにしても、マイナスにはなっても、プラスにはなりえない存在だろう。

(どう、しますかね……)
厄介な点はいくつかあった。
金田一が、高遠の正体を―――犯罪者、殺人者としての―――正体を知っているということ。
ここが、基本的に閉鎖された空間だろうということ(でなければバトルロワイヤルなど成立しない)。
金田一が、曲がりなりにも、自分を何度か追い詰めたほどの知性を持っているということ。
自分には今、常に使っている、愛用の変装道具がないということ。
ひとつひとつは高遠の力量をもってすればどうとでもなる問題でしかないが
(組み合わせが、どうにもいけませんね)
はぁ、と体を入れ替えるとフェンスに背中を預け、夜空へ吐息を解き放つ。
「……まあ、私の名前に気がつかないということはないでしょう」
それなりに長い付き合いだ。
それに気づいた金田一がどう動くかなど、たいして考えるまでもなくよく分かる。

剣持勇をはじめとする、知人たちとの合流と、高遠を『逮捕』すること。
まともな警察権力など存在しないこの場では、おそらく『告発』止まりで終わるだろうが、
それでもそれが高遠のような隠密性を重視する『犯罪者』にとって最も致命的であることを、あの金田一が理解しないとも思えない。
むろんこのゲームの流れの中で、良くも悪くもその行動にプラスアルファは加えられるだろうが、
その二つに対し、何の対策も立てない、ということだけはまずありえまい。
「………」
このフィールドは、高遠と金田一が今まで対峙してきたそれとは、明らかに違う。
むろん、高遠にとって、好ましくない形にだ。
まず、82人というそれなりの大人数とはいえ、その中に『高遠が確実に居る』ことを金田一に知られてしまうということ。
これが何より不味い。
自分は、けして弱くは無い。
だが、それはあくまで一般的な『人』の範疇での話だ。
先ほどの演説と解説の最中、情けなくも見せしめで殺されたサイボーグのごとき男が居たが、
あれとすら、正面から戦えば二秒と持たせる自信はない。
いや、極端な話、警察官である剣持勇と正面から喧嘩して、勝てるかもどうかも相当に怪しいものだろう。
少なくともつもりとしては、今まで通り、『自分は正体がバレたら終わり』であることを自覚して動くべきだ。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:41:48 ID:To2MIRFY
612名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:41:49 ID:droStTCx
 
613名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:41:53 ID:Dbwysa0G
 
614名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:42:23 ID:/KVZk+dR
  
615名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:43:23 ID:To2MIRFY
616『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE :2007/09/24(月) 21:43:24 ID:8ZWwDj8Y
つまり、そういうこと。

だからいつもと同じようにアリバイを作り。
だからいつもと同じようにトリックを造り。
だからいつもと同じように操り人形(マリオネット)を創る。

人を欺き謀ることにより、何よりの快感を得てしまうという悪癖を持った『変人』ではあるが、
行動に、本当の意味での、何者をも意に介さない自由が無い程度には、高遠遥一は『凡人』なのだから。
(ま、それも良し悪しですがね)
これからの行動方針と同時並行で、過去へと思考を動かせる。
強いものは、同時に脆い。
『多数派』という『強者』の間を縫って『少数派』の『弱者』として生きてきた自分には、
彼らの、強さ故の驕りと愚かしさ、それがもたらす致命的な隙が、手に取るようによくわかる。
見せしめに殺されたあの男など、まさにその典型例ともいえる存在だろう。
驕慢に肥大化した自我と、それが呼ぶ取り返しのつかない死。
思考が、思索が、緩みきっているのだ。その強さが故に。

…………

未来への思考へ、立ち戻る。

これからの方針。
手としてはいくつかある。
大まかに言ってしまえば、いつものように人と人の間に『隠れる』こと。

もしくはいつもと同じ舞台に立たないからこそ変拍子として使える『攻撃』を加えること。
ここで言う『攻撃』とは物理的なものだけを指すわけではない。
高遠にとっても金田一にとっても、見も知らぬ世界見も知らぬ国の住人だろう者たちであふれたこの場所ならば
犯罪者高遠遥一とアマチュア探偵金田一一という追う者追われる者の関係を再構成することすら、決して不可能ではないのだから。
簡単なことだ。
おそらく高遠の存在に気づいた金田一がやるだろうことを、高遠が、鏡のように真似をしてやればいい。
こんな場所とはいえ、招待客の全てがゲームに乗るとは思えない。
いや、高遠の知る面子と高遠自身を鑑みてみれば、むしろゲームに積極的には乗らない人間の方が、より多く呼び出されているのかもしれない。
そんな人間をこそ、紛れ込む高遠のような人間が巻き起こす疑心暗鬼と人間不信の禍により修羅の道へと突き堕とす。
こんな悪趣味なことを考える主催者だ、ある種の同類であるからこそ、
高遠にはそういう趣向を凝らす主催者の意図も、読み取れないことはない。

そして、なればこそ金田一は、たとえ知り合いでなくともまず遭遇した相手とは交渉から入るだろう。
そして信頼できると判断したなら、その相手にこう言うのだ
「これこれこういう感じの、高遠遥一という男には気をつけろ」

それは、困る。

そんなことをあちこちでされては、これから取る行動に大幅な制限をかけられてしまう。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:44:09 ID:Dbwysa0G
 
618『高遠少年の事件簿』計画 ◆VavZ5Yv7KE :2007/09/24(月) 21:44:56 ID:8ZWwDj8Y
(しかし)
自分が、それと全く同じことをしたらどうなるか?
「これこれこういう感じの、金田一一という男には気をつけろ」
金田一の『過去の悪行』については、高遠自身の、過去それをくれてやってもいい。
たったそれだけのことで、高遠と金田一の状態は五分と五分に引き戻せる。
こちらが信用を得れば得るほど、言うことが金田一と鏡合わせのように同じであればあるほど、
『善良な者』は、どちらを信じればいいかわからなくなる。
それはおそらく、『善良な者たち』に囲まれながらの直接対峙の時ですら。
……実に知略の戦わせようがありそうなその状況を想像すれば、今から口元が緩んでしまう。

(しかしまあ、楽しみにしてばかりもいられませんか…)
厄介な点が、ないわけではないのだ。

まず何より、高遠と金田一以外にも、彼らをよく知る人物が召喚されていることだ。
当たり前のことだが、いわゆる水掛け論を強引にでも解決させねばならない場合、証言者は多ければ多いほど有利だ。
彼らが絡めば、金田一との、元の世界で「どちらが本当の探偵役で、どちらが本当の犯罪者だったか」を争うというスリリングなゲームも、
一気に高遠の不利へ傾くことだろう。
(できれば、彼らには早期退場していただきたいものですが……)
もしくは金田一もろとも、三人組の悪党集団にでも仕立て上げるか?
いや、あくまで一般人の金田一と違い、高確率で警察手帳まで所持している職業警官では
名簿を見る限り何人か居る『日本人』に対する説得力の面で……

……まあ、いいか。

一旦、没頭していたとりとめもない思考から浮上する。
いまだ遭遇した相手もいないこの状態で、あまりガチガチに行動指針を決めすぎるのも問題だ。
人は、一度決めた手順には盲目的に従ってしまう習性を持つ生き物だ
自覚していれば超克することはさほど難しくはないが、それでも、イレギュラーな事態に対してのラグはどうしても生じてしまう。
もう役立たずになってしまった作戦に、時間の多寡はあれ『こだわって』しまうのだ。
(そして、こんな環境では、そういうラグがえてして致命的になることがある)
なにより
(金田一にしろ私にしろ、出会い頭の『事故』であっさり死んでしまう可能性のがよほど高そうですしね……)
自嘲とともに、そうも思う。

自然、頼りないながらの武力と、頼みとする知略のほとんどは、それらをかわし生き残ることに、そのほぼ全てを費やすことになるだろう。
金田一に過去の『地獄の傀儡師』の濡れ衣を着せ、自分は今までどおり無害無関係を装いつつも殺人と殺人幇助を続ける。
この魅力的な大方針とて、実のところ、所詮は趣味の域、机上の空論の域を出ていないのだった。

実質「やって失敗しても、やらない時より損になることがない」という気楽さが取り柄の、それだけの策だった。
まあ、金田一がこのバトルロワイヤルに脅えきり、思考と策の全てを放り出すほど惰弱な男であったなどという
『こちらの予想を完全に超えた事態』にでもなれば、かえってこちらが墓穴を掘ることになるかもしれないが……
(……フフ……。……そうそう。武力と言えば)
そういえば、ランダムで支給される、何がしかの物品があるという話だった。
「……まず真っ先に確認するべきでしょうに」
苦笑が、漏れる。
やはり、どんなに冷静なつもりでも、自分もかなり動転していたらしい。

「さて、どんなものがあるのか……」

高遠遥一は、傍らのデイパックに、再び片手を突っ込んだ。
619名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:45:03 ID:To2MIRFY
620名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:45:21 ID:17cKm9g3
621名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:45:57 ID:Dbwysa0G
 
622名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:46:33 ID:8ZWwDj8Y
【E-2ホテル屋上/1日目/深夜】

【高遠遥一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、不明支給品(残3)
[思考]
1:ステルスマーダー一直線
2:金田一に『危険な犯罪者』の濡れ衣を着せる
3:剣持と明智は優先的に死んでもらう
4:ただし2と3に拘泥する気はなく、もっと面白そうなことを思いついたらそちらを優先
623名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 21:47:39 ID:17cKm9g3
624勇気の意味を知りたくて(修正) ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 21:59:54 ID:+LPmGtp4
>>558の8行目
「それに反抗して無残に散っていったランスと呼ばれた男。」を、
それに反抗して無残に散っていったモロトフと呼ばれた男。
に修正。
>>570
ヒューズの支給品の「ロイの手袋」を「ロイの発火布の手袋」に修正。
625勇気の意味を知りたくて(修正) ◆o4xOfDTwjY :2007/09/24(月) 22:09:40 ID:+LPmGtp4
すみません。もう一つ追加です。
>>561の6行目
「あの螺旋王ロージェノムとやらも、それに刃向かったテッカマンランスという名の男も」を、
「あの螺旋王ロージェノムとやらも、それに刃向かったモロトフという名の男も」に修正します。
626『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:16:00 ID:PTlS25TI
(殺しあいなんて駄目だ…絶対に止めさせないと……)
ヴァッシュ・ザ・スタンピードは玉座に座る男を見上げた。螺旋王を名乗った男はたった今人一人を殺したにも関わらず何事もなかったかのように説明を続けている。
(ごめん。僕には何もできなかった…)
涙が溢れそうになる。ヴァッシュは唇を噛み締めた。
「気に入らねぇ、ってツラしてるな」
声をかけられた。向くと細身で青い服を着た長身の男がヴァッシュと同じように苦い表情で玉座の男をを睨んでいた。
「……オレもだ」
やはり自分と同じ思いの者はいる。それを確認するとヴァッシュは再び視線を戻した。
(そうだよね…誰も、殺し合いを望むなんて…。そんなことのために君は……)
そこでヴァッシュの視界は歪み意識は闇に落ちた。
627名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:16:14 ID:17cKm9g3
628名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:16:15 ID:HcVQeXLQ
629名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:17:20 ID:0KOdYw8P
630名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:17:21 ID:ouN6Cfds
 
631名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:17:54 ID:HcVQeXLQ
632『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:18:15 ID:PTlS25TI


次に気がついたときヴァッシュは全速力で疾走するモノレールの屋根にへばりついていた。
「のおおぉぉぉぉ!?なんで!?どうして!?なしていきなり屋根の上なのぉ!どぉして走ってるのぉ!僕が何したって言うのさあ!」
跨座式のモノレールである。吹き荒れる風がヴァッシュの顔を容赦なく叩く。
モノレールの正面に掛けている手の力を一瞬でも緩めればたちまち時速数十キロで下を流れる地面へとダイブするだろう。
「無理無理無理!落ちる!落ちちゃう!助けてよママンッ!あ〜、今口の中に何か変なの入ってきたあ!」
「うるせぇぞ!」
必死でじたばた泣き喚くヴァッシュを横合いから怒鳴りつける声がした。
「そんなこと言ったってぇ!ってあれ?ああ、あなたはさっきの青い人!」あ
ヴァッシュが声の方向に首を曲げると先ほどの青服の男がモノレールにへばりついていた。
但し、ヴァッシュが屋根なのに対し男は幾分姿勢を保持しやすい側面から屋根に手を掛ける形である。
「青い人じゃねぇ!ランサーだ!」
イラついた声で男はそう名乗った。
「あぁ、どぉもぉ!ぼかぁヴァッシュ・ザ・スタンピードって言いますぅ!一緒にこの殺し合いを止めさせましょう!」
「真っ先にてめぇが死にそうじゃねぇか!」
633名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:18:24 ID:17cKm9g3
634名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:19:25 ID:0KOdYw8P
635名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:19:31 ID:ouN6Cfds
 
636名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:19:36 ID:fE8YsBnF
       
637名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:19:57 ID:MM0ZUptr
638名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:20:04 ID:HcVQeXLQ
639『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:20:07 ID:PTlS25TI
屋根より安定した場所にいる分いくらか冷静でいられるのか、ランサ−はそう返した。
「そりゃまぁそうなんですけどねぇ!あ、まさかランサーさん殺し合いに乗っちゃうつもりですかぁ!?だめですよ、世の中はラァブ&ピースでいかないとお!」
「馬鹿にしてんのかてめぇは!?」
再び怒鳴りランサ−は片手で頭をかいた。足をかける場所はあるのでサーヴァントの腕力と合わせれば片手でも姿勢の保持に影響はない。
「…くそ!とにかく状況の確認だ!…いつの間にかこんなもん持たせやがって」
そう言うとランサーは肩に掛かっていたデイパックをずらし片手で中身の確認を始めた。
「器用ですねぇ!?」
突風に手を持っていかれかけた体を慌てて戻しながらヴァッシュが叫ぶ。
「英霊を舐めんな!これぐらいの風圧屁でもねぇ」
「じゃあ代わってくださぁぁぁい!」
突然の横風にあおられ下半身が変な方向に曲がっているヴァッシュを無視してランサーはデイパックの探索を続ける。
640名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:20:50 ID:17cKm9g3
641名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:20:57 ID:ouN6Cfds
 
642『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:21:18 ID:PTlS25TI
「あぁ?紙かこりゃ!?え〜、アイザック…アルフォンス…こりゃオレ達の名簿だな!」
「ホントですか!見せてください!一体何人の人達がこの馬鹿げた殺し合いに参加させられているのかと思うと…」
心底心配で堪らないというように顔だけでうなだれるヴァッシュ。
「ちっ…!仕方ねぇ。オラしっかり見ろ!」
ランサーは無理やり身を乗り出しヴァッシュの鼻先に名簿を突き付けた。
「どぉも!…ってちょっと近すぎ!紙がめくれて鼻、鼻が!ふぁ…ふぁ…ぶぇっくしょいっ!」
はためく名簿に鼻先を刺激されたヴァッシュは盛大なくしゃみで名簿を吹き飛ばした。
猛烈な風に巻き上げられた名簿は瞬く間に二人の遥か後方へと消え去った。
「馬鹿野郎!」
「ごめんなさい!」
顔を青くして謝るヴァッシュ。ランサ−は忌々しげにちっと呟くと元の態勢に戻った。
「次だ!」
気を取り直してデイパックの探索を続ける。
643名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:21:21 ID:0KOdYw8P
644名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:22:19 ID:17cKm9g3
645名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:22:21 ID:HcVQeXLQ
646『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:22:23 ID:PTlS25TI
「あぁ!また紙か!?え〜、モノレール…高速道路…こりゃオレ達のいるとこの地図だな!」
「ホントですか!見せてください!一体どこまで行ったら僕達はこの乗り物から降りることができるのか…」
心底心配で堪らないというように顔だけでうなだれるヴァッシュ。
「ちっ…!仕方ねぇ。オラ今度こそしっかり見ろ!」
ランサーは無理やり身を乗り出しヴァッシュの鼻先に地図を突き付けた。
「どぉもぉ!ってまた近ぶぇぇっくしょい!」
はためく地図に鼻先を刺激されたヴァッシュは盛大なくしゃみで地図を吹き飛ばした。
猛烈な風に巻き上げられた地図は瞬く間に二人の遥か後方へと消え去った。
「馬鹿野郎ぉっ!」
「ごめんなさいぃっ!」
顔を白くして謝るヴァッシュ。ランサ−は憎々しげにちっと呟くと元の態勢に戻った。
「次っ!!」
気を取り直してデイパックの探索を続ける。
647名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:22:54 ID:fE8YsBnF
       
648名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:23:02 ID:Y0pUHdOy
 
649名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:23:27 ID:17cKm9g3
650『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:23:38 ID:PTlS25TI
「あぁ!?今度は紙じゃ」
「見せてくださぁぁぁい!」
「絶対に見せねぇっ!!」
我慢の限界を越えたランサーが叫んだ。怒りに任せて車体をよじのぼりヴァッシュの腕を掴む。
「ひっ!」
「いい加減にしろ!テメェさっきからオレの」
そこでモノレールの車体がガクンと大きく揺れた。
路線がカーブに差し掛かったのである。突然発生した遠心力という新たな力に、ランサ−はまだしも体を真っ直ぐ伸ばした状態のヴァッシュは全く抵抗できない。
結果、振り回されたヴァッシュの体はランサーをモノレールの車体から叩き落と
していた。
「へ?」
猛烈な風に巻き上げられたランサーは瞬く間にヴァッシュの遥か後方へと消え去った。
651名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:24:12 ID:0KOdYw8P
652名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:24:14 ID:fE8YsBnF
       
653名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:24:16 ID:HcVQeXLQ
654名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:24:18 ID:ouN6Cfds
 
655名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:25:27 ID:/KVZk+dR
       
656名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:25:40 ID:0KOdYw8P
657名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:27:41 ID:MM0ZUptr
658『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:28:03 ID:PTlS25TI
「馬っ鹿野郎おおぉぉぉぉぉぉお!?」
「ごめんなさああぁぁぁぁぁぁい!?」
顔面蒼白で謝るヴァッシュにこれ以上ない程目を見開いたまま落ちていくランサー。やがて遠くに小さく水柱が挙がるのが見えた。
(な、何かうまいこと風に乗って水の上に落ちれたみたいだし…死んでない、死んでないよねぇあの人ぉ!?)
ヴァッシュはただがくがく震えながらさっきまでランサ−がいた場所でしがみ付いていることしかできなかった。


【G-4 あたりのモノレールの屋根(疾走中)1日目 深夜】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】
[状態]:がくがくぶるぶる
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品1〜3
[思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせる
1.やめて止めてやめて止めてやめて止めて…
2.止まったらすぐ降りる。
3.あの人生きてるよね…?
※参加時期はウルフウッドと知り合って(本編9話)以降ということ意外不明です。
659名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:28:04 ID:/KVZk+dR
 
660名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:28:57 ID:HcVQeXLQ
支援一線
661名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:29:03 ID:17cKm9g3
662名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:29:10 ID:ouN6Cfds
 
663『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:29:20 ID:PTlS25TI


「ちくしょう…ひでぇ目に遭った…」
何とか地面との激突を避け岸に泳ぎついたランサ−は肩で息をしながら地面に倒れこんだ。
少し体が動かしにくかった気はしたが別にこの程度の水泳でそこまで疲れた訳ではない。何かもっとかこう精神的な何かが原因である。
「あの野郎…今度会ったらただじゃおかねぇ」
普段そこまで根に持つことはない、それどころかどちらかと言えばサッパリした性格であるはずのランサーだったがさすがこの状況では怒りがおさまらない。
そんなランサーの目の前にまるで贈り物とでも言うかのようにヒラヒラと一枚の紙が舞い降りた。
「ん…?」
何気なく手にとってそれを見る。
そこに書かれていたのはWANTEDの文字と賞金の額を示すのであろう11桁の数字。
そして真ん中にでかでかと描かれている能天気な笑顔は紛れもなくさっき自分を海に突き落とした男だった。
「……」
ランサーは苦々しい思いで、それでも平静を保ちながら流れ飛んできたヴァッシュの手配書に目を通す。
しかし、備考として書かれたある一文に目を通したときランサーは手配書を握り潰し堪りかねたように叫んでいた。
「何が平和主義者だ!ヴァッシュ・ザ・スタンピードォッ!」
664名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:29:50 ID:R1Vm6ul6

665名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:30:04 ID:/KVZk+dR
 
666名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:30:10 ID:fE8YsBnF
     
667名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:30:13 ID:0KOdYw8P
668名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:30:51 ID:17cKm9g3
669『英霊と台風』 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:31:04 ID:PTlS25TI
【F-3南東端の岸  1日目 深夜】
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小) 精神的疲労(小) 
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(地図と名簿を除く)不明支給品1〜3 ヴァッシュの手配書(一枚)
[思考・状況]1.とりあえず一人でゆっくり支給品を確認する。
※参加時期は本編での死後。そのため言峰の令呪は無効化しています。


【ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書について】
G-2から飛ばされた中の一枚。写真や賞金額の他、多少ヴァッシュについての説明が書かれている。


『モノレールについて』
バトルロワイアル開始と同時にG-2の駅を出発しました。一駅間の移動は5分〜10分。
中は無人で操作は全て機械が行っています。
跨座式モノレールの形についてはこちらを参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB
670 ◆10fcvoEbko :2007/09/24(月) 23:33:12 ID:PTlS25TI
以上で投下終了です。
多数の支援ありがとうございました。
671名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/24(月) 23:59:53 ID:KrQWDLDf
 
672名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:00:54 ID:fE8YsBnF
           
673名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:01:42 ID:0JlIc8H/
   
674汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:01:48 ID:cszWwmT0
(何故、私はこんな所に居る?)
それが最初に浮かんだ疑問だった。
彼は大陸横断特急フライング・プッシーフットに乗り、ニューヨークへと向かっていたはずだった。
しかし、食堂車に黒い服の男達や白い服の男等が銃を手に表れ、近くに居たカップルに床に伏せさせられた直後。
彼――チェスワフ・メイエルは自分が大きな広間に立っている事に気がついたのだった。
最初は汽車を占拠した黒服、もしくは白服の男達によって乗客全員がこの場所に拉致されたのだと考えた。
だが、その後に大広間で起こった出来事を見て、彼は少し考えを改める事になる。
ロージェノムと名乗る男の登場と殺し合いを行うという宣言。
更にはそれに反抗しようと瞬時に鎧を纏った男が行った攻撃と彼の末路。
そして、その後の大広間から今現在彼が居る場所への一瞬にしての移動。
それ等は明らかに200年以上を生きる錬金術師であるチェスの持ち得る、あらゆる知識の外にあるものだった。
もちろん、彼は自分が全知全能だとは思っていないし、あれらの能力者をありえないと否定する気も無い。
そもそも彼自身が世界の絶対たる摂理から“悪魔”の助力により逃れた存在なのだ、
あのような特異な力を持つ者が複数存在していても、なんら不思議な事は無かった。

(しかし、殺し合いとは……私が不死者だと知りながら言っているのか?)
薄暗い部屋の中、冷たい床に座り込み立ち並ぶ棚に背を預けながらチェスはそう考える。
不死者。悪魔のもたらした未知の薬によって世界の理から外れた者達。
それらはその名が表すとおり、老いる事を知らず死という終焉を迎える事はない。
例えば、おそらくは薬屋の店舗なのであろうこの部屋の中には、無数の薬品が詰まった棚が所狭しと並べられている。
だがしかし、殺し合いの場では貴重なそれらは彼には必要の無い物なのだ。
何故ならば彼は撃たれようが、焼かれようが、切り刻まれようが死を迎えることが出来ないのだから。
それどころか、その身が例え灰になろうとも元の姿を取り戻すのに、そう時間は掛からないだろう。
ある特定の方法を取らない限り、不死者を滅ぼす事は不可能なのだ。
その様な殺し合いという目的を根底から覆しかねない存在を、あの男は問題ないとばかりに参加させている。
(考えられる事は三つ)
一つはロージェノムが不死者という存在を知らないという可能性。
ただし、あの時殺された鎧の男の素性を知っているような口振りからして確立はかなり低い。
次は不死者としての能力自体に何かの工作が施されている可能性。
こればかりは試してみないと解らないので、
支給されたでナイフ(というには大きすぎる刃物)で掌を深く傷つけてみたが、結果は常時と余り変わらなかった。
無論もっと大きな傷、例えば死に瀕するような重傷の場合は結果が変わる可能性もあるが、今のところは保留で構わないだろう。
そして最後は自分以外の不死者がこの場に存在するという可能性である。
確かに不死者を通常の方法で殺す事は出来ない。
だが、不死者同士ならば『喰う』という行為で相手をこの世から消滅させる事が可能なのだ。
方法は簡単だ。対象の頭に右手を乗せ『喰いたい』と願う。
ただそれだけで不死者が一人消え、そいつの記憶を受け継いだ不死者一人だけが残る。
それこそが彼等、錬金術師達が不死になった際に悪魔に授けられた唯一の死の方法だった。
675名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:03:17 ID:fE8YsBnF
                
676名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:03:21 ID:qf6HhZnA
 
677名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:03:27 ID:B6iD+hxT
 
678名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:03:30 ID:17cKm9g3
679名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:03:51 ID:BPzw6pCs
 
680汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:04:05 ID:CXh4BjpZ
(この中で可能性が高いとすれば三つ目か)
そう思案しながら、チェスはデイバッグの中に入っていた参加者名簿を見つめる。
彼にとっては幸運な事に、名簿の中には彼の知る200年前の錬金術師達の名は無い。
だが、ここに来る直前まで彼が耳にしていた名前が三つ、まるで代わりの様に記されていた。
アイザック・ディアン、ジャグジー・スプロット、ミリア・ハーヴァント。
この殺し合いが始まるまで、フライング・プッシーフットの食堂車で一緒だった三人。
そして、あの三人を含む乗客達数十人のいた食堂車内で、彼は偽名を名乗る事に失敗していた。
不死者同士では偽名を名乗ることが出来ない。それが悪魔の定めた不死者間でのルールだ。
つまり、あの乗客の中の誰かが不死者である事はほぼ確定している。
(この三人の内の誰か……もしかすると三人全員が、不死者かも知れないという事か)
もちろん、三人とも一般人の可能性もあるし、彼等以外の誰かが不死者の可能性もある。
だが注意するに越した事が無いだろう。
他の不死者に喰われて自らの記憶を覗かれるのは、チェスにとって、とても耐えられるものではなかった。



「さて……そろそろ行くとするか」
やがて、小さく呟きながら立ち上がると、チェスは手早く支給品等をデイバッグに仕舞った。
そして、おもむろに近場の棚へと目を向けると、そこに並ぶ多数の薬品を物色し始める。
確かに彼にとってこれらの薬品は必要の無い物だが、それでも何かに使える物は回収しておこうと考えたのだ。
そして、数種類の薬品を鞄に詰め終えたチェスが店の入り口へ目を向けるのと同時、そこにあったドアが店内へと向けて押し開けられる。
そこには一人の少女が立っていた。年の頃は十代後半といった所だろうか?
橙を基調とした服を身に着けたその少女は、こちらを見て驚いたような表情をしながらも、すぐに右腕をチェスへと向けてくる。
彼女の右手に握られた小形の拳銃は、真っ直ぐにチェスの体を狙っていた。
「動くな。お前の名前とこの殺し合いに乗る気なのかどうか……それから、お前の持っている力についてを教えてもらおうか?」
「お、お願いだから殺さないで!」
内心の動揺を押し隠し、チェスは怯えた表情で懇願する。
(こいつ、まさか私の事について何か知っているのか!?)
一瞬浮かんだその考えを即座に否定する。
彼女の口から出たのはあくまでも力という単語であり、チェス自身の能力に直結する固有名詞などではない。
おそらくは支給された武器の事を言っているか、単なるハッタリなのだろうと思いながらも、
チェスは念の為本名ではなく、名簿で自身の近くにあった名前を名乗っておく事にした。
「ぼ、僕はドモン・カッシュ。人を殺したり、なんてしないし……持っている武器も、変なナイフが一本だけだよ……」
そう言いながら、手にしていたデイバッグをゆっくりと下ろす。
少女は床へと完全に下ろされた黒い鞄をチラリと一瞥した後、チェスへと向けて再び口を開いた。
「支給された武器の話じゃない。お前自身、何か特殊な能力を持っていたりするんじゃないのか?」
(どういう事だ? この女、不死者ではないようだが。
 鎧の男の力を見て警戒しているのかとも思ったが、それにしては何らかの確信を持っているような……)
素早く思考を巡らせながらもチェスはおずおずと首を横に振り、少女の言葉に返答する。
しばらくの沈黙の後。「そうか」と呟くように言いながら、少女はゆっくりと銃を下ろした。
「手荒な真似をしてすまなかったな。私は玖我なつきだ」
軽く頭を下げながら、少女は自身の名を名乗る。
彼女が手にしていた銃は、いつの間にか姿を消していた。
681名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:04:52 ID:XAV59T1X
 
682汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:05:37 ID:CXh4BjpZ
【A-6 通りに面した薬局 一日目 深夜】

【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:健康、なつきに不信感
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式、アゾット剣@Fate/stay night
     薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等)

 [思考]
   1:なつきと情報交換
   2:アイザック、ミリア、ジャグジーに警戒
   3:自分以外に不死者が存在するなら、喰われないよう警戒する

 [備考]
 ※なつきにはドモン・カッシュと名乗っています
 ※不死者に対する制限(致命傷を負ったら絶命する)には気付いていません
 ※参戦時期は食堂車に黒服集団(レムレース)と白服の男(ラッド一味)が現れた直後です
  よって、ラッドの事やレイルトレーサー(クレア)の事を知りません


                      ◇◇◆◇◇
683名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:06:10 ID:BPzw6pCs
  
684名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:06:21 ID:17cKm9g3
685名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:06:23 ID:R1Vm6ul6

686名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:06:43 ID:XAV59T1X
 
687汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:06:56 ID:CXh4BjpZ
(何故、私はこんな所に居る?)
それが最初に浮かんだ疑問だった。
媛星の脅威が去り、黒曜の君が倒れた事によって、彼女達は平穏を手に入れたはずだった。
だが、彼女――玖我なつきは何時の間にか、殺し合いという馬鹿げた状況の中に居た。
大広間から飛ばされた先――薄暗い路地裏で、なつきは自身がエレメントやチャイルドが出せるか否かを確認する。
幾人もの人間を集め、枷を負わせ、命を奪い合えと扇動する。
こんな地獄のような状況で、彼女がある程度冷静で居られたのは、やはり似た様な経験をした事があるからであろう。
一番地によって風華学園へと集められたHiME達による、蝕の祭と呼ばれる戦い。
賭ける物は自分では無く、大切に思っている人物の命だという違いはあるものの、根本的な部分では似ているように思えた。
(いや……むしろ、この殺し合いとやらはあの祭を模した物なのかも知れないな)
チャイルドであるデュランが出てこずエレメントのみが出せる事を確認して、なつきは漆黒色の空を見上げる。
もちろん、空の上にあの赤い星の姿は見えなかった。
続けて手元にあった鞄を開けて、なつきは支給品や名簿を確認する。
名簿には見知った名前が自分以外に三つ記されていた。
鴇羽舞衣と藤乃静留、結城奈緒の三人だ。
(はやく、三人と合流しなければな)
名簿に続けて支給品を確認しながら彼女は思う。
舞衣はおそらく蝕の祭の時と同じように、この殺し合いを止めようとしているはずだ。
静留もあの時なつきの説得を受け入れてくれたのだ、殺し合いには乗らないと信じたい。
結城だって蝕の祭の時とは違い、率先して人を殺したりなどはしないだろう。
この三人と協力すれば、きっとここからの脱出も容易になるだろう。
「しかし、ここに居る私の知り合いは全員HiMEという事か……」
そして、あの大広間でロージェノムに逆らい首輪を爆破された男。
瞬時に鎧のような物を装着し、大火力の武器を放つというまるでTVの変身ヒーローか何かのようなその力。
(だが、HiMEの能力と似たような物と考えればあるいは……)
そんな事を考えながら、なつきは確認し終えた支給品を手早く鞄に仕舞い込む。
それから、周囲を見渡して人影が無い事を確認しながら、路地裏から抜け出すべく歩き始めた。
688名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:07:48 ID:/622+3yn
689名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:08:11 ID:TIK4SdxO

690名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:08:19 ID:0JlIc8H/
  
691名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:08:22 ID:n330Gvof
 
692汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:08:22 ID:CXh4BjpZ
路地の出口を目指しながら、彼女は再び思案する。
突如出現する鎧はエレメントと同じような物と考えれば理解できるし、大火力自体も舞衣のチャイルドであるカグツチという前例がある。
もちろん、あの男が鎧を着用するためには何らかの道具が必要な様だったり、そもそもHiME能力者は女性のみなどの違いはあるが、
HiMEの力と鎧の男の力は似ている部分が多々存在していると考えてもいい。
ロージェノムの言葉を信じるならば、ここには鎧の男と同じような能力を持った者があと二人は存在する事になる。
つまり、この殺し合いには高次物質化能力とそれに順ずる能力を持った参加者が7人は存在しているという事だ。
そしてロージェノムの口にした耳慣れない言葉、螺旋力。
あの男は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めていると言った。この殺し合いがその選別のための実験だと……
おそらく、螺旋遺伝子とは螺旋力とやらを持った遺伝子といったような感じの意味合いだろう。
(だとすると、ここに居る人間の全員がその螺旋力という力を持っているという事になるのか……?)
そして自身の力を省みると、行き当たる心当たりは一つしかない。
「つまり、ここに集められた連中は全員、HiMEの能力のようなものを持っているという事か」
そう考えると、この殺し合いがHiME同士の戦いをモデルにした物だという仮説にもリアリティーが出てくる。
おそらくロージェノムは、特殊能力を持つ者たちを互いに争い合わせる事で蝕の祭のような状況を生み出そうとしているのだろう。
なつきが心中でそう結論付ける頃には、すでに路地の出口は目前へと迫っていた。


路地裏から顔を出したなつきが見たものは、道沿いにいくつかの店舗が並ぶ比較的大きな通りだった。
周囲を素早く見渡して犬の子一匹居ない事を確認した後、なつきはすぐ正面にある店舗へと目を向ける。
「薬局か」
それはドラッグストアのような大きな物ではなく、個人経営なのであろう小さな物だった。
包帯やその他の薬等使える物があるかもしれないと考えながら、なつきは店内へと続く小さな扉を押し開ける。
そこにはすでに先客が居た。年の頃は十代前半か、それ以下だろうか?
黒いデイバッグを持った少年が、少し驚いたような表情でこちらを見つめている。
なつきは自らのエレメントを具現化させると、目の目の少年へと銃口を向けながら素早く店内を観察した。
(棚がいくつか空になっているな……それなりに冷静な上に、少し頭が回るようだな)
「動くな。お前の名前とこの殺し合いに乗る気なのかどうか……それから、お前の持っている力についてを教えてもらおうか?」
「お、お願いだから殺さないで!」
怯えた表情を見せる少年に銃を突きつけながら、彼に質問をする。
銃に恐怖を覚え懇願する彼の様子は、その姿の通り年端もいかない子供そのままだったが、なつきは銃を下ろそうとはしなかった。
(私の推論が正しいなら、こいつも何かしらの能力を持っているはずだ……
 それに、アリッサ・シアーズや凪、理事長の例もある。子供という見た目だけで判断するのは早計か)
「ぼ、僕はドモン・カッシュ。人を殺したり、なんてしないし……持っている武器も、変なナイフが一本だけだよ……」
そう言いながら少年は手にしていた鞄をゆっくりと下ろす。
なつきはその鞄を一瞥しながら、ドモンと名乗った少年に再び同じ質問を投げかけた。
「支給された武器の話じゃない。お前自身、何か特殊な能力を持っていたりするんじゃないのか?」
繰り返された質問に、ドモンはおずおずと首を横に振る。
(やはり、本当の事は言わないか……それとも本当に?)
とりあえず、今は保留しておくかと考えながら、小さく「そうか」と返答し銃を下ろす。
そしてエレメントを消しながら、なつきは軽く頭を下げ謝罪と自己紹介の言葉を口にした。
「手荒な真似をしてすまなかったな。私は玖我なつきだ」


693名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:09:38 ID:0JlIc8H/
  
694汝は〜なりや? ◆FbVNUaeKtI :2007/09/25(火) 00:09:35 ID:CXh4BjpZ
【A-6 通りに面した薬局 一日目 深夜】

【玖我なつき@舞-HiME】
 [状態]:健康、チェスに軽度の不信感
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式、不明支給品1〜3(本人確認済み)
 [思考]
   1:ドモン(チェス)と情報交換
   2:舞衣、静留、奈緒と合流する
   3:この殺し合いから脱出する

 [備考]
 ※チェスの名前をドモン・カッシュだと思っています
 ※なつきは以下の仮説をたてました
  ・今回の殺し合いは蝕の祭をモデルにした物
  ・テッカマンとHiMEは似たような存在
  ・螺旋力=高次物質化能力に近い特殊な力
  ・螺旋遺伝子を持った者=特殊能力者
  ・この殺し合いの参加者は皆、何かしらの特殊能力を持っている
 ※参戦時期は蝕の祭が終了した後です



[アゾット剣@Fate/stay night]
最終話直前、凜が士郎に渡した物。
儀式用の短剣で魔方陣の形成に使用したりするが、武器としても充分使える。
元々は言峰が凜に贈った物。
695名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:09:43 ID:XAV59T1X
 
696名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:10:56 ID:/622+3yn
697名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:13:28 ID:CXh4BjpZ

698いきなりは変われない ◆h8c9tcxOcc :2007/09/25(火) 00:23:51 ID:DtIeRnZG
G-3エリア、空港内。
明かりの落ちたロビーに、雲に隠された弱々しい月明りだけが差し込んでいる。
そのだだっ広い空間の真ん中にぽつんと置かれた、ウレタン入りの柔い長椅子に腰かけ、こなたは身震いをしていた。
鞄を脇へ放りだし、貧乏揺すりをつづける脚をごしごしと擦る。やがて震えは全身におよんだ。
腰を折り、自分の体を両腕で抱きしめる。それでも、震えは止まりそうにない。
たったいま起こったことが、頭から離れなかった。あの部屋で見た、自らの目を疑ってしまうような光景が。


まず、衣装の完成度がすばらしい。
小手先の技術だけで作れる代物ではない。途方もなく深い愛とこだわりをひしひしと感じた。
何の衣装なのか思い出せないのが惜しいが、俳優との一体感も相乗効果をなし、見事としかいいようがない出来だった。
そして常軌を逸した派手な演出。生身の人間が一瞬にして特撮ヒーロー姿に変身、悪の親玉と
決死の激闘を繰り広げたのち、はるか十数メートル後方の壁まで吹き飛び、挙げ句に首まで刎ねとばされるという壮大さ。
壁に叩きつけたのがダミーとのすりかえをする為だったのは見てのとおりだが、いつすりかえられたのかはいよいよ見抜けなかった。
さらにボルテッカのエフェクトは、こちらまで巻き込まれるのではないかと感じるほどの鳥肌ものであったし、充実の三分間であった。
しいて難癖をつけるとすれば、悪役がヒーローに変身アイテムを寄越すシナリオに露骨なヤラセを感じてしまうことくらいか。
参加者もコスプレをした者がほとんどだし、ブレードら出演者の他にもいくらかのサクラは紛れているのだろうけれども、
それを差し引いたとしてもあの臨場感はそうそうお目にかかれるものではない。
特撮もなかなか捨てたものではないと、自他ともに認める二次元の信奉者はかすかな浮気心を抱いた。
そのうえこれから本編が始まると思うと、期待で震えもくるというものである。



ようするに、こなたはあの出来事を『演出』と捉え、同時に『ゲーム』を手の込んだサバイバルゲームと考えたわけである。
699名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:25:41 ID:TIK4SdxO

700名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:25:59 ID:/622+3yn
701名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:26:15 ID:BPzw6pCs
 
702いきなりは変われない ◆h8c9tcxOcc :2007/09/25(火) 00:26:11 ID:DtIeRnZG
ひととおり批評を済ませたところで感激の身震いも収まり、思い出したように鞄を拾い上げる。
中には、活動するにあたり最低限必要と思われるアイテムが詰められていた。
地図によれば、舞台はかなり広範囲におよんでいるし、食料は二、三日分はあるだろうか。
つまり参加者は、この広大な土地を縦横無尽に歩き回り、三日そこらはぶっ通しで『ゲーム』に興じることになる。
相当巨大なスポンサーのついた催しであることを、あらためて認識させられる。
次いで取り出した名簿を見て、失笑する。胡散臭い名前が軒を並べるなかに、よく知る名があったのだ。
柊かがみに柊つかさ。そして従妹のゆたかの三人。
顔ぶれにやや違和感を覚え、ああ、みゆきさんだけ居ないのかと一人合点した。
なんだか“らしい”なと思ってまた噴き出してしまったのだが、このことは口外無用としておく。
それから、簡易照明器具を除けた先にあったのは、『ゲーム』の主役といって差し支えないアイテム、エアガンだった。
嬉々としてこれを取り上げ、まじまじと眺めてみる。
重さといい弾薬部分の精巧さといい、異様にリアルな造りである。
オープニングであれほどの演出をやってのける団体なら、このくらいのディテールは当然かもしれないが。
とはいえ、こういうものは、実用性を重視するのがユーザーフレンドリーではないのか。
不要なところのリアリティに力を注ぐ姿勢はかなり独り善がりに感じられる。ここは大きな減点といえた。
703名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:28:00 ID:TIK4SdxO

704名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:28:03 ID:/622+3yn
705名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:28:05 ID:JdqTvlaD
706名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:28:21 ID:BPzw6pCs
 
707いきなりは変われない ◆h8c9tcxOcc :2007/09/25(火) 00:28:53 ID:DtIeRnZG
試射に適当な的がないかと見回していると、真後ろあたりからがしょん、がしょんという奇妙な音が聞こえてきた。
こなたはすぐさま、椅子の陰に身をひそめた。膝をぶつけた拍子に鞄が倒れ、中身が少しこぼれてしまう。
がしょん、がしょん。均等な、ややゆったりとしたペースで、音はだんだんと大きくなった。
細心の注意を払いながら、背もたれの上に顔を目の高さまで出して様子をうかがう。
右手のほうに、甲冑のコスプレをした大男の姿が見えた。いや、フルフェイスの兜を着けているので性別までは判断できないか。
靴底に金属部分を付けて雰囲気を出そうとしているのだろうが、足音はどこか軽薄で、安っぽい印象が否めない。
甲冑はほぼまっすぐ、向かって左のほうへと歩みを進めていく。椅子との距離は八メートルといったところか。
エアガンのグリップを握り締め、音をたてないよう慎重に標的へと向ける。
余裕を見せ付けるために、頭部を撃ってやろうか。この距離なら、砲身に癖さえなければ確実に狙えるつもりだ。
仮に外したとしても相手はあの動きづらそうな衣装、充分逃げおおせる自信はある。
とはいえ、最初の一歩を踏み外せば気分も盛り下がるし、もしかしたら他の参加者に告げ口をされて危機に陥る可能性もある。
的も大きいことだし、ここは無難にボディを狙っておくべきか。やりそびれた試し撃ちも兼ねて。
ここまでコンマ三秒で考えたのち、照準を合わせて引き金を引く。
708名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:29:54 ID:TIK4SdxO

709名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:29:59 ID:BPzw6pCs
 
710名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:31:47 ID:0JlIc8H/
  
711名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:33:39 ID:B6iD+hxT
 
712名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:33:45 ID:BPzw6pCs
 
713名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:34:57 ID:nDR0rRbs
714名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:47:29 ID:MHIuwf0Y
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     ノ,{,,,,l==l____ノ
   / ノ | i l ||
715名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/25(火) 00:52:06 ID:MHIuwf0Y
誤爆失礼
716名無しさん@お腹いっぱい。
>>715
!?