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・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。
【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪
【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部)
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用
【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用
【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作
【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪
GJだが……新テンプレは?
5 :
一尉:2008/10/12(日) 20:58:16 ID:gcut7SU6
今だ謎たよ。
つガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちら
実は消滅したらしい
>>6 おk。今出ている
>>1案をまとめたから避難所の運営にご意見ください
9 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:24:49 ID:0KfdUFHR
>>1 お疲れ様です。
30分から第3話の続きを投下したいと思います。
10 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 23:30:03 ID:tTdRjKAo
支援
11 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:31:34 ID:0KfdUFHR
…………
レクリエーションルームから退出し、宇宙人はクロノの足に合わせながら廊下を歩いく。
無機質でいて近未来的な造りは自分達の船や施設と似ており安堵する自分と資料にあった情報以上に技術力を持つ彼らを侮れない存在だと改めて警戒させられる……。
「ここだ」
腕を組みながら考えごとをしていたギロロにクロノは立ち止まってそう告げた。
自分達の眼の前には先程のレクリエーションルームと同じタイプのドアがあり。二人分の体重を床が感知して排気をするような音を発して動いて部屋の中が視界に入った。そこからはだだっ広い空間が存在し。
訓練するなら不備は無いぐらいにスペースはある。訓練校時代にも似たような密室でのサーベル戦に射撃訓練を経験しているから何となくそう思う。
「中に入れば良いのか?」
ギロロの尋ねにクロノは「ああ」と頷き、言葉を繋げてデバイスを彼に渡して説明する。
「僕はブリッジに戻ってこのデバイスと君の実力を見る。」
「デバイスとやらはともかく、軍人を舐めているのか貴様……」
軍人相手に「実力を見る」とはかなり好戦的な発言だが、意味合いとしては「デバイスを扱うギロロの実力」があった。
「カエルのことなんかは表面上しかしらないからね。とりあえず僕は行くから中に入ってオペレーターの指示を待っててくれ」
「か、カエルだと!?」
察してくれない頭の固い宇宙人にため息をつくようにクロノはカエルの言うことを流してその場から離れる。
残されたギロロはとりあえず彼の言うように従って部屋へと踏みいった。
ひょこっひょこっ。と体重の軽さが判断出来る足音が壁や天井に反響して自分の耳に帰ってくる。
いったいどんなことをするのだろう……。
生粋の軍人となった彼は期待と不安が入り交じり、感情が高ぶっていた。
『はじめまして』
部屋に響く女の声と共に正面にモニターが現れ、そこには今の声の主らしき少女が椅子に腰掛けている姿があった。
『私はエイミィ・リミエッタ通信士です。ギロロ伍長、よろしくお願いします』
敬礼と自己紹介をしてきたエイミィという少女に敬礼を返し、尋ねる。
「よろしくたのむ。早速なんだが、一体何をやれば良いんだ?」
12 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:34:13 ID:0KfdUFHR
「まず、そのデバイスでバリアジャケットに着替えてもらいます。」
「これか……」
デバイスと呼ぶ手元のカードを眼の前で裏、表、裏、表とひっくり返す。真空パックされた衣服や食料にしてはサイズが大きいな。
やはりペコポンの技術力は、まだまだ。だな。
『思い描いて下さい。あらゆる場所に適した服のイメージを。そして、デバイスの名前を呼んで見て下さい。』
「こいつの名……」
ともかく、魔法などの力は未知である自分はただ現地の者の指示に従うしかない。
『星に入っては星に従え。』という諺もあるしな……。
それに資料の画像に映っていたペコポン人は変わった服装をしていたし、あらゆる場所とは恐らく戦場ということだろう。
エイミィ通信士が言ったようにデバイスを掲げて思い浮かべる。
こ、こんなチャンスは滅多にないしな。贅沢言っても問題はないはずだ。
すぐに心の内に候補があがってくる。それはかつて古代の宇宙戦争においてサナリーと火星独立軍、両陣営において使われていたプレミア戦闘服……。
そのうちの火星独立軍仕様を色濃くイメージした。
「よし……F90、発進準備だ!」
イメージが浮かび上がったと同時に見えた自分のコードネーム。それを叫んだ瞬間。
身体が……熱い!?
爪先から頭の先まで熱く……赤い光が全てを覆い。身体が何かに包まれていく感じを覚える。
だが、違和感はない。こう……フィットしていて、不安は感じない、むしろ安らぎを感じさせる。これがデバイスの暖かさだというのか……。
すぐに光が晴れ渡り、何事もなかったかのようにギロロは佇んでいた。
しかし、ふと自分の身体を見下ろすと赤を基調に白が所々に置かれたアーマーが装着されてその上からトレードマークにもなっているベルトが左肩からかけている。まさに思い描いたとおりのF90をこの身に纏っていた。
「こ、これは……」
そして、自然と右手に握っていたライフル。見るとそれは喪失したはずのビームライフル(RX78の2型)が。そこに存在していた。
無くしたんじゃなかったのか……。
『では。ギロロ伍長、今からターゲットを表示して行きます。ターゲットは擬似攻撃と移動をするので気をつけて下さい。』
「あ、ああ。」
支援であります!
14 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:40:22 ID:0KfdUFHR
エイミィがそう告げた瞬間、辺りには的がついたロボット兵が出現し始める。
その光景にギロロは直ぐに軍人としての鋭い表情へと変わり。肘を前方に伸ばしてビームライフルを構え。球体の銃口から距離のある的にビームを放ち、直撃させた。
間違いない……こいつだ!と触り心地や重さから理解出来る。
大切な武器が無事なことに安堵し、自然と頬が緩む。が、ビームライフルに気を取られていたギロロは自分の身体が大きな陰に覆われていたのを暗くなった足元の床を見て気付く。
振り向くと今撃墜した的よりも大きなターゲットが背後に接近していたのだった。
武器は……ビームサーベル!
身体に鈍りは感じない、やれる!
反応は速く……咄嗟に左手を振りかぶっていた。しまった−−なくしたんだ!?
しかしその瞬間、接近していたターゲットは何かに切断され見事に真っ二つになり。離散していく。
何が起きたのか頭が一瞬、混乱する。
俺は一体何をしたんだ。と切り倒されたターゲットを見下ろすとその断面は何かに焼き切られたのか赤く染まり、熱気を発して小さな蜃気楼を生み出していた。
こ、この切れ方は……。
困惑する思考の中で確信に変わる手掛かりに左手を見遣れば。そこにはいつの間にかグリーンのフレームが握られており、直ぐに実体化して配色がなされた。
白いグリップ。そこからピンク色の光が発し、刃を形成している……。その姿はまさに自身が愛用していた、ビームサーベル。
それがロボット兵を真っ二つに切り裂いたんだ。と解答してくれた。
だが、何故ビームサーベルが?それに心なしかパワーが上がっているような−−いや、考えている場合ではない!!
刃の出力にいささかの違和感があった。だが、直ぐに頭を切り替えギロロはビームライフルとビームサーベルを持ったまま。ターゲット群に突撃していく。
「えぇぃ、迷うなど俺らしくない!!」
以前ケロロがヒーロー物のフィギュア2体、金もそのうちの1体しか買えない程しか持ってなく。そのことでどちらにするか3時間も迷っていた。
その時に自分は……
「ええぃ軍人が悩むな!戦場での迷いは自分達を殺すんだぞ!……こっちのボサツマンレオにしとけ」と言った。それを言った俺が今更迷いを断ち切れなくてどうする!!
15 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:43:42 ID:0KfdUFHR
自分への叱咤で頭に渦巻く暗雲を振り払い。一つ、二つ、三つとターゲットを次々にライフルから放つピンクの光弾で風穴をあけ。光刃で切断していった。
だがそんな中、彼は違和感と憶測があった。
やはりビームサーベルを……いや、ビームライフルを使用してから自分の身体のうちに熱くたぎる何かの力が感じられるのだ。
血がたぎっているんだ。と最初の一発を消費した時はそう考えたが生理現象とは違う。
反応も今までよりも向上しており、反射神経の速度が上がったのははチップによるものだけじゃない。と勘で解る。
そして無くしたと思っていた武器はこのデバイスを起動してから、使いたい。と強く願うと出てきた。
もしかしたら、デバイスに融合されているのかもしれない……。そうなら、今ここで試してみるか。
ギロロは今一度、最低限で良い自分の力と武器の有無を知り尽くす為に。なくした武器の中から1番値段の高いものをイメージした。
フィンファンネル!
すると、イメージしたとおり。フィンファンネルはグリーンフレームで描かれ、数秒で色がつき。
機械状の放熱板が白い翼を象り、彼の背中の左側に姿を現す。
俺の推測も少しは役に立つんだな……。
大事な武器は融合し、デバイスと化した。だから自分が必要と思った時に現れてくれる事に安堵して胸を撫で下ろす。
なぜ融合したか疑問も残るが……先ずは。
眼の前のコレを終わらせる。
辺りを見回せばターゲットはのこりわずか。ビームライフルですぐに片付くことが出来る。
だが……。
「行け!フィンファンネル!」
これで一気に落とす!
バリアジャケットを象ったようにターゲットを撃墜するイメージを浮かべて指示を出すと六つの放熱板は背中から射出され、コの字に折れ曲がってそれぞれターゲットの頭上に高速機動して光弾を放つ。
と同じに身体の内に感じたあの何かが熱く燃え上がってファンネルの動きを補助してくれている。
何だ、何が起きているんだ!?
ギロロはただ驚きながらファンネルにターゲットを撃つ姿を伝えるだけだった。
「凄い……」
ギロロの試験が始まってからおよそ1分が過ぎ、ターゲットは全部落とされ。
モニターをずっと見ていたエイミィはただ率直に感想を述べ。彼女の隣に立つクロノは予想以上のギロロの実力にア然とするしかなかった。
噛ませ犬支援
支援
18 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:48:01 ID:0KfdUFHR
軍人って自称するからターゲットに攻撃行動の設定させてみたけど……たしかに凄い。
そういえば、侵略に来たって言っていたな。
彼からその言葉を聞いた時はそのかわいらしいと言ってしまいそうな赤いダルマのような姿から、たいしたことはないと思った。しかし……今見た動きはまさに軍人と言うのに相応しく、機敏だ。
あんなのがあと四匹も居て、侵略を始めたらどうなるかなんて考えたら頭が痛いな。
状況に応じて武装を引き出す。あのデバイスはミッドチルダ式……とは違うようだし。それにあのコの字……あらゆる角度にそれぞれ動いて魔力砲撃するなんて数こそ少ないがなのはのアクセルシューターに近い。
「エイミィ、データは?」
ようやく言葉が出た。とは考えてる暇はなく、ギロロの能力がどれほどのものなのか。
それが1番気にかかった。
そして身体データを眼にし。エイミィは苦笑いを浮かべて口評する。
「−A。軍人だっけ?」
「ああ」
「流石って言うしかないよコレ」
「とりあえず、赤ダルマもといギロロを迎えに行ってくる。
この結果をどうするかは母さんの帰りを待つか……。」
…………
「そうか……」
デバイス起動が見事に成功したことで用意されたターゲットも倒せることが出来たことで実験は終了し。
ギロロはクロノに促されてブリッジまでやってきて先程の実験での自身の能力とデバイスの性能のことを説明された。
デバイスには杖型が基本としたミッドチルダ式と武器型が基本のベルカ式に別けられる、しかし自分の使ったものはライフルが基本で状況の変化に臨機応変に武装を出現させる。
言うなれば見た目はベルカ、中身はミッドチルダ。というのが内容だ。
「つまり、俺のデバイスは特殊なんだな?」
聞き返すギロロにクロノは「そういうことだ」と返答しエイミィが言葉を繋げる。
「どちらも魔力を使用するのに違いはないけどね。」
「……その事で聞きたいことがある」
二人を見遣ってギロロはターゲットを撃墜している時。常にあった違和感のことを話す。
熱くたぎる力……、血潮の鼓動とは違って今までの戦いで感じなかったと。
「いや、それが魔力だ。最初の銃も、途中で使っていた剣の刃と最後のコの字全て補助していたじゃないか」
「なに?」
19 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:50:43 ID:0KfdUFHR
予想外にもあっさりと診断され。ギロロは三つの武器を使った時を思いだす。
ビームライフルを使った時は、触り心地に酔いしれて深く考えなかったが撃つ度に。
ビームサーベルを使った時から常に。
フィンファンネルに指示を発して飛ばした時。
クロノの言うことがそうだったのなら、自分は自然と魔力を使用していたのだ。
「な、なんともないのならそれで良いんだ!」
無駄に何か身体に起きたのではないか?と思って少しハラハラしたことが無償に恥ずかしくなり、思わず吃って言葉を発する。
「ああ、魔導師に相応しい力だギロロ」
「デバイスはマガジンタイプでもリボルバータイプでもないから魔力切れするかも……デバイスの改良が必要になるね。」
ライフル、サーベル、フィンファンネルを使用して戦っているギロロの映像を入念にチェックして問題点を述べるエイミィにクロノもコクンと頷く。
「前の二つはまだ少ないけど、コの字は多そうだな。」
彼の気分も聞いておいた方が良いな。
そう思い、クロノは自分の一歩後ろに立つ小さな宇宙人へと視線を合わせ声をかけようした。
しかし、話題の主役たる赤い彼の顔色は陰が入っている。それが今の自分が聞きたかったことの答えになって。
「ギロロ、仮眠したらどうだ?」
小さなため息をつき、身体を休ませることを促す。
無理もない、転移してここに来て無傷とはいえ。脳震盪を起こし、医務室で休んだとはいえ一時間程度。
母たる艦長とでレクリエーションで詳しい話を聞いて、そのまま実験シュミレートで燃費の激しい魔法の使用は忙しいと感じる。
「いらん、軍人の体力を舐めるな。と言いたいが……何処だ」
この質問の仕方は、場所を聞いて自分で行くつもりだね……。
ギロロの言葉から彼の心理をエイミィは察して、傍に立つ馴染みの少年にアイコンタクトをとる。
任されてOK?と。
突然、瞼を開いたり閉じたりする仕種をする彼女にクロノは意を介することが出来ずに頭に?が浮かぶ。
〔〔眼にゴミでも入ったのか?〕〕
念話で聞き返された言葉にエイミィはガクッ。とうなだれ、苦笑を零しながら答える。
〔〔違う違う……ギロロ伍長を仮眠室に私が連れて行くからここを任せて良い?〕〕
〔〔ああ、母さんもそろそろ戻ってくるだろうしな。彼を休ませてやってくれ〕〕
〔〔うん、了解〕〕
支援
21 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:53:59 ID:0KfdUFHR
意思疎通を終え、エイミィは通信士の席から立ってギロロの元に歩み寄って言葉をかける。
身長差があるためか、まるで道に迷った子供に声をかけるお姉さんの構図が出来た。それがツボに入ったのかクロノの表情は歪み、口から飛び出しそうな自分の反応を手で抑えて堪える。
「ギロロ伍長、今から仮眠室に案内しますね」
「いや、場所を教えてむぐっ……」
自分が推察した通りのことを言おうとしたギロロにエイミィは彼の口元を人差し指を立てた手で塞ぎ、それ以上は喋らせない。と示す。
そのまま小さな両手から脇に自分の両手を這わせて持ち上げる。
「き、貴様!何を!?」
真っ赤な顔にさらに赤みがさし、小さな彼は騒ぎたてるがエイミィは無視してクロノに向き直り。
「じゃあ、クロノ君。行ってくるね」
「ああ。ぷっ…くくっ」
「き、きちゃま今笑っただろ!!」
「はいはい、行くよ〜」
はにかんでエイミィはばたばたと足を動かすギロロを抱えて部屋を退出して行った。
「止めろ〜恥ずかしい〜〜〜
〔ずかしい〜〕
〔かしぃ〜〕
〔しぃ〜〕
〔ぃ〜……
ブリッジに兒玉するギロロの情けない声。クロノは辺りを見回して誰もいないことを確かめて口から手を離す、そして……。
「あっはははははは!」
思いっきり笑い飛ばす。
が、思いっきり廊下のギロロに笑い声は聞き届き。顔に赤い陰が入っていた。
「くぅ……」
言葉にならない恥ずかしさで貧血を起こしてしまいそうだがエイミィに抱き抱えられたまま気を失ったらまさにぬいぐるみ状態……「生きてられない」と思い、何とか気を保っていた。
エイミィも何を言えば良いか解らずにただ苦笑を零すしかなかったがそこでデバイスのことを思いだす。
そうだ。ここでデバイスを借りておこっかな。
「ギロロ伍長。改良の為に調べておきたいのでデバイスを貰っても良いですか?」
「俺は……軍人で……ぬいぐるみみたいな扱いで……笑われて……そもそもこんなはめになったのは−−」
エイミィの尋ねに赤みの入った赤い顔の彼はぶつぶつと何か物騒なこと言いながら『F90』をその小さな手で差し出す。
あー、ちょっと本人壊れちゃってるなぁ……。
再び、苦笑が零れながらもF90を受け取りエイミィは彼を優しくしてあげようと小さな決心を抱いたのであった。
22 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:57:09 ID:0KfdUFHR
…………
「すごいわね……」
宇宙からやってきた来客が溜まりに溜まった疲れにをとるためにエイミィに仮眠室へと案内をしてもらっていた頃。
彼女が退出してから少し経った後でブリッジに艦長たるリンディ・ハラオウンが裁判での用を済ませたフェイト・テスタロッサ達とを伴って帰還してきた。
そして、クロノはリンディに先の実験訓練の映像を見せ。さらに彼のデバイスが現在使われているミッドチルダ式、ベルカ式……両方の一部の特徴を持っているが、本質はどちらにも該当しないことも話し。
母は改めて映像に映る侵略者の姿を見遣って呟く。撃ってから斬る時の反応速度……。最初はそれの繰り返しだが闘い慣れているという印象は感じさせる。
最後に使っている『フィンファンネル』もそれぞれ独立し、ギロロさんの意思に反応して動くみたいだし……。初めてのデバイス使用でここまで闘えれば訓練校も短期間でプログラムを組めるわ。
ランクは−A、並の魔導師より確実に腕は良いし。まだ、他の四人が見つかったという話は聞かないけど。
もし、ギロロさん達が侵略を実行していたら……防衛するのは考えていた以上に難しいものになるのは確かね。
リンディがそう思案している中、フェイト達もまたフィンファンネルを飛ばすギロロの姿に見入っている。
『行け!フィンファンネル!』
「なのはのアクセルシューターみたいだねぇ、フェイト」
傍で頭に大きめの獣の耳を生やしている人化状態の使い魔の言葉に主はコクンと頷く。
「うん、突撃したりはしないみたい。こうゆう動きならそれぞれに回り込まれても返って墜とすこともできる。でも……彼の場合はこの、フィンファンネルって言う端末の反応が速い」
「軍人って自称するだけあって魔導師としての素質も充分にある。コレで分かったのは彼が知らないあいだにデータ倉庫にあったデバイス『F90』、カートリッジが無くて魔力はチャージしていくみたいで燃費が悪いんだ」
高い機動性、そしてディフェンダーレベルの高いターゲットを撃ち落とす攻撃力は申し分ない。
しかし、それを維持しての魔力使用は多いはず。
クロノの言葉にフェイトは納得し、改めて感心する。
ターゲットと言っても魔力の燃費が激しいデバイスを使ってよく此処まで動ける……。
23 :
リリケロ:2008/10/12(日) 23:59:08 ID:0KfdUFHR
「この子が、ギロロ」
鮮やかな赤を基調に潔い白のバリアジャケットをなんとも美しく見せる小さな宇宙人の名を口ずさむ。
裁判からの帰り、あたたかい笑顔で出迎えてくれたリンディ。彼女から『親しみが沸く宇宙からの侵略者』と知り合ったと聞いて思わず聞き返してしまった。
この子が……。
「それでこの赤まんじゅうはどこに居るんだい?」
「あ、アルフ!(たしかに赤くて丸いけど……)」
本人が居たら怒り叫んでいそうな呼び方をするアルフと。その流れにクロノも乗る。
「赤まんじゅうならエイミィが仮眠室で身体を休めている。転移してきた時の脳震盪とデバイス使用による魔力消費が堪えたみたいだ」
フェイトももう止める気力が無いのか苦笑いを浮かべるだけ。彼の母もまた、苦笑を零しながらギロロの身を案じていた。
こちらはまだしも、ギロロは事故で着艦し。さらにデバイスと彼の能力を確かめるとはいえかなり負担はあったはず……。
「あ、艦長。フェイトちゃん達お帰りなさい」
背後から扉が開かれ、エイミィが微笑んで帰艦を喜んでブリッジへと脚を踏み入れる。
「ただいま、エイミィ」
「ただいま〜」
前の事件以来でこの二人とこうして挨拶出来て話も出来るようになるなんて全く考えていなかった。
そう思うと不思議なものかもしれないな。
言葉を交わし、和気あいあいと良い雰囲気を作ってくれる友人達の姿に自然と微笑みながらクロノはエイミィに尋ねる。
「ギロロ伍長はどうだった?」
「あ、うん。ベットに横になったらすぐに寝ちゃった。それと、デバイスも貰ってきたよ」
彼女からの報告にリンディは表情に陰りが入り、映像のギロロに手を伸ばすが。本人に触れることなく手は摺り抜けていく。
彼が起きたら謝らないと。と手をにぎりしめて決意を固め。息子であり執務官のクロノとデータの処分を相談し始める。
話題の本人が眼を覚ますのはそれから数時間ほどのこと……。
支援
25 :
リリケロ:2008/10/13(月) 00:01:41 ID:9J3ogxtY
続く。
ケロロ「さーて次回のお話は?」
タママ「タママですぅ、次回はあの画像の魔導師と出会うんですぅ。
くっちゃ軍曹さん、くっちゃ。はやく、ずずっ!会いたいですぅ。
ぷはぁ、やっぱりケーキには角砂糖12個入りの紅茶ですぅ」
アリサ「タママてさ……そのケロロって友達よりお菓子が大事なんじゃ」
タママ「何言ってるですか!僕は4回の間食より軍曹さんが好ゲフゥ〜」
すずか「げ、下品だよタママちゃん……それより画像の魔導師って誰?」
タママ「それは次回のお楽しみですぅ」
ケロロ「第4話「タママ、画像の魔導師と出会う。であります!」てことでどすか?ゲッゲーロ♪」
以上です。
早いうちと言ってて遅れてごめんなさい。
次回も少し遅れると思います。
支援ありがとうございました。
GJ!!です。
ギロロが奮戦してましたね。侵略者なのに侵略者と見られなかった彼が哀れw
四人が別々の場所にいますが、どのように遭遇していくのか楽しみです。
24時45分頃、投下予約を。
既に深夜なので人もいないと思いますが、今までで一番長いので
規制に掛かった際は、すぐに代理スレを使用します。
支援
支援
支援
「仲間を集めて勇者が魔王に挑むゲームがあったとして、私はいつも魔王を倒
す最後の一撃は、勇者にやらせるんだ」
スカリエッティの周囲から、強烈な魔力がほとばしる。
「パーティにいる戦士の攻撃や、魔法使いの呪文でも倒せるところを、私は彼
らを行動不能にしてまで勇者を使う。何故だかわかるかい?」
今まで戦ってきたナンバーズのそれよりも、遥に凄まじい力が、大広間とい
う空間を支配し、征服していく。
「それはその物語の主人公が勇者だからさ。彼が魔王を倒すと心に誓い、彼が
仲間を集めたんだ。なら、やはり最後の一撃、トドメを刺すのは彼でなくては
いけないだろう」
逆に言えば、魔王を倒すためなら勇者は仲間がどんなに犠牲になっても、そ
れを厭わず戦い続けなければならないのだ。
何故なら、それが勇者の選んだ道なのだから。
「私も同じさ。この戦いを始めたのは私で、君に戦いを挑んだのも私だ。なら
ば、最後はこの手で決着を付けたいと思うのが、普通だと思わないか?」
奇怪に変貌を遂げた右の拳を握りしめながら、スカリエッティは凶悪な笑み
を敵に向けている。彼にとっての敵、ゼロに対して。
「お前は、自分が勇者だと言いたいのか? オレは魔王か」
「まさか、私はどうしたって悪人だよ。勇者とか英雄とか、そういうのは君に
こそ相応しい称号だ」
しかし、自分は悪人であっても魔王ではないだろう。そんな大層な存在にな
れるとは思えないし、なりたいとも思わない。
「君のおかげで、楽しいゲームになった。最後までゲームマスターでいようか
と思ったのに、ついついプレイヤーの真似事をしてしまいたくなるぐらいに」
スカリエッティの言葉に、近くに佇むウーノが心配そうな表情をしている。
ドクターが負けるとは思っていない、だが、相手はこれまでナンバーズを幾人
も敗北させている実力者だ。勝てたとして、何らかの大きい代償があるのでは
ないか?
「勝てたとして、だなんて。私は何を……」
そんな言葉が出る時点で、自分はスカリエッティの勝利に揺るぎない自信を
持てていないのではないか。ウーノの胸中は、不安で一杯だった。
だが、一度決めたことを覆すスカリエッティではない。彼が自らの意思を持
って、ゼロと戦うと決めたのだ。そうなってしまった以上、ウーノとしては黙
って見守るしかないのである。
「お前がどんな力を持って言うよと、オレには関係ない」
ゼットセイバーを構える手に、力が籠もる。
ゼロの全身が輝きを見せ、スカリエッティの醸し出す強烈なエネルギーを吹
き飛ばすように、周囲を閃光が煌めく。
「オレはお前を倒して、この船を止める」
例え止めることが出来なくても、次元航行艦隊が来るまで粘ることが出来れ
ば勝機はある。これは現場到着前、六課の面々が下した結論だった。本局では
ゆりかご復活の報を受け次元航行艦隊が出撃準備を、もしくは既に出撃してい
る可能性が高い。地上部隊がレジアスという総司令官を失っても尚、奮戦を続
ける理由は、強力な援軍の当てがあるからなのだ。
「なるほど、次元航行艦隊か……確かにそれは私も気がかりだった。ゆりかご
の出力はちっとも上がらないし、二つの月の魔力圏内に入る前に艦隊に補足さ
れれば、我々は終わりだろう」
言葉の割りに、せっぱ詰まった様子が微塵もない。
そんなスカリエッティを、制御室にてクアットロが見つめている。
「確かに、今の状態で艦隊と戦うとなればさすがにこちらの方が不利……」
いつもの笑いを含ませた口調が態を潜め、淡々とした冷酷な口調で喋ってい
る。まるで、誰かを意識するかのように。
「だけど、来られるかしら? 次元航行艦隊は」
第22話「炎の剣聖」
爆発が、時空管理局本局で起こっていた。爆発箇所は、本局内部ではない。
次元航行艦が収容されている港で、爆発物による爆破が起こっているのだ。
「何が起こった、中はどうなっている!?」
それは総旗艦クラウディア含む、艦隊の第一陣が出撃した直後に起こった。
出港途中、または直前だった艦が集中的な被害を浴びて、メインポートは全壊
寸前となっていた。
「わかりません、港内で爆発が起こっていると思われますが……」
「そんなことはわかっている。事故か? それとも何者かの仕業なのか!?」
出撃できた艦艇はまだ八隻程度で、大半は港の中である。もはや出撃どころ
ではない、という事態になってしまったが、クロノとしてはその選択肢を選ぶ
ことが出来なかった。
「本局周辺宙域から離脱し、地上へ向かうんだ。ここには一隻残しておけば、
救助活動は行えるはずだ」
地上を見捨てるわけにはいかないという論調でクロノは部下を諭したが、部
下は納得がいかなかった。
「たった七隻で何が出来ると言うのですか! ここは全力で救助活動に専念し、
艦隊を再編した後に再出撃を行うべきです」
もっともな意見であるが、そんなことをしている間にゆりかごが二つの月の
魔力圏内に入ってしまったら元も子もない。七隻だろうと五十隻だろうと返り
討ちにされてしまう。
「しかし、七隻で勝てるのか……あのゆりかごに」
アルカンシェルなど、強力な武装が使えるならまだしも、クラナガンが近い
という理由から使用許可が下りるはずもなく、だからクロノは数に頼んだ艦隊
を編成したのだ。
早急な思案が必要と考え込むクロノだが、天運は彼に味方しなかった。
突如、クラウディアの艦艇が衝撃で揺れた。
「なっ、今度は何だ!」
「後方の砲艦が、我々に向かって砲撃を仕掛けてきます!」
馬鹿な――!?
その言葉を、クロノは口から発することが出来なかった。モニターには、ク
ラウディアと共に出撃した砲撃型の次元航行艦が、クラウディア含む七隻の艦
艇に砲火を浴びせかけているのが映っている。
「か、回線を開け。砲艦に止めさせるよう言うんだ」
クーデターでも起こったというのか? クロノの声に応じて通信士官が動き
出すが、砲艦との間に回線を繋ぐことは出来なかった。回線が完全に切られて
いる。それどころか、艦内の生命反応をスキャンした索敵士官が驚きの叫び声
を上げた。
支援
しえーん!
「砲艦内、生命反応なし! 無人です」
では、誰が艦を動かし、砲撃しているというのだ。
クロノの問いに答えられる者は誰も居らず、そんな暇もなかった。砲艦から
発せられた直撃弾が、クラウディアの艦艇に穴を開けたのだ。
「反撃しろ! 撃沈させて構わない!」
生命反応がないというのなら、一向に問題がないはずだった。艦艇一隻より
も自分たちの命のほうが大事だった。
正確なことを言えば、砲艦内の生命反応はゼロではない。大量の屍の中には、
かろうじて息がある者も居たし、艦の乗組員を屍へと変えてしまった犯人も、
まだ艦内にいたのだ。
「まぁ、こんなものかしら?」
血だらけとなった腕を拭いながら、女は楽しそうに呟いた。虐殺が楽しかっ
たからではない。これで、自分の任務に一段落付いたからだ。
砲艦に対する砲撃が開始されたのを確認すると、女は艦内にある転送ルーム
へと入っていった。艦の操縦、及び迎撃は自動運転だ。先ほどまでは自分で行
っていたが、一分程度なら自動でも持つだろう。
「待っていて下さいね、ドクター。今、帰りますから」
女はそのまま転送システムを作動、艦内から姿を消した。まさにその十秒後
にクラウディアから撃ち込まれた魔力砲が艦艇を破壊するのだが、クロノたち
が彼女の存在を知りうるのは、ずっと先のことである。
本局でこのような事件が発生したとを、地上部隊は知る由もなかった。だが、
その方が良かったのかも知れない。次元航行艦隊は彼らにとって頼みの綱であ
り、それが来られないなどという事実が知れ渡れば、彼らは今度こそ戦意を完
全に喪失していただろう。
「フリード、ブラストフレア!」
機動六課が来援したと言っても、絶対的な実力者である隊長二人はゆりかご
内へと突入してしまった。
だから、地上での戦闘に加わるのは、キャロやスバル、ティアナといった新
人たちであるが、彼女たちはそれぞれ個々に相対する敵との激闘を繰り広げて
いた。
「地雷王、地雷震を。ガリューはそのまま突撃」
キャロとルーテシア、二人の召喚術士の戦闘は、一見するとキャロが有利な
ように見える。空を飛ぶことが得意ではないルーテシアの地雷王に対し、キャ
ロのフリードリヒは空中を自在に移動する。空からの砲火を浴びせかけるだけ
で、相手を追いつめることが出来るはずだった。
それが出来ないでいるのは、ルーテシアが多種多様な召喚虫を利用したコン
ビネーション攻撃を行っているからであろう。
「避けて、フリード!」
地雷震の振動波から抜け出したフリードリヒに、空戦も行うことが出来るガ
リューが迫った。近づかれ、格闘戦に持ち込まれれば勝ち目はない。
「ガリュー、そいつを殺して」
同年代の少女を殺せと命じるのは、さすがのルーテシアでも後ろめたいもの
を感じた。しかし、キャロと名乗った少女は自分の心の深い部分を、一瞬では
あるが触れてしまった。生かしてはおけない。
ガリューの攻撃に対し、フリードリヒは身を避けることが出来た。しかし、
彼の狙いは必ずしもフリードリヒ本体ではなかった。
「きゃっ!?」
強烈な打撃が、幼い少女を襲った。ガリューの狙いは手綱を握るキャロだっ
たのだ。キャロが手綱を握ることに固執すれば、背骨をへし折られたかも知れ
ない。咄嗟に離し、空へと投げ出されたから衝撃が緩和されたのだ。
「フリードッ」
助けを求めて叫ぶも、肝心のフリードは地雷王の攻撃に動きを封じられてい
る。仕方ない、このまま落下するぐらいならば次なる召喚を行って……
「追いかけてくる!?」
落下するキャロに対して、ガリューが追撃を仕掛けてきた。腕に牙のような
武器を生やし、串刺しにするべくキャロの元へ向かう。フリードがいなければ
空も飛べないキャロにとって、これを避けることは出来ない。防ぐにしても、
防ぎきる自信がない。
そうこう考える間にガリューの姿はすぐそこまで迫っている。
「フェイトさん――!」
敬愛する女性の名前を最後に叫んだ。
少なくとも、キャロはこれが最後になると思っていた。
「ッ!?」
キャロを殺すべく拳を突き出したガリューの一撃が、空を切った。手応えも
なく、掠った感触すらしなかった。キャロの姿が、ガリューの眼前から消えた
のだ。
「瞬間移動?」
その光景を見ていたルーテシアも、何が起こったのか理解できなかったよう
だ。判るのはガリューの攻撃で死ぬはずだったキャロが消えたという事実だけ
で、姿を追うことまでは出来なかった。
敵の位置を確認しようとするルーテシアの背後に、地雷王とは別の気配が生
まれた。
「ルフトメッサー!」
慌てて振り向くルーテシアに、空気の刃が襲いかかった。咄嗟に防御魔法を
展開するも、衝撃に屈して大きく後ろに下がってしまう。
それでも何とか無傷で済むと、ルーテシアは背後に現れた敵に目を向けた。
「あなた、誰……?」
キャロと同じく、ルーテシアと同年代の少年だった。デバイスを構えたその
横に、キャロがへたり込んでいる。恐らく、この少年が助けたのだろう。
「機動六課ライトニング分隊所属、エリオ・モンディアル」
名乗り上げるエリオには、以前とは違う凛々しさのようなものがあった。キ
ャロでさえ見違えてしまったほどで、まさに男子三日会わざれば刮目してみよ
といった感じか。
「エリオくん……どうして」
聖王病院のベッドの上にいるはずの少年が、何故クラナガンの戦場に現れ、
自分を助けてくれたのか。そもそもエリオは戦うどころか動くことすらままな
らない身体だったはずだ。
「僕も、機動六課の一員だから」
強い笑みを見せるエリオに、キャロが叫ぶ。
「無理だよ、まだ怪我も治ってないんでしょう?」
そんな状況で戦えば、エリオの身体は今度こそダメになってしまう。キャロ
はそのことを知っていた。しかし、エリオだって承知の上だった。
「戦いに来たのは、僕だけじゃない。みんな、みんな頑張ってるんだ」
「えっ?」
エリオの言葉に困惑するキャロだが、突然その視界が暗くなった。視界が閉
ざされたのではなく、日の光が遮られたのだ。
一体、何が――
「次元……航行艦」
驚きの呟きを漏らしたのは、ルーテシアだった。
スカリエッティが対策は打ってあると話した次元航行艦が一隻、クラナガン
の空に現れた。空間移動をしたのだろう、突然現れたという表現がよく似合っ
ていた。
この情報はゆりかご内のクアットロもすぐに察知したが、彼女は艦船照合を
してあることに気がついた。
「艦艇の形状が、古い?」
少なくとも、十年以上前に建造されたものだろう。お世辞にも最新鋭艦には
見えないし、艦体にも細々とした傷が見受けられる。大方、どこかから使えそ
うな艦艇を引っ張り出してきたといったところか。
「けど、誰が乗ってるのかしら」
旧式の艦艇を使うなどと、およそまともな人間の考えることではない。きっ
と、物凄い馬鹿か、それとも……
「砲門の標準を、こっちに向けてる!?」
クアットロが目を見開いた。実のところ、クアットロはスカリエッティほど
にゆりかごに過度な期待をしていない。というのも、実際に制御する立場にな
ってみて、ゆりかごの様々な欠点が露呈したのだ。
重要な欠点として、ゆりかごは後部砲門や、防御機構の類が存在しない。後
ろのからの攻撃に対して無力なのだ。ほとんどを推進機関にすることで高い推
進力を発揮し、さらに聖王という存在の性格上、後ろを顧みずひたすら前方に
進軍、進撃するという戦略構造があったのも理由の一つだ。
しかし、クアットロに言わせれば後ろぞなえがないなど、上半身だけ服着て
歩き、その恥ずかしさに気づくことも出来ない愚か者と同じだ。
「反転は間に合わない。ガジェット部隊で壁を作る!」
次元航行艦の艦砲が発射された。咄嗟に地上や空中からかき集めたガジェッ
トが壁となり、爆散しながらもゆりかごを守った。
だが、これこそが敵の狙いだったとは、クアットロには判らなかった。
「地上の敵戦力が減った、一気に反撃!」
次元航行艦から、若い女の声が響いてきた。誰のものか、瞬時に判ったもの
はごく僅かだったが、その言葉の意味するところは明白だった。
「そ、そうだ、反撃だ!」
クアットロが慌ててガジェットにゆりかご後部に結集するよう指令を出した
ものだから、ガジェット部隊の行動は大きく乱れた。戦闘を中断し、我先にと
ゆりかごへ戻ろうとした。
そこに地上部隊の反撃が行われたのだが、敵を倒すということより、クアッ
トロの命令が優先されたガジェットたちはこれに抵抗も対抗もしなかった。結
果、反撃の砲火の前にかなりの数のガジェットが犠牲となったのだ。
「私が、誘いに乗ってしまった」
敵の狙いを読み違えたことにクアットロは愕然としたが、ガジェットに対し
て命令の撤回は行わなかった。どちらにせよ反転迎撃態勢が整うまで、後背を
空にしておくことが出来なかったのだ。
「だけど、あの声……死んだんじゃなかったの?」
やや事実を誤認しながら、クアットロは悔しそうに叫んだ。
エリオ・モンディアル復活!エリオ・モンディアル復活!!支援
支援
「敵は反転行動に移るはず、距離を取りつつ地上に向けて援護射撃、召喚虫を
蹴散らせ!」
「了解です、総隊長」
指示に対し、オペレーターが伝達を開始する。砲手が応じて、地上へと砲撃
が開始される。
「リイン、マイクを!」
「はい、はやてちゃん、じゃなくて総隊長!」
リインから渡されたマイクを握りしめ、八神はやてが起ち上がった。次元航
行艦アースラ、かつてはやても乗艦し、なのはやフェイトにも思い出深い船だ。
その艦橋の艦長席に、はやてはいる。
「クラナガンで奮戦する地上の戦士たちへ、私は機動六課総隊長八神はやてで
す!」
演説にも似た叫び声が、戦場にこだましていく。誰もが戦いながら耳を傾け、
はやての声と言葉を聞く。
「今我々は、地上本部が墜ち、総司令官のレジアス中将を失い絶体絶命の窮地
にある。しかし、我々はまだ負けてない。戦う力は残っているし、戦いを止め
るつもりもない。それは何故か?」
理由なんて、一つしかない。
「この地上を、クラナガンを、ミッドチルダを守りたいから! その為に我々
は戦っている」
何を今更という話ではあるが、戦闘に疲弊しきった部隊員たちにとって、事
実の再確認は必要だった。そうだ、地上を守らなければいけない、我々がやれ
ねば、誰がやるというのさ。
「今目の前にある驚異に立ち向かうには、我々は崩れかけた組織を再編数必要
に駆られている。だから……そこで」
一瞬だけ、はやては言い淀んだ。次の言葉が、どういう反応で迎えられるの
か、想像も付かなかったのだ。
「この次元航行艦アースラに、私に指揮権を引き継がせて貰いたい!」
予想通り、即座に反応はなかった。いきなり現れ、はやては指揮権を寄こせ
と言ったのである。確かにこの窮地、指令系統の再編は最も重要であったが、
生前のレジアスがそうであったように、八神はやてを嫌うものは地上本部には
多い。しかも将官ですらない、一部隊長でしかない彼女に全部隊の指揮権を与
えるなど、常識では考えられない。
はやては目を瞑りながら、反応を待った。癒えない傷を押してまで、はやて
は戦場に行くことを選んだ。誰かが動かなければ地上は終わる、そして、恐ら
く自分にはそれが出来ると、彼女は考えたのだ。
このアースラは、元々はやてが用意していたものだ。何らかの事情で六課が
隊舎を失ったとき、新たな前線基地として、解体寸前だった艦艇を確保し、聖
王教会に保管させていたのだ。まさか、こんな急場で使用するとは思っても見
なかったが。
「頼む、私に力を貸してくれ」
自分にそんな資格があるかはともかく、はやては祈るしかなかった。
そしてその祈りが通じたのか、意外なところから助けが来た。
『地上本部総司令部より、レジアス中将の副官オーリス・ゲイズです』
オーリスが、クラナガン全域に向けて放送を行ったのだ。
「今は亡きレジアス中将、あの方は死の間際まで地上の平和について思いを馳
せ、それを願うと共に亡くなられました」
涙を流さなかったのは、強者たる父親の娘であったからか。気丈にも、オー
リスは強い口調と意思で、言葉を紡ぎ出していた。
「地上を守る、それこそがレジアス中将のご遺志です! 総司令部は、八神は
やて隊長に全権を委ねます!」
驚きの声が、地上部隊に波紋していく。だが、それはすぐに変化を遂げた。
「皆さん……中将の愛した、守りたかったこの地上を、守って下さい!」
驚きは、熱狂へと姿を変えた。地上部隊が、戦意と闘志を取り戻していく。
「はやて総隊長、陸士大隊が指示を求めてきました!」
次々と、指令系統がアースラに纏め上げられる。
「魔法戦車部隊の再編が終了、いつでも行けるそうです」
はやては、大きく息を吐いた。人の力を借りはしたが、目的は果たせた。後
は、果たせた目的を、潰えさせないだけだ。
「まずは前面の敵の撃破を行い戦力の再編を計る、急げ!」
地上部隊の、反撃がはじまった。
「地雷王が……」
熱狂的な地上部隊の反撃に対して、召喚虫軍団が総崩れとなった。元々数が
それほど多いわけでもなく、ガジェットの援護がなければその差を埋められな
いのだ。怒濤の攻勢に対して、地雷王は完全に守勢に回った。先ほどまでは指
示を与えずとも目の前の敵を捻り潰していた彼らが、混乱に足をすくわれ瓦解
しはじめている。
「召喚虫をこれ以上失いたくないなら、降伏するんだ」
ストラーダを構えるエリオに対し、ルーテシアは鋭い瞳で睨み付けた。ガリ
ューが彼女の横に降り立ち、敵を寄せ付けまいと威嚇する。
「私はまだ、逃げるわけにはいかない。逃げたら、ドクターのお願いを叶えら
れない、約束を破ることになる」
そんなの、嫌だ。
ルーテシアのデバイスが光り輝き、魔法陣が出現する。彼女が何をしようと
しているのか、気付いたガリューが止めようとするも、遅かった。
「お願い、来て―――白天王!!!」
究極召喚、ルーテシアが召喚できる中で、最強にして最大級の召喚虫。彼女
が管理外世界で出会い、触れ合い、仲間にした存在。
「大きい……!」
余りの巨体さに度肝を抜かれそうになるエリオであるが、呼び出された白天
王の姿を見たキャロが、ゆっくりと起ち上がる。
「あの子、悲しそう」
キャロにとって、ルーテシアの必死さは少しだけ理解できるものだった。キ
ャロが機動六課という自身の居場所を大切し、守りたいと思ったように、あの
子にもまた、守らなければいけないものがあるのだろう。
「だけど、それでも私はあなたを倒す!」
――天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎
の大地の守護者、
キャロが目を瞑り、呪文の詠唱をはじめる。ルーテシアと同じく、魔法陣が
浮かび上がる。
「竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルーテル!!!」
竜騎召喚、ヴォールテール。キャロの究極召喚。白天王と変わらぬ大きさの
竜に、ルーテシアが少しだけ怯んだ。
「私たちには、私には譲れないものがある。それを守るために、私はあなたと
戦う!」
史上最大、究極召喚が激突した。
何と言う王道的展開…支援
「――はやてが来た」
ゆりかご内にいるフェイトも、はやてが来援したことに気付いていた。高濃
度AMF下にあるとはいえ、それぐらいは判る。
「つまり、反撃開始だ!」
フェイトの周囲にプラズマランサーが出現する。中空にあって、地上から突
撃してくるトーレを狙い撃つ。
「貫け!」
十数発のランサーに対して、トーレは回避行動を行わないどころか、防御姿
勢すら取らなかった。
彼女は、そのまま突撃を敢行したのだ。
「その程度の小細工、攻撃にあらず」
プラズマランサーを全てその身で受け、あろうことか身体で弾きながらトー
レはフェイトに迫った。予想以上の硬さと突貫力を持つ敵に、フェイトはソニ
ックブームを使って地上へと逃げた。
「遅い!」
しかし、トーレは一瞬早くフェイトに迫り、蹴りの一撃をお見舞いした。な
のでフェイトは移動したというより、叩き付けられる形で地上へと降りた。
「それなら、これで」
フェイトの左腕に、雷撃の魔力が集まっていく。環状の魔法陣が生成され、
トーレへと向けられる。
「プラズマスマッシャー!!!」
雷撃の魔力砲が放たれた。フェイトの得意とする高威力砲撃魔法、プラズマ
ランサーとは破壊力が違う。
墜ちろ、そうフェイトは念じたのだが、
「小賢しいんだよっ!」
トーレは怒号と共に、プラズマスマッシャーを右腕で弾き飛ばした。雷撃は
壁へと激突して、爆光を撒き散らす。
「プラズマスマッシャーを、素手で弾き飛ばした……」
半ば唖然として、フェイトは呟いた。防御魔法で弾かれるならまだしも、何
という奴だ。
フェイトはザンバーを構え直す。
「それほどの実力がありながら、何故スカリエッティに忠誠を誓う!」
無意味な問いかけだった、少なくともトーレにはそう感じた。
「あなたと同じですよ、フェイト・テスタロッサ」
「私と同じ?」
「あなたが、あなたを作り上げた母親を愛していたように……こう言えば判り
やすいですか?」
そういう理由を持ち出されると、フェイトとしては答えようがない。だが、
トーレの次の言葉がフェイトの感情を刺激した。
「まあもっとも、あなたの場合は少し違うか。あなたの母親を愛する気持ちは、
所詮記憶転写技術によるものだ。そうでしょう? プロジェクトFの申し子よ」
瞬間、フェイトが飛んだ。凄まじい勢いで、トーレにザンバーを叩き込んだ
のだ。
「フッ、怒りましたか」
しかし、トーレは交差させた腕、インパルスブレードでこれを完全に防ぐと、
大剣の刀身を押し返した。
速さは、二人とも互角。攻撃の威力はフェイトが勝るものの、揚力において
はトーレが圧倒する。容易に決着は付かず、その点でフェイトは苦戦していた。
「それと、あなたは一つだけ勘違いをしている」
また何か、こちらの気に触ることでも言うつもりか。睨み付けるフェイトに
対し、トーレは何気なく言葉を続けた。
「ドクターは、私などよりずっと強い」
ゼロの斬撃が、スカリエッティへ炸裂する。ガジェットを斬り裂き、ナンバ
ーズにさえ傷を負わせた緑色に刃、その刃を、スカリエッティは掴み取った。
「なっ――」
素手で触れることすら危険なのに、斬撃を掴み取るなど出来るはずがない。
しかし、スカリエッティは現にこうして掴んでいる。
「熱さを感じるかと思ったが、意外とそうでもないな」
スカリエッティは微笑し、刃を放すと右腕で弾き飛ばした。そして体勢を崩
すゼロに向かって、拳を叩き込む。
「どうかな、私のパンチは?」
衝撃が、ゼロの身体を支配した。スカリエッティの一撃は相手を吹っ飛ばす
ような派手なものではなかったが、相手の全身を打ちのめす重さがあった。少
なくとも、ゼロの足がぐらつく程度には。
「大したことは、ない!」
声を絞り出し、ゼロは縦一閃の斬撃をスカリエッティに斬り込んだ。スカリ
エッティは微笑を崩さず、これを右腕で受け止める。斬撃をまともに食らって
も、傷一つ付いていない。
「ゼットセイバーだったかな? その輝く剣も、研究させて貰ったよ」
連続して斬り込まれる斬撃を、スカリエッティは尽く弾き飛ばしている。応
酬を繰り返す内に攻守が逆転し、振り下ろされる右腕を、ゼロが防いでいる始
末だ。
スカリエッティの攻撃には、キレのある技や、巧みな動きなどは一切存在し
ない。
「これはどうかな!?」
突き出された手刀も、繰り出されるパンチも、一つ一つは大したことはない。
問題はその威力と、スカリエッティ自身の身体能力の高さだ。
ゼロはリコイルロッドで突きを受け止めるが、鋭く尖った硬質の爪、その一
撃が強烈だった。
「なっ――」
リコイルロッドが、砕け散った。スカリエッティの突きに貫かれたのだ。勝
ち誇ったように顔を歪ませる敵に対し、ゼロは後方に飛んで距離を取った。
スカリエッティは両手を広げ、声を上げる。
「セイバーの出力、リコイルロッドの耐久性、全部判っているんだ。何故だか
判るかい?」
ゆっくりとした足取りで、スカリエッティは歩き出す。
「データだよ。ナンバーズが集めたデータ、あれは当然私の手元にもあるんだ」
怪腕を見せびらかすように構え、スカリエッティは笑い出した。
「これは君と戦うために作り上げた特注品だ。ナンバーズが集めたデータを私
自らが研究し、計算し、構築した……故に!」
ゼロがバスターショットを連射する、スカリエッティはそれを見越していた
かのように自身の周囲に魔力弾を生成した。
「君のバスターの威力、連射速度、発射段数」
バスターショットと魔力弾が激突し、相殺していく。いや、相殺ではない。
「全て見切っているんだよ!」
爆発を突き抜けるように、一発の魔力弾がゼロに直撃した。今のは明らかに
わざとだ、スカリエッティはわざわざゼロのバスターショットの連射より一発
多い魔力弾を生成したのだ。ゼロが連射の際に発射できる弾数を見切っている
と、証明して見せたのだ。
膝こそ着かなかったが、ゼロはダメージを受けていた。魔力弾のくせに魔力
砲の直撃を受けたかのような爆発だった。
「圧倒的、というのはこういうことかな?」
スカリエッティは、嘘をついていない。
ゼロは、圧倒されていた。セイバーも、バスターも、スカリエッティには通
用しない。リコイルロッドは砕かれ、スカリエッティはその強さをゼロに見せ
つけているのだ。
「どうしたゼロ! ゲームの最後が、こんなあっけないのか? 今の君はオレ
ンジを握りつぶすより簡単に捻り潰せそうだ!」
意味のわからぬ比喩を呟きながら、スカリエッティが飛び込んでくる。ゼロ
はそれを避けると、バスターをチャージしながらスカリエッティと距離を取る。
「ゲームだと……」
まだそんなことを言っているのか。これだけの戦闘が、どれほどの命が、ス
カリエッティの為に犠牲になっていると思っている。
「ふざけるな!」
フルチャージショットが放たれた。巨大な光がスカリエッティに迫るも、彼
はゼロの叫びに何の感銘も受けず、右手を振るった。
「いいや、これはゲームだ。ゲームなんだよ!」
まるで虫を払うかのように、スカリエッティはフルチャージショットを弾い
た。彼は圧倒的な性能を持ってゼロを追いつめていたが、それは目の前にある
ものをひたすら崩していくという戦い方だった。もちろん、データを使って効
率のいい戦い方を行うことも出来るのだが、スカリエッティはこの『ゲーム』
をとことん楽しむことにしたようだ。
「むっ――!」
しかし、楽しみたいと思っているのはスカリエッティだけだった。
ゼロはフルチャージショットを牽制に、一気にスカリエッティとの距離を詰
めに掛かった。ゼットセイバーを構え、全身が光り輝く。
「お前のくだらんゲームには付き合い切れん。これがゲームなら、終わりにさ
せて貰う!」
チャージ斬りが炸裂し、スカリエッティの身体が吹っ飛んだ。
確かに斬撃が当たった、手応えはあった。
「ざまあみろ、変態野郎!」
遠くでアギトが罵り、ウーノが血の気の引いた表情を見せている。アギトは
ゼロが勝ったと思い、ウーノはスカリエッティが負けたかも知れないと思った
のだ。
だが、ゼロは自分が勝った気もしなければ、スカリエッティを負かした気も
しなかった。
「直撃はしたが……」
それこそナンバーズなら倒せるだけの一撃を、人間であるスカリエッティに
叩き込んだ。これで倒れないなら、死なないなら、奴はもう人間ではない。
「死ねないなぁ、この程度じゃ」
変化したのは右腕だけだが、既にスカリエッティの身体は常人を超越してい
る。その証拠に、チャージ斬りの直撃ですら、彼は傷一つ付いていなかった。
「死ねないんだよ、私は!」
衝撃波のような魔力とエネルギーが空間を振るわせる。
支援
「ゲームを終わりにしたいなら、してもいいさ。ただ、勝つのは私で、負ける
のは君だがねぇ!?」
スカリエッティが右手を突き出すと同時に、赤い糸のようなものが出現する、
ゼロは迫り来る糸に対し、ゼットセイバーではなく残る最後のリコイルロッド
を使った。
からみつく赤い糸、魔力で出来た糸だ。
「人間の私にあそこまでの攻撃を仕掛けてくるとは、少し予想外だったよ。常
人なら、死んでいただろう」
とっくに人間を超越しているのに、スカリエッティは呆れたように言う。
「少なくとも、オレの斬撃を受けて無傷でいられる奴を、人間とは呼ばん」
リコイルロッドが、全く動かない。糸をつたって、スカリエッティの凄まじ
い揚力が発揮されている。
「それはどうかな……人間というのは、これでなかなか辞めるのが難しいもの
なんだよ」
スカリエッティの口調が僅かに変化したことに、誰も気付かない。
「お前は、何がしたい。何故、こんなことをしている」
今更ながらの質問であるのかも知れないが、考えてみればゼロはそれを知ら
なかった。セインも知らなかったし、ゼロはスカリエッティが自分に戦いを挑
んできた事実のみを認識しているだけであり、彼がその先に何を望むのか、そ
れを知らないのだ。
「夢を叶えたい、とでも言っておくべきかな? ゼロ、流石に君は私の夢は知
らないだろうが」
それどころか、ナンバーズのほぼ全員が彼の夢を知らない。
親の夢も理解していないのに娘を気取るのかと、スカリエッティが思ったか
どうかは、誰にも判らない。
「確かに知らんな。だが、お前の夢などまともな人間に理解できるとも思えん
……オレにはお前が、イレギュラーにしか見えない」
そして、人間だろうとイレギュラーであるなら、ゼロは斬る。
「けど、君は私を斬ることは出来ない。私は既に、君を超えてしまったようだ
!」
魔力の糸に力が入り、リコイルロッドを砕いた。
糸を避けるように後退するゼロだが、地面に着地すると同時に糸が床から出
現し、三角状の檻を作った。
「檻に閉じこめられた獣、それとも籠の中の鳥かな?」
身動きも取れないほど狭い空間に封じ込まれたゼロであるが、この魔力の糸
を生成するのにも、スカリエッティはデータを使用している。ゼットセイバー
の斬撃程度では切れないように、計算して作られているのだ。
「檻を押しつぶすのも、魔力弾を撃ち込むのも、私の自由となったわけだ。さ
てゼロ、英雄は命乞いというものはするのかな?」
勝敗は決したと言わんばかりの言動だが、ゼロは手も足も出なくなった。シ
ールドブーメランも、この檻では使えない。打つ手なしか? いや、まだ攻撃
を行うことは出来る。
支援
「……スローターアームズ!」
スカリエッティの頭上に、二刀の刃が出現した。その刃は回転しながら、ス
カリエッティの両腕を切断しようと襲いかかった。突然のことに、仕掛けたゼ
ロ以外は誰も気付いていなかった。
少なくとも、ウーノやアギトはスカリエッティの頭の上になど視線すら向か
ない。
刃が、当たるか――それとも、
「いや、当たらないな」
ゼロの檻に使われているのと同じ魔力の糸が、二刀の刃を絡め取った。
「セッテのブーレドブーメランか。あの状況下で彼女のISをコピーするとは、
君は案外手が早い、というより手癖が悪いな? 女の子の持ち物に平気で手を
出すのはよくない」
刃が軋み、刀身が折れる。
ゼロの思考すらも、スカリエッティはお見通しだとでも言うのか。笑みを浮
かべ、強気な姿勢を崩そうとしないのは余裕の表れか。
「ゲームオーバーだよゼロ。いや、君は良くやった方だ」
わざとらしく、労うような声を出すスカリエッティ。
「私の挑戦を受け、ゲームに参加し、何の関係もない世界のために戦ったんだ。
立派と言ってもいい」
ゲームに引きずり込んだ張本人が酷い言い草だが、言っている本人は割りと
真面目だった。ミッドチルダはゼロの故郷でもなければ、何の縁もゆかりもな
い場所だ。異世界人であることを理由に、戦いを拒否することも出来たのだ。
「私への憎悪か、それともあの哀れなフェイト・テスタロッサに同情でもした
のかい? しかし、残念ながら今の君には彼女を救うことも出来なければ、終
末を迎えようとしている世界の流れを変えることも出来ない!」
ゼロはスカリエッティに膝を屈し、敗北するのだから。確定した勝敗を覆す
ことも、ゼロには出来ない。
「悔しいか? 怒るかな? 喚き叫んでみたらどうだ!? 私は君に勝った、
君は私に負けたんだから」
勝利の熱狂が、スカリエッティの身体を支配しているようだ。スカリエッテ
ィが指を鳴らすと、ゆりかごや地上、あらゆる場所に大広間の映像が映ったモ
ニターが出現する。
「ゼロ――!?」
フェイトが驚愕に震え、トーレがドクターの勝利に歓喜する。
アースラにいるはやてやリイン、地上で戦うキャロやエリオ、ギンガ相手に
激闘を続けるスバルとティアナでさえ、その衝撃的な映像に戦慄を憶えたよう
だ。
「さぁ、英雄の最後だ。仲間が見守る中、華々しく散ってくれ」
スカリエッティの右手に、魔力が集中していく。魔力砲で、ゼロを檻ごと吹
き飛ばそうと言うのか。檻から出ることの出来ないゼロは、避けることも防ぐ
ことも出来ない。
「言い残すことはあるかい? 今なら君の声は、ゆりかご内にも地上にも響き
渡るが」
スカリエッティの言葉に、ゼロが静かに反応した。
支援
「お前は、こんな方法で世界を変えて本当に満足しているのか?」
少なくとも、彼の部下であったナンバーズの娘たちの大半は、こんなことを
望んでいなかったのではないか。
「やれやれ、最期に何を言い出すかと思えば……お説教のつもりかな」
面白くなさそうに、スカリエッティは呟いた。およそ独創性のない言葉に、
興醒めしたのかも知れない。
ゼロの冷静とした態度も、スカリエッティには不快だった。追いつめている
はずだ、絶体絶命の窮地に追い込んだはずだ。なのに何故、怯えて竦まない。
恐怖に震え、命乞いをしないのだ。
「満足しているさ、あぁ、満足しているとも! 全てを破壊し、全てを作り直
す、私にはその力があり、今まさにそれを実現させようとしている。ゼロ、こ
の流れを変える力すら持ち合わせていない君が、私に何を偉そうに語ろうとい
うんだ!?」
勝利の高揚が、スカリエッティを興奮させているのかも知れなかった。
「……所詮オレは、戦うことしかできないレプリロイドだ」
それは他者に訴えると言うよりも、自分に言い聞かせるような口調だった。
ゼロは狭い檻の中で、何と起ち上がろうと体勢を立て直す。
「世界を変える力なんて持っていないし、世界を変えていくのはオレじゃない。
フェイトをはじめとした、今この世界を必死で生きている人間たちだ。オレは
レプリロイドとして、信じられるものに力を使う。だから、俺はお前と戦った」
ゼロの言葉に、アギトが反応した。
「信じられるもののために、力を――」
友の正義のために力を使い、殉じる覚悟すらあったゼスト。そんな彼と出会
って、彼を守ろうと誓ったアギト。
力とは、傍若無人に振るわれるものではない。誰かのために、何かのために
使われるべきものなのだ。
だがな、スカリエッティ、とゼロが続ける。
「お前にその資格はない! お前はお前を信じた者たちを裏切った。お前を信
じて戦い、傷つき、倒れていった者たちを切り捨てた。そして、それを理解で
きないお前に、世界は変えられない!」
ゼロの叫びに、スカリエッティの表情が歪んだ。張り付いていた笑みが崩れ
落ち、狂気が見え隠れしはじめる。
「言いたいことはそれだけか?」
全てのモニターを強制的にシャットダウンし、スカリエッティは叫んだ。
「これから死に行くものの言葉として、相応しかったとは思えないが……良い
だろう、塵一つ残らぬように消し飛ばしやる!」
魔力砲を撃ち出そうとするスカリエッティと、ゼットセイバーを構えるゼロ。
こうなれば、魔力砲によって檻が破壊された瞬間を狙うしかない。砲火に消さ
れるか、それとも生きて一撃を食らわせるか。
だが、この賭けは成立しなかった。
ゼロとスカリエッティの間を、阻む者が存在したからだ。
「お前は……?」
アギトだった。ゼスト共にいた妖精とも言うべき少女が、ゼロに背を向け浮
かんでいる。
「何のつもりだね? アギト」
まだアギトがこの場にいるとは思っていなかった、いや、そもそもはじめか
らいたことすらスカリエッティは忘れていたのだろう。しかもゼロを庇うなど、
スカリエッティは意外さを禁じ得なかった。
「少し、泣けてきたよ」
スカリエッティの言葉には応えず、アギトは背を見せたゼロに言葉を投げか
けた。
「そうだよな、力って言うのは心の底から信じられる人に使うべきだ。ゼスト
の旦那がレジアスのおっさんと約束したように、あたしがゼストの旦那に誓い
を交わしたように」
彼女が何を言いたいのか、スカリエッティには理解できなかった。いくらオ
リジナルの融合騎とはいえ、アギトごときに倒されるスカリエッティではない。
いや、待てよ……融合騎、だと?
「あたしの力を、お前に託す。ゼロ、あたしを使え!」
アギトは叫ぶと、炎を纏ってゼロの閉じこめられた檻へと入り込んだ。
「そうはいかないっ!」
ゼロとアギトが触れ合うのと、スカリエッティの魔力砲撃が行われたのは、
全くの同時だった。
「――ッ!?」
アースラの艦橋において、はやての傍らに浮かんでいたリインの身体が大き
く震えた。
「どないした、リイン?」
尋ねるはやてに対し、リインは荒い息をしている。そして、心底嫌そうな表
情を作ると、言葉を吐き出す。
「何か今、すっげーむかつきました」
「はぁ?」
「例えるならそうですね……最後に食べようと残しておいた大好きなおかずを、
横からかっさらわれた時の気分によく似てます」
判りやすいんだが、判りにくいんだか、それすらも判らない例え話である。
「はやてちゃん、私すっごく悔しいです!」
「いや、だから何で!?」
はやてには判るはずも、感じられるはずもなかったが、リインは気付いた、
感じ取ったのだ。
ゆりかご内で今、何が起こったのか。
レプリカとはいえ、リインとて融合騎なのだから。
「こっそり狙ってたのに、何でこうなるんですかぁ!」
空中で地団駄踏むリインを、はやては困惑気味に見つめながらため息を付い
た。とりあえず、決して悪いことが起こったわけではなさそうだ。
やっぱり狙ってたのかww支援
支援www
魔力砲が、ゼロを閉じこめていた檻へと直撃した。しかし、この一発で檻は
壊れない。というのも、悪辣で狡猾なスカリエッティは魔力の糸で生成したこ
の檻を、外からの攻撃に限っては素通りできるようにしていたのだ。
「中からはどうあっても壊せず、外からの攻撃も通用しない。反撃など、出来
はしないんだよ」
高笑いをするスカリエッティであるが、彼の浮かべていた笑みはすぐに消し
飛ばされることとなる。
爆発によって生じた煙が、吹き飛ばされたのだ。
「これは!?」
何かが燃えている、いや、何かではない。スカリエッティが作りし魔力の檻
が、赤い炎に包まれる。糸が千切れ、一本残らず燃え尽きていくのだ。
炎の中に、誰かがいる。
熱波が、周囲の煙を吹き飛ばし、スカリエッティを数歩後退させる。誰かで
はない、あの中にいるのは、あの炎を纏いし戦士は……ただ一人。
「――素晴らしい」
素直な感想が、スカリエッティの口から漏れた。
金色に光るボディに、六枚もの炎の翼が生える背中。揺らめく炎が、鎧のよ
うに戦士に纏われている。
「まさかゼロにこんな力があるとは……」
ユニゾン・アタックを利用した、フォームチェンジ、ゼロは炎の剣精アギト
と融合したのだ。サイバーエルフに近い彼女との融合は、さほど難しいもので
はなかった。
「勝負だ、ジェイル・スカリエッティ」
今や炎の剣士、爆炎の剣聖となったゼロが、炎熱色に輝くゼットセイバーの
切っ先をスカリエッティに突き付けた。
「良いだろう、返り討ちにしてくれる!」
スカリエッティの周囲に、幾つもの魔力弾が現れる。スカリエッティはそれ
らの弾を一つにまとめ、巨大な塊を作った。
「潰れろ、もしくは消し飛べ」
放たれる巨大な魔力弾に対し、ゼロは片手でチャージしていたバスターショ
ットを構えた。
「断る、消えるのはお前だ」
爆炎の塊ともいえるフルチャージショットが、魔力弾と激突した。
威力は互角、衝突し爆散する両者の攻撃だが、ゼロのバスターショットは弾
けると共に、凄まじい熱波を空間に撒き散らした。
「攻撃の余波に、私が押されている?」
そんなこと、あるはずがない。
スカリエッティは右手を動かし、ゼロの立つ空間を直接爆発させた。攻撃の
方法など、いくらでもある。
しかし、それは小細工に過ぎなかった。炎の翼をはためかせながら、ゼロは
凄まじいスピードでスカリエッティの攻撃を避けた。
「なら、もう一度動きを封じるまでだ!」
数十本もの魔力の糸が、ゼロの身体を絡め取る。先ほどまでゼロの身体を完
全に閉じこめていたその糸が、
「燃え尽きろ」
ゼロの身体から伝播する炎の前に燃やし尽くされていく。
唖然として、スカリエッティはその光景を目の当たりにした。完全に、勝敗
が逆転しつつあるのだ。
スカリエッティが、歯を噛みしめた。
「私は……まだ勝負は終わっていない!」
右手と右腕に力を込めながら、スカリエッティが飛び出した。リコイルロッ
ドをも砕いた、強烈な一撃。
算出されたデータを元に、研究と計算を重ねて作られた、スカリエッティの
武器。戦士としてよりも、研究者としてスカリエッティは負けるわけにはいか
なかった。
だが、結局はその拘りが、勝敗の決め手となった。
「いや、これで終わりだ。オレが、終わらせる!」
ゼロの身体に、輝きと爆炎が、燦めき燃え上がった。
スカリエッティと、ゼロの姿が、一瞬だけ交錯した。
本当に一瞬の出来事で、この戦闘の唯一の傍観者となったウーノの目には、
二人が激突したようにも、衝突したようにも見えなかった。
それでも、決着は付いたが。
「ぁっ―――!?」
叫び声を上げなかったのは、その暇すらなかったからだろうか。ゼロの爆炎
のチャージ斬りが、スカリエッティ自慢の右腕を、肩口から斬り飛ばした。
斬り飛ばされた右腕は瞬時に燃え尽き、スカリエッティは地面に膝を付いた。
唯一の救いは、傷口も炎に焼かれたため、即座に被覆が出来たということぐら
いか。
祝福の剣聖の出番はなさそうですね支援
「ドクターッ!」
スカリエッティは、敗北した。駆け寄るウーノには目を向けず、スカリエッ
ティはただ、ただ彼を倒した相手にのみ視線を送っていた。
「見事だ、ゼロ」
それは、自らの負けを認める言葉だった。
スカリエッティの目の前で、ゼロとアギトが分離した。相性は悪くなかった
が、やはり即興のユニゾン・アタックには無理があったのだろうか。
「もう終わりにしよう、スカリエッティ。降伏しろ」
ゼットセイバーを突き付けながら、ゼロは諭した。本当ならこんな奴は八つ
裂きにしてやりたいのだが、ここでスカリエッティを倒せば戦いを止める者が
いなくなる。ゼロの感情に任せて良い問題ではないのだ。ガジェットやゆりか
ご、抵抗を続けるであろうナンバーズへの人質としても、スカリエッティの身
柄は生きてこそ有効であり得るのだ。
「降伏か……それは柄じゃないな。誰かに屈するのは、もう沢山だよ」
遠い目をしながら、スカリエッティは呟いた。先ほどまであった熱狂も、興
奮も、全てがゼロに斬り飛ばされ、燃やし尽くされた。
抜け殻か、それとも消し炭か、空虚な虚脱感がそこにはあった。
「ゼロ、君はあまりゲームをやらない方だろう?」
この期に及んで、まだゲームの話をしているのか。
鋭い視線で見据えられながらも、スカリエッティは話を続ける。
「大抵のゲームがもっとも面白くなるのは、クリア前ではなくてクリア後なん
だ。やっと最終ボスを倒した世界、その先には一体何が待っているのか……」
予想以上にダメージが大きかったのか、スカリエッティの息は荒い。ウーノ
が心配そうに、彼の身体を抱きかかえている。
「例えば、ボスよりも遥に強い裏ボスが存在するとしたら、最高に面白いと思
わないかい?」
スカリエッティが何を言いたいのか、ゼロとアギトは判らなかった。両者共
に下らない無駄話と思ったに違いない。
だが、次のスカリエッティの言葉が全てを変えた。
「戦いを止める、か。無理だな、私にはもうそんな価値はない。言っただろう?
私は魔王ではないんだよ」
突如、地面が揺れ動いた。
「地震か!?」
叫ぶも、中空に浮かんでいるアギトが感じる時点で地震ではない。そもそも
空に浮かぶゆりかごに地震など起きるものか。
ゼロは、この揺れが階下から起こっていることを察知していた。
「何かが、来る――!」
瞬間、地面が崩れた。巨大な爆光が煌めき、噴火したかのように爆発を起こ
し、地面に巨大な風穴を開けたのだ。
ゼロとアギトが驚愕の、スカリエッティが歓喜の表情を浮かび上げる。
「あれは!?」
風穴を開けた爆発、飛び散る地面と共に何かが飛び出してきた。一緒に飛び
散ったというより、それが地面を突き破ったのかも知れない。だが、あれは、
あの姿は、まさか。
「エース・オブ・エース――」
高町なのはだった、なのはが、地面を突き破って現れたのだ。爆発の衝撃に
身体を痛めつけられ、着地をすることも出来ずに地面へと叩き付けられた。
「あっ、あっ……」
呻き声を上げるなのはに駆け寄るゼロだが、目にした姿に戦慄を憶えた。
全身が傷だらけの上、血だらけになっている。身体は痙攣を起こしており、
意識は既に無い。ズタズタのボロボロになったバリアジャケットと、宝玉の部
分が粉々になりかけているデバイス。
完膚無きまでに、なのはは敗北していた。
ゼロが、背後を振り返った。なのはが飛び出してきた穴から、何かが浮かび
上がってくる。
強烈な魔力が、威圧感や圧迫感となってゼロの身体を震わせる。
「お前は、何者だ」
長い髪を一つに結び、なのはのバリアジャケットにも似た黒衣を纏う少女。
左右で異なる色を見せる両眼に、ゼロは覚えがあった。
だが、彼の知っている彼女は幼女であって、こんな体格も身長もなのはと変
わらぬ少女ではなかった。
「覚醒したんだよ、聖王が」
スカリエッティが、痛みを押して起ち上がった。彼の表情に、勝利の笑みが
復活していた。
「聖王、だと?」
その言葉にも覚えがある。スカリエッティはこのゆりかごに捕らわれたある
人物を、聖王の器と称して玉座に座らせていた。そして、なのははその幼女を
助けるために単独で動いていたはずだ。
「まさか――!?」
驚愕するゼロに対し、明確な答えを教えるものはいない。教える必要すら、
無かった。
聖王ヴィヴィオ、古代ベルカ王朝に君臨したゆりかごの主が今、覚醒した。
つづく
第22話です。
一昨日は申し訳ありませんでした。平日に仕事が立て込んで全体的な
投下速度が鈍ったのと、基本的に書き溜をせず皆様の感想を読んでから
次の話しを書くというスタイルが裏目に出てしまったようです。
今回含め、今週中に更に2話投下で速度を戻したいと思ってます。
リインとアギトですが、最後まで悩みました。
甲乙付けがたい二人、リインには残念ですが、しばらくお預けという結果に。
話の構成上はリインがしっくり来るんですが、展開上はアギトが相応しかった
もので。
それでは、感想等ありましたら、よろしくお願いします。
GJです
なのはさんが敗北するとは思わなかったw
裏ボスはてっきり三脳が復活させたシグマとかと思ってただけにww
でもこれでリインにもチャンスが生まれたと考えれるかな?
GJです
>仲間を集めて勇者が魔王に挑むゲームがあったとして、私はいつも魔王を倒
す最後の一撃は、勇者にやらせるんだ
俺もだw
64 :
名無しのゼロ式:2008/10/13(月) 02:11:06 ID:QTh/Q9y3
最高です!!
まさに燃える展開!!
アギトと融合してまさに燃えるゼロとスカ氏の激突!
その後のまさかの展開!!
まさか聖王登場ですか!!
俺はてっきりバイルのおっちゃん復活かと!
この勢いで最後まで突っ走ってくだされぇい!!
あとオレンジは狙ったんですか?w
GJでした!
つかなのはさんの描写がないと思ったら、こうくるとは…いや、ちょっとだけ予想してたけど。
このままスーパー聖王タイムでみんなを圧倒してしまうのか、あるいはなのはさんの反撃があるのか。
ゼロはどうするのか。
実に続きが楽しみです。
GJ!
さらにリィンが来て、ツインユニゾンですね?わかります。
GJでした。
やっぱラスボスは二回戦目がないとね!
あなたは神ですか。 マジで
GJ!
しかし、これってなんか複雑な気持ちだよな・・・
例えるなら、攫われたピーチ姫を助けに来たキノコ仙人マリオがクッパ倒した後に、
なんでか、救出目標である筈のピーチ姫と一戦交えることになっちゃいました!/(^o^)\ナンテコッタイ
的なこう・・・なんかこう・・・。しかもクッパより強いってお前それどういう事やねん・・・・・・的な、
なんかよく分からんが、なんかこう複雑な何かしらがあああああああばばばばば
GJ!!
奇跡のソウル・ユニゾンでようやくこの世界に光が見えてきたと思ったら……いやぁもうたまりませんね!?
もしもこの先なのはやフェイトが死ぬことになったら、
「ワレはメシアなり! ふはははははーー!」
の状態でZX世界に帰還することになるのではと不安です。
次回も楽しみに待ってます。
GJ!
とりあえず誤字発見したので・・・
「お前がどんな力を持って言うよと、オレには関係ない」
×言うよ ○いようと だと思います
GJ!!
それでもワイリーの傑作機なら…
ワイリーの傑作機ならボディが違ってもきっと何とかしてくれる。
あのジジイ、擬似的な永久機関やら時間停止とか重力操作とかやってしまうほどだからな…
>>73 永久機関は分からんが
>>時間停止とか重力操作
フラッシュマンとグラビディーマンのことかー!
其れは置いといて
>>61 GJでした!
つか途中から実はスカがバイルに意識乗っ取られてんじゃねえかと考えたのは
多分私だけだろうな・・・・・・
しかし最後の展開、助けに来た奴が実はラスボスのくだりでX8が頭によぎったのは
私だけではないはずだ!
まあ一番の問題はゼロがヴィヴィオをイレギュラー認定するかしないかですが。
次回が楽しみです。
>>75 それは「コサック博士」作のカエル型ロボットの事ですかな?
むしろ手違いで人を操る超音波を使う蝙蝠型ロボットを
作りそうになっていた事の方が怖いわw
何はともあれGJです。
ラストバトル、果たしてゼロのとる道は?
楽しみに待ってます!
>>76 1はライト博士作のロボット、3はライト博士との合作、4はコサック博士作、6はロボット選手権のロボットで、ワイリー作じゃないんだよね。
あとウィキペディア見たら、ワイリーって完璧なロボットも作れたけど、借金だらけでお金が無く、できなかったとあって、なんか妙に納得した。
9にいたってはライトのロボットを言葉巧みに騙したとか話術も半端ねぇしなwwww
そもそも地球製じゃないシャドーマンやらサンゴッドやらラ・トールやらを修理するとかもうやりたい放題。
でもまぁ結局詰めが甘いというか色々あって
. -―- .
/\ / ヽ /\
/ / |´ \
/ | 丿 \
/ 〉'">、、,,.ィ二¨' {. ヽ
//∨∨ `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )/∨∨∨ゝ 、ヽ l / ,
{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY = =
ヾ/  ̄^'^ ′ ̄` \r')リ ニ= ワ だ -=
/∨∨「匸匸匚|∨∨ ニ= イ け =ニ
l | /^''⌒| |n_ =- リ. ど -=
、、 l | /, , ,ヽ !‐}__,..ノ |:::|.| ヽ ニ .| ニ
.ヽ ´´, ,|∧ `ー一'´ /|ヽ:ヽヽ } ニ .じ ニ
.ヽ 失 き ワ ニ. /|{ :ハ  ̄ /| |.|::::::::| | | ニ .ゃ ニ
= 敗 っ イ =ニ /:.:.::ヽ、 'ーー< :| |.|:::::| | / ´r : ヽ`
ニ す. と リ -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、 _,ノ/.::::::::| | /| ´/小ヽ`
= る. ま | -= ヽ、:::::::::\、__/::.::::あ.:::| |' :|
ニ た じ =ニ | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.::::る:::::Y′ト、
/, : ゃ ヽ、 | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ば_::::| '゙, .\
/ ヽ、 | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::あ::::::::ト、 \
/ / 小 \ r¬|ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::と:::::::| \
最後はこうなる
ドクターワイリーは間違いなく天才。ただ、ロックマンの『倒したボスの能力をコピーする能力』が異常なだけ。
……ゼロを開発したのは晩年っぽいが、もっと早く開発に成功していれば、間違いなく世界征服は完遂できたはず。
しかしロックマンゼロ時代でのゼロのボディは…
皆様お久しぶりでございます。
よろしければ、本日18時に投下予約を入れたいのですが、よろしくお願いします。
最近忙しさと相まってスランプ気味です。今回はちょっといつもより少ないです。12kb行かなかった・・・・orz
待ってますw支援
支援
84 :
一尉:2008/10/13(月) 17:32:56 ID:5r4fx4EQ
これなら支援。
この右腕は支援するために・・・
支援
そろそろ時間なので、行かせてもらいましょうか。
はぁ・・・・・約7kb・・・・少ないなぁ・・・・・・・・
1週間振りに会った青年、ネロ。
異形の右腕にて私を退けた戦士。
彼が我らに協力してくれれば、主達の苦労も減ることだろう。それにテスタロッサや高町以外に仕合いが出来そうな相手が来るのは願ってもない事だ。
しかし、彼から聞いた『悪魔』という言葉。この騒動、ただ事ではなさそうだ。
魔法少女リリカルなのは DEVIL HUNTERS 第8話「合流〜前編〜」
「え〜っと・・・・・・」
ホテルの前で初めてフォルトゥナに足を運んだ組の前に立つフェイト。だが、その表情は苦い。何故ならあの時、待ち合わせなどの話を一切していなかったからだ。
「申し合わせをしなかった落ち度だな」
傍で歩くシグナムが涼しげな顔で言う。何クールに言ってるんですか。そういうあなたも一緒だったじゃないですか。フェイトの叫びが木霊する・・・・・心の中で。
「大丈夫?フェイトちゃん?」
心配そうな顔でフェイトの顔を窺うなのは。フェイトはそれに対し、「あはは」と苦笑するしかなかった。
「とりあえず、教団の施設に言ってみればなんとかなるのかな?」
「ふむ、それがいいだろうな」
とりあえず、というフェイトの考えにシグナムも同意する。話が通っているかどうかは不明だが、呼び出しくらいはしてくれるだろう。そう考え、すぐ近くの大劇場へと向かうことにした。
そして、ふと気付く。前に来た時と比べて通りを往く人々が多いことに。
「何かイベントでもあるんかな?」
はやての言葉にシグナムは通りの人々の行く先を見る。
「どうやらそのようですよ。皆、劇場の方へと向かっているようです」
見れば、老若男女問わず皆が劇場へと歩いて行く。本当に小さな子供も居れば、齢80は過ぎているであろう老人さえ見える。
「コンサートか何かなのかな?」
「知るわけないでしょ。ん〜、でもそうなのかしらね」
ギンガの疑問にティアナが答えるも歯切れは悪い。余りにも年齢層に幅があり過ぎた。
「あ・・・・・・」
人通りの多い道を眺めていたフェイトが突然に声を上げる。その視線の先には、
「あのおばあさん・・・・・・」
そう。前回立ち寄った時に世話になったあの老婆の姿であった。おもむろにフェイトはその老婆の方に向かう。
「フェイトちゃん?」
なのはは疑問の声をあげながらもついていく。その他のメンバーも同様だ。シグナムだけは、近づいてから「ああ・・・あの時の」と納得した様子だった。
「おばあさん」
「はい・・・・・・・・あぁ、いつぞやのお嬢さんですかな?まぁまぁ、今度は大所帯で・・・・」
後ろに控える六課の面々を見て言う。
「はい・・・・あの時はどうも」
幸いにも声をかけたフェイトの事は覚えていてくれたようだ。元々、外との交流はあまりないフォルトゥナだ。外来の人間というのは印象に残ったのだろう。
「お二人にはお会いできたので?」
「はい、おかげさまで。それはそうと、ちょっと聞きたい事があるんですが?」
「はて、なんでしょうか?」
この通りの賑わい様、その疑問を老婆にぶつけてみることにした。
「ああ、他所の方は知らないでしょうな。今日は『魔剣祭』の日なのですよ」
「『魔剣祭』?」
言葉的に祭りなのだろうが、いまいちイメージが沸かなかった。
「教団が主催する大集会みたいなものですよ。教皇様のお言葉を聞き、神に祈りをささげ、神を讃え、日々に感謝する。訳あって昨年は開催とならなかったのですが、今年は・・・ということです」
年に一度の催し、それが一度途切れてしまったので、再開した今回は、人も例年より多いということだろう。
どうしたものかと考えていると、老婆は一つ訪ねてきた。
「今度もネロ様あたりに用事で?」
「ええ。それが、細かいことを聞いてなかったもので・・・・・・・」
そこまで聞いて、老婆は合点がいったようだ。
「なら、あなた方も参加されるとよろしいでしょう。他所の方でもわしらはどうこうという宗教でもありませぬ。それに、教団の人間も参加しますからお会いになることもできるでしょう」
宗教団体の催しに自分たちが参加してもいいものかと思ったフェイトは驚きの声を上げる。
「え?」
「我らが神は異教の人間などと差別はいたしませぬ。心から人間を愛した魔剣士スパーダ。慕う人間は誰でも受け入れてくれるに違いありませぬ」
彼女らが知ることでは無かったが、目当てのネロ自身、教団に忠を誓っているわけではない。ただ、目的のために従っているに過ぎない。それでも、一応、教団の行事には顔を出している。
「それなら・・・・・・そうしようか?」
後ろを振り返り、フェイトが皆の意見を聞く。皆、首を縦に振り、同意の意を示す。
「それじゃ、案内・・・・お願いできますか?」
「お安いご用で」
そして、六課の面々もまた、他の信者たちと同じように、大劇場へと足を運ぶのであった。
「綺麗・・・・・・・・」
キャロが思わず呟いた。大劇場の中、中世の趣溢れる内装、そしてステンドグラスが輝く天井、そこからつりさげられる巨大なシャンデリア。
約2年の歳月をかけて再建された大劇場は、かつて、破損する前の姿を取り戻していた。
「あれが、この教団の神か・・・・・」
シグナムの視線の先には、ステージの演壇の奥。石造りの巨大な石像。
かつて、このフォルトゥナを統治し、二千年前に正義の剣を振るった大魔剣士スパーダ。穏やかに前を見つめ、魔剣・フォースエッジを両手で立てる姿は、この街の象徴である。
「魔剣士・・・・・スパーダ・・・・・・・・・良かったな高町。本物の悪魔がここにいるぞ」
「もう、やめてくださいよ!」
暗に、ヴィータがかつてなのはに向けた言葉の事を言っている事に苦笑いする。当時は悪魔でもいいよ、などと言っていたが、やはり悪魔と言われるのはよろしくないようだ。
「あ、ここが丁度空いてますよ」
スバルが見つけた一つの列。不思議なことに誰も座っていないのだ。
「じゃあ、みんな座ろうか」
はやてが皆を促すと、いそいそと座っていく。ちょうど、端の2席が空いた形になった。程無くして、周りも静かになり、魔剣祭が始まるのを予想させた。
劇場内が、暗くなり、やがて一人の女性にスポットがあてられる。
「あ・・・・・・・」
それは、フェイトとシグナムが見た事のある女性。ネロの傍に佇んでいた女性。歌姫・キリエ。オルガンの調べに、彼女の歌声が乗る。
それは、限りない愛の歌。男と女の愛情の歌。
“私が貴方を呼ぶ声を聞いて”
空いた席に一人の男が座る
“貴方を闇から引き戻しましょう”
暗さで彼女らにその顔は見えなかった
“罪深き悪魔の叫び”
この歌は愛の歌
“常に背を向けられるように”
歌姫がこの歌を贈るは愛する男の為に
“あなたは風と共に去り”
かつてはその運命に翻弄され
“けれど、今でも私は、貴方の魂が貴方自身をここへ導き帰る夢を見るの”
己が姿に悩むときもあった
“貴方に贈り物をあげましょう”
己が『悪魔』を見られるのを恐れ
“庭を手にいれ、花が咲き誇るのを御覧なさい”
孤独に過ごし、他を信じようとしなかった
“貴方の瞳に宿る天高く飛ぶ天使の輝き”
けれども今は違う
“心の闇に打ち勝つ為の闘い”
かけがえのない家族を失い、かけがえのない友情を手にいれ、かけがえのない伴侶を得た
“その心は紆余曲折を経て”
喜びと悲しみの中で
“やがてしなやかに成長していくのでしょう”
己が使命に目覚めた
“私の声を聞いて”
その力、神か悪魔か
“貴方を闇から救い出す声を”
誰にもそれは分からない
“罪深き悪魔の叫び”
唯一つ分かるとするのなら
“常に惑わされぬように”
万夫不当の魔剣士の誇り高き人を愛する魂は、今なお受け継がれている。
場内の明かりが戻っていく。盛大な拍手に包まれる場内。そして歌姫の視線の先には
「・・・・・・・・あっ」
「・・・・・・・・ハッ」
あの時と同じように、不敵に笑うネロの姿があった。
「えっ!?」
思わず見とれていた。そしてキリエの視線を追ってみれば自らの隣。フェイトは自身の左を向いてみれば、目当ての男性が足を組んで座っていた。
「ネロ・・・・・?」
「あ?」
ネロとフェイトの1週間ぶりの再会であった。
To Be Continued・・・・・・・・・・・・・
投下完了です。正直、前回の予告通りの所まで進めませんでした。急きょ前後篇に分けてとなりました。
言い訳ではありませんが、体壊したり、他に持ってる連載の方にも気を取られたり。
感じたのは、多重連載はキツイです。とりあえず、今持ってる3本終わらせたら、絶対後は一本ずつ書いていくことにしますわorz
投下乙。いつまでも待ってます
>>84 キチガイが必死だなってーか日本語じゃねえから意味不明
思いついたことを整理くらいしろ
意味不明な文章、キモ、チョンだと自己証明してやがる
とっとと国に帰れ朝鮮人が
GJ!!です。
お隣さんw今後どうなるか楽しみです。
>>93 放っておきましょう。
あと、あなたの差別的考えを書かないでくれ、不快だ。
こんばんは、9時半頃にグラヴィオンStrikerSの新作を投下しようと思いますがよろしいでしょうか?
支援
>>96 書くのはえええええええええwwwwww
よし!全裸で待機してまってれう〜wktk
時間ですので投下します。
あの悲劇から1週間が経とうとした。なのはがその間に教会からいなくなったのだが、ヴェロッサはただ「わかった」とうなづいただけで、何もしようとしない。
いや、何もしてないのだ。今のヴェロッサは廃人のように壊れていた。
その頃次元航行空間に浮かぶ謎の物体の中では、1週間前にゼラバイアがグラントルーパーに敗れる映像をカリムが見ていた。
「ふ、私に楯突く愚かな者たちよ。いかに自分達が愚かな存在か知るがいいわ。
苦しみ惑う者たちよ。統制と安堵、そしてひさを与えてあげましょう」
カリムがそう言うと自分のいる部屋の中心に何かを指示し、そこから上へと光が飛んでいく。そうミッドチルダに向かう光だ。
第15話 想いが衰える時
スバルは慣れないバイクを駆ける。スバルは16歳になったばかりでバイクの免許も取り立てほやほやでティアナやヴェロッサのようにうまく運転できない。
しかしそれでもスバルはバイクで道路を駆ける。いなくなったなのはを捜すために……。
(なのはさん、あたしが追い詰めちゃったのかな……。あの時あたしがなのはさんをグランカイザーに乗せたから……)
フェイトとティアナがいなくなる前にスバルはなのはにひどいことを言ったままなのはが行方知れずになったのを少し後悔した。
しかし後悔しても戻る事はできない。それをスバルは認識している。
(なのはさん、必ず見つけますよ)
城の整備室では、マリーが不機嫌そうにテレビニュース討論を見ていた。その討論の内容はゴッドグラヴィオンと先日現れたグラントルーパーの事で、
グラントルーパーの方がある意味ではグラヴィオンよりもいいと言う意見にマリーはテレビを見ながら反論する。
「もうーーーーーー! ただ単にグラントルーパーに乗ってる人が1機体に1武装しか使えないだけでしょ!」
思わずマリーは手に持っていたスパナをテレビに向かって投げようとしたら、肉まんを持ってきたシャーリーが止めに入った。
「マリーさん、とりあえずこれ食べて落ち着いて……」
「あ、ありがとう。どうもおなかがすいてたのもあって……」
マリーはシャーリーの持ってきた肉まんで何とか落ち着いた。 そして肉まんを食べながら修理中のグランディーヴァを眺める。
「後3日もあればまた合神可能だよ」
「そう……ですか…」
シャーリーは突然下の方を見て俯く。シャーリーの視線にはGドリラーの片割れがあった。それはティアナの乗っていたものだ。ティアナはあの戦いの後行方不明となってしまったのだ。
「ティアナ、無事だといいけど……」
「大丈夫だよ。あの子結構頑丈でしょ」
「そうですけど……」
そんな重苦しいシャーリーにマリーは肉まんをシャーリーの口に押し付けた。
「………、もうマリーさん!」
シャーリーが息切れを起こしかけたようにマリーに怒る。
「ごめんごめん、でも泣かないでよシャーリー。私ね、グラヴィオンの修理が終わるまでは泣かないって決めたの。
泣いたらつらい気持ちも紛れるけど、でもそれでつらい気持ちから逃げたくないって考えてるの…。
だから私は今出来る事を精一杯して戦って戦いきろうと思うの。そういうつらい気持ち全部背負ってね…」
「そうですね、だったら私も泣きません!」
「よーし、そうなったら今夜も徹夜だ!」
「私も手伝わせていただきます!」
マリーとシャーリーは気合を入れてグランディーヴァの修理に力を注ぐ。
「質問してるのはこっちよ!」
地上本部の医療室では、地上部隊に拾われたティアナが怒りながらウーノに問いかけていた。
「なのはさんは? グランカイザーはどうしたの? フェイトさんのドリラーは!? スバルは無事なの!?」
ウーノが呆れたかのように答える。
「何度言わせればいいのですか? あなたは一応怪我人です。おとなしくしてもらわないと困ります」
「助けてもらったのは感謝してるわ。でもだからっていくら地上本部でもあたしを拘束してもいい訳じゃないでしょ。機動六課は本局所属なんだから……」
「……、そうね。ですがあなたのリンカーコアにあるG因子の計測が終われば……」
全部を言う前にウーノはうっかり口を洩らした事に気付く。ウーノにとっては珍しいミスだった。
ウーノがみなまで言う前にティアナが怒る。
「やっぱり…、あたしの意識が無い事に変な事したのね!」
「落ち着いてください…」
「落ち着けないわ!」
ティアナが興奮して暴れようとするのをウーノが力づくで止める。戦闘が得意ではないとは言えウーノも戦闘機人の端くれ。一般人よりは力はある。
その様子をモニターで見ていたヴィータが心で思う。
(全然ダメだな。感情を表に出しすぎてる。そう言うが仲間はいけないと思うぞなのは)
なのはの事を思い出しながら、ヴェロッサの事がふと頭によぎる。
(何であたしじゃないんだ。ヴェロッサ……)
「皆ごめん!」
スバルは街に出た後、何とか休暇中のノーヴェ達を捕まえて、なのは捜索を手伝ってもらおうとしていた。
「水臭いぞ、スバル」
「そうそう、なのはさんはもうあたし達の友達なんっスから!」
「セイン、ウェンディ、ありがとう」
「おいおい、スバル」
「あたし達に例は無いのか?」
「チンクさんもノーヴェもありがとう。それじゃあ早速だけど……」
スバルがなのは捜索網を考えようとした時、ニュースが流れ、そのニュースの内容はレジアス中将が正式にグラントルーパーの発表をしたことであった。
その様子をどこかの飯屋で見ていたヴァイスがご飯を食べながら喋る。
「ふ、言ってくれるねーーー」
テレビを見てご飯を食べるヴァイスの心はこう思っていた。
(グラヴィオン早く戻ってこい。俺はお前の存在に心奪われた男なんだからな)
そんな時、ヴァイスのデバイス「ストームレイダー」に緊急通信が入る。
「この通信、ゼラバイアか!」
ヴァイスは急いでご飯を食べ終え、ヴィータ達と合流しグラントルーパーに乗りゼラバイアのいる場所に向かった。
ゼラバイアが来た事は当然、聖王教会でも感知されていた。
「なのははまだ発見できんのか? ロッサは?」
クロノがシャーリー達に尋ねる。
「それが何度も呼んでるのですが、全然応答ありません」
それもそのはず、ヴェロッサは窓のふちで黄昏ているのだから……。その間にゼラバイアは付近にいた船と衝突した。その船にはレジアスが乗っていた。
「どうした?」
「レジアス中将の乗っていた船が……」
「電波障害が激しくて状況はわかりません」
「状況がわかり次第連絡を入れてくれ」
そう言うとクロノは司令室を後にした。
レジアスの乗っていた船はと言うと実は無事であった。何故かと言うとグラントルーパーが作り出したエルゴフィールドにゼラバイアが封じらていたのだ。
その様子はテレビ中継を介して伝えられていた。
「すごいね……」
「これがドゥーエのもたらした事か……」
セインとチンクもその様子をただすごいとしか思えなかった。
「何とか間に合ったね」
「さてとそれでは……」
「うむ、グラントルーパー隊攻撃開始せよ!」
レジアスの命令により、ヴィータを中心にゼラバイアに対する攻撃が開始された。
そして国民に向かって、レジアスは演説をする。
「今ゼラバイアに対して新たな守護天使が戦っている。先の戦いで破れたグラヴィオンの魂はあれらに宿っている!」
「勝手な事言う人っスね」
「あたしはこういうお偉いさんは嫌いだな」
ノーヴェはああ言う自分が何もしないのに偉そうな態度をとる人間をあまり好まない。それはスバルやウェンディ、他の面々も同じ。
「あたしも……。それじゃあ、なのはさんの事わかったら連絡してね」
『はいはい(っス)』
スバルはバイクに乗ってノーヴェ達と別れてなのは探しを続行する。
海上ではゼラバイアが4つにも分離して、グラントルーパーに攻撃をしていた。
「グラヴィトン、ミサイル!」
グリフィスが乗るグラントルーパーからミサイルが発射され、けいせいをかける。
ミサイルの爆風からゼラバイアはエネルギー波で攻撃するが、ヴィータの機体は簡単に避ける。
「甘いぜ! グラヴィティ、ラーーーーーーーーング!!」
ヴィータの機体は両肩に付いてる突起物を一つにして、それをブーメランのように投げ、ゼラバイアの一つを倒す。
「さてと隊長に負けずに俺も行きますか!」
ヴァイスの乗るグラントルーパーが分離したうちの片割れのゼラバイアに向かって急接近を駆けた!
ゼラバイアはそれを撃退せんとエネルギー波を出すが、ヴァイスの機体はものすごいスピードだったのにも関わらず、それを避けた。
「あえて言わせてもらおう! ヴァイス・グランセニックであると!!」
その頃クロノはヴェロッサの事を心配に思い、ヴェロッサを捜しに行ったところ自室の窓に座り込んで黄昏ているヴェロッサを見つけた。
「ロッサ」
少しの間をおいてヴェロッサはようやく口を開く。
「怖いんだ。カリムが僕を殺しにきたんだ」
「ヴェロッサ、しっかりしろ!」
ヴェロッサの少し意味のわからない言葉にクロノは怒り交じりの激励を言うが、ヴェロッサの態度は変わらない。
「エルゴフィールドを発生させる時、ほんの一瞬だけど隙が生じる。グランカイザーの弱点を知ってるのは僕とカリム義姉さん…。あの人がまさか生きていたなんて……
もうおしまいだ。ふふ、何もかもおしまいだ!」
ヴェロッサにとってカリムは自分の立ち塞がる壁であった。カリムはほとんどの面においてヴェロッサを上回っていた。知能や技術も……。
それゆえにヴェロッサはカリムを尊敬さえしていた。自分が自慢できる姉としてだ。
しかしその自慢の姉であると同時に壁であるカリムが生きて敵となった以上、ヴェロッサには恐怖しかなかった。
その恐怖に怯えるヴェロッサはクロノにしがみつき、まるで命乞いをするかのようにクロノにすがりつきながら言う。
「過去の過ちを償えず、闇に閉ざされた未来に怯える意気地のない男。自分の美学を真実だと思い違った道化。愚かな男だな僕は…」
そんなヴェロッサに対し、クロノは自身の仮面を外す。
「今更逃げ出すつもりなんですか?」
クロノの仮面を外した顔にヴェロッサは驚きの顔を見せた。
ヴェロッサの前にいたのはクロノの格好をしているがクロノではない。
目の前にいたのは先ほどのクロノとは違い、髪が紫にかかって長く、女の人、そう、スバルとノーヴェの姉、ギンガであった!
「私はそんなあなたの為にこの仮面を受け継いだわけじゃないわ。答えてください。一体あなたは何のために戦ってきたのですか!?」
「それはミッドチルダを、君達が住むこの世界を僕のいた世界と同じようにさせないために…」
ギンガは伏せこんでいるヴェロッサの襟元をひっぱり無理矢理ヴェロッサを立たせ、そしておもいっきりヴェロッサに平手打ちをぶちかました!
その強い平手打ちにヴェロッサは倒れた。
「ミッドチルダのため、私たちのため、確かにそうよね。でもそれだけじゃないですよね。この戦いはあなたが始めて、あなた自身が決着をつけなきゃいけない戦いのはずです」
「僕自身の戦い……」
ギンガはクロノの服を脱ぎ捨てる。その服の下にはスバルのバリアジャケットによく似たバリアジャケットが装着されていた。
「あなたはそこにいていいわ。私は私のしたい事をする」
ギンガはそう言って部屋を出て行った。
その頃戦闘エリアではグラントルーパー部隊の活躍により、分離されたゼラバイアは残り一体となっていた。
「ふ、隊長やオットー達だけじゃなくてグリフィスまでやったんだ。俺は最後の大ボスで締めてやるか!」
ヴァイスの機体は残りのゼラバイアの方へと飛んでいく。そしてゼラバイアはヴァイス機を撃ち落そうと先ほどまでのゼラバイア達とはエネルギー量の違う、
エネルギー波をヴァイス機に向かって撃つが、ヴァイス機はそれを巧みに上にかわし、かわしただけでなく飛行形態から人型へと変形までやってみせた。
「人呼んで、ヴァイススペシャル!! そしてトドメだ! グラヴィトンビーーーーーム!!」
人型に変形したのと同時に持っている銃をゼラバイアに向けて発射するも、出てきたビームは点線みたいなものでゼラバイアも避けようとせず、当たるのだがダメージが全然見当たらなかった。
「おのれーーーー! よくも俺の顔に泥を塗らせてくれたな! ゼラバイア!!」
自分の機体のせいなのに敵のせいにするヴァイスであった。
ギンガはヴェロッサの部屋を出て向かった先はグランカイザーの格納庫。
そうギンガはいないなのはやスバルの変わりに自分がグランカイザーに乗り込もうとしていたのだ。
(いくらG因子が少ないからって、スバルが出来たんだ。私だって……)
ギンガはスバルとノーヴェに母が使っていた戦術シューティングアーツを教えた師匠である。弟子が出来て師匠が出来ないはずはないとギンガは思う。
しかし実はギンガはスバルやティアナ達と違ってG因子が足りないのである。それでもギンガは行こうと考え乗り込もうとすると…。
「すまなかった」
ギンガは後ろからする声の方を向く。そこには乱れた服装を整え、前の白のリクルートスーツと違って白のタキシードを来たヴェロッサの姿があった。
「僕の前にどんな運命が立ち塞がろうとも、僕はそこから目を背けたらいけなかったんだね。さあ戻ろう! 僕達の戦場へ!!」
ギンガはクロノの仮面を付け、先ほどまでのクロノの服を着る。そしてそこにはギンガの姿は無くクロノがいた。クロノは司令室へと帰ってきた。
「クロノさん、ヴェロッサさんは……」
「待たせたね!」
すると突然クロノの方を向いていたオペレーター3人の後ろから派手な演出で口にバラを咥えたヴェロッサが現れた。
「とう!」
ヴェロッサが高く飛び上がり、口にたずさわえたバラをシャーリー達の前に投げ、自身は指令官の場所へと着地した。
「皆に心配をかけたね。許してくれないか?」
「いえいえ」
「それより…」
『お帰りなさい!』
(そんな事してる場合じゃないでしょ)
ヴェロッサとシャーリー達のやり取りに内心クロノはそう思ったが、すぐに状況を聞く。
「今の状況はどうなっている?」
「はい今は……」
シャーリー達が状況を説明しようとすると、グラントルーパーが密集して残りのゼラバイアを破壊しようとしている映像が流れる。
「いけない! あれを破壊したら!」
ヴェロッサの警告はグラントルーパー隊には届かない。グラントルーパー5体をあわせた必殺技「ライトニングデトネイター」が残りのゼラバイアを倒した。
しかしそれと同時に光が空高く飛んで行き、散布されていく。
「あの光、カリム、とうとうあれをこの世界に使うんだね…」
その倒した映像と共にレジアスが演説をするのをどこかの部屋で酒を飲んでいたドゥーエは持っていたグラスをTVに向けて投げつけた。
「あの狸め!」
ドゥーエはポケットに手をやり、遊園地で撮った自分とグランナイツの皆が映っている写真を眺める。
(何考えてるのかしら、私……)
ヴェロッサは司令室を出て、外を眺めながら考える。
「今こそ必要なのかもしれない。この暗雲を祓う太陽の輝きが……」
投下完了です。
>>98 スパロボZが発売される前の投下からスパロボZが発売されるまでに投下を一切せずずっと書き溜めていたのです。
そのため実は後2話ほど溜めてあります。(推敲は別)
さてとようやくギンガ登場しました。そしてヴァイスはあの人のセリフを言わせてみましたが、今後あれ以上の事になります。
次回の内容はなのはとヴィータの過去、そして太陽の輝きです。
酷い文章だな
GJでした。
ストックがあると聞くと安心感が3割増ですw
>ID:XY+7i9Ow
>ID:JWCcp5Oy
消えろ
>>JWCcp5Oy
批判するなとは言わないが、理由を述べないと作者の為にならないだろうが。
>>105 前々から思ってたがお前スパロボXだろ?
>>110 それでそれどうやって判断するの?
決定的なものながないかぎり決めつけでしかないぜ
>>110 いやお前がそうなんじゃないの?
と言われて違うと証明できるか?
さて、こんな時間ですが新作を書いてしまったので投下しようと思います。
そいでは言い訳は後にして、まずはプロローグから投下しますね。
かつてとある世界に、世界を征服しようと目論む男がいた。
男の名前は「大首領」。数多の組織を操り、“改造人間”を使って
世界に宣戦を布告した。
「大首領」が作った組織はショッカーに始まり、生み出された改造人間は数百体に及ぶ。
……と、それだけならば、時空管理局の関わる話ではない。単にこの世界だけの問題だ。
だが――。
悪質な事に、彼らの組織が行う作戦は、この世界の内に留まるものばかりではなかった。
いくつかの作戦は、他の次元世界にも影響を及ぼし兼ねないものも存在した。
その規模も多種多様。小規模な次元振程度の影響のものもあれば、
それこそいくつかの次元世界を丸ごと消滅し兼ねない大規模な作戦も確認された。
もちろん、そんな組織を見過ごす訳には行かない。
そこで時空管理局は、「大首領」を次元犯罪者と判断し、その討伐に乗り出した。
だが。戦っているのは時空管理局だけでは無かった。
それは人々の為に戦う、人間の味方が―――
人々の為に闘う、7人の“改造人間”が居た。
人々は彼らを称え、正義の使者「仮面ライダー」と呼んだ。
7人の仮面ライダー達は戦った。
守るべきものの為に、愛する人々の為に。
何度も挫けそうになった。最早立てない程にボロボロにされたこともあった。
それでも彼らは、決して諦めなかった。
やがて栄光の7人ライダーの活躍で、大首領は人々の前から姿を消した。
待ちに待った平和が、ようやく訪れたのだ。
だが。そんな平和も長くは続かなかった。
198X年―――9月27日。
最悪の事態が起きてしまった。
倒した筈の大首領が。
かつて仮面ライダー達が、命を賭けて戦った全組織――
全ての怪人を蘇らせ、再びその姿を現したのだ。
198X年―――11月13日。
公開された改造人間――仮面ライダー第1号・本郷猛の研究内容の一部から、
人類は簡易ライダーシステムの開発に着手。
異次元の科学者――ジェイル・スカリエッティの協力の元に、
短い期間ながら、簡易ライダーシステムの製作に成功した。
それはかつての仮面ライダーのような全身改造手術を必要とせず、
ライダーシステムに順応するように、遺伝子そのものに“因子”を上書きし、
人間の身体を進化させるという、簡単なものだった。
そうして進化した人類は、かつての仮面ライダー達と同等とは行かないまでも、
人間の体力を遥かに超えた能力を発揮するようになった。
198X年―――11月30日。
全ての準備が整った。
オリジナルと呼ばれる7人の仮面ライダーと、簡易ライダーシステム――
ライオトルーパーと呼ばれる兵士が約500人。
過去のデータから算出した結果、戦力としては十二分と政府は云った。
だが、実際のところは始まってみなければわからない。
198X年―――12月8日。
戦いが始まってから、僅か一週間。
戦いは最終局面を迎えたと云っていいだろう。
ショッカーの残存勢力は無いに等しい。
だが、我々人類もの払った犠牲も大きかった。
戦場となった新宿のあちこちには、散っていったライオトルーパー達の死体。
新宿を舞うのは、死んだ兵士達の身体が変化した、「灰」。
ライオトルーパーとしての装甲は残したままに、中身は灰となり、
この新宿を風に吹かれて舞っていた。
それはまさに、地獄絵図と云っても過言では無かった。
やがて大首領は陥落。再び平和が戻った。
だが。平和が訪れたのは“人類だけ”にだった。
政府は最初から、どちらが勝ってもそうするつもりだったのだろう。
それはライダーシステムが他国に漏洩する事や、ライダーという存在
そのものへの恐れからなのか―――真意はわからないが。
政府は新宿という街ごと、仮面ライダーを消すことを選択していたのだ。
新宿の空を飛び交う戦闘機から投下される大量の爆薬。
まるで生まれてきた事そのものが罪とでも言うように。
断罪の炎は、街も、仮面ライダーも―――全てを焼き払った。
それから数年後。
世界の裏側で、PT事件・闇の書事件が立て続けに発生した。
だが、それらは時空管理局と、それに協力する民間人――高町なのはの
協力もあって、早期の解決に成功。
それから10年後に発生したJS事件。
これは、かつて97世界でライオトルーパーの開発や、遺伝子の改造手術にも関わった
ジェイル・スカリエッティが主犯の、テロ事件。
だが、これも高町なのは達の所属する部隊――機動六課の活躍により解決。
ジェイル・スカリエッティは逮捕され、彼の生み出した改造人間部隊―――
通称「ナンバーズ」も、1人の例外を残して、全員が保護された。
機動六課には再び、ロストロギアの捜索・管理という任務の日々が待っていた。
それは機動六課の面々にとって、待ち望んだ平和な日々。
時には穏やかには解決できないロストロギアが絡む事件も存在した。
だが、それでも明確な悪意を持って自分たちに牙を剥いたスカリエッティ等と
比べれば、明らかに充実した日々であっただろう。
そう―――この日までは。
まずはChapter : 00。意外と速く投下完了。
はい。またなんです。またライダー作品なんです。
マスカレードもブレードも書こうと思ったら一向に筆が進まずに……
とまぁ言い訳はいいとして、知名度は低いかもしれませんが
「ハイブリッド・インセクター」とのクロスです。
とりあえず1話は既に書き上がってますが、推敲がまだなので、
今日中には投下しようと思ってます。
あれはプロ作の同人だろ?
三次創作ってどうなの?
プロがやってるオリジナルの同人作品ならともかく、二次創作の同人だから……
パクリや盗作とまではいわないけど元ネタとしては相応しくないと思う。
なんて言うか、二次著作権的に。
話が面白そうなだけに残念だけど、確かに三次創作は厳しいかも
幸い今ならまだ本格的に始まってないし、まとめにも乗ってないみたいだから、そんな大事にせずに済みそう
122 :
一尉:2008/10/14(火) 11:05:10 ID:mxv+8ysZ
四次間ならよい。
>>121 やっぱ、人の二次創作作品を勝手に弄るのは良くないよね。
そもそも東映特撮は著作権に凄くうるさいし、同人をあんまり認めてない。
ハイブリッド・インセクターはWeb掲載の漫画作品だけど、あくまで非公式だし、
勝手に三次創作して迷惑掛かってからじゃ遅いし。
面白そうなだけに非常に残念だが……!
最悪でも作者様に確認をとらないとダメか!?
>>124 それは不可能だし、一番やってはいけないこと。
作者だって東映特撮に許可取って書いてるわけじゃないんだし、
「あなたの二次創作作品をクロスSSで書きたいんですが」なんてバカなこと訊いても向こうに応えられるわけがない。
職人は三次創作と著作権における認識が薄いから、何の問題もないと思って投下したんだろうけど、東映→ハイブリ
ッド作者(二次)→職人で三次創作となることを気付いた方がよかった。
何か批判的な文章になっちゃったけど、これの投下については考え直してもらいたい。
本来なら運営議論スレに誘導するのが筋なのだけれど、作者サイトに突撃とかあるといけないので取り急ぎ
>>124 下の下の下
面白いつまらないじゃなく、火に油を注ぐような行為
絶対にしたらいけない
理由は
>>125にあるとおり
仮に一時版権に許可を得るにしても、そういうのは自分の庭でやるべきことで、共有の場でやれば他の人にも迷惑がかかる
この作品認めるのって、今までの盗作やそれを拝呈してた連中を認めるのと同じじゃね?
>>128 場合によってはそれよりタチ悪い。
自分で勝手に自爆するだけに納まらず、大きく巻き込んでしまう可能性がある。
そのその論点が問題外になりそうだし。
でも三次創作を認めないってことは二次創作も認めないってことになるよな。
>>128 言いすぎだって。
この件では運営議論スレでお願いします。
>>130 二次だろうと一次だろうと、著作権は生じるんだけどね。
ただし著作権違反とかは親告罪なんで、著作者が駄目と明言しているとか、警告して来ない限りは極端なことをいえば問題にはならない。
極論を言えば二次の著作者が違反だといってこない限りは三次も問題にはならないはずなんだけど、商業と同人とでは距離感みたいなものが違うというか…
webでの三次創作は二次創作物の著者の了解を得ている場合が多い。
無許可の三次なんてな前例のあまり例がないことには関わりたくないというのもあるし、下手に議論しだすとまとまらないので場が荒れるのは目に見えている。
だから、三次創作は倫理として正しいかどうかは別にして、とにかく触らぬ神に祟りなしで、やらないにこしたこたあないんだよ。
以下は運営議論スレでね。本当に。
どうでもいいが大首領が大統領に見えてパワードスーツを着て大暴れする某大統領がでてくるのかと
最初思ってしまった……
>>122 キチガイが必死の電波レス乙
この池沼、見下げ果てた池沼やろう
四次間って何?
こんな日本語ねえぞ、オラ、チョンだと自己証明乙
死ねや、生きてていいなんて大それたこと考えてるんじゃねえだろうな、てめえ
2ちゃんの癌はさっさと死ね、てめぇなんて生きてるだけ迷惑なんだよ
>>122 FUCK!!
階級が軍の真ん中辺りの分際で、こんな時にもしゃしゃり出てくんじゃねーよカスが。
一昨日来やがれ(`o´)
とりあえずそいつは無視って言うのが暗黙の了解なんだから暴言撒き散らす
>>134と
>>135は少しROMれ
ていうかね。
>>134-135のは、ほぼ間違いなく便乗荒らし。
思うに多分コンビ芸系かな。
そいつらのこともさっさとNGにしといたほうが、
精神衛生上大変に宜しいことと思われ。
荒らしにも色々あるんだよねぇ……。
いや、普通に同一人物だろ
嵐め、万策尽きて自演を図ったか
スマン…反応した俺が幼稚だった
>>122以外の皆様へ
場を乱してしまって申し訳ありませんでした…m(_ _)m
奴をスルーする事は知ってましたが流石にこの重大(になるかもしれない)な話題の時にKYな基地外発言をしてたんでつい…ι
ちなみに話に出ていますが
>>134の人とはガチで無関係です。
本日20時40分頃より、リリカルセイバーズ第3話投下したいと思います。
144 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 20:24:21 ID:yZRsmJGJ
143
待っていました。
楽しみにしています。
では自分はその次、21:50から投下させていただきます。
一か月もかかってしまって申し訳ありませんorz
お久しぶりです
1ヶ月ぶりとなりますが、リリカル武者○伝氏の次、22:20からR-TYPE Λ 第十九話を投下させて戴いても宜しいでしょうか
今回はほんのりホラー風味です
地上本部でクリサリモンとの戦闘が行われていた時と同時刻。機動六課所有の輸送ヘリは山岳地帯を走る貨物輸送列車を追うように飛行していた。
六課が追っているロストロギア、レリック。そのレリックらしき物が列車内部で発見されたのだ。
六課隊長、八神はやてはスターズ、ライトニング両小隊の出撃を命じ機動六課初の出撃となった。
『ガジェット反応、数多数。そちらに接近中です!』
案の定、レリックを追う謎の機械兵器ガジェットも出現しスターズ小隊隊長、高町なのはとライトニング隊長、フェイト・T・ハラオウンが迎撃に出撃。
これが初の実戦となる機動六課フォワード4名はヘリから直接貨物輸送列車へと飛び移り、内部に侵入していたガジェットとの交戦を開始。
空の隊長二名は順調にガジェットを撃墜していき、手が空き次第フォワードメンバーの応援に回ろうと考えていた矢先に――
『何これ……アンノウン出現! なのは隊長、フェイト隊長、気を付けてください!』
――その黒竜の群れは突然現れた。
全長は4メートル以上はあろう黒き体からボロボロの黒い翼を二枚生やした竜、は血のように赤い四つの目を、なのはとフェイトへ向ける。
五匹ほどの黒竜に囲まれた二人は背中合わせになり、いつでも動けるよう神経を黒竜に向けながら言葉を交わす。
「何なの……この竜達?」
「わからないけど……とりあえず、敵と考えていいんじゃないかな?」
両腕の鋭く尖った赤い爪を二人に向ける黒竜の群はどう見ても友好的ではない。
低い唸り声をあげ、今にも襲いかかりそうな雰囲気を漂わせる。
「ガジェットじゃない……召喚獣?」
「でも、これだけの数の竜を一度に召喚できる魔導士なんて……」
「ガジェット? 召喚獣? そんなのと一緒にして欲しくないわねぇ」
「「っ!?」」
投下ラッシュキターーーーー!!(・∀・)/
全裸待機モードに入る!!wktk
>>146 前の人の投下終了から30分以上後がルールだからもう少し空けたほうがいいのでは?
不意に上空から投げかけられた声に反応し、二人は顔をあげる。
そこには黒いレザー系スーツを纏う灰色の肌をした異形の女性がいた。
顔半分を黒マスクで覆い素顔は見えないが、そこから除く赤い眼と左腕の異様に長く鋭い赤い爪が人外の存在である事を示している。
「それにしても、この世界の人間はホントに空が飛べるのねぇ……話半分だったんだけど」
「この世界の……? お前は一体?」
「答える必要は無いね……デビドラモン!」
黒い女性が指を鳴らし、デビドラモンと呼ばれた黒竜の群がなのはとフェイトへ襲いかかる。
「くっ! なのは!」
「分かってる!」
デビドラモンの爪が振り下ろされ、なのはとフェイトは弾かれるようにその場を離れる。
群の囲みを脱したなのはは外側から得意の砲撃を撃たんと自らの周囲に小型の魔力弾を十数発展開、狙いを定め一斉に放つ。
「アクセルシューター!」
自身の最も得意とする砲撃魔法の一つ、アクセルシューターがデビドラモンの群れへと襲いかかる。
一つ一つが意志を持つかのように自在な軌道を描く魔力弾がデビドラモンの巨体を捉え、その黒い皮膚へ直撃、爆発。
直撃を受けたデビドラモン達が痛みに悲鳴をあげるがすぐに体勢を立て直し、なのはの体を爪で引き裂こうと腕を伸ばす。
「遅い!」
デビドラモンの動きよりも速く、フェイトが高空よりプラズマランサーを発射。
なのはへと襲いかかろうとした三体のデビドラモンに容赦なく魔力砲撃の雨が降り注ぐ。
そのまま三体のデビドラモンは地上へと墜落していく。
「私もいるって事、忘れてないよねぇ!?」
「っ!」
横合いから仕掛けてきた黒い女性の打撃をレイジングハートで受け止めるなのは。
だが、力は女性の方が上なのか、そのまま押し切られる形でなのはは吹き飛ばされる。
《こちらゴーストアイ、各職人に支援開始!》
「うぁっ!」
「なのは! くぅっ!」
フェイトが救援に向かおうとするよりも速く、デビドラモンが襲いかかる。
尾先についた爪を巧みに操って隙をつくり、両腕の爪でフェイトを引き裂かんと二体のデビドラモンがフェイトの前に立ちはだかる。
「フェイトちゃん!」
「お仲間の心配なんてする暇はないよ!」
黒い女性はなのはへ左腕の爪を振り下ろし、なのははその一撃を避け距離を取る。
接近戦では勝ち目が無い。なのははある程度の距離を取り自らの得意魔法の一つ、攻撃における主砲を放つ。
「ディバインバスター!」
対して黒い女性は両腕を振り上げ、自らの必殺たる攻撃を放つ。
「ダークネスウェーブッ!」
蝙蝠の群れを模した熱線と桃色の閃光が正面から激突し、爆発を引き起こす。
機動六課初の任務は、未知なる敵との戦闘という最悪のイレギュラーとなった。
レリック争奪戦 六課VS暗黒デジモン
「状況は!? どないなってんの!?」
六課司令室。
所用で出かけていたはやては入室するなり声を張り上げ、副官のグリフィスへと報告を求める。
「はい。空のガジェットを高町、ハラオウン両隊長が撃破した直後にアンノウンが出現……現在交戦中です」
「フォワード四名が突入した輸送列車にもアンノウン出現。フォワード四名交戦に入った模様です」
「索敵は何やっとったんや! 接近する時点で普通気付くやろ!」
「それが……急に出現したんです。転送魔法使用の反応もありませんでしたし……」
「何やて……?」
オペレーターのシャリオ・フィニーノの報告にはやては疑問の声をあげる。
転送魔法を使わずに突然現れたと言うアンノウン。モニターに映しだされるヘリからの映像を見る限り、生物のようだが、あんな生物は見たことも聞いたこともない。
なのはとフェイトは何とか戦えているが、初の実戦となるフォワードメンバーがどうなっているのか……。
オペレーターのシャリオ・フィニーノの報告にはやては疑問の声をあげる。
転送魔法を使わずに突然現れたと言うアンノウン。モニターに映しだされるヘリからの映像を見る限り、生物のようだが、あんな生物は見たことも聞いたこともない。
なのはとフェイトは何とか戦えているが、初の実戦となるフォワードメンバーがどうなっているのか……。
「最悪やな……」
実戦ともなればどんなイレギュラーが起きても可笑しくはないと理解しているが、その中でも最悪。
よりにもよって初陣で未知の敵との戦闘。隊長二名はともかくとしてもフォワードメンバーが上手く立ち回れるとは思えない。
はやて自身もフォワードメンバーの実力を信じているが、まだまだヒヨッ子の彼女達に手加減する敵などいるはずもないのだから。
輸送列車、貨物車両内部。
スバル・ナカジマとティアナ・ランスターの両名は目の前に出現した異形と対峙していた。
赤い骨だけの体と黒い頭蓋骨。背中に生える黒い翼と宝石のついた骨の杖を担ぐ姿は悪魔と言う表現が適切だろう。
その異形、スカルサタモンは頭蓋骨の奥に覗く目を細め、スバルとティアナを見やっていた。
(何なのよ……コイツ)
(ガジェット……じゃないよね?)
(でしょうね。明らかに機械じゃなくて、骨の化け物だし)
素人でも分かる程に殺気を放っているスカルサタモンへと身構え、二人は念話を行う。
目標のロストロギア、レリックの収められたケースはティアナの丁度真後ろにある。
目的は分からないがもしも戦闘となった場合、レリックだけは何としてでも守り抜かねばならない。
「レリックってぇのは……その中かぁ?」
「えっ……?」
怠そうに左手の人差し指でティアナの真後ろにあるケースを指さすスカルサタモン。
骨だけの不気味な外見からは感じさせないが、人語を介せるだけの知能を持つ事に二人は驚きながらも対応する。
「さぁ……? それがどうしたの?」
レリック狙いの怪物だと言うのなら厄介な事になるかもしれない。
見かけに反して心優しい正義の使者ならばまだマシだろうが、とてもそうは思えない。
「ソイツを貰おうと思って……なぁっ!」
怠そうな動きから一変し、スカルサタモンは杖を構え床を蹴る。
咄嗟にスバルが走り、右腕のリボルバーナックルへと魔力を込める。
「だぁっ!」
「どぉらっ!」
振り下ろされた杖と突き出されたリボルバーナックルが激突する。
重い激突音の後、体格差に押されたスバルがティアナの側へと転がるように飛ばされ、スカルサタモンも激突の衝撃で尻餅をつく。
「スバル!?」
「大丈夫、平気! それよりも……アイツ、結構強いかも」
「人間が俺の一撃を受け止めた挙げ句に尻餅をつかせるだとぉ? やるじゃねぇかよぉ」
杖を支えにして起きあがり、スカルサタモンはスバルを睨み付ける。
まさか人間相手に尻餅をつく羽目になるとは……面白いじゃないかと、スカルサタモンは笑みを浮かべる。
正直な所、相手が人間というのは物足りず不満だったがこれは嬉しい誤算だ。
「レリック貰う前にテメェ等二人潰すのに決めた! ヒャハハハハハッ!」
高笑いをあげ、スカルサタモンは杖の先端を二人へ向ける。
己の中の闘争本能に従い、床を蹴ってスカルサタモンは二人の少女へと襲いかかる。
振り下ろされた杖を避けるスバルとティアナ。一撃で床を陥没させた杖の威力に背筋を冷やしながらもティアナはレリック入りのケースを確保。
スバルはリボルバーナックルのカードリッジを一発消費、その拳から放たれる射撃魔法をスカルサタモンの顔面へ叩き込む。
「リボルバーシュート!」
「ぐおっ!?」
顔面で爆発する魔力弾。
スカルサタモンが悲鳴をあげ、怯んだ隙を逃さずスバルは追い打ちを仕掛ける。
リボルバーナックルのタービンを回転させ、魔力で威力を底上げした拳を打ち込み両足のマッハキャリバーのローラーで骨しかないスカルサタモンの腰を蹴り飛ばす。
「スバル!」
「うん!」
ティアナがクロスミラージュによる銃撃でスカルサタモンへ更なる追い打ちを仕掛け、スバルはその隙にティアナの元へと走る。
スバルが自分の横を抜けて貨物車両を出たのを確認し、ティアナも貨物車両を後にする。
あんな化け物と戦うには貨物車両は狭すぎる……レリックの確保を優先した上での行動だった。
「ティア、これからどうするの!?」
「とりあえず、別行動中のチビ達と合流! 私達だけじゃ結構厳しいかもしれないし……」
訓練で何度も戦ってきたガジェット相手ならばともかく、あんな見た事も聞いた事もない化け物相手に二人だけで戦いを挑むのは無謀。
交戦自体出来れば避けたい所だがこの列車に乗っている間、ずっと隠れて逃げおおせられる相手とも思えない。
この列車の最後尾から突入した同僚、エリオ、キャロと合流すればまだ戦いようはあるかもしれないが。
「テメェ等ぁっ! あんな温い攻撃で俺を倒せると思ってんのかぁ!?」
>>154 ちゃんと読んだら?
21:50って書いてあるでしょ?
背後からスカルサタモンの怒声と足音が聞こえてくる……さっきの攻撃で怒らせてしまったのか、かなりご立腹のようだ。
ティアナは思っていたよりも早くスカルサタモンが追ってきた事に焦りを覚えながらも、次なる手を思考する。
体格差が軽く倍はあるとはいえ、力自慢のスバルが押された相手だ。自分達二人だけで、オマケにレリックを抱えた状態で戦える相手ではない。
背後から迫ってくる足音がどんどん近づいてくる。エリオとキャロに合流する前に追いつかれるかもしれない。
ティアナは隣を走るスバルに目をやる。本来ならもっと出せるはずのスピードを落として自分の隣に付いているのはいかにも彼女らしいが、このままでは追いつかれる。
「スバル、これ持って先に行きなさい」
「ティア?」
ティアナは抱えていたレリック入りのケースをスバルに押しつける形で手渡す。
「私はアイツを足止めするから、アンタはレリック持ってエリオとキャロに合流しなさい」
「えっ……ちょっと待ってよ! ティア一人でアイツの相手なんて!」
「私ならアイツの杖の間合いに入らずに戦えるし、第一、このままじゃ二人とも追いつかれるわ」
「でも! ティアが残るんなら私も……っ!」
「それで二人ともやられて、レリック持ってかれたら洒落になんないの。分かる? 大丈夫、アンタがさっさとチビ達つれてくればいいんだから」
ティアナの諭すような口調にスバルは押し黙る。
足止めに徹するなら遠距離攻撃タイプで、幻術も使えるティアナが自分よりは確かに適しているかもしれない。
だが、万が一にでもティアナがやられたらと思うと不安でたまらない。
「私がそう簡単に倒されるとでも思ってるわけ?」
「そうじゃないけど……」
「だったら少しは信用しなさいっての」
軽く笑みを浮かべて言う親友の顔は自信に満ちている。
足止めに徹するなら自分一人で十分だと、そして、スバルがエリオとキャロを連れてすぐに戻ってくると信じているが故の表情。
それを見てスバルもようやく意を決し、レリックのケースを抱きかかえる。
「……分かった。先に行って、エリオとキャロを連れて戻ってくる!」
「頼むわよ。足止め出来る自信はあるけど、あまり長く持たせられないと思うから」
「OK! 無茶しちゃ駄目だよ!」
「アンタに言われたくないわよ!」
ティアナに合わせていた速度をあげ、スバルは一気に加速し車両の奥へと消えていく。
それを見届け、ティアナは背後を振り向きクロスミラージュの銃口を向ける。
一つ向こうの車両から聞こえてくるスカルサタモンの足音。あと一分もしない内に自分の視界へとあの骨の悪魔が姿を現すだろう。
周囲に魔力弾を展開し、クロスミラージュの銃口にも魔力をチャージ。この場から動かずの連続射撃で動きを止める。
『敵、距離15メートル前方まで接近しました』
クロスミラージュの索敵がスカルサタモンの位置を伝える。
スバルにあれだけの大見得を切ったのだ。足止めをやりきって見せねば格好が付かない。
足音が次第に大きくなり、車両同士を繋ぐ出入り口からスカルサタモンが姿を現す。
その瞬間、ティアナはクロスミラージュの引き金を引き魔力弾を一斉に放つ。
「クロスファイアシュート!」
「またかよ!?」
ウンザリしたような声をあげたスカルサタモンの体へ、魔力弾が直撃する。
生成した魔力弾を撃ち尽くすと同時にカードリッジを入れ替え、後退しつつクロスミラージュの引き金を引き続ける。
ただでさえ魔力保有量がそれ程多くない自分の弾切れが早いか、スバルが応援を連れて戻ってくるのが早いか……いや、スバルが戻ってくるまで持たせなければならない。
クロスミラージュのカートリッジを交換し、ティアナはたった一人の持久戦を開始した。
機動六課フォワード4名の残り二人、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエの二名は輸送列車の屋根の上にいた。
ヘリから降下し、屋根の上に展開していた数体のガジェットを連携で撃破。今から列車内へ突入しようかという所で二人は異変に気付く。
空の上で隊長達が戦っている竜の群れと黒ずくめ女性。ガジェットとは明らかに違う怪物と異形の存在。
「あれは……キャロ!」
「分からない……あんな竜、見た事も無いし」
フェイトと空中戦を繰り広げる黒竜……デビドラモンは、竜召喚士であり、それなりに知識はあるキャロも知らぬ存在。
ミッドは勿論、キャロの出身世界である第六管理世界にすら存在しない生物故にそれは当然の事だろう。
ただ、デビドラモンの凶暴さは見ただけで感じ取れる。闘争本能と主に従うだけの凶悪な生物だと。
流石にフェイトも一人で二体相手は厳しいのか、押されてはいないが思うように攻められない様子を見せている。
なのはも対峙している女性に思いの外苦戦しているように見える。
「フェイトさん達を助けないと!」
「でも、僕達空飛べないし……」
保有戦力制限というルールに従いリミッターをかけて力を落としているとはいえ、隊長二人が苦戦を強いられている。
それは二人にとって衝撃的な光景であり、焦りを生み出させるに十分な効果を与えていた。
今すぐにでも助けに行きたいが、エリオの言うように空を飛ぶ術がない自分達に一体何が出来よう。
(……助けには、行けるかもしれない。でも……)
空を飛ぶ術……キャロには一応、それがあった。
自らが使役する子竜、フリードリヒ本来の力を解き放てば空へと舞い上がる事は可能。
しかし、キャロの中にそれを使うという選択肢は存在しない。
(竜召喚は危険な力……誰かを傷つけるだけの)
幼くして類い希なる竜召喚の力を持っていたが故に故郷を追放された。
それ以来、力を使おうにも制御できずに暴走するばかりでまともに使えた試しが無い事も手伝ってか、キャロはその力を使わない。
否、使えない。例え使っても誰かを傷つけてしまうだけだ……誰かを助けるなど出来る筈もない。
「キュクル?」
主の不安げな表情を心配してか、フリードがキャロの顔を覗き込む。
「フリード……大丈夫。何でも、無いから……」
浮かない顔でそういう主に、フリードは困ったような表情を浮かべる。
大丈夫と暗い表情で言われても納得する出来るはずも無いのは当然。
エリオもキャロに何か声を掛けようとするが……それよりも早く足下、車両の屋根が内側から何かに吹き飛ばされる。
「うわっ……キャロッ!」
「きゃあっ!?」
咄嗟にエリオは落下寸前のキャロを押しのけ、彼女が車両へと落下するのを防ぎ自分は落下。
「痛ぁ……っ!」
車両の床に背中から叩きつけられる形となったエリオは痛みに顔を歪めながらも、槍型デバイス、ストラーダを支えに立ち上がる。
屋根を吹き飛ばし、自分とキャロを襲った犯人であろう大型のガジェットが車両中央、無機質なカメラアイを自分に向けて鎮座している。
球状のボディ上部からはベルトアーム、下部からはコードを触手のように伸ばしたそれは訓練や記録映像で見た物のどれとも違う。
「新型……っ!?」
ガジェットがベルトアームを伸ばし、エリオに襲いかかる。
エリオは後方へ飛び退きながら術式を展開。ストラーダを振りあげ、魔力で圧縮した空気刃を飛ばす。
「ルフトメッサー!」
エリオが放ったそれはガジェットの展開した魔力の結合・効果発生を無効にするフィールド、AMFにより直撃する事なく消滅。
訓練で何度も経験したが、魔力結合・魔力効果発生を無効にするこれは魔導士にとって最も厄介な物の一つ。
このガジェットは大型なだけにAMFの効果範囲も広いのか、すぐ近くにいるエリオどころか距離が離れたキャロの魔法使用まで妨害される。
オマケにかなりの高濃度。高ランクの魔導士ならフィールド内でも対処は出来るそうだが、それは自分達には無理な話だ。
「こんな遠くまでAMFが……」
「これじゃ、フェイトさん達を助けに行く所じゃない……クソっ!」
憎たらしいAMFとガジェットに悪態を付き、エリオはストラーダの切っ先を向ける。
ガジェットを相手にする時点で魔法使用不可状況での戦闘になる事は覚悟していたのだ。
この程度の状況を切り抜けられなければ、この先六課の仲間と共に戦っていくなど無理……まして、騎士を名乗るなど夢のまた夢。
ストラーダの切っ先をガジェットへと向ける。魔法が使えないのなら己の身体能力で勝負、ただそれだけだ。
「いくぞぉぉぉっ!」
僅かに残る不安を自らの叫びと共に吐き出し、エリオはガジェット目掛け突撃した。
「ダークネスウェーブッ!」
「うぁ……っ!」
女性の放つ熱線を防御フィールドで受け止めるがすぐに突き破られ、なのはは短い悲鳴をあげながら衝撃で吹き飛ばされる。
咄嗟に回避運動を取り直撃は免れたが、バリアジャケットのスカートが僅かに焼かれ、白い布が黒い墨となって千切れ飛ぶ。
それなりに自信があった防御をあっさりと破られた事に軽くショックを覚えながら、なのははすぐに次の手を打つ。
「ディバインシューター!」
複数の魔力弾を放ち、一つ一つが全く違う軌道を描きながら女性へと襲いかかる。
女性はそれを鼻で笑い、左腕を槍状へと変化させ接近してきた魔力弾から片っ端から叩き落とす。
その隙をつき、なのはは最小チャージでバスターを放つが、直撃は叶わずギリギリの所で回避される。
(パワーじゃあっちが上……こっちは手数で攻めるしかない!)
なのはは絶えず動き回り、最小チャージのバスターを放つ事で女性の動きをある程度封じていく。
正面切っての力勝負では圧倒的に不利。ディバインバスターですら女性の放つ熱線と相殺がやっとだ。
そのディバインバスターも、最強の切り札であるスターライトブレイカーもチャージする暇を女性は与えてくれない。
故に威力は心許ないがチャージに時間のかからない砲撃を連射し、手数で勝負する手段を選ぶ。
「チッ……鬱陶しい小娘だねぇ」
女性、レディーデビモンと呼ばれるデジモンはなのはの砲撃を回避し、叩き落としながら舌打ちする。
パワーで負けていると悟ったからか、弱い攻撃を連射するという姑息な方法を採り始めた。
この程度の攻撃なら蚊ほどにも感じないが避け続け、防ぎ続けると言うのもいささか面倒くさい物だ。
何よりも、人間相手にこれほど時間を掛ける事はプライドが許さない……そろそろ実力差を思い知らせてやろう。
「たかが人間が、調子に乗るんじゃないよ!」
直撃コースだった砲撃を防ぎ、レディーデビモンは一気になのはとの距離を詰める。
なのははすぐに移動を開始するが僅かにレディーデビモンが速く、槍と化した左腕を突き出す。
「ダークネススピアーッ!」
「っ!?」
レディーデビモンの黒い槍が、なのはの左肩を捉えた。
容赦のない強烈な突きが白いバリアジャケットを突き破り、赤い血の色に染めていく。
「あ……っ?」
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
なのはは呆然と貫かれた左肩を見やり、赤く染まったバリアジャケットとレディーデビモンの槍を視界に認め、状況を理解。
彼女の脳がそれを認めた瞬間、左肩が熱くなり堪え切れぬ激痛が神経を伝って全身に襲いかかる。
「あっ……うあああああああっ!」
張り裂けんばかりの悲鳴が、山岳地帯へと響き渡った。
「なのは!?」
響き渡った悲鳴に、デビドラモンと交戦中だったフェイトは動きを止め、悲鳴が聞こえてきた方向へと顔を向ける。
自分のほぼ真下……距離にして十数メートル程の位置に、左肩を貫かれたなのはの姿があった。
完全に肩を貫通したレディーデビモンの槍と白いジャケットが赤く血で染まり、なのはの表情は普段滅多に見せない苦悶のそれへと変わっている。
その光景の意味を理解した瞬間、フェイト・T・ハラオウンの中の何かが音を立てて切れた。
「「グオオオオッッ!」」
動きを止めたフェイトへ2体のデビドラモンが襲いかかる。
戦いの最中に動かなくなった敵など的意外の何者でもなく、凶暴な性質のデビドラモンは容赦なく必殺の一撃たる爪をフェイトに向け振り下ろす。
真紅の爪がフェイトの頭部を捉え、切り裂くように叩き潰さんとする直前……デビドラモン達は爪の動きを止めた。否……止めざるを得なかった。
デジモンとしての、生物としての本能が目の前の女性への攻撃は危険だと訴えたのだ。しかし、その事を知るには若干遅すぎた。
「……邪魔だ」
冷徹な声で静かに呟くと、フェイトはバルディッシュを軽く振るってからレディーデビモン目掛け降下する。
動きを止めた2体のデビドラモンはそれを追おうとはせず、その場で動きを止めたまま……頭部から尻尾の先まで綺麗に両断される。
体を構成するデータが消滅し、黒いタマゴの形となって重力に従い落下していくそれを気にも止めず、フェイトはバルディッシュをレディーデビモンへと振り下ろした。
「はああああああっ!」
「なっ!?」
レディーデビモンがフェイトの接近に気付いた時には遅すぎた。
非殺傷設定を解除したバルディッシュの刃がその首目掛け振り下ろされ、一瞬の間の後……レディーデビモンの首と胴体が離れ、消滅。
粒子状となったレディーデビモンの体は黒いタマゴとなり、そのまま地上へと落下していく。
「っ……ぁ」
「なのは!?」
解放され、落下しそうになるなのはをフェイトが抱き止める。
貫かれた左肩からは血が流れ、白のバリアジャケットは赤く染まり、フェイトの黒いジャケットにも血が付着。
フェイトの腕の中で荒く息を吐きながら、なのはは右手で左肩の傷口を押さえ治癒魔法での応急処置を開始する。
支援
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
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前の作品投下終了から30分以上が目安です。
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「なのは、大丈夫?」
「うん……なんとか……私は平気だから、フェイトちゃんはスバル達の方をお願い。多分、あっちにもアンノウンがいると思うから」
「……解った。ヴァイスには連絡しておいたから無理せず後方に下がって」
それだけ告げ、フェイトは線路を走る貨物列車へと向かう。
一人残ったなのはは魔法による治癒を行いながら、貨物列車にいる筈の新人達へ念話通信を送る。
『皆……誰か聞こえる?』
『なのはさん、スバルです!』
『スバル、そっちの状況は?』
『なんか変な骸骨がレリック狙って現れて……今、ティアが足止めしてます』
やはりと言うべきか、列車内にもアンノウンが出現していた。
しかし、そちらよりもなのははスバルの言った事に衝撃を覚える。
『ティアナが足止めって……一人で?』
『えっ……はい。私はレリック持ってエリオ達と合流しろって……』
『なんて無茶を……っ! スバル、エリオ達の方はいいからティアナの所まで急いで戻って、私も行くから!』
念話と魔法による左肩の治療を中断し、なのはもすぐに貨物列車へと向かう。
レディーデビモンと同等、またはそれ以上の敵が列車内にいる可能性だってある……そんな敵をティアナ一人で足止めなど不可能だ。
左肩の傷は完全に塞がっておらず、動かすたびに痛みが走るが、無茶をしている教え子を助けなければいけないこの状況でいちいち気にしている暇など無い。
こんな事態になるのなら新人達は待機させ、自分とフェイトだけで出撃するべきだったと後悔すら覚える。
(無茶して潰れたら意味無いのに……っ!)
ティアナに若干苛立ちを覚えながら、なのはは先頭車両の屋根に空いていた穴へと飛び込んだ。
エリオが床を蹴るのと同時に、ガジェットがベルトアームを伸ばす。
不安げな表情を浮かべるキャロが見守る中、エリオは槍へ魔力の代わりに己の闘志を込めガジェットへと振り下ろした。
槍とベルトアームがぶつかり合う甲高い金属音が車両内に響く。体格差を利用し、ガジェットの懐へ潜り込もうとするエリオと、アーム、触手を巧みに用いてそれを妨害するガジェット。
エリオは自慢の足の速さで攪乱しようとするが場所が狭く活かしきれない上に、ガジェットのベルトアームが自意識を持つかのような動きでこちらに付いてくる。
正面から迫るアームの一撃をストラーダで受け流し、お返しとばかりにアームに一撃を加え、その反動を利用しガジェットの背後まで飛び着地。
(全然効いてない……)
すぐに顔をあげ、自分が撃ち込んだアームを確認するが傷一つ付いていない。
やはり魔力による攻撃力補助無しでは厳しい。男とはいえ、成長過程の最中である10歳の少年の腕力には丈夫なアームを傷つけるだけの力がない。
ならばと、エリオは狙いをアームと本体を繋げる接続部分に狙いを定め、ストラーダを構え直し突撃。
渾身の力を込めた槍の一突きは、それよりも早く動いた触手にストラーダを絡め取られ、不発に終わる。
「なっ!?」
驚愕し、エリオの動きは一瞬だけ止まる。それは致命的な隙だった。
豪速で繰り出されたベルトアームによる打撃がエリオの腹にめり込み、その小さな体を車両の壁に叩き付ける。
「うぁ! ぐ……ぅぁ……」
これで攻撃が終わるはずも無く、ガジェットはプログラムされた行動の通り、エリオの排除へかかる。
先の攻撃で気を失ったのか、エリオは壁に倒れ込んだままピクリとも動かない。
ガジェットはアームで器用にエリオの体を掴み上げ、無造作に屋根の穴へ……車外へと放り投げた。
「エリオ君!?」
放り投げられ、崖下へと落下するエリオ。
キャロはその光景を、目の前で今まさに死を迎えようとする少年の姿を恐怖の表情で見るしか出来ない。
今ならまだ力を使えば彼を助けられるかもしれない。しかし、この強力なAMFの中では魔法は使えない上……力を使う事への恐怖が幼い少女の心を支配する。
使えない、使っても助けられない、使っても……逆に彼を死なせるだけかもしれない。
「……あ……あぁ……っ」
屋根の上でガクガクと震える少女を、ガジェットは冷たいカメラアイで見上げベルトアームを伸ばす。
次は屋根の上の邪魔者を消す。命令を実行する為だけに働く思考が下した判断に従い動く。
巧みにアームを用いて屋根の上に姿を現したガジェットを見上げ、キャロは完全に腰を抜かし、その場に座り込む。
「キュクルゥッ!」
恐怖に支配され、動けない主を守ろうとフリードはガジェットへ向け炎を放つ。
しかし、ガジェットの動きを止めるには至らず逆にそのアームによって捕らえられる。
「フリード!? ……ひっ!?」
フリードの心配をする間もなく、ガジェットがキャロへとカメラアイを向ける。
もう片方のベルトアームで車両から叩き落とそうと狙いを定め、アームを振り上げた所で……二本のアームは切り裂かれた。
何事かとガジェットが反応するよりも早く、その球状のボディを魔力刃が背後から貫き、機能を停止させる。
そのまま横薙ぎに振るわれた刃によって破壊され、爆散したガジェットの向こう側にバルディッシュを構えたフェイトの姿があった。
「フェイト……さん?」
「キャロ、大丈夫?」
左腕に気絶したエリオを抱きかかえたフェイトは心配そうな、申し訳なさそうな表情を浮かべている。
アームから解放されたフリードもキャロの傍らへと降り立ち主の顔を覗き込む。
最も心を許せる人が助けに来てくれた……その安心感と恐怖からの解放感から、キャロはその場で気を失った。
「うぁっ! ……ぁ……ぁ」
壁に叩き付けられ、ティアナの口から苦悶の声が漏れる。
足止めに徹すれば一人だけで十分、距離を取って戦えばどうと言う事はない……それは自惚れだった。
膝をつき、そのまま俯せに倒れたティアナの頭をスカルサタモンの足が踏みつける。
「ぐぁ!」
「オイオイ、もうお眠りか? つまんねぇなぁ」
「あっ……があぁっ!」
このまま頭を踏み砕こうとでも言うのか、スカルサタモンは体重を足に掛けてくる。
目を見開き、苦痛に悲鳴をあげるティアナをつまらなそうに見やり、わざとらしいため息を吐く。
たった一人で自分を相手にしようとした事からそれなりの手練れだと思ったが、そうでも無かった。
「ったくテメェのせいで時間の無駄だ。さっさとレリック持って逃げてったお仲間呼び戻しやがれ」
「あっ……ぐぁ……お……断りよ……あがぁっ!?」
「自分の立場っての解ってねぇのか? 雑魚の分際でよぉ?」
体重を更に掛け、強く頭を踏みつける。
敵に足蹴にされ、手も足も出せず一方的に嬲られる屈辱。
雑魚と嘲笑われる屈辱は、ティアナのプライドに大きく亀裂を走らせる。
「さっさとお仲間呼んで惨めに助けてもらうのが三下にはお似合いなん……ぐへぇっ!?」
スカルサタモンの愚別の言葉は、その顔面に叩き付けられた拳により遮られた。
拳の主、スバルは感情の赴くままにリボルバーナックルへ魔力を込める。
「ティアから……どけぇ!」
力と怒り任せに殴り抜いた拳が、スカルサタモンの体を宙に浮かせ壁に叩き付ける。
壁に叩き付けられ、スカルサタモンが悲鳴をあげるよりも早く、スバルは追撃を仕掛け、拳を叩き込む。
「おりゃあぁっ!」
「ぐぎゃはぁっ!?」
壁をぶち抜き、車外へと放り出されたスカルサタモンはそのまま崖下へと落下する。
スバルはそれを確認し、すぐさま床に倒れたままのティアナへと駆け寄り、抱き起こす。
「ティア!」
「スバル……アンタ、一人……?」
「うん。ティア一人じゃやっぱり心配だったし、それになのはさんも……」
「スバル! ティアナ!」
スバルが名前を出すのと同じタイミングで、なのはが姿を現す。
二人の姿を確認し、案の定ボロボロになっているティアナを見てなのはの表情が僅かに強張る。
無茶をしたティアナへの怒りと不甲斐ない自分への怒り、そして情けなさでどうにかなりそうだった。
「ティアナ、全く無茶して……初陣だからってちょっと浮かれてたんじゃない?」
「えっ……その……」
「スバルも、ティアナを一人にしたのは問題だよ。下手したら死んじゃってたかもしれないんだから」
「あっ……すいません、でした」
あまり見せる事の無いなのはの厳しい表情と口調に、二人は思わず顔を俯かせる。
なのははため息をつき、自分を落ち着かせてから小さく笑みを浮かべ、二人の教え子を軽く抱き寄せた。
二人が無事だった事で気がゆるみ、左肩の激痛がぶり返して意識が少し遠のく。
「でも、無事で良かった……ちょっと、安心した……かな……」
「なのはさん……?」
そうして、なのははスバルとティアナに体を預けたまま意識を手放した。
『ドクター、貨物車両のレリック……管理局の手に渡ったようです』
「そうか……まぁ、仕方ないね」
モニターに映る秘書たる女性、ウーノの言葉を聞きながらドクターと呼ばれた男は手元のパネルを操作する。
男、ジェイル・スカリエッティは正面の大型モニターに話題にあがった貨物列車の様子を映しだす。
管理局のヘリが数台到着しており、中には救護班のヘリすら見える。
「おや……負傷者でも出たのか?」
『高町なのはが重傷と聞いています。どうやら、デジモンが出たようで……』
「デジモンが……? 全く、彼には困った物だね」
表情をあまり変える事がないスカリエッティだが、流石に不機嫌そうな声と表情を浮かべる。
協力者である彼が存在を教え、何体か協力者という立場で手元にいるデジモンだが……ここまで勝手をされるのは問題だ。
本来、貨物列車のレリック強奪はガジェットのみで行う筈だったのを突然乱入してきた挙げ句に大事な研究対象の一人を傷つけられてしまった。
「少しばかり自重するように言ってくれないか? 聞けば地上本部にも出たそうじゃないか」
顔を向ける事なく、背後にいた彼へと声をかける。
声を掛けられた男は苦笑し、悪びれた様子もなく謝罪の言葉を口にする。
「いや、すいませんねぇ。今回はどちらもあいつ等が勝手にやった事で……私の不手際です」
「解ってくれればそれでいい。君には色々と助けて貰った事だし、あまり険悪な仲にはなりたくないんだ」
「それはこちらも同じですジェイル博士。私も貴方の作品を数人お借りしていますしねぇ」
「君のお陰で完成が早まったお礼さ。ただ、あまり無茶はさせないでくれよ」
スカリエッティは背後に立つ彼の方へと顔を向ける。
5年前に姿を現し、協力を買って出た異世界の科学者へと。
「ドクター倉田」
登場デジモン解説
デビドラモン 成熟期 邪竜型 ウィルス種
複眼の悪魔の異名を持ち、闇の中を飛び回っているとされる邪竜。
石像の状態で発見される事も度々あり、高位の暗黒系デジモンの居城などで時折見かけられる。
必殺技は両腕の赤い爪で敵を切り裂く「クリムゾンネイル」
レディーデビモン 完全体 堕天使型 ウィルス種
闇の貴婦人と呼ばれる女性型堕天使デジモン。
高純度の暗黒エネルギーを持ち、数ある完全体の中でも強力な部類に分けられる。
蝙蝠の群れを連想させる熱線「ダークネスウェーブ」、左腕を槍に変化させ敵を貫く「ダークネススピア」など多彩な技を持つ。
なお、外見や思考などから人間の女性を連想させるが、デジモンには性別が存在しない為、あくまで女性“型”である。
スカルサタモン 完全体 アンデット型 ウィルス種
強さを追い求めた堕天使型デジモンの成れの果てとされるアンデットデジモン。
しかし、より悪として洗練されており、その力には計り知れない物がある。
必殺技は手に持った杖から暗黒の力を凝縮した光を放ち、敵のデータを滅茶苦茶に破壊する「ネイルボーン」
投下完了。
ホントは先月投下したかったんですが、俺の怠慢で遅れに遅れました。
その上、大が出てこない話で申し訳ないです。 ……倉田は出たからセイバーズクロスの体面は保てた……かな?
デジモン側を強くしすぎたかなぁと少しばかり反省してます。パワーバランス調整難しい……(汗
次はもっと早めに投下したいと思いつつ、次回はフリード覚醒&兄貴と六課共闘で行きたいと思います。
では、読んでいただきありがとうございました。
GJ!
人の姿じゃないからって斬殺するとは、フェイトそんwww
乙でしたー。
デジモンの能力はリリカル並みのチートっぷりで間違いないかと。
ただ、なのはが負傷した途端にキレた上に的確に首を狙って両断するフェイトに恐怖を覚えずには居られませんでした。
GJ!
デジモンは隊長陣レベル以上のこんなもんで問題ないと思いますよ。
やっぱなのは達とやり合える強さはないと。
GJ!!です。
フェイトが敵の首を斬り落とすのを見て、こりゃなのはさんを捕まえたら、
言う事聞かせ放題だと思われそうだw
完全体でコレなら究極体が大変な事になりそうなんだYO
そこでマサル道場開いてデジソウル習得ですよ
リリカルセイバーズ 氏GJ
デジモンの強さはこんなものでいいと思います。
次回はフリード覚醒&兄貴と六課共闘だそうなのでどのような展開になるのか、今から楽しみで仕方がありません。
次回も頑張ってください。
GJ
なかなか面白かった。
フェイトのキレ具合がなかなかイカしてたね。
デジモンって成長の仕方で実力が天と地くらい変わるから平気じゃない?
ゲームだと成長期で究極体に勝てるし、カードでも可能。
アニメでも成熟期で完全体に勝ってたりしてたし。
スカルサタモンってインペリアルドラモンを追い込んだんだよ。
しかし、リミッター付きのフェイトに瞬殺されたり、油断してたとはいえまだAランクになるかならないかのスバルにぶっ飛ばされたりと、完全体にしては弱いですね。
まだ完全体になっはばかりかな?
あれで完全体として成長が完成してたら、究極体もたかが知れてるが、究極体も同じ魔王型で七大魔王はデスモンを数十体を一撃で消滅させれるらしいし、デジモンによって調整が難しいでしょうが、今後も頑張ってくれ。
次も期待してる。
今回回収されたレディーデビモンのタマゴなんですけど、あれはどうなるんだろう。
誰かがパートナーになるんだろうか。でもそうすると、ただでさえ異常な六課のパワーバランスが……
>>180 手負いとはいえ幼年期に食われた究極体もいたなあ…
>>181 そこで、名もない陸士が拾うのさw
これ以上はウロスへ行こうぜ。
クロノの航海日誌より
目の前にSSが来れば支援する!
それだけじゃないか!
GJでした。
フェイトそんおっかないよフェイトそん。
怒らせたらいけない人っているんですよねー
さて、そろそろお時間ですので私の方も投下させていただきます。
もしよろしければ支援の方もお願い申し上げます。
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「ちぃっ、次から次へと……ご苦労なこった!」
武者丸の刀が鈍く光を反射し、金属音に彩られた舞踊を紡ぎ出す。
時に正面の傀儡兵に突き立て、それを軸にぐるりと弧を描いて宙を舞い、
背面から自分を狙っていた砲撃を力尽きた傀儡兵を盾にやり過ごし、そのまま武器として叩きつけて、
またある時はたった一振りで魔導金属製の胴体を横薙ぎに寸断して。
だが、それでも迫りくる傀儡兵の勢いは衰える事を知らない。
硬質の金属を斬り続けた刀……短い間に幾つもの戦いを経て、すでに寿命の近い太刀は悲鳴をあげ、
ほぼ一人で波状攻撃を受け止め続けている武者丸の疲労も限界に近くなっている。
武者丸でさえこのような状態であるのに、へっぽこ堕悪武者たちはと言えば……
「このやろ、このやろ!」
「姐御の邪魔はさせないんだなー!」
「ここから先は立ち入り禁止だから! 関係者以外お断りだから!
お願いだからもう止まってくらさーひぃっ!」
……まぁ、彼らにしてはよくやっている方だろう。
三人がかりで一体を足止めするのがやっとのようだが、いないよりはマシだ。
今にも堤防を破らんとする大洪水を堰き止めるべく、
一つの石ころを積み上げられた土嚢の隙間に詰めた程度には。
すなわちこのままでは斗機丸の安否を確かめるどころか、逆に助けに行くべき自分達が
遠からず圧倒的な物量差に押し潰されてしまう事は明白。
それでも、絶望するという選択肢はこの場の誰も持ち合わせていなかった。
「アルフ、まだか! まだ見つからねーのか!?」
「まだどこにも……って、見つけた! 駆動炉直下から三階層ほど下、中央大階段上の扉の向こう!
ここからでもそんなに遠くない!」
わずかな異常も見逃すまいと、一人端末と戦い続けていたのはアルフ。
武者丸達がずっと終わりの見えない戦いを続けていたのは、
この場で唯一魔法技術に精通している彼女が斗機丸の尻尾をつかむ事を信じていたからだ。
「けど、この反応……」
「どうしたの、アルフ?」
動揺を隠せないアルフの様子を察したススムが問いかける。
「近くに魔導師の反応が四人分ある。
この内二人は多分あんたらの仲間の白い子とねずみっ子だけど……」
「なのはちゃんとユーノ! けど、あと二人って……?」
ぎりりと歯を固く食い縛り、アルフは他の誰よりも慣れ親しんだその名を告げた。
「あぁ……一人はフェイト! フェイトがあんたの仲間の目の前にいる!」
巻之弐拾伍「『運命』という名の真実なの」
「そこを通してもらいたい、フェイト=テスタロッサ。
僕達には急ぎの用事がある。君の相手をしている余裕は……」
立ちはだかるフェイトにクロノは厳しい顔つきで道を通すよう要求する。
だがその一方で彼は実力行使と言う事か、S2Uを構えつつその先に魔力を集束させる。
「ない!」
一歩も退く様子のないフェイトに向け、その魔力弾は放たれてしまう。
しかし、これはあくまで威嚇射撃。
フェイトもそれを理解しているのか、わずかも身じろぎせずに
後方に着弾した影響で発生した爆風にその長い髪を揺らすのみであった。
「通さない」
冷たく言い放つフェイトのデバイスがポールアックスの形を成していく。
「例え相手が何だって……母さんの邪魔は絶対にさせない」
そのデバイスの先端ががしゃりと音を立てて展開し、光の刃を紡ぎだす。
触れるものを皆傷つけるような鋭さを感じさせるその危うい輝きは、
そのまま彼女の決意の固さと先行きへの不安との両方を思わせるようであった。
場の空気が一気に張りつめる。
だが、それはこの場で全滅の憂き目に遭うという予想から生まれるものではなかった。
いかにフェイトが優れた戦闘魔導師といえど、この人数相手ではそう長く持つはずがないだろう。
ただ、それでも良いと考えているのかもしれない。
この部屋の内部が徐々に虚数空間に侵食されていると言う事は、
何らかの次元干渉型の儀式魔法が行われている事を意味する。
恐らく駆動炉に平行世界やら何やらからエネルギーを取り出す類の触媒が使われているのだろう。
それを行っている人物……恐らくはこの庭園の主、プレシア=テスタロッサ。
彼女の儀式が完遂されるまでに、クロノ達が辿り着かないよう時間を稼げればそれで十分。
つまり、フェイトは捨て駒にされたという事だ。
「君は……自分がここにいるという事の意味を、わかって言っているのか!?」
クロノが、恐らくはその裏表のない義憤から声を荒げてフェイトにその真意を確認する。
しかし、彼に目を向けるフェイトは言う。あくまで平静を保ったままに。
「それが、母さんの言葉だから」
彼女自身も気付いているはずだ。
今、このタイミングで彼女をここに差し向けたその意味を。
それでもなお母親を信じるというのか。
互いににらみ合ったまま、膠着状態に陥るかと思われたが、結局そのような事態は起こらなかった。
「そんなの、絶対に、ダメーッ!!」
彼らから目を離さなかったフェイトですらも反応が間に合わないほどの、
まさしく弾丸のような速さで彼女に飛びかかっていく白い影。
「なのはっ!?」
支援
そう、なのはがフェイトの眼前にまで突撃していったためであった。
フェイトのスピードに対抗するべく身に付けていた、瞬発力を一時的にブーストさせる
高速移動魔法、フラッシュムーブ。
それを用いて一瞬にして離れていた距離を手を伸ばせば届く距離まで詰めていたのだ。
「どうして、そんな事を……」
「フェイトちゃん、私、あきらめないから!
何度断られても、無視されても、絶対に!」
なのはは思っていた……いや、気付いていた。
近距離での格闘戦なら武者丸の剣技に及ぶべくもない。
スピード殺法なら斗機丸に、総合戦闘能力ならクロノに、守る術ならユーノに一歩も二歩も譲る。
何より、肝心の砲撃においても鎧丸がなのはのそれのはるか上を行く。
「それなら、私はその分だけ君を打ち倒す……それでもいいの?」
「当たり前だよ!」
魔法の才があると言っても、自分は光線を撃つだけが取り柄の未熟者。
はっきり言ってしまうならばお荷物だ。
だから。
「そんな悲しい目をしてる子をほったらかしになんて、私は絶対にできない!
だからフェイトちゃん、お願い……」
力に訴えることが全てではない。
あくまで繋がりを求めると言う、心からの願いを精一杯に表現する事。
「お話を、聞かせて?」
これが、高町なのはという一人の少女の戦いだ。
「……行こう、二人とも」
「……あぁ!」
そんな彼女の戦いを背に、クロノと斗機丸は走り出す。
「待ってよ二人とも、なのはを放って行く気!?」
「……僕達にはやる事がある。第一にプレシア=テスタロッサの身柄の確保、第二に駆動炉の停止。
フェイト=テスタロッサの優先順位はそれらより下だ」
そんな二人に呼びかけるユーノの方を一瞥もせずに、クロノは冷たくそう言い放った。
「そんな……犯人逮捕のためなら女の子一人こんな危険な場所に置いて行くのも
やむなしって言うんですか!?」
「そこまでだ、ユーノ」
そう言いながら今にもクロノに掴みかからんとするユーノを制する手。
斗機丸の冷たい鋼鉄でできた、しかし熱い何かの宿った手であった。
「トッキーさん、どうして!?」
「男の決意に水を差すな!」
そう言われて、初めてユーノは気付かされる。
扉に向かって駆けて行くクロノの肩の震えに、デバイスを握りしめた手から流れる
一筋の赤い血の流れる様に。
「あ……」
「なのはは確かに暴走にしか見えないくらい、あんな危険な行動をとった。
だがそれは、決して彼女の独りよがりと言うだけなんかじゃあない。
俺達を先に行かせるためでもあるんだ!」
「それは……けど、なのはを一人きりになんて!」
(そうだよ、ユーノ君。フェイトちゃんは私に任せてほしいな)
なおも反論を続けるユーノの心になのはの声が響く。
彼女から発せられた念話だ。
「……なのは!」
(にゃはは……ごめんね、ユーノ君。何の相談もしないで)
(ごめんねじゃないよ! 待ってて、僕もそっちに……)
なのはの言葉に、ユーノもまた念話を用いて応え、彼女の元に向かおうとする。
しかし。
(ダメ。怒られるのは後で思いっきり怒られてもいいよ。
けど、どうしてもあの子と二人っきりで話したい事があるんだ……
だから、今はクロノ君を手伝ってあげて?)
やんわりと、しかし強い意志をもって自らの決意を語るなのは。
こうなった彼女はもうてこでも動かせない。
ユーノはあきれながらも、いかにも彼女らしいと諦めの境地に至り、ため息をつきながら
彼女に返事をよこした。
(わかったよ。けど、絶対にお説教は聞いてもらうからね。だから……)
(お、おっかないなぁ……覚悟しておくよ。じゃあ、また後でね)
(うん……また、後で)
言い終えると、ユーノは斗機丸と目と目を合わせて頷き、先行したクロノの後を追う。
そのクロノは門の前でにらみ合う彼女らの横をすり抜けようとするが、
黙ってフェイトが通すはずがない。
「……ッ! 行かせない!」
「ダメーッ!」
<<Flash move>>
扉を開けようとするクロノに向けて放たれる雷撃を、なのはは魔力の盾と自分の体をもって防ぐ。
「邪魔をしないで!」
「邪魔するよ! 勝手は承知、私は絶対にここから下がらない!」
魔力と魔力の激突で生じた爆煙の中から、煤に汚れた顔でなのはは叫んだ。
「……なんで……?」
三人が扉を抜けていったのを見送らざるを得なくなったフェイトは勢いをつけて飛び、
そのやりきれない想いを魔法にのせて目の前の少女にぶつける。
アークセイバー。
金色の魔力光を放つ大鎌の刃を撃ち出す、彼女の得意技の一つ。
それをラウンドシールドで受け流しつつ、なのはも宙に舞いあがって行った。
「……どうして……?」
支援!!
二人の飛行速度にはそれなりの開きがある。
最高速度ならばともかく、虚数空間の侵食が広がる中ではわずかでもコントロールを失えば
その中に飲み込まれてしまうため、運動性を維持するため勢いを殺して飛ばなければならない。
つまり、スピードと機動性の両立が可能なフェイトが一方的に有利。
相対速度から言えば、なのははフェイトにとっては止まっているも同然なのだ。
そんななのはに、雨あられと光子の槍が、そして雷の刃が容赦なく降り注ぐ。
しかし、その刃をなのはは受け止める。彼女自身の力と技、そして知恵で。
彼女の周囲を浮遊している桜色の光弾、ディバインシューター。
術者の思念によって宙を舞うその輝きが魔力の刃を受け止め、相殺する。
例えバインドで動きを止めようとも、彼女の意識がある限り半端な魔法は意味をなさない。
「どうして私と母さんの邪魔をするの!?」
ディバインシューターは、なのはの周囲を太陽を取り巻く惑星のように、周回軌道を描いて旋回する。
どこまでも敵を追い続ける優れた猟犬のようなその魔弾は、彼女の手にかかれば
大事なものを守るための、生きた盾としてその隠れた力を見せつけていた。
「……やっと、答えてくれたね、フェイトちゃん」
しかし、完全に無力化できるなどという甘いものではない。
守りをかいくぐってきたフォトンランサーやアークセイバーは確実になのはの体力を、
そして魔力を奪っていた。
傷付き、薄汚れた法衣の色は純白だったと言っても、これだけ見れば誰も信じはしないだろう。
けれども、それに身を包んだ少女は眩しいばかりの笑顔を浮かべていた。
「私は、この世でたった一人の母さんの願いをどうしても叶えてあげたいの!
それなのに、どうしてあと少しって言う所であなた達が出てきて、
ジュエルシードを横から掻っ攫って! 私はずっと、この半年それを集め続けて……」
「にゃはは、そうだよね。ジュエルシード集めってとっても大変だよね」
堰を切ったように、フェイトの口から溢れ出る言葉。
それは、今まで淡々としていた彼女が見せた、初めての激しい感情。
なのははそんな彼女の心の叫びをやわらかく受け止め、微笑みを浮かべていた。
「……何がおかしいの?」
「さっきも言ったけどね、私もユーノ君に話を聞かされてジュエルシード封印のお手伝いを
してきたんだけど、もう本当にたーいへん!
怪物が出るわ、堕悪武者さん達が襲ってくるわ、街がジャングルみたいになっちゃうわ……」
大げさなくらいポーズをとり、全身を使って彼女なりにユーノと出会ってからの日々を語る。
「けどね、大変だから、とっても大きいんだ。
辛い事も、それから……楽しい事も」
胸に手を当て、それらの経験が心の中の大事な宝物であると言わんばかりに、
きゅっとその手を握って、まっすぐな目でなのははフェイトに問いかけた。
「ねぇ、フェイトちゃんはどうだった?
私の世界、本当にただ辛い事ばかりだった?」
「! それは……」
フェイトの脳裏を、これまで彼女が母の言いつけで過ごしてきた数カ月にも及ぶ日々の記憶がよぎる。
文字に代表される言葉の壁、文化や習慣の違いへの戸惑い、初めてといっても過言ではない
たくさんの人の中での生活、そして何よりジュエルシードをめぐる戦いの日々……。
だが、そんな辛い日々の中にも彼女の心を支えるものがあった。
「ただいま……」
「あぁー……疲れたぁ……」
まだ雪のちらつく季節、春遠い頃。
その日、ジュエルシードを求めて遠方まで出向いていたフェイトとアルフはその目的をはたし、
ボロボロの姿でようやく隠れ家に辿り着いていた。
「アルフ、もうベッドの準備したから休んで……アルフ?」
シーツの裾を正し、フェイトは自分とともに苦難に耐えてくれた自分の使い魔を呼ぶ。
だが、返事はない。代わりに聞こえてきたのは隣の部屋の床で大の字になって寝ころぶ
アルフの静かとは言い難い寝息だった。
「もう……しょうがないな」
疲れた体を引きずりながら毛布を抱え、アルフにそっと駆けると、何かの拍子に
リモコンに触れてしまったのか部屋のテレビに明かりがともる。
帰って来たのに何かとやる事が増えていくな、と困り顔で消そうとするが、
そこに映ったある人物に目がとまり、その動きは止まっていた。
『それでは歌っていただきましょう、本日三人目の挑戦者、何と人間ではございません!
紅 零斗丸さん! 曲は「迷走交差点」、どうぞ!』
画面に映し出された部隊の中心に立つその人物は、日本全国に突如として放り出されたという
自分とどこか似た境遇の異邦人。
「ムシャ……ガンダム……?」
比喩でなしに白い肌、黄色い目をした一人の武者頑駄無だった。
妙に惹かれるものがあり、フェイトはそのまま画面を注視していた……の、だが。
『なぁがぁれぇぇぇぇながぁれぇぇぇてぇぇぇいまぁいずくぉぉぉぉおぉぉぉっ』
歌声が聞こえだすと同時に滑って転んでずっこけた。
フェイトは知る由もないが、彼が歌っているのは一応演歌と呼ばれる類の物。
ただし、作曲者と作詞者、元歌の歌手にジャンピング土下座で詫びるべきであろうほどの、
恐ろしい音楽の蹂躙行為であった。
一言で表すならひどい。
これはあまりにもひどすぎる。騒音公害で訴えられても仕方のないレベルだ。
音程はぐちゃぐちゃ、テンポも合っていないくせして無駄に声が大きい。
眠っているアルフも悪夢にうなされているような苦悶の表情を浮かべている。
やはり見るべきではなかったと、リモコンを操作しようとスイッチを切ろうとしたまさにその時。
甲高い金属製の、名前も知らない楽器の音がその歌声を遮った。
『は、はい! どうもありがとうございました! いやぁ、個性的な歌声でしたねぇ。
また次回の挑戦をお待ちしております!』
明らかに困惑した作り笑いを浮かべる司会者の男性と、がっくりと肩をおろして
寂しそうにすごすごと舞台から去って行く武者頑駄無。
フェイトは彼の背中から目が離せないでいた。
まるで、「お前はもう用済みだから出ていけ」と言われているような、そんな気がして。
それから後、フェイトがテレビののど自慢を見る度、二回に一回は彼の姿が見受けられた。
下手だ。確かに下手糞だ。
しかし、回数を重ねる毎に彼は少しずつその腕を上達させていた。
気がつけば、彼の姿を追う時が何よりも……ジュエルシードを首尾よく確保した時よりも
自分の心が温かくなると言う事を感じ始めていた。
そして。
『第一回、鎧王杯争奪素人のど自慢大会! 優勝は……山形県代表、紅 零斗丸さんです!!』
魂が、震えた。
異郷の地でただ一人、頼れるものもないにもかかわらず、その武者はわずかな期間に
血の滲むような努力を重ね、晴れの舞台の頂点へと駆け上っていたのだ。
その姿を画面越しに眺めながら彼の境遇に自らを重ね、まるで自分の事のように
フェイトは喜びを顕わにしていた。
やがてアルフも同じくテレビや街角の風景を通して順調に文明開化を迎え、
へっぽこ堕悪四人組もそこに加わって送る賑やかな日々。
いつしか母のためという以外にも、彼女にこの世界にいる理由ができていた。
「フェイトちゃんがお母さんのお手伝いをしたいって気持ちはよくわかるよ」
なのはの言葉に自らの過去を省みていたフェイトだったが、その彼女自身の言葉によって
ハッと我に返る。
そんなフェイトの状況を知ってか知らずか、なのははなおも言葉を続けた。
「お手伝いを頼まれるってことは、その人を信じてお願いするってことだから。
絶対に途中で投げ出しちゃいけない事だって、私も分かってるもの」
そんななのはの心に浮かぶものは、大好きな母の明るい笑顔。
あれこれ子供なりにそんな母を助けたいとの思いであれこれと「手伝い」を重ねてきた、
彼女が辿り着いた一つの答え。
その答えを聞くフェイトの表情は青ざめ、体はわなわなと震えている。
自分もまたなのはの住む世界に触れ、彼女が言わんとする事に想像がつくから。
「けど……フェイトちゃんのお母さんがやっている事は、私にはどうしてもわからない。
あぁ、何て言うか、こう……うまく言えないけど……」
――いわないで。
「皆、いろんな想いを背負って生きているって思うんだ。
それは時にぶつかりあったり、すれ違ったりしちゃうこともあるけど……
フェイトちゃんのお母さん、たった一人で誰にも言わないで、自分の想いだけを通そうとしてる。
想いは一方通行じゃ、他のみんなが困っちゃうって、私、思うから……だから!」
――そこからさきは、いわないで。
「私、フェイトちゃんのお母さんに、どうしても聞いてみたい事があるんだ。
それは……」
――いわないでって、いってるのに。
青ざめたままのフェイトの口がぼそぼそと動いているが、なのははそれに気付かない。
気付いた時には……
「サンダー……スマッシャー……!」
猛烈な魔法の雷、サンダースマッシャーが彼女に向けて放たれていた。
しかし、その対象であるなのはは、意外にもその事に驚きを見せなかった。
まるで最初から予期していたかのように。
「フェイトちゃんの想い、受け止めるから……全部! レイジングハート!」
<<Divine shooter and Round shield Fulldifensor-fomation>>
冷静に複数のディバインシューターを射線上に並べ、ラウンドシールドを張って
荒れ狂う稲光に正面からなのはは立ち向かう。
凄まじいまでの威力の前に、耐えきれなくなったディバインシューターは一つ、また一つと
最前線にあった物から弾け、その度になのは本人の負担が厳しくなっていく。
空中で「踏ん張る」と言うと語弊があるかもしれないが、吹き荒れる電光と魔力の奔流の中、
歯を食いしばりその場から動くまいと奮闘する姿は、そう形容するのがふさわしかった。
しかし、一体何がそこまで彼女を駆り立てるのか。
憐み? それとも同情?
それは彼女にもまだ分からない。
ただ、フェイトが初めて自分の呼びかけに答えてくれた。
ならば、それは言葉であれ攻撃であれ自分も応じなくてはならない。
愚直なまでにまっすぐな、しかしそれ故に頑強な想いがなのはを突き動かしていた。
「やった……?」
肩で大きく息をして、もうもうと立ち込める爆煙の向こうを見やるフェイト。
死んでいるとは思わないが、今の一撃を防ぎきるためにかなり消耗しているはず。
次はどう出てくるか……彼女がいた辺りの空間を警戒しつつ、ただそれだけを思っていた。
背後から音もなく迫りくる恐怖に気付く事無く。
「フェイトちゃん、後ろ!!」
なのはが必死な表情を浮かべ、煙の中から飛び出してそう叫ぶ。
愚かだ。奇襲にしても、あまりに愚かすぎる。
その時のフェイトには、そんな失望にも似た感情しか浮かんでこなかった。
ならば、自分がするべき事は、母のために対象を処理するだけだ。
今更ためらう理由は存在しない。いつもの事ではないか。
傍目には何の表情も感じ取れない、作り物のような表情を浮かべて
フェイトはサイズフォームに変形させた愛杖を振りかざす。
だが、彼女がその死神を思わせる鎌を振り下ろそうとする相手がとった行動は、
フェイトの想像していたものとはまるで逆の、ありえない行動であった。
「……ッ! 何を!? 離して!」
先程と同じ、急加速の魔法を用いてフェイトに肉薄したかと思うと、
そのまま彼女に抱きついて、まだ虚数空間に食われていない壁へとぶつかっていく。
まさか、自分を道連れに体当たりで物理的ダメージを狙っているとでも言うのだろうか?
<<Divine shooter>>
「壁を! 私達のぶつかるあの壁を打ち砕いて!」
なのははフェイトを離すまいと、きつく回した右腕に力を込め、左手に握るレイジングハートは
ディバインシューターをいくつも生みだし、弾体を立て続けに飛び行く先に撃ち続ける。
そして二人は。
「……うっ!」
「あいたた……フェイトちゃん、大丈夫?」
破壊された壁の向こう、明かり一つない暗い通路に折り重なって倒れ込んだ。
「離れて! 一体、どういう……」
なのはをデバイスで振り払い、再び手の中のそれを構え直すフェイト。
ただし、それを目の当たりにしていたなのはは、戦意を見せるどころかホッと胸をなでおろし、
心から安心した様子でそんなフェイトを見つめていた。
「大丈夫みたいだね、よかったぁ。
あのままじゃ、フェイトちゃんがあそこに飲み込まれてしまうって思ったから……」
そう言われて、初めて振り返るフェイト。
当然その瞳に映るのは自分が今までいた空間。
ただし、それは彼女の心胆を寒からしめるには十分すぎるほどの光景であった。
「虚数空間!? そんな、いつの間にこんなに広がって……?」
「あそこに落ちるともう帰ってこれないんだよね? クロノ君がさっき言ってた。
もう、びっくりしちゃったよ! ところで、ここは?」
両手でぺたぺたと不用意に辺りを調べ始めるなのは。
その通路は暗いだけでなく、とても幅が狭い事がわかる。
今まで見た全てが駄々広かったこの庭園の中、まるで何かの意図をもって隠されて作られたかのように。
「そんな事はどうでもいい! さっきの続きを!」
「あれ? 向こうの方に何か明かりみたいなのが見えるよ!」
「あっ、勝手に動きまわっちゃ……」
好奇心に突き動かされ、奥へ奥へと進んでいくなのはをフェイトは慌てて追いかけていく。
なぜか放っておいてはいけない、そんな雰囲気を漂わせていたからなのかもしれない。
「不思議……他の廊下はすごく広いのに、何でここだけこんなに狭くて灯りもないんだろう?」
「ここは古代ベルカ王族の遺跡をそのまま転用して作られた館だからね。
多分、緊急時に王族が逃げおおせるために作られた抜け道だよ」
「へぇ……にゃはは、何だか探検してるみたいだね!」
「探検って……私と君は敵同士なんだよ? どうしてそんな風に安心していられるの?
いつ、私があなたの背後から斬りかかるかわからないのに?」
どこまでもマイペースななのはの態度に毒気を抜かれ、
いつの間にか彼女のペースに巻き込まれている事を自覚しながらフェイトは問いかける。
あの日、あの時に一人の武者頑駄無をテレビで見たその時から自分の中に芽生え、
彼女と会って、さらに大きくなりつつあった未知の感覚に答えを出すために。
「だって、もうフェイトちゃんはもう私とお話ししてくれてるもの。
だから、フェイトちゃんは私の敵じゃない」
「……よく、わからないよ。君の言っている事が」
「あぁー……そっか、うんとね、何て言えばいいのかな……
にゃ、にゃはは……実はなのはにも、まだよくわかりません」
「……そう」
こつこつと、外界と隔絶された空間に二人の足音だけが響き、見事に気まずい雰囲気が完成する。
これはいけない、何とか打開しなくてはとなのははとりあえず口を開く。
「え、えーと! なかなか近づいてこないね、灯り!」
「そうだね」
「あ、あー……」
打開、失敗。
結局二人はろく言葉も交わせぬままに、出口を求めてその通路を進む。
しかしその道のりは意外と長く、出口にたどり着くまでに数分間の時間を要した。
その間の二人の気苦労は想像するだに恐ろしいが、それはこの際置いておくこととする。
「うわぁ……隠し通路よりもっと変な所に出ちゃったね」
「……私もこんな部屋は知らない。初めて見た」
またしても、他のどの部屋とも趣の異なる部屋が彼女達を待っていた。
高い天井のてっぺんまで埋め尽くす、巨大なガラスのような物でできた筒をいくつも並べた棚と、
その筒にびっしりと巻きついている蔦に似た植物。
全て中身は空っぽであったが、かつて何らかの目的で使われていたであろう事は想像に難くない。
それが横に狭く、奥行きの長い部屋の壁の両側をびっしりと埋め尽くしているのだから、
奇怪と言う他ない。
「なんだか、掃除の時に見た理科準備室の標本みたい……あぁ、気持ち悪いの思い出しちゃった!
フェイトちゃんはどう?」
ガラス棚の中にずらりと並べられた、口に出す事さえはばかられる代物の数々を想起させる光景に
うすら寒いものを感じ、肩をすくめるなのはは引き攣った笑みを浮かべてフェイトに話しかける。
しかし、フェイトの方には彼女の相手をしている余裕などなかった。
「な、に……これ……?」
フェイトの瞳が驚愕に見開かれる。
いや、驚愕という一言ですませる事すら足りないその表情は様々な感情が入り乱れたもの。
彼女の眼は部屋の最奥、その中央に置かれたシリンダーに注がれていた。
「……フェイト、ちゃん……?」
空っぽの筒が立ち並ぶ中、それだけは液体に満ち、魔力の明かりに照らされて
薄暗闇の中でぼぅっと浮かび上がり、その存在感を示している。
金色の長髪を揺らし、そこに浮かぶのは一人のもの言わぬ少女。
それも、フェイトによく似た……いや、フェイトの幼い頃そのものなのではないかと思わせる、
小さな女の子が力なく液体の中を漂っていた。
「何で、どうして? だって、フェイトちゃんってここに、えと、あれ!?」
なのはもこの常軌を逸した光景に混乱し、隣で絶句しているフェイトに目を向ける。
だが、事態はすでに彼女らの理解できる範囲をとうに超えている。
魔法とは違う方向に、映画の中でだけ繰り広げられた光景が、
今目の前に現実として存在しているのだ。
それも、人間の最も原初的で単純な、生理的嫌悪を引き出す類のものが。
「……見たのね、フェイト」
こんな事をできるのは、この時の庭園の中には一人しかいない。
この庭園の主、フェイトでは知りえない全てを知っている女……プレシア=テスタロッサその人だ。
「か、あ、さん……これ、一体……?」
さまざまな感情が入り混じっているためか、油の切れたからくり人形のように
フェイトは声のする方にぎこちなく振り向く。
「あら……ジュエルシードを集めている白い娘ね? いけない娘。
危ない場所に近づいてはいけないと教わらなかったのかしら?」
そんなフェイトの態度をまるで何でもない事のように受け流し、
表情一つ変えずに言葉を続けるプレシアに、なのはは柄にもなく声を荒げて叫びを上げた。
「私の事なんかより、フェイトちゃんの質問に答えてあげて!
いったい、この子は誰なんですか!?」
そう言いながらなのははシリンダーに手を伸ばす。
だが、プレシアはなのはの問いかけに応じようとはせず。
「お行儀の悪い子には……おしおきが必要ね」
表情一つ変えずにその両手から紫色に輝く電撃を放ち、
なのはとその隣で立ち尽くすフェイトを弾き飛ばした。
「あぁっ!?」
派手な音を立て、壁面に叩きつけられるなのはとフェイト。
そんな彼女らにプレシアはゆっくりと近づき、無感情にフェイトを見下ろし、言葉を紡いだ。
「あなたは良くやってくれたわ、フェイト。
多くのジュエルシードを集め、駄目押しにこの子を母さんの所に連れてくるなんて。
全部で二十……これだけあれば儀式も十分行えるわ。だから……」
傷つき、倒れた二人の四肢が厳重にバインドで拘束され、ふわりと浮かびあがる。
「あなたにはご褒美をあげましょう、フェイト。
あなたの苦労が実る時を目の前で見せてあげる……アリシアを蘇らせる、その瞬間を」
強力なバインドの締め付けに、苦しそうに顔を歪めながらなのははその聞きなれない少女の事を問う。
恐らく、シリンダーの中にいるその少女の事を。
「アリ……シア……?」
「そうよ、私のたった一人の自慢の娘。
アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。
アリシアは時々わがままも言ったけれど、私の言う事をとても良く聞いてくれた。
アリシアは魔法なんて使えなかった。けれどもとっても明るい子だった。
アリシアはいつでも私に優しかった。
アリシアは……
アリシアは……」
壊れたラジオのように、プレシアはアリシアという娘の事をつらつらと語り続ける。
プレシアの娘はフェイトではなかったのか。彼女の言葉を信じるとするなら、フェイトとは一体。
「じゃあ、フェイトちゃんは……?」
「あぁ……そこのできそこないのお人形さんね?
アリシアの記憶をあげたのに、似ているのは見た目だけ。
せっかくあげた記憶も、あなたじゃ駄目だった。
中身が全然違う、アリシアの代わりになれなかったかわいそうなお人形さん」
その瞬間、フェイトの表情が絶望を貼り付けたまま凍りついた。
「人、形……?」
「そうよ。アリシアが息をしなくなったから、いろんな世界のいろんな人を頼って、
代わりに作ったお人形。だけど、だめね……ちっともうまくいかなかった。
作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ。
やっぱり新しいのを『作って』も、アリシアはこの子だけだもの」
愛おしそうにシリンダーを抱きしめ、撫でさすりながら恍惚の表情を浮かべてプレシアは語る。
支援します
「手伝ってくれた人が、あなたを作るための計画につけた名前が
プロジェクトF……プロジェクトF.E.I.T。
私はアリシアを作りたかったのに、できたのはあなた」
「やめて……」
「アリシアじゃないなら、ややこしくならないように別の名前を考えなくちゃいけないわよね?
だって、一緒にしてあげたらアリシアがかわいそう……だから、フェイト。
それがあなたにつけた名前の理由よ」
「やめてよ……」
言葉もなく、二人の少女が見つめる中プレシアはなおも語り続けた。
繰り返されるなのはの制止の声に耳を傾ける事無く。
「けど、私はその途中で素晴らしい秘術を見つけたの。
失われた世界、アルハザードに源流をもつ秘術……命を失った者を蘇らせる術を!」
ふわりと、プレシアはところどころに虫食いの跡の残る古ぼけた巻物を広げ、
高らかに、そして誇らしげに見せつけて言い放った。
「だからあなたはもういらないの。
アリシアの代わりに、私の慰みのためだけに作ったお人形さん?
そうね、私はあなたの事がずっと……」
「お願い! もうやめてぇーっ!!」
なのはの絶叫がこだまする。
しかし、プレシアの世界にはもはや自分と、自分の愛するものしか存在しない。
だから、なのはの必死の叫びも届く事は無く。
「大嫌いだったのよ!!」
フェイトが母と慕う女性は、フェイトにとって最大にして、最後の絶望を
飽きてしまった玩具を捨てるように突きつけた。
やっとフェイトと心の端を触れ合わせることに成功したなのは。
しかし、その途端二人はなんとプレシアに囚われてしまった!
そして明かされるフェイト出生の秘密。
プレシアの手にした死者蘇生の秘術とは、一体!?
最後の時は刻々と迫り来る。
急げ武者丸、斗機丸よ!
――次回を待て!!
今回は以上です。
プレシアさんの見つけた秘術の正体、わかる人にはわかっちゃうんだろうなぁと思いつつ、
ずっとなのはのターンでお送りいたしました!
それと、皆様の温かいご支援、本当にありがとうございました!
GJ!
死者蘇生だと!?もしかしてあれか!
そしてなのはのターン来たー!
面白かったです。
まだ武者丸たちが武王・機王・鎧王にパワーアップしてないから魔刃との決戦はまだ先だろうし
いずれは登場するであろうワカやバッキー達の事も楽しみに待ってます
>>200 もしかして武者○伝2でハッちゃんがブライトや魔獣アプサラスを甦らせたアレ?
GJでした。
武者が日本に来てたことも絡めて、少しずつフェイトの心が開いていく様が…よかった…
GJ!!
最高でした!!
次回も楽しみにしてます。
うああ、何度見てもこのシーンのプレシアは鬱になる・・・orz
GJでした
それでは、40分より投下させて戴きます
『前方、ゲート閉鎖! 行き止まりです!』
『コンテナ、来ます! 機数、約30!』
『左へ!』
彼等は追い詰められていた。
迫り来る鋼鉄の壁、宙を翔ける鉄塊の群れ。
管理世界の人間ではなく、第97管理外世界の人間達によって宇宙空間へと築かれた、異質な巨大建造物。
その内部を縦横無尽に走る、重金属回廊。
LV-220資源採掘コロニー、輸送システム。
巨大な循環器系にも似たその内部、生体内にて免疫機構に追われる異物の様に、彼等は逃げ惑う。
そして事実、彼等の存在はこの回廊内に於いて、異物以外の何物でもなかった。
『また行き止まりだ!』
『下! シャフトへ!』
高速で迫り来る反重力駆動式コンテナを、時に砲撃が、緑光の線が、雷光と赤光の刃が迎え撃つ。
その度に衝撃と轟音、爆炎が回廊を埋め尽くすが、それらは瞬く間に後方の闇へと消えた。
彼等もまた、高速で飛翔しているのだ。
しかしその速度は、コンテナ群のそれと比して僅かばかり劣っていた。
『また・・・!』
程なくして、無数の巨大な影がすぐ背後まで迫り来る。
鋼鉄の巨体が空気を切り裂き迫る、その異音に言い知れぬ圧迫感を覚えつつも、ディードはオットーを気遣いつつ必死に飛び続けた。
双子の姉が持つISは、どちらかといえば後方支援を主とする能力であり、ディードほど高速飛行に特化している訳ではない。
故にオットーは、この場の7人の中では、比較的に飛翔速度が遅い部類に入ってしまう。
30分にも亘る高速での飛行、そして瞬間的な反転迎撃を続けている為、流石に戦闘機人である彼女達といえども疲労の色は隠せない。
他の隊員達も同様で、既に限界が近い事は明らかだ。
それはSランクの空戦魔導師である、フェイトですら例外ではない。
だからこそディードは常に、姉の様子を気に掛けていた。
慣れない継続高速戦闘、反転迎撃の連続。
傍目から見ても、オットーの疲労は限界に達していた。
肉体的なものではない。
巨大な敵性体に追走される事による重圧と、飛翔を止めてはならないという強迫観念から来る精神的な疲労だ。
戦闘機人としての概念的な呪縛より解き放たれ、漸く新たな人生を歩み始めたばかりの彼女。
ディード自身と同じく、嘗てない程の実感を伴って迫り来る死の具現を前に、彼女は明らかに恐怖していた。
嘗ての様に、戦いの中で敵意を向けられるでもなく、かといって災害の様に偶発的なものでもない。
明らかにこちらを害する現象でありながら、殺気も敵意も一切が感じられない、不気味な鋼鉄の行進曲。
それはオートメーション機構の一部、巨大なシステムに於ける通常稼働態勢に過ぎない。
回廊内に存在する無数のコンテナを、所定の施設へと輸送するシステム。
本来ならば戦闘とは無縁である筈のそれが、現状では何物にも勝る脅威となってディード等に迫り来る、その異常性。
動作する機械群に紛れた蟲は、忽ちの内に無数の歯車に巻き込まれ、その命を散らす事となる。
それは現状でのディード達も同様だ。
巨大なひとつの「機械」内部に紛れ込んだ、僅かに7つの「異物」。
今でこそ危機を凌いではいるが、いずれ遠からぬ内に圧殺される事は目に見えている。
とある目的の下に完成された大規模システム内に於いては、如何に強力な単独戦闘能力を有しようとも、余りに無力な魔導師と戦闘機人の存在。
逃げ惑う事しかできない現状と、打開の糸口さえ見出す事のできない理不尽さ、そして何より意識の根底より精神を蝕む恐怖に、ディードの呼吸は徐々に荒く変化していた。
『シャフト、下へ!』
『そんな・・・これで8回目ですよ!? 何処まで潜るんです!?』
悲鳴の様な念話の遣り取りが交わされた後、攻撃隊は回廊の突き当たり、下方へと垂直に延びる縦穴へと飛び込む。
反重力駆動式コンテナの運行路だけあって水平方向のみならず、こういった縦穴が点在しているのもこの施設の特徴らしい。
そして隊員の言葉通り、ディード達がその中に飛び込むのは、これで8回目。
当初の転移地点から見て、少なくとも1200mから1300mは降下している。
支援
闇に覆われ、その先を覗く事の叶わぬ深淵。
何処へ続くとも知れぬ縦穴の底へと向かい飛翔しながらも、ディードは自身の身に纏わり付く強烈な圧迫感と滲む焦燥を、確かに感じ取っていた。
終わりの見えない深淵へと続く穴を、際限なく降下してゆく自身。
無限の概念にも通ずるそれに対し、意識の根底より本能的な恐怖が沸き起こる。
だがそれでも、降下を止める事はできないのだ。
後方より響く鋼鉄の行進曲が、止める事を許さない。
足を止めれば、待つのは輸送システムによる「異物」としての死だ。
止まらない、止まれる訳がない。
『下方、ゲートが!』
『急いで!』
遥か下方、薄闇の中で回廊が狭まる。
ゲート封鎖。
それが完全に閉じられるまで、あと幾許もない。
フェイトから攻撃隊員に、焦燥混じりの指示が飛ぶ。
『後方は無視して! 閉じ切る前に、早く!』
その言葉も終わり切らぬ内、攻撃隊は可能な限りの加速を以ってゲートを目指していた。
言われずとも、誰もが理解していたのだ。
此処で往く手を塞がれれば、もはや生存は絶望的であると。
「AC-47β」により増幅された魔力のほぼ全てを飛行へと注ぎ込み、肉体が許す限りの速度で以って閉じゆくゲートを潜る。
『やった!』
歓声が上がった。
間に合ったのだ。
ディードはふと振り返り、閉じゆくゲートへと視線を投じる。
そして、その違和感に気付いた。
「え・・・」
閉じゆく巨大なゲート、その向こうに広がるシャフトの壁面は、鈍いながらも光を照り返すだけの光沢がある。
ところがゲートの内側は、ゲートそのものから壁面に至るまで、全てが濃褐色に色褪せ、その表面の殆どが得体の知れない油膜に覆われていた。
非常灯の黄色の光に照らし出された構造物は、機械油と様々な化学物質により侵食され、この施設が如何に劣悪な環境を内包しているかを窺わせる。
唯1つのゲートを挿んでの、余りに異常な差異。
幾許かの損傷はあれど、明らかにメンテナンスシステムによる機能・状態維持が為されていた回廊。
経年劣化、化学物質による汚染、罅と油膜に覆われた壁面。
だが何よりもディードの意識を引き付けたのは周囲の変容ではなく、閉じゆくゲートの向こうに浮かぶ、無数の反重力駆動式コンテナ群の姿だった。
それらは一様に追跡を中断し、反転離脱を開始。
赤い光を放つコアをこちらへと向け、ゲートより離れ行く。
役目は終わったとでも云わんばかりのその機動に、ディードは薄ら寒い感覚を覚えた。
どうやらコンテナ群の制御中枢は、これ以上の追撃は不要と判断したらしい。
それ自体は喜ばしいが、裏を返せばこの先に、こちらにとってより脅威となり得る存在が待ち受けているという事か。
否、それならばまだ良い。
コンテナ群の追撃中断は、如何にも唐突なものだった。
ゲートは未だ閉じ切らず、追おうとすれば容易に通過が可能であったにも拘らず。
まるで「こちら側」へと侵入する事態を避けるかの様に、コンテナ群はその進行を停止したのだ。
そんなコンテナ群の機動にディードは、自ら達の向かう先に得体の知れない恐ろしい存在が待ち受けているかの様な、漠然とした、しかし自らの内では既に確固たる形を持った不安を覚えていた。
もはや追撃の必要はない、敵対者の運命は決した。
聞こえる筈もないそんな言葉が、彼女の意識の内へと届いたかの様に。
「何だ、此処・・・」
支援
隊員の呟き。
ディードとほぼ同時に、一同も周囲の異様さに気付いたらしい。
各々が視線を巡らせ、口々に異常を知らせる。
侵食の進んだ重金属回廊は充満する大気すらも澱み、汚れたそれは侵入者たるディード等に重圧感を与えていた。
重々しい感覚が、呼吸器を圧迫する。
気の所為などではない。
複数種の有害化学物質が、待機中に満ち満ちているのだ。
戦闘機人特有の高度無毒化能力、そしてバリアジャケットに組み込まれた対化学・生物汚染防御機能により、致命的な汚染は避けられる。
だがそれでも高濃度汚染域ともなれば、汚染物質を完全に遮断できる訳ではない。
僅かずつながらも汚染は確実に肉体を蝕み、いずれは致命的な段階へと達する事だろう。
「何て事・・・」
呼吸器を侵す有毒物質の存在に戦慄しながらも、ディードは周囲に対する観察を続けた。
回廊を照らし出す照明は、表面を覆う油膜と同じく、汚らわしく黄ばんだ鈍い光を発している。
その為か空間そのものが、褐色のフィルターを通したかの様に、くすんだ色を帯びて見えた。
陰鬱にして末期的な空気。
決して有機的ではない、何処までも無機的に、しかし破滅的な存在感を以って迫り来る何か。
広義的に解釈するならば「死」という概念に対する、無意識の畏れとも取れるそれ。
しかしディードは、有機体である自身の精神を揺さぶる圧倒的な「死」の匂いが、この金属に覆われた回廊の一体何処から発せられているのか、見当も付かなかった。
生命体の死体がある訳でもない、血の臭いがするでもない、この無機質な空間の何処から、自身は「死」という概念を導き出したというのか。
「ディード?」
「・・・大丈夫」
何処か不安げに声を掛けるオットーに、ディードは数瞬の間を置いて声を返す。
そしてフェイトが軽く手を振って促すと、攻撃隊は底の見えない縦穴の奥へと、再び降下を開始した。
絡み付く有害な大気と汚染された壁面に囲まれつつ、遥か下方を目指し降り続ける事、約7分。
800mほど降下したところで、突如として空間が拡がる。
「やっと・・・!?」
「な・・・」
そして、その広大な空間へと躍り出るや否や、攻撃隊は1人の例外もなくその身を凍り付かせた。
彼等の眼前に拡がるは、それまでの回廊と寸分違わず、化学物質により汚染された壁面と汚れて色褪せた大気。
しかし、複数隻もの次元航行艦すら同時に格納できる程に広大な人工空間には、そんな事など問題にもならない、更に衝撃的な光景が拡がっていた。
誰もが声も無く身を竦ませる中、オットーの緊張を孕んだ声が空気を震わせる。
「R・・・戦闘機・・・こんなに・・・!」
彼等の眼前、広大な空間。
その凡そ半分を埋め尽くす様に、数十機のR戦闘機が鎮座していたのだ。
余りの光景に戦慄するディード。
そんな彼女の鼓膜を、驚愕と困惑に満ちた複数の声が叩く。
「執務官!?」
「何を・・・ッ!?」
咄嗟に振り返れば、左手を自身の正面に翳し、今にも砲撃を放たんとするフェイトの姿。
ディードは思わず、悲鳴にも似た声を上げてしまう。
「駄目・・・!」
「トライデント・・・」
キタキター!支援
数人が、彼女を取り押さえようと動いた。
この状況で先制攻撃など、常軌を逸している。
どれほど好都合に状況を捉えても、高々一度の砲撃で撃破できる敵の数は、10機が良いところだ。
R戦闘機の耐久性を考えれば、撃破数は更に減る。
そうなれば後に待つのは、残る数十機による飽和攻撃だ。
たった7名の魔導師と戦闘機人など、跡形も無く消し飛ぶだろう。
それを理解しているからこそ、ディードを含む全員がフェイトの行動を止めに掛かった。
だが、間に合わない。
金色の光を放つ球体が急激に膨れ上がり、遂に爆発の時を迎えた。
「スマッシャー」
「止めろッ!」
隊員の放った鋭い制止の声も空しく、轟音と共に3条の砲撃が放たれる。
それらは各々が僅かに異なる角度を以って放たれ、数瞬後に飛翔角度を偏向すると、全く同一の地点へと収束した。
即ち、微動だにせず鎮座する、数十機のR戦闘機群の只中へと。
「不味い・・・!」
それは、誰の放った言葉だったか。
その声とほぼ同時、R戦闘機群の中央付近で、膨大な衝撃を伴う金色の光が爆発する。
巨大な力に押されるままに、後方へと弾き飛ばされる攻撃隊。
轟音に麻痺した聴覚が回復し、カメラアイを焼かんばかりの閃光が収まった頃、ディードは漸く着弾地点を確認する事ができた。
「・・・!」
凄絶な光景に、息を呑む各員。
跡形もなく吹き飛ぶか、或いは炎に沈み姿の視認できない数機のR戦闘機。
その数、凡そ7機。
だが、ディードの意識を引き付けたのは、噴き上がる業火でも、散らばるR戦闘機の残骸と思しき鉄塊でもなく。
「何故・・・?」
反撃の素振りすら見せずに鎮座し続ける、着弾地点周辺の数十機のR戦闘機群だった。
衝撃に煽られ、爆炎に焼かれ、機体に損傷を負いつつも、浮遊し戦闘機動へと移行する様子は微塵も見受けられない。
その事実が容易には受け入れられず、ディードは自身の目を疑いつつ、数秒ほど眼下の爆炎を見据え続けていた。
「何で・・・反撃しない?」
「する訳がない」
呆然と呟かれたオットーの言葉に、間髪入れず返される声。
驚きと共に集中する視線の先で、翳していた左手を下ろしたフェイトが冷然と言葉を紡ぐ。
「如何いう事です?」
「彼等が・・・地球軍がバイドの存在する領域に戦力を放置し、あまつさえ警戒態勢を解く事なんて有り得ない。敵を前に無防備な状態を晒すなんて、彼等には・・・「地球人」には有り得ない」
「それは・・・」
「つまりこれは、もう「地球軍」じゃない」
そう言いつつR戦闘機群の一部、最も手前に位置する数機をデバイスで指し示すフェイト。
彼女の誘導に従い視線を投じ、ディードは視界に機体の一部を拡大表示する。
そして、その異常に気付いた。
「・・・破損?」
「違う、これは・・・」
呟かれた言葉に、オットーが補足を加える。
更にデバイスを通して機体を解析していた隊員が、驚愕の声を上げた。
「何だ、こりゃあ・・・」
「どうしたの?」
「此処の機体・・・どいつもこいつもスクラップ同然だぞ」
「何ですって?」
「見ろよ」
隊員のデバイスより投射された空間ウィンドウへと、ディードは視線を投じる。
拡大表示されたR戦闘機の解析結果は、意外な事実を示していた。
「・・・メインノズルが、無い?」
「あの機体はな。こっちはサイドスラスター、あれはミサイルユニット・・・向こうの奴に至ってはキャノピーすら無い」
次々と明らかになる、機体各部位の欠落。
兵器として実戦投入するに当たっては到底、有り得る筈の無い状態。
呆然とキャノピーの無いR戦闘機を見つめるディードは、隊員の1人が上げた声に対し過敏なまでに反応した。
「おい、あれを見ろ!」
ディードは振り返り、その隊員が指差す方向へと視線を移す。
その先、広大な空間を満たす劣悪な大気にぼやける様にして、無数の影が浮かび上がっていた。
目を凝らし、光学処理の精度を上げる。
鮮明となった情景はディードに、とある確信を与えた。
「・・・そうか」
「ディード?」
その呟きに、オットーが訝しげに声を上げる。
ディードは答えず、ゆっくりと前進、降下。
メインノズル付近の内部構造物が剥き出しとなっているR戦闘機の傍らに立つと、その機体下部に据えられたカーゴの表層を見やる。
貼り付いた油膜の一部をツインブレイズの刃で剥ぎ取り、露わとなった電子表示。
第97管理外世界の言語であるそれを解析・翻訳し、ディードは念話としてそれを読み上げた。
『No.5531 解体・廃棄処分』
『廃棄?』
聞き返す念話は隊員のもの。
フェイトは未だ黙して語らず、オットーもまた無言のまま。
ディードは視線を上げ、遥か前方に鎮座する鉄塊の群れを見据えて言い放つ。
『此処は、処分場なんだ』
彼女の視線、その先に鎮座するは無数の残骸。
巨大な水上艦艇、人型機動兵器、元の原形すら判然としないまでに捩じれた巨大な鉄塊。
その全てが酷く破損し、ひと目で起動など不可能と解る状態だった。
ディードは、先ほど感じた「死」の匂い、その根源に気付く。
此処は機能を停止した機械達の、謂わば「墓地」なのだ。
正常な機能を、存在する意義を喪失した機械群が送られる、終焉の地。
それらはこの地で跡形もなく解体・粉砕され、更に無数の工程を経て、最終的には僅かな痕跡すら残さずに葬り去られるのだろう。
無機質でありながら、同時に絶対的な「死」の気配。
生命活動を行う上で決して欠かせない本能からの警告、即ち「死」に対する畏怖を誘発するそれは、根源となる存在が生物か非生物であるかを問わない。
例えば、原形を留めぬまでに破壊された車があるとする。
その完全に潰れ、一枚の金属板となった乗員席を目にした時、人は否応なく「死」を連想するだろう。
其処に明確な「死」を表す存在、即ち乗員の遺体、若しくは血痕などが存在せずとも、人は半ば無意識の内に連想される「死」の概念に恐れを抱くのだ。
この精神作用は奇妙なもので、日常生活に於いては凡そ生命体の「死」とは無縁に思える場面、その随所で人間の意識を苛む。
日常でありながら非日常と隣り合わせの情景、人という存在の入り込む余地の無い空間、常ならばあるべき人の姿の無い空間など、それこそ枚挙に遑がない。
早朝の無人の街角。
工場に蠢く無数の機械群。
打ち捨てられた人形。
昏い水底へと続く階段。
溶鉄を吐き出す転炉。
幾重もの唸りを上げる重化学プラント。
埋立地に積もる塵の山。
煙突より立ち昇る黒煙。
高度文明の負の面が集積する、廃棄物処理場。
『つまり、此処はゴミ処理場って事か』
隊員の念話と共に、攻撃隊は周囲のR戦闘機群を調査すべく、各々が別地点へと散開した。
それほど距離を開けず、しかし過剰に密集する事もない。
この機会を幸いと、誰もが「敵性」軍事技術に対する情報収集を開始する。
デバイスを用いての解析精度など高が知れてはいるが、無駄になる事もあるまいとの考えからだった。
隊員達が各方向へと散り行く中、ディードはオットーを呼ぼうとしたが、彼女が1機のR戦闘機に掛かり切りとなっている事を察するや、別の調査対象を探して歩み出す。
そして数歩ほど足を進め、靴底に糸を引く油膜の存在を思い出すと、顔を顰めて飛翔へと移った。
彼女が目指すは、他とは造形を異にする奇妙なR戦闘機。
その機体の傍らへと降り立ったディードは、その異様な外観を眺めながら、ゆっくりと周囲を回る。
ほぼ漆黒の機体に、試験管にも似た青いキャノピーを備えたその機体は、一見したところ特に重大な損傷を負ってはいないかの様に思えた。
しかし、ほぼ正面へと回った時、ディードはキャノピーに走る無数の罅、そしてそれらのほぼ中央に開いた30cm程の穴の存在に気付く。
彼女は宙へと浮かび上がり、何の気なしにその穴を覗いた。
所詮は単なる残骸、そう思っての行動だったが、キャノピー内部を覗いた瞬間、その思考は後悔に支配される。
「・・・ッ!」
瞬時に青褪め、口元を手で覆うディード。
キャノピー内部は、凄惨としか云い様のない有様だった。
左右のグリップを握る2つの手、固定された脚。
それは良い。
廃棄される筈である機体内に人間の姿がある事、それ自体が異常だが、まだ許容できる。
問題は、その人間の状態だ。
その人物は、左右の手首と両脚とを繋ぐ部位が無かった。
腕も、胴も、その上に鎮座すべき頭部さえも。
あるべき人体の部位が根こそぎ消し飛び、代わりにパイロットシートに穿たれた直径30cm程の穴と、キャノピー内部にこびり付いた大量の黒い染みだけがあった。
グリップを握ったままの手首からは、どす黒く変色した骨格の一部が覗いている。
「ぐ・・・!」
耐え切れず、ディードは素早くキャノピーより飛び退くと、そのまま床面へと崩れ落ち嘔吐した。
胃の中のものを残らず吐き出し、出るものが胃液のみとなっても、嗚咽は止まらない。
余りにも鮮明に襲い来る、明確な「死」のビジョン。
クラナガン西部区画に於いて体感したそれすら凌駕する悪寒が、容赦なくディードの精神を蝕む。
嘗て管理局を相手取り闘っていた頃には意識に上りもしなかった「死」という可能性を眼前に叩き付けられ、彼女は自身が狂気と殺意の渦巻く戦場に居るのだという事実を改めて、しかしそれまでとは明確に異なる意識を以って再確認した。
地球軍の心境が、僅かながら理解できた気がする
この戦場に於いて、人間としての尊厳や生命など、何ら価値を持ち得ないのだ。
彼等はこんな無残な死を、バイドによる殺戮を幾度となく目にしているのだろう。
だからこそ、あれ程までにバイドを憎悪し、敵対する者をいとも容易く塵殺し、自らの生命さえ軽視する事ができるのだ。
彼等にしてみれば、実に単純な事。
殺さなければ、殺される。
敵であるとの疑いが生じたならば、他の一切を差し置いても先制攻撃を仕掛け、塵も残さず殺戮し尽くす事だけが、彼等にとっての生き残る術なのだ。
そうやって彼等は、バイドとの熾烈な生存競争を生き抜いてきたのだろう。
彼等にとっての闘争とは、敵性体の殲滅こそが全てなのだ。
だが、捕虜となったパイロットの証言を信じるならば、それ程までしてでも第97管理外世界の命運は風前の灯であるという。
地球軍の技術が進化するに合わせ、バイドもまた進化を以って対応する。
それに対し地球軍は更なる技術革新を為し、バイドも更なる進化を以って対抗。
際限なく繰り返されるその破滅的なサイクルは、互いの持つ力を常軌を逸した領域にまで押し上げた。
それでもバイドは常に地球軍の戦力を凌駕し、絶対的優位を保っている。
兵器単体の性能がバイド攻撃体を上回ったとして、全てのバイドを滅ぼすには至らない。
奴等は無数の次元、無数の宇宙に存在し、今この瞬間も尚、その数を増やし続けているのだ。
時空管理局本局に於いて視聴した聴取記録を思い起こし、ディードは背筋に寒気を覚える。
地球軍が倫理や道徳を捨て去ってまでして拮抗し得ない存在を前に、管理局が抵抗などできるものであろうか。
管理局は、この事実をどう捉えているのか。
そんな疑問を抱くと同時に、ディードはフェイトの考えを確信と共に理解する。
心を閉ざしたかの様な彼女の冷徹な態度を、ディードは作戦開始前より気に掛けていた。
それからというもの、戦闘の最中を除けば常にその事について思考を重ねていた彼女であったが、漸くその真意へと思い至ったのだ。
恐らく彼女は、管理局と地球軍の間に存在するこの決定的な差異に、逸早く気付いたのだろう。
この件に対する管理局の認識は、飽くまで「ロストロギア」バイドの暴走と、未開の次元世界による侵略行為としてのものだ。
上層部の思惑はまた違うのかもしれないが、少なくとも大多数の局員はそう捉えている。
クラナガンに於いて30万超もの犠牲者を出して尚、あの惨劇はロストロギアと違法な質量兵器、時空管理局法に無理解な第97管理外世界によって引き起こされた「事件」として認識されているのだ。
だが、地球軍は違う。
彼等にしてみればこの戦いは当初より、自己の生存を賭けた対バイド戦線の延長、即ち「戦争」なのだ。
「事件」に対応しようとする管理局と、「戦争」を行う地球軍との間には、絶対的な隔たりがある。
軍隊と相対するのは、何も管理局にとって初めての事ではない。
過去に幾度となく、彼等は魔法・質量兵器を問わず武装した軍隊と渡り合っている。
しかしそれらは、敵対世界が技術的に劣るケースが殆どであった。
仮に管理局が魔法技術体系の面で劣る事はあっても、絶対的な戦力差と巧妙な政治的交渉を背景に、最善と思われる形で管理世界への加盟を実現させてきたのだ。
だが地球軍は、そのいずれとも違った。
魔法技術体系を全く有さないにも拘らず次元世界へと進出し、しかも純粋科学技術からなるその軍事力は、唯の一個艦隊の戦力にも拘らず、本局及び地上本部を完膚なきまでに追い詰める程。
魔法を圧倒し、戦力差を覆し、強大な力で以って魔導師達の誇りを捻じ伏せた。
何もかもが管理世界の持つ認識、そして経験を逸脱している。
地球軍に対し管理世界の常識は通じず、地球軍の認識もまた管理世界には受け入れられない。
質量兵器にて武装した、強大な軍隊。
これまでと同じく、管理世界はその存在を許しはしないだろう。
そして自らを守る盾であり、敵を屠る剣である質量兵器を放棄する事を、第97管理外世界は頑として拒否するだろう。
その先に待つのは絶対的な決裂、決して重なり合う事の無い平行線だけだ。
恐らくフェイトは、自身を責める中で地球軍に対する分析を繰り返し、誰よりも早くその事実に到達したのだろう。
だからこそ当初より地球軍に対し敵意を剥き出しにし、牙を研ぎ続けてきたのだ。
平和的解決など望むべくもない事を悟り、しかしそれに対し一切の戸惑いも抱く事なく、只管に復讐の為の力を蓄えて。
そしてもう直、その機会は訪れるだろう。
彼女の前に、真に地球軍の運用するR戦闘機が現れる時。
その瞬間こそが、彼女の復讐が幕を開けるのだ。
そして上手く事が運べば、彼女自身の復讐を成すと同時に、管理局と地球軍の間に存在する明確な隔たりを、管理世界の共通認識とする事ができるかもしれない。
地球軍の主力兵器たるR戦闘機が魔導師によって撃破可能であると改めて証明できれば、管理局による第97管理外世界への強制執行の実現にも拍車が掛かるだろう。
となれば、その対象が21世紀の地球であろうが、22世紀の地球であろうが、地球軍は必ず武力抵抗に出ると予想される。
その時、管理世界の認識が「事件」であるか「戦争」であるか、それが状況を決定するだろう。
フェイトの狙いは、この作戦中に全局員の認識を「戦争」へと移行させる事だ。
それこそは被害を最小限に抑える為の最善の策であり、管理局が理念を達成する為の布石でもある。
このままでは、管理局に勝ち目など無い。
だが、此処で管理局全体の認識を変質させる事ができれば、少なくとも総合的に地球軍と対等にはなれるだろう。
自身達の世代では「戦争」が決着する事は無いかもしれないが、数十年、或いは百年といった長期に亘って見れば、十分に拮抗状態を維持する事ができるかもしれない。
最悪、目に見える形で管理局が勝利できずとも、負ける事さえなければ自然と組織は変容する。
地球軍という脅威が存在する事を知りつつ管理局が存続するとなれば、それは組織全体がその脅威に対応できるだけの力を有するものへと変容している事を意味するのだ。
此処で自身達が斃れても、その意思を継ぐ者達は幾らでも存在する。
極論してしまえば、次元航行艦等の戦力は幾らでも補充可能だ。
対峙する時間が長ければ、減少した魔導師の数も回復する。
長期的な視野で状況を捉えれば、状況が長引けば長引くほど管理局が有利なのだ。
無限の次元世界に存在する豊富な資源、そして人材。
地球軍の軍事技術に対する解析が進めば、その手は各世界の深宇宙にも伸びるだろう。
そして何よりも、管理局の持つ信念の強さは、地球軍のそれとは比較にならないものであると断言できる。
精神論ではないが、彼らの熱意は状況を打開する為に大いに役立つ事だろう。
フェイトは、未来に拡がる可能性を信じているのだ。
そんなフェイトの予測を理解しつつ、しかし同時にディードは自身の意識の片隅で、酷く冷ややかな声が響いた事を自覚した。
それは、大義などとは切り離された、一個の生命体としての本能の声。
ディードという個人としての、実に真っ当な思考。
そんな大義の為に、私達は馬鹿げた力を持つ存在に相対するのか?
フェイトはまだ良い。
家族の安否は気に掛かるだろうが、それでも彼女は自身の信念に基き、満足して死ねる事だろう。
では、オットーは?
最愛の双子の姉は、その大義を知る事もなく、地球軍に挑んで死ぬ事を良しとするのか?
他の隊員達は?
バイド制圧を目的として作戦に参加した彼等は、突発的に始まるであろう地球軍との戦いを受け入れられるのか?
自分は?
姉が死に、周囲の者が死に、知覚せぬ場で姉妹達が死んでも、果たして納得できるのか?
他人が勝手に始めた戦争で、私達は殺されるのか。
変わったな、とディードは自嘲する。
自身は、確かに変わった。
戦う事に意味を求めるなど、以前は無かった事だ。
だが今は、死にたくない、周囲の人々を失いたくはないと考えている。
それが自身の納得できない事象によるならば尚の事だ。
処理所……まさかここは灼熱の…支援
支援
支援
実際のところ、現在の管理局はほぼ2つの派閥に分裂し掛けている。
共にバイドを制圧するという認識は同一だが、その後の展望がまるで違うのだ。
第97管理外世界に対する強制執行を断行すべし、との主張を繰り返す強硬派。
バイド制圧後に交渉のテーブルを設け、叶うならば相互不干渉条約を結ばんとする穏健派。
其々の派閥が火花を散らし、互いに睨み合っているのが現状だ。
現在のところ、穏健派が主流ではある。
クラナガンの惨状を目にした各管理世界は、圧倒的な軍事技術を有する地球軍との衝突を望んではいない。
望んで業火に飛び込む者は居ない。
余計な被害を避ける為にも、互いに不干渉を貫くべきだ。
恐らくは地球軍も、バイド以外に余計な外患を抱えたくはないだろう。
彼等は、そう主張した。
対して強硬派は、飽くまで第97管理外世界に対する管理局法の適用に拘る。
余りに多くの犠牲を生んだ首都クラナガンを有するミッドチルダ全域の支持を受けた彼等は、質量兵器にて武装した巨大軍事組織の存在など、断固として許容しないと声高に叫んだ。
地球軍が道義を解しない無法者の集団である事は、クラナガンの惨状を見れば明らか。
ならば即刻、21世紀の第97管理外世界に対し強制執行を敢行し、その技術発展を防ぐべきだ。
地球という惑星を制圧する事で地球軍の動きを牽制できる上、同一時間軸上の存在であれば地球軍の存在自体に変容が生じ、可能であれば抹消すらできるかもしれない。
たとえそうでなかったとしても、今現在に於いても危険極まりない質量兵器を大量に生産し続けている第97管理外世界は既に、管理世界にとって重大な脅威である。
当該世界の住人達が質量兵器の廃絶に賛同する可能性は極めて低く、ならば武力を背景として実質的な管理下に置く事によって、その生産能力を奪うしかない。
そして、縦しんば22世紀の第97管理外世界との本格的な交戦状態に移行したとしても、次元航行部隊が戦略魔導砲アルカンシェルを有している以上、破滅的な戦略攻撃は抑止できる。
その上で敵性技術を解析し、地球軍を末端から切り崩せば良い。
彼等は、そう嘯く。
ディードとしては、穏健派に同調していた。
管理局が如何に巨大な組織であろうと、関わるべきでない事象というものは存在するのだ。
組織の許容範囲を超える事象に手を出す事は、それ即ち破滅を意味する。
管理局が崩壊すれば次元世界は未曽有の混乱に陥るであろう事は容易に想像が付く上、その中で姉妹や知人達が無事でいられる保証もない。
況してや、万が一にでも再びバイドの様な敵が現れた際、今回のような大規模制圧作戦の実現など望むべくもないだろう。
それ以前に今作戦の成否さえ未だ不透明であるというのに、地球軍への対応を考えるなど時期尚早だ。
少なくとも、彼女はそう判断していた。
対してフェイトは、明らかに強硬派寄りだ。
地球軍の存在を許さず、飽くまで管理局の理念に則り裁こうと考えている。
無論、其処にはスクライア無限書庫司書長及びシグナムの負傷、そしてクラナガン31万の犠牲者存在が影響している事は間違いない。
だがそれでも、ディードは考えてしまう。
フェイトは、本当に冷静であるのか。
復讐心に突き動かされるまま、勝ち目の無い戦端を開こうとしているのではないのか。
穏健派の動きを封じる事に気を取られ、自身ですら意識し得ない無謀を行おうとしているのではないのか。
どうしても、その危惧が脳裏から離れないのだ。
口元を拭い立ち上がると、ディードは軽く首を振りつつ余計な考えを打ち消す。
今はこの施設からの脱出、そしてバイド制圧こそが急務だ。
将来に不安を抱くのは、作戦終了後でも問題は無い。
もう一度、キャノピーに穴の開いたR戦闘機を見やるディード。
何故、廃棄される機体内部に死体があるのか、不審な点が多々残るそれ。
一刻も早くオットー達と合流し、この機体に対する調査を行わねば。
そう考え、背後へと振り返るディード。
そして彼女は、そのまま動きを止めた。
「・・・オットー?」
呟かれた声に、答える者は存在しない。
更に念話を発してはみたものの、こちらも何らかの要因により返答は無かった。
だが、それも当然の事だ。
支援が間に合わないw
支援
支援
バックします支援
凄い数の支援だWW
支援
えーと・・・代理スレに投下したのですが、解除されたようですので続きを投下します
彼女の視界に、双子の姉の姿は無かった。
金色の刃を振るう、執務官の姿も無かった。
共に戦っていた4名の攻撃隊員、その誰1人の姿も無かった。
彼女の眼前に拡がるのは、唯一つ。
「何で・・・」
僅か数m先に聳え立つ、巨大な鉄製の壁だけだった。
「オットー!?」
堪らず壁面へと走り寄り、拳を叩き付けて叫ぶ。
しかし、返事は無い。
数分前までは、確かに存在などしなかった筈の鉄壁だけが、無情にもディードの拳を弾き返す。
「オットー! ハラオウン執務官! 誰か!」
壁面を叩きつつ、更に叫ぶ。
だがそれでも、答えが返される事は無い。
沸き起こる悪寒に押される様にして、ディードは更に激しく壁面を打った。
その時、拳の当たっていた面が、微かな音と共に崩れ落ちる。
ディードは尚も壁面を叩こうとしていた腕を止め、その崩れ落ちた部位を見やった。
「・・・これは?」
そして、暫し呆然とそれを見詰め、数秒して手を伸ばす。
崩れた壁面の中から覗く、酷く傷んだ配線。
その束を握り締め、渾身の力で以って引く。
更に広い範囲で壁面が崩れ、細かな錆びた金属片と比較的大きな鉄塊、元が何であったかも判然とせぬ小さな部品が床面へと散らばった。
それらへと視線を走らせ、ディードは呟く。
「何、これ・・・?」
配線、鋲、メーター類。
嘗ては何らかの機械類を形成していたであろう、多種多様の金属塊。
タイヤのホイール、シャフト、スクリュー、ファン。
明らかに車両、若しくは小型水上船舶を構築していたであろう部品群。
イヤリング、ブローチ、腕時計。
顔も知らぬ誰かが身に着けていたであろう、数々の装飾品。
そして、何よりディードの目を引いたものは。
人工歯、人工骨、人工関節、ペースメーカー、機械式の義眼。
黒ずんだ液体の跡がこびり付いた、嘗ては誰かの体内に存在したであろう、人工の生体組織。
「ひ・・・!」
思わず声を漏らし、後ずさるディード。
だが彼女は、それに気付いた。
気付いてしまった。
突如として出現した巨大な壁面、その至る箇所から覗く無数の破片に。
「あ・・・」
明らかに車のヘッドライトと分かるもの。
壁面に取り込まれる様に、ボンネットの先端だけを覗かせている。
エア・コンディショナーの室外機。
良く見れば、ファンがまだ回転している。
圧縮されたヘリコプターの残骸。
潰れたコックピットの隙間より伝う幾筋もの黒い液体の跡が、内部の様相を物語っている。
そして、大量の「デバイス」。
ストレージ、アームド、ブースト。
多種多様、形態を問わず大量のデバイスが、壁面に埋め込まれていた。
それらの点灯部が微かに、しかし一斉に明滅を始める。
ディードの意識へと、強制的に介入する念話。
魂なき無数の声が、ディードの意識へと響き渡る。
『Help』
「あ・・・あ・・・」
『Help my Master』
『Please help our Masters』
「嫌・・・」
『Help』
『Destroy』
『Please hurry』
「嫌・・・!」
『Destroy us』
『Please』
『Kill us』
『Now』
「嫌ぁ・・・!」
主の救出、そして自らの破壊、即ち「死」を望む、何十、何百というデバイス達の声。
ディードは両の掌で耳を覆い隠し、小刻みに首を振る。
とても理解などできない「死」への渇望に満ちた無機質な声に、彼女は心底より恐怖していた。
後退さるディード。
と、彼女のブーツが何かを踏み付けた。
奇妙な感覚に恐る恐る下を向けば、細い鎖に通された2枚の金属板、そして幾つかのリング。
彼女のカメラアイは、それらの表面、そして裏面に刻まれた文面を、正確に読み取っていた。
『時空管理局 第75管理世界駐留部隊 第4航空隊 イリス・バーンクライト空曹長 Age19』
『C to I 永遠の愛を誓って』
『U and M パパとママへ 結婚40年目のお祝いに』
『リースへ パパとママから 10歳の誕生日おめでとう』
黒い染みに侵食されたそれらの有り様は、持ち主の辿った末路を連想させるには十分に過ぎた。
更に表情を凍り付かせたディードの意識に、更なる声が響く。
『Please eliminate us』
『Hurry・・・now』
『Please』
「嫌あああぁぁぁぁッッ!?」
軽くSFホラー支援
ディードは最早、間欠泉の様に湧き上がる恐怖を抑える事ができなかった。
彼女の意識を構築するありとあらゆる精神構造が恐怖に塗り潰され、その肉体を強制的に突き動かし、迫り来る「死」の予感からの逃避へと駆り立てる。
尚も呼び掛けるデバイス達の声を振り切る様にして身を翻し、ディードは無数の残骸から成る鉄壁に背を向けて駆け出した。
だが直後、突如として響きだした高音に、思わず足を止める。
そして、その音の発生源へと視線を向けた時、彼女は悟った。
これは、復讐なのだ。
利用され、打ち捨てられ、勝手な都合によって破棄された機械群による、人間への復讐。
自身も、そう思っていたではないか。
他人の勝手な都合で殺されるのか、自身はその事実に納得できるのか。
できる筈がない。
未だ余命を残しつつ、他人の都合によって「死」を強要されるなど、真に耐えられる人間など存在する訳がない。
では、彼等は。
機械はどうなのか。
創造主の勝手な都合によって造り出され、勝手な都合によって廃棄される彼等は。
自らの運命を、真に受け入れているのか?
機械に自由意志など無い。
そんなものを機械に持たせる事は、余りにもリスクが大き過ぎる。
揺らぐ事の無いその事実を理解しつつもディードは、復讐という言葉を連想せずにはいられなかった。
何より、彼女の眼前に展開する光景は、雄弁にその思考を肯定している様に思えたのだ。
「ごめんなさい・・・」
知らず、そんな言葉が零れる。
ディードは、その機械群を知っていた。
知らない筈がない。
彼女達は、正確には彼女達の創造者は使い捨てを前提として、それらを大量に前線へと投入していたのだから。
湯水の如く使い捨てられるそれらの末路を、姉妹の誰もが知ろうともしなかった。
だからこそ、彼女は恐怖する。
彼等の怨嗟に満ちた言葉が、怨恨の視線が、自身を射抜いているかの様な感覚。
もはや彼女は、逃げようとする意思すら挫かれていた。
「ごめ・・・なさい・・・!」
溢れ返る絶望と共に紡がれる、謝罪の言葉。
だがそれらは、答えを返す事をしない。
震え、腰を抜かし、ツインブレイズを取り落とす彼女の眼前で。
キャノピーに穴の開いたR戦闘機と数十機の「ガジェット」群が、その砲口に光を宿していた。
数瞬後。
ディードの華奢な身体を、膨大な光の奔流が呑み込んだ。
* * *
鼓膜を劈く様な悲鳴が、広大な空間に響き渡る。
だがそれは、連続した爆発音と金属の衝突音によって掻き消され、忽ちの内に意識の外へと追いやられた。
「オットー、上!」
汚染されすぎw支援
フェイトが叫ぶや否や、ISレイストームの緑の光条が、情報より迫り来る巨大な影を貫く。
爆発。
飛び散る金属片を異に解する事もなく、フェイトはプラズマランサー6発を斉射。
それらは各々に異なる目標へと飛翔し、6体の異形を消し飛ばす。
爆炎が視界を覆い、しかし後方からの風によりすぐさま晴れた。
その後に残る光景に、フェイトの頬を一筋の脂汗が伝う。
「遅かった・・・!」
「不味いですね。このままでは退路を断たれます」
隊員の言葉に、フェイトは頷いた。
晴れた爆炎の向こう、異形の撃破地点。
其処には巨大な鉄製のブロックが、巨大な鉄柱を形成していた。
様々な鉄製品のスクラップが、巨大なブロックとして構造物を成している。
それは、一瞬の事だった。
各員がR戦闘機の残骸を調査していた最中、オットーが異常に気付く。
ディードとの念話が繋がらず、彼女の向かった方向を見やれば、巨大な鉄製の壁が空間を隔てていたのだ。
すぐさま壁へと駆け寄り、その壁面を叩きディードの名を叫び始めるオットー。
更に1人の隊員がデバイスの解析モードを起動したまま壁面へと接近し、その表層を調査しようとする。
それが、間違いだった。
空を切る音。
巨大な影が隊員の傍を掠め飛んだ直後、彼の絶叫が上がった。
誰もが驚きその方向を見やれば、空中に1本の太い「線」が描かれているではないか。
それが鉄製の構造物であると理解した瞬間、またも「線」が、今度は床面から上部構造物へと垂直に描かれた。
誰もが呆然とその現象を見守る中、悲鳴の様な念話が発せられる。
『脚が・・・脚が! 挟まれた! 動けない!』
即座に2名が救助に向かうも、その瞬間から無数の鉄柱が攻撃隊を目掛け伸長を始めた。
その速度たるや、空戦魔導師の飛行速度を完全に凌駕している。
すぐさま鉄柱の迎撃が開始され、その過程で「線」を描く存在の正体を知り得たのだ。
それは、巨大な蟲としか云い様が無かった。
機械ではあるが、その造形たるや醜悪な昆虫を思わせる。
幅8mはあろうかというそれが、廃棄物で構成された鉄製のブロックにより鉄柱を構築しつつ、凄まじい速度で突進を行っていたのだ。
幸いな事にそれらの耐久性は、外観に反し然程でもなく、容易に撃破が可能であった。
しかしその速度と数に押され、攻撃隊は徐々に迫り来る廃棄物の壁に追い詰められてゆく。
既にR戦闘機群は鉄塊によって押し潰され、広大であった筈の空間はその6割近くが構造物に覆われていた。
逃げ場もなく、かといって迎撃速度が上がる訳でもなく、攻撃隊は迫り来る壁に対し間断ない斉射を行う以外に、現状を切り抜ける術を持ち合わせてはいなかったのだ。
「この・・・!」
攻撃を続けるフェイトの背後、一際大きな悲鳴が上がる。
隊員からの念話、救助を完了したとの報告。
僅かに視線を背後へと投げ掛ければ、膝下を切断され呻く隊員の姿。
フェイトはすぐさま正面へと向き直り、ライオットブレードを振るう。
接近中の蟲が魔力の刃によって切り裂かれ、後方構造物までもが切断されて崩れ落ちた。
だが、足らない。
迫り来る壁を破壊する間に、その倍近い構造物が生成されるのだ。
このままでは攻撃隊は、あと数分と保たずに押し潰されるだろう。
「く・・・!」
「どうするんです、執務官!? このままでは全員潰される!」
「分かってる!」
支援
更にプラズマランサーを放ちつつ、フェイトは苛立たしげに声を返した。
余りにも苛烈な突進攻撃に、大規模砲撃魔法の準備に移行する事ができない。
カバーする人員も足らず、フェイトが迎撃陣を抜ける猶予など、僅かたりともありはしないのだ。
「どうすれば・・・!」
呟きつつも、迎撃の手が緩む事はない。
だがそれでも、壁は徐々に距離を詰めてくる。
こんなところで終わりなのかと、フェイトの意識に焦燥と憤りが湧き上がった、その時。
背後より、オットーと隊員の声が上がった。
「みんな、こっちへ!」
「床にダクトが! 早く中へ!」
その言葉に、フェイトは傍らの隊員へと念話を送る。
先に行けと促し、自身は更に迎撃の弾幕密度を上げた。
そして十数秒後、彼女の脳裏へと声が飛び込む。
『全員、ダクト内に移りました!執務官も早く!』
『私は良いから先に! 数を減らしてから行く!』
最寄りの敵を8体ほど撃破すると、フェイトは身を翻し雷光の如くダクトを目指した。
一辺が2m程の正方形のそれへと、フェイトは減速する事もなく飛び込む。
変化した大気圧の壁にぶつかり、一瞬ながら視界が眩むもすぐさま回復。
下方へと垂直に延びるダクト内部を高速で翔けながら、先行する隊員達へと念話を送る。
『そちらの様子は?』
『200m下方、通路に出ました。先程の回廊とほぼ同じ広さです。敵影なし、負傷者の治療を・・・』
其処で唐突に、隊員の念話が途絶えた。
途端、フェイトの意識が更に研ぎ澄まされ、彼女は再度念話を放つ。
『こちらハラオウン、応答せよ。何があったの』
『・・・こちらオットー。聞こえますか?』
『聞こえる。状況を知らせて』
そして返ってきた言葉は、フェイトに歓喜と焦燥とを齎した。
待ちに待った瞬間、復讐の時。
『接敵した・・・R戦闘機、急速接近!』
その念話を受け取るや否や、フェイトは身体の上下を入れ替え、ライオットブレードを上段へと振り被った。
背後で刃先がダクト内部を削り、壮絶な火花を散らす。
だがフェイトは、それを気に留める素振りすら見せない。
唯一言、念話を発しただけだ。
『総員、壁際へ』
次の瞬間、フェイトは全力でブレードを振り下ろす。
狭いダクト内部、その刃先は振り切られる前に壁を削って止まる筈だった。
だが、刃がダクト内にて垂直となった、その瞬間。
バルディッシュは、一瞬にしてライオットザンバー・カラミティへと変貌していた。
雷光を纏う二又の大剣が、轟音と共に目前の壁を容易く切り裂く。
そして、フェイトの視界がダクト内部から通路へと移行すると同時。
振り抜かれたカラミティの巨大な刃が、上部構造物を突き破ってR戦闘機へと襲い掛かった。
「ッ・・・!」
大量の金属構造物を散弾の如く撒き散らしつつ、R戦闘機へと襲い掛かる二又の刃。
必殺と思われた一撃はしかし、接触直前にR戦闘機がサイドスラスターを作動させ数十mを平行移動した事により、通路を破壊するに留まった。
刃が床面を粉砕すると同時、想像を絶する轟音と衝撃が、攻撃隊とR戦闘機、そして攻撃の実行者たるフェイトをも襲う。
音速を優に超えた鉄片が肌を切り裂き、バリアジャケットをも貫かんとする中、フェイトはカラミティを振り抜いた体制のまま床面へと着地し、微動だにせず敵機を見据えていた。
そして、徐に口を開く。
「・・・流石に、この程度じゃ墜とせないか」
そうして彼女は、ゆっくりと立ち上がると、右手一本でカラミティを横薙ぎに振り抜いた。
隊員からは退がれとの警告が届くが、フェイトはそれらを無視。
こちらの様子を窺っているらしきR戦闘機に切っ先を向け、言葉を紡ぐ。
「こちらは時空管理局」
R戦闘機は動かない。
漆黒の機体、漆黒のキャノピー。
そのまま闇に溶け込みそうな配色だが、上部の僅かな白い装甲が光を反射していた。
フェイトは敵機を観察しつつ、更に言葉を繋げる。
警告ではなく、既に決定された事項を伝える為に。
「地球軍に告ぐ。これより我々は時空管理局法に則り、質量兵器の排除を開始する。以上」
それだけを伝えると、フェイトは一切の前触れ無くR戦闘機との距離を詰め、カラミティを振るう。
横薙ぎの一撃を、敵機は垂直上昇とフロントスラスターによる急速後退を以って回避。
そのままフェイトへと背を向け、通路の奥へと向け加速する。
舌打ちをひとつ、フェイトは念話を発した。
『追撃!』
『了解!』
即座に、攻撃隊はR戦闘機の後を追い、通路の奥を目指し飛翔を開始する。
しかし、曲がりなりにも相手は戦闘機。
速度の問題から、追い付くなど到底不可能である事は解り切っている。
何より、幾ら広大とはいえ、限定空間である通路。
真正面より波動砲を撃ち込まれれば、回避する術もなく全滅するだろう。
だが、フェイトは確信していた。
R戦闘機は、すぐにこちらを抹殺する事はない。
殺すのは「観察」が終了してからだ。
あの機体は今、より「観察」に適した場所を探している。
自身の安全を確保しつつ、こちらの「性能」を見極められる場所。
即ち、機体の機動性を確保できる空間だ。
支援
そして、その予想は違う事なく的中する。
600mほど前進した地点、薄闇に包まれた空間。
R戦闘機は其処で、こちらに機体後部を向けたまま静止していた。
フェイトはバルディッシュを握り直すと、更に速度を上げる。
空間はかなりの広さを誇り、上下左右いかなる方向へと飛んでも接触の心配は無い様に思えた。
フェイトは、ノズルの近辺より発せられる微かな光を頼りに、一機に接近して袈裟掛けに斬り下ろそうと試みる。
そして、R戦闘機まであと100mと迫った、その瞬間。
『退がって!』
オットーからの念話に、フェイトは咄嗟に前進を中断した。
彼女とR戦闘機の間を、下方から上方へと突き抜ける、巨大な鉄塊。
そして次の瞬間、空間全体が照明によって照らし出される。
眩さに目を庇い、しかしすぐに光度慣れしたフェイトは、改めて目前のR戦闘機を見据え。
「え・・・?」
その機体が、先程のR戦闘機とは異なる事に気付いた。
「これは・・・!?」
機体の配色はほぼ同じながら、造形の細部が違う。
全体が一回りほど小さく、機体後部のエッジは先程のそれよりも短い上に本数も少ない。
左右のエンジンユニットの造形も大きく異なり、全体を覆う装甲板が存在していなかった。
そして、何より。
「ッ・・・!」
試験管にも似た、青いキャノピー。
その中央には30cm程の穴が開き、中からはグリップを握り締めたままの左右の手首、そして固定された人間の腰部以下の脚部が覗く。
胴部は無い。
パイロットシートに穿たれている黒々とした穴だけが、対峙する者にパイロットの末路を伝えていた。
そして機体下部の砲身、その砲口に青い光を放つ粒子が集束を始める。
「波動砲!」
攻撃隊、散開。
しかし、突如として頭上より降り注いだ大量の鉄塊により、彼等は迎撃の為に足を止めざるを得なかった。
見れば、頭上に3つの巨大な影が浮遊している。
「あれは・・・?」
それは、互いに酷似した造形を持つ、3機の大型機械だった。
其々が側面、または下方にエネルギーコアらしき部位を持ち、常にユニットの一部が重なる様にして機動している。
その異形は上部より大量の鉄塊、即ち廃棄物を放出し、有毒物質と重金属の雪崩を以って攻撃隊を押し潰さんとしていた。
降り注ぐ巨大な鉄塊の雨を躱し、小型のものは迎撃し、攻撃隊は必死の回避運動を続ける。
無論、フェイトも例外ではない。
膨大な魔力保有量に裏打ちされた大火力を生かし、頭上より落下してくる大型の鉄塊を迎撃。
しかし、重力により加速されたそれらは、破壊されてなお細かな破片となり、高速にて彼女の身体を貫かんと迫る。
フェイトは皮膚の其処彼処を切り裂かれつつもそれらを回避するも、更に執拗に降り注ぐ鉄塊によって、満足に攻撃行動へと移行する事ができない。
視界の端で集束する青い光に、彼女の内で幾重もの警告の声が響いた。
『このままじゃ・・・攻撃可能な者は!?』
『駄目です! 皆、回避で精一杯だ! 攻撃なんてとても・・・!』
しえーん
回避行動を継続しつつ念話を交わす間にも、耳障りな高音と共に波動砲の充填が加速する。
死体を乗せたR戦闘機は位置を微調整し、その機首を真っ直ぐにこちらへと向けていた。
間に合わない。
フェイトは理解した。
一瞬後にはその機首より膨大なエネルギーの奔流が放たれ、自身等は跡形もなく消し飛ぶだろう。
その予想に違わず、R戦闘機の機体後部より光が洩れた。
反動制御の為か、機体後部のメインノズルに点火したのだろう。
敵機、砲撃態勢。
『散開・・・散開して!』
『無理です、動けない!』
『上方、更に落下物!』
隊員達は各々に砲撃の射界外へと逃れようと試みるが、しかしその動きは砲撃の充填速度と比して余りにも遅い。
誰の目にも、結末は明らかだった。
もう、間に合わない。
そして、遂にその瞬間が訪れる。
集束する青い光が、唐突に黄金色へと変貌。
光は一瞬にして膨張し、爆発的な解放へと向かう。
轟音と共に発射された砲撃が、落下する無数の鉄塊により形成される壁を貫き、フェイトの視界を埋め尽くして。
瞬間、その砲撃軌道があらぬ方向へとねじ曲がった。
「え?」
呆然と零れた声は一瞬。
フェイトの視界の中、金色の砲撃は急激に軌道を変更し、壁面へと着弾。
巨大な鉄製の壁面が一瞬にして消し飛び、同時に粉塵と爆炎の向こうから2基のミサイルが高速にて飛来する。
内1基は、波動砲を放ったR戦闘機から飛来した質量兵器の弾幕により撃墜されるも、残る1基はその機体左側面へと着弾、凄まじい爆発と共に装甲を跡形もなく破壊し、機体そのものをも数十mに亘って弾き飛ばした。
被弾したR戦闘機は業火を噴きつつも態勢を立て直し、こちらもまた2基のミサイルを放つ。
破壊された壁面へと向かって突進するそれらは、しかし次の瞬間、視界を塗り潰す閃光と轟音、そして衝撃と共に消滅していた。
だが、フェイトの意識を引き付けたのは、その事実ではなく。
「魔・・・力・・・?」
2基のミサイルを打ち砕いた雷光、そして全身を押し潰さんばかりに圧し掛かる「魔力」による重圧だった。
「まさか・・・!?」
粉塵の向こうより現れる、漆黒の機体。
空間すら歪めんばかりの魔力を纏ったその機体は、先程フェイト等の追撃を振り切ったそれ。
青い光の粒子を集束しつつ、交戦域へと侵入してくる。
フェイトの脳裏を過るは、本局にて確認した交戦記録、クラナガンにて確認された魔力を制御する機体。
冷静に思考すれば、目前の機体も、そして背後の機体も、クラナガンでの機体との明確な共通点があるではないか。
ワイズマンか?ナノマシン波動砲はヤバい支援
しえん
義父降臨支援
しえん
脳内BGM・抑制不能
そして、クラナガンでの砲撃時に記録された、奇妙な幻影。
ロストロギア「闇の書」。
若かりし日の義母「リンディ・ハラオウン」、そして義兄「クロノ・ハラオウン」の幼き日の姿。
浮かび上がる複数の疑問。
地球軍パイロットの証言から浮かび上がった、1つの可能性。
それら全てが、フェイトの意識内を駆け巡る。
何故、嘗ての闇の書が投影されたのか。
何故、義母と義兄の幻影が現れたのか。
何故、あの機体は魔力を制御できるのか。
何故、この機体もまた魔力を纏うのか。
この機体と「クライド・ハラオウン」との関連性は?
「こちら時空管理局、執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウン! 応答を! 応答してください!」
咄嗟に叫ぶフェイト。
反応は無い。
攻撃隊から発言の真意を問い質さんとする念話が入り、目前のR戦闘機、「試験管」にも似た漆黒のキャノピーを持つそれが纏う魔力、その密度が更に高まっただけだ。
「お願い! 応答してッ!」
そして遂に、力は解き放たれた。
R戦闘機を中心に突風が吹き荒れ、フェイトは木の葉の如く吹き飛ばされる。
それでも何とか態勢を立て直し、驚愕と共に見上げた視線の先に、無数の稲妻が網目状に走った。
機体より炎を吹き上げるR戦闘機、そして頭上の大型機械が明らかな戦闘機動を開始すると同時。
魔力を纏うR戦闘機を中心に「広域天候操作魔法」が発動、数十条もの雷撃が周囲へと降り注ぐ。
身体を掠めんばかりの至近距離を貫く雷光に悲鳴が上がる中、フェイトは血を吐き出さんばかりに悲痛な声を上げ続ける。
彼の人を呼び戻す為に。
彼を待ち続けるたった1人の伴侶、たった1人の息子の許へと連れ帰る為に。
「クライド・ハラオウン提督! ・・・義父さんっ!」
無数の雷撃が、空間を埋め尽くした。
投下終了です
時間をかけ過ぎてしまい、ご迷惑をおかけしました
という訳で今回は、ちょっとしたホラーテイストでお送りしました
打ち捨てられ、動く筈のない機械の残骸が襲ってくる
第十六話のゆりかごと同じく、「T」と「SUPER」、そして「Δ」で描かれたシチュエーションです
しかしシリーズ通して、こういったホラーじみたタイプの敵は、必ずといって良いほど出現してきました
残骸が寄り集まって動き出したもの、汚染によって動き出した廃棄物関連の機械、若しくは廃棄物そのもの等々・・・
どうにもアイレムは、化学文明の裏側に潜む陰の面を描くのが好きな様です
今回舞台となったステージは「T」のステージ7「腐敗都市」、そして「U」のステージ5「増設基地」、更に「SUPER」のステージ6「廃棄物処理場」、以上3ステージのハイブリッドです
前半でメインとなっているのは処理場ですが、後半では他のステージの特色も現れ始めます
「蟲(名称不明)」
「U」のステージ5にて登場する、鉄のブロックを生み出す蟲、そして「喰う」蟲です
「赤」がブロックを造り、「青」がブロックを喰う
このステージでは、2種類の蟲の性質を利用して進む事になります
勿論、この蟲は撃破する事もできるのですが、ハズレのタイミングでうっかり「青」を撃破したりすると、強制スクロールによって破壊不能の壁に挟まれて御陀仏なんて事に
かといって撃たずにいると、ブロックを引き連れてやってきた「赤」に進路を塞がれ、これまた挟まれてウボァー
更には両者とも巨体な上に移動速度が尋常ではなく、更に2週目ともなると耐久力の向上も相俟って無理ゲーに
他の敵からの攻撃も激しい為、敢えて壁を作らせて弾幕を凌ぐ必要性まで出てきます
因みに自分は、2週目でこの面を越えた事がありませんorz
「R-9W WISE MAN」
第九話で登場した「R-9WF SWEET MEMORIES」の先々代で、WISE MANシリーズの最初期型、パイロット達が恐れる試験管キャノピー搭載機の初代です
特殊波動砲室用試験の為に開発された機体で、パイロットのメンタル面に掛ける負担はRシリーズ中でも随一
乗り換えひとつとっても、消耗の激しさゆえパイロットが自力で行う事はできず、試験管型キャノピーごと入れ替えるという手段を取っていた程
波動粒子の集束に遠隔誘導機能を持たせたナノマシンを使用し、波動砲発射後の遠隔操作を実現した機体でもあります
「FINAL」のF-Bでは他のRシリーズと共に大挙して押し寄せ、次から次へとナノマシン波動砲を放つ鬼畜機体
何せ回避しても軌道がねじ曲がる為、追い詰められて喰われるケース多し
誘導をミスった時点で撃墜確定です
「R-9WZ DISASTER REPORT」
WISE MANシリーズ最後の機体にして悲劇の傑作機
それまでの特殊波動砲研究のノウハウを全て注ぎ込んだであろう、強力な波動砲を搭載した機体です
如何なる方法によってかは明らかにされてはいませんが、所謂「災害」と呼ばれる現象を人為的に引き起こすという、目ん玉飛び出る様な波動砲を搭載しています
実際にどんな災害かは次回に描写しますが、非常に強力でありながら、同時にとある問題点を抱え込んでしまいます
それは「実用化されたら災害が人為的であるか自然現象であるか判別できない」というものです
案の定、開発当初からバイド戦「以外」での使用に関する懸念が強かった為か、最終的には使用を限定する条約が結ばれるまでの騒ぎになりました
そして結局、実践に投入される事は無かったとの事
勿論この話では、その開発過程に於いて魔法技術体系との密接な関わりがあります
因みに、コードネームはとあるゲームの洋題です
日本での題名は・・・
最後の方で出てきた、3機一組の大型機械についてはまた次回
戦闘が本格化します
次回予告
フェイト・T・ハラオウン(21)
クライド・ハラオウン(不明)
オットー(不明)
ディード(不明)
時空管理局員 4名
次回の犠牲者はこの方々です
おやすみなさい
絶体絶命管理局 凍てついた記憶たち
武者○伝で気になったことがー
「プロジェクトF.E.I.T」じゃなくて「プロジェクトF.A.T.E」では?
わざと?
GJ!!です。
本当に絶望一色だw
戦闘でもキツければ、地球と管理局の関係も酷い事に。
フェイトさん理論で、管理局が地球に拮抗できても、最後に笑うのは漁夫の利になるバイドっぽい。
問題のバイドは、漁夫の利が無くても、二つの勢力と戦え勝てる化け物ですがw
GJ
アイレム臨時放送噴いたw
あと(21)がロリに見えて困るww
リリカルに限らず魔法少女モノ的には愛の奇跡で義父の意識が目覚めるんだろうけれど
アイレムに限らず多くの横シューよろしく絶望が待ってるんですね、解ります
R-TYPE氏お疲れ様です。R-9Wシリーズは魔法技術体系の転用機体だから
こうなると「R-99 LAST DANCER 」は・Rシリーズ・バイド・魔法技術のスーパーを超えた
ハイパー汎用機になってしまうのではないか…怖ぇー
GJです。
「ちょっとお前ら戦闘機のパーツになってもらいますね。抵抗が面倒になったら次元ごと消去しますね」
「ちょっとお前ら全員メッタ殺ししつつ侵略しますね。滅ぼしたと思っても何度でも戻ってきますね」
うん、管理局に必要なのは諦念主義じゃないかと思うんだ。
そのうち局員の誰かがノーメマイヤーの空間に迷い込んで
バイド化しそうで怖い
ケルベロスと因縁を持ったフェイトとか…
GJ!!
とりあえず一言・・・
くらっ!!めっちゃホラーテイストでしたな〜
デバイスなんかがあんなこと言ってきたりしたら
もう、トラウマ確定だ。
それにしても、強硬派は地球を理解してない地球軍は管理局に無関心
なんて、平行線なんだ・・・
強硬派の方々には地球軍が話し合えない状態だと理解しないと、
BAD ENDに直行になりかねんだろww
次回予告の犠牲者におやすみなさいって
もう死亡確定?
>>247 GJ!
あのコンテナどもは鬼門すぎる。そしていきなりのホラー展開にビビったよwwwここのボスが気になる。
ディードさんの行方が超心配、生き残ってもバイドに精神汚染されてそう。
災害型波動砲が凄い効果になってるしwww
なんという平行線、ファイトそんと強硬派の皆さん、それやると被害がエライことになるっすよ、藪蛇というか。
地球側はまだ全ての手札を見せていないんだぜ、さらにバイド相手にどれだけ生き残れるか分からないのに…
>>251 縦シューも絶望が待ってるぜ!
例:レイストーム移植版EXエンド
相変わらずR−TYPE氏の作品は痺れる展開です。
次回が楽しみでならない。
GJ!
それにしてもフェイトや強硬派のやり方は人類滅亡フラグじゃないか。
地球側も魔法を解析してくるだろうし泥沼になってバイドの一人勝ちになってしまいそうだ。
管理局はバイドを回収するなんて楽観視はやいとこやめた方が良いな
GJ
絶体絶命都市の英名を関するアレはいろんな意味でやばすぎですw
何をどうやったらあんなものを開発できたのやら
まさに魔法
GJしかしバイオハザードのゾンビに話しかけても無駄な事だと思う。
意識があってもフェイトもいきなりお義父さんなんてお前誰だよと思われますし。
クライドの記憶の残滓より
手荒い歓迎を受けたが、
なんとかミッドチルダに辿り着くことができた。
だがこのミッドチルダにはもう、
我々を迎え入れてくれる人も、場所もないようだ…。
GJです。
ところで
>>251 >あと(21)がロリに見えて困るww
俺もだwwww
>>261 何か哀れみ度の増したジャミラじゃないか?
GJでした。
フェイト、地球軍に固執するあまりバイドの事を失念してるんじゃないだろうか?
このままだとR戦闘機やバイドより先に後ろから味方に撃たれそうな気もするけど。
GJ
災害報道の艦長殿はオリジナルなのか否か
人の形もしてないクローンとかだったらフェイトソン更にブチ切れるww
>>(21)
(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ
>>264 撃たれるまで生き残れたらなw
次回予告が不吉すぐる
>>247 GJ!
一般市民としてはフェイトの考える構想は御免こうむりたいですねw
ナンバーズの製造時期ですが、
1:51年春、2:52年春、3:55年夏、4:61年秋、5:60年冬、6:63年春、7:75年夏、
8:75年夏、9:69年夏、10:63年冬、11:71年春、12:75年夏、だそうです。
GJ!
相変わらずの絶望感に悶える俺テラバイド
おやすみなさい→ヲヤスミ、ケダモノ→R-TYPEV
という連想ゲームで、バイド化したフェイトがなのはと対決とか考えて更に悶えてしまう……
R-TYPE氏、恐ろしい子……!
>>261 そういえば、クライドも提督だったな。
あのEDは悶えるよりも先に涙が・゚・(ノД`)
268 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 15:40:01 ID:izuRSW6Q
>>247 蟲はPSの「R-TYPES」の図鑑モードで調べれば分かるみたいYO
>>268 R-TYPESのバイドデータによるとあの蟲は、
赤いのがメスのオプロス:体内から金属を出し巣を作るメタルインセクター。作り上げた鉄柱は、雄を寄せ付ける効果がある。
青いのがオスのケプロス:交尾のためオプロスを追いかける。金属を瞬時に破壊することができる。
何か、バトルロワイヤルみたいなストーリーだ。
>>270 相手がまだ人間なだけマシに思える……
バイドやフォーリナーとかは宇宙的恐怖w
ニャル様の仕業と申したか
フィレモンと共に人間がどちらを選ぶか見極めるのですね。分かります。
そういや最近仮面の人来ないなあ・・・・・・
あの人のペルソナクロスが最近の楽しみなんだ。オレ
>>274 ここで言うことじゃないな
第一に一週間見ない程度で最近来てない?
冗談も大概にな
>>274 俺も楽しみにしているが、やはり2〜3ヶ月ぐらい来てないぐらいからかな。
そろそろウロスに行ってください
本日、23時45分頃に投下予約を。22時50分には間に合いそうもないです。
279 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 22:26:42 ID:tPsOdLrK
しえーん
ゴメンナサイorz
支援
283 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 23:09:52 ID:B29aFPNQ
しえん 支援
支援?
虹色の魔力光が、少女の姿を照らしている。
カイゼル・ファルベ、聖王のみが持つことを許された究極の光。
「正確には聖王の遺伝子を持つ者が覚醒した時に発生する。つまり、この光を
放てる者こそ、真の聖王なのだよ」
愉快そうに、スカリエッティが解説する。
黒地に青いラインの入ったバリアジャケットに、一つ結びにされた長い髪。
年の頃は、なのはやフェイトよりも少し若いぐらいか? どちらにせよ、ゼロ
の知っている彼女とは、瞳の色が同じというだけで、まるで別人だった。
「これが、聖王だと――?」
魔力光とともに放たれる、魔力の波動。今まで感じたことがないほど強大な
力を前に、威圧感や圧倒感を超越した衝撃をゼロは受けていた。
膝を屈したくなるほどの強烈な感覚、絶対的なる王の力とでもいうのか。
「そう、君らはヴィヴィオと呼んでいたがね。彼女は元々このゆりかごを起動
させるため、鍵の聖王として用意していた器だった」
ゼロは、ヴィヴィオが人造生命体であることを思い出した。まさか、ヴィヴ
ィオを造り上げたのは……
「私だよ。聖王教会が管理局に極秘で保存していた聖王の一族の遺伝子を奪い、
器として生成したのは、全て私がやったことだ」
全ては計画通りだった。スカリエッティが聖王のゆりかごの存在を突き止め
てから、ずっと考え、準備をしてきた壮大な計画。
部下を聖王教会に送り込み、適当な高位聖職者をたぶらかす。聖職者などと
言っても、所詮は俗物が信仰などという大層煌びやかな衣を纏っているに過ぎ
ず、それを剥ぐことなど造作もなかった。
「唯一の計算違いは、作り上げた聖王の器が行方不明になったことだ。あれが
どうして起こったのか、私は未だにわからなくて、行きついた先は機動六課で
保護されたというじゃないか」
あの時だけは、さすがのスカリエッティも動揺が隠せなかった。表情にこそ
出さなかったが、ヴィヴィオの正体が知れれば全ての計画が頓挫した可能性だ
ってあったのだ。
「しかし、君たちは私の仕掛けたゲームに夢中になり過ぎて、器の存在に注意
をしなかった。だから私は罰ゲームという名の報復に見せかけ、器の奪還を行
うことが、容易にできたわけだ」
機動六課隊舎襲撃事件、あれは、ヴィヴィオを確保するために仕組まれたと
いうのか。
「聖王のゆりかごが起動した後も、接続した鍵が覚醒するかどうか、それだけ
が気がかりだった。器としての完成度には自信があったが、目覚めるかどうか
の確証が持てなくてね」
だが、ヴィヴィオはこうして覚醒した。完全なる聖王として、ゆりかご内に
君臨を果たしたのだ。
「聖王さえ覚醒すれば、後はどうとでもなる。絶対不可侵の神聖を使い、聖王
教会とその信者を屈服させるのも、不可能ではないはずだ……だが、その前に」
故に、スカリエッティは勝利の笑みを取り戻した。彼は勝ちを確信し、自ら
作り上げ、目覚めさせた聖王に声をかける。
「さぁ、聖王よ。目の前にいる愚かなる敵に対し、滅びを与えたまえ!」
敵とは当然、ゼロのことである。敵として宣言されたゼロは、静かにゼット
セイバーを構えた。
スカリエッティの声に応えるように、それまで無言で、瞳も閉じてしまって
いたヴィヴィオが、動き出した。
左右異なる色を持った瞳を開き、まっすぐとゼロを見つめてくる。
「いいぞ、さあ、吹き飛ばせ!」
叫ぶスカリエッティと、身構えるゼロ。ヴィヴィオは、ゆっくりと右腕を上
げ、掌を突きつけた。
「うるさい、黙れ」
虹色の魔力光が、スカリエッティに向けて放たれた。
第23話「聖王ヴィヴィオ」
「ドクターの反応が、消えた――?」
ジェイル・スカリエッティの敗北、その厳然たる事実を、当事者以外で即座
に察知できたのは僅かに三人。
中でも、最も早く反応を示したのはゆりかご内でフェイトと戦闘を続けてい
たトーレだった。ゆりかご内に充満する高濃度AMF下にあっても尚、スカリエ
ッティは膨大なエネルギーを発していた。そのトーレよりも遥に高かったエネ
ルギー反応が、唐突に消えたのだ。
欠片も残さず、あっさりと。
「まさか、ドクターが……負けたのか」
信じられないと言った感じに、トーレは愕然としながら呟いた。余りのショ
ックに一瞬ではあるが茫然自失状態となってしまったほどだ。
そして、その隙をフェイトは見逃さなかった。
「今だっ!」
フェイトの身体が光り輝き、纏っているバリアジャケットが簡素な物へと変
化していく。
トーレが気付いたときには、既に遅かった。
「ソニックフォームッ!!!」
光に包まれたフェイトの姿が、電光石火の如く飛び立った。
「ライドインパルスッ!!!」
負けじとトーレもISを発動するが、彼女は完全に出遅れた。
「ライオットブレード!」
デバイスが変形し、細身の長剣がフェイトの右手に握られた。高密度圧縮さ
れた雷撃の魔力刃、これがフェイトの切り札か。
「インパルスブレード!」
トーレの叫びと共に、彼女の両腕のエネルギー翼が羽ばたくように巨大化す
る。最大出力でフェイトを倒そうというのか。
二条の閃光が、中空で激突を繰り返す。速さは互角か? いや、違う。
「私が、速さで後れを取っている?」
フェイトの速さは、トーレのそれを超えていた。あらゆるデータを元に学習
したはずのトーレが、フェイトに追いつけないのだ。
「おのれ……旧式の遺伝子細工が!」
最新鋭の戦闘機人としての意地か、トーレは真正面からフェイトを打ち砕き
に掛かった。フェイトはこれを避けず、ライオットブレードを構えた。
片腕一本を犠牲にしてでも刃を止め、拳を叩き込む。そうすれば、私の勝ち
だ。トーレは戦士として、必勝の戦略を組み立ててフェイトに迫った。
「ハァァァァァァァァアッ!」
ライオットブレードが振り下ろされ、フェイトが吼える。
「捉えたぁっ!」
その叩き込まれた斬撃をトーレの左腕、インパルスブレードが受け止めた。
「これで終わりだ、フェイト・テスタロッサ!」
トーレの構えた右腕がフェイトに叩き込まれようとする、まさにその瞬間、
『二撃目』のライオットブレードが、トーレの胴体に叩き込まれた。
「二刀流、だと――?」
叫ぼうとして、代わりに出てきたのは血塊だった。深々と斬り込まれた斬撃、
トーレの拳がめり込むより先に、フェイトが二撃目を仕掛けたのだ。
「ライオットザンバー・スティンガー」
短く呟くフェイト。高速戦闘を得意とする彼女が、持ちうる戦闘技術の粋を
極めて編み出した、二刀の刃。
「……私の負けだ、フェイト・テスタロッサ」
大きな血塊を吐き出すと、トーレはそのまま意識を失い地面へと落下してい
った。フェイトも、それに合わせるように降下し着地する。だが、その体勢は
必ずしも安定しなかった。
「拳圧だけで、ここまで」
トーレの最後の一撃は直撃こそしなかったが、ソニックフォームで防御力の
低下したフェイトにダメージを与えていた。
「早く、ゼロの所へ、行かないと」
トーレの反応から、スカリエッティが敗れたらしいのは判った。ゼロが倒し
たのか、それとも別の人間がやったのか。ゼロだとして、あの絶体絶命の窮地
から、どうやって?
「――まだ、こんなにいたのか」
ふらつく足取りで、それでも前に進もうとするフェイトの正面に、ガジェッ
トたちが現れた。
型は様々、数は数えるのも馬鹿馬鹿しいほど多い。判っているのは、ガジェ
ットの大部隊が自分の行く手を塞いでいるということぐらいか。
「私は、ゼロに会いたい。ゼロに会いに行く」
短く呟きながら、フェイトはガジェットたちを見据えた。二刀のライオット
ブレードを構え、更に周囲にはプラズマランサーが発生する。
「だから、邪魔をするな」
邪魔を、しないでくれ。
「そこを……どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!!」
ガジェットの大部隊に向けて、フェイトは真正面から斬り込んでいった。
大支援
スカリエッティの敗北を悟った三者の内、もっとも冷静に行動したのはルー
テシアだった。彼女は事実を知っても軽く眉を顰めただけで、不思議と取り乱
したりはしなかった。
「ドクターが、負けちゃった」
だからどうしたとまでは言わないが、それがどうしたとは思ったかも知れな
い。別にルーテシアはスカリエッティに戦士としての強さは求めていないし、
死んでいなければそれでいいのだ。
「…………」
しかし、スカリエッティが負けたということは、この計画はここで頓挫する
のだろうか。ルーテシアは必ずしも計画や作戦の全容を知りうる立場にはなか
ったが、地上での戦局はアースラの参戦によって覆されつつある。
つい先ほどか、機動六課が誇るベルカの騎士、シグナムとヴィータがデバイ
スの修理を完了させて戦線に復帰した。既に、三匹もの地雷王が彼女らによっ
て倒されている。
「ガリュー、退くよ。準備して」
ルーテシアの決断は、早かった。決して、勝機なしと判断したのではないが、
このまま戦闘を続けていても意味はないだろう。白天王も、キャロとかいう少
女の召喚した巨大な竜を前に互角の攻防を繰り返すばかりで、戦局をひっくり
返すような圧倒的な破壊力を発揮できずにいた。
加えてスカリエッティが敗れたというのなら、ゆりかごからの援護が期待で
きなくなるということだ。ゆりかご内で何が起こっているのか、ルーテシアは
完全に洞察したわけではなかったが、これ以上、戦線を維持するのは無意味で
あると思ったようだ。
「私には、まだやることがあるから…………白天王!」
ルーテシアの声に応じて、白天王が動き出す。
腹部の水晶体に魔力が集中し、光り輝いていく。
「いけない、ヴォルーテル!」
キャロの叫びとともに、ヴォルテールが魔力を高め始めた。
周囲の大地そのものから魔力を集めていく。
「ギオ・エルガ!」
殲滅砲撃魔法、ヴォルテールが持つ最大威力の炎熱砲。巨大な火柱が、白天
王へと迫った。
「ルォォォォぉォォォォォォオッ!」
白天王が低い唸り声をあげ、腹部の水晶体から砲撃を放った。長大な光の柱
が、ギオ・エルガと正面から激突する。
凄まじいエネルギー流が、クラナガンの上空に発生した。思わずはやてがア
ースラの後退を命じたほどで、事実砲火の余波だけで中空にいたガジェットが
消滅してしまったほどだ。二匹の浮かんでいた位置がもう少し低い場所であっ
たら、地上にも多大な影響があったかもしれない。
「互角――」
ルーテシアは、今の自分の力でキャロを完敗せしめることは出来ないと理解
した。
「でも、隙は生まれた」
爆発が轟き、キャロやエリオがフリードリヒの背に隠れて衝撃波をやり過ご
す。あわよくば白天王の後背に飛空するゆりかごの撃破も狙ったギオ・エルガ
の一撃だったが、キャロの考えとは裏腹に敵の砲火と相殺する形で消え去った。
「キャロ、あれを!」
エリオの声にキャロが顔を上げると、ルーテシアがガジェットU型に乗って、
傍らにガリューを引き連れ離脱を開始した姿が目に映った。
「逃げる? でも、どうして」
スカリエッティの敗北を知らない彼女は、ルーテシアが逃走する理由がわか
らなかった。しかし、例え事実を知ったとしてもキャロは首をかしげたかもし
れない。ルーテシアの言動や反応から、彼女がスカリエッティを慕っているの
は明白であり、彼が窮地にあるというなら助けに行くはずである。にもかかわ
らず、ルーテシアはゆりかごとは別方向に進路を取っているのだ。
「追いかけなくちゃ……」
白天王もまた魔法陣へと消えていくのを確認しながら、キャロは立ち上がろ
うとする。しかし、すぐに足元がぐらつき倒れそうになる。
「キャロ!」
エリオに支えられながら、キャロは荒い息遣いをしていた。ヴォルテールを
召喚し、さらに最大砲撃まで行ったことはキャロの身体に大きな負担を与えて
いた。ルーテシアを追撃したいのに、思うように身体が動かないのだ。
「あの子は、きっと――」
何かを言いかけて、キャロはそのまま意識を失った。
「ルーテシアが撤退を開始した?」
同じ戦場にあって、ガジェット部隊を指揮しながら戦闘を続けていたギンガ、
彼女もまたスカリエッティの敗北を悟った最後の一人ではあるのだが、前者の
二人と違って彼女は間接的である。
「スカリエッティが負けた……まさか、そんなことって」
しかし、ルーテシアが撤退するとすれば、それしか考えられない。表面的に
はともかく彼女ほどスカリエッティに親しくなかったギンガとしては、ゆりか
ご内で何が起きたのか、それを予測するのも困難だった。
だが、推測することは不可能ではない。
「ゼロが、勝った」
あの状況下でどうやって、という疑問はやはりギンガにもあるのだが、彼女
はゼロの強さを知っている。恐らく六課にあって、彼の実力を知る者、ギンガ
以外には存在しないと言い切れるほどに。
一度は、その背中を預けられるとまで思ったほどの相手なのだから。
「……チッ」
ギンガはトーレなどと違いスカリエッティに忠誠を誓っておらず、立場的に
はゼストでいうところの協力者の側面が強い。だが、一度肩入れしてしまった
以上、スカリエッティの敗北は自分の破滅に繋がるのだ。
「一度、ゆりかごに戻らないと……だけど、それには!」
ギンガは強い口調で叫びながら、正面を見据えた。彼女は今、戦っている。
実の妹とその親友、二人を相手に壮絶な死闘を繰り広げているのだ。
「ギン姉、絶対に止めてみせる」
スバルには、もはや叫ぶ気力すら残っていなかった。レリックの力で底なし
に近い魔力を誇るギンガに対し、スバルには限界がある。今まで使い物になら
なくなっていた身体を無理やり奮い立たせて参戦しているのだ。それを常に全
力全開で戦っているのだから、魔力に限らず、肉体的な体力やスタミナの消費
も半端ではない。
「しつこいわね、あなたも」
今のギンガにとって、スバルを殺すことは造作もないように思われた。元々、
スバルよりもギンガの方が強いのだ。それに加え、スバルの限界が近づきつつ
ある現状、もうあまり長く戦えない。
次の一撃が、勝敗を決める。相対する姉妹は共に確信していた。
スバルを援護するべくデバイスの銃口を構えるティアナ。一騎打ちに水を差
すとか、そういうこと考えない。二人でなければ、ギンガを超えることはおろ
か倒すこともかなわないと二人は知っていたから。
最初に仕掛けたのは、ティアナ。
「ファントムブレイザー!」
放たれた最大出力の遠距離狙撃砲を、ギンガはディフェンサーを持って弾き
飛ばした。受け切るには、威力が強すぎる。
弾かれた魔力砲弾は近距離で爆発したが、ギンガは全くの損傷を受けなかっ
た。
「スバルが、来る」
コンビネーション攻撃で来ることぐらい、ギンガは予測済みだった。そして、
スバルが必ず真正面から自分に突撃をしてくることも。
「ギン姉――勝負!」
右の拳を構え突っ込んでくるスバルに対し、ギンガも正面から迎え撃った。
リボルバーナックルと、トライシールドがぶつかり合った。スバルの攻撃に、
ギンガの防御。守りきれば、ギンガの勝ちだ。
「ギン姉ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
スバルの雄叫びが、力となってギンガに伝わる。トライシールドに亀裂が走
った。
支援
「スバル――――――――ッ!」
ひび割れが広がり、ギンガの防御がスバルの攻撃に破られようとしている。
歯を食いしばり、必死に突き進もうとするスバル。彼女はただ、目の前の姉に
のみ視線を向ける。
ギンガは、その瞳の力強さに、一瞬ではあるが圧倒された。
「一撃必倒!」
スバルの拳が、ギンガのトライシールドを打ち破った。更なる勢いを得たス
バルは、超至近距離からの砲撃を放った。
「ディバィィィィィンバスタァァァァァ!!!」
右の拳から放たれた魔力砲が、ギンガへと叩き込まれた。
爆発の余波で、スバルの身体が吹っ飛ばされた。全力全開、全てを出し切っ
た一撃だった。
これが通用しなければ、もうスバルには反撃する力が残っていない。
「そん、な……」
なのに、爆発の先にスバルが見たのは、魔力波で爆風を消し飛ばす、ほぼ無
傷と言っていい姉の姿だった。
「あの距離で、あの威力でも倒せないの!?」
絶望的な声を上げたのは、ティアナだった。ファントムブレイザーも、ディ
バインバスターもギンガには通じなかった。
この人の強さは、桁が違いすぎる―――!
「……大した威力ね、以前までの私なら、今ので確実にやられてた」
ギンガは、低く静かに口を開いた。
ウイングロードの上で、力を使い果たして膝を付くスバルを見つめながら、
彼女は言葉を続けいていく。
「スバル、あなたは本当に強くなった。私に守られるだけだった妹のあなたが、
目標を持ち、仲間と出会い、修練を続け遂に私を超えるところまで来た」
空中に浮かびながら、ギンガはスバルから視線をそらした。視線の先には、
聖王のゆりかごがある。
「あなたは、正道を行きなさい。私にはもう無理でも、あなたなら出来るはずよ」
「ギン姉、何を……?」
姉の口調が、僅かに暖かみを帯びていることに、スバルは気づいていた。
ギンガは、困惑する妹に、邪気のない微笑を見せた。
「父さんと母さんの娘として恥ずかしくない存在として、父さんを殺した私が
言うのもおかしいけれど、これは本心だから」
妹と違い、自分は正道を歩むことなど出来ない。生まれた瞬間から、自分に
は出来ないと決まっていたことだったのだ。
「じゃあね、スバル――さよなら」
言い終えるとともに、ギンガは飛行魔法を使って飛び立った。スバルが叫ぶ
よりも早く、ゆりかごに向かって飛び去っていった。
「ギン姉待って、待ってよっ!」
追いようにも、スバルは空を飛ぶことが出来ない。ウイングロードもゆりか
ごまでは伸びず、そもそも維持する気力すら今のスバルには残っていなかった。
「スバル、ここは一旦退くわよ」
ティアナが駆け寄り、スバルの身体を支え起こす。
「で、でもギン姉が!」
「あの人は、私達との戦いを放棄した。つまり、私たちは勝ったのよ!」
勝った気など欠片もなかったが、敢えてティアナはそのように言った。事実、
ギンガが戦場を離れたのだから間違っているわけでもない。
「ガジェット部隊の指揮をしていたあの人がいなくなった今が、私たちが戦局
をひっくり返すチャンスなんだから」
この時既にルーテシアも離脱を完了させており、地上には指揮官を失ったガ
ジェットがいるのみだった。地上部隊が反撃に転じ、大攻勢を仕掛けていれば
勝利を掴み取ることは可能と思われた。
戦局は、大きく傾こうとしている。
一方その頃、スカリエッティの工作によって多大な被害を受けていた時空管
理局本局、次元航行艦隊では、クロノ・ハラオウン提督によって艦隊の再編が
着実と行われていた。
「二十隻だ。二十隻の艦艇を確保次第、再出撃を行う」
さすがに総旗艦合せても七、八隻の艦艇では無理があると考えたのか、クロ
ノは持てる手腕を最大限に発揮して、艦隊戦力を結集した。
そんな中、本局は無限書庫にて、聖王のゆりかごとそれに類する情報の検索
と提出を命令されたユーノ・スクライアが、クロノへと回線をつないできた。
「ユーノか、何か分かったか?」
十年来も友人付き合いがある二人だが、昔からそれほど仲がいいわけではな
い。理由は女の趣味が近いからだ、などとはやてには言われているが、当人た
ちはそれについて明確な発言をしていないし、クロノがエイミィと所帯を持っ
た今となっては関係も落ち着いている。
『我らが偉大な書庫に、わからないことはないよ』
得意げに笑おうとして、ユーノは見事に失敗した。戦場に機動六課がいるこ
とは、情報として彼の耳にも入っている。幼馴染の少女が、心配なのだろう。
基本的な情報、ゆりかごの武装や二つの月の魔力を受けることで活性化する
システムなどについては既に伝えてあったので、ユーノはもう少し踏み込んだ、
鍵の聖王についての説明を行った。
『ゆりかご自体、当時からロストロギア扱いだったことは話したと思うけど、
それに劣らぬぐらいに、聖王も凄い存在だね』
レアスキルである聖王の鎧、ゆりかごの駆動炉から魔力を供給することで得
られる、無限の魔力。絶大な攻撃力と防御力、絶対不可侵の神聖に、抗うこと
のできない王の権威。
『聖王に二度同じ攻撃は通じない、また聖王はあらゆる攻撃を無力化する無敵
の存在、いずれも伝承にある一文だけど、これが本当なら聖王の鎧はかなり高
度な学習システムと、対魔装甲を有していることになる』
更に、聖王のゆりかごがある。移動する玉座、史上最強の質量兵器。かつて
の古代ベルカ王朝が多次元世界に君臨する存在だったというのも、満更嘘では
なさそうだ。
支援
「しかし、ベルカ王朝は遙か昔に滅び、今は時空管理局の時代だ。スカリエッ
ティがどのように使うかはともかく、そんな化石みたいな物に負けられないな」
苦笑するクロノに対し、ユーノの表情は険しくなった。軽口を叩いた友人を
責めているのではなく、別の懸念があったからだ。
『そのことなんだけど、クロノはスカリエッティの狙いをどう読む?』
「どうとは?」
『何故、聖王を復活させたのか』
問われて、クロノは考えた。スカリエッティのことではなく、ユーノがどう
してこのような質問をしてきたのかを。クロノにとって、スカリエッティの目
的など明白に思えたからだ。
「そりゃ、ゆりかごや聖王を使って……月並みな言葉でいうと、世界征服をし
たいんじゃないのか?」
子供っぽい表現になるが、現にスカリエッティは多次元世界に向けて宣戦布
告をしている。その為のゆりかごであり、鍵の聖王なのだろう。
『君の言うとおりだクロノ、僕も恐らくスカリエッティはそう考えたんだと思
う』
「単純明快、実に判りやすいと話しだろ?」
ユーノが余りに冴えない表情をしているので、クロノは訝しがる。何か、あ
るのだろうか。
『クロノ、君はパンドラの箱を知っているか?』
「確か、中に災いが詰まっているとされる箱だろう。なのはの故郷に伝わる神
話に出てきて……海鳴の図書館で読んだ記憶があるな」
クロノ自身はミッドチルダ暮らしだが、母の実家は管理外世界の海鳴市にあ
り、妻や幼い子供たちもそこで暮らしている。かれこれ十年、クロノもあの街
と付き合ってきた。
「けど、それが何だって言うんだ?」
地球では、この神話が元となり、開けてはいけない箱、触れてはいけない物
などを、パンドラの箱と称するようになっている。
『僕は、スカリエッティがある勘違いをしていると思うんだ』
「勘違い?」
それは、無限書庫で知り得た真実。聖王とゆりかご、恐らく今のユーノは、
スカリエッティよりも多くの情報を持っているだろう。
『スカリエッティは、ゆりかごを魔法のランプのような物と思っているんだ』
これも、地球に伝わるおとぎ話の一つだ。
『何でも願いを叶えてくれる魔法のランプ、この場合、ランプの精、または魔
神に相当するのが聖王だ』
「……違うのか?」
絶対的な力、無敵の能力、最強の存在、それが聖王。
『聖王は絶対不可侵の神聖を持つ――クロノ、あれは魔法のランプなんかじゃ
ない、見つけても絶対に開けてはいけないパンドラの箱、史上最悪のブラック
ボックスだったんだ』
伝承には、こうも書かれている。
聖王は何者にも屈することはなく、何者にも汚されない、と。
虹色の魔力光が、スカリエッティへと直撃した。身体を貫かれはしなかった
ものの、大きく後ろに吹っ飛んだ。
「ドクター!? おのれ、何を――」
ウーノが叫ぶも、聖王は鋭い眼力を彼女に向ける。すると、眼光が衝撃波を
生みだし、ウーノの身体を壁に叩き付けた。非戦闘員である彼女は防御するこ
とも出来ず、そのまま意識を失ってしまう。
「やれやれ……覚醒したばかりの聖王は力を持て余してるとみえる」
さすがに頑丈な身体をしている、スカリエッティは倒れた身体を起きあがら
せて、聖王に笑みを向ける。
「目覚めたばかりで、誰が君を解放し、覚醒したのか理解していないようだ」
呆れたような口調で肩をすくめ、といっても既に片方しか存在しないが、ス
カリエッティは言う。そんな彼の姿を、聖王は冷めた視線で、射抜くように見
据えていた。
「知っている。お前が私を作り、覚醒させたんだろう」
その声は、子供らしい高さを持っていた。王が持つ風格や、気高い雰囲気に
は似つかわしくない、少女の声だ。
「それが判っているなら、話は簡単だろう? そう、私が君を覚醒させたんだ。
だったら――」
「覚醒させたから、なんだというんだ?」
言葉に、スカリエッティの動きが止まる。
「……なんだって?」
問いかけに、問いかけで返す。聖王の言葉が、スカリエッティには理解でき
ない。
「私を目覚めさせたから、覚醒させたからどうだというんだ」
ゆっくりと、しかし、正確に聖王は断言する。
「褒美が欲しいというのなら、良いだろう。お前を私の臣下にしてやる」
「……褒美? 臣下? 何を、何を言っている!」
思わず、スカリエッティは叫び、そして気付いた。聖王が向ける冷たい視線、
あれは確実に自分を見下している。
王であるとはいえあまりに尊大な態度に、スカリエッティは不快感をあらわ
にした。
「クアットロ……クアットロ!」
声に応じて、スカリエッティへとクアットロが回線を繋いできた。
『なんですかぁ? ドクター』
緊迫感のない声、いつもなら気にしないはずの声に、スカリエッティは苛立
たしげに言った。
「コンシデレーション・コンソールを使え、この生意気な聖王を我が手に――」
スカリエッティは、覚醒した聖王が素直に言うことを訊かない場合のことも、
ちゃんと考えていた。その為の洗脳技術、ユーノの懸念など彼は知らなかった
が、知っていたとしても鼻で笑っただろう。何故なら、それを計算した上で備
えを要しているのだから。
『申し上げにくいんですけどー、それはちょっと無理でーす』
だが、クアットロの言葉がスカリエッティの計算式を大きく乱した。
「無理、だと?」
『はい、ドクターが器に付けてた物は、覚醒直後に全部解除されちゃいました。
手動で洗脳も試みたんですけど、洗脳波も全部遮られてます』
唖然として、スカリエッティは聖王を見た。聖王は、相変わらず冷たい視線
を彼に向けながら、口を開いた。
「小細工など、私には通じない。聖王は絶対不可侵の神聖であると、お前も言
っていた」
確かに、そう言った。けれど、スカリエッティは創造者なのだ。聖王の器を
作ったのも彼であり、全ては彼が作り上げ、動かすはずだった。
「こんな……こんな馬鹿な話しが、私がお前を目覚めさせてやったんだぞ?
ゆりかごも、聖王も、全て私の物だ!」
取り乱し、叫び声を上げるスカリエッティに、聖王は一片の同情もしなかっ
た。
新鮮
「王に見返りを求めるとは、小物だな」
小物、その言葉に創造者スカリエッティは感情を大いに刺激されたらしい。
残った左腕を構え、魔力をかき集めようとした。
だが、聖王ヴィヴォの方がずっと早かった。
「目障りだ、消えろ」
虹色の魔力光が輝き、スカリエッティの身体を包み込んだ。彼は叫び声を上
げる間もなく、地面へと叩き付けられ、意識までも奪われた。
「…………」
つまらなそうな表情をしながら、聖王は立っていた。そんな彼女の姿を見な
がら、アギトがさすがに怯んでいた。
「何て、奴だ」
武装を失ったとはいえ、ゼストを倒し、ゼロを苦しめたスカリエッティを、
一瞬で倒してしまった。それも、力らしい力を一切使わずに。
聖王はその場で意識がある存在、ゼロとアギトに視線を向けた。
「ゼロ、もう一度ユニゾンだ! そうすれば――」
アギトの言葉に、ゼロは首を横に振った。
「ダメだ……」
ゼロは、戦士としての直感で気付いてしまった。目の前にいる敵が、眼前に
君臨する王が、もはやその程度で倒せる相手ではないという事実に。
剣を握る手に、力が籠もった。
「お前は、回復魔法が使えるか?」
「え? か、簡単なのなら」
「なら、アイツを頼む」
視線だけ、ゼロはなのはの方を見た。聖王によって倒されたであろう彼女は、
命の危機に瀕している。
「でも、それじゃあお前は」
一人であれと戦うつもりなのか――? 出しかけた言葉を、アギトは寸前で
飲み込んだ。ゼロの瞳に、決意の色を見出したからである。
「わかった、やれるだけやってみる!」
アギトは叫ぶと、なのはの所まで飛んで回復魔法の発動をはじめる。元々は、
戦傷が多かったゼストのために憶えたのだが、出血を止めるぐらいなら何とか
なるはずだ。
ゼロはアギトがなのはの回復を行いはじめたのを確認すると、聖王に、ヴィ
ヴィオに視線を戻した。彼女は、アギトの行動を阻害しようとしなかった。
「お前の目的は何だ?」
スカリエッティを打ち倒し、聖王はその力を見せつけた。自分を覚醒させた
物を格下に扱い、神聖を保持したのだ。
「私は聖王だ。多次元世界を制覇し、君臨する絶対者」
声には、明るさが微塵も含まれていなかった。高めの子供らしい声であるの
に、冷たさしか感じない。
「故に、聖王たる私が取る行動は……ただ一つ」
再び聖王として、絶対不可侵の神聖なる存在として、この世に君臨しようと
いうのか。
そして全てを従え、全てを制覇し、全てを征服する。
「出来ると思っているのか、そんなことが」
ゼロの問いに対し、ヴィヴォは簡潔に答える。
「私はその為に作られた」
人造物である自分の存在を、既にヴィヴィオは悟っているのか? 今のヴィ
ヴィオには、母親を求めていたときの面影は、どこにもなかった。
「母親なんて、私にはいないんだ……私は、所詮兵器だ」
「だから、兵器として生きるのか」
「お前だって、そうなんだろう?」
戦うことしかできないレプリロイドと、戦うことが宿命づけられた聖王。似
ているようで、全く異なる両者。
「もう、お喋りはお終いだ」
ヴィヴィオが、聖王へと表情を戻した。放たれる鋭い眼光に、ゼロもゼット
セイバーを構え、全身を光り輝かせる。
相手は今まで戦ったどの敵よりも強い、ならば、自身の持てる最大の技を使
うしかない。
「チャージ斬りで牽制し、戦闘の主導を掴む」
ゼロは聖王と、ヴィヴィオと戦うことに対しての躊躇いや抵抗を、全く憶え
ていなかった。目の前にいるのは、イレギュラー中のイレギュラー、彼に微笑
み、慕ってくれた幼女ではない。
高町なのはを、管理局のエース・オブ・エースを粉砕した、無敵の聖王だ。
「ハァッ!!!」
正面に向かって、ゼロが駆けた。狙うは聖王、ヴィヴィオのみ。
チャージ斬りが、音を立てて炸裂した。
一撃必殺、斬撃が、聖王へと直撃する……いや、直撃は、していない。
「なっ」
ゼットセイバーの刀身は、聖王の身体に届かなかった。聖王の鎧が光り輝き、
瞬時に魔力防壁を張ったのだ。
スカリエッティでさえ吹っ飛ばしたゼロの必殺剣が、通用しない。
「……この程度、なのか」
何の躊躇いもなく自分に斬り掛かってきたゼロに対し、ヴィヴィオは哀愁を
込めた視線を向けたが、それはごく微量であったが為に、誰も気付かなかった。
「こんなものなら、お前にもう用はない」
聖王は片手に魔力の塊を作り出すと、砲弾のようにそれを発射した。ゼロは
これを避け、反撃の体勢を取ろうとするが――
「セイクリッドクラスター」
塊が、突如弾けた。爆散し、爆裂する魔力弾。圧縮型の範囲攻撃か。
一発一発に、さほど威力があるとは思えない大きさだった。それでもゼロは、
何か危険な物を感じてこれを全て避けようとした。
「逃がしはしない」
回避行動を取るゼロの眼前に、聖王が現れた。いつの間に距離を詰めたのか、
それすらも判らない。
聖王はほぼ無表情で、左腕に魔力を込めた。
「プラズマスマッシャー」
雷光の砲撃が、直接ゼロの身体に叩き込まれた。吹っ飛ばされたゼロは壁へ
と激突し、それでも収まらぬ衝撃と勢いが壁を破壊し、瓦礫となってゼロの身
体へ崩れ落ちた。
あっという間だった。アギトが声を上げる間もないほどの僅かな時間で勝負
は付いた。
支援
「何て奴だよ……」
なのはの回復に集中しなければならないと判っているが、ゼロが敗れた以上、
次に狙われるのは自分だ。しかし、こんな規格外の相手に自分の炎など通じる
のだろうか?
「いざとなったら、やってやる!」
叫びながら、アギトの身体は震えていた。
聖王はそんな彼女にも視線を向けるが、すぐに逸らした。逸らしたと言うよ
り、背後を振り返ったのだ。
新たな存在が、彼女の前に現れたから。
「何よ、これ。どうなってるの」
ゼロとスカリエッティがいるはずの大広間へと、自分は飛び込んだはずだ。
しかし、これは一体どういうことだ。
ギンガの目の前にいる存在、圧倒的な存在感と威圧感を放つ同年代の少女。
「聖王ヴィヴィオ……覚醒したの!?」
言いながら、ギンガは周囲を見渡した。スカリエッティとウーノが倒れてお
り、気絶しているだけなのか、それとも死んでいるのか、距離があって判断で
きない。
アギトもいた。アギトは誰かを庇うように結界を張りながら、回復魔法を使
っている。
「なのは、さん」
思わず以前使っていた呼称を口に出してしまった。あの高町なのはが、スバ
ルが憧れ、目標としていた管理局のエース・オブ・エースが、傷つき治療を受
けている。
ギンガは、一人の存在を探した。だが、いない。見つけられない。
僅かに必死さを織り交ぜると、壁の一部が崩れ落ち、瓦礫の山が出来ている
のを発見した。
「あなたが、これを?」
低く冷めた声を出しながら、確認するようにギンガは尋ねた。
「あぁ、私がやった」
何か問題があるのかと言いたげな声と表情で、聖王は答える。
なのはを倒し、スカリエッティとウーノも倒し、絶対的な力を見せつける聖
王ヴィヴィオ、彼女はその力を使って彼も――
「お前もこうなりたくないなら、私に臣従を誓え」
出なければ、殺す。口に出しはしなかったが、聖王の瞳はそう語っていた。
だからギンガは、不敵な笑みを浮かべてやった。
「どちらも、嫌よ――!」
魔力を解放させながら、ギンガは攻撃の構えを取った。
「愚かな、王に楯突くのか」
行動が理解できないのか、聖王は冷たい視線をギンガに向ける。彼女もまた、
それが人を見下し、侮蔑する類の物だと気付いた。
「私はね、誰かに膝を付くとか、そういうのは嫌いなのよ。特に人を下等、過
小に見下して、自分の力を自負するような奴は吐き気がするわ!」
自身の持つ魔力と、レリックの持つ魔力を解放させながら、大広間にウイン
グロードが展開していく。聖王を包み込むように、縦横無尽に張り巡らされた
それを見ても、聖王は表情一つ変えなかった。
「大体、ついさっきまでガキだった奴が偉そうに吠えるな!」
ブリッツキャリバーを起動させ、ギンガは聖王を、ヴィヴィオという名の少
女を見据える。
「違う、これがヴィヴィオの真の姿だ。聖王の姿こそがヴィヴィオの――」
少しだけ口調が自虐的になったのだが、ギンガはそれに気付かず、また気付
いたとしても気にしなかっただろう。
「どっちが本当だろうと、関係ない。私はお前を倒す、それだけよ!」
叫び声と共に、ギンガが駆けた。ウイングロードに飛び乗り、敵を粉砕する
べく加速する。
聖王は、向かい来る敵に対して攻撃の構えも、防御の構えも取らなかった。
「遅いな」
ただ一言、事実だけを呟くと、聖王はギンガの突撃を軽く避けた。
「避けた!?」
確実に捉えたと思ったのに、掠りもしなかった。ギンガは唇を噛みしめると、
ウイングロードを走りながら更に加速を続ける。
「シューティングアーツ!!!」
格闘技法シューティングアーツ、ギンガは怒濤の猛攻を繰り出した。
蹴りが、拳が、次々に聖王に打ち込まれる。
しかし、聖王はそのほとんどを避けるか、弾くか、いずれにせよギンガは聖
王の身体に触れることすら出来なかった。
「こなくそっ!」
リボルバーナックルに魔力を高め、ギンガは勢いを付けて打ち込んだ。レリ
ックの光が輝き、聖王の鎧を揺るがそうとする。
「……お前も、弱いな」
守護騎士のデバイスをも打ち砕いたギンガの拳が、聖王の鎧を打ち抜けない
でいる。余りの硬さに、ギンガは血が出るほど唇を強く噛んだ。
聖王の眼光が、ギンガを吹き飛ばした。正確には衝撃波なのだが、ギンガは
あたかも彼女の瞳に自分が怯んでしまったかのような錯覚を憶えた。
「私は、強い。誰に負けない力を、手に入れたはずなのに」
後方に下がりながら、ギンガは動揺している精神を安定させるかのように呟
いた。
「お前は弱い、お前では私に勝てない」
聖王の断言に、ギンガは鋭く瞳を光らせた。自身の魔力と、レリックから得
られる魔力の全てを、一気に解放させる。
「弱いかどうか、私の本気をみせてやる!」
あれ?これ死亡フラグじゃね?支援
左手で手刀を造り、ナックルスピナーを高速で回転させる。すると、左腕に
引き込まれるように魔力が集まり、ドリルのようになった。ギンガが唯一スカ
リエッティから貰い受けた、改造されたことで得られた必殺にして奥の手。
ギンガが、聖王に向かって突撃を敢行した。
「リボルバァァァァァギムレット!!!」
高速回転するナックルスピナーの一撃が、ヴィヴィオに直撃した。
激しい衝突音が、広間に響き渡る。ギンガの持つ最強の必殺技に対し、聖王
はそれまでと変わらず、避けることも防ぐこともしなかった。
「違うか……お前が弱いんじゃない。私が、私が強すぎるんだ」
攻撃を受けても平然と声を出す聖王に対し、ギンガは目を見開いた。レリッ
クのブーストを駆けてまで繰り出したリボルバーギムレットの一撃、如何なる
物も貫き、砕き散らす破壊力を持った必殺が、通らない。
それどころか、聖王が発する絶大な魔力がギンガの左腕にからみつき、ナッ
クルスピナー及びリボルバーナックルの回転を、止めていく。
「そんな―――!?」
愕然とするギンガを、魔力波が襲った。耐えきることも出来ずに、ギンガの
身体もまた壁へと叩き付けられた。
衝撃による痛みを堪えながら、ギンガは崩れ落ちた身体を立て直そうとし、
目を開けた。そして、見た。
聖王ヴィヴィオが、右手をこちらに突き付けていることに。
右腕から掌を中心に、魔力が集まっていく。
「集束、砲」
あれが何を意味するのか、ギンガは瞬時に悟ることが出来た。しかし、悟る
ことは出来ても、抵抗するだけの力が、彼女には残っていなかった。
「この……化け物がっ!」
叫ぶギンガに対して、聖王はあくまで冷静だった。
「化け物はお前だろう? 戦闘機人の機械人形が」
瞬間、ギンガが動こうとした。聖王が、ヴィヴィオの発した言葉が、彼女に
は許せなかった。最後の力を振り絞り、せめて一撃食らわせようとしたのだ。
けれど、聖王はそんな時間すらギンガに与えてはくれなかった。
支援
「スターライトブレイカー」
巨大にして強大、絶大にして絶対なる魔力の砲火が、ギンガへと直撃した。
避けることも防ぐことも、反撃することすら敵わずギンガは消し飛ばされた。
巨大な光の柱とも言うべき魔力の集束砲は、壁を突き破り、ついには外壁をも
貫いた。
聖王のゆりかごに、風穴が空いたのだ。
そして光の消えた先に、ギンガの姿は存在しなかった。
「……馬鹿な奴」
本当に馬鹿にしたような口調で、聖王ヴィヴィオは呟いた。素直に臣従を誓
えば、命だけは助けてやったというのに。
面白くなさそうな表情をする聖王は、そう言えばまだ一人残っていたなと、
アギトの方に視線を戻そうとした。ギンガとの戦いで、ヴィヴィオはほとんど
動いていない。振り返るだけで、事足りるはずだった。
「―――――!?」
だが、聖王はそれを行わなかった。全く別の方向から、凄まじいエネルギー
を感知したからだ。
「お前は……!」
ゼロだった。瓦礫に埋もれていたはずのゼロが、いつの間にか復活して、聖
王に向けて巨大な砲身を向けている。
「ヘヴィバレル」
イノーメスカノンのエネルギー直射砲が、聖王へ直撃した。
咄嗟のこと、流石の聖王も避ける間すらなかったことだろう。
爆光が輝き、聖王の身体を包み込んだ。ナンバーズが誇る最強にして最大出
力の砲撃、砲火。
しかし、ゼロは自嘲めいた声と共に、イノーメスカノンの砲身を床に投げ捨
てた。
「どうやら、化け物はお前の方らしいな」
エネルギーが粒子となって消え去った後、そこには聖王が立っていた。直撃
を受け、避けることも出来なかったはずの聖王が、
無傷でそこに君臨している。
ゼロは初めて、勝ち目がない戦いに身を投じようとしていた。
つづく
乙!
なんというラスボスw
第23話です。
何て言うか、今回の話しを一言で例えるなら、
ライダーパンチとライダーキックの連撃を食らっても倒れなかった
剣聖ビルゲニアが、シャドームーンに一撃の下に斬り伏せられたときの
あの衝撃は忘れられない。
古い作品での例えだから、誰も判らないでしょうけど。
それでは、感想等ありましたら、よろしくお願いします。
GJ!
その例え分かり過ぎるぜ!しかしRXは(ry
こんなに強いヴィヴィオは初めて見ました!ゼロは単身どうやって戦うのか!?
クジラ怪人は誰ですか?
GJでした!
そして何という絶望感… 続きwktk!
313 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 00:33:39 ID:fee/adAw
乙でした なんという総力戦
ヴィヴィオ強すぎwΣより強い気がw
なのはママ立ち上がれww
ラストまで加速度的に期待です
GJでした。圧倒的じゃないか聖王様はw
GJ!
これぐらい強い聖王を本編で見たかったのは俺だけじゃないはず!
GJ!!です。
ヴィヴィオ強いなw
だが、気になるのはクアットロさんですね。
彼女は本編より遊ばない性質のようなので、ドクターも見捨ててさっさと投降するか、逃げるかしそうだw
置き土産はゆりかごの動力炉を超臨界・暴走状態にしてwww
GJでした!
味方が総出で倒せなかったナッパがベジータに一発で消し飛ばされた
程のインパクト、強さのインフレ大恐慌ですね、わかりま)ry
ラスボス聖王、こちら側の攻撃が一切通じないって、X6のゲイトかw
だけどクアットロがこの状況であそこまで落ち着いてたのは何故だろ?
次回、祝福の風の出番到来? 続きが楽しみです。
この世界でも、ナンバーズにドクターのクローンは仕込まれてるんだろうか?
なんというかスカ博士はマッドサイエンティストの典型的な末路を辿ってるな。
自分の作り出したものに「私はお前の生みの親だぞ」的なセリフを言いつつぶち殺されるという(まだ生きてるっぽいが)
う〜むこれはゼロでもやばい。アルティメットアーマー着たエックスやシグマでもやばそう。
相手が聖王なら、こっちは英雄王を!誰かー!ギル様を連れて来い。傲慢な王様対決だ!
続々と退場してい舞台役者達。
今まで無類の強さを誇っていたギンガも苦もなく捻られ吹き飛ばされましたか。
闇の書の暴走体よりも凶悪そうですね。
いや、戦闘に特化している分手に負えないのはこっちか。
スカ博士は激伝のゴーデスと同じことをまんまやっちゃったなw
あ、言うてはならんことだったか
スカ「いいぞ、さあ、吹き飛」ジュ
スカーーーーーーー!! なんてお約束!
それでも…太陽神サンゴッドなら(ry
それでも…最強の格闘家ナインテイルズなら(ry
それでも…機会神ゴッドリディプスなら(ry
それでも…自称神アルバート様なら(ry
GJ!やばい、歴代最強のヴィヴィオだな
>>319 ギルVSヴィヴィオ、そういやキャロがギル召還したSSでそんなのあったような
なのはさんギルに潰されていたけど
ついにR-9WZが実戦投入されたか
正史だと災害が人為的なのか自然現象か判別できず、且つ強力すぎる故に実戦に投入されなかった
不遇の傑作機が実戦投入されたから、正史とも変わってるし、
デコイメーカー捕まえたからR-9AD3が更に強力になるっぽいし、
R-9LeoU、R-9DV2、OF-5、TL-2B2、B系列などまだ出てきてない機体や
ギガ波動砲が何時使われるのか楽しみだ
出撃→チャージ→チャージ完了→管理局と接触→ギガ波動砲で瞬殺とか
何か報われなさすぎなギンガが死亡でおわるのか、それとも実はって感じになるのか
気になってる
Xならどうするか
ウロスでお願いします。
>>328 ウロスは作品感想とは関係ない雑談をするスレになりました。
ま、そんなことはどうでもいいとして、
ギンガがここまで完膚なきまでにやられると衝撃的だね。
壮絶に戦って果てたならまだしも、手も足もでないとは……24話書き上がるのが楽しみだ。
乙、ぶっ飛び加減が半端じゃねーす。
某金ぴかを思い浮かべてしまった。
連投スマン「っ」が入ってなかった。
332 :
一尉:2008/10/16(木) 15:21:31 ID:3YAL+iH3
GTX−105Eなら支援する。
20:00頃に投下予約をお願いします。
オッケー☆⌒d(´∀`)ノ
少々早いですが、そろそろ投下開始させて頂きます。
支援どす
「戦う理由を自問しない兵士はいない。いるとすれば、そいつはイカれた殺人鬼だ」
そんな言葉を、いつかどこかで聞いた記憶がある。
成る程成る程、実に的を射た考えだ。
それでは、自分はどうなのだろう?
顎に手を当て自問してみる。
祖父に憧れて兵士になり、そのままがむしゃらに頑張ってきた。
しかし、それは直接の理由には成り得ないだろう。
かといって殺人衝動があるわけでもない。
「所詮戦う理由なんて誰も大した事じゃ無い。私達も、君もな」
銀髪の少女――見た目よりもずっと年を喰っているらしいが――チンクの言葉を思い出して再び頭を抱える。
今まで自分は何の為に戦ってきたのだろう?
そしてこれから、何の為に戦っていくのだろう?
ジョニーは消えぬ悩みに悶えた。
第十一話「廃都市攻防戦」
スカリエッティのアジトでは、ジョニーを「ササキ」と呼ばずに「ジョニー」と呼ぶのは三人だけだ。
まず、イカれた変態科学者のスカリエッティ。
そしてその秘書的立場のウーノ。
最後に、怒らせると異常に怖いトーレ。
正に相手にしたくない三人が勢揃いだ。
トーレに関しては、怒っていない時には普通に話せるのだが、怒らせたが最後。
シンプソンスケールによって強さを表すのなら、文句無しで最大級のカテゴリー5に分類されるであろうハリケーンが来襲し、ジョニーはたちまちズタボロにされてしまう。
ジョニーは今、その三人に対していた。
「――頼む! 俺も行かせてくれ!!」
「何故だい? 君が行く必要があるのかな?」
いつもなら薄ら笑いを浮かべているスカリエッティは珍しく無表情で淡々と疑問を口にする。
ぐぐ、と唸るジョニー。
そう、ジョニーは出撃したナンバーズのディエチ・クアットロ・セインの助けに行く事を志願したのだ。
理由は簡単。
ナンバーズの実力は訓練を間近で見ていたジョニーも十分知っていたが、その相手があの機動六課だと予測されたからだ。
支援
ホテルのアグ・スターだったかアゲ・スターだったか、そこでの六課の戦闘はジョニーが見た事も無い光景だった。
派手な格好の少女が巨槌を振るい、女性騎士が稲妻の如く剣を踊らせ、犬が喋っていた。
犬が喋るなんてのは元来有り得ない事だ。
それを見た時は驚きのあまり腹の中で消化されてないスパゲッティを矢の如く吐き戻す所だった。
正に奇想天外。
正にジャパニーズ・サブカルチャーの世界。
おまけに、彼らよりも強い連中がまだいるらしい。
そんな連中と戦うと聞いて不安にならない訳もないだろう。
「そうよ、ジョニー。トーレが監視として行くのに、貴方が行っても意味は無いと思うけど?」
ウーノの言葉に頷くトーレ。
GSRという拳銃一丁のジョニーが行った所で何が出来るか、と。
当然の判断だろう。
だが、ジョニーに引き下がるつもりはさらさら無かった。
「……スカリエッティ。俺は正直、あんたが嫌いだ」
「ほぅ、それで?」
「でも……あの娘達は良い娘達だ。助けてあげたい。力になりたい」
クアットロのような、何を考えているか分かりづらいのもいる。
それでも、力不足でもあの優しい少女達を守ってやりたいとジョニーは思っていた。
ジョニーは勢い良く、決して軽くはない頭を下げた。
「……頼む!」
「……ふむ、良いだろう。トーレ、頼んだよ。ジョニー君、君もなかなか面白い男だねぇ」
「わかりました。ほらジョニー、来い。すぐ出発するぞ」
「あ……ありがとう! 待っててくれ、準備してくる!」
部屋から飛び出していくジョニーと、トーレ。
スカリエッティは口の端を僅かに吊り上げた。
「ドクター、良かったのですか?」
「ああ、どうにかなるとも思えないしね」
それに、と肩をすくめるスカリエッティ。
「そこまでの情報も知らせていないし、局に捕まったのならそこまでさ。トーレにもそう指示は出しておいてくれ。彼への興味は殆ど無かったが……やはり地球の軍人には面白いのが多いなぁ」
どうなるのだろうか、とくつくつと笑いながら歩み始める。
寄り添うように隣を歩くトーレと共に、スカリエッティも部屋から立ち去った。
「バイタルは安定しているわね。危険な反応も無いし、心配ないわ」
薄暗い路地裏。
高いビル群に日の光が差し込む事を阻まれたここは、街の喧騒とも殆ど無縁になっている場所だ。
シャマルがシーツに横たわった少女の簡易検査を終え、同時にその言葉に周りの空気が少しだけ穏やかになる。
休暇中の新人達の内、ライトニング分隊がレリックケースを持った少女を保護、慌ただしくスネーク達も現場に急行。
周りにはなのはとフェイトの定番コンビと、私服の新人達、そしてスネークが揃っていた。
フェイトが長い金髪を揺らし、申し訳なさそうに口を開く。
「ごめんね皆、お休みの最中だったのに……」
「……休暇なんて何らかの事情で潰れるのが定石だ。気にしてもしょうがないだろう」
「スネークさん。それでも……」
長期休暇の中、午前二時に突然叩き起こされてそのまま単独で任務へ、というのがざらだった自身を考えれば、こちらはどれだけマシだろうか。
「いえ、大丈夫です!」
「平気です!」
新人達が素晴らしいやる気を見せる。
さすがに、若いな。
自分だったら上官相手に最後までゴネているに違いないだろう、とスネークは感心する。
フェイトも新人達の様子に再び頼れる上官の顔に戻り、なのはが指示を出した。
「ケースと女の子はこのままヘリで搬送するから、皆はこっちで現場調査ね。スネークさんもお願いします」
「了解」
ああそうだ、となのはがふと呟き、スネークに近寄る。
「頼まれてたこれ、シャーリーから預かってます、どうぞ。……これがあれば遠距離でもロングアーチを中継して私達と念話が出来ますよ」
その言葉と一緒に手渡されたのは、ネックレスがついた弾丸型デバイス。
大きさは四十五口径だが、少し薬莢の長さが長い。
地球で火薬の性能が低かった時代の、装薬量を増やす為に施された仕様だ。
シャドーモセスで戦ったロシア人の男、オセロットを思い出し、皮肉る。
「リボルバー用の弾丸をデザインに使うとは……シャーリーはなかなか『良いセンス』みたいだな?」
「え?」
「何でもない、気にするな」
スネークは苦笑しながら、それを一撫でするとポケットにしまった。
ティアナがデバイスを取り出し、新人三人に振り返る。
「皆、短い休みは堪能したわね!」
「お仕事モードに切り替えて、しっかり気合い入れていこー!」
はい、という威勢の良い返事と共に眩い光が放たれ、バリアジャケットを身に纏った新人達が現れる。
四つの視線がスネークに注がれた。
「スネークさん、準備は大丈夫ですか?」
「問題無い。行くぞ」
軽さと丈夫さで定評のあるM1-11ボディアーマーもスニーキングスーツ越しに着用し、正に無敵になった気分だ。
スネークはFAMASライフルを手に頷くと、新人達と共に地下水路へ駆け出した。
暗くジメジメと湿った空気が蔓延している水路をひたすらに駆ける。
立ちこめる臭いは容易にスネークの眉をひそめさせ、不快感が一層募る。
そんな中スネークの脳内に響く、女性の声。
『――私が呼ばれた現場にあったのはガジェットの残骸と壊れた生体ポッドなんです。ちょうど五、六歳くらいの子供が入るくらいの……』
ギンガ・ナカジマ。スバルの姉らしい。
ハキハキとよく通った声と、そしてスバルをチラリと見てから、なかなかの美人なのだろうと推測する。
何故かギンガという名前を聞いた時、ムカムカしてしまった事だけ気になったのだが。
下らない思考を除外し、スネークはギンガの話に集中した。
生体ポッドという言葉には本能的に嫌悪感を抱いてしまい、同時に嫌な予感もする。
『近くに何か重い物を引きずった跡があってそれを辿って行こうとした最中、連絡を受けた次第です。それから……』
前の事件で生体ポッドによく似た物を見た、と緊迫した声が聞こえてくる。
はやての声が被さった。
『私も、な……』
『人造魔導士計画の素体培養機。……これはあくまで推測なのですが、あの娘は人造魔導士の素材として造り出された子供ではないかと……』
(……人造生命体、か)
『造られた』生命、『造られた』存在。
スネークは誰にも気付かれぬように溜め息を吐いた。
キャロがそれについての疑問の声を上げ、スバルがいつに無く神妙な面持ちで答える。
「優秀な遺伝子を使って人工的に生み出した子供に、投薬とか機械部品の埋め込みで後天的に強力な魔力や能力を持たせる……それが人造魔導士」
「倫理的な問題は勿論、今の技術じゃどうしたって色んな部分で無理が生じるし、コストも合わない。だから――」
――よっぽどどうかしてる連中でも無い限り、手を出す事は無い。
そう付け加えるティアナに、そうだな、とスネークは一言だけ放った。
『……こちらスネーク。はやて、聞こえるか』
『聞こえとりますよ』
『今ティアナが言った通り、そんな技術はよっぽど頭のイカれた連中しか使わん』
『……。はい、それで?』
自身の出自を振り返って嫌な妄想が膨らみ、それを思い切り掻き消す。
もしも、あの少女が自分と同じなら――
『――誰かの意志によって生まれた存在ならそれは即ち、少なからず『何か』に利用するために存在させられている事を示すだろう』
考えられるのは、かつてのスネークのように何かしらの方法で監視されている、もしくは追われているかだ。
ボロボロだった少女を思い出して後者の可能性が高い事を認識し、拳を強く握り締める。
なのはの声が脳内に響いた。
『それってつまり……』
『何者かがあの少女を追っていて、その少女がいるヘリは危険という事だ。レリックケースもあるなら尚更な。……六課に戻るまでに攻撃されそうな地点は……』
沈黙が広がる。
念話越しに、誰かが息を飲む声が聞こえて。
スネークは六課から少女を回収した地点までのルートを思い出し、ぼそりと、それでいて力強く呟いた。
『廃棄都市区画。 ……恐らく廃ビルの屋上から狙って来るだろう』
ヘリを落とすには開けた場所が一番。
それはスネークが誰よりも知っている事だ。
シャドーモセス然り、ザンジバーランド然りである。
はやての声がより真剣味を増した。
『……わかりました、私が出ます。私が空の掃除をするから、なのはちゃん、フェイトちゃんはヘリの護衛を。ヴィータとリインはフォワード陣と合流、ケースの確保を手伝ってな』
『了解!』
『はやて、俺も廃都市区画に向かって索敵、無力化させる』
『……大丈夫ですか?』
はやての心配そうな声が響いてきて、思わず苦笑してしまう。
もしもこれがはやてでなくキャンベル大佐だったのなら、頼む、と一言言われて出撃するのが関の山だろう。
スネークが否定的な態度を取り、「君がやらねば他に誰がいる?」というやり取りを何度繰り返しただろうか。
『PSG-1の調整も済んでるからな。手頃なビルから敵を狙撃する。問題無い』
『……なら、お願いします』
信頼に満ちた声で許可が下りる。
了解、とスネークは返事をして新人達から浴びせられた視線に気付く。
驚愕と尊敬を混ぜさせた表情だ。
スバルがおもむろに口を開いた。
「スネークさん、凄い読みですね……」
「……戦場では『カン』も大切だぞ。理屈だけでなく、全神経で危険を感じ取れるように気を張り巡らせる事だ」
勢い良く首を縦に振る新人達を一瞥し、軽く深呼吸。
「俺は一足先にこのドブネズミが好きそうな場所からおさらばだ。……ティアナ」
「はい?」
周りへ細心の注意を払いつつ、オレンジ色の頭に言葉を投げ掛ける。
所謂『アドバイス』だ。
正直慣れてはいないが、不思議と嫌な感覚でもない。
「常に敵の身になって考えウラをかけ。頭の善し悪しではない。常に頭をフル回転させて、考えろ。頭を使って行動するんだ。……こっちは頼むぞ」
「……はい。了解です、スネークさんも頑張って下さい!」
頼れる返事が返ってくる。
互いに頷き合って、スネークは出口へ向かった。
「……到着っ! ここでいいんでしょ?」
鼓膜が破れるのではないかと錯覚させられるブレーキ音の後、後部座席と瞬間接着剤ばりに密着させられていたスネークは前方に大きくつんのめった。
声は低いが明るい口調で問うタクシーの黒人運転手に、スネークは嘔吐で返した。
到着の衝撃で現れた座席のエチケット袋に、たんまりと吐き出す。
「あー、すいませんね、俺のタクシーに乗った客は皆そうなるんですよ。今まで吐かなかったのは一人か二人だけ」
「……」
身振り手振りで流暢に喋る運転手に目をくれる余裕も無く、体を襲い続ける吐き気と戦い続ける。
どうやら「当たり」を引いたらしい。
新人達と別れ市街地に出て、廃都市区画へ行くためにタクシーを捕まえたスネーク。
急いでいる、というスネークの言葉に長身の黒人男性は快諾。
そのままタクシーとは思えない速度――時速三百キロは超えていたかもしれない――でここまで辿り着いた訳だ。
何故この男が平気でいられるのか、何故こんな馬鹿げたタクシーなのか。
スネークは多くの疑問を抱いたが、もはや聞く気にもなれなかった。
「……ああ、ここでいい。助かった、さっきも言ったが緊急だから料金は管理局に――」
「料金はいいですって。ついこの間子供が産まれたんでね、サービス! 俺の名前はダニエル、息子の名前はレオ。覚えておいて損はないですよ」
「それはめでたいな」
「警察みたいな組織より信用出来ない組織は他に無いけど――ごほん。……まぁ、頑張って下さいよ、んじゃ!」
「……ああ」
黒人運転手は陽気に笑うと、再び爆音を奏でながら去っていった。
精神的な疲れから溜め息を吐く。
あの男が運転するタクシーに「客への配慮」という言葉は無いようだ。
まぁ、あの男は声が妙にスネークと似ていて、親近感を持てた。
とにかく結果オーライという事にして、スネークは念話を飛ばす。
『こちらスネーク』
『シャーリーです、スネークさん大丈夫ですか!? 物凄い勢いで移動してましたけど……』
レーダーを追跡していたら動きが余りに速すぎた、と驚きの声を上げるシャーリー。
周りのアルト、ルキノも驚いているようだ。
『クレイジーなタクシーに「運良く」出会えたものでな。……ヘリは今どこに?』
『ヘリももうすぐ廃棄都市区画に入るところです』
『了解』
一言返事をして息を整えると、当たりを見渡す。
狙撃をするなら高い場所。
ヘリを狙う敵と鉢合わせられる可能性もある。
視界の中、一番高いビルを目指してスネークは走り出す。
誰かを守る為に狙撃銃を握るのは、スネークにとって初めてだった。
「ふぁ、ああぁ……」
ビルの屋上に立つジョニーの大きな欠伸が、乾いた青空に響く。
思えばこちらの世界に来て以来の初めての外出。
視界を埋め尽くす青空は素晴らしいが、廃都市という場所が場所だけにやけに埃っぽい。
おまけに、本当にクアットロ達の監視という役割なので、待機している状態が続いていて暇で仕方がない。
やれる事と言えば、ジョニーの隣に立つ反応の薄いトーレへ話し掛けるか、双眼鏡で色々と見渡す位。
トーレを初めとした戦闘機人達は、双眼鏡等使わずとも瞳に埋め込まれた機械で遠距離でも楽々視認出来るらしい。
ジョニーが双眼鏡でやっと確認出来るクアットロとディエチの二人も、トーレにはアフリカ原住民も真っ青な視力によって見えているのだろう。
双眼鏡に黒点が映り、慌ててトーレに呼び掛けた。
「トーレ! あれが標的のヘリだろ?」
「ああ、あれだな」
クアットロ達もヘリを確認したのか、ディエチが布に巻かれた大砲を取り出した。
そしてそのまま、容姿にそぐわない大きさの砲台を構える。
直後、眩しい紅色の光に包まれる砲台の先。
「……凄い」
これだけ離れているのに、光が収束する際に放たれる音がこちらまで聞こえてくる。
発射をする前でも、その威力の大きさがジョニーにも容易に想像出来た。
数秒が経ち、収束された光は『後方』から乾いた破裂音が聞こえたと同時に放たれる。
アニメで見るような太い光線は、轟音と共に真っすぐ空へ伸びていき――
――虚空の彼方に消え去った。
「外したっ……!」
慌てて双眼鏡を覗くと、腕を押さえて膝を突くディエチ。
ジョニーは直感した。
これは狙撃だ。
では誰が? そしてどこから?
思い浮かぶ可能性は一つ。
後方、頭一つ高いビルに振り返って叫ぶ。
「スネークだっ!!」
同時に、からん、という金属音が鳴ってジョニーの足元を転がる。
――グレネード。
「トーレッ逃げろ!!」
一瞬だけトーレに視線をやると、ジョニーの心配を余所に既にスネークがいるであろうビルへと飛び立っている。
畜生、と毒付く。
とにかく、スタングレネードにしろ破片グレネードにしろ、直撃は不味い。
ジョニーは後方に思い切り飛びずさり――
「うわあああああぁぁ!?」
――体を襲う浮遊感、そしてスタングレネードが放つ二百万カンデラの光を背に、廃ビルから落ちていった。
体が何度かバウンドして、激痛に悶える。
「あぐっ……ううぅ…………ゴホッゴホッ!」
鈍痛が重く体に響き、悲鳴を上げる。
ビルの下に敷いてあった、綿の飛び出た大きいマットに落下したお陰で、致命傷は避けられたようだ。
……幸運なのか不幸なのか分からないところだが、助かった。
衝撃でマットから噴き出される大量の埃を吸い込んで、ジョニーは咳き込んでしまう。
「……ゴホッ……クアットロとディエチはっ!?」
砲撃は命中せず、おまけにディエチは負傷。
正に絶体絶命のピンチで、すぐに助けに行かなければいけない。
焦りながらも周りの空を見渡すと、漆黒の球体がどんどん膨張を続けている。
恐らく、攻撃魔法。
ジョニーは息を整えると、脇目も振らずに駆け出した。
息を切らして立ち止まったジョニーが空を見上げると、白い戦闘服を身に纏った栗色の髪の女性魔導士。
(見えそうで……見えないっ……!!)
彼女が向ける武器の先には、追い詰められたディエチ、クアットロ。
さらにその先に、もう一人金髪の魔導士が武器を構えている。
こちらも同様、見えそうで、見えない。
とにかくジョニーは、挟み撃ちとなっているその状況を睨み付けた。
トーレの姿も見えない。
自分がやるしかないのだ。
幸い、誰もジョニーの存在に気付いていない。
二人の魔導士の武器に光が帯始める。
恐らく先程のディエチの大砲同様、光線を飛ばしてクアットロ達を木っ端微塵にするつもりなのだろう。
(そんな事、させて堪るかよ!)
急いで懐からGSRを取り出して、天に構える。
銃口の先には青空があるのみで、人を捉えててはいなかった。
勿論、ジョニーに拳銃の才能が無いという訳ではない。
ジョニーは雄叫びと共に引き金を引く。
彼女達を守るという信念、そしてトーレへの信頼を胸に。
ちょwそのタクシーは!支援
「うおおおおおおぉぉ!!」
撃つ。撃つ。
弾倉に込められた全ての弾を撃ち尽くす。
乾いた音が廃都市の空に何度か響き――
――一瞬。
ほんの一瞬だが、魔導士達の意識がジョニーに向けられた。
「っ! トーレエエエエェッ!!」
頼む、と悲痛な願いを込めて腹の底から叫び声を上げる。
それに呼応したかのように、クアットロとディエチが消えた――いや、助けられた。
安堵の息を吐くジョニーも、そのまま『何者か』に抱き抱えられて、その場所から姿を消した。
どすん、という鈍い音と共に女性特有の柔らかい感触が消えて、堅い地面とキスをする。
口の中に砂利が入ってしまい、不快で堪らない。
「ぺっぺっ……コホン。……トーレ、信じてたぞ。素晴らしいタイミングだ」
自分達を抱き抱えて脱出したトーレに笑い掛ける。
疲れたように感謝の言葉を述べるクアットロとディエチだが、未だ不機嫌な様子のトーレ。
「……。まぁ、お前の時間稼ぎで間に合ったのは事実だが――」
「だろ? だろっ?」
「……ふん。調子に乗るな。さっさと立て、撤退するぞ」
胸を張るも、一蹴されてしまうジョニー。
何とも肩透かしを食らった気分になり、しょぼくれてしまう。
「……そういえばトーレ、スネークは?」
立ち上がりながらふと思い出したかのように問うジョニーに、トーレが僅かに苦渋をにじませた表情を浮かべる。
「……私が追った時には、既に汚い段ボールが散乱しているのみだった。やはりドクターが目を掛けるだけはある」
逃げ足は速い、と言うトーレの瞳からは僅かに悔しさが伺えた。
魔力探知に捕まらない、というのもジョニーやスネークの大きな強みだろう。
だが、さすが伝説の傭兵と言われただけはあるようだ。
その後ジョニー達はセインと無口の少女に合流し、宇宙開拓時代になるまで味わえないと思っていた奇跡のワープ魔法でスカリエッティのアジトへ戻っていった。
――結果的には大惨敗。
ヘリの撃墜には失敗、ディエチは腕を負傷。
レリックケースは卑怯にも中身だけ抜き取られて掴まされた。
それでも、ナンバーズと無口の少女が失意に沈む中、ジョニーだけは仲間を守れた達成感に大いに浸り、笑みを浮かべていた。
仲間を守る為に戦うのも、悪くないものだ。
まさかのクレイジータクシー支援www
おまけ
ビルの屋上に着いて早々、ジョニーの腹が暴走し、唸り声を上げた。
空調の利いていたスカリエッティのアジトから久々に出て、環境の変化に悲鳴を上げたのだ。
「と、トーレ、ちょっと、おれ、あの……失礼!!」
「早く済ませてこい、馬鹿者」
トーレもさすがにジョニーの腹具合の悪さに慣れたようで、うんざりしながらも、シッシッと手を払った。
ジョニーは慌てて階段を下り辺りを見回すが、ボロボロに朽ち果てた空間。
当然トイレなど期待出来そうもない。
(……ここでするしかないかっ!?)
否。
ジョニーのそれは臭いがキツい。
こんな所でしたらたちまち臭いが籠もり、行き場を無くして屋上へと届く事だろう。
子供の頃からの経験則だ。
トーレの怒り狂う声を想像して身震いする。
だが、いよいよそんな悠長な事を言っている余裕が無くなってきた。
ジョニーは尻を押さえ、覚悟を決める。
「……仕方がない!」
ズボンを下ろしたジョニーの視界の先に、ある物が入って来た。
ボロボロになって底の抜けた、人一人が入れそうなドラム缶。
「……」
・
・
・
「戻ってきたか、そんなに度々トイレに立つなんてお前は――何を嬉しそうにしている?」
「トーレ、今俺は新たな生活の知恵を発見出来た事への喜びで一杯なんだ」
「……何?」
「フッフッフッ、気にしないでくれ」
スネークの前に、バリアジャケットを身に纏った女性達が降りてくる。
なのはとフェイト、そして部隊長のはやてだ。
フェイトがニッコリと笑い掛けてくる。
「スネークさん、お疲れ様です」
「ああ」
「ナイスな狙撃やったですねぇ」
「……はやての戦闘服は初めて見たな」
くるりと回って、どうですか、と問い掛けてくるはやてに握り拳に親指を上に突き立ててみせる。
照れ臭そうに微笑むはやての隣に立つなのはが、他の二人と違って真剣な表情で一歩前に出た。
「スネークさん、私達が追い詰めたのとは違う敵の会話を聞いたと……」
「ああ、奴らの会話で『ディエチ』、そして『クアットロ』という言葉が出てきた。それがヘリを狙撃していた奴らの暗号名だろう」
「後、男の人がトーレって叫んでました」
ふむ、と唸る。
「恐らく、イタリア語の数字だろうな。……ウーノ、ドゥーエ、トレ、クアットロ、チンクエ、セイ、セッテ、オット、ノーヴェ、ディエチ、ウンディチ、ドディチ、トレディチ」
「成る程、もっと大勢いる可能性が高いと……ってスネークさん、凄い!」
「スネークさん、アメリカ人やなかったんですか?」
「勉強した。英語・フランス語・ロシア語・イタリア語・日本語、そしてサル語なら完璧に話せる」
「すご……え?」
「あはは、サル語だなんて……相変わらず冗談が上手いですね」
苦笑する三人を眼光で黙らせる。
「キーウキキッキー、ゥキッキーキッキキッウキィ。『こちらスネーク、潜入地点に到着』って意味だ」
「……」
沈黙。
沈黙。
ひたすら沈黙。
パァン、とはやてが突如手を鳴らし、声を上げた。
「さぁ、ヴァイス君がヘリをこちらに寄越してくれるからそろそろ行きましょか!」
「……おい君達、信じてな――」
「スネークさん、凄い!」
「格好良いです! ささ、ヘリに戻りましょう?」
「……」
さぁさぁ、と背中を押すフェイト。
スネークは憮然とした表情で唸った。
三人とも完全に信じていないが、それは紛れもない事実だ。
直接会った時間は十数分でも、友情が揺らぐ事など有り得ない。
(……そうだろう、ピポスネーク?)
スネークは小声でボソリと呟いて、懐かしい戦友を思い出しながらヘリへと向かっていった。
第十一話投下完了です、多くの支援ありがとうございました。
戦々恐々しながら投下してましたがなんとか規制を食らわずに終わりました。
毎回毎回おまけが長くて申し訳ありません。
ジョニーが出てくるとやっぱりシリアスが薄くなりますね、それが魅力なのかもしれないですが。
MGS4内でも、クレイモア地雷の隣にグラビア本やipodの曲等の『餌』を露骨に置いて敵を引っ掛からせようとしていて、ジョニーの抜けた行動に色々と笑わせて頂きました。
今後MGS5なんかでも出番が来ると自分としては嬉しい限りです。
という訳で、次回もよろしくお願いします。
GJでした!
出てくるだけで笑いが取れるなんてジョニー、なんておいしいキャラなんだ。
あとスネーク、あのタクシーの運転手に常識は通じないぜw
ニトロエンジンなんて可愛いもんじゃない兵器満載改造タクシー乗りだからな。
もしかして声優狙いか? そのタクシーは?
予約が特に無いようですので、22:40くらいから投下します。
さるさん回避は2分おきくらいの投下であれば良かったのでしたっけ?
りりるの人、待ってました〜
事前支援
「なにしてるんや……なのはちゃん、フェイトちゃん。遅すぎるで……」
殆ど変化の無い正面の全天パネルに表示されている”リドレー”の全体図を眺めながら八神はやては呟いた。
それほど大きな呟きではないが、コンソールを操作する音と、空調の音だけが支配するブリッジの中で、予想外に大きく響く。
なのはとフェイトが転移してから、言いようのない緊張に支配されていたブリッジの空気を、その呟きが破ったことは確かだった。
ロボットの様にディプレイを見つめていた、シャーリー達が、それを切っ掛けにほっと息を吐いて後ろの艦長席に振り返った。
「はやてちゃん、いくらなんでもまだ早いですよー」
「そうです、突入してまだ十分しか経ってません。八神部隊長」
自分専用に特設された専用コンソールに向かっていたリインがふわふわと浮かび上がりながら、肩をぽんぽんと叩いている。
ブリッジの極度に緊張した空気に、知らずに体が固まっていたのだろう。舌っ足らずにも聞こえる言葉は、その場の緊張を
ゆっくりとほぐしていく。
情報管制担当のシャリオもリインの言葉に賛意を示す。
操舵のルキノや航法のメイフェアからも、シャーリーと同じような眼を向けられたはやては、シートの背もたれに体を預ける。
ゆっくりと手元のコンソールに目をやった。
そこにデジタルの数値が映し出されている。なのは達が突入してからの時間、即ち作戦経過時間だった。
その数値が無情にもくるくるとカウントアップしている。
何度読み取って見ても、確かにシャーリーの言うとおり十分程しか経過していない。
ほんの十分。だけどはやてには、一日にも感じられる程の長い十分だった。
作戦開始から、ここまで沈黙が続いていると言う事実と、何も判らない新人が突入しているわけではなく、百戦錬磨のエース達が
突入していると言う事実。この二つの現実が、はやての中で言いようのない警鐘を打ち鳴らしていた。
「やけどなぁ、突入成功したでーって報告があってもええとおもえへんか? なのは隊長とフェイト隊長がそろってて
十分もたってんのに、その報告すらないことがおかしいわ」
「通信が繋がり難いのもありますけど、そう言われるとその通りですね……」
はやての言葉に、シャーリーの声が徐々に小さくなる。
リインとシャーリーが顔を見合わせる。そんな様子を眺めながら、はやては独りごちる。
(確かに、あのリドレーの周囲には何らかの未知のシールドが張られている。それが通信なんかを阻害しているのは事実や。
しかし……、リドレーの内部からは通信が繋がらないのかもしれん。でも……、もし……)
ふっと脳裏をよぎった言葉が、はやての心の警鐘を増幅していく。
(もし……、通信が繋がらないやなくて、通信を”繋げられない”んやったら……)
シートの背にもたれ天井を見上げていたはやてが、反動をつけて立ち上がる。正面のパネルに表示されている”リドレー”を
じっと見つめた。
アレは生きている。そして投入した最新鋭のステルス観測機を即座に発見、破壊出来る能力を持っている。
であれば、今のなのは達の状況は……
(通信を繋ぐだけの余裕がない……?)
思考が重ねられて行くにつれ、徐々にはやての表情が厳しくなっていく。そして、自分達の司令官の雰囲気につられ、ブリッジも
徐々に緊迫していく。
厳しい目でパネルを見つめていたはやての横に、不意に空間ディスプレイが立ち上がる。そこには黒檀色のセミロングの
ストレートヘアで鋭い目つきの女性が映っていた。紺色の制服が鋭利な刃物の様な印象の女性を際だたせる。
なのはの率いるアタッカー隊の副隊長であるアクセラだった。
三十の半ばに差し掛かろうという、怜悧な女性は、なのはやはやてからすると一回りほど年長の部下ということになる。
通常の組織構造から考えると、極めて異例のことになるはずだが、魔法能力という評価要素がある管理局では、こういった年齢と
階級の逆転現象は比較的多く見られるケースである。
とはいえ、ここまで年齢差が開くのは珍しい。
まあ、一人で何十人もの局員を相手に出来るなのはやフェイト、はやて達が極端すぎるほど強力で異例中の異例であるから、
仕方がないのかも知れない。
新人や比較的若いメンバーが多かった機動六課時代と異なり、前線部隊に配属された百戦錬磨の隊員の経歴を見たはやてが、
黒髪の提督のお尻に黒い尖った尻尾がついていることを確信したのは数ヶ月前だったか。
ディスプレイの向こうのアクセラが一分の隙もない敬礼を解き、印象的な鉄紺色の眼ではやてをじっと見据える。
全てを見通すような、深い沼の様な瞳に見つめられはやては一瞬たじろいだ。
その微かな動揺を悟ったのか、冷血魔女とも陰で揶揄されるアクセラがふっと口元を綻ばせる。そうすると一転して雪解けの
早春のような穏やかな雰囲気に変わる。
「だめですよ、八神部隊長、部下を送り出した司令官はどっしりと構えてもらわないと」
「アクセラ……」
なのは達が出払っているため副隊長の彼女達が作戦司令室に詰めているのは容易に想像がつく。そしてブリッジの様子をみて見て
察知したのだろう、しっかりと釘を刺しに来た。
その状況察知力と細やかな配慮に、はやては流石やな。と舌を巻く。
苦笑を返すしかないはやての横に、もう一つの空間ディスプレイが広がった。
フェイトが率いるウイング隊の巨漢の副隊長であるサイオンの顔がスクリーンいっぱいに広がる。その暑苦しさに思わず仰け反った
はやてに破鐘の様な笑い声が届く。
くすんだ金髪にちらほらと白い物が混じり始めた武闘派の魔導師が、まるでやんちゃな小僧の様に笑っていた。
「そうそう、突入するのは俺達だけでいいですよ」
アクセラもサイオンも作戦司令室で議論を重ねていたのだろう。そして、なのは達からの連絡が無いことではやてと同じ結論に
達しているようだった。
更に自らの司令官の焦りもしっかりと認識しているらしい。上官として危険な任務を部下に命令する八神一佐としての立場。
幼馴染みで無二の親友としてのはやての思い。二つの立場に板挟みになって焦燥が募っていることを。
そして、司令官自らが”リドレー”に突入しようとしていることを。
サイオンの言葉に、苦笑するしかないといった表情を浮かべるアクセラだったが否定するつもりはなさそうだった。
部下達の配慮に感謝しながらも、はやての冷静な部分がサイオンが打診してきた突入方針を計算する。
曰く、残存する探査機器をリドレーの近くに転移させ、ランダムで移動させてデコイにする。そして汚染地域などの作業用に
積んでいるガジェットを同タイミングで船内に先行突入させる。船内が混乱するのに乗じてアタッカー、ウイング両隊が転移して
隊長達を救出する。
敵情が正確につかめているのであれば、特に意義を差し挟むことはない。しかし、今は何も判っていない。
そもそも、一方的に敵扱いしているが、果たしてどうなのか? 「超弩級のロストロギアである」と言う点でネガティブなイメージ
を抱きすぎてはいないか?
ただ、今となっては敵と認識せざるを得ないかも知れない。
そして、”敵”であるならば、戦力と布陣の把握は最低限抑えておかなければならない情報だった。でなければ、作戦立案も何も
出来るわけがない。
”リドレー”に関する圧倒的な情報不足を打開しようと、危険な偵察任務を背負って突入したなのはとフェイト。
フェイトの言うとおり、二人をロストしたと見なして一時的に撤退するのが、本当は正しいのだろう。
正しいのだろうが……、そんなことは出来ない。
はやての心を見越したアクセラとサイオンの提案は魅力的に映るが……大事なことが抜け落ちている。
「いや、それは許されへん」
「八神部隊長?」
苦悩に満ちた、しかし、部下の手前それを必死に押し隠そうとしているはやての言葉に、副隊長達が訝しそうに見つめ返す。
「ひとつ聞くで? 高町隊長とハラオウン隊長の二人を相手に、あんた達のアタッカーとウイング両隊で勝てるか?」
「……いえ。残念ながら、良くて引き分けです」
実力主義の前衛部隊に身を置く彼等にとって、はやての言葉は鋭い錐の如く全身に突き刺さる。しかし、厳しい言葉の中に、
己の上司の言いたいことを察知した二人は表情を改めた。
起動六課を率いてJS事件を解決に導いた経歴はまぐれではないらしい。続く言葉で二人は白旗を揚げる。
「じゃあ私が後方から支援したらどうや?」
「……分かりました。」
二人は部隊設立時の連携訓練を思い出した。
危険だから。と笑う年若い隊長陣に連れられて、首を捻りながら砂漠地帯に赴いた訓練カリキュラムを。
全員が全員とも一線級の魔導師で構成された、特殊部隊である自分達に必要なものは各自の能力特性の周知と信頼感の醸成、
そして戦術、連携パターンのすりあわせだった。
一通り連携や戦術パターンを確認した後、各員の戦力把握と言う名目で模擬戦を行った。
超が付くほど著名な三人の隊長陣ではあったが、リミッターのかかっていない最大出力を見たのは、その時が初めてだった。
戦艦の主砲のような巨大な砲撃が乱舞し、天空を無数の雷が染め上げ、そして悪夢の様な広域魔法が炸裂する。
今までの常識と言う常識を、軒並み崩された一日だった。
確かに、あの逃れようのない広域魔法支援があれば、余計なことを考えずに全攻撃力を一点に集中することが出来る。
魔導師の部隊は、言うなれば異種混合の組織。同一戦力、種別の物を数を揃えて運用するのではなく、歩兵と戦車と戦闘機が一つの
分隊として行動するようないびつな組織。
そして、この部隊には戦闘機どころか超弩級戦艦や、戦略爆撃機までもがいる始末。常識では何も判断出来ないということだった。
「ひどいこと言ってごめんな、だけど、戦力の小出しはあかん。こと強行偵察任務という観点からしたら、小回りが利いて固くて
早いあの二人のツーマンセルはある意味最大戦力やし、変に部下がおらん方が全力を出せる。
連携したあの二人を突き崩せる敵なんて見たことがない。だから送り出したんや。
でもここまで反応がないとなるとな、そうも言ってられへん。
もし、あの二人が手こずってるんやったら、あんたらだけで突入しても足枷になって各個撃破の的になる可能性があるんや」
苦虫を噛み潰したような表情の二人の副隊長を前に、表情を一瞬曇らせたはやてだったが、次の瞬間には強い意志の籠もった眼で
二人を見据えた。
アクセラもサイオンも、実力主義の世界で一線を張ってきた人間だ。どう見てもぽっと出たての若造にしか見えないはやてに、
お前達は弱い。と言われて平静ではいられない。だが、その小娘とも思える人物が自分達よりも遙かに強大な力を有し、幾多の
修羅場をくぐり抜けてきたことも事実。
支援、開始なの
そして、正しく現状を理解し、私事を捨てて指揮官たろうと努力しているのもはっきりと分かる。
であれば、この年若き司令官を支えることも自分達の役目かも知れない。二人の副隊長は、密かに苦笑を交わしあった。
「……あと十分や、もし、十分たっても何の連絡もない場合は、救出作戦に切り替える。アクセラ、サイオン両名は各自部隊を
率いて転送ルームに待機、装備を揃えて突入の準備を。シャリオ、メイフェアは探査機のプログラミングとガジェットの調整」
「はっ」
何かを吹っ切ったようなはやての言葉に二人の副隊長達は、一分の隙もない敬礼を返した。シャリオ達も立ち上がって復唱した後、
コンソールに向かって、猛然と手を動かし始める。
「リインも頼むで」
「はいっ! はやてちゃん! じゃなかった、八神部隊長!」
シャリオの横に浮いていたリインフォースの言葉に、穏やかな笑みを浮かべたはやては、ゆっくりと席に腰を下ろした。
胸にかけているシュベルトクロイツをきつく握りしめる。
「なのはちゃん、フェイトちゃん……ほんまに大丈夫なんか?」
口の中で弾けた呟きは、今度は誰にも届かなかった。
厳しい表情のはやての瞳は、ノイズだらけのリドレーの全景映像に吸い付けられていく。
リドレーは、そんなはやての視線の前で何も変わらず、ただ、そこにあった。
§ § § § § § § § § § §
絶え間なく機械音が響きカートリッジが次々にロードされていく、そのたびにフェイトの全身にうねるような魔力の渦が
絡みついていき、負傷した腕から切り落としたくなるような激痛が巻き起こる。未だかってここまで無茶をしたことはない。
しかし、ここで無茶をせずにどうする? フェイトは崩れ落ちたなのはを背にかばうように、目の前の敵を見つめる。
抜けるような空の色の髪を持ち、紅茶色の瞳の女性は、ほとんど表情を変えずに白銀に輝く槍を掲げている。
その槍がゆっくりと自分に向けられる。
全身を覆う恐怖心に鳥肌が立つのを抑えられない。しかし、逃げることは出来ない。
フェイトは半眼にして視線を切り、全身を駆け巡る激痛を忘れ、雑念を消し、精神を集中させる。
―― ただ一点を狙う。
未だかってないほどの魔力をライオットザンバーに込めていく。
―― ぎしぎしと体が軋む。
限界まで練り上げられた魔力が、爆発の前の一瞬の静謐をもたらす。
―― まるで爆発の直前の無音の世界の様に。
己の主を心配するように黄色いコアが激しく明滅し、ひっきりなしに文字が浮かぶ。
―― バルディッシュをきつく握りしめる。
赤い雫が頬を伝い頤から雫となってぽたりと落ちる。幻聴かも知れないが、雫の風切り音すら聞こえてくる。
フェイトがかっと眼を見開いた。
―― いざ。
sienn
「だめーーーーーーーっ!」
少年の甲高い叫び声が響き渡ったのはそんな時だった。
「え?」
「イチヒコッ!?」
極限の集中を突き破った叫びがフェイトの耳に届く。忘我の極地から現実に引き戻されたフェイトは目を瞬かせた。
自分が今どこにいるのか、一瞬混乱する。そして、目から入った光景が、ゆっくりと頭の中で結実していく。
あの槍の前に少年が両手を広げて自分を庇うように立っていた。その先に愕然とした表情の青い髪の女性の顔が見える。
白銀の槍を持つ女性の眼は自分に向かっていなかった。慌てて少年に突き付ける格好になっていた槍を外している。
そして、少年は青い髪の女性と桃色の髪の少女に向かって頬を膨らませ、強張った視線を向けていた。
上空に浮かんでいた少女もその様子を見て、憤然とした表情でゆっくりと青い女性の横に降り立ってくる。
「ヒナもしろ姉も喧嘩をやめてよっ」
「イチヒコッ、だってこいつら、あんたに武器を突きつけたのよっ!」
「……そう、許せない」
その言葉に、憤懣やるかたないと、ぷぅっと年相応に膨れた表情の桃色の髪の少女が腰に手を当てて、フェイトを庇う形になった
イチヒコと呼ばれた少年に憤りをぶつける。そして、青い髪の女性は、槍を下に向けつつ眉根を寄せて同じく厳しい目で少年を
見つめていた。
先ほどの緊迫した雰囲気が一気に霧散している。冷厳な裁断者であった敵は、年相応の少女達に変わっていた。
今の彼女たちはフェイトに眼もくれていないし、隙だらけに見える。
だが、なぜか、その少年を楯にして彼女達に攻撃を加える気にはなれなかった。
正直言って目の前の状況にフェイトは戸惑っていた。困惑していた。と言って良いだろう。
そしてそんな彼女をよそに、少年は握りしめた両手を振り回し、少女たちの怒りを真っ向から受け止めていた。
「ぼくは何もされてないよっ、ただ、話してただけなのに、なんでいきなり喧嘩ふっかけるんだよっ!
そんなに喧嘩ばっかりするヒナとしろ姉なんか嫌いだよっ」
イチヒコは目の前のしろ姉とヒナを前に、一歩も引かなかった。
目を釣り上げたヒナと剣呑な光を目に宿したしろ姉は怖かった。思わず、家に飛んで帰って下着を変えないといけないんじゃ?
と思うくらい怖かった。
だけど、もう見たくなかった。大好きなヒナとしろ姉が怖い顔をして、争う光景なんか二度と見たくなかった。
なにを誤解しているのか判らないけど、喧嘩相手の変な名前の人も悪い人じゃない。
いきなり棒やら光る鎌みたいな物を突き付けられた時はさすがに怖かった。だけど、すぐに引っ込めてくれた。
その後は、二人とも、みず姉みたいに優しい顔をしてた。
だから、そんな人に目の敵のように喧嘩をふっかけるヒナたちを見てられなかった。
あと、思い出されるのは、ベニバナとヒナの喧嘩のこと。
―― 僕にしがみついて、震えるだけのヒナ
―― 船の外で、おびえるだけのヒナ
―― 一緒にいたい!って泣くじゃくるヒナ
そんな光景は、もう見たくない。”いちばんだいすきなやつ”が、”こいびと”がそんな思いをするなんていやだ。
喧嘩がどんどん大きくなって、また、ヒナが同じような想いをするのなんて耐えられない。
だから、……だから、何が何でも喧嘩をとめなくちゃ。
その想いがイチヒコを動かした。
大それたことじゃない。
先を見越した判断でも何も無い。
ただ、嫌だったから。
ヒナが、しろ姉が何か変なものに変わっていきそうで嫌だった。
ウィ、ムシュー
(支援)
そんなのは嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。絶対嫌だ。
イチヒコにとっては、ただそれだけのこと。だけど彼にとっては、この世で一番大切なこと。
そしてイチヒコは、ヒナとしろ姉をキッと見据えた。ぜったいに引くもんか。と両手を広げて全身で表現する。
「わかったわよっ! やめればいいんでしょっ、やめればっ!」
R−ヒナギクは、ぷぅっとふくれっ面のイチヒコを見、そしてその後ろの金色の髪のチャペックが戸惑ったように動きを止めて
いるのを見つめた。
やがて、大きなため息をついて、自棄になったように荒々しく兵装を格納した。
あの金色が、この状況でイチヒコを人質に取ろうとしないことも、判断の一つになったのではあるが、何よりもイチヒコの目に
負けた。自分の意志をしっかりと持った目に負けた。
あの目は前に見たことがある。船の外でベニバナと争った時の目……。
(そんな目をされたら、なにもできないじゃないっ!)
わかってしまった。イチヒコが自分の為に怒ってるってことが、わかってしまった。
イチヒコの想いはしっかりと伝わってくる。とても温かいその想いが、心のどこかをほわほわと暖かくさせていく。
しかし、だからと言って、はいそうですか。と従うことは、なんとなく癪だ。心配してくれるのは、とっても嬉しいけど、弱みを
見せているようで、心の中がなんだかもきゅもきゅとする。
だから、顔が緩んでしまいそうになるのを必死で抑えて、しかめっ面を作った。
「……R−ヒナギク、本気?」
隣に降り立ったR−ヒナギクが不貞腐れたようなふりをしつつ、実はどこか嬉しそうに兵装を格納するのをみて、
R−シロツメグサは戸惑ったように傍らの”近所の子”を見つめる。
確かに、イチヒコを守ることも出来たし、目の前の敵の戦力も把握できている。しかし……
「しかたないでしょっ! イチヒコがそう言うんだからっ! R−シロツメグサッ あんたはどうすんのよっ」
「……わかった」
R−ヒナギクの妙に荒っぽく聞こえる棒読みな答えと、ぷうっと膨れるイチヒコを見比べていたR−シロツメグサも、しばらくして
溜息をついて諦めた。
憮然とした表情で手にした槍を光に帰す。
どうせ、目の前の金色の髪のチャペックも何もできない。何かしようとすれば、有無を言わさずドレクスラーで固めればいい。
イチヒコさえ手元にいるのであれば、艦内をドレクスラーで溢れさせてしまってもかまわない。
イチヒコの安全が確保できている以上、多少暴れようとも、なんら問題はない。それこそ、”外”に放りだして、六種兵装の
R−ダリアやR−キンポウゲに任せてしまえばいい。
よくよく考えれば、私はいったい何をしていたのか?
妙な徒労感をR−シロツメグサは感じていた。
「ありがとっ! ヒナ、しろ姉っ! 二人とも大好きっ」
「あ、あ、あ、あんたねぇ、ち、ち、ちょっと、は、は、離しなさいよっ!」
「……!?」
イチヒコの目の前で二人が、釈然としないまま兵装を消した。
そして、剣呑だった雰囲気が、ゆっくりと解れていく、怖かった目がいつもの目に戻っていく。
――よかった、いつものヒナといつものしろ姉だ。
怖い表情も怖い雰囲気もない、いつもの二人。なんだかんだ不平不満を言いつつも自分のことを考えてくれる二人に戻ったことに、
イチヒコは嬉しくなって二人に駆け寄りって、飛び込むように抱きついた。
思わず口から出た言葉に、ヒナが一瞬で顔を真っ赤にして腕を振り回して狼狽え、しろ姉が頬を染めて目を見開き、呆けた様に
硬直する。
それが面白くて、嬉しくて、さらに顔をこすりつける。
「や、ば、ばか、ちょ、ちょっとやめなさいよっ!」
「……イ、イチヒコ……もっと……する」
目の前の光景に、あっけにとられていたフェイトだった。
何故だか、あのイチヒコと名乗る少年のおかげで破滅的な危機が去ったらしい。敵対していた青い髪の女性も、桃色の髪の少女も
今は普通の女の子のように振る舞っている。その落差に戸惑いを感じる。
「なのはっ、なのはっ」
ほっと一息つきたいところだったが、今はそれ以上に、いや何よりも気がかりなことがあった。
目の前の訳の分からない光景を頭から消し去って、なのはの元に疾く戻る。恐怖にぶるぶると震えそうになる体を必死に抑え、
なのはの側に膝をついた。
クレーターの中央に横たわるなのはから、辛うじて小枝を振った時のような微かな呼吸音が聞こえる。
(よかった。まだ呼吸はある。まだ間に合う。まだ大丈夫。まだ……)
フェイトは自分をそうやって励ましながら、今までに練り上げた魔力の全てを込めてなのはの治癒に向ける。
なのはの額に手を翳し、必死にフィジカルヒールをかける。
自分の知っている魔法で、一気に傷を消すような物は知らないし、ミッドチルダの魔法で見たこともない。はやての夜天の書の中に
ひょっとしたら、そう言う魔法があるかも知れないが、今、この状態のなのはを次元転移させるなんて危険すぎて出来ない。
(少しでも傷を治さないと)
フェイトは怖かった。
なのはがもう眼を開けないんじゃないか? という嫌な未来が囁いて来る。もう無理だ。という幻聴が四方から聞こえて来る。
自分の足下がぐらぐらと音を立てて崩れていくようで、怖かった。
顔面を蒼白に、がくがくと震えながらも、その恐怖を振り払うように必死に魔力を込める。
「ほらみろ、ヒナのばか力、怪我しちゃってるじゃないか」
「だ、だ、誰がばか力よっ、あんたを守るために戦ったんじゃないっ! で、なんで、わたしが怒られるのよっ」
「ばか力はばか力だろっ」
「なによっ、少しは私に感謝しなさいよっ」
その二人の様子を、クレーターの縁からそっと覗いていたイチヒコが、すぐ隣で同じように見ているR−ヒナギクの脇をつつく。
一瞬でゆでだこの様に顔を真っ赤にしたR−ヒナギクが、がぁっと喚き返す。
「しろ姉?」
「……少し、待つ」
R−シロツメグサが怪訝そうな表情を浮かべた後、すっと歩き出したのはそんな時だった。
首を傾げるイチヒコに眉を寄せて複雑な表情を浮かべた青い髪の”姉”は、風にマントを靡かせながら、なのはに近づいた。
「くっ!」
「……じゃま」
気配を感じ咄嗟に振り返ったフェイトが、ザンバーフォーム形態のままのバルディッシュを突き付ける。
青い髪の女性は、みぞおちに突き付けられた剣をまるっきり気にもせずに、手で横に払った。
その態度に気が立っていたフェイトの心が一瞬で怒りに溢れる。だが、その怒りを足下からの掠れたか細い声が霧散させた。
引き続き支援なの
荒い呼吸のなか、なのはが片眼をうっすらと開けていた。
「……フェイ……ちゃん、……いいの。……バルディ……納めて……」
「なのはっ! なのはっ! 大丈夫?」
「……うん」
フェイトは、慌ててなのは横に膝をついた。
自分の状態を気にせずに、必死で微笑みを浮かべようとする痛々しいなのはの頬をそっとなでる。
その感触にようやく開いた片眼を細めるなのはを見て、安堵感で思わず嗚咽がこぼれる。
―― 助かった。ちゃんと生きてる。助かる……
限界を超えたオーバードライブの影響がどう出るか。なのはも自分も含めて後遺症がどれほど出るのか分からない、ひょっとしたら
半身不随とかになるかも知れない。だけど、生きてさえいればいい。生きていれば……。
その想いがフェイトから熱い雫となって溢れ落ちる。
「……やっぱり……人間《マンカインド》」
「……え?」
熱い物を頬に滴らせるフェイトの横に、すっと青い髪の女性が膝を降ろす。ゆっくりとなのはの額に手を当て、真剣な表情のまま
固い声で呟く。
悪意も敵意も感じさせない滑るような動きに、フェイトは邪魔をして止めるという気すら起きなかった。
だが、その言葉に怪訝な物を感じ、顔を上げて整った横顔を見つめる。
見つめるフェイトに、ちらっと一瞬だけ視線を送った後、再びなのはに視線を戻した女性が目を閉じる。
やがて、その手が薄く発光する。
同時になのはの全身も白く淡く輝いた。
あっけにとられるフェイトの目の前で、なのはの傷が逆回しの映像を見ているように塞がっていく。
みるみるうちになのはの表情が穏やかになっていき、血行が明らかに戻っていく。
呼吸が落ち着き、ゆっくりとした深い呼吸に変わる。
フェイトは自分の目が信じられなかった。こんな魔法は見たことがない。呪文の詠唱もせずに、デバイスの助力も借りずに……。
いや、ひょっとしたら額のクリスタルがデバイス……? もし、その額のクリスタルが”レリック”であるならば、体に
直接レリックを埋め込む技。ヴィヴィオが聖王として造られたのと同じような技? となると、やはりこの船は、住人も含めて
ロストロギア……。
青い髪の女性の魔法がフェイトの心を千々に乱れさせる。
「……直した」
「あ、あ、ありがとう」
「……いい。イチヒコが悲しむから治しただけ」
フェイトの混乱を尻目に、なのはの額においていた手をそっと離し、青い髪の女性がゆっくりと立ち上がる。
ついさっきまで、自分たちを撃滅しようとしていた敵が、自分たちを治癒する。その心の変遷が理解できなかった。
フェイトはあっけにとられたまま、なのはとその女性を交互に見つめる。そして、なのはが明らかに回復していることを感じ、
呆然としたまま目の前の女性に感謝の言葉を向ける。
青い髪の女性はちらっとフェイトを見た後、そのまま少年達の元へ向かう。
風に乗って微かに聞こえた答えに、照れがあるように思えたのはフェイトの気のせいだろうか。
R−シロツメグサが、イチヒコの元にたどり着いて口を開こうとした時、草原の向こうから金髪の女性が髪を振り乱して
走ってくるのが見えた。
走り寄ってくるR−ミズバショウに気がついたイチヒコが笑顔で手を大きく振る。それに気がついたのか、豪奢な金髪を振り乱して
不安に充ち満ちた表情が、一瞬で笑顔と泣き顔の入り交じった表情に変わる。
「イチヒコさんっ」
「あ、みず姉」
支援
「イチヒコさんイチヒコさんイチヒコさんイチヒコさんっ!」
R−ミズバショウは走り寄ったそのままの勢いで、イチヒコを抱きしめ、そのまま草原に倒れ込む。
押し倒す格好になっているが、そんなことはお構いなしに、頬をイチヒコの頭に擦りつけながら、最愛の少年の名前を繰り返す。
「わぷっ、ちょ、ちょっとみず姉、どうしたのさ」
「わたし、心配で心配で……」
イチヒコは顔を抱きしめられ、豊かな胸に挟まれて息苦しさを感じつつ、顔を真っ赤にして慌てる。
R−ミズバショウは、そんなイチヒコの表情を見て零れる涙をそのままに、更にぎゅっとイチヒコを胸に掻き抱く。
「ミ、ミ、ミ、ミズバショウッ! イ、イ、イチヒコが苦しそうよっ」
「……R−ミズバショウ。やり過ぎ」
イチヒコがR−ミズバショウに押し倒され、豊かな胸に抱きしめられて顔を赤くしているところを見たR−ヒナギクと
R−シロツメグサは唖然憮然とした表情を浮かべ共同戦線を張る。
イチヒコが熟れたトマトの様な顔で、わたわたとしている姿を見つめ、ようやく安心したのか、R−ミズバショウが零れた涙を
拭きながら微笑みを浮かべた。
フェイトがなのはに肩を貸して、クレーターから上がって来たのはそんな時だった。
治癒を受けたとはいえ、少し前は瀕死の重傷であったのは変わりなく、本調子からはほど遠い状態だった。
なのはとフェイトの表情には色濃く憔悴がこびりついている。
「あなた達……」
R−ミズバショウがはっとしたようになのは達を見つめる。水色の瞳が不安に揺れる。
しばらくの対峙の後、ゆっくりと言葉をつなげようとした時、R−シロツメグサが口を開いた。
「……R−ミズバショウ、とっても大事」
「え? 何かしら? しろさん」
思い詰めたようなR−シロツメグサの声に、なにか嫌な予感がしたR−ミズバショウが振り返る。
そこには真剣な表情の、彼女の"夫"がいた。
何を言い出すんだろう? と怪訝そうな表情のR−ヒナギクとイチヒコの視線もR−シロツメグサに集まる。
R−シロツメグサの白い繊手がゆっくりとなのは達を指さす。
「……あれは高等被造知性《チャペック》じゃない。……あれは、人間《マンカインド》」
そして、爆弾を落とした。
「え? うそっ」
「うそでしょ? R−シロツメグサッ」
その言葉にR−ヒナギクとR−ミズバショウが顔色を変え、悲鳴じみた声を上げる。
サン=テグジュペリ号の第三市民でもない、まるっきり関係の無い"外の人間"がここにいること。
そして、その”人間”が彼女達の知っている人間からはまるっきりかけ離れた戦闘能力を持っていることに。
彼女達の知る”人間”からはほど遠い”人間”がそこにいる。
「こんなことで嘘は言わない」
「そんな……」
R−シロツメグサの断定する言葉に彼女達は絶句し、そして、何か不気味な物を見る様な表情でなのは達を改めて見つめる。
チャペック達に一斉に見つめられ、一瞬たじろいだなのはとフェイトが顔を見合わせる。
しえん
念話で会話する必要も無く、お互いの眼を見るだけで意見が一致した二人は軽く頷きあった後、バリアジャケットを解き、
デバイスをスタンバイモードにして、戦意が無いことを表す。そして、なのはが代表して必死に体を支えながら一歩前に出た。
少年を背に庇っている一番年嵩に見える金髪の女性がこの場のリーダーなのだろう。
そう感じたなのはは、自分達に向けている強張った表情を崩さないその女性を見つめる。
「あ、あの……、私は時空管理局統合幕僚監部特務機動隊の高町なのはと言います。そして、こちらが」
「同じくフェイト・T・ハラオウンです」
「……」
なのはは中央のミズバショウと呼ばれていた名前の女性に視線を合わせて、出来るだけ静かな口調で語りかけた。
しかし、彼女は警戒を解こうとはせずに、無言でじっとなのはを見つめている。
その青い瞳が海のように深く、限りない想いが満ちていることを感じて、一瞬たじろいだ。
イチヒコと言う少年を自分の身で庇うかのごとく、自分達の前に立ちはだかるこの女性は、どれほどの経験を積んできたのだろうか、
どれほどの想いを込めているのだろうか。
少年の左右を固めるように立っている翠の瞳、紅茶色の瞳の彼女達も同じような眼差しだった。気高く、何者にも屈さない。
だけど愛する為に全てを投げ出せるような、そんな想い。そんな強さ。
そして彼女達が守ろうとしている、あの少年が最も大事な存在、最も大切な掌中の珠なのだろう。
なぜ、そこまで一人の少年に重きを置いているのかまだ理解できないが、それだけは強く伝わってきた。
(とっても大切なの……ね)
彼女たちの想いがなのはの心に響く。この宇宙船の中で、あのエリオに似た少年を大事に大事にしていたのだろう。
そんな彼女たちに、イチヒコという名の少年も、あきれるほどまっすぐに、想いを返しているのが分かる。であるならば彼女たちの
宝物に条件反射であるとは言え、デバイスを突き付けた自分達に非があるのは明らかだ。
なのはは、視線を離さずにミズバショウの碧眼をしっかりと見つめ返す。
「私達は貴方方に危害を加えるつもりはありません。ただ、何も判らなかったので、調査の為に訪れました。手違いとは言え、
イチヒコさんにデバイスを突き付けたのは、私達のミスです。申し訳ありません。謝罪します」
なのはがそう言ってゆっくりと頭を下げたことで、ようやく踏ん切りがついたのか、ミズバショウと呼ばれている女性が、微かに
震える声で、口を開いた。その口調には明らかに、なのは達の行為を非難する響きが含まれていた。
「……なぜ、航宙法第十八条、同一項に基づく公式通信を行わなかったのですか?
敵意が無いのであれば、正しい経路で通信を行えば済む話ではありませんか?」
「こ、航宙法第十八条ですか?」
その女性の語る言葉に、戸惑ったなのはは、傍らのフェイトを見る。
執務官としての職務上、数々の世界の法律を諳んじているフェイトであれば知っているかも。という淡い期待からだった。
だが、痛む腕を抱えているフェイトは、一瞬宙を見上げたが、固い表情でゆっくりとかぶりを振った。
「知らないとは言わせません。あなたも地球《ソル3》の出身であるならば、常識のはずですっ!」
「ちょ、ちょっとまって、待ってください。地球って……」
『なのは……、ちゃんと整理した方が良いと思う』
『フェイトちゃん……』
なのはとフェイトのきょとんとした表情にしびれを切らしたのか、金髪の女性の声が硬くなる。
そして、その言葉に含まれる内容になのはは愕然とした。
支援
そもそも、事の発端はこの宇宙船の外壁に”じてんしゃ”と平仮名で描かれている所から始まっている。
そして船内で出会った少年、イチヒコ。そして明らかに日本語を話す花の名前を冠した住人達。
そして、決め手の”地球”と言う言葉。だが、この船を造る技術は今の地球にはない。
何がどうなっているのか。混乱するなのはに、そっとフェイトが念話を差し向け、口を開く。
「横から口を挟んで申し訳ありません。お互いの現状把握にいささかの齟齬がありそうです。
正式な話し合いをさせていただいた方が良いと考えます。幸い、私は限定的ながら外交官権限を持っていますので、出来れば
渉外機関の方とご連絡を取っていただけ無いでしょうか?」
「……外交官権限……ですか。分かりました。ご提案をお受けしましょう。私はISAAC-1011105HAL R−ミズバショウ、
このサン=テグジュペリ号の最高権限知性《HAL》の代行機《だいこうしゃ》たる執政機、つまりこの船の代表です。
ですので、話し合いとなると私と言うことになります」
その言葉に、一瞬だけ額のクリスタルを瞬かせた金髪の女性は、フェイトをじっと見つめた後、微かなため息と共に口を開いた。
既に高揚していた時の印象は欠片もなく、涼やかな声が響く。
「ねえ、ヒナ、がいこーかんけんげんってなに?」
「知らないわよ。そんなの」
「……R−ヒナギク……」
「なによ」
「……なんでもない」
ミズバショウ達の会話の語彙が徐々に日常生活から離れていくにつれ、イチヒコには理解しにくい概念が混じってきた。
そもそも、”生まれて”このかた、この”町”から出たこともないイチヒコにとって、聞きなれないもの当然だった。
一年ほど前に寄った星系で、三等船室の住人たちを下ろす時も、結局この町からほとんど出ることはなかった。
ふと、イチヒコは隣で同じように退屈そうな雰囲気のR−ヒナギクに疑問をぶつけてみた。
帰ってきた答えはイチヒコが、たぶんこうだろうな。と考えていた通りの答えだったので、思わず噴き出してしまう。
そんなイチヒコにR−ヒナギクは頬を膨らませ、ついっと顔をそむける。そんな些細な行動も、イチヒコは好きだった。
ひと昔前では、かちんと来る行動も、なぜか笑って流せるようになってきている。
そして横から聞こえたR−シロツメグサのあきれたような口調に、R−ヒナギクがじとりと横眼で睨み付ける。
ふぅとため息をついたR−シロツメグサが、やれやれとばかりに首を振り、R−ヒナギクが更に眉を跳ね上げる。
イチヒコはそんないつもの二人の会話を聞きながら笑っていた。
いつもと同じ。イチヒコが望んだ平穏。平和な毎日。だけどとっても大事な毎日。
(そういえば、たかまちなのはとふぇいとなんとか、って言っていた”人”達はどこから来たのかな?)
ふと、浮かんできた疑問に、イチヒコが首をかしげる。
「……イチヒコ、”外交官”は船と船、星と星の間で交渉を行う役割の古い言葉」
「へー、じゃあ、近くに別の船か星があるんだ」
「……そう。……でも、おかしい」
「おかしいの?」
イチヒコの疑問はR−シロツメグサの言葉で解消された。だが、R−シロツメグサは何かを考え込むように押し黙った。
時折EESが煌めいているところを見ると、何らかの調査でもしているのだろうか?
しばらく返事してくれなさそうな”姉”を見たあと、イチヒコは視線を戻す。
「分かりました。では、直属上司に確認を取りますので、少しだけ通信を許可してください」
「許可します。ただし、当艦に侵入、抗戦した事実は曲げられません。
武器を預からさせていただくのと、一時的に拘束させていただきます。よろしいですね?」
「はい」
ほぼ同年代に見えるR−ミズバショウと名乗った女性の申し出は妥当な物だった。そもそも、彼らから見たら自分達は不法に領域に
侵入した重罪者であって、問答無用で打ち倒されてもおかしくない。
それをいくつかの僥倖が重なり、幾分穏やかに会話することが出来るようになっている。
なのはとフェイトはR−ミズバショウの言葉を聞いて、顔を見合わせて安堵し、大きくため息をついた後、微笑みを交わした。
まだ、後退していたところからスタートラインに立とうとしているだけ。
だけど、数分前の絶望的な状態からは格段に好転している。
拘束するというのは、現状を考えると仕方がない。軟禁されることなど、初めての経験で勝手が分からないけど、彼女達の様子を
見ていると、特に怖がる必要も無いような気がする。
話していて実感するが、強力この上ない力を持っている彼女たちは、基本的に極めて穏やかな性質だ。騎士カリムやフェイトの
義母のリンディのように強さと優しさを兼ね備えている。
自分たちが感じた”リドレー”に対する脅威。超弩級のロストロギアの脅威という認識も実際に彼女達と話してみれば薄れてくる。
フェイトが通信回線を開き始めるのを横目に見ていたなのはは、R−ミズバショウに一言断ってから、気持ちの良さそうな草原に
腰を下ろした。紅茶色の瞳のシロツメグサと呼ばれている女性に治療をしてもらったが、全身の倦怠感は隠しようがない。
正直立っているのもやっとだった。とてつもない重圧から解放されて、張り詰めていた気が抜け、疲労感が全身を包み込む。
草原に腰を下ろしてみて、柔らかな草が見事にそろっていることに気がついた。忘れてしまいそうになるが、ここは宇宙船の中。
草原ですら管理されているはず。でも、この見渡す限りの草原を青々と揃えるのは、気が遠くなるような作業の様な気もする。
もし、これほどの広さの草原を完全にコントロール出来るとすれば、逆に恐ろしい。
ただ、この草の感触は本物で心地良い。草の香りと柔らかな感触を手を滑らせて満喫する。
ふと、周りを見渡した。遠くにそびえる巨大な樹。甲虫か蝸牛を模したような有機的な建物。キラキラと光りを反射する湖。
そして草原を渡る風と、その風にゆっくりと波打っていく色とりどりの花。雛菊、白爪草、蒲公英……。
宇宙にぽつんと浮かぶ、限りなく穏やかな世界。
ヴィヴィオがここにいたら、走り回って喜びそう。
そう思ったなのはは、娘の笑顔を思い浮かべ、思わずくすっと穏やかな微笑みを浮かべる。
そんななのはの様子をR−ミズバショウ達チャペックはじっと見つめていた。
§ § § § § § § § § § §
「八神部隊長! フェイトさんから通信です!」
「なんやて、はよ繋いでっ」
「はいっ」
タイムリミットが来て、作戦の最終確認を転送ゲートで行っていたはやて達に、ブリッジから緊急連絡が届いた。
バリアジャケット姿で、真剣な表情のはやての顔が、いくばくか明るくなる。はやての言葉と同時に、喜色満面のシャリオの映像が
ノイズ混じりの映像に切り替わる。
一面の緑の中、バリアジャケットすら着ていない制服姿のフェイトの姿が映る。
しえん
あの緑色は植物か? と訝しく思ったはやてだったが、フェイトの顔を見た瞬間、そんな些細な疑問は吹っ飛んだ。
「フェイトちゃん、無事やったか? って、なんやのん! その怪我っ! 大丈夫なんか? なのはちゃんは? どないしてん?
何がおこってるんや?」
「……はやて、じゃなかった八神一佐、そんなに、立て続けに質問されても答えようがないよ」
「ごめん、で、どうや?」
フェイトの額から幾筋も血の流れた後があった。無造作に拭ったのか、途中で掠れて黒くなっている。よく見ると腕も抱えている。
フェイトの負傷姿に、はやてに悪夢がよぎる。だが、蒼白な表情のはやてに、フェイトはくすっと笑いかけた。
はやては、その表情で想像していた最悪の状態ではないことを感じ、大きく息をついた。
とはいえ、フェイトにこれほどまでの手傷を負わせる相手など、ほとんど見たことがない。
あと、映像に映らないなのはの動静も懸念が残った。
そんなはやての表情に気がついたのか、なのはが写る様に体をずらす。草原らしき場所に座ったなのはがそれに気がついて
ゆっくりと手を振っていた。
なのはもバリアジャケットを脱いでいたが、表情は比較的穏やかだった。それを見てほっと一息ついたはやてに、フェイトが真剣な
表情で告げる。
「えっとね、一応無事。で、リドレーの住人達とのコンタクトがとれたんだ」
「なんやて!?」
はやては言葉を失った。リドレーは生きている。それは確かだ。
生命反応があるという点からも、”住人”がいることも確実だった。
ただ、二千年もの昔から飛び続けている船の住人というものがいかなる存在か。人の姿なのか、人とはかけ離れたものなのか。
「で、ちょっと、いろいろあって、今は拘束状態なのかな?」
「ちょっとまってや、フェイトちゃん。拘束状態やて?」
言葉に詰まったはやてに、フェイトが言い難そうに眉をよせて、苦笑いを浮かべた。その尋常ではない単語に、はやては目を剥く。
拘束状態ということは戦闘を行ったか、両手を上げたか。幼馴染の怪我の状況を確認するに、前者なのだろう。
最強のツーマンセルが、この短い時間に捕縛されているということに、はやての中にリドレーの住人たちへの警戒感が沸き起こる。
改めて救出作戦から練り上げる必要がある。そう感じたはやての表情が厳しくなる。
支援
……が。
「うわぁ、すごいね、このテレビ。空中に浮いてるよ? あ、なんか人が映ってる」
はやての目の前でフェイトが横を見て狼狽したかと思うと、ドアップで少年の顔が写った。
どこかで見たことがあるような顔やな。と漠然と感じたが、よくよく考えると、おかしい。なぜこんな少年が写る?
「こら、イチヒコ、やめなさいよ」
「ちょ、ちょっとイチヒコさん。お邪魔しちゃ駄目ですよ」
「はーい」
そうこうするうちに、桃色の髪の少女がその少年の手を引っ張って行き、音声だけだが、やわらかい物腰の女性の声が聞こえた。
「フェ、フェ、フェイトちゃん? なんや? なんや?」
明らかにおかしすぎる。
はやての狼狽した表情に、同じく苦笑いを浮かべたフェイトが、映像を切り替える。そこには先の桃色の髪の少女に引きずられた
少年と、二人の女性が写った。そして、草原が広がる中で、半ばじゃれあうように見えるその光景は幼馴染みの負傷状況とは裏腹に、
場違いなほど穏やかな光景に見える。
この光景を見せたのは、状況を端的に説明する為のフェイトの配慮なのだろう。となると、彼等が”リドレーの住人”なのか。
再びフェイトの横顔のバストアップに戻った。
「あ、うん、話せば長くなりそうだから、とりあえず要件だけ。
このリドレーの住人たちと執務官として話をしたいんだけど、いいかな」
「執務官として……なんか。ん、分かった。フェイトちゃんに任せる。やけど、ほんまに無事なんやな」
何とも微妙な表情で、少年たちの光景を見ていたフェイトが、はやてに視線を戻した。
その言葉に含まれる内容で、予想以上に大きな問題になりそうだとはやては感じた。
執務官として。ということは次元犯罪に関するものか、法的なもの、それも”次元世界”の話になるはず。
……リドレーの場合は、後者だろう。
現場の指揮権は完全に委任されているとはいえ、上長であるミゼットにどのように報告するか、考えれば考えるほど頭が痛くなる。
はやては頭を抱えるしかなかった。
「うん、大丈夫だよ、はやてちゃん。でもちょっとだけ、ここにいないと駄目かな」
「なのはちゃん……」
重ねて問いかけるはやての言葉に、なのはが横から映像を挟んできた。顔色は悪いものの、表情はとても落ち着いて穏やかだった。
その顔を見てはやては頷いた。
「はやて、いろいろとややこしそうだから、私となのはで一旦会話してみるよ。また連絡するね、はやて」
「……わかった、気つけてーな」
「うん」
フェイトとの通信を切った後、とりあえず部隊を待機に戻し、シャリオに映像の分析を指示してから、はやてはブリッジへの通路を
歩く。
状況が全然わからない。だが、少なくとも二人が捕まったのは事実だろう。
洗脳されているような雰囲気は微塵もないので、二人が”会話する”と言うのであれば、それが必要と感じたのだろう。
その判断に異を唱えるつもりはない。
そしてフェイトがわざわざ映し出し、じっと見ていたことを考えるとあの少女たちが”リドレーの住人”としか考えられない。
となると、二人はあの子たちに負けた? ……まさか。
はやての脳裏に、穏やかな微笑みを浮かべたなのはの顔が浮かぶ。
こういった時、個人の裁量でかなり動けること、時空管理局が個人に大幅に権限を持たせる組織であってよかったと思うと同時に、
個人に頼り切りな脆弱な組織構造も浮き彫りになる。
ふわふわと横に浮かんでいる不安そうなリインフォースUに、あの二人だったら大丈夫や。と内心の不安を押し隠して笑いかけた。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか、なのはちゃん、フェイトちゃん、頼んだで……。
ひょっとすると、えらい騒動になるかもしれへんよ……)
はやては口を引き結び、幾分早足でブリッジへ向かった。
りりる 5話でした。
多大な支援、前回分の感想ありがとうございます。
遅々として進まずですが、気長におつきあいください。
あと、投下感覚はそれほど加速しない(と思います)ので
まあ、月刊誌くらいの感じで・・・
ではまた。
GJ!
現場レベルでの和解はできそうだが、管理局上層部はどう動くか?
りりるの人、投下 乙です。
最悪の状況が回避されて一安心と言ったところですね。
次の投下を心待ちにしております。
じっくり自分のペースで書き上げてくださいませ〜
乙
間にあって良かった通信w
最悪次元の藻屑に消えてたよww
しかし今後、管理局との間でややこしい事になりそうな予感
次回投下、首を洗ってお待ちしてますぜ
GJ!!です。
何でだろう?優秀なはやてを見ると違和感と何故かちょっとした反発が生まれるw
乙でしたー。
管理局は正義を自任していますけど、法があるわけでもなく、条約を結んでいるわけでもない他の世界もしくは国家に武力を持って押し入るイメージが強いですからね……こういった反撃を受ける可能性がある、ってことですね。
GJです
しかし戦力の小出しが各個撃破を招くなんて判断ができるとは、とてもじゃないがゆりかご戦のときに部下を制御できずに戦力を分散させた挙句に指揮をほっぽりだしてゆりかごに突入した方とは思えないですねえ
ハイハイ感想に見せかけて嫌いなキャラを叩くのは止めましょーねー
ロクゼロ、それまで超然としていたスカが
いきなり俗っぽくなって何か違和感があるな
GJでした!
前回まで絶望的な状況でしたが何とか和解ができそうな雰囲気に。
ただ……ここまでのオーバーテクノロジーを管理局がこのまま見過ごすとは
到底思えませんな。六課連中はともかく上層部が。
まあ向こうがその気になったら勝ち目0ですがw
ていうかそもそも'法'が食い違ってるのに話し合いができるんかね?
全ての世界で管理局の法が優先される訳がないし。
次回がいろんな意味で楽しみです。
>>380 GJです。
このまま良い関係を築けるとよいですね。
どうか気張らずに。
>>389 これからどうなるかわからないし、あまり決め付けるのはどうかな。
りりるGJ
しかし管理局的にはあの船及びチャペック、他タイショー達はアウトな気がするがどうなるんだろうか。
続き楽しみにしてます。
こんばんは、6時ごろにグラヴィオンStrikerSの新作を投下しようと思いますがよろしいでしょうか?
中傷だの叩きだの決め付けたり、過剰に反応したりしないで、スルーするでござるよ。
時間になりましたので投下します。
なのははふらふらと街を歩く。どこにも行く当てはない。ただふらふらしているだけであった。
ふらふら歩いてるなのはは無意識のうちに前にいた人とぶつかる。
「あ、ごめんなさい!」
なのはが少し後ろに下がって謝る。するとぶつかった人はこう言った。
「いいんだよ」
なのははその声に聞き覚えがあった。下げていた頭を上げ、そのぶつかった人の顔を見るとそれは懐かしい顔であった。
ぶつかった人は少女だった。その顔、その赤い髪、少女の着ているドクロがプリントされている服、短いスカートと黒のニーソ。なのはは知っている。
「ヴィータちゃん?」
「久しぶりだな、なのは」
第16話 紅のキバ
ドゥーエは潜入をしていた。それは地上本部に対してであった。これは任務ではなく私情だ。
(とりあえず、どこかしらね…)
「あら、ドゥーエお姉さまじゃない」
ドゥーエは突然後ろから声をかけられる。その声の主は自分と同じスカリエッティの戦闘機人ナンバー4のクアットロであった。
クアットロは自分が手塩にかけた戦闘機人でもっともドゥーエを敬愛している。
「バカンスに行ってるとばかり思ってましたけど、こんなところで何をしてるのですか?」
「実はね……」
同時刻、聖王教会指令室では先日の戦闘での経過を確認していた。
「先日グラントルーパーが倒したゼラバイアの消滅地点を中心に重力異常地帯が拡大中」
「やはりあれは重力子撹乱物質のようだな、ロッサ」
「うん、そうだね」
クロノが隣に座るヴェロッサに聞き、ヴェロッサもうなづく。
「重力子撹乱?」
アルトが少し聞き覚えの無い言葉を聞き、ルキノが教えた。
「重力エネルギーを媒介させるのが重力子、それを撹乱する物質の事」
「さすがルキノ、よくわかってるね」
「あれが蒔かれてる地域はとても空間が不安定なの」
その不安定な空間にヴェロッサの嫌な予感はますます嫌になってきていた。
(スバル、急いでくれ)
なのは発見をスバルに託すヴェロッサ。
スバルはなのはをノーヴェ達と探すがなかなか見つからずにいたが、謎の通信が入りスバルはその通信を信じて行ってみることにした。
なのははヴィータにある場所につれてこられた。その場所はかつてなのはとヴィータが遊んでいた海鳴公園によく似ている公園であった。
「ここって……」
「似てるだろ? 海鳴公園に…。あそこでよく遊んだよな」
ヴィータが昔を思い出したようにふける。よくなのはとヴィータはヴィータの趣味のゲートボールをして遊んだりしていた。
それにはアリサやすずかも一緒になって遊んだりもしていた。
「あたしと会って、1年くらいだったよな。ヴェロッサが来たのは……」
ヴィータはヴェロッサが来た時の事を思い出す。ヴェロッサが来たのはなのはとヴィータがあって1年、なのはがちょうどユーノと魔法に会って1年が経った時だ。
ヴェロッサを海鳴市で見てからちょくちょくなのはとヴィータが遊んでいる様子を見ていたが、ヴェロッサの姿を見なくなったのと同時になのはの姿も見なくなった。
「あの時は何があったのかわからなかった。お前があいつに誘拐されたのかと思った」
「それは……」
なのはは当時、魔法の事を言うに言えなかったのだ。魔法の事を家族や友人に言えたのはヴェロッサに連れられる時に初めて言えたのだ。
その時なのははヴィータにも伝えようとしたが、都合が悪くヴィータがたまたまいないときであり、時間が無いとの事でヴィータに告げれないまま別れてしまった。
「あたしもお前がいなくなってしばらくして魔法の事を知ったよ。お前がヴェロッサに連れられたのはお前のリンカーコアの中にG因子があるからって事も後で知った。でもそれはあたしも同じだ」
「?」
「あたしも数少ないリンカーコアにG因子を持つ存在だ。でもヴェロッサはお前を選んだ。それはお前の潜在能力を期待したんだと思ったんだが違ったな」
「え?」
「お前はゼラバイアに負けた」
その言葉になのはは驚愕を思い出す。
「Gドリラーのパイロットの一人は死んで、もう一人は行方不明。二人を失ったのはお前の責任だ、なのは…」
「やめて…」
そしてヴィータはもう少し酷いことを言う。
「挙句の果てにお前は責任放棄。これじゃあいなくなったあいつらが浮かばねえぞ」
「やめてよ!」
なのはの目には涙が現れていた。
「わかってるよ! そんな事わかってるけど…」
「なのは、あたしと一緒に来い。あたしならお前といいコンビも組めるだろうし、お前ならグラントルーパーを使いこなせるはずだ。ただお前は戦えばいいんだ」
ヴィータの誘いになのはは乗ってしまいそうになる。その時!
「待ってください! なのはさん!」
スバルがなのは達の前に現れたのだ。
「お前はスバル・ナカジマ……」
その頃ティアナは閉じ込められているような気分で病室にいた。
「早くここから出ないと……」
その時誰かが部屋のドアのロックを解除して入ってくるの感知して急いでベッドに戻る。そしてドアが開くとそこには三つ編みでメガネをかけた女性が入ってきた。クアットロである。
「あら、ちゃんといたのね。いましたわよ、ドゥーエお姉さま」
(ドゥーエ?)
ティアナがドゥーエの名前を聞いて薄らと目を開ける。その目の先にはクアットロとドゥーエが映っていた。
「ドゥーエ!」
ティアナは驚いた。まさか裏切ったはずのドゥーエが自分の前に現れたのだから…。
「しらばくね、ティアナ」
「ドゥーエはわかるけど、そちらさんは?」
「あら、私はドゥーエお姉さまの妹のクアットロですわ」
クアットロは少し嫌味混じりなようにティアナ自分を紹介した。何故クアットロがドゥーエと一緒にいるのかというとドゥーエの話を聞いて面白そうだと思ってやっただけの事だそうだ。
戻って公園ではなのはがスバルに話していた。
「もう私は忘れたいんだ。グラヴィオンの事、教会の事、皆の事も……」
「なのはさん」
「私は人間じゃなくていい。スバルに言われたように悪魔でいいの!」
なのはの目から涙が溢れ出す。
「もう何も感じたくない。何も考えずに敵を倒す機械のようでいい」
「おい、いくぞ」
ヴィータがなのはの手を引っ張ってなのはを連れて行こうとすると、スバルがヴィータが握っているなのはの手を持つ。
スバルの手にはフェイトがしていた黒いリボンがあった。そしてスバルは怒り交じりに言う。
「ふざけないで下さい、なのはさん」
「スバル…」
「フェイトさんの事も忘れる気ですか? これを見ても何も感じないのですか!?」
「もうやめて!」
「フェイトさんも可哀相な人ですね。こんな人の為に無駄死にしたんだから!」
なのはは思わずスバルに思いっきり平手打ちをかました!
「なのはさん…、やりましたね!」
スバルも平手打ちで返す。そしてなのはとスバルは次第に拳で殴りあうケンカを始めた。
「お前ら、なのはやめろ!」
ヴィータが止めようとするも二人はやめない。
「あなた一人で戦って様な顔をしないで下さい。フェイトさんが死んで悲しいのはあなた一人じゃないんですよ」
「黙ってよ。フェイトちゃんは子供の頃から一緒だったんだよ」
「面倒ばかり起こして、心配かけるのもいい加減にしてください!」
「誰も心配してくれなんて言ってないよ!」
「本当に迷惑をかけたと思ってるんなら、リインのそばにいてくださいよ!」
「リインの……」
なのはの手が止む。ヴィータがなのはの元に駆け寄る。
「なのは!」
その時、グラーフアイゼンから緊急通信が入った。
「「「ゼラバイア!!」」」
そうゼラバイアが先日の戦闘で発生した不安定なフィールドから現れたのだ。
そのゼラバイアは最初に現れたのとそんなに変わらない姿だが、違う所があった。それは体を展開させて、左右に自分の体の真ん中を開けたのだ。
「ゼラバイア、地上400メートル付近で静止」
「変形のためか、ゼラバイアを中心とした半径500メートルに空間の歪みが確認されます」
聖王教会で動きをキャッチし、クロノは手をアゴに添えて考えるもヴェロッサはすぐに答えを出す。
「歪み、やはり……」
そしてゼラバイアの展開させた穴はゲート状になり、歪みのゲートから数ヶ月前に倒したゼラバイア達が大量に現れたのだ。
「デストロイヤークラスのゼラバイアを中心に転送空間が発生! 次々にウォリアークラスのゼラバイアが送り込まれていきます」
(カリム義姉さん……)
次元航行空間に浮いている謎の物体にいるカリムはその様子を見ていた。
「美しい、美しいわ、私のゼラバイア。抗ってみなさいロッサ。あなたで脆弱でちっぽけな力を…。見せてみなさいあなたが信じる人の可能性と言うものを……」
「そう言えば、何でスバルはここに?」
スバルの運転するバイクの後ろに乗るなのはがスバルに尋ねる。
「ドゥーエさんから連絡がありまして…、ドゥーエさん、なのはさんの事を調べてたみたいで……。前にいた場所によく似た場所に行くんじゃないかって…」
「ドゥーエが……」
「なのはさんにも思い出の場所ってあるんですね。安心しましたよ。さてと飛ばしますよ! ティアとドゥーエさんが待ってます!」
「うん!」
スバルのバイクはさらに速さを増す。ティアナとドゥーエの元へ走る!
(チンクさん、ドゥーエさんはチンクさんの言ってたとおり冷たい人じゃなかったです。ちゃんと仲間の事を気遣う人なんですね)
「ところで何でここが?」
廊下を走るティアナがドゥーエとクアットロに聞く。
「この子のおかげよ」
「私の能力があればこれくらい簡単なものですわ」
クアットロはウーノよりは劣るものの、情報処理能力はかなりの腕前を持っている。
三人が廊下を走る中、レジアスを発見し、レジアスの護衛の二人を簡単に倒し、ドゥーエは自身の武装の鉤爪「ピアッシングネイル」をレジアスに向ける。
「中将、一緒に来てもらおうかしら」
「お前は……」
そしてドゥーエはレジアスを連行し、クアットロ、ティアナと共に飛行艇を奪い、バイクのスバルとなのはと何とか合流した。
「君達がこんなマネをするとは思わなかったよ」
「私はドゥーエお姉さまについてきただけですわ」
「優雅な暮らしは退屈だったのよ」
「ヴェロッサ・アコースの正体は君も知ってるはず。それでも戻ろうと言うのか?」
「あいつは本気で人類を守ろうとしている。私はそれを見届けようとしたい。それにその思いはレジアス中将あなたと同じよ」
「うーむ」
その頃、ゼラバイアのいるエリアでは避難が完了し、グラントルーパー隊が戦っているものの敵の数は多い。
その様子をなのは達はモニターで見ていた。
「ヴィータちゃん…」
「さすがにまずい状況みたいですわね」
「早く教会に戻ってグラヴィオンで戦わなくちゃ…」
「グランディーヴァは大丈夫なの?」
「マリーさん達が直してくれてる」
「なのは、戦える?」
ドゥーエがなのはに聞く。なのはの目には戦う闘志が戻っていた。
「大丈夫、いけるよ」
スバル達は教会の司令室に通信を入れる。
「こちら、スバル」
スバル達が司令室のモニターに映る。
「スバル、なのはさん!」
「ティアナとドゥーエさんもいるんですね」
「発進するんで、準備お願いします」
クロノがスバルのいつもの元気となのは達の帰還に薄らと笑みがこぼれる。
「ロッサ? どこに…」
ヴェロッサが司令室から出て行くのを見て、クロノが呼び止める。
「僕も、自分の責任を果たさないといけない」
ヴェロッサは後ろを向きながらそう言い、指令室を後にした。
その一方グラントルーパー隊がよく戦うも敵の数の多さにまいってしまい、エネルギー残量は残りわずかであった。
「くそ、エネルギー量が…」
「どうするオットー?」
「このまま逃げても同じなら戦うしかない」
「そうだ、グラヴィオンは必ず来る。それまで持ちこたえろ」
ヴァイスが三人を励ます。
「ヴィータ、戻りなさい」
「嫌だね! あたしは負けないぞ! ヴェロッサにも、なのはにも!」
その頃教会に戻ったなのははグランカイザーに乗り込み、他の皆もグランディーヴァに乗る。Gシャドウには意識がまだ完全に戻っていないリインを乗せて…。
「え、リイン!?」
「なのは、何でリインを乗せた!?」
リインの姿を見たクロノがなのはに怒る。するとヴェロッサから通信が入る。
「行かせてやってくれ、クロノ君」
「ロッサ…」
「なのは、リインを頼む」
「うん」
そしてゴッドグラヴィオンはグランフォートレスに乗り、飛んでいく。
戦場ではもはやグラントルーパーは限界に来ていた。
「数が多すぎる……」
珍しくヴィータが弱音を吐く。そしてヴィータがやられそうになった時、閃光が走った。
「おお、グラヴィオンか!」
ヴァイスが叫ぶ。それはグランフォートレスが行った攻撃だが、その上にはグラヴィオンがいた。
「まずはあのゲートのゼラバイアを倒すけど、空間ごと切断しないとダメね」
「だったら超重剣で……」
「ダメだ! 超重剣はグランナイツ6人が揃わないと本来の力は発揮できない!」
クロノの言う事実に皆驚く。
「嘘!?」
超重剣が使えない今戦況はものすごくグラヴィオン側の不利。それでもグラヴィオンは敵に突っ込んでいくも、グランフォートレスは落とされ、グラヴィオンも敵に挟まれてしまう。
「グラヴィオンの合体機構に異常発生!」
「重力子安定指数20%にダウン」
グラヴィオンはゼラバイアの強力なはさみ攻撃にボロボロになっていく。
「何と!? 堪忍袋の緒が切れた! 許さんぞ、ゼラバイア!」
グラヴィオンを助けようとヴァイス機がグラヴィオンを挟むゼラバイアに向かって特攻をかける。
しかしその特攻も虚しく周りのゼラバイアに邪魔されてしまい、墜落する。
「くそーーーーー!」
ヴェロッサはこの事態を重く見、自分の持つ杖を振り回し、上に向けて叫ぶ!
「炎皇、召来!!」
杖の先から光が飛んで行く! そして戦場に光の矢が飛んで来、次々にゼラバイアが倒されいく。
その光はグラヴィオンを捕まえていたゼラバイアを倒し、グラヴィオンは何とか解放された。
「な、何?」
「今のは?」
皆が驚きを隠せない。すると次は空から光の球が姿を現す。
「輝け、新しい太陽よ。この大地を美しく照らし出してくれ」
その光の中には別のグラヴィオンの姿があった。
投下完了です。とうとうあれが出てきました。
次回は意外な人が登場とヴァイスが(ある意味)おかしくなってしまいます。
20分頃から単発ネタを投下したいのですが、よろしいでしょうか?
オッケーイ
では、そろそろ投下します
支援
新暦XX年、世界は核の炎に包まれた。
海は枯れ、地は裂け、あらゆる生命体が絶滅したかにみえた。
しかし――人類は死滅していなかった。
乾いた風が頬を打つ。
じゃりじゃりと砂の混じった空気には水分などなく、この世界がいかなる場所なのかを雄弁に語っていた。
かつての管理世界――ここは、その残骸といったところか。
遡ること数年前。狂乱に堕し、与えられた平和をただ貪っていた人類に、遂に鉄槌が下された。
世界大戦の幕開けである。
惑星全土に拡大した戦争は、この世界の全てを焼き払った。
魔導兵器・質量兵器入り乱れての、泥沼の乱戦。
戦闘機が飛べば魔力弾が撃ち落とし、魔導師の編隊はミサイルに吹き飛ばされた。
彼方でベルカ式の騎士達が切り結べば、此方で機関銃の爆音が兵士を蹂躙する。
1つの世界のあらゆる国家、あらゆる人間を巻き込んだ大戦のあらましは、そんなところだったという。
元々この世界には、魔法の素養に秀でた者は少なかったと言われている。
故に戦場では人員がことごとく不足し、それを補うために大量の質量兵器が導入された。結果、生まれたのは混沌の戦線というわけだ。
そして最後に放たれた禁忌。すなわち、核弾頭。
地球と呼ばれる世界出身の上司からも、大体は聞かされていた。膨大な熱量と猛毒を撒き散らす、大量殺戮兵器の名だ。
現時点においても、これを凌ぐ破壊力を有した質量兵器は存在しないと言われている。
たった1発の投下が引き金となり、最凶最悪の爆弾は世界各地に氾濫する。
核の炎はあらゆる生命・文明を焼き払い、この世界を死の国へと変貌させたのだ。
戦争が終結してみれば、残されたのはこの果てしなき荒野。
人口は開戦以前と比較すれば、爆発的に減少しているのが見て取れる。特に魔導師に至っては、ほとんど絶滅したも同然だ。
文明のレベルは数百年単位まで巻き戻り、世界は再び暴力が支配する時代を迎えていた。
「ひどいものね……」
ぽつりと呟いた声は、そのまま風に流されて消えていった。
防砂用に羽織った麻のマントが、突風にはたはたと翻る。
その隙間から覗くのは、時空管理局員の制服だ。全身が青色で統一されたそれは、すなわち本局所属のエリートの証。
乾ききった大地を、一歩一歩踏みしめていくのは、まだうら若き女性だった。
少女といっても差し支えないかもしれない。若さを残した表情は、未だハタチの境界を跨いでいるか否かは判然としない。
マントのフードの奥底では、燃え盛るようなオレンジ色が輝いている。
平時ならば手入れの行き届いたロングヘアーなのだろうが、生憎とこの天候だ。髪に混じった砂利が不快感を訴える。
――がちゃり、がちゃり、がちゃり、と。
不意に、風の音に混じる音があった。
硬質な足音と共に姿を現したのは、マント姿の1人の男だ。
足元は、左右非対称。金属の光沢を放つ右足は義足だろうか。むき出しになった鉄のフレームが、この世界の文明レベルを伺わせる。
「ここをどこと心得る。恐れ多くも、偉大なる拳王様の居城であるぞ」
誰何の声が響いた。
痛ましい一筋の傷跡を残す瞳は、強烈なプレッシャーに爛々と煌いている。
鋭い眼光。ただのゴロツキとは違う。すなわち、この乱世を戦いの中で生き抜いてきた強者の光。
「その拳王に用件があって、あたしはここまで来た」
しかし、それにもおくびもひるんだ様子を見せることなく、女は淡々と言い放った。
マントのフードを取り払う。炎のごときオレンジの髪が風に舞い、海のごとき青の瞳が男を見据える。
女の視線の先にそびえるのは――小山のごとき、剛健な城砦。
「――時空管理局執務官、ティアナ・ランスターです」
ティアナが世紀末にやって来たようです
テラ世紀末w
支援
拳王軍とは、この乱世の中でも近年めきめきと頭角を現してきた軍閥だ。
その名の通り、世紀末覇者「拳王」を名乗る1人の猛将によって統括されており、総兵力は4000以上。
旗揚げ当初からその圧倒的軍事力、並びに拳王の超人的戦闘能力を振りかざし、破竹のごとき侵略戦争を展開。
恐怖と力の下に、数多くの近隣勢力を平定し、世界をコブラと翼の旗印の下に染め上げてきた。
今となっては、サウザー率いる最大の派閥「聖帝軍」とすら拮抗するとされている。
そしてマントの男――軍師ソウガを名乗る者により、ティアナはその拳王の玉座へと案内されていた。
「済まなかった。我々修羅の国の出身は、どうも外界の情勢に疎くてな」
先ほどまでの剣呑な空気とは一線を画した、柔和な苦笑を浮かべるソウガ。
ティアナはそれに対し、いえ、と小さく返事をしながら頭を下げた。
修羅の国とは、この戦国乱世においても、一際危険な場所と呼ばれた禁断の地だ。
闘争行為が社会制度そのものとして規定されており、外界との接触はほとんどないと言われている。
故にこの男も、管理局の名前を出されてもなかなかぴんとは来ず、ティアナも説明に苦労することとなった。
やがて廊下を歩いていた両者は、大仰な扉の前へとたどり着く。
このドアの先が玉座の間。噂に聞いた拳王の待つ部屋だ。
果たしてこの一帯を瞬く間に支配してみせた拳王という男は、一体いかなる人間なのか。
ごくり。緊張に喉を鳴らせながら、ティアナは目の前で開く扉をじっと見つめていた。
「拳王様。時空管理局より使者が来ております」
ソウガが言う。割とスムーズにここまで来れたということは、既に連絡が行き届いているのだろう。
かちゃり、かちゃりと鳴り響く義足の音に追従し、ティアナがその部屋の中へと踏み込んだ。
この世紀末において、最強の呼び名高き覇者に、彼女が最初に抱いた感想は――
(――でかい!)
その巨大さのなんとしたこと。玉座に身体を預けていても、その圧倒的スケールはありありと見て取れる。
緋色のマントに身を包もうと、猛牛のごとき兜を被ろうと、隆々と盛り上がる巨体を隠し切るには至らない。
一体どれほどの筋肉の鎧を身に着ければ、これほどまでの大男になりうるというのだろうか。
こんな人間、管理局には存在しない。それどころか、ミッド全体を見回しても見られまい。
身体の大きさはそのままプレッシャーの大きさへと比例し、ティアナの背筋を粟立たせる。
小山のごとき巨体が。兜の下でぎらりと輝く眼光が。全てが無言の圧力となって襲い掛かってくる。
底知れぬ威圧感は更にその身を膨れ上がらせ、それが更なる威圧感を生む。
及ばない。ソウガもかなりのやり手だったようだが、この男と比べれば比較にもならない。
ましてや、自分自身はどうだ。これほどまでの迫力を放つ存在の前では、自分のなんとちっぽけなことか。
「……時空管理局執務官のティアナ・ランスターと申します」
全身をぐっしょりと嫌な汗が濡らすのを感じながらも、ティアナはつとめて気丈に名乗った。
嘗められるわけにはいかない。自分は管理局を代表して来ているのだから。
「この世界には、諸国に広がる軍閥調査のために参上いたしました」
「時空管理局……フッ、捨て置いたこの地に今さら使者を出すか」
野太い声が笑う。
容姿にたがわぬ、熊の唸りのような威圧的な声。余裕の表情に宿るのは、まさしく王者の風格。
この男こそ世紀末覇者拳王こと、生きながらにして伝説と謳われし、北斗4兄弟が長兄――ラオウ。
1800年の永きに渡り、脈々と受け継がれてきた幻の暗殺拳・北斗神拳の使い手である。
正当なる伝承者ではないものの、その実力は歴代の北斗の拳士の中でも、最強の男として数えられるほどだ。
人体に存在する無数の経絡秘孔を突くことにより、敵を内部から破壊する一撃必殺の秘奥義は、
まさしく恐怖の拳王が頼みとするに相応しい魔技といったところか。
「信用なさるのですか、拳王様?」
と、不意に声が割って入ったことで、初めてティアナは、玉座の横に立っていた人影に気付く。
ラオウの放つ驚異的なまでの存在感に隠れて、今まで気にも留めていなかったが、どうやらそこにいるのは女性のようだ。
甲冑と純白の衣装に身を包む美女は、確か双剣のレイナと言ったか。
ソウガ曰く、女だてらに拳王親衛隊を率いる凄腕にして、じゃじゃ馬の妹であるとのこと。
「騙し討ちのつもりでもなかろう。今さらこの世界を取ったところで、奴らには何の見返りもない」
レイナの問いかけにも、ラオウは冷静に答えた。
事実だ。
過去の核戦争によって行政は崩壊し、資源は枯渇し、魔導師も死滅したこの世界には、時空管理局が求めるものは皆無。
一応かつては管理世界として登録していたこともあり、こうして形式上の調査を行ってはいるものの、
今になってこの世界を平定しようだとか、そんなつもりは毛頭なかった。
残された人口もたかが知れている。わざわざ支援活動を行うほどでもない。
要するに、捨てられた世界。
自らの欲に身を任せ、共食いの果てに共倒れとなった世界には、ある意味お似合いな末路ではあったが。
だが、何も知らぬままに荒野に残された者達はどうなる。
拳王軍の戦は彼らがための統一でもあった。
「それでその管理局の小娘が、我が拳王府に何の用だ」
そしてラオウは、ティアナへと視線を戻し問いかける。
「はい。闇雲に調査を行うよりは、組織に身を預けた方がやりやすい、と上から……」
「……フ……管理局はサウザーではなく、この俺を選んだか」
にやり、と。
ティアナの返答に対し、ラオウは不敵な笑みを浮かべた。
管理局上層部からのティアナへの通達はこうだ。
円滑な任務遂行のために、一時拳王軍に身を預けよ。
この世界において、個人での探偵活動は困難を極める。ここには今や図書館も新聞もインターネットもないのだ。
ましてや、よその世界から来たティアナには土地勘がない。1人で世界のあらましを探るのには、ここはあまりに廃れすぎていた。
よって、組織に身を置くことで、そこから得られる情報を利用する。
とはいったものの、小さな軍閥に所属していては、より大きな派閥に組織ごと踏み潰されかねない。
だからこそ、最も安全な――すなわち、最も強大な戦力への加入が必要とされた。
そこで選ばれたのが、ラオウ率いる拳王軍。
少なくとも管理局の評価においては、ラオウは宿敵たる聖帝サウザーを乗り越えていた。
「だが、拳王軍に弱者は要らぬ。我が軍門に下るというのならば、それ相応の力は持っておるのだろうな」
しかし、ラオウの語気は厳しい。
それも当然だ。いきなり現れて、自分を拳王軍に入れろと言うからには、それなりの実力がなければ話にならない。
この恐怖の独裁者には、他人の庇護を受ける趣味はない。今さらこの世界を見捨てた管理局を恨むつもりなどない。
故にティアナが戦力として機能する存在ならば、目くじらを立てて拒むつもりもなかった。好きに泳がせておけばいいということだ。
だが、ただの雑魚であるのならば話は別。戦う力もないごく潰しなど、食糧不足の世紀末では引き入れる余裕などない。
「……力を見せろというのならば、お見せいたします」
マントの下から自らの得物を、抜く。
ティアナの手に握られていたのは、金属質の銀色のカード。今やこの世界で見られることはまずなくなった遺物――魔導師のデバイス。
『Standby, ready.』
明滅と共に響く機械音声。インテリジェント・デバイスの証。
瞬間、変幻。
麻の外套の下に隠された青の制服が、一瞬にして分解・再構築される。
漆黒のインナーに白いノースリーブのジャケットを羽織った姿は、魔法の鎧・バリアジャケット。
手の中に収められたデバイスもまた、カード型をなしてはいなかった。
白銀の輝きを放つ双銃は、歴戦を共に戦い抜いたティアナの相棒――クロスミラージュ。
「兵を集めてください。ランスターの弾丸の力、存分にご覧にいれましょう」
拳王府の外。場所は再び、どこまでも続く無限の荒野へと移る。
そこにはマントを取り払い、クロスミラージュを油断なく構えるティアナの姿があった。
やや距離を取り、悠然と腕を組んで見つめるはラオウ。左右の両脇を、ソウガとレイナの兄妹が固める形となる。
そして、ティアナを取り囲む者達がいた。
「へへへ……」
舌なめずりをしながら、下衆な笑みを浮かべるのは、いずれも屈強な男達だ。
合計10人の男達は、ラオウが召集をかけた拳王軍の兵士達である。
筋骨たくましい腕を見せびらかすように露出する者、頭髪をモヒカンに整えた者、身体にタトゥーを入れ込んだ者。
各々が様々な服装をしているが、総じて言える特徴があった。
(……暴走族か何かみたい……)
揃いも揃って、チンピラルックなのだ。
それこそミッドチルダでも走っているような暴走族が、そのまま身体を鍛えて武装したような出で立ち。
表情もその様子に見合った、いかにも小者じみた様相を見せている。
これでも己を強く見せ付けているつもりなのだろうが、あのラオウと比べると明らかに役者が違う。それこそ、天と地ほども。
天下無双の拳王軍と言うからには、どれほどの練度かと期待していたのだが、やはりどこの派閥も末端は末端ということか。
「ひひ……拳王様ぁ〜。この娘っ子を、俺らの好きにしていいってのは本当ですかいィ?」
いやらしく口元を歪めながら、眼帯をした面長の男が問いかけた。
「構わぬ。好きにせよ」
一方のラオウの反応は素っ気無い。どうなろうと知ったことではない、といったところ。
あるいは、この程度の連中に手こずる程度では所詮そこまで、と暗に語っているのだろうか。
望むところだ。そこまで言われては黙ってなどいられない。そもそもそれ以前に、この戦いを持ちかけたのはティアナ自身。
いかに拳王軍といえども、こちらだって管理局執務官にして、元機動六課のメンバーなのだ。
かのJS事件では常に戦闘の最前線に立ち、ガジェットや戦闘機人相手に修羅場をくぐってきているのだ。
「へへっ、そうこなくっちゃぁ!」
遂に眼帯男がヌンチャクを手に、ティアナ目掛けて襲い掛かった。
顔に浮かぶのは好色めいた笑み。
こんな細っこい娘が、男の俺様に敵うわけがない。一発殴り倒し、その後は思いっきりお楽しみとしゃれ込もう。
そんなところなのだろう。
だが、
(遅い!)
のろますぎる。あまりにスロー。まるで素人だ。
さほど足に自慢があるわけでもないティアナだが、この程度の速度など、避けるなという方が難しい。
少なくとも、訓練校時代から腐れ縁の続いてきた、あの相棒の方が遥かに速い!
「へ?」
間抜けな眼帯男の声が漏れる。
鋼鉄のヌンチャクは確かに振り下ろした。必殺の一撃は確かにティアナに当たったはずだ。
しかし、手ごたえがない。
己が得物は地面に深々とめり込んでいる。
これは一体どうしたことだ。こんなことがあるはずもない。魔導師と言えども、姿を消すなんてことはあるはずが――
「――遅すぎるのよ」
「ほぴゃ!?」
撃発。鳴り響く発砲音。
次の瞬間、今度は男の顔が地面に突っ伏していた。オレンジの光輝を放つ弾丸を、無駄に長い頭にぶち当てられて。
何のことはない。素早いフットワークで攻撃をかわしたティアナが、クロスミラージュの引き金を引いたのだ。
一瞬で狙いをつけ、撃つ。流れるような動作で敵をのした彼女の姿に、周囲の兵士達の顔色が変わる。
こいつは強い。ラオウには遠く及ばないものの、そこらの娘とは明らかに違う。
油断していて勝てる相手ではない。全力で殺しにかからなければ、逆にこちらがやられてしまう。
偉大なる恐怖の支配者・拳王の御前で、そんな醜態を晒すわけにはいかない。
「……し、死ねぇぇぇ〜っ!」
ある者は剣を取り、ある者は斧を持ち、ある者は鉄球をぶん回し。
ようやくその気になった兵士達総勢9人が、一斉にティアナに向かって飛び掛った。
両目の海を、走らせる。
青き瞳がせわしなく左右に動き、迫るゴロツキ共をロックオン。
さすがに9つものターゲットを一度に撃破することは、ティアナといえど出来はしない。まだまだ自分はルーキー執務官なのだから。
こういうときは、さすがにかつての上司達が羨ましくなる。
自分もSランクの高みに至れば、見動き1つせずこいつらを蹴散らせるだろうか。
しかし、ないものねだりをしたところで、どうにもならないのが現実だ。
ならば、今自分にできることをするだけ。今出せる精一杯を成し遂げるだけ。
こんな奴らごときに負けるわけにはいかない。
「クロスファイヤー――」
足元に煌く光。ミッドチルダ式魔法陣の顕現。
魔導の力の証を輝かせ、弾丸の形に魔力を集束。生成されるは4つの綺羅星。
見極めろ。この4つの魔力弾を、どの敵に向かって狙い撃つか。
どこを狙えば最も効率よく動けるか。動いた先にいかなる手を打つか。
思考の時間は限られている。敵は全方位から迫ってきている。選択の猶予は僅か数秒。
だが数秒もあれば、自分にとっては十分すぎる。
「――シュートッ!」
轟、と。
一斉射撃の爆音が鳴り響いた。
解放される4つの光。百発百中の魔力弾が、襲い来る雑兵達を迎え撃つ。
「はぐぽっ!」
「げひゃ!」
「ぴげっ!」
「たわば!」
悲鳴と共に宙を舞う兵士達。
屈強に見える筋肉の鎧も、所詮はただのハリボテだ。ただの一撃の銃弾が当たっただけで、総勢4人の男が吹っ飛ばされた。
いかに自らの力を誇示しようとも、所詮は世界滅亡からの数年で身につけた素人仕込みの実力。
対してティアナのそれは、時空管理局という、れっきとした武装組織で訓練されたものだ。どちらが練度で勝るかは言うまでもない。
瞬間、ティアナが疾駆する。
4人を倒したことで空いた包囲網の穴に、迷うことなく身体を突っ込ませる。
女のラインを薄物のインナーで包んだ肢体が、乾いた大地をスライディング。
豪快に地面を滑りながらも、両手のクロスミラージュは休むことをしない。
どん、どん、どん。
すれ違いざまにトリガーを引く。撃ち出される閃光の弾丸。さながら稲妻のごとき早撃ちか。
脳天に一発、鳩尾に一発、ついでに股間に一発。合計3発もの魔力弾を食らった男が、情けなく股ぐらを押さえて崩れ落ちた。
『Dagger Mode.』
無機質なクロスミラージュの声。共に顕現する、光の銃剣。
日輪のごとき光輝を放つバヨネットが、ハンドガン型デバイスを覆うように形成される。
包囲網を脱したティアナは、素早く態勢を立て直すが速いか、即座に敵兵目掛けて飛びかかった。
斬。煌く刀身。素早く繰り出される双刃の乱舞。
目にも止まらぬ速度で自在に振りかざされる魔力の刃が、次から次へと兵士達をなぎ倒す。
「声もそうだが、勇猛果敢ぶりもお前によく似ているな」
「もう、兄さん!」
感心したように笑うソウガと、若干ムキになったように短く怒鳴るレイナ。
そうしたギャラリーの寸劇が終わった頃には、既にティアナが全ての兵士を打ち倒していた。
死屍累々といった様子で、無様に転がる失神した男達。その中でただ1人、魔導師の少女達が立っている。
実力は十分だ。少なくとも、片足を失った身であるソウガよりも筋がいい。
修羅の国の兄妹の表情は、大体そんな評価を物語っていた。短時間でこれだけの働きができるのならば、戦力としては申し分ないだろう。
「どうでしょう、拳王様」
ソウガがラオウへと問いかけた。
あくまでも、最終決定を下すのは拳王の権利だ。
「………」
そのラオウはと言うと、返ってきたのは、沈黙。
ただひたすらに無言を貫き、じっとティアナを見つめている。何かを見定めるように。
王者の放つ無言の圧力が、またしても彼女を緊張させていた。
「……何故非殺傷設定を解かぬ」
ややあって開かれた口を突いたのは、疑問。
これだけ暴れたティアナだったが、死者は誰一人として出してはいなかった。
非殺傷設定。魔導師の行使する魔法には、こうした機能が存在する。
生物と非生物を識別し、生命体への物理ダメージを抑える機能。要するに、死なせないシステムなのだ。
故に、非殺傷設定で放たれたティアナの弾丸は、一撃たりとも兵士の身体に傷を負わせていない。
ただ痛覚だけを与え、昏倒させただけだ。
「え……」
ラオウの問いかけに対し、ティアナは返事に詰まった。
この男は、それが不満だというのだろうか。
とはいえ管理局は軍隊ではない。あくまで治安維持が目的だ。不必要な殺傷行為は許可されていない。
「これは、管理局員である以上……」
「もうよい」
しかし、その反駁を、ラオウは一言のもとに切り捨てる。
そして次の瞬間、緋色のマントが揺れた。
巨体が震える。
ずしり、ずしり、と。
さながら巨大な牛か象か。聴覚は聞こえるはずもない、重厚な足音を幻聴する。
ラオウの足が1歩前に踏み出す度、さながら大地が揺れるかのような威圧感を覚えた。
「その銃でこの俺を撃ってみよ」
そして瞬間、世界は緩やかに制止する。
「へ……」
それだけしか、呟くことも許されなかった。
天地鳴動かと見まごうほどのプレッシャーさえ彼方へと消え、ティアナの思考はその機能を失う。
阿呆のような表情で停止した彼女の脳内では、同じ疑問ばかりが延々と渦を巻く。
今、なんと言ったのだ。
この魔神のごとき男は、自分になにを要求したというのだ。
呆然と立ち尽くすティアナは、明確な解答を得られない。否、得ようとしないのか。
それを認めてしまうのを、無意識に拒んでいるが故の混乱なのか。
「け……拳王様!?」
驚愕も露わなレイナの声を聞いたことで、ティアナはようやく我に返った。
「この拳王を、うぬの魔法で倒してみよと言うのだ」
そして再び突きつけられる、ラオウの要求。
今度こそは、認めざるを得なくなった。不意討ちなどではない。はっきりとこの耳で聞いたのだから。
自分が戦う? このラオウと?
総勢数千の兵を率い、北斗神拳なる超然の力を操り、恐怖の世紀末覇者として畏れられたこの拳王と?
途端、底冷えがするかのような感触に襲われた。
事態を把握したティアナがようやく感じ取ったのは――殺気。
目の前の大男から放たれる闘気。玉座に腰かけている時とは比較にならぬほどのプレッシャー。
さながら押し寄せる大海の波濤を、その全身に叩きつけられるかのような心地だった。
荒波はティアナの全てを呑み込み、巻き込み、海の藻屑へと砕くだろう。そう錯覚するほどの感触。
本当に自分は、この男と戦わなければならないのか。
こんな相手、今までに遭遇したことがない。ガジェットとも、戦闘機人とも違う。
あのエース・オブ・エース高町なのはとも違う。向けられるのが怒気だけだったならば、一体どれほど楽だったことか。
全身に寒気が走る。がたがたと四肢が震える。
この男は危険だと。戦ったところで絶対に勝てはしないと。
否、ラオウは本気だ。こちらが動かねばそのまま殺すと、その圧倒的なオーラで雄弁に物語っている。
ならば、卑小な自分が生き残る手段など、この引き金を引くことのみではないか――!
「くっ!」
覚悟を決めたティアナは、クロスミラージュの銃口をラオウへと向ける。
そして、発射。
トリガーを引く。鳴り響く銃声。撃ち出される眩き魔力弾。一瞬遅れて着弾する。
爆ぜる光。飛び散る魔力素。しかし、緋のマントに身を包みし拳王は――
「フン……蚊ほどにも効かぬ弾よ」
無傷。
全くのノーダメージ。
「う……嘘っ!?」
ティアナの声にも、ラオウは留まることを知らぬ。
痛覚の一切を受けることもなく、ただ悠然とこちらへと迫りくる。
のっし、のっしと。そんな足音が聞こえてくるかのような歩み。
真紅をたなびかせ、兜を輝かせ、世紀末の覇者は行軍する。
目の前にいるのはたった1人の男。しかしその気迫が、その絶大な闘気が、さながら百万の軍勢であるかのように錯覚させる。
怒濤のごとく押し寄せる気配、まさにこれこそが一騎当千か。
「このっ!」
やけ気味に叫びを上げながら、ティアナはなおもトリガーを引き絞った。
どん、どん、どん、どん。
息つく暇なき連射。
練り上げられた魔力が、絞り出された気合が、百の弾丸となって殺到する。
日輪のごとき烈光を放つ魔力弾は、さながら雷光のごとき速度で飛来。落雷のごとき威力で、迫る敵を薙ぎ払う。
その、はずだった。
「何で……何で効かないのよぉっ!」
かちかちと鳴る引き金、どんどんと響く銃声。その中に、ティアナの悲痛な絶叫が混ざった。
視線の先に広がるは赤。
偉大なる王者のマントは、迫るオレンジの光をことごとく跳ね除ける。
既に何十と引き金を引いた。既に何十もの弾を当てた。
されど、ラオウは退かぬ。
さながら堅牢なる城塞か。
それがどうしたと言わんばかりに、鋼のごとき肉体を歩ませる。
圧倒的な流れの前には、小さな弾丸の影響など皆無。
いくら微風が束になろうと、荒れ狂う台風を吹き飛ばすことはできはしない。
これが拳王。これが世紀末覇者。
あらゆる者が彼に挑んだ。あらゆる技が彼に振るわれた。
それら全てを屠ってきたからこそ、今目の前に彼はいて、その血の色のごときマントを風に舞わせている。
障壁など皆無。反撃など惰弱。打ち倒すことは不可能。
故に、拳王の名は最強の証として、この世界全土に轟くのだ。世界最大の畏敬と恐怖を伴って。
一歩一歩。少しずつ、だが着実に。
死の恐怖が明確な形となって、ティアナににじり寄ってくる。
もう駄目だ。この男には及ばない。いかなる抵抗も届きはしない。あまりに格が違い過ぎた。
それでも、手を休めるわけにはいかない。それはすなわち諦めること。
目の前の男を止めることを。自らの命を守ることを。
すなわち、今日を生きることを。
そう。いかに目の前に絶望が立ちはだかろうと。
人間は。ティアナは。
(まだ……!)
死にたくない。
支援
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
大粒の涙を振りまきながら。乳飲み子のように泣きじゃくりながら。
恐怖と絶望に突き動かされ、少女は拳王へと銃を向ける。
「ファントムブレ――」
ティアナは遂に気付くことはなかった。
ラオウの右手が、構えを取っていたことに。その周囲を取り巻く空気が、陽炎のごとく揺らめいていたことに。
少女が知覚することすら叶わず、男の拳が、遂に突き出される。
「――北斗剛掌波!!!」
激烈な嵐を、その身に感じた。
想像を絶する衝撃が、五体全てを余すことなく殴りつけた。
絶叫を上げることすら許されなかった。呼吸は一瞬にして波濤にせき止められた。
重力の感覚は瞬時に消失し、肉体全てが千切れ飛ぶかのごとき痛覚に見舞われる。
激痛。顔面に、胸部に、腹部に、腰部に。
右腕に左腕に右足に左足に。両肘に両膝に指先に爪先に。皮膚に筋肉に内臓に神経に。
もはやどこが直撃を受けたのかすら判然とせず、ただ全身を極大の痛みに苛まれたまま。
どさり。
耳元で鳴り響く音。その身に感じる新たな痛覚。
それでティアナはようやく、自分が地面に叩きつけられたことを理解した。
そして、自分がラオウの拳に吹き飛ばされていたことを、追って理解した。
身体が動かない。視界はぼんやりと霞んでいる。
意識は激痛の中で何度も消し飛びそうになり、そしてそれすらも許されず、何度も激痛に揺り起こされる。
「流れる血は人を殺す」
朦朧とする感覚の中、その声だけははっきりと届いた。
「傷は人の動きを鈍らせ、拳をせき止め、やがて死に至らしめる」
さながら水面に波紋を打つかの如く。
「だが、傷すら伴わぬ痛みは無力。敵の歩みを止めたとしても、所詮は一瞬のこと。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、まさにこのことよ。
そこらの雑魚は倒せたとしたとしても、強者をうぬの魔法で惑わすことはできぬ。……少なくとも、この拳王は倒せぬ」
ラオウの威厳と気迫に満ちた声が、ティアナの意識に語りかける。
「甘えを棄てよティアナ・ランスター! この乱世において慈悲は猛毒!
生ぬるい不殺の力などでは、この世界で生き残ることはできぬ! 殺意なき銃など、我が拳王軍には不要!
肝に銘じよ、そして二度と忘れるな! 生き延びたくば撃て! 一切の容赦なく叩き潰すのだ!」
さながら百獣の王の雄たけびのごとく。
裂帛のごとき咆哮が轟いた後、がちゃり、がちゃりと遠ざかる足音があった。
拳王の具足が遠のいていく。ラオウがこの場から立ち去っていく。
霞のかかったこの瞳では、もはやその足跡を捉えることすら叶わない。
案ずるな。秘孔は突かれていない。
それはソウガの言葉だったか。急速に機能を失いつつある聴力には、それを識別する力はない。
「……甘え、を……棄て……よ――」
ぽつり、と。
ラオウの言葉を。
喉から絞り出したような声でそれだけを呟き、ティアナの意識は深き闇へと落ちた。
この邂逅から三日後。
荒廃した世界の中に、ある噂が飛び交うようになった。
拳王が魔女を手にしたと。
今やこの世界では失われた魔導の力が、拳王軍の下で振るわれていると。
眩いオレンジ色の光が全てを撃ち抜き、全てを切り裂き、全てをことごとく蹴散らすと。
星の輝きが奔流となり、全てを呑みこみ打ち砕くと。
噂は僅か一月で消えうせた。今や世界に残された真実は、変わらぬ拳王軍の猛威と、魔女の残した傷跡のみ。
今となっては、その真相は、杳として知れぬままである。
続かない。
はい、投下終了。というわけで北斗の拳……というか、ラオウとのクロスでした。
ホントもう、やっちまったね! というか最近、単発ネタ書くたびにそう言ってる気がするね!(ぉ
ルルーシュセフィロス殺生丸フェンリルと、これまでにかなりの数の危険人物を書いてきましたが、
今回のラオウはまたそれらとは一線を画する大物だったので、結構書くのには勇気が要りました。
そんなわけで、単発とはいえ久々の反目作品新作は、やっぱり殺伐としてしまったのでした!(ぇ
ちなみに、原作しか読んだことのない方には馴染みが薄いかもしれませんが、
ソウガとレイナの兄妹は、新劇場版シリーズ及び外伝「天の覇王」に登場したキャラクターです。
ラオウとは幼馴染に当たり、彼が最も信頼を寄せる存在なのだとか。
レイナの声を劇場版で当てているのは柴咲コウでしたが、天の覇王では中原麻衣。……うん、なんでティアナなのかもう分かるよね(ぉ
GJ!
こwれwはw
よくやった!としか言えないwww
GJ!!です。
でた!剛掌波www
剛掌波って、リボルバーキャノンと同種の技かw
この世界から帰ってきたティアナはタバコを吹かしながら、犯罪者を撃ち殺しそうだw
それか、ラオウに触発され、生き方を変えたとき、ティアナにあこがれる人間が派閥を作りそうw
GJ!!
なんでティアナなのか不思議に思っていたけど、最後で納得させられて吹いてしまいましたwww
ラオウの生き様がティアナに何をもたらすのか、続きが気になる一品でした
こんばんは。
予約の方は大丈夫のようなので、23:00手前くらいからスバゲッチュを投下します。
今回もあらすじ・おまけ付きです。
では投下を開始します。
5分割なので規制は大丈夫かな・・・。
〜前回までのあらすじ〜
「あー、おいしかった。トニオさんのペスカトーレ、とっておいてよかった!」
「まんぷく……もうたべられない……」
「んー? そういえば、なにかわすれてるような……」
「えー、なんだっけー? …………ふわぁ」
「うーん、それが……わからな……はぁ……ねむぃ」
「すー……すー」
「んー……もういいや……おやすみぃ……」
「ねちゃ……だめ、だよ、ねちゃ…………くー……」
信じられない程に身体が軽い。
手の中の双銃がまるで羽毛のようだ。
動いていて疲れるどころか、闘いの熱がこんこんとわき出して滾っていくのがわかる。
どうかしてしまったのかと、弾丸を放ちつつ思ってしまったくらいだ。自分の体はもしかして、
異常な何かに見舞われていたりはしないか?
(……いや)
己の中で発せられた問いに否の返答を叩きつけながら、振り向きざまに右手のトリガーを引いた。
輝く弾丸が下に弧を描いてカーブし、飛びかかってきたピポスバルの腹部に直撃、昏倒させる。
そのまま左手のゲットアミを一閃させる。またひとり、捕獲が成功した。
スネークの捕獲数はもう既に20を超えているだろうが、後衛を務めることになったティアナで
さえ、「ゲッチュ!」数はもう2ケタに達していた。恐るべきペースだというのは肌身にしみて分
かる。
疲れを感じにくくなっている。
そんな自覚が、ティアナにはあった。機動六課にスカウトされる以前なら、これほどの運動量、
いつへばってもおかしくないレベルであった。飛躍的な体力の上昇を実感する。感覚が肉体に追い
付いていないという奇妙な状況になって初めて、ティアナは己の成長を噛み締めるに至っていた。
「こちらスネーク。敵の勢いが衰えてきた……シャーリー、残り何人だ?」
『サーチできるのは5人だけなの! 他なきっともう脱出して、別の区域に移動したの!』
「……スネーク、陣形変更! ツートップで一気に殲滅します!」
「……了解だ。無茶はするなよ!」
「お互い様ですっ」
息ひとつ切らしていないティアナの快調ぶりを読み取ったのだろうか。逃げ惑うピポスバルたち
をゲットアミ片手に追い掛けながら言ったスネークの、言葉の調子もどこか軽快なところがある。
不敵に笑んで軽口を返し、ティアナは駆け出した。スネークの背後にまわろうとしていた一匹に、
走りながら弾丸を撃って牽制した。走る脚力もまだまだ万全、と感じとる。
基礎体力強化、「絶対に生きて還る」ための訓練。
今ここには居ない高町なのは教導官の、日々の教練の成果だと確信する。
そのなのはの思いを身に感じた気がして少し胸が熱くなった。
今更になって何を、と直後に自分を責め立てた。
戦いにおいて己の持つ技を出し切り、思考を巡らせ知の限りを尽くし、そして最後に物を言うの
はタフさや体力といった肉体的な能力だ。最終的に生死の境を決定するのはその、己の身体の限界
値だ。
我らがスターズ分隊長はその点で、誰よりも自分の身を心配してくれていた。こうして動き続け
て成果が見えて、それで実感するのは情けない話だがそう思う。亡き実兄ティーダの辿った道と、
同じ結末を見るのではないか――そんな懸念が恐らくは在ったのだろう。
(強くなりたい……か)
兄が死んでからずっとそう思って生きてきたし、今だってその思いは変わらない。
亡き兄の夢を叶え、無念を晴らしたいと心から願っている。そのために必要な知と力を身に付け
ることは、今もなおティアナの目標であり続けている。
それには厳しい訓練が必要だし、時には己の肉体の限界に挑戦状を叩きつけることだって必要だ。
激しい特訓そのものの意義は、なのはでさえ完全に否定するようなことはしなかった。あの時彼
女が怒ったのは、単にその理由だけではないのだろう。
あの時のなのはの気持ちが、今なら良く分かる。
スバルはいつだってそばにいてくれた。
付き合った時間の短いエリオもキャロも、自分を信頼してくれた。
ヴァイス陸曹もアドバイスしてくれたし、ヴィータ副隊長も気にかけてくれていた。シャリオだ
って今でこそトホホな感じだけど、デバイス調整の折りにはきっと、自分の安全を第一に考えてい
てくれたにちがいない。
自分はそういう人たちの気持ちを、蔑ろにしてはいなかったか。
人と人とを繋ぐ「情」といったものを、必要ないと切り捨ててはいなかったか。自分ひとりが夢
を追いかけ、その果てにどんな悲惨な末路を辿ろうと、構わないとは思っていなかったか。
人が死ぬ、その時の悲しみを――誰よりも深く知っていた筈なのに。
「…………」
何故だか酷く胸が苦しくなったティアナは、下の唇を裂けんばかりに噛みしめて駆け出した。
走りながら撃ったクロスミラージュの弾丸は、前に立つ者――スネークの体を、今度は掠めもし
なかった。
その後ろ姿に、ホテルアグスタでのスバルの背中が重なったような気がして、ティアナは真直ぐ
に見ることができなかった。
魔法少女リリカルなのはStrikerS外伝
スバゲッチュ 第四話「ティアナの本気、スバルの本気」 Cパート
「こっ、こんなのっ、きいてな……ひゃんっ!」
「ゲッチュ!」され尽くされて、この場に残った最後のピポスバル。その後頭部にティアナ特製
の魔弾が叩き込まれ、間髪を容れずにスネークのゲットアミが一閃した。次の瞬間にはもう、その
小さなシルエットは何処にも無い。
ピポスバルたちの作った戦場にはもはや、ティアナとスネーク以外の人影は無かった。廃墟を模
したその場所の音といえば、クロスミラージュの発砲が谺するのが耳に残っているだけである。
『す……すごいの、二人ともっ! たったの二人で、あの大群を追っ払っちゃったのっ!』
戦いの余韻を引くその沈黙は、興奮しきったなのなのシャリオの通信によって中断された。頭が
戦闘から醒めきらなかった二人も、それでやっと現実へ回帰する。
見回せばもう、その廃墟の一画にピポスバルはおろか生物の気配は無かった。あのチビどもは随
分と数があったはずだが、いつの間にか捕獲しきってしまっていたらしい。
当然脱出した者も居ようが、捕まえた数はかなりのものになっているはずだ。
そう思ってティアナが口を開き、スネークが声を出そうとするが、その役はキャンベルが買って
出た。
『随分捕まえたな。シャリオ君、いったい今ので何匹くらい『ゲッチュ!』したんだ?』
『カウントは57……ううん、今ので58になってるの! 凄いペースなのっ!』
『それほどか! 成る程、急造のコンビネーションの割には悪くなかったということか』
「スタイルに共通する部分が多かったからな。銃も使うし、隠密は得意だとも聞いている」
本当は俺は隠れるのが嫌いなんだがな、とスネークは付け加えて、手の中のゲットアミを背中に
差した。背にはシャリオから手渡されたホルダーが備わっていて、がちゃりという音と同時に固定
され動かなくなる。
移動の邪魔にならないようにと渡されたアイテムであったが、きっちり機能しているようだ。こ
れで妙なモノさえ作らなければというところだが口にはしない。もう既に自業自得な目に合ってい
るからだ。
もちろんなのなの的な意味で。
「ティアナ、怪我は?」
「……他人の心配より、自分の心配をしてください。それ、正規のジャケットじゃないんですから」
シャリオから渡されたスネークの防護服を指差して、答えたティアナの態度は何故だかつっけん
どんなものであった。
何か気を悪くすることでも言ったかとスネークは思ったが、そのようなティアナの内心の機微な
ど解るはずがない。なのはとの模擬戦での一件はつい先日のことであるが、その委細までを彼が知
る術はないのだから。
しかし、その様子を見たシャリオだけはピンと来た。
ミニチュア化してこんな状態になってしまう以前に、スバルから聞いたことがある。恥ずかしか
ったり照れたりする時に、ティアナはそういう、素っ気ない態度をするのだとか。きっとそれだ。
シャリオは確信した。そういえばスバルの積極的な友愛表現にも、同じように反応していたっけと
思い返した。
果たしてそれは正しかった。
改めて見回してみるとティアナの身を心配する人はこんなにも多い。出会ってまだ一時間と経っ
ていない、スネークですらそうなのだ。
そしてその思いが、実際に言葉にされているのを聞くと、筆舌に尽くしがたい面映ゆさにティア
ナは襲われた。正面から受け止めるにはこそばゆすぎる事実であった。
「……何か気になることを言ったか?」
「あ……い、いえ、そんな。そういうことじゃ……気にしないで下さい。すみません」
しかし、目の前のこの男は一時的なパートナーとはいえ、先程出会ったばかりである。それにし
ては先の態度は、己の私情を顕にし過ぎた。その点を素直に謝って、ティアナは脇道に逸れた思考
を呼び戻す。
「体調は?」
「問題ない。そっちこそ大丈夫か。このまま行くのだろう?」
「御生憎様。半端な鍛え方はしてませんからっ」
なのはへの感謝だとか何だとかは、今するべきことでは無い。
今はただ、進むのみ。敵を討ち果たすのみ。
「それはいい。この流れに乗って、一気に片をつけようじゃないか」
魔導の銃を握りしめ、見つめる先には廃墟の出口がある。入り口とはちょうど逆の方向で、しか
もそこいらの壁にはいつの間にか、順路を示していると思しき矢印マークなどが書いてあるから分
かりやすい。
『ふっ、ふ、ふーん、す、すこしはやるみたいだなっ!』
『でもここまでだよっ! こんどというこんどは、この『ひみつへーき』がこてんぱんに!』
勝手に入ってきた通信はぷっつりと切れた。言わずもがな、ティアナの回線切断である。
「……早く黙らせに行きましょっか」
『ひっ、ひどいよティアっ! わたしにももっとしゃべらせ』
また切られた。懲りないピポスバルだった。
支援
「アホはほっといて……ところで、シャーリーさん? 動機の推測、終わりました?」
ピポスバルからの通信を着信拒否状態に設定し、ティアナが言う。シャリオは聞くと、通信機の
モニター越しにしぶそうな顔をした。
ティアナが言う動機とは、スネークが合流した直後にピポスバルがうっかり漏らした「計画」の
単語の関係である。
『それなんだけど……まだ分からない、なの。色々考えてはいるんだけど、どれも理に適わないの』
『いずれにせよ、この後何かあるかもしれん。気を付けろスネーク、ティアナ』
「……大佐。楽しんでる間があったら、少しは考えてくれ」
「何を言う。こうしてお前たちの活躍を見ながら、思案に暮れているじゃないか」
とは言うものの、どう見ても楽しんでいるのはモニターの向こうのキャンベル大佐であった。
「さ。では、今は先に進みましょう。その『計画』とやらごと潰せばいいだけの話です」
「それもそうだな。とっとと終わらせよう」
実際、彼らは今回の圧勝でかなり勢いに乗っている。
この破竹のごとき流れを維持していけば、きっとすぐにこの「ゲッチュ!」劇も終了するはずだ。
誰しもがそう思った。
「気になったんだが……『秘密兵器』とか言っていなかったか?」
「どーせ下らないハッタリでしょう」
「だといいが」
しかし人生、そこまで甘くはないものである。この時言ったスネークの、その懸念は的中した。
廃墟を駆け抜け、開けた土地に出たティアナ達は、バーチャル映像でつくられた空に、ひとつの
シルエットが浮いているのを見る。
それが落とす陰に気づき、目を上げた彼女たちを待ち受けていた人物とは――。
「ティアナっ! ここまでなのっ! 全力全開、私の魔法であなたを止めてみせるのっ!」
「あれは? 白いジャケットを着ているが……機動六課の腕章? ティアナ、同僚か?」
「…………」
「? どうした?」
「\(^o^)/」
「ティアナ?」
本編は終了。以下はおまけです。
支援
おまけ・そのころのギンガさん5
「どうしたのはやて、面白そうな顔して……何かあったの?」
「ん? ああ、これな。もうすぐ、ちょっと楽しいことが起こりそうなんよ」
途中でぱったりと出くわしたフェイトを加え、ギンガと挨拶を交換した後に、はやて・ギンガの
一行はオフィス内通路を真っ直ぐに歩いた。
これから我らが部隊長の興もため、贄となるとも知らないなのなの初心者――ギンガ・ナカジマ。
何も知らずにはやての後ろについて歩き、未だ見ぬ「なのなのプロフェッショナル」との出会いに
胸を膨らませているばかりである。
シャリオから習ったなのなの口調マスター法、その予習はまだ完了していない。
彼女によればレッスン1〜4の四部構成になっていたらしいが、どう考えても時間が足りないと
ギンガは途中で気づいた。いまぐだぐだと思い悩むよりも、なのなのプロの力を間近で見、今後の
習得に活かした方が効率がよさそうだとギンガは思った。
そういうことには気付くのに、シャリオに騙されているとまだ分からない辺りがなんとも言えな
いところである。
「フェイトちゃんも楽しめると思うんやけど」
「本当? ……あ、でも、午後はシグナムと久しぶりの模擬戦が……」
「大丈夫や。時間のかかるじゃあらへんし……と、着いたわ」
広い広いオフィス内の移動が終わり、はやてが立ち止ったのは一つのドアの前。
出撃待機室である。
屋上にあるヘリポート、その真下に位置するこの部屋は、いつでも出撃できる状態でオフィス内
に残る隊員たちの部屋である。
もちろん、今は出動要請その他は出ていない。完全に空き部屋の筈だ。
「あの……八神部隊長。今、この部屋は空きのはずじゃあ……」
「せやから、ここに呼んどいたんよ。ちょっと待つかも知れへんから、くつろいどってなー、って」
そう言って、はやては扉を叩く。
「入ってええ? 着替えとかしとらん?」
「ううん、平気。大丈夫だよー」
この声って。
ギンガは思った。扉の中から聞こえてきた声は、彼女にとってよく聞き覚えのあるものだった。
「ほな、入るで」
部屋の中で、彼女たちを待ち受けていた者とは……。
つづく。
以上で投下を終了します。
Before After
ティアナ ピポスバル ティアナ なのはさん
↓ ↓ ↓ ↓
三┏( ^o^)┛ 三┏( ^o^)┛ ┗(^o^ )┓三 ┗(^o^ )┓三
みたいな感じになるかと。
ではまた。
投下お疲れ様。
ちょw秘密兵器ってww
GJ!!
おお……目頭が熱くなったと思ったら。
続きが楽しみですw
GJ
ティアナにげてえ
まあ、いろんな意味でオワタとしかw
そして、世紀末では空気を入れるのが極めて有効らしいですよ?
飛べなければ延々と弾ませることが可能
うおお覗いて見たら来てたー!
ピポGJ! ピポGJ!
オワタ・・・・確かにオワタよティアナwww
そしてスネークはしっかり段ボール箱を被って隠れてるんですね、分かります。
GJ!
ピポスバルはハッタリなど言ってないとか、ティアナいろんな意味でオワタとか
重要なのはそこではない…。問題はむしろ、
どうやってピポスバルが無傷でなのはさんを引き入れたのかが問題だと思う…。
>>380りりる氏GJです
これは001やベニバナは排除されてる世界なのかね?
そうでないなら司法HAL派が絡んできたらカオスになる予感……
439 :
一尉:2008/10/18(土) 16:40:23 ID:VKcDTSdj
これはカオスたよ支援
投下の合間に軽い質問
クロスキャラのマイナーさの限界ってどこまでだ?
22時50分に投下予約を。
442 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 21:10:07 ID:ZQe5qZ3p
ロックマンゼロまってました
楽しみにしています
支援
>>440 ウロスで聞いてみたらどうだろう?
>>440 基本的にどこまでも大丈夫。
このスレの総知識量をなめるなよ?
かつてウロスがこっちにあった頃はどんなマイナーネタでも一人は必ず反応出来たほどだ
>>443 今知らなくてもあとから興味もつやつもいる
俺もそうwww
投下します。今回の話はオマージュです。
「所詮レリックしか持たない者に、私を倒すことなど出来はしない」
圧倒的な力を持って、桁違いの強さを見せつけていたギンガ・ナカジマ。あ
らゆる敵を打ち破り、無敵と思われた彼女の存在を、聖王ヴィヴィオは一撃で
消し飛ばした。
ギンガは確かに強かった。その実力には他者を寄せ付けないほどの圧倒感が
あり、ヴィヴィオが聖王として覚醒する前までは、彼女こそが間違いなく最強
であったろう。
「私が負けるはずはない。私は全ての次元世界を統べる王、聖王なのだから」
だが、覚醒した聖王の前に彼女の力は無力だった。ヴィヴィオもレリックの
保有者ではあるのだが、それは聖王として覚醒するために必要だったに過ぎず、
覚醒さえしてしまえば、聖王の鎧と自身を繋ぎ止める以外の用途はない。
聖王の強大な力の前には、レリックが持つパワーなど何の問題にもならなか
った。故に、レリックの力に頼るしかなかったギンガは、それを必要としない
聖王に勝つことが出来なかったのだ。
「愚かな戦闘機人は滅び去った」
お前はどうする?
眼前に佇む最後の敵を、聖王は見据えた。
「…………」
ゼロは片手に持つゼットセイバーを構え直し、あくまで戦う姿勢を崩さなか
った。力の差など、戦う前から分かり切っているのに。
戦うことを止めようとしない敵に対し、聖王は呆れることはなかった。愚か
だと思うこともなかった。聖王ヴィヴィオは、彼がそういう選択をするであろ
うと判っていたのだ。
「今まで集めてきたナンバーズの先天固有技能、それを全て出し尽くしたとこ
ろで、お前は私に勝てない」
イノーメスカノンでさえ傷一つ付けられなかった聖王に、他のISなど通用し
ないだろう。
そんなことは、ゼロも理解している。ゼットセイバーもバスターも、ヴィヴ
ィオにとっては玩具も同じだ。
「言いたいことは、それだけか?」
ゼロは、イノーメスカノンを拾い上げた。また砲撃を行うつもりなのか?
ヴィヴィオの目が鋭く光る。
「こんなものに、もう用はない」
一閃、ゼットセイバーがイノーメスカノンを両断した。
自ら強力な武器を破壊した行為、聖王ヴィヴィオはゼロの真意が読めなかっ
た。虚勢か、それともこちらを馬鹿にしてるのか。
聖王である、ヴィヴィオを。
「殺す―――!」
ゼロとヴィヴィオの、最初で最後の戦闘が開始された。
第24話「強さの意味を、知りたくて」
上昇を続ける聖王のゆりかご、その周辺では未だに激しい戦闘が続いていた。
ルーテシアと召喚虫軍団が撤退し、ギンガという指揮官を失ったガジェット部
隊は、地上部隊による相次ぐ猛攻を受けながらも反撃や抵抗を行っている。単
純機械であるがジェットは、命令があるまで戦いを止めることが出来ないのだ。
「ゆりかごの外壁に空いたどでかい穴から、武装魔導師隊を送り込むことは出
来るか?」
旗艦アースラにあって戦闘指揮を続けるはやては、今こそ敵を倒す好機だと
確信していた。
しかし、好機を必ずしも活かせるとは限らない。
「地上部隊も、とっくに限界を超えています。一度後退させて、戦力の再編を
計るべきです!」
シャーリーの声は悲痛としか言い様のないほどに震えていた。オペレーター
である彼女は、次々に報告される負傷、戦死などの報告に精神が痛めつけられ
ていた。減っていくのだ、彼女が見つめるモニターにある数字が、地上部隊の
人員数が。
「けど、ここで退いたら先に敵が体勢を立て直す恐れも……ッ!」
言いかけて、はやての身体がぐらついた。
「はやてちゃん!?」
指揮座に手を突き、何とか倒れること防いだはやて、リインが心配そうに声
を上げる。
良く見れば、はやての立つ床に何かが流れ落ちている。
「血が、でてます」
「ん……あぁ、これか」
隠していたつもりはなかったが、はやてはばつの悪そうな表情を浮かべた。
はやての傷は、冷凍処理を施すには大きすぎた。癒えないままの傷口が開いて、
血が流れ出しているのだ。
「す、すぐに医務室へ、シャマルに連絡を――」
動揺するリインを、はやては手で制した。
「あかん、それはダメや。シャマルがこの事を知ったら、私を気絶させてでも
艦橋から遠ざける」
それでは、指揮が出来なくなる。はやては唇を噛みしめながら、痛みにジッ
と耐えている。
力の入らない足腰に、ふらつく身体。いつ気を失ってもおかしくない。
「まだや、まだ、倒れたらあかん」
しっかりと目を開けて、足腰を踏ん張らせる。
指揮官として、総隊長として、そんな義務や責務じゃない。
「リイン、私はみたいんや。この戦いの終わりを、最後の最後まで自分の目で」
戦いの果てに世界が変わるのか、八神はやてという一人の人間が知りたがっ
ている。
「アイツを……たった一人で世界の変革に立ち向かおうとしているアイツを、
私は最期まで見届ける、見届けたい!」
だから、必ず勝ってこい。
口には出さず、はやては心の中で叫んだ。
その頃、アースラの医務室ではシャマルが重傷患者の治療に追われていた。
はやてがシャマルに連絡するのを拒んだ理由の一つに、彼女の手が離せない状
況にあったことがある。しかし、それでもはやての傷が悪化したと聞けば、彼
女は主への忠誠心を優先しただろう。
故に、はやてはシャマルにだけは伝えるなと釘を刺したのだ。
「ディードとセッテ、大丈夫かな……」
医務室の外に、二人の少女が立っていた。それぞれ壁に背中を預け、疲れ果
てた表情と声だった。
「あれだけの傷、ここまで持ったのが奇跡だよ」
セインと、ディエチだった。重傷の妹を連れて脱出した二人は、アースラに
保護されていたのだ。この戦場においてアースラ以上に医療設備の整った場所
はなく、二人が艦にいるのはある意味で必然だった。
「ねぇ、セイン」
気まずそうに、ディエチが口を開く。彼女は損傷らしい損傷もなく、治療を
受けていない。
「なにさ?」
三人を連れてのディープダイバーは流石に堪えたのか、セインはくたびれた
感じで床にへたり込んでいく。
躊躇いながら、ディエチは言葉を続けた。
「どうしてあたしを、助けてくれたの?」
セインが軽く、ディエチの顔を見上げた。
何がいいたいのかは、判っていた。
「あたしは、あなたを……」
ゆりかご内で蹲っていた自分の所へセインが来たとき、ディエチは心の底か
ら驚いた。彼女は自分の手を取って、脱出を諭したのだ。
自身を殺そうとした妹を、助けた。
「助けて貰う資格なんて、あたしにはなかったのに」
項垂れるディエチに、セインは起ち上がった。
軽く、本当に軽く、妹の肩を叩いた。
「お姉ちゃんだからさ、私は」
微笑むセインの笑顔は、ディエチにとって眩しすぎた。眩しさに目を反らし
ながら、彼女は小声で呟く。
「先に出来たのはあたしじゃないか」
「細かいことは気にしなくていーの! それに、ディエチのことを助けように
言ったのは、ゼロだから……」
その名を口にして、セインは小さなため息を付いた。心配なのだろう。
「ディエチには、実は感謝してるんだ。あそこであなたに撃たれなかったら、
私はここまで来られなかったと思うから」
そういった意味では、ディエチに命じたスカリエッティも同じことなのかも
知れない。撃たれたときは絶望にその身を支配されたセインであったが、今は
別の希望を手に入れている。
「あの人は、きっと大丈夫だと思う。戦って、しみじみ思った。あぁ、この人
には勝てないって……正直、あの格好良さには抗えない」
後半、何やら聞き捨てならないことをディエチが呟いた気がする。
「ディエチ、今何か変なこと言わなかった?」
「え? いや、その、別に何も言ってないよ?」
赤面して首を振る妹に、セインは物凄く複雑そうな表情を浮かべ、
「……助けるんじゃなかったかな」
チッ、と舌打ちまでする始末だ。
「セイン、何かサラリと酷いこと言わなかった?」
「気のせいじゃない? 私は何も言ってないよ。うん、言ってない言ってない」
笑い合うだけの気力は、二人ともまだ残っていた。
「私は待つよ。もう一度会おうって、約束したし」
信じられるだけの信頼を、セインはゼロに寄せているから。
私はずっと、母親を求めてきた。
生まれて目覚めたその時から、母親という存在だけを、欲していた。
名前以外はほとんど思い出せない曖昧な記憶、それでも自分が人であるなら、
必ず母親がどこかいるのだと、私は思い込んでいた。
「けど、スカリエッティと再会したとき、私は全てを思い出し、悟った」
自分が、普通の人間ではないことを。聖王のゆりかごを起動し、動かすため
だけに作られた、器に過ぎなかったことを。
遺伝子系譜を辿っていけば、自分の元となった人間はわかるだろう。
しかし、それは決して私の……ヴィヴィオの母親ではない。
「私に母親はいない、いるはずがなかったんだ」
自分は兵器だ。聖王という名の、史上最強の兵器。
玉座を守り、ゆりかごを動かすためだけに作られた、ただの鍵。
「人としても、聖王としても、私は中途半端……」
ならばどちらか一つでも、完全なものとしたい。
聖王が、その絶大なる魔力を解放させていく。
「私が母親を求めていたのは、私が弱かったからだ」
力のない子供の姿、庇護されなければ、守られなければ生きていない無力さ。
「けど、私は強くなった」
誰よりも強く、何よりも強く、どんなものよりも強く――
最強の存在である聖王として、ヴィヴィオは覚醒した。
「だから、もういらない」
母親なんて、必要ない。
その存在を追い求め、欲していた日々は、終わったのだから。
「最強の聖王に、そんなものはいらない!」
虹色の魔力が爆発し、眼前の敵に強烈な衝撃波が叩き付けられる。
ゼロは衝撃波を浴びながら、倒れそうになる身体を必死で耐え抜いた。
「言いたいことはそれだけか……強くなった、か」
聖王の強さをものともせず、ゼロはヴィヴィオに剣を向けていた。最強を前
に臆することもなく、瞳には強い光があった。
何故こいつは、跪かない。
「ここをお前の処刑場にしてやる。私の前に、倒されろ!」
聖王が、自ら攻撃を仕掛けにいった。凄まじい速さでゼロとの距離を詰める。
激しい虹色の光りが、辺りに飛び散った。
「ハァッ!」
ゼットセイバーの斬撃が、迫り来る聖王へ振り下ろされる。避けることも出
来たが、聖王は敢えて避けることをしなかった。
「プラズマアーム」
光りが、聖王の両腕を包んだ。ゼットセイバーが直撃するも、輝きが斬撃を
防いでいる。
ゼロは刃を引き、連撃を叩き込んだ。
「こんな斬撃!」
斬撃と打撃の応酬で、聖王はゼロにも劣らぬ速さを見せた。威力も、一発で
相手を叩きのめすだけの力が籠もっている。ゼットセイバーでなければ、刀身
を砕かれていただろう。
連続斬りを全て受けきり、聖王は反撃に転じた。
「プラズマ――」
左腕に魔力が集中され、雷撃が巻き起こる。
これは、先ほどと同じ……!
「スマッシャァァァァッ」
砲撃を、ゼロはギリギリのところで避けた。それでも砲撃の余波だけで、身
体が吹き飛ばされそうになるほど、聖王の一撃は強烈だった。
後退し、ゼロはバスターショットの連射を浴びせかける。
「無駄だ」
避けることも、防ぐことも、この程度の攻撃には必要なかった。バスターシ
ョットは聖王の鎧に尽く弾かれ、虚しく散っていく。続けざまにフルチャージ
ショットが放たれるも、聖王はそれを無視した。直撃弾でさえ、無力化してし
まったのだ。
「チッ――」
イノーメスカノンでさえ通用しない相手に、フルチャージショットなど攻撃
にもならないということは判っていた。
だが、牽制すらならないのでは、舌打ちの一つでもしたくなるところだった。
「セドリッククラスター」
拡散型の魔力弾を、再び聖王は撃ち放った。数は三つ、ゼロの中空で炸裂し、
魔力弾の雨を降らせた。
浴びせかけられた雨粒の威力は、その小ささとは比較にならないほどで、ゼ
ロは全身が貫かれるような痛みを味わった。
「どうだ、痛いだろう」
聖王は事実を確認するかのように、ゼロに声を掛けた。あれだけの魔力弾を
浴びても、彼はまだ立っている。
膝すら、付いていないのだ。
「……どうして」
何故、倒れないんだ。
ゼロの全身が輝き、ゼットセイバーを両手で握り直す。まだ、攻撃を続ける
というのか。
「その技は、もう憶えた!」
繰り出されるチャージ斬りの斬撃を、聖王は片手で受け止めた。
聖王に、二度同じ技は通用しない。
「お前の必殺は、聖王には効かない」
斬撃を弾かれ、ゼロは大きく身体を後退させた。聖王はそれを追わず、右手
と左手、それぞれに魔力を集中させはじめた。
片腕ずつ、異なる魔法を使おうとしているのだ。
「ディバインバスターと、プラズマスマッシャーだ」
技の名に、ゼロは覚えがあった。
「それは、フェイトの――」
もう片方は、なのはの技だったはずだ。
先ほどから感じていた、些細な疑問、聖王は何故二人の技を使えるのか。
「憶えた……私はあそこで、二人の戦い方を憶えたんだ」
無意識か、それとも本能か、ヴィヴィオは六課で見たなのはとフェイトの戦
いを、完全に記憶していた。戦技教導の映像記録も、実際に新人たちと戦って
いる姿も、全て魔法のデータ収集として記憶されていたのだ。
「私は子供の姿をしながら、私の存在を感知できる魔導師を探していた」
そして、なのはと出会った。管理局が誇るエース・オブ・エースと、出会っ
てしまった。その結果ヴィヴィオは、いや、聖王はデータ収集の対象であった
なのはも倒せるだけの存在となったのだ。
「なのはとフェイト、私はその二人の戦い方を学習し、強化している」
聖王の鎧が持つ、超高度学習システム。
謂わばゼロは、なのはとフェイトの二人を相手にしているようなものなのだ。
さらに聖王は、戦いの中で常に学習を続け、進化していく。
「お前の剣技も、憶えた」
チャージ斬りを片手で受け止めるのも、聖王にとっては造作もないことだ。
負けるわけがない、ゼロが、勝てるわけがないのだ。
両手を、聖王は突き出した。
「消し飛べ、そして鉄屑とかせ」
ディバインバスターと、プラズマスマッシャーの双撃砲が発射された。
砲撃は、ゼロに直撃した。
爆光が輝き、爆発が轟く。大広間は既に崩壊寸前に近いダメージを負ってお
り、修復作業も間に合わない。
聖王はゆりかごの修理に回すエネルギーすら、自身の力に変えているのだ。
「これが私の、聖王ヴィヴィオの強さだ!」
砕け散ったか、それも消し飛んだか。並の魔導師なら千回は殺せるだけの力
を叩き付けた。例え生きていても、無事であるはずがない。
爆煙が晴れ、視界を遮るものが消えていく。聖王は倒した敵を確認しようと
一歩前に出て、
「これで勝った気でいるなら、お前はまだ甘い」
声に、足を止めた。
信じられない物を聞いたかのように、煙の晴れた先に視線を向ける。
「倒したと思って近づいたところで、思わぬ反撃に遭うかも知れないぞ?」
ゼロだった。ボロボロになりながらも、ゼロは生きて、その鋭く力強い瞳で
聖王を見据えている。
「なんで……倒れないんだ」
直撃だったはずだ。避けることも出来なければ、防ぐ手立てすら持っていな
かった。魔力砲撃を全身に浴びて、鉄屑とかしてもおかしくないはずだ。
手加減など、一切していないのに。
「これが、お前のいう強さか」
傷だらけの身体を引きずるように、ゼロはゆっくりと歩き出す。攻撃は、決
して効いていないわけじゃない。
聖王が、ヴィヴィオが倒し切れていないのだけだ。
「この程度なら、子供の姿の方がまだ強かったな」
あり得ない、何なんだ、こいつは。
「アァァァァァァァァァァァァッ!!!」
魔力光が、聖王の身体から連続して放たれた。
美しい虹色の光りが、爆光となってゼロに襲いかかる。
「倒れろ、死ね、くたばれ!」
そのほとんどは直撃し、直撃しなくても爆風や攻撃の余波によってゼロはダ
メージを負っているはずだ。
なのに何故、ゼロは倒れない。どうして、死なないんだ。
「私は強い、私は強い、私は強い、私は強い、私は強い……」
無敵にして、完全になる、最強の存在。
「私は強い、強くなったはずなのにっ!!!」
聖王は叫ぶと、セドリッククラスターを叩き付けた。ゼロの目の前で拡散さ
せ、魔力弾を全身に浴びせかける。
「ぐっ!」
流石のゼロも、衝撃に後退してしまう。
けれど、それでも尚、倒れることだけはしなかった。
「倒れろ、倒れろよ!」
聖王は、如何なる敵に対しても勝利しなければならない。そして聖王と相対
するものは、必ず負けなければいけない。
それなのにこいつは、ゼロは―――!
「お前は、どうしてそこまで出来るんだ……」
何者にも屈することのない聖王が、明らかに怯んでいた。目の前にいる敵に、
戦士に、存在に、僅かに圧倒されたのだ。
「オレには、生きて元いた世界に帰るという目的がある」
それを果たすまでは、死ねないとでもいうのか。しかし、それが戦う理由だ
というのなら……!
聖王は、ゼロから発せされる圧倒感を打ち消すように、右手を突き付けた。
残された力を振り絞り身構えるゼロだが、聖王の行動は攻撃を意図したもので
はなかった。
「次元航行が出来るのは、ゆりかごだけじゃない」
呟くと、ゼロの背後の空間に、突如亀裂が入った。そして、彼の背丈以上の
大きさがある穴が出来上がっていく。
空間を、次元をこじ開けたとでもいうのか。敵の意図が読めないのか、ゼロ
は無表情のまま警戒を続ける。
だが、次の瞬間、聖王ヴィヴィオは信じられない言葉を口にした。
「その次元の穴は、お前が元いた世界へと繋がってる」
言葉に、ゼロが驚愕を覚えたのは事実だ。
時空管理局でさえ探し当てることが出来なかった世界へ続く道を、聖王は一
瞬で作り上げたのだ。
「嘘は、付いてない」
信じる信じないは別として、聖王は確かにゼロの元いた世界への道を作った。
けど、何故そのようなことをしたのか?
「何の真似だ……」
後ろを振り返らずに、ゼロは聖王だけを見て、口を開いた。聖王は息をつき
ながら、攻撃の構えまで解いてしまった。
「お前の戦う理由が、元いた世界に戻るためなら、その穴を通って帰ればいい」
聖王は、ヴィヴィオはそう断言した。
どのようにでも殺すことの出来る相手に対して、倒さなければいけない敵に
対して、聖王は通常では考えられない行動に出たのだ。
「どういう風の吹き回しだ」
ゼロは、聖王は嘘をついていないと思った。恐らく背後に出来た穴を通れば、
自分は間違いなく元いた世界へと帰ることが出来る。
何故、聖王がそんなことをするのか、それだけが判らない。
「……私は一度」
聖王の表情が、僅かながらに変化した。
幼さを残す面影が、ゼロも知っている幼女の時と重なっていく。
「お前に、助けられた」
少女の想いが、そこにはあった。聖王などという存在ではない、ヴィヴィオ
という名の一人の少女が、そこにいた。
かつて聖王病院を彷徨っているとき、ヴィヴィオは騎士に襲われそうになっ
たことがある。
そして、その時彼女を助けたのが――
「ゼロ、お前だ」
借りは、返さなくてはいけない。
少女としてか、それとも聖王としてか、ヴィヴィオは戦いを一時的に放棄し、
ゼロにチャンスを与えている。
「元の世界帰って……私の前に二度と現れないで」
誓えば、ヴィヴィオはゼロを殺さないつもりだった。元の世界に帰って彼が自
分の前から姿を消せば、その存在を忘却し、記憶の彼方に飛ばしてしまおうと思
っていた。
「…………」
ゼロは無言だった。思案しているのか、それならそれでいい。数分ぐらいは、
考える時間を与えても――
「断る」
数秒の間しか置かないで、ゼロは断言した。
「オレは、まだ元の世界に帰るわけにはいかない」
ヴィヴィオの表情が、歪んだ。
「なんで、どうして!」
元の世界に帰るという目的は、果たされようとしている。後ろを振り向き、
穴に飛び込めば、それで済むのだ。
「お前の、あなたの戦う理由はもう――」
「理由なら、ある!」
ゼロの声が、ヴィヴィオの叫びをかき消した。
「オレは、オレの戦いに、決着を付ける」
そして初めて、彼は元いた世界に帰ることが出来る。少なくともゼロは、そ
う考えているのだ。
「戦いなんて、そんなもの! 戦って、正義の味方でも気取りたいの? 聖王
に勝って、英雄にでもなるの!?」
ゼロが自分に勝つことなど、出来はずがない。そして自分がゼロに負けるこ
とも、あるわけがないのだ。
ヴィヴィオの叫びに、ゼロは静かに口を開く。
「虚構や虚像に、意味なんてない。オレは、正義の味方でもなければ、英雄に
なりたいなんて思ったことは、一度もない」
英雄は、自分がなるものではない。英雄とは、彼の知っている英雄は――
「オレはただ、自分が信じる者のために戦ってきた」
ゼロの瞳が、ヴィヴィオの人を貫くように見つめている。ヴィヴィオは、顔
を背けることも、言葉を発することも出来なかった。
「ヴィヴィオ、お前は何を信じる? 何を信じて、お前は戦う」
問いかけに対する答えは、すぐに見つからなかった。
やがて絞り出すように、ヴィヴィオは言葉を吐き出した。
「私は、私を信じる。聖王ヴィヴィオは、王としての強さのみを信じ、戦う!」
その答えが正しいのかどうか、言った本人ですら判らなかった。
ゼロは、ヴィヴィオの出した答えに、一瞬だけ目を閉じ、
「お前が聖王として持てる強さを、全てオレにぶつけてみろ」
出なければ、オレは絶対に倒せない。
支援
ゼロの言葉に、ヴィヴィオは唖然とした。これではまるで、こちらが挑んで
いるようではないか。
王が、誰にも屈することのない聖王が、一人の敵に対して戦いを挑んでいる。
そんなこと、あっていいはずがない。
「良いだろう――」
しかし、ヴィヴィオは、ヴィヴィオから聖王へと表情を戻した少女は、覚悟
を決めていた。王の威厳も、権威も、神聖すらも、この際はどうでもいい。
ただ目の前にいる敵を、最強の戦士を、全力で倒したい。
「私はお前を倒して、完全な聖王となる」
その為に得た、聖王の力。最強にして最大、絶対にして無敵、私はそれだけ
の強さを、聖王となって手に入れたはずだ。
「この剣で、お前を倒す!」
聖王が右手をかざすと、魔力粒子が結集し、形を為していく。
黒色の柄を持つ姿形に、ゼロは見覚えがあった。大きさに際はあるが、あれ
はまさか……
「ライオットブレード!」
フェイトが持つそれと、全く同じ物を聖王は作り上げた。ゆりかご内で起こ
った戦闘全てが、データとして聖王の元へ送られてくるのだ。
「ゆりかご内で、私に出来ないことはない」
剣に、魔力の刃が光り輝く。フェイトのそれと違って、虹色の光りを放つ刃
が、刀身として現れる。
「お前は私を本気にさせた。これでお前を――」
言いかけて、聖王の動きが止まった。
ライオットブレードを持った片手に、視線を向けた。
「なに、これ」
聖王は、ライオットブレードを正確に再現していた。流石にインテリジェン
トデバイスではないが、材質、形状、出力、あらゆる物をコピーし、完全な物
として作り上げたのだ。
「重い」
片手に持った剣が、重い。刃の出力も、聖王が予想していた物より遥に強い。
何という凄まじい武器……いや、待て、フェイトはこの重たい剣をどのように
使っていた?
「二刀流――」
そう、フェイトは二刀のライオットブレードを両手に持って、戦っていたの
だ。こんなにも重く、高出力の剣を、二刀も振り回していたというのか。
聖王が、唇を強く噛みしめた。
「一太刀で、決めてやる」
両腕で、ライオットブレードをしっかりと構えた。
対するゼロは、動く気力すら残っていないのか、ゼットセイバーを構える気
配すらなかった。
「動けないなら、それでもいい」
私は、勝たなくてはいけない。聖王として、聖王ヴィヴィオとして、どんな
敵にも倒して、
「強さの証を、知らしめなければならいんだ!」
聖王ヴィヴィオが、駆けた。
虹色の閃光が、ゼロとの距離を一瞬で征服し、輝ける刃を振りかざす。
「死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!」
振りかざされた剣と刃が、ゼロの脳天に直撃した。衝撃が身体を揺らし、斬
撃がゼロの赤いヘルメットを、叩き斬った。
「私の、勝ちだっ!」
今度こそ、倒した。勝利を確信しても、いいはずだ。
勝ち誇った表情を作ろうとした聖王、その聖王に対し、
「――――!?」
鋭い眼光が、貫いた。
ゼロの瞳は、まだ死んでいない。力強い光りを放ち、生きている!
「そん、なっ」
ほとんど反射的に、聖王は後方に飛んで距離を取っていた。ゼロの瞳と目が
あったとき、聖王は確かにその眼光に貫かれた。本能的な恐怖が、聖王の身体
を支配したのだ。
「はぁっ……はぁっ……」
ゼロは、倒される寸前だった。反撃する力も、戦いを続けるだけの体力も、
抗うだけの気力も、何も残されていないはずだ。
荒い息を吐き続けながら、ゼロの身体がぐらついた。割れたヘルメットが落
ちて、片方は床へ、もう片方は次元の穴へと吸い込まれていった。聖王の言が
本当であれば、今頃元いた世界のどこかに飛ばされたのだろう。
警戒し、次なる攻撃を仕掛けてこない聖王であるが、ゼロはもう動けなかっ
た。例え動けたとしても、聖王に、ヴィヴィオに勝つことはもう……
――ゼロ、光をつかむんだ
その声は、突然ゼロの頭の中に響き渡ってきた。
力尽き、倒れようとするゼロを押しとどめるように、親友にして戦友の、彼
が唯一英雄と認めた男の声が、聞こえてきた。
「エックス、なのか……?」
消え失せようとしている意識を無理矢理覚醒させ、ゼロは何とか踏みとどま
った。
――光が、君を導いてくれる
奇跡はXの領分だな支援
「光を、つかむ」
ゼロは、何もない空間に手を伸ばした。視線の先にあるのは、割れたヘルメ
ットの片割れだけ。
光など、どこにもあるわけが……
「いや、ある」
ゼロの足下が光り輝いていく。その光りは聖王ヴィヴィオにも見えるようで、
驚きに目を見開いている。
この光りは、いつか見たことがある。この世界に来る前、確かにオレはこの
光りを見た。
ゼロは足下に転がるヘルメットの割れた額から、一つの石を取り出した。
「願いの叶う石、か」
宝石、ジュエルシードをゼロは右手で握りしめた。
あふれ出す光りが、ゼロの全身を照らし、輝かせる。
「答えろ、ヴィヴィオ」
静かな口調で、ゼロは言葉を紡ぎ出していく。
「お前の言う強さとはなんだ」
言葉に、聖王が一歩、また一歩と後ずさる。聖王が、気圧されている。
「お前を愛してくれた人を傷つけ、お前が愛した人を傷つけて」
遠くでは、なのはを必死で治療しているアギトが、ゼロの姿を見守っている。
「お前はそんな力が欲しかったのか? こんな、オレのヘルメットしか割れな
いような、その程度の強さを」
お前は欲しかったのか?
「違うだろう、ヴィヴィオ」
ジュエルシードの光りが、ゼロの全身を包み、燦めきと輝きを放っていた。
聖王がその問いに答えを出すよりも早く、ゼロが駆け飛んだ。
「違うだろ――――――ッ!!!」
ゼロが空中で、右腕を振り上げた。ジュエルシードを握りしめた、願いを叶
える石を持った右手に、力を込めた。
聖王ヴィヴィオは、涙を浮かべていた。答えることの出来なかった自分にか、
最強の敵を前にした恐怖からか、それでも聖王は、攻撃の構えを取った。
「インパクトキャノンッ!!!」
聖王ヴィヴィオが持つ、最強の技。拳を使った、最大威力射撃。
如何なる物も消滅させる、王者の一撃。
対するゼロも、右の拳を振り上げていた。
ジュエルシードの輝きは、ゼロが永い眠りと共に失っていた記憶の糸をたぐ
り寄せる。
ゼロは、その光りをつかむことに成功した。
「アースクラッシュ!!!」
ゼロが記憶と共に過去に捨て去った技。持てる全ての力を拳に集め、全力で
敵に叩き込む、破壊の一撃。
アースクラッシュと、インパクトキャノンが激突した。
最強の技と技がぶつかり合い、二つの光が光り輝く。
赤と、虹。
赤き閃光の前に、虹色の光りが押しつぶされようとしている。
「私は……私はっ!!!」
聖王ヴィヴィオは、持てる力全てを出し切った。誰であろうと、彼女がこの
時、本気でなかった、実力を発揮できなかったとは言えないだろう。
そして、全てを出し切ったからこそ、
「これがっ――」
アースクラッシュが、インパクトキャノンを打ち破った。叩き込まれた破壊
的エネルギーの塊が聖王の鎧を揺るがし、レリックに亀裂を走らせた。
「答えだっ!!!」
ゼロが振り上げた最後の一撃、ゼットセイバーの斬撃が、レリックを斬り裂
いた。
聖王の鎧が砕けた。
ここでまさかのアースクラッシュw
支援
鎧を壊された聖王は、もはや聖王ではなかった。聖王としての姿を維持でき
なくなったヴィヴィオの姿が、変化していく。
ゼロのよく知る、あるべき姿へと。
「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
地面へと倒れたとき、既に聖王の姿は消えていた。ボロ布を纏った幼女が、
そこにいるだけだった。
「あっ、えっ……」
幼女は震えていた。記憶が混乱しているのではない、記憶が正常だからこそ、
幼女は震えているのだ。
「――いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ヴィヴィオが、発狂して泣き叫んだ。
自分が何をしたのか、何をしてしまったのか、ヴィヴィオはやっと理解でき
たのだ。
聖王の強さ、そんな物は所詮虚像でしかなかったのだ。
誰にも屈しない強さなど、聖王は持っていなかった。聖王の強さは、誰もを
屈服させる強さなのだ。
何者にも屈しない強さ、それを本当に持っていたのは――
「うっ、あっ…………」
ヴィヴィオは、顔が上げられなかった。絶望し、暴走し、自分は強さを追い
求めた。でも、それは自分が弱いから、弱いからこそ力に縋ったのだ。
そして手に入れた力でヴィヴィオがしたことは、自分が愛した、自分を愛し
てくれた人たちへの、反抗だった。
だから、ヴィヴィオはひたすらに泣き叫んだ。
もう、泣くことしかヴィヴィオには出来なかったのだ。
「ヴィヴィオッ!」
泣き叫ぶ幼女に向かって、ゼロが叫んだ。
声に恐れ、怖がり、ヴィヴィオの身体が震え上がる。
「涙を拭け、お前はアイツから、泣かないだけの強さを教えられたはずだ」
ヴィヴィオが、顔を上げた。彼女の前立つゼロは、疲労しきった顔の中に、
僅かな暖かみを混ぜてくれていた。
だから、ヴィヴィオは必死で、瞼を擦り上げた。
「うん……もう、泣かない!」
ほとんど無理矢理、それでもヴィヴィオは笑顔を作り、ゼロに向かって微笑
んだ。
聖王のよりは砕け散り、聖王ヴィヴィオは敗北した。
復活した聖王のゆりかごは今、再び主を失ったのだった。
つづく
第24話です。
今回はロックマンゼロというより、ロックマンXに思い入れの強い話です。
判る人は判ると思いますが、元ネタはX3のあれです。
前回と、今回、そしてこの次の話を書きたいが為に、私はこの作品を書き
始めと言ってもいいかもしれません。
それでは、感想等ありましたら、よろしくお願いします。
乙!
アースクラッシュでニヤけてしまったじゃないか。
あの技は死亡フラグだから、無事生き残れてよかったw
GJ!
ゼロ4の最後でメットが砂漠に埋まってたシーンに繋がったな
ってことはゼロ帰れないじゃないかーwww
だがGJ!
GJ!
元ネタは「答えろ、ホーネットォーッ!!」
ですねわかります。
X4の打ち切りは残念でならなかった……
岩本版エックス完全版がどこの書店にもねえええ!!
GJ!
ホーネット副隊長にまさかのアースクラッシュw
GJ!
本当は地面ボコボコにして破片巻き上げるだけのはずが
ビルこっぱみじんにしちゃったアースクラッシュキタ━(゚∀゚)━!!!!!
ホーネックだった・・・
>>470 アレは書店で注文しないと無理
そしてもう注文は受け付けていないので購入も絶望的
にしてもXスキーとしてはこの作品はニヤニヤ出来るネタが多いですね
GJ!
ライオットブレード云々もホーネットのオマージュだったのかw
だがそれがGJ
ゼロはミッドに骨を埋めるのか?
ダメージ受け過ぎたせいで真っ白に燃え尽きそうで不安でもある
GJでした!
ところで岩本ネタ以前に彼女、聖王ヴィヴィオがコピーエックスとダブった人、
素直に手を挙げてくれwww
しかし激昂して怒鳴るゼロって少なくともロクゼロ時代にはなかったような。違和感の正体はそれかな?
そしてエックス、この土壇場で助言ってタイミング良過ぎなんですけど、
まさか1〜3みたく最初から全部見守ってたとかのオチじゃないよね?
最終回、楽しみに待ってます!
なんだかXの忍法我慢の術を思い出したぜ。
ゼロの方、乙です。
来るかと思っていたホーネットイベント、
来たときは思わずニヤニヤしてしまいました。
XのゼロといえばX2の
「おれはおまえがきらいなのさ。」
が印象に残ってる。
ゼロの意志決定はこの一言が表してる気がする。
ボンボン世代多いな(自分もだけど)GJ!
ロックマンゼロのゼロってヘルメット脱ぐシーンあるのか?
とりあえず今回は、岩本版エックスの素顔ゼロで脳内補完させてもらいました。
・・・あれ? リィンとのユニゾンは? ま、まさか!!
ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄-氏 あなたって人はどれだけ俺達を興奮させれば
気が済むんですか! 楽しみで仕方ないじゃないか!(アスラン風)
今気付いた。これは岩本版ロックマンか?
ボンボン世代には大好物です。
ワンパンで状況ひっくり返しやがった!!
この後は奪ったバイクで帰還しようとして逃げられるんですね。わかります。
さてこの時点でまだクアットロが残ってるのが気になる所。
次回を興奮しながら待ってます。
484 :
一尉:2008/10/19(日) 16:37:24 ID:6mHmc/fm
それなら小学館文庫版の岩本版にあります。
このボンボン家にまだあるwwww
ホーネックフラグ立つとX(なのは)守ってボロボロにやられちゃうじゃないか(w
>>486 そうだよ。
誰も今まで突っ込まなかったけどホーネットじゃなくてホーネックだかんねw
そいえば岩本版のX4ってボンボンじゃビストレオ瞬殺したとこで打ち切られてたけど
かなり前にアイリス死亡まで描かれた同人出したって情報があったような。
これ以上はウロスだから置いといて。
次回、おそらくクアットロが最後の悪あがきか?それともサイバーエルフX登場?
楽しみに待ってますよ。
488 :
一尉:2008/10/20(月) 14:07:55 ID:QyntjEK9
うむ別冊コロコロてもゼロの漫画があります。
489 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 15:19:53 ID:PgxE2qT2
毒婦・クアットロが残ってるのが心配ですけど、
ゼロの不屈の闘志がまた光(ハッピーエンド)を掴む事を信じております・・・。
こん……ばん……わッ
ええもうすごい勢いで離脱しておりましたが
17:30頃から、時間ができたので書いてた作品を投下しても良いでしょうか?
いやまあHALOクロスではなくて、新作なのでアレですが……!
三話程度の中篇の予定なので
あ、あと岩本ロックマンだったらVAVAが最高に大好きです
――その男は暗闇の中で覚醒した。
随分と長く意識を失っていた気がする。
或いはたった今、この世に生れ落ちたかのような。
そう言った認識を得た直後、急速に世界が広がった。
状況を把握できた、と言い換えても良いだろう。
彼は自分が金属製のベッドに横たわっている事に気付いた。
否、ベッドではあるまい。これは――手術台だ。
「やあ、目が覚めたか」
不意にガコンと音がして、彼を灯りが照らし出した。
周囲の様子が露になる――が、彼にとっては然したる意味も無い。
たとえ真の暗闇の中であろうと、彼の"眼"は見通す事ができるからだ。
手術室。手術台。何の事は無い。見慣れた光景だ。
その入り口にたたずむ白衣の男だけが、普段とは違った存在だった。
「――"博士"ではないのか。誰だ、貴様は」
「ジェイル・スカリエッティ。或いはドクターとも呼ばれるがね」
その男、およそまともな人物でない事は一目でわかった。
眼が違うのだ。爛々と輝く金色の瞳は、それだけで男の異様さを物語る。
肉体がどうかなど知らない。その精神こそが異常。
「……何故、俺はココにいる?」
「的確な質問だ。"彼ら"はキミを使ってある作戦を行い――そして失敗した。
そして大きな損害を受けたキミを廃棄する代わりに、我々に売ったのさ」
「つまり俺は……払い下げられたのか」
彼は虚ろな声で言った。ある種の虚無感が其処にある。
「ガラクタとして、残骸として、スクラップとして」
「そう悲観する必要は無いぞ。単に彼らではキミの肉体が再生できなかった、というだけの事だ」
言われてみれば、確かにそうだ。
彼と同等の損傷を受けた仲間は、皆間違いなく死亡していたのに対し、
手術台の上に横たわっている彼の身体は、全くと言って良いほど無傷。
見慣れた黒色の戦闘服も、胸部装甲も、傷一つついていない。
となれば、頭部も同様なのだろう。
ぎこちなく腕を伸ばして顔を撫でると、硬質の感触があった。
間違いない。自分は完全に回復している。
「俺を買い取ったと言ったな。そして、修理まで行った。――――だが、何の為だ?」
「私の"上司"には色々あるようだがね。私に限って言えば、夢の為だ」
「……夢、だと?」
頷き、白衣の男は大きく両手を広げた。
まるで役者でもあるかのような大仰な仕草。
「生まれた時から持っていた夢。
刷り込まれたものかもしれないが、これは私の願いだ。
私が望む世界。
私の世界。
自由な世界。
それを襲い掛かって、奪い取る。
――それが、私の夢だ」
世界を奪い取る。
その言葉が、電撃のように彼の脳裏を駆け抜けた。
たとえ自分が今生まれたばかりであるとしても、
たった今受けた衝撃こそが、彼にとっては何よりも大切だった。
「――――それは」
ようやく絞りだせた声は、随分と震えていた。
恐ろしいのでもない。怯えているのでもない。
それは極めて明確な一つの感情によるものだ。
彼は喜んでいた。
歓喜していた。
世界を奪うという、その『夢』に。
「?」
「世界征服、という事か」
――これが、全ての発端だった。
魔法少女リリカルなのはNumberS
『仮面の男』
支援は欲しい?感想も欲しい?
「スローターアームッ!!」
二本の足で地に立つ男目掛けて、空より飛来する刃が二つ。
戦闘機人No7。セッテの固有技能および固有装備、ブーメランブレード。
空中戦闘に特化した彼女によって、意のままに操作されるその兵器は、
古代ベルカ騎士の一撃に匹敵するという威力、速度を秘めた代物だ。
当然、まともに喰らえば只では済まず、また回避する事も難しい。
だが――……それが届くよりも先に、大地が踏み砕かれた。
――跳躍。
一瞬にして15m。恐るべき脚力である。
回避したのみならず、その男は空中のセッテ。その間近にまで迫る。
「――ッ!」
たまらず彼女は急制動をかけ、距離を取った。無論、その間にも戦闘行動は途絶えることが無い。
投擲したブーメランブレードを呼び戻しながら、両手に更に二振りの刃を生み出す。
宙に浮いてしまえば、何の装備も有さない存在は動きようが無い。狙うならば今だ。
両手に武器を握ったセッテは、背後から男に迫る刃に加え、その二刀を投擲。
前後左右からの回避不能な同時攻撃によって、一挙に畳み掛ける。
悪くは無い。
決して、悪くは無い。
だが、それはおよそ一般的な場合にのみ言える戦術でしかない。
この男は、そのようなマニュアルの範疇に入る筈が無いのだった。
しっかりとその脚が"宙を舞うブーメラン"を踏みしめる。
「反転―――……」
どん、と鈍い音。
男が更に跳躍した事を理解した瞬間には、その一撃がセッテへと放たれていた。
「――キィイィィックッ!!」
この男を一瞬にして15mの高みにまで至らせた脚力。
其処から全力を持ってして放たれるキックの威力は、およそ10トンになるだろう。
そうなれば無論、まともに喰らえば戦闘不能となる事は間違いない。
まさに一撃必殺。
空中戦特化という事もあって、比較的防備の少ないセッテでは耐えうる事は不可能だろう。
トンと脚が触れた瞬間に、模擬戦終了を告げるブザーが鳴り響いた。
「どうですか、001」
「戦術は悪くない。が、思考外の出来事にとっさに反応できないようではな」
地に降り立った彼女に対し、同様に着地した男――001は、そう答えた。
ナンバーズは異常な存在だ。だが、それを上回るほどに異常で不気味なのが、この男だった。
身に纏っているのは黒色の戦闘服。これはさして問題は無い。
基本的にはナンバーズの其れと、男女の差こそあれど大きな違いは無いからだ。
しいて言うならば肘や膝、肩などの要所にプロテクター、そして胸部には頑丈な装甲が備わっている点くらいか。
首にマフラーを巻いているのも、気にする程の事ではない。
チンクの眼帯、ディエチのリボンや、ディードのカチューシャ、或いは他ならぬセッテのヘッドギアなど、
ナンバーズと言えども戦闘行動の支障になら無い範疇で、多少のファッションは許されている。
問題は、頭部だ。
――仮面。
ヘルメットと呼ぶことはどう考えても不可能だった。
何故なら其処には『顔』が存在していたのだから。
緑色の目を持つ、無機質な『顔』
であるならばそれは、正しく『仮面』だった。
そんな存在がどうして正常だと言えようか。
まだしも肉体が生身であったならば、そう呼べたかもしれない。
だがセッテの視界――解析システムは、男が生身の人間では無い事を伝えている。
脳の一部を含む肉体の大半が機械に置き換わっている彼こそは、まさしく最初の戦闘機人。
およそ全ての戦闘機人の原型となったが故に"001"と呼ばれている男。
ドクタースカリエッティの旧友であり、同時にナンバーズの教官でもある男。
それが、彼だった。
空戦型であるセッテの模擬戦相手としては役者不足とも思えたが、
しかし先程の跳躍を見ればわかる通り、この男は十分以上の空戦能力を有している。
このように何の問題もなく、彼女に訓練を施すことが出来るのだ。
少なくともその点については、セッテも文句は無い。
「お前の姉からも言われなかったか?」
「はい。トーレから"機械過ぎる"と」
的確な表現だな、と呟いて001は笑った。
「我々は改造人間――もとい、戦闘機人だ。兵器であるが、同時に兵士でもある」
「001。言っている意味がわかりかねます」
「つまり、人間なんだよ、俺たちは。ここに詰まっているのは蛋白質の塊か?」
そう言ってコツコツと001はヘルメットを叩いた。
緑色の複眼が煌き、セッテは奇妙な居心地の悪さを覚える。
文句があるとすれば、これだ。
セッテは彼が苦手だった。
こんな感情は、完璧な兵器であろうとする彼女にとって有り得ない事なのだが、
とにかく彼女にとって001は苦手と判断せざるをえない対象だった。
理由はと問われても、セッテには判断できない。
結局、プログラムに発生したバグ、或いは欠陥と結論せざるを得なかった。
どちらにせよ留意すべき事態であるのは間違いあるまい。
こうして幾度か1号に戦闘訓練を受けるのも、そのバグを克服するのが目的なのだが。
どうにも、この複眼に見つめられるのだけは、慣れない。
思考の中へと陥っていたセッテを現実に引き戻したのは、1号の次なる言葉だった。
「ただの兵器では、奴らに勝てん」
「――……奴ら?」
「圧倒的な性能差。絶望的に不利な戦況。
そういった物を、いとも簡単に覆してのける存在だ」
「……わかりかねます。
性能差や戦況の悪化。別々に発生したのでしたら覆す事も可能かと思いますが、
両者が同時に発生したのであれば、それを打開するのは不可能かと」
最もな意見である。
およそ魔法に関して言えば持って生まれた素質がほぼ全てであるし、
彼女達の持つIS、先天固有技能なども、その典型的な例だと言える。
だが、それに対して001は皮肉げな呟きでもって答えた。
「それが、可能なんだよ。――――人間という奴には」
――人間には、それが可能。
不可解な理論に彼女が頭を悩ませていると、001は笑いながら手を振った。
「まあ良い。いずれお前も逢うだろうし、今考えても仕方ない事だ。
それより、集団洗浄の時間じゃないのか? お前も行って来たらどうだ」
「いえ、可能ならばもう一戦お願いしたいのですが」
「悪いが、俺はドクターに逢いに行かなければならない。
良いから行って来い。訓練、訓練、では機械そのものだ」
「はい、ではそのように」
****************************************
ジェイル・スカリエッティの本拠地には、大規模な集団洗浄場が存在する。
より一般的な表現をするならば、大浴場と言った所か。
12人のナンバーズ姉妹全員で入浴してもまだ余裕のある規模の浴場では、
今日も今日とて幾人かのメンバーが、集団洗浄を行っていた。
話題と言えばまあ、いつも通りだ。
ノーヴェやウェンディによるバカ騒ぎから始まり、
オットーの性別について、或いはクアットロについての軽口。
この場にはいないドゥーエに対してのあれこれやらも加わり、二転三転した後、
研究施設における唯一の男性型戦闘機人――つまり001の事になる。
「あー……ダメだ。やっぱアイツは好きになれない」
「そうッスねー。あのヘルメット、髑髏みたいで、ちょっと怖いッス」
「そこじゃねぇよ。何考えてるかわかんねぇところが苦手なんだ」
浴槽にしっかり肩まで使ったノーヴェと、のんびり浮かんでいるウェンディの会話に、
さもありなんと他のナンバーズ一同、揃って頷く。
性別不明なオットー以上に謎めいているのが、あの仮面の男、001だからだ。
戦闘機人の試作品――タイプゼロよりも前に存在していたとの触れ込みであり、
ドクターとの付き合いも長く、ナンバーズ達も生まれた当初から関わっている。
更に言えばセッテならずとも訓練を指導してもらった経験は全員にある。
そしてその戦闘能力は、魔術的要素が一切無いとはいえ、特筆すべきだ。
だが――果たして"姉妹"の中で、誰か一人でも彼を好ましいと感じる者はいるだろうか?
嫌っている者はいないだろう。だが、好きにはなれなかった。
「僕も彼の事は好きになれない。――何故、顔を隠してるんだ」
「あたしも。001さんの顔、見たこと無いもの。ディードは?」
「特段、好ましいとも思ってはいませんが」
「でもさー。私、前にドクターから聞いたんだけど。
私たちの持ってるIS――先天固有技能ってあるじゃない?」
「ああ、あたしのエアライナーとか、セインのディープダイバーとかだろ?」
「お姉ちゃんのこと呼び捨てにすんな。
ともかく、戦闘機人にそれぞれ固有能力持たせようって、001の発案だって聞いたよ?」
「うわ、マジかよそれ」
「あ、それとあたしはあの仮面には爆弾が装備されてるって聞いたッス! 外すと爆発するって」
「……誰から聞いた、それ」
「クア姉から」
「そりゃ嘘だよ、ウェンディ」
満場一致でそれは嘘だ、という結論に達する姉妹たち。
しばらくしてセッテが集団洗浄に参加すると、すかさず質問攻めが始まる。
加えてウェンディによる胸部接触も行われ、解放されたディードが胸を撫で下ろす一面もあった。
つまり何が言いたいのかと言えば、単純な一言である。
ナンバーズは今日も平和だった。
ショッカーライダー?昭和タイプっぽいけど?
*******************************************
「――――終わったぞ」
研究室。
不意に聞えた静かな声に、001の意識は緩やかに覚醒した。
またしても手術台の上。だが、特に慌てることも無い。
日に一度スカリエッティの検査を受けるのが、彼の日課だからだ。
「どんな按配だ?」
「キミのお陰で彼女達の製作も、訓練も、実に滞りなく進行している。
いや、むしろ当初の予定をはるかに上回る出来栄えだ。
だからこそ、私も努力はしているのだが――……」
「難しい、か」
「……ああ、すまないね」
ドクター・スカリエッティにしては珍しく、沈鬱そうな表情を見せた。
だが、それに対して001は特に気にした様子も無い。
元より仕方の無い話なのだ。
「拒絶反応――リジェクション、か。
最初から機械との適合を考えて生み出されたナンバーズならばともかく……。
元々がただの人間だったキミでは、機械との融合は負担が大きすぎるのだよ」
「理解している。ドクターが努力をしてくれたことも。不満は無い」
マフラーを結び直しながら001は言う。
言葉に他意はなく、まったくの本心であった。
結局のところ薬で無理やり抑え込むだけであっても、大したものだ。
そういった事すら以前は不可能だったのだから。
「こんなにも人間らしい待遇を受けたのは、久しぶりなんだ。何せ――」
その声は何処か笑っていた。
「改造人間という名の『兵器』だからな、俺は」
「戦闘機人という名の『兵士』なのだよ、今は」
ドクターの声は、何処か疲れていた。
「私にとって、生命というのは素晴らしいものだ。
その可能性を探りたいし、尊い存在だとも思う。
人は『生命を弄ぶ』などとも言うがね。だが、しかし君は――……」
「構わない。判りきっている事だ」
頷きを一つ返し、手術台の上に腰を下ろす。
伸ばした右手が手繰り寄せるのは、スカリエッティの用意した作戦計画書だった。
複製が困難であるという意味において、紙と言う情報媒体は比較的優秀なのだ。
慣れた手付きでページを繰る001の姿に、スカリエッティは苦笑を浮かべる。
「相変わらず君は、寝ても覚めても征服、征服、だな」
「当然だろう。この"組織"で戦闘経験者は俺だけだ。それに――」
「それに?」
毒霧、ミサイル、火炎放射、ナイフ…あとなんだったかな?
避難所にラスト投下されてるみたいだ。
漏れは無理だから有志の方よろしければ代理投下お願いいたします。
迫るスカ一味地獄の軍団支援
503 :
代理:2008/10/20(月) 18:14:14 ID:IdBKZDwg
「これは俺の『夢』だからな」
これにはスカリエッティも笑うしかない。
一番の同士。一番の友人。本当に頼りになるが、頼り切ってしまいたいわけじゃない。
と、不意に001の手が止まる。
「……スカリエッティ。ひとつ聞いても良いか?」
「ああ。一つといわず、幾つでも」
「この――タイプ・ゼロファースト、セカンドという奴だ」
001が指差した先には、カーボン複写された設計図が添付されていた。
スカリエッティの計画書において「可能であれば捕獲」と記されたそれは、
図案の人物が子供であるとはいえ、その内部構造は間違いなく改造人間――戦闘機人である。
「ああ、文字通りの存在だよ。戦闘機人のゼロ番機――もっとも、君よりは後発だが。
『誰か』が作り、奪取され、現在は管理局に所属している。私の知的好奇心から、調べてみたくてね」
「――……特徴は?」
「ファーストがテクニックを。セカンドはパワーを重要視している――らしい」
「……………」
「興味があるのかね?」
いや、と首を左右に振った001は手術台から降り、資料を手にしたまま歩き出す。
「技と、力……か」
退室する間際、ひどく懐かしげに彼が呟いた言葉の意味は、スカリエッティにはわからなかったが。
以上ここまで。
とりあえずクロス先は「仮面ライダー」ってことで一つ。
505 :
代理:2008/10/20(月) 18:21:49 ID:IdBKZDwg
以上で代理終わり
容量も一杯だし新スレ立ててくる
乙でした。
それにしても「技の一号、力の二号」……これは惹きつける物がありますね。読み手に、そして『001』にも。
職人の方、代理の方、乙でした。
昭和の特撮テイストはいいもんだ。
???誰? 一号さん? いや世界征服はしないか。 ショッカーライダーとか?
そういや仮面ライダーになりたかった戦闘員ってWeb漫画おもしろいよ!
GJ!!
しばらく離れてたので大丈夫か心配でしたが、
生存確認できてよかったです。
それにしても、このナンバーズはかなり強くなりそうな予感
HALOクロスも楽しみに待ってます。
ゆっくりとがんばってください。
眼が緑って事とキック力10tって事だから、THE NEXTのショッカーライダーだろうね
>511
THE NEXTのショッカーライダーなら、V3同様にナノロボット製だからリジェクションは無いんじゃ? ある程度は自己修復機能も持ってるはずですよね。
クロス元は仮面ライダーということらしいから、多少混ざってんじゃない?
魂とかネクストとか本放送の分とかいろいろさ、喋りは魂に近いものかんじたし。
test
515 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 09:46:44 ID:blUNy9IW
296 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/20(月) 21:12:20 ID:q7puJV62
三脳は名前だけ出てたっけ。
レジアスは序盤に出てきて、再登場したかと思ったら死んだ。
297 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/20(月) 22:26:42 ID:aZYnPN1s
>>295 そういえばそうだった
あんまり印象に残らない死に方だったから忘れてたよ
298 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/21(火) 01:10:47 ID:I9KM7tII
つっても死んだのなんて、ゲンヤ、レジアス、ゼストぐらいだが……
299 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/21(火) 01:18:06 ID:g.9X77ro
吹っ飛ばされたギンガはどっかに打ち上がってそうだよな。
消し飛ぶ矢車と書かれて死ななかった兄弟もライダーにいたしな。
あとオットー忘れんな。
300 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/21(火) 08:28:13 ID:FpcMvPwM
設定雑談スレの住人は本当になのはが嫌いなんだなぁ。
正直、そんなにリリなのが駄目な話なら、
普通にクロス先単品の二次を読んだ方が良いと思うんだが。
彼等が望んでいる様な強力なヘイト話なんて早々こないと思うんだ。
301 名前:名無しさん 投稿日: 2008/10/21(火) 08:53:39 ID:7TkZYXFg
× なのはが嫌い
○ なのは(三期)に不満がある
516 :
勇者精霊伝ブレイカー最高:2008/10/21(火) 09:48:56 ID:blUNy9IW
282 :名無しさん:2008/10/20(月) 12:48:56 ID:nW5//bIM
R-TYPEクロスのフェイトの方が改変振りは酷いことになってると思うけどなぁ
なのはやはやても管理局に思想的に染まりきってるし
ガングレイヴクロスもナンバーズの性格はかなり別物になってるしさ
283 :名無しさん:2008/10/20(月) 13:24:06 ID:vwUFal4U
結局キャラ変えんなって言いたいわけね
本編だけ観てろよ
284 :名無しさん:2008/10/20(月) 13:58:53 ID:7kq/iw0A
とゆうか、原作キャラがクロス作品のキャラの影響を受けなかったらクロスじゃなくないか?
個人的には、出会うことで良い方向、悪い方向関係なく影響されていったりするのが楽しくて俺は見ているんだけど。
285 :名無しさん:2008/10/20(月) 14:08:36 ID:PdF.WcuY
何も変わらないというのならやる意義なくね?
本編でいいじゃん
286 :名無しさん:2008/10/20(月) 14:09:07 ID:kiFOeAiE
>>272 新撰組血風録にも同じ話があったな。
彼の場合は、末路は悲惨だったが。
>>282 俺は改悪は嫌であるが、改変は大丈夫な方だ。
蛇足だがR-TYPEクロスの方は皆、虎眼流の門弟の様になっているな。
深い意味はない。
287 :名無しさん:2008/10/20(月) 14:19:22 ID:BbJ.FN62
結局の所程度問題だ。
リリなのは少年兵問題ってのがあるが、
これをネチネチと断罪するようなクロスをしたら
アンチと呼ばれるのは確定的に明らか。
影響を受けるのは良いが、クロス先のキャラは全く影響受けなかったり、
影響受けるキャラのこれまでの課程を全部無視して
全くの別人になられても困る。
517 :
勇者精霊伝ブレイカー最高:2008/10/21(火) 10:02:03 ID:blUNy9IW
勇者精霊伝ブレイカー最高だよな。
少しは見習えよ
R-TYPEは序盤でユーノ、シグナム、ザフィーラといった面々が戦闘不能って展開に驚いた
本当にそのうちバイド化、死亡者が出てきてもおかしくないな
でもうまくなのは世界でRの雰囲気が出てるから俺は好きだぜ
シューターとしてもSTGとのクロスは嬉しい
519 :
一尉:2008/10/21(火) 14:55:38 ID:mOUDrdZl
したかしに戦死者いない思う。
またでたか。自分だけで文句つける度胸もないヘタレが
勇者精霊伝ブレイカーググッてみたら作者がオチスレ立てられた経験あるとかwwwww
残り16KBか。
普通に埋めるにはちと厳しいか?
>>522 普通はアスキーアートでうめますね。
ただ何か雑談をして生めるのもいいかもしれません。
雑談ネタ。何かありますか?
勇者精霊伝ブレイカーてなに?
触れるな触れるな
皮肉で聞く場合もあるんだぞと小1(ry
まあ、伝ブレイカーとやらの話題は完全にスレ違いだしな、とマジレス。
529 :
一尉:2008/10/22(水) 11:46:12 ID:7iq+UGuZ
ああ知っているよポームペーシがあります。らきすたとトランスフォーマーと
クロス作品連載しているよ。
なんとも懐かしい話だが、もう終わりにしよう
‥ __. -‐----、_ , '⌒ヽ
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/ , zi≠ i .i .ハ ヽ ヽ:ヽ
j ./z≠ .| .i..:j:.:メ ├廾弋ヽヽ ヽ| :.
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ヽ:: ノ
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ト/ |' { `ヽ. ,ヘ
N│ ヽ. ` ヽ /ヽ / ∨
N.ヽ.ヽ、 , } l\/ `′
. ヽヽ.\ ,.ィイハ | _| 俺は今とんでもない事に
ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ、 | \ 気付いた! ソフトバンク、
.  ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ > 並べ替えると ,馬糞と糞!
. l  ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__ ソフトバンクモバイルを並べ替えると,
゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ トr‐' / 踏ん張ると糞も倍!!
l `___,.、 u ./│ /_これは偶然の一致か!?
. ヽ. }z‐r--| / ト, | ,、 何者かの陰謀では ないのか!?
>、`ー-- ' ./ / |ヽ l/ ヽ ,ヘ
_,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´ ./ \、 \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ / :| ,ゝ=< / | `'''‐- 、.._
オマエノナー
‥ __. -‐----、_ , '⌒ヽ
/´ `ー、 :.
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j ./z≠ .| .i..:j:.:メ ├廾弋ヽヽ ヽ| :.
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