【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚79人目】

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1名無しさん@お腹いっぱい。
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     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ジョジョの奇妙な冒険」のクロスSSスレよ。
    〃 ` ヽ     他にも避難所にしか掲載されてないSSとかもあるから一度見てみなさい 
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは900か950を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′

【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚78人目】
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1202329825/

●まとめサイト                               ,〜'´  ̄ヽ
http://www22.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1.html         ミハ^^ヽヽ(  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
●避難所.                           ____. -' ヽル::::д)ζ <批判は避難所だ!君の意見を聞こうッ!
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9292/     =='、 ̄ニ|::... . . . . ...::::: :: ::〉:::.:ヽ     |_________________
●ジョジョの奇妙なAA集               ' ´   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`!:::::::::::.. :i
ttp://jojoaa.web.fc2.com/                         `y::::::. ::ト、
●ジョジョスレUPローダ                            〉::::::::. .::`ヽ
ttp://vblave.hp.infoseek.co.jp/                        ハ:::::::: ..:λ:i
●アニメAA保管庫 ゼロの使い魔ページ                /:::::::::: .:/::::i´
ttp://aa.tamanegi.org/anime/zero-tsukaima/
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*スレ運営について意見のある方は運営議論スレへどうぞ    . *
*http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1184936505/ *
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2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:15:53 ID:9DdlqVp1
第一部+第二部
ジョナサン 卿 ブラフォード シュトロハイム シーザー スケコマシーザー
究極生命体カーズ様 ワムウ様 スト様 石仮面+ブルりん+吸血馬

第三部
承太郎 法皇花京院 一巡花京院+平賀才人 メロン花京院
ジョセフ アブドゥル ポルナレフ イギー 
DIO様 ンドゥール ペットショップ ヴァニラ・アイス ホル・ホース
ダービー兄 ミドラー デーボ エンヤ婆 アヌビス神 ボインゴ 

第四部
東方仗助 仗助+トニオさん 広瀬康一 アンリエッタの康一 虹村億泰 ミキタカ+etc 間田
シンデレラ カトレアのトニオさん 岸辺露伴 静(アクトン・ベイビー)+露伴
デッドマン吉良 猫草 キラー・クイーン 猫→猫草

第五部
ブチャラティ ポルナレフ+ココ・ジャンボ(亀ナレフ) アバ茶 ナラ・アバ・ブチャ組
ルイズトリッシュ マルコトリッシュ ナンテコッタ・フーゴ アバ+才人 ジョルノ  ミスタ
ディアボロとドッピオ プロシュートの兄貴 リゾット ローリングストーン 偉大兄貴
ギアッチョ メローネ 俺TUEEEディアボロ ペッシ ホルマジオ スクアーロ
暗殺チーム全員 紫煙+緑日 ブラック・サバス セッコ 亀ナレフ+ジョルノ イルーゾォ
サーレー

第六部
引力徐倫 星を見た徐倫 F・F アナスイ ウェザー エルメェス エンポリオ ヘビー・ウェザー
プッチ神父 帽子 ホワイトスネイク 白蛇ホワイトスネイク

SBR
ジャイロ+才人 ジョニィ マイク・O
リンゴォ マウンテン・ティム Dio

バオー+その他
橋沢育郎 バオー犬 味見コンビ(露伴+ブチャ) 決闘ギーシュ タバサの奇妙なダンジョン ジョナサン+才人 銃は杖よりも強し(ホル・ホース)
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:16:11 ID:9DdlqVp1
・行数は最大で60行。 一行につき全角で128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数を管理してくれるので目安がつけやすいかも。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しにザ・ハンドされます。 空白だけでも入れて下さい。
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:20:48 ID:MGo/IYJ9
          |: : : : :.| : : : | : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : |
           |: : : : : l.: : : :|: ! : : |: : : : : : : :|: : :|: : :/: : : : : : : :|
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          |.:.: : : :.:∨\|Vヘ: :|:∧: : : :/j/|: :/|: /∨.: : : : :|
.           |: : : \:.:Y〒孑汀 ハ: :./ 汀戈〒ヾ/: : : /: :,′
            lハ.: : : :\:ト 辷ヒzi ヽ∨r'  ヒz辷! 彳 : : /: :/
              丶: : : : :ヽ、___ ノ ⌒ヽ、___ /: : : /: :/
           _  \ : : : ゝ ̄ ̄  '    ̄ ̄/: : : /j∨
          /:::`ーくヘ: : : :> _   -    _ <: : : /:::::::ヽヘ、
     _ノ三三ニ≡=- \ :.{ \> _, </ /_j/-=≡ニ三三\_
     F¬≠=≡三三ニ≡= ミ`ヽ、 \_.  _/ /  -‐= ニ三三三ニ≠¬|
     |l        ̄¨¨ ¬ー-、ヾ\V⌒V/_,, -―¬ ¨¨ ̄      l|
     |l 1に乙 する      {{ ̄ ̄ ̄ ̄}}                  l|
.    /|l 1000の方法       } |      | {  眠迷書房館       l|
.    l |l                   | | >>1乙 | |                  l|ヽ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:33:53 ID:4dKa845d
\\   First kiss か ら 始 ま る ふ た り の 恋 の              //
  \\   H I S T R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y !    //
   \\       こ の 運 命 に 魔 法 か け た             //
     \\ 君 が 突 然 あ ら わ れ た ァ ァ ―――z___  ッ! //
             ,ィ =个=、      _        _         _       ,。='゚=。、
    〃  ̄ ヘ   〈_/´ ̄ `ヽ    〃 ` ヽ.    〃  ^ヽ   〃 `´`ヽ.    〃了⌒ヽ
   くリ 7"バlキ〉>∩ { {_jイ」/j」!〉∩  l lf小从} l∩.   J{  ハ从{_,∩ {lヽ从从ノl∩.  ノ {_八ノノリ、∩
    トlミ| ゚ー゚ノlミ| 彡. ヽl| ゚ ヮ゚ノj| 彡 ノハ{*゚ヮ゚ノハ彡  ノルノー゚ノjし彡 ヾヘ(゚)-゚イリ彡 (( リ ゚ヮ゚ノノ))彡 >>1乙!>>1乙ゥ!
.    /ミ/ノ水i⊂彡  ⊂j{不}l⊂彡 ((/} )犬⊂彡.   /く{ {丈}⊂彡   /_ノ水⊂彡   /ノOV⊂彡
     / く/_jl ハ.   く7 {_}ハ>    ./"く/_jl〉`'l   l く/_jlム! |    }J/__jl〉」.   (7}ヽ/∧
   .ん'、じ'フ .ノ   ,,,,‘ーrtァー’  ,,,,,,んーし'ノ-,ノ   レ-ヘじフ〜l   ノんi_j_jハ_〉    /__ ノ_j

  ,,-''´  ̄ヽ   ミ 乂 彡    |!i!ii| ∩.   ,、 、   (⌒⌒⌒⌒)   ,−−、    ___
  ミハ^^ヽヽ(∩ =0o◎o0∩  (;゚Д゚)彡  ,ヘハ@ヘ∩. ( △ △∩ _|_Jo_ミ∩ (ミミミ三 ミ∩
  ル ゚∀゚)ζ彡 さ `Д´)彡 .  (  ⊂彡.   ゞ ゚∀゚)彡  (/ ・∀・彡   ( ´∀`)彡   (`∀´ )彡
  (  ⊂彡゛    (  ⊂彡    |   |    ( ノ::⊂彡  (  ⊂彡.    (  ⊂彡.   (  ⊂彡.
   |   |      |   | .   し ⌒J.   │  │ .  |   |      |   |     |   |
   し ⌒J.     し ⌒J             し ⌒J.    し ⌒J.     し ⌒J.    し ⌒J
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:39:46 ID:ikxcS4NR
1乙ッ!
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 22:57:01 ID:BU8fx2rc
            , -―  ――-、
             /に    (ニ==\
         //')      に二) (ヽ   新スレを立てやがったなッ!
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  よく立ててくれたよなぁぁぁぁぁぁ
         i!   ● / /●  ヾヽヽ,!     >>1乙!!
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
        /⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
      \ /:::::  >,、 __, イァ/   /
.          \     |三/ []「/__ /
         `ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/


            , -―  ――-、
             /に   u (ニ==\   …乙?…でいいんだよな…
         //')  u    に二) (ヽ  うぐぐ………
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  乙…のはず……
         i!   ● / /● uヾヽヽ,!  間違ってないよな……
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
           ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~`=ーノ
           /⌒l,、 __, イー-<
.          /lilili/ |三/^ oOo,ヽ
          |三 lキヾr-、[] 「! (ニ }
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 23:31:49 ID:in2g3smC
            _. -=ニ::_Z ̄ニ=-  .._
        / (:_: ;r'": :/:: ̄:7''ヽ:,r': ̄`ヽ、
        /: : : : : :ヽ、:_(_: : : (:: : : :\,r=‐':"⌒ヽ._
      / : : : : : ; ': : : : : : ̄::ヽ、__/: : : : : l: : :/ミノ
     ' : : : : : / : : : : : : :__:ヽ_: /:: :l: :l: : : : l : ゙‐'ヽ
     l: : : : : :;' : : : : : : (((//゙ハ、 : l: :l : : : l: : : l : ',
.    l: : : : : :l: : : : : : : : : : : :`Vノ : l: :l: : : ,' : : ;': l:ll
    l: : : : : :l: : : : : : : : : : : l: :/:l :l: :l: :l:: :/ /::/: :;リ|   >>7
    l: : : : : :l : : : : : : : : : : l: :l::ノ: }: :} l / /::/レj:/::|   ……>>1凸か?
.     l: : : : : l: : : : : : : : : : :l: :|/_;イ_;イ_;リ、// .ノ/:|
     '; : : : : l: : : : : : : : : ::l: :|ニニ ‐--ミ`' } ,ィチj゙ :|    俺は小学校までしか行ってないが
    /´ヽ: : : :l; : : : : : : : : :l: :|z't'ツ"_>`` '" {^~ |: :|    それなりに語学力はあるつもりだ
  / ¶′\: :ll : : : : : : : : l: :| `~¨´ (::"′   ',ノl: :j   
,r‐{   , \ll : : : : : : : :l: :| :.           ∨ノ:|
  ! ¶′',  r、\: : : : :::::l: :| :.      .._ /´): :l
 ¶′   \ ヾ>、\: : : ll: :|  :.       __-了:/::;'
エエエュ┬r 、\ `ヾ>、\:ll: :|   :   ‐.._'´¨´ノ:/::/
―‐ - 、 ̄`<〉、 ヽ、._`^‐-\ト 、 :      ̄「V/
 ¶′   \ `<〉、 \` ー==┬''^ヽ、 ...__ ノ
   ¶′  \ `〈>、 ヽ`:r'"||  ,タ ¶ }
¶′    ¶′ヽ  `〈>、ヽ i || ,タ  /
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/07(金) 23:38:39 ID:BU8fx2rc
            , -―  ――-、
             /に    (ニ==\  
         //')      に二) (ヽ 
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  ………………。
         i!   ◯ / /◯  ヾヽヽ,!
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi
           ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~`=ーノ
           /⌒l,、 __, イー-<
.          /lilili/ |三/^ oOo,ヽ
          |三 lキヾr-、[] 「! (ニ }


            , -―  ――┛┗
             /に    (ニニ┓┏ 
         //')  u   に二) (ヽ  オメーが間違ってどうすんだよオオオォォォッ!! 
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  本当に小学校でたのか
         i!  ●`' ./ /´●uヾヽヽ,!  テメーはよオオオォォォッ!
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi 
        /⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
      \ /:::::  >,、 __, イァ/   /
.          \     |三/ []「/__ /   
         `ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/ 
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 00:11:58 ID:gguSBbXa
>>7-9
これは新感覚wwww
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 00:22:33 ID:jrQkCGzU
なるほど小学校は小学校でも尋常小学校だったのか…

>>1
スレ立て乙!
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 00:45:57 ID:t3NEPspT
ゴーレムに『弱点』がないなら
司令塔を倒せばいいじゃあないか

対噴上戦で仗助も実行してるし
大半のスタンド使いならこうするとおもうんだが
1312:2008/03/08(土) 00:47:01 ID:t3NEPspT
前スレと誤爆したァーー!

兎も角>>1スレ立て乙!
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 01:37:06 ID:GFLHv+eX
>>1
でも確かにブチャラティ小卒にしては相当頭良かったよな。
別に機転とか発想とかそういう事でなく、純粋に物事を知っている感じで。
ギャングしてる間に相当苦労したんだろうなあ。
じゃなきゃ今頃ミスタは檻の中だよ。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 01:40:34 ID:OSEMqUnb
ジョジョキャラは基本的に
学歴関係なく知識人だが一番の長所は行動力だね
こればっかりは学校じゃほとんど育たない
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 01:46:45 ID:DJajKO77
このレスを見たあなたは確実に交通事故に会います

逃れる方法はただ一つ
↓このスレに行き
http://ex21.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1204608839/


ゆかりんがいちばんすごくてかわいい


と書き込んでください。書き込まなければ確実に明日交通事故にあいますよ
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 02:00:18 ID:leCDhf83
>>15
心の中で思ったなら行動は終わっているから尋常じゃないよな
兄貴もなんか無駄に知識レベル高そうだよなぁ、見た目的に
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 09:51:16 ID:nKCdOP4L
>>10
確かにwww
……>>5もなんか違わねーか?
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 23:37:40 ID:HmRh1u8y
キングクリムゾン
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/08(土) 23:39:25 ID:hpqpFdfw
>>12
そりゃ露伴が逆探知に成功してたからだろ。
スタンドじゃないゴーレムにその種の手は使えないし、
おまけにスレイプニルで影武者作れるぞ。
2112:2008/03/09(日) 00:03:45 ID:ihnBkL/g
>>20
それでも…ジョルノならきっと…
22名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 00:19:49 ID:6eTMa1UZ
13巻でヨルムンを複数同時に運用することを示唆してるあたり、
ヨルムンを動かす事においてミョズが肩に乗ってる事(ヨルムンを超近距離から操作する事)は必須事項じゃあないんだよな
つまり狙いをヨルムンから本体へと都合よくシフトすることは出来ないわけだ
23名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 01:11:14 ID:TxwMsRY3
>>21
ゴーレムの破片が手に入ればな。それだけでも結構きつい。
見つけたところで護衛ゴーレムぐらいあるだろうし。

にしても神の頭脳は反則的だな。
スタンドでいえば遠距離パワー群体型とかって感じだろ。
24名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 02:20:30 ID:m1LNfZ8W
つまり広域範囲で無差別に殺っちゃうしかないわけか…
チョコ先生、兄貴、神父だろうけど、確実なのはヴァニラさんで削っていくのが一番か
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 05:03:48 ID:qEAYaJa6
スタンドじゃなくて物体だから、遠距離パワー型よりはマシだと思われ。
セッコとか潜り放題でかなり有利かと。無機物だから能力も効き易いし。
デカイ分、早めに視認が効くから不意打ちされることは考えにくい。
ガンダムみたいにビームライフルとか持ってる訳じゃないし、バーニアの熱で死亡なんて事もないから、
近距離パワー型でも(あくまでガンダムとかとやらされるよりは)本体の安全を確保しやすい。
破壊自体は出来なく無いと思われる。反射魔法も全体に行き渡らせる為、薄くなってるから攻撃は通るし。
ナイフも才人に弾かれるレベルなので近距離型にはなんとかなるレベル。本体の安全確保さえ出来れば、割と勝てる相手かと。
ガンダールヴも今のところ、近距離型ほどのパワー描写ないしな。
まじめに考えるなら本体をどう守るかが勝負の鍵かな?
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 09:32:34 ID:5u7rcI89
>>23
ミョズの強さはパトロンに豊富なマジックアイテムを持つガリア王がいてこそだろうなぁ。
あれ? それともミョズって作成技能もついてたっけ?

あと前スレ>>973、カード使い乙
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 10:40:16 ID:6eTMa1UZ
>>25
反射魔法って「広範囲に使うと効果が薄くなる」なんて特性あったっけ?
それにヨルムンにかかってる反射魔法は、ヨルムン装甲の上に反射魔法の装甲を重ねている、
みたいなもんだろうから(そうでなきゃヨルムンがサーレーさんみたいに傷だらけになる)、
セッコがヨルムンの装甲に触る前に反射魔法の効果を受けて、結果触れない、ということになりそうな気がする

やっぱ「この世から全く姿を消す」ことで反射魔法を司る精霊にも気付かれずに、
尚且つガード不能のガオン!で攻撃できるヴァニラさんが最有力なのかな
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 11:59:02 ID:3bmzOPbx
吉良のシアーハートアタックもかなりいけるぞ。
ゴーレムに体温はないから司令塔のミョズだけを狙い続ける。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 12:33:15 ID:6eTMa1UZ
>>28
でもシアーハートアタックだと逆に厳しそうだぜ?
ヨルムンみたいな体温ゼロの相手に掴まれると爆発も使えないから、最悪の場合二度と動けなくなりそうだ
ヨルムンを避けようにも遠隔自動操縦だから吉良が意図した動きをさせることもできんし

でも、ジョジョ史上最強レベルの攻撃力を持つクリームでしかヨルムンに勝てんというのもロマンが無いしな
反射魔法さえどうにか出来れば、倒し方はいくらでもあるんだがなあ……
30名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 12:41:29 ID:TKly4ULJ
つーかしぇっ子もといセッコの場合は大地を液状化させて沈めてから能力解除すれば楽勝なんじゃね?
ブチャだとジッパーで穴開けて落としてから閉じればいい
31名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 12:54:07 ID:kk/PC1lW
つまり落とし穴TUEEEEEEEE
32名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 12:57:19 ID:MJBEGPM0
ああ!とってもステキだよ僕のヴェルダンデ!ということか。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 13:01:16 ID:m1LNfZ8W
シアーハート使わなくても第一の爆弾だけでヨルムン完全消滅するんじゃね?
あー、でも百円は無事だったな…でも彩先生は消滅したし、どっちだ

直接破壊するとなると、ヴァニラさんかキラー・クイーンしかないだろうけど
戦闘不能に追い込むなら結構あるな。
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 13:04:12 ID:OpsZXWOQ
第一の爆弾は内側からか外側からか選べたはずだぜ
でヨルムンってダイヤモンド以上に堅いのか?
それ以下だったらスタープラチナやザ・ワールドでも破壊できると思うんだが
35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 13:22:10 ID:MzitbC0o
硬かろうが柔らかかろうが「踏み台補正」がかかってるのは確実だから
最終的にヨルムンが破壊されるのは確実だな
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 13:23:05 ID:TKly4ULJ
>>28
本体狙いなら探知能力があるハーミットかハーヴェストが適役だろう
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 13:53:25 ID:UmYTLjov
エルフのカウンターって精霊との契約なんだから、戦場を移動したら再度契約しなおさなきゃならないんじゃないか?
って事は、先にその場の精霊と契約すればヨルムンのカウンターを無効に出来るとか。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 14:24:46 ID:DoG5qMtc
6部のアニメを消す能力を持ったキャラが最強
39名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 14:56:51 ID:mmotrVNm
>>38
つまり、小説版ではなく、漫画版の世界に召還されるんですね
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 15:42:21 ID:5u7rcI89
>>37
ヨルムン自体の精霊と契約してるんだと思ってた。でないとビダさんの負担が半端ねえことに……!
41名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 15:58:53 ID:6eTMa1UZ
>>30
全長50メートルのヨルムンをすっぽり落とせるだけの落とし穴作れる程オアシスもスティッキーフィンガーズも能力射程長くないでしょ
それに、中途半端に落としてもヨルムンの器用さなら抜け出されそうな予感

>>33
だからヨルムン装甲にさわる前に反射魔法の効果を受けるから、キラークイーンはヨルムンの装甲にさわれないんだよ
だから第一の爆弾でヨルムンを直接的にまるごと吹っ飛ばすのは無理かと
42名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 16:06:26 ID:x7PYvgMg
やっぱりガオンかな?防御力無視だし
なんか倒そうと思えば他のスタンドでも倒せるんだろうけど
反射魔法ってやっかいっすね。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 16:08:05 ID:x7PYvgMg
ageちまった。スマン
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 16:29:25 ID:MzCFjKcR
逆に考えるんだ、反射させてもいい、そう考えるんだ

ゴールドエクスペリエンスの反射の能力ッ!どちらが先に砕けるか!
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 16:44:00 ID:x7PYvgMg
攻撃しなきゃ反射しない





そうか!お互いに攻撃しなきゃいいんだよ!
主人公「お先にどうぞ」
ビターシャル「いえ、あなたがどうぞ」
主&ビタ「どうぞどうぞ」
譲り合いの精神は大事ですね。

バキの独歩VS渋川を思い出した。
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 16:50:03 ID:VTAq+BMd
>>45
護身の心得と申したかwww
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:11:34 ID:x1U1+t2y
>>41
オアシスは結構範囲広かったしいけるんじゃね?
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:26:01 ID:x7PYvgMg
オアシスゴーレム自体溶かせるなら足から体に入って
体内すいすい泳げるのになー
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:32:53 ID:H743PnLy
>>34
ダイヤモンドは傷付きにくさが抜き出てるだけだぜ?
実際はそこまで壊れにくくは無い
50名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:37:46 ID:x1U1+t2y
>>48
生物じゃないし溶かせるんじゃね?つかオアシスってパンチが当たってない部分も溶かしてる描写があるんだよな…
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:43:34 ID:dSO303jc
ゴーレムとかヨルムンガントを壊すのは
プラネットウェイプスで隕石を落としまくって壊すのも結構楽かも



ライフルの銃弾の速度が時速約3000kmに対して
隕石の平均速度はだいたい時速7〜80000kmらしいし………
防御不可能だろ…
物理的に考えて……
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:50:55 ID:x1U1+t2y
>>51
隕石落としは反射されるんじゃないの?
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:56:37 ID:73ycgeJ6
反射されても空に跳ね返されるだけだがな
ぶっちゃけヨルムンの反射がどの程度かわからんのでどうとも言えんが
54名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 17:56:42 ID:wdBoCTjU
スタンドにはあまり外壁は関係ないと思うので遠隔操作のスタンドなら有利?
自分はブラックサバスかチープトリックがお勧め。夜ならパープルヘイズも。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 18:19:35 ID:MzCFjKcR
どこまで反射するかだよな
力、及び魔法までなのか
熱、空気とかまでなのか
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 18:25:02 ID:sGeG1XLN
カウンターを応用した装甲ってどんな感じなの?
普通の装甲の上に反射の層みたいなのがあるのか
見えないカウンターの壁みたいなのがあるのか
はたまた触れられた瞬間カウンターが発動して跳ね返すのか
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 18:46:12 ID:i/OGHiWH
>>53
反射先にその攻撃を行なう大本狙う可能性もあるしな
そうじゃないと魔法とか少し外れた方向に誘導してからぶつけるだけで自分は喰らわなくなる
58名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 19:45:00 ID:REOILZw+
>>54
ヨルムンを守ってる精霊を引きずり出して一刺し。
「この『精霊』。 『選ばれるべき者』では……なかった!」ポイッ

ってな感じかw
59名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 19:53:13 ID:i/OGHiWH
ちょwwwwww
うっかり選ばれたらどうすんだよw
60名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 20:06:54 ID:6eTMa1UZ
>>51
つまりこういう事か

「オレの『プラネット・ウェイブス』が呼び寄せる隕石は時速7〜8000km……銃弾の速度の20倍以上だ。
 精霊さんがちゃんと止めてくれるよーに……お祈りでもしとくんだなァ〜〜」
61名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 20:09:34 ID:MzCFjKcR
速度^2×質量だから恐ろしい威力だな
62名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 21:39:03 ID:REOILZw+
カウンターって要は線路に敷かれてるバラストと同じで、
電車が走った時の衝撃がレールへ、
レールの衝撃が枕木へ、
枕木の衝撃がバラストへ、そして地面などに分散。
みたいな感じで、一人に集中する攻撃が周りの精霊=環境に分散して守るような形と考えていいんだよな?

で、周囲の環境=精霊はある程度知能を持っているわけだから、
ヘブンズドアーをカウンターに仕掛けたら精霊たちが本になってしまうんじゃあないかな?
63名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 22:59:38 ID:V1Xh/Wr2
ヘブンズドアーの文字飛ばしとかは効かない気がするが、空中絵や原稿は効きそう
64名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 23:14:07 ID:EOSMzT35
多分、反射は本人(精霊とか)が攻撃だと認識したものにしか効かないのでは?
攻撃されていると気づかなければいけるかも。
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 23:27:34 ID:REOILZw+
ならドラゴンズドリームで倒せそうだ。
あれ自体は攻撃の意思は無いし、攻撃が決定されるだけで攻撃そのものは別の所から来る。

しかも巨大だから凶の方角に入りやすいwww
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/09(日) 23:59:17 ID:TSHLGicQ
                      ______                  /^l  r i /ニヽ
         /^l  r i /ニヽ     /∧∧∧∧∧∧.\               / /   ! i .| |.| |
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       ~.= フ /        |,∧∧|  | ー-'   ,' .|             ~.= フ /
       ,' /ー"           ´|/∨|\   ̄ ̄ ̄ ,' .|               ,' /ー"
       レ              __r' └‐┘ \   " , 'ヘ┘、           レ
               ,, - ''" _|   |    \_/   ! ` 、  <俺がヨルムンを「倒した」…っ!
   (二ニ      , -'' _ -‐  .|    i       |   |`   \
    __,,、 -‐ ニ ./`<.      |    '、__/「||_ _.|_     ヽ   (二ニ
 (二~ -― ''" /    \    |  ,-r"r= ( (●)三 _ ニ  =  `',    __,,、 -‐ ニ (No.4)ニ -‐
        /       '、   |_/ `|-{ {  r-r'  ̄ \|    |    (二~ -― ''"
  ○    i        ',     f"ー-= | l   __   | /   ',
       .|         i     !-‐~ ̄l ノノメ.| ̄    ̄|. レ     ',
 O       |           |    /´ ―= '‐'―く.|       |. |   ○ /
        |         |   /   ―---‐r" |       ! |    /
0       .|  _,, -――- ,,_|  /    ―---r'  ヽ    .ノ !   O.|
       <_|       | /     ,,-ー''    \_ /  ,'-‐'  |
         |     ,, -'"     /            /   0  .|
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:11:24 ID:eM8V7ZCb
    (⌒)   (⌒)
  .(⌒)}: {;⌒)⌒).{
.<ワ };.| },..}'l;,. |,、/;:{ク
 ヾVヾYヾYヾlリレルルっ
. C'|/.リ’'';;;;;:::::;;;;;''t|ソ
. c|イノ  ___, 、__`ll
  lrll  (◎) (◎)l!   ヨルムンガンドを守る「精霊」が生きているのであればだ
  l l  ';::  | ::; |
  `ーi  "  ' '"/   グリーンディの黴は全ての生きる存在を黴らせることが出来る!
    | `ー  ̄ , '
  ,,__[ ̄ ̄~V ̄|
/' ヽ   ハ   ゙ー、
 T 」 |    リル    |
ト ⊥ |〃X]XIIヾ |
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:13:11 ID:1pNLN5nQ
ジャンピング・ジャック・フラッシュでもよさそう
無重力に引き込めばヨルムは無力化できるし
近くに本体がいるなら血液沸騰であぼーん
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:16:20 ID:u4SEmdMl
                   _____,---、_____,l ̄ヽ
                 __/     ヽ__ヽ  \
                ( \_____,-   ______----|))
              ___(ヽ\\    _/ __     /
             /く ̄\\_|--___|-/ |--__/
            (○\( \/   /   ) //
            ()\\二| ヽ   |   / |[/
            ()\二二/ /   / ̄\__ ヽ
            ヽ二/ー'', -――- 、  \ヽ
                /        ヽ  |ヽ|--,
                i ・      ・ l\||____|_
                ||    _,●_    | \  ヽ   ヨルムンガントもしまっちゃうからね
                |l   モ_,ヘ_手  ,ノ _---|-,  |   
             ,--ヽ__ヽ、_     //ヽ__|___ヽ|],,|
           /____-- (__/`  ̄  /\/| |//
         ー ̄ ̄     ヽ  \/\/ヽ/ ̄_|
         | 四       \___/\/ヽ/___  ヽ
         ヽ|ヽ___-l_____(⊂⊃| |\/ヽ/   |  |
           \__/ー--- ̄ー\|___||    |  /_
                         \_____/___/__)
                          (________--/)_
                         /       「
                        /  /二二ヽ  |
                        |   ヽ___ ヽヽ/
                         |     \/
                        /ー____  /
                       (----___-/
                     _,lー---____/
                   ⊂___,,/⊂二⊃|
                     /○ ○ o。/
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:19:55 ID:vMb9WHlo
思わず吹いたwwwww
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:22:23 ID:WUrN8JIh
スタンド能力つかわなくてもさ、ヨルムは兵器なんだから
ガンダールヴが触れば使いこなせるんじゃね?
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:31:48 ID:kF3RAu6A
>>71
ヨルムンは魔法道具だからミョズにしか扱えないよ
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:43:18 ID:lnANhdZA
つまりヨルムの剣を奪えばいいわけだな
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 00:54:57 ID:5mstmezp
上の方で広範囲にかけると弱まるってのはあったぞ?
デルフが鎧に当てること自体は出来ると発言してる。247頁な?
それでも攻撃力が足りなくて切れないって才人が返してるが。
読み直そうぜ?
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 01:25:13 ID:eM8V7ZCb
ほむ
つまり対魔法用に広範囲にカウンターを付与したら余剰効果として
大砲くらい謎金属装甲で跳ね返せるようになったわけね
スタンドでもなんとかなりそうだな
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 01:32:47 ID:EXqutSkt
>>65
むしろ龍夢はカウンターとかに近い質の物かも知れんな
要するにフィールドに対する物とそのフィールドから得られる何かだから
下手すると上位互換かもしれない
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 01:40:01 ID:5mstmezp
それだけじゃなく、跳ね返した時も空気が歪んでトランポリンの様に〜と地の文で書かれ、
さらに才人に伝わったダメージは剣をはじき飛ばされて、吹っ飛んだだけでその時点で才人にダメージはない。
階段から落ちてエントランスホールの石畳に叩きつけられて、初めてダメージになってる。
この描写から、恐らく反射というよりは反発計数を上げる様な魔法って認識でいいと思う。
型月的な概念によってみたいなのや、禁書の一方通行的な反射では決してない。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 01:58:20 ID:eM8V7ZCb
作品違うが「覚悟のススメ」の展性チタンみたいな感じなのか
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 02:07:04 ID:5mstmezp
近いかも。
空気でやる『応報』みたいな描写。
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 09:01:59 ID:yac6flmW
反発係数を上げる魔法だと……カウンターでタバサの竜巻を跳ね返したのに無理が出ないか?
気流の流れ(渦)をそのまま跳ね返す反発なんてあるのかね?
81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 09:04:49 ID:A6RKVtCg
劣化スーパーフライみたいなもんだと思ってたけど自然現象も反射するのか
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 09:08:49 ID:kF3RAu6A
>>80
キュルケが飛ばしたファイアボールをそのまま跳ね返したりしてたしな

系統魔法→跳ね返す
物理攻撃→止める

みたいな感じだからどういう原理が働いてるのか全く分からん
83名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 09:58:47 ID:Rnf0gXqC
俺はジグマール隊長のエイリアス防御みたいな感じと捉えた
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 11:06:22 ID:X0nPuiG+
系統魔法は自然の力っつーか精霊の力の及ぶ領域だから跳ね返せるとか愚考してみたり。
そうなると物理攻撃はなんなのかと問われれば、
人の意志によって生み出される攻撃だから受け止めることしか出来ないとかそんな感じだろうか?

>>77
つまり木原神拳は通用しないのか
85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 11:59:58 ID:1pNLN5nQ
受け止めるということは触れるのだから
ジャイロの鉄球でなんとか・・・ならんかなあ
86名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 13:08:41 ID:+JFDg/NF
エコーズのしっぽ文字やサンドマンのならどうだろう
どちらも無差別発動だから効果は出ると思うんだけど
唯効果のある擬音がイメージできない
87名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 13:18:37 ID:yac6flmW
少なくとも声(音)は通ってる、でも超音波とか超振動とかで攻撃しても反射されそう
つまり、エコーズで日常会話レベルの音を延々きかせてノイローゼにすれば良いとっ!
……流石に無理があるか
88名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 13:55:47 ID:lcU+ywen
「ボロボロ」の音でもくっつけりゃ崩れるんじゃね?
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 13:56:08 ID:lcU+ywen
sage忘れごめんorz
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 15:31:23 ID:f0tS/cwG
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 15:49:41 ID:dR7oGOG1
ミシ メキョ
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 17:28:52 ID:x1oys7t/
ドロォ←これでおk
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 19:55:48 ID:1EyqiX+I
>>91-92
擬音祭をやってはるのは此処どすか?
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 20:06:58 ID:89z0jbTZ
メメタァ
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 20:08:02 ID:89z0jbTZ
sage忘れた
「うむむむ〜〜んんんんんん、予想どおりエルフの解毒薬はなじむ。この肉体に実にしっくりなじんで正気が今まで以上に回復できたぞ。
なじむ。実に!なじむぞ。フハハハハハ。フフフフフハフハフハフハフハハハハハハハハハハハハハハハハフハフハフハフハフハフハフハハフッフッフッフハハハハ
この肉体は数年前エルフの毒を飲んだ…。今使ったのはその解毒薬…。ンッン〜〜♪実に!スガスガしい気分だッ!
歌でもひとつ歌いたいイイ気分だ〜〜。フフフフハハハハ。数年前に心を壊されたが……これほどまでにッ!
絶好調のハレバレとした気分はなかったなァ…フッフッフッフッフッ、エルフの解毒薬のおかげだ。
本当によくなじむッ!最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ。」

「お母様が!おおおおお!お母様がアアアーッ!!戦闘態勢にはいったーッ!!」
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:21:05 ID:2KKB0BL5
「パッ」

消滅の擬音って特殊にも程があるか。
何が起こるかさっぱりだわ
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:23:59 ID:3Tyds/EW
タバサの母親がDIO化してるではないかww
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:45:10 ID:kYEA2Vxu
>>97
つ『ティウンティウン』

これが究極の消滅した時の効果音じゃね?
光になって消えるぞ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:50:10 ID:lnANhdZA
こんな母親が居たらジョゼフじゃなくても毒飲ませるわw
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 22:50:17 ID:MI8h5JTG
>>99
ちょwロックマンwww
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 23:03:44 ID:cifZv0Ij
つ「ヤラレチャッタ」
103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 23:56:08 ID:1NZkM6Tb
>>97
消滅の擬音つったら「ガオン」だろ。ジョジョ的に考えて
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/10(月) 23:56:52 ID:u4SEmdMl
このラクガキを見たとき
お前は

避難所で銃は杖より強しを読む

ガォン!
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 00:31:31 ID:TbC48JRx
ここは一つ理解不能な擬音を入れて精霊を混乱させるというのはどうだろうか

「もっちゃん」とか「ズビビビビダバッハー」とか「コペルニクスッ」とか「ずっぺんぞろりんのびゅー」とか「メソ……」とかさw
106名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 00:33:54 ID:GiM6lstR
>>105
メソは擬音じゃないぞw
あれ…あのヨルムンガンド背中にファスナーが付いてるなぁ…
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 00:58:30 ID:90ieQw5w
まてwwそっちの世界に引き込んだら
完全な無力化じゃねぇかwww
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 01:54:02 ID:DeFJRZNu
そんなデンジャラスじーさんみたいな効果音は嫌だwwwww
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 02:06:29 ID:GiM6lstR
>>107
外すと髪がサッパリする妙に重たい濡れたら煙を出す金属を付けた最強のカウンター技使いが第四の使い魔って事だな!
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 03:31:15 ID:W4qgobNH
ごんぶと
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 07:44:23 ID:/m1d+HDf
これが最強の虚無、『虚無イラーズ』だ。
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 10:13:59 ID:j2hMMKc+
新スレになったのに作品の投下がない・・・
あと4日で1周年なのに・・・

は! 一周年記念のために溜めているのか!?
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 10:21:37 ID:yAFEPOSF
駄目だ…ジョジョスレだと分かっていてもッ!
理解不能な擬音と言われると「ゴシカァン」「クシカツ」を挙げずにはいられないッ!!
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 10:27:29 ID:Z3uDY0Lk
ジョジョのゴゴゴ=戦闘シーン等
ネウロのゴゴゴ=料理を二皿しか食ってない時
115名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 10:34:41 ID:DeFJRZNu
>>112
『新月』……じゃない、『後期日程』まであと一日
つまりそういう事なんだ
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 18:41:49 ID:31VaDFxs
あと4日は投下が無いと思っていただこう!
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 19:52:38 ID:bldkDqt/
では小ネタを一つ。


【記すことさえはばかれる理由】



「神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
そして最後にもう一人……。
神の唇ブリミル・ル・ルミル。魔法を伝えし来訪者。あらゆる魔法を紡ぎ出し……え?
…………………我?」

ガンダールブ「!?」
ヴィンダールブ「え!?」
ミョズニトニルン「え!?」
ヴィンダールブ「だれか今まで…最後の一人が居た所を―─いや連れて来られた所を見た者がいるか?」
ガンダールブ「い…いや見なかった。しっかり覚えているが来た時はすでに俺たち三人だった!」
ミョズニトニルン「ガンダールブのいうとおりこれは超スピードだとかトリックだとかでは…決してない」
ブリミル「よ…………四人目は…………われだったァ――――
     従えて来たハズのにィ〜〜
     ……………居ない奴の事は書けない…と!
     これで『記すことさえはばかれる』四人目の誕生じゃな。ジャンジャン!ヒヒ」
ガンダールブ「ミョズニトニルンおめーこーゆーヌケサクなやつってよーっ、ムショーにハラが立ってこねーか!」
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 22:16:58 ID:eZYI+hvT
じゃあ俺も一つ

【こんなブリミルの使い魔には勝てっこない】

神の左手ディオ・ブランドー
勇猛果敢な神の吸血鬼
世界を支配する『世界』の使い手
導きし我に肉の芽を打ち込む…


神の右手が吉良吉影
心優しき神の殺人鬼
あらゆる爆弾を操りて
導きし我を吹っ飛ばす…


神の頭脳はディアボロ
経験のかたまり神の帝王
あらゆる時間を吹っ飛ばし
導きし我すらも利用する…


そして最後にもう一人……
記すことさえはばかれる…
一人だけラスボスじゃない…リンゴォ・ロードアゲイン

時を操る四人の僕を従え……従えられて、我はこの地にやってきた……。

119名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 22:29:41 ID:Ug3q8RL1
肉の目打ち込んじゃらめぇw
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 22:34:08 ID:b6seIRjJ
>>118
しっかり記してんじゃねーかw
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 22:43:33 ID:yAFEPOSF
>心優しき神の殺人鬼
>心優しき

…嘘だッ!!
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 23:04:25 ID:O4zw6Zrg
きっと"恋人"の確保が心置きなく出来るから嬉しくなってだな
123名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 23:06:14 ID:dcW3tax+
ブリミルははバオー、カーズ……

いや、荒木かっ……!?
124名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 23:21:34 ID:GiM6lstR
荒木なら従える方だしなぁw

しかし、バトル編は決着ゥ!したが…その前後が埋まらん…後4日しかないのに…
125名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/11(火) 23:23:56 ID:bldkDqt/
>>121
心は優しいんだよ。
ただ趣味に前向きなだけなんだ…。
126ゼロいぬっ!:2008/03/11(火) 23:57:37 ID:8j747BsQ
それじゃあ12時から投下しますね。
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 00:00:00 ID:1zI20FP/
犬ころキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!



支援する!!
128ゼロいぬっ!:2008/03/12(水) 00:01:54 ID:dg10iLA4
「タルブの村が燃える……それをただ黙って見ているしかないとは」

空と大地が入り混じる地平線が夕焼けの如く朱に染まる。
その下に広がるのは火竜の息吹に焼き払われる村の無残な姿。
そこには、かつての穏やかな風景の名残さえない。
濛々と立ち上る煙に、手綱を握るアストン伯の拳が震える。

「村はまた作り直せばいい。ですが二度と取り戻せない物もあるのですアストン伯」

彼の傍らに立つ騎士が心中を察し告げる。
悔しげにアストン伯は唇を噛み締める。
村を広げたのにどれだけの時間と労力を要したのか、
そこに刻まれた記憶や思い出とて掛け替えの無い物なのだ。
普段ならば無関係の人間だからこそ言える言葉と一笑に付しただろう。
しかし、その騎士の声には真実だけが持つ重みがあった。

「確かに。君達が言うのならばそうなのだろう」

蹄の音を響かせながらアストン伯は振り返った。
彼の背後に広がる森にはタルブから避難させた村人達がいる。
もし騎士達が事前に襲撃を知らせてくれなければ、
この中の何人かは確実に命が失われていただろう。
守るべきは領土だけではない、そこに住まう領民とて姫殿下より預かった物。
領主ならば命を賭して、それを守り抜かなければならない。
その為には一刻も早く姫殿下と合流する必要がある。

己が物であるかの如くアルビオンの竜がタルブの空を舞う。
屈辱的な光景を苛立たしげに見上げながらアストン伯は呟く。

「今に見ていろ。一匹残らず叩き落してくれる」

騎士の口元に思わず笑みが浮かぶ。
まるで昔を懐かしむように彼は思った。
もし隊長がいたならばきっと同じ事を言っただろうと。


先頭に立つメイジに率いられ、騎乗した人の連なりが街道を往く。
その中に混じってギーシュとルイズは共に戦場へと向かっていた。
急遽集められた義勇軍はタルブへの道すがらで新たな兵を加え、次々と数を増やしていた。
だが、それでもアルビオンとの戦力差を埋めるには至らない。
ましてや、こちらは兵士でさえないのだ。
勝てる見込みどころか生きて帰れるのかも危うい。
溜息をつきながらギーシュは諦めにも似た境地に達した。
それでも“彼”が一緒だったなら微かな希望を抱けただろう。
……だけど、ここに彼はいない。
隣には俯いたまま馬を歩かせるルイズだけ。
その歩みは遅く、戦に息巻く者達が彼女に罵声を浴びせる。
それに睨みを効かせながらギーシュは彼女の傍に馬を寄せる。
129ゼロいぬっ!:2008/03/12(水) 00:03:03 ID:dg10iLA4
「彼は連れてこなかったのかい?」
「………………」
「ヴェルダンデは付いてきてくれるって。
やっぱり僕の使い魔だけあって勇敢だと思わないかい?」
「………………」
「出立前にちゃんと手紙は出したよね?
僕が渡したら“君にはこんなに渡す相手がいるのかい?”って驚かれちゃってさ。
“ほとんどガールフレンド宛です”って言ったら呆れ顔で預かってくれたよ」

視線を上げず彼女はただ手綱を握り締めるのみ。
静寂に耐え切れずギーシュは矢継ぎ早に話し続ける。
それでも彼女の表情は窺えないまま、ただ時間だけが過ぎていく。
互いが沈黙を保ちながらしばらくして徐にギーシュは口を開いた。

「モンモランシーには書かなかった……いや、書けなかったんだ」

器から水が溢れ出すように心の内から洩れた真実。
言葉の意味が理解できずルイズは顔を上げた。
見れば手綱を握るギーシュの腕も、鐙に掛けた脚も震えていた。
そしてルイズと視線を合わせる事なく続ける。

「書こうとしたら手が動かなくて……急に熱が冷めてくみたいに気付いたんだ。
今まで戦場に行くなんて頭では理解してても分からなかった。
だけど大切な人と別れるかもしれないと考えて……初めて実感したんだ、『怖い』って。
モンモランシーの顔が浮かぶ度に頭の中がグチャグチャになって、
誰に笑われても非難されてもいいから彼女と一緒に逃げようかとも考えた」

先刻まで饒舌に喋っていた人物はそこにはいない。
紡がれるのではなく吐き出される言葉に彼女は耳を傾けた。

「でも、そんな事をすればモンモランシーはきっと僕を許さない。
そしてトリステインが負ければ彼女が無事でいられる保証なんてない。
窮地に立たされて、ようやく彼女がかけがえのない存在だって気付いたんだ。
だから戦う。何もしないで失うよりは自分で未来を勝ち取りたい」

ガチガチと鳴る歯を噛み締めながらギーシュは前だけを向き続ける。
その先に続く戦場を、更に向こうに続くであろう未来を見つめるように。

「……私は」

ぽつりとルイズは呟いた。
ギーシュの話は彼女に僅かな安堵を与えていた。
自分が抱える苦悩は自分だけの物ではない。
戦場に向かう誰もが持ち得る物だとギーシュが教えてくれた。
閉ざしていた心の扉をゆっくりと彼女は開く。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 00:03:40 ID:1prEjKue
「支援」か…っ
「支援」かァ―――!!!
131ゼロいぬっ!:2008/03/12(水) 00:05:05 ID:dg10iLA4
「アイツに戦って欲しくない。
嫌いなのに苦しいのにそれでもアイツは戦うもの。
私が危ないって知っているから必ず戦場に付いてくる。
きっと止めても言う事なんか聞かない」

彼が最初の誓いを守ると誓ったように、
ルイズも最初の誓いを守ろうとしていた。
今度こそ自分の手で彼を守る。
自分一人でも戦えるのだと見せなきゃいけない。
だから……安心して元の世界に戻っていいのだと。

「ちい姉さまに手紙を書いたの。
もし帰れなくても、ちゃんと面倒を見て貰えるように」

ぽろぽろとルイズの瞳から零れ落ちる大粒の涙。
目蓋を閉じようとも抑えきれずに頬を伝う。
溜め込んでいた感情を吐き出すみたいに彼女は泣き続けた。

「でも、そんな事しても許されるわけない。
私は裏切ったんだ、アイツは私を信用していたのに……」

それは自分を信じてくれた彼と、アンリエッタへの裏切り行為かもしれないのだ。
他人の目に触れぬようギーシュが自身のマントで彼女を覆い隠す。

「きっと分かってくれるよ。二人ともルイズの事が大好きだから」

慰めにもなるかどうかも判らない言葉を掛けながら、
ギーシュは戦場へと向かう行列を眺める。
誰もが家族や友人といった大切な者を残して往く。
それはアルビオンの兵も同じなのだろう。
なら何故、僕達は争わなくてならないのか?
きっと答えが出ても、それでも人は争いを止められない。
僕達に出来るのは抗う事だけしかないのだ。


火竜が焼き払ったタルブの平原にアルビオンの地上部隊が降り立つ。
アルビオン側は軍艦から兵を降ろす為、
トリステイン側は義勇兵や諸侯軍の到着を待つ為に、
互いに緊張状態を維持しつつ両軍は布陣を敷いていく。

「敵の陣容をどう見るかね?」
「はっ! やや本陣の守りが厚いですが典型的な横陣でしょう。
如何にも戦知らずのトリステインらしい配置かと思われます」

頭上から両軍の様子を窺いながら指揮官である老士官の問いに、
年若い副官は明瞭に答えを返した。
しかし、それに彼は首を横に振った。

「あれは鶴翼の陣だ、本陣を餌代わりにしてのな。
迂闊に本陣を狙って突き進めば右翼の魔法衛士隊がやわな脇腹を食い破る。
いやはやトリステインの姫君はお飾りとの噂だが中々大した度胸の持ち主だ」

意地の悪そうな笑みを浮かべる上官に、副官はばつが悪そうに襟を正す。
型に嵌まった性格の持ち主である自分とは合わない人だと彼は直感していた。
132ゼロいぬっ!:2008/03/12(水) 00:06:38 ID:dg10iLA4
「では、どうなさるおつもりですか?」
「簡単だ。自分より弱い敵と戦えばいい。
勝てない相手と戦うほど馬鹿げている事はない」

キッパリと言い放つ老士官を前に唖然と立ち尽くす。
こんな事を口にしていてよく今まで軍法会議にもかけられずにいたものだと、
ある意味、尊敬の念さえ感じてしまう。

「右翼に戦力を集中させた分、左翼は手薄だ。
恐らくは各地の義勇軍も加わるだろうが問題はない。
艦砲射撃の混乱で統制が失われれてしまえば数など関係なくなる。
左翼を突破した部隊は背後から迂回して本陣を叩く。
正面との部隊と合わせて挟撃すれば堅牢な本陣とて容易に崩壊する」

そう言いながら老士官は眼下に映る光景を次々と指差す。
先程までとは打って変わった態度に副官は目を白黒させる。
しかし老士官はとても自慢げな気分には浸れなかった。
偉そうに講釈ぶっていても最初から勝負は付いている。
頭上を抑えた状態で数においても相手を圧倒しているのだ。
仮に敵の思惑通りに包囲が成功しても砲撃を止める事は出来ない。

チェスでいうならば既にチェックメイトの見えた盤面。
後はどれだけ早く犠牲を出さずに終わらせるかだけだ。
それも味方だけではなく敵の犠牲を含めて。

靴音を立てながら老士官は甲板の縁まで足を運ぶ。
義勇軍といっても恐らくは徴兵される年にも及ばぬ子供や学生達、
とても戦力とは数えられぬ者達ばかりだろう。
艦の真下には未だ燻るタルブ村の焼け跡。
ここにも乳飲み子や幼子達が多く住んでいたに違いない。

「……多くの若者達の未来を奪ってその先に何を掴めるというのだ?」

脳裏に浮かぶのはニューカッスル城内で出会った少年達の姿。
まるで間もなく始まる日食のようにハルケギニア全体が闇に閉ざされていく
そんな予感に近い錯覚を彼はその肌で感じていた……。
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 00:08:19 ID:yROq5NS9
支援
134ゼロいぬっ!:2008/03/12(水) 00:08:29 ID:dg10iLA4
以上、投下したッ!
次回は主役置いてけぼりの大戦争!
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 00:12:36 ID:g5YZaI1e
SHIEN!
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 00:16:05 ID:yROq5NS9
乙!
ギーシュが微妙に死亡フラグを立て続けてるように見えるw
それにしてもルイズの心境が切ないなぁ…

そして暗黒アンアンが一体何を企んでるのか戦々恐々でドキワクで次回も期待しとりますでよ
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 01:28:30 ID:dsOc3nYb
GJ!
とうとう血沸き肉踊る戦争が始まるのか!
一心不乱の大戦争が!!
次回、楽しみに待ってます!

そして、ギーシュが……ギーシュがカッコイイだと……
馬鹿な!?ギーシュはいつまでも三枚目キャラのはずなのに!!
夢……か?
138名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 14:56:49 ID:hdqq0mnG
>>137
夢。
139名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 15:57:15 ID:I5MX2CWu
>>137
まさかとは思いますが、その「カッコイイギーシュ」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います。
140名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 17:26:19 ID:BSyHZogO
かっこいいギーシュなんてありませんよ… ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから
141名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 17:26:57 ID:IyEkkhWA
>>137
背後に、何やらドロドロしたものが見える
ついでに、素数を数える声も聞こえる
142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 17:46:26 ID:s6GjglPh
みんな真面目にギーシュに対して酷いな
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 18:18:46 ID:j7gp2V2C
ひどくなかったら逆に気味が悪いくらいに感じる。
やるときはやる男はやらないときは本当にダメ男だからいいんじゃないか。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 18:20:16 ID:I5MX2CWu
「好きな子ほど虐めたい」って奴なんです。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 21:38:05 ID:WcLE0oJl
本気になった時のギーシュはかっこいいぞ
まるでポコや康一、早人のように

「ねーちゃん!あしたって今さッ!」
「こ…こわい…の…は、痛みじゃあ…ないぜ…。ヘ…ヘヘヘヘ…」

「おまえはバカ丸出しだッ!あの世でおまえが来るのを楽しみに待っててやるぞッ!」

「おまえに味方する「運命」なんて………おまえが乗れるかどうかの「チャンス」なんて………今!ここにある「正義の心」に比べればちっぽけな力なんだ!確実にここにある!!今確かにここにある「心」に比べればなっ!」

奴らのかっこよさは異常
146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 22:11:09 ID:84IqqtMs
>>145
エンポリオも忘れないでやってください
第二部・第三部だとスモーキーや家出少女だけどこの二人は影薄いな
スモーキーは初の黒人市長になったらしいから大出世だけど
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 22:15:05 ID:WcLE0oJl
エンポリオ忘れてた、スマソ

「わからないのか?お前は「運命」に負けたんだ!「正義の道」を歩む事こそ「運命」なんだ!!」
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 22:52:10 ID:g5YZaI1e
五部からはペッシを推す
「分かったよプロシュート兄ィ!!兄貴の覚悟が言葉でなく、心で理解できた!」
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 23:11:11 ID:uZ+QM2yo
7部からは女性だがルーシー・スティール夫人が格好良い
台詞は忘れたスマソ
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 23:20:01 ID:tPDcmH2y
ところで、ゼロ魔にダイアー、アブドゥルポジションっていなくね?
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 23:26:24 ID:ceqf0whO
>>150
そもそも作品のノリが違うからな。なんていうか、必要のないポジション?
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 23:29:47 ID:/TsndYyL
>>150
ゼロ魔のかませ役は各キャラで持ち回りだからな
サイトのかませはギーシュでワルドのかませはサイト、ビダのかませはタバサとキュルケだった
153名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/12(水) 23:36:08 ID:wI80wXoh
ダイアーさんがかませとな?
154名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 00:13:54 ID:VqSkfp2Q
ところで、締め切…ゲフンゲフン一周年は3月15日で良いんだよな?
155名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 01:04:09 ID:WyjGTPJB
ふと、ウォーケンさん召喚を考えてみたんだが…
あれほどバランスブレイカーなキャラは荒木作品では珍しいな……


VSギーシュ
ワルキューレごと塵に帰る

VSフーケ
良くてゴーレムが溶けて無くなる
悪ければギーシュと同じ

VSワルド
あの能力は風じゃ防げそうにありません、
本当にありがとうございました

VS7万
ヘッドホン外してリミッター解除すれば周りが問答無用で塵に………

エルフあたりじゃないと互角に戦えそうにないな
156名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 01:09:24 ID:ecLFSth5
>>155
ワルドは何とかなりそうじゃね?
電流は原作どおり耐えるかもしれないけど
風も防げない気がする
まぁ攻撃を貰わないようにすることが前提だが
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 01:27:34 ID:7kfFCSA5
ウォーケンさんは「敵意を見る」ことができるバオーだから勝てたようなもんだからなあ
バオーじゃなきゃ分子振動なんて見切れないよ
空動波の方だったら風メイジなら「何か来るな」程度に分かりそうだが
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 01:47:08 ID:y/VG/V4V
神の左手ガンダールヴ
勇猛果敢な神の指
あらゆる物を小さくし
導きし我を瓶に詰める

神の右手がヴィンダールヴ
心優しき神の鏡
あらゆる鏡に入り込み
導きし我を許可しないィィィ!

神の頭脳はミョズニトニルン
覚悟のかたまり神の兄貴
あらゆる苦難を受け止めて
導きし我に成長を促す

そして最後にもう一人……
記すことさえはばかれる……
な、なんか眼の色が変で不気味なんですけど……(((・д・;)))

四人の僕…? 僕になるのか? と、とにかく!我はこの地にやってきた……
159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 02:03:48 ID:+lL6RTMT
成長する前に・・・\(^o^)/オワタ
160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 02:14:52 ID:HJvsYNn4
これも定番化してきたな
うん、暗殺チーム好きだ
161名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 16:35:00 ID:d+DHp3/5
なんか一巡後のポルポの記事を見つけたぞ。

ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080313-00000043-reu-ent
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 20:47:21 ID:R2boVh1L
自宅監禁じゃ警備がいても全然安全じゃないから普通にころされ
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 20:58:50 ID:bUwxjP5w
>>161
ちょwすげぇww
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 21:09:23 ID:W//o65lq
>>161
苦情来てたの本人からじゃなく、刑務所側からかよw
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 21:15:44 ID:lc1WICHG
200kgか。てっきり500kg級かと思ったよ。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 21:22:28 ID:7kfFCSA5
9時30分から投下すると予告させてもらおうッ!
167名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 21:28:23 ID:g7uzkFdT
しえ
168ゼロのスネイク:2008/03/13(木) 21:31:44 ID:7kfFCSA5
では改めて……よろしくお願い申し上げます


14話@


信じる。
この一言を、ホワイトスネイクはルイズに期待していなかった。

今しがたゴーレムの一撃で小屋ごと吹き飛ばされた、人の形をした何か。
それを「ただの小さいゴーレム」と言ってしまうことは出来ても、
実際にそうであることを証明するものは何一つ無い。
しかもその「人の形をした何か」が、
「数秒前に小屋に入っていったミス・ロングビル」だったなら……事態は最悪の展開を迎えたことになる。
いや、状況から考えれば後者である可能性の方が高いだろう。
「あれはただのゴーレムだ。だから心配なんかしなくていい」……とする方にこそ、無理があるのだ。

なのにルイズは「信じるわ」と言った。
それはかつてプッチ神父のスタンドだったときには当たり前のように受け取っていたものだった。
しかし、それはホワイトスネイクがこの世界に来て初めて受け取ったものだった。
「無償の信頼」だった!

自分は、これに応えねばならない。
主人の力となって主人を守護する、スタンドとしての自分の本能がそう叫んでいるのを、ホワイトスネイクは感じた。
そしてまたホワイトスネイクは思った。
この小さな主人の思うようにやらせてみたい。
自分がどれほどの傷を受けようとも、「どうにもならない事態」になるまでは守り抜きたい。
あの強大なゴーレムに立ち向かうことがルイズの精神をどこまで成長させるのかを見てみたい、と。
169ゼロのスネイク:2008/03/13(木) 21:32:50 ID:7kfFCSA5
「ちょ、ちょっとルイズ! 今ゴーレムに吹っ飛ばされたのって……」

いまだに状況がつかめないモンモランシーが引きつった声を上げる。
だが、

「ごめん、モンモランシー。あとバックアップお願い」
「え? 何……バックアップ?」

モンモランシーが聞き返したときには、既にルイズはゴーレムに向かって走り出していた。
直後、ホワイトスネイクがすぐにその小さい背中に追い付き、そして横に並ぶ。
ルイズとホワイトスネイク、互いの視線が一瞬だけ交錯する。
互いの目的を確認するにはそれだけで十分だった。

そして自分の方に一直線に向かってくるルイズとホワイトスネイクに気づいたかのように、
ゴーレムもまた動き始めた。
一歩一歩、地響きを立てながら歩むゴーレム。
ルイズが全力疾走に近い速度でゴーレムに向かっていることもあり、
当初20メイル以上もあった間合いはほんの数秒で殆ど埋まった。
その距離は、ゴーレムがルイズを踏み潰せる距離。
その距離は、ルイズがゴーレムに爆発の魔法を当てられる距離。
互いが、互いを射的距離内に捕らえた。
170ゼロのスネイク:2008/03/13(木) 21:35:26 ID:7kfFCSA5
先手を取ったのはゴーレムだった。
鈍重な足を軽く持ち上げ、その足をルイズの真上に踏み込もうとする。
だが、

「シャアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

突如、足の内側から叩き込まれた蹴りのラッシュが、その狙いを逸らさせる。
ゴーレムが踏み込んだ足は、ルイズからわずか10サントの位置に踏み込まれた。
必殺の踏みつけを邪魔したのはホワイトスネイク。
ゴーレムの挙動を先読みした、「ルイズを守るため」の防御行動だ。

拳撃でなく蹴撃を用いたのには2つの理由がある。
一つはゴーレムの圧倒的なパワーに対抗するため。
拳のラッシュを打ち込んだところで、ゴーレムの動きのベクトルを変えることは困難だからだ。
そしてもう一つは――

ビシィ!

ホワイトスネイクの蹴り足に一筋のひびが入った。
ゴーレムのパワーと真正面からでないにしろ、ぶつかったのだ。
その代償が、これだった。

(ヤハリ、足ニダメージガ……!)

蹴りを使ったもう一つの理由。
それは拳のラッシュによって自身の腕にダメージを負い、
ラングラーとの戦いでそうだったように、DISCの使用に支障を来たさないためである。
171ゼロのスネイク:2008/03/13(木) 21:38:23 ID:7kfFCSA5
ルイズへの攻撃を予想しえぬ形で外したゴーレム。
それは周囲の木々の影に隠れてゴーレムを操作する、土くれのフーケにとっても同様だった。
だがフーケにとってさらに予想外だったのが、

「バカな……あの小娘、なんであんなことを?」

ルイズはゴーレムが踏み込んだ足のすぐ隣――最初にゴーレムがルイズに狙いをつけた位置で立ち止まっていた。
ゴーレムにほんの少し、横に足を払わせれば、それだけで殺せる位置。
紛れも無く「死地」だ。
そんな場所に、何故?

その疑問が、フーケのゴーレムへの指令を中断させた。
ゴーレムの動きが、ほんの一瞬だけ止まる。
その隙を、ルイズは見逃さなかった。

「な、何してるんだ、ルイズ! は、はや、早くそこから逃げるんだ!」

ギーシュが悲鳴に近い声を上げる。
だがルイズに迷いは無い。

「何言ってるのよ、ギーシュ」
 
彼女が掲げる杖の先にあるのは――

「この距離がいいのよ、この距離が!」

ゴーレムの膝関節。
巨体で鈍重なゴーレムの、もっとも脆弱な部位だ。

「錬金ッ!!」

短い詠唱と共に放たれたルイズの魔法はゴーレムの右膝に命中!
そしてその効果は――

ドッグォォオオオオン!!!

爆発ッ!!
あえて立ち止まることで狙いを正確なものとした魔力の炸裂は、ゴーレムの右膝を跡形もなく吹き飛ばしたッ!

ズズゥゥゥン…………

片足を失い、轟音を立てて倒れるゴーレム。
ルイズはそれに目を向けながら、荒い息をついた。
破裂しそうなぐらいに鳴り響く心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえた気がした。


To Be Continued...
172ゼロのスネイク:2008/03/13(木) 21:41:32 ID:7kfFCSA5
投下終了

パワーBでしかも弱ってる白蛇じゃあどう頑張ったってゴーレムとは正面から殴り合えません
あと今回はただの驚き役だったモンモンとギーシュは次で頑張ります

なお「細かく切ったほうが緊張感を保てるだろうか、ジョジョ的に考えて」と思って、今日は短めにしました
なので次の投下はできるだけ早くやりたい
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 22:13:10 ID:fo9lw1Jp
乙!
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 22:53:22 ID:hU7jiUrn
GJ!
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/13(木) 22:56:48 ID:YkcmowFR
いい投下だった!GJ!!

ギーシュとモンモンが活躍……か。
どうしても活躍している姿を想像できないのは、自分だけだろうか……?
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 00:17:56 ID:YFSKcAeG
あんなゴーレムが走ったりしてよく…いややめておくか
177名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 01:24:26 ID:1+pak8UO
>>176
>>169で「一歩一歩、地響きを立てながら歩むゴーレム」っつってるから走っちゃいないでしょ
とは言え至近距離でゴーレム転ばせたらルイズも潰されそうではあるが
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 06:00:27 ID:UUezLLs8
まとめ久々に読んだがやはり「途中で終わった」が多いのはつらいぜ
アヌビス神とかあれは文字通り神だった、ギーシュさんに再び会いたかったぜ
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 10:06:40 ID:DKrqrdg4
ヘブンズドアー!

えっと、何も見えなくなって避難所へ吹き飛ぶ
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 11:26:28 ID:X05d4WxE
ちょっとまていw
見えなくなったら作品が読めねーだろw
181名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 14:51:40 ID:fFr8VTHK
これは予言だが、明日は作品が続々と投下されるに違いない。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 14:55:29 ID:rckfJ5AU
一周年記念間に合うように書こうとは思うんだけどさ
人気も皆無だし、時間も長期間開いてる作品なんかはお呼びじゃないよな
183名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 15:00:59 ID:+3laDt6Y
>182

投下があるならばそれだけでもありがたいことです。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 15:21:14 ID:Fm3j9lSV
神父が新月を迎えるまで
あと二十四時間
185名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 15:23:13 ID:H1HKk3Kv
臨月と読んでしまった俺はどうすれば
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 15:25:39 ID:cgzWivMU
>>185
マタニティを着た神父想像しちまったじゃねーかw
もちろん生まれてくるのは緑色の赤ちゃんだ
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 15:42:33 ID:H1HKk3Kv
祝福しろ…出産にはそれが必要だ
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 16:11:08 ID:voTvvZVS
>>182
俺も同じ心境だよ

最近一ヶ月以内にも投下したんだが、
何時間もかけて書いて投下したのにレスが5個以上つかず、
自分が1番気合い入れて書いたシーンに対する反応がほとんど無い

別に住民に強制するってわけじゃあないが、そういうのを見ると
「オレの作品って、面白くねえのかなあ〜〜……才能無いんだろうなあ〜〜……これじゃ書いててもしょうがねえよなあ〜〜〜………やめたくなった」
と思ったりもする

まあ結局はおだてられないと書き続けられない自分の心の弱さが原因なんだがね
189名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 16:50:46 ID:iJumXOO9
その作品のファンが丁度、投下時に居合わせる事って確率低いだろうからなぁ〜…
常駐してる人は多分レスが何個かついた時点で自分のレス控えてる気がするし
とりあえず、避難所の感想スレとかに応援メッセージがあるかもしれんから覗いてみて

ただ、何も感想がなかったとしても確実に一人は"その作品の続きを待っている"人がいる事は忘れないでくれ
文が下手糞? テンプレ通り? 俺TUEEE?
そんなもの、なんの問題にもなりはしない
召喚されたソイツが活躍することを望んでるのはアンタだけじゃあないって事だ

と、まぁちょっぴり熱くなって支離滅裂だけど、
作者さんにはどんなにゆっくりでもいいから確実なる一歩を踏み出し続けて欲しいなと言うわけですよ
190名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 17:06:32 ID:sRKf30iU
自分のパンティーあげたくなるぐらいGJ送りたくても
気づくのが遅くてスレの雰囲気変わってるとレスしづらくなるからな
称賛レスの数はあまり気にしないでもらいたい
191名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 17:28:06 ID:P+BhRQNK
>>190
俺も同じ次から称賛のラッシュする
192名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 18:25:26 ID:rUnusAYY
このスレに必要の無い職人さんなんてただの一人も存在しませんよ。
193名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 19:43:55 ID:BiOnpwg+
某クロススレはたくさん感想がくるから人気なのかなぁ・・・
よし俺も>>191のように絶賛ラッシュだ。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 19:53:19 ID:1OeoGZ/d
なら俺は投下終了と同時に乙とGJを叩き込む!
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 21:17:18 ID:tNr09jWW
だれもいないなら俺が“投下”してみるが‥‥!?
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 21:22:08 ID:UAt6l3hY
支援するぞォッ!
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 21:46:59 ID:BiOnpwg+
カモーン!
198名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:02:14 ID:bdJd5SKy
なんだ…やけに静かだな…
199名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:12:58 ID:hrkOnOXw
>>198
おい、なにつったってんだ
後50分くらいでセレモニー始まるぜ
おとなしく座ってようぜ
200名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:13:05 ID:fWKfJTes
短編ネタ『収穫する使い魔』

「ここは何処だど? なんで月が2つあるど! 理解不能! 理解不能!!」
私の召喚した使い魔はとても五月蝿かった。
「五月蝿いわね!貴方を私が召喚したの! わかる?」
「あっ『理解可能』」

只の平民だと思ったらかなり反抗的な使い魔だった。
「母ちゃんが家で待ってるど! ゴン太だって家にいるど!」

だけど、結構一本筋が通ってた。
「お前が謝るべきだと! お前が二股してたから彼女達が傷ついただと!」

そして凄まじく強かった。
「あっありのままに起こった事を話すぜ……
『1対1だと思っていたら平民の体から100体ほど幽霊が出てきてギージュに襲い掛かった』
何言ってるんだてめえって顔をしてるが催眠術や超スピードじゃねえもっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ」

でもちょっと欲深い
「うーそれを売れば幾らになるど………」
だからこれは破壊の杖って危険な武器なの!

そして恐ろしく射程の長く数多い『槍』達を持っていた。
「馬鹿な……奴からここまで何メイルあると思っているのだ……」
「シシシッ……わるどミツケタゾ!」
ワルドは絶望的な顔をして、その『幽霊』達を見上げたのだった。

「500体の数は卑怯よ……」
ルイズは自分の使い魔を見てげんなりしていた。

4部より矢安宮重清を召喚。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:24:27 ID:oXZ8AiLW
重ちーーーーっ!!!!
GJ!
202名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:53:05 ID:bdJd5SKy
初・重ちーきたああああああああああああッ!?
GJ!GJ!!
203名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:55:18 ID:5tORUkc6
GJ!
たしかにハーヴェストは反則だなw
204名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/14(金) 23:59:27 ID:cEUPFnUD
なんという重ちー
ワルドもおマチさんも無力無力ゥ!

そして描写はないがマルトーオヤジもカツサンドを作れるようになってホクホクにちがいねぇ!

つまりはGJ!ってことさぁ
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 00:09:32 ID:Ts8B8gtV
GJだ!!!!
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 00:44:16 ID:U0xfYwLp
おお重ちー!
GJ!
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 00:48:07 ID:/jZwuZ63
ハーヴェストの力がいくら低いと言っても1体1体が肉を引き裂くくらいだから…
そんなのが500体とか来たらねぇ…

現にキラークィーンの能力を知ってれば圧倒的に勝つことも出来たのにな……
しげちー………
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 01:22:10 ID:Kt4UkH43
というか頸動脈うんぬんの話さえしてなかったら重ちー勝ってるってアレ。

まあ話の展開的に死んじゃったけど。
でも話2つで死んじゃうなんて不憫すぎる
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 01:35:00 ID:qQnXr0qm
吉良の恐ろしさがわかってよかったけどな
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 01:45:58 ID:AcWlzXT7
重ちーの死因が
ハーヴェスト描くのが面倒だったからってのはマジですか?
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:14:38 ID:MuemkSil
投下いたす
212仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:15:01 ID:MuemkSil
「…ルイズ」
アンリエッタが謁見の間で呟いたルイズの名は、誰にも聞かれることなく、虚空に消えていく。
玉座に座り、目を閉じて心を落ち着かせる……そんなアンリエッタを見たマザリーニは、いつになくアンリエッタが緊張しているのを見抜いていた。
百人以上入れそうな謁見の間は、見事に磨かれた石の床に、真っ赤な絨毯が敷かれている。

マザリーニはこれから来るであろう、ある人物の姿を絨毯の上に幻視した。
先代の陛下に跪き、陛下から直々にお言葉を賜っていたある人物は、トリステインの貴族達の間で知らぬ者は居ないと言われるほど誉れの高いメイジだった。

烈風カリンと呼ばれたその人物が、実はルイズの母カリーヌ・デジレだったと知られたのは、皮肉にもルイズの死を聞いたその日であった。
土くれのフーケを追って、フーケ共々魔法の失敗により爆死したと聞き、カリーヌ・デジレは唯一の目撃者ロングビルを直々に尋問したのだ。
カリーヌ・デジレは自身が隊長を務めていたマンティコア隊から、水系統に優れたメイジを一人借り受けて、魔法学院に赴いたらしい。
公式な記録には残されていないが、水系統のメイジを使って、ロングビルに洗いざらい吐かせたであろうことは想像に難くない。

誰よりも規律を重んじていた英雄が、規律を破ってまで娘の死の真実を知ろうとしたのだ。
その事実はオールド・オスマンからアンリエッタの耳にだけ届けられるよう、マザリーニが手を回した。
マザリーニは。その他の貴族に情報が漏れぬよう徹底させた、特にオールド・オスマンは烈風カリンがカリーヌ・デジレであるという噂を拡散させぬよう、ヴァリエール家の権力をちらつかせて『説得』したおかげで、魔法学院の外にその情報が漏れることは無かった。


噂の火消しに勤めたマザリーニだからこそ、ラグドリアン湖近くの国境警備隊から届けられた一通の手紙に驚いた。
この手紙を王宮に届けるよう指図したのは、カリーヌ・デジレだとしたら問題がある、いくらヴァリエール家が大貴族だとしても、国家の直轄である国境警備隊の竜騎兵を私用で使うなどあってはならない。。

しかし、手紙にはマンティコア隊の紋章と、ヴァリエール家の家紋の両方が並び描かれていた、これは暗に『烈風カリン』からの手紙であると言っているようなもので、すぐさま手紙はアンリエッタの下に届けられた。

手紙の内容は、『水の精霊とルイズに関する重大な話をしたい』…という至極簡単なものだったが、アンリエッタとマザリーニの背筋を寒くさせるには十分なものだった。



「カリーヌ・デジレ様がお見えになりました」
魔法衛士がマザリーニの脇にそっと近づき、耳打ちする。
「急ぎ陛下の御前に」
「はっ」
マザリーニは答えると、魔法衛士はすぐに踵を返し、音もなく謁見の間を出て行った。
玉座から少し離れた位置で、マザリーニがアンリエッタの表情を伺うと、アンリエッタはこくりと頷いてまっすぐ扉を見据えた。
ほんの数秒にも、十分にも感じられる奇妙な緊張感の中、謁見の間の扉が静かに開かれた。
213仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:15:48 ID:MuemkSil
「……………」
アンリエッタの影武者がルイズだと知る二人、アンリエッタとマザリーニが謁見の間にいる頃、ルイズは鏡の前に立ち、自分の顔つきを入念に調べていた。
ほお骨やアゴの形を調整し、髪の毛を切って髪型を変え、アンリエッタと瓜二つの顔をしているが、どうしてもウェールズには気付かれてしまう。
体型の調節も完璧だ、スリーサイズだってアンリエッタと同じになっている、姉と同じで劣等感を感じていた胸の大きさも、今は自由に変えられる。
それなのに、ウェールズには気付かれてしまう。

なぜルイズとアンリエッタの区別が付くのか、そう質問してもウェールズは「何となく、かな」と、はにかみながら答えるばかりだった。
ルイズは「愛の力かしら?」と言ってからかうのだが、二人はそれを真に受けて、頬を赤く染めてしまう。
ツェルプストーとは違って、とても初々しい二人に、ルイズはほんの少しの嫉妬と、大きな癒しを感じていた。


ルイズは鏡に映るアンリエッタを見る、どこからどう見てもアンリエッタの姿、これがルイズだと解る人間は居ないはずだ。
例外があるとすれば水系統のメイジだろう、ルイズの身体を流れる『水』の流れはルイズだけのものだ。
ヴァリエール家の主治医が今のルイズを調べたら、その正体がルイズであると気付かれてしまうだろう。

だが、ウェールズは『風』『風』『風』のトライアングルだ、ルイズを一目で見破るほど水系統の力に優れているとは思えない。
冗談で言った「愛の力」だが、今のルイズにとって、それは冗談でも何でもない。
カリーヌ・デジレが火急の用で謁見を望んでいると聞いた時から、ルイズは母に見破られるのを恐れ、アンリエッタの居室に引きこもっていたのだ。

鏡の前で全裸になって、顔も、体つきも、髪の毛も、アンダーヘアも、すべてアンリエッタと同じ形になっているのを確かめていく。

それでもルイズは不安だった。

(お母様に会いたい…)
(…でも、会ってどうするの?)
(もう会わないと決めたのに、死を偽装してまで決別したのに、今更どうやって会おうと言うの?)
(お姉様にも、お父様にも会いたい)
(虚無の使い手だと言えば、それをアンが保証してくれれば、私は胸を張ってみんなに会いに行ける)
(学院の皆を見返してやることもできる)
(みんなが私を認めてくれる)

(……吸血鬼で、なければ)
214仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:16:51 ID:MuemkSil
謁見の間では、アンリエッタを始め警護の任についている数名の魔法衛士までもが驚きに目を見開いていた。
カリーヌ・デジレがアンリエッタ女王陛下に献上したいと言って持ち込んできたのは、子供がすっぽりと収まるほどの革袋だった。
中には何か液体らしきものが入っているのか、重そうに揺れている。
それを運んできたのは、ついこの間シュヴァリエを賜った、シエスタとモンモランシーの二人。
革袋より一回り大きい水桶を用意させると、シエスタが水桶の上に革袋を乗せて、ゆっくりと革袋の口を開いていった。

「水の精霊から渡された、水の秘薬にございます」
カリーヌ・デジレの言葉に驚き、謁見の間は奇妙な沈黙に包まれた。


一番最初に気を取り直したのはマザリーニだった、背後に立つ魔法衛士に「…検査を」と一言呟くと、魔法衛士は水の秘薬に近づいてディティクト・マジックを唱えるなどして、本物であるかどうかを調査し始めた。
そして指先で直接水の秘薬に触れると、驚きのあまり手を震えさせて、後ずさった。
「確かに、確かにこれは水の秘薬でございます」
さすがの魔法衛士も驚きを隠しきれず、語尾が震えていた。

「このような大量の水の秘薬、目の当たりにしたことなどありませんわ、いえ、これからも目の当たりにすることができるか解りませんわ。いったいどうしてこのような量の秘薬を? 」
アンリエッタがそう質問すると、カリーヌは跪いたまま、静かに、しかしはっきりと聞こえることで呟いた。

「ルイズの姉に当たります、ヴァリエール家次女のカトレア、その病状改善のためにどうしても水の秘薬が必要だったのです」

「しかし、あの時はタルブ戦のすぐ後でしたわね…確か水の精霊を怒らせた者が居ると聞いて、ラグドリアン湖には不用意に近づかぬようおふれを出した覚えがありますが」

「はい、来るべき戦に備え、無用の混乱を避けようとする陛下のご深慮を、私はこの身勝手で蔑ろにしたも同然です。一縷の望みで、後ろに控える両名をラグドリアン湖まで連れて行ったのです」

「ミス・モンモランシーとミス・シエスタですね。顔をお上げなさい」

二人はおそるおそる顔を上げ、アンリエッタの顔を見た、その表情には怒りは見えなかったが、女王陛下という肩書きに、シエスタは無視できない畏怖を感じていた。
ぽつりと、マザリーニが呟く。
「あなた方は、ラグドリアン湖に近づくことで、水の精霊を刺激するとは思いませんでしたか」
「「…!」」

予想していた言葉だが、マザリーニの言葉には予想外の重みがあった、マザリーニの口調は静かなものだったが、そこに含まれる冷徹さが二人を貫いた。
「それについては私からの発言をお許し下さい」
「申しなさい。……面を上げて結構ですよ、カリーヌ・デジレ」
アンリエッタが発言を許すと、カリーヌは顔を上げ、まっすぐにアンリエッタを見据えた。
鋭い眼光を予想していたアンリエッタは、カリーヌの瞳からまるで慈しむような雰囲気を感じ、心の中で驚きの声を上げた。
カリーヌの瞳は、ゲルマニアに嫁ごうとする自分を案じてくれる、太后まりアンヌの瞳にそっくりだったのだ。

「カトレアの治癒に必要な水の秘薬を得るため、ミス・モンモランシーとミス・シエスタを連れて、独断でラグドリアン湖に赴きました私の、不徳の致すところでございます。
二人の協力の元、水の精霊はミス・モンモランシーと改めて盟約を結ぶことはできましたが、一歩間違えれば私は水の精霊とトリステインの間に修復不可能な亀裂を産むことになったでしょう」
「ミス・モンモランシー、新たに盟約を結ぶんだとは…それは本当ですか?」
「はい」
「ならばそのときのことをお聞かせ願えるかしら」
「は、はい、光栄の至りですわ」

モンモランシーは緊張のあまり、声が少し上ずってしまった。
何とか緊張に耐えて、ラグドリアン湖で起こった出来事を話しだした…だが、タバサとキュルケの名前は口にせず、あくまでもはしなかった。
あくまでもモンモランシーの血と、シエスタの波紋の力で、水の精霊が自分たちを信用してくれたのだと話したのだ。

「なるほど…そのようなことがありましたのね。ではカリーヌ…いえ、トリステインの誉れたる『烈風カリン』に全幅の信頼を置き、この件は不問と致します。このように大量の水の秘薬、並びにトリステインとの信頼改善、よくぞやってくれました」
「勿体なきお言葉です」
「ミス・モンモランシー。ミス・シエスタ。お二人もまた大儀です。しばらく別室で休憩を取らせましょう…よろしいですね?」
「「はい」」

二人は、緊張のせいか、勢いよく返事をした。
215仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:18:19 ID:MuemkSil
王宮内、マザリーニの執務室。
ぎゅうぎゅうに押し込めば、大人が五十人は入れるであろうこの部屋に、今は四人の人間しかいない。

一人はこの部屋の主マザリーニ、もう一人は烈風カリン、そしてもう一人はアンリエッタ、最後にアンリエッタの警護を務めるアニエスであった。

アンリエッタはソファに座り、マザリーニはその斜め後ろに立っている、アニエスは扉の側で剣に手をかけてじっと黙っていた。
テーブルには紅茶も何も置かれていない、強いて言えば、対面に座るカリーヌ・デジレの姿が重厚な茶褐色のテーブルに映っているぐらいだろうか。

「…先ほどは話せなかったこと、ここでなら存分に語り合えますわ。あの手紙に書かれていたルイズに関することとは、いったい何なのですか?」

アンリエッタがそう口を開くと、カリーヌは静かに、しかし鋭い眼光でアンリエッタを見据えた。


「私の娘、ルイズが、生きているかもしれません」
「……ルイズが、生きている?」
アンリエッタは呆然とした様子を隠すことなく、呟いた。
「確証があった訳ではありません、ですが、許されるならばラグドリアン湖方面に捜索隊を派遣するつもりでした」
冷静なカリーヌの言葉に引き戻されたのか、アンリエッタは少し深く息を吸って、呼吸を整えた。


そもそもの始まりは、ラグドリアン湖に近いある貴族の別邸に、カリーヌが赴いたことにある。
ヴァリエール家とはとても比べられない小さな貴族だが、ラグドリアン湖近くに領地を構えるだけあって、この血に赴く水系統のメイジと積極的な交流をしている。
カトレアの治癒のため、その人脈から何人かのメイジを斡旋して貰ったこともあるのだ。
そのおかげでカトレアは今まで生きながらえてきた、カリーヌはその恩返しのため、時々その貴族が保有する騎士団に手ほどきをしていた。

タルブ戦が終わって間もない頃、ヴァリエール家は戦争に参加しないと決めていたので、いつものように騎士団に手ほどきをしていた。
帰り道、ガリアとの国境近くにある森林で、大きな火事が起こっていると聞いたカリーヌは、騎士団を引き連れて火事を鎮火する見本を見せようとしていた。

それはルイズ達がミノタウロスと戦った時に起こした火事であった。。

カリーヌは『風』『風』『風』『風』のスクェアとしても規格外なその力で、火事の起こっている森林に巨大な渦巻き状の風を作り出した。
それはまるで、ろうそくの火を消すかのように、一瞬で燃えさかる木々を薙ぎ倒して炎を吹き消した。
呆気にとられる騎士団に指示を飛ばし、生存者の有無と原因の究明を徹底させる、これでカリーヌの仕事は終わるはずだった。

だが、カリーヌが従者として連れてきたメイジが、煤だらけになった男から、驚くべき証言を聞き出してしまった。

火事は、怪我を負い正気を失ったミノタウロスが、二人のメイジと戦った事で起こったと言う。
その上そのメイジは、ピンク色の頭髪を持ち、顔に大きな火傷のある女性で、しかももう一人のメイジらしき男から『ルイズ』と呼ばれていた……。
216仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:20:07 ID:MuemkSil
「火事の原因を目撃した男は、ミノタウロスに襲われる二人を目撃していたそうです。そのうち一人が顔に火傷を負った女性で…ルイズと呼ばれていたと証言しております」

「っ……ルイズが生きていると言うのですか?」
「あの爆発痕を見れば、生存が絶望的だとするのは当然です、しかし…しかし私には、ヴァリエール家はルイズを諦めることはできません」
「そうですか…。もしや、ラグドリアン湖に赴いたのは、ルイズを探すために?」
「…愚かな望みかもしれませんが、それを期待して居ないと言えば嘘になります。私は、烈風カリンでありつづけることはできませんでした、公私をはき違えた私は…私はただの愚かな母でしかありません」

マザリーニは、ううむと唸って、考え込んだ。
ルイズという少女は、ルイズが思っている以上に愛されている、魔法の才能など関係なく、いや、この様子では身を守る為に魔法を覚えさせようと、必要以上に厳しくルイズに接してきたのだと想像できる。
わざわざ手紙にマンティコア隊の刻印を用いてまで、謁見を望むなど、鋼鉄の規律とまで呼ばれた烈風カリンの伝説からは考えられない、公私混同を当然だと思う風潮はトリステインにも蔓延しているが、烈風カリンだけは違うという思いこみがあった。

だが、マザリーニは逆にそれを感心していた、カリーヌは公私混同を悔やみながらも、その手段に出た。
悔やんでいるという点が重要なのだ、悔やむことを止めてしまった人間は歯止めがきかない、歯止めがきかぬ欲で身を滅ぼしたリッシュモンという前例もある、
しかしカリーヌは失脚など恐れては居ない、罰を受けることも恐れては居ない、寂しく死んだ娘に会えるなら……と、淡い期待を抱いているに過ぎないのだ。

ちくり、と胸の奥が痛む気がした。


雲はいつの間にか太陽を遮り、窓から入り込む日差しがほんの少し柔らかくなった。


「これからもルイズを探すおつもりですか?」
マザリーニが呟く、カリーヌはそれを聞いて、こくりと頷いた。

「……ルイズのことは諦めたつもりでした。ですがミス・シエスタが魔法学院で、ルイズから貴族の振るまいをルイズから学んだと聞いた時、涙が溢れました。あの子は自慢の娘です。だから私は手段を問わず…ルイズを探し出したいのです」
「手段を問わず、とは?」
「ルイズが生きているのなら盗賊・土くれのフーケも生きているかもしれません。それを口実にヴァリエール家からメイジを各地に派遣します。ガリア・ゲルマニア・アルビオン・ロマリアにも派遣するつもりです」

マザリーニは表情には出さなかったものの、大胆なカリーヌの発言に唖然とした。
アンリエッタも同じ気持ちなのか、こちらは目を見開いて驚いている、心の中ではどうやってルイズを庇うのかを考えているに違いない。

アンリエッタはふと視線を逸らした、わざとらしく窓の外を見て、必死でルイズ達を庇う手段を考えた。
ふぅ…とため息をついてから、改めてカリーヌと向き合う。
「どのような形であれ、ルイズが生きているというのなら、友人として力を貸したいと思います…が」
アンリエッタが答えに窮していると、マザリーニが口を開いた。

「陛下、よろしいですか」
「申しなさい」
「フーケそのものではなく、フーケの足取りと、盗品売買の経路を探りましょう。土くれのフーケの件を今更掘り返すのは得策ではありません。フーケを名乗るニセモノも多数いると聞いておりますから、かえってそれらを調子づかせる事になります」
マザリーニの言葉を聞き、カリーヌが視線をマザリーニに移した。
「ヴァリエール家からメイジを派遣するにしても…ゲルマニア方面は避けた方が得策でしょうな。表向きはフーケの足取りを調査するということにすれば…」
217名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:20:39 ID:ZkorbXup
支援!
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:21:07 ID:4UzJAQTq
シエン
219仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:22:28 ID:MuemkSil
マザリーニが言い終わると、アンリエッタはホッとした表情で、こう纏めた。
「では改めて…そうですわね。五日のうちに勅使をヴァリエール家に派遣し子細を纏めましょう。マザリーニ」
「はい、五日あれば人員の確保もできるでしょう」
マザリーニの言葉に、アンリエッタも満足げに頷いた。

アンリエッタはすっくと立ち上がると、カリーヌの前に手を差し出した。
カリーヌはその意図が分からなかったが、アンリエッタと同じように手を前に出すと、アンリエッタはその手を掴んで優しく包み込んだ。
「……烈風カリンといえば、私は子供の頃、まるでおとぎ話のように聞かされておりました。ですが今、母として私に相対した貴方は、やはり誰よりも優しく誇りに満ちていますわ…貴方がルイズの母で、良かったと、私は思います」

その言葉に、カリーヌは含みがあるのを感じていた。

ルイズが生きていると信じているような、淀みのないアンリエッタの態度。

それは王家の人間が備えている威厳なのだろうか、それともルイズの友達としてだろうか?

それとも両方なのろうか?

ここ数ヶ月間で、劇的に風格を備え始めているアンリエッタの姿に、カリーヌはどこか懐かしい貴族のにおいを感じていた。
220仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:24:34 ID:MuemkSil
夜。

既にカリーヌ・デジレはヴァリエール家に帰っている。
シエスタとモンモランシーも、今頃は久しぶりに魔法学院のベッドで寝ている頃だろう。
数日間間を置いて、改めてカトレアを治療するらしい。

アンリエッタの居室で過ごしていたルイズが、アンリエッタからそんな話を聞いていた。
窓際で椅子を並べて座り、とりとめのない話をする、アンリエッタにとってもルイズにとっても、心の安まるひとときだった。

ルイズは変装を解き、元の姿に戻っている、平民の着るような野暮ったい厚手のズボン姿が、アンリエッタとは対照的だが、月明かりに照らされた二人は、姉妹のようにも見えていた。

「ねえ、ルイズ。貴方のお母様ってとっても素晴らしい人ね」
「そうよ、だって、烈風カリンだもの、生きた伝説よ」
「違うわ、母としてよ。今でもまだルイズのことを諦めてないんですもの」
「まさかミノタウロスに襲われた時、あの男に名前を聞かれているとは思わなかったわ…失敗したわね」
「失敗だとは思わないわ。だって、貴方がどれだけ家族から想われているのか解ったんですもの」
「………私、ゼロよ?魔法の才能ゼロってずっと言われてきたのに、今更私のことを探してるなんて言われても…駄目よ、実感がわかないわ」
「ねえ、ルイズ。貴方のおかげでウェールズ様と会うこともできたし、トリステインだって貴方のおかげで助かったのよ。今度は貴方が幸せになるべきよ」
「やめてよ、アン…私に釣り合う男なんて居るわけ無いじゃない。いつか、いつか寿命が来るのよ」
「まあ!私、殿方のことだとは言ってないわよ、やっぱりルイズにも自覚はあるのね」
「………」
「ごめんなさい、冗談よ、でも、ルイズに幸せになって欲しいのは…本当よ」
「気が向いたら考えるわよ。そろそろ行くわね。今度会う時は…そうね、クロムウェルの首をお土産にするわ」
「……無茶、しないで」
「うん、わかってるわ」









王宮から少し離れた場所に、トリステインで最も大きな練兵場がある。
そこでは、人間を軽く五人は乗せられる成体の火竜が一頭、たたずんでいた。
その傍らで手綱を握るワルドは、練兵場の塀を跳び越えて入ってきたルイズを見ると、既に火竜の背に乗っているマチルダの前に飛び乗った。

のしのしと火竜が歩き、ルイズの元へと移動する。
「ルイズ」
ワルドがそう言って手をさしのべると、火竜はそれに会わせて身体をかがめた。
さしのべられた手を握り、ルイズが火竜の背に乗ると、火竜は大きな翼を広げて力強く空気をかき分けた。
ふわりと上昇する火竜の背から、少しずつ遠ざかるトリスタニアの風景、灯の点る窓の明かりを見て、ルイズはそこに人間の息吹を感じた。

思い出すのは、アルビオンのサウスゴータ。アンドバリの指輪により自我を奪われ、奴隷となった人間の住んでいた町。

トリステインを、そんな目に遭わせるわけにはいかない。
ルイズは月を見上げた。

「ねえ、フーケの足取りを調べるんだって?」
不意に、後ろから声がかかった。
ルイズはワルドに抱きかかえられるようにして火竜に乗っているので、最後尾に座るマチルダの顔はよく見えない。
「ヴァリエール家からも派遣するそうよ、本音は私の捜索、フーケの足取りは建前らしいわね」
「愛されてるねえ」
「やめてよ、愛されていると言えば聞こえは良いけど、ちょっとタイミングが悪いわよ」
「いいじゃないか、あたしなんて怖い人にしか探してくれないんだ、家族に探して貰えるなんて、羨ましいよ」
「あら、私を探そうとしているのは、ハルケギニアで一番怖いメイジよ…そう、一番ね」
221仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:25:58 ID:MuemkSil
アルビオンには、驚くほどすんなりと到着することができた。
ワルドとマチルダが交代でレビテーションやフライを唱え、火竜の負担を最小限に抑えたため、二度目の日の出を見る頃にはアルビオンが見えていたのだ。
心配されていた竜騎兵による哨戒だが、それもルイズが『イリュージョン』を使えば誤魔化すことができる。
そもそも現在のアルビオンは、タルブ戦で多くの竜騎兵を失っており、以前と比べてその防御網も穴だらけと言っていい。

アルビオンに到着したルイズ達は、森林地帯から潜入し、ウェストウッド村へと進むことにした。
アルビオンから降り注ぐ川の水が雲になり、ルイズ達の姿を隠してくれたが、火竜はそれを嫌がったのかあまり乗り気ではなかった。
途中、ルイズが『イリュージョン』を用いて森を作り出し、火竜をその中に隠してアルビオンに着陸した。


マチルダの案内で、三人はウェストウッド村に徒歩で移動していた、鬱蒼と茂る森の中は薄暗く、トリステインと比べて背も高い気がした。
『なあ嬢ちゃん、そっちの男にもあの娘を見せちまうのかい?』
ルイズは、背中の剣から声をかけられて、少しだけ考えた後ワルドに向き直った。
「ええ。…そういえばワルドは、会うのは初めてよね」
「ティファニアという女性のことか?ウェールズ皇太子からハーフエルフだと聞いているが…正直なところ、不安はあるな」
『不安になることなんかねえよなあ』
デルフリンガーの軽口にマチルダが答える。
「まったくだね。裏で何やってたのか知らないけど、そっちの子爵サマの方がよっぽど怖いさ。正直言って、エルフが怖いだなんて思われてるのは信じられないね」
「そうなのか?まあ、僕は軍人だからな、エルフといえば戦力として驚異だとしか教えられていない」
ルイズは歩きながら、アゴに手を当てて考え込んだ。
「……確かにあれは驚異ね」
『ありゃ確かに胸囲だなあ』


ウェストウッド村に到着したのは、日が沈みかけた頃だった。
途中、疲れたと愚痴を漏らすマチルダをルイズが背負うなどのハプニングはあったが、特に問題もなく到着することができた。
「マチルダ姉さん!」
マチルダの姿を見て走り寄ってきたのは、ティファニアであった、フードを被り耳を隠してはいるが、その驚異的な身体的特徴は服の上からでも十分に確認することができる。
「みんな無事だったかい?アルビオンがひどいことになっているって、トリステインで噂になっててさ、ここまで来る間気が気じゃなかったよ」
「大丈夫、みなさんのおかげで何とか無事に暮らしていられるわ。でも、今いろんな村で人がかり出されてるって噂になってるとか…あ、石仮面さん!」

「お久しぶり、ティファニア。元気だった?」
「はい、おかげさまで…あれ?石仮面さん…ですよね?」
ティファニアは、ルイズの姿をまじまじと見た、茶色く染められた上着に、ズボン姿のルイズは、以前見た時と比べて背が低いように思えたのだ。
「?」
「身長ぐらい増えたり減ったりするわよ、気にしない気にしない」
誤魔化すようにルイズが呟くと、背後からデルフリンガーが呆れたような声を出した。
『そりゃー無理があるぜ』
「うるさい」
無慈悲にもルイズは、デルフリンガーを鞘ごと投げ捨てた。

ワルドはとりあえずデルフリンガーを拾うと、ベルトを肩にかけた。
ティファニアはワルドの姿を見ると、ルイズの袖を軽く引っ張って、小声で呟いた。
「こちらの人は?」
「紹介するわ、彼はワルド。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドよ」
「はじめましてお嬢さん。僕は彼女の…石仮面の部下を務めている。以後お見知りおきを」
「はい、よろしくお願いします」
ティファニアは両手を腰の前で重ねて、お辞儀をした。
その仕草でたわわに実った果実が腕に圧迫され、驚異的な柔らかさを見せつけた。
「ルイズの言うとおり、確かにこれは胸囲だ」
『やっぱ驚異だろ?』

ワルドの側頭部にルイズの蹴りが炸裂するのは、この一瞬後である。


To Be Continued→
222仮面のルイズ:2008/03/15(土) 02:28:44 ID:MuemkSil
投下したッ!
カリン様のキャラって難しい。
かなり独自解釈になってしまった気がする。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:33:01 ID:dE60a9Ps
GJっした!
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:37:47 ID:GUrSXwkL
さて、今日はひとまず寝てまた明日の朝に読ませてもらおうか…
しかしその前に、乙!!
一周年一番槍見事!
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:49:11 ID:/jZwuZ63
GJ!!

ワルドとデルフ、誰が上手い事を言えとwww
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:50:01 ID:fki0rpOD
GJ
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:54:29 ID:+QomM+rw
GJ!
お袋さん子煩悩。
ワルドにとっての脅威に笑いました。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 02:56:12 ID:oSEOLeoZ
ワルドwwwGJww
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 03:01:45 ID:Kt4UkH43
GJ!
きちんとシリアスの後でギャグをとるってのがいいね
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 03:28:45 ID:6jmKuuPD
ワルドいいキャラだw
GJ!
231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 04:01:54 ID:1ZjncqBT
GJ! さすがおっぱいソムリエ・ワルドwww
232名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 04:19:35 ID:/iIGhxLl
さすがにラッキースケベ(シェフィールドには殆どレ○プ)なアヌビスワルドには及ばないけど
仮面ワルドも優遇されてるよな〜
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 05:57:33 ID:hfL4cyx5
マテ
アヌワルのシェフィールドのはハッタリじゃないのか
本当に犯っちまってたのか
234名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 07:29:30 ID:iNtJMS+7
>233

ヤッてはいないですよ
そもそもアヌビスワルドは胸にしか興味ないですからw
あ、今は太股にも目覚めてるんだっけ?
235名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 08:40:39 ID:eD9pA67q
仮面さん投下乙そしてGJでした
ルイズの母様もルイズも切ないなあ
やはり石仮面は“親子”に不幸を呼ぶ代物なんですね……
あとおっぱい子爵は自重しろ
236名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 10:13:02 ID:ciIvz2nc
                  おっぱい一筋30年
     _
   ( ゚∀゚)x"⌒''ヽ、        鍛えに鍛えた左腕
   (|     ...::   Y-.、
    |  イ、     ! :ヽ      求めるものはただ一つ
    U U `ー=i;;::..   .:ト、
          ゝ;;::ヽ  :`i      今日も明日も腕を振る
            >゙::.   .,)
           /:::.  /;ノ
     ゞヽ、ゝヽ、_/::   /
     `ヾミ :: :.  ゙  _/
       `ー--‐''゙~
237名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 11:49:25 ID:/l1cogP3
振りすぎ
238名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 14:13:33 ID:lP1pSnP/
筋肉大移動かよwww
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 14:37:46 ID:6ik4Le9l
ちと遅れてるからギクシャクするかもしれんがぁぁぁぁぁぁッ!!


仮面氏GJ!!!!!!!!!!!

カリンさんの母としての愛情に全オレが泣いた
240偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 15:14:35 ID:Y+hMrNKW
朝昼は授業、夕は図書館、夜は体を鍛えるために広場でデルフリンガーを
抱えながら走り込みをしていた。
「貴族の娘っ子、もう止めとけバテバテじゃねえか」
「何を言っているのデルフリンガー・・・ハアハァ・・・あなたが言ったんじゃない
・・・体を鍛えることの基本は・・・走り込みだと・・・ハアハァ・・・」
虚無の手がかりはデルフリンガーの記憶の中にあるというのなら、わたしが
振って思い出してもらうしかない。
「やり過ぎだ、最初からそんなんじゃ鍛えるどころか体をブッ壊しちまう」
「まだよ・・・まだ全然足りないわ・・・」
「どうなってもしらねーよ俺ァよー」
さて、もう一頑張りしますか。顔を上げると月に照らされて人影があらわれた。
「誰?」
わたしが声をかけると、人影はびくっ!として持っていた何かを取り落とした。
がちゃーん!と月夜に陶器の何かが響き渡る。
「わわわ、やっちゃた・・・。また、怒られちゃう・・・、くすん」
「シエスタ!?」
月明かりに照らされて姿を見せたのはメイドのシエスタだった。
メイドの名前なんか覚えないわたしだけどプロシュートが結果的に助けたという
縁で言葉を交わすようになっていた。
「あのっ!とても珍しい品が手に入ったので、ミス・ヴァリエールにご馳走しよう
と思いまして、お茶っていうんです。走られて喉が渇いているんじゃありません
か、よければどうぞ」
「覗いてたの?」
「いえ、その、そういうわけじゃ!」
シエスタに見られても別に問題ないか・・・
「まあいいわ、淹れてちょうだい」
「はい、お待ちください」
お茶に口をつける・・・独特の味ね・・・
「シエスタ、ミルクは無いの?」
「いえ、これは何も入れずに飲むそうですよ」
「ふーん」
思っていたより喉が渇いていたのか、あっという間に飲み干した。

ぐー

わたしのお腹が大きな音を立てる、シエスタにもしっかりと聞こえたようね。
走りまくったせいでお腹の中が空っぽになったようだ。
「あははは・・・はしたないわね」
241偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 15:15:56 ID:Y+hMrNKW
「お気になさらず、こちらも宜しければいかがですか?」
シエスタが小皿を差し出してくる、そこにはクックベリーパイが!
「い、いいの?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとう、頂くわ」
本当ならかぶりつきたいところを我慢してフォークで行儀良く食べていく。
「ンまーい!」
・・・ああ・・・しあわせ・・・
「お茶の御代りもどうぞ」
紅茶が欲しいけど、しょうがないか。新しく淹れられたお茶を飲む、これは・・・
「甘さが口の中からスッと引く感じがする、悪くないわね・・・
それにクックベリーパイもディ・モールト(非常に)美味しいし・・・
マルトーさん、いい仕事してるわね」
「いえ、あの違うんです」
シエスタが声をあげる。
「あの、これは私が焼いたんです」
「本当なの?町で売っている物より美味しいわよ」
「はい練習しましたから」
「まさか、わたしの為に?」
「はい、ミス・ヴァリエール最近元気が無いように見えたものですから」
自分で気がつかなかったけど、シエスタにはそう見えたのか・・・
「ありがとシエスタ、おかげで元気百倍よ!」
「喜んで頂いてなによりです」
「じゃあ行くわ、ご馳走様シエスタ」
「ミス・ヴァリエール今日のところはその辺りにしておいたほうが・・・
明日に差し障りが出ますので・・・」
「大丈夫よ、これ位。じゃあねシエスタ」
わたしはデルフリンガーを抱え再び走りだした。

翌日シエスタの言った通り体が痛くてベッドから出る事が出来なかった。

242名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 15:16:55 ID:/HzvI1fb
投下の最中は雑談もない。一人で行くんだ書き手さん達。
投下されるのは小ネタであり…短編であり、皆の待ち望む奇妙な使い魔…
生き延びるんだ、あんた達は『希望』!!ここはオレらが支援する。
来いッ!プッチ神父!(MIH的な意味で)
243偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 15:17:43 ID:Y+hMrNKW
投下終了

祝 一周年!
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 15:18:04 ID:9T7iXwAS
テラフォーチュンオブホイールwww
245名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 15:20:01 ID:9T7iXwAS
連レススマソ>>236ね後投下GJ
246名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 15:27:51 ID:6jmKuuPD
GJ!
247名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 16:21:05 ID:MOcGWD65
うぉぉぉ!なんというGJ!
そして>>244
車輪の運命ってどーゆー意味だよクソックソッ!
248偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 16:25:51 ID:ggmBt9Lz
わたしは夜遅く魔法の練習を広場の隅で行っていた。
「ウル・カーノ」
火は起こらず爆発するだけだった。錬金、風鎚、凝縮、着火・・・
相変わらず何を唱えても爆発しか起こらない、変わった事といえば
抜群にコントロールが良くなった事位ね。
夜も遅いというのに本塔からメイドたちがゾロゾロと出てきた。
「精が出ますねミス・ヴァリエール」
その中の一人が声を掛けてきた。
「シエスタこそ、こんな時間まで仕事してたの?」
「はい、厨房と食堂は常に清潔にしておかないと、虫が出たら大変ですから」
確かに食事に虫が入っていたら大騒ぎよね。
「ミス・ヴァリエール・・・あまり根を詰めると体に良くありませんよ」
「それは、あなたの方じゃないの?」
わたしがこんな生活を始めたのは、つい最近だというのにシエスタは
今まで朝早くから夜遅くまで働き詰だ。
「私ですか?私はキチンと息抜きしてますよ」
エプロンの下からスッと一冊の本を取り出し、わたしに手渡した。
「さあ、どうぞどうぞ」
読んでみろっていうの?建物の明かりを頼りに本を読んでみる。
なになに・・・バタフライ伯爵夫人の優雅な一日。

なっ、何?何なのコレは!?××××って何!?
「あががががががががが・・・か、返すわ」
シエスタに本を突っ返す。
「お気に召しませんか?」
「召さないわ」
本をエプロンの下に戻すと今度は紙束を取り出した。
どれだけ入れてんのよ。
「では、こちら等いかがでしょう」
紙束を受け取り読んでみる、また同じような内容なんだろうか。
249偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 16:27:18 ID:ggmBt9Lz
見つめ合うギーシュとプロシュート。
ギーシュ、プロシュート、ギーシュ、プロシュート。
お互い名前を囁き合いながら顔を近づけ、そして・・・

「えーと、シエスタさん・・・これは一体なんでしょう?」
「ギーシュ様×プロシュートさん。ギーシュ様へタレ攻めですわ」
シエスタは極上の笑みを見せた。
「あの男同士なんですけど?」
理解出来ないわ。
「ミス・ヴァリエール」
シエスタがコホンと静かに告げる。
「そこが、いいんじゃないですか」
「ごめん、わかんないわ」
・・・ていうか、プロシュートの名前を勝手に使わないで欲しいんだけど。
「そうですか・・・」
シエスタ、こちらが申し訳なく思うぐらいガッカリしていた。
「お力になれなくて残念です」
シエスタは肩を落とし、トボトボと去って行った。

わたしは走り込みの後建物の周りを息を整えながら歩いていた。
バタフライ伯爵夫人・・・あんな物が平民の間で出回っているの?
それに、あの紙束・・・
角を曲がると出会い頭に紙束を山ほど抱えた人とぶつかり
向うの人が持っていた紙束がバサバサと地面に落ちていった。
「ご、ごめんなさい。拾うわ」
ぶつかった人はマリコヌルだった。わたしは紙束を拾うためにしゃがみこむ。
「ル、ルイズ!?いいよいいよ、僕がやるから」
彼が杖を振るうと落ちていた紙が元通りに纏り、彼の両手の中に納まる。
「じゃあ、僕は急ぐから」
マリコヌルはワタワタと駆け抜けていった。
「なんなのよ一体」
わたしも寮に戻ろうと足を向ける。
カサッ。一枚の紙が足元に落ちていた。
取りこぼしだろうか、わたしは紙を拾い上げるとそこには絵が描かれていた。
キュルケとタバサ、二人が服を半分脱いだ状態で絡み合っていて
下にこう書かれていた。
タバサ×キュルケ

・・・ああ・・・世の中って広いなあ・・・

250偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 16:30:15 ID:ggmBt9Lz
一周年記念

他の書き手さんは夜になったら投下するのか?

終了
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 16:34:27 ID:KvIji4dC
ちょwwwwwGJwwwwww
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 16:40:57 ID:jXSAqKUv
なんだこのぽっちゃりさんはwwww
さぁ、その個人製作の本をワールド・ドア経由で日本に持ち込むんだ
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 18:09:55 ID:RvagT+0H
GJ!
誰がその本作ったんだよw
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 18:26:59 ID:eD9pA67q
GJ!
ってか何が流行ってんだハルケギニアw
255ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 18:55:11 ID:1BKPHZqq
GJ! 偉大さんは偉大ですね。センスが良すぎる。
それじゃあ一周年記念でいつもの1、5倍増量で7時からお送りします。
256ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:00:46 ID:1BKPHZqq
アンリエッタ姫殿下の御前にてルイズは傅く。
深く下げた頭は彼女への敬意と謝罪の意を表していた。
ルイズは全てを明かした上でアンリエッタの言葉を待つ。
自身の背信行為が許されるなどとは思っていない。
罰を言い渡されれたのならば甘んじて受け入れよう。

謁見の間での姫様の口振りは彼の実力を知っているようだった。
きっと助力として望まれたのは私ではなく使い魔の方。
以前なら屈辱と受け取ったかもしれない。
だけど今は違う。あるのは望まぬ力を与えられた悲しみだけ。
でも圧倒的な不利を覆すには彼の力は不可欠。
そうと知っていながら私は彼を元の世界へと逃がしてしまった。
それは真にトリステインの事を案ずるならば犯してはならない過ち。
……なのに私は一国の安全よりも彼の命を優先した。

かつてワルドが語った事を思い出す。
『どちらが正しいのかなんて誰にも決める権利はない』
あの時は意図さえも理解できなかった言葉が重く響き渡る。
裏切り者。その刻印はワルドだけではなく私にも刻まれたのだ。
国も使い魔も裏切って私は自分の心に従った。
それが私の罪。守るべき貴族としての責任を放棄した罪。

何も告げぬまま、そっとアンリエッタの手がルイズの肩に添えられる。
びくりと肩を震わせる彼女にアンリエッタは静かに顔を寄せる。

「いいのですルイズ。私に貴女を責める資格はありません」

ぎゅっとルイズの肩を抱き締めて彼女は告げた。
それは口先だけの言葉では断じてない。
合わせられた胸を伝ってアンリエッタの温かな気持ちが流れ込んでくる。
一人の少女として振舞う事が許されなかったのは彼女も同様だった。
アルビオンに付け入る隙を与えたのもウェールズに宛てた恋文のせい。
貴族としての生を課せられた少女の、たった一度だけのわがまま。
同じ想いを抱えた親友をどうして彼女が裁けるというか。

ウェールズ様を喪って独りぼっちになったと思っていた。
だけど違う。私にはまだ心強い友と臣下がいる。
復讐に命を捧げるなどあってはならない。
このトリステインと彼女達を守る為にも私は生きる。
……たとえ、それが愛しい人のいない明日であろうとも。
257ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:02:18 ID:1BKPHZqq
言葉を交わす必要はない。
無邪気に遊び回った頃のように二人の心は通じ合っていた。
込み上げてくる感情と涙を堪えながらルイズは懐に手を入れた。
そこから取り出した『始祖の祈祷書』と『水のルビー』を彼女に差し出す。

「これはお返し致します」
「いえ、それは貴方が預かっていてください。
少なくとも私の気持ちに整理がつくまでの間は」
「……分かりました。ではお預かりします」
「ええ、いつの日か必ず貴方の手で返してください。
それまでは決して死んではなりません、これは命令です」

にこりと笑みを浮かべてアンリエッタは告げた。
ルイズなら命を賭して自分を守ろうと無茶をするだろうと予期していた。
それに釘を刺す意味で彼女は国宝を持たせたのだ。

「ではルイズは私の傍に」
「はい!」

隣に寄り添うようにルイズは自分の馬を引いてくる。
魔法が使えずとも優秀な指揮官でなくとも今のアンリエッタには彼女が必要だった。
誰よりも安らぎを与えてくれる親友。
それこそが復讐に身を焦がす自分を止めてくれる最後の砦。

(……いつまでも私の傍にいてくださいねルイズ)



「これでどうかな? 急拵えだから見栄えは悪いけどね」
「いやいや、こいつぁ立派な物ですよ。十分すぎるぐらいでさあ」

人一人隠れられるぐらいの深さを持った穴が線の如く延びる。
それは紛れもなく彼のいた世界で言う塹壕だった。
ヴェルダンデの手際の良さにニコラ軍曹は思わず感嘆を漏らす。
そして同時に自分の助言を何の抵抗もなく聞き入れたギーシュにもだ。
本来、中隊長を務めるべき人物は勝ち目のない戦いを前にして逃亡した。
ここにいるのは士官の教育も碌に受けていない傭兵上がりだというのに。
戦場を知り尽くしているが故に、如何にして銃撃や砲撃を防ぐかを彼は知っていた。
だが並の貴族であれば、このような場所に身を隠すなど誇りが傷付くと拒否しただろう。

(大物なのか、ただの臆病者なのか、判断がつきかねる人だな)

まあ、どちらにせよ自分が生き残る確率が上がったのには変わりない。
一見すれば頭上を大艦隊に抑えられ数でも負けている絶望的な戦だ。
だが、まるっきり勝ち目がないかというとそうではない。

あれだけの艦隊を維持するには相当な補給が必要となる。
それこそタルブ、ラ・ロシェールを制圧し橋頭堡でも作らなければ賄えない。
加えて『スヴェルの月夜』を過ぎた今、時間が経つほどにアルビオンはトリステインより離れていく。
そうなれば艦隊とを繋ぐ補給線も延びざるを得ず、断ち切る事も不可能ではなくなる。

逆にこっちは奇襲に面食らって準備が整わなかっただけで、
この場を持ち堪えれば大国に相応しい陣容で相手を追い返せる。
傭兵は端金で命を捨てるような真似はしない。
勝算があればこそ戦争を仕事とする彼等は付き従うのだ。
258ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:04:14 ID:1BKPHZqq
「他に必要な物はあるかい?」
「そうですな。後は運がありゃあ完璧なんですけどね」

ギーシュの問いに彼は笑いながら答えた。
結局、勝負はやってみなければ分からない。
そんな時に一番頼りになるのはツキしかないのだ。
だけど幸運を用意できる指揮官などいる筈もないと思っていた。

「それなら問題ない」
「へ?」
「魔法の腕はドットクラス、戦場に行った事もない僕が、
何万って数のアルビオン軍に包囲されたニューカッスル城から逃げて来れたんだ。
強運でもなきゃそんな奇跡起こせるわけないだろ?」

ぽかんとニコラは口を開けたまま立ち尽くす。
冗談めかしたように言うギーシュに言葉も出ない。
こんな状況でよくそんな大法螺が吹けるものだと、むしろ感心を覚える。
彼の嘘に乗っかるつもりでニコラは返した。

「ああ、そりゃ頼もしいんですがね。
そん時に運を使い果たしちまったかもしれませんぜ?」
「……怖い事言わないでくれ。
ただでさえ戦場に立っているだけでも膝が震えてくるんだから」

そう答える上官の膝を見れば
嘘でも冗談でもなく本当に震え上がっていた。
沸き上がる疑念を振り払いながらニコラは溜息をついた。
あの戦場から帰ってくるなど有り得ない、と。
もし、そんなのがいるとしたら、そいつは始祖の生まれ変わりに違いない。


「姫殿下、お呼びに従い参上しました」

アンリエッタ姫に呼び出されたアストン伯が片膝をついて挨拶を述べる。
僅かに頬を伝う冷や汗は抗命罪を問われる恐れから来ていた。
しかしアンリエッタは冷静に現状報告を促す。
村を見捨ててまで得た情報は余す所なく彼女に伝えられた。

「敵はタルブ村を強襲、竜騎士隊によって村は焼かれ艦隊の上陸地点を作り出したようです。
村人は事前に森の中へと避難させてあった為、犠牲者はおりません。
私めは手勢三十騎を率いて姫殿下との合流した次第です」
「御苦労です。ところで邸宅の警備はどうしていましたか?」
「は? 我が屋敷ですか? フーケ騒ぎの際に衛兵の数を増やしたぐらいで他には……」
「番犬は使っていましたか?」
「え、ええ。それが何か?」
「では急ぎ屋敷に引き返して犬を数頭連れて来るのです。
事は急を要します。直ちに取り掛かってください」
259ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:05:51 ID:1BKPHZqq
アンリエッタの命を受けて出て行くアストン伯の首は傾げたままだった。
命令の意図を理解出来ぬまま彼は邸宅へと馬を走らせる。
その背中を眺めながらマザリーニは姫に訊ねるように呟く。

「上手くいきますかな」
「いってもらわねば困ります。
幸い、こちらに彼がいないのを向こうは知りません。
どんなに小さな手であろうと打っておくに越した事はありません」

密談するように話す二人の前に慌てた様子で伝令が飛び込んできた。
彼の口頭報告を聞きながらアンリエッタ達は即座に空を見上げた。
まるで蓋をするようにアルビオン艦隊がその高度を下げていく。
その行動が意味する所はただ一つ。

「各隊に連絡! 艦隊からの砲撃に備えなさい!」


トリステイン陣地に向けられた砲門が次々と火を噴く。
大気を震わせる砲声に、大地を揺るがす弾着。
巨人の合唱ともいうべき轟音がタルブ周辺に響き渡る。
さすがに本陣は風メイジ達が直撃を逸らしているが、
他の各所では凄まじい土煙と共に並みいる兵達が吹き飛ばされていく。
その光景を後方の艦で眺めるクロムウェルは呟いた。

「所詮はこの程度か。いや、我が軍が強すぎたのか」
「ならば『レキシントン』で御覧になればよかったのでは?」

護衛として隣に控えたフーケが尋ねる。
無論、意見するつもりなど毛頭ない。
彼女にしてみれば、クロムウェルのこの気まぐれは僥倖だった。
如何に強大な戦艦といえどバオーの力を知っているフーケの気は休まらない。
あの怪物と戦えと言われていたなら、とっとと妹を連れて逃げ出すつもりだった。
しかし戦場から離れた艦であれば空を飛べない奴と交戦の恐れはない。

「艦長と艦隊司令、皇帝が同じ艦に揃ったのでは指揮系統が混雑する。
それに中からでは『レキシントン』の勇姿を見れないのでな」

見下ろすのは砲撃の為に降下した入道雲の如き巨艦。
その砲声は離れて尚、彼等の耳を劈く。
陶酔するように艦隊を見下ろすクロムウェルに、フーケは溜息をついた。

(こいつには過ぎた玩具だね。軍隊も……アレも)

心中を悟られぬように彼女は仮面を被り直す。
警戒すべきシェフィールドは同席していない。
それが何を意味するのかは判らないが、
親から解放された子供みたくはしゃぐ上司に愛想を尽かしたのではとそんな事を考えてしまう。

砲声が止む。弾着の煙が地上と敵兵を覆ってしまったが為の中断。
しかし地形さえも変えてしまうのではないかという砲撃を浴びて、
有象無象のトリステイン軍に反抗する気力は残されている筈がない。
そう考えたクロムウェルは満足げな笑みを見せた。
260ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:07:00 ID:1BKPHZqq
しかし、それは響き渡る鬨の声に掻き消された。
吹き抜ける風が煙を洗い流し、その姿を現していく。
晴れ渡った地上には杖や銃を手に健在を示すトリステイン兵の姿。
数で勝るアルビオン軍さえ、その気迫の前に踏み止まっていた。

まるで効力を示さぬ砲撃に、噛み締めたクロムウェルの歯が軋みを上げる。
戦局の変化に一喜一憂するクロムウェル。
その姿に皇帝としての器があるとは到底思えない。

クロムウェルはアンリエッタをお飾りと呼んだ。
しかし、それはこの男も同様なのではないかと疑わずにはいられなかった。


「何をやっておる! 砲撃手はちゃんと敵を狙っているのか!?」
「敵の痩せ我慢だと思いたいものですな」

がなり立てるジョンストンの横でボーウッドは冷静に感想を口にした。
多少時間が掛かるとも、このまま砲撃を続ければいずれは打ち崩せる。
だが、血気に逸る総司令や皇帝はそれを望むまい。
力押しででも敵軍との短期決着を図ろうとするだろう。
その彼の予想通り、竜騎士隊や地上部隊に突撃命令が下された。
直ちに艦に搭載された竜騎士達が飛び立っていく。
その中、ワルドは命令に背いてただ黙って戦場を観察していた。
船員の一人がそんな彼を見咎めて声を荒げた。

「ワルド子爵! 出撃の命令が出ています!
従わない場合は抗命罪として処分される事も……」
「黙っていろ」

ワルドの一言に船員は凍りついた。
僅かにこちらを睨む視線はそれだけで人を殺せる。
もし僅かにでも声を出せば喉を掻き切られていただろう。
静かになった彼にワルドは淡々と告げる。

「私の隊は先程出撃して休ませている所だ。
それにあの怪物を仕留める為、皇帝直々に自由行動も許されている。
何の問題もないと総司令官にも伝えておけ」
「はっ!」
「それともう一つ。艦隊の高度を上げるように伝えろ」

怯えを隠しながら彼は敬礼して応える。
一刻も早く立ち去ろうとした彼をワルドは呼び止めた。
頼まれた総司令官への言伝に彼は恐る恐る聞き返す。

「ですが、これ以上高度を上げると風の影響で砲の命中精度が……」
「構わん。この程度の高さならば奴は飛び移ってくるぞ」

ラ・ロシェールでの光景が未だにワルドの目に焼きついている。
この戦の勝敗などワルドにはどうでもいい。
バオーを打ち倒す事だけが今の彼の全てだった。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 19:08:13 ID:jXSAqKUv
支援するぜぇ!
262ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:08:32 ID:1BKPHZqq
「鬨の声を! 杖を掲げて我等の健在を示すのです!」

アンリエッタの号令に合わせて兵達が雄叫びを上げる。
その周りでは負傷した兵達が次々と後方へと運ばれていた。
砲撃による被害は甚大だった、だからこそ敵に悟られてはならない。
もし、こちらが弱っていると知られば敵は一気呵成に攻めてくるに違いない。
ならば虚勢であろうとも張り続けて敵を食い止めるべきだ。

あれだけの砲撃を浴びてもトリステイン軍の士気は衰えなかった。
象徴でもあるアンリエッタ姫に率いられている事に加え、
目の前で燃やされたタルブ村の惨状が彼等の義憤に火を点けたのだ。

「迎撃の用意を! これ以上トリステインへの侵攻を許してはなりません!」

砲撃が止み、動きを見せる敵軍にアンリエッタが指示と檄を飛ばす。
迫り来る竜騎士隊を迎撃すべくグリフォン隊と竜騎士達が飛び立っていく。
彼等を送り出した後で、ずしりと彼女の両肩に重みが圧し掛かった。

遂に戦いの火蓋は切られてしまった。
気丈に振舞おうとも彼女はまだ初陣も果たしていないのだ。
大軍を指揮する重責は彼女を押し潰そうと更に重みを増していく。

そんな彼女の手を隣に控えたルイズが握り締める。
その暖かな感触だけが今のアンリエッタにとって唯一の救いだった。


「いい報せと悪い報せが二つずつあるんですが、どれから聞きたいですか?」
「それじゃあ交互に頼む。知っての通り心臓が強い方じゃないんで」
「まず良い方から。艦隊が砲撃を止めました」
「なるほど。確かにそれは良い報せだね」

長玉で敵軍の様子を窺っていたニコラの軽口にギーシュが応える。
ヴェルダンデの掘った塹壕は砲撃の嵐に対しても効果を発揮していた。
多少、負傷者は出たがそれでも他の部隊に比べれば微々たるもの。
何とかなるかもしれないとギーシュは思い始めていた。
だが続くニコラの報告がそれを砂糖菓子みたいに打ち砕く。

「ですが、それは地上部隊を突入させる為の前準備のようです」
「それが悪い方か。じゃあ次の良い報せは?」
「敵さんの動きから次にどこを狙ってくるか判りました」
「なら援護に向かう必要があるな」
「いえ、その必要はありません。此処です」
「………え?」
「敵軍が狙っているのは此処の突破です、指揮官殿」
「はは、ははははは」

敬礼するニコラを前に、ギーシュの顔に乾いた笑みが浮かぶ。
何が良い報せと悪い報せだ、全部悪い報せだったじゃないかとギーシュは一人毒づいた。
彼の淡い期待は押し寄せる敵軍の足音によって瞬く間に消し飛ばされたのだった。
263ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 19:09:44 ID:1BKPHZqq
以上、投下したッ! 次回は総力戦!
264名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 19:13:29 ID:jXSAqKUv
GJ!
ギーシュはストレスで髪がまっちろけになるんじゃないか?www
265偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 20:41:39 ID:enEHVmOQ
いつもの日課をこなす為に広場に出ると隅の方で一人のメイドが泣いていた。
あの黒髪はシエスタだ。
「どうしたのシエスタ。マルトーさんにでも叱られたの?」
シエスタはブンブンと首を横に振った。
「余計なお世話だったかしら・・・わたし、もう行くわね」
この場は、そっとしておこう。
「・・・待ってくださいミス・ヴァリエール、話を聞いてもらえますか」
「ええ、聞かせてちょうだい」
シエスタと建物の階段に並んで座り込んだ。
暫く黙り込んだ後シエスタは静かに語りだした。
「・・・私、帰る所が無くなっちゃいました」
「帰る所が無くなったって、どうゆうこと?」
「たった今聞きました。二日前に私の故郷タルブ村が全滅しました・・・
原因は不明・・・」
・・・全滅・・・原因不明・・・
「王国のアカデミーの調査でも何も解っていません。亡くなった村の人達から
ディレクトマジックの反応無し。現在調査中、村人が持っていた未知の病気が
一斉に発症した可能性が有るという事でタルブ村出身の私にも調査に来られ
ました。そのお蔭でこの事を知る事が出来たんですけど。」
シエスタの目から、いつもの輝きが消えていた。
「ごめんなさいシエスタ・・・何て言葉を掛けて良いのか分からないわ」
「いいんですよ、ミス・ヴァリエールもプロシュートさんを失ったではありませんか」
虚ろな目で微笑むシエスタが痛々しくて見ていられない。
「でも、でも使い魔一人と家族全員じゃ・・・」
わたしの言葉をシエスタはさえぎった。
「ミス・・・数の問題ではありません。命の重さに変わりありませんから」
シエスタの瞳から涙が溢れていた。
「ごめんなさい、シエスタ」
「だから、謝らないで下さい。話を聞いてもらっただけで充分ですから」
・・・軽々しく聞くんじゃなかった・・・なんて無力なの・・・
266偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 20:45:40 ID:enEHVmOQ
「調査に来られた方は、こう仰られました。これは始祖ブリミルの怒りだと」
「始祖ブリミルの怒り?」
「いつまで経っても聖地を取り戻さない貴族に始祖ブリミルがお怒りになった
・・・そう仰ってました」
何処かで聞いた事あるような無いような。
「だけど、おかしいじゃ無いですか!それなら、何でメイジでも貴族でもない
村の人達が全員死ななきゃならないんですか!」
今までずっと押えてきたのかシエスタの感情が爆発した。
「シ、シエスタ落ち着いて」
「どうして、みんな老衰で死ななきゃならないんですか!どうして!どうして!」
老衰ですって!!シエスタの両肩を押さえ怒鳴りつける。
「シエスタ!!」
シエスタは一瞬唖然としたが、直に気を取り戻した。
「す、すみませんミス・ヴァリエール取り乱してしまいまして」
「いいのよ、それよりも今『老衰』って言った?
何も解らなかったんじゃなかったの?」
「あ!すいません混乱してまして話す順番を間違えてしまいました」
「構わないわ。こんな事があったんですもの、続けてちょうだい」
「村の人達は全員老衰で死んでいたそうです・・・
お爺ちゃん、お婆ちゃん、子供達、赤ちゃんまで・・・原因は不明です」
お爺ちゃん、お婆ちゃん、子供達、赤ちゃんまで老衰で死亡・・・
「グレイト・・・フル・デッド・・・」
「ミス・ヴァリエール・・・なんですって?」
あ、ああああ、ああああぁああああああああああああああああ・・・
お、思い出した。ゆ、夢を・・・唯の夢じゃなかった・・・
何故、忘れていたの・・・オリヴァー・クロムウェル・・・
・・・おのれ・・・どこまで、わたしを苦しめれば気が済むの・・・

・・・その偉大なる使命のために、始祖ブリミルは余に力を授けたのだ
閣下、始祖が閣下にお与えになった力とは何でございましょう?
よければ、お聞かせ願えませんこと魔法の四大系統はご存知かね?
ミス・サウスゴータその四大系統に加え、魔法にはもう一つの系統が
存在する。始祖ブリミルが用いし、零番目の系統だ。真実、根源、
万物の祖となる系統だ零番目の系統・・・虚無?余はその力を、始祖
ブリミルより授かったのだ。だからこそ、貴族議会の諸君は、余をハル
キゲニアの皇帝にすることを決めたのだ・・・

お、オオオ・・・オリヴァー・クロムウェル・・・虚無ですって・・・
わたしが求める虚無の系統をお前が!?・・・
うあああああああああぁああああァあああ・・・
どこまで!どこまで人をコケにすれば気が済むのオリヴァー・クロムウェル!!

だけど、これで終わりじゃなかった・・・負の連鎖は止まらない。
267偉大なる使い魔:2008/03/15(土) 20:52:32 ID:enEHVmOQ
投下終了

次回、プロシュート兄貴トリステイン学院襲来!

まとめの方へ。今日の三回分の投下、分けて登録してもらえると嬉しいです。   

268名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 20:57:28 ID:xtAzYKmk
ゼロいぬのギーシュはかっこいいな
このギーシュは黄金になれるか?まあなれなきゃ死んじゃうんですけど…


まさかここで兄貴が出てくるとは予想外だぜ
今思えばアンドバリの指輪は外道だよな
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 21:26:23 ID:jXSAqKUv
うっわぁ暗いよ、暗いよorz
けどGJ
270名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 21:27:40 ID:8YOCHKpT
生ハムの兄貴じゃ無く、死ハムの兄貴だ
271名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 21:36:25 ID:eD9pA67q
偉大さん連作GJでした
うわああああ!兄貴ィィィイ!
クロムウェル爆破されろ!
272名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 21:38:57 ID:WOqXTAUO
亀だが>>210
ジョジョでは描くのに面倒なスタンド使いはすぐ死んでしまうという法則があるのさ
273名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 21:50:28 ID:RAWK0UKC
偉大さんGJ!一日に3回投下とは恐れ入る。


そして22時に投下。
274Shine On You Crazy Diamond:2008/03/15(土) 22:02:37 ID:RAWK0UKC
暫らく進むと馬車は深い森へと入っていた。
木々は鬱蒼と茂り、多くの葉が太陽を遮っているため昼間だというのに薄暗い。なんとも気味が悪いところである。
ここにいるだけで心細くなってしまいそうだ(が、そんなことをおくびにも出さないのが貴族である)。
馬車はさらに先進んでいくがドンドンと道が細くなっていく。
「ここから先は、徒歩で行きましょう」
するとミス・ロングビルはそう言った。
確かに、ここから先を馬車で行くには道幅が狭いし、なにより乗っていけたとしても馬車の音でフーケにわたしたちのことを気づかれる恐れがある。
なのでミス・ロングビルの発言にしたがって、わたしたちは馬車から降りて小道を歩み事になった。
ミス・ロングビルを先頭に、徒歩で小道を進んでいく。
ここまで来ているので、もしかしたらわたしたちのことは既にフーケに悟られているかもしれない。そしてわたしたちを虎視眈々と狙っているのだとしたら?
そう考えると気が抜けない。そんな緊張の中歩いていくが、
「なんか、暗くて怖いわー、いやだー」
そんなことツェルプストーには関係ないらしく、ヨシカゲの腕に手を回し抱きついている。
こんなときでもツェルプストーにとっては男を振り向かせることの方が大切らしい。
「離れてくれ。いざというとき動きにくい」
「だってー、すごくー。こわいんだものー」
……呆れるけど、色ボケもここまで来ればたいしたものかもしれないわね。ツェルプストーには緊張感という言葉が無いのかしら?
この状況でそこまで余裕な態度を取れるところは褒めてあげてもいいくらいだわ。絶対に褒めないけど。
275Shine On You Crazy Diamond:2008/03/15(土) 22:03:45 ID:RAWK0UKC
歩いていると開けた場所に出た。森の中の空き地といった感じで、広さは学院の中庭ぐらいの大きさだろう。
その真ん中に、廃屋が建っていた。
ミス・ロングビルが言っていたのはあの廃屋なのかしら?
とりあえず、小屋からこちらが見えないように森の茂みへと身を隠す。幸い隠れる場所には困らない。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
そう言いながらミス・ロングビルはあの廃屋を指差した。やはりあの廃屋で間違いないらしい。
改めて廃屋に目にやる。朽ち果てた窯と、壁板の外れた物置がとなりに並んでいる。人が住んでいるような気配はまったく無い。
フーケは本当にあの中にいるのかしら?
疑っていても仕方が無い。今は中にいると信じて行動するだけである。みんなとの相談の末、次に行う行動は決まった。
タバサ立案のおびき出し作戦である。
まずは偵察兼囮が廃屋の近くまで行き、中を確認する。そして中にフーケがいれば挑発して外に誘い出すというものである。
あの小屋の中に、ゴーレムを作り出すほどの土はない。つまり外に出なければフーケの巨大ゴーレムは作れない。つまり外に出ざるを得ない。
そしてフーケが小屋の外に出たところで魔法で疾風怒濤の攻撃をお見舞いする。
つまりフーケが外に出てゴーレムを作り出す前に、魔法でフーケをけちょんけちょんにしてやるのだ。
なかなかいい作戦である。これならばきっと成功するだろう。
問題は誰が偵察兼囮をするかということだが、タバサが言うには「すばしっこいの」がいいらしい。
この中で一番すばしっこい奴と言ったら、やはりヨシカゲだろう。剣士(ほんとかしら?)だから素早い動きも出来るはず。
そういうわけで、偵察兼囮はヨシカゲということに決定した。
ヨシカゲは茂みから出ると、あっという間に廃屋まで近づいていった。そして暫らく中の様子を窺っていたかと思うと、これまた素早く戻ってきた。
「中には誰もいないみたいだ」
ヨシカゲがそう告げたので、今度は皆で近づいていく。窓を覘いてみる。小屋の中は一部屋しかないらしい。
部屋の真ん中にある埃塗れのテーブル、転がった椅子、崩れた暖炉、部屋の隅には薪が積み上げられている。そしてどこにも隠れられそうな場所は無い。
タバサがドアに向けて杖を振り罠が無いかどうかを確かめる。
「罠はないみたい」
そう呟くと、ドアを開け中へと入っていった。そして続けてヨシカゲが入っていく。
しかし、このまま全員入ってしまったら、もしフーケが戻ってきたときに不利ではないか?だれかが外にいて見張りをするべきだ。
うんうん。我ながらいい考えだわ。そして考えたからにはそれは本人がやるべきよね!
「わたしは、外でフーケが来ないかどうかを、見張っておくわ」
そしてそのことを小屋に入ろうとしていたツェルプストーに伝える。
「あっそ」
ツェルプストーは実に素っ気無い返事を返しながら小屋の中へ入っていった。
276名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:03:46 ID:1l4tso1L
久々だ吉良支援
277Shine On You Crazy Diamond:2008/03/15(土) 22:04:51 ID:RAWK0UKC
まったく、今の態度はなんなのだろうか。まるで外の見張りが必要ないとでも言うような態度だった。ほんと、いつもわたしを虚仮にして〜!
わたしが見張らずに襲われたらどうするつもりよ!まったく!
「ミス・ヴァリエール」
「は、はい?」
そんな腹を立てていたときに、ミス・ロングビルが話しかけてくる。一体なのだろうか?
ミス・ロングビルは小屋の中に入らないのかしら?
「わたくしは、あたりにフーケがいないかどうかを偵察してきます」
「あ、わかりました。気をつけて」
「ええ」
そう言って、ミス・ロングビルは森の中へと入っていった。やっぱりオールド・オスマンの秘書をする人は考えが違うわね。見張るんじゃなくて探索するなんて。
やっぱりオールド・オスマンのダメさをフォローするにはそれぐらいの機転が必要なのかしら?
「あっけないわね!」
そんなことを考えていると、何故かツェルプストーが大きな声を出した。中で何があったかはわからないけど、言葉からして破壊の杖が見つかったのかもしれない。
そうやって推測をしているところに、何故か大きな影が差した。
雲が上にでも来たのかしら?
何気なく上を向く。そこには、フーケの、巨大な土ゴーレムが、存在していた。
一瞬頭の仲が空っぽになる。ゴーレムは腕を振りかぶる。そこでようやく頭が事態を理解して、
「きゃぁああああああああ!」
悲鳴を上げた。それと同時にゴーレムが腕を振り小屋の屋根を吹き飛ばした!
「ゴーレム!」
ツェルプストーの叫ぶ声が小屋から聞こえてくる。そして次の瞬間、
「きゃああ!」
突然の突風に体が吹き飛びゴーレムから離れ、地面に倒れる。
一体なんなのよ!?
立ち上がり風が吹いてきた方向を見ると、ゴーレムが大きな竜巻に攻撃されていた。おそらくタバサの魔法だろう。わたしはあの竜巻によって吹き飛ばされたらしい。
しかし、ゴーレムにはそんな竜巻は効いたそぶりは無い。そして間も無く竜巻も消える。その代わり、今度は炎に包まれるがそれすらも効いたそぶりは無い。
「無理よこんなの!」
キュルケの焦ったような声を聞きながら、わたしは杖を取り出すと強く握り締めた。
自分は何をしにここに来たのか?フーケを捕まえるためだ。そしてみんなに馬鹿にされないため、認めてもらうためだ!
それなのに!見張りを買って出たのに発見できずにゴーレムに襲われて、無様な悲鳴を上げただけでなにもできず、あまつさえ味方の攻撃で吹っ飛ぶなんて!
見張りすらできないなんて、これじゃあ恥を晒しに来ただけだわ!馬鹿にされて当然!
だったらどうするの?決まってるわ!立ち向かうのよ!ここで背を見せたら貴族じゃなくなるわ!
ゴーレムは今、丁度うしろを向いている。それなら邪魔されること無い。攻撃するには絶好の好機。そんな好機を逃すわけがない!
タバサやツェルプストーが逃げていくのを見ながら、ファイヤーボールの呪文を唱え、魔法の成功を祈りながら杖を振るう。
278名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:05:18 ID:/HzvI1fb
「支援」…………それは「投下」があるゆえだぜッ!
279Shine On You Crazy Diamond:2008/03/15(土) 22:05:56 ID:RAWK0UKC
しかし、杖から炎は出ることは無く、ゴーレムの表面が少し爆発しただけだった。つまり失敗。何の決定打にもならない。
でも、そんなのは初めからわかっていたことだ。タバサやツェルプストーの魔法が通用しなかったのを見たときからわかっていたことだ。
魔法が使えない自分じゃ倒せないなんてわかっていたことだ!
でも、だからといって諦めるわけにはいかない!諦めて逃げたら自分は貴族ではなくなってしまう。そしたらだれも見返すことは出来なくなってしまう!
冗談じゃないわ!わたしは貴族よ。いつか魔法が使えるようになって、みんなを見返すのよ!
それに、諦めなかったら何とかなるかもしれない。諦めずに戦えば勝てるかもしれない。何事もやってみなくてはわからないではないか!
そう信じる事にする。そう信じて戦う事にする。そう信じなきゃ、きっとこのまま立っていることも出来ないような気がするから。
ゴーレムがこちらを振り返ろうとする。それにあわせて、もう一度呪文を唱えようとする。
「逃げるぞ!」
そのとき近くから不意に声が聞こえた。もちろん知っている声だ。ここ一週間ほど一緒に過ごしてきた自分の使い魔の声だ。
声のした方向を見ると、そこには想像したとおり、使い魔のヨシカゲが立っていた。
ヨシカゲは素早くわたしの手を握って、引っ張ろうとする。わたしを引っ張って逃げるつもりなんだろうけど、そういうわけにはいかないわ!
「いやよ!あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしをゼロのルイズと呼ばなくなるでしょ!」
そうヨシカゲに言って、引っ張られている手を振りほどこうとする。
「考えてものを言え!魔法も使えないお前が勝てるか!」
そのヨシカゲの怒鳴り声が耳に響く。そしてある一つの出来事を思い出させる。ヨシカゲがギーシュと闘った時のことだ。
ヨシカゲだって、魔法も使えない平民のくせに、ドットとはいえギーシュに勝ったではないか!そう、今の状況だってそれと同じこと!
わたしがヨシカゲで、相手がギーシュ!だったら、
「やってみなくちゃ、わかんないじゃない!」
「無理だ!」
無理なんかじゃないわ!使い魔にできて、そのご主人さまにできないなんてことはないのよ!それに、
「ここで逃げたらゼロのルイズだから逃げたって言われるわ!」
「どうでもいいだろうそんなこと!」
わたしにとって切実な問題を、どうでもいいというヨシカゲに腹が立ってくる。
そうだ、所詮ヨシカゲは平民なのだ。貴族としての在り方を知らなければ、貴族としての矜持すら知らないのだ。
「わたしは貴族よ。魔法が使える者を、 貴族と呼ぶんじゃないわ!敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」
そう言ってヨシカゲの手から離れようと手を引っ張って、突然手が離された。
えっ?どういうこと?今のは引き剥がしたとかそういうのじゃなくて、明らかに意図的に離された。どうして突然離すの?
その驚きのまま、ヨシカゲを見る。ヨシカゲの顔はいつもと同じような無表情だった。いつもそんな表情だから、いつもならまったく気にしない。
でも、今はそんな表情をしていられるような状況じゃない。現に、さっきまで慌てた表情をしていたではないか。その違いに、感じたことの無い気味の悪さを覚える。
そして、ヨシカゲの足が動いたと思ったとき、わたしはお腹に鋭い衝撃を感じた。
「げほぉ!」
一瞬にして呼吸が止まる。咽喉もとに何かが這い上がってくるような感じがする。何かを吐き出すような感じがする。
その後に、今まで感じたことも無いような、恐ろしいほどの痛みがお腹の中心にして駆け巡る。
痛みを抑えるように手でそこの部分を覆うがまるで意味が無い。最早立っていられなくなり、地面に跪き蹲る。眼から涙が溢れ出る。
「そんなに死にたいなら手伝ってやるよ。皆には必死で戦ったって言っといてやる」
そんなヨシカゲの声に、なんとか顔を上げヨシカゲを見つめる。その顔は、やっぱりいつもと変わらない無表情だった。
280初代506:2008/03/15(土) 22:08:34 ID:RAWK0UKC
以上。


吉良やシームーンは途中が全く書けてなくて止まってるです。
どういう展開にするかは既に思いついてるのに・・・
281名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:08:41 ID:/PB2IpHl
支援祭りだッ!
282名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:12:41 ID:6oFR1GWT
投下乙
ルイズ視点で改めて読むと非情というか非道だな吉良
283名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:14:42 ID:jXSAqKUv
おっちゅ
やっぱ悪役だしなぁ、こんなんだよなぁ
284名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:16:31 ID:/HzvI1fb
神経質吉良GJ!
俺も三十分くらいに投下したいんだが、やべえぜッ! 緊張で手が震える!
285使い魔は空高く:2008/03/15(土) 22:30:32 ID:/HzvI1fb
使い魔は空高く 第一章≪使い魔は立ち上がる≫

「チクショウ、まずい。まずいぞッ! これは!」
夜、フリーウェイを一台のオートバイが疾駆する。
まるで、暴走族のそれのような速度が出ているにもかかわらず、ハンドルを握る男はヘルメットをかぶっていない。『個人の自由は尊重されるべき』と、法定でその着用が義務付けられていないというのもあるが、彼の場合、そんなことを気にする余裕がないといった体だった。
むき出しの顔は筋肉が強張り険しい表情で、左目のまぶたが下がっている。上げようとはしているが上がらない。小刻みに痙攣するまぶたが、そう主張しているようだった。
「なんでこんな日に限ってバスが止まるんだ。コッチに来てからようやく手に入れたバイト、初日だっつーのによォ、クビになっちまうじゃあねえか! バイクなんか乗りたくないってのに、ヘッドライトも壊れちまってるしよォオオッ」
悪態をつくが、その表情と激しくなっている動悸、だらだらと流れ出ている汗からそのあせりようが見て取れる。ひとりごと然とした悪態も、あるいはそんなあせりを無意識に抑えつけようとしてのものか。
「ハッ、今のはァ―!」
しかしそれも無駄だったようで、不慣れなせいか、左目が開いていないことも手伝ってか、彼は降りるべきインターチェンジを見過ごしてしまった。
焦りがピークに達し、軽いパニック状態に陥った彼は正常な判断ができず、フリーウェイを逆走しようとした。減速もせずにである。
「お、おお、うおおおおお!」
このときの時速は、百と少し。当然曲がりきれず、彼のバイクは安っぽい特撮映画で使われる、怪獣の吼え声のような耳障りなスリップ音をたてながら分離帯に猛スピードで突っ込んだ。州立病院行きは免れないはずだった。
「なんだ? なんなんだあこれはぁあああ!」
衝突の瞬間、突如として彼の眼前に銀色に光り輝く鏡らしきものが現れ、バイクと彼はそれに頭から突っ込んだ。鏡は割れることなく、寧ろ彼を飲み込んでゆく。
どうやら鏡ではなかったらしい、などと彼が考える間もなく、
「うおああああぁぁああ! ……ッ……ッ!」
絶叫を最後に、彼は消えた。静寂だけが残る。
286名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:30:52 ID:/jZwuZ63
来いッ!!
プッチ神父!!!
287使い魔は空高く:2008/03/15(土) 22:35:05 ID:/HzvI1fb
それからしばらく。彼の絶叫を吸い込んだ夜空で、闇に染まった空高くで、きらめく星々の合間を縫うようにして、
二つの星屑が長い軌跡を描いた。

一章一説 〜星屑は違う空に流れる〜

時は春。
所はトリステイン魔法学院。
堅牢堅固な城郭を思わせ、普段は見るものに厳かな雰囲気を与える校舎も、今は陽気にあてられ
たようで、どことなく穏やかな空気に包まれている。空には綿菓子の食いかけのような雲がひと
つふたつ浮かんでいたが、逆にそれが透き通るような青を引き立てている。快晴だった。
そしてそんな晴ればれとした空の下では、轟音を伴った爆発が断続的に発生していた。
「これで53回目か!? つ、次はいつ、どこが爆発するんだ!?」「ゼロのルイズが何度失敗する
か、賭けてみるのも悪くね――――ッ」「賭けてる場合かァ――! もう少し離れなきゃあやば
い!」「成功のないまま終わり。それがルイズ・フランソワーズ・ヴァリエール……」
罵声と悲鳴のない交ぜになった野次が、集まっていた生徒達の方々から飛ぶ。
爆発の原因であり、『ゼロ』と呼ばれた少女、ルイズ・フランソワーズ・ヴァリエールは、十分に
美人――というよりは美少女か――といえるだけの器量を備えているが、今はその顔を怒りの朱で
染め上げ、いかにも気の強そうな形の整った眉は吊り上がり、鳶色の目には角が立っている。
「あんた達さっきからうるさいわよ! 集中できないじゃない! それに、そんなに沢山失敗してないわッ!」
彼女が言うように、失敗の回数そのものは二十に迫る程に留まっていたが、しかしその度に爆発である。どこが
そうなるかもわからないうえ、いつ終わるかもわからないのだから、罵声はともかくも悲鳴を上げるのは仕方のないことだった。
だが当のルイズにしてみれば、それらの声によって集中が途切れることが、今は何よりも鬱陶しい。
何故なら今日は。

『使い魔召喚の儀式』

ルイズにとって、いや、ルイズ達全員にとって春の使い魔召喚は重要な儀式である。何せ進級がかかっているのだ。未だに成功して
いないのはルイズただ一人だったが、野次を飛ばしていた者達の中にも、少なからず今日のこの儀式に不安を抱えていた者はいる。
「まったく……!」
ルイズは度重なる爆風で顔にかかった、その特徴的な、ブロンドがかった桃色の髪を掻き揚げ、集中を取り戻すため、この儀式に臨む際に
固めた意思と決意を改めて心に刻み付ける。
(予習復習は怠らず、日々の授業も欠かさない。立派な貴族に、立派なメイジになるために。召喚を成功させるため、徹夜でイメージトレ
ーニングもしてきた。始祖ブリミルにお祈りも捧げたし、昨日の夜に偶然見つけた流れ星にも、きかっり三回お願いした。絶対に成功する。成功させるわッ!!)
努力している。神頼みもした。後は自分の力を信じればよい。それしかなかった。
目を閉じ、息を整え、杖を構える。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、うったえるわ! だからいい加減に、応えなさいッ!」
地鳴りがおき、風が吹き荒れ、本日累計二十回目の爆発で、半径30メイルほどが砂煙に包まれた。
288名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:36:04 ID:6oFR1GWT
バイク込みで召喚か支援
289名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:37:24 ID:eD9pA67q
スカーイハーイ!支援
290使い魔は空高く:2008/03/15(土) 22:37:44 ID:/HzvI1fb
「げほ、けほ、また失敗か! ここまで砂煙が届くとは、これじゃあ本当にこっちの身が危う
いぞ!」「いつもいつでもうまくいかないんだから! あんたこそいい加減にしなさいよ、ゼロ
のルイズ!」「言っても――痛たたた目に砂が! ――無駄さ。諦める気までゼロなんだからな!」
口々にルイズを非難する生徒達だったが、ふと、奇妙な感覚に包まれた。
「……」
 ルイズが固まったまま動かない。
ルイズは生来の負けず嫌いであり、また、名門公爵家ヴァリエールの生まれであることを誇りにして
いる。ので、からかいや侮蔑に対しては、たとえそれがほんの冗句であったとしても過敏に反応す
る。とりわけ、『ゼロ』という単語をルイズは嫌っており、耳にするなり内容も聞かずに食って掛かるほど
だった。
ルイズを馬鹿にする者達の大半は、そうやって食って掛かってくるルイズを見て面白がるのだ。それはルイズ
の高名な家柄を伴って、既に学院中に広まっており、皆の習い性のようにまでなっていた。
だからこそ不自然だった。これほど自分たちがゼロ、ゼロ、と連呼しているのに何も言わず、あまつさえ顔色ひと
つ変えないルイズは、有体にいえば不気味である。
 しかし、何人かの生徒は気づいていた。ルイズは反応しないのではなく、別のものに意識を奪われ放心しているのである。反応できていないのだ。
 舞い上がった砂煙が、春独特の穏やかながらも力強い風に巻き込まれ、掻き消えてゆく。
 砂煙が晴れるに連れ、生徒達は皆、ルイズの意識を奪ったものに気づきはじめた。
「なにィィイイイイ!?」
「今起こった事をありのままに話したいが、こればっかりは本当に信じられないぞ」
「『召喚』は『成功』……していたのかよォ〜」
 何かが、爆発でえぐられた穴の中に横たわっていた。

 ◆ ◆ ◆

「ぐうぉッ! うおァァアアアアア!?」
 激痛が、彼の意識を無理やりに覚醒させた。
熱したアイロンを押し付けられたうえにスチームを吹きかけられたような痛みと熱さだ。もちろん実際にそんな体験をし
たことはないが、少なくとも、炎天下に駐車してあった黒の乗用車に、以前ウッカリ手をついてしまったときとは比べ物
にならない。突然のことでもあり、その痛みがどこからくるものなのかも、彼にはよくわからなかった。
「ぐぅ、う、ううッ!」
それが左手であると認識した途端、また新たに、じりじりとした痛みが左手を襲った。見れば、奇妙な
記号が浮かび上がってきている。
と、混乱する間もなく唐突にその痛みが治まった。
傷みの余韻でぼんやりとする頭をめぐらすと、城や塔、奇妙な出で立ちをした集団、月面のようにクレ
ーターだらけの風景が目に入った。自分の乗っていたバイクを、何者かは知れないが、これまた奇妙な出で立ちの男がいじくっているのも見える。
そこで、周りの喧騒にも意識が向くようになった。
291名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:39:35 ID:jXSAqKUv
俺は支援なんだー!!
292名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:40:56 ID:6oFR1GWT
>>291
噴いたw
293名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:41:27 ID:S6GZO3IH
シエンスタ
294使い魔は空高く:2008/03/15(土) 22:41:51 ID:/HzvI1fb
「はは、がんばれよゼロのルイズ、お前は徒歩だァ――ッ」「飛んでみなよ、さ、あんたにできるならね!」「ゼロが? まさかだろ! 『フラ
イ』も『レビテーション』もまともに使えないんだぜ?」「成功のないままおわ――」「お前それさっきも言ったろう」
 彼らはマントを一様に翻し、口々にルイズを嘲りながら空を飛び、去っていった。
 その光景はリキエルにとって異常なものだったが、立て続けに強い衝撃を受けた彼の脳は、混乱する間もないを通り越し、考えることそのもの
を拒否していた。だから彼は冷静で、見上げた空に薄っすらと浮かんでいた月がふたつあったことにも、心が動かされることはなかった。
「と、ところで君。ああ、あのき、奇妙な道具――だろうか? あれをその、しば、しばらくの間このわたしに預けてはくれないだろうか。いやな
に! 悪いようにはしないよ少しばかり解たゲフンゴフン細部を調べたりするかもわからないが固定化もかけるしなんなら料金を払うにもやぶさか
ではないよしかしあれは一体何なのだねいやはやあんな金属の感触は初めてだしああ早く研究してみたいが今取り掛かっている研究も捨てがたくて
おっとまだ拝借の許可を得ていなかったねというわけでやはりあれをわたしに預けて欲しいのだがかまわんねッ!」
「はあ……どうぞ」
 自分の乗っていたバイクを指差しながら、興奮気味を少しばかり通り越した勢いでコルベールが詰め寄ってきても、気の抜けたような返事を返すばかりである。
地団太を踏んでいたルイズが怒声を浴びせるまで、リキエルはぼんやりと、ただ空を見上げているだけだった。
295使い魔は空高く:2008/03/15(土) 22:43:04 ID:/HzvI1fb
フゥゥ――……初めて……投下しちまったァ〜〜〜
でも想像してたよりなんて事は、な、なななななないな。
読んでくれた方々、書くに際してpluck貰ったゼロいぬ氏に(勝手に)感謝します。
296名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:45:00 ID:jXSAqKUv
この時点ではまだ1人技術革命を起こす気も無かった人がいきなりバイクなんて持っちゃったらどうなっちゃうのかしら
297名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 22:49:07 ID:eD9pA67q
投下GJ
ついにリキエルキター!
まだスタンドを得る前なのかな?
298名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:09:36 ID:S6GZO3IH
GJ
299名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:23:23 ID:/jZwuZ63
スカイハイは即死攻撃も妨害攻撃もあるし、
なによりも相手には触らないからねぇ……

スタンド発現したら普通に最強だろうな
300名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:25:02 ID:+a+ZaV3h
職人さん皆GJ!!
これが『投下祭り』かッ!
301ゼロいぬっ!:2008/03/15(土) 23:37:27 ID:1BKPHZqq
気にしないでも良いですよ。
作品を書いてくれる職人さんが増えれば私も読む楽しみが増えますし。
自分の人気が取られそうで怖いなあというのはありますけど。
302名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:47:27 ID:jXSAqKUv
さぁて、一応今日中に書きあがったので投下していい?
本当に数ヶ月ぶりだから若干怖いんだけど
303名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:48:05 ID:6vNazG3/
関係ない、行け
304割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:49:57 ID:jXSAqKUv
ごめん、誰かに後押しして欲しかったんだ

食堂にて実に対照的な朝食を終えた2人であったが、あれからこれといった衝突もなく平穏に食事を終えた2人であった。
それから2人は食堂を後にしたわけであるが、一方は目的を持っているようにズンズンと迷いなく進んでいる。
そしてもう片方はその後を付いてまわっている。
見ようによっては強引に連れまわしている恋人同士とも見えなくもないが、一般的にはエスコートする立場にある男性が頭二つ分程低い女の子の後を歩いているといった時点で既におかしい。

「所でこれから一体何処に向かうんだい?」
「ここは魔法学院だからね、これから朝の講義よ」

『世の中は貴族による魔法によって回っている。それ故、貴族は貴族足らしめる態度を養い魔法を学ぶ』というのが目の前のルイズの弁である。
結論として貴族と平民とでは天と地ほどにかけ離れているという事らしい。
それは単に地位といった物ではなく単純に力によるものであるという事をを知ったシーザーであったが、問題は『使い魔』とはある意味平民よりも地位の低い立場であるという事を知ったということである。
何しろ使い魔はメイジの実力に見合った獣やモンスターが応じる。
それは実力者のメイジには強力なドラゴンがといった具合にである。
よって、現在の立場は貴族の価値からすると下手な平民よりも地位が低い。
305割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:50:38 ID:jXSAqKUv
 
 本音を言えば直ぐにでもこの学院を取り仕切っている人物の所にもとに居た所へ帰りたいと掛け合いたい所だが……
 どうにも今の俺の立場は平民と言われてはいるものの、実際にはそれ以下の扱いしか今まで受けてないからな。
 今までのルイズの言動からしてここの責任者への面会も許されない可能性が大きいだろうから自分で調べるしかないか……

使い魔という立場は自然、シーザーの帰る方法は厳しくさせている。
ならばこの小さい少女と一緒に授業を受け、少しでも手がかりを探すためにも暫くは付き従わなければならないという結論にならざるを得なかった。
そんなシーザーであったが、目の前に数多くの『使い魔』を見ると少々気圧されてしまう。
フクロウやネコといった魔法使いのイメージに沿うモノから、巨大なヘビといった『動物』といったカテゴリーに分けられる中では変わったモノも居た。
だがその中でも最も目を引くのはルイズの部屋から出た時に見たキュルケのサラマンダーの様なまるっきり空想の住人であろう。
そしてそのような生き物がごまんと居るのだ。気圧されるのも当たり前とも言える。
そういうファンタジー丸出しな中でも二本足で歩く猫のような可愛らしい生き物も居たのだが、外見が恐ろしい生き物が大半を占めていた。
306割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:51:41 ID:jXSAqKUv
 
そんな中でシーザーだけが浮いていた。
何しろ1人だけ人間でその上平民のカテゴリーに入っているからだ。
それだけで既に注目を浴びている。
案の定先に教室へ来ていたこれらの使い魔の主は今しがたやってきたシーザーに向かってクスクスと笑っている。
より厳密に言うならばその主ルイズに対してである。
その嘲りの笑いの中でもルイズは空いている席に腰を掛けた。シーザーも座ろうとしたが……

「ここはメイジの為への席よ。使い魔は座っちゃダメよ」
と睨まれながら言われてしまった。

一応従うという方針ではあるので渋々従うが、床に座ると机が邪魔で見えない。
仕方が無いので帰る方法を探す上では不利になるかもしれないが、ルイズの隣に座る。
今度は何も言われなかったが、それは講師が教室に入ってきたからかもしれない。

「あらあら、春の使い魔召喚は全員大成功したようですね。このシュヴルーズ、こうして色々な使い魔を見るのが楽しみなのですよ」
そうして端から端まで見回したあと、ある一点に視点が定まった。
「まぁ、中には随分と変わった使い魔を召喚した方もいらっしゃいますが」
その言葉の後に周りからどっという笑いに包まれる。
それに対してルイズは抗議の声を上げ、それからは売り言葉に買い言葉。すわ取っ組み合いかと思いきやシュヴルーズが治めた。
ルイズは最初の注意で反省し、周りで笑っていた人間はシュヴルーズによって口を土で塞がれていた。
それからは皆が静かになり、順調に授業は進んでいった。
307名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:51:48 ID:6vNazG3/
支援!
308割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:52:07 ID:jXSAqKUv
 
その中でシーザーが知ったのは魔法の系統、トライアングルやラインといったメイジの実力、そして彼女の系統の土の魔法の一例である錬金。
そしていざ実践ということで用語の解説をシーザーにしていたルイズが指名された。
そしたらば、キュルケがシュヴルーズに困ったように中止を勧めた。
原因をはっきり言わないが、その表情と雰囲気は雄弁に『危険』だと語っている。
キュルケの弁に加えてルイズを除いた全ての生徒が沈黙したまま首を縦に振っているのも説得に拍車を掛けている。

だが、シュヴルーズは彼女が努力家であるということでそのままやらせた。

それがこの惨事を起こすとはシーザーとシュヴルーズは露にも思わなかった。
結果から言えば錬金は失敗した。その失敗は教壇の机ごと石が爆発したのである。
至近距離で爆風を浴びたシュヴルーズは失神し、当の本人は煤にまみれただけ。
他の生徒距離が離れていたので確たる被害は皆無であったが、正しく爆音であったため昼寝をしていたキュルケの使い魔の吐いた炎によって使い魔たちは上に下への大騒ぎであった。
よってこの騒ぎを起こしたルイズは使い魔共に教室の片付けという名の罰を言いつけられたのであった。


「おい、ご主人様」
「何よ。口を動かすなら先に手を動かしなさいよ」

シーザーの手には雑巾、対するルイズは何も持っていない。

「少しは手伝ってくれても良いんじゃないか?」
先ほどから少女はほぼ全てをシーザーに任せっきりであった。
やったことは全ての机に対して雑巾でもって拭いたのみ、それもイヤイヤである。
瓦礫の片付けから窓の運び入れ、窓拭きなんかは全てシーザーの手による物であった。
根っからの女ッたらしであるシーザーも少しは愚痴りたくもなるものである。
309割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:52:48 ID:jXSAqKUv
 
 何もよキッカリ半分手伝えとかは思っちゃいねぇが、せめて五分の一位は手伝ってくれてもいいんじゃないか?

「……わかったでしょ?私が『ゼロ』って言われてるのが」
そう、思っていた矢先にポツリと、形の良い唇から零れたのだ。

「――何をやってもダメ、基本的な魔法も爆発になっちゃうのよ
 あんたを召喚した時も失敗ばかり。なんだかスゴい風や石にシャボン玉しか出てこなかったのよ」

「別に俺は魔法が使えるという訳じゃないからな、アドバイスなんかはムリだ。
 けれども、その努力までは無駄にはなりはしないだろう?
 さっきのミセス・シュヴルーズだってシニョリーナの事を『努力家』だと言ってたじゃないか」

「フ、フン!そそそそそんなことあんたに言われなくたってわかっているんだから!さぁ早く食堂に行かないと昼食が無くなっちゃうわ!」


そう、言った後ルイズはシーザーに背を向け歩き出した。
口ではそう言ってひいても耳が赤くなっているのがシーザーから見れば一目瞭然であったが敢えて言わなかった。
今まで付き合った女の子の性格にこのように扱い難い子も居たのだ。そしてそれを指摘したら怒るということも。

 折角元気出したんだ。例え短い時間でも不機嫌になるのは嫌だしな

 ちょ、ちょっとはご飯を多めにしてもいいかもね。躾の基本はアメとムチだものね!

そう両者は思ったとか
310名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:53:28 ID:6vNazG3/
エンッ
311割れないシャボン:2008/03/15(土) 23:54:14 ID:jXSAqKUv
取りあえずこれで終わり
えっらい久々に投下したけど書く気はあるんだよ!

次は決闘の導入部まで行けたら良いなぁ
312名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/15(土) 23:59:59 ID:6vNazG3/
投下乙&GJ!
無理に書く必要はないから時間をかけてでも自分が納得のいく作品を頼むぜ
313名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 00:05:29 ID:Xodl/Wdj
投下乙!
まるで最盛期の頃の投下量だ
314ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:11:33 ID:Ts5sTAXg
投下乙!
そして一周年オメデトウ!

自分も祭に参加したいんですがかまいませんね?
315ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:15:02 ID:Ts5sTAXg
『Do or Die―4R―』

 部屋の中を緊張が満たしているのがその場の誰にも感じ取れる。
 それほど切迫した事態だと言うことではあるが、少年たちにしてみれば事態がいきなり大きくなりすぎていて未だに現実を受け入れられないものも数名いるようだった。
「外はどうだい?」
「まだ見張りが多いな。あれじゃあすぐ援軍を呼ばれるだろうよ」
 フーケの問いに窓から外を覗くウェザーが答えた。
 アニエスが階下に向かってからまだ時間は経っていないのだから当然とも言えるが、同時に外の敵が中に誘導されると言うことはイコールでアニエスのピンチに繋がると言うことでもある。
 そのジレンマを当然ながら理解している二人は落ち着かないのか先ほどからせわしなく体を揺すっていた。
「……あの、オレ達はどうしたら…」
 そんな緊張に耐えかねたのか、口を開いたのは財布をすろうとした少年だった。
「ああ、外に出たらさっさと帰りな。今日は怖い夜になりそうだからママと一緒に寝るんだね」
「母さんはいないよ」
 自嘲する出もなく責めるでもないその言葉は張りつめた空気によく浸透したかのように、部屋中に響いた。
 バツの悪そうな顔をしかけたフーケもその言葉に顔を正す。
「親父もいないし姉もいない。みんな"あいつら"に奪われた…」
 その言葉に他の子たちも苦い表情を浮かべる。同じような境遇なのだろう。
 何があって何をされて何故そうなったのか――詳しいことは聞くまでもなくわかってしまう。
 と、暗い画が脳内に映し出されるのを見計らったかのように、階下から雄叫びが上がってきた。そして同時に窓から外を窺っていたウェザーが口を開く。
「…おい。外の奴らが表に向かってるぞ。いくなら今だ」
「オーケー、行きましょうか」
 勝手に納得している二人に完全に置いていかれている少年たちは首を傾げるばかりだが、二人も二人でそんな彼らのことなどお構いなしにいきなり窓から飛び降りたのだ。
「ちょっ…とッ!」
 慌てて窓に駆け寄ったときには外に残された数人の見張りは完全に伸びているところだった。
 唖然とする彼らにフーケが声をかける。
「ほら、さっさと降りてきなさいな。軽業は得意だろ?」
 特に脅されたわけでもないが、その言葉にこくこくと頷くしかなく、言われたとおりに軽業は得意だ。普段から盗みをして生活しているのだから逃げる隠れるに必要な足腰は出来上がっている。
 そして最後の一人が地面に足を付けたときには、ウェザーとフーケは踵を返して走り出していた。
「ちょ、お、オレ達はどうすれば……」
「さっきも言ったように帰ればいい。親はいずとも寝床くらいはあるんだろう?飯食って歯磨いてグッスリ寝ればまたいつもみたいに変わらない朝が来るさ。それがどんなに最低な毎日でも、だ。
 お前たちは十分俺たちの力になってくれた。大人が撒いたクソは俺たち大人が片付ける」
 そう言い切って再び走り出す。夏の長い日が沈み作り出す夕闇にその背はすぐに溶けていった。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:15:21 ID:IzQ4CphK
C-EEN
317ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:17:09 ID:Ts5sTAXg


「けど意外だったね」
 裏通りのチクトンネ街の中でもさらに裏にある道を走りながらフーケがそんなふうに口を開いた。
 大きな通りはもしかしたら敵がいる可能性がある。だから二人は裏を走っているのだ。
 と言ったところで、二人が向かっているところは結局は敵の本陣であり危険に代わりはないのだが、それでも無駄な戦闘は控えるべきであろう。
 それにこの街を破壊するのであればそれなりの人数は必要になってくる。それは裏返せば敵の本陣の手薄さを表しているのだ。
「意外?意外な事なんてお前が寝るときはシャツ一枚で寝るってことぐらいしかないぜ?」
「今さら誰も覚えていないようなワンシーンを切り取ってくるんじゃないよ!」
 走りながら器用に蹴りを放ってきた。
「たく……余裕なんだか頼りないんだか。とにかく、意外だってのはあんたがあの子たちを使わなかったってことさ。……ああ、もちろん戦力として期待はしてないけど、それでも助けを呼んでこいだとかあるじゃない。
 やっぱり貧民街の子じゃ信用されないから?それとも、子供にそんな危険なマネはさせられないからって言うロリコン精神からとか?」
「その問いに関して第一に訂正させてもらえるのであればお前は世のロリコンに対して謝罪するべきなんじゃあないのか?」
「犯罪者に謝る必要があるのかい?」
「お前の偏見に対して謝罪する必要があるんだよ!」
「そうかー……今までゴメンなウェザー」
「今まで俺のことロリコンだと思ってたのかテメーは!」
 火急の事態でとんでもない事実が発覚してしまった。
 フーケは基本的にやられたらやり返すタイプのようだ。
「別に暮らしぶりが悪いだとかガキだからなんて言うつもりはない。ガキでも大人よりよっぽどモノを知っているヤツを俺は知ってるしな。
 それに――」
 最後にそう呟き、ウェザーは少し口を歪めた。それが嬉しそうに見えたのはフーケの錯覚ではないだろう。
「あいつらの目は強かったよ」
 まるでルイズたちを見ているようだ。とは言わなかったのは前述のロリコン談義を鑑みてのウェザーなりの保身だった。
「そっちの心配よりもこっちの心配してる方がまだ建設的ってもんだ。そもそもあそこに上手いこと侵入できる方法でもあるのかよ?」
「まあね。以前から行こうとは思ってた所だからさ。あとは仕掛けをご覧じろ…ってなところだね。それに後顧の憂いは取り払ってある……って言っても、"あいつ"って戦闘能力ないんじゃなかったの?」
「そこは腕の見せ所。それこそとくとご覧じろってやつだ」
「そんなもんかなあ」
 それよりも、と足を止めることなくフーケは続ける。
「随分とあのガキたちに肩入れしたじゃないかい。それはもしかして自分の境遇と重なっちゃったから――とか?」
「過去の事を聞いたところで力にはなれないんじゃなかったのか?」
「でも未来のことなら力になれる――でしょ?」
 してやったりという表情のフーケに、ウェザーはよく覚えていたものだと感心半分呆れ半分で肩をすくめた。
「……別に自分の境遇と重ねてたわけじゃない。…が、暇つぶしにもってこいの話ではあるか。この湿っぽい空気と事件にはピッタリのとっておきだ」
 むかーしむかしあるところに……そんな語り口で、お伽を読むように軽い口調でウェザーは話し始めた。できるだけ感情のこもらない声で、あくまで昔話を聞かせるように。
318ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:20:05 ID:Ts5sTAXg
「――そして、今こうしてカビ臭い路地を走っている。ちゃんちゃん」
 と、おどけて見せて話に幕を下ろした。
 明るく振る舞ってはいても、その内容は笑えるものではなく、またイマイチフーケの理解の範疇を越えてもいた。だがそれをウェザーの戯言だなどとは思わなかった。
「まあ、酒の肴にもならねえような与太話だ。信じなくてもべつにいい」
「信じるよ。今度は…興味本位じゃないから」
 呟くようにそう言ってフーケは話し出した。
「あたしの名前はマチルダって言うんだ」
「あ?」
 ウェザーの返事は待たない。
「あたしはアルビオンのサウスゴータ地方の太守の娘だったのさ。両親がいて友達もいて、妹みたいな子もいたわ。温かかった。母様と父様と一緒に毎日始祖様に祈ったわ。贅沢は言わないから、今の生活を壊さないでください……てね。
 でもブリミルはあたしに愛をくれはしなかった。
 いきなりだったわ。父の上司――大公家の母子が必死の形相で家に連れられてきて、父は苦い表情で城の方をずっと見ていた。あたしは幼くて、でもその状況がどれだけ切羽詰まっていたのかはわかったわ。
 その後はもう訳も分からなかった。まるで鉄砲水に押し流されるように転がり続けて……気づけば何にも残っていないんだもの。王党派に…いえ、テューダー家に壊され奪われてね。
 始祖様、どうしてあたしを救っては下さらないのですか?どうして平穏を奪ったのですか?―――そんなことを真面目に考えられたのも、空腹に負けて盗みをしたときまで。その時初めて杖を人に向けたのよ。
 あの子を守らなきゃって必死だったのもあるけど、なんて事無かったわ。ねえ、親も神もない貧弱なガキは何に頼ればよかったの?
 ………それは杖。そして自分自身」
 自分の懐――恐らくは杖を握りしめてそう言った。
「わたしはね、ウェザー。これでもけっこう腐らずにこれた方だと思ってるの。汚れはしたけどね…。それはわたしにはたまたま魔法という力があったから。
 だから、何も持たない者達が踏みにじられていくのが許せない。だから、わたしは薬をばらまいたクソ野郎共をブッ飛ばす!」
 いつぞやのように目をつり上げ、荒い言葉でそう吐き出した。
 盗賊だ何だと言っていても、どこか馴染みを持てるのはそこに起因しているのだろう。そう思ったウェザーはまだ見ぬフーケの妹分に心中で礼を言った。
 そして勢いよくフーケの背中を叩いた。バシンといい音が響く。
「いッ、ぎ!何すんだい!」
「なーに、湿っぽい話もここまでってこった。明日は快晴だぜ?俺が言うんだ間違いない」
「は、なんだい。やっぱり余裕じゃないかい」
「おうよ。こんな湿っぽく沈んでようとも、身軽になればワケないぜ!それでも不安だっつーんなら、お前の頼れるもののトップにウェザーって書きこんどきな」
 その言葉に面食らったような顔をしていたフーケだが、すぐに顔を逸らして呟く。
「……ばーか、あんたなんざ水に浸した紙よりも頼りないってんだよ」
「言ってくれるぜ。おうそうだ、今度お前の家族とやらを見せてくれよな」
「……あんた死亡フラグって知ってる?」
319ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:24:07 ID:Ts5sTAXg


 鈍器と刃物が波のように押し寄せる。十分な殺意を持ったそれらに触れれば命は紙のように容易く引き裂かれてしまうだろう。触れることが文字通り死を意味する。
 だがアニエスはその波を泳ぎ切っていた。自ら飛び込み斬って離れる。隙間を潜り狂気をかいくぐり敵の戦力を奪う。
「……フッ!」
 指を切り落とされた者がまた脱落する。
 すでに幾度目かもわからない作業の繰り返しではあったが、成果もあった。
 床にはすでに十人近くの男が倒れ伏していた。それは当然ながらアニエスの手柄であり、先ほどの作業の結果でもあった。
 だがそれでも――
「キリがない」
 扉の向こうには黒い山が。アリの巣をつついたのかと思うような人数が控えていることをアニエスに教えていた。同時にそれは裏が手薄になったということでもあったが。
 いかに鍛えられた兵士と言えども人である以上疲弊する。それは歯車がすり減るように、わずかであったとしても確実なことであった。
 そしてこの状況。
 多勢に無勢の見本市のような状況である。
 ただでさえ失敗の許されない状況に、一対多のプレッシャーは疲労に拍車をかける。致命傷こそないものの、店の制服は斬り結ぶほどにその形を失っていく。
 敵もそれを理解しているのか必ず複数でかかってくるのだ。ルカたちとは違う組織された戦い。
「個々の力がそこまででもないのが救いか……いや、この場合は生殺しか?」
 どこか自嘲するような言葉ではあったが、それでもアニエスに"諦め"はなかった。
 繰り返しの中でわかったこと。それはこの敵は群れであると言うことだった。
 猿とボス猿。働き蟻と女王蟻。部下と上司。要するに"頭"がいるということだ。繰り返される攻撃にただ耐えていたわけではない。同じく群の"頭"として指揮を執るアニエスにはすでに見えていたのだ。
 再び殺戮の波が押し寄せる。見計らったように深く――まるで水に潜るかのように深く息を吸い込んで、アニエスは力強く床を蹴った。繰り返される攻めに生まれたわずかな隙間に飛び込むかのように。
 まず斬りかかってきた一人の懐に飛び込み当て身の要領でかち上げ倒す。そのまま勢いを殺すことなく敵陣に切り込んだ。
 密集地帯では強く剣を振るう必要はない。適当に振っただけでも確実に敵を斬れて、そして人間の本能が痛みや回避のために体を避けるからだ。
 重要なのはスピード。完全に囲まれる前に敵の頭を潰し、その勢いで外へ抜ける。あとは逃げながら少数を相手にすればいい。敵の狙いが自分である以上、頭の悪いこいつらは必ず自分を追いかけてくるとアニエスは確信していた。
 アニエスの行動が予想外だったのか敵はキレイに道を譲り、あっという間に敵の頭が見えた。驚きに目を見開いているのがわかる。
「しま…!」
「もらった!ハァッ!」
 気合い一閃。上段に振りかぶっていた剣を振り下ろす。
320名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:24:59 ID:0290/rXh
支援だぁぁぁあ
321ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:27:19 ID:Ts5sTAXg
 が――
「なんてな」
「ッ!」
 アニエスが感じたのは肉を切り裂いた感触ではなく、内臓を抉られるような衝撃だった。
 アニエスは歪な放物線を描いて再び店の中央に吹き飛ばされてしまう。
「あ……ぐぅ、く…」
 立ち上がろうとするが鈍い痛みが腹に居座ってしまいどうにも力が入らない。
 状況だけでも整理しようと顔を上げると、頭の脇にはいったいどこに隠れていたのかと言うような大男が、手に巨大な槌を持って立っていたのだ。
 嵌められた。それを見て理解する。
 予想外だから敵が道を譲ったのではなく、予想していたから道を譲ったのだ。一対多の戦闘における定石『頭狙い』を見越していた。アニエスが飛びかかってくるのを待ち、強力な一撃を加えようという算段だったというわけだ。
 そして見事に決まった。
 反射的に剣で防ごうとしたが、元々携帯性を求めた仕込み杖だ。すでに刃としての機能は持ってはいない。
 ぱちぱちぱち。群の中から拍手が聞こえてきた。
「いやいや。大したもんだアンタ。この作戦は俺の前の上司から教わったものなんだが、この作戦でここまでもったのはアンタが初めてだ」
 コートを着た男はアニエスが頭と見ていた男だった。その手には杖が握られメイジであることを教えている。
「貴族崩れの傭兵か……」
「傭兵が悪いみたいに言うなよ。悲しくなってきちまう」
 そう言うといきなりアニエスの腹部を蹴り上げた。鉄球を体の中に放り込まれたような痛みが走り、アニエスの口から赤い液体が零れた。それを見て男は加虐的な笑みを浮かべる。
「あ…っく」
「あ〜らら〜。肋折れちゃってたんだ。あれは痛いよなあ……苦しいよなあ……」
 男が指を鳴らすとアニエスの肋を砕いた大男がアニエスを跨ぐ。その時いかにもわざとらしくアニエスの腕を踏み砕いていった。そして呻くカモを羽交い締めにして立たせる。
「オレも以前は貴族だったんだ。だから君にも慈悲を上げたい」
 窮地に立たされながらも目の光を消すことなく睨み続けるアニエスによく見えるように、男は人差し指を立てて見せた。
「一つゲームをしよう。ルールは簡単だ。俺たちざっと二十人が今からお前を殴る。お前は耐えるだけでいい」
 ね、簡単でしょ?と、男は笑った。だがそれにもアニエスは笑って返した。
「心優しいな没落貴族。その優しさをもっと別のことに活かせば落ちぶれることもなかったろうに」
「余裕だな。それじゃあその余裕に免じて一ついいことを教えてやろう」
 そう言ってアニエスの耳元に口を近づける。
「今各アジトから増援が向かってる。この街を真っさらにするための、な。そいつらは合流のためにここにくるんだが……ざっと二百はいるかな?」
 最後の数字にアニエスの体がビクリと反応した。
「青ざめたな?どうやらルールは覚えているらしい……。そして、お前がどんなに足掻こうとも結果はかわらねえ!」
 アニエスの歯軋りをオーケストラか何かのように堪能する男の顔は喜色満面だ。
「あと十分もしないで人数は揃い祭が始まる!やっぱり祭は燃やしてなんぼだろ!」
322名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:29:29 ID:LjAudzE0
sien
323ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:30:09 ID:Ts5sTAXg


 大きな川をまたぐ橋の上をごとごとと音を立てて荷車は進む。
 と、豪奢な造りの門前でいきなり槍が交差してその進路を妨げた。
「止まれ。この門がどこへ通じているのかわかっているのか?」
 幾分か横柄な態度の門番である。
「ええ、勿論存じていますわ。トリステインの中心部。王宮とそこへお勤めになられる貴族方のお屋敷ですもの」
 そう言って門番の前に進み出たのは暗いフードを被った人物だった。その恰好に門番たちは当然警戒心を強くしたが、フードを外した瞬間に泡の如く弾けて消えてしまった。
 やりすぎなほどに丈の短いスカートの給仕服に身を包み眼鏡をかけた"緑髪"の美女が現れたのだ。手に持った槍も緩くなろうというものだ。
「今晩こちらで行われるパーティーのお酒をお持ちするよう依頼されていましたので」
 門番が女の後を覗き込むと樽を幾つか乗せた荷車を引く下働きふうな男が一人いた。影になってしまって顔を見ることは出来ない。
 通行許可人が書かれた紙束をめくりながら時間と商品を照らし合わせる。が、
「パーティー用の酒の搬入?聞いてないぞ」
「ええ?ちゃんと連絡が行っているはずですわ。よくお確かめになられて?」
 女は慌てたように門番に駆け寄りその手を掴んで紙を覗き込む。手が触れ合い必要以上に覗き込んでくるために、女と門番は密着する形となっていた。しかももぞもぞと動くために女の胸と太股が門番の切ないところを刺激する。
 柔らかさといい香りにほだされかけた門番だったが、それでも仕事人の意地と隣にいるもう一人の門番の存在がギリギリで理性を踏み止めさせた。取り敢えず女と離れなければとその肩を掴んだとき、"たまたま"目が合ってしまった。
 その後は早かった。視線が電撃のように網膜から体内を突き抜け、門番の理性をいとも容易くショートさせてしまったのだ。
 木偶人形のようになってしまった門番はふにゃけた声で仲間に荷を確認するように伝えると、夢遊病者のように自分もそこへ向かっていった。
「では、中の確認をします」
 そう言って樽の蓋を開けると中から拳が飛び出て門番たちの顔面にめり込んだ。声を上げる暇もなく気絶した門番たちを下働きふうの男が集めて縛り上げ、橋の下に隠してしまった。
324ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:33:01 ID:Ts5sTAXg
「仕掛けと言うには些か単純過ぎやしなかったか?フーケ」
 帽子を被り直した下働きふうの男――ウェザーがそう尋ねると、ローブを脱ぎ捨てた美人が眼鏡を捨てていた。
「男に仕掛けと言えば色仕掛け…って、なんか前にも似たようなこと言った気がするんだけど」
「デジャブだろ」
 正確には脱獄した直後である。
 二人は荷車を引きながら無人となった門をくぐる。陽は沈み暗くなっているというのに、やけに灯りが少ない。
「何だか気味が悪いねえ……貴族の間じゃ早寝が流行ってるのかい?」
「どうだかな――」
 瞬間、二人が背中を合わせて身構える。隙のない目で辺りを見渡せば、かすかに人の気配がする。いや、それは徐々に増えていて、ややもしないうちにかなりの数になっていた。
 とうとう飽和を迎えたのか路地からぞろぞろと武器を持った人影が現れ出す。数人だったのが気づけば数十人にまで増えている。
「おい…手薄なんじゃなかったのか?」
「間違えたっていいじゃない。人間だもの」
「ひっぱたいていいか?」
 軽口を叩いているが冷や汗を流しているのも事実だ。作戦が読まれていたこと。そして何よりこの状況、思った以上に貴族が絡んでいるようだった。
 すでに道を塞ぐほどの人数になった敵は当然ながら二人を囲んでいる。そしてスタートの合図を待つ競馬のように息も荒く、些細なことで引き金に鳴りかねない様子だ。
 そして、どこかで地面を擦る音が聞こえた瞬間に、雄叫びと共に雪崩のように襲いかかってきた。
「ウェザー、保険!」
「わかってる!」
 ウェザーは荷車をひっくり返し樽の中身をぶちまけた。中身は大量の土。そしてフーケの肩を掴むと叫んだ。
「『ウェザー・リポート』!」
 貴族たちの屋敷の間を吹き抜けてきた風がウェザーの周りに集まり、小型の竜巻のようになる。風は土を巻き上げ、それを見計らっていたかのようにフーケが『練金』をかけ土は鉄となり、竜巻は鉄の弾丸を発射する凶器に変わった。
 三百六十度に打ち出された弾丸は敵を打ち据え、次々にリタイアさせていく。完全に出鼻を挫かれ崩れる敵の山を見て取った二人は、弾けるようにして左右に分かれた。
 作戦の段階で決めていたことだ。時間が無いとわかった以上、この広い貴族街を二人で探るのは得策ではない、と。ゆえに二人はこの貴族街を半分に分け、それぞれが区分する場所で敵のボスを探し倒す事にしたのだ。
 戦闘を最小限に抑えて敵の頭だけ妥当する。理想であってもやらねばならない。
 与えられた選択肢はわずかに二つ。

 Do or Die だ。
325名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:36:09 ID:TYpKiNfo
一周年記念支援「した」
326ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:36:24 ID:Ts5sTAXg


 水たまりの少し目立つような整理されていない道を男たちが闊歩する。不遜な態度で往来のど真ん中を進んでいくのだが、それを咎める者は誰もいず、むしろ皆その集団から逃げるようにそそくさと逃げ出してしまう。
 それが面白いのか男たちは下品な笑い声を上げた。
 男たちは『組織』の構成員である。今日の"祭"のために集まってきた荒くれ共である。これから起こる惨事に気をはやらせ、軽い興奮状態であった。
 そんな危険物の鼻に薫り高い匂いが漂ってきて、思わず足を止めた。そして全員がきれいに首を匂いの発信源に向けた。
 匂いはとある飲食店から流れてきているようだった。近づいてみれば、所狭しと並べられた料理の山があった。店先にまでテーブルを出すほどである。少女が次々に皿を持って来てあっという間にそのテーブルも料理で埋まってしまった。
 ちょうどそのタイミングで店の中からコック丸出しの青年が現れた。男たちに気づいたのか人のいい笑みを浮かべる。気づけば男たちは店先に立っていたのだ。
「おいおい、こりゃ何のパーティーだ?いい匂いじゃねーか」
 粗野な態度の男にも青年は気を悪くした様子もなく、にこやかに笑いながら手を広げた。
「これはサービスデス。新しい食材が手に入ったので色々と作ってみました。皆さんまだお食事もまだのようですし、是非とも食べていってください」
 本来ならここで疑うべき点が多い。が、男たちはバカだった。バカだからこそこんなチンピラをやっており、こんなバカなことに参加しようとしているのだ。男たちにとって食欲>疑いである。雄叫びを上げて飛びついた。
「うんまぁーい!生ハムとメロンがコーラスしているかのような味だッ!」
「こっちもだぜ!野菜なんて緑のぐろいヤツだと思ってたのによぉ……ん?おい兄ちゃんよ、この白いのはなんだ?食ったことも見たこともないぜ」
 フォークの先で持ち上げて見せた食材はどの食材よりもいい匂いを発していた。トニオはその質問を受けると、やはりにこやかな表情で答えた。
「それは『ドリアン』デス。南国で取れる果物で、『果物の王様』と呼ばれていマス」
「気に入ったあーッ!」
 味を気に入ったのか通称が気に入ったのかはわからないが、男たちはさらに勢いを増して腹を満たしていった。
 と、そこへ今度は酒が出された。綺麗な葡萄色をした液体が何なのかは言うまでもなかった。
「おお、気が利いてるじゃねーか!いいね、気に入ったぜお前!これから俺たちのお抱えのシェフをやれよ!もちろん……この子も一緒にな!」
 そう言って酒を運んできた少女の腕を掴む。早くも酔っているのか定かではないが迷惑には変わりない。
 がしっ、と青年は笑顔を崩すことなく男の手を掴んでいた。予想以上に強い握力に男は思わず少女の腕を放してしまったほどだ。
「な、何しやがるッ!」
「手も洗わずに食事はスル……テーブルマナーは守らナイ……」
「あ?何言ってやがががががが?」
 問いただす前に異変がその男を襲った。だけではない。そこかしこで男たちが苦悶の声を上げている。
「お?オオオオォォォォ?」
 一人、また一人と倒れていく男たち。そしてそんな彼らに青年はこう言った。
「果物の王様ドリアンの食後にお酒を飲むと体内で化学反応を起こし、強烈な吐き気と目眩を覚えマス。ヘタをすると死に至りマスヨ」
 まるで死刑宣告だ。が、青年は依然笑顔のままである。
「て、めぇぇえ……」
「王が酒を飲むと暴君となるなんて、有名な話でショウ?」
 最後にそう言って青年は踵を返した。そして同時に男も気を失う。
 そこへおずおずと言った様子で少女が青年を呼び止めた。
「あ、あのトニオさん。ありがとうございました」
「イエイエ、気にする必要はありませんよリュリュさん。まあ、ウェザーさんに頼まれた程度の働きにはなるでショウ」
 トニオと呼ばれた青年はそんな少女に優しく答えた。
「そもそも食事とは人間全員に与えられた共通の娯楽であり、生きる上で書かせない神聖な行為デス。彼らはそれさえも多くの人から奪っていたのですから、これくらいは当然でショウ」
 そして笑った瞬間、リュリュはトニオの背後に黒いオーラを見たという。それを一瞬で引っ込めたトニオはリュリュに医者を呼ぶように手配する。
 そして貴族街の方を見て、真剣な表情を見せた。
「……負けないでクダサイ」
327名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:37:38 ID:/6Bsvxuj
支援だぁーっ!
328ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c :2008/03/16(日) 01:39:34 ID:Ts5sTAXg


「やっぱり止めようよ!無理だって!」
 スラム街の少年たちに腕を掴まれる形で足止めを食っているのはウェザーからスろうとした少年だった。
 少年たちはウェザーとフーケと別れた後どうしようかと途方に暮れていたのだが、不意にその少年が足を動かし始めたのだ。初めこそ黙って付いていた他の面々だったが、何気なく聞き、帰ってきた言葉に驚きを隠せないでいた。
「貴族に助けてもらうなんて無理だって!」
「無理じゃねーよ!ブルドンネ街には治安維持の駐屯所があるだろ。そこで事情を説明すれば……」
「それが無理だって!オレ達みたいなスラムのガキが何言ったって……。それに、オレ達だって何されるかわかったもんじゃないだろ!」
 これまでしてきた悪行は、生きるためとは言え許されるものではないのは重々承知している。
 だが、
「あの人だって言ってたじゃないか。"変わらない朝が来る"ってさ。だからもうオレ達は帰ろう?」
 だが!
「じゅあお前は一生こんな人生でいいのかよッ!」
 少年の叫びに仲間たちがハッとしたような顔になる。少年はまるで胸のつっかえ棒が取れたかのように言葉を捲し立てた。
「日陰で怯えて、やることといやあ残飯漁りとせこい盗人家業!その日生きるのに必死で明日が来たって何も変わらねえ!そんな朝が来てもお前ら満足かよ!
 大人が撒いたクソは大人が片付ける?っざけんな!こっちはとっくにそのクソひっかぶっちまってんだぞ!そのクソをばら撒いた奴らにビクビクオドオドしてていいのかよ!
 今やらなきゃあホントの明日なんて来ない!」
 そして最後に息を大きく吸い込み吐き出した。
「明日って今だ!」
「ほー…いいこと言うじゃねーの」
 背後から降ってきた言葉に少年が振り返ると――蹴り飛ばされた。仲間たちに支えられて立ってはいるが、鼻血で顔の下半分が真っ赤である。
 現れたのは『組織』の奴らであった。二十人は超えようかという数である。
「おい、どうしたんだよ?」
「あー?いやさー、何かこいつらオレ達の作戦知ってるらしくてさー、しかも何かチクろうとしてんのね。だからお仕置き」
 今度は仲間ごと少年を蹴り飛ばす。壁に叩き付けられて鈍い痛みが走った。
 ほどほどにしとけよー、などと後で言っている奴らも、この嬲りショーを楽しんでいるふうである。
「おーい、その辺にしとけよ。マジ集合時間過ぎるってー」
 そんな声がかかったのは男が少年たちを蹴り続けて何分経ってからだろうか。か細い呼吸音しか上げない子供たちを見下ろしていた男は少年を乱暴に引き起こすと壁に叩き付けて凄んだ。
「お前らマジこのことチクって見ろや。今度はこんなもんじゃすまねーかんな。お?」
 少年がパクパクと口を動かしているのに気づいた。命乞いでもするのかと期待していた男だったが、
「……っせーよ……煮えた鉛を飲ませるくらい言ってみろっつーの……このチキン野郎」
 その言葉に顔を歪ませた。
「そーかよ!そんなに死にたきゃ殺してやらぁッ!」
 思いっ切り握った拳を振りかぶり叩き下ろそうとした瞬間、不意に力が掛かり後方に吹き飛んでいった。そして今度は自分が壁にぶつかり気を失ってしまう番となった。
「その体で大した口上を吐く。その意気やよし」
 霞む視界に映ったのは、逞しい体に翻るマント。そしてそこに刻まれていた模様は――
329名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 01:45:27 ID:y/pHVpqe
支援した!なら使って良い
330名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 03:46:23 ID:ax4+mV4b
GJ!ずっとまってたかいがあった
331名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 03:47:30 ID:btVDT5rj
代理スレきてた
俺ケータイだから代理無理だ・・・
332ヘビー代理:2008/03/16(日) 05:17:11 ID:9Rlw8r2O


 店の中に砂を叩くような鈍い音が響く。
「オラッ!」
「ふぅっあッ!」
 十人目の男の拳がアニエスの腹部を捉える。衝撃は折れた肋骨で倍増され内臓をかき回し、口から血となって吐き出されていく。すでに給仕服にあの可愛らしかった面影はない。だが、今のアニエスはほとんど痛みを感じてはいなかった。
「しぶといな……早く楽になっちゃえよ」
「この程度では……ゲホッ、皿洗いの方が過酷と言うものだ…」
「強がるね」
「強がりじゃないさ…。むしろ強がっているのはお前だろう?すでに十分はとうに過ぎているんだ……なのにお前の仲間は一人も来ない。……フフフ、いったいどこで油を売っているんだろうなあ…?」
 力無く笑いながらも、アニエスの言葉には勝ち誇っている節さえある。その言葉にメイジ崩れの男はこめかみをひくつかせた。
 そうやって余裕ぶっているがいい。お前らの企みはウェザーたちが防いでくれる。お前らを個々に釘付けにしておけば我々の勝ちだ。
 と、不意に男が立ち上がった。そして杖をアニエスの鼻先に突きつける。
「もういいわ。元々お前にこだわる必要はねーんだし、先の方から焦げて死ねよ」
 死ぬ?私は死ぬのか?じゃあ私の復讐は誰が遂げる!こんな所で死ねるか!
「お、いいねえ。その生きたいっていう目。強がっててもやっぱり死ぬのは怖いよなあ?未練たらたらって感じの目がたまらねえ……。
 ああ、今ならあの人の丸焼き趣味が解るわ。生きながら焼かれるのは未練が強そうだからなあ……。じゃあ、逝ってらっしゃい」
 目の前で杖に火が着く。
 よりも早くアニエスは床に落ちた。
「…え?」
「…あ?」
 アニエスと男の疑問の声が重なる。どうやらお互いに予想外のことが起きたようだった。
 アニエスが背後に首を回せば、そこで自分を羽交い締めにしていたはずの大男は床に寝ており、代わりに無精ひげの伸びた中年男性が剣を担いで立っていた。
「お、お前は……武器屋の!」
「YES I AM!」
 格好つけてはいるがその顔は赤い。どうやら酔っているらしかった。
 そしてさらにその影から人影が現れた。
「あーあー…店がグチャグチャじゃねえか。グラス割れてねーだろーなあ」
「マスター!」
 いつの間にか消えていたはずのマスターがそこにはいたのだ。
「おうアニエス、生きてるって事は無事みたいだな。さて、お前ら」
 そう言ってマスターは男たちの方を見る。その目に思わず何人かが退いた。
「ウチの従業員に随分とまあ教育してくれたみてえだなあ……この授業料はキッチリ払ってやる」
333ヘビー代理:2008/03/16(日) 05:17:44 ID:9Rlw8r2O
「…ハッ!援軍が二人来た程度で……」
 その言葉を掻き消すように表が騒がしくなった。何人かが吹き飛んできて店の中に転がる。
「誰が二人っていった?ブルドンネ街とチクトンネ街の腕利きの店長たちを集めてきてやったぜ」
「く……」
 外では再び怒号があがり、時折それに紛れて「トレビア〜〜〜〜ン」と言う声が混じって聞こえた。
「テメーらよくもいたいけなオレをイジメやがったなッ!許さんぞッ!この剣に誓ってお前を倒す!」
 しゃっくり上げながらイマイチろれつの回らない舌で武器屋の親父がそう叫ぶ。その間にマスターがアニエスを助け起こした。そして袋を渡してやる。
「これは……武器?」
「この酔っぱらいを酔わせて持ってこさせた奴だ。好きなのを使え。なーに、道具は使われてなんぼだ。酒臭い親父の下で埃被ってるよりかはいいだろう」
 言われるまでもなくアニエスはすでに袋の中を物色していた。そして一本の剣を取り出す。
 装飾は地味だが、鞘から解き放たれた瞬間に刃が空気を吸い込むかのように震えた。
「なるほど。腐っても武器商人と言うワケか。いい仕事をする」
 形勢すでに覆りつつある。内と外からの挟み撃ちは狭い室内も相まって効果が高かった。
 恋しがるように息を深く吸い込み、アニエスは体中に力を戻す。
 自分は生きている。まだ生きている。まだ、戦える。まだやらなければならないことがある。だから――
 "それ"はまるで麻薬のようにアニエスの体から痛みを消し去っていく。
 刃に映る自分の顔はどうなっているだろうか。きっと狂おしいほどに憎悪に燃えているだろう。
 それでいいというようにアニエスは駆け出した。



     To Be Continued…
334ヘビー代理:2008/03/16(日) 05:22:46 ID:9Rlw8r2O
以上投下完了!
お、俺は一周年記念にお呼びじゃねーってのか!
答えろ!さるさーん!

使空さん待ってました!六部仲間が増えた!自分は楽しみに待ってますよ!


との事、
大丈夫!板がお呼びじゃないと言っても、俺たちはアンタの投下をいつも待ち望んでいるッ!!
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 06:30:54 ID:8ZME0GWE
ヘビーの人&代理の人GJ!
ヘビーさんの一周年記念待ってましたぜえええええええええ!
336名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 08:02:07 ID:PT9FR66H
ヤバイな…一周年投下祭りだってのに…スマン締め切りにまにあわなんだ
まぁでも、その分コッパゲ先生が逝ったりするしさ…こらえてくれ

ああ、一周年だから言ってやる!大好きさ!全員纏めて大好きだよ!!
他の暗チもそろそろ来ないものか…
337名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 08:28:46 ID:jorZqVUx
ヘビーさん投下乙そしてGJでした!
トニオさん強いよトニオさん
338名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 09:43:16 ID:G2eD5eyk
トニオさんが『鉄鍋のジャン』化してるw
339名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 13:21:29 ID:nEKSAcZH
一周年記念に乗り遅れちまった…片思いの女の子が親友とキスしてるのを見ちまった
アホの男と同じ気分だ…
では、気を取り直して投下します。
340狭間に生きるもの:2008/03/16(日) 13:22:37 ID:nEKSAcZH
 天上に輝くふたつの美しい月を眺めていると、部屋の隅にひとつの影が舞い降りた。
 その影は懐から一本の棒のようなものを取り出し、音もなくゆっくりと部屋の主へと近づいていく。
 私はなにげなく影に近づき、その背後に回ると頭を掴んで反対へと回す。
 すると、枯れ木が折れるような音が鳴り、影は力なく床に崩れ落ちた。
 私は力が抜けて重たくなった影を引きずり、部屋の扉を開けて外へと放り出す。
 そして部屋の扉を閉め、死体に驚く衛兵に声を掛けた。

「北花壇騎士四号だ。その暗殺者の身元を調べろ」
「は、はっ!了解しました!」
 
 部屋の外がざわめき始めるが、それを無視して窓辺に戻り中庭に眼を落とす。
 あちらこちらで衛兵たちが走り回っているのを見ながら嘆息すると、先程のように空を見上げた。
 夜空に美しく輝く二つの月と、それに負けじと自己主張する星たちを見ていると、背後の寝台に眠る
 部屋の主から声を掛けられた。

「ヨシカゲ…なにかあったの?」
「なんでもない、寝てろ」
 
 背を向けたまま、この部屋の主であるイザベラにそう告げる。
 背中に視線を感じるが、相手をするのも面倒なので無視を決め込んで空を眺めていると、
 何かが背中めがけて飛んできて、私をすり抜けて窓へと当たる。
 枕だ。
 イザベラが投げたそれを、私は振り向かずに持ち主に放り投げるがすぐにまた飛んでくる。
 何度かそんなやり取りを繰り返し、根負けした私は寝台に近づいて枕をイザベラに渡そうとするが、
 イザベラは私に握手を求めるように手を差し出す。
341狭間に生きるもの:2008/03/16(日) 13:24:12 ID:nEKSAcZH
「手を握りなさい…これは命令よ」
「……わかったよ」

 私は握り返されないように注意しながら手を握ると、イザベラは安心したように寝台に横になる。
 以前にもこうしてイザベラの手を握った事がある。
 あのときも今夜のように暗殺者がイザベラを襲い、私が始末した。
 ひとつだけ違うのは、今夜のように素手ではなくナイフを使って始末した事だ。
 そのときの私は身分を与えられておらず、イザベラ以外に私の事を知る者もいなかったので、
 死体の処分に困った私は寝ていたイザベラを起こして聞いてみたのだが、その後は大変な騒ぎになった。
 確かに、血に塗れたナイフを持った幽霊が傍に立ち、床には死体があるんだから驚いて当然だ。
 私も同じ状況に立たされたら口から心臓が飛び出るほど驚くに違いない。
 そして、騒ぐイザベラの声に気づいて部屋へと踏み込んできた衛兵が死体を見つけてまたもや騒ぎとなった。
 無論、寝台で怯えているイザベラが殺した訳もなく、死体を調べれば刃物で殺されたことはすぐにわかる。
 誰が部屋に忍び込んだ暗殺者を殺したのか当然の疑問となったが、それに答えを出したのがイザベラだ。
 
「四号さ。わたし専属の護衛だよ!」
 
 そのときから、私は北花壇騎士四号となった。
 ちなみにこのガリアでは『四』という数字は『死』に通じるとされ、とても縁ギが悪いらしい。
 軍隊や騎士団でも使われないという徹底振りだ。
 当然、そんな数字をつけられた私は気分を害し、どうしてそんな不吉な番号を私につけたのか、
 どうせなら幸運の『七』がいいとゴネてみたりしたのだが、当然とばかりにイザベラはこう言い返した。
 
「だって、あんたもう死んでるじゃないか。それに『七』はもう決まってるんだよ」

 イザベラの言うことは全くもって正しい。
 すでに死んでいる私にとって『死』は一番縁遠いものだ。
 何も言い返せずに不貞腐れる私にイザベラはそっと手を差し出し、眠るまで握っていろと命令した。
 ハッキリ言って嫌だったのだが、そのときの私はなにを考えていたのかその手を握ってしまった。
 幽霊の私にとって、生き物に触れるのは問題ないが触れられるのはマズイということを、
 そのときは忘れてしまっていたらしい。
 イザベラが眠ったのを見計らい手を抜こうとしたのだが、悪いタイミングで寝返りをうたれ、
 私の腕は根元から千切れてしまった。
 あのときの痛みを思い出すと、今でも身震いがする。
 今回はそんな事にならないように眠るイザベラの肩を押さえ、寝返りをうたれないように注意しながら
 手を引き抜こうとしたのだが、イザベラに微妙な力加減で手を握られていた。
 このまま手を抜いたらどうなるのか、自分で試そうとは思わない私は朝まで手を握られる事にした。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 13:25:00 ID:G2eD5eyk
ミスタなら涙目w支援
343狭間に生きるもの:2008/03/16(日) 13:25:39 ID:nEKSAcZH
 翌日、私は謁見の間でヒマを持て余していた。
 こんな興味を引くものが何一つない部屋なんぞに居たくはないのだが、これも仕事の内だから仕方がない。
 壁にもたれながら欠伸をすると、イザベラから突き刺さるような視線が送られてきた。
 自分が仕事中なのに欠伸をするとは何事だとでも言いたそうな顔をしているが、ヒマなのだから
 欠伸のひとつくらい許してほしい。

「娘を攫った連中は全員始末したぜ。モチロン娘は無事だ…だがなぁ、お前なんかオレに恨みでもあんのか?
 アイツら、よりにもよってぶどう畑に隠れてたんだぜ?国境越えてよォー」

 目の前にいる坊主頭で変なソリコミを入れた男、北花壇騎士六号は任務終了をイザベラに報告していた。
 六号はぶどう畑になにやらトラウマでもあるらしく、延々とイザベラに愚痴を言っている。
 私を含め、北花壇騎士の一号から六号までイザベラが起用した者たちで占められている。
 要するにイザベラの親衛隊みたいなものなのだが、私を除くほかのメンバーは姿だけを見ると
 街にたむろしているゴロツキ同然、いや、ゴロツキにしか見えない連中だ。
 正直に言って、こんな奴らを雇う気になったイザベラの頭を疑いたくなる。
 だが、仕事はできる連中だ。
 少なくとも前の奴らよりは忠誠心があるようだ。
 もっとも、命を救われ、仕事と生活の保障を与えられれば感謝するのは当然だと私は思う。
 
「あっはっは!そりゃご苦労だったね…ところで…その手に持ってるものはなんだい?」
「コイツか?向こうで貰ったんだよ。飲むなり売るなり好きにしろってよ」

 そう言って六号は眼帯をつけた炎を象った焼印が押された木箱をイザベラに見せる。
 その焼印は食事をとる必要がない私でも知っている、とても有名なワイン倉のものだ。
 確か、年に二、三本しか出回らないと聞いた事がある。
344狭間に生きるもの:2008/03/16(日) 13:27:24 ID:nEKSAcZH
「ひょっとして、飲んでみたいとか思ってる?」
「な、なに言ってんだい!そんなわけないだろっ!わたしくらいになると飲みなれてるんだよ!!」
 
 イザベラは木箱をチラチラと横目で見ながらそう言うが、説得力が全くない。
 それでは、私はとても飲みたいですと言っているようなものだ。
 六号もそれに気づいているのか、ニヤニヤ笑いながらイザベラを見ている。

「しょォーがねェなァァーーーっ!アンタにやろうと思ってたんだがよォーー!
 オレはワインなんて飲まねェし、捨てちまうかァーー」
「ま、待ちな!!なにも飲まないなんて言ってないだろ?!」

 おあずけ喰らった犬ッコロみたいにイザベラは身を乗り出すが、六号はイザベラを椅子に座らせると
 太モモに木箱を載せて頭をポンポン叩き、背中を向けて手を振りながら部屋を出て行った。
 呆けた顔でイザベラが六号を見送ると、からかわれたとわかったのか、今度は顔を真っ赤にして怒鳴り散らし、
 従者たちにワインを保管するように命令する。
 その後、従者たちを部屋から追い出して私にブツブツと何かを言っていたが、適当に聞き流しながら
 相槌を打っておく。
 窓辺により空を見上げると、小柄な少女を乗せた、突き抜けるような青空と同じ色の竜が中庭に降り立っていた
345狭間に生きるもの:2008/03/16(日) 13:31:35 ID:nEKSAcZH
投下終了です。暗チじゃないよ!北花壇騎士だよ!
各国についてちょっと補足

アルビオン 1.2部 ちょこっとSBR
ロマリア 3部
エルフの国 4部
ガリア 5部
ゲルマニア 6部

トリステインについてはそのうちに作中で説明します。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 13:38:33 ID:jorZqVUx
投下乙そしてGJでした
北花壇騎士団6号はご本人なのかな?
(ぶどう畑にトラウマ的な意味で)
静かに進む物語と寂しがり屋なイザベラ様がとてもすばらしいです
347名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 13:58:51 ID:y/pHVpqe
GJ!
なんという萌えイザベラと萌え吉良、そしてホルマジオw
しかしエルフは杜王町かいw
348名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 14:12:21 ID:gJAmDf9Z
これはいいガリア王国、ジョゼフはきっと若い頃に色々な偽m(キング・クリムゾン
エルフが4部ね…露伴先生なら納得だわww
349名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 14:56:41 ID:PT9FR66H
ガリアの戦闘戦力がかなり高いな
エルフはやっぱほら、ミキタカとかまんまエルフだしw
見えるぞ…嬉々としてエルフにヘヴンズ・ドアを叩き込んでいる先生が!
350名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 15:55:04 ID:8DmZPRP8
GJ!!
ダメだっ…イザベラに萌やされつくしてしまうッ…
肉体派の多そうなアルビオンに期待
351名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 18:44:22 ID:mmgH26LZ
GJ!
まだまだ、いまは後夜祭ならぬ後日祭よ!
これは暗殺チーム全員来てるかな?
352名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/16(日) 21:03:39 ID:048n98s8
なんかまとめサイトがやたら重くて全部表示されるのに時間かかってるんだが
自分だけかな?
353名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 12:42:44 ID:sG4rNyht
キングクリムゾン
354名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 14:43:10 ID:0pzYi648
>>352
ACT3 FREEZEじゃね?
355名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 15:12:23 ID:URoo+hAL
>>352
何、良くある事よ。
356名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:07:20 ID:5VmyodJZ
かなり(内容が)カオスになってきたけど15分から投下させていただくよ…していいかちょっと迷う(;´・A・)
357名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:12:51 ID:AkqEtVyc
行く以外の選択肢が…あると思うな…ッ!
358ポルジョル18:2008/03/17(月) 23:16:49 ID:5VmyodJZ
あ、ありのまま起こった事を説明するわッ。

召喚した亀を使い魔にしたと思っていたら、突然亀の中の人が「ご主人様の使い魔だなんていってたが、スマン。ありゃ嘘だった」的な事を言った…
な、何を言ってるかわからないと思うけど、私にも何が起こっているのかわからなかった…いいえ、わかりたくなかった!

召喚した亀に飼い主がいてしかもちい姉さまの恩人だったとか、召喚には成功したけど異世界から来た平民だったとかそんなチャチなものじゃあないわ!
困ったとか…理想と違ってがっかりとか、そんなことじゃあない。もっと恐ろしい、もっと汚らわしい裏切りを受けた気分だわ!

オールド・オスマン学院長らへフーケ捕縛の報告を終えたルイズ達は、見慣れない部屋にいた。
ルイズの使い魔だと思っていた亀の中、カメナレフの「事情を説明するから鍵に触れてくれ」という言葉に従って入ることができた部屋は細かいところで、奇妙だった。

彼女らが普段使う蝋燭や魔法仕掛けのランプなどの光とは違う蛍光灯の光。
それ一つとっても既に明るすぎたし、内装も貴族として教育を受けてきたルイズ達は異質なものだという事にすぐに気付いた。

見慣れない様式の家具。変な長方形の真っ黒い板、金属製の箱からは聞いた事の無い曲が流れ、そして柔らかそうなソファには壮年のこれまた奇妙な頭の男性が腰掛けている。
服装なども色々とおかしくて、ルイズ達を戸惑わせる。
眼帯をつけ、両足は膝から下が義足。腕も片方が人工物だった。

「貴方が…」

当事者でないからか、いち早く我に返ったキュルケが尋ねると、ポルナレフはばつが悪そうな表情で頷いた。

「うむ…私がお前達がカメナレフと呼んでいたものの正体だ。亀じゃあないし、名前も本当はジャン・ピエール・ポルナレフと「ふざけないでッ!」

説明に耐え切れずにルイズは叫んだ。

「ルイズ…」

心配そうに名前を呼ばれ、ルイズはよりヒステリックな声をあげる。
キュルケの心配する態度が耐えられなかった。まだ部屋の様子を見てからいつも通り本を読み始めたタバサの方が好ましい。
他の貴族から、”自分の使い魔に実は中の人がいた”なんてことで同情されるなんて…正面からゼロと嘲笑われるより、深く侮辱されたように感じた。
…ルイズは敵にでも向けるような目をしてポルナレフを否定する。

「私が召喚したのはこの亀よッ! アンタなんかじゃあないわ! 契約だってできたんだから…!」
「すまねぇが、それも勘違いだ」

頭の後ろをかきながら言うと、突然空中に炎が生み出される。
熱く、自然の法則など無視してもあがるルイズ達には見えないマジシャンズ・レッドの炎は、ポルナレフの意思によって蠢き、ポルナレフが用意したとっておきの肉を焼く。
ポルナレフ達が入っている亀の手に刻まれたルーンと同じ紋様が、一瞬で刻まれる。

見たことが無いルーンだと教師のコルベールが騒ぎ、オールド・オスマンにはちょっと汚い字ですが、ガンダールヴだと…隠れて騒いでいたルーンが刻み込まれ、ルイズは声もでなかった。

「契約の事は知ってたからな…マジシャンズ・レッドを使って、契約すると同時に亀の手に焼きこんだ」
「…そんな」

キュルケがアチャーっと顔を手で覆うのを見て、ポルナレフは辛そうな顔をする。
仕方なかったとはいえ、真実を告げられたルイズの体から、少しずつ力が抜けていくのを見るのがポルナレフにはとても辛かった。

「私にも、やる事があるからな。見ず知らずのメイジの使い魔になるわけにはいかなかったんだ」
「それなら、どうして使い魔のふりなんてしたのよ…! アンタなんて呼んでないわ! 私が召喚したのは、強くて美しい使い魔よ!」

自分を責める言葉に流石にその方が都合が良かったからだとは返せないポルナレフは苦しげな顔で、「突然呼ばれて、咄嗟にできたのはそれだけだった」と答えた。
359名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:21:07 ID:5VmyodJZ
ルイズは悔しげに顔を歪めて、ポルナレフに詰め寄る。何かに気付いてルイズは叫んだ。

「そうよ! 私は亀だけを呼んだのに、どうしてアンタなんかが一緒についてきたのよ!? 亀が召喚されて使い魔にされたってアンタには関係ないじゃない!」

その言葉にポルナレフは深く傷ついた表情をして、キュルケにちょっといいかもと思わせたが…
もっとショックを受けたルイズはそれに気付く事はなかった。

「仕方ないだろ、私は死んでるんだからな」
「はぁッ? 私を馬鹿にしてるの!?」

屈辱に震えるルイズに、ポルナレフは慌てて手を振り回し、自分の真剣さを必死に伝えようとする。
死んでいる、という言葉を聞いて、タバサがビクッと震えたことには誰も気付かなかった。

「この亀の能力は今体験してるだろ? 昔ちょっとしたことがあって死んだ私は、その能力でこの亀の中に留まる幽霊なんだよ。だからコイツを使い魔にさせるわけには」

ポルナレフは最後まで言う事が出来なかった。
飛び上がったルイズの手がポルナレフの頬を叩いた。
痛みは差ほどでもない。悪いビンタだったが、ショックは大きかった。
確かに、ポルナレフにしてみればルイズは、どうでもいい存在だった。
ルイズの気に入らない点は多々ある。だが、曲がりなりにも使い魔として何日も寝食を共にするうちに少なからず情が沸いていたのだ。
ビンタを受けてショックを受ける自分に、ポルナレフも驚いていた。
幽霊に触れるとは思っていないルイズはまたポルナレフが嘘をついたと思って、より表情を険しくした。
(デッドマンQと6部等を読みながら考えたんだけど亀の中だから触れるってことにしました…)

「そんなことあるわけないでしょ…! 本当の事を言いなさいよ!」
「本当だって言ってるだろうがッ、少しは私の言う事をだな…!」
「亀の次は幽霊だなんて、信じられるわけないでしょ!」

だったら、と自分の腕をポルナレフはナイフで切ってみせる。
見事なナイフ裁きに驚くルイズ達だったが、切り裂かれてパックリ開いた傷口からは一滴の血も流れない…タバサが心なしか顔を青ざめさせ、ポルナレフから距離をとった。

「どうだ! 私の体はもう血も流れてねーし、痛みも余り感じねー! 正真正銘の生霊なんだよ」

傷口を見せて叫ぶポルナレフから、タバサは逃げ出した。
だがタバサは回りこまれたッ。

「タバサッ、待って。二人を止めるのを手伝ってよ!」
「いや…」

立ちふさがるキュルケに微かに青白くなった顔を横に振り、タバサは努めて冷静な振りをして入ってきた亀の天井へとレビテーションで突っ込んでいく。
てっきりなんだかんだといいつつ手伝ってくれると思っていたキュルケはタバサのそんな態度を訝しんだ。

「もうタバサったら…どうしたのかしら?」

どうでも良さそうな態度でタバサが亀の中から逃げ出す間にも、二人は言い争う。
脱線してしまったが、問題はそこではないのだ。
ルイズにとって、初めて成功したと思っていた魔法が、それを証明する存在が、実はそうではなかったということが、重要だった…

「もういいわ…あんたなんて、アンタなんて伯爵様の所にさっさと戻っちゃえばいいのよ!」

ルイズがそう吐き捨てた頃、ジョルノはオールド・オスマンに事情を伝え、二つのことを認めさせていた。
あくまてルイズが承諾するという条件でだが、カメナレフの返却。
そして、再び使い魔を召喚する許可を…
360名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:25:02 ID:AkqEtVyc
支援
361名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:27:30 ID:5VmyodJZ


「今夜はせっかくの『フリッグの舞踏会』じゃというのに、頭が痛いのぉ…」

色々とありすぎたとオールド・オスマンは深くため息をつく。
恩人の形見である円盤が戻ってこなかったのは真に惜しいが、それについては諦めがつく。

忙しいからという理由で自分で取り戻しに行くどころか教え子に奪還を命じたのはほかならぬオールド・オスマンなのだ。
しかも相手は名の知れた『土くれのフーケ』。教え子達がそれを大きな怪我もなく、皆揃ってフーケを捕らえて帰還しただけでも満足だった。
その一人が、円盤を落としてしまったと責任を感じているとあれば、尚更だった。

その責任を感じ、自分を責めていたルイズに再召喚をさせることを条件付とはいえ認めさせられたことを思い出して、オスマンはまたため息をついた。
同席を許された少し見事に頭が輝く教師コルベールも重々しく頷き同意する。

「全くです。よもや」
「それとなくあの子の胸が本物かどうか尋ねただけで何もあんなに…」
「いえ、あれはストレートすぎましたぞ」
「そうかのお…わしのモグソートニルも踏み潰されかかったしのお…」

ちょっと連れの女の子の胸を凝視して使い魔のモグソートニルにスカートの下に走らせただけだった。
ほんの、ちょっとした冗談。スキンシップだったのにネアポリス伯爵と名乗った少年がいたいけなネズミを踏み潰そうとした光景を思い出し、オールド・オスマンは残念そうに使い魔であるネズミを撫でる。

「死んだ方がいいのでは?」

コルベールがぼそっと言う。 
久しぶりに聞いた炎蛇全盛期の冷たい声に、オールド・オスマンは部屋の雰囲気を取り戻そうと咳払いをする。
無駄な足掻きだが、オールド・オスマンは冷たい空気を無視して本題に戻る。

「ネアポリス伯の説明では使い魔の儀式は完了していない。ということじゃったが、まずはその事について確かめてもらえんかの?」
「わかりました…しかし、私は正直気が重いです。あれほど熱心な生徒が、初めて魔法に成功した結果」
表情を曇らせて心情を吐露するコルベールをオールド・オスマンは首を振って止めさせた。

「申し訳ありません。もし本当だった場合は、今度こそミス・ヴァリエールの召喚の儀式を完了させてみせます。それでは、失礼します」

大げさに意気込んでからコルベールは退室していった。

使い魔のモグソートニルがオールド・オスマンを見上げる。
長年一緒に過ごしてきた使い魔が自分を気遣っていることに気付き、オールド・オスマンはその頭を撫でてやる。

ルイズが魔法に懸ける熱意はオールド・オスマンも良く知っていた。
貴族としての格で言えば最上位に当たるヴァリエール家の三女であるルイズは注目を集めずにはいられなかった。
しかも魔法がまったく使えない。

実の事をいうと進級させるかどうか、使い魔召喚の儀式に参加させるかどうかという所で、オールド・オスマンは判断を迫られた。
何も皆が使い魔召喚を成功させる傍らで何度も何度も爆発を起こし、力尽きるまで失敗させるのは残酷だと言うのだ。
コレまでは何もなかったし、その気は今後も無いだろうが、ヴァリエール家から何か言ってくるのではないかと危惧する者もいた。
…だがオールド・オスマンは少なくない反対を押し切って、召喚は成功した。
そしてその使い魔と共にフーケを捕らえるという手柄を立てた。
だというのに、その使い魔の飼い主が現れ契約は完了していないなどと…始祖ブリミルも酷い事をなさるとオールド・オスマンはもう一度深くため息をついた。
今度ルイズの母が訪ねてくると面会した折にジョルノから聞かされてもおり、オールド・オスマンの悩みは尽きなかった。
362名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:29:38 ID:5VmyodJZ
一方彼らの頭を悩ませる原因を作ったネアポリス伯爵、髪を黒く染め髪形をかえてシャツを着替えたジョルノは、ポルナレフを探しいこうとしていた。
ポルナレフの意向を聞いておきたかったし、(聞いたから絶対にそれにそった行動をしていくとは限らないが)テファを説得しなければならない。
それに当たって、ポルナレフに少し相談しておきたかった…

その為学院にたどり着いたものの国に戻る事になったイザベラや、テファとは一旦別れておりフードを被ったエロタウ…ミノタウロスのラルカスだけを伴っている。
2mを楽に越える大男を連れて、ジョルノは階段を下りていく。

階段を降りきって、その足は人の多そうな場所へと向かっていた。
そこで適当に生徒を捕まえて亀の場所かルイズの居場所を尋ねれば見つけられるだろうという算段だった。

「ご主人様一つ頼みがあるんだが…」
「なんです?」

亜人の使い魔ということにしているので自分をご主人様と呼ぶラルカスに目を向ける。
すると…探すまでもなくジョルノの視界に気弱そうな女生徒が一人目に入った。
「実は今日の為にフェイスチェンジを覚えてみたんだ。ほら、イケ面に化ければ今夜の舞踏会で一夜のロマンスを体験できるだろ?」

はにかむ牛の顔を余り見ないようにしながらジョルノは少し考え、仕事ではかなり精力的に働いていることもわかっていたので許可を出す事にした。

「…構いませんが、羽目を外し過ぎないようにお願いしますよ」
「理解してるぜ。おっと、あの亀野郎のことをあの女生徒に聞いてましょう。ちょっとボ「シッ…人目を気にしてください」OK」

浮かれるラルカスを咎めて、ジョルノは誰かを待っているらしいその女生徒に話しかける。
ダンスのステップを芝生に刻みながら後ろを付いてくるラルカスの事は気にしないことにした。

「お嬢さん、少しお尋ねしてもよろしいですか?」
「え? あ、はい…なんでしょうか?」

年齢的にはそう換わらないようにも見えるが、服装から生徒ではないと悟ったらしく女生徒は少し緊張した様子で振り向く。
初々しい仕草に、ラルカスが少し顔を綻ばせる。ジョルノは紳士的に、昨日覚えたばかりのトリスティン式の礼をする。

「ルイズ・フランソワーズという女生徒を探しているのですが、もし知っていたら教えていただけませんか? 彼女の使い魔でもかまいません」
「ルイズ…ああ、『ゼロ』の! 確か彼女なら女子寮に向かうのを見ましたわ。彼女の使い魔なら、あちらに…多分、食堂の裏で他の使い魔達とたむろっていると思いますわ」

女生徒は言いながらその場所を指し示し、ジョルノはそれを覚えて礼を言う。
妙に詳しい説明にラルカスは眉を顰めたが何も言わずに置いた。今夜の舞踏会に着ていく服のコーディネートで頭が一杯だったわけではない。

「ありがとう、助かりました。申し遅れましたが私ネアポリス伯爵と申します、この礼は後ほどまた改めてさせていただきます」
「ネアポリス伯!?」

他国人でありながら急速にトリスティンでも名が売れたゲルマニア貴族と知り、女生徒は驚く素振りをみせ去ろうとするジョルノを呼び止めた。

「お待ちください! でしたら、一つお願いがございます…」
「なんでしょうか? 私のできる範囲であれば協力させていただきますが」

なんとなくこうなるだろうなと思っていたジョルノは、特に迷う素振りもなく聞き返す。
女生徒は喜色満面にネアポリス伯にお願いする。

「実は…ある出来事からお友達を一人傷つけてしまったんです。それ以来彼女は余り授業にも顔を出さず…」

憂いを顔に浮かべて、女生徒はジョルノに体を寄せた。
自分の魅力を、それなりに理解しているのだなとジョルノは感じた。

「伯爵様、お願いでございます。彼女を励ましてあげていただけないでしょうか? 貴方に励ましていただければ、きっと彼女も…!」
「私はそういうことは余り得意ではありません。ましてや面識のない方とは」
363名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:30:37 ID:Qk+xSmj/
しえん
364名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:34:21 ID:5VmyodJZ
謙遜するように言ってジョルノは首を横に振る。だが、女生徒は引き下がる気はないらしく、ジョルノとの距離をまた縮めた。
断るような態度を見せてからジョルノはですが、と諦める様子の無い女生徒に言う。

「そうですね…貴方の方がよくその方のことがわかるでしょうし」
「え?」
「今夜の舞踏会の相手にお誘いするのを名目にして、励ます内容の手紙を代筆していただけませんか? プレゼントと一緒にお送りしてみましょう。今からでは大したものは用意できませんが、花とアクセサリーの一つ位は用意して見せますから」
「あ、ありがとうございます。すぐに用意しますわ!」

言うなり女生徒は体を離し、簡単に手紙の受け渡しなどの約束をしてジョルノに一礼する。
ここにおりますので、といい手紙を用意し始める彼女の準備の良さにジョルノ達はちょっぴり感心した。

「今夜が楽しみになりましたわ。貴方様とミス・モンモランシのダンス、楽しみにしております」

ケティ・ド・ラ・ロッタと名乗るその女生徒と別れ、ポルナレフの元へとジョルノ達は歩いていく。
もう相手が見つかっていいなぁと羨ましそうにするラルカスに、ジョルノは苦笑した。
完全にケティと離れてから、ジョルノは言う。

「彼女は多分、僕を待っていたんだと思います」
「あん? ご主人様が誰かわかってたとか言うんじゃないでしょうな?」
「誰でもいいのかも…僕以外にも声をかけているのかもしれない」

証拠があるわけではなかったので、ラルカスは窺った見方だと笑い飛ばしジョルノの先を歩き出す。
食堂はすぐそこだ。そこにポルナレフがいる…大声で何か愚痴っているのが、ジョルノ達の所まで聞こえていた。

「でも、良かったのか? テファと踊ったりするのが先でしょうが」
「彼女をギャングの世界に関わらせる気はありません」

ラルカスは鼻で笑った。
ジョルノの言う事でも、今回ばかりは本気とは思えなかったのだ。
それに、烈風を始め、ジョルノ達の組織に敵対する動きが強く、纏まりを見せ持ち始めているような印象もラルカスは受けていた。

「もう遅いだろう。今更距離を置いても逆に危険じゃあないのか?」
「ゲルマニアならどうとでもなりますし、もうすぐロマリアの枢機卿様のお許しを買う算段もつきますしね」
「…聖職者を買収したのか?」
「高くつきましたが…ロマリアが最も腐っている」

言うと、ジョルノは珍しくため息をついた。
始めてみるジョルノの表情を、ラルカスは年相応だと感じて何故か可笑しくなった。

「既に僕が他の女性に手を出していると聞けば、彼女の熱病も少しは冷めるでしょう」
「どうかな?」

甘いなと言いたげにニヒルな笑みを浮かべる牛男を追い抜き、ポルナレフの元に向かった。
ジョルノ達が行くと、沈んだ空気を垂れ流す亀の中にワインの瓶が次々運び困れていく所だった。
気遣わしげな表情を浮かべながら、亀にワインを入れていくメイドを押しのけ、ジョルノは亀を取り上げて人目につかない場所へと連行した。

「ウォッ、なんだ…!?」

驚きながらマジシャンズレッドが亀から顔を出す。
ジョルノはゴールドエクスペリエンスで、マジシャンズ・レッドを押さえつけて中に入る。
精神的に深手を負ったマジシャンズ・レッドの力は弱く、グングン押し込み、ついには亀の中へと逆戻りさせることにさえあっさり成功する。
拍子抜けしたジョルノはソファに腰掛けてワインを煽っているポルナレフに尋ねた。

「何やってんです?」
「俺は、ダメな大人だ。ルイズを傷つけちまった…」
「そんなにルイズが気に入ってたんですか?」
「いやそういうわけじゃあねぇんだが…」
365名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:35:00 ID:5VmyodJZ
眉を顰めるジョルノに、ポルナレフのはっきりしない返事が返される。
ゴールド・エクスペリエンスの視界には、項垂れたままワインを煽るポルナレフの姿が見えていた。
部屋も薄暗く、テレビには『ぼのぼの』が仕舞っちゃう叔父さんに仕舞われる映像が流れている。
人気の無いところにたどり着いたジョルノは亀の中に入る。
ゴールド・エクスペリエンスで見た光景より、かなり情けない顔をしたポルナレフがジョルノを見上げていた。
何も言わずにジョルノはその隣に腰掛ける。
人が来ないように、見張りをラルカスに任せたジョルノはポルナレフと今までのことを語り合う。

ポルナレフの、主人になったルイズとの余り良くない状況にジョルノはちょっとだけ同情するような目をした。
今回ばかりはポルナレフに同情の余地がある。同じくテファに召喚されたジョルノからすれば、良くそんな主人で我慢できたなとも思ったが。
そしてジョルノの話に、ポルナレフはジョルノを2,3発殴りたくなったが、グッと我慢して同情するような態度を示した。
美少女侍らせた挙句お前とはもういられないとかお前は俺を敵に回したいのかと、問い詰めたかった…だが大人としてグッと堪えた。

「ルイズですが、もしかしたら彼女は…」

ジョルノはルイズがテファと同じ系統のメイジではないかと疑っていた。
旅の間も少し調べてみたが、使い魔に人間を呼ぶこと自体、前例が見つからないからだが…
ポルナレフは聞きたくないと腕を振るって制止する。

「いや…悪いが、これは俺の問題だ。お前には悪いが、待っちゃくれねぇか?」
「…わかりました。もう少しそちらは様子を見ましょう」

ジョルノの返事にポルナレフは笑顔を見せて、(ポルナレフ的には)兄貴分としてまだ高校にも入ってないジョルノが珍しくしてきた相談に乗ってやる事にする。
こっちは当事者ではないのでルイズとのことよりは気楽にワインを楽しみながら答えることが出来る。
考えて三秒、すぐに言い案が浮かんだ。

「そうだッ! さっき言ってた話だが、どうせならはっきり言った方がいいぜ」

気楽に言うポルナレフの態度には真剣に考えているのか疑わしさがあったが、こんな事で冗談を言うような男でも、多分、きっとないのでジョルノはアドバイスを聴いてみることにした。
薄く笑みを浮かべて、ジョルノもポルナレフから少しワインを分けてもらう。
名門貴族も通う学校で出されるワインだけあって、とても良い香りが口の中に広がった。
「…つまり新しい女が出来て誤解されたら嫌だからさっさと荷物を纏めろと言えばいいんですね?」
「いや、ちょ…まてお前、それは幾らなんでも酷いだろ!?」

かなり引き気味なポルナレフにジョルノは不思議そうな顔をした。

「そういうことではないんですか?」
「違うッ! もう少し彼女を傷つけないような方向で上手く言うんだよ!」
「そうですね…善処します」

舞踏会が始まってから言うか始まる前に言うか、その程度の事で大きく変わるとも思えなかったし、ジョルノはテファの元へと向かった。
ポルナレフが頑張れよと背中に声をかけたが、ジョルノは返さずに亀から出る。
人の目はない…ジョルノは学院長室のある塔を見た。

テファは、まだそこにいるはずだった。
何も言わずに歩き出すジョルノの後を、ラルカスが追いかけてくる。

「ラルカス、貴方も舞踏会の準備があるでしょうから自由行動してもらっても構いません」
「お、そうですか? じゃあさっきのミス・ツェルプストーに声をかけてみることにしよう…!」

許しが出た途端180度進む向きを変えるラルカスを笑って、ジョルノは亀を片手にテファの元へ行く。
 
「ああそうだ。ご主人様、ミス・タバサの件だが、彼女の使い魔にアンタが断った理由を説明しておきました」
「助かります」

シルフィードでは余り期待できそうに無いが、と思いながら礼を言って、今度こそラルカスとジョルノは分かれた。
そして、芝生に座るケティから手紙を受け取って、ジョルノ達が学院長と面会する前に宛がわれた客室に戻る。

テファは、今夜舞踏会があるというのにまだ何の準備もせずベッドに腰掛けてジョルノを待っていた。
ジョルノが入った途端俯いていた顔を上げて、ジョルノを見る目は一歩も引かないとジョルノに彼女の心情を伝えて来る。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:40:15 ID:oF9ah5S+
C-EEEN!!
367名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:41:03 ID:5VmyodJZ
一筋縄ではいかないようだとジョルノは感じたが、臆さずテファとの距離を詰めていった。
テファが口を開く…ジョルノはそれに被せるように声を出した。

「テファ、まだ準備をしていなかったんですか? 明日には貴方はゲルマニアに向かうんですから、ラルカス程とは言いませんが今夜は楽しまないと損ですよ」

そう言って用意しておいたドレスなどを荷物から出すジョルノにテファははっきりと言う。
ベッドの上に広げた布地をテファの指が押さえつけた。細い指が握りこまれ、皺を作っていく。

「私はいかないわ。ジョルノとまだ旅をするの」
「ダメです。何度も言わせないでください。僕は「私も何度も言いたくない。どうしたら私を連れていってくれるの?」ありません。そんなことは…」

ジョルノも始めてみせる剣幕で詰め寄ってくるテファにはっきりと告げる。
だが、テファは怯まなかった。

「私が、姉さんを助けるわ」

一瞬、何を言ったのかジョルノは理解するのを拒否した。
だが、テファは大きすぎる胸に手を当て、ジョルノに言う。

「それが成功したら、私を貴方の組織に入団させて欲しいの」
「駄目です。場合によっては警備の人を殺さなければならないんですよ? 貴方にその覚悟があると「きっと、姉さんとゲルマニアに行っても戦争が終った後アルビオンに帰っても、昔みたいにはもう暮らせないわ」

ジョルノがポルナレフと会いに言っている間…いや、オールド・オスマンと会っていた時もテファはずっと考えていた。
旅をして、エルフということがばれてしまうとどれだけ危険か、少しは理解できた。
ここでジョルノに頼んで姉のマチルダを助けてもらい、ジョルノが用意したゲルマニアの屋敷で静かに暮らす。
そんなことでまたジョルノが来る前のように暮らせるのか自問してみた…使い魔は、召喚したメイジにとって必要な者が呼びだされると姉は言っていたが、それは当たっているようだった。

「危険だってことはわかるけど…今の私が安心できるのはジョルノの隣だけだわ。私は、貴方が」
「テファ、それは風邪のようなものです。貴方は冷静じゃあない…」

切なげな目で言うテファに、ジョルノは険しい表情をして切り捨てた。
動揺して、テファの目が見開かれるのを見ながら、辛辣な口調で続ける。

「そんな考えは一晩寝て、少し頭を冷やせば考えなおせますよ」
「おいジョルノテメェ! もう少し言い方があるだろうが!?」
「カメナレフさんは黙っててください」

素っ気無い態度を装い、ジョルノは懐から先程ケティに書かせた手紙を取り出す。
もしかしたら、それの中身は熱烈なラブレターとかになっているのかもしれないが、確認する気はなかった。

「可愛らしい人を見かけたので今夜お誘いするつもりなんです。貴方も馬鹿な事は考えずに今夜の準備をしてください」
「わ、私は別に構わないわ。お母さんだって、お父さんの愛人だったもの…!」

虚勢も含んだ返事に、ジョルノは今度こそ厳しい目を向けて言った。

「…貴方はもう少し自分を大事にするようにそのお母さんに教わらなかったんですか? 僕にこれ以上関わると邪悪なことに関わることになる。これ以上は言わせないでくださいね」
「で、でも…」

テファの返事にジョルノは奥歯をかみ締めて無視した。テファが黙り込んでしまったので、もしかしたらとても怖い顔を見せてしまったのかもしれないと思ったが、気にしなかった。
荷物からプレゼント用のアクセサリも見つけてたので、一方的に話を打ち切り、ジョルノは急いで部屋を出て行く。

残されたテファは、決意を決めた。
ジョルノが置いていった亀に声をかける。
368名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:43:44 ID:zHo5S+4d
支援!
369名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/17(月) 23:44:01 ID:5VmyodJZ
「ポルナレフさん、貴方に協力してもらいたいことがあるの」
「お、俺か?」
「土くれのフーケを、マチルダ姉さんを今夜私が助け出すわ。お願い、手を貸してください」

胸の前で手を組んだポーズでお願いされたポルナレフには、フランス紳士的にも、女性のお願いを断る事は出来なかった。

「ジョルノ…お前が置いていくから悪いんだぜ?」

少しして、ミス・モンモランシの部屋に手紙やらと一緒に大量の花を生み出して贈ってから、ジョルノは慌てて出たせいでポルナレフを置いてきてしまったことを思い出したが…
どこかで見た体格と歩き方をする2m以上の大柄のイケメンの青年を見かけてしまい、それどころではなくなってしまった。

「ボン・ジョォルノご主人様。既に…! 二人ほど既に、ダンスの相手を決めたぜ」
「それはよかった。ラルカス、後でテファにもフェイスチェンジをかけてあげてください」
「了解した。だがもう少し待ってくれ。向こうに美女が見える」

以前教えたイタリア語で適当に挨拶を返す牛男に軽く怒りが沸いたが、『フリッグの舞踏会』というのは何か特別な舞踏会なのかもしれない。
そう思うことにしてジョルノは他の場所へと足を向けた。

自分の事ばかりではなく、一応他にも会うべき貴族の子息達がいる。
舞踏会に向けてジョルノ自身の用意もある。
そうした些事に時間を取られ、ポルナレフやテファがどうしているか把握できない間に、少しずつ日は傾いていった。
『フリッグの舞踏会』が始まる時刻へと、時間は流れていく。

ポルナレフと喧嘩中のルイズも、部屋で泣くのを止めてドレスを身に纏い、髪型をセットし、軽く化粧をしていた。
あんな使い魔のことで『フリッグの舞踏会』にでないなんて貴族にあるまじき行為だと、ルイズの反発する心は感じたからだった。

化粧を終え、泣いた後が見つからない事を鏡で確認するルイズは、不意に一つのことに気付いた。

「そうだわ…ッ! 逆に考えるのよ。あんな奴、使い魔じゃないって言うんなら…」

ルイズは杖を持ち、鏡に向けて軽く振るった。

「私はもう一度使い魔を召喚できるって考えるのよ」

責められた時のポルナレフの顔が脳裏に浮かび、罪悪感を感じたが…ルイズは無理やり笑い、会場に向かう為部屋を出ていった。



以上です。
なんで再会して舞踏会まででもう二話も使ってるんだよックソっクソっ…とちょっと思いながら、オスマンとかを削ってもまだ次も舞踏会予定です。
ジョルノと亀は困ってるけど牛達は基本他人だからフリーダム過ぎるんだ…次はお姉さんと再会までいけるとイイナと思います。
ではまた
370名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:04:25 ID:cvzXfdkw
GJ!
テファの覚悟もジョルノの格好良さもポルポルの渋さもGJ!
でもやっぱり牛自重wwwwwww
371名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:14:17 ID:vkwqJyyQ
GJ!
ポルポルとテファのその後がマジに気二ナリマスネ。
そして毛帝の黒さが何気ににじみ出てる…。

あれ?サイト登場フラグ?
ポルポルはともかくジョルノと相性悪いか?
372名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:28:30 ID:uFmIjBKV
>>371
そう簡単にサイトが出てくるかしら
373名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:46:05 ID:vkwqJyyQ
オレは展開的には和解できればいいなと
374名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:54:19 ID:I11tQDc2
怪帝が邪悪すぎるw
スピードワゴン見たらDIO見たいに「コイツは臭ぇー!」って言う前に間違いなく吐くwあまりの邪悪さにww
375名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 00:57:34 ID:xW1MFfTX
ここで、康一くんが召喚されるとか?
面識もあることだし。
376名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 01:04:35 ID:RHXgBrmB
GJ!
あえて!あえてケティの優秀さを褒め称えよう!!
これだけキャラが立ったケティは初めてだwww


時に、
>眼帯をつけ、両足は膝から下が義足。腕も片方が人工物だった。
と成ってますが、ポルナレフがカメの中に入った後は、義手じゅあなく両手とも生身(幽霊だけど)だったし、両目とも健在でしたよ。眼帯はしてましたが。
脚は出てきてないんで見えませんでした。
とにかく63巻の最後をご確認ください。


再度GJ!
ルイズの才能に気付いたジョルノがどう転ぶか気になるところ…。
377名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 01:07:10 ID:FnDqkaAc
邪悪な怪帝にGJ!
果たしてルイズは誰or何を召喚するのやら?
378名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 01:52:35 ID:CLAQ1Bo9
ホルホル君に一票
ポルポル君と宿命の再開
379名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 02:31:31 ID:BLJAlllP
何だこの怪帝は…DIO様のようなカリスマに溢れてやがるッ!
まさか怪帝が召喚したのは石仮面かッ!?

そして、メンヌヴィル戦が決着ゥゥ!したわけだが…
さすがに、前と違ってこの時間に投下しても、さるさん直撃だからキツイな…
今週夜勤だからAM1:30以降かPM4:00までのどちらかになるが、どっちがマシだろうかな…週末まで待つという手もあるが

まぁとにかく怪帝にGJだよこれは
380名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 10:15:10 ID:xZuJBqxb
>>377
チョコ先生に一票
381名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 12:24:57 ID:HH+p3ZnZ
エターナルフォースデルフリンガーとアトミックファイヤーブレード吹いたwww
382名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 15:29:38 ID:hKheuZWw
>>381
何ヶ月前の話だよw
しかしザブゼロの人最近見ないな。
383名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 16:47:39 ID:7jTuQ+m5
>>382先生…
濁点………多杉だぜ
384名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 17:28:48 ID:DCowzRY5
>>382
アヌビス神の人も>最近見てない
音信不通ってのは悲しい、良い所ならなおさら
385名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 19:37:00 ID:h9EErXnD
鏡ィ
386名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 19:38:39 ID:cvzXfdkw
ようこそ…『過疎の世界』へ……
387名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 19:39:09 ID:hUMXo0KB
>>384
一月頃に姉妹スレの避難所にいた
可能なら2月中に向こうの分がどうにかできればいいとか言ってた
けどできてなかったから多分何かあったんじゃないだろうか
多忙なんだろう
388名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 19:39:52 ID:cvzXfdkw
間違えた…
ようこそ……『停止の世界』へ……
389名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 20:49:44 ID:I76857uC
やっぱりここまで続くとネタ不足って深刻な問題だよな。
姉妹スレ見たく多ジャンルじゃないわけだし。
ってかなんで姉妹スレっていうんだ?兄弟スレでもいいじゃねえかチクショウ!イラつくぜ〜!
390兄貴:2008/03/18(火) 21:02:46 ID:Jf2SdPaI
シエンスタが貰えるなら今日の1:30ぐらいに投下できるんだが・・・
しかし結構長くなったなぁ
391名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 21:08:17 ID:+rMwMPYm
あ、兄貴ぃいい!
392名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 21:18:13 ID:hsX1qYG/
兄貴待ってたぜ
393名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 21:22:13 ID:dZhUjUT9
>>382からジオンの香りがする。
394名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 21:22:39 ID:xZuJBqxb
よし兄貴が投下するまでの前座で小ネタ投下だ!

エレ「カトレアが召喚して使い魔にした平民って貴女?
    『女性に幸運を与える事が出来る』っていうけど、そんな嘘で妹は誑かせても
    ヴァリエール家長女である私には通用しないわよ!」
辻彩「フ〜〜厳密には違いますわ。
    私が出来るのは女性に、幸福になれたり愛されたりする人相を与える事ですわ。」
エレ「…ふざけないでほしいわね。
    やはりただの詐欺師ね! そんな出鱈目で妹を騙して…」
辻彩「ところでエレオノールさん、貴女の人相は目と眉の形が良くないわね〜〜。
                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
    この形では男の人は、貴女が好きになればなるほど逃げていくのよね〜〜〜。」
エレ「ふ、ふざけないで! そんなこと一度たりともないわ!!
    ……いいでしょ、そこまで言うのなら私に幸運をやらを与えてみなさい!」
辻彩「それでは始めましょうね。 あと言っておきますけど『30分』しか持ちませんので。」
カトレア「エレオノール姉様、バーガンディ伯爵様がいらっしゃいましたわ。」

それから30分後
             ・ ・ ・ ・ ・
エレ「どうして『30分』だけなのよォオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
    ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
   もっと長くしてちょうだい!」
辻彩「フ〜〜……貴女、ひょっとして私の故郷に親戚が誰かいません?」
395名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 21:56:45 ID:cvzXfdkw
辻先生GJ!
このエレオノールは間違い無く髪の毛で襲ってくる
んで、バーガンディ伯爵は「好きになっちゃったんだよ…その性格」とか言ってくるMに成り下がりかねんwww
396名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 22:04:06 ID:hs6Rz6Ak
久しぶりに読み直したらアヌビス神が面白かった
デルフ・アヌビス二刀流を妄想してた頃に来たときは歓喜した事を思い出して
懐かしくなった。
397名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 22:55:39 ID:vkwqJyyQ
春休みは近いんだ。
きっと帰って来てくれる…アヌビスも鉄も…。
398名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:02:25 ID:23Zvj99G
兄貴今日の1:30からクル━━━━(゚∀゚)━━━━!!
って…あれ?……明日の?今日の?…あれ?
新手のスタンド使いか?
399名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:07:29 ID:Jf2SdPaI
住民!明日って今さ!
400小ネタ フーケの魔法学院日記:2008/03/18(火) 23:26:46 ID:FnDqkaAc
じゃ、兄貴がくるまでに一レスの小ネタ投下

○月×日
今日もまたオスマンの使い魔共退治に忙しかった
ご禁制の薬やワインを注射してこようとするから困る
数も多いのでキレてゴーレムで踏み潰してやった
疲れたから食堂で水をもらった
この水を飲むと不思議と寝不足が解消されるので助かる
料理長のマルトーに理由を聞いたら「ソレハ企業秘密デス」と
何故か片言で返された
黒髪のメイドが荷物を髪の毛を使って運んでいる
あれは便利で羨ましいと常々思う
二年生達が使い魔と戯れているのを見た
眼鏡をかけた少女の肩には隼が止まっている
氷を自由に操れる珍しい種類だ
薔薇を手にした少年は言葉を解する亜人に
角砂糖を口でキャッチさせている よしよしがキモい
一見平穏そうなこの学院だが、何かおかしい気もしてくる
オスマンに頼んでしばらく休暇でももらって家に帰ろうかねえ
そん時は、留守を守ってくれてるアイツに
コーヒー味のガムでもおみやげに持って帰ろうか
401名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:35:50 ID:EA6ChsNQ
なんか凄くほのぼのしていいな………


石を投げたら確実にスタンド使いに当たりそうだがら
学院の名前をグリーン・ドルフィン・ストリート魔法学院にした方が良いんじゃない?
402名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:37:30 ID:IRftyDoV
セッコ亜人ちゃう!
403名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:40:42 ID:I11tQDc2
オスマン:ハーヴェスト
マルトー=トニオさん
シエスタ:ラブデラックス
タバサ:ペットショップ
ギーシュ:しぇっこさん
おマチさん:イギー
かw
ほのぼのしていいな
404名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/18(火) 23:42:34 ID:elWrqg4C
>>394
オチ吹いたwwwエレオノールってヤンデレもいけるんだなw
>>400
ちょ、長髪シエスタだと…ッ!?なんという破壊力ッ!
405名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 00:58:39 ID:g7iMbZxF
>>394
確かにエレオノールと由花子は似てるwwww
どっちも恋人にしたくない点でwww

>>400
この後盲目のモット伯がくるんですね。わかります。

というかルイズは何を召喚したんだ?
原作ではサイト=剣を使って闘う人という事は。
ハッ!まさか!!
LUCKとPLUCKの剣か!!!
406名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:02:44 ID:b6v0IAy4
セッコとギーシュのセットはありだな
ヴェルダンテと扱い変えなくていいし
407名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:07:23 ID:pV/q+Sjn
ギーシュとセッコの戦闘能力が数倍以上違うのは気のせいかな?
408名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:20:38 ID:00+RxHKz
サイトは左手に剣、右手に槍持って
「たしかに…………憶えた……ぞ」
と言うに一票
409兄貴:2008/03/19(水) 01:32:00 ID:pR8aOLPw
予告どおり、食らえッ!住人!一周年記念投下スプラッシュをーーーーーッ!!
410名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:32:42 ID:t9wzAVsL
支援した!
411兄貴:2008/03/19(水) 01:33:58 ID:pR8aOLPw
グッタリしたオスマンを引きずるように連れて行くフーケを見送ったが、どうやったもんかと少し考える。
直限定となると、いきなり食堂に行ってもどうしようもないし、魔法なんぞ使えないので老化して人質に紛れる事もできない。
なお、モンモランシーも食堂行きだ。スデに一人始末したので、
それが帰ってこないのは拙かろういうことで、まだメイジが居たから探しに行った。という事にするらしい。

こうなれば、隙を見て一人一人順番に順番に始末していくしかない。面倒だが、それしか無い。
一先ず、塔から出て別の広場に来たのだが、意外なヤツがそこに居た。

「……邪魔だ」
正面に立ち塞がるようにして、シルフィードがそこに居た。
「きゅい」
「……オメーの相手してる暇ねーんだよ。隠密性もクソもありゃしねぇ」
邪魔だと言っても、退かない。夜とはいえこんなんが居た日にゃあ一発で補足されるに決まっている。
そんなわけで、どっか行けという具合に手を払いながら後ろを向き別の場所に行こうとしたが、その手を捕まれた。
「きゅい!」
「ちょっと待て、てめー…何のつもりだ!?」

その疑問に答える間も無く、シルフィードの翼が動き飛んだ。
さすがに、速い。一気に50メイルぐらい上昇したのだが、無論、背に上がれるわけでもなく腕を掴まれたままだ。
「…穴開けたらただじゃあおかねーからな」
「きゅい?」
こんな状況下でもスーツの心配。さすがである。
分かってるのか分かってないのか、抜けた感じの鳴き声が帰ってきた。
もっとも、言葉が理解できる韻竜などとは思ってもないし知らないので期待はしていない。
が、一応爪は引っかからないようにしてくれたらしい。
しかし、こうして腕掴まれて宙に浮いているとビーチ・ボーイに釣られていた事を思い出す。

結構大きさのあるシルフィードとはいえ地上から結構離れている上に
日は出ていないし、月も雲で隠れ気味になっているので、発見は難しいはずだ。
ただ、シルフィードに見付かったという事は、タバサもこちらの事を知ったという事になる。
偶然か、それとも『知っていた』のか。これだけでも大分違う。
まぁ話すタイプではないと見ているのでそれ程深刻ではないが、万一がある。

そうこうしていると、下の食堂付近で音と共に閃光が奔った。
こっちからは離れているので大した事はないが、近くに居れば、どこぞの大佐のように『目が…目がぁぁ』状態だろう。
続いて、火炎と爆発を確認したが、高度が少し下がると同時に唐突に腕への負荷を感じなくなった。なんというか落ちている。

「…っ!何してくれやがんだてめェェーーーーー!」
珍しく声が出る。ここまで出したのはブチャラティにジッパーで列車外に諸共放り出された時以来だろう。
いかにスタンドを備えていようとも、この高さから落とされては死ぬ。こちとらスタンドがある他は普通の人間である。
「お姉さまが危ないの。頑張るのねー」
そんな声が聞こえてきたような気がしたが、気にしている暇は一切無い。
無論、その後一拍送れて「あ、そういえばあの人、メイジじゃなかったのね」という間の抜けた声がした事にも。
412兄貴:2008/03/19(水) 01:35:20 ID:pR8aOLPw
時間が少しバイツァダストしてシルフィードの下、約30メイル。

ボロボロのオスマンとモンモランシーを見つけたという事で特に怪しまれなかったフーケだが、まだ何かあると思っている。
何せ居ないのは、あのニューカッスルから脱出した二人。何らかしら行動を起こすだろうとは予想していた。

「……もう少し優しくしてくれても良かったんじゃが」
「手加減してやっただけ有難く思いな。それにしても、どう出るかだね」
見た目こそボロ雑巾だが、実際のところ中身はそれ程酷くは無い。
とりあえず、メンヌヴィルを相手にするつもりはないので、動いた時に他のメイジを始末する予定なのだが、肝心の動きが無い。

そうこうしていると、紙風船が食堂に飛び込んできた。
(少なくともこっちに人質が居る分、直接被害が出る物じゃない。……考えられる事は行動だけを無力化する事!)
全員貴族の子弟が人質となっているのに、無差別攻撃を仕掛けるはずはない。
瞬時にそう判断し、オスマンを盾にすると同時に激しい音と光が食堂を包む。
「やっぱりか……やってくれるよったく……」
「……わし学院長なんだけど、扱い酷くない?」
光をモロに受けたオスマンが目を押さえながら抗議してきたが、フーケにとってはあまり関係ない事だ。
「手加減した分、まだ貸しが残ってたみたいだから返して貰っただけじゃあないか。気にしない」
そう言ってイジけ気味の爺さんを無視すると、銃士とキュルケにタバサが飛び込もうとしているのを見た。

「これで終わってくれれば楽でいいんだけど……」
本当にこれで終われば楽でいいのだが、相手が相手だ。
「そうもいかないんだよねぇこれが」
メンヌヴィルが居た所から炎の弾が銃士やキュルケ達の所に飛ぶと爆発を起こす。

「所詮、素人が勝てる相手じゃないって事か。あいつもまだみたいだし、このままじゃあいつら死ぬよ」
無論、ここで自分がしゃしゃり出てもどうしようも無いので出て行く気はない。
だが、教え子が危ないというのにオスマンは落ち着き払っている。
「コルベール君があの中に居らぬから、まだ大丈夫じゃ」
「そういや、さっきもそんな事言ってたね。宝物庫の弱点をわたしに言った時はそんな感じはしなかったけど」
「……減給じゃな」
413ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:36:37 ID:pR8aOLPw
数ヶ月越しに秘密が暴露され、安月給がさらに下がったコルベールに少し同情したが
表では倒れたキュルケにメンヌヴィルが杖を向けていた。
白炎からすれば、炎の女王でもまさに微熱程度であるらしく、笑みを浮かべている。

それにしても、どうしてこうわたしが関わった男はこうもアレなヤツが多いんだろう。
エロジジイに、ロリコン子爵に、今まで見た事の無いのようなドS。そして焼ける臭いが好きだという白炎。
いい加減ウンザリしてきたが、今は死ぬかどうかの瀬戸際なので何とか己を保っていると、本当にメンヌヴィルの前にコルベールがやってきた。

「へぇ…あいつの炎を防ぐなんて確かにやるじゃないか」
キュルケを包もうとしていた炎を最小限の炎で押し戻したあたり、その実力が伺える。
だが、そうであるのならば疑問が一つだけある。
「それにしたってあれだけの実力があるなら、わたしだって危ないかもしれないのに」
オスマンが捜索隊を募った時、あの場にコルベールも居たが手を挙げなかった。

分からない事を考えても仕方ないので、二人の方を注視したが、メンヌヴィルはさらに嬉しそうにし、コルベールは対照的な顔をしている。
馬鹿笑いしながら話しているのでメンヌヴィルの声だけは聞こえてきたが、どうやら知った間柄らしい。

「本当に久しぶりだ!隊長殿!二十年か!教師をしているとは驚いたぞ!人の焼き方でも教えているのか?はははははははッ!」
そんな心底可笑しそうな声を聞いて、一つ思い当たることがフーケにある。
出撃前に、隊長を攻撃して返り討ちに遭い目を焼かれたと言っていたのを思い出した。

……てく……がん……めェ………

「……何か言ったかい?」
「わしはまだボケとらんよ」
メンヌヴィルの声に紛れて何か聞き覚えのありすぎる声が聞こえてきたので、オスマンかと思ったが違うらしい。
どこからだろうかと思っていると、また聞こえてきた。

このク…カス…ァ……ァア…ア

メンヌヴィルとコルベールの上の方から聞こえてきたのだが、暗闇であまりよく見えない。
だが、もの凄く聞いたことあるだけの声だけに、その方向を見つめていると
二人の上にある大木の枝が揺れると同時に、見覚えのありすぎるヤツがメンヌヴィルの頭を踏んだ。
414ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:37:44 ID:pR8aOLPw
「このクソカスがァァァァアアア」
どこぞの手首フェチの殺人鬼が乗り移ったが、テンパっている場合ではない。

地面まで10メートルの時点で、庭に植えられた無駄にデカイ木の枝をグレイトフル・デッドで辛うじて掴む。
素手なら掴みきれずそのまま落下だろうが、幸い一応人型スタンドを備えている。脚が無いとはいえあるだけマシだ。
なお、グレイトフル・デッドのデサインについてメローネがしきりに
『足なんて飾りだ。偉いヤツにはそれが分からんのだ!』と連発し非常に鬱陶しかったので殴り飛ばした事の詳細は割愛しておく。

だが、いかにご立派な木とはいえ所詮は枝。当然折れる。
それでも、続け様に太目の枝を掴んでいくと落下速度が落ちてきた。
地面まで4メートルぐらいになると、そのまま降りても一応死なないぐらいになっていたが
視界に眼帯かけてバカ笑いしている無駄にデカイやつが目に入ったので、頭を思いっきり踏むと綺麗に着地した。

「本当にオシマイかと思ったよ…クソが…!」
あのクソ竜、いつかブッ殺す。と言いそうになったが耐えた。言えば色々と全否定してしまう事になる。
というか、こういう厄介事はミスタでいいからマジに変われと最近の胃へのストレスから、少々そう思う。
何かもう、胃の中から『ロオォォォォドオォォォォォォ』という呻きが聞こえてきそうなぐらいに。
もっともそのミスタは追い込んだせいで素敵なお友達と共に入院中であるが。

「なぁ、No5…俺間違ってないよな…?」
「元気出シテクレヨォ…ミスタ〜ジョルノダッテ、ソノ内分カッテクレルサ」
「ああ、俺の味方はお前だけだぜNo5…」
ヴェネツィア国際病院精神科において、そんな会話をするミスタとNo5だったが
「先生、ミスタさんが、また独り言を…」
「この調子だと、まだ時間が掛かりそうだな…」
その様子を偶然見た医師と看護婦にはピストルズは見えないので、精神面がやはりアレと思われ入院期間が延長となっていた。

方膝付いて立ち上がったが、呆然としているキュルケと気絶しているタバサ。そして、自分達と同じ空気を纏うコルベールを見た。
が、そのコルベール先生だが、それがベチャリという音を立てて地面に突っ伏したような感じだ。
空から人が降ってきた上に、メンヌヴィルの頭をイタリアが誇る赤と緑の配管工のように踏んだのだから無理も無いが。

「意外と派手な登場したね」
「若いんじゃろう」
そんな、のおほんとした会話をするのはフーケとオスマン
さすがのフーケも空から降って、配管工よろしくメンヌヴィルを踏むとは思ってなかったらしい。

何か間の抜けた雰囲気だが、実際のとこそこら辺に指を吹っ飛ばされた銃士とかが転がっているので。結構な惨状である。
本人にしても、想定外だけにどうしたものかとちと悩む。
踏んだ事は特に気にしていないが、何の準備も無く敵のド真ん中だ。
いつもなら牽制も兼ねて広域老化を叩き込むとこだが、オスマンと話つけてるので使うわけにもいかない。
とりあえず、まず視線がタバサに向けられた。気にかけているというより、ガンを付けていると言った方が正しいかもしれない。

「こいつ…人をあんな目に遭わせといて呑気に寝てんじゃねえッ!!」
ルイズのような例外を除き、使い魔は大抵主人の命令で動くと認識している。
つまり、高度30メートルから落とされたのもタバサがやったのかと思っているわけで、少々ヒートアップしております。
この男、基本的に己に攻撃を仕掛けてくる相手は誰であろうと徹底的に叩き潰すタイプである。
まぁ暗殺チーム全体がそうなのだが。G・デッドのように能力上で巻き込むのならともかく、メイジで無いという事を知っている上でやったならアレだ。
例えどれだけ幼く見えようとも性別が女だろうと容赦しない。またまたスト様もビックリだ。

反応が無いので、蹴りの一発でもくれてやろうかと近付き、杖を軸に座るようにしているタバサを少し脚で揺らしたが、またしても反応は無い。
普通なら気絶していると思いそうなものだが、元暗殺者といえど人間である。心拍数絶賛上昇中で少しばかり動揺しているのだ。
本気で『罰』と書かれた紙でも貼り付けてやろうかとも思っていたりする。
イタリア人なのに『罰』とか突っ込んではいけない。そんな事をすれば、職業漫画家の吸血鬼がどこからともなくやってくr…


WRRRYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!
415名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:38:02 ID:dQa6KS6r
支援
416名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:41:20 ID:t9wzAVsL
支援
417ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:42:47 ID:pR8aOLPw
「ちッ…寝てるってわけじゃあねぇな」
少しすると、まぁ落ち着いたのか気を失っている事に気付いたが、とりあえず状況確認をせねばならない。
「おい、てめー敵か?」
頭を押さえながら立ち上がった眼帯の男に質問したが、この際ついでに首ヘシ折っときゃよかったかと、少し考える。
明らかに悪党面してるので敵だろうと思っているが、元とはいえ人の事言えない職業に就いていたのに随分と酷い。

「ああーーーーーーーッ!!」
そこまですると、今まで呆けていたキュルケが叫んだが、こちらも何時もどおりで何も変わってないらしい。
「よぉ、相変わらずだな。ちったぁ静かにしろよ」
「で、でも何で…!?」
「そりゃあこっちが聞きてーよ。言っとくが、ツケ利かねーからな」

「ぐが…何者だお前」
「質問に質問で返すんじゃあねぇ。今、質問してんのはオレだぜ。敵ならそのままくたばってろ。ボケが」
やっとこさ立ち上がったメンヌヴィルに向け吐き捨てるかのように返す。
味方だったらどうすんだと突っ込みが入りそうだが、例え味方であっても
『死んでないんだから文句無いはずだ。んなもん無いよな?ベネ(良し)、無いな』的な考え方である。
自己完結三段活用という非常に自己中心的な思考だが、それがギャング。

「あいつホント敵無しだね…」
少し離れた所でフーケが本気でそう思う。
こいつ、どこまでこの態度を保てるのか知りたくはあるが、知ればそれはそれで怖い。
何かもう、始祖にすらタメ口使って気に入らなければ、空気を吸うように自然体で『ブッ殺した』と過去形で言いそうだ。

そして、肝心のメンヌヴィルだが、何か知らないが嬉しそうだ。
「血と死の臭い。俺たちと同類か」
そう言うと、香りを吸い込むように鼻腔を広げたが、それを見てプロシュートの眉が若干歪む。
「惜しいな。隊長どのさえ居なければ、真っ先にお前を焼いてその焼ける香りを堪能してやるというのに」
その言葉を聴いてさすがのプロシュートも少し引いた。

――こいつ変態か…!?そういう意味ではメローネと同類だが……

無論、ビビったわけではない。しかし、事前に聞いていたとはいえ、いきなりそんな事をカミングアウトされればさすがに引く。
まして、人が焼ける臭いを好んで嗅ぎたいなど変態以外の何者でもない。誰だって変態の相手はしたくないのである。
なお、メローネと同タイプと評したが、あれだって任務以外でベイビィ・フェイスの息子を作ったりしない。
なにせ、上半身をピッチリとした袖の無い服で覆い、無駄に割れた腹筋とかが露になったその上にマントを羽織っている。
色々思い出したくない物を思い出させてくれやがったので少々気分が悪くなってきた。
したがって、現段階における目の前の眼帯男のプロシュートの評価は
『放火魔で臭いフェチの、隊長(多分コルベール)に異様なまでに拘ってるガチムチのキレてるド変態』
という極めて散々なものである。
418名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:43:47 ID:48vW3Os4
兄貴なのにDIO支援
419ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:45:05 ID:pR8aOLPw
「で、何だ。こいつ敵でいいのか?おい」
早いとこカタ付けちまおうと、意識が半分飛んでいるキュルケとコルベールに一応敵かどうか確認を取る。
もっとも、例え味方であっても排除したい気分にはなっていたのだが。
「え、ええ。そのはずだけど…」
「君、これは…」
「ああ、気にすんな。もう『終わる』からよ」

まだ何か言いたそうなコルベールの言葉を遮ったが
メンヌヴィルまで距離およそ2メートル。辛うじてグレイトフル・デッドの手が届く距離だ。
問答無用の直触り。これで一気にケリを付ける。
スタンドが見えない以上、本体が動きを見せなければ対処のしようが無い。
まして、自分よりコルベールに目が行ってるので避る事などできはしない。

だが、掴もうとした時メンヌヴィルが一歩下がった。
…偶然か?
そう思いもう一度仕掛けたが、やはり避けられた。
人間、不可視の物を回避する事は極めて難しい生物である。つまり『見えている』という事になる。

「てめー…見えてんのか?」
こっちでスタンド使いが出たというような情報は入っていないだけに自然発生したとは考えていないが
ベイビィ・フェイスの息子、猫草、猿のような例がある。
ポルポのブラック・サバスあたりも一人歩きしているかもしれないという事も想定せねばならない。
『チャンスをやろう………向かうべき『2つの道』を………!!』
そんな事をのたまいながら矢を人の頭にブッ刺していくサバスが記憶の中から浮かんだが、そうなれば最悪だ。
グレイトフル・デッドの場合、どちらかを相手にするだけでも結構キツイのだが
メイジ兼スタンド使いなぞが量産された日には、さすがに手に負えなくなる。
そもそも、スタンド使いがメイジと相対するにあたって、最大のアドバンテージが
一部の例外を除きスタンド・ヴィジョンが『見えない』という事である。
スタンド・ヴィジョン自体は近距離型であるが、あくまで老化込みなので接近戦はどちらかというと不得意な部類に属する。
相手に補足されない距離から老化を叩き込み、行動不能に陥った敵に接近してトドメを刺すというのが本来のやり方だ。
なにより致命的なのが、グレイトフル・デッドの機動力の無さにある。
脚が無いだけにスタンドそのものの移動は手で行うのだが、攻撃するとなると移動が不可能になる。
迎撃だけなら、ステッキィ・フィンガースクラスのラッシュをある程度捌けるが、中距離から攻撃されるどどうしようもない。
つまり、見えているのであれば、少なくとも広域老化抜きで勝てる相手ではないという事になる。

とんだ貧乏くじ引いちまったか?と思うがもう遅い。フーケはビビって出てこないし
キュルケは精神的に、タバサは物理的に戦闘不能みたいなものだ。
残ってるのは…コルベールぐらいだが、フーケ追撃の時に手ぇ挙げなかった事を覚えているので、戦闘要員としては使えないと判断している。

仕方ねぇ、事後承諾だ事後承諾。使わなけりゃあこっちがヤバイ。使い魔が死んでも本体が生きてりゃ問題ねーだろ。
と学院を阿鼻叫喚の老化地獄に巻き込んでケリ付けようかと考えを改めたが、それをやる前にメンヌヴィルが口を挟んできた。

「ワルド子爵から聞いた事がある。妙な力に掴まれるなと。よく分からんが、空気の温度の変化で何をしようとするかぐらいは分かる」
それを聞いて若干拍子抜けした。感じているという事で見えているわけではないようだ。
「ああ、目が見えてないって事か。それだけってんなら安心だ。少なくともオレらの領分には踏み込んでないって事になる」
だからと言って不利な事には変わりないが、当面スタンド使い相手を想定しないで済みそうだ。

もっとも、直接見えないと言っても、感じ取られてしまうのであれば、そうそう接近戦に持ち込ませないだろうし
メイジは元から中距離タイプだ。近距離パワー型であれば強引に突っ込んでもいいが、先のとおりそうではない。
420ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:46:58 ID:pR8aOLPw
正面から突っ込むのは下策というものだ。策を使う必要があるだろうが
普段から老化を使い盛大に正面から突っ込んでいるだけあって、やはりそう得意なものでもない。
そもそも、暗殺チームで策なぞ使ってるヤツが居たかどうかと聞かれれば、居ないと答えたくなる。
精々ホルマジオぐらいだが、あれにしても能力の応用というぐらいで、大概、各メンバー全員が能力を使って正面から突っ切るタイプだ。

さっきのでケリ付けたかっただけに、一度距離を取られるとやはり厳しい。
こいつ一人だけなら、火出した時に合わせて老化を使えばいいが、生憎まだ敵が他にもいる。
デルフリンガーが無い以上魔法の集中攻撃を受ければどうしようもないのだ。
ボスのような大物ならともかく、使い捨ての傭兵如きに相打ち狙いというのも釣り合わない。
策を弄する時間も無いだけに、どうすっかと、辺りを一瞥したが、コルベールが杖を出して割り込んできた。

「ミス・ツェルプストーとミス・タバサを連れて、下がってくれ」
「確かにまだ夜だがな。寝ボケてんのか?誰に物言ってるつもりだ」
邪魔だと言わんばかりに言い放ったが、本人からすれば実際邪魔なので仕方ない。
「これはわたしと彼の問題なんだ。頼むよ…」
かみ締めた唇の端から血が流れていたが、やはり纏う空気が違う。

そこに食堂から二人を狙うようにしてマジック・アローが数本放たれた。
それが勢い良く飛んで行ったが、二人の2メイル先で何かに弾かれたように消えたと同時に
コルベールの杖の先から炎の蛇が飛び出し、そのメイジの杖を燃やし尽くす。
「これでも駄目かね?」
冷たい笑みを浮かべたコルベールがそう言ったが、その眼は腐るほど見てきたそれだ。
「…とんだ皮被ってやがったか?リゾットならとっくに見破ってたんだろーがな。つか撃たせる前に燃やせ。ダメージはねーが衝撃は来るんだからな」
纏めて食らえば、衝撃で骨が折れるだろうが、拳で弾く限りは魔法の矢の2〜3本程度なら問題無いのだが、痛いものは痛い。
とにかく、こいつは自分たち暗殺チームと同じか、それに類するヤツだと認識した。

「オメーは立てんだろ?そいつ連れて行くぞ」
どういう理由で皮被ってたのかは知らないが、本性見せてやるというのであれば別段邪魔はしない。
こいつがやられても、終わった後の隙を突いて直をブチ込めば済む。
「待って!ミスタが…」
「本人がそう言ってるんだから助けなんていらねーだろ。第一オレが見たところいるようにも思えないがな。そんぐらい分かんだろーが」
キュルケがコルベールを見たが、プロシュートと同種のスゴ味を感じ頷く。
「それにしても…」
「何だ?」
「憎たらしくなるぐらい冷たいけど、周りの事を分かってるのは変わってないわね。ルイズに会ってもそうなのかしら」
「言ってろ。リゾットに比べりゃオレなんざ微温湯だ。オメーが暑苦しすぎんだよ。んな暇があんならさっさと立て」

さっき利用した木に背を預けると、観戦と洒落込む。
再び月が雲で隠れて闇の中になったが、職業柄夜目は利くので特に問題は無い。
421ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:48:27 ID:pR8aOLPw
しばらく見ていたが、戦況はメンヌヴィルが有利というところか。
互いに炎を飛ばしあっているが、コルベールの防戦一方だ。

「にしても、五月蝿いヤローだ」
馬鹿笑いしながらメンヌヴィルが魔法を飛ばしているのだが、非常に五月蝿い。
鉄砲玉にはなれても暗殺者にはなれない。そういうヤツだ。
そもそも、この任務自体が使い捨てなんじゃないかと思えてきた。
メイジと言っても金で雇われた傭兵だ。成功すれば良し、しなくても使い捨てる、そういう作戦だろうこれは。
経験上、流れのチンピラに仕事をさせるのは大抵が鉄砲玉なのでそう判断した。まぁ暗殺チームも組織から見れば似たような物だったのだろうが。

そうしていると、戦闘場所が広場の真ん中に移ったようで、よく聞こえないが何か話をしているのが分かる。
どうでもいいので特に聞こうとしなかったのだが、コルベールが膝を付いて頭を下げたのが見えた。
「てめーから仕掛けといて降参か?……いや、そうでもねーか」
何かある。
そう思うと同時に、コルベールが上空へ向けて杖を振ると小さな火球が飛び出る。
照明代わりかと思ったがそうでもないらしい。
その火球を見ていると、小さな爆発が起こり、それが広がっていくと巨大な火球が出現した。

これと似たような光景を一度見たことがある。
生で見たわけではないが、メローネがネットをしていた時に気化爆弾というのを一度だけ見たのだがそれとよく似ている。
気化燃料を空気中に撒き散らしながら周囲一帯を焼き尽くすというえげつない兵器だっただけに記憶にあった。

メンヌヴィルが倒れた後、静かになりコルベールの呟きだけがよく聞こえてきた。
「蛇になりきれなかったな。副長」

倒れたメンヌヴィルに向けて近付いたが、少々息苦しい。
さっきの炎のせいで酸素濃度が低下してるせいだろうが、息ができないというわけでもない。

隊長が倒されたのを見た他の傭兵が動揺しているがその程度の相手なら他に任せていいと思い、とりあえずはこちらの用を済ます事にした。
無事だった銃士やキュルケにタバサ。おまけに味方と思っていたはずのフーケが攻撃を仕掛けてきたのですぐにカタが付いたが
前に目をやると少し離れた所でアニエスがコルベールに掴みかかっている。
まだ『戦闘中』にも関わらず何やってんだと言いそうになったが、それより先に慣れた気配を感じた。

「てめーらボケっとしてんじゃあねーぞッ!!」
二人の後ろに、どこからか放たれた炎が迫る。
あんな気配を出したのだ。発せられた場所は分かっている。
422ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 01:50:16 ID:pR8aOLPw
だが、それでも二人にとってはスデに至近距離の上体勢も悪い。魔法で防御は不可能だ。
咄嗟にコルベールがアニエスを突き飛ばし、身代わりになろうとした。
「貴様…!」
「……すまなかった」

直撃する。そう思いキュルケが目を反らせたが、それより先に誰かが割り込んできた。
「…ッ!馬鹿が!あんなもんで人一人殺れると思うんじゃあねぇ!」
その叫びと共に炎の中に紫がかった半透明の左腕を突っ込む。
「〜〜〜〜〜ッ!ってぇだろクソがッ!!」
火球が空中で燃え上がったが、元々の射程距離がそう長くないだけに本体の左腕に余波を受けた。
すぐさまグレイトフル・デッドの右腕で炎を消したが
スタンドで本体をある程度防御したとはいえ、本来なら鉄をも溶かす温度だ。
当然ながら左腕に相応のダメージはある。魔法か何かで治さない限り当分使い物にならないだろう。

火が放たれた先を見たが、メンヌヴィルが立ち上がっている。
「『爆炎』を受けてまだ…」
「知らねーようだから教えといてやる…!
  人間ってのは5分ぐらいなら息が止まっても蘇生できるんだとよ。てめーの温いやり方のせいで予想外のダメージ貰っちまった…ッ!」
それにしたって何らかの蘇生処置が必要だが、傭兵として鍛えていただけの事はあるという事か。
「大体、何だありゃあ?部屋ん中ならともかく、あんなもん外でやったら意味ねーだろうが」
いかに巨大な火球が酸素を燃やし尽くそうとも、消えれば周りから自然に集まってくる。
ついでに説明を加えるなら、威力こそ遥かに上だが、同じ原理の気化爆弾にしても周囲に居る人間を酸欠にするのではなく
一酸化炭素中毒と、爆風を受けた時に起こる急性無気肺との合併症による窒息である。

まして、火球が作られていたのは僅かな時間にすぎない。
致死量の一酸化炭素ぐらいなら作れるとは思うが、それを相手が吸い込むかどうかは別問題だ。
ミスタの頭に三発弾丸をブチ込んで、まだ生きていたというのを体験している身だけあって、あんな程度で死んだと思い込む方がどうかしている。
それでトドメ刺そうとメンヌヴィルの所に行こうとしたのだが、揉めている二人に気を取られたせいで後手に回ってしまった。

「ガハッ!…ハッ!…ははははは!さすがだ!さすがオレが惚れただけの事はあるな隊長殿!」
ok。それを聞いてプロシュートの中で『ガチホモ』という項目が新たに追加されメンヌヴィルの評価が落ちるとこまで落ちきった。
これ以上下がるなら、マンモーニぐらいだろうが、それは望めそうに無い。
「終わるまでそこで見てろ。テメーもだ。恩には恩を、仇には仇を。このダメージは倍にして返すッ!」
左腕を焼いたのはこれで二度目か。上着は脱いでいたから前とは違って無事だが、シャツが少し焼けた。これだって高かったから余計ムカついている。
423名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:51:17 ID:NCKb4Nzm
支援!
424名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:52:49 ID:48vW3Os4
支援
425名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:54:12 ID:22SPYRZt
しAMEN
426名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 01:56:40 ID:22SPYRZt
メーデーメーデーさるさんに突入した。オーバー
427名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:00:26 ID:22SPYRZt
これで無理なら避難する。オーバー
428ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:00:43 ID:pR8aOLPw
「しかし、平民に助けられるとは運が良かったな。さぁ続きだ隊長!」
「悪いな。あのハゲは女とよろしくやるらしいから忙しいらしい。選手交代させてくれ」
コルベールとアニエスから離れたプロシュートがメンヌヴィルに近付いたが、メンヌヴィルは興味無さそうにしている
「邪魔だ。平民が、まして左腕を焼かれたお前に何ができる」
「ッ…!腕一本で勝った気になってんじゃあねーぞッ!」
まだコルベールの方を向いたメンヌヴィルの後ろから、かなりイラついた感じの声がかかる。
左腕が使い物にならなくなったとはいえ、その眼は依然として死んでなどいない。

「どいつもこいつもナメた真似してくれやがる……ギアッチョじゃあねーがいい加減イラついてきたぜ」
腕や脚の1〜2本が千切れても食らいついたら離さないというのが暗殺チームだ。
この程度で参ってるようでは話にならないのだが、この目の前のクソッタレのデカ物は、それだけで相手にしようとしなくなっている。
まぁ、その、なんだ。
用は早々に戦力外扱いされた事にスッゲェムカついているわけである。
ペッシとかなら間違いなく額に浮かぶ青筋を見ているはずだ。
「今はお前ごとき平民に構っていられんのだ。隊長どのをじっくり炙ってやらねばならん」

目に見えはしないが、語気から判断したのかメンヌヴィルが後ろを向いたまま話してきたが、明らかにナメている。
暗殺チームは組織の脅威となる者は政治家だろうと、アメリカのギャングだろうと全て取りのぞいて来た。
そしてその任務達成率は100%である。暗殺という過酷な任務からして、その達成率は他に類を見ない物だろう。
パッショーネ内ですら、本来なら敬遠されている方々なのであるのだが、それをこうもナメてかかられているというのはワルド以来久しぶりだ。
こうも調子付かれると、やはり気に食わない。

「素人風情が……調子乗ってんじゃあねーぞ」
暗殺任務に必要なのは、冷静かつ素早く確実に対象を始末するかという事が必要だ。(ギアッチョは例外としても)
フーケのように盗みなどならともかく、殺しの中で愉しむなぞド素人もいいとこである。
そんなド素人にナメられるなぞ『侮辱』とも取れる行為であり、普段冷静な判断が出来る方のプロシュートとはいえ、かなりムカついている。
まぁ、残った冷静な部分で、スタンドを知らんので仕方ねーわな。 とも思っているのだが。

しかし、こうメイジを相手にするとなると、こちらとしてもスタンド使いの相方が欲しい。
フーケでも特に問題は無いっちゃあ無いのだが、隠密性や即効性が高いだけにスタンド使いの方が適している。
猫草を思い出したが、0.1秒で却下した。
アレはフリーダムすぎて扱いきれる代物じゃあない。というか奇妙な植物が生えた鉢植え持って戦うのは無理がありすぎる。
あのエテ公を殺すんじゃあなかったなとも考えたが、スデに終わっているので考えても仕方ない。
無い物強請りをしてもしゃーないので、精々フーケをコキ使ってやるかと結論付けたのだが
知ったらフーケは間違いなく泣くはずだ。……いやもうスデに泣いているか。
429ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:03:30 ID:pR8aOLPw
「たかが腕一本で能書き垂れてんじゃあねぇ。どこ見てやがる」
「調子付くな。体温が上がっている上に息も荒い。隊長の焼ける香りをたっぷり味わってからゴミのように殺してやる」
メンヌヴィルがそう言った瞬間、プロシュートからため息が出る。
「…ったく。少しはマシなのが出てきたと思ったが…お前もそうか」

思わず右手を額に当て、落ちてきた髪を戻す。
『殺してやる』。これを聞いた瞬間、イラつきが全てフッ飛びどうでもよくなった。
「『殺してやる』なんて言葉は…終わってから言うもんだ。オレ達『裏の世界』では特にな」
思わず説教(あくまでギャング的な意味の)染みた言葉が出たが、無理も無い。
向こうでは『最も』使う必要の無かった言葉を言ってきたので、一種の条件反射というやつか。

――ああ、クソッ!こいつブン殴って説教してェーーーー。

そう思ったか定かでは無いが、とりあえず終わったらフーケにギャング的心得を叩き込む事に決めた。
多分、抵抗されるだろうが知った事か。
犯罪者としての自覚があるなら、覚えておいて損はない。
なお、暗殺チームにおいてこの講習を受けたのはやはりペッシだけである。
対象は、問題児(児って歳でも無いが)三人組のメローネ、ギアッチョ、ペッシなのだが
ギアッチョはスーツ装備して聞いてねーし、メローネは早々に逃げ出したので、三人分纏めてペッシが受ける形をなっている。

この場合、ものスゴク八つ当たりに近い物があるのだが関係ない。
序盤で三人娘もろとも始末するつもりだった己の過去を存分に呪うがいい。
ギャングスターというものは恩も忘れないが、仇も決して忘れないという難儀なナマモノなのである。

「急に何やっとるんだね」
「ちょっと敬虔なアルビオン人の血が騒いで…」
そして、フーケが何かこう5ページにも及ぶ『無駄』とか『マァヌケめぇ』とか
『老化しよ、ねッ!背中見せよ、ねッ!ねッ!』とか『オーノーだズラ』とかいう無数の幻聴が色々聞こえてきて
なにやら何とも言えない微妙な気分になり泣きそうになりながら信じた事の無い神様に祈っていた。
ディ・モールト疲れてるんです、ねッ!この人(23歳)。

「仕方ない。五月蝿い蠅から焼くことにしよう」
やれやれと言わんばかりにメンヌヴィルが首を振ったが、ようやっと杖がプロシュートに向けられる。
それと同時に横に避け回避。今まで居た地面に炎の弾が飛び爆発した。
「ほう、よく避けたな。だが、続けてどうだ?」
「馬鹿の一つ覚えが…」
続けて回避行動。さっきの戦闘を見る限り、ホーミングもするようだが、それをしないあたりやはりナメている。
430名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:04:53 ID:dQa6KS6r
支援
431ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:05:40 ID:pR8aOLPw
爆発で地面に穴を開ける事数度。至近で受けた爆風で体勢を崩したのかプロシュートが膝を付いた。
「どうした、もう終わりか?やはり、平民は平民か」
「強いな…確かに強い。一つ聞くが、お前とあのハゲとはどういう関係だよ」
「この際だ、説明してやろう。あの男は魔法研究所実験小隊の元隊長で、オレから両目の光を奪った男だ。オレは隊長殿にぞっこん惚れた。
  あいつみたいになりたいってな。そう思ったら背中目掛け杖を振った。その結果がこの両目だ。さぁお喋りの時間は終わりだ。燃やしてやる」

メンヌヴィルの杖の先に炎が巻き起こったが、対するプロシュートの発する声は極めて落ち着いている。
「ああ、そうだな。オレをナメきってくれたおかげで助かったよ。こうして話していた間にも時間が稼げた」
「時間だと?隊長殿の怪我を治す時間稼ぎか?なら礼を言おう。また隊長殿と戦えるのだからな」
「目が見えないってのは大変だな。人の温度の見分けは付くらしいが、他はどうだ?植物とかよ」
  植物ってのは何年経とうが温度が一定だからな。オレの能力も利き辛いんだが…直は別なんだぜ?グレイトフル・デッドの直触りはよォ〜〜」
「植物だと?極上の香りというものは生物を燃やしてこそだ。植物など燃やして何になる」
どうやら、直という意味を理解していないらしい。どうやら、あのヒゲはこいつには老化の事は伝えていないようだ。

まぁ、知っていようがいまいが、手遅れだ。もうスデに『終わって』いる。
「温度には敏感でも音はどうだ?気付いたか?あの音に。ま…もう遅いんだがよ」
「何?何だ、この音は?」
「その位置だ。お前のその位置が、ディ・モールト良い」
今までこそ小さかったが、今ではハッキリと聞こえる。何かがひび割れたりするような音だ。

メンヌヴィルが魔法で地面に空いた穴。プロシュートが片膝を付きながらそこに手を突っ込んでいる。
「遊んで適当に狙いを付けてくれたお陰だ。手間が省けただけ礼を言うぜ。こんだけデカイと適当に穴開けるだけでもすぐ見つかるもんだ。根ってのはな」
穴から引き抜くように手を出すと、木の根がその手に掴まれていた。しかも、スデに枯れ始めている。
スタンドを展開しているだけあって爆風でのダメージなぞ無いに等しいのだが、良い感じにナメていただけあって勘違いしてくれた。

「今日二度目の頭上注意だ。本日の天候は晴れ。……所により倒木にご注意下さいってか」
言い終えると同時に老木がメンヌヴィルの後ろから倒れ込んできた。さっきの木が老化でボロボロに崩れ幹が折れたのだ。
根を介しての直触り。いかに寿命が人のそれより長いとはいえ、直ならば容易く枯らす事ができる。
「うぉぉぉぉおおお!馬鹿なァァァアア!こ、この木は!この木はこんな…!」
「オレに対しての情報不足だな。文句あるならワルドかフーケに言えよ。おっと、ただし地獄でだ」
倒木にメンヌヴィルが巻き込まれたが、杖の先に出ていた炎が燃え移った。
メンヌヴィル自身の魔法の火力が高いだけに倒木が一瞬にして燃え上がり、身体を包む込んでいく。
「自分の火で焼かれちゃあ世話ねぇぜ。クソみてーな臭いだが、オレからの礼の代金だ。そんなに好きなら死ぬまでじっくり味わえ」
「………貴……ァ……」
炎の中でメンヌヴィルが何か言っているようだが、大して聞こえはしないし、何より興味が無い。

何時の間にか晴れた月と燃え上がった倒木を見て一息付く。改めて自分の能力の使い辛さを認識した。
だからといってこればかりは、本人の精神の表れなのでどうしようもないのだが。
「にしても…焚き火ってのはもう少し情緒があるもんだが…こりゃあいいとこゴミの焼却ってとこか。後始末が大変だ…」
なにしろ、デカイ。デカイだけに火の勢いも結構なものだ。まぁ火の始末は他のヤツに任せるとしたが、キュルケの怒鳴り声が届いた。
432名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:06:55 ID:48vW3Os4
支援
433ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:08:16 ID:pR8aOLPw
声のする方向に視線を向けたが、なにやら揉めている。
アニエスがコルベールに剣を突き付けているようで、中々の修羅場のようだ。
「さっきから何やってやがる。内輪揉めとか本気で勘弁しろよ。メンドクセぇ」
負傷や戦闘の疲れでかなりダルい。
最悪二人ともブン殴って終わらすかと思って近づいたのだが、どうも事はそう単純ではないらしい。

「貴様…何故わたしを助けようとした!
 あの時、女、子供も容赦なく焼き殺したお前が!今、わたしを助けるぐらいなら何故あの時故郷を焼いた!!」
アニエスのその言葉を聞いて思い当たる事はある。
リッシュモンはあの時殺ったが、あれは命令を出しただけだ。パッショーネで言うならボスの立場か。
当然、実行者。これもパッショーネに例えるなら暗殺チームが居るはずなのだが、それがコルベールか。と判断した。

「命令だった……」
「命令?リッシュモンのか!」
「そうだ。……疫病が発生し、焼かねば被害が広がると告げられた。仕方なく焼いた」
そんな二人のやり取りを聞いてプロシュートの眉が少し上がった。
どうも今の言い様が気に食わないのだが、とりあえずもう少し聞いてみる事にした。
「バカな…それはリッシュモンがでっちあげた嘘だ……!」
「……ああ、後になってわたしも知った。新教徒狩りと知り毎日罪の意識に苛まれた。メンヌヴィルの言ったとおりの事をわたしはやった」
「それで……それで軍を辞めたのか」
「そうだ…二度と炎を破壊の為に使わないと誓った」
「そんな事で…貴様が手にかけた人が…帰ってくると思っているのか?故郷と家族の仇討たせてもらうッ!」

アニエスが剣をコルベールの首に突き付けたが、それでもコルベールは動こうとはしない。
それを見てもプロシュートとしては止める理由も特には無い。
自身が恨みを買う立場だっただけに、復讐者に対しては
『殺れるもんなら殺ってみやがれ。ただし、死ぬ覚悟はしておけ』
である為に、抵抗する気が無いならそりゃあそいつの勝手だ。
という事で今の所邪魔する気は無いのだが、そうもいかないキュルケが割り込んできている。

「お願い、止めて!確かにコルベール先生はあなたの仇かもしれないけど
  今はあなたを助けようとしてくれたじゃない。それでも斬るっていうの?」
確かにあの時グレイトフル・デッドが割り込まなければ間違いなくコルベールは死んでいた。
そのせいか、アニエスの目に迷いが出始める。
「ぐ…ッ!だが…二十年前にわたしの故郷を焼いた事には変わりはない…ッ!こいつが…いくら後悔していようとだ」
そうは言うがかなり迷っているようで、切っ先が上がったり下がったりしている。
昔の仇と今の恩。どちらも天秤にかけるには重いが、それでも僅かに仇の方に傾いたようで剣を振り上げた。

と、そこにプレッシャーを撒き散らしながら、プロシュートが三人に近付く。
「おい」
「何だ!貴様も邪魔するつも…り」
アニエスが見た物は、問答無用で構えられている握り拳が飛んで来る様。
反射的に防御姿勢を取ったが、それはアニエスを捕らえる事なく……コルベールに突き刺さった。

「なな…何を…」
相変わらずの突拍子の無い行動を目にしたキュルケがどういう事態か理解できずに聞いてきたが
殴った方は、それを無視してコルベールの胸倉を掴んだ。
434ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:10:31 ID:pR8aOLPw
「さっきから黙って聞いてりゃ、何ふざけた事言ってやがるてめー…」
「な…わたしは何も…」
まだ何か言う前にもう一発追加で拳が入る。
「まだ分かんねーのか。さっき言ったな?仕方なくってよ。
  仕方なく?仕方なくだと?ナメんのも大概にしやがれ。知らなかったってのは良い…
 組織に属している以上、命令はあるからな…別にその事じゃあねぇ。
  だがッ!『罪の意識に苛まれた』だと?それじゃあ仮に疫病が発生してたってんなら仕方ないって事で済ませれる。そういう事だよな?おい」
暗殺チームの立場からすれば、『疫病』も『新教徒』も違いは無い。
殺るか、そうでないか。のどちらかでしかない。
結果は問題とはしていない。むしろ、その過程にある物が気に入らないのだ。
疫病だろうが、新教徒狩りだろうが、ダングルテールを滅ぼしたという結果に変わりは無い。
だが、こいつは疫病だったから仕方なく焼き、そして新教徒狩りと分かれば後悔したなどと言った。
暗殺任務において、『仕方なく』やった仕事などは一切無いだけに、余計に気に入らない。

「自分がしでかした事から逃げたんだよ…オメーは。
  請け負った仕事が偽物だったんなら、その時命令を出したヤツを殺るならすりゃあいいじゃあねーか。
 それもしないで、何が仕方なくだ。なぁにが罪の意識だ。大体オメー隊長だったんだろうが。部下はどうすんだよ。
  オレ達チームの他のヤツならッ!組織に裏切られとしても逃げたりはしねぇ!例え途中で仲間が何人死のうとも決してなッ!」
だからこそ、ホルマジオも、イルーゾォも、ペッシも、メローネも、ギアッチョも、リッゾットも戦い死んでいった。
ボスがジョルノに倒されてさえいなければ、今頃は、イタリアで墓の下か潜伏生活というところだろう。

「それでも分からないってんのなら……」
言葉の温度が一層低くなり、次の言葉にキュルケとアニエスが凍りついた。
「……いっその事、ここで死ね。なに、オレに殺られるのも、そいつに殺られるのも大して違いはねぇ。この際だ、オレがブッ殺しといてやる」
絶対零度。さっきコルベールが発した、触れば火傷し燃え尽きるような感じとは全く違う雰囲気。
暗殺という汚れ仕事に従事し、対象が誰であろうと躊躇しないという全てを凍らす冷徹極まりない声。

コルベールもそういう物を持っていたかもしれないが、プロシュートから言わせれば、まだ甘い。
言うなれば、専門職と兼職の違いか。この場において、その差がハッキリと出た。

スタンド使い以外には見えない力がそ右腕より発せられ、コルベールの首筋を掴みその跡を出現させる。
こうなれば、一瞬で終わる。直ならば、人一人老死させる事など容易い事だ。

が、不意にスタンドを解除しコルベールを離した。
「…それをオレに向けるって事がどういう事か分かってやってるんだろうな?」
明確に向けられている敵意。後ろを見なくても誰が何をしようとしているかぐらいは分かる。
「分かってる、でも!そんな事は絶対に許さない…!」
何時に無く真剣な顔のキュルケが、すぐ後ろで杖をこちらに向けている。
「先に言うが…スデにグレイトフル・デッドはオメーの真正面だ。それでもか?」
キュルケがその問いには答えず、呪文を唱え始める。
「馬鹿が……ッ!」
先にもあったが、敵対するつもりなら一切の容赦はしない。
435ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:14:28 ID:pR8aOLPw
だが、掴もうとした時、下のコルベールが静かに口を開いた。
「わたしの教え子には、手を出さないでくれ」
「そうしたいんだが、向こうがそうさせてくれねぇ」
「もういいミス・ツェルプストー。わたしはそれだけの事をやったんだ。その報いだよこれは」
「嫌です!あんなに小ばかにしていたあたしをミスタは守ってくれたでしょ。だから今度はあたしが!」
「…ってこった。悪いがオレは手加減なんっつー器用は事はできねぇからな」

一触即発。誰かが少しでも動けばケリが付く。
キュルケが杖を動かすと同時にプロシュートがスタンドを向け、コルベールが止めようと声を出そうとした時
風が吹き、キュルケを吹き飛ばす。コルベールとプロシュートには直接当たらないようにだ。
これだけの風を精密に使いこなすのは、この場所においては一人しか居ない。

「タバサ…あなたどうして……」
倒れたキュルケが顔を上げると、杖を持ったタバサが顔を横に振る。
「駄目」
その一言。それだけの行為だった。

なんとか杖を拾い、再び二人の方へ視線を向けると、またしてもコルベールの首筋を見えない手が掴んでいた。
「君に言っても仕方ないかもしれないが、最期に一つ言わせてくれ。
  これ以上、殺し合いに慣れるな。死に慣れるな。わたしのようにならないでくれ」
「…お前それは冗談のつもりか?オレみたいなヤツに言う事じゃあねーぞ」
「まぁいいさ。君たちの世界を見てみたかったんだがな…」
そう言ってコルベールが目を閉じると同時に、見事に重なる二つの声。
「やめてぇぇぇ」
「やめろぉぉぉ」
キュルケと今まで黙っていたアニエスが同時に叫んだが、もう遅い。

何時もと変わらない声のプロシュートが一言だけ言った。
「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
スタンドパワー全開。
その瞬間、コルベールの身体に無数のシワが刻まれ朽ち果てていき、その場に崩れ落ち
近寄ったタバサがコルベールの手を取ると雪風の二つ名と同じような冷たい声で告げる。
「死んだ」


炎蛇のコルベール――死亡
436名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:15:58 ID:48vW3Os4
こ、コルベールせんせーーーー!?

GJ
437ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:16:25 ID:pR8aOLPw
ようやく日の光が出てきたが、その場で声を出す者は一人も居ない。
広場にコルベールが枯れ木のように朽ち果て倒れているのだから当然だ。

そんな重苦しい中、何かに気付いたアニエスがやっと口を開いた。
「お前が…貴様が、あのグラモン元帥の子息を決闘で討ち滅ぼしたという悪魔憑きか…」
「よく知ってんじゃあねぇか。ま…確かにこいつは…悪魔かもしれないが」
人によっては悪霊とも言うだろうが、中には己に害をもたらすスタンドも珍しくないだけに、ある意味間違ってはいない。
「何故だ…何故殺した!」
「あ?オメーの手間省いてやったんだろうが。感謝しろよ」
「違う!二十年だ!二十年をもこの日を待っていた…それを貴様が!」
「そうか?ならどうしてあの時すぐに殺らなかったんだよ」
殺ろうと思えば、あの場で殺れたはずだ。
その事を指摘されアニエスが戸惑う。
「それは……仇とはいえ、わたしの身代わりになろうしたからだ……!」
「ハッ!そんな半端な気で殺ろうとすんじゃあねぇ。迷いながら殺るなんぞ、まだ殺らない方がマシだぜ」

心に迷いがあるという事は、その覚悟が出来ていないという事だ。
つまり、今のアニエスにコルベールを殺す資格などは無い。
「なら、どうすれば良かった…どうすれば…!」
「知るか。そのぐらい自分で考えろ。オレとあのハゲからの宿題だ。次、会う時までぐらいには答え見つけとけよ」

「…クソ。負傷者の手当てを…悪いがしばらく一人にしてくれ…」
近くに居た銃士にそう告げると、力無くアニエスが歩き出し、その姿を消した。

他の銃士の姿も見えなくなると、息を吐く。
「ったく…どいつもこいつも…」
今にして思うと、チームのヤツらが懐かしく思える。
よくもまぁ、ああも似た連中が集まった…いや、似た連中だから暗殺チームになったのかと思っていると
コルベールの上に覆い重なるようにして、キュルケが泣いていた。

「どうしてこんな……」
どうしてこうなったのか全く以って理解できない。
コルベールを殺ろしたプロシュートも、死を受け入れたコルベールも、そしてあの時邪魔したタバサの事も。
438ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:17:34 ID:pR8aOLPw
パシ!

それもこれも、自分のせいだ。自分が不用意な行動を取らなければ、もう少しマシな結果になったかもしれない。
そう思うと余計に泣けてきた。

ピシ

ふとコルベールの指に嵌った燃えるようなルビーを見つけると、ある決意が浮かび上がる。

ガシ

何時もの『微熱』の二つ名を持つ自分ならどうするか。

グッ

決まっている。情熱と破壊という火の本領に基き行動する。
つまり、プロシュートへの攻撃の再開。敵わなくても一矢報いたいという想いで顔を上げたのだが…

グッ

もの凄い無表情でプロシュートとタバサが手を合わせていた。

「で、何時からだよ」
傍から聞くと何のこっちゃ分からないだろうが、意訳すると「何時からオレに気付いた」という事だ。
「夜の街道」
「マジか?あの暗さだぞ」
「シルフィードを甘く見ない」
ウェールズを追った時の夜。つまり、大分前から知っていたという事にはさすがに驚きを隠せない。

「それでよくオレの事他のヤツに言わなかったな」
「人には事情がある」
「大したタマだよ…オメーも。それにしても、何も言ってないのによく気付いたな。礼を言うぜ」
「普段言わないからすぐ分かった」
コルベールが死んだというのに、一仕事終えたかのような感じでそんな会話をする二人と
さっきまでの危険極まりない雰囲気とのギャップに力が抜けかけたが、振り絞るかのようにしてキュルケが叫んだ。

「な、何よ!あなたたち!コルベール先生が死んだっていうのに、よくもそんな風にしていられるわね!」
そのシャウトにキュルケの方を向いた二人だが、揃って『何言ってんの?この人』というような顔をしている。
「タバサもタバサよ!あの時あなたが邪魔したおかげで先生が…!雪風を微熱で溶かしてあげれたかと思ってたけど全然違ってたのね!」

「おい、アレはまさかとは思うが素か?」
「多分そう」
二人揃って呆れ気味だが、この状況で気付ける者が居る方が珍しいだろう。

「大体、揃って手なんか合わせたりして!ミスタが死んだのがそんなに嬉しいの!?見損なったわ!」
いい加減五月蝿いと思ったのか、普通にタバサが一言だけ短く言った。
「死んでない」
「ええそうよ!自分で確認したんでしょうから……って、え?」
「だから死んでない」
439名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:19:16 ID:dQa6KS6r
なんと!支援!
440名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:20:12 ID:qPzGZJX6
ワ・・・王大人の「死亡確認」状態かよ・・・
441ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:20:20 ID:pR8aOLPw
ザ・ワールド
そんな声と共にキュルケだけの時間が止まる。それでも、何とか理解しようとしたが、まだいま一つ理解できていないようだ。
「……つまり?」
「見れば分かる」
そう言って指差した方向を見ると、さっきまで枯れ木のようだったコルベールが元に戻っている。
さすがに、ここまで生き残った髪の毛は丈夫なようで抜け落ちてはいない。

慌ててコルベールの元に駆け寄り、手首を取ったが温度と脈の動きが確かにある。
「生きてる……」
「報酬も出ねーのに殺るかよ。誰が好き好んでそんな割りに合わねぇ事するか」
それこそはき捨てるかのように言ったが、今度はキュルケに疑問が浮かんできた。
「で、でもあの時死んだって言ったじゃない!それにあの雰囲気…!」
確かに、恐ろしいまでの冷徹な殺意がキュルケとコルベールを襲っていたのだから当然だが
その問いに答えたのはタバサだ。

「普段言わない事を言った」
その言葉を聞いてさっきの事を思い出す。この男が普段絶対言わないような事。
必死になって記憶を探ると、一つ引っかかる言葉があった。

『……いっその事、ここで死ね。なに、オレに殺られるのも、そいつに殺られるのも大して違いはねぇ。この際だ、オレがブッ殺しといてやる』
『この際だ、オレがブッ殺しといてやる』

『ブッ殺しといてやる』

「あ……」
「彼は殺すなんて使ったりしない」
「よく分かってるじゃあねーか。マジで何モンだ。それに比べてなんだ!?オメーのあのザマは!?」
本気であれば、そんな事思った時点で行動が終わっている。
どっちか気付くかと思ったのだが、やはり気付いたのはタバサの方だ。

「今までのは演技?だとしたら劇場で主役張れるわね…」
「そうでもない。殴ったのも言った事もありゃ本気だ。ついでに言えば、お前に向けた殺気も本物だぜ」
気が抜けたのか、頭を押さえながらそう聞いてきたが、続いてプロシュートが言った事に動きが止まる。

「……もしもよ?もしも、あのままタバサが止めなかったらどうなってたの?」
腫れ物に触るように恐る恐る聞いてきたが、聞かれた方は当然のように答えた。
「お前がそこに転がってるに決まってるだろ。具体的に言うなら、全身シワだらけになって、無数のシミとかも出来てる。
  自慢のスタイルも崩れてるし、場合によっちゃあ歯や髪も抜け落ちてるな。そこまで酷いと解除しても元には戻らないかもしれねぇ。
 なにせ、直を叩き込んだ相手の殆どは殺っちまってるからオレも分からん。まだ他に聞きたいか?ああ、そういや背骨とかも…」
「いえ…もう結構よ……」
もう限界。これ以上聞いたら欝になる。至極普通に言っているだけ余計恐ろしい。
そんなわけでまだまだ続きそうな説明を即座に断ると、キュルケが半分泣きながらタバサに抱きついた。
442名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:21:28 ID:48vW3Os4
ぐああ早とちり……!
まことにスマン支援
443名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:23:23 ID:39hyk/W5
王大人乙、しえん
444ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:23:28 ID:pR8aOLPw
「タバサ〜〜あなたってばホント良い娘ね。一個どころか、十個ぐらいの貸しよ、これ」
タバサに抱き付き頬ずりまでせんばかりのキュルケだったが、老化を免れたのだからそれも当然というべきか。
「オメー、そんな老化すんのが嫌か」
「当然よ!」
即答というのはまさにこの事。間髪入れずに返してきたが、人の能力全否定されただけに少々ムカつかないでもない。

「まぁいい…それより、そいつどっかに隠せ。あいつに見られたら洒落にもなんねー」
折角面倒な三文芝居までかましたのにバレては洒落にならんとして指示を出したが、どうやらまだ納得がいってないようだ。
「でも、どうしてそんな回りくどい事を?簡単に止められたんじゃ」
「別に、本気で殺るなら止めやしなかったがな。あの場で殴って止めても、そいつが追われる事には変わりねぇ。
  だからいっその事、死んだようにして、あいつに時間やって考えさせるしかねぇだろ。どいつもこいつも半端なくせに面倒なヤローばっかだよ」
本当に、ロクに覚悟の意味も理解できてないような連中ばかりだ。
ただ、最近少しだが思うようになった事がある。
今までこそ、似たような連中に囲まれていたため気にも留めていなかったが、本来は自分たちのような連中が圧倒的少数派なのだと。
まぁ、今更進む道を変える事もできないだろうし、変える気も無い。

そうしていると、妙にニヤついた顔でキュルケがこちらを覗き込んでいる。
「……何だ」
「やっぱり、そういうとこ変わってない。普段無愛想なのに、意外な所で面倒見がいいところとかが特に」
何せ、ペッシがミスタに撃たれた時に、老化していたとはいえわざわざ出て行ったという実績がある。
ミスタをおびき寄せるためというのもあったが、あの時はまだブチャラティチームの情報は略歴と顔写真ぐらいしか知らなかった。
もし、ミスタが自分らと同じ、目的の為には一般人をも巻き込むのを躊躇しないタイプなら、かなり危なかったといえる。
それを承知で出て行ったというだけに、返す言葉があまりない。

それでも反論する余地があるのは長年の経験だろうか。
「勘違いすんな。そんな気なんぞ毛頭ねぇ。そのハゲにはまだ利用価値があると思っただけで他は何もねぇ」
「ルイズと一緒のとこあるのねー。やっぱり似た者同士だったってとこかしら」
「どこがだよ…あんなのと一緒にすんな」
「結構似てる」

遂にタバサまで要らん事を言い出してきたので話を変える。というか、本来話している暇など無いのだが。
「オメーまで言うか。マジ勘弁しろ。それより、こいつをどうにかしてくれると有難いんだが」
見せたのは、余波で良い具合に焼けた左腕。こんな状態で普通に話をしていたのだから、相変わらずの精神力といえる。
それこそ、治るのであるのならば、腕や脚の一、二本を自ら切り落とす事ぐらい躊躇はしない。そういう意味ではジョルノのG・エクスペリエンスは反則だ。

「魔法ってのアテにしてなけりゃあ、あんなもんできねぇ芸当だ」
早く治せよ。という感じで腕を出したが、何かこうキュルケが言いにくそうにしている。
「……そうしたいとこなんだけど、戦争で学院の秘薬も徴収されたみたいで残ってないのよ」
「何?……つまり無理って事か?」
「ん〜、怪我の程度にもよるけど精神力を削って治すって事もできるわ。でも、ねぇ…」
辺りを見たが、どうやらマジにコルベールを殺ったと思われたようで人が居ない。
「仕方ねぇ…適当なヤツ見つけるしかないようだな」

逃げてー!水のメイジ逃げてー!
445名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:26:30 ID:22SPYRZt
最後の最後でさるかァー
446名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:29:28 ID:3caqbd6F
支援する
447名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:30:38 ID:22SPYRZt
もう一度だッ
448名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:31:36 ID:48vW3Os4
再支援
449ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:32:01 ID:pR8aOLPw
この目は間違いなく、脅してでも治させるという感じの目だ。
火の系統で良かったと思う反面、これから巻き起こる交渉という名の恐喝を想像して犠牲者の為に目を閉じたが、誰かがこっちに近付いてきた。
よりによって水のラインのモンモランシーである。
「おう、オメー確か水だったな」
「いや、でもちょっと無理なんじゃ…」
能力的にではなく、ギーシュを殺ったという関係的に無理があると判断したが、返ってきた言葉は意外だった。

「腕出して」
「あら…見ない間にそういう関係になってたの?」
「違うわよ。皆と先生を助けてくれた借りは返す。それだけの事!終わったら覚悟しときなさいよ」
「さっきテンパってたヤツはどこのどいつだ。来るのは何時でも構わねぇが、手加減なんぞしないからな」
「……はぁ。なんでこんなのに決闘なんて挑んだのかしら、あの馬鹿。ほら腕」
言われたままに腕を出すと、モンモランシーが呪文を唱え始めた。
一応、また何か盛られたら洒落にもならんので何時でも直に移行できる体制には入っていたが、どうやらそれは無用になりそうだ。

しばらくすると終わったようで、手を動かしてみる。
多少痛みはあるが、動くようになっただけ良好だ。
「いつか絶対……参ったって言わせるんだ……から…覚悟しとき…なさ…い……」
やはり秘薬無しに治癒を使うのは無理があるようで、絶え絶えにそう言うと、モンモランシーが地面に向け倒れた。

「よ…っと。こいつも軽いな…飯食ってんのか?」
地面にぶつかるスレスレの所で力の抜けた身体をキャッチする。
全く、面倒なヤツに目ぇ付けられたもんだ。
「おら、そいつがノビている間にジジイの所行くぜ」

こいつをここに放置したままというのも何なので、どこかに運ぶ事にしたのだが
それを見たキュルケが一々要らん事を言ってくる。
戦闘直後なので説教する気にもなれない。こいつも面倒なヤツだ。本当に面倒な連中ばかりだ。だが……


面倒だという事が大半を占めるが、『この温い雰囲気もそう悪くは無い』という気が自覚しないまでも僅かだが湧き上がっていた。

←To be continued
450名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:32:01 ID:3caqbd6F
たかがサルさんの一つや二つ、支援で押し返してやる!
451ゼロの兄貴:2008/03/19(水) 02:34:29 ID:pR8aOLPw
復ッッ活ッッ!コルベール復ッッ活ッッ!!コルベール復ッッ活ッッ!!
2回ぐらい先頭行が開いて亜空間にバラ撒かれてさるさん食らったからな…

とりあえず投下したッ!
兄貴が相手呼ぶ時は、お前、オメー、てめーの三種類あるから使い分けがな…
しかしこの先は考えてねぇ…そして星屑も進んでねぇッ!このままではトレーズ様スレが終わってしまう!
空中戦は終わったのにその前が全然だ……
452名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:34:45 ID:48vW3Os4
すごい量だ…
GJ!
やっぱ兄貴はスゲーぜ
453名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:35:43 ID:3caqbd6F
乙&GJ!

コッパゲ死んだど思ってマジびびった
アホ竜はとんでもないお仕置きがまってるな……南無
454名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:36:40 ID:dQa6KS6r
GJ!!
俺もコッパゲ死んだと思ったw
455名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 02:37:35 ID:TiDeXvVt
マジでGJ
さすがは兄貴としか言いようがない
フーケのお先が真っ暗なのか輝きに満ちてるのかさっぱりだ……
456名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 13:34:18 ID:sOHOstTG
マジでコルベール死んだと思ったのは兄貴だからなんだろうな・・・
457名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 14:50:59 ID:FcSu4jkQ
兄貴投下乙そしてGJでした
いやあ読んでて見事に騙されました

さて、昨日の夜中に投下した小ネタが自分の中でフィーバーしたので
その続編?的な小ネタを書いて投下してみる
ほのぼの期待した人はごめんなさい
458小ネタ:2008/03/19(水) 14:54:43 ID:FcSu4jkQ
「きみたちが、わしらを連れてきた場所が食堂で助かったわい」
「じじい、何言ってやがる?」
アルビオンに雇われた傭兵部隊がトリステイン魔法学院を急襲した
女生徒おおよそ九十人と学院長であるオールド・オスマン氏が
人質にとられ、護衛に来ていた銃士隊も、捕らわれずに済んでいた
キュルケ、タバサの両名も隙を伺うことしかできなかった
そんな中で、オスマン氏は突如としてそんなことを言い放つ
「ここなら、すぐ隣の厨房に、美味いワインがたくさんあるからのう」
「へっ!その美味いワインでどうするってんだ?!
 まさか、飲ませて酔わせる……なんて作戦が、
 今更利くと思ってんじゃねえだろうな!」
メンヌヴィルは、義眼でオスマン氏の方を睨みつける
「いいや、飲ませはせんよ。ただ、たーーーっぷりと味わってもらうだけじゃ。
 ……血管で、直接のう!!」
オスマン氏の目が、かっ!と大きく見開かれた
「うっ?な、何だ?」
傭兵達が何人かざわざわと騒ぎ出し、膝をついていく
「き、気分が、悪ィ……」
「頭痛が、する……」
「は、吐き気もだ……」
ばたばたと床に膝を突いていくメイジ達の体温の変化にメンヌヴィルは困惑する
「てめえ、何をしやがった!!」
「ほっほっほ。知らんかったんかのう?酒を直接血管に入れると、
 簡単に、泥酔した酔っ払いが完成するんじゃよ?」
笑うオスマン氏にメンヌヴィルがわなわなと震える
「てめえら何やってやがる!水メイジ、とっとと治療を……!」
「む、無理です、杖を折られて……わ、わあああああ!!」
「何だあああ、この虫みてえなのはあああ!」
アニエスは、遠巻きからその光景を唖然として見ていた
食堂から何か小さな虫のようなものが現れたかと思ったら
そいつらが傭兵達に近づき、何かをした
そうしたら、傭兵達が次々と倒れていったのだ
その虫の群れは倒れた傭兵達の腕から杖を奪っては折り、
抵抗しようとしたものには容赦なく攻撃を加えていた
ある者は肉を削がれ、あるものは眼球をくり抜かれて悲鳴を上げる
「な、何なんだ、何が起こってやがる?!」
「……聞いたことはあるよ。『白炎』のメンヌヴィル。
 盲目の炎使いの傭兵じゃとな。……ある種の蛇は、
 体温で獲物を見つけるという。主もそうやって敵を判別しておるんじゃろ?」
ゆらり、とオスマン氏が立ち上がる
自身と生徒達を縛っていたロープは既にに彼の『使い魔』によって引きちぎられていた
「ど、どんな魔法を使いやがったんだ、てめえ!」
「魔法ではない。わしの使い魔じゃよ。さあ、みなのもの、今の内に
 逃げるのじゃ!傭兵達には構うでない!!」
きゃあきゃあと悲鳴を上げながら、女生徒達が逃げ出す
「待て、逃がすか!」
メンヌヴィルは生徒達に杖を向けようとして、体中に張り付く何かの違和感に気がついた
459小ネタ:2008/03/19(水) 14:56:48 ID:FcSu4jkQ
「それが、わしの使い魔じゃよ。気づかなかったじゃろう?
 そいつらには、体温というもんが存在せんからのう」
部屋にあった杖は、既に使い魔の手によってオスマン氏の手の中にある
「ぐ、離れろ!」
「一体一体の力は、せいぜい人の肉を削ぐくらいしかできんがのう」
メンヌヴィルはその言葉にぞっとした
やろうと思えば、この虫のような何かは簡単に自分を殺せるのだ
「そんだけ集まれば、身動きをとるのもしんどかろうて……」
「何なんだ、こいつらは、何なんだ貴様は!」
「ふむ、そういえば名乗っておらなんだのう」
オスマンは自身の長く白い口ひげをこともなげに撫でる
「わしは、トリステイン魔法学院の学院長。オールド・オスマン。
 二つ名は『収穫』。そう呼ばれる由来は、二つじゃ。
 一つは、わしの使い魔であるそやつらの名が『ハーヴェスト』であること」
メンヌヴィルの手からは既に杖が奪われている
その体には500を優に超えるであろう『ハーヴェスト』達が群がっている
「もう一つは、わしが『刈り取る』からじゃよ……『敵の命』を、のう。
 やれ!『ハーヴェスト』ッ!!」
甲高い人の声のような鳴き声をあげると、ハーヴェスト達は
一斉にメンヌヴィルの体中に食らいついた
「が、があああああああ!!」


女生徒達は肉を削がれる傭兵達の姿に悲鳴をあげ眩暈を起こし、
銃士隊は呆気にとられてその光景を見つめていた
「お、おい、てめえら!」
聞こえてきた声に、アニエスがはっとなって後ろを振り向いた
どうやら別行動をしていたらしい傭兵が、一人のメイドの喉元に杖を突きつけていた
「う、動くんじゃねえ!今すぐ隊長を解放しやがれ!
 で、でないと、この女がどうなっても知らねえぞ!」
「しまった!」
「杖と銃を捨てて、その妙な使い魔も動かすんじゃねえ!」
だらだらと脂汗を垂らしながら、傭兵は必死に叫ぶ
「あー、構わんがのう。隊長殿は、既に遺体じゃぞ?」
からん、と床に杖を転がしながらオスマン氏はさらりと言い放つ
「それから、もう一つ。お前さん、運が悪かったのう。
 よりにもよって、その娘を人質にしちまうとは……」
「何を言ってやが……」
「あ、あの……」
腕の中のメイドが声を発した
「……私って、子供の頃から興奮すると眼輪筋がピグピグいって
 ちょっと、暴力的な気分になるんですよね」
それは殺されるかもしれない、という怯えた声ではなく
むしろ何かしら怒りを込めた声だ、と傭兵は思った
では、その怒りを向ける対象とは、何だろうか?
……決まっている 彼だ
彼の腕はいつの間にか何か黒い紐のようなもので絡め取られている
「え、あ、あれは?」
事の成り行きを見守っていたキュルケが愕然として呟く
「意外。それは髪の毛」
もう大丈夫だろうと安心しきった様子でタバサが答えた
ただ、さっきの虫と髪の毛は若干夢に出そうだと思ってほんの少し身を震わせた
髪の毛で傭兵を拘束したまま、シエスタは腕の中からあっさり抜け出すと
恐ろしい形相で傭兵に向き直った
「このままションベンたれの(ピーッ)ひきぬいて
 そこから内臓ブチまけてさしあげますッ!」
およそ十代の少女が口にするに相応しくない叫びが彼女の口から出た直後
傭兵の悲鳴が食堂に響き渡った

460小ネタ:2008/03/19(水) 15:00:55 ID:FcSu4jkQ
名も無い傭兵達:肉を削がれたり眼球を抜かれたりしたが生存し捕縛 再起可能
『白炎』のメンヌヴィル:オスマンに命を『収穫』され死亡 再起不能
人質にとった傭兵:ションベンたれの(ピーッ)をひきぬかれ
            さらに内臓もブチまけられた 再起不能
女生徒達:眠ろうとすると髪の毛に拘束されたり虫のような何かに
       たかられたりする夢を見て中々眠れなくなった 再起可能
『収穫』のオスマン:スタンド名『ハーヴェスト』
            女生徒や教師達からちょっと見直されたが
            ハーヴェストを覗きに使ったのがバレて袋叩き 再起不能?
『土くれ』のフーケ:オスマンの能力のことは知っていたが教えなかった
           故郷に帰り妹分や孤児やブチ犬と暮らす 再起可能
シエスタ:スタンド名『ラブ・デラックス』
      同じ能力を持っていた近所の奥さん(ユカコ・ヒロセ)に
      能力の使い方を習っていてよかった、と思う 再起可能
マルトー:スタンド名『パール・ジャム』
      その後厨房に逃げ込んでいた傭兵の一人を石鹸でぶん殴る 再起可能


以上で投下終了です
杖を構えて眼を見開いてハーヴェスト500体を従えて敵に臨む
オスマンを想像したら燃えてきたのでかっとなって書いた
あまり反省はしていない
なお、ルイズが誰を召喚したのかは読者の皆さんのご想像にお任せします

461名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 15:16:33 ID:FGSAnZx7
投下乙!
>近所の奥さん(ユカコ・ヒロセ)
もしかして夫婦でハルケギニアに来てんのかw
勝手に家に押しかけてきた漫画家もいたらカオスだ
462名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 15:49:34 ID:eXSf1STC
GJ!!!
「あ、あの…………私って、子供の頃から興奮すると眼輪筋がピグピグいってちょっと、暴力的な気分になるんですよね」
ここで噴出したwwwww

後石鹸で殴られた傭兵にも吹いたwwww
463名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 15:53:52 ID:Lk1nKPKW
兄貴GJ!
こ、こんな伏線に騙されるなんて・・・くやしい!でも(ry
しかしそれくらいの兄貴の徹底ぶりだからなあ・・・流石です!

小ネタ投下乙です!
オスマンの使い魔は小型がしっくりくるな

自分も今晩八時ちょいくらいには投下できそうです
464名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:14:25 ID:d6lhVrk5
アホかwwwwwwwwwwwwww

休憩時間無し=休憩無しとでも思ってるのかよw
休憩したけりゃ好きなときに5分ぐらい休憩してるよw
それを規定で定めていることが変なんだよwwwww
465名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:16:38 ID:2e04MC8j
アホは貴様だ
466名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:24:48 ID:adf6mqWP
>>464
ゴバーク。
467名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:25:33 ID:FGSAnZx7
ところで話は変わるが
チャリオッツはマジシャンズ・レッドの炎を切り裂き弾き飛ばしてたんだが、
メイジの炎魔法相手でも同じことが出来るんだろうか
468名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:27:30 ID:v5cAI4hN
魔法とスタンド共に精神力を使うから出来そうな気がするな。
規模にもよるだろうけど
469名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:38:00 ID:FGSAnZx7
>規模にもよるだろうけど
なるほど、クロスファイヤーハリケーンスペシャル(CFHS)
でさえも正面からでは通用しなかったろうしな
CFHS以上の攻撃が出来るというとスクエアクラスの炎系統メイジくらいか
470名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:52:48 ID:sOHOstTG
テーブルに燃え移った普通の火(?)も捌いてたからできるんでね?
471名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 16:59:00 ID:PctkPldn
魔法の炎がブ男よろしく
自然に逆らうかどうかは気になるな
唯テーブルの火はブ男が飛ばした炎を
チャリオッツが切り返した物だぞ
472名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 20:32:44 ID:JGyhQugW
ゼロの奇妙な使い魔 まとめサイトの登録文章なんだが、
サブタイトルだけしかわからない登録って何なんだろ。

あれで登録文章の前の文やメインタイトルがわかるの?
自分はわからないから落丁本を見せられているのと同じ気分だよ。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 21:06:42 ID:3caqbd6F
>>472
      r;ァ'N;:::::::::::::,ィ/      >::::::::::ヽ
.      〃  ヽル1'´        ∠:::::::::::::::::i
       i′  ___, - ,. = -一   ̄l:::::::::::::::l
.      ! , -==、´r'          l::::::/,ニ.ヽ
      l        _,, -‐''二ゝ  l::::l f゙ヽ |、 ここはお前の日記帳じゃねえんだ
        レー-- 、ヽヾニ-ァ,ニ;=、_   !:::l ) } ト
       ヾ¨'7"ry、`   ー゙='ニ,,,`    }::ヽ(ノ  避難所で書いてろ
:ーゝヽ、     !´ " ̄ 'l,;;;;,,,.、       ,i:::::::ミ
::::::::::::::::ヽ.-‐ ト、 r'_{   __)`ニゝ、  ,,iリ::::::::ミ
::::::::::::::::::::Vi/l:::V'´;ッ`ニ´ー-ッ-,、:::::`"::::::::::::::;゙ ,  な!
:::::::::::::::::::::::::N. ゙、::::ヾ,.`二ニ´∠,,.i::::::::::::::::::::///
:::::::::::::::::::::::::::::l ヽ;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /
::::::::::::::::::::::::::::::! :|.\;::::::::::::::::::::::::::::::/ /
474名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/19(水) 21:10:06 ID:bmErnSUk
>472

更新履歴と目次を併用すればなんの問題もない。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 11:02:47 ID:N7O7VfdI
めっちゃカメナレフだが
>>441
>「報酬も出ねーのに殺るかよ。誰が好き好んでそんな割りに合わねぇ事するか」
にゾルディック家並のプロ意識を垣間見た。そして
>「普段言わない事を言った」
に逆転裁判の矛盾探しを幻視した。思わず「異議あり!」と突きつけたくなる様な。
そして面倒面倒言う兄貴を見て、某面倒が嫌いなレイヴンが頭をよぎりました。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 15:38:26 ID:T+MpzNs3
>467
チャリオッツは空気の溝を作って炎を斬っていた様な…
ポルナレフのスタンドを操る高い技術のなせる技だと思う。
477名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 16:25:07 ID:AlzywCNV
>>476
チャリオッツって改めて考えると
スピードと精密な動きという点ではスタプラと互角にやりあえる数少ないスタンドだな
478名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 16:31:04 ID:KlbRfvpI
ポルポルくんは熟練のスタンド使いだなぁ
479名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 16:50:41 ID:T+MpzNs3
能力を技術でカバーそれがポルポルandホルホース。シンプルなほど強い。
剣勝負でポルナレフと才人だちらが強い?
480名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 16:53:29 ID:5Y2xjUrx
駆け引きの差でポルナレフ
いざって時の奥の手もあるし
481名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 17:04:12 ID:Aj3iGsM+
チャリオッツ使えば瞬殺だろうな
482名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 17:17:23 ID:T+MpzNs3
それってガンダールヴはただの熟練なしのボディービルダー
見たいな者?普通の熟練者に負けるよう気がする。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 17:18:03 ID:AlzywCNV
>>479
まあスタンド抜きで普通の剣使ってもポルが勝ちそうなんだよな
JOJOinCEスレだとシン・アスカの師匠役やってたりするんで
才人と同時召喚ものとか、ルイズが才人でキュルケがポル召喚とか読んでみたいものだ
姉妹スレのDODと内容被りそうだが
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 18:00:58 ID:VkcEhVtu
>>483
二行目は関係ないと想う
485名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 18:06:09 ID:AlzywCNV
>>484
あっちのスレのポルがかっこいいんでつい書き込んだ
今はスレ違いだった事を反省している
スマン
486名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 18:14:33 ID:Th+3yYfH
ガンダールヴはテンションしだいな面が大きいからなー
ド外道な真似してサイトがキレれば瞬間的にポルポルを圧倒して倒せるかもだが(ワルド瞬殺の時くらいアレな事されて)
ポルポルが味方で訓練とか、憎めない敵ポジションだと経験で負けるだろうなー
最新刊サイトあたりだと流石に経験を積んでるので、どうなるか分からないが
487名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 18:33:19 ID:/o1LAebW
ポルナレフの人気は異常…こ、これは奴のスタンド!?
488名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 19:42:33 ID:kGzi9zGp
>>486
最新刊あたりのサイトは超音速の剣さばきが出来るチャリオッツにも
勝てるほど強くなったの?
489名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:14:35 ID:UDed6ans
無理じゃね?イメージ的にDQ5小説のリュカ対ティミーな感じな。
ポルはそこに戦いに費やした年数による老獪さも加わるから
一撃勝負でもない限りちょっと想像つかない
490名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:35:34 ID:3LKlVkCn
チャリオッツなしでもポル勝てそう
491名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:38:55 ID:R8GtMZBX
そもそもスタンド使いでないサイトにチャリオッツの攻撃を防いだり、
スタンドに有効打を与えたりができるのかというクロスオーバー定番の問題が……。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:47:22 ID:T+MpzNs3
スタンド以前に用兵とか軍人は自分が使う武器は使いこなしているので
才人が少し経験を積もうがその様な人たちに勝てる物なのか?話が成り立
たなくなるが。年季の違いを思い知らしてやる!が悲しくなる。
493名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 20:49:29 ID:KlbRfvpI
才人に特殊な訓練を受けさせてやりたいんですが
かまいませんねッ!
494名無しさん@腹がぱんぱん。:2008/03/20(木) 21:00:15 ID:/o1LAebW
ようこそ、このトイレは特殊な訓練を君に受けさせる為のものだ。
あの中にツナギを着た教官が居るので、彼に従うように。
495名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:01:57 ID:AlzywCNV
>>493
JOJOで師匠キャラというとツェペリさんやリサリサ先生くらいだな
他に指導してくれるくらい面倒見がよさそうなキャラというと
ジョナサン、アヴさん、前にも言ったけどポルに
ブチャラティ、兄貴、ジョリーン、エルメェス兄貴といったところか
496名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:02:17 ID:NtT+thF4
つまり才人に鉄球の技術を与えればおkw

……始球走まだこねーのかなー
497名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:03:58 ID:T+MpzNs3
まず呼吸法をマスターする体は自然にできてくる。
498名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:07:21 ID:nd0ANXSW
弟子を取ってたスト様はどうした
499名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:29:52 ID:DCWtw7Ao
ウルジャン今月号のジョニィのスタンドはヤバイ
だがモヴェ公(ジョニィのスタンドのヴィジョン)はそれに反比例してキモくなった
500名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:45:57 ID:fuarJYIL
>>499
ネタバレすんな
501名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 21:59:47 ID:6/TGmIr+
>>499
せめて5月まで待て
502名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 22:29:50 ID:o64v5zG7
ポルナレフって案外厨設定背負ってるよな
唯一の肉親である妹の仇を討つために旅をして
復讐心をDIOに利用されて
アヴさんに助けられて仲間入りして
アヴさんに助けられて仇討ちを果たして
死んだはずのアヴさんに助けられて思わず涙し
アヴさんに助けられてアヴさんに死なれる
DIOを倒した後は家族のいない故郷へ帰り
色々あってディアボロに敗れて体ボロボロにされて
最終的には世界を邪悪から守るために命を賭けて
幽霊になってまでこっちに残る
でも希望を託した相手はDIOの息子とディアボロの娘とワキガなギャング

それでも明るいポルナレフが自分は大好きだ
ポルポル・ザ・ファミリアーと白銀と亀な使い魔さんマダー?
ジョルポルはわりとこまめに投下あるから嬉しいけど
503名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 22:33:55 ID:iee6Rs5z
DIOの息子と言うがな
体がジョナサンと言う事は血脈はジョースターなワケで
504名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 22:42:20 ID:T+MpzNs3
でも骨から生まれた赤ん坊はDIOなわけで
505名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 23:11:52 ID:zEshBqiR
もう何が何だか
506名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 23:12:51 ID:Tz9Htk1h
代理投下しようと思いますが構いませんねッ!
507ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:13:25 ID:Tz9Htk1h
『Do or Die―5R―』

「ふぅ…」
 とある屋敷の裏でため息が漏れ聞こえてきた。
 フーケは背を壁に預けて荒い呼吸を整える。戦闘を極力避けていたためにダメージこそないが、それでも緊張と焦りが疲れになってのしかかる。
 ある程度息を整えられたのか、顔を上げて目の前の屋敷を見上げる。そこはフーケが目指していた場所だった。
「ウェザーの方も上手くやってるかな? まあ、上手くやってなくても何とかするか」
 そんな楽天的な考えで足を進める。恐らくは門で決着を付けるためだったのか、その屋敷には見張りもおらず灯りもついていなかった。
 屋敷内を徘徊し部屋を一つずつ見回るが、やはり何も、誰もいなかった。
 そして気づけばとうとう残り一つとなってしまっていた。
「さてさて、アタリを引いたかハズレを引いたか……」
 細心の注意を払いながら扉を開けていく。
 蝶番が軋む音とともに開いていく空間は――闇そのものだった。
 フーケの背後の月明かりで辛うじてハッキリ見えるのは二歩先までで、窓は一つしかなく黒の厚いカーテンに覆われていた。静けさも相まってまるで怪物の胃袋に放り込まれた気分にさせられる。
「調度品が高級なのは盗賊冥利に尽きるけど…、生憎と今日のお目当ては違うのよね」
 小さな獅子の像を手で弄びながら残念そうに呟いた。
 部屋の半ばまで足を踏み入れて辺りを再度見渡す。だが、やはり何もない。
 諦めたのかフーケはため息を付き、
「結局ハズレ――」
 像をいきなり投げつけた。
508ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:14:24 ID:Tz9Htk1h
 部屋の奥隅に一直線に飛んだ獅子は何もないはずの空間に"ぶつかり"、劈くような金属音を上げてその空間を"砕いてしまった"のだ。
「――なわけないわよねえ」
 ヒビ割れ崩れ落ちていく空間の破片は、しかしよく見れば輝いていた。微かな月光を受け幻想的な景色を作り出したのは空間の破片などではなく、鏡の破片だったのだ。
「モノを映し出す鏡の性質を利用して角の一辺に鏡を設置すれば、映し出されるのは同じ壁……まるでそこがこの部屋の隅のように見えていても、その後には空間が出来てるってわけ。
 解ってしまえばなんてことないトリックだけど、この徹底した暗黒の空間作りと天上まで届く巨大な鏡を用意した努力は褒めてあげる」
 フーケは以前に襲われたときの違和感、そして屋敷の外観と部屋の大きさで異変を察知していたのだ。ルカの時も、椅子に座るように促してしまえばわざわざ逆らって部屋を物色したりはしない。
 それは道具さえあれば誰にでもできるトリックだが、だからこそ誰も気が付かなかったのだ。
 舞い散るガラスの破片の向こう側。さらに深い闇の中に輝く二つの目が見えた。
「こそこそ隠れて指示だけ出すなんていいご身分ね!」
 そこをめがけてフーケが杖を振るった。
 だがその時二人の間に落ちた鏡が光を反射した。
 それを見た瞬間にフーケは慌てて身を引いていた。
「く……」
 それでもフーケの給仕服の腹部は裂け、肌にはうっすらと赤い線が引かれることとなった。
「よくかわしたなぁ……」
「同じヘマはしないわよ!」
 すぐさま再び杖を構える。もっとも、その時にはすでに男はいなくなっていたが。
「まだ隠し部屋があるなんて、驚きを通り越して呆れたわ……」
 瞬時に辺りに目をやるが、居場所が特定できないと判断するや踵を返して部屋を飛び出す。そのままわき目もふらずに屋敷を駆け抜けた。
「……オレへの攻撃が不可能と見るやいなやのあの逃げ……。マジでこっちの攻撃方法に気づいたのか?」
 部屋中に散乱した鏡を見ながら呟く。このトリックは元々気づかれたとしても、そのトリック自体が己の力に変わるという二段仕掛けのモノだったのだ。フーケは踏み込んでこなかったと言うことは、あの破片群の中に入ることがどういうことか理解している。
 独力でスタンドに気づくことは不可能に近い。ならば"他にスタンド使いがいる"と言うことになる。それもフーケの味方として。そうなれば当然ながらこの戦いに参加しているのだろうが、フーケが一人の所を見るに別行動らしい。もっとも、
「どんな能力だろうと関係ねえ…。オレの『ハングドマン』は最強のスタンドだ。炎を操ろうが超精密なスピードとパワーだろうが、『鏡の世界』は貴様らの干渉外。じわじわじわじわじわじわと、炙るように殺してやる」
 どこからか現れた禿頭の男は、その"特徴的な左手"で口元を抑える。抑えきれずに零れ出る愉悦の笑いを抑えるために。
 床に落ちたいくつもの破片に映るのは男のもう一つの姿。
「さあ、童話の世界の住人が出てきてやったぞ。じっくりゆっくりたっぷりと、骨の髄までいたぶってやる」
 街に悪意を振りまく男――J・ガイルが夏の夜に飛び出した。
509ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:15:28 ID:Tz9Htk1h


「ん〜〜、トレビア〜〜ン!」
 気の抜けるような掛け声だが、それとは裏腹に野太い声と共にぶっとい腕がチンピラの喉を強打した。ウェスタンラリアットである。
 喉に衝撃を受けたチンピラはそのまま白目を上げて後に吹き飛ぶ。そして静かになった。もはや立ち上がる者は誰一人としていなかったのだから。
「ご苦労さん。取り敢えず決着だ」
 マスターのその言葉に援軍が雄叫びを上げた。武器を振り回す者、座り込んでしまう者、それに手を貸す者。とにかく、ここでの戦いには勝利したのだ。
「いやいや、おつかれだなあスカロン」
 マスターに声をかけられたケバケバしい色のシャツにごついガタイを窮屈そうにしまい込んだ男が振り返る。すると、スカロンと呼ばれたその男は身をくねらせ始めた。
「本当だわよ!本来なら『カッフェ』の奴に手なんか貸したくもないけど、今回は街全体の問題だからしょうがないわ」
「そう言うことだ。簡単な治療ならみんな始めてるからやってきたらどうだ?」
「わたくしがケガして帰ったらみんなを心配させてしまうじゃない。今日はお休みにしたけど、明日までにはさすがに治せないんですから」
「その言いぶりだと二日もあればどんなケガでも治せそうだな…」
「そりゃそうよ」
 まるであなたは治せないの?と、さも当然のように答えられてはさすがに閉口してしまう。化け物め、と心中で呟き話を変えてみた。
「だ、だがまあそれで他人をケガさせてりゃ世話ないんだがな」
「美しい薔薇には棘があるのよ」
「棘って言うよりは毒だな。即死級の」
 どうにも洒落にならないような気分になったマスターは話を切り上げるとアニエスを探し始めた。一番の重傷者であるから恐らくはすでに応急処置を受けているだろうと治療を受けている人だかりを覗き込むが見あたらない。辺りにもそれらしき影もない。
 マスターは首を傾げるしかなかった。
「どこいったんだあいつ……」
510名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 23:16:32 ID:Py8FaLTO
sien
511ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:16:37 ID:Tz9Htk1h


 雨上がりで悪臭の強まった路地を男は走っていた。
 店内では戦局が一気に傾いた。街中からかき集めたのではないかと思うような人数で押し掛けられては策も何もあったものではなかった。街の人間たちには薬と恐怖である程度の統制を敷いているハズだと聞いていたと言うのにだ。
 旗色が悪いと見るや、このメイジ崩れの傭兵は頭としての役割を放棄し、群を囮にして外へ逃げ出したのだった。
「畜生が!とんだ火遊びだぜ。何が『オレの作戦に狂いはない』だよあの猿山の大将はよぉ!仲間が集まらねーんじゃ意味ねーだろーが!そもそも、姿を見せねー時点で妖しいんだよ!」
 そう毒づいたとき、細い横道の闇の中から白刃が飛び出してきた。
 咄嗟のことではあったが傭兵は何とかあごの先をかすめる程度で避けることに成功した。そして追撃の一閃も跳び退いてかわす。と同時にそつなく懐に手を伸ばし杖を探る。
「ほっ、アブねえアブねえ――……って、アレ?」
 杖がいっこうに掴めない。
 まさか落としたわけもなく、不思議に思い手元を見れば――
「探し物は"これ"か?」
 そう言って闇夜の襲撃者が掲げて見せたものは紛れもなく傭兵の腕だった。
「お、おおおおおぉぉおお?お。れの。腕。っがァッ!」
 真っ赤な噴水を上げる少し短くなった腕を前に男は叫び、そしてまだくっつくとでも思ったのか地面に放り投げられた腕を拾おうとかがみ込んだ。
 だが、腕に指先が触れる瞬間を狙い澄まして足の甲が顔面にめり込む。鼻と前歯を何本か折られ、今度は仰向けに倒されることとなった。
「うぐあ!ぢ…くしょうてめえェエギッ!」
 起き上がろうとした傭兵の胸へ容赦なく足を落とし、肋骨を軋ませると脇腹を蹴り上げ完全に砕いた。そして肩を足で押さえ壁に押し付ける。肺から息が一気に抜け、視界が点滅する中、傭兵はその襲撃者を見上げた。
 月明かりを背負って立つシルエット――それはアニエスだった。
「テメ……何で…」
「"何で動けるんだ?"――とでも聞きたげだな」
 そう言いながら刃をぎらつかせる。意図的ではないにしても恐ろしすぎるというものだ。
「生憎とまだ死ねない体でな――いや、私の意志が死なせてはくれないのだ。情にほだされて忘れかけていたが……お前のおかげで思い出せたよ。確かに私は未練だらけだ。殺さなければならない相手がまだいるんでな……憎悪で痛みも吹き飛ぶ」
 淡々と、静かに告げるアニエスに傭兵は冷や汗を垂らす。
 イカレてやがるこの女……。
「何だ?泣いているのか?男の子だろう。腕が一本なくなった程度じゃあないか。まだ死なないさ。それに……」
 アニエスは男の肩を解放してやる。
「安心しろ。貴様はどうやら中核の人物のようだからな、怒り心頭ではあるが無下に殺すつもりはない。もっとも、それ相応の罰は覚悟して置くんだな」
 場合によっては今よりも酷いかもな。そう付け加えてくるりと背を向けた。
 傭兵は折れた肋をかばうように蹲りながら観念したように呻く。
「くっそ……ダングルテール以来のでかい祭だと思ったのによお……」
 刹那、傭兵は勢いよく体を起こすと残った腕で取りだした小銃をアニエスの背中に向け引き金を引こうとした。
「だが最後の最後でツイてるぜ!」
 だが、驚くべき速度で反転したアニエスの刃がその小銃も傭兵の腕同様に半ばで切り落とし、弾丸は不発に終わってしまった。
 返す刀で傭兵の腿を切り裂き、懐から取りだした短剣を傭兵の残った腕に突き立て、今度こそ磔にした。
512ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:18:06 ID:Tz9Htk1h
「ひぎあああああぁぁああ!」
 絶叫を始める傭兵の口に壊れた銃をつっこみ声を抑えてしまうと、影になるように上から覗き込んだ。そのせいで傭兵にはアニエスの表情が見えない。
 と言っても今の傭兵にそんなことを気にする余裕はないのだが。
「ああ――まったくだ。まったくもってツイてるよ……。私も、お前もだ。よもやこんな所で仇に出会えるとは思いもしなかった」
「は、はあぎ…?」
「ああ、喋りにくかったか?」
 ずるり…、と口の異物感から解放された傭兵が改めて聞き直す。
「仇だって……?お、オレが?」
「貴様自分の言ったことを三秒も覚えていられんのか?鶏か貴様」
 この世の軽蔑を全て集めたかのような視線を送り、アニエスは傭兵によく聞こえるよう声を低くして言ってやった。
「ダングルテール」
 瞬間的に傭兵の体は固くなった。あまりにも露骨すぎて滑稽なほど。
「う、うそだ……あの村の住人は全員焼き払ったはずだ……!亡霊でもなければ……ありえない!」
「そうだ亡霊だ。私はあの炎から生まれた怨嗟の塊。復讐の亡霊だ。二十回目の夏にしてようやく貴様のもとに来た」
 深い――深い闇がその目には宿っていた。
 ああ、自分はここで殺されるのか。
 恐怖に凍りついた意識が辛うじて紡ぎだしたものは諦めだった。
 目の前の亡霊はそれに答えるかのように突き立てた短刀を薙ぐようにして引き抜いた。壁から自由になった腕は、しかし重力に逆らうことが出来ない。それで腱を断たれたことに至った。足も動かず、完全にまな板の上の鯉である。
 だと言うのに、アニエスはそれだけで手を止めてしまった。
 ひいひいという呼吸か悲鳴か判別できない音を喉からこぼしながら、傭兵は疑問の視線を投げかける。
「生きたままだ」
「へあ?」
「私たちは生きたまま焼かれた。喉は焼かれ肺に熱風が流れ込む。乾ききった眼球は割れて骨まで溶けだすその苦痛――それを与えなければ意味がない」
 アニエスの声に混じって何かの唸り声が傭兵の耳を打った。視線をわずかに下に送れば、闇の中にいくつもの鬼火が見える。そして徐々に大きくなる唸り声と共に姿を現した鬼火の正体は野犬だった。汚く痩せた体は明らかに飢えを訴えている。
513ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:19:39 ID:Tz9Htk1h
「気づいていたか?この辺りはもうスラム街に入っていることに」
「あ……ああ……ああ……」
 二人を囲むようにして様子を窺っていた野犬たちだったが、傭兵が手負いと見るとその包囲網を狭め始めた。強くなる唸り声と獣臭に傭兵は息を呑む。
「ふ、ふざけるなよ……こんなことォ……」
「ふざける?これは摂理だ。この野犬たちが飢えているのも元はと言えば貴様ら『組織』がここの住人たちを虐げるからだろう。薬を捌き金を搾り取る悪鬼どもめ。因果応報という言葉を知らないのか。
 いや……貴様に関してはそれだけではないがな」
「た、頼む!助けてくれェ!ダングルテールのことも謝る!これからは心を入れ替えるからどうか……」
「ああ、いいとも。貴様が私の知りたいことを、そのハープのような音色を出す喉で歌ってくれれば私はお前を殺さない。当時の仲間――貴様に戦術を教えたという隊長も含めた居場所を、な」
「そ、そいつは無理だ。オレがいたのは魔法研究所実験小隊ってぇほぼ非正規の汚れ屋だが、あのダングルテールの後にオレは脱走してるんだ……。
 だ、だが一人だけオレと同じ傭兵家業をやってる奴を知ってる!そいつもオレと同じで脱走した口なんだが、これがまた狂った野郎で……」
「ご託はいい。さっさと名前と居場所を吐け」
「ぐ……。メンヌヴィルだ、聞いたことくらいあるだろう?」
 その名前にアニエスはハッとする。
 『白炎』メンヌヴィルと言えば傭兵の中ではトップクラスに位置するビッグネームだ。そしてその嫌われ具合もトップクラスである。アニエスは一度その戦闘跡を見たことがあったが、炭化した大地と肉の焼ける酷い臭いが頭にこびりついている。
「そいつは今アルビオンにいる。あの人は鼻が利くからな……とくに、鉄と焼ける臭いには敏感さ。戦争があると悟ったんだろうな。何せオレもそこにいたんだから、確かな情報だぜ」
 そこまで言って、傭兵はアニエスに何かを期待するような視線を送った。だがアニエスはそれを気にする様子もなく、剣を収めて後にさがった。
 今までアニエスを警戒していた野犬たちもその様子に安心したのか包囲網をさらに縮め始める。
「お、おい…!お前約束が違うじゃねーか!は、早く助けろってェ!」
「何を言う。ちゃんと約束は守るさ。"私は貴様を殺さない"。だからこうして剣も収めた。あとは自分でどうにかするんだな。
 もしもどうにも出来ないというのであれば」
 瞬間、アニエスの目から温度が消える。
「――煮るなり焼くなり好きにされろ」
 嘲るようなアニエスの言葉に傭兵は土気色の顔をして口をパクパクとするしかなかった。出血も手伝ってもはや呼吸もままならないのだろう。それでも絞り出すようにして呪詛の言葉を紡ぎ出す。
「――……地獄に堕ちろ……」
「地獄ならとうに味わったさ」
 そして黒い雪崩が押し寄せた。
 その爪でその牙でその顎で、血を肉を骨を、啜り咀嚼し噛み砕いていく。
 もはや人としては最低限の機能しか残さない傭兵の双眸は凍りついたように動かず、空の月を捉えている。大きな二つの月に、今日はなぜかもう二つ月が浮いていた。底の見えない暗さを持った月。
 その月光を受けた牙が見えた瞬間、傭兵の全ては終わった。
514ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:20:49 ID:Tz9Htk1h


「抱き締めたいなァッ!」
「冗談ッ!」
 前回り受身をしたフーケの服がまた裂ける。すでに服は破れに破られ、背中などは大きく開いてしまっていた。
 フーケはそんなことを気にすることもなくすぐに駆け出す。背後では妖しげな笑い声が聞こえる。
 何とか致命傷は避けてはいるが、いずれ捕まるだろう。
 ――いや、とっくに捕まっているのか。
 小さく舌打ちをする。
 見えない相手に上手いこと避けていることはあり得ない。気配らしきものは感じられるが、それでも微かであり、感じてから避けていては間に合うはずもない。それでもまだ生きているということは"自分"ではなく"敵"が致命傷を避けているのだ。
 遊ばれている――。
 ボスは狩りを楽しんでいるようなものだろう。一方的な暴力に由来する愉悦。わかりきっていたことだが最低だ。
「いや、最悪なのかな……けど、油断してくれてるならそれにこしたことはないね」
「ほおらいくぞお!」
 再び声が聞こえてくる。……と言うよりも響いてくるというべきなのだろうか。声からボス本体の位置を探ることが出来ない。恐らくはスタンドを通して声を通しているのだろう。メイジにしか聞こえないのかもしれない。
 ウェザーはメイジとスタンド使いは近しいものだと言っていた。どちらも精神に由来する強さであり、スタンドが魔法に干渉するのもそのせいではないか、と。
 仮説でしかないが、今はそれを確認している余裕もない。二の腕が裂けるとノースリーブになってしまった。
 一端建物の陰に隠れてやり過ごす。幸い下っ端に出くわさないのは街の方に回したからだろう。嬉しい反面焦りも増す。
「あー……これで負けたらあいつがうるさいんだろうなぁ」
 服を破り傷口に当てて止血する。ため息の出るような状況だった。それでも目的地まではあと少しだ。そう活を入れて走り出した。
 そして再び見覚えのある場所に出る。石畳に残る血痕とひび割れは侵入したときに暴れてできたものだ。ということは門も目の前である。
 一気に駆け抜けて橋の上に出ると、反転して止まった。
 やおらスカートの中に手を入れると幾つかの小瓶を取りだし橋の上に放り投げた。割れて出てきたのは土だ。すぐに『練金』で壁を作り出す。
 この橋の上なら、敵は一直線にしか攻撃してこれないはず。なら、その進路上に障害物を配置してやれば捕まえることもできる。
「――……え?」
 しかし、予想に反してフーケの脇腹にずぐり、と痛みが走った。
 そして血がこぼれ出す。痛みに思わず蹲った。
「なんだぁ?結局お前、オレの能力には気づいてないんじゃねーか。川だろうと池だろうと、オレには関係ないね」
「あぐッ……!」
 フーケは唇を噛み締めると傷ついた脇腹を押さえて走り出した。橋の上には点々と赤い印が残され街の方へと続いていく。
「おーおー健気だねえ。まあ、そっちの方が遊びがいがあっていいけどな」
 J・ガイルは舌なめずりをしながら、追い打ちをかけるでもなくフーケの背を見る。獲物の必死な様子を楽しむかのように。
515ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:21:58 ID:Tz9Htk1h


 夏も盛りだというのに、月さえ黙してしまったかのような静かな夜。人々は本能的に何かを感じ取ったのか極力外へ出てこようとはしない。
 そんな中、道を駆ける一人の男がいた。幻獣マンティコアの刺繍の施されたマントを翻し、とある建物の扉を開いて中に駆け込む。
「ゼッサール隊長、各拠点の包囲完了いたしました」
 男は入ると同時に敬礼を取った。視線の先には机に向かっているマンティコア隊隊長ド・ゼッサールの姿があった。机の上に広げた街の地図から視線を上げて隊士を労う。
「ご苦労。引き続き警戒しておけ。くれぐれも住民に不安を与えるなよ」
 それに答えた隊士は、しかし沈黙した後でゼッサールに尋ねてきた。
「しかし隊長、敵は素人に毛の生えたチンピラとは言え、敵の本拠地での戦闘です。数も相当だと報告もありますし……本当に援護はいらないのでありましょうか」
「ヒポグリフ隊がすでに行っているのならば問題はない」
「ですが……これほどの大捕物、万一失敗するようなことがあれば我々衛士隊の沽券に関わります!」
「……お前、入隊して何年になる?」
「は?あ、えっと、マンティコア隊に配属されて今期で六年目であります!」
「そうか」
 突飛な質問に男は小首を傾げたが、ゼッサールはそれを気にする様子もなく腕を組んだ。
「……私はな、大捕物だからヒポグリフ隊に任せたんだよ」
 それだけ言って視線を隅にやる。そこには居心地悪そうに立っている少年たちの姿があった。水魔法により傷は治癒しているが、ここに連れてこられたことに戸惑いを隠せないでいる様子だ。
 そこへゼッサールが声をかける。
「諸君らの勇気ある行動に感謝する。君たちのおかげで国の大事は未然に防げそうだ。己が身を省みないその勇気は尊敬に値する」
「あ、ああ……そりゃ、どうも」
 国中の憧れである魔法衛士隊の隊長にそう言われて、少年たちはむず痒そうだった。何となく夢のような気さえする。
「家まで護衛を付けよう」
「いや、いい!……です。ケガも治ったし自分達で帰れる。……ます」
 そうか、と隊長はその厳つい髭面に人の良さそうな笑みを浮かべ少年たちを扉まで促す。そして少年たちは外へ踏み出した。
扉を開けた瞬間に飛び込んできた光景に息を呑む。
 マンティコア隊隊士たちが道の脇にずらりと並んでいるではないか。背後からゼッサールの太い声が響く。
「救国の英雄に敬礼ッ!」
 ザッ、という音とともに一斉に敬礼する隊士たち。その間を少年たちはうつむき肩を揺らして歩いていく。
 奪われ蔑み踏みにじられてきた人生。人として扱われぬ絶望。失意に駆られ道を逸れ、下を向いて歩いてきた。日陰こそが我が住処。そう思っていた。これからもそうだと思っていた。
 だが――
「バカ野郎。下を向くんじゃねーよお前ら」
 リーダー格の少年が前を見ながらそう言った。
「こういうときは胸を張って堂々と歩くんだよ」
 オレ達はまだまだこれからだ。そう思わせるような光に踏み出す一歩だった。
516ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:23:32 ID:Tz9Htk1h
 そして見えなくなる。ゼッサールが敬礼を解くのに合わせて隊士たちも下ろす。と、一人の隊士がゼッサールに声をかけてきた。『組織』とフーケの関係をゼッサールに伝えた隊士だ。
「隊長、女王の近衛である魔法衛士隊が平民に敬礼を取るということは女王の権威が取ったというのと同然です!こんなことが上に知れたら……」
「せっかくのチャンスがダメになる……か?」
 ゼッサールの言葉に隊士がギョッとなる。
「な、何を言って……」
「あまり私を見くびるなよ。モット伯を絞ってみたら吐いたぞ。今回の事件と貴様らとの関連などをな」
 脂汗がとめどなく溢れてくるらしく、しきりに額を拭いてはいるが動揺は隠し切れていない。しどろもどろに何事かをいうがもはや言葉にもならないようだ。
「黙れ。言い訳は取り調べで聞く」
「そうかよ。じゃあもういいよ」
 言うが早いか杖を引き抜く。魔法衛士隊は魔法の威力だけではなく、詠唱速度や咄嗟に杖を引き抜く速度と言った目立たないところから鍛え上げられている。ブツブツと呟いていたのは言葉ではなく呪文。
 同じ衛士隊同士なら先手を打った方が勝つ!
「アンタの首を手土産にすりゃあこの失態も帳消しだッ!」
 そう言った瞬間隊士の意識は飛んでいた。壁に叩き付けられたことに彼は気付けていないだろう。
「見くびるなと言ったはずだ。先手を打てば勝てるとでも思ったのか?修練が足らん。これが隊長である私とお前との差だ」
 いつの間に抜いていたのか、ゼッサールの手には杖が握られていた。何十年という鍛錬に裏打ちされた純粋な技量である。
 隊士たちが息を呑んだ。それほどの力量を見せたのだ。絶大なる力でもって隊の統率を図る。かつての師の教えを実行した。
 数名の隊士に後始末を任せると、残りの隊士に指示を飛ばす。この熱帯夜にゼッサールの忠実な部下たちは飛び出していった。
517ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:25:47 ID:Tz9Htk1h


 街の外観に溶け込むような家の中に、その外観に不釣り合いな男たちが集まっていた。各々が手に武器を持ち、一種の興奮状態にあるようだった。テーブルの上には白い粉が散乱し、それを奪い合う。
「おいよお!そろそろ時間じゃねーのかよッ!火どころか煙一つアがりゃあしねえ!」
「大方"不運(ハードラック)"と"踊(ダンス)"っちまったんだろ。つかテメェさっきからシャブ一人でギッてんじゃねっぞ、お?」
「あ?テメェなに調子くれてんだ?"顔(ツラ)"貸せや。あんまトンガってっと"潰"すぞ!」
「おいおい二人とも待てって。つーかそんなに暴れてーならオレ達だけで街にでりゃあよくねぇ?」
「ヤベえ、お前マジヤベぇな。マジオレら大人しすぎたろ。つかオレらでヤッちまったらオレら"天下(テッペン)"取れんじゃね?そーなりゃシャブ使いたい放題ジャン!」
 その言葉に家中から歓声が上がる。掛け声と共に足踏みで地面を揺らす。ちょうど薬の効きが頂点に来たのだろう。血走った目をした男たちが扉めがけて殺到する。今まさに狂気が解き放たれたのだ。
 ――しかし、男たちの進む先には壁があった。いや、それは人が横一列に並び、道を塞いでいる光景だった。その人間たちの恰好に気づいた男が一人、震えた声を出す。
「あ……ま、ままま――」
 その壁の中心になっていた人物が声を張り上げた。
「おのれら、チンピラ共ッ!このオレ率いるヒポグリフ隊が相手だッ!」
「魔法衛士隊だアァァァッ!」
 叫びを上げ逃げまどう男たち。しかし路地に入った瞬間、すでに待ちかまえていた衛士隊の魔法によって、ある者は風に押さえ込まれ、ある者は足下の地中が変形した檻に捕まった。
 立ち向かおうとする者もいるが、相手は鍛えられた軍人だった。薬で恐怖は薄まろうとその実力差は覆しがたく、また衛士隊も容赦がなかった。一人、また一人と魔法衛士隊に捕まっていく。
 そして他の所でも同じような光景が広がっていた。街における趨勢はこれではっきりすることとなるだろう。だが、手足が死のうとも頭が残っていれば幾度でも再生する。『組織』というものは往々にしてそういうものなのだ。
518ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:27:09 ID:Tz9Htk1h


 夕立で出来た水たまりも気にすることなくフーケは走り続ける。傷に当てた分だけ衣服はその布面積を小さくし、今や夏に相応しいを通り越してやりすぎなほどであった。
 街に入ってからも変わりなく続く鬼ごっこは確実にフーケの体力と精神をすり減らしていた。曲がり角には目もくれずに十字路を真っ直ぐに突っ切る。
「ホラァ!追いついちまうぞッ!」
 後方からの声と共にフーケのスカートの裾が裂ける。
「くっ…!」
 慌てて角を左に曲がる。
 だが、依然背後の気配は消える様子もない。確実に追われている。足を休ませることも出来ずに走り続けるしかないのだ。
 勿論フーケもただ追われるだけではなく、何とか振り切ろうと左へ右へ細かく曲がり蛇行して走る。
「ムダムダムダァ!」
 一瞬何かが輝いたのをフーケは見て取ると、咄嗟に横っ飛びにT字路を曲がった。
「おしいおしい……クク」
 フーケはその声を振り切るかのように跳ね起きて駆け出し始めた。服や顔に付いた泥も気にしている暇はない。
「ははは!随分いい恰好になったじゃねーか!たまんねぇなあ弱いものイジメってヤツぁよお!」
 勝ち誇ったような声にも耳を貸すことなく走っているがついに限界が来た。
 目の前には曲がり角だがもはや一本道も同然。一分もたたないうちに――
「ッ!…行き止まり……」
「残念だったなあ、フーケ」
 瞬間、膝裏に熱を感じ、力が抜けて膝を突いてしまった。
 さっくりと裂けた傷口からは赤い血が流れ出す。
「楽しい楽しい夜の鬼ごっこもいよいよお終いだ。ここからはまな板ショーの始まり始まり」
「くっ……」
 周囲を見渡してみるが目に付く物と言えば積まれた木箱と水溜まり程度だ。本体の姿など欠片も見えない。
「ハン。勝ち誇ったところでちっとも格好良くないんだよ!裏でこそこそして女いたぶって楽しいのかい?」
「ああ、楽しいね」
 フーケの問いにさも当然とでも言いたげにJ・ガイルは答えた。
「何をされているのかわからずに死んでいく顔。目の前で大切なモノが奪われて時の顔。それが見たいからオレはここにいるんだぜ。いたぶって何が悪い?貶めて何が悪い?オレには力がある。それを許されるだけの力が!」
「クズが……」
「そのクズに追いつめられてりゃ世話ねえぜ。え?『土くれ』のフーケさんよォ!噂には聞いていたが、前にアジトに侵入したときに決めていた。お前は骨の髄までいたぶり抜いてから犯すってなあ……。
 死なない程度に四肢を痛めて血を流し、テメエはオレにこう言うんだ。『もう止めて!痛くしないで!』ってな、涙を流してその綺麗な顔をグチャグチャにして言うんだ。もうそれだけでヤバイってのに、当然オレは許しはしない。
 絶望に落ちていく顔をしながらお前は死ぬんだ。たまらねえ……いつだったかスラム街の女をヤった時もやばかった。あんときゃその女のガキがいてよぉ……楽しかったぜぇ。しかもそいつがスリを始めて『組織』に上納してるんだから傑作だぜ!
 その金はオレの懐にも来てるンだっつーの!」
519ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:28:39 ID:Tz9Htk1h
 哄笑が渦を巻いて起こる。どこまでも耳障りだ。そしてその話を聞かされたフーケはすっくと立ち上がると杖を振るった。
 ちょっとした地鳴りと共に通路に土が隆起して壁を作り出した。行き止まりだった場所が箱に変わる。
「な、なんだ?」
「っあー……あたしもまだまだねー。こんなビチグソ以下の腐れ外道に、もしかしたら酌量の余地はあるかもしれないなんてほんのすこ〜〜〜〜〜〜〜〜しだけとは言え、思ってたんだから。本当、まだまだね」
 そして下げていた顔を上げた。
 いつにも増してつり上がる双眸は刃のように尖り、殺意と憎悪がない交ぜになったオーラを箱の中に充満させていく。
「壁を作って逃げ場をなくしたつもりか、笑わせる。オレのスタンド能力が解らない以上――」
「反射」
 J・ガイルの言葉をブッた斬って断言する。姿はなくともJ・ガイルが息を呑むのが見えるようだ。
「その反応だとどうやらビンゴみたいね。正直まだ半信半疑って所だったけど、これで心おきなくあんたをブッ飛ばせる」
「……どこで気づいたんだ?」
「最初にピンときたのはスラムの子たちがガラスの反射を使ったときよ。一度あんたにやられてるけど、その時にキラッて何かが反射したのを見てるわ。それに確証を与えたのが今日のアンタの大鏡のトリックよ。
 あそこまで鏡にこだわる以上は、鏡自体か、それに関係すること。それに鏡を使ってどうやって攻撃しているのかがまだ解らなかった。鏡から鏡へ移動して攻撃しているのか……鏡の中から攻撃してるのか。
 だからあの橋で確認したのよ。遮蔽物をまたいで攻撃できないなら前者。してくるのなら後者――って具合にね。ついでに、どの程度のものに反射が効くのか試したけど、水もイケるようでなによりだわ。あんたは今、目の前の水溜まりの中にいる。
 あんたはあたしを追いつめてるつもりだったのでしょうけど……残念、その逆よ。気づかない?ここは四回通ったんだけどなあ。まあ、通る度に壁を増やしてたから気づかないかしら?『追う者は追われる者以上に気を付けよ』。まったくね。
 あんたが油断しきってくれたおかげでおかげでこの状況まで持ってこれたんだから、まったく――」
 油断様々だわ。
 そう言ってフーケは笑った。J・ガイルの哄笑とは対照的な静かな笑み。しかしその中身がドス黒いことはその笑顔を見れば一目瞭然だ。
 油断。していた?自分が?ナメやがって。コケにされるのは許せねえ。
 自分はいつだって上位に立ってきたんだ。ここへ来る前に殺されはしたが、あれは何かの間違いだったはずだ。
 オレの『ハングドマン』は無敵なんだ!
「テメエこそ、何を勝ち誇ってるのかは知らねーが……調子に乗ってるんじゃねーぞ。居場所が割れようと能力がバレようとオレの『ハングドマン』は無敵だ!攻撃する術は無い!」
 そうだ。まだ負けた訳じゃあない。向こうに攻め手はないがこちらは好き放題に出来る。結局泣きつくのはあの女だ。
 ったはずなのに。
 フーケは無言のまま杖を振るった。足下の地面が盛り上がり徐々に固まっていく。そして現れたのは身の丈はあろうかという巨大な腕だった。その大きな掌の隙間からフーケの目が覗く。
「確かに――その中に引きこもってるあんたに攻撃する術はないね。でも……そこから出たらどうかな?
 例えば砕けたガラスにあんたは居続けられるのか?例えば水が涸れてもあんたは引きこもり続けられるのか?
 出来ないんだろう?何か別の反射するものに映らなきゃならない。例えば――あたしの目……とか」
 そこに至ってようやくJ・ガイルは自分が絶体絶命の窮地に立たされていることを理解した。
「光の速さでも、来る場所が解ってれば網を用意することは容易いわ」
 フーケの魔法だろうか、土が水溜まりの宙に浮く。J・ガイルは慌てて周りを探るが、光を反射するものは見あたらない。フーケの目以外には。
520ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:29:44 ID:Tz9Htk1h
「う、うおおおおおおおおおあああああッ!」
 雄叫びと共に、水溜まりを埋めるには十分すぎる量の土が降り注ぐ。同時に土の腕が空を掴んだ。
 否、それは確かに何かを握っていた。ちょうど人一人分の空洞がその手には出来ていたのだ。
「そしてウェザーの言った通りね。『スタンドが魔法に干渉できるのならばその逆もまた然り』……。もっとも、『見えない』ってアドバンテージは痛すぎるけど……」
 手の中で何かがもがく感覚がある。フーケには見えないがそれこそ『ハングドマン』である。
「その拘束を外せないところを見ると、遠距離型っていうのはホントに非力なのね。潰しちゃわないか心配だわ。じゃないとわざわざ捕まえた意味がないじゃない」
 言いながら指揮棒のように杖を振り、周りに次々と腕を作り出していく。
「鉄の腕じゃあ反射してあんたに逃げられちゃうかおしれないからね。殺傷能力が落ちて苦しむだろうけど、まあそれは望む所よねぇ?」
「ま、待て!と、取り引きしよう!」
 ここにいたってJ・ガイルは急に取り繕ったような態度を取り出す。追いつめられると今までの自信はどこへやらと言った有様だ。
「お前が欲しいのは利益だろう?なら『組織』の利益のうち四割をお前によこそう!だから、な?な?」
「……悪の親玉ならもうちょっとそれらしい最期ってもんがあるだろうに。あんたがアルビオンの内紛の原因を作ったなんて、正直信じられないね」
「アルビオン?……ああ、それはボスがやったやつだな」
「――……はぁ?」
 J・ガイルの声に思わず間抜けな声を漏らすフーケ。
「そうだ!オレと組んでボスを倒そう!そうすれば五割……いや、もっと大きな利益がオレ達の物になるんだ!どうだ、魅力的な話だろう?」
「ヘイヘイ!ちょ、待ちな。あんたはボスじゃなくって、じゃあ、そのボスは誰なんだい?」
「そ、それは知らない……ボスは一度も姿を見せたことがないからだ。そのくせ偉そうに命令ばかりしやがるからよぉ……他の支部で問題が起きて今はそっちに向かってるから、その間にオレが頭になっちまおうと思ってな」
 その問題ってのはオレが起こしたんだけどな。と笑った。
「あの野郎は他の奴をまったく信じてないのはその徹底した隠蔽ぶりでわかるからな。事件は必ず自分で解決すると思ってたよ。案の定そうだったわけで、おかげでオレは美味しい汁が吸えた。
 この大規模な暴動も元々はボスの作戦だったんだが、オレの出世の第一歩として使わせたもらおうと思ってな。ま、まあ確かに誰も見たこと無いボスだが、お前の機転とオレの無敵の能力があれば暗殺も簡単だ。だから、なあ、組もうぜフーげぶぇッ!」
 皆まで言わせずに拳の一つが『ハングドマン』殴りつけた。何もないところを殴っているようでも手応えはある。
521名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 23:30:26 ID:o64v5zG7
支援
522ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:31:49 ID:Tz9Htk1h
「あんたに名を呼ばれると気分が悪いわ……」
「オ……ゲ……」
 さらにもう一発。
「あんたの声を聞くと耳が腐るわ……」
「ブぎィアアアァ」
 さらに一発。
「あんたが生きてるとみんなが嫌な気分になるわ……」
「ナーアアアアアァァッァァァァ」
 さらに。
 さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。さらに。
「バニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニ
 バニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニ
 HAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
 バニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニバニ」
「ブッゲアアアァァァァァァァアアアアアア!」
「バニッシングッ!」
 無数の土腕によるラッシュのシメは天に昇るようなアッパーだった。
「無敵の存在があるはずないじゃない。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから……」
 もはや返事などありはしない。しばしの静寂がフーケを包む。
 フーケは自分の服を見た。所々破け、土に汚れてしまって見る影もない。もはや最低限の役目しか果たさない布きれではメイドと言うよりアマゾネスだ。
「あたしの一張羅の請求書は地獄宛に送っとくよ」
 途中適当な布をローブ代わりに羽織り表に出ると、なにやら騒がしいことになっていた。
 とある店先に人垣が出来ている。気になったフーケはそこに近づくと、野次馬の一人に声をかけた。
「何の騒ぎかしら?」
「ああ、それがいきなり人がボロボロになって浮き上がって、あの飲み屋の看板にブッ刺さっちまったのさ。わけがわからねえ」
「その男……どんな男でした?」
「ここからじゃよく見えねえけど、何でも"両手とも右腕"だとかって――って、なんであんた男だって……」
 疑問に思った野次馬が振り返ったときには、すでにそこにフーケは居なかった。
 布を脱ぎ捨てると、痛む体を引きずるようにして走る。
 勝てたとは言えダメージは深刻だし、油断してくれなければそもそも勝負にさえならなかっただろう。
 そんな男を今まで押さえ付けていた人物とは、いったいどんな化け物なのか……。
「間に合ってよ……ウェザー」
523ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:33:12 ID:Tz9Htk1h


「オラァッ!」
 掛け声と共に男が一人吹き飛ぶ。背後の道には他にも数人の男たちが倒れていた。
 地理になれていないウェザーにとって、今自分が立っている場所がどこなのかさえわからないのだ。同じ所を二、三度巡ってしまった。
 だが、それで気が付いたこともあった。追っ手の数が減っているのだ。恐らくは街の方にかり出されたのだろう。
「時間はないな」
 呟いて目の前に視線を移す。赤の装飾が門に施されているのが特徴的な屋敷があった。
 微かな記憶を辿れば恐らくはこここそが記憶の場所。
「せっかくだからオレは赤の屋敷を選ぶぜ!」
 誰に言ったのか、そう言って突入していった。
 中は無人だった。外であれだけの大立ち回りを演じても何の反応もないのだから当たり前だが。ウェザーは好都合とばかりに部屋中をひっくり返し始める。だがやはり何も見つからず、とうとう最後の一つの部屋となった。
「これでいなけりゃフーケがアタリか……」
 そう言って扉を開けた。
 と同時にいきなり前転して部屋の中に転がり込む。今し方ウェザーが立っていた場所には代わりにナイフが数本突き立っていた。
 身を起こしたウェザーはすぐさまスタンドを発動させる。
「『ウェザー・リポート』!」
 空気のセンサーは部屋中に張り巡らされ、すぐに空気の乱れを観測した。
 トラップのナイフを一本引き抜くと、それを部屋の隅めがけて投げつける。ドスッ、という鈍い音がして、次いで重いものが地面に落ちる音がした。
 暗闇から転がり出た何かのもとにウェザーが歩み寄り、俯せに倒れているのが男であると認識した。黒いコートに黒い頭巾という変わったいでたちだが、こんな所に一人で隠れていたと言うことはボスで間違いないだろう。
「あっけないが、存外組織のボスの戦闘能力なんてこんなもんか……」
 そう言って顔を確認しようとしたとき、不意に嘔吐感に襲われた。耐えられずに思わず吐き出してしまう。
 だが、吐き出されたものは真っ赤な液体とカミソリだった。
「うげェ!な、なにィィィィィィィ、これはッ!」
 ウェザーは事態に驚愕しながらも、背後にわずかな気配を感じて振り返った。
 黒いコートに黒い頭巾という、奇妙ないでたちの男が立っていた。だが、床にはもう一人の奇妙な男が転がっている。
 いや、それよりも、"なぜこいつはセンサーに反応しなかった"のか!
「お、お前はいったい……ッ!」
「オレはお前に……近づかない」




To Be Continued…
524ヘビー・ゼロさん代理:2008/03/20(木) 23:34:17 ID:Tz9Htk1h
>563 名前:ヘビー・ゼロ[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 23:06:35 ID:YWphJUIk
>以上投下完了!
>と言うわけでボスはあの人でした。
>1Rでトニオさんが「ワタシの祖国のギャングとやり方が似てる」と言ってたり、
>ウェザーがヒゲを剃ろうとした→ヒゲ剃りの道具→カミソリだったり、
>全Rで『鉄』と言う言葉を出したりしてたんだけど・・・
>あと、あの人のやり方じゃない!ってところもあると思うけどそこは次回あたりにでも・・・

>本スレに投下できないので、どなたか代理お願いします


ということで代理投下したッ!
ヘビー・ゼロさんGJ!
525名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/20(木) 23:46:13 ID:o64v5zG7
ヘビーさん&代理さん投下乙そしてGJでした
意外ッ!ソレは彼!
まあ、落ち着いて考えたらJガイルに組織を率いる手腕なんて無いわな
しかし、まさか彼だったとは、いやはや予想外です
一体彼は何故内紛など引き起こすに至ったのか、
他のメンバーも来てたりするのか……次回が凄く楽しみです
526名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 00:37:57 ID:Q4s8jHnw
軌道が分かればポルナレフの様に切れるが、
掴むとはスタープラチナも真青。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 00:43:27 ID:zbI5GkKi
GJ!
リゾットでくるとは予想外
アニSもマチルダちゃんもかっこいいなあ
528名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 00:51:55 ID:kDTfGw28
投下乙!
非常に熱く意外性のある話だったけど
「せっかくだからオレは赤の屋敷を選ぶぜ!」のショックが強すぎるぜ!
529隠者の中の人 ◆4Yhl5ydrxE :2008/03/21(金) 01:23:36 ID:/6h8/DNM
ヘビーさん&代理乙&GJ!
アニSさんにときめくのはわしだけでなくてもいいッ!

さて二時から投下するから住人のみんなッ! 覚悟を決めろッ!
530名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 01:25:29 ID:NsXByg0V
支援
531名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 01:49:14 ID:ESq6serg
おぉ!続きを楽しみにしてた
アルビオン手紙奪回作戦の完結編になるのか?
532ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:02:29 ID:/6h8/DNM
 キュルケとギーシュの二人に両脇を抱えられて空を飛ぶルイズの左目には、途切れる事無くジョセフの視界が映り込んでいた。
 自分を殺そうとしてくる何人ものワルドが次々と打ち倒されていく光景は、目を閉じても否応無しに見せられ続ける。
 薄汚れた暗殺者でトリステインを裏切った重罪人だとしても、憧れの人だった青年であったことは変え様が無い。しかし今、実際に襲われているのは自分ではない。ジョセフだ。
 自分の中にあるはずもない魔法の才能に求婚したワルドと、守ってやると誓ったジョセフ。今のルイズがどちらに重きを置いているかは、斟酌するまでも無い。だが、それでも。まだワルドの変貌に気付いてから一日も経っていない。
 そう簡単に割り切れるものでは、なかった。
「もっと急いで! このままじゃ、ジョセフが……」
「黙ってて! これでも私達の全速力よ!」
「焦る気持ちは判るよ、ミス・ヴァリエール! 僕達だって友人を失いたくないからね!」
 普段の飄々とした軽薄な雰囲気を感じさせない切羽詰った二人の返答に、ルイズは言葉を詰まらせた。
「ご……ごめん。うん、判ってる……でも……」
 ルイズを抱える手に僅かに力を込め、キュルケは火のような赤い瞳を彼女に向ける。
「言っておくけど、私達の精神力はもう期待しないで。正直、もしかしたらタバサ達と合流する前に精神力が尽きるかもしれない。もしジョセフが負けた時、私達が戦わなくちゃならないとしたら――」
 一旦言葉を切り、一瞬だけ無言で鳶色の瞳を真正面から見据えた後、言い切った。
「あの裏切り者と戦うのは貴方よ、ヴァリエール」
「……判ってるわよ、そんなのは……!」
533ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:03:35 ID:/6h8/DNM
 微かに出るのが遅れた言葉は、その事実に目が向いていなかった事の証明だった。
 判っていなかったのではなく、あえて目を背けていたのだろう、とキュルケは考えた。
(無理もないわ。でもねルイズ、それでもアンタはダーリンを助けに行くと言ったのよ。アンタの中では、もうとっくに答えは出ているということよ。踏み切るなら、早い内の方がいいわ。下手に迷うと……みんな、死んでしまう)
 キュルケの中で走る思いは、言葉にはならない。それは言うまでも無いことだからだ。キュルケが知っているルイズという少女は、魔法の才能はゼロだが聡明で誇り高く、ジョセフ・ジョースターという老人を大切に思っている。
 しかしかつての憧れの人物を、裏切り者だと知ってすぐに掌を返して敵対できるような性格でないことも、よく知っている。
 そうと知っていてルイズの望みを叶えようと、枯れかけている精神力を絞り出して空を翔けている。
(私ってば情が深いのよね。博愛主義、というやつなのかしら)
 くす、と小さな笑みを浮かべ。自分には見えない光景を見ているルイズの表情の変化は、どんな言葉よりも雄弁にジョセフ達の窮地を教えてくれる。
 無二の親友タバサと、愛するジョセフを救うため。そして認めたくは無いけれど。
 先祖代々の仇敵と言えども、ルイズという友人の為に。
 三人の少年少女は、一日足らずの滞在となったニューカッスルへ再び接近した。
 昨日見た光景とは違い、既に城は無残に崩れ落ちてしまっている。先程出航してからさして時間も経っていないのに大きく変わった岬のシルエットに驚いたのも束の間。
 続けて岬全体がゆっくりと大陸からずれるように滑り落ちていく。
「うわ! 見てみなよ二人とも! 岬が……岬が、落ちていく!」
 ギーシュが言うまでも無く、ルイズとキュルケは落ちる岬に視線を奪われていた。
534ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:05:43 ID:/6h8/DNM
「……今まで正直信じられなかったけど……本当に岬って落ちるものなのね……」
 たった一言呟いて、キュルケは思いを新たにした。
 あれだけのことをやってのける人物は、必ずツェルプストーに大きな利益を齎すことだろう。それがヴァリエールの恋人だというのなら、ツェルプストーの伝統にかけて、何としてもモノにしなければ。
(……でも、御先祖様達がやってきたことよりずっと難しいだろうけど)
 モノにする本人がルイズを猫可愛がりしているのは明らかだし、何よりルイズもジョセフを大切に思っている。それでも、目標が困難ならば困難なほど燃え上がるのは、ツェルプストーの血筋と言うものだった。
 だがルイズは眼前で起こるスペクタクルの他にもう一つ、注視しなければならない情景が左目に休み無く映し出されていた。
 正にその時、ジョセフはシルフイードの背を蹴りその身一つでワルドに躍り掛かった。
 左腕から迸るハーミットパープルがワルドへ奔るが、ワルドはグリフォンの機動と風の渦で紫の茨を薙ぎ払い回避していくが、一本の茨が遂にワルドの左腕を捕らえた。
 ルイズは知る由もないが、それは奇しくも昨夜の戦いと同じ流れ。
 昨夜はジョセフの左腕を放つ一撃でワルドの左腕を切り飛ばした。
 今もまた、ジョセフの左腕から放たれた茨を伝った波紋がワルドの腕を吹き飛ばした。
 しかしそこからは、昨夜とは異なっていた。
 ワルドは瞬時に自らの左肩を自分の作り出した風の渦で切り離し、波紋の伝達を防ぐ。
 グリフォンの翼が大きく振り払われ、視界が大きく回転する。
 空の青と雲の白が目まぐるしく入れ替わる中、恐ろしいスピードで迫ったグリフォンの前脚が振り下ろされるのが見え――ルイズは、目を閉じるのではなく、見開いた。
「ジョセフ!!」
535名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:06:12 ID:ESq6serg
ガンバレ、キュルケ
536ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:08:23 ID:/6h8/DNM
 赤い何かが目の前に飛び散っているのが見える。それが自分の血ではなくジョセフの血だと判別するのも一瞬遅れた。
 空を落ちていく視界に、今しがた吹き飛ばされたはずのワルドの左腕が、瞬時に再生するのを、ルイズは確かに目撃した。
 見る見るうちにグリフォンが小さくなっていく視界。
 ルイズは、ふる、と小さく首を振った。
 これが夢なら、どんなにいいだろう。
 ワルドは昔と変わらない憧れの人で。アルビオンは滅びることなんか無くて、アンリエッタとウェールズが手を取り合えて。ジョセフもお調子者で自分を怒らせたりするけど、ただ側にいてくれて。
 どうしてこんなことになってしまったんだろう。
「うっ……」
 喉の奥がつんとして、おなかの底から堪え切れない波が押し寄せてくる。
 熱くなった目に涙が溜まってぽろぽろと風に流されていくのが、判る。
「う、うっ……」
 泣くものか。泣いてたまるか。泣きたくなんか、ない。
 昨夜だって。ワルドが倒されてジョセフに抱き締められた時だって泣かなかったじゃない、私。今泣いちゃ駄目。だってまだ、ジョセフは死んでない……左目に、ジョセフの見ている物が見えるんだもの……。
「……ミス・ヴァリエール。ミス・タバサの風竜が見えたよ」
 込み上げる涙を何とか押し留めようと必死に自分に言い聞かせていたルイズに、少しばかり言いにくそうに言ったギーシュの言葉が届く。
 涙で滲む両目を袖で拭うと、前から猛スピードで飛んでくるシルフィードが見えた。
537名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:08:47 ID:pxb59LdY
支援
538ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:10:12 ID:/6h8/DNM
「……ええ、見えるわ……」
 たった一言答えて、ぐ、と嗚咽を飲み込んだ。
 まだ胸はしゃくり上げるのを止められないが、呪文の詠唱は出来ないことはない。
 シルフィードは空で巨大な半円を描くように旋回することで、三人を背に乗せるための減速と同時にすぐさま元の空域へ戻れる機動を行う。
 タバサがワルドに反撃する為の手段を求めていたのも確かだが、ルイズ達がフネを離れてわざわざここまで来たという事は、ジョセフとの感覚の共有で今しがたのアクシデントを察知したからだ、という推論に達するのは自然とも言える。
 ルイズ達の飛行ルートとシルフィードの旋回するルートを巧妙に合わせ、互いのスピードを無理に調整することも無く三人をシルフィードの背に乗せることに成功した。
 決して短くない距離をフライで飛んできたキュルケとギーシュは、既に戦力として望むべくもない。気を抜けば今にも気を失いかねないほど消耗している。
 残る戦力となるルイズに頼るしかない状況の中、タバサはルイズを見やる。
「シルフィードが怪我をすればトリステインに帰還出来ないかもしれない。だから私は回避に専念する他ない。貴方の魔法だけが頼り」
 要点のみを連ねたタバサの言葉に、ルイズは泣き腫らして赤くなった目を袖で拭った。
「判ってるわ……! ワルドを倒して……ジョセフを、助けに行かなくちゃならないんだもの……!」
 それはタバサに答える言葉と言うより、自らに言い聞かせる類の言葉。
 そうやって口にしてもまだ断ち切れないほど、彼女に縛り付いた躊躇は弱くなかったが。


 *

539ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:15:21 ID:/6h8/DNM
 激痛などという甘い言葉で表現できない衝撃。
 人生の中で何度も味わった感覚を、ジョセフは感じていた。
 高い空から地面に向かって落ちていく経験は何度もあるが、だからと言ってそれに慣れられるという訳ではない。
(アバラは2、3本じゃすまんくらい折れている……胸の肉も大分抉られてる……呼吸は何とか出来るがッ……波紋は練れんッ……)
 むしろライオン並みの大型の獣の前脚を食らってこの程度で済んでいる、というのは幸運以外の何物でもないのだが。
 だが年老いてもなお明晰さを保持しているジョセフの頭脳は、既に答えを導き出していた。
(このままでは助からない)
 飛行機も無ければパラシュートも無い。
 せめてもの救いはタバサとウェールズを逃がすことは出来たということ。
 だが、こんな異世界で死んでしまえば。地球に残してきた家族や友人達を悲しませてしまう。そしてあの小生意気な主人も。
(ちくしょうッ……わしも今まで奇妙な敵達との死闘を潜ってきたが……最後があんなクソガキに負けて死ぬっつーのはカンベンしてほしかったわなァ――)
 ものすごい速度で空を落ちていく中、ジョセフの意識は不思議なほど明朗だった。
「――思い出したぜ、相棒」
 落下の最中、左手に握られたままのデルフリンガーが、言った。
「ボッコボコにされたあいつがなんでピンピンで戻ってきたか思い出したぜ! でもその種明かしはまた後だ、実はもう一つ思い出したことがあるんだよ!」
540ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:22:17 ID:/6h8/DNM
 デルフがそう言った直後、ジョセフの身体が自身の意思を無視して動き始める。
 乱れた呼吸が整い、激しい生命力に満ちた呼吸に変貌していく。
 その呼吸は、ジョセフにとって非常に馴染み深いものだった。
 全身の痛みを和らげ、何本も折れていた肋骨が見る見るうちにくっつき、胸から吹き出し続けていた血が止まっていく。
「これはッ……波紋!?」
「その通りだぜ相棒! 俺っちにゃ吸い込んだ魔法の分だけ使い手の身体を動かす力があるんだよ! 疲れるから使いたくはねえんだがな! 足とか手とかなら動かしたことあるけどよ、こんな妙ちくりんな動かし方させたのは初めてだが何とかなったな!」
「空は飛べたり出来んのか!」
「そこまでムチャ言うんじゃねえよ相棒! そこらは自分で何とかしてくれよ!」
「伝説の剣ならそのくらいの機能つけといてくれんか!」
 軽口を叩きあいながらも、ジョセフは先に空中に落ちたニューカッスルの岬を見下ろす。
 自分が落ちたのは岬が落ちてから数秒後のこと。
 あれだけ巨大な物体が受ける空気抵抗はかなり大きい。ならば。
「無理を通せば道理が引っ込むって言葉もあるよなァ!」
 空中で無理矢理姿勢を立て直し、両足を下に向けて空気抵抗を成る丈殺して落下速度を早める。
 下から吹き上げる風圧に巻き上げられた城の瓦礫に狙いを定めて足を付けると、落下する方向を変える為の跳躍を繰り返す。
 瓦礫と言えども中にはかなり大きなものも多い。打ち所が悪ければ死ぬかもしれない。
 しかしジョセフは巧みに瓦礫の八艘飛びを成功させると、止まる事無く落下を続けている岬へ見事着地した。
541ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:27:33 ID:/6h8/DNM
 瓦礫さえ吹き上げる風圧の中、ジョセフが岬に立っていられるのは吸い付く波紋で足を地面にくっつけているからである。
「で、岬に着いてどーすんだ相棒。このスピードじゃ落ちたら死ぬぜ。俺っちは剣だからもしかしたらどうなるかもしれねぇがよ」
 まるで他人事のように評論するデルフリンガーに、ジョセフは何でもない事のように言った。
「とりあえず最後までやれるだけの事はやってから諦めるしかあるまい。何とか出来そうな心当たりがないワケじゃあない」
「あるのかよ?」
「やるだけのことはやってから死ぬのがジョースターの伝統でなッ!」
 そう言った瞬間、ジョセフは空を落ちる地面を走り出す。かつてジョセフの命を救った生命の大車輪は、50年経った今も錆び付いてなどいなかった。
「それでこそ伝説の使い魔だな! くぅーっ、そこにシビれる憧れるってな! よし相棒、よーく聞け。あのキザにーちゃんが波紋で腕が吹き飛んだ理由とすぐに生えた理由を思い出した。ありゃー先住魔法だ。水の精霊の力が身体に充満してやがる」
「先住魔法?」
「ブリミルがハルケギニアに来る前にこの世界で使われてた魔法だ。今の貴族達が使う系統魔法とは違うが、効果は系統魔法よりずっと強い」
「なるほどな、昨夜ブッちめたはずのあいつが舞い戻ってきたのはそのせいか?」
「その通りだ。アイツは厄介だが波紋に対しては相性が最悪だわな」
 ジョセフの脳裏には、波紋を流された途端左腕が破裂した光景が映し出された。
「確かに波紋は水を自由自在に駆け巡る性質があるからな。水の精霊って言うくらいなんじゃから、普通の生き物なんか問題にならないくらい水気がたっぷりじゃろうな」
「波紋以外であいつを倒す方法は、水を害する火の魔法か……そうでなけりゃ……」
542名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:28:38 ID:ESq6serg
しえん
543ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:32:40 ID:/6h8/DNM
 虚無の魔法、と言いたい所ではあるが、そんなものを使える心当たりはデルフリンガーには無い。
「あのお嬢ちゃんの失敗魔法か、だな。あれは威力も高いがとにかく爆発させる効果がいい。今のアイツは言わば水の塊だ、再生出来ない位飛び散らせちまえばいいって寸法よ」
「ルイズの……か。しかし望みは薄いな」
 ルイズはトリステインに帰るフネに乗せている。
 ならば今ジョセフの中にある手段を試す以外に手は無かった。
「で、そろそろ俺っちに種明かししてくれよ。今、相棒と俺っちが助かるものすげェ手段ってヤツをよ」
「言うよりも実際に見せてやった方が……」
 ふと、ジョセフの言葉が途切れた。
「どうしたよ、相棒」
「いや……なんか、左目がおかしい……」
 ジョセフの視界が少しずつ揺らいでいく。
「そりゃーあんだけドタバタやってるんだからよ、疲れてるんだよ」
 何度か瞬きをしているうち、段々と視界の揺らぎは歪みに移行し。やがて、何らかの像を結んだ。
「うおッ!? なんか別のものが見えるぞ!?」
 思わずジョセフが叫んだ。それが自分の見ているものではない、誰かの視界だと言う結論に達するのはさして難しいことではなかった。
「おう、何が見えてるんだ相棒」
「こいつぁ……ルイズの視界じゃな」
 いつかルイズが言っていた事を思い出す。
『使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるわ』
544名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:33:38 ID:ESq6serg
 
545ゼロと奇妙な隠者:2008/03/21(金) 02:35:29 ID:/6h8/DNM
 しかしルイズはちっとも自分の見てるものなんか見えないと言っていたが。逆の場合もあるということなんじゃろうな、とジョセフは納得した。
 だが、何故突然ルイズの視界が自分の左目に映り込んだのか。
 左手を覆う手袋の中から見えた、いつにも増して強く光るルーンの輝きに、ジョセフはおおよその事情を理解した。
 これも伝説の使い魔『ガンダールヴ』としての能力の一つだと言う事だと。
 どんな状況になるとルイズの視界が見えるのか、と考えると、ジョセフは左目に映った視界を注視し――愕然とする。
 そこに見えたのは青い竜の背。ものすごい速度で飛んでいるのは飛び行く雲の速さが雄弁に語っている。
 時折ちらりちらりと視線が揺らぐのは、ルイズ自身の不安を如実に示す。
 まず見えたのはタバサの背。続いて横に座るキュルケ、ギーシュ。背に乗せられて気絶したままのウェールズ。
 そして、見る見るうちに相対距離を縮める――ワルドのグリフォン。
「な……なッ……」
「な?」
「何をやっとるかあいつらァァーーーッッッ」
 流石のジョセフでもこの光景は想定外も想定外だった。
 逃げろと言ったのにどうしてまた立ち向かってるのか、どうしてシルフィードの背に全員が乗っているのか。それは推理するまでも無い。
 それにしても、だ。勝ち目の無い戦いに新たな手も用意せず再び向かおうとする、向こう見ずなどと言う生易しい言葉で言い表せない程の無謀に、ジョセフは帰ったら全員大説教だ、と心に決めた。
 同時に。今から行うべき手段は何としてでも成功させなければならない、とも心に決める。
「人生にゃあどうしてもやらなくちゃならん時があるよなぁ……」
 ふ、と口の端に笑みを浮かべ。ジョセフは目的の場所に辿り着いた。
「おい相棒、ここか? 本当にここか? ここに俺達が助かるどんな方法があるんだ?」
 戸惑うように鍔を鳴らすデルフリンガーに、ジョセフはニヤリと笑ってハーミットパープルを伸ばす。
 搾り尽くした筈のスタンドパワーがなおも溢れてくるのが判る。
 もしかしたらこのスタンドパワーは命を削って無理矢理出しているものかもしれない。
 だが、ここでやらなければ。どちらにせよ、だ。
 左手に握ったデルフリンガーを更に強く握り締め、ハーミットパープルは目当ての“それ”を掴み取った。
「よォッしゃァアーーーッッ! さすがワシ! ついてるゥ!」
 デルフリンガーは「おい、ここまで一生懸命走ってきたの一か八かだったのかよ」とツッコミを入れるのも面倒臭かった。


 To Be Contined →
546名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:36:13 ID:ESq6serg
乙!
547名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 02:40:37 ID:l16voRsK
ジジイ乙!
548隠者の中の人 ◆4Yhl5ydrxE :2008/03/21(金) 02:43:59 ID:/6h8/DNM
以上投下したッ!
ごめんね一周年記念祭りに間に合ってないしまだ完結してないのごめんね
次回の投下で終わるはずなんだけど果たして本当に終わるのかどうか自分でも判らないぜフゥハハァー
落下する速度とか時間とか物理法則とかその辺りについてイロイロとツッコミ所大量だとは思うが
まあその辺りは気にしないで頂きたい(´∀`*)ウフフ
また今月中に投下できたらいいな…マジで…
549名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 03:21:26 ID:0wGHyM1Y
もともと浮いてた大地の一部だったし多少浮く力あるから落ちるのもゆっくりなんだよ!
ΩΩΩ<ナンダッテー!
ぐらいの気持ちでいいかとw
550名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 03:22:44 ID:qnsOtU7c
大丈夫大丈夫 重いものは早く落ちるとかゆで先生も言ってたし
551名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 13:11:51 ID:rnGUTMNr
>>550
早く落ちちゃダメじゃねーかw

552名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 14:34:05 ID:Xk7E6BOZ
だってゆでだもの
553名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 17:51:34 ID:6/hVgSGg
隠者の人GJ翁かっけええ
554名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 23:30:36 ID:o1//LWht
35分から投下しますが歩道は空いてますか?
555名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 23:35:58 ID:R85Gdn8o
空いているとも
空いてなかったらロードローラーを通して支援するとも
556ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:35:59 ID:o1//LWht
「よもやここまでの差が……!」

火竜の背後に食らいついたグリフォンが容易く引き離される。
魔法の詠唱が終わるのを待たず竜騎士の背はその射程より外れていた。
気が付けば背後には逆に自分を追い駆ける複数の敵影。
吐き出された炎の吐息は身を翻す間も与えずに騎士を焼き尽くした。

栄えぬきの魔法衛士隊は決して実力的に劣る物ではない。
しかしグリフォンと火竜の最高速度の差は致命的だった。
相手を追えば逃げられ、逃げれば必ず捉えられる。
思う様に杖を振るう事さえ出来ないまま叩き落されていく。

悪夢ともいえる光景を眺めながらギーシュは言葉を失った。
もし彼らが破れる事があれば火竜の牙はこちらへと向けられるだろう。
頭上から襲い来る炎と魔法を相手に、地上部隊では成す術などない。
ましてや突撃してくる部隊を防ぎながらなど到底無理な話だ。

「どっち見てるんですかい? アンタはこっちでしょうが」

グリッと半ば力づくでニコラがギーシュの首を捻る。
向けられた先に見えるのは大地を弾ませながら迫る敵軍、その先陣に立つ亜人の集団。
各々の手には使い込まれた物であろう黒ずんだ染みを付着させた鋼鉄の鈍器。
人間を叩き潰す為だけに作られたそれは鎧さえも意に介さず諸共に打ち砕く。
加えて人間以上の強靭さを持つ彼等は弾丸が減り込んだぐらいでは止まらない。
正しく狂った獣と化して敵陣へと突き進む狂気の塊なのだ。

地上と空で同時に展開される絶望的な戦況。
だが、それに嘆いていても仕方はない。
ましてやギーシュは全軍を指揮する立場にはない。
戦の成り行きを案ずるより、この持ち場を死守する事を考えなくては……。

「一歩でも退いちまったらそこで終わりですぜ。
連中は凶暴でタフですが忠誠や統率って物がねえ。
ここの通行料が高いと判りゃあ足を止められます」

ニコラの助言を受けながらギーシュは部下に装填の指示を出す。
弾薬を込めて火縄を点して、人よりも二回りは大きい的に狙いを定める。
ギーシュの合図と共に放たれた弾丸が次々と亜人達を穿っていく。
頭蓋や心臓を撃ち抜かれて巨体が次々と崩れ落ちていく。
だが、それでも彼等は止まろうとはしない。
倒れた者や体に空いた銃創には眼もくれず雄叫びを上げて迫る。
それは戦術ですらない獣の本能だったのだろう。
しかし、その効果は戦に慣れぬ義勇兵達には覿面だった。
近付いて来る敵に慌てて込め直そうとして火薬や弾を落す者が続出したのだ。
射撃の訓練も受けていない彼等が取り乱せばこうなるのは判りきっていた。
次射の準備が整わぬ内に、二足歩行の野獣達が迫る。
もはや眼前の敵を駆逐するだけの火力はなかった。
557ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:37:12 ID:o1//LWht
舌打ちをしながらニコラは銃を捨てて剣を抜いた。
乱戦になれば銃よりも役に立つのはこちらだ。
分の悪い賭けに張っちまったと後悔しつつ彼は笑みを浮かべた。
彼にとってはこれは仕事でしかない。
最悪、この混乱に乗じて姿を眩ませるつもりでいた。
隣には同様にして杖を構えるギーシュの姿。
惜しむらくは、この愉快な上官の初陣を勝利で飾れなかった事。
今まで自分の助言を聞いた物好きなど一人もいなかった。
だからこそ僅かな間とはいえ愛着が湧いたのだろう。
もし余裕があれば彼も逃がそうとニコラは心中で決断した。

その刹那、二人の視界から亜人達は消滅した。
同時に巻き起こる夥しい砂煙。
辛うじて窺う事が出来たのは地面から生える亜人の手足。
よく見れば彼等の巨体は地面に埋もれていた。

「ヴェルダンデ!」

咄嗟にギーシュは自分の使い魔の名を呼んだ。
あんな巨大な落とし穴を作る時間も道具もなかった。
唯一それが可能だったのはヴェルダンデだけ。
そして主の呼びかけに応えるように彼は土の中からひょっこりと顔を突き出した。

ここにいる筈がないと思っていた。
臆病なヴェルダンデが戦いに参加するなど予想さえ出来なかった。
だからギーシュは何も命じず単身戦いに臨んだ。
……しかし彼はここにいる。

ギーシュは最後まで信じ切れなかった。
それはヴェルダンデではなく自分の事だ。
“使い魔は主と似た物が召喚される”
その言葉は戦いに脅えるヴェルダンデを見れば一目瞭然だった。
彼の臆病さは自分の心の弱さの表れなのだと。
そして今も自分は戦争を前にして臆している。

だが! 今は違う!
この瞬間、ギーシュは心から確信した!
脅えていた過去の自分は通り過ぎた!
自分はヴェルダンデと共に『成長』したのだと!
己の『勇気』を心の底から信じ切れるようになったのだ!

この『勇気』が仮初の物でもいい!
今この一時の恐怖を振り払えるならば!

銃を手に取りギーシュが吼えた。
続いてニコラ、遅れるようにして義勇兵達も雄叫びを上げる。
指揮官の鼓舞と亜人の消滅に鉄砲隊も平静を取り戻していた。
それとは裏腹に彼等の咆哮に亜人達は困惑する。
先頭集団が落とし穴に嵌まった事に警戒したのではない。
彼等は自分達を強者と信じて疑わず、人間を狩られる側の存在だと認識している。
ならば、これは何だというのか?
脅え竦むのは自分達で、人間達は威圧するかの如く吼え猛る。
立場をそっくり入れ替えたかのような現実に彼等は戸惑う。
558ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:38:58 ID:o1//LWht
突然叫び声を上げた主人に不安げな視線を向けていたヴェルダンデ。
その彼がふと自分の真上に落ちた影に気付いて振り向く。
驚愕する彼の眼に映されたのは掲げられた巨大な鉄の塊。
半ばほど体を埋められながらも亜人は暴力を振るうのを止めない。
ギーシュに気を取られた彼へと振り下ろされる鉄槌。

瞬間。ヴェルダンデの頭上を掠めるように炎が通過した。
それは背後の亜人へと直撃しその巨体を焼き尽くす。
ヴェルダンデが助かった事を安堵する間もなく、
ギーシュとニコラが炎が来た方向へと銃口を向ける。
今のは火の系統魔法じゃなく間違いなく炎の息吹だった。
となれば近くに火竜がいると示唆しているも同然。
しかし茂みより現れ出でたのは火竜ではなくサラマンダー。
更にその上に乗っているのは見紛う事なき自分の級友。

「キュルケ!?」
「随分ヒドイじゃない。せっかくの援軍に銃を向けるなんて」

何故、彼女がここにいるのか考えるよりも、
ギーシュは真っ先に援軍という言葉に反応を示した。
もしかしてゲルマニアが動き出したのか?
それなら軍人の家系であるキュルケが出陣してしてもおかしくない。
思わぬ助けの手にギーシュは沸き立つ。

「それで、その援軍はどこに?」

キュルケの背後の茂みを見渡すようにギーシュが目を配らせる。
せいぜい隠れられても数人程度ぐらいだろう。
それとも離れた場所に待機させているのだろうか?
考えあぐねたギーシュが視線を上げると、
そこにはニコニコとした笑みを浮かべて自分を指差すキュルケの姿があった。

「ここにいるじゃない。それとも私じゃご不満?」

その言葉にギーシュはがっくりと肩を落とす。
たった一人で戦場に来る彼女の度胸よりも、
自分達を助けに来てくれた事への感謝よりも、
ぬか喜びに対する落胆が何よりもギーシュには大きかった。

「……うん、ありがとう。君の助力に心からの感謝を」
「言っておくけどアンタの為じゃないわ」

明らかに絶望的な表情を浮かべながらギーシュは礼を告げた。
その態度に、眉を寄せ額に血管を浮き上がらせながらもキュルケは返す。
彼女の返答でギーシュはようやく気が付いた。
ゲルマニアが参加しないのなら、どうして彼女がいるのか?
理由を訊ね返そうとする彼よりも先にキュルケは答える。

「決まってるでしょ。アルビオンとの戦争なら必ずアイツが出てくるからよ」

髪を掻き揚げながらキュルケは空を見上げた。
そこにはグリフォン隊と空中戦を繰り広げる数多の竜騎士の姿。
彼女の瞳はその中に誰かの姿を投影しているように見えた。
否。誰かなどと考えるまでもない。
ウェールズ陛下を殺しアンリエッタ姫殿下とルイズの期待を裏切り傷付けた非道。
元・魔法衛士隊隊長のワルド子爵、彼以外には有り得ない。
今も尚滾る憤怒の炎を表すみたいに彼女の赤い長髪が風に靡く。
559ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:40:43 ID:o1//LWht
後先の事を考えない我が儘と言ってしまえばそうかもしれない。
本来、家柄や地位の事を考える立場にある人間が私怨で動くのだ。
だけど、彼女は自分の意思でそれを貫き通す。
例え、それで貴族としての権威を失ったとしても躊躇わない。
その有り様は誰よりも自由で誇り高いものだった。
血の気が引きかけていた自分の顔にギーシュは活を入れた。
数などは関係ない、己の意思で戦場へと来た彼女をギーシュは戦友として迎え入れる。

「いや、キュルケが来てくれたなら百人力だ。
まあ、それでもあと九百人ほど足りないんだけどね」
「安心しなさい。援軍は私だけじゃないわよ」

そう言って再び空を見上げる。
今も激戦が繰り広げられるタルブの上空。
その中に紛れて飛ぶ一匹の風竜の姿を確認してキュルケは微笑んだ。


「これで四騎撃墜! さあ、五騎目はどいつだ!?」

流星のように炎に包まれて落ちていくグリフォン。
それを見届けながら竜騎士は気炎を上げる。
目前まで迫った勝利に彼等は酔っていた。
もはや敵と呼ぶには脆く歯応えもない。
まるでゲームの点数を競うかのように敵影を捜し求める。

「……次は貴方の番」

その時、男の背後から冷たい声が響いた。
背後を取られたのに気付き、即座に男は火竜を加速させた。
グリフォンの速度では火竜には追いつけない。
声を掛けず後ろから奇襲すれば倒せたかもしれないのに、
つくづく間抜けな連中だと男はせせら笑った。
引き離した相手を確認しようと振り返った瞬間、
そこにいたのはグリフォンではなく真後ろに食いついた風竜の姿。
間抜けなのは自分の方だったと気付いた直後、
氷の矢に串刺しにされた火竜と共に竜騎士は墜落した。
560ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:43:02 ID:o1//LWht
「まずは一騎」
(きゅいきゅい! まだまだいっぱいいるのね!)

青い髪を揺らしながら冷静に呟くタバサに、
耐えかねたシルフィードが非難じみた警告を発する。
アルビオンで執拗に追い回された記憶はまだ新しい。
しかも戦場を飛び回る火竜の数はあの時よりも遥かに多いのだ。
いつ取り囲まれて嬲り殺しという憂き目にあっても不思議ではない。
そんな中で平然としているタバサに危機感を感じなかったのだから、
シルフィードも文句の一つも言いたくなるという物だろう。

一騎、二騎落とした程度では戦局は覆らない。
如何なる英雄であろうとも一人で戦況を変えるなど不可能。
それでもタバサは決して退かない。
だが彼女の本当の敵はこの程度の相手ではない。
タバサが挑んでいるのはガリアの王ジョゼフなのだ。
それは、たった一人で一国に敵対するに等しい。
この程度の敵に背を向けて復讐が果たせる筈もない。

そして何よりもタバサは証明したかった。
自分に力があれば、あの時の惨劇は防げたと。
今の自分なら守りたい者を守れるのだと。

風竜を駆る少女に撃墜される竜騎士の情けない姿。
それを仲間の竜騎士達は失望混じりに眺める。
油断していたとはいえ竜騎士でもない少女に倒されるなど恥以外の何者でもない。
傷付いた誇りを取り戻さんと彼等はシルフィードへと群がる。

(包囲されるのはマズイ……)

自分が竜騎士隊を引き付ければその分グリフォン隊の負担は減る。
一人で敵を撃退する事は出来なくとも撹乱するぐらいなら可能なのだ。
勝機を見出すまで守勢に徹しようとする考えは間違っていない。
だけどタバサは心のどこかで期待していたのかもしれない。
いつものようにルイズの使い魔が助けに来てくれる事を。

他の人に言ったら笑われるかもしれないけれど、
全員が揃ったなら例えそれが何であろうとも打ち勝てる、そんな気がするのだ。
実力や実績のような言葉では片付けられない『何か』が確かにそこにはあった。

だけど一方では逆にタバサの心を恐怖が蝕む。
それは、この場に彼が現れなければ勝てないのではないかという不安。
どんなに優れた名品も一片が欠け落ちてしまえば意味を失ってしまうように、
“彼”の不在を戦力的な意味以上にタバサは重く受け止めていた……。
561ゼロいぬっ!:2008/03/21(金) 23:44:53 ID:o1//LWht
以上、投下したッ!
562名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/21(金) 23:48:58 ID:W/v322ox
乙!GJ!
さて使い魔不在のタルブ戦どうなる!
563名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 00:39:22 ID:np3jNdSI
GJ!本格的な戦闘描写に移りましたな。
キュルケとタバサも参戦し、物語も熱くなってきた!

そして何より、
ギーシュがかっこいい!これは、夢じゃないぞ!
ほら、頬を抓っても痛く……

……あれ、夢か?
564名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 00:48:07 ID:3ONZLsle
GJ!
キュルケ、タバサgood!
ギーシュは…うん、格好良いだと?

>>563
落ち着け、なら人差し指を噛んでみたらどうだ?ジョルノみたいに…

……俺も夢に思えてきたんだが?
565名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 00:58:20 ID:GgBSkzFi
いぬさんGJ!

キュルケもタバサも格好良いな!!
っていうかお前ら夢だとか何だとか酷過ぎだろwww



単にギーシュさんが時空を超えて大活躍してるだけだって。
566名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 07:24:40 ID:7kMWMtqn
YOUを支援してやるッッ!!!
567名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 16:43:42 ID:FkP7IQC/
あまり夢見てるとデス・サーティーンに殺されるよ。
568名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 21:10:52 ID:d4hj84sF
ヘビーゼロGJ!
なんかフーケ山がものすっご格好いいよ。

隠者GJ!
逃げろといったのに立ち向かってりゃ慌てるよな、おじいちゃんがんばれ!
569名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 21:12:18 ID:d4hj84sF
ゼロいぬGJ!
ルイズ達が力を合わせる王道的展開がこんなにもアツいものだとは…
いぬと一緒につくった絆って奴か!人間賛歌って奴ですか!?
570名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 22:59:50 ID:UQRMV96i
では5分から投下しますけど構いませんねッ!?
571名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:02:24 ID:GgBSkzFi
歩道が開いてるではないか。
572名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:04:52 ID:m0v0CWOL
行け
573名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:05:44 ID:BSNmF//I
支援のモード!
574ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:06:14 ID:UQRMV96i
アンリエッタの本陣に次々と伝えられる戦況。
しかし、その多くはトリステイン側の不利を報せる物でしかない。
増援を求められても本陣を手薄にする訳にもいかず、
王女は報告を聞きながらただ杖を固く握り締めるのみ。
現状では個々人の奮闘に期待するより他にないのだ。

「グリフォン隊から伝令! 味方と思しき風竜の所属確認を求めています!
乗り手は青い髪の少女、服装から魔法学院の学生ではないかとの事」
「…………!」

大空で戦うグリフォン隊からの連絡にルイズの心拍が高まった。
思い当たる人物など一人しかいない。
どうして、そんな事をしているのか、
ガリアの人間であるタバサにとって他国の戦争など無関係の筈。
それなのに戦地へと赴いた理由は一つしかない。

私達を助ける為。
フーケとの戦いでもニューカッスル城でも、
タバサ達は自分の命を省みず私達を助けてくれた。
嬉しさよりも先にルイズは悲しみが込み上げてきた。
仲間に迷惑を掛けまいと一人で飛び出してきたのに、それでも彼女達はやって来る。
困惑するルイズに、更に追い討ちを掛けるように新たな報せが届く。

「報告します! 我が軍の左翼に攻撃が集中しております!
このままでは支えきれません! 至急増援を!」
「左翼というと義勇兵で構成された部隊ですな。
外堀からこちらを追い詰めていくつもりでしょう。
やはり一筋縄ではいかぬ相手のようです」

マザリーニの言葉にルイズは唐突に立ち上がった。
その部隊の中には間違いなくギーシュがいる。
このまま見殺しにする事など彼女には出来なかった。

「何処へ行くのですルイズ?」
「誰も行かないのなら私が援軍に行きます!」
「待ちなさい! 一人では危険です!」

アンリエッタの制止を振り切ってルイズは馬に跨り颯爽と駆け出した。
傍にいた重臣や兵達も彼女の行動を止める事は出来ず呆然と見送るだけ。
咄嗟にアンリエッタは声を上げて兵達に出陣を促す。

「誰か彼女の護衛を!」

しかし皆一様に頭を下げて目線を合わそうとはしない。
魔法衛士隊は王女の護衛として傍らに居なければならず、
ましてや保身を第一とする高級貴族が自ら窮地に向かうなど有り得ない。
その情けない姿に苛立ちを覚えるアンリエッタに一人の貴族が名乗りを上げた。

「では私が参りましょう」
「え? ええ、お願いできますか」
「お任せを」

歩み出た貴族の姿を見てアンリエッタは目を疑った。
風評も良くなければ、武勇に秀でているという訳でもない。
その彼が自ら前線に赴くなど彼女には考えられなかった。
だけど藁にも縋る思いでアンリエッタはその貴族を送り出したのだ。

「では頼みます」
「御安心を。彼女とは因縁浅からぬ関係ですので」
575ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:07:29 ID:UQRMV96i
鳴り止まぬ銃声と悲鳴。
その最中にあってルイズは急かすように馬を走らせる。
心中に付き纏う不安は決して拭い去る事は出来ない。
思い浮かべるのはギーシュとタバサ、
そして彼等と同様に来ているであろうキュルケの事だ。

ずっと一人でやっていけると思い上がっていた。
いつだって私は誰かに支えられて生きていたのに気付かなかった。
自分に何が出来るのかなんて問題じゃない。
いてもたってもいられずにルイズは行動に移した。
“敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶ”
母親より学んだその言葉の意味をずっと私は勘違いしていた。
伝えたかったのは“背を見せるべき相手の事”だった。
守るべき民、愛する人、深い信頼で結ばれた友、
それに気付かなかった私の背後に誰もいなかった。
だけど今は、まるで私の背を押すように彼女等の事を感じられる。

「よう。嬢ちゃん」
「急いでるから後にして!」
「いや、後回しには出来ねえな」

カチャカチャと鍔を鳴らしながら背負ったデルフが喋る。
だけど、それを制して私は急いだ。
恨み事を言われるのは判っていた。
私はデルフから“彼”を奪い取ったのだ。
剣であるなら戦いを望むのは当然だ。
戦う場さえ与えられなかった屈辱はどれ程の物だろうか。
ましてやデルフの呼び掛けで彼が目覚めるのを恐れて引き離したのだ。
戦いが終わった後ならいくら叱責されようと構わない。
だけどデルフが発したのは怨嗟の声ではなかった。

「もし魔法が飛んできたら俺を使え。
振り回せなくても盾代わりには十分なる」

怨んでいる筈なのに、使い手でもないルイズにデルフは力を貸すと言った。
その言葉の真意を理解できずに問い返す。

「どうして…?」
「相棒がいたなら必ずお前さんを守るだろう? 
なら俺はお前さんを命懸けで守る。使い手の意思は俺の意思だ。
それに、お前さんがどれだけ思い悩んで決めたかも知ってる」
「……デルフ」
「胸を張れ。お前さんは俺が見込んだ相棒、そいつの認めた主なんだぜ。
きっと相棒だって怨んじゃいないさ」

その一言が気休めだというのは承知していた。
本当の気持ちなんて今もコルベール先生の所で眠る彼以外には判らない。
だけど確かに、その一言にルイズは救われたのだ。
張り詰めていた感情が解けるように彼女の瞳から小さな雫が零れ落ちた。


「何やってるのよ! 話が全然違うじゃない!」
「参ったな…。奴さん等の銃、トリステインの最新式より遥かに高性能だ」
「ちょっと待ってくれ! それじゃあ火縄銃の僕等じゃ全然勝ち目ないじゃないか!?」

真上を掠めていく弾丸をやり過ごしながら塹壕に隠れた三人が騒ぎ立てる。
キュルケの参戦も戦況を変えるには至らなかった。
戦意を失った亜人達の代わりに迫ってきたのはアルビオンの鉄砲隊だった。
576名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:07:35 ID:BSNmF//I
黄金伯爵支援
577ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:09:36 ID:UQRMV96i
『亜人みたいに大きな的ならともかく、
銃ってのはやたらめったら撃っても当たりゃしません。
鼻息が聞き取れる距離まで相手を近づけてからじゃないと』

数と質で劣ってはいても、こちらには塹壕という防壁がある。
ましてや多大な犠牲を覚悟で突撃してくる様子もないとなれば、
時間を稼ぐのは容易いと、そうニコラは判断したのだ。
亜人達との戦いで彼の助言は的確であると感じたギーシュも賛同を示した。
相手に無駄弾を撃たせて再装填の隙を突いて反撃に出る。
その考えは決して間違いではないように思えた。

『ちょっと! 敵が撃ってきたわよ!』
『大丈夫ですよ。この距離じゃあ届きさえ……』

その直後、放たれた弾丸がニコラの頬とキュルケの髪を掠める。
瞬時にして顔面を蒼白に変えた三者は塹壕の中に潜り込んだ。
そして手も足も出せぬまま今もヴェルダンデの様に彼等は身を潜めていた。


靴音を響かせながら突き進むアルビオン鉄砲隊の行進。
距離を詰めながら放たれる弾丸の雨は反撃の暇さえ与えない。
辛うじてフレイムの吐息が敵の侵攻を食い止めているものの、それだっていつまで続くか判らない。
ヴェルダンデの落とし穴も突進してくる相手ならともかく、じりじりと距離を詰めてくる相手には効果も薄い。
かといって塹壕まで接近を許せば嬲り殺しに合うだけだ。

「こうなったら突撃あるのみよ!」

があー、と遂に耐え切れなくなったキュルケが吼える。
ニューカッスル城に潜入した時と同様、隠れ続けるのは彼女の信条に反するのだ。
勇ましく杖を振るい群がる敵兵を薙ぎ倒して血路を開く。
その方がよっぽど自分らしいと納得してキュルケを決断した。

「てい!」
「落ち着くんだ! 今飛び出しても何も解決しない!」

咄嗟に飛び出そうとしたキュルケの足をニコラが掴んで引き倒す。
その上にギーシュが覆い被さり組み伏せる。
街中だったら有らぬ誤解を受けそうな状況だがそうも言ってられない。
如何にトライアングルのメイジでも数の不利は覆せない。
四方八方から止む事なく飛んでくる弾丸を全て防ぎ切るなど到底叶わない。
思わず揉んでしまったキュルケのたわわに実った胸の感触に心奪われながらもギーシュは解決策を考えていた。

そこで問題だ! この状況でどうやってあの鉄砲隊を倒すか?
(三択)1つだけ選びなさい。

答え@ハンサムなギーシュは突如反撃のアイデアが閃く。

今やってるけど無理。
それよりも吸い付くような肌の手触りが心地良くて堪らない。

答えA仲間が来て助けてくれる

来てくれたけど当てにならない。
ついでに髪からほんのりと甘い匂いが漂って来てそれどころではない。

答えB倒せない。現実は非情である。

柔らかいだけでなく押し返してくるような反応が何とも…。
578ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:10:41 ID:UQRMV96i
結局、考えは纏まらなかった。
何より冷静になればなるほど掌から張りと弾力が伝わってくる。
二律背反の中、煩悩に負けたギーシュが経験豊富なニコラに丸投げする。

「何か良い手はないか?」
「そうですね。上空からの支援があれば何とか」

そういって見た先には苦戦というよりも一方的に蹴散らされるグリフォン隊の姿。
とても援軍を遣せるような状況ではないし、来るとしたら敵の方が先だろう。
首を振るギーシュにニコラはもう一つの案を口にした。

「となると大砲か。横一列に並べてブッ放せば止められます」
「……さっきからわざと言ってないかい?」

皮肉げに言い放つギーシュの視線の先には、こちらに向けられた艦隊の砲口。
対するトリステイン艦隊は既に壊滅し、残存艦艇もこちらに向かっている最中だ。
この状況を打破する鍵が全て敵の側に揃っているというのは笑い話にしかならない。
やはりキュルケの言う通り、突撃しか道はないのかと諦めかけた時だった。

「何しているの…?」

不意に掛けられた声に反応しギーシュは見上げた。
そこには馬上から自分を見下ろすルイズの姿。
絶望も浮かべずに戦場に立つ彼女を見てギーシュは思い出した。
この程度の窮地なんて幾度も乗り越えてきたじゃないか。
諦めるのはまだ早いのだ、と無茶をしようとした自分を諌めた。

しかし冷静になってみれば自分を見るルイズの目は冷たい。
そこには汚い物を見るかのような侮蔑の念が込められているのではとさえ感じる。
そこでようやくギーシュは自分の置かれている状況を理解した。
塹壕から出て行こうとしたキュルケを二人で取り押さえた姿は、
二人掛かりで組み伏せて彼女に乱暴しようとしているようにしか見えないのだ。

ふるふると震えるルイズと硬直したままの二人、
そして抑えつけられて身動きの取れないキュルケ。
奇妙な沈黙の中、真っ先に口を開いたのはデルフだった。

「ああ。こりゃアレだな。
戦争に負けそうになって自棄になった連中の乱行だな。
どうせ死ぬからって女を襲ったり略奪やらかしたりするんだよな」
「待て! 違う、全然違うぞ!
全く疚しい気持ちがなかったとは言わないが僕は潔白だ!」

必死に抗議するギーシュの声もルイズには届かない。
俯いて前髪に隠された瞳には憤怒の炎が赤々と燈っている。
窮地に追い込まれて風前の灯火とまで思われたギーシュが、
キュルケを押し倒しているのを見つけた彼女の心情は如何なる物だったか。
不安だった心は落胆を通り越し、そして激怒へと変わる。
ギチリと握り締められたルイズの杖が高々と掲げられる。
579ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:11:46 ID:UQRMV96i
「こ、こ、こ、この貴族の恥さらしー!」

瞬間。戦場を揺るがすかの如き轟音が響き渡った。
ルイズの失敗魔法が炸裂したのかと脅えていたギーシュが恐る恐る目を開く。
しかし辺りは吹き飛ばされてはおらずルイズの杖も天を指したままだった。
呆然とするルイズの視線の先を追えば、そこにはアルビオン軍が爆風に吹き飛ばされる光景が広がっていた。
飛来してきた砲弾が進軍する鉄砲隊を次々と蹴散らしていく。
予期せぬ反撃にルイズばかりかギーシュもニコラもキュルケさえも言葉を失った。

「続けて第二射! 前進してくる敵集団に火力を集中させろ!
足を止めた者、逃げる者には目もくれるな! 撃ぇ!」

凛とした号令が戦場に響く。
それに合わせて鳴り響く砲火の音。
どこか聞き覚えのある声にギーシュは声のする方へと視線を向けた。
整然と並べられた大砲と砲手、その背後で指示を出す一人の女性。
傷を負っているとは思えぬ程に毅然とした立ち振る舞い。
目蓋に掛かった金色の髪が風に靡く。

「アニエス!」

思わずギーシュは彼女の名を呼んだ。
共にアルビオンに旅立った戦友と再会できた偶然を、彼は始祖に感謝した。
ましてや待ち望んだ援軍として現れるなんて出来すぎだ。
やはり彼女は勝利の女神なのかもしれない。

ギーシュの声に反応してアニエスは振り向く。
直後、笑みを湛えていた彼女の顔は一転して険しいものへと変わった。
突然の豹変に戸惑うギーシュに彼女は問いかける。

「……おまえは何をやっている?」

アニエスが目にしたのはキュルケを押し倒すギーシュのあられもない姿。
再会を嬉しがるギーシュの顔は、にやけている様にも見て取れた。
もはや軽蔑というには生温いぐらいに刺すようなアニエスの視線が向けられる。
今まで築き上げてきたイメージが一瞬にして崩壊していく音、それがギーシュの耳の中で響く。
そして血の気が引いていく感覚と共にギーシュは悟った。

……多分、僕は生きて帰れない。
この戦場を無事に潜り抜けたとしても。
580名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:12:16 ID:BSNmF//I
永遠の絶頂ギーシュさんになり損ねたギーシュ支援
581ゼロいぬっ!:2008/03/22(土) 23:13:44 ID:UQRMV96i
以上、投下したッ!
シリアスにギャグを混ぜるのは難しい。
582名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:16:01 ID:BSNmF//I
乙&GJ!

殺伐とした戦場に命と引き換えに清涼感を提供してくれたギーシュに敬礼ッ!
583名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/22(土) 23:22:31 ID:GgBSkzFi
GJ!!
これは「あの人」が久しぶりの登場か!?
それとやっぱりギーシュはギーシュでした。
584名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/23(日) 00:42:25 ID:HVwe253D
投下乙!

やっぱり、俺が見たのは夢だったんだな……これこそがギーシュ!これがギーシュだよ!

でもキュルケのおっぱいを堪能したのは許せん!あれは、俺のだ!
585名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/23(日) 11:24:43 ID:8Blo6Kpv
ゼロいぬギーシュはいい役に当たったなぁ。
アヌビスワルドとか仮面ワルドとか、オッパイニスト達が集まったら凄いことになりそう
586名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/23(日) 20:14:25 ID:MV+1cVKj
ttp://www8.atwiki.jp/zali/

野郎・・・・
587名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 01:21:42 ID:OdE8l11I
キング・クリムゾン!
588名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 07:30:28 ID:UD0vB4f0
>>585
ミノタエロスも呼んでやってくだちい。
589名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 14:18:07 ID:XgZZWy35
>>588
貴様ーっ!!!
うまい事言ったつもりになってんじゃねーぞ!!!
590使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 19:50:06 ID:IO7ZG2fX
必ずやるって決めた時は「十分後」だッ!
今のオレは、何がなんでも「十分後」で突っ切るのよッ!
スレに食らいついたッ! 投下してやるッ
591名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 19:53:15 ID:rln8goT3
支援
592使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 19:59:42 ID:IO7ZG2fX
一章二節 〜ゼロは使い魔と相対す〜

漫然と身を任せるまま、ルイズの部屋に連れてこられたリキエルだったが、道すがら、
停止状態にあったその思考は回復の兆しを見せるようになっていた。少しずつ、身に起き
た異常に心が向き始めたのである。
 心身ともに整理のつききっていない状態ながら、リキエルはとりあえず事情に明るそう
な人間、ルイズに話を聞くことにした。聞いて、まず困惑した。してから、当惑した。い
くつかの質問を投げかけたが、返ってくる答えは要領を得ないものばかりで、混乱を助長
するものでしかなかったのだ。
「メイジ? 召喚? 契約? 使い魔? 意味がわからないぞ。ここはどこだって?」
「あんた何、まさか魔法を知らないわけ? いったいどんな田舎から来たのかしら。着て
るものも変だし、ついでに言えば髪型……っていうより髪の毛も変よね。ここはかの有名
なトリステイン魔法学院よ。田舎者っていっても、名前くらい聞いたことあるでしょ?」
 呆然とした面持ちで――内心も同じ心持ちで――確認するような口調のリキエルに対し、
ルイズはぞんざいな口ぶりで、滔々と言いたいことだけを言った。
「聞いたことがないからこーして訊いてるんだ。大体なんだ? 魔法ってよぉ。それに田
舎だって? フロリダは有数の観光地だ。宇宙センターもあれば鼠と夢の国もある州だぜ、
それなりに興業はうまくいっているし、総生産も七千億を超えてる。これは五年前のこと
だがな」
「ふーん、そう。五年前っていうと、わたしまだ十一歳だわ」
「じゃあお前は十六なのか。って、そんなことはどーだっていいんだ! というより、惚
気の入り混じった面白くもない恋愛相談を聞くような、露骨にどーでもいいって顔をする
んじゃあない!」
「今お前って言ったわね? 言葉には気をつけなさいよ、平民のくせに」
 会話は、一向にかみ合う気配すらなかった。
「平民だって? またわけのわからないことを……。ともかく! どうやって連れてきた
のかはこの際どうでもいい。お前達の目的も正体も知ったことじゃあない。オレをもと居
た場所に帰してくれッ!」
――ん? そうだ、オレはどうやってここに来たんだ? オレは事故って……。
 愚痴っぽく言いながら、リキエルは同時に疑問を抱く。それは思考能力の復旧作業が、
今しがたになって完了したからだった。そうなると、自身の現状をより深く考えることも
できるようになる。
しかしそれはリキエルにとって、決して喜ばしいことではなかった。
――鏡……いや、鏡らしきものか。それが向かってきて、違う。向かってったのはオレ
だ。それで意識が、左手に奇妙な文字が、イギリスにあるようなやたらとでかい城が見え
て、でかいといえば、あの月はなんだ? 大きさはともかく2つある理由は、ってそうじ
ゃない。どうしてオレは……。
593使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:01:14 ID:IO7ZG2fX
「言葉に気をつけなさいって言ったでしょ。還すなんて無理よ。もう契約しちゃったし、
呼び出すことはできても、元に戻す魔法なんてきいたこともない……ってちょっと聞いて
るの? 主人の話くらい聞きなさいよ!まったく、使い魔としての自覚に欠けてるんじゃ
ないの? いい? 使い魔っていうのはね」
 思考の渦にはまり込んだリキエルの耳には、ルイズのそんな声はほとんど入らず、ムス
ッとした顔も目に入らないようだった。
――そうだ、ああそうだ。いやそうじゃない。なにがだ? なにが、オレは事故って、
左手に激痛が……人が飛んで、魔法だと? あ? 魔法だ? わけがわからなく、わけ、
あ、まずい。わからねえ。これ以上はやばい。これ、わけが、これ以上は、うう! やば
い、まただァ!
 息が荒れ、汗が噴き出す。
「主人の目となり耳となり、秘薬やその素材を見つけてきたり、主人の身を守ったりする
存在なんだけど、どれもあんたには……あんた、ど、どうしたのいったい」
「やべえぜッ! 手から汗が、ビショビショだ。まぶたが下りてくる!」
 リキエルが突然大量の汗をかきながら取り乱すのを見て、使い魔の役割について講釈し
ていたルイズは狼狽する。
――バイクで、左手が、月が2つ、魔法が、事故って、使い魔で、人が飛んでッ! 手
に激痛、手、手が汗で、激痛、ふかないと! 目が、前が見えねえ! タオルは? ここ
はどこだ!? うおぁあまぶたが!
「い……息苦しいッ! 汗をふきたいッ! タオルはどこだッ!?」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ! どうしたっていうのよ!?」
――落ち着け? 落ち着け!? 落ち着けるわけがねえ! くそ、息苦しい! タオルはど
こだ。ここはどこだ! 駄目だ、考えるんじゃあない! またいつもみたいに、また、ま
た! ああくそ。苦しい! くるし、考え、息がッ!
 リキエルの意識の中には既に、ルイズの存在など影も形もない。それどころか、自分が
正常な意識を保っていられるかどうかさえ、リキエルにはわからなくなってくる。
 正気が保てない。そう思った瞬間リキエルは、首の後ろだけを無重力状態にされたよう
な、嫌な浮遊感を伴う恐怖にさらされた。
「まぶたがッ! どんどんおりてくるんだぜッ! 見えねえッ!」
「なんなのよ……いったいなんなの!」
はいつくばり、ゲドゲドの恐怖面で滅茶苦茶に手探りをするリキエルを前にして、ルイ
ズの方もパニックを起こしかける。
リキエルの思考は止まらない。
――鏡が、事故って、バイトの、召喚、激痛、考えるな、激痛、正気が、正気が、使い
魔、汗をふきたい、タオルは、また、考えるな! まぶた、息苦しく、前が見えねえ! 正
気が、ちくしょおお!
594使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:02:46 ID:IO7ZG2fX
「いつもだ! ストレスが重なるといつもこうなる。使い魔だって? オレにはなんの力
もない! こんなオレに何ができるっていうんだ!? ちくしょう、ここにタオルはねーの
か! 死ぬかもしれないッ!」
処理しきれずに断片的になり、乱雑に思い浮かぶ記憶の奔流に精神をかき乱され、リキ
エルは耐え切れずに悲鳴を上げた。


「え?」
 メイジの存在すら知らない平民を使い魔にしなければならない理不尽と、その平民が目
の前で何の前触れもなしに取り乱し、喚きだすという理不尽に苛まれ困惑し、小刻みに震
え立ち尽くしているだけのルイズだったが、その平民の悲痛な叫びで、半強制的に意識を
ゆり戻された。
ルイズは考える。この男は自分の使い魔だ。平民であろうと人間であろうと、自分の召
喚した使い魔だ。その使い魔が苦しんでいる。突然池のど真ん中に放り込まれた蟻のよう
に苦しみ、もがいている。使い魔を見捨てるメイジがいるだろうか。そうすれば、自分の
理想とする貴族の像はどうなる。自分の憧れ、姉達ならばどうするか。
「……」
 改めて彼の様子をうかがってみると、その苦しみようがわかる。
目を覚ましたときから閉じられたままだった片目は気になっていたが、いまや両のまぶ
たが下がったまま痙攣している。汗はまさに滝が流れ落ちるようで、両手で押さえられた
喉からはヒュウヒュウと、取入れ損なった空気がもれ出ていた。
「……」
 厳しいが優秀な上の姉なら、こともなげにその冷静さで対処するだろう。病弱だが優し
い下の姉なら、その優しさでもって献身するだろう。自分にはそれはない。ないが、でき
ることがないわけではなかった。
「タオルは、タオルはねェーのか! くそ、正気が、息が……はっ! こ、れは」 
 むなしく空を掻くだけだったリキエルの手のひらに、ごわごわとした布の感触が触れる。
「お、落ち着きなさいってば! ほら、タオルよ。ゆっくり息を吸って、汗をふきなさい!」
「ヒック、ヒッ、クァ! はぁ―、はぁ―。あがが、はぁ―」
 リキエルは渡されたタオルで一心不乱に両手をふく。タオルはよく汗を吸い、驚くこと
に、絞れるまでになった。
「はぁ―、はぁ―、がが、かっ、はぁ―、すまない」
尋常ではない量の汗が流れ、まぶたも上がっていないが、少しずつ息が整ってくる。な
んとか話ができるようになったリキエルは、喘ぎながらも謝辞を述べた。
595使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:04:00 ID:IO7ZG2fX
「ほ、本当よ、感謝しなさいよね。大体、しし、死ぬだなんて大げさなのよ。ちょっと、
ちょっとだけびっくりしたじゃない。いったいなんなのよあんた」
 プライドからか、動揺を隠すため、ルイズはかき集められるだけの威厳を声に乗せて、
どもりながらもそう言った。なんなのよ、とは抽象的だったが、リキエルは、その言葉の
意図するところを汲み取った。
「はぁ―はぁ―、クッ、はぁぁ――――」
 最後にひとつ大きく息を吐き、もう一度「すまない」と言ってから、リキエルはポツポ
ツと、自分の元いた場所とこの場所との差異、この場所に来るまでの経緯について語り始
めた。

◆ ◆ ◆

「つまり、月がひとつで貴族もメイジもいない。あんたはそんな場所から来た?」
「Exactly(そのとおりだ)」
「……遠くから来たっていうのはなんとなくわかるけど、さすがに信じられないわ」
「オレだって同じだ。信じられるか、こんなファンタジックでメルヘンなことが」
 ベッドに座り、リキエルの話に耳を傾けていたルイズだったが、その内容は彼女の価値
観でいえば突飛すぎるもの、非現実的すぎるものだった。田舎者の無知な平民と考えてい
たが、自らの使い魔となったその平民は、ひょっとすると予想外に厄介な存在なのかも知
れない。
先ほどのリキエルの取り乱しようから、少なくとも、彼のいた場所とトリステインには、
その生活様式から常識に至るまでさまざまな差異があることはわかっていたが、その場所
が異世界ともなると、話の段階が変わってくる。
 ――もしかしたら……。
担がれているのかも知れない。あるいは、リキエルの精神が異常をきたしているとも考
えられた。先ほどのリキエルの様子を見たあとでは、そんな可能性もないとは言い切れな
い。むしろそう考えた方が、より現実的とさえ思えルイズには思えた。
 しかし、相変わらず片方のまぶたが下がったままで顔色もよくないとはいえ、今のリキ
エルの受け答えは健常者のそれだった。困惑しているようではあるが、混乱もしていなけ
れば、特別おかしなところも見受けられない。
担がれるにしても、そんなことをする理由は初対面のリキエルには無く、第一あの苦し
みようが演技ならば、トリステイン領内にある劇団のほとんどはお遊戯会もいいところだ。
――って、お芝居を見たことはなかったわ。
答えも出ないまま思考が逸れる。思考が散漫になってきているらしかった。
結局のところ、リキエルの言うことを信用できるかといえば、やはりその内容が非現実
的すぎるのである。
もし本当だとしても、どうするべきなのかルイズにはわからない。送り返すべきかもし
れないが、自身が言ったようにその術を知らない。聞いたことすらない。だいたい、話の
内容がどう考えても非現実的すぎる。
596使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:05:30 ID:IO7ZG2fX
 ――アレ?
気づけば、ルイズは堂々巡りの第一歩を踏み出していた。
ここまで考えたあたりで、ルイズは一度考えるのをやめた。リキエルそのものには気の
毒という感情も湧くし、先ほどの様子を目の当たりにした以上、あまり無体な扱いをする
のも気が引ける。それでもやはり平民のためにあれこれと悩むのはなんだか癪だったし、
精神的にも肉体的にもなんだか疲れてしまっていた。
 そんなルイズの悩みの種、一方のリキエルはというと、こちらもあれこれと考えている
最中だ。
 ルイズと話をする過程で、図らずも思考の整理がついたため、驚きこそすれ、先ほどの
ようにパニックを起こすことはなかった。なかったが、それでもこの事態にはついていけ
なかった。ただ漠然と、ここはどうやら異世界らしい、ということが理解できてしまった
だけである。
 輝く鏡に魔法に貴族。おまけに目の前の小娘の言を信じるなら、自分は召喚された使い
魔らしい。普通ならば、新手の悪徳募金収集か? と耳も貸さないだろうが、実際に目の当たりにした諸々の出来事を鑑みれば、そう思うよりなかった。
理解を超える事象には無理やりに理屈をつけず、流されるままそれを受け容れるか、夢
の中だと思う方が楽だ。一種の現実逃避だが、今のリキエルにそのことについて深く思考
する気力はない。なるようになれである。
 そういったこともあってか、リキエルは使い魔をやってもいいような気がしていた。捨
て鉢な気持ちだが、それだけというわけでもない。
 ――コイツに。
 助けられた、とも思うのだ。偶発的なできごとであれ、分離帯に突っ込まずに済んだの
は大きい。やけに高飛車な態度はあまり好かないが、先ほどパニックの発作を起こしたと
きに、自分を気遣ったことから――使い魔に対してはそれが当然なのかもしれないが――
さほど性根の悪い人間でもないらしい。
それに、話を聞いた限りは元の世界に帰る方法は目下のところ不明で、その方法がわか
るまではこの世界で生活することになる。当面は自分は養われる側で、他に選択肢が無い。
そして何よりの理由として、今は疲れているし、いろいろと考えすぎてまたパニックに
陥りたくもなかった。
ハァ……
 黙考を続けていたルイズとリキエルは、ここ数時間のうちに増えた悩みを思い、同時に
心の中で嘆息した。


「そういえば、あんたどうして片方のまぶたが下がってるの?」
「……ああ、まあ、気になるよなァ〜」
597使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:07:01 ID:IO7ZG2fX
 ひと段落ついたところでルイズは、抱いていた疑問を投げかけた。
ルイズにしてみれば単純に疑問を口にしただけなのだが、リキエルにとってその質問は、
トラウマのスイッチを入れるキーワードである。それなりに安定していたリキエルが、み
るみるうちに沈む。
「最初は16の頃からだ……学年末の試験の会場だったよ。両方のよォー、まぶたがストー
ンと急に、俺の意志に関係なく落ちてきちまってよォー」
 語りながら、リキエルの顔は少しづつ青ざめていった。額には早くも玉の汗が浮かび、
呼吸も荒くなってきている。
「はッ! もしかしてやな予感。まま、まさか、また!? もういいわ。は、話したくないならもういいから!」
 リキエルの様子に気づき、また先ほどのようにパニックを起こされてはたまらないと、
ルイズは叫ぶようにして、あわてて彼の話を遮った。
「ハァ――、ハァ――」
リキエルは額に掌をあて、汗をぬぐいながら深く息をする。
未然にリキエルのパニックを阻止し、ルイズも安堵して冷や汗をぬぐう。やはり厄介な
平民を使い魔にした、と思った。
――使い魔といえば。
リキエルの呼吸が整ったころ、ルイズは使い魔の仕事についての話が途中だったことを
思い出した。納得がいこうがいくまいが、この平民に使い魔をさせるしかなかった。なら
ば、その役割について教えておかなければならない。
そう思い、ルイズは口を開いた。
「で、改めて使い魔の仕事につい――」
「ちょっとルイズ、あなたさっきからぎゃーぎゃーうるさいわよ。隣付き合いはデリカシ
ーを大切にしなくちゃあね。それにお子様はもうそろそろ寝るお時間じゃなぁい?」
と、そのとき唐突に部屋の扉が開き、ルイズよりいくつか年上と思しき女生徒が無遠慮
に踏み入ってきた。ボリュームのある赤い髪と、情熱そのものを閉じ込めたような紅い瞳
が褐色の肌に良く映える、ルイズとは違う種類の美人だ。ルイズが顔美人ならば、こちら
は色気美人といった具合だろうか。プロポーションに至っては完全に対極である。
「だ、誰の体が、なんですって……? 誰の体型がお、おおお子様みたいですってええ!? 確かに聞いたわ! じゃなくてツェルプストー! なに勝手に入ってきてるのよ! 学院
内で『アンロック』を使うのは禁止のはずでしょうが!」
「ご挨拶ね、あなたが心配だから見に来てあげたのよ? どうやら平民を使い魔にしたら
しいじゃないの。落ち込んでるんじゃあないかってね」
「なっ! あん、た……い、いけ、いけしゃあしゃあぁ……ッ」
ルイズはいろいろと言いたそうだが、言いたいことがまとまらないのか、口元をわなわ
なと震わせているだけで声がでていない。頭に血が上ると、舌が回らなくなる性質らしい。
そんなルイズを捨て置いて、グンバツな女生徒はリキエルに視線を向けた。
598使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:08:31 ID:IO7ZG2fX
「あなたお名前は? 私はキュルケっていうの。二つ名は『微熱』」
「オレはリキエル」
 リキエルは唐突に入ってくるなりルイズと口論――食って掛かっていたのは主にルイズ
だったが――を始めた女に面食らっていたが、どうやら隣人であることがわかると、こう
いったこともさして珍しくはないのだろうと判断した。
キュルケはリキエルを値踏みするように上から下まで観察した後、ルイズに視線を戻し、
挑発するような笑みを顔に浮かべた。
「本当に平民なのね。因みに私はサラマンダーだったわ、正真正銘、火竜山脈のね。好事
家に見せたらまず値段なんてつかないでしょうね〜」
「ぐ、だからなんだっていうのよ! そんなこと言いに来たんなら、さっさと自分の部屋
に帰りなさいよ!」
 サラマンダーを召喚したという言葉にルイズは一瞬たじろいだが、すぐに持ち直してキ
ュルケ部屋から追い出そうとする。キュルケも長居するつもりはなかったらしく、「乱暴ね」
などと言いながらも出て行くそぶりを見せた。
「そういえば、キスのお味はどうだったのかしら? まさかあれが初めてじゃあないわよ
ね? まあどうでもいいけど。じゃ、おやすみなさいね〜」
が、ただで出て行くつもりもなかったようで、非常に強力且つ、主にリキエルにとって
危険な爆弾を放り投げていった。その爆弾は、理性によってなんとか抑えつけられていた
ルイズの怒りを、ものの見事に爆破した。
「ぬう〜〜〜っ! ツェル、プス、トオオオォォオオオオ!」
 言葉を発するもままならず、ルイズは獅子の咆哮もかくやそう叫ぶと、乱暴に服を脱ぎ
だし、これまた乱暴にネグリジェへと着替えだした。
 なぜ脱ぎだす? だとか、繊維を傷めるんじゃあないのか? だとかをリキエルが考え
ている間に、ルイズは着替えを終え、呆けた顔のリキエルに小山ほどの量の何かを投げつ
けた。
「もうっ! 寝る! 疲れた! 洗濯!」
 色々と抜け落ちた言葉で叫ぶと、それを最後にルイズは本当に寝てしまった。
 使い魔の役割を話すことはおろか、リキエルを気遣うような思考も、とうの昔に白河の底である。いや、多少なりともそんな思考があったからこそ、そして疲労が溜まってい
たために、リキエルは怒鳴られる程度で済んだのかもしれなかった。
これが普段のルイズであれば、リキエルが無事に次の朝を迎えることはなかっただろう。とりあえず鞭で十六連打された後、延髄蹴りに部屋から蹴り出されていたはずだ。
 なぜルイズがそこまで激昂するのか? その理由は使い魔とメイジとの契約の儀、『コン
トラクト・サーヴァント』の方法にある。
 その方法というのが――勿論リキエルの与り知るところではないが――口付け、有態に
いえばキスなのである。
599使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:10:01 ID:IO7ZG2fX
呼び出した使い魔が人間で平民で、さらにその平民にキスしなければならない。ルイズ
は初めそれに明確な拒絶を示し、再度の召喚を猛烈に望んだが許されず、結局リキエルに
キスする破目になったのだ。
しかも実をいえば、それはルイズのファーストキスだったのである。うら若き乙女の初
接吻ともなればその重要性は語るに及ばず、それを見ず知らずの馬の骨、もとい牛の皮に
捧げざるを得なかったルイズの苦悩は、推して量って知れずとも知るべしである。
そして、あくまで使い魔との契約のためなのだから、あれはキスのうちにカウントしな
いはず、と半ば以上無理やりに納得し、忘却の向こう側へ押し込もうとしていたところに
キュルケの爆弾である。たとえルイズでなくとも、堪忍袋の尾が切れることこれ必定也、
である。


「気をつけた方がいいかもな、これは」
 知らず知らずのうちに命拾いしたリキエルは、それでも本能的に危険を察知していたよ
うで、ルイズはキュルケを敵視しているらしいということを心に刻んだ。ついでに、身体
的なコンプレックスがあるらしいことも、備考として刻む。
 それから渋い顔をして、先ほど投げつけられたものを拾い上げた。衣服の類と……下着
にしか見えない白い布。これを洗えということらしい。どうやら、身の回りの世話や雑務
全般を押し付けられたようだった。
「……まあいいか」
 嘆息しながらも、リキエルは自分を納得させる。
 高飛車で高圧的な態度は、生きた封建という制度と年相応のわがままで話が付く。洗濯
は仕事と思えばどうということもない。何もできないと言ったのは自分だし、本当のこと
だ。これくらいのことは当然と思えばいい。恩云々を置いておくにしても、上下しか分か
らないこの世界では、薄く寝息をたてるこの少女に頼るしか、他にないのである。
「男にこういうのを洗わせるってのはどうかと思うがな。貴族ってのはそういう奴らって
わけか?」
 ルイズに言ったものか、そう皮肉気につぶやいたリキエルは、とりあえず寝床を探し始
めた。今から洗濯をするほどの気力は残っていない。今日は寝て、明日の朝早く起きして
やればいいだろうと、リキエルは思ったのだが、
「あ……なんだ? 毛布の一枚もないぞッ! 床で、しかも布切れ一枚かぶらずに寝ろっ
てことかよッ! これも貴族と平民の差ってやつなのか!?」
 使い魔の仕事もやぶさかではないと思っていたが、それもやはり間違いだったかと、リ
キエルは身の不遇を嘆きながらも床に寝転がった。そうすると、まだ少し脳が興奮してい
るのか、取り留めのない考えが浮かんでは消えていく。
(冷たい床だな。石だからだろうな……お、体温で温まってきたなァ。冷てェ! 寝返り
はまずかったか。自転車のサドルとかも、こんな感じで冷たいよなァ。朝方とかよォー。
そういや、バイクはどうなったんだっけか。ま……いいか。乗っても、また事故るだけ、
だろうさ。床は冷たいが、寒くは、ないな。秋か、春か、この世界にも、季節とか暦って
のは……あるんだろう、なァ)
 ふと、目じりのあたりに痺れるような感じがしたので、リキエルはまぶたを少し強く閉
じた。すると、強い虚脱感が体を襲う。興奮の裏に潜んでいた抗いようもない睡魔が、リ
キエルの腕を掴み、引き込もうとしているらしかった。
 リキエルはまた、漫然と身を任せた。
600使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/24(月) 20:12:02 ID:IO7ZG2fX
完成だッ! SSの投下がッ!
601名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 20:18:04 ID:2Xt589l6
乙!そして、GJ!

早速死に掛けるリキエル。幸先悪いなあww
これから先、見ず知らずの土地で受ける理不尽と対面して生きていけるのか?
602名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 21:22:31 ID:w8JjByNK
乙!GJ!
覚醒さえすれば凶悪な能力のひとつ何だけどなあ
これから成長する使い魔ってのも珍しいな、先の展開が楽しみだ
603名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 21:25:46 ID:7dSrky+f
GJ!
リキエルのパニックになるシーンが上手くかけてていいなあ。
未だスタンドを持たぬリキエルがこれからどうなるのか、期待っ!!
604名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 22:41:53 ID:J3QIj6D/
GJ!
このルイズは結構良い奴だな、これからどうなるのかwktkするぜ。

「銃は杖よりも強し にの投下」ミツケタゾ!!
605名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 23:28:46 ID:mN+J7BvT
投下乙そしてGJ!

牛の皮で盛大に噴いたw
さて、これからこの二人はどうなっていくのか楽しみだ
ところで、自分六部の記憶が曖昧なんだが
この時点じゃ、まだリキエルってスタンド能力目覚めてないよね?
606名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 23:36:14 ID:vPXwk/AB
目覚めるのは徐倫たちと戦う直前だから
プッチとも知り合っていない今じゃスタンドのスの字も知らない
607名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 23:52:49 ID:FW4cM7LH
神父の言葉で覚醒しながらも、
予想・思い道理、にならないとパニックをおこす彼が大好きだ。GJ
608名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/24(月) 23:55:20 ID:FlCQsOym
GJ!
牛の皮ってライダースーツの事かwwwww

>>606
スタンドのスの字も知らないけど、スタンド自体は発現してたはずだよ。
ただ自覚してないだけで。
609名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 00:13:41 ID:4HDQqc9w
スタンドがまだ悪影響しかない状態ってことだろ
ホリィみたいな

GJ
610名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 08:32:56 ID:3JClXpZF
まとめサイトの「一章二節 〜ゼロは使い魔と相対す〜 」のタイトルがわからん。
611名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 08:51:05 ID:c3ONaLXb
>>610
更新ページ見てるんでしょ?
だったら、一緒に目次ページが更新されてるでしょ?
長編の場合、単独で更新されることなんて無いんだから。
それで判断できるでしょ?

wikiの内容に文句がある場合は、避難所にお逝きなさい。

まとめwiki総合スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9292/1184390034/l100

まぁ、これだけ作品量がある以上、もはや表記を統一するなんて無理だろうけどな!
612名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 08:54:54 ID:3JClXpZF
>>611
なるほど。サンクス。
613名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 10:02:17 ID:c3ONaLXb
>>612
いえ、きつい書き方をしてしまって申し訳ない。

しかしながら、この1年で長編に登録された作品数が120作超、話数では1800話超。
その内3分の1の600話強がサブタイトルを登録名にしてますからねぇ・・・

いまさらサブタイでは探しにくいのどーのと言うのは遅いでしょ。
614名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 10:24:29 ID:fWmVOk8H
探しにくいんだよって文句言ってるんじゃなくて
読みたいけどタイトルが分からん教えてって意味じゃないのか
615名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 10:30:00 ID:c3ONaLXb
>>614

あー、前(>>472)で文句付けてた人がいたんで、その類の人かと思ったんです。
ご不快にさせてしまい申し訳ないです。

616名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 11:14:58 ID:FQnANGqX
どっちにせよ、わざわざここに書き込むようなことじゃ無いがね。
617名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 11:28:55 ID:c3ONaLXb
ですね。ではこの話は終わりと言うことで別の話題を。

先日このスレは1周年を迎えましたが。
初めて作品が投下されたのは3/26です。

と言うわけで、明日は作品投下開始一周年ですw

第一号作品「砕けない使い魔」の作者氏、及び他の作者の方々に感謝を。
618名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 19:31:20 ID:MatTaaSX
あれからもう一年か・・・
このスレが人大杉で見れないから
ギコナビ入れたのもいい思い出だな
619名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 21:51:45 ID:eNSR7VtB
あの時は毎日がお祭りだったもんな・・・。
承太郎の人なんて毎日投下するし一日以下で一スレ消費するから
目が離せなかったのはいい思い出
620名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:04:27 ID:RbBblAcK
1000取りの為に寝ないで張り付いていたのも良い思い出だ


次の日がヤバかったが
621名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:23:36 ID:MatTaaSX
夏休みの時期に雑談だけで500レス突破した
アレも今では笑い話だな

ジョースター卿は毎日のように出現してたww
622名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:28:08 ID:qMcH0qXy
すまないが誰か前スレのdatくれないか?
623名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:31:34 ID:eNSR7VtB
そういやタバ茶とかルイ茶とかギー酒とかも流行ってたよな・・・。
時間を巻き戻せるならもう一度だけでいいからあの勢いみてぇ〜・・・・。
624名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:36:56 ID:YMa+yTTS
座談会とかな
懐かしきあの日々
625名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 22:50:48 ID:Ipsbs2L2
連載中の作品と投下が存在する限り、きっとあの熱い日々は戻ってくると俺は信じてる。
俺はカキ氷でも食って気長に待つとするさ…
626名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/25(火) 23:42:45 ID:6IHTx8+Z
ベイダースレとこのスレと姉妹スレのトリプル実況状態は黄金期だったな
懐古厨と呼ばれてもいいからもう一回味わいてえぜ
627名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 00:08:50 ID:05Oi8v7C
そういえば
初期はギーシュがどうボコボコにされるか皆で楽しみにしてたな…www
628名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 00:09:27 ID:/YkO1zn+
逆に勢いがありすぎる頃は入りづらかったな。
緩和されて来てからまとめ見てスレも覗くようになった。
629名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 00:21:05 ID:qbmUGE3l
自分は姉妹スレから流れてきてラウンジクラシックの途中から読み出した
気付けばゼロ魔は外伝含めて全巻、ジョジョは
3部の数巻、4部、6部以外を揃えた
過去ログは既に3回通りは読み返してるw
630名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 00:28:23 ID:58lbswan
       、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
     /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~  何やら私が呼ばれた気がするので来てみた
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}    そして逆に考えるんだ
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}   /ノ
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´     「こんなマターリとした空気も数ヵ月後には懐かしくなる」と
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 ) |
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ        考えるんだ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
            \  `'ー-、  // /:.:.}       `'ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
              ′ / ! ヽ
631名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 01:17:49 ID:sY0+eta2
>>630
相変わらず卿は最高だなwwww
632名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 01:20:12 ID:R1VGSVbm
ベイダー懐かしいな。
あれが終わったときは少し鬱になった。
633名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 02:04:56 ID:nxUGwc0k
>>627
だな…特に、ゼロ魔系クロスで初めてギーシュ決闘にて死亡というのをやっちまったしな……
ふふ…よくここまで来たものだ…かつて感想文を金払って書いてもらっていたというのに、わしは今ここまでやっておるのだ…(デラーズ閣下風に

星屑が…星屑が進まないィーーー!ACFAなんてやってる場合かっつーの…
634名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 02:22:28 ID:xuyE3cuK
俺、いまでも鉄の人やアヌビスの人を待ってるんだ。
なかなか進まない自前のSSを書きながら。
635名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 02:34:21 ID:Max+JBPG
ベイダー好きだったなあ。最初のスレをリアルタイムで発見した幸運
このスレのすごい加速に集中してたらまだ読んでないのにベイダーが落ちてて、泣いたこともあった
636名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 02:34:52 ID:KCI7eTdH
ACfA面白いよな…
もうルイズにホワイトグリント召喚してもらうしかない…
637名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 02:54:30 ID:nxUGwc0k
>>636
あの白グリのミサイルマジ嫌い
オンで浮くだけで回避もロクにしないミサイル垂れ流してる粗製リンクズの何と多い事か
レールガン良いよレールガン
他の暗チ…待ってます…電話…くだ…さ…い…
638名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 12:55:03 ID:GLWGoPyP
ACfAとアサシングリードどっちを買うか悩んでアサシングリード買ったオレが通りますよ。
639名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 13:34:32 ID:2MCKhb8o
            _. -=ニ::_Z ̄ニ=-  .._
        / (:_: ;r'": :/:: ̄:7''ヽ:,r': ̄`ヽ、
        /: : : : : :ヽ、:_(_: : : (:: : : :\,r=‐':"⌒ヽ._
      / : : : : : ; ': : : : : : ̄::ヽ、__/: : : : : l: : :/ミノ
     ' : : : : : / : : : : : : :__:ヽ_: /:: :l: :l: : : : l : ゙‐'ヽ
     l: : : : : :;' : : : : : : (((//゙ハ、 : l: :l : : : l: : : l : ',
.    l: : : : : :l: : : : : : : : : : : :`Vノ : l: :l: : : ,' : : ;': l:ll
    l: : : : : :l: : : : : : : : : : : l: :/:l :l: :l: :l:: :/ /::/: :;リ|   >>638
    l: : : : : :l : : : : : : : : : : l: :l::ノ: }: :} l / /::/レj:/::|   アサシン「ク」リードか?
.     l: : : : : l: : : : : : : : : : :l: :|/_;イ_;イ_;リ、// .ノ/:|   あと強制はしないがsageるんだな
     '; : : : : l: : : : : : : : : ::l: :|ニニ ‐--ミ`' } ,ィチj゙ :|
    /´ヽ: : : :l; : : : : : : : : :l: :|z't'ツ"_>`` '" {^~ |: :|
  / ¶′\: :ll : : : : : : : : l: :| `~¨´ (::"′   ',ノl: :j   
,r‐{   , \ll : : : : : : : :l: :| :.           ∨ノ:|
  ! ¶′',  r、\: : : : :::::l: :| :.      .._ /´): :l
 ¶′   \ ヾ>、\: : : ll: :|  :.       __-了:/::;'
エエエュ┬r 、\ `ヾ>、\:ll: :|   :   ‐.._'´¨´ノ:/::/
―‐ - 、 ̄`<〉、 ヽ、._`^‐-\ト 、 :      ̄「V/
 ¶′   \ `<〉、 \` ー==┬''^ヽ、 ...__ ノ
   ¶′  \ `〈>、 ヽ`:r'"||  ,タ ¶ }
¶′    ¶′ヽ  `〈>、ヽ i || ,タ  /
640名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 13:42:07 ID:yVqtDS4F
>>634
わ、私も待ってるぜ>アヌビス

でも最近はACfAの方が…ミサイルなんて「母ちゃん」や「ステゴロ」相手には無力なんだよ〜
男は黙って「とっつき」か「斬る」なんだよ〜
641名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 14:20:48 ID:t3o+O6pb
昔のネタほじくり返すけど
「ピチューン」
でいいんじゃない?←消滅の擬音
642名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 15:47:11 ID:Rr5HgYGO
>>641
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お前かwwww
643使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:51:04 ID:2F/owHzo
>>617
こんな書き込みを見た日にゃあ
その「投下」をしねえわけにはいかねえだろう…!
644使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:52:34 ID:2F/owHzo
一章三節 〜使い魔はゼロを見る〜

 目を覚ましたリキエルは、まず窓の外を見やった。
日は出ているようだが、まだ薄暗い。早起きには成功したらしい。成功といっても、意
識してそれができるほどリキエルは器用な人間ではない。見知らぬ場所で寝たことで、単
純に眠りが浅かっただけである。硬い床に、何も被らずに寝転がっていたというのもその
一因かもしれなかった。
 身を起こしてみると、体の節々が不満を言うようにギシギシと痛んだ。それに少し肌寒
い。目が覚めた一番の要因はこれだろうと、リキエルは思った。
そんな肌寒さや、寝起き特有の奇妙な現実感が、今おかれている状況が夢の中ではない
ことを改めて実感させた。わかりきっていたこととはいえ、リキエルは、自分が夢を見て
いるのではないか? という考えを捨て切れていなかった。その可能性がどうやら完全に
消えたことで、リキエルは少しだけ肩を落とした。
「……とりあえず仕事だな」
 多少なりとも憂鬱な気分を払拭しようと、リキエルは今自分がやるべきこと、できるこ
とに意識を向けた。好き好んでやるわけではないが、他になにをするわけでもない身の上
である。
 リキエルは、洗濯を命じられた衣類と下着、ついでに昨晩自分の汗をふき取ったタオル
を拾い上げ、ルイズを起こさぬよう、なるだけ物音を立てずに、そろりと部屋から抜け出
した。

◆ ◆ ◆

 好調とはほど遠いものだったが、寝覚めは悪くなく、寝ぼけていたわけでもないとリキ
エルは思っていたが、実際はそうでもなかったらしく、肝心なことを忘れていた。どこで
洗濯をすればいいのかわからないのだ。
この世界には魔法があるためか、科学技術の発展は遅れているようだった。というより
も必要とされていないらしく、所謂、文明の利器と呼ばれるものが存在していない。無論、
洗濯機などがあろうはずもなかった。昨晩のルイズとの話でそのあたりの事情はわかって
いたのだが、だからどうこうということを考えるのは今日の自分に任せ、昨晩のリキエル
はそのまま寝てしまったのである。
そういうわけで、手洗いをするしかないと気づいたリキエルは、適当に当たりをつけて
水汲み場を探し始めたのだが、
「広すぎるだろうがッ! 自然公園並か、それよりもっとかもしれない! 本当だな、造
形美と機能美が両立しないってのはよォ〜」
645使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:54:04 ID:2F/owHzo
 いかんせん敷地が広すぎた。このトリステイン魔法学院、伊達に城が建っていたり塔が
点々と屹立しているわけではなく、全寮制ということもあってか、広大な敷地面積を誇る。
 外に出てみたはいいものの、勝手のわからないリキエルは水汲み場を見つけるのに難儀
し、小一時間ほど駆けずり回った挙句、未だに見つけられていない。すでに日は昇って、
召喚の儀式があった草原も、その光をうけて黄金色に輝いている。早くに目が覚めた意味
がまるでなかった。
 リキエルは、どうしたものかと頭を抱えた。そんな迷える子羊然としたリキエルを、天
は憐れと思ったか、ちょっとした手助けをするつもりになったようである。
「あの、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう方では?」
 後ろからかけられた言葉に、リキエルは首を回して振り返り、開いている片目を少し見
開いた。
メイド服の少女がいた。ハウスキーパーの類ならば、リキエルのいた世界でもそう珍し
くはないが、その少女は、見たところ給仕や女中といった立場の仕事をしているように見
受けられた。本職というと語弊があるが、そういったメイドには、そうそうお目にかかれ
るものではない。
珍しい、とリキエルは思ったがしかし、当然とも思えた。貴族制の生きているこの世界、
使用人がいてもなんら不思議はないだろう。
それよりも、見も知らない少女が自分について知っていることの方が、リキエルには気
になった。
「知ってるのか? オレを」
「ええ。やっぱりあなたのことだったのですか。奇妙な服装の、隻眼の平民を召喚してし
まったって、噂になってますわ」
 なるほど、やはり人間を使い魔にすることは、半日で噂になる程度には珍しいことのよ
うだった。
 ――ただ。
隻眼というのは格好がつき過ぎるとも、リキエルは思った。
「私も平民で、貴族の方々をお世話するためにここでご奉公させていただいている、シエ
スタっていいます」
 はきはきとした態度から、目の前の少女の気立てがよいことがわかる。歳はルイズと大
きな差はないだろうに、内面はえらい違いである。根底にある人間性の違いか、それとも
貴族と平民との差だろうか。
初対面の人間にも物怖じしないシエスタに、リキエルは道を聞くことにした。
「オレはリキエル。……ところで、会って早々悪いんだがちょっと聞いていいか」
「はい、なんでしょう?」
 きょとん、とした顔でシエスタは答える。
「水汲み場か、井戸みたいなモノはないか?」
646使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:55:34 ID:2F/owHzo
「はい、それならこちらです。ついてきてください」
 水汲み場は、寮からほど近い場所にあった。
「…………」


「レースのついたものは、無理に力を入れるとほつれてしまうので、指の先で少しづつ、
擦るようにして洗うんです。そう、そんな感じです」
 桶と洗濯板を借り受けて、シエスタの指示をうけながら、リキエルは一枚一枚丁寧に洗
濯物を片付けていく。
貴族が着るものであるからか、それともルイズの趣味なのか、どれも妙に凝った作りで、
衣服の手洗いなどしたことがないリキエルには、どう洗えばいいのかわからなかった。そ
こでシエスタに教示を願ったのだ。
 それならば、と自分が洗うことを申し出たシエスタだったが、リキエルは自分の仕事だ
からと、感謝しながらも申し出を断った。ただ、生理的に洗いづらい下着類については言
葉に甘えさせてもらった。
 小山ほどもあった洗濯物だが、意外なほど早くその殆どが洗い終わった。汚れのないも
のも含まれていたからだ。激昂したルイズは、どうやら綺麗なものまでまとめて投げつけ
たらしかった。
「悪いな。オレの勝手につき合わせちまって」
あとは干すだけとなったころ、リキエルはシエスタに向かって言った。
「いえ、いいんですよ。今は私、仕事もありませんし」
 シエスタはこともなげに、謝るリキエルに笑いかける。それから、ほんの少し顔を曇ら
せてリキエルに訊ねた。
「でも、リキエルさんこそ、大変じゃないですか? 突然使い魔になってしまって。貴族
の方に仕えることになってしまって。洗濯も、本来は貴族の生徒さんたちが各自でやるも
のなんですよ」
 それは初耳だ、とリキエルは思い、それも含めて考え、首を振った。
「偶然とはいえ、助けられたからなァ。恩返しだと思うことにしたんだ。それにやること
もないんだよ、こんな見知らぬ土地じゃあな」
 ついでに、逃げ出して自活しようというような気概もリキエルにはない。
「助けられた、ですか?」
「ああ。オレが……」
 首を傾げるシエスタに、リキエルは説明しようとして、やめた。説明したところで信じ
られるような話でもないだろうし、自分でもなぜこうなったのか理解できていないのだか
ら、うまく話せそうにもなかった。
「いや、なんでもない。そういえばシエスタ、朝食は摂ったのか」
 話題を変えるために、多少強引ながらリキエルはそう聞いた。何となく気にかかってい
たことでもあったので、ついでである。
647使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:57:04 ID:2F/owHzo
 シエスタはまた首を傾げたが、あくまでお喋りの一環としての疑問だったため、すぐに
そんなことは忘れたらしく、リキエルの問いに答えた。
「私達は、朝食を済ませてから仕事に取り掛かるんです。それで、お掃除をしたりお洗濯
をしたり、それから同室の子が多分、今なんかは食堂で――」
 そこでシエスタは言葉を区切った。そしてリキエルに向き直る。心なしか、案じるよう
な色を含んだ顔になっている。
「リキエルさん。リキエルさんは、お食事を?」
「いや、まだだ」
 考えてみれば、丸一日近く何も胃に収めていない。指摘されるまで気づかなかったが、
ひどい空腹を感じる。そう付け加えると、シエスタは目を丸くして、顔を少し青くする。
と次の瞬間には、眉尻をこれでもかというくらいに下げ、尚且つまた血相を変えるという
器用なことまでした。
「大変。リキエルさん急いでください! まだ、走れば間に合うかもしれません! 洗濯
物は私が干しておきますから!」
「お、おい、なにがだ。どこへ行けっていうんだ」
 シエスタの剣幕にリキエルはたじろぐ。ころころと変わる表情から必死さは伝わってく
るのだが、なにやら焦っているのがわかるだけで、おそらく肝心な部分が抜けている。シ
エスタもそれに気づき、たどたどしくも説明する。
「使い魔は、貴族の授業についてかなきゃあならないんです。もうすぐその時間が来ちゃ
うんです! だから急がないと!」
 やはり、まだあまり要領を得ない説明だったが、その説明を反芻したリキエルは、漠然
とシエスタの言わんとしているところを理解した。
「つまりこういうことか? さっさと食事にありつかないとオレは食いっぱぐれる」
「そうです!」
「なにィィイイイイ」
 確かに一大事である。忘れていた空腹感が思い出されたためか、リキエルにはこれ以上
食事を抜くことは、耐え切れないことのように思えた。
リキエルはシエスタに食堂の場所を聞き出すと、礼もそこそこに、あとを任せて脱兎の
如く駆け出した。
「……あ」
リキエルの姿が見えなくなった頃、平民は食堂に入れないということをシエスタは思い
出し、また顔を青くした。

◆ ◆ ◆

 敷地内で一番高い、真ん中の本塔の中。アルヴィーズの食堂。
648使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 15:58:37 ID:2F/owHzo
 アルヴィーズとやらは何か知れないが、目印がハッキリとしているため、リキエルは迷
うことなくそこを目指して、ただひたすらに走る。三大欲求の一つに忠実になった身体は、
その能力が飛躍的に高まっているようだった。
 と、いきたいところだが、急に走り出して空っぽの胃をひっくり返し、鈍痛に顔をしか
めているのがリキエルの現状である。
 形だけは必死に走り、ようやく本塔の入り口を視界にいれたリキエルは、ハーフマラソ
ンを初めて完走するランナーのような達成感と安堵を感じた。
 しかし、ゴールを見つけたからといって安堵するのはいささか早計といえる。マラソン
でも、安堵した途端に筋肉が弛緩し引きつり、痙攣して立てなくなって再起不能という事
態がままある。要するに、リキエルは間に合わなかった。
 リキエルは見覚えのある、桃色がかったブロンドの少女が食堂から現れるのを認めた。
少女は小さめの口を大きく開き、よく通る声で怒鳴った。
「あ、いた! あんたどこほっつき歩いてたのよ! 折角、特別な計らいで中に入れてあ
げようと思ってたのに! これから授業よ! さっさと付いて来なさい!」
「はぁー、はぁー、お……ぇ」
 タッチの差で、リキエルはパンの欠片さえ口にできなかった。人生とは往々にしてそう
いうものであるが、その僅かな差をやりきれないと思うのが人情である。
やりきれなさを抱えながら、リキエルは疲労で重くなった足を引きずるようにして、目
を吊り上げて何事かを叫んでいる主人のもとへ歩いて行った。失意の念が、リキエルの耳
を厚く閉ざしていた。
リキエルは心の中で叫んだ。JESUS! とただ一言。


 しかめ面のルイズと、消沈した面持ちのリキエルが教室に入っていくと、先にいた生徒
達が一斉にくすくすと笑い始めた。
ルイズはそれを無視してずんずんと階段を下り、開いている席に腰を下ろした。
同じようにリキエルが椅子を引くと、ルイズがそれを睨み付ける。
「……なんだ」
「使い魔は座っちゃ駄目。主人をほったらかすような使い魔は特に」
「洗濯をしてたんだ。昨日の夜に渡されたやつをな」
 言われるまま、床にひざ立ちしながらリキエルは抗議する。空腹と、食いっぱぐれたこ
とにより気力が減退しているため、勢いはなきに等しかった。
しかし、ルイズは死体を蹴飛ばすかのように容赦しない。
「仕事が遅すぎるわ。行くなら私を起こしてからにしなさいよね。危うく寝過ごすところ
だったんだから! 着替えも顔洗いも自分でしなくちゃならなかったし」
「それは……すまなかったな」
649使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:00:07 ID:2F/owHzo
 リキエルは、苦虫をすり潰したエキスをコップ一杯分飲んだような顔になった。
仕事が遅いと言われたのは仕方がないことかもしれないが、他の仕事については聞かさ
れてもいないことであり、その内容もおかしい。掃除洗濯などは覚悟していたが、着替え
の手伝いともなると話は別である。いかな貴族とはいえ、会って間もない男にそれをやら
せるとは、このルイズという少女、なかなかに図太い神経をしているらしい。それとも、
平民には男も女もないということだろうか。
 平民というものの扱いに改めて辟易するリキエルだったが、このルイズの様子では、改
善の余地もないだろうと諦めた。
 しかし、実のところはそうでもないのである。
 何かといえばパニックを起こしやすいリキエルを、ルイズは気の毒と思ったか、少なく
とも食事については一応の改善を図っていたのだ。粗末ながらも椅子を用意したり、貴族
のそれとは北極星とナマコくらいの差があるが、ある程度まともな食事を用意させたりと
いったことだ。
 リキエルにとってそれは当然の待遇といえるが、当初は床で食べさせることなども考え
ていたルイズにしてみれば、かなりの譲歩である。ただ、結局どれも無駄に終わってしま
っただけなのだ。
 ルイズの機嫌が悪い最大の原因は、実はこれである。平民のくせに、使い魔のくせに、
ご主人様の温情を突っぱねるとはいい度胸じゃない! ははは恥かかせるなんて、やって
くれるじゃない! というわけらしい。
「次からは気をつけること。じゃないと朝食抜きだから」
 そう宣言し、ルイズは視線を前に移した。
 憮然とした顔でため息をつき、リキエルも前を向く。丁度そのとき、扉が開き、教師と
思しき中年の女性が入ってきたところだった。全体的にふくよかな容姿と優しげな微笑み
が、その人柄を表しているようだった。
「春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。この『赤土』のシュヴルーズ、こうやって
新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみですのよ」
 彼女、シュヴルーズは教室を見渡しながら言った。そして、その視線がルイズとリキエ
ルのところで留まり、少し驚いたような顔になる。そしてつい、思ったことを口にしてし
まった。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したようですね。ミス・ヴァリエール」
 その言葉で、生徒たちの忍び笑いが爆笑に変わった。爆笑している内の一人が、腹を抱
えながらルイズに向かって言う。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
 肩を震わせながらも耐えていたルイズだったが、『ゼロ』の一言は我慢ならなかったらし
く、その生徒を睨み付けて言い返した。
「違うわ! きちんと召喚したもの! 平民でも成功は成功よ!」
「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」
 いよいよ生徒達の笑いが止まらなくなる。ところどころから、ゼロ、ゼロという単語が
飛び出してくる。
650使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:01:37 ID:2F/owHzo
 ――ゼロのルイズってのは……。
 いったい何なのだろうかと、リキエルは思った。こちらに来た当初にもそれを聞き、昨
晩のキュルケもそれを口にしていた気がする。何度か耳にしたが、その意味はわからない
ままだ。ただ、ルイズの様子を見れば、あまりいい意味ではないことだけはわかる。
 そのルイズは拳を握り締め、そして静かに、怒鳴りたくなる衝動を抑え、それでも溢れ
出る怒りをこめて言った。
「ミミ、ミセス・シュヴルーズ。侮辱、されました。風上のマリコルヌが、わわわ私を、
侮辱したわ」
 それを聞いて先ほどの生徒、マリコルヌが反射的に立ち上がる。ギラギラした光を瞳に
宿らせて、マリコルヌは声を張り上げた。
「風上だ! かぜっぴきじゃあないぞ! オレは風上の――」
「合ってるでしょう?」
「……あれ?」
 シュヴルーズが呆れたように杖を振る。
マリコルヌは、何やら消化不良に悩まされたような顔をしたまま、すとんと席に座らさ
れた。糸の切れた操り人形のようなその姿に、生徒達はまた笑い声を上げた。
「わたくしの発言も思慮に欠けました。しかしミスタ・マリコルヌ、お友達を中傷するよ
うなことは感心しませんよ」
 少し厳しい顔で、シュヴルーズはマリコルヌに言う。そして、あなたたちもですよ、と
いうように、ルイズを笑っていた生徒にも顔を向ける。それにより笑い声は小さなものに
なったが、殆どの生徒はゲラララゲラゲと笑い転げたままだ。
 その中の一人が笑いをこらえ、表面だけは真面目な顔で叫んだ。
「でもミセス・シュヴルーズ! ルイズのゼロは紛れもない事実です!」
 こらえていた分もあってか、先ほどよりさらに大きな笑いが教室を埋め尽くす。
ルイズは、今度はそれらに怒鳴って言い返すこともしなかった。どうやら無視を決め込
んだようである。ただ、右肩と眉が、水揚げされた鰯のようにピクピクと震えているので、
無視し切れてはいないようだった。
 ルイズが言い返さないのを良いことに、生徒達は笑うのをやめようとしない。何がそこ
までおかしいのかわからないリキエルから見れば、ここまで来ると一種異様である。
シュヴルーズが眉根に皺を寄せ、再度杖を振るった。すると、笑い声がぴたりと止んだ。
「一度でいいことを二度言わせる気ですか? あなたたちは、しばらくその格好で授業を受けなさい」
 大口を開けて笑っていた生徒は口の中に赤土が詰め込まれ、くすくす笑いをしていた生
徒は上下の唇に赤土を押しつけられていた。優しげな風貌をしているシュヴルーズも、そ
こはやはり教師である。生徒に舐められるようでは務まるわけもないということだろう。
 授業を始めますと言って、シュヴルーズは机の上に石ころを出現させた。それから改め
て自己紹介をし、講釈に入った。


 授業は静かに進行する。リキエルはシュヴルーズの話を適当に耳に入れつつ、大学の講
義室のような教室を見回してみた。
651使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:03:40 ID:2F/owHzo
おそらく皆使い魔なのだろう、カラスやフクロウなどの無難な生き物から、想像上のも
のだと思っていた生物などが目に入る。尻尾の燃えているデカイ蜥蜴は、昨晩のキュルケ
が言っていたサラマンダーというやつだろうか。中には生物か否かも疑わしいようなもの
もいて、窓の外でも数匹ウロウロしていた。リキエル自身もその中の一体だと考えると、
確かに笑えることかもしれない。
 ――いい迷惑だがな。
それら使い魔達の主人はその殆どが、セメントか粘土のようになった赤土で口を塞がれ
ている。魔法で取り払おうとしてか、杖を振り回している者もいるが、効果はないらしい。
キュルケがそうなっていなかったのは意外だった。
ちなみに、マリコルヌも赤土を免れたらしかった。釈然としない顔のまま黙っていたか
らだろう。
 リキエルは一通りそれらを観察し終え、本格的に授業を聴いてみることにした。この世
界の授業が理解できるとは思わないが、暇つぶしになるかもしれない。そう踏んで耳を傾
けたのだが、これがどうしてなかなか面白い。
魔法における四つの系統、『火』『水』『土』『風』。失われた『虚無』を合わせて五系統。
シュヴルーズは土の系統らしい。自分の系統であるためか、そこは熱く弁舌を振るってい
る。その内容から察するに、土の系統は工業や農業にその力を発揮するようである。先ほ
どのように攻撃的な用途もあるようだが。
聞いているうち、リキエルはなるほどと思った。魔法使い――こちらでいうメイジはそ
れぞれ得意な魔法に違いが出るようで、二つ名というのも、得意な魔法の系統に因んだも
のらしい。『赤土』を名乗るシュヴルーズが土ならば、『微熱』を二つ名に名乗ったキュル
ケは火の系統といったところだろうか。
――ゼロというのも……。
その二つ名というやつだろうか。だとすれば、その意味するところはなんであるのか。
リキエルはまた疑問に思ったが、ルイズ本人に確かめたところで結果は見えているし、
熱心に授業を聴いているルイズに話かけるのも気が引けた。とりあえず、今は授業に集中
することにした。
 今日の授業の本題は『錬金』だった。そのおさらいという話である。
錬金と聞いて、リキエルは以前何かで読んだヨーロッパの錬金術を思い出したが、それ
もあながち間違いではなかったらしい。
652名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 16:03:45 ID:XZwmoplf
支援
653使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:05:10 ID:2F/owHzo
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
 授業よりも爪の手入れに勤しんでいたキュルケが、興奮した声を上げた。リキエルも開
いた口が塞がらない。
初めに用意した石ころに、シュヴルーズが何かを唱えて杖を振ると、それが金属に変わ
ったのである。シュヴルーズの言うところによるとそれは真鍮で、金を錬金出来るのは『ス
クウェア』クラス、彼女は『トライアングル』クラスなのだということだ。
 またよくわからない単語が出てきたが、リキエルは話の流れから、メイジのランクのよ
うなものだろうとあたりをつけた。
なんにしても、魔法はなんでもありなのだ、ということは改めてよくわかった。石ころ
を真鍮にしたり金にしたり、原子も分子もあったものではない。
 次に、シュヴルーズはそれをルイズにやらせようとした。熱心な態度が気に入られたら
しい。目を掛けられたということか。ルイズは少し目を見開き、口を開いて何か言おうと
したが、直ぐにまた結び、席から立ち上がった。
途端に教室中からうめき声と悲鳴があがる。うめき声の理由は、口に張り付いたままの
赤土である。
「ウんんんン――ッ! ガアアアア――アァッ!」「再びかァ――ッ! 昨日みたいのは勘
弁してくれェ!」「逆に考えるんだ。一度きりなんだから昨日よりはマシと考え、られるか
アアアァァ!」「ンゴォおおおおぉ――ッ!!」「成功のないままおわ――」「それはもういい
んだよッ! さっさと隠れろ!」
 悲鳴叫喚どこ吹く風と、ルイズは教卓の前に立つ。生徒達は顔を青くし、我先にと机の
下に隠れだした。残っているのは、未だに放心した面持ちのマリコルヌだけである。
 シュヴルーズとリキエルはそれらを不思議そうに眺め、ルイズは先ほどシュヴルーズが
したように、杖を掲げて何やらブツブツと唱える。ルーンというらしい。そして石ころに
向かって杖を振り下ろした。
「おぉぉお! なにィィイイイ!?」
 その瞬間眩い閃光が、轟音を伴ってリキエルの視界を奪った。


 ……石ころは爆発した。らしい。
654使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:06:40 ID:2F/owHzo
 というのも、石ころの置かれていた教卓は粉々で、それがあった場所の床もえぐれてい
るため、正確には何が爆発したのかもわからないのである。
 教卓の名残や床だったものは四散し、机に食い込み窓を割り、使い魔たちを脅かし、マ
リコルヌに突き刺さっている。爆発の中心近くにいたシュヴルーズは目を回しており、マ
ントはズタボロで蜂も住まないほどに穴だらけだ。本人に目立った傷がないのは幸運だっ
たといえる。
 幸運といえば、ルイズとリキエルも無傷だ。ルイズは制服のところどころが破れている
が、本人はピンピンしている。リキエルは驚きのためか、珍しく両の目を見開き、やはり
驚きのために腰が完全に抜けてしまっているが、小石ひとつ体には受けていない。
「魔法は失敗だッ! 依然変わりなくッ!」「ゼロの魔法=爆発!」「マリコルヌを医務室に
運べェェ! 息をしていないッ!」「魔法が使えないのにこの学院にいるんじゃあねェ――
ッ!」「見せ場のないまま終わり。それがマリコルヌ・グランドプレ」「お前、脇キャラ昇
格狙ってねえ?」
 教室を叫喚と罵声が飛び交う。シュヴルーズが気絶したためか、赤土を引っぺがすこと
ができたらしい。使い魔たちも暴れ回り飛び回り、色々と収拾がつかなくなっている。
しかしそんな中、爆発を起こした張本人は澄ましたもので、制服についた煤を手で払っ
ていた。落とせそうにないことがわかるとすぐに諦めて、コホン、とひとつ咳をしてから、
こうのたまった。
「ちょっと、失敗したみたいね」
…………。
 誰も何も言わない。皆が皆、餌を待つ池の鯉のように口をパクパクとさせたあと、疲れ
たように長い溜息をついた。
「こういうことか」
 角砂糖を一度に三個ほど飲み込んだような顔をしながら、リキエルは小さく呟いた。『ゼ
ロ』の意味を、言葉ではなく心でもなく体で理解していた。
――しかしこういうことなら……。
 直接聞いておいた方がよかったかもしれないと、机にすがりつくようにして立ち上がり
ながらリキエルは思った。パニックを起こす間もないほどに驚いたのは、この世界に来て
早二度目である。腰はまだガタついていており、先ほどまで開いていた両目は、やはりい
つもどおり、片方のまぶたが下がっていた。
 ――洗濯といい、食事といい……。
 前途は多難。そういった予感が、リキエルにはしている。
655使空高 ◆vS6ov90cAI :2008/03/26(水) 16:08:10 ID:2F/owHzo
あーあ、投下しちゃった……!
書き溜めしてたくせに……。
656名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 16:09:30 ID:awTKkQhj
投下乙だッ!
リキエルがいつ目覚めるか、楽しみにしているッ!
657名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 18:05:34 ID:XZwmoplf
乙!
さて、もうすぐ有れば使い魔お披露目でもあるギーシュ戦
どう展開するか楽しみだ
658名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 18:18:31 ID:DfdiXRjy
乙ー。

就職決まって忙しいが、此処だけは見に来ちゃうんだよな・・・・
659名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 21:28:58 ID:upao3SDa
内定オメ。

そのうち、仕事後の安らぎを求めてここへ日参するんだぜ。
660名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 22:37:08 ID:NJhy48DB
20日から入社して忙しいが、此処だけは見に来ちゃうんだよな・・・

ってか何で4/1じゃなく3/20から働いてるんだろう・・・?
教えて仮面のルイズさ〜ん。
661名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 00:05:58 ID:4HpyxXvD
悩みがあるが自分はもう
662名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 02:41:43 ID:24f8mkui
OH! YA?自動翻訳なのに言語を変えた台詞表現が通じるこれ不思議
663セリフ改変ですら中途半端:2008/03/27(木) 06:43:05 ID:VkZe72C4
>こんな書き込みを見た日にゃあ
>その「投下」をしねえわけにはいかねえだろう…!

これでもし!このおれが『職人』だったらもし!
てめーおれだってそうしたぜ!


おれはロム専なんだよ……
小ネタ書こうとしてもまるでまとまらねーんだ…。
664名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 11:07:31 ID:Rc0HLc1F
>小ネタ書こうとしてもまるでまとまらねーんだ…。
気持ちは分かる
自分も魔少年召喚してカトレアさん以外のヴァリエール家の人間にふぐ喰わせるとか
フーケの盗んだ破壊の杖を盗み返して、フーケに罪を擦り付けるとか
ギーシュとの決闘ではったりかまして自滅させるとか
色々と思いつきはするんだが文章にできない
(しかし原作読み返してみたらBTってろくでもない事しかしてねーなw
だから『魔少年』なんだろーけど)

真面目な話、いいネタを思いついたんなら台本形式(キャラ名「台詞」)でもいいんじゃないか
と思うわけだがどうだろう?
665名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 12:31:10 ID:wCKcLyOF
       、--‐冖'⌒ ̄ ̄`ー-、
     /⌒`         三ミヽー-ヘ,_
   __,{ ;;,,             ミミ   i ´Z,
   ゝ   ''〃//,,,      ,,..`ミミ、_ノリ}j; f彡
  _)        〃///, ,;彡'rffッ、ィ彡'ノ从iノ彡
  >';;,,       ノ丿川j !川|;  :.`7ラ公 '>了   なに>いいネタを思いついたんなら台本形式(キャラ名「台詞」)でもいいんじゃないか
 _く彡川f゙ノ'ノノ ノ_ノノノイシノ| }.: '〈八ミ、、;.)
  ヽ.:.:.:.:.:.;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;.;.;)        と思うわけだがどうだろう?
  く .:.:.:.:.:!ハ.Yイ  ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~
   ):.:.:.:.:|.Y }: :!    `二´/' ; |丶ニ  ノノ    逆に考えるんだ
    ) :.: ト、リ: :!ヾ:、   丶 ; | ゙  イ:}
   { .:.: l {: : }  `    ,.__(__,}   /ノ   台本形式でしか書けないのなら
    ヽ !  `'゙!       ,.,,.`三'゙、,_  /´
    ,/´{  ミ l    /゙,:-…-〜、 ) |     そのネタはロクなネタではない、と考えるんだ。
  ,r{   \ ミ  \   `' '≡≡' " ノ
__ノ  ヽ   \  ヽ\    彡  ,イ_
      \   \ ヽ 丶.     ノ!|ヽ`ヽ、
         \   \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__
            \  `'ー-、  // /:.:.}       `'ー、_
          `、\   /⌒ヽ  /!:.:.|
          `、 \ /ヽLf___ハ/  {
666名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 12:32:58 ID:fecxsql1
>>664
それは逆だ。台本形式で、それでも面白いって作品は極々稀だぜ。
台本形式ってのは、面白さの足かせにしかならねえ。
仮に書きあがったとしても、面白くなけりゃ意味がないだろう?
667名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 13:39:44 ID:ke27aeR+
台本形式を容認するのは弊害が多すぎるからお勧めできない
668名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 13:43:52 ID:4kYIZHHS
みんなでよってたかってリレー小説よろしく何か作ろう

と言う話になってプロット検討の段階でなら台本形式もいいだろう

しかし完成形では駄目だ
その場合音頭取った者がきっちり文章として纏め上げる責任を担わなければならない
669名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 14:33:15 ID:hHaZalva
文章が纏まらないのは、いきなり文章を書こうとするからさ。

起承転結の順を追って、どういう流れで物語が進むのかを適当に書き出しとけば、
意外となんとかなる。

表現力とかは気にすることは無いさ!そーゆー技術は後からついてくるから!
670名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 16:00:38 ID:8lLzhe0s
いや、ネタの種類によっては台本形式にせざるを得ないのもあるだろう。

ギーシュ座談会とか名前無しでやられると読む方は勿論、
書く方ですら混乱しかねないぞw
671名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 16:14:40 ID:bnatbquf
ギーシュさん座談会にすれば名前なしでも大丈夫だよ!
672名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 16:33:59 ID:jyXRq/nA
>>671
一人しかいねーのに座談会って何だwww
673名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 16:44:45 ID:8lLzhe0s
ギーシュさんが座談会するんじゃなくて
ギーシュさんについて座談会すればおkw
674名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 17:09:16 ID:Rc0HLc1F
>>673
DIOとか吉良とかボスとか承りがギーシュさんについて座談会するわけですね!

「敢えて言おうギーシュさんを恐れているわけではない。
 奴のカリスマは侮れんということだ。」
「ふふふ、下品ですが彼の手首を見てその……勃起してしまいましたよ。
 僕はノーマルなんだが。」
「俺が求め続けていた絶頂をそのまま実現したまさに帝王だ。」
「こいつら悪党どもをここまで恐れさせ、そして引きつけるギーシュさん……
 いったいどんな漢なんだ?」
675名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 20:16:05 ID:ghnTPK+3
別に台本形式でもいいと思うがな。
某露伴のとか、特に問題なく十分な読み応えがあるけど。
676名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 21:40:04 ID:b/TO0tzw
そんな中自分の作品で使うネタでかっこいいギーシュの死に様のネタが三つも浮かんだ!

俺に・・・どうしろというのだ・・・
677名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 21:45:48 ID:tQLiYGIk
台本形式を認められない場合、どうやってそのキャラが喋っているかを描写する必要がある。
逆に言えば台本形式だとそういう描写を略してしまいがちなために、小説以前の文章になりがちだ。

このスレのSSが高レベルな水準にあるのもそのおかげだと思うよ。

まあ本当にちょっとした小ネタ程度なら台本形式でも問題は無いと思うけど。
678名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 22:44:46 ID:TtoYyruk
>>676
死亡確認されたり第三の助っ人に助けられたりすれば三回死ねるよ!
679名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 22:47:42 ID:DqDU6Ct2
GERなら問題なく全てまっとうできるなw
680名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 22:56:04 ID:b/TO0tzw
>>678-679
なるほどなるほど
そんな俺は対ギーシュ戦で手間取ってる人
681名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 23:04:50 ID:pDx0bFR5
台本と言われても台詞だけの台本から、場面設定まで書き込まれた台本まであるからなんとも言えないなあ。
名前のついた台詞だと、ほんとに短い小ネタぐらいにしか使えない気がする。
という訳で思いついた小ネタ。



ワルド「ルイズ?どうしたんだい、そんなに胸を気にして」
ルイズ「何でもないわよ」
ワルド「気に病むことはない、『貧乳』は女性にとって弱点かもしれないが、視点を変えるだけで大きな価値になる」
ルイズ「ちょっ、ちょっと!何を言い出すのよ」
ワルド「よく聞くんだ、いいかね、貧乳、これはいけない。胸の小ささを貧しいと表現している、愚劣で浅はかな表現だ」
ルイズ「……」
ワルド「だが!これを『つるぺた』と表現することで、未だ開ききらぬ青いつぼみのような、朝露を受けて今開こうとしている朝顔のような!若さとみずみずしさと命に満ちあふれた言葉となる!」
ルイズ「ちょっと」
ワルド「だから君はそのままでいいんだ、いやむしろそのままが良いんだ!」
ルイズ「ちょっと!」
ワルド「ん?ああ、すまない、ちょっと興奮してしまったよ。…ところでその、腕についた刃は何だい」

ルイズ「テファの胸に見とれてたアンタが言って、も説得力無いのよ」
ワルド「な、何?テファ?誰のことだ? ところで、いつも一緒にいるアヌビスはどうした?」
ルイズ「しらを切る気かしら、さよならワルド、あなたのこと忘れないわ」
ワルド「ル、ルイズ、よく見たら背もちょっと伸びたかい …うわっ!」
ルイズ「逃げるな!」
ワルド「おおお落ち着け!話せば判る!」


石仮面デルフ「へえ、アヌビス神ねえ。神を名乗るだけのことはあるみてーだなあ」
アヌビスデルフ「心の中を読まれた奴ら、皆吹っ切れてさー。なかなか退屈しねえぜ」

石仮面ルイズ「待てこの女の敵!」
アヌビスワルド「デルフリンガー!ルイズを止めてくれ!」
石仮面デルフ「無理」
アヌビスデルフ「やれやれ」
682名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/27(木) 23:53:46 ID:W3Q99ONd
風船おっぱいとおっぱい子爵か、ギャグキャラ補正がかかりまくってるな。
683名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 00:26:23 ID:0MTv+eyT
教えてくださいジョースター卿・・・
ギーシュ戦で貴方の息子が言いそうな言葉が自分には少ししか思いつきません・・・
684名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 00:39:35 ID:IJH0JNAz
>>683
それは無理に戦わせようとするからだよ
逆に考えるんだ
ギーシュと戦わせなくってもいいやと考えるんだ
685名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 00:42:28 ID:xP5KWxSC
石仮面ルイズとおっぱい子爵か…
意外とナイスなコンビかもしれんな
おっぱ(ryはギーシュさん信者だから仮面ルイズに平伏す事はないだろうしなw
ドタバタコメディな感じに困り顔で逃げ回るおpp(ryと怒ってるようでどこか嬉しそうな仮面ルイズという絵が一瞬で脳内に妄想された
686名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 01:24:34 ID:tID10l6s
>>683
つ原作台詞改変
ツ勢い
津倒置法でそれっぽく
687名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 01:29:40 ID:wa97t06i
>>683
ギーシュがッ!泣くまでッ!殴るのを止めないッ!
とか。
688名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 04:38:17 ID:K1UqTewP
>>685
クロスオーバー作品のクロスオーバーだと!?
これはなにかいいネタが浮かんできそうだ
689名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 08:27:06 ID:m0NI0M4z
読者がSSを読むにあたって……一番『大切な』事は何だと思うね?
それは『sage』だよ、>>688君!
690名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 09:33:54 ID:sHHl4/Es
〇*|。・+|。.*゚ | ・  | .+o *||。゜+ | o。 |  *。 |
。||+*i。゜ +・  o |* 。 +・ _,,. - ..,_゚ 。|*o ゚ .|+ |. *
 *o |! 。*:゜〇 ・ | o+。,.イ‐-、     丶、。*゚・ ||  ・ |o
 o○+ |  |i 。|〇+ * 。/ i   ',       ハ  ・|*゚ + |。
 |o   |. ・゚+〇。 + *||. 。,'  ヽ.  }、       !i *゚・ +゚ || o
゚ |i *o゚*゚+゚ ||o ○・ +゚ i   F‐、{ \     ,ィ.!*゚・+゚ || *゚
  。*゚.  .l ・+゚ | | o  ゚ 。i/¨ヽ. l: :l :〉>: `:ー一';ル'O。 |* 。|。
+゚ || o.○+゚ || o* ○,..ィi:f:ゝヽ {<ヽ〉: :i : : : :》:} | ・  | .+。
。+〇*・  o | * 。/_;.::l入__、 :l.i: ィt:ッ、シ、 ;.ィfフ*゚・ +゚ || o ○
+・ +。 o |* 。/:::L.ノ:::i: : :.l: : )): : ̄ : : ,:i `/、○||+ 。 |+
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 |\./|  ┬  /\  ──┐| | \     ヽ|  |ヽ  ム ヒ | |
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    >                       <
691名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 09:38:37 ID:wa97t06i
一瞬仗助かとオモタw
692名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 15:39:49 ID:72dlMiaO
なぁにがヘブンだっ!!!
693名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 16:28:46 ID:83HDa6Ou
神父っつーか、8マンに見えたw
694名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 17:44:18 ID:zAkff4Eh
ひかるーうみーひかるおおぞらーひーかーるーだいーちー♪
ゆーこうむげーんのーちーへーいーせーんー♪
はっしっれーエイトマーン♪たーまよーりーもはーやくー♪

と十代なのになぜか知ってる俺
695名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 18:04:23 ID:CakSeyGY
中学の頃デビルマンの歌を学校で友達と歌ったのを思い出した。
696名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 20:13:23 ID:mi53VMj7
最近の中学生はラノベや深夜アニメ、ギターの話しかしないから困るってばっちゃが言ってた
697名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 20:28:38 ID:osyBjfKa
>>696
サンプルが偏っている気がするw
698名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 21:36:44 ID:Y8lXDnOS
>>695
だーれも知らない知られちゃいけーないー
ウチのボスーがだーれーなのーかー♪
699名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 21:39:42 ID:xP5KWxSC
そこで実写版の通称ヘタレマンですよ

唐突に正体バレして「ふぁーーー!」とか叫びだすボス
700名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 23:38:09 ID:XmprUuTW
クロスオーバー作品のクロスオーバーか…
ならばリレー小説でいけそうだな。

たとえば
忘れえぬ未来への遺産
使い魔は静かに暮らしたい
銃は杖よりも強し
ジョルノ+ポルナレフ
のSSでクロスオーバーを考えると
康一がデッドマンの吉良にあって混乱したり
ホルホルがパッショーネの組員を殺して、狙われて怪我したとこを
ジョセフに治療してもらうなどが考えられた。
701名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/28(金) 23:48:13 ID:XCnEfjJw
しかし三次は荒れるからなあ……
面白いものが出来るとも限らないしさ
いや、自分も銃杖エルザと仮面ルイズとか
銃杖地下水と妖刀流舞のアヌビスとか
おっぱいについて熱く語るクルセイダーズとか
妄想してニヤニヤしたりしますがね
702名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 00:09:47 ID:8ISu+GOo
荒れると言うかくそになる確率激高だろ
初めてきた人にまったく分からん品
703名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 00:38:29 ID:NB7isckL
見たい、という気持ちは分からなくも無い。
でも、やっぱりSSの形にはならないし、とっつきにくさもあるだろうね。
書くほうも大変だろうし……。
704名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 00:52:40 ID:+y9DjZPW
そういうのは両作の作者とファンのためのお遊びみたいなもんだから
顔も見たこともないどころか話したこともない同士じゃ大変かもね
705名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 06:46:38 ID:HthibBHX
二次SS同士のクロスか、こういう話の流れを見て思た。
銃は杖よりも強しのホルホースが、DIO様の所の黒タバサの事知ったら激怒するんだろうか?
それとも、DIO様の事恐れて逃げるのだろうか?
706名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 07:26:02 ID:mAOLrpJ7
他の作品を読むことを前提とした作品は、その元の作品の知名度が高くないとなぁ
このスレにいる奴ならコーラを飲むとゲップするくらい確実に読んでる作品が複数あるならそれらを混ぜるのもいいかもしれん
混乱を避けるためにアクの強い作品を使うとベネ
707名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 12:56:59 ID:gm6wq4o7
>>705
元の世界(もしくは別の作品)から承りを連れてくるに一票
ところで人間に取り付いた肉の芽(暴走前)を除去できるスタンドってどんなのがあるだろ?
イルーゾォのマン・イン・ザ・ミラーで肉の芽だけ鏡の世界に送るか
アナスイのダイバー・ダウンを体内に潜行させて排除くらいしか思いつかん俺
リトル・フィートで肉の芽だけ小さくさせるのは可能かな

二次SS同士のクロスなら鏡警備員と銃杖ホルのコンビを見てみたい
鏡警備員の続きまだかなー
708名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 14:32:34 ID:j3C8A9IT
クレイジーな金剛石で肉の芽を直して戻すというのならどっかのSSで見たな
709名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 15:28:20 ID:q/rV01Dc
波紋使いが二人居ればエシディシみたいに排除できるよ!
710名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 17:04:28 ID:ldWwqPi1
二人しかいない作品だから比較的クロスさせるのは簡単かもと思いつつ、
10分から投下しても構いませんねッ!?
711名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 17:07:48 ID:gm6wq4o7
>>710
自分はOKだが、他の人たちはどうだろう?
712ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:11:18 ID:ldWwqPi1
「バカな! こんな事が…!?」

砲火に晒され駆逐されていく先鋒を驚愕の眼差しで見下ろしながらジョンストンは叫んだ。
優勢であったアルビオン軍の先陣が圧倒的な火力によって打ち崩される。
前線に配備された敵の砲は数においてアルビオン軍の地上部隊のそれを上回っている。
物量でも勝っていると確信していた彼等にとっては不意打ち以外の何物でもない。

「いったいどこからあれだけの砲を掻き集めてきたのだ!?」

喚くだけの名ばかりの総司令官の横でボーウッドはふと考える。
確かに国中から集めたのならまだしも、そんな時間など無かった筈だ。
せいぜい集められたとしても国境周辺からが関の山。
そこに思い至った瞬間、彼は結論に行き当たった。

「恐らく沈められた艦に搭載されていた砲を持ってきたのでしょう。
ラ・ロシェールからタルブまでなら馬と人足が十分にあれば事足ります」

自嘲するように口元を歪めながらボーウッドが告げた。
もし奇襲などせず艦隊決戦に持ち込んでいれば、こんな事態は起きなかっただろう。
自分の手で己の首を絞める、正しく自業自得という訳だ。
ボーウッドの発言に込められた嫌みを感じ取り、ジョンストンの顔が醜く引き攣る。

「竜騎士隊を向かわせろ! 上空から砲を破壊するのだ!」

苛立たしげに彼は交戦中の竜騎士隊へと伝令を向かわせる。
本来なら上空からの一方的な艦砲射撃で片はつく。
しかしワルドの指示により艦隊は射程外への待機を余儀なくされていた。
どうせ自分に手柄を立てさせない為の嫌がらせだろうが、
それでも皇帝の勅命であれば従うより他にない。

(…今に見ていろワルド。貴様のような薄汚い裏切り者に居場所なぞない)

元よりワルドの増長を許すつもりなどない。
このトリステイン侵攻が済めば案内役は不要だ。
既にジョンストンの頭の中では彼を始末する算段がついていた。


「……我々相手によく保つ」

アルビオン歴戦の竜騎士達も困惑を隠し切れなかった。
一騎で戦場を駆ける風竜の少女もそうだが、
劣勢を前にしても落ちぬグリフォン隊の士気は目を見張る物がある。
弱者と侮り、ここで手を緩めれば敵の反抗を許すかもしれない。
しかし総司令の命令は絶対だ。
悩んだ末に竜騎士隊一隊だけが砲台へと差し向けられた。
一見して護衛も少なく竜騎士に対抗する術はないだろう。
その間に、上空を制圧すれば戦の趨勢は決するのだ…!
713ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:12:16 ID:ldWwqPi1
(きゅいきゅい! お姉さま、あいつらどっか行っちゃうのね!)

戦列を離れていく竜騎士の姿に、シルフィードの顔に喜色が浮かぶ。
風竜が飛行に長けた種族といえども体力には限界がある。
ましてや常に生命の危機に晒される緊張感の中では消耗も数倍に跳ね上がる。
肩を上下させながら呼吸するシルフィードの上で、
彼女の主も同様に息を切らせていた。

前の戦いではキュルケもいたが今は一人。
防御と攻撃、その両面で瞬く間に削られていく精神力。
残された精神力では身を守るのが精一杯で、
竜騎士を撃墜するなど到底不可能だ。

(きゅい!? 全然減ってないのね!) 

見れば、遠ざかっていくのは竜騎士隊のごく一部。
その場には彼女達を屠るのに十分すぎる戦力が残されていた。
ルーンを通じて伝わってくるタバサの悲惨な現状。
もう逃げるしかない。勝ち目がない戦いから逃げても恥じゃない。
彼女は自分の役目を果たした。
否、それ以上の事をやり遂げたのだ。
しかしシルフィードの背から、か細くも力の篭った主の声が響く。

「………ダメ」

否定の言葉に、きゅいきゅいとシルフィードは抗議の声を上げる。
それが自分を心配するものだと分かっていながらタバサは受け入れない。
ここで退けば竜騎士隊を掻き回す事が出来なくなる。
それに、魔法が使えなくても……。

「………まだ手はある」
(え? さ、さすがお姉さま! 何か秘策があるのね!?)

こくりと頷きながら手の内を握り締める。
ただの重しになりつつある杖を風を切りながら振るう。
正面には自分へと殺到する竜騎士隊。
その手には突撃槍の如く杖が構えられている。
衝突すればたちどころに飲み込まれる殺意の津波。

「それは……」
(それは!?)

その刹那。くるりとシルフィードの巨体が翻された。
そして、敵に背を向けつつ流星のように降下していく。
困惑するシルフィードの耳元でタバサは呟いた。

「……逃げる」
(お姉さまーーーー!!?)

言葉にならないシルフィードの絶叫と共に、有り得ない速度で地上が目の前に迫る。
恐怖から目を背けた背後には猛追してくるアルビオン竜騎士隊。
八方塞りのまま確実に近付いてくる死の恐怖。
この時ほど彼女は使える主を間違えたのではと疑った事はなかったという。
714ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:13:45 ID:ldWwqPi1
「部隊を砲撃の届かぬ後方まで下がらせろ!」

老士官の命令が即座に伝令へと伝えられる。
それは長年の戦闘経験が為せる業か、
突然の戦況の変化にも慌てず男は対応していた。
戦争が引いた絵図面通りにいく事などない。
何が起こるのか判らないと覚悟していればこそ対処できるのだ。

「しかし、それでは敵に付け込まれるのでは?」
「それはあるまい。むしろ打って出てくるならば好都合だ」

思わぬ反撃を受けたとはいえアルビオン軍は健在。
勢いに乗った所で、質・量共に勝る相手を打ち砕くのは容易ではない。
そのような軽率な行動に出る相手ならば引き寄せて包囲し殲滅するまでだ。
膠着状態が長引けば不利になるのはこちらだ。
それを分かっているからこそ連中は防衛に専念しているのだ。

「大砲は厄介ですね。空軍の援護を待ちますか?」
「いや、我が軍も大砲を前進させよう。
幸い、砲の射程も精度もこちらが上だ。
砲撃戦に持ち込めば無駄に兵を損耗させる必要もない」

相手の攻撃の届かない距離からの一方的な攻撃。
それがアルビオン軍の常套手段であり戦術の基本。
彼はそれを恥ずべき事だとは思わない。
互いに戦力を出し尽くしての決戦などに興味はない。
双方が多大な犠牲を出してまで何を得るというのか。
勝負が圧倒的であればどちらの犠牲は最小に抑えられる。
そう信じて彼は地上の砲手に伝令を送った。


「怯むな! 届かぬなら前進して撃ち返せ!」

砲撃の音に阻まれながらもアニエスの声は高らかと戦場に響き渡る。
近くに着弾があろうとも微動だにせぬ彼女の勇姿に、砲手達も勇気を振り絞る。
アニエスも戦場を知っている。指揮官が心を乱せばそれは全軍に波及する。
危険を承知して尚、砲火に身を晒し前進しなければならない時がある。
それが今なのだ! ここで退けば心も体も打ち砕かれる!
やるべき事を指揮官が体現して初めて兵は動くのだ!

それに砲手達には戦う理由があった。
彼等はアニエスの部下ではない、トリステイン艦隊の生存者達だ。
アルビオン軍の奇襲により訳も分からぬままに殺されていった同胞、
目の前で沈んでいく自分達の艦の姿が今も彼等の目に焼きついている。
その時の怒りと憎しみが死の恐怖を押し流す。
復讐の一念が彼等を戦場へと駆り立たせているのだ。

砲撃を浴びながらも前進を繰り返すトリステイン軍の気迫。
それを前に、アルビオン軍兵士達に動揺が広がる。
彼等にとって、これは勝ち戦も同然だった。
落ちている勝利を拾うような簡単な作業だと思っていた。
だが、この瞬間。間違いなく彼等の喉元には刃が突きつけられていた。
一方的に命を奪う虐殺ではなく、命を奪い合う戦闘へと変わっていたのだ。
ましてや死をも覚悟したトリステイン軍と、上の命令に従うだけのアルビオン軍。
砲弾の直撃に吹き飛ばされようとも突き進む敵に、彼等は未知の恐怖を感じていた。
715ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:14:52 ID:ldWwqPi1
互いの距離が詰まる。
既にアドバンテージであった射程距離は意味を成さない。
もはや勝負を決するのは兵器ではない、それを駆使する兵士の気力だ。
そして、それこそがトリステイン軍の最大のアドバンテージ。

「撃ぇ!!」

アニエスの号令が響く。
間際に迫った両者の砲が火を噴く、その瞬間。
トリステイン軍の砲台が轟音を立てて爆散する。

広がる爆炎をマントで遮りながらアニエスは空を見上げる。
頭上を旋回する巨大な影、それは再び彼女達へと牙をむいた。
舞い降りた火竜より吐き出される灼熱の炎。
火竜の吐息を受けた砲台、そこに込められた火薬が誘爆して破裂した。
まるで風船が割れるように呆気なく破壊されていく砲台。

「くっ…!」

毒づくアニエスの真上に竜騎士が降下する。
咄嗟に抜いた剣が心許なく感じられる。
火竜の喉元で燻る炎、それがアニエスの過去の痕を抉る。
迫る恐怖に歯を食い縛り彼女は火竜に立ち向かう。
火竜の上げる咆哮、それはギーシュの掛け声に掻き消された。

「放て!」

ニコラを始めとする鉄砲隊が一斉に火竜を狙い撃つ。
放たれた弾丸が雨粒のように竜騎士に降り注ぐ。
しかし、それも竜騎士の展開する風の障壁に阻まれて届かない。
それでも撃ち続ける鉄砲隊の猛攻に、舌打ちと共に竜騎士が上空へと逃れる。
だが、それを狙い済ましフレイムとキュルケの炎が捉える。
油袋に引火して燃え尽きる火竜の姿。
それには目もくれずギーシュはアニエスの安否を確かめた。
火竜の炎も一斉射撃の流れ弾も受けた様子はない。
安堵の溜息を漏らすギーシュに、アニエスは声を掛けた。

「またお前に助けられたな、ギーシュ」

アニエスの口元が綻ぶ。
彼女の微笑みに、不意にギーシュの胸が高鳴った。
それは自分の知る軍人である彼女ではなかった。
過去のトラウマから立ち直ったばかりで、
覆い隠した筈のアニエスの素顔が僅かに透けていた。
その親しい者に向けるような無防備な彼女の表情が、
一瞬、ギーシュにここが戦場だという事を忘れさせた。
716名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 17:15:40 ID:3RywGD9p
バンザーイ!
バンザーイ!
支援だぁあ―――
717ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:16:04 ID:ldWwqPi1
「ギーシュ!!」

ルイズが叫びながら彼を突き飛ばす。
その直後、二人の真上を火竜が通過する。
標的を逃した火竜が旋回し再びルイズ達へと襲い掛かる。
咄嗟に杖を取ろうとしたルイズの表情が凍った。
遮二無二体当たりした所為だろうか、
彼女の手から杖も祈祷書も零れ落ちていた。
落とした杖へと駆けるルイズは、敵から見れば正しく動く標的。
無力と化したメイジへと竜騎士は杖を振るう。

「嬢ちゃん! 俺を抜け!」

デルフの声に我に返ったルイズが鞘から彼を解き放つ。
メイジに剣が扱えるものかと竜騎士はせせら笑いと共にエア・カッターを放つ。
だが、それはデルフの刀身に触れた瞬間、男の笑み同様消え去った。
魔法を吸収するデルフの能力に困惑しながらも竜騎士は反転し、
今度は火竜の吐息で彼女に狙いを定める。

「来るぞ! 炎は防げねえ、躱わせ!」

デルフの警告を聞きながらもルイズは拾った杖を構えた。
火竜の速度は人のそれとは桁が違う。
全力で突進してくる竜騎士を避ける事は出来ない。
どうせ一か八かになるのなら逃げるよりもルイズは戦いを選んだ。
それが無謀と分かっていながら彼女は決して背を向けない。

止めに入ろうとしたアニエスも間に合わない。
新たに迫ってくる竜騎士を迎撃しながらキュルケは彼女へと振り返った。
間近に迫る巨大な火竜と、それに相対する小柄な少女。
火を見るよりも明らかな勝敗の結果にキュルケは思わず目を逸らそうとした。
718ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:16:59 ID:ldWwqPi1
刹那。火竜の胴体に氷の矢が食い込む。
それはキュルケが良く知る彼女の魔法。
体を刺し貫かれた竜が力なく地上へと落ちていく。
良い所で見せ場を奪っていくタバサに嫉妬しつつ、
キュルケは歩み寄ってくる人物へと視線を向けた。

「ありがと。助かったわ、タバ……」

キュルケの動きがぴたりと止まる。
そこにいたのはタバサではなかった。
自慢の髭を弄りながら彼は硬直したままの彼女に語りかける。

「なに、これも貴族の義務というやつだ」

キュルケの眼に映るのは長尺の杖を携えた中年の貴族。
何度も突き合わせたその顔は嫌でも覚えている。
実際、毛嫌いしていたしトラブルの元になった事もあった。
少なくとも彼女の知る限り、このような場所に好き好んで来るような人物ではない。
だから確かめるようにキュルケは彼の名前を呼んだ。

「……モット伯?」
「うむ」

YES,I AM!と言わんばかりに胸を張りながらジュール・ド・モットは答えた。 
それとは裏腹にがっくりと落ちるキュルケの両肩。
“ああ、なるほど”と彼女は悟った。
自分が助けに来た時のギーシュはきっとこんな気分だったに違いないと……。
719ゼロいぬっ!:2008/03/29(土) 17:19:10 ID:ldWwqPi1
以上、投下したッ!
確かにこれからクロス作品を投下しようとしてるみたいに見えますね。
でも、もしやるとしたら避難所ですから。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 17:46:39 ID:ZDyTQZ/8
乙!
あいかわらず戦争シーンの緊迫感がいいな

ここまで来てクロスかと思ってビビったぜ
やるなら避難所と聞いて安心した
721名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 17:56:12 ID:d1pVnKYL
投下乙そしてGJでした!
モット伯!モット伯!僕らのモット伯に敬礼!
722名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 18:46:42 ID:+y9DjZPW
GJ!
723名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 19:06:48 ID:nq+nlUTQ
投下乙です
そして、予期せぬ救援がw
724名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 19:38:13 ID:NB7isckL
GJ!

戦力差を埋めるためにトリステイン側は必死になってるのが良く分かる。
背水の陣で士気は高いけど、現実に存在する戦力の差はなかなか覆し難いですなぁ……。
原作見てみると、あれで良く戦う気になったものだと感心する。

そして、
アニエスがギーシュにフラグを立ててらっしゃる……モンモランシーはどうなるんだ!?
725名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 20:20:31 ID:2MSTqlJQ
これほどYes I amが似合うブサ…げふんげふん! ゼロ魔キャラは初めて見たw
GJw
726名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 20:29:22 ID:ZNSa9AMH
GJ!

みんなはかっこいいギーシュは好きですか?
727名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 21:33:44 ID:dKC4DQhk
カッコいいギーシュなんていませんよ…ファンタジーやメルヘンじゃないんだから
728名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 21:35:28 ID:/HThDxCa
かっこいいギーシュなんて存在しませんよ
メルヘンやファンタジーじゃないんですから
729名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 21:44:45 ID:nq+nlUTQ
かっこよくなったらギーシュじゃなくてギーシュさんになってしまうじゃないですか
730名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 21:48:11 ID:mAOLrpJ7
ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!
731名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 21:48:37 ID:L2SFfi4f
カッコイイギーシュ?ギーシュ・ド・グラモン?のことですか?
そんなもの、此処にはいないよ…
732名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 22:20:03 ID:3RywGD9p
お……同じ話題だ……
ま…また、くり返している…
>>137あたりからの『話題』がまたくり返している…!!
733名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 23:11:03 ID:EioAgW7g
キラークイーン・バイツァ・ダスト!
734名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/29(土) 23:34:00 ID:2qKVICLJ
>>773
カッコイイギーシュにそこまで追い詰められていると申すか
735名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 00:08:30 ID:M0wnofg1
いったい、>>773になにが起こるというんだ!!
736名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 00:29:07 ID:AE5zaa13
>>773
絶頂が終わらない……
それが「ギーシュ・ド・グラモン・レクイエム」!

犬GJ!
( ・∀・)o彡 MOTTO伯!
( ・∀・)o彡 MOTTO伯!
737名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 00:39:42 ID:DKvZzUUr
>>734
ボスんなとこで引きこもってないで仕事してくださいよ。

738名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 01:12:26 ID:BG1w4J8P
>>729
違うな、「ギーシュさん」はただ格好良いんじゃない、「愛に溢れているから」
格好良いんだ…愛に溢れてないギーシュさんなんか格好良くてもギーシュさんじゃない!!
739名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 05:53:50 ID:imUWhMQp
>>738
何を言うんだ。ギーシュはこんなに愛されてるじゃないかっ…!
ゼロ魔の登場キャラで屈指に、愛されてるじゃないか…っ!
序盤で更新が途切れるなどSSではザラにある。だがそれでも大抵ギーシュイベントだけはみんな書くじゃないかっw
740名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 15:07:16 ID:XXO3l8sd
どいつもこいつもヒデェ言い草www
カッコイイギーシュがいてもいいじゃないか・・・。
741名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 16:08:35 ID:IV9394tI
決闘とサブ・ゼロの所のギーシュはカッコイイ…気がする。
742名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 23:24:55 ID:za5lz1y4
とりあえずギーシュよりF・Fのほうがかっこいいぜ!と改めて思えるために六部を読み返す
・・・・・・・・・F・Fは記憶DISCがないんだよな
スタンドDISCから生まれて記憶のDISCないからスタンドDISC奪われただけで瀕死になったんだよな
でも、それだと記憶=魂なのか?
DISCぬかれてF・Fの精神であるスタンドはなくてもF・Fには自分の中で生まれた『記憶』が・・・
うーん、わからん
743名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 23:34:54 ID:AE5zaa13
スパイスガールやact3みたいな自我持ちスタンドがノヨーリアスBIGみたいに自立したようなもんじゃねーの?
744名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 23:38:16 ID:mlJHj8X0
ノヨーリアスじゃない、ノトーリアスだ
決してテファーリアスじゃないからな
745名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 23:45:57 ID:Gkkc3epe
きっと徐倫達と過ごした日々で本当の『魂』が生まれたんだよ。
その瞬間、彼女の中で『記録』は血肉の通う『記憶』へと変わった。
『記憶』は『思い出』に! 人生へと繋がる道!
746名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/30(日) 23:49:18 ID:AE5zaa13
打ち間違えたorz

でもノトーリアスBIGが「ノヨー」とか言ってたら微妙に萌えね?
747名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 00:04:15 ID:U79gnQCX
それなんてロリ武道家?
748名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 01:16:39 ID:d44t1wh0
ロリ武道家ならぬメイド波紋使い投下します。
749仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:17:09 ID:d44t1wh0
「テファ、こっちのお芋はいくつ剥けばいいの?」
「籠の中に入っている芋、全部よ」
「解ったわ」

ルイズ達がウエストウッド村に到着した翌日、ティファニア達の住む孤児院で、ルイズ達がティファニア達の仕事を手伝っていた。
朝、子供達とマチルダは野菜を収穫しに出かけ、ワルドは薪を集めると言って森に入っている。
ルイズはと言うと、孤児院の台所で野菜を刻んでいた。
つい先日まで勤めていた『魅惑の妖精亭』に比べると、かなり小さいが、そこにはティファニアとマチルダの思い出が詰まっていると聞いていた、石畳と釜戸はマチルダがテファに合わせて練金したものらしい。

魅惑の妖精亭で働いていたルイズは、台所が手狭に感じられたが、同時にその小ささに安心感を感じていた。
大きな台所といえば、魔法学院の厨房に一度だけ入ったことがある、吸血鬼になって間もない頃、包帯を貸してくれたシエスタの姿を見かけたので、声をかけに入ったのだ。
適当に挨拶を交わしただけなので、特に何を言ったかは覚えていない。
あの魔法学院の厨房は、今思うととても大きかった、働いている料理人の数もかなりのもの、オールド・オスマンが何処かから引き抜いたという料理長は、料理だけでなく人を使うのも上手かったらしい。

また魅惑の妖精亭の厨房は、注文を受けてから素早く料理を出せるように、保存食の置き場や調味料の置き場に工夫が凝らされていた。
ワルドが『遍在を四人出せるな』と冗談交じりに呟いていたので、あそこは四人程度が理想的な人数だったのだろう。

ここ、ウエストウッド村の孤児院は違う、本当に小さな釜戸と、申し訳程度の棚しか作られていない。
しかし、すべてがティファニアのために作られ、調節されている、この台所から感じられる不思議な安心感は他には無い。

マチルダは、ティファニアと二人で台所に立つつもりだったのだろうか?そう考えると、ルイズの胸に暖かいものが感じられた。

「ごめんなさい、お客さまなのに、手伝って貰っちゃって」
「そんなこと無いわよ、お世話になってるんだから、これぐらい手伝わないと」
ルイズが微笑むと、ティファニアも笑みを返した。

しばらくして芋の皮むきが終わると、ティファニアの指示に従って鍋の中に放り込む。
薪の燃える音と、沸騰した水の音…そして孤児院で暮らす子供の声だけが聞こえてきた。


しばらく火加減を調節していると、不意にティファニアがルイズの側に寄ってきた。
「石仮面さん。…あの、ちょっと聞きたいことがあるの。あんまりこんな事を聞いちゃいけないって、解ってるんだけど」
「どうしたの?」
「アルビオンとトリステインって、戦争してるのよね。 それって、わたしのせい?」
「え」

胸の前で両手を合わせ、申し訳なさそうな瞳でルイズを見るティファニア。
その仕草はとてもいじらしくて、見ているこっちの方が申し訳なくなるような気がした。
「ティファニアのせいじゃないわよ、何でいきなり、そんなことを聞いてきたの?」
「だって、私の魔法、とんでもないものだって石仮面さんが言ってたから……」

ルイズは「ああ」と呟いて納得した、ティファニアはウェールズを除いて唯一、アルビオン王家の血筋を継承する存在であり、しかも伝説とまで言われた虚無の使い手なのだ。
「確かに貴方の魔法は、ハルケギニアでは伝説とまで言われるものだけど、この戦争とは関係ないわよ」
「そうなの?」
「そうよ、………」
むしろ関係があるのは私の方だ、と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
750名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 01:17:13 ID:+X0HlEao
支援
751仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:17:55 ID:d44t1wh0
マチルダ達が野菜を取ってから戻ると、それを受け取って調理を続ける、丁度お昼になる頃にワルドが戻り、料理も出来上がった。

昼食は子供達と一緒に食べることになった、ティファニアの誘いをルイズ達が受けたのだが、それは予想以上ににぎやかで、楽しいひとときだった。

15人がテーブルを囲み、野菜と芋を煮込んだスープを食べている中、5歳ぐらいの金髪の少年がお椀を手に持って、テファの顔をじっと見つめ
「テファ姉ちゃん、おかわりしてもいい?」
と、スープのお代わりをねだっていた。

「よく食べるねえ、みんなの分も考えて食べなさいよ」
マチルダがいなすと、ティファニアがあらあらと言葉を続けた。。
「大丈夫。おかわりはまだあるわよ、今日はちょっと沢山食べても大丈夫だからね」
「「「はーい!」」」

木製のお椀を差し出す子供達を見て、ルイズがクスッと笑みを漏らした。
「本当に、にぎやかなのね」
子供達に囲まれた食卓というのも、ルイズにとっては初体験であった、ルイズが貴族のままであれば、こういった食事の機会など一生巡ってこなかったかもしれない。
「騒がしくてごめんなさいね、ほらみんな、ちゃんと行儀よく食べなきゃ駄目よ」
ティファニアがお代わりをよそりつつ、子供達を注意する、その様子を見て今度はマチルダが笑みを零した。

「ティファニアもいつの間にか、一人前だね」
「そんなこと無いわ。私、マチルダ姉さんから教えてくれたテーブルマナーとか、よく覚えてないもの」
「そう?」
「うん」
ティファニアもまた、マチルダに笑みを返している。
きっとこの二人だけの思い出があるのだろう、マチルダの優しい笑みはルイズが初めて見る笑顔だった。

「おじちゃんはお代わりしないの?」
子供の一人がワルドを指さして呟く、するとワルドは子供の指先を見て、右を見て、左を見て、ついに自分に行き当たってしまった。
「…あ、ああ。一杯で十分だよ」
「遠慮しないで食べたらどうだい、おじさん。みんなもそう思うだろ?」
マチルダがニヤニヤと蛇のような笑みを見せ、おじさん、の部分だけ強調する。
それを聞いたワルドは頬をピクピクと痙攣させつつ、無理矢理笑顔を作り出し、子供達に向かってこう言い返した。

「ハ、ハハハ。マチルダおばさんにもスープのおかわりを勧めたらどうだい」
「……!」

不意に、カチャカチャという食器の音が止まった。
子供達は何かを感じ取ったのか、ある者は器をテーブルに置き、ある者はスプーンを口に運んだポーズで止まっている。

おかしな雰囲気に気付いたルイズがマチルダの顔を見ると、口の端はイビツにつり上がって不気味な笑みを見せているのに、目はそれとは正反対に大きく見開かれていた。

ちらり、と横目でティファニアを見ると、ティファニアもおろおろと狼狽えるような視線でワルドとマチルダを交互に見ている。
マチルダに視線を戻すと、いつの間にか手には長さ25サントほどの細身の杖が握られていた、練金でワルドを圧死させるつもりだろうか。
次の瞬間には『針串刺しの刑だッ!』と叫びながらワルドを蜂の巣にしてしまうかもしれない、痴話げんかは勝手にしてくれればいいが、子供やティファニア、そして自分が巻き込まれるのは避けたかった。

この殺気を薄れさせるにはどうしたら良いか、その方法は意外と簡単に思いつくことができた。
752仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:18:24 ID:d44t1wh0
「奥さんに向かって”おばさん”なんて、酷いじゃない。ねえティファニア」
「「!?」」
ルイズの唐突な発言に、ワルドとマチルダが慌てて視線をルイズに向けた。
ティファニアは咄嗟のことで返答に困ったのか「え?えっ?」と困惑の目でルイズを見たが、すぐに気を取り直してマチルダとワルドを交互に見つめた。
「え……そうだったんだ。だからマチルダ姉さん、ワルドさんを一緒に連れて帰ってきたのね」
「ななななな何言ってんだいテファ!あたしがどうしてこんな似合わない口ひげと!」
「なっ、何だと!父上に習ったこの口髭をバカにするか!」
「ちちうぇ? はっ、あんた母さん母さん言ってただけじゃなく、ファザコンでもあるのかい!いいかいテファ、こんな奴とは何でもないんだよ?」

少し早口で、ティファニアに言い聞かせるマチルダだったが、マチルダにとっての不運は『母さん』という単語にあった。

「でも、マチルダ姉さんもおばさま(マチルダの母)と同じ髪型よね。そっか、二人ともお父様お母様が大好きなのね」
「ちょちょちょっと!ティファぁぁぁあ!あんたいいかげんに…ってルイズ!あんた何笑ってるんだい!」

クックック、と噛み殺しきれない笑い声が漏れたルイズに、皆の視線が集中した。
「そうだルイズ!君は何を考えて居るんだ、こんな粗野な女を奥さんなどと!」
「粗野だってぇ!?その言葉そっくりそのまま返してやるよ裏切り者!」

ギッ、とワルドとマチルダがにらみ合った所で、ルイズの隣に座っていた女の子がルイズの袖を引っ張った。
それに気付いたルイズは、きょとんとした顔で自分の顔を見つめる、銀髪の女の子に顔を近づけた。
「どうしたの?」
「おねえちゃん、うらぎりものって、なに?」
「それはね、あの人一度レコン……他の人に浮気したのよ。だめなお父さんよね」
「えー。だめなおとうさんなんだー」
「さ、そんなことより早く食べちゃいましょ、夫婦喧嘩は仲が良い証拠だから」
「うん!」

「「夫婦じゃないッ!!!」」
マチルダとワルドの叫びは、これでもかと言うほど息が合っていたらしい。
753仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:18:45 ID:d44t1wh0
「悪夢だ…」
「悪夢よ…」
「二人とも何突っ伏してるの」
夜。
孤児院の子供達が眠った頃、孤児院の一室でルイズ、ワルド、マチルダの三人が集まっていた。
あの後、マチルダは『お母さん』と呼ばれ、ワルドは『お父さん』と呼ばれ、怒るに怒れない状態で食事が終わった。
ティファニアにルイズの名が知られてしまったが、この際仕方がない、『ルイズ』というのは昔の名だと教えておいた。

机に突っ伏しているマチルダとワルドの二人は、頭を抱えるような形で両手を後頭部で組んでいる、ルイズはその様子を見て思わず『やっぱりお似合いじゃない』と思い、ほくそ笑みながら二人を見ていた。

「ほら気を取り直して、ワルド、薪拾いの成果は?」

ワルドはむくりと身体を起こし、ふぅとため息をつく、懐から一枚の紙を取り出してテーブルに広げると、ある一カ所を指さした。
「ここがウエストウッド村、僕たちの居る場所だ。この街がサウスゴータ、そしてこっちがロサイスだ」
テーブルの上に広げられた紙は、アルビオンの地図だった。ワルドは朝の薪拾いの辞典で、遍在を各方面に飛ばしていたのだ。
「ルイズが以前見た時は、サウスゴータは洗脳されていたそうだな。今日見てきた限りでは洗脳されているとは思えなかったが、都市の規模に比べて活気がなさ過ぎる、かなりの人数が徴兵されたか、労働力として連れ去られたらしい」
「ったく、胸くそ悪いね」
マチルダが吐き捨てるように言うと、ルイズも無言で歯を噛みしめた。

「それで、一つ気が付いたんだが…竜騎兵が四六時中飛び回っていたんだ、アルビオンの竜騎兵はタルブ戦でほとんど失われたはず、だが今日だけでも、風竜一頭に火竜四頭を目撃した。
街道沿いに向かった遍在と、サウスゴータに向かった遍在が同じ風竜を見ている、これはおそらく住民を監視しているのだろう。
そして他の火竜だが、竜騎兵を戦闘に無人の竜が三匹従っていた、しかも幼いように見える。
おそらく火竜山脈か…どこかで羽を休めている火竜を見つけ、戦力にしようとしたんだろう、幼い竜でも戦力としては十分だからな」

ワルドが言葉を句切ると、ルイズが地図の上を凝視した。
そこにはワルドの遍在が調査した、風竜の飛行ルート、ならびに関所とも言うべき臨時ゲートの位置が記載されている。
「今、遍在は…三体、位置は微妙ね。ニューカッスルには近づけそう?」
「無理だな。街道からではとても近づけないし、森の中も難しい、風竜より目の良いグリフォンが配置されている、見つかりそうになって慌てて一体を消したぐらいだ」
「…クロムウェルを直接叩きたいけど、そのためには森の中か…うーん」

ルイズは腕を組んで、地図とにらめっこを開始した。
風竜の機動力、グリフォンの目、これだけでもニューカッスルに接近するのは厳しい。
もしレコン・キスタが、地下の臭いに敏感なジャイアントモールや、風の臭いに敏感な狼、夜の気配の察知にやたら敏感なバグベアーなどの使い魔達を配置していたら、ますます接近は難しくなる。
「……サウスゴータで情報を集めましょう。明日の朝出発するわよ。マチルダはここに残って、テファにものしもの事が無いよう備えて」

「元からそのつもりさ、クロムウェルを暗殺するのには手を貸せないよ、相手が大きすぎるからね」
あっけらかんとした態度でマチルダが答えるが、決して軽い気持ちで言っている訳ではなかった。
「…守りは、攻撃の五倍の兵力が必要…だったっけね。あたし一人でどこまでできるか解らないよ。捕まってもせいぜいゲロすんじゃないよ」
「解ってるわ。ティファニアを守ってあげてね」

ルイズの言葉を聞いて、マチルダは笑みを浮かべた。そしておもむろに立ち上がると、部屋を出て自分の部屋に帰っていった、マチルダの部屋はティファニアと同室で、今日は久しぶりに一緒に寝るらしい。

「…なあ、ルイズ」
「何?」
マチルダが出て行った後、静かになった部屋の中で、ワルドが口を開いた。
「君も人を踊らせるのが上手くなったな、まあ、子供達の前で魔法合戦を繰り広げずに済んだが…」
「ああ、お昼の事ね。マチルダの殺気ったら凄かったもの。あとでテファに聞いたら、おばちゃんって言われてゴーレムでお仕置きしたこともあるんですって」
「子供相手に容赦がないな」
「ええ、まったくね。 ……ワルド、貴方は部屋で寝ていて、今夜は私、見張りをするわ」
「君が見張りを?いや、僕がやるよ」
「だめよ、貴方には遍在をいくつも使わせてるんだから、ちゃんと体力を回復させてよね」
そう言うとルイズは、壁に立てかけていたデルフリンガーとローブを掴み、窓から外へと飛び出していった。
754名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 01:19:08 ID:tct7HnYN
ノトーリアスBIG「支援なノヨー」
755仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:19:49 ID:d44t1wh0
『……』
カチャ、と音が鳴る。

ルイズは孤児院の屋根の上に乗り、デルフリンガーを枕代わりにして、仰向けに寝そべっていた。
デルフリンガーの金属部分が月光に反射し、目立ってしまうのは困るので、デルフリンガーにはローブが巻き付けられ金属部分が覆い隠されている。

『……』
再度、カチャリと音が鳴る。

「何か言いたいことでもあるの」
ルイズが呟くと、デルフリンガーが鍔を小さく鳴らして、小声で呟いた。
『何か言いたいことがあるのは、そっちじゃねえのか』
「…………」

ルイズは図星を疲れたのか、息を止めて黙ってしまった。
たっぷり一分間の沈黙の後、ふぅと大きなため息をついて呼吸を再開し、身体を横に向けた。
眼前には、デルフリンガーの鍔があった、ルイズはそこに顔を近づけ、囁く。

「人間は、人間と結ばれるべき、そう思うでしょ」
『まあ同種族ってのが健全ではあるなあ』
「吸血鬼に惹かれる人間なんて、あってはならないの、それが愛情であっても、憧れであっても」
『おめえ、寂しがり屋のくせに、よくそんなことが言えるな』
「前にも言ったでしょ、私が欲しいのは友達よ。私を、対等に扱ってくれる、友達」
『じゃあ何か、ワルドがおめえを上に見てるから、わざと意地悪な冗談を言ってやったってことかい』
「……うん」
『難儀だな』
「でもね、意地悪じゃないの、二人は、決して仲が悪いとは思えないの。ワルドさまは自分で自分の未来を閉ざそうとしてる。私、初恋の人を、巻き添えにしたくない……」
『……』
「今回の任務だって、ワルドさまを連れて行くの、怖かったの……もし、もしこの任務でワルド様が死んだら、私のせいよ。わたしは必要なら、あの人に死んで来いと命令しなきゃならないの……」
『嬢ちゃん、おめえ、優しすぎるよ』


月が雲に隠れ、辺りが暗くなった。

暗闇の中でルイズが呟く。


「わたしは、わたしは、ただのばけものよ」


デルフリンガーは、少女に虚無を授けた原因、始祖ブリミルに悪態を突いてやりたくなった。
自分の身体が人間なら、この少女を抱きしめてやりたいとすら思った。
でも、ブリミルはもういない、デルフリンガーの身体はただの剣。

そして何もかも忘れて眠ることも、剣なる身ではできないので、デルフリンガーは沈黙することしかできなかった。
756仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:20:16 ID:d44t1wh0
「かんぱーい!」
「あらあらジェシカったらもうそれで十杯目よ。シエスタちゃんも遠慮せずどんどん飲んでね」
「あ、あの私こんなに食べ切れません…」

時間は少しさかのぼる。
王宮に水の秘薬を献上したカリーヌ・デジレ達は、そのまま魔法学院に立ち寄り、シエスタとモンモランシーを送り届けるはずだった。
しかし、モンモランシーは此度の功績を聞きつけた両親に連れ去られてしまった。
カリーヌはシエスタ一人でも送り届けようとしたが、シエスタはそれを断り、ある場所へ立ち寄ることにした。
ラ・ヴァリエール公爵夫人カリーヌの誘いを断るのは、トリステインの貴族達には考えられぬほどの無礼として写りかねない、しかし生まれついての貴族ではないシエスタには、そんなことは解らなかった。
また、カリーヌ自身もシエスタを咎める気など無く、むしろシエスタを後押しするという立場を取った。

『魅惑の妖精亭』は、カリーヌのような高級貴族に一生縁のない場所ではあるが、それがシエスタの親戚であると言うのなら話は別。
それに魔法学院に来る前には、ジェシカに城下町を案内され、危険から身を遠ざける知恵などを教えて貰っている。
お世話になった親戚に晴れ姿を見て貰いたい、その言葉に、カリーヌは微笑んだ。

「らによー、もう、しゅう゛ぁりえになるならぁ、もっと早くお店に顔出しなさいよぉ」「ジェシカったら飲み過ぎよー、ほらお水」

時間は夜、既にお店は開いており、ジェシカはシエスタを祝うため、仕事を店長のスカロンに任せて、二人っきりでお酒を飲み、料理をつまんでいた。
ジェシカは既に顔を赤くし、目も座っている。

二人がお酒を飲んでいる個室は、住み込みで働いている女の子達のために『魅惑の妖精亭』で準備した部屋であった。
酔っぱらったジェシカの話では、ついこの間お店を止めていった兄妹が、この部屋を使っていたらしい。

「んぐっ、んぐっ…らにこのお水、美味しい…ふわぁ…」
「ほら、もう眠いんでしょ、ジェシカ」
シエスタから渡された水を飲むと、ジェシカの目つきが急に眠そうなものに変わる。
そもそもジェシカが酒に酔うこと自体あまり考えられない、子供の頃からジェシカはお酒の量を知っていた、お店で働く以上必要なスキルかもしれない。
だか今日は、酔っぱらう程祝ってくれている、シエスタはそれが嬉しい反面、やはり申し訳ない気持ちもあった。

波紋入りの水を飲んだジェシカは、すぅ、すぅとそのまま寝息を立ててしまう、シエスタはジェシカの身体を持ち上げるとベッドに寝かせ、そのまま波紋を流した。
二日酔いにでもなったら困るので、身体に負担が残らぬ程度まで、波紋で解毒をする、お酒も毒の一種だと気付いた時はシエスタも苦笑せざるを得なかった。

「ありがと、ジェシカ。わたし頑張るからね」
そう言ってジェシカの身体を横に向ける、万が一寝ながら嘔吐した時、窒息させないためだ。
そっと布団を被せ、シエスタはジェシカの髪の毛を手櫛ですいた、自分と同じ黒髪でも、ジェシカのは若干硬く、そして艶やかに見えた。

「ロイズぅ……また来てよぉ」
「ロイズ?」
ジェシカの寝言が意外だったのか、シエスタは寝ているジェシカに聞き返した、しかしジェシカが返事するはずもない、すぅすぅと寝息を立てている。

「……ロイズ、かぁ」
名前が似ているだけ、たったそれだけのことで、ある人のことが思い出されてしまう。
魔法学院の昼食時、『ありがとう、美味しかったわ』と言ってくれたルイズの姿が、シエスタの脳裏に浮かび上がった。
「まさか、ね」

自嘲気味に呟いて、部屋に備え付けられた鏡台を開き、椅子に座る。
ルイズはもう居ない、居たとしたらそれはもうルイズではない…はずなのだから。

鏡台の引き出しからブラシを取り出す、誰かが使っていたものらしく、ブラシには茶色い毛が絡まっていた。
気のせいか、髪の毛は地面に掘り出されたミミズのように、うねっ、と動いた気がした。
「やだ、私まで酔ったのかな」

そう思ってブラシを置き、顔を両手で挟み込む、深呼吸をして身体と意識を落ち着かせると、もう一度ブラシを掴もうとして……思いとどまった。

「……」

そっと、今度は確かめるように、何か確かめてはいけないものを確かめるように、恐る恐る、波紋の通った手で髪の毛に触れた。
757仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:21:17 ID:d44t1wh0
ガチャリと扉の開く音がして、スカロンが振り向く。
倉庫からワインの入った箱を取り出そうと、腰をかがめたところだったので、身体をくねらせるようにしてシエスタを見た。
「スカロンさん」
「あらシエスタちゃん、どうしたの?」
「今日中に帰らなければいけないので、今日はこれで失礼します」
スカロンは残念そうに唇をとがらせ、手を胸の前で組み、くねくねと動きながらシエスタの側に寄った。
「あら、魔法学院は忙しいのね。今日は泊まっていって貰えれば良かったのよ」
「ごめんなさい、どうしても急いで帰らなくちゃならないんです」
「じゃあ馬を手配するわね、少し待ってて」
「大丈夫です、手配して貰えるよう頼んできましたから」
「そっか、じゃあシエスタちゃん、またいつでも遊びに来てね」
「はい。……あの、一つ聞きたいことがあるんです。ジェシカが泥酔しちゃって、ロイズって人の名前を呟いたんですけど…」
スカロンが驚いたのか、目をぱちくりとさせた。
ジェシカがロイズの名を出したことに驚いたのか、それとも泥酔するまで酒を飲んだことに驚いているのかは解らない。
「あら〜、あの子ったら、かわいい妹分が出来たみたいで喜んでいたのよね。ロイズちゃんはこの間辞めていったの、ちょっと訳ありで、度を続けているんですって」
「そうですか…あの、もしかして、その人に火傷の痕はありませんでしたか?」
「ううん。見えるところに火傷は無かったと思うわよ」

シエスタが俯く、なぜかその拳は握りしめられていた。
「……わかりました、ありがとうございます。これはおまじないです」
「おまじない?」
スカロンが聞き返すと同時に、シエスタはスカロンの手を握った。
ぼんやりと身体が輝くと、スカロンの身体は少しずつ軽くなっていく気がした、いや、実際に身体が軽く感じるので、驚いたように自分の身体を見渡した。
「スカロンさん、働き過ぎですよ、いろんな筋肉が凝り固まっていました」
「あらーそうなの、これがシュヴァリエを賜った『技術』なのね?」
「はい。でも人には言わないでくださいね」
「ええ、わかってるわよ」

スカロンがにっこりと微笑むと、シエスタも微笑みを返した。
だがその微笑みの下には、言いようのない罪悪感と困惑が渦巻いていた。






ダダダッ、ダダダッ、と、馬が蹄の音を鳴らして駆けていく。

馬上ではシエスタが、魔法学院の方向を一心不乱に見つめていた、早く到着しろ、早く到着しろと叫ぶかのように、手綱を握る拳が固められていた。

シエスタの左腕には、丸くなったマントが抱えられている。
マントの中には『魅惑の妖精亭』から失敬した、拳が難なく入る程度の瓶が包まれている。

その瓶の中には、ロイズという人物が使っていたであろうブラシが入っている。


ブラシには、染料で茶色く染められた、ピンク色の髪の毛が絡みついていた。


To Be Continued→
758仮面のルイズ:2008/03/31(月) 01:22:26 ID:d44t1wh0
投下したッ!

おマチさん涙目。
759名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 01:26:19 ID:+X0HlEao
これは、ワルド×マチルダフラグかっ!?
くっついちまうのかっ!?

そしてとうとう足がつくか仮面ルイズ!
続きをwktkして待ちます。
GJ
760名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 01:52:27 ID:tct7HnYN
GJ!
ルイズがせつない…
デルフが良い漢だ…
この先の展開が激しく気になるぜ!!
761名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 02:02:37 ID:nV48xkwv
仮面キター!乙!
3月中に続きが読めるなんて幸せ

すごく先の展開が気になるな
妖精亭に潜入しつつヒトに手を出さなかったルイズにシエスタは何を思うのか
やっぱり両者を待ちうけるのは不幸な対決なのか
それともオスマン・シエスタがルイズのあり方を理解するのか

チラッと出て来た赤石の伏線らしきものも気になるな
762名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 07:09:18 ID:aw/4hD7/
もうすぐ500kbなので新スレ立てます。
763名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 07:11:32 ID:aw/4hD7/
【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚80人目】
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1206915020/l50
764名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 14:37:17 ID:RrDxPbSb
ume
765名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 15:27:27 ID:R1Zi/ZgG
このスレの埋めに協力するとでも思ってんのかよォ―――ッ
766名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 15:34:29 ID:OpdxM8OE
仮面の人最高に乙ってやつだぜェー!!

ルイズの痕跡に気づいたシエスタ
学院側の対応や如何に!!
続き待ってるぜ
767名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/31(月) 16:10:38 ID:FNnCeFw7
うめうめ
768名無しさん@お腹いっぱい。
                _  --─-- 、
               /彡三三≡  `ヽ、
             /彡三二====   ヽ'|
            /ム=====−--− ´  |
           / | ,.-===- __    __ -zィ ト.      「埋める」と心の中で思ったならッ!
            | |///∠--ミ≧三__彡 '´ |'
ぃヘ          ∨ー '´      `ヽニ--‐,.-<ハ
ヘ ヘ         |          /三. ミ/,.ヘ | ヽ      その時スデに行動は終わっているんだッ!
、ヘ ヘ          |、        _,. ⌒ヽノ )ソ |
ぃヘヘヘヽ        ヽミヽ、  __r∠ニ,.     /
``    `ヽ、     マ互)  └^‐'′    |`´          次スレへ行くぜペッシッ!
     /´`ヽ`ヽ, r::::ヘ |          /   ,.-::
      |   l |  `ス|::::::::::ソ          ,/   ノ::::::
      |  〈   ヽ゚ゝ_::::::`ー,r=-    /、_(`´:::::::::::
     ヽ、__)  u  l、::::::::ヽ、__,/`ヽ、:::ヽ:::::::::::;
         u    r〈::;-/ `ヽ      7へ::/
             ⌒) /  ハ−::7  /
              `〈  /_`Y'´  |
               ヽ-'´: : : ;>‐ 、|
 / ̄ ̄`ー→ー→ー--一': : : : : /    \
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【ジョジョ】ゼロの奇妙な使い魔【召喚80人目】
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