【柊】ナイトウィザード クロスSSスレ【NW!】 Vol.6
1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
3 :
桃魔の中身:2008/02/18(月) 13:09:51 ID:pkwFq22U
>1
乙。
>3
さあ……行け!
【俺の屍を越えて行け的な面で】
5・夜を駆ける -Hero's come back!- 前編
青い月匣で区切られたその場所は、なんの変哲もない小さな路地だった。
けれど、イノセントはそこに立ち入ろうとはしない。そこになにがあるのかも認識していない。それに疑問を差し挟むこともない。
彼らは常識を作り、常識に守られる者。
ゆえに、非常識が常識を排除している場について、認識することができない。
だから彼らは、そこに何がいるのかを知らない。
この町を脅かそうとする者と、この町を守ろうとする者たちがそこでにらみ合っていることも。
「私の敵、とはまた大きく出たっスねぇ」
ベホイミが軽口を叩く。相手―――ブランシェリーナは冷たい表情のまま、至極当然と言わんばかりに答える。
『敵だろう。お前達はこの町を守ろうとしているのだから』
「確かにそれじゃわかりあえそうもないっスね」
ベホイミとブランシェリーナの間に殺気の応酬が始まる。
どちらかというと直情径行の彼女は交渉事に向かない。いつもの笑顔のまま、メディアが代わりにたずねた。
「ブランシェリーナさん、あなたの目的はなんですか?
なんでここに現れて、わざわざ邪魔な私達に宣戦布告じみたことをするんです?」
『これまでお前達は、私の計画を邪魔し続けた。その手際については見事と言っておこう。
結局邪魔が入るのなら、障害は計画の前に潰しておこうと思うのは悪いことではなかろう。
だから、私はお前達に布告する。明日午前0時、私は計画を成就させる』
その言葉に、ベホイミから放たれる相手への敵意がより強くなる。
相手に実体があれば即座に殴りかからんばかりの威圧を、しかし相手は涼しく受け流している。
メディアはそんな膠着状態を打開し、相手の情報を引き出すため続けて聞いた。
「なぜこの町を襲うんですか。この町には何もありません、ただ人が住むだけの、特殊な封印もなにもない町です」
『何もないわけではない。この町に住むウィザードであるのなら、ここがなんであるか知らぬわけはないだろう?』
「それは、この町が『交流区域』だということですか」
『然り』
この町がなんであるか、とウィザードに聞いて返ってくる言葉はそれしかない。
何か大きなものが封印されていたりはしない。魔導具の保管・管理も行っていない。強力なウィザーズ・ユニオンの支部や本拠もない。
そんな町に何かをする理由は、高位エミュレイターにはない。だから、これまでこの町で大きな事件が起きることはなかった。
その平和を崩した存在は、逆に問う。
『お前達とて知っているだろう。妖怪と人間は違う存在だ、真にわかりあうことなどできない。
生きる時間も考え方の根底も異なる存在と共に生きることなどは不可能だ』
「交流区域否定派ってわけっスか。さすがにいいトコのお嬢さんの考えることは違うっス」
不敵な笑みで、ベホイミは相手を挑発し自身を鼓舞する。こんな相手に、この程度の相手に負けたりなどするものかと。
人と妖怪が違う存在であるという考え方の人間は、ウィザードの中にも存在する。
聖教の使徒たる聖職者は、主の教えに背を向けながら人間の中に隠れひっそりと生きていた吸血鬼らを狩るために魔女狩りをやった過去もある。
他にも、純然と歴史を積み重ねた歴史ある魔術師や聖職者、神職の中には異端である人間外の存在を排除しようとする傾向のあるものは厳然と存在する。
そんな人物達が交流区域の制定についていくつか難色を示したこともあるが、人と妖怪は手を携えてその考えを打破した。
けれど、いまだにそんな町の存在を苦々しく思っている否定派はやはりいる。
ブランシェリーナは、そんな挑発にのることなくただ冷厳に二人を見るのみ。
『なんと言われようが、人間と妖怪は違う存在だ。
それは何があろうと変わらぬ事実、それを否定することに何の意味がある。
違う存在が同じ町に住むというこの町は、やはり異端にして不自然だ』
「不自然だから、壊すのですか」
『そう思ってもらってかまわん』
メディアがさらに何か言い募ろうとした時、投影映像の向こうのブランシェリーナはどこからか黒い装丁の本を取り出した。
本の装丁は黒。他に何の色も存在していない。何者にも侵されぬものとしての象徴色そのままの黒。
タイトルすらない本を、大事そうにブランシェリーナは抱えて言った。
『この本は、私の魔術師と錬金術の知識を総動員して作りあげた<血の文書(クリムゾン・ロウ)>「アンジュ」。
長き年月をかけ、全呪文を私自身の血で書き上げた、私専用の最高の魔導具だ。
これは、ある分量以上ののプラーナを分身体に吸わせることで「妖怪」や「妖怪に関わりの深い人間」に無差別に攻撃する、対都市用広範囲対象限定魔導具』
魔導書というものは、書という名の通り魔導に関する研究結果を記すものだ。
呪文や魔を呼び込む力ある言葉を大量に記したそれは、何も考えずに記し続ければ積み重ねられることで複雑な効果を持ち、暴発して人を傷つけることもある。
ゆえに、魔法の効能を薄めたり消したりする素材を使ったり、逆の属性の魔力を帯びさせることによって相殺させることで危険を薄め、
後にその研究に触れる者が安全に開くことができるようにするのがセオリーだ。
しかし、彼女の作った<血の文書>である『アンジュ』というのはその真逆の性質を帯びさせた魔導書ならぬ魔導具の一種だ。
ある手順にそって作った一冊の本に、使用する本人の血を混ぜたインクを使用して本人への同調性を強化し、そのインクを用いて魔導書に必要な呪文を書き記したもの。
それはけして他人に開けぬ代わりに使用者との強いつながりを有し、使用者の意のままに動く一種の使い魔に近いとされる道具だ。
もっとも、魔法も使えるが通常は使用者の能力を超えられないこと、使用者が定期的に血を抜いてインクを作らねば作れないこと、
一般的な使い魔のように動くことができないこと、インクを使って呪文を書いていた時の使用者の思念がどうしても影響を与えること、
何より作成に10年単位の時間がかかることが、この魔導具を廃れさせた。
けれど、濃度100%の使用者の血を用いて字を記して強化され、他者のプラーナを取り込んだ彼女の書はもはや出力の面では彼女を凌駕し。
今まで純粋に人の世から妖怪を消すという一つの目的に向けて作りあげられた『アンジュ』は、もはやこの町程度なら条件さえ整えればなんとでもなる域に達している。
そう説明し、ブランシェリーナはさらに酷な現実を突きつける。
『―――お前達が私にかまけている今の間に、最後の生贄のプラーナを取り込ませてもらった。
これで、後は全ての準備を終えて0時を過ぎれば、何もせずとも明日純粋な人間のみを残して後は綺麗に均等に吹き飛ばされる』
その言葉にベホイミとメディアに緊張がはしった。
ここに足止めされている間に、新たな犠牲が出てしまった。それはどうしようもなく取り返しのつかない失敗だ。
そんな二人の心情を無視したまま、魔術師にして錬金術師は皮肉気に微笑みながら本の表面をなぞる。
『10日ほどお預けを受けていたアンジュも少しはりきりすぎたらしい。
奪ってきたプラーナの量がかなりのものでな、これではイノセントなど一たまりもあるまい。
まぁ、アンジュが危害を加えられるのは妖怪かそれの近くにいるものだけだ。
ほんの数時間それが早まっただけにすぎんか。安心して眠れ、すぐに仲間ができるだろうよ』
ぎり、と歯噛みする音が響いた。
ブランシェリーナに対峙するベホイミは、その瞳に隠そうともしない怒りをたたえ彼女を睨みつける。
誰が悪い。
犠牲を出してしまった自分。犠牲を見過ごしてしまったこの町にいる全てのウィザード達。犠牲を出したこの女。
犠牲になってしまった側は、何一つ悪いことをしていない。
そんな、何一つ悪くないこの町の誰かが傷ついたことを、ベホイミは許せない。許すわけにはいかない。
そしてこれから先、0時までにこの女を止められなければさらに誰かが傷つくことになる。
失ったものは戻せない。それに思いを馳せるのは後でもできる。だから今は前を向く。前を向いて守りたいものを守り抜く。
だから、宣言した。
「お前の宣戦布告、確かに受け取った。
全力で今夜、お前の企みごとお前をぶちのめしてやる」
「ベホちゃん……」
『いい敵意だ。私の敵よ、余興にすぎんがお前を私の敵と認識する。
だから、全力でかかってくるがいい。お前達を排除した後、私は私の計画を成就させよう』
一足先に駅の西の公園でお前達を待っているぞ、と彼女は告げて、嘘のようにその場から消え去った。
月匣を展開していたメディアがそれを解くと、隣で拳を握り締めるベホイミに対して言う。
「ベホちゃん、とにかくベホちゃんのお友達と合流しましょう。あの人を止めるには少しでも戦力は多い方がいいです」
「そうだな」
そう彼女が言うと同時、ベホイミの0-Phoneが着信を告げた。
し
***
腹部に灼熱感。
頭は狂ったように痛みを信号として送り出す。
慣性上前に進む体のせいで、腹に突き刺さったものが肉とこすれ、さらにそこから痛みを全身へと訴える。
「……っ!」
漏れそうになる苦鳴を、柊はのどの奥でなんとかとどめた。
結果として、彼の手はレベッカに届いた。
レベッカがフードのついた服を着ていたおかげだ。最後の瞬間、何とか指先がフードに引っかかり、そのまま腕を全力で後ろへと振り切った。
……そのせいでレベッカは後ろに引っ張られて地面に背中を思いきり打ちつけることになったわけだが、命に別状はない。
その代わり、レベッカが拾おうとした瞬間に勝手に開いた黒い本の中から現れた闇色の槍が、魔剣を持つ時間すら与えられなかった柊の腹部を貫通した。
もっとも、これまで前線で剣を振り続け痛みには慣れている彼がこの程度で戦えなくなることはない。
そのまま魔剣を引き抜き叩き斬ろうと月衣に手を伸ばしたその時―――彼の体から、力が奪われる。
一度だけ味わったことのある感覚だった。あんなおぞましい感覚を忘れられるはずもない、凄まじい脱力感。「荒廃の魔王」と相対した時に受けた感覚は、つまり―――
(こいつ―――俺のプラーナ食ってやがるのかっ!?)
プラーナとは、可能性であり存在の力。それを全て奪われればそこに存在することさえできない存在力。
物であれ生き物であれ、そこに存在するために全ての形あるものが持つ力だ。
存在を強制的に削られるおぞましい感覚に本能的な恐怖が首をもたげかけ―――しかし彼はそれをねじ伏せた。
「こ―――のぉっ!」
プラーナを奪っているのは自身に突き刺さったままの黒い槍だ。
ならばそれを抜けばいい。黒い槍の大本になっている開いた本に、全力で蹴りをいれる。
蹴り飛ばされた本は地面をごろごろと転がった。
槍が無理矢理に逆ベクトルの力を受けて引き抜かれることで風穴に栓をしていたものがなくなり、体から多量に血液が失われていくのを感じて一瞬眩暈が襲う。
体のあげる悲鳴の絶叫を、気合で無視して月衣から魔剣を引き抜き、青い月匣を展開する。
あまり時間はかけられない。さっさと終わらせてベホイミあたりに連絡をいれ、ヒーラーにあたりをつけてもらうのが一番手っ取り早く合理的だ。
失われる血は無視。時間の勝負なら自身の体調を気にする時間すら惜しい。転がる本に向けて一歩を踏み出そうとし―――
「<フォースブレイド>っ!」
最近開発された冥属性の詠唱魔法がはじめて聞く声と共に発動。闇を鍛ち固めたような重さを感じさせる刃が撃ち放たれ、黒い本を両断した。
本はさらさらと粉となり青い世界へと溶け消える。
そのあまりのあっけのない終わりに一瞬呆けたようにそちらを向いたまま硬直する柊。自分の覚悟はなんだったのかと思う光景だ、それも仕方のないことだろう。
そんな彼の背後に向けて、足音が近寄ってくる。その音はばたばたと騒がしく、あまりにも急いでいるようだった。
彼がそちらを向くと、そこにいたのは銀の髪を黒いリボンで二つに括り、赤い瞳をらんらんと輝かせた色の白いゴスロリの少女だった。
その容姿は人形のようだ。白い頬が、走ってきたせいで少し桃色に染まっているのでさえ美しいと思えるような極上の美少女。
今まで銀髪の少女にあまりいい思い出のない柊でさえ、一瞬その娘に目を奪われた。
別に好みとかそういう意味ではなく、美しいものを見た時に生まれる純粋な感動だ。結構本気で死にかけてるのに余裕だなこの男。
が、そんな感動も少女自身の次の発言で木っ端微塵に砕かれる。
「大丈夫でありますかっ!?」
どこの、っつーかどっちの軍曹だ。
そんなツッコミを通常なら入れられるのだろうが、HPレッドゾーンの柊はさすがに脱力しきってその場に座りこむ。
これまで張りつめていた緊張とか覚悟とか死の予感とかがこの少女一人に全て粉砕されたことも原因だろう。
彼の様子がその場に崩れ落ちたようにでも見えたのだろうか、少女は心配そうに駆け寄ってくる。
「生きてるでありますか、ちゃんと意識を保つでありますよ!?」
「生きてるよっ!?半分以上死んでる気がするけど、意識はある」
こんな会話ができるのも常識の外側にいるウィザードだからだろうか。
正直、この男の常識は非常識の存在であるウィザードの常識からすら外れている気がしないでもないが。
閑話休題。
意外に元気そうな柊に驚きつつも、少女は彼の左脇腹にぽっかりと空いた真っ赤な風穴をうわぁ、と呟きながらも検分する。
「これはまた綺麗に穴が空いてるでありますな。内臓とかぐっちゃぐちゃでありますよ」
「言うな、想像するから。お前は怪我人の残り少ない気力も削ぐ気か」
「そういうこと言わないと、怪我しても平気そうな顔してる怪我人は絶対反省しないから積極的に言えとウィザード研修受けた時に指導されたでありますよ」
「どんな指導者だよ……」
ツッコミにも覇気がない。
ともあれ、少女はその空洞の前に臆さず手をかざし、初歩の治癒魔法<ヒール>をかける。
非常に真剣な様子で、それに集中しすぎて、背中からどこかデフォルメされた形の、小さく可愛らしい蝙蝠の翼がにょきりと生えているのに気づいていないほどだ。
さすがに傷が深すぎるのかすぐに楽になることはないものの、数回かけられたことでじわじわと、やがてほぼ完璧に復調する。
魔剣を片付け、真剣に傷口のあった場所を見つめる少女に向けて礼を言う。
「助かった。ありがとうな、えーと……」
名前を聞いていないことに今更気づいて戸惑っている様子の柊を見てぴんときたのか、少女は笑顔で答える。
「わたくしはノーチェであります。あなたはなんという名前でありますか?」
「柊 蓮司だ。改めて助かった、ありがとうなノーチェ」
「治癒魔法は専門外なので少し心配だったありますが、失敗がなかったようで一安心でありますよ」
「怖ぇこと言うなよっ!?」
知人、というか幼馴染にヒーラー/陰陽師のくせによく大失敗で仲間をかなりの重傷に追い込む少女がいるため、
治癒魔法の恐ろしさをよく知る彼は全力でツッコミをいれた。
ん
にゃはは、と頬をかきながら少女―――ノーチェはまじまじと柊の顔を見た。
「しかし、あなたが例の柊 蓮司でありましたか。こんなところで会うとは思っていなかったであります」
「例のってのはなんだ例のってのは」
「あ、0-Phoneで写真とってもいいでありますか?実家に送って自慢するでありますから」
「俺は珍獣かなんかかっ!?」
閑話休題。
柊はこの町に今いる定住者でないウィザードは自分以外に二人であることをベホイミから聞いている。
片方は桃月町でプラーナを狩る者であり、今レベッカを―――実際襲われたのは柊だが―――襲おうとしたウィザード、片方は別の理由で来ていると聞いていた。
検討はつくものの、一応確認をとるために彼はたずねた。
「お前なんでこの町に来てんだ?観光地でもなんでもねぇぞ、ここ」
「おぉ、それを聞いてくれるでありますかっ?」
えへへー、と嬉しそうな表情を隠しもせずノーチェはポケットから一枚の紙を取り出す。
桃月町の写真がいくつかプリントされ、でかでかと『日本の交流区域をゆく -桃月町3泊4日の旅-』とプリントされた紙に、柊が一瞬目を丸くする。
ノーチェは(ない)胸を張り、答える。
「ちょっと久しぶりに実家に帰ったら、背教者会議イタリア地方会議所でやってた福引のお知らせが届いてたのでありまして。
引きに行ったらなんと特賞でありますよ!もうこれは仕事を休んででも羽を伸ばせという神の思し召しとしか!」
背教者である吸血鬼が神の思し召しとか言うな、とローマ聖王庁関係者が見たら即座に断罪に走りそうな危ない発言をかますノーチェ。
ここにいるのが、世界情勢にも疎く信仰心もそう強くない柊だったのは彼女にとって僥倖だった。
というか、何やってんだ背教者会議。
なお、この福引は背教者会議のトップであるレオンハルト=ローゼンクラウンの肝いりで始まったことだというのは知らないほうがいいかもしれない。
表向きは交流区域の設立に大きく貢献した背教者会議への礼として、交流区域側がたまにこういったことをするらしいということになっているが、
実際はレオンハルトの「ちょっと日本式で福引とかやってみたくないかな?」の一言で始まったことだというのもやっぱり知らないほうがいいことだ。
柊はそんなもんか、と呟いてこの少女がこの事件に無関係であることを確信する。
ともかく、今見た光景についてベホイミに連絡するべきだろうと0-Phoneを取り出す。
コール一回で即座に相手は電話に出た。
「よう、今どこだ?」
『柊さん。今は学校の近くっスけど、それがどうかしたっスか?』
「悪ぃんだけど、ちょっと迎えに来てくれねぇか?口裏合わせんのに協力してくれ」
『……今度は何したんスか』
「ちょっとイノセントが月匣の中にいて、とある事情のせいで今起こすわけにはいかないから月匣解除できねぇだけだ。
状況報告はここまで来てくれりゃするから、ともかく早く来てくれるか?」
ベホイミは少しだけ考えたようだったが、確かに報告は後からでも聞けると思ったのか彼女は了解っス、と答えた。
それに礼を言って、電話を切ろうとし―――電話はかけた側が切るのが礼儀だ、って柊、お前学生時は不良じゃなかったか―――彼は、思い出したように言った。
「あ、あともう一つ。学校に近いなら男ものの制服のシャツ一枚拝借してきてくれねぇか?」
腹部を中心に広く赤黒い染みができており、かつ大穴が開いている代物を着て町を徘徊すれば100%職質ものだ。
代わりはバイト先にあるが、このままそこまで行くのも絶対マズい。ついでに雇用主の店長にいらぬ心配をさせるのも彼の本意ではなかった。
ベホイミが了解っス、というのを聞き、今度こそ電話を切る。
ふと見れば、ノーチェがにこにこ笑ってまだそこに立っている。
「どうした?なんか言いたいことでもあるのか」
柊に聞かれて、彼女は答える。
「はいであります!怪我を治した礼、と言ってはおかしいでありますが、ちょっと一夜の宿とごはんをくださいでありますよ」
「ツアー旅行じゃねぇのかよっ!?」
意外にケチだな背教者会議。
13 :
桃魔の中身:2008/02/18(月) 13:25:18 ID:yYEY0d0L
どうもお騒がせしてます桃魔です。
……PC4、やっと出てきました。実はPC4のPLはずっとその場にいたのです、PCは遅刻してたけどPLは遅刻してませんでした的叙述トリック(違)。
キャラ紹介などは後編終了後のあとがきにて。
中書きは軽めにしめまーす。
返レス(全部前スレのもの)
>858 もったいないお言葉をありがとうございます……(感動)。これからも精進いたします。
>859 も、もしや本格的にもうPC4が誰か看破しておられましたかっ(たぶん偶然でしょうが)!?あざーっす!そう言っていただけると書いた人間は感無量です。
>862 何を今更。ベッキーはもともとかわいい子ですよ?俺が好きなのは大森先輩だがなっ(だからどうした)!PC4は……こんなオチですいませんでした(汗)。
>863 あの作品のスレ住人も卓ゲ者に劣らずカオスだが、まさかこんなトコにまでいるとは思わなかっ……え、えーと先に言っとくけど同姓同名って向こうは多いよね?
>864 PC4についてはこんな感じです。PLは起きてました。
>866 日常と非日常のギャップはわかりやすいドラマですからねぇ。別に専売特許ってわけじゃないが、これがないとNWは面白くないよね、とは思います。
>870 いつもお世話になってます。これがベッキーの底力です。俺が好き以下略!なるべくヒロインっぽく、でも本編を外れないよう意識したつもりですがどうですかね?
>872 食べたことないからわかりませんが無駄においしそうですよね>カレー。自分は忍者好みになった覚えはありませんじょ?
>873 もし遭遇してたら一発でバレてる気がします(汗)。開場3分前に駆け込みセーフった白い帽子が自分です。馬鹿です。目印のはずのampm多すぎるよあの辺っ!?
>875 ですから、あれがベッキーの実力ですって。俺が以下略!ベッキーはもともと可愛い子なんですよ、小学生編とかバスケ編とか読むととてもそう思う。
>887 酷い、ひどいよう……。
>894 (電話のコール中)……あ、もしもし警察ですか?
>>894にストリーキングがいるんですけど。はい。場所は(ry
>896 あざーっす。頑張ります!……でも、たぶん一番このスレ占領してたの自分だよなぁ……(汗)。
>898 なんとか今朝方戻ってこれました。ご心配おかけしました。
>901 押忍!誠心誠意やらせていただきます!むしろやらせてくださいお願いします。
>902 NWキャラでした。タイトルの意味、わかっていただけたでしょうか?
さて。現れた黒幕ですが何の意味もなく顔を見せたわけではなく、なかなかの策士のようです。
ならば、彼女の言葉には何らかの意味があるはずで……?
後編はその辺りからお話を始めようと思います。ではでは、今夜またお会いしましょう。
つまり、王子だな。支援。
乙。だが正直前スレに投下すると思ってたんだぜw
>13
乙。
なぁに、男でも女でも両方でも、全部ひっくるめていけますから。
【行くな】
乙です。
…ん?もしかして、サロンあたりでノーチェの一人称とかを聞いてらっしゃいませんでした?ww
メロンあたりで一人称とか答えちゃいました。僕。
>>桃魔的日の中身の人
GJ!
因みに、埋めも兼ねて感想は前スレに書き込みましたので。
敬具
嘘予告が嘘じゃなくなりそうな件について
ヤッチマイナー!!!
トカ&ゲーの出演は決まりだな。
23 :
912:2008/02/18(月) 15:18:40 ID:nhqKVj9Q
>>20 期待しちゃうぜ!
本編終了後設定だと魔法のテロリストこと、ヴィンスフィルトやオデッサが居ないのがなぁ…とか言ってみる。
>24
ええまあ、いろんなところは嘘予告を元につくってます。と、言うわけで最初の投下をば。
「あ〜あ、負けちゃったかあ…」
少女は、つまらなさそうに言った。その瞳に映るのは、もう一人の自分。自らの生み出した世界と共に敗北し、最後のあがきも失敗した自分自身を彼女は無表情に見つめていた。
少女は、用心深い性格だった。それはかつて彼女が種族の最下層であったことの名残。この世界の『雛形』を掌握し、圧倒的な力を手にしたのちも、その性分は変わることがなかった。
その用心深さが彼女に『保険』を用意させた。手に入れた『世界』を使って生み出した、自らのすべてのデータをコピーしたバックアップ。
力こそオリジナルに及ばないが、知識、知恵、性格すべてが同じ存在。
「さぁて、どうしよっかな…」
オリジナルですら敗北した彼女に、彼らを敵に回すだけの力は無いことは、自分が一番良く分かっていた。
もうバックアップを用意することもできない。次の敗北は、完全なる消滅を意味する。
すでに自らの持つカードは彼らに知られ、用意した切り札も失った。不利なゲームにわざわざ乗るのは好みではない。
しばし彼女は考え、そして、大人の女の笑みで、笑った。
「とりあえず、テーブルを変えましょう。私は、私の世界が欲しいだけ。手に入れられるのならば、どのファルガイアでも一緒だわ」
この世界のデータライブラリ、ヒアデスに触れ、彼女は知った。『遠き地球』は一つではないこと。そこへ渡ることも自分ならば、たやすいことを。
それゆえに彼女はあっさりとこの世界を去ることを決意する。
「場所は、私たちがいなかったところがいいわ」
知られていないこと、それは大きな武器になる。
「聞こえていないでしょうけど、さようなら。ヴァージニア」
ファルガイア最大の賞金首集団が誕生したその日、その言葉を最後に少女は誰にも知られることなく、この世界を去った。
初夏のさわやかな風がそよぎ、麗らかな日差しが優しい光を投げかけるテラス。
「今日も絶好の紅茶日和ですね柊さん」
そこで、世界の守護者アンゼロットは、完璧な手順で入れられた紅茶を飲みながら、目の前の男に言った。
「てめえ、いきなり拉致っといてんなことほざいてんじゃねえ!ってかこれほどけ!」
ガチャガチャと音を立てながら、鋼の鎖で椅子に縛りつけられた柊蓮司は、吠えた。
その言葉にアンゼロットは笑いながら答えた。
「そんなこと言って、解いたら逃げ出すじゃないですか」
「あたり前だ!今日でもう3ヶ月目突入だぞ!?たまには帰らせろ!」
柊は、世界の真実を知らなかった。あれでもアンゼロットは自分に振る任務を抑えていたのだと。
世界を揺るがした戦いの終結後、柊は朝から晩までのつきっきりの補習授業と追試の嵐を乗り越えることでかろうじて卒業を迎えることができた。
先生の話では後1回遅刻していたら留年確定だったらしい。
もし狙ってやったのならある意味恐るべき才能だよと、苦笑交じりに言われたとき、柊はその元凶の恐ろしさを垣間見た気がした。
かくして、不幸学生から不幸フリーターへとクラスチェンジを果たし、留年と言う楔を失った柊に待っていたのは、とんでもない量のアンゼロットからの依頼だった。
世界をまたにかけた、任務に次ぐ任務。つい1時間前に任務を終え、もしかしなくても俺ってロンギヌスよか働いてね?労働基準法とか違反でね?などと自問自答している間にまた拉致られて今に至る。
「どうせ家にいても寝るかゲームでもするくらいしかしないじゃないですか。いい年の若い人がそれでは後々困りますよ?」
「うるせえ!だからって2ヶ月連続して仕事を回すな!人生にはなあ、ただひたすらに惰眠を貪るような日が少しは必要なんだよ!」
「さて、和やかな雑談はここまでにして、今回の任務です」
「どこが和やかだっ!?」
柊の突っ込みは華麗に無視された。
『はるか遠き異界にて、新たな魔王が誕生する。異界は魔王の庭と化し、世界は、新たなる邪悪を敵に迎える。それを倒すには柊蓮司が必要となる』
「なんだこりゃ?」
目の前に置かれた紙に書かれた文面を読み、柊は首をかしげた。
「何って、もちろん預言ですよ?」
「預言って…何で俺がフルネームで入ってんだよ!?」
「そりゃあ、そういう預言ですから」
「んな馬鹿な預言、あるわけが…もしかしてあれか?皇子とにゃふうの日記なのか?」
あまりにもアレな内容に柊は突っ込みを入れ、その後思い当たる節に気づいて、げんなりとうめいた。
だが、アンゼロットの答えは意外なものだった。
「いいえ。残念ながら外れです」
それと同時にお付きのロンギヌスが紫の布に包まれたものを運んできて、柊の前で開いて見せた。その中のものを見て、柊は驚いたように言う。
それは、一振りの剣だった。柊のものとよく似ているが、ついている宝玉の色が違い、今の柊の魔剣と比べると少し小ぶりだった。
「こりゃあ…晶の魔剣か?」
「そのとおりです」
戦いの中で20,000年前の異世界に飛ばされた戦友の魔剣。異世界での戦いを終えた後、柊はせめて剣だけでもとファー・ジ・アースに持ち帰っていた。
そのあと自分で管理するのもなんだからとアンゼロットに預けていたものだ。
「この剣には20,000年分の異世界、ミッドガルドの情報が保存されていました。異世界の情報とは貴重なもの。そこでロンギヌスに命じ、データの解析を進めていたところ、見つけたのが先ほどの預言と言うわけです」
「そうか…」
その言葉に、適当な相槌をうって、柊は考え込む。晶が残した預言。異界というのはミッドガルドだろうか?何にせよ、見過ごしていい内容でもない。
「…んで俺は何をすればいいんだ?」
柊はアンゼロットに向きなおり、聞く。
「引き受けて、頂けますか?」
「どうせ嫌だっつっても無駄なんだろ。とりあえず、話を聞かせろ」
「わかりました。では、ご説明いたしましょう」
アンゼロットが頷く。柊はそれに頷きかえし、先を促した。
「つい先日、この魔術師協会のデータベースに何者かがウィルスを投入し、データベースをハッキングしました」
「ハッキング?んなことできんのか?」
魔術師協会のデータベースには幾重にもファイアーウォールが設定されており、常時専門のスタッフが監視をしている。更に呪詛を利用した魔術的防御まで施された、非常に堅牢なものだ。
そこいらの人間に突破できるものではない。ウィザードでも、それが可能なのはほんの一握りだろう。
「ええ。スタッフの話ではまるで生きているかのような反応の速さのウィルスだったそうです。幾重にも張り巡らせられた防御をあっという間に突破されました。
そして、ウィルスは何らかの情報を入手し、脱出を図ったのです。その後の必死の追跡で、相手の位置を特定することに成功しました。ですがその場所というのが…」
「異世界だった、と言うわけか」
「はい。それも主八界には含まれない我々にとってはまったく未知の異世界。1人送り込んだら、その後に増援を送るのには3日はかかる場所です。
そのような場所の任務には、とにかく腕の立つウィザードでなければなりません。また、預言が本当であるならば、その異界にいるのは新たなる未知の魔王。
並大抵のウィザードでは返り討ちにされてしまうでしょう。ですが、預言を信じるならば、柊さん、あなたならばそれを倒せるのです」
アンゼロットの言葉に、柊は少し考えた後、深くため息をつき、言った。
「わーったよ。アンゼロットの頼みならともかく、他ならぬ晶のご指名だ。行ってやるよ」
「私の頼みなら云々は後で言及するとして、とりあえずそうと決まれば善は急げと言います。すぐに手配しましょう」
「よし、まずはこの鎖を解いてくれ。引き受けると決めた以上、逃げたりはしねえからよ」
話がまとまり、柊は当然と言えば当然の要求をした。だがそれに
「それは出来ません」
アンゼロットは笑顔で答えた。
アガートラームだよ支援
「…は?」
思わず柊の口から間抜けな声が漏れる。
「ただの異世界ならともかく、全く未知の異世界へ至るには、世界結界を突破するための力と、正確な弾道計算が必要なのです」
「弾道計算ってなんだよオイ!?」
アンゼロットの不穏な言葉に柊は必死の形相で鎖から逃れようとする。だが、魔術強化まで施された鋼の鎖はビクともしない。
そんな柊を生暖かい表情で見ながら、アンゼロットは手元のボタンを押す。
音を立ててテラスの床が開き、姿を現したものには、黒光りする筒と台座、導火線、そして金文字で彩られたプレートがついていた。そのプレートに刻まれた文字は
『柊蓮司カノンMk2』
「てめえまさかまた」
「では、準備をお願いします」
柊の言葉を遮り、アンゼロットが言うと同時に、ロンギヌスのメンバーがわめく柊を無視して椅子ごと抱え上げ、大砲の中に詰め込む。
アンゼロットは笑顔で傍らのロンギヌスが恭しく差し出したマッチを擦り、火を導火線に近づけた。導火線がバチバチと音を立てて短くなっていく。
「それではくれぐれも頼みましたよ、柊さん」
そう言い終わると同時だった。
どっか〜〜〜〜ん!
派手な音と共に
「覚えてろよ〜!アンゼロットォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」
柊蓮司は、星になった。
今日はここまでとします。
GJ!
ちょっとエッチなおねーさん登場に期待!
移動に大砲ってw
原作ネタだとわかっていても聖剣伝説2思い出すわ。
次回もガンバ!
GJ、楽しみにさせてもらいますー
・・・ってWA2のクロスとみせかけて、ボスは3からですかいっ!
ぐっじょぶ!
やっぱり出たか、黒衣の少女。
ヴィンス云々ってのは単に「魔法のテロリスト」って言いたかっただけ何で気になさらずにwww
37 :
桃魔の中身:2008/02/18(月) 22:13:43 ID:pkwFq22U
桃魔の中身です。5話後半は11時の5分前から投下したいと思います。
皆様お誘い合わせの上、支援協力をお願いいたします(どこのアナウンスだ)
ばっちこーい。
支援しよう。
ただし投下の拒否は認めない。いいかね?
力の限り投下し続けるんだ!
そして、最後に……GJと言わせてくれ。(意味不明)
5・夜を駆ける -Hero's come back!- 後編
レベッカは、肩を揺すられて目を覚ました。
「宮本先生、宮本先生!何寝てるんですか!」
「んあー、早乙女?うるさいなぁ……」
ゆっくりと目を開くとそこにいるのは同僚の隣のクラスの担任教師だ。
起こしに来たのだろう、ご苦労なことだ、と考えて、なぜ自分が早乙女のいる場所―――学校にいるのかという疑問に行き当たった。
「あれ、なんで私学校にいるんだ?」
確か表彰式の直後、レベッカは迫り来る生徒達から逃げて近くの空き地の土管に逃げ込んだはずだ。
その後お節介が来て、結局土管から出ることになって、黒い本を見つけて、
―――何か、赤い、ものが、自分じゃなく、どこかから、ばらまかれて
「何言ってるんです。生徒から逃げてる途中で転んで気絶して、そこを柊君とメディアに助けられたんでしょう」
「へ?あ、そうだったな。そうだ」
その言葉で、赤い光景が吹き払われた。
もう、しっかりしてくださいね、と言って早乙女は職員室から出て行く。部活の顧問のためだろう。
その背中にうるさいバカ、と答えて、レベッカは一人職員室に残される。
外を見れば、相当に暗い。昨日言われた言葉を思い出して、さっさとメソウサを呼んで帰ろうと思い―――じっと携帯電話をみつめる。
彼女の携帯には一つのアドレスが登録されている。
それは昨日はじめて会った相手だ。ただの知り合った近所の子供に、危なくなったらいつでも電話しろと言って強制的に近い勢いで情報を交換させるお節介。
個人情報保護もなにもあったもんじゃない、とその時は思ったものだったが、不思議と断る気にはならなかった。
それだけの相手だ。それだけの相手でしかないはずだ。しかし。
「……別に、礼くらいしてもバチは当たらないよな」
そう、誰かに言い訳するように言って。彼女は一通のメールを送る。
送信ボタンを押す時に指が震えたのは秘密だ。断られたらどうしようとか不安と期待がない交ぜになっていたのも秘密だ。
ともかく、送った。送ってしまった。まだ足が震えている気がするが、無視することにした。
と、その時後ろから声がかけられる。
―――おまたせしましたー。
「お、待ったぞー」
やってきたのはメソウサだ。レベッカを見て、嬉しそうに笑っている。
その笑顔がやけに嬉しそうで、少し気になった彼女はたずねる。
「どうした、何かいいことでもあったのか?」
―――いいえ、一緒に帰れるって幸せだなーと思っただけですー。
「ヘンな奴だな」
―――そんなー!
メソウサはやっぱり泣くものの、その表情はやはり嬉しそうだった。
彼は知っているからだ。この世の常識の外を。そこに引き込まれそうになった彼女を、引っぱり上げた奴がいたことを。妖怪同士のコミュニティもなめてはならない。
彼は知っているからだ。この世界がどれだけ脆いかを―――そして、脆い世界を守ろうとする人間がいることを。この、自分の腕を握ってくれる手の暖かさの有り難さを。
だから、この手を守ってくれたことはありがたいことなのだ。『有り』『難い』ことなのだ。かけがえのないものなのだ。
それに感謝を、そして武運をと祈る。この手を解く未来を望む者と戦う者たちに、自分の望む未来を託して。明日もまた、この手が自分を引いてくれることを祈る。
―――季節はずれの、星が流れた。
***
柊の部屋に、メディアが入ってくる。
月匣内で着替え終え、ベホイミがともかく作戦会議をする場所を、という話になった時にここしかないという話になった。
ベホイミは「ウチ、今人が入れる状況じゃないんで……」と遠い目で涙すら浮かべ、メディアは「女の子の部屋に入るなんてダメですよ?」とにこやかにかわした。
居候の身で部屋に知り合いを連れ込むというのは激しく抵抗があったものの、贅沢も言ってられない。
……店長的には連れ込まれるのが女の子という方が激しく気になるのだろうが、柊 蓮司にその手のことは期待するだけ無駄だ。
「ご苦労っス。宮本先生はどうでしたか?」
「早乙女先生が声をかけて、すぐに帰ったみたいです。これ以上通り魔が起きることはないですから、気をつけて帰ってくれれば大丈夫でしょう」
そうか、とベホイミと柊が安堵する。
彼らが柊の部屋に行く代わり、メディアには気絶したままのレベッカを学校に運んでもらっていたのだ。
その間にお互いの説明を行い、状況を把握する時間が必要だったのもある。
今度はメディアがたずね返した。
「それで―――柊さん、でしたか。その子は一体どなたです?」
「……一応、命の恩人ってとこか。恩返ししろって言われたんだよ、仕方ねぇだろ」
メディアが指差したのは、何故かこの場にいるノーチェだ。命を拾ってもらった手前、彼には彼女の宿泊場所の提供と食事の提供を断る術は残されていなかった。
もっきゅもっきゅと、店から材料を拝借して柊の作った腕一本サイズのバゲットに縦に切れ目を入れサラダとハムを詰めたまかないを縦笛を吹くように咀嚼して飲み込む。
……これだけ見ていると本当にのどかな光景である。
ベホイミはそののどかな光景から目を逸らしつつ、シリアスな方向に話を持っていく。
「と、ともかく。状況を整理するっスよ。
敵はブランシェリーナ=セルジュって言う女ウィザード。狙いはこの町の妖怪と彼らに関わりの深い人間の排除。
そして、その得物―――<血の文書(クリムゾン・ロウ)>っていうのは、一定の儀式をして0時を超えればそれを速やかに執行する魔導具」
「プラーナを集めることで威力を増すこの魔導具には、製作者にして使用者の強い意思が乗り移ります。
今回の使用者、ブランシェリーナさんは人外に対して強い気持ちを持ってたんでしょうね。
人外とそれに深い関わりを持つ人間しか襲えないその魔導具でプラーナを集めるには、交流区域はぴったりだった。そして、彼女の目的にも合致したんでしょう」
それは、妖怪と人間の完全なる隔離。共にあっていい存在ではないと、ブランシェリーナはそう言った。
ベホイミはそれを鼻で笑う。
「はん、ご大層なこと抜かしてんじゃねぇっスよ時代遅れの選民思想者が。
やってることはただのテロリズムじゃないっスか」
「相変わらず言うことキツいな、お前……。
―――ま、やる前から諦めて他人に余計なちょっかいかける奴ってのは確かに俺も腹立つけどよ」
「私もです。ベホちゃんと同じで、私もこの町が大好きです。だから、私も戦います」
そう言って不敵に笑う3人。
そこへ、声がかかった。
「そう簡単に止められる相手とも思えないでありますがね?」
けぷ、と可愛らしく生理現象を見せるノーチェだった。
全員の視線が集まったことを理解して、彼女はぴっと人差し指を立てる。
「いいでありますか?複雑な儀式魔法っていうのは、術式をいくつかのブロックに分けてるものでありますよ。
儀式に必要なプラーナや魔力を集める術式、力を収束させる術式、収束した力を振り分け循環を起こす術式、その力を加工・変換する術式、望む結果を起こす術式、
邪魔の入らないように結界を敷く術式が必要な場合もあるでありますな。他にも色々たくさんであります。
聞いていた話では、すでに必要な力は集められているようでありますからいくつかの手間が省けるでありましょう。
術式そのものは<血の文書>に記されているもの。<血の文書>はある種使い魔のような魔導具とのことでありますから、ある程度の自律行動はできるでありましょうな」
近接専門職の竜使いと魔剣使い、諜報と人脈に特化した忍者には難解に過ぎる本格的な魔法用語がずらずらと並べ立てられ、当然きちんと理解ができた者はいない。
全員の心の声を代弁するように、ベホイミが問う。
「え、ええっと……すいませんっス、わかりやすく説明してもらえないっスか?」
「つまり、<血の文書>は使用者が近くにいなくてもその効果を発揮できる、ということでありますよ」
そう言われ嫌な予感に見舞われる三人。使用者がいなくても使用できるということは、使用者と<血の文書>が別の場所に設置されている可能性があるからだ。
その言葉を、ベホイミが曖昧に否定してみようとした。
「い、いくらなんでもそこまでは……」
「そうとも言い切れねぇな。そもそもお前らのとこにそいつが顔出したのは、宣戦布告もあるだろうがプラーナを吸収すんのを邪魔させないためだったんだろ?
だったら、自分の居場所をおとりにする程度のミスリードをやってのける可能性はある」
柊が考えこんでそう言った。
ベホイミがあわてる。この町を守るために必要な情報は、ブランシェリーナの位置ではなく<血の文書>のある場所だ。
それを、まんまと出し抜かれている形になる。
「ど、どうするんスかっ?0時までに<血の文書>っていうのを止めないと、この町に被害が出るっスよ!
けど、場所がわかってるのは<血の文書>を持っていないかもしれない黒幕の居場所だけなんて―――時間がないのにっ!」
そう焦燥感に駆られるベホイミ。
部屋に嫌な沈黙が下りるかと思われたその時、その不安と焦燥を吹き飛ばしたのは、やはりノーチェだった。
「<血の文書>の場所がわかればいいでありますか?」
はい?と異口同音に彼女の言葉に思考を停止させる3人。
ノーチェは月衣に手を突っ込んで―――彼女の身長の半分ほどはありそうな唐草模様の大風呂敷の球状の包みを取り出した。
風呂敷からごろん、と現れるのは巨大な水晶球だ。
確認するようにノーチェはベホイミにもう一度問う。
「調べたいのは黒幕と<血の文書>が一緒にいるかと、もしそうなら<血の文書>がどこにあるのか、でありましたな。
黒幕がいる場所はわかってるでありますから、<血の文書>の場所がわかれば一緒にいるかどうかもわかるでありましょう?それで間違ってないでありますか?」
「え。あ、はい。そうっスね」
支援ー
支援だぜよ。
あとこのSSも避難所が必要な気がしてきた。
8.5KB超えでおさるさんらしいし。
じゃあちょっと待つでありますよ。と笑顔で答えて、ノーチェは巨大な水晶球に向けて両手をかざす。
アブラ〜、カダブラ〜、はんにゃ〜、テク○ク〜となにやら(魔法系統的にも)怪しい呪文を唱えながら、彼女はプラーナを少し開放して怪しい身振りをする。
怪しい。この上なく怪しい。
が、時間がない中方法がないためにノーチェの姿をじっと見つめるしかない三人。
やがて、脈絡なく彼女は両手を天に掲げて叫んだ。
「―――喝ーっ!」
……だから、魔法系統的にツッコミどころしかないって。
しかしそれをスルーして、ノーチェが額の汗を腕で拭い水晶球をみつめると、そこにはぼんやりと町の風景が浮かぶ。
見えるのは夜景。家々の明かり。
次に見えたのは、不揃いな木々。東京のど真ん中で、木々が密集する場所はけして多くない。
そしてもう一つ見えたのは、ぼろぼろの白いベンチ。それでピンときたベホイミが叫んだ。
「4丁目の森林公園!そうか、あそこならある程度広いし儀式のスペースも確保できるはずっス!」
場所の特定ができたベホイミの声にあわせ、メディアが月衣から調査結果の封筒を取り出し、その中にある桃月町の地図を引っぱり出して印をつけた。
柊が腕を組んで唸る。
「結構離れてんな。こりゃ片側に時間かけてたら洒落になんねぇか」
彼らの勝利条件は<血の文書>の術式の発動を止めること。
だが、ブランシェリーナを無視して<血の文書>の発動を止めに行ったところで彼女が邪魔をしにくることは目に見えている。
一番安全で確実なのは、ブランシェリーナを倒して<血の文書>を破壊もしくは停止させることにほかならない。
となれば、力を分散して各個撃破が一番の対応策だ。寡兵を分けるのは失策とされるが、相手もまた数が多いわけではない。
3人で対応するのならそれが一番だろう、と柊が言ったその時、傍らにいたツインテールが不思議そうにぴこりとゆれた。
「なんで3人でありますか?」
「なんでって……俺と、ベホイミとメディアで3人だろ?」
そう本気で不思議そうに彼が確認すると、ノーチェはやれやれとばかりに肩をすくめた。
「聞いてはいたでありますが、ホントに頭悪いでありますな、蓮司」
「毎度毎度うるっせぇよ!?どいつもこいつも人を好き勝手に頭悪い言いやがってっ!
っていうかてめぇに言われると死ぬほどむなしいわっ!?」
中の人的にな。
閑話休題。
ノーチェは自身を指差して、自信ありげに胸を張った。
「ここにもう一人、行きずりのウィザードがいるではありませんか」
自分もいるだろうと主張するノーチェに、ベホイミが不思議そうにたずねた。
「ノーチェさんも協力してくれるんスか?」
「もちろんでありますよ。協力しちゃダメでありますか?」
「いえ、そういうわけじゃないっスけど……なんでこんなに協力してくれるんスか?
ノーチェさんはこの街になんの関係もないのに……」
その言葉に、ノーチェは綺麗に笑う。
「この町は、いい町でありますな」
ノーチェは吸血鬼だ。
見た目どおりの年をとっているとは限らない、常識外の存在―――人外、妖怪とも呼ばれる括りに入るものだ。
おそらくはここにいる誰よりも長くを生きているのだろうが、しかしその表情は無垢な赤子のように。
「人間だとか、人外だとか、そういった区切り(こと)はくだらないのでありますよ。
この町を見ていると、その考えは正しいと思うのであります。
みんなが対等に話して、みんなが笑う。それが、完璧とは言わなくてもここにはあるのでありますよ。
―――それに。商店街のたこ焼き屋でたこ焼きをおごってくれたみのりが、また一緒に食べようと言ってくれた約束、守らなければならないでありますし」
だから、私もこの町が続いていってほしいのでありますよ、と綺麗に笑った彼女を見て、ベホイミが肩を震わせる。
メディアがハンカチを取り出すのを受け取って、彼女はこみ上げてきたものを押し隠す。
柊は、携帯にメールが来ていたことに気づく。差出人は、この町で会った一人の少女のもの。彼は、それを見てふっと笑った。
ベホイミは顔を上げる。前を向く。ただ、この町を守りたいという思いをかなえるために。
「柊さんと私は別れた方がいいっスよね」
「アタッカー同士だしな、どっちも倒さなきゃならねぇなら火力は分けた方がいいだろ。
そういうことなら、俺とノーチェで<血の文書>潰しに行ってやる。お前は敵さんのご招待受けたんだろ?だったら、『この町の敵』を真っ向からぶち抜いてやれ」
それがこの町守るお前の仕事だろ?と聞くと、ベホイミは力強く頷いた。
もちろん、ベホイミとメディアは敵に面が確実に割れているので、相手にこちらが掌で踊っていると思わせて油断を誘うという意図もある。
4人は顔を見合わせると、ベホイミが手を差し出した。
「とりあえず、これが終わったら皆でバカ騒ぎするっスよ」
メディアがそれに手を重ねる。
「賛成です。ベホちゃん太っ腹♪」
誰がおごるか!?と言っているベホイミを無視して、そこにノーチェが手を重ねた。
「わたくしも行っていいでありますかっ!?お金がなくて今夜の宿にも困るのでありますよっ!」
最後に柊が手を重ねる。
「さっきメールがあったんだけどよ、レベッカが料理大会で特別賞もらって副賞に出た近所の焼肉屋の貸切招待券、日曜にクラスの連中に使うからついでに来ないかだと。
それでいいんじゃねぇのか?」
「お、いいっスね焼肉。ここは宮本先生の乙女心を理解しない柊さんの鈍感さに感謝するべきっスか」
「ちょっと宮本先生が可哀想ですけど……まぁ、ご厚意を無駄にするのはよくないですよね」
「蓮司!焼肉ってあれでありますよねっ!
食べる前にはリミッターを解除してかからねばならない伝説の肉の闘技場のことでありますよねっ!?わたくしも行っていいでありますかっ!?」
「ベホイミとメディア、お前らの言ってる意味がよくわかんねぇんだが。あとノーチェ、友達も連れてきていいぞって書いてあったからいいと思うぞ」
軽口が重なりながら、約束が積まれていく。
これで全員死ねなくなった。後は信じて走るだけ。
―――さぁはじめよう。大切なもの(やくそく)を守る戦いの、その第一歩を踏み出そう。
ベホイミが、叫ぶ。
「行くっスよ。帰ってこい!!」
おう!と3つの声が響き、重なった掌を拳に変えて、4つの拳がうちあった。
しえ
***
桃月町4丁目、森林公園。
その奥まった場所の地面に、青白い輝きを放つ奇妙な図形があった。
見るものが見れば、それが魔力を帯びた魔法陣であることがわかっただろう。
その図形の中心には、黒以外の色がなく、材質が何で出来ているのかも見ただけではわからない装丁のハードカバーの本が置いてあった。
黒の本は、風もなくめくるものもないのに、ぱらりぱらりと規則正しく一枚ずつめくられていく。まるで、本そのものに意思があるように。
それこそは<血の文書>・『アンジュ』。
この町の人間や妖怪のプラーナを奪い、この町に数え切れぬほどある人と妖怪の絆を絶たんとする『町を襲う災厄』。
その本のページが全てめくられきった時、この町を襲う災厄は顕現する。
誰も気づかなければ、気づかれぬうちに数多の絆が今夜断ち切られただろう。
―――そう、『アンジュ』の使用者の意図に、誰もが踊らされているだけだったのなら。
深夜の森林公園に、赤土を踏みしめる音が響く。
足音は二人分。この町全てを相手取るものである『アンジュ』に対して、対峙するのはたったの二人。
けれどその二人、けしてあなどることなかれ。
「お、あれか。月匣先に展開しといて正解だったな、当たり前だけど隠そうとしてねぇ」
やれやれ、と不敵に笑うのは、これまでいくつもの世界を幾度となく守ってきた剣の担い手。
そのとなりで不満そうに腕を組むのは、大魔王の企みを退けた、絶滅社所属の吸血鬼傭兵。
「迷惑にもほどがあるでありますな。それじゃあちょっと小手試しに―――<シューティングダーク>!」
彼女の近くに常に存在している魔法の一つが、名を呼ばれると同時にすぐに効果を生み、闇をこごらせ一矢と成す。
その矢は夜闇を引き裂き―――魔法陣の真上から球状に展開された結界によって弾き散らされた。
そんな光景に、吸血鬼少女はむ、とうめいた。
「結界―――結構硬そうでありますな」
「だな。まぁ、この程度で済ます気はあっちにもないらしいぞ?」
はい?と少女がたずねようとすると、すぐ近くまで炎の渦が迫っていた。
わひゃっ!?と悲鳴を上げ、彼女が頭をすくめようとするより早く、すでに剣を抜いている担い手がそれを剣で叩き斬る。
彼は、少女に言う。
「行くぞ。援護頼んだ」
「頼まれた、であります。さぁ好きなだけ突っ込んでくるがいいでありますよ!」
「そうさせてもらうぜっ!」
剣士は力強く赤土を踏み蹴り、吸血鬼は不敵に笑って。互いに己の内から最善の戦術を選び出す―――!
***
桃月西口公園。
人が集まらないこの時間帯に、一人の女が人待ち顔で立っていた。
亜麻色の髪の、グラマーな黒革のスーツの女は、腰布がひらひらと風に揺られるのを気にもせずに待っている。
公園の空気は青かった。月匣は、音一つなく静かなものだった。
月匣とは、多かれ少なかれ当人の心情を反映する。
例え世界と乖離していない形であったとしても、『自身の世界』である月衣の延長である以上は、術者の『自分』を反映する形になるのだ。
音のない世界は、彼女の内が静かで固い決意があるということの証左。
その音のない世界に、二つの足音が入り込んだ。
女は待ち人を見据える。
そこにいたのは、金髪のメイドとこの町を守る魔法少女。
女は、冷徹な瞳のままで言った。
「よく来たな、私の敵。こうやって会うのははじめてになる。
はじめまして、だ。知っているだろうが、私の名はブランシェリーナ=アンジュ=リヴァル。名を聞いてもいいか、私の敵よ」
言われ、少女達はブランシェリーナに厳しい目を向けながら答える。
「魔法少女、ベホイミ」
「メイドのメディアといいます。よろしくお願いしますね」
「短い間になるだろうがな。このまま私が時間を稼げば、『アンジュ』が術式を完成させ―――」
つまらなそうにブランシェリーナが告げようとしたその時、彼女はこの町に二つ目の月匣が発生するのを感じとった。
それまで無表情だったブランシェリーナの顔に、はじめて少しとはいえ驚愕が刻まれる。
ベホイミは、胸のすく思いで不敵に笑った。
「アンタ、まさかこの町を守りたいと思ってるウィザードが私達しかいないとか勘違いしてたっスか?
―――この町を、なめるな」
この町を、この町に住む人々を、その人々がつないだ絆をなめるなと。町を守る魔法少女は『町の脅威』の元凶に向けて言い放つ。
ブランシェリーナは驚愕を一瞬の内に己の鉄面皮の下に戻すと、眼前の敵を睨んだ。
「少しはまともな思考ができる者が残っていたか。
侮っていたことをここに謝罪しよう。しかし、これ以上はない。『アンジュ』には防衛用の攻撃術式も組み込んである。
さらにアレを守る防御結界は、条件次第では公爵級以上の魔王の一撃すら止めてみせる代物だ」
挟撃支援
そう言って、彼女は腰布をばさりと脱ぎ落とす。その腰布には魔法陣が描かれていた。そして、とブランシェリーナは足を踏み鳴らして告げる。
「お前たちが仲間の心配をする必要がないよう、ここで私が終わらせてやろう―――<ミリオン>」
名を呼ばれたものが、魔法陣から現れる。
それは巨大な金属の塊だった。おそらく金属だけでできているわけではないのだろうが、目に付く部分はすべて鈍い銀色で覆われている。
高さは7mほど。標準的な建物の二階弱ほどの高さのそれは、頭と胴と手足の区別があるだけの、不恰好な人間のようにも見える。
ブランシェリーナは、威厳をもって言い放つ。
「これは<ミリオン>。<真理の箒(エメスブルーム)>を知っているか?
錬金術師の一つの到達点、他の錬金術師に認められる一人前の証の一つは、己の手で物言わぬ自身の命令だけを聞く人形―――ゴーレムを作りだすことだ。
そのゴーレムのうち、もっともポピュラーで最低限のスペックを詰め込んだとされる最低限の品(ボーダーライン)が<真理の箒>と呼ばれるもの。
ゴーレムを作ることに特化して錬金術を学ぶものはな、そのスペックをさらに自身にあったように改正していくものだ。
そして―――これが、私専用のゴーレム。もの言わぬ我が手足にして敵を消すための道具」
つま先で腰布をひっくり返すと、違う魔法陣が現れる。その魔法陣を上に立てば、彼女ごと腰布は姿を消し―――<ミリオン>と呼ばれた箒のコクピットに収まった。
ブランシェリーナは、言う。
『そろそろはじめよう、私の敵。
この場は口上を並べ立てる所ではない。私の20年にわたる思いが勝つか、お前達のこの町への思いが勝つか。ただそれだけをぶつけ合うために用意された場だ』
ベホイミははは、と力なく笑う。
「なんスかそれ。反則にも程がないっスか?」
「わぁぁ……流石にこれだけ大きな代物は初めて見ますねぇ」
メディアの声にもやや呆けが入っている気がしないでもない。
二人は同じタイミングでため息をついて―――前を向く。
「けど、魔法少女としては負ける気はないんでしょ、ベホちゃん」
「当然だ。背中任すぞ」
はい、と笑うメディアを置き去りにする勢いで、ベホイミは矢のような疾駆を開始する―――!
支援
しぇん
54 :
桃魔の中身:2008/02/18(月) 23:16:19 ID:fe9/KNo3
nobudyknows+。
後編のクライマックス前に合うのがこの辺りしかでなかった。でも結構まんまな気がする。
前編がノーチェ登場編だとしたら後編はノーチェ活躍編です。ノーチェをあの過酷なリレーの中にたたっこんで置きながらフォローできなかった自分の罪滅ぼし。
え、マユリ?マユリはいいんだよずっと俺の脳内で繰り返し違うネタ元のクロスでヒロインやってるから。ここには様々な理由上投稿できんが(18方向ではないです)。
ノーチェ可愛いよノーチェ。彼女と大森先輩が一行でも絡めただけで自分はもう満足だよ。そこ、安いとか言うな。
決意と始まりのお話、どうだったでしょうか?お楽しみいただけたら幸いです。あと、たぶんエンディングは明後日の投下になると思われ。すみません。
キャラクター紹介・その4
ノーチェ PC4 キャスター/吸血鬼・魔術師 冥/虚
イタリア原産のおバカ吸血鬼。伝家のでっかい水晶球を使っての情報収集と、敵の妨害を得意とする絶滅社の美少女傭兵。
実は当時ついうっかり火山の噴火によりすっ飛ばされて消えてったちょっとお頭の弱い(本人談)吸血鬼の子孫、らしい。
セッション中はそれはむしろネタ発言で受け取られてたんでまぁそうかもしれん、そうでないかもしれんの精神で行きましょう。
桃月町に来たのは背教者会議の福引に当たったからで、戦う理由は友達と一緒にまたたこ焼きを食べたいからと箇条書きにするとなんかシリアスさががらがら崩れるキャラ。
一応魔術師でもあるため、魔法的な知識も多数持つ。よって、前衛職でがっちがちに固まってるこのパーティ内の知識面でのご意見番。ぱっと見そうにはとても思えないが。
性格は前向きで明るい。能天気とも言う。けれど、個人的には「無垢なる賢者」とか「賢いからこそ賢者というのではない」の体現のようなイメージ。
……あれ、おバカキャラで書こうとしてたのに腹ペコおバカになってないか?
レス返
>>14 要は王子です。……ん?なんか寒気が。風邪かな……?
>>15 すみません(汗)。前スレに投下できるのかわからなかったので、ちょうどたったこっちに投下しちゃいました。次から気をつけます。
>>17 Yesです。あそこでもお礼してきました。
>>18 その節はお世話になりました。ありがとうございます。
前スレ
>>915 ―――さて、一週間に渡ってお送りしてきたこのお話も、あとは一つとエピローグを残すだけになりました。
回復呪文組は黒幕を、王子ペアは脅威そのものを。それぞれ討ちに夜を駆けます。さて、どうなることやら。
昼間のノリとキャラクターの大半は氷川節、全体のノリと話の構成はきくたけ節を意識して書いたつもりです。色々至らぬ点も多かったですが。
ですからオーラスは、昔知人に「お前こういうの(ラストバトル)書いてると死ぬほど生き生きするな」と言われたことのある不肖このわたくし、
桃魔の中身の全力全開を見ていただけたらと思います。拙い内容ではありますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
ではまた。明日のお昼にお会いしましょう。
更に支援
(ガンナーズブルームを構えて)ロンギヌスへの23号、これより火力支援を開始する。
うわー、もうだめだー
57 :
桃魔の中身:2008/02/18(月) 23:24:32 ID:fe9/KNo3
レス返抜けてたorz
改めて
前スレ
>>915 そう言ってもらえれば柊もHP削った意味があると思います(たぶん)。
あ、今の柊ですがHPは全快なものの、プラーナは通常の内包値の半分まで削られてます。
具体的に言うと全力開放二回分のプラーナ。さて、奴は次回どう使うのでしょうかね?
うん!じゃあ今からアゼル様のとこに行って抱きついてくる!さらばだ!
>>51 7メートル?
つまり、「真理の箒」+【超巨大武器】か? それにドリル付けたら、スタイルクラスをどれにしても【マシーナリィオペレート】【オービットアーム】が鬼強な組み合わせだな。
ベホイミ、メディア……大丈夫か?
ともあれGJでした。最終回も楽しみにしてます。
>桃魔の人
乙。ノーチェは可愛いなあw
中身はクレバーだから
>>59 >>60 可愛くてクレバー…そうか、ちよちゃんかっ!?
【馬鹿は更にクロスした】
>桃魔の人
お疲れ様です。レベッカに萌えつつ楽しく読ませていただいております。
本当に、ネタ考えるだけでSS化できない自分とは大違いです。orz
(自分で言って落ち込んだらしい)
しかし、<血の文書>・『アンジュ』でしたっけ。かわいそうに。
柊の不浄な(アゼル様談)プラーナを吸ってしまったばかりに、
おそらく○ることになるのだろう。流石に○力対策は考えすら
していなかっただろうし。
…先の展開これでばらしたことになってたらやばいかなぁ、
もしかして。
ちなみに自分のほうは嘘予告みたいな形でも良いから出せるよう
頑張ります。が、あまり期待せんでください。元から期待されて
ないかもしれないけど。
>>54 GGGGGGGJ!惜しむらくは今日今まで用事があったせいで今まで読めなかったことなんだぜ!?w
王子コンビとはリプレイではなかなか見れない組み合わせだな!まぁ一応前例はなくもないがw
うん。正直ノーチェかな、とは思ってたんだ。
ぱにぽに系キャラが既に二人いて、NWキャラが柊1人、PCは4人となると、猛一人は多分NWキャラ。
で、ヨーロッパにいる香具師ってまゆりんとノーチェと九条瑞希くらいしかいない。
まゆりんは久しぶりか?っていう気がするし、瑞希にしては3話冒頭がアホの子すぎるww
・・・・ただね、タイトルとの関係について俺に説明してくらさいorz
>>13 __[警] ∠なに変態!? 変態は許せません!
( ) (゚∀゚)
( )Vノ )
| | | |
今、空いているかねー?
前スレの埋めついでに話題にしてた作品のプロローグが出来たんだけど。
どーぞどーぞ。
66 :
魔剣が???:2008/02/19(火) 01:10:07 ID:PI+Q2Bqp
了解。
短めだけど、次回からクロス先と繋がるよー。
それは必然だったのかもしれない。
それは運命だったのかもしれない。
悲しくて。
切なくて。
どうしょうもない絶望を伴って。
まるで悪夢のようだった。
見たくもない光景だった。
悲鳴のような金属音が、全身を震わせた。
脳に刻み込むような鈍い銀閃が、くっきりと目に見えて、
彼は。
彼は――柊 蓮司は悲痛な絶叫を上げた。
「ま、魔剣が折れたぁあああああああああ!!!!?」
手の中に握られて、ものの見事に折れた魔剣がそこにあったから。
【柊 蓮司の魔剣が折れたようです】
第0夜 魔剣を失った魔剣使いはただの使いである
68 :
魔剣が???:2008/02/19(火) 01:14:25 ID:PI+Q2Bqp
思えば無茶だったのかもしれない。
数ヶ月前東京・秋葉原で起こったシャイマールの覚醒事件、そしてそれを無事解決し、
なんとか高校を卒業した柊 蓮司に待ち受けていたのは――もちろん平和なんかではなかった。
任務。
任務。
任務の嵐だった。
高校生時代を超える任務の山が、彼を待ち受けていた。
本来ならばもっと早く気が付くべきだったのかもしれない。今まで彼の餌として、
そして僅かな希望としてぶらさげていた学校生活の出席日数。
それが餌として役に立つのは希望がある限り、つまり卒業に不可欠な出席日数を超えない
限りである。
今まで無節操に拉致していたと思われていたアンゼロットだが、絶妙に任務の期間と
出席日数を計算していたのである。
そんな暇があるなら、もっと書類整理とかに時間を費やせよとロンギヌスの誰かが考えたが、
まあ口に出したら最後、キルキルキル! しか言えなくなるまで地下で訓練させられる
羽目になることが明白なので、誰も言わなかったという。
閑話休題。
つまるところ、柊 蓮司の学生という立場が微妙にアンゼロットによる任務の量に抑制
をかけていたとも言える。
そして、今高校を卒業し、不良高校生から高卒職無し少年として社会的立場が成り下がった
柊に、容赦する理由は消えたのだ。
故に、彼には任務が下される。
時には日本の奥地で眠っている埋蔵金を掘りに行かされ、又は南海の海で秘宝を狙う密
猟者と争奪戦を繰り広げ、或いは宇宙でHAHAHA! と笑う芳香剤の戦艦に乗って(乗せられて)
地球侵略を狙うタコ型火星人のUFOを叩き切り、そして最後には何故か任務の際に
6割以上の頻度で出会う某ぽんこつ魔王にからかわれたりなど……
とにかく忙しい日々を送っていた。
彼の両目の下にははっきりと見えるほどのくまが色濃く現われ、しかも家に帰る暇も
ないのでアンゼロット宮殿の客室のベッドに服を変える暇もなく倒れ伏し、任務と任務の
僅かな休憩時間に価格にして数千円にも及ぶ栄養ドリンクを何本も飲むほどである。
たった数ヶ月で、柊 蓮司は疲労の極みとも言える状態にまでなっていた。
そして、その日。
いつものように、この数ヶ月連日のように繰り返されたお茶会にて。
「柊さん、今日も私の答えにハイかYESで答えてください♪」
「あー、おう……」
守護者アンゼロットの前で、決して手を付けるはずのない紅茶のカップを見ながら柊 蓮司は呻くような返事を返した。
かなりの疲労度であり、まるで死人のような状態である。
だがしかし。
「今日も素直で結構です。それではさっさと説明しますね」
楽しげに話すアンゼロットの目元……そこには見目麗しい美少女の顔には似つかわしく
ない黒いくまがあった。
決してネットゲーのやりすぎなのではなく、深く刻まれた疲労の証拠が。
簡単な話である。
柊 蓮司が死に掛けるぐらいに忙しく任務があるのは、それだけ世界の危機が多く出没
している証拠。
しかも、シャイマール覚醒時での迎撃戦で何十、何千ものウィザードが撃墜され、未だ
に病院のベットの上で唸っているものも少なくない。
慢性的な人手不足のツケとさらに弱体化した世界結界によるエミュレイターの出現が、
さらに忙しさに拍車をかけ、普段は勤務時間が五時間にも満たない守護者の生活を仕事で
埋め尽くしていた。
他人が苦しい時は自分も苦しい。
まさしくそんな状況だった。
まったく何の救いにもならない話だが。
「それでですね。今任務を続行中の、ウィザードの加勢に向かって欲しいのです。報告に
よると、相手は魔王級のエミュレイターらしいですが、雑魚魔王らしいので柊さんの実力
ならば必ずややり遂げると――」
「あー、了解了解……とりあえずさっさと送ってくれ」
アンゼロットの話を途中で切り、柊はひらひらと手を振る。
本来ならば一言の文句や反論を叫んで、そのまま問答無用で落下させられるのがお決まり
のパターンなのだが、今の彼にはツッコミをいれるだけの気力すらも失われていた。
「……分かりました。それでは、柊さん頑張ってくださいね」
そう告げて、アンゼロットがどこからともかく垂れ下がってきた紐を掴む。
そして、クイッとそれが引かれて――
「ぁー〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
カパッと開かれた床から、本当にやる気を無くすような絶叫を上げて柊は落ちていった。
こうテンションが下がるような声で。
「……」
その声を聞き、アンゼロットが僅かに額に汗を浮かばせる。
「そろそろ柊さんにも休暇を与えるべきでしょうか?」
その分の任務はロンギヌス・コイズミに割り当てましょうかと考えて、アンゼロットは静かに窓から映る蒼い地球を見つめていた。
疲れていた。
まるでやる気が無かった。
思えばそれが全ての原因であり、取り替えしの付かない失敗の元だった。
落下した先には目をパチクリさせて武具を構えたままの新人らしきウィザードたちが数人、
対峙していたのは丸っこい亀のような巨大なエミュレイター。
魔王級と呼ばれるだけあって、強い魔力を感じた。
けれど、それだけだ。
この程度の雑魚魔王なら何度も切り伏せている。
いつものように月衣から魔剣を抜き放ち、一秒でも早く終わらせる。
そんな思考で疲れて鈍った動きで地面を蹴り、生命力も伝達し切れない魔剣の刃を振り翳し、
切れが悪く手首を返して――魔剣を叩きつけた。
そう、それで。
それで――折れたのだ。
「へ?」
ボキンと嫌な感触がした。
クルクルと目の前でなにかが飛んでいた。
そう。
魔剣が。
こう、ぽっきりと。
ものの見事に。
折れました。
「ぁあああああああああああああああああああ!!!」
それが、柊 蓮司の新たなる事件(喜劇?)の始まりだったと誰が判っていたのだろう。
神殺しの魔剣。
幾多の魔王を滅ぼし、神を殺し、あらゆる魔を断ち切ってきた魔剣。
それを巡る新しい物語が始まる。
……幾多の女性を巻き込んで。
――次回 ??編/1夜【鍛冶師を探せ】に続く
投下完了
次回からクロスし始めます。
G乙J!
しかし、どうなるか見ものd……
あれ? 実はシュミットって実はレヴァーティンを作るのに協力したんじゃね?
今のうちにもう一人の来訪者のオープニングを投下しておきます。あの人です。
戦いは、佳境を迎えていた。相手は古より伝わる悪魔そのままの姿をした、魔王。
「これで、終わり!」
魔剣使い、七瀬晶の一撃が正確に心臓を刺し貫く。そして、魔王が倒れ込む。
「くはははは。おめでとう。私の負けだ。だが、私は蘇る。すぐになあ」
そう言って魔王は消え去る。一見すれば負け惜しみにも聞こえる魔王の最後の言葉を、晶は悔しそうに聞いていた。
魔王の言ったこと、それは事実だった。どれだけ深手を負わせても、決して滅することはできない。
1ヶ月もすれば、奴はまた蘇り、再び襲ってくるのだ。
「クソッ!」
晶は悔しそうに吐き捨てた。
「ご苦労様でした。晶殿。これでしばらくは奴も大人しくしておりましょう」
額に石を埋め込んだ青年が言う。彼はアルフ、このミッドガルドにおいて、最も発達した文明を持つ種族だった。
「いえ…私では、どうやってもあれを倒すことは出来ませんから…」
晶は疲れた声で言った。
「倒せないのは仕方ありません。それに晶殿の知識のお陰でレーヴァテインの研究も順調に進んでおります。いずれ奴を封印することも出来るでしょう」
「…そうですね。それまでは私も精一杯頑張ります。少し、休ませてもらいますね」
そう言って部屋を出て行こうとする晶を、アルフの青年、ここの指導者だ、が呼び止めた。
「…ときに晶殿」
「何ですか?」
晶は振り向いて、固まった。目の前の男は笑っている。笑っているが、目が笑っていない。
「貴方には感謝しております。私たちでは為す術がなかったあれと戦う事が出来、新たな知識ももたらしてくれた。ですが…若い者に変なことを吹き込まないで頂きたい」
「…変なこと?」
気圧されながら、晶は聞き返す。
「はい。最近の若い者は、口を開けばホワイティだのゴレンジャイだのスパムだの口走り、言葉も乱れております。聞けばこれらの話は晶殿から聞いたとのこと。
彼らはこれからのアルフを担うものたち。あまり変なことをお教えにならないよう、お願いしますよ」
「はぁ…」
自室のベッドに倒れ込み、晶はため息をついた。そして壁に飾られた自らの使う魔剣とまったく同じ形の魔剣を見る。
「柊くん、無事なのかな…」
あの戦いのあと、色々と聞き回っては見たものの、柊らしき人物はついに見つからなかった。
「おみそ汁、食べたいな。ガキ使取ってるHDD,そろそろいっぱいになってるよね。みんな、元気にしてるかな…」
アルフたちと話しているときや戦っているときは、まだいい。こうして1人になると、無性に泣きたくなる。
「柊くん、会いたいよ…」
知らず知らずのうちに晶は思い人の名前を口走る。その時だった。
「う〜ん。こんなのが本当にファルガイアを救えるのか?」
「誰ッ!?」
突然の声に晶は驚いて振り向く。
「ボクは、ダン・ダイラム。これでもガーディアン…君に分かるように言うと世界の守護者の1人さ」
そこに立っていたのは、二足歩行の猫だった。
「守護者?ミッドガルドの?」
どう見てもそんなご大層なものに見えなかったが元々いたファー・ジ・アースの守護者が女の子なのは知っている。
ならば異世界の守護者が二足歩行の猫と言うのもアリなんだろう、と。
だが、猫はクビを振って答える。
「いいや。ボクはファルガイアの時空を司るガーディアンさ」
「ファルガイア?」
聞いたことのない世界だ。
「そう、ファルガイア。まあ一言でファルガイアって言ってもたくさんあるんだけどね」
「それで、そのファルガイアの守護者がなんの用なの?」
つかみ所の無い猫に、晶は少しいらつきながら聞く。
「ああ、実は君にファルガイアを救って貰いたいんだ」
猫の言い出したことはとてつもないことだった。
「へ?救う?」
思わず、聞き返す。
「うん、そうそう。君には一緒にファルガイアに来て、助けて貰いたいんだ。君なら出来るって言われたからね」
その言葉に、晶は弱気になった。この世界に来ることになったのも、自分の力不足が原因なのだ。正直、自信が無い。
「そんな…無理だよ。大体、だれがそんなこと言ったの?」
その言葉を聞き、猫はしばらく部屋を見渡し、ニヤリと笑って、部屋の一カ所を指さして、笑みを浮かべて、言う。
「ああ、あれあれ。あれの使い手」
「柊くんが!?」
その言葉に、晶は驚いた。猫が指さしたのは、壁に飾ってある魔剣。柊蓮司の魔剣だったのだ。
「そうそう、そのヒイラギクン。むしろ君がいないとどうしようもないって言ってたよ」
柊蓮司は、生きていた。だが、自分と同じく異世界、自分とは違う、ファルガイアと言う世界に飛ばされた。
そして、自分に助けを求めた。それは晶ならやってくれると信じてくれたから。そんな考えが晶の頭に浮かび、晶の心に希望の光をともらせた。
晶は立ち上がり、拳を握って高らかに宣言した。
「私、やるよ!ファルガイアを救う!」
晶の言葉を聞いて、猫は更に笑みを深める。それはまるで詐欺師のような笑みだった。
「よし、そうと決まれば早速行こうか」
そう言って次元の穴を開き、晶の手を引っ張る。その勢いに晶は押されつつ、言う。
「ちょっと待って、柊くんの魔剣も持ってかないと困るんじゃないの?魔剣のない魔剣使いは、ただの使いだよ?」
「ああ、大丈夫大丈夫。それと、ボクが出来るのは案内までだから。向こうに着いた後は頑張ってね」
「へ?ちょっとーーー!?」
抗議の声と共に1人と1匹が消える。そして後には、誰もいない部屋だけが残された。
かつて尊い犠牲を払い、ファルガイアは救われた。全てが終わった後、ARMSは解散され、メンバーはそれぞれの道を歩み始めた。
それから2年。この物語は始まる。それは、2つのファルガイアと2つの異世界を結ぶ物語。
とりあえず、今回はここまで。次はいよいよ本格的に本編開始します。
>>66 龍騎の第一話を思い出したwww
>>71 GJ!
考えたら柊って姉視点で見たらただの高卒無職なんだよなw
>>77 対外的にはアンゼロット工務店とかに就職、単身赴任とかじゃないのかな
「柊さん……蓮司君は我が社の期待の新人なんです」
「騙されるな姉貴! 全部ソイツの陰謀だ!」
「黙りな蓮司! フラフラ学校サボって卒業も危うかったアンタを雇ってくれるなんていい人じゃないか!」
「学校行けなかったのは俺のせいじゃねえ!? その女が無理矢理・・・!!」
「酷いです柊さん・・・」
「蓮司、あやまれ!」
「なんで俺が悪いみたいになってんだよ!? くそおぉおお!!」
79 :
桃魔の中身:2008/02/19(火) 12:56:30 ID:W/tZoXJY
6話前編は13:30からやりたいと思います。
よろしくですー
お待ちしてまーす
6・すべきこと、したいこと -青い果実+真っ赤な誓い=『 』-
赤。
まどのそとには、朱いそらと紅いつきがうかぶ。
いえのなかは赤がべったりとそこらじゅうにあふれかえっている。
ゆかにねているのはまま、ぱぱ、せるじゅおにいちゃん、えれな。
どうしてみんなねているの?
みんなこたえてくれなかった。
わたしのまえにたってるのは、うちでかってるねこ。
わたしよりもおおきなおおきな、ぱぱよりおおきなまっしろのねこ。
ゆきのひにわたしがひろったまっしろいちいさなねこは、
いまは、真っ赤にそまってた。
わたしはねこのなまえをよぶ。
「……あんじゅ?」
『シェリー……』
ねこは、そのこえをきいて―――わらった。
***
硬質なもの同士がこすれるような甲高い音が月匣の内に響き渡る。
魔剣と結界のいく度めかの衝突は、やはり間に火花が散るだけに終わった。
しかし、それに対して感慨を抱く暇はない。結界の内側にある<血の文書>には、自身に近づくものに対する防衛攻撃術式も内包されている。
ぱらぱらと数枚のページがめくれ、ぴたりとそれがおさまったページに書かれている文章が、小さく光を放つ。
もしもそれを読める位置にいるものがいたなら、それが攻撃魔装<ディストーション・ブレイド>の回路文であることがわかっただろう。
柊の感覚が、自分の近くの空間が歪むのを感じ取る。虚属性の魔法の発動の前触れだ。
以前ある任務で裏界第二位の大魔王に遊びでイヤというほど叩きこまれた覚えが無駄にそんな感覚を強くしてしまったという哀しい経緯があるが、今はそれが彼の命を救う。
後ろに軽くバックステップし、効果範囲から逃れる。一瞬前まで彼のいた空間が見えぬ刃によって切り裂かれるのが、ぐにゃりと歪んだ光景という形で見えた。
しかしそれに安堵している場合でもない。
「蓮司、右!」
後ろに立つノーチェが声を上げる。
その声に体が反応して右に跳ぶと、彼の左側に銀色の雨がバケツをひっくり返したように降り注ぐ。水属性の<シルバーレイン>だ。
ノーチェの助言でそれを辛くもかわした柊は、離れた距離をつめるために走る。
小さく口の中で魔剣に魔法の炎を纏わせる呪文を呟いた。彼の知る少ない魔法は、違わずその効果を発揮する。
炎を纏った魔剣を担い、裂帛の気合とともに振りぬく。
「おっ、らああぁぁっ!」
侵魔の王すら切り裂くその刃は、しかし結界の前に無力だった。
結界に傷一つつけることはできず、間に火花が舞う。
けれど、その結果に彼は一つの確信を持つ。
柊が全力ではないとはいえ、それなりに高レベルの魔剣使いの一撃にまったく意味をなさないこの防御力は異常だ。
ノーチェの魔法も柊の剣も通さず、炎も風も存在への干渉すらもまったくの無意味。そんなものが人間に作れるのなら、<血の文書>が廃れることはないはずだ。
それに、結界に斬りつける度に妙な感覚を感じていたこともある。
それらが合わさり、彼の抱いた疑念は今確信に変わっていた。
しかし、<血の文書>は剣を振り抜きそれ以上身動きのとれない柊を容赦なく襲う。
再びページがめくれ、今度は三つの節が輝いた。
同時に生まれるのは渦巻く水の奔流と、それを取り巻くいくつも連なる炎の珠。
水属性の魔装<ウォータースパイラル>と火属性の魔装<ファイアボール>の融合。対になる属性同士の魔力を、相殺させずに上手く融合させたそれが柊を襲う。
体勢上回避は不可能と判断、即座に魔剣を盾に覚悟を決める。
プラーナの開放はしない。
ただでさえこの本に半分食われた状態なのだ、一滴たりとも無駄には使えない。そんなことに使う余裕はない。それ以上に、彼は共にこの場に立つ仲間を信じている。
着弾の直前、可愛らしい声が戦場に響いた。
「<ダークバリア>!」
ノーチェの声とともに、柊の傍らに黒い球が生まれた。その球は魔法を吸い寄せ、柊への攻撃の威力を削ぐ。
もちろん、そう長くもつものではない。その球は、あまりの威力にすぐに許容量を超えぱちんと弾けた。
残った融合魔装が柊を襲う。水の流れが圧力を伴って体を叩き、時折弾けて撒き散らされる高い熱量と爆風が内側にまでダメージを与えて彼を吹き飛ばした。
転がり、ノーチェのそばまで吹き飛ばされた柊に、彼女は叫ぶ。
「蓮司!」
その声に、意外に元気そうに跳ね起きる柊。
「おう。ナイス援護、助かった」
「……意外に元気そうでありますな?」
「あの程度でへたばれるかよ。こっちは日頃魔王相手にしてんだぞ?」
「普通、魔王級と相対するのは一生に一回あるかないかだと思うでありますが……」
「うるせぇよっ!?」
とはいえダメージがないわけではない。というか、割と深刻だ。
ノーチェは黒い本を睨んだ。
<血の文書>は二人にとどめを刺すためなのか、結界によって自分に攻撃が届かないと知っているように強力な発動魔法の準備に入っていた。
柊がぼやく。
「三種類の属性に複数魔法の同時発動……あれもこれもって手出しすぎるのは器用貧乏になるもんだけどな」
「魔術師と陰陽師は同じルーンマスター系であります。魔法戦士やるよりは器用貧乏にならないでありますよ。むしろお互いの短所を補いあう分強力になるであります」
「そんなモンか。って言っても魔装つけすぎだろあれ。まともに近づくのもかなりキツいんだが」
「金に飽かせてありったけ魔装つけてるんでありましょうな。
魔法の記憶容量については、あれはもともとが『記録する』ための本でありますからページの許す限りできるのでありましょうし」
「貧乏人からするとすっげぇ腹立つ。……とはいえ、とりあえずあの結界ぶっ壊す方が先だろうな」
腹立たしいが、確かにあの結界は固い。それさえなければ、今すぐにでも<血の文書>を破壊しに行けるのだが。
だからノーチェは隣の男に聞いた。
「壊せそうでありますか?」
柊はそれに平然と答える。
「俺じゃ無理だな。魔器開放使っても壊せる気がしねぇ」
「どうするでありますかそんなのっ!?」
あっさりと無理だと言った柊が、この場で一番攻撃に特化している。
最大火力が通用しないのならあの結界を破壊する術などあるはずもない。
けれど、柊は言う。
あれな、どうも攻撃の当たる場所に結界の構成密度を集中させるように作られてるらしい」
「と、いいますと?」
「攻撃が当たる瞬間に、あのドームみたいな結界作ってる―――なんて言うんだっけか」
「結界の構成要素でありますか?」
「あぁ、それ。それが集中するようになってる。
俺は剣で叩き斬るしかできねぇから、俺がやろうとするとよっぽどの威力叩き出さなきゃならねぇわけだ」
面の防御に見えて、実は点の防御であるため魔力を均等に張っているわけではないらしい。
それはつまり、一点の攻撃しか出来ない柊では破壊することが実質不可能であるということ。
そして、それはつまり。
「攻撃が全面から襲う範囲魔法なら、あれを壊せるということでありますな?」
「そういうことだ」
範囲に対する攻撃手段を持つノーチェなら、結界を壊すことができるということだ。
しかし、ノーチェは顔を曇らせた。
「蓮司、問題があるであります」
「なんだ?」
「わたくしが使える範囲魔法、発動魔法しかないのでありますよ」
発動魔法は、魔装と異なり呪文を詠唱して発動させる魔法だ。
その呪文の詠唱中、他の魔法を使用することはできない。つまり、防御魔法を使用することができないのだ。
そして、<血の文書>は今魔法の詠唱中。どれだけ頑張っても詠唱時間を短くする術を持たないノーチェよりも、<血の文書>の魔法の方が先に完成する。
ただでさえ妖怪を狙ってくる相手が、吸血鬼が魔法の詠唱なんて隙だらけのことをしているのを知って、狙わないはずがない。
柊が囮になるという手もあるが、相手が殺す気で放つ威力増強の限りを尽くして他人から奪ったプラーナを突っ込んだ一撃に、防御魔法のない状態で耐えられるかは疑問だ。
どうするかと柊が思案していると、これしかないか、とノーチェが呟いた。
「あんまり使いたくなかったのでありますが……蓮司もベホイミもメディアも命はってるのでありますから、やるしかないでありましょうな」
「ノーチェ、なんか考えでもあんのか?」
「一応、一個だけ方法があるであります。ただ、一つ約束してほしいでありますよ」
真剣な様子のノーチェに、柊もまた真剣な表情で頷く。
「何があっても、何が起こっても、わたくしのことを信じてほしいでありますよ。
わたくしのこれからすること、全部に意味があるであります。無駄にしないでほしいでありますよ」
「……正直よくわかんねぇが、わかった。お前を信じる」
不敵に笑って、ノーチェは言った。
「さぁ―――勝ちにいくでありますよっ!」
「おう、当たり前だ!」
じ
***
「どぉりゃああぁぁぁぁっ!」
女の子としてどうなのかと思う気合の声とともに、炎を纏うベホイミの拳が重い音を立て<ミリオン>の右膝に打ち込まれる。
通常のウィザードがまともに食らえばダメージ必至のその一撃は、しかし鋼の装甲に何度も何度も打ち込まれようとも、まともに効いたようには見えない。
ベホイミはさらにそこに膝蹴りをおまけで打ち込むも、やはり巨人は揺らぎもしない。
お返しとばかりに足を持ち上げる<ミリオン>。そのままなら7mの巨人に踏み潰されることになっただろう。
しかし、彼女は一人で戦っているわけではない。
「ベホちゃん!」
後ろから走りこんでいたメディアが、ベホイミの制服を掴み―――上に投げ飛ばす。
足とすれ違いながら、ベホイミは上へと向かう。
しかしベホイミのいた場所に今いるメディアには、振り下ろされる鉄の塊を避ける方法はないはずだ。
わずかな遅滞もなく振り下ろされた鉄塊は、華奢な彼女の体を無情にも押し隠す。
ずずん、と重い音とともに砂煙が舞い上がる。
やがてその砂煙が落ちそこにあったのは、少女の無惨な姿―――ではなく、いつもの笑顔で<ミリオン>の顔を見てたたずむメディアだった。
メディアはウィザードのクラスで区分すると忍者だ。その特殊な鍛錬で可能になる体のこなしは、奇術にも見まごうほどである。
必殺の一撃をかわされ、<ミリオン>を操るブランシェリーナに動揺が走ったのか。ベホイミの行動に気がつくのに一瞬遅れた。
彼女は、<ミリオン>の拳にあるわずかな出っ張りに足をかけて、ブランシェリーナのいるコクピットに向けて巨人の表面を蹴り登っていたのだ。
漢前な雄たけびを上げ、ベホイミはコクピットに向かう。
それに気づいたブランシェリーナはベホイミが今登りつつある<ミリオン>の右腕を跳ね上げた。
足場がいきなり動いたことで、ベホイミは地面から10メートルほどの高さに放り出される。
ウィザードはこの高さから落下した程度で死んだりすることはない。
が、空中で戦闘機動ができるほど自由な動きをする能力はベホイミにはない。
つまり、空中に放り出されれば彼女は的でしかない。
その的に対して、<ミリオン>は容赦なく拳を突き出した。鋼の圧倒的な質量が、無抵抗の少女に撃ち込まれる―――その刹那。
がんがんがんっ、とけたたましい音を立てて、<ミリオン>の腕に向けて飛来したものが突き立ち、わずかに軌道がそれた。
その突き立ったものを見れば、事情をよく知らない者は誰であれ目を丸くしただろう。
錬金術の粋を尽くして作り上げられた<ミリオン>。
その腕に突き立つのは―――食事用の、磨き上げられ銀に輝くフォークとナイフ。
そんな珍妙なものを武器として投げたのは、先ほど<ミリオン>の攻撃を避けたメディアだ。
曰く、「メイドの武器はハウスキープに使うもの全部ですよ♪」とのことだ。
その、仲間の作ったチャンスを、ベホイミは逃さず掴み取る。
軌道のそれた巨大な拳に足をかけ、ブランシェリーナのいる頭に向けて駆け下りる。
その速さはまるで矢のごとく。解き放たれた矢は、後ろを向くことなく一点を見据えて駆け抜ける!
「うおおおぉぉぉぉぉっ!」
腕はすでに拳を握り、大きく振りかぶられている。
その一撃で全てぶち抜くと言わんばかりの気迫とともに、彼女はその拳を振り―――
―――ばしゅんっ!と頭の真ん中にある穴から放たれた光の筋が、彼女の体を凄まじい勢いで撃ち抜いた。
その光の勢いと威力に抗えず、ベホイミは叩き落とされるように地面に突っ込んだ。
メディアがその光景を見てさすがにあわてた。駆け寄ろうとする彼女の背に声がかかる。
『行かせると思うか?』
足を止め、メディアはしっかりと<ミリオン>と相対した。
彼女はベホイミのために時間を稼ぐため、問う。
「ブランシェリーナさん。一つ、お聞きします。
あなたがそれほど妖怪と人間の隔離にこだわるのは―――あなたのご家族が、妖怪に殺されたからですか?」
返事には、少しだけの間があった。
『……よく調べているな、ニンジャ』
「色々、顔の利く知り合いがいるもので。
リヴァル家は、20年前一夜のうちにたった一人の女の子を残してみんな亡くなっているんです。
その女の子の名前がブランシェリーナ=リヴァル。つまり、あなたです」
『その通りだ』
感情の見当たらない平坦な声が返る。
それでも今の注意はこちらに向いているようだと判断し、メディアは話を続けた。
「リヴァル家は、自分達の飼っていた猫の妖怪に侵魔が乗り移ったものに一夜の内に4人が殺されたと聞いています。
それが、あなたがこの町を壊そうとする理由ですか」
罪を突きつける審問官のように問うメディアに、相手はやはり冷淡な声で答えた。
『ちがう』
あまりに意外なその一言に、メディアがえ?と呆けたように声を漏らした。
ブランシェリーナは淡々と告げた。
『確かに、あの夜が今の私のはじまりだった。
けれど私は、妖怪に恨みを持っているからこの場にこうして立っているわけではない』
「どういう、意味ですか」
『あの夜―――私がはじめて紅い月を見た、あの静かな血の夜。
あの子は、私が拾ってきた白猫のアンジュは。私を助けたのだ』
そうして彼女は語りだす。
町の片隅で箱に入れられた白い猫との出会い。
その猫と、家族で育んだ絆。
家族もまた、その白猫が人外の存在であることを知っていながら暖かく迎えたこと。
そして―――アンジュと彼女に名づけられたその猫が、第三天使の喇叭によってもろくなった世界結界を通り抜けたエミュレイターによって『憑かれしもの』となったこと。
アンジュはエミュレイターによって自由を奪われ、その体を好き勝手に使われた。
大切に接してくれた家族達をその手で殺し、その真っ白な体を赤く血で染め、プラーナをすすり、そしてブランシェリーナの前に立った。
けれど、小さな猫は最後の最後で抗った。
自分を拾ったその小さな手を、自分の手で傷つけることだけはしたくなかった。
だからアンジュは―――自分の血で自分を赤く染めた。
ブランシェリーナは、押し殺した声で言う。
『わかるか、あの子の覚悟が。
出会ってしまった大切なものを、その手で傷つけたくないと願い、私の名を呼び、笑って死んでいったあの子の覚悟が。
―――そんな出会いがあったから、私達は苦しい思いをした。侵魔につけこまれることになった。
繋いだ手が切り離されるという苦痛は、手が差し伸べられないよりも苦しい。
手を繋ごうとしたことが苦しみに変わるのなら、最初から繋がぬ方がいい。
妖怪は自分の場所から出ず、人間は自分の場所を守りさえすればいいのだ。そう難しいことではあるまい』
「世界中の人間の町に住む全ての妖怪を、あなた一人で全部追い出す気ですか?」
『私にそれほどの器がないことはわかっている。
だが、このような事件が何回かあれば、妖怪は人間に不信を抱く。それだけでいいのだ、ただそれだけでいい。
不信が起きればそれが広まっていくのは必然だ。その結果、妖怪と人間は己の住処に戻ることになるだろう』
だから私の邪魔をするな、とブランシェリーナはそう言った。
大切な相手がいなくなることは悲しい。だから、そんな思いをしないように私達は分かれているべきなのだと。
確かに喪失は苦しいものだ。それを味わったものならば、誰もが理解できる感情だろう。
けれど―――
「ふざけんな」
―――その言葉に異を唱える者が、ここにいる。
少女は汚れていた。地面に叩きつけられて砂だらけで、光にやかれてところどころ焦げたようになっている制服。
けれど、その眼光はまっすぐにただ目の前の鋼鉄の箱の中にいる女を貫く。
「お前には、この町のみんながいがみあうように見えるのか」
一歩。
「お前が絆を断ち切らなきゃ、傷つけあうように見えるのか」
二歩。
「みんながみんな出会わなきゃよかったと考えると思うのか」
三歩。
メディアと肩を並べる。
「お前のやってることは、ただのテロだ」
『……なんだと』
「同情はしてやる。大事な奴が消えたら悲しいっていうのは、皆がわかるけど皆が同じ思いを抱いてるかはわからない。
けど、お前のやろうとしてることは、お前とアンジュが分かれるきっかけになったエミュレイターと同じだ。
この町のみんなの絆を、自分勝手な理由で断ち切ろうとしてるだけだ。
みんなが笑ってる今を、勝手に崩そうとしてるだけだ」
彼女は、叫ぶ。
「お前には、本当にわからなかったのかっ!?
たとえ一時とはこの町で暮らしたんだろっ!この町のみんながどれだけあったかいか、どれだけ笑顔で暮らしてるか、見えなかったわけじゃないだろうっ!?」
しゃべるウサギと、一緒に歩くちびっこ教師がいた。
化け猫を、文句を言いながらも居候させる喫茶店の店主がいた。
人に慣れていないジュゴンに、優しくしてやっている高校生がいた。
水がないとたまに動きの止まるオオサンショウウオに、笑顔で水をかける少女がいた。
精霊界から来たと名乗る怪しいトカゲの言うことを聞き、魔法少女をやっている女の子がいた。
他にもたくさん、たくさん。
この何の変哲もない町の中で、妖怪と人間の絆が結ばれている。
「お前だって自分のやってることが間違ってることくらいわかってるんだろっ!?
自分がどれだけ悲しかろうが、どんな理由があろうが他人にその痛みを押しつけていい道理なんかどこにもないってことくらいっ!」
傷ついているはずの少女が出す声は、とてもそうとは思えなかった。
ただただ、この町のことを信じている少女が、この町を壊そうとする悲しみで道を外れた女の心に、打ち抜くように言葉をぶつける。
「みんな今笑ってる!未来なんかどうなるか誰にもわからない!お前が、この町のみんなの未来を勝手に決めるな!
この町を―――なめるなっ!」
自身の信念を真っ向から否定され、ブランシェリーナは―――揺らいだ体を、持ち直した。
『黙れ。すでに計画ははじまっている、お前ができることなど何もない。お前の拳でできることなど何もない』
そう言って、ブランシェリーナは敵を見据えた。
『すぐに終わらせてやろう、私の敵。私の信念は、積み重ねた年月は、お前の甘言ごときに崩されはしない』
ベホイミは、自然体でその宣言に応える。
「確かに、私にはアンタを救ってやることはできない」
そう告げて、彼女は―――自身の最大の武器である拳を握る。
固く、固く握り締める。
「私にできるのは、この拳に信念を込めて握るだけ。
握った手のひらで何かが『すくえる』と思うほど、私も世間知らずじゃない」
けど、と彼女は続ける。
「握りこんだ(こんな)拳にだって、できることがある。
道に迷って泣き続けて、道を外れたと思い込んでる子供を、元の道に殴って戻すくらいはできるつもりだ」
そう言って、彼女は不敵に笑う。
目の前の鉄の塊を、道を外れた迷子であると言って。
そう侮辱する眼前の敵に、それまで凍ったようだったブランシェリーナの声に、熱がこもった。
『―――やってみろっ』
>>80さん、ありがとうございます。ひょっとしたら誰も相手にしてくれてないのかと思った……(涙目)。いや、時間的に過疎ってんのはわかってるんですが。
いや、説明は後編に回しますが、正直すげー微妙な音楽副題つけ続けたのはこれがやりたかったっていう一心でやってたことだったり。
書いてた時とーとつに頭に浮かんだんじゃよー、もうやるしかないってアクセルとアドレナリン全開状態だったんじゃよー。許しておくれよー(誰に言ってんだ)。
一応それぞれの戦いはちょろっと書き方を変えてます。
王子ペアの方はウィザードらしく(あと二人とも王子なんで少しクレバー補正入ってます。許せ)、回復呪文組はウィザードっぽさを抑えてヒーロー物っぽく書いてます。
二組とも特技欄参考にしてはいますが実際データ組んでるわけじゃないんでおかしい部分があるやもしれません。が、そのへんはご了承ください。
レス返
>>58 ドリルはつきません、天元突破したくなるんで。超巨大武器・マシーナリィは持ってますが、オービットは今回単体なんで使用できません。後編も頑張りますっ!
>>59 ノーチェ可愛いよノーチェ。貴君とはいい酒が飲めそうだ、後編はもっとカッコカワイイぜノーチェ(オーレィ!の節で。)!
>>60 クレバーっぽさを意識してみました。え?そういう意味じゃない?
>>61 そうかその手がっ(お前も乗るな。)!?いやー、でも正直ちよちゃんはとてもいいものだと思うのです。個人的に好みは榊さんだが。
>>62 その手の方向にはいきません。おいらそれでキレイにまとめる方法わからねぇよ……。これからも精進します。頑張ります。そちらさんもガンバです。
>>63 問1:王子の苗字はなんですか? 問2:王子のイニシャルはなんですか? 問3:王子への愛を月に向かって絶叫してきてください。 presented by 真昼の月
さぁて。これで全部の種は撒き終えた。あとは仕上げをごろーじろー(漢字変換普通にやっても出ない)。
ベホには赤い翼をあげたかったけど、あれ実はドクロ仮面装備だから通常状態だと持ってないんだよなー。カッコいいのに。
ではでは、後編をお待ちくださいです。
GJだぜぇ……
燃える、燃える展開に期待いっぱい!
早く後編が読みたいです!
GJだぜえ
オリキャラの家はフランスで地獄の仕立て屋工房を開いてないかい?
うひー、GJですのよー。
そしてうっかりリヴァルに感情移入しかけた俺を許してくれ。
ところで前スレで言ってたタイトルの答えって何だったんでしょう。いまだ解らない俺を笑ってくれよ…
ベホイミャーさん乙
うん、やっぱり熱い。リレーも燃えたが、やっぱりすべて自分でやった方が起伏を書けて燃える!
クレバー王子二人組も実にクレバー戦闘中な模様。もう技能に『クレバー』と入れていい気がしてきた
関係ないんだが、ばにぽにを頭が思い出したのか、アホ毛が立って直らなくなったんだがどうすべきだろう
ベホイミかっけー。
なぜか某フラグ乱立な幻想破壊を思い出した。
今日辺りプリキュアの中の人来るかな・・・?
97 :
5-352:2008/02/19(火) 19:02:35 ID:vHCUhrak
>>90 お返事有り難うございます。62のはただの妄想なので気にしないで下さい。
嘘予告もどきのほうですが、流石にルールブック無しでSS書こうと
いうのはさすがに無謀が過ぎたかなぁ、と思いつつ妄想だけは
広がり続けております。と、言うより物語の流れ自体は出来て
いるんですよね、実際のところ。ただ、それぞれのキャラの話し方、
NWのルール、魔法やスキル、あと細かいイベントの中身が
決まらないんですよね。あと魔王の名前とか。
そういうことで悩んでいる場合皆さんはどうなさいますか?
よろしければ教えてください。
自分も今書いてるSSが滞ってるんですよね。やっぱりルールブックなしだ
ときつい。自分大体同じような状態で。ネットで探してもスキルとかのって
ないし。やっぱり買うしかないんですかね?
そりゃあルールが知りたいなら買うしかないだろ。
ネットで探してとか軽く言っているが、ルールをまるまま掲載すると言う事は
ゲームのR@Mを流す事と同等だぜ?
そりゃまあ、小説のあらすじや電源ゲームの攻略記事を載せるのとは話が違うからな。
データ内容をプレイできるぐらい詳しく乗っけられると、ルルブを売る意味がなくなる(誇張)から=営業妨害と判断されても文句言えないわけで。
詳しい効果を書かず、スキル名のリスト程度なら大丈夫なんだろうけど、
それじゃサイトに上げておく意味がないから、結果誰も乗せない。
買うのが無理なら、持ってる知り合いに個人的に転載してもらうぐらいじゃないの、せいぜい。
まあリプレイ読みあされば作中で使ってるものについては特殊能力や魔法の大ざっぱな解説くらいは載ってるけどな。
細かいところ詰めたいならルルブ買った方がいいと思うけど。
まぁ簡単な特殊能力の効果くらいなら、リプレイサイトで公開されてるPCのデータから探すという方法もないこともないけどな
現実的にはネットで探すよりも買って読んだ方がずっと時間的にも労力的にも安上がりだとは思うが……
先日のリレー中に初めてSSを書いてみただけの、読み専の意見。
ところどころに「ルール的な根拠のある行動」をとると、ぐんと説得力が上がる気がする。
アニメ版NWも、同じような手法を取ったからこそ、原作組にすんなりと受け入れられたところもあるんだろう。
もちろん、最初から最後までゲーム的にやれとは言わない。
ちょこっとだけ入れるだけでいい。
でも自分が書いたときは、途中からルールがダブルクロスになってた気がする。
そういや投下は毎日小出しにするのと1週間に1回一気に投下するのはどっちのがいいのかね?
まとめての投下は規制に引っかかる可能性が高いので細かく刻んだ方が良いと思われる。
小出しの方が楽しみが長く続いて良いに1票
了解。流石に今日のは短かったので、本日は、もう1本投下してもいいですか?
トカ&ゲーは書くのがムズイぜ支援
どうぞどうぞ
あの夫婦は背塔螺旋に行く前にこしらえてたんじゃないかとか思いつつ支援だお
リルカに幸あれ支援
ideブラッド・エヴァンス
『祖国のために生きた友、ここに眠る』
簡潔な言葉は、ブラッド自身の手で刻まれたものだった。名前は刻まなかった。どれを刻んでも、嘘になるから。
親友が死んだのは、半年前のことだった。眠るように逝った彼をブラッドは、見晴らしの良い丘に葬った。
「もし、お前が知ったら、お前は笑うのだろうか。戦うことしか知らなかった男の、平穏な日々なんて、似合わないってな。
俺は今、幸せに暮らしている。仲間も友もいる。メリルにもはやく俺以外の男を見つけて幸せになって貰いたいんだが…」
1ヶ月に1度は、こうして会いに行き、話す。それは本当の自分を知っていた男にしか言えない、孤独だった。
硝煙の臭いは、決して日だまりの臭いとは相容れ無い。ブラッドは、そう感じていた。
その日も墓参りを終え、ブラッドは帰り道を急ぐでもなく歩く。モンスターはまだ時折出るが、特に問題にはならなかった。
ブラッドがこの辺りのモンスターに負けるなどありえなかったし、何より野生の獣は力の差を敏感に察し、自分より強いものを襲わない。
だからこそ、村を離れた荒野で誰かに出会うなど、滅多にない出来事だった。ましてやそれが
「あんの猫…そもそも何処に行けば良いのか位教えておきなさいよ…」
年頃の女であることなど。
「おい、そこの女。そこで何をしているんだ。道にでも迷ったのか?」
渡り鳥かとも思ったが、その割には武器も持っていない。丸腰で荒野を旅するなど、無謀も良いところだ。
だが、話しかけてから失敗したことに気づいた。自分の風体は普通の人間には恐怖を与える。
「あ、もしかしてこの辺りの人ですか?よかった。すみませんが、この辺りに町とかありませんか?」
だが、女の方はブラッドを見ても驚かなかった。本当に人に会えたことに安堵しているだけのようで、ブラッドににこやかに話しかける。
「あ、ああ、この近くに村がある。もしよければちょうど帰るところなので案内するが…」
そのことに、むしろブラッド自身が動揺し、答える。
「あ、良いんですか?じゃあ、お願いします」
そう言って女はブラッドに並んで歩き出した。それを見て、ブラッドの動揺が収まる。代わりに長年磨いてきた戦士の勘がその女に注目する。
(隙のない動き…訓練、いや実戦で磨いたものだな。筋肉の付き方を見るに、クレストソーサレスや格闘家と言うわけではなさそうだが…)
「ところで、こんな所で何をしていたんだ。渡り鳥か?」
少し堅い調子でブラッドは女に尋ねる。
「渡り鳥?」
聞き慣れない単語に女は不思議そうに聞き返す。
「知らんのか?賞金稼ぎのことだ」
女の疑問に答えながら、ブラッドは不信を募らせる。
「賞金稼ぎ…なるほど。あ、でも私は違います。柊くん、友達が困ってるって聞いて着たんですけど、その友達が何処にいるのか分からなくて…」
「どこにいるのかすらわからんのか。それでは探しようも無いだろう」
「う〜ん。そうなんですけど、どうしますかね。あ、えっと…」
「ブラッド・エヴァンスだ。ブラッドでいい」
「私は七瀬晶って言います。それで、ブラッドさん、私の友達のこと知りませんか?柊蓮司って言って、茶色の髪をして、紫色のブレザーを着た、不幸そうな男の子なんですけど…」
「知らんな」
「あ、そうですか…」
それから会話がとぎれ、二人はしばし無言で歩く。その沈黙は、セボック村につくまで続いた。
「おかえり。おじちゃん!…その人、誰?」
笑顔で出迎えたメリルは、晶を見て、わずかに敵意を込めて言った。それに気づかないふりをして、ブラッドは答える。
「ああ、帰る途中で会った。人を探しているらしい。名前は…」
「七瀬晶です。よろしく」
ブラッドの言葉をついで、晶が答える。
「メリルです」
それにメリルは素っ気なく答えた。どうやら『おじちゃん』と一緒に現れた同い年くらいの女の子が気にくわないようだ。
それを何故か晶は懐かしいものでも見るようなまなざしを向ける。
「ああ、大丈夫。ブラッドさんとは本当に偶然会って村に案内して貰っただけだから。それより、この辺りに人捜しとかできそうな…」
晶の言葉は最後まで紡がれることは無かった。世界に起きた異変のために。
空が、赤く染まる。その、突然の出来事に
「…赤い月だと!?」
ブラッドは空を見上げて驚きの声を上げ
「これは…月匣!?」
七瀬晶は条件反射で月衣より魔剣を抜きはなった。
その剣を見てブラッドは僅かに驚く。
(アガートラームか!?…いや、わずかに違う…)
「うわー!?モンスターだあ!?」
村人の叫び声を聞いて、ブラッドは動揺を押さえ込む。戦場では、動揺は死に繋がる。
「とりあえず、話は後です!」
晶はそう言うと叫び声のした方へと駆け出す。
「分かった。今は、協力してもらう。だが後で知っていることを話して貰うぞ!」
愛用のマイトグローブをはめながら、ブラッドは晶を追って駆けだした。
「大丈夫かな…おじちゃん。それにしても…」
1人取り残されたメリルは呟く。
「おじちゃん、どうしたんだろう?空の月が赤いなんて“当たり前”のことなのに…」
荒野と支援のSS
sideリルカ・エレニアック
「いい加減にしなさいよ!この…ハイスパーク!」
「ああ、ストライクプルコギドンが、ストライクプルコギドンがー!」
ロボットと言うよりはがらくたの寄せ集めであるそれを、リルカは弱点を的確についた雷撃の呪紋でなぎ払う。
「おのれ、覚えているトカいないトカ!この怨みはいずれ利子をサラ金もびっくりの金利でつけて全額一括返済今だけ30%ポイント還元で返してもらうトカ!」
「げー」
「結局増えてんのか減ってんのかわかんないじゃないそれ!」
妙な捨て台詞を吐いて逃げていく世界観の違う2匹に、リルカは突っ込みつつハイフレイムを叩き込む。
「ぎゃー!焼けるー!焦げるー!黒焼きにされて今夜は寝かさないトカ言うのに使われるー!」
「使うかー!」
かくして、何とか帰る手段を得るために密かに学院に忍び込んだ面白生物2匹(自作のメカ付き)は撃退された。
「はぁ、はぁ…本当にあいつらだけは懲りないわね…」
肩で息をしながら辺りを見回す。
そこには他の学院生徒が倒れている。あの面白メカはリルカならば1人でも倒せると言っても普通の生徒には充分脅威だった。
「エクステンション…ヒール」
回復の魔法を全体に掛ける。倒れていた生徒たちが起きあがり、リルカに羨望のまなざしを向ける。
「すごいな…流石は2代目エレニアックの魔女ッ子」
そんな声を掛けるのは、同級生のテリィ。
「まあ、ね」
それにリルカは頬を赤らめながら胸を張った。
2年前、数々の戦いと冒険をしてきたリルカは、大きく成長した。魔力の低さを技術と経験、判断力で補う戦い方を身につけたのだ。
今や『エレニアックの魔女ッ子の妹』と彼女を呼ぶ人間はいない。実力において姉を上回った彼女は名実共に『2代目エレニアックの魔女ッ子』となったのだ。
1人部屋に戻ったリルカは、少しはしゃいで机に座り、写真立てに飾られた写真を見て、テンションを下げた。
そこに写っているのはかつての思い人。彼は妻と一緒に双子の赤ん坊を抱き、カメラに笑顔を向けている。
「忘れるのって、難しいよね…」
リルカは、今でも彼のことが好きだった。姉を失い、落ち込んでいた彼女に、勇気をくれた人。今は幼なじみと結婚してしまった、元同僚。
「私、いつまでも子供のまんまなのかなあ…」
2年で背も伸びたし、胸も少しは大きくなった、と思う。自分に自信も持てたし、魔法だって上手く使えるようになった。
だが、どうしてもそこだけは乗り越えられなかった。心からの笑顔で2人を祝福出来ない。
「へいき、へっちゃら」
元気の出るおまじない。けれど落ち込んだ心は晴れない。
「…寝よ」
そう言って立ち上がり、外を見たとき、リルカは異変に気づいた。外が、赤い。
「何これ…月が、赤い…」
窓から身を乗り出して、リルカは呆然と呟く。まだ夕方であるはずにも関わらず、空には赤く丸い月が昇っていた。
「やあ、リルカ。どうしたんだい?」
急いでマントをつけ、外に出たリルカにテリィが声を掛ける。
「何って…空見れば分かるでしょ!」
それを聞いてテリィは空を見る。そして言った。
「分かるって?普通じゃないか。ほら、赤い月だって綺麗に出てるし」
「…え?」
その言葉にリルカは何とも言えない気持ち悪さを感じた。テリィの言葉には真剣に疑問に思う気持ちがこめられている。
だが、そんなはずは無い。そもそも赤い月が昇ること事態が異常なのに。
「普通って、どう見てもあの月が…」
そう言った時だった。
雪が盛り上がる。それは人の形を取り、剣のようになった腕をこちらに向ける。雪は次々と盛り上がり、十数体もの化け物と化す。
「うわあ!?モンスターがなんでこの中に!?」
テリィは驚いてフレイムを唱える。だがそれは人形の表面で音を立てて消火され、倒すには至らない。
(テリィの魔法なら、この辺りのモンスターなら1発で倒せるはずなのに!)
そのことにリルカは内心驚きながらもクレストグラフを取り出し、呪紋を唱える。
「ハイフレイム!」
テリィとは比べものにならないほど強力な魔法。それは人形を一撃で焼き尽くした。
「テリィ!みんなを呼んできて!ここは私が抑える!」
「わ、分かった!」
テリィが駆けだしたのを見て、リルカは再び呪紋を唱える。
(数が、多すぎる!倒しきれない!)
腕のなぎ払いを愛用の傘で受け止める。傘に込められた結界呪紋が敵の腕を弾き、体勢が崩れた所を炎で焼き尽くす。
(一度に来られたら、やばい!)
リルカの勘が、危険警報を鳴らし続ける。1人では、いずれ切り裂かれる。
(このままじゃ…)
敵は1対1から徐々に集まって一度に攻撃する態勢を取る。
(やられる!)
とおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
その時だった。空から何かが聞こえる。リルカは空を見上げ、それを見つけた。何か、降ってくる。
どごぼすっ!
それは地面に激突する。そして雪煙が晴れたとき見えたのは…
地面からにょっきりつきだした、2本の足だった
(な、何あれ…)
リルカは、思わず固まった。それは戦闘中であることを考えると致命的になりかね無かったが、そうはならなかった。
「うおおおおお!?抜けねえ!?」
呆然として見ていたのは、敵も同じだったからだ。
やがて、2本の足は上半身を引き抜き、雪を払う。それは一人の青年だった。年はリルカより少し上だろうか。
服がところどころ焦げている。一体何をどうやったらああなるのか、永遠の謎だった。
男は空を見て、ついでに人形の方を見て、言う。
「何がどうなってんのかさっぱり分からんが…」
そして虚空から手をやり、一気に引く、その手に握られているのは…
「とりあえず、エミュレイターがいるんならそいつをぶっ倒せば良いんだよな!」
「アガートラーム!?」
そう言って人形に襲いかかる男の持つ剣に、リルカは驚きの声を上げた。
支援支援
エクステンション支援
口笛と共に支援
今日はここまで
乙ー
GJ!
始まりはブラッドとリルカからか。
そういやベアトリーチェは一回は世界消滅させてんだよなあ。
乙
ふむ、紅い月が常態化?黒衣の少女がやらかしたのかそれとも別の…
って思いっきり名前かかれてる…orz
125 :
桃魔の中身:2008/02/19(火) 22:17:01 ID:W/tZoXJY
6話後編は11時過ぎになると思います。
よろしくです。
>桃魔の人
お待ちしております!
127 :
桃魔の中身:2008/02/19(火) 23:17:55 ID:W/tZoXJY
漫喫で更新しようとしてんだけど、このパソが規制受けてるらしくて無理っぽいんだが……どうしようか。
残念ではありますが、慌てず騒がず明日に回すとか。
そうさな。スレは逃げやしないし。
多分。
まさか書いてる人がファンブルとは……さすがだな。
―――旅の途中で、よからぬ噂を聞いた。
先のクロスオーバー祭り。記憶に新しい事と思う。
その中にサイバスターがいた…。
実は、NW世界とサイバスターは密接な関係があるらしい…
第四世界エル=クラム…
真・魔装機神サイバスター パンツァーウォーフェア…
よもや…
代理投下を引き受けた人です。
オンラインセッション中ですがー、タイミング見つけて投下します。
いま中身の人がメール添付で送る作業中ですよ。
>>132 うぉぉぉ、オンセ中なのに……作者さんもですがあんま無理せんといて下さいー(汗
>>131 ああ、あのOPムービーだけは神でアニバスターのCMがウザかったゲームか。
持ってるは、俺。
言っとくがスパロボのサイバスターとはほとんど関連ナッシングだぞ。
>>134 オリジナルのサイバスターの片腕を元に真・魔装のサイバスターが作られたんだっけ?
>>127 ネカフェとかは永久規制喰らってるとこ多いですよ。
あちこちネカフェ渡り歩いて荒らした馬鹿がいたせいで。
>>134 真バスターのシナリオを書いたのは…FEAR。
そしてメインライターはきくたけだ。
さらに、第四世界エル=クラムは、魔装機という機械鎧が跋扈する錬金術と魔法の世界。
これは、何かナーとおもってなw
>>131 昔あったなア・ゼルスこそが第四世界説。公式に否定されたけど。
ラ・ギアスからサイバスターの腕が異空間へそしてア・ゼルスに落ちる
で魔装機開発。ちゃんとオリジナルの腕にはラムス=イクナートの文字がとか
結構ニヤリとするネタはあったんだが、いかんせんシナリオ以外の出来が…
24時ちょうどに投下始めます。
>>132 セッション中はセッションに集中しないとダメですよー。
真・魔装機神…。
サイバスターに乗り換えたあたりで積んだ覚えがwww
当時はTRPGなんて知りもしなかったんだけどなぁ。
スパロボか…。
NWでクォヴレー=ゴードンのデータ考えたりしてたんだがあんまりしっくりくるのがなくて断念した記憶があるな。
>>143 V3だったら転生者→強化人間あたりで 2ndだったらアタッカー/強化人間→魔物使いあたりが
汎用性も高くて何とか行けそう。
カオスフレアの方が再現が楽って言うの禁止。
では投下を開始します。
>>セッション中だと心配してくれた方
大丈夫。プレイヤーの方にはちゃんと中断する旨を伝えましたから
6・すべきこと、したいこと -青い果実+真っ赤な誓い=『 』-
ノーチェは、魔法の詠唱を開始する。
彼女が詠うように唱え紡ぎ、力を持った言葉達が周囲のプラーナを感応させて隷属させる。
一言で事象を起こす言葉を積み重ねることで、段階を踏み、自身の望む事象へと昇華させる。それが、魔法だ。
銀の髪の一房一房が揺れ動き、月光をはねかえして楽譜のように踊る。
その美しい光景に―――<血の文書>が気づいた。
もともと妖怪に対しての攻撃を最優先させるこの魔導具が、そんな絶対の隙を見逃すはずもない。
今までその吸血鬼への攻撃を邪魔してきた魔剣使いの妨害はない。ならば、<血の文書>たる『アンジュ』がやることは一つ。
最も優先すべき命令である、それの存在理由は―――妖怪の排除に他ならない。
『アンジュ』は、用意が完了した詠唱魔法を、吸血鬼に向けて解き放つ。
―――<フレイムレイジ>、と記された一節が、最後に光を放った。
それと同時に生み出されるのは、炎。
近くにある酸素を奪うように食らい、炎はあっという間に巨大な竜のごとくに成長する。
青い世界に突如現れた朱色の竜に、周囲の空気がわなないた。それは竜のいななきのように響き、月匣を震わせる。
炎の竜は、指定されたたった一人の少女に対して空気を焼きながら疾駆する。
そして、少女は抵抗することもなく炎に飲み込まれた。
一人にそこまでする必要がどこにあるのかわからないほどの熱量が叩きつけられ、火の粉が舞う。
あまりのエネルギーに巻き添えをくらった地面から土煙が巻き上げられたほどだ。
その力に、たかが一ウィザードが耐え切れるはずもない。
はずがない、のに。
ごう、と風が吹く。
風が、全ての砂煙を取り払う。
そこにあったのは、月を映す鏡だった。
いや、鏡というには平面ではなく波立っている。
それは、鏡と見まごうほどに美しく長く伸びて広がった銀の髪だった。
髪を括っていた二本の黒いリボンが、月を映す銀の鏡の後ろへと流れていく。
ばさりと広がったただでさえそう短くはない髪が、地面に落ちるほどに、落ちた後もさらに進むように伸び続け、やがて止まった。
赤い瞳が、らんらんと紅玉のごとくに輝きを放つ。
そこにいたのは、美しい月夜の女王だった。
彼女の祖先は、かつて人の手では倒せず、この世界そのものの力を使ってようやく倒しきれたとされる伝説の吸血鬼だ。
その吸血鬼の血は、彼女にも色濃く受け継がれている。
しかしあまりに強い力に先祖のように慢心することのないよう、彼女の一族は生まれてから死ぬまで自身の力を押さえつける枷、<拘束術式>をつけるのが掟だった。
女の髪には強い魔力が宿るとされる。ゆえに、ノーチェはその術式をリボンの形に加工し、それで髪を縛ることで自身の力を抑制していたのだ。
そもそも彼女は吸血鬼だ。
その内でも太陽の下に出ても大丈夫とされる高位の吸血鬼である。「不死の王(ノーライフ・キング)」という異名を持つ吸血鬼が、この程度で死ぬはずもない。
支援!
満月の月の光を奪うように、銀の長い髪が煌く。
彼女の手の中にある空間のゆがみが、煌きに呼応してより大きく渦巻きだす。
術式によって拘束を受けていた限界が一気に開放され、その力はゆがみをより大きく強力なものへと変えていく。
最後の一節が、紡がれた。
「―――<ディメンジョンホール>」
同時。ゆがみは虚空を渡り、標的である『アンジュ』の上へと一瞬のうちに転移する。
ノーチェの手の中で外に出るのを抑制されていたゆがみは、その檻がなくなったことで一気に開放された。
存在そのものを否定するゆがみが、周囲にあるもの全てを飲み込むために広がり、近くにあるものから存在の力を貪欲に食らっていく。
その場にあるもっとも大きく存在の力を内包する結界は、ゆがみの格好の餌だ。
ぐにゃりと。ゆがみは効率的に結界を飲み込もうと全ての方向から吸い込む方法を取った。
一点には強いものの全方向からの攻撃に、拡散された構成要素では対応し切れない。
『アンジュ』に防御用の魔法が組みこまれていたのならそれを使うことがあったのかもしれないが、なまじ厄介な結界がはれるだけにそれ以上の防御魔法を持っていない。
結界は悲鳴を上げ―――澄んだ音を立て、割れる。
ゆがみは、結界の消滅と同時に喪失が補填されきったのか、そこで消滅する。そして―――
結界が消滅すると同時に、結界を展開していた魔法陣の外縁を踏み抜く者があった。
この場にいるもう一人のウィザードは、厄介な結界がなくなったことでその力の本領を存分に発揮できる。
相棒を携え、力強く地を蹴り、一秒でも早く『アンジュ』を叩き斬るためだけに疾駆する。
そう、柊が今の今までノーチェの盾になることもなく、囮になることもなかったのは、ただ彼女の言葉を信じてこの瞬間を待ち続けたゆえに。
力強く、前へ、前へ、前へ、他に小細工を考えることもなく、ただ前へ。
振り返る意味はない。躊躇う必要もない。刃の存在意義はただ斬ることのみ。ならば、一秒でも早く。一歩でも速く。
その在り方はまさに風。そしてその在り方そのままに、彼は地面を蹴り疾駆する。その刃をもって敵を斬る、ただそのためだけに。
その脅威を感じて、思考はあれど感情はないはずの<血の文書>は、確かに戦慄した。
ブランシェリーナは結界を破られることを想定していなかった。『アンジュ』には、自身を守る術がない。ならば、この脅威に対抗する方法は脅威そのものを消すことのみ。
『アンジュ』の内の一節が輝き、迫る柊に闇の飛礫が放たれた。虚属性の魔装<ヴォーティカル・ショット>だ。
今ノーチェは自分の魔力を使いきり、柊への援護ができる状況ではない。魔法への抵抗力は低くなる。
しかし、彼の相棒はただの剣ではない。
運命を断ち切り、神すら殺してみせた、世界の危機に立ち向かい続ける一振りの刃―――すなわち、魔剣である。
柊は前より襲いくる闇の飛礫を、一薙ぎで叩き斬る。魔剣に魔法が切れないという道理はない。彼らもまた、常識の外の存在だからだ。
そして、ただ愚直なまでに前に進むその剣の担い手はその程度では止めることはできない。
その前へ進もうとする意思は、ついに一足一刀、彼の独壇場へと『アンジュ』を取り込む。
ならばやることは一つ。
プラーナを開放できるだけ開放、裂帛の気合とともに下からすくいあげるように斬撃を放つ。
その一撃は、『アンジュ』のページを掠めた。ばさり、と舞い上げられる紙。
浅い。それでは『アンジュ』の機能を完全に止めることはできない。だから『アンジュ』は一節を輝かせて炎を生み―――
しかし、柊はその光景に不敵に笑った。
彼の一撃に対し、『アンジュ』自身に防御する術はない。それが今、示された。
特大の一撃はかわされたら終わりだ。これなら安心して投入できる。
柊自身のこれまでの経験が、鋭く周囲を知覚する。
『アンジュ』は魔装を放とうとする寸前。ノーチェは援護に入れない。
魔剣に本当の力を使わせてやるのなら、ここで魔法を食らうわけにはいかない。防御も回避も攻撃が遅れる。ならば、今この瞬間にしかチャンスはない。
だからこそ、全ての常識を無視し、彼は今こそ魔剣を振るう。
流れる血を介し、魔剣に自身の生命を食わせる。慣れた感覚に、さらに猛りが加速する。
残るプラーナを全部突っ込み、風が舞う。ともにある風に、さらに肉体が歓喜する。
相棒に大量の力の渦を開放させる。終わりへの予感に、さらに気分が高揚する。
―――終わりだ。
「くらええええぇぇぇぇぇぇぇっ!」
凄まじいまでの力の渦を伴った剣は、今度こそ、生まれはじめていた炎ごと<血の文書>を両断し。
ある少女の20年の妄執と、この町の危機を力の渦が容赦なく消し飛ばした。
柊はノーチェのもとへと駆け寄る。声をかけると、彼女は不満そうな表情で腕を組んでいた。
彼女は今、戦闘が始まる前とはまったくの別人のようだった。
身に着けていたゴシックロリータの服はところどころ焦げていた。
そして、そんなことがどうでもよくなるくらいの変化がある。彼女の銀の髪は、もともとあった量の二倍ほどの長さまで伸びていた。
柊がそれに素直な感想を漏らした。
「……すっげぇなそれ。リボン外しただけでそんな伸びるもんなのか」
「わたくしのリボンは拘束術具の一種でありますからな。
伸びたら伸びっぱなしなのがイヤだったから外すのにためらったのでありますよ、わざわざ切ってからもう一度リボンで括らないといけなくなるでありますからな。
髪の毛切るお金がもったいないでありますし」
「俺らの命は床屋代と天秤にかけられたのかよっ!?」
「だから最終的には外したでありましょうっ!?」
一瞬でも躊躇われたのは事実なわけだが。
柊はため息をつき、言った。
「ノーチェ、手ぇ出せ」
「はいでありますよ?」
不思議そうな表情で差し出される小さな手。ぱん、と乾いた音を立てて、手と手が打ち合わされた。
届けー!
ベホイミは、駆ける。
この世界の不条理を、20年の妄執を、目の前の馬鹿を、ただその拳で殴り飛ばすそのためだけに。
鈍重な<ミリオン>はそれに反応できない。右膝に、炎を纏った左のジャブが叩き込まれる。しかし、それではゆるぎもしないことはこれまでも同じだ。
『無駄だ』
そう言って、<ミリオン>は左足でベホイミを踏み潰そうとする。それを受ければ、いかに彼女といえど再び立つのは難しいだろう。
しかし、ブランシェリーナの手足のごとくに動くはずの己の僕にして傀儡、<ミリオン>は、ぴくりともしなかった。
突如失われた制御に何が起きているのか把握しようとすると―――月光に照らされて出来た<ミリオン>の月影に、いくつものナイフとフォークが突き立っていた。
メイドが、笑う。
「私のことも、忘れないでくださいね」
メディアの用いた忍者の秘術の一つ、<影縫いの術>だ。時間は短いが、相手の動きを封じることができる。
彼女はベホイミに呼びかける。
「ベホちゃん今です!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
援護を受け、全身全霊の力を込めて彼女は今までなんの反応もなかった鋼にもう一度右の拳を叩きつける。
拳で鋼を打ち抜くことは不可能だ。それが非常識と常識の対決ならばともかく、非常識同士がぶつかり合ってその条理が崩れるはずもない。
けれど、それが積み重なったとしたら話は別だ。
雨だれですらぶつけ続ければ岩に穴を穿つ。千畳の堤もアリの空けた穴から崩壊することがある。
だから彼女は諦めない。何度でも、何度でも、これが失敗しても、いつか訪れるその時まで、拳を打ちつけ続けるだろう。
そのいつかがこの時起きただけのこと。だからそれは必然。ベホイミの思いが、鋼の巨人の足を今こそ打ち砕く!
右足が砕かれ、大きくバランスを崩す<ミリオン>。
地面に崩れ落ちようとするその巨人の上を、ベホイミが走りぬける。
頑なに自分の内に閉じこもる馬鹿を殴り飛ばすために、ただひたすら駆け抜ける。
それを認識したブランシェリーナが、不安定になっているコクピットの中で、ビーム用のトリガーを手探りで探す。先ほどベホイミを吹き飛ばした例の兵器だ。
もともと狭いコクピット内だ、すぐにそれは見つかった。そして彼女は確信する。
―――こちらの方が、早い。
当然といえば当然だ。
コクピットまで行って拳を振りかぶり相手を殴り倒すよりも、トリガーに手をかけて引く方が断然早い。
それは、幾多の戦場を渡ってきたベホイミにも直感的に理解できた。
そのままでは届かない。その拳は、思いは、届かないまま終わる。
そんなことが、認められるか。
支援〜!
認めてたまるか。認めたりしない。認めてなんかやるもんか。
湧き上がった想いが、彼女をさらに加速させる。
ウィザードとしての全てをつぎ込んで加速する彼女の拳は―――やはり、それでも一歩届かない。
どれだけの思いをつぎ込もうとも、どれだけの力をつぎ込もうとも、やはりそれは届かない。
それが彼女の限界だ。全ての力をつぎ込んでも届かない、それが限界と呼ばれるものだ。
(限界<おまえ>は、)
限界にぶち当たった時、人は諦める。そこに絶望を抱く。
けれど彼女は知っている。
諦めたくないものがある。代わりのきかないものがある。大切な輝けるような日々を。
(邪魔だ)
今ベホイミの前に立ちはだかるのは鋼の巨人ではない。ブランシェリーナでもない。
彼女の行く手を遮るのは、彼女自身の限界のみ。
ウィザードとしての全力では届かない。
(そこから、)
けれど彼女は諦めたくなんかない。目の前を覆う壁に向け、全力のその先を求め続けた。
(私の目の前からっ―――)
だからこそ、その指先は彼女の限界の壁に届いた。
触れられるのなら壊せるも道理。
彼女のクラスは竜使い、己の体に眠る力と意思を信じて拳を握り、全てをぶち抜く魔法使い。魔法使いが、たかが自身の常識(げんかい)を超えられぬはずはない。
「ど、けええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
その意思が、彼女の纏う制服―――コンバットスーツにかけられていたリミッター(げんかい)を吹っ飛ばした。
ベホイミの体のことを考えてかけられているリミッターが消えたことで、彼女は彼女の体を破壊しながらもさらなる力を手に入れる。
その彼女の覚悟こそが。意思で限界をねじ伏せた覚悟こそが、届かぬはずのその一歩を埋める―――!
『な』
ブランシェリーナがトリガーに指をかけそれを引くよりも、突如おかしい加速を見せたベホイミに驚くよりもなお速く。
固く握り締められた拳がコクピットを一撃で破砕し―――中にいた女を、思い切り殴り飛ばして背後の壁を突き抜けながら空を舞わせた。
こうして、この町は守られた。
そして、間違えて歩き続けた女は、この町を守る魔法少女にぶっとばされてここでその歩みを止めた。
それだけの、お話。
これで投下はお終い。
友人の魂を込めた熱い物語、いかがでしたでしょうか。私も今読んで泣いてます。
では作者コメ、行きますよ。
155 名前:桃魔の中身の人
なんかもう言うまでもない気がするが武装錬金+doa@ネクサス。
赤がベホイミ、青が柊的なイメージ。最後のかぎかっこ内は好きな熱い曲入れたってください的な場所。
個人的にはSKILLとか英雄とかThe biggest dreamerとか黄金魂とかBe survivorとかJOINTとかnowhereとか聞きながら書いてました。
シェリーたんは頑固です。あと、目標できちゃうと他のものが目に入らない類の子です。こう書くと萌えっ子に見えてしまうのは何故だ。
王子組の方は結構特技効果色々と付け加えてみましたが、あんな描写が限界です。おいらもいつか限界突破できるようになりたい。
ベホイミは完璧ヒーローに徹していただきました。カッコいいよベホ、愛してるよベホ。メディア影薄いけど結構頑張ってますよ?
けども一番最後を終えるまでは感想とかは言いたくないので、ちょろっと没ネタをノートから発掘してみた。
・そもそもこの話じゃなくてリレーラストのだけど王子が柊とリンクする時に王子に「行こうぜ柊!俺とお前の輝きだ!」とか言ってもらおうと思ってた。
けど、それだと柊死ぬんでやめた。
・この話に戻して。実は料理大会で宮田も参戦させようかと思ってた。流石に可哀想すぎたのでやめておいた。
・実はラストバトルは4人で敵(当時はシェリーたん名前も決まってなかった)と戦う話にしようと思ってた。
・「行こうぜ相棒!」「当たり前っス!」とかそんなノリをやろうと思ってた。
・「魔法少女とロボが殴りあう構図面白いんじゃね?」→「話の流れ決定」→「この動機でロボ使いかよwwこいつのあだ名シェリーで決定〜♪」(実話)
・アンジュって仏語で名前つけたから、仏語でシェリーたんの苗字つけなきゃならなくなった結果あの苗字に。他に仏語苗字なんてキャンデロロしか知らねぇよ。
・ブランシェリーナって名前長いんでシェリーってあだ名で呼んでもらおうと思ってた。「私の名はブランシェリーナ、シェリーと呼べ」……これはないわ。
レス返
>>91 早く続きが読みたい、というのは物書きにとって一番嬉しい言葉だと思います。個人的に。あざーす。
二次作家としても物書きとしても嬉しい言葉をいただけるなんて……これ、ドッキリだよね?カメラどこだ(挙動不審)っ!?
>>92 シェリーたんのとこは分家です。だからなんでこんなに仕立て屋スレ住人多いんだよっ(逆ギレ)!?あ、モデルと同姓同名のにーちゃん死んでるが同姓同名なだけ。
>>93 感情移入していただけたならこっちとしては大成功です。あざーっす。
答えは大したことじゃないんですが、3話はノーチェ初登場で王子キャラそろうんで。柊の、というよりは王子的な、という意味で苗字の頭文字をいただいただけです。
>>94 だから、そんなあだ名(以下略)!?アホ毛ですか?切るか、天を突くまで伸ばし続けるか、謎の電波塔にするかの内から選んでください。
>>95 ベホにフラグは……未来ちゃんのがあったか。閑話休題。正直、禁書や型月には死ぬほど影響受けてます(汗)。自分の文章が書けるよう、これからも精進したいです。
>>97 そういうときは広げるか小さくまとめるかのどっちをとるかにもよると思います。自分はちっちゃくまとめる方を選びました。
ぶっちゃけ、必要ないところは切るのも一つの手だと思います。……出来なんぞ五十歩百歩のアマチュア風情が偉そうなこと偉そうに言ってすみません。気に障りましたらここに謝罪を。
さてさて、大きな物語は終わったわけですが。
小さな欠片がまだまだ残っております。その整理をせねば、一つのお話として完結できたとは言いがたいでしょう。
そんなわけで、少々ロスタイム。明日はそれぞれのエンディングをやろうと思います。多少NPCのエンディングもあったりします。明日また、お会いしましょう。
GJ!!
ノーチェかわいいよノーチェ。
>>155 GJ!こういうの大好きだwww ・・・・すっげえ茸っぽい文章だと思ったのは内緒。
エピローグも待ってるぜノシ
>「俺らの命は床屋代と天秤にかけられたのかよっ!?」
この発言に不覚にも吹いたwwwwww
NW側最終戦闘の流れとしてはノーチェが囮として魔法を喰らって、<<不老不死>><<拘束術式>>で蘇生、魔法発動して結界破壊。
で、柊が通常攻撃したあと、<<イレイズ>><<魔器解放>><<生命の刃>>で処刑、ってところかな?
ぱにぽに側は・・・・ごめん、正直ギルドスキルでも使ったのかと思ったw
あ、忘れてた。
代理投下の中の人もお疲れ様〜。オンセでも活躍期待してますノシ
ぐっじょーっ!
エンディングも超楽しみ、でもここ毎日の楽しみが
終わってしまうのちと寂しい・・・
代理投稿の方もありがとうございました
ぐっじょぶ!
代理さんもご苦労様でした。
この勢いに乗って自分も投下しようかなw
ぐっじょーぶだ!
後の楽しみはエンディングだけか……いや、ポジティブに考えよう!
あと一日ワクワク出来る!!
投下した!なら使ってもいい
大作投下後の箸休めに、妄想のカケラを置き逃げ!
PC@ コネクション:アンゼロット 関係:依頼人
推奨クラス:魔剣使い
今日も今日とて、君はアンゼロットに拉致同然に呼び出される。
君の文句をいつもどおりに聞き流し、アンゼロットは仕事の内容を語る。
とある少年が、彼自身はあずかり知らぬ秘術の継承者だと言う。
そして、その力を狙って、様々な組織やエミュレイターが動いていると。
君の仕事は、そんな彼を監視し、護衛し……もし、その力が危険なものであったときは、
抹殺する事。
そうすることが世界を守ることと語るアンゼロットを、君はいつものように拒絶する。
大のために小を犠牲にする事は、君の流儀ではない。
君は、あくまで護衛のために、この仕事を引き受ける。
そんな君の名前は、柊蓮司と言った。
PCA コネクション:絶滅社 関係:依頼人
推奨クラス:番長
今日も今日とて自らの信念のままに生きる君の元に、依頼が舞い込む。
困った人を手助けするのも、番長の勤め。君は話を聞いてみることにする。
とある少年が、彼自身はあずかり知らぬ秘術の継承者だと言う。
そして、その危険な力が目覚める前に、抹殺して欲しいと。
それを聞いた君は、こう答える。
「 知 っ た 事 か ー っ ! 」
少年には、何の罪もない。ましてや、不確実な未来の危険のためにその命を
犠牲にするなど……そんな筋の通らぬ事は、到底許せる事ではない。
縁もゆかりもないその少年だが、知ってしまった以上、見過ごす事など出来ない。
君は、その少年を守り抜く決意をする。
そんな君の名前は、金剛晄と言った。
PCB コネクション:黒兎 春瓶 関係:友人
推奨クラス:暗殺者
今日も今日とて店の使いの途中で、君は偶然一人の少年と出会う。
やや臆病で内向的だが、心優しいよい少年だ。
――そんな少年が命を狙われる場面を、君は眼にしてしまう。
唐突だが、君の正体は暗殺者だ。復讐のために刃を研ぐ血塗られた――
いや、その手を濡らす血すらも蒸発させる、闇に身を置く灼熱の火炎魔神だ。
だが。
このような非道を見過ごすほどに、心まで闇に閉ざした覚えはない――!
そんな君の名前は、ユウと言った。
PCC コネクション:黒兎 春瓶 関係:主人
推奨コネクション:
突然だが、君は命ある存在ではない。
君の創造主がその呪術を持って生み出した、仮初の命を持つものだ。
そしてその使命は、いまだ受け継ぐ秘術に目覚めぬ、創造主の孫を守り抜く事。
OK、男が背負ったこの使命、仮初の命の燃え尽きるまで果たして見せようじゃねぇか。
そんな君の名前は、ハイドといった。
「な、なんでボクがこんな目に〜!」
「は、男がオタオタすんじゃねぇ。どっしり構えてやがれ」
「このような子供の命を奪う事が……貴様らの正義だと言うのか!」
「筋が通らねぇ真似するなら、俺が叩き潰す!」
「……えーと……俺の言うことがねぇよ?!」
「呪法解禁!!ハイド&クローサー」より黒兎春瓶&ハイド、
「イフリート〜断罪の炎人〜」よりユウ、
「金剛番長」より金剛晄の、
サンデー@男気漫画クロス、なんてどうでしょう。
ナイトウィザード×絶望戦士リリキュア
カフカ…天/火/聖職者
コネの広さに定評あり。必殺技は絶望退散(攻撃魔装+天罰)
チリ…地/冥/魔剣使い
魔剣は土木用スコップ型。発動魔法<トンネル>を取得。
メル…魔術師/水/風
携帯電話型魔導書(スマート0−フォン)を持つ。
ナミ…イノセント/風/地
NPCの一般人、パンピー。特殊な設定は皆無。つまり、普通。
ゼツボウ…冥/虚/落とし子
仮面に乗っ取られている。装備から見て魔術系
毎度どうもです
激遅レスですが感想くれた人サンクスでした
リオンの声繋がりについては二次的な理由だったりします
一番最初がアニメ板つー事でまずベルかリオンのどっちか二択だったので
あとリオンは脇でほくそえんでる方が格好いい、ってのは同意なんですがもう一方で
「他の魔王ばかり動かそうとして自分は動かないのが気にくわない」(パピヨン風味)とも思っていまして
そんな訳で(今の所)彼女に出張って頂きました
ところでパピヨン風味繋がりで
ベル「貴方もいっぺん死に臨んでみなさい? 意外と恍惚で病み付きよ?」
とか言うセリフが浮かんでしまった・・・
とりあえず続きできたので投下しますー
「誕生日と星座は?」
「よく知らない」
「何処に住んでるの?」
「今日から寄宿舎」
「スリーサイズは?」
「パーソナルデータにあまり興味ない」
「ここの制服着ないの?」
「調達が間に合わなかった」
「あかりんって呼んでいい?」
「別にいい」
「趣味と特技は?」
「射撃と料理」
「好きなタイプは?」
「……転生者?」
「罵ってください!」
「くたばれ、地獄で懺悔しろ」
矢継ぎ早に飛ばされる質問の嵐に灯は全く表情を変える事なく淡々と答える。
彼女を囲む人だかりを見ながら、担任は呆れたように嘆息を吐き出した。
「おいおい、緋室さんにばっかり質問するんじゃないぞ? 転入生はもう一人いるんだから……なあ、柊くん?」
「…………」
担任の声に回りの生徒達の視線が一斉に蓮司に集まった。
しかし彼は視線を気にするでもなく、何かに耐えるように歯を食いしばり拳を握り締めている。
「どうした、柊君」
「…………」
「あれ、ちょっ……柊君!?」
蓮司は担任の声を無視して踵を返し、教室の引き戸を豪快に開け放って廊下に出た。
そして彼は教室に振り返り、目線を上げる。
『2−B』
「……またこのネタかよおおぉおぉおお!?」
私立銀成学園高校の屋上。
遠方に広がる街並みと、昼休みの喧騒に僅かに揺れる生徒達を眼下に臨みながら、蓮司は目を細めて息を吐き出した。
「学校っていいなあ……」
満ち足りた表情で彼はしみじみと感想を吐き出す。
学校に辿り着くまでは勿論の事、午前中の授業も何事もなく終了した。
そんな普通の学生のような時間を過ごしたのはいつ以来だっただろうか。もうあまり記憶に残っていない。
「あとは……」
落下防止のフェンスに置いた手に僅かに力を込める。
そして彼は小さく俯くと、肺の空気を全て吐き出すほど深く暗い溜息を吐き出した。
「これで三年だったらなあ……」
「……何故そこまで学年に拘る?」
脇から呆れたような声を出したのは斗貴子だった。
彼女はフェンスに背を預けながら、ちらりと蓮司に視線をやる。
「潜入任務で学年が変わるなんて、別に珍しい事でもないだろう。私だって年齢で言えば三年なんだぞ?」
もっともと言えばもっともと言える彼女の言葉に、しかし蓮司はがくりと肩を落とし恨みがましい目線で斗貴子を見返した。
「……じゃあお前、今から一年の教室に行って『本来なら三年生のはずですが、何故か一年生に編入される事になりました』とか言われても平気なのか?」
「それは…………すまなかった」
カズキの妹である武藤まひろのクラスに赴く事を想像したのだろう、斗貴子は僅かに眉を険しくして呻くように漏らす。
微妙に重い沈黙が降りて斗貴子は手にしていた昼食のサンドイッチを口に入れる。
なんとなく空気に耐えられなかったのか、彼女はサンドイッチを飲み込むようにして喉に通した後再び口を開いた。
「しかし、彼女は何故キミ達を学校に編入させたのだろうな。今回の任務から言って学校に入る必要などなさそうなのに」
「前の斗貴子さんと同じなんじゃ?」
地面に座り込んで青汁を飲んでいるカズキが言うと、彼女はゆるゆると頭を振ってそれを否定する。
「あの時はまともな戦力が私だけだったから。今は私にカズキ、剛太や毒島、そして戦士長が二人もいる。
ウィザードではなくとも一拠点を防衛するには過剰と言っていい程の戦力だ」
「んー。じゃあアレだよ。やっぱ学生なんだから学校に行っとかないとって事じゃない?」
「何を暢気な……」
「そんな訳あるか」
嘆息交じりに言いかけた斗貴子に口を挟んだのは蓮司である。
彼は振り向いて斗貴子と同じようにフェンスに背を預け、ずるずると座り込みながら口を尖らせた。
「あの女のこった、特に深い意味なんてねえよ。あったとしても何か下らねえ悪巧みに決まってる。アイツはそーいう奴だからな」
はん、と言いながら蓮司は肩を竦めて見せる。
それと同時に、彼等がいるこの屋上と校舎を繋ぐ鉄扉が弾け飛ばんばかりの勢いで開かれた。
「カズキィィイ!!」
「あ、やっぱりここにいたんだ」
「てっきり校内を案内してるかと思ったんだが」
姿を現したのは岡倉 英之、大浜 真史、六枡 孝二の三人である。
「おう、皆――どふっ!」
友人の顔を認めたカズキが喜色を称えて手を上げ声を上げかけたが、一直線に疾走してきた岡倉のリーゼントがカズキの顔に叩き込まれた。
岡倉はのけぞったカズキの胸倉を掴み上げ、がくがくと揺さぶりながら更に叫ぶ。
「何故だぁあ!?」
「な、何が……?」
「アレだっ!」
「……?」
体中に怒気を孕ませたまま、岡倉は先程から黙々とパンを食べている緋室灯を指差した。
「斗貴子さんといい、緋室さんといい、何故転入生はお前にばっかり集まる!?」
「……あー」
合点がいったのかカズキは一つ頷いてみせると、小さく笑みを浮かべてポーズを決めて見せる。
「やっぱアレかな、オレもついに覚醒しちゃったかな」
「覚醒だとぅ?」
「そう……男のミリョクって奴に! 斗貴子さん斗貴子さん」
「?」
カズキは愕然とする岡倉を押し退けて斗貴子に顔を向ける。
怪訝そうに見返してくる彼女にカズキは優しく微笑みかけて――
「悩殺! カズキキッス!」
「―――」
斗貴子は身体が強張り、目を僅かに見開く。
ポーズを決めたまま動かないカズキを呆然と凝視したまま――彼女は顔を紅潮させた。
「……っ」
しかし彼女はすぐに眉間にしわを寄せて、驚くべき速さで指をカズキの眼に叩き込む。
「△×□〜〜!」
「……今度やったらブチ撒けると夏に言わなかったか? 言ったよな?」
「ごめん、つい」
「まったく……」
紅潮してしまった頬に手を当てながら誤魔化すように顔を反らすと、斗貴子はそこで何時の間にか斗貴子達から距離を取っている蓮司に気付いた。
「……どうした、蓮司」
彼はびくりと身体を震わせた後、周囲に目を配りながら小さく溜息をつく。
「……いや、てっきりアンゼロットが出てくるのかと」
「わたくしがどうかしましたか、柊さん?」
「ひっ!?」
唐突に声が響いて蓮司は裏返った悲鳴を上げて飛び退き、声のした方を見る。
だがそこにはアンゼロットの姿はなく、パンを食べ終えた灯の姿があった。
「……似てた?」
「心臓に悪い事すんじゃねえよ! いくら声が似てるからってえ!!」
「……いつもじゃれあってるから、つい」
「じゃれあってる訳じゃねえ!?」
「俺もぜひじゃれあいたい!」
地団太を踏みながら叫ぶ蓮司に混ざるように岡倉が手を上げて叫ぶ。
灯は彼に視線をやり上から下まで観察すると、
「……私と?」
「そう! 同じクラスメイトとしてぜひ!」
「…………じゃあ、これ」
灯は脇においてあったバッグに手を入れて、光り輝く直方体の物体を取り出した。
「こ、これは……っ!?」「そ、それは……っ!?」
岡倉の期待に満ちた声と、蓮司の驚愕に満ちた呻きが同時に漏れる。
「これは……お弁当?」
「凄いな、純銀製だ」
岡倉の後ろから覗き込んだ大浜と六枡の二人が声を漏らす。
そしてそれに直面している岡倉はまるで太陽に目がくらんだかのように身体を震わせている。
「こ、これはまさか!」
「……お近付きの印に作ってきた」
「やはり手作り弁当っ!? 色々過程をすっ飛ばしていきなり? 俺、いつの間にフラグを立てたんだ!?」
おそるおそる弁当箱に手を伸ばしかける岡倉。
しかしそれを制止する声が轟いた。
「待て! 早まるな……えっと、リーゼント!」
「岡倉 英之」
「そう、岡倉! ……死ぬぞっ!!」
純銀の弁当箱の蓋がカタカタと鳴動しているのに気付いているのは蓮司だけだった。
いや、恐らくは斗貴子も気付いているのだろう、彼女は少しだけ青ざめた様子で弁当箱を凝視している。
切羽詰った蓮司の叫びに岡倉は一度だけ彼に視線を向ける。
そしてふっと笑みを浮かべると、
「美少女に殺されるなら本望だ! でやっ!」
岡倉は弁当箱の蓋に手をかけると、一気にそれを開け放ち――
「キシャアアァ!!」
――叩きつけるような勢いで蓋を閉じた。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………食べてくれないの?」
「えっ!? いや……」
身体を大きく震わせ、怯えた目で灯を見る岡倉。
彼女は無機質な瞳に僅かな悲嘆を孕ませてから、僅かに顔を伏せて呟いた。
「……友達になってくれると思ったのに」
「うっ……うぐ、ぐぅ……!」
「あ、あんまり無理しない方がいいよ、岡倉君……」
「……せめて遺書を書いてからにした方がいいぞ」
大浜と六枡の声を耳に入れながらも視線はガタガタと揺れ動く弁当箱から目を離せない。
息を呑んで岡倉は再び弁当箱に手を伸ばそうとするが、どうしても触れることができなかった。
そんな時、弁当箱を横からカズキが取り上げた。
「岡倉が食わないんならオレが食うぞ?」
「「何ィー!?」」
蓮司と斗貴子が同時に声を上げる。
「? せっかくあかりんが作ってくれたんだから食べてやんないと失礼だろ?」
「武藤カズキ……」
灯が尊敬と親愛を込めた目線をカズキに向ける。
そんな彼女を尻目に、蓮司と斗貴子は焦った様子でカズキに詰め寄った。
「おま、お前さっきの見なかったのか!?」
「見たよ? 凄い活きが良かったよな」
「活きがいいとかいう問題ではないだろう、アレは!!」
「え、そう?」
言いながらカズキは躊躇なく蓋を開ける。
「キシャア!!」
同時に緑色をした物体が粘液を吹き散らしながら奇声を上げる。
「活き作りと似たようなモンだって。ほらこの色なんて青汁みたいだし」
「色とか以前にそのクリーチャーに疑問を持てよ!!」
「そうだなあ、丸呑みは流石にちょっとアレだからこっちの方だけ」
「いやそっちじゃなくてさ!!」
蓮司の叫びを無視してカズキは灯から受け取った箸(純銀)で触手らしきモノを摘み上げる。
びちびちと跳ねるそれを見て斗貴子はひっ、と裏返った悲鳴を漏らし、縋るようにカズキを見た。
「お願いだ、カズキ……青汁やゲテモノはいいとしても、人としての尊厳まで失わないでくれ……」
「斗貴子さん……心配性だなあ。大丈夫だって、見た目はコレでもちゃんと作った奴なんだよな、あかりん?」
「………。うん」
少しだけ沈黙した後こくりと頷いた灯にカズキは満面の笑みを浮かべて見せた。
「ホラな。それじゃいただきまーす」
「「あ゛あ゛〜〜!?」」
カズキは緑色の液体を滴らせた触手を口の中に放り込む。同時に蓮司と斗貴子の悲鳴にも似た声が響いた。
岡倉達三人はもはや声も出ないと言った感じでカズキを凝視し、灯もまたカズキの様子を窺っている。
固唾を呑んで見守る周囲を他所にカズキはしばし咀嚼した後それを嚥下し、吟味するように首を捻った。
「……なんていうか、新感覚?」
「マジでっ!?」
「だ、大丈夫なのか? 本当に何ともないのか!?」
「大丈夫だってば。今まで食べた事ない味だからちょっと戸惑うけど、慣れれば全然平気だよ?」
青ざめた顔で尋ねる斗貴子にカズキは笑顔で答える。
灯は半ば呆然としてカズキを眺めやり……そして彼の手をそっと握った。
「武藤カズキ……貴方は素晴らしい」
「え? そう?」
「……私の料理をまともに食べてくれたのは貴方が初めてだから……とても嬉しい」
普段表情を崩すことがない灯の顔がほころぶ。
多少ぎこちなくはあったが柔らかい笑顔を向けられて、カズキは照れ臭そうに頬を掻いた。
「カァアァアアズキィイィイイ!!」
横合いから怨嗟に満ち満ちた岡倉の叫びが響き渡る。
「斗貴子さんというものがありながら、なおかつ彼女を目の前に何をストロベリってやがるんだぁああ!?」
岡倉は大きなリーゼントをカズキの脳天に叩きつけ、手にしていた弁当を彼からひったくった。
「カズキが食べれるんなら俺だってー!!」
「待て、リーゼント!」
「早まるな、岡倉!」
「岡倉君落ち着いて!」
「だから遺書を先に書いておけと」
灯とカズキを除いた周囲の制止を振り切って岡倉は奇声を上げるクリーチャーを箸でむんずと掴む。
「うおぉおおおぉおーーー!!」
そして勢いに身を任せたまま彼はソレを口の中に放り込み――
「……………………………ぐぶっ」
くぐもった呻き声を漏らして昏倒した。
今回は以上です
だんだんカズキが人間離れしていくような気がします
あと原作レイプ級斗貴子さんの台詞リスペクト・・・
個人的に真面目な台詞をギャグに持ち込んで台無しにするのが好きだったり
オレ、偽善者なのかなあ・・・
いや、GJ。
だがあかりん弁当を堂々とイノセントの前で晒して大丈夫なのか?>世界結界
なあに、原作終了後のカズキなら人間離れしてても不思議じゃない
…それにしても3バカは馴染み過ぎだ
>>173 毎度のことながらGJ。六桝大好きだから出してくれて嬉しかったぜ。
あかりん順応しすぎ。斗貴子さん柊とわかりあいすぎ。超楽しい。
あ、思わず味も素っ気もないレスをw
>>173 GJ!斗貴子さんと柊の間にフラグが立ちつつあるような気がするのは俺だけでいいw
あと、ノリノリな絵魔様のこの上なく素晴らしい笑顔が見えたのも俺だけでいいwww
あかりん完璧に英魔さまモードだなぁ…。
武藤遺伝子所有も凄まじい効果、と言うか人間として何か間違ってるし、斗貴子さんも妙に解り合ってるし、しかもこれらが全く違和感無いな…
つまり何が言いたいかというとだな、GJ
感想どうもです
世界結界に関しては・・・「ギャグパートなので気にしない」という方向で一つ
深く考えてしまうとアンゼの街の往来での柊拉致なんてレッドカードものですし
真面目に考えるならあかりん弁当は
アニメでも一般生徒も混じってる(はずの)スケート場休憩室で堂々と持ち出してたり
紅巫女でも望や菊田先輩にクリーチャーチョコを披露してます(マユリに至っては魔法ぶっ放した)
まあ前者は開ける前に柊が喰ってしまい後者は××で”結果的には”大丈夫だったんですが
そもそもあかりん弁当はPL諸氏による過剰演出の産物で
「破壊的な料理の腕前」そのものは別に魔法的な意味合いはないネタライフパス・・・のはず
まぁホムンクルス一度見てるし精神的にタフなんだろうなー、とか思って勝手に納得してしまってたよ。
>>180 ギャグパート把握。 ギャグじゃあしょうがないなw
ぶそれんの人オツ。
カズキはいつでもどこへ行ってもマイペースだなぁw
まあギャグなら世界結界がそれを許容するのは古今東西の常識だったな。
某赤貧黒魔術士無謀編のキースとかその典型だしな!
185 :
桃魔の中身:2008/02/20(水) 16:17:00 ID:mo9Lqv1M
うぃーす。昨夜はお騒がせしました桃魔でーす。
エンディング、今朝思いついたエピソード追加で書いてたらこんな時間になりました(汗)
投下は45分からの予定です。結構長いので支援お願いできますかね?
>185
――ふん。
どうやら、最後の戦場には間に合ったようだな?
任せろ。お前の背中は俺が護ってやる。
だから思う存分、暴れてこい。
>>185 いってこいやぁああああ!
世界は任せたぜw
てす
先陣を開くのは任せろ。
オマエはただ…走りぬけっ!
エンディング -あの日、あの場所、全てに『ありがとう』-
それじゃあ、はじめよう。
このお話の最後を。最後の先の、輝けるものを。
―――全てにありがとうと、言えるまで。
まず一番手は支援となり!
1・レベッカ宮本の場合。 -Starry heaven-
桃月商店街内にある焼肉屋・『食ったもん勝ち』。
日曜日の夕方から、その店は大盛況だった。
「すいませーん、カルビと鳥モモ追加ー!」
「塩ダレコブクロこっちにもよろしくです」
「お前、それオレが大切に育ててたイカの一夜干しとにんにくホイル焼きじゃんっ?なんで勝手に食うんだよ!」
「ふっ、お前との友情もここまでだ。焼肉は人を狂わせるんだよ」
「やめて、みんな私のために争わないで!」
「クッパ、クッパ、クッパッパ〜♪」
……なんか友情が壊れてたり違う事件に巻き込まれてたりする奴いないか?
閑話休題。
今ここにいるのは、桃月学園1年C組の面々だ。
というのも、担任が先の桃月学園クラス対抗料理大会において審査員特別賞をもらい、その副賞としてついてきたのがこの焼肉屋の貸切招待券だったからだったりする。
なんとも太っ腹な副賞だ。
この商店街は萌えに飢えてる人間が多いので店主が萌えたとかそんなこともありそうだが。
ともあれ、そんなこんなで1−Cの生徒達は夕方から店貸切の焼肉パーティの只中にいた。
その中で、やけに目立つ少女が一人。
「レバ刺しもう一皿お願いするであります!できれば血の滴るよーなヤツを!ニンニクも足りないでありますよっ!」
見た目は銀髪に紅瞳、透けるような白い肌の少女なのだが、この焼肉屋への順応っぷりはなんなのか。
そんな少女を横にはべらせて満足そうに抱きつきつつ語りかけるのは姫子だ。
「ノーチェちゃんちっちゃくてかわいいー!ギャップ萌え〜!」
「わあっ!?何するでありますか姫子!離すでありますよ〜!く、くるみー、助けてほしいであります〜!」
「頑張ってねー。たぶんもうちょっとしたら玲が止めると思うよ」
「助ける意思0でありますなっ!?」
きゃあきゃあと姦しく網を囲んでいる最中、その隣にいた一条さんがくるみに聞いた。
「くるみさん。そう言えばその玲さんはどこに?」
「宮本先生も見当たらないです」
続けるのは6号さん。それに答えたのは都だった。
「……まぁ、すぐ帰ってくるわよ。馬には蹴られたくないでしょ?」
その言葉にくるみ以外の全員は首を傾げてなにやら言いづらそうな都の顔を見た。
……くるみはだからそれ私の台詞ー!と叫ぶものの、やはり地味なため誰にも気づかれなかった。哀れだ。
大騒ぎの店を出れば、そこにはもう夜の帳の降りた町があった。
それを見ている男に、小さな少女が声をかけた。
「お前はもう食べないのか、焼肉」
若い男は焼肉大好きだって聞いたから誘ったんだけど、と言う金髪の少女―――レベッカは、男をじっと見据えていた。
男―――柊は振り向くと、答える。
「ちょっと外の風にあたりに来ただけだよ。肉はありがたく食ってかせてもらうぜ」
止めても無駄だからな?と茶化すように言う相手に対して、真剣な表情でレベッカは聞いた。
「いつだ?」
「なにがだよ」
「いつこの町を出るんだって聞いてるんだ、答えろ」
その予想外の問いかけに、柊が驚いたような顔をした。
今までそんな顔をさせたことがなかったので、少しだけ胸がすく。
「……お前に言ったか?俺」
「言わなくてもわかる。お前単純だし。天才をなめるなよ?」
「自分で言うなよ天才とか。バカみたいに見えるぞ?」
「本物の馬鹿に言われたくない。ごまかすなよ、結局いつ出発するんだ?」
柊はベホイミに頼まれて、エミュレイターの群発発生と通り魔事件の解決を手伝うためにこの町に滞在していた。
だから、全部が終わった後は自分の旅にもどるだけだ。この半月ばかりの方が彼にとっての非日常であったとも言えなくはない。
彼は、一つ頷いて答える。
「一応、明日の朝。お前来るなよ?明日は学校なんだし」
「当たり前だろ。お前なんかのために学校休めるか」
口をついてでたのは、そんな憎まれ口だった。
もっとも、本音は別れに立ち会ったら絶対ついて行きたくなるからで、そんなことを彼女に言えるわけもないのだが。
幼くても、レベッカは天才と呼ばれる類の人間だ。
柊が彼女の踏み込めない何かを持っていることはわかっていたし、そこに踏み込むには多くの時と覚悟が必要になるだろうことも理解している。
彼女は、言った。
「それで?今度はどこに行くんだよ」
「一回実家帰らないと殺されるから実家に帰るかな。そもそも俺帰省の途中だったわけだし。
その後は―――まぁ、風の吹くまま気の向くままってヤツか」
なんだか、その言葉はとても彼に似合う気がしてレベッカは思わずその口の端を持ち上げた。
いつでもどんな時でも、誰にもその信念を曲げられず、偶然のように、必然のように―――風の指す道へ。
ふらふらと、不安定で。けれど誰にも邪魔できない。通り抜けた後また同じところに帰ってくるかもわからないけれど。
笑われたと思ったのか、少し不機嫌そうに彼は呟いた。
「なんだよ、俺そんなにおかしいこと言ったか?」
「別にそういうことじゃない。お前らしいなと思っただけだ」
「……なんか腹立つのは気のせいか?」
「気のせいだ。お前もよく言うだろ?子供は子供らしくって。お前はお前らしく、でいいんじゃないのか?おあいこだ」
口で女性に勝てた覚えのない(妙に彼の周りが舌戦の強い女性ばかりだというのには目をつぶれ)柊は、諦めてため息をついた。
「聞きたいことはそれだけか?じゃあ、俺はそろそろ戻るぞ。せっかく誰かのおごりなんだし、できるだけうまいもん腹の中につめて帰るさ」
そう言って踵を返す柊に、レベッカは振り向かずにすれ違った後声をかける。
「なぁ、柊」
「なんだよ?」
彼は振り向くが、やはりその位置からではレベッカの表情は見えない。
当然だ。彼女はこの位置を望んで計算して声をかけたのだから。
「お前、言ったよな。危ない時はいつでも連絡しろって。助けに行ってやるって」
足が震える。
相手の人格は、出会って数日ほどだがある程度把握しているつもりだ。
そして、彼女の問いにどう答えるかもわかっているつもりだ。けれど、他人は自分ではない。想定した答えを返してくれるかどうかは予測はできても完璧とは言えない。
だから少し怖い。けれど、彼女は勇気を振り絞ってたずねた。
「あれ―――お前がこの町にいなくても、どっか遠いとこに行ってても、有効か?」
心臓がマラソンを走りきった後と同じくらいうるさい。
この音が相手に聞こえている気がして、気が気ではない。
絶対そんなはずはないと頭の中の理論は答えるのだが、感情は理屈で割り切れるものでない以上、その理論は力を持たない。
柊は、ため息を一つ。
たぶん顔見たら怒るな、と直感で判断。このあたりだいぶ成長が見られる。
ともかく、顔を見ないままにぽん、と頭に手を置いた。子供に大人がやるように。
「当たり前だろ、約束破るのは嫌いなんだ」
「子ども扱い、するなよ」
泣き顔も苦手だ。誰かに自分のことで泣かれるのは、やっぱり辛い。
けれど、レベッカが必死に我慢しているのは柊にもわかった。それを指摘すれば彼女がより困るだけだろう。落ち着いた頃にもう一度謝ろうと思って、一言だけ言った。
「別に今生の別れってわけじゃねぇんだ、またいつか遊びにくるさ」
「……絶対だぞ。あとで指きりするからな、針の数は兆で」
億の上かよ、と笑いながらツッコミをいれて、彼は再び踵を返し、後でな。と言い残して店の中に戻った。
―――そんなやり取りを物かげから見ていた人影が、4つ。
支援
「かくて犠牲者がもう一人、ってことっスかね?」
地味メガネ。
「もうベホちゃんってば。いいじゃないですか、あの年頃のお隣のお兄さんはロマンですよ?」
金髪メイド。
「そんなモンですか。うちの妹にもあんな可愛げあったらよかったのに……」
二卵性双子兄。
「まぁ、あれはあれでいいんじゃないか?初恋はいつだって実らないもんだ」
メガネ魔女。
四人のデバガメであった。なんでA組の修とD組のベホイミ・メディアがC組の焼肉パーティにいるかと言えば、単になりゆきだったりする。
実は他にも他クラスの連中が混じってたりする。留学生連中は特に。B組のズーラとか。
玲の何か感慨深げな言葉に、三人の視線が集まった。
彼女は眉を寄せ、三人に問うた。
「なんだよ、私の顔に何かついてるか?」
「いや、橘さんがそういうこと言うとは思ってもみなかったっていうか……」
「えぇと、ほら。人間誰しも意外な過去の一つや二つあるもんスよねっ!?」
「い、意外だなんてもう。玲さんに失礼ですよベホちゃん」
「お前ら帰れ。今すぐ」
もともとレベッカに直接呼ばれたC組の人間であるとはいえ、玲の言葉にえー、とブーイングする三人。
その4人の背後から、声がかかった。
「デバガメか。いい度胸してるなお前ら」
その声に4人の動きがぴたりと止まる。
そこには、背後にゴゴゴゴ的な擬音を背負っていそうなのが見て取れるレベッカが立っていた。
4人が弁解をはじめる前に、彼女は笑顔で言った。先ほどまで泣いていたとは思えないほど、強い笑顔で。
「お前ら全員、今日の飲み食い代自腹な?後でおばちゃんにお前らの分だけ別にしてもらうから」
抗議の声もどこ吹く風。
レベッカは笑う。決めたのだ。
助けてもらったのだから、助けてやれるヤツになろうと。
抱えるものを相手が教える気がないのなら、まったく違うやり方でそこを見てやろうと。
その想いを大本として彼女が背負ったものは、彼女の人生にとってプラスになったかは誰にもわからない。だが。
彼女は本物の天才だ。きちんと目標があり、努力する意思があるのなら、いつかそこに到達するだろう。
いずれ、十塔ハジメと彼女が並び立つ両雄として魔導科学研究の頂点に達する未来があるの『かも』しれないが―――それはまた、別のおはなし。
……行っちまったか。
絶対に生きて帰って来いよ、坊主――。
さて、俺たちは俺たちの仕事を片付けるとするか。
支援。
2・ブランシェリーナ=リヴァルの場合。 -僕たちの未来-
桃月町。
<交流区域>と呼ばれる特別な場所として指定され、妖怪に規則を与えて住まわせるのを許可している町。
そんな、さまざまな勢力の協力があってなりたつ複雑な利権関係の町に、一人フリーで喧嘩を売った錬金術師・ブランシェリーナ=リヴァルは、今。
―――桃月町のとある借家の一室で途方にくれていた。
そう広い家ではない。洋風建築のモダンな家であるものの、もともと下級クリーチャーが住み着いていたのをとあるウィザードが駆除した後の、しかし人の入らない物件だ。
ベホイミにぶん殴られた後、彼女は町の最高権力者のところに連れて行かれるのだろうと思っていた。
しかし、ベホイミのとった行動は違った。
戦いが終わった直後のブランシェリーナの様子が、本当に道に迷ってどうすればいいのかわからない子供のようで、そのまま突き出すのは気が引けたのだという。
そもそも彼女は、今はフリーの身であるものの元は「十輪図形」のメンバーである。それもゴーレム作りにおいて免許皆伝クラスの。
そんな彼女が世界魔術協会や背教者会議の手の入っている町に手を出したのだ。ちょっとした混乱が起きる可能性がある。
幸い、町に死者は出ていない(約一名死にかけた奴がいるが、当人ほぼ気にしないためスルー)ため、ブランシェリーナの件を隠し通そうということにしたらしい。
もちろん、本当はそう上手くいかないものなのだが、色々な連中が色々な動きをした結果、彼女は<交流区域>桃月町の町長の保護管理下に置かれる、という形で収まった。
とはいえ、それで困るのはブランシェリーナの方だ。
当然裁きを受けるものとして、覚悟はしていたつもりだった。
自分がいつか殺される覚悟を持って、彼女は20年間ずっと文字通り血を流しながら進んできた。
それを、数人のウィザードに見事なまでに妨害されて彼女の月日は水泡と化した。たった一人の少女の、町を守りたいと望む気持ちによって。
そんなわけで、彼女は今ものすごく途方にくれていたりするのだったりした。
「……簡単に言ってくれる」
そう言って思い出すのは、自分を殴って別の道にすっ飛ばしたぼろぼろの魔法少女。
彼女は、ブランシェリーナがこの町で暮らせることが決まって後、何か言いづらそうにこう言った。
『アンタの20年は、やっぱり間違ってるっスよ。それを直すことはやっぱりできないっス。
けど、アンタは別に人外が嫌いなわけじゃないんでしょう?だったら、もうちょっとこの町で暮らしてみるのも悪くないんじゃないっスか?』
おそらくは照れ隠しの一環なのだろう、無愛想な表情が思い出される。
変な奴だな、と思ったのを覚えている。
彼女には、何故か自分に与えられているこの時間の意味がわからない。
覚悟をして進んできた。痛みも苦しみも全て前に進むための糧に変えてきたつもりだった。けれど、その20年は否定されてしまった。
しかし彼女もあの戦いで一つだけ学んだことがある。
それは、前を向いて走る人間の意思に勝つのは並大抵のものではないということ。
正直この町をどうこうしようという気は今の彼女にはない。そして、これからも起きることはないだろう。
間違いだと言われたからではない。後ろを向き続けていたのを、強制的に殴って前を向かされたからだ。
そして、今まで見たことのないほどのまっさらな世界(みらい)が見えた彼女は、今途方にくれている。目標に向かっていた時とは違い、何もすることがないからだ。
一つため息。まったく、厄介なことをしてくれた。これでは、やることを探さねばならないではないか。
そう思って、彼女は外出の用意をする。自分の未来を見つけるために。
前に向かって歩き出そう。後ろを見ていた時には見えないものが、そこにはあるはずだから。
そして、ブランシェリーナは―――子猫を抱いている自分の映る、家族の写真の入ったロケットを握り締めて、<交流区域>桃月町へと今日も繰り出した。
思ったより、手厳しい戦いだぜ……。
だが背中を護ると約束した以上、それを果たすまで倒れるわけにはいかねぇってもんだ。
3・桃月町に来た魔法使いの場合。 -希望峰-
たこ焼きの入った紙の器を膝に置き、ベンチに隣り合って座る二人の少女。
かたや銀髪を二つに結ったどう見ても日本人とは思えない少女、ノーチェ。もう一人は、桃月学園の制服にヘアバンドとメガネのクールそうな少女、大森みのり。
笑顔でもっきゅまっきゅと幸せそうにたこ焼きをつつく外人の美少女と、無表情ながらも箸を止めることのない日本人の美しい少女、なかなかお目にかかれない光景だ。
数日前、桃月町の有名なたこ焼き屋の前で食い入るようにたこ焼きを作っているところを見つめるノーチェに、みのりが自分のたこ焼きを一つ渡したのが始まりだ。
以来、毎日こうしてこの時間にどちらからともなく集まり、たこ焼きをみのりが二つ買って店の前で食べる、というのが習慣になってしまった。
ノーチェおごられっぱなしかよ、とも思わなくもないが、みのりはみのりで嫌ならこないはずなので意外にいい関係なのかもしれない。
食欲の秋。空は高く、雲はゆるゆると流れている。銀杏がだんだんと金色に色付く中、たこ焼きはやがてなくなった。
ごちそうさま、であります。とノーチェが言うのを、みのりがこくんと頷いた。
ノーチェはうーん、と伸びをして空を仰ぐ。
「いい季節でありますなー。自分の故郷は山の奥でありますから、年中寒いのでありますよ」
「そう」
「あ、でもレモンの収穫時期になると近所のレモン畑がすごくキレイなのでありますよっ!
近くのリーザおば様のつくるレモンピールとそれで作るレモンケーキがもう絶品でありましてな?
あ、おば様のボロネーゼ風ニョッキとマリナーラもすごくおいしいのでありまして―――」
たこ焼きを食べ終わった後は、こうしてノーチェが今まで旅した場所や実家の話をし倒し、みのりはそれにこくりと一つ頷くというやり取りが繰り返されていた。
もっとも、みのりは興味がないことに頷いているわけではない。
彼女は基本無表情(のちドジっ子)だが、図書委員を務めるほどには自身の知識が増えることに対して貪欲だ。単に知ることに対し楽しみを感じるタイプだとも言う。
だから、ノーチェの話は彼女にとってもとても興味深いものであり、この時間は彼女にとっても大切に感じられる時間だったのだ。
正直、中学生くらいの少女が色々な国に行った思い出がある、というのにツッコミが入らないのはどうかと思うが、
みのりに言わせればそれが真実ならその疑問に何の意味があるの?とのことらしい。どうなんだそれ。
やがてぴょい、とノーチェがベンチを降り、みのりにくるりと振り返った。
「そろそろ帰るでありますな。ちょっと呼び出しがかかってて、明日のお昼にはわたくしこの町を出ねばならないのでありますよ」
その唐突なさよならにも、みのりはそう、と言っただけだった。
ノーチェは笑顔で礼を言う。
「今日までありがとうでありました。たこ焼きはおいしかったし、みのりとの時間はとても楽しかったでありますよ」
「そうね。楽しかった」
返る言葉はそれだけだ。けれど、彼女はその言葉に色々な思いを乗せている。さみしくはない、だって―――
「またこの町に来たら、たこ焼きおごってくださいでありますよ」
「えぇ、待ってるわ」
人の顔を覚えるのが苦手なみのりが、彼女の顔は覚えたのだから。
そして、ノーチェがそう約束してくれることを彼女はわかっていたから。
短い間ながらも、ノーチェとみのりは言葉少なでありながらも確かな絆を育んでいた。
ではまた、であります!と宣言して駆けて行く少女の背中を、みのりはじっと見つめている。
それが角を曲がって消えるのを見届けて、彼女は小さく息を吸って―――
「―――てふっ!」
……慢性鼻炎も大変なようだ。
それはともかく、周りに誰か見ている人がいなかったかと赤面しながら確認し、冷静な表情に戻り、彼女は誰にともなく呟いた。
「……名前、聞くのを忘れてた」
……ツッコミを、頼むからこのボケしかいねぇ時空にツッコミのできる人間をください……っ!
アパーム、支援だ!支援持ってこい!
おい 吸血鬼w
ニンニク追加するな! 支援!!
何っ!? 敵の、敵の増援、だと……? バカな……!?
こいつは超すぅぱぁどすげぇばいな投下だぜ。全力で支援だ
4・桃月町にいた魔法使いの場合。 -Rolling star-
早朝。
日が昇る少し前、夜の闇が徐々に削られて昼の青に変わりゆく、もっとも空の美しい時間帯の一つ。
桃月町の町境に柊は立っていた。目の前に立つのはベホイミだ。彼女は、言う。
「今回は本当にありがとうございましたっス。助かったっスよ、柊さん」
「たいしたことはしてねぇよ。本当に町守ったのはお前だろ、胸張れよ」
「……腹に大穴開けられたり持ってるプラーナの半分を吸収されたりするのをたいしたことじゃないって言える生活はしたくないもんっスねぇ」
「俺に言うなっ!?」
しみじみと言うベホイミに即座にツッコミをいれる柊。
この光景もこれで終わりだ。柊は枷がない以上一ヶ所に留まっていられる性質の人間ではないし、ベホイミはこの町を守ると決めている。
だから、彼らがこの場所で別れるのは当然のことだった。
柊が言う。
「今回みたいに、俺(ウィザード)がなんかできてお前の手に負えないことが起きたら、呼べよ?手伝うから」
「んー……タダでこき使える柊さんみたいな人がいるのは確かにありがたいんスけど」
「アンゼロットみたいなこと言うんじゃねぇよっ!?」
そのツッコミにくすりと笑って、ベホイミは答える。
「ま、やれるだけは自分でやってみるっスよ。私がこの町が好きだから、こうやって戦ってるんスからね」
彼女の言葉に、それもそうか、と呟いて。柊は今度こそ背を向けた。
「じゃあな。たぶん、また来る」
「はいはい。その時は、馬鹿みたいに今回の話肴にしてお茶でもしばきましょうっス」
「そこは酒って言っとけよ。あんなとこにいたくせに」
「表的に働いてない無職に酒は100年早いっス」
「表的に高校生に酒は早くないのかよっ!?」
「無職と学生の間にある溝は狭いけどマリアナ海溝並に深いもんスよ」
そんな馬鹿みたいなやりとりをして、どちらからともなく手を差し出す。
「それじゃあ、また」
「おう。また来る」
握手。共にこの半月を駆け抜けた相棒として。再会を約束し、彼らは早朝の空気の中を別れる。
―――が。正直、そうは問屋がおろさない。
くぅぅぅるぁああああっっ! ここから先は何人たりとも通さん!
アイツの、あの若造には誰も近付けさせぬッ!
ベホイミは見た。早朝の空にぐにゃりと空間の歪みが生まれ、そこから機械的なアームが姿を現すのを。
「柊さん、あれ……」
そう聞こうとした時、すでに柊は魔剣を引き抜いて迎撃体勢に移っていた。その表情はなんかもう真剣そのものだ。馬鹿らしくなるくらい。
直後、ベホイミにすら視認できぬ速度でアームが柊めがけて射出された。
見えないということは、避けることができないということだ。ならば―――全力をもって迎撃するのみ!
「でやあああぁぁぁぁっ!」
朝っぱらから超ご近所迷惑な叫びが響き渡る。
ともあれ、その甲斐あってなのか彼は視認できぬスピードで迫っていた機械式のアームを吹き飛ばすことに成功する。
見えぬと言っても来る方向さえわかっていれば、迎撃はそう難しいことではない。
しかし、その程度でこの襲撃をかわせると思うなと言わんばかりに、まったく違う場所にまたも空間の穴が開く。
全力でアームの相手をした柊の回避が一瞬遅れることを睨んだかのようなタイミングで、穴から彼に一直線に向かうのは―――カウボーイの縄。
見た目はマヌケだが、これを用意してくる相手は何の考えもなしにこんなものを用意する相手ではない……と、思う。
ともあれ。今剣を振り切った柊にとって、それを迎撃するのは至難を極める。
しかし彼は諦めない。この程度で諦めてなどいられない。正直、なんか間違ってる気が果てしなくしても彼は必死である。
心底よりの叫びと共に、無理矢理体を動かす。
「な・め・ん・なぁぁぁぁぁぁっ!」
プラーナを全力で開放。一滴たりとも無駄にしないんじゃなかったのか、これ以上の無駄遣いはないだろう。
回避行動のために叩き込んだプラーナは、果たして縄を彼に跳び超えさせた。
その強襲をかわした柊に、少しだけ余裕が生まれた。
「はっ、人がそう何度も何度も同じ手に引っかかると―――」
……なんか、学生時よりも襲撃の仕方がパワーアップしてないか?
へへ、俺達は一人10秒ぐらいしか持たせることができねぇ。けど逆に言えば10秒だけ投下を守ることが出来るんだぜ?支援
閑話休題。
ちょっといい気になっている柊。
しかし、勝負の最中に気を抜いた者に勝利の女神は微笑まない。
ついでに言うと、今彼が戦って(無駄に足掻いて)いるのは勝利をもたらすかともかく確かに女神なわけで。
着地。
思うなよ、と柊が続けようとするのを遮り、ベホイミが言った。
「……柊さん、下下」
下?と彼が言われて足元を見ると、
そこには、今まさに効果を発揮しようと光を放つ魔法陣があった。
柊の顔から血の気が引いた。
二回の襲撃で上かと思わせておいて、本命は足元か。闇砦でも読んだのか守護者。
魔法陣の読み解きなど、バリバリの前衛職でなおかつ輝明学園の授業もまともに受けてないような人間にできるはずもないが、それでも逃げられないことはわかった。
ベホイミと柊の脳裏に、ものすごくイイ笑顔で笑う銀髪碧眼の少女が「柊さんのおバカさ〜ん♪」と言っている姿が浮かんだ。絶対言ってる。あの人は絶対言ってる。
無駄な足掻きだが、最後に柊が叫んだ。
「ア……アンゼロ―――」
が、最後まで言わせてもらうこともできない。
一瞬輝きが強くなり、魔法陣―――転送陣が柊をどこか、おそらくは某宮殿へと連れ去った。
風が吹く。
残されたのは、今ウィザードから見てもかなりの高レベルの、しかしどうしようもなく馬鹿らしい攻防を目の当たりにしたベホイミだけ。
柊 蓮司―――彼がいつ実家に戻れるのかは、たぶん神さまも守護者も知らない。
まぁ、彼のことだ。どこに行ってもそれなりになんとかやっていくことだろう。
5・桃月町の日常の場合。 -重なる影-
「えー、ひいらぎやめちゃったのー?」
月曜日・夕方の喫茶エトワール。そこには今、珍しい客が来ていた。
ランドセルは背負っていないものの、喫茶店に来るには少し早い小学校高学年くらいの少女が、3人。
三つ編みの活発そうな少女、口元をノートで隠す内気そうな銀髪の少女、髪を二つに結ったそわそわしている少女の3人組。
いきなり入ってきて店長にバイトがどこにいるかを聞き、いないと言われて文句を言ったのは、三つ編みの少女――― 一条 望だ。
店長は曖昧に笑いながら頷く。
「うん、そうなんだ。ごめんね」
「なんでですか?なんか……あのお兄さん、まちがってポットとかコーヒーカップとかたくさん割っちゃったとかですか?
そう尋ねるのは銀髪の内気そうな少女―――犬神 雅だ。
桃月学園にいる兄にちょっと特別な思いを抱いているブラコンの気のある少女である。
もっとも、暴走するとペガサスローリ○グクラッシュとかかますのであまり追い詰めてはならない。あと嘘もつくのもやめましょう。
雅のそんな面を知らない店長は、ううん、とジャパニーズスマイルを貼りつけたまま首を振った。
「なんでも、家に帰る旅費がないから雇ってくれっていうのが始まりでさ。
だから住み込みで働いてもらってたんだけど、旅費も溜まったし帰るってちょっと前に言われたんだよ」
「ちょっと前ってどれくらい?私たちに言わずにどっか行っちゃうなんて水くさいなぁ」
そう不満そうに言う望。
結構ご近所に受け入れられていた柊であるため、急にいなくなって寂しく思う人間は結構多かったようだ。
店長は3人にホットミルクを渡しながら答える。
「うーん、いつだったかな……木曜、だったっけ?」
「木曜で合ってるニャ。あのバカバイトが先週一杯でやめるって言い出したの」
ちょっとアンゼロット自重しろw
そして、もうだめだー(燃えすぎて)支援!
それを肯定したのは、カウンターの上に寝そべっているバカ猫だ。
飲食店で動物飼ってもいいのか、と思わなくはないが、最近の喫茶店はリアルにペンギン飼ってるところもあるので何とかなるんだろう、たぶん。
そう言えば、いつでも他人の言うことに文句ばかりのこの猫もどきが柊が辞めると言い出した時には妙に静かだったな、と思いつつ店長はそうそう、と頷いた。
人外はこの町においての非常識の塊であり、この町で起きる非常識の事態には敏感だ。そのための妖怪専用の連絡路もある。伝書鳩とか。
だから、猫もどきも知っていた。喫茶店の短期バイトが夜に何をしていたかを。水曜の夜、何の為に何をしようとし、それを成したのかを。
だからこそ、それも彼を止めることをしようとはしなかった。桃月町の恩人にエゴを押しつけるのはやめよう、というのがこの町の妖怪の総意だったのだ。
もう、と望が不満を漏らす。
「勝手にいなくなるなんて、宮ちゃんみたいだね」
「宮ちゃんって、宮本さん?死んだって言われててそれがデマだってわかった」
そうたずねるのは残った一人、未来だ。
望と雅は柊がひったくりを捕まえる時に知り合ったため顔見知りである。
そんな彼女達が柊のことを学校で話していたところ、興味を持ったらしい彼女を連れて今日の放課後会いに行こうということになってこの喫茶店に来たわけなのだった。
この三人は桃月第三小学校の同級生だ。
そして、一時期ではあるもののレベッカが同じクラスに通ったこともあったりする。やっぱり色々あってもとの鞘、今の状態に戻っていたりするのだが。
雅がその言葉にぽつりと呟く。
「そのデマ流したの……実は望ちゃんだよね……」
「いいじゃん結局宮ちゃん生きてたんだし」
どんな弁解の仕方だ。
とはいえ、その件については雅も強く言えない。桃月学園まで行って大暴れしたことがあるからだ。もっとも、彼女が望に強くものを言えるとは思えないが。
はぁ、とため息をついて店長は遠くを見つめた。
「けど、柊くん今頃どこで何をやってるんだろうねぇ。真面目に働くいい子だったのに」
猫もどきはそれに続ける。
「結局また妙なことに巻き込まれてるに決まってるニャ。絶対そういう星の下に生まれた男よアイツは」
うんうん、と頷きながら、望も。
「あー、確かにそれなら結構想像つくかも。今頃富士山の頂上にいたりしてねー♪」
雅がいつものことながら脈絡のない発言に小首を傾げた。
「なんで富士山なの?望ちゃん……」
「ほら、ひいらぎならいてもおかしくないじゃん?ないとは思うけど」
その言いようにどんな人だったんだろう、と思う未来であった。
……実は彼女が親愛の情を抱くドクロ仮面の相棒だった、というのは思いもよらないことだろう。
柊……柊ー!?くそっ、俺達は投下を守れてもヤツまでは守れなかったのか支援
last・桃月町の魔法使い的魔法少女の日常の場合。 -HOME SWEET HOME- again
『まったく、リミッターがかかってるから壊さないように使ってくださいって言ったじゃないですかベホイミさん』
そう文句を言われた。
覚悟はしていたものの、やっぱり腹が立ったので会いに来た宇宙人ともみ合った。
大家さんがまた倒れかけた。
ともあれ、宇宙人は一つため息をついてスペアの変身リングを渡してくれた。
『ベホイミさんのことですから、やる時は容赦なく壊すだろうことは予想がつきます。
一応、技術部の人間がスペアを作っておきました。これを使ってください。あくまで間に合わせなんで、早いところこれを直してお届けしますから』
まったくもって、後始末が完璧なマスコット様だな、と思った。
「えー!?あの人ベホイミちゃんのお友達だったんですかー!?」
そう、宮田に驚かれた。
その後涙目になって延々と文句を言われ、早く紹介してくれれば宮本先生にとられることなかったのにー、と言われた。
この子に彼氏は当分先だろうなぁ、と思った。
そして、昼。
「―――というわけで、ある程度は各方面丸く収まったみたいです」
「そっか、ごくろーさん」
クラスを出て屋上に。メディアがする報告を、彼女は黙って聞いていた。
メディアがしていたのは、ブランシェリーナの処遇の話だ。彼女をこの町に住まわせるため、水面下の交渉と手続きの大半をしたのはメディアとノーチェである。
そもそも、翌日動くのに支障が出るような戦闘をこなしたベホイミと柊に関しては問題外だ。もっとも、こいつらに交渉だのができるとは思えないが。
人外側への対応をしたのがノーチェで、様々な利権絡みの調整をしたのがメディアであり、最終的に丸く収まったのは日曜の深夜のことだった。
じゃあなんであの場(焼肉屋)にいたのか気になるが、彼女にも息抜きしたい時があるのだ。そして、せっかく守った町に実感が欲しかったのもあるだろう。
メディアは、いつもの笑顔のままで答える。
「本当に。大変だったんですよ、後始末」
「わかってるよ。それで?お前は私に何をさせたいんだ」
「ベホちゃんの困ってる顔が見たいだけですよ〜♪」
「お前泣かす!絶対泣かすっ!」
……まぁ、こんなやりとりが彼女たちの日常なわけだが。
一通りの応酬を終え、メディアが問う。
「けど、ほんとによかったんですか?ベホちゃん。
あの人をこの町に住ませるなんてことして。すごく怒ってたじゃないですか」
「……この町にすねに傷持ちのウィザードが多いのはお前も知ってるだろ。それに、あんなの放っておけるか」
<交流区域>は単に妖怪と人間が共に住む場所、というわけではない。
妖怪と人間が手に手を取り合うこの町は、今はフリーになっているウィザードもまた多く滞在する。
色々と理由はある。
何らかの組織に所属していたものの、組織のリーダーが人外に対する差別主義者でベトナム戦争帰りの兵士的に嫌気がさし逃げ込んだ、人外と手をとりたい変わり者。
多くの組織が創設に関わったがゆえに、逆に誰の土地でもないことを見込んで逃げ込んだ逃走者。
人外の研究がしたいと言って滞在するマッドサイエンティスト。
ある意味、一種の緩衝地帯のような様相を呈する形になっている。
もっとも、この町に定住する場合は町長の許可がいる。
その許可を得るには、町長を含めたもともとこの町に住むウィザードによる協議委員会による面接をパスする必要があり、
それをパスしたのはベホイミ・メディアを含めて両手の数で事足りる数でしかない。
というか、町に入る場合はどんなウィザーズ・ユニオンであれ誓約書を書かなければならないという町は<交流区域>以外にないわけだが。
意外と面倒だが、もともとエミュレイターに狙われることが少ない町だ。今のところ、そう大きな問題は起きていない。
そして、ブランシェリーナに行く場所はない。
今まで知識を得るためだけに利用してきた<十輪樹形>は<黄金の蛇>の下部組織、そしてそのトップこと白髭王・ゼドはドワーフだ。彼女を受け入れるはずもない。
ならば彼女の道を折った者として、立つ場所くらいは用意してやるべきだろうというのがベホイミの言い分だった。
そんな彼女にくすりと笑って、メディアは言った。
妖怪ネットワーク……やべ、うさぎの穴思い出してしまったよ支援
俺があの英雄譚にも語られる放浪の傭兵だって?
ハハ、そんな名はもう捨てたさ。今の俺は単なる「盾」さ。
「ベホイミちゃんは優しいですね♪」
「うるさい。黙れ」
「では、アレもお願いしますね」
そう言って彼女が指差すのは上。
アレ?と聞きながら上に視線を向ける。
そこには、落下傘で空から数多くの虫っぽい生き物が降下してきていた。
ベホイミの持つ宇宙付箋が勝手にその生き物を解説してくれる。
『パラシュートバタフライ 空から現れる侵略者。地上に取り付くと同時、眠り粉を撒き散らして地上を制圧する』
その数は、頑張れば500ちょっとまで数えられる両手でも足りないほど。微妙な数だな。
メディアが笑顔で言う。
「対空砲火ベホイミですね」
「できるかバカ―――!!」
びしっと空からのんきにふよふよ降りてくるパラシュートバタフライを指差し、ベホイミは叫んだ。
「こっちは空飛ぶ為の装備なんか持ってないってのっ!どうするんだよあんなのっ!?」
「ですよねー」
しかしメディアは笑顔を崩さない。
「でも―――負けるつもりはないんでしょ?魔法少女としては」
「……お前、それ言えばなんとかまとまると思ってないか?」
ベホイミのジト目もなんのその。メディアは笑顔で続けた。
「まぁ最初は手伝いますよ。だから、頑張ってきてくださいね」
こいつ、やっぱりキライだ。と内心思いつつ、少しばかりベホイミはメディアと距離をとる。
メディアは、その意思をくみ取ったのか両手を組み、軽く全身のバネを溜める。
いつでもいいですよー、という彼女の声に、ベホイミは彼女に向けて走り出す。
屋上の短い助走距離で、しかし彼女はギアをローから一気にトップまで持っていき、最後の一歩に足をかける。
その場所はメディアの組んだ腕の上。メディアの力とともに、その一歩をオーバートップで踏み抜いた。
柊……いつか帰ってくる日を、このスレを守りながら待ち続けるぜ。
支援!
落下傘降下を続けるパラシュートバタフライの一匹の背に、強烈な衝撃が加わった。
飛ぶでなく、文字通り跳んできた魔法少女が、そこにいた。変身は跳ぶ間に終わらせていたのだろう。
彼女は宣言する。
いつものとおり、この町を脅かすものに対して。
私がいる限り、お前らの好きにはさせないと。
知らしめるように、名を名乗る。
「魔法少女 ベホイミ」
それが、お前らを倒す者であり―――この町を守る者の名だ、と。
これが彼らの日常。
非日常を経てなお、変わらぬ強い彼らの日常。
だからこそ、彼らは非日常を駆け抜け続ける。
―――この輝かしい毎日と、自分もまた、共にあるために。
end
終わった……か?
そうか、あいつはやってくれたんだな…… た い し た も ん だ ぜ、 あ の 坊 主 は。
ハハ、ちょっと無理をしすぎたみたいだな、俺なんかが情けないぜ。
だがアイツのような若者が居る限り、この世界は安泰みたいだな。
俺は、ちょっくら休ませてもらうか……。
GJ!
さ、最高だったぜ。
そして、明日からはもう続きが読めないんだね……淋しくなるぜよ。
知ってる人は知っている「羽っ鳥もさく共和国」。大好きだ。
他はDay after tomorrow@TOS、Fate/hollow ataraxia ED、Strawberry JAM@スパイラル、YUI@BLEACH、Hearts Grow@銀魂、HOME MAID 家族。長ぇよ。しかも横文字!
前も言ったけど3話のPrayはなのはじゃなくて銀魂で、HOME SWEET HOMEはナルトじゃない方です。別にどうでもいいっちゃいいが。
終わったー(叫ぶな)!楽しかったー(だから叫ぶなって)!!
なんつーか、やりたいことをやり切って楽しくまとめられたらここまで楽しい気分になるよね的な充足感ですよ。
全部先に書き上げたのは、いつまでも完結しない作品に置いてかれる読者の気分を知ってるから。
6話+αで短く仕上げたのは、書く気が減っていく書き手のやるせない気分を知ってるから。
そして手に入れたぜ?このスレで初の個人物書きで長編完結者の称号を!そこ、セコいとか言うなー!
(舞台裏で色々行われております。しばらくお待ちください)
……コホン。落ち着いた。うん、俺できる子。だいじょーぶ、だいじょーぶ、アメ舐めた。
ともあれ、魔法少女と魔法使いと人外と一つの町のお話。書いてる方は非常に楽しかったですが、皆様にお楽しみいただけたなら幸いです。
ついでにこれ見てナイトウィザードもの書く気が起きた方とか氷川作品買う気になってくださった方がいれば、二次作家として自分の勝ち、ってことで。いたらいいなぁ。
色々と未熟な点もありましたが、これからも精進していきたいと思います。
つーかぱにぽに文章化向かねぇよ。キャラの口調と一人称調べるためにえんえんとページめくり続けたよ。頑張ったよ自分。
あと一回くらい顔出すかも。今回のレス返したら楽しそうだし。あとおまいら支援で遊びすぎだw
レス返
>>156 あなたともし会うことがあったなら本気で酒を酌み交わしたいわけだが。受けてくれるか、兄弟?
>>155 うぅ……やっぱり、自分で物書く以上は模倣じゃ三流なわけで。自分のものに昇華できるよう、努力していきたい所存であります。吹かせたなら俺の勝ち。
1st仕様ならエアダンエアブレも使わせたかったが、2ndでチャレンジしてみた。柊は最後の攻撃受ける前に2nd<サトリ>も使ってる。どうでもいいけど。
ベホは……最後はコンバットスーツの特殊能力<限界突破>で相手と同カウントに行動値が変化、即行動可って反則性能ってことでなんとか。
>>159 あざーっす!エンディング、楽しんでいただけましたでしょうか。おまけみたいなもんと思ってください。俺も名無しに戻るの寂しいよ。
>>160 あざーっす。ネタわからん俺を許してくれ。
>>161 あざーっす!そう言ってもらえたらすげー嬉しい。ワクワクしてくれたのに止めさしてすまん。
ついでに
>>155 まぁ、礼は言うよ。ありがとう。あとオンセ中すまんかった。でも、これだけは言わせろ。お前に嘘でもそんなこと言われると寒気がする。やめれ。
この場においてお礼をば。
まずは原作に。毎回楽しませてもらってます。次は何してくるのかわからないからこそ、本当に面白い。大好きだ。
あと王子、貴方のキャラを勝手にいじり倒してごめんなさい。マジすいません。でも愛してるぜ。
次に、この話のアイデアをくれた「ベホイミ×ナイトウィザード見たい」って言ってくれた人。貴方がいなきゃこの話が生まれることはありませんでした。ありがとう。
そして、これ4話まで書き上げた後読ませたらツッコミをよこした上、最後の最後で頼っちまった
>>155、一応、礼は言う。今度なんかする。
投下支援してくれた人。ほんと助かりました。この投下ド初心者に対して手助けしてくれてありがとう。
感想くれた方々。ありがとう。ほんとありがとう。俺返レス書いてる時間が一番楽しかった。寝る時間も削って書いてた。
最後に、こんな場所まで読み進めてくれたみんなに。この日、この場所、全てに『ありがとう』。
PS
さーて、学校の用事終えたら何書くかなー?
リレー始まってからずっと止まってる柊→くれはでも書くか。それよかマユリヒロイン話が先かな?けど、さっき思いついた彩陵高校ネタも……(以下えんえん妄想)。
ハハ……久しぶりにこの言葉を使うぜGJ!
ここ数日本当に楽しませてもらいましたッ!
後、ノーチェは自重。もはや馬呑吐ぐらいの耐性ついてないか君は。
しかしどうしよう。ぱにぽに見切って買わなくなってたんだが購買意欲をそそられてる。
ベッキー可愛いよベッキー。
ひとつだけ。
GC版TOSの主題歌は、「Starry Heavens」だぜ。複数形。
ぐぐぐぐっじょーーーーーっぶ!
いやいやお見事。綺麗に纏まってALLハッピーエンドでしたな。
柊は…あれも一つの幸せの形ということで。でもアンゼロット、一回くらいは実家に帰省させてやれw。
ではでは、これからの妄想具現化も楽しみに待ってます。
いまはただ、つかれたそのみをいやすことにせんねんしてください(うつろな眼で棒読みっぽく)
よーし、この勢いで俺も続きを書くぜ。
っと、時間もないのに言ってみる。
……もうすぐで出来るけど。
グッ! ジョーーーーブッ!!!
ベッキー可愛いよベッキーっつか楽しい時間をありがとー!
>>228 期待してるぜ?
楽しい時間は終わった……ワクワクは、止まってしまった。
でも、代わりに爽やかな満足を得られたんだぜ?
それから、ワクワクもチョッピリ残っている。
また、次の話を読ませてくれよな!
>>228 ばっちこーい!
>桃魔の人
GJ!そしてお疲れ様でした。レベッカに萌え、
柊やベホイミに燃え、アンゼロットの容赦のなさにシビレル(?)
いい作品でした。ぱにぽにをここで初めて知った自分でさえ
この作品を見てぱにぽにを読んでみたいと思ったから
大成功といえるでしょう。それでは桃魔の人、今はただその身を
癒すことだけを考えてください♪
>>231 そして、紅茶を飲み終わると「それでは次の任務です」
というのですね。分かります。
あなたはなんて酷い人だ。
もうさっそく次のレス住人の心を射抜く名作を作らせようとするなんて。
ああ、なんて残酷な……期待してしまうじゃないかw
桃魔の人、次回作も期待してます!
乙。柊は柊だな、色々な意味で。
「矢野王子キャラが二人揃えば(戦術的に)無敵だ!」とふと思ったがそれを言うには今更すぎた。
しかし、一つ気になることがある。
支援がどんどん「煮えた台詞」になってきてるのは何故だ。
燃えに感化されたんだろう。
読んでる途中で俺もいいたくなった。
ともあれ桃魔の人乙。
卓ゲ者には煮え台詞スイッチを持つ者も少なくないからな
かわたなさんほどじゃないが、
押すとさらさらと煮えた台詞を吐くようになるスイッチは最低一つは常備しているのが
卓ゲ住民の常識だからな。
問題は押すとカッコイイ台詞か電波台詞になるかどうかがわからないということでw
それが死亡フラグであってもな。
積み上げる手が止められなくなるのはよくあることさ。
まぁ、そんな俺らだからこそ何処でも手を取り合えるのさ
桃魔の人乙。いい仕事してますねー。
なんと言うか実にキャラ達が「らしい」感じがしてよかった。
願わくばボスキャラの彼女のその後のちょっとした短編を希望したいぜ。
いいことかんがえた!
みこシリーズならぬ桃シリーズを(ry
>>224 GJだと言わせてもらおう!全員キャラ立ってるのとか見事だぜっ
ベッキーとノーチェがかわいすぎwwww
敢えて惜しむべき所があるとすれば。
燃え支援祭りに乗り遅れたことだorz
ベホイミャーさんGJだぜー!燃えたぜー!楽しかったぜー!
つー訳で、俺もこのいい気分のまま、ちょっくらぱにぽに原作を買いに本屋へ行って来るぜ!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2336941 みならじ第2回 ■パーソナリティ:後藤邑子、伊藤静。
「心が綺麗な天使」「フッ(失笑)」
「ウザイ」「キャハハ」「ほんとさぁ…大丈夫?」「おいおい、自称天使」
「自分が天使だと思ってること自体が間違ってるんじゃないの」
「軽く(精神病院に)通院してみた方がいいよ」「それかもう日本出てったほうがいいんじゃないの
>桃魔の人
GJでした!!
あぁ、ベッキー可愛いよ、ベッキー♪
かなりの熱さ&ハッピーエンド乙でしたww
私はNWはアニメから入った口ですが、とっても面白かったです。
素晴らしい作品、ありがとうございました。
246 :
前スレ859の人:2008/02/21(木) 00:10:00 ID:tsKPAI8p
桃魔的日の中の人さん、ぐっ、ぐっぐっ、GJです&一週間お疲れ様でした! 今はその体を(略)。 皆さんも言ってますが、このSSをここ一週間の自分の一番の楽しみにしてました。
何と言うか、柊やベホイミ達と一緒に桃月町にいるような感覚でしたよ。
そしてノーチェ、お持ち帰りして良いですか?w
ともあれ、面白い物語有難うございました!
だいぶ遅レスですが>13
サロンでノーチェを出すというレスを見て、もしかしたらと浮かれてあんな文章になっただけで、あの時点では確信とかはなかったです。
魔法少女アイとのクロスもいけるかなあ、とか思った24の冬。
>>桃魔の人
GJ!完結、おめでとうございます
さて、昨日は投下できなかったので、朝っぱらから投下します。
sideアシュレー・ウィンチェスター
「いらっしゃいませー」
かつて、全世界規模で起こる、犯罪、災害に対応するべく、各地から強者を集めて作られたARMSと呼ばれる特殊部隊があった。
「3点でお会計、8ギャラになります」
その部隊は時に世界中で暴れるテロリストを、時に世界を滅ぼすべく降り立ったドラゴンを、時に世界を飲み込もうとする異世界を相手にし、そのすべてを撃破した。
部隊が解散されて2年、隊長だった男は今…
「はい10ギャラのお預かりで、2ギャラのお返しとなります。ありがとうございましたー」
パン屋をやっている。
「お疲れ様。アシュレー。今日はもうそろそろ閉めましょう。私も手伝うわ」
奥から彼の妻、マリナが現れて言う。それをアシュレーは優しく制した。
「いや、手伝いはいいよ。マリナにはこれから大変な仕事が待ってるんだから、今から体力つけておかないと」
「もう…まだまだ、3ヶ月は先の話よ。後1ヶ月は普通に働けるわ」
つわりも最初よりはひどくないしと言いながら、彼女はそろそろ目立つようになってきた自分の腹をなぜる。
「けどもう、3人目かあ…」
アシュレーはつぶやく。双子の父親になってから1年。
新米のパパである彼には、さらに1人増えると言われても正直実感が沸かなかった。
それにマリナは口を尖らせて反論する。
「もう…それはアシュレーが2人が生まれてすぐに獣のように…」
「いやそれはそのなんて言うか…」
しどろもどろになるアシュレー。すっかりかかあ天下であった。
「ねえ、アシュレー。今度の子供には、なんて名づけようかしら」
「そうだなあ…」
マリナをカウンターに用意した椅子に座らせて、アシュレーは店じまいの用意を始める。
かつてこの店を切り盛りしていたおばさんは、アシュレーが一人前になると引退し、
今は双子の世話をしたり、身重のマリナの代わりに家事を手伝ったりしてくれている。
「…男の子だったらブラッド、女の子だったらリルカなんてどうかな」
少し考え、アシュレーは何となく思いついた名前を言う。それはかつて共に戦った仲間の名前だった。
「あの2人の名前?うん、確かにいいかも知れないわね」
それにマリナは笑顔で同意する。
「あの2人に似てくれれば、とってもいい子になるわ。だってアシュレーの大切な仲間ですもの」
「そうだね。2人とも、元気にしてるかな…」
なんとも言えない和やかな空気が流れる。それは、平和な日常の象徴。
だがそれは、突然の闖入者によって破られた。
「大変だよ!あんちゃん!モンスターが街で暴れてる!」
そう言って駆け込んできたのは、一人の少年だった。
「なんだって!?本当か、トニー!?」
少年の名はトニー。アシュレーとは長いつきあいになる、少年ARMSの隊長である。
それを聞いてアシュレーはすぐに店の奥に引っ込み、バイアネットのついたARMを持ってくる。
使わなくなって久しいが、手入れはかかしていない。
ARMを肩に担ぎ、アシュレーはマリナに向き直る。
「マリナ、行ってくる。マリナは危ないから店から出ないで」
「分かったわ。気をつけてね、アシュレー」
「トニー案内してくれ」
「分かった、こっちだ!あんちゃん!」
そう言って2人は外へ飛び出した。
「月が、赤い!?」
外に出たアシュレーは一歩外に出てその異変に気づいた。空に、赤い月が輝いている。こんなこと、今まで無かった。
「何言ってるんだあんちゃん!今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」
トニーの言葉に、アシュレーは正気を取り戻す。確かに今はモンスターを倒すのが先だ。
「ああ、そうだな、急ごう!」
街は阿鼻叫喚の様相を呈していた、犬、猫、鴉、ネズミ…街中の生き物が広場に集まり、それらが次々とモンスターへと変貌する。
「これは…トニー。お前も安全なところへ!」
「分かった。気をつけろよ!あんちゃん!」
モンスターたちはその場に残った唯一の人間を見つけ、奇声を上げて襲ってくる。
アシュレーはそれをバイアネットで切り裂きつつ、複数体攻撃用の弾丸でなぎ払った。
だが、倒しても倒してもどこからともなく生き物が集まってきてモンスターと化して襲ってくる。
「クソっ、次から次へと…これじゃまるで…」
アシュレーの脳裏によぎるのは、かつてのARM結成記念パーティーの記憶。
目の前の仲間たちが次々とモンスターと化した嫌な記憶がよみがえる。
「ぐあっ!?」
モンスターの1体がアシュレーの腕にかみつく。
アシュレーはそれをひきはがしてバイアネットでとどめを刺すと、敵の集団へARMを向ける。
カチリッ
アシュレーはあわててARMの残り装填数を確認した。マルチブラスト、ショックスライダー、ブラスターギルティ、すべて残弾0
「クソっ!弾切れか!」
アシュレーは毒づく。こうしている間にも次々とモンスターが発生する。万事休す。
「ハァーハッハッハ!お困りのようだね!勇敢な若者よ!」
突然上から高笑いが聞こえる。アシュレーは反射的にそちらを見る、そこに立っていたのは…
「だが安心したまえ、この、弱い者の味方!裏界の公爵であり魔騎士たる私が来たからには、この程度、1ラウンドもかからず殲滅してあげよう!」
それは派手な格好をした、女だった。
鎧を着けているところを見ると、渡り鳥だろうか?だが、武器は持っていないようだった。
「誰だ!?お前は!?」
「さて、せっかくだから私はこの剣の試し切りを選ぶとしよう!」
アシュレーの問いを完全に無視して女は敵のど真ん中に華麗に3回転しつつ飛び降りる。
そして、どこからともなく一振りの大剣を取り出した。
「パチものだったらモーリーへの土産にはならないからね!さあ、その切れ味を見せてもらおうか!『下がる男』の魔剣よ!」
それは、アシュレーには見慣れたものだった。幼いころに読んだ絵本で、2年前の旅路の中で、何度も見てきたそれは…
「必殺!エリゴール花電車歌謡ショー!」
女はその場で回転を始める。それは周りのモンスターと生き物を引きよせ、まるでミキサーのように砕き散らす。女の言ったとおり、一瞬にしてモンスターは全滅した。
「ふっ、まだ名前も分らないような雑魚魔王の手下風情が、この私に歯向かおうなど、1億と2000年は早いわ!」
「貴様…」
「ん、まだいたのか勇敢な若者よ。礼はいらないよ。私は当然のことをしたまでだからね」
「貴様が何故持っている…」
「さあ、行きたまえ。これでも私は忙しいのだ。これから、新入りの顔を見に行かねばならん。
ところで君、彼女がどこにいるか知らないか?おそらくこの世界の中心付近にいる可能性が高いと踏んでいるんだが」
「答えろ!なぜ貴様が、アガートラームを持っている!?」
アガートラーム、世界を救った伝説の聖剣にしてだれよりも優しき兄妹であった2人の墓標であるそれを持った女に、アシュレーは叫んだ。
「アガートラーム…だと!?」
アシュレーの言葉に女は初めて反応を返す。
「馬鹿な…ありえぬ…」
「さあ、答えろ!その剣を、何処で手に入れた!?」
「『下がる男』の魔剣にそんな遺産チックなかっちょいい名前がついているなど、ありえるはずがない!」
「人の話を聞けえええええええええええええええっっ!」
アシュレーは既にいっぱいいっぱいだった。怒りから思わず女にARMを向けてしまう。
女はそれを見て、不敵に笑う。
「ほほう。この私に喧嘩を売ろうと言うのか勇敢な若者よ」
「返答次第ではな。さあ、答えろ。その剣を、一体何処で手に入れた」
「ふっ…知れたこと。この辺りの森に生えていたので引っこ抜いて来たのだ!」
「貴様っ!?」
女の言葉がアシュレーの逆鱗に触れる。アシュレーは単体用の弾丸を女に向けて発射した。
「甘いわ!」
女は気合いと共にアガートラームを振り下ろした。アガートラームは正確にアシュレーの放った弾丸を2つに割る。
それを見て、アシュレーは冷静さを取り戻した。
目の前の女は、強い。全力で挑んでも勝てるかどうか。
一方の女もアガートラームを構え、戦闘態勢を取った。
2人の間に荒野の決闘のごとき空気が流れる。
「いくぞ!勇敢な若者よ!この私に喧嘩を売ったこと、後悔するがよい!」
そう言って駆け寄る女のスピードはまさに閃光のごとし!だが…
「何!?私より速いだと!?」
アシュレーはそれ以上のスピードで動き間合いを詰め切った。
アクセラレイター、早撃ちと呼ばれる高速の剣の使い手が編み出したと言われる、超神速の行動術である。
(やはりこの女、強い!一気に決めるしかない!)
女の素の反応速度を見て力の差を感じ取ったアシュレーが全力で仕掛ける。
「喰らえ!フルフラット、ライジングノヴァ!」
自身のARM最強の弾丸、それを零距離で全弾発射する。轟音が辺りに響いた。
至近距離での弾丸発射の反動でアシュレーは吹き飛ばされた。とっさに転がりつつ、起きあがる。
「やったか!?」
もうもうと立ち込める白煙。並みのモンスターなら跡形もなく吹き飛んでいるところだ。だが。
「なかなか、やる。だが私を倒すには足りなかったな」
声はアシュレーの後ろから聞こえた。振り向こうとしたアシュレーの背中が袈裟斬りに斬られる。
激しい痛みと共にアシュレーは倒れた。
「クソッ…」
震える頭を上げ、アシュレーは後ろを見る。そこにはボロボロになった衣装を着た、女が立っていた。
「この魔王、エリィ=コルドンに刃向かった罪は万死に値する」
女は芝居がかった口調で言う。
「だが、力の差を理解しつつなお戦い、自らの最大の技で挑んで来る勇敢さは賞賛に値する。
ゆえに、その勇気に免じて命だけは助けてやろう。感謝するが良い。では、さらばだ」
その言葉と共に女はいずこかへと去った。後にはアシュレーだけが取り残される。
「待て…剣を…返せ…」
アシュレーは一言呟いて意識を失った。
sideブラッド・エヴァンス
「…にわかには信じられぬ話だな」
晶と共に敵を掃討したブラッドは、メリルの家で晶の事情を聴いていた。
メリルは2人にお茶を出したあと、遠巻きにこちらを見ている。主に、晶の方を。敵意を持って。
晶の話した内容は突拍子もないものだった。
自分は異世界の人間で、特殊な力を持った人間であり、ガーディアンの導きでこのファルガイアに渡ったのだという。
ファルガイアを、救うために。このファルガイアで1人戦う友人の助けを呼ぶ声に応じて。
「嘘くさいってのは同意しますけど、本当に自分をガーディアンって名乗る、ダン・ダイラムって猫に連れてこられたのは本当です」
ブラッドは考える。
来ている服はこの世界では見慣れないものだった。
メリルとそう変わらぬ歳にも関わらず何もないところから剣を取り出し、その腕前もかなりのもの。
ダン・ダイラムと言うガーディアンには覚えがある。
かつて世界中から収集したミーディアムの一つだ。そしてその司る力は時空、一応筋は通っている。だが…
「もう一度、お前の剣を見せてくれないか?」
「へ?いいですけど…」
そう言うと晶は再び虚空から剣を取り出す。そしてそれをブラッドに手渡した。
ブラッドはしげしげとそれを眺める。魔法には疎い自分でもそこに込められている魔力を感じる。
ただの剣でないことは確かなようだ。だが、そんなことより問題は…
「…俺は、この剣によく似た剣を知っている」
「本当ですか!?」
ブラッドの言葉に晶が食いつく。
「ああ、これとの違いははまっている宝玉が赤かったことと、大きさくらいだ。それ以外はよく似ていた」
「大きさ?あ、でもそれは超巨大武器として成長させればありえるか。それに赤い宝玉の、私の魔剣にそっくりな剣って言えば…」
晶は一人で呟きながら考え込む。そしてブラッドに向きなおり言った。
「ブラッドさん。その剣はもしかしたら柊くんの魔剣かも知れません。どこで見たか、教えてくれませんか?」
「ああ、そいつは魔神を倒した伝説の剣として、メリアブールの宝になっている。ここからだと少し遠いが、テレポートジェムを使えばすぐに行ける。ちょうどその近くに友人が住んでいる。そいつのところまでなら、連れてってやろう」
ブラッドはあえて1つの情報を伏せた。それは、その剣の使い手が、女であること。
この世界の人間なら、子供でも知っていることだ。
「伝説の…?と、とにかく連れてっていただけるのならお願いします。他に手がかりも無いし、まずはそこから当ってみようと思います」
だが、晶はそのことを知らないようだった。異世界の人間だと言うのは、本当なのかも知れない。
「分かった。テレポートジェムは、俺の家にいくつか置いてある。取りに行く。一緒に来てくれ」
「はい。よろしくお願いします」
ブラッドが剣を返し、晶がそれをしまうと2人は立ち上がる。
晶が外に出た後、ブラッドはメリルに声をかけた。
「家を使わせてもらってすまなかったな。ご両親にはありがとうと伝えてくれ」
「う、うん…ねえおじちゃん?」
「なんだ?」
「あの人、なんか怪しいよ。騙されないように気をつけてね」
「…ああ、そうだな」
晶は怪しい。それは事実だ。もっともメリルの言葉にはそれ以上の何かがこめられていたが。
外では村人たちが戦いの後片付けをしていた。
だれも空に昇った赤い月のことは気にしない。まるでそれが当たり前であるかのように。
「エミュレイターを倒したのに月匣が消えないなんて…でもこのあたりにルーラーはいなかったし、どうなってるんだろう?」
空に赤い月が昇り、自分と晶以外はそれを不審に思っていない。
ブラッドにとってはそれだけだったが、どうやら晶にとってはそうでは無いらしい。
ブラッドは尋ねることにした。
「先ほども言っていたようだが、月匣とはなんだ?」
「あ、えーとその私がいたここに来る前の世界のさらに前にいた世界で私が生まれた世界での話なんですけど…ああもうややこしいなあ、とにかく、私のいた世界では、
モンスターが現れるときは周りに結界を張るんです。そこではこんな風に赤い月が昇るんですけど、その結界を作った奴を倒せば結界は消えるんです。だけど…」
「その作った奴が見つからなかった、と言うことか」
「はい。それにこの月匣、ものすごく広いみたいです。下手したらこの世界全部を覆ってるんじゃないかな。でもそんな広範囲の月匣、魔王でもなきゃ無理だよね…」
「魔王?」
その言葉を聞いて、ブラッドに苦い記憶が蘇る。
それは、仲間の一人が新しいマイクを手に入れたときのことだった。
「今日は、マイマイク入手記念リサイタルを敢行する!もちろん全員参加じゃ!」
そう言って仲間が選んだのは、『ステージっぽい』という理由から、かつての処刑場跡だった。
そして無理やり付き合わされたARMSの面々は、酷い歌声に反応して蘇った魔王と戦うことになった。
その強さは、勝った時には正直生きているのが不思議なくらいだった。
ブラッドの生涯で最も厳しい戦いだったかも知れない。
事件の張本人とは1年前に会ったきりだが、元気にしているのだろうか?
そんな苦い記憶を振り払い、ブラッドは続ける。
「そうか。ではあの赤い月を消すにはそのルーラーとやらを探し出すところから始めんとな」
「はい。そうなります。多分柊くんもそいつと戦ってるんだと思うんですけど…」
そう言って晶は柊のことを考える。
あの、世界の不幸を一身に背負った男なら、簡単に敗北したり死んだりはしないと思うが、魔剣もなしに、一体どこでどうしているんだろうか?
今日はここまでです。
ちょ、エリィ様そんなとこで何してんですかwww
これまたナイトウィザード的な魔王が出てきたなぁ
うーん、そういえば柊の魔剣に正式に名前って付いてたっけか?
乙である。朝っぱらからエリィ様降臨とはやってくれる。
惜しむらくはエリィ様の一人称って我輩だったりするのよねー。
そして別れの言葉はアディオスだZE。
細かい事ウザイかもしれんが「そこが大事なんです」と某メイド漫画家もいってるので。
>>256 指摘thx、保管されたときには直しておきます。
>>255 公式に名前は決まってない。天さんとかが適当な名前をつけたりしたことはある。
魔器解放は魔剣の名前を呼ぶらしいから名前はあるんだとおもうけど、柊の中の人は特に決めてはいないんじゃないかなぁ
今更なんだが、そのアガートラームって魔剣は実際はどんな外見なんだ?
柊の魔剣にそんなに似てるのか?
宝石がついてて刀身に文字が書いて有ればマスコミはみんな魔剣にしちまうってじっちゃが言ってた
特に似てないはず
確かでかくて非常に無骨な剣だった
宝玉とか文字とかは付いていないはず
柄以外に剣の腹にも掴む場所があったよーな?
なんだかんだで、あの無骨さが好きだった
柊の魔剣? 正直ださすぎるべーw
エンディング終わった後の反響がすごくて俺びっくり。
……これだけ返事があると嬉しいけど、やっぱり夢みたいで怖いっス。これ、ドッキリだよな?カメラとかそこらにあるんだろっ(挙動不審)!?
え、えーと、とりあえずカーテンコール代わりに最後のレス返っス。
>222 おつかれさまでした。今は(ry。休みましたね?では次の任務です♪ by真昼の月
ぐはっ、確認したはずなのに……やっぱ自分英語弱いなぁ。例の晶ネタもワイバーンの綴り間違えてたもんなー、確認したのに投下後に気づくなよ。
>223 さよならは……言わないぜ? 正直なに書くかで迷う状況なわけだが。TISたんに出てきてもらえれば他の人の作品で思い出した某おさんどん出せるかなーとか。
>225 それは俺にノーチェ書くなってことかい(曲解)? だーから、ベッキーはもともと可愛いってば。俺の好みは大森先輩だけどなっ(しつこい)!
>227 休ませてくれねぇのかいっ(笑)!?頼む、ちょっとだけ休ませてくれ。買ったのに、俺まだ蘭堂舞がどんな子かも知らないんだぜ……。
>228 ファーイトー!
>229 うっす。自分も書いてて楽しかったっス。だからベッキーはもともと可愛い子なのさってば。
>230 そー言ってくれるなら書いた甲斐があるってもんス。そーすねぇ、次は何書こうかなぁ……銀魂ネタも浮かんだけどあの台詞回しキッツイんだよなぁ……。
>231 ……休んでいい、んだよな(ひきつった笑顔)?
>232 うい、気長にお待ちくださいっス。何にするかから考えねぇとなぁ……DXクロスなら再構成して書き直すだけだから早いか?でも書きかけって気持ち悪いしなぁ。
>233 確かに王子二人いたら相手したくないな、GM的にもPL的にも(笑)。もーちょっとクレバーにスマートに戦わせたかったがそれやるには自分まだ力不足だった。
>234 (赤面して)うー……そ、そんなこと言ったってなにも出ないんだからねっ!? (素面に戻って)これでいいっスかー?ツンデレプレイって。
>239 そう言ってくださるととても嬉しいです。二次作家にとって「らしい」キャラが書けてるって言われるのはやっぱり嬉しいことです。
シェリーたん大好きだけど俺思いつかないんだよなー。たぶんしばらくしたらあの町の公園で都会に憧れる河童と疫病神と一緒に漫才してると思う。
返事レス多っ!?2レス消費します……ごめん。
返事続きー。
>240 だから、この話の続編ネタ思いつかないんだよう。
でも自分リレー時に誰かの「ネコアルク出してくれねぇ?」の一言からベホ対HARI−MA書き上げたりしたことあるから何かの拍子でできるかも。ぽろっと。
>241>243 メディアが裏方だったからちっとわかりづらいかなー、と思ったけどそう言ってくれると報われる。
ベッキーとノーチェの可愛さについては俺の愛だ。ベホと柊の無駄な熱さとカッコよさも俺の愛だ。愛って大事だよね。
>242 ……もぉいいよ、ミャーで(諦)。無理はしないでくれ?けど、お前さまの心意気は受け取りました。頑張ってください、ありがとー。
>245 ベッキーの可愛さが出てたなら嬉しい、かな。大体半月頑張った甲斐があるってもんです。アニメ組の人に誉められるとは思ってなかった。こっちこそありがとう。
自分は生温いハッピーエンドが大好物なもので。やっぱり、みんな笑える方がいいよな(某スレで某ヒロインに酷い仕打ちした奴の台詞か)。
>246 だから、ほんとーに休んでいいんだよなっ!?ノーチェは俺んです。嘘です。王子のです。つまりみんなのものです。皆で愛でようぜ?
>247 ……別にやれんことはないかもしれんが、ここには投下できなさそうだな、とか思った2○の冬。
>248 あざーっす!まぁ、先に書き上げてるんで完結もなにもって感じっすけど(苦笑)。そちらさんも頑張ってくださいっス。
実は、コンセプトが「ベルが黒幕じゃないNW」、「アンゼが直接出てこないNW」、「あんまり公式で活躍しないコネを使った話」だったりする。
自分が知るずっと前からNWを支え続けてくれた人たちへの感謝の気持ちも込めて、こんな物語(シナリオ)にしてみたかった。
……最後の最後に柊を拉致させたのは、あそこで普通に別れさせるとあんまりにも柊がカッコよすぎるから。
ベッキー落とした挙句にカッコいいエンディングっ!?そんなんネタ人間の王子が許すわけねぇじゃねーかっ!?と、オチをつけさせたかっただけ。
まぁ、それでも奴のことですから。自分が柊を信じてるからこその判断ですじょ(怪しい笑み)?
なお、奴のベッキーに対する対応は「懐いたガキ」だったりする。柊からラブはないよ?っつーか、19と10歳は流石に犯罪じゃねぇのか。
頑張れベッキー!奴は、奴は本気で手ごわいぞっ!?ラブに発展するかは知らんが(超無責任)。
じゃあ、また会おうぜみんなっ!自分これから名無しに戻るよ!そしてまたいつか中身として戻ってくるぜ!
>>261 剣の聖女のムービーでアナスタシアが柄と剣の腹の取っ手持って走ってる絵がかっこよかったな。
>>265 感動をありがとうっ!
またのスレ到来を楽しみにしてるぜ
ところで6年後には 16と25である。
……まぁ悪くない年齢では(ry
>>249のあたりを見ていたらふと『つまり双子の名前は「トカ」と「ゲー」なんですよね?』ってネタを思い出した。
些末な話ではあるんだけど、なるべく「っ」より「ッ」を使って欲しい微妙なお年頃。
ネタ思いついたんだが質問していいか
ろんぎぬすのマスターって16くらいの女の子に三人称何を使うかな?
お客さん、はちょっと堅い気がしてさ。
そもそも「ろんぎぬす」のマスターって…… あ、あいつか
うちの卓のマスターさんは、ファイナルハーツの粋なベテラン店長代理人
そんなイメージからだが、「嬢ちゃん」ってのはどうだろう?
>>269 昔の仕事中だったら名前呼び捨て、もしくは「おまえ」だと思うんだがなー。
今は「お嬢ちゃん」とか、そんな普通のマスターって感じでいいんじゃね?
渋いマスターイメージで、「お嬢さん」でいいかも。
丸くなったという感じで。
ってーか、バーに16歳の女の子が入ってきたらつまみ出せwww
ろんぎぬすはみんなの居酒屋だからマスターってイメージがねぇ。
BAR・ホーリーオーダーの方がマスターって感じがするだろ。
ならばむしろおっちゃんのイメージで『ヘイ嬢ちゃん!』みたいな感じでいいんじゃね?
277 :
269:2008/02/21(木) 23:25:29 ID:4LBER7I/
>>271-276 さんくー、頑張って書いてみる。
……最終的には戦隊作れる(数)までやれるかな?
SSを途中まで書いたはいいが、そもそもその作品がアニメじゃないことを思い出して
削除した。さぁ別の題材を探そう。
ところで、正義の宝玉ってどんな効果なんだぜ?
片方がNWなら何でもいいんだぜ? あんちゃん
バリア無効+必殺攻撃だと思う>正義
ふと、アライブを全巻読み終わって賢者の石絡みでナイトウィザードのクロスを妄想してみたが、俺には王子みたいな濃厚なテーマ物語が出来ないという結論に達した
つまり何を言いたいかというと………クレバー王子マジで凄いな!
1時から投下します。
sideリルカ・エレニアック
ブラッド・エヴァンスと七瀬晶がタウンメリアへと向かおうとしていたその頃、柊蓮司とリルカ・エレニアックの2人は…
「どこなんだよここは!?」
「ご、ごめん。失敗しちゃった…」
森の中で道に迷っていた。
事の起こりは1時間ほど前に遡る。
「これで、最後!ハイフレイム!」
「こいつで、終わりだ!エンチャントフレイム!」
リルカの呪紋が人形を焼き尽くすと同時に炎を纏った柊の魔剣が人形を真っ二つにかち割った。
シェルジュ自治区に静寂がやってくる。どうやらモンスターは全滅したようだ。
「ふう…お前、やるじゃねえか」
「あなたもね」
協力して敵を倒した事による達成感からか、2人には奇妙な連帯感が生まれていた。お互いに親指を上げ、互いの健闘を称える。
その直後にリルカは気づいた。目の前の男について何も知らないことに。
とりあえず、リルカは尋ねた。
「とりあえず手伝って貰っちゃってなんだけど、あなたは誰?どこから来たの?なんで空から降ってきたの?
こいつらが何なのか知ってるの?あの赤い月に何か関係があるの?
なんでアガートラームを持ってるの?まさか引っこ抜いてきたの?もしかして泥棒?」
「おいおい待て待て一度に聞かれても答えられねえよ!落ち着け!」
弾丸のように矢継ぎ早に繰り出される質問に、柊は混乱して言う。
その言葉にリルカも落ち着いて話を聞くことにした。
「ごめんなさい。一気に聞かれても困るよね。じゃあ、まずあなたは誰で、どこから来たの?ってか何で空から降ってきたの?」
「ああ、俺の名前は柊蓮司、魔剣使いだ。どっから来たかって言われると…信じて貰えねえと思うが、この世界の外からだ。
何で空からってのは…聞かないでくれ」
「この世界の外?ファルガイアじゃない異世界から来たってこと?」
「ファルガイア?…ああ、この世界の名前か。そうなるな。ちなみにファー・ジ・アースって所から来た」
「異世界…」
普通ならば一笑にふす話なのだろう。だが、リルカにはあながち嘘だとも思えなかった。
異世界、それはリルカがかつて参加していたARMSが最後に戦った相手だからだ。
あの時の異世界は暴れ回るモンスターみたいなものだったが、異世界があるんならファルガイアのように普通に人が住んでいる異世界だってあってもおかしくはない、と思う。
「おっけ。あなた…レンジが異世界から来たってのは、とりあえず信じるよ。
でも、その異世界から何で来たの?もしかして、この赤い月やさっきのモンスターと何か関係あるの?」
「ああ、多分だが、ある。俺は、この異変の原因を倒しに来たんだ」
リルカの次の問いに蓮司は力強く頷いて答える。その答えにリルカは驚いて聞き返す。
「原因って…分かるの!?」
「ああ。多分こいつは、魔王の仕業だ」
そして、柊は話す。エミュレイターと月匣、それを束ねる魔王、そしてそれと戦うもの、ウィザードについて。
「へえ…なんか、凄いね」
その話を聞いて、リルカは大きな事件に再び巻き込まれたことに対するとまどいを感じていた。
リルカは、柊にたずねる。
「魔王って位だから、強いんだよね?」
「多分な」
リルカの脳裏によぎるのはかつて1度だけ戦った、魔王の名を持つモンスター。あの時は6人がかりでようやく倒した。
「じゃ、私たちだけじゃ厳しいかな…」
「う〜ん…かもな。って、お前も手伝ってくれるのか?」
「うん。私たちの世界の問題でもあるし。それに足手まといにはならないと思うよ?」
「そりゃあそうだろうが…」
柊は戦いの中で、リルカが極めて優れた魔法の使い手であることを見極めていた。
ファー・ジ・アースでも達人と呼ばれる域に達しているだろう。
それも実戦で磨いた技らしく、隙のない魔法だった。確かに心強い味方になるだろう。
柊はそう判断していた。
「それに、私の仲間なら、言えば手伝ってくれると思う。みんなで挑めば、魔王でも何とかなるよね?」
「仲間か…」
仲間は多い方がいい。その方が出来ることが多くなる。
それに、彼女の仲間なら腕も立つだろう。柊はそう考え、彼女に言う。
「分かった。頼む、手伝ってくれ。えっと…」
「リルカ。リルカ・エレニアックだよ。よろしくね、レンジ」
「ああ、よろしく頼むぜ。リルカ」
二人はぎゅっと握手をかわす。かくして、ウィザードとクレストソーサレスの臨時パーティーが結成されることになった。
「んで、リルカの仲間ってのはこの辺に住んでるのか?」
柊は早速リルカに聞く。それに対し、リルカはクビを横に振った。
「ううん。今はみんなばらばらに暮らしてるから…でも、大丈夫。これを使えばみんなのところまでひとっ飛びだよ!」
そう言うとリルカはポケットから緑の宝石を取り出す。
「それは?」
「テレポートジェムって言って、行ったことのある場所ならあっという間に移動できる便利アイテムだよ。
とりあえず、ここから近いアシュレーの所に行くね。そーれ、レッツ・ゴー!」
そう言うとリルカはテレポートジェムに魔力を込めた。
かくして、冒頭に戻る。
「なあ、リルカ。悪いがもう1回さっきの奴、使ってくれねえか?失敗は無しで」
「ご、ごめん。もう無い…」
2人の間に何とも重い空気が流れる。
「と、とりあえず街を探そうぜ。そこまで行ければ何とかなんだろ」
「そ、そうだね。街に行けばテレポートジェムも売ってるしね」
こんな時こそポジティブシンキングとばかりに顔に笑みを張り付かせて2人は獣道同然の道を歩きだした。
しばらく2人して黙って歩いていたが、重苦しい空気を吹き飛ばそうとリルカは口を開く。
「そう言えば、ここでも赤い月が見えるんだね」
「ああ、そういやあずっと月匣の中っぽいな。てっきりあの辺りだけかと思ってたが、こりゃもしかすると世界中がこうなのかもな。
…そうすっと敵は魔王の中でもやばい奴ってことか?」
失敗。余計に空気が重くなった。また2人は黙って歩き出す。
そのときだった。
ぐぅ〜きゅるるるるる〜
豪快な音がした。柊は思わず音のした方を見る。
「ば、晩ご飯食べてなかったから!」
リルカが顔を真っ赤にして必死に言い訳をし、次に何かを期待する目で柊を見て、ため息をつく。
「と、ところでレンジ、食べ物とか持って…るわけないか」
柊は完全に手ぶらだった。どう見ても食料その他を持ち歩いているようには見えない。
だが、柊の返答は意外なものだった。
「いや、そういや昨日、エリスが持たせてくれた弁当があったな。たまにはちゃんとしたものを食べなきゃ駄目ですよ柊先輩って」
そう言うと柊は月衣に手を突っ込み、3段重ねの重箱を取り出す。それを見てリルカは目を丸くした。
「ちょうどいい。ここらで一旦休憩にしようぜ。どう見ても1人で食うには多いし、分けてやるよ」
「ふぅ〜。満足満足♪」
幸せそうな顔でリルカが言う。
「あ、あっという間に…」
エリスの弁当は優に4人分はあるものだった。その半分以上をリルカはあっという間に平らげていた。
油断していたら柊の分が無くなりそうな勢いだった。
「ポーリィ並みの食欲だな」
重い空気はすっかり消えている。人間腹が満たされれば悲壮感が薄れるものだと言うことだろうか。
「いや〜こんなにおいしいご飯は久しぶりだよ。おばさんの焼きそばパンに匹敵するね。これを作ったエリスさんって人はレンジの彼女?」
「ば、馬鹿ちげえよ。仲間、ただのな〜か〜ま!」
「ふ〜ん。な〜んか怪しいなあ…」
突然の恋話に顔を真っ赤にして否定する柊とそれをニヤニヤしながらからかうリルカ。意外にいいコンビかも知れない。
「そういえばさレンジ…」
食後の休憩時間と言うことで2人して木陰に座って休んでいるとリルカが何かを思いついたように言う。
「うん?なんだ?」
「さっき、何にも無いところからお弁当を取り出してたよね?どんな手品なの?」
「ああ、そういやさっきは説明してなかったか。あれは月衣っつって俺たちウィザードが武器とか色々しまっておくための結界みたいなもんだ」
「武器?ああ、そう言えばレンジの剣もいつの間にか無くなってたけど、そのカグヤにしまってたの?」
「そうだ」
「じゃあさ、その剣ちょっと見せてくれない?さっき、聞き忘れてたこともあるしさ」
「いいぜ。重いから気をつけろよ」
そう言うと柊は月衣から魔剣を取り出し、リルカに手渡す。
それを少しよろけながら受け取って、リルカはしげしげと剣を眺めた。
「う〜ん。やっぱり似てるなあ」
「似てる?何に?」
柊はきょとんとして聞き返した。
「ああ、うん。この世界にね、昔からアガートラームって伝説の剣があるんだけど、この剣それと瓜二つなの。
だから最初はレンジが引っこ抜いて持ってきちゃったのかなって思ったんだけど、違うよね。
レンジはファルガイアに来てからまっすぐシェルジュ自治区に落ちてきたみたいだし」
「落ちてきたって言うな!」
リルカの軽口に突っ込みつつ、柊は答える。
「けどそれ変だぞ?その剣は俺がウィザードになってからずっと一緒だった…いやまあ1回失くしたけど、あの頃の剣とは違うしな。
とにかく、この世界に昔からあるはずがねえ。他人の空似ならぬ他剣の空似じゃねえのか?」
「う〜ん。やっぱりそうなのかな…」
「多分そうだろ。そろそろ行こうぜ」
「うん、そうだね」
そこで話を打ち切り、2人は立ち上がる。
魔剣を月衣に突っ込み、2人は再び歩き出した。
月衣マジ便利支援
しばらく歩き、ようやく2人は村らしきものにたどり着いた。2人は同時に安堵の溜息をつく。
「よかったあ…外海の孤島とかだったらどうしようかと思ったよ」
「さらりと怖ええこと言うなよ」
人が住んでいるところに出られたことによる余裕からか、2人して軽口をたたき合う。
村に入るとリルカは変な顔をして辺りを見渡した。
「あれ、ここって…」
見覚えがある。確かここは…
「リルカ!」
突然柊に抱き寄せられる。そのことにリルカが赤面して抗議する。
「ちょ、ちょっとレンジ、いきなり何を」
だが、柊の顔を見て、平静を取り戻す。
リルカにも見覚えがある。あたりを警戒する、歴戦の戦士の表情。
柊はその面持ちのまま、ゆっくりと月衣から魔剣を抜く。
「何か、いる。気配を殺してやがる。素人じゃあねえな。リルカ、俺から離れんなよ」
「ん、おっけ」
小声で会話する。そして、リルカもポケットからクレストグラフを抜き出す。
時間に直せば、ほんの数十秒にも満たない時間。だが、極度の緊張状態のなかで、その時間は数時間にも感じられる。
「…!上だ!」
柊がとっさに魔剣を天に向ける。魔剣は間一髪で空からの刃を防いだ。攻撃をしてきたのは、眼帯をつけた、若い女。
「カノンさん!?」
「…!?リルカか!?」
2人が同時にお互いの名前を呼び合うと同時に。
「カノンさん、一体何があったんですか!?」
中学生ほどの少年が近くから飛び出してきた。
「すまなかった。てっきりあの赤い月が出てから現れ出したモンスターの類かと思ってな」
若い女、渡り鳥のカノンは柊に頭を下げる。
「いや、いいさ。それよか俺ら以外にも赤い月のことが変だってわかってる奴がいて安心したぜ」
「ここ、バスカーの村だったんだ」
リルカは少年、かつての仲間の1人であり、ガーディアンを使役するバスカーの神官であるティムに話かける。
「はい。でも驚きました。リルカさんが突然訪ねてくるなんて。何か御用ですか?」
「え、いや御用っていうか…あはははは」
ティムの問いをリルカは笑ってごまかした。テレポートジェムの転送ミスだなんて、言えない。
「でも、何でこの村にカノンさんがいるの?」
リルカは話題を変える。そのことに深く突っ込むことはせず、ティムは頷いて説明をする。
「ええ…実は、何日か前からグラブ・ル・ガブルが変なんです。何かが入り込んだような感じで。
そこで調査のためにカノンさんに護衛をお願いして、一緒に調べに行こうと準備をしていたら…」
「あの、赤い月が昇ったと」
「はい。村のみんなはあの赤い月が当然のことだと思っているようなんです。
それに、あの月が出てから、この辺りにいるモンスターとは思えないほど強いモンスターがひっきりなしに襲ってくるようになって。
それで動くに動けず、困っていたんです。
今のところは僕たち2人でも何とかなってますが、あんまり続くと流石に辛いかもしれません。そこで、リルカさんと、ええと…」
「柊蓮司だ」
「ヒイラギさんには、増援…アシュレーさんやブラッドさんを呼んできてもらいたいんです」
「うん。いいよ。どうせ私たちもアシュレーのところへ行くつもりだったし」
ティムの頼みにリルカは頷いた。
「ありがとうございます。助かります」
「いいっていいって…ところでティム、お願いがあるんだけど…」
リルカのお願いに、ティムは不思議そうに聞き返す。
「はい?なんですか?」
「テレポートジェム、分けてくれない?できれば5,6個」
「あんがと。できるだけ早く戻ってくるね」
テレポートジェムを十分な数補給し、リルカはティムに別れを告げる。
「はい。お気をつけて。リルカさん、あ、それともう一つ、アシュレーさんに伝えて頂けますか?」
「ん?なに?」
「グラブ・ル・ガブルの異変の直後に、ダン・ダイラムの強い力で、この世界に何かがやってきたみたいなんです。
もしかしたらそれも何か関係があるかも知れません」
「ん。分かった。一応伝えておくよ。じゃね!」
そうしてリルカは再びテレポートジェムに魔力を込め、柊と共にアシュレーの住むタウンメリアへと向かった。
今日は、ここまでです。
乙です。リルカがテレポートジェムを使うと変な所に飛ぶのは最早コーラを飲むとゲップが出るくらい当然の事……!
エリスが持たせた“昨日の”弁当?
まぁ、月衣の中に入れとけば生物が入れないから腐らないらしいしなw
ふふふ、テレポート失敗を見ると幻想水滸伝のほうを思い出すなぁw
柊が幻想世界に行ったら108星の一人になるのかしら?
下がりに下がって-9星くらいになるとか
転落星・・・もとい天落星とか新たな星が生まれそうだ。
295 :
5-912:2008/02/22(金) 14:46:26 ID:VzZtCRAk
真の紋章は強力だしな。
真の紋章持ちって落とし子か?
地伏星とか柊っぽいかなー、やっぱ落がないと駄目かなー?
真なる落下の紋章www
落ちる、堕ちる、墜ちる……まあこれらの中からなら天堕星とか天墜星とか?
下がる方だろ、と言いかけて『天下星』は無ぇよなと思った
>>296 むしろそのまんま
「下がる男の紋章」
てのが出ても俺は驚かんぞww
300 :
5-912:2008/02/22(金) 17:15:34 ID:VzZtCRAk
柊の紋章とな!?
そういや幻想水滸伝には、
ひいらぎこぞうとかひいらぎマスターとか出てたよなw
宿星持ちになるなら天暗星とかになるのかな
フリック、(エッジ)、腕、ベルクートと不幸ぞろいだし
>>289 GJ!
まあ、リルカはロンバルディアやグラウスヴァインが異世界ドラゴン次元から来た存在だと知ってるし驚かないよなw
小ネタでハンドアウト投下したいんだけど、誰か今いる?
ハンドアウトくらいなら連投規制にも引っかからないんじゃないか?
ブックレットで、自分の専用武器を他人に貸せる共鳴具って能力が追加されたな。
前に案が上がったゼロ魔クロス、デルフリンガーは貸与前提転生者で参戦というのはどーだろう。
演出上、移動を工夫する必要があるが。多分ディフェンダー。
んじゃ投下します。
PC1
シナリオコネクション:水無灯里
推奨クラス:大いなるもの
推奨キャラクター:アリア・ポコテン
キミは水の惑星AQUAの水先案内人(ウンディーネ)の会社社長だ。
ある日キミの友人で会社の社員である水無灯里がどこかへときえてしま
った。どうやら魔王級のエミュレーターによってさらわれたらしい。
事態の解決には自身の力だけでは足りない。キミは異世界の住人の力を借りることした。
PC2
シナリオコネクション:アンゼロット
推奨キャラクター:柊蓮司
キミは高校を卒業したあと、世界を飛び回りアンゼロットの依頼をこなしている。度重なる任務につかれたキミは、アンゼロットの魔の手から逃げ温泉街へときた。ここで疲れた体を癒そうと。だが温泉宿の扉を開いたキミを待っていたのは、見たこともない白い物体だった。
PC3
シナリオコネクション:アリア・ポコテン
推奨クラス:異能者or使徒or夢使い
キミは水の惑星AQUAの水先案内人(ウンディーネ)だ。ある日君の友人である水無灯里がどこかへと消えてしまった。しかもキミの周りの人々はだれも彼女のことを覚えていない。不審に思ったキミは彼女を探してニューヴェネツィアの街を駆け回ることになる。
PC3
シナリオコネクション:柊蓮司
推奨スタイルクラス:アタッカー
キミは柊蓮司をよく知る人間だ。アンゼロットからの命令で、どこかへと逃げてしまった柊蓮司を探している。彼の居所が温泉街だと知ったキミはそこで見たこともない白い物体と出会うことになる。
ARIAとのクロスです。
アリア社長がPCかwww
ネオヴェネツィアじゃなかったか? 街の名前
>キミは異世界の住人の力を借りることした。
ここはケット・シー経由の方が、っぽいんじゃないかなー、とか思う。
それと、PC4の立ち位置と
>見たこともない白い物体
がハンドアウトの時点から柊と被ってるのも気になる。
PC4はもっと別の立場か、それが無理があるならPC3名でいいんじゃね?
313 :
5-912:2008/02/23(土) 02:56:23 ID:cXyhOe1h
まぁ灯里は過去に行ったり、蜃気楼の世界に行ったり、本物の狐の嫁入りを見たり、ネオヴェネツィア七不思議を全部体験したりと巻き込まれ体質だからね。
間違えた。もうちょっと推敲すべきだったorz
まぁ柊も未来に行ったり、アルシャードの世界に行ったり、本物の魔王と何度も戦ったり、学校の不思議現象として認知されてたりと巻き込まれ体質だからね。
同じような体質同士で丁度いいんじゃないかな?
【全然違う】
316 :
5-912:2008/02/23(土) 03:57:45 ID:cXyhOe1h
でも、灯里の場合はさらった魔王級のエミュレーターかその手下と仲良くお茶しているイメージがするな(笑)
灯里「はひー」
アンゼ「はひー」
こうですね
>>317 アリシア 「あらあらうふふ」
アンゼロット「あらあらおほほ」
の方が…そういやアンゼもARIAの名前法則的にオッケーだねw
319 :
317:2008/02/23(土) 04:20:40 ID:RxnMkYqZ
>318
分かりづらくてスマン。
アンゼは小暮さん以外にも演じたことがあるんだぜ?っていうネタなんだ。
>>316 リオンあたりと会うと書に素直に感嘆してリオンやや照れてる、みたいな光景が浮かぶ
数ヶ月前まで世間を騒がせていた真月も消滅し、
世間からは少しづつ忘れ去られようとしていた。
だが、そんなある日。
再び、真月が空に浮かび上がる。
それだけではない。真月と同時に、紅月もまた空に現れたのだ。
「光狩」の計画は潰えたのではないのか?
「侵魔」は一体何を画策しているのか?
この異例の事態を前に、古来より異形と戦ってきた「火者」と「ウィザード」…
今まで相互不干渉であった二つの異能者たちが、初めて手を組む事となる―――。
NWx夜が来る!
「夜を斬る!〜Gemini of the Moon〜」
―――真月と紅月が昇る時、古き悪意と新しき希望の戦いが、始まる
PC1 柊蓮司
推奨クラス:魔剣使い
君は、日本コスモガード協会からの要請を受け、某県大津名市を訪れていた。
この街には、「火者」と呼ばれる古来から「光狩」を人知れず狩ってきた
異能者の支部があるのだという。
そして今、キミは、私立桜水台学園天文部の部室の前にいる。
こここそが件の火者の支部だというのだが…
シナリオコネクション:羽村亮
PC2 七荻鏡花
推奨クラス:サトリ
キミは、モデルの仕事で東京秋葉原を訪れている。
仕事も終わり、キミは久しぶりに東京にいる旧友と親睦を深めようとしていた。
だが、そんな時キミは異形に襲われる一人の少女を助ける事になる。
彼女によると、彼女の恩人が今、絶大な危機に晒されようとしているという。
「お願いです!柊先輩を助けてください!」
同時に真月の復活を知ったキミは、急ぎ大津名市に舞い戻る!
シナリオコネクション:志宝エリス
PC3 赤羽くれは
推奨クラス:陰陽師
キミは、いつものように赤羽神社で仕事をしていた。
その時だ。キミの目の前に独りの軽薄そうな青年が現れる。
彼が言うには、彼の友人が非常に困っているらしい。
彼自身も出向きたいのだが、彼は彼でこちらの仕事から手を離せない。
彼のたっての願いで、キミは某県大津名市に足を運ぶことになる―――
シナリオコネクション:星川翼
PC4 三輪坂真言美
推奨クラス:言霊使い
キミは、ヒーローショウでハッスルした後の帰り道だ。
その帰り道、キミは近所の公園でテントをはっている不審者が警官に
職質を受けているのを見かける。
なんとなく、彼女が気の毒になったキミは、彼女を手助けすることにした。
お礼を言う彼女は、おもむろにキミにおむすびを差し出した…!
シナリオコネクション:マユリ ヴァンシュタイン
――という、ネタを投下してみる
PC1:剣士繋がり
PC2:腕輪繋がり
PC3:星繋がり
PC4:魔法使い繋がり
かな?
>>323 そんな感じでw
というか、さすがベースになった作品の一つだけあって、
親和性の高さを感じる…
>>316 ここARIAカンパニー設立当時から毎年同じ時期に訪れる、2人づれの少女の客。
でもARIAカンパニーの人たちは不思議だと言いながらもあんまし気にしない、とかありそうだw
毎年訪れる、異常な貫禄を纏った銀髪の少女
327 :
5-912:2008/02/23(土) 13:26:51 ID:cXyhOe1h
実は、ケット・シーと知り合いとか?
ケット・シーは実は普段はその少女の膝の上で惰眠をむさぼっています
とすれば問題なし
ゴスロリファッションで、猫をなでていた日には端から見たら悪人決定だろうがな
>>328 つまりこういうことか。
何故か窓からの光を背に受けて、黒猫を撫でているマフィアのボス。
ボスはにやりと笑い、部下に命令する。
「それでは柊さん、これからする私の(ry
うん、普段と何も変わらんなw
330 :
5-352:2008/02/23(土) 14:25:47 ID:e3bw9Obc
いきなりですが、あいも変わらず妄想の文章化が進まない5−352です。
先日NW2ndのルールブックを本屋で取り寄せを頼んだので
7〜10日ぐらいには届くので楽しみです。
とりあえずクロス先のキャラがどうやってNWに来たのか
設定という名の妄想が出来たので簡単にですが書いてみたいと思います。
大十字九朗の場合:あるいつものアーカムでいつもどおり現れた破壊ロボ。
それをいつも通り破壊しようとする九朗。しかし、いつもの破壊ロボより
手強くなっていることに気づく。ウェストいわく、何だか空から落ちてきた
宝石のような剣を拾って調べ、それを利用して新しい動力炉を付け
パワーアップしたとのこと。多少苦戦したものの破壊ロボを倒した九朗。
しかし、それにより動力炉に取り付けられた剣が暴走しどことも知れぬ
場所に転移してしまった。
と、こんな感じなのでOKですかね?突っ込みをお待ちしております。
>>330 それはアルENDのハッピーエンドルートの後かな?
人間状態で、イタクァとクトュグァを振り回す九朗ならバランス壊さないだろうし。
333 :
277:2008/02/23(土) 16:03:30 ID:9dRU5eUd
そんなわけでやれるだけやってみた居酒屋「ろんぎぬす」の小ネタ。
16歳の女の子二人に翻弄されるツッコミマスターが書けて満足。
っつかひょっとして自分あの娘書くのに開眼したかっ!?
15分から投下しまーす。
かもぉーん!
支援!!
支援だな
336 :
277:2008/02/23(土) 16:15:15 ID:9dRU5eUd
よるとでぃーぷぶらっど -出番ねぇよ、冬-
よく晴れた西高東低の気圧配置の標準的なある冬の日。
とあるショッピングモールの中にある、ちょっとした休憩所。
樫の木の、温かみを感じるテーブルと椅子がいくつか置かれた、混雑時には多くの人の憩いの場となるその一角も、にぎわっているわけではない今の時間帯はがらがらだ。
そんな人のまばらな休憩所に、今日は黒い塊があった。
塊、というのは語弊がある。机の上にもったりと黒く大きな何かが鎮座しているのだ。黒い何かは、テーブルから端々が零れ落ちそうになっている。
よくよく見てみれば、その塊が人間の頭で黒い何かは烏の濡れ羽のような長い黒髪であることがわかる。
ぴくりとも動かない黒い塊は、もはや寝ているとかそういうレベルではない。周囲の空気すら歪ませているような気がするほどの負のオーラが発されている。
そのあまりの異様な状況に、誰も目を合わせようとはしていない。というか、ぶっちゃけ関わりたくない。
普通なら通りすがりの親子が「ままー、なにあれー」「しっ!見ちゃいけません」とかいうお約束を繰り広げるのだろうが、それさえもない。
子供心にすらアレは関わらないほうがいいものだ、とわかるのだろう。
警戒心の薄い子供ですら近づきたがらないものに対して近づこうとする者があるのなら、それはよほど危機感の壊れた奴かよほどのおバカしかいない。
そんな奴が都合よく現れるわけが―――
「もしもし、大丈夫でありますか?」
―――あったりした。
支援だ我が友!
338 :
277:2008/02/23(土) 16:15:52 ID:9dRU5eUd
***
相手が目の前にいるのにもしもし、と声をかけたのは、銀髪を二つにくくった少女だった。
服装は黒。ゴシックロリータと世間一般的に呼ばれるタイプのもので、少女の見た目にはとてもよく似合っている。
月光に照らし出されるススキのような柔らかな銀色を括り、赤いほおずきのような神秘的な瞳の少女は―――その神秘性を自身の口調によって木っ端微塵に崩壊させていた。
さておき。少女がぴくりとも動かない黒い塊に声をかけると、今まで何の音も立てなかった黒い塊から音が漏れた。
「―――オ」
「お……?
お水でありますか?お腹痛いでありますか?横隔膜の痙攣現象でありますかっ?」
最後のはしゃっくりだ。
さておき。黒い塊は、心配そうな少女に告げた。
「おなか。減った」
周囲の空気が少女と黒い塊以外の野次馬の空気が止まる。
もちろん、黒い塊に物怖じすらしなかった少女はやっぱり空気を読まない。目をぱちくりと開いて彼女は言う。
「お腹減ったでありますか?ここ、ショッピング以外にご飯食べるところもあるでありますよ?」
そりゃあショッピングモールだ。食事の出来る場所がないはずがない。
黒い塊は答える。
「お金ない」
「なんでここにいるのでありますかっ!?」
当然といえば当然な少女のその言葉に、黒い塊はようやく動いた。
突っ伏していた体を起こして見えたのは、「大和撫子」を絵に描いたような黒髪で白い肌の少女だった。発言は変だが。
黒髪の少女は、無表情に淡々と答える。
「前。食い倒れたことがある」
「食い倒れたっていうのもまた珍しい経験でありますな」
そもそも『食い倒れる』っていう動詞は存在するのか。
「経験は大事」
「そうでありますな。
わたくしも同じ顔の人間を仲間と敵に一緒に持つという世にも奇妙な経験があるのでありますが、友達と再会できたり屋根の下で眠れたりととても充実した日々を……」
話かみ合ってないぞ。
ともあれ、銀髪の少女が語り倒すのを横目に、黒髪の少女が呟く。
「食べ過ぎで。お金がなくなって帰れなくなった」
「あぁ、食い倒れた時の時の話でありますか。それは大変でありましたな」
こくん、と頷いて黒髪の少女は続ける。
「だから。今度は先に一日乗り放題券を買った」
「おぉ。それは重要な成長でありますなっ、頭いいでありますよ!」
「乗り放題券。高い」
間。
沈黙を気にせず、さらに少女は続ける。
「カード。家に置いてきた」
「……その心は?」
「お金ない。お腹すいた」
黒髪の少女は、訴えるように銀髪の少女をその茫洋とした瞳でじっと見つめ、繰り返した。
「……お腹すいた」
「安心するであります!」
少女はその薄い胸をとん、と叩いて続けた。
「わたくしもお金は持ってないでありますっ!」
どこをどう安心しろと。
もはや見ている野次馬がいるのなら涙を流さんばかりの状況である。もう近くに人が寄り付こうとすらしていないわけだが。
つまり、と黒髪の少女は言う。
「あなたも私と同じ。ということ」
「はいであります!」
あまりに元気のよいその答えに、あてが外れた、と言わんばかりに大きなため息をつく少女。
そのため息に、あわてたように銀髪の少女は言った。
「あぁっ、でもわたくしツケのきくお店知ってるでありますっ!
この時間帯ならまだ迷惑かけないでありますし、よかったら一緒に行きませんかでありますよっ!?」
「―――、本当?」
感情が見えづらいものの、その目には確かに光があった。いわく、ご飯にありつける、という期待の光。
任せるでありますよ!と胸を張り、少女は誇らしげに言う。
「でなければわたくしも文無しでこんな物価の高いところに来ないであります」
「それもそう」
頷いて、黒髪の少女はようやく立ち上がる。銀髪の少女よりも、幾分か背が高い。
歩く気力がわいた少女を見て、銀髪の少女はツインテールを揺らしながら笑顔で言った。
「じゃあ、一緒に行くでありますかっ!
申し遅れたであります。わたくしはノーチェと申しますであります!」
「私。姫神 秋沙」
黒髪の少女―――姫神の胸には、日本人がするには珍しい本格的な十字架の飾りがあった。
***
居酒屋「ろんぎぬす」。
それはこのショッピングモールの地下にある、ちょっと小粋なみんなの居酒屋。
渋みのある親父が一人で経営するこの店は、クセのある連中が集う。そして、その日の客もまたそうだった。
開店二時間前の、仕込みの大切な時間。
なのに。
「こんにちはでありますよっ!」
……なんというか、厄介な客が来てしまった。
いつもは渋い笑みを浮かべながら客に応対する店主も、少し嫌そうに眉をしかめる。
「おいおい嬢ちゃん、いつも言ってるだろう。ウチは居酒屋なんだよ」
いつも言ってる、という時点でこの言及が無駄なことがわかるが、ノーチェはやはり小首を傾げていつもの答えを返す。
「確かに未成年はお酒飲んじゃいけないでありますが、居酒屋に入ることは禁止されてないでありますよ?」
「―――、なるほど。その手が」
「詭弁って言うんだそういうのは。しかも今は営業前なんだがね」
一緒に入ってきた姫神が頷くのを見て、厄介な客が増えた、と思う店主。
もう一人は初顔だが(しかも黒髪の美人だが)、このたまにやってくるなんだか憎めない厄介者が連れてきた以上、クセのない客ではないだろう。
そう考えて内心ため息をつきながら、軽くノーチェを睨んでみる。
「しかも純真そうなお嬢さんをこんな店に連れこんで。他にいい店あるだろう?3階のパスタ屋とか」
「選択肢がないのでありますよ。わたくし達二人とも文無しでありますから」
「出てけ」
そもそも文無しは客とは言わない。
えー、とブーイングをかましてノーチェはいつものようにそれに答える。
「いつもおいしいまかない食べさせてくれるではありませんかー」
「普通はまかないでもタダで出してちゃウチが潰れるんだが?」
「この間送った大根となんか高い老酒とエキストラヴァージンがあるでありましょう?あれでチャラってことでなんとか食べさせてもらえないでありませんかー?」
そう。この店の店主がたまに文無しでのーてんきにやってくるこの少女に、文句を言いながらもまかないを食べさせてやるのはそこに理由がある。
店の前で行き倒れていたところを助けてまかないを食べさせてやったのが始まりなのだが、
その恩返しのつもりなのか世界中の名産だの野菜だのが時折送られてくるようになった。
送られてくるものは文句なしに味がいいため、それをやめろと言うわけにもいかず。しかし、それを止めなかったがゆえにたまに来てはメシをたかりに来るのだった。
そんな関係ではあるものの、無下に断ち切ることもためらわれ、こうしてずるずると今まで続いてしまっているわけだったりする。
ひとつため息をついて、店主はとんとんとん、とまかないがわりを二人分出してやる。
炊き上がっているご飯に刻んで塩をまぶしてごまと一緒に混ぜた菜めし、鰤のあらで作ったあら汁、最近有名になったトマトに定番の巾着と蒟蒻の静岡風おでん三種。
ついでに自家製のお新香(違う地域では香の物、お漬物とも)を出して、お茶をさらに置いてやった。
おぉ、と感嘆の声を上げる姫神。
まかないってレベルじゃない気がするが、そこらへんは店主の心意気だ。美人の女の子に頼られて嬉しくない男など存在しないともいう。
意外に礼儀正しくいただきます、と合掌し、ノーチェは遠慮なく食べはじめた。それをじっと横目で見て、姫神も黙々と食べ進む。
それを満更でもなさそうに横目に見ながらモツ煮の鍋をみる店主。
……のどかな光景であった。
し
***
人間、腹が極限まで減っていると何も言えないものらしい。姫神はもともと静かだが。
やがて皿は空になり、焙じ茶をすする姫神とノーチェ。なんだかのどかな光景である。
ほう、と温まった息を吐き出し、姫神は表情を変えぬまま言う。
「おいしかった。ごちそうさま」
「いやー、相変わらずいい仕事してるでありますな〜。極楽でありますよ〜」
「メシ食い終わったなら出てってくんねぇかな、嬢ちゃん」
そんな迷惑そうな苦言を完璧に無視。
某引きこもり用精神防御壁があるかのように鉄壁のスルー技能でノーチェは姫神との会話を始める。
「それにしても、どうしてこんなところに一人で来たでありますか?
秋沙くらいの年頃なら駅使うほど遠い場所に行くのならご家族ご兄弟などと一緒なのが常識なのでありましょう?」
「嬢ちゃん、それいつの時代の常識だ」
たぶん3〜40年くらい前のだと思われる。
姫神もまた、その発言をスルーしてノーチェと話を続けた。
「私の生家は京都。今は東京の西で。寮生活」
「なるほど。それじゃ、お友達とかはどうなのでありますか?」
「……最近。スルーされがち」
なんだか、その発言とともに彼女の周辺から光の恵みが減っていくかのように見える。
暗〜くなっていく周囲に呼応するように、彼女の言葉がだんだんと重みを増していく。
「というか。私は2巻から出ているはずなのに。それまでのオールスターの4巻に登場が許されないとはどういうこと。
3巻の次に名前ありで登場したのが6巻とはどういうこと。はじめて表紙に出たというのに。帯ごときに隠されてしまうとはどういうこと。しかも意図的に。
2巻でも10巻でも死にかける。瀕死のヒロイン。それが私。
そこまでやっても。クラスメイト以上にすすまないというのは。もはや私に魅力がないと。そう言いたいわけ。うふふ。うふふふ」
「あ、秋沙?なんか黒いオーラが出てるでありますよっ、しまってしまって!」
姫神さんもだいぶ溜まっているようだ。その必死の思いに自分、涙がちょちょぎれそうです。
虚ろな笑みをしばらく浮かべると、それのガス抜きを行うように彼女は大きく一つため息をついた。
「ごめんなさい。ここで愚痴を言っても意味がないのは。私もわかっている。
こんな黒い思いを。実現する力も度胸も。私にはない。けれど。少しだけ思うことがある」
「思うこと、と言うでありますと?」
「……。具体的には。もっと出番があれば。と」
決意表明。
……そりゃあ無理だ、と思った方。自分と友達になりませんか。
閑話休題。
姫神の言葉に、ノーチェはぽん、と彼女の肩に手を置く。そして、いいでありますか?と優しく(生暖かく)微笑みながら諭すように告げた。
幻想殺しの話か!?
相性いいのか、悪いのか、支援!
「毎回毎回出番があっても、けして意識されないという運命を背負った幼馴染も、世の中にはいるのでありますよ?」
お前が言うな(中の人的に)。そう思った方。自分と心の友になりませんか。
さらに閑話休題。
店主もまた、姫神を諭すようにじっと彼女の目を見て言った。
「いいかい、お嬢さん。出番が多くても報われるとは限らないんだよ?
ちょっと踏み入れる足場を間違えれば、けして這い上がれない蟻地獄に陥ることもあるもんだ。
幹部にまで登りつめていてもいつの間にか町の電気屋に勤めることになってたり、各地でやられ役筆頭になってたり、
とりあえず敵に困ったらこいつ使っとけとか言われたり、挙句の果てにはアウトラインは俺の見た夢扱いされる始末……」
……こっちもかなり溜まっているようだ。
が、男の泣き言なんか聞きたくないのでスルー。聞いてると背中がすすけてるとか言いたくなるからスルー。
しかし、姫神の思いは強かった。
「出番があれば。少なくとも会う可能性が増える。そして。他の皆にはある。例のシーン要員として。使ってもらえる」
「例のシーン、でありますか?」
そう、と力強く頷き、姫神は言った。
「八時二十分」
*八時二十分とは……某越後の縮緬問屋のご隠居が全国を行脚するご長寿時代劇の劇内において、全国の青少年達を毎回テレビの前に釘付けにさせた例の時間のこと。
その覚悟に、もう涙が止まりません。
ともあれ、その言葉の意味を理解できないノーチェは小首を傾げた。
「でも、それっておかしくないでありませんか?」
「おかしいとは。なにが?」
無表情の中にちょっと不機嫌さの欠片を交えたような姫神の台詞に、だって、とノーチェは思ったことそのものを口にした。
「秋沙が出番がほしいというのは、『だれかさん』ともっと仲良くなりたいからなのでありましょう?
だったらわざわざ前に出て出番を増やすよりも、ちょっと勇気を出して本人のそばにいようとする方がまっすぐでわかりやすいでありますよ」
あう、と。まったくの正論に姫神の口から可愛らしい声が漏れた。
姫神の言う『だれかさん』と、一緒にいたいから出番がほしいと嘆くよりも、『だれかさん』と一緒にいるために自分から近づく方がよっぽど確実でわかりやすい。
ノーチェの言うことは、限りなく正しくて無垢な答えであった。
だが。
「……。それができるなら。苦労はしない」
恋とはいつだって思うようにいかないものである。
好きな人の仕草に一喜一憂し、空の色さえ変わって見える。
何気ない視線が心を締めつけ、何気ない一言が心を暖める。
特に姫神は自分を上手く主張するのが苦手だ。
状況に変化を与えてしまうくらいなら、と変に一歩譲ってしまうところもある。幸せに慣れていないともいう。
だからこそ、その『ちょっとの勇気』が果てしなく遠く難しく感じてしまう。
『ちょっとの勇気』の大切さも、諦めないことの大事さも、彼女は知っているつもりだ。
それでも、今の彼女にとってその一歩は限りなく遠い。
ノーチェはそんな複雑な様子の姫神を見て、そんなものでありますか、と呟いた。
静かな時が流れる。
響くのは、モツ煮がとろ火で暖められて気泡の弾ける小さな音のみ。
しばらくして、ノーチェが言った。
「難しいもので、ありますなぁ」
「うん。難しいもの」
誰かと誰かが交わることに、絶対の正解などない。
こうすればいい、などとは口が裂けても言えはしない。
いつになっても誰にも絶対の答えはわからないことだろう。
けれど。絶対の正解がないからこそ、人は悩む。人は前に進もうとする。
それでも。前に進んでばかりでは、どんな人間も息切れをおこしてしまうから。
―――時には、こんな休息も。
二人の少女は、同時にため息をついた。
少しだけ、無表情の中に笑みを含ませ、姫神が言う。
「また。こうやって。愚痴を聞いてくれる?」
「もちろんでありますよっ!」
そう答えるノーチェは、ひまわりのように大輪の鮮やかな笑顔を浮かべた。
携帯のアドレスを交換すると、姫神は店を出る。その表情はやはり茫洋としていたが、どこか楽しげだった。
残されたのは、ノーチェと店主。ノーチェはくすりと笑うと、店主に言った。
「秋沙に思われてる方は幸せなのでありましょうなぁ」
「まったくだ。あんないいお嬢さんに気づかないとは罪作りな。……あと出てけ」
「そうでありますよ。どこにでもいるもんでありますなぁ、罪作りな男」
「そうそう。まったく恵まれない奴もいるっていうのにな。……開店まであと30分しかないんだよ、出てけ」
「あ、そうそうそれから。さっきの話でありますが」
「さっきの話っていつの話だ?……だから出てけって。皿洗えないだろう」
「あなたは途中で足を踏み外したんじゃなくて一歩目からそういう役どころ(ネタ的やられ役)だったはずでありますよ?」
「……よーしわかった。なぁ嬢ちゃん、アンタのその髪の毛、ちょっと引っぱらせろ。
たしかどっかの資料に二つに結った髪の毛は取れるし飛ぶ時に使うって書いてあったような気がする。今どうしようもなく試したくなった」
「勘弁でありますよーっ!?しかもそれ夢!夢の中の話でありますしっ!?」
「っつーかお前が言うな!お前に言われるとすごくむなしくなるから!誰のせいだと思ってるんだっ!?俺が、俺が……っ!」
どたばたがしゃずもももかきーんっ。
居酒屋「ろんぎぬす」。
今日はちょっと開店が遅れる模様。常連様、申し訳ありません。
END
346 :
よるとの中身:2008/02/23(土) 16:25:27 ID:9dRU5eUd
どうも、舌の根の乾かないうちに戻ってきた中身です。名前欄ちゃんとしろよ俺。
今回は「とある魔術の禁書目録」より吸血殺し(ディープブラッド)の姫神秋沙にご登場願いました。
姫神なのは愛だ(しつこい)。個人的には姫神と御坂19090号が好きだ。あとオルソラ。
長編書くのもちょっと疲れたからたまには小ネタ書こう!と思ったらすごい方向にはっちゃけて俺びっくり。
頑張れ春日。超頑張れ。
っていうか設定年齢上ノーチェと姫神が同い年ってどーなのさ。いや、世の中色んな設定年齢があるもんだが。19歳かに座のB型とか。
ちょっとでも笑えるネタが入ってたら自分的に大成功。無軌道って楽しいね。整合性考えずに済むし。
ひょっとしたら「よると〜」は続くかもしれません。続かないかもしれません。俺に降ってこいネタの神。
347 :
5-352:2008/02/23(土) 16:52:51 ID:e3bw9Obc
>>331 九朗は人間状態で戦ってますよ、もちろん。問題なのはゲームのほうを
持ってないので小説や二次SSなどを参考にするしかないってことですね。
なら書こうとするなという突っ込みは無しの方向で。
>>332 拾いましたYO!具体的に言うと某うっかり魔術師が作った試作品で
実験してたらいつものうっかりで暴走、アーカムに流れ着いたわけです。
ちなみに、ウエストは九朗たちとは違う某惑星Fに飛ばされて某トカゲ
な人(?)達と騒ぎを起こした挙句トカゲ共々ミッドガルドに飛び、
某芳香剤の制作の手伝いをしたなどという裏設定も思いつきましたが
どうでしょう?
>>346 良いものを読ませていただきました。
ところで市民、サプリのタイトルがアウトランド、ステージ名がエンドライン。お分かりですね?
そういえば、ディアボロスの設定って王子が書いてるんだろうか。
とすればあの場の中の人は
7時から、投下します。
sideアシュレー・ウィンチェスター
「…ここは?」
アシュレーが目を覚ますとトニーとマリナの泣きそうな顔が最初に目に入った。
「良かった、目を覚ましたのね!アシュレー!」
「広場でぶっ倒れてるのを見たときはたまげたぜあんちゃん!」
「そうか…俺は…あの女に負けたのか…」
アシュレーはぼんやりと思い出す。何故倒れたのかを。
ここは、2階にあるアシュレーとマリナの部屋。その部屋の1つしかないベッドに、アシュレーは寝かされていた。
「あの後ブラッドのおっちゃんと晶姉ちゃんが来てここまで運んで治療してくれたんだ。今呼んでくる!」
そう言うとトニーは部屋を出て行った。
「まだ無理しないで。ブラッドさんは少し休めばすぐに元気になるって言ってたけど…」
「そうか…今、何時くらいなんだ?」
そう言ってアシュレーは外を見る。その瞬間、頭が一気に覚醒した。
外では今もまだ、赤い月が輝いていた。
「…!?月がまだ赤いままだ!一体どうなっているんだ!」
「落ち着いて、アシュレー!」
混乱するアシュレーを、マリナはいさめる。
だが、その直後に彼女が言った言葉は、アシュレーを更に混乱させた。
「アシュレー、疲れてるのよ。月が赤いのは、当たり前じゃない…」
「!?何を言ってるんだマリナ…」
「目を覚ましたか。アシュレー」
驚いてアシュレーがマリナを問いつめようとした瞬間、ドアが開いて色黒の大男と若い女が入ってくる。
男の手にはアシュレーのARMが握られている。その男にアシュレーは見覚えがあった。
「ブラッド…?」
「ブラッドさん…」
「すまないがマリナ、少しアシュレーと話がしたい。席を外しては貰えないだろうか?」
「はい…アシュレーのこと、頼みます」
ブラッドの頼みにマリナは頷き、部屋を出て行く。出ていく瞬間のアシュレーを見る瞳には困惑と心配が張り付いていた。
「どうやらアシュレーもあの赤い月を異常だと認識出来ているようだな」
3人だけになった部屋で、ブラッドが口を開き、アシュレーに確認する。
「ああ、でも何でマリナはあんなに不思議そうに…?」
「マリナだけではない。この街の人間も、セボック村の人間も、あの赤い月が当然のものと受け入れている」
「セボック村でも、あの月が出ていたのか!?」
「うむ。確認はしていないがあれはおそらく世界中で出ているようだな」
「そして、誰もそれを疑問に思っていない…?」
「ああ、少なくとも俺の知る限り、あの赤い月が異常だと認識しているのは、ここにいる3人だけだ」
「3人…?」
ブラッドの発言で、アシュレーはブラッドのすぐ側に別の人間がいることに気づいた。
見慣れない格好をした、少女。その少女はアシュレーがこちらを見るとなぜか腰を曲げて頭を下げ、言う。
「あ、初めまして。私、七瀬晶って言います。アシュレー・ウィンチェスターさん、でいいんですよね?よろしくお願いします」
「あ、ああ…よろしく…」
その少女と挨拶を交わし、アシュレーはブラッドに向き直って聞く。
「それで、ブラッド。そこの、アキラさんと言う人とは、どういう知り合いなんだ?」
「ああ、彼女は…」
そしてブラッドは晶から聞いた話をアシュレーに伝える。
彼女がガーディアンの導きで異世界からやってきたこと、今回の事件に心当たりがあるらしいと言うことを。
「異世界から?」
思わずアシュレーは聞き返した。異世界からドラゴンでもない普通の人間がやってくるなど、初めて聞いた話だ。
「ああ。友人を探しているそうだ。その手がかりとなりそうなのが、アガートラームだと言う」
「アガートラームだって!?」
「はい。その剣が柊くん、友達が使っていた剣にそっくりだってブラッドさんに聞いて手がかりにならないかと思って…」
晶の言葉を、アシュレーは遮るように呟いた。
「アガートラームは…謎の女に奪われた…」
「なんだと!?」
「ええ!?」
アシュレーの発言に、2人は同時に驚いた声をあげた。ブラッドが慌てて問う。
「馬鹿な、あの剣はそう簡単に抜ける代物ではないのでは無かったか!?」
「ああ、俺にもどうなっているのか分からないけど…」
アシュレーが事情を説明しようとした、その瞬間だった。
ドガンッ!
店が揺れる。1階の店に何かが落ちてきたようだった。
「ブラッド!」
「ああ、受け取れ!」
緊迫したアシュレーの声にこたえ、ブラッドは整備を済ませたアシュレーのARMを投げ渡す。
そして自身もマイトグローブをはめて、戦闘に備えた。
「晶、お前も来てくれ。下に何がいるか、分からん」
「はい!」
ブラッドに言われ、晶は魔剣を月衣から抜く。
虚空から現れたアーガトラームそっくりの剣に驚くアシュレーを、ブラッドが手で制した。
「話は後だ。今は、侵入者をなんとかする」
「…分かった。行こう」
戦いに慣れた戦士の言葉に、アシュレーは頷き、音をあまり立てないように歩き出した。
下に降りると、話し声が聞こえる。若い男女2人組らしい。なにやら言い争っているようだ。
「おいおい、もう失敗は無しにしてくれって言ったじゃねえかよ!」
「失敗じゃないよ!ここタウンメリアだし!ただちょっとお腹がすいたなって考えちゃったからパン屋に直接出ただけで!」
「あんだけ食っといてまだ足んなかったのかよ!?」
「魔法を使うとお腹がすきやすくなるの!」
2人の声にその場にいた全員が聞き覚えがあった。アシュレーとブラッドは、女の声に。晶は男の声に。
「「リルカ!」」
「柊くん!」
「アシュレー!それにブラッドまで!?」
こうしてリルカはかつての仲間と再会を果たし、
「晶!?もしかして七瀬晶なのか!?」
柊蓮司はかつての戦友と思いがけない再会を果たした。
side ???
「永遠に1人で生きてゆく…それは、ただ1人ファルガイアに残ったわらわの宿命じゃ」
―――違うよ?あなたは1人で生きていく必要なんか無い
「人間と交わって生きろと言うのか。それは出来ぬ。人間はすぐに老いて死ぬ。出会うても別れが辛くなるだけじゃ。
500年前、アナスタシアを失ってわらわは決めた。深くは関わらぬと。人間は見守るべきものに過ぎぬ」
―――そうだね。あなたは人間と交わる必要なんか無い
「ならばやはり、わらわは孤独じゃ」
―――それは違うよ。あなたは、あなたにふさわしいお友達をつくれるもの
「なぜそんなことが言える!?ノーブルレッドはわらわしかおらぬ。わらわ1人では子を育むことすら出来ぬ!」
―――そうだね。でも、それはファルガイアが今の姿であるかぎり
「…どうゆうことじゃ?」
―――もうすぐ、ファルガイアは生まれ変わる。ノーブルレッドが生まれる世界へ
「生まれ、変わる?」
―――ノーブルレッドは夜の支配者。その愛を受け入れた人間は、ノーブルレッドに生まれ変わる
生まれ変わった人間はノーブルレッドと交わって、新しいノーブルレッドを産むの。そうしてノーブルレッドは世界に満ちる
「馬鹿な。血を啜っても人はノーブルレッドには変わらぬ!そんなの、ただの迷信じゃ!」
―――それは、古いファルガイアだから。新しいファルガイアでは、それは真実
「新しい、ファルガイア…?」
―――新しいファルガイアに、ノーブルレッドを蝕む太陽なんていらない。空には高貴な色の赤い月が輝き、ずっと夜が続いていくの
「それは、まことか?」
―――ええ。赤い月の輝くファルガイアは、すぐにやってくるわ
「わらわは、もう、1人でおらずとも、よいのか?」
―――そう。だから今は…
「お休みなさい。次に目覚めるそのときには、ファルガイアも生まれ変わっているから」
グラブ・ル・ガブルに包まれ、胎児のように身を丸めて眠る白き少女の頬をなぜ、黒衣の少女は囁いた。
安心した顔で眠る白き少女を見て、黒衣の少女はくすくすと笑う。
「みんなの“想い出”を変えることをこんなに強く願うなんて、よっぽど寂しかったのね」
その姿はさながら、無邪気な子供。
無邪気な子供は自らの好奇心を満たすために虫を引き裂くことも厭わない。
それを黒衣の少女は明確な悪意を持って行う。それが、彼女の本質。
その少女に突然声が掛けられる。
「ほほう。なるほどな。お前が、新たな魔王にならんとする者か」
「…誰かしら。お客様をお招きした記憶は無いのだけれど」
黒衣の少女はゆっくりと振り向く。
グラブ・ル・ガブル、少女の領域の中心まで少女に気取られずやってくるなど、並大抵の事では無い。
すなわち、それを為した者も並大抵の者ではあり得ない。
「なあに、リオンの奴から我輩らの方法を真似た奴が異界に現れたと聞いてな。見に来たと言うわけだ」
「あなた達…そう、貴方が、裏界の魔王と言うわけかしら」
「うむ、我輩は裏界の公爵、魔騎士エリィ=コルドン。いかにも裏界を統べる魔王の1人だ」
「そう。それで、貴方は私をどうするつもり?殺して、首でも持って行く?」
「ふっ…ルー辺りだったら裏界の権威と品格を守るなどと言ってやりかねんな。逆にベルだったら面白そうなら協力するだろうな。
だが、我輩はそのどちらでもない。我輩は見極めに来たのだ」
「見極める?何を?」
「お前が、裏界ではない異界とは言え自らの領土を持つ魔王に相応しいか否かを、だ」
「そう。それで、魔王エリィ=コルドン様の見立てでは、私はどうだったのかしら?」
「うむ、まずは合格と言ったところだな」
黒衣の少女の問いにエリィは大きく頷いて答える。黒衣の少女は黙って先を促した。
「最近のエミュレイターや冥魔には無粋なものが多くて困る。
強そうだ、怖そうだ、機能的だ、そんな愚にもつかぬ理由で不格好な姿をとる者が多い。
一山いくらの雑魚ならばそれも良かろう。
だが、仮にも領土を持ち、統治する立場にある者には相応の品格が求められる。
魔王たるもの、美しくあれ。それが我輩たち裏界の魔王の考えだ」
エリィは語る。それを聞き、黒衣の少女は笑みを深めて、言う。
「そう。良かった。どうやら、ここで切り札を使わずに済みそうだもの」
「ふっ…場合によっては我輩と戦い、勝つつもりだったか」
ともすれば侮辱とも取れる黒衣の少女の言葉。
だが、エリィはそれを余裕を持って受け流す。
「その不敵さも、魔王には必要な資質。よかろう。
もし、この世界を手にすることができたなら、エリィ=コルドンは敬意と共にお前を魔王と認めよう。
さて、名前を聞いていなかったな。お教え願えないかな、レディ?」
エリィは黒衣の少女を認めた。それゆえに、名前を尋ねる。
それに黒衣の少女は答える。自らの名を。
「私の名前は、ベアトリーチェ。前にいたファルガイアでは『夢の中の君』なんて呼ぶ人間もいたわ」
「…1つだけ、忠告しておいてやろう」
去り際、エリィは背を向けたベアトリーチェに言う。
「この世界にやってきた異邦人、柊蓮司には気をつけるがいい。
奴が関わった事件で陰謀を最後まで完遂させた魔王は1人もいないと言うからな」
「…そう。ご丁寧な忠告、感謝いたしますわ魔王エリィ=コルドン様」
そして今度こそエリィはいずこかへ去った。
白き眠り姫を眺めながら、ベアトリーチェはエリィの言った言葉について考える。
「異邦人、ヒイラギレンジ。イレギュラー要素ね…」
世界の書き換えにガーディアンが何らかの抵抗を見せるのは計算に入れていた。
ゆえに七瀬晶の登場はさほど問題にならない。
だが、問題はもう1人の異邦人。
まさかあんな強引な方法で無理やり未知の異世界に介入してくる馬鹿がいるとは想定外だった。
想定外の動きをする馬鹿は嫌いだ。いつだってこちらの計画をかき乱す。
ベアトリーチェはそう考えていた。
それゆえに、ベアトリーチェは早めにイレギュラー要素をつぶすことを考える。
「そうね…ここで待っているのにも飽きたし、ご挨拶に伺うとしましょう」
そう呟くとベアトリーチェもまた、何処かへと消える。そして、世界の中心に静寂が訪れた。
今日は、ここまで。
>>346 GJ!マスター苦労してるなぁw
あと、やっぱあなたの書くノーチェはかわいいですぞ推定桃日の中の人w
>>357 乙〜。
・・・・あれ?ダイナシノカバの偉い人の登場は?
【いろいろ間違ってる】
>>357 乙で〜す。
エリィ様がなんだかトレーズ様みたいなエレガントさに吹いたw
完全一発ネタハンドアウト投下。少なくとも俺には書けません
そもそも普通のハンドアウトとは記述する情報の順番が違ってますが
そこらへん含めて多めに見てくれるとありがたやありがたや
PC1
シナリオコネクション:今の上司
キミが建設に関わっていた塔に激しい稲妻が落ちたあの日から早数週間。
あの日を境に、上司も部下も周囲の環境すらさえも変わってしまったが、塔を完成させるというキミ自身の使命だけは変わらない。
今朝、キミは「現場に何年も出てこない愚か者」の存在を知った。そんな不届きものを容認するわけにはいかない。
なぜなら、キミは現場監督なのだから。
推奨ワークス:現場監督
PC2
シナリオコネクション:"番長"
推奨ワークス:大学生
最近どうも、周りの様子がおかしい。
授業が行われる校舎は、天を突かんとばかりに聳え立つ巨大な塔(建設中)。教官はいかつい外国人で授業は肉体労働。…明らかにおかしい。
しかも、その頂点に君臨するのはかつてのキミの同居人だ。
"番長"を名乗る彼は、手に入れた権力を自らの欲望を満たすために振るっている。
いいかげん止めさせなければならない。それは、彼の健康のためでもあるのだから。
推奨キャラクター:槌谷揺
PC3
シナリオコネクション:現場監督
推奨ワークス:ひきこもり
キミはひきこもりだ。それも、マスターを自称するほど筋金入りのひきこもりだ。
そんなキミの元に、ある日一人の人物が訪れた。
アパートの玄関の前に立っていたのは、筋骨隆々の大男。
彼は、キミがもう何年も前に中退した大学の「現場監督」だと言う…
PC4
シナリオコネクション:アンゼロット
バベルの塔が出現した。
なんでも、七徳の宝玉や蓄えられていた膨大のプラーナと塔に落とされた神罰の雷とが干渉した結果であるとか、一人のウィザードと共に(時代を)下ってきたのだとか。
理由は定かではないが、このような巨大な歪みをこのままにしておくわけにはいかない。
キミに、アンゼロットから事件解決の命令が下った。
…どうやら、彼女に名前を覚えられてしまったのが運の尽きだったらしい。
推奨キャラクター:ロンギヌス・コイズミ
>>346 この行き倒れと言葉の切り方どっかで見たなぁ…と思いつつも名前が出るまでガチでわからなかった俺を許してくれ姫神さん
363 :
5-912:2008/02/23(土) 22:22:47 ID:cXyhOe1h
安藤さんの住んでるところが
「佐渡の近くの忘れられた島」
だったことを思い出し、若い頃にラーメン屋の竹さんといろいろと暴れ回ったというネタを受信した。
……正直、このネタわかってもらえる気がしなかった。ネタを書いたテストの裏、紙飛行機作って明日に飛ばした。
>>363 PC2(槌谷揺)→オコジョさん(声:小泉豊)
PC4,1がロンギヌスコイズミと現場監督(声:小泉豊)であることから、
PC3の引きこもりはおそらく
NHKにようこそ!の佐藤達広(声:小泉豊)かと
366 :
5-912:2008/02/24(日) 00:11:54 ID:2821pWuN
>>365 サンクス!!
声優ネタ、俺はそんなに知らないんだ(汗)
忘れられた村とか忘れられたスープとか忘れられた島とか忘れられたローブとか
>368
前半はな!
>>368 もうあのシリーズ20年近いのにあいつらまだ一桁なのかw
あれは明らかに、レベルアップ条件とパーティーの傾向が噛み合ってないだけだよなw
新刊数年買ってないがまだ1桁なのかアレwwww
つまり、柊を小鳥に変えちゃっても問題ないと。
柊が765プロで事務員やるとな!?
>>364 オレハワカルゾ、バネ足ジョップリン
竹サンモうぃざーどダッタラチョットオモシロイゾ
「オッス俺柊蓮司!あんたが特別プロデューサーか?じゃあアイドル呼んでくるぜ!」たったかったったったー(ry
あなたの担当するアイドルを選んでください。
1.赤羽くれは
2.アンゼロット
3.志宝エリス
4.氷室灯
5.落藤雛
6.神田和泉
7.パール=クール
8.リオン=グンタ
9.ベール=ゼファー
0.露木椎果
-1.柊蓮司
氷室だとふぶきになってしまうw
えーと、じゃあ僕は鷹羽みなtのマネージャーってことで。
>379
ギャースッ! 変換ミスってる!?
…こんな事が無いよう、キチンと書き込む前に確認しろよ俺!
えっと皆さん、頭の中で
4.緋室灯
に変換してください……。orz
>379
黒皇子の巻末の記述だと鷹羽みなとって、世界を救ったものの、声を失ったんですよね?
2nd時点では声、回復してたりするんですかね? 『柊蓮司と宝玉の少女』下巻の一つ願いが叶うって奴で。
コレってネタになりません? みなとが復帰の為リハビリしてる時に事件が起きて、柊と出逢うとか。
時間軸は微妙に分からないんですが、Dear...のラストで治ってますよ。
小ネタ程度に考えたネタを、今回予告風味に投下したいんだがOK?
どーぞどーぞ支援
では。
夏休み。
「合宿に行こう!」
と言う、輝明学園剣道部部長、十文字 冴絵の鶴の一声で、
合宿と言う名の小旅行を決行する剣道部員たち。
行き先は、満弦ヶ崎中央連絡港市。
楽しくなるはずの旅行。
しかし、一人の少女との出会いが、再び「月の守護者」の運命を引き戻す。
少女の名は――フィーナ・ファム・アーシュライト。
NW×夜明け前より瑠璃色な
「月の王女とその守護者」
紅い月が昇るとき、世界は真の姿を現す。
多分、予告の域を超える事は一生ないだろう
最後の一言が
「なお、セッションの内容は予告なく変更される場合がありますので予めご了承ください」
のような言い回しに聞こえるw
月の王女はいづれ月女王になるのかね?
ゲボクを引き連れるようにはなります。いや嘘ですが
自分で書いておいてなんだが、これ、問題点山積みなんだよなあ
クロス先は時系列からして、かなり未来の話だし、
そもそもハーティの事件が前提にあるということは、
月にいる彼女たちも無事でいられるはずがないし
何より、あのリプレイキャラの性格の把握が難しい。特に約一名w
そうだな。嘘だが。嘘同盟だな。これも嘘だが。
つまり、ウィザード柊無謀編ということだな。嘘だが。
ぬるぬる酢イカ野郎様の間違いではございませんか?
もしくはずるべた腐りジャム野郎様
ぬかった!実にどうでもいい事だけど。
しかし俺から振った事とはいえ、このスレにも嘘同盟員が結構いるもんなんだな
俺も投下していい?
ゴーゴー
>>396 ありがとうピカチュウの人、続くよ!
…と、思う俺はFの方しかやってない。
「今は情報を整理することが必要だ。各自、知っていることを話してくれ」
ブラッドの提案で、5人はお互いが知っていることを順番に話していくことになった。
「ティムが言ってた、ダン・ダイラムが呼び寄せた何かって、アキラさんのことだったんだね」
「時空ってくらいだから、時も操れるし、世界を渡れるってことか」
最初に話すのはブラッドと晶。2人の話にリルカと柊がそれぞれ納得する。
リルカの言葉を聞いて、ブラッドも晶の方を向き、言う。
「ああ。アキラを疑っていたわけではないが、これでこちらも確信が持てた。
ティムが言っていたならダン・ダイラムの導きでアキラがやってきたというのは間違いないだろう」
「え?まだ信じてもらえてなかったんですか?」
「そうではない。充分に信頼に値する裏付けを得るまでは情報の過信は禁物と言うことだ。
不確定な情報だけで動くことほど危険なことは無い。常にそういうわけにもいかんが、できるなら裏付けは取るべきだ」
「あ、ああ、そういう意味ですか。じゃあ次は柊くんの話を聞かせてくれるかな?」
ブラッドの言葉に晶も納得する。そして、柊に話を促した。
「アンゼロットさん…相変わらず無茶するね」
柊の話を聞き、晶は達観したように言う。
普通ならばありえないくらい理不尽なことだが、柊蓮司に限って言えばそれは日常茶飯事なのだ。
「でもさ、レンジってファルガイア基準だと無茶苦茶強いんだけど、ウィザードってレンジ位が普通なの?」
詳しく話を聞いて、リルカは自らの疑問を聞く。それに答えたのは、晶だった。
「ううん。そんなこと無いよ。柊くんはウィザードの中でも物凄く強い方だと思う。けどなんで?えっと、リルカちゃん?」
「だってさ、レンジの話だと、ようするにレンジはファルガイアの調査に来たってことでしょ?
レンジの世界から見れば未知かもしれないけど、たかが調査にそんなに強い人送り込む必要あるのかな、って」
今度はリルカは柊の方を見て聞く。柊は目をそらしながら、答えた。
「…あー、それは、あれだ。アンゼロットだからな。あいつは俺をいじめるのが好きなだけだ、うん」
柊は、自らの話から晶の預言についての話を飛ばしていた。
柊は晶の方を見る。
晶も柊の方をじっと見ていたので目が合ってしまい、2人して赤面する。
目の前の晶は、どう見ても今の自分とそう変わらない年齢だった。
預言のことまで話したら、彼女がファー・ジ・アースに戻れなかったことまで言わねばならなくなる。
口のうまい幼馴染あたりだったらその辺をごまかすこともできるかも知れないが、自分ではそこまではできない。
晶がそのことを知ったら落ち込むだろうと言う、柊なりの配慮だった。
「そ、それよか俺はまだこの世界のことをよく知らねえんだ。さっきお前がティムって奴と話してたこともちんぷんかんぷんだったしな。
その辺の説明も兼ねて次はリルカが話してくれよ」
誤魔化すように柊はリルカに話の矛先を向けた。
399 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/24(日) 15:27:58 ID:PnhHnSrp
出かける前に支援。
畜生、最後まで付き合えないのが無念だ
ぐは、sage忘れた、スマン
「グラブ・ル・ガブルに予兆があったのか…となると敵はそこに?」
「う〜ん。何かが入り込んだとは言ってたけど、どうなんだろね?」
「とにかく、これで我々元ARMSメンバーのうち、5人までは赤い月の異常に気付いていることになるな」
ブラッドがこれまでの話をまとめる。それを聞いて、リルカはブラッドに尋ねた。
「5人…あ、じゃあさあ、マリアベルも気づいてるのかな?」
「「マリアベル?」」
「あ、マリアベルって言うのはね…」
初めて出てきた名前に柊と晶が反応を返す。それに気づいたリルカが2人にマリアベルについて説明する。
マリアベル=アーミティッジ。このファルガイア最後のノーブルレッド。
太陽を苦手とし、魔法と機械操作に長けた、元ARMS6人目のメンバー。
500年以上生きているが、その姿は透けるような白い肌と金色の髪、そして紅い瞳を持った子供のままで、えらそうな口調で話す。
そんなリルカの説明を聞いて、柊は言う。
「太陽が苦手で、白い肌と赤い瞳を持っててずっと年とらない。まるでヴァンパイアだな」
「ヴァンパイア?レンジの世界にもノーブルレッドがいるの?」
「ああ、メカが得意って話は聞いた事ねえけど、似たようなのはいるぞ?」
リルカの問いに柊が答える。晶もそれに頷く。
数こそ多くないが、種族そのものがウィザードと言っても過言ではないヴァンパイアは、ウィザードの間では人狼と並んでポピュラーな異種族だ。
深いつきあいになったものはいなかったが、柊にも何人か知り合いがいた。
「へえ…やっぱり異世界だけあるね」
「どんな納得のしかただ」
「あはは。じゃ、最後は、アシュレー。大怪我したってブラッドから聞いたけど、一体何があったの?」
「謎の女?」
「ああ、そうとしか言えない。アガートラームを引き抜いて持ってきたと言っていた」
「アシュレーに1対1で勝つなんて、もの凄い強い人なんだね。渡り鳥なら、雇ったりして手伝って貰えないかな?」
「多分、無理だ。あの女は、話が通用するような相手には見えなかった」
「ふむ…ならば戦力として当てにするわけにはいかんか…ん?どうしたのだ2人とも?」
ARMSの3人が謎の女についている間、柊と晶の2人はお互いの顔を見合わせていた。
時折「でもまさか…」だの「いや、あいつらならありえる」だの「やっぱりそうなのかな?」だのと言った小声の会話が漏れてくる。
いつの間にか3人がこちらを見ていることに気づき、2人は正面を向く。
そして、柊が2人の間で出た結論を言う。
「言いにくいんだが…多分そいつ、魔王だ」
「「「魔王ッ!?」」」
思わず3人の声がハモる。
「魔王って、もっとこうゴツかったり色々トゲトゲがついてたりするもんじゃないのッ!?」
3人を代表してリルカが柊に聞く。
他の2人も同じ意見なのだろう、リルカの意見に頷いている。
「ああ。何故かファー・ジ・アースの魔王はそういう連中ばっかりなんだよ」
「普通に魔王っぽいのもいるんだけど、名前がよく知られてる魔王は大体女の子の姿をしてるの」
「どんな世界だ…」
あまりに衝撃的な内容にアシュレーは思わず頭を抱えた。
「それで、どんな奴だった?銀髪のショートヘアでポンチョ着てたらベルで確定なんだが」
柊がアシュレーに尋ねる。
「いや、鎧をつけた、派手な格好だった。年は…俺ぐらいかな」
「う〜ん。鎧着た奴はいたような気もするが、派手な格好では無かったしなあ…
とにかく、蒼い月のときと宝玉集めてるときに魔王は10人位見たが、そんなのはいなかったぞ。
どうも俺の会ったことない奴みたいだな。晶はどうだ?」
「私も分からないよ。っていうか私は魔王事態あいつを除けば1人、2人しか見たこと無いよ」
「ちょっと待て。魔王ってそんなに沢山いるのか!?」
なにげにかわされるアレな話題にアシュレーが思わず突っ込む。
「ん、ああ。確か全部で…何人だっけか?」
「え〜と、72人だったかな?流石に名前までは覚えてないけど」
「けどまあ、魔王は1度に多くても2人くらいだろ多分。
何しろウィザードが裏界に侵攻しようって時にも10人集まらなかった位だし」
「へえ、そんなことがあったの?」
「おう。あの後は特に大変だったぞ。色んな意味で」
2人の間で世間話のように交わされる会話は3人の理解をはるかに越えていた。
「まるで魔王のバーゲンセールだな…」
ブラッドの思わず漏らした呟きがその場にいた3人の気持ちを何よりも代弁していた。
「それにしても柊くん…」
晶はアシュレーの話を聞いてからずっと気になっていたことを聞く。
「どうするの?魔剣が無いんじゃ、困るんじゃない?」
「魔剣が無い?どういう事だ?」
柊は不思議そうな顔をして晶に聞く。
「え?だってその魔王が柊くんの魔剣…アガートラームを持ってっちゃったんでしょ?
私が預かってた柊くんの魔剣はミッドガルドに置いてきちゃったし…魔剣の無い魔剣使いはただの使いだよ?」
「もういいんだよそのネタはよッ!?」
思わず突っ込みを入れてから、柊は改めて言う。
「なんか誤解があるようだが、俺はちゃんと魔剣を持ってるぞ。ほれ」
そう言って柊は月衣から自らの魔剣を取り出し、晶に見せる。
「…ッ!?アガートラーム!?」
その剣を見てアシュレーが思わずARMを手にして立ち上がる。
「落ち着いて。よく似てるけど違うの!あれはレンジがシェルジュで一緒に戦った時から持ってた剣だよ!」
一触即発の空気を察したのかリルカがとっさにアシュレーの前に回って言う。
「…ふむ。話には聞いていたが、本当に瓜二つだな」
ブラッドだけが落ち着き払って、柊の魔剣を観察していた。
支援いるかい?
「しっかし、俺たち以外が“当たり前”だと思ってる赤い月、か…」
「どうしたの?柊くん」
珍しく頭を捻ってる柊に晶が尋ねる。
「いや、最近、似たような事件があったような気がするんだが…」
柊の脳裏にとある記憶が蘇る。それは、あの地獄の補習授業中の想い出。
クソ暑い真夏の日差しを受け、だらだらと汗を流しながら何故自分は冬服でいるのかと自問した記憶。
2日ほどでその真夏日は終わり、後に柊はアンゼロットからその事件について話を聞いた。
“常識”が書き換えられ、世界中が永遠に続く真夏を“当たり前”と信じていた事件。
それについては他のウィザードが解決したと言う話だったので詳しくは聞かなかったが。
「ふ〜ん。あ、それならさ、アンゼロットさんに連絡を取ってみない?」
柊に魔剣使いの割りに頭の回転が速い晶が提案する。
「アンゼロットに?」
「うん。ミッドガルドからは通信出来なかったけど、ファルガイアからはどうか分からないから。
魔王の正体も分かるだろうし、その事件について聞こうよ。何か手がかりになるかも知れない」
「う〜む、気がすすまねえが、そうするか」
そう言うと柊は懐から0-phoneを取り出す。そして電話を掛けようとして言う。
「うわ…微妙」
画面ではアンテナが1本、ついたり消えたりしている。
下手に使うとすぐに電池切れになってしまうだろう。柊は3人に尋ねる。
「この辺りに、通信施設とかの魔法装置とか、無いか?魔力の強いところでもいいぞ」
柊の問いに、アシュレーが答える。
「…1つだけ、心当たりがある。ちょうど近くだし、行ってみよう」
その言葉に4人が頷いた。
今日は、ここまで。
支援じゃけんの
ここのまとめスレへのアップってまとめスレの管理人さんがやってくれるってタイプですよね?
前スレのSSがすべてアップされないうちに落ちてしまったので、どうなっているのか少し心配になってます
今回も楽しませてもらいました!
しかし柊、冬服って、微妙にザ・サマ−の影響力を下げでもしたのか?
そういえば、バーゲンセールで思い出しましたが、星を継がないもので
アンゼロットが別の言い方してましたけど何でしたっけ?
何だか、バーゲンセールではなく○○みたいですね。見たいなこと
言ってたと思うんですけど。
>>408 事態はもっと単純さ。
異変が始まる前から帰らせてもらえなかったんだw
嘘予告です
魔王達(+下がる男)の饗宴
PC1
推奨クラス:大いなるもの
キミは宇宙最強の魔王だ。
少なくともそれに相応しい実力を持っている。
ある時、キミの前に以前倒した超魔王バールが現れた
終始、戦いは有利に進めるがバールは何と君のレベルを吸い取り逃亡した。
このままで済ますわけにはいかない魔王の誇りにかけてキミはバールを追った。
PC2
推奨クラス:大いなるもの
キミは亡き父の後を継いだ魔王だ。
キミは父の仇でもある超魔王バールを追っていた。
とうとう追い詰め止めを刺そうとした瞬間バールはキミのレベルを吸収し逃亡した。
逃げた先は地球だ。
以前訪れた時と微妙に雰囲気が違うがそんなことは些細なことだ。
PC3
推奨クラス:転生者
キミの前世は魔王神と恐れられた伝説の魔王だ。
だが今は愛しい恋人と共に平穏な暮らしをしている。
だが、そんなキミの前に超魔王バールと名乗るものが現れた。
どうやらキミの前世が魔王神と知っての襲撃らしい。
恋人と共に迎撃するも不利と悟ったバールは逃亡するがキミはその転移に巻き込まれる。
意識を失ったキミが目覚めた場所は秋葉原と呼ばれる場所らしい。
PC4
推奨クラス:大いなるもの
キミは裏界において実質ナンバー1の実力を持つ魔王だ。
そんなキミの前に超魔王バールと名乗る来訪者が現れた。
確かな実力を持つ相手だが全力を出せる裏界においては敵ではない。
だがそんなキミの油断を突きバールはキミのレベルを吸い取り逃亡した。
バールには直ちに天誅をあたえなければならない、だがレベルの下がった今ではそれは難しいだろう。
そんなキミの脳裏に浮かんだのはPC5だった。
PC5
推奨キャラクター:柊蓮司
キミは今、幸いなことに任務もなく学園に通っていた
そんな平和を享受するキミの前に突如虚空からPC3が現れる。
困惑するキミの前にさらに因縁深い魔王PC4が現れた。
どうやらキミの短い平和は終わりを告げたようだ。
ナイトウィザード×日本一ソフトウェアです。
大いなるものが多いのはクラス名が思いつかなかったからです。
ちなみに書く予定はまったくありません。
PC1 ゼダ@ファントムキングダム
PC2 ラハール@魔界戦記ディスガイア
PC3 ロザリンド@魔界戦記ディスガイア2
PC4 ベール=ゼファー
PC5 柊蓮司
>>+プリキュアの人
更新の方がストップしちゃってるみたいですが…そちらで何かトラブルでも?
wikiなんだから、気付いた人が……
とりあえず、安価だけでも貼ってくれるとまとめる人は大助かりなんじゃないかな。
【保管庫管理人仕事しろ】
保坂、まーりゃん先輩、大阪、柊が全員同じ場所に転校して『ツッコミ所が多すぎる』という電波が降ってきた
理由も謎なら内容も謎だなぁコレ……収集つかないよ
>>416 収拾が付かないというか…柊がツッコミ疲れて死ぬぞ?
あと保坂はまーりゃん先輩の超電子ドリルキックで沈みそうな気もするが。
保坂相手には、くれはを出すって言うのはどうか。
そういえば春香ってウィザー……(日記はココで途切れている。
毎度どうも
未保管分が溜まってるけどいいのかな、と思いつつ
50分ぐらいから投下したいと思います
一応前のは
>>167からって事で
「なるほど、つまりお二人は斗貴子氏やカズキと同業という訳だ」
「ああ、まあそんな感じだ。詳しく説明するとややっこしくなるからそういう事にしといてくれ」
「聞く気もないけどね。カズキが何も言わないんなら聞く必要もその意味もない事だろうから」
顔を緑色に変色させて昏倒している岡倉を脇においたまま、六枡は軽く紹介を受けた蓮司と灯を見やりつつ呟いた。
――アンゼロットの説明によれば、ウィザードの技術と戦団の技術の最大の違いは『世界に対する許容度』であるらしい。
『神秘』として常識から秘匿されたウィザードの技術とその存在は『知られてはならないモノ』だが、『学問』として常識との
融合を目指した戦団の技術と存在は単に『知られていないだけのモノ』なのである。
故に、戦団の生み出した錬金術の技術は一般に知られてもある程度のレベルまでは世界に許容され、常識として認識される。
先年にこの銀成市で起こった神隠し事件や銀成学園の集団幻覚事件、最近で言えば巷を騒がせている蝶々仮面の怪人などが良い例だ。
もっとも、その”ある程度のレベル”の境界が具体的に判明していない以上、無闇に明かしてしまうべきモノではないのも確かだったし、
ウィザードである蓮司達の素性を詳細に明らかにする事はより忌避すべき事だった。
「えっと、それじゃあ柊くんや緋室さんが転校してきたのは、最近また起こってる行方不明の?」
「……ああ、そういう事になる」
「……去年学校に出た奴みたいなのがいるって事なんだね」
「大丈夫だ。オレ達がなんとかするから、絶対」
巨躯を縮込ませた大浜を鼓舞するようにカズキは断言する。
ゆるぎない彼の瞳を見ていくらか安堵したのか、大浜は小さく息を吐き出した。
「そうだよね、去年だってカズキくんと斗貴子さんが守ってくれたし」
「オレ達が学校を守れたのは皆のおかげだよ。学校の皆がオレ達を助けてくれたから」
「学校の皆、か。ちょっと不謹慎だけど、幸い今の所学生に被害はないみたいだしな」
「―――」
六枡の言葉にカズキは咄嗟に声を返すことができなかった。
エミュレイターと融合したホムンクルスにプラーナを喰われた人間は最悪存在を抹消されると言う。
そういう風にしていなくなった人間達は、面識があるなりといった何らかの縁がない限り蓮司達ウィザードであってもその存在を
認識する事はできなくなるらしい。
確かに、今の所学生に行方不明者は出ていない。
だが、本当は誰にも認識されていないだけで学校から文字通り”消えて”しまった人間もいるのではないか――
「カズキ」
ふと肩に置かれた手の感触でカズキは現実に引き戻された。
目をやればそこには蓮司がいて、こちらを見つめている灯がいる。
そして脇には、これまで一緒に戦ってきた斗貴子がいた。
小さく頷く彼女に向かって、応えるようにカズキは頷き返す。
「……うん。そのために、皆がいるんだもんな」
失われてしまったものを取り戻すことはできないけれど、これから失われるかもしれないものを守る事はできるだろう。
例えば今目の前にいる人達。例えば今生きているこの街。
例えば今ここにいる世界を。
「……やっぱりここを貸し切ってたな」
そんな時校舎へと続く鉄扉が開かれて、一人の少年が姿を現した。
「剛太……貸し切ってたって?」
軽く辺りを見回している少年――中村 剛太に釣られるようにしてカズキは回りに視線をやった。
今更ながらに気付いたが、この屋上は結構な広さがあるにも関わらず他の生徒の姿は見当たらない。
多少風当たりは強いが、街を一望できるこの屋上は昼休みを過ごすには格好の場所のはずだ。
カズキが小さく首を傾げてると、剛太は小さく苦笑を漏らしてから肩を竦めて見せた。
「お前等がいるとうるさくって昼飯もおちおち食べられないんだってさ」
「遅かったな、剛太。何かあったのか?」
「すみません。ちょっと校内を案内してたもんで」
「案内?」
「はい。流石に一つのクラスに三人も転入させる訳にはいかなかったみたいで」
言って彼は振り返る。促されるように屋上に姿を現したのは、膝ほどまである黒髪を絵元結で束ねた少女だった。
「やほー、ひーらぎ。きちゃった!」
「な……く、くれはァ!?」
蓮司が顎を落として素っ頓狂な声を上げる。
彼の声を心地良さそうに耳に入れて少女――赤羽 くれははにっこりと微笑むと、剛太と共に六人の許に歩み寄った。
「人員補充なんだって。何でも構成が前のめり過ぎるとかなんとか……あ」
言ってしまってからくれはははっとして周りにいるカズキ達を――正確には一緒にいた大浜と六枡(あとついでに転がっている岡倉)を見た。
剛太からカズキと斗貴子に関しては聞いているのだろうが、他の三人については聞いていないらしい。
「大丈夫だ、ここにいる奴は一応知ってるから」
「はわ、そっか。よかったー」
安堵して胸を撫で下ろす彼女を上から下まで眺めつつ、蓮司は眉を寄せてからくれはに問いかけた。
「つーかくれは……お前、その格好……?」
彼女はいつも着ている巫女服ではなく、銀成学園高校の制服を身に纏っていたのだ。
蓮司に指摘されてくれはは「はわ」と声を漏らすと、照れ臭そうに頬をかいて苦笑した。
「アンゼロットが調達してくれたんだよ。流石に巫女服でこの学校に通う訳にはいかないからねー」
「確かに……でも、」
「巫女服で学校に通う、だとォ……!?」
口を開きかけた蓮司を遮るようにして、地の底から響くような声が沸きあがった。
それまで昏倒していた岡倉が何時の間にか目を覚まし、ゆらりと立ち上がった。
「そんなパラダイスが東京にはあるのか!?」
「……輝明学園には巫女クラブがあって、そこの部員は巫女服での登校が許されてる」
さらりと説明する灯。
それを聞いた岡倉はぶるぶると身体を震わせて、爆発するように叫んだ。
「もう転校するしかない!」
「大浜も大喜びだな!」
「なんでボクに振るのォ!?」
岡倉に続くように叫んだカズキに、大浜が悲痛な声を上げる。
「大浜 真史……キミは……」
「ああ!? 斗貴子さん引かないでよ!?」
僅かに距離を取る斗貴子に縋るようにして大浜は呻く。
そんな周囲の喧騒を気にする風でもなくくれはは窺うような目線を蓮司に向けた。
支援します。
「どう? 似合ってる?」
「うっ……」
制服姿を見せびらかすようにしてくれはは蓮司の前で軽く回ってみせる。
長く伸びた艶やかな黒髪と腰についたリボンを揺らす彼女の姿に、蓮司は動揺してしまっていた。
正直な所を言ってしまえば、輝明学園のものとは違った方向に趣味が入りまくっている銀成学園の制服は、くれはには
あまり似合ってないような気がした。
というのも、彼女は生家が神社であるので子供の頃からの付き合いであっても巫女服以外の彼女をほとんど見た事がないからだ。
こうして普通の少女と同じような制服を着ている彼女は、蓮司が知る彼女とは全く別人のような気がするのだ。
だからだろう、
「あー………まあ、似合ってる……んじゃないか?」
彼女の屈託のない表情に妙に照れ臭くなり、蓮司は目線を反らしてぼそりと呟いた。
「はわ………えへへ、そっか」
一瞬だけ驚いたような顔を浮かべると、彼女は僅かに頬を染めて嬉しそうに笑った。
その表情を横目で見やって、蓮司は顔が熱くなるのを感じる。
まずい。これはまずい。
何かよくわからないが、非常にまずい。
きっとアレだろう、吊り橋効果とかそういった類のものなのだろう。
そうに違いない。
必死に言い聞かせて、蓮司は平常を装うべく強引に笑って見せた。
「まあ、アレだ。馬子にも衣装って奴だな、あっははははははぶぅっ!?」
いつも通りの自分を取り戻した蓮司は、叩き込まれた鉄拳できりもみしながら吹き飛んだ。
ボロ雑巾のように床を転がっていく蓮司に目もくれずくれははカズキ達を振り返りる。
「そういえば自己紹介まだだよね? 赤羽 くれはです、よろしくね」
「あ、ああ……」
何事もなかったかのように愛想のいい笑みを浮かべ回りの人と紹介しあうくれはに、斗貴子は多少動揺しつつもどうにか返し、
「……どうした、カズキ?」
ふと自分を見つめるカズキの視線に気付いた。
彼は何事かを考えるように顎に手を当てて、神妙な顔で斗貴子をじっと見やっている。
「……どうしたんだ? あまりじろじろ見るな、失礼だぞ」
まじまじと見入ってくる視線に気恥ずかしさを憶えたのか、斗貴子は僅かに身を引いてから少し険の入った声を上げる。
「……斗貴子さんってさ」
「なんだ?」
「――巫女服似合いそうだよね」
「っ!?」
支援〜
ざわっ、と男性陣(蓮司を除く)の空気が変わる。
彼等の視線が一斉に斗貴子に集まり、彼女は自分の身体を隠すように身を抱いた。
「な、なっ……何を馬鹿な!!」
「いやだって黒髪だし、キリッとしてるから……」
「斗貴子さんに清楚な巫女服! 色々やばいだろそれは!」
「黙れエロス! 神職を侮辱するな!」
顔を赤くして、後ずさりつつ吼える斗貴子に、くれはが首を傾げて彼女を覗き込む。
「ん、何? 斗貴子さん巫女服着たいの?」
「誰がそんな事を言った!?」
「でもホント似合うと思うんだけどなあ、巫女服」
「くどいっ!」
気恥ずかしさが過ぎて怒気に転じたのか、斗貴子はだんと床を踏んでこの空気の下手人であるカズキに一歩詰め寄った。
そして口を開きかけたその時、
「あー、いたいた! お兄ちゃん!」
明るい声が響いてカズキの妹――武藤 まひろが若宮 千里と河井 沙織を伴って現われた。
「お、まひろ。丁度いい所に」
「なんてタイミングで……!」
愕然として斗貴子は呻く。
この状況下で彼女が現われてしまえば、
「二年生に転校生が三人も来たって……どうしたの?」
「ああ、実は今斗貴子さんに巫女服が似合うよなって話を――」
「ええっ! 斗貴子さん巫女服着るの!?」
こうなってしまうのは確実なのだ。
「いや、着るとかそういう話では――ひぁっ!?」
「見たい見たい! 斗貴子さん綺麗だから絶対似合うよ!」
まひろはカズキを撥ね退けて斗貴子に抱きつく。
裏返った悲鳴を上げる彼女を他所にまひろは満面の笑みを浮かべて斗貴子に縋りついた。
「で、いつ着るの? 寄宿舎帰って? もしかして今ここで?」
「き、着ないと言ってるだろう! というかそんなモノは……」
「着たいならあるよ? 巫女服」
脇で見ていたくれはがさらりと言った。
くれはの制服姿! レアだぜ支援!
同時に斗貴子の顔が驚愕に凍りつき、まひろの顔が歓喜に輝く。
「ほんとに!? あ、その前に初めましてさん? 今日来た転校生の人?」
「うん、赤羽 くれはだよ。よろしくね」
「よろしく、くれはちゃん! くーちゃんって呼んでいい?」
「くーちゃん? はわー……まあ、別にいっか」
一瞬にして愛称まで作り上げたまひろがくれはの両の手を掴んで大きく振る。
少しだけ苦笑を浮かべながらもくれはは彼女の行為に身を任せている。
和気藹々と言った雰囲気だったが、斗貴子は先程のくれはの言葉に気が気ではなかった。
とはいえ下手に口を出してしまえばまた話題をぶり返してしまう。
このまままひろが別の話題に移ってしまう事を祈ったが、
「……で、巫女服は?」
先程から沈黙を保っていた灯がぼそりと呟いてしまった。
「緋室 灯っ! お前、初見の時といい先日の一件といい私に何か含むところでもあるのかっ!?」
「別にない。学友として話題の提供を」
「そんな話題は提供しなくていい!!」
「そう、巫女服!」
斗貴子の抵抗を打ち砕くようにまひろが手を叩く。
そしてまひろが期待に満ちた目線をくれはに向けると、彼女はふっふっふ、と得意げに笑って床に置いてあった
灯のバッグを手繰り寄せた。
「はいー、ここに取り出しますは何の変哲もないあかりんのバッグ〜」
バッグに視線が集まるのを確認した後、くれははおもむろにバッグの中に手を差し入れてごそごそと動かし始める。
「のーまくさんまんだーぼだなんー」
「……何故神道の巫女が密教の真言を?」
「というかなんでそーいうのがわかるんだよ、六枡……」
しばらくの間くれははバッグの中を適当に探り――実の所月衣から出すのでそんな必要は全くないのだが――やがて彼女は
バッグから巫女服をずるりと引きずり出した。
「はい、この通り!」
『おおーっ!!』
歓声と拍手が沸きあがる。
得意気な表情になってそれらに応えるくれはを、斗貴子はぽかんとして見ていることしかできなかった。
「じゃあこれ。ホントは襦袢を下に着るんだけど、まあ別に正式にどうって訳じゃないし」
「……? ……!」
くれはから白衣と緋袴を手渡されて斗貴子はようやく我に返る。
興味深々で視線を向ける一同から後ずさり、
「な、なんで着ることになってるんだ!?」
「え、着るんじゃないの?」
「着ないと何度も言ってるだろう!」
「一人で恥ずかしいなら私達も着るから!」
「巫女さんの服かー、一回ぐらいは着てみたいよね、ちーちん」
「私は昔一度手伝いで着たことあるけど」
「あ、ちーちんは作務衣着てるもんね」
「いや、作務衣は関係ないから、まひろ……」
「着替えならまだあるよ?」
「しかし赤羽さん。斗貴子氏が着るならかもじが要るんじゃないだろうか?」
「はわ、私は地毛がこれだから流石にそれはもってきてないなあ」
「かもじ?」
「付け毛の事。古来から女性の髪には霊力が宿ってるとされていて、地毛の短い巫女はかもじをつけて代替にするんだ」
「へぇー」
「はわー、六枡君物知りだねえ。でもまあ正装する訳じゃないから要らないと思うよ?」
「物知りで済むレベルじゃねーよコイツ……」
何時の間にか一同に混じって会話をしているくれはを見ながら、斗貴子はそろそろと校舎に向かって歩き出す。
頃合を見計らって逃走しようと脚を踏み出した瞬間、
「……確保」
「くっ!? またお前か、緋室 灯ぃ!」
「あっ、斗貴子さん逃げちゃやー!」
灯に拘束された斗貴子がもがく間もなくまひろ達に殺到される。
まひろに抱きつかれながら斗貴子は縋るような、そして責めるような表情で呆然としている蓮司をにらみ付けた。
「蓮司っ! こいつらをどうにかしろっ!」
「え!? お、俺っ!?」
「そうだ! 緋室 灯といい赤羽 くれはといい、お前の連れだろう! 責任をとれっ!」
よほど切羽詰っているのか、普段ならまず言わないような支離滅裂な論法で斗貴子は叫んだ。
唐突に矛先を向けられ立ち竦んでいる蓮司に、女性陣の視線が一斉に集まる。
「なに、ひーらぎ? 文句あるの?」
「う、くっ……」
何時の間にか混ざっているくれはが半目で蓮司を睨み付けた。
言葉には出していないが、その視線は言外で間違いなく脅しをかけている。
彼は少しだけ斗貴子とくれはを交互に見やった後、二人から目を反らした。
「すまん俺には無理だッ!」
「この軟弱者ぉ!!」
灯とまひろに捕まえられて、ぶつけるにぶつけられない怒りを込め斗貴子は地面を蹴りながら叫んだ。
斗貴子さんの巫女姿もみたいぜ! 支援。
更に支援!
※ ※ ※
斗貴子にとっては無限とも思えた昼休みを終えて、一行は屋上から各々の教室に戻るべく廊下を歩いていた。
午後の授業を免罪符にしてその場で着替える事はどうにか回避した斗貴子だったが、結局まひろ達の押しに負けて
寄宿舎に帰ってから巫女服に着替えることを約束させられてしまった。
がっくりと肩を落として歩く斗貴子を中心にして談笑する女性陣の後に続いて男性陣が歩を進める中、剛太がふと蓮司に話しかけた。
「そういえば、柊」
「なんだ?」
「まひろちゃん達が来てから、お前ずっとあの子達見てなかった?」
「うっ……!? い、いやそんな事は」
「そういえば見てたね。斗貴子氏にふられるまでずっと凝視してた」
「お前あいつ等の話題に混ざってたんじゃねえのかよ!?」
思わず声を荒らげる蓮司に六枡は委細構わぬ様子で目を反らす。
一方で岡倉はカズキの肩に手をかけてまくし立てた。
「おい兄貴、妹が色目使われてたらしいぞ、何か言ってやれ!」
「え? うーん……」
カズキは一度蓮司を見やった後、前を歩くまひろに目をやって一つ頷いた。
「まひろも子供じゃないんだから、別にいいんじゃないか?」
「わあ、カズキくん大人の反応だ……」
「くっ、これが彼女持ちの余裕と言う奴か……っ」
「――ただし!」
カズキはカッと目を見開き、胸に手を当てて叫んだ。
「オレの事は義兄さんと呼んでもらおう!!」
「呼ばねえよ!?」
「じゃあじゃあ、斗貴子さんの事はお義姉ちゃんって呼ばないとだよ!」
「呼ばなくていい!!」
何時の間にか近くに来ていたまひろが声を上げ、斗貴子が叫ぶ。
十人近い男女が廊下を占拠しながら歩く中、蓮司はカズキに近寄って耳打ちした。
「なあ、カズキ」
「ん?」
「あのさ……俺達が初めて会った時の事、憶えてるか?」
「? 憶えてるけど……あの時はゴメンな、邪魔しちゃって」
「いや、それはいいんだけどよ……あの時俺が追ってたエミュレイターの事も憶えてるか?」
話題が話題だけに、二人は少しだけ歩を緩めて集団から距離を取った。
カズキは追想するように首を捻ったが、
「うーん……女の人だったよな? あれ、女の子? 髪が肩ぐらいまであったような気がするんだけど……悪い、そっちはよく憶えてない」
「……。そっか、ならいい」
言って蓮司は足を止めた。振り返ってこちらを見るカズキに彼は照れ臭そうに頬を掻く。
「わり、ちょっとトイレ。先に行っててくれ」
「……ああ、わかった。教室わかるよな?」
おう、と軽く手を上げて応えると、カズキが見送る中蓮司は踵を返した。
なんかいろいろと天国が形成されていく!?支援ww
授業開始のチャイムが鳴り響く中、蓮司は一人校舎裏に佇んでいた。
壁に背を預け、彼は0−phonを耳に充てたまま動かない。
やがて耳元で、涼やかな少女の声が響いた。
『どうかなさいましたか、柊さん』
「ちょっと話があってな」
『話? せっかく授業に出られるのですから――』
「――”そんな事”はどうでもいい」
蓮司の声に茶化す場ではないと感じ取ったのだろう、少女――アンゼロットは世界の守護者としての態度で応えた。
『話とは、なんでしょう?』
「……お前、もしかしてわかってて俺をここに転入させたのか?」
婉曲的に言う気分ではなかったので、単刀直入に切り出した。
そしてそれを聞いたアンゼロットの方も、少しの沈黙の後端的に言った。
『はい。事前の調査と先日の接触で概ね情報は得ましたので』
「……っ」
ほんの僅かな期待を打ち砕かれて蓮司は唇を噛み手にしていた0−phonを握り締める。
「……カズキもあの子の友達も誰も気付いてない。変わった様子も、なかった」
『アレ等は”そういうモノ”だというのは、知ってるはずでしょう。
見ず知らずの他人だろうと、よく知る隣人だろうと、こちらとあちらは薄氷の境しかないのですよ』
実際にソレを見ているはずのカズキが気付かないのも無理のない事ではあった。
例えば、普段とは違う服を着てみたり。
例えば、普段結っている髪を下ろしてみたり。
それが男であったならまだしも、女であればそれだけの変化で驚くほど簡単にその印象は変わってしまうものだ。
「……あの子も、融合型のホムンクルスとやらにされてるのか?」
『いえ、彼女は通常の規格通り憑かれているだけ……つまり真正のエミュレイターのようです』
アンゼロットの説明を聞きながら、蓮司は瞑目して情報を整理する。
頭の中で予想を吟味した後、彼は確認するように0−phonの向こうにいる彼女に問いかける。
「……偶然じゃあねえよな」
『でしょうね。錬金の戦士がいるとはいえ、寄宿舎の中にあって学校にこれといった被害やその残滓が残っていない以上、
何らかの意図が介在しているはずです』
「……魔王か」
『ほぼ間違いなく』
そもそも人間と接触して段取りを組むというやり方自体、単にプラーナを求めている下位のエミュレイターとは一線を画している。
普段馬鹿だの頭が悪いだの揶揄されている蓮司であるが、彼は多くの修羅場を経験してきた歴戦のウィザードなのだ。
『斗貴子さんやブラボーさんといった方達ならともかく、侵食の度合いによってはカズキさんに相手をさせるのは酷でしょう。
しかるべき処置をお願いします』
これといった感情を乗せる事なく事務的に語るアンゼロットに、蓮司は僅かに眉をひそめた。
世界の守護者として大局的な視点を持たねばならない彼女の立場は彼もわかっている。
だが蓮司としては、こんな風に冷然とした態度の彼女は、普段愉しそうに自分を弄っている時の彼女以上に気に入らない。
「……わかった。だが、俺は俺のやり方でいかせてもらう。文句は言わせねえぞ」
『……。ええ、勿論。そこの所も含めて、貴方をそちらにやったのですから』
一瞬沈黙したアンゼロットは、どこか嬉しそうに彼に答えた。
『では柊さん。彼女を――河井 沙織さんをよろしくお願いしますね』
通話を終えて蓮司は0−phonを手にした腕をだらりと下ろす。
しばし何処ともなく虚空を見つめた後、唇を噛んで拳を壁に叩きつけた。
「………くそったれ」
今回は以上です
シナリオ名は「ボケ役が多すぎる」
急募:突っ込み要員
どんな相手にでも突っ込めるアグレッシブな方
報酬:柊や斗貴子さんとの友情(ただしフラグは立たない)
くれはの制服はなんだか違和感ですけど、斗貴子さんが巫女服似合いそうなのはガチだと思います
柊、いつもながら損な役回りだぜ……。 支援。
GJ! お疲れ様です。
萌える展開&燃える展開でいつも楽しみにしてます。
>>434 GJ!なんという天国が形成されていく予感・・・・。
そして、決めるときはシリアスな柊。やっぱいい男だぜ。
さて・・・・斗貴子さん巫女服の画像を期待しつつ、ちょっと離席ノシ
GJ!
秋葉原分校だったらそりゃ「物知り」で済みそうだと思った。
>突っ込み要員
つ上月司
つ夜ノ森風音
つ ノーチェ
つ シグ
つ トラン・セプター
つ なんかどっかの傭兵家業やってる王女様
好きなのを選ぶがいい。
440 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/25(月) 03:41:12 ID:GZ1BFA0p
乙
ボケばかりが臨界突破して突っ込みが追い付けねぇw
それに柊じゃくれはの握ってる秘密無しでも無理っぽいし
とりあえずまひろに巫女はイマイチなんじゃないかなと残念。お前も着やがれ桜花!と言いたいむしろ言うお前も着やがれ桜花!
>>416 大阪はマサトが相手すればいいし、保坂は皇子が相手すればいいし、まーりゃん先輩はグィードが相手すればいいんじゃないかな?
大阪とマサト→ふたりでトランス
保坂と皇子→脱いだり嫁について語ったり脱いだり
まーりゃん先輩とグィード→英魔さまと天のかけあいそのまんま
これ全部にクレバー王子がツッコミな
くれはの銀成学園高校の制服姿の画像が想像できないなー。
イラストかける人は羨ましいや。
ははぁ、斗貴子さんに巫女服着せたくて書き始めたのがばればれですよ。
>>442 そしてバルキリースカート起動でちゃん様風になった巫女服姿の斗貴子さんが見れるんですね!
投下します。
「アシュレー、本当に行くの?」
タウンメリアの入り口で、マリナはアシュレーたちを心配そうに見る。
「ああ、あの赤い月…いや、モンスターの異常発生を何とかしなくちゃならない。
どうもそれが出来そうなのは俺たちだけらしい。出来ることがあるのなら、俺はやりたいんだ」
「…2年前に、全部終わったと思ったのに。また、アシュレーが戦わなくちゃいけないなんて」
そんなマリナを、アシュレーは抱き寄せる。そして、マリナの耳元で囁くように、言った。
「大丈夫。すぐに帰ってくるよ。約束する。昔から、俺がマリナとした約束、破ったことないだろ?
それよりもマリナの方こそ気をつけて。トニー、俺がいない間、マリナの事、頼んだぞ」
「おう!まかせとけ!あんちゃん!」
「…本当に、気をつけてね。行ってらっしゃい、アシュレー」
そうして、2人は口づけを交わす。それが夫婦であることの証であるかのように。
リルカは胸が締め付けられるような息苦しさを感じていた。
この2年で、また強くなった2人の絆を見せつけられたような気がして。
「ん?どしたリルカ。なんか顔色悪いぞ?」
その変化に1番に気づいたのは、意外にも柊だった。
女心には鈍感な割りにそう言うのには鋭い。
「な、何でもないよ!?へいき、へっちゃらだようん!?」
「そ、そうか?なら良いが。調子が悪くなったらすぐ言えよ?」
思わず過剰に反応してしまったが、柊はそれ以上は追及してこなかった。
(び、びっくりした〜)
心臓の鼓動を抑えようと何度か深呼吸する。
(…あれ?)
そして、気づく。
晶が、アシュレーたちと柊を見る視線に。
嫉妬と諦めが入り混じった、複雑な感情。自分の中にもあるそれと同じものを感じる視線。
(もしかして、アキラさんって…)
「おい、リルカ。行くぞ」
「へ!?あ、分かった!」
ブラッドに声をかけられてリルカは正気に返る。
「とりあえず、ダムツェンに行くんだよね!?まかせて、私がテレポートジェムで…」
「「「やめとけ」」」
晶以外の3人がハモった。
テレパスタワー。ファルガイア中の通信の要となっている施設。
それが、アシュレーの言う心当たりだった。
「お、いけそうだ」
その最上階、通信の原動力となる巨大な感応石が安置されている場所で、柊は0-phoneを確認する。
アンテナは3本。十分に通信が可能だ。
「まさかあいつにかけることになるなんてな…」
柊はアンゼロットへのアドレスを呼び出し、通話ボタンを押す。
本人直通の番号。ずいぶん前に無理やり登録させられたが、掛けるのは初めてだ。
「ああ、アンゼロットか?俺だ、柊だ」
「はい。アンゼロットで〜す。現在プライベートネトゲタイムにつき後でかけなおしてください」
ブツッ、通信が途切れた。
慌てて柊が掛けなおす。
「んなこと言ってる場合かこのやろう!?」
「ほんの軽い冗談じゃないですか。最近ストレスがたまりすぎじゃないですか?」
「誰のせいだと思ってんだ!?」
「ああ、そうそう増援の件ですが、なかなか志願者が集まらなくて困っています。
呼出には応じてくれるのですが、みなさん転送装置を見ると尻込みしてしまって…」
「当たり前だ。ってかあれを転送装置と言い張るか」
「とりあえず、泣きそうな笑顔でエリスさんといい笑顔でグィードさんが志願してくれましたが、どっちがいいですか?」
「…どっちもやめとけ。エリスをあれに放り込むわけにはいかんし、あの変態神父はこっちがお断りだ。
それよか、聞きたいことがある」
「…分かりました。それで、何について聞きたいのですか?」
柊のまじめな声に、アンゼロットも守護者としての威厳に満ちた声で答える。
「ああ、実はな…」
「…お話は分りました。ではまず、その、ファルガイアに現れた魔王についてお話いたしましょう」
事情を聞き、アンゼロットは答える。柊は0-phoneのスピーカー音量を最大にし、全員に聞こえるようにした。
「その魔王は、おそらくはエリィ=コルドン。自己顕示欲を司る魔王です。
常に公正であることを是として善悪を問わず弱者の味方をすると言われています。
今迄にも何例か、任務においてエリィ=コルドンらしき人物に手助けを受けたウィザードの報告も受けています。
次に赤い月を常識として受け入れている件ですが、確かに柊さんの言うとおり“ザ・サマー”に酷似しているように思われます」
「そいつはどんな事件だったんだ?」
「かいつまんで言うと、エミュレイター『夢を食らうもの』がとある少女の願望通り、永遠に続く夏を当然であると常識を書き換えた事件です。
あの時は時間と共に常識の汚染が進み、最終的には私も含め、事件の当事者たるウィザードたちを除いた全員の常識が書き換えられるという事態に陥りました」
「願望?」
「はい。『夢を食らうもの』は人間やウィザードにとりつき、その人物の思う通りに世界を書き換えると言うエミュレイター。
もし無理に倒してしまえば、とりつかれた人間のプラーナは抜き取られ、夢を食らうものには逃げられてしまうのです」
「厄介な相手だな。取りつかれた奴を助ける方法とかは無いのか?」
「それは、その取りつかれたものが自らの夢と決別するほかに方法はありません。
そうして初めて取りつかれたものと夢を食らうものとのつながりが断たれ、夢を食らうもののみを倒すことができるようになります。
『夢を食らうもの』自体はすでに山瀬京介君、柊さんにわかるように言えば左から2番目のジャスティスレッドによって倒され、消滅が確認されています。
ですが、もしこたびの魔王が同様の事件を引き起こしていると言うのなら、恐らくは何処かに取りつかれた人間がコアとして存在するはずです」
「そうか。大体分かった。あんがとよ、アンゼロット」
事件の詳細を聞き、柊は礼を言う。
「おや、珍しい。柊さんが私に感謝するなど。これは、明日にも世界が滅亡する予兆でしょうか。
さっそく全ウィザードに召集を…」
「うるせえ!そこまで言うか!?世話になったら礼の一つも言うのは当然だろうがッ!?」
「ほんの軽い冗談ですよ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえんだよ!?」
「とにかく。あんがとよ。じゃあ、これで切るぜ」
「待ってください。まだお話は終わっていません」
話を終え、電話を切ろうとする柊をアンゼロットが止める。
「実は、あの後、こちらでさらにファルガイアの調査を進め、分かったことがあります」
「ん?なんだ?」
「くす。今回の事件にくすくす。あるかは分りませんが、ファーくすくすくす。とファルガイアには時間軸にずれくすくす。
具体的にはファルくすくすアの時くすくすくすくす。ちから見ておよそ500年進んでいるそうで
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす…」
「お、おい。アンゼロット一体どうしたんだ!?なんか変だぞ!?」
突然笑いだしたアンゼロットに柊は問い返す。
だが、アンゼロットはそれには答えず狂ったように笑い続けている。そのときだった。
「ひ、柊くん、あれ!?」
晶が感応石の上を指さした。全員がそこに注目する。
そこにいたのは、黒いワンピースを来た、1人の少女だった。
感応石の上に腰かけ、微笑みながら足をぷらぷらさせている。
「こんな所に、女の子…!?まさか!?」
「あの子って、もしかして…」
「自らやって来るとはな…」
こんな時間、こんな場所に少女がいるはずがない。
同時に思い至った3人がその答えに達する。
普通なら、ありえない。だが、2人の異邦人の話からすればその少女とは…
「魔王かッ!」
超神速の反応でアシュレーが自らのARMに装填された弾丸を発射する。
瞬時に狙いをつけられたそれは、正確に少女の肩口へと向かい…
少女の体をすり抜けた。
「なッ!?」
「…残念だけど、私は“まだ”魔王では無いわ」
それが当然であると言うように少女は感応石からふわりと飛び降りて、5人の前に立つ。
「はじめまして。私の名前は、ベアトリーチェ。今日はごあいさつに来たの」
貴族の淑女がするように、スカートのすそを持ち上げて、ベアトリーチェは5人に自らの名を言う。
「貴様があの赤い月の黒幕かッ!?」
アシュレーの問いをベアトリーチェは答えず、言う。
「でも、あなたたちがよりにもよってここへ来てくれたのは幸運だったわ」
「…どういうことだ…!?」
その言葉と同時に5人を眩暈と強烈な睡魔が襲う。
「だって、ここでなら、私の力を増幅できるもの。
行ってらっしゃい、私の、夢魔ベアトリーチェの悪夢へ」
その言葉と共に、5人の目の前が、漆黒に閉ざされた。
今日は、ここまでです。
>>449 GJ!アンゼロットどーなったんでしょ?w
ところでですね。次は大航海時代とクロスさせるつもりはありませんか?w
柊がカタリーナタンの船に乗り込んで、とゆー(ry
>>449 ふむ、幻影とは云え遂に主人公達と魔王のファースト・エンゲージか、うむGJ!
さて、柊達はどの様な悪夢を見させられるのかな?
特にARMS側は自分が原作を詳しくは知らないから余計に楽しみですわw
>>499 グッジョブっす。あの「くすくす」は途中からベアトリーチェが
回線に割り込んで笑っていたんですかね?しかし、柊たちの悪夢か…。
柊に関しちゃ、日常こそが悪夢なきもするなぁ、学年下がるは
年齢下がるはこき使われるはで。まじめな話だと大事な人とかが死ぬのを
見せられるとかかな?それとも普通に3のときの城に飛ばされるか。
前者に関しては柊はたとえそういうのを見せられても絶望はしない
だろうから(七徳の宝玉事件で似たようなことがあった)いいけど
他はきついかな?後者なら漢探知を誰がやるかということに。柊か
ブラッドかな、やるとしたら。最後に、プライベートネトゲタイム
自重してください英魔さま。(魔はわざとです。)
>>452 柊の悪夢?
高校を卒業してしまった今、それはやはり
『 赤 羽 く れ は と 柊 自 身 の 婚 礼 』
しかないでしょう、柊的にはw
アニメでのあのフラグの叩き折りっぷりから見て間違い無い!w
あの「くすくす」は柊の存在している時間軸が「下がった」というオチを言うまで
アンゼが笑いを堪えきれなかったと解釈してたんだが、もしかして違ったのかw
>>453 それはむしろ晶にとっての悪夢だと思うがどうか。
>>455 ならば、柊と晶でのザッピング方式の共演と云う事で。<くれは×柊の婚礼
じゃあ晶の子供の父親が柊で結婚式に妊娠がわかるという悪夢で。
柊の悪夢はどれも内容はシリアスのはずなのに何故かギャグ風にしかならないような気がするのは俺の知性が下がってるせいか?
なんだかんだ言って、柊は絶望しないもんだというイメージがついてるせいかも知れんが
大抵の酷い目は見てる上、克服済だからなあ
後、柊が遇ってない酷い目って言うと、
フェレットや柴犬に変身してしまったり(勿論口頭人語意思疎通不可)とかか?
オマイラ大事なことを忘れてる。
「柊蓮司にとっての悪夢」は「くれはが握っている秘密が暴露されること」以外に
はたして存在するのだろうか、いや存在しない!
最近保管代理を行っていた者です。
諸事情の為しばらく作業が出来ませんでした。
心配してくださった方々、どうもお騒がせしました。
ご心配なく、前スレは一応手元に保存してありますのですぐに追加いたします。
実際どのへんまで保管してたっけ?
464 :
462:2008/02/26(火) 20:17:00 ID:0XfaSgTN
只今保留分(3-273さん作のネギまネタ)を除いてSS・ハンドアウトなどは全て保管いたしました。
小ネタに関しては見落としがあるかもしれませんので、発見した場合は連絡していただけるとありがたいです。
一応前スレなどは保存してありますので連絡はレス番だけで結構です。
3-273さんの作品に関しては著者より以前小ネタとして扱って欲しいという希望がありましたが、小ネタとして扱うには文章量が多く(小ネタ頁を分割しなければ現状だと容量オーバーしてしまう)
また一応SSとしての条件を満たしていると判断していますので改めて扱いに関して確認したい為ご返事お願いします。
ネギまネタは今週中に作者の応答が無い場合は管理人さんとの相談の上、著者の判断関係無しに相談の結果の上保管させていただきます。
(どちらにしろ小ネタの頁は3−237さんの作品に関係なく近いうちに容量オーバーを迎えるので2ページ目を作ることになりそうですが)
追記:
追加し忘れていた「よるとでぃーぷぶらっど」を保管しました。
……さて、時間が無くてまだ読んでいなかったSSをのんびり読むとしよう。
前スレ関係じゃないから報告していいのかなぁとか躊躇いつつも一応報告
前々スレのリレー>702、ラストバトル前の王子介入成功のシーンが抜けてる
あと合わせ鏡のシンデレラって保管されてたっけ?
>462
実に乙。
>>465 実に乙です。
今はその体を休めることだけを考えてくださいねw
471 :
462:2008/02/26(火) 22:29:07 ID:0XfaSgTN
>>466 報告ありがとう御座います、早速702は保管いたしました。
合わせ鏡のシンデレラはまだ保管されていません、目下捜索中です、すみません。
そう言えば、リレーの登場人物に流鏑馬君とこいのぼり店長が抜けてます。
後、アバター・O-GAMIはさくら大戦の大神一郎ではないかと推測します。
乙華麗
柊にとっての悪夢かー
やたらと優しいアンゼロットとか、ペタペタ引っ付いてくるくれはとか
ブラックストマックなエリスとか?
>>432 そんなアンゼロットが出てきたら世界結界壊れるんじゃないか?
あと二つは大丈夫だろうけど。あとはグィードとピーな夢とか。
んなのが出たら死にかねんが。精神的に。他にはあかりんの
料理フルコースとか、無理やり幼稚園に通わされるとか。
そこらへんは流石に柊でもきついんじゃないか?
>>471 今見つけたけど、合わせ鏡のシンデレラ、一応保管はされてるみたいだ
ページ一覧にあったよ
476 :
474:2008/02/27(水) 00:18:22 ID:u8ZF9yny
ゴメン、寝ぼけてた、432じゃなくて
>>473だ。orz
柊の悪夢か。
……アンゼロットとの結婚とか。
真面目な話をすると、仲間を救えない事じゃないかね。
自分の力不足で仲間を犠牲にしてしまうのが、性格的に一番堪えるかと。
ネタな話をすれば、魔剣をなくして“使い”になる事だろうな。
>>478 だから、スルトのEDであんなにも安堵してたんだよな。
>477
なんという姉さん女房
くれはと結婚って、今の柊には悪夢と感じるだろうが
なんかどう考えても、あの二人は25くらいまでずるずると付き合って、
結局はお互いまんざらでもない表情で結婚するんだぜ。
アンゼロットやナイトメアに外堀埋められて…という印象が強いな。
>>481 いや、案外くれはがお見合いすることになったりするんだ
で、その相手が実はシナリオのボスだったりするわけだ
んで柊のエンディングフェイズ
くれは「あーあ、いいお話だったのに。責任とんなさいよ」
柊「あー、まあ、その、何だ。……そうだな。そうするか」
くれは「ふふ、アンタで我慢してあげるんだから、感謝なさい?」
柊「バーカ、そりゃこっちのセリフだっての」
こんな感じで
柊とくれはだとどう考えても某幻の虎ルート(3秒で終了)しか思いつかないのですがどうしよう。
どうもしなくていいか。
柊なら魔王とも結婚出来そうな気がする
>482
いいな、それ!
ごめんね結婚とかじゃなくてごめんねと言いつつ、投下します。
「…あれ?ここは…?」
上下左右どこまでも暗闇が続く空間に、リルカは立っていた。
「みんなは…?」
辺りを見回してみるが、誰もいない。
「確か、魔王の女の子があらわれて、いきなり眠くなって…!?」
思い悩むリルカに突然氷の槍が飛んでくる。
とっさにリルカは最も使い慣れたクレストグラフを取り出し、発動させる。
「ハイフレイム!」
クレストグラフから生み出された炎が氷の槍を溶かし出す。だが…
「きゃあ!」
完全には相殺できない。溶け残ったわずかな氷の刃がリルカの腕を斬り裂く。
「駄目じゃない。教えたでしょう?攻撃呪紋での打ち消しには、魔力で負けた場合を考えて、傘での防御も併用しなさいって」
氷の槍が飛んできた方向から、声が掛けられる。それはリルカと同い年くらいの少女の声。
「その声、まさか…!?」
リルカは、思わず声のほうを見る。
そこに立っているのは、リルカにそっくりな、だがわずかに大人びた少女。リルカの想い出にある、そのままの姿をしたそれは…
「久し振りね。元気にしてた?リルカ」
「お姉ちゃん!?」
それは、ベアトリーチェの生み出した悪夢…
「何で…貴様がいるッ!?」
アシュレーは目の前に立つ、漆黒の騎士に恐怖する。それは、かつての自分自身。
嫌な汗が背中を伝う。無言のままナイトブレイザーは光で出来た剣を手にアシュレーに襲いかかった。
「なるほどな…確かに悪夢だ」
ブラッドは目の前に立つ男に構える。
ARMを持った、自分と比べれば線の細い、その男に。
「久し振りだな。ビリー…いや、今はお前がブラッド・エヴァンスだったか」
あの頃と変わらぬ、にこやかな笑みを浮かべながら、かつての親友が言った。
そして…
「てやあああああああああああああああ!」
気合いと共に魔王の攻撃をかいくぐり、晶は目の前のそれを切り裂く。
「ふはは。無駄だ無駄だ。いくらあがこうと、お前ひとりでは我は倒せぬ、倒せぬのだ!」
だが、魔王は再生を繰り返す。
「くっ…回復が、早すぎる!?」
そのスピードは晶の知る魔王のそれを、はるかに超えていた。
「ハイスパーク!」
「ふふふ、フィールド!」
リルカの雷撃の魔法に対し、姉は魔法の力を弱める結界を張る。
それでは相殺しきることはできず、姉は傷を負う。だが…
「ヒール!」
それすらも先読みしていた姉は傷を負うのとほぼ同時に回復の魔法を発動させる。
傷が瞬時にふさがる。そして…
「「ハイフレイム!」」
同時に放った呪紋は、リルカに大きな火傷を負わせる。
対する姉の方は先ほど展開した結界の効果でダメージを大きく軽減していた。
「くう…ハイヒール!」
とっさに高位の回復呪紋を展開し、傷をふさぐ。
「ヒール…レジストダウン」
その間に姉は自らの回復と共にリルカに魔法への防御力を弱める魔法を放つ。
「さあ、次は倒れずにいられるかしらね?」
姉はあくまでも余裕の笑みを崩さない。
記憶にある笑みを見せられて、リルカが長らく忘れていたそれを思い出す。
(駄目…やっぱり私じゃ、お姉ちゃんには勝てないよ…)
それはシェルジュ自治区史上最高の天才、エレニアックの魔女っ子として尊敬されていた姉への劣等感。
頭では分かっている。偽物だと。だが、心がついていかない。リルカの気持ちがどんどん沈んでいく。
「さあ、もうおしまいにしましょう?」
「う…いや…」
そして、リルカの気持ちが完全に折れそうになった、その時だった。
「騙されんな!目の前のそいつはただの悪趣味な偽もんだ!」
柊蓮司の声が、その世界に響いたのは。
「!?」
その言葉に、姉の顔が歪んだのを、リルカは見逃さなかった。
「そっか…そうだよね…」
力が、湧いてくる。姉が決して見せなかった、醜悪な表情。
そんな顔をする奴が、自分の尊敬する自慢の姉のはずが、初代エレニアックの魔女っ子のはずがない!
「決着をつけるわ。次で、決める」
そう宣言し、リルカは一枚のクレストグラフを取り出す。ゼーバー。無属性の攻撃呪紋である。
「忘れたの?純粋な魔力では、私の方が上よ」
姉もまた応じるように同じクレストグラフを取り出した。
柊の言葉と共にアシュレーの戦い方が、変わる。攻撃から、防御へ。
耐えるように攻撃を捨てて回避し、バイアネットで受け流す。
長時間の戦いに焦れたナイトブレイザーは漆黒から深紅へと変わる。
自身の最大最強の熱線、それで敵を焼き払うために。
柊の声に動揺し、生まれた敵の隙を、ブラッドは見逃さない。
走り寄って、重いボディーブロウを叩き込む。
「な…ビリー…お前は俺を殺すのか?名前を奪うために」
血を吐きながら、男はブラッドに問いかける。
「ヒイラギには感謝せんといかんな…」
その言葉をブラッドは無視する。人の記憶をもてあそぶ外道にかける言葉は無い。
柊の言葉に、晶は動きを止める。致命的な隙を魔王は見逃さない。
「ぐはははは、油断したな!」
魔王の攻撃がついにまともに晶をとらえる。晶は宙に跳ね飛ばされた。
そして、すべての戦いに決着がつく。
「「ゼーバー!」」
発動は同時。2人の呪紋がちょうど2人の中間地点でぶつかり合う。
純粋な魔力のぶつかり合いならば、より魔力の大きい方が勝つ。
姉の呪紋がリルカの呪紋を押し返す。
「だから言ったじゃない。私の方が魔力が上だって」
微笑みながら姉が言う。だが、努めて平静にリルカは答えた。
「聞いてなかったの?私は、これで終わりにするって言ったの。最後の必殺技がこの程度のはず、ないでしょうが!」
デュアルキャスト。リルカの最大の必殺技。体内の全魔力を使った、2つの呪紋の同時発動。
リルカは、解き放つ。用意していたもう1つの呪紋。2発目のゼーバーを。
ぶつかりあった2つのゼーバーは、融合し、膨れ上がる。
それは、無属性呪紋の多重発動で生まれる、リルカ最大の呪紋!
「アカシックうううううううリライタあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
それはもう一つのゼーバーを打ち消し、姉の姿をした偽物もろとも世界を白く染め上げた。
「自分自身のことだったんだ。知っているさ。それは、最後の必殺技。
使った後は、すべてが空っぽになる。その程度でも、あっさり倒れてしまうほどにな」
神速のバイアネットを叩き込まれ、倒れ伏した深紅の騎士を見下ろしながら、熱線を受けてボロボロになったアシュレーが呟いた。
「さらばだ」
リミッターを解除して放つ、ブラッドのARM。その威力は通常の3倍まで高められる!
かくして、大切な親友を騙る外道は、跡形も無く吹き飛んだ。
「ば、馬鹿な…」
魔王は茫然と呟く。自らの首から飛び出した、晶の魔剣に。
「回復が速いって言うのなら…」
吹き飛ばされることで魔王の上へと回った晶が呟く。
「一撃で仕留めればいいのよ。奇襲でもなんでも使ってね」
その言葉と共に、魔王は倒れ伏した。
「あれ!?」
リルカは我に帰り辺りを見る。
確かさっきまで暗闇の空間にいたはずだったのが、いつの間にかテレパスタワーに戻ってきている。
自分の体を調べてみるが、怪我どころか服にも傷一つ無い。
他の3人も同様らしく、不思議そうな顔をして辺りを見たり自分の体を調べたりしている。
「くっ…電気信号で構成された体に傷をつけるなんて、つくづく非常識な剣ね…」
少女、ベアトリーチェの悔しそうな声が上から響く。4人はそれに反応してそちらを見た。
ベアトリーチェは、感応石の上に立っていた。腕を抑えている。
よく見れば彼女の腕は切り裂かれ、断面から漆黒の闇がのぞいていた。
「ふん…ウィザードに、常識が通用すると思うなよ」
その傷を与えた男、柊蓮司は、ベアトリーチェを見上げながら、言う。
「…くす。流石は魔王に認められたイレギュラーってところかしら。いいわ。
今度は、私のお城の中でお相手をするわ。全力でね」
そう言い残し、ベアトリーチェは空間にとけるように消えた。
ベアトリーチェが消えるのを見届け、柊は魔剣を月衣にしまう。
そして、4人の方に向きなおり、言う。
「行こうぜ。俺は、あいつだきゃあ許せねえ」
「あ、ああ…そうだな」
その顔に宿るのは、まぎれもない怒り。アシュレーがそれに圧倒される。
(な、なんかお礼とか言いづらいなあ…あれ?アキラさん?)
お礼を言いあぐねたリルカは晶がじっと柊の方を見ているのに気づいた。
悲しそうな、タウンメリアで見た、あの表情と同じ表情で。
柊はそれに気づいてはいないようだった。全身から怒りを迸らせながらさっさと行ってしまう。
「…2度も、くれはを斬らせやがって…」
去り際、柊が白くなるほど拳を握りしめ呟いたその言葉に。
「柊くん…やっぱり」
晶だけが反応する。
(何だろう…アキラさん、悲しそう…まるで…)
柊を見る晶の姿は、まるで自分自身を見ているようだとリルカは感じていた。
今日は、ここまで。
悪夢の正体は「本人がもっとも戦いたくないものと戦わせられる」です。
まあ、たちの悪いドッペルゲンガーと思ってくれれば良いでしょう。
ちなみに晶は手元にあったガイアを元に、レジェンド(ストレンジャー相当)3/ソードマスター5/スカウト4で作ってます。
(スルトの剣にて晶の持ってた加護にトールが含まれていなかったことから、ファイターでは無いと判断しました)
ルール的には攻撃を食らってブレイク→《スピリットチャージ》からの《奇襲攻撃》+《限界突破》でダメージ増強、
さらに《逆転運命》を使用し、振り直しのクリティカルで《死点撃ち》を起動させて一撃必殺と言う流れです。
>>450 あの時代にキャロネードだのシップだのを量産する主人公が一番世界の常識を乱してる希ガスw
>>451 実は何気に本体だったり。向こうから物理的に干渉出来ない代わりにこっちからも干渉できなかったりします。
柊が珍しく主人公らしいな
これは間違いなく立場とか男が下がるフラグ
SSKと言い忘れた
それはともかくGJ
アガトラの人乙ー。
なんというかレイアースのエスクードを手に入れる時の話思い出したアル。
そういやWA2なのにさっぱり音沙汰がないなエッチなお姉さん。
まさかブレイザーが消滅して心残りなくなったから成仏してしまったのか?
なぜ出てこないのかと考えてたら、
アナスタシアと晶って魂が近いような気がしてきた
ハッ!?まさかこれは伏線なのか!
まぁ晶はまた本人の居ないとこで柊の嫁宣言してほしいところ。
またとか言うなw
>>494-495 ヒーローは遅れてやってくるもんなんだぜ?
…そもそもガーディアンに頼んで晶をファルガイアに呼んだのは「あれの使い手」だったりするんだぜ?
個人的には柊にはベル様か晶とくっついて欲しいな。
ベル様は個人的に大好きだし、からかうベル様とそれに反応する
柊とか結構いいなぁと思うし。晶のほうは個人的にも好きだけど
それより色物が多すぎる柊周辺の女性で比較的まともだし、
存在的に普通のウィザードだし。癒しになればなぁと思って。
>>497 一応ふぃあ通でやっちゃったからまたで良いじゃんw
>>498 という訳で楽しみにしてます!
>>491 ウィザードが常識に囚われてはいけません!
べつにいーじゃん。江戸時代の日本にバイクとかジャスタウェイとかあるくらいなんだし。
【それは別作品である上に、そもそもギャグ世界の産物である】
弄られるベル様しか思い浮かばねぇwwwww
ちわ!
待ってる人がいるか知りませんが、3話を10時から投下します。
>>501 飛鳥時代の日本には巨大ロボがあるしな。
風華学園高等部2-A教室。
朝の教室はどこの学校でも騒がしいものと相場が決まっている。もちろん、ここ風華学園でもそれは変わらずだ。
級友たちのざわめきを聞き流しながら、俺こと、楯祐一はぼーっと窓の外を眺めていた。
"媛星"の一件から約半年…無事に進級も果たし、俺は平和な青春を謳歌していた。
……いや「平和」ってのはいろいろと誇張がすぎるな、うん。
つい最近現れ始めた"エミュレイター"とやらを退治するため、再結成された対オーファン部隊改め、対エミュレイター部隊に駆り出されたり。
というか、それ以外にもいろいろ波乱を含んでいるわけで…。
「祐一っ。なーにぼーっとしてんの?」
隣の席に座っていた朱色の髪の少女が俺に声をかけた。
「ん、鴇羽か。ちょっと考えごとをな」
この娘がその波乱の半分を担う、鴇羽舞衣である。
「ふぅん…あっ、そうだ、今日うちのクラスに転校生が来るらしいわよ」
「転校生?」
「そ。ちらっと見かけた子の話じゃ、可愛い女の子だって」
なるほど、どおりでいつもの朝より教室が騒かったわけだ。
「女の子、ねぇ…」
「あー、今鼻の下伸ばした」
「なっ、そんなわけないだろ。冤罪だ、冤罪!…あ、おはよう玖我」
話題を変えようと、ちょうど席に着いた玖我なつきに挨拶した。
「む…話逸らした…」
「ああ……おはよう、奴隷クン」
最近「祐一」がデフォルトになった玖我が「奴隷クン」と呼ぶ時は、大抵の場合機嫌が悪い。すこぶる悪い。
触らぬ神に何とやら、ここはひとつ触れないでおこう。
「なつき、何かあったの?」
ちょ、鴇羽さん、そこで触れますか!?
「…ちょっとな」
(あれ、怒らない…)
素直に答えた玖我に俺は少し驚いた。この二人、油と水のような性格だけど、芯ではわかり合っているのかもしれない。
「…紗江子さんとケンカでもした?」
「いや、母さんとは上手くやっている」
「じゃあどうして…」
鴇羽がさらに追求しようとしたとき、ホームルーム開始を告げるチャイムが鳴った。
案の定、担任の斉藤朋子先生が見慣れない少女を引き連れて教室にやって来た。
白い帽子を抱え、薄紫の髪を飾るのは空色のリボン──ついでに可愛らしい微笑みも完備で、第一印象は「清純そうなお嬢さん」と言ったところか。
級友たち…特に男子の面々が騒がしい。先生がそれを咳払いで征して転校生を促す。
「志宝エリスです、どうぞよろしくお願いします」
黒板の前で一礼をする転校生、志宝エリス。
(ん?あの子どっかで……)
俺は彼女の声をどこかで聞いたことがあるような気がしていた。
「志宝さんは一年休学していたそうで皆さんよりも年上ですが、仲良くしてあげて下さいね」
(休学、ねぇ)
ふと、玖我の方に視線を向けると一瞬目を見開いた後、気まずそうに目を逸らすのが見えた。
「窓側が空いてるから志宝さんの席はそこね」
「はい」
てくてくと、俺から見て鴇羽を挟んだ向こう側の席に着く。鴇羽が小声で挨拶をする。
「鴇羽舞衣です、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
年下相手に敬語とは、ずいぶんと礼儀正しい人のようだ。
-+--+--+--+-
昼休み。
学生にとって、昼休みとはまさにサハラ砂漠にぽつんと存在するオアシスである。
とまあ、それは冗談としても昼飯時は戦争だ。
食堂で人気メニューを手に入れるため我先にと群がる者たちがいれば、テラスのいい席を確保しようと血眼になる者たちもいる。
で、俺はと言うと…、
「たまには一人になりたい時もあるよなー」
予め調達しといた菓子パンなどを手に校庭をぶらぶらと歩いていた。
鴇羽は今ではすっかり元気になった弟の巧海、こっちは高校生になっても相変わらずの美袋ミコト、未だに女子の服装になれないらしい尾久崎晶と昼飯を食べているだろう。
玖我の方もおそらく妹たちと一緒だ。
適当な芝生を見つけ、腰を下ろす。
ビニール袋にはあんパン、カレーパン、メロンパンにチョココロネ。
一番人気の焼きそばパンもゲットした。
「さて、食うか」
昼休みの時間は無限じゃないから、あんまりゆっくりとしてられない。
黙々とパンを口に運ぶ。
昼飯を一通り食べ終わり、緑茶を飲んでいると視線の端の光景になにやら違和感を感じた。
「ん…」
志宝エリスが赤毛の中等部生と楽しそうに昼食をとっていた。
赤毛の子は前に見かけたことがある。確か巧海と同じクラスの子だ。
「あのコたちが気になるの?」
「いや、そういうんじゃなくて…って」
振り向くと、中等部の制服を着た男子生徒が木の上でひらひらと手のひらを振っていた。
「こんにちは♪センパイ」
──俺はコイツに見え覚えがある。
「お前…炎凪?」
コイツの名前は炎凪、"媛星"のしもべ…のはずなんだけど何だか違和感がある。
しえん
「いや、色違いだな。誰だ?」
そう、色違いなんだ。
髪は白じゃないし、瞳だって血のような赤じゃない。
そして、それ以上に俺は何故か理由もなく炎凪とは違うと感じていた。
「色違いって…まあいいや。そうだなぁ…通りすがりの魔法使いB、とでも名乗っとこうかな」
…前言撤回、コイツめっちゃ怪しい。というかAはどうしたAは。
「…で、その通りすがりのまほーつかいさんが俺に何の用ですか」
「いや、センパイにこれと言った用はないよ」
「ないのかよっ!」
「あははは、ツッコミのキレがいいね」
この自称"魔法使い"、ある意味凪よりタチが悪いかも知れない。
「ところで…」
自称"魔法使い"が急に神妙な面持ちになった。俺は思わず身構える。
「授業もうすぐ始まりそうだよ?」
「え?」
確かに、周りを見渡せば未だ校庭に残っているのは俺独りだけ。つか、もうすぐチャイムが鳴る時間だし!
「そういうお前はどうなんだ…、アレ?」
俺が再度振り向いた時には既に、自称"魔法使い"の姿はそこからかき消えていた。
現れる時も唐突なら、去る時も唐突と来たか。
あながち魔法使いというのも間違いじゃないのかも知れない。
何だかいろいろ釈然としないが、今は授業に間に合うのが先決だ。
──ちなみに、やっぱり遅刻して先生に叱られたのは言うまでもない。
-+--+--+--+-
7月とは言え、時刻が六時を回ればもう日も暮れ始める時間帯だ。
剣道部の練習を終え男子寮に帰る道すがら、ばったり鴇羽と出会した。
「祐一、お疲れさま。部活の帰り…だよね」
「ああ、そう言う鴇羽はバイトの帰りか?」
「うん」
こう見えて、鴇羽舞衣はかなりの苦労人だったりする。心臓の弱い弟を抱え、姉弟ふたり、俺なんかには計り知れない苦難を味わっている事だろう。
「それで、巧海は?」
「先に寮に帰ったよ。行き違いだったな」
「そっか…じゃあ、これ渡しとく。よかったら二人で食べて」
と、言って鴇羽はお重の入ったトートバッグを取り出した。これには夕飯のおかずやらがびっしり詰まっている。
「いつも悪いな」
「い、いいのよ、ついでみたいなもんだし…」
「ありがとう」
「ちょっ…もう」
と、この様に他愛のない雑談を交わしながら寮へと向かう。
ふたりっきりで歩くシチュエーションもなかなか無いので、内心穏やかではなかったりする。
「あれ?あそこに居るの志宝さんじゃない?」
「お、ほんとだ」
庭園の前で佇んでいる志宝エリスを見つけた。
「志宝さん、こんばんは」
「あっ、舞衣さんに楯さん、こんばんは」
近付いてみると、どうやら庭園に咲いている白いバラを眺めていた事がわかる。
「花を眺めてたみたいだけど、バラが好きなの?」
「はい…白いバラは特別なんです」
「特別?」
鴇羽がそう問いかけた時だった。
──突如、世界が紅く染まる。
空には血の色をした不気味な満月──
「紅い月…」
地面に青白い魔法陣が現れ、炎の鬣を持つ奇怪な獣が這い出す。
その獣は獅子と山羊と蛇の頭を持ってる、如何にも神話なんかに出てきそうな怪物だった──
「エミュレイター!」
理事長から"エミュレイター"またの名を"侵魔"と呼ばれる存在が、如何なるモノかという話は聞いていたし、何より今までにも何度か退治してきたが、これ程の威圧感を感じる相手じゃなかった。
正直、オーファンだってこれほどのはそうそう居なかったような気がする。
さらに魔法陣が二つ、這いだしてくるのは同じ怪物。
三体のエミュレイターは鼻息荒く、獲物を値踏みするような目つきで俺たちを睨みつける。
「鴇羽、カグツチは?」
無言で頭を振る鴇羽。
理由あって、鴇羽の"チャイルド"カグツチは喚べない…というか、喚んだとしても戦力にならないだろうが。
「……祐一、志宝さんを連れて逃げて。あたしが囮になる」
鴇羽が自分の"エレメント"である天輪を生成して、俺たちと怪物の間に立ちはだかる。
「待て、それは…」
「……いいえ、逃げません」
「えっ?」
「志宝さん、今なんて?」
「私、逃げません」
志宝エリスは微笑んでそう言うと、右手を前にかざす。
「"ウィザーズワンド"──」
彼女の言葉と共に虚空から"ソレ"が現れた。
いや、目の前の光景は作り出されたという方がしっくりとする。
まるで"HiME"の高次物質化能力のような現象だ。
志宝エリスは杖のような形状の"ソレ"を掴むと、バトンの要領で器用に操る。
「だって、エミュレイターと戦う事が私たちウィザードの役目なんですから」
「君が、ウィザード…?」
呟いた俺に志宝エリスは頷き返すと、エミュレイターに向き直る。
「鴇羽さん、少しの間エミュレイターの攻撃を凌いでもらえませんか?」
「え、ええ。わかった、やってみる」
鴇羽が四肢の天輪を回転させ突撃する。
エミュレイターは迎撃とばかりに一斉に炎を吐き出した。紅蓮の奔流が一瞬にして鴇羽を包む。
「…っ!このぉっ!!」
が、しかし、天輪の発する炎が盾となってエミュレイターたちの吐き出した炎を塞き止めた。
赤黒い炎と、朱鷺色の炎、二種類の火炎が混じりあい、せめぎあう。
その熱波は、離れた場所にいる俺が肌が焼けるくらいに感じられるほどだ。
そんな中、志宝エリスはの指を優雅に泳がすと、虚空に光の線が描かれていく。
俺には計り知れないがそれは一種の文字列のようにも見えた。
一方、単体の出力で鴇羽の方が勝っているとしても所詮は三対一、徐々に鴇羽は圧され始め…遂に均衡は破られた。
「しまっ…」
「グオォォォッ!!」
先頭の怪物が巨大な腕を振りあげ、鴇羽に目掛けて叩きつけた。
辛うじて天輪で受けた鴇羽だったが衝撃を殺し切れず弾き飛ばされる。
「鴇羽ッ!!」
俺は咄嗟に、というかほとんど無意識に飛び出した。鴇羽と地面の間に身体をねじ込み、何とか庇う事に成功。
「っ…たた…」
背中を盛大に打ってしまったが、どうやら鴇羽の方は無事なようだ。
支援
「あ、ありがと…大丈夫?」
「ああ、何とか」
その時、志宝エリスの紡いだ"力"が完成した。
「──"リブレイド"っっ!!」
瞬間、眩い閃光が紅の世界に炸裂した──
激しい光の奔流がエミュレイターの群れを飲み込む。
膨れ上がる純白の閃光は臨界点に達するや否や、耳を劈く大音響と共に大爆発を引き起こした。
視界を覆う爆光と爆風──
それに襲われたエミュレイターは塵芥も残さずに消滅した。
その余波で大地は抉れ、校舎のガラスは次々と粉々に砕け散った。
「すごっ…」
鴇羽が驚愕の声を漏らす。
と、同時に世界は元の色を取り戻していた。
「ふう…」
この現象を引き起こした張本人が俺たちの方へ向いた。
「二人とも、お怪我はありませんか?」
彼女は初めて教室で出会った時と同じく、可愛らしい微笑みを湛えていた。
-+--+--+--+-
パチン──
仄暗い部屋に"遠見のコンパクト"が小気味いい音を響かせる。
この部屋の主、ベール=ゼファーが呟いた。
「…志宝エリス、予想以上にやるじゃない」
ベルは上機嫌だった。
わざわざエリスと戦わせるため、いつかと同じキマイラを用意させ、思惑通りに力を示してくれたのだから機嫌がよくもなる。
私怨
「楽しそうですね、ベル」
「あら、リオン。あんたも来たの?」
音もなく現れたのは"秘密侯爵"リオン=グンタ。
あらゆる秘密を記した書物を所持し、この世のすべての秘密を把握しているという魔王である。
「ええ…私も"HiME"には因縁がありますから」
「あぁ…あの後、緋室灯たちに邪魔されて逃げ帰ったんだっけ?"秘密侯爵"の名折れよね」
ベルの言いようにリオンは不満げだ。
「…あの場の因果は狂いに狂っていました。そんな状態では、例えアカーシャの書ですら意味をなさないでしょう」
リオンが普段より強めの語調で言い返す。ベルはそんな彼女の様子が面白いらしい。
「それ、ただの負け惜しみじゃない」
「む…ですから、あれは…」
何時になく、大人気ないリオン。よっぽど自分の書の内容が外れた事を気にしているのだろう。
「まあいいわ。で、あんたも今回のゲームに参加するってわけ?」
「……ええ、少し気になる事があるのです」
ベルは「ふーん、気になる事ねぇ」と言いながらも銀色の髪をいじる。
どうやらあまり興味が無いようだ。
「ま、あたしの邪魔さえしなきゃ別にいいわ。どうせまだ下準備の段階だし」
死宴
「わかっています。私も貴女の邪魔をするつもりはありませんよ」
リオンはそう言い残して姿を消す。
独り残されたベルは、新しい玩具について語るようにひとり言ちた。
「リオンがどんな策を巡らすのか知らないけど…、そろそろあの仕掛けを動かしてみようかな」
開いた"遠見のコンパクト"には女性の後ろ姿が写っている。
「…ふふっ、エリスちゃんはいったいどんなダンスを見せてくれるのかしら──」
──ベール=ゼファーの声が、紅い世界に妖しく響いた。
以上。
規制されて焦った。
やっぱ、携帯じゃダメかなぁ。
因果が狂ったどころ、特異点がリンボーダンスを踊ってたような祭りだったからなw
支援!
ほっかーん。
>>521 GJ!気づくのが遅くて支援できずすまない。
・・・・乙系のキャラはほとんど知らないからよくわからないなぁw
こんなクロスはいいんだろうか
と思いつつ、ハンドアウトを晒してみる。
【PC1】
キミは、プロ野球選手だ。
かつてはエージェントとして危ない橋を渡ったりもしたが、最近は野球一筋の生活を送っている。
本拠での三連戦を終え、疲れ果てて家路につこうとした時、キミは得体の知れない怪物に襲われた。
銃すらも効かないその怪物に追い込まれたキミの前に、一人の男が現れる。
剣の一撃で怪物を葬ったその男は、ついこの間ドラフト外で入団した、高卒の新人だった。
シナリオコネクション:柊蓮司
推奨クラス:忍者
【PC2】
いつものようにキミはアンゼロットに拉致された。
今回の任務は、とあるプロ野球チームへの潜入である。
なんでも、プロの野球選手として活躍しているエミュレイターがいるらしい。
球団に潜入するためには、プロ野球の選手になるのが一番だとアンゼロットは言う。
流石にルールぐらいは知っているが、キミは、本格的に野球などしたことがない。
任務を遂行するため、アンゼロットによる特訓が始まった。
シナリオコネクション:アンゼロット
推奨キャラクター:柊蓮司
【PC3】
キミは、とある組織に追われている身だ。
ある日、キミは食事をとるためカレー屋に立ち寄った。
たまたまテレビで中継されていたプロ野球の試合には、元同僚の恋人が出場していた。
何気なくその試合を見ていると、キミの隣に座った人がいた。
彼女が言うには、彼女の先輩も、キミの恋人と同じチームに所属しているのだという。
今度アイツに会ったときにでも聞いてみるか、などとキミは思った。
シナリオコネクション:志宝エリス
推奨クラス:忍者
【PC4】
傭兵であるキミに今回依頼を持ちこんできたのは、アンゼロットだった。
聞いてみれば、柊蓮司が、あるプロ野球チームに潜入捜査を行うのだという。
アンゼロットは、精神を操る術を持つキミに、彼のバックアップを依頼してきた。
柊蓮司とは知らない間柄ではないし、アンゼロットの提示してきた報酬も上々である。
断る理由はない。キミは依頼を引き受けた。
シナリオコネクション:柊蓮司
推奨キャラクター:鈴木太郎
人造人間とか人狼とかも出せそうだと思うんだけどどうだろう。
野球好きな魔王とかいれば即効書き始めるんだが…ううむ
いつもの代理保管人只今帰還……と思ったら新しい保管人が来てるのかな?
とりあえず双子の貴石の保管ありがとう御座いました。
>>472 補足ありがとう御座います。早速追記いたしました。
あとSS読み終わっての感想
>>ベホイミの人
最後まで楽しく読ませていただきました。GJです。
何気にコメントで触れている人はいないっぽいけどベッキーの成長物語になっていますね。
そして相変わらず片道一方通行なフラグを量産するなぁ、下がる男。
あと推定ですがよるとでぃーぷぶらっども面白かったです。
相変わらず苦労人の春日恭二頑張れ、ファイト。
>>武装錬金クロスの人
和月野ブヒ郎自重ww
それにしても3バカの順応力は異常だなぁ、あと斗貴子さんの巫女装束装着の際の周囲の連携も異常な気もする。つか六枡の知識量は本当に謎だなw
何はともあれ続きを楽しみにしてます。特にパピヨンとか(出るかどうかは知らないけど)
最後にあかりん弁当の前に散った岡倉に黙祷。……ところで何気に顔色一つ変えずにあかりん弁当を食べたのってカズキが初めてじゃないか?
>>アガートラムが多すぎるの人
これが某戦艦の知識の原点、ちい覚えた……やっぱり晶自重しろw
あとエリィ様は本当においしい所を持っていくキャラだなぁ。というかイメージぴったりかも、原作リプレイやシナリオとアニメにすら登場していないのにここまでイメージがはっきりしたキャラも珍しいんじゃないか?
これから後半戦に突入する感じですが頑張ってください。続きを楽しみにしています。
>>双子の貴石の人
いくら裏で暗躍してても消えないベル様のへっぽこ臭に乾杯w
というかリブレイドって聞くと別のきくたけ作品の習得魔法が八割方攻撃魔法な神官思い出した。
それにしても随分攻撃的なパーティだなぁ、まあ舞-HiMEに回復魔法の概念は無かったようなするから問題ないのか。
何はともあれGJ、これからも頑張ってください。
>>魔剣が折れたようですの人
GJ、そういや柊にフラグ立てたキャラって結構多いよな……
個人的にGJ掲載コミックのシェノンがでるかどうかが気になってます。
何はともあれ続き楽しみにしています。
あとARIAネタも挙がってたが灯里って攫われても攫った相手を素敵時空にとりこんでのほほんと平和そうにしてる光景しか思いつかねえw
>525
アゼルが実はトラキチとか。
>526
ここには保管庫管理人も常駐してるんだぜ?
ごめんあさい。いつもありがとう。
>525って何か特定の作品とのクロスなんだろうか
530 :
526:2008/02/28(木) 01:04:55 ID:6RJiGSaO
GJ掲載コミックじゃなくてGF掲載コミックだった
つかGJ掲載コミックって何だよ俺w
>>525 なにそのパワプロクンポケット?とか言いたくなるwww
>>525 カレー屋って部分がまた色々とわかってる人だなw
>>525 なあに、魔王なぞ適当に関係ありそうな悪魔の名前と外見を美少女風に変えればOKさボーイHAHAHAHAHAと爺ちゃんが言ってたよ。
じゃあ私も流れに乗ってハンドアウトをさらしてみよう
注意 とある作品のネタバレを含みます
現在、表の世界では戦争が行われている。
その戦争は国同士の戦争だが、実際は巨大企業同士の勢力戦争だ。
今は表の技術のみだが、いつ裏の技術が使われてもおかしくない状態だ。
ただそれだけでなくエミュレイターの力にまで手を伸ばそうとした。
しあわせってなんだっけ?
表への裏の侵食を止められるか!
Pc1
シナリオコネクション:Pc3
推奨クラス:異能力者
君は数年前までは唯の人間だった。
とある企業による人体実験により、超能力を得ることになった。
だがその企業からはPc2の手助けによって逃亡に成功する。
現在はその企業に対するレジスタンスの一員である。
君は幸せな日々を手に入れるため今日も戦い続けている。
情報屋から得た情報により仲間を得るためPc3に接触しようとしている。
Pc2
シナリオコネクション:Pc1
推奨クラス:人造人間もしくは改造人間
君はとある企業によって製造されたアンドロイドだ。
君はPc1の教育係であったが、Pc1と共に企業より逃亡した。
現在はレジスタンスの一員でPc1とコンビを組んでいる。
君は新たな仲間を得るためPc1と供にPc3に接触しようとしている。
Pc3
シナリオコネクション:彼氏
推奨クラス:人造人間もしくは勇者もしくは龍使い
君はヒーローである。
何故ヒーローかって?
一人の少年の願いによって生まれたからだ。
現在は一匹の猫を供に悪を倒している。
情報屋によると、今夜接触してくる人物が2組いるらしい。
Pc4
シナリオコネクション:アンゼロット
推奨キャラクター:柊 蓮司
君はいつものようにアンゼロットに拉致された。
どうやら今回の任務は勧誘任務のようだ。
指定された人物はどの人物の表の世界を追い出されたものばかりだ。
彼女たちの先行きを案じながら君は任務についた。
PC5
シナリオコネクション:妹
推奨クラス:龍使い
君は最強の情報屋だ。
君に勝てる人物はいないであろう。
君の情報網によると今日あたり君から情報を買った二組が目標に接触するようだ。
君は関係ないなと思いながら最愛の妹の待つ我が家に帰っていった。
>巨大企業同士の勢力戦争
アーマードコアかと思った。ForAnswer
で、ライバルチームはトニー君率いる高卒谷ワイルドアームズと。
ごめん忘れてくれ。
今調べてきたが、本当にパワポケシリーズは野球ゲームとは思えないなぁ。
ざっと見ても、超能力とかアンドロイドとか冒険者とか忍者とか、挙句の果てに秘密結社とか。
シナリオ間違えてないかこれw
>>531 エリィ=コルドンあたりは、普通に草野球の助っ人に入りそうだが。
部屋のネットがつながらないので、職場から投下します。
「…ようやく来たか」
テレポートジェムを使い、バスカーの村へとやってきた5人を、カノンがどこか疲れた顔で出迎える。
バスカーの村の入り口、そこには異常な数のモンスターの残骸が転がっていた。
「遅れてすまなかった。まさかここまで発生しているなんて…」
それを見たアシュレーが申し訳なさそうに言う。
だが、カノンは首を横に振って答えた。
「かまわん。これをやったのは私でもティムでも無いからな」
「…どういう事だ?」
ブラッドが首をかしげた。それにカノンが黙って村長の家の方にあごをしゃくって見せる。
「…まあ、見れば、分かる」
「と、言うわけで少年よ。我輩との契約に応じるか否か、はいかyesで返答してもらおう!」
「いえ、あの、その…」
「君には素晴らしい侵魔召還師の才能が眠っている。これはもう我輩と契約する運命にあると言うことだ」
「いえ、ですから先ほども言ったとおり僕はバスカーの神官で、もうガーディアンにお仕えしてる身なので…」
「そうかそうか。まあ無理もない。あの程度の雑魚を蹴散らした程度では我輩の実力を信用出来ぬと言うのも頷ける。
とはいえ、これ以上蹴散らしてはベアトリーチェ嬢にも悪いので、それは出来ないのだ。分かってくれ。
そうだ。代わりと言ってはなんだが我輩との契約の記念に対価をくれてやろう。
さあ、望みを言いたまえ。使い切れぬほどの財産か?永遠の命か?
…おおっと、この我輩自身と言うのは無しだぞ。君のような子供にはこの我が儘ボディは刺激的過ぎるからな」
(どうしようどうしようこのままだとティムくんがこのひとにとられちゃうそりゃあわたしとくらべたらスタイルもいいし
げんきでおとなでティムくんはむらのおんなのこにももてるしおにあいとかいわれたらわたしなんかじゃどうしようもないけど
それでもわたしはティムくんいがいとけけけけけっこんするなんてああいやそうじゃなくて…)
「だから、対価とかそう言うのでは無くて!」
「とはいえ君ぐらいの年ならば波にも反応するくらい若い欲望を持て余してしまっても仕方のないこと。
よし、特別にこのエリィ=コルドン自費出版写真集(特別定価5000v)をプレゼントしようではないか」
「いりません!」
「我輩の貴重な水着姿も載っていると言う代物だ。更に初回限定版には豪華特典のクロウ=セイルとの2ショット温泉入浴生写真もついてくる。
もちろんタオルや水着をつけるなんて無粋な真似はしていない。つまりだ、この教育的配慮から異常に色の濃いお湯の下には…」
「ああああの!てぃてぃてぃティムくんも困ってるのでへへへ変な誘惑するのはやめてくだしゃい!」
「おおそうだ。そちらの少女も我輩と契約してみないか?見たところまだまだ未熟のようだが磨けば光るものを感じるぞ」
「ええッ!?」
―――そこでは、3人の熱い交渉(ただしもっぱら喋っているのは1人だけ)が繰り広げられていた。
熱心な勧誘を受けているのは、バスカーの神官、ティムとその許嫁であるコレット。そしてそれをやっているのは…
「貴様ッ!?」
派手な格好と鎧がまぶしい、魔王エリィ=コルドン。
「うん?確か君はいつぞやの勇敢な若者ではないか。悪いが我輩は今忙しいのだ話なら後に…」
ガチャッ
「…ほほう。1度ならず2度までも我輩に銃を向けるとは、よほどの愚か者か、はたまた勇者かどちらなのだろうな?」
話を遮りアシュレーはARMをエリィに向ける。どのみちこうでもしないとマトモに話にならないのは、経験済みだ。
「…俺は、このファルガイアを守る。相手がどれだけ強大であってもだ、魔王」
「ふっ…覚悟の上と言うわけか。この世界の勇者も、なかなかにやる」
「さあ、剣を抜け。ここで、決着をつけてやる」
「…勇敢な若者よ。お前は言ったな。相手がどれだけ強大であっても、ファルガイアを守る、と」
「そうだ」
「ベアトリーチェ嬢はすでにこの世界を半ばまで掌握している。完全に乗っ取るのも時間の問題だろう。
そうだな、あと3日もすればこの世界の赤い月は永遠に不滅の存在となり、君たちも含めて誰も疑問を抱かなくなるだろう。
状況は、君たちに圧倒的に不利だ。それでも、君はベアトリーチェ嬢と戦うと言うのかね?」
「…言ったはずだ。相手がどれだけ強大であっても俺は、ファルガイアを守る!ただ、それだけだッ!」
「ふっ…そうか…」
強大なプラーナを発しながら、エリィは立ち上がる。
「…ティム、コレットを安全なところへ」
その異常な雰囲気に、状況を察したのか各々が戦闘の用意を行う。
ティムが震えるコレットを連れて出て行ったのを確認して、全員が身構える。
「ならば、致し方あるまい」
エリィは虚空より再び剣を取り出す。アガートラーム。この世界に伝わる、伝説の聖剣。
そしてエリィは剣を握りしめ…
「受け取るがよい!勇敢な若者よッ!」
…アシュレーへと放った。
「なッ!?」
アシュレーは思わず剣を受け取ってしまう。
何かの罠かと思いとっさに向きなおるが、エリィはその場に腕を組み立っているだけだった。
「何のつもりだッ!?」
「ふっ…我輩は魔騎士、エリィ=コルドンだぞ。常に弱者の味方をするのが我輩の、美学だ」
「そんなの…信用できるかッ!?」
「侮ってもらっては困るな。確かに我輩ら魔王は、人であろうと神であろうと同じ魔王であろうと平気で欺く。
だがな、ただ1つ、おのれの美学にだけは決して背かぬ。背いたのならば、それはもう魔王である資格がない。
それにだ、ベアトリーチェ嬢も我輩らの中に名を連ねようというのならば、この程度のハンデは乗り越えてしかるべきだ」
「そんな馬鹿な話があってたまるかッ!?」
「ふっ…強情だな。まあよい、確かにアガートラームはお返しした。これより先は当人同士で決着をつけるがよい。
双方の武運を祈ってやろう。ではアディオーーーーーーーーーーーーーーース!!!!」
ハーハッハッハッハッハッハッハッハッハ…
そして高笑いと共にエリィは何処かへと去った。そしてそこには茫然とした5人だけが残された。
「こいつは確かに俺の魔剣だ。だが、使い手は俺じゃないな」
アシュレーからアガートラームを受け取った柊はひとしきり剣を眺めた後に言う。
「え?ど〜ゆ〜ことレンジ?」
意味不明な言葉にリルカが柊に尋ねる。それに柊は簡単に説明する。
「おう。こいつは、確かに俺の魔剣と同じものだ。だが、今のこいつの主は俺じゃあねえ。全然手に馴染まねえしな。
魔剣使いと魔剣は一心同体。他の武器じゃあ、それこそ箒や伝説の武器クラスのもんでも魔剣使いの真価は引き出せねえ。
それと同じで、魔剣が選んだ使い手以外が魔剣を振っても、そこいらにある普通の剣と大して変わんねえ。
んで、俺の見る限り、こいつの今の主は…」
そう言いつつ、柊はアガートラームの柄をアシュレーに向ける。
「アシュレー、お前が持っててくれ。お前なら、こいつを使いこなせるはずだ」
「ちょっと待ってくれ。俺は剣はあまり得意じゃないんだ」
柊の発言にアシュレーはかぶりを振って言う。
「自警団時代に一応武器の扱いは一通り叩き込まれてはいるが、正式に隊員になった後はずっとバイアネットとARMで戦ってきたんだ。
今さら剣を使えと言われても、正直、困る」
「問題ねえよ」
アシュレーの懸念を柊は一言で切り捨てる。
「どういうことだ?」
「魔剣ってのは自分の意思を持った武器だ。必要になりゃあ使い方は魔剣が勝手に教えてくれる。
たとえ昨日まで剣を触ったことも無かった素人でも自分の魔剣ならば使いこなせる。魔剣使いってのは、そういうもんだ」
柊の発言に晶も頷く。
ウィザードとして覚醒する前は普通の女子高生だった晶はその言葉が真実であることは自らの体験から知っていた。
「それに、どのみちお前以外が持っててもこいつはただの剣にしかならねえ。魔剣は使い手がもっててこそだ。
こいつのためだと思って、持っててやってくれ。頼む」
魔剣の無い魔剣使いの辛さを知る柊は、同時に使い手のいない魔剣の辛さに思いをはせる。
それゆえに柊の頼みは真摯なものだった。
「…分かった。そこまで言うなら、アガートラームは俺が預かるよ」
柊の頼みに折れ、アシュレーはアガートラームを手にする。
それは確かに使い慣れたARMのように手に馴染んでいるようにアシュレーには感じられた。
用意してもらった両手剣用の鞘にアガートラームを納め、7人はバスカーの村の広場に立つ。
「そう言えばティム、準備がどうとか言ってたけど、どうするの?
あの子…ベアトリーチェがいる場所は大体想像がつくけど、あそこまで行くのは大変だよ?」
リルカがティムに尋ねる。
「はい。実はプーカに、ロンバルディアさんに連れて行ってくれるよう頼みに行ってもらってます。
プーカとはクアトリーで待ち合わせてます。ですからまずはクアトリーに行こうと思うんです」
「本来なら、何人かは村に残り、残りのメンバーでグラブ・ル・ガブルを調べにいく手筈だったが、
あの女がこの辺りのモンスターを根こそぎ倒してしまったからな。私たち全員で行っても問題ないだろう」
ティムの言葉にカノンが続いて言う。
「ところでブラッド…」
「なんだ?」
「まだ信じられぬのだが、本当にあんな女が魔王なのか?」
2人にも一応事情を説明したが、やはり納得はしていなかったらしい。
困惑した顔でカノンはブラッドに尋ねる。
「…同感だが、間違いないらしい。それにテレパスタワーで出会ったベアトリーチェと言う魔王も少女だったぞ」
「…そうか。異世界とは、奧が深いな」
「まったく同感だ」
今、ファルガイアはたった1人の少女の手で侵略されようとしている。
まるで冗談のようなその話に、微妙についていけてない大人2人だった。
今日は、ここまで。
>>501 そうだね蒸気で浮く空中戦艦とかあるしねw
引っかき回すだけ引っかき回して帰って行きやがったっ!?w
流石エリィ様!
そこに痺れる憧れる――ッ!
>>549 GJ!結局適当にひっちゃかめっちゃかにしたかっただけかエリィ様ー!w
>>549 エリィ様なにやってんですかーw
あと大人二人の意見はすげえ納得、つかロンギヌス呼んだころは本気で思った。
ともかくGJ。明日から一週間ちょっとの間、諸事情でこのスレにこれませんが続きを楽しみにしています。
早速保管庫に保管してまいります。
あと、なんとなく思いついたネタ。
PC1
君はつい最近夢使いの中でも他人の夢の中での活動を専門とする夢魔導師と呼ばれるウィザードに覚醒した。
最近は小学校のころからの友人で夢魔導師として活動する友人から夢能力の使い方を学びつつ暮らしている。
だがある日の夜、不意に夢世界の中でかつて対峙した良識の魔物のような化け物に襲われる。使い慣れない
夢能力に振り回されて危機に陥っていた君を救ったのは奇妙な格好をした一人の男性だった。
・シナリオコネクション:PC3
・推奨クラス:夢使い
PC2
君は夢魔導師を統括する国際夢魔導師協会の日本支部長を父に持ち、自身も夢魔導師として活動するウィザードである。
最近は友人が夢魔導師として覚醒し、彼女にその能力を教授しながら今まで通り友人との一時を楽しんでいる。
だがある日の夕食の席で、父から彼女の身の回りに注意するように呼びかけられた。
何でも最近彼女を狙って暗躍するエミュレーターが居るらしい。
君は大切な友人をエミュレーターから守ることを決意した。
・シナリオコネクション:PC1
・推奨クラス:夢使い
PC3
君はフリーの傭兵として活動する凄腕のウィザードだ。
ある日、国際夢魔導師協会の日本支部長を務める君の古い友人から個人的に一つの依頼が舞い込んできた。
どうやら彼の娘の友人に非常に優秀な才能を持つ少女がおり、その才能を狙って暗躍するエミュレーターがいるらしい。
だがとある事情から少女のことは協会に伝えておらず、事態に対応できるのが彼の妻と子供達だけなのだという。
そこで友人でもあり優秀なウィザードである君に少女の監視をしつつ、事態に対処して欲しいとの事とだった。
・シナリオコネクション:パトリック・マクファーガス
・推奨キャラクター:鈴木太郎
PC4
君は国際夢魔導師協会の日本支部長を父に持ち、自身も夢魔導師として活動するウィザードである。
だがある夜、父は姉の友人で背丈が自分とあまり変わらない少女がエミュレーターに狙われており、彼女の
身の回りに気をつけなければいけないとの事だった。
このままではまた寝不足で身長が伸びないではないか、そう考えた君は君の身長の大敵である
エミュレーターを一刻も早く発見して始末しなければと決意を固めるのだった。
そんな事があった次の日だった、君のクラスに一人の転校生がやってきたのは……
・シナリオコネクション:PC5
・推奨クラス:夢使い
PC5
君は数々の世界の危機を潜り抜けてきたベテランの魔剣使いである。
今日もいつものように世界の守護者たるアンゼロットに拉t……呼び出されていた。
何でも最近厄介なタイプのエミュレーターが一人のウィザードとして覚醒したばかりの少女を狙って暗躍しているらしい。
そこでアンゼロットは君にその少女が通う地域に潜入し、件のエミュレーターに対処するよう依頼してきた。
そして笑顔のアンゼロットは、下がるお茶と書かれた一つの壷と市立末野中学校の制服等一式を取り出したのだった。
・シナリオコネクション:アンゼロット
・推奨キャラクター:柊蓮司
エリィ様に熱心な勧誘してもらえるティムてらうらやましすw
誰か地下にコレットと三人で以下略
>545-549
GJ! 俺、エリィ樣が公式の方で活躍した所なんて見たこと無いのに、これぞエリィ樣だと思ってしまうw 不思議だ!
>553
一巻は読んで面白かったけど、主人公視点の少女ちっくな文章にハズくなって買わなくなったなぁ>どりぃむ・まいすたぁ
また読んでみるかな?
556 :
553:2008/02/29(金) 21:04:07 ID:eHwKKQ6P
ちわ〜。
PS2版のプレイ開始前に四話を投稿しとこうと思います。
規制が怖いのでとりあえず半分ww
──正午──
エリスは校舎の最上階、屋上へと出る扉の前に立っていた。
昼時の所為か、階下からは生徒の喧騒が漏れ聞こえる。
彼女がこんなところを訪れたのにはちゃんと理由がある。
エリスは昨夜キマイラと戦った後、二人と共に理事長宅に向かった。
その場で説明してもよかったが、二人以外の"HiME"にも逐一説明するのは非効率だし、何より"相棒"に相談をしないのは失礼だとエリスは考えたからだった。
そこで現在学園にいる"HiME"の関係者一同を集め、事の次第を説明した。
ちなみに、那岐を見た祐一となつきの反応が見事にシンクロしていたことだとか、エリスが持ち込んだマドレーヌでミコトを餌付け…もとい打ち解けたとか、いろいろと一悶着あったがここは割愛しておこう。
ともかく、顔見せも無事…とは言い難いが終わった。
あとは本格的に調査を始めるだけである。
エリスがここにやって来たのは、その調査の打ち合わせをするためだった。
ドアノブに手をかけ、エリスは扉を開けようと押し込んだ。
「…あれ?開かない?」
どうやら、この扉は立て付けが悪いらしい。
何度も扉を押してもギシギシと鈍い金属音を響かせるだけだ。
「うんしょっ!うんしょっ!」
エリスはムキになって押し込むが、やはり扉はウンともスンとも言わない。
力が足りないのか、体重をかけても扉はまったく開く気配を見せなかった。
「……どうしよう。あ、そうだ」
エリスは瞼を伏せ魔力を軽く練ると、一言「"ノック"」と呟いた。
エリスの紡いだ魔法によって扉が独りでに開く。
空は快晴、絵の具を垂らしたような青空が広がっていた。
「火渡くん?」
「おっ、エリスちゃんこんにちはー、今日もカワイイね」
那岐は屋上の手すりに腰掛けて、手をひらひらと振っていた。
相変わらず、片手には本を持っている。
「えっ!?そ、そんなこと…」
「あはは、エリスちゃんは純情だね」
「もう、からかって」
「ゴメンゴメン」
那岐はそう言うと、分厚いハードカバー本をぽんと閉じる。
本の表紙には「トロイ」と記されていた。
「……火渡くん、本が好きなの?」
「うん、まあね。書物は人間が生み出した素晴らしい文化だよ」
「?? そ、そうね…あ、お昼食べた?よかったらどうぞ」
月衣から取り出した弁当箱には、色とりどりのおかずやおむすびが詰まっていた。
「うわ、美味しそ〜。ぜひともいただきたいです、はい」
空っぽの弁当箱を前にまったりとしている那岐にエリスが問いかけた。
「火渡くん、ちょっと不思議に思ってることがあるんだけど…」
「何?僕に答えられることなら」
「学園の周辺に現れているエミュレイターって、シェイプドライフばかりみたいでしょう?」
「らしいね」
「それってちょっと不自然なんじゃないかなって思う。いくら世界結界が弱ってても、やっぱりアモルファスの方がプラーナの消費や効率がいいだろうし…」
エリスの考察を聞き那岐は少し目を見張った。
そして、月衣よりノートパソコンらしきものを取り出して操作し始めた。
「それって…ピグマリオン?」
「そうだよ。今、真白ちゃんから貰っといた交戦記録を検証させてる……っと、出た出た」
モニターにはびっしりと詳細なデータが映し出された。
「確かに……これは異常かも知れない」
──交戦回数述べ342回。
そのすべてが、タイプ:シェイプドライフと思われるクリーチャーで埋め尽くされていた。
「地球産のもチラホラいるけど…う〜ん……」
那岐はそう小さく唸って何やら考えている。
「今まではおとり…?だとすると…」
「火渡くん?」
そして、不敵な笑みをエリスに返した。
「…エリスちゃん、案外いいところに目を付けたかも知れないよ」
-+--+--+--+-
放課後、エリスは那岐と共に校内を探し回っていた。
目的はただ一つ、"タイプ:アモルファスに憑かれた人物がいないか探す"こと。
雲を掴むような話だが、エミュレイターの目的がわからない今、エリスたちにできることと言えばこれくらいだった。
「びっくりしたなぁ。ここの生徒さんてみんな"HiME"のことに驚かないんだね」
そう、全ての生徒は"HiME"のことを知っている。
というか、"HiME"同士の戦いが風物詩になってたりする。
ついさっきも舞衣となつきが、激しい火花を散らしてスケールのデカい痴話喧嘩を繰り広げていたし。
魔法を秘匿し、常識を護る者であるところのエリスには到底信じられない話だが、そういうことになっているのである。
「ああ、それはね、この風華学園…てか、"封架の地"の特殊性が関係してくるんだよ」
「特殊性?」
「そ。もともとここは古代神"媛星"を封じる為にできた土地でね。封じる際に、裁定者がこの場所に『"HiME"と"オーファン"は実在するという常識』を規定したんだよ」
「…えと、つまり世界結界自体に最初から組み込まれてるってこと?」
「そーそー。さっすがエリスちゃん、物わかりが早いね〜。ちなみに世界各地にこういう場所があったりするらしいよ」
つまり、この"封架の地"にいる限りイノセントだろうが何だろうが、"HiME"関係の事柄では精神崩壊しない。
逆説的にウィザードとエミュレイターに関してはやはりアウトなのだ。
ちなみにこの法則による補正は範囲外に出ると機能しない。
そのため、ごく一部の例外を除いて記憶が違和感なく修正される。
「でも、どうしてそんなことを?」
「たぶん、いつか目覚める"媛星"との戦いを進めやすくするためじゃないかなぁ」
「そっか…。それにしても火渡くんって、ずいぶん事情に詳しいね」
「ええっ?ま、まあね。あははは…」
「??」
そんなこんなでエミュレイターの痕跡を探し、二人はドーム型の建築物とやってきた。
水晶宮と呼ばれている場所だ。
天井は吹き抜け。
そして、三方は中央等、高等部、中等部のそれぞれの建物と繋がっており、残された一方が外へと繋がっている。
そんな立地ゆえ、下校時間ともなれば待ち合わせや雑談などで大勢の生徒たちで賑わい、情報収集にはもってこいの場所だった。
とそのとき、エリスの視界の端に、黒い長髪の少女が建物の外へと出ていくのが見えた。
青みがかった豪奢なロングドレスは学園の校舎で着るには違和感がありすぎる。
だが、周囲の生徒たちはその異物を気にも留めていなかった。
まるで、"そんなもの最初からいなかった"かのように。
(今のって……)
エリスの思考は、目の前を特徴的な髪型の少女がものすごい勢いで横切ったことでかき消えた。
少女は通り過ぎた…かと思うと踵を返して戻ってくる。
「あれっ?エリスさんと那岐くんだー」
エリスのルームメイト、夢宮ありかだ。
そのありかに那岐が気さくに話しかけた。
「やあ、ありかちゃん。相変わらず元気いっぱいだね〜」
「二人とも知り合いなの?」
「はい!那岐くんとは同じクラスなんです」
「あと、舞衣ちゃんの弟くんも一緒かな」
「偶然だね〜」
「ですよね〜。あっ、偶然と言えば…」
エリスとありかは那岐そっちのけで雑談に花を咲かせていた。
「あれ?ちょっ、ふたりとも……ま、いいか」
女の子はみんなこんなものなのです。
「なんだか楽しそうな話をしているね」
「!!」
そんな三人の後ろから、黒い制服を着た男子生徒が声をかけた。
「あっ、黎人さんこんにちは〜」
「こんにちは、ありかさん」
「えっと…」
エリスが居心地悪そうにしていると、男子生徒は整った顔に人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた。
「ああ、ごめん、挨拶してなかったね。僕は三年の神崎黎人です、よろしくね」
「二年に転入した志宝エリスです」
「黎人さんは生徒会長さんなんですよ」
「生徒会長?」
「まあ、そういうことになってるよ。実際は何でも屋みたいなものだけれどね」
そういえば、なにやら周りから黄色い声援が聞こえていた。
なるほど、この見目麗しい生徒会長はやはり女生徒の覚えがいいらしい。
それから小一時間ほど神崎を交えて会話が、好青年風の見た目に違わぬ紳士的な態度だった。
「ん?ああ、そろそろ行かないと。じゃあまたね、ありかさん、エリスさん」
神崎黎人が去った後、いつの間にか姿を消していた那岐が現れ呟いた。
出遅れたが支援
「僕…あの人嫌いだな」
「えっ?」
「何でもない。さ、他のところも回ってみよう」
「う、うん」
それ以上、那岐が神崎黎人について言及することはなかった。
-+--+--+--+-
窓から射し込む陰り始めた茜色の光が、人気のない廊下を一層もの悲しいものとしている。
半日、エミュレイターの痕跡を探して歩き回ったが、成果は芳しいものではなかった。
「やっぱり、私の考え間違ってたのかな…」
空振り続きで落ち込み気味のエリスがポツリと呟いた。
前を歩く那岐が事も無げに、
「そんなことないと思うけどなぁ」
と言って、校内図に調査済みのばつ印を付けた。
「ここからは手分けして探そう。エリスちゃんは保健の陽子センセーに、おかしな症状を訴えた生徒がいないか聴いてきて。僕はもう少し校内を回ってみるから」
エリスはうつむいて何も答えない。
「どしたの?」
「……こんなことしててほんとにいいのかなぁって思って」
那岐がにやりと笑う。
まるでいたずらを思いついた子供のように。
支援
「そうだねぇ、柊蓮司や緋室灯っていう花形ウィザードの活躍に比べれば、こーいうのは地味な仕事かもね」
「あっ、そ、そういう意味じゃなくて…」
「僕たちはできることをやるだけ、違う?」
「……うん」
「じゃ、保健室の方は任せたから」
那岐はてくてくと遠ざかっていった。
-+--+--+--+-
「そういう症状の子は来てないわ」
保健室。
自らも"HiME"である鷺沢陽子が名簿らしき物を見ながら答えた。
「そうですか…」
「ごめんなさいね、力になれなくて」
「いえ…ありがとうございました」
エリスはそう礼を言った後、引き戸に手をかけて保健室を辞した。
エリスが廊下に出たところで、ばったり担任の斉藤朋子に出会った。
気さくで年が近いからか男女ともになかなか人気のある教師だ。
エリスもまだ二日しかたっていないが、クラス担任だけあってそれなりにお世話になっている。
「あっ、志宝さん、ちょうどよかったわ」
「先生?どうしたんですか?」
「ちょっとあなたに話があって探していたの。一緒に来てくれる?」
「あ、はい」
エリスは誘われるまま、屋上へと足を踏み入れた。
すっかり太陽も沈みきり、辺りは夜の闇に包まれている。
紫煙(* ゚∀゚)y~~~~
支援:《裏界の温泉》
うっ、やりすぎた。
まあ、結果的にキリがいいんでとりあえずこれまで今日はこれまで。
支援遅くてスマンかった。乙でー
ただ、最近流れが遅めだから、
投下ペースも最初ゆるめにして、支援が飛び始めたらちょっと早くする、とかの方がいいんじゃないかな。
7連投とかになってると、気付いたこっちも怖いし、ちと心苦しいし。
では、6時からゆっくりめに投下。
スレイハイム公国、クアトリー。
既に滅んだスレイハイムに残る唯一の街にしてギルドグラートへ向かうための駅の中継点として栄えている街である。
「…時間を考えると普通ですけど、なんだか変な気分ですね」
本来ならば既に深夜と言ってもいい時間のせいか、人通りは無い。
だが、あの赤い月を異常と感じている一行には常に空に輝く赤い月のせいで時間の感覚が今ひとつつかめていなかった。
夕方頃から赤い月の様子はまるで変わっていない。
「それで、ティム。プーカって奴は一体どんな奴なんだ?」
柊がティムに尋ねる。
「ええ。プーカと言うのは僕の友達で…ああ、ちょうど来たみたいです」
そう言うとティムは空を指さす。その指さした先に、1羽のコンドルが飛んでいるのが見えた。
コンドルはティムたちの周りを何度か回ると、ゆっくりと下に降りてくる。
充分に降りたところでネズミのぬいぐるみのような本来の姿へと戻った。
「グッドタイミングなのダ。ティム。ちょうど全員そろっているようなのダ。
ガーディアンが連れてきたと言う異邦人と…そっちの不幸そうな男は誰なのダ?」
「不幸そう言うな!」
「そんなこと言っちゃ駄目だよプーカ。そちらはヒイラギレンジさん。ファルガイアを救うために来てくれた人だよ。
そしてこちらがナナセアキラさん。ガーディアンの導きでファルガイアに訪れた人だ。2人とも凄く強い剣士だよ」
「なるほど。大体分かったのダ」
「それで、ロンバルディアさんの事なのだけれど…」
「ああ、あいつは昼前にはこちらにつくそうなのダ」
「昼前っつってもこの空じゃあさっぱり分からんな」
柊が空を見て呟く。そこでブラッドが提案した。
「何にせよ、しばらく時間はあると言うことか…どうだろう?この辺りで一旦宿を取らないか?
休息をとるには良いタイミングだと思うのだが」
ブラッドの提案に全員が頷いた。
(…うう、トイレ…)
男女に別れ2つの部屋を取り、各々準備を終えて仮眠について3時間。リルカはふと目を覚ました。
しょぼしょぼとする目をこすりながら、外に出て、トイレへと向かう。
(ふぅー、すっきり…あれ?アキラさん?)
トイレを終え、部屋に戻ろうとしたところで、リルカはベランダから外を見るアキラを見つけた。
「あの…アキラさん?」
「へ!?…あ、リルカちゃん。どうしたの?」
「いえ、アキラさん、こんなところで何してるのかなって」
「…ああ、ほら、綺麗だなって思って、見てたの」
そう言うと晶は外を指さした。リルカもつられてそちらを見る。
「うわあ…すごおい…」
リルカも思わずため息を漏らした。
クアトリーの街の北に広がる、塩の原野。一面の純白が何処までも続くその場所を、赤い月の光が染め上げていた。
きらきらと赤い光を反射して輝く塩の粒と、赤い光を吸ってルビーのように輝く塩の柱。
「なんだか、夢みたい…」
「赤い月が作っているものだと思うとアレだけど、ね」
リルカの感想に晶が同意しながらも突っ込みを入れる。そして2人はお互いの顔を見合わせて、笑った。
こちらロンギヌス補給部隊、支援する
しばらく2人で無言で赤く染まった原野を眺める。
沈黙に耐えかねたのかリルカが口を開いた。
「…あの、アキラさんは」
「アキラでいいよ。その代わり、私もリルカって呼んでも良いかな?」
「…うん。いいよ」
「あんがと。それで、何?」
「うん…ねえ、アキラさ…アキラってさ、もしかして、レンジの事が好きなの?」
「…なんで、そう思うの?」
「う〜ん。なんて言うか、勘、かな」
「…あはは。やっぱり恋する乙女って鋭いなあ」
「へ?恋する乙女って…もしかして私!?」
「うん。相手は多分…アシュレーさんかな?」
「なななななんで!?」
本人にも気づかれていないはずの恋心をあっさり看破され、リルカは混乱する。
「ふふふ、恋する乙女は鋭いのだよ♪」
晶が冗談めかして、言った。そして、2人に沈黙が訪れる。
黙ってしまったリルカの顔が真っ赤だったのは、月の光のせいだけでは無かった。
「…リルカはさ、柊くんのことどう思う?」
沈黙する世界の中で、晶が唐突にリルカに尋ねる。
「…どうって、う〜ん。なんか間抜けだったり不幸そうだったりするけど、頼りになる、かな?」
「酷い言われようだね」
「そ、そんなのアキラが聞くから」
「でも、柊くんらしいや」
そう言って微笑む晶は、どこか寂しそうだった。
「…柊くんってさ、女の子の心とかにもんのすっっっっっっっっっっごく鈍感なのね」
「え?」
「でも、仲間とかすっごく大事にする人で、おまけに困ってる人がいたら見過ごせないお人好し。
だから、本人その気が無いのに仲間だから、困ってるからって普通に女の子に優しくしちゃうの。天然のジゴロだねありゃ」
「アキラも、なにげに酷いこと言ってない?」
「乙女の勘によればアンゼロットさんの言ってたエリスって子も多分そう。柊くん並みの扱いなんて、女の子には普通無理だもん」
「…」
「ま、私も人のこと言えないんだけどね」
そして晶は外を見ながら言う。
「…柊くんにはね、幼馴染みが1人いるの」
幼馴染み。その言葉にリルカの心が少し痛む。アシュレーとマリナも、幼馴染み同士だったから。
「いっつも喧嘩ばっかりして、顔を合わせると言いあいしてるような、そんな子。
だけどね、その子がピンチになったら柊くんは誰よりも速く駆けつけるんだよ。
この前なんて、攫われた幼馴染み助けるために異世界まで行っちゃうんだもん」
「異世界?」
「そう、ファルガイアでも、ミッドガルドでもない異世界。そこに、柊くんはたった1人で乗り込んでいったの。
幼馴染を助ける。ただ、それだけの理由で」
その声に宿るのは、思い人に対する誇らしさと…その幼馴染への嫉妬。
「異世界で何があったのかまでは知らないけど、魔王も絡んで大変だったってのは聞いてるんだ。実際そうだったと思う。
だって、ついこの前まで私と大して変わらなかったはずの柊くん、ものすっごく強くなってんだもん。
だから柊くんが帰ってきてすぐに、アンゼロットさんから任務を言い渡されたときには焦ったなあ。
足手まといになるわけにはいかないって、アンゼロットさんに頼んで特訓用のダンジョンで必死にLv上げて…
それで任務の直前に会ったら何故か柊くんのLvが下がってたのは笑い話だけど」
「それって笑い話なの!?」
笑いながら話す晶に思わずリルカは突っ込む。その突っ込みに、晶は今度は苦笑して答えた。
「う〜ん。柊くんだからねえ…でも、そうして挑んだ任務が、結局私と柊くんとの別れ。
私と柊くんの魔剣だけミッドガルドって言う異世界に飛ばされちゃってね…まだ、帰れないっぽい」
「え、じゃあレンジとはファルガイアで初めて再会したの?」
「そうだね。でも柊くんはファー・ジ・アースからで、私はミッドガルドから。この戦いが終わったら、またお別れかな?」
「そんな…なんとか、ならないの?レンジと一緒に帰るとか、レンジもミッドガルドに連れてくとか…」
出会ってすぐに別れが訪れる。それは、ARMSが発足するとほぼ同時にはじまり、解散とほぼ同時に終わったリルカの恋のようで…
リルカは、そのつらさを、目の前の少女に味あわせたくはなかった。
支援継続する
>>双子の貴石の人
支援できなくて済まぬ。
とりあえずGJ、続きを楽しみにしているので頑張ってください。
「…私が柊くんと一緒に帰ったら、ミッドガルドが滅んじゃうから。それにさ、柊くん、私に言いにくいことがあるみたい。
…私とブラッドさんの話を聞いて時空ってくらいだから時を操れるとか言ってたから、その辺かな?
多分、今の私と柊くんは生きてる時代が違う。それもものすっごく遠い」
「…そんなのって」
「柊くんなら、頼めばついてきてくれると思う。何とかなるさって言ってね。だから、頼めないんだけどね。仕方ないよ」
「仕方ないって…好きなんでしょ!?」
リルカは思わず叫んだ。仕方ない。諦めるようなその言葉が自分の心の声そのもののように思えて。
「…好きだから、だよ」
今にも泣きそうな顔のリルカを、晶は優しい表情でなでる。
その姉を思わせる優しい表情に、リルカは困惑した。
「ど、どうゆうこと?」
「好きな人だから、誰かを好きな人が不幸にするのはいやなの。
ここで私がわがまま言ったら、柊くん、沢山の人を悲しませちゃう。
柊くんは気にするなって言ってくれるだろうけど、きっと私自身がそんな私を許せない。
…だから、柊くんには、このこと、ないしょね」
「え?あ、う、うん」
念を押すように言って晶はあくび混じりに1つ伸びをする。その目に涙が輝いてたのをリルカは見逃さなかった。
でも、言わない。それが晶の決意だと、知ったから。
「さ、寝よ。明日はいよいよファルガイアの命運を賭けた最後の戦いだよ。寝不足で負けたなんて、笑えないからね」
「…そうだね。みんなで行けば、へいき、へっちゃらだよねアキラ!」
「よし、その意気だ!…それと私の話、聞いてくれてありがとね」
「ううん。私も、アキラの話を聞けて良かったって思うから」
「そっか。お姉さんの甘酸っぱい恋話は、参考になったかなリルカくん?」
「はい、とっても。ありがとう、先生!」
冗談めかした言い合いに2人は同時にぷっと吹き出して笑いあった。
支援、行きます!
決戦前夜に死にフラグってロマンだよねと言いつつ、今日は、ここまで。
エリィ様、キャラ立ちすぎだよねw
>>580 GJ、女性陣の死亡フラグが……
そういや昔死亡フラグ立てまくった人が公式に居たなぁ、最終的に生きてたけど。
とりあえず、私はしばらくこれなくなるので来週戻ってきたときに続きが読めるのを楽しみにしています。
その前に保管作業に行ってきます。
誰か今日朝8時以降から約一週間の間の補完作業お願いします。
早起き乙です
死亡フラグのバーゲンセールだ・・・
ところで、これを読んでワイルドアームズ買おうかと思ったんだが、やっぱり1から買わないとわからないかな?
>>582 世界観はつながってないから大丈夫だよ。強いて言うなら3がちょっと1に似た歴史を持ってるだけで。
ありがとう、ゲームNWと一緒に買ってくるよ
乙です乙DEATH
そういえば、晶は普通のウィザードにしてはレベル高かったんですよねぇ…
こう解釈されると、確かに説得力ありますね
アニメでのフラグ粉砕っぷりでは柊とくれはがくっつくのは遠そうですが、晶…
>>585 6Lvって下がる前の柊のレベルと同じだしね。
でも、覚醒したらいきなり10レベルなんてのもいたりするのがNWだw
残りを投下。
アドバイスを守って支援待ちつつ目一杯ゆったりといきたいと思います。
支援
「あの…先生?お話っていったい」
手すりの手前で立ち止まり、振り返る斉藤。
彼女の発した言葉でエリスの思考が凍り付いた。
「志宝さん、いいえ…シャイマール様」
「えっ?」
──斉藤朋子の背後には紅い月が煌々と、煌々と、その滴る血のように禍々しい姿を晒していた──
「せ、んせい…?」
エリスが"担任だと思っていた"人物の手が彼女のか細い首に延びる。
「あう…うぐ…っ」
キリキリと人間とは思えない力で首が締め付けられる。
「私と一緒に裏界へ行きましょう?裏界はあなたの国なのですから」
肺が、脳が酸素を欲し、エリスの思考を刈り取っていく。
「ち、が……ひいら、ぎ…せ…ん…」
──ついにエリスの意識は途切れ、昏い昏い闇の底に堕ちていく。
深淵に映るのは、心の内で密かに想う人か、それとも永久に別れた父とも呼べる人か──
「エリスちゃん!!」
その声がエリスを深い闇から引き戻した。
発砲音が三発、エリスの視界を横切る。
乱入者の姿を確認した"憑かれしもの"は、エリスを乱入者に向けて振り投げた。
慌てて受け止める那岐。
「っと……大丈夫?ケガは?」
「ごほっ、げほっ!……だ、大丈夫…。それより、先生が」
支援?
斉藤朋子……いや、"憑かれしもの"は、もう人の形を取る必要もないと判断したのか四肢を鋭い刃物に、表皮を甲殻に、頭髪を針の筵へと変えた。
「なるほどね」
那岐はいっさいの躊躇いなくも引き金を引き、弾丸を撃ちはなつ。
しかし弾丸は"憑かれしもの"の刃で両断された。
「やっぱり、エリスちゃんは間違ってなかったわけだ」
「志宝さン。一緒ニ裏界、ヘ行キマしョウ…?」
「先生……っ」
「エリスちゃん、何を言っても無駄だよ!」
巨大な銃器が破裂音を響かせる。
"憑かれしもの"は驚くべき身のこなしで易々と那岐の攻撃を躱した。
「ウソっ!?」
目標を失った弾丸がコンクリートの壁に当たり火花を散らした。
「邪魔、ダ」
針状の髪の毛が機関砲のように撃ち出される。
「きゃっ!」
「うわっと」
横っ飛びで避けた那岐は転がりながら何度も発砲する。
今度は見事に命中したが、堅牢な甲殻に弾かれ満足なダメージを与えることができない。
「ッ!?──エリスちゃん、援護をっ!」
「で、でも…」
エリスが躊躇っているうちに、"憑かれしもの"が那岐に向かって突進する。
──腕と同化した白刃が振りおろされる。
「!!」
エリスは思わず、両目を瞑った。
支援
「ぐっ……!!」
次に目を開いたとき、那岐は銃器の砲身を盾代わりにして、辛うじてだが刃を防いでいた。
金属と金属が火花を散らして凌ぎ合い、悲鳴を上げる。
防ぎきったと思われた瞬間、"憑かれしもの"が刃と化した脚で那岐の腹を蹴りあげた。
紅い線を引きながら、高々と吹っ飛ばされる那岐。
紅い世界に、紅い飛沫が散った。
「火渡くん…っ!」
エリスが駆け寄ると、那岐がよろよろと立ち上がる。
彼の周囲には防御魔装の魔術防壁が揺らめいていた。
「血が…」
「これくらい、かすり傷だよ…」
ワイシャツが紅く滲んでいる。
本人はかすり傷と言っているが、出血の量からかなりの深手だとわかる。
それでも、那岐は銃口を"憑かれしもの"へと向ける。
だが…、
「だ、ダメだよ火渡くん!」
その腕に組み付くエリス。
「エリスちゃん!?何を…」
「先生を助けないと、何か方法が」
「──そんなことしている間に、僕たちが殺されちゃうよ!!」
那岐はエリスの腕をふりほどき床を蹴る。
そして、"憑かれしもの"との距離を急激に詰めた。
「コれデ終わリダ」
髪の毛が寄り集まり、槍となって那岐を襲う。
「──行くよ…"日巫女"…」
支援
その言葉を受け、銃が形を変える。
那岐の全身をプラーナの淡い光が包み込み、それと同時に銃身が開く。
「──!!」
頬をかすって鮮血が飛ぶのにも構わずに、伸びた槍の隙間に飛び込む。
そして、那岐は銃口を"憑かれしもの"に押し付けた。
「──………ね」
かすかに何事かを呟いた瞬間──金色の閃光が爆発した。
閃光は一条の柱になって──
チリを燃やし、
大気を焼き、
紅い世界を斬り裂いた。
金色の光に包まれた"憑かれしもの"は微塵も残さず、消し飛ぶ。
それと共に月匣も消え去り、元の暗闇の世界が帰ってきた。
「はぁ…はぁ……」
肩で息をする那岐。
その顔は苦悶で満ちていた。
エリスが複雑な表情で歩み寄る。
「火渡くん…その、どうして……」
「どうして殺した、とか訊くつもり?」
那岐の台詞にエリスの表情が強ばる。
「…た、助けることができたかも知れないのに……」
「あれだけ完全に癒着してしまったらもう手遅れだよ」
「でも!」
「どうやったって助けられない命はあるんだ、ウィザードなら割り切ることだって必要だよ」
「──っ!」
エリスは胸の内に湧いた激情に任せて那岐の頬を叩いた。
支援
リアルタイム初遭遇支援
「あっ…その……」
「……足掻いても変えられないことがある…この世界にはね」
那岐はそれだけいうと翠緑色の風を巻き起こして姿を消す。
「私…わたし、は……」
残されたエリスは、行くあてもなく途方に暮れた迷子のようだった…。
-+--+--+--+-
屋上での戦いを観戦していたものがひとり。
給水塔の上に立ち、人気のなくなり静かになった屋上を眺める。
「…ベルも大人げのないことをしますね」
"秘密侯爵"リオン=グンタである。
彼女は手に持った書物を開いた。
そのページは何も書いていない空欄だった。
空白を白魚のような指でなぞりリオンは呟く。
「火渡那岐…あなたは何なのですか……?」
あらゆる秘密を記すリオンの書物をもってしても彼の秘密は読むことができない。
また、そういった人物が他にも複数いる。
これはリオンにとってゆゆしき事態であり、同時に興味深いことだ。
考えられる理由はひとつ。
彼女の力を遮る"何か"がここ、風華学園に存在からである。
因果がひとつ歪めばそれに連なって他の因果が歪むのは世の理。
「あなたが特異点なのか…それとも……」
黄色い月が寝静まった学園を見下ろしていた──
以上です。
展開がNWっぽくなかったり、エリスがちょっと違うような気がしますが、その辺はご容赦を。
遅レスですが、
>>524 舞乙キャラはありか以外いませんよ?
…いや、どうだろう、影響は多分に受けてるかもw
>>526 やはりきくたけ世界的にリブレイドは外せないかなと(にやり)
回復使いもちゃんといるんですよ?
ただ…「回復魔法なんて軟弱なものはいらん!」な血みどろバトル大好き人間なのでww
一応エリスが回復できる設定なので(調理とかヒールとか)、あとはハッタリで何とか。
支援してくださったみなさま、前回前々回いい忘れてしまった分も含め、まことにありがとうございました。
次からは短めにして前後編仕様にしときます。
投下ラッシュにまとめてオツ。
>>576 > それで任務の直前に会ったら何故か柊くんのLvが下がってたのは笑い話だけど」
> 「それって笑い話なの!?」
いかん、柊が下がることに慣れ過ぎた俺の感性は、この普通の感性が
新鮮すぎてフイタwwwwwwww
毎度どうも。
あんまりレス開いてないのにいいのかな? と思いつつ45分頃から投下します
おや、珍しく予告に遭遇した
まったり支援でよければ26時ごろまで可能だぜ
SSが投下されるなら支援をせざるを得ない。
日が沈み月が昇る。
陽光は世界から姿を消し、夜闇が世界を覆う。
色彩と音響を切り取った影絵のような街並みを、給水塔の上から少女はじっと見つめていた。
少女の持つ紅の瞳は、無貌の世界を鏡面のように映し出しその表情を窺うことはできない。
「……そこは私の特等席なんだがな」
無音の世界に沁み込むように響いた声に、緋室 灯は街から視線を落としてそちらを見やる。
同じ銀成学園高校の屋上、フェンスに身を預けて津村 斗貴子は灯と同じように街を見つめていた。
「……」
少しの間灯は斗貴子を見つめ、やがて軽く地を蹴って給水塔から飛び降りる。
一切の音を立てず羽のように静かに屋上に降り立って、彼女は斗貴子の隣に歩み寄った。
そして斗貴子と同じ目線で再び街に目をやり、特に感情を込めない様子で静かに口を開く。
「……乗らないの?」
「……。いや、いい」
別にそこに乗りたくて言った訳ではない。なんとなく声をかけてみただけだ。
だから斗貴子には、それ以上灯に提供する話題がなかった。
再び降り始めた沈黙を破ったのは、灯の方だった。
「服、着替えたの?」
「っ……それは言うな」
僅かに眉間に皺を寄せ、斗貴子は呻く。
斗貴子は現在ニュートンアップル学園の制服を纏っている。
当たり前だが学校の時間はとうに過ぎ、寄宿舎での服装は(比較的)自由ではあるのだが、
”こういう時”にはこの制服でいるのが一番都合がいいのだ。
もっとも、今灯が尋ね斗貴子が呻いたのはこの制服に関しての事ではない。
その直前まで着ていた衣装――昼休みに何が何だかわからないまま約束させられてしまった巫女装束――の事だ。
その時は休み時間の戯言だと思って……厳密には期待していたのだが、やはりというべきかそれはまひろ達に
よって履行する事になったのだ。
約束してしまった手前もはや断るわけにも行かず、斗貴子は寄宿舎に戻った後まひろ達と共に巫女衣装を着ることになった。
そこまではまだ許容できた。
昨年の末に着るハメになったサンタクロースのコスチュームに比べれば巫女装束などかなり真っ当な部類に入るからだ。
だが、見通しが甘かった。甘すぎた。
先述の衣装の時には冬休みという事もあって他の生徒に見られることは殆どなかったが、現在は三学期の真っ最中。
当然寄宿舎は生徒で溢れかえっている。
そんな中を斗貴子はまひろ達に引きずり回され、夕食が終わるまでその格好で衆目に晒してしまったのだ。
ひっきりなしに向けられる携帯のカメラを思い出して、斗貴子は大きく溜息をついた。
紫炎
当方、支援の準備アリ!
悠々来られよ!
「本職のくれははともかく……あとまひろ達もともかくとして、何故キミは平気なんだ?」
「輝明学園ではあまり珍しくないし、服装が変わっても別に」
「……東京の学校は計り知れないな」
「……萌え?」
「萌えとかいうな」
ボソリと呟く灯に、斗貴子は再び嘆息を漏らす。
斗貴子には灯が何を考えているのかわからない。
表情を全く見せないくせに珍妙な行動や台詞を吐き出すあたり全く理解不能だ。
「変わった奴だな、キミは」
「……そう?」
「一般常識からはかけ離れてると思うぞ」
「一般常識……そうかもしれない」
やはり灯は表情を変えずに言う。
いや――表情だけは全く変わらなかったが、
「――輝明学園に転入してから、余分な情報が増えすぎているから」
その声だけは、ほんの僅かに感情を帯びていた。
「……情報?」
「そう、余分な情報。無意味な会話、不必要の接触、無益な行動。学園生活や日常生活。
そういった諸々の、任務の遂行に不必要な知識と思考」
「―――」
斗貴子は僅かに目を見開いて灯を振り向く。
視線を合わせる事なくただ人形のように夜闇の街を見つめる少女を、斗貴子は言葉もなく凝視した。
初めて彼女と逢った時の事を思い出す。
紅い月を背負うようにして斗貴子を見下ろしていた灯。
そんな彼女を見て、斗貴子はまるで鏡を見ているような錯覚を覚えたのだ。
「……『絶滅社』って知ってる?」
「あ、ああ。確か世界規模で展開している傭兵斡旋企業……だったか」
「私はそこで『製造』された。この世界を侵すエミュレイターを駆逐するための兵器――強化人間(キリングドール)として。
ただそのためだけに生まれ、そのためだけに生きる。それが私に求められている唯一つの機能」
――この世界に潜むホムンクルスを駆逐するために。そのためだけに生きてきた。
無意味な会話、不必要の接触、無益な行動。学園生活や日常生活。
そういった諸々の、任務の遂行に不必要な思考を排除して。
「色々な場所を巡った。戦場に行った事もあるし、学生として潜入した事も多かった。
それでも私は、そういうモノでいられた。それで構わなかった」
様々な場所に赴き、ホムンクルスと戦ってきた。
学生として潜入した事も一度ではない。
だがそれでも、何も変わる事はなかった。
自分は戦士として生きてきたし、それで構わなかった。
「でも、それが変わってしまった。任務として輝明学園に潜入して、そして――」
それが、変わってしまった。任務としてこの街を訪れ、銀成学園に赴き、そして――
「『私』は、」
――『彼』と、出逢った。
静寂が戻った夜闇に、冬風が通り抜けた。
闇に溶けるような黒髪と、闇を焦がすような紅髪が静かに揺れる。
風の行く先を見るように視線を反らした灯に釣られて、斗貴子もそちらを見やる。
二人の少女の見つめる先にあるのは、静謐に沈んだ夜の街並。吸い込まれてしまいそうな夜空。置き去りにされたように白く浮かぶ月。
――少女が少年に出逢ったのも、こんな月の夜だった。
「……それで、いいんじゃないか?」
視線を動かさないまま、斗貴子は囁くように呟いた。
自分に向けられた視線を感じながら、彼女は言葉を継ぐ。
「多少……いや、かなりズレているとは思うが、そういったモノを得るのは良い事だと私は思う」
「でも私は――」
「兵器である前に、戦士である前に……私達は人間だ」
灯の言葉を遮って言いながら、斗貴子は自分の発言に僅かに驚きを感じていた。
一昔の自分であれば、絶対にそんな事は言わない。そんな事を考える事さえもしなかっただろう。
それがこんな台詞を吐き出すようになってしまったのは間違いなく――彼のせいで、彼のおかげだ。
知らず、斗貴子の唇は僅かに緩んでいた。
「私はここに来て、多くのかけがえのないモノを手に入れる事ができた。キミにとってその学園は、私にとってのこの場所なんだろうな」
振り向いて斗貴子は灯を見つめる。
ほんの少しだけ困惑の色を見せている灯の顔が、昔の自分と重なった。
「キミは多分、これからもっと変わっていくと思う。でもそれは決して悪い事ではない」
そんな自分に語りかけるように、斗貴子は声を紡ぐ。
灯はしばし沈黙し紅の視線を僅かに彷徨わせると、
「……。よくわからない」
「だろうな。私もよくわからなかった」
「貴方も?」
「ああ。だが安心していい、私でもわかったのだから……キミもきっとわかるようになる」
「……貴方がそういうなら」
「……その納得の仕方はちょっと失礼だぞ」
「そう?」
「そうだ」
真顔で小さく首を傾げている灯を見つめながら、斗貴子は苦笑を閃かせた。
灯はそんな彼女を紅の瞳でじっと凝視した後――彼女に応えるように、その顔に小さく微笑みを浮かべた。
※ ※ ※
ぶちまけるにはまだ早い支援
注:深い意味は無い
読みふけるのは後回しだ、支援砲撃を
人通りがまばらになった夜の街を、蓮司はカズキや剛太と共に歩いていた。
この街に潜むホムンクルスやエミュレイターを警戒して気を張っている――という訳ではない。
四六時中気を張っていた所で労力の無駄遣いであるし、何より周囲から訝しげに一瞥されるだけだからだ。
行方不明事件が蔓延しているとはいえ、街にはそれなりの人間が闊歩している。
どんな異常だろうと、それが自身の身に降りかからない限りはやはり他人事でしかないのだ。
「しかし、こんな風にしててエミュレイターっていうのは見つかるもんなのか?」
車道を挟んだ反対側の歩道を歩くカップルに何気なく目をやりながら剛太が声を漏らした。
「いや……実はあんまり意味がない」
「え、そうなの?」
「アモルファス……ヒトに取り憑く奴は普段は普通の人間と変わらないからな。本人でさえ自覚がない事も多い。
強いて意味があるとすりゃあ、近くで月匣が展開された時に早く駆けつけられるぐらいだ。奴等は月匣の中でしか顕現できないから」
もっともそれはアモルファスタイプのエミュレイターの場合で、自身の現身を持つシェイプドライフの場合はその限りではない。
普段無知と蔑まれる蓮司とて、そのくらいの知識はあるのだ。
それが十分に発揮できないのは、本人の意思とは別の何か抗い難い何かの力が作用しているに違いない。
軽く頭を振って蓮司は剛太に向かって逆に問いかけた。
「ホムンクルスは違うのか?」
「ああ。こっちはホムンクルス自体を探すってより、奴等のアジトを見つけるんだ。
街を捜索して奴等が拠点にしそうな所を絞り込む。後は虱潰しに……」
蓮司に向かって解説しながら、剛太はカズキが興味深そうに自分をみやっているのに気付いた。
彼は嘆息して軽く頭をかいてみせる。
「……そういや武藤はこの辺の事何にも知らないんだったな」
「うん。オレ、戦団とか何もしらなかったから。……そっか、だから斗貴子さんあの時も遅れたんだ」
一人何かを納得したようにカズキがうんうんと頷く。
それを半目で眺めやり、剛太は再び溜息をついた。
「……まあアジトとかその辺りは戦士長達が調査してるだろ。下っ端の俺達はこうして足で稼ぐしか……」
「蝶野なら何か知ってるかな」
「……蝶野?」
「パピヨン。蝶のマスクを被ってる奴」
「……あー、あいつか。何か最近噂されてる怪人とかいう」
「知ってるのか、蓮司?」
「見た事ならある。またナイトメアみたいな変なウィザードかと思ってたんだけどな」
「あいつみたいなウィザードがいるのかよ……」
「いる。色々といるんだよ、ウィザードにはな……」
冬でありながら首筋に汗をたらしつつ呻く剛太に、蓮司はしみじみと頷いて見せた。
特徴的な格好といえば夢使いが代表的だが、人狼族やら吸血鬼やらがいるウィザードの世界ではさして珍しくもない。
外見的な事だけではなく内面的な事も含めれば、常軌を逸している者達など両手両足の指で数え切れないほどに蓮司は知っている。
「でも、アイツ最近全然姿を見ないぞ?」
「そうだな、去年の末ぐらいまではワリと見かけたんだけど……」
カズキは虚空を見つめて首を捻り、何かを思いついたように二人を見た。
「あそこならいるかもしれない」
「あそこって、まさか」
「そう、あそこ」
思い切り眉を顰める剛太に、気にする風でもなく応えるカズキ。
この街の事を殆ど知らない蓮司としては、二人の反応を訝しげに見ていることしかできなかった。
しっえーーん!
蓮司の二文字だけだとなぜこんなに胸がざわめくのだ私怨
戦線は確保した!
随時、投下せよ!
「いらっしゃいませー」
三人が店の中に足を踏み入れると、店員の明るい声が響き渡った。
このファーストフード店――ロッテリやの第一人者とも言える店員の少女の姿は見えない。
(本人は望んでいないだろうが)この店に最も馴染んでいる彼女とはいえ、一日中店に入っている事は難しいのだろう、
現在カウンターで接客をしているのは別の店員だった。
「やっぱりいないか……」
「安直過ぎるぞ、武藤……」
店内を一望してからカズキは小さく呟き、その脇で剛太が肩を落として呻く。
変人バーガーと揶揄されたり特異点とまで噂されるこの店であるが、そうそういつもそういった類が集まるわけではないようだ。
「どうすんだ?」
「店に入って何もしないで出るってのもアレじゃないか? せっかくだから何か食べていこう」
「カズキ……お前、夕食滅茶苦茶食ってなかったか?」
「そうか?」
呆れた蓮司の声に軽く返し、カズキはカウンターに向かって歩き出す。
そこまで空腹ではなかったが別に反対する理由もなかったので、二人はカズキに続いてハンバーガーセットを購入すると、二階席に向かって歩き出した。
「二階は喫煙席だけど、結構眺めがいいんだぞ」
「今は夜だからあんまり関係ないけどな」
「へえ……」
気のないような台詞を返しながらも、内心では蓮司は心が躍っていた。
何しろここ一年近くアンゼロットによって二十四時間世界中を飛びまわされて彼はこういった普通の学生がするような事をほとんど経験していない。
ファーストフード店で食事をする――そんな何でもない事に蓮司は幸せを感じていた。
階段を上りながら蓮司はドリンクに刺されたストローを口に咥えた。
くれはが居れば行儀が悪いなどといわれそうだが、今は男同士だ。知った事ではない。
そして三人は二階席に辿り着き、
「む?」
「お?」
「どりぃ〜む?」
「ぶふぉっ!?」
蓮司は口に含んだジュースを盛大に吐き出した。
「ぐふ、がはっ……な、なんでアンタ等がここにいるっ!?」
咳き込みながら蓮司はテーブルを囲んでいた”三人”を食い入るように睨み付けた。
眼帯にマント姿のまま席に座っているナイトメアが苦笑を漏らしつつ口を開いた。
「我々とて神仙ではない。栄養補給のために食事を摂るのは当たり前だろう?」
「う、い、いや、それはいい! だが一緒にいるソイツはなんだ!?」
ハンバーガーセットの載ったトレイを片手で持ち直し、蓮司は震える手で三人目を指差す。
ナイトメアの向かいに座り、前面を大きくはだけた漆黒のスーツを纏った蝶々仮面の男――パピヨンは、
手にしていたポテトを齧りながら蓮司を無視すると、意にも介さず隣にいるカズキに目をやった。
チョコも食えない四円
「なんだ武藤、お前も来たのか」
「久し振りだな、蝶野。最近見なかったけど、何処行ってたんだ?」
「何、くだんのパピヨンパークがようやく軌道に乗ったんでな。ちょっと日本を出ていた」
「え、それって去年言ってた? あれ本気だったのか?」
「当たり前だ。俺はいつでも蝶本気だからな」
「おい、何事もなかったかのようにスルーすんなよ!?」
必死に叫ぶ蓮司にようやくパピヨンは視線を向けた。その存在に初めて気付いたかのようにパピヨンは眉を顰めると、
煩わしそうな視線を向けながらナイトメアに向かって声をかける。
「やかましい男だな。お前の知り合いか、ナイトメア?」
「ああ。今回の件で一緒に組んでいる仲間だ」
「は、こんな奴等の御守とはお前も大変だな……奥方を放っておいていいのか?」
「幸い経過は良好だ。順調に行けば二月の中旬、と言った所だな」
「そいつは蝶畳。無事に生まれたらお祝いに行かせてもらおう」
「頼む。アレも喜ぶだろう」
「待てぇええぇ!?」
「うるさいぞ、店内で騒ぐな柊 蓮司。他の客に迷惑だろう」
「なんで普通に仲良く談笑してんだよ!? しかも家族ぐるみの付き合いなのかよ!!」
一応正論であるナイトメアの言葉に応える余裕もなく、蓮司は行き先を失った指先を彷徨わせながら叫んだ。
「彼とはちょっとした縁で知り合ってな。経緯は面倒なので省く」
「ナイトメアとはともかく、花子婦人は中々に素晴らしいセンスを持ってたからな。少々懇意にさせてもらっている」
「なんだこの変態コミュニティ……」
絶句している蓮司の脇で、今にも逃げ出しそうな剛太が呻くように漏らした。
するとそれまで沈黙を保っていたブラボーがハットの奥から鋭い眼光を向けた。
「戦士・剛太」
「は、はいっ!?」
「……俺をこの二人と同類にしないでもらおうか」
「え……えぇ〜……?」
「その格好で言っても全く説得力がないな」
「まったくだ」
「俺の気持ちを代弁してもらってなんだが、お前等が言うな……っ」
「まあとにかく、二人とも早くこっち来いよ」
何時の間にか三人のテーブルに混ざったカズキが、階段付近に立ち尽くしている二人を手招きする。
蓮司と剛太の二人は互いに視線を交わしながら、
「……剛太、早く行けよ」
「やだよ、俺はノーマルなんだぞ……? お前が先行けよ、柊」
「俺だって嫌だ、あいつらに混ざるのなんてごめんこうむる」
肩を押し合って牽制するのだった。
しえねむ
兵站は軍事の基礎である、支援
視厭
変態コミュニティ支援
今回は以上です
女の子は真面目にやってんのに男共ときたら・・・
以前突っ込み不足と言いましたがそういえば剛太がいた
ボケが目立つが比較的常識人で突っ込みもやってるんです、彼は
カズキや斗貴子さんと一緒に戦った戦友なのに小説では二度ともハブられ、
ゲームでも風邪とか言われてハブられた悲運の男、中村 剛太をよろしくお願いします
ところで、ナイトメアの奥さんこと鈴木花子さんは会社員(で通してる)夫にあの衣装をチョイスする蝶ハイセンスなご婦人だったりするんですよ?
まあ、剛太だから仕方ないよな。
…そういう意味でも微妙に柊的?>ハブられる男
ブラボー。ああもう、あかりんが可愛いなチクショウめ。
ほら剛太って高速移動以外は派手さに欠けるし武器も地味系だしね。
オツ。
蝶畳がツボに来た。
乙。
良い具合に変態率が急上昇してるなぁw
剛太の攻撃は解説と図解がないと分かり難いしねぇ…
(小説などの文字描写だとクドくなり易い)
>>623 GJ!変態だ、変態ばっかだwwwwww
それはさておき。
既に人間らしさを知ってる斗貴子さんと、人間らしさってもんにとまどってるあかりんの対比がいいね。
やっぱ面白いわ。続き待ってますw
目標は1日1投下。と、言うわけで、12:30分からいくですよ?
「そういや、ロンバルディアってのは誰なんだ?」
相も変わらず赤い月が照らすクアトリーの街の入り口で柊がたずねる。
「ドラゴンだ。前にARMSに協力してもらったことがあってな。あいつがいなければグラブ・ル・ガブルへ行くのは難しいだろう」
柊の疑問にブラッドが答える。
「へえ…ドラゴンか。乗るのは初めてだな」
それを聞いて、柊はファンタジーRPGではお馴染みの姿を思い浮かべていた。
「あ、見て!あれがロンバルディアだよ!」
「へえ、どれどれ…ドラゴン?」
リルカの指差した方を見て、柊は首を傾げる。
そちらから飛んできたのは一機の巨大な飛行機だった。
戦闘機を思わせる流線形のフォルムだが、カラーリングは特撮映画にでも出てきそうな赤と白と青。
それは減速して墜落するようにまっすぐ柊たちに向って降りてくる。
地面に激突する寸前、それは飛行機からヒト型へと変形する。そして、合成音を思わせる声でしゃべった。
「久しいな。ARMSよ。我の力を借りたいとのことだが、思ったよりも大所帯だな」
「ああ。すまないが、グラブ・ル・ガブルまで行きたい。連れて行ってくれないか」
「よかろう。その位ならばお安い御用だ」
「う〜ん。ドラゴンって言うよりは変形ロボだな」
その姿を見て柊は率直な感想を洩らす。
爬虫類を思わせる顔や2枚の翼はドラゴンに見えなくもないが、変形機構と鎧を着込んだような姿はヒーローが乗り込むロボットを連想させた。
「え?ファルガイアではドラゴンって言ったらこれだよ?」
「いや、まあそうなんだろうけどよ…」
どこか納得のいかない柊であった。
「この先は我自ら案内しよう。皆は休んでくれてかまわんぞ」
「そうか…すまない。ロンバルディア、頼む」
ロンバルディアに乗り込み、つくまでの間は特にすることが無い。
各々はそれぞれ自らの装備の最終点検をしたり持ってきたアイテムの確認をして過ごす。
ARMと擬体と言う整備点検が必須である武器を扱う3人は各々の武器を点検する。
「ふう…俺のはOKみたいだ。2人はどうだ?」
「ああ、俺も点検はとうに終えている。時間があればカスタマイズも考えたが、今回はこれで行くしかないな」
「私の方も、問題無い。元々整備点検の不備が命にかかわる身体だからな。抜かりはない」
リルカが回復アイテムなのであろう食糧がパンパンに入ったバッグを持っているのを見て、晶がたずねる。
「あれ?回復アイテムとかはリルカが持つの?ブラッドさんやアシュレーさんが持った方がよくない?」
「え?ああ、いいの。ミスティック使えるの私だけだから」
「ミスティック?」
「うん。アイテムの真の力を引き出すって技。クレストソーサレスの必修なんだ。
アイテムの力を引き出せなくっちゃクレストグラフの力も引き出せないとかで」
「へえ、そんなのがあるんだ」
ロンバルディアに乗り込み、柊はグラブ・ル・ガブルについて尋ねる。
それに答えたのはティムとプーカだった。
「それで、グラブ・ル・ガブルとやらはどんなところなんだ?」
「はい。このファルガイアの地下に広がる。原初の青い泥のガーディアンが実体化したものです」
「泥?」
「そうなのダ。グラブ・ル・ガブルは原初の泥。世界の始まりのガーディアンなのダ」
「ふ〜ん。なんかすげえんだな」
「ですが、グラブ・ル・ガブル事態は自我を持っていないので、何かの意思に乗っ取られると大変なことになってしまうんです」
「そっか。となるとあいつ…ベアトリーチェはそこにいるってわけだな」
「はい。恐らくは…!?」
衝撃が襲い、ロンバルディアが揺れる。7人に緊張が走る。
「…ロンバルディア、何があった?」
アシュレーがロンバルディアに尋ねる。
「…砲撃を、受けた。2時の方向。かなりの威力だ。並大抵の代物では無いな」
「そうか…」
「悪いがアシュレーたちはここで降りてくれ。我はそいつを倒しに行く」
「分かった」
ロンバルディアが地面すれすれを飛び、7人はロンバルディアから飛び降りる。
全員が無事降りたのを確認したロンバルディアは砲撃のあった方へと飛び去った。
遠くで聞こえる砲撃音とロンバルディアの咆哮を聞きながら、ブラッドが言う。
「なるほど、ここはすでに敵の勢力圏と言うわけだな」
「ああ、どうやらここにベアトリーチェがいるのは間違いな…みんな、ここから離れろ!」
何かを察したアシュレーが叫ぶ。とっさにブラッドがティムを、アシュレーがリルカを抱えてそこから飛びすさる!
その一瞬のち
ゴガァアアアアアアアアア!
さっきまでアシュレーたちの立っていた地面から巨大なドリルが飛び出し、大地をえぐる。
キュイイイイイイイイイイ…
それと同時に甲高いモーター音を上げて別の1体が7人の前までローラーで移動してくる。
「おいおい…敵まで巨大ロボットかよ!」
敵は2体。1体はドリルと一つ目のついたドラム缶に足が生えたもの、もう1体は角の生えた人型ロボット。
「一筋縄でいきそうな相手じゃあねえな…って5人ともどうした!?」
柊と晶はすぐに魔剣を抜き、背中あわせに立って2体のロボットを警戒する。
それに対し唖然としてその2体を見ていた5人は柊の言葉にようやく我に帰って戦闘態勢を取る。
「…ここは私が足止めをする。お前たちは、先に行け!」
カノンが叫ぶ。
「大丈夫なのか?こいつらは…」
「倒すのはともかく足止めならば、な。だが、このデカブツ相手にはティムのコンバインが必要だ。
私と一緒に残ってくれ、ティム!」
「はい。分かりました!」
「了解なのダ!」
「…分かった、2人とも危ないと思ったらすぐに退却してくれ!死ぬなよ!」
そして、アシュレーたちはグラブ・ル・ガブルへと駈け出した。
それを阻もうとするロボット2体をカノンが牽制する。
2体は目標をカノンとティムの2人に変え、向きなおった。
「…なんでキュベレイとアースガルズが…?」
ロボットに有効な雷を司るヌァ・シャックスのミーディアムを取り出しながらティムがカノンに尋ねる。
「さあな。だが今確実なこと、それは戦わなければ死ぬと言うことだ!」
カノンが答えながらようやく温まってきた身体から様々な武器を展開する。
目の前の2体、かつての仲間の忠実なしもべであるゴーレムたちとの戦いに備えて。
支援するぜ!
背塔螺旋、グラブ・ル・ガブルまで続く唯一の道である、地下へと続く螺旋階段を5人は下りる。
「柊くん、そっち行ったよ!」
「おう!くらいやがれ!」
途中何度もモンスターが現れ、戦いとなるが、ぴったりと息のあったコンビネーションを見せる柊と晶が大型モンスターを瞬時に斬り伏せ、
「食らえ!マルチブラスト!リルカ、頼んだ!」
「任せて!ミスティック…ミニキャロット!いっけえブラッド!」
「トドメだ。ロックオンプラス、パルスクラスター!」
お互いのことを知り尽くしたARMSメンバー3人が雑魚をなぎ払うことで足止めすら出来ず撃破される。
「長えな。まだ続くのか?」
更に進み、塔内にいくつか存在する部屋の1つで、延々と続く螺旋階段に厭気がさした柊が3人に尋ねる。
「この部屋で最後だ。この奥に、グラブ・ル・ガブルがある」
ARMの弾丸を補充しながら、アシュレーが答える。
「そうか…よし、行こうぜ!」
その答えを聞いて元気が出た柊が立ち上がった、そのときだった。
「みんな!なにか、来る!」
晶が全員に警告を発する。それと同時に壁がぶち破って巨大な身体が飛び出した!
「ちっ…またロボットかよ!」
柊は剣を構えて言う。
飛び出してきたのは先ほど見た、角の生えたロボットにそっくりなロボット。
「一気に行くぜ…くらいやがれ!」
「ダメ!レンジ!」
速攻勝負とばかりに突っ込む柊の一撃。
カツーン
「ぬなッ!?」
それをロボットは両手からだしたバリアで防ぐ。バリアに阻まれ、柊の魔剣はロボットに傷1つつけられない。
ロボットはバリアを纏ったままその拳を柊に向けて放つ。バリアに触れた壁が削られていく。
「うおおおおおッ!?」
まともに食らったらやばい。経験と勘から柊は必死で回避を行う。
僅かにバリアに触れた髪の毛の先が文字通りの意味で『消滅』した。
「なんだありゃ!?かてぇってレベルじゃねえぞ!?」
咄嗟に距離を取りながら、柊は叫ぶ。
「あいつには強力なバリア機構がついてるんだ。普通に攻撃してもダメージは与えられない!」
「ええッ!?それじゃ倒しようがないじゃない!」
「大丈夫だ!あいつの手の甲に発生装置がついてる!あいつのバリアは1回攻撃を防ぐと次に攻撃を防げるようになるまでタイムラグがある。
そこを狙って攻撃をすれば…」
晶の疑問に答えながら、アシュレーが右の手の甲のバリア発生装置を撃つ。
ヒビが入ったところでブラッドが正確無比な射撃でだめ押しをして完全に破壊した。
「破壊することは可能だ」
その直後、左手の発生装置から再びバリアを発生させるロボット。
「となると、もう1個ぶっ壊すには…だれか1人がおとりになる必要があるってこと…か!?」
「そう言うことになる…な!」
ロボットから矢継ぎ早に繰り出されるミサイルをかわしながら柊とアシュレーが会話する。
「それなら、私がやるよ!」
「晶が?」
柊たちの会話を聞き、晶が言う。
「うん。今のメンバーの中じゃ一番身軽なの私だし、手を狙うのは銃の方がやりやすいでしょ?
それに私ならもし食らっても、大丈夫だから」
「食らっても大丈夫?どういうことだ?」
「ああ、それは…来た!みんな、行くよ!」
ロボットとて敵に十分な作戦タイムを与えるほど愚かでは無い。
その巨体で突撃してくる。
「いっけえ!」
まずは晶がスライディングで下をくぐりロボットの後ろに回り込んで一撃を加える。
ロボットはとっさに腰を回しバリアでその一撃を防ぐが、無理な体勢で防いだせいで直後の反撃が甘いものとなる。
それを余裕で回避して晶は叫ぶ。
「2人とも、後は頼みました!」
「任せろ!」
「了解した!」
バリアが消滅するタイミングを見計らってあらかじめ準備していた2人がほぼ同時にバリア発生装置を射撃する。
2発の弾丸が吸い込まれるようにロボットの拳にあたり、バリア装置は砕け散った。
「レンジ、これつけて!」
リルカが柊に鞄から取り出した何かを放る。とっさに受け取った柊はその指輪を適当な指にはめた。
それと同時に柊の体に電気が流れるような感覚が伝わり、魔剣が放電を始める。
「なるほど、便利なアイテムだ!ありがとよ、リルカ!」
意図を理解した柊が魔剣をもって突進する。
「くらいやがれー!!!!!!!!!!」
全力で生命力とプラーナを攻撃に叩き込み、柊はロボットのど真ん中に魔剣を突き刺す。
グガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ…
ロボットの弱点である雷の属性を帯びた攻撃は、ロボットを一撃で戦闘不能に追い込んだ。
戦いが終わり、5人は治療と次の、おそらく最後の戦いの準備を行う。
「やるじゃねえか。晶!」
「ふふん。これでも鍛えてるからね。今じゃレベルも12まで上がったよ」
「おお、道理で強ええはずだ。俺と同じレベルたあ恐れいったぜ!」
「まあ、魔王といっつも戦ってるからね。柊くんこそ、ウィザードでレベル12ってすごいじゃない!」
「おう、苦労してるからな。魔王と戦ったり魔王と戦ったり」
「あはは。それじゃ私と変わんないじゃない」
「ああ、それもそうだな…ん?3人ともどうした?」
強敵への勝利の達成感で高揚する魔剣使い2人と違い、ARMS3人の顔は対照的に暗い。
「そう言えば、皆さんあのロボットに詳しかったですけど、戦ったことがあったりするんですか?」
先ほどの戦いを思い出し、バリアのことや弱点の雷、それらを完全に把握していた3人に晶がたずねる。
3人は顔を見合せる。無言。沈黙が辺りを包む。
「なあ、ヒイラギよ…」
「なんだ?ブラッドのおっさん」
3人を代表してブラッドが柊に尋ねる。
「テレパスタワーで、お前と話していたアンゼロットと言う女の話は、信用できるものか?」
「あん?そうだな…まあ、普段はともかくまじめな声でしゃべる時のあいつが嘘をついたのは見た事ねえな。
けど、それがどうした?」
「うむ、あのアンゼロットと言う女が言っていたな?今回の敵は人間を取り込みそいつの望んだとおりに世界を変える、と」
「ああ、んなこと言ってたような…もしかしてそいつが誰なのか分かったのか!?」
「ああ。おそらく、だが」
ブラッドは残骸と化したロボットを見る。
ゴーレム。ファルガイアに残る、超文明の戦闘兵器。
ノーブルレッドが自らのために残した遺産であるそれを使役できるものは、このファルガイアには1人しかいない。
今日はここまで。
アースガルズと言えばバリアだよね!…2だと影が薄いけどw
乙〜。今回はどちらかと言うとタメの回ですね。
さて、囚われの彼女をどうやって救うか期待してます。
確かに2は影薄いけどマシだろ。4じゃバリアどころかゴーレムですらないしw
いつも乙であります!
ほっかーん!
●志宝エリスと双子の貴石 #05
●NIGHT WIZARD cross period #07
●アガートラムが多すぎる #10
一発ネタ。
ついかっとなってやった。反省はしている。
PC1
シナリオコネクション:PC4
推奨キャラクター:柊蓮司
キミはいつものようにアンゼロットに拉致されなかった。
だが、PC4が別人の様に変貌し、
PC5の横にいるはずの無い人間を見てしてしまう。
何が起こったのか調査するため、キミは自分から欠席するハメになった。
PC2
シナリオコネクション:情報統合思念体
推奨クラス:大いなる者
キミは、自分を唯の人間だと思っていた。
かつて大きな事件に巻き込まれた君は、大切な人を失い自分の力を知ることになった。
世界を作り直そうとすらしたが、現実を受け入れ、そのまま生きていく事を望んだ。。
その事件が再び起きようとしている事を知ったキミは、それを止める事を決意した。
PC3
シナリオコネクション:時空管理局
推奨クラス:魔術師
キミは、ごくごく普通の平凡な魔法少女だった。
かつて大きな事件に巻き込まれた君は、みんなで生きていく為に大勢を殺した。
その事件が再び起きようとしている事を知ったキミは、一人立ち向かう事を決意した。
自分だけが傷つけば、他に誰も犠牲になるものはいないのだから。
PC4
シナリオコネクション:BF団
推奨クラス:強化人間or聖職者
キミは、ごく普通の高校生だった。
かつて大きな事件に巻き込まれた君は、人間である事をやめ不死の力を手にした。
就職先の団体でエージェントとして訓練している君だが、
何かあったのではないかと、しつこく問い詰めてくるPC1に辟易している。
PC5
シナリオコネクション:オヤシロサマ
推奨クラス:魔剣使い
キミは、女装して女子校に通う平凡な女の子だった。
かつて大きな事件に巻き込まれた君は、親友を失い、妹ができた。おまけで、神様もついてきた。
相変わらず、女装して女子校に通っているキミは、友人の形見である剣が不思議な光を放っている事に気付く。
自分では使えないはずの魔剣がなぜ使えるようになったのか、キミは理由を突き止める事を決意した。
PC6
シナリオコネクション:PC4
推奨クラス:勇者
キミは、ごく普通の青年だった。
かつて大きな事件に巻き込まれた君は、男に襲われたり、女に男の様に襲われたりした。
平凡な日常に戻ったはずの君だが、異様な雰囲気を放つPC4を目撃する。
また何か起きようとしているのではないか、そう思った君は調査を開始した。
>>638 元ネタ全然分からないけど
女装する女の子って普通じゃないのかな
>>640 女装して女子校に通ってる"から"女の子なんだよ。
キミは、女装して女子校に通う平凡な「女の子」だった。
これなら納得
>>639 PC3誰だ?
管理局ってくらいだからアレだと思うけど、死んだ香具師なんか数えるほどしかいないが。
ハンドアウトネタはいいんだが、ネタが全部判るヤツばっかでもないんだし、
最後に何がモトネタが書くか、メ欄にでも仕込んで欲しいな。
柊以外わからねぇw
元ネタそのままじゃなくて、2次とか色々混じってそうな印象だが一体?
キャラがわからん。
NW…柊はいいとして
ハルヒ…ハルヒ
なのは…?
ジャイアントロボ…?
ひぐらし…?
最後はタイトルすら分からん
おいおいこれってパロロワじゃねえのか!
何て微妙なネタを。
荒れそうなのは自重しよう。
あと、PC6って誰だ?
あぁ、PC4とPC5の知ってるってそういう意味か。
どっちもしばらく見ないけど……。
なんかキャラスレでの柊のスルーっぷりにこんな歌が頭をよぎった
どこに書き込むか考えたがここに書き込んでみる
物心ついたころから ずっと一緒にいて
いつの間にか 好きになっていた
ふと気づいたら あいつの周りは美人ばかり
どうしてこんなことになったの?
素直になれない代わりに
遠まわしに思いを伝えようとするけど
何回やっても 何回やっても
柊気づいてくれないよ
あのニブチンどう考えてもおかしい
私だけじゃない 他の子の気持ちにも絶対気づいてない
頑張ってフラグ立てたけど 片っ端から砕かれる
だからいつか婿にするために
私あいつの秘密だけは握っとく
気がついたら いつもいつも守られてて
そして気になる人になっていた
彼の隣にはくれはさんがいるけど全然進展見られない
もしかしたら私にも チャンスがあるかなとか
思ってみたけど
料理作っても 裸見せても
柊先輩 振り向かない
もしかして何かを下げられているの?
どんなに頑張っても先輩の中じゃ 私はただの仲間止まり
『マドレーヌ作ってくれよ』なんて台詞も先輩にはその気ない
だからこの思い伝えるために
仲間として先輩の側にいる
…他のキャラは思いつかんかった。MAD、作ってみようかなあ…
>>639はパロロワ総合クロスって解釈でいいのかな?
それはそれとして、今更ながら
>>535って何のクロスだ? 誰か教えて欲しい。
ぱろろわ?
うん、パロロワ全体とのクロスです。
分かり難いネタですまんかった。
PC2=涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱 アニロワ
PC3=高町なのは@魔法少女リリカルなのは LSロワ
PC4=柊かがみ@らき☆すた アニロワ2nd
PC5=宮小路瑞穂@処女はお姉さまに恋してる ギャルゲロワ
PC6=【◆6/WWxs9O1s氏@現実 カオスロワ
現実って何だ!?w
>>654 PC6はそれかwww
そう言えばあれにもかがみは出てたっけ。
ここでふと、卓ゲバトルロワイヤルと言う妄言g
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) おっと、これ以上はスレ違いだぜ
. | (__人__)____
| ` ⌒/
>>656 \
. | /( ○) (○)\
. ヽ / ⌒(n_人__)⌒ \
ヽ |、 ( ヨ |
/ `ー─− 厂 /
| 、 _ __,,/, \ ドス
| /  ̄ i;;三三ラ´ |
| | | ・i;j: | |
!!!!!!!
パロロワか、道理で…
PC4…ビッグファイアか村雨さんかと思ったがにしては…
PC5…伽峨覚夜か?
みたいな感じで混乱した。
の者です。
いまさらですがクロス元はパワポケです。
しかしさらしといてなんですが、解る人がいるとは!
正確には
Pc1:10、Pc2:10、Pc3:7、Pc4:NW、Pc5:8
の登場人物です。
あと、パワプロクンポケットシリーズです。
実況パワフルプロ野球シリーズではありません。
二つはまったくの別物です。
また、ハンドアウトをさらします。
ここは地球とは違った銀河系
この世界は現在、連邦によって統治されている。
その統治も連邦という絶対正義の力による恐怖政治だ。
しかし、その連邦に対抗するために一人の男が立ち上がった。
Pc1
君はスペースキャプテンである。
君の父親は連邦の過失の事故により死亡してしまった。
君はそのこと思いながら今日、宇宙船を手に入れた。
任務であるワクチン集めは連邦の思惑を壊すことができるようだ。
任務を了承し君は宇宙へと旅立った。
シナリオコネクション:大村長官
推奨クラス:勇者叉は転生者
Pc2
君は連邦によって作られた最強生物である。
親である連邦は君に平穏を与えてはくれなかった。
現在は連邦の依頼を受けながら連邦をつぶすチャンスを探っている。
今回の以来は邪魔者の撃破らしい、精精楽しませてくれるのを期待しながら、
Pc3と供に目標に向かって移動を開始した。
シナリオコネクション:Pc1
推奨クラス:強化人間叉は人造人間叉は魔物使い
Pc3
君はとある研究機関により製造された新人類である。
しかし、仲間はすでに居ない。
なぜなら危険視した連邦によってその研究機関は壊滅され、仲間は破壊されたからだ。
現在は、連邦の復習する機会を探りながらPc2と共に運び屋をしている。
どうやらさきほどPc2が連邦の依頼を受けたようだ。
シナリオコネクション:Pc2
推奨クラス:人造人間
Pc4
君は連邦から追われる身である。
なぜなら君は軍からの逃亡兵である。
君が軍につかまるとおそらく銃殺刑であろう。
君は今日も連邦の目を盗みながら宇宙パイロットをだまし日銭を稼いでいる。
どうやら先日騙した鴨がまたやってきたようだ。
シナリオコネクション:オチタ
推奨クラス:異能力者
Pc5
今日もいつものように拉致されていた。
どうやらエミュレイターが他の銀河に侵攻を開始しようとしているらしい。
こちらとしても手をこまねいている場合ではないのだが、
最近発見されたばかりで、調査が済んでいない。
そこで君に白羽の矢が立ったわけだ。
アンゼロットは君の返事を聞き終わる前に君を発射した。
シナリオコネクション:アンゼロット
推奨キャラクター:柊 蓮司
だからクロス元を書けよ
なんかハンドアウト・クイズ大会みたいになっているな
パロロワとか、他のスレのネタ出されてもこっちしか見てない人間にはキモいわ。
クイズよりもなによりも普通に元ネタを出しながらやって欲しい。
ごめんなさい、しばらく前に元ネタ書かずに
小泉豊が多すぎる的ハンドアウトを投下してごめんなさいっ
正直鬱陶しいのは解るが、もう少し柔らかくなりたまえよ
まずは、くにゃれ
まぁクロスオーバーは3つ以上の作品を混ぜると駄作になるというどっかの誰かが言った言葉があったりするからなぁ
NWだから(TRPGが元ネタだから)ある程度の多重クロスでも看過されやすいとは思うが、流石に少し抑えようぜ
>>659 普通の人にはどっからどう見ても野球ゲームじゃないんだからパワポケ9て表記しろよw
く、くにゃるってどうすれば良いんだろうって考えたら、ピタゴラスイッチの10本アニメになってしまった…
何か違うだろ俺
ぼくワカメダンス!
1時半から投下します。
side マリアベル・アーミティッジ
「どうだ?マリアベル、俺も結構やるだろ?」
赤い月の照る空を飛ぶ飛空機械の操縦席で、顔も背も匂いも変わったくせに笑い方だけはあの頃のまま、ジャックがわらわに尋ねる。
「ふん…まだまだじゃな。安定性が今ひとつじゃ」
「ちぇっ…マリアベルの口の悪さはかわんねえな」
ジャックは拗ねた口調で言う。それをわらわは鼻で笑って返す。
「当たり前じゃ。おぬしとは人生の年期が違う。
わらわに言わせれば10年もたたずにそこまで変わる人間の方がおかしいのじゃ」
「…時間がたったからじゃねえよ」
「うん?何か言ったか?」
わらわの言葉に対してジャックは小さな声で呟いた。
「ああいやその…腹減ったなって」
顔を背けて誤魔化そうとするジャック。愚かものめ。わらわの、ノーブルレッドの聴力を忘れたか。
「そうか。そうじゃな。一旦戻るとするか」
「おう。そうすんべ」
まあよい。詳しい話は後でじっくり聞き出してくれるわ。みなの前で、な。
「お帰りなさい。ジャック、マリアベル!」
クアトリーの町のすぐ近くの野原に飛空機械を着陸させると、ビオレッタがわらわたちを迎えてくれた。
「凄かったわね。あんなものが空を飛ぶなんて最初は信じられなかったけど!」
「あんなもの、は余計だ」
ジャックが口を尖らせてビオレッタに返す。
「何よ。失敗ばっかりでまともに飛ぶようになっただってつい最近じゃない!」
「そりゃあそうだけど…」
ビオレッタの更なる反撃にジャックは黙り込んでしまう。
やはり分かっておらぬな。口喧嘩で男が女に勝てるものか。
「う〜ん。それはそうだけど、そこは成功するまで頑張ったジャックを誉めるべきだよ」
「そうよ。それに、そんな風に言われると手伝ったお姉さんの立場も無いんだけどなあ」
だが、ジャックに思わぬ助っ人が現れる。ジャックの1番の友であるリーズと、わらわの1番の友、アナスタシア。
「あ〜あ〜そうですね私が悪うございました。何よ、リーズまでジャックの味方しちゃって…」
今度はビオレッタが拗ねてしまう。拗ねてしまったビオレッタをリーズが優しく抱き寄せる。
「ごめんね。飛空機械に関してだけは、僕はジャックの味方をしたいんだ。
だって、ジャックの飛空機械がなかったらビオレッタとだってこんなに仲良くなれなかったと思うから…」
「もう…馬鹿」
ビオレッタが真っ赤になる。やはりリーズは天然のたらしじゃな。
「さあ、みんなお茶にしましょう。リーズくんがアップルパイを焼いてくれたから」
1人マイペースにアナスタシアがバスケットを取り出して言う。
アナスタシアよ、そんなだから、いつまでたっても浮いた話の1つもでんのじゃ。
遭遇したからには支援せねばっ!
赤き月の下で行われる、茶会。
茶うけはザラメのたっぷり入った、じゃりじゃりとする甘いアップルパイ。下品な味だが、今はそれが心地よい。
アナスタシアの入れた茶もなかなかにいける。伊達に貴族ではないと言うことか。
さて、茶も堪能したところで…
「ジャックよ。時間がたったからではないなら、何がお前を変えたのじゃ?」
ぶほぁ!
おー。実際に口に含んだ茶を噴き出す人間など、初めて見たぞ。
「ママママリアベル!?き、聞こえてたのかよ!?」
「当たり前じゃ。ノーブルレッドの聴力を侮るで無いわ」
面白いほどに狼狽しよる。ふっ、まだまだ修行がたりんな。
「へえ〜。そうなの?確かに一体何がジャックくんをあそこまで熱心にさせたのか、お姉さんも、気になるな」
ナイスフォローアナスタシア。それでこそ我が親友。
「そ、それはその…」
ジャックが口ごもる。なんじゃ、わらわには言えぬようなことか?
お、真面目な顔になりおった。何を言うつもりじゃ?
「マリアベル。俺と、一緒に暮らさないか?」
…
…?
…!?
「ななななにを言う!?」
「ずっと、決めてたんだ。約束しただろ?いつか、飛空機械がうまくいったらお前を乗せてやるって。
その約束があったから、俺は頑張れた、変わったんだと思う。お前と再会したかったから。もう、お前がいなくなるのは嫌だ。だから…」
「ばばば馬鹿な事を言うでない!わらわはノーブルレッド、人間と同じ時は生きられぬ!」
そう、人とノーブルレッドは共に同じ時間を歩むなど…
「あら、大丈夫よ」「うん。大丈夫だ」「大丈夫じゃない?」
だが、ジャック以外の3人が口々に言う。それに頷いてジャックも言う。
「俺の血を吸ってくれ。マリアベル。俺も、ノーブルレッドになる。お前と一緒に、生きたいんだ」
そう言うとジャックはわらわを抱き寄せる。首筋がわらわの目の前にせまる。
「さ、一息にやってくれ…」
本当に、良いのか?わらわと共に生きてくれるのか?わらわをもう、1人にしないでくれるのか…?
そんな思いと共にわらわはゆっくりと牙を…
「「「マリアベルッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」」」
夢が、消える。そう、これは夢。だが、もうすぐ夢で無くなるはずの、夢。
もーいっちょ。
side グラブ・ル・ガブル
「なんじゃ…騒々しい」
聞き慣れた声に、マリアベルはゆっくりと目を開ける。生きている。そのことに3人はほっと胸をなで下ろした。
「よかった。無事だったんだねマリアベル!」
「てっきり敵の手に完全に落ちているのかと思い心配したぞ」
「さあ、帰ろう。ベアトリーチェを倒して、みんなのところへ!」
3人は口々にその思いをマリアベルに告げる。そんな3人にマリアベルはただ一言だけ、返す。
「断る」
はっきりとした拒絶の言葉。アシュレーが問いただす。
「…どういうことだ?」
「聞こえなんだか?わらわは、赤い月の世界を望む、そう言ったのじゃ」
その紅い瞳に宿るのは、はっきりとした敵意。
「そんな…何故だッ!?」
「孤独にはもう、飽いた。それだけの事じゃ」
「違う!マリアベルは1人なんかじゃない!私たちだっているし、他のARMSのみんなだって…」
「知った風な口を聞くでないわ!人間がッ!!!!!!!」
マリアベルに一喝され、リルカがビクッと身体を震わせる。
「今は良かろう。おぬしらを見ていればそれなりに楽しめるやも知れん。
だがな、おぬしたちの命は、あまりに短い。100年の後、おぬしたちは誰1人として生きてはおらぬじゃろう。
そうなれば、わらわはまた、1人じゃ。後に残るのはわらわを置いて行ってしまったものたちの悲しみの想い出のみ。
おぬしたちに分かるか?
忌まわしき身体故に太陽に焼かれ、大事な友に7年置いていかれた悲しみ!
魔神の炎にまかれ、二度と飛べぬ身体になったジャック!
焼き払われ、灰と化したクアトリーの町!
魔剣とガーディアンを共に、魔神と戦うと言い出したアナスタシアを見送られねばならなんだ、後悔!
世界中を巡り、結局魔剣しか見つけられなんだときの絶望!
誰1人、人間としてのアナスタシアのことを覚えておらぬ世界に取り残された孤独!
アナスタシアの血族を、再び犠牲にして世界を救ったことへの嫌悪!
…我が最後の友、アナスタシアが命を賭して守った世界。わらわは500年見守り続けてきた。
アナスタシアが消えた日より数えきれぬ明日を越えた。
身近で、大切な人間はすぐに変わっていってしまうのに、種としての人間は、変わらぬ。
魔神が死して100年もせぬうちに互いを殺し合う。
国などと言う対面にこだわり、判断を誤る。
大儀などというものに踊らされ、平気で無駄な犠牲を生み出す。
もう、古き世界の明日を見るのは沢山じゃ!どうせまた、同じ事を繰り返すと分かりきっておる!
だから、もう、古き世界はいらぬ…わらわは、新しい世界の、明日を望む…」
3人は、何も言えなかった。
自分たちには、人間には理解できない明日への絶望に圧倒されて。
そして、マリアベルは再び眠りにつこうとする。
その、瞬間だった。
「ふざけんなよ…この、クソガキッ!!」
柊蓮司の叫びがグラブ・ル・ガブルに響いたのは!
まだまだ〜。
間に合った!支援
その言葉にマリアベルが気色ばむ。
「く、クソガキじゃとッ!?」
「てめえ、黙って聞いてりゃ、ようは自分が気に入らないから世界を作り変えるってことじゃねえか!
それじゃあ、この世界で生きてる、他の奴らはどうなる!?世界は、お前の玩具じゃねえんだぞ!」
「黙れ小童!だからと言ってわらわにまたあの退屈な明日を生きろというのか。
20年も生きておらぬお前ごときに、悠久の明日がどれだけ退屈なものか分かるものか!」
「ああわかんねえ!明日がどうとかはさっぱりだ!だがな、昨日の大切さなら知ってるぜ!」
「昨日の…?」
「今の前には沢山の昨日があった。それはな、今に至るまで延々続けてられてきた昨日だ。
俺だってガキじゃねえ。世界が綺麗なだけでも幸せなだけでも無いことは知ってる。
けどな、そんな世界でも、必死こいて守ってきた連中がいるんだよ!今にいたるまでずっとな!
ファルガイアだってお前の友達やここにいる連中がそうやって、昨日を守ってきたんだろ!?
そいつを自分勝手な理屈で踏みにじろうなんざ、たとえ神様がやろうとしても、この俺が、柊蓮司が許さねえ!」
「こ、この…」
「今、お前がここにいんのだって、父ちゃん母ちゃんがお前を産んで、アナスタシアって人が魔神と戦ったからだろ?
それを、なんだ!1人で生きてるみたいなこと言いやがって!お前だけで世界ができてんじゃねえんだぞ!」
「言わせておけば…」
「怒ったのか?でも、てめえにゃ何もできねえ。そんな殻に閉じこもって世界を変えるのすら人任せのクソガキにはな!」
それは、柊の純粋な憤りからの言葉だった。だが、それは確かな力を持って、マリアベルへと届いた!
「黙れ!貴様にノーブルレッドの怒りの恐ろしさを教えてくれるわ!」
マリアベルは目の前の痴れ者を罰するべく、立ち上がろうとして、身動きが取れないことに気づく。
すっぽりと全身を包み込んだグラブ・ル・ガブルががっちりとマリアベルを固定しているのだ。
「ええい、邪魔をするでない!」
怒りのままに魔力を発し、マリアベルは周りのグラブ・ル・ガブルを吹き飛ばす。
そしてぽっかりと開いた穴から飛び降り、目の前の痴れ者に怒りの飛び蹴りをお見舞いする!
パシッポイッ
「あめえぜ!そう簡単に俺を倒せると思うなよ!」
それを軽々と受け止め、すぐ側の床に投げ捨てた柊が挑発するように言う。
「この、この!」
マリアベルはすぐに立ち上がり拳を振り回すが、柊には当たらない。
しばらくそうして腕を振り回して、体力を使い切ってへたりこむマリアベルに、柊は声を掛ける。
「俺だってな。世界を変えること事態を否定するつもりはねえよ。世界は、変わっていくもんだ。
だがな、やるなら自分の力で変えろよ。好きなようにな。けどな、間違ってたら、誰かが止めるぞ。
世界を変えるってこと、なめんじゃねえ」
「はぁはぁ…わらわに説教とは、1000年は速いわ!」
「だったら見返してみやがれ。今のままだとてめえはただのわがままなクソガキだぜ!」
「くっ…覚えておれ!」
「おう。俺が生きてるうちは覚えといてやる…ん?みんなどした?」
怒濤の言い合いに気圧されていた他の4人に、柊が尋ねる。
「ああ、いや…」
「なんかすごいなって…」
「たいした物だと思ってな」
「柊くん、突っ込みには定評があるって知ってたけど…」
それぞれが感想を漏らす。何とも言えない空気が漂った、そのときだった。
届け支援
しえん、しえん。
「くすくすくすくす…」
グラブ・ル・ガブルに、全員が聞いたことのある声が響く。少女の笑い声。特徴のある笑い方は…
「「「「「ベアトリーチェ!」」」」」
マリアベルがこじ開けた。グラブ・ル・ガブルの穴。そこに1人の少女が腰掛けていた。
「なんじゃ?あの娘は?あの声、何処かで聞いたような…」
マリアベルだけが首をかしげる。それを誤魔化すようにアシュレーが言う。
「…マリアベル、頼みがある」
「なんじゃ?」
「ティムとカノンが、外でゴーレムと戦っている。それを、止めてくれ」
「なんと!?わらわの可愛いゴーレムたちとティムたちが戦っておると!?
こうしてはおれん。この場はおぬしらに任せるぞ!」
自らの可愛いゴーレムたちと仲間のピンチと聞き、マリアベルはグラブ・ル・ガブルの外へと駆けだした。
途中で「わらわの、わらわのアースガルズ2がー!?」という悲鳴が聞こえた気がするが、5人は目の前の敵から目を離せない。
「あーあ、あの子との接続、切れちゃった…」
わざとらしく、ベアトリーチェは言う。
「せっかく寂しいもの同士、お友達になれると思ったのに。ヒイラギレンジったら、ひどーい」
冗談めかして子供っぽい喋り方をするベアトリーチェだが、それが演技であることはこの場にいる全員が知っていた。
「うるせえ!友達を利用すんな!」
「あんたは、許さない!人の心を食い物にする、あんただけは!」
「観念しろ!もう、マリアベルとの繋がりがたたれた以上、遠慮はしないぞ!」
「そういうことだ。悪いがここで、消えて貰うぞ」
「マリアベルをだまそうとするなんて、ゆるさないんだからー!」
口々にベアトリーチェへの怒りを口にする。
「くすくす…ま、いいんだけどね」
それを流しつつ、ベアトリーチェは言う。
「あの子を通して、グラブ・ル・ガブルには充分に私の情報を感染させたわ。後はその増殖を待つだけ。
もう、あの子無しでもグラブ・ル・ガブルを乗っ取ることができる。
それに、一部はもう既に掌握している。こんな風に…ね」
ベアトリーチェの声と共に、世界が歪む。
そこは、荒れ果てた荒野。何処までも続く荒野の空に、赤い月が輝いている。
「ここは、私が実体化させた、私の悪夢。ここでならお互い触れあうことが出来る。
あなた達の攻撃が通用する代わりに、私もあなたたちを斬り裂くことができるの」
それは、戦いの合図。5人は構える。正真正銘の最後の戦いに備えて。
「と言っても、流石に5人も同時に相手するのは大変。だから、こちらも切り札を使わせてもらうわ」
そう言うと、ベアトリーチェは虚空に手をやり、何かを取り出す。
それは、巨大な大剣だった。飾りも何もない、無骨な両手剣。自らの身体よりなお大きいそれをベアトリーチェは軽々と持ち上げる。
その剣をかまえ、ベアトリーチェは言う。
「これが私の切り札、“想い出”から発掘した…ガーディアンブレード・アガートラーム」
「アガートラームだってッ!?」
散々慣れ親しんだその名前にアシュレーが驚く。
「さあ、始めましょう。夢魔ベアトリーチェの、死に至る悪夢を」
微笑みながらベアトリーチェが戦いの始まりを宣言した。
今日はここまで。
久しぶりに「空色の冒険」読み返したら、「この話の数年後に焔の災厄なんだよな・・・」と考えて鬱になったことまで思い出した件。
嘘予告で4本とか適当こいたせいでベアちゃんの性能が偉いことになった件
>>682 乙〜。柊にとっては腹立つだろうなこの考え方。だってゲイザーと一緒なんだもんw
乙でーす。
これで心おきなく出かけることができますww
唐突だが
「火星…いえ、水の惑星AQUAでエミュレーターの反応が確認されました。
行っていただけますね? 柊ア蓮司さん」
という電波を受信した。
みなさんそろそろ次スレの時期ですね。
もう480越えか。密度高かったんだなあ。ちょっとスレ立て行ってくる。
>689
乙乙〜
>685
「人の名前を勝手に変えんな!」
「お気持ちは分かりますが、仕方がないのです。
なぜならあそこは、"あ"で始まらない名前の人は存在できない。そういう空間になっているのですから」
「素直に灯とか呼べよ!?」
こうですか?
くれはとあかりん、アンゼロットならOK、柊はNG
存在すら許されないとはAQUAに張られた月匣恐るべしだなw
男性なら例外も居るぜw ウッディとか
>692
彼のファミリーネームはアレンかもしれないぜ。
ゲヘナの邪霊律のような月匣だなぁw
>>692 残念、「綾小路宇土51世(あやのこうじ うど 51せい)」で通称ウッディなのだ。
(例外は社長*2ぐらい)
>>690 拾われたw
存在できないんじゃなくて、
名前が出なくなってメインを張れなくなる=脇役化するんではないだろうか、とは思った。
そしてEDクレジットが↓
緋室 灯 :小暮英魔
赤羽くれは:佐藤利奈
下がる男 :矢薙直樹
ネギま書かなきゃならんのに、ARIAのネタばっか浮かんで浮かんでくる。
アリア社長のコスがにゃんぷう仮面ではなく、ナイトメアに。
主役のはずなのに、アリア社長の出番がなくなっていくのはどういうこと?
「お茶会」の話みてから、構想がとまらなくなってきた。
……ネギまの資料買ってこよ。
>柊
郵便屋さんみたいに役職で呼ばれるか
素直に猫になるしかないな
>>696 いっそ資料無いネギまより先にARIAネタ書いちゃえばいいんじゃね?
>>697 下がり屋さん♪
ARIAはゲームでも主人公から名前が剥奪されて、
ログに青年なんて付けられてるからな。
どいつもこいつも「あなた」とか「きみ」とか「おまえ」としか呼ばねぇもんだから
結局スレ住人が付けたあだ名がアオトシだ。
あ、一人だけ「ご主人様」って呼んでくれたっけw
そういや話は埋まるまでこっちに投下した方がいいんすかね?
残り16KBだし、たりなそうだと思ったら新しい方でいいと思う
>>701 じゃあ、次回からは向こうって事で。
2時から行きます。
「行くぞ!ベアトリーチェ!」
戦いが始まると同時に、アシュレーはアクセラレイターを使い、加速を開始する。
だが、ベアトリーチェはその時既にアシュレーへと迫っていた。
「何ッ!?俺より、速いだとッ!?」
「くすくす。この世界は私の悪夢。夢の主の望みは、全てに優先される。
この世界において、アクセラレイターが貴方の専売特許だとでも思っていたのかしら?」
とっさにアシュレーはベアトリーチェの一撃に備える。
恐ろしいほどの速さで放たれるアガートラームの一撃。それはアシュレーの身体を切り裂きながら吹き飛ばした。
「ぐあッ!」
「アシュレー、大丈夫!?」
「ああ、何とかなッ!」
とっさにリルカがアシュレーにかけよる。すさまじい一撃だ。二撃は耐えられないだろう。
「くっ…はええ!」
「ダメ!防がれた!」
「なかなかの威力でしょう?流石はエルゥの残した遺産と言ったところかしら」
柊の攻撃を避け、晶の攻撃をアガートラームで受けとめながら、ベアトリーチェは言う。
「エルゥ、だと?馬鹿な!貴様がエルゥだとでも言うつもりか!」
その言葉にブラッドが疑問を呈し、同時にARMを発射する。
エルゥとは獣の耳を持つと言う伝説上の種族である。高い知能と文明、ガーディアンの加護を持つ。
だが、公式の記録に存在が記されているノーブルレッドと違い、このファルガイアでは存在すら確認されていない。
そんな、おとぎ話の中の住人である者の遺産など、ありえるはずが無かった。
「あんな奴らと一緒にしないで」
その弾丸をアガートラームで叩き落としながら、ベアトリーチェは眉をひそめて言う。
「私は…魔族よ」
その言葉と同時に全員を痛みと共にテレパスタワーの時と同じ強烈な睡魔が襲う。
意識を失いそうになる感覚に、5人は必死で耐えた。
「魔族…?」
急いでミスティックでポーションベリーの力を拡大したリルカの治療を受けながら、アシュレーが聞き返す。
魔族。水銀の血と鋼の身体を持つと言う、恐るべき侵略者。
だが、エルゥと同じく、魔族もまたファルガイアにおいてはおとぎ話の中にしか存在しない。
「くすくす。知らなくて当たり前。そもそもこのファルガイアを選んだのは、エルゥも魔族もいなかったからだもの」
「…このファルガイア、だと?どういうことだッ!?」
不可思議な発言を繰り返すベアトリーチェに、アシュレーが聞き返した。
「そうね…昔話をして上げる」
防御力上昇と回避率上昇、2つの防御呪紋を使いながら、ベアトリーチェは言う。
「むかしむかし、ここではないファルガイアに、2つの種族がいました。
1つはファルガイアに根付き、ガーディアンの加護を受けて暮らすエルゥ。
もう1つは、新天地を求め、空の彼方からやってきた、魔族。
彼らはとっても仲が悪くて、お互いを滅ぼそうといつも争っていました。そんなある日のことです」
それは、優位に立つが上の余裕。5人はそれぞれに攻撃を加えるが、2つの防御呪紋に阻まれてベアトリーチェに有効打を与えられない。
「エルゥが、1つの武器を完成させました。その名は、アガートラーム。
それはガーディアンの力を吸い上げ、力に変えることで絶大な威力を発揮する武器でした。
沢山の魔族がその刃の前に破れ、ついに魔族は滅んでしまいました。
しかし、アガートラームは、エルゥにとっても災いの武器だったのです。
力を奪われたガーディアンは衰え、ファルガイアに恵みをもたらすことが出来なくなりました。
また、その絶大過ぎる力はファルガイアをも切り刻み、ファルガイアを荒野の世界に変えてしまいました。
こうして、ガーディアンの恵みを得られなくなったエルゥもまた衰退し、世界は人間に奪われてしまいましたとさ」
くすくすと、こらえきれないと言った風情でベアトリーチェが嘲う。
「面白いと思わない?相手を滅ぼすために作った武器が、自分も一緒に滅ぼすなんて。
これはね、そんな“想い出”から生み出した、アガートラーム。
そうね…そちらのアガートラームが明日への希望を生み出したアガートラームなら、
こっちのアガートラームは明日への絶望を生み出したアガートラーム」
そして、ベアトリーチェは再び剣を構える。
「そんな、名前だけ一緒の魔剣では、本物の、相手を滅ぼすためだけに作られた武器には勝てない」
にこやかにほほ笑みながらベアトリーチェが挑発した。
「みんな…」
回復を終えたアシュレーが立ち上がり、全員の方を見る。
言葉はいらない。それは、何度も繰り返してきたことだから。
ただ、全員で頷き、5人はほぼ同時に行動を開始する!
「喰らえ!ベアトリーチェ!」
アクセラレイターの神速の反応で、アシュレーは再びARMを構える。使う弾丸は…
「マルチブラスト!」
嵐のようにベアトリーチェに空中で拡散した無数の弾丸が降り注ぐ。
「こんな豆鉄砲で、私を倒せると思ったのかしら?」
ベアトリーチェはアガートラームを盾代わりにしてそれを防ぐ。アシュレーの狙い通りに。
「今だ!晶!」
アガートラームを盾にしたことによってベアトリーチェに生まれた死角。
それはごくわずかな、だが、歴戦の戦士たる晶には十分な死角。
「任せて!これでも…くらいなさい!」
その死角を利用して晶はベアトリーチェの後ろに回り込み自らの魔剣をつきたてる。
「かふぁ!?」
背中に深々と魔剣を刺し込まれ、ベアトリーチェがよろける。
魔剣を抜き、ベアトリーチェから距離をとって、晶が叫んだ!
「今ですブラッドさん!」
「まかせろ!」
全精神力をARMに注ぎ込み、意図的に暴走状態へと移行させる。こうすることで破壊力が爆発的に跳ね上がる。
のけぞったことによってさらされたベアトリーチェの無防備な姿。そこにブラッドは己の最大の一撃を放つ!
「リニアレールキャノン、発射!」
空中に浮かぶ要塞すら貫く、へヴィアームの中でも最大の火力を誇る1発きりの弾丸を、ブラッドは正確にベアトリーチェに直撃させた。
「…だから、人間は嫌いなのよ。群れると、厄介だもの」
流れるような連携攻撃は、ベアトリーチェに確かなダメージを与えていた。ところどころの肉が裂け、黒い闇がのぞいている。
「まだよ。まだ、終わっていない!最後は…」
攻撃力上昇の呪紋を唱えながら、リルカは言う。その対象はもちろん…
「レンジ!とどめお願い!」
「任せとけ!」
自らの魔剣に強力な魔力が宿るのを待っていた。魔剣使い、柊蓮司!
柊は、プラーナを解放し、刃に乗せる。全力の一撃のために。刃が、赤く燃え上がる!
「魔器、解放おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
柊の呼び声に応えるかのように魔剣は会心の軌道でもってアガートラームをすり抜け、ベアトリーチェの身体を捉えた!
支援!
支援ッ!
「くすくす…痛いわ…でも…この程度では、グラブ・ル・ガブルと同化した私は、倒せない」
身体を引き裂かれ、その断面から漆黒の闇をこぼしながらなお、ベアトリーチェは余裕を崩さない。
「ところで、ヒイラギレンジ…私が、ただ、暇つぶしに無駄な話をしてると思った?」
余裕の表情のまま、ベアトリーチェはアガートラームを握り直す。
柊が、驚愕の表情を浮かべる。アガートラームから放たれる、先ほどまでとは桁違いのプラーナを見たのだ。
「貴方を一撃で倒せるだけの力、グラブ・ル・ガブルからくみ上げるのに、こんなに時間がかかっちゃった」
ベアトリーチェは、アガートラームを振り抜く。
それを柊は避けられない。ただ、意識の中の時間だけがゆっくりとなり、柊の眼がゆっくりと自分の身体に染みこんでいく刃を捉える。
「さよなら。ヒイラギレンジ。貴方みたいに諦めの悪い人、私、だいっ嫌いなの」
そして、弾丸のように柊蓮司の身体が吹き飛ばされた。
「…あら、まだ生きてるのね」
吹き飛ばされた先で、柊はキッとベアトリーチェを見据える。だが、立ち上がることは出来ない。
柊は咄嗟に防御にプラーナを全力で解放することで、辛うじて即死は免れていた。
「がはっ!」
柊が地面に血を吐く。明らかに危険な状態だった。
「柊くん!?大丈夫!?」
晶が駆け寄る。その光景を見て、リルカはようやく我に返った。
(か、回復、回復を!)
最高位の回復呪紋のクレストグラフを取り出し、魔力を込め始める。すぐに回復させないと、柊の命が危ない。
「…でも、もう一撃、今の貴方に耐えられると、思う!?」
その言葉と共にベアトリーチェの姿がかき消える。
(またアクセラレイター!?駄目!間に合わない!)
「やらせないよ!」
「奇跡でも何でもいいからお願い!間に合って!ハイリヴァイヴ!」
リルカの呪紋が発動する。光が降り立ち、柊を癒す。リルカの願いどおり、確かに呪紋は間に合った。
「あ、あき…ら?」
1人の少女が柊をかばったことによって。
アガートラームの刃が晶の腹から飛び出している。明らかな致命傷。
「よ、よか…た…まに…たんだね」
その言葉と共に晶は倒れる。
「とことんしぶといのね…まあいいわ、これで、1人減ったもの」
直後に飛んでくる2発の弾丸を受け流しつつベアトリーチェは2人から距離を取り、言う。
「おい、晶…あきら…あきらああああああああああああああ!!!!!!!!」
柊蓮司の絶叫が世界に響いた。
支援っっ!
今日は、ここまで。
>>683 世界に1人しかいない超越者って意味では同じですからね。
ワイルドアームズ2版(笑)でのベアトリーチェのデータを攻略記事風に書くと、こうなった。数字はおおよそのダメージ。
3のときと比べて洒落にならないレベルで強くなっているのは、仕様です。こっちではラスボスだしね。
ちなみにブラッドのHPが6200、柊5800、アシュレー5200、晶4300,リルカ3700くらい。
…あれ?晶死んでなくね?
ベアトリーチェ
HP:78000
特殊攻撃
アクセラレイター+斬撃(絶対先制、アシュレーも使った場合、よりRESが高い方が先制する。基本RES700):3000〜3500
ロックオンチャージ+斬撃(威力上昇+絶対命中、RESが0になる):5000〜6000
アルカナ
ダークマター:全体2000〜2500、闇属性
ナイトメア:全体1500〜2000、無属性、睡眠付与
ライフドレイン:全体800〜1200、無属性、与えたダメージ合計分ベアトリーチェのHPが回復
フィブルマインド:全体抗魔減少
シールド+タービュランス:物理防御、回避率上昇
相性
闇属性無効、バッドステータス無効、他は通常相性
行動パターン
各種アルカナあるいはアクセラレイター+斬撃をランダムに使用。
ターン終了時に斬撃のダメージ>誰かのHPになると、高い確率でアクセラレイター+斬撃を使用する。
ただしアルカナでも死ぬHPだと攻撃用アルカナを使ってくる可能性と半々。
そのため斬撃のダメージ>残りHP>アルカナダメージのキャラがガードするとちょっとお得。あるいはディフェンサーでかばうのもあり。
また、スピードダウンでRESを下げておくとアクセラレイター+斬撃時にアシュレーがアクセラレイターを使えば先制可能。
全員にスキルかギアで睡眠耐性をつけておこう。やみの指輪は通常攻撃が無効にされることに注意。魔剣使い2人にはつけないように。
シールド+タービュランスを使用した次のターンには必ずロックオンチャージ+斬撃で攻撃してくる。普通はガードしないと死ぬ。
ブラッド、柊ならぎりぎり耐えられるので、前述のRES下げを行い、
アシュレーがアクセラレイターでベアトリーチェより速くミラクルベリーを使用可能ならば攻撃しても良い。
…まあ、SS(ってか初見)だとそこまで効率的には戦えないんだけどねw
>>710 相変わらずGJ!
休憩時間に覗いてみるものだなw この後もがんばれる!
乙です。
やっぱり魔剣使いはどう転んでも酷い目に会うなぁw
ステータスを見て、固体として純魔族に比べ遥かに弱い夢魔の
凄まじい強化っぷりに吹いた。
乙。熱い戦いと対なメタで身も蓋もない攻略法に吹いたw
>>712 負けないように小細工と準備は欠かさない。それがベアトリーチェクオリティ。
一応グラブ・ル・ガブルの力を流用してるとか、通常の3倍くらいの力が出る悪夢空間を展開してるとか理屈はつけてますがw
>>713 流石に2のラギュ様クラスにまで対処ミス=死にするのもねえ…一応正規ボス扱いだしw
>負けないように小細工と準備は欠かさない。それがベアトリーチェクオリティ。
そしてそこにゲーム性を求めて負ける、それがぽんこつ魔王クォリティ
>通常の3倍くらいの力が出る悪夢空間を展開してる
柊ダイナミック吹いた
晶クラッシュよりは晶ブルーフラッシュのほうがなんとなくイメージに合うような
向こうに投下ついでにレス。
>>716 …まあ、あの人の場合もう侵略事態が趣味だしねえ。
手に入れたら手に入れたで興味なくす悪寒。皇帝消滅ライバル失脚で裏界で実質トップだし。
>>717 やっぱり特撮的に3倍パワー空間は基本かな、と。
ちなみに3でのベアトリーチェのHPが26000、3倍になったのはその辺。
>>718 宝玉も青だしね。
埋めがてら雑談。
しかし、このスレも順調に動き始めてきたよなぁ。ベホミャー氏やアガトラ氏はもちろん、新しい書き手の人も現れたし。
……白状します、このスレ初期は瞬殺がオチだとばっか思ってました。スイマセンッッッ
これを機に更新止まってる人も復活してくれないかなーと言ってみるテスト。
はっはっは、あんまりそう不粋なことは言うもんじゃない。
……時間はかかるもんだしな、と自分を納得させられるようになろうぜ。気持ちは痛いほどわかるが
SSが投下されない時に
ハンドアウトで繋げられるのが強みだよな
そっからネタ拾う人もいるしw
>722
それはもう「(卓上)ゲーム脳」と言っていいんじゃないだろうか
「下がる」という単語に過剰反応する俺は柊脳
「パワーポイントの箇条書きで小さくするのってどうやるの?」
「ここのレベルを下げるをクリックすれば…」
ピクッ
卓上板住人は荒らしでもシナリオのネタにするしなw
【柊する】(ひいらぎ・する)
v サ変
下がる、少なくなる、値が小さくなる、落ちる
柊蓮司 in Wizaradry
せんし1「おいひいらぎ、お前の装備を準備したぞ」
そうりょ1「なかなか似合ってるじゃないか、ACもずいぶん下がって安心だな」
柊「下がるゆーな!」
ふと、“ブラストハンド”柊蓮司と言うネタが頭をよぎったw
吹奏楽団?
うおあー。
今日はじめて知ったけど、WA2ndがマイベストコンシューマRPGなオレとしては、ワクワクが止まらなすぎる。
あのラストバトルはヤバいですよね。卓ゲでなんとかしてあんな演出やれないか、しょっちゅう考える。
データが細かい辺りもなんというかたまらないw
うー、なんか書きたいな。考えてみよう……。
>729
ヽ)
`<⌒4ヘーшヘ4^>
(fノ/"ハ"リ>゙ それはブラスバンドじゃな!
∞|゚ヮ゚ノ∞
ハ⊂|介|⊃ハ 因みにわらわがブラストハンドじゃ!
(/_」)
しソ
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