アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ12
参加者リスト・(作中での基本支給品の『名簿』には作品別でなく50音順に記載されています)
2/7【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
●スバル・ナカジマ/○ティアナ・ランスター/●エリオ・モンディアル/●キャロ・ル・ルシエ/●八神はやて/○シャマル/●クアットロ
3/6【BACCANO バッカーノ!】
●アイザック・ディアン/○ミリア・ハーヴァント/●ジャグジー・スプロット/○ラッド・ルッソ/○チェスワフ・メイエル/●クレア・スタンフィールド
4/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/●ランサー/●間桐慎二/○ギルガメッシュ/○言峰綺礼
2/6【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ/●枢木スザク/○カレン・シュタットフェルト/●ジェレミア・ゴットバルト/●ロイド・アスプルンド/●マオ
1/6【鋼の錬金術師】
●エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/●ロイ・マスタング/●リザ・ホークアイ/○スカー(傷の男)/●マース・ヒューズ
3/5【天元突破グレンラガン】
●シモン/○カミナ/●ヨーコ/○ニア/○ヴィラル
4/4【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル/○ジェット・ブラック/○エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/○ヴィシャス
2/4【らき☆すた】
●泉こなた/○柊かがみ/●柊つかさ/○小早川ゆたか
3/4【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗/●シュバルツ・ブルーダー/○アレンビー・ビアズリー
2/4【金田一少年の事件簿】
●金田一一/●剣持勇/○明智健悟/○高遠遙一
3/4【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル/○高嶺清麿/●パルコ・フォルゴレ/○ビクトリーム
1/4【天空の城ラピュタ】
●パズー/○リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ/●ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ/●ドーラ
3/4【舞-HiME】
○鴇羽舞衣/●玖我なつき/○藤乃静留/○結城奈緒
1/3【R.O.D(シリーズ)】
●アニタ・キング/●読子・リードマン/○菫川ねねね
1/3【サイボーグクロちゃん】
●クロ/●ミー/○マタタビ
0/3【さよなら絶望先生】
●糸色望/●風浦可符香/●木津千里
1/3【ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
●神行太保・戴宗/○衝撃のアルベルト/●素晴らしきヒィッツカラルド
2/2【トライガン】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド
2/2【宇宙の騎士テッカマンブレード】
○Dボゥイ/○相羽シンヤ
1/2【王ドロボウJING】
○ジン/●キール
【残り41名】
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f3/304c83c193c5ec4e35ed8990495f817f.jpg 【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【書き手の注意点】
トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、
>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします
無理して体を壊さない。
残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。
自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
叩かれても泣かない。
来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
人物背景はできるだけ把握しておく事。
過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
一人称と三人称は区別してください。
ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
携帯からPCに変えるだけでも違います。
【読み手の心得】
好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
荒らしは透明あぼーん推奨。
批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
一度死亡が確定したキャラの復活
大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
【NGについて】
修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)
したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。
予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
まとめwikiを参照のこと
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
※※※※※※※※※※※※注意※※※※※※※※※※※※※※※
このバトルロワイアルという形で行われている企画みたいなもの(
>>2-8)は
実際に2chで行われているバトルロワイアルとはまったく別のものです。
彼等の企画(以下したらばでの企画)に関してはアニメサロンに移転が決まっております。
彼等は2ch上で議論ができなかったために外部掲示板に逃げた逃亡組であり
いうなれば荒らしに相当します。
アニキャラ総合板で行われる正式なバトルロワイアルは現在このスレッド上で
討議中ですので奮ってご参加ください
ーーーーーーーーーーー(Q&A)ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ここに投下された偽SSはどうしますか?
全て削除依頼を出してください。また、出していいという話し合いもついております
(4スレ目参照)
・ここはSS企画を行うスレなのですか?
そういう話はありません。ただ、『何故か』バトルロワイアルはSS形式でなければならないという
固定概念にとらわれた妙な人たちはいますが、このスレの住人ではありません。
・GとかCというのは実在するのですか?
わかりません。
ただ、特にGに関しては、彼等がGの本拠地と言っているLeaf・Key板ですら、
Gといわれている人間のほとんどはしたらばの交流所から出た憶測でしかないという話です
したらばの行いがあまりにむごいために、反感を持つ人間が多いのは事実です。
したらばは、彼等にはむかった人間全てをGやCという一人の人間の単独犯にしたいようですが
結局はただの憶測であり、証拠が挙がっておりません。
はむかえば全てGとかCとかアンチと呼ばれます。気にしないようにしましょう
また、通称dionと呼ばれる、反・したらばバトルロワイアル陣営を全て敵視する変な人が
削除議論板などで暴れています。
彼等は2chの企画なのに2ch上で企画内容を話し合うのは荒らしという奇妙な論理で
削除依頼を出してきます。
ただ企画を行うのは2chであるので、2ch上で企画を話すのは当然のことです。
それを彼は許さないといきまいているのです。
彼等は2chでは必ず荒らしがでるから(Gが出るから)2chでは話せないといってますが
しかし、荒らされたというログは存在しません。
あるのはただの議論ログであり、彼等が荒らされたという間のログを見ても
話し合いが平穏に行われています。(彼等に対して「荒らされたときのログを出せ」と
何人かが要求してますが、なしのつぶてです。実在しないのだから出せないのでしょう)
つまり、したらばが言う「荒らされた」というのは、ただの被害妄想、いいがかりに過ぎないのです。
彼等の言う「荒らし」はいうなれば「Dionやその一派に歯向かった人間」の総称です。
まず気にしない事が一番です。が、たまに削除議論板で彼が暴れるのでたまに運営板などの
監視を行ってください。
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現在、テンプレ議論が進行中です
夢の世界の話。
眠りにつく清麿。囁く声。
一面に広がるお花畑。備考を刺激する香り。声と香りがスイッチ。
「……麿……清麿…………清麿」
「ん……んん……?」
「清麿!」
「ん〜……この声はジン……ってうわあああああああああああ!?」
起こされ見る。目の前に立つ囁きの主。視線を独占するその異様な姿。
変な格好のジン。怪しげなコスチューム。バレエのレオタード+短パン+蝶の被り物。
奇人変人。彼に惚れた女の子たちが総じて泣く。
「ジ、ジン……その格好はいったい……!?」
「人の格好に口出しするな。それより清麿。おまえは最近、物事を難しく考えすぎてる。
もっと頭やわらかくいこう! そうすりゃみんな、HAPPYYYYYYYYYYYYYYYYYだァー!」
明らかにおかしい挙動。もしくは可笑しな挙動。ひたすらに困惑する。
「ハッピーにいこうぜ、ハップィィィィィィィにー! わっはっはっはっはっはっはっは!」
(おい……ジン……)
恐ろしすぎてツッコめない。ジンの変貌にぶるぶると震える。青ざめる。
笑いながら走り出したジン。追えない。ついていけない。相変わらずの困惑。唖然。
追ってこない清麿に気づいてUターン。戻ってきてカンカンに起こるジン。唖然のままお説教。
「♪今のが俺のレッスン1。だけれど今のじゃ0点だ♪アホ足りないからお仕置きです。アホのビンタをお見舞いよ♪」
ぬるぬるのヤリイカ(新鮮)。頬を引っ叩かれる。ビンタビンタ往復ビンタ。
パシーンパシーンパシーン。意外と痛い。
「♪さてさてそれではレッスン2。アホのお手玉やってみよう♪手本は漢のラッドくん!」
ジンが指差し構えるラッド。筋骨隆々。胸板露出。内腿露出。全裸にふんどし姿。色は白。
やる気満々仁王立ち。なにをやってる殺人狂。
「清麿ォー! 覚悟しやがれぇー!!」
(おい……ラッド……)
恐ろしすぎてツッコめない。ツッコんだら負けかなって思う。青ざめる。
お手玉取り出すラッド。お手玉放るラッド。お手玉するラッド。笑いながらやるラッド。楽しそうにやるラッド。
「ワッハッハッハッハ、ワッハッハッハッハ、ワッハッハッハッハ、アホのお手玉おみまいだ!」
アホのお手玉投げつけられた。顔面クリーンヒット。まだなにもしてないのに。
「♪さてさてそれではレッスン3。0点続きの清麿に、なつかしキャラがお目見えだ♪」
ノリノリで仕切るジン。お手玉当たって鼻が赤い清麿。笑いっぱなしのラッド。
どこからともなくやってくる二人。今度は普通の格好。
けれども第四部最終決戦仕様のヨーコ。やたら星。ついでにシンヤ。
「今日は清麿にアホのビンタをくらわせるのが仕事らしいわ。協力してビンタをくらわせましょう」
「うん! ぼくとヨーコが協力して、清麿にアホのビンタをくらわせよう!」
「あ、清麿だわ」
「なんて言うと思ったかバカめぇ!」
「キャア!?」
仲良く手を取り合うヨーコとシンヤ。しかしシンヤの裏切り発生。おなかを蹴飛ばされるヨーコ。
「裏切ったわねテッカマンエビルゥゥゥゥゥ!」
「人間なんかとつるんでいられるか。清麿にアホのビンタをくらわせるのはこの俺だ……ってうわああ、バナナの皮だ!?」
すってころりん。バナナの皮ふんずけて転ぶシンヤ。バナナの皮=果汁のぬるみ=孔明の罠。
「マッハッハ! それはワシが食って捨てたバナナの罠よ! 不味かったぞ! 清麿にアホのビンタをくらわせるのはワシだ!」
紫色のチューリップの中に潜んでいた東方不敗マスターアジア。跳躍。清麿に襲い掛かる。
すすーっ……と身を引く清麿。やや遅れて東方不敗着地。そして落下。
「うわあ! こんなところに肥溜めが!?」
肥溜め=肥料=屎尿=汚物。清麿まで届かず肥溜めに落ちる東方不敗。汚物塗れになってもがきあがく。
「ぐぬぬぬぬ……これしきのことで東方不敗が滅入ると思うなよぉ!」
熱血+加速+集中+必中+ひらめき+気合+ド根性。ついでに努力+幸運。
超級覇王電影弾。渦巻く肥溜め。上昇する超級覇王電影弾=汚物塗れの東方不敗。脱出後再び清麿目掛け降下。
すすーっ……と身を引く清麿。やや遅れて東方不敗着地。そしてまたもや落下。
「うわあ! こんなところにも肥溜めがー!?」
二重の罠。二重の策。二番煎じ。諦めないじじい。
「ぬぅ! 死ねん……ワシは、ワシは清麿にアホのビンタをくらわせるまで死ねんのだああああああああ!!!」
(じいさん…………あんた立派だよ…………)
東方不敗→名誉の肥溜め沈没。あっはっはと笑う清麿。あっはっは。
「♪よしよしなかなかいいカンジ。あとはまったりオットセイ♪」
コスチュームチェンジ。みんな揃ってオットセイ。みんなで輪になりオットセイ。
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! えいっ!!♪」
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! とおっ!!♪」
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! へいっ!!♪」
アッハッハッハ。
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! ふんっ!!♪」
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! ていっ!!♪」
「♪えっちらオットセイ! えっちらオットセイ! やあっ!!♪」
アッハッハ。アッハッハッハ。アーッハッハッハッハッハッハァーッ!
えっちらオットセイ…………
えっちらオットセイ………………
えっちらオットセイ……………………
◇ ◇ ◇
「…………………………アレ?」
それは、電気ショックを浴びすぎた後遺症か。それとも脳を酷使しすぎた反動か。
夢から覚めた清麿は、気絶する直前に得たはずの答え、とても重要だったはずのなにかを、まるっと全部忘れてしまっていた……。
「…………………………アレ?」
螺旋力もアンサーナントカも、全部気のせいだったのかもしれない……。
【D-6/総合病院/1日目/夕方】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、軽い貧血、疲労(大)
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ、
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、
無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:…………………………アレ?
1:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
2:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
3:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
4:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※直前の考察内容をほとんど忘れてしまっています。
[清麿の考察]
※監視について
・………………アレ?
※螺旋王の真の目的について
・…………………アレェ?
※首輪について
・……………………アレェー?
※螺旋力について
・………………………アルェー?
† † †
……葬った男は1人、女は2人。
生かしたんはビルのてっぺんにおったのと、死に面晒しとったのと、あのイかれた2人。
見逃したのを入れても、数で言うたら大したことあらへん。
えろースンマセン。夜通し働かせてもろても、ノルマに届きそうにないですわ。
100人殺るのはワケないが、100人探すんはやっぱキツイで。
それに肝心の商売道具も、もろてませんし。慣れんブツやられてもなぁ。
この手の仕事は若い頃から得意なはずなんやけど……何でこうなったかわかるか?
要は『もっと待遇良くせんかいこのボケ』っちゅーことや。
死に損ない働かせよ思たら自分、もうちょっと考えェ。
見てみこの体たらく。
怪我や痛みは100歩譲ったるけどな、さっきから獲物に追いつきそうで追いつかんのや。
こんだけ入り組んどる町や。そら隠れ蓑は仰山ある。
せやけど、手がかりが無いわけやない。
あの拳法使いの商売敵がガキ共にほざいとった言葉尻を考えれば、奴らは絶対また合流する。
つまりそれほど遠くに逃げんっちゅうこっちゃ。
ワイを騙くらかす罠やもしれへんけどな。……ガキ共が。逃げる方向をわざわざこっちに見せ付けやがって。
まぁ見つからんなら見つからんでええし、見つけたら見つけたで殺せばえぇ話や。
ホンマはサクッと始末してスッキリしたいんやけどな。
今は、神さんがあの2人にちんまい愛情を注いどんのかもしれへんしな。まだ殺すなって。
人類はみな神の子なのだから――なんてな。
まぁ勝手にやってろや。こっちはこっちで適当にやらせてもらうで。
ただ今、どっしり座って荷物の整理して、腹ごしらえ中。
そんなわけで、橋(エリアはB-5か? )の前で陣取りや。
† †
山のように高い建物が一杯あるこの町が、私には新鮮でした。
お城というよりは、綺麗に切り取られた壁がきちんと並べられているみたい。
でもこの景色を不思議だと思っていたのは、私だけだった。
エドと言峰神父、あの人たちが住んでる世界ではごく普通に見かける物だそうです。
だから私は彼らからこの町の歩き方を教わりました。もちろん、危険から逃れるために町に隠れる方法もです。
建物には沢山の入り口があるのだから、同じ場所から出ない。
エレベーターという不思議な箱や階段を使ってやり過ごし、通風孔や倉庫に隠れて、安全になるまでじっとする。
とても怖かったけれど、エドが一緒にいてくれたおかげで無事に卸売り市場の近くまで来ることが出来ました。
でも……でも、これ以上進むことは出来ませんでした。
卸売り市場に行くのに必要な橋の所に、あの男の人が待ち伏せしていたからです。
遠回りをすれば、この橋を渡らずに先に進めます。
あの人に気づかれないように川を泳げば大丈夫かもしれません。
『――――だがなシータ、君はいずれ選択を迫られる』
あの時の言峰神父の言葉が聞こえてきます。
私たちは見てしまったのです。あの男の人が、自分のカバンからエドの大事な物を出していたのを。
†
エドです。宇宙は広ーいです。
エドはシズマのドライブを探して旅をしています。
おねえちゃんと神父ソンが手伝ってくれるので、一生懸命頑張ってます。
一生懸命逃げて、一生懸命隠れて、一生懸命チェックして、一生懸命ゾクゾクします。
卸売り市場までもうちょっとです。
でもエドは卸売り市場には行きません。エドの大事が物を見つかったからです。とっても欲しいです。
でも、おねえちゃんがダメと言います。
ねーおねちゃん。ねーねーおねえちゃん。どうして貰いに行かないの?
はーい。それはあの『黒ずくメン』が、エドたちをやっつけようとする悪い人だからー。
ねーおねえちゃん。そもそもおねえちゃん。どうして無視して行かないの?
OH! それは『黒ずくメン』が銃を持っているからー。
ねーおねえちゃん。やっぱりおねえちゃん。どうして神父ソンから貰った槍を使わないの?
そうでーす。それはエドが心配だからでしょー?
でも大丈夫でーす。神父ソンがくれた槍は頭がいいのです。
うまく『黒ずくメン』をやり過ごして、エドのトマト(パソコン)を取り返して、卸売り市場に届けてくれるそうです。
ベルカ式アームドデバイス。魔法で動く不思議な不思議なハイテクちゃん。電池は一体どこでしょー。
その名はストラーダ!あだ名は……ん〜と、え〜とぉ、トラ! ストラーダだからトラ! かっくいー!
機能は神父ソンが1人で調べて紙にまとめていたので、おねーちゃんが困ることはありません。
教訓、教訓、知らない物を貰ったら使っていきましょー。
† † †
ワイもまだそこまで老けこんだつもりは無いけどな。
この年になるとホンマ思うで。
人間の頭ん中で考えられる兵器で実現不可能なモンは無いっちゅーのをな。
言うたらパニッシャーもその偏屈具合では充分やろけど。十字架からビックリドッキリ弾バンバンやし。
せやけど『アレ』は無い。この際や、順を追って説明したる。
鎌鼬。
気配を察知したのか本能は反応していた。即銃弾を撃ち込んだった。
せやけど目が若干遅れて認識したせいか、その行為が無駄と気づくのにコンマ数秒のズレや。
とっさに体を転がせて避けたはいいものの、当然“そいつら”は銃弾を真っ二にして橋の主桁に斬り込み入れよった。
衝撃波の類かトリックかはわからん。せやけどこれが壁を無視して連続で飛んでくるんやからな。
こっちも負けてられん、と思わず刀を出してみたが話にならん。
今のワイではお手上げや。避けるので精一杯やし、持っとるバッグがそろそろウザくなってきたで。
鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい。
わかる、わかるで。こいつは加減しとる。狙っとるようで狙っとらん。本気で殺そうとしとるフリをかましとる。
何や、何が目的や。ワイの降伏を待っとんのかい。
それともあれか、お前もあのトンガリと同じ馬鹿か。
言っとくが今のワイは弱者だろうが容赦せぇへんぞ。後で命乞いしても絶対許さへんからな。
迷いなんざとうの昔に断ちきっとるぞ。なぁトンガリ、俺は――。
『――――弱虫はお前のほうだウルフウッド。なんでもかんでも、あっさり見限ってる』
じゃかましわボケ!!
† †
私が槍を一振りするごとに、目の前にある建物の群れが少しづつ崩れていきます。
影に隠れながら移動しているので、橋にいるあの人にはまだ見つかっていないようです。
できればこのままお互い無事に終わってほしい。私の目的はあの人の命ではなく、荷物なのだから。
あの人の荷物を持ってくるという約束でエドは先に卸売り市場に行ってくれました。
川の流れに従って迂回し、途中で川を泳いで渡るそうです。
だから私は自分をおとりにして、ストラーダの指示に従いながら時間を稼ぎます。
橋にいるあの人が何かの拍子に荷物を落としてくれさえすれば……!
ストラーダの飛行能力で、目にも止まらぬ速さで回収できるのに。
ストラーダによれば、私がここまで使いこなせているのは言峰神父からお借りした力のおかげだそうです。
でも力を得た代わりに、私の体は大きく負担がかかっているという事も知りました。
『――――シータ。君はどの選択を善しとするのかな?』
……言峰神父、あなたの言葉に私はずっと迷っていました。
例えそれが守るための殺人であっても、善しとするのならばそれは悪じゃないのかもしれない。
でも、少しだけわかったような気がします。
善悪の問題じゃないんです。
誰かが目の前で死ぬのが絶えられません。パズーが死んだことはどうやっても償いきれません。
だから私は、誰も殺さないし、殺させないことを選びます。
実際誰かに襲われたら、私は恐怖するでしょう。
でも、今の私には誰も死ななくても済む力があります。
言峰神父、私はあなたに感謝しなければなりません。
私はあなたに深く悩まされました。でも、最後に後押ししてくれたのはあなただった。
この力は永遠に続くことはないでしょう。
でも、この力がある限り私はこの答えを選択します。
だからお願い! 黒服の方、早く荷物を捨てて! 体中が熱くて今にも倒れてしまいそう……。
†
エドです。宇宙は広いけど、地上も広いです。海も広いです。
川は広くありません。でも川はすごく激しいです。
川を泳ぐのは好きではありません。けど嫌いでもないです。
卸売り市場はとっても広くて、発電所よりも静かです。
歩いてるとザラザラします。走ってみるとピチピチします。
あっちにもこっちにも食べ物が見えますが、満腹エドには興味がありません。
しょうがないので、ビリビリするために電子機器を発見しました。パーソーコーンー!
いじれるだけガンガンいじっちゃいます。何故ならデータがわかるからー!
お肉にお魚お野菜、色んなデータが載ってます!
……にゃー?
食べ物以外にも、ここで出荷手続きをとってる物もあったのなー!
えーとこれは何なのなー?
『人間掃討軍』……『専用』……『兵器』? これだけわかんないにゃ?
えーと、『任意の施設に配属せし』……『パスワードと厳重なセキュリティ及び』、『ラセンリョク』?……『解除必須条項』ね。
とりあえずわかってる部分はいじって解除しちゃいまーす。なぜならシズマドライブが見つかるかも知れないからー!
卸売り市場のぉ〜パソコンからぁ〜『ラセンリョク』以外のセキュリティだけでもにゃにゃにゃのにゃー!
† † †
ワイは餌をまいた。
身動き一つとらず、腰に差しとる刀、デリンジャー、バッグ、全部捨てたった。
そっちが殺す気無いんやら、こっちも殺す気をあえて捨てたる。
この瞬間だけ、捨てて初めて対等や。
お前の殺意のこもっとらんその攻撃は、その馬鹿さ加減はトンガリよりも……アレや。
さぁ、どっからでも来い。
それともまさか、ここまで来て急に殺しに変えるなんて言わんよなぁ?
† †
私は確かに見ました。
黒服の片が自分から荷物を全て地面に捨てたのを。
私の考えをわかってくれたのでしょうか? それとも、私をおびき寄せるための罠でしょうか。
でも、これでエドの荷物を取り戻すことが出来ます。
私は目をつぶり、深呼吸をします。そしてストラーダと最初に相談したことを確認しました。
スピーアフォルムで落ちている荷物に向かって真っ直ぐに翔ぶ。そしてソニック・ムーブという高速に移動する技術を使って逃げる。
魔力に慣れない私の現在の体の負担を計算すれば、やってやれなくは無いはずです。
準備は、整いました。
ストラーダに、合図を送ります。
――――Empfang!
!?
速い!
手が、腕が、体が、引っ張られる! でも、耐えなきゃ。
お願いです黒服の方、どうかそのままでいてください。
私はあなたに何の危害も加えません。
だから……このまま何もしないでください。
私の目的が荷物であることに気づかないでください!
† † †
来る。
来る。
来るで。
おいおい、何やその格好。
つか意外と近くにおったんかい。
30。
20。
いや、15メートルも無い。
まだや。
まだ抜くな。
その気になれば向こうが上。
あのスピードと飛行能力でガチにやられたらあかん。
向こうに諦めを見せ付けろ。
ここか。
いやまだや。
まだ。
もう少し。
10メートル。
まだ。
来よる。
まだや。
まだまだ。
7メートル。
もう少し。
銃は拾える。
いける。
もう一息や。
3メートル。
もう少し。
もう。
少し。
1メートル
奴。
『――――Sonic Move! 』
……消えた?
いや待て、後ろか!?
† †
† †
……息が詰まりそうでした。
ソニック・ムーブ終了時にバランスを崩し、危うく川に突っ込んでしまいそうでした。
私は黒服の方が落とした荷物を持ってストラーダに大きく上昇してもらって卸売り市場の側まで飛んできています。
ひとまず、あの黒服の方から逃げ切ることに成功しましたし一安心です。
それにしても……どうして私はこんな格好になってしまったのでしょうか。
これは服というより、花嫁が着る純白のドレスです。白い手袋にネックレスと、何故かティアラもついています。
まるでどこかのお姫様のようです。ストラーダはバリアジャケットと教えてくれましたが、特殊な服なのでしょうか?
そしてこのストラーダは、私がラピュタへ行くための希望になりそうな気がします。
今はまだ体が慣れていないけど、いつか必ず……!
「おねえちゃん来た来た! いらっしゃぁ〜い!」
あ、下でエドが呼んでいます。
どうやら彼も無事に到着したみたいです。後は言峰神父が無事であることを祈るばかりです。
† † †
体は異常なし。出血もなし。
視界もはっきりしとるし、足も竦んどらん。
脈も正常。耳鳴りもせぇへん
盗られた物はバッグ。つまり手元に出しとった刀とデリンジャー以外全部やな。
呆れたわ。おんどれは最初っから持ち物目当てやったんかい。
あの裂くような鎌鼬は?あの小型ジェットバーニアは? 瞬間移動は? 武器やないんか? あれは立派な戦力やろ?
そうか、あの攻撃はホンマのホンマに殺意こもっとらんかったんやな。
逃げてどないすんねん。足止めくらいしとかんかい。
ヤられたらヤり返されるっちゅう発想が無いんかい。
ワイに何もせぇへんかったからそれで終わりとでも言いたいんか?
最初にあの神父と戦わずに逃げたんは何でや?
……アホくさ。もう勝手にせぇ。
あー、しんど。
† †
卸売り市場に到着したあと、しばらく私たちは休憩をしてお互いのことを話し合いました。
エドの話すことはあまり良くわかりませんでしたが、喋っているエドの様子はとても楽しそうでした。
その後、私はエドに連れられて、私は卸売り市場をまわりました。
私が見たことのある市場に負けないくらい、沢山の食材が並んでいますが、そのほとんどは造り物のようです。
でもエドはここで牛乳を見つけたと言っているので、中には本物の食べ物も置いてあるのでしょう。
それにしても、随分と大きな建物です。特に天井が高い。大きな物が運ばれていたのでしょうか?
私の知らない町では、これは当たり前のことなのでしょうか。
「あるよーなないよーな。ないよーなあるよーな。何があって何がないのかー……」
エドにも聞いてみましたが、こんな調子です。
彼……いや、彼女の住む町でも、珍しいそうです(ついさっき、私はエドが女の子であると知りました)。
エドの町の話は私にはあまりよくわかりませんが、彼女の言う『ビバップ号』という船よりもここは大きいそうです。
「着いたよ! これこれビックリ〜! 」
エドがジャンプしてはしゃぎながら私に、ある物を紹介しました。
とても変わった四角の物体……メイン・コンピューター、と言うそうです。
そこに映っている画面と、私が持ってきたエドの大事な物が一緒になれば、とても良い事になるんだとか。
一体何が起こるのでしょうか?
†
エドです。不思議発見です。
エドのと市場のとで配線を繋げて合体したスーパーコンピューター。
こいつで色々ハッキングした結果、面白いことがわかりました。
地図に書かれている名前がついている場所には秘密があったのです。
なんと、これらの場所には人間掃討軍専用兵器が隠されているのです!
もちろん全ての施設に隠されているのかと言えばそうではなく、それはランダムだそうです。
この卸売り市場を含めたいくつかの施設に配備されたのは間違いないようです。
兵器の詳細はまだ詳しく調べてみないとわかりません。
陸上用なのか海上用なのか宇宙用なのかもわかりません。
エドの知らない言葉が並んでるので、よくわかりません。
シズマドライブシステムか、それ以外のことかもしれません。
でも兵器があるのはすごいことです。すごいことなので、早速垂れ流すように設定しちゃいました。
パソコンがある施設には、かかっているロックを外して伝達。
その他の簡易通信機器にも、エドのメッセージがしばらくしたら自動的に流れるように設定しちゃいました。
『エドです。地図の載っている施設を全部、良く調べてみてください。すごいお宝を発見ができるかもしれません。
詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだそうです!
もしも見つけてしまったらぁ〜一切、粉砕、喝采ぃ〜八百屋町に火がともる〜!』
以上、一回目の通信でした。
とうぜんでーす。情報はみんなでわかちあう物だからでーす。
この施設以外の施設の通信システムにも垂れ流すようハッキングしちゃいました。
となりに座っているおねえちゃんは、頭に?が増殖中みたいです。何がわからないんでしょー?
エドの説明ですか〜? エドの行動ですか〜?
それともこの画面に出てる言葉ですか〜?
ふふーん。
これはですね〜えーと『☆@意jh;眉gh』……にゃにゃ?
急に真っ暗? 変です。文字が読めませーん。
でも大丈夫です。
そうです……こんな時は声を出しましょう。
せーの、1、2……5…………4………………
「ぎょぉくさぁ〜……い………………」
† † †
あーしんどかった。
蘇り気味のせいか、思っとったより時間がかかったな。
ワイみたいにゾンビになると、やっぱ動きが鈍るんやろか。
けど『挨拶代わりの一発はちゃんと当たった』しなぁ。
葉巻オヤジに持ってかれたあの女みたいに再生されるかもしらんが、中枢の頭なら時間かかるやろ。
ちゃんと脳みそ吹っ飛んどるから、常人なら即死で終わりやけどな。
おーおーあの嬢ちゃん、死体に駆け寄って何か言うとるなぁ。
せやけどおんどれが蒔いた種や。
ワイがあそこで諦めん人間やっちゅーのを考えんかった方が悪い。
それと運の無さやな。逃げた方角追ったら普通、最初にここに来るやろ。
ま、そっちが勝手にやるんならこっちも勝手にやらせてもらうっちゅうこっちゃ。
……つーかどいつもこいつもええ加減にせえよ。
中立協定結んで終わりなんてどんだけやねん。
『殺し合い』しとるんやないんかい。
死なば諸共。命は天秤にかけてこそやろが。
ほいでな、そこにおる白いドレスの……あ、今は血まみれで真っ赤やな。
なぁコソ泥の嬢ちゃん。
お前の殺意こもっとらんその姿見とると、トンガリを思い出して適わん。
せやから直接、面と向かわずに、陰に隠れて距離をとって狙撃するつもりや。
そんで。
そんで地獄を見したるわ。
嬢ちゃんがこと切れる瞬間まで。
じっくり痛みと苦しみを与えて。
あの手この手で五体を奪ったる。
これや。
これがワイの……「報復」じゃ!!
【B-5・卸売り市場/一日目/夕方(放送直前)】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:ものすごく不機嫌。イライラし過ぎ 全身に浅い裂傷 (治療済み)、肋骨骨折、幾つかの打撲(治療不要)。
[装備]:デリンジャー(残弾1/2)@トライガン デリンジャーの予備銃弾12 刀ムラサーミャ&コチーテ。
[道具]:なし
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:シータを徹底的に痛めつけて殺す。神父はパニッシャーなどの強力な武器を手に入れてから。
2:自分の手でゲームを終わらせる。 女子供にも容赦はしない。迷いもない。
3:とにかく武器(パニッシャー、銃器)が欲しい。誰かが持ってたら殺してでも奪う。
4:施設で武器調達も検討。
5:タバコが欲しい。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。ゆえに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへの鬱屈した感情が強まっています。
※シータを槍(ストラーダ)、鎌鼬(ルフトメッサー )、高速移動の使い手と認識しました。
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労(大)、深い悲しみ、決意とその裏返しの迷い、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)、令呪(使用中)
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 、バリアジャケット
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤、ミネラルウォーター500ml 2本)、びしょ濡れのかがみの制服
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガン、暗視スコープ、音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ) 士郎となつきと千里の支給品一式
[思考]
基本:みんなと脱出を目指す。 殺し合いには乗らない―――だが、それを守れるのか不安。
1:言峰の令呪がある限り、誰も殺さないし殺させない。しかしその決意がエドの死で何かしらの影響が出ている(?)。
2:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す。
3:卸売り市場で言峰と合流。
4:マオに激しい疑心。言峰については半信半疑だが、少し心配。
[備考]
※マオの指摘によって、ドーラと再会するのを躊躇しています。
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※令呪は、膨大な魔力の塊です。単体で行使できる術はパスを繋いだサーヴァントに対する命令のみですが、
本人が術を編むか礼装を用いることで、魔術を扱うにおいて強力な補助となります。 ただし使えるのは一度限り。
扱い切れなければ反動でダメージを負う可能性があります。人体移植された魔力量が桁違いのカートリッジと認識してください。
※バリアジャケットのモデルはカリオスト○の城のク○リスの白いドレスです。
※言峰から言伝でストラーダの性能の説明を受けています。ストラーダ使用による体への負担は少しはあるようですが、今のところは大丈夫のようです。
※エドがパソコンで何をやっていたのかは正確には把握してません。
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ 死亡】
※エドのゴーグルとコンピューターはエドの死体の側にあります。
※ウルフウッドはシータの死角からエドを狙撃しています。現在もその位置です。
『施設の秘密』
地図上で表記されている施設の内のいくつかに、『兵器』と呼ばれる物が隠されているようです。
いくつ隠されているのか、それは何なのかは不明。
エドはこの事実をパソコンのハッキングを通じて、
通信機器機能を持つ他の機械に後で自動的に自分のメッセージを流れるよう仕組みました。
どこの施設の何の通信機器に流れるのかは不明です。一つとは限りません。
はい早速きたので削除ってくださいね
あとで出すけど過去の議論のまとめ貼っとけよ
廃墟となり果てたビルの傍らに、二人の男が向かい合っている。
スカーは間合いを計りながら思考を巡らせていた。
(さて、これからどうする……?)
目の前の神父は強敵だ。
修練による体術に加え、その判断力も完成されている。
こちらの破壊の右腕の特性をこのわずかな戦いの間にほぼ正確に見抜いた。
おそらくは通常の戦闘はもちろん、スカーや国家錬金術士のような異能を持つ者との戦闘も相当数重ねているのだろう。
それに加え、先ほどの動き。
(まるで別人のような素早さになっていた……)
あれが神父の本当の実力ならば、スカーを一段も二段も上回っている。
先ほどは何とか切り抜けられたが、あの一瞬の攻防で葬られていてもおかしくはなかった。
いや、既に左腕が奪われた以上、あの動きでなくともスカーは言峰には勝てないだろう。
もちろん、スカーにも手がないわけではない。
その手とはすなわち相打ち。
さきほどは突然だったが、今度は一度、相手の動きを見ている。
致命傷を負う覚悟があれば、こちらの右腕を相手の身体に叩き込むことが可能だろう。
(だが……それはできない。己れの命は飽くまで復讐のためにある)
それがスカーの結論だった。
自分の命と引き換えに神父の命を奪っても、復讐が遂げられなければそれはスカーにとっては敗北も同然。
この舞台に一人、そして元の場所にはもっと大勢、仇が残っている。
スカーはここでは死ねない。
だが、逃走も難しい。
思考の迷路にはまりこんでいたスカーに、不意に言葉がかけられた。
「傷の男よ。君は何を求め、この殺し合いに乗っている?」
彼がこの質問を受けるのは二度目だ。
ドモン・カッシュ。
この舞台で出会った三人目の男。
一度目の質問には答えなかった。
しかし、会話により、相手の気が少しでもそれれば儲け物。
そう思い、今度はスカーも構えは崩さず、注意を払いつつ言葉を返す。
「……復讐だ」
「ほう?」
隙こそ生まれなかったものの、神父は興味を引かれたようにわずかに目を見開いた。
さらに言葉を繋いでくる。
「君のその修羅のごとき執念の正体は復讐心か。誰か縁者でも、ここで殺されたのかね?」
「……いいや。イシュヴァールの虐殺。そして己れはイシュヴァール人だ。これだけ聞けばおおよそ推測はつくだろう」
スカーはここにいる者たちが異なる世界から集められたということを、未だ知らない。
故に、その内容を言峰が知るはずもないが、虐殺という言葉からそれなりに予想はできた。
「虐殺に対する復讐か。なるほど、その怒りは人として当然の感情だ」
大いに興味をひかれたようで、神父の思考が内へ向かうのが見て取れた。
スカーはそれを見ながら、僅かずつ距離を詰める。
残る全力を振り絞って接近し、右腕の一撃を叩き込む。
もう少し接近できればそれが可能だ。
何がそんなに興味があるのか知らないが、この神父はこちらの話について考え、こちらへの警戒を怠っている。
(己れを説得しようとでも考えているのかもしれないが……無駄だ)
通常時なら一秒もかからず移動する距離をスカーは永遠とも感じる時間をかけて進む。
神父は考えているためか、気付かない様だったが、再び疑問を発してきた。
「それで、君は理解しているのか?」
「何をだ?」
そして遂に『その地点』に到達する。
(今!)
スカーが一気に跳躍しようとしたその時、神父の言葉がスカーの耳を打った。
「殺し合いに乗る君の行いもまた、虐殺と同様だということを、だ」
それを聞いたスカーの心に僅かな、そう、ほんの僅かな動揺が走った。
そしてそのほんの僅かな動揺を神父は逃さなかった。
「がっ!?」
スカーの身体に衝撃が走った。
滑るような足運びで一瞬にして距離を詰めた神父がスカーの腹に肘を打ち込んだのだ。
寸前で気づき、後方に身を引いたが、遅い。
踏み込みと同時に放たれた一撃はスカーの身体を浮かし、後方へ飛ばす。
この機会を逃すつもりはないと、神父はスカーを追う。
対するスカーは何とか着地し、踏みとどまろうとするが、衝撃は殺し切れず、身体が後ろに流れる。
瞬時に判断を切り替えた。
逆に地を蹴ってバク転の要領で身体を回転させ、右腕を支えに神父の顎めがけて両足の蹴りを放つ。
蹴りは仰け反るようにかわした神父の顎をかすった。
だが、効果は十分。
回避行動によって神父の突進の勢いは止まる。
一回転したスカーは、そのまま地についていた右腕に紫電を走らせる。
地面に亀裂が走り、爆散した。
■
「逃がしたか……」
土煙が晴れた後、言峰は呟いた。
「まあ、良い……。考えれば、切開するには時間も足りん」
もう一つ令呪を使えば傷の男を倒すことも可能だったかもしれない。
だが、通常なら立ち上がれぬほどのダメージを負った身体をなお支える憎悪。
その憎悪をつくった傷を切開したい。
その根源的な欲求が言峰に傷の男を倒させなかった。
あわよくば戦闘力を奪う程度に留め、時間をかけて傷の男の古傷を抉りたかったのだが……
「私もつくづく、欲の深い男だ」
自身に呆れつつ、言峰は笑う。
あるいは、手加減しようとしたことにより、彼自身、傷の男の反撃を受け、殺されたかもしれない。
だが、仮にそうなっても己を通した結果の選択ならば、彼は後悔すまい。
自身の悪を好む性質を是とする言峰はそういう男だった。
「……む?」
潜んでいるかもしれないスカーを警戒して周囲を見回した言峰の目に、夕陽の反射光が飛び込んできた。
拾い上げると、青い石のペンダントだった。
傷の男か、黒い牧師との戦闘中、相手のデイバックからこぼれた支給品だろう。
詳細はわからないが、もしかしたら傷の男にとって価値があるものかもしれない。
ならば再会の縁になるかもしれぬと考え、言峰は十字架と一緒にそれを首にかける。
「さて、シータたちを追うとしよう」
■
いくらも行かぬうちに、言峰の目に異様な光景が広がった。
橋を中心に、周囲のビルがまるで巨大な刃物で切り裂かれたかのように刻まれているのだ。
周囲に人影はなく、砂塵が舞うだけである。
すでにこれを起こした者たちは先へ進んだのだろう。
「ほぅ……。これほどの破壊が起きるとは……。早速、令呪を使ったか?」
だが、どこにも死体も血痕もない。
決着はまだついていないということだろう。
言峰の心の中に期待が湧く。
あの強い、そして清廉な少女は。
殺すのか、殺さないのか、殺されるのか、殺させるのか。
誰であろうと傷つくことを好まぬ彼女が、いずれの道を選ぶのか。
「さあ、シータ。見せてくれ、君の答えを。見せてくれ、君の苦しみを」
秘跡を取り行う聖者のように厳かに呟き、言峰は歩きだした。
橋を渡り、卸売り市場へと足を運ぶ。
急ぐことはない。
答えはすぐそこにある。
【B-5・橋の上/一日目/夕方】
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:左肋骨骨折(一本)、疲労(中) 、令呪(六画)
[装備]:飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:荷物一式(コンパスが故障、食糧一食分消費。食料:激辛豆板醤、豚挽肉、長ネギ他)
[思考]
基本:観察者として苦しみを観察し、検分し、愉悦としながら、脱出を目指す。
1:エド、シータと合流し、情報交換する。ただし、シズマドライブに関する推測は秘匿する。
2:卸売り市場で豆腐を手にいれ、麻婆豆腐を振る舞う。
3:エド、シータを観察、分析し、導く。
4:シータがウルフウッドにどう対応するか、非常に期待している。
5:殺し合いに干渉しつつ、ギルガメッシュを探す。
6:傷の男(スカー)に興味。
[備考]
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。
※会場がループしていることに気付きました。
※シズマドライブに関する考察は以下
・酸素欠乏はブラフ、または起きるとしても遠い先のこと。
・シズマドライブ正常化により、螺旋力、また会場に関わる何かが起きる。
※令呪は、膨大な魔力の塊です。単体で行使できる術は、パスを繋いだサーヴァントに対する命令のみですが、本人が術を編むか礼装を用いることで、魔術を扱うにおいて強力な補助となります。
ただし使えるのは一度限りで、扱い切れなければ反動でダメージを負う可能性があります。
人体に移植される、魔力量が桁違いのカートリッジとでも認識してください。
■
(何という未熟! 相手の隙を誘うつもりが、逆に動揺させられるとは!)
スカーは走りながら自身を叱咤していた。
既に神父は撒いている。
だが、激情がスカーを走らせていた。
生殺与奪の権利を捨て、この会場にいる者すべてを殺す。
それを覚悟し、実際に二人もの仇ではない人間の命を奪った。
だが、他人から見た己の姿を突き付けられた瞬間、スカーの心は古傷が開いたような痛みを感じ、動揺した。
(己れのしていることが国家錬金術師と同じだと……!?)
ギリギリと歯を食いしばる。
ドモン・カッシュの言葉、先の神父の言葉、温泉で命を奪った男の言葉。
所詮は言葉にも関わらず、何故自分はこれほど心を乱しているのか。
彼らへの、そして何より不甲斐ない自分への怒りが後から後から湧く。
気づけば川を越え、巨大な建物の前にいた。
息を整え、どうにか気持ちを平静に戻す。
周囲を確認すると、どうやら『ショッピングモール』の前のようだった。
(だいぶ離れたな。今から戻っても誰もいるまい……)
そして冷静になって気がつく。
紙使いとの戦いで負ったはずの裂傷と右足の傷の痛みがないことに。
あれだけ走れば足の傷は痛みを訴えるはず。
不審に思って血止めの布を引きはがすと、やはり傷が消えていた。
「胡散臭いと思っていたが、本物だったか……」
スカーは服の内側を探ると、青いラインの入った黄金の鞘を取り出した。
紙使いの女が所持していた鞘は、その内側に入っていた紙によると、身につけているだけで傷を癒すという。
今は使える物は何でも使う必要があったため、神父と牧師の戦いに割り込む直前に身につけておいたのだ。
但し書きに「魔力がなければ効果を発揮しない」と書かれていたが、どうやら自分はその魔力とやらがあるらしい。
「しかし、そうなると拙いな……」
自動で傷が癒えていくなら、左腕の骨が繋がることもあるかもしれない。
だが、その際に奇妙な形に繋がることがあれば、スカーにとって問題になる。
変形した腕は身体のバランスを崩し、格闘する上で隙を作る元となりかねない。
繋がらないとしても、動かない腕は固定しておかねば邪魔だ。
スカーは副木になるものを探してショッピグモールの中へ足を進めた。
「仕方あるまい……。まだまだ殺さねばならぬ相手はいるのだから……」
呟いた直後、先ほどの動揺と不覚を思い出し、スカーはまた己への強い憤りを感じるのだった。
【A-7・ショッピングモール前/一日目/夕方(放送直前)】
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、全身打撲(治療不要)、肋骨、左肘骨折(要治療)、腹、肺にダメージ
自分への憤りと僅かな動揺、アヴァロンによる自己治癒中
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:デイバック、支給品一式@読子(メモは無い)、不明支給品(0〜1個)
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:ショッピングモールで左肘の副木になるものを探す。
[備考]:
※会場端のワープを認識しました。
※スカーの右腕は地脈の力を取り入れているため、魔力があるものとして扱われます。
【アヴァロン@Fate/stay night】
全て遠き理想郷。
セイバーの失われた宝具で、エクスカリバーの鞘。
真名を開放すれば如何なる攻撃も寄せ付けぬ無敵の守りになる。
セイバーがいないため、アニメ本編ほどの劇的な効果は望めないが、
魔力があれば身につけているだけで少しずつ身体の傷を癒す。
過去ログが引っ張り出せないんですが
>>35 どのスレかは知らないが、専ブラとか使えば見えるよ
作品見るだけならまとめwikiを進めるけど
過去ログはその、作品を読んだ後の余韻が続かない
余韻?www
照明に照らされた映画館の中。ここに5人の男女が集まっていた。
今この場所では、とある作業が行われている。
カチカチという音と共に時折“ラセーン”という何とも奇妙な音が聞こえる。
こんな事になった要因は三十分程前にもたらされたある物による。
◇ ◇ ◇
「…こいつらが俺が今までに会ってきた人物だ。で起きた事はさっき言った通り」
「ニコラス・D・ウルフウッド、そして鴇羽舞衣ですか…。この二人はほぼ完全に黒という事ですね。貴方が行動を共にされていた玖我なつきさんが会われたというドモン・カッシュを名乗った少年も気になるところですが…」
映画館に着いた直後、軽い自己紹介を行い、今は情報交換の最中である。
ラッドの方は既に聞き終え、今は衛宮士郎の動向を聞いている。
それらは明智が聞き出し、そしてねねねが記録する。役割分担は自然とこうなっていった。
ねねねは手製の警戒者リストに新たにゲームに乗っていると確定した者を無言で書き記していった。
(鴇羽舞衣…か。本来はこんな殺し合いに乗る娘じゃなかったんだろうけどね…)
あのタコハゲにいいように乗せられていると思うと無性に胸糞が悪くなってくる。
「次はあなた方の持っている支給品なんですが…何か螺旋に関連しているものはありませんか?少し気になる事がありまして」
ラッドも士郎も首をかしげる。
「知らねぇな」
「悪いが心当たりはない。ああ、役に立ちそうな物ならこんなのはあるけど」
そう言ってバッグからある物を取り出した。
「携帯電話…か?」
ねねねが士郎に尋ねると
「ああ、それはレーダーにもなってるらしい。支給品の名前を入れればそれが支給されていた人の場所が表示されるってロイドさんが言っていた」と答えた。
それを聞き、明智は目を見開いた。
「なんですって?」
◇ ◇ ◇
そして今の状況に至る。ねねねと明智は共に探している人物がいるので携帯の入力に勤しんでいる。
ラッドは銃の手入れを行い、士郎とイリヤはそれぞれのデバイスと何やらやっているようだ。
「…終了です」
明智のその声と共に全員が注目する。
「士郎君の所持していた携帯電話、私と菫川先生の所持していた名簿、イリヤ君の所持していた支給品リスト。これらによって、我々はこのバトルロワイアルに参加している者達についての情報をほぼ完璧に把握する事が出来ました」
これからの行動について明智が音頭を取る。
「さてこれからの行動ですが…まずは衛宮君。君は18:00に図書館に行く予定だと言っていましたがそれは一旦止めていただけますか?」
「なっ…!何でさ!こっちから呼び出しをして、放っておけってのか!」
「今ドモン・カッシュを名乗った少年についてはある程度絞り込みが可能です。そもそも今この場で少年と呼称出来る人物は少ない」「む…」
この言葉に士郎は口をつぐんだ。
「ガッシュ・ベル、チェスワフ・メイエル、高嶺清麿、ジン。この4名です。しかし最後の二人はラッド氏が最初の方に知り合った人物、つまりバトルロワイアルが始まってすぐに出会っているし、その場所からいっても除外出来る」
そして明智は淡々と士郎に諭していく。
「そして残りの二人は…携帯を見たところ何の因果か同じ場所にいるようです。この二人の動きに注意していれば図書館に行く必要はありません」
「…分かった。とりあえずアンタの言う通りにしておくよ」
「シロウ…」
しかめっ面をしながらも了承する士郎をイリヤは心配げに見つめていた。
「次はラッド氏ですが、フラップターを使って高嶺清麿君とジン君を迎えに行って頂けますか?」
「オイオイ何で俺がんな事しなきゃいけねんだ?そいつは命令か?それともお願いか?ああ!?」
「お願いですよ。この中で今フラップターを運転出来るのは貴方だけです。そして高嶺清麿君、ジン君と顔見知りである貴方が行かれるのが迎えに行った時に一番トラブルが少ないでしょう」
「………」
「そして何より1人で行動する際にはこの中で一番サバイバリティに長けているようですから」
ラッドの説得には骨が折れそうだ…。しかし失敗は許されない。これは彼が一番適任なのだから。
「そろそろ殺しがしたいんだがなぁ!あの紫爺とかよぉ!」
「戦力を整えてからやるのではなかったのですか?武器も十分ではないでしょう?」
「…けっ!わあったよ。ただ見付けたら殺るの止める自信はねーぜ?」
「…ええ、お願いしますよ?」
案外楽に了承して貰えたようだ。明智は心中で安堵する。
「私と菫川先生とイリヤ君と衛宮君はラッド氏が戻って来るまでしばらくはここで待ちです。イリヤ君にも魔法習得の為に時間が必要でしょう。いいですか皆さん?」
「ああ」
「分かったわアケチ」
「………」
全員が了承する中で、ねねねだけがボーッとしていた。時折「読子はここに…」とブツブツ呟いている。
「菫川先生?よろしいですか?」
「あ?あ、ああ…分かったよ」
明智はねねねの様子をいぶかしみながらも続ける。
「もし何かがあってここを離れざるを得ない場合にはここに向かって下さい」
そう言った明智が指差した一点。そこは…
「刑務所?どうして?」
イリヤが不思議がる。
「ここならば広い上に囚人を逃がさないように外敵からの守りも固いはずです。危険な犯罪者ならそれだけで寄り付きたくないというイメージが働くかもしれませんしね。ま、これは希望でもありますがね…」
◇ ◇ ◇
「出来れば高嶺清麿君を連れて一度戻って来てください!彼は病院にいるようです!ジン君はD-7に!」
「場所は最初から分かってるよ!ってD-7ぁ!?」
ブーンという音を残してラッドは映画館の前から飛び去っていった。
「さて、我々は中で彼の帰りを待つとしましょう。この携帯を調べたりと色々やることもありますしね」
ラッドを見送った面々は明智に先導され中に戻る。だが
「私はここで魔法の練習をするわ。シロウもアケチもネネネも先に中に入ってて」
イリヤがそんな事を言い始めた。
「なら俺もイリヤの近くに…」
そんな事を言うイリヤの近くに士郎は居ようとする。
「ダメ〜!後で見せてビックリさせてあげるんだから!」
「でもなイリヤ…」
「ダメなものはダメ!」
頬を膨らましてイリヤは怒る。
「…はは、しょうがないな。何かあったら直ぐに中に逃げてくるんだぞ?」
イリヤのワガママに負け、士郎が折れる。
「マッハキャリバー、だっけか?いざというときはイリヤを頼む。俺も直ぐに駆けつけるから」
するとねねねも横から口添えをする。
「私からも頼むわよ。マッハキャリバー」
『お任せ下さいTeacher…とBrother?』
「何でさ!?」
こんなやり取りを行った後に士郎とねねねは映画館の中に戻っていった。
「さて、始めよっかマッハキャリバー。今私が使える魔法はどんなのがあるの?」
『防御魔法が殆んどです。まずは基本的なプロテクション、そしてシェルバリアという魔法を使えるようになるのがいいと思われます。緊急防御手段としてリアクティブパージというのもありますが…』
「防御か…分かったわ。じゃあ早速練習しま…!?」
その時である。
突如イリヤの体がふらついた。
「…っ!」
『どうしました?仮マスター』
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。彼女は一千年の歴史を持ち、聖杯の器を用意するアインツベルン一族の少女、聖杯戦争を勝ち残る為に作られたホムンクルスである。
しかし聖杯戦争における彼女の役割はそれだけでは…ない。
聖杯とはあらゆる願いを叶えてくれる万能の杯である。
ただし、それは実際に存在する訳ではなく、大量の魔力を用意された器に籠め、聖杯としての力を宿らせるのである。
だがその宿らせる器が破壊されてはどうしようもない。それを防ぐ為にアインツベルンは『自立行動の出来る生きた聖杯』を用意した。
それこそがイリヤスフィールの正体であり、その最大の役割だった。
「…ううん、何でもないよマッハキャリバー。早くそのプロテクションとシェルバリアっていうのを練習しましょう」
『…分かりました。あまり無理はなさらずに』
そして聖杯に籠めるその魔力は何処から来るか。それはサーヴァントの魂である。サーヴァントは死ぬと無色の力となり聖杯に取り込まれる。しかし…その魂を取り込む毎に人としての機能を失っていく。
イリヤの身体には今まさにその症状が進行してきていた。
時は放送直前、まだ誰も知る由もないがランサーが死んだ直後の事だった。
支援だああああああああああああああ
支援だあああああああああああ
【C-5・映画館/一日目・放送直前】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:フラップター@天空の城ラピュタ
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ファイティングナイフ、超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾5/5)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:明智たちとの情報交換。少なくともまだ殺すつもりはない。
1:ジン、清麿と合流。望むなら明智たちの所へ連れて行く。
2:東方不敗と鴇羽舞衣の所に戻ってぶち殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
5:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※ソルテッカマンを着込む際、ロイドの荷物を預かりました。
※明智たちの仲間になってはいないものの、友好関係を築く意思はあるようです。
【チーム:戦術交渉部隊】
[共通思考]1:各種リスト、便利アイテムを利用した豊富な情報量による仲間の選別及び勧誘。
2:基本的には交渉で慎重に。実力行使も場合によっては行う。
3:首輪の解析・解除が可能な者を探す。
4:主催者の打倒・ゲームからの脱出。
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、参加者詳細名簿、携帯電話
予備カートリッジ8、ダイヤグラムのコピー、首輪(キャロ)、ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]
基本思考:犯罪芸術家「高遠遙一」の確保。ゲームからの脱出。
0:ラッド・ルッソの説得、及び彼の仲間の勧誘。
1:首輪を調べる。ただし不安要素が多いため解体作業には着手しない。
2:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機。
3:ゲームに乗っていない人間を探しつつ施設を回る。
4:金田一等仲間の知人を探す。
5:明日の正午以降に博物館の先に進む。信頼できる人物にはこのことを伝える。
[備考]
※金田一等探していた人物の場所を知りました。
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
※ガジェットドローンは映写室に繋いだ時点でいったん命令がキャンセルされています。
再度偵察に出すかどうかは未定です。
※ラッドは未だにどう動くかは測りかねています。
【携帯電話】
@全参加者の画像データ閲覧可能。
A地図にのっている特定の場所への電話番号が記録されている(どの施設の番号が登録されているのかは不明)。
全参加者の現在位置表示システム搭載。ただしパスワード解除必須。現在判明したのはロイドと舞衣の位置のみ。
パスワードであるランダムアイテムの『正式名称』は全て入力されました。他にも何か表示されたり機能が解除されているかもしれません。
それ以外の機能に関しては詳細不明。
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、詳細名簿+@アニロワオリジナル、手書きの警戒者リスト
:ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
[思考]:
1:おいおい、ラッドは大丈夫なのか?
2:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機?
3:読子はあそこに・・・
4:読子等仲間の知人を探す。
5:詳細名簿を参照に、危険人物、及び死亡者の知り合いを警戒する
6:柊かがみに出会ったら、ボン太くんのぬいぐるみと『フルメタル・パニック!』全巻セットを返却する。
7:読子が本当に自分の知る人物なのか確かめる。※
最終行動方針:打倒タコハゲ
[備考]:
※読子の居場所を知りました。死体かまでは知りません。
※詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。
※詳細名簿+の情報から、参加者それぞれに先入観を抱いている可能性があります。
※殺人鬼であるラッドと、それを勧誘する明智に軽度の不信感を抱いています。
※思考7、パラレルワールド説について。
富士見書房という自分が知り得ない日本の出版社の存在から、単純な異世界だけではなく、パラレルワールドの概念を考慮しています。
例えば、柊かがみは同じ日本人だとしても、ねねねの世界には存在しない富士見書房の存在する日本に住んでいるようなので、
ねねねの住む日本とは別の日本、即ちパラレルワールドの住人である可能性が高い、と考えています。
この理論の延長で、会場内にいる読子やアニタも、ひょっとしたらねねねとは面識のないパラレルワールドの住人ではないかと考えています。
※イリヤと士郎の再会により、自分の知る人物がやはり同じ世界の住人ではないかと疑い始めました。
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、腹部、頭部を強打、左肩に銃創(処置済み)、軽い貧血、精神疲労(中)
[装備]:クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、レガートの金属糸@トライガン, ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ、閃光弾×1
[思考]
基本方針:何があってもイリヤを守り抜き、これ以上犠牲者を出さない。
1:イリヤが無事で本当によかった。
2:ラッドが仲間と合流しだい、鴇羽舞衣を止める。
3:できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は――
4:とりあえず映画館で待機。
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。
真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※チェスに軽度の不信感を持っています
※なつきの仮説を何処まで信用しているかは不明
※ロイドの支給品一式を受け取りました。その後、食事によって多少疲労が軽減したようです。
※レガートの金属糸をフラップターから回収しました。
※ある程度現実的思考になりました。
明らかに自分が役立たずだったり、犬死にするようなケースでは冷静になれるようです(精神的にダメージがあります)。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル、支給品リスト@アニロワオリジナル
[思考]:
基本行動方針:シロウと一緒にゲームを脱出!
0:これってまさか・・・
1:絶対にシロウを守り抜く。
2:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる。
3:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機。
4:仲間の知人を探す。
5:放送で呼ばれた死亡者の知り合いを警戒する。
[備考]:
※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
※ランサーが死んだ事で魂が取り込まれました。今は然程影響はありませんがもしギルガメッシュが死んだ時はかなりの障害が起こる可能性があります。
※プロテクションはその場で張る魔法障壁、シェルバリアは熱なども防ぐ半球状のバリアで一度張るとしばらく消えません。ただしプロテクションよりも消費魔力は高いです。
リアクティブパージは防御魔法やバリアジャケットで防ぎきれない場合に使う緊急手段でバリアジャケットの外装を爆破してダメージを弱めるものです。使った後は実質的に無防備な状態に陥ります。
他のバリアジャケットにも同様の機能がついているため士郎にも使用可能かと思われます。
58 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/14(木) 04:37:31 ID:rIWZDMFT
>>58 生贄はここだけで十分。
ここもしたらばでだれもこまってないしさ。
Gは馬鹿なんだから一生ここであそばしとけ。
そっちの方が見てて楽しい。
まあどんなに叫ぼうが何しようが2chの企画では既にないさ
こちらはこちらで企画をどんどん立てていけば自然とクズどもは消える
今一番勢いのある漫画ロワや一番勢いのあったギャルゲの2chを荒らさないあたりGの目的はただの嫌がらせだろな。
Gはギャルゲが大好きだから、好きなジャンルは荒らせませんよってことか。
底がしれてる。
ここ勢いあったんだけど潰れたね
227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/12(火) 00:09:45 ID:WZig2U7W
>>222>>226はなんなんだろ?
毒吐きでアニロワアンチを過激にたたいて、うざがられてたやつか?
マジでアニロワアンチが変装してるんじゃないかと思ってきた
アニロワアンチの人はこいつにけんか売られても、アニロワに過激な荒らしをするのだけはよしてくれ
てかもしかしてG?
228 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/12(火) 00:24:58 ID:R26XNyIT
開幕当時から一貫して「こんな作品群じゃ駄目だ」って言い続けてる人が居るのは知ってる。
投票の結果が気に食わなくて、アニロワ銀なんてのを立てた人が居るのも知ってる。
「必ず失敗する」「こんなんじゃ失敗だ」と、基準を一切明確にしないまま叫び続けてる人が居るのも知っている。
あの手この手で、何とかしてアニロワ2nd=失敗だと印象付けようとしている人が居るのを知っている。
この人がSSを書けないってのは、最早周知の事実。
---
こいつただのKYなんじゃね?
>>58-59 >>60 構ってチャンが喜ぶような反応を返すなと何百回言えば分かるんだ?
前スレでも同じ事が繰り返されたのを忘れたのか?
半ば頓挫してるような企画で何言ってんだ
>>65 構ってチャンが喜ぶような反応を返すなと何百回言えば分かるんだ?
前スレでも同じ事が繰り返されたのを忘れたのか?
このロワって批判するとすぐ潰しにかかる人いるよね
wikiの大本営発表が滅茶苦茶苦しすぎてワロスwww
>>60の新企画マダーチンチン
所詮は口だけで何も行動できない屑共だな。
あほはおまえだ
とあほが申しております。
>>11で書いてる討議ってどこでやってんだよ?
やるなら早く企画始めろや。
出来ないならただの荒し粘着決定な。
おまえの決定になんの価値がある
お前の決定には価値があるのか?
>>66 レッテル張り乙。
これだけのペースで良作が投下されるなら順調だろ。
どっかのゴキブリが書いた文章集合体とは訳が違う。
という大本営発表でした
と駄文しか書けないゴキブリ。
2chねらーはゴキブリだそうです皆さん
>これだけのペースで良作が投下されるなら順調だろ。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
>どっかのゴキブリが書いた文章集合体とは訳が違う。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
一般住人からしてこの高慢っぷりは酷過ぎ
書き手はもっと狂ってるんだろうな
狂ってるのはお前一人だけだから安心汁。
ID:RzQAXgwE一人だけですね
ID:RzQAXgwE=◆B0yhIEaBOIは本当にwikiでレッテル貼りつけするのに必死です
お前ら学べよ…。
とゴキブリさんでした
>>85 あのなぁ、過去スレでゴキブリはお前みたいな反応をすると喜ぶって散々証明されただろうが。
何で今更かまって君を喜ばすんだ……!?
お前がバカにされるのは勝手だがな、このスレで反応と言う撒き餌を与えてんじゃあねえと何回言われてると思う?
そんなにGと遊びたきゃ最悪板に専用スレでも立てろ、このスレをくだらん事で消費すんな。
と反応するゴキブリ
88 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/17(日) 00:38:09 ID:Prwj+ZQl
企画を潰すには荒らしが必要不可欠だからね。
荒らしと討論してあげて、熱を冷まさないようにしないと。
ぶっちゃけ愚痴スレで愚痴ってるのに絡んでるのも、そいつらをヒートアップさせて荒らしに昇華させたいからだしw
「実に、愉快な気持ちです」
孔雀羽の男はそう言った。ニンゲンが醜く死んでいく様は見ていてとても気持ちの良いものですねと。
王は答えない。
何かを考えるような、あるいは待ち望むことでもあるかのように頬杖をつきただ前を見ている。
「このような趣向を考え付かれるとは、螺旋王は本当に素晴らしいお方だ」
自らの才覚を誉め讃えられようと王は眉一つ動かさない。
男の言葉を否定することも、肯定することもしない。
抱えきれない程の歓喜に震える男にとっては王のそのような反応さえも嫌なものではなかった。
時刻がある一点に至り、さらなる恍惚を求める男が全身を大きく広げて叫ぶ。
さあ、奴らが血にまみれて泥のように死んでいく姿をもっと私にお見せくださいと。
◇
人間とは面白いな。
少しの力でたやすく狂う者、逆に死を目前にして微塵も己を揺るがさぬ者。
強大な力を持ちながら全力でそれを振るわぬことに誇りを持つ者。
絶望的な状況であるにも関わらず、己の思うまま上を目指すことを止めようとしないその力。
人の身に刻まれた二重螺旋の為せる技、か。
ふん、死者の発表を行う。
ミー
糸色望
読子・リードマン
剣持勇
マオ
キール
クアットロ
ドーラ
神行太保・戴宗
八神はやて
クレア・スタンフィールド
金田一一
リザ・ホークアイ
ロイ・マスタング
スバル・ナカジマ
ランサー
エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世
以上、17名。
次に禁止エリアの発表だ。
19時より A-3
21時より G-7
23時より C-8
以上だ。
じきに日は完全に沈み、貴様等の本能が最も嫌う夜となる。
襲撃する者と、される者。
どちらも生き残るためには新たな方策が必要となるだろうな。
一変した世界の中で貴様達がこれから私に何を見せてくれるのか、楽しみにして
いる。
ではな。
◇
「新たな死人の名を聞いて奴らはどんな表情を見せるでしょうね」
王は答えない。
「今自分がいる絶望に、更に底があることを知るでしょうか」
王は答えない。
「さっきまで甘い言葉を交わしあった仲間をどのようにして殺すか思案するでしょうか」
王は答えない。
「愚かにも我らに牙をむき、醜悪な肉の塊と化すのでしょうか」
王の答えがなくとも、男は言葉を止めない。
王の口の端の歪みが、王もまた自分と同じく満ち足りた気持ちでいることを示すものだと知っているからだ。
なんだこりゃ
93 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/17(日) 12:36:28 ID:92Wfqo9c
つまんないな
主催者がしょぼ過ぎるw
ここまで放送がつまらないロワも珍しい。はっきり言って削除して書き直させるレベルだろ
、、、いや、いっそのこと本編ごと全部書き直すべきか?
うん。すれば?
別に止めないから。
そのためにここで話し合ってるんだもんな
口先ばっかりだな
>>98 書きなおしたという意見に対して書き直せばといって自演扱いされる意味がわからない。
オレは
>>94じゃないよ。
>>99 君はもうちょっとスルースキルを身に着けるべきだね
ちょっと上の流れを見てみな、こいつは話の通じない典型的構って厨ってのがよく分かるよ
特に過去スレを見て、ゴキブリの対処法が分かったならスルーに勤めな
あーあ、早く終わらねぇかな
3rdが待ちきれん
103 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/20(水) 18:21:21 ID:eBvvTPi6
あ
いまやりゃいい
破棄したほうが早いな
「ん……」
柊かがみは目を覚ます。
寝ぼけ眼をこすりながら、壁にかけられた時計を確認する。
時計の針が差しているのは6時30分。
あれからだいたい1時間ぐらい寝ていたらしい。
体を伸ばし、ゆっくりと意識を覚醒させる。
そしてかがみの眼の前には一人の少女が倒れている。
少女の名は結城奈緒。さっき散々かがみを切り刻んでくれた人物である。
4つも年下だが生意気極まりない。ゆたかちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいだ。
これぐらい静かなら可愛げもあるのだが、とかそんな感想を抱きながらじっと見ていると、
その視線に応える様にしてゆっくりとその目蓋を開けた。
「あ、起こしちゃった?」
「……ひッ!?」
何ともなしに手を伸ばしたら、身体をびくっと震わせて後ずさられた。
その原因は確かにかがみのとった行動なのだが、正直なところちょっと傷つく。
「……怖がらなくても大丈夫よ。もう何もしやしないわよ」
「あ、アンタ……いったい何なのよ」
「何度も言わせないでよ。私の名は柊かがみ……“不死身の柊かがみ”よ」
込み上げる羞恥心を押さえ込んで、わざわざ二つ名をつけて名乗る。
せっかく強い立場にいるのだ。強者を演じておいて損はない。
そこでやっと女の子は思い出したように自分の左目に手を当てた。
「安心しなさい。あんたの左目は無事よ。
……勘違いしないでよね。五体満足のほうが利用価値があるってだけよ」
わざと冷徹に、何でもないことのように振舞う。
どうやらそれは功を奏したようで、奈緒はかがみに対して何も言わず、ただ強く睨みつけるだけにとどまっている。
その視線こそ強気だが、その奥には紛れもない恐怖が映っている。
……まるで木津千里を前にしたかつての自分の様に。
そしてその虚勢を支えているのはきっとあの金ぴかの人の存在なのだろう。
だけど彼はもう――
「フン……ようやく目を覚ましたか小娘ども」
「え……」
姿を現したアルベルトの姿に呆ける女の子。
人間、信じられないことが起きると思考が止まってしまうものなのだ。
そう、アルベルトがここにいるということは金ぴかの人が――彼女の仲間が死んだということ。
けれどアルベルトはそんな感傷などお構い無しに近づくと、その手を少女の眼前に翳す。
「では小娘……貴様の知っていることを洗いざらい吐いてもらおうか。
でなければ……分かっているな?」
* * *
「……なるほどな。あの道化も王を名乗るだけあって眼力は確かだったというわけか」
学校の図書館で手に入れた書物から得た異世界の情報。
“本人が戦う”ということに意味があるという推察。
施設には二種類あり、“当たり”の建物には何らかのヒントがあるのではないかという考察。
そして博物館に弱者の救済措置となる“何か”があるというメッセージ。
それらの情報を手に入れたアルベルトは満足げに頷いた。
正直、予想以上の成果だ。
黄金王は手駒としては最悪だったが、贄としては上物であったらしい。
そしてもう一人の贄――結城奈緒は一通り喋り終わった後、茫洋とした顔つきのまま、部屋の隅でうずくまっている。
よほどあの慢心の王の強さに信頼を置いていたのだろう。
完全に放心状態にあるようだ。
これがBF団であれば情報奪った以上始末するのが普通だが、この少女にはまだまだ働いてもらわねばならない。
「さて、貴様の処分だが……勝者の言うことを聞いてもらおうか。貴様の主の分、ギルガメッシュのまでな」
奈緒の体がビクリと震え、その顔がアルベルトのほうに向けられる。
ギルガメッシュという名を聞いたからだろうか?
その瞳に僅かながら意思が戻ったのを確かめ、アルベルトは口を開いた。
「良いか? 貴様には今から6時間の間に情報を集めるだけ集めてもらう。
勿論ワシらの名前を出さずに、な。
報告は……そうだな、映画館で聞くとしようか」
つまるところ、命を助ける代わりに別行動をとって情報を集めて来い、というのだ。
だがその作戦には呆けていた奈緒にだってわかるぐらい、大きな穴がある。
「……はぁ? アンタ馬鹿じゃないの? そんな事言われてハイハイ言うこと聞く馬鹿がどこにいるってのよ」
あまりに馬鹿らしい提案に恐怖すら忘れて、いつもの口調で話してしまう奈緒。
それもそうだ。ここで奈緒を解放したところで奈緒が約束を守ることなどありえない。
いや、よっぽど律儀でない限り
だがアルベルトは一層笑みを濃くすると、怪訝な表情のかがみに何かを耳打ちした。
「え!? でも……ああ、そういうことね」
「うむ、貴様にはそれだけの力がある」
かがみは覚悟を決めた顔になるとゆっくり歩を進める。
それだけで奈緒の脳裏に先ほどの光景が再生され、無意識のうちに口を抑える。
かがみは髪を二つに束ねていたリボンを無造作にほどくと、奈緒の左手をとり結び始めた。
「ちょっ……何すんのよ!」
「いいからじっとしてなさい。
……黄昏よりも暗き存在(もの)、血の流れより紅き存在(もの)、時の流れに埋もれし偉大なる汝の名において、我今ここに闇に誓わん。
我等の前に立ち塞がりし全ての愚かなるものに我と汝の力もて、等しく滅びを与えんことを……」
ぶつぶつと感情をこめずに呟きながら、リボンを奈緒の左手に巻きつける。
その不気味さに圧され、奈緒が口を挟むかどうか迷っている隙に左腕に黒いリボンが巻かれてしまう。
「……何の真似よコレ?」
「ねぇ、私が言ったこと覚えてる? 『後であなたから受けた痛みを何倍にもして返す』ってやつ」
忘れるはずが無い。
何故なら未だにその言葉を聞くだけで、自分の意思とは関係なく指先が震えるのだから。
怯えを含んだ奈緒の視線を受け、かがみは笑う。
何てことのない笑みのはずなのに、奈緒の背中からは脂汗が止まらない。
「そのリボンに“呪い”をかけといたから。せいぜい気をつけなさい。
さっきの約束を破ったら、その瞬間にあんたがあたしに与えた痛みが何倍にもなって返って来るから」
「はぁ!!?」
「あ、当然だけど外そうとしても同じことが起きるわよ。
命が惜しかったらそのリボンは大切にしといたほうがいいわよ」
友達との別れ際に『車に気をつけなさいよ』とでも言うかのような気軽な口調。
それが逆に奈緒にとっては空恐ろしいものに感じられ、黒いリボンが毒蛇になったかのような錯覚に陥る。
アルベルトはそんな奈緒の様子を愉快そうに見つめ、玄関のほうを指差す。
つまりは先ほどの『柊かがみの特殊能力』も『リボンに篭められた呪い』もすべてはブラフ。
これ以上ないぐらいに真っ赤な嘘である。
首輪にヒントを得たアルベルトが耳打ちによって授けた策を元にかがみが演じた――ただ、それだけのこと。
「何、急拵えにしては真に迫った演技だったぞ。そうそう嘘だと分かりはすまい」
「……それならいいんだけど……」
さっきの戦闘がトラウマになってしまったのだろう。
かがみから見ても可哀相なぐらい奈緒は怯えていた。
確かにあの様子ならリボンを外すことは出来ないだろう。
だが、それでも確実ではないことぐらいかがみにだって分かる。
何らかのきっかけで真実に気付いたり、あるいは怯えを乗り越えれられれば
不利になってしまうのはどう考えても自分達のほうだ。
いくら多くの情報が欲しいからと言って奈緒を解き放つのはリスクが高すぎる。
まるで何かに焦っているようにかがみには見えた。
と、そこまで考えてかがみはその原因に思い当たった。
簡単な話だ。自分の気絶中に何があったかを考えれば答えはおのずと姿を現す。
何故ならば彼が今まで自分から口にした名前は、たった一つしかないのだから。
「……アルベルト、もしかしてさっきの放送で……戴宗って人は……その……」
「フン、貴様には関係の無いことだ」
「ちょっと何よその言い草! せっかく人が心配してるってのに……!」
あまりにも完全な拒絶にカチンと来た。
だがそんなかがみの態度を一笑に付すかのように、アルベルトは葉巻に火を点し、一服する。
「……小娘に心配されるほどこの衝撃のアルベルト落ちぶれてはおらんわ。
どうせワシらの目的は変わらん。貴様が螺旋王を喰えばすべては解決することだからな」
先程以上に強烈な意志の篭った瞳でかがみを見下ろす。
「ヤツが死んだというのなら、生き返らせればいい。
貴様が螺旋王さえ食えば覆水は盆に返るのだ」
当たり前のことのように言うアルベルト。
だが、かがみの18年間染み付いた常識は抵抗を試みる。
「その……ホントに死んだ人を生き返らせることってできるの?
螺旋王が嘘ついてる可能性だってあるんでしょ」
かがみの読むライトノベルでは大抵の場合、“死者復活”は最大の禁忌として扱われる。
それは倫理的な配慮や物語上の制約もあるだろうが、困難極まりないことはれっきとした事実だ。
だがそんなかがみの疑念をアルベルトは切って捨てる。
「それはない。少なくともヤツが最初から嘘をついていない限り、“死者蘇生”……もしくはそれに類するものは可能だ」
その言葉に込められたのは絶大なる確信。
それもそのはず。何故ならばアルベルトの知る戴宗は上海で一度死んでいるからだ。
螺旋王が最初から嘘をついている可能性も無いわけではないが、
そんな自分以外に大して効果があるとは思えない嘘をつくメリットが見当たらない。
それに、だ。
「それに、真偽がどうあれ貴様もワシもこの道を駆け抜ける他はない……違うか?」
そう言われては、かがみは納得する他ない。
そう、すでに賽は投げられた後。
自分たちは下り坂を駆け下りているのだ。
止まれば奈落へ向かって一直線に転がり落ちるほどのスピードで。
最後まで走りきってゴールするしか、自分たちの道は残されていない。
「……それもそうね。
じゃあ、これからの行動を確認するけど……後で映画館に行く以外は今までと変わらないでいいのね?」
「いや、もう一つ変わることがある。
これからは強者に対してこちらから積極的に打って出るつもりだ」
そう断言したアルベルトに驚きの目を向けるかがみ。
その目は物語る。それでは先程話し合ったことと矛盾するのではないか?、と
だからアルベルトはそれに答える。言葉を持って。
「我らは誰よりも早く螺旋王の下へ辿り着かねばならん。
そう――『誰よりも早く』、だ。万が一……誰かが螺旋王を打倒してからでは遅いのだ。
そうなる前に力あるものをワシの手で間引いておく、ただそれだけのことよ」
一見理にかなっているロジック。
だがかがみはどうしても後付けのような違和感を拭えなかった。
もしかして戴宗という人が死んだことでヤケになってるのだろうか?
いや、そんな短絡的な思考はこの男らしくない。
それだったら別の目的があるといったほうがまだ納得が……
「!!」
それは偶然の閃き。
かがみの脳裏に浮かんできたのは一つの答え。
(アルベルトはもしかして……強い奴と戦いたがってる?)
――戦闘狂。
戦いに何らかの価値を見出すものたち。
かがみの読む小説には、しばしばそれに類するキャラクターが登場する。
アルベルトの真意がそうであると考えれば、先程のギルガメッシュへの挑発的な言動も、
敵を作る可能性のある奈緒を解き放とうとしているのも理屈が通る。
事実、黄金の王との戦いに向かう時のアルベルトは生き生きとしていたように思う。
その視線の先にいるアルベルトは泰然と葉巻をふかすと、衝撃波を使いそれを消滅させた。
「……休みすぎたな。では、そろそろ行くぞ」
かがみも続くようにして立ち上がろうとして……そしてやっと気づくことが出来た。
自分が今、どういう格好をしているかに。
「ちょ、ちょっと待って! その……せめて着替えさせて!」
いかに不死者といえど着ている服までは再生の論理の外にある。
先ほどまでは必死だったから気にしていなかったものの、
奈緒の放った攻撃によって胸とかお尻とか年頃の少女として結構際どい所が破れている。
傷自体は再生するため、服の破れた箇所からは白い肌が見え隠れしている。
この格好で他人に会えば“そういう趣味の人”と誤解されてしまう可能性は大だ。
その状態でもしもゆたかとでも再会するはめになったとしたら――死ねる。
不死者といえども死ねる。というかむしろいっそ殺せ。
「……服ならばそのクローゼットにでも入っているだろう。
ワシは先でもう一服しておるからさっさと着替えろ」
顔を赤くしたり青くしたりと忙しいかがみを見ていたアルベルトは
深いため息をつきながら家から出る。
「とにかく適当なトレーナーとか動きやすいものを――」
だが、クローゼットを開けたかがみは思わず絶句した。
「……なんだこれは」
クローゼットの中に入っていたのは明らかに民家にそぐわないような服装の数々。
婦人警官用の服、ナース服にバニースーツ……いわゆる“コスプレ衣装”としか呼べない代物の数々だった。
「……どんな人が住んでたのか考えたくないわね」
その用途を考えると正直袖を通したくないが、背に腹は変えられない。
まさかこんな場所で、しかも殺し合いの最中にコスプレをすることになるとは思わなかった。
そして数々の衣装の中からかがみが選んだのは一番まともだと思われる真っ赤なチャイナドレス。
傍にあった姿見に全身を映してみて失笑する。
こなたならともかく、普段なら絶対にやらないような格好だ。
そういえば後輩の子が言ってたっけ。
『コスチュームプレイは魂マデそのキャラになりきるのが“コツ”ネ!』
だとかなんだとか。
ああ、だったらいっそのことなりきってみせようか。
一匹の化物に。そう、異能者"不死身の柊かがみ"に。
なら思い切って髪形も変えてみるか。
……いっそのこと、ポニーテールとかどうだろう。
『お姉ちゃんは……う〜んその〜……』
『かがみのポニーテール、武士みたいでオトコマエ〜』
2人にそう笑われたのが遥か昔のことのようだ。
――でも決して過去だけのものにはしない。螺旋王の力で、私は全てを取り戻す。
普段の自分ならやらない、友人に似合わないと笑われた髪型。
二度と迷わないという決意と今までの“柊かがみ”に対する決別を形にするように、
妹の形見のバンダナをリボン代わりに髪を結う。
今後のことを考えて予備の服を2、3着ディパックに詰め、家を出てアルベルトのもとへ。。
先程までと衣装を変えたかがみを見て、アルベルトは愉快そうに口の端を吊り上げる。
「ほう……馬子にも衣装ではないが、中々どうして似合っておるではないか」
褒められるとは思っていなかったのか、頬を赤らめ『あ、ありがと』と小声で返すかがみ。
だがアルベルトが真面目な顔つきになったのを見て、同様に表情を引き締める。
「では今度こそ行くぞ不死身の。ワシらには一刻の猶予も無いのだからな」
「わかってる。急ぎましょ」
夕日はほとんど沈み、上空には白い月と星が出始めている。
星に願いを、ではないがかがみは願う。
次に出会う奴らはどうか素直に協力してくれますように、と。
削除依頼だしておきます
出しておいた
あら
企画の過去ログ上げようか?
このままでは新規も難しいだろ
【D-4/路上/1日目-夜】
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:全身にダメージ(小)、右足に刺し傷(処置済み)、スーツがズダボロ
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:ディパック×2、支給品一式×2、シガレットケースと葉巻(葉巻-3本)、ボイスレコーダー、
シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム、赤絵の具@王ドロボウJING、
ガンメンの設計図まとめ、王の財宝@Fate/stay night、ミロク@舞-HiME
シェスカの全蔵書(数冊程度)@鋼の錬金術師、首輪(クアットロ)、黄金の鎧@Fate/stay night(半壊)
[思考]:
基本-1:不死者(柊かがみ)に螺旋王を『喰わせ』、その力や知識、およびアンチシズマ管をBF団へと持ち帰る。
またその力を使い、戴宗を復活させ、再戦する
基本-2:基本-1が達成できないと判断すれば、優勝を目指す
1:不死者(柊かがみ)の身を守る。
2:強者にはこちらから仕掛け、撃破する。
3:脱出や首輪解除に必要な情報を集める
4:24:00(0:00)に映画館に向かう
5:他の参加者達と必要以上に馴れ合うつもりはない
6:マスターアジアと再会すれば決着をつける
[備考]:
※上海電磁ネットワイヤー作戦失敗後からの参加です
※ボイスレコーダーには、なつきによるドモン(チェス)への伝言が記録されています
※ですが、アルベルトはドモンについて名前しか聞いていません
※会場のワープを認識
※図書館(超螺旋図書城)のカウンターに戴宗へのメッセージを残しました
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、チャイナ服、ポニーテール
[装備]:つかさのスカーフ、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバッグ×5(支給品一式×5、[水入りペットボトル×1消費])、柊つかさの首輪、柊かがみの靴、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ) 、
奈緒が適当に集めてきた本数冊 (『 原作版・バトルロワイアル』、『今日の献立一〇〇〇種』、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』)
オドラデクエンジン@王ドロボウJING、緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、エクスカリバー@Fate/stay night、
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、がらくた×3、予備の服×2
[思考]
基本:螺旋王を『喰い』、自分の願いを叶える
1:衝撃のアルベルトに協力する
2:24:00(0:00)に映画館に向かう
[備考]:
※会場端のワープを認識
※第二回放送を聞き逃しました
※ギルガメッシュは死亡したと思っています
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました
* * *
二人の下から走り去ってから数分後、奈緒の姿は高速道路の上にあった。
少女は路上に座り込み、渡されたディパックを探っている
食料は没収されたものの、それ以外の名簿や地図などはディパックの中にちゃんと入っている。
更にはご丁寧に地図には禁止エリアがメモされ、名簿には死亡者の名前欄に横線が引かれている。
――無論、【ギルガメッシュ】という名前欄にも。
何ともいえない気持ちで名簿の上を滑っていた視線は、自然と左手の異物へと向けられる。
左手に括り付けられた黒いリボン。
【不死身の柊かがみ】曰く、そこには“呪い”の力が込められているという
普通に考えれば嘘に決まっている。
そんな都合のいい力があってたまるか。
だからこのリボンをはずしても何も起こらない。そのはずだ。
『もう、治っちゃったけど。どうする? 次はどこに傷をつける?』
「――ッ!!」
だが、リボンに触れた途端に奈緒の脳裏にフラッシュバックする。
千切れかけの腕、青白い神経、半分に割れた目玉……
思い出すだけでも喉から胃液がせりあがってくる凄絶な光景。
更にそれが巻き戻る様は生理的嫌悪感を抱かせた。
そう、万が一呪いが本物だった場合、あれがすべて倍になって自分の身に返ってくるのだ。
そして肉体的には普通の女子中学生である奈緒ではまず間違いなく死んでしまうだろう。
いや、一瞬で死ぬならまだいい。
だがもし自分がやったように徐々に傷が刻まれれば……
そう考えた瞬間、まるで凍りついたようにリボンに触れた手は止まってしまった。
「くそっ……ふざけんなっ! ふざけんなっ! ふざけんなっ!」
地団太を踏み、行き場のない苛立ちをアスファルトにぶつける。
足の先に投影するのはギルガメッシュを殺したアルベルトの顔。
こんな訳の分からない呪いをかけた柊かがみの顔。
そして何より、恐怖に飲まれ、動けなくなってしまった自分自身の顔。
「くそっ……くそっ……くそっ……!」
道路を蹴り続けてどれだけ経っただろうか
悔しくて顔を上げた先にあったのは水平線に殆ど沈んだ夕日の姿。
僅かに残った真紅が海の色を染めている。
その紅にふと、ギルガメッシュの双眸を思い出し、少し涙ぐむ。
だがその時、僅かな陽光を水面より手前で反射する“何か”を奈緒の瞳は捕えた。
「あ……」
その光を見た瞬間、無意識のうちに身体が駆け出していた。
海沿いに散らばっている光を反射するもの。
見覚えのある黄金の輝き。
そこに辿り着いた奈緒はその正体を理解する。
即ち、英雄王の鎧の破片を――
「ホントに……負けちゃったんだ、金ぴか」
あの無敵を絵に描いたような男が負けるなんて未だに信じられない。
だが金色の欠片は何よりも雄弁にそれが事実であると突きつけていた。
手のひらに収まるサイズのそれを拾って、スカートのポケットの中に突っ込む。
「……油断ばっかしてるから、こうなんのよ、バカ」
『慢心せずして何が王か。それを補うのは臣下の役目よ』
いつもならそう返って来るはずの居丈高な言葉も今はもう無い。
ここに来てからずっとそばにいた、憎まれ口を叩く相手はもうこの世にいないのだ。
あたし達はいったいどんな関係だったのだろう。
愛や友情じゃないことは確かだが、忠誠心だとかそういうものもこれっぽちも持っちゃいない。
まあ、あいつはただの臣下としか思ってなかっただろうけれど、あたし自身はあいつをどう思っていたのだろう。
『あぁ、そうか。ならば、貴様の働きは我が友の代わりというわけか。
ふむ。友(エルギドゥ)の代わりというには少々心とも無いが、悪くない働きであったぞ、ナオ』
かつてゴミ処理場で言われた言葉を思い出した。
唯一と言ってもいい、ギルガメッシュが奈緒を認めた言葉。
その“エルギドゥ”が何処の誰で、どんな人物だったのか奈緒は知らない。
だが……その名を口にするとき、高慢な王にしては珍しい、どこか安らかな表情をしていたのだ。
そしてその代わりと言われたことが、少し嬉しかった自分がいた。
ああ、そっか、つまり――
「あたしは――アイツの隣で歩きたかったんだ」
後ろに付いて回るでもなく、先導するでもなく。
平等な関係で、何も考えずに、ただ隣にいて歩いていたかったのだ。
あくまでも対等な、そう――言わば相棒として。
そのことを理解した瞬間、いきなり両目から涙が溢れ出した。
「ぐぅ……っ、ひぐっ……」
せりあがってくる嗚咽を堪え、血が滲むほど破片を握り締める。
いつだって大事なことに気付くのは、すべてを失ってからなのだ。
「金ぴかの……ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ありったけの想いを込めて、叫ぶ。
遥か遠くに行ってしまったパートナーに届けとばかりに。
【D-3/高速道路上/1日目-夜】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:精神的疲労(大)、かがみにトラウマ
[装備]:右手にかがみのリボン
[道具]:ディパック、支給品一式(ただし食料は無い)、黄金の鎧@Fate/stay nightのかけら
[思考]
基本思考:???
1:???
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
※第2回放送を聞き逃しました。
※ギルガメッシュは殺されたものと思っています。
※柊かがみの『呪い』について
ま っ た く の 大 嘘 で す。
リボンを外したり、約束を守らなくても奈緒の体にはまったく変化はありません。
奈緒は真偽を疑っているものの、嘘という確信も得られないので外せずにいます。
遠く、遠く。
無慈悲ながら救いでもある声が聞こえてくる。
ある者には絶望を、ある者には希望をもたらす言葉の群れが。
「……半分死んだのか。それでも生きてくれているのはさすがだね。
本当に嬉しいよ、兄さん……っ!」
くっくっと、漏れ出る笑いを押さえようともせずに、一つの影が戦場を悠然と闊歩する。
この殺し合いの場の中でも、最強に近い力を持つ存在が。
相羽シンヤは総合病院に向かっていた。
勿論、先刻の戦闘においての負傷――――左腕と口内の傷、ファウードの回復液を飲み干しても全快には程遠かったそれを治療する為ではある。
だが、それ以上に、自分の背中にいるゆたかの介抱をするためという理由が大きかった。
……未だ、気絶したままの彼女が起きる兆しはない。
眠り姫は、目覚めない。
(――――全く、厄介だな。だけど放っておく訳にもいかないからね)
見捨てる訳にはいかないし、死んだりさせるのは論外だ。
見たところ相当虚弱な体質であるようで、発育も足りていない。
足手まといではあるが、テッカマンエビルたる自分が守ってやる必要があるだろう。
そう考え、シンヤは自分を納得させる。
彼女は大事な人質なのだ。そうでもなければ虫ケラと同行することなどありえない。
何にせよ、目覚めを待つにはそれなりに落ち着いた設備のあるところがいいだろう。
その為にも病院に向かわなければならない。
……その後をどうするか、一応の指針はある。
首輪という制限の解除とテッククリスタルの入手。
機会さえあるならば、いつでもアクションを起こしてもいい状態だ。
道中で、いくつかの人影を見ることはあった。
ツンツン髪の情けない顔をした赤コート男、全身青タイツの変態、どこかの訛りで話す女の三人だ。
だが、どいつもこいつも――――特にコートの男は言動を聞くに、役立ちそうにないどころか足手まといになりそうだった。
その上戦闘の真っ最中だったため、ひとまずは見逃しておく事にしたのだ。
潰しあってくれるならこちらが接触する相手が少なくなってくれるだろう。
それに、ゆたかとの約束もある。
戦闘に介入して皆殺しにしても良かったのだが、首輪とクリスタルに関すること以外で人を襲う事はしないと言った以上、それを破ることには抵抗がある。
テッカマンに変身できる以上、戦闘をしても負傷などのリスクはほとんどないのだが、それでも何故かゆたかの事が意識されてシンヤは実行に移せなかった。
(……そうだ、兄さんとの橋渡しになってもらうのだから)
確かに彼女の言うとおり、交渉で済むならその方が体力の消費も少ない。
ブレードと戦うなら疲労などしていない万全の状態で、だ。
PSYボルテッカも無駄撃ちはしたくはない。
そう理由付けをして、相羽シンヤは足を進める。
……逆に言えば、理由付けをしなければ、彼はゆたかと行動することが出来なかったのだ。
現在、彼は人間の姿でゆたかを背負った状態である。
(ランスの馬鹿が思いっきり危険性をアピールしてくれたからな、仕方ない)
交渉するならテッカマンの姿ではまずいだろう。
臨戦態勢を取ってゆたかを変に刺激するのも望むところではない。
自分もひとまず休息しようと、そう思ったところで都合よく病院が見えてくる。
安堵の溜息がシンヤの口から漏れる。目的地はすぐそこだ。
一応、病院で待機するリスクはある。
自分と同様に負傷したり、休息を求めてくる人間が訪れる可能性もあるし、あるいは既にいる事も十分ありえるからだ。
だが、今の自分に敵うはずがない。
テッカマンエビルが虫ケラに倒されるなど、絶対にありえないのだ。敵うとしたらブレードのみ。
……故に、誰が潜んでいようが関係ない。
シンヤの口元が歪んだ。
そして一歩、彼は病院へと足を踏み入れる。
――――こうして、病院を舞台としたあまりにも一方的な殺戮劇は幕を開けた。
◇ ◇ ◇
「……シアン化ナトリウム、塩化水素、濃硫酸、ジホスゲン、チオジグリコール、その他諸々。
螺旋王はこんなものまで使わせるつもりなのか……!?」
冷え切った薬品保管庫。
高嶺清麿は、そこで誰に聞かせるでもなく嘆息する。
勿論、ただ独り言をつぶやいているだけではない。
正確に言えば、病院各所で使えそうなものを収集していたのだ。
気絶から目覚めた直後、彼は自分が何をしていたのかを忘れてしまっていた。
ジンと別れ、この殺し合いの意味を考えていた所までは覚えている。
しかし、それ以後の記憶がないのだ。
何故そんな事になったのか、そして、自分は何を考えていたのか。
……ある程度の答えは、周囲を調べてみて見つけ出したメモと解体された首輪。
そして、無造作に落ちていた自分のネームシールによって把握できた。
まず、メモから判明すること。
螺旋王による監視の存在と、彼の目的に対する仮説。
このことについては、メモを読む事で鮮明に思い出すことが可能だった。
同時に、解体された首輪から、螺旋王のオーバーテクノロジーによる監視、およびネジによる首輪の解体の可能性にも思い当たることができた。
……そして、自分の首輪についていたはずのネームシールの存在。
このことから、自分が何故気絶したか、そして首輪の存在意義についても考察することができたのだ。
ネームシールがはがれているという事は、即ち自分がネジを回そうと試みたということ。
(――――我ながら無茶するな、俺……)
苦笑するも、記憶がないのだから仕方ない。
(……そして、ネジを回したのに俺は生きている。つまり……)
つまり、首輪を解体しようとしても死には至らない。
ペナルティはその程度だという事は、参加者の死が目的ではないということだ。
螺旋王による任意の遠隔爆破の可能性も低いだろう。
……あらためて自分の首輪のネジを触ってみれば、首輪本体から僅かに浮いているのが確認できる。
これから分かるのは、自分は何らかの手段を持ってして、僅かながらネジを動かすことができたのだ。
しかし、どれだけ強くいじってもそれ以上動く気配はない。
(これは要するに、条件さえ満たせば首輪を解除できるということか)
首輪の目的。それは、参加者の拘束、及び試験という二つの意味があるのだろう。
そして、殺し合いという状況の存在。
そこから導き出せる結論は一つ。
(――――極限状況下で、参加者が得られる“何か”がある、か)
では、“何か”とは何か?
「……螺旋王の言動を考えれば一つしかない。それが……螺旋力なんだろうな」
証拠はある。自分自身だ。
条件を満たさない……螺旋力を持たない状態での首輪解除によるペナルティ。
それが何かは分からないが、それによって自分は一瞬だけ螺旋力を得ることができたのだろう。
そうでなければ、首輪のネジが動いた理由が分からない。
「……試して、みるか」
ドライバーを手に、先端を首輪に持っていく。
もし今の自分にも螺旋力があるなら、首輪を解除できるはずだ。
ごくり、と喉が鳴る。
穴にドライバーを挿し込み、一気に回して――――
「ギャアアアァァアアアアアァァァァァァァァアアアアアアア!」
……電気ショックに見舞われた。
「……ら、螺旋力ってのはいつも目覚めている訳じゃないんだな……」
痙攣しながらも、どうにか意識を繋ぎとめる。
……自分の行動パターンを推測すれば、先刻はひたすらこれを続けたのだろう。
のたうちまわりながら首元でドライバーを回し続けていたというのはある意味馬鹿っぽいが、それは置いておくことにする。
判明したのは、少なくとも今の自分に螺旋力はないということだ。
先刻の自分は何を得たのか、それが思い出せないのが悔やまれる。
ネジを回し続ければ再度螺旋力を得られるかもしれないが、同様の結果になる可能性があるなら同じ事を繰り返しても意味がない。
むしろ、他の螺旋力を得た人間に接触すべきだろう。
放送で既に螺旋力に目覚めた人間がいるのは判明しているのだ。
そうして得た結論からは、ある疑問が必然的に浮かび上がってくる。
「螺旋力とは何か、それが問題になる」
覚醒条件は判明した。あとは、その正体と用途だ。
まさか、ネジを回す為だけの力ではないだろう。
……清麿の、思い出したくとも忘れられない記憶が告げている。
先刻、何か重要なことが理解できたのだ。
そしてそれは、螺旋王がこの殺し合いを始めた動機に繋がることだ。
だが、
「くそ……! 何で俺は思い出せないんだ!」
……現時点の清麿には、それは不可能なことだった。
そして、放送が始まった。
「……良かった。ガッシュ、まだ生きていてくれてるんだな」
ラッドやジンの名前も告げられていない。
安堵と共に、複雑な心中が鎌首をもたげる。
……自分は、すでに全体の半分以上の人間を見捨ててしまったのだ。
苦渋の選択とは言え、その重圧は大きい。
だが、だからこそ清麿は決意する。
――――かならず、この殺し合いを止めて見せると。
そうして彼は、すぐにそのための行動に移った。
これからの激戦を想定し、治療の為に薬を集めておくことにしたのだ。
螺旋力についての疑問はあるが、現時点ではこれ以上考察できることもないだろう。
万一自分がここを発ったと勘違いされないため、診察室にジンに病院内を回る旨を告げるメモと考察の簡易な複写を残して院内を回りはじめる。
自分への輸血などを済ませた後、行動を開始した。
こうした薬は、他者と接触する際においても取引材料として使える可能性が高い。
どういう構造かバッグにはいくらでも物が入るため、片っ端から中に入れていく。
止血剤、モルヒネ、ペニシリン、輸血用血液、血清、ブドウ糖液、エトセトラ。
こうした物は持っているに越したことはない。
点滴用の注射器なども必要だろう。
……そして、この行為にはもう一つ目的があった。
病院内の劇物毒物、各種危険物の回収である。
知識のあるものが使えばあまりにも危険なそれを、ゲームに乗っている人間に渡す訳にはいかないと判断しての事だ。
病院の薬物は学校の理科室などとは比べ物にならないほど危険な物質が存在するのは自明である。
……だが、この病院には、それさえも甘く感じられるほどの危険物が用意されていたのだ。
そう、殺人ゲームに使用されることを前提とした、兵器群が。
毒ガス。貧者の核兵器。
それを作り出すに十分な種類の薬品群は、さしもの清麿の背中をもぞっとさせた。
こんなものをどこか適当な施設にでも流し込めば、それだけで内部の人間を全滅させられるだろう。
自分の選択が正しかったことを確認する。
脅威はそれだけではない。
リンテレンの砂糖爆弾というものをご存知だろうか?
銅版で区切った容器内に硫酸、ある種の塩素酸化合物、そしてその名の通り砂糖を配置し、化学反応によって爆発する、世界最初の時限爆弾である。
混ぜ合わせない限り危険性はそこまで高くないが、破壊力は十分である。
こうした爆弾すらも作り出せるほどに、危険な薬品が存在していたのだ。
明らかに医療と言う行為には必要ない物質。
……螺旋王の用意したものに間違いはないだろう。
他にも、手術道具なども使い方次第で武器になりうる。
メスなども回収するに越した事はなかった。
そうして一通り、病院を回った上で診察室に戻った清麿は、ドアの擦りガラスの向こうに人影があるのを確認した。
「……ジンか?」
少し安堵する。
病院に一人でいるのは、やはり心もとなかった。
ガッシュと一緒に元の世界へ帰るためにも、死ぬ訳にはいかない。
だからこそ、協力者はいるに越したことはないのだ。
そして彼が診察室に入り、その人物と邂逅する事が惨劇の発端となる。
◇ ◇ ◇
蛍光灯の人工的な光の照らす部屋の中、相羽シンヤは待っていた。
病室の一室にゆたかを寝かせ、この施設を調べようといくつかの部屋をのぞいた先に、それはあった。
解体された首輪と、考察メモ。仲間へのメッセージ。
それに記された文章を読んだ時、渡りに船だと踊りだしたいくらい気分が高揚したものだ。
まさか、まさかまさか、こんなに早く首輪の解除への手がかりを得られるとは!
しばらくすればこの文章の主は勝手にこっちへ来てくれるのだ。
虫ケラどもにこれほどの期待を抱いたのは初めてかもしれない。
人間だった頃を考えても、ここまで待ち遠しい気分になるのは何年ぶりなのだろうか。
「ああ、とても楽しみだよ兄さん……!
何にせよ、いつまでも待たせないで欲しいものだね、どこかの誰かさん……」
手の中のテッククリスタルを弄び、幾度となくそんな事を呟く。
そして、放送からはおよそ数十分。扉の外から声が響いてきた。
「……ジンか?」
がちゃり、と音がしてノブが回る。
開いた隙間から入ってきたのは、以前一度見たことのある顔だった。
その表情は一瞬驚愕に包まれたのち、即座に警戒へと切り替わる。
中々修羅場をくぐってきているようだ。
「……お前は……」
「フフ……久々、といった所か。前の時は挨拶もしなかったけどね」
右耳のない若い男。
ブーメランの男の仲間だったと記憶している。
白服との交戦ですぐにあの場所を離れることになった為、どのような人物かは分からないが。
あらためて、相手を観察する。
警戒態勢をとり、即座にバッグの中身を取り出せるようにする為に姿勢を変えたところから見るに、機転は多少は効くようだ。
ただ、その速度や体捌きからみるに、戦闘能力は低いだろう。
体つきもまだ発達途上といったところだ。
マスターアジアと名乗ったあの老人どころか、白服の男よりもはるかに劣る。
紙の女のような特殊能力もまず持っていない。仮に持っているのなら、既に使っていてもおかしくはないのだから。
唯一警戒すべき対象があるとすれば、それはバッグの中身だ。
だが、それには確実にタイムロスが生じる。
その僅かな時間さえあれば、自分には十二分に対処が可能だ。
結論。
このテッカマンエビルにとっては、眼前の男はまったく脅威とはなりえない。
そうとなれば、後は首輪についての情報を無理にでも聞き出し、必要とあれば首輪を解除するまで連れまわすだけだ。
ゆたかという少女には確かに必要以上に他者を襲わないと言ったが、それはあくまでも自分と兄に全く関係しない場合だ。
首輪の解除はそもそもの目的であり、テッククリスタルの入手と同程度に重要だった。
ならば、どんな手段を使おうとも問題はない。
彼女が起きていればそうした行動を止めたのだろうが、都合よく彼女は気絶中だ。
……事を起こすなら、手っ取り早い方が楽になる。
「……早速だけど聞かせてもらう。首輪の解除方法を知っているか?」
「…………く、」
高嶺清麿は、焦りを押さえ込み、沈黙する。
完全に誤算だった。
考えてみれば当然なのだが、病院を目指す人間が自分達だけとは限らない。
当初の通り、ひとところにじっとしていれば誰かが来てもやり過ごせたかもしれないが――――、
しかし、院内を回ったことで完全に外に向ける注意を失っていた。
放送による死者の多さの重み。それによって、冷静さを失っていたのかもしれない。
ジン宛のメモも完全に裏目に出た。
目の前の男は、首輪についてこちらがある程度情報を持っていることを知ってしまっている。
「…………」
沈黙で返す。
念のためメモに詳細を記すことをしなかった分、助かったかもしれない。
相手はまだ、こちらが相手の知らない首輪についての情報を握っている可能性を考慮している。
だからこちらに攻撃してこないのだ。……黙っている限りは。
そして、それは正解だ。
バラバラの首輪と考察メモから分かるのは、せいぜい首輪のネジの存在と、それを回すことで解除できることくらいだ。
なのに、こちらは首輪を解除していない。
相手がそこから分かるのは、解除には何らかの条件が必要だということ。
――――螺旋力。
その存在を、目の前の男は知らない。
……そのことを喋るべきか、否か。
相手の性格を考える。
目の前の男は、ゲームに乗っている。
少なくとも、数時間前まではゲームに乗っていたことは確かだ。
首輪の解除が目的ならば、解除条件を教えさえすれば殺戮をやめるか?
その可能性は低くはない。だが、高い訳でもないのだ。
例えば、目の前の男が殺人鬼だとしたらどうだろう。
そう、ラッドとは似てはいるが異なるタイプの、無差別に殺すのが好きな人間だとしたら。
その場合、首輪の解除はライオンの檻を開けるのと同義だ。
螺旋王による遠隔爆破(自分にはその可能性が低いことは分かっているが)を恐れる必要もなく、手当たり次第殺してまわることだろう。
こんな事を考えたくはないが、この状況下ではある程度白に近くない限り、灰色は黒とみてもいい。
そもそも話したところで自分が助かる保証もない。
むしろ、用済みになれば即座に消される可能性が高いだろう。
……それでも、相手の目的次第でどうにかできる可能性はある。
ならば、それに賭けるべきか。
いずれにせよ動機を知らなければ対処の仕様がない。
「……一つ聞かせてくれ。お前の目的は何だ?」
深呼吸をし、問う。
嘘をつかれる可能性はある。
しかし、返答次第では共闘は無理でも敵対はしない可能性があるのだ。
だが。
「……質問をしたのはこっちだ。お前に選択の余地はないよ」
「く……」
ラダムのテッカマンとしての誇り。
そして何より、兄への自分の感情。
それらに踏み入る質問に、相羽シンヤがたかが虫ケラごときへ返答する事などありえない。
それは即ち――――話し合いという形を、破棄するということだった。
双方にとって不幸だったのは、小早川ゆたかがこの場にいないことだった。
十数部屋離れた場所で眠りにつく彼女さえいれば、話し合いの余地があったかもしれない。
高嶺清麿は相羽シンヤが無差別に殺戮をしている訳ではないことを知り、脱出の為の同盟を組めたかもしれない。
相羽シンヤは高嶺清麿を警戒させることなく、首輪解除に協力さえできたかもしれない。
だが、現実に彼女はここにおらず、両者の間には警戒しか生まれる事はなかった。
そして、事態は動き出す。最悪の方向へ。
清麿はバッグの中に意識を移す。
内部にはイングラムに加え、先刻手に入れた各種薬物劇物が存在する。
だが、この間合いではそれらを使うのは難しいだろう。
せいぜいが強酸を相手にぶちまけるくらいだ。
そもそもが、ジンの車に生身で攻撃を仕掛け、ラッドの銃撃をかわすような相手。
……まともにやりあっても勝てるとは思えない。
頼りになりそうなのは、先ほど手に入れた手術用のメス十数本。
切れ味に関しては抜群だが、使い捨てな上に打ち合うこともできない。
投擲と、懐にもぐりこんでの攻撃が考えられるが、今の状況では前者の用途が望ましいか。
投げたのちに、怯んだ隙に強酸を浴びせ、逃走する。
ここは病院だ、一度逃げ出せさえすれば隠れる場所はいくらでもある。
分が悪い事は承知している。あくまで、これは最後の手段だ。
相手の出方次第では、言いなりになるのも一つの方法である。
……だが。
結果的にでも、殺人への関与を強制されることだけは避けねばならない。
いざとなれば、……それこそ、最悪の結末を覚悟してでも。
清麿は生唾を飲み込む。
その雰囲気を感じ取ったのか、シンヤは自分の右手にあるものを清麿に見せ付けるように肩の高さまで掲げて見せた。
「……いい事を教えてやろう。俺は相羽シンヤ。またの名を……テッカマンエビル。
そして、ここにあるのはテッククリスタルというんだ。
あの会場にいたならどういう意味か、分かるだろう?」
僅かながら、兄を想起させる質問に対して感情が昂った為か。
シンヤは語調に殺意を込めて清麿を睨みつける。
――――清麿は即座にシンヤの言動を理解する。
忘れるはずもない。螺旋王に挑みかかり、無残に散っていった異形のことを。
いまここにある、全ての始まりの事を。
たとえ螺旋王に通じなかったとしても、ガッシュのバオウと比べても遜色ない威力の技を持っていた“異星生命体に改造されし螺旋生命体”。
彼が変身する時に用いたのはまさしく今シンヤの右手にあるものとそっくりな結晶であり、また、変身の際のパスワードであろう言葉は“テックセッター”だった。
あの姿がテッカマンという名称なのであれば、パスワードは十分名称に合致している。
つまり。
目の前の男は、あの異形と同等の存在だということだ。
もしそうならば、抵抗に意味はない。あまりにも力の差がありすぎる。
……ハッタリだ。
そう思い込もうとして、しかし清麿は自分の肩が僅かに震えているのに気付いた。
理解はしている。ただ、それを認めたくないだけなのだ。
血が滲むほどに拳を握り締め、ようやく清麿は現実と向かい合う。
――――どう足掻いても、この男からは逃げられない。
――――どう足掻こうが、自分の負ける要素はない。
シンヤは思う。
目の前の男が、ここまで強情とは思わなかった。
考察のメモを見る限り、相当頭の回転は速いようなので使い道があるかと思ったのだが。
……モロトフという前例のおかげで、自分の言ったことの意味も分かっているようだ。
そして間違いなく、自分に怯えている。
なのに膝を屈さないのは何故か。
未だに沈黙を保ち、自分に牙を剥き続けるのは何故なのか。
……シンヤの感情がざわめきだす。どうしようもない苛立ちが込み上げる。
ある程度の理由は分かる。おそらく、自分が殺し合いを求めていると思っているのだろう。
それはある意味間違いではない。事実、前回会った時は邪魔者は全て殺すつもりでいた。
だが、本当の目的は兄だけだ。
その他の有象無象など知ったことではない。
さっさと首輪についてを吐いていればいいものを。
そうすればお前などには興味はない、好きに生きて好きに死ね。
なのに何故そうまでして邪魔をするんだ。お前はどうでもいいと言ってるだろう。
そんなちっぽけな虫ケラごときが俺と兄さんの邪魔をするんじゃあない……!
負の思考がループし続け、どんどん加速していく。
黒い感情が煮詰まり行く中、シンヤは殺意のこもる視線には不釣合いな、一見楽しそうな声で言葉を紡ぐ。
「……そうか。頭では分かっていても、実際俺がどういう存在なのかは実感できてないのか」
くく、と歪んだ笑みを湛え、シンヤは右手のテッククリスタルを握り締める。
「ああ、じゃあ、身をもって思い知らせてやるとも!!
このテッカマンエビルの力に泣いて怯えて喚いてみせろぉっ!!」
そして、インサニティプレリュード――――狂気の前奏曲は奏でられ始める。
最早誰にも止めることは敵/適/叶わない。
「テェェェェエーック・セッ――――――――!!」
…………。
何も、起こらない。
シンヤは気付く。自分の体が全く変化していないことを。
どういうことだろうか。
普段通りならば、キーワードと共に外骨格が装着されるはずだ。
……なにか、おかしい。
そういえば、何故かキーワードを言い切ることができなかったような気もする。
クリスタルに異常でもあったのかもしれない。
確かめようとして、……そこで、相羽シンヤはようやく気付いた。
右肩の付け根から、肺の一部ごと自分の腕が消失していることに。
「こ、ふ…………」
同時、口と肩口から同時に血が吹き出てくる。
喉の奥から何か小さな塊がせり上がってくる。砕けた肺の小片だ。
右手のあった方を見る。
臓器の一部と骨が露出し、足下から数歩のところにテッククリスタルを握ったままの自分の右肘から先が落っこちている。
「あ……」
拾わなければいけない。
ぼやける頭でそんな悠長なことを思った瞬間、背後から耳に聞き覚えのある声が届いてきた。
「……今お前、こう思ったよなあ?
俺は最強の力を持っている! 俺がコイツに負けるはずがない!!
俺が首輪の情報を手に入れられるのは当然だ!! ……ってなあ、相羽シンヤくんよおー」
声につられるまま、背後……窓の外を向く。
……そこに居たのは、かつて交戦した相手。
生身でガンメンとも渡り合える銃――――超電導ライフルを発射した態勢のままの、ラッド・ルッソだった。
「……ら、ラッド!?」
突然の闖入に、清麿は驚く。
全く予想しない事態。
いきなり目の前の男の腕が吹っ飛んだかと思うと、ラッドが一連の流れに割り込んできたのだ。
清麿でもどうすればいいのか、先の展開が全く読めなかった。
慌てる清麿に、しかしラッドは落ち着いて清麿に行動を示す。
「……さっさと行って隠れてろ、キヨマロ。
こいつの目的は分かってんだろ?
せっかく隙作ってやったんだから、それを上手く使えっつーの」
言いながら、窓枠を乗り越えて中に入ってくる。
ここでようやく清麿は、自分だけに注意が引き付けられている最中、
ラッドがシンヤの腕を窓ごとぶち抜いたことを理解できた。
……言いたい事はある。
ラッドに気付かず、こんな蛮行を止められなかった自分も腹立たしい。
だが、今はラッドのほうが正論だ。
シンヤが呆然としている隙に、180度向きを変えて思い切り走り出す。
一心不乱に、後ろを振り返ることもなく。
「……な、待て……ッ!」
激痛と猛烈な吐き気。そして、扉の音で我に返ったシンヤは、しかし動きを止める。
ここで背後を向けば、確実にラッドに背中を撃たれるだろう。
まずは、この男を排除しなければならない。
常人ではショック死してもおかしくない負傷だが、シンヤはラダムのテッカマンだ。
腕一本を失って体のバランスを崩した上、失血の症状もでているが、それでも既に戦闘すら可能な状態まで落ち着いていた。
「……く、貴様ぁああああああああああッ! 虫ケラごときが、よくもやってくれたなぁああああああああ!!」
「おうおうおうおう、いい感じにブッチ切れてくれてるねぇ相羽シンヤくんよぉ。
屈辱かい、屈辱かぁい? そりゃあそうだよな、人間如きに腕一本ぶっ飛ばされたんだもんなあ!!
いいねェ、もっともっと惨めに喚いて見せてみろよ、ヒャアハハハハハハハハハ!
分かってんのか? 今のは頭を狙った射線上にキヨマロがいたから腕を消し飛ばしてやったんだぜ?
つーまーりーだ! この俺が仲間思いの優しい優しぃ〜い人間じゃあなかったら、
今頃テメエの頭は完ッ全に消滅してたんだぜ、感謝しろよ? しーてーみーせーろーよー」
「……俺は、テッカマンエビルだッ! 相羽シンヤと……、呼ぶんじゃないッ!
虫ケラがぁぁぁああああああああああッ!!」
激情するシンヤ。
その脳裏に浮かぶ言葉はただ一つ。
殺す。
目の前の白服男を、何としても殺す。
圧倒的な力の下に、目の前の男を骨一つ塵芥一つ残さずこの世から抹消する。
何故、白服男が自分の名前を知っているのかといった疑問や、右肩の激痛すら思考に入れず、ただただ消滅させることのみを考えて動く。
シンヤが床に落ちたテッククリスタルに左手を伸ばす。
これを手にし、テッカマンエビルになりさえすれば勝利は揺るがない。
いつものシンヤなら、たとえラッドに銃撃されていたとしても十分こなせる動作だ。
しかし、片手を失ったことによる身体バランスの変化、そして、奇しくもクレア・スタンフィールドによって傷付けられた左腕の動きの悪さが、その動作を僅かに遅らせる。
結果。
テッククリスタルとシンヤの左手の間に、ファイティングナイフが突き立てられた。
ラッドが、クリスタルを掴むのを妨害するために投擲したのだ。
僅か数十センチのついたてはしかし、シンヤがクリスタルを手にするのを防ぐのには十分すぎる。
同時。ラッドは既に、シンヤへの追撃を加えるべく動き出していた。
……不運なのは、ラッドがモロトフの変身を見たことで、テッククリスタルの作用を警戒していたこと。
そして、鴇羽舞衣操るソルテッカマンとの対峙により、テッカマンの危険性を多少なりとも体験していたことだ。
故に、先刻も真っ先にクリスタルを持つ右手を狙い、今も最初からクリスタルを手にさせないことを念頭に行動し続けている。
……この状況となるに至って。不運は他にも多々ある。
ラッドが超電導ライフルを手に入れたこと。
既に一戦をこなしたことで、ラッドがシンヤに殺意を抱いていたこと。
明智とねねねとの接触により、ラッドがシンヤの情報を得ていたこと。
クレアとの戦闘により、シンヤが片手にハンデを負っていたこと。
小早川ゆたかが清麿とシンヤの邂逅に居合わせなかったこと。
こうした要因が全て重なった結果として今がある。
要するに、……本当に、不運だったとしか言いようがなかった。
クリスタルの回収を阻まれ、刹那の時間でシンヤは思考する。
このままクリスタルを回収すべきか、それとも迎撃すべきか。
……シンヤはクリスタルの回収を選択した。
どうせわずかな時間だからと、虫ケラのほんの数発の攻撃など、耐えられない筈がないと。
ここで迎撃をしていたら、あるいは多少展開が変わったかもしれない。
しかし、違う可能性を論ずることに意味はない。
それは、既に失われた半数以上の人々がもし生きていたらと論ずるのと同じ様なものでしかないのである。
テッカマンの素体となったものは、人間形態でも飛躍的に身体能力が増加する。
それは防御能力においても同様であり、ビルから落ちた程度ではなんともないほどに強化されているのだ。
……だが、人体には鍛えようのない部位が存在する。
ライフルを放り出し、クリスタルを回収しようとするシンヤの懐に飛び込んだラッドは、そのまま握った拳をカチ上げた。
強く、強く振りぬきながら。
「お前よぉ、人間サマの力をナメただろ?」
――――アッパーカット。
アゴに引っ掛けるように打ち出されたそれは、単純ながらいかなる防御も無視して脳を直接揺らすことを可能とする。
シンヤの首が、ごきり、と嫌な音を立てて天を向く。
先の戦闘で噛み合わせの悪くなった口が下から打ち付けられ、歯肉からは再度出血し始めた。
「がは……っ!」
……脳震盪。
衝撃が頭蓋を通り抜け、豆腐のような中身をぐるんぐるんと揺らしてゆく。
どんなに肉体が強くとも、脳そのものを鍛える事はできはしない。
ただの一撃でシンヤは肉体の制御を失う。
足下がおぼつかず、猛烈な吐き気に見舞われた。
バランスを崩したシンヤの体は崩れそうになる。
だが、ラッドはそれを許さない。
「お前、ボクシングはやったことあるか、よォッ!」
中指一本拳による右目へのフック。
ぐちゅり。
突き出された指の関節を押し込まれ、シンヤの右半分の視界は永遠に暗闇に染まることになった。
目の周囲の骨ごと砕かれ、網膜剥離どころか、下手をすれば水晶体が眼球の内側から滲み出てきている。
「なんでもよぉ、古ぅーいギリシアのオリンピックの頃からあったらしい、ぜ!!」
顔面の真中、人中を射抜く左ストレート。
形容しようのない音と共に鼻が潰れた。
大量の鼻血が胸部まで噴出し、喉や口の中まで大量の血が流れ込む。
軟骨はひしゃげ、もう二度と元の形には戻らないだろう。
「ま、俺の弟分、の! グラハムって、ヤツの! 受け売りなんだが、なあッ!!」
胴体部への右左右の三連打。
肝臓が悲鳴をあげ、肋骨の何本かは軽く持っていかれる。
それでも、テッカマンとして改造された体は気絶することさえ許してくれない。
大量に血の混じった吐瀉物を撒き散らす。
しかし、それ故にシンヤはまだ活動できる。
連打の分だけ今の攻撃は軽かった。
……好機と見て、シンヤは攻勢に出ることを選択する。
体は動く。満足に動くわけではないが、それでも常人よりも遥かに速く。
「はぁぁああああああああああああッ!!」
震脚を一歩。
右脚を軸として、重心を低くしたミドルキックを放つ。
武術の嗜みのあるシンヤだからこそ可能な、当たれば軽く人間を潰せる一撃だ。
そして、回避は不能。
鎌のように周囲を刈り取る軌道は、いかなる動きでも逃れることはできない。
そのはずだった。
「……へ、残念賞だったなぁ」
「……ッ!」
確かに胴体に当たった。
当たったが、……しかし、その効果の程は期待には到底満たないものだった。
良くても肋骨を1、2本叩き折ったのみ。
ラッドの余裕の残る表情を見るに、それすら大した効果はないだろう。
ラッドは回し蹴りを放った瞬間、シンヤの右側面に飛び込んできたのだ。
……右手を失い、更に右の視界を完全に失っているシンヤには、有効打を与えるには難しすぎた。
否、最初からラッドはそれを狙って右半身だけに集中して攻撃を入れていたのだ。
失血や体のバランスの変化、肝臓への打撃で力がまともに入らない状態で命中させることができたことはむしろ、
シンヤの体術の優秀さを示しているとさえいえるだろう。
狂気はまだまだ終わらない。
「んで、何が言いたいかっつーと、だ!」
回りこんだ先の目の前。
肩の付け根から先を失った、その傷口にラッドは拳を抉り込む。
剥き出しになった骨によって、自分の拳が傷つくのも構わずに。
何発も、何発も。
「ぎ、がァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ……!」
ぶちゅりぐちゅぐちゅぷちじゅぶっぐちゃぐちぶしゃっ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
一撃のたびにインパクトした部位から鮮血と肉片が飛び散っていく。
「人間はなあ! ずっと! 昔から! そうやって! 力を! 手に入れて! きたんだよ!
人間やめて! 手に入れた力で! 自分が! 無敵だなんて! 思ってんじゃねえ!
自分が! 死ぬなんて! 思ってねぇだろが! テメエらはよォッ!」
いつの間にか、ラッドの拳は傷口を抉るだけでなく、全身を満遍なく嬲るようになっていた。
顔も、手も、胸も、腰も、鳩尾も、間接も、肩も、喉も。
ひたすらひたすらラッドは、ひとつひとつ丁寧に、殺意という心を込めて拳をプレゼントしていく。
「どうよどうだよ今の気分はよ! テメエがくだらねえと、虫ケラって思っていた人間如きに嬲られるのはよぉッ!
俺は楽しい、楽しいぜ!? こんな楽しい事が他にあるかよ、ひゃぁはははははは!!
何でテメエは笑ってないんだよ、笑えよ無茶苦茶愉快なんだからよお!
おいおいおいおいまずいまずいぜ? 何か目覚めちまいそうだよ妙な力が湧き出てきそうだよおいおいおいおい!
この調子で何人かぶっ殺せばテンションのゲージマックス越えてどうなっちまうんだろうなあ俺!
滅べ! 滅べ! 滅べ滅べ滅べ滅べっ! 何もかも無くなっちまえ! ハァッハハハハハハハハ!!」
高笑いと共に、ラッドはとどめとばかりにシンヤのこめかみに回転を思い切り加えたフックを叩き込む。
これもまた、脳を揺らす一撃だ。
……そこでようやく、ラッドのパンチの雨は降り止んだ。
真横に吹っ飛ばされ、倒れこんだシンヤの上半身は、もはや拳を浴びていない部位は殆どない状態だった。
それでも。
顔は膨れ上がり、歯は所々欠け、あちこちがうっ血しているにもかかわらず、シンヤはゆっくりと、息を乱しながら立ち上がろうとする。
ひゅう、ひゅうと声にならない声をあげ、一つ残った左目でラッドを見据え、二本の脚でしっかり地面を踏みしめる。
「……すげえな。まだ立ち上がれんのか、ありえねえだろ」
ラッドは心底感嘆する。
いくら強化された人間とは言え、あそこまで打撃を叩き込まれてもなお立ち上がれる身体能力にもそうだが……、
それ以上に、それだけの苦痛を受けてもなお立ち上がれるその精神力に。
痛覚というのは身体の異常を感知するシグナルであり、改造されてもそれを消すような処置はおそらくされていないだろう。
にもかかわらず、シンヤはいまだ立ち上がり、少しも覇気は衰えない。
それは彼の信念の強さによるものなのか。
……違う。ラッドは知っている。
明智たちとの情報交換で得た、シンヤの情報を。
(――――妄執か、くだらねえ)
……兄への劣等感。その経緯。
リストに細かく刻まれた出来事を、ラッドは思い出す。
(……使えるな)
くっくっと歪な笑みを湛え、ラッドはやれやれというようにシンヤと自身の血で真っ赤に染まった手を体の両側に突き出し、シンヤの芯を叩き折る言葉を放ち始めた。
紛れもない喜色を浮かべて。
「相羽シンヤくんよぉ、結構すげえのな、お前。
俺結構感動しちまったよ」
「…………」
「あたりまえっつー顔だな。ヒャハハハハハ、こりゃあいい!
お前、まだ自分が俺に負けるはずねえとか思ってるだろ!」
「……ラダム、の、テッカ、マンが、貴様ら虫ケラ、ごときに……ッ」
シンヤから言葉が返ってきたことに、ラッドは軽くだが今一度驚く。
喉も潰したはずが、回復速度が思ったよりも速い。
しかし、その事はラッドにとって
(……都合がイイよなあ、ヒャハハハハ)
「へ……、言うねえ。まあいい、話の続きだ。
んで、だ。心の優しい俺は、お前を殺すのはどうかと思ったのよ。
このまま見逃してやろうかってなあ!!」
「きさ……まァァァァッ!!」
(いいねえいいねえ、もっともっと怒って屈辱を感じてみろよ、相羽シンヤくんよ!)
「しかしだ! このまま見逃したんじゃあ俺の殺意ゲージが治まらねえ!
そこでだ、両方にとってサイコーの選択肢を俺は思いついた!!」
ラッドは口が裂けんばかりの笑みを浮かべ、高々と言い放つ。
「テメエの前でテメエがいつまでたっても敵わない、大好きな大好きな立派でカッコいい兄貴を嬲り殺してやる!
そのときお前はどんな顔を浮かべるんだろうなあ!
オニイチャン、シナナイデーなんていって泣き喚くのかなあ、兄貴が死んだことを喜ぶのかなあ!
それとも目標に永遠に届かないことが分かって空っぽになっちまうのかなあ!
ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハハハハッハハハハッハハハハッハハハハ!」
「貴様ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!
殺してやる……、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるぅッ!」
相羽シンヤは、耐えられなかった。自分の根底にあるものを守る為に。
兄という絶対不可侵の像。それを汚されない為に。
それは、形こそ歪だったにせよ、確かに兄への愛情だった。
だからこそふらつく足で、一心不乱に拳を握る。
目の前の男に拳を届かせられる為に、負傷も武術も忘れてただただ一直線に突き進む。
こうして、幕引きが訪れる。
不意に、目の前の白服の男がシンヤの視界から消えた。
……それは、先刻と同じく、潰れた右目の視界にラッドが回りこんだためだった。
冷静なままでいれば、ラッドの挑発さえなければ、同じ手は食わなかったろう。
しかしそれを考えるのは泡沫の夢だ。
本能的にラッドの位置を察知し、シンヤは振り向く。
そして見る。
あまりにも無慈悲に、所々裂けた血染めの拳が顔面に迫ってきているのを。
それが、相羽シンヤが意識を失う前に見た最後の光景だった。
◇ ◇ ◇
高嶺清麿はエントランスにいた。
ここならば見渡しもよく、また、逃げる際にもいくつか方向が考えられるからだ。
隠れる場所も複数ある。
幾つも並ぶ長椅子の一つに腰を落ち着け、清麿は思考に沈み込む。
「……あれで、正しかったんだろうか」
ラッドを止めるべきではなかったか。
突然のことでどうしようもなかったとはいえ、そればかりが幾度となく脳裏に浮かぶ。
……ラッドの銃撃。奇襲じみたあれをまともに食らった以上、あの男はもうまともに動けないだろう。
それを止められなかった時点で最早こちらから介入する余地はないのだ。
既に相手を傷つけている以上、話し合いにさえ持ち込めない。
殺すか殺されるかの展開になり、そしておそらくあの男は……。
「……くそ。今更俺は何を言ってるんだ」
もう、40人以上の命を見捨てているのだ。殺し合いに極力関わらず、放っておくと決めた時点で。
目の前で起きようが、自分の実力の及ばない時点で今までと何も変わらない。
……そう、自分の実力でどうにかできたとは思えない。
そのことが清麿を苛み――――、そして、無力感を味わわせている。
「……終わったぜ、キヨマロ。どーよ、景気は?」
「……ラッド」
うつむいた顔を上げ、通路のほうを見てみれば、そこには白服を真っ赤に染めたラッドが楽しそうに笑っていた。
……それだけで、何がどうなったかを嫌というほど思い知らされる。
「……ああ、最悪だ。それとありがとう、ラッド」
搾り出すように、清麿はどうにか返答する。
助けてもらったのは事実なのだ。礼だけは言っておいた方がいいだろう。
「へえ。……何も言わねえのか?」
「……助けてもらったのは事実だからな。それに、もう何十人も見殺しにしているんだ」
「今更……って訳か? それにしちゃあ顔色が優れねえな、無理する必要はねえぜ」
「…………」
沈黙する。
殺戮を終えたばかりというのにこちらに心遣いするラッドに薄ら寒いものを覚えながらも、清麿は思考を切り替える。
……今は一人でも戦力が欲しい。
とりあえずは合流を喜び、情報を交換しなければ。
「……何にせよ、無事で何よりだったラッド。よくここが分かったな」
「メッセージが残ってたからな。ま、お前もよく生き延びれたもんだ。
病院のどこにいるか探し回ってたら、お前が誰かに脅されてるんだもんよお。
苦労したぜ? 気付かれないように外に回りこむのはな。
相手があのシンヤくんだたぁ外から見るまで分からなかったが」
そう言って笑うラッドに頷き、互いのこれまでの経緯と情報を話し合いだす。
それは不安材料の多かった清麿にとって喜ばしいものになった。
「……なるほど、映画館にそんな集団がいるのか。確かに合流したい所ではあるけど……」
「そういうこったな。ま、とりあえずどうするかはお前に任せるぜ?」
ラッドの話を吟味する。
螺旋王に対抗する集団。それが本当なら、自分の考察は役に立てるはずだ。
……ラッドが騙されているか、もしくは自分を騙そうとしていない限り。
だが、その可能性は低いと見ていい。
まず、このゲームに乗る限りにおいては、大集団はメリットは少ない。
いずれ内部崩壊することが目に見えているからだ。
集団を構成している時点で、危険性は少ないだろう。
殺戮集団だとしても、戦闘力に欠ける自分をわざわざ消す為にラッドを派遣する必要はない。
ラッドが騙しているケースでも、殺すならとっくに殺しているだろう。
更に、ラッドはジンと自分が別行動していることを指摘した。
どうやら先方は参加者の所在地を把握する道具を保有していて、それを自分に隠す気はないらしい。
それだけの情報力があるのに自分からそれを公開するとは、人員に欠けているのも確かなようだ。
おそらく対螺旋王の集団は実際に存在していて、自分をメンバーに加えたがっているのは信頼してもいいと考える。
ならば、これからどうするか。
映画館にいる明智という人物は、出来る限り早く自分と接触したがっていると聞いている。
ラッドの持つフラップターという飛行機械を見せてもらったが、あれは2人乗り、無理をしても3人乗りが限界だろう。
ジンがこれから何人連れてくるかは分からないが、それなりの数は見積もっておくべきだ。
となると、3つのプランが考えられる。
プラン1.ラッドと共に先に映画館へ向かう。
これのメリットは自身の安全性と、先方との連携だ。病院が安全でない事は先ほどの一件で身に染みた。
集団に加われるなら、安全性は極度に高まるだろう。
こちらの考察を活かしてもらえそうな点も大きい。
そして、デメリットはジンとの連携。
置手紙などをするにせよ、完全に意思を疎通できない以上、彼との協調が困難になる。
プラン2.ラッドと共にジンの帰還を待つ。
これは、上記のプラン1とは連携に関するメリットデメリットが真逆だ。
安全性に関しては一人でいるよりは多少はマシだろうが、心もとなくはある。
だが、ジンの連れてくるメンバー次第では、対螺旋王の集団を先方とこちらの2つに分けて行動できる可能性もあるだろう。
ゲームに乗った相手に対抗するには非常に有利になる。
プラン3.ラッドに先に映画館に向かってもらい、自身はジンの帰還を待つ。
一番リスキーではあるが、見返りも大きいプランだ。
ラッドをメッセンジャーとすれば、こちらの考察などの情報を開示した上で向こうからの情報も得られる。
反面、ジンの帰還まで一人残ることになる為、安全性に一番不安が残るのもこのプランである。
上記3つ、どれを選ぶか。
顎に手を当て考えていたそのとき、ラッドが思い出したかのように呟く。
「……そうそうキヨマロ。さっき、少し気になるモン見つけたんだがよ。
少し付き合ってくれや」
「……?」
言って、ラッドは身を翻す。
どういう意図かは分からないが、どうやらついていった方がいいだろう。
これからどうするかを考えながら、清麿はラッドの向かう方向へと歩いていく。
「……ああ、それと、一つ聞いときたいんだがよ」
不意にラッドが立ち止まり、清麿のほうへ向いて一言、告げた。
「お前……仮に、自分がとんでもない力を手に入れたとして。
何でもいい、バケモノみたいな体でも、魔法みたいな能力でも、全知全能の賢さでもだ。
……それでも自分を人間と思えるか? 自分は人間以上だなんて考えたりするかもしれねえよな」
「俺は。……俺たちは、人間だ。たとえどうなっても、……人間をやめることなんて、出来はしない」
即答する。力を込めて、ラッドを見据えて。
無表情で相対していた殺人狂は、その応えに口元を吊り上げて一言返しただけだった。
「そうかよ」
赤いタキシードを翻し、背中を向けて、再度何処かへ向かってラッドは足を進めはじめる。
振り返らぬままの後ろ姿から、清麿の耳に呟くような声を届かせて。
「安心したぜ。テメエを殺さなくて済んだからよ」
◇ ◇ ◇
暗い闇の中に彼は漂っていた。
ここはどこだろうか、と考えるも、明確な答えは見つけられない。
ただ、ぼうっとしているのは何となく気持ちいいと思う。
きっと、何かをしようとするととても苦しい思いをすることになるのだろう。
……ふと、不意に光が見えたような気がした。
気になったのでそちらの方を向いてみると、見覚えのある姿が見えたように感じられた。
……誰だったろうか。それを、守らなければならなかった気がする。
確か、約束だ。
そうだ、兄さんとの約束だ。それを彼は思い出す。
頭が鮮明になってゆく。
痛くて苦しくて気持ち悪い。
――――だが、守らなければ、彼女を。
意識が浮上していくが、……しかし、一歩とどかない。
体が起きる事を拒否しているのだ。
このまま休息しろと。苦痛に身をさらすなと。
一瞬、その甘い言葉に身を任せてもいいかと考える。
しかし、即座に脳裏に一つの顔が浮かぶ。
兄の顔だ。あの人を乗り越えるために、彼女は絶対必要なのだ。
……そうだ、彼女をあの狂人から逃がさなければ。
必死になって四肢を動かす。
だが、右手の反応がない。そういえば、吹っ飛ばされてしまったのだ。
もがく。もがく。あと少し、あと少しだ。
彼女の所へ辿り着け。
目印となるものが必要だ。
そう、彼女のことを示す記号が。
彼女の名前は、確か――――
「ゆたか……ッ!」
――――相羽シンヤは、目を覚ました。
ラダムのテッカマンとして強化された身体能力は、あれほどの打撃を受けてさえ、なお生命活動を停止する事はなかったのだ。
ずきり、という痛みと共に、右腕にとてつもない喪失感を感じる。
右目も開かず、声もかすれている。
……それでもなお、彼は未だ生き続けていた。
左腕一本でどうにか体を起こす。
辺りを見れば、すでにあの白服の男はいなかった。
「……く、そぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!
必ず……ッ! 殺してやる……! 必ずだ……ッ!」
叫ぶ。内に篭った怨念の深さを、確認するがごとく。
大きく、大きく。
……胸いっぱいに空気を吸い込んで、ゆっくり吐き出すことで心を落ち着かせる。
恨みを吐き出した後、急に膨れ上がってきたのは安堵だった。
自分が生きているというその事を、深く何かに感謝したくなった。
もっとも、それは著しく彼のプライドを傷つけることでもあるのだが。
ひとまずは体勢を立て直す。
さすがにダメージを受けすぎた。ゆたかを連れ、早々にここを離脱して休める場所を探すべきだろう。
白服の男に遅れを取るようで悔しいが、彼女の事を考えればそれがベストだ。
だが、次に会った時には必ず殺す。テッカマンエビルとして。
それを、固く心に誓う。
周囲を見渡すと、自分のバッグと嘔吐した胃の内容物、そして右手がくっついたままのテッククリスタルが落ちていた。
……あの男はなぜ持ち去らなかったのだろうか。
僅かに疑問に思いながらも、今はそれどころではない。
急いでバッグとクリスタルを回収し、よろけながらもどうにか立ち上がる。
いそいで、ゆたかの下に向かわねば。
体が重い。立っただけで眩暈がする。血を失いすぎたためか。
片手しかないのでクリスタルをバッグにしまってから、ようやくドアを開け放ち、引きずるように歩き始める。
高々数十メートルが、砂漠を越えるような過酷さに感じられる。
ぼとぼとぼとぼと、右肩のあった場所から血はこぼれ続け、何度も何度も転倒する。
体がまだ、右手を失った状態での歩き方を習得していないのだ。
それでもなお、シンヤは歩き続ける。
何の為、誰の為にそこまでするのか――――シンヤ自身にも分からないまま。
そして、ようやくゆたかを寝かせた病室に辿り着く。
「……ゆたか、起きているかい」
ぎい、と扉を開き、暗い部屋の中へ倒れこむように進んでゆく。
そういえば、名前を呼んだのは初めてかもしれない。
苦笑し、ベッドに手をつきゆたかの顔を見ようとして、ようやく気付いた。
そこには誰もいない。
「……な、」
絶句したシンヤの後頭部に何かがこつんと当たった。
直感が告げる。
振り返ってはいけない。……いや、もう振り向くことさえ許されないのだ。
「……おーい、どうしたよ? つかの間の安息は楽しめたか?
嬉しかったか? 悔しかったか? 悲しかったか? 怒ったか? 楽しかったか? 苦しかったか?
まあ、何にせよ、……だ!」
ぐりぐりと、冷たい鉄の筒の先端が押し付けられる。
それが何かはいうまでもない。
「……畜生」
「お前は絶対にこう考えたはずだ!!
あの虫ケラ野郎は去った! 俺はもう安心だ!
次会った時は絶対に俺様の圧倒的な力で殺してやるから覚悟しろ!! ってなあ!
それが全部が全部、俺の掌の上で踊っていただけと知った気分はどうよ!?」
シンヤは、真の絶望というものをまざまざと思い知る。
……ここまで残酷なことがあるものか、と。
目に映るのは、背後から差し込む光がベッドに映し出す一つの影だけ。
その手には長大な筒が握られ、自分の脳天に突きつけられていた。
「……畜生……っ」
「ここに至ってもまだ自分は誰よりも強い! だから死なない!
なんて考えてるんだよなあ、テメエみたいなヤツは! ヒャアハハハハハハハハハハハハッ!!
楽しいよなあ楽しいよなあ! テメエの今までの人生全ては!
今、ここで! 俺に殺されるためだけにあったわけだ!!」
そして悟る。自分がこの後どうなるか、を。
最早悔しさも怒りもない。プライドすら原形をとどめていない。
……思い浮かぶのは、自分の近くにいた人々の事だけ。
「……畜生、ゆたか……俺は……ッ!」
「ああ安心しろや、ここにいた嬢ちゃんは俺の仲間が面倒を見ているからなあ!
テメエみたいなイカレたバケモノと行動できるくらい肝が据わってんなら上出来だ、
殺すつもりはねえからよぉ!!
それと、テメエの兄貴に関してだが」
ああ、兄もこいつに殺されてしまうのだろうか。
それだけは許せない。そんな事はあるはずはない。
兄は自分よりも優れているのだ。こんな狂人に負けるはずがない。
あの人なら絶対に勝ち抜けるはずだ。
「……兄さん……」
「やっぱりテメエから殺すことにしてやる。俺はテメエの兄貴の性格を知ってるわけじゃねえからな。
まあ、テメエの兄貴も自分が死なねえ……なんて思い上がってるんならさっさとそっちに送ってやるからよぉ、感謝しろよ?
そうじゃないなら分からねえが、未来の事なんて知ったこっちゃないからな」
ここに至ってシンヤはようやく気付く。
自分にとって、兄がどのような存在だったのかを。
……もう、彼に出来る事は殆どない。
出来るのはただ、兄がこの戦いを乗り越えることを思い浮かべるだけだった。
「……畜生、畜生ッ! タカヤ兄さんっ、俺は、……俺は、兄さんの事を……ッ」
「……つーわけで、だ。そんじゃま、とりあえずはよぉ、」
「ちぃぃいいいぃくしょぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!
兄ぃぃぃいいいいいいいぃぃさぁぁぁあああああぁぁぁあああぁあぁぁぁあああああ、」
「――――死んどけ」
【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】
削除依頼済
【D-6・総合病院入院病棟/一日目/夜】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:ハイテンション、疲労(小)、左肋骨2本骨折、両拳に裂傷(戦闘には問題なし)、螺旋力増大中?
[装備]:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾3/5)
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ファイティングナイフ、フラップター@天空の城ラピュタ テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ 、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:ヒャアハハハハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
1:とりあえず清麿の意向次第。望むなら明智たちの所へ連れて行く。
2:東方不敗と鴇羽舞衣の所に戻ってぶち殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
5:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
6:シンヤの兄であるDボゥイに興味。死なないと思っているようならブチ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※ソルテッカマンを着込む際、ロイドの荷物を預かりました。
※明智たちと友好関係を築きました。その際、ゲーム内で出会った人間の詳細をチェックしています。
※テンションが上がり続けると何かに目覚めそうな予感がしています。
◇ ◇ ◇
「……どうするかな、本当」
清麿は思い切り溜息をつき、愚痴を吐く。
これからの行動についてもあるが、今何よりの悩みの種になっているのは別のものだった。
その、問題そのもののほうに目を向ける。
「……ん……、おねえ、ちゃん……」
自分の背にいるのは名前も知らない少女。
病棟の一室でラッドが見つけた彼女は、自分が先刻院内を回っていた時にはいなかった人物だ。
……つまりは。
「……さっきのヤツの、仲間だったってこと、だよな……」
彼女の所に案内するなり、ラッドは野暮用だといって自分を追い出した。
とりあえず、今はエントランスに向かっている最中だ。
……彼女は何者なのか。先ほどの男を殺す必要はあったのか。
彼女が起きた時にどう説明すればいいのか。眠っている間にあの男は死んだなどと自分はいえるのだろうか。
放っておく訳にもいかないが、しかし、自分達が恨まれるのは十分ありえるだろう。
……話を聞いてくれればいいのだが。問題は数多い。
何にせよ、これからの行動は彼女も含めて検討しなければならないだろう。
彼女の安全を考えるなら、今のメンバー全員で映画館に向かった方がいい。
彼女を一人にする訳にはいかないし、かといって自分と二人きりでも守れる保証はない。
ラッドに映画館まで送ってもらう手もあるが、仲間を殺したラッドに彼女が逆上する危険性もある。
しかし、ジンを放っておく訳にもいかないのだ。
清麿は考える。ラッドの言葉に従うようだが、彼女は自分が面倒を見なければならないだろう。
彼に任せるには不安要素が大きすぎる。
その上で、先ほどの3つのプランのどれを選択するか。
螺旋力に関しても、疑問は山ほどある。
先刻のラッドの言葉。
どれだけ力を得ようと『人間』であるというその内容に、何か引っかかるものを覚えたが、それ以上の答えは得られなかった。
悩みは、尽きない。
その背中で彼女は夢を見る。
「……Dボゥイさん、シンヤ、さん……。みんな、一緒に……」
もう、けっして叶う事のない夢を。
……未だ、気絶したままの彼女が起きる兆しはない。
眠り姫は、目覚めない。
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(開催用に開発された白地図)
【D-6/総合病院エントランス/1日目/夜】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ、
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、
無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール、
各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:背中の少女やラッド、ジンを含めて今後の行動を考える。
1:プラン1〜3のどの形でもいいから明智たちと接触する。
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。
[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説@】【仮説A】【仮説B】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:気絶、疲労(中)、心労(大)
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる
0: ……Dボゥイさん……、……シンヤさん……。
1:Dボゥイと合流する
2:シンヤとの約束を守り、彼が自分から参加者を襲わないように気をつける
3:当面はシンヤと行動する
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました
※今のところシンヤとの約束を破るつもりはありません(シンヤの事を他の参加者に必要以上は言わない、テッククリスタルを持つ参加者に譲ってくれるように交渉する)
※螺旋力覚醒
207 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/17(月) 23:13:41 ID:si8yiggO
死んでも生き返ってはいけないというルールはないから
死んだら別フィールドににぶっ飛ばせばいいんじゃね
>>192 の世界で死んだら、>>203の世界に転生とか
208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/17(月) 23:29:12 ID:YXM1jlhX
糸色望はA世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
「へたれセイバー」に食われて死亡しました
A世界で糸色望が死亡しました
糸色望は他界しました
・
・
・
糸色望はB世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
突如、「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」に鈍器で殴られて死亡しました
糸色望は他界しました
・
・
・
糸色望はC世界の…
◇ ◇ ◇
暗い、暗い闇の中。
生ける者は立ち去り、何一つ動くものの無くなった空間に、蠢く影が一つ現れる。
部屋の真ん中で倒れている頭と右腕のない死体から這い出てきた“彼”は、白い拳大の蟲のような姿形をしていた。
――――“彼”は考える。
新たなる宿主を得る必要があると。
――――“彼”は確認する。
自分は誇り高きラダムの本体であると。
――――“彼”は知っている。
今、自分の元の宿主も含め、いくつもの人間が殺しあっていると。
――――“彼”はほくそ笑む。
これは、優秀な肉体を得る絶好の機会であると。
――――“彼”は把握する。
螺旋王とやらの技術は、非常に高度なものであると。
――――“彼”は推測する。
殺し合いが目的ならば、この会場のいずこかに自分達の用いるものと同じテックシステムがあるのではないかと。
――――“彼”は計画する。
優秀な肉体を用いて、最高のテッカマンを創造することを。
――――“彼”は切望する。
最高のテッカマンの力で、螺旋王の技術を全てラダムに持ち帰ることを。
そうして“彼”は動き出す。
ひとまずの、仮の宿主を得る為に。
幸い、ここは病院である。
先ほど前の宿主を殺した男達でもいいが、焦る必要は特にない。
弱った人間が勝手に集まってきてくれる実に都合がいい場所なのだから。
抵抗力が落ちていたり、無抵抗でありさえすれば、その人間に寄生することは難しくはないだろう。
――――“彼”は徘徊し始める。
夜の病院を、己の肉体を手に入れるために。
【ラダム@宇宙の騎士テッカマンブレード】
知性のみを高度に発達させた虫状の知的生命体。
知性のみを高度に発達させたため、肉体そのものは非常に脆弱であり、専ら他の生命体の体内に寄生している。
寄生された生命体は元々抱えていた性格が攻撃的な方向で極端に増幅されているようである(シンヤのタカヤに対するコンプレックスなど)。
※ラダムの行動範囲は基本的に病院内です。寄生の相手は、無抵抗だったり衰弱したりしているキャラクターです。
※病院内の薬物や危険な道具は殆ど清麿に回収されています。
※シンヤの死体は頭部と右腕が消滅した状態です。首輪や荷物は持ち去られています。
232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/20(木) 00:20:37 ID:FAwql9YC
たとえばね
キャラが増えれば増えるほどいいというんだったら
キャラ数の上限は無いほうがいい
ということで、
>>208のような形で死んでも復活できるようにして軍団制で戦う
あと、同じキャラを何人も作っておけばいいのではないかなと
たとえば、糸色望だったら
A軍団にもB軍団にもC軍団にも等しく糸色望がいるとか
84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/16(日) 19:13:24 ID:BgC9eCX7
あ、言い換えると
「パロロワ」というのをしたらばの団体で規格かなんか勝手に作ったのかもしれないけど
うち等2ch側にはなんの関係が無いという事です。
したらばの推奨する「パロロワ」だけが「バトロワ」じゃないの
85 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/16(日) 19:17:47 ID:mVqbNKNE
バトロワに復活してはいけないなんてルールは無い
たとえば
>>45の
http://keiyasuda.ddo.jp/~br2ch/br/brlist.cgi 人が復活したり何だりで何度も殺しあってるけどこれもバトロワ
まあこんな感じでやってますが
代理投下とかは違法だから削除依頼しておいてください
したらばさん
コピペはアウトだっていったでしょ
螺旋王が実験を執り行う為に用意した何処かの世界、何処かの時代、何処かの街。
正方形に切り取られ、等しい升目で句切られた殺戮の遊戯盤――その、中央に近い位置にそれはある。
物語を銀板に跳ね返すことで見る者に伝える装置。切り取られた四角の中に世界を覗かせてくれる魔法。
決して越えることの出来ない境界線を跨いで、それぞれに夢想を垣間見せる鏡。
摩訶不思議の箱――映画館が其処にある。
◆ ◆ ◆
薄い色の絨毯が敷かれた広いロビー。
その端に連なって並んでいる、待ち合いをする為のテーブルとそれを囲む椅子。
丁度十を数えるテーブルと椅子のセットの内、九つまでは全くの空。逆に残りの一つには人が集まり、雑多な物がその上にあった。
ゲームのプレイヤー。ステージに放り込まれたアイテム――それらが記された、虎の巻。さらには裏技を可能とする特殊な携帯電話。
雑多な情報が書き込まれた数枚の地図。各人の推測や憶測が書き留められた無数のメモ紙。働きっぱなしのサインペン。
奔放で理知的な殺人狂であるラッド・ルッソを見送り、真っ白な少女であるイリアに自由を与え再び映画館の中へと戻ってきた3人。
銀髪の中に同じ色のナイフの切れ味を持つ明智健吾。心の出口を捩り、それを隠す菫川ねねね。ためらいの無い少年。衛宮士郎。
――その3人はそれぞれの席に戻り、間もなく始まる定時放送までの時間をさらなる考察をする為に当てていた。
各人が道程で拾い集めてきた個々の情報により、このゲームの盤上にあるほとんどの事が明らかとなった。
後はそれぞれの点の間に線を引き、浮かび上がってくる図形が何かを探る作業に入るだけ……――だが。
「3人寄れば文殊の知恵……だってのに、何であんたは急に黙り込む?」
ねねねの前に座る明智。先刻までは饒舌にその知性から得られた推論を吐き出していた彼が、何故か戻ってきてから無言だった。
その神妙な表情は、とても物事が順調に推移している現状を喜んでいるものではない。むしろ、そう――……、
「うまく事が運びすぎています」
――彼はこの状況に対し、大きな懸念を抱いていた。
◆ ◆ ◆
「……話を聞かせてもらおうじゃない」
そう言うねねね。そして、怪訝な顔でこちらを覗き込む士郎の二人に、明智は一つ決心をしてそれを語り始めた。
「――まず、私の考えている前提条件を言いましょう。螺旋王は常に私たちの話を聞き、姿を見ています」
聞き捨てなら無い発言に身体を揺らす二人。それを片手で制し、明智は言葉を続ける。
「超科学や魔法が存在すると確認できた今。
その方法を論じる必要はありませんし、もうそれに抵抗するのも無意味です。
なので、私はあえて口に出して語りましょう。今の状態――あまりにも螺旋王の想定通りに進んでいると。
不自然なまでに集中する情報。そして、今盤上に配置された駒の位置を確認して私はそれを確信しました。
私達は螺旋王の描いたシナリオ――その線上を滑り降りているだけ。
……残念ながら、私だけではここで匙を投げざるを得ません」
「あんた……、急に投げ出すって――!」
すでに身体を半分乗り出していたねねねを再度明智は手で制す。
発言内容は投げやりであったが、しかし表情は冷徹な知性を湛えたままだった。
「私だけでは……と言ったでしょう。
3人寄らば文殊の知恵――その通りですよ。あなた達には私と同じ立場に立って協力してもらいたい。
だから、今話すのです」
不可解な発言に説明を要求する二人に、明知は自身の中だけで密かに進めていた考察を披露した。
それは彼の脳内に蓄積されている大量の犯罪者データから導き出された、螺旋王に対するプロファイリングの結果。
「……劇場型や、見立て。犯罪者が自らが起こす犯罪の中に、何らかの思想やアピールを持たせることは多々あります。
螺旋王が犯罪者と言えるかは、彼の世界を知らない私に断言できることではないですが、しかし犯罪でなくともそれは同じこと。
彼が最初に実験だと称した様に、この殺し合いには何らかの意味があり、彼は私達に何かを期待している。
それは、彼が放送で繰り返し意味深な発言をしていることからも明らかです」
それが解ればどうなるんだ? ――と、士郎が明智に尋ねる。
螺旋王の目的。それが殺し合いを眺めるだけでないとしたら、自分達にとってどんな意味があるのかと。
「はっきり言いましょう。
彼は殺し合いの結果――ではなく。その過程で発生する何かを発見。データを収集することを目的としています。
もちろん。ある程度はそれが得られるという確証を持ってです。
そのために私達を盤上に配し、自らが作り上げた仮定の上を私達がなぞるのを見守り、放送という手段で微調整している。
……そして恐らくは、それは彼が螺旋力と呼ぶものに関わることなのでしょう」
定時放送により、繰り返し聞かされてきた『螺旋力』の存在。
あそこまで露骨ならば、何らかの意味があるのだろうと明智の前の二人も気に留めていたところではある。
「殺し合いの中で……って言うんなら、やっぱ火事場の馬鹿力みたいなものなのか? その螺旋力ってのは」
「解りません。それに近いのかも知れないし、全く別のものなのかも知れない。
私が私だけでは無理だと感じるのがこの部分です。所詮、私はここに集められた一世界の住人でしかありません。
魔法、魔術、錬金術、超能力、超科学――常識も法則すら違う世界から集められた82人。
それを全て把握しているのは、現在の所は螺旋王のみ……」
「だから、殺し合いに首を突っ込むよりも人集めを優先するってわけか……」
「ええ。螺旋王の目的を読み、それを先取りできればこの殺し合いを途中で終わらせることができるかもしれません。
または、その為の交渉材料にできる可能性もあります」
聞き手側に専念している二人に頷くと、明智はさらに言葉を紡ぐ。
「螺旋王に対し、82人の知恵で立ち向かいたい。しかし、それはもう不可能です。
ですが、この現状が私の考えている通りならば、まだ望みは――いや、ここにしか望みはない。
なぜならば――……」
――それはと、明智が螺旋王に課せられた自分達の役割。そして、その中に潜む逆転の芽。それを語ろうとした時。
その発言は、何時の間にか迫っていた定時放送――螺旋王の声により遮られた。
『人間とは面白いな』
そんな、まるで自身が天上の神であるかの様な言い回しから始まったそれに、3人は慌てて紙とペンを手に取る。
またしてもつぎ足されるであろう死者の名前を前に、言いようの無い緊張が高まりペンを持つ手に力を込めさせた。
『人の身に刻まれた二重螺旋の為せる技、か――』
前置きの中で語られるそれに、3人は反応する。
やはり、キーワードは『螺旋』。しかも、今回は具体的に『人間の中の二重螺旋』と新しい情報が提供された。
先に己の推論を語った明智も、それを聞かされたねねねと士郎も、やはり螺旋王はこの実験で螺旋力を得るのが目的だと再確認する。
それが、螺旋力を持った人間を直接確保したいのか、それとも人間が螺旋力を獲得するプロセスを見出したいのかはまだ不明だが。
しかし、そんな目まぐるしく回転する3人の頭脳も、続けて発表された死者達の名前にぴたりとその動きを止めることとなった。
「(そうですか。彼らはもう……)」
剣持勇。そして、金田一 一。……その二人の仲間の死に、明智の心は僅かに震える。
だが、それも最悪の想定の中からは出ていない結果。その覚悟によって感情よりも理性を優先させることに成功した。
彼の隣りに座っている士郎も、ランサーの脱落と未だ数を減らさない死者に驚きはしたものの取り乱す程ではない。
それよりも、二人が驚いたのは――……、
「う、嘘……。センセー……が?」
――目の前で、まるで子供の様にボロボロと涙を零すねねねの姿であった。
◆ ◆ ◆
西には熟した果実の様に真っ赤な太陽。そして、それに押し出されて長く伸びる影が向うのは夜を目前とした蒼い空。
薄く白い姿を現し始めた月の下。映画館の中の3人と同じく、外に一人残ったイリアも放送を聞いていた。
「(ランサーが消滅……そうか、それで)」
それで、聖杯のシステムが反応したのかと、ランサーの死を知ったイリアは納得した。
そして何故彼が本来の名前でなく、サーヴァントのクラス名で呼ばれているのかも同時に納得する。
「(でも、だとしたら随分中途半端だわ……?)」
螺旋王が自身を聖杯として利用しようと考えているなら、贄……つまりはサーヴァントがランサーの1体だけというのはおかしい。
もう一人、ギルガメッシュという名の英霊が召喚されているが、こちらはクラス名でないので扱いが不明だ。
聖杯に注がれるにはあまりにも大きな存在ではあるが、しかし――……。
「……意味がわかんない」
――とりあえずは、イリアはその問題を無視することにした。それよりも、今は特訓なのであると。……と、
「あらシロウ。私は一人で大丈夫だって言ったでしょう?」
目の前に現れたのはつい先ほど別れたばかりの士郎であった。
特訓中の姿を見るのは、おめかし中の姿を覗き見ること同義。いくらシロウと言えどダメ! と、イリアは追い返そうとする。
「いや、覗きにきたんじゃないんだ。
明智さんが、イリアにお願いがあるって……、菫川先生を励ましてくれってさ」
「ネネネが……?」
そうか。そう言えばヨミコと言う人は、彼女の大事な人なんだとネネネから教えてもらっていたことをイリアは思い出す。
ならば頼まれるまでもない。今まで何度も助け、面倒を見てもらったのだからと映画館の入り口へと向った。
と、内へと向う自分と入れ違いに映画館から離れていってしまう士郎をイリアは呼び止める。
「あれ? シロウはどこに行くの?」
「やっぱ、元気ない時は飯だと思ってさ。
それに、ラッドが仲間を連れ帰ってきたら大所帯になるだろう?
だったら、今の内にこの近くを回って食材を確保しておこうかなって思ったのさ」
それは素敵な提案だと、イリアの白い頬が赤く高潮した。士郎が持つ料理の腕前は自身の舌が覚えている。
螺旋王より与えられたモノによる灰色の食生活が、薔薇色のものに変わる予感。それに期待は高まり、お腹もク〜とその存在をアピールした。
「非常時だしさ。そんなに期待されても、どれだけできるかは解んないけど……うん。努力するよ」
「シロウの料理を食べれば、ネネネもアケチもきっと元気がでるわ♪」
離れてゆく背を手を振って見送り、イリアは改めて映画館の中へと向う。
妖精と謳われる少女の足取りは軽い。その足元では車輪の従者が静かに明滅していた――。
176 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:03:08 ID:lPD5mFeE
sienn
支援
179 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:04:02 ID:0rwIbBxP
チャットより支援
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:04:08 ID:lPD5mFeE
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◆ ◆ ◆
「さて……と、スーパーかコンビニ。それともレストランか……?」
夜を迎える寸前の茜色と紫が混じった風景の中に立ち士郎は思案する。
映画館を基点に、南の総合病院-デパート方面。そして、南西の駅の方までは繁華街が続いている。
言葉で上げた以外にも、食材を得られる場所は多くあるだろう。
だがしかし、あくまでちょっと食材を調達しに行く……というだけである。選好みをしている内に、誰かに襲われてしまっては本末転倒だ。
ある程度、幅広い種類の食材が得られるならそれでいい――と、士郎はその足を進め始めた。
「(……言峰綺礼)」
死んだはずの男が此処にいることは、最初に名簿を見た時から知っていた。
そして、合流したイリア達が持っていた詳細名簿を見て、その男が同姓同名などの勘違いでないことも確認したばかりだ。
何故生きているのか? それは考えない。問題とするのは、そう遠くはない場所にいるという事。
放送前に明智が確認した時には、北を流れる川の向う。丁度、自分が向う予定のあった図書館の近くにあの男はいた。
そこからあの男がどちらに向ったかは解らない。彼の目的も、彼がここで何をしているのかも……。
「(………………………………)」
色の濃さを増してきた影の中。その中からあの男がこちらを見ているかも知れない。そんな錯覚に身体が強張る。
あの常に闇色の服を纏っていた男。彼が自分を覗いて、またほくそえんでいるのではないかと……。
「やっぱ、大人数で食べるなら鍋かな? 夜は冷えるし……」
そんな軽口を意図的にこぼし、士郎は錯覚の中ですら自分を蝕むあの男を振り払う。
死に際のロイドに教えられた事。それを自身を支えそして抑える楔とし、現在の自分がしなくてはならないことを再確認する。
「腹が減っては戦はできぬ――だな」
大通りに面した商店街の大きなゲート。それを潜り、士郎は食材を求めて独り暗闇の中へと進んで行った――。
【C-5/北東部-商店街/一日目/夜】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、心労(中)、腹部と頭部を強打、左肩に銃創(処置済み)、軽い貧血、
[装備]:クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、レガートの金属糸@トライガン
[思考]:
基本方針:螺旋王の実験を食い止める。イリアを守る
1:商店街で食材を調達。早々に、映画館へと帰る
2:言峰が近くに来ている可能性があるので警戒
3:1に成功すれば、映画館内で全員分の晩飯の用意
4:イリアの様子は常に気にかける
5;ラッド達が帰ってきて状況が落ち着けば、鴇羽舞衣の説得に赴く
6:善悪に限らずできるだけの人を救いたい。が、止むを得ぬ場合は――
[備考]:
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※チェスに軽度の不信感を持っています。
※なつきの仮説を何処まで信用しているかは不明。
※ロイドの言葉を受け、ある程度ですが無駄死にを避けてより多くの人を救う選択を意識できる様になりました。
188 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/22(金) 00:05:11 ID:46jol+YE
レフリー支援
しえーんっ(ノ)・ω・(ヾ)
風来のSIEN
◆ ◆ ◆
広くはあるが、空調によりその温度を暖かく均一に整えられたロビー。だが、その端にあるレストルームの中は冷え込んでいた。
青いタイルの敷かれた内装。空調が届かないというだけでなく、その雰囲気が其処を冷ややかに感じさせるというのもあった。
だが、今この女性用レストルームの中が寒々しいのは、そういう理由のせいではなく――、
「……あぁぁぁぁああぁぁっ! うっ、うわぁあああぁああぁぁぁあん!」
――万遍なく響き渡る大きな泣き声のせいであった。
泣いているのは、菫川ねねね。声を張り上げ、嗚咽を漏らし、誰に憚ることなく、まるで幼児の様に泣いている。
彼女のたった一人の『センセー』――読子・リードマンの死が知らされた時。彼女はあの時の少女時代へと戻ったのだ。
他人にも、そして自分自身に対しても微塵たりとも思わせてなかった寂しい自分。独りぼっちだった少女の時へ。
「えっ、えぅ……! センセーが……センセー……ッ! うわぁああぁああぁ――!」
何で本を『書く』のか? どうして、ねねねは13歳という若さで作家としてデビューしたのか?
それは勿論、読んでもらう為だった。大切な人に自分の書いた本を読んでもらいたい。作家になった自分の本を読んでもらいたい。
多くの人に読んでもらい本をたくさん出して人気が出れば、本は海を越えその人の下まで届くだろう。
その時は少ししかなかった自覚。それを理解させてくれたのが『センセー』。彼女の、いや本にとっての最高の『読者』――読子・リードマンだった。
「……どうしてっ! なんで、センセーがっ! っあ、ふあぁ、うっく……!」
ただ我武者羅に書いていた少女時代。本の向こう側に、自分の世界をひたすらにぶつけていたその時に彼女は現れた。
まるで本の中から現れた様な、ファンタジーでミステリアスな存在。一回り近くも年下の自分に、まるで子犬の様にじゃれついてきて……。
ともかくとして、様々な事がありねねねは変わった。『読子』を知ったから。そして――『読者』を知ったから。
彼女の作家としての才能も更に花開いた。ただの物珍しい、若さだけが特徴の作家ではなく。物語を創造し、本を読者に齎す作家に。
「ま、まだ……っ、読んで、ない……ほ、……ぅ、うええぇぇぇえええん!」
菫側ねねねが新刊を出せば、読子は世界のどこからでもやってきて、涙を零しながら感想を述べサインをねだった。
程無くして、読子が読む本をねねねは書き。ねねねが書く本を読子が読む。それが当たり前の習慣になる。
貴重な作家としてねねねは幾度も危機に陥ったが、そんな時はやはり読子が助けに来て、時には逆に読子はねねねの本に助けられた。
波乱万丈ではあるが、幸福だったサイクル。グルグルと永遠に書き続ける限り、読み続ける限り続くと信じていたサイクル。
「……っく! あぁっ、私が――私が――っ!」
だが、サイクルは唐突に途切れた。
どうしてか、ある日を境に読子は現れなくなる。そして、片輪を失ったねねねの筆もその時――折れた。
いつしか、読子に読んでもらわなければ本が書けない。ねねねの中で、読子はそんな存在になっていたのだ。
ねねねは読子を探し――そして、見つからない。そんな時がひどく長く続いた。何時の間にかにねねねは大人になっていたが、
もう本は書けなくなってしまっていた……。
「もう……、もぅ……私はっ! あっ、ああぁぁぁああぁぁあ……」
螺旋王の実験が始まった時。読子の名前を見て心を躍らせたのは、ねねねの誰にも話せない秘密である。
どんな時でも、自分の危機に読子は駆けつけた。今回もそうであると、ついに読子が自分を救う危機が訪れたと、密かに歓喜した。
だが、どこかに不安があったのも事実。イリアに言った『覚悟』という言葉。何よりもそれは臆病な自分の心を抑えるためのものだった。
近くに見えてはいるのに、ギリギリで指先が届かないそれが……、今度こそ決定的に離れていってしまうのではないかと。
そんな不吉な予感に苛まれていたのだ。イリアとフォルゴレがいなければ、どこかで独り泣いていたかもしれない。
「――っぅ。…………っ! ………………………………! …………!」
そして、ついに予感は現実となった。
菫川ねねねはもう独りぼっち。
もう、――書くことも。――読んでもらうことも。――何もできない。
G支援
◆ ◆ ◆
独りきりとなったロビーの中、明智はいつかの様にどこかで聞いているはずの螺旋王に語りかけていた。
「これが……、これも含めて全てがあなたの計算通りなのでしょう。
ならば、私はあえてそれに乗ります。あなたの期待通りに……、そしてあなたの期待を僅かにでも上回ってみせる。
それが私の――明智健吾から螺旋王への挑戦です」
フ……と、些か自嘲気味に笑うと明智はその身を再び椅子の上へと収めた。
この螺旋王の実験。結末までは予測できなくとも、すでにルールは全て理解している。と、明智は確信している。
齎された情報――人物像。仕掛け。エピソード。それらの無数の点が浮かび上がらせる螺旋王の狙い。それが何かという事を。
参加者全員での殺し合いによる実験。
それがお題目でしかないことはすでに明らかにしている。ならば、参加者に課せられた真の目的は何か?
それは一人一人によって、違う。各人がそれぞれに、
フラスコの中に注がれた多種多様な化学物質の様に個別の役割を持たされ、そしてそれぞれの化学反応を期待されている。
それは大きく別ければ4つに分類できる。
1つ目は、殺し合いを推進するための物質。殺害による実験の推進を肯定し、積極的に活動する物質。
2つ目は、先にあげた物質の働きを阻害する物質。殺害を良しとせず、他の物質の存在を守ろうとする物質。
3つ目は、それ自体は無力であるが劇的な変化を期待されている物質。螺旋王が最も重視する物質だ。
4つ目は、この仕組みに気付き、3つ目の物質が螺旋力を発現するのを促進させる物質。
螺旋王は1番目と2番目が作り出す状態の中で、3番目の物質が4番目を触媒に変質することを目論んでいる。
それが彼の言う、螺旋力の発現。
そして、明智は自分が4番目に該当すると考えている。
螺旋王にこの仕組みに気付く知性を期待され、意のままだと気付いてもその通りに動くであろう駒。それが自分だと。
「(……そして、高嶺清麿。彼が今ここに加わろうとしていることも、またそうなのでしょう)」
出会ったばかりのラッド・ルッソが迎えに行った高嶺清麿という少年。
名簿の情報とラッドの証言から彼も『4番目』だろうと、明智は当たりをつけていた。
「(私の隣には金田一君が……と思っていたんですがね。これは私個人の願望でしかありませんでしたか)」
今は亡き少年探偵に心の中だけで追悼を繰り返すと、明智は机の上に手を伸ばしコーヒーカップを取った。
そして映画館の事務所内にあった安物のコーヒーメーカーから淹れたコーヒーを喉に流し込む。
物腰はあくまで普段通りにスマート。思考も眼鏡の奥の眼差しもどちらも至極冷静。明智健吾にブレは無い。
SIENするのに理由が居る階?
絶望支援
◆ ◆ ◆
陶器のタイルを叩く小さな足音。
それが入ってくると同時に、まるで目覚まし時計の様だった一つの箱は鳴り止んだ。
「ネネネー? 大丈夫……?」
まるで自分より幼い子供に向ける様に、イリアは声をかける。
もうすでに泣き声はやんでいるが、迷子の子供の様なそれは入ってくる前から聞こえていたからだ。
「………………うん、大丈夫。……ごめんねイリア。偉そうなこと言ってたのに、この様で」
壁越しに聞こえる声は少しだけ精彩を欠いていたが、それでも菫川ねねねの声だった。
しかし、間にある扉を開くことができないのがその虚勢の限界を現している。
それだけで、イリアにもねねねがどれほどに悲しんでいるのか理解することができた。
「えっとね。今ね、シロウが晩御飯の材料を集めにいっているの。
シロウのご飯はとてもおししいから……、きっとネネネも元気でるよ。
……ああ、そうだ。私も手伝うわ! そしたらネネネももっと元気になるよね――」
「――ありがとう。イリア」
静かな部屋の中に、さっきよりは力強い声が響く。
ねねねがこのまま何処かに行ってしまう……そんな不安を、とりあえずは払拭できたことにイリアは安堵した。
最愛の人を失いどん底にいるねねねをそこから引き上げる方法を、幼いイリアは知らない。
ただ寂しさだけは理解できるから、せめて一人きりにはしない様にと手を差し伸べるのだ。
「泣いたらさ……、メイクが落ちちゃって。みんなに見せれる顔じゃあないから――」
「うん。わかるよイリアも女の子だもん。先に言ってるからゆっくりおめかししてきてね」
コツコツと、再び小さな足音を立てるイリア。と、何かに気付き真っ白な髪を広げてターンした。
「そうだ。アケチからの伝言。
ネネネに物語を書いてほしい――って。
ラセンオウが書いた筋書きを、唯一上書きできるのはサッカであるネネネせんせーだけだ……って、言ってたよ」
それじゃあね。と、最後に見えないねねねへと手を振ってイリアはその場から姿を消した。
SIENNjきゃああああああああ
◆ ◆ ◆
明智に、託された仕事を終えたことを告げイリアは再び映画館の外へと出てきた。
真っ赤だった太陽はもうほとんど消えて、わずかに空の端っこに紫色が残るのみ。空気も冷え始めていた。
しかし、其処こそが相応しい舞台だと言わんばかりに、新雪の髪を持った少女は踊る。
「マッハキャリバーも寂しいよね」
本来の主人を失った車輪の従者にイリアは囁きかける。
「ねねねも……。そして、シロウがいなくなったら私も同じになっちゃう。きっと、私がいなくなっても……」
だから、もうだれも一人ぼっちにはしないようがんばろう。
独りになった人がいるなら、走っていって手を差し伸べよう――そうイリアは決意し、皆の幸福を願う。
「これからもよろしくね。マッハキャリバー」
『はい。マスター』
藍色の空の下。街燈が作り出す黄金のスポットライトの中。真っ白な少女は星に願いを告げる。
【C-5/映画館-外/1日目/夜】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル
[思考]:
基本:シロウと一緒にゲームを脱出!
1:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる
2:シロウが帰ってきたら、料理をお手伝いする
3:その後はみんなで晩御飯
4:シロウ、アケチ、ネネネの言うことを聞いてがんばる
5:聖杯については考えない。シロウにも内緒
[備考]:
※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
※聖杯にランサーの魂が取り込まれました。
※マッハキャリバーより、「プロテクション」「シェルバリア」「リカウティブパージ」を習得中です。
【プロテクション】:魔法障壁を張り、攻撃をガードします。
【シェルバリア】:半球状の結界を張り、外部からの干渉を遮断します。一定時間持ちますが、それなりの魔力を消費します。
【リアクティブパージ】:バリアジャケットを自ら爆破し、その威力で攻撃を防ぐテクニックです。
支援、それが俺の名だ
しえーん
◆ ◆ ◆
「(……ひどい顔)」
鏡の向こう側に立つ自分を見た時の、菫川ねねねの率直な感想がそれだった。
瞼を真っ赤に泣きはらし情けない表情をしている自分。こんな顔を見ていたらひっぱ叩きたくなる――……。
「しっかりしろ――!」
静かだったレストルームの中に連続した破裂音が鳴り響く。ねねねが鏡の向こう側にいる情けない女をぶっ叩いた音だ。
女は瞼だけではなく頬も真っ赤に腫らし、ますますもってブサイクな顔に……だが、もうみっともない顔はしてなかった。
「私が物語りを……、螺旋王の筋書きを――上書きする?」
明智は自分にそれを期待している。魔法も超能力も無いただの女に――『作家』――として挑戦しろと!
文を打つことを久しく忘れた両手をねねねは見る。そして自問する――できるのか? と。
あまりにも大それた挑戦。あの男に限らず、何故世界はこんなにもただの女に期待するのかと……。
「書けるのか……? 私に……そんな、そんな『本』が――?」
世界は――運命は――物語は――、そして何よりこれから生まれてくる『本』は知っているのだ!
菫川ねねねが世界に相対するに相応しい『作家』であることを。彼女の中に無限の才能が眠っていることを!
『彼女』も知っていた。――だから、二人は出会ったのだ。運命が、物語が二人を導いたのだ!
「センセー……、私、私書くよ。私は本を――書く」
今更になって気付く。そうだ、書けばよかったんだと。書くのをやめるんじゃなく、書きまくればよかったのだと。
センセーが目の前にいないのなら、読みに来てくれないのなら……逃げ場がなくなるほど本を書けばよかったのだと。
世界を、自分の『本』で――埋めてしまえばよかったのだと!
「書いて、書いて、書いて、書いて、書いて――――書きまくってやる!」
『菫川ねねね』の書く『本』で、螺旋王の書いた傲慢な脚本をぶっ飛ばす――と、ねねねは心を燃え上がらせる!
その『本』の結末は決まっている。生まれてこの方そればかりだった。読子の喜ぶあの終わりに決まっている。
いかな艱難辛苦を登場人物に与えようとも、どれだけ後でご都合主義だと罵られても――――!
「――ハッピーエンドだ!」
鏡の中で不適に微笑む菫川ねねね。
遂に蹴飛ばすべき道理の端に足をかけた彼女の瞳には、緑の螺旋が渦巻いていた……。
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ) 螺旋力覚醒】
くろすおーばー支援
SIENだよー
【C-5/映画館-レストルーム(♀)/1日目/夜】
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:螺旋力覚醒、健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、
『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
[思考]:
基本:螺旋王のシナリオ(実験)を破壊し、ハッピーエンドを迎えさせる
1:本を書くにはまず資料! 明智と一緒に考察をする
2:ある程度考察が進んだら、ハッピーエンドを迎える『本』(方策)を書く
3:ラッド・ルッソの動向には警戒する
4:柊かがみに出会ったら、「ポン太くんのぬいぐるみ」と「フルメタル・パニック全巻セット」を返却する
5:センセーに会いに行きたい……けど、我慢する
◆ ◆ ◆
――ハッピーエンドだ!
ロビーの端にまで聞こえてきた菫川ねねねの決意表明に、明智は一人頬をゆるませた。
放送の直後。大粒の涙を見せて泣き出した時はどうしようかと困惑したが、
やはり目星をつけた通り彼女こそが、我々に対し螺旋王が与えた逆転の可能性だと確信する。
螺旋力――未だ不明のその力だが、明智はそれに対してもある程度の目星をつけていた。
士郎が口にした火事場の馬鹿力。それに近く、それよりもやや限定的なもの――『抗う力』。それこそが今の明智が考える螺旋力。
「(螺旋王の目的は、決して殺し合いの完遂ではない。むしろその逆、この実験を誰が破壊するのかという事のはずだ)」
明智の目の前には狭いテーブルが一つ。しかし、その上には無限に近い膨大さの情報が載っている。
彼自身に支給された、悪名も合わせて併記されたプロフィール一覧。
菫川ねねねに支給された、各人の経歴や能力などが客観的に詳しく記されたファイル。
イリアに支給された、螺旋王の用意した全支給品の、見た目、能力、本来の持ち主が記載されたリスト。
ロイドという男に支給された、実験参加者の現在位置を知ることのできる携帯電話。
そして、その単純な情報は掛け合わせ、個々の人間が遭遇したエピソードをブレンドすることで更に質と量を増す。
出会った人物。そして彼らから聞く知人の人となりで、名簿は更に情報量を増す。
携帯電話と支給品リストを掛け合わせることで、全参加者の位置と彼らに支給されたアイテムの一つが明らかになった。
更に、生者と死者の位置、放送によって判明している死のタイミング。それにより、散らばった点の間に線が浮かび上がる。
舞台の代わりである地図の上にそれらを写せば……、大雑把ながらにもその全容が明智の脳内に浮かぶのだ。
これを、明智健吾という男は螺旋王からの挑戦と受け取る。
王と同じ視点を授けるから、見事打ち負かせてみよ――という螺旋王の声を聞く。
実験場の8マス×8マスをゲーム盤とし、互いが打ち手となってそれを進めてゆこうという誘い。
明智はその鋭利な瞳で盤を見る。その中に緑色の螺旋は無い……が、螺旋王の心臓に突き立てる銀のナイフの輝きがあった。
これは予想外
超パロロワ支援
実況が支援をお送りいたします
◆ ◆ ◆
「さて……と、しかし私にはやることがありますね」
螺旋王への思いを一旦断ち切り、明智は実験の参加者の一人としての方へと思考を切り替えた。
片手で携帯電話。そして、もう片方の手でメモを取りながら完成させた、放送直後の位置情報が記された地図。
それを見ながら、彼は当面の懸念事項への推測と対処を進めてゆく――……。
この後、合流が予定されている「高嶺清麿」。彼の滞在している病院には、現在他に3人の死者がいることが判明している。
何があったかは不明だが、彼が犯人でないことだけはまず間違いなく確かだ。
情報は位置だけではない。明智の脳内には放送の記憶――つまりは、彼らが殺されたタイミングも入っている。
第1回の放送で脱落が判明したアニタ・キングとエドワード・エルリック。同じく2回目で判明したエリオ・モンディアル。
ラッド・ルッソの証言を信じるならば、彼がその3人を……少なくとも前者2人に関しては確実に殺してないと言い切れる。
それに加えて、この映画館内にはキャロ・ル・ルシエの反応があるが、死体はない。あるのは首輪のみ。
なので、名簿から想像できる彼の人格から推測するに、彼が自分と同じ様に首輪だけを死者から拝借したという可能性が高い。
出会った時点で確認の必要はあるが、とりあえずは彼との合流に問題はない――そう、明智は結論付けた。
考えておかねばいけない問題の内、もう一つ大きなものがある。それは地獄の傀儡師――「高遠遙一」の存在。
現在位置は豪華客船内。しかも、彼以外に5人もの生存者と、1人の死者が乗り合わせている。
死者の名前はアイザック・ディアン。あくまで位置情報は首輪のものであるので、死体が乗り合わせているとは限らない。
恋人であるミリア・ハーヴェントが形見として持ち歩いている可能性も考えれるのだから。
注目すべき人間は――「高遠遙一」「ティアナ・ランスター」「チェスワフ・メイエル」の3人。
高遠遙一に関しては言うまでもない。恐らく、豪華客船の付近に浮かんでいる剣持警部の死体は彼の仕業なのだろう。
そして、その直接の下手人。地獄の傀儡師に人形にされた者の候補として上がるのがティアナ・ランスターだ。
午前の内に出会ったあの少女。
クロス・ミラージュと約束していた錯乱状態からの回復は、駅へと戻った時にいなかったことから失敗したのだろうと解る。
ならば、もしそんな不安定な状態の彼女を地獄の傀儡師が見つければどうするか? ――言うまでのないことである。
豪華客船が現在、彼のステージとなっていることは想像に難くない。
もう一人の注目すべき人物チェスワフ・メイエル。十中八九、玖我なつきに偽名を名乗った少年とは彼のことだ。
少年とは言うが、それが違うということは彼の経歴を見れば明らになる。
彼は錬金術師である。しかし、ただ錬金術師だけと言うならエドワード・エルリックのように若年の者は存在する。
たが、注意深く経歴を観察すれば、彼が見た目どおりの少年でないことは明らかなのである。
一つ一つの出来事に年代は記されていないが、とても天才というだけでは間に合わない評価と経歴の持ち主。
そして決定的なのが、場所を同じくしているアイザックとミリアに親交があると記載されているにも関わらず、
彼だけ生年月日が1700年代であること。これにより、彼が見た目通りの少年。それどころか、人間かも怪しいことがわかるのだ。
傀儡師のステージにより怪しい人間だけが脱落するというのならば、それも看過できるかも知れないが、
そうはできないのは、「ガッシュ・ベル」という少年の存在があるからである。
先に挙げた高嶺清麿のパートナーであるこの少年。合流の後、彼がこのことを知ればそこに向かいたくなるのは必然。
高遠遙一を止めたいという使命感。亡くなった剣持警部への意趣返し。それを合わせて考えれば自分もそこへと向かいたい。
だが、それが非常にリスキーであることは否めない。ティアナが人形となっている可能性があるからだ。
現状の戦力に加え、今後の加入が予定される清麿、ジン、ラッドと、豪華客船内にいる傀儡師と人形の戦力。
天秤にかけた場合。一体それはどちらに傾くのだろうか……?
これもやはり、高嶺清麿との合流を待ち、彼より事情を聞いてからだろうと明智は保留する。
その時までに被害者が出る可能性を見逃すのは口惜しいが、力に関しては全く及ばないというのがすでに出た結論だ。
観客からのおひねり支援!
さらに別種の大きな問題が一つ。映画館より南にあるデパート周辺で起きた『何か』である。
今回の放送で呼ばれた脱落者の内、6人までがそこに反応を残している。
そこにはあの『ロイ・マスタング』も存在した。何か、凄惨な事態が発生したという事だけは間違いない。
また、そこから橋を渡ったところにも真新しい死者の反応が二つ。
君子危うきに近寄らずではないが、そこへと向かうことは遠慮しておいた方がよいだろう。
他にも気に留めておくべきことは、多々あるが当面の問題としてはこんなところだろうか……と、明智は思考を中断した。
気付けば、カップの中のコーヒーは冷め切ってしまっている。菫川先生も、もう戻ってきておかしくない頃だ。
ギシと音を立てるプラスティックの椅子から立ち上がり、今度は二人分のコーヒーを入れるため明智はロビーを進む。
入れ替わり立ち代りに人が行き交ったロビーから人の姿が消え、次の話までの静かな時間が訪れる――……。
【C-5/映画館内/1日目/夜】
【チーム:戦術交渉部隊】(明智、ねねね、イリア、士郎)
[共通思考]
1:各種リスト、便利アイテムを利用した豊富な情報量による仲間の選別及び勧誘
2:基本的には交渉で慎重に。しかし、実力行使も場合によっては行う
3:首輪の解析・解除が可能な者を探す
4:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、閃光弾×1
予備カートリッジ8、ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]:
基本1:螺旋王より早く『螺旋力』を手に入れ、それを材料に実験を終わらせる
基本2:高遠遙一の確保
1:ラッド達が帰還するまでの間を、考察と休憩にあてる
2:菫川ねねねに情報を提供し、螺旋王を出し抜く『本』(方策)を書いてもらう
3:螺旋力が具体的に何を指すのか? それを考察する
5:首輪に関しては、無理をしない程度に考察
6:高嶺清麿と合流できれば、事情を説明して豪華客船に向かうか検討する
7:ラッド・ルッソの動向には注意する
8:2日目の正午以降。博物館の閉じられた扉の先を検証する
[備考]
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
※ガジェットドローンは映写室に繋いだ時点でいったん命令がキャンセルされています。
231 :
こいつウザ杉:2008/02/22(金) 00:12:48 ID:wIzj8Euf
188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:05:11 ID:46jol+YE
レフリー支援
197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:06:50 ID:46jol+YE
G支援
202 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:07:55 ID:46jol+YE
絶望支援
209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:09:09 ID:46jol+YE
支援、それが俺の名だ
212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:09:44 ID:46jol+YE
しえーん
216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:10:25 ID:46jol+YE
くろすおーばー支援
221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 00:11:02 ID:46jol+YE
超パロロワ支援
誰がために支援する
※以下の支給品が映画館-ロビーの、テーブルの上に並べられています。
【参加者詳細名簿】
全参加者の簡単なプロフィールと、その人物に関するあだ名や悪評、悪口などが書かれた名簿です。
【参加者詳細名簿+】
全参加者の個人情報と、その人物に関する客観的な経歴が記されています。情状など主観になる事は書かれていません。
※読子・リードマンとアニタ・キングのページはねねねが破いて捨ててしまいました。
【警戒者リスト】
ねねねがメモに書いた、要注意人物のリスト。自分、または仲間が遭遇した危険人物の名前が書き連ねてあります。
「高遠遙一」「ロイ・マスタング」「ビシャス」「相羽シンヤ」「東方不敗」「鴇羽舞衣」「ニコラス・D・ウルフウッド」
【全支給品リスト】
螺旋王が支給した全アイテムが記されたカタログ。正式名称と写真。使い方、本来の持ち主の名が記載されています。
【携帯電話】
通常の携帯電話としての機能の他に、参加者の画像閲覧と、参加者の位置検索ができる機能があります。
また、いくつかの電話番号がメモリに入っています。(※詳細は不明)
[位置検索]
参加者を選び、パスを入力することで現在位置を特定できる。(※パスは支給された支給品名。全て解除済み)
現在位置は首輪からの信号を元に検出される。
【ダイヤグラムのコピー】
明智健吾がD-4にある駅でコピーしてきた、モノレールのダイヤグラム。
【首輪】
明智健吾が死体から回収した、キャロ・ル・ルシエの首輪。
【考察メモ】
雑多に書き留められた大量のメモ。明智、ねねねの考察や、特定時間の参加者の位置などが書き残されている。
らせんりょくってなんですか?
オリジナル設定?
でしょ
グレンラガン
ここまでくると拡大解釈すぎてわけわかんね
一気に糞SSを垂れ流ししてるようだから
一時期が終ればすぐに収束すると思われ
ひたすら削除依頼ヨロ
>>244 他力本願情けねーww
人として恥ずかしくないでちゅか〜wwww
245みたいな人間がいるから企画というのはどんどん変な方向に向かうのだよ
>>247 “同類”のくせに偉そうなことを言うなよw
仲良くしようぜ?
そもそも、前提からして何もかもが間違っていたのだ。
ルルーシュ・ランペルージは決して歴戦の戦士でも、屈強な肉体を持つ軍人ではない。
確かに彼は一つの"部隊"のリーダーである。
しかも"騎士団"を名乗る圧倒的な武力を備えたレジスタンス組織を掌握している。
だが、それはあくまで"駒"としての存在であり、彼自身は戦う力はほとんど持っていない。
純粋に殴り合い殺し合い撃ち合いに興じたとして、彼が圧倒出来る参加者などほとんど存在しないのが現実だ。
己の力のみで一対一のキャットファイトを行った場合、彼のオッズはおそらく残りの全参加者のうちでもTO5に入る程高い。
もちろん女や子供、全ての人間を含めた中で、だ。
彼には他人を圧倒出来る腕力などない。
彼には天変地異を巻き起こすような魔力などない。
彼には高層ビルを破壊するような馬鹿げた戦闘能力などない。
彼には数百メートル先の対象を正確に撃ち殺す射撃技術などない。
ルルーシュはまさに社会が産み出したもやしっ子の代表、結晶とも言えるような類の人間だ。
肉体労働は彼にはあまりにも不向きであり、頭脳を用いた策謀こそがその真髄、いやそれしか出来ないのである。
だが彼は肉体こそ貧弱ながら、経験豊富な軍人や戦士達の長――そして多方面から注目を浴びる部隊のカリスマ的指導者という側面も持ち合わせている。
では、彼の武器とは何なのだろう。
彼を他の参加者と乖離させ、分水嶺となり、ある種の高みへと引き上げる神の見えざる手とも言うべき能力とは一体何なのだろう。
ブリタニアの少年、ルルーシュは二つの力を持っている。
一つはギアス。一つは黒の騎士団。
だがその組織力はこの《バトルロワイアル》という舞台において、決して生かされることはない。
黒の騎士団のメンバーで、ルルーシュ以外にこの殺し合いへと参加している人物は紅月カレン――いや【カレン・シュタットフェルト】ただ一人。
主戦力である《ナイトメア》を入手する手立ても未だおぼつかず、彼らの武力は非常に心許ない状況であると言える。
そしてギアス。その「絶対遵守の力」に掛けられた制限は各参加者の中でも最大級のものだろう。
ルルーシュ本人に掛かる強烈な負担。強制力の減少。
通常ならば何人もの人間を一度に自害させることさえ可能な王の力も、本来の姿とは程遠い。
特に一度に複数の人間に対して強力な命令を行った場合、彼はその身を裂かれるほどの激痛に襲われることになる……これが厄介だ。
ギアスを使用するたびに苦痛の末昏倒しているようでは、命がいくつあっても足りない。
それでは。
ギアスに制限を掛けられ、その組織力を失った彼はただ少しだけ不思議な力を持った非力な少年である――そう断定できるのだろうか。
答えは否。どのような角度から彼を分析してもそのような解答は不適格と言える。
彼には才気があった。他の人間を圧倒する類稀なる頭脳、そして目的達成のためには部下さえ切り捨てる非情さ。
狡猾な蛇のように人の心を見透かし、自らの野心を叶えよう満身する人としての心の強さも持っている。
ルルーシュは王の力を与えられた人間と言えよう。
同時にこの空間において、誰よりも「帰りたい」と切望する人間でもある。
ナナリー・ランペルージ――彼の最愛の妹の名前だ。
ルルーシュは彼女のために、何よりも大切に思う彼女の元へ何をしても帰らなければならない。
そして彼にとって最良の友である――枢木スザクは死んだ。
呆気なく、枯れ花をへし折るように容易く。
何処で、どのような経緯で命を落としたのかルルーシュは知る由もなかった。
スザクが何を思い、何を感じ、最期に何をしたのか……それは永久の闇の中へと沈んでしまった。
事実は時間の流れのように淡々とそして残酷なまでに少年の心を変えて行った。
いや、これは本来の結末と何ら変わりのない結果なのかもしれない。
そう、もしもルルーシュがこの《バトルロワイアル》に巻き込まれなかったとして。
結局彼は近い将来、同等の決意を固めることになったからだ。
季節が移り変わるように、当たり前のように、彼は堕ちていった。
加えて、糸色望の死亡によりルルーシュはようやく《ゼロ》としての自分を取り戻したと言える。
だが彼が「教員」として未来ある若者に託した願いはルルーシュに対して何の感慨ももたらさなかった。
たった一つ、
ただ一つだけ、
今確かな事があるとすれば。
ルルーシュ・ランペルージ……いや、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは彼の死によって、ようやく「王」としてのスタートラインに立った。
今彼の中に潜んでいるのは人間ではない。
修羅道に堕ちた鬼、人の心を失った魔物の方がまだ可愛げがある。
彼は螺旋王ロージェノムを撃滅することに対して、どのような手段を取ることも辞さないだろう。
それがたとえ――幾つもの屍を重ねることになっても、だ。
□
「はぁはぁ……はぁ…ッ…くそっ!!」
疲労で筋肉が引き攣る。荒々しい息が口唇から漏れる。
疾走したりした訳でもなく、ただ歩いているだけなのにこの様だ。
せいぜい一時間と幾許と言った所だ。
足元のコンディションは最悪とはいえ、子供の山登りと変わらない距離と言えよう。
「ゼ――ル、ルルーシュ。本当に、大丈夫なの? 一度休んだ方が……」
「…………問題ないよカレン。まだ……大した距離は進んでいないからね。それより早く移動することの方が大切だ」
「……そう」
隣のカレンが心配そうな目で満身創痍の彼を見やる。
ソレに応えるため、ルルーシュは小さく笑みを浮かべた。
だが学園で自らを偽るために生み出した作り笑いも、この状況では妙に引き攣った笑いになってしまう。
説明するまでもないが、これは強がりである。
慣れない山道の移動によって、ルルーシュは疲労困憊に近かった。
膝はガクガク奮え、足の裏には鈍痛が走る。
日頃身体を全く鍛えていなかったツケが回って来た形だろう。
「ランペルージ。いくらお前がまだ青臭いガキだとはいえ、さすがにこの程度でへばっているようじゃ話にならん。
大体、シュタットフェルトの方がよっぽど元気ってのは男としてどうなんだ」
「……スパイク・スピーゲル。ルルーシュを侮辱することは私が許さない。
それに、名前の方で呼んで――さっき、そう……言ったはずだ」
剣呑な雰囲気が場を包んだ。
二人の数メートル先、先頭を歩くスパイクをカレンが冷ややかな目で睨めつける。
いや、スパイク本人には決してルルーシュに対して悪気がある訳ではないのだ。
いわゆる本来の気質から成る軽口の一種。
カレンへの発言を抽出してみても、それは見て取れる。
しかし、それでも見事に核心を付いたその発言にルルーシュの苛立ちは益々高まっていった。
(こいつら、どんな身体の造りをしているんだ? くそっ……まさかこんな事になるとは……)
カレンとスパイクだけならば、軽くジョギングをしてるかのような速度でこの山道を走破することが可能だ。
が、ルルーシュの平均的な移動速度から考えると、勿論ソレは異常である。
二人の姿を見失わないようにするので精一杯。
今はカレンが隣についていてくれているが、彼はこの瞬間も煮え滾るような憤怒をその胸中に押し隠しているのだ。
(突然の強行軍……とはいえ、地図だけではこの足場の悪さは予想出来まい。病み上がりにこの負担は……ッ)
心の中で悪態を付いても後の祭りだった。
いや、例えルルーシュ本人がこの苦痛を予測していたとしても、彼らの方針が変わることはなかっただろう。
自らの身体能力の劣悪具合から最良と思われる判断を見過ごすほど、彼の指揮官としての精神は甘くはない。
状況に応じて最も適切な行動を取る――当然、自らに多少の苦痛をもたらす決定であっても同様だ。
三人が行くのはE-7の右方。マップの右端に位置するエリア、山岳地帯である。
鬱蒼と茂る森。ゴツゴツした岩場。普通に移動する場合、絶対に通過するはずのないルートである。
彼らは禁止エリアに設定されてしまったキャンプ場を捨て北上する最中だった。
当初は出来るだけ長い間、その場所に留まっている予定だったのだ。
しかし放送の前後で状況は大きく一変する。
特に大きかったのは、三回目の放送の直前に北西の方向、おそらくデパートがある地点から強大な光が会場を包んだこと。
そして放送。ルルーシュ達を逃がすために、盾役を買って出た読子・リードマンが死亡したとの報せ。
この二つだった。
禁止エリア、極光、南方の温泉で別れた仲間の死亡――それらの事実は彼らに北進を余儀なくさせた。
しかも性急に、加えて迅速な進行が求められる事態であった。
三人は光を目指して集まって来るであろう他の参加者との鉢合わせを避けるため、わざわざ森林、そして山岳地帯を抜けての北上を決定したのだった。
「そうだったか? すまんな、物覚えが悪くてよ。『シュタットフェルト』」
「――ッ!」
「おいおい、そんなに睨むんじゃねぇって。ジョークだよジョーク。少し落ち着けってカレン」
疲労困憊の身体を引き摺りながら歩くルルーシュを尻目に、未だ疲れが見えないカレンとスパイクの口論は続く。
これで一体何回目なのだろうか。
キャンプ場を出てから、今までに二人が衝突した回数はそろそろ片手では数え切れなくなって来た。
「お前という奴は……っ! よくこの状況でそんな台詞が吐けるものだな!
読子という日本人はお前の仲間ではなかったのか。それに先程呼ばれたエドという名前も知り合いなのだろう!?
何故そんなにヘラヘラしていられるっ!?」
「……カレン。さすがに少し、言い過ぎだ。それに、あまり大きな声を出すな」
「だけどっ……ルルーシュ!」
ルルーシュは凄まじい剣幕でスパイクを罵倒するカレンを宥める。
いくら何でもこのような状況で大声を出すのは不味い。
とはいえ、このスパイクの対応が彼女を刺激してしまうことは仕方ないことのようにも思える。
だがそれ以上に彼女の憤りはスパイクではなく、むざむざゼロを死なせてしまったカレン自身への叱責が多分に含まれているようにルルーシュには感じられた。
(やはり《ゼロ》を失ったことが相当堪えているようだな。とはいえ……皮肉なものだ)
既にゼロであってゼロでなくなってしまった己を呪えばいいのか。
それとも巡り合わせの悪さを嘆けばいいのか、ルルーシュは口元を歪ませる。
こんなに容易く《ゼロ》の価値が崩壊してしまうとは、思っても見なかったのだ。
彼のデイパックに収められているゼロの衣装にもう一度袖を通すことがあるのか、それさえ疑わしい。
とはいえ、わざわざ『シュタットフェルト』とブリタニア風の言い回しでカレンを呼称する――それは藪蛇というものだ。
彼女にとってソレは明らかな侮辱であり、敵意を生み出す種火と成り得る。
そして、今、カレンはスパイクの人物像をこう捉えざるを得ない。――日本人でもなく、仲間が死んでも悲しむ仕草さえ見せない非情漢、と。
「……そりゃあ、よ。悲しくない訳ねぇだろうが」
「だったら、それなりの態度というものがあるのではないかっ!? さっきから性質の悪い冗談ばかり言って……」
スパイクが深々と溜息をつきながら、一言。
そしてソレに応えるようにカレンが拳をグッ、と握り締めた。
キッ、と釣りあがった形の整った眉が歪む。眉間に皺を寄せ、歯をキツく噛み締める。
(馬鹿か……カレン。仕方ないとは言え……この男がどうしてこんな軽薄な態度を取るのか、何故分からない。
緩いように見えてコイツは相当の食わせ者だぞ!?)
ルルーシュは先頭に立つスパイクの背中を見つめる。先程から彼は一度もこちらを振り返ろうとしない。
背中、二人の言葉を全て背中で受け止める。
おそらく何もかもわざとなのだろう、ルルーシュはそう判断する。
スパイクはカレンの気に障る台詞ばかりを意図的に選んで発言している。
黒の騎士団に起こったゴタゴタを全て把握している彼は当然、カレンそしてルルーシュの心情も十分に理解している筈だ。
……表向きは。
特にカレンの状態は相当に深刻だ。
いかに代替わりを果たしたとしても、自らが心の底から信奉していた男の死は彼女にとって例えようのない衝撃だった筈なのだ。
こんな状況でなければ、時間が解決してくれる問題なのかもしれない。
だが「殺し合い」という切迫した事態においては、自ずと荒治療が必要になる。
悲しみで心を占領される訳にはいかない――一人で絶望を抱き締めることこそが最も不適切な対応と言える。
「カレンいい加減にしろ! ……スパイクさんもすいません」
「でもルルーシュ!」
「スパイクさんの気持ちが分からないのか!? 一度冷静に考えても見ろ。彼がどうして――」
「ランペルージ、それ以上は言わなくていい」
「……ですが」
カレンの意識を自分に向けさせることで、彼女が罪の意識を一人で抱え込むことを防ぐ。
同時に、新たに《ゼロ》という重責を背負うことになった少年に心の整理をさせる時間を与える――そんな所か。
「お前は、分かっているみたいだな」
その時、初めてスパイクがルルーシュ達の方を向いた。
彼の手は自然とポケットを探り煙草を探していた。
が、当然の如く彼の支給品の中にそれに順ずるものは存在しない。ホルダーに収納したデザートイーグルのフレームを指先が撫でる。
「カレン、一つだけ言っておく」
「……何だ」
そもそも、カレンは当たり前のことを失念している。
親しい人間が死んで、悲しくない人間などいる訳がない。
悲しみを外に表し、涙を流し、肩を震わせることだけが――嵐のように荒れ狂う心の混沌を表現する方法ではないのだ。
そして、この男は立場上自分達の前で剥き出した悲哀の感情を見せる訳にはいかないと考えている。
少なくともルルーシュにはそう思えた。
「とりあえず、な。ルルーシュは良い《ゼロ》になると思うぞ」
この場でただ一人の『大人』である彼は、決して弱味を見せる訳にはいかないのだから。
「「「「我ら名前を書風連! ボンボン系の書鬼様の命により支援いたす!」」」」
□
キャンプ場から脱出した際、ルルーシュ達はまず荷物の分配を行う所からスタートした。
カレンに支給されていた道具――しかし、未だ明らかにされていないものが二つあった。
一つがノートパソコン。
当然、フラッシュメモリを読み取る機能や携帯バッテリーなどが付属したモバイルタイプの機種だった。
時間が無かったため、ネットなどに接続出来るのかどうかは依然不明。
コレは情報機器に強いルルーシュが持つことになった。
もう一つが様々な化粧品やSFXの用具などが収められた道具一式だった。
説明には『高遠遙一の奇術道具一式』と書かれていた。
確か、参加者の一人だった筈だ。
手品に使うトランプやシルクットなどが含まれていたことから、おそらく彼の職業はマジシャンなのだろう。
サーカスで使うような衣装から、いかにもと言う雰囲気を放つマスクなど利用価値は十分にありそうだった。
こちらは本来の持ち主であるカレンが持った。
武器はスパイクのデザートイーグルとカレンのワルサーP99のみ。
ルルーシュ本人は手ぶらになってしまうが、戦闘適正などを鑑みるに二人がそのまま持つのが適当だと判断した。
そして、最も大切な決まりごと。それが《ゼロ》の扱いについてだった。
このことに関して、ルルーシュは一つのプランを持っていた。
それ故、
「――ゼロはしばらくの間、封印する」
と、ルルーシュが告げた時カレンが見せた悲痛な表情は少しだけ彼の胸を打った。
そう、今ルルーシュは《ゼロ》の仮面とマントを着用していない。
それらの道具は彼のデイパックの奥にしまわれている。
基本的にゼロについての話題は控えるという取り決めも行った。
まず大前提として、《ゼロ》の姿はこの空間では逆効果にしかならない。
なぜなら参加者に等しく配布されている名簿に【ゼロ】という人物の名前はない。
顔と名前を隠すこと――それは明らかに怪しい人間、という扱いを受けて終わってしまうのである。
元々ゼロとは、正体を隠し偶像として民衆に接するため、ルルーシュが作り出した裏の顔である。
だが、少なくとも螺旋王の台詞を鵜呑みにするならば、この空間は『優れた螺旋遺伝子を持つものを選別する場』なのだ。
つまり参加している人間の大半が、何らかの技能を習得した特殊能力者である可能性が高い。
精神、肉体的にも習熟した者を相手に仮初の姿で接することは逆に自分の身を危険に晒すことになる。
だが、逆にゼロが効果を発揮する場面も必ず来る筈なのだ。
ギアスを有効活用するために、これほど最適な装備はない。
そうギアスを今後も軸として考えていく場合の話だが……。
「ルルーシュ?」
「……ああ、カレンすまない。少し考え事をしていた」
隣を歩くカレンが不安そうな表情で俯いたルルーシュの顔を除き込む。
彼女の白魚ような指先がルルーシュの背中を撫でる。
それは心の底から彼を心配した故の行動だったが、今のルルーシュにとっては何の感慨も生み出さなかった。
「お前ら……イチャつくのは結構だが、そろそろ森を抜けるぜ。用心しな」
「べ、別にイチャついてなんか――!」
カレンがスパイクの台詞に頬を赤らめ、またも怒鳴りつけようとする。
が、その時、
「――おねーさん、喧嘩は良くないんじゃないかなぁ」
三人の頭上から謳うようなボーイソプラノの声が響いた。
「ちッ――!?」
「下がって、ルルーシュ!」
すかさず反応するスパイクとカレン。
それぞれ獲物を取り出し声が聞こえた方向、すなわち上方へと向ける。
この森は背の高い広葉樹が多く生い茂る非常に大きな森だった。
光も刺し込まないような薄暗さながら、数本の枝木が葉を擦り合い立体的な空間を形成している。
(敵襲だと……! いや、ならば声を掛けて来る筈がないか。だが、こんな場所に他の参加者がいるとは……)
「――よっと」
まるで忍者のような身のこなしで一人の少年が姿を現した。
当然、現れる方向は上。軽業師も真っ青な動作で悠々と着地する。
ルルーシュ達は彼のその動きに唖然とならざるを得なかった。
軽く数メートルはある高さから飛び降りて無傷。その表情には余裕さえ見て取れる。
「男二人に女一人のぶらり旅? とはいえ仲はあまり宜しくない、と」
「……名前は?」
「俺? 人に名前を聞く時は先に自分が名乗るもの……そんな野暮なことは言いません。
俺はジン。見ての通りイタイケで純情なただの――ドロボウです」
スパイクが銃を構えながら問い掛けた質問にペコリ、とお辞儀をしながら応える。
ブワッ、と一瞬で場の空気が変わったことをルルーシュは肌で感じた。
現れたのは袖にうずまきマークの付いた黄色いコートを羽織った少年。
ハリネズミのような黒々とした髪の毛を逆立て、不敵な笑みを浮かべている。
「……信用できねぇな」
「あれ、そう? どんなお宝だって盗むけど、人の命だけは盗むつもりはないんだけどな」
「……ガキならガキで年相応の態度ってものがある。お前は……異様だ」
それはスパイクの直感だった。
明らかに眼の前の少年、ジンの仕草は外見から想像出来る年齢(十代中盤から後半と言った所か)とは掛け離れている。
「ドロボウ」という肩書きを抜きにしても、彼が油断ならない人物であることは確かだろう。
「お褒めの言葉を預かって光栄だね。ただ異様とまで言われるのは少しだけ意外かな。
参考までに、どうしてそう思うのか教えてくんない?」
「ペラペラとよく回る口だ。銃を向けられてその立ち振る舞い。普通、一朝一夕じゃ身につかねぇ。
ドロボウなんてチンケな言葉は似合わん」
「そう、母ちゃんがくれた自慢の口だから。それに俺は王ドロボウ。主催者サマに辞任していくためには何だってやる訳さ。
パーティ会場が血生臭くちゃ、ご来賓の皆様もしかめっ面だろ?」
「「「「ええいエロスの鐘の十常時! このSS、支援してくれるわ!」」」」
対峙するジンとスパイク。
その少し後ろでルルーシュを守るように銃を構えるカレン。
この状況において、最も安全な場所に居るルルーシュはジン、と名乗った少年について必死に分析する。
「さて、どうすれば信用して貰えるかな? 今だって同行者の皆さんに無理言って一人で出て来てるんだよね。
こう見えても最高に多忙だったりする訳さ。
消えた身体の帰りを待っている頭(ブレーン)のためにも、あくせく働かなきゃいけないんでね」
ジンの特徴的な言い回しは続く。
しかしこの時、ルルーシュは彼の言動がある一つのシンボルを差していることに気付いた。
つまり、彼に有力な仲間がいる、と。
(信頼出来る仲間を持っている……ということか。そしておそらく頭脳派の人間……。
どの程度まで考察を進めているのか不確実だが、接触してみる価値はあるな)
「――もっとも」
「ん?」
「『オジサン』達の脳味噌が疑惑でサラダボウルになってるってなら……軽くお遊戯に付き合うのもOKだよ。論より証拠、ってね?」
ニヤッ、と笑いながらジンが両腕を上げファイティングポーズを取る。
――戦って自分が殺し合いに乗っていないことを証明する。
一見矛盾しているようにも思えるやり方だが、ある意味筋が通っているとも言える。
なぜなら、戦いとは個人のありとあらゆる能力の複合結晶体であるからだ。
特に一対一、生身の戦いとなると各々の性格が如実に発揮される。
剣を振るうタイミング、身のこなし、間合いの詰め方、銃の照準、全体的な視野……。
久遠の時にも似たその邂逅は同時に理解の場所でもある。
打ち出される一発の正拳、斬撃、射撃。その一つ一つが磨き上げられた精神と意志から放たれるものだ。
優秀な戦士となるためには様々な能力を必要とし、幻想は一切存在しない。
戦いの空気を通じて、心が惹かれ合うことも決してフィクションではない。
武道家などが口にする「拳と拳で分かり合う」という言葉は根拠のない妄言ではない訳だ。
「ガキを甚振るのは趣味じゃない。が……一番性に合ってるやり方だ。泣いても知らんぞ」
「ソイツは奇遇。実は俺もすこーしだけ嫌なことがあった訳で……ね。遊び相手が欲しかったりして」
そして、変わる空気。
スパイクは手にしていたデザートイーグルをしまうと、脇を締め、軽くステップを踏み始める。
――ジークンドー。
彼が尊敬する格闘家であるブルース・リーが生み出した独自の拳法だ。
様々な中国拳法に空手や柔道、サバットなど国境を越えた武術を組み合わせて誕生した複合格闘の総称である。
元々チャイニーズ系であるスパイクにとって、近接格闘は銃撃戦と同様に得意とする分野なのだ。
「へぇ、独特な型だね。カンフーマスターに会うのは初めてだったり」
「減らず口もそこまでだ。言っておくが……俺は強いぞ」
スパイクの背後のルルーシュ達も彼らの放つその独特の雰囲気に圧され、若干呼吸をするのが苦しくなる。
「「「「ふっふっふ……隙あり!支援する!!」」」」
このままでは両者の激突は避けられない。
端的に見てもそう結論付けがなされようとしたその時、
「そこまでだ、二人とも」
「ん?」
動いたのはこの場で唯一、戦闘力を持たない彼だった。
「ル、ルルーシュ!? 前に出たら危ないわ!」
狼狽するカレンを尻目にザッ、と砂利を蹴り飛ばし睨み合うスパイク達の元へと歩を進める。
これは一つの賭けだった。
劣悪な環境に置かれた自身を表舞台へと復帰させるためのギャンブルのようなものだ。
(わざわざ貴重な戦力を目減りさせる訳がないだろう。
どちらも十分に利用価値がある……むざむざ疲労させる必要性など皆無だ)
――俺は他の参加者から遅れを取っている。
これが先程からずっと、ルルーシュの中で拭い切れなかった思考である。
まず、八十二名もの人間がこの殺し合いに参加している以上、螺旋王を打倒しようと考える人間は少なく見積もっても三分の二程度はいた筈だ。
その中にある程度『頭の切れる人間』が含まれていることは明らかだろう。
おそらく、早い段階で有力な参加者同士が合流したケースがあってもおかしくない。
その点、自分は確実に運がなかった。
カレンやあの妙な猫、偽ゼロと言ったおめでたい頭の連中と遊んでいたせいで、時間を大いに浪費したのだ。
最初からスパイクのような、ある程度良識を持った人間と出会えていたならば状況は一変していた可能性が高い。
既にゲームが始まってから十八時間が経過している。
参加者の数もついに半分を割り込み、殺し合いは中盤戦に突入したと言ってしまっていい。
つまりある程度、螺旋王に達するための手掛かりを掴んでいる人間がいても不思議ではない。
加えて、こちらの姿を一方的に捉えながらわざわざ声を掛けて来たこと。
あくまで自身のスタイルを崩さずにコンタクトを取って来たこと。
この両者からも、彼がある程度友好的な感情を自分達に抱いて行動していることが分かる。
(危険は、無いはずだ。最悪……ギアスを使えばいい。大丈夫だ、落ち着けルルーシュ)
更に一歩足を踏み出す。
尖った小石を踏み潰し、両脚に残る鈍痛を振り払う。
相手と一対一で向かい合う――最も大切なのは第一声だ。
揺るぎなく確固とした自我に裏づけされた言葉。それこそが他の人間を衝き動かすのだ。
「――ジン。君を、信用しよう」
「はぁっ!? おい、ランペルージ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ルルーシュ!」
「いいから。ここは俺に任せてくれ。……スパイクさんもよろしいですね?」
「……チッ。分かった、ここは退いてやる。――油断だけはするなよ」
ルルーシュはカレンとスパイクを退けるようにして、二人の前に立った。
対峙。ジンと一対一で向き合う形となる。
「ルルーシュ・ランペルージだ」
「ご丁寧にどうも。しがないドロボウやらせて貰ってマス。
でも、まさか君が出てくるとは思わなかったよ。てっきり後ろにいるモジャモジャ頭のオジサンがリーダーなのかな、と」
「……俺はまだ二十代だ」
「スパイク・スピーゲル。ルルーシュの邪魔よ、黙っていて」
「……ヘイヘイ」
「「「「ぬわー!!!!」」」」
「オジサン」という言葉に反応したのか、スパイクが苦虫を噛み潰したような表情のまま唸り声を上げる。
そしてすかさずソレを咎めるカレン。スパイクは反論する気も失せたのか、気だるそうに頭を掻いた。
ちなみに彼の年齢は二十八歳。男としても最も油の乗っている時期である。
「ハハハ、女の子は怖いね。――彼女、ルルーシュの恋人?」
「違う。ただの……同じ学校の友人だ」
「へぇ、ソイツは珍しい。一つだけ忠告、同郷の仲間は大切にしておいた方がいいよ」
「……お前も誰か――」
「……さぁね。それにドロボウの過去は少しぐらいミステリアスな方が面白いと思わないかい?」
乾いた笑い。
サーカスのピエロか狂言回しのような言動を見せていた今までのジンからは、到底考えられないような真面目な表情。
一瞬だけ彼の顔が泣いているように見えたのは気のせいだったのだろうか。
「そうだな。ダークヒーローに隠された過去は欠かせない。
それが重厚な鎖に縛られたものであればあるほど、彼らの行動は崇高な存在へと昇華される」
「イエス、ロマンは大事さ。永遠の灰色より一瞬でも輝く七色の方が美しい――ってね」
ルルーシュは己の中の《ゼロ》を見つめながら、小さく笑った。
そう、仮面を被るのは自らを象徴化させるためだけではない。
本来の素顔を隠し、偽りの自分を構築することが最大の目的と言える。
「それにしても、ルルーシュ。そんな英雄に知り合いでも? 良かったら紹介して欲しいね。武勇譚を拝聴しに参上したい所だよ」
「残念ながら、ご期待には沿えそうにも無いな。"何の力も無い"から、俺にはこうやって彼らの偉業を褒め称えることしか出来ない」
「『鳴かない猫は鼠捕る』とも言うね。そもそも、俺には君が爪も牙もなくした老猫にはとても見えないな」
「……どうだろうね」
少なくとも、先程スパイクと会話していた時と比べて大分マシな展開だった。
歳の近い二人の少年のやり取りは予想外なほど上等に進行した。
数分間に渡る対話で、最低限の情報の交換が行われた。
つまり、ジンに複数の仲間がいて彼らがこの先の山荘で"一人の参加者"を治療していること。
ルルーシュ達が褐色の肌をした大男に襲われたこと、などだ。
「あ、そうだ」
「どうしたジン?」
「今、俺の仲間が猫の看病をしてるんだよね。今はそれなりに回復した筈だけど。眼帯を付けた喋る猫……名前はマタタビだったかな」
「なッ――!」
「それって……あの時の猫かしら?」
「……あの妙に渋い猫か」
カレンとスパイクが小さく頷いた。
二人もクレア・スタンフィールド、八神はやて、マタタビの三名には接触している。
が、ただ一人。ルルーシュが覚えた感想は残りの二人とは明らかに違ったものだった。
(一人だけ生き残ったあの猫か……。いや、しかし妙だ。奴には確実にギアスを掛けたはず。ならば……)
「ジン、お前の仲間はここから"北"の山荘にいるんだったな。彼から何か聞いたか?」
「ん? いや、別に? 山荘があるのはD-8の古墳の近くかな。三人と出会ったのは隣のエリアだけど。
でも彼のおかげで俺はルルーシュ達に会えたんだから、実は幸運をもたらす招き猫だったりして」
「そう……か」
ルルーシュは半ば確信した。
鼓動が凄まじい勢いで身体をノックする。
全身の疲れが一辺で吹っ飛び、背筋に冷たいものが走った。
信じたくは、ない。
だがこの空間は明らかに異常だ。そして、自分達は悪魔の住む万魔殿のような空間に放り込まれたモルモットと酷似している。
様々な、そして不可解な制約が掛かる場所――そんなことは十分過ぎる程に理解している。
ルルーシュがマタタビ達に掛けたギアスの内容はこうだ。
『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
このギアスの内容が遵守されていれば、ある程度回復した身体を引き摺ってでもエリア中心部へ移動するだろう。
いや、そもそもD-8などというエリアの隅に未だ滞在していることが妙だ。
話によるとジンとそのマタタビを保護していた者達が遭遇したのが隣のD-7である。
明らかに、中心へと向かうコースからは外れている。
ならば既に他の参加者に接触し、仲間に誘った後である……という仮説はどうだろうか。
既にお役御免となったマタタビがフラフラとD-7にやって来たと考えるのは?
いや、これも在り得ない。
ギアスの効果時間は非常に長期に渡る。
少なくとも数ヶ月、この殺し合いが行われている間はほぼ切れることはない。そう思ってしまっても構わない筈だ。
命ある限り延々と命令を実行する筈。
加えて勧誘活動を一切行っていないことも明白だ。
これらの事象から推測出来る現状はただ一つ、つまり――
(ギアスが、切れている?)
□
「ニアです! よろしくお願いします!」
「ブルゥァァァァァァァァァァアア!! ジィィィイイイン、キサマ!! このような小汚い格好をした連中をどこから連れて来た!?」
「ちょっと散歩してたら空から降って来てね。ああ、三人とも、そこの椅子に掛けてくれる?」
「ぬぅぁぁぁにが『空から振って来てね……』だ! スカしてんじゃねぇぇぇぇ!! ボぅぉケがぁぁぁぁぁああ!!
お前が居ない間に私がどれだけ苦労をしたと思っているのだ!?」
「まあまあ、そのおかげで脱出のための優秀なパートナー候補を見つけることが出来た訳だし。俺も『偵察役』を首にならないで済む」
「ジンさん、パートナーってなんですか?」
「パートナーってのはね、ニア。君のアニキさん――カミナと、ビクトリームみたいないつもハッピーでディープでステキな関係のことだね」
「ダ、ダレがあんな奴とパートナーだと!? べ、別にグラサンジャックなど、どうなろうが私の知った事ではないわっ!!」
ジン、ニア、そしてビクトリーム。
少年と少女、そして『V』字型の謎の動く喋る物体。
三者による他の人間を寄せ付けない独特の時空に、部屋へと足を踏み入れたルルーシュ達は唖然とするしかなかった。
(こ、これは……まさか……。また、なのか。頭に何かが沸いてるとしか思えない会話ッ……!! なんて……事だッ!!)
三人がジンに案内されたのはD-8エリア、古墳のすぐ近くにひっそりと佇むように建設された山荘であった。
山荘と言ってもそれほど大きな施設ではなくて、どちらかと言えば山小屋と称した方が適当かもしれない。
そこの玄関口のすぐ、応接間になっている場所の大きな机の上にルルーシュ達はやって来ていた。
「……私、夢でも見てるのかしら」
「心配するな。俺にもしっかりと『V』に見える」
「お前には聞いていない」
「……悪かったな。お節介が過ぎてよ」
ルルーシュは髪の毛を掻き毟り、頭を抱えて塞ぎ込みたくなる衝動を必死で押し殺す。
両隣ではカレンとスパイクが相変わらず言い争っているが、今はどうでもいいことだ。
ジンの言っていた仲間――それがまさか、こんな連中だとは夢にも思わなかった。
特にこの『V』の形をした物体が問題だった。
ジンからある程度、同行者の説明は受けていた。
一人、不思議な色の髪と瞳を持った厨房主任。
一人、喋るトラ猫。
そして最後の一人、あまりの華麗さに目を疑わざるを得ないとにかく凄い奴。
いや、というか「少しだけ驚くことになるだろう仲間がいる。いや、ちょっとしたサプライズさ」などと適当な説明をしただけだったのだ。
まさか、ソレが人でも、動物でもない謎の生物だとは思いもしなかったが。
今思えばこの時ジンは一言も『人』とは言っていなかったのだ。
(だが、それ以上に気に障るのは……『声』だ!)
ビクトリームの声、それはルルーシュの脳髄をガンガンと揺さぶる。
普遍的な視点から考察すれば、それは少しだけナイスミドルな妙に良い声――そのような評価で十分だった筈だ。
しかし、
ルルーシュ、いや神聖ブリタニア帝国第11皇子にして第17皇位継承者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとって彼の声は毒でしかなかった。
(まさか、ここまで『奴』と似ている声の人間がいるとは……忌々しい)
「「「「よくぞ耐えたぞ十常時!! 貴様のSSに今は亡き我らが師、tu4氏の影を見た!」」」」
こんな偶然があっていいのだろうか。
世界には自分とそっくりの容姿をした人物が三人はいる、と言うが声に関しても当て嵌まるのだろうか。
彼の父親であるブリタニア皇帝――その声が眼の前で『ブルゥァァァァァアア!』などと吼える物体Xならぬ、物体Vと同じだろうとは。
(落ち着け、落ち着くんだルルーシュ。今何よりも優先すべきは情報の収集だ。奴との因縁はここから脱出してから考えるべき事象ッ……)
心を穏やかに。そして、冷静な頭を取り戻さなければならない。
ジンの口からは聞けなかった有力な情報を集めること。マタタビの状態について分析を重ねること。
必要なデータはあまりにも多い。
「一つ、いいかな。マタタビという猫はどこに……」
「マタタビさんでしたら、一度だけ意識を取り戻したんですが今は奥でお休みになっています」
ニアが快活な笑顔と共に応える。
キラキラと光る、まるで人工物のように色彩的なショートカットがサラリと揺れた。
「彼は、何か言っていましたか? 俺達の事なんかも……」
「何か……ですか? いえ、少なくともルルーシュさん達のことについて何も言ってなかったと思います。
マタタビさんが喋られたのは……ご自分の名前と、あとは……『テッカマンエビル』ぐらいでした」
「……テッカマン……エビル?」
「はい、確かにそう呟いていました」
ニアがルルーシュの問い掛けに口ごもる。若干伏し目がちになりながら、視線が下がる。
ルルーシュには彼女の応答が少なくとも嘘は付いていないように思えた。
傍目にも分かる重傷を負っているのならば、本来ならば面会謝絶の状態に近いだろう。まともに会話が出来なくても不思議ではない。
(テッカマンエビルか……。テッカマン……あの妙な格好をした戦士達のことだろうか。
テックセッターという変身ヒーローのような掛け声とも名称に関連性が見て取れる。
同時にギアスを掛けたはずのクレア・スタンフィールドと八神はやては死亡した……つまり、コイツが奴らを殺したということか?)
「――あの、皆さん聞いて下さい」
考え込んでしまったルルーシュとの言葉の隙間を埋めるように、ニアが再度口を開いた。
「私には……ルルーシュさん達に話していないことがあるんです」
優しく隣のニアを宥めるジンの声に、ニアも小さく微笑んだ。
そして一瞬の間、実直な眼差しを携えその場の全ての人間に向けて彼女は語り掛ける。
「私がルルーシュさん達に黙っていたこと……それは螺旋王、いえ――私のお父様についてです」
□
「「「「SSとはその出来にあらず!書き続けることこそに意義があるとな!!」」」」
瞬間、ルルーシュ達の表情が一斉に驚きの色に染まった。
この殺し合いの主催者である螺旋王ロージェノム。彼を『お父様』と呼称する人間、それはすなわち――
「君が……奴の娘だってことかい?」
「はい。捨てられはしましたが、私のお父様であることに間違いはありません」
「……実の娘をこんな馬鹿げた殺し合いにぶち込むとはねぇ……王様の考えることは分からんな」
「アンタ、アイツの娘だったら何か知らないの? 何でこんな馬鹿げたことをやらせてるのか……とか」
「まぁ、少なくとも自分から進んで参加したい類のパーティではないかもね」
スパイクの指先がトントン、と忙しなく濃い木目のテーブルを叩く。
彼の苛立ちはそのまま、場の空気が一転して重苦しいものへと変わったことを明示していた。
(螺旋王の娘……だと!?)
彼女、ニアが螺旋王の実子であるという事実。
それは確かに参加者にとっては、脱出の鍵になるかもしれない情報だった。
いかに実の親から縁を切られた廃棄王女とはいえ、彼女が所持する螺旋王についての知識はおそらく参加者の中でも別格だろう。
今までこの空間でルルーシュが出会った者の中でも、明らかに特殊な人間。そして代用不可の超VIPと言える。
螺旋王の人となり、敵の戦力。しかし、
「すいません、私には……何も……分かりません」
「逆にさ。アンタがあの螺旋王の部下だ、ってことはないの? アイツの娘なんでしょ?
例えば隙を見てこっちの状況をアイツらに報告している――とか」
当然、このような疑いが発生してしまうのも道理なのだ。
親子の情とは人の本能の中でも相当上位に位置する捨てきれない感情だ。
普通の生活を送って来た人間にとって、親が子供を庇護する関係は極めて常識的な枠組みの中に存在すると言っても過言ではない。
確かに、子供を子供と思わない親がいることを知ってはいても、共感を覚えるのは難しい。
この言葉を発したカレン自身も、長年に渡る母親との衝突の末、どれだけ彼女が自分のことを想ってくれていたのかを理解したばかりなのだ。
「そんなっ!! それだけは絶対にありえません!!」
ニアはカレンのこの言葉に絶句する。彼女の告白はつまり『親愛の証』であった。
これからどんな未来が訪れるのかは分からない。
それでも自分が螺旋王の娘であること。コレは重要なファクターに成り得ると判断したのだ。
『皆に隠しておく訳にはいかない』
そのような義務感から、ニアは自らの忌まわしき過去を口にしたのである。
彼女のおばあさまであるドーラは、ニアが自分は螺旋王の娘であると伝えてそのまま受け止めてくれた。
だが、誰もがドーラのような人間ではない。
それ所か、ニアに疑惑の眼を向けることが自然な反応でさえあるのだ。
「「「「我らが支援の道を作る!! 貴様はその先をゆけぃ!!」」」」
「むぅぅうううう!? そ、そうだったのかぁぁぁああああ!! 実は逐一余すところ無く報告していたのだなぁっ!? 小娘!?」
「……カレンおねーさん、中々厳しい所を付くね」
大げさなリアクション共に、表情を凄まじい勢いで変えるビクトリーム。
ちなみに彼は非常に単純であるため、カレンの言葉を聴いて今初めてニアが敵の手先であるかもしれない、と悟ったのである。
普段は含む笑いを絶やさないジンも、顔面に微妙な笑いを浮かべている。
ニアが螺旋の王女であることを知っていたジンでさえ、その可能性について密かに疑っていたのだろう。
彼の微妙に歪んだ口元がソレを物語っている。
「わ、私はっ……!」
「いきなり『私は螺旋王の娘です』なんて言っても、信用される訳がない。
どんな考えがあったのかは知らないけど、こういう反応が起こることは十分に予測出来た筈よ」
「ベリィィィィィィシィィィィィット!! まさかこの華麗なるビクトリィィィム様がこぅぉおんな小娘に騙されるとはぁぁぁぁあ!!」
早口で捲くし立てるカレンと大きな瞳を不安げに瞬かせながら必死に弁明するニア。
とにかく騒がしいビクトリーム。
山小屋は今や疑惑と不信の坩堝へと成り代わる寸前だった。
(確かに、カレンの言葉にも一理ある。本当に螺旋王側のスパイだとしたら、自分の出自を公開するとは思えんがな。
……いや、逆にその秘密を握っている知り合いが参加している故の行動とも考えられるか。
ただ、どちらにしろ――)
ルルーシュは笑った。
深々と口元に刻まれた皺は彼の愉悦を物語るように、一瞬で皮膚へと侵蝕する。
腹の底から湧きあがるような高揚感を隠すため、ルルーシュは口元へと手を当てる。
(現状、最も適切な一手はこれか、決定だな。後は《奴》を始末さえ出来れば……)
他にもいくつか案自体は浮かぶが、どれも決め手に欠ける。
だが少なくとも今自分が選ぶべき行動は一つだけである。つまりニアを保護すること、である。
「カレン、止めろ。ニアさんが脅えているじゃないか」
「…………止めないで、ルルーシュ。あなたにも分かる筈よ。彼女が信用出来る保証はどこにもない」
「それは俺達も同じことだ。何故彼女が疑われることを覚悟してまで、出会ったばかりの俺達にこのことを告白してくれたのか……。
君だって分からない訳じゃないだろう」
ルルーシュは今にも食いかかりそう勢いでニアを詰問するカレンを制しながら、ニアの擁護を開始した。
ニアからの信頼を勝ち得ることはこれから先、必ず役に立つ筈だ。
面倒な手順など踏まず、直接ギアスを使って操り人形にしてしまう、という手段もあった。
だが、幾つかの不安な要因が浮き彫りになったのだ。
使用時における身体への強烈な負担もそうだが、最大の問題点はギアスの継続時間が極端に短くなっている点だ。
100%の確証はないが、おそらくこの予感に間違いはないだろう。
土壇場になった時、効果が切れてしまったらどうなる?
全て一からやり直しになってしまう。ギアスを掛けられている間の記憶は失われないのだ。
今、ギアスは万能の力ではない。出来るだけ使うポイントを限定しなければならない。
「それとこれとは話が別で――!!」
カレンがそこまで言い掛けた時、ずっと黙り込んでいたスパイクが突然立ち上がった。
ガタッ、と音を立てながら椅子を引き、無言のままツカツカとニアのすぐ側まで歩いて行く。
ルルーシュを含め、誰もが彼の行動に拍子抜けになる。
「……めんどくせぇ」
ぼそり、と呟くように。
この状況とはあまりにも不釣合いな言葉、そして行動だ。
だがルルーシュは、スパイクのこの発言で張り詰めていた緊張感が一瞬で砕け散ったような印象さえ覚えた。
つまり、ニアを糾弾する負のオーラに満ちた空気が、だ。
場の人間全てがスパイクの行動に注目している。
彼の一挙一動を十の瞳が追っているのだ。
何故スパイクがこのような不可思議な行動を取るのか。
いや、少なくとも個々人が言いたい事をベラベラ喋っていた最悪な状況があっという間に解決したことは確かだ。
「お嬢ちゃん、ニアだっけ」
「はい」
「良い返事だ。ジンから聞いたんだが、アンタ料理が得意なんだって?」
「え……は、はい! ダイグレンの厨房で調理主任をやっていました!」
「そうかい。じゃあ一つ頼めるかな」
それだけを伝える、スパイクは小さく腹部の辺りを擦った。
そして笑いながら一言。
「腹、減っちまってよ」
□
「「「「必殺!!母乳噴出拳!!」」」」
「亀の甲より年の功って奴だね。ルルーシュもそう思わないかい?」
「……そうだな」
ジンとルルーシュは応接間でグダグダと喋りながらチェスに講じていた。
趨勢は明らかにルルーシュが有利。だがジンの腕前も中々なモノであり、油断はならない状況だった。
久々に骨のある相手との勝負に、ルルーシュは密かな楽しみを感じていた。
「おねーさんにドヤされちゃいそうだなぁ。俺自身も、ニアちゃんについてはちょっと気になることがあってね。
そのせいで、中々カレンおねーさんにストッパーを咬ませることが出来なくてさ」
「それは俺にも言えることだ。もう少し……早く行動に移るべきだった」
「……ま、そんな俺達の優柔不断が高じて旨い飯にありつけるってこと。スパイクに感謝しないとね」
ジンのナイトがルルーシュのポーンを蹴散らす。
すかさず、ルルーシュはルークを動かして敵の動きを牽制。
無駄話をしていながらも、ジンの的確な判断に舌を巻く。
(だが……まだ甘い)
結局、スパイクの「腹減った」との申し出によって、応接間での討議会は閉幕となった。
ニアは今一人でいそいそと食事の準備中。
カレンは不機嫌なまま、山荘の周囲で警戒に当たっている。スパイクも彼女と一緒に見回りだ。
ビクトリームは当初ルルーシュ達を信用していなかったが、ルルーシュに支給されていた【メロン】を見ると態度を一変させた。
どうも彼が持っていたメロンは全て食べ終えた後で、そのためイライラしていたらしい。
今はラジカセをジャカジャカやりながら、部屋の隅で踊っている。
「チェックだ」
「……うん、無いね。負けたよ、ルルーシュ。チェスには自信があったんだけどなぁ」
「いや、ジンも相当なレベルだった。実は少し"違法"なゲームにも手を出しててね。
普通の人間で俺とここまで張り合える相手と勝負したのは久しぶりだ」
それは素直な感想だった。
ルルーシュは友人のリヴァルと連れ立って、しばしば賭けチェスに精を出していた時期があったのだ。
同じく友人のシャーリーなどには、何度もその行為を咎められたりもしている。
(気楽な時間だ……まるで、殺し合いに参加させられていることなど忘れてしまいそうになる。だが――)
彼には羽根を休め、気を抜く暇などなかった。
彼は絶対に元の世界へと帰らなければならない。
最愛の妹のため、死んでいった親友のため、自分自身の野望のため。
ルルーシュはチェス盤の駒をケースに片付けると、スッと立ち上がる。
今のはウォーミングアップに過ぎない。これからが本当の勝負だ。
「ジ――」
「ルルーシュ。お姫様のアフターケアは任せるよ」
『クイーン』の駒を小さく振りながらジンが楽しそうに笑った。
口元の苦笑を押し潰しながら、ルルーシュも小さく手を振る。
満足げにジンが駒を放り投げる。
綺麗な放物線を描いてゆっくりと白の『クイーン』はルルーシュの掌へと吸い込まれた。
□
「さっきはありがとうございました」
「いえ、お礼を言われる程のことはありませんよ。スパイクさんに結局、最後は持って行かれてしまいましたし。
カレンには後で俺からキツく言っておきます」
ニアが厨房に向かいながら小さく礼をした。
かわいいピンク色のレースが付いた純白のエプロンが眩しい。
真剣な表情で冷蔵庫に入っていた食材と向かい合っている。
「いいえ大丈夫です! カレンさんの言っていた事も、言われてみればその通りですし。
おばさまも言っていました! 『少しは人を疑った方がいい』って!」
ニアが若干表情を鬱屈させながら、それでも元気よく応える。
その笑顔はルルーシュの眼には夏の高原に咲くヒマワリのように輝いて見えた。
そして同時に彼の中の魂が疼く。
なぜなら、今から自分はこの快活な少女を何とかして篭絡させなければならないのだから。
ルルーシュがニアの元を訪れたのは、勿論ジンの言う《アフターケア》の為などではない。
ニアとある程度の親交を結び、今後の展開をより円滑にするための工作活動である。
螺旋王の娘――それは他の参加者とは一線を画す重要なポジションである。
ロージェノムが放送の度に口にする《螺旋力》や、王の情報などニアにしか分からないことは数多くある筈だ。
彼女が知り得ていることは極わずかなのかもしれない。
少なくとも後々対螺旋王が現実味を帯びて来た時、必ず手駒の一人として欲しい人間ではある。
「しかし、まぁそれは、どうなんでしょうね。ニアさんは『今のままでいる』のが一番だと思いますよ」
「そうですか?」
「ええ。おそらく……その、『ドーラさん』も同じことを言ったと思います」
「ッ――! あ……」
ルルーシュの口から『ドーラ』という名前が飛び出した瞬間、ガチャン、と大きな音を立ててニアが手元の皿を落としてしまった。
直径5,6cm程度の小皿が台所の床に散らばる。割れなかったのが幸いである。
(……やはりか。ジンから話を聞いておいて正解だったな)
ルルーシュは予想通りに進んでいく展開を受けて、心の中で確信と共に浮き立つ思いを押さえ込む。
この山荘にやって来る前にルルーシュはジンから、とある情報を得ていた。
つまり、ドーラというニアとゲーム開始時からずっと同行していた女性が死亡したことについて。
放送後彼女の死を知り、泣き崩れそうになったニアを必死で慰めようと努力したが、結局確固たる手応えは得られなかったとジンは言っていた。
あのジンが「出会ってから数十分しか経っていない女の子を励ますには自分は役不足だった」と嘲笑交じりに語っていたくらいだ。
傷は相当に深いのだろう。
その後、怪我人のマタタビを治療するために山荘へ移動し、唯一戦えるジンが見回りへ。
二人の世話を不安ながらビクトリームに任せた、と。
(ニアはまだドーラの死を乗り越えていない。突き崩すならば、ここしか無いな)
「ふははは! これしきの支援、DAT落ちにしてくれるわ!!」
「すまない、妙な事を言って。手伝うよ」
「……いえ。私が悪いんです」
ルルーシュはコレ幸いとニアに近付き、小皿を拾い始める。
ニアも手に持っていた包丁を傍らに置いて、しゃがみ込む。
特に会話もなく、黙々と皿を拾う二人。
ドラマや映画などでは手と手が触れ合って、恋が始まる――そんな陳腐なストーリーが持て囃される。
とはいえ、現実の世界ではそんな馬鹿げたロマンスなど起こる筈もない。
淡々と木目の床から白いピースが消えていく。それだけだ。
「――分かってはいるんです」
「え?」
追撃の言葉を捜していたルルーシュにとって、明らかに予想外の言葉がニアから漏れた。
(これはッ……!?)
それは強固な意志の力。
渦巻くクローバーの緑が光となって溢れてくる幻覚が見えそうなくらいだ。
弱々しい少女の潤んだ瞳ではない。まっすぐと未来を見つめる力強い眼差しだった。
「もうドーラおばさまは帰ってこない。シモンも、ヨーコさんも……だから私が強くならなくちゃいけないって。
慣れたりはしません。大切な人と会えなくなるのは、凄く……悲しいことですから。
でも私を抱き締めて、慰めてくれる方はもういないんです。
ドーラおばさまもこの胸の中で一つになって生き続けるんです。大丈夫です。私は……頑張れます」
「そう…………だね」
それは、上っ面だけの薄っぺらい同意だった。
ルルーシュは完全にニアという少女を見誤っていた。
彼のニアに対する人物像は『元気なだけが取り得の世間知らずな純粋培養されたお姫様』であった。
周りの人間が誰しも聖人であると思い込み、人を疑うことをまるで知らない人形のような。
(違う……彼女は、お飾りの王女などではないッ! 明確な個を持ち、希望を実現させるための覚悟も持ち合わせている。
伊達に螺旋の王女ではないと言った所か……。しかしこれでは……)
ルルーシュは自信の計画に小さな綻びが生じた事実を認識する。
小娘の一人ぐらい、ギアスに頼らなくてもどうにでも出来る――そう思っていたのだ。
だが、それは明らかな過信だった。
彼女は容易く出会ったばかりの男に、心を委ねるほど軽い女ではない。そして無知でもない。
もしもC.Cがこの場面を目撃していたとしたら、確実に鼻で笑われていたことだろう。
「童貞の癖に女を舐めすぎだ」などと言う辛酸な台詞と共に。
「ルルーシュさん? 座ったままどうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「え、あ……すまない。少し、調子が悪くてさ……」
座り込んだまま衝撃を受けていたルルーシュを小皿の回収を終えたニアが不思議そうな顔で見つめる。
慌てて適当な言い訳を見繕うが、明らかに自分が気落ちしていることを悟った。
このままでは本当に調子が悪くなってしまうかもしれない。しかし、
「大変じゃないですか! お薬があれば良かったんですけど……すいません。毒しかないんです」
「「「「もうすぐスレが静止する……これまでか!!」」」」
このニアの何気ない一言がルルーシュの転機となる。
「毒……だって!? ニア、君は毒なんて物騒なものを持っているのかい?」
「え? はい、私の支給品ですけど……」
「ゴメン。ちょっとだけそれ、見せて貰ってもいいかな」
「あ、はい。コレ……です」
ニアがポケットから小さな袋を取り出して、ルルーシュに渡した。
すぐさまルルーシュはその中身を確認する。
袋の中には赤と白の典型的なカプセルが三つ。ご丁寧に『毒入り。飲むと死にます』という注意書きまで付いている。
「ニアがコレを持っていること、皆は知っているのかい?」
「……いえ? 多分ルルーシュさんしか知らないと思います」
(ああ、そうか……これが俺が選ぶべきやり方ってことか)
ルルーシュはもう一度、手元のカプセルを見つめる。
あと一歩、自身が踏み出すことで束の間の平穏は崩れ去るのだ。
小さな軋轢は幾つもあるが、今までの状況と比べれば天と地ほどの隔たりがある。
しかし、最善の一手である。
奴の存在は明らかに今後の展開に支障を来たすことになるだろう。
数々の実験を重ね導き出した絶対的な"ルール"はもはや、役立たずと言ってしまっても過言ではない。
今の自分に必要なことは『持っている力』を最大利用するための道を探すこと。
サンプルが必要だ。
そして、過去の事象は切り替えていかなければならない。
そうだ。一歩を、最後の一歩を踏み出そう。もう一度「王の力」を手に入れるために。
「なぁ、ニア――俺の眼を見てくれるか?」
□
「待てィ!!」
「むぅ……よくぞ生きておった!衝撃のネコミミスト!!」
夢、夢を見ていた。
拙者はグルグルと螺旋を描くマーブル色の海の中で躯を横たえていた。
俺は寝ている。そして夢を見ている。
つまり、これは明晰夢という奴なのだろう。
……いい機会だ。
ゆっくりと、自らの記憶のページを捲って行くこととする。
まずは分かり易い結論から行こう。
全ては、光の渦に飲み込まれてしまった。
奇妙な連帯感で結ばれた男と女は極光の奥に消えた。
二人は愛し合っていた。少なくともソレは間違いない。
妙な強迫観念が俺達を衝き動かしていたことは明白な事実だ。
だが、二人の間には確かな絆があり、愛情があり、そして互いを気遣う想いがあった。
猫である自分には人間の恋愛というモノは良く分からない。
かといって完全な獣でもないので、獣の恋愛について語れと言われても言葉を濁してしまう。
とりあえず傍目から見ても男――クレア・スタンフィールドと女――八神はやて、この両名はお似合いだった。
ぼんやりと、ゆっくりと黒く染まって行く黄昏にも似た意識の中。それでも拙者は一つだけ、思っていたことがある。
それはこの二人を祝福してやりたい、という気持ちだ。
拙者だって、別に悲観主義者って訳でもないんだから幸せそうな人間を見るのは好きだった。
そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。
そう、拙者達にとって必要な情報は奴が――テッカマンエビルであるということだ。
奴は強い。もう在り得ないくらい強い。「ふざけんじゃねぇぇぇぇえええええ!!」と絶叫したくなるくらい強い。
拙者は公明正大な猫だから、事実は事実として認めようと思う。
何が強いって、少なくとも拙者より若干上の実力を持っていたかもしれないクレアの数倍は強い。
や、あくまで奴が「テックセッター」とか訳の分からん日本語を叫び、変身を遂げた後の姿に限定した話ではあるが。
前回は遅れを取ったが、もう一度生身で戦えば拙者が圧勝することは目に見えている。
キッドじゃこうは行かない。多分、何度戦っても負けちまうだろうな。
……ああ、キッドか。そういえば死んだんだっけな。……実際の所、本当なのかね。
正直疑わしい話だ。ただ、なんとなく嫌な感じはする。
機械と生身の身体で出来た俺自身の中で何がモヤモヤと疼いているんだ。
胸にぽっかりと空洞が出来ちまった……みたいな感覚さ。
何て言えばいいのかね、コイツは。とりあえず気持ち良くはねぇ。
……チッ。何か、物足りねぇ。暴れ足りねぇ。
って、おい! 本当に死んじまったのかよ、キッド!?
拙者との決着を付ける前に逝くたぁ、どういうことだっ!?
傷が疼く。胸が痛い。腕が痛い。頭が痛い。
ああ、クソッ!! 拙者はこんな所でグズグズしている訳にはいかねぇってのに!
――――マタタビさん、起きてますか?
っと……コレはあの時のお嬢ちゃんの声か?
ふわふわした髪の毛の……確かニアって言ったか。
そろそろ、夢も終わりってことかねぇ。
眠ってばかりじゃ拉致が明かねぇ。いい加減、起きるとするか。
あばよ、キッド。
夢から覚めた後、拙者はもう振り返らんぜ。
何しろクレアとはやての敵を討つためにテッカマンエビルをぶっ飛ばさないといけないんだからな。
奴は気に食わねぇ。絶対にボコボコにしてやる!
休んでなんていられねぇ。
拙者の知らない所で勝手に野たれ死んだ貴様に、もう興味はないのさ。
まぁ、亡骸を見つけたら線香の一つも上げてやるけどな。
じゃあな、俺のライバル。
「……眠っている、のでしょうか?」
「起き……てる」
そして、拙者は、覚醒した。
まどろみは、消えない。
ゆらゆらと峰深き瀬にたゆたんでいるような不思議な気分だ。
微妙な鈍痛となって拙者の脳髄に眠気が居座ったまま、大きな顔をしている。
「良かった! 実はいいものを持って来たんですよ!」
「いい……もの?」
そう言ってニアはポケットから小さなカプセルを取り出した。
赤と白。綺麗な色をしている。
ニアの笑顔が眩しい。
彼女の快活な笑顔を見ているとこちらまで力がみなぎって来そうだ。
「そ……れは?」
「私の支給品の『"薬"入りカプセル』です! ……でも、どうして今まで忘れていたんでしょうか?」
薬入りカプセル、か。妙な名前だ、そう思った。
だが意識は朦朧としており、未だ完全に現実の世界へと帰って来ていない。
元々拒む理由など存在しないが、当然拙者の身体はニアの成すがままだ。
「どうする孔明、奴は真実を知らん! あいつは70kb支援するつもりだぞ!!」
「ぐぐぐ……」
「それじゃあ私が飲ませて差し上げますね!」
「た……の、む」
ニアのよく形の整った指先が拙者の口元へと近付いてくる。
ふと、拙者はニアの瞳を見つめた。
特に意味があった訳ではない。しかも寝ぼけていたせいで、視界はまばらだった。
……?
妙、だな。
いや、拙者の思い違いだったのかもしれない。
だがこの少女はこんな……
――血塗れた色の瞳をしていたのだろうか。
「マタタビさん、お口を開けて頂けますか?」
ハッと我に返る。少女が不思議そうな目をしてこちらを見ていた。
赤と白。
硝子のコップ。注がれた透明の液体。
そして――
拙者は、
そのカプセルを、
言われるがままに嚥下した。
□
「よいか十常時、私は母乳を出すつもりもないし、アッー!をするつもりもない。だがこれだけはわかっているぞ!!」
絶対遵守という概念を念頭に置き、人の精神に干渉をする場合、その精神に最も手を加えずに済む条件付けとは何だろうか。
……いや、質問を変えよう。
『最も優しい、イージーな精神干渉とはなんだろうか?』
例えば博愛主義者に殺人を命じるのはどうか。
これはその人物の意志、信念、存在全てを否定して掛かる指令だろう。
考えたくもない話だが、ギアスの効力が弱っている今、感情の爆発によって抗われても不思議ではない。
同時に今すぐに自殺しろ、と命じるのもハードルは高い。
人の生存本能という奴は意外なくらい厄介だ。
生命活動に支障を来たす命令は躯が、心が全力で否定しかかる筈だ。
……もっとも、俺が初めて使用したギアスは『複数の人間に自殺を命じる』ものだった訳だが。
「きゃぁぁあああああああああああっ!!!」
最高のタイミングで、奥の部屋からニアの凄まじい絶叫が響いた。
「……ッ…………ニアっ!?」
「お姫様の悲鳴、ナイトの出番ってことかな!」
「むぅぅぅぅうううっ!? こ、小娘!? どうした、何が起こったのだ!?」
応接間で休息していた俺を含む三人が、その声を聞いて一斉に走り出す。
ビクトリームなぞ、わざわざラジカセのスイッチを切る気の利かせようである。
……普段から、それくらい気を遣ってくれると嬉しいのだが。
当然、俺もわざとらしいくらいに『驚いた振り』をする。
ここまで全てが予想と同じ展開だとしても、だ。
脳内を揺さぶるような凄まじい痛みに耐えながら狭い通路を駆け抜ける。
だが、この程度ならば昏倒するレベルには達していない。
大丈夫だ……少なくともマトモに頭は回る。
「ベルゥィィィィィィシィィッット!! 小娘ぇぇぇぇぇっ!!」
「……ジン! どうなって……いるんだ!?」
「辛そうだね、ルルーシュ」
「……持病の偏頭痛がな」
「ソレはお気の毒に。とりあえず、ランチのお盆を引っ繰り返したって訳じゃないのは確かだね」
一気に奥の部屋へ。
マタタビが眠っていた部屋、いや今ニアが『薬』を持って行った部屋へと向かう。
さて。そろそろ、先ほどの質問の解答編へと進もうか。
確かに精神干渉にも色々なケースがあるだろう。
だが、少なくとも主義、主張、信念、本能などの人間の奥底に眠る問題に対しての接触はタブーだ。
これらは若干ハードルの高い課題である。追々実験していかなければならないことでもあるが。
ならば記憶の操作か?
だがコレも感情に絡む場合が多い。
一人の人間に関する記憶を全て抹消する――などと命じた場合、
消し去った相手への感情如何によっては、ある種の抵抗などが生まれるかもしれない。
ならば最も簡単な命令とは『どうでもいいことを忘れさせる』ではないだろうか。
俺がニアに掛けたギアスは非常に単純なモノだ。
ほんの小さな記憶の転換。小さな綻び。
実際、ギアスを使わなくても「〜ってなんですか?」としばしば尋ねる彼女ならば、言葉だけでも騙せたかもしれない。
ただ俺は彼女の瞳を見つめながら、囁いただけだ。
『毒についての記憶を全て忘れろ』と。
後は全てニアが『自主的』にやってくれる。
俺がやったのはカプセルの説明書きを握り潰し、新たに『薬入りカプセル。凄く良く効く薬』と書いた紙を忍ばせたこと。
そして「薬なんて面白い支給品を持っているね。怪我人が沢山出そうなこの状況じゃきっと役立つだろうね」と助言をしたこと。
たったのこれだけである。
優しい心とそして人を疑うことを知らないニアのことだ。
そのまま、マタタビに毒入りカプセルを飲ませたに違いない。いや『ほぼ確実に飲ませる』と思っていた。
そして奴が死んだ後で悲鳴を上げた、と。
当然、このような間接的なギアスを掛けたのには様々な理由がある。
その相手にニアを選んだことにも、だ。
まず少なくともこの先ギアスを《切り札》として使って行くためには、早い段階で誰かに実験台になって貰う必要があった。
使用者への強烈な負担、有効期間の減少などルールに反故が発生している。
幾つか情報を集めなければ、肝心な時に武器にならない訳だ。
『マタタビを殺せ』と命じることは簡単だ。だが、これには様々な問題が浮上する。
しかも、ギアスのルールの一つ『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』さえ消滅しているかもしれなかった。
故に攻撃的な命令は極力控えた方がいいと判断した。
が、どうやらこのルールに関しては元のままであったようだ。これは貴重な収穫だろう。
そして更に俺自身への負担の問題もある。
何故、あの時俺はギアスを掛けた後に気絶してしまったのだろうか。
掛けた内容?
掛けた人数?
それとも条件が複雑過ぎたのか?
奴らの中にギアスの内容と激しく信念を別にする人間がいたのだろうか?
疑問は尽きない。
故に今回は最も単純な条件に限定して実験を行った。
つまり『一人に』『ギアスの副作用の延長である最も単純な記憶の消去を』『イデオロギーの絡まない条項へと』使用した訳だ。
結果として俺は強烈な頭痛と疲労感に襲われこそはしたが、気絶はしなかった。
少なくとも単純な記憶消去ならば、十分に実用に値することが証明出来たのだ。
「あのロワはヌルいキャラ付けで楽に生き残れるほど、甘くはないということをな!!」
そもそも、マタタビはゼロに関する情報を持った数少ない参加者の一人だ。
つまり追々死んで貰わなければならない。しかも重傷を負って動けない。
戦力的価値もなく、生きているに値しない。
最後に何故、ニアにギアスを使ったのかについて。
これは最も肝心な『仕上げ』に必要なことだから、の一言で済む。
絶対に必要な駒であるニアにマインドコントロールを目的としたギアスは使用出来ない。有効期間の問題があるからだ。
つまり《信頼》を勝ち取ることが何よりも大切なのである。
「ブルゥァァァァァァァアアアアッ!!! 小娘、無事かぁぁああああ!! ………………って……アレ?」
「……コイツは。本当に特大の爆弾だった、って訳かな」
先頭のビクトリームがドアを蹴破り、部屋へと突入する。
続いてジン。最後に頭を抑え、足を引き摺りながら俺は躯を滑り込ませる。
広がる光景は何もかもが、想像していたものと同じだった。
純白のベッドを口から吐き出した血液で染め絶命しているマタタビ。
その隣で呆然とした表情のまま、腰が抜けたようにへたり込むニア。
どんな言葉を掛ければいいのか、戸惑いの表情を隠せないジンとビクトリーム。
そして一人、誰にも気付かれずに笑いを噛み殺す俺。
そう、全ては――計画通りだ。
【マタタビ@サイボーグクロちゃん 死亡】
□
「違うか!違うか!違うかぁーーーーーーーーーーーー!!!」
「あの、ごめんなさい。毒って……なんですか?」
と、ニアが言い出した時の他の連中の表情は、怒りを通り越して呆れていたようにさえ思える。
それは、あまりにも罪深い一言だった。
『無知とは罪である』と語ったのは、どこの哲学者だっただろうか。
まさか、ここまでその言葉を体感出来ようとは思いもしなかった。
「ば、馬鹿にしてるのっ!!! アンタ、内容の分からない薬を飲ませたって言うのか!?」
「……ごめんなさい。確かに『凄い良く効く薬』だと書いてあったんです」
「御免で済む訳がないだろ! 死人が……出ているんだから」
凄まじい勢いで悲鳴を聞き付けて帰って来たカレンがニアに噛み付く。
今回は以前行われた『螺旋王と繋がっているのではないか』という種の詰問を越え、明らかな尋問へと変化している。
少なくとも今回、マタタビを殺害したのが毒薬であり、それを飲ませたのがニアであるという事実に変わりはないのだから。
「まぁまぁカレンおねーさん。ここは落ち着いて。あんまり怒ると可愛い顔に皺が寄るよ?」
「ジン! 何を言って……ふざける場面じゃないだろ!?」
「……ジンが言いたいのは、お前は頭に血が昇り過ぎってことだよ。質問する奴が顔真っ赤にしてどうする」
カレンはスパイクに言い返そうとするが、さすがに自らの態度が不味かったと悟ったのか握り締めた拳を降ろした。
キッと口唇を真一文字に結び、ニアを射殺さんばかりの視線で睨む。
カレンはジンがおそらく日本人である、と考えているのだろう。彼に向かって話す時は、若干言葉尻が軽くなっている。
「ここは俺が仕切らせて貰う。まず……簡単に纏めると、ニアお嬢ちゃんは支給品に良く効く薬があることを思い出した。
そして、それをマタタビに飲ませた。が、その後にマタタビは血を吐いて死んじまった――これで合ってるかい?」
「……はい。間違いありません」
「OK。じゃあ、落ち着いて答えてくれ。飲ませたのは確かに薬だったんだな? まだ残ってるかい?」
「いいえ。袋は残っているんですが……薬はもう……」
ニアが項垂れたまま、スパイクの質問に答える。
そう、ニアはもう薬を持っていない。
これは『命令された人間は、ギアスがかけられる前後の記憶に対しての欠損が起こる』ことの実験だった。
ギアスを掛けた際にカプセルを一つだけ彼女に渡し、残りは俺が回収しておいた訳だ。
故にルール通り、記憶を失ったニアから手に入れた毒入りカプセルは厳重に梱包して俺が持っている。
「……そうか。じゃあ次の質問だ。単刀直入に聞こう、マタタビを殺すつもりはあったのかい?」
「そんなまさかっ!! マタタビさんを殺したいなんて私が思う訳がありません!!」
「ニア!! アンタまだそんなことっ!!」
「カレンおねーさん、ここは抑えて抑えて。ね?」
……じっとしていられないのか、コイツは。
とはいえ、カレンの日本人以外の人間に対する露骨な感情はどうしようもないのかもしれない。
特にニアはブリタニア人の見た目とそっくりだ。
チャイニーズ系らしいスパイクにすら、あれだけの態度で応じるカレンがニアに不快感を覚えるのも無理はないのか。
なにしろ、最愛の兄――紅月ナオトを殺されているからな。
カレンがレジスタンス運動をしているのも、全て兄への想いを継ぐためだ。
が、そろそろ俺も動かなければならないだろう。
ここまでは予想の範疇だ。そしてこの先が勝負の分かれ道でもある。
「皆――聞いて欲しいことがある。実は、マタタビが死んだのは……俺の責任でもあるんだ」
「え……ど、どういうことなのっ、ルルーシュ!?」
「落ち着いて、カレン。実はニアが『薬』を持っていることを俺も知っていたんだ」
「ル、ルルーシュさん! 悪いのは私ですっ! ルルーシュさんは何も……」
ニアがガバッと頭を上げ、必死で『俺は無実だ』と弁明してくれる。
思わず浮かび上がって来る愉悦に浸りそうになる。いや……まだ早い。
これこそが俺が望んでいた展開だ。そして、
「皆、すまない。皆の怒りはニアの代わりに俺が全て引き受ける。だから、ニアを……許してやってくれないか」
俺は深々と頭を下げた。
ニアが息を呑む声が聞こえた。カレンが何かを呟いているがボリュームが微量過ぎて聞こえない。
ジンが茶化すように小さく口笛を吹いた。スパイクは肩を大きく溜息を付いた。
ビクトリームはどうもニアがマタタビを殺した事実があまりにもショックだったらしい。
石になったように隅で固まっている。
くだらないプライドなどいくらでも捨てても構わない。
いっそ土下座ぐらいしてやっても良かったが、さすがにそこまでやると演技が過剰だろう。
必要なのは――このゲームを生き残るための力だ。
確信する。
今、この瞬間。
俺はギアスでは決して手に入れることの出来ない力――『信頼』を勝ち取ったということを。
□
(なぁ、ミーくん……)
「ルルーシュ、本当に……あの子と行くの?」
「ああ。俺はともかく、カレン達は普段通りに付き合うのは難しいだろう。……ニアのこともあるしな。
でも、心配することはないさ。短い別れだよ」
「……うん」
そう、俺とニア――そしてビクトリームはカレン達と別れて別ルートで行動することになった。
人が死んだ場所にいつまでも留まっているのは流石に気が引ける。
カレン達はマタタビを埋葬してから、移動を始めるようだった。
目的地はひとまずB-4の図書館に設定した。
俺たちが右回り、そしてジン達が左回り。
ルートはその時の状況を考えながら臨機応変に、とまで決定した。
清麿というジンの有力な仲間の情報も手に入れ、明確な脱出に向けたプランが出来上がりつつあると言えるだろう。
またビクトリームの支給品だったという銃も入手出来たため、ある程度の武力も入手した。
特にジンの能力は有望だ。
行動力があり、知識も豊富で、加えて場慣れしている。
頭が固くなく、柔軟な思考が出来る点も大きい。出来れば奴とは再会したい所だ。
さて――それでは、最後の詰めに入るとするか。
「カレン」
「……え?」
「《ゼロ》として命じる――スパイクを殺せ」
完全に意気消沈していていたカレンの耳元で、俺は最後の目的を告げた。
ルルーシュ・ランペルージではなく、ゼロとして。
「マタタビを殺したのは奴だ」
「え……でも、私達は外に……!! それに毒だって……」
「おそらく隙を見て取り替えたのだろう。ニアは抜けている所があるから、十分に可能な筈だ」
「でも……」
我ながらなんとムチャクチャな理論だろうか。
そもそも、ニアは毒薬を肌身離さず持っていたのでどう考えても摩り替えるのは不可能。
そしてマタタビ殺害の実行犯はニア、黒幕は俺――これは揺るぎない事実だ。
とはいえ、
「カレンッ!! 何故分からない!?」
「ルル――」
「奴は《ゼロ》の正体を知ってしまった。それだけで殺されるには十分だということを!」
「――ッ!!!」
こう言ってやれば、カレンは"絶対"に断ることは出来ない。
奴は黒の騎士団の団員。ゼロの命令は絶対なのだから。
そして同時にカレンはこの瞬間、理解した筈だ。
俺が本当はゼロを捨てたのではなく、三代目ゼロとしての自覚を持っているという事実に。
351 :
ナイトメア・チルドレン ◆tu4bghlMIw :2008/02/22(金) 01:57:41 ID:v907MW6E
「――分かりました、ゼロ」
「ああ。死ぬなよ、カレン」
「ブリタニアから日本を解放するまでは死んでも死に切れません」
「…………ゼロも、いい部下を持ったものだ」
カレンがキッ、と眉を上げこちらを真剣な眼差しで見つめた。
俺もソレに応えるように小さく頷く。そして背中を向けた。
本当に、心の底からそう思うよ……カレン。
しかし、お前の力では奴を仕留めることはおそらく不可能だろう。
そんなことは十分過ぎる程分かっている。
でもさ……せめて深手を負わせる、くらいは期待してもいいだろう?
なにしろ《ゼロ》の正体を知ってしまったのはお前達二人なんだからさ。
「うぉぉぉいいいいいい!! ルルゥゥゥーシュゥウ!!! 早く来んかぁぁああ!」
山道の方角からビクトリームの野太い声が響いた。
ニアの姿も見える。未だ顔色が優れない。
無理もないか。凶器は毒だったとはいえ、人を一人殺したのだから。
彼女の悪夢が過ぎ去る夜はおそらく来ないだろう。そう、永遠にだ。
ビクトリームは何だかんだ言って、ニアのことが心配らしい。
表面的には「お前がメロンを持っているから」などと言っていたが。
とはいえ、彼女が進んで殺人など犯す筈がないと一番強く思っているのも彼だろう。
意外に仲間思いな奴なのかもしれないな。少なくとも俺以上なのは確実だ。
「ルルーシュ? どうしたんですか、とても……嬉しそうですよ?」
「え、あ……気付かなかったな」
俺は、気が付けば笑っていた。
それが手を振るニア達に向けたものだったのか、それとも別の理由だったのかは分からない。
だけど、
とにかく、
どうしようもない位に、
俺は愉快で愉快で堪らなかった。
【D-7/山道/一日目/夜中】
ネコミミストは――風になった――
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(大)、中度の頭痛
[装備]:ベレッタM92(残弾15/15)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、メロン×11個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、ゼロの仮面とマント@コードギアス 反逆のルルーシュ 、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:清麿との接触を含む、脱出に向けた行動を取る。
2:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
3:以下の実行。
「情報を収集し、掌握」「戦力の拡充」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
4:余裕があればモノレールを調べる。
[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※ギアスを使った影響は若干収まってきましたが、いまだ頭痛があります。
※清麿メモの内容を把握しました。
【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神的疲労(大)、ギアス
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:ルルーシュとビクトリームと一緒に脱出に向けて動く。
2:ビクトリームに頼んでグラサン・ジャックさんに会わせてもらう。
3:シータを探す
4:お父様(ロージェノム)を止める
5:マタタビを殺してしまった事に対する強烈な自己嫌悪
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※カミナに関して、だいぶ曲解した知識を与えられています。
※ギアス『毒についての記憶を全て忘れろ』のせいで、ありとあらゆる毒物に対する知識・概念が欠損しています。有効期間は未定。
※ルルーシュは完全に信頼。スパイク、ジンにもそこそこ。カレンには若干苦手な感情。
【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:静留による大ダメージ、鼻を骨折、歯二本欠損、股間の紳士がボロボロ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム不明支給品x1、魔本
[思考・状況]
1:……小娘が人殺し?どうなっておるのだ?
2:奴らには付いていくのはメロンが欲しいからで、別に心配なぞしておらんぞ!?
3:パートナーの気持ち? 相手を思いやる?
4:吠え面書いてるであろう藤乃くぅんを笑いにデパートに行くのもまぁアリか…心配な訳じゃ無いぞ!?
5:カミナに対し、無意識の罪悪感。
6:F-1海岸線のメロン6個に未練。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後。ガッシュ&清麿を知ってるようです。
※会場内での魔本の仕組み(耐火加工も)に気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
※モヒカン・エースはあきらめかけており、カミナに希望を見出しはじめています。
※静留と話し合ったせいか、さすがに名簿確認、支給品確認、地図確認は済ませた模様。お互いの世界の情報は少なくとも交換したようです。
※分離中の『頭』は、禁止エリアに入っても大丈夫のようです。 ただし、身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。
※変態トリオ(クレア、はやて、マタタビ)を危険人物と認識しました。また、六課の制服を着た人間も同じく危険人物と認識しています。
※ニアとジンにはマタタビの危険性について話していません。
※持っていたベリーなメロンはジンを待っている間に完食しました。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
そして十常時は投下を終えると――考えるのをやめた
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(小)精神疲労(中)若干不安定
[装備]:ワルサーP99(残弾15/16)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック、支給品一式(-メモ)、高遠遙一の奇術道具一式@金田一少年の事件簿
[思考]:
基本:黒の騎士団の一員として行動。ゼロの命令を実行する。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:スパイクを出来るだけ密かに始末する。
2:ゼロ(ルルーシュ)に指示を仰ぐ
3:先代ゼロ(糸色望)の仇を取る
[備考]
※マタタビを殺したのはニアだと思っています。
※ジンは日本人ではないかと思っています。
□
(どうしたもんかね……。清麿、こっちは最高にグチャグチャな状況だよ? そっちはどうなっている?)
山荘に残されたジンは一人応接間で考え込んでいた。
マタタビを殺したのは本当にニアなのか。
それも彼女自身の意思によるものなのか。
支給されていた薬が実は毒だった……などという事実がありえるのだろうか。
(綺麗な色してるよ……これで人が死ぬなんて思えないくらいにさ)
ジンはポケットからカプセルを取り出した。
赤と白――ニアに支給された毒入りカプセルである。
ちなみにこれはルルーシュが厳重に梱包したつもりで、うっかり落としてしまったものである。
三人が去った後に、部屋の隅に落ちているのをジンが発見したのだ。
(ルルーシュは信用出来ると思うけど……お姫様は……難しいな)
あの状況でニアを庇うことが出来るなんて、ルルーシュは中々大した男だと思う。
さすがにあの時、自分さえ彼女を擁護しようという気持ちを持てなかったのに。
(キール……お前なら、あの子にも最高のエスコートをしてやれたのかね。女の子の扱いはお前の専門だった筈なのにな)
命を落とした――らしい、相棒の姿を思い浮かべる。
そして漏れる落胆の声。完全に忘れ去るのは中々に酷という奴だ。
スパイクも顔には出していなかったが、相当に堪えている筈だ。
確か読子とエドという知り合いが二人死んだらしい。
(ま。実際、問題は山積みだけどね)
夜は深く、少年の心は未だ晴れない。
芽生えた疑惑の種はゆらゆらと蔦を伸ばし、空を駆ける大ドロボウへと絡みつく。
悪夢の中で彼が何を思うのか。それはまた別のお話。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
ここまでくると悪質な集団荒らしだな
【ジン@王ドロボウJING】
[状態]:全身にダメージ(包帯と湿布で処置)、左足と額を負傷(縫合済)
[装備]:夜刀神@王ドロボウJING×2(1個は刃先が少し磨り減っている)
[道具]:支給品一式(食料、水半日分消費)、支給品一式
予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、清麿メモ 、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿
[思考]
基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:ラッド、ガッシュ、技術者を探し、清麿の研究に協力する。
2:ニアに疑心暗鬼。
3:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。
4:この事件の真相について考える
※消防車は山荘の隣に止めてあります。
※清麿メモを通じて清麿の考察を知りました。
□
(ったく……どうなってやがるんだ)
完全に後手に回った――そう言わざるを得ないだろう。
まさか自分が見回りに出ている間に、死者が出るなんて思いもしなかった展開だ。
読子とエドの死について、少しじっくり考えたかったのだがそうも行かないらしい。
(八神もリードマンもエドも皆死んだ……ってか。おいおい、マジかよ? これ)
マタタビを殺したのは……まぁおそらくニアだとは思う。
うっかり、という奴なのか。――実際、うっかりで人が死ぬのは困るのだが。
ルルーシュには迷惑を掛けるが、こうするしかなかったようにも思える。
(さてと……螺旋のお姫様の相手は終わって、次はも駄々っ子嬢ちゃんの相手か。……めんどくせぇ)
メンバーの中で唯一の大人である自分が、もう少ししっかりしなければならないのかもしれない。
ただでさえ、ガキやガキに近い精神状態の人間が多いのだから。
「それにしても……」
スパイクは辺りを見回しながら、何となく呟いた。
「お姫様の飯を食いそびれたのだけは、幸福だったのかもな」
凄まじい異臭を放つキッチンの奥の料理を見つめながら、スパイクは苦笑いを浮かべた。
【D-8/山荘/一日目/夜中】
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:満腹、疲労(小)、全身打撲、胸部打撲、右手打撲(一応全て治療済みだが、右手は痛みと痺れが残ってる)
[装備]:デザートイーグル(残弾7/8、予備マガジン×2)
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ) ブタモグラの極上チャーシュー(残り500g程)
[思考]
0:マタタビを埋葬した後、仲間を集めつつ左回りで図書館を目指す。
1:とりあえずもう一度さっきの出来事について考えてみる
2:カレンをそれとなく守る。もちろん監視も
3:ジェットは大丈夫なのか?
いつ終るのかすらもよくわかんねー
どうすんだこれ?
250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:40:38 ID:ePxzxXvx
255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:41:58 ID:ePxzxXvx
259 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:42:46 ID:ePxzxXvx
264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:43:44 ID:ePxzxXvx
270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:44:41 ID:ePxzxXvx
280 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:45:51 ID:ePxzxXvx
289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:02 ID:ePxzxXvx
295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:47:42 ID:ePxzxXvx
298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:48:17 ID:ePxzxXvx
304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:03 ID:ePxzxXvx
309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:49:53 ID:ePxzxXvx
312 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:50:30 ID:ePxzxXvx
315 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:51:01 ID:ePxzxXvx
323 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:52:05 ID:ePxzxXvx
327 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:53:02 ID:ePxzxXvx
336 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:54:35 ID:ePxzxXvx
343 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:55:28 ID:ePxzxXvx
348 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:56:55 ID:ePxzxXvx
355 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 01:58:17 ID:ePxzxXvx
361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:04 ID:ePxzxXvx
362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/22(金) 02:00:35 ID:ePxzxXvx
とりあえずコイツは連投処理でいいんじゃないかな
十分すぎるレベルだと思う
それにキロバイト数多すぎだろ
これじゃ荒らしとなんもかわらん
小説書いてるから個人で100連投とか
キチがってるだろこのクズ
文書が下手すぎるのかなんだかよくわからないけど
どこが終りなの?この文
すいません。
>>322の
>そんな時、拙者達の前に現れたのはシンヤという男だった。
>名簿の情報から判断するに本名は相羽シンヤ、と言うのだろう。今となってはどうでもいいことだが。
>そう、拙者達にとって必要な情報は奴が――テッカマンエビルであるということだ。
を、
そんな時、拙者達の前に現れたのはエビルという男だった。
そう、拙者達にとって最悪の厄災を運んで来た――テッカマンエビルだ。
に変更して下さい。マタタビはシンヤの名前を知らないんですよね。
,. - ── ──
r'つ)∠─── \
〆⌒  ̄ ̄ ̄ \__ ヽ
,.イ ,イ \ヽ, }
ヾイ /{ { ヽ、ト、 \ ノ
{ .ト{\ヽ', メ __\ } /
>>369 ゝ |"ひ) \ イびゞ \ ヽ- 、 しらねーよ基地外帰れ
ノ ト、"´,. ー ノ ///\
/. { ゝ / レ// } ( ( ) ( ) )
{ ヽ ヽ⌒> / レ´TT ( ) ( ) ( ノ
V{ \ └ ´ / ,.イ/ / ____...................____
,-、 f^ヽ >ー┬|/ ! ,.イノ ,, -ー" _,,.. _,,._ ,,.._ ,,.._ _,,.. ゙ ヽ、
{ ヽ:::;ム マミ、: : \ ム: : :∨ / /,,r"i/ ,r"i/,,r"i/,,r"i/,,r"i 、 ヽ
\ ヽ,ム ∨ヘ : : \ /: /ヘ: : :ヘ / ./ /#; / /#.; / /#; / ,/#; / ,/#; / .," i |
,.- 、 \ ヽ〉 ヽ \: : :\://ヘ: : :| i i. /#; / ,/#; ./ /#; / ,/#; / ,/#; / .,' / /
ヽ、 \ | 〉 \ lヽ./^)、 : : |: : ! ヘ. |〃/ ,|〃/ ,|〃/ .,|〃/ , |〃/ .,"..;;/ /
丶、`¨ / ァ'´ /: : ヽr:| : ハ ヽ ヽゝ' `ヽゝ~ ヽゝ' ~ヽゝ' ~ヽゝ' " /
`) l ,.イ、ヾニ二7イ |.ィ ゙ ー-- 、、... _ ____ ,,,,, .... --―"
⊂二´.. _ __/ / ` ー-、_|/、__jニフ
ヾー--='彡- ' /´:j:_}::::/一`
`ーr'´ ,f-':j´:||`′
/ヾ二トr‐_Tj-トイ : l:!┐
もう何いってんだかさっぱり判らないんですが
まさか一気に100kb以上埋めてくるとはなwwwww
偉そうに作品内の身内だけでわかるようなネタぶりまかれても困るんだが
この基地外の文書、70kb超えてるんだよね
狂ってるよなこれ
そういうの2chで流す無神経さ
集団荒らしなんじゃないのかね
ここまでくると
rt((し)ゝ)m
__ (シイ(((イト、 ⌒)、
(从Y  ̄ ミ;( ⌒ヽ
(y/ (ソ((jし))
/ __, 、__ 乂リソそ)
_i_/_ソ_ Tへ\、__ 从(の))
.T ,.ィrj lー|〃ぃヽ、T \(シ(r)))
/ 'ー ' / 'ー──' j)ソル);) 原作見てても
{ fc っ ) Yルしノ )
l / _,_,__ ヽ tl } )) 何がなんだか
.l Y ィニニ ≧ 〉} 、ノソノ
!  ̄ ノノ y'シノ
Y 'ー─ ハ⌒ヽ
/ \----- / | )⌒)
/ | ム____/ / ノ )\
,.イ ̄ ̄ / ノ )
/ / ノ イ
ダメだ読む気もおきないわ
寝る
備考欄多杉
ルルとジンのチェス対決はよかった。この調子で明智とも戦う展開になってほしいものだ。
ビバップのエドとも一戦やってほしかったが。
ぎゅるりと正確無比に無慈悲な動きで蛇が飛ぶ。
実際に音がしたのではない。あくまでもそのような擬音が相応しいというだけだ。
蛇の獲物は人。スレンダーな体つきに局所的に丸みを帯びている理想的な体形だ。
その若い女性は無抵抗なまま。
否、抵抗する暇があったかどうかすらも怪しい。
たとえ銃撃さえ避けられるような、ヒトを超えた存在であろうとも反応は不可能であるからだ。
蛇はその脆い体に絡みつく。獲物を決して逃がさぬように。
ぎちり、ぎちりと締め付け、締め付け、締め付け――――、
そしてついに、終末は訪れる。
蛇の締め付けに間接は耐え切れず、女性の四肢が胴体と泣き別れ、首は飛び爆ぜる。
後に残るは動くに動けない芋虫だけだ。
……だが。
首も四肢も失ったその体からは、血の一滴すら流れ出る気配はない。
当然だ。
その女性は人間などではなく――――、ただのマネキンだったのだから。
「……なんと。これは……、佳いものだな。
先ほどの鞘といい、胡散臭いモノでもたまには試してみる価値はある、か」
傷の男――――スカーは己の右手に握ったものを見る。
己の手に入れたバッグに入っていた最後の品。……それは、鎖だった。
一見単なる鎖かと思って最初は軽視していたのだが、ショッピングモールに訪れるにいたってようやく中を
検めてみたのだ。
鎖の説明書きにはこうあった。
天の鎖(エルキドゥ)――――と。
持ち主の意に従い、敵を捉え、拘束する聖なる鎖。
“神すら律する”その力は、常なる状態でも“英霊”でさえも抜け出せるものは一部しかおらず、
“神に連なる系譜のもの”を相手取った場合、神の血が濃いほど力を増すという代物だった。
まさしく、神殺しの力。人間ではとても対抗できまい。
(――――破戒僧となった己れには相応しい装備だな)
皮肉げに口元を歪めるも、スカーは非常にこの鎖を気に入っていた。
この鎖を用いて相手を捕らえ、その上で右手の一撃を食らわせる。
――――それに耐えられるものがいるとは思えない。
この鎖も魔力とやらが必要なようだったが、やはり問題なく発動できる。
魔力とはなんなのか、錬金術による“理解”の工程で鞘と鎖を調べた所、世界そのものや生命に満ちている
力らしい。
“気”に似たようなものといったところか。
だが、どうやら分解は出来ないようだ。
“神秘はより強い神秘に打ち消される”法則というのがあるらしく、自分の右手ではこれらの道具の“神秘
”を上回れないのである。
試してみた所、自分の力では射程距離は十数メートル程度のようだ。
遠距離攻撃が出来るのは非常に大きい。
物陰に隠れて接近し、相手が一人になった所でこの鎖を放ち、右手を叩き込む。
機先さえ取れれば、相手になるのは殆どいないだろう。
(……先ほどの神父。奴と相見える前に調べておけば佳かったものを。失態だな)
そう思い、つい先刻の戦場を思い出す。
「……己れの行いが、国家錬金術師の虐殺に値する、か……」
……どうなのだろうか。
いや、分かっている。
人殺しは人殺しでしかない。
国家錬金術師にも家族はいるだろう。
戦いの中で、誰かを守る為に錬金術の力を用いることを選んだものもいるだろう。
――――だが。だが!
(それでも! ――――それでも、己れは殺すと決めたのだ! 最早――――戻れん!)
かつて決意した思い。
……それを上書きするように、別の男の今わの際が蘇る。
死んだら、どうする。
……自分が理不尽にこの場に呼ばれたように、あの男もそうだったのだろう。
修羅場に身を置くならまず出てこないような、甘い考え。
ならばあの男は戦いとは縁のない平和な所から呼び出されたのか。
かつて神に祈り静かな暮らしていた自分が、否応なく戦渦に巻き込まれたように。
……血迷ったのだろうか。
肝心なことを忘れていた。あくまで、自分の敵は国家錬金術師だということを。
ならば。そうでない者たちですら排除しようというのは。
「……神父。お前は、……正しかった」
……だが、今更だ。
既に何人も手にかけた。戻る道はない。
今の自分にはドモン・カッシュのように復讐を乗り越えることも出来ない。
……なにより。
「……鋼の錬金術師。焔の錬金術師。貴様らは……どんな思いで逝ったのだ?」
既に、この殺し合いの場にいる己の殺意の対象は全ていなくなった。
放送の確かさは、自分がよく知っている。
この手で何人も屠ってきたのだから。
なのに、いまだ自分はここにいる。
自分はこれから、何をすればいいのか。どうしていけばいいのか。
元の世界に帰れさえすればいくらでも殺すべき対象はいる。
だが、戻る手段も分からないのだ。
螺旋王とやらの言動など信用できない。
ここには国家錬金術師がいるからこそ、連中を殺すために邪魔になる人間を排除していたのである。
既にエドワード・エルリックもロイ・マスタングも消えた以上、自分がここで殺戮を続ければまさしく国家錬金術師と同じことではないのか。
……だが、今更引き返すことも出来ないのだ。
スカーは苦悩する。
殺意の対象が死に、目標を見失ったその時。
言峰綺礼の蒔いた呪縛は思考と現実の矛盾を糧に一気に芽吹いたのだ。
戦いの最中ならばそんな余裕はなかったろう。
だが、傷はまだ治るまで遠く、誰かと交戦するにはあまりに無謀すぎる。
そんな、魂をすり減らしていくそのタイミングだった。
どことなく抜けたような印象を与える音が、ショッピングモールに響き渡ったのは。
『〜ピンポンパンポン〜♪』
「……何だ、これは?」
楽器の様でいて、しかし妙に音に個性がない。その上音量が大きすぎて、あちこちで反響しているようだ。
何らかの錬金術だろうか。
だが、音だけを増幅する錬金術など聞いた事がない。
そう思った矢先、今度は人の声がスカーの耳に届く。
人間では到底出せない音量で。
『エドです。地図の載っている施設を全部、良く調べてみてください。
すごいお宝を発見ができるかもしれません。
詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだ そうです!
もしも見つけてしまったらぁ〜一切、粉砕、喝采ぃ〜八百屋町に火がともる〜!』
それだけを告げると、謎の音源は再度ピンポンパンポンと鳴り、それきり黙りこんでしまった。
「……む」
子供の声だった。
誰か、この施設にいるのだろうか。
錬金術かと思ったが、しかし、自分の手には胡散臭い道具が2つもあるのだ。
なら、この殺し合いの参加者に声を増幅させる道具があってもおかしくはないだろう。
拡声器、という名称辺りだろうか。
……罠かもしれない。
だが。
「……己れは、国家錬金術師などとは違う……!」
たとえ敵であっても、国家錬金術師でない限り子供を殺したりはしない。
……探して、保護しなければ。
どうやら何かを探しているらしい。
ついでにそれも見つけてやれば喜ぶだろう。
「……宝探し、か。兄さんとはよくやったものだ」
自然に口元が歪む。
一瞬、懐かしい景色を思い出したのだ。
……だが、感傷に浸っていてもしょうがない。
特にやることもないし、付き合ってみてもいいだろう。
じっとしていると、あまりに余計なことを考えすぎる。
当面の目的を見失った彼は、とりあえずの目的に縋るようにショッピングモールを歩き始めた。
◇ ◇ ◇
結論から言うと、子供は見当たらなかった。
もしかしたら螺旋王の放送のように、別の場所から告げたのかもしれない。
地図に載っている施設と言っていたのだし、他の場所にも流れた可能性も高いだろう。
……だが。
言葉通りのものは、存在した。
「これは……。これが、……宝の箱、か?」
ショッピングモール内を歩き回り、最後に辿り着いたのが資材搬入倉庫。
そこの一角に、妙なコンテナが配置されていたのだ。
他のコンテナより明らかに大きく、配色も異なっている。
緑色に輝き、表面には二重螺旋の書き込まれたそれを調べてみれば、そこには
『螺旋力と螺旋にゆかりのあるアイテムが揃って鍵となります』
と扉の表面に刻まれている。
「……成程。先ほどの子供も言っていたな」
螺旋力。生憎とそんな物には心当たりないが、しかし問題はない。
自分には破壊の力……否、分解の力があるのだ。
たとえどんな錠であっても、錬金術の特性である
『理解、分解、再構築』
のうち、
『理解、分解』
の工程をもってすれば開けられないはずがない。
物理的な強度とは関係なく、存在そのものを解体しているのだから。
ごきり、とスカーは手を鳴らす。
大地の力を取り込み、錬金術を発動。
そのまま右手をコンテナに押し付けた、その時。
スカーの世界は一瞬で切り替わった。
◇ ◇ ◇
しろいせかい、くろいせかい。
どこまでもどこまでもそのふたつがにじゅうらせんになってじぶんをとりまく。
しろとくろはみどりいろに。
螺旋。二重螺旋。時計回り。螺旋力。スパイラル。
人間。文明。科学。知性。神は死んだ。螺旋。螺旋。形而上学。
ロージェノム。螺旋力を使用したバリアー。コンテナ。子供。鎖。鞘。
お前のドリルは天を突き破るドリルなんだよ。顔面。コアドリル。
次の段階。発展の究極。人間の行き着く先。螺旋。
根源。断続平行進化。螺旋。トリプレットコドン。絶滅。
コモンアンセスター。螺旋。RNAワールド。螺旋。化学進化。
(……何だ。何なんだ、これは……!)
錬金術の特性、“理解”。
扉を破壊しようと、まずその工程を発動させた瞬間――――スカーの意識は飛んだ。
否、情報、そして何かの概念の濁流に飲み込まれる。
扉を守るのに使われていた何らかの力に干渉することで。
(――――やめろ! 己れは……! 己れは……ッ!!)
世界。銀河。存在。生命の神秘。螺旋。力。個性。パラダイムシフト。
惑星。螺旋。デオキシリボ核酸。ダーウィン理論。創造。想像。
魔術。科学。魔法。ギアス。不死。ラピュタ。錬金術。プラント。魔本。
エレメント。チャイルド。紙使い。螺旋力。
力。力。力。力。力。力。力。力。螺旋。神の見えざる手。
いくつものいくつもの世界。不完全性定理。絶対の否定。到達点。
公理系。生命。ロジック。螺旋。食事。搾取。複雑系。命の連鎖。
ヒルベルトプログラム。生と死。観念。命の価値。螺旋。天地乖離す開闢の星。
(……これは……錬金術なのか? 扉を開く……。)
人間。人間。哺乳類。鳥。螺旋。恐竜。パンゲア。プルームテクトニクス。
螺旋。6500万年前。超好熱性細菌。イスア。全球凍結。迷子石。コノドント。
アウストラロピテクス・アファレンシス。五大絶滅。生きている化石。
KT境界。螺旋。イリジウム。カンブリア大爆発。ピカイア。ラマルク。螺旋。
レッドリスト。ドードー。種の終わり。ジャイアントインパクト。
無酸素水塊。ノーチラス。アンモナイト。海進と海退。層序学。螺旋。
(――――違う! 錬金術も、魔術も、紙使いも、全てはこの力であり……!!)
不死者。悪魔。全能性。不死の酒とホムンクルス。連環。ループ。螺旋。ウロボロス。スパイラル。
復活。存在変換。錬金術。螺旋力。吸血鬼。死者の蘇生。因果逆転の槍。
今そこで人が死のうとしてる。螺旋。僕にはその方が重い。
倫理観。禁忌。プレシア・テスタロッサ。ジュエルシード。魔法。
死んだらどうする。友情。親愛。家族愛。螺旋。殺人狂。地獄の傀儡師。
神。神。紙。読まずに死ねるか。異能。復活。三日後。進化。心。螺旋。錬成陣。螺旋。
(命、……その、生き死にさえも、向かう先さえも総べる力、それが……!!)
――――われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか……?
不意にいくつものいくつもの光景が目の前に展開する。
黒目のない男が、少年に向かって指を鳴らす。
しかしそれは阻まれる。死なない男が庇っているからだ。
砂漠の星で、協会で一人永遠の眠りに就こうとする男がいる。
彼は、もっと生きたがっていた。
自分の良く知る世界がある。
とある軍人が、家族に化けたホムンクルスを撃てず、命を散らした。
テロリストに乗っ取られた豪華列車。
泣かない少年が、火炎を放つ男を屋根の上から突き落とす。
どこかの屋外。
髪を二つに結った少女が、頭を冷やせと言われて光線に撃ち抜かれていた。
禍々しい瘴気に満ちた空間で。
見覚えのある神父が、少年に向かっていくつもの汚泥を飛ばしていく。
二人の男が睨みあっている。
銃と日本刀が交差し、まるで踊るように離れていく。
ここ会場の舞台に良く似た世界。
少女達は、どうと言うことのない平和な日常を幸福に浪費していく。
やはり会場に良く似た世界。
奇術師と学生の推理勝負は、いまだ決着がつく気配はない。
世界を駆け巡る二つの異形。
弟は、最期の最期に兄を超えた。
他にも、他にも、他にも。
師を失い、泣いて亡骸を抱きしめる格闘家がいる。
戦いの最中、仮面を失った少年がいる。
喋る機械の猫がいる。
絶望したがりの先生がいる。
独特な台詞回しの少年がいる。
獣を操る少女がいる。
空の城に向かう子供達がいる。
赤い本を手に戦いに臨む少年がいる。
――――そして。
(あれは――――、)
螺旋王。獣人。人間。機械。そして、生命と、進化と、螺旋と――――
(……そうか、螺旋力とは、そして、己れは――――)
◇ ◇ ◇
……どれくらいの時間、彼はそこに立ち尽くしていたのだろうか。
既に傷は完治し、腹も随分と空いているようだ。
左手の添え木が邪魔すら感じられる。
時間が一気に飛んだようだと思う。
前を向いてみれば、コンテナはびくともしていない。
当然だ。完全に理解することなどできなかったのだから。
螺旋に類するアイテム。それがなければ、どうしようもないのだろう。
今のスカーにはそれがはっきりと分かる。
彼は自分の右手を見る。
兄から譲られた、その力を。
見つめ、強く強く握り締めた。
螺旋力。今の自分にも、この世界の誰であってもそれは備わっている。
まだその力の一端に触れただけでしかない。だが、それがあるならば。
誰彼の生き死にさえ左右できるのならば。
「……兄さん。また、会うことが出来るのか?」
返事はない。当然だ、ここには誰もいないのだから。
……だが。
傷の男に気落ちした様子はない。
贖罪のつもりはない。仇を許すつもりもない。
それでも彼は、一つの選択をした。
「兄さん……。己れは……、誰かを、守ろうと思う」
勿論偽善のためではない。全て自身のためだ。
国家錬金術師どもは殺す。それを変えるつもりはない。
だが、それに加えて螺旋力を用いて兄を、イシュヴァールで失われたモノを取り戻す。
それだけではない。ここで、自らが失わせてきたモノたちに対してもだ。
……全てを、元の形に。
たとえそれが、摂理に反する行為でも。
「……神父、お前は言ったな。己れは虐殺者だと。……その通りだ」
その為に、だからこそ。
「……己れは、故に手を汚す。躊躇いはない。螺旋の力あるものたちを、手に収める為に」
足りない。“全て”を戻すには、自分自身だけでは全く足りないのだ。
この会場にいる、ありとあらゆる存在。
生きとし生けるもの達は皆、螺旋の力を手に入れ得る。
だからこそ。……だからこそ、自分が守らねばならない。
それを脅かすものを全て排除することで。
螺旋の力に目覚めていたとしても、他の人間に危害を加えるのなら同様だ。
たとえそれが、自分の力の及ばない存在であろうとも。
――――懸念するのは螺旋王の事だ。
あの男がどう動くのかは分からない。あの男の螺旋力の程度も分からない。
だが、どうすべきかは簡単だ。
仮に、この会場の螺旋力保有者全てを超えるほどの螺旋力をあの男が持ち、約束を守るというのなら。
……それまでに保護したもの全てを自分の手で消せばいいだけだ。
どうせ、自分は虐殺者なのだから。
傷の男は身を翻す。
その瞳に、緑の螺旋を浮かばせて。
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師 螺旋力覚醒】
【A-7・ショッピングモール資材搬入倉庫/一日目/夜中】
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康、覚悟、螺旋力覚醒
[装備]:天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night
[道具]:デイバック、支給品一式@読子(メモは無い)、アヴァロン@Fate/stay night
[思考]
基本:螺旋力保有者の保護、自身及び螺旋力保有者の敵の抹殺、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:螺旋力保有者に接触し、保護する。
2:螺旋に関係するアイテムを収集し、ショッピングモールのコンテナを開ける。
3:邪魔をしたり、危険と判断したりした場合、螺旋力保有者でも抹殺する。
4:螺旋力保有者の敵がいなくなったら螺旋王を見極める。螺旋王の螺旋力の大きさ次第でそれまでの保護対象を抹殺し、優勝する。
5:……腹が減ったな。
[備考]:
※会場端のワープを認識しました。
※言峰の言葉を受け入れた分、かえって覚悟が強まっています。
※スカーの右腕は地脈の力を取り入れているため、魔力があるものとして扱われます。
※螺旋力について何らかの知識を得たようです。
※螺旋力覚醒
【天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night】
かつてウルクを七年間飢饉に陥れた“天の牡牛”を捕縛した鎖。
ギルガメッシュがエア以上に信頼する宝具。
使用者の意思に応じてホーミングし相手を拘束する。
能力は“神を律する”もの。
捕縛した対象の神性が高いほど硬度を増す特性を持つ、数少ない対神兵装。
ただし、神性の無い者にとっては頑丈な鎖に過ぎない。
※ショッピングモールには螺旋力と螺旋に関するアイテムで開くコンテナがあります。中身は不明です。
削除依頼完了どす
とりあえず地図からでしょ
397 :
◆UcWYhusQhw :2008/02/23(土) 00:22:07 ID:Y+UT/LYg
「スバルはん……」
あの爆発で生きてられるとはおもわへんかったけどやっぱり。
スバルはんに思う事は無いわけではあらへんけど死んだら終わりや。
もし生きとるんやったら手駒にと考えたやけどそれまで。
うちはそこでスバルはんについて考える事を止めた。
今はそんな事より流れた放送の中身や。
禁止エリアについては今はそこまで関係あらへん。
気になるというなら……下部に固まってきたという事ぐらい。
下部に人でも固まっていたのだろうか。
まあそれよりも今気にすべきは死んだ人数や。
17人。
また随分と減った。
順調に進行してるって事や。
これは喜ぶ事なんやろうか。
いや、少なくとも今は違う。
人数が少なくなるという事は手駒になる奴も減るって事や。
そして強者が残る。
私が勝てないような強者が。
その為には協力者が必要なんや。
そうかなりの強者の。
弱者はいらへん、足手まといなだけや。
そんな足手まといは殺しとく、邪魔やし。
必要なただ一人、なつきだけや。
後はただの駒。
なつきの為に利用する駒でしかあらへん。
ゲームをする時には強い駒が多い方が楽にきまっとるさかいね。
支援
そして目の前にいる男、ヴァッシュはん。
見た限りではかなりの強者。
あの卓越した銃器の扱いは見事の一言や。
それに奇抜な戦い方、あの槍使いを翻弄させるとは。
おちゃらけてるくせになかなかやりおる。
詰めが甘いがまあ、そこは妥協点であろう。
戦闘能力だけで見るとかなりの上物や。
ただ「戦闘能力」だけでいうとや。
彼の思考、理念は邪魔でしかあらへん。
何が誰も殺させないだって。
血迷い事だ。
現に2人も死んでおるやないか、うちのせいせやけど。
うちが行動する事によって彼の理念は常に邪魔しはるやろ。
足手まといを始末にするにしても絶対に否定しはる。
そして殺し合いに乗ってるものでさえ止める。
何がそこまで彼をはしらせるんやろ。
少し気になった。
まあそんな事は後でいい。
取り敢えず考えるべきはヴァッシュはんをどうするべきかや。
手駒として使うか、切り捨てるかや。
戦闘能力は別格。
しかしその考えは邪魔。
どないしましょ。
どっちもいい考えや。
慎重に決めんと……
そして
うん、決めた。
「「「「我らその名を書風連! 呼ばれなくとも支援する!!」」」」
うちはその考えの下にヴァッシュはんに近づく。
そう、うちが決めた答えは
「ヴァッシュはん……」
「なんだい……」
ヴァッシュはんはどこか沈んだようすで座っていた。
大事な人でも呼ばれたんかいな。
まあそんなのうちには関係あらへん。
だからうちは用件を告げる。
「手をくまあらへん? うちとヴァッシュはんでこの殺し合いをぶちこわすんや……もう、うち殺し合い、やになったんどすのん」
「……え?」
そううちが選んだのはヴァッシュはんを手駒としてつかう事。
ここで別れてヴァッシュはん以上の強い手駒が手に入るとは考えられへん。
むしろ、協力する人間すら少ないやろ。
その中でこんなお人好しはある意味で貴重や。
その理念が邪魔やけど、うちが間違って殺したと言う事でもいいし、影で始末してもいい。
ようは自分の手を染めればいいのや。
そう考えれば絶好の手駒。
まさに最良の駒。
使い方を間違わなければこれ以上の無い手駒やさかい。
だからうちは彼を使う事に決めた。
「君とかい……」
「なんや……不満なの? うちはもう乗ってないのや。組む事に問題なんてあらへん」
そう、今のうちは乗ってない。
なつきの為、自分の力でやってみせるんや。
その為にあんたを手駒にした方がやりやすいさかいね。
なんか気乗りしないみたいけど味方につけてやるさかい。
「もう、人を殺したりはしないのかい?」
「そや……もうしない。絶対や……殺したんのは悪いと思ってる……なんか空しゅうて……せやから力を貸してほしいんや」
あたり前やけど嘘だ。
別にどないとも思ってへん。
ただ力、運が無かったから死んだだけや。
だってなつきの為やもん。
多少の犠牲なんて仕方ないやろ。
そしてこれからもかわらへん。
足手まといは始末するし邪魔する者も殺す。
他人の死なんかどないでもいい。
ただなつきがもう一度、うちのまえにあらわれるだけでいいのや。
だから罪の意識なんてある訳がない。
ヴァッシュはんには悪いけど。
その信念は一生わからへんわ。
せやけど今はヴァッシュはんの力を利用しなければならへん。
その戦闘能力を手に入れる為に。
その甘ったれた信念には反吐がでるけど今はのもう。
だからうちは簡単にも嘘を吐ける。
「そう……ヴァッシュはん言うとったやん……ラブ&ピースって! うち、それに感動しましてなあ……放送を聞いた後に死者が多くて……辛くなった時その言葉に感銘受けましたんよ」
「……本当かい?」
そんな訳あらへん。
血反吐がでるくらい堪忍や。
ラブ&ピースってなにいってるんだか。
気持ち悪いわ。
大の男がそんな言葉をいうなんて。
あーもう堪忍して欲しいわ。
でも仕方あらへん。
これもなつきの為。
気持ち悪い単語を言い続ける。
「そうや……ラブ&ピースや! ラブ&ピース! ヴァッシュはん」
うちは笑顔を作ってVサインを作ってヴァッシュはんの真似をする。
アホらし。
でも我慢や、我慢。
「「「「ええい!残り200kb、すべて支援で埋め尽くしてくれる!!」」」」
「解ってるくれるのかい……殺し合いがどんなに空しくて悲しいものか? 何も生まない事を。生きてるだけでも何とかなるって」
「せや。うち、わかったんよ、だからお願いや! ヴァッシュはん!」
懸命に訴えかける。
後一押しや。
もう落ちる寸前。
この男はやっぱお人好しや。
だからうちはヴァッシュはんの手を握り訴えかける。
少し声を震わせ感情的になっているように。
「ヴァッシュはん……お願いやから……」
最後の一押しをした。
これで、どや。
完璧な筈。
そう思った瞬間、頭に手をおかれ
「いやいや……せっかくの美人がだいなしだよぉ、笑いなよ……ほらラブアンーーードォピィーーーーーーース!」
へらへらした笑顔をこちらに向けた。
って事は成功したのさかい。
「ええのん? うちに協力しても」
「もちろんさ。君が殺し合いをしないならさぁ」
「当たり前やろ? そういったやん」
よし、強い手駒が入ったで。
暫くは怖いものは無い。
あとは上手くコントロールするだけや。
駒は使い方を間違えると悲惨やさかいに。
ふふ上々や。
ただその時にヴァッシュはんが見せたどこかさびしい笑顔がどこか頭に残りはる。、
なつきの為に1歩進む事ができたで。
なつき、待ってれな。
「なら一緒に言いましょう、あれを!」
「あれ?」
あれってなんやろ?
凄く嫌な予感はしはる。
ヴァッシュはんの満面の笑みがごッつう嫌や。
薄気味悪いで。
「「「「ラブ&ピーーーーーーーーーーーーーース!!!!」」」」
そしてその言葉を発す。
「そう……もちろん! ラーーーーーーーブ、アーーーーンーーードォピィーーーーーーース! ほらシズルさんも!」
「え゛」
え゛。
堪忍してや。
そりゃあ必死に言った気もしはるやけどあれはあれで。
せやけど今言わんと信用得れへんし。
そんなキャラでもあらへん。
ヴァッシュはんの笑顔に腹立つ。
「さあ、シズルさんも!」
ええい、ままよ。
なつきの為。
なつきの為なんや。
堪忍や、絶対わらんわでえ、なつき。
仕方ないんや。
なつき。
きらわんとってなあ。
「さあ、一緒に!」
ああ、どうにでもなれ!
「「ラーーーーーーーブ、アーーーーンーーードォーーーーピィーーーーーーース!」」
言うてしもた。
なんかなつきが笑ってるようにも思えるわ。
……忘れといてください。
もう未来永劫思い出したくないですわ。
それにもう永遠にやらんわ。
「さすがぁシズルさん! いいですねぇ……さあもう一度!」
「え゛」
その後何回もあった。
……手駒にしはるの間違ったかもしれへん。
なつき……たのむから笑わんといてえ。
「ほな行きましょか。ヴァッシュはん」
「そうだね」
あの後、うちらは準備をし移動し始めた。
ヴァッシュはんも信用してくれとるし順調や。
なつき、見といてや。
絶対、あんたにあって見せるさかい。
そのためには犠牲をなんぼ払ってもかまへん。
例えなんぼ殺してもや。
ヴァッシュはんは手駒でしかいない。
思いっきりつかって使えなくならはったら始末しはるだけや。
そないして、なつきに辿り着いてみせる。
絶対や。
なつき、うちはなつきの為にあるから。
さかいに絶対なんぼな事でも会う。
そないそら絶対曲げることのあらへん鉄壁の意志。
さあ行きましょか。なつきの為に。
「「「「安心なされいシズル殿!我らもついておりますゆえ!!!!」」」」
前にのしのしと進んでいくシズルさんをみる。
シズルさんが僕に言った。
絶対殺さないって。
でもそれ嘘だ。
きっと殺す事をやめないだろう。
だってシズルさん笑っていない。
顔は笑っていた。
でも目は、心は決して笑ってなんか無い。
僕と対峙した時に何も変わらない冷たい心。
殺気さえ感じられた。
どんなにあの言葉を言おうとそれは変わらなかった。
じゃあ僕はそんなシズルさんに何もしないのか?
違う。
もう沢山だ。
目の前で人が死んでいってまた知り合った人まで死んでった。
ランサーさん、ドーラさん。大宗さん。
そして僕がふがいないばっかりに死んでしまったクワットロさん。
じゃあ僕は無力だと嘆くだけなのか?
絶対に違う!
もう絶対誰も殺させない。
もう目の前で人が死ぬなんて事をみすみすと許すわけにいかない。
僕は何があってもそれは止めない。
だから僕は諦めない、最後まで。
シズルさんはきっと殺していくだろう、これからも。
僕をきっと利用しながらも。
なら、僕はシズルさんの傍でシズルさんを見てよう。
例え利用されてるとわかっていても。
シズルさんが誰かを殺そうとした時を全力で止める。
もう死ぬをみるのは沢山。
そしてシズルさんにも死んでほしくない。
どんなに偽善とののしられても、馬鹿にされても僕は信念を変えない。
それが僕の生き方だから。
だってもし生き方をかえて戻れるかい?
ナイヴズやメリル達の元に。
それはできない。
きっと皆非難する。
この生き方がヴァッシュ・ザ・スタンピードそのものだから。
だからもう僕は止まらない。
死んでしまった皆の分まで。
どんな時まで信念を貫き通す。
そして帰ろう。
皆の下へ、笑顔で。
僕はどんな時でも変わらない、変わっちゃいけない。
だから僕は改めて誓う。
絶対誰も死なせない、例え罪を犯した者でも。
そう絶対だ。
ここが僕のリスタート。
もう止まる訳にはかない。
絶対に揺るがぬ信念をもって。
さあ、いこうか。
僕が信じるものの為に。
そして、
「よい所にきたな、雑種共……なにか、着る物と温かい食べ物はないか?……ハ、ハ、ハクション!」
目の前に体格のいい金髪の男がいた。ただしほぼ全裸。
しかも寒さに震え体を揺らしてる。
え、えーと。
たぶんシズルさんも同じ考えだろう。
乞食?
【F−5/北部/1日目/夜】
【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:疲労(中)、左足に打撲、左眼損傷(ほぼ失明状態、高度な治療を受ければあるいは…)、首筋に切傷、精神高揚
[装備]:雷泥のローラースケート@トライガン
[道具]:支給品一式×4(食料二食分消費)、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
サングラス@カウボーイビバップ 、包丁、不死の酒(不完全版)@BACCANO バッカーノ!
棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)、大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書、防水性の紙×10、
偽・螺旋剣@Fate/stay night、暗視双眼鏡、不明支給品0〜1個(槍・デバイスは無い)
[思考]:
基本思考:螺旋王の力を手中に収め、なつきと共に永遠を生きる
0:乞食ですのん?
1:ヴァッシュを利用。
2:邪魔になる人間は殺す
3:足手まといは間引く
4:邪魔にならない人間を傘下に置く
【備考】
※「堪忍な〜」の直後辺りから参戦。
※ビクトリームとおおまかに話し合った模様。少なくともお互いの世界についての情報は交換したようです。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)
※不死の酒(不完全版)には海水で濡れた説明書が貼りついています。字は滲んでて本文がよく読めない模様。
※一応、殺し合いに乗らず脱出する方針に転換したので、ジャグジーに対する後ろめたさは、ほぼ無くなりました。
※ヴァッシュが利用されている事に気付いてるのを知りません。
「「「「さっすがヴァッシュ殿!そこにしびれる憧れるッ!!」」」」
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】
[状態]:全身打撲、強い決意。
[装備]:ナイヴズの銃@トライガン(破損)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせるし、誰も殺させない。
0:乞食?
1:静留に利用されてる振りをし警戒する
2:静留が殺そうとした場合全力で止める。
3:ナイヴズの銃は出来るだけ使いたくない。
[備考]
※クロの持っていた情報をある程度把握しています(クロの世界、はやてとの約束について)。
※第二放送を聞き逃しました。
※ミリィのスタンガンは粉々に破壊されました。
※隠し銃に弾丸は入っていません。どこかで補充しない限り使用不能です。
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:疲労(大)、全身に裂傷(中)、全裸(腰布一枚)悪寒。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。【王の財宝】の再入手。
0:……寒すぎる。
1:“螺旋王へ至る道”を模索。最終的にはアルベルトに逆襲を果たす。
2:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。
3:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】 。
4:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
5:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
6:慢心を捨てる――――?
※地図の端と上空に何か細工があると考えています。
※腰布の詳細はご想像にお任せします。
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(開催用白地図)
どぞ
なんか屑書き手どもがずいぶんさわがしいな
なんかあったのか?
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とりあえず1マス200mということで、全部海化
あと、島つくってけ
将棋っぽくね?
つうか山ステージと海ステージ
どっちがいい?
409 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/23(土) 00:24:26 ID:kk39Mlan
「「「「我らその名を書風連! 呼ばれなくとも支援する!!」」」」
421 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/23(土) 00:26:40 ID:kk39Mlan
「「「「ええい!残り200kb、すべて支援で埋め尽くしてくれる!!」」」」
428 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/23(土) 00:27:45 ID:kk39Mlan
「「「「ラブ&ピーーーーーーーーーーーーーース!!!!」」」」
439 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/23(土) 00:29:29 ID:kk39Mlan
「「「「安心なされいシズル殿!我らもついておりますゆえ!!!!」」」」
450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/23(土) 00:31:45 ID:kk39Mlan
「「「「さっすがヴァッシュ殿!そこにしびれる憧れるッ!!」」」」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
へ .ヘ
/ハ \_/ 八
/_______}
{_________
|ミ/ ー―◎-◎-)
(6 u (_ _) )
ノ/| .∴ ノ 3 ノ
ノ/_ \______ノ__
・・・すまん
あまりにも発言がアレなんでさすがに気持ち悪くなったよ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
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とりあえず作り直してみたけど、全面海か?
>>464 こういうのって周り醒めてると白けるよなー
こうはなりたくねえよ。正直
夜が来る。
とてもとても長い夜が。
私はこの夜を乗り越えなければならない。
夜を乗り越えて、その先にある明日へ到達しなければならない。
だから私は戦う。戦わなきゃいけないから。戦って掴まなくちゃダメだから。
私を支えてくれる、支えてくれた、これからも支えて欲しい、あなたのためにも――。
◇ ◇ ◇
すっかり日も落ちた、夕刻の船上。
五時を経過した空は、茜色の情景を星々の輝きへ譲ろうとしている。
日本の季節で言うならば、この移り変わり方は冬のそれだろうか。
夜明けは遅く、日没は早い、夜が幅を利かせる季節。
この街、あるいは国、あるいは惑星に、四季の概念はあるのか否か。
『敵』と相対しながら、ジェット・ブラックはそんな瑣末なことを考えていた。
「おいおい。そいつはいったい、なんの冗談だ?」
対峙する敵、ヴィクトリア朝式メイド服を纏うティアナ・ランスターは、殺意を込めてジェットに言う。
「世間一般で言うところの魔法――あなたを殺すためにできる、私の精一杯」
ティアナの周囲に浮遊する、蛍火にも似た光の球体。
魔力スフィアと呼ばれる破壊の光球は、ナイフの殺傷能力など遥かに凌駕する。
ふよふよと浮かぶその数は3。現在のティアナが、デバイスなしで同時に行使できる、限界の数だ。
たった3発と軽視することもできれば、攻撃に全開で臨んでいるとも解釈できる。
しかしティアナの言う『魔法』に関してなんの知識も持たないジェットは、その数が意味するものも、威力すらもわからない。
未知なる『兵器らしいモノ』に対し、ジェットは想像を巡らせ導き出した、不安極まりない対応策を強いられる。
「で、そいつはいま俺が向けてるコレより高威力なのか? 弾速は? 絶対に先手が取れる自信でもあるのか?」
対峙する二人、ティアナは周りに『魔法』を浮かばせているだけだが、ジェットは『銃』という明確な殺傷兵器を向けている。
銃弾の射出スピードというのは、剣の達人が放つ刺突よりも、獣が獲物に飛び掛るよりも、ずっと速い。
互いが武器を向け合っているという状態、決め手となるのは先手を取るに必要な速度である。
魔法を知らぬ者から見れば、優勢はジェットに傾いていると言えよう。
「クロスファイア、シュート」
「ッ!?」
だが結果として、ティアナの有する三つの光球は、ジェットの握る銃よりも速く放たれた。
決め手となったのは、射出の条件である。
引き金を絞るという物理的行為が必須な銃とは違い、魔法の発動は外面的動作を必要としない。
魔力を集中させ、念じ、あるいは唱え、意のままに操る。全て四肢を動かさずに実行できる。
ジェットがティアナの攻めのタイミングを見誤ったのも、無知ゆえの結果だった。
が、攻めの後の対処に、魔法に関する知識は必要としない。
銃弾のそれと遜色ないスピードで迫る光球を、ジェットは横に転がって回避する。
ティアナの魔法が射撃に分類されるのであれば、対処の仕方など回避か防御の二択だけだ。
鉛が当たる音よりも重く、三つの光球が甲板を叩く。そのすぐ横に移動したジェットが、
「クロス」
体勢を立て直しつつ、魔法の威力とやらを見極め、
「ファイア」
立ち上がり、ティアナの次なるアクションを見るため、
「…………」
視線を向けた先では、速くも二射目のための装填作業が始まっていた。
(連発も可能ってわけかよ!)
「……シュート」
再び作り出された魔力スフィアは三つ。光球の使い道と威力を思い知ったジェットは、やはり回避に徹する。
弾数は三。一斉射撃可。軌道は融通が利き、否直線的。速度はやや遅く、威力は十分。
魔法の性質を図り、ジェットは冷静に弾道を見極めながら回避するが、さすがに三連続で来られると動作が追いつかない。
一発目を避け、二発目を避けると同時に体勢が崩れ、三発目で被弾してしまった。
「ぐっ……!」
左腕に得体の知れぬ熱と衝撃を受けて、ジェットは大きく弾き飛ばされた。
左腕は義腕であるため直接的な痛みは薄い。が、肩口から伝わる振動だけで、脳と内臓が悲鳴を上げる。
甲板を滑るジェット。衝撃がやんだ頃、左腕の損傷度を確認する意味も含め、左腕一本で体を跳ね上げる。
動きはする。パワーも十分だ。だが状況は一向に厳しい。
三射目。ティアナは新たな光球を形成させようと、ジェットに虚ろな視線を投げかけていた。
ティアナの魔法は、ジェットからしてみれば『弾切れの心配がないうえ、財布に優しい銃弾』みたいなものだ。
ワルサーに金がかからないってんならチンジャオロースに肉が入れられるじゃねえか、と心中で羨む。
長年の貧乏生活で培ってきた余裕が不要なところで発揮されていることには気づかず、今度は甲板端の物陰に身を隠す。
清掃用のデッキブラシや乗船客のためのパラソルなどが被せられていたシートが、魔法の余波を受けて舞い上がった。
「逃げたり隠れたりしても無駄よ。安心して、優しく、殺してあげるから」
「『高尚なる男性は女性の忠告によっていっそう高尚になる』とはよく言ったもんだがな、俺はそんな忠告を聞けるほど高尚でもない」
ジェットは破損したデッキブラシのブラシ部分を投げつけてみるが、ティアナはこれを冷静に回避。
初撃はナイフで来たことを鑑みても、体術が不得手というわけではないらしい。
遠距離戦しか能がないならいっそ突攻して……とも考えたが、なかなか上手くはいかなそうだ。
(さぁて、あんな訳のわからんものをぶちかましてくる女、どうやり込めろってのか……)
今度は船橋の壁際に潜み、ジェットはそっとティアナを覗く。
ゆったりと、しかし確かな歩調で寄って来る少女の背後には、どこか異質な殺意の波動が感じられた。
I.S.S.P.、そして賞金稼ぎへと流転したジェットは、これまでにも様々な殺意の保有者と相対してきた。
殺意の発生源など、だいたいは私利私欲、あるいは憎しみがほとんどである。
また人を殺すという行為が僅かでも罪であると認識しているならば、人間はそこに恐れを抱く。
犯罪者などはその恐れを突き、殺意の発生源となる感情を叩き折れば、軽く捻じ伏せられる。
だが、ティアナからはそれが窺えない。殺意を抱くことに対する恐れも、殺意を向ける目的すらも。
培ってきた観察眼が、ティアナは極稀に見るイレギュラーケースであると訴えた。
恐れといった感情を抱かず、目的も持たず殺意を宿す、犯罪者の中でも希少種と言える存在。
まるで人間ではないような、言うなれば誰かに操られた殺人マシーン……いや、ティアナの背後に隠れる人物の顔を思い出すならば。
(あの女は操り人形……そんでもってあの男は、趣味は悪いが凄腕の人形師ってところか)
この船に訪れてから知り合った得体の知れぬ二人組、ティアナと高遠の関連性を疑えば、答えは一発だった。
ティアナはジェットに殺意を抱くだけの理由がある。厳密には『あった』。
キャロという少女をジェットがバラバラにしたと誤解してい『た』彼女ならば、記憶を失った振りをしつつ、狐の皮を被ってジェットに復讐を果たそうとしても不思議ではない。
しかし全ては過去形であり、今のティアナからはかつて抱いていたはずのジェットに対する憎悪、殺意の発生源となる感情が微塵も感じられなかった。
この時点で、ティアナの殺意の正体が恨みや怒りでないことは明白だ。
ならなぜジェットに襲い掛かるのか。そこを考えれば、彼女と繋がりを持つ高遠が出てくるのは自明の理。
ティアナとの別れ際を思い出しても、あの時点で彼女の精神が平常を保てていたとは考えがたい。
高遠はおそらく、そんなときにティアナと遭遇したのだろう。
ジェットへの憎悪、キャロへの悲しみを抱いたままの状態で、高遠はティアナの精神をケアするのではなく、さらに壊した。
その結果が、現在のティアナの状態……感情を失ったまま殺意を抱けるという、人間ではありえない人形の姿だ。
高遠は自分が犯罪者であると告白していたが、よくよく考えてみればおかしな話でもある。
刑事や探偵と面識を持ち、非常時だからと敵かもしれない他人を通じて休戦を申し込む。
そのうえ実際に刑事であったジェットに相対しても、あの冷静な態度。
ありえないのだ。高遠が本当に犯罪者だとするならば、異常すぎる。
いくら非常時とはいえ、天敵である法の番人に休戦を申し込んで受け入れられるなど、どこの犯罪者が思うだろうか。
たとえ休戦案を思いついたとしても、まず実行に移せはしない。しり込みし、もっと確実な方法があるのではないか、と考える。
天敵を前にしての立ち振る舞い、殺し合いという非常時に直面しての立ち振る舞い、現在の状況……
諸々を考慮して、ジェットは高遠遙一を多くの『罪の意識を持った犯罪者』ではないと踏んだ。
ならば高遠遙一はいったい何者なのか? と考えたところで、行き着く答えはやはり犯罪者だ。
ただし前述のとおり、高遠は世間一般の犯罪者の枠を外れた存在であると推測できる。
多くの犯罪者は自分の行いを罪と認識し、それが罰せられることに恐れを抱くが、高遠にはそれがない。
彼が犯罪者として掲げている看板は、おそらく背徳の意識ではなく情熱や野望といった種のものだろう。
つまり、怒りや憎しみといった感情から犯罪に及ぶのではなく、犯罪自体に意味を見い出そうとしている者。
刑事を天敵ではなく宿敵かなにかと認識し、このような非常時においても、敵として君臨する覚悟を決めた者。
犯罪者ではなく、犯罪中毒者、犯罪マニア、犯罪馬鹿などと呼んだほうがしっくり来るような人間に違いない。
そしてジェットは知っていた。そういう手合いは、感情で動く犯罪者よりもよっぽど厄介だと。
(なにせ、それだけ『やり手』ってことだ。それ相応の自信と自覚があるから、覚悟が決められる。
奴は追われるタイプじゃなく、立ち向かうタイプの犯罪者……ってことはだ)
今さらながらに再確認する。
俺たちはハメられた。高遠遙一の企てる崇高な犯罪計画によって。
(なんてこった……とんだキレ者だぜ、あのタレ目野郎。が、俺もこのまま哀れな被害者役に納まるつまりはない)
おそらく高遠が敵として見ているのは、本来彼と敵対するはずだった金田一一と明智健悟の二人だけだ。
現刑事である剣持、元刑事であるジェットは、敵ではなく獲物に分類されたのだろう。
だからこそ、高遠の共犯者であるらしいティアナは剣持を始末し、ジェットにも同じ末路を辿らせようとしている。
問題はそのティアナだった。
どんな精神誘導を仕掛けたのかは知らないが、現在彼女は人形として殺意を振るっている。
ティアナから感情を削いだ方法、それさえわかれば、共犯者たる彼女は致命的な落とし穴にすらなり得る。
(まさか魔法やポロロッカなんてものを使ったとは思いたくないが……催眠の類ならまだ看破する策はある)
忍び寄る魔の手は、もうすぐそこまで。
攻守の逆転を狙い、ジェットは一つの賭けに出た。
(俺もそろそろ腹を決めるか。と、その前に……望み薄だが、保険を仕掛けとくか)
その場にしゃがみこみ、ジェットは石を打ち鳴らした。
◇ ◇ ◇
私の望み。それは、他者には到底理解のしえぬものでしょう。
奇人変人と罵りください。私はその蔑称を受け入れます。
奇人たりえなければ、奇術師は務まらない。
変人たりえなければ、犯罪者は務まらない。
両立してこそ、地獄の傀儡師は務まるのです。
◇ ◇ ◇
「誰かが死ぬとしたら……今夜ほど、おあつらえ向きな夜は無い。そうは思いませんか? 」
ティアナがジェットの排除作業に徹しているであろう頃。
食堂室では、高遠遙一とミリア・ハーヴェントがこんな会話を繰り広げていた。
「おあつらえ向き? 誰かが死んじゃうのに向いてる夜って、どんな夜?」
「あなたが先ほど披露していたお話……金田一君が解決したという事件にも似た夜、とでも言いましょうか。
推理小説はお好きで? 1930年初頭のアメリカの名著といえば、なんでしたかね」
「ホゥムズならよ〜く知ってるよ! こういうのはアイザックのほうが詳しいんだけど」
「そうですか。なら、なにかピンとくるところはありませんか?
豪華客船……七人の乗客……消えた男性が一人……訪れる夜……どうです?」
「いかにも事件が起きそうな感じだね!」
「ええ、私もそう思います。そして、実際に剣持警部という人が消息を絶っている。
ひょっとしたら、事件は既に起こっているのかもしれません」
「ええええー!? それじゃあケンモチって人は……」
「……既に殺された可能性も」
全身で驚いた様子を示すミリアに、高遠はニィッと微笑んだ。
「と、この場にシャーロック・ホームズでもいれば、事件として成り立ちはするでしょうがね。
しかし悲しいことに、今回の一件は事件としては成り立たない」
「どうして? ホゥムズがいないから?」
「ホームズ役がいないからですよ。真相を暴く者が不在の場合、それは事件にはならない」
「でもでも、ケンモチが消えたのは立派なミステリーだよ? ミステリーなのに事件にならないの?」
首を傾げるミリアに、高遠は告げる。
「探偵不在の場に、推理の要素は混在しません。
ゆえに『事件』としては成り立たず、この一件は名を変え『惨劇』と呼ばれることになるでしょう。
……あなたの恋人であるアイザック・ディアン氏が姿を消した一件と、同じようにね」
高遠の含みある言葉を受け、メトロノームのように首を右往左往させるミリア。
「でも、アイザックはどこに消えたのかわかってるわけだから、同じじゃないんじゃないかなぁ?」
「おや、それはおかしな話ですね。ミリアさんは、アイザックさんがどこに消えたのかご存知で?」
「アイザックはお父さんのお城にいるんだよ! きっと暗〜い地下室に閉じ込められてるんだね!」
あっさり言うミリアに、高遠は思わず失笑した。
「いや、失礼。ミリアさん、あなたはなかなかにおもしろい女性だ。
ですが、アイザックさんが螺旋王の下にいるという証拠はあるのですか?」
「証拠……う〜ん証拠はないけど、チェスくんはお父さんがアイザックを連れ去ったって言ってたし、
閉じ込めておくんだったらやっぱり地下室の牢屋の中じゃないかなぁ? あ、塔のてっぺんっていうのもありかも」
「……あなたは本当に信じているのですか? チェス君の言葉が真実であると」
ミリアと会話をするには落としすぎのように思えるトーンで、高遠が発する。
「子供というのは、常に悪戯心を内包している生き物です。小悪魔と通称されるほどにね。
またときには、自らが犯してしまった過ちを誤魔化すために、嘘を取り繕ってこう訴えるでしょう。
悪いのは自分じゃない、悪いのはあいつだ、僕は悪くない、と」
「……チェスくんが、みんなに怒られたくなくて嘘をついてるってこと?」
高遠に釣られたのか、ミリアがいつもよりも随分と暗い声調で言う。
「ほう……想像よりも鋭い方だ。いえ失敬、一つの可能性ですよ。なにせ――」
「ならだいじょーぶだよー!」
かと思ったら、すぐに元気を取り戻して高遠の言葉を遮った。
「チェスくんはすっごくいい子なんだよ?
みんなに心配をかけまいとして、家族に会いに行くって嘘までついたんだから!
あの『線路の道をなぞる者(レイルトレーサー)』が吐き出しちゃうくらいのいい子だしね!」
立ち上がり、ミリアは再び語りに入ろうした。
言葉の中にあった『レイルトレーサー』というのがなんなのかは気になるところだったが、予期していなかった反応に高遠はまず、
「落ち着いてくださいミリアさん。あなたが心優しい女性であることは承知していますが――」
「それにね、これはとーっても不思議なことなんだけど」
声による制止をかけようとするが、しかしミリアは止まらない。
胸元に両手を当て、恋情を募らせるかのような仕草で穏やかに語る。
「チェスくんと話してるとね、なんだかすぐ側にアイザックがいるように思えるの。
アイザックとチェスくんが重なって見えるっていうか……あれ、これってもしかしてミステリーかな!?
でもひょっとしたら……ああ〜! どどどどどどうしよう〜!?」
「……? いったいどうしたというのですか、ミリアさん?」
穏やかになったと思えば、今度は急に慌てふためき出す。
ころころ変わるミリアの百面相に、高遠はある予感を覚えつつあった。
「もしかしてもしかしたら、アイザックは地下室に閉じ込められてるんじゃなくて!」
「地下室に閉じ込められているのではなく……?」
「透明人間になって、チェスくんたちを側で見守っているのかもー!」
ずこっ、
予想だにしていなかった発言が飛び出し、高遠は思わず肩を落とす。
「な、なぜそのような考えに……?」
「だって、本当にチェスくんとアイザックが重なって見えるんだもん。
雰囲気が似てるっていうか、前のチェスくんとはちょっと違うっていうか」
「背後霊、というやつかもしれませんよ?」
「やだなぁ、それじゃあアイザックが死んじゃったみたいじゃない」
笑い飛ばすミリアに、高遠は調子を崩さず、攻め時だと信じ踏み込んだ。
「ええ、問題はそこです。前回の放送……アイザック・ディアン氏の名は、確かに死者として呼ばれている。
あなたはチェス君の証言でそれが嘘だと知っているわけですが、事情を知らない者からしてみれば、
疑うことなくアイザック・ディアンという人は死んだのだと、そう思うでしょうね。
そしてこの事実の厄介なところは、アイザック氏の命運が全てチェス君の証言に委ねられているというところです。
仮にチェス君が真相を話さなかったとしたら、あなたはアイザック氏が死んだと思い込んでいたのではないですか?」
「それは……」
「いえ、言わずともわかります。チェス君の言がなかったら、アイザック氏の死亡は否定できなかった。
そして仮にチェス君の証言が嘘だとしたら……同じくアイザック氏の死亡を否定できる材料はなくなってしまう。
ミリアさん。あなたは恐れているのではありませんか? アイザック氏生存の可能性が否定されることを。
だからこそチェス君の証言を、本心では嘘だと気づきつつも、信じなくてはならない……違いますか?」
笑みを押さえ込んだ真剣な表情で、高遠がミリアに問う。一秒待って、
「残念賞だね!」
答えは、思わぬ即答で返ってきた。
「残念賞……とは?」
「チェスくんは嘘なんてついてないし、私もチェスくんのこと信じてるもん。だからヨーイチの推理ははずれ。残念賞」
「チェス君が嘘をついていないという根拠は? チェス君がいい子だから、という解答以外でお願いします」
「チェスくんがすごく強くていい子だから、だよ!」
破顔一笑、ミリアは断言した。
「それは答えになっていないのでは?」
「ううん。なってるよ。だってチェスくんが嘘をついてたら、チェスくんがいい子じゃなくて悪い子になっちゃうもん。
チェスくんはみんなを心配させないためのいい嘘はつくけど、
もし本当にアイザックが死んじゃったのを隠してるんだったら、それは悪い嘘になっちゃうから」
「みんなを心配させないためにアイザック氏死亡の真相を隠している、とも考えられませんか?」
「それでもみんなにとっては悪い嘘になっちゃうし、チェスくんもそのことはわかるはずだよ。それにね」
屈託のない表情はそのまま、まどろむような声でまたミリアが言う。
「アイザックは私を置いて死んじゃったりしないよ。絶対。どんなピンチになっても、百丁拳銃でのりきっちゃうんだから!」
この瞬間、高遠は次なるフェイズへ進むための決断を下した。
◇ ◇ ◇
喰らいついたら離さない――なんてのは、どこの誰が言ったんだったかな。
そういや知ってるか? 地球のアジア大陸には、犬を食用にしている国があるらしい。
エドとアインに聞かせてやるか。いや、すまん、冗談だ、許してくれ、ってか腹減ったな。
……ブラック・ドッグは食用じゃない。一応、言っておくぞ? 一応な。包丁探すな馬鹿野郎。
◇ ◇ ◇
(彼はかわいそうな人だ。彼は苦しんでいる。そして悩んでいる。けど違った。彼は思いつめたフリをしていたのだ。
そして私や高遠さんを騙した。なんて卑劣な人。楽にしてあげるなんて言わない。優しく、凄烈に、殺してあげる。
でもまぁ、人なんだから死ぬのが怖いのは当たり前よね。本当は許されたいけど、でも死ぬのは怖いってことなのかしら。
……おじさんの思考ってのはイマイチよくわからない。でもまぁ、いっか。殺してあげるのが一番だ。
死ねば救われるんだから。キャロに謝れるんだから。ね? だから、クロスファイアシュート)
甲板上、ブルーシートに隠されていたテーブルで築かれた山めがけ、ティアナが破壊の魔力スフィアを三発、叩き込む。
本来は牽制や敵射撃魔法の迎撃に使用するクロスファイアを、明確な破壊のために行使するというのも初めてかもしれない。
それでも魔法を知らぬ一般人相手なら十分だ。元よりデバイスなしの制限下では、これが精一杯である。
「――ちぃっ! おい、ちょっと弾幕止めろ! 俺の話を聞け! 少しくらいいいだろうが!?」
「年頃の女の子とお喋りがしたいの? 残念だけど、私そういう趣味ないですから」
「違う! ええい、応じないってんなら勝手に喋るぞ!?」
吹けば弾ける粗末なバリケード、その先に潜むジェット・ブラックは、なにか申し開きをするつもりらしい。
やはり、許されはしたいが死ぬのは怖いということだろうか。それでも関係ない。
「話ってのは、キャロって子のことだ! おまえさんが朝方叫んでた名前!」
(! キャ、ロ……)
次弾を放つべく魔力を集中――しようとしたところで、思わず意識は耳に傾いた。
意識せず、右手でエプロンドレスの裾を握り締める。
「覚えてるだろう!? おまえはあそこで俺に言った、あんたがキャロを殺したってな!
今でもそう思ってるのか!? だから仇を討とうとして、俺を殺そうってのか!?」
パッ、と右の掌が開く。
ジェットの馬鹿げた問いかけに、ティアナは上品な微笑みで返した。
「なんだ、なにを言い出すかと思えば……あのときはごめんなさい。あれ、私の勘違いだったわ。
キャロを撃ったのは、紛れもなく私。私はもう、自分の罪を受け入れた。ひょっとして、ずっと気にしてたの?
だったらやっぱりごめんなさい。でもその負い目も含めて、今ここで清算してあげるから」
なんだ、この人はやっぱり後悔していたんだ、そして許されたいと思っていたんだ、そうティアナは確信した。
同時に、だったらなおさら楽にしてあげないと、とも思う。
再度魔力の構築作業に入る、その過程で、
「ああなんだ、やっと誤解が解けたわけか! そうだよなぁ、キャロを撃ったのは俺じゃない!
俺はキャロの死に顔を眺めながら、あいつの体をいろいろ弄くり回して、それから分解してやっただけだしな!」
その、過程、で、
「…………え?」
思考が、停止、する、
「殺人犯だなんて思われちゃたまらん! 俺はただ、『幼女の死体で遊んでただけ』だってのによぉ!」
死姦、というワードが、過ぎる、
「いやしかし、ありゃ今思い出しても最高だったな! 生前の姿も拝んでおきたかったところだ!」
「ちょっと、待って。あなた、なにを、言ってるの? いったい、なに、を」
瞳がぶれる。
焦点が定まらない視線。
脳すらぶれる。
頭が真っ白に飛ぶ。
「ああ!? だから、俺は殺人犯じゃないって言ってるだろうが! 俺が興味あるのは死体の女だけだ!
殺し合いなんて最初は馬鹿げてるとも思ったがな、ああいうカワイコちゃんの死体にありつけるならそう悪くもない!」
なにかが。
得体の知れぬなにかが込み上げてくる。
胸を蹂躙するような熱い痛み。
熱を帯びた衝動が脳髄を掻き毟る。
体温は上昇し呼気は荒々しい。
――ナンダコレハ?
「なぁ、キャロってのはどんな声で鳴くんだ!? どんな性格だったんだ!? 趣味も聞いときたいところだな!
生前の元気な姿がイメージできないと、いまひとつ『ノ』らないんだ!」
キャロは、優しい子だった。
若輩ながらも厳しい訓練に耐え、泣き言の一つも言わない、良き同僚であり友達だった。
決して、決して、こんなおっさんの慰み者になるために生まれてきたわけじゃない。
わかっているのに、否定の声が出せないでいる。
「ああクソ、おまえさんがキャロの知り合いだと早くに気づいてれば、それもイメージできてもっと楽しめただろうになぁ!
こんなことなら、『最後のお楽しみ』はもっと後に取っておくべきだった! ちくしょう、後悔だぜ――」
――コウ、カイ?
――エ? アナタノコウカイッテ、ソレ、ナノ?
ティアナの心音が、激しさを増す。
込み上げてくるモノの正体は、感情。
種別は、怒りと憎しみ。
憤怒と憎悪として、喉の奥に充填される。
痰を発し、声に出す。
「っ、ふざけないで! 女の子の体にいたずらして、あげくの果てにはバラバラにして楽しむなんて変態じゃない! そんなの――」
「――殺すより酷い、か? キャロを殺した本人がよく言うぜ」
突き刺さる。
認めたはずの罪、されど封印したはずの罪悪感を、荒々しいノックでこじ開けられる。
――アレ? オカシイ。
――ワルイノハ、ヒドイノハ、アレ?
「言っておくが、おまえにゃ感謝してるんだぜ!? あんな上等な死体を拵えてくれたんだからなぁ!
俺は死体好きだが、元刑事である以上、法は無視できん! だから自分で作るってことはまずしないんだ!」
――ワカッタ。モウイイ。ダマレ。
「ま、この非常時に法律や道徳がどうのこうの言うつもりもないがな!
そういやおまえさん、あのときこう叫んでたよな!? キャロの体をこんなにして――って!?
――ソウイウコト、ダッタンダ。
「ありゃひょっとして、怒ってたのか!?
大切な仲間をバラバラにされて――その楽しみを、赤の他人である俺なんかに奪われたことが!」
「――っ、っ、だま」
満たされる。
占領される。
体の中が熱。
頭の中も熱。
熱っぽい体。
怒怒怒怒怒。
「黙れええええええええええええええええ!!」
――その瞬間、ティアナの体内に仕掛けられていた、ある種の箍が外れた。
同時に、自分がずっと勘違いをしていたのだと気づく。
ジェットは許されたいだなんて思っていなかった。
彼が背負っていた後悔の正体は、絶好の機会に自身の欲求を満たしきれなかったやりきれなさ。
高遠に見せていた上辺の申し訳なさなど、世間体を気にしていただけ。
「クズ! 下衆! 変態! 死ねッ! 死なすッ! あんたは死なすッ! 今ここで死なすゥ!!」
「ハッ! 人殺しとちょっと趣味の特殊な奴、どっちが下劣かなんて頭じゃわかりきってるだろうが!」
「うっさい! うっさいうっさいうっさい! クロスファイアアアアアアアアア!!」
ああもう、細かいことはどうでもいい。
このまま、押し寄せてくる欲に身を委ねたい。
感情の全てをぶつけたい。
取り繕わない。
キャロの無念を晴らしたい。
そうして自分を納得させたい。
満足したい。
安心感を得たい。
変態オヤジをぶっ殺したい。
「シュートオオオオオオオオオオ!!」
――激昂した状態で魔力構築が成せるはずもなく、しかしそれでも強引に、ティアナは魔力スフィアを作り出す。
球体とは呼べない歪な形態を取りながら、スピードだけは先程よりも加速して、ジェットに放たれる。
ジェットは、したり顔でそれを受けた。
「グッ!?」
嗚咽は一瞬。微動もせずに一発目を受けたジェットは、衝撃で後ろに弾かれる。
地から足が離れた刹那。追撃の第二射が、ジェットの身をさらに焼く。
宙を舞う体がツイスト。三射目の命中による三連撃を受け、ジェットは艦橋の壁に衝突した。
「ガッ……」
拉げる壁。直下に蹲るジェットの身。焼け焦げた臭いが鼻を突く。
しかしこれではまだまだだ。ジェットはまだ死んでいない。死んでいるはずがない。
なぜなら、ティアナはまだなにも得ていないのだから、死んでいるはずがないのだ。
「死んだ? いいえ死んでない! 死なす! むしろ死ね! 死死死死死死シシシシ――」
醜悪な形相を気にもせず、ティアナはジェットのほうへ駆け出す。
求めたのは感触だった。射撃による結果ではなく、物理的手段を持ってしての確かな死の感触。
阿修羅と成り果てた総身が、復讐を成就せんと走る。
「――おぬし、いったいなにをしておるのだ!?」
道を遮ったのは、二つの小さな人影だった。
◇ ◇ ◇
――パーティー楽しみだね、アイザック!
◇ ◇ ◇
「ねぇヨーイチ、みんなが戻ってきてないのに、勝手に部屋を離れちゃっていいの?」
「大丈夫です。それよりも、もっと大事がなことがありますしね」
食堂室からは少し離れた、船内廊下。
高遠遙一はミリア・ハーヴェントを引きつれ、ある一室へと向かっていた。
「大事なこと、って?」
「到着してからお話しましょう」
不思議そうな顔で首を傾げるミリアに、事態の説明は果たしていない。
ただ重要な用件があるとだけ告げ、荷物ごとミリアを引っ張り出した。
向かう先は、客室の奥の奥……訪れる者も少なかろう、薄暗い一室である。
「ここって……倉庫?」
「ええ。客室用ではなく、主に船員が利用する倉庫です」
扉を開けると、中は暗かった。
篝火も灯らぬ部屋で蛍光灯のスイッチを探してみるが、見当たらない。
見つかっていたとしても、高遠はそれを押しはしなかっただろうが。
「ここなら邪魔も入らないでしょう。ミリアさん、扉を閉めてください」
「扉を閉めたら真っ暗になっちゃうよ?」
「他の誰にも聞かれてはならない話です。暗闇結構ではありませんか」
ミリアはもったいぶる高遠に憮然な表情を向けるが、過度に怪しんでいるわけでもない。
それがミリア・ハーヴェントという女性の人柄であり、性格なのは既に理解している。
だからこそ、高遠はこの部屋を選んだ。
バタン、と鉄扉が閉まり、二人は闇に溶け込む。
隙間から漏れる光で辛うじてお互いの姿は認識できたが、それでも闇には違いない。
頼りのない足取りで、ミリアはつい転びそうになってしまう。
「きゃっ」
「おっと」
よろめいたミリアの体を、高遠が抱きかかえるような形で支える。
いや、その姿はほぼ抱きしめていると言っても過言ではないほどの力強さが感じられた。
「よ、ヨーイチ?」
「ミリアさん……驚かずに聞いてください。実は、私は」
ミリアの腰に両腕を回し、高遠はさらに強く抱擁する。
戸惑うミリアをうっとりとした声で制し、事の本題を告げた。
「螺旋王、いえポロロッカ王に命じられ派遣された、諜報員なのです」
「え……えええぇぇ!?」
ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |!
cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・
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動揺から驚嘆に素振りを移行し、ミリアは高遠の顔をまじまじと眺める。
それを、しっ、と立てた人差し指で押さえつけ、『聞かれてはならない話』の真意を連想させる。
「ポロロッカ星諜報員としての私の今回の役目……それはミリアさん、アイザック王子の婚約者たるあなたの監視です」
即興のデマカセ、ミリアにとっては衝撃足りえる事実を、真面目な様相で語っていく。
「地球人であるあなたと王子の婚姻を、王が快く思っていないのは既にご存知ですね?
しかしその体面とは裏腹に、王は父としての切実な感情も抱いておられるのです。
地球人とはいえ、息子が選んだ女性だ。見極めたい――とね。
だからあなたは、82人中の一人として、入国審査に参加させられている。
そして私は、実際にあなたが王子の妃となるに相応しいかどうかの判定を下す、面接官といったところでしょうか」
「じゃあじゃあ、ヨーイチは実はアイザックと同じポロロッカ星人なの!?」
「そうです。ああちなみに王子は現在、あなたの予想通り城の地下に幽閉されています。
私どもとしましても、早々に記憶が戻ったうえに、二人が早期再会を果たすとは思ってもみませんでしたから。
仕方がない処置とは言えます。ええですが安心してください。間違いなく、あなたの恋人は無事です」
ミリアにとっては極上の甘言。
喜色に緩む彼女の表情が、高遠の童心をくすぐった。
もっとだ。もっと囁きを与えたい。そして操りたい。
かつて奇術の成功に向けていた喜び。それとはベクトルの違う愉悦。
犯罪者『地獄の傀儡師』としての、当然の感情が込み上げてくる。
「でもヨーイチは、どうして私にそのことを教えてくれるの?
謎の正体を明かしちゃったら、アイザックのお父さんが怒っちゃうんじゃない?」
「それは確かに。ですがもういいのです。私の役目……すなわちミリアさんが王子の妃に相応しいかどうかの判断は、もうつきましたから」
ポロロッカ星王子のアイザックと、地球人のミリアが婚姻を結ぶ。
ミリアが身分の壁を蹴破るほどの器量を持っているか否かの判定を、高遠が下す。
そしてその審査は、既に終了したという。
生唾を飲み込んで待つミリアに、高遠はそっと囁きを。
「結果を述べますと……ミリアさんとアイザック王子の結婚は認めるわけにはいかない、という結論に至りました」
声が途絶えた瞬間に、ミリアの顔が失望色に染まる。
伏し目がちになる目。俯く顔。元気が取り得のミリアが、精神的に弱まった瞬間。
高遠はその隙を見逃さず――さらに激しく、ミリアの全身を包み込んだ。
「よ、よよよヨーイチ!?」
「ああ……そうガッカリした顔をしないでくださいミリアさん。私まで悲しくなってしまう。
あなたにはそう、向日葵のような微笑みをしていて欲しい。そして私に、その笑顔を振りまいて欲しい」
なにがなんだかわからない、という風なミリアの顔色は、まだ白い。
高遠はそれに褐色を点す、魔法の言葉を投げかけた。
「ミリアさん。愛している。アイザック王子ではなく、この高遠遙一と結婚して欲しい!」
「……………………へ、ええええええええええええええー!?」
ぼっ、と火がついたような音。途端にミリアの顔が赤面に染まる。
高遠の抱擁はなおも力強く、口から飛び出す告白は情熱的で大胆。しかも甘い。
その恋情がまるで本物と思えるほどに、奇術師の演技は迫真だった。
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「え、で、でもでもでもでもでもでも! 私にはアイザックがががががががが!」
「忘れさせてあげます……! この私がすべて、あなたの記憶の中のアイザック王子を、消してさしあげましょう」
そんなことができるはずなどない。ミリアもそう思っているのだろうが、衝撃が先行して否定や拒否の言葉がでない。
高遠の攻め手がまだ有効である証拠だった。畳み掛ける。
「どうしていきなりそんなことを言うの? 私、そんな、えと」
アイザック以外の男性に愛を語られた経験などなかったのだろう。ミリアの動揺ぶりは尋常でない。
好都合。
「ああ、笑顔も素敵ですが、困った顔も一段と魅力的だ。そう、本当に魅力的……」
「…………え?」
ぶっ、と。
裂ける音が鳴った。
じわっ、と。
滲む音も鳴った。
ぽたっ、と。
滴る音が続き。
ぽたっぽたっぽたっ、と。
連続して響き渡る、ミリアの背中。
「ヨー、イチ?」
「あなたは、本当に魅力的だ。
その何事にも動じない楽観的思考、周囲に希望を振りまく愛嬌、希望を実現化しえない人間性……
あなたのような女性には出会ったことがない。あなたほど、『惨劇の被害者』として魅力的な人材はいないでしょう」
「ヨーイチ、背中が、熱い、よ?」
途切れる言葉。解かれる抱擁。崩れる足。そして体。
床に倒れたミリアの視線は、闇に溶け込む高遠の表情など捉えはできないだろう。
無論、高遠の手にミリア殺傷の凶器たるスペツナズナイフが握れられている事実も。
「アイザック・ディアン消失の真相はいまだ掴めていませんが」
崩れ落ちたミリアの体を睥睨し、しかしすぐ視線を逸らし、高遠は退室する。
「あなたがあちらで恋人に再会できることを祈っていますよ。……Good Luck、ミリア・ハーヴェント」
第三回目となる放送が始まったのは、その直後のことだった。
◇ ◇ ◇
支援数多いな。支援
わからぬ。私にはまったくわからぬ。
なぜ、あの者は王にしてこのような悪態を働くのだ?
あの者はいったいどんな王なのだ。国の者は、あの者をどう思っているのだ。
わからぬ。私一人の頭ではまったくわからぬ。
誰か教えて欲しい……いや、やはり不要だ。
こればかりは、私自身の力で考えねばならぬ。
◇ ◇ ◇
意識が朦朧とする。
出血箇所は……腕、肩、そして厄介にも頭部。
三点を軸として駆け巡る、体中の痛み。
響いてくる声すら鬱陶しく思えるほど、ジェットのダメージは深刻だった。
が、耳に届いた声を無視はできず、むしろチャンスと受け取って、奮い立つ。
「おぬし、いったいなにをしておるのだ!?」
前方、ティアナとの間を遮るように、二人の小さな男児の姿がある。
チェスワフ・メイエルとガッシュ・ベルだ――『保険』が効いた、とジェットは神に感謝した。
「あなたたち……どうしてここへ?」
「甲板で剣持さんを探してたら、なんだかすごい音が聞こえてきたから……」
「それだけではない。あの『火』はなんだ!? ジェットのことも含め、おぬしがやったのか!?」
ガッシュの詰問と指摘に、ティアナは一時的に怒りを治めた様子だった。
それほど、ガッシュの指し示した方角にあるそれが、今さらながらも衝撃的だったのだろう。
「なに……なによあれ……いったいいつの間に?」
いつ、誰が、どうやってあんな風にしたのか、ティアナは本気でわかっていないように見える。
つまり、ジェットが万が一のための保険として仕掛けた細工は、見事に功を成したと言える。
それだけではなく、この場にチェスとガッシュという第三者の介入を鑑みて、確信する。
攻守逆転だ、と。
「……気づいてなかったのか? ま、そうだろうな。あれが煙をあげる頃、おまえさんは怒りで俺しか見えてなかったはずだ」
頭と肩から血を流した状態で立ち上がり、ジェットはチェスとガッシュの側に並び立つ。
「ジェットおじさん! いったいなにがあったの!? ティアナお姉ちゃんは――」
「喚かんでくれ。今から、順を追って説明する」
「その前に答えなさいよ! あれは……あの『火』はなんなのよ!?」
半狂乱の状態はそのまま、ティアナが怒声でジェットに説明を求める。
ジェットはやれやれとぼやき、ズボンのポケットからあるもの手にとって見せた。
「ガッシュ、おまえさんならこれに見覚えがあるんじゃないか?」
「なっ……それは、剣持が使っていたライターなのだ!」
ジェットが握るZippoライター。
それは煙草を支給された、また本人自身喫煙者であったがゆえに、没収されないでいた剣持の所持品。
この物品の所在に、納得がいかない声を漏らしたのがティアナである。
「どうしてあんたがそんなものを……だってそれは」
「死体と一緒に確かに海に捨てたはず、か?」
「っ! なんで……なんでなのよ!?」
「船という地の利を考えれば、遺体の処理場ときて思い浮かぶのはまずそこだ。
わざわざ俺を甲板に誘き出してから襲ったのも、後始末が楽だからだろう?
大方、おまえさんと揉み合った際に零れたのか……魔法なんてので吹っ飛ばされりゃ、その可能性もデカイわな」
ジェットの言葉はつまり、剣持の失踪が実は殺人であり、またその加害者がティアナであること示していた。
甲板に残されていたライターは、言わば証拠品。
ティアナと戦闘を繰り広げる中で、ジェットが偶然発見した剣持最後の遺失物である。
そしてガッシュやティアナが言うところの『火』……甲板の端のほうで燃えているブルーシートは、このライターによって齎された『狼煙』。
同じく剣持の捜索に出ているであろうガッシュに、異常事態を知らせるための策として着火した。
とはいえ、誰かが甲板に出ていなければ発見もされないであろう貧弱な策。
期待度からしても本当に保険程度のものだったが、どうやらこれが見事に功を成したらしい。
最悪ジェットがここで倒れた場合、なおこの船を舞台にして惨劇が起こらないように、という二重の意味での保険でもあるが。
「だが、それだけではティアナが剣持を殺した証拠にはならんぞ!?」
「ああ、これだけじゃ証拠不十分で釈放だろうな。『法律のある世界』だったら。
が、今は殺し合いの真っ最中で、ここに法なんてものは存在しない。
殺人鬼を裁くのは法でも刑事でもなく、俺たち自身だ。じゃなくちゃ、こっちが殺されちまうからな。
ガッシュ、証拠なんてものはいらないんだよ。俺たちは裁判じゃなく、サバイバルをやってるんだからな。
ここに剣持消失の確かな痕跡があり、そしてこの女は俺たちの中で一番怪しい。疑ってかかるにゃ、それだけで十分だ」
法の定められた世界、道徳というルールに準じるならば、ジェットの物言いは言いがかりもいいところだ。
連行するには強引、有罪を主張するには馬鹿げた、証拠不十分の訴訟。だが、論点はそこではない。
生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、殺し合いにおいて重要なのはそこだ。
「ジェットおじさん、ティアナお姉ちゃんは……」
「あいつは俺を殺そうとした。この怪我はそれだ」
ましてや、ティアナは事実としてジェットの殺害を試みている。
「そんな……だって、朝の出来事は勘違いだったんでしょう!? それに、ティアナお姉ちゃんは記憶を失ってたんじゃ」
「そいつも嘘だ。こいつはキャロのことをしっかり覚えてやがった。無論、俺たちのこともな。
ついでに言えば、こいつが犯行に及んだのは誤解から生じる恨みでもない」
そしてその殺害の動機は、ジェット個人に限定されたものではない。
「唆されたんだろうよ。あの高遠って男にな」
――それが、ジェットの立てた推論の終着点。
精神的に疲弊していたはずのティアナから感情を削ぎ、記憶喪失だと嘘の情報を与えた男。
犯罪者らしからぬ堂々とした素振りで、観衆や天敵の注目を浴びようとするおかしな姿勢。
事件の裏に潜む、黒幕の存在。
「高遠が!? だ、だが、高遠自身も騙されていた可能性だってあるのではないか!?」
「それも考えた。が、それでもやっぱりおかしいんだよ。
大切な友人をバラバラにされたと思い込んでいたはずの女が、どうして当人に対面して激情を殺せる。
辛いことや悲しいこと、許せないことや腹立たしいことを、全部胸に締まって復讐に没頭するなんざ……できるはずがないんだ。
そんな悟りを開いた賢者みたいな真似、十代の女にできるもんじゃない」
ティアナが復讐目的でジェットに襲い掛かったのだとするならば、そこには絶対に憎しみや怒りが混入する。
だがティアナはマーダーマシンとして、感情を殺したまま復讐とは別の目的を持った様子で殺人に臨んでいた。
自分自身の覚悟だけでそんな風にできるのなら大した役者だが、友達の死に涙を流せる少女が、という前提を考えればまずありえない。
だとしたら、彼女が感情を殺せたのは、他者がそうなるよう手助けをした……と考えるのが自然だった。
そして浮上したのが、犯罪者らしからぬ毅然とした犯罪者、高遠遙一の存在である。
「違う……高遠さんは、私を導いてくれただけ……そんな、そんな風に悪く言わないで……」
ジェットの指摘が正鵠を射ているという証拠だろう。ティアナの狂気は薄れ、脚は僅かに震えている。
そして弁護しているのは、他ならぬ高遠遙一の名だ。ここまでくればもはや決定的である。
「ああ、やっぱりな。おまえさんを裏で操ってたのは高遠で決まりだな。いたいけな少女を利用するとは、あの男も相当な――」
「っ、高遠さんを侮辱するのはやめて!」
「……庇うんだな、やっぱり。おまえさんは、そこまで奴に心酔してるってわけだ。
だがそれは主従関係じゃない。おまえさんは奴の存在を支えにしているだけ……逆に言えば、奴もそれが狙いか。
先導者みたいな立ち位置に納まればこそ、自身は責任を問われず、信奉者は自由に操れる。
まったく、田舎でエセ宗教でも開きゃ、大層立派な教主様になれるだろうぜ」
「それ以上、それ以上あの人のことをぉぉ!」
涙すら流したティアナは、怒りとも憎しみとも違う別の感情に駆られるがまま、再び魔法を行使する。
一発限りのクロスファイア。目掛けるはジェットの口元。胸をざわつかせる騒音を絶つため。
「クロスファイアァァァ、シュートォ!」
目茶目茶な魔力構築を終えての、先程よりも歪な形の魔力スフィアが、飛ぶ。
「ウヌ!?」
「攻撃!?」
刹那、自らが人間よりも丈夫な種であると自覚しているガッシュが、
いつのときか身を盾にしてでもミリアやジェットを守ると言ったチェスが、
両者ほぼ同時にジェットを庇おうとするが、
「動くなおまえらッ!」
「!?」
ジェットの怒鳴り声に束縛され、動作が一瞬遅れた。
その間、魔力スフィアはジェットの胸元に直撃し、巨体を押し倒す。
ジェットは、ティアナの怒りの矛を甘んじて受けたのだ。
「ぐっ……がはっ」
「ジェットおじさん!」
「ジェット! なぜだ!?」
勢いよく吐血するジェット。元々の傷も相まって、声をかけるのが躊躇われるほどの重傷患者と成り果てた。
回避も防御も取らず、自らを的にしたジェットの真意が、チェスとガッシュにはわからないようだった。
そしてそれは、ティアナも同様。衝動的に放った魔法の一撃が、まさか今まで一番の有効打になるとは思っていなかったのだろう。
その場にいる誰もが困惑する中、ジェットが呟く。
「人間ってのは、弱い生き物だ」
ゆっくりと、立ち上がる。
「嫌なことがありゃ、忘れたくなるのは当然。誰かに怒りをぶつけたくなるのも、当然。普通なんだよ」
血塗れの視線は、ティアナのほうを向いている。
「あー……さっき言ってたキャロの死体にいたずらしたって話な。ありゃ嘘だ。すまん」
くしゃくしゃになったティアナの顔を、凝視する。
「信じてくれとは言わないが、ありゃ不器用な俺なりの、荒療治だったんだよ。
おまえさん、あのとき俺を憎い、殺してやりたい、って心の底から思っただろう?
それでいい。それが普通なんだ。俺はおまえさんに、普通を取り戻して欲しかった。
誰かに恨み持つことは愚かかもしれんが、感情殺した人形でいるよりは、よっぽどマシだ。
だからだな、だから…………ああ〜…………いかん、駄目かもしれん」
え、と他三名がリアクションを取る最中、ジェットの体が急激に揺れる。
肌から見る見るうちに血色が失われ、出血の規模は端から見ても怖気が走るほど。
「ジェ、ジェット! 気をしっかり持つのだ!?」
ぐらんぐらん揺れるジェットの体を、ガッシュが懸命に支えようとする。
その隣、同じく事態を重く見ていたであろうチェスは、ガッシュとは違う種の深刻な表情を見せ、考え込む。
「……ごめんガッシュ。ジェットおじさんのことお願い」
かと思ったら、脱兎の勢いで船内に走り去っていってしまった。
後に残されたガッシュはウヌウ、と一言漏らし、ティアナのほうを窺う。
ジェットも朦朧とする意識を奮い立たせ、『ティアナの説得』を続行する。
「俺にはおまえさんがどうして殺人に及ぶのか、どうして高遠の命令を聞くのか、
もしくは高遠の言葉が正しいと思えるのか、そこまではわからん。
だがおまえさんの本能は、人を傷つけることに対して拒否反応を起こしているはずだ。
俺の姿を見てどう思う? これを自分がやったと自覚して、それでもまだおまえは」
「私は、私は……」
「どうなんだ、ティアナ・ランスター!?」
ずい、と。ジェットは致命傷の身を前に押し出す。
涙目のティアナは、反射的に一歩後ずさった。
怯えている。この姿こそが、ジェットの求めたものだった。
キャロの遺体にいろいろ酷いことをしたなどという虚言を吐いたのも。
高遠のことを大袈裟に悪く言ってみせたのも。
すべて、ティアナに感情と自我を取り戻させるための処置である。
彼女の精神は、冷静に考えて行動する分には、正常に機能していた。
つまり、精神は壊れていない。封を施しただけの状態だ。
ならばその封をこじ開けてしまえばいい。
ティアナは元々、友人の死に悲しみ、落ち込み、怒れるほどには心の優しい少女である。
彼女の性格や素性を知らないジェットでも、あの映画館近隣での出来事を思えば、それくらいは理解できた。
なら封をこじ開ける方法は簡単だ。ティアナの感情を、さらに強く引き立ててやればいい。
そして選んだのが、『憎しみ』と『怒り』。
ジェットはティアナがかつて自分に向けていた感情を、さらにエスカレートさせるという荒っぽいやり方で、彼女を人形から人間に戻した。
とはいえ、これは本人自身が荒療治と自覚している、一種の賭けのようなものだった。
あそこでチェスたちが介入しなければ、ジェットはティアナの猛攻を受け殺されていただろう。
そうなってもおかしくないほどに、彼女は激昂していた。
逆に言えば、それほどの感情を引き出せなければ、ティアナを人間に戻すことはできなかった。
仮にジェットが殺さたとしても、感情を取り戻したティアナは、少なからず罪の意識を覚える。
そうなれば、後の行動には必ず支障が出る。高遠好みの人形ではなくなるのだ。
それから先、高遠に改めて狂わされるか、もしくは処分されるか、はたまたティアナ自身が立ち直れるかまでは、深く考えていなかった。
その点を含めての博打。自分の失態で一度は野放しにしてしまった少女に対する、ジェットの意地とも言えた。
が、結果的にはその博打も大当たりだ。
ティアナは怒りや憎しみといった感情を取り戻し、ジェットの傷ついた姿を見て、怯えている。
自らが傷つけてしまった、殺人の一歩手前まで踏み込んでしまったという、罪悪感を覚えているのだ。
その罪悪感が、犯罪を踏みとどまらせる。この時点で、ティアナは人形を脱した。
地獄の傀儡師の計画は、ジェットの命懸けの博打により、頓挫したのである。
「わたしはぁぁ――」
ティアナの慟哭が空気を裂いた直後、第三回放送は始まった。
◇ ◇ ◇
馬鹿! どうしてもっと早く動けなかった!?
誓ったんだろう!? 悲しませないって、後悔しないようにって!
なのになんだこれは! 辿り着いた先には、後悔が待っているかもしれないぞ!?
ああもう、どうしてこんな……ちっ、愚痴を言っている暇もないじゃないか!
怪しむには十分だった。なのに迂闊にも、一番怪しい奴の側に彼女を置いてきてしまった。
させない――それだけは絶対に!
◇ ◇ ◇
第三回放送で告げられた死者の数は17名。
その中に剣持勇の名があったのはもちろんとして、もう一人、この時点で呼ばれるはずのない名が混じっていた。
金田一一。
名探偵金田一耕介の孫にして、『地獄の傀儡師』の犯罪を見抜いた唯一の知恵者にして宿敵が、死んだ。
名を耳にした瞬間、高遠遥一を揺るがした感情は、落胆である。
自らが企画する、殺し合いを舞台にした芸術的犯罪。そのメインたる役者が、舞台に上る前に退場してしまった。
この緊急事態に、脚本家にして監督たる男はなにを思うか。当然のごとく落胆だ。それしかない。
(金田一君、そしてキール……おそらくは、アレンビー・ビアズリーが彼を迎えに行った際に、既に事は起きていたのでしょう。
キールはそれに巻き込まれ、アレンビーはどうにか逃げ果せた、というところでしょうか。
論理を武器として修羅場を潜ってきた少年探偵も、暴力の世界では形無しというわけですか……フッ)
ミリア殺害後、高遠は放送の内容を反芻しながら船内を渡り歩いていた。
金田一一……地獄の傀儡師としての初犯、魔術列車殺人事件を見事に看破して見せた少年探偵。
幻想魔術団に対する復讐のつもりで起こした犯罪は、金田一という存在の出現で、高遠に新たな情熱を齎した。
それこそが、芸術的犯罪の追及。金田一にも暴けないような完全犯罪を成し遂げるという、崇高な目的を持つようになった。
だが、当の宿敵が先に死亡してしまっては……すべて台無しではないか。
ミリアの殺害も、豪華客船の出航計画も、高遠の現在の役割も、なにもかも無為に消えてしまう。
――仕切りなおすべきか。
高遠は歩きながらに思案する。やりがいをなくした背中で、トボトボと。
そもそも、なにを成して芸術的犯罪は完成されるというのか。
全標的の殺害ではない。事件自体の迷宮入りでもない。探偵の完全敗北である。
真相を知る者は己のみ。他者に与えるのは永遠の謎。全てが己の術中。コンプリートしての芸術。
なのに。大根役者しかいない舞台上で、一人際立ってどうするというのか。どうもしない、虚無感が漂うのみだ。
敵のいない場で全てが思い通りに運んだとしても、なんら楽しくはない。
スポーツと同じようなものだ。ライバルがいなければ燃えない。
高遠にとって、名探偵金田一一の存在はそれだけ大きかった。
(……残念。と割り切る他ないでしょうね、これはもはや。
死者は蘇りはしない。我が宿敵は潰えた。ならば、代役を立てるしかない。
生き残っている者でそれが務まる人物といえば、明智警視。そして……)
高遠の脳裏を、冷たい声の少年がよぎる。
チェスワフ・メイエル。あの少年らしからぬ少年は、金田一の代役として務まるかどうか。
(彼がただの子供でないことは既知しています。彼の挑戦を受けた以上、その素性もいずれ。
ですがチェス君、あなたにはその前に、私の挑戦を受けてもらうとしましょう。
剣持勇、ジェット・ブラック、そしてミリア・ハーヴェント連続殺人事件……あなたにこの謎が解けますか?)
既に死亡している剣持勇。放送では呼ばれなかったが、今頃は殺されているだろうジェット・ブラック。
そして、つい先ほど高遠自身が手にかけたミリア・ハーヴェント――彼女を第三の被害者に選んだ理由は、三つある。
ひとつ、彼女が役者として非常に危険な人間であったため。
ふたつ、彼女が惨劇の被害者として非常に魅力的であったため。
みっつ、高遠自身に疑心を植えつけるため。
まず一つ目。
恋人が生きているのか死亡しているのかも定かではない状況で別離を強いられている、
という特殊な境遇を持つミリアに関して、高遠は新たな人形候補になるのではと企み、実行してみた。
恋人の喪失というこの上ない闇を抱える少女、地獄の傀儡師として囁きかければ、大抵は外道に落ちる。
だが根本的問題として、ミリアは闇など抱えていなかったのだ。
彼女が抱いていたのは光。希望という名の、決して暗くはならない光だった。
驚くべきはその驚異的な精神力。恋人との永遠の別れという確固たる事実を、まったく信用しない。
どころか、チェスの明らかな虚報を心の底から信じ、そこから希望を見い出している。
常人であれば、でもひょっとしたら……と、僅かながらでも悪い方向に考えを持つ。
ミリアにはそれがないのだ。数で言えば100、アイザックの生存を信じきっている。
この時点で、彼女は傀儡には成り得ない。殺人教唆は、心の脆弱な者を前提としているからだ。
そして肝心なのが、高遠の常識で考えれば、このような強靭な精神力の持ち主は存在し得ないということである。
常識の範疇に存在しない、それすなわち存在自体がイレギュラーであり、どんな行動を起こすか予想がつかない。
操れず、また行動予測もできない人物を舞台に立たせるなど、危険すぎる。
脚本を無視して急に舞台で暴れ出す可能性とてありえるのだ。
そうなるくらいならば、役者ではなく舞台装置の一つとして活躍してもらおう。
と、これが高遠の出した結論である。
続いて二つ目。
ミリアの性格は、良く言えば楽観的、悪く言えば馬鹿な、つまりはそれくらい飛びぬけて明るい。
決して自分が悲劇に見舞われるなどとは思っていないだろう。また周囲の人間からも思われにくい。
惨劇から極めて遠い場所に立つ人物、平和の住人を逆に惨劇の中心に立たせてこそ、意外性がある。
まさかあんなにいい人が亡くなるなんて……という弁は、報道番組での定番だ。
死から一番かけ離れた人間であるからこそ、いざ被害者になったときに輝く。残された者の悲痛や驚きもより強調される。
そういう意味では、ミリアはまさにうってつけ。作り出す被害者として、魅力的なのだ。
これに一つ目の理由も合わせれば、ミリアはまさに適任。選ばれて当然の役柄だった。
ただし、なにもこのタイミングで殺す必要性はない。
被害者として相応しい程度の理由では、もちろん高遠も機を待っただろう。
彼に計画を早めさせたのは、三つ目の理由、もとい利点が原因である。
最後となる三つ目。
高遠は元々、ミリアと二人きりという容疑者として怪しむには十分な境遇に置かれていた。
その上でミリアが殺害でもされようものなら、疑いの目は当然彼女と一緒にいた人物、高遠に向くだろう。
しかし時として、怪しすぎる状況証拠は混乱を招く。
殺人犯という肩書きを事前に自ら示し、既に別の死者も出ている、その間に築かれた新たな死体。
これらを照らし合わせても、高遠は怪しすぎる。消去法でいくなら間違いなく犯人だろうが、証拠がない。
証拠を提示しなければ事件は解決したとは言えず、疑心は永遠に残る――本当にそうなのだろうか? と。
とはいえ、高遠は完璧なアリバイを作ったわけでもなく、殺害方法に奇抜なトリックを使ったわけではない。
だが、証拠はなにも残していない。いや、正確に言えば、他の者は証拠が証拠と認識できないのだ。
たとえば今回のようなケース、刺傷による殺人事件が起きたとして、考えられる証拠はどのようなものか。
凶器から摘出される指紋、犯人にこびりついた血痕、ダイイングメッセージ等だろうが……この場合、それらは証拠となり得ない。
なぜならば、環境が特殊すぎるからだ。この殺し合いという舞台自体、犯罪者にとっては有利すぎるフィールドなのだ。
仮に高遠が凶器として使用したスペツナズナイフ。これに指紋が残されていたとしたら、物的証拠になる。
しかし高遠はそんなヘマはしないし、そもそも誰がどうやって指紋を識別するというのか。
それこそが、この環境最大の利点。法はもちろんのこと、鑑識や捜査機関の不在。
証拠を証拠として成立させる手段が、この会場には存在しないのだ。
中には明智やジェットといった本職もいるが、彼らとてすべてを担えるわけではないだろう。
ミリアの殺害にしても、高遠は指紋を残さぬようナイフの柄をハンカチで握り、
刺す際にも返り血を浴びにくい背中を、それも密着状態で貫いた。
証拠と成り得るナイフは自らが持っていた分全てをミリアのデイパックに移し、現場に放置してきた。
指紋隠蔽のためのハンカチは海に捨て、腕に返り血がついていないことも確認済み。
仮にここが捜査機関の充実している現実の世界だとしても、まず物的証拠は残っていない。
証拠がなければ、高遠はただ怪しいだけの容疑者に納まり、犯人にはなり得ない。
しかもこの場合、下手に捜査を進めれば、凶器と思しきナイフを持つ者として、ティアナにも容疑がかかるだろう。
が、それも結局は証拠となり得ない。捜査する側の混乱をさらに加速させるだけだ。
もちろん、このような環境の利ばかりに頼った犯罪を、自らが目指す芸術の達成とは思わない。
全ては金田一が到着すまでの布石及び前座……のつもりであったが、その金田一が死亡してしまっては仕様がない。
この脚本を一時的にメインに据え、チェスが探偵役足りえるかを判定するとしよう。
(と、噂をすれば影、ですか)
道行く高遠の前方、なにやら慌てた様子のチェスが駆け寄ってくる。
高遠はガッシュがいないことに訝しげ、しかし脚本どおり演技に入る。
「お兄さん! どうしてここに!? お姉ちゃんは一緒じゃないの!?」
呼気荒く詰問してくるチェスに、高遠は同じような慌てぶりを演じつつ接する。
「君こそ、ガッシュ君はどうしたんです? まさか、彼もミリアさんと同じように?」
「同じ……? 同じようにって、ねぇそれってどういうこと!?」
スーツの裾を掴み、ぐいぐいと引っ張るチェス。よほどミリアが心配と見える。
話によれば、彼はこの殺し合いが始まる以前からミリアと親交があったらしい。
ならばそれも当然か、と高遠は心中で苦笑する。
「落ち着いてくださいチェス君。彼女はつい先ほど、私の下から消えてしまったのです。剣持警部と同じように」
「消えた!? 消えたって!?」
「手洗いに立った直後でした。二人とも離れるわけにはいかず、私は食堂室に残っていたのですが……
たかが手洗いと思い、油断してしまったのが失敗でした。彼女はいくら待っても戻ってこなかった。
仕方がなく、こうやって探していたのですが……先ほどの放送は聞きましたね?」
「うん。剣持さんが……死んじゃってた」
チェスの視線が伏し目がちになる。ひょっとしたらミリアも……と思っているのだろう。
本性は謎だが、やはり本質は子供か。と高遠は少しだけ冷めた気持ちになる。
「何者かが、私やガッシュ君の隙を見て剣持警部を誘拐……そして殺害したと考えられ――」
「おーい! ヨーイチィー! チェスく〜ん!」
剣持死亡の事実に対して、高遠がもっともらしい推論を提示しようとしたところで――思わぬ声が届いた。
ギョッとなり、後ろを振り向く。
そこには、笑顔のミリア・ハーヴェントが立っていた。
(――まさか。いや、そんな馬鹿な!?)
高遠の内面に、衝撃が走る。
金田一にトリックを暴かれた際のそれを遥かに凌駕する、まさかの驚愕が、一瞬だけ彼に冷静さを失わせた。
隠せない動揺に、ミリアやチェスが気づかない様子だったことだけが幸いか。
「お姉ちゃん! どこに行ってたの? 二人で心配してたんだよ」
「ごめんね〜チェスくん。実はヨーイチが……あ、でもこれって言っていいのかなぁ。う〜ん」
喜びながらミリアの側に駆け寄っていくチェス。それを受け止めるミリア。
高遠一人、動けない。驚愕がいまだに身を拘束する。
確かに殺したはずだ。即死ではないにしても、あの状況下で助かるはずなどない。
ましてや、このような平然と笑顔を振りまける状態になど。
高遠は殺人教唆こそが本領であるが、殺傷行為自体が不得手というわけでもない。
殺しの技法、遺体の処理、証拠の消し方、すべてにおいてプロフェッショナルだ。
環境の利があるこの舞台で、高遠自身が働く殺人に限定すれば、絶対に暴かれることはない。
その完璧なる前提が、殺人失敗という最もありえない結果として覆される。
いや、これではむしろ蘇りだ。
(蘇り……? そうか、まさか)
高遠が殺人を仕損じる唯一の可能性。そんなものがあるとすれば、それは高遠の思考が及ばぬ『未知』の介入に他ならない。
たとえば、ティアナの魔法という『未知』。
ミリアが高遠によって殺された後、魔法のようなもので蘇生、もしくは超回復を遂げたとは考えられないだろうか。
いや、ない。ミリアがそんな異能者である素振りはなかったし、だとすれば再会と同時に刺傷の件を糾弾してくるはずだ。
このミリアはいたって平静。出会った当初と変わらぬ笑顔でいる。
まさか、高遠が刺したことに気づいていない、もしくは知らないとでも言うのか。
だとすれば、このミリアは何者かが変装した姿とも考えられるのではないか。
ではいったい誰か。体格からしてジェットやガッシュはありえないし、高遠も把握していない侵入者か。
だとすれば危険だ。なにが目的かは知らないが――と。
「なにがあったの? ボクにも教えてよ」
「う〜ん、まぁいっか、いいよねヨーイチ? あのね、これはチェスくんもビックリな事実だと思うんだけど……」
普段は陥らない、そもそもが初めてな異常事態に直面したせいか、高遠は事態の究明に没頭した。
それが、ミリアに真実を語らせる隙を与えてしまう。
「ヨーイチは、アイザックと同じポロロッカ星人だったんだよ〜!」
気づいたときには、もう遅い。
饒舌なミリアの語りは、瞬く間にチェスへと伝わっていく。
高遠の位置からは、チェスがどんな顔でそれを聞いているのか窺えない。
ただ背後から感じる気配だけで、高遠は冷や汗を流した。
この少年に、自身がミリアについた嘘が伝わることが、とても不味いことであるように思える。
率直に言えば、嫌な予感がしてたまらないのだ。
「でね、殺されたー! って思ったんだけど、ヨーイチも凄腕の手品師でぇ――」
「……うん。そっか! そうだったんだね!」
背を向けたまま、チェスの屈託のない言葉だけが届く。
既に、高遠がミリアを刺したというところまで伝わった。
ミリアはそれを手品だと認識しているようだが、
「ねぇお姉ちゃん、実は上でガッシュが大変なことになってるんだ。先に行ってあげてくれない?」
「え? でもチェスくんは? それに、あの、ヨーイチに告白のことについて――」
「ボクはお兄さんと一緒に後で行くから! だから、お姉ちゃんは先に行って!」
チェスは、おそらくそう思ってはいない。
厄介払いをするようにミリアを甲板へと送り出し、チェス自身はこの場に残る。
立ち尽くす高遠はなにも喋らず、チェスも振り向かない。
静寂のまま、少しばかりの緊張が続く。
やがて、均衡はチェスのほうから破られた。
「――さて、やってくれたな若造」
凍てついた、仙人のような声。
声質の高低は子供のそれなのに、纏う空気がまるで違う。
子供でありながらに子供ではありえない風格が、チェスの身を包む。
「どうして? なんで? なにがなんだかわからない……って言いたげだね」
かと思ったら、また子供の声調を取り戻し、無邪気に喋り出した。
ただし、いまだに振り向かない背中から発せられる空気は、重い。
「まぁ無理もないだろう。このような悪魔のいたずら、貴様に想定できるはずもない」
また、声質が変化した。
「ボクもビックリだよ! まさかミリアお姉ちゃんもそうだったなんて!」
変化。
「もっと早くに気づくべきだった。アイザック・ディアンがそうなら、彼と常に一緒にいた彼女もまた、そうであってもおかしくない」
変化。
「でも、結果オーライだね!」
まるで子供と大人が交互に喋っているように、言霊を自在に変化させていく。
一流の俳優ならば、声の演技一つで全身が纏う雰囲気や印象を変えることも可能かもしれない。
だがチェスのような子供が、大人の本性を宿すなど、技術的に考えてありえない。
もしやチェスは天才的な子役なのか、もしくは、
(チェスワフ・メイエルの本性……!)
この、子供らしからぬ風格こそ――チェスの本当の姿なのではないか。
「ああ、なんせ彼女のおかげで、私たちを謀ろうとした化け狐の皮を剥げるのだからなぁ!」
高遠がチェスの正体を薄らとだが理解し、恐怖を覚えたときにはもう遅い。
眼前のチェスは躊躇いのない動作でデイパックからアゾット剣を抜き取り、振り向く。
小悪魔の形相だった。子供らしい小さな顔面に、醜悪な笑みを宿す。特殊メイクかなにかと誤解してしまいそうなほど。
触れてはならぬものに触れてしまったのかもしれない、と高遠は思い、竦みそうになる。
だが、これまでに立ち向かったことのない種の恐怖が、逆に高遠の闘志を燃え上がらせた。
天才や完璧主義者ほど不意打ちには弱いものだが、高遠は曲がりなりにも殺人鬼、命のやり取りは得意分野である。
習性で、体が動いた。
万が一襲撃者に襲われた際対処できるよう忍ばせておいた一本限りのナイフを、バックベルトから抜き取る。
アゾット剣を握りながら駆け寄ってくる童顔の悪魔に、高遠は人間らしく、怯えを持ったまま対抗した。
リーチはナイフよりも剣、しかしチェスと高遠の腕の長さを考慮すれば、有利なのはこちら。
チェスの剣技のほどが知れない。迂闊に刃を射出するのは危険か。
ならば裂傷の一つや二つは覚悟して、確実に、零距離でチェスを殺しに行く。
刹那の策略が廻り、高遠も駆けた。
先手を仕掛ける。
肘を後方に引き、握ったナイフごと一直線に突き出す。
チェスはそれを、剣の握り手とは逆、左手を翳すことで防御する。
叩き落とすつもりか。いや違う。掌を盾にしようとしている。
浅はかな。スペツナズナイフの切れ味を侮っているのか。好都合。
高遠は構わず、チェスの左手に刺突を繰り出した。
刃が触れ、チェスの指を三本、切り落とす。
だが、チェスは怯まない――!?
(なっ――)
指が落ちたことなど気にも留めず、小悪魔の形相をそのままに、チェスは高遠に剣を振った。
小柄な体型から、刃の重量を乗せた斬撃が放てるわけもない。攻撃の形は、高遠と同じく刺突だった。
アゾット剣の先端が、高遠を抉る。
「…………っぐ」
二者の衝突が終わり、その場に停止した。
高遠とチェス、零距離のまま向かい合って立つ。
遠くから見れば、抱き合っているようにも思える光景。
それは、間近で見れば奇観以外のなにものでもない。
苦渋の顔を浮かべる高遠。歯をむき出しにして笑うチェス。
高遠の腹部から生える剣。その柄を握るチェス。
ぽたっ、ぽたっ、と零れる鮮血。これも高遠の腹部から。
チェスの手によって、剣が抜かれる。
高遠の体が、崩れ落ちた。
「……クク、ククククク……はははっ、あーはっははは……アー……クソ! クソッ! クソォ!
本当に、本当にやってくれたなぁ高遠遙一! 狐風情が、おまえのせいで滅茶苦茶だ!
おかげでまた『チェスワフ・メイエル』に逆戻りだ。もうあんな生き方はしないと決めたのに……
ミリアお姉ちゃんを、二人を守るために、ボクはまた昔に私に戻ってしまった!」
仰向けの体勢から、チェスの言葉を聞く。
狐というのは、チェスたちを謀ろうとした高遠のことを言っているのだろう。
一人称を『ボク』と『私』で使い分けていることには、なんの意味があるのだろうか。
チェスワフ・メイエルに逆戻りとは、いったいどういうことなのか。
わからない。失血によるショックか、高遠の朦朧とした意識はなにも導き出せないでいる。
ただ、視覚に映し出されるありえない光景だけを捉えた。
切り落としたはずのチェスの指計三本。
床に散らばったその指が、返り血と共に帰還していく。
チェスの脚を登り、胴体を登り、肩を経由して、左腕を降り、左手に舞い戻る。
そして元の鞘に納まった――再生したのだ。切り落とされたはずの指が、独りでに動いてくっついた。
物理現象としては100パーセントありえない。しかし、ああだからか、と高遠は逆に納得する。
チェスの正体は、ティアナと同じ。おそらくはミリアも。
高遠の理解が及びつかぬ、それゆえに予測もできなかった、未知。
それこそが、チェスワフ・メイエルに抱いていた畏怖の正体なのだと、薄れゆく意識の中で思い知らされた。
「チェス、ワフ、メイ、エル……あなたは、いったい」
「……ふん。結局貴様は、自分の手で真相をつかむことはできなかったな。
だが、こっちはまだ貴様に死なれちゃ困るんだ。だから急所はわざと外した。
まぁ、身長差が主な原因だが。それよりも、もう一働きしてもらおうか。貴様の計画の後始末を。
貴様が知りたがっている謎は……そうだな、道中でゆっくり聞かせてやる」
そう言ってチェスは高遠の髪を掴み、乱暴に引きずり出した。
腹に覚えるズキズキとした痛みの中で、高遠は予感した。
これから、私は地獄を見る――と。
◇ ◇ ◇
あ〜……もうウンザリ!
そりゃ、ファイターにとってライバルってのは大切な存在だけどさ……あんなのいらないって。
でも、めぐり合わせちゃうんだよねぇ、なぜか。
因縁? 宿命? 運命?
――ううん、そんなの信じないよアタシ。
◇ ◇ ◇
時計の針は真南、六の数字を回り、空もそれ同様に闇を纏い出す。
夜景が一望できる甲板上、燃え盛る炎のせいで夜というにはまだ明るい舞台を、三人が立つ。
いずれも、視線は空に向いていない。それぞれ、今しがた終了したばかりの放送について考えていた。
「ウヌウ……勇にキール、それに金田一までもが……」
「状況は最悪ってわけだ……しかもついにエドまで……くそったれ」
剣持勇の名が呼ばれたことにより、彼の失踪が殺人事件であるという裏づけが取れてしまった。
金田一一というのは、高遠が話していた迎えるべき少年の名だ。彼の死で、高遠がなにを思うのかまでは想像できない。
エド、というのはあのなんたら三世というやたら長ったらしい人物のことだろうか。どうやらジェットの知人らしい。
しかし、そんな他者の嘆きよりもまず、ティアナにとっては、
「……………………え?」
スバル・ナカジマ。
唯一無二の親友にして、苦楽を共にしてきたパートナーの消失が、胸を打った。
「うそ、う、そ」
遠雷のような声がスバル――と告げて、まずティアナの視界は真っ白になった。
矢継ぎ早に呼ばれた八神はやての名もまた、彼女の意識を飛ばす追い討ちとなる。
ティアナが夢を追い求めた場所、時空管理局機動六課。
夢に向かって駆ける歩幅を、一癖も二癖もある相棒と一緒に調整してきた。
八神はやてはそんな二人を導いてくれる、心優しい女性であった。
「うそう、そうそうそ、う、そう、そう、そうそ、うそ、うそ」
涙と、拒絶の声しか絞り出せない。
キャロの死と遺体の爆散にあれだけ怒り狂っていたティアナが、ただ悲しむことしかできない。
ジェットやチェスに向けていたような敵対心や殺意が、少しも湧いてこない。
どうして? 問いかけても、答えてくれる人はいない。
あの人なら、高遠遙一ならどうだろうか。
あの人ならきっと。
助けてくれる。
でも。
「スバル……スバル……スバルゥゥ――!」
今は全部はどうでもいい。
今はただ、悲しむことしかしたくない。
泣いて喚いて、親友の死を精一杯悲しみたい。
心の奥底から伝わってくる願望と欲求に、ティアナは身を委ねる。
ジェットとガッシュは、それを突っ立ったまま傍観し、まったく声をかけない。
「あんた……っ、どうしてぇ! どうしてあんたまで……わた、わたし、あんたが、あんたがいな、きゃ……」
泣いて泣いて泣きじゃくって、頬を涙の雫でぐしょぐしょにして、それでもまだ足りない。
何秒、何分、何十分とそうしていただろうか。
いつの間にか、ジェットとガッシュの側にミリアが加わっていた。
傍観者が三人となり、それでもまだ、ティアナは悲しみ続ける。
止める者は誰もいない。きっと止めてはならないと思ったのだ。
それくらい、今のティアナの姿は哀れだった。
(ああ、結局、いつだって私はこうなんだ)
表とは違って冷静な、上辺だけは冷静でいようという裏の意識が、己の生き様を顧みる。
幼い頃に両親が事故死、最愛の兄は殉職したうえに上司に無能と罵られる。
兄の汚名を晴らそうと同じ道を目指してみれば、周りは天才肌ばかりで劣等感。
その劣等感自体が間違いであったことにも気づかず、教官に叱咤される。
ようやく成長できたかと思えば、舞台が変わっただけでまた元の木阿弥。
わかっていたんだ。人殺しなんてなんの解決にもならない。ただの自己満足。
あの人の示す通りに道を開けば、不思議と安心できたから。つい縋ってしまった。
彼、高遠遙一は優しすぎたのだ。彼女の直接の教導官、高町なのはよりもずっと。
なのはは、ティアナに選択肢を与えてくれた。しかし高遠は、選択肢ではなく、直接答えをくれた。
より手っ取り早いほうに縋ってしまったのは、効率を重んじる二等陸士としての性か、それともティアナ自身の弱さか。
いずれであったとしても、もう結果は出てしまったではないか。
スバル、キャロ、エリオ、はやて――失ってしまった仲間たち。
犯してしまった殺人に、今さらの後悔を覚えている自分。
人の痛みを思い出してしまったから、辛い。
(私は……私は、こんな風にはなりたくなかった! なのに!)
全ては自分の愚かな判断ミス。教導官による修正は施されない。
自分の過ち。悔いる。嘆き。悔いる。悔いるのも、辛かった。
「……ごめんね、みんな」
死んでしまった機動六課の面々、
まだ生きているシャマル先生、
元の世界で自分たちを探しているであろう人たち、
もう一人の相棒クロスミラージュ、
自らが殺めてしまった剣持警部、
未遂とはいえ重傷を負わせてしまったジェット、
そして、こんな自分に救いの手を差し伸べてくれた高遠さん。
「本当にごめんなさい」
みんなに謝罪をして、ティアナは甲板に転がっていたナイフを拾う。
その切っ先を、喉元に刺した。
「ティ、ティアナ!?」
「おい!」
「来ないで!」
ぷっ、とほんの1ミリだけ傷ができて、赤く滲む。
これくらいじゃ死ねない。
もっと深く刺そう、と思い立ったところで、ジェットたちが声を荒げる。
「馬鹿な真似はよさぬか! おぬしがここで死んでどうなる!?」
「そうだよ! なにがあったかはよくわからないけど、死んじゃったらダメだよ!」
「ガッシュやミリアの言うとおりだ! ぐっ……怪我人に怒鳴らせるんじゃねぇ!」
「痛いでしょう!? 辛いでしょう!? あなたをそんな風にしたのはこの私! 私なのよ!」
両手でぎゅっと握り締めたナイフ。
震える手で、先端の刃を喉元に翳す。
祈るような直立姿勢で、三人と対峙する。
動けば刺す、と言わんばかりの格好で。
「駄目なのよ……私、いいことをすれば許されると思ってた……でも、駄目なの。
高遠さんが教えてくれた答えに縋っても、ちっとも楽にならない……辛いのよ!
なにをどうやっても、全然心が晴れないの! 辛くて辛くてたまらないの!
だから……だからだからだから」
死んで、楽になりたい。
そう声に出して言うつもりだったのに、断言できないでいる自分。
切っ先を翳すだけで、今一歩が踏み出させないでいる自分。
こういう点も含めて、ああこの子は弱い、と失意する。
こればっかりは駄目なのだ。
どんなに指導されたって、直りっこない。
ティアナが抱えるコンプレックスみたいなものが、死を駆り立てるまでに身を蝕む。
「――だから、死んで楽になりたい。ふん。死ねばいいじゃないか。ううん、むしろ死ねよ人形」
自殺志願者と、説得に臨む三人。予断を許さぬ場に、新たな来訪者の影が二つ。
その場にいた四人は、それを見て思わず息を飲んだ。
現れたのはチェス。そしてその手に掴んでいるのは、高遠の頭部。
さらに目で追っていくと……腹部を赤く滲ませている高遠の全姿が、チェスによって引きずられている。
高遠の醜態、チェスの乱暴な素振り、どちらも意外すぎて、誰もが言葉に出せないでいた。
「ジェットおじさん……お兄さんは、ううん、高遠遙一は自供したよ。
ティアナ・ランスターに殺人を教唆していたのは自分。
剣持警部を殺害させたのも、ジェットおじさんやミリアお姉ちゃんを殺させようとしたのも、
ぜ〜んぶ……『地獄の傀儡師』高遠遙一の、崇高なる犯罪芸術の一環だってね!」
チェスから飛び出た証言に、名指しを受けたジェットのみならず、全員が驚愕する。
「自供!? 高遠が、本人がそう言ったってのか!? あとその『地獄の傀儡師』ってのはなんだ」
「高遠遙一の元の世界での異名さ。自らが殺人を犯すのではなく、他人に殺人を教唆し、人形に仕立て上げる。
そうやってできた人形を意のままに操ることから……地獄の傀儡師って呼ばれてるらしいよ」
「ま、まままマインドコントロールだね!?」
「まさか、高遠はゾフィスのように人の心を操る能力を持っておるのか!?」
「能力というよりは技術に近いよ。心理学や精神論に基づいたうえでの精神誘導。それがこの男の十八番さ」
チェスの言う高遠の正体は、作り話としては上手すぎる。
しかも現在のティアナの境遇を思えば、十分成立する話でもあった。
そしてこの言葉に一番の衝撃を受けるのは、人形本人である。
「高遠さん……本当、なんですか?」
語気弱く、チェスに髪を掴まれたままの高遠に尋ねる。
高遠は伏せっていた顔を僅かに持ち上げ、やつれた表情でティアナを見た。
「……フッ」
鼻で軽く一笑し、ティアナはそれだけで全てを理解した。
言葉としても、高遠自身の口から告げられる。
「ええ、その通りですみなさん。先ほどのチェス君の言は全て真実、剣持警部失踪から始まった諸々の情事は、私の仕業です」
死刑宣告と大差ないであろう言葉が、ティアナの身に重くのしかかる。
高遠の告白に関して、ジェットが訝しげな表情で尋ねた。
「……解せんな。この期に及んで、なんでおまえさんが全てを自供する? 罪が軽くなったりはせんぞ」
「心得ていますよ。いや……実を言いますと、絶望してしまいましてね。なにもかも……ほとほと疲れました。
私が今まで舞台だと思いこんでいた場所は、他人の畑。役者は全員、履歴書を偽装していたわけです。
これでは上手くいくはずがない……理解したら、過去の自分が急に馬鹿らしくなりましてね。
……まぁ、金田一君の死も、ある程度は影響してるのでしょうか」
高遠も重傷の身であろうことは間違いないが、彼の語調は常と大差なかった。
それだけに、ジェットはますます憮然顔だ。高遠の遠まわしな説明だけでは、納得できていないのだろう。
「……ジェットおじさん、気がかりなのはわかるけど、もうこの男に後がないことだけは事実だ」
「いや、待て。高遠についてもそうだが……おまえのそれはなんだ? おまえ、本当にチェスなのか?」
「……それは、後で説明するよ。今は、それよりも」
来訪から今の今まで、チェスは子供特有の溌剌さを消し、陰を纏って喋っていた。
まるで別の人格に入れ替わったかのように、妙な風格がある。
そのままの風格で、チェスはデイパックを探り出した。
「ガッシュ。これ、君の本でしょう? 返しておく」
出てきた赤い本が一冊、ガッシュの下に放られる。
「これは剣持警部の荷物。危ないものも入ってるから、ジェットおじさんに預けるね」
出てきた別のデイパックが一つ、剣持の下に放られる。
「それと……うん。これで、この事件もおしまいだね」
最後に、一振りのアゾット剣を取り出して、チェスはデイパックの紐を閉じた。
「チェスくん……?」
「チェス、おぬし……」
ミリアとガッシュの心配そうな声と瞳。
チェスは向き合わず、蹲る高遠を睥睨した。
「まさか……チェス」
チェスの行動の真意に気づいたジェットが、一歩踏み出す。
が、
「来ないで!」
チェスに制され、それ以上を踏み出せない。
声もそうだが、なによりもその手に握った剣が、頭上高く掲げられていたから。
誰もが理解し得る、単純な図式。
チェスが掲げた剣を振り下ろせば、直下の高遠は死ぬ。
「やめ……やめ……やめてぇぇぇ!!」
気づいた者の中で、先んじて待ったをかけたのがティアナだった。
涙声のまま、懸命に高遠の救命を懇願する。
だが、高遠の犯罪に本意ではないにしても加担していたティアナの言葉を、チェスが聞き入れるはずもない。
「今さら勝手なことを言うなよ! おまえたちが……おまえたちが滅茶苦茶にしてくれたんじゃないか!
これは処刑! 罪を犯したおまえらは、揃ってここで死ぬんだ! ボクがこいつを殺したら、おまえも死ね!
自殺する勇気がないって言うんなら、ボクが殺してやる! おまえら二人とも、ここで終われ!」
生殺与奪の権利は、完全にチェスの手中だった。
だがチェス自身、振り上げた剣は望む結果ではないのか。
ティアナ同様、瞳からは大量の雫を零している。
ガッシュには、それが許せなかった。
◇ ◇ ◇
――――鴨の数は、
◇ ◇ ◇
――魔界にやさしい王様がいてくれたら、こんな辛い戦いはしなくてよかったのかな……?
きっかけは、心優しい魔物の女の子の言葉。
泣きながらでも戦わなければいけない、そんな宿命を課せられた魔界の子供たち。
ガッシュもその一人だったが、彼はこの戦いを受け入れた。納得したわけではない、抗うために受け入れたのだ。
やさしい王様になり、コルルのような思いをする者がいなくなるように頑張ろうと、あの日清麿と誓ったから。
だからここまで来れたのだ。
傲慢な王を目指す者、強い王を目指す者、部族の本懐を遂げようとする者、愛のために戦う者、
いろいろな目標を掲げるライバルたちと戦い、そしてガッシュは、着実に夢へと近づいていた。
その矢先に、ガッシュは参加を強いられた――魔界の王を決める戦いよりももっと愚劣な、バトルロワイアルに。
ただし、それでもガッシュの信念は揺るがない。
勝ち抜けばいいのだ。自分の思うやり方で、やさしい王様を目指すべく。
なにも変わらない。泣きながら戦う者がいるならば、自分がやさしい王様になって、泣かなくて済むようにしてやればいい。
そう――やさしい王様を目指す者として、ガッシュは皆を泣かせる螺旋の王に、断固として立ち向かう決意をした。
ふと、目線を下にやる。
そこには、チェスによって放られた一冊の赤い本がある。
ガッシュにとっての武器であり、生命線であり、王を決める戦いの参加資格のようなもの。
ガッシュの目標に対する情熱にも似たその赤い輝きが、神秘的に明滅しているのに気づく。
同時に思い出す。埠頭で夢を語り合った剣持勇が、清麿にしか読めぬ本を読んでいた事実に。
なにがどうなってああなったのかは、ガッシュにはわからない。だが、直感は働いた。
赤い魔本に灯る輝き。その光の粒子が誘う先に、彼女はいた。
ガッシュ同様、悲しみを嫌い、この場にいる全員を助けたいと願っている少女。
今のミリアなら、この本が読めるのでは、と。
「ミリア! この本を読んでみるのだ!」
「え、え?」
本を拾い上げ、ページを開き、ミリアの眼前に晒す。
彼女の細腕に本を持たせ、表記されている魔界の文字を目で辿らせた。
「どうだ!? 読めぬか!?」
「え、ええええ……こんな難しい字読め……読める! ここだけ読めるよ!」
清麿にしか読めないはずの本。剣持がそれを読んでみせた事実。そして今のミリア。
ガッシュはそれらの事柄をなんとなくレベルで認識し、これしかないと思った。
彼は清麿ほど冷静で知的には動けない。だから、直感に従う他なかった。
「ミリア! 今すぐその部分を読むのだ! 早く!」
「う、うん! わかった!」
こうしている間にも、チェスは剣を直下へ、ティアナは絶望からかまたナイフを喉元に、最悪の結果が生まれようとしている。
それだけは阻止しなければならない。
やさしい王様を目指す者として。
誰も、欠けさせてはならない!
「――第三の術! ジケルド!!」
ミリアが唱えた瞬間、ガッシュの口から小さな光球が放たれた。
バチバチと火花を散らし、プラズマのようにも見えるその速度は、酷く遅い。
瞬間的に全員の注目がガッシュの放ったプラズマにいくが、そのプラズマもすぐに萎んでしまった。
いや、違う。萎んだのではなく、当たったのだ。ティアナがクロスファイアで破壊した、デッキブラシの残骸に。
甲板に散らばり短い柄だけとなったそれは、プラズマの光を受けてその本体も強く輝き出した。
そして、効果が発動する。
「え……な、なにっ!?」
「なっ……これは、いったい!?」
驚きの声を上げたのは、チェスとティアナだ。
両者共に、握っていたはずの剣とナイフを明後日の方向に引っ張られている。
物理的干渉が働いたわけではない。見えない力によって、吸引されているような感じだった。
あまりの強力にチェスとティアナは抗いきれず、両者同タイミングで凶器を手放した。
アゾット剣とスペツナズナイフが飛んでいく先は、先ほどの光り輝くデッキブラシである。
木製であるはずのデッキブラシが鉄製の剣とナイフをくっつける姿は、まるで磁石のようだった。
いや、磁石の『よう』ではなく、本当に磁石なのだ。
ミリアが唱えた、『第三の術 ジケルド』。
光球が命中したものを強力な磁石に変えてしまう術である。
術の効果に誰もが唖然とする中、術を放った本人は、チャンスとばかりにティアナ目掛けて走り出した。
「ヌゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
脇目も振らず、ものすごい形相で駆け抜ける。その姿は、走っているとも言いがたいほどだった。
大きく見開いた目は焦点が定まらず、視覚情報すらも除外して、脚を前に進めることだけに集中している。
なぜ一直線にティアナの下に行けるのかが不思議なくらい。
その姿が猛接近してくるのに驚いて、ティアナは唖然としたまま、
「あぶっ!?」
突進してきたガッシュの頭突きを受ける。
ティアナがおでこを押さえながら悶絶する間、ガッシュは今度はチェスのほうへ振り向き、また走り出した。
「ヌア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
絶叫しながら迫るガッシュに、チェスは思わず、ひっ……と声を漏らした。
思わず逃げ出しそうになるが、思った頃にはもう遅く、ガッシュの頭突きがお見舞いされる。
「いだぁっ!?」
ティアナと同じく、おでこを押さえて悶絶する。
このガッシュの一連の奇行に、ミリアとジェットはさらに唖然。
もはや声も出ず、ただ視線だけでガッシュに追っている。
まだ誰も気づけていない。
この時点で、誰かが誰かがを傷つける心配がなくなっていたことを。
「おぬしたち! よおおおぉぉぉぉぉおおおく聞けぇぇぇぇぇ!!」
全観衆が注目する中で、ガッシュが声高らかに叫ぶ。
「私は……やさしい王様になる!」
既知していた者、そうでない者含め、改めて宣言する。
「ここでもそれは変わらん! 皆を悲しませる螺旋王を倒し、私が代わりに王様となる!」
そんな荒唐無稽な目標を、堂々と、毅然とした態度で語る。
「清麿! フォルゴレ! アレンビー! キール! 勇! 高遠! ティアナ! チェス! ミリア! ジェット!
いずれも私の心に残る、大切な者たちだ! その大切な者たちが、どうしていがみ合ったり殺し合ったりできようか!?
私は許さん! 誰が誰を傷つけることもだ! やさしい王様を目指す者として、このガッシュ・ベルが誰も死なせはせん!!」
ガッシュの大きな瞳に灯るのは、雷光にも似た輝き。
王族に生まれた彼だからこそのカリスマ性の発揮は、この地ではこう呼ばれることだろう。
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!! 螺旋力覚醒】
◇ ◇ ◇
――ふむ。
それもまた、大いにあり、と言ったところか。
◇ ◇ ◇
「――許す?」
ガッシュの宣誓が響き渡った後、誰もが次のアクションを起こせず、ティアナだけがそう呟いた。
「許すって、言うの? だって、だって私、殺しちゃったのよ? あなたと一緒にいた、剣持さんを」
ペタン、とへたり込んでしまったティアナの顔は、依然泣き顔だ。
ガッシュの言葉がどう届いたのかはわからないが、彼女はまだ自分が許されたとは思っていない。
それだけ、蓄積されていた罪悪感は大きかった。封を施されていたことで、放出する際の勢いも相当だった。
今の彼女の心はめちゃめちゃだ。親友の死に、罪の意識、許すという言葉、混乱。
どうしていいのかわからない、迷える子羊と化しているのだろう。
なら。
「ウヌ。それも許す。勇とて――ヌ?」
ティアナの問いかけに答えようとしたガッシュの前方を、先んじる。
ここは譲れない。ガッシュも譲ってくれる気らしい。ありがとう。
「来ないで……」
ティアナの周囲に、極小の魔力スフィアが浮かべられる。
ナイフを奪い取ったとはいえ、彼女の本領はこれだ。まだ自殺も殺人も決行可能である。
だけど、恐れない。自分が恐れれば、ティアナも恐れてしまうから。
「あぶない!」
遠くで自分の身を心配してくれるチェスに、笑顔だけで応える。
ここはこうするべきだと、やっぱり思うから。
――『彼』なら、絶対にこうすると思うから。
――『私』も、こうしたいの。
「あ」
ティアナの眼前に立った。
魔力スフィアは消えない。けれど、どんどん小さくなって……消滅した。
ティアナの顔からも、怯えが消えていく。
そうだよ。
こうやって笑顔で接すれば、みんな笑ってくれるんだよ!
そうだよね…………ね、アイザック!
「――ソーソーや義経だって、何人も何万人も何億人も何兆人も殺してるんだよ?」
彼の言葉を借りて、喋り出す。
「それでも周りのみんながいい奴だって言えば、いい奴になるんだよ。つまり……その場のノリだね!」
――ノリだなミリア!
ここにはいないはずの彼が、すぐ側で支えてくれているような、そうでないような。
とにかく心強い気がする。だから頑張れる。
「だからねティアナ。私たちがティアナをいい奴だって言ってるんだから、その波に乗り遅れちゃ駄目だよ。
胸を張って、最後に自分自身を信じるの! でもねでもね、その波を起こすにはね、
周りの人が一人でも『いい人だ』って思うことが必要なの! だからね、ティアナはいい人なの!
私たちが知ってるの! だからねだからね、私たちが波を起こしてあげるの!」
ティアナの泣き顔を、屈託のない笑顔で逆に鷲掴みにする。
ぐわしっ、と互いに抱き合えば、それでみんな笑顔になれる。
アイザックとの関係が、そんな感じだった。
「だからね、だからね」
ミリアは力強く頷き、ティアナの頬を優しく撫でてやった。
「だから、もう笑ってもいいんだよ!」
――いつだって、アイザックとミリアの二人は周囲に幸福を撒き散らしてきた。
錬金術師の数百年越しの因縁だとか、大陸横断鉄道を舞台にした列車強盗だとか、富豪の遺産相続問題だとか、全部関係なしに。
だからきっと、ここでもそうなるようにできている。
――当の本人たちは、そんなことを自覚してはいないのだろうが。
「ごめ……さい…………ごめ……ごめ…………ごめんなさいいいいいいいい」
微笑むミリアの胸元で、ティアナは今度こそ本当に、嬉しさのあまり泣き崩れた。
◇ ◇ ◇
そうして、希望の船は廻る――
◇ ◇ ◇
全ての幕が下りた後、そこに死者はもちろんのこと、悲しみを訴える者は一人としていなかった。
事件を解決へと導いたジェットとチェス、荒立つはずだった事態を安全に終息させたガッシュとミリア。
おそらくは誰が欠けても成しえなかった結果が、こうして目の前に広がっている。
……勝敗にこだわるならば、今回の一件は過去類を見ないほどの完全敗北であると言える。
辛うじて命は拾ったものの、こちらの目的たる犯罪の成立は不可能となり、どころか、今後の方針もぶち壊しにされた。
なのに、不思議と清々しいのはなぜだろう。
金田一というライバルが潰え、闘志が鎮火してしまったのだろうか。
それとも、『不死者』などという存在が許されている事実に、嫌気がさしたせいだろうか。
高遠遙一は思い出す。甲板に上るまで道中で、チェスが語った不死者にまつわる情報を。
殺しても死なずに血肉が再生し、歳も取らないという不死者なる存在。
その該当者たるチェスは、第二放送前に同じく不死者であったアイザックを『喰った』らしい。
不死者が不死者を殺せる唯一の方法と、アイザック消失事件のからくりが、まとめて判明する。
そして同時に、チェスと十中八九本人も知らなかったであろう事実として、ミリアも不死者であるということも。
これらの情報を得て、高遠は全てを納得したのだ。
アイザック死亡の真相、チェスの正体、ミリアが生き返った訳、全て不死者のルールで説明ができる。
(まったく馬鹿げた話だ……『殺し合いなのに死なない人間が紛れている』などとは。
螺旋王も一般人たる私に無理難題を押し付けるものだ……もう少し、面子のバランスに気を使って欲しかったところです)
本人すら自覚していなかった異能を、高遠が予測できはずもなく、ミリアの殺害失敗は完全な不幸と呼べた。
チェスの正体に気づけなかったのも同様。
不死者などという殺し合いのルールを根底から覆す者が存在するはずないと、常識で考えてしまったのがそもそもの失敗。
が、これも不幸の範疇であると言える。なにせ高遠は不死者など知らぬ一般人。常識で考えるのが普通なのだ。
唯一弁解できない落ち度があったとするならば、探偵役候補として考えていたチェスが、暴力で訴えてくる可能性を考慮しなかったことだろう。
素性が怪しくとも所詮は子供、とどこかで見くびっていたのかもしれない。その点については、ジェットにも言えることか。
「ジェット刑事……一つお尋ねしたいのですが」
「なんだ?」
「なぜ、ティアナ君の背後に私がいると気づけたのですか?」
「そうだな……理由は二つある」
「一つ目は?」
「あんたは犯罪者として優秀すぎた」
「ふむ……では、もう二つ目は?」
「俺の異名を知らなかった」
「異名、それは?」
「喰らいついたら離さない、『ブラック・ドッグ』だ」
「フフッ……そのようなおっかない異名を隠していたとは」
「笑うな。別に隠してたわけじゃないぞ」
「いや失敬。では、もう一つだけよろしいでしょうか?」
「怪我人だってのによく喋るな。で、なんだ?」
「……そのような血塗れの説得ではなく、ティアナ君を殺すという選択肢もあったはずです。
刑事を辞め、賞金稼ぎとして暮らしているあなたが、なぜ自己防衛の手段として最適なほうを選ばなかったのですか?」
「アホか。元刑事なのは関係ない。賞金稼ぎだからこそだ。あー……こりゃ相棒の口癖みたいなものだがな。
『殺しはしない。賞金がパーになる』……ま、言ってみりゃ貧乏性なわけだ。他人の命を金に換算するくらいにはな」
「くっ、くくくくく……」
「だから、笑うな」
甲板中央、並んだ状態でそれぞれ怪我の治療を受ける高遠とジェットの会話。
そこから導き出された解答を元に、高遠は改めて思う。
(どうやら私は平和ボケしていたようです。暴力の介入と、金田一君以上の知恵者の登場は『まだ』ありえないと、そんな先入観を愚かにも抱いていたわけですか)
気づくのが遅すぎたが、結果自分はまだ生き残っているわけだから、運がいいほうだろうか。
それに、高遠がこの会場で糸を括りつけた唯一の人形も、まだ失ってはいない。
「高遠さん、他に痛いところはありませんか?」
「ええ、だいぶ楽になりましたよ。ありがとう、ティアナ君」
礼を言う先……仰向けになっている高遠の真上には、真っ赤な顔をしたティアナの姿がある。
ティアナは一人(ミリアたちも手伝ったが)、船内に置かれていた救命用具を用い、高遠とジェットの応急処置を施した。
今の状況は、その副産物。看護したりないらしいティアナが自ら申し出た、『膝枕』は――。
「そんな……わ、私はただ、高遠さんに元気になってもらいたくて……」
「うっ……しかし、やはり刺された場所は痛みますね。生かしておくつもりなら、もっと優しくしてくれてもいいものを」
じとっ、とティアナが横にいるチェスを睨む。
チェスも反射的に睨み返すが、ジェットの隣で包帯を巻いているミリアと、それを手伝うガッシュにまで睨まれ、萎縮する。
さっきまで生きるか死ぬかの言い争いをしていた連中が、この団欒ぶりである。高遠は笑いを我慢するので大変だった。
意外だったのは、ティアナがまだ高遠のことを慕っていたこと。
殺人教唆という真の狙いは露見してしまったが、それでも彼女にとって高遠は恩人である。
海から救ってくれたこと、その後ぐちゃぐちゃに乱れていた心をやや乱暴なやり方でケアしてくれたこと、
そしてもしかしたら、女性としては忘れることのできない例のアレも……感情の中で蟠っているのかもしれない。
ティアナが自分に惚れている、とまで自惚れるつもりはないが、この分なら……再び傀儡として使うのも不可能ではない。
とはいえ、今の彼女は人形ではなく、感情を取り戻した立派な人間だ。お願い程度の頼みならともかく、殺人の類は絶対に拒否するだろう。
その点を踏まえても、高遠はこれから先をどうするか、決めかねていた。
ガッシュの言葉を信じ、彼の目標に協力の姿勢を見せるか。
原点に立ち戻り、犯罪芸術家・高遠遙一として再出発を切るか。
大きく分けて二択、さてどうするかというところまで考えて、ガッシュが言葉を切る。
「ウヌ……皆の者、仲良くなっていることはとても喜ばしいことではあるのだが……」
なにやら深刻な表情で、正座の姿勢を取るガッシュ。
「今は仲良く談笑している場合ではないのではなかろうか?」
と指摘して、周りの人間全員が、あっ、と口を漏らした。
――いや、決して忘れていたわけではない。もちろん覚えていた。
先のことよりも今、解決しなければならない重大な問題がある。
その問題とは……甲板上の大火災をどう乗り切るか!
現在、高遠らの六人の所在は、豪華客船甲板の中央部にある。
そしてその周囲には、ジェットが保険として放った火が、今もなお轟然と燃えている。
つまり高遠たちは今、火の海の真ん中に身を置いている状態なのだ。
「ジェ、ジェットおじさんが余計なことするから!」
「む……下は海なんだ。いざとなったら飛び込めばいいだろうが」
「馬鹿なことを言わないで。怪我人が二人もいるのよ。っていうかあなたがその怪我人じゃない」
「この怪我を負わせたのはおまえさんじゃねーか」
「あら、一度は許すって言ったのに、昔のことをネチネチ言うの?」
「ウヌウ、ジェットもティアナも喧嘩はやめるのだ」
「あー! そう言えばヨーイチ、さっきの告白のことなんだけどね」
「こ、告白!? なんですかミリアさん、告白って!?」
「ミリアさん、それは……」
「あのね、さっきヨーイチが私に愛してるって情熱的に……」
「……高遠サン? アイシテルッテ、ダレガ、ダレヲデスカ?」
「な、なぜ片言で喋るのですかティアナ君」
「ウヌウ……おぬしら、もっと危機感を持つべきではないのか……? 私が変なのか……?」
火災現場に取り残されるという状況で、無為に慌てふためいても仕方がない。
その点を思えば、六人各々のマイペースぶりは、決して悪い傾向ではなかった。
ジェットの言うとおり、周囲が海である以上、このまま船と臨終する心配はないだろう。
夜になったことで水温は低下しているし、重傷人の高遠とジェットに水泳は難行だが、岸もすぐ近くなので問題はない。
とはいえ、もし船の動力部にまで火が渡りでもしようものなら、最悪船ごと大爆発という可能性がある。
そういった事態を想定するならば、いつまでも談笑しているわけにはいかないだろう。
(さて、先のことを考えるよりもまず、今はこの窮地を脱する策を練るとしますか)
高遠は一人、ティアナの膝の上で思案にふけた。
が、それも一瞬で終わる。
火災、海上、船上、六人、不死者、元刑事、魔物、魔法使い、そして――
これらの状況を鑑みて、高遠は考えるまでもなく、最善の手段を導き出した。
全ては、この使い物にならなくなった希望の船から脱出してからにしよう。
(みなさんに披露しましょう。『地獄の傀儡師』ではなく、『奇術師』高遠遙一としての、世紀の大脱出マジックを)
◇ ◇ ◇
結局、この地に探偵は現れなかった。
◇ ◇ ◇
あのときのガッシュの顔は怖かったな、とチェスは今さらながらに思い、身震いする。
血塗れのジェットは、その巨体に違わずタフガイだ。若干貧血気味のようだが。
高遠とティアナは……まぁ、心配はいらないだろう。少なくとも、今すぐ行動を起こすようなことはない。
高遠はあれできっちりと敗北を認めているようだし、ティアナも殺人人形には戻らないはずだ。
(まったく、一時はどうなるかと思ったが……いや、これもある意味当然の結果か)
チェスは嘆息し、この事件における『チェスワフ・メイエル』の行動に関して思い起こす。
ミリアを守るため、引いては彼女を失うことによる後悔を打ち払うため……チェスは、一時的にかつての自分を取り戻した。
そうしなければ、高遠には勝てなかったからだ。純情なチェスくんのままでは、高遠を完全に疑い切ることはできなかった。
とはいえ、あの場面で不死者という利点を生かし、暴力に訴えたのは、チェスくんとしてはありえない奇行だ。
ゆえに、もう終わりだと思った。チェスくんとして振る舞い、ミリアの隣に立つことは、これを機に不可能になると、本気で怯えた。
しかしそんな不安をチェスに代わって追い払ってくれたのは、ガッシュと、他ならぬミリア本人である。
「船上で炎のように燃え上がる恋だね! ファイヤーパーティーだね!」
このような窮地に身を置かれても、ミリアはその人間性を崩さない。
炎の側まで近づき、メラメラと燃える情景を楽しむかのように、一人踊り出す。
彼女のパートナーを喰ったせいだろうか。なんだかチェス自身も踊り出したくなってきた。
(アイザックさんの意思かな……ボクは、この笑顔をどうしようもなく守りたいと思える)
チェスを含めた五人の視線が、無邪気なミリアの姿を追いかける。
まったくのんきなもんだ、とジェット。
ウヌウ……これでよいのか? とガッシュ。
まぁいいではありませんか、と高遠。
ヨクアリマセン説明シテクダサイ、とティアナ。
ミリアが結んだ、六つの輪。
綻ぶことなど永遠にないと、そう思えた。
(いつか……またいつか、アイザックさんとミリアさんの二人と並んで、ボクも踊れる日が来るのだろうか?」
切実に、願う。
そのときだった。
ミリアのすぐ側、濛々と燃える火炎の中から、一人の影が飛び出した。
全身に黒のイメージを纏わせる謎の男は、手に一振りに剣を握っていた。
火炎の中から飛び出した瞬間、その剣を振った。
剣の振るわれた先には、ミリアがいた。
刃はミリアの首筋を狙い、スパン、と頭と胴体を分断する。
鞠のように舞い上がったミリアの頭部を、皆が凝視する。
もちろん、チェスの視線の矛先もそちらにあった。
ミリアの首が落ち、転がり、チェスの足元までやって来る。
覗いてみると、その表情は笑顔だった。
え、
◇ ◇ ◇
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおお!!」
気合一声、己で己に渇を飛ばし、豪華客船の船体側面をがむしゃらによじ登る。
掴むところもろくにない壁を、赤と緑が混じった神の指で、穴を開けん勢いでただひたすらに。
「速く……速く行かないとヤバイって!」
奴は――あの銀髪に黒装束の殺し屋は、まず間違いなく甲板に向かった。
きっかけを思い出す。マオとの戦いにおける乱入、その後の戦闘、そこで奴は一旦逃げた。
そして仲間と合流するべく船に駆けつけ、どうやら甲板が燃えているらしいということに気づいた矢先。
埠頭で、再び奴と鉢合わせた。
発見したのはこちらが先で、奴はなにかを待っている様子だった。
勘を頼りに推測するなら……おそらく、待ち伏せをしていたのだ。
乗客が火災から逃れるために船から降りてくるのを、闇討ちしようとしていたのだろう。
そんなことはさせない。あそこに仲間がいる。そう思い立ち、こちら側から仕掛けた。
だが奴もこちらの存在には気づいていたようで、その場は軽くあしらわれた。
そして奴が向かった先は、豪華客船火災現場。
なぜ船内ではなく甲板を目指したのか、それはわからない。
ただ、とてつもなく嫌な予感がするのだ。
いてもたってもいられず、奴を追った。
そして同じく甲板に到達したが……僅かに遅かった。
「……うそ、でしょ」
呆然と佇むガッシュ、チェス、ジェット、高遠、そして見知らぬ女の子の五人。
彼らの視線を仰ぐ『奴』。
転がるミリアの胴体と、首。
「そんな……」
遅かった、もう少し速くここに来れれば、奴の危険性をみんなに知らせられれば、結果は違ったはずだ。
速さが足りない。速さが足りていれば――ミリア・ハーヴェントは死ななかったはずだ。
火の熱さなど感じない。
後悔だけが、アレンビーの身を焼いた。
◇ ◇ ◇
(切れ味は……悪くない)
鮮血の滴る刀身を見て、殺し屋は思う。
頚椎を一刀で切断できるなら、得物とするには十分だ。
そして、肝心の獲物はというと、
(数は五、いや、奴も加わり六か)
レーダーどおりの数。
多い。
が、その内二人は餓鬼、一人は女、二人は死に損ない、厄介なのは奴だけか。
ちょうどいい。あのときの借りをまとめて返す。
奴の仲間諸共、刃の錆にする。
船上、いつでも退却が可能な環境。
火中、獲物は逆に逃げにくい狩場。
獲物、奴以外は雑魚と変わりない。
それらを考慮し導き出す答え――好機。
「――皆殺しだ」
ビシャスは深紅の刃を煌かせて、呟いた。
◇ ◇ ◇
【E-3/豪華客船・甲板/1日目/夜】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:精神崩壊、全身打撲、肋骨にひび、体力消耗(中)、精神力消耗(中)、髪を下ろした状態、呆然
[装備]:スペツナズナイフ@現実x2
[道具]:なし
[思考]
基本思考:人殺しはもうしたくない。
1:目の前の男に対処。
2:高遠を守ってあげたい。
[備考]
※キャロ殺害の真犯人は自分であると思っています。
※銃器に対するトラウマはまだ若干残っています、無理に銃を撃とうとすると眩暈・吐き気・偏頭痛が襲います。
※高遠を好意的に慕っており、騙されたことへの恨みはほとんどありません。
【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ】
[状態]:重傷(特に頭部に致命傷、応急処置済み)、出血による貧血、空腹、呆然
[装備]:コルトガバメント(残弾:6/7発)
[道具]:デイバック×4、支給品一式×3(ランダムアイテム0〜1つ 本人確認済み)
巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、ドミノのバック×2@カウボーイビバップ、
テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、 賢者の石@鋼の錬金術師、
カウボーイ風の服とハット、アイザックのパンツ、アイザックの掘り当てたガラクタ(未識別)×1〜6、
安全メット、スコップ、ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!、スペツナズナイフ@現実x2
[思考]
基本:情報を集め、この場から脱出する
1:目の前の男に対処。
2:チェスに後で詳しい話を聞く。
3:情報を集めるために各施設を訪問する。(とりあえず次は豪華客船。機会があればゴミ処理場も調べなおしたい)
4:謎の爆弾魔(ニコラス)を警戒。
5:仲間(スパイク)が心配。
6:明日の正午以降に博物館に戻ってくる。
[備考]
※テッカマンのことをパワードスーツだと思い込んでいます
※チェス、アレンビー、アイザック&ミリア、キールと情報交換をしました
※監視、盗聴されている可能性に気づきました
しかし、それは何処にでもその可能性があると考えているだけで、首輪に盗聴器があるという考えには至っていません
※チェスの証言を嘘だと見抜いています。また、アイザックは不死者などではなく本当に死亡したと考えています。
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、肉体疲労(大)、呆然
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料:アンパン×5)
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ、水上オートバイ
[思考]
基本:やさしい王様を目指す者として、螺旋王を王座から引きずり落とす。
1:ウヌウ……!?
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと金田一と明智を捜す。
[備考]
※剣持、アレンビー、キール、ミリアと情報交換済み
※螺旋力覚醒
【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:茫然自失
[装備]:アゾット剣@Fate/stay night
[道具]:デイバック、支給品一式、薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等)
[思考]
基本:なんらかの方法で螺旋王と接触し、アイザックを取り戻す術を得る。ミリアの命を最優先に考える。
0:え、
1:アイザックの記憶の中のチェスくんとして振舞う。
2:アレンビーたちの帰りを待つ。
3:仲間が揃ったら、螺旋王の下へ向かいアイザック奪還。
4:いざとなったら身を盾にしてでもミリアや仲間の命を守る。
[備考]
※アイザック・ディアンを「喰って」その知識や技能を得ました。
※不死者に対する制限(致命傷を負ったら絶命する)には気付いていません。
※チェスが目撃したのはシモンの死に泣く舞衣のみ。ウルフウッドの姿は確認していません。
※ジェット、アイザック&ミリア、アレンビー、キールと情報交換をしました。
※監視、盗聴されている可能性を教えられました。
※無意識の内に急激に進化する文明の利器に惹かれつつあります。
※螺旋王ならアイザックを元に戻せると信じ込んでいます。
※自己犠牲の精神が生まれつつあります。
※高遠とティアナにはまだ完全に心を許したわけではありません。
【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
[状態]:腹部に刺傷(応急処置済み)、出血による貧血、呆然
[装備]:スペツナズナイフ@現実x1
[道具]:デイバッグ、支給品一式、アイザックの首輪、バルカン300@金色のガッシュベル!!、豪華客船のメインキーと船に関する資料
[思考]
基本行動方針:未定。
1:目の前の男に対処。
2:『奇術師』として皆を船から脱出させる。
3:脱出後、以後の方針を練り直す。
[備考]
※ガッシュから魔本、および魔物たちの戦いに関する知識を得ました
※ティアナからなのは世界の魔法、出会った人間の情報を得ました
※ジェットと情報交換しました。
※これまで彼が実際に出会った参加者には、地獄の傀儡子の真の犯罪手段については話していません。
※チェスになんらかの敵対心を持っています。
※チェスから不死者に関する簡単な説明を受けました。
【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:疲労(中)、中度の貧血、左肩・左腕・右腿に被弾、右脇腹に刺し傷(全て止血済み)、激しい怒り
[装備]:パニッシャー@トライガン
[道具]:デイバック×6、支給品一式×4、支給品一式(食料-[全国駅弁食べ歩きセット][お茶][サンドイッチセット])
ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)、ドーラの大砲@天空の城ラピュタ(大砲の弾1発)、
ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING 、リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6、予備カートリッジ数12発) 、
東風のステッキ(残弾率60%)@カウボーイビバップ、アンディの衣装(−帽子、スカーフ)@カウボーイビバップ、
血塗れの制服(可符香) マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ 、ライダーダガー@Fate/stay night、
鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、注射器と各種薬剤、拡声器
[思考]
1:奴を倒す!
2:仲間を集め、螺旋王を倒す。
3:豪華客船へとゲームに乗っていない人間を集める(高遠の伝言)
4:悪いヤツは倒す!(悪くなくとも強い人ならばファイトもしてみたい……)
[備考]
※チェスの証言はもう余り信じていませんが、話は合わせるつもりです
※キールロワイアルのアレンビーver.「ノーベルロワイアル」を習得
※シュバルツ、東方不敗はすでに亡くなっている人として認識しています
※ガッシュ、キール、剣持、アイザック&ミリア、ジェットと情報交換をしました
※高遠を信用できそうな人物と認識しています
※無我夢中だったため、螺旋力に気が付いていません
※螺旋力覚醒
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:胴体にダメージ大、疲労(中)
[装備]:日出処の戦士の剣@王ドロボウJING 、ジェリコ941改(残弾7/16)@カウボーイビバップ、軍用ナイフ@現実
[道具]:支給品一式、レーダー@アニロワオリジナル、マガジン(9mmパラベラム弾16/16)×1
UZI(9mmパラベラム弾・弾数0)@現実、防弾チョッキ@現実
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:皆殺し。
2:武器の補充、刀剣類の獲得。
[備考]
※地図の外に出ればワープするかもしれないと考えています
【ミリア・ハーヴェント@BACCANO バッカーノ! 死亡】
※珠洲城遥の腕章@舞-HiMEはミリアの死体が装備したままです。
※豪華客船の甲板全域で火災が発生しています。船内への影響は不明。
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探偵不在の舞台は、事件から惨劇へと名を変える――
以上全て削除依頼ヨロ
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