アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ10
参加者リスト・(作中での基本支給品の『名簿』には作品別でなく50音順に記載されています)
5/7【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
○スバル・ナカジマ/○ティアナ・ランスター/●エリオ・モンディアル/●キャロ・ル・ルシエ/○八神はやて/○シャマル/○クアットロ
4/6【BACCANO バッカーノ!】
●アイザック・ディアン/○ミリア・ハーヴァント/●ジャグジー・スプロット/○ラッド・ルッソ/○チェスワフ・メイエル/○クレア・スタンフィールド
5/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○ランサー/●間桐慎二/○ギルガメッシュ/○言峰綺礼
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ/●枢木スザク/○カレン・シュタットフェルト/●ジェレミア・ゴットバルト/●ロイド・アスプルンド/○マオ
3/6【鋼の錬金術師】
●エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/○ロイ・マスタング/○リザ・ホークアイ/○スカー(傷の男)/●マース・ヒューズ
3/5【天元突破グレンラガン】
●シモン/○カミナ/●ヨーコ/○ニア/○ヴィラル
4/4【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル/○ジェット・ブラック/○エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/○ヴィシャス
2/4【らき☆すた】
●泉こなた/○柊かがみ/●柊つかさ/○小早川ゆたか
3/4【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗/●シュバルツ・ブルーダー/○アレンビー・ビアズリー
4/4【金田一少年の事件簿】
○金田一一/○剣持勇/○明智健悟/○高遠遙一
3/4【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル/○高嶺清麿/●パルコ・フォルゴレ/○ビクトリーム
2/4【天空の城ラピュタ】
●パズー/○リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ/●ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ/○ドーラ
3/4【舞-HiME】
○鴇羽舞衣/●玖我なつき/○藤乃静留/○結城奈緒
2/3【R.O.D(シリーズ)】
●アニタ・キング/○読子・リードマン/○菫川ねねね
2/3【サイボーグクロちゃん】
●クロ/○ミー/○マタタビ
1/3【さよなら絶望先生】
○糸色望/●風浦可符香/●木津千里
2/3【ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
○神行太保・戴宗/○衝撃のアルベルト/●素晴らしきヒィッツカラルド
2/2【トライガン】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド
2/2【宇宙の騎士テッカマンブレード】
○Dボゥイ/○相羽シンヤ
2/2【王ドロボウJING】
○ジン/○キール
【残り57名】
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f3/304c83c193c5ec4e35ed8990495f817f.jpg 【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【書き手の注意点】
トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、
>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします
無理して体を壊さない。
残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。
自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
叩かれても泣かない。
来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
人物背景はできるだけ把握しておく事。
過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
一人称と三人称は区別してください。
ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
携帯からPCに変えるだけでも違います。
【読み手の心得】
好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
荒らしは透明あぼーん推奨。
批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
一度死亡が確定したキャラの復活
大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
・上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
・初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
・予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。
・予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
・まとめwikiを参照のこと
http://www40.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/1.html
マンションが作り出す大きな日陰の中から一人の少年が飛び出した。
息が荒く、走り方もおぼつかない。
躓きそうになる。
振り返るどころか顔も上げず、ただ目を瞑り、前を見ようともしないで走り続ける。
ただ、走り続ける……。
◆ ◆ ◆
少年は周囲から名探偵と賞賛されるほど頭の回転の良い強い人間だった。
どんな謎めいた事件だろうと、殺意を垂れ流す殺人者を前にしようと、少年は決して恐れず、挫けず、諦めない。
例え悲観的な状況に陥ろうとも。知恵を振り絞れば乗り越えられない事は無いと少年は信じているからだ。
諦めなければ、いずれ必ず謎は解け、自身の正義の示すままに悪に立ち向かう力が生まれる……少年はそう確信していた。
その想いはやがて決意となり、数多の事件の果てにその決意が少年を支える一本の柱となる。
少年は自身の中に折れない柱を幾多の試練の中で築き上げたのだ。
それは少年の中の絶対的な力となり、悪に立ち向かう為の武器となった。
少年は疑わない。
乗り越えられない不幸なんて無いんだということを。
少年は信じている。
悪に屈する事なんて絶対にないんだということを。
この決意さえあれば、悪に負けることは無い、ということを……。
◆ ◆ ◆
「クソッ……、なんで……、クソ、クソ、クソ……」
閉じられた瞳の隙間から涙が零れ落ちる。
そこには一人の無力な少年が居た。名探偵ではなく、ただの、普通の少年……。
何の力も無い、何にも出来ない、無力な少年が……。
「クソ…、クソ……、クソ……」
少年の心に去来するものは、深い絶望。
かつて名探偵と呼ばれた勇姿は今は見る影も無く、現実を否定するかのような表情で目を瞑り、
今も尚、自身を食いつくそうとする絶望の底に向かって落ち続ける。
少年は考えもしなかった、自身の武器が全く通用しない人間が居るという事を……。
受け入れれるはずもなかった、自身の持つ最強の武器が易々と踏みにじられる様を……。
自身の持つ絶対的な武器を信頼していた少年の心は、一人の男によって無残にも折れた……いや、折られてしまった。
知略、戦術、駆け引き、そして勇気、少年の持つそれら全てを男は易々と踏みにじり、眼前に絶望を突きつけてきたのだ。
少年は無力だ。
少年は何も出来ない。
少年には誰かを助ける力も、誰かに立ち向かう力も無い。
少年は……弱い。
男の発した言葉が少年を蝕み、硫酸を流し込むかのように少年の心を破壊的に溶かしていく。
抱いた決意は砕かれ、心は絶望に落とされ、目に映る世界を、耳に届く音を、失意の内に少年は閉じる。
かつて勇猛果敢に殺人者を追い詰めた眼差しは失われ、代わりに光を失ったかのような虚ろな瞳が姿を見せた。
少年はもう、元の『名探偵』に戻る術を忘れてしまったのだ。
それが少年の、この世界での姿だった……。
「ちっくしょっっ!!!!」
だが、実際のところ、少年を追い詰めたのは何も男の言葉だけではなかった。
確かに、男の言葉は少年の心を砕き、絶望に叩き落した。それは間違いない。
事実、少年は心が折れた瞬間、全てを諦め、自身の死を受け入れた。
少年は殺人者に屈し、自身も殺人鬼の獲物の一人として命を刈り取られる事を覚悟したのだ。
しかし、少年は最後の最後で救われた、いや、救われてしまった。
一人の血に濡れた少女の助けによって……“命”だけを……。
――早く!金田一君!私の乗ってきたエレベーターに乗って逃げてください!
風浦可符香。
少年にとって、見張るべき殺人者の一人でありながら、少年と心を通わせたこの世界での友人。
彼女の救いの手は、少年を悪から生かした。
本来なら、それは素晴らしいほど美しい話として語り継ぐ美談となりえるだろう。
しかし、殺人者だろうと何だろうと、命を決して軽んじない少年の中に僅かに残った『名探偵としての心』は、それを美談として受け止めるわけにはいかなかった……。
「オレは……、オレは……、お前を見殺しにしてまで……」
少年を追い詰めたのは恐怖という名の感情……だが、この恐怖の対象は“迫ってくる何か”に対してではない。
少年の恐れているもの、それは、何も出来ず、一人の少女を死なせてしまったという、自分自身の中に蔓延する後悔の念だった。
少年の中にある『探偵としての心』、それは、決して誰かが無為に死ぬ事を認めるものではない。
犯罪者を許しはしないが、犯罪者が無為に死ぬ事も許してはならない。
例え、それが殺人を犯した重罪人だろうと、等しく生きる権利を有し、犯した罪を償うべきだと考えている。
それゆえに少年の正義は、例え犯罪者だろうと命の危機に瀕した者を救う為ならば自信の命を掛ける事を厭わないという思考を有しており、
その本能ともいえる思考は、考えるより体が動くようにインプットされているという高潔な精神となっていた。
つまり、助けられる命は助けなくてはならない。いや助けたい。
それが探偵としての、いや人としての少年の、当たり前の信念だった。
……しかし、この時、その信念に少年は逆らってしまった。
少女が少年を助けに来たとき、少年は直ぐに少女の状態を察した。
体の数箇所に銃創が見られ、そこから夥しい血が流れ出ている。
少女の命が風前の灯火だという事は直ぐに分かった。
例え、この場で直ぐに治療できたとしても、少女は決して助からない。
それを、数多くの遺体を目にしてきた経験から少年は瞬時に理解してしまう。
自分の腕の中で冷たくなっていく確かなイメージが浮かび、幾人もの過去に見た死に際の顔と重なった。
赤の他人、学校の教師、クラスメイト、様々な友人、そして、もっとも親しい後輩までも……。
それは探偵としての人の死に関わってきた者の悲しい習性だった……。
だが、それはあくまでイメージだ。
助かる可能性が限りなく0に近いとしても、何か奇跡が起きれば少女を助ける事が出来るかもしれない。
いや、奇跡が起きなくても助けなくてはならない。
いつもの少年なら、その信念を信じ、少女の命を救う為気力を振り絞って立ち上がったはずだ。
だが、その時の少年に、そのような決断を下す思考は残されては居なかった。
少年は少女に促されるままに、その場から逃げ、後悔だけが残る。
勿論、言い訳をするとしたら、先に自分を追い詰めた男の言葉のせいなのだろう。
男の言葉が、普段の少年の持つ冷静な思考と熱い心を凍てつかせ、矮小な無力な少年へと変えてしまったのだ。
当然、無力な少年に、絶望的な状況を打破する力などあるわけも無く、少年は少女の言うままに逃げる事を選択するしかなかった。
表向きは少女の最後の願いを聞き届けた上で、自身の命を守る為、緊急避難を行使したとして、
少女を助けられなかったという点において少年に同情こそすれ、非難される事は無いことだろう。
それは決して間違いではない。普通の人間なら、その行動は正しいと言ってもいいのだ。
しかし、その場から走って遠ざかる内に、少年の心の中に僅かに残った『探偵としての心』が警鐘を発し始めてしまう。
通常の思考が出来るようになってきた頃、少年は自分が許せない事に気づいた。
これまで幾人もの犯罪者と戦い、追い詰めてきた少年にとって、その犯罪者から逃げるどころか、
逃げる為に一人の少女の命までも犠牲にしてしまったという事実は、確固たる深い後悔と共に自身を攻め立てているのである。
少女は死んだ。
バイザーの男が殺した。
だが、助ける事を放棄した少年も人殺しと同罪だ。
少年が、少女を、殺した――。
少年は走り続ける。
向かうべき場所を見失い、自身の世界を閉じるように。
その手に大きな大砲とデイバックを握り締め、少年は闇雲に足を前に出すだけだった。
瞳から大粒の涙が零れ落ち、冷たいアスファルトの地面に染み込んでいくのも構わずに……。
◆ ◆ ◆
どれくらい走っただろうか、気が付けば、アイザックとミリアという二人の秒なカップルと別れた高速道路に上がる為の入り口まで来ていた。
ここまで来たのは本当に無意識での事だった。
おそらく、心のどこかで助けを求める自分が居たのだろう。
明智、剣持という頼れる二人に未だ出合ってはいないせいもあり、記憶の片隅に残っていた、この世界で知り合った新たな知り合いに無意識の内にすがったのだ。
誰でもいい、今、自分を苦しめる絶望を和らげる事が出来るのなら、誰でもいいから助けてくれ、と……。
少年の心は完全に名探偵として気概を失っていた。
少年はもう、本当にただの少年だった。
無力で、何の才能もなく、何も出来ない弱い人間……。
守る側から、守られる側、いや、守られる価値の無い人間に落ちぶれてしまったのだ。
少年の精神はもう、限界だった……。
その時、追い討ちを掛けるように定例の放送が始まる。
それは、少年を更なる絶望に叩き落とす悪魔の嘲笑となった。
「アイザックさんが……、死んだ?」
漏れるように呟き、呆然とした表情のまま少年はついに膝を突いた。
少年の名は金田一一、“元”名探偵……。
【C-3/高速道路入り口/1日目-日中】
【金田一一@金田一少年の事件簿】
[状態]:疲労、精神的疲労(中)、自信崩壊、茫然自失、肩に浅い銃創
[装備]:ドーラの大砲@天空の城ラピュタ、リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6)
[道具]:支給品一式、大砲の弾2発、予備カートリッジ数12発
[思考]
1:俺は無力なのか……
2:そんな、アイザックさんまで……
3:誰か助けてくれ……
[備考]
※高速道路の入り口は、最低でも1エリアに一つはあると推理しています。
※アイザックの不死については信用していません。もちろん、ポロロッカ星人であるとも思っていません。
>>2-43 どうでもいいけど速やかに出てけおまえら
邪魔だ
ならとりあえず企画の話を再開するか
↓から書き直しをするんだっけ?
【書き手の注意点】
トリップ必須。荒らしや騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付け、
>>1の予約スレにトリップ付きで書き込んだ後投下をお願いします
無理して体を壊さない。
残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの仮投下スレにうpしてください。
自信がなかったら先に仮投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
本スレにUPされてない仮投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
叩かれても泣かない。
来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
人物背景はできるだけ把握しておく事。
過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
一人称と三人称は区別してください。
ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
>フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
>ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
>位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
だからよけーなお世話だってのに何を付け加えてんだ
やるとして、参加者どうするんよ
板で出てくるの全部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジですかwww
最萌とかで出てきたキャラは確定で
ちょっとキャラ洗い出してみろよ
最萌だけでも
サラ・アディエマス
(スクールランブルシリーズ)
廉子(蟲師)
ムックル(うたわれるもの)
桂聖奈(極上生徒会)
ドミヌーラ(シムーン)
園崎魅音(ひぐらしのなく頃に)
ジュリエット・ナオ・チャン(舞-乙HiME)
真紅果林(かりん)
薔薇水晶(ローゼンメイデン トロイメント)
アル・アジフ(機神咆吼デモンベイン)
ゆうま(錬金3級 まじかる?ぽか〜ん)
ナツキ・クルーガー(舞-乙HiME)
リオーネ(ふしぎ星の☆ふたご姫シリーズ)
蒼星石(ローゼンメイデン トロイメント)
柏木優奈(ぱにぽにだっしゅ!)
黒須ゆり(マジカノ)
たゆね(いぬかみっ!)
カルラ(うたわれるもの)
和泉香(極上生徒会)
パキラ(錬金3級 まじかる?ぽか〜ん)
メディア(ぱにぽにだっしゅ!)
アンゴル・モア(ケロロ軍曹)
月村すずか(魔法少女リリカルなのはA's)
鶴屋さん(涼宮ハルヒの憂鬱)
沢近愛理(スクールランブルシリーズ)
日向夏美(ケロロ軍曹)
三枝みこ(かみちゅ!)
ステラ・ルーシェ(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
桂みなも(極上生徒会)
柚原このみ(ToHeart2)
佐藤綾乃(女子高生 GIRL'S-HIGH)
朽木ルキア(BLEACH)
一条かれん(スクールランブルシリーズ)
真壁こぬりちゃん(ぺとぺとさん)
マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム(舞-乙HiME)
キョンの妹(涼宮ハルヒの憂鬱)
ネリネ(SHUFFLE!)
とりあえず最初だけ
∩ :・:∵
>>22ガッ!
⊂、⌒ヽ∴: L/ ,r=''""゙゙゙li,
⊂(”。Д。)つ > 、、,,_ ,r!' チ ..:::;il!.. ┏┓┏┳┓
V V ; Y⌒r!'゙゙´ `'ヾ;、, ..::::;r!'゙ ┏┛┗┻╋┛
グフゥ ,i{゙‐'_,,_ :l}..::;r!゙ ┗┓┏┓┃
. ,r!'゙´ ´-ー‐‐==、;;;:.... :;l!:;r゙... ┃┃┃┃ ┏┳┳┓
,rジ `~''=;;:;il!::'li ┗┛┗┛ ┗╋┛┃
. ill゙ .... .:;ll:::: ゙li ..┗━┛
..il' ' ' '‐‐===、;;;;;;;:.... .;;il!:: ,il!
..ll `"゙''l{::: ,,;r'゙
..'l! . . . . . . ::l}::;rll(,
'i, ' ' -=====‐ー《:::il::゙ヾ;、
゙i、 ::li:il:: ゙'\
゙li、 ..........,,ノ;i!:.... `' 、 ∧ヌ∧
`'=、:::::;;、:、===''ジ゙'==-、、,,,__ `'(・∀-,,)
`~''''===''"゙´ ~`'''' ヽ ノつ旦~
〜( ,,(~)
ヽ)
ちゃんとやれ
たとえば、
アニメでは出てこないけど原作で出てきたキャラとかもOKにするとか?
そうするとやりやすいんだけど
そっちの方がリスト作りやすいしな
本当の意味で原作尊重ならそうすべきか
うたわれるもの
Fate
ひぐらし
ToHeart2
SHUFFLE
舞-乙HiME
ぱにぽに
極上生徒会
ARIA
シムーン
スクラン
ローゼン
苺ましまろ
うたわれるもの
Fate
ひぐらし
ToHeart2
SHUFFLE
涼宮ハルヒ
灼眼のシャナ
いぬかみっ!
ガーゴイル
SEED DESTINY
ふたご姫
最萌だとこんな感じか
>>26 基地外はほっとけ
>>24-25 じゃあこち亀いれようぜ
100巻全部wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
__ __
。////¬ γ////\
丿//////ヽ___///////ヽ
(//////ソγ ̄V ̄ヽ///////)
ヽ////// ヽ////丿
 ̄′//| ▲ ▲ |/ヽ゚
│/> ▼ ▼ </|
│/<γ ̄● ̄ヽ>/ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ。゚ヽ____丿丿 < おまいらディズニーを忘れてるだろ
ヽ\ ∽ ノ 丿 | もっかい原爆落とすぞコラ
\ ̄ ̄ ̄ / \__________________
 ̄ ̄ ̄
,、 -,,'""'l =,/ \
/ ./i `、
/ ィ/ ヾ,,、 }
lノ、i゙, , _,.r'`ゝ、r-、 |
ゝ,、( o) ̄'v'6,l i
>>29 誰だお前は
ヽソ.  ̄ ,r'、 ノ
', -‐'` ノ ヾr、._
', ` / ,r‐'゙/ \_
゙ フヾ゙,r''´,r/ /
_,,r'ヽ',~,r''/__/
‐''´ ‐''" !/ \
・・・ディズニーもたしかにアニメか…
あーーーーーーーーーーーーーーー入れちゃおうか…
考えた事なかった
バトロワを主催する動機ナンバーワンじゃん>ディズニー
なんとなくデ●ズニー主催で宜しいか
参加資格って何?
アニメになってることだけ?
ぶっちゃけそう
麻原彰光もアニメ化はしてるぜ
_______ ________
/;;;;;;;;;;;Y;;;;;;;;;;;;\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/;;;;;;;;;;;;;;;Y;;;;;;;;;;;;;;;;;\ |
/;;;;;;;jj|||从从从从|||jj;;;;;;;;;;ヽ | これのことか?
/;;;;;;;jj||!!:::: ''!|||jj;;;;;;;;;ヽ <
/;;;;;;;jj|||!!:::: '!||||jj;;;;;;;;ヽ |
/;;;;;;;jj||||!!!llllljjjj;;, ,;;jjjlllll!!!!||||||j;;;;;;;;ヽ .|
./;;;;;;jj|||||!:::<●> <●> !||||||||||||||| \_____________
|;;;;;j|||j|||||:::: / ||| ||||!
.|;;;jll!;jj||||||::: <_ _ || _ イ|||!
/;;jl!;jj||||||||||j,::: ,;jllllllllllllllj;, /|||||||||!
/;;;;;;;;jj|||||||!;|||||j;,!!'' ┬┬ ''!!;,./||||||||||||!, ゴゴゴゴゴゴゴ、、、、、
;;;;/;;;jj|||||||!;;;!|||||||j;,__/;;;;\__/;;;イ|||||||||||||!,
;;/|;;jjll!!||l!;;;;;;;!l||||||jiiiii;;;;;;;;;;;;;;;;;;/!|||||||!|||||||||!
//;jjl!;;jl!;;;;;;/ !||||||jiiii;;;;;;;;;;;;;;;/ \|||!i||||||||||__
/~⌒~ ̄| , !||||||jii;;;;;;;;;;;/ \  ̄\
/ | `ー―、!|||||ji;;;;;;/ -―'~ ̄ 、 \
/ / `ー!|||ji;/ ヽ
アニメ版麻原か…
参加しては
いけないという
理由は
ないっっっっっ
参加者リスト・(作中での基本支給品の『名簿』には作品別でなく50音順に記載されています)
5/7【魔法少女リリカルなのはStrikerS】
○スバル・ナカジマ/○ティアナ・ランスター/●エリオ・モンディアル/●キャロ・ル・ルシエ/○八神はやて/○シャマル/○クアットロ
4/6【BACCANO バッカーノ!】
●アイザック・ディアン/○ミリア・ハーヴァント/●ジャグジー・スプロット/○ラッド・ルッソ/○チェスワフ・メイエル/○クレア・スタンフィールド
5/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○ランサー/●間桐慎二/○ギルガメッシュ/○言峰綺礼
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ランペルージ/●枢木スザク/○カレン・シュタットフェルト/●ジェレミア・ゴットバルト/●ロイド・アスプルンド/○マオ
3/6【鋼の錬金術師】
●エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/○ロイ・マスタング/○リザ・ホークアイ/○スカー(傷の男)/●マース・ヒューズ
3/5【天元突破グレンラガン】
●シモン/○カミナ/●ヨーコ/○ニア/○ヴィラル
4/4【カウボーイビバップ】
○スパイク・スピーゲル/○ジェット・ブラック/○エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/○ヴィシャス
2/4【らき☆すた】
●泉こなた/○柊かがみ/●柊つかさ/○小早川ゆたか
3/4【機動武闘伝Gガンダム】
○ドモン・カッシュ/○東方不敗/●シュバルツ・ブルーダー/○アレンビー・ビアズリー
4/4【金田一少年の事件簿】
○金田一一/○剣持勇/○明智健悟/○高遠遙一
3/4【金色のガッシュベル!!】
○ガッシュ・ベル/○高嶺清麿/●パルコ・フォルゴレ/○ビクトリーム
2/4【天空の城ラピュタ】
●パズー/○リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ/●ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ/○ドーラ
3/4【舞-HiME】
○鴇羽舞衣/●玖我なつき/○藤乃静留/○結城奈緒
2/3【R.O.D(シリーズ)】
●アニタ・キング/○読子・リードマン/○菫川ねねね
2/3【サイボーグクロちゃん】
●クロ/○ミー/○マタタビ
1/3【さよなら絶望先生】
○糸色望/●風浦可符香/●木津千里
2/3【ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
○神行太保・戴宗/○衝撃のアルベルト/●素晴らしきヒィッツカラルド
2/2【トライガン】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド
2/2【宇宙の騎士テッカマンブレード】
○Dボゥイ/○相羽シンヤ
2/2【王ドロボウJING】
○ジン/○キール
【残り57名】
じゃ、これは破棄やね
・アニメキャラは全徴兵
アニメ作品化された元の作品のキャラも徴兵
・主催はディズニーっぽい
・リストは数が多いから順次作りあげていく
・出来た順から殺しあってもよい
ってところかな
鉄腕アトムもちろん出るよね
全部
大変だな
――思う存分に闘争を続けるが良い。
そう締めくくると、螺旋王は実験の参加者達に向けた2度目の定時連絡を終えた。
それは、実験の舞台となっている街の隅々にまで等しく響き渡る。
頂上に登った太陽に照らされじわりじわりと熱を蓄える路上にも、逆に陽を遮り薄く冷ややかな影で満たされる森の中にも。
そして、山の中腹にひっそりと佇む寂れた温泉宿。その中で身を潜める者達の上にも等しく響き渡っていた。
◆ ◆ ◆
天井から釣り下がり、時折思い出したかのように細かく明滅を繰り返す蛍光灯の黄ばんだ明かりの下。
狭く埃っぽい部屋の中に紙を捲る音と、その紙の上に筆を走らせる音だけが、静かなざわめきのように響いている。
部屋の中にいるのは、黒の騎士団の面々。
彼らのリーダーであり、その素顔を漆黒の仮面の下に隠してただ「ゼロ」とだけ名乗る男。
そんな彼を信奉し、また黒の騎士団に所属する戦士の一員である少女カレン・シュタットフェルト。
そして、彼女の級友にして今は気を失い布団の中で横たわっている華奢な少年ルルーシュ・ランペルージ。
定時放送の内容をメモに記し終えると、カレンはそれを今は眠っている級友の物にも書き写そうと、彼の荷物へと手を伸ばす。
そしてそれと同時に、放送が始まってより口を閉ざしたままのゼロの方を窺った。
「(…………ゼロ)」
指導者たるゼロ。彼の表情は頭を覆う黒い仮面により窺えないが、彼女にとってその心情を察することは難しくなかった。
虐げられる全ての弱者に代わり、彼らのために悪と立ち向かいそれを断罪するための組織――黒の騎士団。
その創設者であり、虐げられる者達にとっての希望。黒の騎士団のリーダーである彼がこの状況を嘆かないはずがない。
深い漆黒の仮面の中に、彼らを救えなかった事に対する悔恨と邪まな力を振るう悪への怒りを封じ込め、
身動ぎ一つせずに絶える姿に、カレンは強く心を打たれ、胸が締め付けられるような錯覚を覚える。
……と、そんな彼女の前でゼロが幽鬼の様にゆらりと立ち上がった。
「……カレンさん。ご学友のことをよろしくお願いします」
そう言いながら部屋を渡り、廊下へと続くドアの前までマントを引き摺り進む。そして、
「私は少し身体を温めてきます。元よりここに着たのはそのためでしたからね。
ルルーシュ君のこともありますし、しばらくの間はここを動けません。カレンさんも今のうちに身体を労わっておいてください。
これから先、慌ただしくなることも多くなるでしょうから……」
そう言い残すと、ゼロは静かにドアを閉めて部屋の外へと姿を消した。まるで、幽霊の様に静かに。
◆ ◆ ◆
ゼロを見送るとカレンは大きく息を吐いた。やはり彼は大きく心を痛め、悩んでいると……。
「……………………」
確かに今の状況は、はっきり悪いと断ぜざるを得ない。
螺旋王と名乗る輩によって殺し合いの幕が上げられてより、たった半日で25人――割合にして丁度3割ほどの人間が命を失っている。
事がこのまま推移すれば、再び半日が過ぎる頃には生き残りは半分にも満たなくなっているだろう。
そうなれば、反ロージェノム思想を持った人間を集めることも難くなり、黒の騎士団に十分な力を持たせることも叶わなくなってしまう……。
「(そういう意味では、さっきのルルーシュのあれは……)」
半時ほど前にあったルルーシュの勇み足的な行為。それを思い出しながらカレンは彼の寝顔へと視線を動かした。
リーダーであるゼロの意向を無視して事を進めたのは赦しがたいが、結果的には彼の出した指示は的確だったように思える。
ゼロもその点においては認めていたし、今回の件は不問にしてくれるとまで言ってくれていた。ならば……、
「――――フ」
緊張に固くなっていたカレンの表情が僅かに綻び、静かに眠る級友を見る目に少しの優しさが浮かんだ。
◆ ◆ ◆
横たわっている青年の衣服を緩め、手を取って脈を計ったりと、甲斐甲斐しく手当てを始めた少女。
それを襖に空いた穴の中の向こう側から、藍鼠色をした好奇心が強そうな瞳で見つめる一人の女がいた。
風呂上りのしっとりとした長く真っ直ぐな黒髪を流れるままに、薄暗い部屋の中でしゃがみ込んでいるのは、
大英図書館最強のエージェント。ザ・ペーパーこと、読子・リードマンである。
わざわざ一度建物の外へ出てベランダから入りなおし、彼らに見つからぬようこっそりと隣の部屋に忍び込んでいたのだ。
これは、普段はぼうっとしている彼女にしては珍しくエージェントらしい行動を取ったといえるだろう。
それだけ彼女はルルーシュという青年の異能に脅威を感じ、その異能を使った行為に憤りを感じていることの現れである。
「(……気絶。されているみたいですね)」
その能力の代償なのか、はたまた疲れや眠気など他の要因のせいなのか目当てとしていた青年は眠ってしまっている。
取りあえず、彼らの会話を盗み聞きして「悪いこと」の言質を取れればと読子は考えていたのだが、彼らは禄に会話もしない。
そして一人は姿を消して今は一組の男女が部屋に残るのみだ。結果、読子は踏み込む機会を逸し……、
「(……なんだかこれじゃあ出歯亀みたいです)」
……なんとも言えない居心地の悪さを感じているのだった。
それっぽく振舞っては見たものの、やっぱり彼女に諜報任務は向いていないということだった。
そして、彼女の現在のパートナーであり、割かしなんでもやってのけるあの男とはいうと――?
◆ ◆ ◆
「(……なんで、俺が男の裸なんか目に焼き付けなくっちゃならないんだ?)」
読子の頼れるパートナーであり、宇宙を駆け賞金首を狩るカウボーイであるスパイクは大きく溜息をついた。
今、彼は読子の元を離れ部屋から一人抜け出したゼロを見張っていた。
その場所は、先程まで自分達が浸かっていた露天風呂の中である。
「(クソッ! こんなことなら、向こう側を見張るべきだったな)」
異能には異能で……という読子の主張と、一対一なら万が一の場合でも対処しきれるだろうという目算の元、
スパイクは仮面の男の後を追うこと選んだのだが、その男が脱衣場の暖簾を潜った時にそれを激しく後悔した。
「(……にしても、奇妙な体つきの男だな)」
スパイクが嫌々ながらに目線を向ける先には、一糸纏わぬ姿となったゼロが湯に浸かっている。
それは、全体的にはヒョロっとした華奢な肉付きであるのに、何故か首周りだけはがっちりとしているという奇妙な姿だった。
「(……まぁ、四六時中あんな仮面を被っていりゃあな)」
出会ってより一度も外したところを見たことのないあの黒い仮面も、さすがに風呂に入る時まではしておらず、
今はその素顔――糸色望としての顔を立ち昇る湯気の中へと曝していた。
「(なんだか、頼りなさげな顔つきだな。あんなのでリーダーが……いや、そのための仮面か)」
部屋に残った二人と比べれば幾分か歳を取っているようにも見えるが、目の前の男も随分と若く見える。
修羅場馴れしているようにも見えないし、黒の騎士団などと大層な名を名乗ってはいるが所詮は子供の遊びの延長か……。
そんな風に考えると、湯気の香りも相まってかスパイクからも途端に緊張感が抜け出していく。
もたれる壁にかける重量を増やし、筋肉を緊張から解き放つとスパイクは目を伏せ、ゆっくりと待ちの状態へと移った。
危機と機会を鋭敏に察知する耳と鼻の感覚だけは残しながら……。
◆ ◆ ◆
螺旋王により知らされた自らの教え子――木津千里と風浦可符香という二人の死。
その突拍子の無さに、糸色望の心は身体を浸ける湯の表面の様に揺蕩い落ち着かないでいた。
自身の心の有り所を探し、糸色望は思索の迷路を彷徨う……。
「(本当に、まさか……という感じですねぇ……)」
誰かを殺す場面ならともかく、誰かに殺される場面なんてものが想像もできなかった二人が揃って死んでしまった。
3人の中で誰かが死ぬというなら真っ先に自分が――と考えていたのに。
先に生き尽きるからこその「先生」だと言うのに、まさか彼女たちの方こそが生を徒(いたずら)にする「生徒」となるとは……。
「徒(あだ)となった生は、仇(あだ)としてそれを為すべきでしょうか……?」
呟きながら糸色望は湯船の縁に置いた漆黒の仮面を見やり、そこに映った自分の顔を見る。
――丁度いいだろう?
黒い面に映った自分がそんなことを言った様に糸色望は感じた。
反ロージェノムを目論む黒の騎士団。その首領格である「ゼロ」という立場。復讐を為すと言うならそれは丁度よいだろうと。
鞄の中から見つけ出した仮面を、まるでそうするのが当たり前の様に被ったのもまた運命だったのだろうと。
「命を運ぶと書いて運命ですか。それじゃあまるで死神の仕事の様ですね」
糸色望は仮面の中で薄く笑うもう一人の自分に湯を浴びせ追い払う。
「……そんなの御免です。私向きじゃあないですよ」
自分の信条は絶望。自身の望みを断ち、人の望みを断つことだけ……。それが仇討ちなどとはとんでもない。
「というか、なんですかこのシリアスな雰囲気は……」
水面の下に潜らせた口から息を吐き、ブクブクと泡を立てて糸色望はいくらか気を紛らわす。
人が殺されたというのに笑っているのも不謹慎だが、だからと言ってすぐに復讐だなんていうのも空気に流されすぎだろう。
さりとて空気を読めなさすぎるというのも、それはそれで問題だが……。
「……本当に参りましたね。どう身を振っていけばよいのか」
頬を垂れる水滴を拭い糸色望は天を仰ぐ。
亡くなった生徒の命を背負って生きていくなんてのはあまりにも前向きすぎる……。
かといって、全てを打っ棄ってしまうというのも状況が、主にカレン嬢が許してはくれないだろう……。
「全てはコレのせいですよ。忌々しい……」
言いながら再び糸色望は仮面を睨み付ける。あの時、これを被りさえしなければ……と? 何かに気づく。
人一倍他人からの視線に敏感だからこそ気づけた、仮面の表面に映るある視線。その視線の持ち主とは――?
◆ ◆ ◆
――パチリ、と閉じられていたスパイクの目が見開かれた。
感じ取った「何か」に全身が総毛立ち、無意識の内に手が懐の銃へと伸びる。
目に映る光景に先程との差異はない。だが、温泉に浸かっていた男も何かを感じたのか逃げ出すように湯から上がってきた。
仮面を片手に脱衣場――つまりはこちら側へと向ってくる男の背後。深く茂った葉の陰に――!
隠れていた場所から飛び出したスパイクは、逃げ込んできた糸色望へカウンターで前蹴りを叩き込む。
裸の男がぐぇと潰したカエルのような声をあげ二人が離れた瞬間――そこへ真っ直ぐに伸びた大木が地響きを立てて倒れこんできた。
一瞬のうちに温泉の上へと架かった一本橋。その上を疾走し、一つの黒い影が二人に襲い来る。
サングラスの裏に凶眼を隠し、さらにその内に狂気を宿す傷面の男。人により、ただ「傷(スカー)」とだけ呼ばれる男がそこにいた。
大きく響く破裂音と共に、閃光と弾丸がスパイクのデザートイーグルより放たれる。凶弾は一瞬にしてスカーの元へと辿り着くが、
「――クソッ!」
男が迫る弾丸を身を捩っただけで避けたのを確認すると、スパイクは舌打ちしながら銃を収めた。
依然突進してくる男とスパイクが交差するまでは後一瞬。
その一瞬の内に、スパイクは拳を構えその場で3ステップ。迫るスカーも拳を強く固め巨木の上を3ステップ。そして――、
――二人は交差した。
全てを打ち砕くハンマーの様に打ち出されたスカーの拳が空を切り、そこにあった空気を破裂させる。
そしてそれと同時に、スパイクの地を舐めるような位置から繰り出された弧を描く蹴りがスカーの頭を刈り取った。
だが、手応えに会心のそれを感じ取れなかったスパイクは、勢いのままに身体を回転させ大きくその場を離れる。
そしてスパイクの読み通り、彼が前の一瞬にまでいた場所を再び轟と音を立てて大きな拳が通り過ぎた。
交差した二人が離れそれから一間。飛ばされたスカーのサングラスが温泉に飛び込み水音を立てた。
それを機に、今度はタンッと床を蹴りスパイクより間を詰める。フェイントの左裏拳から本命の右直突き――。だが……、
「(――強い!)」
さらに小刻みに拳と蹴りを繰り出すも、スパイクは攻撃は目の前の男に届かない。逆に――、
「グガァッ――!」
スパイクの繰り出す拳の間を縫ってスカーの掌底が胸を貫き、彼を壁際まで吹っ飛ばした。
「(……俺って、こんなに弱かったっけ?)」
自身のダメージを計りながらスパイクは目の前に迫る男を観察する。
暗く沈んだ瞳。顔に張り付いた狂相。全身から漂わせる血の匂い。殺人鬼……と言うよりもむしろ屠殺者。人を物の様に壊せる男。
「(こんなヤツに殺されるのは冗談御免だな)」
しゃがみこんだ状態から跳ね上がり様にハイローのコンビネーション。さらに脚を鞭のようにしならせ――1、――2、――3!
ハイのフェイントからローで脚を刈り取り、スタンプするように相手の胸へと踵を三発。
スパイクは華麗な足技を披露すると、そのまま背後の湯船へとスカーを叩き落した。
「……やっぱり俺は強い。――と」
湯船の中で立ち上がった男の頑丈さに賞賛を送りつつ、スパイクは再び拳銃を抜き出しずぶ濡れの男へとポイントした。
もう避けられまい。さて、どんな言葉で降伏勧告を告げるべきかとスパイクが思案し始めた次の瞬間――、
――目の前の床がスパイクに向けて炸裂した。
◆ ◆ ◆
「ゼロッ!」「スパイクさん!」
ただならぬ物音に何事かと廊下に飛び出していた二人の女は、そこへ逃げ込んできた二人の男を見て悲鳴を上げた。
全身に埃を浴びてそこかしこに擦り傷を作っているスパイクと、彼に引き摺られる歩いているゼロこと糸色望。
「――敵だッ!」
スパイクが言うが早いか、廊下の壁が爆散しその男がその隙間より姿を現す。
未だ無言。ただ単純な機械の様にその殺意をぶつけてくる彼は、追い詰めた男に止めの一撃をくれてやろうとするが、
「……やめてください」
読子の手の中から伸びた一本の白い線がその腕を捕まえていた。
それはただの紙をよった紐にすぎなかったが、ザ・ペーパーである彼女が触れれば、それは鉄を編んだワイヤーよりも固くなる。
だが鉄よりも固いはずのそれも、男の右腕に赤い火花が散ると本来の紙のごとく容易く千切れ霧散した。
そして無言の破壊魔は、自身の空けた壁の穴を潜り再び姿を眩ます。
◆ ◆ ◆
「……………………」
合流したスパイク達よりいくらか離れた暗がりの中で、彼らの気配を探りつつスカーは自身の右腕を見ていた。
破壊の練成陣が刻み込まれたそこに残された痣。それを見て、先程の女が使った能力を推測する。
「(…………紙か)」
構成物質の解析によって得られた感触によると、腕に巻かれたあれはただの紙以外の何物でもなかった。
だがしかし、ただ紙を練成しただけではあの様に硬度が増すなどということはない。それに練成反応もなかった。
一見すると錬金術に近くはあるが、全く未知の能力……そう判断せざるを得ない。
「……まぁ、いい」
息を整えなおし右手を強く握ると、スカーは再び彼らの元へと近づき始めた。
女の術は不可解だが、紙にしろ何にしろ右腕で触れればそれで問題はない。そして、他の3人も脅威ではない。
「ここで……全員、殺す」
獲物の近くまで静かに忍び寄ると、スカーは再び右腕に宿る破壊の力を解き放った。
◆ ◆ ◆
予期もしなかった強敵の出現により、ルルーシュが静かに眠っていた和室の中は、今や激しく色めき立っていた。
「読子、あの化物はなんだ。お前の親戚かなんかか?」
「解りませんけど、多分あの方も特殊能力者かと……、おそらくは手に触れた物を破壊する」
「それは、見りゃあ解る……」
カレンやゼロと共に逃走の準備を進める中で、スパイクは軋む身体に苦痛の声を漏らした。
あの瞬間、散弾のように浴びせかけられた浴場の床石。それに打ち据えられた全身が悲鳴を上げている。
骨や眼などの器官にダメージがないのが不幸中の幸いだったが……、
「それ大丈夫ですか? すごく痛そうなんですけど……」
「ああ、まずいな。これじゃあ、銃が握れねぇ……」
ガードした際に打ち据えられた右手の甲が青く腫れ上がり、指が痺れて握れなくなってしまっている。
子一時間もすれば痺れは取れるだろうが、今は拳を打つことも銃を握ることも叶わない。
「ともかく逃げるしかないな。今のところは……って、おい。まだ起きないのかそのガキは?」
スパイクの目の前では、先程よりカレンとゼロがルルーシュを起こそうと必死になっていたが、
当のルルーシュはまるで毒リンゴを食べてしまった白雪姫のごとく、眠りの淵から上がって来ようとはしなかった。
「――仕方が無い。俺が背負っていくか」
と、そう言ってスパイクが横たわるルルーシュの肩に手を回そうとした瞬間――。
◆ ◆ ◆
破壊の力によって一瞬で開けた壁の向う。
スカーの目の前に最初に飛び込んできたのは、例の女より放たれる紙の紐だった。
それを破壊の力を発揮した右手であしらいながら、部屋の中へ視線を走らせる。
こちら側から見て部屋の奥にいる例の女は後回し。
床に転がっている先程の男ともう一人の子供もいつだって殺せる。
黒仮面を被った男が戦う術を持っていないのももう確認済みだ。
ならば――、
一瞬で選別を終えた無言の破壊魔は、その最初の標的を銃を構えた赤毛の女に定め――、
「(死ね)」
――その破壊の右腕を彼女へと突き出した。
◆ ◆ ◆
日焼けし、色褪せた畳の上に身体より噴出した血が撒き散らされた。
そして、更にその身体よりボタリボタリと血が垂れ落ち畳の中へと染み渡ってゆく……。
スカーの持つ破壊の掌の最初の犠牲者となり、その身体に致命的なダメージを受けたのは――、
「――死んだらどうする!」
彼を慕う少女の悲鳴を背に受けるのは、現黒の騎士団のリーダーこと――糸色望だった。
最初の標的となったカレンを庇い、彼女と破壊魔の間に割り込んだ彼は対面するその男に、言う。
――死んだらどうする、と。
今まさに彼らを殺さんとする相手に言うには、それは滑稽な台詞だったかも知れない。だが、糸色望は繰り返す。
「……死ん、だら……どうするんです。責任、取ってくれる……んですか?」
絶望から復讐に身を投じ、何もかもを捨て、何もかもを壊そうとする男を糸色望は問い詰める。
「彼女が、死んだら……。あなた、責任取れるんです……か」
糸色望は人間の生と死とは、人が人を殺すこととは何かを目の前の男に問う。
「私は……。私は……、私は……責任取れません……でした、よ」
糸色望は自らの血の中に膝をつき頭を垂れる。まるで誰かに懺悔を捧げるかのように……。
そして、その後ろには瞳の中に激しい怒りと悲しみを湛え、銃口をその怒りの対象へと向ける少女がいた。
寂れた温泉宿に、再び一発の銃声が響き渡る。
しかし、それは仇を討つには至らず、破壊魔は再び姿を消し其処には静寂と悲しみ、血の匂いだけが残った。
◆ ◆ ◆
「……遺言を、残します」
それが、糸色望が辿った人生の最後の場面だった。
血濡れの彼を抱き支え、嘆き涙を流す少女をなだめ最後の言葉を紡ぐ。偽りでも希望を持てるよう……。
可符香さんならこう言うでしょう……。
――ホワイトライ(優しい嘘)ですよ。先生。
「カレンさん。安心してください。私は死すとも……、ゼロと黒の騎士団は……不滅です」
眼を開き、耳を寄せる少女に糸色望は更に騙る。
「あなただけに、明かし……ましょう。ゼロの……秘密を……」
カレンのためだけのゼロは、彼女を優しい嘘で欺く。
「ゼロは……、ゼロという存在は……一人だけの存在ではないのです。
何故、ゼロが常に仮面を被って、正体を隠しているか……解りますか?
それは、誰しもが……ゼロに成れる為、です。
例え、その時のゼロが死んでも誰かが仮面を継げば、ゼロと黒の騎士団は……なくならない。
理解しましたか……、カレンさん?」
自分の顔を悲壮な表情で覗き込む少女が涙を零しながら頷いた時、糸色望は少しだけ心が軽くなったような気がした。
「……最後に、告白しましょう。私は、あなたが……いつも接していたゼロとは、別のゼロです。
あなたを欺いて、利用……していました。許してくれますか……?」
もう視界は薄暗闇に覆われ少女がどんな顔をしているかは解らなかったが、糸色望は続けて言葉を紡いだ。
「私の、ゼロとしての……最後の、仕事……です。
糸、色……望が、命じます。
カレン、さん……あなたは、この仮面を……次の、ゼロへ……。ルルーシュ君へと……伝えてください。
彼もまた……ゼロと、成り得る……ひと…………」
まだ自分が生きているのか、それとも死んでいるのか……それすら曖昧な感覚の中で糸色望は最後の言葉を……。
「……遺言が、長くて……すいま……せ……ん……………………」
……ルルーシュ君はそうなんですよね? 間違っていたら、彼に迷惑をかけることになりますが。
まぁ、これが嘘から出てきた真になるよう……私も、向こう側で……………………………………………………………………。
【糸色望@さよなら絶望先生 死亡】
木漏れ日の中を土と枯葉をザクザクと踏みしめながら、先を急ぐ黒の騎士団の姿があった。
先頭を行くのは、赤く泣きはらした眼に新しく強い意志を宿したカレン・シュタットフェルト。
カレンは、山の中で歩きやすい場所を探しながら黙々と歩を進める。
その頭の中にあるのは、先刻「先代」ゼロより聞かされた衝撃的な真実。
ひどく驚かされたが、ここで初めて出会った時のゼロの態度といい、ルルーシュの突飛な行動といい、
思い返せば合点のいくことばかりであった。
カレンは脇に抱えるゼロの仮面を強くだきしめ亡くなったゼロに誓う。
――ゼロを後継へと伝え、決してゼロと黒の騎士団を絶やさない事。そして、いつかその目標を達成することを。
そんなカレンの後ろを追うのは、未だ眠りから覚めない少年を背負うスパイク・スピーゲルと、
彼に背負われ未だ事の移ろいをなんら知らないルルーシュ・ランペルージ。
軋む身体に鞭打ちながらスパイクはカレンの後を追い、そして考える――女は怖い、と。
それは前を行く少女のことではない。後に、あの温泉宿に残してきた読子・リードマンのことである。
彼女は自らあそこに残ると言い出したのだ。そして、あの化物の様な男をもう一度迎え撃つと……。
「(あいつも、また化物だな……)」
その時、スパイクは初めて彼女が今まで本気の一欠けらも出していないことを知った。
あの彼女が纏う雰囲気……それは、それまでのほんわかとした柔らかくぬけたものとは全くの別物だった。
今まで彼女はエージェントとして一体何人の敵を死に追いやり、そしてその死を受け止めてきたのか……。
百戦錬磨の賞金稼ぎにも恐れを抱かせる彼女はまるで、――母親のような死神。
その死神と相対するであろう化物に哀悼の意を念じ、スパイクは逃げるように山の中を歩き続けた。
【H-6/山中・北東/一日目/日中】
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労(中)、全身打撲(軽)、胸部打撲(中)、右手打撲(重+痺れ)
[装備]:デザートイーグル(残弾7/8、予備マガジン×2)
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ)
[思考]
1:ひとまずキャンプ場まで行き、そこで読子を待つ
2:黒の騎士団やこの状況についてカレンに尋ねる
3:読子と合流できたら、一緒にはやて達を追う
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ワルサーP99(残弾15/16)@カウボーイビバップ
[道具]:デイパック×2、支給品一式×2(-メモ)、ゼロの仮面とマント、メロン×12個、不明支給品(0〜2個)
[思考]:
基本:黒の騎士団の一員として行動。ゼロの命で動きゼロを守る
1:ひとまずキャンプ場まで行き、そこで読子を待つ
2:ルルーシュが起きたら、先代ゼロより託されたゼロの仮面を渡し事情を説明する
3:その後は新しいゼロ(ルルーシュ)に従って行動する
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:精神的疲労(大)、気絶
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
0:……………………(気絶中)
1:状況の把握。
2:以下の実行。
「情報を収集し、掌握」「戦力の拡充」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
◆ ◆ ◆
スパイク達が出立してより大分後、再び静寂に包まれた温泉宿の中を一人の男が進んでいた。
カレンの放った弾丸が掠った左肩に更なる手当てを施し、ますますもって動き回る死人の様な状態で。
だが、その眼に宿る意志は未だ強いまま……。
――死んだらどうする。
あの時、その言葉にスカーは一瞬だが躊躇した。同じ様なことは何度も、それこそ人を殺した数ほどに言われ続けてきたのに。
何故今更になって怖気づくのか。相手が目的とする仇ではなかったからか、それともあの男が特別だったのか……。
だがそれはあくまで一瞬の感情の揺らぎにすぎない。今のスカーは再び直前の、復讐の道を往く心を取り戻している。
ぎしぎしと床が軋む音を隠そうともせず、スカーは再びあの場所へ、あの男を殺した場所と戻る。
普通に考えればもう誰も残っていないはず。だが、誰かが残っている――そんな奇妙な予感があった。
かくしてスカーはそこへと再び立つ。そしてそんな彼を待っていたのは……、
「……おまえか」
……一人の女。大英図書館のエージェント。ザ・ペーパーこと読子・リードマンだった。
そして、その傍らには着衣を整えられ布団の中で静かに眠るあの男の姿があった。
立ち上がり相対した無言の女に、スカーは同じく無言で破壊の力が宿る右腕を前に出して構える。
二度、女の能力を受けているがその力の種は割れておりもやは女は彼の敵ではないはずだった……、が!
「――――グッ!」
突如、太腿に走った激しい痛みにスカーは短い呻き声を洩らし、それを見て絶句した。
いつの間にかに、何の前触れもなく白い矢が……、「紙」がそこに刺さっていた。
刺さっていた矢は、すぐに只の紙に戻るとするりと傷口から抜け落ち、ぽっかりと開いた傷口はそこより血を溢れさせる。
「………………私は、あなたを許しません」
無言だった女が口を開くと、それと同時に両方の掌の中に湧いて出てきたかのように紙が溢れる。
それを見てスカーの額に脂汗が浮かび、慄くと同時に彼は敵を過小評価していた自分を叱責した。
傷ついた脚にまだ力が入ることを確認すると、絶命の一撃を放つべく慎重に機を窺う。
……と、本気を出したスカーの耳に何かざわめきの様な音が聞こえ始めた。
それはスカーの全周を覆い、少しずつその大きさを増し、増してくる度にスカーの緊張を煽る。
そして彼は波打ち始めた壁や天井を見て悟った。すでに自分が死地にいることを。白鯨の腹の中に取り込まれていることを……。
「ペー……パー……――!」
その部屋は、すでに壁も天井も何もかもが掻き集められた紙によって造られた彼女の空間だったのだ。
その世界の主が侵入者に眼差しを据えると同時に、紙のざわめきは主人の発言を妨げぬようにかピタリとやんだ。
そして、その静寂の中で彼女は激しい怒りを込めて侵入者に死刑宣告を叩きつける。
「――許すことが……できません!」
そして、紙と紙に仇なす者との戦いが始まった…………。
【H-6/温泉施設・紙の部屋/一日目/日中】
【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康、怒り心頭
[装備]:メモ(百枚程度)、飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:デイバック、支給品一式(-メモ)、パンツ、不明支給品(0〜2個)
[思考]
1:傷の男を倒し、ゼロ(糸色望)の仇をとる
2:その後、キャンプ場に向かいスパイク達と合流する
3:そこで、カレンやルルーシュに事情を説明してもらう
4:はやて達を追い、合流する(※はやてにパンツを届ける)
[備考]
※事情は把握していませんが、黒の騎士団は「悪いこと」をする組織ではないようだと認識しました
※はやてがやろうとしていることを誤解しています
※○極○彦の小説や、仲間から集めたメモ紙はは紙の部屋の材料として消費されました
※温泉施設内にあるありとあらゆる紙製品が紙の部屋の材料として消費されました
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、左脇腹と右脇腹、右手の親指を除いた指四本にそれぞれ切傷(応急処置済)
左肩に銃弾が掠った傷(手当て済)、右太腿に刺し傷(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:紙の部屋より脱出
2:逃げることも視野に入れた上で、紙使いに対応
3:状況が落ち着いたら、しばらく休息に専念する
4:どこかで、地図や他の支給品一式を手に入れる
[備考]:
※会場端のワープを認識しました。
※スカーが耳にしたのは、はやての拡声器による放送です。制服のくだり以前は聞き逃しています。
※糸色望の死体は、温泉施設内の紙の部屋の布団の中で寝かされています
削除依頼だしといて
まあそのうちに
とっとと移転するという話は明確に出てるし
しかも今回のこれもコピペだから削除してもらえるだろ
69 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/16(日) 15:49:35 ID:sg8nGVB6
結局移転すんの?
しないだろ
こちらはしないしする必要もねー
そんなことより参加者を決定すべし
したらばってのは結局は居直り強盗みたいなもんだからな
まぁ別に止めやしないさ
ロワ企画は好きだから新しい企画が始まるなら歓迎する
…でもさ、参加者を
>>22のようにごちゃごちゃにするのは最初から完結する気が全く無いってのがバレバレだからねぇ
挙げてあるキャラを全て書くことができるのか?
カオスが好きならカオスロワにでも行けばいいだけだし
意味もなく乱立だけはマジ勘弁な
完結しろなんて誰がいつ言ったんだ?wwwwwwwww
バトルロワイアルの企画をするスレであって
SSを完結させるスレではありません
SSとかをやりたいなら別のスレでやってください
ハイハイ揚げ足揚げ足
完成しないモノを作ろうとするなんて真性の馬鹿だなぁ…
子供の言い訳だなw
あふれる若さでこれからも頑張ってくださいwww
どこが子供の言い訳なのか説明して欲しい所だが…
あと一つ忠告しておくよ
wを多用していると頭悪く見えるから気をつけような(´ー`)
企画をたててロワの実行するのがパロロワってもんだろう
そんなに企画をしたけりゃ妄想スレでもなんでもたてりゃあいいのに
何でこんなとこで企画だけするのか全く意味不明なんですが
>企画をたててロワの実行するのがパロロワってもんだろう
誰がそんな事決めたんだ?
したらばできめられたルールではそうなんだろうよ
ここでは全く関係ないけどなーー
ここはバトルロワイアルをやるスレであって
「パロロワ」スレじゃないんですよ
あ、言い換えると
「パロロワ」というのをしたらばの団体で規格かなんか勝手に作ったのかもしれないけど
うち等2ch側にはなんの関係が無いという事です。
したらばの推奨する「パロロワ」だけが「バトロワ」じゃないの
さて、前半だけしか指摘されていないんですが
後半の方は同意したとみてよろしいですか?
削除人さん削除乙でした!
後半の指摘なんて何度もされているけど無視ですかそうですか
自分達の書いたwikiがソース?
はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ??www
>>88 ウリナラルールを披露するのは結構ですが
うちまで巻き込まんといてくださいね
バトロワはやりたいけどあんた等の言うパロロワはやりたくないという事です
ここはバトロワスレです
2chにいくつパロロワスレがあって
おまえが言うようなバトロワスレがいくつあるのか数えてみ
数の多さは関係ねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
そういう態度がお前等嫌われてるんだろうがよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>91 そんなに“バトロワ”がしたいなら新スレたてれば?
“パロロワ”であるアニロワスレで何を言っているんだ、と
いつからかはわからないが、「パロロワ」とかいう形でルールをまとめたがる厨房が多くなってきたんだよね
他のバトロワ関係のスレでも話が出てるけど
「バトロワとは…」とか語りたがる厨が多くなってきて
そいつらが各板に自分達の推し進める「パロロワ」を押し付けるようになってきて
「俺達の推し進めるパロロワはこんなにはってんしてるんだー」とか自慢するようになって来まして
ちょっとおかしいよねー
>>94 ここはバトルロワイアルのスレであってパロロワのスレではありません
スレタイに思いっきり書いてあるでしょ?
テンプレは勝手にあんたらが変えたようだけど
バトルロワイアルとは、殺しあってればバトルロワイアルです
それ以上でも以下でもない
感動とか名作とかは余計な御世話です
したらばの言ってるのは、長距離走やバレーボールというスポーツに、
観客を喜ばせるために感動と涙が必要で、そのための演出としてあれをしなければならない
これをしなければならないと口出ししてるのとおなじです
長距離走は長い距離を走ってそのタイムを競うというその基本だけを守ればいい
余計な事はいらない
バトルロワイアルも、単に殺しあっていればいいだけ
完結だとか名作だとかは余計な御世話だし、
フラグなんてもっと大きな御世話
しつこいから一応言っておくけど、ID:lJKdW6Evも荒らしの自演だと認識してるから。
荒らしをスルーできない人は荒らしです。無論俺も同罪だがね。
はい、言論封鎖がきましたよ、と
「荒らしの自演」って便利な言葉だよな
なんだって「荒らしの自演」になるし
しつこいから一応言っておくけど、したらばや他のパロロワ?wも、ただの荒らしの自演だと認識してるから。
荒らしをスルーできない人は荒らしです。
けど私達は一応丁重に扱ってますけどね、最低限
そこが人間の質の違いなんでしょーね
…自分のブログとかで書けばいいじゃん。
>>97の言いぐさだとここでやる意味が全く無いと思うんだけど
ちなみにその“バトルロワイアル”SSはリレーも無し?
もしそうなら新しくスレたてる事をオススメする
リレーは当然あるんじゃないですか?
死亡した人間のデータ継承だけはするでしょうから
ただ、
>>97の言っている事の方がバトロワに近いです
パロロワは認めてませんから
パズーは はりせんぼんで こうげき!!
そんごくうは しんだ!!
どらえもんは ちきゅうはかいばくだんを つかった!
ミス!
↑
これでもバトロワ
ワロタww
たしかにそうだ
いちいちリアルに深刻に書く事なんてねえよな
それでも十分面白いし
ならなおさらカオスロワに行くべきだな
君たちのバトロワは決してここでは認められないと思うから…
最近ここに来た俺に、ここまで殺伐としている理由を誰か三行で説明してくれんか。
>>105 それはおまえらの都合であってうち等の都合じゃありませんよ
あんたらのいうカオスロワにすればいいじゃないですか
>>105 あんたらがパロロワとでも銘打って別のスレに行くべきだ
というよりももはやあんたらのバトロワはバトロワじゃないよ
パロロワという、なんだかよくわからない別物
名前変えて他のスレでやれ
カオスって混沌って意味ですかね
したらばのルール(パロロワのルール)に従えないのをすべてカオスとでも言ってるんだったら
バトロワというのはそもそもカオスですと、お答えしますが
>>107 違う違う、少し落ち着こうって
全て自由で簡単に虐殺、蘇生等の展開はここのアニロワ2ndでは御法度ってこと
既に始まっている以上新しく始めた方が早い
それにここに固執していても無駄な理由がちゃんとある
アニロワ2ndは“2nd”
つまりアニロワ1stの次作品
君たちの嫌いな“パロロワ”なんだ
嫌いな作品の2nd扱いにされるのは“バトロワ”好きとして屈辱じゃないのかい?
1はそういうパロロワに近いものだったかもしれないけど
今はそのやり方が否定されてるってだけですが何か
ていうか、1回目の焼き直しをしてどうするの?
確かに…2回も3回も同じルールでやってどうするんだ?
キャラ変わっただけで全く同じになるだけだろ
>>110 お前はさっきから何反応してんだ?
コイツには何を言っても無駄だって事を何故学習できない?
99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2007/12/16(日) 20:09:17 ID:CRaK50Pq
はい、言論封鎖がきましたよ、と
コイツには何を言っても無駄だって事を何故学習できない?
で全て意見を封鎖できるじゃん
こういうやり方かよ
>>79 亀レスだけど、
>>78は
>>76に向けた言葉なんでよろしく。
ちなみにwは頭悪く見えるのを承知した上でそう見せたい時に使ってるんでお気になさらず。
普段は頭よさそうにみせたいんですねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
自分を着飾りたいという虚栄があることが透けるレスだな
俺はお前等2ちゃんねらーとはレベルが違うんだとか思ってるんでしょう
差別的発想ですね
『――それまでの間、思う存分に闘争を続けるが良い』
どこからともなく聞こえてきた螺旋王ロージェノムの言葉が終わる。
そう、たった今第二回定時放送が終了したのだ。
今まで一触即発の状況に陥っていた二人の青年は睨み合っていたが、放送が始まった事で彼らはメモを取っていた。
勿論、禁止エリアの場所を地図に記しておくためだ。
試した事はないがいくら彼らでも禁止エリアに入れば無事では済まないだろう。
いや、無事に済むわけがない。そうでなければ禁止エリアを設定する意味がない筈だからだ。
ラダムのテックシステムにより、テッカマンとして生きる事を余儀なくされた彼らを。
Dボゥイこと相羽タカヤ、またの名をテッカマンブレード。
Dボゥイの弟にして相羽シンヤ、またの名をテッカマンエビル。
放送が終わり、それぞれ複雑な表情をしている彼らを殺せるくらいでないと、禁止エリアの意味はない。
「ッ! ゆたか!!」
予想以上に多すぎる死者の存在を知り、言いようのない怒りに表情を歪めていたDボゥイ。
ラダムの素体テッカマン選別と同じようなものを感じる、許すことは出来ないロージェノムの行為。
ロージェノムに対する溢れ出す怒りの大きさに、Dボゥイはその時まで思わず忘れていてしまっていた。
以前から危惧していた事態が、一度経験していた出来事がまたやって来たのだという事を。
「そんな…………こんなことって……」
Dボゥイとシンヤの只ならぬ雰囲気に、放送が始まる前から不安そうな表情を浮かべていた少女。
禁止エリアの位置が読みあげられていた時は、彼らと同じようにメモを取っていた少女。
死亡者の発表が行われ、ある一つの名を聞いた時点でメモを落とし、更に彼女にとってもっとも馴染み深い名前が。
その名前が呼ばれた時、声にならないほどの悲しみを知った少女。
陵桜学園高等部一年生、小早川ゆたかがそう言って力なくへたれこんでいた。
只でさえ病気がちで弱弱しいゆたかの身体。
そんなゆたかの身体が余計に弱弱しく、こぢんまりとしたようにDボゥイは見えてしまった。
「嘘だよね…………パズーくん…………」
数時間前に出会い、無邪気に笑っていた少年、パズー。
ゆたかが気を失い、目を覚ました時には既に何処かへ行ってしまったがなんだか友達になれそうな気がした少年。
そんなパズーが死んでしまった事実がゆたかの意識に重く圧し掛かる。
しかし酷な言い方だが、ゆたかはパズーとはほんの少しの交流しか持たなかった仲。
不謹慎ながらもDボゥイはゆたかのショックはそれほど大きくないと思っていた。
勿論、ゆたかが以前に話していた、あの名前を持つ人物の死と較べての話だが。
「…………こなたお姉ちゃん……」
『泉こなた』
確かにゆたかの両耳に入ってきた馴染み深い名前。
これは夢なんだ、そう思ってもあの時感じた、ゆたかの身体の震えはあまりにも現実味を帯びていた。
そう、今も震え続けているゆたかの身体は一向に収まる様子もない。
「ゆたか…………」
Dボゥイがゆたかの名を呼ぶ。
ゆたかを励ますことが出来ない自分を、Dボゥイはとても無力な存在だと悔やむ。
口が達者とは言い難いDボゥイは口を強く噛み締めている。
只、その両眼にはラダムへの憎しみと同じ位の怒りを秘めて。
「Dボゥイさん…………」
そんな時ゆたかがDボゥイの手をそっと握る。
きっと今のゆたかはなにか、自分を支えてくれるものが必要だったのだろう。
こなたが死んだという事実に、震え続ける自分の身体を止めてくれるDボゥイの、暖かい手が今のゆたかにはたまらなく欲しかった。
只、Dボゥイの手を握ってもやっぱり止める事は出来ないものがあった。
放送が終わったときから、いやこなたの名が呼ばれた時からゆたかの頬を流れていた涙は止まる事がなかった。
「なんで……なんで……パズーくんや……お姉ちゃんが…………うぇっ……ひっ……」
頭ではわかっているその後の言葉がとてもゆたかの口から出ようとはしない。
その言葉を言ってしまうと、永遠に涙が出てきてしまうような気がしてしまうから。
そんな涙を流しながら、最後まで喋る事が出来ないゆたかをDボゥイ無言で見つめる。
ゆたかのとても小さな、今の彼女の様子を表しているような小さな手を優しく握り返す。
不器用で無骨なDボゥイにはそれしか今のゆたかにやれることはないからだ。
(お姉ちゃん…………なんで……なんで………………どうして…………ひどいよ……)
止まる様子を見せない涙を流し続け、ボロボロの顔でゆたかはあの夢の事を思い出す。
目を覚ましたときはおぼろげにしか覚えていなかったあの夢の鮮明な記憶が蘇る。
『ううん、ケンカはしなかったな。
でも、ここで“終わり”だと思うと残念かなって』
あの時こなたが言っていた言葉が何度も、何度もゆたかの頭の中で再生される。
あの夢でこなたが言っていた言葉の意味が、今のゆたかにはハッキリとわかってしまった。
認めたくはない、たとえ自分の虚弱体質が治ると餌を釣られても絶対に認めたくはない事が。
そう、こなたは死んでしまったという事。
その事実がゆたかの胸に深く突き刺さる。
その傷はゆたかの小さな胸にはあまりに大きすぎた。
『あ、そうそう。お父さんに伝えといて。“『俺より先にいくな』って約束守れなくてごめん”って』
(ひどいよ…………そんなこと…………叔父さんに言えないよ……そんなひどいこと…………私には言えないよ…………)
いつもこなたを可愛がり、ゆたかにもまるで娘のように接してくれた泉そうじろう。
彼はきっとこなたや自分を探しているに違いない。
きっと碌に寝ずもせずに愛する娘の無事を祈りながら。
もし自分が無事にこの殺し合いから脱出出来た時、自分はそんなそうじろうに対して何か言うことが出来るだろうか?
きっと涙が溢れ、何も出来るはずもない。
精々その場で泣き崩れ、只惨めに泣き続ける事しか出来ない。
そんな自分に、あまりに残酷な事を頼んだこなたの事をゆたかは恨まずにはいられない。
『もっと沢山話したかったよ。もっと色々遊びたかったよ。もっとずっと一緒にいたかったよ。
でもさ……私はここまでっぽいや』
(私だって…………私だってもっとしたかったよ…………お姉ちゃんが大学生になっても、私が社会人になっても…………ずっとお姉ちゃんと笑い合いたかった…………それなのになんで………なんで……)
そんな時ふと、こなたとの思い出がゆたかの頭の中で浮かんでくる。
音楽を聴いていた時、つい気分が良くなり好きな歌手の真似をして歌っていたのを、こなたに見られ、ちょっとからかわれたあの日。
みんなで浴衣を着て花火を見に行って、調子が悪くなったけどとても楽しかった夏のあの日。
そして体育館の舞台の上で、一生懸命に練習したチアリーディングをみんなで成功させた。文化祭のあの日。
そんな心地よい思い出が今では遠い昔の出来事のように思えてしまう現実が、ゆたかにとってはとても悲しかった。
これからももっと重ねていく筈だった思い出のページに、写るべき人がもう居なくなってしまったから。
「ゆたか…………聞いてくれ」
そんな時、身体を震わせながら自分の手を握り、俯きながら涙を流すゆたかにDボゥイが声をかける。
Dボゥイの声を聞いて、思わずゆたかは顔を上げる。
何故ならDボゥイの声が優しかったから。
今まで聞いたどんなDボゥイの言葉よりも、優しくゆたかには聞こえたから。
「君は俺が必ず守り抜く……どんな壁が待っていようとも打ち貫いてみせる……
だから安心して俺に全てを任せてくれ。絶対にだ……絶対に守ってみせるから」
Dボゥイの優しい声がボロボロになったゆたかの心に響く。
そのボロボロになった心の傷跡による痛みが、次第に和らいでいくのをゆたかは感じる。
そのあまりにも心地よい言葉に。
腰を落とし低くなったDボゥイの視線と、彼の言葉の意味に若干の疑問を覚えたゆたかの視線が合う。
そしてゆたかに握られた手とは、反対の手で彼女の頭をDボゥイは優しく撫でる。
Dボゥイのその行動にゆたかは驚きを覚えると同時に、彼女の頬にほんのりと熱が生じる。
飼い犬が大好きな飼い主に撫でられたらこんな気分がするのかな?そんな呑気な事を思えてしまう程に今のゆたかにとって、Dボゥイの優しさはたまらなく嬉しかった。
ずっとこうやって撫で続けて貰えたら……そんな事をゆたかは真剣に願う。
「だから許してくれ……俺は今からやらなければいけない事がある……すまない」
(えっ……?)
だがそんなゆたかの淡い望みは無常にも砕け散る。
そう、Dボゥイが腰を上げ、ゆたかから手を離し、歩き出してしまったからだ。
ゆたかに握られた手さえも優しく振りほどいて。
「でぃ、Dボゥイさん!」
思わずゆたかもDボゥイの後を追って駆け出す。
何故だかゆたかは走り出さなければならないと思った。
もっと自分の頭を撫でて優しさを、勇気を与えてほしいと思う気持ちは当然あるが、その事だけがゆたかの身体を突き動かしたわけではない。
Dボゥイがどこか自分の知らない遠い所に行ってしまうような気がしたから。
ゆたかにそこまで感じさせるほど、Dボゥイの背中は悲しそうなものに見えたからだ。
まるで何かを必死に隠しているかのような様子で。
「来るな! ゆたかッ! 来るんじゃないッ!!」
そんなゆたかにDボゥイは振り向きもせず、Dボゥイが吼える。
先程の優しい声とは違い、あまりにも攻撃的な声にゆたかは思わず立ち止まってしまう。
Dボゥイに何を聞きたい事があるのに、彼の変貌に押され、ゆたかはとても口を開けない。
嫌な胸騒ぎを先程から覚えているゆたかはDボゥイが止まる事を切実に願う
だが、現実はまたしても非常にもゆたかの願いを断ち切ってしまう。
Dボゥイは歩みを止めようとはしない。
「待たせたな……シンヤ」
Dボゥイが口を開く。
その両眼に見える感情は憎悪、悲しみなど様々なものが入り乱れている。
「構わないよ兄さん。兄さんのこの世への別れを邪魔する程、無粋な真似はしないさ」
そう答えるのは今まで一言も口を開かなかったシンヤ。
彼の両眼に見える感情はどす黒く、見るものに恐怖を与える程にDボゥイとの闘いへの欲求、そして勝利しかない。
シンヤは既に右腕にこの殺し合いで支給された、カリバーンを握りDボゥイを待っている。
ゆたかの話に出てきたパズーに最後のとどめを刺した張本人だが、彼はそんな事には微塵にも興味は示していない。
だから彼はDボゥイに今までどうしていたのか? などとは聞く必要もなければ、そんな事にも興味はない。
彼の関心、望みはもっと別のところにあるからだ。
「そうだな……なら、始めるぞシンヤ……」
対するDボゥイもシンヤに今までの彼の行動を聞こうとはしない。
Dボゥイもシンヤと同じで、これから彼らが行おうとしている事に較べれば他の事はあまりにも些細な事だから。
勿論、ゆたかを守ると言った事は彼女を安心させようという思いからついた嘘ではない。
これからDボゥイが行おうとしている事が終われば、最早彼の最大の目的は達成出来たと言えるからだ。
そしてDボゥイはデイパックからテッカマンアックスのテックランサーを取り出し、右腕に携える。
「そうだね。俺はこの時を待っていたんだよ兄さん! だからさ……」
そう、それは兄弟喧嘩とはとても言えない行為。
そしてDボゥイとシンヤにとってどんな事よりも優先させなければならない宿命。
Dボゥイとシンヤの表情に更なる歪みがハッキリと浮き彫りになる。
その二人をゆたかは只、震えながら見守る事しか出来ない。
「いくぞシンヤッ!!」 「いくぞ兄さんッ!!」
今、この殺し合いで初めてテッカマン同士の闘いが始まった。
愛する父、相羽孝三によってラダムの支配を逃れ、ラダムに己の父、兄、弟、師匠、未来の義姉、同僚を奪われた復讐の化身、テッカマンブレード。
あまりにも優秀すぎる己の兄を尊敬すると同時に抱いていたコンプレックスをラダムにより増長され、兄を超えるためにラダムのテッカマンとして生まれ変わった悪魔の化身、テッカマンエビル。
彼ら二人の最早宿命ともいえる闘いが。
只、普段とは違いテックセットを行わずに。溢れ出る感情を隠す仮面を付けずに。
◇ ◆ ◇
今、この殺し合いで初めてテッカマン同士の闘いが始まった。
愛する父、相羽孝三によってラダムの支配を逃れ、ラダムに己の父、兄、弟、師匠、未来の義姉、同僚を奪われた復讐の化身、テッカマンブレード。
あまりにも優秀すぎる己の兄を尊敬すると同時に抱いていたコンプレックスをラダムにより増長され、兄を超えるためにラダムのテッカマンとして生まれ変わった悪魔の化身、テッカマンエビル。
彼ら二人の最早宿命ともいえる闘いが。
>>118見てからこれみると
なんか自己陶酔してんなーって直感で判るな
「これで終わりだ兄さんッ!!」
上を向いたDボゥイの視界にはシンヤがカリバーンを空中で振り下ろそうとしている姿が入る。
紛れもない嬉しさを見る事が出来るシンヤのその表情にDボゥイは複雑な感情を抱く。
だが、その感情を握り捨てたDボゥイはテックランサーの柄の部分を両手で握り締め、
己の頭上に翳す事でカリバーンの斬撃を受け止める。
今度はカリバーンの刃とテックランサーが暴力的にぶつかり合い、小規模ではあるがその摩擦により火花さえも生まれてしまうほど激しい衝撃が双方に走る。
「シンヤ! 俺は……この身体がたとえ砕け散ろうとお前は殺す! それが俺の存在意義だッ!!」
先程はシンヤに押し切られたDボゥイは一旦左腕に込めた力を抜く。
だが当然その行為はカリバーンの斬撃を受け入れるためのものでない。
ほんの一瞬抜いた力を瞬時に左腕に戻し、いや先程込めていた力以上のそれを込めて、
強引にテックランサーを右方向に回転させる。
カリバーンをテックランサーに打ちつけていたシンヤの身体も同様に、彼の方向からすれば左の方向に体制を崩されるのを余儀なくされる。
そこにシンヤとほぼ同程度の異常な速度でDボゥイの左足が振り上げられ、シンヤの右脇腹に直撃。
咄嗟に身体を引いたシンヤだったが、僅かに苦痛な表情を浮かべながら一旦距離を取るために、Dボゥイに蹴り飛ばされた勢いを利用して後方へ跳躍する。
だがシンヤの表情には悔しさよりも喜びの感情が強く出ていた。
待ち焦がれていたDボゥイとの闘いにより、沸き起こる満足感がシンヤの心に癒しを与えてくれるから。
「さすがだよ兄さん……そうでなければ面白みがないからね」
「シンヤ……俺の事を兄と呼ぶな……俺達がもう相容れる事はないハズだ……」
Dボゥイとシンヤが再び数十メートルの距離を挟んで向き合う。
未だ彼らの闘いは始まったばかり。
一向に彼らの闘志、殺意は折れようとはしない。
「や……やめてくださいDボゥイさん! シンヤさん! なんで……こんな事しないといけないんですか!? 理由を……理由を教えてください!!」
そんな時ゆたかが声を張り上げ、悲痛な顔で兄弟と思われるDボゥイとシンヤの闘いに口を開く。
常人なら気を失いそうな程の雰囲気を醸し出すDボゥイとシンヤの闘いに口を出すことなど、人一倍繊細なゆたかにとってあまりに酷で恐ろしい行為。
だが今のゆたかにとってこの闘いが続く方がたまらなく、怖かった。
ゆたかの元々の声の大きさが小さい事もありそれ程の大きい声では無かったがDボゥイとシンヤの耳には確かに届いた。
「ゆたか……」
そんなゆたかの必死な顔を見て、Dボゥイの意思は揺らぐ。
たとえ血が、肉が、骨が、全てを失ってでもシンヤと闘い続けようとする自分をゆたかは悲しんでいるという事に。
かといって自分達の因縁を話すわけにはいかない。
血に塗れた自分達の因縁をゆたかが知れば、きっと彼女は自分を見る眼が変わる。
只の人間ではなく、悪魔によって造られた化け物である自分に対して恐怖を抱いてしまうと考えたからだ。
「へぇ……まさかあのゆたかって娘に話していないんだね兄さん。
だったら知って貰おうじゃないか俺達の事を……ええ! 兄さんッ!!」
だがシンヤはDボゥイの意思を踏みにじるかのように、口を開く。
別にシンヤはゆたかが悲しそうな顔をしているため、同情したわけではない。
シンヤはDボゥイが望まない事ならどんな事でも行おうとする男。
たとえその事でどんな結果が引き起こされても関心はないからだ。
これだけ見て他の人ぱっと分かるのかよ
「何ッ!?……シンヤ! 貴様ぁぁぁぁぁッッッ!!」
「教えてやるよ俺と兄さんの事を…… いいだろうタカヤ兄さんッッッ!! 」
シンヤのふざけた言葉に逆上し、ゆたかに自分達の因縁を知って欲しくないDボゥイがテックランサーを携えシンヤに突撃する。
だがそんなDボゥイの様子など尻目に、カリバーンを携え、構えを取りながらシンヤは言葉を続ける。
ゆたかはタカヤという聞きなれない名前を聞き、困惑せずにはいられない。
まさかDボゥイという名前が本名ではないと思っていたゆたかは、タカヤという名前が彼の本名かと思う。
未だ怯えが取れない顔をDボゥイとシンヤに向けながら。
「そうさ……俺と兄さんの正体をなッ!!」
◇ ◆ ◇
Dボゥイさんとシンヤさんがまた闘ってる。
私にはとても持つことさえ出来そうにない武器を持ちながら。
本当はこんな危ない事は止めて欲しい……けど私にはあの二人の中に立ち入る事が出来ないからこうして見ている事しか出来ないの。
何故だが私はこれからシンヤさんが言おうとしている事に変な胸騒ぎを覚えた。
けど私は知りたい……Dボゥイさんが時々見せてた悲しい顔。
さっき私を励ましてくれた時に見せてくれた優しい顔とは似ても似つかない、今の怖い顔。
その顔の理由を私は知りたいから……。
「俺と兄さんは正真正銘血を分けた兄弟! 俺の名は相羽シンヤ、そして君がDボゥイと呼ぶ俺の兄さんの本名は相羽タカヤだ! きっとDはデンジャラスの略だろうッ!!」
「言うな……言うなシンヤぁぁぁッッッ!!」
やっぱりシンヤさんはDボゥイさんの弟さんで、Dボゥイさんの本名はタカヤさん。
でも私に本名を隠してたって事は何か本名で呼んで欲しくない理由があったのかも。
じゃあDボゥイさんって呼び続けた方がきっといいハズだよね?
でも何であんなにDボゥイさんは怒ってるんだろう?
シンヤさんが只、自分達の関係を話しただけなのに……?
ずっとシンヤさんに向かってあんなに武器を振り回すのはなんで……?
「始めの場所でボルテッカを放ち、憐れにも爆死した黄色の奇妙なヤツが居ただろう!? あれがテッカマン……地球を侵攻するためにラダムによって造り出された化け物さッ!!」
「黙れシンヤ!……それ以上……それ以上口を開くなぁぁぁッッッ!!」
ボルテッカ? テッカマン? ラダム? 全然言ってることがわからないよ……。
あの男の人が地球を侵攻するための化け物? そんなお姉ちゃんが読む漫画に出てくるような話があるなんて信じられない。
でもなんでシンヤさんがそんな事知っているんだろう?
Dボゥイさんがさっきよりもっと怖い顔になってるのも私にはわからないよ……。
「あの男は奇妙な結晶のようなものをロージェノムが渡した事でテッカマンになっていただろう? あの結晶こそテッククリスタル! テックセットを可能にさせ、テッカマンとなるのに必要な代物。そして……俺と兄さんが探し求めているものだッ!!」
「シンヤ……シンヤ……シンヤぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!」
え?…………タカヤさんとシンヤさんが探しているもの?
なんで? そのテッククリスタルっていうのはその……テッカマンっていうのになるのに必要なんじゃ…………?
どうしてそんなものをDボゥイさんとシンヤさんが欲しがる必要があるの……?
口に出して質問しようと思うけど、全然口が動かない。
これ以上聞いたら何故だか後戻りできないような気がするから……。
Dボゥイさんのあの怖い顔を見るとそんな気がしたから……。
「何故俺達が欲しがるかって知りたいだろう? そんな事は簡単だ! 何故なら俺とタカヤ兄さんは……」
「うおおおおおあああぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
心臓の鼓動が早まるのはハッキリと感じることが出来る。
今にも胸に穴が空きそうなほど心臓が激しく動いてることがわかる。
頭の中でシンヤさんがこれから言おうとしている事の予想が浮かぶ。
けどそんなことはあるわけない! そう思って私は何度も何度もその予想を何かの間違いだと信じていた。
だってもしシンヤさんの話が本当ならシンヤさん、そしてDボゥイさんは……。
でもDボゥイさんのあの顔を見れば見るほどたまらなく不安になってくるのはなんでなんだろう……。
お願いシンヤさん…………嘘だと言ってください…………。
でもそんな私Dボゥイさんを見てシンヤさんが笑い、思わず私の背筋に寒気が走る。
シンヤさんの笑い顔はあまりにも怖かったから。
「あの男……テッカマンランスと同じラダムのテッカマン……そう、化け物だからだ!
俺の本当の名はテッカマンエビル! そして兄さんの本当の名はテッカマンブレード!
そうだろう……ブレードッ!!」
シンヤさんの言葉を聞いた瞬間、私はしばらく考える事が出来なくなった。
段々と考えるだけの力が戻ってくるのを感じる。
Dボゥイさんがあの死んじゃった男の人と同じテッカマンという存在……。
Dボゥイさんは人間じゃない……私はその事をぼんやりと考えることしか出来なかった。
◇ ◆ ◇
「シンヤ……いやエビル! 貴様は必ずこの俺が殺す!うおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!」
Dボゥイの攻撃にまともな対応はせずに、攻撃を避ける事に集中しながらゆたかに、彼が隠していたかった自分達の因縁を話したシンヤ。
シンヤに対して、耐えようの無い怒りを抱いたDボゥイがテックランサーを振るう。
自分が守ると誓った、か弱い存在であり、ついさっき大事な人の死を知ったゆたか。
そんなゆたかにこれ以上の悲しみ、恐怖を与えないためにもテッカマンという存在を彼女に知って貰いたくなかったから。
血に塗れた存在であるテッカマンはゆたかにとって知らない方が良いと思ったから。
今までの力に更なる怒りを上乗せしたあまりに重い斬撃。
そのテックランサーに対してシンヤもカリバーンを相応の力で振るう事で応じる。
「くッ!」
「ちッ!」
今までにない衝撃が二人の腕に走り、思わずDボゥイとシンヤはそれぞれ持っていたテックランサーとカリバーンから手が離れ、二本の刃は彼らの後方へ落ち、音を立てて転がる。
「シンヤッ!」
だが、Dボゥイはテックランサーを回収しようとはせずに、そのままシンヤに向かって右の拳を突き出す。
今の彼にはテックランサーを取りに行く時間さえも惜しい。
今すぐにでも取り返しのつかない事をやったシンヤを殺す事だけが望みだった。
「そこまで怒ってくれるとは……うれしいよタカヤ兄さんッ!!」
襲い来るDボゥイの右の拳を左手で掴み、それ以上の右拳による侵攻を抑える。
Dボゥイが予想以上の反応を示した事により今のシンヤの気分はあまりにも良いものだった。
だがシンヤの望みは完全には成就してはない。
Dボゥイに反撃の打撃を与えるべく、シンヤが右腕に力を込め、右の拳を揮う。
だがその拳はDボゥイの空いていた左手により掴まれ、自分がやったように抑え込まれる。
互いに両腕に力を込め、己の相手を打ち倒すための均衡状態が再び生まれる。
「まさかあの娘にミユキを重ねているわけではないよな兄さんッ!」
予想以上のDボゥイの激昂を不思議に感じたシンヤがふと思った事を口に出す。
Dボゥイの実の妹にして、相羽ミユキことテッカマンレイピア。
彼女もまたDボゥイと同じくラダムの精神支配から脱したテッカマンであり、彼と共にラダムと闘うと誓った少女。
だが父によって助けられたタカヤとは違い、完全なテッカマンになれる肉体を持っていないと判断された純粋な不完全体であるミユキの身体はボロボロだった。
そのボロボロの身体を引き摺りながらミユキは最後まで彼女の兄であるシンヤ達と闘った……只、愛する兄、Dボゥイのために。
「ッ!……ミユキは関係ない……それにお前にミユキの事を言う資格はない……ミユキを殺したお前にはぁぁぁッッッ!!」
確かにDボゥイはゆたかにそんなミユキを重ねていたという節はあった。
初めてゆたかと会った時に感じた事はもとより、病気がちだと言っていたゆたかの姿に、テッカマンの不完全体であるがゆえに弱り果てていたミユキの姿がどことなくダブってしまったのかもしれない。
その事が必要以上にゆたかを守るようにDボゥイの身体を突き動かしているだろうか。
だがその事を考えるよりも今のDボゥイにはやるべき事がある。
そしてそれはシンヤにも言えることであった。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーッッッ!!」
「むおおおおおおおおおおぁぁぁぁぁーーーッッッ!!」
互いに掴まれていた腕を強引に引き抜き、一旦距離を開けるためにDボゥイとシンヤの二人は後方へ跳躍。
テッカマンのケタ外れの身体能力を利用して、空中で回転をしながら宙へ跳び、両足から大地に着地する。
たとえテックセットしていなくとも、首輪により制限をうけていようともDボゥイとシンヤはラダムのテッカマン。
地球侵略のための尖兵として造られたテッカマンがこれくらいの芸当が出来ないハズがない
丁度青ざめた表情を浮かべたゆたかの位置を直角とし、Dボゥイ、シンヤが直角二等辺三角形の残り二つの頂点に位置する場所に降り立つ形となった。
その時、Dボゥイはチラリとゆたかの方向に視線を向けるがゆたかは思わず視線を落としてしまう。
(ッ!ゆたか……俺は……俺は……俺はッ!)
そのゆたかの行為が今のDボゥイには残酷すぎた。
「そうかミユキのコトは関係ないか……だったら別に俺がこんなコトをやっても文句はないよなッ!」
そんな時、シンヤが更に後方へ跳ぶ。
言いようのない不安に駆られ、ゆたかの安全を確保しようと既に全速で駆け出したDボゥイを尻目にシンヤはあるものを拾い上げる。
それは先程の衝突により弾き飛ばされた、シンヤの支給品であるカリバーン。
更にシンヤはカリバーンの柄を片腕で握り、そのまま槍投げの要領で投擲を行う。
だがその標的はシンヤの宿敵、Dボゥイではない。
先程から只、Dボゥイの方だけを凝視し続け、座りこんでいたゆたかに対しての投擲。
別にシンヤにとってとても利用手段のないゆたかの死はなんら問題にはならず、同時にDボゥイがどう動くかが彼には気になっていたからだ。
『勝利すべき黄金の剣』そう謳われたカリバーンがゆたかの命を刈り取らんと迫っていく。
ゆたかがその事に気付いたのはシンヤが投擲を行ったほんの数秒にも満たない後だった。
◇ ◆ ◇
なんで私Dボゥイさんと目が合った時、思わず目を逸らしちゃったんだろう?
きっと私の事を心配してくれていたハズなのに……。
一瞬Dボゥイさんの顔が、凄い悲しそうに見えたのは今でも思い出す事が出来る。
でもDボゥイさんは人間じゃない…………。
Dボゥイさんはテッカマンっていうよくわからない存在…………。
Dボゥイさんもあの黄色い人がやってた凄く怖いもの……ボルテッカっていうのを出せるかのかな…………?
なんで…………あんなに優しいDボゥイさんを……私は怖がってるんだろう……………。
Dボゥイさんはいつも私の事を守ってくれたのに…………なんで………?
そんな時シンヤさんが私の方に漫画やアニメでしか見た事がないような剣を私に投げた。
ああ……あれに当たったら私もつかささんやパズーくん、お姉ちゃんの所に行けるのかな?
運動はお世辞にも得意と言えない私は思わずそんな事を思ってしまった。
だって私きっとDボゥイさんに嫌われちゃったから…………シンヤさんの言葉を鵜呑みにしてDボゥイさんを見る目の色を変えてしまったから……。
きっと私はここで死んじゃうんだ…………そう思って私は両目を瞑ってしまった。
だって私にはあの飛んで来る剣を避わす事なんてとても出来そうにはないから。
けど突然私の身体が何かに押され、一瞬だけ宙に浮いた感じがした。
何でだろう…………? そう思って私は恐る恐る眼を開けたの。
そうしたら……そうしたら……そうしたら…………。
「がッ!」
「ふん、よくやるよ……だがそれでこそタカヤ兄さんと言えるのかもしれないな」
Dボゥイさんが私を庇ってくれたの…………。
Dボゥイさんを一瞬でも信じることが出来なくなった私を………。
右肩にあんな剣が刺さってまでもこんな私を…………。
右肩からあんなに痛そうな赤い血を一杯流してまでも私を…………。
私も……私も……私も……私も何かやらなくちゃ…………。
Dボゥイさんがあんなに痛そうな顔をしてるのに……何も出来ないなんて……嫌だ。
だってDボゥイさんは……Dボゥイさんは……Dボゥイさんは!
◇ ◆ ◇
「予想はしてたけど……俺との闘いの為に無茶はやめてくれよな兄さんッ!」
Dボゥイがゆたかを庇う事は薄々感付き、カリバーンを投げた直後から駆け出していたシンヤが叫ぶ。
狙いはDボゥイに必死に寄り添うゆたかではなく、ゆたかを庇い右肩にカリバーンが突き刺さり、地に膝を屈したDボゥイ。
「くっ……シンヤ……」
シンヤの方を振り向き、肩に突き刺さったカリバーンを武器として使用するためにそれの柄にDボゥイが手を掛ける。
だが、シンヤと闘う以前から貧血気味であり、更に血を失ったDボゥイの動きは重い。
「どうせ俺達はテッカマン……化け物である俺達が人間如きを気にする必要はないハズだブレードッ!!」
そんなDボゥイがカリバーンを引き抜く前に、シンヤが十分に距離を詰める。
更にシンヤの手にはDボゥイに近づく途中で拾い上げたテックランサーがしっかりと握られている。
体制が前かがみ気味になっていたDボゥイの隙だらけの腹に斜め方向から右足を叩き込む。
そのシンヤの右足による衝撃でDボゥイの身体がいとも容易く、数十メートル先横方向へ吹き飛ぶ。
シンヤがテックランサーで直ぐにDボゥイの身体を切り裂こうとしなかったのは、それでは味気ないと思ったのかもしれない。
「トドメだタカヤ兄さんッ!!」
だがもうシンヤにはそんな気は微塵にもない。
幼少の時からいつも優秀で、尊敬の対象でもありながら父からの愛さえも独占し、嫉みの対象でもあったDボゥイ。
そんなDボゥイにトドメを刺そうとテックランサーに添えた腕に更に力を込め、彼の元へ駆け出そうとする。
だが、その時シンヤは気付いた。
とても弱く、簡単に振りほどくことが出来る力ではあるが。
小早川ゆたかが身体を震わせながらもシンヤの上着を、その小さな両手で引っ張っていた。
なにかを決心したような瞳で真っ直ぐ、出来るだけシンヤのそのどす黒く、見るものに恐怖を与える瞳に視線を逸らさずに。
◇ ◆ ◇
「何のつもりだい?」
シンヤが心底不思議そうに問う。
別に今この場でゆたかをテックランサーで切り裂き、Dボゥイの反応を見るのも面白いかもしれない。
だがこの場であえて身の危険を顧みずに、ラダムのテッカマンである自分にわざわざ自分から接触してきたゆたかに対しシンヤは興味を持っていた。
そのため即座にゆたかを殺す事はせずにシンヤは取り敢えず話を聞こうと思ったからだ。
「訂正して……ください」
そんなゆたかはシンヤの威圧感に押されながらも必死に口を開く。
こなた達が死んでしまったショックも完全には癒されていなく、Dボゥイが自分を庇い重症を負っている。
いつものゆたかなら卒倒してもおかしくないほどの出来事の連続。
だがゆたかはなけなしの気力を振り絞り、必死に意識を保つ。
シンヤが言った言葉で一番許せなく、どうにかして取り消してもらいたいから。
只、その揺ぎ無い意志を糧にしてゆたかはその細い両の足で立ち続ける。
「訂正? 何のコトだ?」
シンヤがまたしても訝しげに言葉を返す。
事実、シンヤ自身は何も嘘を言ってはいなかったからだ。
そのシンヤの行動がゆたかの意思を更に強固なものとさせる。
「Dボゥイさんは……化け物なんかじゃありません」
「なんだって……?」
自分より高い位置にあるシンヤの顔を真っ直ぐ見つめ、ゆたかが声を絞り出す。
そんなゆたかの言葉をシンヤは不思議そうに眺め、シンヤによって蹴り飛ばされたDボゥイもゆたかの言葉に驚愕の表情を浮かべている。
「Dボゥイさんは私をいつも守ってくれた……Dボゥイさんはこんな私を助けてくれた
……そんなDボゥイさんが化け物のハズがありません!」
だがゆたかはそんなシンヤとDボゥイの表情を尻目に言葉を続ける。
この殺し合いが始まり、寂しさのあまり泣き崩れ、取り乱していた自分を優しく保護してくれたDボゥイ。
ヒィッツカラルドが襲撃して来た際、自分を庇いながら闘ったDボゥイ。
自分がつかさの死を知ったショックで思わず気を失っても、自分を見捨てずに傍についてくれたDボゥイ。
パズーとこなたの死を知り、再び気を失いそうになった自分を優しく
そしてたった今あまりにもリスクが高い行為でありながら、自分を庇ってくれたDボゥイ。
そんなDボゥイが化け物であると一度でも疑った自分に対しての憤りを気力に変えて、ゆたかが精一杯の大声を出す。
「ふん! だがお前はランスのあの姿を見ただろう? 兄さんがあんな姿になってもそんな綺麗事を言っていられるのかッ!?」
「もういいゆたか! もうその言葉で俺にとって十分だ……」
ゆたかの言葉に若干の苛つきを覚えたシンヤが吼える。
何故この少女はそこまで言い切れるのかがシンヤにはわからないからだ。
ゆたかの言葉に驚き、直ぐに彼女の元へ向かおうとDボゥイが叫び、必死に身体を起ち上がらせようとする。
Dボゥイはそれ以上ゆたかが何か言おうとしているのを止めて欲しかった。
きっと今のシンヤの言葉を受け、ゆたかは言葉に詰まってしまうだろう。
シンヤの言葉は真実であり、勿論ゆたかにその事について非があるとDボゥイは思っていない。
だが自分を気遣って、言葉に詰まりながら無理に自分を庇護するゆたかの姿は見たくない。
それがDボゥイの本音だったからだ。
「シンヤ……シンヤ……シンヤぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!」
え?…………タカヤさんとシンヤさんが探しているもの?
なんで? そのテッククリスタルっていうのはその……テッカマンっていうのになるのに必要なんじゃ…………?
どうしてそんなものをDボゥイさんとシンヤさんが欲しがる必要があるの……?
口に出して質問しようと思うけど、全然口が動かない。
これ以上聞いたら何故だか後戻りできないような気がするから……。
Dボゥイさんのあの怖い顔を見るとそんな気がしたから……。
・・・・、・・・・・。・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
てのが大杉、というかキモイ
くどい
くどすぎるこの駄文
だからこーいう文垂れ流すの
や─────────────────
め─────────────────
ろ─────────────────
よ─────────────────って気持ち悪いんだよマジで
読んで無くても
_,-'´ヽ
,r'´>`ヽ `、
,r‐'''''''''''‐' 7>、:.:.:ヽ i
r‐--‐‐‐-v''''‐i::. :. `'''‐-;;;! !
l;,r'´¨¨''‐;:! .::::l:: :.:. :.__::. 〈
!ヾ7;r;./ .: .:: ::/!:..i、;-''i ! ̄ヽ `、
ヽ::ヽ/: .:::.::_/___ヽ!/ l ! ! ヽ みんなこういうSSがいやにゃといってるのにゃ
`、:.:: .:;-"l ! `i、 l_,! _,-'’ ヽ こんなの書いてて俺様は頭いいと思ってるんだからどうしようもないのにゃ
_,/.:::.:/ l_,! / `'''''''''´/.: .:: .: :. : i !
// ::::::ヽ ____ ,/ ,、_丿 !::: .:::..:::: :::::. ::: l !
// / :::::: / ヽ `ー'′ !i::.::;イi::;ri:..:::::.:::: ll,!
l,!l/l :::i:::i:!::::::::::`:..、 _l!;/:::''´:/ヽ:ト、i、/
,r‐`、!:/!!::::::::::;::::::::`''''ニ=''''¨二l,イ´_ `
ヽ _ 〈 ′l;!ヾ;/`´`´_Y’‐''´ :.. i´ ` 、
l,r'''''''''ヽ /7:: ::i::!. ヽ
/:. `i-'''’/:: .:. ::. ::Y:. :. ヽ
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ヽ ______,,ノ!_!/.:::::.:::::::::... :::::::l∠-! l<_ !
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見飽きてる、
くどい、
気持ち悪い、
文体が似すぎ
頭いい人間が書いたもんだと思えない
はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・
何をつっこんでいいかわからんが
どうみても作家の自己陶酔の駄文だろ…常考・・・・・・
見せられるほうにもつらいんですがね
これでしたらばの奴等は頭いいと自慢しやがりますか
この人たちこんなSSに何キロバイトつかってんの?
そういうSS書きたいんだったら開き直れyo
妙なヒロイックとかそういう下らない
感傷的なネタは見ているほうを
よけいいらだたせるんだyo
それで自分は頭いい、天才だとおもわれてちゃかなわねえ
二回目となる放送が終わってから小一時間ほど経った頃、マオはいまだに高級マンションにいた。
正確に言うなら、マオは高級マンションの一室で休養を取っていた。
「くそっ!あの電波め……!」
毒づきながら、マオは部屋の冷蔵庫から拝借した氷嚢を額に当てる。
ガンガンと頭の中からツルハシで叩かれているような頭痛が、少しは和らいだ気がした。
風浦可符香と眼を合わせた直後と比べると、これでも随分マシになった方だ。
――うるさいとは思ってたけど、まさか悶絶するほどとは……っ!
ついその時のことを思い出しそうになり、マオは慌てて思考を切り替える。
――放送も聞き逃すし、踏んだり蹴ったりだ。
どれほど人が死のうが、マオにとっては知ったことではない。
ただ、禁止エリアの情報を得ることが出来なかったのが気がかりなのだ。
「まあ、それはギアスを使って人から教えてもらえばいいことなんだけどね……っと」
マオはそれなりに寝心地の良さそうなベッドに横になり、仮眠を取るため片手で近くにあった目覚まし時計を弄る。
もちろん、マオがこのような行動を取るのには理由がある。
少し時を遡るが、マオは頭痛に苛まれながらも逃げ出した金田一を追うためにギアスを広げた。
そしてマオは金田一の思考を捕らえ――あまりの頭痛に、その思考を理解することが出来なかったのだ。
微かに絶望したような声が聞こえ、マオはその時にやっと放送が流れていることに気がついたのだ。
慌てて放送に耳を傾けようとしたが、また頭痛が酷くなりそれどころではなくなった。
「……流石に、こんな状態で動き回ったらC.Cを探すどころじゃないしね。
ここが禁止エリアに指定されている可能性は、けっこう低いと思うけど……」
8×8マスの会場の内、すでに3マスが埋まっておりそこにさらに3マスが禁止エリアとなる。
確率としては61分の3、ハズレを引くことはまずないはずだ。
不安がない訳ではないが、現在のマオのコンディションでは出歩くのも億劫な状態だ。
腹を決めて、頭を休めることにしたのだ。
――C.Cの夢を見れるといいんだけどなぁ。
そう思い、マオは静かに目を閉じる。
結果から言ってしまうと、マオはC.Cの夢を見ることは出来なかった。
とびっきり最悪な、悪夢(ナイトメア)を見ることとなる。
■
何処かの、人気のない山の中に二人の人間がいる。
緑色の髪に紫のチャイナ服を着た美女と、まだあどけなさの残る少年だ。
――僕が、C.Cを絵に書いてた時だ。
――我ながら、ドへたくそな絵を書いてたなぁ。
――でも、そんな絵を見てC.Cは嬉しそうに笑ってくれたんだ。
――C.C。その時の笑顔を、僕はいつでも思い出せるよ。
――そう、いつだって、いつも、いつまでも。
――ほら、今だってすぐに君の笑顔と優しい声を……?
唐突に、マオは違和感を覚えた。
夢の中のC.Cが、顔を伏せていたからだ。
――おかしいな、今までこんなこと一度もなかったのに。
マオの中で何かが警鐘を鳴らしていたが、こんな時もあると自分を納得させる。
何か、強烈な不安が膨れ上がってくる。
――きっと、C.Cの声を聞いてないからだ。
夢の中にいた子供は、いつの間にかマオ自身になっていた。
マオは不安を押し隠すように、C.Cに近づく。
夢の中でもいいから、とにかくC.Cの微笑む顔を見たかった。
C.Cの顔を隠している髪を掻き分け、愛しい人の顔を見ようとしたとき――つるっと、髪が落ちた。
「なぁ!」
よく見ると、それは精巧なカツラだった。
慌てて、カツラが乗っていた場所を見る。
『こんにちは、ところでここはポロロッカ星ですか?』
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
声にならない無言の絶叫と共に、マオは飛び起きた。
肺からただ空気を搾り取るように絶叫しながら、マオはメチャクチャに暴れまわる。
とにかく体を動かさないと、気が狂いそうだった。
部屋の内装が見るも無残なものになった所で、マオはやっと暴れるのを止めた。
ぜぇぜぇと、荒くなった息を整える。
「なんだ、なんだったんだよ今のは!」
マオは、C.Cとの思い出を夢として見ていたはずだ。
しかしC.Cが存在した場所には、何故か――風浦可符香が、存在していたのだ。
「C.C……助けてよ、C.C……っ!」
そして、マオの悪夢はまだ続いていた。
夢に見ていた思い出だけでなく、マオの思い出の全てのC.Cが――風浦可符香と入れ替わっていた。
人混みの中で、心の声に苦しんでいるマオをあやしているのは風浦可符香だった。
幼い頃、お互いに抱きしめ暖めあって眠る相手は風浦可符香だった。
久しぶりに再会した時、銃を構えているのは風浦可符香だった。
クロヴィスランドで、マオが銃で撃ち抜いた相手は風浦可符香だった。
ルルーシュにギアスを掛けられ、逃げ出した先にいたのは風浦可符香だった。
人混みの中で、心の声に苦しんでいるマオをあやしているのは風浦可符香だった。
幼い頃、お互いに抱きしめ暖めあって眠る相手は風浦可符香だった。
久しぶりに再会した時、銃を構えているのは風浦可符香だった。
クロヴィスランドで、マオが銃で撃ち抜いた相手は風浦可符香だった。
ルルーシュにギアスを掛けられ、逃げ出した先にいたのは風浦可符香だった。
「いやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ、めぇぇぇえっぇえぇぇっぇえぇぇ、ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
今度は明確な拒絶を込めた絶叫を上げ、マオはデイパックを手にとって駆け出した。
ドアを破る勢いで部屋から出る。部屋の近くには、まだ可符香の死体が転がっていた。
マオは血走った目でデイパックからステッキを取り出し、死体に向かって弾をばら撒いた。
撃つ。
撃つ。
撃つ。
まだ撃つ。
死体が原型を留めなくなった所で、やっとマオは撃つのを止めた。
また荒くなった息を整えようともせず、マオは意識を集中させる。
――C.C、シーツー、しーつー、C.C、僕の愛しい人!
『ちょっとしたディープラヴってやつですね』
元凶を挽肉にしても、やはり駄目だった。
マオはあまりの絶望に膝を着き、虚ろに笑いながら空を見上げた。
いつの間にやら頭痛は消えうせていたが、マオにはもうそんなことはどうでもよかった。
炎は、消える寸前が一番綺麗に輝くと言う。
マオと可符香が眼を合わせた時、可符香の命の炎はまさに消える寸前であった。
制限されているとはいえ、心を知ることに慣れていたマオが悶絶したのにはそんな一因もあったのだろう。
そしてその燃え尽きる寸前の炎は、マオの精神に意図せず焼き痕を残していった。
マオの思い出のC.Cが、風浦可符香に入れ替わるように。
とはいえ、人の心はコンピューターのように簡単に置き換えられるものではない。
マオに残された焼き痕とて数日か、ひょっとしたら数時間もしたら消え去るかもしれない。
しかし、そんなことがマオに分かるはずもなかった。
――奪われた。
――C.Cとの思い出が、奪われた。
呆然とした意識で、マオは笑っていた。笑うしかなかった。
C.Cはマオにとって唯一の思考が読めない人間で、それ故に全てだった。
その全てが奪われた今、マオは空っぽの抜け殻になってしまった。
「……しーつー」
力無げに呟いた所で、マオは首が疲れたので見上げるのを止めた。
そして――緑色の鉱石を、その眼に留めた。
それはマオに支給された品の一つで、役に立たないだろうとデイパックにしまっておいた物だ。
ステッキを取り出した時に一緒に出てきたのだろうかと思いながら、何かに引き寄せられるようにマオは鉱石を拾う。
――C.Cの髪と、同じ色だ。
そう思うと、その鉱石は他のどんな鉱石よりも価値のあるものに見えてきた。
まじまじと観察していると、その鉱石に赤黒いものが付着しているのに気づいた。
おそらく、可符香の血だろう。
緑の鉱石に付着するそれを見て、マオはC.Cをたぶらかすルルーシュを連想した。
マオはイラついて鉱石を拭い――ふと、閃いた。
「ルルーシュだ!」
一言恋敵の名を叫び、マオは立ち上がった。
生気のなくなっていた眼は、いまや爛々に光り輝いている。
「ルルーシュならC.Cを思い出せる!」
マオが閃いたのは、そんな方法だった。
ルルーシュにC.Cの情報を考えさせ、それをマオが読むことでC.Cを取り戻す。
憎き恋敵に頼ってしまう方法だが、拘ってる余裕はなかった。
マオは鉱石を強く握り、反対の手でステッキとデイパックを拾う。
可符香の残骸を踏みぬけて、マンションを駆け下りる。
マンションから外に出たところで、可符香のデイパックが置き去りにされているのに気がついた。
「大切な遺品を置いてきぼりにしちゃうなんて、名探偵としてどうかと思うよ。金田一くぅん」
金田一を嘲り、その間抜けさに感謝しながらデイパックの中身を確かめる。
その段階で、マオは自身がヘッドホンのことを失念していたことに気がついた。
後頭部をガシガシと掻き、反省する。
C.Cの声より、もっと根本的なものが奪われたのだから無理もない話とも言えるが。
「ヘッドホンは無いか……ちぇっ、役立たず」
ヘッドホンが入っていなかったことに落胆したが、マオは緑色の鉱石を取り出して心を落ち着けさせる。
いつの間にかその鉱石は、マオにC.Cのことを思い出させることから精神安静に一役買うようになっていた。
……明確に連想すると、風浦可符香が出てくるため難儀なものだが。
――とにかく、今はルルーシュとヘッドホンだ。
眼を閉じ、マオは周囲の心の声に耳を澄ませる。
この悪夢から目を覚ますために。愛しい人を取り戻すために。
『呼びましたか?』
幻聴は、断固として無視した。
【C-3/海岸沿いの道/1日目-日中】
【マオ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的・精神的疲労(小) 精神汚染(小)
[装備]:東風のステッキ(残弾率60%)@カウボーイビバップ マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:デイバック×3 / 支給品一式×4 / 支給品一式(食料-[全国駅弁食べ歩きセット][お茶])
オドラデクエンジン@王ドロボウJING / 日出処の戦士の剣@王ドロボウJING
アンディの衣装@カウボーイビバップ / 緑色の鉱石@天元突破グレンラガン
エクスカリバー@Fate/stay night / ライダーダガー@Fate/stay night
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION / 鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
血塗れの制服(※可符香の物)
[思考]
1:ルルーシュ、またヘッドホンを見つけてC.Cを取り戻す
2:聞き逃した放送の内容を、ギアスで確認する
[備考]
マオのギアス
周囲の人間の思考を読み取る能力。常に発動していてオフにはできない。
意識を集中すると能力範囲が広がるが、制限により最大で100メートルまでとなっている。
さらに、意識を集中すると頭痛と疲労が起きるため、広範囲での思考読み取りを長時間続けるのは無理。
深層意識の読み取りにも同様の制限がある他、ノイズが混じるために完全には読み取れない。
※また、錯乱などといった思考の暴走には対処しきれない事に気づきました。
※異世界の概念はあまり信じていない様子。
※シータの知りうるラピュタ関連の情報、パズーやドーラの出会いをほぼ完全に知りました。
※金田一と、その近辺の情報を知りました。
風浦可符香による精神汚染
マオの思い出の中のC.Cが、全て可符香と入れ替わりました。マオがC.Cを忘れたわけではなく、何故かC.Cを思い出すと可符香になってしまいます。
数時間から数日で正常な状態に戻ります。
緑色の鉱石@天元突破グレンラガン
第11話でシモンがニアにプレゼントした緑色の鉱石。
また厨臭い文章がきやがりました
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、述懐する。
――初めは、ただ鬱陶しいだけの存在だった。
自分のことを美男子と自称したり、出会いがしらに変な歌を教え込まれたり、守るといいながら震えてみたり。
殺伐とした世界をぶち壊すような、スラムに迷い込んだコメディアンのような男だった。
パルコ・フォルゴレ――鉄の、無敵の男は、イリヤと菫川ねねねを守るために囮となり、そして死んだ。
放送の内容を耳に残して、もう彼に嫌味ごとを言う機会もないんだな、とイリヤは悟った。
「黙祷しましょう。我々がパルコ・フォルゴレ氏にできるのは、それくらいです」
ワイシャツを着たインテリ風の男――明智健悟は冷静な口調でイリヤと、菫川ねねねに言う。
イリヤは、明智の言うとおりに目を瞑ってフォルゴレに弔詞を読む……気になどはなれなかった。
ねねねにいたっては、目を瞑るどころかその眼光を余計にギラギラと光らせ、明智を睨んでいる。
――正午を知らせる放送が終了を迎えた頃。場所はC-5の映画館内。
今は延々とコマーシャルが流れているスクリーンの幕下で、イリヤとねねね、そして明智の三人は話し合っていた。
三人とも殺し合いには乗っていない穏健派、方針だけで言えば同志であったものの、そのムードは和やかとは程遠い。
先の放送でフォルゴレやエリオ・モンディアルなど彼女らの知人の名が呼ばれたことが第一だったが、最大の要因は明智にあった。
「さすがはエリート刑事さんだ。人が死ぬのにゃ慣れっこってわけか」
皮肉めいた言い回しで、ねねねが鋭く言い放つ。
明智はそれを受けてもクールという名の鉄面皮は崩さず、言い返す。
「心外ですね。私とて、人の死に心を痛めぬ冷血漢というわけではない。
特にあなた方と共にいたフォルゴレ氏は、詳細名簿の文面から見ても亡くすには惜しい人物でした。
機動六課のホープたるエリオ少年についても同様です。彼の死で多大な影響を受けるであろう人物にも心当たりがありますしね」
「なら泣け。もっと悲しそうな顔してみろ。あんたの冷たい顔見てるとイライラしてくるんだよ」
「おや、菫川さん……いえ、ここは菫川先生とお呼びしたほうがよろしいですか?
あなたは激情家ではあるようですが、先の物事をちゃんと見据えている聡明な女性かと思っていたのですが」
「わかってるよ。ああわかってるわよ。だけどな、あんたはムカツク。それだけだ。クソッ」
ねねねがなにをそんなに怒っているのかは、イリヤにも理解できた。
フォルゴレは銀髪の男――詳細名簿を見るに“ビシャス”という危険人物らしい――に殺された。
しかもただ殺されたわけではない。イリヤとねねねを逃がすために自らを盾にしたのだ。
選択肢はあった。あの場で逃げず、フォルゴレを助けるに行くこともできた。なのに、ねねねは逃走を選んだ。
それは武器の貧困さや自分たちの戦闘力のなさ、あらかじめ知っていた相手の力量を計っての判断だろうが、一番の理由はたぶん、自分……イリヤが子供だったから。
大人として、子供であるイリヤを死地に巻き込むことができなかったのだ。フォルゴレも、ねねねも。
イリヤたちが逃げた先、モノレールの駅にいた男が、この明智健悟だった。
偶然にもお互いが同じ詳細名簿(細部は異なるようだが)を所持しており、事前に得ていた情報から手を組むのに危険性はないと判断し、とりあえず明智と共にD-4の駅に下車した。
その後は、明智とねねねを主軸に情報交換が行われる。
D-4の駅に数時間前まで六課メンバーのティアナ・ランスターがいたこと、
錯乱状態にあった彼女の説得を相棒のデバイス・クロスミラージュに任せていたこと、
しかし戻ってきたその場に彼女らの姿はなかったこと、
イリヤとねねねが銀髪の男から逃げてきたこと、
その際フォルゴレが囮になってくれたこと、
銀髪の男がビシャスなる人物であること、
様々な情報が錯綜する中で、明智はビシャスが追ってくる危険性を考慮し、場所を映画館に移そうと提案した。
その時点でねねねは既に明智の冷静すぎる素振りが気に入らない様子だったが、安全を第一に考えた彼女は明智の案に同調。
イリヤはフォルゴレを助けに戻りたかったが、モノレールの時間を考えても、そこは折れるしかなかった。
そして、映画館に着いた頃には放送である。
イリヤはもう、フォルゴレを助けに戻りたいという願望を失っていた。
戻っても無駄だということが、放送によって判明してしまったからだ。
「フォルゴレは……わたしたちを守るために、死んじゃったの?」
やや大きめのシートの上、脱力した肩を抱えながら、イリヤがか細く尋ねる。
「……イリヤ君、でしたね。少し厳しいことを言いますが、あなたとてこれまで死と無縁の環境を生きてきたわけではないでしょう?
聖杯戦争……魔術師……サーヴァント……それらの言葉が示す意味がどんなものかはわかりませんが、あなたは見た目ほど子供ではない。
少なくとも私や菫川先生以上には、非日常というものに慣れているはずだ。違いますか?」
イリヤが見た目相応の少女でないと知る明智は、落ち込む彼女を厳しく諭した。
「デリカシー皆無だな。ってか少し黙れ」
「……失礼。言いすぎたようです」
同じくイリヤの正体を紙面の情報範囲で知るねねねは、しかし明智のように冷徹ではなかった。
詳細名簿の内容を信じていないわけではないだろうが、それでもねねねはイリヤを子ども扱いしているのだろう。
フォルゴレの死に悲しみ、悔しさを覚え、守られて当然だと、そういう風に思っているに違いない。
今のイリヤにとっては、ありがたい心遣いではあった。
「少し外に出てきます。道中で見つけた現場の検分もしたいのでね。菫川先生、ご同行願えませんか?」
「断る。だいたい、あんたにはマッハキャリバーのお仲間と関係があるからってついて来たんだ。
この先も一緒に行動する気なんざ、これっぽっちもない」
「行ってきなよ、ネネネ。わたし、ちょっと一人になりたいの」
そう言って、イリヤは座席に深く蹲る。声からして憔悴している様子だった。
そんなイリヤを見て、ねねねがどう思ったかはわからない。
ただ歯がゆそうに顔を顰め、握り拳を作ったかと思うと、すぐに解いて一回舌打ちをした。
「……マッハキャリバー。なんかあったらすぐに知らせるんだぞ」
『はい、Teacher』
イリヤの側に喋るアクセサリーを残し、ねねねは明智に連れ添って映画館を出て行った。
向かう先はそう遠くではない。ここに入る際に見つけた、すぐ近くの事故現場を見に行ったのだろう。
スクリーンの音声以外はシンと静まり返っている館内で、イリヤはフォルゴレを想った。
馬鹿で、頑丈で、勇敢で、馬鹿で、馬鹿で、馬鹿な男だったな、と。
鉄のフォルゴレなんて誇らしげに自称していた点が一番馬鹿だった。
どんなに肉体を鍛えようが、フォルゴレはただの人間だ。死ぬときは死ぬ。
わかっていたはずなのに、フォルゴレの死をどうしようもなく重く感じている自分がいる。
それはたぶん、彼が死んだ“意味”を考えているからだろう。
(フォルゴレは、わたしとネネネを生かすために死んだんだ。……弱いくせに)
女子供は世間一般で見て、弱者の象徴である。常識ある大人の男がそれを守ろうとするのは、当然と言えた。
だけど、違うのだ。
一作家に過ぎないねねねはともかく、イリヤは明らかに一般人の域を出た存在である。
聖杯戦争を経験したバーサーカーのマスターであり、俗にホムンクルスと呼ばれる存在。
歳だって、見た目よりもずっと上だ。実年齢を考慮すれば、ただ大人に保護されるだけの対象とは言いがたい。
イリヤ自身の戦闘能力は決して高くないが、あのときだって、簡単な魔術弾でも放ってフォルゴレを援護することはできたはずだ。
なのに、しなかった。ねねねに手を引かれるまま、フォルゴレとの離別を受け入れてしまった。
それが今、後悔として押し寄せてくる。あの選択は過ちではなかったのか、もっといい方法があったのではないか、と。
「……もう、終わったことなのにね」
今さらあれこれ考えたところで、フォルゴレの死は覆らない。
どんな殺され方をしたにせよ、彼は今もどこかで息絶えている。
たぶんもう二度と、会うことはない。
「フォルゴレ……」
潤んだ瞳を空気に晒したくなくて、イリヤが顔を腕の中に沈めた、そのときだった。
バキューン、バキューン、
「えっ!? な、なに?」
と、館内に安っぽい銃声が二発分、響いた。続いて、なにやら緊張感を催すBGMが流れてくる。
異変に驚いたイリヤだったが、その銃声が実際のものではなく、目の前のスクリーンから流れているものだと知ると、ほっと胸を撫で下ろした。
人騒がせなスクリーンにむっとした視線をくれてやると、あ、と声を漏らす。
そこには、フォルゴレがいた。
「『00F 鉄のフォルゴレ バキューン!バキューン!』……?」
映し出されているタイトルを読み上げ、イリヤは目を白黒させる。
スクリーンの中には、一輪の薔薇をくわえ、銃を握るパルコ・フォルゴレの姿があった。
「どうして、フォルゴレが……?」
疑問を口に出したところで、イリヤはこれが上映予定にあった映画作品なんだということに気づく。
そんなもの事前に確認していたわけではなかったが、主演男優との思わぬ再会に息をのんだ。
意識せず、イリヤはちゃんとした姿勢で座席のシートに座りなおしていた。
◇ ◇ ◇
快晴の下の荒野。
金髪の男が、大勢のマフィアと対峙している。
マフィアは一人の女を人質として捕らえ、そのこめかみに銃を突きつけていた。
「はっはっは。馬鹿な男だ00F。いや、伝説のスパイ鉄のフォルゴレ。たった一人で来るとはな」
「フォルゴレ、逃げて!」
マフィアのボスらしき男が言い、捕らえられた美女が叫ぶ。
対峙する金髪の男――『00F』、またの名を伝説のスパイ『鉄のフォルゴレ』は、多くの戦車や戦闘ヘリに囲まれながらも悠然と立っていた。
「今日こそ始末する」
「君たちにできる……かな?」
圧倒的劣勢にも、フォルゴレは臆しはしなかった。
それどころか、前髪をかき上げながらキザっぽい笑みを浮かべ相手を挑発する。
「やれっ!」
ボスらしき男の号令が発され、数百人の部下たちが持つマシンガンが火を噴いた。
空を旋回していた戦闘ヘリからも、地上のフォルゴレ目掛け機関銃の雨が降り注ぐ。
戦車の砲身から特大の一撃が放たれ、フォルゴレのすぐ側で爆煙を上げた。
しかしそのどれもがフォルゴレには命中せず、無為に霧散していく。
BGM『チチをもげ! パルコ・フォルゴレ』
陽気な音楽の鳴り響く戦場で、フォルゴレは踊り、歌い、数多もの銃撃をすべて回避していた。
ライオンの鬣のような美しい金髪を風に靡かせて、特徴的な割れ顎を際立たせるように笑い、フォルゴレがボスと美女の下に迫る。
一瞬、なにが起こったのかわからないような一瞬の間に、ボスと美女の足元で爆発が起こった。
支援
「あ〜れ〜」
爆風により天高く舞い上がった美女が、悲鳴を上げる。
このまま地表までまっしぐらというところ、フォルゴレはその着地点に先取りし、落ちてきた美女をしっかりと抱き止めた。
そして、キラキラキラーンという輝く効果音に乗せ、ニヒルに笑いかける。
「大丈夫かい?(キラーン)」
「……フォルゴレ様(キュン)」
『チチをもげ!』の荘厳なバックミュージックは、依然として鳴り響いている。
その僅か3分程度の短い曲が流れる間に、フォルゴレはマフィア集団を壊滅させ、捕らわれの美女を救いだした。
お姫様抱っこの体勢で美女を抱えたまま、フォルゴレが颯爽とその場を去っていく。
「み、見事だ……鉄の、フォルゴ、レ……(ガクッ)」
ボスらしき男が、力なく倒れた。
フォルゴレは散っていた悪に一瞥もくれず、格好いい笑い声を発しながら荒野を行く。
「ははは、はっはっは、ハァーッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
END.
◇ ◇ ◇
パチ、パチ、パチ…………
僅か数分の短すぎる上映が終わり、シアター内には一人分の拙い拍手だけが残った。
唖然とも恍惚とも取れない微妙な表情で、イリヤがぼそっと感想を呟く。
「……フォルゴレって、本当に俳優だったんだ」
映画などろくに見たこともないイリヤにとっては、今の作品がどれほどのものだったのかは判定できない。
だが率直な感想として、スクリーン上のフォルゴレはとても格好よく思えた。
水族館で馬鹿やったり、ねねねにボコボコにされていたあのフォルゴレとは別人みたい。
美しくて、たくましくて、笑えて、それでいてどこか懐かしさを覚える、フォルゴレの主演作品。
イリヤは放心したように感動し、しばらくの間そのままぽーっとしていた。
そして思う。
あの姿こそが、パルコ・フォルゴレなんだなと。
「ねぇ、マッハキャリバー」
拍手を止めて、イリヤがマッハキャリバーにそっと語りかける。
「わたしに、あなたの使い方を教えて」
失意の色に染まっていた顔は、もう俯いてはいなかった。
前を見据え、力強く言を発する。
『その言葉を待っていました。仮マスターへの設定の適用化は既に完了しています』
「わたし、フォルゴレに笑われたくない。フォルゴレに負けたくない。フォルゴレみたいに格好よく生きたい」
『あなたには才能があります。しかし、訓練を積んだ魔導師というわけではない。くれぐれも無茶はなさらないように』
「もうあんな悔しい思いはしたくないから……わたしは、わたしの好きなものを守れる力が欲しい」
その瞳に確固たる抗いの意志を灯して、イリヤは立ち上がった。
フォルゴレに生かしてもらったこの命を無駄にしないため。もう二度と悔しさを味わわないため。
殺し合いに立ち向かうための、健全なる力を欲する。
『イメージしてください。あなたの身を守る衣服の姿を』
手中に収めたマッハキャリバーが、イリヤの魔力に反応し明滅する。
薄暗いシアター内が神秘的な光に包まれ、その光源となったイリヤに変化が訪れる。
纏っていた衣服は淡く消失し、雪にも似た白い裸身をむき出しにする。
そのかわりとして、魔力によって生み出された光が、薄い衣のようにイリヤを優しく包み込む。
やがてそれらは生地に、布地へと昇華して、イリヤがイメージしたとおりのバリアジャケットを形成した。
――フォルゴレのように、格好よくありたい。
――ネネネやシロウを、私の好きなものを守りたい。
――悲しみや悔しさなんて、いらない。
抱いた願望が、イリヤを行動へと導いた。
◇ ◇ ◇
イリヤがフォルゴレの死に一切の涙を流さなかったのは、やはり彼女が人間ではないからだろうか。
などと一瞬でも思ってしまった過去の自分を殴り倒し、ねねねは自分で自分に渇を入れた。
「だぁーもう! 私はなんだ!? ただ守られるだけしか能のないヒロインか! 柄じゃないんだよ!」
男勝りな口調で喚き散らして、ねねねは地団駄を踏んだ。
仄かに焼け焦げたアスファルトが、無機質な音を立てる。
辺りには、まだ血の臭いが残っていた。
――映画館から少し離れた路上。
そこには、木っ端微塵に破壊されたバイクの残骸と、頭の割れた少年の死体と、少年とは別の人間の肉片が散らばっていた。
そう遠くはない過去、ここで誰かと誰かが殺し合っていたことが、ありありと連想できる惨状だった。
「ったく……朝方のんきに物見遊山してた私らが馬鹿みたいじゃないか」
フォルゴレとイリヤと出会い、水族館で朝を迎え、あの銀髪と接触するまで、ねねねはまだ現実に直面してはいなかった。
それも今となっては過去形だ。フォルゴレは死に、目の前には誰かの死体が転がっており、自分はなにもできなかった事実に憤慨している。
現在進行形で殺し合いが行われているという忌避したいような非現実が、目をそらせないリアルなのだと思い知らされた。
改めて、ねねねをこんな状況下に引き込んだタコハゲを憎悪する。
溜め込んだ怒りとストレスは当に臨界点を越え、ねねねの顔を真っ赤に染めあげた。
「あたり構わず取り乱していては、螺旋王の思う壺ですよ」
怒り浸透中のねねねに対し、現場を検分していた明智が言う。
その表情、口調、姿勢はとことんまで冷静で、その冷静さが不気味に思えてくるくらいで、むしろねねねにとっては怒りに対象にすらなった。
と、その明智の手にやたら物騒なものが握られていることに気づき、ねねねが尋ねる。
「なんだ、その銃」
「そこの茂みに落ちていました。弾も入っていますし、廃棄物ではないでしょう。戦闘のごたごたで誰かが紛失したものではないかと」
明智は説明しつつ、拾ってきた猟銃をデイパックにしまった。
「使うのか、それ」
「使えるものは使うべきでしょう、こんな状況なら。ああ、射撃の心得があるのか、という意味の問いなら心配は無用です。なにせロスでは――」
「知らん。興味ない」
質問から会話を弾ませようとした明智を制し、ねねねはそっぽを向く。
ねねねは特別ヒステリーな性格というわけではなかったが、貯蓄されたストレスよって、その印象を近づきがたいものへと変えていた。
そんなねねねに明智は気取ったような溜め息をつき、やれやれと呟いた。こういう細かい所作が癪に障る。
「ところで菫川先生、なにか刃物を持ってはいませんか?」
「刃物? そんなもん、なんに使うんだよ」
「……彼から首輪を採取するために使います」
僅かに熱気の残っていた事故現場の空気が、ぴしり、と音を立てて凍てついた。
途端にねねねの顔から赤みが引き、穏やかさを取り戻していく。
だが、決して怒りが治まったわけではない。
ある程度の臨界点を突破し、悟りを開いたような状態。
今のねねねの心理状態を説明するならば、そんな感じだ。
「だいたい察しはつくけど、念のために訊いとく。なんのためにそいつの首を切るって?」
「首輪を得るためですよ。これからを生き抜くには、確実にこの首輪が関門となる。後々のために、サンプルを入手したい」
「よし、一発殴らせろ」
「私とて気は進みません。ですが、これは必要なことです」
「あんたの気なんて知るか。いいから、殴らせろ」
「……どうぞご勝手に」
律儀にも明智の了解を得てから、ねねねは握り拳を作り、大きく振りかぶって、それを放った。
プロボクサー顔負けの容赦ない右ストレートが明智の顔面に迫る。
その寸前で、ねねねの細い腕は明智によって掴み取られた。
そのまま左の腕も回し取られ、明智はねねねの背後に回りこんで後ろ手に彼女を拘束する。
刑事が犯人を捕らえるときによく使う、流麗な動作だった。
「このっ! 殴らせろ馬鹿ッ!」
「少し冷静になってください菫川先生。フォルゴレ氏の一件であなたが精神的に疲弊しているのはわかります。
だからといって、怒りに身を任せては主催者の思惑どおりの結果を招いてしまう。
あなたなら、フォルゴレ氏が格好つけのためだけに囮になったのではないということがわかるはずだ」
「わかってるわよそんなこと! わかってるから、私は私が許せないんだ! クソっ、クソ……」
ねねねは拘束を解こうと力を込めるが、明智の締めは完璧で、女性の力ではどうにもできなかった。
やがて喚く気も失せ、ねねねの声は小さな呟きへと変わる。
明智への憤慨は、いつしか無力な自分へと矛先を変え、瞳に悔しさが滲み出た。
ねねねもまた、イリヤと同じように悔しさを覚えていたのだ。
あそこでフォルゴレを助けに入れなかったこと、ここぞという場面で堅実に行動してしまった自分に、嫌気が差した。
その悔しさは、明智に八つ当たりしたところで晴れるものではない。
それもわかっているはずなのに、明智に敵意を向けている自分がいて、よりいっそう腹が立った。
「クソ……」
力がないから、守られる。力がないから、守ってくれた人が死ぬ。
冷たい現実を前に、紙を操れない、物語を作るしか能のないねねねは、なにもできなかった。
それがたまらなく悔しくて、悔しくて悔しくて悔しくて仕様がない。
「私の周りはそれはそれはスペクタルな奴らばっかりだったよ。でもな、私はそいつらの中にただ“いた”だけだ。
それでも、私は私なりに抗ってきたさ。納得のいかないことに、片っ端から首つっこんでいった。
そんな私が、なんだよこのザマは。菫川ねねねはあそこで逃げるような女じゃない。だってのに……!」
ザ・ペーパーや三姉妹を取り巻くトラブルの中に、ねねねはなぜかいつも紛れていた。
ただし、その中心に立ってトラブルを終息に導いてきたわけではない。大半は傍観者か被害者の役だった。
ここでもそれは変わらない。菫川ねねねは、特別な役目を持たぬ数合わせの登場人物にすぎない。
これまでならそれも容認してきただろう。だが、フォルゴレは違う。
「あいつは、私がなにもできなかったから死んだ」
責任を説いたところで、誰もねねねを非難したりはしないだろう。これは、彼女自身の気持ちの問題である。
強くあろうとした。読子と離れ離れで、アニタ死んでしまった世界で、強くあろうとした。
その意志とは逆の道を行く、不甲斐ない自分が許せなかった。
ただそれだけのことで喚き散らしている、子供みたいに傍迷惑な自分に、余計に腹が立った。
「そうやってあなたは、自分を悲観し、また過ちを繰り返すのですか?」
「……なんだと」
「彼の死に、彼の死を回避できなかった自分に苛立ちを覚えているなら、なおさら前を向くべきでは?」
「だから、何度も言ってるだろ! そんなのはわかってるんだよ!」
姿勢を崩さぬ明智の態度がまたねねねの心理を刺激して、怒りを誘発させた。
「なら、あなたは気持ちの整理をつけるべきだ。そのイライラが私を殴ることで発散されるというのであれば、それも甘んじて受けましょう」
言うと明智は拘束を解き、自由になったねねねは間髪いれずに明智を殴り飛ばした。
全力による鉄拳が明智の頬を打ち、その強烈さに彼の体は地を滑る。
やや遅れて鈍い音が鳴った後、ねねねの荒い息遣いだけが鮮明に響いた。
「……これで、満足ですか」
「ああ、すっきりしたよ。でも感謝なんてしないからな」
「私としても、殴られた相手に礼を言われては気持ちが悪い」
「……あんたも言うじゃんか」
ずれた眼鏡を優雅な仕草で直し、明智は立ち上がる。
殴られてなお崩れぬキザったらしい姿は、見ているだけでムカついてくる。
それでも、前に比べれば幾分かマシに思えているのを、ねねねは実感していた。
「おや?」
立ち上がる途中で、明智は地面にキラリと光るなにかを発見する。
赤黒い血に塗れたそれは、僅かな隙間に太陽光を反射して、本来持つ銀の色を鮮やかに主張していた。
拾い上げると、どうやらその物体が輪の形状をした金属物質であることがわかった。
「首輪、か? それ」
「そのようですね。どうやら、その少年の首を刎ねる必要はなくなったようです」
道端に伏せられていた少年の遺体を一瞥した後、明智は改めて首輪を見回す。
血に塗れて銀色の部分が少なくなった首輪。その僅かな隙間に、所有者を識別するためであろう刻印が刻まれているのを発見した。
「……『Caro-Ru-Lushe』。この首輪が嵌っていた者の名前ですね」
「キャロって、たしかそれ……」
「ええ。おもしろくもない偶然です。この事故現場には、機動六課のキャロ・ル・ルシエさんが巻き込まれていた可能性が高い」
反射的に周囲に散らばっていた肉片らしきものに目がいき、ねねねは眉をひそめる。
そもそも首輪が一個の固体として存在している時点で、その持ち主がどうなったかなど容易に想像がつく。
そして、周囲にはこの注視しがたい惨劇の跡。深く考えるまでもなく、キャロがどういう死に方をしたのかが推察できた。
「腐ってるな。こんな殺し方をする奴も、それを強要しているタコハゲオヤジも」
「同感ですね。警察という立場を棚に上げて言わせてもらいますが、このような真似ができる下種を罰するに、日本の刑罰は生温い」
「なんだ、意見合うじゃん」
「光栄ですね。私としても、あなたとは今後も蟠りなくいきたいものですが」
「あなた“方”、でしょ?」
「……フッ、失礼。そうでしたね」
互いに軽く微笑みあった後、ねねねと明智の二人は自然な動作で肩を並べ、イリヤの待つ映画館へと戻っていった。
戦利品に一丁の猟銃と、少年のものらしきデイパック、そしてキャロの首輪を持って。
◇ ◇ ◇
数分前までフォルゴレ主演の名作が上映されていたことなど露知らず、ねねねと明智の二人は映画館へと帰還した。
今はなにも映さぬスクリーンの下で、待ち人たる仲間の姿を視認する。
「おかえりネネネ! それとアケチも!」
先ほどとは打って変わり、心を裏返しにしたかのような元気なイリヤに出迎えられ、ねねねと明智は唖然とした。
「も〜、あんまりにも遅いから、迎えに行こうとしてたのよ?」
いや、それは唖然というレベルではなかった。
あまりにも想定外、それでいて衝撃的な光景に、二人は息をすることすら忘れ、その場に立ち尽くす。
「ちょっと、二人ともどうしちゃったのよ?」
イリヤがちょこんと首を傾げて見せるが、ねねねも明智もリアクションを取ることができない。
半開きになった口からはひたすらに無音。完全に機能が停止していた。
「ねぇマッハキャリバー、これってどういうことだと思う?」
『おそらく、お二人とも仮マスターの変貌に驚かれているのではないでしょうか?』
「変貌って、こんなにかわいくドレスアップしたんだから、“変身”って呼んでよ」
『失敬。しかしやはり、お二人が戸惑いの渦中にあるのは事実なようです』
平然と話を進めるイリヤとマッハキャリバーに対し、二人は一言も喋れず。
長い間絶句して、ようやくねねねが口を開いた。
「……その、すがた、は?」
「マッハキャリバーの力を借りて“変身”したの。バリアジャケットって言うんだって」
「ギャグじゃ、ないよ、な?」
「ひどーい! これでちゃんと性能も伴ってるのよ。でしょ、マッハキャリバー?」
『はい。外見は仮マスターのイメージから抽出したものであり、しかしその魔力耐性は見た目に反し……』
マッハキャリバーが小難しい説明を述べるが、それでもねねねと明智は戸惑いから抜け出せなかった。
目に映るイリヤの現在の姿を思えば、それも仕方がないことなのである。
なにせ今イリヤが纏っている上下の服を簡潔に言い表すとするならば……
“体操着”と“ブルマ”
たったこれだけで説明終了。大半の人間には伝わる。
つけ加えると、体操着は襟首に紫のラインが入っており、その他装飾等は一切ないシンプルな作り。
ブルマは昔ながらの紺色で、イリヤの小さな臀部をふっくらと覆っている。
発育し切っていない未熟な肢体に、それら健康の象徴とも言える神秘の組み合わせが見事に調和。
プラチナブロンドがギャップにより際立ち、粉雪のようなきめ細かい肌もより目を奪うよう強調されている。
俗に、『タイガー道場のロリブルマ』と呼ばれる少女……に、そっくりな外見(ねねねたちが知るよしはないが)。
防護服(バリアジャケット)などと言われようが、その違和感は拭えるものではない。
こんなものは一昔前の小学生ならば誰もが身につけていたものであり、スポーツ専門店に行けば今でも手に入りそうな品だ。
機動性を重視した作りであるため動きやすくはあるだろうが、こんなもので魔力耐性がどうのこうの言われても、困る。
「……あのさマッハキャリバー。一応訊いとくけど、あんたの趣味じゃないよな、これ?」
『? 仮マスターのこの姿がなぜ私の趣味に繋がるのかはわかりませんが、これの性能は確かです。露出は多めですが、これといって問題はありません』
「イメージしてって言うから、動きやすそうのを思い浮かべてみたの。そしたら、こんなん出ました〜!」
「あー………………いや、もうなにも言うまい」
ねねねは軽く頭を抱え、イリヤの格好を受け入れた。
心にかかっていた重苦しい靄を、一瞬で吹き飛ばすほどの破壊力があったわけだが、逆にありがたいかもしれない。
明智にいたっては、隅でひっそりと失笑を漏らしている。嘲りの笑いではなく、心の底からおかしくて笑っているようだった。
なんだ、こいつもこんなんで笑うんだ。とねねねは妙に納得し、釣られるように笑顔を作った。
そんなねねねと明智を見て、イリヤだけが不思議そうな顔をする。
「なんで二人とも笑ってるのよ〜?」
しばらくの間、和やかな時間が続いた。
◇ ◇ ◇
「それで、これからどうするの?」
横一列にズラーッと伸びる観客席の最前列。
その左端から順に、明智、イリヤ、ねねねと座っていた三人は、これからの方針について話し合う。
「そうですね……お二人の希望は?」
「わたしはシロウを捜したいけど、やっぱりどこにいるかわからないし、これまでどおりネネネについて行くわ」
「目的地としては図書館だけど、それも根拠の薄い理由だしねぇ。明智警視殿に妙案があるってんなら、私はそっちに従うわ」
イリヤ、ねねねと順に意見を述べ、その決定権は明智に委ねられた。
その様子からも見て取れるように、もはや二人に明智と行動を共にすることへの不満はない。
それを再確認し、明智は改めて己の意を述べる。
「では、しばらくはここに留まり、休憩としましょう」
飛び出した案は、意外にも待ちだった。
「しばらくはって……夜までここで休憩ってこと? 昼の内に動いたほうが色々と都合がいいんじゃないの?」
「確かに、襲撃をする側にとって夜は絶好の機会でしょう。だからといって、事を急いでは何事も仕損じてしまいますよ」
「こっちからは動かないで、誰かが近寄ってくるのを待つってこと?」
「そのとおりです。この施設は隠れるのにも適している上、会場の中心地という人が集まるには最高の立地条件を備えている。
さらに、我々の手元には訪れる人間が善悪かどうか、殺し合いに乗っているかどうか判断できる材料が、二つもある」
明智の言葉にねねねはハッとして、数時間前に発覚した偶然を思い起こす。
「私と、あんたの詳細名簿か」
「ええ。最低でも明日の朝を迎えるか、夜間に安心して行動できるほどの戦力が整うかしたら、こちらから動きます」
「ひとつ訊いていい?」
「なんでしょう」
「そりゃ私ら二人がお荷物だから……誰かに襲われたら対処しづらいからってんじゃないだろうな?」
明智の提案は、理に適っているものだった。
しかし同時に、このメンバーがいかに貧弱な面子であるかも物語っている。
特に女子供の類に分類されるねねねとイリヤは、明智に変に気を使われているようで、釈然としないものがあった。
「無力という観点で言えば、それは私も変わりませんよ。
戦闘機人、テッカマン、英霊、HiME、どれと相対しても満足に対応できる自信はありません。
それに私は既に一度、“焔の錬金術師”に一杯食わされていますからね」
「機動六課の……ティアナって人はどうするの?」
「彼女のことは気になりますが、捜そうにも行方が掴めません。会場内を東奔西走するリスクについては、我々“三人”の戦力の心許なさに要因があります」
「無闇に動き回るよりは、人が集まりそうなここで待ち伏せたほうが得策ってわけね」
「そういうことです。それに、これを調べる時間も欲しいですしね」
明智の手には、血が洗い流され綺麗になったキャロの首輪があった。
最終的にここから生きて帰るのに、最大の障害となるであろう戒め、首輪。
遠くない未来、必ず看破しなければならないそれを調べるなら、今が最適だった。
「は〜い! なら私も、色々と試してみたいことがあるの。マッハキャリバーに『べるか式』ってのを教えてもらいたいし」
「時間は有効に活用すべきです。後を生きるためにどう行動するかは、各々の判断に任せますよ」
「なら私は……なにしようかな」
「紙とペンがあります。ここでの体験談を本にでも起こしてみてはどうですか」
「……自伝にしても売れなさそうだな」
これからしばらくの時間を“休憩及び待機”と定めた三人は、各々どうすごすか思案に暮れた。
首輪の調査、魔法の習得と、明智とイリヤはそれぞれの目的を得て、ねねねだけが手持ち無沙汰になる。
仕様がないから映画館外の見張りでもしてようかと言ったところ、
「ああ、それなら必要ありませんよ。先ほど便利なものを手に入れましたから」
明智はさらっと言ってのけ、事故現場から持ってきたデイパックに手をかける。
出てきたのは、珍妙なカプセル型の機械だった。
ちょうど人と同じ大きさはあるだろうか。中心にカメラらしきものを備え付けた謎の機械は、不気味に宙を佇んでいる。
「デイパックに残ってたのこれ? たしか支給品リストで見たような……なんだっけか」
「ガジェットドローン。正式にはガジェットドローンT型。こちらのプログラム通りに動いてくれる、便利な機械人形ですよ」
「あんた、プログラミングなんてできんの?」
「ロスで一通り学びました。もっとも、これはある程度の知識を持った人間なら誰でも細工できるよう簡略化されているようですが」
言いながら、明智はガジェットドローン側面部のコンソールを弄る。
ねねねとイリヤが見つめる中、プログラミングはものの数分で完了し、ガジェットドローンは映画館外へと飛び去っていった。
「どこへ行ったの、あれ?」
「映画館周辺の索敵に出しました。参加者を発見次第その姿を撮影、速やかにここに戻ってくるようにと。
参加者が見つからなくとも、30分ごとにはここに戻るよう指示しています。本体に異変が起きても、すぐに対応できるようにするためです」
「へー、便利なもんだ」
感心すると同時に、ねねねは自分の仕事が機械に奪われたに気づいて落胆した。
もういっそ不貞寝でもしようかと思ったが、明智が注意を促す。
「監視係ができたからといって、くれぐれも油断はしないように。
私はあれの性能を把握しきっているわけではありませんし、中には監視の目を掻い潜ってここに潜入できる者もいるかもしれません」
「はいはい。心得ていますよ明智警視殿。本当に小説でも書いてようかね、ったく」
「もう、ネネネったら不貞腐れないの。大丈夫よ。もし誰かが襲ってきても、私がついてるんだから!」
「そうだな。そりゃ安心だ。せいぜい頼りにさせてもらうよ、ちびっ子」
こうして、三人の昼は過ぎていった――
(見ててねフォルゴレ。私、フォルゴレに負けないくらい強くなるから。シロウもきっと……)
(クロスミラージュ君の説得は上手くいったのでしょうか。できればまた会いたいものです。さて、次なる問題は……)
(これで図書館で本読んで待ってました、ってんなら笑い種だけど。お願いだから、元気でやっててよね……)
――三者三様、喧騒とは無縁の静かな映画館内で、未来を、そして現在を案じる。
【C-5・映画館/一日目・日中】
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:右肩に裂傷(応急手当済み)、上着喪失
[装備]:レミントンM700(弾数3)、フィーロのナイフ@BACCANO バッカーノ!
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、参加者詳細名簿
予備カートリッジ8、ダイヤグラムのコピー、首輪(キャロ)
[思考]
基本思考:犯罪芸術家「高遠遙一」の確保。ゲームからの脱出。
1:首輪を調べる。ただし不安要素が多いため解体作業には着手しない。
2:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機。
3:ガジェットドローンを介し周辺の索敵。協力できそうな人物がいた場合はこちらから接触する。危険と判断した相手は無視。
4:ゲームに乗っていない人間を探しつつ施設を回る。
5:金田一等仲間の知人を探す。
6:明日の正午以降に博物館の先に進む。信頼できる人物にはこのことを伝える。
[備考]
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。
※明智の命令で、映画館周辺をガジェットドローンが飛び回っています。命令内容は以下のとおり。
・参加者を発見次第その姿を撮影し、速やかに映画館内に戻る(基本隠密行動。撮影も相手にバレないように行う)。
・参加者を発見できなくとも、30分ごとには映画館に戻る。
・AMFの展開はオート。抗戦はなし。
【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)、詳細名簿+@アニロワオリジナル、手書きの警戒者リスト
:ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
[思考]:
1:暇だ。本当に小説でも書いてるか?
2:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機。
3:図書館に行く。誰も見つけられなければ本がある場所へ(しばらく保留)。
4:読子等仲間の知人を探す。
5:詳細名簿を参照に、危険人物、及び死亡者の知り合いを警戒する
6:柊かがみに出会ったら、ボン太くんのぬいぐるみと『フルメタル・パニック!』全巻セットを返却する。
7:読子が本当に自分の知る人物なのか確かめる。※
最終行動方針:打倒タコハゲ
[備考]:
※詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。
※思考7、パラレルワールド説について。
富士見書房という自分が知り得ない日本の出版社の存在から、単純な異世界だけではなく、パラレルワールドの概念を考慮しています。
例えば、柊かがみは同じ日本人だとしても、ねねねの世界には存在しない富士見書房の存在する日本に住んでいるようなので、
ねねねの住む日本とは別の日本、即ちパラレルワールドの住人である可能性が高い、と考えています。
この理論の延長で、会場内にいる読子やアニタも、ひょっとしたらねねねとは面識のないパラレルワールドの住人ではないかと考えています。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル、支給品リスト@アニロワオリジナル
[思考]:
基本行動方針:シロウに会うまで絶対生き残る。
1:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる。
2:明日の朝方か、もしくは夜間行動するに十分な戦力が整うまで映画館に待機。
3:シロウ等仲間の知人を探す。
4:放送で呼ばれた死亡者の知り合いを警戒する。
[備考]:
※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。
※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。
※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。
【ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
スカリエッティが開発した機動兵器。カプセル状の形をしたT型。
側面部に設置されたコンソールから命令をプログラミングすることができ、その命令に従い自立行動する。
命令プラグラムは、セットした本人でなければ解除不能。上書きも不可。
プログラミングは簡略化されているが、ある程度の機械技術がなければ難しいものと思われる。
また、アームケーブルとAMFは健在なものの、光学兵器等の武装は撤去されている模様。
監視のためのカメラも備えられており、側面部の簡易モニターに映し出すこともできれば、アームケーブルを通して他の映像媒体に出力することも可能。
シモンに支給されたもの。
483 名前:A 投稿日:2007/12/17(月) 00:14:07 HOST:KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jp
どこかの誰かが勝手に決めた『2ちゃんねるの削除ルールに』従う必要なんか無い!
今の住人が変えると言ったら変わるんだ!
スレタイも
>>1もテンプレも関係無い! そんなのはきっとしたらばか何処かが勝手に作ったんだ!
だから、俺は今からこのスレで自分の好きなことを話すからな!
……ということですか?
それこそスレ違いなんだけど……そこで適切なスレに移動する気は無いんですよね、やっぱり?
移動する気があるなら批判要望板辺りにどうぞ。
どっかで見たような臭い文章ですねー
本当だ
…………………
自分のSSがバカにされてファビョってんじゃねーの?
私怨だな
KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jpってそんなに偉かったんですね〜
初めて知りました〜
まったく
負け犬の遠吠えw
190 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/17(月) 13:09:32 ID:g5yG4RVi
質問
ここに投下されたSSでどれが本当の歴史?(どれが削除対象?でも可)
とりあえず地図みたいなものを作ってみました
つっても例のCGIのバトルロワイアルの地図を見てぱっと考えただけなんですがw
(参考)
■凸凸凸凸凸凸■■〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸凸〜〜〜〜
■■■■■凸凸凸凸〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸□□□凸凸凸〜
■〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜□□□□□□□凸凸凸
■■■■森■■ ■〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸□民 学□□□□
〜〜〜■■■森 ■〜〜〜〜〜〜〜凸凸〜〜〜〜〜〜〜□凸凸病 凸凸□□□
〜〜〜〜〜〜 ■〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸〜〜〜〜〜〜凸凸 □凸凸□□
〜〜〜〜〜〜 森森〜〜〜〜〜〜〜〜凸民〜〜〜〜〜〜凸凸□□ □凸凸□□
〜〜〜〜〜〜 ■森〜〜〜〜〜〜〜〜凸港〜〜〜〜〜〜港□□凸 □□
〜〜〜〜〜〜 森■〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸〜〜〜〜〜〜凸凸凸凸 □凸凸□□
■■■■■森■■森〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸□民 学□□□□
〜〜〜■■■森■森〜〜〜〜〜〜〜凸凸〜〜〜〜〜〜〜□凸凸病 凸凸□□□
〜〜〜〜〜〜■■■〜〜〜〜〜〜〜〜凸凸〜〜〜〜凸凸凸凸凸凸 □凸凸□□
〜〜〜〜〜〜■森■□□浜浜浜浜浜浜浜浜浜浜浜浜浜浜凸凸 □凸凸□□
〜〜〜〜〜〜■森■浜浜浜浜浜浜浜□凸民凸凸□□□凸凸□ 凸民〜〜〜〜〜〜
〜■■■森■□凸凸□□□凸凸□□□凸凸□□凸□凸凸□□ 凸凸凸凸□凸凸
〜〜〜〜〜〜■森■ 凸民 凸凸□□ □凸凸□□凸凸
凸凸□□ □凸凸□□凸凸病凸 凸凸 凸凸□□
凸凸□□□凸凸□□□凸凸□□凸□凸凸□□凸凸□□□凸凸□□□凸凸□□凸
〜 海
凸 山
浜 砂浜
民 民家
学 学校(大学)
病 病院
森 森
□ 平野
■ 高地
空白 道路
あと、CGIの方では、東西南北に分けてましたが
人数多いので、1マスを9に分けてブロックにするとかどうでしょう
考え方は面白いね
でもなんか大戦略みたいだな
青空の下、鈍い銀色の構造群が輝く。
黒い海を足元に跪かせ、己が威容を主張する工場の只中を、走る影が一つ。
倉庫の屋根を蹴り、太いパイプを伝い、梯子を掴んで影は昇る。
赤と白の縞模様に塗り分けられた煙突を上へ上へと進んでいく。
薄汚れた赤マントが高所の風に吹かれてばさばさとなびく。
されど、ドモン・カッシュは煙突の先だけを見つめ、足早にただ駆け上がっていく。
彼自身の切実な目的のために。
◇
時はわずかに遡る。
言峰との接触を終えたドモンは、ある工場の事務室で体を休めていた。
双剣の少年、傷の男、そして言峰。
一筋縄ではいかぬ強者との連戦に体力を根こそぎ奪い取られ、休息を余儀なくされていたのだ。
もちろんこれは、一刻も早い螺旋王打倒に燃える彼にとっては、いささか不本意なことではあった。
しかし、万全ではない状態で無理に戦い続けても、いい結果が得られないことが分からぬドモンでもない。
その後、水分を補充し、緑の毛布で覆われた柔らかいソファーに体を沈めて休むこと数時間。
体を蝕んでいた不快な消耗の疼きは薄れ、ほとんど消えかけていた。
「……やはりここにもないか」
そして、疲労が概ね回復したことを感じ取った彼は、何を思ったのか突然立ち上がり、部屋の中を漁り始めた。
備え付けの戸棚を開け、机の引き出しをまさぐり、シンクの下の収納を覗き込む。
しかし、どうやら、そのような探索は思わしい成果をあげられていないようであり、ドモンの口からは愚痴がこぼれている。
一体、どうして彼はこのような行動をとっているのか?
その答えは、彼が休憩中に思い至ったある『こと』に起因している。
人心地ついたのちに、今後の方針に思いを巡らせようとした時、彼は不意にその『こと』を思いついた。
いや、正確を規すならば思い出したと言った方が当たっているかもしれない。
その『こと』は、とても重要なことであるにもかかわらず、ここに来て以来ずっと忘れられていたのだ。
だから、一度思い出してしまうと、ドモンの頭と神経はその『こと』に釘付けになった。
「ちっ、ここでは無理だな。他を当たるか……」
部屋を一通り検分し終わると、忌々しげに呟く。
ここで目的を達することは難しいと考えたドモンは、ソファに掛けてあったあったマントを無造作に掴むと
そのまま、出口へと足早に歩を進める。だが
「さて、二度目の放送を行う。
無事にこれを聞いていられる貴様達には、ひとまずおめでとうと言っておこうか――」
彼の手がドアノブにかかる前に、二回目の放送が始まった。
◆
「風浦可符香が死んだ……」
事務室のドアの前に立ったまま、俺は呆けたように呟いた。
目を閉じ、頭を目の前のドアにもたせかけると、そのまま、固めた拳を金属の戸板に叩きつける。
ベギンと重い音がして表面がわずかに凹んだ。
「気づけたはずだろう……こんな殺し合いの場にただの少女が一人きり……どれだけ危険なことなのか」
俺は自らの浅はかさを悔いていた。
いくら自分の道を示されて興奮していたとはいえ、あそこで彼女を置き去りにするのは取り返しのつかない失態だ。
だいたい、俺があのとき、エドを探す手間も惜しんで走り出したのは何のためだった?
ファイトを通じて外道を倒し、仲間を集め、“弱者を守る”ためじゃなかったのか?
弱者を守る――なら何故、真っ先に目の前の少女を守ることを考えなかった!?
「……俺は結局、ファイトの期待に酔っていただけなのか」
もう一度両の拳をドアに叩きつけ、自分を戒めるように歯を食いしばる。
そう、俺は強い奴と気兼ねなく戦える興奮に身を任せるあまり、大事なことが疎かになっていたのだ。
今になって冷静に思い返してみれば、俺の失態が風浦可符香の一件だけではないことに気づく。
まずエドだ。
この世界に来てすぐに出会ったいたいけな少女を、俺はどうした?
……置き去りにしたんじゃないのか。死んだ風浦可符香と同じように!
それも、注意が逸れている間に、どこかへ消えてしまったという、普通に考えれば危険な状態であったにもかかわらず……だ。
放送を聞く限り、エドはまだ生きているようだが……この調子では、いつ殺人鬼の餌食にならないとも限らない。
何せ、この半日で二十人そこそこの人間が死んでいるんだからな。
……いや、もしかしたら、既に悪漢の牙に晒されたが
合流していた風浦可符香がそれをうまく逃がしたのかもしれない。
そして風浦可符香はエドを守るためにその命を……という可能性も十分にあり得る。
だとしたら、彼女は俺が殺したようなものだ。
それから、双剣の男と銃使いの女。
俺はあの二人、特に双剣の男とはお互い丹念に拳を交わし、心を通じさせることに成功した。
だが、その後、俺がとった行動は一体何だった?
――『俺はこれからこの会場を戦って回る。お前はさっきの女と合流しておけ』
――『な、に?』
そうだ。新たなファイトを行うことばかりに気がいき、完全に本来の目的を、“仲間を集める”という目的を失念していた。
もし、あそこであの二人と合流していれば、今頃、俺は有用な情報を手に入れ、螺旋王と戦う道筋を見出していたかもしれん。
だが、それに比べて現実の俺はどうだ?
未だあの男に至る方法どころか、今、自分のいる場所すら満足に知ることすらできていない。
こんなことをいつまでも繰り返していては、螺旋王の打倒など夢のまた夢だ。
「反省を……せねばならんようだな」
俺はドアに頭をつけたまま考える。
額越しに感じるひんやりとした金属の感触は、心なしか精神を研ぎ澄ましてくれる気がした。
一体、何が間違っていたというのだろう?
やはり、誰彼構わずにファイトを挑むというやり方が正しくなかったのか?
否。それは違う。
風浦可符香が俺に授けてくれたこのやり方は間違ったものではないとはっきり言える。
傷の男や言峰との闘いがそれを証明している。
傷の男。
凄まじい力を持つ奴の心を俺に伝えてくれたのは、紛れも無くあのガンダムファイトだ。
あのファイトを通して、俺は奴の拳の裏にある奴の思い、奴が抱える怒りや悲しみ、そして復讐の心を知ることができた。
おそらく、奴のあの頑なな心に、生半可な言葉は通用しまい。
奴の心を溶かすことができるとしたら……それは拳だ。魂の篭った拳同士の闘いだけだ。
……かつての俺がそうだったように。
そして、言峰。
あの男についても、拳をあわせてはじめて分かったことがある。
それは、あの男が紛れも無い『悪』を抱え込んだ男だということだ。
確かに、奴は武道家としては気持ちのよい男。
天から授かった恵まれた肉体を、禁欲的に研ぎ澄まし、丁寧に丁寧に完成させたクンフーは素直に尊敬できる代物だ。
……だが、奴の拳に込められているのはそれだけではない。
例えようもなく黒く、粘りつくように邪な何かが、奴の技には宿っている。
言峰と対峙していると、ときおり、その『悪』が俺を丸呑みにしようと口を開けるような感触に襲われる。
まるで、黒いヘドロでできた獣が俺の体を覆いつくそうとしているような、そんな感覚に。
そしてそれは、かつて俺がデビルガンダムと対峙したときに感じたものと……極めて近い。
俺が奴に仲間として合流を申し出なかったのも、その『悪』の感触ゆえだ。
見たところ、殺し合いに乗っている様子はなさそうだったから捨て置いたが
もし、再び見えることがあれば、注意する必要があるかもしれん。
この二人に関するこういう事実は、もし直接ファイトすることがなかったら、分からなかっただろう。
自慢じゃないが、俺は頭も悪いし口も巧くない。
そんな俺が仲間を集めるためには、このやり方をとるのが妥当であるのは間違いない。
では、間違っていたのは何か?
決まっている。ファイトという手段の使い方が間違っていたのだ。
そう、俺は今まで、ファイト自体に拘るあまり、その後のことを全く考えていなかった。
とにかくファイトしなければ!一人でも多くの人と、一刻も早く!
俺は今までそれだけを考え、本来の目的を見失っていたのだ。
だから、これからはそんなんじゃいけない。あくまでファイトは手段。
敵を打ち倒し、仲間を集め、弱きを守るための手段だ。
これからはそれを肝に銘じ、確固たる目的を持って戦わなければならん!!
「『漢』とは、拳を通して分かり合う者……か。
すまなかった、風浦可符香。人と分かり合って何を為すのか、俺はそこをすっかり忘れていた。
やはり俺はまだまだ修行が足りんようだ」
風浦可符香の言葉を思い出し、顔を上げる。
さっきの放送によれば、この六時間のうちに殺された者の数は十六名。
殺し合いは確実に加速している。
一刻も早く止めなければさらなる犠牲者がでるのは必至だろう。
もう、目先の戦いを楽しんでいる暇は無い。
「だから……そのためにもまず……」
俺は、放送が始まる前、自分がしようとしていたことを不意に思い出す。
その『こと』を果たすため、俺はドアを開け放ち、部屋の外へと歩み始めた。
◆
ばさばさと風に翻弄されるマントを意に介すこともなく、ドモン・カッシュは立っていた。
煙突が誇る地上150mに臆する様子を微塵も見せず、ただ下界を睨みつけている。
北には黒く輝く海を挟んで、芝とコンクリートのだだっ広い平地を備えた滑走路。
東と西には灰と銀の威容がこちらを圧する大工場群。
そして、南には青々と茂った緑も眩しく、山峰が連なる。
その光景はまさに大パノラマと言ってよかったが、別に彼は景色を楽しむためにここへ来たわけではない。
ドモンがここに来た目的、それは有り体に言ってしまえば「人探し」である。
最早、間違ったファイトをせず、敵を倒し、仲間を集め、弱きを守ることを決意したドモンであったが
そのどれも、とどのつまり、他人がいなければ行うことができない。
加えて、彼には一刻も早く他人を見つけたいもう一つの理由があった。
それは――
「……グキュゥーーーーー……」
どこからともなく、動物がいななくような音が聞こえてくる。
その音源を探ってみれば……然り。音はドモンの腹の辺りから聞こえてくる。
「……ちっ!武士は食わねどなんとやらと言うが……
やはり荷物を全部やってしまったのは間違いだったか?」
つまるところ、ドモン・カッシュは空腹だった。
体を休め、とりあえずの疲労が体から去ると、入れ替わるように激しい空腹が彼を襲った。
これまでの激しい戦いが彼の中に貯蔵されたエネルギーを根こそぎ奪い去っていったため
彼の体は代償物としての食べ物を求めて、一斉に騒ぎ出したのである。
その要求に答え、自分の本能を抑えるため、ドモンはあの事務室を探してみたのだが……結果はご存知の通りだ。
あの後、食料を求めて、目ぼしい工場の食堂や売店をあたってみたのだが
運の悪いことに、そこには何一つ食べられるようなものは置いていなかった。
そこで高所に上り、レストランや市場など食料のありそうな場所を探そうとしたのだが、これも失敗。
煙突の周囲には工場地帯と住宅街が広がっており、それらしい建物を見つけることはできない。
結果に絶望した彼は、方針を切り替えて、まず他人を探し、間接的に食料を得ることに決めたのだ。
(これからもまだまだ厳しい戦いは続くはず……
そんなときに空腹が原因で負けたとあっては、一生の不覚だからな。
……とりあえず、人を見つけたら、まず今まで通りファイトを仕掛ける。
そして、相手が悪人なら斃して食料を手に入れる。相手が善人なら謝って食料を手に入れる。
相手がどちらか分からなければ……何とかして食料を手に入れるッ!!)
「その過程で仲間にふさわしい人間に出会えればなおいい」などと
ずれたことを考えている男を尻目に、風は青空を吹き渡っていく。
山から降りてきた強風はドモンの傍を通り過ぎて狭い海を渡り、広がる滑走路にまでその手を伸ばす。
「キャッ!」
「…………どうした?」
「……いや、あの……その……ちょっとスカートが……」
「そ、そうか……それは……スマン」
……そうして伸びた風の手は、奇妙な二人を優しく撫でた。
◇
漢の決意、邪魔する虫は腹の虫。
コンテナの齎す影を抜け、二人が漢の視界に入るまで、あと、少し――――
【G-3/煙突/1日目/日中】
【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:空腹(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:己を鍛え上げつつ他の参加者と共にバトルロワイアルを阻止し、螺旋王をヒートエンド
1:食料を手に入れる
2:積極的に、他の参加者にファイトを申し込む(目的を忘れない程度に戦う)
3:ゲームに乗っている人間は(基本的に拳で)説き伏せ、弱者は保護し、場合によっては稽古をつける
4:傷の男(スカー)を止める
5:一通り会場を回って双剣の男(士郎)と銃使いの女(なつき)と合流する
6:言峰に武道家として親近感。しかし、人間としては警戒。
[備考]:
※本編終了後からの参戦。
※参加者名簿に目を通していません 。
※地図にも目を通していません。フィーリングで会場を回っています 。
※正々堂々と戦闘することは悪いことだとは考えていません 。
※なつきはかなりの腕前だと思い込んでいます。
【G-3/空港/1日目/日中・放送直後】
【チーム:Joker&Fake Joker】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:脇腹に傷跡(ほぼ完治・微かな痛み)、胸焼け
[装備]:ワルサーWA2000(3/6)@現実 、大鉈@現実
モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと9秒連射可能、ロケット弾は一発)
[道具]:支給品一式、ワルサーWA2000用箱型弾倉x4、鉄の手枷@現実
[思考]
基本:ゲームに乗る。人間は全員殺す。
0:……くそっ、何だこの恥ずかしさは!
1:中央部近辺に向かい、激戦区を観察。そしてそこから逃げてきたものを殺す。
2:シャマルに礼を尽くす。その為にも、クラールヴィントと魔鏡のかけらをどうにかして手に入れたい。
3:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
4:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
[備考]
螺旋王による改造を受けています。
@睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
A身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
…人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。
単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。
※二アが参加している事に気づきました。
※機動六課メンバーをニンゲン型の獣人だと認識しました。
※なのは世界の魔法について簡単に理解しましたが、それは螺旋王の持つ技術の一つだと思っています。
また、その事から参加者の中で魔法が使えるのは機動六課メンバーだけであるとも思っています。
※螺旋王の目的を『“一部の人間が持つ特殊な力”の研究』ではないかと考え始めました。
【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:魔力消費 中
[装備]:ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式×2、バルサミコ酢の大瓶(残り1/2)@らき☆すた、魔鏡のかけら@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:八神はやてを守る為に、六課メンバー以外の全員を殺す。けれど、なるべく苦しめたくは無い。
0:……
1:中央部近辺に向かい、激戦区を観察。そしてそこから逃げてきたものを殺す。
2:しばらくの間はヴィラルと行動する。
3:クラールヴィントと魔鏡のかけらを手に入れたい。
※宝具という名称を知りません。
※ゲイボルク@Fate/stay nightをハズレ支給品だと認識しています。
※魔力に何かしらの制限が掛けられている可能性に気付きました。
※魔鏡のかけらを何らかの魔力増幅アイテムと認識しましたが、
どうやって使用する物なのか、また全部で何枚存在しているのかはまだ理解していません。
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〜 湖
凸 山
浜 砂浜
▼ 民家
● 学校(大学)
● 病院
森 森
□ 荒野
■ 平野
空白 道路
〓 鉄道
|/ 高速道路
なんかいいなそれwwwwwwwwwwwwwww
バトルフィールドが複数あるって駄目なの?
さすがにそれはないだろ……どんなロワにする気だよ……
死んでも生き返ってはいけないというルールはないから
死んだら別フィールドににぶっ飛ばせばいいんじゃね
>>192 の世界で死んだら、>>203の世界に転生とか
糸色望はA世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
「へたれセイバー」に食われて死亡しました
A世界で糸色望が死亡しました
糸色望は他界しました
・
・
・
糸色望はB世界のバトルロワイアルに参加決定しますた
僕達は殺し合いをすると、3回書かされました
突如、「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」に鈍器で殴られて死亡しました
糸色望は他界しました
・
・
・
糸色望はC世界の…
ちょww他界ってw
永遠に殺され続ける訳か
他のバトロワでは占領という概念があるから、それをうまくつかえば
2つ以上の世界でもいけるんじゃないかな
言峰は禁止エリアをメモし、呼ばれた者の名に横線を引く作業を終えた。
今回の死亡者は16人。
その中には彼が接触した者たちの名もあった。
パズー、そして間桐慎二。
彼の言葉に対して殺人の拒否と殺人の肯定という、正反対の反応を見せた者たちであったが、どちらも生き延びることができなかったようだ。
もっとも、言峰としては間桐慎二には大して期待していない。
どのような無様な死に方をしたのか、多少興味を持ったくらいだ。
さらに、風浦可符香の名も呼ばれていた。
自分に似ているというので興味を持っていたが、これも死んでしまったとなっては仕方ない。
(16人。思ったよりも多いか……)
第一回放送で死亡した者も含めると25人、全参加者の四分の一以上が命を落としたことになる。
殺し合いに乗った者はそれなりに多いらしい。
今回の放送で親しい者の死を知り、優勝の際の褒美に一縷の望みを賭けて殺人に走る者もいるだろう。
言峰は優勝すればいかなる願いも叶えられる、などという口約束はまるで信じていない。
そもそも「実験」と称して殺し合いを催していること自体、相手が全能ではないと白状しているようなものだ。
全能なる者は実験など行うまでもなく、あらゆることを見通すはずである。
仮に全能なる存在だと仮定したところで、実験の結果、生き残ったモルモットを実験者がそうそう自由にするとは思えない。
良くて解剖、悪ければ一生を螺旋王の操り人形として過ごさねばならないだろう。
言峰は殺されるつもりも、実験体として一生を過ごすつもりもない。
さらに言えば、ギルガメッシュがいる時点で自分が優勝できるとも思ってもいない。
あの唯我独尊の男のこと、王を名乗るロージェノムに制裁を加えるべく動いているのだろうが、優勝するならば当然、彼をも倒さねばならない。
如何に言峰が達人とはいえ、サーバント相手に生き残れると過信するほど愚かではない。
仮にギルガメッシュの名が放送で呼ばれることがあれば、ギルガメッシュを上回る者がいることになり、さらに見込みはなくなる。
よって言峰が生き残るためには脱出を目指すしかない。
参加者の苦痛を検分し、愉悦としていた言峰ではあるが、客観的に見ればそろそろ宗旨替えして仲間を募るなり、脱出の情報を集めるべきである。
■
支援支援
言峰は自らの足元に膝を突き、泣き伏している少女に目をやった。
放送でパズーの名を聞いた途端、シータは膝からがっくりと崩れ落ち、放送が続くのも構わず、嗚咽を漏らしていた。
エドはその周りを心配そうにぐるぐる回っているものの、どうすればいいのかわからないようだ。
言峰はシータの前に屈みこむと、ゆっくりと語りかけた。
「残念ながら、パズーの名が呼ばれてしまった。それで、シータよ。君は何を望む?」
言峰の言葉にも、シータは何の反応も見せず、肩を震わせていた。
彼女の心には後悔が荒れ狂っていた。
(自分と会わなければ、パズーはこんなところに連れてこれらなかった! 死なないで済んだはずなのに!)
実際にロージェノムがどんな方法で参加者を選定したかわからない以上、その思考には何の論理性もない。
だが、マオによって植えつけられた『彼らの不幸はすべて自分が原因である』という自責の念は、シータの心を蝕んでいた。
そんなシータに、なおも言峰は彼女を導く誘惑の言葉を紡ぐ。
「君がどうしてもパズーを救いたいと願うならば、あるいはその方法はあるかもしれん」
「えっ!?」
顔をあげたシータに言峰は淡々と告げた。
「螺旋王ロージェノムは言っていただろう。『優勝者にはいかなる望みも叶える』、と……。
これだけの力を持つ者だ。君がその優勝者になれば、パズーを復活させることも可能であろう」
先にも言ったように、言峰はそんな口約束は信じてはいない。
しかし、言峰が信じていないだけで、願えば本当にどんな願いもかなえるつもりがある、と信じることももちろん可能だ。
少なくとも、自らの身を顧みれば死者蘇生の技術がある可能性は高い。
従って、これは嘘ではない。
「そ、そんなこと!」
シータはこの発想を考え付きもしなかったようで、怒ったように言峰を睨みつけた。
「パズーのために他多数の命を奪うのは怖いか?
ならば、願いを『この戦いで死んだ者すべての復活』もしくは『この殺し合いをなかったことにする』とでもすればいい。
この願いならば、パズーだけでなく、命を落とした者すべてを救うことができる。
それでなくとも生きるということはそれだけで他の命を踏みにじる行為だ。
誰かのためにそうしたとて、それが心からの願いだというなら恥じることもない」
「あ、貴方は……そうしろ、とでも言うのですか?」
そう言葉を返したシータだが、その表情には動揺が見られた。
怒りを感じつつも、その提案に魅力を感じているのは明らかだ。
これは別にシータが殺人を好む性質を持っているから、というわけではない。
殺し合いという異常な環境におかれ、信じていたマオに裏切られたところに知ったパズーの死である。
シータの精神は弱り、思考力も低下していた。
そこへ一見、正しいような選択を提示されれば、誰しも魅力を感じずにはいられまい。
その反応に満足を感じながら、言峰は答える。
「もちろん私とて、殺されたくはない。だが、これでも私は神父だ。
君の魂が地獄に落ちてでもパズーの復活を願う、というのならば、そのための道を示すのも聖職者の務めというもの。
人には様々な道があり、人の幸福は人それぞれだ。どれも一概に否定することはできない。
だが、選ぶのはあくまでも君自身だ」
言峰は腕時計……待機状態のストラーダを起動すると、シータの足元に槍を置いた。
「私に支給された物だが、もしも君が彼の復活を願うなら貸し出そう。手にとりたまえ」
シータはその顔に苦痛を浮かべ、槍をじっと見つめていた。
やがてその手が槍に伸びる。
出会ってからのさまざまなパズーが思い出される。
シータと共にあり、彼女を守り、励ましてくれたパズーに再び会うため、彼女は槍を手に――
――しなかった。
「どうした?」
言峰の問いかけに、シータは顔をあげた。
その目から再び涙が溢れる。
彼女にはどうしてもできなかった。
その傷が癒えるからと言って、誰かを傷つけていいわけではない。
同様に、例え後で生き返らせられるとしても、誰かを殺すことなど彼女にはできなかった。
そんなことをあの真っ直ぐな心を持つパズーが望むはずがない。
残された自分は彼に恥じるような生き方をしてはならない。
「ごめんなさい……。ごめんなさい、パズー……」
謝罪の言葉と共に嗚咽を漏らし続ける。
彼を生き返らせられるかもしれない可能性がありながら、それに賭けられないことを謝り続けていた。
いっそのこと、槍で自らの喉を突いて果てた方が楽かもしれない。
だが、それもパズーやドーラ一家、自分を逃がしてくれた町の人々、ポム爺さんを裏切ることになる。
もはや彼女はどんな苦痛を味わってでも、脱出のために戦うしかないのだ。
■
しばらく後、シータは涙を拭うと、顔をあげて立ち上がった。
「大丈夫ー?」
「ええ、大丈夫よ、エド。心配してくれてありがとう」
心配しつつもどこか能天気なエドに微笑むと、シータは言峰を見据え、断言する。
「殺し合いには乗りません。私はここから生きて帰ります」
「パズーを見捨ててもよい、と?」
「いいえ……。でも、そのためにみんなを犠牲にすることはできません。
ゴンドワの谷の詩にもあります。
『土に根を下ろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え 鳥と共に春を歌おう』
どんなに大きな力を持っていても、例え死んだ人を生き返らせられる力があっても、
人は大地と一緒に生きていかなければならないんです。
それが……」
シータは顔を歪め、涙をこらえた。震える声で続きを告げる。パズーに別れを告げる言葉を。
「それが……大切な人と別れることになっても……」
そんなシータの視線を受けながら、言峰は感心していた。
(やはり彼女は強い)
言峰としては彼女がどちらを選ぼうが、構わなかった。
パズーを生き返らせる術があるかもしれないと知った時点で、シータは苦しみから逃れられない。
ゲームに乗れば殺人に手を染め、乗らなければパズーを見捨てることになるからだ。
とはいえ、ゲームに乗り、言峰に槍を向けていれば無力な現実というさらなる悲劇を思い知ることになっただろうが。
そしてシータが殺し合いに乗らなかったことは、言峰のもう一つの目的も果たしていた。
そもそも、この程度で殺し合いに乗るようならば、とても脱出のために行動し続けることはできない。
今は脱出を目指していても、途中で殺し合いに乗って願いを適える可能性に思い当たり、自らの同行者に牙を剥きかねない。
そういう意味では、このゲームは優勝時の賞品も含め、洗練されているものだといえよう。
だが、シータはその選択を拒否した。
これ以降、そう簡単に殺し合いに乗ることはあるまい。
「……それもまたいいだろう。試すようなことを言ってすまなかった」
言峰は沈痛な面持ちで深々と頭を下げる。
突然の殊勝な態度に、シータは慌てて首を振った。
「いいえ、お気になさらないでください、言峰神父」
「いや、申し訳ない。お詫び、と言ってはなんだが、私も同行させて欲しい」
「え!?」
思いがけない申し出に、シータは目を見開いて驚いた。
先ほどは自分に殺人を教唆しておきながら、今度は協力を申し出る。
シータは目の前の神父が何を考えているのか、さっぱりわからなかった。
「何、心配せずとも多少の心得はある。
パズーのようには行かないかもしれないが、君たちの手助けはできるつもりだ。
それとも、私など信用できないかな?」
「い、いえ……そんなことは……」
パズーの名を出したことで、シータの顔に暗い影がよぎる。
それを見ながら、言峰は内心、ほくそ笑んだ。
当然ながら、彼は良心からこのようなことを申し出たわけではない。
シータという感受性に富んだ少女がこの殺し合いの場で次々と襲ってくるであろう苦難を乗り越えるのか、それとも屈するのか。
さらにエドという、まるで磨かれた玉のように傷のない心を持つ少女がこの殺し合いの場でいつまでそれを保ち続けられるのか。
今までに出会った者たちは言葉で揺さぶり、後は放置するだけだったが、それでは顛末を見届けられる可能性は少ない。
それに、シータはともかく、エドは自分に興味があること以外は耳を貸さないだろう。
ドモンもそうだが、まともにこちらの言葉に耳を貸さない相手には、言葉による教唆は難しい。
ならば二人に同行し、脱出を目指す傍らで彼女たちを観察し、分析し、導く方法を検討するのも悪くはない。
さるさる回避〜
「エド、私も一緒に行っても?」
「うん、いいよ〜」
エドが了承したことにより、なんとなく流れは容認する方向に向かったため、シータも頷く。
「では、よろしくお願いしよう。
早速だが、二人は何を目的にこちらに歩いていた? この道の先は会場の外のはずだが……」
「ええっと、それは……」
もともとエドについてきただけなので、シータに明確な目的はない。
言い淀んでいると、エドが突然手をあげて叫んだ。
「はーい。エドは管を探してまーす!」
「管?」
「そう! 管がないと息ができなくて……」
急に言葉を切ったかと思うと、呼吸を止める。
そのまま顔が真っ赤になるまで我慢したと思うと、ばたりと音を立てて倒れこんでしまった。
「え、エド!?」
シータが驚きの声をあげてエドを揺さぶると、すぐにひょこりと目を開けて立ち上がる。
「ってなっちゃうの!」
「だ、大丈夫なの、エド!?」
「んにゃ? 何が?」
シータの心配などどこ吹く風という様子のエドを、流石の言峰も呆れて見ていた。
やはり、この娘に負の感情の種をまくのは骨が折れそうだ。
だが、今はその難題よりも、エドの話に関心があった。
「エドよ。その話をもう少し詳しく聞かせてくれないか?」
「いいよ〜。発電所で見たんだけどね〜……」
■
手足を軟体生物のようにくねらせながら喋るエドから根気よく話を聞き出し、言峰は話をまとめた。
「つまり、そのアンチ・シズマ管とやらを三本見つけ、どこかに設置しないと、この会場の酸素がなくなり、窒息死するということか?」
「そう。みんな倒れちゃうの。バタンキュー、レスキュー、バーベキュー! ……エド、腹減った〜〜……」
「大変! 早く見つけないと!」
「ふむ……」
言峰は考え込む。
エドの言葉は彼女なりの真実だろう。
だが、聖杯戦争の監督役であった立場から考えると、果たしてそのような現象が起きるかどうか、疑問なのだ。
聖杯戦争の目的とは聖杯を呼び出すことであり、サーヴァントとマスターによる争いはそのための手段にすぎない。
螺旋王の言葉が本当ならばこの殺し合いも同様、優秀な螺旋遺伝子を見出すことが目的であり、殺し合いはそのための手段にすぎないはずである。
その目的に沿わない死に方、例えば禁止エリア侵入による爆死などは彼の望むところではない。
なのに、酸素をなくして参加者を皆殺しにする、ということが果たしてあり得るのか。
そもそも参加者を皆殺しにしたければ、首輪の遠隔操作でいつでも可能なはずだ。
つまり、酸素がなくなるというのはブラフか、そうでなくても差し迫った問題ではないと思われる。
では、わざわざ参加者にこの情報を与えたのは何故か?
まず、螺旋王の趣味という可能性が考えられる。
つまり、螺旋王が言峰と似た性質の持ち主で、アンチ・シズマ管を集めようと右往左往する参加者を見て愉悦に浸るのが目的という可能性である。
だがこの可能性はほぼ除外してもかまわないだろう。
エドは独自の観点によってこの真実に気づいたようだが、参加者を右往左往させたいならばもっと解り易く教えるはずだ。
一つから二つでも電力を止める効果があるらしいが、参加者全体を揺り動かす動機としては少し弱い。
他にはアンチ・シズマ管という支給品それ自体を殺し合いの動機とする可能性が考えられる。
真の効果に気付かないままであっても脱出を目指す参加者はそれが殺し合いに乗った者に渡すまいとし、
殺し合いに乗った参加者も、何かに利用するためにアンチ・シズマ管に集める。
万が一、真の効果に気づいた場合はそれこそ死に物狂いで集める者がでるだろうから、殺し合い促進に役立つはずだ。
とはいえ、優勝者の願いを適えるという、これ以上ない殺し合いの促進効果をもたらすシステムが確立している以上、これも真の狙いとは考えにくい。
また、アンチ・シズマ管を三本集めることが何かまったく別の意味を持つ可能性がある。
アンチ・シズマ管を集め、シズマドライヴを正常化することにより、別の何かが発生するのだ。
それが何かまでは皆目見当つかないが、螺旋遺伝子に関係することか、会場に影響がある何かだろう。
(今のところはこの程度しか思いつかないが……。
実際にはこれら複数の目的を含有している可能性もあるな……)
「あの……言峰神父?」
考え込んだ彼を不審に思ったのか、シータとエドが言峰を覗きこむ。
「……すまない。少し考え事をしていてね」
「ええ……。それで、これからなんですけど……。
私たちは他の殺し合いに乗っていない人たちを集めながら、アンチ・シズマ管を探そうと思います」
「そうだな……。確かに酸素がなくなる、とあっては脱出どころではない」
言峰は自分の予測は隠して同意した。
ここは螺旋王の思惑に乗っておく。
その方が騒動を期待できそう、というだけの理由で。
「では、共に行くとしよう……ん?」
歩き出そうとした言峰は自分のデイバックにとりついて鼻を蠢かせているエドに気づき、立ち止まった。
「何かな?」
「食べ物の臭い! 神父ソン、何か食べ物はありませんかー?」
「神父ソン?
……そういえば、昼時か。考えてみれば私もまだ何も食べていないな。
シータ、エドよ。情報交換を行いながら、卸売り市場に向かいたい」
「え、ええ?」
「んー、何で?」
不思議そうな二人に、言峰は意味ありげに頷いた。
「そこで至高の食事を提供しよう」
「えー! 今食べたーい。エド、腹減った〜!」
「わかった。では着くまではこれでも食べているがいい」
そう言ってエドとシータにデイバックの中から乾パンを取り出して手渡す。
「おおー!」
エドはそれを開けて頬張り始める。
そんなエドを横目で見ながら、おずおずとシータは尋ねる。
「あの……言峰神父、どうして卸売り市場に向かうのですか?」
「理由は二つある。
一つはアンチ・シズマ管の設置場所を探すこと。
この会場内にあるとしたら、おそらくはどこかの施設にあるのだろう。
一つ一つ調べていくしかあるまい。
もう一つの理由は……」
ここで言峰はこの男にしては珍しく悪意のない笑みを浮かべた。
「豆板醤はあっても豆腐がないのでな……。豆腐がない麻婆豆腐などありえぬ。
何、心配せずとも多少の心得はある。泰山のものには及ばぬが、楽しみにしているがいい」
言峰綺礼、彼が好むものは二つ。
一つは人の絶望、不幸の類。
もう一つが麻婆豆腐である。
ただし、彼が好む麻婆豆腐は、常人には耐えがたいほどの辛味を伴う。
その彼にとって最も価値ある支給品はデバイスでも宝具でもなく、食糧の激辛豆板醤なのかもしれない。
かくて陽の心に満ちた少女と、陰の心に満ちた神父と、その狭間に揺れる少女の奇妙な道行がはじまった。
【A-4・高速道路/一日目/日中】
【チーム:陰陽を為す者たち】
[共通思考]
1:三本のアンチ・シズマ管、及びその設置場所を探す。
2:1のために各施設を回る。
3:1のために参加者から情報を募り、できるなら仲間にする。
最終:ゲームから脱出する。
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:左肋骨骨折(一本)、疲労(小)
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式(コンパスが故障、食糧一食分消費。食料:激辛豆板醤、豚挽肉、長ネギ他)
[思考]
基本:観察者として苦しみを観察し、検分し、愉悦としながら、脱出を目指す。
1:二人と情報交換する。ただし、シズマドライブに関する推測は秘匿する。
2:卸売り市場で豆腐を手にいれ、麻婆豆腐を振る舞う。
3:エド、シータに同行。二人を観察、分析し、導く。
4:殺し合いに干渉しつつ、ギルガメッシュを探す。
[備考]
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。
※会場がループしていることに気付きました。
※シズマドライブに関する考察は以下
・酸素欠乏はブラフ、または起きるとしても遠い先のこと。
・シズマドライブ正常化により、螺旋力、また会場に関わる何かが起きる。
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労、強い使命感
[装備]:アンディの帽子とスカーフ
[道具]:なし
[思考]
1:二人と情報交換する
2:言峰について行き、食事をもらう
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労、深い悲しみ、強い決意、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。みんなと脱出を目指す。
1:エドを守る
2:二人と情報交換する
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
4:まずは卸売り市場へ
5:マオに激しい疑心
6:言峰については半信半疑
[備考]
マオの指摘によって、ドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※エドのことを男の子だと勘違いしています。
たとえばね
キャラが増えれば増えるほどいいというんだったら
キャラ数の上限は無いほうがいい
ということで、
>>208のような形で死んでも復活できるようにして軍団制で戦う
あと、同じキャラを何人も作っておけばいいのではないかなと
たとえば、糸色望だったら
A軍団にもB軍団にもC軍団にも等しく糸色望がいるとか
100万人の糸色望とか
ちょっと待った。それはマジで言っちゃてるわけ?
そんなんじゃ完結できなくね?
完結させる気なんてないでしょ
始める気もないみたいだから。
「ぅ…………」
闇。そしてバチバチという何かが燃えるような音。
頭が痛い。
ガンガンガンガンと頭蓋骨を内側からノックされているような感覚が脳味噌を支配している。
奥歯がカチカチとぶつかり合い、体温の低下を伝える。
足と手の指の感覚がない。だけどそんなことよりも、
――ここは一体どこなのだろう。
瞼を開く。
ティアナ・ランスターが目覚めると、そこにはまるで見覚えのない景色が広がっていた。
まず、そこは明らかにどこかの室内であること。これだけは確定だ。
真っ白い壁、部屋の中央にはシックな煉瓦造りの暖炉。
本来アンティークとしての役目を果たすだけであろうそのオブジェにメラメラと燃え盛る炎が赤く揺れている。
何らかの建物の中に居るのだろう、感覚的にそんなことを思った。
「あ、れ……」
だがすぐさま彼女は気付いた。ここは地面の上ではない、と。
鍵は自分が寝かされていたソファが揺り篭のようにグラリと揺れたことだ。
ティアナはふらつく頭でこの妙な感覚の原因を考える。
だが深い思索に耽る必要すらない。
記憶上の一番最新の行動を検索。その状況、場所、そして自分が居た周辺の地図と重ねて考える。
一瞬で、答えは出た。
「……船?」
そう、船だ。海の上、繋がれた巨大な物体の中にいるとしたら全ての辻褄が合う。
この内装の豪華さ、部屋のサイズ。おそらく地図にあった豪華客船の一室に自分はいるのだろう。
びしょ濡れだった筈の身体もしっかりと拭き取られ、分厚い毛布が掛けられている。
海を漂っていた自分を誰か親切な人が助けてくれたのだろうか。
「別に放っておいてくれても……よかったのに」
ティアナは誰に聞かせる訳でもなく、ぽつりと呟いた。
意識が少しずつ戻って来た。だから心もドンドン戻って行く。鬱蒼とした暗闇の中へ。
心象風景は一面コンクリートの灰色の壁だ。勿論灯りなどある訳がない。薄暗い密室だ。
その壁は時間が経つに連れて高さを増していく。
そして、一箇所ポッカリと天井に空いた真っ青な空が少しずつ磨り減っていくのだ。
その青が自らにとっての最後の防波堤であり、良心の在り処なのだろう。それだけは何故か分かった。
一人で居ると心の傷はますます大きくなる。
ブラックホールのように、周りの光を食い潰し自らを侵蝕していく。
何もかもが辛かった。
いきなり訳の分からない所に連れて来られて殺し合いを強制させられて、そして狼狽しキャロを――撃ち殺した。
違う。殺したのはあの男。ジェット・ブラックと名乗ったあの男。
気がつくとティアナは唇を噛み締めていた。ベトつく口唇は少しだけ潮の味がした。
「クロスミラージュ……」
もう、自分の手の中にはない理解者の名前を口ずさむ。
青い髪の半裸の男と嬉しそうに会話していた相棒。
情けなくて、無様で役立たずの自分にクロスミラージュも愛想を尽かしたのだろう。
少し時間が経った今になって、その疑念は更に色合いを濃くしていた。
こんなマスターよりも、もっとずっと強くて相応しい人間がいる……そう判断されてしまったのだ。
「う…………」
涙が零れた。ポタポタと頬を伝い、地面に落下していく。どうしてこんなに悲しいのだろう、ティアナには分からなかった。
「自分なんて死んでしまえばいい」と本心から思っていた筈なのに。
胸をナイフで切り裂かれるような痛みも、コメカミに釘が突き刺さり脳内を陵辱されるような苦しみも味わいたくなんてないのに。
キャロの死を意識した時と少しだけ違った意味合いの涙は、それでもやっぱり塩辛かった。
ティアナは毛布を握り締める。何かに縋っていないと潰れてしまいそうだった。
ぬいぐるみを身体に押し付けるように、その毛布を強く強く抱き締めた。
だが、何の因果だろう。
そんな彼女の悲しみと絶望と悔恨が最高潮に達した時、
「――――ッ!?」
ティアナはようやく忘れていた<<とあること>>を思い出したのだ。
――ソレは今の自身の格好についての話。
通常、海に飛び込めば身体は濡れる。当然、着ていた衣服も含めて全てずぶ濡れだ。
濡れた服は体温を奪い身体にまとわり付き、漂流者の体力を奪う。
溺れた人間を介抱する際、濡れた衣服を脱がして乾かすことは災害救助における常識である。
救助者がある程度、水難事故に遭った人間に対する処置を知っていたのだろう。
ティアナの場合においてもその作業は当然の如く行われていた。
身体から熱を奪い、命を危険に晒す危険性を持つ衣服は<<一枚残らず>>脱がされていた。
つまり今、ティアナは素っ裸に毛布を一枚かけられただけ、という凄まじく無防備な状態にあったのだ。
「な、な、な……ッ!」
いかに心に闇が差そうとも、人間には超えられない壁というものが存在する。
羞恥心の壁もその中の一つで、自分が全裸に剥かれたという事実を完全に一蹴して絶望に浸ることが出来るほどティアナは女を捨ててはいなかった。
それ所か生来の生真面目な性格が影響してか、身体の火照りと事態に対する困惑だけが頭の中を一時的に乗っ取ったのだ。
(何で? どうして? は、裸って……)
恥ずかしさに身を縮めれば縮めるほど、身体に密着した毛布の感触が素肌に伝わってくる。
今毛布の綿毛のザラザラとした感触が素肌を刺激する。隙間から吹き込んでくる風が少しだけ冷たい。
誰かに脱がされた――そう判断するのが妥当だ。
その時だった。
「……おや、眼を覚まされましたか」
プレートにティーポットとカップを乗せた若い男が軽いノックの音と共に部屋へ入って来たのは。
ティアナの頭の中が先程とは違った意味で真っ白になった。
カチャ、という男の扉を閉める音が虚しく響く。
「いやいや、しかし驚きましたよ。まさかこんな所で海を漂流している方に出会うとは」
「……あ、あな……たが?」
「ええ、申し遅れました。私は高遠遙一。職業は……そうですね、奇術師とでも名乗っておきましょう。
そしてこの希望の船の案内役を務めさせて頂いております」
高遠と名乗った男は仰々しい仕草で一礼。口元を小さく歪ませ、ティアナに微笑みかけた。
ティアナは男のあまりに流麗で淀みのないその口調に少し気圧されながら、彼を観察しようとする。
(ダメ……頭の中が、上手く纏まらない。……先に白黒ハッキリさせないと)
しかしそんな現状を鑑みるならば最善の手と思われるような思考さえままならなかった。
今。彼女の中には強烈なまでの存在感を示している懸念事項が巣食っている。
男の名前やプロフィールなどの情報をまるで上手く処理出来ない。
そう、今彼女が高遠に問い詰めたいことは、ただ一つだけ。つまり、
「……見たの」
乙女的な尊厳に関わる問題についてだった。
高遠は「おやおや」と一言だけ、不可解な言葉を吐き出してからしばらく逡巡する。
もちろん、ティアナには彼がこの台詞の真意ついて推し量れないほど愚鈍には見えなかった。
故に彼のこの間の取り方の意図が掴めない。
今にも自分は恥ずかしさで死んでしまいそうなのに、どうしてこの男はこんなにも余裕に溢れているのだろう。
「ふふふ、面白いことをお聞きになる方だ」
「うっさい! いいから……答えて」
高遠はティアナの質問が可笑しかったのだろうか、口元の歪みを更に深くする。
だが不思議と嫌悪感は感じなかった。
彼の眼が自分を性的な視線で捉えているようには到底思えなかった。
業を煮やしたティアナは声を荒げた。
「解せませんね、その質問は。だってそうでしょう?
もし、私が『あなたの身体なんて一切見ていない』と告白しても、あなたはおそらく納得しない。
それに頭の中では十分過ぎる程、事実を理解出来ているのではないですか?
今更私の口から直接聞くまでのこともなく……ね」
「…………早く」
ティアナは高遠の言葉などまるで聞いていないかのように、鋭い目付きで彼を睨みつける。
鬼気迫る表情、淡々として抑揚のない声。高遠は思わず苦笑した。
もっとも、全裸に毛布を纏っただけの少女に鬼のような形相で噛み付かれれば、誰であろうと居心地の悪さを感じるだろうが。
高遠は両手で持っていたプレートを近くの机に置き、小さく肩を竦める。
「<<ティアナ>>君の下着でしたら、下の浴場にある洗濯スペースで着ていらした制服と一緒に洗濯中です。
先程スイッチを入れたばかりなので、終了までにはもう少し時間が掛かるかと。
……これでいかがでしょう?
「――ッ!?」
高遠のその言葉に、ティアナは自分の頬が更に熱を持つ感覚を覚えた。
あえてこういう遠回しな言い方を選んだのだろう。下着から何から何まで全部見た――そういうことだ。
顔だけじゃない。全身が火照って熱い。
カッカと体温が一気に上昇する。何故か肌がむず痒い。
――全部見られた、何もかも全て。
しかも自分よりも幾分か年上の若い男に……。
ティアナの毛布を握り締める指先が震える。
今にも高遠を理不尽な衝動で怒鳴りつけてしまいそうな気分だ。
……いや、やっぱりぶつけよう。
「あ、あなたっ!!」
「ああ、そんなに怖い顔をしないで下さい。いえ、やましい気持ちなどこれっぽちも在りませんでしたよ?
<<ティアナ>>君には一切手を出していない――コレは保証しましょう。神に誓って、ね」
「そ、そんな台詞信用出来る訳ないでしょ!!」
「そうですか? この不肖私めですら、このような極限状態において<<男>>としての欲望を優先するほど愚かではない程度の自覚はあるのですがね」
「う……」
しかし対する高遠は依然人を小馬鹿にしたような飄々とした態度を保ったままだ。
カップに乳白色の液体を注ぎ、香りを堪能したそっと口をつける。
ティアナは言い淀む。当たり前のように羞恥心を露にしている自分が、逆に状況が読めていない愚者であるように思えて来たのだ。
当然それと同じくらい自分の憤怒が正当である、という認識もあるのだが。
「ひとまず落ち着いてください。こちらをどうぞ」
「……何」
「チャイです。螺旋王はどうやら紅茶にもそれなりに精通している人物のようです。中々質の良い茶葉が揃っていました」
ティアナが毛布に包まって座っていたソファの前にあるテーブルへ高遠が新しいカップを置く。
そしてポットから彼が飲んでいるのと同じ液体を入れた。
彼女の鼻先をシナモンとミルクの甘い香りがくすぐる。ゆらゆらと湧き立つ湯気が非常に魅力的だ。
毒でも入っているのではないかと警戒する。ただ彼が自分を殺そうとするのならば、既に機会はいくらでもあった筈だ。
つまり彼は一応は自分に敵意を持っている訳ではないことが分かる。
ティアナはあまりにも自然に向かいのソファへと腰を降ろした高遠を睨み付けながら、白と青と金の高級そうなカップに手を伸ばした。
「……おいしい」
ぽつり、とその声は勝手に口から漏れていた。
少しだけ茶味の掛かった乳白色の液体が喉を通り胃袋の中へと吸い込まれて行く。
身体が内部から暖かくなっていく感覚。ミルクと砂糖の甘さ。ハーブの香り。
もっと、もっと、欲しくなる。
身体が乾いていたのだ。だからきっとこんな他愛も無いミルクティーが在り得ないくらい美味しく感じられるのだ。
「<<ティアナ>>さん。まだまだお代わりはありますので、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?」
「う、うるさいわね! 少し……喉が渇いていたのよ」
「ふむ、身体の方は大丈夫なようだ」
「え?」
高遠の眼が微妙に細くなる。ティアナは思い掛けない彼の言葉に驚きの声を上げた。
「肋骨……怪我をしていらっしゃいますね。
おそらく、何らかの鈍器で殴打された傷……加えて、<ティアナ>君はデイパックを背負ってさえいなかった。
いくら海で流されたと言ってもそう都合よく、荷物だけが流されるとは考え難い。
意志を持って誰かに襲われたと推測するのが自然だ」
「……よく、頭が回るのね」
「いえ、大したことはありません。順を追って考えていけば自然と行き着く当たり前の帰結ですよ」
「……そう」
ティアナの頭の中にもう一度、この殺し合いに参加させられてからの悲惨な出来事が蘇った。
視線が勝手に高遠から外れ、カップの中身へと向かう。
ずっと見つめていたら身体ごと吸い込まれてしまいそうな深い色合い。
燃える炎の音と暖かな空気が逆に身体に毒だった。
言葉が途切れる。高遠は紅茶を飲むティアナをじっと眺めていた。
そして数秒後、ただ眼を伏せてカップの中身を啜るティアナを見て小さくため息を付いた。
「とはいえ、あなたはまだまだ本調子ではないようだ」
「……どういうこと?」
「本来なら、私があなたを最初にお呼びした時に気付くべきことだったんですよ、ティアナ・ランスター?」
「…………あ」
ようやく、ティアナは高遠の言葉を、奇妙な態度を理解した。
そうだ。自分はこの男に自己紹介などしていない。持ち物の中にも自分の身分を証明するものなど一切無い筈だ。
それでは――何故、彼は自分の名前を知っているのだ?
そして同時に痛感した。
こんな簡単なことに言われるまで気付かないなんて、どれだけ自分が今腑抜けているのかと言うことに。
「あなたが船の外で見聞きしたことを教えて頂きたい。
辛いこともあるでしょうが、こんな私でもきっと何かの助けになることが出来ると思います。
こう見えてもそれなりに人生経験は豊富でして、ね」
■
「なるほど。そして、ティアナ君はあの高さから身を投げた、と」
「……ええ」
高遠は目の前の毛布にくるまり暗澹とした表情を覗かせる少女の姿をもう一度じっくりと眺めた。
ティアナは彼の視線を避けようともせずに、握り締めたカップの取っ手の感触を確かめる。
言うべきことを言い終えて、ティアナは貝になった。
周りをシャットアウトする。意識を思考の海へと落とす。
静寂。
乾いた沈黙を埋めるものは暖炉の炎の音だけ。
状況は何も変わっていない。
ティアナと高遠は豪華客船内の船長室で、こうして情報の交換を行っている。
高遠が自分の名前を知っていたのは首輪に掘り込まれた氏名を確認したためらしい。
まるで牧場の家畜のような扱いだな、とティアナは思った。
テーブルの上に置かれたティーカップも、ティアナの格好も依然先程のまま。
「下着ぐらいすぐに準備するべき」そう思わなくもないのだが、不思議と自らの境遇を告白しているうちに羞恥心が薄れて来たような気がする。
感覚が鈍って来たのだろうか、それは分からないけれど。
頭がぼんやりする。もう一度横になりたい。
暖かくて気持ちよくて、そして何故か落ち着く。
何もかも、全部吐き出した。
クロスミラージュに自分が体験した出来事を打ち明けた時とはまるで違う感覚だ。
だって、今の自分はティアナ・ランスターなのだから。
もう<<高町なのは>>になることは出来ない。そしてその尊敬する人間に依存することもない。
姿を幻影で包むこともないだろう。ソレは彼女を冒涜することに繋がる。だから駄目だ。
人間は物を考え、そして行動する生き物だ。
何も考えず、傀儡のようにゾンビのように辺りを彷徨うモノを人間とは呼ばない。
どんなに堕落した人間であれ何かしらの行動理念というものを持っている。
自分は一度、その意志を失った。
全てをなのはさんに押し付けて、現実から逃亡した。
クロスミラージュにも見限られた。当然だ、こんなにも自分は愚図なのだから。
そして気付けばその身を投げ出していたのだ。
断言しよう。あの時、自分は確実に生きることを放棄した。
辛く苦しい"生"を放り出して、"死"の中に活路を見出した。
灰色の空の中に光る蒼に誘われ、花の蜜に群がる蟲のようにフラフラとただ深い海へと堕ちていくことを望んだ。
ティアナは指先にグッと力を入れる。
五指十指、滞りなく動く。
身体の疲れは抜けていないし、脇腹も痛む。
だけど多分<<健康>>と言ってしまっても差し障りない程度の怪我だ。そう、キャロと比べればこんな怪我何の問題もない。
では――今の自分を動かしている感情とは何なのだろう。
目覚めてすぐに思考をし、裸を見られたことを恥ずかしいと思い、紅茶の味を本当に美味しいと感じた。
この部屋で意識を取り戻して最初に考えたことは決して「自殺すること」ではなかったのだ。
自分は生きている。そして生きたいとも思っている。
だがその動機を未だに整理することが出来ていない。
答えは出てこない。
漠然とした意識の集合体として、ティアナ・ランスターは今この空間に在るのだ。
空っぽだ。虚しさだけの肉の器。抜け殻だ。
「ティアナ君。君はキャロ君の、キャロ・ル・ルシエ君の仇を取りたいと思いますか」
「どうして、そんなことを聞くの」
静寂は高遠の問い掛けによって破られた。ティアナはソレに不機嫌な態度を示す。
「キャロの仇を取りたくないのか?」と尋ねられれば、当然イエスと答える。
キャロには何の罪もなかったのだ。あの子にあれだけの苦しみと痛みと悲しみを与えた連中がのうのうと生きている。
考えるだけでティアナは頭が変になってしまいそうだった。
「ジェット・ブラックと彼に同行している少年――でしたか。
二人の様子を語った時のティアナ君の様子は異常でした。
尋常ではない語り口調。鬼の形相。心の底から殺してやりたい、そうあなたの眼は語っているように思えましたので」
「――ッ、キャロは、キャロには……殺される理由なんてなかったの!
あの子は優しくて友達思いで、だけどいつも一生懸命で仲間のことを一番に考えるような子だったの。
なのに……あんな、あんな最期なんてあんまりじゃない……あんまりよ!」
もう止められなかった。感情の吐露を止めることが出来ない。
ひたすら叫び、嘆き、溜め込んでいた苦悩を高遠に向けて吐き出す。
涙がこぼれた。
指先は震え、内臓は今にもひっくり返ってしまいそうだ。
クロスミラージュは自分にとって頼れる相棒だった。再会した時も自分を元気付けようと必死だった。
そして、そのの心が重かった。
同情が、
献身が、
苦悩が、
痛みが、
信頼が、
何もかもが私にとって重荷だった。
逆に、この男は自分に対してとことん無関心だ。
感情の波と言うものがまるで見えない。
ただ淡々と情報を整理し、その結果導き出される解と疑問を投げ掛けているだけ。
「それは、二人を殺したい程憎んでいる、ということですか」
やっぱりだ。
これだけ自分が取り乱しているのに、男の言葉はこれっぽちも暖かくなかった。
「立ち直らせよう」とか「優しくしてあげよう」とか、そんな意志をまるで感じない。
故に心は勝手に昂ぶって行った。
身体の中の熱が燃え上がり、忘れていた感情に火を点ける。
「当たり前じゃないっ! あんな奴ら……殺されて当然よ」
「――そう、ですか」
「え?」
高遠が口元にゾッとするような微笑を携えながら、ポケットに手を突っ込んだ。
ティアナは彼のあまりにも自然なその言葉に、胸中の殺意を見失いそうになる。
「ティアナ君、人殺しの経験は?」
「――な……あ、ある訳ないじゃないっ!」
あまりにも非常識な高遠の言葉にティアナは当然、反論する。
「そうですか? てっきり、今までに一人や二人殺した経験があるものかとばかり」
「アンタ……」
「ふふふ、そんなに目くじらを立てることもないじゃないですか。
<<魔法>>などと言う危険な力を持っているのです。試しに人に向けて使ってみた……ありそうな話ではないでしょうか。
それに……ね。その綺麗な身体と――血だらけの制服を見れば、あなたの言葉を全て鵜呑みにするのは中々困難と言うものだ」
「ッ!?」
ティアナは思わず立ち上がりそうになる両脚を必死で抑え付ける。
大きく瞳を見開いたまま、高遠の顔を直視する。
「あれだけ赤黒く染まった制服を身に着けていれば、その筋を疑わない方がどうかしています。
明らかに他人、加えてアレだけの量の血液――確実にその血を流した人間は死んでいると判断出来る。
そして血に濡れた身体を隠そうともしない者……ソレは余程の精神異常者か、もしくは出会う人間が自分をどう思おうとも問題視しない人間です。
ティアナ君は少なくとも前者には見えなかった……つまり後者。
ゲームに乗った人間……殺人者ではないかと疑うのは自然な論理です」
「――ッ!!」
高遠の言葉は明らかにティアナを真正面から否定するものだった。
確かに、自分の身体が血塗れだったことで疑念の眼を向けられるの仕方がないと思う。
確かに明智に襲い掛かった時の自分は幽鬼のような憤怒に満ち溢れていたとは思うが、彼の言葉はまるで自身を焚き付けているかのようにすら感じる。
「そもそも、ティアナ君の話にはおかしな部分が多々あると思うのですよ」
「おか、しな……部分?」
「ええ」
高遠の言葉は止まらない。ポケットに突っ込んだ指先で中に入っている"何かを"弄くりながら、彼は無表情で続ける。
次の焦点はティアナが彼に話した自らの境遇についての言及だった。
だがティアナが高遠に何一つ嘘など言っていない。
殺し合いが始まり、すぐさまジェット・ブラック一味にキャロを殺され、自分がキャロを殺したと思い込まされた。
奴らはティアナを取り込もうと幾つか策を講じたが、何とか逃げ出すことが出来た。
そして自暴自棄になった所を明智に取り押さえられ、青髪で半裸の男との戦いに負け、クロスミラージュに見捨てられた絶望故、海に身を投げた――何も間違っていない。
「言いたいことは色々あるのですが……そうですね。
一番気になるのは、やはり『本当にキャロ君を殺したのはジェットという男なのか』という一点についてですね」
「な――ふ、ふざけないでっ! そんな、確かにキャロを殺したのはアイツよ。ジェット・ブラックよ! しっかりとこの眼で見たんだから!」
「本当に、そうでしょうか?」
高遠はティアナの言葉を遮る。
「ヒントは三つです。順を追って説明していきましょう。
まずゲーム開始後すぐにキャロ君が遠方から狙撃され、殺害された――これが一つ目の疑問点です。
狙撃、ということは下手人はおそらくライフル銃を支給されていた筈です。
しかし狙撃において何よりも重要なのはポイントの確保です。一流のスナイパーであるほど、自らが銃撃を行う場所には入念の下調べを行います。
そしてその場所は空でも飛べない限り、簡単に見つかるものではありません。ましてや、狙撃が行われたのは市街地ですしね。
加えて、狙撃銃は準備や点検に時間が掛かることで有名な銃だ。
銃に詳しい人間であればあるほど、銃の構造把握には念を入れる……ティアナ君も心当たりがあるでしょう?
これだけの逆境が存在する中で、ゲーム開始からほとんど時間が経っていないにも関わらず正確な射撃を行うような者がいるのでしょうか」
「え……」
高遠の言葉は非常に理が通っていた。
ゲームが始まってすぐさま自分のスタンスを決定出来る人間がどれだけいるだろう。
見知らぬ人間を殺す――しかも、狙撃という明確な技術を必要とする方法で。
稀少だ。そんな能力を持つ人間が参加している可能性は相当に低い。
思考が歪んだ。
ぐにゃりと、
ぐしゃりと。
頭がキリキリと痛み出す。
まるで頭蓋骨に電動ドリルを押し付けられて少しずつ脳味噌を削岩されているような。
万力で思いっきり頭部を締め上げられているような、痛み。
「次の疑問点はもう少し単純です。
ジェット・ブラックという人物が殺し合いに乗っているのならば何故――ティアナ君をさっさと殺してしまわなかったのか。
お世辞にもティアナ君は強そうには見えません。その実がどうであれ、ね。
しかも彼と出くわしていた時、あなたは非常に錯乱していたそうではないですか。
ゲームに乗った人間が、果たしてそんな不安定な少女を懐柔しようなどと思うのでしょうか」
「あ、あ、あ……ッ」
ピシッ、ピシッとティアナの頭の中で奇怪な音が響いた気がした。
ティアナはグルグルと回りだした頭を両手で抱え込むように喘いだ。
割れてしまう、壊れてしまう。心が、精神がバラバラになる。
――狂ってしまえ。
そんな声が聞こえた。
「そして最後の一つは……それ以上に分かり易くて明快だ。そして、同じくらい残酷な……疑問です。
ティアナ君は銃の扱いに慣れていると聞きました。
そんなあなたが銃を――撃ったかどうかさえ分からない。そんなミスを犯すのでしょうか。
撃ったと一度思ったのならソレが正解……ただ事実から目を背けていただけではないのか」
「や……め、て……それ以上、言わ、言わない……でッ」
高遠は縋るような眼のティアナを少し眺めると、
――小さく頷いた。
ティアナは安堵した。未だギリギリと痛む頭を抱えながら、心の底から。
何とか、押し留まった。
全てが壊れてしまうほんの一足前でギリギリ踏みとどまったのだ。
自分が、ティアナ・ランスターがまるで別のナニカに変わってしまう直前で。
「……こそ」
「え?」
「ティアナ・ランスター。ようこそ――殺人者の世界へ」
高遠は愉悦混じりの微笑を浮かべた。
笑った。
にまりと、背筋が凍りつくような口元の歪みと共に。
罪状を被告人に言い渡す裁判官のように、一番残酷な結末をティアナへ放り投げる。
「私なりの結論を申し上げましょう。
キャロ君を殺してしまったのはジェット・ブラックなどではない。
あなたは逃げていたのです。自らが犯してしまった罪から……ね。
そう、キャロ君を殺したのはあなたです。とっくの昔に――ティアナ君は人殺しだったのですよ」
「――――――――――――――――ッ!!!!!!」
何かが音を立てて壊れたような気がした。
一体自分は何なのだろう。何を無くしたんだろう。
分からない。
もう、どうでもいい。
どうなっても構わない。全部、全部。
ああ…………キャロ、ゴメンね。私……
あなたを、殺しちゃったんだ。
□
「十六人か……前より増えてるじゃねぇか……」
二回目の放送を脳内で反復しつつ、剣持は呟いた。
剣持は埠頭から再度、豪華客船に戻り甲板で一服していた。
ガッシュは今、辺りにいない。
何度も危険だと忠告したのだが「後々のためなのだ!」と言い残し、船内を探索しに向かった。
自分が最初に眼を覚ました場所だけに色々気になるらしい。
アイツを一人にしても大丈夫か不安だったが、この船にいるのが高遠一人な以上その心配は薄いと思った。
いくら頭が切れるとはいえ、高遠は普通の人間だ。
魔界の子であるガッシュはおそらく船内の誰よりも強い。
自分に関しても、高遠が接触して来た時に油断をする気は毛頭ない。
剣持は今もこの船の船長室にいるであろう高遠について考える。
自分の中の高遠は何人もの人間をその手で殺し、また殺させている殺人鬼である。ソレも生粋の。
故に奴が完全に心を入れ替えて脱出のために動く……とは想像しにくかった。
だが、同時に奴が異常なまでに『殺人という名の芸術』そして『金田一一』に拘りを持っている人間だということも知っていた。
この二つの観点から考察を進めれば、高遠の言葉を信じても良い気持ちになって来る。
血で血を洗う無粋で凄惨なだけの殺し合いは確実に奴の美学に反するだろうからだ。
「金田一……俺は一体どうすりゃあいいんだろうなぁ」
一本目の煙草を吸い終え、目の前の大海へ向けて放り捨てる。
そしてすぐさま二本目――こんな自体にも関わらず、煙草を吸うペースは変わらない。
いや、いつもよりも本数が増えているくらいだ。
「ったく。一人じゃどうにも頭が回らん……」
「――あの」
突然掛けられた声に驚き、剣持は振り返る。
いつのまにか、剣持の背後二、三メートルの位置にオレンジ色の髪をツインテイルにした少女が立っていた。
――ここまで近付かれたことに全く気付かなかった。
剣持は煙草を咥えたまま、少女を観察する。新たに船にやって来た人間だろうか。
だが、デイパックを背負っていないのが引っ掛かる。
一見手ぶら……に見える。少なくとも銃器は持っていないようだ。
だがそれ以上に気になるのは、やはり少女が身に纏っている不可解な洋服。
そして今にも壊れてしまいそうな程、おぼろげな瞳。
「あなたが――剣持さんかしら?」
少女が満面の笑みを浮かべながら尋ねる。
にっこり、という擬音が本当に聞えてきそうなくらい眩しい笑顔だ。
しかし、どこか妙だ。心臓の鼓動が早くなる。妖精の囀りにも似た声が剣持をくすぐった。
「そうだが……お前さん、いつのまに……というか、なんだその格好は……」
「ああ、やっぱり! 明智さんからの伝言があるの」
「明智警視?」
剣持は怪訝な顔で答えた。
まるで知らない少女からいきなり名前を呼ばれれば、誰でもそう感じる。
白と黒のあまりにも殺し合いとは関連性を持たない衣装に身を包んだ少女はパッと瞳を輝かせた。
そして何かを伝えるべく、こちらへ近付いてくる。
剣持はニコニコしながら近付いてくる少女の全身をもう一度眺めた。
少なくとも、自分が出会った人間の知り合いではない。
だが「明智」という名前を出している以上は彼と出会っているのだろう。
「あーその"コスプレ"って奴か? いや、それにしてもどこでそんな服……」
「ゴメンなさい。私、」
「――ッ!?」
「あなたを、殺しに来たの」
少女がナイフを剣持の胸に突き刺さした。
■
「な……に……!?」
ナイフが抉り込む。
剣持の背広を突き破る。内ポケットの中に収められた警察手帳に穴を空け、その奥深く皮と肉と血管と神経をズタズタにする。
剣持の口からまるで蛙を靴の裏で叩き潰したような声が漏れた。
母音も子音もない、ただの空気の流れに過ぎないソレは歯と唇の隙間からヒューと間抜けな音を響かせる。
喉の管を血液が駆け上る。
ティアナは生来の殺人癖も鬱蒼の気もなく、至って真面目で冷静な性格をしていた。
だが、ティアナは見てしまった。
自らの親友が無残に殺され肉と血の欠片となり飛び散り、脳漿を撒き散らし、少し焦げた屍体になる光景を。
血の赤と骨の白と炭の黒と脂肪の黄、そして桃の少女――キャロ・ル・ルシエの頭髪。
蛋白質が炎と結び付き人体が燃焼する際、それは特殊な臭いとなって人の鼻腔をくすぐる。
牛や豚や鶏や羊が焼き殺される時と似ているようで、それでいて、最高に吐き気がする臭いだ。
死臭は人を狂わせ、脳に幻想を見せる。
頭は覚えていたのだ。殺しの場の空気を。だから少女がこんなことになってしまったのは、多分ある意味正しいのだ。
残酷な結末を突きつけられて、ただ正常に狂っていっただけ。
そして残すは仕上げだけ、そんな状態だった。
人を殺すための武器だけ、そんな状態だった。
背中を押し、殺人を正当化し、救いを差し伸べてくれる人間さえいれば、何もかもが終わりそして始まる、その寸前だった。
だからティアナが彼と出会った時にその運命は回り始めたのだ。
砕けそうな精神と狂気とそして、悪意。
高遠遙一が凍り付くような微笑と共にティアナ・ランスターの掌に小さなナイフを渡した時、彼女は何もかもを理解した。
スペツナズナイフ――少女の相棒であるクロスミラージュとは比べ物にならないくらい、ひ弱な武器だ。
しかし、一つだけ勝っていることがある。
このナイフで全力で戦えば相手は死ぬのだ。殺すことしか出来ないのだ。
切れば死ぬ。当たれば死ぬ。
そんな世界の常識から乖離した<<非殺傷>>という領域において生きて来た少女にとって、それは破滅への第一歩だった。
本来ならば<<武器>>とは、人を殺める覚悟を持った者が持つべき神聖なる血塗れの道具なのだ。
資格も訓練も必要ない。
必要なものはただ「相手を殺そうと思う強い歪んだ意志」だけ。
それさえあれば、人殺しの壁なんてすぐさま越えることが出来るのだから。
■
ティアナは両の手で握り締めたその小さな凶器に更なる力を込める。
脇を締め、柄の部分をドライバーのように捻る。
ギジッと何か奇妙な音が聞えたような気がした。何かが切断される音。血が滴り落ちる。
刃は剣持の胸に深々と突き刺さる。少女は手を離さない。
まるで夢に囚われた夢遊病者のように虚ろな――だが嬉々とした瞳でただひたすら、その<<殺人>>を実行する。
剣持の筋骨隆々な肉体も鋭利な刃にはさすがに敵わない。
人の身体とはそもそも金属に蹂躙される弱い存在なのだから。
「がっ……!!」
剣持が口から血液を吐き出した。
ティアナはその液体が躯に掛かる前にタッと甲板を蹴って後ろに退避する。
「お前さん……何を…………」
剣持を激しい痛みが襲う。
彼にはこの突然現れた少女が何を考えているのか、これっぽちも分からなかった。
自分は刑事だ。当然刃物を持った人間の対処も心得ている。
油断した――確かに、そうだ。
まさか、こんな格好をした年頃の女の子が自分に襲い掛かってくるとは思いもしなかった。
そう、今思えば明らかに異様だった。それは少女の放つ雰囲気についてだ。
普通、どんな人間であろうと人を殺そう傷付けようと思えば何らかの敵意を発する。
ソレは熟練した殺人犯においても同様で、どれだけ場数をこなそうとも完全に消し切ることなど不可能なのだ。
しかし、この少女からは――そんな気配を微塵も感じなかった。
自分の感覚が鈍ったとは思わない。
ただ少女の動作はあまりにも普通で、流暢で、何一つの歪みもなかった。
それこそ息をするくらい自然に剣持の胸へとナイフを突き刺したのだ。
「どうしてっ……お前みたいな奴がこんな真似を……ッ! がッ……」
「……何故って、そんなの簡単じゃない」
剣持の問い掛けにオレンジ色の髪の少女は心底不思議そうな表情を浮かべ、小さく首を傾けた。
まるで幼さと無邪気さを同封した人形のようだ、剣持はそんなことを思った。
血が流れる。
「悪い人間を殺すこと――それが、私の償いだから」
ティアナは疑問に満ちた眼で剣持を見た。蒼い瞳が怪しく煌く。
「俺が……悪い人間、だと? お前さん、まさか……高遠に騙されて――」
「何を、言っているの? 彼は立派な人間、善人よ。だってこの船に人間を集めて、弱者を守ろうとしているんだもの。
そして、私はここに紛れ込んだ危険人物を排除するの。彼の……代わりに」
「ぐ――あの……野郎ッ!!!」
剣持は唇を強く噛み締めた。
やられた――高遠は自分を排除するために先手を打って来たのだ。
自身が接近するのではなく、人を使う……まさに地獄の傀儡師・高遠遙一の十八番だ。
つまり目の前の血に濡れたナイフを握り締める少女は奴の操り人形と言うことになる。
奴の行動を監視する――そう誓った筈なのに。なんだ……このザマは。
「うん。それじゃあ、さようなら――クロスファイアー……」
ティアナは剣持に興味をなくしたのか、淡々とした口調で別れの挨拶と共に呪文を口にした。
一瞬視線を下げ、予めチャージしておいた魔法弾を展開。色彩豊かな魔力スフィアがティアナの周囲に数個現れる。
<<非殺傷設定>>など、とっくの昔に解除されている。
ソレは、手負いの相手にトドメを刺すための一切の慈悲を含まない純粋な殺戮行為だった。
剣持は次の瞬間、己の身に何が起こるかを察知した。
逃げる? いや、違う。
この重傷ではまともな回避などそもそも不可能だ――彼女に刺された時点で既に詰んでいるに等しい。
何が出来る?
何をすればいい?
――考えるまでもなかった。
気付けば躯は動いていた。
燃え盛る恒星のような魔力珠を剣持に向けて今に発射しようとしているティアナへと一心に駆けた。
それは無謀な突撃だった。
明らかに足りない戦力で堅牢な城を攻めるようなもの。勝機などこれっぽちもない。
逆に正気を疑われてもおかしくないような愚行だ。
一つだけ確かなことは、剣持の心にある強い正義感が「目の前の少女に救いの手を差し伸べたい」と叫んでいたこと。
「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」
胸元から広がる激しい痛みを抑え付け、剣持は雄たけびと共に少女へ突進する。
この突撃が何の意味を持つかなど分からない。剣持は心の底から少女を救いたかったのだ。
しかし、
「――シュート」
少女の壊れた心に彼の想いは届かなかった。
呪文が完成し、魔力の塊が真っ直ぐ剣持に向けて打ち出された。激しい閃光が剣持の身体を走る。
手加減なし、フルバーストの魔法弾だ。
剣持の巨漢がボールのように大きく吹き飛ばされた。
宙を舞う。全身に走る裂傷、激しい出血。
剣持の声は届かなかったのだ。後はただ堕ちていくだけだった。
剣持は身体ごと吹き飛ばされ、甲板から投げ出される。
自分が凄まじい勢いで落下していく感覚を覚えた。
終わり。死の予感だ。
剣持は金田一と明智に向けて心の中で謝罪した。高遠の策に躍らされてスマン、と。
空へ手を伸ばす。気がつくと、その掌には黒いリボンが握られていた。
最後、少女に向かっていた時に掴んだのだろう。
つまり、これは――
「……ダイイング……メッセージって奴か」
とはいえ自分を殺した黒幕は高遠なのだが。
それでも剣持は小さく笑うと甲板の上から自分を見下ろしている少女を、霞む視界に捉えながら小さく呟いた。
「ガッシュ……すまん。あとは任せたぜ……金田一、明智警視――じゃあな」
【剣持勇@金田一少年の事件簿 死亡】
□
「……勇?」
ガッシュの躯に不思議な感覚が走った。
コレは……一体何なのだろう。魔力の流れだろうか。
誰かが、自分の名前を呼んだ気がしたのだが。
ガッシュは船内を一人歩き回っていた。
アレンビー達と出会った時はほとんど中の捜索をせずにここから出てしまったため、様々な発見があった。
まず船内に蓄えられた様々な食料品だ。
基本的にレトルトものが主だが、とにかくヴァリエーションが豊富である。
他にもワインセラーやプレイルームなど本当に財を尽くした施設であると実感出来た。
特に船内の中央に位置する大広間は劇場のような舞台と照明装置、シャンデリアなど豪華絢爛な装飾が施されていた。
まるで城の中にいるような、そんな気分を少しだけ味わった。
しかし、今ガッシュにはやるべきことがあった。
それはつまり、剣持を捜索することである。
埠頭から帰って来て一度別行動を取ることを決定した時、剣持はずっと甲板に居ると言っていた。
しかしそこに彼の姿はなかった。
ただポツンと吸い終った煙草が一本落ちていただけだったのだ。
剣持が使っていた部屋にも行ってみたが、デイパックは放置されていた。自分の魔本も置いたままだった。
どこかに行くとすれば、その両方を残していくとは考え難い。
いや、そもそもガッシュに黙って船外へ出て行くとは思えない。一体何処に……。
ガッシュは首を傾げながら、既にある程度全体図が頭の中に入っている船内を歩き回る。
剣持を探し始めてから数十分後、とある部屋を訪れた。
つまり高遠が居ると思われる船長室だ。
「高遠!」
「どうかしましたか、ガッシュ君」
「ウム、それがな。勇の姿が先ほどから――む?」
ガッシュの眼に見知らぬ女の姿を捉えた。女、とはいえまだ若い。十代半ば程だろう。
妙な格好をした少女が高遠の座っているソファの向かいでお茶を飲んでいる。
「ああ、彼女はティアナ君です。先程、海を漂っている所を救助しまして。
今は大分怪我の調子も良くなったので、話し相手になって貰っているんですよ」
「ええと、ガッシュ……君、でいいのかしら。私は時空管理局機動六課スターズ分隊所属、ティアナ・ランスター二等陸士です」
ティアナと名乗った少女は、穏やかな表情でガッシュに微笑みかけた。
ガッシュは困惑した。
まさか自分達が少し席を離している間に、この豪華客船へとやって来た人物がいるとは思いもしなかったからだ。
しかも出会った経緯があまりにも特殊である。
剣持が言うに高遠は「連続殺人犯」らしい。つまり元の世界では悪人だった訳だ。
しかし、この状況下において彼は自ら率先して、脱出を考える人間の指揮を取ろうとしている。
つまり今は善人だと言っても可笑しくない。
表と裏、白と黒。高遠の本心はいったいどちらなのだろうか。
付き合いの長い剣持ですら高遠を完全に危険な人間であると断定することは出来なかった。
ソレならば出会って数時間しか経過していないガッシュが彼を信頼していいものか決め兼ねているのも当然だと言える。
そんな高遠を通して紹介された少女――ティアナ・ランスター。
疑惑の種が当たり前のように芽生える。
とはいえ、何を疑えばいいのかさえ現状では不明な訳だが。
とりあえず。この空間におけるもっとも分かりやすい定義に沿って判断を下す。
つまり殺し合いに乗っているか否か。
……白だろう、おそらく。
正直、この橙色の少女がゲームに乗っているとは考え難い。
例えば、彼女の殺し合いの場にあまりにも不釣合いなくらい落ち着いた顔付き。
デイパックも背負わず、高遠とチェスに興じる彼女をどう扱っていいものか分からなかった。
加えて彼女が自己紹介の際に口にした「二等陸士」という階級もガッシュの思考を強化する。
おそらく、ティアナは軍人なのではないだろうか、ガッシュはそう判断した。
ならば、それは信用に値する職業だ。そう、剣持の「警官」と同じくらいに。
そしてもう一つ、彼女の――服装について。
「ウム、私はガッシュ・ベルだ。ティアナ、話の前に一つだけ――聞いてもいいか?」
「ん、何か気になることでもあるの?」
「いや、大したことではないのだ。だがおぬしはその、軍人のようなものだろう?」
「……そう、ね。厳密には違うんだけど、そう思って貰っても問題ないかな」
「では何故……そのような不思議な格好をしているのだ?」
「――ああ、コレ。結構可愛いでしょう」
ティアナは右手に持っていた高級そうなカップを机の上に置くと、すっと立ち上がりくるりとその場で一回転した。
ふわりと黒色のロングスカートが空を舞う。
レースをたっぷりとあしらった純白のエプロンドレスが照明を浴びてキラキラと光っているようにさえ見える。
オレンジ色の髪の毛と清潔感に溢れるホワイトブリムの一体感も極上だ。
ガッシュは再度、彼女の異常を確認した。
言葉にはし難い。ただし、その雰囲気が明らかに妙なことだけは確信出来る。
台詞や仕草は確かにその年頃の少女となんら変わりはない。
服装も非常に美麗で、長い髪を下ろしたその姿は思わず見惚れてしまう程だ。
しかし彼女が何故か"メイド服"を着ていることもそうだが、身に纏うそのオーラがどこか――気味が悪い。
「ティアナ君、その服が気に入ったのは分かりましたから……ガッシュ君、剣持君がどうかしたのですか?」
「ウム……それがだな。先程から勇の姿が見えないのだ」
「それは……妙ですね。私を見張ると豪語していたのにまさかいなくなるとも……。
私はずっとここでティアナ君の看護をしていましたし。ようやく落ち着いて来た所なんですよ」
ちらりと高遠がティアナを一瞥した。少女もそれに合わせて機械的に頷く。
その動作はまるで油を差していない機械人形のようで、どこかギクシャクしていた。
両者の意志の疎通がまだ完全に取れているとは到底思えない。
高遠は……知らないのか。しかし、剣持が高遠に何かをされたとは思えない。
何しろ自分以上に彼は高遠を警戒していた。
もしも二人きり、という状況になっても遅れを取ることはない筈なのだ。
「ティアナ君、剣持君を――ああ、体格の良い四十代くらいの男性なんですが。どこかで見掛けましたかね?」
高遠がガッシュと同じように眉に皺を寄せる。
そして、剣持の行方をティアナに尋ねた。
ティアナは意外そうな表情を一瞬見せ、つまらなさそうに答えた。
「――いいえ、見てないわ。誰だか知らないけれど、じっとしていられなくなって海に泳ぎにでも出掛けたんじゃないかしら」
「……ムゥ、いくら勇でもそこまで元気ではないと思うが……」
ティアナは軽い冗談を交えながら高遠の問いに答える。
「自分は剣持などという男は見てもいないし、全く知らない」という訳だ。
ガッシュは小さく唸りながら、頭を抱えた。
「ガッシュ君、ひとまずもう少し待ってから行動するとしましょう。
案外しばらくしたら、ひょっこりと顔を覗かせるかもしれませんよ」
中々理にかなった提案だった。
まだ自分が剣持を見失ってから一時間も経っていない。
自分が帰って来るのが遅かったため、彼が痺れを切らして一人で見回りに行ってしまった可能性もある。
それどころか、未だ自分が知らない部屋で眠りこけているかもしれないのだ。
「……分かった。おぬし達はここにいるのか?」
「ええ。とりあえず、今のゲームが終わるまでは。これが終わったら、私の方でも少し探しておきましょう」
「ウム、では私は船内をもう一回りして来る。頼んだぞ、高遠」
【E-3/豪華客船・廊下/1日目/午前】
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料:アンパン×8、ミネラルウォーター)
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ、水上オートバイ
[思考]
基本:螺旋王を見つけ出してバオウ・ザケルガ!!
1:船内にいる筈の剣持を探す。
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと金田一と明智を捜す。
[備考]
※高遠を信用すべきか疑うべきか、計りかねています。
※剣持、アレンビー、キールと情報交換済み
※聞き逃した第一放送の内容を剣持から聞きました。
□
「……高遠さん」
「何ですか、ティアナ君」
ガッシュの足音が聞えなくなった少し後、そのやり取りは始まった。
「あの子を、殺す必要はないの?」
数時間前のティアナからは考えられないような物騒な台詞を少しの言い淀みもなく吐き出した。
高遠は彼女のその変貌に心を奮わせる。
「まだ時期ではありません。彼は役者の一人です、もう少しだけ生きていて貰いましょう。
それに彼は強い。剣持君のようにあっさりやられると思えない」
「……分かったわ」
しぶしぶティアナは頷く。
そして再度ソファに腰を降ろし、若干冷たくなったカップに再度口をつける。
その瞳は完全に制止した水面の輝きと似ていた。
鏡のようなその煌きを反射する絶対なる蒼。
あらゆる生物の反応を感じない非情なまでの冷たさに満ち溢れて。
それは崩壊の危機に晒されたティアナの防衛本能が紡ぎ出した一つの結論を示していた。
(ようやく……面白くなって来ましたね)
高遠は目の前の<<人形>>と成り果てた少女を眺めながら心の中で愉悦を噛み締める。
そもそも高遠の行動には全て理由があった。
ティアナの服を脱がし全裸にしたのも、彼女が危険な人物だった場合行動を抑制するためだ。
彼女に語った通り、一切みだらな意志がそこに入る余地などない。
それ所か相手が服を着ていて逆に自分は裸であるという異様なシチューションは両者の立場を明確にする。
加えて暖かい部屋と甘い飲み物。これは思考をぼやけさせ、意志を低下させる。
そしてその結果、少女の精神は壊れた。
それはもう無残なまでに。
死してなおその身体を弄ばれたキャロ・ル・ルシエのように木っ端微塵になった。
高遠はそこに付け込み、少女を傀儡に変えることに成功した。
ティアナ・ランスターが本当にキャロ・ル・ルシエを殺害したのかは分からない。
本当に彼女が殺した可能性も高いが他の要因も十分に考えられる。
彼女の錯乱具合では「狙撃」という大前提すら間違っているかもしれない。
が、最も残酷な結末が「自らの仲間を自分の手で殺害する」ということなのは間違いない。
どうやら彼女は以前誰かを誤射した経験があるようなのだ。昨日今日の段階ではなく、心の中に根付いたトラウマのようなものか。
まさに運命の悪戯という奴だろう。外の世界はどうやら中々愉快なことになっているらしい。
しかし傀儡と言っても完全に従順な人形へと仕立てあげた訳ではない。ほとんどソレに近い状態ではあるが。
簡単に言えば条件付けのようなものだ。
キャロ・ル・ルシエを殺害したと思い込み、彼女の殺意は外ではなく中へと向かった。
おそらくこのまま放置すれば自傷行為の末、命を絶ってしまうことは明らかだったのだ。
故に私は救いの手を差し伸べた――つまり、贖罪の道だ。
「……ティアナ君、剣持君の死体は?」
「海に落ちて沈んだ後、すぐに動かなくなって西の方へと流れて行ったわ。確実に死んでる」
ティアナはさらりと答えた。その表情に人を殺したという罪の意識はない。
いや、もはや心の奥底まで染み込んでしまっているのだろう。
もしや一人殺してしまったのだから二人殺そうが三人殺そうが全て同じ、そう考えているのかもしれない。
しかも彼女には人を、いや「悪人」を殺す理由がある。
彼女の歪んだ正義感は悪を処断し、罰を下す。
ゲームに乗った殺人鬼を殺す。
自分達に害を成す人間を殺す。
そして、彼女にとって「善人」である高遠自身が指示した相手を殺す。
もちろん出来るだけ痕跡を残さないように、姿を見せないように――という点は徹底させている。
……まさか本当に姿が消せるとは思わなかったが。
これは予想以上に有効な拾い物だ。彼女の持つ魔法の力は殺人に容易く転用出来る。
「しかし、その服を気に入って下さったのは幸いでした。
生憎そんなコスプレ紛いの衣装しか見つけることが出来なかったので……」
「……ええ。さすがにもう、今六課の制服に袖を通すのは難しいかな。そもそも血だらけで変な誤解されそうだわ」
ティアナは自嘲交じりに「ま、この服だって十分に変だけど」と答えた。
ちなみに、このヴィクトリア朝式メイド服を調達して来たのは当然の如く高遠である。
もちろん趣味やフェチズムのような要素はそこには存在しない。
船内でコレぐらいしか服を見つけることが出来なかった故の緊急措置なのだ。
彼女が身に着けていた下着はすぐに乾いたのだが、さすがにあの制服を再度着させる訳にはいかなかった。
べっとりと赤黒い血液がこびり付いた衣服など言語道断だ。
「私は誰かを殺しました」と看板を背負って歩いているようなものである。
「でも、これ……メイドよね」
「そうですね、メイドですね」
「――ご主人様、とでも呼んだ方がいいかしら、高遠さん?」
「……さすがにソレは勘弁していただきたい所です」
高遠の答えにティアナは小さく笑った。
心が壊れた――とはいえ少女は理知的であり、妙に明るく無邪気だ。
素面の状態の彼女とは数分しか言葉を交わしていない高遠でさえ、この変貌には驚いている。
普通あそこまで精神的に陵辱されれば、本当に人形のようになってしまってもおかしくはない筈なのだが。
元々強い精神を持っていたということなのだろうか。
そんな人間でさえ、殺人を犯してしまう。
もしかしたら、アレが彼女にとって『初めての殺人だった』かもしれないのに。
そう考えると非情に滑稽で、彼女が哀れに思えて来る。
……これだから心に傷を負っていた者を自分達の世界へ引き込むの堪らない。
(まぁ……いいでしょう。さてと、次なる来訪者は一体……?)
【E-3/豪華客船・船長室/1日目/午前】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:精神崩壊、全身打撲、肋骨にひび、体力消耗(小)、精神力消耗(小)、髪を下ろした状態
[装備]:メイド服
[道具]:なし
[思考]
基本思考:キャロを殺した贖罪のため、悪人を殺す
1:高遠に指示された人間を殺す
2:ゲームに乗っている人間を殺す
3:危険だと判断した人間を殺す
4:弱者は保護する
[備考]
※高遠を盲目的までに信頼。
※キャロ殺害の真犯人は自分であると思っています。
※銃器に対するトラウマはまだ若干残っています、無理に銃を撃とうとすると眩暈・吐き気・偏頭痛が襲います。
※剣持のデイパック【ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
ドミノのバック×2@カウボーイビバップ 】は豪華客船・客室内に放置。
※剣持の死体はスパイクの煙草(マルボロの赤)(16/20)@カウボーイビバップ と、
ティアナのリボン@魔法少女リリカルなのはStrikerSを握り締めたまま西に流されました。
【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:スペツナズナイフ@現実x5
[道具]:デイバッグ、支給品一式、バルカン300@金色のガッシュベル!!、豪華客船のメインキーと船に関する資料
[思考]
基本行動方針:心の弱いものを殺人者に仕立て上げる。
1:善良な高遠遙一を装う。
2:しばらくは客船に近寄ってくる人間に"希望の船"の情報を流し、船へ誘う。状況によって事件を起こす。
3:殺人教唆。自らの手による殺人は足がつかない事を前提。
4:明智には優先的に死んでもらう。
5:ただし4に拘泥する気はなく、もっと面白そうなことを思いついたらそちらを優先
[備考]
※ガッシュから魔本、および魔物たちの戦いに関する知識を得ました
※ティアナからなのは世界の魔法、出会った人間の情報を得ました
※ティアナを駒として信用しています
華麗にスルーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
なんでそれア二キャラ総合軍がない・・・・・・
まずはさんかだな
クアットロは早足で進む。
回りをきょろきょろと見回し、警戒をおこたらず、きびきびと歩く。
少なくとも、こうしている間は震えも止まる。
恐怖に支配されぬよう、頭脳も同時に働かせるにはこれが最善だろう。
ヴァッシュと合流しなければ。
あのお人好しに、自分を守らせなければ。
そのためにも、先にいた民家を目指して歩いてきたはずなのに。
今見ているこの景色に覚えがないのは何故か…?
気がついたら大きな道路に出ていた。
やや向こうに見えるのは、川と、橋。
少し待て、ここはどこだ?
デイパックから地図を取り出し、回りの地形と合わせて確認してみる。
もちろん、周囲への警戒もおこたらない。荷物を広げるのも、電柱の影に身を隠しつつ、だ。
広げた地図と付近を照合…おかしい、似た地形がどこにもない。
というよりも、地図自体が全然別のものに変わってしまったとしか思えないのだが…
そう首をかしげた二秒後、クアットロは愕然とし、同時に泣きたくなった。
なんのことはない。単に地図が逆さだったのである。
気づいてみれば単純なことだが、この程度のことにすらパニックを起こしそうになるほど
今の自分は精神的平衡を欠いている。それを認めざるを得ないのだ。
(KOOLに…KOOLになりなさい、クアットロ…)
自分の最たる武器は頭脳である。
頭脳が働かなくなったとき、自分の死命は決すると言ってもいい。
DJ細胞を植え付けたあの男や、最初に自分を撃ってきた黒服の男を例に挙げるまでもなく、
この殺し合いに参加している人間の大半が、おそらくは戦闘力偏重タイプなのだ。
そんな馬鹿どもを相手に、真正面から戦えるわけがない。
馬鹿を制するのはいつだって頭脳なのだ、謀略なのだ。
だからこそドクターは自分に『聖王のゆりかご』を任せたのだ。
大丈夫、最後に勝つのは自分だ。
失敗をしたならしたで、それを挽回するのもこの頭脳ではないか。
このゲームの舞台には、だまくらかせる人間が、まだ六十人弱も残っている。
さっきのようなバケモノに遭遇しても、駒さえいれば戦える。
だって、自分は戦闘力馬鹿とは違うのだから…
自分で自分を激励しながら、地図の向きを直すクアットロ。
まずはヴァッシュとの合流なのだ。そのために、今の自分がどこにいるのかを把握しなければ。
なんとか気を取り直して、周囲をふたたび見回し始め…
少し高いところで、なにか、光ったものに気がついた。
視線を戻す。
誰かいる、二人…
「が」
次の瞬間、持っていた地図がぶっ飛んだ。
それと一緒に、左肩が丸ごともげて落っこちた。
************************************
「ライフルを貸して」
川を渡る橋の直前に位置する歩道橋の上にて。
ヴィラルが察知した何者かの接近を、双眼鏡で明確に確認したシャマルの第一声である。
唐突な台詞にヴィラルは少々たじろいだようだったが、そんなことに構ってはいられない。
「あれを知っているのか。人間ではないようだが」
肩からばちばち、少量の火花を発しているのをヴィラルも見逃してはいなかったらしく、素直に疑問を表明してくる。
その通り、あれは人間ではない。というよりも、やはり人間ではなかったと言うべきか。
最近になって機動六課と戦闘した敵の姿を、シャマルもまたよく覚えていた。
あの一味が発揮したポテンシャルは人間のそれではなく、人工的に作られた戦闘用機械人間…戦闘機人のそれとしか思えないものであることも。
そして、あの顔だ。知っている。
ヴィータが言っていたのだ。
あいつのせいで、あたしは冷静さを奪われたんだ、と。
レリックと一緒に保護した子供…ヴィヴィオが乗ったヘリを狙撃することをあえて予告し、
ヴィータの精神に揺さぶりをかけた卑劣女が、今ここにいる!
「あれは裏切り者よ」
声のトーンをつとめて落とし、シャマルは言った。
「魔法の力を賜りながら、螺旋王に仇をなす裏切り者よ。
私の仲間も、何人もやられたわ」
ひとつ言葉を続けるごとに、シャマルの怒りは累乗的に倍加しつつあった。
どうして、あんな奴が生き延びているのだ。
キャロとエリオがすぐに殺されてしまっているのに、
どうしてあんな奴が一分一秒も長く生き延びているのだ。
…そうだ、お前のような奴がいるから、キャロとエリオは死んだのだ。
死ななければならないのはお前なのだ。
すぐ死ね、ただちに死ね。
主はやてのために死ね。六課のみんなのために死ね。
死にたくないのなら、私が殺してやる。
気づいても殺してやる。気づかなくても殺してやる。
向かってきても殺してやる。おびえて逃げても殺してやる。
東西南北どこに行こうが、お前の終着点は地獄の業火の中だけだ。
その中に、私が今すぐ、放り込んでやる。
はい上がってきたら、叩き落としてやる。
「ライフルを貸して」
再度の要請に、ヴィラルは足元にワルサーWA2000とその予備弾倉を置いて応え、
「怒りで手元を狂わせるなよ。
俺は前に出ておく。他にも敵がいるかもしれん」
それだけ言って、歩道橋から飛び降りていった。
片手に大鉈を携えた彼を見送ってから、
シャマルは言われた通り慎重に、重い銃身を操って狙いを定める。
標的が全身を使って回りを見回し始めたのは、今まさに撃つ瞬間だった。
引かれた引き金は止まらない。
心臓を撃ち貫くはずだった弾丸は標的の左肩に吸い込まれ、
もとから損傷していた部分を完全破壊し脱落させた。
***********************************
「か、かた、た、かた、が…」
なぐられるような衝撃で横倒しにされたクアットロが路上に見たものは、
ついさっきまで腕がつながっていた部分の、そのまた根本の部位だった。
肉屋で売られる塊のように、ぼとりと丸ごと落っこちている左肩だった。
幸か不幸か、気絶はしなかった。
一瞬、持って行かれた意識は、頭を塀にぶつけたことで戻ってきたから。
この後も生き延びるという自由を偶然にも奪われずに済んだことは幸運と言えようが、
今見ている光景もまた幸運だとは、誰が言えようか。
自分の妙に細く不安定になった肩幅と、路上に転がるそれを交互に見て。
「か、肩がぁぁぁぁ―――ッ?」
流血が噴出するかのように、喉からほとばしり出る声。
恐怖でも絶望でも、痛みからくるものですらもない。
それは単に、状況が理解できぬというエラーメッセージだった。
ただひたすら『衝撃』とでも称すべきものが彼女の頭脳を真っ白に変色させていく。
「やだ、こんなのやだ、あんまりよ、あんまりだわぁ…」
落とした左肩をせめて取り戻そうと前に身を乗り出す。
普段の彼女が、常に愚行をあざけ笑う側にいたにもかかわらず。
果たして、結果は。
「っひぃぃ!」
ロングヘアーが半ばから、ばっさりと落ちた。
後頭部の至近をなにかが通過していったのだ。
それはおそらく、さっき自分の肩をもぎ取ったものだと
クアットロは今度ばかりは感づく。
ごきぶりのように這いつくばって、塀の影にすっ飛んで戻る。
その間に飛んできたもう一撃が、はるか手前の道路を砕き、
もう一撃が、今までクアットロのものだった左肩をばらばらに撒き散らかした。
「わたしの…」
口からだだ漏れになる悲鳴はともかく、
ようやくクアットロは飛んでくる何かの正体を理解した。
そうだ、あれは…ライフルだ!
最初は自分も持っていたではないか。
狙撃して仕留める側だったではないか。
そして、今、狙撃してきた相手を、自分はちらりと確かに見たのだ。
知っている…あれは、シャマルだ。機動六課のシャマルだ。
遠すぎて見えづらかったが、外見的特徴は合致していた。
それにもう一人の連れがいるとなると。
(私のことは知られてる、騙せない…)
絶望した。
あまりの巡り合わせの悪さに絶望した。
逃げる以外にありえない。
どこかに隠れてやり過ごさなければならない。
走っている時間も惜しい。一刻も早く、安全なところへ抜け出るには。
そうだ、飛べばいい。自分には飛行能力があるではないか。
あの黒服の男からもさえ逃げ切った、飛行能力が。
クアットロはすぐさま思案を実行に移し、
宙に飛び上がった直後…右耳がちぎれた。
「っ? ぎぃぃぃっ」
また、彼女の頭脳は真っ白と化した。
自分を明確に狙った一撃が、空へ飛び上がった直後に飛んできた。
それを辛うじて理解しただけだった。
狙いやすい場所にわざわざ姿をさらして、そのまま直線的な移動を行ったのが原因である。
彼女が冷静な傍観者であるのなら、そんな真相にもあっさり気づくことができたであろうが。
予想外を通り越した事態にパニックを起こし、あわてて高度を落とした先は民家の二階。
顔面からガラスを破って盛大に突っ込むと、彼女はあっという間に血まみれになった。
その真正面にあった鏡が、その様を余すことなく彼女自身に伝えていた。
「? ? ? な、なんで、どうして?
撃たれた? 血? どうして耳がないのぉ?
わたしの耳どこなのぉ、どこなのよぉ―――っ」
確かに、彼女クアットロは策士であろう。
自らの優位を最大限に生かし、敵につけ込む術を知っている。
だが、悲しいかな。
彼女は、自身が追い詰められる経験に、これ以上なく乏しかったのだ。
ために他人の失敗をあざけ笑うことを趣味にしていられた。
明日は我が身という発想が、根本的に存在しなかった。
ために他人はすべからく、陰険な嘲笑を向ける対象でしかなかった。
彼女は自身が凋落する姿を想像できないのだから。
希代の天才、『無限の欲望』(アンリミテッド・デザイア)ことジェイル・スカリエッティに付与された
巨大なスペックに基づいた無敵の全能感から来る自信が彼女の超強力な基盤であり…
逆を言うと、それしか彼女にはなかった。
「に、逃げなきゃ、逃げ…撤退しないと、戦略的撤退しないと。
ここは戦略的撤退して、ヴァッシュさんを連れてきて、あいつらを」
なんと滑稽で哀しい姿なのだろう。
この後に及んで、彼女は負けを認めていない。
先ほどのバケモノから受けた襲撃の際に理解したのではなかったのか?
自分はこの場において絶対的強者たりえないと、学習したばかりではなかったのか?
もぎ取ったカーテンと近くにあったティッシュで左肩があった部分の止血を試みながら、
理想的な未来図に思いを馳せて、クアットロは笑う…弱々しくも。
「まさか、建物の中まで、ライフルで狙えるわけないですものぉ。
それが、それが私の狙い…うふ、ふっふっふっふ」
どうか彼女を笑わないでいただきたい。
そうとでも思わなければ、彼女は闘志を支えていられないのだ。
彼女には、それしかないのだから。
壊れた嘘でも、抱きしめているより他にないのだから。
だが、そのようにして奮い立たせたなけなしの闘志も。
「私には銃もある。この入り組んだ住宅地で逃げ切るには充分…」
背後のドアが破砕される大音響と同時にへし折れた。
「けええああああああああっ?」
怪鳥音のような甲高い悲鳴を響かせたクアットロが振り向いた先には、
一撃のもとに粉砕されたドアが破片となって降り注ぎ…
その犯人とおぼしき何者かが、巨大な鉈を手元に引いて、わずかに残ったドアの外枠を蹴り倒した。
全身のいたる所に包帯が巻かれ、その手足は人間のものではなく、なにか獣を合成でもしたかのようにいびつに節くれ立っている。
その顔が人間のものであったなら…すぐにそうだと確認できたなら、多少は安心できたかもしれない。
残念ながら、クアットロが見たものは、そうではなかった。
なぜなら男の顔面は、可愛らしいハート柄の布地が厳重に巻き付けられていたのだから。
わずかに見えるのはその下より覗く、ぎらりと光る獣の眼だけ。
その眼でクアットロをぎろりとにらむと、底冷えのするような声で、男は言った。
「…ちょこまか動くな、貴様のような輩には、死あるのみだ」
「き、きいいい―――――っ」
きゃー、とも、ひー、ともつかない悲鳴が響く。
あまりに猟奇的な光景に、クアットロは一瞬にして恐慌のど真ん中に連行されたのだ。
直後、続いて振り下ろされた大鉈の一撃を転がるように回避。
持っていた銃…エンフィールドNO2をめくら撃ちで全弾ぶっ放してから窓の外へ飛び出す。
ライフルで狙われる、などと、そのようなことは考えの端にも上らなかった。
ただ、ただ、恐怖から逃れたい一心が行動に直結したに過ぎない。
玄関先に落下し、くじいた足の痛みも無視しながら立ち上がり、走る。
痛い。痛くてたまらない。けど、走らなかったら死んでしまう。
どこを目指しているかなど知るものか。
あの変質者もすぐには追って来られまい。
それまでにどこかへ逃げ込んで、やり過ごしてしまえばいい。
このあたりは入り組んでいる。誰か一人が隠れた家を特定するのも容易ではないのだ。
走って、走って、そろそろ敵を捲いただろうと思ったところで、川沿いの古びた一軒家を隠れ場所に選ぶ。
かつて左肩だった部分から垂れた血は、逃げた際に辛うじて持ってこられたカーテンが吸い取っている。
道に点々と落ちて道標になっている、というような間抜けな事態だけは避けられたはず。
一軒家の中へ滑り込んだクアットロは、まず風呂場に向かってバスタオル多数を確保。
左肩の傷口にそれら全てを当てて、脱衣場にへたり込んだ。
(…頭が、くらくらしますわぁ)
すでに全身が限界を訴えていた。
気力でここまで持たせてきたが、最早一歩も動けはしない。
ここまで来たなら安心だ。傷の手当てをしつつ休息をとり、動けるようになってからヴァッシュを探そう。
他の人間と自発的に接触するのは避けるべきか。二人死んだとはいえ、機動六課はこの会場に六人もいるのだ。
考えてみれば、あの連中が自分のことを警戒するよう触れ回らないわけもない。
そう考えれば…この会場で味方といえる人間は、すでにヴァッシュしかいない可能性すらもある。
あのお人好しだったら、自分クアットロの悪評を耳にしたところで、そう簡単には信じるまい。
そこにつけ込んで利用しよう。あとのことは…ヴァッシュに会ってからだ。
今もきっと、あのお人好しは待っている。突然いなくなってしまった少女の身をマヌケにも案じているはずなのだ。
騙されているとも知らずに。利用されているとも知らずに。
自分の見立てでは、それほど強力な手駒だとも思えないが…
それでも、これ以上一人で居続けるよりは、はるかにマシだ。
とにかく、今は一歩も動けない。ここで休み続けるしかないだろう。
寝息などが漏れないように、タオルをしっかりかぶって寝ればいい。
機動六課のシャマルと、その連れ…今さっきの変質者がここに気づくとも思えないし、
他の参加者にしたって、こんなところにわざわざ寄る意味自体があまりない。
駅が近いのが気がかりではあるが、今はこれ以上、どうにもできまい。
では、体力を回復させようか…
わずかばかりの安心を表情に浮かべた途端だった。
ザリ…ザリ…
足音らしきものが、接近する何かの存在をクアットロに伝えた。
隣の小さな駐車場に敷き詰められた、砂利を踏む音であろう。
(お、落ち着くのよ、クアットロ…
ここが私の正念場。ここで奴に見つからなければ、勝利!)
むしろ、見つかれば敗北…死ぬ、と言った方がはるかに正確なのだが、
そんな単語を頭脳の端に上らせることさえも呪わしいのだから仕方ない。
不安を増大させて、敵に感づかれたらおしまいなのである。
だから、ひたすらに息をひそめる。
うずくまって亀のようにタオルをかぶり、上目遣いで脱衣場の窓から外の様子を伺う。
そんな見方をしているものだから、外の様子などほとんどわかりはしない。
事実上、足音だけで判断し、足音が去るのだけをひたすら待ち続けるクアットロである。
ザリ…ザリ…
足音が近づく。
うずくまったクアットロの背が、小刻みにふるえ始める。
本人はまったく、それに気づいてはいない。
ただ、耐えて待ち続けるだけだった。
(やり過ごすの、やり過ごすのよ。
黙ってさえいれば、気づかれるわけがないんだから)
脂汗が、びっしりと浮く。
ひたすら、足音は近づいてくるのだ。
わかるわけがないのに、まるでわかっているかのように。
踏みならされる砂利の音は、重量感を増していた。
(ばれるわけがない、ばれるわけがない)
破裂しそうな心臓と、暴走しそうな両足を必死で説得しながら、
クアットロは足音が通り過ぎるのを待つ。
安心の言葉を呪文のように脳裏に思い浮かべ続け、そして。
ザリ…
足音が離れ、やがて消えた。
クアットロはそれでも警戒を続け、数十秒間、耳をよく澄ませた。
…行ったか。どうやら、行ったようだ。
(やった、勝ったわぁ)
タオルの山から這い出して、窓からそっと外の様子を確認する。
人影らしきものは、確かにどこにも見当たらない。
脅威は去った。クアットロは自らの勝利を確信した。
あとはここで隠れていれば、とくに誰も寄ってくることはないだろう。
体力を回復して体勢を立て直し、しかるのちにヴァッシュと合流。
あの連中への復讐は、その後でできる。
待つのも策士の領分なのだ。
次、相まみえる時には最高の舞台を用意しよう。
むろん、自分が一人勝ちする舞台を、だ。
「うふふ、さようなら、おマヌケさ」
しかし、勝利宣言は途中で遮られた。
突如として響き始めた崩落音が、彼女の言葉を悲鳴に換えた。
「さわああああああぁぁぁぁ――――っ!?」
風呂場が突然爆発した。
細かい破片がクアットロの身体を叩く。
それは爆発というよりも、どちらかというと暴風によってなぎ倒されたと言った方が近いのではないか。
クアットロがそのように思った瞬間、
暴風が彼女の方へと向き始めたのだ!
「ひわわわわ、わひっ…」
脱衣場から瞬時に脱出。その後を追いかけてくる謎の暴風から必死で逃げる。
彼女を捉えようとする暴風は一軒家の壁や天井を一瞬にして粉微塵に解体しながら追ってくる。
無我夢中で走るクアットロの背中に、もうほとんどかすめているような距離で大破壊が発生し続け、
それが彼女に二度目の顔面ガラス割りを強いることとなった。
体当たりでガラスを割って飛び出すなり、一軒家は最後の一部屋まで跡形もなく消し飛んだ。
瓦礫から、盛大な土埃が立ちのぼる。しばらく視界は通らないだろう。
…もう認めるしかない。敵は何らかの方法でこちらを探知して攻撃してきた。
それをどうにかしてごまかさなければ、どこまで逃げても同じ事になる。
ならどうする? このままでは、ここで瓦礫の一部にされてしまう!
今こそ、落ち着かねばならない時。
最後の賭けに出なければならない時なのだ。
今、手持ちのカードでどうにかするのなら。
(そ、そうだわ…)
クアットロは、冷汗混じりの笑みが浮かべた。
(これならいけるわぁ。
私は優秀で、頭のデキは他のくだらない連中とは数段違う。
やっぱり最後に笑うのは私なのよぉーっ)
早速、思案は行動に移される。
土煙が晴れるのは、まもなくのこと。
************************************
(外すな、シャマルは)
そう直感したからこそ、ヴィラルは彼女一人を置いて
敵の追撃にかかったのだ。
あれは裏切り者だという。
裏切り者というからには、キドウロッカの裏切り者なのだろう。
すなわち、螺旋王の裏切り者であり、獣人の裏切り者ということだ。
ならば、この手で処刑する理由としては充分すぎる。
しかし、走る足に力が籠もったわけは、それだけではなく。
(あのような顔は見るに堪えん…)
憎しみに冷たく燃え上がったシャマルの瞳を前に、
いたたまれない気分になってしまったのも確かではあった。
討ち取られた同志の仇を討つのは当然のことだ。
ましてやそれが、裏切り者の仕業ともなれば。
友を、仲間を失った彼女の無念も、十二分に理解できるつもりだ。
つまり、彼女があの敵を討つのに反対する理由などひとつもないのだが…
それでも、料理を差し出した際に見せてくれた健気さ、優しさと、
宿敵を発見した際の怨嗟に歪む表情とを脳内で見比べる羽目になるのはきつかった。
そしてそのやりきれない気分はそのまま、逃げる敵への殺意へと変わった。
(手早くカタをつけさせてもらうぞ)
敵が落下した民家の一階から適当な布地を拾い上げて顔に巻き付けたのは、
目つぶしなどの小細工を一応は警戒してのこと。
確実に仕留めなければ、自分にとってもシャマルにとっても、この先不愉快なことになる。
そう思って一撃で決めるべく室内に突入するも、あえなく逃がしたのは痛恨であった。
狙いも何もつけていない銃とはいえ、至近距離でやたらめったら撃ちまくられては近づけなかったのだ。
だがそれも、ヴィラルにとっては致命的な事態とはなりえない。
(血のにおいと、焼けた機械のにおいだ…
貴様のにおいは、どこまで行っても目立つなぁ、裏切り者)
人間並みまで機能を落とされたとはいえ、獣人として培った嗅覚は伊達ではない。
シャマルが人間と微妙に違うことをそこから感じ取れたように、
追っている敵の奇妙なにおいの組み合わせも、あっさり探知できてしまうのだった。
やがて、敵の隠れる一軒家に到達した彼は、内部への突入を試みようとして…
(待て…突入は二度目だ。
裏切り者であるからには卑劣なはず。
何か罠をしかけているかもしれんな…?)
そこで彼は思いついたのだ。
敵が中でどんな準備をしていようが、まったく関係のない処刑方法を。
彼はおもむろに一軒家を離れ、向かいの家の屋根へと登り、そこに座り込んでからデイパックを開封。
取り出したるは、バルカン砲。
シャマルから聞くに、威力は折り紙付きとのこと。
予備弾は無いから大事に使えとも言われてはいたが、
一刻も早く消滅させたい輩が目の前にいるのならば、否やもないというものだ。
とはいえ、引き金を引いた瞬間から発生する大威力に、さしものヴィラルも少々唖然とした。
これほどのものならば、ガンメン相手にも対抗できよう。シャマルが大事に使えと言うわけだ。
ぼんやりして弾を無駄遣いするわけにはいかないので、引き金を引いたままヴィラルは銃身を横に振った。
撃っていたのはせいぜい二秒ほどであろうか。
たったのそれだけで、今まで立派に建っていた一軒家は、まるで竜巻の直撃を受けたかのように爆散していた。
土煙がひどくて様子が全然見えないが、敵はバラバラに撃ち砕かれただろうか…
バルカン砲は構えたまま、眼をこらし、耳を澄ます。
「悪運の強い奴だ!」
駆け出す足音を逃さず捉えた。
砲身をそちらに向けて、土煙が収まった頃合いに再発射、今度は確実に仕留めるつもりだった。
…が。
「なにっ?」
走って去っていく後ろ姿は、敵のそれではなかった。
それは、なんと。
「シャマルだと? なぜ、ここに…」
いるわけがない。
こんなに早く、シャマルが追いついてきているわけがない。
では、あれは一体、何だ?
何故、自分から逃げていくのだ?
理解できない状況下で思考停止に陥ったヴィラルは、
走っていくシャマルの後ろ姿をただ見送るだけになってしまった。
そして、その直後に見せられた光景に。
「…シャマル―――ッ!?」
ヴィラルは、何も考えずに駆け出した。
************************************
「か、は…」
絶頂からの転落であった。
せっかく、あの変質者を出し抜いたのに。
IS、シルバーカーテンでシャマルの姿に化けてしまえば撃てないだろうと見抜き、
実際その通りになったのに。
走って逃げたその先には、本物のシャマルがしゃがみ込んでいて。
携えたライフルが火を吹く瞬間が、クアットロにもよく見えた。
右太ももを撃ち抜かれて、なすすべもなく、転ぶ。
もう、走ることもままならない。
それでも、地面の上を這って進む。
すぐそばに川がある。落ちて流されれば、逃れられる。
それだけを頼りに、彼女は芋虫と化すのだ。
狙撃の二発目、三発目が何故飛んでこないのか、何故止めを刺されないのか。
そんなことを考えていられる余裕は、彼女にはない。
だが、背中を捕まえられて抱き起こされれば、さすがに話も違ってくる。
クアットロを腕の中に抱えるのは、さっきの変質者!
「大丈夫か、シャマル、大丈夫か!」
「ひっ、ひいいっ」
思わずその手を全身で振り払ってしまったそのタイミングで、
IS、シルバーカーテンはその効果をみるみるうちに失った。
クアットロ自身の集中力が完全に途切れてしまったためだった。
「うおっ?」
変質者の男も、さすがに驚いたらしい。
クアットロを突き飛ばすと同時に、顔に巻き付けてあったハート柄の布地がはらりとほどけた。
その後ろから、落ち着いた歩調でやってきたのは。
「見ての通りよ、ヴィラル」
「シャマル、お前…」
「こいつはこうやって、私達を騙すのよ」
「…そうか」
再び地面に転がって、自らの身を芋虫としていたクアットロは、
変質者…ヴィラルのその頑健な右足で思い切り踏みつけられた。
「げえええっ」
吐き出される胃液。それに準じた内容物。
これらが奉仕してきた身体の運命も、たった今、終わろうとしている。
クアットロの見上げる瞳を、ヴィラルは命乞いだと受け取ったらしく、
侮蔑を込めた宣告を下してきた。
「貴様に対する哀れみは、一切無い。
この場で切り刻まれて川に流され、海の藻屑となるがいい」
大鉈が、振り上げられる。
これから解体にかかるということなのか…生きたまま。
「いや、いやよぉ、こんなの嫌ぁぁ――」
「あがくな」
「死にたくない、死にたくないわぁ、お願い、たすけて、見逃してよぉ」
みっともなくもじたばたと暴れ回るクアットロに、
ヴィラルもシャマルも憤怒を隠そうともしなかった。
「裏切り続けた挙げ句の台詞がそのザマか。いい面の皮だな」
「死なずに済むと思っていたの?
あなただけがいいように他人を殺して行けるとでも?
死になさい。あなたのようなモノの行く先は、それしかないのよ」
「許して、許してよぉ、死にたくないの、死ぬの怖いのよぉ」
身に覚えのないことを言われている気もするクアットロだったが、
今はただ死にたくない一心である。
死というものが至近距離に迫ってくるにつけ、恐怖は底抜けに増大し続けている。
もう、他に何も考えられない。ただ生き延びたいだけだった。
そして、そんな懇願が相手に通るかどうか…それを一番よく知っているのもまた、彼女自身だった。
「げぐっ、ぎぃやああああ、やめ、やめてぇ、ああああ――」
二人の返事は、クアットロの下腹部に突き刺さるヴィラルの踵に代弁させられた。
「女をいたぶるのは胸糞悪いが、貴様だけは話が別だ。
苦しみ抜いて死んでいけ。無念のうちに死んでいった同胞達の分までな」
太陽光を反射して煌めく大鉈が、クアットロの脳裏に写真のように焼きつく。
目玉が裏までひっくり返りそうな痛覚の中、たったひとつのイメージを彼女は得た。
降り注ぐナイフに串刺しにされていくイメージ…
死にたくない、の一心から、それはほとんど無意識に発動された。
先のバケモノとの一戦と同じように、バビロンの門は開かれた。
「な…」
「き、貴様アアアアアアッ?」
降り注ぐナイフ、暗視スコープ、マント、首輪、水鉄砲、肉片、銀玉。
高速で飛来するそれらは姿勢の低いクアットロには当たらない。
二人がいくつもの物体の直撃を受けて倒れた隙を見て、クアットロは自らの身を川の中へと投げた。
冷たい水は、たちまち彼女の意識を奪う。
戦闘機人の見る夢は、果たして…
【F-4/川の中/1日目/午後】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:左肩喪失 右耳喪失 背部に裂傷(小) 全身に細かい切り傷(小) 右太ももに銃創(貫通、重傷)
疲労(極度) 死への恐怖(極度) 自信喪失(極度) 魔力消費(中) 髪がうなじあたりで切れてショートヘアー化している
眼鏡喪失(視覚は問題なし) 左肩だった部分から機械部分露出 気絶中
[装備]:ゲート・オブ・バビロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(地図喪失)、暗視スコープ、ゼオンのマント@金色のガッシュベル!!、首輪(クロ)
S&W M38(弾数1/5)、S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数0/6)、短剣×12本
単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、マース・ヒューズの肉片サンプル
[思考]
基本:???
1:???
[備考]
※川に落ちてどこまで流されるかは、次の書き手さんにお任せします。
※精神的に壊滅的な打撃を被りました。
※身体的なダメージも大きすぎます。早いうちに手当を受けられなければ、遠からず死にます。
※支給品はすべて把握しています。
※首輪及び螺旋に関する考察は以下のとおり。
・首輪はネジを回すことで解除できる。ネジを回すには、螺旋力が必要。
・死者から採取した首輪でも、上記の条件は適用される(未検証)。
・シルバーカーテンで首輪の爆弾としての機能を停止できるかもしれない(不安材料が多すぎるため未検証)。
・螺旋力とは、殺し合いのような極限の環境下において、誰にでも目覚める可能性があるもの。
・螺旋王の目的は、あくまでも『実験』。殺し合いはそのための手段でしかない。
【首輪について】
銀色のリング。首の後部に二つの小さな溝があり、その間に所有者の名前が刻まれている。
これは実はシールになっており、見ただけではわかりにくいが、よく触ってみると裏に隠れたネジの窪みがわかる。
シールを剥がすとプラスのネジが隠れており、これを回そうとすると螺旋王の音声が響き、所有者に謎の苦痛を与え気絶させる。
クアットロの推理どおり、このネジを回す方法に螺旋力が関係あるかどうかは不明。
また解除に失敗した場合、どういった方法で所有者を気絶させたのかも不明。その後の影響も一切不明。
【F-4/住宅地・川沿い/1日目/午後】
【チーム:Joker&Fake Joker】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:脇腹に傷跡(ほぼ完治・微かな痛み)、胸焼け
[装備]:大鉈@現実、モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと7秒連射可能、ロケット弾は一発)
[道具]:支給品一式、鉄の手枷@現実
[思考]
基本:ゲームに乗る。人間は全員殺す。
0:おのれえええええええええ!
1:中央部近辺に向かい、激戦区を観察。そしてそこから逃げてきたものを殺す。
2:シャマルに礼を尽くす。その為にも、クラールヴィントと魔鏡のかけらをどうにかして手に入れたい。
3:発見次第、裏切り者(クアットロ)を始末する。
4:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
5:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
[備考]
螺旋王による改造を受けています。
@睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
A身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
…人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。
単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。
※二アが参加している事に気づきました。
※機動六課メンバーをニンゲン型の獣人だと認識しました。
※なのは世界の魔法について簡単に理解しましたが、それは螺旋王の持つ技術の一つだと思っています。
また、その事から参加者の中で魔法が使えるのは機動六課メンバーだけであるとも思っています。
※螺旋王の目的を『“一部の人間が持つ特殊な力”の研究』ではないかと考え始めました。
【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:魔力消費 中
[装備]:ワルサーWA2000(3/6)@現実 、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式×2、ワルサーWA2000用箱型弾倉x3、バルサミコ酢の大瓶(残り1/2)@らき☆すた、魔鏡のかけら@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:八神はやてを守る為に、六課メンバー以外の全員を殺す。けれど、なるべく苦しめたくは無い。
0:きゃあああああああああっ?
1:中央部近辺に向かい、激戦区を観察。そしてそこから逃げてきたものを殺す。
2:しばらくの間はヴィラルと行動する。
3:発見次第、戦闘機人(クアットロ)を殺害する。
4:クラールヴィントと魔鏡のかけらを手に入れたい。
※宝具という名称を知りません。
※ゲイボルク@Fate/stay nightをハズレ支給品だと認識しています。
※魔力に何かしらの制限が掛けられている可能性に気付きました。
※魔鏡のかけらを何らかの魔力増幅アイテムと認識しましたが、
どうやって使用する物なのか、また全部で何枚存在しているのかはまだ理解していません。
※両者ともゲート・オブ・バビロンによって攻撃を受けました。
どの程度のダメージを受けたかは、次の書き手さんにお任せします。
クアットロの状態表を以下のものに修正します。
【F-4/川の中/1日目/午後】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:左肩喪失 右耳喪失 背部に裂傷(小) 全身に細かい切り傷(小) 右太ももに銃創(貫通、重傷)
疲労(極度) 死への恐怖(極度) 自信喪失(極度) 魔力消費(中) 髪がうなじあたりで切れてショートヘアー化している
眼鏡喪失(視覚は問題なし) 左肩だった部分から機械部分露出 気絶中
[装備]:ゲート・オブ・バビロン@Fate/stay night
[道具]:なし(空のデイパックのみ所持)
[思考]
基本:???
1:???
[備考]
※川に落ちてどこまで流されるかは、次の書き手さんにお任せします。
※精神的に壊滅的な打撃を被りました。
※身体的なダメージも大きすぎます。早いうちに手当を受けられなければ、遠からず死にます。
※支給品はすべて把握しています。
※首輪及び螺旋に関する考察は以下のとおり。
・首輪はネジを回すことで解除できる。ネジを回すには、螺旋力が必要。
・死者から採取した首輪でも、上記の条件は適用される(未検証)。
・シルバーカーテンで首輪の爆弾としての機能を停止できるかもしれない(不安材料が多すぎるため未検証)。
・螺旋力とは、殺し合いのような極限の環境下において、誰にでも目覚める可能性があるもの。
・螺旋王の目的は、あくまでも『実験』。殺し合いはそのための手段でしかない。
【首輪について】
銀色のリング。首の後部に二つの小さな溝があり、その間に所有者の名前が刻まれている。
これは実はシールになっており、見ただけではわかりにくいが、よく触ってみると裏に隠れたネジの窪みがわかる。
シールを剥がすとプラスのネジが隠れており、これを回そうとすると螺旋王の音声が響き、所有者に謎の苦痛を与え気絶させる。
クアットロの推理どおり、このネジを回す方法に螺旋力が関係あるかどうかは不明。
また解除に失敗した場合、どういった方法で所有者を気絶させたのかも不明。その後の影響も一切不明。
※支給品一式(地図喪失)、暗視スコープ、ゼオンのマント@金色のガッシュベル!!、首輪(クロ)
S&W M38(弾数1/5)、S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数0/6)、短剣×12本
単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、マース・ヒューズの肉片サンプル
以上の物品が、【F-4/住宅地・川沿い】にぶちまけられました。
で、どういう場とロワをつくるかだな
>>280 削除依頼だしとくからてめえで保守しろよ
キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
携帯からPCに変えるだけでも違います。
【読み手の心得】
好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
荒らしは透明あぼーん推奨。
批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
嫌な気分になったら、「ベリーメロン〜私の心を掴んだ良いメロン〜」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
一度死亡が確定したキャラの復活
大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
話の丸投げ 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
でも本当に無駄なルールが多いなこれ
>例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
>この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
>こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
ヒステリックすぎるな
とりあえずルールでも考えるか
世界を二つ以上に分けるのと、あとなんだ?
世界を分けてしまえば、いままでできなかった
セカイ系攻撃が可能なのではないか?
世界二つにすんの確定かよwww
なんで、初っ端からそんな色物な感じを出すんだ?
3つにしてもいいぞ
4つ
奇数だな
なら半分はもらおうか
7つ
「ごはん、ごはん〜。肉なしチンジャオロースじゃないよ。作るのは神父ソン〜」
謎の歌詞を独自のテンポで刻みながら、少女、エドワードは陽気に先頭を歩いている。
その後方を行くのは大小二つの影。
エドのすぐ後を行くのは黒い神父服に身を包んだ大男、言峰綺礼である。
その更に後方、少し離れた位置にいるのはラピュタ王家の末裔、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタであった。
「……あの、言峰神父」
自身の倍はあるのではないかという大男を見上げながら、意を決したように少女は口を開いた。
「なんだね、シータ。懺悔ならばいつでも聞くが?」
自身の腰程の身長しかない少女を見下ろしながら、言葉を受けた神父は答える。
「いえ、今後のコトです。
言峰神父が頼りになる方であるのはわかります。
あなたなら、襲ってきた方も撃退できるでしょう。
ですが、」
その先に続く言葉が予想できたのか、言峰は僅かに眉をひそめる。
「殺すな、と?」
「はい。無理を言っているのは承知しています。
ですが、どのような人であれ殺してしていいなんてことはありえません。
それに、殺人はやはり許される行為ではないと思います」
強い決意と意思を持って少女は告げる。
その言葉を受けた神父は、しばらく考え込んだ後、重々しく口を開いた。
「ふむ。この状況の厳しさをその身で知りながら、その言葉が言える君はやはり強い人間だ。
だがなシータ。残念だがそれは約束しかねる。
私とて聖職者だ、好き好んで殺し回ったりはしないが、殺すつもりでやらねば勝てぬ手合いは得てして存在する。
まして、ここでは私の力など微々たるものだ、手加減などしている余裕はない。そうでなくては殺されるのはこちらだ」
「……そう、ですか」
元より無茶をいっているのは承知していたのか、シータはそれ以上喰らいつくでもなく、ただ残念そうに引き下がった。
だが、次に神父が告げた言葉に、シータは目を見開く事になる。
「それにシータ。君は人殺しを絶対の悪のようにいうが、それは――――そんなに悪いことなのかね?」
「なっ!? 当たり前です!」
驚きながらも、シータは反射的にそう言い返した。
人は人を殺しては行けない。
そんな事は当たり前のことだ。
そんな事を、仮にも神の教えを説くべき男に問われるなどとは思っても見ないことだった。
だと言うのに、神父は反論が心外だと言わんばかりの顔でふむと頷く。
「当たり前ときたか。
では一つ問うが、人殺しが絶対の悪などというその当たり前は、いったいどこの誰が決めたのかね?
君か? 私か? それとも、まさか神などとはいうまいね?」
寒気のするような笑顔。
聖書を謡うような声で、神父はとても神の使いとは思えない言葉ばかりを並び立てる。
誰が決めたのか、なんて考えるまでも無い。
誰が決めたのか、それは、
それは…………誰が決めたのだろう?
「はい、は〜い。それは昔の偉ぁい人が決めたのですょ」
先生に向かって手を上げる生徒のようにエドが元気よく発言する。
その発言を受けた神父は僅かに表情を崩し噴出した。
「ふ。それこそまさかだ。古の時代とは血で血を洗いながら権力を奪いとるものだ。
人殺しで権力を得たものが人殺しを肯定はすれど、否定はしまい。
第一、アレがそのような事を決めるとはとても思えん」
神父の口ぶりはまるで昔の偉い人を知っているかのようだ。
そんなことはどうでもいい、問題は、
「では、あなたは人殺しが許されることだと言うのですか」
そう、問題なのは、まるで殺人を肯定するような神父の発言だ。
問いかけるシータの声が思わず強張る。
そんなシータとは対象的に、神父の態度にまったくの緊張はない。
それは懺悔室の神父と懺悔人にも似ていた。
「そうは言っていない。
少なくとも、君にとって人殺しは絶対の悪なのだろう。それを否定するつもりはない。
だが、他の人間にとってはどうだ? 必ずしも、そうであると言いきれるのかね?」
「……それは」
殺し合いの舞台で次々と死んでいく人たち。
つまりそれは殺した人間がいるという事と同義だ。
殺し合いに乗った人にとって人殺しは悪ではないのだろうか?
「そう、答えは否だ。
善悪など人の価値観によるものだ。絶対の価値観など存在し得ない」
「…………………」
シータは答えられず口を噤む。
エドは既に話に興味を失ったのか一人ニョロニョロと尺取虫のような動きをしている。
幾ばくかの沈黙。
神父は仕切りなおすように、さてと言葉を切る。
「そう言えば、先ほどの人殺しの善悪を誰が決めたかという問いに対する君の答えを聞いていなかったね」
突然話をフラれたことに、シータが怯えるようにビクリと反応する。
そして、慌てたように考え込む。
「え、えっと。すいません言峰神父……私には、わかりません」
申し訳なさそうにシータはそう告げた。
それに対し、言峰は残念がるでもなく息を吐いた。
「ふむ。そうか。
なに、そう難しい話ではない、人殺しを悪と定義したのは―――君だ、シータ」
「え? わた、し?」
神父の言葉は全てが謎かけのようだ。
直接答えを聞いてもシータにはその意味が理解が出来ない。
「そう。答えを決めるのは君であり、私であり、皆である。
元よりどのような行為にも明確な答えなどない。
故に、その是非を決めるのは本人以外にありえない。
ならば、誰に褒め称えられようとも、本人がそれを否定するならば、それは悪だ。
逆に、誰に咎められようとも、本人がそれを肯定するならば、それは善であるのだ。
然り、殺人で救済でであれ、善悪を決めるのは本人だ。
例え十の内九を救ったとして、一を切り捨てたことを悪しと嘆くならばそれは悪であるし。
例え何人殺して回ろうとも、本人がそれを善しと笑うのならばそれは善なのだ」
「ありえません!
そんな、人を殺して平然としていられる人間なんているはずが……」
「―――ない、と言いきれるのかね?」
ピクリと、シータの動きが止まる。
神父の言葉にシータは頷くことができなかった。
なぜなら頷けば嘘になってしまう。
シータ自身、天上から放り出される沢山の人間をゴミのようだと笑っていた男を知っている。
「先ほど君が否定した過去のやり直しも同じだ。
君はそのための殺人を悪しとした。それだけの事だ。
だがシータ。君にとって未来はどうだ?
私の、エドの、そして何より君自身の未来を守る。
そのために手を汚すことは、君のとって善なのか、それとも悪なのか?」
「どういう、意味です…………?」
問いかける声は震えていた。
なににそんなに怯えているのか、それは彼女自身にもわからない。
目の前の神父が怖いのか? それとも、その言葉の先を聞くのが怖いのか?
「例えば、ここに殺人者が襲ってきたとしよう。
私は成す術も無く殲され、残るはエドと君だけだ。
その時、君の手には一丁の銃があったとして、さて、君はどうする?
引き金を引くか、それとも引かないのかね?」
「それは……っ」
シータはすぐさま答えを返そうとするが言葉が出ない。
どうすると言うのか?
引いたところで当たるとは思えない。
だが、神父が問うているのはそんな事ではないのだろう。
「言っただろう。殺人を絶対の悪とする必要はない。すべては君の心一つだ。
無差別な殺人ならともかく。君が守るための殺人を善しとするのならばそれは悪ではないのだ。
引き金を引いて自身を守るか、それとも引き金を引かず皆殺しにされるか。
シータ。君はどの選択を善しとするのかな?」
「それは……………」
引くのだろうか?
引かないのだろうか?
答えなどはありはしない。
神父の言葉が思い返される。
殺すのが善なのか、
殺すのが悪かなの、
殺されるのが善なのか。
殺されるのが悪なのか。
わからない。
自分自身の事だと言うのに、彼女にはその答えがわからない。
「まあいい。その答えは今は保留としておこう。
――――だがなシータ、君はいずれ選択を迫られる。
その時こそ、その答えを私に見せてくれ」
その言葉はこれまでの諭すような言葉ではなく、酷く真摯な言葉だった。
ひょっとしたら、この神父もその答えを知りたいのかもしれない。
そんな事を、焼け付いた頭でボンヤリとシータは考えた。
「エドはしな〜い。自分がされて嫌なことは人にしはいけないのです」
えっへんとエドは小さな胸を張る
「ふむ。それもよかろう。またそれも一つの価値観だ。
己が価値観と相反する行為を侵したとき、人はそれ罪と呼び、赦されるために神に祈るだ。
赦しはここに、 Armen」
そういいながら神父は胸元で十字を切る。
シータは一人その場に立ち止まり先を行く二人の背を見送っていた。
エドのように単純な二元論で片付けられるほど彼女はシンプルではなかった。
神父の言葉は予言のようだ。
決断の時はいずれ来る。
そうなったら、自分はいったい、どうするのだろうか?
【B-5・道路分岐点辺り/一日目/午後】
【チーム:陰陽を為す者たち】
[共通思考]
1:三本のアンチ・シズマ管、及びその設置場所を探す。
2:1のために各施設を回る。
3:1のために参加者から情報を募り、できるなら仲間にする。
最終:ゲームから脱出する。
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:左肋骨骨折(一本)、疲労(小)
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式(コンパスが故障、食糧一食分消費。食料:激辛豆板醤、豚挽肉、長ネギ他)
[思考]
基本:観察者として苦しみを観察し、検分し、愉悦としながら、脱出を目指す。
1:二人と情報交換する。ただし、シズマドライブに関する推測は秘匿する。
2:卸売り市場で豆腐を手にいれ、麻婆豆腐を振る舞う。
3:エド、シータに同行。二人を観察、分析し、導く。
4:殺し合いに干渉しつつ、ギルガメッシュを探す。
[備考]
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。
※会場がループしていることに気付きました。
※シズマドライブに関する考察は以下
・酸素欠乏はブラフ、または起きるとしても遠い先のこと。
・シズマドライブ正常化により、螺旋力、また会場に関わる何かが起きる。
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労、強い使命感
[装備]:アンディの帽子とスカーフ
[道具]:なし
[思考]
1:二人と情報交換する
2:言峰について行き、食事をもらう
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労、深い悲しみ、強い決意、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。みんなと脱出を目指す。
1:エドを守る
2:二人と情報交換する
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
4:まずは卸売り市場へ
5:マオに激しい疑心
6:言峰については半信半疑
[備考]
マオの指摘によって、ドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※エドのことを男の子だと勘違いしています。
一人、道を行くその足取りにも、男のイラつきは如実に現れていた。
受けた傷の治療を行っても、ウルフウッドのイラつきは収まらなかった。
放送で自分が殺した相手の名が呼ばれようとも感傷はない。
ただの事実だ、今さらイラつくこともない。
ただ、強いて言うなら、唯一この場で知っている男の名がなかった事に、落胆したような、安堵したようなそんな気持ちになっただけだ。
その男がこの場でどうしているかだなんて考えるまでも無い。
考えるまでも無いからイラついてくる。
あのアホは相も変わらず喜々として死地に飛び込んでいくのだろう。
それは今の自分と同じようであり、対極だ。
彼は死を消し去るために死地へと向かい、
己は死を創り上げるために死地へと向かう。
イラつきが収まらなくとも足は進む。
しばらく進んだころ、遠くに人影を見つけた。
デカいのが一つ。小さいのが二つ。
デカい男の胸元にはきらりと光る十字が見える。
自分と同じ牧師、いや格好からして神父だろうか?
傍らには無力な子供が二人。
弱きを守り、保護する。
なるほど、こちらは聖職者らしくこの場においても救済の道を歩んでいるのだろう。
「……まあええわ。どの道やること変わらんし」
デリンジャーに弾を詰めなおし前に進む。
相手が救いを説く神の使いであろうと関係ない。
己は既に死者だ、救いなどない。
死者が遣わせる救いは死以外にない。
今やこの身は死を遣わせる死神の使い。
十字を切るように刃を落とそう。
祈るように引き金を引こう。
迷わぬよう頭に二発、心臓に二発。
救いはここに――――さあ、死地を創ろう。
【B-6・道路/一日目/午後】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:更に不機嫌。かなりイライラ 全身に浅い裂傷 (治療済み)
[装備]:デリンジャー(残弾2/2)@トライガン デリンジャーの予備銃弾17
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤+四枚、ミネラルウォーター500ml 2本) 士郎となつきと千里の支給品一式
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガン、ムラサーミャ&コチーテ、暗視スコープ、エドのコンピュータとゴーグル、びしょ濡れのかがみの制服
音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ)
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:見つけた三人を殺す
2:自分の手でゲームを終わらせる。
3:銃を持った人間を確認次第、最優先で殺してそれを奪う。
4:女子供にも容赦はしない。迷いもない。
5:ショッピングモールで武器を調達。
6:できればタバコも欲しい。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。ゆえに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへの鬱屈した感情が強まっています。
『それまでの間、思う存分に闘争を続けるが良い』
2回目の放送がスピーカーから流れた時、あたし達は放送開始と同時に到着したモノレールの中にいた。
静かに発車時刻を待つ箱の中で、あたしは放送のことを思い返していた。
2回目にしてついに呼ばれた知り合いの名前を。
――玖我なつき
その名前を聞いた瞬間思ったのは、『ああ、やっぱりね』ということだった。
個人的に言えば鴇羽の方が先かとも思ったが、どちらともこんな場所で長生きは出来ないだろうと思っていた。
騙されでもしたか、厄介なやつに出会ったか……甘ちゃんな彼女達ならそんな感じの最後だったに違いない。
いつか豆鉄砲に撃たれた目がアイパッチの下で疼いた様な気がして、軽く手を当てる。
かつては殺し合いもした仲だが、今となっては――まぁ友人と言ってもいい間柄かもしれなかった。
「――まぁ、何だかんだで楽しかったわ」
あたしだって死んでしまった相手に悪態つくほど性格は悪くない。
そう、死んでしまったものは戻らないのだ。もう、二度とは。
……さて、気持ちを切り替えよう。
何てったってあたしはまだ生きているのだし、これから死ぬ気もサラサラないのだから。
まず放送を聴いて真っ先に頭に浮かんだのは同様にこの放送を聴いたであろう藤乃のことだ。
あのぶぶ付け女は玖我を生き返らせるため、これまでの方針がどうであれ、優勝を狙って動き出すだろう。
あの女の玖我に対する執着と、行動を起こした際の蛇のような執拗さは身をもって知っている。
恐らく出会えば見敵必殺……いや、背後から忍び寄られていつの間にか首を飛ばされる可能性だってある。
あの女なら笑いながらそれをやりかねない。
元からあまり会いたくない相手だったが、色々な意味で会いたくない相手にクラスチェンジしてしまった。
んで、あたしが新たな問題に頭を抱えている時に隣の全身黄金男はというと、
我関せずといった顔持ちで引き続き、読書にいそしんでいたのだった。
……わかっちゃいたけどマジ空気読め。
そんなアタシの視線を感じ取ったか、わずかにその赤い瞳をこっちに向ける。
「蜘蛛女、地図に禁止エリアは書き込んだな? 見せよ」
金ぴかに言われるまま書き込んでいた自分が恨めしい。
かつては男を使う側だったというのに今の状況は何なのだろう。
そんなこっちの思惑などまったく無視して、金ぴかは強引に地図を奪っていく。
「ほほう、これはまた……」
金ぴかは何がおかしいのか愉快そうに地図を見て笑っている。
はっきり言ってかなり不気味なのだが、それが似合っているのだから始末が悪い。
「……って、何か気付いたの金ぴか?」
「フン、つまらんことだ。
それよりも気付いたか? あの男が抜かしていたことを」
質問を質問で返すな、……と言いたくなったが我慢して放送の内容を思い返す。
えーと、確かあのハゲ親父が言うには……
「――“命と引き換えに螺旋の力に目覚めた”とかいうやつ?」
「そうだ。これで先程言ったことが決定的になったな。
二度余計なことを口にするなど偶然ではありえん。
まず間違いなく螺旋王の目的は“螺旋の力”――
そしてそれは戦いに――恐らくは命に関連するものだということだ」
地図から視線をはずし、宝石みたいな真紅の眼をこちらに向ける。
「そして“命と引き換えに”とわざわざ言ったという事は、
最初の放送で言った“目覚めた少女”は未だ生存している可能性が高い。
あの道化が興味を示したサンプルを我のものにするのもまた吝かではないな」
ってオイオイ、こいつ少女誘拐犯にでもなる気か。
「たわけ。この世の全ては我のモノだ。
最初から我のものを自分の手に戻したところでそれは誘拐とは言わん」
あー、分かってましたよ。そういう返答が来ることぐらい。
それにしてもこんな奴に目をつけられるとは可哀想に。
まだ見ぬ『螺旋の力に目覚めた少女』に心の中で同情する。
と、そこであたしは地図を覗き込んで、一つのことに気付く。
「あれ? 禁止区域に灯台が入ってるけど……アンタさっき施設は入らないとか何とか言ってなかった?」
重箱の隅をつつくようなあたしの指摘に不機嫌になるかと思いきや、更に頬を歪ませ愉快げに笑うではないか。
「良く気付いたな蜘蛛女。そう、それを確認するために我はある場所へ向かう。
そこに到着するまでお前も何か読んでおけ。情報は何にせよ持っていて損することはない」
そう言って金ぴかは手元の“八つ墓村”とかいう小説に目を戻した。
こうなってしまえば梃子でもこちらの話には耳を貸さないだろう。
大きく息をついて、椅子に背を預ける。
まあ、確かにギルガメッシュの言う通り、手元には未だ数冊の未読本があり、
金ぴかが何処に向かうつもりにしろ、そこに着くまではどうやったって時間はかかるのだ。
何といってもモノレールは決してこちらの都合には合わせて動いてはくれない乗り物なのだから。
(そういう意味では金ぴかにぴったりな乗り物だといえないこともない)
ま、このモヤモヤした気分を軽くするために読書をするのも悪くないだろう。
と言っても元々あんまり本を読むほうではないから、あんまり厚い本はさっき読んだ『BATTLE ROYALE』でお腹いっぱいだ。
そういういうワケで文庫本サイズの本を適当に一冊とる。
「げ、これ破れてんじゃん……」
手に取った文庫本はさっきの本の雪崩の影響か、作者の名前の所だけが破れかかっていた。
幸い中に影響は無い様で読むのに支障はなさそうだが。
ま、単なる暇つぶしだしこれでいいか。
タイトルは――
「“君は僕を知っている”、か……」
* * *
とはいえ、その建物がまさか近づいても良く分からないとは流石に予想の範囲外だったが。
「――キモ」
第一印象はそれに尽きる。
道端に立てられた二階建て程度の大きさの巨大な渦巻き。
その外見は前衛的過ぎて、はっきり言って設計者の美的センスを疑ってしまう。
ちなみに正面に取り付けられたデカい看板には名は体を表すがごとく、『螺旋博物館』と書かれている。
「ふむ、やはりな」
何やら納得した様子で一人頷くと金ぴかは遠慮も警戒も無しに博物館の中へと足を踏み入れる。
待ち伏せを警戒しつつ、続いて中に入ったあたしを待ち構えていたのは、
『らせんはくぶつかんへようこそ!』
こちらの緊張感を見事に削いでくれるポップな感じの文字列であった。
蛍光色の文字に脱力するあたしを尻目に金ぴかは“順路”と書かれた矢印に従い、奥へと進んでいく。
(本人に訊けば『矢印に従うのではなく、我の行く先に矢印が向いているのだ』とか言いそうだが)
そこから先、二人して常時展示用の部屋を見て回ったが、特に目新しい発見もないまま奥へ進んでいく。
何か情報でもないかと思って備え付けのパンフレットを手にとって見るが、特に目新しそうな情報は見当たらなかった。
っていうかこのパンフレット、文字もらせん状に配置してあって読み難いったらありゃしない。
「ふむ……蜘蛛女、貴様の知る博物館とはこのようなものだったか?」
「んなわけないでしょ。こんな頭おかしくなりそうな構造の博物館なんてそうそうありゃしないわよ」
全国を回ればお目にかかれるかもしれないが、少なくともあたしは知らない。
読みにくいパンフを筆頭に、はっきり言って螺旋に拘りすぎだ。
こんな構造だと潰れた後再利用なんて出来ないんじゃないの? と余計な感想まで付け加えてみる。
「ほう、では何か気付かんか? 先ほどの学校と比較して考えてみよ」
学校と博物館?
まぁ、遠縁の親戚ぐらいの関係はありそうだけど……
「たわけ。先ほども言ったろう、注目すべきは共通点よりも相違点だ。
この建物はモノレールといい、貴様のいた世界と酷似しているのだろう。
ならば我が何も言わずとも気付きそうなものだがな」
その『ヤレヤレこれだから雑種は』って顔はやめろ。
はぁ、元々頭脳労働はあたしの役目じゃないのだが……嫌々ながら考えてみよう。
……アタシ達がさっきまでいた学校はごく普通の学校だった。
それに比べると確かにここはおかしい。
具体的に言えば“螺旋”への拘りっぷりが。
螺旋状の通路に螺旋状に文字の配置されたパンフレット。
はっきり言って無駄ばかりで使いにくいが、それを無視してまでこの博物館は“螺旋”というキーワードにこだわっているのだ。
「そう言われると……何か……“螺旋”ってキーワードにこだわりすぎっつーか……」
「然り。この建物は周囲から“浮いている”のだ。
まるで後から付け足されたような不自然さ――いや、事実その通りであろうよ。
ハッ、これで確信したわ。この舞台の建築物には重要なものとそうでないものがある。
灯台は恐らく何ら関係のない“最初からあったもの”に違いない」
その言葉が終わらないうちに、通路の突き当たりに赤い螺旋階段が現れた。
――また、螺旋だ。
ここまで螺旋尽くしだと本当に頭が痛くなってくる。
「ってことは何? この博物館はこの殺し合いのために作られた施設だっていうワケ?」
「そうだ。時代には時代の、土地には土地の空気がある。
それからは建築物といえど――否、人の手によるものであれば尚更逃れることは出来ん。
モノレールの中から見渡せる範囲を見渡してみたが、特に此処はその空気から逸脱しておったわ」
そんなことを言いながら螺旋階段を上っていった先を阻むのは、これまた螺旋状にデザインされた扉。
『特別展示準備中』 と言う張り紙が御丁寧にしてある。
その扉を目の前にしたギルガメッシュはというといきなりディパックに手を突っ込み、
漆黒の大剣――巳六を取り出したのであった。
「ちょ、ちょっと!!」
あたしが止めるまもなく振り下ろされる黒い刃。
その一撃は金ぴかの馬鹿力をもってすればコンクリートを粉砕するほどの威力がある。
巳六の重量、そしてその切れ味を持ってすれば金属といえど只ではすまないハズだ。
――だが、その切っ先は扉に触れるか触れないかというところで切っ先は停止していた。
いや、良く見れば先端がかすかに震えている。
……もしかして“止めている”んじゃなくて、“止められた”のだろうか?
「……フン、やはり力押しではどうにもならんか。まったく忌々しいものよ」
「……っていきなりどういうことよ。いきなり剣取り出したりしてあたしにも分かるように説明しなさいよ」
「触れてみよ、さすれば分かる」
言われるままに扉に触れてみる。
「うあ……」
思わず妙な声が出てしまったがそれも仕方ないだろう。
この扉、見た目は金属なのに妙に暖かい上、押せばその分返すような奇妙な感触がある。
適当な例えが見当たらないが……とにかく変な感触なのだ。
「どうやらこの先は奇妙な結界で覆われているらしいな。
螺旋王とやらははよほど条件を満たさぬ者に中身を見せたくないようだ。
さて、では問題だ。ここには何があると思う蜘蛛女?」
『分からない』そう答えるのは簡単だ。
だがその直後、またあの小バカにされたような表情をされるのは正直ムカつく。
――何とかして金ぴかに一泡吹かせてやりたい。
そう考えたあたしはヒントを探して周囲を見わたす。
すると天井近くに監視カメラらしきものを発見。
さらに張り紙の上には明日の正午を指し示す謎のメーター。おそらくは時間制限だろう。
そして『特別展示準備中』という注意書きには
『特別展示に入場される方は螺旋に類する物を持参ください。開封、未開封は問いません』
という続きが、小さい文字で書いてある。
何で、監視カメラが設けてあるのか?
何で、時間制限が設けてあるのか?
何で、こんな注意書きが書いてあるのか?
そして金ぴかは何を言っていた? 思い出せ。
『参加者を誘導しているようにも見える。
さて、奴は参加者をどこに誘導し何をさせたいのか。
はたまた、何を見つけさせたいのか』
『この舞台。施設といい、図書といい。奴の発言といい。
あからさまなまでに参加者を釣る情報と言う餌がばら撒かれいる。
まるで何かに気付いた下さいと言わんばかりにだ』
「――あ!」
一瞬のひらめき。
それが導き出した答えは、
「――弱いヤツへの、救済措置……ってこと?」
それに行き着いた。
この戦場においてあたしは強い方か?
……答えは残念ながらノーだ。
ジュリアが封印されていようがいまいが、金ぴかをはじめとしたそれ以上の化け物がここには存在する。
だが、だからと言って決して最弱だとは思っていない。
その程度には戦闘経験と腕に自身があるつもりだからだ。
だからこの会場には恐らく、あたしより弱い奴がいる。
そいつらがこの殺し合いを生き抜くためにはどうしたらいい?
隙を突いて強い奴を殺す?
――無駄だ。ここには規格外の奴らがいるのだ。金ぴかのようにそれこそ次元が違う奴らが。
強い奴同士を戦わせて、生き残ったほうを殺す? もしくは最後まで逃げに徹する?
――だめだろう。最終最後に1対1にでもなってしまえば殺される他ない。
そう、普通ならどうやっても強い奴の方が有利なのだ。
でもオッサンの目的は一方的な殺人ではないらしい。
なら弱い奴にもそれなりに勝利する可能性を持たせなければならないはずだ。
――だったらどっちかの勝利条件を変えてしまえばいい。
強い奴は『弱い奴を明日の正午まで殺しつくす』。
そして弱い奴は各施設から多種多様な情報を手に入れ、
『明日の正午まで生き残る』、もしくは『螺旋に関するものを手に入れる』という風に。
まあ、“戦い”を目的とする以上“状況をかなり有利にする”程度のものだろうけれど。
「ほう、やれば出来るではないか。それでこそ従者にした甲斐があるというものよ」
満足げな笑み。どうやらあたしの答えは正解に近いものだったらしい。
「そうだ、そう考えれば弱者にも勝利する可能性が出てくる。
力を手にした弱者はその力に酔いしれ、敵を殲滅せんとするだろう。
強者はその誇りにかけて弱者を抹殺せんと動くだろう。
その力が対等であればあの男が求める闘争がそこに生まれるであろうよ」
「ふーん……じゃあこの扉の向こうには使い方次第で強い奴と戦えるものが入ってるって訳か」
あたしは相槌代わりにさっき言ったことを改めて言った。
だが金ぴかは意外なことを言われたかのように、面白げに視線をこちらに向ける。
「ほう、面白いことを言うな蜘蛛女。何故“使い方次第”とつけた? 言ってみよ」
「え? だって単純に強力な武器とかだったら
強いヤツに強い武器がわたっちゃう可能性があるじゃん」
そうだ、それでは意味がない。
弱い奴に渡ってこそあのオッサンにとって意味があるのだ。
「例えば、明日の昼まで単純な意味での強いヤツ以外で生き残ったものがいるとすると、
そいつはよっぽどしぶといか、運がいいか、――頭がいいか。
運は計算なんか出来ないから運だし、しぶといってのはまぁ――ある程度強いヤツってことでしょ?
だとしたら弱いヤツの中で確実に残るのは頭のいいやつ……そう思ったのよ」
そう答えると金ぴかは無言で一歩あたしのほうへ踏み出す。
(ヤバ、何か地雷踏んだ?)
時々忘れそうになるが目の前の男は気まぐれで人を殺せる男なのだ。
おっかなびっくり金ぴかの様子を伺うあたし。
金ぴかはそんなアタシに対して、頭に手を載せ左右に揺らし始めた。
つまり――頭を撫で始めたのだ。まるで、よく出来た子供をほめる様に。
「ちょ、ちょっと、やめっ」
「王からの褒美は受け取るのが臣下の義務だ。
喜べ、我が手で撫でられたものは数えるほどしかおらぬのだからな」
満面の笑みで手のひらを左右に揺らす金ぴか。
力任せで自分勝手で首が痛くなるだけのソレは乱暴で頭を撫でているというよりは、強引に頭を揺らしているといった方が正しい。
それを振り払わなかったのは言っても聞かないことを知っているからか?
……それとも遥か昔においてきた過去を思い出すからだったんだろうか?
その思考は一層強くなった頭のぶれの前にかき消されることになったのだが。
* * *
「うぇ、気持ち悪……」
よほどあたしの頭が気に入ったのか、解放されたのは数分たった後だった。
程よくシェイクされた頭の中は復帰まで暫くの時間を要し、お気に入りの赤い髪は寝起きのようにボサボサになっていた。
「そうだな、貴様の言うとおり少なくともここには“弱者にとって有利な何か”が存在する。
それが何であれ、我が蔵の財に加えるの必要があるのは確かだが」
それだけ言うとこの扉への興味をなくしたかのように階段を降り始める金ぴか。
あたしはぼさぼさになった髪を整えながら後に続く。
「……って、じゃあその時間までここで待つの?」
「フン、我の時間は金よりも尊い。
幸いこの周辺にもいくつか施設がある。
そこにも何か仕掛けがあるかもしれん。それらを確かめながら廻るのも悪くあるまい?」
ってこんな趣味の悪い施設が他にもあるのだろうか。
「いや、ここまであからさまな釣り針は早々あるまい。
一見して違和感のない形で仕込んである可能性が高かろう――あの図書室とやらのようにな。
だが、後から無理矢理付け足されたものには必ず違和感が出るものだ。
そこを辿っていけば――あるいは螺旋王とやらの裏をかけるかも知れんぞ?」
『まぁあの男が早々尻尾を出すほど迂闊だとは思えないがな』と会話を締めくくり、金ぴかは視線を前へ戻す。
そういうもんか、と思いながらさっきついでに考えた疑問を金色の背中にぶつける。
「そういえばおかしくない? そんな強力そうなものを参加者に与えるって。
自分達に逆らう武器に使われたらそれどころじゃないでしょ?」
よくよく考えれば能力制限にもそんな意図があるんじゃないだろうか。
「なるほどな。少しは頭を使うようになったか」
イチイチ人の神経を逆なでしなければ話せないのだろうかこの俺様野郎は。
金ぴかは階段を降りきった所で、まるで黒板の前の教師のように勿体つけ、こちらに身体を向ける。
「簡単に考えられるのは回数制限をつけること、だ。
何であろうと回数制限をつければ人は迷い、そして躊躇う。
その上で螺旋王自身が多くの部下を使い、その道具を使い切らせれば良いだけだ」
流石王様。部下は捨て駒ですか。
それは兎も角としてそう考えれば、なるほど反逆されても心配はないだろう。
銃弾が百発あっても的が千個あれば命中率は10%を超えることはないのだから。
「もしくはもう一つの可能性として――」
だがそこで思案顔になり、言葉を切る。
「もしくは?」
「いや、あの螺旋王とやらがよほどの道化でなければこの可能性はない。
まあ、どちらにせよ時が来ればまた分かることよ」
ってオイ、放送前といい焦らすにもほどがあるだろう。
こっちだって生死がかかってるのだ。聞く権利ぐらいはあるはずだ。
そう改めて問い詰めようとした、あたしの行動を邪魔したのはまたしても音だった。
グゥ。
まぁ問題はその音の元が――あたしの腹の虫だったことなのだが。
「クッ……ハハハハハハハハハーッ!」
一瞬金ぴかにしては珍しい虚を突かれた表情になったかと思うと次の瞬間、身体を折り曲げて爆笑し始めやがった。
こいつ……誰だって12時間もすれば腹の一つでも減るっつぅの!
だが言い訳すればするほど泥沼に落ち込みそうなので、恨みがましい視線を向けるだけに留めておく。
「ククク……まったく、我を笑い殺す気か。
――いいだろう。貴様の望みどおりそろそろ食事とするか。
何、たまには臣下の望みを聞き入れるのも王の役目というものよな。感謝するがいい蜘蛛女」
誰が感謝するか、バーカ。
そう口には出さず心の中で呟いて、廊下を戻るギルガメッシュの後に付いていく。
まぁ、さっきの質問はまた次の機会にでも聞けばいいか、とか考え直しながら。
【D-4 博物館・一階/一日目 午後】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:健康、眼帯を外したい
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:支給品一式、パニッシャー@トライガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ) 、奈緒が適当に集めてきた本数冊 、『
原作版・バトルロワイアル』 、『今日の献立一〇〇〇種』 、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』
[思考]
基本思考:面倒なのであまり戦いたくない。ヤバくなったら真面目にやる。
1:とりあえず食事を取る
2:とりあえず金ぴかと一緒に行動する
3:攻撃してくる人間を殺すのに躊躇いは無い
4:藤乃には色々と会いたくない
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:巳六@舞-HiME 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、シェスカの全蔵書(1/2)@鋼の錬金術師
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】【王の財宝】の入手。
1:食事を取った後、周囲の施設を回ってみる。
2:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】
3:異世界の情報を集めておく。
4:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
5:宝具、それに順ずる道具を集める。
6:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
8:エレメントに興味
※学校の図書館には様々な異世界の歴史を記した本があります。
(ただしどれだけ関係ない話があるか、どこまで詳細かは不明。
少なくとも参加者の名前や能力については述べられていない。
また1stガンダム〜ガンダム00まで全黒歴史を紹介するなど、関係ない情報も相当数紛れている)
※主催者による監視を警戒しています
※参戦時期は原作死亡時。
313 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/24(月) 08:56:22 ID:dID/2IDV
あぼーん
「あっぶ! おっぶ! でりゃあああああああああああ!」
けたたましい叫び声と水を掻く音が、混ざり合って喧騒となる。
近くに人がいればなんだなんだと野次馬になったであろうその光景は、傍から見ればあまりにも滑稽だった。
『カミナ! 陸地はもう目の前です』
「おうよ! このカミナ様にかかりゃあ、塩っ辛い水なんぞへでもねぇ!」
そう豪語する海上の男は、下手くそな動作で水を掻き分けながら、丘を目指し懸命に泳ぐ。
男の青い髪はずぶ濡れになったせいか元の奇抜さを失い、目元のサングラスは幾多もの水滴を帯びていた。
――その男、カミナ。
この世に生を受けてから幾数年。暗く深い穴倉で育った彼にとって、海はまったくの未知だった。
水という極めて根本的な概念は知れど、それの持つ動き、味、圧力などは知識としての枠をまったく外れている。
泳ぐ、という慣れてはいないものの不可能ではない行為でさえ、当初は混乱のせいでままならなかった。
しかしそれも、カミナの持ち前のガッツと、彼に海の存在を教えたクロスミラージュの指導で、どうにか緩和しつつあった。
どうにか、というのはつまり、ここに至るまでかなりの時間を要したことを意味する。
海に飛び込み、泳ぎ始めてから数十分は経っただろうか。
常人ならばとうに力尽き溺れていたであろう長い時間を、カミナは海上ですごしていた。
海を知らなかった者が長時間海上に漂い、溺れるどころか泳法の上達に至るなど、離れ業もいいところである。
しかし事実として、カミナはそれをやってのけた。
彼に生まれつき泳ぎの才能があったわけではない。おそらくは根性で捻じ伏せたのだろう。
道理を蹴っ飛ばす。彼の口癖でもある信念が、体現されたかのような姿だった。
「よっしゃあ! ここまで来れば――」
陸地を視界に捉え、あと十数メートルの距離というところで、それは轟いた。
『――さて、二度目の放送を行う』
「な、なにぃ!?」
耳に飛び込んできたのは、あの忌々しい螺旋王の声だった。
遠雷のような轟きに、カミナは二回目の放送の訪れを直感する。
「馬鹿野郎ッ! 後にしやがれ!」
状況からいえばそれどころではなく、空に文句をぶつけてみるが、その怒りは無為に消えた。
カミナが水上でもがく間も、螺旋王の演説は淡々と進められていく。
その言葉の節々を頭の隅で捉えていたカミナは、やがて、
「――ッ!?」
驚愕に顔を歪ませ、ピタリと怒鳴りをやめた。
『そんな、まさかエリオまで……』
すぐ側で、クロスミラージュの落胆の声が聞こえる。
聞こえてくるだけで、頭には入ってこなかった。
脳内は既に、螺旋王が告げたある“結果”に蹂躙され、思考が麻痺している。
いつしか水を掻く意欲も失せ、ガラの悪い目つきは揺り、視点は覚束ない。
あの、カミナが。
『カミナ……?』
放送が終わり、カミナの異変に気づいたクロスミラージュだったが、しかし遅かった。
「がっ!?」
クロスミラージュが声をかけた直後、カミナの顔は苦痛に歪み、その身は海中へと沈んだ。
辛うじて顔が出ている状態にまで陥り、すぐに這い上がろうと力を込めるが、上手くいかない。
焦燥が生まれ、なおも足掻き、事態は余計に悪化していく。
『カミナ!? どうしたというのですかカミナ!』
音声を張り上げるクロスミラージュだったが、既にカミナには声を返す余裕すら残っていないようだった。
ただひたすらに体をじたばたさせ、丘に上がった鯉のような醜態を晒している。
その様がなにを意味するか、目を持たぬクロスミラージュにも十分理解できた。
『カミナ、まさか……足が攣ったのですか!?』
やはり、返答はない。
カミナは多量の水を飲み込み、発声はおろか、呼吸すら困難な状況に陥っていた。
一瞬の油断が招いた、海の洗礼。穴倉育ちのカミナはそれを直に受け、成す術もないまま破滅の道を辿っていた。
行き着く先は、溺死。
『――――――』
クロスミラージュの声は、もはや誰にも届かない。
泳ぐ力を失い、波に捕らわれたカミナは、無呼吸のままどこぞへと流されていく。
消え失せていく意識の中で、カミナは黙視しがたい現実に腹を立てていた。
(なんてこった……この俺が、大グレン団のカミナ様が……こんなところでお陀仏かよ……)
仲間たちとの日々、獣人たちとの激闘の記憶が、泡状になって弾ける。
ジーハ村でのガンメン退治、ヴィラルとの決闘、黒の兄妹やロシウたちとの出会い……
数々の思い出が――走馬灯という名の形になって――カミナの全身を駆け巡る。
(間違ってたってのか? 下が水なら死ぬこたぁねぇ。あいつを助けようって思ったことがそもそも……)
どこで選択肢を間違えたのか。カミナは自問して、なにがなんだかわからなくなった。
(わからねぇ。俺にはさっぱりわからねぇ。シモン……ヨーコ……おまえら本当に、死んじまったのか……………………?)
波濤は紡がれる。一人の男の無念を乗せて。
それはあまりに残酷で、悲しい結末だった。
【カミナ@天元突破グレンラガン 死亡】
――ピッ
男の首輪が、微かな電子音を鳴らした。
◇ ◇ ◇
「くっ! ここも駄目か」
赤いマントを羽織った男が一人、苦虫を踏み潰したような顔で一軒の定食屋から出てきた。
レール式の戸を乱暴に締め、強張った表情で再び町を練り歩く。所作の節々から、苛立ちが窺えた。
――その男、ドモン・カッシュ。
若輩者ながら一流の武闘家として名を馳せた彼は、抗う者としてこの地に君臨している。
熱く滾った拳を螺旋王に見舞うため、明日の勝利を目指し奔走するその姿は、子供から見れば勇ましいの一言に尽きるだろう。
しかしその実、彼の行動目的には改善の仕様がない根本的“ずれ”があり、それは空腹によってさらに深刻になりつつあった。
(それらしい店を物色しても、食い物の一つもありはしない! やはり、ここは誰か他の参加者から食料を入手するしかないか!?)
食欲は三大欲求の一つであり、また生き死にに一番深く関わってくる要素でもある。
彼の故郷であるネオジャパンに古くからあることわざ『腹が減っては戦はできぬ』の言葉どおり、格闘家にとっても食は重要だ。
それを疎かにすることは、格闘家としての怠慢。むしろ未熟。空腹は恥ずべきことと、ドモンは自ら自分を攻め立てる。
そうやって食料探求の熱意に油を注ぐも、収獲は依然として得られない。
殺し合いという名のサバイバルでそう易々と食料が調達できるはずもないのだが、今の彼はそこまで頭が回らなかった。
細かいことよりもまず、『どうすれば手っ取り早くメシにありつけるか』。その一点に思考がいった。
すぐに導き出した答えは、食料を持っている人間から貰う(奪う)という方法だったが、彼が探索する町には人影の一つすらありはしない。
飯が見つからなければ人も見つからない。言峰と別れてからの数時間あまり、ドモンは空腹と孤独感で苛立ちが募るばかりだった。
「むっ」
町をいくら練り歩こうと、彼の頭でいい案が浮かぶはずもなく。気づけば、町外れの水路へと足を伸ばしていた。
陽光に照らされキラキラと光る水面は、陰鬱なドモンの気分を晴らすほどの清涼剤となったが、かといって腹の虫が納得するものではない。
その絶景よりもまずドモンが気にかけたのは、水面の内部である。
「まさか魚が泳いでいるとは思いがたいが……」
口ではそう言いつつも、瞳は期待の色で染まっていた。
この際、食えるのならなんでもいい。頭の端でそう願い、ドモンは欲求を満たすための糧を探した。
しかし、発見できず。目で見る限りは影すら確認できない水中に、ドモンは不当な怒りを覚えた。
「いやしかし、奥深くに潜んでいる可能性もある。…………釣るか? いや、竿がないか……ならいっそ飛び込んで――」
空腹のあまり、馬鹿な軽挙に躍り出ようとするドモンの視線を、一つの巨大な影が過ぎった。
一瞬、肥大する期待に抑えきれず飛びかかろうとしたが、それを注視して一歩踏みとどまる。
それは、ドモンが狙いとする食料にしては、あまりに巨大すぎた。
「まさかあれは……人か!?」
水面にぷかぷかと浮かぶ、小麦色の肌。魚影と呼ぶにはあまりにも大きく、魚にはない存在感があった。
久方ぶりの人間との遭遇に心を躍らせたドモンは、腹の虫を黙らせるほどの声で水面に叫びかけた。
「おーい! そこのおまえ、なにか食い物を分けてくれないか!?」
度を越えた空腹が、第一声に持って来るべき言霊をすべて省略させた。
要点だけをストレートに告げ、海中を漂う者の返事を待つ。
五秒経った。
「おい! 俺の声が聞こえないのか!? 俺の名前はドモン・カッシュ! 安心しろ、殺し合いには乗っていない!」
さらに五秒待つ。返事はない。
「チッ……おいおまえ! 本当は聞こえているんじゃないのか!? 悪いようにはしない、俺の声が聞こえるんならさっさと上がって――」
そこまで声を張り上げて、ドモンはやっと異変に気づく。
発見した時点で気づかなければならなかった重要な点を、遅れて。
――あいつはなんで、あんなところに浮いているんだ?
海中の男は、見る限り裸だ。泳いでいた……とは思いがたい。なにせ今は殺し合いの最中だ。
泳いで移動しようとしたのか、それともドモンと同じように空腹に苛まれ、魚を獲ろうとしていたのか。
そのどちらかだろうと踏んで、しかし違和感は拭いきれない。
――なら、あいつはなんで返事を返さないんだ?
シャイなのか。いやいやそんな馬鹿な。ドモンは首を振って現実と向き合う。
自問自答する必要はもうない。彼の頭が悪いのは自他共に認める事実だが、これは誰が見ても明らかだ。
――あいつは、溺れている!
「くそッ!」
空腹のあまり状況を見失っていた自分を一喝し、ドモンは海に飛び込んだ。
怒涛の勢いで水を掻き分け、漂流する人影に泳ぎ寄る。
「おい! しっかりしろ、おい!」
ぐったりした体を抱きかかえ返答を求めるが、やはり反応はなかった。
それもそのはず、漂流していた人物の体は既に冷え切っており、青ざめた顔からは生気が感じられない。
とにかく丘に上げるべきだと考えたドモンは、漂流者を抱えたまま岸を目指して泳いだ。
人間ひとり背負いながら泳ぐことは、卓越した肉体を持つドモンにとってはそれほど困難ではない。
高さ2メートルはあろうかという堤防を人ひとり抱えたままよじ登り、改めて患者の容態を確認する。
まず第一に、漂流していた人物は男だった。
奇抜な青色の髪に、目元でずれかけていた赤いサングラス。一見しただけでは国籍が判別できない。
上半身は裸で、曝け出した肌には刺青が彫られている。
その体つきは武に精通したドモンから見ても引き締まっており、波に捕らわれるような軟弱な男には思えなかった。
となれば、彼が溺れた原因として考えられるのは、この左肩の大きな切創だろうか。
出血は止まっているようだが、その処置はお世辞にも上手とはいい難く、また簡素なものだった。
なにがこの男をこうまで駆り立てたのか。ドモンは考察を巡らせ、男に興味を抱いた。
そしてすぐ、今がそれどころではないという事実に気づく。
「俺の声が聞こえるか!? 聞こえるなら返事をしろ!」
平手で男の頬をパンパンと叩き、意識を確認する。応答はない。
次に、男の口元に耳を当て、呼気の流れを確認する。呼吸は止まっていた。
次に、男の胸元に耳を当て、心音のペースを確認する。心臓は止まっていた。
極めて危険な――素人が見れば死んでいるようにしか見えない――状態にある。
いったい何時間、海を彷徨っていたというのか。手遅れなのかどうかも判然としない。
ただ、ドモンは目の前の絶望感に打ちのめされるような繊細な神経だけは持ち合わせていなかった。
男の容態を「溺れているだけだ!」と頑なに信じ、因業なまでに男の意識回復を願った。
そしてすぐに――水難救助の際の心肺蘇生法が脳裏を過ぎった。
男に意識はない。呼吸は停止している。心臓も停止している。だが死んではいない。
ならば、果たすべきはただ一つ。そしてその大役は、ドモンにしかできない。
ここは逡巡する場面ではない。男として覚悟を決める場面だ。
そこまで理解して、生唾を飲む。
(――やるのか?)
額に脂汗を浮かべながら、ドモンは前代未聞の巨大すぎる壁に直面した。
それを受けて、脳が「やはり死んでいるのではないか?」という都合のいい解釈を持ち出す。
ドモンの人間性はもちろんそれを否定したが、片隅ではそれに異を唱える声もあり、結局は逡巡に至った。
救うべきか救わざるべきか。結果だけを望むならば当然前者だが、しかしそのための手段が懊悩として蟠る。
何秒間そうやって悩んでいたかはわからないが、こうしている間にも男の蘇生確率は下落している。
(ええい、人命にはかえられん!)
意を決し、ドモンの指先が男の肩に触れた。
が、すぐに引き離す。そのまま顔を俯かせ、わなわなと震え出すと、再び男の肩に手を伸ばす。
指先が触れて、今度は離さなかった。冷え切った体を確かめるように、また壊れ物を扱うかのように、そっと撫でる。
緊急事態だ。危急存亡だ。俺しかいない。俺がやらねば誰がやる――
何度も何度もそう己に言い聞かせ、ドモンは艱難辛苦に立ち向かった。
行動を起こすは、彼の乾いた唇だった。
◇ ◇ ◇
薄紅色の唇が、これから待ち受ける行為に怯え、震えた。
北からやってきた海風が唇を冷たく刺激し、また震える。
震えが止まらないまま、その矛先は、彼の唇へと向いた。
触れ合いを求めるように、彼の青い唇は微動もせずにそれを待つ。
大胆不敵な勇姿に決心が鈍り、唇の震えはいっそう激しさを増した。
それどころか、吐息は興奮したように荒くなり、頬はほんのりと上気している。
こわい――と、心のどこかで怯えを感じていたのかもしれない。
それでも、やらなければならない。
顔と顔が近づいて、心臓が高鳴る。
彼の顔に自分の顔の影が差し込み、赤面する。
すぐ側の波音は、心音のざわめきに掻き消された。
脳裏で、互いの唇の相対距離を知らせる、カウントダウンが鳴り響く。
あと5センチ……あと4センチ……あと3センチ……
カウントするのがもどかしくなって、唇を強引に押し当てた。
勢いをつけすぎたせいか、衝突の際にガキッ、と音がする。
歯と歯がぶつかった音だった。なんだか恥ずかしさが込み上げてきて、咄嗟に唇を離す。
が、すぐにまた押し付ける。今度は歯をぶつけないよう、優しく丁寧に、けれど情熱的に。
んっ……と、誰かの喘ぎがか細く響いた。けれども怯まない。
灼熱色に染まった頬を自覚して、それでも行為をやめる気にはならなかった。
肺に溜めた渾身の想いを、互いの口を通して経由させていく。
彼の生気を取り戻すため、自分の生気を注ぎ込む。
途中、密閉し合った唇同士に僅かな隙間ができ、慌ててより強く唇を押し当てた。
その拍子に舌先が彼の舌にちょろっと、当たったような気がしたが、構っていられない。
一生懸命に、彼をこの世に呼び戻すため、行為に没頭し続けた。
それ以外のことはなにも考えずに、陶酔したような表情のまま。
甘い一時が、幾千年の時のようにも思えた。
【カミナ@天元突破グレンラガン 蘇生確認】
◇ ◇ ◇
「ゲホッ! ゴホッ! ゴォッ!?」
喉の奥から水が盛大に噴き出し、カミナは眠りから覚めた。
口の中が塩っ辛い。それに、鼻や喉がヒリヒリと痛む。そしてなにより、息苦しい。
何秒間むせこんでいただろうか。カミナが整然とした呼吸を取り戻すまで、かなりの時間を要した。
意識をシャキッとさせようと自身に渇を入れる中、視界に見慣れぬ人影が映った。
乱雑な黒髪に鉢巻き。ボロボロの衣服の上には、目を引く赤いマント。
その姿は、カミナ同様水浸しになっていた。
「げほっ……あんたが、助けてくれたのか?」
意識せず、そんな質問が漏れた。同時に、自分が海で足を攣り、溺れていたところを目の前の男に救助されたのだと悟る。
「ああ。俺の名はドモン・カッシュ。ネオジャパンのガンダムファイターだ」
「なぁにぃ!? ガンメンファイターだぁ!?」
男の名乗りを聞き、カミナは反射的に声を荒げた。
ガンメン、という憎き仇敵である獣人にまつわる単語を耳にし、突発的に警戒心が働いたのだった。
しかし声高らかに立ち上がれど、その足腰はふらふらで、すぐ地に膝をついてしまう。
「病み上がりだ。無理をするな。それとガンメンファイターなどではない。ガンダムファイターだ」
「んな? ガン、ダム……? ガンメンとは違うのか?」
「違う。ガンダムとは我が愛機ゴッドガンダム、そしてガンダムファイトに用いられるモビルファイターの通称を指す」
「…………?」
死の淵を彷徨い、生還したと思ったら、いきなり未知の情報による洗礼である。
カミナはただでさえふらつく頭をさらに掻き混ぜられ、混乱の極みに陥った。
「そういうおまえの名はなんだ?」
「ああ? 俺を知らないってか? ――ちょうどいい。寝起きの気つけだ。いっちょかましてやろうじゃねぇか!」
言うや否や、カミナは脳内の混乱を吹き飛ばすような勢いで跳び上がり、天に人差し指を掲げる。
「深い穴ぐら天井ぶち破り、地上を歩いてついでに海も一跨ぎ!
やってやれねぇことはねぇ! 大グレン団のカミナ様たぁ、俺のことだっ!!」
カミナという男にとってはほとんど習性のような名乗り文句が、爽快に炸裂した。
その狂言回しのような自己紹介に、ドモンが抱いた感想はただ一つ。
(…………馬鹿か?)
遠慮容赦ない評を、せめてもの情けとして、心中に吐き捨てる。
「……とりあえず、名前はわかった。神名と言ったな。日本名のようだが、出身はネオジャパンか?」
「ねおじゃぱん村だぁ? このカミナ様、生まれも育ちもジーハ村っ! 地上に出れど、故郷を変えた覚えはねぇぜ!」
「そ、そうか」
さっきまで溺れて気を失っていた人間が、この変貌振りである。
カミナのぶっきらぼうという言葉を体現したかのような姿勢に、さすがのドモンも若干引き気味だった。
「まぁ、出身についてはどうでもいい。そんなことより、なぜ溺れていたのかを聞かせてほしいんだが」
「溺れてただぁ? この俺が? おいおいそいつぁ…………アッー!!」
失神とともに失っていた記憶を、カミナは指摘を受けてようやく思い出す。
海に飛び込んだそもそもの理由、追っていた女がいたことを再認識して、カミナは慌てふためいた。
「おい板公! じゃねぇ、クロスミラージュ! どこだ!?」
『…………ここにいます、カミナ』
「どこだ!?」
『あなたの足元です……』
カミナに“海”というものの存在を教えた銀色のプレートを思い出し、声をかけるとそれは直下の地面に転がっていた。
危うく流されてしまったかとも思われたが、クロスミラージュはカミナの体から離れることなく、一緒に救助されていたらしい。
「音声機能か……この声は、そのカードのようなものから発せられているのか?」
『はじめまして、Mr.カッシュ。クロスミラージュといいます』
初めて聞く声に訝しげな視線を送るドモンだったが、難しい形相は数秒で緩み、ドモンはさして混乱した様子を見せることもなく、クロスミラージュの存在を受け入れた。
住まう世界の文明レベルで言えば、明智健悟やカミナの理解力よりもドモンのそれのほうが数段上をいっていたからだ。
さらに言えば、ドモンは科学者の息子でもある。本人に専門的知識はなくとも、機械工学に関する慣れや親しみは、カミナの比ではない。
見た目には喋るだけの板……クロスミラージュについても、そういうものなのだ、と解釈した。
「そんなことよりもだ! ここぁいったいどこなんだ? 俺はどこまで流された? あのティアナって女はいったいどこに――」
『落ち着いてくださいカミナ。詳細な現在位置は私にもつかめませんが、かなりの距離を流されたのは確かです。マスターの行方も、残念ながら』
「ならウダウダしてる暇はねぇ! とっととおめぇのますたーを探して――」
「ちょっと待て。事情がまったく飲み込めん。俺にもわかるよう詳しく説明してくれ」
こうしている間にも、ティアナはカミナと同じように、海上のどこかを彷徨っているかもしれない。
自らの尊厳と意地を通し、クロスミラージュの不安を汲んだカミナは、名誉挽回しようとすぐさま捜索に戻ろうとするが、それをドモンが制す。
やると決めたら即実行のカミナとしては、もどかしさを感じはするものの、恩を売られた相手を無碍にするのは吝かでない。
しかしながら、焦燥交じりに今のカミナにろくな状況説明がこなせるはずもなく、ドモンへの説明はクロスミラージュに委ねられた。
「なるほど。つまり、海に飛び込んだクロスミラージュの主人を探していた最中というわけか」
「そういうこった! でだ、ものは相談なんだが、あんたも協力しちゃくれねぇか?」
「断る。だ――」
「そりゃねぇだろ薄情野郎!」
「話は最後まで聞け! ……俺は俺でやらねばならんことがある。だが、そのティアナという少女を無視するのも気が引ける。
そこでだ、カミナ。おまえにひとつ頼みごとをしたい。もしそれに応えてくれるなら、俺も喜んで捜索に手を貸そう」
「なんでぇなんでぇ、それなら話がはえぇ! で、その頼みごとってのはいったいなんだ!?」
協定を結ぶ上での取引として、ドモンがカミナに要求したもの。それは。
「……メシを、分けてくれ」
後背に情けなさを背負って進言し、カミナに唖然とされる。
ともあれ、これにてドモンの空腹は解消された。
これしきの羞恥など、先の初体験に比べれば屁でもない。
◇ ◇ ◇
「よぉし! メシも食った! 体力も戻った! もう少し待ってろクロミラ! おめぇのますたーは俺がなんとしても見つけてやらぁ!」
「……数十分前まで溺れ死んでいたとは思えないほどの覇気だな」
「たりめぇよぉ! 俺を誰だと思ってやがる!」
『それよりもカミナ。クロミラ、というのはいったい……?』
「クロスミラージュってのは長ったらしくて好かねぇ! だから、俺はこれからおまえのことをクロミラって呼ばせてもらうぜ!」
一度は心肺停止にまで陥った人間が、メシを食っただけでここまで回復するなど、ありえないことだった。
だが事実として、道理は蹴っ飛ばすのを信条とするカミナは、常識を逸してもとの元気を取り戻していた。
その様子に半ば呆れ顔のドモンは、カミナの先導のもと後ろを歩く。
「捜すとは言うが、なにかあてはあるのか?」
「ねぇ!」
「威張るな!」
『とりあえず沿岸ぞいに歩いてみましょう。運がよければ、マスターもどこかに流れ着いているかもしれません』
漂流中に耳にした放送内容は、クロスミラージュもしっかりと聞いていた。
今回の死亡者は十六人。その中には機動六課の一員であるエリオ・モンディアルの名前があったが、幸いにもティアナはまだ呼ばれていない。
少なくとも、あのまま溺れ死んだ可能性はない。だとすれば、どこかに漂着しているか誰かに救われたものだろうと判断した。
『しかしMr.カッシュ、本当によろしいのですか? あなたにも目的はあったでしょうに』
「構わん。そもそも俺は、共にこの殺し合いに立ち向かうための仲間を集めている最中だった。
カミナ、おまえは拳を合わせる必要もなく、肩を並べるに相応しい相手だと思っている。それに、メシの恩があるしな」
ドモンが人間の善悪を見極める手段として用いていた“ファイト”は、カミナには必要なかった。
一飯の恩義があるのが第一として、つい先ほどまで溺れていた相手にファイトを求めるのは気が引ける。
もちろん、一人の男としての願望を述べるなら、カミナの引き締まった肉体にはある種の恋情を覚えるが……今はそのときではない。
それに、カミナがティアナという少女を救おうという善意を見せているならば、それに加担しない手はなかった。
「わりぃなドモン。にしても、ドモン、か……ドモン、ね」
「なんだ、俺の名前に覚えでもあるのか?」
「いやなに、大したことじゃねぇ。ただよ、俺のダチ公によく似た名前なんでな。ちょっとばかし思い出してただけさ」
言うカミナの表情は、どこか郷愁を帯びており、しかし目線は虚空を睨みつけるように鋭かった。
女の気持ちには鈍感なドモンだったが、こればかりは容易に想像がつく。
この殺し合いという現状において、誰しもがいずれは直面するであろう不幸、カミナはそれを背負っているのだろう。
「……いや、らしくなかったな。俺はこの目で見たものしか信じねぇ。
シモンも、ヨーコも、当然ティアナも、まだどっかで生きてやがる。ああそうさ」
放送内容の否定。螺旋王の通告を虚偽と断定し、頑ななまでに我を通す。
常識の目で見ればただ現実逃避をしているだけのように思える男。
だがドモンは、そんな哀愁漂うカミナに一類の男らしさを感じた。
男とは、より強い男に共感を覚え、惹かれるものである。
特に、カミナのような気持ちのいい性格の男には。
「フッ……まあいい。くれぐれも足を踏み外して、また海に落ちるようなことはしてくれるなよ」
「おっとぉ! このカミナ様、同じ鉄は二度も踏まねぇ! そして借りは返すのが信条だ!
ティアナ捜しを手伝ってもらうのはメシと交換として、命を救ってもらった恩はいつか必ず返させてもらうぜ!」
水も滴る男が二人、肩を並べて共に行く。
沿岸から海に視線をやりつつ、ドモンは心のどこかで、長いつき合いになりそうだ、と感じた。
◇ ◇ ◇
『ところでMr.カッシュ。一つだけ失礼な質問をしてもよろしいでしょうか?』
「なんだ?」
『あなたはその……同性愛者、というわけではありませんよね?』
「なっ……なんだと?」
「ドーセーアイシャ? なんだそりゃ?」
『同性愛者というのは……』
「教えんでいい! そもそも、なんでそんなことを思ったんだ!?」
『いえ、あなたが行った心肺蘇生法の一部始終を見ていた感想なのですが、どうにもやり方が』
「み、見ていたのか」
『ええ。そのやり方が、どうにも拙いというか……別の行為に趣旨がいっているように見えましたので』
「別の行為だと?」
『マウストゥマウス、つまりは……』
「ご、誤解だ!」
『そ、そうですか。いえ、ならばいいのです。大変失礼をしました』
「なんだぁ? なんでそんなに顔を真っ赤にしてんだ?」
「き、ききききき気にするな!」
「??? ……俺にはさっぱりわからねぇ」
【G-4/沿岸/1日目/午後】
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神力消耗(大)、体力消耗(大)、左肩に大きな裂傷(激しく動かすと激痛が走る)、全身ずぶ濡れ
[装備]:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、
[道具]:支給品一式(食料なし)、ベリーなメロン(3個)@金色のガッシュベル!!(?)、ゲイボルク@Fate/stay night
クロスミラージュ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ3/4:1/4)
[思考]基本:殺し合いには意地でも乗らない。
1:沿岸ぞいに歩いてティアナを探す。
2:ドモンに恩を返す。
3:グレンとラガンは誰が持ってんだ?
4:もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!
[備考]
※グレンとラガンも支給品として誰かに支給されているのではないかと思っています。
※ビクトリームをガンメンに似た何かだと認識しています。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。
※ゴーカートの動かし方をだいたい覚えました。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※シモンとヨーコの死に対しては半信半疑の状態です。
※拡声器の声の主(八神はやて)、および機動六課メンバーに関しては
警戒しつつも自分の目で見てみるまで最終結論は出さない、というスタンスになりました。
※第二放送についてはヨーコの名が呼ばれたことしか記憶していません。ですが内容はすべてクロスミラージュが記録しています。
※溺れた際、一度心肺機能が完全に停止しています。首輪になんらかの変化が起こった可能性があります。
【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:健康、全身ずぶ濡れ、赤面
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:己を鍛え上げつつ他の参加者と共にバトルロワイアルを阻止し、螺旋王をヒートエンド
1:カミナと共にティアナを捜す。
2:積極的に、他の参加者にファイトを申し込む(目的を忘れない程度に戦う)
3:ゲームに乗っている人間は(基本的に拳で)説き伏せ、弱者は保護し、場合によっては稽古をつける
4:傷の男(スカー)を止める。
5:一通り会場を回って双剣の男(士郎)と銃使いの女(なつき)と合流する。
6:言峰に武道家として親近感。しかし、人間としては警戒。
7:機会があればカミナとも拳を交わしたい。
[備考]:
※本編終了後からの参戦。
※参加者名簿に目を通していません 。
※地図にも目を通していません。フィーリングで会場を回っています 。
※正々堂々と戦闘することは悪いことだとは考えていません 。
※なつきはかなりの腕前だと思い込んでいます。
あ、いつもの駄文の人だ
あぼーん
暗いトンネルに立ち込める臭いが、天才の鼻を刺激する。
列車がレールの上を走るときに撒き散らすような――鉄がわずかに焦げる時のソレ。
列車の中を掃除するときに湧き出てくるような――土埃が舞う時のソレ。
列車で先日許されざる者へ贄の洗礼として放った――薬莢が飛び出した時のソレ。
職業柄、常人以上の嗅覚を持つ彼にはこの三重奏が少しばかり鬱陶しいようだ。
彼の掻傷からポタリと滴り続ける赤い独奏はすっかり脇に追いやられてしまったらしい。
天才は手探りを交えながら、仲間の知り合い『だった』物の側まで歩いてしゃがみこむ。
そしてネズミを仕留めた猫のように背中を丸めると、それをまじまじと見た。
千切れたコード、破損した電子回路、歪曲して疲労を起こしている金属の断片……
誰がどうみてもゴミの塊だった。『彼』の知り合いが見れば誰もが『彼』だとわかるゴミの塊だった。
天才の観察につられるように、背後から2名が近づいてきた。
片や獣の野良猫はその残骸に天才よりも接近し、片や女の下手人は凶器を抱え、観察し始めた。
生まれて始めて身内の葬式に参列した時のように。感情の向けどころがわからぬ幼児のように。
* * *
* * *
「なんで? 」
声を挙げたのは、ミーに止めを刺した八神はやてだ。
足先から脳天まで……彼女は震えていた。
肢体の微弱なアップダウンが、引き金に掛かった指先と砲身を抱えた腕を遊ばせている。
H&K MP7が彼女の拘束から自由の身になるのも時間の問題だろう。
「……私、な、何をしなひゃぁッ!? 」
はやてが二言目を発しようとしたその時、彼女の体が突き飛ばされる。
彼女が持っていたH&K MP7、支給品一式を入れたディバッグも解き放たれて宙を舞う。
体勢を整えるほどの心的余裕は今の彼女には当然無く、大きく尻餅をつくのは自然なこと。
対して彼女の所持品は彼女の前方に飛び出し、同じく前方にいた一人と一匹の側に中身を吐き出しながら落ちる。
だが八神はやては闇の奥へ進む自分の持ち物にも、尻餅をついた自分の体にも興味を持つことは無かった。
彼女の思考を今もなお奪い続けているのは、ミーの成れの果て。
そして彼女の前に立ち片腕を盾にする自称婚約者、クレア・スタンフィールドと彼の片腕に工具を突き刺す野良猫・マタタビの対峙。
「……本当に刺すつもりは無かった」
「わかるさ。俺が前に出てはやてを庇ったからだろ? 」
「脅し。あくまで問い詰める手段に過ぎなかった」
「それもわかる。俺もそうしようと思ってた」
「納得のいく動機が知りたかっただけだ」
「動機? まるではやてがあいつを……あ〜『ミー』だったか? 始末したような言い草だな」
「死体がある。その死体の死因を引き起こしたと考えられる武器を持っている奴が、間近にいる。疑わねーのか? 」
「疑うさ。『普段』はな。だがそれは有り得ない。なぜなら俺がそう思っているからだ」
クレアの言葉がマタタビの手に、より力を込めさせる。強く握られた工具が、クレアの傷口から更に血を漏らせた。
触発された感情は、友の死に対する怒りなのかズレた持論を語る相手への呆れなのか。
わかっているのは、今のマタタビは知人の死を冷淡にあしらうような現実主義者ではないこと。
仲間との別れが当たり前だった野良猫時代に研がれた牙は、ミーとその仲間たちと出会いで磨耗していた。
傍目から見ればその牙は、ちょっと気難しく義理人情に厚い猫の八重歯に成り下がっていた。
「……成る程その性格だ。どうやらテメーには、他人の気持ちを汲む思いやりってものが」
「あるさ。俺だって人の子だ。同僚が殺されたら同僚を殺した奴を殺す。はやてが殺されたらはやてを殺した奴を殺す」
「この工具、そのまま腕を刺し貫いてやっても拙者は構わんぞ。その前に抜き取れるのならな」
「凶器と考えられる銃も、はやての道具もお前のすぐ側に落ちてるじゃないか。というか、俺がそうさせたんだが」
「だったら余計に引き下がれねえ。お前たちは入り口側。調べている間に逃げられたら冗談じゃない」
「わざわざ証拠品をそっちに渡したんだぜ? 普通ならそれで身の潔白を証明したようなもんだろう」
「『普通』ならな。だが車掌兼殺し屋が素手で猫を殺せないわけがあるまい」
「良くわかってるじゃないか。俺ならこの状況でもお前を口封じする事は可能だろう」
「……拙者には貴様かあの女のどちらかがミーを壊した、と妄信するつもりはない。
まずこのトンネルにいるという事実にすら、何ら説明がつかないんだからな」
「ああ、このトンネルは確か地図に載っていたな。そもそも俺は一度ここにいたんだ。温泉からそう遠くない距離にあった」
「距離の問題じゃない。拙者たちはいつからここにいた? そしてミーは何故死なねばならなかったんだ?」
「死んだのは間違いなくこのトンネル内だな。超絶な俺の鼻が曲がりそうだ」
「第三者の介入は考えられん。拙者たちの隙をつけるのなら最初に狙うのは女のはやてか猫の拙者、そして人間の貴様だ」
「俺たちの事を知っている第三者なら、殺すのに一番手間がかかりそうなミーを始末するのは余計に変だしな。
俺は殺られるわけがないし、この俺がはやてをむざむざ見殺しにするはずがない。だから殺されるとしたらお前だ」
「そうだ、だからこそはやてが犯人、もしくはお前との共犯と考えたほうが筋が通る。
はやての事を一番よく知っているのは、他ならぬ連れてきたお前だ」
「このトンネルにいつのまにか俺たちがいたのも彼女の仕業か? それはどう説明をつける? 」
「種がわかれば……唯一絶対の強者のクレア様なら努力して出来る、じゃないのか」
マタタビの言葉がクレアの腕に力を込めさせる。刺さった工具が、傷口から更に血を吐き出させた。
してやったり顔のマタタビに対する彼の感情は侮蔑なのか。否、彼は笑っていた。
原因は自分が天才だったことを一瞬だとしても忘れていたことへの自嘲なのか。
それ以前に、突然トンネルに飛ばされた自分の境遇か、それともフィアンセ(予定)の凶行の嫌疑による混乱か……。
天才の思考を考察するにはあまりにも不毛な論理だが、重要な事項ではないのでここで割愛する。
わかっていることは今のはやてが、クレアが、マタタビがミーの死に準じた行動をしていること。
そして、掛けられていた呪詛の命令のままに行動していないということ。
「はやて! 」
「……は、へ」
「今すぐこのトンネルから出るんだ」
「え、え、え!? 」
「なに、すぐ終わる。血生臭い真似はしないさ。君は人殺しをするような女じゃないからな」
クレアはにこやかな表情で首を後ろに回し、腑抜けていたはやてに呼びかける。
その笑顔は新婚夫婦が朝に『行ってきます』のキスを交わしそうなほど穏やかなものだった。
その笑顔が彼女の瞳にどのように映ったのかはわからない。
しかし鶴の一声のように、はやては光のさす方へ駆け出した。ただひたすら、真っ直ぐに。
「……出鼻をくじかれたな。クレア、貴様が共犯だとしても、武器を振るう意欲がすっかり萎えてしまった」
「悪く思わないでくれよ。はやてを庇いながら俺がお前と一戦交えて勝利するのはわけないが、
それだとはやてか俺がミーを始末したという嘘の事実を認めたことになる」
「どこまでも自分本位な野郎だ。結局自分の思うがまましか信じてねぇだけだろうが」
「そうさ。強者だからな。この世界が俺の思い通りにならないはずがない」
「これだけ判断材料が揃っていても、はやてが直接的にも間接的にも全くの白だと思っているのか? 」
「……証拠も推理もクソくらえだ。俺が無実だと言っている。彼女は白さ」
「そうかい、じゃあこれからテメーをじっくり尋問させてもらおうか」
マタタビはクレアの腕から工具を抜き取り、はやての持ち物を一つにまとめあげる。
勿論、クレアへの警戒を怠らぬまま。時計の秒針よりもゆっくりと。
「好きにしろよ。だがなマタタビ俺は……いや、俺たちは絶対にやっていない」
「あーへいへいわかったから、とっととはやてを連れ戻してきてくれ。
そのかわりもう一回拙者をハめやがったらただじゃおかないからな」
「好きにしろよ。あ、そうそう。これは返してもらうぜ」
クレアが右と左のそれぞれの手で何かを見せびらかす。
マタタビはそれがついさっきまで自分の手元にあった物だと気づき、ハッとする。
H&K MP7、そしてフライング・プッシーフットの制服がいつのまにかクレアの手元に移動していたからだ。
「……いつの間にくすねやがった! 」
「はやてを迎えに行くのに手ぶらはアレだろう? 服も乾いたしな。
ほら、他の荷物は預けといてやるよ。それにこれは元々彼女が持ってたもんだ」
「あーわかったわかった! 今のが最後のチャンスだからな!
拙者が馬鹿だったって事で勘弁しておいてやるからさっさといっちまえ! 」
「じゃ、俺ははやての所に行ってくる。まだ遠くには行っていないはずだからな――」
* * *
支援
元来たトンネルの入り口に向かって一人の女が走っている。彼女の名は八神はやて。
彼女が走っている理由は、彼女自身にもよくわかっていなかった。
と、いうよりも今の彼女には何から何までが理解不能だった。
自分が温泉にいたまでの事は覚えている。自分以外に誰があそこにいたのかも覚えている。
だが、その後の記憶が無い。
気がつけばトンネルの中にいて、クレアとマタタビがいてミーの残骸があって、自分は弾切れの銃を持っていた。
そして目の前にいる猫と男が押し問答を始めて、自分はトンネルから出るよう指示された。
だが、それでも今の自分は――この走っている自分の体の動きを、はやてはまだ把握していないのだ。
自分はこれからどうすればいいのか、何をすべきなのか。それすらちゃんと思考されていなかった。
それは、クレアの言葉が突き刺さっているからなのかもしれない。
――君は人殺しをするような女じゃないからな――
頭の中で色々な過去の情景が小麦粉入りカレーのようにグチャグチャと混ざり合う。
自分がやってしまった過ち。悲痛に悶える少年。あざ笑う神父。割り切って蓋をしたはずの過去が脳幹を濡らす。
そして浮かび上がる、無邪気なサイボーグを自分が崩してゆく妄想。
幼きころから死線は味わっていたはずなのに、身に覚えが無いような有るような……曖昧な『悪しき行為』。
そう、まるでそれはかつて自分が起こしてしまった……
「あかん! 私は何をしとるんや。大事なのは今や! まだ、全てがそうと決まったわけやない! 」
だがはやては『狸』だ。助けを待つのに疲れる日々を送る、古城のお姫様ではない。
いつまでも腐っていくつもりは毛頭無いらしい。彼女は立ち直り改めて考え始めたようだ。
自分の状況を整理する為に、常闇に煌く明晰な頭を使って。
(私はそもそも全部がわかっとらん。ミーに覚えが無いことをヤッたとは考えたくない。
戻るべきや! 2人とこ戻て、なんとかして身の潔白を訴えるべきやろ!
もし犯人が私ら以外の人やったら、トンネルにいたのも何かの魔法やもしれへん。とりあえず2人の所へ――)
ふと、はやては立ち止まった。
定理の証明法を閃いた数学者のように、妙案を閃いた策士のように、体の背筋をピンと伸ばして両目を大きく開いた。
そして両目は、まるで充血したかように緋色に染まってゆく。彼女の眼球の黒も白も、まるでフィルターを被せたようだ。
「せや」
はやては突然ぐるりと体を捻らせ、トンネル内を走りだし、そのまま入り口から飛び出した。
そしてすかさず右手を額にかざして、この世界の中心部を見つめながら、A-7からH-7まで伸びる道路の上を走り出した。
その瞳から読み取れる感情は無垢。覚悟を決めて思考停止させた尖兵のソレではなく、単純思考で出来た電脳人形の眼だった。
「エリア中心部に行かな」
【G-7路上/一日目/日中】
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康、強い決意、上下の下着無し(下はタイツのみ着用)ギアス
[装備]:無し
[道具]:
[思考] 基本思考:力の無いものを救い、最終的にロージェノムを逮捕する。
1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
2:突然の事態の困惑。ミー殺しの無実をマタタビとクレアに伝えたい。
3:クレアの求婚に困惑。変な気持ち。でも人殺しをしてしまったので、クレアへの良心の呵責。
4:慎二の知り合いを探し出して、彼を殺した事を謝罪する。
5:読子達にデイパックを返したい
[備考]
※ムスカを危険人物と認識しました
※シータ、ドーラの容姿を覚えました。
※モノレールに乗るのは危険だと考えています。
※言峰については、量りかねています。
* * *
はやてに遅れること少し。
トンネルを抜けようとしている人物がいた。
多くを語る必要は無い。その人物は言うまでもなく、先ほどマタタビと一緒にいたクレアだ。
「おっ光が見えてきたな……本日2度目の脱出だ。はやてはどこに行ったんだ……? 」
……物事には『始まり』と『終わり』が存在する。
形あるものには崩壊があるように、生きるものには死があるように。
そして、物事には『始まり』と『終わり』について何かしらの『ルール』がある。
これからあることについて唐突に語る事をを許していただきたい。
『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
絶対的能力による制約にも『始まり』と『終わり』はあるという事を。
では、このルールの『終わり』とは何なのか。
八神はやて、クレア・スタンフィールド、マタタビが起こしたこれまでの行動は、
『エリア中心部に向かう途中でミーと半ば強引に呼び止められ接触。彼の忠告を“害”とみなし排除した』ことだ。
つまり、上記のルールを『一通りこなした』、と考えられる。
だから彼らは制約から解放されたのではないか。制約中での行動を全て忘れさり、正気に戻ったのではなかろうか。
全てはルルーシュ・ランルページが宣告した命令が一息だったから。
『エリア中心部に行く』『他の参加者に接触する』『使えそうかどうかを判断する』が別個の命令としては成立していなかったのだ。
ルルーシュ本人の真意はわからない。
だが、命令を下していた当時の彼が酷く憎しみに染まり一時の感情で激昂していたのは事実。
彼にとっては、命令の細分化的判断はさほど重要ではない、という意識がどこかにあったのかもしれない。
そもそも、この点において螺旋王による何らかの介入があったのかもしれない。
また、ギアスという能力には、その利便性と応用性に富む能力ゆえにしばしば効果への『ひずみ』が生じる。
それはギアスをかけられた本人に命令を効かないという意味ではない。
ギアスを掛けられた者がギアスによる命令をこなした後の反応がまちまちであるということだ。
『死ね』『殺せ』という、生死を持ってでしか完結しえない命令ならばまだしも、
『喋るな』『アイツを自分のところを差し出せ』『真実を話せ』『生きろ』といった抽象的な命令をかけられた者は、
命令をこなした後に、正気に戻り我に返るのだ。
ようするに今回ギアスにかけられた2人と一匹は、後者だった。
つまり先に述べた条件をこなせばいつでも本来の彼らに戻れるということだ。
だが、これは『終わり』ではない。
「……ん〜こりゃはやての奴、トンネルの外まで行っちまったのか。行くとしたら温泉か? 」
この場合、ギアスの命令をこなした彼らが一度本来の彼らに戻ったとしても、何らかの条件を満たせばギアスはまた発動するのだ。
一度、一連の行動をこなしまた正気に戻ったとしても、また何らかの条件を満たせば再度ギアスの命令をこなす為に動く。
あくまでギアス自体が解除されたわけではないのである。
「応援で温泉にいた奴らを連れてこようとしているのかもしれない。 まぁいい。急いで温泉に向かい彼女をつれ戻さ――」
そしてその再発動、つまり『始まり』の条件とは、
“誰かに会う為に自分が目星をつけた目的地に行こう”という一連の思考をした時ではないだろうか。
「そうだった、俺はやらなければならない事があったんだ」
……これはむしろ『終わりが無いのが終わり』と言うべきである。
勿論ギアスにかけられている間の彼らの記憶は残ることがないので、本人達が気づくことはない。
まるで夢遊病患者のように、彼らは自らが引き起こし続ける現実を受け入れるしかないのだ。
その呪縛には治療の余地はあるかもしれないが、ギアス自体の解除、という完治に到達する可能性は極めて低い。
だが、最も注意すべきはギアスによる全ての命令がこの可能性に当てはまることは、断じて無いということだ。
あくまで今回、ルルーシュ・ランルページが温泉で2人と一匹にかけたギアスへの、可能性のみに特化して述べたと考えてほしい。
「エリア中心部に行かないとな」
【H-7トンネル入り口/一日目/日中】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:疲労(少)、右腕負傷、自分への絶対的な自信 、ギアス
[装備]:フライング・プッシーフットの制服(下着無し)
[道具]:セラミックス製包丁@現実 、H&K MP7(0/40)+予備弾40発@現実、バスタオル
[思考] 基本:脱出のために行動する 、という俺の行動が脱出に繋がる。はやてと結婚する。
1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
2:はやてをマタタビのいるトンネルに連れ戻し、彼女のミー殺しへの無実を証明する。
3:自分たちがトンネル内にいたことに疑問。
4:モノレールとやらに乗ってみたい。名簿に載っているのが乗客なら保護したい。
5:はやての返事を待つ。
* * *
「……お前の支給品は拙者が預かっておく」
トンネル内で一人壁を背にして座り込むマタタビは知人『だったもの』に話しかけた。
その知人は、これまで日常と非日常の境目を共に生きてきた一人。
『仲間』というには程遠く、どっちかと言えば厄介事を持ち込んで自分を巻き込んでくる、はた迷惑な『隣人』だった。
だがそれは知り合ってから充分に年月が流れ、その上でマタタビがなんとなく感じたこと。
共通する敵の為に一緒に戦ったこともあるし、トラブルを一緒に解決したこともあった。
そしてその場には……いつもクロがいた。
そもそもマタタビとクロを引き合わせたのは他ならぬミーとその仲間であるコタロー&剛万太郎博士である。
どんなにマイペースで自分勝手に生きていたマタタビでも、
野垂れ死ぬところを一食一般の恩義で救ってもらった時の義理をマタタビが忘れることは無かった。
気が向けばいつでもクロと戦える。
クロが居候をしている家で大工稼業に勤しむことが出来る。
気がつけばクロの家で居候させてもらっている。
五月蝿くても、彼を仲間だと言って信じてくれる同胞が集まってくる。
彼がその全てを得たのは、ミーたちと出会ったから。
全ては――『平穏』だった。
螺旋王によって集められたこの状況も、言うなれば日常だとマタタビは割り切っていた。
大したことでは無い言わんばかりに、クロとミーが好き勝手して、滅茶苦茶にして、自分を時折巻き込んで、全てを終わらせる。
それが、マタタビがこれまで考えていた率直なイメージだった。
だが、そうではなかった。
「何故だ……第二回放送で決まった禁止エリア!? キッドが死亡!? もうとっくに昼は過ぎているだと!? それに……! 」
彼を巻き込む2つの台風は、すでにこの世から消えていた。
平穏を提供した知人は目の前で果てていて、唯一無二のライバルはどことも知れぬ場所で死んでいた。
「なぜキッドの奴が持っていたはずの“コレ”がここにあるんだ……」
マタタビはクレアの鞄から取り出したビンを睨む。
中に入っている目の玉が、標本のように中で揺れている。
この目玉の持ち主はマタタビであったが、現在の所有者はクロだった。
遡ること数年、ささいな事で縺れたクロがマタタビの目玉をえぐり取ってしまった。
マタタビは目を諦めたが、クロはその目玉をこっそり回収し、大切に保管していた。そして彼はある日マタタビにこう言ったのだ。
――この目玉、返して欲しいか? ヘヘッ返して欲しけりゃ自分の手でオイラから奪ってみろよ――
だがそれ以来、取り替えそうと思っても、マタタビは未だにクロからこの目玉を取り返せてはいなかった。
それが、今ここにある。クレア・スタンフィールドのディバッグの中に入っている。
「クレア……! 」
目玉との有り得ない再会に、マタタビは考える。
クレアがこれを持っているということは、彼がクロと会ったことがあるということだ。しかし彼はその事をマタタビに話さなかった。
クレアがクロに何かをした、とは考えにくい。
クレアが奪ったのなら置き去りにするはずがないし、捨てているだろう。
クロがクレアに目玉を託したのならば話すはずだし、後から温泉にやってきたミーと知り合ったのならば、なおのこと。
マタタビがクレアと出会ったのは第一回放送が流れた直後であり、そのころはクロはまだ死んでいなかった。
覚えの無い走り書きを信用するのは不本意だが、クロが第一回放送と第二回放送の間で死んだとしたらクレアにはアリバイがある。
席を外す時があっとはいえ……。
「……ヤれたとしてもクレアにキッドを殺す時間があっただろうか?
それにこの血まみれの人間の女モノの下着は……!? 」
マタタビは自らの記憶を思い出す作業にかかる。
クレアが最初に戻ってきたとき、彼は『彼女』を引き連れていた。
それから、席を外す度に『彼女』が側にいた。
結婚しようだの愛するだの浮ついた言葉が飛びかい、彼女が公衆の面前で醜態を晒していたのは記憶に新しい。
だが、あの時に怪しい素振りはなかった。つまりクレアにクロを殺す機会はない。
ということは消去法で残るは彼女だけ。彼女がクレアに罪をなすりつける為に、
自分の目玉をクレアに渡した(プレゼントと称するか、こっそりバッグにいれたか)と考えるべきだろう。
そもそも、彼女がクレアと出会う前にどこで何をしていたのかはわからないのだから。
そして今、彼がはやてのバッグから発見した血に染まる赤い下着。
これらから考えても、良からぬ発想はいくらでも可能だ。
「……いや待て。あの書置きは確かにキッドの字だった」
マタタビが最初に彼女に話しかけたとき、彼女はクロの書置きを自分に見せてきた。
それは紛れもないクロの字。つまり、クロがはやてを信頼していたことは間違いない。
「では……キッドにあの書置きを書かせた後、隙を突いて殺害したとしたらどうだろうか」
彼女が隙を突いてミーを殺したのだとしたら、この考えは一応の筋が通る。
クロを殺せる実力者ならば、ミーを殺することも不可能ではない。
クロからまんまと『お墨付き』をいただいて、虚言をふりまけばマタタビとミーの始末も容易である。
クレアを手玉に取っているのをふまえれば、有り得なくはない。
「だが……引っかかる……」
マタタビは頭を掻き毟る。
やはり自分達がいきなりトンネルにいた事に説明がつかないからだ。
まるで時がふっ飛ばんだような感覚。魔法でも使わない限りこんな事は無理であり、不可能。
この謎への糸口を見つけなければ、これまでの思考は所詮机上の空論だった。
「やはり会って話を聞いてみないことにはな、そろそろクレアが戻ってくるだろうが、待ってられん。拙者も行くか――」
マタタビは荷物を急ぎ足でかき集めると、ダッシュでトンネルを走り始める。
しかし、突然彼は走るのを止めてしまった。そして彼はその場に立ち尽くす。
ただ、ただ、空ろに。まるでその名の通りの植物に酔いしれたかのように。
そして彼は、呟いた。
【H-8トンネル内/一日目/日中】
【マタタビ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、ギアス
[装備]:大工道具一式@サイボーグクロちゃん、マタタビのマント@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式×5(マタタビ、はやて、クレア、読子、ミー)食料:缶詰
メカブリ@金色のガッシュベル!!(バッテリー残り95%) 、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん、
マタタビの目玉入り瓶@サイボーグクロちゃん、拡声器@現実、世界の絶品食材詰め合わせ@現実、
レイン・ミカムラ着用のネオドイツのマスク@機動武闘伝Gガンダム 、アニメ店長の帽子@らき☆すた
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、血に染まったはやての下着(上下)
[思考]:
1:『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』
2:強い憤り。はやて・クレアから2人の関係、特にはやてにはクロとミーの死について必ず真意を問い質す。
3:リザを待てないので、リザと接触したい。
4:暇があれば武装を作る。
【ギアス“エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する”】
1:一連の命令をこなすと正気に戻る。
2:しかし"誰かに会う為に、(本人が目星をつけた)目的地に行こう”という一連の思考をした時に再びギアスが発動する。
3:その他の情報は不明
なーんか必死になって投稿してんなぁ
削除依頼だしといてよ後で
どうでもいいがルールを再構成しようや
まず
・全てのキャラクターをださなければならない、またはその環境を整えなければならない
・そのキャラクターを破壊するような設定や制限はかけてはならない
これは必須だろ?
登場人物だけでも1000人超えて当たり前だろう
キャラへの愛情とか云々の前に
まずは出させろと
選挙とか必要ないと思うんよ
完結させる気ないんならそんなルール決めなんて必要ないんじゃね?
やりたいことあるならさっさとやってみろよ。
俺から見るととりあえず気に入らないヤツらに反発する為に、
企画を進行してるそぶりを見せてるだけに見えるがね。
としたらばさんがほざいてます
瓦礫だらけの荒野となったC-6エリアに、東方不敗・マスターアジアは一人立っていた。
東方不敗は自ら力を与えた少女の引き起こした惨劇と、その惨劇に引き寄せられてきた参加者たちのほとんど全てを見ていた。
「与えたワシが言うのもなんだが、まさかエリア一つを丸々瓦礫の山にするとは思わなかったわ」
短くその惨劇に対する感想を述べ、東方不敗は空を見上げる。
瓦礫の山となったその光景は、いつしか人類抹殺を決意した光景を思い出させるからだ。
――似たような光景を見るたびに、ワシの決意はより強く、より硬いものとなる。
――ワシは、必ず本懐を遂げてみせる。
そのためには、まずこのゲームを征する必要がある。
顎に手を当て、東方不敗は惨劇に引き寄せられた参加者たちを思い出す。
――白服の男と、赤い外套の死にたがり屋どもは自ら死地へ赴くだろう。
――青い軍服の女と、青い服の男も放っておいても構わんな。どちらも火種となりえる。
――エビルという小僧は火種となりえるが、あのゆたかという少女の気性は争いを押し進めるには少々邪魔か。
――さて、あとは……
視線を空から、はるか遠い人影に向ける。
青年が肩に突き刺さった黄金の剣を抜き、服から切り取った布で肩を手当てしている。
Dボゥイ、その本当の名を相羽タカヤという、『ラダムという異星生命体に改造された螺旋生命体』。
「見たことの無い科学力かと思っていれば、よもや本当に宇宙人とはな」
このゲームの最初の犠牲者となった男に向けて言った螺旋王の言葉を、東方不敗は覚えていた。
初めは疑問に思っていたものだが、Dボゥイとエビルの戦いを盗み見てその疑問は氷解した。
そもそも、東方不敗は衝撃のアルベルトほどの者が所属するBF団なぞ知らない。
地球侵略しているというラダムなど、聞いたことも無い。
「ならば、異なる星々の者がこのフィールドに集められていると考えることもできる」
荒唐無稽な話だが、今のこの状況を考えると逆に納得のいく話に思える。
そしてそんな事を行える螺旋王とやらもまた、宇宙人と考えるが当然のように思えた。
フッと東方不敗は苦笑する。
――まだ決め付けるのは早計。焦らず、これまで通り情報を集めて正体を見極めなくてはな。
そのために、今一度争いの火種を蒔くことにしよう。
そう考え、東方不敗は足もとにある瓦礫を力強く蹴り飛ばした。
「お前には、もう一働きしてもらうとしよう」
■
窓から入り込んでくる光で、鴇羽舞衣は眼を覚ました。
寝起き直後のぼんやりとした頭で寝返りを打ち、壁に掛けられた時計を見る。
カチ、カチ、と正確に時を刻む時計を見て舞衣は思った。
――やばい、遅刻する。
「あーんもうっ!なんで起こしてくれなかったのよ!」
パジャマから大急ぎで制服に着替えた舞衣は、食卓に着くなりに怒鳴り声を上げた。
そんな舞衣の声に、呆れたように母が返す。
「起こしたわよ、何度も」「相変わらず寝坊だ、舞衣は」「……妹のくせに、お姉さまを名前で呼び捨てにしない」
トーストをパクつきながら失礼なことを呟いた妹に、軽く拳骨をいれる。
反対の手で机に置かれた牛乳を取ろうとしたが、その前に別の手に持っていかれた。
抗議しようと思ったが、その前に人の牛乳を掠め取った弟はゴクゴクと牛乳を飲み干す。
「巧!」「姉ちゃん、これ以上乳でかくしてどうすんだ?」「いっ!?」「祐一のためだな」「っ!こらあんた達!」
みょうに恥ずかしくなり腕を組んで胸を隠し、本日二度目となる怒鳴り声を上げる。
そのスキに最近生意気になってきた弟と妹はバッグを掴み、家の外へと逃げ出す。
「もぉー、怒ったわよ!」
舞衣も二人を追いかけようと家を出ようとし、思い出したように食卓に振り返る。
舞衣の母と父が、微笑ましそうに舞衣を見ていた。
「……行ってきまーす!」「行ってらっしゃい」
母の声に送られて、舞衣は家の外に出た。
弟と妹とは薄情にも――もしくは食卓の報復を恐れてか、先に学校に行ってしまったようだ。
このまま逃げられては姉の沽券に関わるので、走って追いかける。
しばらく行ったところで、見知った人影を見つけた。
「祐一、詩帆ちゃん」「おす、舞衣」「おはようございます、舞衣さん」
挨拶の後、ふと視線を感じて横を向くと弟と妹が道の角からこちらを覗いていた。弟があっかんべーをして角の奥に消え、妹もそれに続く。
そろそろ怒りは呆れに変わり、舞衣はしてやられた感じになる。
おそらく弟と妹の二人は、舞衣が二人を追いかけるより恋人と一緒に登校する方を選ぶと考えたのだろう。
事実その通り、舞衣は後者を選ぶのであった。
「まったくもう、あの子達ったら。どうせなら詩帆ちゃんみたいな子が妹ならよかったのに」「そうかぁ?こいつ家じゃけっこぐっ!」
余計なことを言おうとした祐一のわき腹に、詩帆が無言で肘を入れる。
軽く顔をしかめた祐一に眼もくれず、詩帆は純心そうな顔で口を開く。
「でもお兄ちゃんと舞衣さんが結婚したら、私、舞衣さんの本当の妹になりますね」
「ちょっ!おっ、お前何言ってんだよ!」「不肖者の兄ですけど、見捨てないでやって下さいね」
えへっと舌を出し、詩帆は逃げるように駆け出す。
どこかで見たような光景だ。具体的にはつい先ほど。
「し、詩帆てめぇ!」「詩帆ちゃん!」
逃げた詩帆を、舞衣と祐一は二人そろって追いかける。
追いかけながらも、舞衣は今この瞬間を幸福だと思った。
そしてこれが夢だと、舞衣は分かっていた。
「夢には、人の願望が投影されるそうだ」
「……ひどいよね、これが私の望み?」
舞衣は、いつの間にか風華学園の図書館の中にいた。
図書館内部を一望できる二階書架の最奥の扉の前で、――玖我なつきと向かい合っている。
「こんなこと、あるはず無いのに」
自分自身が呆れるほど、舞衣にとって都合のいい世界。
現実はもっと理不尽で残酷で、舞衣に優しいものではなかった。
「だから、奪う方に回ると決めたのか?」
「それ以外に、どうしろっていうのよ!」
なつきの言葉に、舞衣は激しく吼えた。
溢れる何かを抑えるように顔を伏せ、体を縮ませる。
「大切なものも!守りたいものも!全部もう私には無くなって……私には、もうそれ以外に何にもないんだから!」
「本当に、……そう思うか?」
なつきは軽くため息をつき、舞衣の頬に手を当てる。
そのまま顎の先まで手を沿え、グイっと舞衣の顔を上げさせる。
真っ直ぐに、瞳を合わせる。
「まったく、まるで昔の私だな。自分以外の人間なんて信じられないって眼をしているぞ」
「アンタに、私の何が分かるのよ」
「分かるさ、お前は私の生い立ちを知っているだろう」
何も言えなくなり、舞衣はなつきの手をどけて瞳をそらす。
苦笑して、なつきは舞衣を慰めるよう髪をなでる。
「私もお前と同じようなことになったから偉そうなことは言えないんだが、覚えていて欲しい。その生き方は、とっても寂しいものだぞ」
「それで、いいわ。私はそれでいい」
「……あとな、そんな生き方をしてると、どうしょうもなくお節介な奴が寄ってくるんだ。
どんな訳だか、構ってほしく見られるらしくてな。それでな、気がついたら周りには人が沢山いるんだ。
私の周りに、静留や、――お前がいたように」
舞衣は、答えない。
なつきは舞衣の髪から手を離すと、奥にある扉に向かって歩き出した。
>>352 考えてみた
バトル・フィールドは複数あり、それらを「世界」と呼びます。
このバトル・ロワイアルではプレイヤーが3チームに別れ、どれだけ世界を占領できるかで勝負が決まります。
世界の占領の仕方は簡単で、手持ちのキャラが一番その世界に多くいればその世界を占領した事になります。
たとえば、キャラが150人いたとして、
A世界 1 70 2 50 3 40
B世界 1 30 2 70 3 100
C世界 1 50 2 30 3 10
だとすると、第一世界ではGが占領、B世界ではしたらばが第三世界を占領、第三世界ではGが占領で
Gが全世界の支配者という事になります。
もちろんこれは、変動します。
いっぺんに大量にヌッ殺せるセカイ系キャラとかもいますので
戦術次第では逆転もありえます。
ただ、たとえ「涼宮ハルヒ」がセカイ系の力を発動してそこにいる全世界のキャラを皆殺しにしたとしても
その世界にいるキャラがゼロになるだけです。
殺されたキャラは別世界に転生します。
また、セカイ系の力を使った場合、そのセカイの地図から何からなにまで全部変わりますので注意
「なつき……?」
「時間なんだ。……なあ、舞衣」
扉を開いたところで、なつきが振り返る。
扉の先は真っ暗で、その先に何があるのか見ることは出来ない。
「私は、お前と出会えて良かったと思っている。お前は、どうだ?」
舞衣の返事を待たず、なつきは扉の奥へと足を進める。
扉を後手で閉じようとしたところで、思い出したようになつきは足を止めた。
「ああ、そうだ。出来れば静留のことを頼んでいいか?
本当なら私が止めなければいけなかったんだが、お前に託すしかなくなってな」
そして今度こそ本当に、なつきは扉の向こうへ消えた。
「後を頼む、舞衣」
■
轟音が響いて、振動が舞衣を揺らした。
ハッと舞衣は眼を覚まし――自分がまだ、ソルテッカマンの中にいるのだと気づいた。
「……夢?」
だとしたら、なんて酷い夢なのだろうか。頭を振って、夢の内容を忘れようとする。
気をそらせようとして、今の自分の状況を確認する。
確か、怒りに任せて至近距離からフェルミオン砲を撃って……それから、意識が無い。
「なんなのよ、もう」
悪態をつき、『何の瓦礫も乗っていない』ソルテッカマンの体を起こす。
マスクが邪魔で、その下の涙を拭うことはできなかった。
■
「ペガァァァァァァァァァァァァァス!」
瓦礫だらけの荒野の中で、Dボゥイはあらん限りの声でペガスを呼ぶ。
血が足りない状態で叫んだせいか、くっ、と呻き膝をつく。
それでも顔だけは伏せず、眼と耳を研ぎ澄ませる。
「……くそっ、やはり駄目か」
ペガスの姿も、飛行音も聞こえない。
駄目で元々の賭けだったが、やはり落胆が残る。
「俺の知っている限り、無傷のテッククリスタルはエビル、ランス、ソード、オメガの分の四つ。
そして、俺の分のテッククリスタルはペガスに組み込まれている」
額に手を当て、確認するようにDボゥイは呟く。
右腕の袖は応急処置に使ってしまい既に無く、むき出しの肌が現れている。
「この場にいないソード、オメガの分は期待しない方がいい。ランスの分は、おそらくあのまま螺旋王に回収されただろう。
となると、後はエビルの分と……ペガスか」
問題は、果たしてペガスが支給されているのかということだ。
ペガスは単独で飛行できる上、内臓武器も充実している。そんなものが果たして支給されているのか、疑問が残るところだ。
「……いや、今はあるかないかを考えている場合じゃない。とにかく、クリスタルを探すだけだ」
膝を立て、左手に持ったカリバーンを強く握り締める。
エビルに連れ去られたゆたかが、本当に無事に返されるという保証は無い。
だが、今のDボゥイに出来ることはエビルに言われた条件を満たすことだけだった。
――エビル、俺がクリスタルを手に入れるまでゆたかに手出しなぞするなよ!
Dボゥイがギリッと歯をかみ締め、――それと同時に、爆音が、響いた。
あまりのタイミングの良さに思わず口元を押さえ、そんな訳ないだろうと改めて音が響いた方向を見る。
Dボゥイのいる位置から東北、ちょうどエリアの真ん中あたりからだ。
――生存者か、それともこの惨状を作り出した張本人か。
舞い上がった土煙のせいで、いったい何者がいるかは検討がつかない。
少し考えて、Dボゥイは姿勢を低くして駆け出した。
――生存者の場合、助ける。危険人物だった場合、奇襲をかけて無力化する。
■
土煙が晴れて自分が作り出した光景を見ることとなり、舞衣は少なからぬ驚きを覚えていた。
民家やビルが立ち並んだ市街は文字通り瓦礫と化しており、舞衣は自分が先ほどまでと同じ場所にいるか自信がなくなってきた。
「アンタ、ひょっとしたらカグツチより凶悪なんじゃない?」
舞衣は思わずそう呟く。
しかし、そのソルテッカマンもいまやボロボロの状態だ。
右手の動作は鈍く、フェルミオン砲もユニットごと引き千切られている。
全身を覆う装甲に欠落がないのは、流石といった所だろうか。
「まさか、バルザックか?」
予期せぬ背後からの声に、舞衣はビクッと肩を震わせる。
慌てて背後を振り返ると、傷だらけの血塗れ、さらに泥だらけの男が立っていた。
――うわ、どうしよう。
十中八九殺し合いに乗っていそうな男の出現に、舞衣はマスクの下で心底嫌そうな顔をする。
どうしたものかと考え、そこで自分は奪う側に回るのだと決意したことを思い出す。
「とりあえず、人違いです」
舞衣はそれだけ告げ、レーザーライフルを男に向けて発砲した。
男は、最初から警戒はしていたのだろう。銃口が向けられると同時に走り出し、レーザーライフルの銃弾は避けられてしまった。
男はそのままソルテッカマンの背後に回るよう、舞衣を中心に円を描くように走り続ける。
なるほどと、舞衣は感心する。ソルテッカマンの武装を考えれば、背後を取るのは理にかなった行動に思えた。
しかしそうはさせまいと舞衣は引き続き男に対してレーザーライフルを撃とうとし、――弾切れという事実にやっと気づくことになった。
――うわ、本当にどうしよう。
弾切れを起こしたことに気づいたのか、男は走るのを止めてこちらを伺っている。
どうやら怪我をしていたのか、肩から出血していのが見て取れた。
――あとは接近戦だけなんだけど、それは向いてないってさっき思い知ったし……
諦めの混じった分析をしつつ、舞衣は違和感を覚えていた。
今の戦闘と、その前の戦闘を比べると明らかに違うものがある。
――あの全てを焼き尽くすような怒りと悲しみは、どこにいっちゃったんだろう?
■
――迂闊だったな。こんな状況で、救援が来る可能性は低いっていうのに。
正面から対峙しながら、Dボゥイは見知ったソルテッカマンの後姿に思わず声を掛けてしまった自分を反省する。
ソルテッカマンが弾切れを起こしていなければ、今頃Dボゥイは死んでいてもおかしくない状況だった。
問答無用に襲ってきたことに加え、高威力のフェルミオン砲――市街を破壊した下手人だと見て、間違いないだろう。
――しかしソルテッカマンが支給されているなら、ひょっとしたらペガスも……。
息を整えて身体を前傾姿勢にし、いつでも飛び出せるように身構える。
仲間の鎧であったソルテッカマンの弱点は、Dボゥイとて把握している。
ソルテッカマンはラダムに対抗するために作られたもので、対人戦闘のためのものではない。
つまり、接近戦だ。
「……ねぇ、アンタはどうして殺し合いに乗ったの?」
ソルテッカマンを装着した女の問いに、Dボゥイは眉根を寄せる。
それから自分の衣服の状態を思い出し、勘違いされてもしかたがない姿だと思い出した。
Dボゥイが無言なのをいいことに、女は続ける。
「私は、ここに連れてこられる前に全部奪われちゃって。
それでここに来て、少し仲良くなった子がいたんだけどその子も死んじゃって。
私は、もう奪われるのは嫌だから、もう奪う側に回るしかないと思って」
聞き流そうとしていたDボゥイだが、どこかで聞いたような話につい注意を向けてしまう。
女の、懺悔にも似た声はなおも続いた。
「だから、奪ったの。人を殺したわ。子供を二人。ひょっとしたらもっと沢山。
でも奪っても心は晴れなくて、逆にどんどん雲っていって」
「もういい、それ以上、喋るな」
無理矢理、女の声を遮る。
下降気味だった怒りが、瞬く間に頂点まで昇っていた。
「俺の知り合いにも、お前と同じように全て奪われた奴がいた。その上、奴は肉親と殺しあうことを強要された」
片手で持っていた剣を、両手で握り直す。
肩の傷のことなど、気にしていられなかった。
「どっちがより不幸かなんて、比べられるものじゃない。
だがその不幸を理由にして殺し合いに乗っていることが、俺には許せない!」
おそらく、同属嫌悪というものなのだろう。
Dボゥイには、ラダムという明確な復讐するべき存在があった。
鴇羽舞衣には、明確に復讐するべき存在が見えずにいた。
ただ、それだけの違いだ。
そしてそれだけの違いなのに、Dボゥイにはそれ以外にしかたなかったと話す目の前の存在が許せなかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
怒りに任せて、Dボゥイは大地を蹴る。
女は、Dボゥイの言葉に苛立ったように敵意を現す。
「じゃあ、私はどうすればよかったって言うのよ!」
苛立ちの声と共に、ソルテッカマンは左の拳を握りこむ。
突っ込んできたDボゥイに合わせ、叩き下ろすように腕を振った。
バレバレのモーションだったため、Dボゥイは背後に回るようにその拳を右に避ける。
ソルテッカマンは、拳に振り回されたように前方に体勢を崩す。
その隙を見逃さず、Dボゥイはカリバーンを振り上げた。
「甘い!」
「どっちが!」
泳いだような姿勢から、ソルテッカマンは残り少ないエネルギーで身体を回転させるようにバーニアを吹かす。
ボロボロのソルテッカマンでは本来の推力の半分にもならないが、身体を反転させるには十分だった。
女はソルテッカマンの右足をDボゥイより高く上げ、重力と遠心力を使って人を殺すには十分な威力の踵落としをDボゥイに叩き込んだ。
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁっぁぁ!」
女は、言葉にならない叫び声を上げる。
酸素を全て吐き出す勢いで女は叫び、――Dボゥイもまた、叫んだ。
「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおおおぉぉぉぉ!」
振り下ろされる鋼鉄の足に対し、Dボゥイは振り上げたカリバーンを叩きつけた。
無理な姿勢から振るったためか、カリバーンはその刀身の半分ほどを食い込こまる。
力比べの形となり、Dボゥイの右肩の傷は完全に開き血が噴出す。
「まぁだ、まだぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!」
止められたことを当然のように受け入れ、、女は残りのエネルギーと推力の全て使いDボゥイを押しつぶそうとする。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
伸ばした両腕が、増した圧力に耐え切れず肘を曲げる。
その姿を見て舞衣はより強く右足に力を入れ――
唐突に、ソルテッカマンの全てが動かなくなった。
「嘘!っきゃあ!」
エネルギー切れ、そんな事実に気づく間もなくソルテッカマンの右足は押し返された。
バーニアにより無理な体勢を無理矢理維持していたソルテッカマンは、無様な形で大地を転がる。
「終わりだ!」
Dボゥイはカリバーンを逆手に持ち替え、刃をソルテッカマンの頭部と腹部の装甲の隙間に突き入れた。
■
「……なんで、殺さないのよ」
舞衣は、仰向けになって空を見ている。数時間ぶりに頬を撫でる風が、どこか気持ちよかった。
そばにはソルテッカマンと、胴体と離ればなれになったソルテッカマンのマスクが転がっている。
「面倒だ」
疲れきったといった感じで、Dボゥイは答える。
Dボゥイは開いてしまった傷口に対して、もう一度応急処置をやり直している。
今度は左の袖を使用したため、バランスはきっちりした感じだ。
「さっきの話の続きなんだけどさ」
「五月蝿い」
「嫌、話す……私さ、なんでか気絶してる間に……友達の、夢を見たんだ」
諦めたのか、それとも無視することにしたのか、Dボゥイは黙って処置を続ける
舞衣は、ぼんやりとした表情で続ける。
「意地っ張りで、自分勝手で、どこか抜けてるところがある娘でさ。
私なんかより、ずっと前に大切な人を奪われちゃった娘なんだけどね」
腕を交差させて顔の前に置き、眼に日陰を作る。
そしてぼんやりと、夢の内容を思い出す。
玖我なつき。舞衣と同じHiMEの一人で、舞衣の――友達。
驚くほど素直な気持ちで、舞衣はなつきを友達だと言えた。
「私と出会えてよかったってさ。あと、後を頼むって言われちゃった。……夢なんだけど」
いつか、殺し合い運命だったのは間違いないと思っている。
けど、こんな分かれ方は卑怯だと思う。
「私はなつきが何を言いたかったのか分からなくて、このまま、奪う側にいることも辛くて、結局何がしたいのか分からなくて」
その事に気がついたのは、間違いなくなつきの夢を見たからだ。
でも、なつきが自分に何を伝えたかったのか。それが一番、舞衣には知りたいことだった。
そして、不思議と舞衣はもう二度となつきには会えないような気がしていた。
「ねぇ、私、放送を聞き逃しちゃってさ。一つだけ、教えてくれない」
「……いいだろう。その代わり俺の質問にも一つ答えてもらうぞ」
「分かった。……それで、玖我なつきって名前」
「その娘の名前ならば、つい先ほど放送で呼ばれたぞ」
予想した通りの言葉だが、その声は予想したものではなかった。
慌てて立ち上がり、周囲に眼を配る、いつの間にか、老人が二人の近くに立っていた。
舞衣にとって、見覚えのある姿だ。
絶望した舞衣に、力となるソルテッカマンを渡した張本人。
「だから、貴様らはアホなのだ」
■
東方不敗は、Dボゥイと鴇羽舞衣の二人を戦わせることで争いを広げようとしていた。
Dボゥイが勝てば、その返り血を後押しとし、ゆたかを助けるための修羅と仕立て上げる。
鴇羽舞衣が勝てば、その狂気はDボゥイの執念を上回るもの。放っておいても争いの火種となりえるだろう。
だが、その目論見は消えた。
「娘よ、貴様を突き動かしていた狂気は、怒りと悲しみはどこへ行った!
既に貴様は罪無き子供を二人も殺し、さらにロイドという男も殺した」
瓦礫の下より現れた鴇羽舞衣には、かつての狂気が微塵も感じられたかった。
あるのは絶望と、己が何をすればいいかすら分からない迷子のような感情。
Dボゥイとの戦闘でまだ見込みはあるかと思ったが、結局は東方不敗の思惑通りとはならなかった。
「だというのに奪うのが辛いだと、何がしたいのか分からぬだと、恥を知れ!
貴様はもはや、戻れぬ所まで来ておるのだのだ。今さら戦うことを降りるなど、けして許されることではないわ!」
語り聞かせるように、東方不敗は舞衣を追い詰める。
東方不敗の気迫に、舞衣は一歩後ずさる。
「下がっていろ」
「え……?」
舞衣をかばうように、Dボゥイが前へ出る。
思わず不思議そうな顔で、舞衣はDボゥイを見る。
何の感情も読み取れない無表情な顔だが、舞衣にはDボゥイが怒っているように見えた。
東方不敗は、Dボゥイに対してフンと鼻を鳴らす。
「Dボゥイ、いや相羽タカヤよ。貴様は悪魔となった弟の手からゆたかという少女を取り戻すのではなかったのか?
だと言うのに敵に情けをかけ、その手を血で濡らすことを躊躇うなど笑止千万!
貴様の手は既にに血に塗れておるわ!その手で何かを守ろうとするならば、修羅になるほ他に道は無いと知れ!」
本名を告げられ、Dボゥイは警戒をさらに強める。
カリバーンを握り締め、いつでも動けるように身構える。
「なぜ、俺の名を知っている」
「簡単な話よ、貴様と貴様の弟との殺し合いを一部始終見せてもらっただけのこと」
Dボゥイという男もまた、東方不敗の予想通りに動かなかった誤算の一つである。
守りたいと思っていた少女を連れ去られ、憤怒にまかせ修羅の道へと堕ちるものだと思っていた。
しかし、結局はどうだ。同じ境遇の少女に同情し、トドメを刺さぬうちにその矛先を収めている。
――おそらく、あのゆたかという少女の影響もあるのだろうな。
Dボゥイはおそらく、自分が思っている以上にゆたかに心を許していたのだ。
そしてその分だけ、ゆたかの清らかな心に影響を受けることになった。
東方不敗は、そう分析した。
――しかしそれでは、ワシにとって困るのだよ。
「戦え!戦って殺し合え!」
声を荒げ、東方不敗は二人に殺し合うことを促す。
しかし言葉とは裏腹に、東方不敗はこの二人が殺し合うことはないだろうと考える。
いきなり現れ、上からの物言いで殺し合えと言われて従うものはまず居ない。
「戦わぬというならば、ここでワシが引導を渡してくれるわ!」
狙うは、Dボゥイの命。
ここでDボゥイが死ねば、いずれエビルはゆたかを殺し、争いに乗る。
鴇羽舞衣とて、完全に狂気から脱した訳ではあるまい。ここで同じ境遇の者を惨たらしく殺せば、また狂人に戻るだろう。
東方不敗は構え、挑発する。
「さあどうする、Dream boy?」
【C-6中央部/市街地跡/一日目/午後】
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:左肩から背中の中心までに裂傷(傷は塞がったが痛みは若干残っている)、右肩に刺し傷(応急処置済み)
全身打撲(中)、貧血(大)、腹部にダメージ、 深い怒り
[装備]:カリバーン@Fate/stay night
[道具]:デイバック、支給品一式、月の石のかけら(2個)@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:テッカマンエビル(相羽シンヤ)を殺し、小早川ゆたかを保護する
1:目の前の老人に対処する。
2:ゆたかと合流する
3:テッククリスタルをなんとしても手に入れる
4:極力戦闘は避けたいが、襲い掛かってくる人間に対しては容赦しない
5:再びシンヤとテッカマンの状態で闘い、殺害する
[備考]
※殺し合いに乗っている連中はラダム同然だと考えています
※情報交換によって、機動六課、クロ達、リザの仲間達の情報を得ました
※青い男(ランサー)と東洋人(戴宗)を、子供の遺体を集めている極悪な殺人鬼と認識しています
※シンヤが本当にゆたかを殺すと思っているため、生への執着が高まりました。
※恐らくテッククリスタルはどちらを使ってもテックセットが可能です。またその事を認識しています
※ペガスが支給品として支給されているのではと思っています。
【鴇羽舞衣@舞-HiME】
[状態]:疲労(大)、全身各所に擦り傷と切り傷、罪悪感
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:どうしたらいいのか分からない。
2:なつき……
[備考]
※カグツチが呼び出せないことに気づきましたが、それが螺旋王による制限だとまでは気づいていません。
※静留にHIMEの疑いを持っています。
※チェスを殺したものと思っています。
※Dボゥイを殺し合いに乗っている人物だと認識しています。
※ソルテッカマン一号機は大破&頭部の取れた状態で近くに転がっています。
【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:全身、特に腹にダメージ。螺旋力増大?
[装備]:マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム
[道具]:支給品一式
[思考]:
基本方針:ゲームに乗り、優勝する 。
1:Dボゥイを殺し、舞衣を壊して争いを広げる
2:情報と考察を聞き出したうえで殺す。
3:ロージェノムと接触し、その力を見極める。
4:いずれ衝撃のアルベルトと決着をつける。
5:できればドモンを殺したくない。
※137話「くずれゆく……」以後の行動は、騒動に集まった参加者たちの観察でした。
※白服の男(ラッド)と赤い外套(士郎)が移動した方向を把握しています。
※青い軍服の女(リザ)と青い服の男(ランサー)が移動した方向を把握しています。
※エビルとゆたかが移動した方向を把握しています。
※137話「くずれゆく……」中のキャラの行動と会話をどこまで把握しているかは不明です
※173話「REASON(前・後編)」の会話は把握しています。
※螺旋王は宇宙人で、このフィールドに集められているの異なる星々の人間という仮説を立てました。
本人も半信半疑です。
>>359 CGIの方のバトロワも診療所占領で勝負を付けるが
それと同じ感覚だな
ならその方向で話を進めればいいのではないでしょうか
なんだかもうカオスすぎw
どんだけ書き手泣かせのロワになるんだよ
鳥は舞う。
自身の姿を誇示するように黒い羽をはためかせ、その絶対的な闇で日の光さえも多い尽くす。
そこに見えるのは、ただただ暗く、深いだけの闇であり、悪意の塊。
見る者の希望を蝕み、心を食いつくし、狂気を運ぶ。
言うなれば、出会うもの全てに絶望を届ける不幸の鳥だ。
覚えておけ。
鳥は決して微笑まない。
自身の目的を果たすまでは決して悪意を薄めたりはしない。
忘れるな。
鳥とは決して目を合わせてはならない。
命が惜しいなら決してその瞳を見てはならない。
その暗く漆黒の闇と呼ぶべき瞳は、何もかも飲み込む絶望の沼だ。
己が大事なら、決して目を合わせず、黒き姿にも視線を走らせるな。
心に刻め。
黒き鳥は悪意の塊、絶望を届ける不幸の鳥だという事を……。
◆ ◆ ◆
空を歩く黒い塊。
ゆっくりと、ゆっくりと歩く黒い塊。
黒い体で太陽を遮り、空を横切る異質な塊。
それは、一人の人間だった。
ビシャス。
チャイニーズ・マフィア「レッドドラゴン」の幹部にして、いずれその組織を自身の悪意で塗りつぶし、その頂点に立とうと目論む闇を背負う男。
そして、今この場では、目に映る全て者に死を届けるための黒き死神だ。
見るものに恐怖を叩き込み、圧倒的な絶望を味あわせる、最凶最悪の生き物である。
ビシャスは空を歩いている。
空を飛ぶ大きな鳥のように大地に大きな影を落としているその様は、遠目から見たら誰もが自身の目を疑う事だろう。
だが、しっかりと目を凝らせば、それが本当に空を飛んでいるわけでは無い事は直ぐに分かるはずだ。
厳密に言えばビシャスは空を歩いているわけではない。
ビシャスが立っている場所、それは、一本の太いレールの上だった。
モノレール、レール上。
本来は人間が歩く場所ではなく、別の鉄の塊が通過する為に存在する鉄のレールの上を、ビシャスは平然とした表情で歩いているのである。
金髪の男を殴り殺した後、ビシャスは離れていくモノレールを見送った。
そして、その鉄の塊を見送りながら、ビシャスは小さく息を吐き、自身の置かれている状況を今一度考え始める。
端的に言えば、『効率が悪い』という一言に尽きる、という悩みである。
10時間以上見知らぬ土地で殺し合いを続け、遭遇した人間は僅かに6人。
その内、死に追いやれた相手は僅か2人。
そして残りはおそらく70人前後。
歩いたエリアは僅か端の数エリア。
未踏エリアは数えたくも無い。
いくら見つけた端から殺していくとしても、これでは全ての人間を殺しきるまで何日掛かる事になるか……、考えるまでもなく気が遠くなる思いだった。
人殺しを生業の一部にはしているが、それはビシャスにとってはあくまで一部である。
ビシャス自身は別に、殺人狂と呼べるほど人の死に狂気的な喜びを感じるをわけではない。
勿論、絶対的な絶望を押し付けるための闘争に優越感を覚える事もあるが、こうも殺しに体力と手間を取られては溜息の一つも出るというものだろう。
ゆえに、ビシャスはこれからの事を考える。
さて、どうするか……、と。
真っ先に考えたのが、移動手段の確保だった。
自身が居た場所が角隅だった事もあり、他の人間と効率よく遭遇するには、やはり中央部に向かうのが手っ取り早いと考えるのは当然の成り行きである。
だが、その為の移動方法が徒歩しかないというのは、マフィアの幹部たるビシャスにはいささか受け入れがたいのである。
手近に車でも落ちてないかと周囲を見渡したが何も無い。
地図を見る限り、水族館やドーム球場、果ては観覧車など、明らかに観光をメインにしているエリアのはずなのに、そのどれにも車の陰さえ見つけられなかったのだ。
これには流石のビシャスも殺戮を楽しむという気概が空回りするというものである。
仕方ない為、既にモノレールの立ち去った駅へと足を進める。
そして、そこで更なる溜息を漏らす事となった。
モノレールのダイヤグラムを見る限り、再びこの駅にモノレールが戻ってくるのが今から2時間も先の話しらしい。
別に今すぐ動かなければならないわけじゃないが、ここで何もせず2時間過ごすという事に言い知れない落胆を覚えてしまうのも事実だった。
獲物はまだ腐るほど居る。
武器も手に入れたい。
そして、因縁のスパイクとの決着を……。
ビシャスの中に渦巻く、闘争への微かな欲求。
それが今のビシャスを僅かながらに焦らせるのである。
だが、現状は完全な手詰まり。
先程、一通りレーダーを使って探索をし終え、この付近に誰も居ない事は確認済み。
本当にやる事が無い。
なら、モノレールが戻ってくるまでの空いた時間、休憩に回すかとも思うが、別に休憩するほど疲れても居なく、
むしろ殺し合いという場で何も出来ず立ち止まってる事に苛立ちが募るというぐらいである。
ビシャスは今一度考える。
さて、どうするか……、と。
そして、結論として出た答えが今の現状である。
地上から軽く見積もって10メートルといったところをビシャスが歩く。
本来鉄の塊が通るべきレールをビシャスは進む、ただ、中央へ行きたいがために。
まぁ、言ってしまえば、遠回りしてまで中央へ向かうのは面倒であり、それなら、手っ取り早く最短コースを進む。つまりはそういう事である。
当たり前の事だが、モノレールが走るためだけにあるレールには、風除けどころか人が歩く為の手摺りなんて物は無い。
いくら太いレールの上とはいえ、足幅はおよそ50センチほど。
したがって、足を滑らせればいくらビシャスでも自身が死神の餌食になるのは逃れられない事だろう。
並の人間なら足を震えさせ、心を折って歩くのを止める。それが普通の人間の神経というものだ。
だが、ビシャスは違う。
横殴りの強い風がビシャスの体を撫でようと、踏み出す足が震える事は無い。
人の感じるべき恐怖など当然なく、その男には、ただただ深い闇しか見えない。
足取りも一定に、歩く、歩く、歩く……。
獲物を求め、ただ、歩く……。
ビシャスという悪意の塊は、つまりはそういう男だった。
そして、ある地点、丁度『C-3』に入ろうかという地点で放送が流れ始めた。
◆ ◆ ◆
地図に禁止エリアを書き込み、ビシャスは再び歩き始める。
放送で考える事は特に無い。
しいて言えば、やはり自分は遅れを取っていると言うことぐらいだろうか。
この6時間の間に死んだ人間の数は16人、その内自分が殺したのはたったの1人だ。
別にゲーム気分というわけではないが、自分以外の人間が殺人を強行し、自分以上の戦果を上げている事には、流石のビシャスも僅かながらに焦りを覚えてしまう。
獲物、武器、スパイク……。
目的は単純なれど、その場所に至るまでにどれだけの時間と労力を有するのかビシャスは考え、苦虫を噛み潰す様な表情を作った。
しかし、立ち止まってはいられない。いや、立ち止まるつもりは無い。
ビシャスにとっては、今置かれた状況も、このゲームも、所詮は自身が今までやってきた事の延長線上でしかないのだ。
レッドドラゴンに巣食う害虫を一掃し、いずれその頂点に立つ為に、ビシャスは手段を選ばない。
なら話しは簡単だ。
今まで通り、自身の野望の為、目的の為、ビシャスは前へと進む。一切の迷いを捨てて。
そして、再び自身の標的を見定めるように、闇のように黒く染まった心に刻み込むのだ。
獲物を狩り、武器を手に入れ、スパイクを殺す、と。
そして、その目的が指し示すように、ビシャスの体は高速道路に降り立った。
黒く、絶望を生み出す深い闇が、日の光を背に受けてモノレールのレール上から交差する高速道路へと舞い降りるその姿は、
まさに死神の鎌を持った黒き鳥と呼ぶの相応しく、美しい。
だが、それも、次の瞬間には本物の死神へと姿を変えた。
ビシャスの暗く底の見えない暗黒の瞳が、レーダーが指し示す5つの光点を捉える。
死神たるビシャスがこの反応を見逃す筈が無かった。
南に固まった4人、そして、東に1人……。
名前はどれも知らない。
いや、この際、スパイク以外の名前など限りなくどうでもよく、ビシャスにとって重要なのは、そこに獲物が居るということである。
冷たく暗い瞳が選んだ標的は、勿論……。
◆ ◆ ◆
アレンビーとキールはミリアから教えられた金田一一という少年と出会うため、ミリアが来たという高速道路の上を歩いていた。
金田一に遇ったら、高遠の伝言を伝える。
そして出来るなら、金田一と共にミリア達の待つ豪華客船『希望の船』に戻る。
その二つの目的を果たす為に、一人と一羽は前へと進むのだ。
隣を飛んでいる喋る鳥、キールの口説き文句を右から左へと流しつつ、心地よい風をその身に受ける。
海風が高速道路の中で不規則に方向を変え、アレンビーの頬を撫でているの気が緩むほどに気持ちが良い。
うーん、と大きく背伸びをし、アレンビーはその心地よさに身を任せたくなる。
本当にこの場所で殺し合いなんて行なわれているのだろうか?
そんな事を今更疑いたくなってしまう程に、アレンビーは、ただ目の前にある綺麗な海の姿を横目に見ながら歩いているのである。
しかし、そんな幸せな時間はそう長くは続かない。
それは唐突に浮かび上がった。
ゆらゆらとまるで亡者のように体を揺らし、こちらに向かってくる一人の人間。
明らかに生気の通った元気な人間の姿ではない。それが遠めから見てもはっきりとわかってしまう。
一瞬だけ足を止め、向かってくるその男を見つめる。
相手は気づかない。いや、気づこうとする気配すらない。
一体なにが……。
そう思った瞬間、その人間の身体的特徴に心当たりが生まれた。
近づいてくるその姿、それは少年の姿だ。
髪を後ろで束ね、あまり身奇麗にしていると思えないボサボサな髪。
そして、その髪の隙間から覗く表情は、明らかに生気の抜かれた死人のように暗く淀んでいたが、その淀んだ瞳の上に飾られた太い眉毛がある人物を連想させる。
それは、ミリアから聞かされた金田一一の身体的特徴と酷似していたのである。
「あんたが……、金田一、一?」
5メートルの距離まで近づいて居るというのに、一向に顔を上げようとしないその少年に向かって、アレンビーが声を掛ける。
すると、その名前に反応するように、僅かに表情が変わった。
「一で、いいんだよね?ミリアからこっちに居るって聞かされて探してたんだけど……なにかあった?」
金田一と一緒に行動していた風浦可符香が既に放送で呼ばれていた事は知っていたが、
それが金田一に一体どういう影響を及ぼしたのかはアレンビーには想像できない。
ゆえに、ついそんな無神経とも言える質問をしてしまった。
「あ、あ、あ、ああああああ、あああ、あああああああああああああああああ……」
次の瞬間、目の前の少年が膝から崩れ落ち、盛大に声を上げて涙を流し始める。
一人と一羽は、それを何も出来ずに見送った。
◆ ◆ ◆
マオは最後に聞こえた金田一の心の声を頼りに南に向かい、途切れていた金田一の声を再び捉えた。
風浦可符香に与えられた衝撃から未だ頭痛は鳴り止まないが、それでも僅かなノイズだけで金田一の声を聞き取れた事に安堵する。
「アハハ、なんだい名探偵君、君は本当に情け無いねぇ……」
金田一から漏れる悲痛にまみれた声を聞き、心の底から笑みを零す。
(そう、これだ。
この悲しみに震える絶望の声は何時聞いてもたまらない……)
風浦可符香に砕かれかけた精神を悲痛の叫びで潤し、マオは漸くと言った具合に一息つける程度に余裕を取り戻す。
そして、これからの事をじっくり考え始めた。
哀れな少年の止めを間違いなくさすために……。
しかし、その時、マオは取り戻した余裕を再び掻き乱す要因の気配を感じた。
どうやら、金田一が誰かと接触したらしい。いつの間にか声が三つに増えていた。
(……アレンビー?キール?)
二人の名前と思わしき単語をギアスで思考の中に受けつつ、他に何か情報が得られないギアスの効果範囲を広げる。
その瞬間、突然頭痛が酷くなってマオの思考を襲った。
(クッ!)
浮かび上がったのは言うまでもなく風浦可符香の声である。
それが、聞こえてくる三人の声と交じり合い、マオの頭をガンガンと叩くのである。
どうやら、効果範囲の100メートルは変わらないようだが、それを維持しようとすると集中力が乱れ、あの声が聞こえてくるらしい。
マオは一旦ギアスの効果範囲を狭め、心を落ち着けるために何も考えないようにした。
そして幾分落ち着いた後、再びギアスを広げる。今度は慎重に。
(クソ、ホント厄介な置き土産を残して行きやがって、あの女!)
心の中で愚痴を零しつつ、マオは声の聞こえてくる方に足を勧めつつ、声の分析を始めた。
どうやら、金田一が突然泣き出したらしい。
アレンビーとキールというヤツ等からは、その対応に苦慮している声が聞こえてくる。
その関係から、どうやら二人は殺し合いには乗っていないらしいことが分り、そして、無防備な少年に優しい声を掛ける程度には冷静な精神を有している事が分った。
「ふ〜ん、どうやら、良い人に拾われたみたいだねぇ、金田一君。
でもま、その幸運もここまでかな?」
気が付けば、金田一、アレンビー、キールの3人とマオの距離は20メートル程までに縮まっていた。
入り口から高速道路に上がり、3人がいる道路の中央からは死角になっている壁際にソッと身を潜める。
そして、マオは三人の姿を肉眼で確認した。
「やれやれ、君はやっぱり女の子に守られるのかい?どれだけ僕を笑わせれば気が済むのさ」
アレンビーに慰められている金田一を見つめながら、ゆっくりとその右手に持ったスッテキを持ち上げる。
そして、ステッキの先にポッカリと開けられた暗い銃口を金田一へと向けた。
「でもまぁ、とりあえず十分楽しんだし、君もう死んでいいよ」
マオに一部の迷いは無い。
引き金は、何の躊躇いもなく引かれた。
◆ ◆ ◆
ダンッ!ダンッ!ダンッッ!
突然響き渡った銃撃音。
その凶弾は雨となり、標的に向かって突き進む。
しかし、その銃弾は空を切ることになった。
「ふ〜、危ないなぁ〜。もう誰さ!」
見た目は活発そうな青い髪の女の子。
しかし、その実はガンダムと呼ばれる巨大ロボットを駆るガンダムファイターであり、自身も相当な武道家である。
当然、銃撃による突然の奇襲への対応は常人より遥かに優れており、遠方から海風に乗せて聞こえてきた微かな引き金の引かれる音に反応するのはある意味必然だった。
その為、弾丸が着弾する前に、標的となった少年諸共退避することはそう難しくはなかったのである。
「な、なに!」
驚いたのはマオの方だった。
思わずそう呟き、つい自身の姿を三人の前へと晒してしまう。
「もう〜、危ないじゃない」
中央分離帯の縁石の影に金田一を隠し、アレンビーは襲撃者の前に立ち、言った。
その口調はまるで子供の悪戯をたしなめるかのようだった。
殺されかけたという様子がまるで見えない。
「ク、クソ!」
当然のようにマオはアレンビーへと再び銃口を向け、引き金を引く。
しかし、その弾丸が一発たりとも当たる事はなかった。
速い、速すぎるのだ。
マオの放つ弾丸はアレンビーの超人的な身体能力の前には無力も等しいのである。
そうでなくとも、マオは射撃のプロと言う訳でもない。
ゆえに、一流の武道家からすれば、引き金を引く瞬間も、銃口から弾道を予測する事も容易い事であり、弾丸を食らう理由は何一つ無いというわけである。
「ヤル気なんだね?いいよ、相手してあげる」
アレンビーの瞳に微かにファイターとしての炎が灯った。
しかし、それは本当に僅かな火だった。
アレンビー自身、目の前の男が大した使い手じゃないことは動きを見れば直ぐにわかる事であり、別段本気になるまでも無いと思ったのである。
ほんの少し力を抑えつつ、マオに向かって駆け出す。
自分に向かってくる弾丸を尽く避けながら、フェイントを混ぜて跳躍。
マオの目には、突然姿が消えたように映った事だろう。
それほどアレンビーの動きには無駄がなく、素人の目には到底追えるものじゃなかった。
そして、マオに向かって蹴りを叩き込む為に、マオの上空を取る。
「ノーベル!!ストライク!!!」
気合を乗せた声と共に、蹴りの姿勢を作って急降下。
足先がマオの体を捉え、確実に意識を刈り取る。
本来ならそれで終わりのはずだ。
しかし、結果はアレンビーの予想した当然の結果を裏切った……。
「なっ!?」
その目にありえない光景を見る。
アレンビーの瞳が捉えたもの、それは、自分の姿を見失っていると思っていた目の前の男が、笑みを浮かべてこちらに銃口を向けている姿だった。
ダンッ!
発射された弾丸は一発、しかし、今の状況をひっくり返すにはそれで十分だった。
マオの放った凶弾が、空中で突然の方向転換の出来ないアレンビーの左肩に吸い込まれる。
「ッッッッ!」
ありえない銃撃を受け、蹴りの体制を崩し、そのまま落下し、背中を地面に叩きつけた。
そして、理解できない事態に困惑し、左肩を貫いた痛みと共に悶絶する。
幸い、弾丸は体を貫いていたが、それでも明らかに行動に支障をきたす怪我だった。
直ぐに立ち上がり、戦闘態勢を取れないないのは当然とし、一時的に声すらも失う。
だが、そこは落ちてもガンダムファイター。
瞳だけは、鬼のように目の前の男を睨み付けていた。
(そんな、ありえない!)
アレンビーは目の前の男を睨み付けながら、今起きた出来事を考えていた。
そもそも、目の前の男は大した相手じゃない、そう思ったからこそ、単純なフェイントで十分だと思った。
それは確かにアレンビーの驕りといえるかもしれない。
しかし、今でも確信を持って言える。やはり、目の前の男は大した相手では無い。
それは、男の立ち居振る舞いや、動きの一つ取っても無駄だらけであり、見る物が見れば一発でわかる物だったからだ。
では、何故超一流の武道家の繰り出した、単純とはいえ、精密なフェイントを見極める事が出来たのだろうか。
やはり、それが一番の問題であり、今のアレンビーには理解できない事態だった。
「ハ、ハハハハハっ、ヒ、ヒヤヒヤしたよ、全く、女の子のくせにとんでもない子だねぇ」
バイザーの男、マオがアレンビーを見下ろし、その手に持ったステッキ型の銃を突きつける。
「おや?僕が何で君の動きを読めたのか不思議って顔だね。教えて欲しい?教えて欲しいかい?欲しいんだろ?」
アレンビーに追い詰められた事が相当なプレッシャーとなったのであろう。
嘲る声にも僅かな焦りが含まれ、若干早口にも感じられる。
しかし、その狂気は本物であり、今直ぐにでもアレンビーを撃ち殺す事に何の躊躇いも無いことは誰の目にも明らかだった。
「良い機会だから教えようかな〜。
僕はね、人の心の声が聞こえるんだよ。
君が僕に突っ込んでくる前に、『フェイントを入れて跳躍、そのまま蹴りを叩き込む』って声が事前に聞こえてたからね、
姿を消した瞬間直ぐに対応できたってわけさ。
どうだい?凄いだろ?凄いよね〜、アッハッハッハハハ」
フラメンコダンサーのように両手の平を自身の耳の傍でパンパンと打ち鳴らし、マオは興奮に任せるままに饒舌になっていた。
それは明らかにいつものマオの姿ではないが、その事にマオは気づかない。
ただ、もう完全に勝ったと言わんばかりに笑い声を上げるだけだった。
そのせいか、今のマオは突然発展した戦闘によりある一つの事を失念していた。
それは、さっきまで三つだったはずの声が、今は、蹲って震えている金田一と目の前のアレンビーと呼ばれる少女の二つしかなくなっているという事だった。
「テ!メ!ェ!
なにオレのお姫様を傷物にしてくてんだよ!!!」
それは、銃撃と同時に上空へ飛び上がり、マオのギアスの効果範囲から逃れていた一羽のカラスの雄たけびだった。
上空10メートル程からマオに向かって急降下、そして、その鋭い爪先をマオの顔面に叩きつけたのである。
「ぎゃああああああ!」
突然の一撃にマオは絶叫を上げる。
しかし、バイザーを掛けていたせいか目は無事であり、それほど深いダメージは無い事が分ると、すぐに襲撃者であるカラスへと銃口を向け、撃った。
「コ、コノッ!」
何発かの銃声、しかし、宙を駆けるキールはその弾丸を危なげなく避けていく。
その間、マオの足元から青い髪をした少女がゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「やってくれたね……」
左肩を撃たれた為、左手はだらりと垂れ下がってはいたが、アレンビーは微かに笑みを浮かべて立ち上がった。
その瞳は相変わらず力強く目の前の男を睨み付けている。
「……も、もう、諦めな。アンタの負けだよ」
僅かに息の上がった声でアレンビーが告げる。
勝負が終わったと思ったマオが不用意にアレンビーに近づいてくれたお陰で、アレンビーにとっては最高の間合いと言うべき距離がマオとの間に出来ていた。
心を読めると言うのが本当だとしても、常人をも遥かに凌駕する圧倒的な速さで打ち出されるアレンビーの拳を狭いスペースで回避するなど到底不可能だ。
たとえ、銃撃により何時もより調子が出ないとしても、目の前の素人を打ち倒すのに何ら問題は無い。
足はしっかりと地面に根付いているし、全身の力も十分みなぎっている。
フゥと、一呼吸起き、右拳を握り締め、今度こそ目の前の敵の意識を刈り取る為に力を込めた。
「おやすみ!どっかの誰かさん!」
「ク、クソォォォ!!!」
アレンビーの右拳が下から上へ突き上げるようにマオの腹に飛ぶ。
それと同時に、マオがアレンビーに向けて再び銃口を向けようとした。
しかし、それが完了し、引き金を引く前には間違いなくマオの意識は肉体から飛び出しているはずだ。
今度こそ、当然と言うべき勝利をアレンビーは確信した。
パン!
偶然か奇跡か、どっちでも良い、結果だけ言えば、アレンビーの予想は再び裏切られる事となった。
それは先程まで聞いていた銃声ではなかった。
当然だ。
目の前のバイザーの男は撃ってはいない。
それどころか、未だ銃口はあさっての方向だ。
この状態で引き金を引いたとしても、何の意味もなくアレンビーに意識を刈り取られる事だろう。
というより、男は既に意識を失くしていた。失くしている筈だった。
なぜなら、アレンビーの拳は何の障害も無く男の腹部にめり込んでいたからである。
では、今聞こえた銃声は何なのか?
簡単だ、別の襲撃者だ。
その答えに行き着いた瞬間、アレンビーは慌てて目の前の男の体にめり込んだ拳を引き戻し、自身の体に異変が無いかを調べようとした。
と、その瞬間、おかしな違和感を覚える。
(あれ?アタシの拳、何で血なんか……)
目に映ったのは自身の拳を真っ赤に染め上げる見知らぬ血液。
自分は男の腹を殴ったはずだ、それも気絶させるために威力をある程度抑えて。
吐血するほど強く殴ったわけじゃない。血なんかで汚れるはずは無い。
なら、この血は一体?
その考えに答えを与える為に、アレンビーの視線がゆっくりと持ち上がり、僅かに自分より背の高い男の顔を見る。
すると、その脳天に綺麗な穴が開いているのを見つける事が出来た。
(え?なに?撃たれたのって、まさかコイツ?)
次の瞬間、目の前の男がゆっくりと崩れ落ちた。
気が付けば、男はもう、完全に息をしていなかった……。
◆ ◆ ◆
マオの敗因。
それは、風浦可符香からもたらされた影響により、ギアスの制御が僅かに不安定になっていた事。
そして、それを軽視してしまった事。
加えて、目の前の人間を倒す事に集中するあまり、いつもの冷静さを失ったという事の三点である。
それゆえに、マオはキールの奇襲を許し、背後から迫っている脅威に気づけなかった。
それが、マオが二度目の人生を閉じた理由である。
【マオ@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】
◆ ◆ ◆
男が倒れた先、そのずっと向こうに一人の人間が立っているのが見えた。
それは、言うなれば黒い塊。
人の姿をした暗黒の象徴である。
「なに、あれ……」
遠めに見つけた瞬間、何故だかアレンビーの中に理解できない戦慄が走る。
これまで幾人ものファイター達と激戦を繰り広げたアレンビーだったが、これ程離れて居るというのに銃弾のように殺意を飛ばしてくる相手は初めてだった。
言うなれば、それは他者に与える純粋なる死のイメージ。
それを与える為に圧倒的とも言うべき悪意を携えた殺人者。
それこそ、死を与える為の漆黒の死神とも言うべき存在。
一瞬にして、そのような冗談めいた形容が浮かんだ程だ。
男の右手に銃を持ってるのが分る。
銃口は確実に自分を見つめている。
“くる!”と思ったときには引き金を引かれていた。
さっきまで戦っていたバイザーの男とは殺意も技術も桁が違う。
それは間違いなく、どんな相手をも殺すために放たれた確かな殺意だった。
「ッ!」
距離もあったた為、その一撃は辛うじて避ける事が出来た。
だが、先程とは違い、小手先のフェイントだけではあの相手は倒せないと瞬時に理解する。
銃撃を防ぐような遮蔽物が少ない高速道路上での戦闘な上に、マオから受けた左肩の傷が絶妙な加減でアレンビーの足を引っ張り始めた。
これでは、避け続けるだけでも何時まで持つかわかった物ではない。
ゆえに、アレンビーはゆっくりと覚悟を決める。
目の前の黒い男を倒したいなら、一発や二発の被弾を覚悟してでも飛び出さないと勝てないと言う事を……。
◆ ◆ ◆
キールは正直焦っていた。
突然襲われた事もそうだが、その襲撃者と平然と戦うアレンビーにどう加勢した物かと考えるだけ考え、行動に移せなかったからだ。
しかし、バイザーの男の放った弾丸がアレンビーを傷つけた瞬間、キールは何も考えずに飛び出していた。
理由は分らない。
可愛い子を傷つけた男に腹が立っただけなのかもしれない。
だが、それにしても、ここまで自分が短絡的な行動に出るとは予想もしなかった。
何故自分はあんな考え無しの行動を取ったのだろうか?
もしかしたら、いつも隣にいる相棒が居ないせいで、どこか調子が狂ってるのだろうか?
なんでだ?どうしてだ?
キールの頭の中で答えの出ない疑問符が浮かび続ける。
だがまぁ、幸いにも奇襲は成功し、アレンビーがバイザーの男を倒す切欠にはなった事を素直に喜ぶべきだろう。
とりあえずそう考え、キールは勝利者となった我らが愛しのお姫様へと笑顔で近づく為に黒い羽をはためかせた。
しかし、その瞬間、去ったはずの一難が再びやってきている事に愕然とするしかなかった。
黒い姿の男がアレンビーに向かって再び銃弾を撃ち放つ。
それを唖然とした表情で見送るキール。
一瞬アレンビーに近づくのを躊躇ったが、ここまで来たらアレンビーを見殺しにする気はさらさら無い。
キールはアレンビーの傍に降り立った。
しかし、その瞬間、黒い男とは別に、キールの視界はある物を捉えた。捉えてしまった。
正直、見つけなきゃ良かったとさえ思った。
「あー、もう!!だから言ったってのに!!!」
そして突然、そんな叫び声が戦場に響き渡った……。
◆ ◆ ◆
小さな黒い影が戦場を奔る。
一羽のカラス?いや、それは、勇敢なる者の姿だった。
「キール!!!」
何が起きたか全く分らなかった。
突然何かを見たキールが絶叫にも近い雄たけびを上げたと思ったら、疾風の如く飛び出し、そして何かを拾い上げると、そのまま天に向かって飛翔を始める。
その姿を無意識の内に追いかけ、アレンビーはキールの行動の一部始終を見た。
キールは、その足の爪に可愛らしいぬいぐるみの様な物を掴み、そしてそのまま上空へと飛翔していくのだ。
それは、見間違い出なければ、さっきまで自分のディパックの中に居たはずの爆弾生物と呼ばれる生き物だった。
(ポル、ヴォーラ……?)
キールからその危険性を散々聞かされていたアレンビー。
しかし、アレンビーにはその外見の可愛さから、それがそんな危険な物だとは到底思えなかった。
ゆえに、戦闘になっても特に気にせず、ディパックと共に放置してしまったのだ。
ディパックの口が微かに開いていることも気づかず、また、それがどれほど危険な行為かも知らずに……。
爆弾生物ポルヴォーラ。
可愛い外見とは裏腹に、岩山を破壊する為に利用できるほど危険な火力をその身に内在させ、
驚きなどの簡単な衝撃で、その内在エネルギーを破裂させるという、危険極まりない生き物である。
当然、銃撃戦の真っ只中にあったポルヴォーラが爆発するのは必然というべき帰結である。
そして、それをいち早く察知出来たのは、唯一危険を知るキールしか居なかったのも、必然といえた。
加えて言えば、導火線に火をつけたのはアレンビーなのだが、爆発する引き金となったのは、間違いなく黒ずくめの男、ビシャスだった。
つまり、ポルヴォーラは見ていたのだ、全てを。
マオの襲撃から始まり、アレンビーが負傷し、また形勢が逆転したところで、襲撃者マオの死体がビシャスによって生み出される。
その一部始終のうち、ポルヴォーラの爆発へのカウントダウンを速めたのは、間違いなくマオの死体とビシャスの登場である。
元来、ポルヴォーラは危険などでも何でもない、大人しく優しい生き物である。
だが、人間達が採掘などでポルヴォーラを利用し始めた為、彼らへの見方が変わってしまい、危険な爆弾生物として認知されてしまっていた。
心を通わせれば、十分爆発の危険は薄まると言うのに……。
つまり、事前に明確な対処が間に合っていれば、今回の爆発は防げた可能性も高いのである。
しかし、何の因果か様々な偶然の流れにより、このような事態になった。
一人ぼっちで支給品としてこの世界に放り込まれたポルヴォーラの心中はさぞ動揺した事だろう。
それでも、アレンビーに優しくされて少しは心が落ち着いたが、キールの進言により、ディパックの中で押し込められてしまった。
そして、戦闘が始まり、優しくしてくれる人間は誰も居ない中、銃声と、死体、そして鋭い殺気を放つ黒ずくめの男。
これら現実の積み重ねの結果が、今の事態なのである。
キールは飛んだ。
その場で爆発されれば、飛べる自分はまだしも、目の前のアレンビーは爆発のエネルギーを体に受け確実に死んでしまう。
それを十分に理解しているから、キールはアレンビーを守る為に飛んだのだ。
勿論、付き合いは決して長くは無い。
命を駆けてまで助ける程、大切な人なのかと問われれば、「イエス」と即答は出来ても心の何処かで本気じゃない自分が居るのも事実である。
加えて、いつものキールなら、ジンという相棒が傍に居てくれるお陰でそんな無茶な行動も何とかなったのだろうが、今はその相棒も居ない。
それらは十分キールも理解していたはずだ。
しかし、頭では分っていながらも体は本能に従ってしまった。
ナイトがか弱い女の子を助けるのに理由なんて無い、と言うキールの信念の示すままに……。
もう、キールに冷静な判断をする思考は残されてはいなかった。
ただ、目の前で自分の惚れた相手に死なれ、自分がみすみす生き残るという構図がどうにも許せ無いと瞬時に考え、飛び出してしまったのである。
勿論、それが、どういう結果をもたらすかを頭の隅で理解しながらである。
ポルヴォーラをその爪でしっかりと掴み、出来るだけアレンビーを爆発に巻き込まない為に、出せる限りの最高速度で天に向かって飛び上がる。
それは、キール自身も信じられないほど速い速度だった。
(あれ?何で、オレ、こんな無茶してんだ?
……あー、でも、可愛い子を守って、てのは、やっぱ英雄たるオレらしい――)
爆発したのはその直後。
一瞬とはいえ、太陽が二つに増え、けたたましい轟音が響き渡る。
英雄となった黒き鳥は、そのまま虚空へと消え去ったまま、もう帰ってはこなかった……。
【キール@王ドロボウJING 死亡】
【C-3南端/高速道路上/1日目-午後】
【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:疲労(小)左肩に被弾
[装備]:
[道具]:デイバック、支給品一式、ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)
注射器と各種薬剤、拡声器
[思考]
1:キール……
2:豪華客船に向かいミリアたちと合流する。
3:仲間を集め、螺旋王からアイザックを救い出す。そして目指せ結婚式!
4:豪華客船へとゲームに乗っていない人間を集める(高遠の伝言)
5:悪いヤツは倒す!(悪くなくとも強い人ならばファイトもしてみたい……)
[備考]
※キールロワイアルのアレンビーver.「ノーベルロワイアル」を習得
※参加者名簿はまだ確認していない
※シュバルツ、東方不敗はすでに亡くなっている人として認識している
※ガッシュ、キール、剣持、アイザック&ミリア、ジェットと情報交換をしました
※高遠を信用できそうな人物と認識しています
※チェスの証言を全面的に信用しています。
398 :
:2007/12/26(水) 22:36:47 ID:kkjg4bya
【金田一一@金田一少年の事件簿】
[状態]:疲労、精神的疲労(中)、自信崩壊、茫然自失、肩に浅い銃創
[装備]:ドーラの大砲@天空の城ラピュタ、リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6)
[道具]:支給品一式、大砲の弾2発、予備カートリッジ数12発
[思考]
1:???
2:俺は無力なのか……
3:誰か助けてくれ……
[備考]
※高速道路の入り口は、最低でも1エリアに一つはあると推理しています。
※アイザックの不死については信用していません。もちろん、ポロロッカ星人であるとも思っていません。
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ、ジェリコ941改(残弾14/16)@カウボーイビバップ、軍用ナイフ@現実
[道具]:支給品一式、レーダー@アニロワオリジナル、マガジン(9mmパラベラム弾16/16)×1
UZI(9mmパラベラム弾・弾数0)@現実、防弾チョッキ@現実
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:何だ?何が起きた?
2:皆殺し。
3:武器の補充、刀剣類の獲得。
[備考]
※地図の外に出ればワープするかもしれないと考えています
マオとキールの持っていた物は、C-3南端の高速道路上に落ちています。
『ポルヴォーラの爆発』
C-3とD-3の間のエリア上空に爆発による眩い閃光が走り、周囲にポルヴォーラの爆発音が響き渡りました。
威力そのものは次の書き手様にお任せします。
>>371 書き手もクソも書いてもらうような形のバトロワじゃねえから
あぼーん
それじゃわからないから
1.2.3・・・とか数字振れ
408 :
◆o4xOfDTwjY :2007/12/28(金) 00:56:39 ID:frCOxeKQ
蒼き槍兵ランサーは、先ほど発見した気絶した青い軍服の女を乱雑にベンチへと寝かせる。
本来なら近くの病院に連れて行くべきなのかもしれない。
しかし、相手は自分を襲った炎使いの男と同じ制服を着ている。
とくにいたわる必要もないと考えたランサーは、少し移動して見つけたベンチに女を寝かせることにした。
ランサーはこの女から得るべき情報を整理する。
この女の着たものと同じ青い軍服の炎使いの男、デパート前の橋で目撃した時に彼女と一緒にいた少年、この2つの情報は確実に得るべきだ。
この女自体に恨みはないが、青い軍服を着ている以上、自分を襲った炎使いとは何かしら関係があるだろう。
だからとくに労るでもなく、乱雑に扱っている。
いっそ殺してしまおうか、そう考えなくもないほどに青い軍服に対してランサーは怒りを募らせていた。
それ以外にも、自分の見込んだ少年のエリオの死や、病院で見た子供2人の死体、この理不尽な殺し合いに対しての怒りも募っていたこともある。
その怒りの矛先が青い軍服に向けられたがゆえに、自分には直接恨みのない目の前の女にまで殺意を感じてしまったのかもしれない。
「ったく、落ち着けってんだ。とりあえずこの女の話を聞いてからだ」
青い軍服の女はまだ目覚める様子ではない。
ランサーは周囲を見渡す。
さきほどまでいた北方面は倒壊した建築物の瓦礫や、砲撃により起こった煙が上がり、先ほどの戦闘の酷さを物語っていた。
対して南は、自分が何時間か前にいたデパート建物が燃え上がり、黒い煙が上空へと伸びている。
明らかに誰かが放火したとしか思えないような豪快な燃え方だ。
もしかしたら、あの炎使いの男がやったのかもしれない。
どっちにしろ、状況確認のために一刻も早く行動したいところだ。
そう思いながらも、目の前の女が目覚めるまではランサーは動くことはできなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
409 :
蒼き槍兵と青い軍服の狙撃 ◆o4xOfDTwjY :2007/12/28(金) 00:57:26 ID:frCOxeKQ
狙撃銃をおろしたホークアイは溜め息をつく。
また罪のない命を奪ってしまった。
見晴らしの良い建築物の中に隠れ、イシュヴァール人を見つけ次第に狙撃する。
もはや作業化してしまうほどに、この行動を繰り返した。
躊躇いはあれど、軍に所属する限り命令には従わなければならない。
そして彼女は、自分自身に対しても嫌気がさしていた。
それは、銃を使うがゆえに人を殺す実感が薄れてしまっていたこと、狙撃が成功した瞬間に僅かながら安心を覚えてしまう自分にであった。
――さん、おばさん
狙撃銃に弾薬を補給し、新たな獲物を見つけようとした矢先、自分の背後から声がする。
自分はまだおばさんと呼ばれる歳ではないと、少々腹立たしく思いながらも、声の聞こえた方に銃を構える。
彼女の後ろにいたのは、全身血まみれの少年だった。体には剣が突き刺さっており、右手にはナイフと思しきものを持っている。
突然の出来事にホークアイは動揺し、とっさに狙撃銃から銃弾を放った。
銃弾は少年の頭部にあたるが、少年は倒れることなく、ホークアイへと向かってゆっくりと歩いていく。
――おばさんのせいで僕死んじゃったよ。
ホークアイは銃で撃っても死なない少年に怯えて、尻餅をつく。
何発か銃弾を撃つものの、少年は表情ひとつ変えずに自分へと近づいてくる。
――だからおばさんも一緒に死のうよ。
そして、少年は右手のナイフを振りかざした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
410 :
蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士 ◆o4xOfDTwjY :2007/12/28(金) 00:58:18 ID:frCOxeKQ
「イヤァアアアッ!」
ホークアイは悲鳴と共に目覚める。
夢か、と多少安心するもののそれはすぐに消え去る。
「たいそう騒がしいお目覚めじゃねえか?ああ、青い軍服の姉ちゃんよぅ」
彼女の目の前には、槍と思しきものを自分へと向ける男が立っていた。
彼女はとっさに銃を取り出そうとしたものの、銃どころかデイパックまで目の前の男に没収されていた。
「お目覚めのところ悪りぃが、あんたには聞きたいことがいくつかあるんでな。それまでは殺しはしねえ」
「…つまり、返答次第では殺すと?」
逆に解せばそういう意味になる。そう思い、返した言葉だった。
男は鋭い目つきで彼女を睨みつける。
そして、槍の先端の刃物が目前にまで迫り止まる。
「そうだ。余計なことはするな」
ホークアイは冷や汗をかく。一瞬、死を覚悟した一撃だった。
目の前の男から漂う異様なまでの殺気。
捕らえられてなお、今こうして生きていられるのは、目の前の男が自らの殺気に飲み込まれない自我を持っているからなのかもしれない。
下手なことを言えば即座に殺されかねない。
彼女はそう悟り、目の前の男の次の言葉を待つ。
「俺はあんたと同じその青い軍服を着た男に襲われた。炎を使う奴だ。そいつはあんたの知り合いか?」
淡々と告げながらも、しかし確実に怒気と殺意が込められた男の質問。
その質問にホークアイは戸惑いを覚えながらも自分の知る事実を告げる。
「その人はおそらく私の上司、ロイ・マスタングです。しかし、彼はむやみに人を襲ったりするような人ではありません」
彼女は知っている。
ロイ・マスタングは軍を内部から変えて、平和を築き上げるという野心を持っていた。
そしてその信念は確固たるものであった。
だからこそ、ホークアイは無能大佐と言われるような彼にもついていった。
そんな彼がこの殺し合いに乗るはずなどない。
彼女はそう信じていた。だから目の前の男の問いにも答えた。
もっとも、マース・ヒューズが死んだ後に彼女がこの殺し合いの舞台に呼ばれていたなら、それは違っていたのかもしれないのだが。
「だが俺たちはそいつに襲われた。奴は俺らを間違いなく殺す気でな」
「彼がそんなことを…」
「そしてエリオっていう小僧の片腕を燃やした」
ホークアイは困惑する。
ただでさえ最悪な状況だというのに、自分の上司が殺し合いに乗った事実を告げられる。
彼女が考える前に、またしても男の質問は続く。
「もうひとつ聞く。俺はあんたをデパート前の橋で一度見た。その時は小僧を一人連れてたはずだ。そいつはどうした?」
その質問でホークアイは、パズゥの最期を思い出す。
自分が彼の無謀を許したせいで彼は死んでしまったのだ。
「彼、パズゥは殺されたわ。その後に私は気絶してここで目覚めた」
「そうか…。チッ、また小僧っ子が死んだのかよ」
目の前の男は舌打ちを漏らした。
そしてホークアイの顔をしばらく見つめると、槍と思しきものを下ろした。
それと同時に忌々しい放送は始まる。
411 :
蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士 ◆o4xOfDTwjY :2007/12/28(金) 00:58:54 ID:frCOxeKQ
――さて、二度目の放送を行う。
静寂を飲み込み、無情な声が響き渡る。
男はデイパックから名簿と地図を取り出し、放送の内容をメモしている。
放送は更なる追い討ちのごとく、ホークアイに無情な現実を突きつける。
死亡者として呼ばれるアルフォンス、ヒューズ、パズゥの名前。
パズゥの死を目の当たりにしている彼女は、この放送が嘘でないことを改めて実感する。
――それまでの間、思う存分に闘争を続けるが良い。
放送が終わると同時に、男はデイパックを彼女に向かって投げた。
ホークアイは呆気にとられながらも、デイパックをキャッチする。
「俺の名前はランサーだ。あんたは?」
「…リザ・ホークアイです」
ホークアイは、先ほどかのような殺気がランサーと名乗る男から薄れているのに気づいた。
ランサーは南の方を顔を向ける。ホークアイもつられて南を見ると、何かが燃えあがっていることに気づく。
「俺はデパートに向かう。あんたが起きる少し前から、炎が立ち上がっててな。もしかしたら、ロイ・マスタングの仕業かもしれないしな」
ランサーはホークアイから得た情報をほとんど真実と判断した。
彼女の疲弊しきった表情と姿は、最早自分を騙す気力すらないと感じたからだ。
「私を殺さないのですか?」
「最初はその気だったし、その青い軍服に憎しみも感じた。だがそりゃあただの逆恨みだ。それにあんたも仲間を奪われた身なんだろ?」
ランサーは、彼女もまたこの殺し合いで大切なものを奪われ、苦しい状況に立たされていることを感じとっていた。
彼女がロイ・マスタングのように、殺し合いに乗った人間なら殺すつもりだった。
しかし、彼女には殺し合いに乗っている様子はなかった。だから殺さなかった。
ランサーは槍を担ぎ、南に向かって走りだそうとする。
だが、それをホークアイの一声が止めた。
「待ってください。私も行きます。ロイ・マスタングが殺し合いに乗っているのなら、私が止めなければなりません」
ランサーはそれを意外に思い、驚きの表情を見せる。
自分は、彼女の上司のロイ・マスタングを殺そうとしている。
彼女がそれに加担しようとは思えない。
ならば、仲間になるふりをして不意打ちでもするつもりなのか。
「あいにくだが、俺はあんたを信用したわけじゃあない。まあ、着いてくるってんのなら勝手にしろ。追いつけるのならな」
そう吐き捨て、ランサーは南へと目にも止まらない速さで駆け出す。
ホークアイは、ランサーの速さに圧倒されたものの、すぐに彼を追って走り出す。
「マスタング大佐、あなたが間違った道を進んだならば、それを正すのが私の役目です」
ホークアイは誰に言うでもなく自分にこう言い聞かせる。
彼女は仲間の死を悲しむ間もなく、自分の使命を果たすべく進む。
こうして蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士もまた、この殺し合いの螺旋に巻き込まれていくのであった。
413 :
蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士 ◆o4xOfDTwjY :2007/12/28(金) 00:59:51 ID:frCOxeKQ
【D-6北西部/道路/1日目-日中】
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、強い決意
[装備]:鉄槍(折ったポール+アサシンナイフ@さよなら絶望先生×1本)
[道具]:支給品一式×2(食料二食分消費)、ヴァッシュの手配書、防水性の紙×10、
不明支給品0〜2個(槍・デバイスは無い)、偽・螺旋剣@Fate/stay night、暗視双眼鏡
[思考]
基本:このゲームに乗った者、そして管理している者との戦いを愉しませてもらう
1:デパートに向かう
2:どこかにあるかもしれないゲイ・ボルグを探す
3:↑のために他の参加者を探して接触する
4:ロイ・マスタング、言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュと出会えれば、それぞれに借りを返す
5:衝撃のアルベルトと出会えれば戴宗からの言伝(一時的な休戦の申し込み)を伝える
6:エリオの知り合いと出会えたら事の経緯を伝える
7:日が暮れたら、戴宗と合流するため一旦温泉へと向う
最終:エリオの遺志を尊重し、螺旋王を討ち倒して彼の仲間を元の世界へと帰す
[備考]
※エリオ、戴宗と情報交換をして、それぞれの世界についての知識を得ました
【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、精神的ショック、全身各所に擦り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、M500ハンター(0/5)@現実、ダーツ@現実(残り23本)、タロットカード@金田一少年の事件簿、
USBフラッシュメモリ@現実、泉そうじろうのデジタルカメラ・説明書付@らき☆すた(※マタタビの勇姿(後ろ姿)を撮ったデータが一枚入っています)
[思考]
基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない
1:ランサーを追ってデパートへと向かう
2:ロイ・マスタング大佐を探し、ゲームに乗っていたならば止める
3:できれば銃器を調達したい
4:パズゥの知り合いとの接触および、彼を守れなかったことを謝罪したい
5:2日目の0時頃に温泉へと戻り、マタタビに協力を要請する
6:トンネルで見た化物を警戒する
7:ゆたかを心配
※リザ・ホークアイの参加時期はアニメ15話辺り。彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ存命しています
※トンネルで出会った人物より、『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の名前を聞きましたが、それが名簿に記載されていないことにまだ気づいていま
せん
※マタタビと情報交換をしてません。また、マタタビを合成獣の一種だと考えています
※Dボゥイとゆたかの知り合いについての情報を得ました。
[sími]
覺處靜?體聲臟樣
私は
たぶん、今目覺めた。
此處は、何處だらう。
私は何をしてゐるのだらう。
私は生暖かい液體に浸ってゐる。
私は目を閉ぢてゐるのだらうか。
目を開けてゐるのだらうか。
暗い。
そして靜かだ。
私は躰を丸くして、液體に浸ってゐる。
聲が聞こえる。
何を怒ってゐるのだらう。
いや、悲しんでゐるのだらうか。
私の気持ちは、とても安らかである。
私は親指を握り締めてゐる。
私の臟は外に開いてゐる。
私の臟は何処に繋がってゐるのか、
どうも少し、
寒いやうだ。
私は
目覺めてゐるのだらうか。
「母樣」
(京極夏彦「姑獲鳥の夏」冒頭より。一部漢字改変)
@ @ @ @ @ @ @
俺は躊躇することなく跳んだ。
相手が誰であれ、その戦術がどうであれ、自分の戦法は変わらない。
近接格闘からの一撃必殺。基本的にはそれが全てだ。
だが、その一手で過不足は無い。
それで全ての事が足りるよう、十二分に鍛錬は積んでいる。
だが、女も黙って死を受け入れるつもりは無いようだ。
俺が跳ぶのとほぼ同時に回避運動を開始する。
女は、滑らかな動作で後方の壁へとバックステップを……
いや、違う。
そう見紛うのも無理は無い。だが、移動したのは彼女の体ではなかった。
動いたのは、壁だ。
女の後方の壁が、女に向かって迫って来ていたのだ。
それが、まるで女が動いたかのような錯覚を俺に抱かせていたのだ。
そして、俺がそうと気付いた次の瞬間には、
女の体は、迫り来る白い壁に飲み込まれていた。
そう、まるで液体に沈み込むように、女の体は壁の中に染み込んでいった。
光源の無い薄暗い部屋には、俺独りが残される。
いつの間にか、先ほどの男の死体も消えていた。
運び去ったのは、奴の能力だろう。
こういった場合に、先ずとるべき行動は一つ。
「チッ……」
舌打ち。一種の逃避的精神運動である。
逃げられた……か?
静寂が、その場に降りて来た。
此処は、何処かの入浴施設内……の筈である。
俺――名前などどうでも良い――は、再度この場所に舞い戻って来た。
目的はただ一つ。
他者の殺害だ。
当初の目論見――否、予感通り、この場には一人の人間が残っていた。
だから、攻撃に転じた。ただそれだけだ。
だが、不覚にもその姿は、既に俺の目の届かない場所に隠れてしまっていた。
そこで、改めて周囲の状況を窺う。
あくまで慎重に、注意深く。まだ戦闘が終わった訳では無い。
前を、左右を、後ろを、上下を、素早く見渡した。
白い。
白い壁が、文字通り四方を囲んでいる。
薄暗い光源は、おそらく日光が紙を透けているのだろう。
だが、しっかりと眼で見る限り、その白い壁以外には、何もない。
この室内……いや、この白い匣には、それ自身を提議する白壁以外の一切が欠如していた。
明かりも、家具も、そして、出口さえも。
そう、この室内は密室。ネズミ一匹入り込む余地さえ見当たらない。
俺は、この白い室内に、完全に密封されてしまっていた。
先ほどまでは何の変哲も無い民家の一室だったこの場所も、今や異様な空間へと変質してしまっていた。
一瞬の間にこれだけの物を作り出すその能力は、確かに脅威ではある。
そのスピードと前動作の無さは、これまでに見えた錬金術師達の中でも抜きん出ている。
だが、ただそれだけだ。
鋼の錬金術師も、この程度の練成ならば瞬時にやってのけていた。
しかし。
解せない。
これは、一体どういう意図なのだろうか?
あの女は何を企んでいるのだろうか?
何も無い密室に閉じ込める……だけなのか?
さしずめ、自分をこの密室に幽閉し、これ以上凶行を重ねることを阻止したい……と言ったところだろうか?
だが、もしそうなのだとしたら、生ぬるい事この上ない。
この期に及んで、自らの手を汚すことを拒むような輩であるならば。
その楽観が、当たっていれば良かったのだが。
突如として、足元が揺らぐ。
いや、足元だけではない。この白い匣全体が揺れている。
そして、眼前の床が浅く盛り上がったかと思うと――
「ちぃッ!!」
次の瞬間には、獣の爪を思わせる鋭利な棘が、眼前に聳え立っていた。
すんでのところでそれを躱したものの、今度は左方の壁から新たな棘が伸びる。
さらに、前後の壁から、地面から、天井から、
突き出した無数の棘が、文字通り俺に牙を剥く……!
改めて認識する。
ここは、魔女の胎の中。
俺は、既に飲み込まれ、胃袋の中で消化を待つだけの存在でしか無いのだと。
全方位から、絶え間なく襲い来る攻撃。
恐らく、奴はこちらの位置や動きを把握してはいまい。
だが、そんなことは無関係と言わんばかりに、
残酷な斬撃が、部屋中を所狭しと、雨霰の如く降り注ぐ。
しかも、だ。
こちらの逃げ場を無くさんとばかりに、
徐々に、だが確実に、
部屋が狭くなってきているという事実に気付いてしまった。
――あの女、見かけによらずに陰湿な……
口元に浮かんだ笑みは、余裕の表れでは決して無い。
寧ろ、その逆だろう。
だが、無慈悲な刃は、躊躇無く獲物へと迫り来る。
その殺意のうねりに、一切の死角は無い。
@ @ @ @ @ @ @
襲撃者を閉じ込めた白い匣を前にして、
読子・リードマンは、険しい表情のまま、直立していた。
怒り、激情、そういったシンプルな感情が読子の中を渦巻いている。
だがその一方で、彼我の戦力を正確に分析し、それを冷静な判断のもとに戦法にフィードバックできている。
そう読子は自負していた。
思えば、余りにも予想外の出来事が、息つく間も無く次から次へと起こっていた。
突然見覚えの無い場所に運ばれ、
謎の男ロージェノム率いる組織の統べる町で、
その圧制に健気にに立ち向かう少年少女と出会い、
そしてその勢力を脅かす謎の催眠術師少年が現れ、
更には新たな殺人者が乱入してきて……
正に風雲急の展開だ。
現実は小説より奇なり、とは良く言ったものである。
だが、読子は慌てない。
自分はこれでも、この道のプロ。
それらにキチンと対応し、事態の解決の為の最善の策を打つのだ――
そう、読子は考えていた。
そして眼前の白い匣が、その判断の結果である。
男の攻撃を数回見ただけだったが、読子は確信していた。
あの男は、手から何かしらの衝撃波とか発剄とか破壊光線とかかめ○め波とか……
そういった、謎の攻撃手段を繰り出す事が出来るのだ。
攻撃時にバチバチ光ってたので、都合上「シャイニングフィンガー」とでも名付けておこう。
そのSF(=シャイニングフィンガー)の効果によって、
温泉は破壊され、紙は破られ、マスクマンの命は奪われたのだ。
だが、これまでを見る限り、あの攻撃は射程が短い。
これは勘なのだが、多分あれは直接触らないとダメージを与えられないような攻撃なのだろう。
ならば、自ずと対応法も見えてくる。
相手の手の届かない場所から、相手が捌き切れない量の攻撃を浴びせれば、彼に対応する術は無い。
つまりは、既に自身の勝利が決まっているのだと読子は考えている訳だ。
あの男の体捌きはたしかに凄い。
でも、それだって常識の範囲内だ。分身したり、変わり身の術が出来るわけではない。
閉鎖空間に閉じ込めて、全方位からの攻撃を受ければ、無傷でいられる訳が無い。
もしSFでどうにかしようとしたって無駄だ。
読子の紙の強度は、言っちゃあ何だが折り紙付きだ。
少しぐらい穴が開いたって、直ぐに塞いでしまえば良い。
そして、その間も攻撃が止む訳では無い。そもそも、攻撃するだけの余裕が有るのかどうか。
さらに、念には念を入れ、匣を小さくして逃げ場を無くす。
これで、磐石のはず。
後はあの男が力尽きるのを待つばかり……
どうもこの所勘が冴えている。
勝因は、冷静な“洞察力”だな。
それは、読子がそう考えた矢先だった。
朱い稲光が、白い紙の向うで瞬いた。
それも、今までよりも遥かに大きく、眩く。
「な、何!? で、でもちょっとぐらいの反撃ぐらいじゃ……!」
そう。ちょっとぐらい壁が綻んだ程度では、あの匣の中から逃れられはしないはず。
ちょっとぐらいの穴ならば……
読子の眼前の白壁に、僅かな焦げ目が、穴が穿いた。
それが見えた次の瞬間には、
その穴から四方に延びた光が、
紙の壁を、
砕き、
千切り、
焼き、
溶かし、
灰燼その物へと変えていった。
「そ、そんな!? あれだけの紙が一瞬で!?!? い、一体どうやって……!?」
その光景は、読子の理解を超えていた。
鉄壁の紙壁が、一瞬で瓦解した。
あの包囲網は完璧だった筈だ。
なのに何故?
あの男に、ここまでの破壊力を持った攻撃手段が有ったのか?
それならば、何故今まで使わずに?
実は、コレが命と引き換えの、最後の一撃だったとか……?
そんな楽観を一蹴するが如く、
立ち込めた紙塵の向うに、薄っすらと影が揺らめく。
自らの血に濡れた巨体。
その紅い目が、こちらを睨む。
やばい……!
満身創痍だなんてとんでもない!
あの男はまだ――殺る気だ!!
男が跳ぶ。
まるでスローモーションのように、その動きがゆっくりと見えた。
でも、私を取り巻く空気は重く、粘着質で、私の体に纏わり付く。
咄嗟に、懐にしまっておいたメモ用紙を投げつける。
刃物同様の高度を持ったそれらの紙片はしかし、男の勢いを削ぐのには不十分だ。
狙いの甘い紙のナイフ達は、男の体を掠っただけで、男の後方へと飛散する。
後が無い。
温存とか、そういうことを気にしている場合では無いと気付く。
今、この一瞬を逃れなければ、その後などもう、無い。
無我夢中に残りの紙束すべてを掴むと、それを男に向かって投げつける。
それらは、先ほどの匣の壁とは比べ物にならない分厚さの防壁へと姿を変える。
「くどいッ!」
だが、それらも男の手によって、一瞬の内に霧散してしまう。
この壁をも物ともしないなんて、やはり何かしらのトリックの種がある筈だ。
だが、その種明かしは後回し。
今は、距離をとることだけを考える。
今の紙壁は、もう十分に役割を果たしたのだから。
「ぐッ!?」
予期せぬ痛みに、男の声が漏れる。
その脚には、一枚の紙――否、一本の剣が刺さっている。
それは、先ほど男の脚を抉ったものと同じ場所。
そう、今の紙壁はただのフェイク。目隠しだ。
紙壁で目を眩ませて、脚を奪う。
これで、私が逃げる隙が――――
「ぐぉぉぉぉおおおおおおおッッッ!!!」
「う、嘘……っ!?」
私の甘い考えを吹き飛ばす咆哮が空気を震撼させた。
深々と開いた脚の傷穴から鮮血を迸らせながら、
それでも男は止まらなかった。
もう、距離が無い。
迎撃しようにもネタ切れだ。
死神の右腕が、私の顔へと伸びてくる。
ガクン
だが、その手は私の鼻先数cmで止まる。
男の膝が崩れている。
流石に気力だけでは、もう立っているのもやっとなのだろう。
助かった……?
そのまま、その右手は私の胸元をかすめる。
このまま、逃げられ……る……?
そして、延び切った右手が、僅かに私の腹部に触れた。
「ぱしん」と、静電気が走る音がする。
一呼吸置いて、「ぷちゅっ」と、ビニール袋が破れたような音がした。
ブックドラフト。
自宅で度々襲われたような、大量の本の、雪崩のような崩壊。
それを彷彿とさせる勢いで、黄色い物が、滑り出した。
小腸だ。
私……の……?
「え? ええ? これ、え? どう、ちょ、ちょっと、えっ?」
思ったよりも小さな穴から、だらりと腸管が伸びている。
私のお腹から。
不思議と、痛みは無い。
でも、ただ、灼ける様に、熱い。
「そ、そんな、え? ま、戻って、待って、ああ、えっと」
零れ落ちた腸を、お腹の中に戻さないといけないと思った。
でも、つるりと滑り出した私の腸は、戻そうとしてもなかなか上手く戻らない。
それでも何とか戻そうともがく私を、男が静かに見下ろしていた。
「無駄な足掻きをしなければ静かに逝けたものを……
過ちを悔いろ。紙の魔女よ」
過ち? 何の? 私が何を間違えたって?
私は間違ってなんか……
「紙を鋼に練成しているのかとも思ったが、そうでもない。
あくまで『紙』という属性を保ったまま、その性質を変化させる術……
これが錬金術の類かどうか、終に確証は持てなかったが……
万物の理に反する術、野放しにするには捨て置けん」
男が血の滴る脚を引きずりながら、ゆっくりとこちらに歩み寄る。
「あの紙箱は悪手だ。
すべての紙を『一つ』に連続させてしまったのだから。
小さく纏まりつつあるその一塊の紙の分解、容易いことだ。」
ぼそり、ぼそりと、独り言とも、語りかけとも付かない言葉が聞えてくる。
この男の人は何を言っているのだろう。
分解? 悪手?
「特定の物質に偏重した戦法、組み易し。
それで尚向かってくるとは、私の力を読み誤ったか。
冷静に観察すれば看破できそうなものを……予断が過ぎたな」
……それって、つまりは。
私の……判断ミスって……こと?
男の手が、私の額を優しく撫でる。
「神に祈る時間をやろう」
え? 祈る? 何を?
神様? 紙? え?
何……?
目の前が赤く染まる。
@ @ @ @ @ @
薄暗い部屋の中に一人、私は横たわっていた。
自分から流れ出た血と体液に浸りながら、
それでも尚、私の中から、色々な物が流れ出すのを感じていた。
私は思う。
あの男の人は、何をあんなに怒っていたのだろうか。
それとも、悲しんでいたのだろうか。
スパイクさん達は無事だろうか。
ねねね先生はどうしているだろうか。
私はこのまま死ぬんだろうか。
ああ、死ぬんだろうなあ。
そんなことを、まるで他人事の様に考えていた。
こういう時には、走馬灯が巡るものなのだろうか。
でも私の場合、巡って行くのは、私の人生ではなくて、
私がこれまでに読んできた、数多の本の内容だった。
好きだったあの本。
何度も読んだあの本。
ああ、そういえばあんな本もあったな。
あれ、あの本の結末はどうだったっけ?
そして、気付く。
思い出せない。
あの話の結末を、あのストーリーを、あの登場人物の名前を。
私が貪欲に貪った数々の大切なものが、血や体液と一緒に流れ出てしまう。
ああ、だめだ。流れていかないで。
止めて。
誰か、私が散乱してしまうのを止めて。
どうか、私を。
願わくば、私という物語をどうか、繋ぎ止めて。
私を書き留めて。
このまま流れて消えてしまうのは嫌だ。
誰か……お願い、誰か……
私を、連れて行って。
物語の中に……
ああ、そういえば、こんなシチュエーションの物語が有ったような気もする。
何ていうタイトルだったっけ?
私の台詞は、なんだっけ?
【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ) 死亡 】
【H-6/温泉施設/一日目/日中】
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(大)、全身に裂傷、右太腿に刺し傷(要治療)
[装備]:なし
[道具]:デイバック、支給品一式@読子(メモは無い)、飛行石@天空の城ラピュタ、不明支給品(0〜2個)
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:傷の手当及び休息
[備考]:
※会場端のワープを認識しました。
※糸色、読子の死体は温泉施設内に放置されています。
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
429 :
転載:2008/01/03(木) 03:24:28 ID:/dKf92/1
2chパロロワ事典@Wiki
ギャグの人
http://www11.atwiki.jp/row/pages/252.html ハカロワ3に沸いた駄書き手・荒らし。
最近は頭文字の『G』、その頭文字から連想する『ゴキブリ』の呼び名で定着している。
ギャグの人という名は彼が投下した駄作SSに対する住人のコメントが「それはひょっとしてギャグでやっているのか!?」だったことに由来する。
投下した作品が余りにも酷い作品ゆえ、分規制を採用していたにもかかわらず誰からもリレーがされなかったことを逆恨みしてハカロワ3の荒らしを始める。
携帯等の複数端末から同時に荒らしに来るため、勢いがあって厄介。その勢いはハカロワ3の本スレをしたらばに追い込むほどであった。
なお、現在もハカロワ3の本スレはしたらばに存在するが、ギャグの人や一部の痛い住人・アンチの手により強引に葉鍵板にもスレが存在してしまっている。
その後、本2chパロロワ辞典wikiも荒らしたため、ここからもアク禁された。
(これにより、本wikiのハカロワ3や一部の項は編集規制が施され、ページの更新・修正をしたくてもできない状態となっている)
その後、交流雑談所にも降臨し、交流所荒らしを開始。バレバレな自作自演や煽り、コピペ荒らしを繰り返した。
特に自身をのけ者にしたハカロワ3を相当恨んでいたらしく、ハカロワ3の話題が挙がる度にしつこいくらい噛み付いてきた。
そのため、交流雑談所ではハカロワ3の話題をすることは一時期タブーとされ、まともな雑談やハカロワ3の話題は急遽立てられた交流所毒吐きスレで行われることになった。
なおこの時、ほぼ1日中スレに現れていたため「まるで1匹いたら30匹はいるという黒いアレみたいだ」等と毒吐きスレで言われたことにより『G』、『ゴキブリ』と呼ばれるようになった。
(実際、当時のギャグの人は一度スレに現れると深夜〜真夜中までスレを荒らし続けていたので、『高い生命力を持ちどこにでも現れる嫌われ者の代名詞』であるゴキブリに例えたのはあながち間違いではない)
ラウンジclassic@2ch掲示板にあるパロロワ交流雑談所は現在、ギャグの人のせいで機能をほぼ停止させられている。
現在の主な荒らし対象スレはアニロワ2nd。アニロワ2ndはG対策のため議論・感想・予約等をすべて避難所であるしたらば掲示板で行い、SS投下のみを2chスレで行っている。
キャプテン、勉強男、ギャグの人は合わせて『パロロワ三大荒らし』と呼ばれている。
ちなみに、同じ厄介者のキャプテンからも直々に『いらない子』呼ばわりされた可哀想な子でもある。
また、この三人の中で唯一『最悪板』にオチスレが立てられた不名誉な存在でもある。
ネカフェや漫喫、串等を多用する。
Gは、接続毎にIPが変わる回線を好んで使う傾向がある。
特に、以下の使用頻度が高い。
p*-air02hon32k.tokyo.ocn.ne.jp
softbank219206014168.bbtec.net
KD12502801*.ppp.prin.ne.jp
202-94-152-169.cust.bit-drive.ne.jp
んじゃあここでテンプレ議論再開だろう
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f3/304c83c193c5ec4e35ed8990495f817f.jpg 【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
↑ これ、ところで改造するの?
提案
時間表記に午前・午後は使うべきでは無いと思います
原則、24時間表記がベストではないでしょうか
たとえば、午前と書かれていても8時のことなのか午前中全部を指すのかこれではわかりません
記載内の混乱を避けるためにも、午前・午後の表記は無くしたほうがいいと思います
432 :
変更(提案):2008/01/03(木) 04:13:18 ID:H+XtVDJk
lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
若しくは3:00、9:00、15:00、21:00
もしくは両方(世界によって違う)
原則、6時間置き。『基本的に』以上の時間に運営者が「何か」発表を行う
普通、禁止エリアと死亡者、残り人数などを発表すると思われる(判断は地図屋に任せる)
放送は多分、基本的にはスピーカー。
何も指定が無ければ機械音声での読み上げでいいんでないかい
世界の創造主の判断によってはメールやインターネットなどでの閲覧も可としてもよい
(判断は地図屋に任せる)
lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
【作中での時間表記】(23時スタート)
1 子 23時 - 1時 深夜 宝瓶宮
2 丑 1時 - 3時 丑三つ時 磨羯宮
3 寅 3時 - 5時 黎明 人馬宮
4 卯 5時 - 7時 明け方 天蝎宮
5 辰 7時 - 9時 朝 天秤宮
6 巳 9時 - 11時 昼前 処女宮
7 午 11時 - 13時 真昼 獅子宮
8 未 13時 - 15時 昼過ぎ 巨蟹宮
9 申 15時 - 17時 夕方 双子宮
10 酉 17時 - 19時 夜のはじめ頃 金牛宮
11 戌 19時 - 21時 夜 白羊宮
12 亥 21時 - 23時 夜遅く 双魚宮
lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
変更点
・0時開始→23時開始(十二支を参考)
・夜・夜中・真夜中・深夜などの紛らわしい表記を削除
・子の刻・丑の刻とか書かれても判る奴とわからない奴いるから、24時間表記でもおk
放送
・世界の創造主(地図作る香具師)の判断である程度変えられる
・統一ルールは6時間置きということだけ
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{ノ `ヽリ| l │ i|
レ!小l● ● 从 |、i| もっと良いアイデアは、ないかい?
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ.i|
/⌒ヽ_|ヘ ゝ._) j | i/⌒)
\/:::::| l>,、 __, イァ|. {ヘ、_∧ もっと大募集にょろ!
. /:::::/| | ヾ:::|三/:::/.| |、_:::ノ
`ヽ< | | ヾ∨:::/ | |::イ
その23時変更というのは、23時じゃなくて0時でもいいと思われる
ただ、時間の区切りを子・丑・寅・卯・・・で分けるのは正解
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
↑
早朝・朝・午前とか何なのかわかんねーよ
まあ、丑三つ時・黎明 もどうだかという感じだけどさ
丑三つ時というのは違うぜ
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
1日を2時間ごとに区切り干支(深夜12時から午前2時までが子の刻。以下、丑の刻、寅の刻…と続く)で表現する方法が始まったのは戦国時代である。ただ、時間の最小単位が2時間では何かと不便なので(待ち合わせなどするにも
大変不便)、1時間を指す時は上刻、下刻で表現していた。このやり方だと、例えば「丑の上刻」であれば、午前2時
から午前3時までの間になる。
江戸時代に入ると「数呼び」という新しい方法が出てくる。これだと、深夜12時が九つとなり、2時間ごとに八つ、
七つ、六つ、五つ、四つと一巡し、お昼の12時に再び九つとなる。1時間を表現する場合は「半」という文字を付ける。
つまり、12時が九つ、1時が九つ半、2時が八つ、といった具合である。
江戸時代にもっと細かい時間を言う場合は、干支を使った呼び方を用い、干支と干支の間の2時間をさらに3つに分け
て(戦国時代は2つだった)、上刻(△時00分〜40分)、中刻(△時40分〜80分)、下刻(△時80分〜□時00分)と
呼んだ。これだと、例えば、「丑の上刻」と言えば、午前2時から2時40分までの間になる。
「草木も眠る丑三つ時」などと言う時は、干支と干支の間の2時間をさらにさらに細かく4つに分け、丑一つ(2:00〜2:30)、
丑二つ(2:30〜3:00)、丑三つ(3:00〜3:30)、丑四つ(3:30〜4:00)となり、丑三つ時は午前3時から3時半ということになる
。なお、子の刻を午後11時〜午前1時とする説もあり(広辞苑ではこちらを採用)、この場合は丑三つは午前2時〜2時半
の間ということになる。
http://homepage3.nifty.com/ponpoko-y/joho/toki.htm ////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
丑三つ時というのは完全に午前3時周辺の事を指すらしいから当てはまらない
考え方としてはいいかもしれないけど
438 名前:A 投稿日:2008/01/03(木) 02:12:30 HOST:KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jp
執拗ってどれくらいかな……?と思って過去レスを数えてみた。
そしたら気付いた。削除はされてる。
投下スレ10に空き容量が26kbほど得られました。十分活用できる量だね。
現スレでは削除無くても、そのうちまた削除して貰えれば、十二分にありがたい。
削除人さん有難う。
以下、過去2レスのデータを一応。
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ9
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1195822039 28-30,62-209,212,219,221,231,259,263,280-284,
306-311,316-323,335-336,356-361,373,380-389,417,431,
期間11/23〜12/12(20日) 計197/454レス 138/500kb
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ10
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1197690706 14-45,67-118,139,141-146,155,184-193,203-212,231-235,
258-261,281-292,336,348-353,359,369-371,405,407
(削除:314 337 406,425-428)
12/15〜12/28(14日) 計145/428レス 48kb/474kb
(あぼーん 7レス 26kb)
439 名前:A 投稿日:2008/01/03(木) 02:21:55 HOST:KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jp
っと、2レスじゃなくて2スレだった。
とりあえず、依頼は現状通りに、
問題有りと思われる書き込みを一通り依頼→どれが削除相当かは削除人さんが判断
ってことで良いのだろうか。
おおIDがAUだ
KHP059139089113.ppp-bb.dion.ne.jpって前もサブカルで暴れてたIDじゃね?
たしかこいつしたらばでも管理人やっててサブカルのアンチスレにまで入り込んで大暴れした
基地外だよ
>>432 金牛宮↓
ヽ,.ヽ.、_
.ヽ、 ` ̄`゙゙''ヽ、
.゙''―-、, ゙ヽ
゙ヽ, .゙i
:i !
-.、 ,、/‐--、.,_ ./ ,i
゙i ゙i ,.、r'"i゙!´ .! ,>-、/ ./
i、 | :! /゙=" :|i :|.,,ニ∧ :i, i ./
\ | :! /\ O i.i,/,、イ ゙i,゙i, ゙i, .ヽ, ,/
\,、.,_ | :i、 /゙ヽ,,=i、_,、r' ;/゚ノ゙-‐// ヽ、,゙フ
,イ, `゙゙'ヽ、.,_ ,ノ .//,-。-i゙´:)゙´´ i i, .゙i, ./
/´ i,ヾ;::::..... `゙ヽ< i'、.i゙i,゙''"ブi; ,r''⌒i,i,゙i, .゙i, __,,,,∠゙"⌒'
,イ \:::::::::.... `ヽ,ヾ゙ヽ, ,、ン''゙ _,r''"゙i;゙i,゙i, :i; _ .,、-‐'"´ ``゙゙'ヽ
/ i, ゙i,ヽ;、::::::::... `ヾi゙i,ヽ-‐'"__゙i .〉i;、-i;;;フ //'"゙゙/ ./ .,r‐''''''‐、
,/ ,/ii, ゙i, ゙i,ヽ,''‐-、;... ゙ヽ,-゙‐'´ ゙'v゙, i,// /'|,,/ / /⌒ヽ
/./i:| | i, :iヽ, ゙ヽ、, .\‐'" ゙̄ヽ、, ゙ヽ、,r―'、 λ゙i, `゙゙'ヽ、, i i,、. /゙´
./ ././j | :! :゙! ヽ, `ヽ、,ヽ, ゙'ヽ、,,_.| Y i, ゙i;゙'ヽ, ゙ヽ, i, j | !
/ /// i :! :| ヽ ゙ヽ,i_ ゙ヽ, ゙i, i、,) .,,、>、 ゙ヽ, ゙ー゙ .i, :i,
,;/.// ,! j i i, .,、-―''""'''''―---、、,,_.i ヽレ‐'゙ ,、、r'ヽ, ヽ, .ヽ,
// / ./ / i ./ .,、-――''''''――--、二゙''<, r'" _,,,,\ ヽ、
'シ'゙ / / / |'゙ / ,、-‐‐、 ,、、、_゙i, .゙i, ゙i, ./ .,,,,,,\ ゙'ヽ、
´ / / / i ./ i /゙' .ノ / ,.., ゙i,゙i, .゙! .゙!.! ゙ヽ `゙ヽ、,
,/ / / | :| .i, ゙iー'゙ ,ノ / i'" j i, .゙i, .i,゙‐=‐゙ ゙i `i.、,
_,,、、-‐゙ ,、r゙ / | :i ヽ、 `゙''''''''゙´,ィ ! .ヽ-'' i ゙i .゙i .i, .i,,-、゙
_,,,、、-'" ,、-'" i, ;i. `ニ''''''''"ノ j j | L_ i、 ゙ )
,,,,,,、、-‐''゙ i, i;. ./ _゙.) ノ / ,、-‐' ,j、__ ゙''ヽ、, `'''゙
::| i゙\, ./゙i, ヾ, .ヽ, `'‐''",/ .,.r'".,,、-‐'"´ `゙ヽ、 .゙ヽ,
ヽ!.゙i, `゙ヽ 、, / .\ \ .゙'―''" / / ,、-―-.、'"⌒゙'ヽ、゙ヽ, ヽ
、,,_!, i、 `ヽ、, ./ \ ゙ヽ、, ,/ / / ゙i; ゙'i, ゙i ゙-''"
439 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/03(木) 12:46:39 ID:LTB+w0TG
そんなひといましたねーw
なつかしいわあ
あ、どうせだから会場に時計塔作ろうぜ
カリオストロみたいな奴
441 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/01/03(木) 15:18:02 ID:bZiuA+wz
宝瓶宮、磨羯宮
とかなんで書いてあるの?
>>441 戦国時代の中国天文学において天球の分割方法の一つであった十二辰は、天球を天の赤道帯に沿って東から
西に十二等分したもので、この名称には十二支が当てられた。また、木星が約12年で天球を西から東に一周
することから、十二次という別の天球分割法における木星の位置が年の記述に利用されていたが、十二辰の
方向と順序に対しては逆方向であるため、紀元前4世紀ごろ、十二辰の方向に合わせるべく木星とは一直径を
境に逆回りに天球を巡る太歳という架空の星を考え、太歳の十二辰における位置で年を示す紀年法が使われる
ようになった。これが後漢以後に始まり現在まで使われている干支による紀年法の起源である。
また、12という数が1年の月数と同じであることから、月を表すのにも用いられるようになった。これを月建といい、
建子の月は冬至を含む月、すなわち夏暦の11月、周暦の正月である周正に置かれた。
さらに、時刻(十二時辰)や方位の表示にも用いられるようになった。正午(昼の12時)、正子(夜の12時)、
子午線(南北を結ぶ線=経線)、卯酉線(東西を結ぶ線=緯線)の称はこれに由来する。
十二支の各文字は、一説に草木の成長における各相を象徴したものとされる(『漢書』律暦志)。また、各十二支には
動物が割り当てられている。これを十二生肖と呼ぶが、日本では十二支という言葉自体で十二生肖を指すことが多い。
元々十二支は順序を表す記号であって動物とは関係がない。なぜ動物と組み合わせられたかについては、
人々が暦を覚えやすくするために、身近な動物を割り当てたという説(後漢の王充『論衡』)やバビロニア天文学の
十二宮の伝播といった説がある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E6%94%AF こういうことらしい
なるほど
じゃあいらないんじゃないか?
┃┌1 ┬2 ┬3 ┬4 ┬5 ┬6 ┬7 ┬8 ┬9 ┬10┬11┬12┬13┬14┬15┬16┬17┬18┬19┬20┐┃
┃A │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃B │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃C │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃D │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃E │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃F │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃G │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃H │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃I │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃J │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃K │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃L │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃M │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃N │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃O │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃P │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃Q │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃R │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤┃
┃S │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │┃
┃└─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘┃
横ずれは後で直すわ
あとはこれにマップを追加していくだけか
でもこの縦のズレどうにかならないかな
>>446 つ
┌1 ┬2 ┬3 ┬4 ┬5 ┬6 ┬7 ┬8 ┬9 ┬10┬11┬12┬13┬14┬15┬16┬17┬18┬19┬20┐
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │A
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │B
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │C
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │D
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │E
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │F
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │G
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │H
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ I
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ J
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ K
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ L
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ M
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ N
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ O
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ P
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ Q
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ R
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ S
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