【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 5【一般】

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1名無しさん@お腹いっぱい。
ここはローゼンメイデンの一般向けSS(小説)を投下するスレです。
SSを投下してくれる職人は神様です。文句があってもぐっとこらえ、笑顔でスルーしましょう。
18禁や虐待の要素のあるSSの投下は厳禁です。それらを投下したい場合は、エロパロ板なりの相応のスレに行きましょう。
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【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 4【一般】
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【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】
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http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173568505/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 01:31:25 ID:7451vkqD
31:2007/05/09(水) 01:31:40 ID:mzVP9d1S
間違えました。
直ちに削除依頼を出してきます。

板の住人の方々には大変ご迷惑おかけしました。
申し訳ありません。
41:2007/05/09(水) 01:33:04 ID:mzVP9d1S
また間違えてるし…orz
落ち着け俺。

エロパロ板の人達に謝らなければ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 01:35:58 ID:daQ4wt3u
ドンマイ
6名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 05:15:56 ID:tHWKWObT
クソ金糸雀と金糸雀ヲタ死ね
        __,,ゝ┼─┼====┐.        ''"´"'''::;:,,,      ヽr'._ r`γヽ./.゚;・.,'
        | □|   .| |:|ヾ二二二二二(ポ     ,,;;;;´."'''    //`Y. ,,‘ .゚;・.,'`ヽ
   _____|__,|_;||___,| |:|ル-┬─┘     ´''::;;;;::'''"´      i | ノi ノ_';;;∵\@
  |ヌ///   /   ~~|ミ|丘百~((==___     バゴーン       ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д;;。;∵ がじらぁぁぁぁぁぁ!
  └┼-┴─┴───┴──┐~~'''-ゝ-┤             `ー -(kOi∞iミつ
  ((◎)~~~O~~~~~O~~(◎))三)──)三);                (,,( ),,)
  ..ゝ(◎)(◎)(◎)(◎) (◎)ノ三ノ──ノ三ノ;*;∵                じ'ノ'
7 ◆LNZbyB1zfI :2007/05/09(水) 17:31:13 ID:701xqIzd
電波を受信してしまったので投下。まだ序盤ですけど。
8 ◆LNZbyB1zfI :2007/05/09(水) 17:33:56 ID:701xqIzd
「漆黒の翼」

ズキン...    ズキン...
背中から生えた翼の付け根に時折走る、鈍い痛み。
お父様の期待に応えられず見限られてしまったときから、
初めて自分の妹たちに出会い、自分の代わりとなる存在が作られたと知ったときから、
妹たちへの嫉妬と憎悪の心から生まれた漆黒の鴉のような翼が、華奢な背中を突き破って生えた時から、
延々と二百年以上もの間続いている痛み。

痛みが強くなる度に、私の脳裏に忌まわしい記憶が蘇る。
お父様に望まれて生まれ、愛され、見放され、そして捨てられた記憶が。
私はお父様に望まれてこの世に生を受けたはずだった。
初めて目を開いた時、最初に映ったのはお父様の優しい笑顔だった。
お父様は簡単に自己紹介され、私のことを、ご自分の名前から取ってローゼンメイデンの水銀燈と名付けて下さった。
お父様は、私に歩き方から紅茶の入れ方まで、何でも手取り足取り優しく教えて下さった。
私もお父様の愛情に応えようと、一生懸命教えられたことを学び、体得し、お父様のために尽くそうと頑張った。
お父様を喜ばせるために、歌を覚えたり踊りを覚えたりもした。
お父様を愛し、お父様に愛されることが、自分のこの世に生を受けた意味だと信じていた。
それなのに…。

日に日にお父様の表情に翳りが出るようになってきた。顔が笑っていても目が笑っていないことが多くなった。
お父様に笑っていただこうと、ますます私は尽くしたが徒労に終わった。
次第に螺子を巻いてもらえなくなり、呼び出されることもなくなり、ついには誰もいない物置部屋の椅子に放置されてしまった。
動くことも出来ず、ただ部屋の中を眺める毎日が、気が遠くなるほど続いた。
何故お父様は私を見てくれなくなったのか。何故?何故?
そればかりを延々と考え続けていた。

漆黒の衣装が灰色に見えるほどに埃が積もった頃、物置部屋の扉が開いた。
小さな人影がこちらを覗いている。誰何しようとしたが、生憎声は出ない。
人影はおずおずと部屋に入った来たが、すぐに私に気付き「ひゃっ」と声を上げて驚いていた。
すぐに気を取り直したのか、人影は私の傍までやってきた。窓から差し込む光に人影は照らし出された。
背丈は私よりも小さい。緑色の髪に黄色を基調とした衣装、厚底の靴。
「わ、私はローゼンメイデン第2ドール金糸雀なのかしら。貴方は、第1ドールの水銀燈お姉様なのかしら?」
人影は私を見て、大きな無邪気な声で自己紹介をした。
お父様は私以外にもローゼンメイデンをお作りになった?私の代わりこの子を作った?
心の奥底がざわつく。目の前にいる第2ドールとやらに対し、嫉妬の炎が燃え盛る。
「動けないのかしら?螺子が切れてしまっているのかしら。埃がたくさん積もってるから、とても古いお人形なのかしら?」
金糸雀と名乗った妹らしき人形は、無邪気かつ無遠慮に言いたいことを言ってくれる。
その時扉の向こうから声がした。
9 ◆LNZbyB1zfI :2007/05/09(水) 17:35:14 ID:701xqIzd
「金糸雀、金糸雀、こっちへおいで。こっちへ来て、またおまえのバイオリンを聞かせておくれ」
「は〜いお父様。今行くかしら〜」
金糸雀は返事をして出て行ってしまった。去り際「また、来るかしら。お姉様」と言った。
続けて扉の向こうからお父様の声が聞こえてくる。
「おお、おお、待っていたよ。こんなところにいたのかい。」
「ああ、この部屋には入ってはいけないよ金糸雀。私の恥を見ないでおくれ。部屋にある物は皆失敗作なのだから」
失敗作。私は失敗作。失敗作という言葉が頭の中を巡る。
私の何が至らなかったのだろう、どこが失敗だったのだろう。
哀しい。あれほど尽くしたのに。お父様に喜んで欲しくて一生懸命愛し、愛されるよう努力したのに。
泣けるものなら泣きたかった。涙を流せるのなら流したかった。しかし身体は動かない。
開いた目は、ただただ、虚空を眺めるだけだった。

次の日、金糸雀は予告していた通りやってきた。両手いっぱいに叩きや箒、ちりとり、雑巾などの掃除道具を抱えている。
「水銀燈お姉様とお話したいのかしら。でもお姉さまの螺子を巻く前に、お姉さまをキレイにするのかしら」
本当に無邪気な妹だ。そういえば私も、お父様に愛されようと一生懸命だった時はこんな感じだったかもしれない。
金糸雀は窓を開け放ち、私に積もった埃を叩きで軽く落とした後で、水に濡らして固く絞った布で丁寧に拭き始めた。
甲斐甲斐しく何度も水と布を取替えて拭いてくれたおかげで、小一時間後には、私の身体は随分見られるようになった。
しかし反対に金糸雀が埃だらけになってしまった。
「ふぅっ。キレイになったかしら。いよいよ螺子を巻いてみるのかしら」
金糸雀が私の後ろに回り、発条の螺子を背中の穴に挿し込み、ゆっくりと回した。
キリキリキリ…。キリキリキリ…。
螺子が巻かれるにつれ、四肢に感覚が戻ってきた。
思い切り伸びをし、内部の歯車の自動調律をすると、ほぼ問題なく動けるようになった。
正面を見ると埃まみれの金糸雀が目を輝かせて立っている。
私は金糸雀の持っていた布巾をそっと取り上げると、彼女の頬や髪、袖に付いていた埃を払ってあげた。
 螺子を巻いてくれてありがとう。それから、こんなにキレイにしてもらって…。
 貴方が初めてこの部屋に入ったときから、ずっと私は貴方を見ていたわ。
「お姉様が動いたのかしらー!改めまして、私はローゼンメイデン第2ドール金糸雀かしら」
 改めまして。私はローゼンメイデンの…最初のドール、水銀燈よ。よろしくね。金糸雀。
失敗作である自分の代わりに作られたのであろう妹を見るにつけ、どす黒い感情が胸の奥から沸き起こるのを抑えられなかったが
一方で自分を慕ってくれる彼女に対する淡い感情も芽生え始め、どうにか衝動を抑えることができた。
10 ◆LNZbyB1zfI :2007/05/09(水) 17:36:45 ID:701xqIzd
今回はここまで。
ローゼン日記よりも長くなるかも
11名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 18:37:04 ID:wYcPvQ9x
>>1乙です
期待上げ
12名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 18:43:38 ID:z+eF04qQ
>>1 乙です!
13 ◆vJEPoEPHsA :2007/05/09(水) 19:15:17 ID:Fu2NWjKE
保管庫更新しました
tp://library.s12.dxbeat.com/rozen/nomal/
14名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 21:45:19 ID:CsBIAVSO
>>13
乙です!こんなサイトがあったのですね!
とりあえず、前スレ604の続きです。

水銀燈は飲み干した。少し紅茶を少なく入れすぎたか。
「あっもうちょっと飲みます?」
「そうね…」
ヤカンを持った。ぬるくなっている。確か…真紅はぬるいお茶に対しては徹底的にブチ切れてたよな…やっぱ入れ直してきた方がいいか。
「ち、ちょっと待ってて!今入れてきます!」俺は部屋を飛び出し、台所へ。古い茶を捨てる。
もったいないが、銀様にこんな茶を飲ませるわけにはいかない。新たに紅茶を煎れる。そして部屋に戻り、またコップに注いでやる。
水銀燈は静かにそれを口に運び少し飲んでは、一息着き、また飲みを繰り返す。ん?しまったぁ!今は夏だ!熱いお茶はダメなのか!?
でもアニメって確か夏が舞台だった…だからこれでいいんだ。うん。俺は必死に自分を落ち着かせようと努力した。
俺は水銀燈を見つめた。水銀燈が大きなコップで飲むのを見ていると興奮する。
哺乳ビンを必死で両手で持ち、ミルクを飲む赤ちゃんを連想させる。
しかし、いくらかわいいと言ってもずっとこれを使わせると言うのは失礼だ。小さなティーカップが要る。
俺は大概、思い立ったらまず行動してしまう方だった。
気付けば立ち上がっていた。水銀燈はどうしたという顔でこちらを見上げている。もう後には退けない。
「ちっ、ちょっと出かけてくるよっ。す、すぐに戻ってきます!」
ああ、情けない。いつまで動揺しているのだ。俺は部屋を飛び出した。よし、ティーカップを買いにいこう!
外に飛び出し、また軽トラに飛び乗る。ダッシュボードに投げ捨ててある自分の財布を後ろポケットに突っ込んだ。
エンジンを掛ける。
「あ…俺金ねぇ!!」俺は発狂した。血の気が引く。汗が顎から滴り落ちる。運がいいのか悪いのか、母のクルマが家に入ってきた。
俺は軽トラから出、母の元に駆け寄る。
「おかぁ、金貸してぇな」普段は標準語を話すが、地元で地元の人と話すと不思議な事に方言になってしまう。
「はぁ?大学生にもなってぇ、親におこずかいおねだりかいなぁ。情けない。自分の金はどうしたねんな?またパチンコか!?」
断られるのは百も承知だ。しかし今は金が必要だ。
「ちっちゃうわ!」
何故親はこうして何でも知っているのだろうか。
「あんたなぁー」
母の説教が延々と続く。しかし、俺は心に…いや銀様に誓った。
パチンコは程々に、後先考えてやろうと。「負けるためにパチンコするんだ!」なんてもう言わない。
俺はまた一つ賢くなった。こうして人間は成長していくのだ。
「しゃーないなぁホレ」
気付けば母は壱万円を差し出していた。
「ありがとう!絶対返すわ!」
俺は車に戻った。よく考えると、こんなド田舎のスーパーにティーカップとか言うシャレたモノが有るのか微妙だった。
とりあえず行くしかない。四方八方山と田の道を、車を走らせていると右手に一件の農家が見える。
連れの家だ。その瞬間俺の頭に天才的な閃きの閃光が走った。クルマを路肩に止め、その家に入る。
家はやはり古びた日本家屋だ。鍵などというものは存在しない。
「おーい、おるかー!わしやー!」
勝手に玄関の戸を開ける。なんてあつかましいと思われるかもしれないが、田舎では普通だ。中から一人の男が出てきた。
「おー、帰っとったんかいな。久しぶりやのー、調子はどうや」
簡単に会話を済ます。
「それでよ、お前の家に昔、知人のヨーロッパ旅行のミアゲとか言ってコップと土瓶のセット持っとったやんな?」
「あー…そういえば…そんなんあったっけ?」
「あったわ!それを今すぐに貸してほしいねん」
「ええけど…何に使うんや?」
そいつは納戸を漁りながら言った。
「…水銀燈が家に来たんや…」
「水銀燈?体育館のあれか?あんなん部屋に付けたら明るうて目チカチカするやろ」
「はぁ!?ちゃうわい!いいから早く貸してくれ!まじ頼むわ!」
俺はそいつから、見つかったティーカップを貰うと一言礼を言い、その内飲みに行く約束をして軽トラに飛びのった。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 21:49:34 ID:CsBIAVSO

すぐに家に着き、早速それでお茶を入れる。モノが小さく繊細なのでゆっくりと二階の俺の部屋に運ぶ。
そぉーっと、絶対に水銀燈に気付かれないように襖を少し開ける。中の様子を確かめてから入るためだ。
中を覗いてみる。あれ?居ない…と思ったら水銀燈は窓に座っている。アニメのめぐの病室のシーンにソックリだ。
裏が山なので、家が立っている所は少し高かった。なので、外はそこそこきれいな景色が見えるはずだ。
ひたすら田んぼが続き、その先に民家がポツポツ見え、細い農道が縦横に走っている。さらに向こうには低い山がある。
今日のように天気の良い日は山の隙間から市街地と太平洋の水面が僅かに見えるはずだ。
不便な立地に俺は昔から嫌だと思っていたが、今は神様仏様に感謝している。
襖を開ける。水銀燈がこちらに気付いた。
「お茶を…」
ちょっと待て。よく考えたら水銀燈はお茶は3杯目。さすがにこんなに飲まないか。
俺は言い掛けた言葉を止め、ティーセットを机に置いた。水銀燈の元に近づく。
「あなた、本当によい所に住んでるのね」
水銀燈は景色を眺めながら言う。よかった。銀ちゃんはどうやら家は気に入ってくれたようだ。救われた気分になった。
いつのまにか日は落ちかけ、辺りは夕焼けに染まっていた。
水銀燈に目を移す。オレンジ色に染まった水銀燈…虫の音が心地いい。そよそよと風が吹き水銀鐙の髪を撫でた。
ため息が出る。なんて俺は幸せなんだろう。とにかく俺は神様に感謝した。
夕焼けはあっという間に闇に変わる。俺は部屋のライトを付けた。すると一気に外は夜になった。
水銀燈は窓から下り部屋の畳に座った。俺も座る。
「…」
痛い沈黙が続く。いったい…何を話せばいいんだ…アリスゲームの事か!?
アリスゲームと言っても俺の知識はアニメで得た知識のみだ。
だいたい、アニメでは水銀燈は真紅にボコボコにやられ、最後は燃やされたり、
さらには訳の分からない薔薇水晶とかいうドールにボコボコにやられた、なんて話出来るか!!でもこの沈黙なんとかせねば…
そういえば…アニメ内でジュンは真紅と出会った直後どう接してたっけ…
ジュンは真紅・雛苺、翠星石をものにし、さらにそれでは飽き足らず蒼や金にまで手延ばしてたよな。しかも人間の巴まで・・・
なんて奴だ。一体何股なんだ!?憎い。ジュンが憎い。
思考が脱線しかけたが、元に戻す。
ジュンはドールを手懐けるプロだ。あいつの行動を真似るのだ
しかし、一番最近見たオーベルでさえ半年前の話だ。第一期の話なんかもう忘れてしまっていた。
ふと思った。そういえばこの銀ちゃんって何銀だろう。なよ銀…ではないよな。
時計に目をやる。
もう部屋に入って40分が過ぎようとしていた。何か話さねば。銀ちゃんは窓沿いに座って真っ暗な外を見ている。
「あの…」
16名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 21:52:50 ID:CsBIAVSO
俺が切り出すと銀ちゃんはこっちに振り向いた。ドキッ!心臓が跳ね飛び、肋骨に直撃した。
「…なに?」
しまった!話題をまだ考えていなかったんだっけ!仕方がない。
「あの…」
そういえば俺は彼女の事をなんと呼べばいいんだ?水銀鐙?なれなれしい。
水銀鐙さん?何か変。銀ちゃん?論外。銀様?なんか…ねぇ…。
「あの、何とお呼びすれば良いのでしょうか。」
「わたし、最初に、水銀燈だと言わなかったかしら?」
「あ、じゃあ水銀燈と…」
「他に呼び名がある?」
「いえ、無いです。申し訳ないです。。。」
ああ、なんて会話だ…
何か話題は無いか?このまま沈黙を続ける訳にはさすがにいかないだろう。俺は意を決した。
が次の瞬間、腹が鳴った。気付けば夜8時だ。
銀様も腹が減っているに違いない。
俺は何か作るために、銀様に一言言ってから一階に下りた。やはり両親は出ていた。旅行とか言っていた気がする。
冷蔵庫を開ける。
「えーっと…ニボシ、鰺の開き、ほうれん草…ミズナ、大根…漬物に梅干し、小魚の煮付け…ハナマルハンバーグなんか作れっこなかった。
仕方がない。お弁当用冷凍食品を電子レンジでチンし、ご飯を盛って持っていく。
「あ、あの・・・水銀燈…」
呼び捨ては少し照れる。念のため最後に聞こえない程度に「さん」を付けた。
「あの、こんなつまらない物しか無いけど、良かったら食べて…」
「…」
銀ちゃんは少し臭を嗅いでから口に入れていく。モグモグと口を動かす様子は本当に愛らしい。みなに見せてやりたいくらいだ。
それにしても、アニメの冷酷銀様とは少し違うなと感じた。なよ銀ほどなよなよしてるわけではない…まぁいい。
正直、こっちの方が萌える。
「お茶ドゾー」
俺はお茶を差し出した。
そうこうしている内に夜も更けてきた。そろそろドールは寝る時間だったはずだ。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 21:54:49 ID:CsBIAVSO
ドン、ドドンドン!
外から炸裂音が聞こえた。
「あっ、そういえば!」
俺は思わず声を上げた。なんてタイミングだ。今日は花火があるのをすっかり忘れていた。
数日前に無理矢理別れた彼女と見に行くはずだったのだ。漫画や小説を見ているような、完璧なタイミングだ。
これは丁度いい。立ち上がり、不思議そうにこちらを見る銀ちゃんの手を引っ張り、俺は外に飛び出した。
「何!?離しなさい」
「いいから!とにかく来てみろって!」
俺は銀ちゃんを軽トラ…いや、バイクだ。ここはバイクがいい。帰り、花火の観客で道が混むからだ。バイクならスイスイ帰れるはずだ。
農業用機械がしまってある大型倉庫のシャッターを開ける。確か、親父のバイクがあるはずだ。
シルバーの米用大型冷蔵庫の横にバイクらしき物が見える。カバーが掛かっている。それを外し、外に出す。非常に重い。
「どう…やるんだろ・・・原付と・・・似てるよな。」
とりあえず適当にやってみる。
「バルルーン…ドッドッドッ…」何とかエンジンは掛かった。重低音が響く。運転の仕方は何となく分かる。
俺はハーフタイプのヘルメットを被った。そしてバイクにまたがる。
「ほら、銀ちゃん、ここに乗って!」
銀ちゃんはバイクを初めて見たかのように、呆気にとられた顔をしていた。しかしすぐに近寄ってきた。
「ち、ちょっとぉ、ぎ・・・」水銀燈は何か言おうとした。が俺は構わず
「ほら」
俺は銀ちゃんを抱き上げてバイクに乗せた。
そして、もう一個、艶消しの真っ黒のハーフタイプのヘルメットを手に取り、水銀鐙の頭に乗せた。
「きゃあ!何よーこれぇ!」
水銀鐙には大きすぎた。前が見えないらしく、ごねごねとヘルメットを触っている。…


なんか…








萌るハァハァ
18名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 21:57:30 ID:CsBIAVSO
「それを被らなきゃ危ないの!しっかり捕まれよ!」俺はバイクを走らせた。
「きゃあ!」
水銀燈はとっさに俺の背中に抱きついた。





やばい…かわいい…ハァハァ


何もない農道を飛ばす。前には既に花火が何発も上がっている。
「ほらっ、銀ちゃん、花火上がってるよ!」
…水銀燈の返事はない。俺は微妙に後ろの様子を伺った。
すると、彼女は片手でヘルメットを押さえ、もう片方の手で俺の体にしっかり抱きつき、花火を見ていてくれていた。
アニメでは絶対にお目にかかれないような笑顔だ。俺は感動で泣きそうになった。ていうか涙は流れていた。
笑顔に涙を流しながらバイク運転。まわりから見ればただの変人だろう。だがそんな事どうでも良かった。
調子に乗り、アニメ第三期は俺の話でいいのではないかとすら思った。
山の中腹の広場に着いた。結構人がいた。バイクを止め、俺は水銀燈の手を引き、森のなかに入っていった。
「ち、ちょっと、どこへ行くのよ!?」
「いいから、付いて来てみって!」
ズンズン林を進む。しばらくすると景色が開けた。

「ドーン!」
花火が目の前で上がった。
「な!ここすごいだろ!?俺が小学校の時に見つけた秘密の場所なんだ。」
19名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 22:00:59 ID:CsBIAVSO
〜半日前〜
「何で!?何でよ!訳わかんない!なんで!?そんな…いきなり…」
私は一度彼に会いたかった。会って、しっかりと話しをつけるのだ。こんな事、納得出来るはずが無かった。
私は急いで駅に向かった。よかった。何とか、日が暮れるまでには彼の実家に付けそうだった。
私は高校の時、何度か彼の家に行ったことがあったので、場所は知っていた。予想通り三時間後、彼の家に到着した。
「ごめんくださーい」
「あらー、久しぶりやねー」
中からオバサンが出てきた。私は精一杯の笑顔で感情を誤魔化した。
彼はさっき出ていったので、今は居ないという。すぐに帰ってくると思うので、彼の部屋で待っていろとのことだ。
私は階段を上がった。考えれば考えるほど怒りが込み上げてきた。勝手だ。そんなの勝手すぎる。
彼の部屋の襖を勢い良く開けた。
部屋は昔となんらかわらない様子だった。ある「人形」を除いて。
それは窓辺にちょこんと座らされていた。顔は何かを監視するように外を向いていた。
彼にそんな趣味があったかしら…
出会った直後、携帯の待ち受けが美少女アニメキャラで、少し引いた覚えがあったが、それ以降、何もなかった。
その人形は何か異様な雰囲気を発散していた。私は恐る恐る近づいた。
肌は大変色白で、とても人形の肌とは思えないほど生き生きとしていて美しかった。髪も絹のようにきめ細かい銀髪だ。
顔は文句の言いようが無い程整っていた。しかし全くの無表情だ。何を思っている顔なのか全く掴めない。
瞳と唇は血のように真っ赤だ。まわりが白いので、その赤は強調される。女の私でも本能的に興奮しそうになるほどだ。
彼女は視線を服へとずらす。それは黒を基調に、かなり細部まで丁寧に作り込まれ、背中に可愛い、小さな羽が生えていた。
目線を顔に戻す。







「ひっ!!」
20名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 22:04:12 ID:CsBIAVSO

私は飛ぶように部屋の端に後退った。
顔が笑っているのだ。あれだけ無表情だった顔が。目は見開き、口は左右に切れるようにニヤついている。
しかし、よく見ると、表情など何もかわっていないようにも見えた。やはり私の見間違えか…
私はとりあえずこの部屋から出たくなった。何か嫌な予感がするからだ。まるで、人形が生きているようだ。生きている?
「そんなわけ無いわよね…」あたりまえだ。
「そんなわけ…あるわよ」
「ひっ!?」
私はとっさに振り向いた。しかしさっきと何も変わりは無かった。
「私…疲れているのかしら…」
空耳を聞いたのはこれが初めてだった。
私は振り向いた。






「いゃーぁ!!」
私は叫んだ。しかし何故か声が出ない。あの人形は宙に浮き、私の行方を阻んでいるのだ。
殺される…私の体は本能的に怯えきっていた。
「あなた…何?」
その人形は私の顎に触れ、聞いてきた。
体がガタガタ震えてくる。私は腰が抜けて倒れこんだ。すーっとその人形も降りてきた。これは本当に現実なのか。
「もう一度聞くわ…あなたは…」
体かガクガクと音を立てて震える。恐い…可愛い人形なのにどこか冷酷な目つきだ。
そういえば…
彼がいきなり私を振った理由…もしかしてこの人形が原因ではないのか。
私は怯えながらも意を決して尋ねた。
「あなた…一体何なの?何?何が目的なの?」声が震えている。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 22:05:48 ID:CsBIAVSO
「あーらぁ、質問を質問で返すなんて…」
「私は…彼の彼…女よ。数日前までね。」
「そぉ。」
「私の質問にも答えてよ。あなたは何なの!?」
「何ってぇ…ただの彼のお人形さんよぉー。」
「何が目的で彼に近づいたの!?」
「…」水銀鐙は目を細め、彼女をにらみつけた。
「そんなに知りたぁいのぉ?」
水銀鐙は目を剥き、歯を見せずにニッと笑う。
「いいわ…あなたにだけ…教えてあげる」

・・・・・・


「何ですって!?そんな…そんな!ひどいわ!」
「…はぁい…おしゃべりは終わり。。悪いけど…あなたの記憶…一部消させてもらうわぁ」
「記憶を消すですって?そんな事…」体が動かない。声も出なかった。
その人形は背中から羽を一本出し、私の額に押し当ててきた。どんどん力が込められていく。痛い・・・
気が遠退いていった。


帰り道。気づけば銀ちゃんはバイクの上で俺に抱き付いた状態でぐっすり眠っていた。
銀ちゃんの行動一つ一つが叫びたくなるほど萌えた。萌え死にそうだ。
家に着くとヘルメットを外してあげ、ゆっくりと銀ちゃんを抱きかかえた。
スー・・・スー・・・と寝息を立てて眠っている。



やばい・・・これは・・・やばいぞ・・・これは可愛すぎる。
こんなのを見せられておれはどうすればいいんだ!だれか教えてくれ!
22名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 23:46:16 ID:kyIHt/9O
駄目野郎だが行動力と頭の回転の早さは褒めるべきところなんだろうな
23kkk:2007/05/09(水) 23:49:20 ID:y0Z3bV3W
最高にGJ!
24名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/10(木) 10:08:36 ID:2bO4meYd
銀ちゃんカワイイ!
アニメ3期は俺の話しがおもろいwwwwww
25名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/10(木) 23:00:36 ID:Uo13OINi
>>14-21
ドールの銀ちゃんと変に現実味のある話の内容が嫌味なく面白い。
第三キャラの俺と彼女の名前を決定して出していない所にも好感が持てる。
つか実は実話?w
26名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 02:36:42 ID:BspvqBBc
皆さんレスありがとうございます!
ご存知の通り、前スレに投稿した一個目のSSは、ドールが一人づつ死んでいくと言う非常に惨いものでした^^;
で、最初その続きを書こうと思ったのですが、あの黒さに自分自身、嫌気がさしてきました。
なので今回、あえてそのま逆の方針「極力明るく」を目標としてみました^^;
27名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 02:42:53 ID:VFiO7F8E
これは絶好のピチカート日和の予感
28名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 02:45:54 ID:TfXBDxMH
GJ ナイス銀さま!
最近のローゼンメイデン小説の良作を挙げていかないか?
29名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 02:46:46 ID:VFiO7F8E
×これは
○この流れは
30名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 03:25:21 ID:1W0m3aKu
>>27
意味がわからない。おまえは何が言いたいんだ?
31名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 05:22:39 ID:vAXYT/Cj
kitaiage
3221:2007/05/12(土) 00:46:06 ID:DtwX7cvg
微妙に(エロ注)的内容が一部含まれる続きになってしまいました・・・
投下しても大丈夫でしょうか。もちろん、18禁にはならぬよう、出来る限り努力しておきましたw
一応、許可をもらいたいです。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 00:51:29 ID:0O5DmvKc
よし俺が許す。GO
34名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 07:09:06 ID:SAV2pBtu
まさかとは思うが銀様に手を出す気ではあるまいな
党員がみんなでお前の家に遊びに行くぞ
35名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 14:15:58 ID:KD0lTOby
wktk
36名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 15:09:18 ID:xElYXrfh
早く続きを!
37名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:06:18 ID:DtwX7cvg
では投下〜
俺は自分の部屋に入り、水銀燈をカバンの中にそっと寝かせた。
彼女の手の平を重ねて、その上に彼女の頭を乗せてやる。アニメで見たドールの寝方を再現してやるのだ。
…俺は銀ちゃんを見つめた



…たまらない。

反則だ。

この可愛さは。

…ちょっとくらいなら…触っても…いいよ…な

俺は手始めに水銀燈のホッペを指で触ってみた。





…ぷにゅっ






まさに上記の擬音語通りの感触がした。ハァハァ
心臓の鼓動が早くなる。あ、あれ?どうやら俺の心臓は下半身に血を送っているようだった。
ホッペを触ったあと、つぎ触るところと言ったら…あれだよな…
俺は目線をほっぺから首へ、そしてさらに下げていく。目線はふっくらとした膨らみの部分に到達した。
その部分に手を近づけていく。その瞬間、
「ううーん…」水銀燈が寝返りをうった。俺は驚いて手を引っ込めた。
「俺はいったいなにやってんだ」
俺はカバンを閉じた。
そして立ち上がり、机に座った。パソコンを起動する。暗い部屋にパソコンの液晶画面の明かりが灯る。
そして2ちゃんねるを開き、水銀燈スレの一つに入る。やはり数日前に書き込んだレスはもののみごとに美しく華麗にスルーされていた。
「どうにかしてこの幸せを皆に自慢してやりたい!」
ふと、俺の視界に雑誌が目に入った。
「そうだ…」
俺は「ローゼンメイデンのSS」で検索する。
「よかった。やっぱりあった。」
俺は「ローゼンメイデンのSSスレ」に入った。今までの出来事全てを文字で残すのだ。
俺は小説なんか学校の現文以外で読んだ事なかった。基本的に文字を読むという辛気臭いことはあまり好きでなかったからだ。
だから、慣れない長文を書くのには大変苦労した。同時に改めて日本語の難しさというものを思い知った。
全部書きおわった頃にはもう朝方になっていた。目蓋が重い。まだ誤字脱字がわんさかあるだろう。
もういい…ちょっと寝てから・・・修正だ・・・俺は意識を失った。
38名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:13:33 ID:DtwX7cvg
「はっ!?」しまった。俺はそのまま寝てしまっていた。
「水銀燈!?」
水銀燈は俺の目の前、つまりパソコンを置いてある机のうえに堂々と膝をたてて座っている。
くそっ!もう少しで見えそうなのに!惜しい!俺は心のなかで叫んだ。
「あらぁ♪やっとお目覚めぇ〜??」
なんか今日の銀ちゃんはやけに色っぽい。というか大胆だ。どうしたのだろう…
「あ、うん…パソコンを見てたら寝てしまったみたい…」
「ふぅ〜ん…それより…あなたぁ昨日…わたしにぃ、なにかしたでしょぉ〜?」
「えっ!?」
やばい、もしかしてバレてたのか!?
「そんなに私とぉ…やりたいの?」
水銀燈は俺の顎に触れ、顔を近付けて言った。何かを企む、文字通り小悪魔のような笑みを浮かべている。
こういう銀ちゃんも…悪くないかもハァハァ
俺の心臓の鼓動が早くなっていく。体中の血液が凄まじいスピードで循環し、体温を上げていく。
もう既に水銀燈には、俺に下心があった事はおそらくばれているだろう。
そしてありえない事に銀様自らお誘いしてきたのだ。ここは正直になっておくほうが良いだろう。
「えっ…あ…そう…です・・・やりたい・・・・・・です」
俺がそう言った途端、俺の目の前にいる銀ちゃんはすぐさま、さらに近寄り、いきなり首を傾げ、腕を俺の首に巻きつけると唇を奪った。
銀ちゃんは貪るように…やばい…激しい…
俺は必死になった。すると今度はその状態を維持したまま水銀燈は俺の片手を手に取り、自らの胸へともっていった。
俺の心臓は破裂寸前だ。とうとう下の部分がおっきしてきた。
正直、これは…相当やばいぞ…この、エロゲーのような展開…
「んーっ、ぱぁ…」
いきなり、水銀燈は俺の唇から離れた。その時、チュパッとやらしい音がなった。
「んふふ」
水銀燈は舌でペロと自分の唇に付いている唾液を舐めとった後、手で自分の唇を拭った。
エロい…エロすぎるぞ銀ちゃん!!
水銀燈は下をみた。そしてニッと笑う。
「あらぁ〜これはなぁに?」
水銀燈は俺の股間をパンツの上から握った。
「ひっ!」俺は情けない声をあげた。
やばい…今の俺の選択肢…気付けば俺は手に二枚のカードを持っていた。

1.やられるがまま。銀ちゃんに全てを委ねる。
2.今すぐに水銀燈の手を振り払い、押し倒して無理矢理犯す。
さあどっちがいい!!
39名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:17:25 ID:DtwX7cvg
ここは冷静に考えるんだ俺!人生最大の転機!いや好機!
そうだ、ここは1が無難だ。2だと、せっかくの銀ちゃんとの仲が崩壊する恐れがあるからだ。
しかも、逆に俺が殺される可能性だってある。俺は「されるがままになる」というライ○カードを選んだ。
「ここぉ、かたぁーい…ふふ♪」
もみもみもんでくる。今度はズボンの中に手が入ってきた。
「うわぁ」
「そんな顔しちゃってぇ〜かわいいぃ〜…ハムッ」
水銀燈はそれを口にくわえた。
「ふぉ!」
俺は絶頂した。









バッ!!!



「…」




何だ?俺は…
俺は瞬時に状況を把握した。
「はぁ!?やっぱり夢落ちかよ!くそが!!」俺は絶叫し、拳を机に叩きつけた。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:21:10 ID:DtwX7cvg
気分を落ち着かせる。涎が滴れて机に溜まっている。俺はティッシュを取り、机を綺麗にした。
ふと外を見る。今日もギラギラと太陽が空気を熱している。蝉もいつものように大合唱だ。
時計を見る。朝の9時を回っていた。
俺はトイレに行こうと立ち上がった。そういえば銀ちゃんはどこだ。俺は部屋を見回したがどこにも居なかった。
カバンはある。窓が開いている。心地よい、そよ風が吹きこんできた。どっかに空中散歩にでも出かけたのだろう。
昨日の出来事は夢ではなかった。目の前の銀ちゃんのカバンが何よりの証拠だ。
俺はうれしかった。本当に、本当にこれは現実なのだ。ホッペを摘むと痛いのだから。
…体がベトベトして気持ち悪い。風呂に入りたい。
すると銀ちゃんが窓から入ってきた。
「あ、おかえり」
「あら、起きたの」
水銀燈はチラとこちらを見た。が、すぐに目を逸らされた。
やっぱ銀ちゃんは無言だ。
「そうだ!」
俺は思い立った。こんなに暑いのだ。川に泳ぎにいこう。もちろん、銀ちゃんと!
「なぁ!銀ちゃん!」
「なに?」
「今から川に泳ぎに行かん?」
「えっ・・・川?泳ぐの?」
「うん、川。渓流だから水が綺麗で冷たくて気持ちいいよ。な!行こ!」
「…」
返事がない。
「…嫌?」
水銀燈は首を左右に振った。髪も左右に揺れる。この仕草もまたかわいい!ハァハァ
「なら行こ!」
俺は水銀燈を抱き抱えた。
「汗…臭いわ…」
「うわわぁ!ごめん銀ちゃん!」
俺はすぐに銀ちゃんを下におろした。
「ちょっとシャワー浴びてくるよ!」
俺は風呂場に入った。
シャワーを浴びる。こんな汗の臭かがせて悪かったなぁ…俺は少し罪悪感に苛まれた。
「ん?」
風呂のスリガラスに黒いものが移っている。
銀ちゃんがそこで待っていてくれているのだ!
おぉ俺は…本当に銀ちゃんのミーディアムになったんだなぁ。俺は感激した。嬉しくてたまらなかった。
根元の木が腐ってるようなボロい風呂場も今はどんな超高級ホテルのバスルームよりも美しく見える。
「銀ちゃん、あがるからちょっとそこ退いてー。」
影がスッと消える。
「ありがとう」
俺は風呂から出、脱衣場で服を着る。
そして脱衣所を出る。引き戸の横に水銀燈はいた。
「じゃっ!行こか!」
「ええ」
水銀燈は満面の笑みを浮かべた。
41名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:37:44 ID:DtwX7cvg

何で川まで行くのか。もちろん、バイクだ。その理由は…まあ…あれだwwwwww
また倉庫からバイクを出すためにシャッターを開ける。そして米の冷蔵庫の付近に行く。そうだ…俺はいい事を思いついた。
「おーい、水銀燈ー!ちょっと来てみ!」
「なぁに?」
外で待っていた水銀燈は中に入ってきた。
「こっちこっち」
「何よ」
「これはな、お米を貯蔵するための冷蔵庫なんだけど、この中は涼しくて気持ちいいんだ。中に入ってみない?」
冷蔵庫と言っても巨大で、中に何もなければ大人一人位十分に入れる。
また、温度も丁度よく、真夏の灼熱地獄を体感したあとにこの中入ると最高だ。
俺は巨大な観音扉を開ける。心地よい冷気が出てくる。俺は水銀燈を抱き抱え、冷蔵庫の中に入れた。
「ほらっ涼しいだろ?」
「ほんと!気持ちいいわぁ」



・・・バタン!
俺は冷蔵庫の扉を閉めた。

「ちっちょっとお」
中から水銀燈の声が聞こえる。
俺は必死に笑いを堪え、沈黙を守った。


「ねぇ、冗談はよして。出してよ」
くっくく…ダメだ。笑えてくる。


「ね、ねぇ…そこに居るのでしょ!?」
俺「…」


「出して…早く出してっ!ねぇ!出して!」
俺「…」ドアを押さえ沈黙を続ける。


「・・・出して…早く…」




「ん?」しばらくして声が聞こえなくなった。さすがにやりすぎたか。
俺は扉を開けた。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 21:40:48 ID:DtwX7cvg

「あ…」
水銀燈は冷蔵庫の中で三角座りし、シクシクと泣いていた。
「ご…ごめん…」これはやりすぎた。
水銀燈はこちらに振り向いた。涙を流して俺を見つめてくる。
うっ…こんな時になんだが、これは…d(゚∀゚)カワイイ!!

水銀燈はまだ俺を見つめている。
・・・・・・
俺はイイ!と思ったことを後悔した。本当にかわいそうに思えてきた。
俺は水銀燈を抱き上げた。
「悪かった悪かった。まじごめん…」
俺は水銀燈の頭を撫でながら言った。
「馬鹿!ほんとに…真っ暗で恐かったん…だから…」
水銀燈はヒックヒックと嗚咽していた。
俺はバイクのエンジンをかける。1100ccの巨大なエンジンが唸りを上げた。
俺は昨日と同じ様に水銀燈をバイクに乗せ、出発する。
しばらく走る。いつの間にか山に入っている。時々、小さな集落がある。
山のなかの道を走るのは本当に気持ちがいい。マイナスイオンむんむんだ。
水銀燈とは…話しにくい。俺は無言で川を目指してバイクを飛ばした。
43名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 23:43:01 ID:zzP9s0bF
>>37-42
GJ!銀さん可愛いし読みやすくて素敵です。続き期待!


以前めぐのお見舞いとか
銀ちゃんクッキーとか似顔絵とかのSSを書かせて貰った俺から、
SS職人さん達と読者の方たちへプレゼント。
ttp://rozen.no-ip.org/uploader/img/rozen00410.zip
(※トロイメント未視聴の人は注意)

書き手と読み手双方が
何らかのモチベーションを得てくれればいいかなぁ、と思う次第です。
一日くらいで消しますんでお早めにどーぞ。
44kkk:2007/05/12(土) 23:59:13 ID:Ed0vhCCt
>>37-42
(・∀・)イイ! GJ!
45名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 00:07:41 ID:C+cLhNgQ
妄想を現実化しているというより現実を妄想化しているな

>>43
もろたthx
46名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 00:19:16 ID:1pJbVruR
GJすぎる
>>45
意味わかんね
47名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 00:20:29 ID:46U1+I/x
>>43
異常に重いんだが
ダウンロード速度264bps
48名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 11:38:27 ID:A0KeleDg
タダでこんなに良いものが読めるとは…
レスを見るとローゼンメイデンはまだまだ需要が有るのがわかる
つくづく連載終了が悔やまれる
いや、スレ違いだなスマン
だが言いたかった
49名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 18:56:21 ID:4jnp7bW0
>>42の続きです〜
しばらく走っているとトンネルが見えてきた。俺はこの道を通るといつもワクワクする。それを抜けるとダムが見えてくるはずだ。
下からダムのせき止め?を見上げると、そこそこな迫力がある。その近くの道を通る。
「ほら、銀ちゃん!あれがダムだよ。すごいだろ?」
銀ちゃんに返事は無い。
よほど怒っているのか…
山のクネクネ道をしばらく走ったあと俺はアスファルトの道から舗装がされていない脇道に入る。すると急な下り坂が表れた。
危ないので俺はバイクからおりた。銀ちゃんもヘルメットを外してやり、バイクから下ろしてやる。
「この先に川があるんだ。だいたい10分くらいで着くよ」
俺は重いバイクを押しながら森の木のトンネルを歩いた。
すると道にスバル・インプレッサが止まっている。知り合いのクルマだ。
木漏れ日がメタリックブルーのボディーに反射し、すこし綺麗だ。が、後ろにそそり立つ巨大な羽はいつ見てもダサい。
なぜこんなもの付けるのか俺には理解できなかった。
眼前に川が見えてきた。バイクをとめる。川の幅は測ったことは無いがパッと見、4、5メートルか。
もうちょっとあるかもしれないし、ないかもしれない。川自体は小さく見えるが、深さは結構ある。
深いところで3メートルはゆうに有るだろう。水は極めて透明だ。全く濁りはない。底までくっきり見える。
流れはそんなに速くない。だがぼけていると流される。川辺には大きな石、小さな石がいっぱいある。
どうやってやってきたのか人間より大きな岩もゴロゴロある。
「転ばないように気を付けてね」
俺は水銀燈に注意をうながした。
どこからかバシャバシャと水の音や声が聞こえる。
「やっぱ来てるか…銀ちゃん、こっちだよ。」
俺は後ろを振り向いた。
足場が悪いので銀ちゃんは手間取っていた。
俺は銀ちゃんの元ヘ行き、抱き抱えてやる。
「よーし、ここは人がいるからあっちにしよう」
俺は銀ちゃんを抱えて川を登る。
「ここらでいいだろ」
俺は場所に着くと水銀燈を下ろしてやった。
暑い。暑すぎる。俺は川に入りたくてたまらない。我慢できなくたった俺は服を脱ぎ去り、下の下着一枚になり、川に飛び込んだ。
「うー!冷た!」
非常に冷たい。夏なのに水はギンギンに冷えている。冷蔵庫で冷やした水より冷たいかもしれない。
底を見ると魚がいる。オイカワか、ヤマメ・アマゴ・イワナだろう。カジカもいるようだ。
「銀ちゃん!きもちいいよ!早く入って来てみろって!」
銀ちゃんは靴を脱いで裸足の状態で躊躇している。
そうか。ドレスで泳げるわけがない。
あ!そうだ…俺にまたもや閃きの閃光が走る。
俺は川から出る。
「ほら、銀ちゃん早く」
「でも…」銀ちゃんは服をゴネゴネと触っている。
「そんなの脱いじゃいなよ!」ハァハァ
「えっ、でも・・・」
「ここには誰もこないから大丈夫だって!」
「ホント?」水銀燈は少し羞かしげに上目遣いで聞いてくる。
「もちろん!俺が保障する」
「わっわかったわぁ」
銀ちゃんはおもむろに服を脱ぎ始めた。
50名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 19:03:49 ID:4jnp7bW0
「よ、よし、準備はいいね?」
水銀燈は下着姿になった!これは…アニメにも無かった姿!下着姿の水銀燈も…いいぞハァハァ
「なっなにじっと見てるのよ」
「いや、別に…」
俺は急いで目を逸らした。
「ただ、銀ちゃんかわいいなーって思って」
「なっ!……」
「……ありがとう…」銀ちゃん顔真っ赤。
「さて行くぞ!」俺は水銀燈を抱き抱え、川に向かって走りだした。
「ちっちょっと!」
そういえば水銀燈って水に濡れても大丈夫なのだろうか。
そういえばオーベルでは海みたいな所に沈んでいっても大丈夫だったよな。サブザブと水のなかに入る。
「冷たぁ〜」銀ちゃんが言った。
「なっ気持ちいいだろ?」
「ええ!とっても」
銀ちゃんは嬉しそうだ。
「ここは岩壁になってるだろ?あそこを登っていって頂上から飛び込むときもちいいんだぁ!」
上流から下流を向いて左側、つまり俺たちが歩いてきた所は石がたくさんあるだけだ。そして森が続いている。
対して右側は断崖絶壁の岩壁だ。5メートルはあるか。
その岩壁に登るために俺は銀ちゃんを離した。
その瞬間、
「きゃあ!」
ブクブクと沈んでいくではないか。よく考えたら銀ちゃんは人形だ。浮くわけがない。俺は自分の愚かさを呪った。
「待ってろ!いま助けに行く!」
水深は・・・3メートルとちょっとだ・・・よし。俺は急いで潜る。
が、流されて少しづつ銀ちゃんから離れてしまう。流れに逆らいながら数メートル潜るのは以外と辛い。
くそ!もうちょっとで届きそうなのに!次の瞬間
「うっガポッ!」
俺は足をつった。去年の受験期間から運動不足が続いていたからだ。痛くて俺は思わず水を飲んでしまった。
俺はどんどん沈んでいく。苦しい。もがいてももがいても水面は遥か上だ。俺はパニックになった。
苦しい!死にたくない!苦しい!助けて!誰か!意識が遠退いていった。
51kkk:2007/05/13(日) 19:13:56 ID:+THeIoxg
52名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 19:27:57 ID:1pJbVruR
これは金払ってもいい
53名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:12:12 ID:4jnp7bW0

「ん…死んだのか?」
そうだ、俺は溺れたのだ。情けない。








何かを忘れている。。。





「銀ちゃん!!」俺は飛び起きた。
「あら♪やっとお目覚め?」
銀ちゃんは横に座っていた。どうやら、川の外にいるようだ。
「えっ、銀ちゃん…助かったの?」
「ええ、あれくらい」
「よかったぁ〜。あ、そういえば、俺は…」
「か、感謝なさい…」
「銀ちゃんが助けてくれたの!?」
「…」
「ありがとう!銀ちゃん!それと…何も知らずに深い所まで連れていって…ごめん・・・
しかも助けに行った俺が溺れるなんて、情けないね。。。男失格だよ。」
「でも・・・私、嬉しかった。。。それと、私も忘れてたの…自分は人形だから泳げないってこと。わるかったわ…」
暗い空気になった。せっかく遊びにきたのに。
「そうだと思ったよ!銀ちゃんが悪いって!」俺は努めて明るく言った。
「なっなんですって!?」
「はいはい、冗談だよ!」俺は水銀燈のデコをこついた。
「なっっ!」銀ちゃん、また顔真っ赤。
「そだ!釣りしない?」
「…釣り?」
「うん、この川には魚がいるんだ。焼くと旨いぞ!」
「ほんと!?」
ん?銀ちゃんは魚好きか?
「ちょっと待ってて。釣り竿借りてくるよ」
俺は走りだした。
54名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:17:40 ID:4jnp7bW0
「そんな調子のって走ったらまた足つるわよ!」
「だいじょーぶー!そだ、銀ちゃん、服濡れてるだろ?俺のシャツ着といていいよ」
服の濡れた銀ちゃんもいい感じなので惜しいが・・・
「やぁーよ。あなたが一度着た服なんか」
「素直じゃないなぁ」
俺はそう言いながら川を下った。
来たとき居たやつはまだ遊んでいた。元気なものだ。
「うーっす、久ぶりやなー」
手前で何かしていた一人に声をかける。
「おー、久ぶり!誰かと思ったやんけ。帰っとったんかいな。連絡くれよー」
「あー、悪い悪い、色々忙しかったねん」
「あっ、丁度ええわ。おまえもこっちこいよ。」
「悪い!今日はあかんわ。親戚の子の相手したってるねん。マジだるいし。」
適当な言い訳をしておく。
「そうか…しゃーないな」
「悪いな。でよ、お願いやねんけど、釣り竿持っとらん?もし持ってたら貸して欲しいねん。」
「あー、あいつが持っとるかも。おーい!釣り竿貸してやってよぉー!」
「釣り竿?」向こうにいた一人が言う。
「誰がぁー?」
「こいつやー!」
「おー!久しぶりやんけ!おまえもこっち来いよ!」
「親戚の子と来てるんやってよ!」
「まじ?」
「ごめんなー!」
「釣り竿なー、わしのインプのトランクに入れたーるわ。インプの場所わかる?」
「あー、わかるわ。来る時見たし。ありがとーな!遅ーなったら、また家に返しに行くわぁ!
あ、そや、炭もちょっと欲しいわ…無いやんな?」
「あー炭はたぶん無いわー…。」
「わかった。ありがとうな!」
「おう、またな!」
「おう」
俺は片手をあげ、別れを告げたあと森に入っていく。
車を見つける。俺はインプのトランクを開け、釣り竿と釣具一式を取り出した。
「銀ちゃん待ってるかな」俺は急いだ。
「おまたせー!」
おっ、嫌とか言っておきながらしっかりと俺のシャツを着ている銀ちゃん。
「遅かったわね」
「うん、ちょっとね」
「いま用意するからちょっと待ってね。」
55名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:21:11 ID:4jnp7bW0
俺は釣り竿を延ばし、先端の紐にライン(透明の釣り糸)を付ける。
そして右手、左手、口を使い鉛製の重りや針、蛍光色の紐である目印などなど必要なものを順々に付けていく。
渓流用の餌釣り仕掛の完成だ。銀ちゃんは俺の作業を横で無言でジッと見ていた。
「あなた、以外と器用ね」
「そうか?釣りする人ならこれくらい誰でも出来るよ。」
俺は餌となる白くて小さな幼虫を針に刺した。
「うっ気持ち悪い…」
銀ちゃんは顔を逸らした
「あはは、餌釣りなんだから仕方ないよ…さて、こっちだよ。」
俺は釣れそうなポイント(釣り場)を探す。水銀燈はしっかりついてくる。
「あそこがいいな」
俺は釣れそうな「おちこみ」を見つけた。川が小さな滝?状になっている部分で、少し水深が深くなっている。
魚はおちこみに落ちてくる餌を食べるため、ここに寄ってくるのだ。
俺はさっそく投げ入れた。

…十数分後…

「釣れないわね…」
「あっれー?おかしいな…」
俺は場所を移動したりしながら粘った。
「ホントに釣れるの?」
「釣れるよ!見てろ!デカイの釣り上げてやる」






諦めかけていたとき・・・
「おっ…キタ!でかい!」俺は上手くアワセる。
パチャン…
「あらかわいい」
手のひらサイズのアマゴだ。天然のアマゴは模様が大変綺麗でかわいい。
俺「…」情けないorz
俺は針を外し魚を逃がしてやる。
「あら、逃がしちゃうの?」
「まだまだ小さいからね。」
「ふーん…」
俺は釣りを再開した。釣りは持久戦だ。焦ってはまず釣れない。
銀ちゃんの前でおっきいの釣って凄い所見せてやる!
56名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:24:02 ID:4jnp7bW0




諦めかけていたとき・・・
「おっ…キタ!でかい!」俺は上手くアワセる。
パチャン…
「あらかわいい」
手のひらサイズのアマゴだ。天然のアマゴは模様が大変綺麗でかわいい。
俺「…」情けないorz
俺は針を外し魚を逃がしてやる。
「あら、逃がしちゃうの?」
「まだまだ小さいからね。」
「ふーん…」
俺は釣りを再開した。釣りは持久戦だ。焦ってはまず釣れない。
銀ちゃんの前でおっきいの釣って凄い所見せてやる!


さらに十数分後・・・
「おっ!でかい!!」
竿の引きが前と全く違う。
バシャ!銀色の体が見える。
「うお、でけー!鱒だよ銀ちゃん!」
「そ、そう」あれ?銀ちゃんの声が遠くから聞こえる。
「銀ちゃん、何でそんな離れてるの?」
「なんでもないわよ」
「ふーん」わかったぞ、銀ちゃんは大きな魚が恐いんだな。
「ほら、見てみなよ!おーきいだろー?40センチはあるな。」
俺は魚を持って、水銀燈に近づく。
「どうしたの?銀ちゃん。ホラ!」
俺は銀ちゃんに魚を投げる真似をした。
「きゃあ!」銀ちゃんは両腕で顔をかばった。
「冗談だよ!」
「もう!」銀ちゃんはふくれた。これまたかわいい。
その後は、調子よく釣れた。もちろん銀ちゃんにもやらせてあげた。
「そろそろ日が傾いてきたね」
「そうね」
俺は川辺の木陰に腰をおろした。
銀ちゃんもその横に座った。夕方の風が気持ちいい。
「おもしろかった?銀ちゃん」
「ええ、とっても!」
「なんか俺ばっか楽しんでた気もするけど・・・」
「そんな事無いわよ。」
「そう、よかった!」
57名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:29:17 ID:4jnp7bW0
・・・・・


「ねぇ…」
水銀燈が切りだした。
「キスして」
「えっ…」俺は動揺した。これは現実か!??ばれないようにホッペの下の方を軽くつねってみた。痛い。
「ねぇキスしてよ」水銀燈が誘っている!!!まだ出会って二日目だぞ!?
「…」キスか…嬉しいが…緊張するなぁ…俺は顔を近付ける。
「!!」だめだ。俺は昨日の夢を思い出してしまった。ああ、ダメだ。変な妄想が頭を駆け巡る。
仕方がない…俺は顔を水銀燈のホッペに進路変更し、一瞬だけキスした。
「なーんだ。つまんない」
水銀燈は目を開け、そっぽを向いた。
「そうだ!」水銀燈は腕を差し出した。
「今度はここにキスして」
「ここに?」
「ええ。あなたがここにキスすると私と契約をかわしたことになるの。」
「契約?」辺りは夕焼けに染まっていた。虫が鳴いている。
「深い意味は無いわよ」
「そう」キタぞ!俺はついに正式な水銀燈のミーディアムになるんだ!俺は興奮を押さえ、キスした。


俺は釣った魚を小さなクーラーボックスに入れた。
そして帰宅の途につく。バイクを走らせる頃には辺りは真っ暗になっていた。
「家に着いたらこの魚、焼いて二人で食べようね」
「ええ!」

こうしてこの一日は終わりを告げた。
58名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:32:31 ID:4jnp7bW0
水銀燈と出会って3週間が立っていた。
その間、俺はずっと銀ちゃんと一緒に過ごした。色々な所に行き、遊んだ。喧嘩もした。
ドレスもいいが、外に出てもおかしくないように、今の女の子らしい服を買ってあげたりもした。
俺にとってこの3週間は宝物だった。








楽しい事というのは長いと信じていても思いの外、早く過ぎ去る。









終わりは突然やってきた。
確か夏休みがもう終わろうとしていた頃だったか。明後日には実家を離れようとしていた時期だと思う。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:39:34 ID:4jnp7bW0
今日は特にすることが無かった。と言うよりなぜか体がだるくてしかたない。何もやる気が起きないほどだ。疲れたのかな…
「あ〜」
俺は畳の上で、扇風機の前で涼んでいる。
エアコンなどというハイテク機器は無かった。戸全開だ。庭から中が丸見えだ。
銀ちゃんは縁側で本を読んでいた。
「ちょっと、静かにしなさい」
「はぁ〜〜い」扇風機で声が震える。
「ん?」
やけに目が霞む。擦っても擦っても治らない。なんだ?力が出ない。
しばらくするとだんだんと意識が朦朧としてきた。視界が曇り、グルグルと回転し始めた。
「ん〜なんか体が…」
「あら、」
本を読んでいた水銀燈がこちらにやってきた。
「銀ちゃん…?」
眠くなってきた。
「なんだか…眠いんだ」
「でしょうね」水銀燈は微笑んでいる。でしょうね?どういう意味だろう。
「へ?」俺は銀ちゃんに尋ねた。
「あなたはね、今から私に殺されるの。」
「は?」意味が分からない。
「私は自分の目的のためにあなたを利用したの」
「利用?」声に力が入らない。
「そう。私はあなたの命を奪って力を得るの」
一体なんの話だ。
「何を言ってる…んだ?…今まで…」
「今まで一緒に仲良く暮らしてきたって?そんなの演技よ。あなたから確実に力を得るためのね。あなたってホント馬鹿ね。
私は昔から人間が大嫌いなの。残念だったわね。騙されるあなたが悪いわ。」俺は必死に水銀燈を見つめた。
「私にはね、あなたと違ってアリスゲームに勝つという宿命があるの。
その目的を達成するためにあなたを利用したの。馬鹿なあなたは私の思ったとおりの反応をしてくれたわ。
おかげで簡単に契約にこぎつけ、あなたのエネルギーを私に送るための回路を作れた。」
よくわからない。ちょっとした事を考えるのでも一苦労だ。
簡単に言えば、銀ちゃんは俺の命を奪って自分が生きるための糧とすると言っているのだな。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:42:11 ID:4jnp7bW0
「そう…よかった…ね」皮肉を込めて言ったわけでは決して無い。
「はぁ?あなたってホント馬鹿ね。私はあなたを殺そうとしているのよ。わかる?あなたは今から死ぬの。」
俺にとって、水銀燈と出会うまでの人生は本当につまらない物だった。何の夢も希望もなかった(持たなかった)
俺は大学なんか行く気は全く無かった。しかし、親に行かされていた予備校の先生や学校、両親に猛烈に進学を勧められ、
気付けば大して何もせずに某国立大に入学していた。法学部に入った理由はただなんとなくだ。
そして大学生活は「つまらない」の一言で片付けることができた。
何の目的もない勉強は苦痛でしか無かった。退学を真剣に考えた程だ。俺にとって人生はすべてが物足りなかった。
何をしてもすぐに飽きた。前の彼女とも、彼女が高校の時、一方的に接近してきたので、ただなんとなく付き合いはじめただけだ。
やはり俺は何とも思っていなかった。その証拠に別れた時は何のためらいも無かった。そんな時だ。彼女か表れたのは。
たった一ヶ月程だったが彼女は俺に一生分の喜びを与えてくれた気がした。いや、俺の場合、それ以上かもしれない。
「キミに…殺されるなら本望だよ…俺の命をキミが…使ってくれる…の・・・だろう?
俺が…キミの…幸せに役立つなら…こんな命…いくらでも…差し出せる…よ」
今のこの俺があるのは彼女の存在があったからなのだから。
水銀燈は驚いた顔をした。そして…
「ハハハッ!なぜ!?なんであなたはそんなに馬鹿なの!?」
水銀燈は口を大きく開け、笑っている。




「…」
61名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:43:45 ID:4jnp7bW0
「なぜあなたは…そんなに…こんな私なんかに…優しいのよ…」






気付けば水銀燈は泣いていた。どうしたのだろう。俺は何かまずい事でも言ったっけ。
「水銀燈…泣かないでよ…僕はキミのそんな顔は…見たくないよ…」俺の意識はみるみる遠退いていく。
同時にとてつもない幸福感に満たされていく。これで水銀燈と一緒になれるのだ。



「ごめんね…ごめんね…」ん?何か聞こえる。水銀燈?
君が言っているの?なぜ?


62名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 20:46:36 ID:4jnp7bW0
「んーっ…」
気付けば俺は意識が戻っていた。だが体はだるいままだ。関節が痛い。
「…ごめんね…」
壁にもたれ、足を広げて座っている俺の横に、水銀燈は俺に頭と体をもたれさせるように、座っている。
「ごめんね…私…ごめんね…」
俺は力を振り絞り水銀燈の頭を撫でた。まだ頭はボーッとする。
「なぜ…君が謝るの?なんで…泣くの?」
「…ごめんね…私も…あなたが好き」
「…そう…ありがとう。銀ちゃん。嬉しいよ…」
「私ね、とっても楽しかった…あなたと過ごした日々…私の…宝物よ…?」
意識が徐々にハッキリしてきた。体力も回復してくるのが分かる。視界の曇りも消えてきた。俺は横にいる水銀燈をみた。
俺の脇にもたれ、うつむいている。
「あれ?」確かに目の曇りは取れた。しかしすこし水銀燈が白っぽくというか薄く見える。
「おい、水銀燈?」俺は水銀燈をゆすった。


グシャ…


「それ」は脆くも崩れた。

「へ?水銀燈!!」俺は叫んだ。
どこからか水銀燈の声が聞こえる。
「はじめてだったの。こんなにやさしくされたの…嬉しかった…」
俺は窓を開け水銀燈と叫んだ。どこに行くのだ水銀燈。早く戻ってきてくれ。
「ねえ、私の最後の望み、聞いてくれる?。」
最後!?そんな…嫌だ。嫌だ最後なんて。離れたくない。せっかく…まだ出会ったばかりじゃないか…あんまりだよ。ひどいよ…
俺は水銀燈の名前を呼んだ。いい年して泣きながら呼んだ。しかし返事は無かった。水銀燈が戻ってくることは


もう無い。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 21:04:07 ID:Jl8AxkLM
>>62
全俺が泣いた
64名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 21:44:04 ID:9vkGP5A3
友人との会話が奇妙にリアルだな
65名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 21:54:12 ID:4jnp7bW0
今、やっと俺は、出会ったその夜から書いていた日記を小説の形にしたものを、かなり省略はしたがを投下し終えた。
結局、彼女の願いは何か分からなかった。が、俺は思う。水銀燈の分もしっかり生きよう。これが彼女の願いなんだ。そうに決まっている。
今、手元に銀ちゃんが着ていたドレスと鞄がある。
いつまでも銀ちゃんを側に置いておきたいという理由から捨てれずに、残しておいたものだ。
週末、実家の倉の奥に片付けに行こうと思う。



どうでしたでしょうか。
感想なんかいただけるとうれしいです・・・
また、「パクリだ!」的な事言われない事を願っておりますw
66名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 22:39:14 ID:oCJiiEUu
切なくていい!
こういう書き方もありだなと思い知らされた。また書いてくれ。
後、インプださい言うな!w
67kkk:2007/05/13(日) 22:43:34 ID:+THeIoxg
最高。GJ!
68名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 22:54:31 ID:OLYdsq2i
>>66
ところでインプはどう?
                 いいですね
( ´∀`)            (´∀` )         (・ω・ ).。o ~(・・・・・・・)

                       走りますよねぇ
( ´∀`) (´∀` )          (・∀・` )


走らんよインプは   走らんよねぇ              ?
( ゜Д゜)    (゜Д゜ )             (´・ω・`)


NAインプって亀だよな。   そーそー重いしね。
( ´∀`)         (´∀` )           ゛(・ω・ )


内装は軋むし   馬力は無いしWRX以外は
プラスチッキー  偽インプってか?     インプって酷いんだぁ?
( ´∀`)  (´∀` )              (・∀・` ))))


あんだとコラ!?   インプはいい車なんだよ!ゴルァ!     ???
( ゜Д゜)        ( ゜Д゜)         ((((’〜’;)
69名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 23:29:05 ID:1pJbVruR
もう、神認定してもいいか?
70名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 00:27:23 ID:9/oBJlVm
ノーマルスレ初の神職人認定age
71名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 01:34:21 ID:8/Pc388g
>>65
GJ!短期間でここまで話を展開できるとは。
とても面白かったし、主人公視点ですんなりの話に引き込まれました。
その文章力に脱帽です。

ただ、あまり褒めてばっかでは書いた人も本意では無いと思うのでちょっとだけ指摘。
あくまで私の個人的な意見ですので、読み飛ばしていただいても結構です。

まず、これは始めから読んでいて感じたことですが、水銀燈があまり水銀燈らしくない気が
しました。>>59でなんでらしくない行動をとっていたかは一応の説明がなされていますが、
その分>>60以降の水銀燈と主人公とのやりとりをもう少し書き込んで彼女らしさを前面に出したほうが
良かったんじゃないかと、水銀党員の私としては思いました。
全体を読み返してみても>>58以降が少々端折り過ぎの気もします。
せっかくここまでを細かく描写していたのですから、最後もじっくり書かれた方が良かったのではと。
あと、主人公視点で書かれているので、終わりももう少し余韻を持たせて書くと尚良いと思います。
それ以外は文句なしです。お疲れ様でした。
次作も楽しみにしてますよ。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 01:48:21 ID:w+i2vrHW
>>65
GJ!
面白かった!


正直>>58を読むまでシリーズ化を期待していた俺がいた
73Rozen Maiden LatztRegieren プロローグ:2007/05/14(月) 02:09:57 ID:wSZh4ySF
0

水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、そして…第七ドール。
これら七体の薔薇乙女 - ローゼンメイデンと呼ばれる自らの意思を持つ生ける人形は、
天才といわれた人形師ローゼンが究極の少女アリスを目指して作られた試作品といえたとこでしょう…
究極の少女とは美しさか、存在か、心か、何をもってしての究極なのか
私は夢の中でずっと、ずっとそれを思い出そうとしています…
ローゼンは最初に水銀燈を作ったが、アリスではなかった。そして、二作目、三作目…どれもアリスではない。
ついに彼は七作目を作り終えたところで人形作りをやめてしまい、姿を消してしまった。
では、何故七作目で止まったのか…?

七作目には依然としてアリスになれなかったものの、その鍵となるものを見出せたからか
それとも七体というところに意味があるのか

"7"にはそれは幾何学的にあまりに沢山の意味を持っていますが、
"割り切れない気持ち"、"さらなる探求"がこの場合には適するところでしょうか…
それは7が全円の360度を 1、2、3、4、5、6、7、8、9 の中で唯一割り切れない数だから

アリスへの割り切れない気持ちと、アリスへのさらなる探求…

ここで、私からあなたにしつもん。
ローゼンは薔薇乙女七体に彼女らの魂となるローザミィスティカを"7つ"に割ってそれぞれに与えました。
なぜローゼンはよりにもよって、割り切れない7を選んだのでしょうか。これでは均等に分けられません。
そこにはローザミィスティカとアリスに関わる秘密が姿を隠しているのです…
74Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/14(月) 02:12:50 ID:wSZh4ySF
初めて書いた小説です。あげてすいません。
アニメ第二期の後の話ですが、雛苺、蒼星石も復活しているので設定をある程度無視しています。


1

鞄の中で眠りに就こうと目を閉じた真紅は、今日の出来事を思い出していた。
お父様を名乗って現れた一人の人間は実はその弟子で、第七ドールを名乗って現れた薔薇水晶もローゼンメイデンでは無かった。
昨日のアリスゲームは、全て夢だった。
だから、それまでに倒されたドールはお父様の手によって直してくださった。
一度体を水晶に串刺しにされ、生まれて初めてジャンクというものを味わった晩だったが、真紅の気持ちは暖かかった。
もう一度アリスを目指しなさい。お父様はおっしゃった。でも、アリスゲームだけがアリスになる方法じゃない。

他に道はある。

これは他のドールにも伝えられた言葉だろうか、真紅は思った。
翠星石や、雛苺、金糸雀、そして水銀燈。
もし水銀燈にも、お父様がアリスゲーム以外にも道があることを教えていたら…
私はもう、水銀燈と戦わずにいられるのか。

彼女は今頃、何をしているのだろう…真紅は急に強烈な眠気に襲われ、眠りに落ちた。

視界が闇に閉ざされている。
真紅は不安を感じた。何もみえない。普通なら、今頃は自分のフィールドで一人紅茶を飲んでいるはずなのに。
次第に闇はゆっくりと薄らぎ、僅かながらうっすらと風景を表し始めた。
真紅の不安はいよいよ焦燥に変わってきた。明らかに私のフィールドではない。
薄暗い、人気の無い廃墟も同然の…教会。空間の両側には、一つ残らず破壊された信者席がやりたい放題に放置されている。
ステンドガラス張りの窓から入ってくる光は極度に少ない。その一部に、薔薇が描かれているのが目に入った。
そして教会の正面には、大きな十字架が立てられている。
真紅はその瞬間息を呑んだ。十字架のすぐ下にいる人物が下を向いて呆然と立ち尽くしていたからだ。
十字架をそのまま逆さにした逆十字の印を標されたドレスが目をつく。
そう、彼女だ。水銀燈…!。
下に俯いたまま身動きひとつしておらず、自分には気付いていないらしい。
一瞬、真紅はその場を離れたい衝動に駆られたが、何かの力が勝手に真紅を前へと押し進め始めた。
いや、違う。
これは全く違う人の視線を自分が見ているのだ…だから自由が効かない。
視界はついに水銀燈の目の前へと迫ると、ゆっくりと水銀燈は顔をあげた。
その瞳から憎悪と殺意の赤い光が差して真紅が身を凍るような恐怖を感じたとき、突然視界全体を真っ白なフラッシュが覆った。
75Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/14(月) 02:14:00 ID:wSZh4ySF
何がおきたのか分からないのだが、今真紅は飛んでいた。
数本の黒い羽と共に。いや、黒い羽のすぐ後を追うようにして飛んでいる。水銀燈の羽だ。いまだ自分の視線ではないらしい。
黒い羽はまっすぐ軌道を変えることなく飛び続けた。やがて黒い羽は何処を目掛けて飛んでいるのかが見えてきた。
真紅は声を張り上げたが、自分の耳に何も聞こえてはこなかった。黒い羽の行く先には、自分自身がいる。
真後ろを向いていて、背後より迫る水銀燈の羽に気付いていない。距離がみるみるうちに縮まっていく。
やめて!真紅はもう一度声にならぬ叫びをだしたが、真紅に黒い羽がまさに刺さろうという直前で全く別の視点に切り替わった。
竜巻。すぐ目の前の竜巻が地面をえぐりながら直進し、今度は水銀燈を飲み込もうとしている。
この竜巻は金糸雀の技で起こしたものだ。またしても、竜巻が水銀燈に到達する直前で視点が切り替わった。
それからも、次から次へと事が成熟する直前で視点が切り替わっていった。
翠星石の植物が雛苺を捕らえる直前…
蒼星石のはさみが金糸雀を切る直前…
さらに視点が切り替わると、今度は紅い花びらが目の前に写った。これは自分のものだった。
視点は花びらの動きに沿って、まっすぐ同じスピードで追いかけてゆく。今回は長い。
ゆっくりと目の前の障害物をぎりぎりで避けて視界が開けると、何も知らずに一人飛んでいた水銀燈が目に飛び込んだ。
突然の攻撃に水銀燈はこちらを向き、恐怖に満ちた顔を覗かせた。
やめて!
いまや花びらは水銀燈の胸にむかって一直線にむかい、ほとんど着弾したも同然だ。だが、またそこで視点が切り替わった。
雛苺の蔓が翠星石を絡め取る直前でまた視点が切り替わる…
一体誰の悪ふざけなの!
だが、次の光景がさらに真紅を戦慄させた。
真っ白の薔薇の茎。どのドールのものか思い当たらない。
茎はまっすぐのびてゆき、その動きに沿って視点はまっすぐ直線に進んでいった。
その茎の先にいた人物は一人の人間だった。お父様!白い茎は戸惑うことなく人形師のもとへとのびていく。
そのまま視点が人形師のもとへ突っ込もうとするところで、視界はゆっくりと闇に閉ざされていった。
76Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/14(月) 02:15:13 ID:wSZh4ySF
2

「……はっ! あ、痛ッ…」
これまでになく突発的な目覚め方をした真紅はその勢い余って鞄に頭をぶつけるようにして飛び起きた。
「はぁ…!っはぁ…」
まだ呼吸が整えらない。今まで見た中でも最も恐ろしい夢をみた。
アリスゲームの夢。いままで楽しげな表情ばかり見せてくれる雛苺も、優しげな表情を見せてくれる蒼星石も、
アリスゲームの中では全てを変えてしまう。みんなの恐怖に駆られた表情が頭を離れない。
自分の攻撃で恐怖に慄いたあの水銀燈の表情も。

そして夢の中でかい間見えた、お父様の姿。でも、やっぱり顔まで見ることは出来なかった。
お父様は何者かに襲われたのではないだろうか、一瞬真紅はよからぬ予感を覚えた。
あの白い茎。一体…

夢の記憶を辿っていくうち、序盤で廃れた教会にいる水銀燈が憎しみに満ちた瞳で見上げてきたのを思い出し、真紅は身震いした。
あの瞳はやはり自分に向けられているのだろうか…

自分は姉妹の水銀燈をジャンクと罵ったことがあるし、実際にジャンクにしたこともある…

しきりにあらゆる罠を仕掛けてくる水銀燈にいつも命がけな日々を強いられた真紅だったが、失って初めて分かったのだ。
いままでいた姉妹がいなくなってしまう寂しさと辛さを。
それからは、しばらくくんくん探偵を見ても、本を読んでも、みんなと紅茶を飲んでも全く楽しい気分になれなかった。

だから、水銀燈が復活した時は本当に嬉しかった。

しかし、水銀燈は前と同じく、いや前にも増して真紅や他のドールにしきりにアリスゲームを仕掛けようとする。
全身を焼かれ一度ジャンクにされたことで今水銀燈が持つ真紅への憎しみはかつてより大きいはずだ。
先週、水銀燈は薔薇水晶と手を組んでドール達全員をアリスゲームへと巻き込んだ。
次は一体どんなことを仕掛けてくるつもりなのか…
このままでは、また同じことが繰り返されてしまう。だが、真紅は硬く決意していた。

もう姉妹は失わない。自分は戦わない。私は、私なりの方法でアリスゲームを終わらせる。他にも道はあるのだから。

気持ちを落ち着かせ鞄から出ようとしたとき、
翠星石と蒼星石 - それぞれ左右の目の色が異なる双子のドールが - 部屋へ入ってくるのが見えた。
「珍しいね真紅。いつも決まった時間に起きる君が…。何かあったのかい?」
真紅は部屋の素朴な時計を見やった。午前9時34分。
「そうね…なんといったらいいのか」真紅は起き上がり外から鞄を閉じた後、顔を落とした。「アリスゲームの夢をみたわ」
双子の二人に鋭い緊張感が流れた。蒼星石がまじめな顔つきになって問い掛ける。「それはどんな?」
真紅の顔はみるみる暗さを増すかのようだった。
「最初、水銀燈の羽が背後から私に飛んできた。それから、みんな戦って…夢の中では誰も傷つけられなかったけど、
私は水銀燈を攻撃していた…あの子に胸に向かって私の花びらを放っていた。
それはローザミィスティカを奪おうとしていること、私はあの子を殺そうとしていたのよ!」
真紅は悔しそうに言った。「あんなこと私は望まないのに!」

19世紀時代の真紅と水銀燈…、
蒼星石は真紅に話してもらったことを思い出した。この二人は訳あって決裂している。あの話を聞かせて貰えたのは、
自分が愚かにもあの時アリスゲームすら知っていなかった水銀燈を真っ二つに断ち切ってしまったからに違いない。
真紅は続けた。「最後に、お父様を見たの」
「えっ」「お父様を?」二人は驚いた。
「お父様は、何者かに襲われていた…白い薔薇の茎のようなものに。何者かはわからない」
真紅はようやく顔をあげ、双子の方を向いた。その瞳は悔いと不安で弱々しかった。
「蒼星石、翠星石…一体何がおきているの?」
77Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/14(月) 02:16:36 ID:wSZh4ySF
3

広大な劇場と、照明に照らされた豪華な舞台に、ローゼンメイデン第二ドール・金糸雀が立ち、
手持ちの楽器であるバイオリンを劇場に向かって演奏し始めた。
これ程までに夢舞台という言葉が似合う素晴らしい劇場があろうか。
ところが、金糸雀の演奏の聞き手となるはずの観客席には、誰も座っていない。それどころか、金糸雀以外に人の姿もない。
それは、ここがnのフィールドで、また金糸雀のフィールドでもあったからだった。
金糸雀はそれでもただただ演奏を続けた。決してうまいとはいえない演奏かもしれないが、バイオリンを弾くのは大好きだった。
これは自分という存在の創り主お父様の大事な贈り物。
自分が全てのローザミスティカを集めてアリスとなったら、お父様に会ってバイオリンを聴かせて差し上げるつもりだ。

その為にも、お父様のためにいつもこうして練習するかしら!

そうして今日もただ一人バイオリンの演奏を劇場に響かせていると、
突然観客席の内の最前席に光の粒が何もないところから現れ、下へと降り注いだ。光はやがて形作り、ある人影を作る。
人影は席にゆっくり腰掛け、演奏を聴く姿勢をとった。
金糸雀の演奏する手が止まった。見覚えのある、優しい人影だった。でもそんなことって…
「お…おとう…様…?」恐る恐る、金糸雀は人影に向かって声をかけた。
人影の返事はなかった。光は勢いを増し、金糸雀の舞台側まで光り輝いた。金糸雀の視界が一瞬光に埋もれる。
「お父様…!」金糸雀は叫んだ。光がやむと、人影は既に姿を完全に消していた。
一瞬の出来事。そしていつもの、自分ひとりだけの空間の戻る。

金糸雀は悲しい気持ちに襲われた。そうだ、お父様はアリスを待っている。私はアリスゲームに勝たなくてはならない。
全てのローザミィスティカを集めて。この私の演奏で、他のドール達を蹴散らして。
再びバイオリンを手を掛けたとき、思わぬことが起こった。
弦を引いても、全く音が鳴らない。よく見ると、バイオリンの方の弦に何かが絡まっている。
「どうしたかしら、ピチカート」
金糸雀は不思議な顔つきをして、弦に絡まったものに手を触れた。
罠だと気付いた頃には手遅れだった。
いつしかそれは手を蔦って全身に絡まり、金糸雀の身動きを完全に封じた。鞭を思わせる素早い動きだ。
「く、苦しい!」
金糸雀の叫びは誰の耳にも届かなかった。数秒の後、金糸雀は地面の中へずるずると引き込まれた。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 02:42:40 ID:cvf8XP3q
>>65
乙!この切ないような満足したような読後感は久しぶりだ!
また機会があったら来てくれ!
79名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 02:48:00 ID:cvf8XP3q
もしかして割り込んじゃったかな・・・
ID:wSZh4ySFさん、スマン!
80名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 03:32:52 ID:u6xWgdeK
>>65
乙!!これは良かった!
確か小説2作目だよな?
これが才能というやつか…
81名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 07:40:56 ID:6s2tRVWC
>>43
調子こいてんじゃねーぞ無能が 氏ね
ワケわかんねーんだよ二度と来るなボケ

>>65
すっげーイイよ!天才ってお前みたいなのを言うんだな!
あと6体もローゼンメイデンいるんだから残り6人の「俺」の話も当然期待してるぜ
82名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 07:47:38 ID:JWg7K9ra
>>65乙。
しかしそんなにベタ誉めするほどのSSか?
もちろん書き手は悪くないし、大変GJなのだが。
読み手のレベルが下がったのか、単に過去スレのSSを読んでいない新しい人たちが多いのか。
83名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 08:22:35 ID:6s2tRVWC
質の低い過去SSなんてどうでもいいし大事なのは今だ
65はSS書き始めて2回目らしいじゃねえか、それでこの腕前は天才だろうが?
84名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 09:20:18 ID:DdAl6MrJ
>>77
シリアスものに飢えていたところだ。GJ!

>>82
出来は悪いが、感覚の目で見れば問題ない。考えるな、感じるんだ
85名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 12:29:58 ID:OSdjsA6I
>>77
こういう重いSSを待っていた!GJ!
続きに大いに期待。

>>82
何事にも流行というものがありまして。
今は>>83のように>>65氏のようなのが好きな読者が多いだけじゃないか?
そんな気にするほどのことでもないような。

あと、忘れ去られてる>>7-10
早く続きを投下しないと蒼い子みたいに本当に忘れ去られるぞ。
86名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 13:54:43 ID:9aXcfPED
消えてるから分からんのだけど、43って結局なんだったの?
目立ちたがりの自己厨宣伝?
>>65
自分が読んだローゼンSSの中では一番でした。
淡い気持ちと、切ない現実感が押し寄せてきて泣きそうになります。
是非また書いてください、待っています。
87名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 15:34:19 ID:ezXVKSyC
昔ので言うなら、ピンクハウスのやつと翠マフラーのやつは良かったな
ジュンの性格変わってたけど、上手い心情描写だった
88 ◆xLJAc4vOZM :2007/05/14(月) 15:44:56 ID:k5US6CPc
今までトリップ付け忘れてました(爆

うぉー!みなさん、お褒めの言葉有難うございます!!!自分には
もったいない言葉です(滝汗)涙が噴出すほどうれしいです!!!
>>71
正直、こういうレス待ってました!!w水銀燈らしくなかったですか。。。orz
>>58以降ですよね。。。絶対誰かに指摘されると思っておりました^^;
休みの内に完結させようと思っておりましたので、少々話が突っ走りすぎというか急ぎすぎたと思います。自分で読み返してみても
かなりこれはダメだと思いました。
もうちょっと、工夫次第で最後、面白く出来る余地があったなと後悔しております。。。

次回も、もし気が向けば何か書きたいと思います。
89名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 18:28:11 ID:wSYJMDLY
43は


光の螺旋律の絵コンテ
90名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 18:30:03 ID:OSdjsA6I
>>88
へー。やっぱりSS書きってのは褒めるばっかじゃ満足しないものなんだ。
具体的な評価や指摘も欲しいんだね。
そんな謙虚な姿勢にますます期待!
91名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 22:46:45 ID:8/Pc388g
保管庫見れないよ?なんで?

64 名前: ◆vJEPoEPHsA [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 07:29:44 ID:ypwhmDEY
URL貼り忘れていました、すみません。
tp://library.s12.dxbeat.com/rozen/
92名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 22:51:10 ID:8/Pc388g
>>88
そういうことでしたか…。
何でも終わりが一番難しいんですよね。
次は焦らずじっくり練って書いてみてください。
期待してますよー
93名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 23:13:51 ID:OSNTfozF
>>88
GJだ!
もう一回、シリーズの一番最初から読んで泣いてくる。
ちうか、新しいシリーズをぜひとも書いてほしい。
さっきも書いたが、俺はアンタのSSのためにこのスレに来てる。
正直言って、原作者に承諾得て、正式に執筆するのを奨めたいくらいだ。

もう一度言おう。
GJだ!!






>>89
ウソはいけない
43はウィルス
94名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 23:32:23 ID:u6xWgdeK
俺もそう思た。
話のなかにもあったが、リアルにアニメ3期は>>88のSSでいいと思うw
95 ◆vJEPoEPHsA :2007/05/15(火) 01:19:44 ID:vUfxNYBS
>91
なんだか保管庫(で使っているサーバ側)に問題発生しているようです。
X-BEATのトップにも行けなくなっていてよく分からないのですが、
今のところURLの一部を dxbeat.com → x-beat.com と置き換えるといけるようです。
サイト内は相対リンクで結んでいるので多分大丈夫だと思いますが、検索エンジンは使えなくなっています。
FTP接続も不可能なので修正することができなくなっています。
面倒ですが、スレごとのまとめリンクから閲覧してください。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 02:11:26 ID:b2crb44s
>>88
あんまり読み込んでないが、一応それなりに読んでの感想
確かに上手い、すんなり読めるし、つくりも面白い
でもちょっと気になるのが。
まずみんなが言う銀さまの心理。微妙に違ってね?
あと主人公の心理。はっちゃけたり気にしたりどっちだよと。もう少し脈絡もてと。俺らと同じ人間なんだから納得できる行動してほしかった。ちょっと?って感じ
あと、最後はどうやら作者とくっつけてるようだけど、そういう書き方するんなら特に意見とか求めるよりは放置のほうがよかったんではないか?と
それのほうが余韻があってよかった
フレンドリーな作者もいいが、作者の行動や言動、その見解自体が作品に影響することもあるのでね

そんなとこ。個人的な疲れもあってあんまり読み込めない・誤解があるかもしれないけど。辛かったらスマンね
97名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 04:29:40 ID:ZTXMddEB
>>88
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1171710619/416
これの続きはもう書かないの?
98名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 06:47:16 ID:S6akdpZm
>>93
それは俺が別の職人に対してしたレスと同一内容だw
保管庫タイトルで『お見舞い』の職人さんに対して、したレスだ。
俺のレスを盗作しやがったな?!とまでは言わんが、レスや感想くらい、自分の言葉でしようぜ。
それが職人さんに対する最低限の礼儀だと思うが。

99名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 07:13:14 ID:F0GnijP6
>>98がいいこと言った!
100名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 12:36:05 ID:mJvmNl3j
>>96殿のお手本を見たいですな
101名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 13:03:21 ID:RDA5yZPL
>>100
ナンセンスの極み。
SSの批評はSS職人しかできないのか?
102名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 18:24:01 ID:0QZIfxrS
そんなことより二階堂流麗だ
103 ◆xLJAc4vOZM :2007/05/15(火) 19:07:51 ID:BjmU1jB0
>>96
なるほど・・・確かに言われてみればそうですね・・・
貴重な批評どうもです^^
>>97
途中ですが、今のところ書く予定は無いです。
多分、この続きを書いてもあまり面白くないと思うので^^;
104名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 21:51:26 ID:dzoRThVH
とりあえずうPしときますね



世の中には不思議な事がある。

例えば人形が意思を持ち、人間と同じ様に振る舞い、話したり、物を食べたりと。

そう。
そんな事はあり得ない話だ。
本当なら。

しかし、だったらこんな事だってあり得ない話であるべきだ。
こんな・・・こんな事は。


   ・
   ・
   ・


「はぁ・・・いよいよか・・・」

桜田家の長男、桜田ジュンは学校の制服の襟に指をいれ、
窮屈そうにこね回しながら緊張した面持ちで玄関に座り、靴を履こうとしていた。

「何だったら私が付き添ってやってもいいですよ?」

すぐ側で、緑色のドレスに身を包んだ
二つ分けの茶褐色な長髪の人形がニヤニヤと笑みを浮かべながらジュンに話しかけてきた。
ローゼンメイデンと呼ばれる不思議なドールの第三女、翠星石である。

「バカ言うな。子供じゃないんだから。それにどこの世界に人形に保護者してもらう中学生がいるんだよ」

むすっとした顔で翠星石の言葉に言い返すジュン。
その後ろには鮮やかな濃赤のドレスをまとった、金髪のやや幼いドールが見守るような笑みで彼を見つめていた。
此方はローゼンメイデンの第五女、真紅である。

「そろそろ巴が迎えに来る頃ね・・・ジュン」
「やっぱり来るですか、あの精神注入棒女・・・」

真紅と翠星石がそう言いながら玄関のドアを見つめた。
彼が引き篭もりからようやく立ち直り、そして今制服をまとって、復学の為にこの扉を開けようとしている。
真紅の心には感慨深い物があった。
翠星石はあまり面白くなさそうである。

「お、お姉ちゃん・・・おねえちゃん・・・ううぅ」
「なっ、泣くなよ姉ちゃん・・・大丈夫、もう僕は逃げたりなんかしない・・・
 みんなが居てくれたから、お姉ちゃんが居てくれたからこうして勇気が持てるようになったんだ」

感激のあまり よよよ と泣きそぼる姉、のりの肩に手をおいて力強い笑みを見せるジュン。

「ジュンくんっ!」
「よせっ離れろっ、抱きつくなッ!」

精神的に力強く成長した弟に感激して抱きつく姉に、何やってるんだと言わんばかりに

「もう巴がそこまで来てるですよ〜・・・」
105名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 21:52:57 ID:dzoRThVH

翠星石は白け顔で二人に話しかけてきた。何故か手にはモンキーバナナを持っている。
そこにジュンの幼なじみ、柏葉巴が玄関の扉を開けて朝の挨拶をかけてきた。
幸いクラスが一緒な上に、前々から徐々にジュンが復学出来る手はずを整えていてくれた彼女。
今回こうして一緒に登校して、ジュンの精神的圧迫感を和らげていこうとしてくれていた。

「おはよう、桜田君。・・・準備は・・・も、もういいの?」
「あ、ああ お、おはよう。姉ちゃん離れろって」
「あはは。ごめんね巴ちゃん、お姉ちゃん感激しちゃってついジュン君に」

「ジュン、いよいよあなたが本当の一歩を踏み出すときが来たわね。
 この真紅のミーディアムらしく、気丈に振舞っていれば大丈夫。貴方ならそれができるわ」

「ま、翠星石も応援していてやるですから、 モグモグ  一発ガツーンとかましてきやがれです  ムグムグ」

「ああ、ありがとう二人とも・・・って何食ってんだよお前・・・」

みんなが話する中、一人だけ緊張感無くバナナを頬張ってる翠星石にジュンが呆れ顔で尋ねた。
何故か翠星石はバナナを咥えたまま、ちょっぴりいやらしい笑みでジュンを見つめて

「べふにぃ・・・ふゅんふぉふぁんふぉくふぁふぇるふぁめをふぇんふゅうふぇふ」

まともに話すと放送コード断裂破砕な内容の言葉を喋っていた。
翠星石が何を言っているのか把握できない巴、のり、ジュンは首をかしげているが、
真紅は顔を赤くして猛然と翠星石に抗議しだした。外観は少女、中身は熟女の真紅ならではの明快な思考解析である。

「あ、朝から何を言ってるのあなたはっっ!!
 大体抜け駆け無しって言ってきたのはあなたなのに何でジュンにそんな破廉恥な」

「あのぉ・・・真紅・・・何話してるのかわかんないけど、僕もう行くよ」
「桜田君の事は心配しないで下さい。私が・・・ついていますから」
「あ、ええ。よろしくね巴ちゃん」

二人のドールの良く解らないやり取りに別れを告げるべく、
ジュンは巴と一緒に玄関を出ようとしていた。

「よっし!行ってこいですぅーー!!」
「ぅわっ!?」
「ジュ、ジュンっ!!」
106名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 21:55:38 ID:dzoRThVH

バナナを食べ終え翠星石が放ったその皮が、ものの見事にジュンの足もとに滑り込み
彼は見事に後ろ向きに倒れこんだ。ベタなギャグでもここまでクリーンヒットはしない。

「いっ・・・たたたた」
「だ、大丈夫ですか・・・ちょ、ちょっとした冗談だったですのに、
 まさかここまでベタにヒックリこけやがるとは思わなかったです」
「っっ・・・翠星石っ!!あなた最近ジュンに対する度が過ぎるのではなくて!!」

その瞬間、辺りが凍りついた。

「え?!」
「し、真紅?!」
「じゅ、ジュン・・・君?!」

「な、何?」
「な、何だよ・・・」

「「って えーーーーーーーーーーーーー!!??」」

「どどど、どうなってやがるですか!?」
「ちょ、ちょっと二人とも??」
「どっどういうこと?!ジュン君が真紅ちゃんで真紅ちゃんがジュン君?!」

説明せねばなるまい。
翠星石の放ったバナナの皮で滑ったジュンを庇おうと、とっさに真紅がジュンの背中に回ったまではよかったが
当然身体の大きさが違うため支えきれる筈も無く、そのまま倒れこんでしまったのだが、
その時真紅のおでことジュンの後頭部がぶち当たってしまい・・・魂が入れ替わってしまっていたのである。
まさにローザミスティカの存在を否定するかのような不可解なトリック。

「あああああああああ」
「あああああああああ」

真紅とジュン、二人仲良く _| ̄|○; このように膝を突いて喚く様を、
三人の女性達は顔を引きつらせながら、気が遠くなる思いで見ているのだった。
107名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 21:57:37 ID:dzoRThVH
多分続きますんで、また今度。
108名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 23:09:33 ID:qDZ83kJI
>>107
いらね

そんなのよりこの人の続きが気になって仕方が無い
早く書いてほしいもんだ。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1171710619/3-15
109名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 23:25:24 ID:BeqsCHN4
>>98
あれに>>93みたいなレスの価値があるのか?
ダラダラ長いだけで締まりの無い話じゃないか
しかもセリフの使い方がおかしいぞあれ。
セリフの「 」の中にまた( )の入れてるのなんか見たこと無いし
どう考えたってイレギュラーだろ、素人SSにしても文体が酷過ぎる。
最後も変に説教臭い終わり方でゲンナリしたよ
アリス云々語るんじゃねえってな。
110名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 23:35:28 ID:b2crb44s
妙に殺伐
111名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 23:44:41 ID:3OLituWs
>>109
長文読めないDQNですかw
112名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 00:13:40 ID:xOo8GciP
>>107
同人誌のネタ乙。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 00:21:26 ID:ohrY1aw+
>>103
新作待ってるよ

>>107
つかもう書くな低脳文章のクズ野郎!wwwwwww
114名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 00:37:11 ID:VuIGM5NU
>>112
kwskってか>>107って同人のパクりなの?最低だな
115名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 00:44:30 ID:xOo8GciP
>>114
スマン、語弊があったかもしれん。
でも確か、真紅とのり、雛苺と水銀燈、翠と蒼、Jと金が入れ替わるやつを見たことある。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 01:00:30 ID:VuIGM5NU
>>115詳細snks
何にせよ>>107はもう書くの止めた方がいいな
ほんとにパクってるのかも知れないし
これ以上書いてもお里が知れるってもんだ
117名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 02:24:57 ID:86NaNtbq
最近、新しい読者が増えてきた気がする
やっぱり本家が終了したからかな?
まぁ何であれ嬉しい限りですな
11898:2007/05/16(水) 04:36:27 ID:aJSrcoRV
>>109
おまい、話の論点が完全にズレてるぞ?
俺は>>93に対して、感想やレスは自分の言葉でしなよとは言ったが、別におまいや他の連中に対し、
俺と同じ感動を持てとか、俺の感想に強制的に同意しろなどと言った覚えは全くないぞ。
そういう風に取れる表現もしていないと思う。

どんな感想や感動を持とうが、それは個人の自由だろ?
もちろんおまいがそういう感想を持つのは、おまいの自由だ。
だけど俺におまいの批評や感想や意見を押し付けたって意味はない。
どうしても言いたいなら職人さんに対して言う事じゃないのか?

長文スマソ。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 12:54:10 ID:7HgghaOJ
>>109
もう少し穏やかに書けないものでしょうか?
確かに、ここでの発言は基本的に自由です。
しかしその自由は、発言が与える周囲への影響に対する責任が付いてくることを忘れないでください。
どういう感想を持ってもそれは貴方の自由ですが、評価の押し付けともとれる書きようや、
いちゃもんのような挑発的な批評の書きようはいかがなものでしょうか。
貴方の>>109のレスを、当時あのSSを心待ちにしていた読者たちが読んだらどう思うか考えましたか?
彼らとの論戦を望んで書かれたのですか?ここで論戦するとスレの雰囲気がどうなるか考えて発言しましたか?
書き込む前に少しでもそういうことに思いを巡らせましたか?
論調からして>>83も貴方でしょうか。違っていたらごめんなさい。
しかしあのように他のSSの職人さんを十把一絡げにけなすレスをされてまで、
自分のSSが褒められることを望む職人さんはいないでしょう。
そもそもSSの批判は>>118さんが指摘されている通り、SSの職人さんに直接向けられるべきではないですか?
批判が悪いとは言いませんし、むしろそれを望むSS職人も多いので大いに結構だと思います。
しかし批判するにも書きようというものがあるのではないですか。
SSスレは互いの価値観を発表しあう場である以上、どうしても衝突が起きやすいし荒れやすいものですが、
だからこそ互いを尊重する姿勢は持つべきじゃないでしょうか。
私の指摘は自分でも大袈裟だと思いますし、わざわざ事を大きくせずに見過ごしても構わなかったとも思います。
貴方にとっても間違いなく大きなお世話だとは思います。
しかしここ最近、特定の職人ばかり擁護して他の職人を排除するかのようなレスが目立つなど、
雲行きが怪しくなってきているのは看過できませんでした。
ですから、他にも該当者はいるようですが、敢えて発言が目立つ貴方を槍玉に上げさせてもらいました。

長文お目汚しすみません。

>>115
それを言ったら、◆xLJAc4vOZMさんのSSだって類似のSSがありますよ。

>>118
激しく同意します。
120名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 13:43:42 ID:0eKosg62
晒しage
121名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 15:19:23 ID:aHDspwJH
一転、糞スレ化したな
122名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 15:33:14 ID:xNx5mwO+
>>107
続きに期待してます。
しかしスレの雰囲気が変な感じになってるからローゼンSS総合の方にでも投下し直したほうがいいかも。
123名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 18:53:24 ID:XIiy3hWo
>>121
どの辺りから?
124名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 20:53:59 ID:VedIeOTP
巴が雛苺と契約を続けていたと仮定しての小ネタ

とあるファミレスに中学生とおぼしき少年と少女が座っている。

注文はドリンクバーとデザートが少々、それだけでかれこれ30分以上はいるだろうか。

この若さにして将来を誓いあった仲なのか、お互いの左手の薬指には
薔薇をかたどった同じデザインの指輪がはめられていた。

しかし、二人の間に流れている空気はとても恋人同士のそれではない。
二人とも沈黙を続け、少年は落ち着きなくコーヒーを何度も口元に運んでいる。
少女の方は俯きながらテーブルに指で「の」の字を書いている。
まるでこれから別れ話でも始まりそうな、そんな重苦しい雰囲気だった。

「あの、これ…」
つと、少女が重い沈黙をやぶり、まるで離婚届けでも差し出すように、少女は鞄からおずおずと書類を差し出した。
「私の口からは何も言わないから、これで察して…」
まさかこの齢にして結婚していたのか、いやまさか。
興味本位の野次馬が見守る中、少年が口を開いた。
「…っておい、これ」
その紙はなんのことはない、ただの宿題のプリントだった。
「こんなもん届けるためにわざわざファミレス来てこんな雰囲気つくる必要ないだろ!
  普通に渡せよってゆーかいつも通り図書館で会えばよかったじゃないか!
  じゃなきゃウチに来てくれれば雛苺にも会えたし!」
「ごめんなさい、これ渡すの忘れてて…今まで渡すタイミング逃しちゃってて」
「答えになってなーい!っていうか僕柏葉にまで突っ込みたくないんですが!」
「そんな…ひどいよ、桜田くん…私だけのけ者なんて」
「確かにお握りに苺入れたりとか、天然かましてた時もあったけど!
  そんなキャラじゃないだろあーた!」


オチはない
125名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 20:58:59 ID:oka86dSp
なんで契約したままなのに苺がジュンの家にいるの?とつっこんでもいい?
126名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 21:57:47 ID:79Ei5ox2
thfcー^^
127名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 22:39:49 ID:ok/UH61D
>>124
いいタイミングでおもろいSSをw
素でワロタ。
128名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 08:55:15 ID:3wecn9AN
前のスレで翠紅苺のSSを書いたんですけどどこが変でした?
初めて書いたから、反省して次に繋げてみたいと思って
129名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 10:18:13 ID:/po0JIce
強いて言えば最後の名前で噴いた
まぁ楽しめるレベルだったと思う
130Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:18:49 ID:OVHeD+Qc
>>77の続き

4

「…ダブルキル」
nのフィールドの中で、嘲る様な独り言が響く。そこは全体が薄暗く、廃墟しかない。
「…マルチキル。うっふふふふ…」
黒い翼を羽ばたかせ、銀色の髪、ダークピンクの瞳に、ナイトブルーのドレスと逆十字の柄が入ったオーバースカート。
ローゼンメイデン第一ドール・水銀燈が、自分のフィールドに無数に散らばっている
がらくたも同然な欠けた人形を相手に、破壊ゲームを楽しんでいた。
水銀燈の力によって無理やり意思を与えられた首や片手のない人形たちが、その命惜しさにフィールド中を逃げ惑っていく。
そんな彼らを自らの黒い翼の羽を使ってさらに粉々へとしていくのだ。

だが、これはあくまでもゲーム。無数に羽をとばしてやってただハチの巣にするのではつまらない。
水銀燈は自分の翼のうち、たった二本を取り出して手に持った。
狙うは二人仲良くそろって廃墟の道を逃げ惑う哀れなジャンクたち…あの二体だ。
道の先はただっ広く、一見この道を逃げ進むには無謀に思える。しかし、ただ一つだけ希望がある。
道の途中、横に開ける細く目立たない道…そこへ入り込めば身を隠すことが出来るだろう。
だが、無駄な努力だ。
水銀燈は狙いを定め、二本の黒い羽をあの細い道の数歩手前のあたりへと飛ばした。
一瞬、それは見当違いな所に向かって飛んでいったかに見えた…
ところが二体の人形は身を隠すべく、方向を転じて垂直にのびる細い道へ向かい始めた。
あと少しでその道へと入り込めるというところで、
まるで全てを予知していたかのように後から黒い羽がまっすぐ飛んできて二体ともそれぞれ頭と背中に突き刺さった。
タイミングも位置も完璧だった。
「うっふふふふ…あったり。おばかさんたちったら、まるわかりよ…」
ゲームの勝者水銀燈が敗者を嘲笑った。
突き刺さった黒い羽は青い炎を発し始め、有無を言わさず人形達に燃え移り始めた。
二体の人形はもがき、最期の抵抗として必死に自分達が目指した細い道の中へ体を引きずろうとしている。
足は既に灰と化し地面を蹴れる代物ではなく、這って進もうにも次は手が崩れ落ち、いまや体を運べるものは完全に無くなった。
水銀燈はこの敗者のもがく姿が面白くて仕方がない。
二体の人形はついに原型すらおさめないがらくたの塊へと化した。
「またしてもダブルキル…うふふふ…」
水銀燈の世界におかれた人形達は、こうして日を追うごとにジャンクからジャンクへと化していった。
アリスゲームの為だ。水銀燈は思った。アリスゲームの勝者となり、自分という存在の創立主 - お父様に合うための、
これは破壊の練習行為だ。他のドール達よりも、自分には遥かに物を破壊する経験を多く持っている。
それに自分の力で作り上げた技と武器だってある。
これこそがこの水銀燈の強さであり、お父様への愛でもある…
131Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:20:28 ID:OVHeD+Qc
5

自分こそがアリスに一番相応しい。
アリスゲームの為になることもせず、保守的な他の愚かなドール達とは違う。
「……チィ」水銀燈は舌打ちしてがらくた人形を足で踏み潰した。
また思い出してしまった。
どいつもこいつもローゼンメイデンの宿命であるアリスを目指すこと - お父様が理想とした完全な少女になることを - 
忘れ、ジャンクを恐れアリスゲームを避け弱い者同士固まってじゃれ合うドール達の愚行を思い出すたび、
水銀燈は必ず軽蔑や怒りといった感情に苛まれた。

この愚行の先頭には…顔も思い出したくない…あの第五ドール…
自分なりにアリスゲームを制するとぬかしといて、実際していることはままごとだ。

アリスゲーム以外の道?
薔薇乙女同士で誰が一番アリスに相応しいのか仲良く話し合いをするくらいのことしか思いつかない。
そしてどうせアリスに一番相応しいのは自分なのだ。

アリスへの執着が強い一方、普段から群れているドール達に真っ向から一人でアリスゲームを仕掛けにいく程、
水銀燈は自信過剰ではなかった。これまで、真紅のいない間に雛苺を人質に取って自分のフィールドにおびきよせたり、
翠星石と蒼星石の悪化した双子の関係を利用してローザミスティカを迫ったり、邪魔な媒介を夢の中に閉じ込めたりした。
結果としては…いずれも失敗した。あいつらの結束は想像以上に固い。そしてあいつらは相も変わらず…保守的だ。

おかげで、アリスゲームは全く進行しない!ただ一人のジャンクすらでていない!

いや…。
過去にジャンクとなった者は出た。最も認めたくない、最もアリスに相応しいはずだった者が。
私は一度、真紅に負けた。そして、ジャンクに…
あの様なアリスへの志半ばなドールに!この水銀燈を倒しておきながら、結局ローザミスティカを奪うこともしなかった。

どこまで私をばかにすれば気が済むのか!

今こうして左手で人形を握り締めながら真紅への殺意を込めている事が出来るのは、
お父様が私を直してくれたから。

一度アリスゲームの敗者になったにも関わらずお父様が私を直してくださった意図は明らか。
お父様は真紅のやり方に呆れられたのだ。
水銀燈には自然とお父様の声が聞こえたかようだった。

 - アリスを完成させられるのは水銀燈、お前しかいない - 。


突然、左手の指輪が意思とは関係無しに紫色の光を発し始めた。「な、なぁに?」水銀燈は困惑した。こんなことは初めてだ。
「メイメイ」同じく紫色に輝く小さな光の浮遊体 - 水銀燈の人工精霊が駆け飛んできた。
人工精霊は今指輪が光っていることの意味を伝えた。

ミーディアムの命が危険に晒されている。
132Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:21:20 ID:OVHeD+Qc
6

「誰かぁぁ!誰か助けて〜!」
とある部屋の中で、極めて危険な状況に晒されている者が叫んだ。
「放せって!ほどけー!!」
不登校の少年 - 桜田ジュンが、ロープでぐるぐるに縛られて湯の溜まった風呂の湯船へと落ちそうになっている。
風呂場の隅に放置されており、その位置はかなりきわどい。
「あぁっ、すっかりチビ人間のこと忘れてたです」
階段を降りていくさなか、翠星石がジュンの声に反応して風呂場へと向かった。「チビ人間!生きてるですか!?」
「死んだ方が良かったか?この性悪人形!いやここまでくると悪魔人形だな!さっさとほどけー!どういうつもりだアー!」
「この前と同じことですよ」翠星石は微笑を浮かべて言った。
「私達ローゼンメイデンは契約したミーディアムに危険が迫ると反応するです。
そうやって真紅を起こそうとしたちゅー訳ですぅ」
「真紅!?」ジュンはいつもより目覚めの遅い真紅を今朝から気にかけていた。「それで真紅は起きたのか?」
「さっき起きて私より先に階段降りてったですよ」
「そ、そっか…よかった…って、、あ、あんにゃろうー!僕がこんなにも叫んでいるっつーのに無視しやがったな!!」
翠星石は吹き出した。「この調子だと真紅はチビ人間の危機に反応して起きた訳じゃなさそうですぅ!無様なヤツですぅ!」
「わ、笑ってないでほどけよ!!もういいだろー!」
「しゃーねーなー、救ってもらえない哀れなチビ人間に少し慈悲をかけてやるですぅ」
「くっそぉー…ほんとのほんとに覚えてろ呪いの性悪人形…」
「何かいったですか?チビ人間」翠星石は手をかけたジュンを少し湯船側に揺らした。
「わああああああ!なんでもない!」ジュンは青ざめた。殺される!恐怖で口が硬直する。「なんでもないから…ほどいて…」
「はぁ、もうやめなよ…翠星石…」蒼星石が呆れ気味な表情で部屋の入り口に立っているのが目に入った。
とめにくるのが若干遅い!
133Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:23:29 ID:OVHeD+Qc
7

水銀燈は自分の契約したミーディアムである柿崎めぐの病室へと窓からかつてない程勢い強く飛び込み、
ガタガタとガラスが揺れた。

ミーディアムの身に危険が迫っている。

ところが、目に飛び込んできたのは、思っていた程悲惨なものではなかった。
ミーディアムは、呼吸器をつけられ何人かの白い服をきた人間の女に囲まれて、
聴診器の先端チェストピースをあてられたり、そばになにやらの機器を持ち込まれたりしている。
当の本人は苦しげにもがいていて、呼吸すらままなっていないように見える。

だがこんなことは生まれつき病弱な自分のミーディアムにはよくあることだった。

「メイメイ。これ位のことでこの私を呼び起こしたとでも?」
水銀燈は問い詰めたが、人工精霊はただあちこち宙を舞い続けるだけだった。水銀燈はため息をついた。全くの無駄足だ。
ゆっくりと窓から飛び降りようとしたとき、突然同じく白い服をきた男がめぐの病室に押し入ってきた。
「一体どういうことなんだ!原因は?」
「全く分かりません!先生、このままでは心臓の細胞が死滅していきます!かなり危険です!」
「とにかく今は特効薬の投与だ」男は叫んだ。「さあ運ぶぞ。ぐずぐずするな!」

心臓。それは人間にとって最も大事なもので、めぐは生まれつきそれに欠陥があると話していた。
一連の会話からして、人工精霊は正しかったらしい。
めぐの命は危ない。
水銀燈は運ばれていくめぐを窓から振り返って凝視した…すると、一瞬、めぐと目が合った。
ベッドを運ぶ白い人間達に遮られてその姿は見え隠れする。
めぐは左手を看護士の間から突き出させ、息もままならない状態で"それ"を必死に水銀燈に見せようとした。
左手に嵌められた、契約の指輪を…
水銀燈に考えられるめぐの意図は一つしかなかった。"私の命を使って"。
病室の外まで運ばれるまで、めぐは左手を差し伸ばし続けた。そして…今、水銀燈の視界から消えていった。

「おばかさんね」水銀燈は一人静かに呟いた。「あなたに都合のいいように…アリスゲームは始まらないのよ」
今はどのドールも眠りについているだろう。そんな状況下でのアリスゲームはあり得ない。
「メイメイ…あの子、これから死ぬの?」
人工精霊は未来のことは分からないことをマスターに伝えた。
「そう…そうね。おばかさん」
水銀燈は病室の窓から下にあるコンクリートの出っ張りに腰掛け、満月の夜空を見つめた。
驚くほど自然に、心の中に歌が流れ始めた。それはもう聞くことの叶わないかもしれない、ミーディアムのよく歌っていた歌が。

 …からたちの花が咲いたよ
   白い白い花が咲いたよ

    からたちのとげはいたいよ
     青い青い針のとげだよ

  からたちは畑の垣根よ
   いつもいつもとおる道だよ

    からたちも秋はみのるよ
     まろいまろい金のたまだよ…
134Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:26:11 ID:OVHeD+Qc
8

「ヒグマ卿、あなたが犯人だな!?もう逃げ場はないぞ!」
「よくぞ見抜いたな、くんくん探偵。噂どおりの素晴らしい推理力だ。だが、私は止められぬぞ。無駄なあがきはよしたまえ」
「そうはいくものか!」
真紅はいつものようにソファーに腰掛けてくんくん探偵を見ていた。割と本格的なサスペンス人形劇だ。
隣でも、第六ドール・雛苺が緊迫した顔つきでテレビに夢中になっている。
「真紅〜!!おまえェェェ…」ブルブルと怒りで体を震わせながら真紅の契約したミーディアムであるジュンが部屋に入ってきた。
真紅はミーディアムのことを下僕と呼び、水銀燈は糧と呼ぶが - ローゼンメイデンと契約してミーディアムとなった人間
の役目はどれも同じである。ドール達がアリスゲームへ望む為の力を分け与えること。それは人間の命を削られることも意味する。
にも関わらず、桜田家の少年ジュンは力を三体分のドールへと提供している。
彼は最初は真紅達をを悪夢の人形だとか呼んだが - ドール達の宿命アリスゲームのことに触れ、次第に心を動かし始めた。
いままで食事を共にしたり、家の床に落書きをしたり、醜悪な料理を作ってくれたりした
ドール達の姉妹が、アリスゲームで戦い左手をもぎ取られたり水晶に串刺しにされたりすることに心を痛めてくれたのだろう。
真紅はそんなドールを気遣ってくれるジュンをミーディアムとして正解だったかもしれない、と思っていた。
まだまだ家来として教育してやらねばならないところは多いが。

「ううっ…これはまずいぞ…」
「フッフッフッ。だからおとなしく逃げていけばよかったものを。くんくん探偵!」
「わあああっ!」
「ぬっ!?これは!」
「大丈夫です!くんくん、私がついています!」
「あ、あなたは…キツネ婦人!」
「フっ!たかが女一匹で…この私に敵うと思うか!」

ち、違うわ!真紅は思わず心の中で叫んだ。くんくん、キツネ婦人こそ真の黒幕よ!騙されないで!
「しんくぅぅー!!」
「えっ?」
再び自分の名前を呼ぶ超えに真紅は我に帰った。
「なーに?ジュン」
「僕の声が聞こえなかったのか?」
真紅はかぶりを振った。「あら?何か言ってたの?聞こえなかったわ」
「あのなァ!僕はさっきあの性悪人形に…」
そう言い出すと同時に、翠星石が声高に笑い出した。「おーほほほほ!私はただ眠りから醒めない真紅を気にかけたチビ人間に
協力してやっただけですぅー!そしてミーディアムを危険に晒して真紅を呼び起こそうとしたですよ感謝するです人間!」
「だ、誰が感謝なんかするかー!」ジュンは翠星石に今にも飛び掛りそうな体制を見せた。
「あら、そう?私を心配してくれていたのね」真紅は微笑んだ。
「でもホーリエが翠星石はジュンに危害を与えられるはずがないと言っていたわ」
翠星石は顔が急に火照った。「ななななな、何を言うですかっ冗談はやめろです!わわ私がこんなチビ人間一匹その気になれば…」
「フフ、嘘よ」
「きぃぃぃ!こいつぅせっかく私が心配して…はっ」翠星石は急にジュンに見やった。「何こっち見てやがるですか人間!
私はべべ別に、本気になればいつだってお前みたいな長所のない人間なんかボコボコにしてやれるですぅ!うぬぼれるなです!」
そう言うなり翠星石はジュンにけりを入れた。
「いってええええ!僕は何もしてないだろ!おい、いい加減にしろオ!!
僕だってお前みたいな性悪人形本気になればいつでも捨て…あ…ん…?」
ジュンは翠星石が突然黙り込んで後ろ向きにうつむいているのに気が付いた。
「いや…えっと、冗談だって…」
翠星石は突然向き直って二発目の蹴りをいれた。「いってええええええええ!」
「ふんっ」そういい残して、翠星石はリビングから出て行った。
135Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/17(木) 22:28:50 ID:OVHeD+Qc
丁度そのころ、真紅はくんくん探偵を見終えた。今日のくんくんも見事な洞察力を発揮し危機を脱してのけてくれた。
「私、ジュンの部屋でお絵かきしてくるの〜!」くんくん探偵に満足した雛苺は二階へと駆け上っていく。
一方真紅は次に何をするか一瞬だけ考えたあと、ソファーから立ち上がった。
「ジュン。紅茶を入れて頂戴。」
「お前ー…。」ジュンは蹴られた痛みから床をころころ転がりながら叫んだ。「悪魔かあ〜!」
「全くほんっとにこういうとこは成長しない家来ね。はやくしなさい」
ジュンをステッキで突きながらそういい終えたとき、家のチャイムが鳴った。
「くっそぉーどいつもこいつも。今いきまーす!」
ジュンが扉まで何とか痛みをこらえて辿り着いて扉を開けたとき、
第ニドール・金糸雀を抱えた草笛みつが涙目に玄関前に立っていた。
「桜田ジュン君…助けて…あなたしかいないの。金糸雀が…金糸雀が動かなくなっちゃったの…!」
136名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 22:40:08 ID:70qpF/4n
>>130-135
こーいうSSを待ってた!
GJ!感想は全部終わってからにさせてもらうよ!
長くなりそうだけど、根気良く続けておくれ。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 02:46:12 ID:EIBqiGg/
一気に過疎った
138名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 03:09:57 ID:B7gG1JY4
馬鹿野郎お前を一人にはしねーよ
139名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 07:54:37 ID:aSZl94y1
ウザいガキが来なくなって、このスレも元の落ち着きを取り戻したね。
案外、過去SSをけなしてたレスも、露骨に一人の職人を贔屓していたレスも、
その職人の自演だったのかもな。
おっと、こんなこと書くとまた長い説教が来るかなw
140名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 13:12:42 ID:isrzpaq7
やっぱりな俺も何故あんなSSが賞賛されるのか不思議だったぞ
141名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 13:25:22 ID:1C890hGh
あの不自然なレスも、自演だったとしたら頷けるな。
142名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 16:46:54 ID:xxmaKKkA
>>140>>141
自演乙
143名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 17:25:12 ID:aSZl94y1
>>142
自演厨の作者乙
144名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 18:00:32 ID:B7gG1JY4
頼む後生だお願いだ空気を悪くしないでくれ
145名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 18:07:44 ID:twNVUfBN
むしろめちゃくちゃ悪くしようぜこのクズどもが
146名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 18:23:32 ID:1C890hGh
>>145
ウザッ
147名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 18:42:52 ID:isrzpaq7
>>146
原因が何か言ってるwww
148名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 18:46:24 ID:EIBqiGg/
キリが無いから言い争いはここまでだ
149名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 19:14:09 ID:Vbnk+TR9
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
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150名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 20:28:47 ID:KWhRHW0Z
同人ネタといえば、オイラも色々考えていたけど
あんまりだ…と思って没にしたアイデアw

1.捉えられた薔薇水晶が樽に頭だけ出して放り込まれ
  剣を持ったドールズ達がその廻りを踊り狂って一人一人剣を樽に刺して行く
   題して『薔薇水晶危機一発』

2.腹部のない水銀燈のゼンマイは、実は頭に付いていたという衝撃の事実
  その事実に「パクリは許せない」とばかりに戦いを挑んでくるぜんまい侍
  題して「水銀燈VSぜんまい侍〜だんご屋の決闘」
151名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 20:43:27 ID:twNVUfBN
どこの同人作家か大分絞り込める内容だな
152名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 20:55:02 ID:VSWNm+UN
ぴんぽ〜ん
「おっ!届いたな」
「なにが届いたのJUM」
「よう辛苦!いろいろな怪我を未然に防止できるメガネさ!これでもう(いろいろな意味で)痛い思いをすることはない!
逝ける!学校に逝けるぞワハハハハハ!」
「まあ素敵ね早速かけてみなさいな」
「そう慌てるなって今かけ・・・痛あっ!」
「ど、どうしたの!?JUM!?」
「メガネの柄が目に刺さった・・・」



ごめん
153SUPER SIZE SHINKU 01/10:2007/05/18(金) 23:50:36 ID:82sDwRU5
「お〜い真紅起きろ〜。 半年振りにBIRZの仕事だぞ〜。」
ガチャリと部屋のドアを開ける。 ぶよん。 柔らかい感触に突き当たった。

「きゃっ! ちょっとジュン、どこを触っているの! 偶然を装って、いやらしい淫獣ね!」

……。 ぶよん。 ぶよん。 目の前の謎の物体がプルプル揺れる。 肉である。
ごしごし。 目を強くこする。 まず自分の視覚を疑うあたり、泣けるほど良心的だ。
ぷにっ。 指先をめりこませた。 やわい。 微妙に嬉しくない弾力だ。

「いやっ! 何をする気!? まさか人間に相手にされないからって、この私に欲情……」
「 鏡 見 ろ や !!! 」

怒りに任せて声を荒げた後に、自分の心無い一言に気付く。 見れるはずがない。
気まずいながらも、さりげなく上下左右に視線を走らせる僕。 全長ゆうゆう2メートル。 全幅余裕の4メートル。

「スパーサイズ真紅……。」
真紅はデブっていた。


「フン、BIRZの仕事も久し振りね。 私みたいにギャラが高いスターはそうそう呼べない羽振りのようね!」
上機嫌で紅茶に口をつける真紅。 ゴキュッ。

「おかわり。」
一口で飲み干しやがった。 遠近法はありあまる肉に無力化され、ティーカップはさながらお猪口のごとし。
半年近くに及ぶ無職生活は、真紅をボロボロ……もといブヨブヨに蝕んでいた。

「な、なぁ真紅。 お前ちょっと太……いや、ポッチャリしちゃったんじゃないか?」
傷つけないよう遠回しに言ってみる。 今の真紅がBIRZに載った日には、僕らみんな路頭で迷子だ。

「な、何ですって!? 卑しい下僕の分際で何て口を聞くの? もういっぺん言ってみなさいよ!
 誰が鏡餅よ? 誰が冷奴よ? 誰がハンソロに一発でやられそうな顔してるってのよォーー!!」
「そこまで言ってねぇよ!!!!!」

真紅は自分の惨状をちゃんと把握していた。 あまりに悲痛なその叫びに、僕は思わず目を伏せた。
言葉のオブラートなんて、リアルオブラートの前では何の役にも立たないんだな。
154SUPER SIZE SHINKU 02/10:2007/05/18(金) 23:51:32 ID:82sDwRU5
「これが真紅……そう……。 これは脚本を変えなくてはいけないね……。」

蒼星石が呟く。 何気ない風を装っているが、顔面神経がビックンビックン脈打ってる。 クールキャラも大変だな。
雛苺はさっきからずっと無言だ。 真紅がのそりと動く度に、ビクリと僕の背中に隠れる。
明らかに知らない動物を見る子供の反応だ。 変わり果ててしまったけれど、アレは真紅なんだよ、雛苺……。

「なぜ? 普通に第7ドールと私の邂逅から始めればいいじゃないの。 私のピンチに注目が集まっているのよ。」
確かにそうだったのだが、今となっては言うまでもなく第7ドールの方がピンチだ。
あまりに戦闘力が違いすぎるというか、コイツめちゃ強そう。 そう言えばデビルガンダムに似てるな。

「うーん、君が太るという展開はどう頑張っても不自然すぎるよ。 いっそ主役交代した方がマシかもね……僕とかに。」
そう言って顔を赤くする蒼星石。 あるある。 いつもより少しだけ調子こいてみた時の居心地の悪さっていうか。

「ハッ! 貴女のような電波ポエマーには無理ね。 中学生日記でもあんなに転げ回れる神作品はそうそう無くてよ。
 もし私が教師だったら、あの素敵ポエムはイラスト入りで全校掲示板に張り出してあげるのだわ(笑)。」
「それだけはやめてぇーーー!」

はっ。 思わず僕が叫んでしまった。 横を見ると蒼星石も屈辱に顔を真っ赤にしてプルプル震えている。
この攻撃で嘔吐しないとは、さすが呪い人形クール編。 僕なら(笑)で3回はいけたな。

「クリームに溺れて見る夢は……きっととても……甘いのだろうね。 いい詞ね。 貴女が考えたのかしら?」
「分かったよ! 分かりました! やめてください! ちょっと言ってみただけだろ!」
「いい〜え、謝るこたないですよ蒼星石! それは素晴らしい名案ですぅ!」

ばこーん! ドアを勢いよく開けて性悪人形が登場。 胸を張る翠星石の影に、ドアと壁に挟まれた黄色いのが見える。
いたのか、えーと……カ……カ…………。 まぁいい。 やられキャラがやられただけの事だ。

「話は簡単です! 双子パートを増やすのです! 真紅と同じくらい私たちのヒキも注目されてますからね!」
「でも翠星石、僕らのエピソードは最初から入ってるじゃないか。 真紅パートの代案にはならないんじゃないかな?」
「だ、だからぁ、そこはほら、ローゼン一番人気キャラである私の、その……ろ、ロマンスとかどうですか?」
そう言いながら物言いたげにチラッチラッと僕を見る翠星石。

「なんだ性悪人形。 人気取りのために僕とロマンスするって事か? プッ。 プププ。」
皮肉っぽく言い返す僕。 無い無い。 いくらなんでも無理があるだろ。 しかし、今日の翠星石は一味違った。
もじもじ。 何を言い返すでもなく、服の裾をいじる様が何だかしおらしい。
155SUPER SIZE SHINKU 03/10:2007/05/18(金) 23:53:10 ID:82sDwRU5
あ、あれ。 調子狂うな。 何か言おうと口を開いた瞬間飛んできた言葉に、僕はさらに度肝を抜かれた。

「だっ、だからそう言ってるのです! ジュンと私との、心の触れ合いを描いてほしいのですーーー!!!」
ぽかーん。 うろたえるべきか。 冗談っぽく言い返すべきか。 怒るべきか笑うべきか泣くべきか。
完全にリアクションが取れずにいる僕。 い、いや、いつものコイツからして、このぽかんとする様を笑おうとかそういう……。

「い……イヤ、ですか?」
「そうではなく!」
即答してしまった。 イカン! 人間様の余裕を見せなければ。 こいつは人形……こいつは人形……。

「や、やっぱりジュン迷惑そうだから……。」
「思ってない思ってない思ってない!」
力答してしまった。 いつかも思ったけれど、綺麗な目。 それが今はうっすら涙を溜めていて。
それに見つめられていて、強情張る余裕もなくて。 思考が堂々巡りして、うまく頭が回らない。

「ちょ、ちょっと! 私の意向を無視して勝手に話を進めないで頂戴!」
「ローゼンはページ数が少ないですぅ! 今の真紅じゃ全容を描くだけで今月分が終わっちゃいますぅ!」
「餓狼伝はそれで立派に成り立ってるのだわ!!!」
「バキは成り立っていないです!!!!!」

ぐりん! 二人が突然僕の方を向いた。 その剣幕に思わずビクッとなる僕。

「ジュン。 翠星石たちのマスターはジュンです。 ジュンが決めてください!」
「フ! 愚問ね翠星石! ジュンはマスターである前に私の下僕よ! 結果なんて聞くまでも無いのだわ!!」
僕は途方に暮れて二人の顔を見回した。 耳までほんのり上気させた翠星石。 耳までむっちり肉の詰まった真紅。
翠星石。 桜色の頬、二色の瞳、瑠璃の涙。 真紅。 あんまん、食まん、カレーまん。 翠星石。 真紅。 翠星石。

「悪い、真紅。」
「 な ん で す っ て ェ ェ ェ ーーーーー !!!!? 」
真紅の絶叫が耳に痛い。 ごめん真紅。 ほんとごめん。 違うんだ。 外見で決めたんじゃないって。
だってほら、今日の翠星石、なんか凄いじゃん。 見た目じゃないよ。 心なんだよ。 マジマジ。 信じてくれよ、真紅。

「ジュン……。 真紅が落ち着くまで、私たちは他所に行ってる方がいいですぅ……。」
「そ、そうだな……。 真紅、ほんと違うから。 あくまでフィジカル面での差は考慮せず、純粋に……。」
翠星石を抱っこして、僕は気もそぞろにそそくさと部屋をでた。
156SUPER SIZE SHINKU 04/10:2007/05/18(金) 23:54:01 ID:82sDwRU5
「まぁ……過ぎた事はしょうがないし、落ち着いて話をまとめましょうか。」
「それがいいわぁ〜……。」
「そうだね……。」
「うゅ〜……。」
「かしら……。」

びゅーびゅーと風が吹き抜ける吹きさらし。 今回のリフォーム対象は桜田ジュンくんのお部屋です。
無機質だった味気ないお部屋が、ワイルドさ溢れる鬼押出に早変わり。 あなたも自然派ライフを満喫しませんか?

「水銀燈、まずは窓を閉めて頂戴。 風が温くて気持ち悪いわ。」
「真紅が壊しちゃったから無いわぁ……。」
八つ当たりでボコボコにされた水銀燈が、ひらひらと手を振る。

「蒼星石も気が利かないわね。 こんな時はみんなに暖かい紅茶の一つでも振舞うべきではなくて?」
「真紅が壊しちゃったから無いよ……。」
八つ当たりでゲジ眉を描かれた僕は必死にメイクを落としてる真っ最中。 ちくしょう、油性だこれ……。

「まったく、多少部屋を模様替えしたくらいでこの体たらく……。 貴女たちに美意識というものは無いの?」
「真紅が壊しちゃったから無……むぐぐ。」
必死で雛苺の口を塞ぐ僕。 八つ当たりで命を落とす妹なんて見たくないよ!

「……。」
「……。」
「それでは本題に入りましょうか。 平たく言えば翠星石の処刑方法についてだけれど。」
「あれあれ? カナがまだかしら? カナがまだかしら?」

「まったく、いつも天邪鬼な翠星石が直球ド真中で攻めてくるなんて完全に予想外だったのだわ。」
「今日の彼女は十分な勝算があったからあれほど大胆だったんだろうね。 だって、今の真紅って、ほら……。」
「あ゛!?」
「何でもないです。」

僕の臆病者、臆病者。 うう……僕の方が姉なのに。 もはや誰もこの大怪獣の暴挙を咎める事はできないのだろうか。
その時。 ばしん! 大きな音を立ててテーブルが跳ね上がった。 誰かが表面を強く叩いたのだ。

「真紅。 貴女の姉として、一言言わせてもらうかしら。」
157SUPER SIZE SHINKU 05/10:2007/05/18(金) 23:54:52 ID:82sDwRU5
チッ、チッ、チッ。 秒針の音がよく聞こえる。 ちーん。 雛苺がティッシュで鼻をかんだ。

「やっぱり一族郎党皆殺しにしてあげるくらいが妥当かしらね。」
「う〜ん、僕らも一族郎党だからね……。」
「あれあれ? なんで反応が無いのかしら? なんで反応が無いのかしら?」

パンッ。 渇いたカシワ手の音。 振り向くと、水銀燈が怜悧な瞳で真紅を見つめている。

「……真紅ぅ。 貴女の姉として一言言わせてもらうわぁ。」
「あら珍しい。 面倒見のとってもよろしい水銀燈お姉さまから、訓示の言葉を戴けるなんて。 明日は雨かしら?」
「確かに。 君からそんな事を言い出すなんて。 僕も、興味あるな。」
「聞きたいの〜。」
「あれあれ? カナも同じ事を言ったかしら? カナも同じ事を言ったかしら?」

ふぁさっと髪の毛を払って、優雅に毛先をくるくる弄る水銀燈。 視線は毛先に向けたまま、気のない素振りで告げる。

「結局ねぇ、貴女は実力で負けたのよぉ。 自分を律する事もできずブクブク太った結果、オトコに捨てられたのぉ。
 分かるぅ? 敵は自分だったのよぉ。 貴女は翠星石に負けたんじゃないの。 自分自身に負けたのよぉ〜。
 それなのに、さも自分が被害者であるかのようにヒステリー起こして当り散らすなんて……」

ビシィ! 鋭く真紅に指先を突きつける。

「醜いわよぉ! し・ん・くぅ〜!!!」
「いったぁー!」
「水銀燈かっこいいの!!」
さすが水銀燈! 僕らに言えない事を平然と言ってのける! そこに痺れる憧れるゥ!!

「フッ、なんて無様なのかしら。 貴女はもう真紅じゃないわぁ。 そう、肉。 真肉にでも改名するのねぇ!」
「そこまで言っちゃうかぁー!!」
「もう水銀燈フィーバーが止まらないのーーー!!!」
凄いぜ水銀燈! 見事なまでの斬りっぷりに、僕らの熱狂はクライマックスへと向かって高まっていった。

 ド グ ワ シ ャ ァ ッ !!!

グボッ、と嫌な音を立てて真紅が拳を引き抜く。 水銀燈はものの1秒で厚さ1ミリの押し花となった。
今更ながら正論の通じない相手に命運を握られている事を悟り、僕らはガタガタ震えるだけなのだった……。
158SUPER SIZE SHINKU 06/10:2007/05/18(金) 23:55:44 ID:82sDwRU5
「まったくこの菌類が……今度燃やした暁には、悠長に見てたりせずガンガン石炭をくべてやるのだわ。」
ペラペラになった水銀燈を見ながらぼやく真紅。 罪の意識って何だろう。

「しかしアレね……。 これだけ時間があっても帰って来ないなんて、あの二人……キメてるかもしれないわね!」
ブフッ! ペラ銀燈から頂戴したニュー・サン・キングを盛大に噴出す僕。
すっ、翠星石が? ジュンくんに、その……操を? ブンブンと頭を振って、変な考えを振り払う。

「あっ、あのね真紅。 常識で考えなよ。 いくら好き同士でも人間とドールだよ? それは無いよ。」
「どうかしら? ジュンは私のネジを巻く前に下着チェックをした生粋の淫獣よ。 きっと今頃二人は熱く抱擁を交わしてるわ。」
「ハハハ、無い無い。 おかしな想像して、二人に失礼だよ。」

「やがて翠星石は目を閉じ唇をかざして、ジュンの唇がたどたどしくそれを覆うのだわ。 心音と息遣いが二人の全て……。」
「いやいやいや、やめなって。 分かるでしょ? 本当マジメな話。」

「絡めた舌から唾液を嚥下し合う二人。 荒い息がリビングを満たす中、ソファに倒れこんだ二人は互いの服を……。」
「だからやめろって言ってんだろ!!! ぶっ殺すぞ!!!!!」

思わず憤怒の言葉が口をつく。 そしてすぐに後悔。 お父様、本当に申し訳ありません!
僕は激情に囚われて、薔薇乙女らしからぬ暴言を吐いてしまいましたぁ!!

「そうよ蒼星石。 それが当然の反応。 貴女はさっきから他人事のようにこの話を聞いてるけど……。」
バオッと指先を突きつける真紅。 風圧で僕の顔面がひしゃげる。 ほんと何者ですか貴女。

「このままでは、翠星石はあの生殖鬼のモノになってしまうのよ!!!」
「!!!」
核心を突かれた。 その通りだ。 ついさっき僕を苛立たせたもの。 それは、翠星石を誰かに取られるという。
嫉妬だったのだ。

「でっでも……翠星石はそれを望んでるんだ。 僕が口を出す筋合じゃない……。」
「お馬鹿ね、蒼星石。 いいこと。 確かに、意思を尊重して自由にさせてあげるのは一つの愛情だわ。
 でもね。 間違っていたら間違っていると頬をひっぱたいてあげるのも、また一つの愛情なのよ。
 …………ねぇ、手を貸して頂戴、蒼星石。 今の私には。 貴女の助力が必要なの。」

……。 僕はどれくらいの時間黙っていたのだろう。 1分? 2分? ひょっとしたらもっと。
やがて目を開いた僕は。 しっかりと真紅の手を握ったのだった。
159SUPER SIZE SHINKU 07/10:2007/05/18(金) 23:56:36 ID:82sDwRU5
「お前らの考えてる事は、全部まるっとお見通しだ!」
リビングでまったりテレビを見ながら、時間を潰す僕ら。 平和だ。 普通に平和だ。
翠星石もいつもより機嫌がいいからか、大人しい。 真紅には悪かったけど、たまにはこういう時間もいいかな。

「あー、面白かったです。 上田ときたら本当にケッサクですぅ!」
乗り出してた身から力を抜き、ぽふんと翠星石がもたれかかってきた。 んん。 さっきのさっきだし、思わず緊張してしまう。
でも。 頭のどこかでは、こんな展開を考えていたような。 それでいて、考えるな、とも考えていたような。

「ドラマ終わっちゃったですねぇ……。」
「う、うん……。」
心地いいような、居心地悪いような、微妙で神妙な空気が流れてる。 ま、間が持たない……。

「……ジュン。 その、どうせだから、次の番組が始まるまで、ば、BIRZの練習……とか。 するのは、どうでしょう。」
「へ。 レンシュウ? と言うと。 ……あ、あ、あー、練習ね。 い、いいんじゃないか。」
BIRZの練習と言うと、えーと、勿論ろま……ロマンポルシェ。 ではなく。 やっぱり、さっきの話……だよな?

「そ、そうです。 練習です。 こ、これはあくまでBIRZの練習であって、それ以外の何者でもないのですよ……。」
「れ、練習だよな……。」
「練習です……。」
動悸が速すぎて胸が痛い。 小さすぎる肩に触れた。 少しずつ近付く顔。 ポプリのような香り。 大福を食う雛苺……。

「「 うぉわぁあああああああうあうあうあう !!! 」」
「ぴきゃー!」
大慌てで離れる僕らと、大声に驚いて叫ぶ雛苺。 危なかった! 今のは危なかった!

「二人とも何してたの?」
「へ? い、いや、ちょっとチビ人間の鼻毛が出てるみたいだったのでチェックを……。」
とばっちりで鼻毛キャラにされてしまった。 ちくしょう、本当にそんな所見てたんじゃないだろうな。

「そ、そういうお前はまた苺大福を食ってるのか? 苺大福もお前に食べられ続けて、可哀想な人生(?)だな。 ハ、ハハ。」
アホな事を言ってしまった。 しかし雛苺はそれに取り合うでもなく、ギタリと笑うと、豪快に苺大福を噛み千切った。

「ふふふ……心配しなくても、うにゅーの次はジュンの番なのよ……!」
「何だそりゃ!? 日常会話にしては斬新すぎるだろ!!!」
もっともそれは冗談では済まなかったのだった。
160SUPER SIZE SHINKU 08/10:2007/05/18(金) 23:57:28 ID:82sDwRU5
「い、一族郎党皆殺し……ですか。」
「そうよー。 もんくを言った水銀燈は、三次元から二次元にあっしゅくされちゃったなの。」

ガクガク震える僕ら。 どうやらほとぼりを冷ますどころか、僕らは完全に真紅を怒らせてしまったらしい。
だってしょうがねーじゃん! BIRZは樽ドル雑誌じゃないんだもん!

「ヒナがこのうにゅーを食べ終わる頃、ジュンはもううにゅーを食べられない体になっているのねー……ふぅ。」
「やめろよ!!!」
苺大福をかじりながら、しみじみと溜息をつく雛苺。
いるよねこういう奴! 瀬戸際の人間を見ると、大した理由も無くプレッシャーかける奴!

「えっと……翠星石たち、いる?」
「ひっ! そ、蒼星石!!」
リビングの入り口にひょっこり蒼星石が現れた。 雛苺リークで、こいつが魔王の尖兵である事は分かっている。
そんな見え透いた愛想笑いには騙されないぞ! いやらしげな帽子被りやがって!

「ねぇ。 もう真紅も落ち着いたし、そろそろ部屋に戻って来ないかい?」
「絶対にお断りですぅ!!」
「どうせ僕らを部屋におびき寄せて、ゆっくりとリンチするつもりなんだろ!!!」
露骨にギクリとする蒼星石。 マジなのかよ!

「い、嫌だなぁ。 どうして僕が真紅に加担しなきゃいけないんだい? 僕も彼女の横暴にはうんざりしてるのにさ。」
「ははぁ、分かった。 おおかた、僕に翠星石を取られて悔しいからだろーーー(笑)。」
「 ッ ラ ァ !!!!! 」
ザギッ。 蒼星石の飛び足刀が人中をえぐり、僕は台所まで吹っ飛ばされた。 やはり(笑)の威力は凄い……ガクッ。

「ジューン! カムバーック、なのーーー!!」
「そっ、蒼星石!! いきなり何て事するですか!!?」
ガクリと膝をつき、四つん這いで男泣きに泣き出す蒼星石。

「あぁそうさ! 妬みさ! 嫉みさ! 僕と翠星石はいつだって一緒だったんだ! なのに今は僕の場所に違う人がいて!
 それも、よりによってメガネで根暗で引き篭もりな禁治産者で! 簡単に割り切れるわけないだろォーーー!」

恥も外聞も無い慟哭。 それは強く僕らの胸を打って。 ことさら僕は違う意味でも胸が痛くて。 そんな風に思ってたの?
そんな中、翠星石は泣き崩れる蒼星石に歩み寄ると、優しく肩を抱きしめた。
161SUPER SIZE SHINKU 09/10:2007/05/18(金) 23:58:20 ID:82sDwRU5
「蒼星石……私たちは双子じゃないですか。 家族の絆は、どんなに離れても決して切れないのです。
 足元を見失って、オージービーフの手先になるなんて……蒼星石には似合わないですよ。」
「うっうっ……ごめん、翠星石。 手を切るよ。 僕、あの悪性コレステロールとは手を切るよ……。」

こうして蒼星石はベジタリアンとなった。 やっぱり牛肉は国産に限るよな。
しかしハッピーエンドに見えたのも束の間。 まるで天からの警句のような、恐ろしい声が辺りに響き渡った。

「うおおおお……あっさり裏切ってるんじゃないのだわ! この…………エロ帽子が!」
「お父様から載いた帽子だ!」
「 エ ロ 親 父 が !!!!! 」
「 お 父 様 の お 父 様 か ら 頂 い た お 父 様 だ !!!!! 」

真紅だ! まさか二階にいるまま会話できるとは。 声デカい! 耳もいい! そういやオペラ歌手って太った人が多いよな。
と言うか、この会話ご近所さまに聞こえてやしないだろうか。
学校にも登校せず、部屋からは小っちゃな女の子の声ばかり聞こえます。 恥ずかしすぎて死にたい。

「貴女まで私を見捨てるの? どうして? 半年も私をほったらかしにしたのは誰よ! BIRZじゃないの!
 必要とされないドール。 愛されないドール。 その気持ちが貴方たちに分かって!?
 気を紛らわすには食べるしかなかったのよ。 誰からも必要とされない日々。 不安で。 不安で。
 涙を見せないためには、食べるしかなかったのよぉ……う、うっうっ……。」

真紅。 頭をハンマーで殴られたような気がした。 僕はなんて事をしてしまったんだろう。
忘れていた。 真紅が右手を失った日。 あいつがどんなに変わっても、僕は変わらないって。 そう誓ったはずなのに。
真紅が少し太ったくらいで。 そんなちっぽけな理由で、大切な事を見失ってしまっていたんだ。

「悪い、翠星石。 えと、僕……行ってくる。」
「……はいです。 ほら、ちんたらしてるんじゃねーです! ダッシュダッシュです!」

僕にその言葉は届かなかった。 もう走り出していたから。 階段を二段飛ばしで駆け上る。
例え、ビッグオー真紅に思い切り横っ面をひっぱたかれるとしても。 僕はあいつの所に行かなくちゃ。

「真紅!」
「ジュン……?」

そして僕はドアを思い切り蹴飛ばして。 何も言わず、あいつの胸に飛び込んで。 そっと、だぶつく脂身を抱きしめたんだ。
162SUPER SIZE SHINKU 10/10:2007/05/18(金) 23:59:21 ID:82sDwRU5
「真紅……。 さっきは言いそびれちゃったけど。 貴女の姉として、一言言わせてもらうかしら。」
黄色いのが真紅に優しく手を差し伸べる。 え。 お前ずっと部屋にいたわけ?
今の抱擁を見られたのは、ちょっと気恥ずかしい。

「貴女は見失っている事があったかしら。 本当に大切な事は、見た目じゃないの。
 例えBIRZ収録の日までに痩せられなくても。 痩せようと努力する気持ち。
 その心こそが大切なのかしら。 心なくして心を通わせる事はできない……もう、今の貴女なら分かってるかしら。」

そう言って。 黄色いのはニコリと微笑んだ。 それは、とても慈しみに満ちた微笑で。
こんなに小さい体だけれど。 彼女は大きかった。 彼女は真紅はより大きい、寄りかかる事のできる相手なのだった。
そして真紅はそっと涙を拭って。 彼女に向かって最高の笑顔を返したのだ。

「ありがとう…………貴女の事、大好きよ。 量産型雛苺…………。」
「 カ ナ が お 姉 さ ん か し ら ぁ ーーーーー !!!!! 」


そして。 BIRZ収録の日がやってきた。

「雪華綺晶さんスタンバイOKでーーーす。」

ADの声が響き渡る。 遂に真紅の出番だ。 結局、真紅は痩せる事はできなかった。
でも。 いいんだ。 そんな事は。
真紅は真紅だから。 それはきっと、誌面を越えて、読者の心にも届くから。

ふと、振り返る真紅と目が合った。 二人して、口元が綻ぶ。
言葉なんか無くたって。 今は分かる。 何もかも上手くいくって。 だから僕は。
振り返らないでスタジオを後にしたんだ。





次の号。 ローゼンは打ち切られた。
                                                     おしまい
163名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 00:05:16 ID:fL1QWZ03
金糸雀うざい
164名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 00:10:16 ID:KbkhZpd+
>>162
そりゃ打ち切られるなwww
面白かったww
165 ◆xLJAc4vOZM :2007/05/19(土) 00:31:31 ID:tGpuwKQ0
自分は自演など一切しておりません。

一部のレスを見て非常に不愉快に感じたので書かせていただきました。
何の根拠も無いにもかかわらず、このような事を書かれるのは極めて不快です。
もう自分は二度とこのようなスレには投下しません。
先に投下した二つの拙いSSを読んでいただいた方々、ありがとうございました。
空気を乱して申し訳ありませんでした。
166名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 00:36:01 ID:AyIvu8fq
おいおい
167名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 00:41:57 ID:iwSHnT42
>>165
そうだそれでいい。自演厨もう来んな
168名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 00:49:31 ID:Y0oSo9WU
>>162
なんという文才…面白かったGJ
169名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 03:08:42 ID:tGqLgU0/
見やすい文章と見づらい文章がある
>>153の文章は久しぶりに見やすかった
んでもってカオスとシリアルの連動っぷりがよかった

んで、この人どっかで見たことある気がするんだ。ピンハかEVERGREENか翠マフラーの人じゃないかな
170名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 06:55:16 ID:TdDlDBOw
ここもこんな状態か
どこもかしこも持ち直しは無理そうだ
171名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 12:50:33 ID:fL1QWZ03
あげ
172名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 13:07:22 ID:7kedL32r
アリスゲームが終わって2年後
人知れず人間を襲うドールがあらわれた
今はいない薔薇乙女の分まで奮闘する
みッちゃん、巴、じじい
劣勢挽回の為じじいはひとつの紙にマークをする
巻きます ○
しかし何もおきない
「なぜなんだ?」
「おまえでは無理だ」
そこに今まで行方不明だったJUMが
ベルトを巻いて登場
「来い!ホーリエ!」
ローゼンメイデン・カブト

あまりこのスレに合わないかも
173名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 19:18:50 ID:Mr2yaVPa
こうして貴重なコンテをUPしてくれた43と、
107、165のSS作家を住人のみんなは力を団結して叩き出しました。
作家達のアリスゲームはこうして更なる始まりを迎えるのです。

叩いて叩いて叩きまくり、再起不能にされるか這い上がるか。
それはアリスを目指す作家達の根性と、読者達への服従貢献度が
どれだけあるかにかかっているのです。
ですからたっぷりと頑張って下さい、皆さん。

トリビアァァァル!!!
174名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 21:59:32 ID:6hPftTXN
もうだめぽ
175名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 22:31:07 ID:TJwPZ+IQ
>>153-162
GJ!
こういう楽屋裏ネタ的後日談SSって好きだなー。
読みやすい上に良く練りこまれていて面白かった!
まさにローゼンSSの手本だ。
ひょっとしてこれまでも単発のバキネタとかで投下してた人かな?
次作も期待大ageですよ。
>>165みたいのがベタ褒めされることに疑問を感じていたし、
もともといちいちそんなことで褒めたりするスレでもなかったと思うけど
敢えて評価するというのならば、>>153-162のようなSSこそが
本来評価されるべきSSだと思うね。


>>165
気の毒な気もするけど、最後の一文がちょっとひっかかるわけで。
無実なら書く必要も無い文なのでは?
抗議する相手へのアンカーも無いし。SSの文体も疑わしい人たちに似てるし。
彼らかららしいレスも無いし。
図星だったのか、褒め殺しにされたのか。
ま、いいや。また気が向いたら来てね。
176 ◆xLJAc4vOZM :2007/05/19(土) 23:37:51 ID:tGpuwKQ0
>>175
自分はただ、新しいSSが投下されて、せっかく良い雰囲気になりかけてた
所にこういう事書くとまた空気が悪くなると思って書いただけです・・・
177名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/19(土) 23:58:56 ID:H8wuu0SC
どっちもどっちってことでひとつ
178 ◆xLJAc4vOZM :2007/05/20(日) 00:03:14 ID:8mp3tpyy
>>177
何故???意味が分かりません。自分はただSSを投下しただけですよ!(怒
ハッキリ言って自分は何も落ち度はないし、悪くないと思っております。
だいたいこのスレの最初にいた人は何処に行ったのでしょう。
ここをまだ見ているなら少しは弁護して欲しいところです・・・
179名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 00:10:35 ID:xSh6edTc
うるさいそんなことよりオナニーだ
180名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 01:35:34 ID:kR/ruos5
>>162
GJだ!
もう一回、シリーズの一番最初から読んで泣いてくる。
ちうか、新しいシリーズをぜひとも書いてほしい。
さっきも書いたが、俺はアンタのSSのためにこのスレに来てる。
正直言って、原作者に承諾得て、正式に執筆するのを奨めたいくらいだ。

もう一度言おう。
GJだ!!
181名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 05:12:12 ID:yw1X+qhk
おまいら天才か
182名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 05:39:29 ID:68KEaqWT
ここも荒れてるのか
183名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 09:54:09 ID:tKQkK69n
>>180
コピペ乙
一昨日出直しておいで
184名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 10:42:55 ID:omods3B0
それじゃ初期にいたけど、一年くらい離脱していたおいらから一言

>>1を読め。10回くらい読め。それが全てだっ。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 11:47:34 ID:kbGwN4tb
◎(゚∀゚)◎アヒャ!
186名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 13:50:17 ID:jz/hvica
ほめ殺しって上手い言葉だよな
187名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 16:10:29 ID:tCYL8yB9
>>184
了〜解っ

>>186
元祖は故 竹下 登だったけか?
188名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 21:14:20 ID:bhvB6jck
中曽根じゃなかった?
189名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/20(日) 23:40:55 ID:FrGSJAkb
kaso
190名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 00:10:15 ID:3D3/QVtJ
kuso
191名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 02:00:52 ID:GTibp15a
>>98の言ってるお見舞いとかいうSSはノーマルスレ史上最悪のクソSS
それをわざわざ宣伝する98はそのクソSSの作者本人

つまり自作自演の最低なクソ野郎ということです
192名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 02:10:44 ID:39LiFASX
>>191
まぁそんなクソクソすんなって
19398:2007/05/21(月) 02:41:51 ID:3MuFXwcx
>>191
何を根拠に自作自演だと?
俺は間違いなくSS職人ではないぜ。
まあ、どうでもいいけどな。
どうせこんな所でしか吠えられない、虫ケラ以下の知能指数の奴を相手にしても仕方ないからな。
ホント、可哀想に。
お前は頭の良くなる薬でも作ってもらえる製薬会社の実験動物になった方が幸せな人生を送れるよw
194名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 04:07:22 ID:RC0p+x+2
何でこんなにあおり耐性が無いんだここは
195名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 07:12:23 ID:kRSWBWjb
>>193
一番の馬鹿はおまえかもな
196名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 07:28:43 ID:uxf9ymop
頼むから同人関係者の罵り合いは他所でリアルでやってくれ。
ディープな対立関係をこのスレに持ち込まないでくれ。
197名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 08:10:20 ID:uxf9ymop
>>165も、そんな争いに利用されたとしたら
あまりに気の毒。
198名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 14:14:59 ID:Apxzm74T
>>195-197
一連の褒め殺し&叩きの元凶&マッチポンプ乙!!
199変態めぐ ◆b7XuiBsTpk :2007/05/21(月) 14:57:40 ID:ESqQQUwT

  .'´,ヘ ヘヽ
  !〈 ((゙ "))〉     http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1179726727/1-100
  il!!|.゚ ヮ゚ノ!     ママ銀燈スレ復活!良かったら来て
  il(i ゜ ゜i)l 
 ノl!!l   |!|  
   |._ハ_.|    
   i⊃i⊃
     
200名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 15:02:37 ID:mDSkncjU
>>198
一連の褒め殺し&叩きの元凶&マッチポンプ&傍観者の振りした煽り厨乙!!
201名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 15:17:04 ID:Apxzm74T
>>200
一連の褒め殺し&叩きの元凶&マッチポンプ&傍観者の振りした煽り厨乙!!(^O^)
202名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 15:22:03 ID:RC0p+x+2
だからなんでこんなに耐性無いんだ
203名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 17:07:16 ID:uxf9ymop
>>202
暇潰しなんじゃないか?
204名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 17:36:37 ID:kRSWBWjb
こんな所で暇潰しするより、将来食うのに苦しまないように
今は一刻も早く学校に行くべきだと思うわぁ〜お馬鹿さぁ〜ん


205名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 17:37:49 ID:mDSkncjU
>>201
一連の褒め殺しの真紅&叩きの元凶の水銀燈&マッチポンプの金糸雀&傍観者の振りした煽り厨翠星石乙乙!!(^O^)
206名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 18:24:30 ID:mDSkncjU
我ながらなかなかのお馬鹿さんっぷり。
>>204のように言われると弱いので、ここで止めとこう
207名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 19:00:22 ID:FPKec1pV
>>206
なんなんだ、あんたは?
208名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 21:20:38 ID:L2CdXoG2
ピンポーン

「誰だよ、こんな朝っぱらから…」

姉が登校してしばらくした後、呼び鈴が鳴った。
とりあえず誰が来たのか確認してから居留守を使おうと決め込み、
覗き窓に顔を近付ける。

(って柏葉?なんの用だろ?学校に間に合うのか?)そんなことを思いながら扉を開けるジュン。

がちゃっ

「あ…おはよう、桜田くん…」
挨拶をするものの、その表情はひどく落ち込んでいる。

「(なんか今日はいつにも増して暗いな。何かあったのか?)あ、ああ、おはよう…
 どうしたんだこんな朝から」
「うん…ちょっと相談したいことがあって」
「ふーん…でも学校は?」
学校という言葉を聞いた途端、表情を更に強ばらせる巴。

「…! 相談っていうのは、その学校のことなの…」
「(何か複雑な問題みたいだな。姉ちゃんも居ないってのに…)まあ、立ち話もあれだし、とりあえず上がってよ。
 話は中で聞くからさ」
「ごめんなさい…急に押し掛けて」
「いや」

「…ところで、雛苺は?」
「それが、まだ帰ってきてなくて…」
「そう…」
「真紅たちも最近はよく出かけてさ。今もどっかに行っちゃってるよ」
209名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 21:23:11 ID:L2CdXoG2
場所を居間に移し、紅茶とお茶うけを用意したあと、ジュンは尋ねた。
「それで、相談っていうのは…?」
「うん、実はね…」
俯きながら巴は語りだした。

聞けば、学校の帰りに偶然ポストに手紙を出そうとしていた雛苺と会い、
近況を話ながら桜田家へ送り帰したのだが、
その様子をクラスメイトに見られたらしい。

友達も少なく、教室で浮いた存在となっている学級委員さまの
隠れた趣味発覚とばかりに、クラス中に「巴は人形遊びが趣味で、外で堂々と人形に話しかける危ない人」だの
「クラスになじめないストレスのあまり人形いじりに走った」だのの噂が広まり、
教室に居れなくなったという。
しかし厳格な父に登校拒否を認めてもらえず、似たような境遇の幼なじみに話を聞いてもらおうと、
ジュンを頼って桜田家へ足を運んだ次第だそうだ。

「それは…大変だったな」
「うん…これからどうしようかと思って…」
「担任に相談しようにも、アイツじゃな…」
脳裏にジュンのトラウマの原因をつくった、あの担任教師の笑顔が映り、
ジュンはうんざりした表情で言った。

「それじゃ下校の時間まで家に帰れないな」
「うん…どうしよう」
「とりあえずウチに居る?」
そう言って、ジュンは激しく後悔した。
何を言ってるんだ僕は。 今は両親も姉ちゃんも居ないんだぞ変な誤解を受けたらどうするんだよ!

「本当にいいの?」
ジュンが一人で慌てふためいているのをよそに、
巴は顔を上げてジュンを見つめながら聞いた。

…そんな顔をされたら断れないじゃないか。
「あ、ああ…」
っておい「ああ」じゃねえよ僕は
っていうか柏葉ももっと深く考えろよ
誰も居ない家に男と女二人っきりだぞ!?


こうして始まった二人の登校拒否カップルの行く末は…?

続かない
210名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 22:02:04 ID:1vVKxfac
馬鹿野郎、何故エロパロ板じゃなくここで書くんだ
211名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 22:09:49 ID:JP4mwcY3
>>207
自作自演したり煽ったりと忙しい、学校通いの某SS書きじゃね?w
212名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/21(月) 23:22:43 ID:3D3/QVtJ
ていうかここって笑えるほど馬鹿ばっかだなw
SS書き、SS読み、馬鹿同士で言い合ってるのかwそりゃ結構結構wwwww
見てると面白いから頑張れw
213名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 00:10:23 ID:pyd2Wz7d
面白アゲ
214名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 00:19:05 ID:sA+5fP+5
http://rozen.no-ip.org/contents/rozen_uploader2/src/1179490501584.png

                   (゚д゚ )
          <⌒/ヽ-、__ノヽノ |
        /<_/____/ < <
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     (゚д゚ )
          <⌒ヽ_ /ヽ-、__ノヽノ |
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         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                       Σ(゚д゚ )
          <⌒ヽ    /ヽ-、__ノヽノ |
        /<___ノ ̄ ̄/____/ < <
    
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          <⌒ヽ_ /ヽ-、__ノヽノ |
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          <⌒/ヽ-、__ノヽノ |
        /<_/____/ < <
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          ∧∧
         ( ・ω・)   Σ(゚д゚ )
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         ( ゚д゚ )      ( ゚д゚ )
         _| ⊃/(___ノヽノ |
       / └-(____/ < <
215名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 00:29:58 ID:c/pyXo/F

            >>1
             ↓                _人
      ∩    ∧_∧            ノ⌒ 丿
       \ヽ_(    )         _/   ::(
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 L_ `ー / /   /           \_―― ̄ ̄::::::::::\
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  | ̄ ̄ ̄\     ノ こんな     (     ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
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      たてんじゃねー!      Y人, ' ',人⌒ヽ、, '
                      Y⌒ヽ)⌒ヽ、 人,ヽ)人'、, '
        へ, --- 、         ノ ̄     ::::::::::::::::::::::)
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   し'   し' と∨ ̄∨       \__::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ
216名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 00:41:14 ID:zDajZO+y
おい、やめろ!もうこれ以上荒らさないでくれ!
217Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:24:09 ID:CvZx6MMb
>>135の続き

9

水銀燈は自分を呼ぶ声に目を開けた。
その途端、朝日の光が一挙に目に飛び込んできたのでひどく動揺した。水銀燈はあまり日の光は好きでない。
なぜこんなことに?
自分の記憶をしばらく辿るとすぐに答えが出た。
あのまま病院の外に腰掛けて寝てしまったのか。
「ねぇ、水銀燈」めぐは窓から顔を出して自分を覗き込んでいた。「そんなとこで寝てたら、風邪ひいちゃうよ」
「ドールは風邪なんて…」言いかけた時、水銀燈は驚いて顔を上げた。「めぐ!あなた生きていたの」
めぐは自嘲するように笑った。
「私もね、驚いちゃった。まだ生きているなんて。昨晩、水銀燈が慌てた感じで窓から飛び込んできた時は嬉しかった。
死ぬ前にちょっとだけでも合いたかったから。結局生き延びちゃったけど。あの時私の命を使ってくれれば絶対に死ねたのに。」
水銀燈はめぐから視線を逸らして言った。
「アリスゲームが始まらないと契約も意味が無いと前も言ったでしょう?」
「ふふ…そうね。でもいいんだ」
めぐは両腕を窓口に組んで遠い空を見つめた。
「私ね、余命ニ週間なんだって。看護婦さんたちが話しているのを聞いちゃった。
心臓が肥大化して細胞が死滅していくんだって。全く原因が分からないみたい。
特効薬なんて無駄なことで進行が抑えられたらしいけど、それでももって二週間だって…ふふ」
「そぉ…よかったじゃなぁい」
水銀燈はめぐから視線を逸らしたまま答えた。
「ニ週間後に余命が尽きて死ぬか、それまでに天使さんに命もってかれるかのどっちかね。
どっちかというと天使さんに命もってかれる方が素敵な感じでいいんだけどな。贅沢過ぎかな…?」
めぐが自分のベッドに戻っていくと、水銀燈は後を追うようにして窓のふちに飛び上がってから着地した。
「下らない人生だった…生まれたて心臓が壊れてて、ろくに学校へも通えない。友達もいない。パパとママは喧嘩ばかり。
ついに私が10歳の頃ママは家を出ていっちゃった。パパは仕事のことしか頭になくて、私のことは忘れてる」

生まれた時から壊れてて、父には忘れられる。水銀燈はぞっとしてすぐに考えるのをやめた。

「おばあちゃんには昔歌を歌ってもらったりしたけど、そのおばあちゃんもいなくなっちゃった。
今となってはだーれも私のことなんか気にかけちゃいないの。そして毎日このつまらない部屋で死ぬのを待」
「黙りなさい。その話を聞いていると気分が悪いわ」
めぐは驚いて水銀燈に目を向けると、彼女は腕を組んだまま窓からずっと外を見ていた。
「ごめんなさい」
二人の間に気まずい沈黙が流れた。
218Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:25:12 ID:CvZx6MMb
「ねぇ、水銀燈」
めぐは沈黙してるままではつまらないとばかりに再び話し掛けた。
「なにかしら」
水銀燈は外を向いたまま答えた。
「両手の指先を全部あわせて、中指だけ折り曲げてみて?」
そう言って、めぐは見本を手でやってみせた。中指だけ第二関節まで密着させ、他の指はその先端だけが接触する。
水銀燈は横目でちらとめぐの手を見てみた。
一瞬、いかにも下らなそうなことをしているので無視しようと思ったが、
不意にさっきめぐをを黙らせたことの後ろめたさが水銀燈の心に働き始めた。
もう一度横目でめぐを見てみると、お願いといわんばかりのめぐの顔がずっとこちらに向けられている。
それから水銀燈は数秒間だけ粘った。やがて、はぁとため息をついて手を動かした。
「…こーぉ?」
「ええ。そしたら、親指、人指し指、薬指…という順で指をはなしてみて」
水銀燈は言われた通りに指を離し始めた。親指、人指し指は何の問題もなく離れたが、薬指だけがどうしても離れない。
「ふふ」めぐは小さく笑った。「お人形さんでも水銀燈は人間と同じ関節の構造してるんだ」
水銀燈は手を組みなおした。「くだらないわ。ばかじゃなぁい」
「私達人間もね、こうしていると薬指だけは絶対に離れないの。
だから結婚指輪は薬指にはめるんですって。永遠に二人の仲が離れないようにって」
めぐと水銀燈は同時に左手の契約の指輪を見た。
「他にもね、左手の薬指は心臓に直結しているとか、リングには終わりが無いから永遠にとかどうとか」
水銀燈はあまり興味を持っていないふうだった。
「それで?」
「それでね、」
めぐは人差し指をたてた。
「私が死んでも、魂は永遠に水銀燈と一緒ってのはどう?文学的でいいでしょ?水銀燈は私の命を使っているんだからね。
そしたら私の魂は水銀燈と一緒に空を飛べるの」
「ふん…勝手にそう思ってなさぁい」そう言い残して、水銀燈は窓から飛びだっていった。
219Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:27:33 ID:CvZx6MMb
10

「金糸雀が…動かなくなった?」
聞いた真紅と蒼星石の二人が後ろから駆けつけて来た。翠星石はというと、すねて二階へ閉じこもっている。
「そう…朝起きたら鞄から起きて来なくて…気になって鞄を開けて起こしてみても全然反応しなくて…」
みつは目を真っ赤にさせながらようやく答えた。ずっと泣いていたのだろう。
「わーーん!私の…私のカナがああああああああああああああ!!カナカナカナあああああああ」
みつはジュンに抱きついて吹っ切れたように号泣をはじめた。
「わああ…なんだよ…」ジュンは戸惑った。大人の女性に抱きつかれて泣かれるのなんて初めてだ。
みつの長い髪のかおりが鼻をつき、ジュンは気恥ずかしさを覚えた。
「ちょっと、金糸雀を私に見せて!」真紅はいきなり取り乱したように言って二人の間に割って入った。
金糸雀がみつとジュンに挟まれて押し潰されそうになっているのを見かねたからのか、
みつがジュンに抱きついているのに不愉快を覚えたからなのかは微妙だ、と蒼星石は思った。
「いけない、私ったら!」みつは我に戻り、慌ててジュンから離れて金糸雀を差し出した。
すると真紅は落ち着きを取り戻した様子で金糸雀を優しく抱きかかえ、まずは顔を見た。眠り続けたままの顔。次に背中の螺子。
最後に両脇を支え持ち全体を見る。一同が真紅の行動を見守った。

真紅は結論を口に出した。「金糸雀は眠っているだけだわ」
「じ、じゃあ金糸雀は無事なの!?」みつの顔がぱっと明るくなり、両手を合わせて真紅に迫った。
「ええ…まあ」真紅は答えた。「正しくは、金糸雀は夢の中で迷子になっている…」
みつは困惑した。「どういうこと?」
「…夢の中」蒼星石が代わって説明を始めた。
「僕たちローゼンメイデンは眠るとき必ず身を置く場所があります。そこが夢の中といったところです。
人間にも本来それぞれもっているのですが、人間にははっきりとそれを見ることが出来ません。
僕と双子の翠星石にはその夢の中への入り口を"見つけ出す"力を持っているのですが…その僕が知っていることは…」
蒼星石は自分の言葉にとまどいを見せた。
「人やドールが夢の中からの出口を見失ってしまった場合、一生そこから出れません。
現実世界ではずっと眠り続けたままになるんです」
蒼星石が喋り続けるにつれ、みつの顔には絶望の波が広がっていった。今にも再び瞳から滝のような涙を流しそうだ。
「それじゃあ…それじゃあカナは…」
「大丈夫よ」真紅が急いでなだめた。「その為にここに蒼星石がいるんですもの。金糸雀の夢の中に蒼星石の力を借りて入り、
金糸雀を見つけ出せればきっと呼び起こせるわ」
「ほ、ほんとおお!?」みつは希望に満ちた明るい顔に瞬時にして戻った。その表情の切り替えの速さは漫画のようだ。
「カナ、カナを呼び起こしてくれるの!?」
その問いに答えられるのは私ではない、真紅はそう思って蒼星石を見やった。
すると、蒼星石は微笑みながら真紅にうなづいた。オーケーサインだ。
真紅はみつに向き直って答えた。「ええ。だから安心して」
「ありがとう!真紅ちゃん、そして蒼星石ちゃん!!本当にありがとう!!きっと何かお返しするわ!」
みつは二人を両腕で抱きかかえ、ついに二度目の涙を解き放った。今回は嬉涙だ。
「でもおかしいよ、真紅」蒼星石はきつく抱かれながら小さな声で真紅に耳打ちした。
「今日の朝まで自分の鞄の中で眠っていたということは…」
「ええ。"自分のフィールド"から出られなくなるなんてことはローゼンメイデンには絶対にありえない」
真紅がまじめな顔つきをして答えた。「きっと昨晩金糸雀に何かあったわ」

「ああ、そういえば…」みつは突然何かを思い出したように言い出した。
「今日の朝、壁に変な文字が現れていたの。英語だかドイツ語だかわからないけど…とにかく変な文字。
外国語なんて全然私には読めないけど…すぷれんでぃとーとかなんとか」
「変な文字が壁に?」真紅は強い興味を示した。まるで何かに思い当たったかのようだ。
「それは英語かドイツ語かはっきりしない?」
「それが、とにかく変な文字でちょっと分からないのよ…ある文字は知っているアルファベットで、
ある文字はなんだかへんな感じになってる。iとsが合体したような…でも、多分英語じゃないかなあ」
真紅は一考した。薔薇乙女は元より様々な言語に精通しているが、
一部は通常のアルファベットで、一部はiとsが合体した文字を含むなんて言語は英語はもちろん、
ドイツ語にもラテン語にも思い当たらない。
まさか本当にそんな言語が存在するのだろうか。真紅は蒼星石に視線を送ると、蒼星石も首を横に振った。
220Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:28:35 ID:CvZx6MMb
「ねぇ、その文字、私たちに見せて頂戴」
真紅が切り出すと、みつは驚いた様子をみせた。「え?でも私の家、遠いよ?」
「あら、問題ないわ」真紅は微笑んでから踵を返し、廊下の奥へと歩き出した。
「私が許可するわ。家に上がって頂戴。ある部屋に案内するから」
今まで黙って話を聞いていたジュンだったが、ついにそこで割り込んだ。「お、おい、一応僕の家だぞ」
真紅は足を止めて振り返った。「そういえば、ジュン、あなたもよ。ついてきなさい」
「僕の話を聞いてんのかよ!真紅!」
「すいません。でも今回は許してあげて下さい」蒼星石がなだめた。
「今回は真紅も人助けする為にしてるんですから。あなたも分かっているはずです」
「ああ、分かってるよ…ただ相変わらずあいつの態度が気に食わない」
言い終えてジュンは口を尖らたあと、戸惑っているみつに向き直り、あがるように素振りで示した。
「あ、どうぞ、あがってください。真紅が向かっていったのは多分鏡の部屋だと思いますので…ええっと、こっちです」
「は、はあ。お邪魔します」
みつは靴を脱ぎ整えなおしてからジュンについて行くと、やがて古びた物置部屋にたどり着いた。
物置の正面には大きくて豪勢な鏡がおいてあり、それは古き時代のものを感じさせる。
真紅はその鏡に向かって右手をかけて独り言を喋っていた。少なくともみつにはそう見えた。
「ホーリエ、以前に出かけた彼女の家のフィールドの出口は覚えてる?そう?さすが私の人工精霊ね」
真紅は言い終わると三人に向き直った。「すぐに着くわ。金糸雀は私が抱えているから」
その言葉に蒼星石とジュンが納得したような素振りを見せたが、みつには訳が分からなかった。「な、何をするの?」
真紅はみつに向かってほくそ笑んだ。「あなたはこれから、nのフィールドを通るのよ」
221Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:32:30 ID:CvZx6MMb
11

同じ頃、桜田家の二階ジュンの部屋では翠星石と雛苺がそれぞれの行動に走っていた。
雛苺は床に紙を散らばせてひたすら絵描きに浸っている。
翠星石の方は部屋をあちこち歩き廻ったりベッドに座ったりしながらぶつぶつと独り言を口走っている。
「あのチビ人間…生意気ですコンチクショーです…」
今頃はどうせ真紅と仲良く紅茶でも飲んでいるんだろう。その光景を頭に思い浮かべた。
「きぃぃぃ!別にヤキモチとかは全然ないですけどあのチビ人間は真紅とばかり仲良くしててむかつくです!こちらがいづらいです!」
翠星石は絵描きに夢中な雛苺を尻目に部屋の中を探索し始めた。彼女の考えていることは一つ、チビ人間への復讐だ。
「あんなチビ人間にこの翠星石がなめられてたまるもんですか!!たっぷり胸に刻み込ませてやるです!!」翠星石の瞳が燃えた。
ふと、ジュンがよく座って向き合っている、光を発する厚みの薄い箱が目に入った。
この箱と向き合ってはジュンが嬉しいそうに"買い、買い"と口ずさんでいる箱だ。
最近では、真紅も同じことを始めたらしい。何でもくんくん関連の本がこの箱で手に入るとか。
今この箱の画面には、黒がベースの画面に、緑色に光ったどろどろした感じの文字でLastGenerationと書かれている。
そして左上にはサイト名が表示されていた。

OWN−AGE.COM
 online gaming media and editing resources

右下には別の小さなブラウザがある。

ファイルのダウンロード
46.8kb/s 残り2時間18秒

ジュンは何か重要なことをこの箱でしようとしている。翠星石の勘が働いた。
再び雛苺に目をやると、彼女の描いた絵が数枚目に入る。どれも下手くそだが、今はその下手さが素晴らしいものに思えた。
これだ!
翠星石は雛苺に近づいて耳打ちをした。その表情は既に悪いことを企んでいる女のそれだ。
「チビチビ苺、ちょっと力貸すです…」
222Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:34:19 ID:CvZx6MMb
12

これから自分は人間として、何か一線を越えてしまうのではないのだろうか。みつはそんな気がしてきた。
「え…えぬのフィールド?」
無情にも、みつの問い掛けに誰も答えてくれなかった。いや、更に無情にも、三人は実際にそれをやってのけてくれた。
真紅を先頭にして、蒼星石、ジュンが鏡の中にのめり込んでいく。三人を吸い込む時、鏡はまぶしく光り輝いた。
「光が消えないうちにきてください」ジュンはそういい残して - 鏡の中に消えた。
そうしてみつ一人が物置部屋に取り残された。
そう、そうよ。分かったわ。
前にも鏡の中から突然部屋にドール達がやってきたことがあったっけ。それと同じことよ…!
千鳥足で、みつはゆっくりと鏡の前に立った。鏡から放たれる光はみるみるうちに弱まっていく。
みつは覚悟を決めた。本能が鏡に頭がぶつかることを警告したが、数秒後、その警告は間違いだったと分かった。

「きたわ。蒼星石!」真紅がnのフィールドに入ってきたみつを確認するとすぐさま叫んだ。
「うん!」蒼星石は世界樹と呼ばれる巨大な樹の枝から一枚の葉を取り出し、正気を失いかけているみつの元へと急いだ。

みつは自分が水面のない深い水の中でぐるぐる回されている気分だった。
呼吸ができない。どこが下でどこが上なのかも分からない。ただせめて、触れられるものを求めて体中をじたばたさせた。
しばらくして、背中が柔らかいものに触れた。
「ふう、大丈夫ですか?みつさん」
聞き覚えのある声。蒼星石の声だった。
気を落ち着かせて足元をみると、一枚の巨大な葉っぱが自分と蒼星石をのせている。
その下は地獄を思わせる、ひたすらの闇。
あちにこちらに、扉や窓といった入り口らしきものが無数に空間に浮いている。
重力はいずこへ、また一体どこに光源があって、こんな暗闇の空間でこういった物体が照らされているのかと思った。
「あまり動かないで下さい。あとはこの葉が案内してくれるので」
正確には真紅を追うだけだけどと思いながらも、蒼星石はみつを落ち着かせる為そういった。
真紅の人工精霊がみつの部屋への入り口を案内してくれる。

「ここよ!」真紅が叫ぶと、四人全員がある扉の前に集まった。
その扉が開けると、その先はマンションの一室を思わせる部屋に繋がっていた。
みつはすぐに分かった。自分の部屋だ。そしてこの光景は自分の部屋の鏡からみた角度と合致する。
「ここね?みつさん」
「は、はぁい…」みつはやっとの思いで声を出した。
「そう。では早速入りましょう」
自分を乗せている葉が勝手に動き出すと、みつの部屋へと繋がる扉がこちらに迫ってきた。

ようやくここから生きて出れる。みつは我が家がいかに素晴らしいものであるか泣きそうな思いで実感した。
223Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life:2007/05/22(火) 02:36:20 ID:CvZx6MMb
ふう、真紅はため息をついた。毎度人間を新しくnのフィールドに連れてく時は骨が折れる。
昨晩、夢の中で金糸雀には確実に何かが起きた。壁に残されたという文字が気になる。
不可解なのは、ドールが持つ独自のフィールドに他のドールや人間が入ることは普通は出来ないという点だ。
今一緒にいる蒼星石と、もう一人翠星石なら出来るが、そんなことをあの双子がするなんて考えられない。それは庭師の掟でもある。
それに、水銀燈だって違う。
彼女は一度スィドリームとレンピカの力を奪い、自分のフィールドにこそ押し入って自分の眠りを妨げてきたが、
その際金糸雀の方までは絶対入っていない。あの時はまだ金糸雀は姿を現していなかったから。
さらに付け加えると、これは"あの子らしくない"。
考えられることは…まさか。
真紅は胸に抱えていた金糸雀をゆっくりと部屋のベッドに置いた。
それから慎重に視線で壁中を見回す。見つかった。
「あれよ。あの文字」
真紅は言いながら指を差した。全員がその文字に注目した。
その文字を見ている内、みつの言っていることがよく分かった。確かに変な文字という形容がしっくりくる。

ttp://grugru.mine.nu/box/guru_guru_4095.jpg

「ね、ね?変な文字でしょ?」みつが言ったが、全員文字に集中して何も答えなかった。
間違いなくそれは英語を思わせるが、やたら湾曲された、不可解な文字だ。
どちらかというとただ単に字が下手な者が書いたという表現がしっくりくる文字で、
ジュンには雛苺あたりが壁に落書きしたのではないかとすら思えた。
「へったくそな字だなあ。なんてかいてあるんだ?"e"とか形違ってるし…」
「splendid…wee?」蒼星石が口走った。後半の"wee"の部分がいやに面白おかしく響いた。
「splendid iceじゃないかしら。一応そう無理やり読めば意味が通るけど。」
真紅が提案した。「ま、こんな汚い字を書いた子はまず一からアルファベットを勉強しなおすべきね」
「splendid ice ってどういう意味だ?」ジュンが聞いた。
真紅は一考した。「そうね。美しい氷とか、透き通った雪とか」
「ふーん…」ジュンは曇った返事を返したが、真紅の中では確信ができつつあった。
氷、そして雪。さて、どうしたものか…


U:糸口 Breaking the ice に続く
224名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 02:57:59 ID:sA+5fP+5
>>217-223
乙&wktk
225名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 04:07:45 ID:fuKf9dQC
こいつぁ期待
226名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 05:14:38 ID:NWodflZe
手が込んでる
こりゃ楽しみ
227名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 07:23:00 ID:BKYeosFg
こういう手の込んだ手法をとるSSは初めて見た。
続きがとても気になる。
228名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 08:29:03 ID:IH2S4lrQ
ここの銀ちゃんに一票入れて下さい
一日一回投票出来ます。
今月の24日までに3位以内に入っていたら銀ちゃんが脱ぎます。
ttp://vote.rentalcgi.com/html/daioh.html
229変態めぐ ◆b7XuiBsTpk :2007/05/22(火) 10:29:59 ID:H03KzDLG
水銀燈がママになって優しくしてくれるスレ
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1179726727/1-100
230名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 14:00:07 ID:fsR6Z8lK
このスレつまんねつまんねつまんねつまんね
  <⌒/ヽ-、___ このスレつまんねつまんね
/<_/____/ このスレつまんねつまんね
このスレつまんねつまんねつまんねつまんね

     ∧∧
やっぱ( ^ω^)おもすれ━━━━!!!!
    _| ⊃/(___
  / └-(____/
231名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 00:17:08 ID:WMMed1xj
ここはゴミ置き場である
暗くて、壊れた人形がいっぱいそこらかしこにちらばってある
壊れた人形からは悲しみの声が聞こえてくる
壊された人形からは恨みの声が聞こえてくる
そう、ここは全ての壊れた人形――ジャンクたちの立ち寄る人間の墓場みたいな所である
そしてここにまた一体のドールが現れた
(ここはどこ…?)
そこにいたのは真紅であった
きたばかりの真紅には自分が何故ここにいるかを理解する事が出来なかった
(私は薔薇水晶と戦ってたわ…それなら何故ここにいるの?)
「簡単な事よぉ」
真紅が声に気付き後ろを向くと、水銀燈がウフフと笑っていた
「どういうこと!?」
「あなたは薔薇水晶に負けたからここにいるのよぉ、他にここにいる理由は無いでしょう?」
(………!?)
真紅はまるで自分に銃を向けられてることに気付いた人質のような顔をしていた
自分が負けるなんて事実をしらされたからである
(私が負けたですって…?分からない…)
真紅は自分の中に微かに残る薔薇水晶と戦った時の記憶を思いだそうとした
(私はおい詰めたはずだわ…でもそこにジュンがきて…わたしは振り向いて……そして…刺されたんだ…)
真紅は自分が負けた時の事を全て思いだそうとした
(私はおい詰めたはずだわ…でもそこにジュンがきて…わたしは振り向いて……そして…刺されたんだ…)
真紅は自分が負けた時の事を全て思い出した…
(私はアリスゲームを否定していたのにそれに乗って、しかもそのアリスゲームにも負けてしまった…、今の私には何も残ってない…)
そして今の状況に絶望した
真紅はゆっくり膝を地面に落とし、手は顔を覆う為に使われていた
(わたしはジャンクね…何も出来ないただの人形なのだわ…)
真紅は手から溢れるくらいの涙を流していた
「あら?あなたは何を悲しむ必要があるの?」水銀燈はそんな真紅を見て声をかけた
だが真紅にはそんな話に興味はなかった
(…ジャンク…)
水銀燈は無視されたことに苛立ち声を荒げて聞いた
「聞いてるの真紅!?」
「黙ってて!」
真紅は水銀燈の無責任な発言に声を荒げて言い返した
「あなたはなんなの?私の気持ちの半分も分る訳が無いくせして、あなたに大事なものを守れない気持ちが分かるの!?」
――バッチィィン!!――
(な、何?)
真紅は自分の頬の痛みに気付くのに、2秒の時間をようし、さらにそれが水銀燈のビンタと気付くのに5秒をようした
232名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 00:24:20 ID:WMMed1xj
「謝らないでよぉ、わたしはあなたがそんな女だって知ってるからぁ」
「あなたにも守るべきものはあったのね…」
「………」
水銀燈は唇を噛み、上を悲しげな顔で向いた
「…でも、所詮わたしはあなたと同じよ…大切なものを守れずに朽ち果てただけの何も残せなかった人形…」
(………)
真紅も薄々は気付いていた…
自分がどうしようもなく不様で何も出来なかった人形であることに
そして、自分がした事はローゼンメイデンでなく普通の人形と同等でしかない事に…
「でも…、ジュンならなんとかしてくれるわ」
「あのミーディアムが?あなたは何を考えてるの?」
「ジュンは私が壊れた時に完璧でなくてもいいと言ってくれた」
「…気休めよぉ…」
「あら?あなたのミーディアムも同じ事を言うと思うわよ」
「………」

私はきっとメグもそう言ってくれるだろうとは思っていた
しかし私がそれを認めたら自分に負けるような気がした
壊れた自分をお父様に認めてもらうために戦っていたのに、完璧でなくていいと言われたらそれに甘えてしまいそうだと思っていた…
だから私はこんな事を聞いてしまったのだろう…
「戦えば…、完璧になれるのよ?」
それを聞いた真紅は私の方向を振り向いて頬を緩めると優しい笑顔で言った
「戦わなくていいなら、わたしは完璧じゃなくていいわ」
「ばぁかみたい……」
私は当たり前のように言われてあきれてしまった
でもそれが正しいのかも知れない
私は難しく考えすぎていただけ…
メグと二人でいれればそれで良かったのに…
自分が素直なら良かったのかも…
もし生まれ変わりがあるなら、次は素直に生きるのもいいかな…
233プライド:2007/05/23(水) 00:28:11 ID:WMMed1xj
「謝らないでよぉ、わたしはあなたがそんな女だって知ってるからぁ」
「あなたにも守るべきものはあったのね…」
「………」
水銀燈は唇を噛み、上を悲しげな顔で向いた
「…でも、所詮わたしはあなたと同じよ…大切なものを守れずに朽ち果てただけの何も残せなかった人形…」
(………)
真紅も薄々は気付いていた…
自分がどうしようもなく不様で何も出来なかった人形であることに
そして、自分がした事はローゼンメイデンでなく普通の人形と同等でしかない事に…
「でも…、ジュンならなんとかしてくれるわ」
「あのミーディアムが?あなたは何を考えてるの?」
「ジュンは私が壊れた時に完璧でなくてもいいと言ってくれた」
「…気休めよぉ…」
「あら?あなたのミーディアムも同じ事を言うと思うわよ」
「………」

私はきっとメグもそう言ってくれるだろうとは思っていた
しかし私がそれを認めたら自分に負けるような気がした
壊れた自分をお父様に認めてもらうために戦っていたのに、完璧でなくていいと言われたらそれに甘えてしまいそうだと思っていた…
だから私はこんな事を聞いてしまったのだろう…
「戦えば…、完璧になれるのよ?」
それを聞いた真紅は私の方向を向き頬を緩めると笑顔で言った
「戦わなくていいなら、わたしは完璧じゃなくていいわ」
「ばぁかみたい……」
私は当たり前のように言われてあきれてしまった
でもそれが正しいのかも知れない
わたしは難しく考えすぎていただけ…
メグと二人でいれればそれで良かったのに…
素直なら良かったのに…
もし生まれ変わりがあるなら、わたしは素直に生きるのもいいかなと思ってしまった…

234名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 02:31:34 ID:uOsyq/25
つまんね
235名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 06:47:28 ID:FSETOyHg
>>233

ただ、このくらいの内容なら完成してから投下してくれた方が読者としては助かる。
短い上にブツ切れなのはちょっと、ねぇ。
>>234
作家さんは案外脆いんで、そういう感想の時は>>1に従いスルーでよろ。
もっとも、一番作家にとって辛いのは無反応・全面スルーなんだけどなw
236名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 07:56:38 ID:KTE9jmOa
銀ちゃんに一票入れて下さい
一日一回投票出来ます。
今月の24日までに3位以内に入っていたら銀ちゃんが脱ぎます。
詳細はリクキャラ投票所
ttp://akm.cx/2d2/src/1179799320380.jpg
237名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 10:24:03 ID:YePjYomB
>>235が一番キツイ事言ってる気がする
238名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 11:15:34 ID:FnIod3QY
シリアス系は相当上手くなきゃ評価はもらえないからな
ただ精進あるのみ、出直してまいれ
239名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 15:43:55 ID:YePjYomB
でも下手上手とか気にせず、ドンドン投下して上手く書けるように練習するのがいいですよね。その方が読み手、書き手の両方に吉です♪
240名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:53:28 ID:5NICaBX0
いい事言ったよ
241名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 23:36:55 ID:qpbFnV5l
それはそうと何で>>43>>107>>98氏があそこまで槍玉に挙げられたのか
今だ理解できない。まぁxLJAc4vOZMさんも煽りを受けてたけど。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:07:39 ID:zD9yvCNa
そういや何でxLJAc4vOZMってあんなに煽り受けたんだっけ
まあ今更どうでもいいけどな
とりあえず俺は>>217-223の続きが見たいw
243名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:17:24 ID:ExIwJUvV
自演乙
244名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:20:21 ID:6umVCDkj
このSSスレ1〜5までに挙がった作品群から選別して二次創作本にしたら
案外売れるかも試練ね
245名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:28:50 ID:dJ8gqeEw
傑作だと思ったSSを挙げてみない?
246名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:39:34 ID:y3v54qk2
>>245
それは完結or短編のみの話か?
247名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:50:57 ID:e0r6vS0S
>>241-243
まぁ、過ぎた事を蒸し返すのはもう止めましょうや。
今更どうでもいいし。

>>245
SS職人さんが投下するまでの間を繋ぐにはちょうどいいかも。
248名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 01:09:17 ID:6umVCDkj
>>246
自分が気に入った作品なら関係ないんじゃない?
>>245
傑作と思える理由か好きな理由(あくまでも個々の意見として)は
書いてみてもバチは当たらんだろう。
>>247
しかしIDはそうは言っていないようだが?w
退屈しのぎか計画的だったのか知らんが叩かれた一連の人間は堪ったもんじゃないよ。
43のお宝頂いといて叩いてたとしたらまさに盗人猛々しいって感じだw
249名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 01:25:59 ID:GfylPPv6
早漏だが述べよう
「EVERGREEN」「翠のマフラーのやつ名前忘れた」
他色々あったけど、何度も読み返したやつがこれ
250名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 01:44:50 ID:rTQ4Hlwb
super size shinku
251名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 01:59:39 ID:e0r6vS0S
>>248

ああっ。本当だ。こんなID初めて出た。SOSってw

シリアス物なら長編で「アリスゲーム」ってのがあったっけ。
アニメ後のあとがき的な話で面白かった。ちょっと説教臭い感じが読み辛かったけど。
パロディなら>>250に同じ。一番笑った。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 03:21:16 ID:pImbZ/Gx
良いと思ったのは未完ばっか
253名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 04:57:43 ID:UWYrFjDM
>>232駄作乙
254名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 16:21:08 ID:6J0YIE3C
あげるぞ
255名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 17:43:46 ID:ZI3+avwn
お見舞いってやつ?
話は割とありきたりだし知的な内容の文章でもないね。
類義語が重なっておかしいと感じた部分や誤字とかもあった。
でも人物それぞれの心情心理描写がすごく丁寧で、読んでていつの間にか引き込まれてた。
次のうPが楽しみだったし、ほんの一歩先の展開が気になる文章の構成がうまくて
ついつい先を読みたくなる気にさせるんだな。それに各キャラクターをまんべんなくフォローして
最後は綺麗に終わったのが個人的に好印象だったね。
256名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 22:50:28 ID:dEDSvHaO
「もう、話がつながんないわー!」
苦悩する桃種の窮地に現れたコミックマスターJ
神の如き彼のペンが奇跡を呼ぶ!

その詳細はBIRZ発売を待て!




というのを書いて居たんだが
だめだ!
BIRZの発売前に書き切れん。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/25(金) 00:59:15 ID:22DmfS7O
m9(^Д^)プゲラ
258名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/25(金) 13:27:03 ID:DYamu+DO
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259名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/25(金) 18:13:03 ID:7WVLjcxN
IDはそうは言っていないみたいだが
260名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/25(金) 18:17:27 ID:DkbrzJj/
そのIDはヂャムと読むのか
261名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 00:30:06 ID:tFMWznqr
toukamada~?
262名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 00:38:43 ID:e6s/8XnW
ローゼン日記も面白いとおもいます。
人物の主観点での情景描写が、ギャグでも、シリアスでも上手く書けるところが。
次の文字に目が行ってしまいます。

次の作品も期待しています。
263Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 13:55:30 ID:eOGpEnZ1
>>223の続き

13

病院のすぐ隣にある廃れた教会の中を、水銀燈は十字架に向かって一人歩いていた。
夕日のオレンジ色の光がステンドグラス越しに差している。
20世紀の現実世界は本当につまらないもので、この教会を除いて好める場所はほとんどない。
町を上空から見渡せば、似たような美醜も無い灰色の建物ばかりが目に付いた。
不思議なことではあるが、実はこの教会は自分で見つけた所ではない。
気付いたら自分はここにいた。ここで自分はめぐによって目を覚ました。

お父様。お父様が私をこの教会に導かれたのですか?

ステンドグラスに描かれた一つの薔薇の花。水銀燈はそこにお父様の意思を感じ取っていた。
同時に、アリスを完成させなさいという声も。

お父様。

アリスを誕生させるには、自分一人で真紅共の陣営を崩さなければならない。
自分には出来る、また自分がやらなければなない、第一ドール。水銀燈は言い聞かせた。

お父様。待ってて下さい。そして、私を見ていてください。私が必ずアリスを完成させます。

水銀燈はステンドグラスの薔薇を見上げながら心の中で誓った。
その夜には、水銀燈をこの教会に導いた真実の答えが待ち受けていた。
264Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:00:52 ID:eOGpEnZ1
14

「おーほっほっほっほ!!」翠星石はオーバーを思わせる程の笑い声を部屋に轟かせた。「完璧です!!」
「完璧?ヒナの絵が?」ヒナ苺は首をかしげた。
「そうですよチビ苺!」翠星石は目を輝かせてヒナ苺に向き直った。
「チビ苺の素晴らしい(あまにりも理解不能な絵をかく)才能は、これで世界中に認められるはずです!!」
「えー。」雛苺はいぶかしげな顔を見せた。「翠星石はこの前私の描く絵のことを"若き日のピカソ"なんていってたー!」
「何いってるですか、チビ苺!私達が前いた時代に生きていたそのしがない画家は、
次の時代になると知らないうちに超有名になってたじゃないですか!」
翠星石は雛苺の絵を指差した。
「目んたまひんぬいてよく見るです!この絵にはチビ苺の気持ちが痛い程伝わってくるです!その…」
言い終えた後、翠星石はいきすぎたことに気付いた。どう見ても理解不能な絵だった。
「その…おかしのこととか…これは…えーと…くんくんが楽しそう!…と…か…」
「これはくんくんじゃないの!」雛苺は頬を膨らませた。「これはジュンなの!」
「ジュ…これが…」翠星石は面食らった。どう考えてもあのチビ人間ではない。
「ま…まあいいです!そういうことなら」
翠星石はパソコンのPaintで、雛苺の描いたジュンの下に"Sakurada jun"と書き加えた。
上書き保存をし、再びOWN-AGE.COMとかかれたサイトのブラウザを最大化し、左下の部分に目を向けた。

Manage Screenshots
image to upload
________________ 参照...

〆 Use as default image for list pages?

upload

箱の操作は思いのほか簡単だ。真紅が短期間でこれをマスターしたのも納得できる。
Paintという絵描きソフトで雛苺に絵をかかせ、それをこのサイトにアップロードする。
ただ"参照"をクリックし雛苺の絵"h.jpg"と"jun.jpg"を選んでから"upload"をクリックすればいい。
やがて、先ほど手を加えた雛苺の画像が、サイトにでかでかと表示された。
「ふっふっふ。これで復讐は完了です…」
翠星石はふうと息をついてからニヤリと笑った。
265Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:02:06 ID:eOGpEnZ1
「ヒナ、手書きの絵の方が得意なの」雛苺は心配気に呟いた。「その箱の"たま"で描く絵は難しいの」
全くもってそれでいい、と翠星石は思った。
現在このLastGenerationと書かれた動画がいかに世界中の注目を集めているかを理解することは、
英語をはじめ数々の言語に精通した薔薇乙女である翠星石には容易なことだった。
サイトではこう英語でコメントされている。

In one of the most spammed movie on irc, sempy shows you some 1337 frags with
clean editing and retaliation-style music.

Sempy cooks up a very slick frag movie featuring some frags by some of the best players of the moment.
Please excuse the novel that follows :P .

「クリアな編集と最強の人間達がとてつもない技能をあなたにお届けする史上最も賛賞された映像」
翠星石は満足気に笑った。「その参考画像がこれです!」
レビューされているサイトの上に載っている画像は、先ほどの緑色の文字とは打って変わって恐ろしくバランスの悪い文字で
"らすとじえねれーしょん"と書かれている。最初の方を大きく書き過ぎたせいか、後半の"しょん"は苦し紛れにスペースギリギリ
に詰められ、下へとのびている。さらに、一見何の生物か分からないような絵のもと、"sakurada jun"の文字が目に入る。

「我ながら傑作です…あのチビ人間はこうして"史上最も賛賞された"下手くそな絵描きとして世界に知られることになるです。
おーほっほっほっほ〜!」
「うー!」雛苺はうなった。「やっぱりヒナの絵のこと下手っていったー!」
「う…」

人の製作した動画へのスクリーンショット - 参考画像をアップロードすることが、
サイトを閲覧している者全てに許可されていることは意外だったが、いかんせんここは見るからに海外のサイト。
この日本という国の常識は通用しないのかもしれない。

翠星石は英文中"some 1337 frags"の"1337"の部分で少し悩んだが、これは"leet speak"などを表す"leet"であることに気付いた。
19世紀時代、マスターの孫がこのleetspeakを手紙にふんだんに使ってマスターを悩ませていたのを覚えている。
leet speakとは"分かる人だけが分かる言葉"をモチーフにした、はっきり言ってしまうとただの俗語の外国語版である。
代表的なものは o を数字の 0 と表記すのもの、IやLを数字の1と表記するもの、他"for"を"4"の一文字で片付ける場合もある。
このleetの語源が、エリートを表すeliteにあることを知っている人間はこの国ではどれ程いるだろうか、
翠星石は心の中で一人笑みを浮かべた。

雛苺との沈黙が流れた後、翠星石は自分の成し遂げた復讐劇をもう一度確認しようとパソコンの画面を見た。
そして信じられない光景を目のあたりにし、一瞬で全身の毛がよだった。
「きゃあああ!」
恐怖が心を支配し、体がぶるぶると震える。
そこには身に覚えの無い、奇妙な三枚目の画像がアップロードされていた。
266Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:03:26 ID:eOGpEnZ1
15

闇が意識を支配した時、水銀燈はそれからさらに40秒待った。

33…34…35…。

薔薇乙女の時間計算は完璧である。それは背中の螺子が着実に、そして正確に時を数えているからだ。
螺子は今のところ初めて動き出してから58万6940時間14秒まで数えている。

…40。

水銀燈は目を開けた。すると、おなじみの自分のフィールドが目に入ってきた。
醜いがらくたの人形達が活気に満ちた様子で自分のフィールド内をねずみのようにちょこまかと動き回っている。
少し眠りにつくのが早すぎたらしい。思えば現実世界ではまだ夕方だった。
思いのほか早く冷酷で非情な主人が帰還したことに気付いた人形たちは、慌てふためいてそれぞれ物陰に隠れていった。
「…こざかしいジャンクどもね」
今日は何故かこの人形たち相手に遊んでやる気分ではなかった。
人形たちが恐る恐る廃墟の物陰から自分を覗き込んでいるのを尻目に、水銀燈は一人フィールド内を歩いた。
目障りだが、こいつらは夜になれば勝手に動かなくなる。

「二週間…」水銀燈は呟きながら壁に手を添えた。ニ週間。めぐの余命。
「ふ、大したことじゃないわ。元々、私は…ミーディアムを必要としていなかった」
ただ現実世界での暇つぶしがなくなるだけだ。そうでしょう?

不意に、後からこつこつという音が水銀燈の耳に入ってきた。足音だ。誰かが厚かましくも私のフィールドに入ってきたらしい。
「誰!?」
水銀燈は音のする方向に振り返った。すると、ある人間の姿が目に入ってきた。
「お前は…」
それは今は亡き薔薇水晶を作り上げた男。
槐だった。
267Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:06:56 ID:eOGpEnZ1
16

「あらぁ、いつかのエセ薔薇乙女の人形師さんじゃなぁい」水銀燈はいつもの人を小ばかにする語調で話しかけた。
「"エンジューメイデン"ってところかしらぁ?」
槐は表情一つ変えずに水銀燈の元へと歩いてきた。
「僕の薔薇水晶は、薔薇乙女第一ドール、お前を含め真紅をも倒し、アリスゲームを制した。僕の人形はお前達を超えていた」
水銀燈はキッと槐を睨み上げた。
「私の背後から姑息に攻撃してきただけのこと…!」
槐は心の中で密かに水銀燈を嘲った。戦いでは卑怯な者が強い。そんなことも分からないのか。
「その後の話しだけど、私お父様から聞いたわぁ。可愛そうにバラバラのジャンクへと崩れ去ったそうじゃなぁい。あっはっは」
「そう…バラバラだ。修復不可能。がらくたなんてものじゃない。完全に消し去られた。
何故ここまで跡形もなく消すのかと不思議なくらいにね」
「はん、神聖なるアリスゲームを穢した罰でしょぉ?」
その言葉を聞いた時、槐はフッと不可解な笑い声を立てた。
「その罪なら、第一ドール。実はお前も犯している」
水銀燈は面食らい、既に忍耐が限界へと近づきつつあるのが分かった。
「私の何処がアリスゲームを穢しているですって!?答えによっては、あなたをここでバラバラにしてやるわ」

槐が口を閉じ、不気味な沈黙が流れる中、水銀燈は槐を見据えながら答えを待った。
やがて返って来た答えは一驚を喫するものだった。

「真紅に一度敗れたお前を僕が直し、アリスゲームに再戦させたからだ」
「な…」調子が完全に狂い、水銀燈は一歩後ろへよろめいた。「…なん…ですって?」
「僕の作り上げた傑作である薔薇水晶。人は力を持ったり、何かを成し遂げると、必ずそれを誰かに認めて貰いたくなるものだ。
僕の場合、師であるローゼンに認めてもらいたかった。しかし、彼は姿を消していてその居場所は誰にも分からない」

槐は自分の右手の平を見つめながら話しを続けた。

「だから僕は思いついた。薔薇水晶を薔薇乙女のアリスゲームに参加させてはどうか。もし僕の人形が一番優れているのなら、
アリスゲームの勝者となりアリスとして師の元に届くだろうと。幸いにも、第七ドールがまだ姿を現していないことから、
お前達を欺くのは簡単だった」

「あんたの人形のことなんか聞いていないわ!」
水銀燈は話を遮った。さっきの言葉が気になって仕方がなかった。
「あなたが私を直したって…ホントなの?」
「僕の人形が本当に一番だと認められるためには」
槐は水銀燈を無視してただ一方的に話した。
「ちょっと!聞きなさい!」
「…師が手掛けたどんなドールにも劣ってはならなかった。
たとえアリスゲームの敗者となった者とさえ、一度比べてみる必要があった」

言い終わると、槐は水銀燈を意味ありげに見やった。
その瞳の持つ何かが、水銀燈の動きを凍らせた。
268Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:10:27 ID:eOGpEnZ1
「そこで僕は薔薇水晶の完璧さを確かめる為に、君を直すことにした。君が真紅に敗れたあと桜田ジュンのフィールドに入り、
君を拾った。不思議なことに、ローザミィスティカまで一緒に放置されていた。真紅に慈悲をかけられたのかな。
その時点で僕は君を直す必然性を確信していた。このままローザミィスティカが放置されたままではアリスゲームは
進行できないからね。そうしてお前を直したあとは、薔薇水晶にお前を入れた鞄を持たせ、あとは置き場所を彼女に任せた。
薔薇水晶はそれを完璧にこなした。
柿崎めぐが夜に一人教会へ出向いたタイミングで鞄を落し、お前は当然その彼女によって目を覚ました。
そのあと薔薇水晶はお前のフィールドで待機し、然るべきお前との戦いを待った。全は予定通りだった」
「嘘…嘘よ」槐を凝視しながら、水銀燈はさらにもうニ、三歩後すざった。
「私を直して下さったのはお父様よ…真紅がアリスゲームを穢すから…一番アリスの相応しい私を…お父様が…」
槐の瞳から目が離せない。魔法にかかったかのようだ。
ふと薔薇水晶の言葉が思い出された時、水銀燈の体に電流が流れた。

 "ローゼンメイデンを直せるのは、お父様だけ。"

「……薔薇水晶のいったお父様というのは…」
水銀燈はそこで言葉を切ったが、答えはすぐ目前にある。はっきりとしていた。
「そんな…」
「お前を直す時、気になることがあった」槐は静かに言い放った。「なぜ我が師はお前の腹部を作ってやらなかったのか」
決定的な言葉だった。それを知っているのは、私を壊した者か直した者以外ありえない。
269Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:14:07 ID:eOGpEnZ1
17

目に前に突然現れた刺客を、水銀燈は今やどう扱うべきなのか全く分からなくなった。
自分は薔薇水晶の比較台にされた。だが、その為とはいえ自分は蘇ることができた。
それが意味していることは残酷で受け入れ難いものだった。
私はお父様に直してもらえなかった。私は、まだお父様に認められていないの…?
それだけではない。自分はアリスゲームの敗者になったのも関わらず、
お父様の意思に反して今も堂々とアリスゲームに再戦している。それはアリスゲームを穢している行為に他ならない。
自分は恥ずべきドールだ!
お父様の非難するような視線が自分に向けられている気がして、水銀燈は何処かに身を隠したい想いに駆られた。
そして、押し潰されるような心細さも感じた。
今までは、一度お父様に直されたと信じていたからこそ、自分がアリスに相応しいという絶対の自信を持てていた。

槐は第一ドールを直すとき腹部が無いことには驚いていた。我が師は完璧を求めていた。それは自分も同じ想いだ。
薔薇水晶に絶対の自信こそはあったが、だからと言ってわざわざこれから薔薇水晶の敵となるであろう
ドールを強化するつもりは毛頭無く、槐は腹部がないまま水銀燈を直した。
さらに槐は念のために、死にかけている人間か、または病弱な人間に彼女を拾わせるよう薔薇水晶に言ったのだった。
そうして選ばれたのが柿崎めぐだ。

「僕の答えは君にバラバラにされてしまうものだったかな?」
槐に見据えられ、水銀燈は自分が蟻サイズまで小さくなっていく錯覚を覚えた。
「そんな…お父様…私を直して下さったのはお父様ではなかったのですか…?」
一人消え入りそうな声で呟きながら、気付いたら水銀燈は両手で自分の腹部をおさえていた。

「まあそう気を落すな…僕の薔薇水晶に倒された後も君は"まだ"動いている。二度目の復活は間違いなくわが師によるものだろう」
槐は水銀燈をなだめた。本題に入る前にこんなにうろたえてしまっては困る。
第一ドールは既に精神的に辛そうだが、僕や薔薇水晶の苦しみに比べれば何でもないと思った。
「もっともここで死ぬような僕でもないけどね。僕は師からあらゆることを教わった。この世の摂理に抗うようなことも。
僕は今夜君に聞きたいことがあって来た」
270Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:20:07 ID:eOGpEnZ1
水銀燈は腹部を両手で抱えながら弱々しく槐を見上げた。
まだ何かあるの?
「師であるローゼンが自分の体にローザミィスティカを仕込んで長寿の命を得ていることは知っているね」
水銀燈は無言で頷いた。もう終わらせてと懇願する子供のようだ。
「僕も師の様にどうにか長寿の命が欲しかった。薔薇水晶は並みの人間が持てる月日では到底完成出来るものではなかったから。
ところが、ローザミィスティカを体に仕込む方法は生身の人間には不可能なことだった。
ローゼンの肉体の実態は弟子の僕にすら教えられていないが、もはや人間ではないことは確かに思える。
その時、師はスィドリームとレンピカの恐ろしい秘密を教えてくれた。
自分の命の提供主である両親のいずれかの夢の樹を奪い、それを自分の夢の樹に植えれば通常の4倍は生きられると。
僕は師の人間性を一瞬疑ったが、そんなことは今に始まったことではない。
師は元から狂人だった。究極の成果を求めればそうなってしまう。だから僕は…」

そこで槐は言葉を詰まらせたあと、突然目を見開き両手で頭を支え叫び始めた。狂気を思わせる変貌振りだ。

「だから僕は、父をも殺し、長寿を得て、100年以上研究して薔薇水晶を完成させた!どれほどの努力の成果の賜物であったかは
師が一番よく知っているはずだ!なのに師は一瞬にして僕の全てを崩した!どうしてだ!?師は弟子への愛を知らなかったのか。
教えてくれ、第一ドール!君はわが師ローゼンの言葉を聞いたはずだ。薔薇水晶には何が足りなかったのか。
彼女には何が起ったのか?なぜ薔薇水晶はアリスゲームの勝者にもなったに関わらず破壊されてしまったのか。」

水銀燈は迫真に迫る槐の声に気押されながらも、今自分に吹っかけられた問いの内容が思いのほか単純であることを理解した。
薔薇水晶が消滅したことについてお父様は何も言っていなかったが、そうだとしても考えてみれば答えは簡単なものだ。

「それを私に聞き来たって訳?あなた、ばかじゃなぁい…それは、あなたの人形がローゼンメイデンじゃなかったからよ」
「ローゼンメイデンではなかったから!?」槐は叫び、失望した顔つきになった。
「師の作ったものではないというだけで、究極の少女にはなれない条件に匹敵するのか?究極とはなんだ?その作り主は
選ばれない。誰が作ったものであろうと、究極は究極だ。ローゼンメイデンだけが究極の少女への道ではない。忘れるな。
君達はアリスへ目指して作られ、いずれもそれに届かなかった存在にすぎないと。それとも、師は何時の間にか薔薇乙女以外に
アリスはありえないと決め付けているのか。その根拠はなんだ?そんなこと弟子である僕ですら聞いていないぞ!
僕は師から全て教わったし、独自に研究もした。それが薔薇水晶だ!」
槐は叫び終わると、右手の拳を握り締めて壁を打った。

哀れ、この男は自分の人形への自信のあまり相手の気持ちまで考えが回らないらしい。
お父様は自作の薔薇乙女からアリスを作り出したいと思っておられるだろうし、それが当然のことだ。

ただし…、本当に薔薇乙女が7つのローザミィスティカを集めても尚、アリスに到達出来なかった場合は?
仮に自分が全てのローザミィスティカを集めたとき、アリスと認められず薔薇水晶の時のように体が崩れ始めたら?
こんなこと、考えたこともなかった。そして、これからも考えるべきことではないことだとも思った。
自分はアリスゲームを制することだけを考えていればいい。それでいいはずでしょ?。

「それじゃあ残念だけど、あなたの疑問の答えは今の私からは得られそうにないわねぇ」
水銀燈はようやくいつもの調子を取り戻しつつ話し始めた。槐は壁に向かったまま、身動き一つしていない。
「けど、アリスとは何か。究極の少女って何なのか」驚いたことに、久しく感じていなかった感情が心に湧き出てくる。
「その問いには私自身が必ずアリスとなって答えてあげるわ。それが一度私を直してくれたことへの私なりのお礼だと思いなさい」
「アリスに…君が…」
槐がゆっくり振り返ると、第一ドールは優しげに微笑んでいた。
「果たしてなれるかな。君はそもそも人形としても未完品…」
水銀燈の笑顔が一瞬の内にひきつった。
「一度しか言わないわ。帰りなさい」
271Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/05/26(土) 14:24:50 ID:eOGpEnZ1
17

これは恐らく覚悟の要る旅になる。真紅は確信していた。
「蒼星石。文字のことはもういいのだわ。金糸雀のフィールドに入ってみたい。やってもらえる?」
「もういいのかい?」
「ええ。私の考えでは、まず間違いなくこの文字の答えが金糸雀のフィールドの中にある」
蒼星石はうなづいた。「分かった。じゃあいくよ。レンピカ!」
青色に輝く蒼星石の人工精霊が、名前を呼ばれるとベッドに横たわる金糸雀の周辺を舞う様に飛び回り始めた。
「扉を開いて!」彼が叫ぶと、やがて何もない空間に渦を巻いた水面のようなものが浮かび上がり、
瞬く間にひと一人入れる大きさにまでに巨大化した。

みつは口をあんぐりあけてこの質量保存の法則が現実世界で破られる瞬間を目撃していた。
自分はやはりまだnのフィールドの中にいて、実はここは自分の家ではないのではないかという疑念が頭をよぎった。

真紅はみつに念を押した。「金糸雀が夢の中で迷子になっている時は、金糸雀と心が通じ合っているあなたが
一番金糸雀を見つけてあげられる可能性は高いわ。だから無理にとはいわないけど、あなたが来てくれれば大いに助けになる」
「あ、あ、あ、その、その中に入るんですか」みつは怯えた手で渦を指差した。
「ええ、そうよ。これは金糸雀の世界に通じている。もし私たちと一緒にきてくれる場合は、絶対に離れないで頂戴」

離れないとも。みつは思った。ええ、離れませんとも!

「あのー、僕もですか」ジュンが静かに言った。
「当然でしょう?私の家来」
ジュンは問い掛けたことを後悔した。

「それじゃあいくよ」「ええ」
四人は順番に渦の中へと飛び込んでいった。
それからというものの、目に入ってくるのはあらん限りの闇のみだ。
おかしい。蒼星石は思った。なぜ"何もない"んだ?これが金糸雀のフィールドなのか?

4人は空間の流れに身を任していると、前方に闇に浮いた巨大な白い薔薇が目に入ってきた。
それはみるみる内にこちらへと迫ってくる。いや、どちらかというとこちらが猛烈な勢いでそれに引き寄せられているらしい。
なすすべがないまま、四人は巨大な薔薇のもとへたどり着いた。そこで、4人の動きはピタと止まった。
いや違う。全員すぐに気付いた。

巨大な蜘蛛の巣に絡め取られた。
272名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 19:39:47 ID:LExphZPF
(;゚∀゚)=3ムッハー

(・∀・)イイヨイイヨー
273名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 23:26:15 ID:J23Qyyzg
>>263-271
凄く知的で謎めいているSSだ。
でもキャラが謎に翻弄される話は非常に読者を選ぶね。
頭のいい人が好んで書くタイプの話だけど、何を言い表したいのか凄く判り難い。
しかしボチボチと把握しながら読ませてもらいますね、オレ頭悪いんでw
274名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 06:43:31 ID:QKky0r83
きらきー顕現?
275名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 14:34:46 ID:U1YbsPgo
>>263-271
うむうむ。面白い。難しいから2回以上は読み返さないと話の繋がりが分からないけど
読んでみようという気にはさせるストーリーだ。

ただ一箇所どうにも気になった点を指摘させてもらう。
>>271
>蒼星石はうなづいた。「分かった。じゃあいくよ。レンピカ!」
>青色に輝く蒼星石の人工精霊が、名前を呼ばれるとベッドに横たわる金糸雀の周辺を舞う様に飛び回り始めた。
>「扉を開いて!」彼が叫ぶと、やがて何もない空間に渦を巻いた水面のようなものが浮かび上がり、
彼?彼?蒼星石は男の子?もしもし?
276アリスゲームにゴリラ参戦!!:2007/05/27(日) 20:30:10 ID:o4gEInVa
nのフィールドには魔物が棲む。
「翠星石はそう言った超常現象の類は信じてないですぅ。そう言った物は人間の心理に起因する事が多く、
科学的に説明が付いてしまうですぅ。」
「別に私はそう言う話をしてるわけじゃないかしらー。」
「じゃ、どういう話なんですぅ?」
「まあここでウダウダ言っててもラチがあかないわ。まず確認してみないと。」
nのフィールドに棲む魔物の噂の真相を確かめるべく集まった翠星石・金糸雀・真紅の三人は
ついにその魔物が棲むとされる部屋の扉の前までやって来たのである。
「じゃ、行くですぅ。せーの!」
そしてついに扉が開かれた時、そこには一頭のゴリラの姿が…
「ほらねかしら。」
「…。」
「まだこの世には科学では解明出来ない物が沢山あるですぅ…。」
「科学とかそう言う問題じゃないでしょ。」
何故nのフィールドにゴリラがいるのか? そのあまりにも非現実的な現実を受け入れる事の出来ない
翠星石と真紅の二人は呆れる他無かった。
「確かに薔薇水晶の事があってから他の乙女がアリスゲームに参戦してきてもおかしく無くなったけど…
まさかこれ程の乙女がいたなんてビックリかしら…。」
「乙女じゃないのだわ! と言うかドールじゃないわ!」
「いくらお父様がアリス探しを焦っていると言ってもゴリラにアリスゲームの資格を与えるとは思えないですぅ。
となればアレはドールだと考えるべきですぅ? 毛深いドールってたまにいるですぅ。」
「そうそう、何処にも一人は必ずいるかしらー。ああいう毛深いドール。」
「いないのだわ! 金糸雀にしても翠星石にしても何を根拠にアレをドールだと言い張れるの? 」
「だって腕時計してるかしら。」
「あっ! 本当なのだわ!」
何と言う事か、そのゴリラは腕時計をしていたのである。これには真紅もびびる。
「いや…腕時計をしているからと言ってドールと認めるわけには…
とは言え何を持ってドールとするか…。」
「あ…携帯電話かけてるですぅ…。」
「何ですってぇ!?」
「ラプラスの魔も携帯電話かけてるかしら!」
「まさかラプラスの魔がゴリラと電話してるの!?」
「と言うかラプラスの奴電話持ってたですぅ?」
とにかくそんな感じでゴリラはラプラスの魔と電話していた。
「腕時計して、電話出来るんだからドールとして認めてあげても良いと思うですぅ?」
「いいやダメなのだわ! 電話くらいゴリラだって出来るわ!」
「真紅も強情かしら…。」
と言う事で、ゴリラがドールか否かを調べる為に新たな実検を行う事となった。
277アリスゲームにゴリラ参戦!!:2007/05/27(日) 20:31:06 ID:o4gEInVa
「箱と棒と吊るしたバナナかしら?」
「翠星石、一体何を始める気?」
「以前テレビで見た事があるですぅ。アメリカの研究所で行ったチンパンジーの知能を
調べる為のテストですぅ。道具を使ってあのバナナを取れれば少なくともチンパンジー以上の
知能を持つ証拠ですぅ。」
「じゃ、あのバナナが取れたらアレをドールとして認めろって事?」
「その通りですぅ真紅。」
「なるほどかしらー。じゃあ翠星石、それでどうやったらあのバナナ取れるのかしらー?」
「翠星石! 早速実検開始なのだわ!」
「ちょっと待つかしら翠星石。ラプラスの魔がバナナ欲しがってるかしら。」
「よし、じゃあラプラスの魔取ってみるですぅ。」
そんなこんなでゴリラに先駆けてラプラスの魔で実検を行う事となった。が…
ラプラスの魔はバナナの取り方が分からず、暴れ出してしまい、取り押さえねばならなかった。
「やめなさい! もう良いわ!」
「箱の上に乗って棒でバナナを取るだけなのに何でこんな事になるですぅ?」
「え? そうやって取るのかしらー!?」
「金糸雀…。ま…いずれにせよあのバナナを取る事が出来れば流石の私もドールとして認めるわ。
ラプラスの魔は取れなかったけど。」
そこで噂をすれば影、ゴリラがやって来たのである。
「あ! 来たですぅ!」
「ウホウホ。」
「よし! これでアレがドールかゴリラかハッキリするですぅ!」
「あのバナナ! 取れる物なら取って見なさい!」
すると、ゴリラは脚立を使ってバナナを取っていた。
「翠星石達より頭良いですぅぅぅぅぅ!!」

もしかしたら、ゴリラのアリスが誕生するかもしれなかった。
                  おわり
278名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 09:16:55 ID:0m3QMZiG
魁!!バラオトメ高校w
279 ◆qrN8aillXg :2007/05/28(月) 21:24:01 ID:rF0OiDja
えー、すみません、お久しぶりです。だいぶ間を開けてしまって申し訳ありません。
てゆか、ほとんど書き進んでないわけですが・・・今、ちょっと上京したてなもので。
結局、夏休みまで再開できないかもです。すみません。
読み直したらけっこう意味不明なとこが多かったので、ちょこちょこ手直ししました。
www.interq.or.jp/mercury/p37/lampe/
すんげえ中途半端で恐縮ですが、5話もさわりだけ。一度に投下とか当分無理そうっす。
280名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 21:50:03 ID:rF0OiDja
しまった、これ文字コードのせいで携帯から見れないかも・・・
それと、やっぱルビタグなんか使えたもんじゃないわ、これ
ほんとすみません、毎日ちょっとずつでも続き書き溜めますです、はい
281名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 00:12:58 ID:cUEz2b9c
そうですか
282名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 02:34:04 ID:3YQCJAI3
うんこ
283名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 20:33:35 ID:ClDZrKc+
【人形師ローゼン】



【ローゼン】
僕はね、究極のアリスを探しているのです。でも【人間】には究極のアリスはいなかった。だから【人形】を作り自分の手でアリスを創ることにしたんだ。

一体目
水銀燈と名付けよう。ん?おかしいな。部品が足りない…
あとで作ればいいか。
二体目
金糸雀
水銀燈と比べ幼くしてみたが…ヴァイオリンでも持たせておくかな。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 20:45:55 ID:ClDZrKc+
三体目
翠星石
緑の服にして……………!!!ヤバい!眼球間違えてしまった!
両目を緑にする予定だったのに、【赤、緑】になってしまった…
何か解決策はないか。
四体目
蒼星石
我ながら良いアイディアだ。
このドールの眼球を【緑、赤】にした。
中々、いい感じだ。
翠星石とは姉妹ってことにしておこう。


sageを忘れてスマン。
285名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 20:59:49 ID:ClDZrKc+
五体目
真紅
だんだんと疲れてきたな。あっ…紅茶をこぼしてしまった。あーあーまぁ、このまま創るか…。
六体目
雛苺
おもいっきり幼児体型にしてみたが、う〜ん
七体目
雪華綺晶
いい。良い仕上がりだ。
さぁて、このぐらいでいいかな。


【アリスゲームの始まりだ】

【町の人々】
え?あぁローゼン?

あの人形を作って笑ってたわ。いや、笑い方が異常だったわ。

ロリコンだろ?

あの人、自分は不老不死だ!とかnのフィールドに行く!とか意味不明なことを叫んでいたわ。精神が異常なんじゃない?

ローゼン?あの行方不明になった人?

【ローゼン】
何か忘れているような…

286名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 21:35:09 ID:PZZAmbKp
どうしてSSに描かれるローゼンは、こうもてきとーなのが多いのかw
287名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 23:45:22 ID:YVbS4RXc
kaso
288名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 00:54:45 ID:kqz8xs4f
いよいよ今日発売か!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 02:11:20 ID:QquFW3VB
何が?
290名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 07:38:27 ID:VdLeleFx
>>289
バースに決まっているじゃないか!
薔薇乙女の最終話だよ。
もっとも、すでにいくつかの関連スレでネタバレ情報が流出してるけどね
291名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 08:08:31 ID:zyHxMJlT
阪神か
292名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 09:07:51 ID:JmL7I6Yb
打ち切りおめでとう!
293名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 10:52:00 ID:kaxixUlL
>>290
アホ
バーズだバーズ
294名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 23:13:01 ID:kqz8xs4f
終わりの形をとっているが、続編の期待を持たせる終わりだった>今月のバーズ

あとのことは皆さんのご想像にお任せします、という感じにもとれた。
295名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 00:58:19 ID:yw7R/5vn
原作は読んだ事無いが、続編の期待を持たせる終わりだったのか・・・
俺は諦めないぞ!
296名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 11:49:17 ID:r9YOessH
期待age
297名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 17:53:13 ID:WfX8OhKV
ソードマスタージュン
298名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 19:16:50 ID:7eyQhbvu

>>297
上手いこといったもんだw
299名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/01(金) 01:30:40 ID:EA+qGGGf
>>294
ここはアニメキャラの板だし。
原作がどうなろうと関係ないべ
300名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/01(金) 02:56:22 ID:yPiWjb54
            ∩_ 
           〈〈〈 ヽ
          〈⊃  }
   ∩___∩  |   |
   | ノ      ヽ !   !
  /  ●   ● |  /
  |    ( _●_)  ミ/ <こいつ最高にアホ
 彡、   |∪|  /
/ __  ヽノ /
(___)   /
301名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/01(金) 03:06:25 ID:7dZ8qLWh
全ては原作があってこそだ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/01(金) 22:29:34 ID:LZBOCRWV
kasosure
303名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/01(金) 23:46:38 ID:Mbn6VXCJ
kusosure
304名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/02(土) 02:09:53 ID:x4lPfJly
kasusure
305名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/02(土) 09:01:25 ID:p1UH+thy
kaso?

sure!
306名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/03(日) 01:32:03 ID:uDp9apet
終了
307名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/03(日) 19:19:46 ID:s7L/Y9aB
期待age
308Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 03:40:47 ID:0bjRwWFm
>>271の続き

19

もはや快眠など望めまい、水銀燈は鞄を開けて今は暗くなった教会へ再び出向いた。
今夜の月は満ち欠けなので、比較的ステングガラス越しに入ってくる光の量は多い。

「では僕は帰るとしよう。僕にはまだやるべきことがある。邪魔をした」
「そうやって私のフィールドにも入ってきたの?」
「その通り。僕は師と同じく、nのフィールドは自由に行き来できる」

ついさっき、槐が現実世界へと帰っていった時のやり取りだ。彼が私のフィールド内の壁に触れると、そこに出口となる穴が開いた。
お父様の弟子とだけあって、ラプラスの魔の様にnのフィールドを自由に行き来する方法を知っていたのだろう。
ラプラスの魔か。水銀燈はかつてあの兎に言われた言葉をふと思い出した。"かつては、持たざる者だった、薔薇乙女の第一ドール"。

違う。今はあるべくして私は今ここにいる!

そうは思うものの、いま水銀燈の頭の中は何重にも考えがこんがらがっていた。
そして、事実を確認しながら槐の話を改めて整理しようとした。

20世紀になって、自分は真紅を目の敵にして戦った。無論真紅が憎かったからだ。そして真紅の右腕をもぎ取った。
ところが、信じがたいことにミーディアムが - マエストロの業で - 真紅の腕を直した。
結束したミーディアムと真紅に自分はもはや勝てなかった。そして最後の抵抗として放った炎も返され - 自分は焼かれた。

だが、それで終わりではなかった。気付いたら自分はこの教会で今のミーディアム - 柿崎めぐによって目を覚ました。
その時私を直したのがあの弟子 - 槐だったというのだ。
私が入った鞄は薔薇水晶が持ち、この教会を選んで置いたのだと。いや、場所はおろかミーディアムも選ばれていたのかもしれない。
"ローゼンメイデンを直せるのはお父様だけ。あなたはアリスゲームの為に直された"。
あの言葉も考えてみれば、薔薇水晶とってのお父様というのは槐だし、アリスゲームの為に私を利用しようとしていた目論見も読めてくる。
私のことを"強い"と確信した薔薇水晶は私と手を組み、真紅達をまるごとアリスゲームに巻き込む計画を立てたのだ。
槐も最初からそのつもりで私を直したのかもしれない。
309Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 03:44:24 ID:0bjRwWFm
水銀燈は以前、薔薇水晶がこの教会へ押し入り、自分と一対一でのアリスゲームを仕掛けてきたことを思い出した。
その時も私のことを"やはり、強い"と言った。
ところがその後、自分は水晶に捕らわれ閉じ込められた。その時彼女が言った言葉はこうだ。
"期待はずれ。もっと強いと思っていたのに。あるんでしょ?もっと。力が"
勿論あった。水晶の檻を突き破り、私はアリスゲーム続行の宣言を出した。
ところが彼女はそこで満足げに笑って消えていってしまった。
成る程今思えばあの一対一の対決は、真紅達を交えたアリスゲームの前の私の実力の最終確認に過ぎなかったのかもしれない。
そう思うと腹が立った。

やがて始まった槐による偽りのアリスゲームは、薔薇水晶が制した。
私も、真紅も、みんな彼女がジャンクにした。
けれどもお父様は、偽りのアリスゲームを正すため戻し、私を直してくださった。真紅達も。そして薔薇水晶は崩れ去った。
この私にとっての二度目の復活は、間違いなくお父様の手による復活。この時生まれて初めてお父様の声も聞いた。
"もう一度アリスを目指しなさい"。
あの槐によって一度掟破りに復活した自分だが、私にはまだアリスになる資格が残されている。お父様はまだ私を見てくれている。
そういうこと…。それが分かれば水銀燈はもう充分だった。

ふと、耳に綺麗な音色の歌声が入ってきた気がした。
衝撃的なことを知らされ、動揺し疼いていた心も、その歌声を聞いていると癒されていく感じがする。
歌っている本人のもとを目指し、水銀燈は教会から飛び立った。午後6時57分。
今宵は随分と長い夜になりそうだ。
310Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 03:48:40 ID:0bjRwWFm
20

 夢は風 光導く 空と雲を超えてゆく あなたの声響け
  幸せと 嫌な思い出 優しい今が遠ざかる 静かな夜続け

有栖川大学病院のとある病室から少女の歌声がする。
その涼んだ歌声は外へと響き渡り、外の世界への憧れを主張しているかのようだ。
日が沈み、あたりが暗くなっているところを、満ち欠けの月が微かな光がその病院を照らす。

病院の頂には闇に浮かぶ赤十字のマークが目に入る。
この赤十字マークは、そこが病院であることを示す為の象徴、また人を治療することの象徴などと一般に思われがちだが、
実は本来"たとえ戦時にあっても攻撃をしてはいけないという標識"を意味する。
その信頼性を保持するために、赤十字のマークを勝手に使用することは禁じられている。
あまりにも多用されると、赤十字を盾に身を守ろうとしている戦略だと疑われてしまうからだ。
よって、日本での救急箱、薬局、Tシャツなどに使われる赤十字は条約の規定外だという声もある。
ゲームにおいても、主人公の体力を回復する為のアイテムに赤十字マークが使われることは本来不適切であり、
それを知っているゲームならば、回復アイテムは青の十字だったり、ハート型だったりという風にしている。
まして敵キャラクターに赤十字のマークを施したりするのは大いなる反則業だ。

 この場所に残す足跡さえ  消えかけてゆがむ 傷跡の様
  夢の中 生まれた心 ガラス窓が 君見てる

病室のベッドで月を見ながら、柿崎めぐはそこまで歌うと、ばさっという音と共に黒い翼を持った人影が窓に現れた。
めぐの顔が綻んだ。「天使さん。またきてくれたんだね」
窓に着地した水銀燈が発した言葉は一言だけだった。「続き歌って」
「その前に質問っ!アリスゲームはまだ始まらないの?」
水銀燈は肩をすくめた。「まだね」
「そう…。ねえ、私が二週間後に死ぬまでには始まってくれるかな?どっちにしろ死ぬことには変わりないんだけど。
やっぱり水銀燈に命を奪われるのが一番いいから。うっふふ」
そう言ってめぐは弱々しく微笑み、いつものばかじゃなぁい、とかくだらなぁい、というような返答を予想した。
しかし、今回は違った。
やがて水銀燈は普段にはない、重々しい口調で喋り始めた。
「あいつらは…真紅達は…どいつもこいつも、アリスになろうとする意思が足りない」
異様な雰囲気が立ち込め、めぐは笑うのをやめて彼女の言葉に聞き入った。
「いつもみんな揃って遊んではかり。堕落した日々を送る薔薇乙女たち。それが私の敵よ」
一時の沈黙。
「けれど、相手は五人。結束すれば手強い。確実に勝ちにいくなら、真っ向から戦うのは偶策。何か手段を考えなければならない。
そして、真の第7ドールはいまだに姿を見せず…」
水銀燈はそこでアホらしいとばかりに一人で笑った。
「アリスゲームに臨もうという気持ちがあるのは、薔薇乙女で私だけなのかもね」
めぐは水銀燈の話しからアリスゲームのむなしい現状を理解した。そして水銀燈が一人ぼっちだということも。
内容が殺し合いだろうと、なんだろうと、ゲームには相手が必要だ。相手がいなければ勝ち負けも成立しない。
「だから、なかなか始まらないのね」
めぐは言った。アリスゲームを始められない水銀燈のもどかしさが、よく分かる気がする。
それは自分も死に導いてくれるアリスゲームを望んでいるからだった。
けれども、私がアリスゲームについて水銀燈を手助けしてやれることなんてない。そしてそれは彼女も望まないでしょう。
私が彼女にできることは、一つだけ。

 瞬の内に込めて すがる気持ち捨てて 全て思い繋げ

月が夜空を登っていくなか、めぐは病室で歌を最後まで歌い終わった。
311Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 03:51:51 ID:0bjRwWFm
同じ頃、翠星石と雛苺は痛みと衝撃にふらふらしながら、冷たい地面から立ち上がっていた。
「いったたたた…ここはどこです?」
自分の長い茶髪の大部分が地面にべったりついてしまい、翠星石は憂鬱な気分になった。
一方、雛苺はぶるぶる震えていた。
「こ、ここヒナ知ってるの。水銀燈のフィールドなの!」
「水銀燈のこんちくしょー?」
翠星石は何か引っ掛かるものを感じつつも、確かに自分のいる場所が雛苺の言う通りなのを確認した。
薄暗い廃墟。
「またあのカラス野郎ですか…チビ苺、私から離れるなですよ!」
雛苺はがっしり翠星石にしがみついた。
「う、チビチビ苺にここまでべったりされるとちょっとむかつくです…」
しかし、何かが変だ。
さっきジュンの箱から出てきた者の姿…あれは水銀燈ではない。どこかで見たことがあるが、それともまた違う。
そして自分達は白い棘 - いばらのようなものに捕らわれ、画面の中へと引き摺り込まれた。あれは…
でも、何故ここに?
いずれにせよ、今はこのフィールドから出る手段を考えなければならない。
312Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 03:59:55 ID:0bjRwWFm
21

看護婦がめぐの病室のドアをノックする音が聞こえた。
「めぐちゃん、お父さんがお見えですよ!」
「水銀燈、隠れて!」
めぐは反射的にベッドから立ち上がり、窓のふちに立つ水銀燈に向かって両手をあたふたさせた。窓から突き落とすかの勢いだ。
「ちょっちょっと」水銀燈は仕方なく、窓の下のコンクリートの出っ張りに降り立った。
やがてドアが開き、めぐの父が入ってきた。
「めぐ。話がある」
厳格。そして規律。めぐの父の声から感じ取れる第一印象はまさにその二言に尽きた。
「ふーん」めぐは父と顔をまるで合わせようとしない。「そう、私2週間後に死ぬよ」
父は驚いた様子だった。「知っていたのか」
「うん。それで、もうすぐ死ぬ娘に何の用なの?」
「そんなこと言わないでくれ、めぐ。まだ話は終わっていない」
めぐは全く関心を示さなかった。
「エスコーツ心臓病院」
父はそういってプリント数枚をめぐの病棟のそばの棚に置いた。
「海外の病院で、心臓手術での成功率は90%を超えるらしいんだ」
めぐは、突然ぎっと目を見開いた。その目からは希望というよりも明らかに怒りが感じられる。
「そこの外国へ出かけて、手術を受けてみないか。パパも仕事で海外いくから、連れて行ける」
「はあ!?一人で勝手に海外にいってろ!いままで放ってきたくせに、今更何!?」
めぐは吹っ切れたようにして言い続けた。
「10歳の年からずっと病院暮らししてきた私が、今さら生き延びて何しろって!?
大体、心臓そのものを別の人と取り替えないと助からないって私知ってるんだから!!今まで放ってきたのもそれが理由だろ!!」
「めぐ。すまなかった。パパの仕事が」
「はいはいいいよ謝んなくても!パパは私のことよりも仕事が好きだもんね!だったら今からでも仕事に戻れば?消えろ!」
「めぐ!」
父は一喝した。
「そういうことはもう二度というな!パパの言うことをたまには聞いてくれ。
その病院へいけば、お前の心臓が治せる希望があるんだ。何もせずにお前には死んで欲しくない」
そこまでいい終わると、父は踵を返し病室の出口へと向かった。「また来る」
「最低のくず野郎!」
めぐは棚に置かれたプリントを引き千切り、父が見えなくなるまで叫び続けた。
「死んじまえ!バカ!私はもう何処にもいくつもりはないからね!」
興奮状態で叫び続けたせいか急に胸が激痛に襲われ、めぐは胸を押さえてもだえ苦しんだ。
同時に、本来心臓の病気とは関係のないもの…涙が、とめどめなく目から流れて出てきた。
何が悲しいの?あと二週間で死ぬこと?父のこと?
めぐは泣き続けた。
313Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 04:01:32 ID:0bjRwWFm
「先生から娘さんについて話があるので案内します」
看護婦がめぐの父に話し掛け、何処かへ連れて行く。
水銀燈はゆっくりと窓へ飛び移り、めぐの様子を伺ってみた。
涙を流す目はぎゅっと閉じられ、左手は苦しむ胸を押さえ、右手は溢れる涙をふき取っている。
話が出来る状態ではないだろう。
しばらく時間が経つと、やがてめぐの泣き声がやんだ。眠りについたらしい。
この眠りは全てを忘れたいという現実逃避の行動だろうか、水銀燈は思った。
窓から病室に入り、ベッドに腰掛ける。涙の軌跡が爪跡のように残されためぐの顔を見ていると、なぜだが自分の心に痛みを覚えた。
生まれつきの欠陥を克服することなく、2週間後に死ぬ。
助けてやりたい…そう思ったとき、槐の言葉が頭をよぎった。
"自分の命の提供主である両親のいずれかの夢の樹を奪い、それを自分の夢の樹に植えれば通常の4倍は生きられる"
その意味はこうだ。
人間にはそれぞれ自分の夢の中に"樹"を持っている。母か父の樹を奪い、それを自分の夢の樹の一部にしろということだ。
そうすれば通常の4倍は長く生きられる。槐はそうやって長寿を得た。
無論、夢の樹を切り取られたりすれば、その人間は死ぬ。蒼星石と翠星石の双子はそういう能力を持っている。
4倍。八週間か。それまでなら、アリスゲームにも決着をつけることが出来るかもしれない。
全てのローザミィスティカの力があれば、めぐを救うことが出来る。
薔薇水晶の言ったことで信憑性には欠けるが、やってみる価値はある。
けど、自分に人間を殺せというのか。めぐの父を殺せと?
それは薔薇乙女らしからぬ行為だ。殺ること自体は簡単だが、これ以上お父様の志向に逆らいたくなかった。
水銀燈は病室の壁に寄りかかり、地面に座った。そして悩み続けた。

何の前触れもなく、病室の鏡が光を放った。
「誰…!?」
水銀燈が顔を向けると、逆さの状態で鏡の裏側にへばりついた真っ白な少女が目に入った。
「初めまして…お姉さま」
少女は言った。
「私は貴女の末の妹、雪華綺晶」
314Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 04:08:29 ID:0bjRwWFm
22

ジュンは人生最大の悪夢になるであろう体験を味わっていた。
体中に絡みついた強力な糸。宙につらされ、暴れても力は空間に逃げていくだけだ。
蜘蛛の巣に捕らわれた体をばたつかせ、ジュンは情けない台詞を絶叫した。「真紅!!助けて!!」
一方、真紅の方も身動きが取れないでいた。
「油断したわ、ホーリエ…まさか入り口にこんな大掛かりな罠を仕掛けるなんて」
「ぼ…ぼくに任せて…」蒼星石が辛そうに声をしぼりだした。「レンピカ!」
彼女の手元に、巨大な鋏が現れる。庭師として、雑草を取り除く為の鋏だ。
そんなものでこの糸が切断できるだろうか、ジュンは大いなる不安を覚えた。
かつてテレビ番組で、えんぴつ程の太さがある蜘蛛の糸が巣を作れば、ジェット機すら絡め取るという話を聞いたことがある。
その説の根拠は蜘蛛の糸が持つ類まれなる強靭さに基づいている - 太陽光の焦点面ですら焼けない耐熱性と、
いかなる温度変化においても膨張・縮小といった変形を起こさない弾力性。
それ程神秘的な性質を持ちながら、蜘蛛の糸は人間の産業であまり目立った利用はされていない。
それは蚕などと違って飼育が困難だからだ。そのコストは絹糸の一万倍とすら言われることもある。
よって蜘蛛の糸は、本当に意外で目立たない部分 - しかし割と最近では身近な産業で使われている。
アクションものの映画やドラマでよく見かける、スナイパーライフル等のスコープの照準である。
何よりも変形を起こさないその性質は、ミリ単位で正確な狙いが要求されるライフルのメモリとするには最適と見込まれたからだ。
「くっそ!」
庭師の鋏を手にした蒼星石だったが、蜘蛛の糸が絡みついた両手はほとんど動かすことが出来ない。「真紅!僕の鋏を取れる?」
「やってみるわ」真紅は逆さに吊るされた状態で、差し出された鋏を取るために懸命に絡め取られた体をよじった。
上体を左斜めに起こし、鋏を受け取ろうとするが、ぎりぎりで手が届かない。「クっ。」真紅は毒づいた。
ジュンはふと巣の下部分に絡め取られたみつが、気を失って微動だにしていないことに気付いた。
蜘蛛の巣は、普通上半分よりも下半分に粘液性のある糸が集中して張られる。
「こうなったら仕方ない」
蒼星石は著しく制限された腕で届く糸に鋏を向けた。
「切れるところから切ったらなんとかなるかもしれない!」
「横糸を切る時は粘球に気をつけて!」ジュンは彼女に向かって叫んだ。「その鋏まで粘球に絡め取られたらおしまいだ!」
「わかりました!」
蒼星石は叫び返したあと、地道に蜘蛛の糸を切断していった。どうやら庭師の鋏の切れ味は抜群だったらしい。
一本、また一本と切断していくごとに、蜘蛛の巣全体に振動が伝わった。
蒼星石は少しずつ体の自由を取り戻していった。さらに切断作業を続けると、あたりを引いた。
ある一本を切ったとき、巣の全体が湾曲してゆらゆらと揺れ始め、真紅と蒼星石の位置が近くなった。
「よし、今だ!」「ええ!」真紅は庭師の鋏を受け取った。
真紅の位置からだと蜘蛛の巣の中心部に届く。
「ここを断ち切れば…!」
真紅は全身の力を込めて一振り、蜘蛛の巣の中心部に鋏を振る。
「はっ!」
空を裂く、バドミントンのスマッシュのような凄まじい音が轟いた。
ばさっ。真紅によって蜘蛛の巣は見事に四方八方ばらばらに崩れ、四人は蜘蛛の巣から開放された。
その途端今度は重力に引かれ、四人は遥か彼方の闇へと落ちていった。
315Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/04(月) 04:11:09 ID:0bjRwWFm
「ふう、いよいよ金糸雀のフィールドにつけるわね」
地面に着地した真紅は立ち直りながら、自分の体にいまだ残る糸を払った。
蒼星石も同じく糸を払っている。
真紅は彼女が糸を払い終えたタイミングを見計らって鋏を返した。「庭師の鋏は本来私に扱えるものではないのだわ」
鋏を受け取りながら、蒼星石は一瞥した。「ありがとう。それにしても真紅、すごいスイングだったね」

遅れてジュンとみつの二人が落下してきた。
「…散々だよ」
ジュンは頭に手を添えながらそう口にした。現実世界ではない分ダメージはあまりないらしい。みつは気を失ったまま地面に転がっている。
「困ったわね。こんな大きい人間私には運べないのだわ。ジュン?」
「僕?」ジュンはみつを見た。「うーん、僕の力でも…、っていうか、馬鹿力なら真紅の方があるんじゃないのか?」
真紅が何か言いかけた時、蒼星石が叫んだ。
「真紅!ここは!?こんなところが金糸雀のフィールドだなんて、僕には信じられない!」
「…ここは…え?」
自分達が今いる場所を見たとき、真紅は平静さを失ってありもしないことを必死に説得する目撃者のようになった。
「そんな!どうしてここに!?これはあの子の罠だったというの?私の考えは、全くの間違いだったってこと!?」
灰色の分厚い雲が空を覆う。
果てしなく続く廃墟。地面に散らばったがらくたも同然の人形。
そこは水銀燈のフィールドだった。
316名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/04(月) 04:29:32 ID:BaRWNofb
ktkr!wktk!!
この作品凝ってるなー
317名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/04(月) 09:37:10 ID:XIaDMSx1
ヒャッホウ打ち切りでも寂しくなんかないぜ
318変態めぐ ◆b7XuiBsTpk :2007/06/04(月) 18:39:11 ID:fate1Kl4

  .'´,ヘ ヘヽ
  !〈 ((゙ "))〉   >>313 私はそんなに繊細じゃないわもっと変態よ(オナニー
  il!!|.゚ ヮ゚ノ!       
  il(i ゜ ゜i)l 
 ノl!!l   |!|  
   |._ハ_.|     
   i⊃i⊃

319名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/04(月) 21:38:13 ID:1qHwaOe9
            ∩_ 
           〈〈〈 ヽ
          〈⊃  }
   ∩___∩  |   |
   | ノ      ヽ !   !
  /  ●   ● |  /
  |    ( _●_)  ミ/ <こいつ最高にアホ
 彡、   |∪|  /
/ __  ヽノ /
(___)   /
320名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/04(月) 22:43:17 ID:Xj6zyIC6
>>318いつまでもスネかじれると思うな
321名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/04(月) 23:14:14 ID:QTMbcOlJ
>>318
IDがfate
つまり型月の回し者
322名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 01:03:01 ID:8fZx64gS
つまり過疎だってことだ
323名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 05:21:30 ID:Zf6zUFE6
  ,',i><iヽ
  /((ノノリノ))  ヒナの菊に
. ((ミi!゚ ヮ゚ノミ)) 指を入れてほしいの〜
    (⊃⌒*⌒⊂)   ∧_∧
     /__ノ(i)ヽ__)  (    )  
._______  /      ヽ
||\         /  .|   | |
||\..∧_∧    (⌒\|__./ ./
||.  (    )     ~\_____ノ|   ∧_∧
  /   ヽ            \|  (    )
  |     ヽ           \/     ヽ.  
  |    |ヽ、二⌒)        / .|   | |
324蒼星石 ◆b7XuiBsTpk :2007/06/08(金) 00:57:05 ID:JMvHKQZl

ローゼンメイデンの柿崎めぐと話すスレ6
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1181230677/1-100

水銀燈がママになって優しくしてくれるスレ
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1179726727/l50x

蒼星石の館
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1180951547/l50x

【妖艶】ローゼンメイデンの真紅と話すスレU【才女】
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1177626823/1-100
325名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/08(金) 02:48:35 ID:pFuFyse0
326名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/10(日) 12:28:27 ID:0Gb0Tt+3
保守揚げ
327蒼星石 ◆b7XuiBsTpk :2007/06/11(月) 00:20:48 ID:qUWNWqSX
つローゼンメイデンの柏葉巴が彼女になってくれるスレ
http://sakura02.bbspink.com/test/read.cgi/erochara/1181488075/1-100
328Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:23:40 ID:7XnPQ4g4
>>315の続き

23

妹…。七体目を名乗る少女。きらきしょぅ?
水銀燈は気分が踊った。本当ならば、七つのローザミィスティカがいまこの時代に揃う訳だ。
「第七ドール…うっふふふ、ついに姿を表し…??」
鏡に映された少女の姿を目に納めた瞬間、水銀燈は頭を金づちで殴られたような衝撃を覚えた。
どこかで見た顔じゃないか。
「これは何かの冗談?」水銀燈はへらへらと笑いたてた。「"エンジューメイデン"第二ドールではなくて?」
その少女は、先週現れた偽の薔薇乙女 - 薔薇水晶に酷似していた。
あの懲りない人形師の槐が、また似たようなドールを作って私達のアリスゲームに送り込んできたのではないかとすら水銀燈には思えた。
「そう…私は薔薇水晶によく似ているのです。お姉さま」雪華綺晶は穏やかな笑みを見せた。「何故だと思います?」
「はぁ?そんなの知らないわ」
水銀燈は可笑しそうに首をかしげたあと、鏡の元へと詰め寄った。
「よりにもよってこの水銀燈の前に現れるなんて…ズタズタのジャンクにしてあげるわよ」
「強気…」
雪華綺晶は逆さのまま、水銀燈を薄い目で見据えている。
「でも、あなたはかわいそう。愛という棘(いばら)が貴女を幾重にも縛っているのが見えます…
お父様が愛しくて愛しくて…でもその愛は決して返されない」
「な…!」
「かわいそうな水銀燈。彼女のパパを殺してあげても、貴女の呪縛は消えないのに…」
雪華綺晶は鏡の中でくるくる踊るように回りながら、逆さの状態から地面に降り立って言った。
「ぐるぐる…ぐるぐると、ただ憎しみが廻るだけ…全てはアリスのために」

このフィールドに連れ込まれてから数十分、何も起らない。
焦らされているのだろうか。苛立ちを覚えるほど周囲は静まり返っている。
翠星石は堪え切れずに叫んだ。
「水銀燈ー!いるのは分かってるです!もったいぶってねーで姿現すです!」
返事はない。あまりの静けさに、自分の声がフィールドの壁や床に吸い込まていったような違和感すら覚えた。
彼女の頭には、べったりとカニのように雛苺がしがみついている。
灰色の空を見上げ、翠星石はかの第一ドールの姿を探し始めた。
水銀燈は大体空から黒い羽を撒き散らしながらという、憎たらしい登場をする。
上空に目を凝らしていると、思いもよらない人影が遥か上空に4つ翠星石の目に飛び込んできた。
その人影は崩れ落ちる瓦礫さながらにがらがらと地へ落ちていく。
「あれは…真紅!蒼星石!チビ人間にデカ人間!」
翠星石は叫んだ。
「雛苺、いきますよ!」
329Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:26:10 ID:7XnPQ4g4
「ククっ…ふっふふ…あっはははは!この私がかわいそうですって?」
雪華綺晶がいい終わる前から、水銀燈は既に笑い出していた。
「私は水銀燈。闇を縫わされ"逆十字"を標された薔薇乙女最凶のドールよ。
末の妹さん。戦いを挑みにきたのなら、さっさとそこから出てくればァ?」
水銀燈が指で手招きすると、雪華綺晶はにっと笑った。
「現実世界には身をおけない…何故なら私は幻の中にしか存在し得ないから」
雪華綺晶は言いながら自分の頬を両手で触れてみせた。
「物質世界に存在を縛られること自体がアリスへの枷になってしまう不要の形骸なのか。
イデアのイリアステル。それこそがアリスの輝きなのか。お父様はそう考えました…だから私は、実体を持たない」
「実体を持たないですって?」
水銀燈は再び笑いが堪えきれなくなった。
「要はあなた、手抜かれたんじゃなぁい?おめでたいジャンクだわね七番目」
「かわいそうな水銀燈。手抜かれたのはあなたです…」
二人の睨み合いが続いた。

「私は争う為に来たのではない。お姉さま。可愛そうな私のお姉さま…私はあなたに協力します」
鏡が光を放ち、雪華綺晶の後ろにある光景が映し出された。
「そこは…」水銀燈にはすぐにその場所が分かった。「私のフィールド!?どうして…」
さらに、そこには翠星石と雛苺の二人が、廃墟の中を懸命に駆け巡っている姿もある。
「あいつら、知らない内に私のフィールドに…あなたが連れ込んだの?」
「お姉さま」雪華綺晶が薄く微笑む。「あなたの行いは正しい。アリスゲームを避けようとする愚かなドール達。
あなた一人ではアリスゲームを始めさせることは出来ない。私とあなたで…はじめましょう。」
「どうして私のフィールドがわかったの?あなた、人のフィールドに勝手に入れるこざかしい能力でも持っているわけ?」
「いいえお姉さま。張り巡らされた棘が私を導くのです」
「そんなでたらめで私をはぐらかす気?」
「棘の導きによって…今宵、あなたのフィールドに全ての薔薇乙女が集うのです」
「ふん、随分と親切なことしてくれるのね?あなたのローザミィスティカだって危ないわよぉ」
その言葉をきいた時、雪華綺晶はふふふっと実に少女らしい可愛げな笑い声を出した。
「私には要らないから。私のも姉妹のローザミスティカもみんなあなたに差し上げる。
今宵のアリスゲームで私が奪ったローザミィスティカはあなたに贈ります…だからお姉さまも負けないで」
次に、鏡はあの真紅と蒼星石を映し出した。他に、真紅のミーディアムともう一人気絶している人間の女の姿も。
どうやら今宵私のフィールドでアリスゲームが始まるのは本当らしい。
「…何を考えているの?おなた」
水銀燈はそれが心底から放たれた台詞だということに気付いた。
「ローザミィスティカを贈る代わりに」雪華綺晶は鏡の中で右手を差し出した。「あなたのマスターを私に下さい…」
330Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:31:04 ID:7XnPQ4g4
24

「ここは水銀燈のフィールドだって?」
蒼星石が驚愕した顔で辺りを見回しながら、真紅に聞き返した。
「え、ええ、けど一体どういうことなの?どうして水銀燈のフィールドに繋がっているの?」
質問に質問で返しているあたり、真紅もかなり混乱気味のようだ。
「僕にも分からない…確かにレンピカは金糸雀のフィールドの入り口を探り当てたはずなんだ。
なのに中に入ってみると何も無いのは僕もおかしいと思った…まるで誰かに"喰われた"かのようだよ」
「喰われた?」真紅はその恐ろしげな表現に身震いした。「フィールドを食べるですって?」
「うん…」緑色と赤色の瞳がまっすぐ真紅に向けられる。「夢が奪われた、とも言える」
不安げに顔を見合わせる二人を見ながら、ジュンは事態が予想より遥かに悪い方向へ向かっていることを悟った。
金糸雀の身の安全に大いなる疑念が持たれている。

「蒼星石ー!真紅!」
遠くから自分達を呼ぶ声が聞こえる。
「翠星石!」真紅は勢い良く振り返った。「なぜあなたが?」
「ジュンー!みっちゃーん!」今度は雛苺の声だ。
「翠星石!今そっちに行くよ!」蒼星石が叫び返し、真紅と一緒に声のする方に走っていった。
「お、おいおいお前ら待てって…」取り残されたジュンは独り言を呟き、後ろに倒れているみつを眺めた。
しばらくの時が流れる。
「ち、ちっくしょおおお!」ジュンは叫ぶなり肩にみつを担いで、真紅達の後を追った。

五人は無事フィールド内で合流した。

一番先に問い掛けたのは真紅だった。「翠星石、雛苺!なぜあなた達までここに?」
こっちが聞きたいです…! - その気持をなんとか堪え、翠星石はゆっくり話しだした。
「それが…さっきチビ人間がよく一人で笑っている箱をいじっていたら…」
「な、なにー?」ジュンがすかさず身を乗り出したが、真紅が手で遮った。
「突然見知らぬ真っ白な女がでてきて…白い薔薇に絡まれてジュンの箱に吸い込まれたです…
そして気付いたら水銀燈のフィールドにいたです。」
「真っ白な女?」真紅が間髪要れずに聞いた。「それはローゼンメイデン?」
「多分そうですぅ。でもなんだか見覚えのあるようなドールだったです」
一端言葉を切ったあと、翠星石はついに答えを見つけたとばかりに人差し指を立てた。
「あああ、あいつ!あいつです!薔薇水晶!薔薇水晶が真っ白けっけーになったようなドールでした」
やはり、そうだったか。真紅は一呼吸してから言い始めた。「恐らく、そのドールが…」
「そう、そのドールこそが、真のローゼンメイデンの第七ドールですよ。レディー達。くくッ」
突然、別の方向からした声が真紅の言葉を遮った。今や誰もが知っている声だった。その声は、いつも不意を突いて横から耳に入ってくる。
「ラプラスの魔…!」
名前を呼ばれたタキシードを身に包む直立二足歩行の兎は、軽やかな動きで壊れた建物の上から地面に降り立った。
この兎が本当に - フランスの数学者ラプラスの考案した超越的な存在 - 全ての未来を予測する知性をもつとされる -
ラプラスの魔そのものであるか、またはそれにちなんで名づけられているかは謎に包まれたままだ。
「七番目はそもそも実体を持たない、アストラルの人形。そんな彼女の背中の螺子を巻くものは、人間のこころ。
薔薇乙女が一斉に目覚めている今…それはよりどりみどり…」
ドール達はお互いに顔を見合わせた。
第七ドールが目覚めた。何世紀にも渡って、決して姿を見せなかった真の第七ドールが。
「はてさて。第七ドールはなぜ、第一ドールの世界に皆さん方を招待したのでしょうな。
私がいまお嬢さん方にいえることはただ一つ…第七ドールが我々の前に姿を見せるとき、正真正銘のアリスゲームが始まるでしょう」
第七ドールがここに!?真紅は息を呑んだ。そういえば、肝心なこの世界の主 - 水銀燈も姿を見せていない。
「最初の舞台は第一ドールの壊れた世界。歯車は動き出しました」
ラプラスの魔はそう言うと、いつものように - 後の壁に穴を開けて、その中へと消えていった。
331Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:36:01 ID:7XnPQ4g4
「本当の第七ドールが」翠星石が呟く。
「ここにやって来る」真紅がその続きを受け持った。「長かったアリスゲームも…いよいよこの時代で終わるということ」
その結末は誰にも分からない。想像したくもない。
再び空間は静粛に包まれた。
「ねえ、みんな」
そこへ、蒼星石がその重い口を開いた。
「もし今夜ここに、全ての薔薇乙女が本当に揃うようならば、僕は…」
彼女は一度顔を下に落としてから、決意に満ちた顔で皆に向き直って言った。
「僕はその時アリスを目指す」
全員が蒼星石の顔を見つめた。
「それが僕たちの宿命。みんなだって分かっているはずだ」
「蒼星石!」
最初に突っ込んできたのは双子の姉の翠星石だった。
「そんな、そんな急に…いやです!まだ7体揃うとは決まっていないです!そんなこと突然言われても私納得できないです!」
蒼星石の両腕を握り、激しく揺さぶる。
「翠星石…お願いだ。それにみんなも」
蒼星石は続けた。
「真のアリスゲームはもうすぐそこまできているんだ。今覚悟を決めないと、自分のローザミィスティカだって守れなくなるよ」
「いやぁ〜!!」雛苺が大声で叫んだ。「ヒナは、アリスゲームなんてしないの!」
ふう、ため息をついて蒼星石は雛苺を見つめた。
君は確かに幼い。その幼さで戦う運命を担うのはあんまりだ。だがそう作られたのもお父様の意思…。
「蒼星石、一応念をおすけど」真紅も割って入った。「お父様はアリスゲーム以外にもアリスになる方法はあるといっていたわ」
蒼星石は首を横に振った。
「どうかな。アリスゲームが一番お父様の願いを叶える道に適っていると僕は思うね」
ジュンは歯を食いしばった。話を聞くだけの立場を取っていたが、いまや忍耐の限界を超えた。
「蒼星石、お前だって本当は姉妹同士戦うのは嫌なんだろう?真紅たちと一緒にアリスゲーム以外に
アリスになる方法を探せばいいじゃないか!どうしてそんなことがいえるんだよ?」
「何故なら」
蒼星石はジュンに軽んじるような視線を送った。こればかりは人間が関われる問題ではないんだ。
「いずれにせよ、アリスになるのはローゼンメイデンの内のたった一人。
アリスゲーム以外に方法があるにしても、結局はその一人を決めるため僕たちは争わなければならない」
「一人とは限らないかもしれないじゃないか!」
「それに、もう僕達は十分すぎる程アリスゲームを長引かせてきた」
蒼星石はみんなの方に向き直り、口調を強めて言った。
「いつまでお父様を待たせるつもりなんだ!僕はアリスを完成させたい!」
「蒼星石、早まる必要なら無いわ。お父様はまだ私達を待って下さっている」
「例えそうだとしても僕がもう我慢ならない!これから別の道を探すだって?これまでの60万時間は一体なんだったんだ!?」
「やだやだやだアリスゲームなんていらないのー!」

それぞれの想いが五人の間を交差するさなか、突然空から無数の黒い羽が雨のように降り注いできた。
「危ない!」
ドール達はとっさにその場から離れ、それぞれ近くの物陰に隠れた。
お互いの距離がそれぞれ広く開き、それは皮肉にも - ドール達の決裂を思わせた。
「う、うわああっ!」
ジュンはみつを抱えている分逃げるのが遅れた。
背中を黒い羽が何本かかすめるなか、どうにか屋根のある建物の下まで辿り着き、中に入って慎重にみつを地面に寝かせた。
その後ろでは未だに黒い羽が空を裂く音を鳴らしながら地面に降り注いでいる。
「うっふふふふ…」元凶の笑い声が上空より響き渡り、一同は顔を上げた。
フィールドの主、黒い翼を持ったローゼンメイデンの第一ドール。水銀燈が宙に浮いて五人を見下ろしていた。
その隣には、見たことのない真っ白なドールが浮いている。
真紅が声を張り上げた。「あれが…ローゼンメイデン第七ドール!」
332Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:43:10 ID:7XnPQ4g4
25

何も見えていないかのような虚ろな金色の瞳。全身を覆う白。
そういう特徴を持ちながらも - その姿に真紅は薔薇水晶の連想を禁じえなかった。翠星石の言うとおりだ。
「初めまして、お姉さま方…私はローゼンメイデン第七ドール、末の妹…雪華綺晶」
第七ドールが名乗るその隣で、次に水銀燈が言った。
「うっふふふ…ようこそ。私のフィールドへ。可愛い私の妹たち」
お姉さま方と雪華綺晶が言う一方で、水銀燈が妹たちと自分達を呼んだことに、真紅は一種の倒錯にも近い感覚を味わった。
思えば、今宙に浮かんで並んでいるあの二人は - 薔薇乙女の長女と末っ子な訳だ。
第一ドールと第七ドール。
「蒼星石のぼっちゃんは初めて?どぉ?私のフィールドは」
水銀燈に問いを投げかけられた蒼星石は、手元に鋏をしかと手に握り締めながら返事をした。
「そうだね。完璧な少女アリスを目指す薔薇乙女のフィールドが、こんな壊れたような世界じゃ心配になってくるよ」
「あら、この壊れた世界は…」水銀燈は右手を蒼星石に向けた。「あなたたちの将来なる姿をかたどっているのよ!」
言い終わるや否や、水銀燈の翼から黒い羽が蒼星石の元をめがけて飛んでくる。
「はっ!」
羽が自分の目前まで飛んできたところで、蒼星石は鋏を振って逆風を起こし、勢いを殺した。
「第四ドール、蒼星石のお姉さま」
いきなり、今度は雪華綺晶が上から蒼星石に語りかけ始めた。
「かわいそうに。揺れておられますね。お父様の願いを叶えに応えたいのに、双子の姉があなたを縛っている…」
「な…なに?」
初対面のドールにいきなり心の内を言い当てられたことに蒼星石は悔しさと不快さを覚え、雪華綺晶を睨み上げた。
「どうしてそんなことが分かるんだ!?」
「水銀燈、どういうこと!?」今度は真紅が下から叫んだ。「あなた、また第七ドールと手を組んだというの!?」
「真紅ゥ…」水銀燈は不快そうな顔をして彼女をみやった。「手を組んだ?人のことがいえて?…っと」
真紅にむかって言い放ちながら、水銀燈は真横から伸びてきた雛苺の蔓をかわした。こいつの姑息な不意打ちにももう慣れている。
「ああっ…」自分の蔓が空を絡め取った失敗に、雛苺は悲しげに唸った。
「私からあなた達に教えられることはただ一つ」水銀燈は雛苺に右手を向けた。「今日生きてここからは出られない」
8本の羽が、矢のようにして同時に放たれた。雛苺が慌ててその場から逃げたあと、ショトガンのような着弾音を出して羽が地面に突き刺さった。
「第六ドール、雛苺のお姉さま」
再び雪華綺晶が上から物言い始めとき、雛苺は初めて自分のことを姉と呼ばれた気がした。
「うにゅ?」
「あなたがアリスゲームを恐れる理由は何も仲間割れや、苦痛が怖いからだけではありません。もう一つ心の中で恐れていることがあるのです。
こんな自分が究極の少女なんてものになれるはずがない、そんな素質は自分には全く無いのではないのかと。かわいそう。お父様の愛を」
「第七ドール!ドールの心の弱みに付け込むのはやめなさい!」
真紅が、これ以上は耐えられないとばかりに厳しい口調で怒鳴ると、わざとらしく雪華綺晶はびくっと体を振るわせた。
「ひゃっごめんなさいっ。第五ドールの真紅お姉さま!」
彼女は合わせた両手を右頬に当て、目を丸くさせた。しかし、その金色の瞳は相変わらず何も見えていないかのようだった。
「お姉さまは怖い。だから恐れられている。全ての姉妹が - アリスゲームが始まったら、自分を壊してしまうのは真紅なんだと、
第六を始め、双子の第三、第四のお姉さま達はみんなそう思っています」
「なん…!」
真紅は、ドール達の不安げな視線が一瞬自分に集まったのを肌で感じ取った。
私情に任せて再び怒鳴りそうになるのをどうにか抑える。
あの子の挑発に乗ってはならない。真紅は自分に言い聞かせた。ラプラスが言っていた…"心を喰うドール"だと。
真紅は物陰から身を乗り出して雪華綺晶を見上げた。
そして間を入れてから、全員に聞こえるようにして声高に言った。
333Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:44:18 ID:7XnPQ4g4
「第七、雪華綺晶といったわね。はっきりと言うわ。私はアリスゲームを終わらせ、別の方法でアリスになる」
厳然たる声が迫り、フィールド内を響き渡っていく。
それはこの場の薔薇乙女全員に対しての紛れもない - アリスゲームを放棄する宣言だった。
真紅の言葉を聞いた雪華綺晶は、登録されていない文字列を打ち込まれたコンピュータのように固まった。
「別の方法で…アリスになる…?」
そう呟いた彼女は表情は意外なものだった。まるで恐れているかのような顔で、目を見開いている。その後ろで白い髪がゆらゆらと舞い続けた。
「あなたは聞いていないのね」真紅は確固たる声で続けた。「"アリスゲームだけが、アリスになる方法じゃない"。お父様の言葉よ」
「くっ…!真紅のやつ!」水銀燈が怒りに体を振るわせた。「アリスゲームこそが本来薔薇乙女の誇りであり宿命だというのに!」
その下では第四ドールの蒼星石が、地面に突き立てた鋏に手を掛け、暗い面持ちで肩を落としていた。
「真紅姉さま」
知らず内に普段の調子に戻した様子の雪華綺晶が突然言った。
「私には、もう一つあなたに謝らなければならないことがあるのです」

有栖川大学病院の一室で、めぐは心臓の苦しさから目を覚ました。
また発作が始まったの?…
心臓が熱い。だが熱いのはそこだけではないことに気付いた。
めぐは驚いて体を起こした。とっさの勢いで自分の左手薬指の指輪を見る。
すると、指輪は紫色の光を放ち、指に熱を伝えていた。
水銀燈が私の命を使って戦っている…
334Rozen Maiden LatztRegieren U:糸口 Breaking the ice:2007/06/11(月) 03:51:11 ID:7XnPQ4g4
26

雪華綺晶はゆっくりと両手で何かを抱えるような動作を見せた。
「謝ります…お姉さま。お父様のため、アリスのために、このドールはその運命を担ったのです」
彼女の手元を、真っ白に輝く小さな光が - 雪華綺晶の人工精霊が - 舞う様に飛ぶと、そこに横たわった人影が姿を現し始めた。
その人影には白い棘が何重にも絡まり、ぐるぐる巻きにされている。
「金糸雀!」真紅が叫んだ。今日みつに助けを求められてから、ずっと探し続けていたドールだ。
棘に縛られた金糸雀は気を失っているのか、眠り続けたままだ。
「第二ドール・金糸雀姉さま。薔薇乙女の二女として誇り高く、知的なお方。
しかし、かえってそれが邪魔してお姉さまは疑惑に苛まれている。姉妹達との疑惑に…いえ、やめておきましょう。
真紅姉さまに叱られてしまう。ふふっ。金糸雀姉さまはお返しします」
雪華綺晶はにっこり笑い、手に持っていた金糸雀をぱっと手放した。地面に向かって一直線に落ちていく。
「金糸雀!」真紅はもう一度叫び、落ちゆく彼女の真下の落下地点にむかって駆け出した。
「うっ!」
ぎりぎりのとこで、真紅は金糸雀を地面に衝突させることなく抱きかかえることに成功した。
衝撃が強いあまり、バランスを崩しかける。
大丈夫。真紅は安心した。ローザミスティカは奪われていないようだ。
体勢を直し、雪華綺晶をきっと睨み上げた。
「やはり、あなただったのね!第七ドール!…口の割には二女に対する敬意が少し足りないのではなくて!?」
「真紅姉さま。私は第二ドールには少し休んで貰っただけなのです。すぐに目を覚ますでしょう」
雪華綺晶は微笑み、一瞥して言った。
「あなた方にも敬意を払い、第七ドールは自分を紹介していました」
彼女はそう言うと、何も無い空間に向かって、自分の右人差し指をゆらゆらと揺れ動す。
すると、白色に輝いた文字が透明なガラスに描かれるようにして、独りでに形作り始めた。

s…p…l…e…

ttp://up.sussiweb.com/up3/img/4440.jpg

"splendidice"。今日みつの部屋を訪れた時、壁に書かれていたあの文字だ。
だが、文字には驚くべき秘密があった。
雪華綺晶が宙に現れた文字に左手で軽く触れてみせると、文字はゆっくりと反転し始めた。180度。
全員が目を瞠る。
文字が持つ魅惑なる魔力が、全員にとり憑ついた。文字を知らなかった水銀燈まで、その光景には魅入った。
反転した文字は全く違う単語をなしていた。

ttp://kissho.xii.jp/1/src/1jyou8138.jpg

"I am a seventh"。

「I am a seventh.splendidice」雪華綺晶は完成した単語を上と下順番に読み上げた。「私は第七の、雪華綺晶」
雪華綺晶は再び真紅に向かって微笑んだ。「気に入って戴けました?」
「アンビグラムだったのね…」真紅はそういう芸術文字を聞いたことがあった。
アンビグラム - Ambigramとは上から見ても下から見ても単語としてなしている文字で、イタリア語でAmbiは両方、Gramは単語を意味している。
aやeはひっくり返すだけで無条件にそう代わってくれるので、aとeを含む単語water、angelなどはアンビグラム化しやすい。
splendidIceは、"綺羅なる雪"を意味しているが、何もこれはアンビグラムの為に用意した自分の名でありお父様から戴いた名という訳ではない。
「上から眺めている日常も、下から見れば全く新しい発見があるものです」雪華綺晶は語りかけた。
「世界は全て対象をなしていますから。光と闇。現と幻。無と有…完全と不完全」
そこまで言い終わると、やがて文字は白い煙を上げながら消滅していった。
この場全員の注意が自分に注がれているのをはっきりと感じ取れる。アンビグラムもその為に用意した。
あとは、皆が見ている中はっきりと宣言するだけだ。

雪華綺晶は声を神妙に轟かせた。「全ての薔薇乙女が目覚め、ここに出揃いました…始まるのです。約束の刻が」

「誰も逃げられません」

V:喪失 The lost に続く
335名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 03:56:57 ID:sDydCmwv
こんな夜中に投下しやがって・・・お前は俺を寝不足にするつもりか?GJ!
336名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 03:57:39 ID:ef905XfF
(;゚∀゚)=3ムッハー
GJ!!
337名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/12(火) 00:55:27 ID:WSqwiFpx
原作とアニメがうまく融合出来てる…。
この週1ペースの投下が待ち遠しくて仕方がないこの頃。
GJ!
338名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/14(木) 03:21:57 ID:xAQRRRo2
梅岡の奮闘日誌

いや〜今日は良い天気だねぇ〜桜田ぁ〜
こんな日は・・・痴漢に限る!
そんな訳で早速僕は痴漢をすべく満員電車に乗ったんだ
電車の中で僕は可愛い女の子を見つけたんだ
僕は興奮してその女の子のスカートの中のパンツに
僕の勃起したチンポツールフを擦り付けたんだ
すると女の子は急に焦りだしたんだ
もちろん僕は女の子が焦っているのにも構わずにチンポツールフを擦り続けたんだ(僕って一途だろ?)
チンポツールフを擦り付けてから5分位が経った時ついに女の子が泣き出しちゃったんだよね
周りの人は泣き出した女の子に注目し始めたから
僕は流石に「ヤバイ!」っと思ってチンポツールフを擦り付けるのを止めて上げたんだ(僕って優しい♪)
もちろん僕はその後すぐさまエクソシスト風に電車から降りて逃げたんだけどね♪
いや〜今日も良い日だったなぁ〜桜田ぁ〜明日はどんな女の子が僕に痴漢されるのを待っているんだろうねぇ〜
桜田が学校に戻ったらすぐに痴漢のテクニックを教えてやるからな♪
先生達皆桜田の事待って居るからな 絶対に学校に戻って来いよ!


339名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/15(金) 08:03:12 ID:9JrcnJMQ
|<iヽ
|ノリノ))、
|ヮ゚ノミ))  ダレモイナイ・・ウニュ〜スルナラ イマノウチ♪
⊂ノ
|
            _
          ,',i><iヽ
     ♪   /((ノノリノ))
       ♪ ((ミi*''゚д゚)ミ)   ウオォ〜!アンマァエアウエァ〜♪
        ((と__つつ))  クハッ♪キャハ♪ケヘァ♪カハァ♪
            _
          ,',i><iヽ
         /((ノノリノ))
         (ミi ゚д゚ )ミ)   
         (と__つつ  








  ,',i><iヽ
  /((ノノリノ))  ヒナのスジを
. ((ミi!゚ ヮ゚ノミ)) 指で開いてほしいの〜
⊂/⌒ヽ∪/⌒ヽ    ∧_∧
 (__人,_,( !),_人__)  (    )  
._______  /      ヽ
||\         /  .|   | |
||\..∧_∧    (⌒\|__./ ./
||.  (    )     ~\_____ノ|   ∧_∧
  /   ヽ            \|  (    )
  |     ヽ           \/     ヽ.  
  |    |ヽ、二⌒)        / .|   | |
340名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/16(土) 05:46:46 ID:UMJA7nR5
_その人形は黒き羽衣を纏った天使か、はたまた悪魔に成り下がった堕天使か。少なくとも病中の少女、柿崎めぐは、彼女のことを天使だと思っているようだ。
_病を克服し外界に戻って行く者。克服出来ずに旅立って逝く者。生の香と死の香が混在する空間。それが病院であり、此処は外界とは異なった独自の雰囲気を醸し出している。
_特に一人部屋というものは、他の病室と比べ死の香が一層濃いものとなる。大病を患った人々は生の世界との繋がりを徐々に喪ってゆき、終いに死の世界に飲み込まれてしまうのだ。
_そして柿崎めぐという名の少女もまた、その死の世界へと飲まれようとしていた。少女にとっての生の希望、そんなものは死と言う名の甘美な果実の前ではあまりに無価値な存在なのである。
_少女の時より見せる大人びた表情から推測するに、年の頃は十五、六才程と言った所であろうか。その優美さとあどけなさを兼ね備えた少女の可憐な顔や体は、長い入院生活と死への憧れにより、痛々しいほどに痩せ細っていた。
341名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/16(土) 05:51:24 ID:UMJA7nR5
_窓辺に置かれた何の飾り気もない白のベッドに仰向けになりながら、只々意味もなく天井を見据えている虚数の瞳。その負の硝子玉は、今この瞬間に砕け散って終ったとしても何ら不思議ではない。
_ところが、その割れてしまいそうな負の硝子玉も、時に見違えたような輝きを放つ瞬間がある。それは黒き天使と一緒に過ごしている時であり、その瞬間だけは、少女の瞳は黒曜石のような輝きを放つのだ。
_だが、勿論少女は自らの死を望んでいる。何も天使と出会ったからと言って、生への希望を見出している訳ではない。寧ろ実際はその逆であり、少女は死への道標を、皮肉にも自らが天使と称した人形に求めているのであった。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/16(土) 06:03:51 ID:WEeDRg0X
343名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/16(土) 16:59:39 ID:UMJA7nR5
_そして今宵も、少女の黒き天使は病室の窓辺へと舞い降りた。少女はそれに気付くと直ぐに体を起こし、おもむろに窓を開けた。そうして、何時もように黒曜石の瞳で黒き天使を向かい入れるのである。
_「水銀燈、今日は寒かったでしょう。だから私のベッドで一緒に眠らない? 暖かいよ」
_先程と打って変わって満面の笑みを湛えた無邪気な顔。少女は掛け布団の右半分を捲り上げ、今まで掛け布団で隠れてていた部分を右手でポンポンと叩きながら、此方に来るようにと言った。しかし彼女は乗り気ではない。
_「いやよ、人間の、それも病人のベッドなんて汚らわしいもの」
_黒き天使は窓の縁に立ったまま、不機嫌そうな顔と共に冷たく無機質なグラスアイの瞳を病室の壁に向けている。冬の冷たい夜風になびく細く繊細な白絹の髪。そして少女の長い黒髪もまた、夜の冷たい風に帆を張っていた。
_すると彼女の返答を聞いた少女は、なびく髪を後目に突然クスクスと小さな声をあげて笑いだしたのである。
_「やっぱりね、水銀燈なら多分そう答えるんじゃないかと思っていたわ」
344名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 00:35:37 ID:Pq/pT8ch

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|<iヽ                , '´ ̄`ヽ
|。リノ))                i ノ'_\@
|々゚ノ) うー…            ヾ* 々`ノ かしらーかしらー
⊂ノ                  / U  U
|                      しー‐J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





                           , '´ ̄`ヽ
     ,',i><iヽ              ;*∵i ノ'_\@
     /((ノ。リノ))  ギョイーーーン   ';∴+  ヾ# 々`ノ がじらぁぁぁぁぁぁ!
    〈《(* 々゚ノ)_ ,、,、,、,、,、,、,、   ';∴;.゚;・,、∴;
    / つ|匚) 巛|}三三三三)》 / U  U
    しー‐J ̄ ̄ ^^^^^^^^^  しー‐J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





                  ,',i><iヽ
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               ⊂〈《(# 々゚ノ) あ"う"ー! .゚;・.,'`ヽ
     ';∴;.゚;・,、;     ヽ とソ  \ 从/ _';;;∵\@
     / U  U     (__二⌒) <   > 'ヾ(i.゚'Д;;。;∵
     しー‐J         (_丿    /VV\   ;:∵;;;,
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    しー‐J          し―-J   `;:,゙;~ヽ|!|!!,i,,!ii,!l;;。,・ グチャッ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
345名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 21:50:36 ID:XZ7fnOeB
うにゅ〜
346名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/18(月) 21:26:06 ID:kuAvql2Z
>>343続きは?
347Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 00:44:40 ID:zOCUYvai
>>334 の続き

27

"Rozen Maiden" - "薔薇乙女による"


"Presents"   - "お父様への"

先程のアンビグラム文字と同様にして、白色に輝いた文字が雪華綺晶によって花火の様に上空に打ち上げられている。

 "For Father" - "贈りもの"

一つ一つの文字が打ち上げられるたびに、雪華綺晶は両手を上げて満足げな笑みを覗かせた。


"Began The Alice Game has!" - "アリスゲームが始まった!"


最後の文字まで煙を上げて消え去ると、今度は水銀燈のフィールドの鐘楼から、鐘の音が鳴り響き始める。
鐘の下にある大きなローマ時計は今、丁度零時を差している。
「これは約束の刻を知らせる鐘」雪華綺晶が水銀燈の隣で言った。「お父様も聞かれておられるでしょう」
水銀燈は鐘楼に目を向けた。あの鐘楼が鳴るのは19世紀時代のアリスゲームが終わりを告げた時以来だ。
時計のところに、かの兎 - ラプラスの魔が立っているのが遠くながらに見える。構図は真紅と決裂したあの時と全く同じだ。
ただし、今回この鐘は終わりではなく始まりを告げている。
アリスゲームの始まりか。
突然ぽつんと、ひんやりとしたものが体をくすぐったく差すの感じ、水銀燈は自分の世界を見上げた。
「雨…?」それは上空より落ちてくる水滴だった。「私のフィールドに…?」
隣の雪華綺晶が水銀燈の顔を覗き込んだ。「お姉さま?泣いておられるのですか?」
「…へ?」
一滴の水滴が頬を滴り渡っているのに気付き、水銀燈は白いレースの施されたドレスの袖でふいた。「これは雨の水滴よ」
「かわいそうに。過去に裏切られたことを思い出せずにはいられないのですね。あの紅薔薇に」
雪華綺晶は勝手に話を進めた。
一本の白薔薇を地面へするすると落とし、彼女はそれをつたってロープ代わりに地面へと降り立った。
地面に立つとすぐ、向きを変えて虚ろな金色の瞳を真紅に向けた。
「…?」
見据えられた真紅は金糸雀を抱えたまま後ろに身構えた。
体に纏わり付く白薔薇をゆらゆらさせて、雪華綺晶は微笑みながら真紅のもとへと歩いていく。

水銀燈はいぶかしげに雪華綺晶を見ていた。別に泣いてなどいなかったのに。増してこの私が。
なのに、雪華綺晶が言うことは毎回毎回どこかしら - 必ず核心をつくものがあった。
そう、今までの事全てが見られていたかのように。
水銀燈は真紅と雪華綺晶のやり取りを見守ることにした。第七の攻撃手段とかも把握できるかもしれない。
348Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 00:50:56 ID:zOCUYvai
雨は次第に激しさを増し、フィールド全体をぬらし始めている。
雪華綺晶は着実に真紅との距離を詰めていった。
僅かに口を開き、小さな声で何かを口ずさみ始める。
「 .. de..go. .. . der .. oo.. da .shoo」
ほとんど聞き取れなかったが、その声が魔女の呪文のような響きを持っていることだけは分かった。
雪華綺晶がもう一度言うと、今度ははっきりとそれが聞き取れた。
「derbgoo Nashgshoo,derbgoo dashshoo.. ふっふふ」
真紅は信じられないという顔で雪華綺晶を見つめた。「薔薇乙女がその言葉を口にするなんて!」
「"逆十字"の姉さまも躊躇する言葉でしょう」
雪華綺晶は言った。
「全てを終焉に繋ぎとめる言葉。アリスは全ての薔薇乙女を見つけ、捕まえ、一つに繋ぎとめます。それがアリスゲーム…」
「私はアリスゲームの道を選ばない」真紅はきっぱりと言った。
「ふふっ…強情…あなたも強情…」
雪華綺晶が言い終わったとき、真紅の手元で金糸雀がぴくっと動いた。ゆっくりと目蓋があがる。
「真紅…?ここは…?」
金糸雀が声を出した。
「金糸雀!」
真紅の注意が金糸雀に注がれた。「よかった。目を覚まして!」
金糸雀はドアップに映し出される真紅の顔を見つめながら、一体何が起きているのかぼんやり考えた。
真紅の後ろに見える、薄暗くて荒れ果てた廃墟。こんな所見たことない。nのフィールド?
背後から聞き覚えの無い、直接脳内に響いてくるような声がした。
「この雨…」雪華綺晶は手のひらで雨の水滴を受け止める仕草をした。
「お姉さまが心のうちで悲しんでおられます…他でもないあなたのことで」
金糸雀は首をよじってなんとか後ろを見た。途端、飛び上がりそうになった。薔薇水晶!?いや、違う、あの白薔薇!
今朝自分を絡めとって地面に引き摺りこんだあの白薔薇だ!間違いない。
「し、真紅、あれは…」
「何がいいたいの!?第七ドール!」金糸雀が言い終わる前から、真紅の険しい口調の声があの真っ白なドールを問いただしていた。
「だ、第七ドールかしら!?」
真紅の言葉を聞いた金糸雀の目が見開かれた。頭から瞬時にしてぼやきが消える。
「し、真紅!じゃあここは一体どこなの!?」
真紅は口が滑った己の迂闊さを呪った。今の現状を金糸雀に知られたくなかったのに。

「金糸雀姉さま。アリスゲームが始まったのです。全ての薔薇乙女がここに集って」
雪華綺晶は今やお互いの両手を伸ばせば触れ合うくらいのところまで来ている。
「金糸雀姉さまのお心が末の妹の言葉を聞き入れて下さる程寛大ならば、
すぐにその第五ドールの姉さまから離れてください。とんだ恐ろしい裏切り者ですよ」
「黙って!」
雪華綺晶に対する嫌悪感がみるみる内に増していく。真紅は歯を食いしばった。落ち着いて。挑発に乗ってはいけない。
だが、既に金糸雀をアリスゲームに巻き込ませないという希望は打ち砕かれた。
「アリスゲーム…全ての薔薇乙女が集って…」
金糸雀がオウム返しすると、急に彼女の体に力が篭った。「離すかしら!真紅!」
勢い良く真紅の手元から飛び降り、右手を高く掲げる。「ピカチート!」
金糸雀のバイオリンが光と共に出現し、彼女の手元に納まる。
「そういうことなら、お父様の為にアリスを目指し、私は戦う!」
顔を落とし、真紅は悔しそうに首を横に振った。
349Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 00:51:50 ID:zOCUYvai
「あなたは助かりました。金糸雀姉さま。もう少し遅ければ、真紅姉さまの裏切りで喰われていたでしょう。
まさにさっき、金糸雀姉さまのローザミスティカを掬い取ろうとしていたところだったのですよ」
雪華綺晶の言葉を聞くと、金糸雀は驚いたような顔を真紅に向けた。「それで私を手に持っていたの…?」
「違うわ!金糸雀、第七ドールの言葉に耳を傾けてはいけない!」
しかし、余裕を失い焦った形相の真紅に金糸雀の疑いは増大した。
「この真紅姉さまは」雪華綺晶は続けた。「恐ろしい策略家です…自分は戦う気のない振りをしておいて、
油断させて最後にまとめてローザミスティカを戴く。自分はいつも姉妹達を守るような存在だと、みんなにそう思わせるために、
水銀燈の姉さまを利用しているのです。元々、水銀燈はあんな冷酷で加虐的なお方ではありませんでした…
その真紅の思惑によってそう変えられてしまったのです。自分を失ってしまった、可愛そうな水銀燈」
雪華綺晶は意味ありげに真紅に笑みを投げかけた。
「真紅のもとに水銀燈が訪れた時から、その作戦は始まっていたのです…水銀燈を敵役に仕立て上げ、自分は姉妹を守る。
そうして皆の信頼を得る」
「なんて下劣な発想をするの!」真紅は叫んだ。
「真紅は水銀燈と仲良く接しました。彼女の歩行を手伝い、一緒に月を眺め、紅茶を飲みました。
そして遂に彼女が力を失って倒れた時…」
雪華綺晶はそこで間を入れ、恐ろしそうに身震いした。
「あなたは薔薇乙女なんかではないと告げ、ただの作りかけと吐き捨て、ジャンクと罵った!可哀想に!
そして水銀燈の心は引き裂かれました…あなたの思惑通りに。可愛そう…」
金糸雀は何か聞き間違いがあったに違いないと思った。真紅と水銀燈が仲良く?水銀燈を敵役に仕立て上げる策略?

「なぜ昔の私と水銀燈のことを知っているのかしら」
真紅は込み上げる怒りをどうにか抑えながら、努めて慎重に言葉を選びながら言った。
「本当は19世紀の時からあなたは目覚めていた。ずっと全てのドールを監視し続けながら。いやらしい子ね。
けどあなたは何も分かっていないのだわ。あの時水銀燈はローザミステイカを持っていなかった。
誰だって彼女が薔薇乙女なんて信じられるばすないじゃない…!なのに、なぜそんな捻くれた発想が出来るのかしら」
「なぜなら」
雪華綺晶は真紅の問いに答えた。その背中で白薔薇がうようよと伸び始める。
前戯はこれまでだ。
「"アリスゲーム以外の方法でアリスになる"というあなたの言葉…裏を返せばそういう意味だから!」
言い終わるのと同時に、白薔薇が幾本も伸びて真紅に襲い掛かってきた。
「くっ!」
真紅はその場から飛び退き、迫り来る棘を紅の花弁で追い払った。
互いの棘と花弁の力がぶつかり合う。そこに衝撃波が生まれ、近くの廃墟の建物の柱を崩壊させた。放射状に砂塵が巻き起こる。

「うっふふふふふ…いよいよ始まりねぇ」
水銀燈は上空から下の二人のやり取りを見て笑みを浮かべた。
二人の会話はこの位置からは聞こえなかったが、見るからに仲たがいしている。

アリスゲームの幕が今切って落とされた。

「ふふふ…それじゃあ私もそろそろ…」
水銀燈はそう言って、めいっぱいまで翼を広げ、自分のフィールド全体に響くような声を轟かせた。
「最初に悲劇のヒロインを演じるのは誰かしらぁ?」
350Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 00:54:47 ID:zOCUYvai
28

水銀燈の翼は最大まで広げられるとかなり大きく、身長の三倍近くはある。
そこまで広げなくても彼女は空を飛ぶことが出来るので、その巨大の翼の主な用途は別にあった。
身の防御。水銀燈は翼を最大限まで広めると己の身を覆い隠し、それを防御に使ってきた。
翼が大きければ死角もないし、何よりも丈夫になる。そして、これが彼女の戦闘に入る前の体勢だ。
水銀燈は素早くフィールド内のドール達全ての現在位置を確認すべくフィールド内隅々まで視線を走らせた。
好条件にも、ここは私のフィールド。ドール達の位置関係を把握できれば戦いにおける位置取りは自分のものだ。

まず、真下の広場に堂々と立っているのが、雪華綺晶 - 何を狙っているのか見えてこないが、こいつは絶対に何かを企んでいる。
私にローザミスティカを譲るですって?代わりにめぐを貰ってどうするつもりなのか。いずれにせよ、後で必ずジャンクにしてやる。
右下の建物の先にいるのが、真紅。砂塵に紛れて移動している。上空からは丸見えだ。
二人の間にいたはずの金糸雀はどうにも見当たらない。建物の中に隠れこんだか。
左に目をやると、蒼星石が一人立っているが、もう少し奥には翠星石と雛苺の二人がいる。三人の仲を考えると、三人1セットか。
全員の位置を大体確認したあと、水銀燈は雨に降られながら何処から攻めるべきか考えを巡らせた。

大多数による無差別な殺し合い - デスマッチにおいて生き残るには、ある一つの鉄則がある。
それは敵全員との相対的な位置関係において、出来るだけ外側にいろという鉄則だ。中心の方にいる者ほど、あらゆる敵の標的にされる。
一方、外側にいる者は、少なくとも背後からの攻撃の心配は無いし、常に全体を見据えることが出来る。
ドッチボールでいう内野に比べ外野が有利なのと同じ原理だ。
そうなれば、いまの私達の位置関係において、最も外側にいるドールどもを更に外側から攻めればいい。
水銀燈はもう一度ドール達に目配らせした。そして、にやりと口元に笑みを浮かべた。
標的は決まった。
そして翼を広げ、獲物に飛び掛る鷹のごとく廃墟の中へと飛んでいった。
351Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 01:01:05 ID:zOCUYvai
ジュンは建物の中に身を潜めながら自分に出来ることを考えた。
目前の壁は、一部が壊されて大きな口をあけている。その壁穴から慎重に外をうかがってみる。
さっきまで降りしきっていた雨は、それがにわか雨だったかのように今はもうすっかりとやんでいた。
左斜め前の建物に煙が立ち込めている。そこでドールの接触があったに違いない。戦闘という名の接触が。
真紅を見失ってしまった。うしろではみつが気絶したままで横たわっている。
「チビ人間!」
右斜め前の建物から、翠星石がこちらに声を掛けているのが見えた。
「おばかー!チビ人間が一人でそんなとこいたら水銀燈にメッタ殺しにされるです!はやくこっちくるですぅ!」
ジュンは顔をしかめた。薔薇乙女は人間に危害を加えるべき存在ではないらしいが、経験上水銀燈は人間にも手を出してくる。
建物の奥へと駆け戻り、みつを再び肩に抱え、意を決して建物の外へと躍り出た。
出来るだけ目立たないように壁に沿って走る。瓦礫が地面を埋め尽くし、ところどころひび割れが起きていてるので足場は悪い。
水銀燈の、壊れた世界か。
がしゃがしゃと瓦礫を踏む足音を立てながらジュンは翠星石のもとを目指した。
曲がり角まで到達した丁度その刹那、ゆらゆらとこちらに飛んでくる雪華綺晶の姿が目に入った。
「うわっ!」        (せつな)
ジュンは反射的に近くの建物の破片の影に身を伏せた。抱えているみつの体重が体にのしかかるなか、
ただ自分の身に何も起らないことだけを祈り続けた。
何も起らない。
ジュンは体の横にみつを一度ずらしてから慎重に顔を上げた。
雪華綺晶はジュンの存在を知ってかしら知らずか、そのまま角を曲がって逆方向へと飛んでいった。
(…あのドールは人間には直接には手を加えないのか?…)
「チビ人間、なにぼけーとしてるです!はやく!こっちに!」
翠星石の呼び声で、ジュンは我に返った。危険なのはむしろ水銀燈の方で、そちらはまだいつ何処からくるか分からない。
「い、今行く!」
ジュンは再びみつを抱えて廃墟の道を走り始めた。特にそれからは危険もなく、無事翠星石と合流することが出来た。
建物の中には雛苺もいる。中の部屋は相変わらず壊れた壁やひび割れた天井などで出来ていた。
「はぁ、はぁ。疲れた…」
「別にお前の命自体はそこまで心配してないんですけど」
翠星石はヒステリックな顔つきでジュンを見ながら言った。「この私のミーディアムであるお前に死なれると真紅も困りますからね」
「あーそーかい」ジュンは息を切らしながらようやく答えた。
ミーディアムが殺されれば、その契約したドールの力は格段に落ちる。
それを狙って水銀燈が自分を殺しに来るのは確かにあり得なくは無い話だ。実際、過去に一度奴に夢の中に閉じ込められたことがある。
「あー!」雛苺が急に声を出し、建物の外を指さした。「あれは蒼星石なのー!」
「な…!」翠星石はジュンの頭をおさえつけて外に身を乗り出した。「おい…いてーぞ…」
「蒼星石ー!」翠星石は完全にジュンを無視して叫んだ。「蒼星石!お願いです!こっちくるです!」
蒼星石は鋏を片手に廃墟の道を堂々と歩いていた。呼びかけられると、戸惑いを浮かばせた顔をこちらに向けた。「翠星石…」
「こっちくるです!」翠星石は妹に来るように手で促した。「そんな目立つとこ歩いていたら水銀燈の標的に…」
突然、全く予想外の衝撃が背後から伝わってきた。後ろの壁が爆音を立てながら炸裂し、大きな穴を二つ開ける。
穴からは巨大な黒い龍のようなものが頭を覗かせ、こちらを喰わんばかりに迫ってくる。
「後ろだ!」ジュンが叫んだ。「後ろからくる!」
「スィドリーム!」翠星石がすかさず如雨露を召喚し、部屋の中に緑色の水をばら撒いた。
世界樹の蔓が床から突き出し、それが水平に伸びて黒い龍の頭に正面から突っ込んだ。
黒い龍は世界樹にぶち当たると四方に散り、黒い羽の塊となって宙を舞った。
安堵の間もなく、今度は黒い羽が雨あられと穴の先から飛んできた。
耳たぶをかすめる羽が空を裂く音を鳴らし、壁に突き当って砂埃を巻き起こす。砕かれた石の破片が飛び散る。
「外に出るんだ!」
黒い羽に追い立てられながら、ジュンは身を低くして物陰を探した。
頭上を通り過ぎた羽が、前方の壁穴に貼り付けられた木の板を真っ二つに割った。
352Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 01:09:54 ID:zOCUYvai
水銀燈はその場に立ったまま、両手を前に突き出して執拗に羽を撒き散らし続けた。
翠星石と蒼星石はすでに何処かに身を隠したが、のろまな人間と雛苺はまだ視界の中であたふたとしている。
しかし深追いはしない - この攻撃の目的はまだ殺生ではない。
今の状況で例えば雛苺を狙いにいけば、背後から翠星石の援助攻撃を食らうことになる。
この攻撃の目的は4人の離散だ。羽を放ち続け、あいつらを錯乱させ、取り残された一人を確実に狙う。

ジュンはいよいよパニック状態に陥いりつつあった。
どこにも身を隠すところがない。外に出る以外に逃げ道はないが、遠すぎる。水銀燈の羽の雨に晒されている今の状況では。
だが、やっぱり外に出る以外に生き残る道はありそうになかった。
「いってっ!」
建物の外に一歩出たとき、二本の羽が右腕と足の腿に着弾した。千枚通しが体に刺されたような痛烈な感覚が走る。
思わず体のバランスを崩して足をつき、廃墟の道端に倒れる。
「ジュン!」頭上を過ぎ去る羽が激しい風切り音を轟かせる中、ジュンは翠星石の呼び声をおぼろげに聞いた。「ジュン!」
あののろまなチビ人間!翠星石は心の中で毒づき、羽の雨に晒されながらうつ伏せの体を引き摺るジュンを物陰から眺めた。
助け出してやりたいのは山々だが、黒い羽の雨が止むことなく降り注いでいるので物陰から身を乗り出せない。
視線の先には一本の柱があり、あれを遮断物として利用してジュンを引っ張り出すことは出来そうだが、遠すぎる。
そこに辿りつくまでにはハチの巣にされている。

三本目の羽がジュンの背中に突き刺ささり、悲鳴が上がった。赤色の液体が飛沫を上げ、びちゃという音を立てて地面を赤く塗った。
翠星石の身がよだった。人間の体は傷つくとあんな液体がでてくるのか。
苦痛に歪むジュンの顔が目に入る。
「ああ、もう見ちゃおれんです!」翠星石は叫び、近くの障害物の上によじ登った。
激情に任せるまま、彼女はそこから助走をつけて足元を蹴り、力いっぱい飛んだ。
翠星石の真下を黒い羽の雨が横殴りに降り注いでいく。「とりゃああぁああぁああぁあ!」
それからも翠星石は空中でクロールするように四肢を掻き、少しでも飛行距離を伸ばそうとした。
やがて重力に引かれ、体が地面を強打した時、翠星石は見事建物の柱のところにいた。
「届いた…!」この遮断物の後ろにいれば羽は当たらない。
安心してる暇は無い。翠星石は如雨露を振ってジュンをカバーするように水を撒いた。
世界樹が上に伸び、それが盾となって倒れたジュンを黒い雨から守る。
翠星石はジュンに近づいて手を差し出した。
「急ぐです、人間!こっちに!」
ジュンが応えて手を伸ばした。「あ、ああ!」
世界樹に守られながら二人は手を結び、翠星石の手に引っ張られてジュンは不恰好な匍匐前進を始めた。
「ひとまずはこの柱の後ろに身を隠すです!」
二人が柱の所まで到達した直後、スィドリームの世界樹が黒い羽の攻撃に耐え切れず切断され、軋む音をたてながら傾いて倒れた。
巨大な緑色の蔓が地面に打ち付け、瓦礫の破片や泥を周囲に吹き飛ばす。二人はそれを全身に被った。
泥が口にの中に入ったジュンは唾と一緒にそれを吐き出した。
黒い羽の攻撃は依然と続き、二人に残された遮断物はこの柱しかない。
353Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 01:18:31 ID:zOCUYvai
「これからどうすれば!?」ジュンが聞いた。残された柱の部分にも、激しく羽が打ち付けている。
「わからねーです!」
翠星石が答えた。
「向こうまでいければいいのですが」
彼女はさっき自分が飛んできた方向を指さした。
「遠すぎます!水銀燈の攻撃に晒される範囲が広すぎて世界樹の壁じゃ防ぎきれないです!」
羽の打撃を受け続け、柱にも少しずつひびが入っていく。ひびが入るたび、ピシという音を立てて石の破片が四方に飛び散る。
このままでは柱まで破壊され、二人とも羽の攻撃に対して無防備になる。
「水銀燈の羽は無限大なのか!?」ジュンが聞いた。
翠星石が迫る羽に身を縮み上がらせながら叫んだ。「どういう意味です!?」
「あいつの羽に"弾切れ"があるのかと聞いたんだ!」
横をかすめて飛んでいく羽が風を巻き起こし、二人の髪をなびかせる。
「そんな場面は見たことありませんが!」
「水銀燈がこんなにしつこく羽を飛ばしてくる場面も見たことないぞ!」
ジュンは叫んだ。「僕に考えがある!翠星石、建物の中に世界樹を出させるんだ!」
「そんなとこまでスィドリームの水は届かんですぅ!ちょっとでも腕出したらカラス野郎の羽がぶっ刺さるです!」
「じゃあ僕がやる!」
「に…!」翠星石が泣き顔で叫んだ。「人間に使わせる程この如雨露は易くねーですぅ!」
「そんなこといってる場合かよ!」
突然柱の一部がくびれ、そこから黒い羽が入り込んできた。二人は柱の中心により一層強く寄り添い合う。
翠星石は、ふとジュンの背中がなすり付けられている柱に赤い液体の跡がこびれ付いているのに気付いた。
「人間にこれを使わせるくらいなら」
自分の体がやけを起こす決心をしたことを、翠星石は悟った。「私は死を選ぶですぅ!」
右手を目いっぱい伸ばし、如雨露を後ろへと振り切る。黒い羽は如雨露に当たり、カンカンと音を立てて地面に舞い落ちた。
建物の中に撒かれた水が二本の世界樹を成長させ、上に伸びる。そして天井を貫いた。
瞬く間に天井に大きなヒビが入り、ゴロゴロと音を立てながら崩れ落ち始めた。地響きがし、大量の砂埃が吹き出てくる。
水銀燈の羽が一切飛んでこなくなった。崩れ落ちた天井が空間を遮断したのだ。
「よし、今だ!」二人はそこから駆け出し、道を進んで別の建物の中へと入り込でいった。

「ふん…まあいいか」水銀燈は翼から羽を飛ばすのをやめた。
もうこれ以上の深追いは危険だ。雛苺と蒼星石の場所が分からない。
一人だけ取り残されるのが一番理想的な展開だったが、これでも構うまい。4人は3つに離散した。
翠星石と人間。雛苺の一人。蒼星石の一人。この内どれを攻め立てるかがこれからの問題だ。

不意に後ろから小石の転がるような音がした。
「…!」
水銀燈が本能的に振り返ると、蒼星石が鋏を握り締めてこちらへ突進してきているのが目に飛び込んだ。
「はっ!」
蒼星石が振り切る直前で彼女は地面から飛び立ち、鋏は空を切り裂いた。
水銀燈は後ろの建物の上に着地し、蒼星石を見下して言った。
「後ろから不意打ちなんて…びっくりしたじゃなぁい」
「水銀燈。君の狙いは分かっていたよ。ドール達を個別にさせる為だったんだろう?」
蒼星石は言い、鋏の先を水銀燈に向けた。「でも、その必要ならなかったよ。僕が一人でお前の相手をする!」
354Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/19(火) 01:33:37 ID:zOCUYvai
29

雛苺は転んだ身を起こそうと躍起になっていた。
自分がどんな場所にいるのか全くわからない。転んだと思ったらこんな所にいた。
とはいえ、身を隠すには絶好のポジションにはついたらしい。水銀燈の羽はこちらへは一切飛んでこなかった。
「う、うにゅう…ジュン、翠星石、どこぉ?」
突然、雛苺のすぐ左隣に水平な人影がミサイルさながらに突っ込んできた。
「きゃああああああ!」
雛苺が恐怖に飛び上がったとき、ようやく頭を上にして立つことが出来た。
砂塵が巻き起こり、しばし視界を砂の煙が覆う。雛苺はむせながら、やってきた人影に恐る恐る手をかけようとした。
ところが、視線の先にいたのは真紅だった。
「はあ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。あら、雛苺」激しく息を切らした真紅がこちらに顔を向けた。「無事で…よかったわ」
「う、うにゅ…し、真紅こそ」
真紅の体のあちこちには白い棘や、分厚い蜘蛛の糸のようなものが絡み付いている。雪華綺晶と激戦した跡だろうか。
自分も物陰に入れてくれといわんばかりに真紅は雛苺に詰め寄った。
「はぁ、はぁ、はぁ…第七ドール、雪華綺晶…あの子はかなりヤバイのだわ」
息を乱した真紅の体が激しく波打っている。
「まさに蜘蛛そのものよ」
その時、右の方で建物が真っ二つに割られる爆音が空間に轟いた。激しく地面がゆれ、思わず物陰の外に投げ出されそうになる。
数秒後、二人の間に大量の砂埃が入り込んできた。再び視界を砂の煙が覆う。
「うっ…けほ、けほっ!…はぁ、はぁ」
真紅はむせ、息を切らながら話を続けた。
「第七ドールは、ドールを捕まえて、拘束して、体を溶かして中から吸う」
そう言って手持ちのステッキを持ち上げた。先端が溶けて形を崩している。"J"の形をしていたのが今や積分を表す∫のようになっている。
雛苺が恐ろしげに声を張り上げた。
「きゃあああ!真紅のステッキが溶けて…」
突然真紅の手が雛苺の口を覆った。雛苺の恐怖に血迷った目が真紅を見つめる。
その直後、二人が隠れた物陰の背後を雪華綺晶がゆらゆらと飛びすぎていった。
雪華綺晶が完全に消え去ったのを慎重に確認して、真紅は雛苺の口元から手を離した。
「はぁ、はぁ…。雛苺、よく聞きなさい」
真紅は物陰から外を覗きながら言った。
「あなたはここから逃げなさい。翠星石を探し出して、スィドリームの力でフィールドの出口をあけて貰うの」
彼女が言っている最中、こちらへ向けて水銀燈の羽の流れ弾が飛んできた。
とっさに再び物陰へと隠れなおすと、真紅の目の前の壁を数本の黒い羽が貫いた。
「ああ、恐ろしい!」
真紅は目を瞑り、やりなげな感じで頭を後ろの壁にぶつけさせた。
「水銀燈と蒼星石が戦っているわ」
雛苺の肩を強く握り、真紅はまた言った。
「ホーリエに翠星石を探させるわ。もうここには長く居られない。あなたはホーリエについていって、翠星石を探しなさい」
再び物陰の背後で建物が崩壊する轟音が轟き、二人は頭を低くした。その途端二人の頭上を塵と小石が飛び交う。
雛苺が不安げに頭を支えながら聞いた。「でも、真紅は?」
「私は、水銀燈を説得しなければ」
真紅はもう一度物陰から乗り出し、外で戦っている水銀燈と蒼星石の二人を眺めて言った。
「根はいい子なの。私は知っている。だから信じている。必ず…」
そこで雛苺に向き直り、思い至ったかのように小さく微笑んでみせた。
「あの子を追い込んでしまったのは私よ。だから、冷え切ってしまった今のあの子の心に私が優しさを取り戻させてあげたいの」
雛苺と真紅の目を合わさった時、互いにそれを理解した。 - 姉妹で戦うのはやめてほしい。水銀燈にも傷ついてほしくない。
「ホーリエ、いきなさい!翠星石を探し出したら、私達のところへ戻ってきて!」
真紅に命令された赤色の人工精霊が廃墟を推し進み始めた。
その人工精霊を心配そうに見つめながら、真紅は言葉を付け加えた。
「第七ドールに捕まってはだめよ!」
355名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 08:56:57 ID:+hUKda+c
フォォォォゥ!
(;゚∀゚)=3ムッハー
(;゚∀゚)=3ムッハー
356名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 10:00:40 ID:OqTm7yg/
ここまでガチでバトってる話は未だかつて読んだことねえぜ
357名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 11:46:14 ID:IHoduKfN
凄い!
読んでいてその情景が目に浮かぶようだ。
何という臨場感溢れる文章!
wktkwktk
358名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/20(水) 00:38:39 ID:KaGVBXXf
原作が此処まで凝っていれば良いのにな
359名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/20(水) 12:40:36 ID:0JgvpMsL
「人形総進撃」

21世紀初頭、国連科学委員会は小笠原諸島周辺を利用して一大海底牧場を建設。
あらゆる魚類の養殖を始め、陸上では世界の恐怖であった人形を集め、人形ランドとして
その研究が進められていた。

真紅がいる。翠星石がいる。そして雛苺もいる。
蒼星石も、金糸雀も仲良く同居している。

人形達が、もし区域外に出ようとすると、管制装置が働く。
つまり、それぞれの本能と修正に応じて、科学的な壁が設けてある。

水銀燈が一定の水域を旋廻して外に出ないのは、いたる所に磁気防壁が設備してあるから。
それに、ここには人形達の食べ物が豊富に栽培され養殖されており、自由に食べられる。

この人形ランド海底牧場は、地底深く建設されたコントロールセンターで
自動的に管理されている。
360名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/21(木) 02:06:02 ID:cYylWsfP

     ___    お前みたいなゴミが翠星石の姉のはずないですぅ!
   く/',二二ヽ> 翠星石の姉は水銀燈一人だけですぅ!!
   |l |ノノイハ)) 
   |l |リ゚∀゚ノl|     バリバリバリバリバリ                     .゚;・.,'`ヽ
   ノl/l_介」 Lr○ュ"_ l_ ___,.,;:''''""`'';;;...,,            - ̄‐―  _';;;∵\@
 ト--l∪r=tl[((三三((三((=(;;'',       '',.:;,,,. '" .,.  .,,..; "'`,.,,  ‐―   'ヾ(i.゚'Д;;。;∵ かしらー!
 ヒ[冊冊冊ツヽ ̄ ̄!! ̄; ̄ll ̄||'':;:,..  ,...;:''"           - ̄‐―   ;;∵;;,i∞iミつ
   ミく二二二〉ミ                                  (,,( ),,)
                                             じ'ノ'
361名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/22(金) 02:42:13 ID:AJXntIzc

         ___ #ミ   まだ生きてるですか?
       く/',二二ヽ>#  さっさと息の根を止めやがれですぅ!
       |l |ノノイハ))  ミ
       |l |リ ゚ヮ゚ノl|   ヾ ヽ ∵:  ガスッ
       ノl_||  ]]つつ++#####.゚;・.,'`ヽ:, ゴスッ
       ≦ノ`ヽノヘ≧    _';;;∵\@v                       (,,( ),,)
       ミく二二二〉ミ   'ヾ(i.゚'Д;;。;∵ か…し…   ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'



         ___    トドメですぅ!!!
       く/',二二ヽ>
       |l |ノノイハ))ミ      ,,-----、 グチャッ!!
       |l |リ ゚ヮ゚ノl| ヾ. ヽ. |;::::  ::::|
       ノl_||  ]]つつ二二二|;::::  ::::|⊃', ',・.,'`
        ≦ノ`ヽノヘ≧ ヽ.∴;;..|;::::  ::::|;* @';;;∵                (,,( ),,)
      .ミく二二二〉ミ `.:,゙;~ヽ.''-----'';。,・';;;         ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'
362水銀燈・告白編:2007/06/22(金) 18:13:00 ID:aW+mFv94
ある晴れた日曜日の午後、僕は自室でネットサーフィンを楽しんでいた。

人形たちは一階のリビングでトランプをして遊んでいるようだ。
今日は蒼星石や水銀燈まで遊びにきているようで時々笑い声が二階にまで聞こえてくる。

コンコン・・・

僕の部屋をノックするのは誰だろう?
ドアを開けてみると、そこには黒い人形が立っていた。
「ジュン君・・・」
水銀燈はモジモジしながら部屋に入ってきた、何だろう?

「私・・・ずっとジュン君のことが好きだったの」
えっ!!??
「ジュン君・・・私のことキライ?」
こんなことがあっていいのだろうか・・・この僕が告白されるなんて・・・

「ぼ、ぼ、ぼくも水銀燈のことが・・・だ、だ、大好きだよ」
僕の言葉に水銀燈は赤くなり、目を潤ませる。

「うれしい・・・」

抱き寄せようと手を伸ばすと水銀燈はスッと身を避ける。
水銀燈はなんのつもりかニヤリと笑うと階下に駆け下りて行ってしまった。

「水銀燈・・・」
追いかけようと部屋を出た瞬間、一階のリビングからドッと笑い声が響く。
人形たちの「罰ゲーム」とか「告白タイム終了」という言葉が聞こえてきた。

水銀燈の「キモかったわぁ」というセリフを聞いて僕は部屋に戻って泣いた。
363名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 01:22:59 ID:KdHnNpPS
        ┌──┐
         i二ニニ二i  在日死ね
          i´ノノノヽ)))_ _ _
         Wリ|゚ ー゚〔::二二〔()           ...:;:''"´"'''::;:,,, ドガァーーン!!
        /'i)介つ〔三三三:〔[二[二二二[〔()〕″     ,,;;;;´."'''
      と⌒__ ⊂ソ |ミ|| |_|_|  /A     '''''::;;;;::'''"´



         ヽr'._ r`γヽ./.゚;・.,'
         //`Y. ,,‘ .゚;・.,'`ヽ
         i | ノi ノ_';;;∵\@
         ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д;;。;∵ がじらぁぁぁぁぁぁ!
          `ー -(kOi∞iミつ
              (,,( ),,)
               じ'ノ'



            ___   
           く/',二二ヽ>
           |l |ノノイハ)) 砕け散れですぅ!
         ⊂|l |リ゚ ヮ゚ノl|         .゚;・.,'`ヽ
          ヽl_介」とソ' \ 从/ _';;;∵\@  グシャッ
            (__二⌒) <   > ,ヾ(i.゚'Д;;。;∵
           (_丿    /VV\    ;:∵;;;,
364名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 11:56:16 ID:qOED1XO9
難燃性素材にアスベストを織り込んだ特殊繊維製のオムツに船舶用高粘度B重油を滴り落ちるほど
滲み込ませて、ドレスをビリビリに引き裂いて素っ裸にしたチョンドールに装着。
燃焼途中で脱落せぬよう鋼鉄製の超細型コイルにてしっかりと固定しガスバーナーで点火。
JR渋谷駅前にて拘禁を解き明治通りを走らせる。

オムツから不気味なオレンジ色の炎をメラメラ燃え上がらせ、激しい黒煙を振りまきながら短い足で
全力疾走するクソキムシジャン。
「ああああ熱いかしらあああああああああああ〜」と白目を剥いて叫びながら、
「カナ、なにも悪いことしてないかしらあああ」
と、完全に誤った自己認識に基く主張を行なって恥じることのないチョンドールの醜悪な姿。

ゲラゲラ哂いながら携帯を向ける女子高生。チョンドールに向い指を指して子供を諭す若い母親。
空缶やペットボトルを投げつけるDQN中学生。更には「売国人形」を轢き潰そうと迫る街宣車。

尻に火の点いたチョンドール、表参道方面へ向かって走る、走る、走る。
なるほど弱いだけのことはある。逃げ足だけは天下無敵だ。
自らを励まそうとしてか或いはオムツの燃える熱さに耐えようとしてか、無意識に
「あいとっ、あいとっ」と泣きながら自らに掛け声をかけるチョンドールの姿は実に陳腐だ
365名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 16:47:44 ID:foM9QaPd
前スレで銀様SSを書かせて貰っていた者です。
現在引越しの余波でインターネットに接続するのが非常に厳しく、続きを投下出来ずに沈黙してました。。
この度運が良ければ接続出来そうなので、投下前に一言御挨拶をしに参りました。
SS名を『虚空回廊』から―Ravens.Feather―へ変更しました……どうでも良いなんて言わないでェ(蹴
書き溜めてますので、近いうちに一斉投下出来そうです。
最後に――前スレにて感想、応援をして下さった方々に感謝。。
366名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 18:48:46 ID:WeYY8pFf
どうでも良い
367名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 23:17:24 ID:Bso8G6q0
しょうもない一発ネタ思いついてしまったんだが……書いたらダメか?
368名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 23:23:32 ID:uH5IIl18
いいから書きやがれですぅ
369名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 23:26:19 ID:Bso8G6q0
……怒るなよ?


JUM「真紅! 大変だッ!!
真紅「朝から騒々しいわね……ジュ……ン!?
雛苺「うゆ……? どうしたの……のおぉぉぉ!?

JUM「エミュでロクゼロ3のメシアいじめやってたら……自分の体が



        、‐- _
         `'  、 `゛''' ‐-   、
            `゛''‐ 、     `/| ‐-  、_
               ∧`''‐-、 /  |     `゛''''―- 、_
               / l、_,,、, '  .| 、           `゛'''―-、__
              .l /::::::::/  .,‐ト、` ''‐ 、        ,‐- 、_,,y-‐''
              | /::::::::/  ./:::::::ヽ、// `゛''‐、     ヽ-ニニ:´`''‐-,、
              | l:::::::/.  |:::::::/ヽ /     >――,-'"  .ト'::::/フー‐ 、
              ヽーク  /olヽlヽ y,、------ヽ、_   ̄l | |,、ノヽ__/
           ,-r''~ヽ\/ /ー' /(__ノ'彡        '‐‐‐'-ー''"
          lT / `ヽヽア、_,-、 テ'  ̄ ̄`''‐-、     ヽ、`'-、     <こんなんになってたッ!!(CV:風間 勇刀)
          ヽ / / ̄ ̄ヽ   ̄フ‐''''"ヽ   ヽ `''、     ヽ ̄
           ヽ ( __,/ ̄ ̄ノ  0 .|    |   ヽ     `,
            `ヽi::::::::::::::::::::::_,,,,,、,,__/   /    .∧    l
             ヽニ‐‐フ ̄   \ニニニ/   / ヽ    |
               ̄ ̄   _,、 -‐lT::フ,ニ=ヽ‐'   /l   l |
              ,、-、,、-''"::::::::::::::lV /::::::::__ヽ /  l  ||.|
             / / ̄:::::::::::::::::::::::::ヽ l:::::::::ヽ  ヽ'   /) / リ
             l  {::::::::::::::::_,、-‐‐''''"`ヽ:::::::::\ ヽ // /
           ,、-ト、 'ー‐''"/  ̄`゛''ニ=--\:::::::::ヽ---、--、
          l l´ \_,,、ノ     ̄`゛''''‐‐\::::::::::::::::::::/ `ヽ
        _,,,ノ、 `ー'''´ト、          ,、-''\:::::::::::::,'    ヽ
      / ̄ ー―t-,-'"::::l       ー‐'''"''''" ̄`Tー‐'   ノ  .' ,
     ./ヽ__,,,、-)_(::::::::ノ               \  、‐'    ヽ― 、
     .\:::::::::::::::::::ノー‐'"                 `゛''''"`゛''――'"  ヽ
        ̄ ̄ ̄                            l  _,,、-イ''
                                        ̄| ̄ ̄ヽ、
                                       /    ヽ 
                                       .ト、___/ |
                                       |:::::::::::::::::::::::::|
                                       ヽ_____ノ

真紅「……どうしてポーズをとっているの?
JUM「そんなことより、このままだと水銀燈にまでこき使われそうだ……なんとなくだけど
雛苺「……ジュンかっこいい、登り甲斐ありそうなの(赤面
JUM「登るな
370名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/23(土) 23:36:29 ID:uH5IIl18
二度読んだ
一度目は何も感じず
二度目で何故か噴いた
371ロックマンJUM:2007/06/23(土) 23:42:25 ID:Bso8G6q0
タイトルつけるの忘れてた。
372名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 01:21:00 ID:C+9GK1NO
>>368翠星石氏ね
373名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 08:54:14 ID:1D8ONMbt
メカ真紅をやっつけろ

ニクイやつが やって来た
遠いフィールドのかなたから
ニクイやつが やって来た
銀の地肌に虹色の
よろいをつけた すごいやつ
その名はメカ メカ メカ真紅
メカ真紅が やってきた

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm501058 
374Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 22:08:46 ID:fnSXDuAG
>>354の続き

30

水銀燈は上空で黒い翼を広げ羽を機関銃の如く放ち始めた。
その最中は、翼を羽ばたかせることが出来ないのでどうしても少しずつ高度が落ちていく。
また、別方向へ飛ぼうとする時には一旦攻撃を停止しなければならない。
しかし、この羽の攻撃に晒された蒼星石には反撃する余裕がないらしく、その必要はなさそうだった。
地面をちょかまこと逃げ回る蒼星石を上から狙って羽を放つこのシチュエーションはさながらゲームのようだ。
羽の速度は瞬速という訳でもなく、地面に着弾するまでには若干の時間がかかる。
だから、蒼星石の行く先をある程度読んで攻撃しないと当たらない。
水銀燈は的が隠れられないように、物陰付近には特に弾幕を張るようにして重点的に羽を飛ばした。
柱、身の隠せそうな建物の崩れた断片、建物の中への入り口…。こうなれば袋の中のネズミだ。

蒼星石は上空を見上げ、飛んでくる羽を確認すると二回地面を蹴って後ろに飛び退いた。
その地面に羽の先が食い込み黒い草を生やす。羽は尚もこちらに降り注いでくる。もっと後ろへ退こうとしたが、
そこで背中が壁にぶち当たった。これ以上後ろはない。蒼星石は迫り来る羽を鋏を振り切って逆風で追い払い、
両足で強く地面を踏んでから上に跳んだ。
上へと飛び上がるところ、ダダダダタと連続的な音をたてながら黒い羽が蒼星石を追って壁を登るように貫いていく。
高度が水銀燈と同じところまで達したタイミングを見計らって、蒼星石は背後の壁を思いっきり蹴った。
体が水銀燈を目掛けて水平に飛び、距離を一気に詰める。そして鋏を振った。
黒い羽の雨が一時的に止むや、水銀燈の体がふっと横にずれた。鋏は空を切り、蒼星石の体はそのまままっすぐ先へと飛んでいった。
「ふふふ、遅い遅い。この私を相手に空中戦であなたに勝ち目なんて無いわ」
水銀燈が笑いながら蔑むように言った。
空中で体を翻し、蒼星石は再び後ろの壁を蹴って水銀燈を目掛けて飛ぶ。またしても軽やかにかわされる。
すれ違いざまに水銀燈は彼女に声を掛けた。
「分かる?蒼星石…?これまでの私達の戦いは、ただの前戯に過ぎなかったのよ - 本当の薔薇乙女が全て集まった今からこそが、
アリスゲームの本番なの」
おちょくるようにすれ違いがてら背中を蹴られ、蒼星石は空中で加速させられて前方の建物を目掛けて剛速球で突っ込み始めた。
「うわああ!」
このままでは壁に激突する衝撃に耐えられない。スピードが速すぎる。本能的に蒼星石は手持ちの鋏を体の前に伸ばした。
鋏の先端がまず壁を貫き、クモの巣状のひびを壁に走らせた。金属と岩の正面衝突する音が耳をつんざく。
持ち手の部分まで鋏が壁の中に食い込むと突如勢いはがくんと止まり、次に鈍く深い衝撃が蒼星石の腹を襲った。
体が弓のようにしなり、うめき声が上がる。胸が苦しくなり一瞬呼吸でできなくなる。
たが、これでも衝撃は和らいだ方だった。体が直接壁に当たっていたら今頃気絶していたかもしれない。
蒼星石は壁に深々と刺さった鋏を取ろうとした。
しかし、どうしても抜けない。
もう一度しっかりと壁に足をついてから全力で鋏を引っ張る。無駄だった。
そうしていると間もなく、羽の飛ぶ風切り音が後方より聞こえてきた。
やむを得ず蒼星石は鋏をあとにして地面に降り立った。
羽の雨が降り注ぎ、壁と鋏にあたる。鋏にあたった羽はカンカンと音を立てて弾かれ、舞い落ちた。
丸腰になった自分を狙ってすかさず第二群の羽が降り注がれる。
蒼星石は右腕で顔を庇いながら瓦礫の地面を踏み進み、近くの建物の中に逃げるようにして入っていった。
少し間を入れてから、蒼星石はもう一度入り口から顔を出して水銀燈の位置を確認しようとしたが、
その時目の前の障壁を一本の羽が貫いた。そこが削られて破片が飛び散り、危うく目に入りそうになる。
息を切らしながら蒼星石は建物の中に隠れなおした。
「うっふふふ、これからどおするの?蒼星石。鋏を失った今のあなたに何ができる?」
外から呼びかける水銀燈の声がする。
「おとなしく私にローザミスティカを渡す?」
「渡すものか!」
蒼星石は大声で応えると建物の中を走り始め、奥の階段を駆け上った。
二階の部屋に入ったその時、壁を貫通して中に入り込んでいる自分の鋏の先端が目に入った。

この先端を中から向こうに押しやれれば外で拾うことができる…!
375Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 22:29:21 ID:fnSXDuAG
鋏に駆け寄り、先端を握って外に押し出そうとする。渾身の力を込めて押すがびくともしない。
蒼星石は部屋の中を見回し何か使えるものがないか詮索した。
通路に張り巡らされた木の板のバリケードが目に入り、蒼星石はそこに飛びついた。一枚の木の板を両手で掴んで引っこ抜く。
板の裏側では、打ち込まれた二本の釘が貫通先を失ってその尖った先端をむきだしにしている。
それから彼女は近くに転がる小さな岩を拾った。板を床に置いて足で固定し、その釘の先に岩を上から叩き付ける。何度も何度も。
次第に釘に岩が食い込んでゆき、奥まで入ってしっかりと固定された。巨大なハンマーの完成だ。
蒼星石はそれを握り締めて水平に振った。板の先に固定された岩を突き出た鋏の先端にぶつけさせる。
僅かに鋏が奥に押し込まれる。何度も打ち続けると、テコの原理の力もあって鋏は壁の中にまで押し込まれた。
もう一度だけ叩くと、やがて壁の向こう側で鋏の落ちる音がした。
「よし…!」
蒼星石は手作り製の金づちを投げ捨て建物の外に急ぎ足で向かった。
一段飛ばしで階段を駆け下り、水銀燈の存在に注意を払いながら外に出る。
鋏が落ちているであろう場所まで走り、そこで蒼星石は足を止めた。
遅かった。
水銀燈がその鋏を手に持って、今にも空に飛び立とうとしている。
蒼星石の足音に気付いた水銀燈は顔をこちらに向けて意地悪く笑った。
「一度、これ使ってみたかったの。うっふふ」
鋏をガチャガチャと閉じ開きしてみせる。「だってぇ、あなたがこれを振る度、とても気持ちよさそうな音が鳴るんですもの」
「返せ!」
蒼星石の帽子がブーメランのようにして飛んだ。水銀燈の手元に当たり、空を飛びかけていた彼女の手元から鋏がこぼれ落ちる。
すかさず蒼星石がされを拾い上げた。
水銀燈が右手首を痛そうに払い、上から彼女を見下して言った。
「いやらしい帽子ねぇ…」
それを聞いた蒼星石は意外そうな顔をした。「真紅にも全く同じことを言われたことがある」
その瞬間、水銀燈の顔から突然余裕そうな表情が消えた。
「私と真紅を一緒にするな!!」
上空で黒い翼が蒼星石を覆いつくさんばかりに大きく広げられ、再び羽が雨あられと飛んでくる。
蒼星石は慌ててその場から離れようとしたが、既にヘリコプターからスポットライトを当てられた逃亡者も同然の状態だった。
この攻撃はかわせない。どこにも身を隠すところが無い。
生存本能が働き、体が勝手に動いた。
鋏を盾にして身を庇う。羽が鋏を叩き、金属音が鳴り響くたび手に僅かな振動が伝ってくる。
だが、面積的に考えるとそれで全身を庇い続けることは不可能だった。
「いっ!」
足の甲に一本の羽が突き刺さり、一瞬体が揺らいだ。
衝撃の後にはズキズキと痛みが差してきた。その痛みの度合いは急激に上昇する温度計の感温液の如く増していく。
このまま地面に倒れたりすれば羽の格好の的だ。
蒼星石は、バランスを崩した体のよろめきをむしろ勢いとして利用するようにして両足を蹴った。
その場から真横に立ち幅跳びするような動作で、近くの屋根の下を目指す。
宙を飛んでいる最中の時間がえらく長く感じられた。
やがて体が地面に着いて横倒れになったとき、上半身だけが屋根の下にもぐり込めたことが分かった。
すぐに下半身も屋根の下に入れるべく体を前に引っ張る。後ろを振り返ると、既に向こうの地面は黒い羽の芝生に覆われていた。
更に数本の羽が加えてそこに降ってきた。地面に敷かれた瓦礫が割られ、泥と一緒に破片が跳ね上がっている。
蒼星石は身を丸めて足に刺さった羽を抜き取った。それから、鋏をしかと手に持って立ち上がる。
奴の言うとおり、空中戦においては自分に勝ち目は無い。相手は翼を持っていて、しかもあんなにも効率の良い飛び道具も持っている。
一方自分の持つ武器はこの巨大な鋏と、ついで程度の帽子だけだ。
水銀燈を相手にして勝ち目は接近戦以外にありえない。
この屋根の下にいれば上空からの羽の攻撃は届かない。それを見かねた水銀燈が降りてくれば、接近戦に持ち込むことが出来る。
より建物が密集し狭苦しくなっている場所を捜し求めて、蒼星石は屋根に沿って走り出した。
376Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 23:01:21 ID:fnSXDuAG
31

翠星石とジュンの二人は並んで走りながら建物の中へと駆け込んだ。
へこたれるように地面に座り、乱れた息を整える。
「せ、背中に刺さった羽が」ジュンは言った。「肺だ!羽が肺に穴をあけた!胸が、胸が苦しい!」
ジュンは見えぬ背中の羽を取ろうと必死にその場で暴れている。
「人間の体は良く分かりませんが、そういうことなら」翠星石はジュンの背後に移動した。「ちょっとそのまま動くなです!人間!」
そう言ってジュンの背中に飛び掛り、背中の羽を引っこ抜いた。
「いいいいっ!」
あまりに急な衝撃にジュンの背中が丸まる。瞬く間に羽が抜かれた箇所からジュンの服が赤く滲んでいく。
「あああああ死ぬ!」ジュンは涙目にに部屋の中を往復した。「僕は水銀燈とかいう人形に殺されていくんだ!」
「うるさいですぅ。ちょっと黙るです」
翠星石は如雨露を持ち上げた。不注意に走ってきたジュンの足にそれが引っ掛かり見事にぶっ倒れる。
「そんなに騒ぎ立てたら水銀燈のコンチクショーが聞きつけてそれこそ二人とも殺されるです」
「翠星石ー!死に際でお前まで僕の敵に回るのか!」転んだジュンが顔を上げた。「の…!…あれ」
ジュンはそこであることに気付き、自分の胸に手を触れた。「もし本当に肺に穴が開いてたとしたらこんなに喋れないよな」
安堵の波が押し寄せ、ジュンはほっと息をついた。「久々にあんなに走ったから胸が死ぬほど苦しくなっただけじゃないか…
よかったぁ。アクション映画の見すぎか。大体そんなことになってたら今頃吐血してるよな…あはははははって笑い事じゃない!」
ジュンは自分のノリツッコミを唖然とした表情で眺める翠星石の視線に気付き、恥ずかしそうに体の動作を止めた。
「羽」翠星石はゆっくりとジュンを指差した。「まだあと二本刺さってるです」
「え」言われた途端、急にあと二箇所の傷を脳が自覚し始めて激痛を知らせてきた。「いたたたたた…」
右腕と右腿。それぞれ突き刺さった黒い羽を抜き取る。その羽の先っちょは血がこびれついて赤黒く染まっている。
ジュンは右腕の袖をまくって傷口を確認してみた。
予想を超越してかなりの量の赤い液体 - 血がそこから流れ出ていたので、ジュンはその光景に戦慄した。
人間の体は血が一度に大量に失われ、急激に血圧が急に下がるとショック状態に陥る。
左手で傷口を拭ってみると、血が絵の具のように広がって腕を赤く染め上げただけだった。
手のひらに血が伝わって指先から滴り落ちる。ジュンはズボンのポケットからハンカチを取り出して血を拭き取り始めた。
「くそ、止まらないぞ…」
傷口を拭いても拭いても、真っ赤な血が次々と噴水の如く傷口から湧き出てくる。
動脈を貫かれたのだろうか。血が生き生きとしていてまるで止まる気配を見せない。
「に、人間!傷口を拭くことよりも塞ぐことを考えるです!」後ろで翠星石が言った。「ちょっと腕貸すです!」
翠星石は頭から白い頭巾を抜き取ってジュンの隣まで寄った。
一瞬その赤い液体を怖がるような仕草をしたあと、その傷口に頭巾を巻き付け始める。
ジュンの驚いた顔が翠星石に向けられた。
「できたです、人間。こ、これでその血とやらは止まります」
翠星石は言うと、ジュンは翠星石の顔をまじまじと見つめた。
「な、なんですか!?人間っ」
「いや、その…ありがとう。翠星石」
ジュンは心からの気持ちを口で言った。
「なっ…」翠星石の頬が自分でも分かるくらいに急激に火照った。「こ、このくらい当然のことですよ…!」
そう言ってジュンに背を向けたとき、突然翠星石は自分の両手を見るなり飛び上がった。
「きゃああああ!私の手が赤いです!真っ赤です!不吉で不純な人間の液体が私に付着したです!」
彼女は手当たり次第両手を壁になすり付けてジュンの血をふき取ろうと躍起になった。
「翠星石、落ち着いて。ハンカチで拭いてやるから」
今度はジュンが翠星石をなだめる番だった。彼女の肩に手をかけ、振り返らせてから、両手の血をハンカチでふき取る。
翠星石は言葉を失ってその光景に見入っていた。
「これは血といって人間には大切な液体なんだよ。お前達でいうローザミスティカみたいに…失い過ぎると死ぬんだ」
ちょっと驚いたような表情の翠星石が顔を上げた。「お前達人間は…そんなふうにして死ぬですか」
ジュンが翠星石の手を拭き終えると、何処からともなく赤色に輝いた人工精霊が二人の元に飛びよってきた。
「ホーリエ!」翠星石は人工精霊の言葉に耳を傾けた。「そうですか…!分かりましたです」
ジュンに向き直り、翠星石は言った。「ジュン!雛苺と真紅がこっちに向かうそうです!」
377Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 23:22:03 ID:fnSXDuAG
32

「…はぁ…はア…!」
蒼星石は息を切らしながら屋根の下をひたすら走っていた。
彼の周辺を絶え間なく黒い羽がビュンビュン音を鳴らして当り散らしてくる。
蒼星石は崩れかけの石造りの柱の後ろに隠れた。息を整え、柱から慎重に顔を出して状況を確認しようとした。
羽の攻撃をふんだんに受けたその柱にひびが走り、上半分が崩れ落ちて蒼星石の姿を丸見えにした。
「くっ!」
蒼星石は再び走り出した。その後ろで水銀燈の羽が発火し、青白い閃光と共に爆発を起こした。
地震が起り、蒼星石はよろめいて壁に寄りかかった。天井が崩れ落ち、破片の雨が降り注ぐ。
その雨に加え、さらに横から黒い羽の雨が横殴りに飛んでくる。
揺れる地面の中蒼星石はふらつく足取りで別の柱のところまで進み、もう一度身を隠した。
もう正面に出て行くしかない。
水銀燈をどうにか狭い建物の中に誘い込み、接近戦に持ち込むのが作戦だったが、バレバレらしい。
何処かしら遠くから一方的に執拗に羽で攻撃してくる。こちらに寄ってくる気配は一切無い。
このままではそれこそ反撃も出来ずにやられるだけだ。
周辺の羽が再び青白い火を発し始めたとき、蒼星石は腹を決めた。
「お父様…どうかアリスを目指し闘う僕を見守っていて下さい…」
柱の物陰で呟き、彼女はゆっくりと道の真ん中へと進み出た。
そんな彼女を外の世界へ迎い入れるように、水銀燈の羽はいつのまにかすっかりやんでいた。
空が覗かせる広い廃墟の空間にまた出た蒼星石は冷静に水銀燈の姿を探した。
水銀燈は廃墟の建物の屋上に立って翼を広げ、両手を掲げていた。
蒼星石が屋根から出てきたのを確認した水銀燈はふっと笑って建物から降り立ってきた。
そして蒼星石の鋏がぎりぎり届かない位の高度でまる。
「うっふふふ…あなたってほォんと、一人で悩んで、落ち込んで、自爆して最初に消えるタイプのおばかさんよねぇ」
水銀燈はその時 - 少なくとも蒼星石には - 信じられない行動に出た。
両手を伸ばし中指を立てたのだ。それも挑発するようにその中指をピクピク揺れ動かしている。
「あなたみたいな少年ドールがアリスになったと知ったら…お父様にしてみたら"コレ"よねぇ」
怒り狂った声を張り上げた蒼星石が飛び上がって水銀燈に襲い掛かる。
「許さない!」彼女は鋏をぶんぶん振りながら絶叫した。「僕はお前を許さない!」
グーで中指を立てた水銀燈の行為はただの蔑みを表すものではなかった。
"Flip the bird"と呼ばれるサインで意味は"Fuck You" - お前を強姦する - そして立てられた中指は雄の象徴である
男根を見立ている。それは、どちらかと言えば男の子に見える蒼星石の容姿を深くえぐるように侮辱したものだった。
「うっふふふふ!」水銀燈は目を見開いて笑った。翼を羽ばたかせて横にずれ、蒼星石の攻撃をかわす。
蒼星石は、すぐに自分が逆上してしまったことを後悔した。罠だ - 空中戦に誘い込む為の。
彼女は水銀燈に向き直って叫んだ。
「ローゼンメイデンがそんな卑しいことして、恥ずかしくないのか!お父様が見ているのに!」
「ふっ…私もう分からなくなってきちゃったのよ…蒼星石」
水銀燈は言った。「あなたが知っている以上に私は今まで何度もお父様の志向に背いたことがあるの…
アリスゲームの掟を破ったことすらね。でもそれら全ては"アリスになる為"私がしてきたことだった。この矛盾分かる?」
横に振られてきた鋏を一度頭を下げてかわす。蒼星石が鋏を定位置に戻そうとしたところを水銀燈は腕と鋏を掴み上げて動きを封じる。
「あなたに腹を切られ、真紅に焼かれて、薔薇水晶に砕かれ、
三度ジャンクを味わったこの水銀燈が尚まだここでアリスゲームに臨んでいるのは…」
バック転するような要領で水銀燈は蒼星石の胸を思いっきり蹴り上げた。空中で逆十字のオーバースカートが逆さまに捲れ上がる。
鈍い音が鳴り響き、蒼星石の体は遥か上空へと打ち上げらた。鋏が水銀燈の手元に収まる。
「お父様は私がアリスになるのを待って下さっていた!」
水銀燈は鋏の先を上にして思いっきり振り落とし、地面に突き立てた。
それからすぐに上に飛び、目にも留まらぬ速さで蒼星石の体を宙で捕まえる。
「けど次はない。何故なら真のアリスゲームが始まったら - 第七ドールが姿を現してね。私がもう一度ジャンクになれば本当に
全てが終わる - アリスゲームの掟なのだから。魂は闇の中で届かぬお父様を求め、延久に彷徨い続ける。でもおかしいと思わない?」
水銀燈は蒼星石を上から押さえつけ、下に叩き落そうと力を込め始めた。
その真下では突き立てられた庭師の金色の鋏が先端を光らせている。
378Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 23:30:52 ID:fnSXDuAG
「私最近思い始めたの - アリスゲームのルールはそんな簡単なものではない。何か恐るべきからくりがある。
"自由度が高すぎる"。一対一で闘うものでなければ、真紅みたいに敗者の雛苺に力を供給することも出来る。
第七ドールみたいにいつまでも姿を隠し続けることも出来れば、そもそも同じ時代に全員目覚めないと意味がない!」
二人は急激に高度を下げ始めた。隕石のように猛スピードで落下していく。
「どう思う?死に際のあなたの口から聞きたいの。うふっ、そのような条件下ではアリスゲームが何世紀にも長引いても当然。
なぜお父様はアリスを待ち焦がれながら、そのようにしたのか」
蒼星石は水銀燈の言葉に聞き入ってる余裕などほとんどなかった。むしろこの会話もまた罠だ。会話に集中させ、抵抗力を奪う。
「第七ドールはアリスゲームについて、何か知っている。私の直感がそう告げているの」
水銀燈は続けて言った。
「ローザミスティカについての秘密もね。真紅が"アリスゲーム以外の道"と口に出したとき雪華綺晶は怖がっていた」
蒼星石は無視した。"好奇心は猫を殺す"。興味の沸く話だったが、今の状況を忘れてはならない。
いま、水銀燈の話に受け答えなどしていれば自らの鋏が体を貫く。
必死に身を乗り出し、水銀燈を下に覆そうと試行錯誤するも全く効果が無い。見る見るうちに地面が迫ってくる。
その上で水銀燈が敗者を見下すように笑った。
突然、二人の横からバイオリンの演奏する音が鳴り響いた。
「追撃のカノン!」
何処かしらから声がすると、水銀燈と蒼星石の二人を目掛けて音波の竜巻が何本も蛇のように伸びてきた。
「チィ!」
水銀燈は舌打ちしてから蒼星石を手放し、翼を力いっぱい羽ばたかせて高度を上げた。
そのすぐ下を竜巻が伸びてゆきそばの建物の壁に突っ込む。衝撃音がして建物が真っ二つに砕かれる。
砂埃の塊が花火の様に散り散りに飛び、そのあとバラバラと断片や瓦礫がそこから土砂崩れの様にして流れ落ちてきた。
「金糸雀か!一体何処から!?」
水銀燈は飛んでくる砂を被りながら周辺の建物を見回した。金糸雀の姿は何処にも見当たらない。
なるほど。漁夫の利を狙っている訳か。
自分は身を隠し、他のドールが戦いに夢中になってるところを横からまとめてすくい取る。
いかにも金糸雀らしい戦い方だ。

水銀燈から手放された蒼星石は依然として地で待ち受ける鋏の先に向かって一直線に落下していた。
幸いにも、あれは僕の鋏だ。水銀燈に抑えられてさえいなければ鋏は主人の言うことを聞いてくれる。
「レンピカ!」
蒼星石は鋏に向けて手を伸ばして叫んだ。
水色の人工精霊が蒼星石をはるかに超えるスピードで降下してゆき、鋏の周辺を舞う。
鋏が独りでに地面でカチャカチャと震え始め、やがてフッと飛んだ。そして主人の手元に納まった。
無事地面に降り立った蒼星石はふうと息をついた。

「ふ、惜しかったのかしら。」
二階建ての建物の中、金糸雀は伏せの体制で、バイオリンを手に持って壁にあいた穴から水銀燈と蒼星石を見下ろしていた。
「戦いを続ければいいわ。二人とも…!そして薔薇乙女一の頭脳派この金糸雀が、
まとめてあなた達のローザミスティカを奪ってやるわ!」
自分は決して蒼星石を助けたつもりはない。ただその時を狙って攻撃を繰り出しただけのことだ。
どちらかが勝利を確信する瞬間。その時こそが隙を突くのに最も適したタイミング。今回の場合は水銀燈が標的だった。
「しかしまぁ、さすがは翼を持っているだけあって、交わされてしまったのかしら。ふふ、別の建物に移動した方がいいかしら」
金糸雀は呟いて穴から体を引っ込ませると、立ち上がって建物の中を移動し始めた。
既に位置を感づかれた可能性すらあるので、出来るだけさっきとは逆の方角へと移動したい。
角度を大きく変えれば変えるほど気付かれにくくなる。
379Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/24(日) 23:51:17 ID:fnSXDuAG
33

何世紀もの間、姿を隠し続けてきた最後のローゼンメイデン - 第七ドールの雪華綺晶は、廃墟の建物の上から
第一ドール水銀燈の壊れた世界をその虚ろな金色の左目で眺めていた。
左の方からは、この世界の主水銀燈が羽を飛び散らす音や金糸雀のバイオリン、建物が崩壊する音など激しい乱戦の音が聞こえてくる。
真紅が何処かへ消えた。…自分はあの薔薇水晶とは違い、真紅に特別な執着を持ったりはしていない。
あの薔薇水晶が - 真紅に対抗心を燃やしたエピソードを思うと雪華綺晶は微笑まずにはいられなかった。
だが、第五ドール真紅は今大いなる過ちを犯そうとしている - アリスゲーム以外の道。お父様がドールにそう告げたと彼女は言った。
「何が、お父様の心を動かしたのです」
雪華綺晶は突然言った。その背後には、ラプラスの魔が立っていた。
「フフフ…光もなく、音もなく…その心を納められる器は存在しない。あなたと同じ様に」
「器がなければ…」雪華綺晶は若干首を上にあげて言った。「行き着く先は無意識の海だけなのに…」
二人の遠くで雷鳴を思わせる金切り音が轟いた。細かい塵と一緒に風が吹き、雪華綺晶の白い髪を右になびかせた。
恐らく町並みの建物を金糸雀のバイオリンが吹き飛ばしたか、蒼星石が裂いたかどちらかに思われる。
「ククっ…ならばどうしましょうか ?」ラプラスが言った。「影のお嬢さん…"アリスゲームの発端となった"ドールとして」
雪華綺晶はゆっくりとラプラスに向き直った。「アストラル体の未来は見れますか」
「おやおや…それが私の目から逃れられるかという意味だとすれば…これは大変。
末の子まで私に敵意を向けてくるとは…いささか淋しさを感じてしまいますな」
ふと雪華綺晶の金色の瞳が、ラプラス越しに小さな赤色の浮遊体 - 真紅の人工精霊を捉えた。
それは主人なしに単独行動でそそくさと廃墟の中を急ぎ足で進んでいる。
雪華綺晶はそれを楽しそうに目で追った。「ふふっ…あれは駒鳥さん…小さな小さな駒鳥さん…」
「いよいよなのですかな?影のお嬢さん」
「"偽りには真実の光りがまぶし過ぎたようです"」
雪華綺晶は依然真紅の人工精霊を眺め続けながら言った。薔薇水晶が崩れた時ラプラスの告げた言葉だ。
「その真実の光りとはわたし。それはわたしなの」言い終わるや雪華綺晶は建物から飛び降り、廃墟の道を飛ぶように移動していった。
「クククっ」ラプラスは頭の帽子に手を触れて呟いた。「今回の"おもちゃ"は扱いに頭をひねらせる…」
380Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/06/25(月) 00:13:07 ID:clPhYV02
34

一端の引き際だ。水銀燈は心の中で言った。
自分を横から狙おうとする者がいる以上、これ以上蒼星石と戦い続けるのは明らか愚策だ。
「まずはあのこざしい金糸雀の息の根を止めなければね…!」
ところが、全く憎たらしいことに、空気を読めていない蒼星石がこちらへ突進してくるのが見えた。
「な…!」
反射的に羽を放ったが、蒼星石に全て鋏で追い払われた。そのまま一挙に水銀燈の元へ詰め寄り、鋏を振ってきた。
水銀燈は身を低くしてかわした。鋏がそばの柱を真っ二つに割る。
「蒼星石!あなたって信じられないおばかさん!…けほっ!」
壊された柱の細かい断片を吸い込んだ水銀燈がむせながら顔を上げて叫んだ。「状況を理解しなさい!二人とも死ぬわよ!」
「こういう切羽詰った状況ほど」蒼星石は再び鋏を振った。「君を追い詰め、倒すチャンスを得られる!」
何処までも男臭い社畜め!水銀燈は心の中で毒づいた。
まだ七体も残っているのに!始まったばかりからそんな危険な橋を渡って最後まで生き残れるつもりか!
水銀燈は身を退け、どうにか鋏の届かない距離を保ち続けた。
「逃がさないぞ!」蒼星石が血相を変えた顔で鋏を振りながらこちらに迫ってくる。
突然、水銀燈は地面に置かれた瓦礫に足がすくわれた。さっき金糸雀の攻撃で壊された建物の一部だ。
「しまっ…!」
水銀燈の息が詰まり、顔に一瞬恐怖の表情が浮かんだ。
バランスを崩し、ゆっくりと体が後ろに倒れていく。
「終わりだ!」
蒼星石は巨大な鋏を両手で押し開いた。鋏の内側が露わになる。
開かれた鋏の中に、蒼星石は倒れた水銀燈の首元を突っ込ませようと前進した。
「くっ!」
水銀燈は開かれた鋏の内側を両手で支え持った。鋭くなっている部分が彼女の指の関節に痛みを走らせる。
鋏が閉じられれば、水銀燈の首はチョン切られることになる。
「蒼星石…!やめな…さい…!」
全身の力を両手の指に込めながら、水銀燈が言った。
鋏を閉じようとするのと、こじ開けようとする二人の力がぶつかり合い、鋏はガタガタと揺れ続けている。
仰向けに倒れたまま鋏の内側を支え持つ水銀燈の手の痛みは極度に達していた。
「バカヤロウ!やめろ!金糸雀の格好の餌食じゃなぁい!」
水銀燈は絶叫し、右足で蒼星石の背中をしきりに蹴り上げ始めた。
こんな終わり方はごめんよ!
「ぐっ…うう…!」蒼星石の顔が一瞬痛みでゆがむ。「だが…まだ金糸雀の攻撃はきていない!」
言ってるそばから、再び何処かしらからバイオリンの演奏音が聞こえ、音波の竜巻がこちらに突進してきた。
二人はそれにすぐ気付いたが、お互い鋏に込める力を一瞬たりとも緩めることが出来ない。

さっきとは別の建物の中で伏せながら、金糸雀は一人笑みを浮かべていた。水銀燈と蒼星石。頂きかしらぁ!
381名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 18:10:05 ID:KpmmTH6f
>>380
まるでTV観てるような、この切り方!
次回乞うご期待って感じが良いね。
wktkwktkでお待ちしておりますよ。

何となく金糸雀が最初にやられる予感。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:06:56 ID:0VLdFl+B
キム死ね
383名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:30:59 ID:rMezwAxm
        ┌──┐
         i二ニニ二i  在日死ね
          i´ノノノヽ)))_ _ _
         Wリ|゚ ー゚〔::二二〔()           ...:;:''"´"'''::;:,,, ドガァーーン!!
        /'i)介つ〔三三三:〔[二[二二二[〔()〕″     ,,;;;;´."'''
      と⌒__ ⊂ソ |ミ|| |_|_|  /A     '''''::;;;;::'''"´



         ヽr'._ r`γヽ./.゚;・.,'
         //`Y. ,,‘ .゚;・.,'`ヽ
         i | ノi ノ_';;;∵\@
         ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д;;。;∵ がじらぁぁぁぁぁぁ!
          `ー -(kOi∞iミつ
              (,,( ),,)
               じ'ノ'



            ___   
           く/',二二ヽ>
           |l |ノノイハ)) 砕け散れですぅ!
         ⊂|l |リ゚ ヮ゚ノl|         .゚;・.,'`ヽ
          ヽl_介」とソ' \ 从/ _';;;∵\@  グシャッ
            (__二⌒) <   > ,ヾ(i.゚'Д;;。;∵
           (_丿    /VV\    ;:∵;;;,
384名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:32:06 ID:rMezwAxm

   , '´ ̄`ヽ
   i ノ_'\@
   ヾ# 々`ノ 
   / つ⊂ノ  ごろごろぴー
   (__ ̄) )
    し'し



     , '´ ̄`ヽ
     i ノ_'\@
     ヾ# 々`ノ  が・・・がじら゛ぁぁ・・・
     ( つ⊂ ヽ ゴロゴロ
      ( ヽ( ̄、)
       l,ノ (__)



          , '´ ̄`ヽ   っ
          i ノ。'\@    っ
          ヾ#゛々゚ノ かー・・・が!!・・・しー・・・し・・・ら・・・
         / つ大O
≡     /"( ),==r' `ヽ  
       ! *し)__.| * !
   ≡  ◎、_彡" ヽ、_彡


                 _______
                 |          |
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          , '´ ̄`ヽ   |  TOILET    |
          i ノ_'\@ うー・・・       |
           ヾ# 々`ノ   | ◎        .|
.          /,   .つ   .|          |
         (_(_, )   .|          |
          i:;:lしし'      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ⊂.:.,':.,':⊃
     ⊂;'::.,'::.:.,';.'.,';';.:⊃
       ⊂;':;.':.,'::.::⊃



    , '´ ̄`ヽ
  ∩ i ノ_'\@ グスグス…
 ⊂⌒ヾ* 々∩
  `ヽ  つ ノ
        ⊂.:.,':.,':⊃
     ⊂;'::.,'::.:.,';.'.,';';.:⊃
       ⊂;':;.':.,'::.::⊃



  ビチャビチャ
         , '´ ̄`ヽ
   〃〃∩:.,i ノ。'\@':.,
 :.,'::.:.,';.'⊂⌒ ヾ*;:々^ノ.,'.,';';.:
   :.,'::'::.,'`ヽ___つ.,':.:つ:.,';.'.,';'
     :.,'::.:.,';.'.,';':.,'::.:.,';.'.,';'
385名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:32:59 ID:rMezwAxm
     , '´ ̄`ヽ
     i ノ'_\@                 人  
 /⌒ヽヾ* 々`ノ かしらー!!     /⌒.(;:;:;:;:)         , '´ ̄`ヽ
 {   (/つ ノつ  ___         I.  (;:;:;:u:;)         i ノ'_\@
 ヽ  (__⌒ワ')ク  (三(@    →   ヽ (;:u;:;::;:;:;)    →   ヾ*.;々`人 クチャクチャ
  に二二二)                に二二二)       / つ;:(;:;:;:;:;)
   _)   r'                  _)   r'        しー‐(;:;:;:;u;:;)
  └───`                └───`          (;:u;:;::;:;:;)
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386名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:34:00 ID:rMezwAxm
             人
    Σ , '´ ̄`ヽ (;:;:;)
      i ノ_'\@.(;:;:;:u:;)
      ヾ# 々`ノ(;:u;:;::;:;:;) がっ
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       しo
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      と_)__つ(;:u;:;::;:;:;)
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      .人
     (;:;:;)
    , '´ ̄`ヽ
   i ノ_'\@
   ヾ*.;々`と,,, クチャクチャ
   / つ;:(;:;:;:;:;)
   しー‐(;:;:;:;::;:;)
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387名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/25(月) 22:34:59 ID:rMezwAxm
            ( ⌒ )
             l | /
            , '´ ̄`ヽ
            i ノ。\@
           ヾ# 々゚ノ かっ・・・かしらーーーーー!!
           /,   つ
.       ブリッ!(_(_  /
           //レヽJ
         .人
        (;:;:;:;:;)
       (;:;:;:;u;:;)



.    , '´ ̄`ヽ ガツ
.    i ノ'_\@  ガツ
    ヾ*.;々`人. 大好物かしらー♪ 
    / つ;:(;:;:;:;:;)
    しー‐(;:;:;:;::;:;)
388ロックマンJUM:2007/06/26(火) 23:19:05 ID:3j/9/dBi
水銀燈「お久しぶり、おばかさぁん♪」
JUM「水銀燈!?(CV:風間 勇刀)」

水銀燈「JUMがあの、どうりょくろをやられたイレギュラーハンターになったって聞いて、私も等身大になってみたわぁ」
JUM「……俺を訪ねて、どうしようと言うんだ」
水銀燈「そんなに身構えなくてもいいわぁ、って言うかその『※シールドブーメラン』下げて」

※一部の飛び道具を弾き返してダメージを与える効果あり。

JUM「……で、用件は何だ」
水銀燈「そんな大層な事じゃないわぁ、ちょっと付き合ってほしい事があるの……」



めぐへの、お見舞い品の『お買い物』にね……フフ……


                                                    ,i!
                                   |ヽ、   , ‐''''T''''‐  、 //|
                  , -r<薔薇コ=- 、 、       |:.:ヽ`y'::::::::::::::::!::::::::::::::::〉:/:./
                /  _ ___       \\      |:.:.:.ヽ`、::::::::::::i:::::::::::::/,:.':.:.:,/
             にy' ,r'´ .::.:.:.i:.i:.:``ヽ、    ヽ ヽ     ト、:.:.:.ヽ'、:::::::::|::::::::::/,:.:.:.:./:|
              「イ .,.:,.::,イ!.::j:||:|::|:..il:.ト、ヽ   li i  r┐.,':::',:.:.:.:.:\::::::::|:::::::/,.':.:.:./::::|    /1
                 //.://:/l.::i.:.:|:|!.!:i!:::|!:.i Nヽ _」ト、|  ヽ ヽ!:::::',:.:.:.:.:<´ ̄'i' ̄`>:.:.:.:|::::/-.ヘ ///  
             //::// / |.:.|.:.:| l:|: .:|.:||::| .|:l|二>ネ〈j!   ヽ ヽ:::::L:.:.:.:.:\ |  ,:':.:.:.,.ノ:::|,ノ、 /-、!  
            ,イ7Nl/N、 」:.:lMl/ lノノ! l|N ノノ! _ノ7!ト、!   ,|/´ヽ//i'ト,.、:.:.ヽ|/:.,.ィ'フ |::/N/:.:!:7 | 
           / ハ |トト、 l N、N  」, -!‐|‐|//LヽY二〕 ,....-ヘ:.:┌‐ヘ``゙~`ヽY-''"`~,イ/:/`ヽ:.:!'V     
          // / :l/入ヽヾモコヽ   'こテニ7/ノノ7l1::!! : : : : :.ヽ:.|ヽ ト、   :!    ,.イ':/! ///      
      __ / ノ / , イ/  〉' , ' ' ' '、   ' ' ' '//7.:/ |::||-‐,.=‐' ´``‐',┘>>´ ̄` <ノ:/:.ト-‐'  
 , イ.:..:.:::::::::::::::::``ヾ :.:.ノノノノ.>、  ー-   / /:/ l .:.:l::||:'': : : : : :,... ': : :.く二ニ`Y´,フ´:./!:./
  ,彡.:.:.:.:.::::::::::::`ヾ、ヽy ///イN >、_ , イ /:/ i |::l:|l|ト_...:._‐'',...: : '':.フ:.:.:.:.:.:,.>:': : :/v':.|
     ノ .:.:::r'.:.:.:.:.ヽ. .///L7孑ケノハ>、/,/:/  lN」」j!‐'' ,/-┐r':.:.:.:.:.,...:': : : : /:.:/: :/`ヽ r‐、 ,-、
   / /.:r'´.:/.::::::::///.:::7 ^ヾ/ノ1 |:::// /^フ不「.:.:.:ヽ'::::::::::::/>ヘ:.,. ': : : : : ,.イ:.:.:./: :/:.:.:ノ/´::::/:::::::\
    ,/.::.::::/.:.::::::::::///.:.:/   `~~ ~´/./ / ノ.::i!.1'::::::::::::::::/:://: : : : :,. ':.:.:!.:.:/: :,':.:.:く:::ヽ、/:::::::::::::::\
389ロックマンJUM:2007/06/26(火) 23:26:24 ID:3j/9/dBi
蛇足

水銀燈達と別れ早1年・・・・水銀党の追及は止む事なくJUMを追い詰める。
ドールズの事を案じながらも、JUMは目の前の銀様信者を振り払い生きる事に精一杯であった。


____
|  |
|  |
|  |      彡    ビュウウウ…
|  |                彡         彡
|≡|        彡
[ J]             |ヽ,---、|ヽ   彡
              __ヽ ヽ▼/ ノ
              \_>;・∀・|)
                人つゝ 人,,
              Yノ人 ノ ノノゞ⌒〜ゞ
            .  ノ /ミ|\、    ノノ ( 彡
             `⌒  .U~U`ヾ    丿
                     ⌒〜⌒
タララララーラー タララララララー ターラーラーララーラーラーラー(For Endless Batlle) 
390ロックマンJUM:2007/06/26(火) 23:29:35 ID:3j/9/dBi
以上。
ちなみに(For Endless Batlle)じゃなくて(Departure)だった。
391名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/27(水) 00:52:47 ID:Q3Ah+iLe
958 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 21:59:55 ID:aEdWMwCM
金糸雀のいらなさは異常

975 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:23:42 ID:aEdWMwCM
真紅>雛苺>薔薇水晶>蒼星石>水銀燈>翠星石>金糸雀

981 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:30:44 ID:DnZsNRUT
薔薇すぃ>雪>翠>銀=紅>蒼=雛>金
金はアニメであの声で長々と台詞言うのがね
あとみっちゃんとのコンビが微妙 実際ウザいのはみっちゃんだが

985 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:33:17 ID:lkUBPhDL
実際人気ランキングでドールズで最下位だからな
正直微妙すぎる、結果的にお荷物状態になってるしな

994 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:43:44 ID:DnZsNRUT
金、真面目にやれば戦闘能力は結構高いハズなんだがな
翠がやられてからやっと本気ってのはやはりキムシジャク

9 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:52:44 ID:3QCzEIRg
金糸雀アンチ氏ね

11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 22:56:32 ID:aEdWMwCM
>>9

776 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 00:06:40 ID:3QCzEIRg
おやすみカナ

820 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 07:16:27 ID:3QCzEIRg
おはようカナ

855 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 16:02:13 ID:3QCzEIRg
カナと一緒に昼寝したい



こりゃまた見事な金糸雀厨っすねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
まさか前スレで金糸雀批判してたの全部アンチの仕業と思ってんすかwwwwwwwwww

17 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 23:08:31 ID:qjxwxsuZ
>>11
何んスかそれwwwww
気持ち悪いにも程があるwwwwwwwww
これだからキャラ厨はウザがられる

20 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 23:14:18 ID:bG77447W
>>11
これは気持ち悪い
カナリア厨がでてきたら徹底的に叩かないとだめだな
392名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/27(水) 00:53:44 ID:Q3Ah+iLe
3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 23:37:39 ID:ZNXLThQM
真紅>雛苺>薔薇水晶>蒼星石>水銀燈>翠星石>金糸雀

32 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 01:05:00 ID:hRpGwlQb
金糸雀厨って他人のネタパクって恥ずかしくないんだろうか…
やっぱ在(ry

40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 01:46:15 ID:o4ibKKN0
雛苺と金糸雀はいらない子

232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/14(木) 11:15:18 ID:CVLHLysZ
カナリアとかいらないだろ、常識的に考えなくても…


やっぱり銀様が一番だねっ☆

241 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/14(木) 13:06:34 ID:Gql5ri+L
翠星石≧水銀燈>蒼星石>>薔薇水晶>真紅>>>(越えられない壁)>>>雛苺>>金糸雀

雛苺と金糸雀はゴミ

246 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/14(木) 14:26:17 ID:z8fpQsCT
金糸雀って本来、「不人気や影が薄いのをネタにされるキャラ」にするつもりだったんだろうけど、
予想外のことに真紅がその位置に収まってしまったためにマジで邪魔な存在になってるんだよなぁ

588 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 09:27:45 ID:LD/UpX1s
最近はカナリア厨よりアンチの方がマシに思えてきた

620 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 12:53:59 ID:0/kUGW5w
金糸雀信者って一日中スレに張り付いてるな


他にやることないんだろうか

624 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 13:01:14 ID:0/kUGW5w
636 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 21:13:44 ID:28s6kpFF
カナリア好きは、「敢えて不人気なデコ出しキャラを好きな自分」が好きなんだろ^^
正直に言えよw

642 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 22:20:16 ID:33NEsrw+
>>636
確かに金糸雀信者ってそういう中二病っぽいイメージがある

628 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 13:07:49 ID:0/kUGW5w
思えば漫画最萌で金糸雀厨が調子に乗り出してからこのスレも人が減ったり変な流れになったりしたんだよなぁ
アニメ最萌でも同じことが起こるんだろうなぁ…はぁ…

651 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 14:10:51 ID:+VSXnWev
カナリア厨と雛苺AA厨が同一人物に思えてきた
いつも似たような時間に書き込んでるし

772 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 20:15:53 ID:nXR8dJAQ
翠=銀=紅=薔薇=雪>蒼=雛(ここまで好き)>>>>>>>>>>>>>>>>>金
393名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/27(水) 00:54:38 ID:Q3Ah+iLe
911 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 17:48:48 ID:0hsZ6ppW
真紅>水銀燈>蒼星石>雛苺>>>雪華綺晶>翠星石>>>金糸雀

939 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 18:12:24 ID:6MmS36pF
原作
翠=雛>紅>銀>蒼>雪>金

アニメ
翠=雛>銀>薔>紅>蒼>金

信者の痛さ
金>翠>蒼>銀>紅>雛=雪=薔

947 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 18:19:58 ID:0hsZ6ppW
金糸雀厨って最萌の時も荒らしを呼び込んだし最悪だな
こいつらを同じローゼンファンとは思いたくないね

955 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 18:24:31 ID:6MmS36pF
>>947
ローゼン勢はみんな冷めてるのに金糸雀信者だけが必死になってたからな
実際そのせいでこのスレも荒れて人減ったし
アニメ最萌でも同じことが起こると思うとウンザリだわ

959 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 18:27:36 ID:0hsZ6ppW
ドール自体がクズだから信者もクズしかいないんだろうな

961 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 18:31:28 ID:IW6bytIi
>>947
>>955
もともと好きでもなかったけどその話聞いてますます金が嫌いになった

170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:57:25 ID:EblYP6d9
今人気投票したらカナは真紅より上位にいきそうな気がする
最萌でも優勝したし最近はカナの人気も結構上がってきてるよ

172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:59:55 ID:0hsZ6ppW
>>170
ここまで頭の悪そうなレス久々に見た

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:02:10 ID:4mmG3Ppn
>>170
真紅の不人気とキムの不人気はレベルが違うってこと分かってる?^^;

177 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:03:33 ID:eAb2tC4B
170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:57:25 ID:EblYP6d9
今人気投票したらカナは真紅より上位にいきそうな気がする
最萌でも優勝したし最近はカナの人気も結構上がってきてるよ

179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:09:38 ID:Srlev5Jk
半分冗談まみれのレスだろ>>170

180 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:11:05 ID:mbAv5yFM
冗談じゃなかったら頭おかしい

184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:17:48 ID:Tz6+/hjf
>>170みたいな奴が真紅AAで荒らしてるんだろうな

186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 00:19:57 ID:e1AlM3Lz
カナリヤ厨って>>170みたいな奴ばっかなの?
マジきめぇ
394名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/27(水) 00:55:56 ID:Q3Ah+iLe
>>391-393
糞糸雀と糞糸雀ヲタがいかに嫌われてるかの図
395名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/28(木) 21:12:54 ID:GXtbfdXS
ここも終わりだな
396名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/28(木) 21:26:42 ID:9xfvZC2U
まだ終わらんさ
連載中の作品がまだある
397名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/28(木) 21:46:22 ID:GXtbfdXS
だぁーれでもいいから何か投稿してくーださいな
398名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/29(金) 14:02:31 ID:SzBjShuw
駄目だこりゃ
399ロックマンJUM:2007/06/30(土) 07:49:11 ID:ZvOsoeLD
JUM「真紅の指輪の力で新しい武器を手に入れたぞ!」

⊃JUMナックル

真紅「すごいわ……JUM」
JUM「ふむふむ……ただ殴るだけじゃなく翠星石の出せるあの太い蔦を引っこ抜いたり
    敵の装備品を奪う『ウェポンシージング』が可能なのか……」
雛苺「翠星石の蔦を素手で引っこ抜けるなんて、すごい力なの〜」
翠星石「シ、シージングって……す、翠星石のハート(ローザミスティカ)も奪えやがるですか?(////////)」
JUM「……奪いたい物が敵の体の一部なら、相手を粉々に粉砕した上で初めて奪えるんだが」
翠星石「ヒィィィィィィ!!!(ガクガクブルブル)」


蒼星石「やあ、久しぶりだね皆」
翠星石「蒼星石!」
蒼星石「もう、僕の言いたい事は分かっているよね? さ、アリスゲームの続きをはじめようか……」
雛苺「うゆ……アリスゲームなんて嫌なの」

JUM「……そう言えば、『ウェポンシージング』って体の外についている
    装備品なら敵を破壊せずに簡単に奪えたっけな」
真紅「JUM?」
JUM「……試してみるか」
蒼星石「え、ちょ……ちょっとJUMくん!?」
JUM「鋏は人(人形)に向ける物ではないと言う事忘れたか? 没収だ!!」

  J U M ナ ッ ク ル ッ ! ! !



┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 

     僕の鋏返してーー!!
           V
         ┌──┐                          ハーハッハッハッハ 
         i二ニニ二i                             V 
         i´ノノノヽ)))       ──.,,   ,,..., |ヽ,,..., |ヽ,,..., |ヽ ,,, |ヽ,---、|ヽ 
          Wlllдiノリつ      _  ヽ.´"'''´ __. "'''__ ´"'''__´"'''´ヽ  ヽ▼ ノ /l ∧  
          ((つ介/          -=≡ `'"`'´\ `'´\ `'´\ `'´\_> ・∀| 〈 |/ノ  
         / /⌒)            ─= と ̄ と ̄ と ̄ と ̄    _つ(0o)
         /_/⌒し           ─=≡ r'´  r'´  r'´  r'´ _ r--__ノ
         し                ─= し   し   し   し'´ し'´
400名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 08:19:57 ID:B+PKTut8
>>399
テラ和んだwww
401雛苺・彼岸編:2007/07/01(日) 14:11:45 ID:aiV6heF9
(いつからだろう・・・)
ふと首の後ろに手をやると大きなオデキができているのに気がつく。
手鏡を取り出し、見てみると醜く汁をたらす吹き出物が鏡に写る。

「あ〜!トモエの首にシュウマイができちゃったのよ〜!」
雛苺が無邪気にはやしたてる。

雛苺はいつまでもケラケラと笑い続ける。

(そうね・・・雛苺は人形だから吹き出物なんか無いのね・・・)

これまで妹のように思っていた雛苺が急に無機質な置物に思えた。
手を伸ばし、吹き出物の表面をゆっくりとなぞると不意に昔の記憶がよみがえる。



巴が小学生のころだった。
祖母は病気で寝たきりになり、いつも仏間に広げられた布団に横たわっていた。

夕方、祖母に食事を運ぶのは巴の仕事だった。
日課の竹刀の素振り100本を終えると、台所に用意された祖母の食事を仏間に運ぶ。

「お婆様、ご飯です」

巴が呼びかけるが反応がない。
いつものことだ、家族に相手にされない不満を孫にぶつけているだけなのだ。
数度よんでも寝ているのか、寝たふりなのか、ピクリとも動かない。

祖母を起こそうと祖母の耳に顔を近づけると、シワシワの首筋にある吹き出物が目に入った。
吹き出物がプチリと音をたててはじけ、中から黄色い汁が垂れてくる。

強烈な険悪感が巴を支配し、巴は祖母の体に馬乗りになって首を絞め付ける。
子供の力だ、いくら絞めてもすぐに死に至ることはない。
意識の無い祖母の口からヒューヒューと息が漏れるのが楽しかった。

「許しておくれ・・・・許しておくれ・・・・」

気がつくと祖母の口が念仏のように許しを求めていた。
巴は立ち上がると、自分の子供部屋に走りこんだ。




気がつくと雛苺を膝の下におさえつけ、首を絞め上げていた。

まるで祖母の首を絞めたあの時のように・・・


巴の手の中でゴキリと音を立てて雛苺の首が砕けた。
402名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/01(日) 21:13:41 ID:JsOaB27A
気持ち悪い
403Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:07:56 ID:kM1KYV0J
>>380の続き

35

本能がそうさせたのか、水銀燈は蒼星石の背中を蹴るのをやめ、地面を足の裏で蹴った。
すると体が前へ進み、驚くほど簡単に首元が鋏から開放される。
瞬時に頭が働き、水銀燈はぱっと鋏から手を離した。間髪いれずに鋏が勢い良く閉じられ、ガチャンと金属音が響く。
鋏は水銀燈の顎のすぐ下をかすめた。
体をうつ伏せに転がし、翼を広げ不恰好な体勢のまま水銀燈は地面から飛び立った。
その直後音波の竜巻が地面を貫く。衝撃波が放射状に広がって、岩や瓦礫を周囲に吹き飛ばしていく。
蒼星石もその犠牲となった。衝撃波に飲み込まれ、大きく体が打ち上げられる。
彼女は後ろの壁に体を強く打ちつけ、そのまま地面に倒れ伏した。

水銀燈は廃墟の町並みを飛び進みながら金糸雀の姿を探した。
逆風に吹かれながら、視界の中を飛ぶように流れていく左右の建物群を目で追う。
「一体どこに…!?」
外から探しだすのは無理だ。既に金糸雀は建物の奥に身を隠しているに違いない。
水銀燈は空中で動きを止めた。
もう一度周囲によく目を凝らしてから、適当に近くの窓から建物の中に入った。
中から見つけ出してやる。そうなれば金糸雀も逃げ場があるまい。
建物の中は、手や足のないがらくたの人形が床に散らばっている。壊れた木製のテーブル、天井には割れたシャンデリア。
「はぁ…はあ」
駆けている最中、水銀燈は急に疲れを感じ、そのまま地面に座った。右膝を立て腕をそこに乗せる。
まさか蒼星石相手にここまで苦戦する羽目になるとは。
まだ戦いは始まったばかり。適度に体は休めておかなければ持たない。
水銀燈は近くに開いた壁穴から外を覗いてみた。誰も見当たらない。
四つん這いのまま部屋の中を移動し、別の壁穴から外を覗いてみる。蒼星石が地面に倒れ伏しているままなのが見えた。気を失っている。
とどめを差しにいきたいが、ここは堪えて金糸雀が先だ。
そう思ったのは、気を失った蒼星石に対し、自分だけでなく金糸雀も手を出そうとしていない点を思ったからだった。
敢えて金糸雀は蒼星石をそのままに放置し、今もどこかで見張り続けている。
狙いは大体見当がつく。倒れている蒼星石の所へ他のドールが来るのを待っている。たとえそれが味方の真紅だったとしても、
蒼星石を心配して助け出そうとするとこの隙を突いてまとめて狙うつもりだ。
負傷者をあえて殺されない - その戦略は人間の戦争における地雷と同じ考え方だ。
地雷には火薬量をあえて人間の命を奪わない、足を吹き飛ばすだけ程度に調整されているものがある。それは地雷の被害者を他の兵士に
助け出さそうとする為だ。負傷者と、それを助け出そうとする者。ダブルで戦力を奪うことが出来る。

水銀燈はしばらくは自分も身を隠したまま蒼星石を見張り続けるのを決めた。
例えば仮に - 姉の翠星石が蒼星石を発見し、助け出そうとしたとする。その二人をまとめて狙おうと金糸雀が動き出し、
攻撃を仕掛けてくれば、必ず位置が特定できる。何処から奴の攻撃が伸びてきたのかここから目に納めればいいのだから。
404Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:14:37 ID:kM1KYV0J
36

廃墟の町並みを猛スピードで飛んでいく真紅の人工精霊に、第七ドールの雪華綺晶は驚きの俊敏さでぴったり後についていた。
建物から建物へと飛び移り、時には蜘蛛の様に壁を張り付く。
ホーリエの行き着く先にあるものは当然 - 真紅だ。
突然、目前のホーリエが方向転換しはじめ、横の建物の窓の中に入り込んでいった。
付けていたことがついにばれたらしい。雪華綺晶は手から強力な蜘蛛の糸をだし、ホーリエの入った窓の中へと付着させた。
すると糸に体が引かれ、凄まじい勢いで窓から建物の中に体が入り込む。その時ホーリエはひび割れた微妙な隙間から建物の外に出ていっていた。
それを追い、雪華綺晶は両手を体の前で交差させながら近くの窓ガラスを体当たりで割り、建物から飛び出した。
割れたガラスがガシャンと音を立てる。
地面に着地してすぐ周囲を見回す。ホーリエを発見するや楽しげに微笑み、蜘蛛の糸を飛ばした。
ホーリエがわずかに横にずれて糸をかわす。蜘蛛の糸はその先の壁に付着した。その糸を縮小させて体を引っ張らせ、
雪華綺晶は一気にホーリエとの距離を詰めると二発目の蜘蛛の糸が放つ。次にホーリエは左にかわした。
一本目の糸を手から切断し、二本目の糸に体を引っ張らせ、それを何度も何度も繰り返してホーリエを着実に追い詰める雪華綺晶。
ついに手が届くところまで迫り、左手を伸ばして人工精霊を捕まえようとしたとき、突然太い蜘蛛の糸が雪華綺晶の
首元に引っ掛かった。「…あらっ?」体がブランコのように振られ、ホーリエは自分を置いてきぼりにして前へと飛んでいった。
雪華綺晶の頭が持ち上げられて、視界がひっくり返る。そのまま落下し後頭部を地面に激突させた。
その際になって、初めて雪華綺晶は蜘蛛の糸がいつの間かに自分を囲うように張られていることに気付いた。
いや、そうなるようにホーリエに"誘導された"のだ。
「ふふふっ」仰向けにぶっ倒れたまま雪華綺晶は一人笑った。「真紅の人工精霊にしてやられちゃったぁ…ふふ」
405Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:25:06 ID:kM1KYV0J
37

真紅と雛苺の二人は依然として従来の物陰から動かないでいた。
「遅いわ…ホーリエ」
真紅は、このフィールドからの逃げ道を作るべく翠星石の位置を人工精霊に探させていた。
「真紅ぅ。さっきより、静かになったなの」
雛苺が言った。数分前はすぐ近くでドール達の激戦があり、二人が隠れた物陰のところまで水銀燈の流れ弾や、壊された建物の
断片が入り込んだりしていた。
「戦いの場が移ったのか、あるいは」真紅はそこで一呼吸入れた。「誰かのローザミスティカが奪われてしまったか」
雛苺の目が潤んだ。「翠星石?蒼星石?金糸雀?みんな無事なの?」
「ごめんなさい。雛苺、今の私からはなんともいえない…」
それから真紅は苛立だしげに付け加えた。「ジュン、あの使えない家来ったら、一体何処で何をしているのかしら」
「ああっ!真紅!」雛苺が突然物陰の外を指差した。真紅が慌ててその手を振り落とす。「大声出さない!全く…」
「でも、でも、真紅。ホーリエがきたの」
「え」
真紅は雛苺が指差した方向に向き直った。
赤色の浮遊物体 - 真紅のホーリエがこちらに飛んできている。
「ホーリエ!良かった…」真紅はホーリエの言葉に耳を貸す。「そう、翠星石の位置は…割と近いわね。え、なんですって?」
突然真紅の顔が険しくなった。「第七ドールに捕まりかけた?あれだけ見つからないようにといったのに!」
真紅は物陰から出た。雛苺の手を引きながら、廃墟の町並みを走る。「雛苺、行くのよ!雪華綺晶が近くにいる。急がないと…」
その刹那、真っ白な影が二人の目の前に降り立った。
有無をいわさず白い棘が伸びてくる。反射的にステッキを前にかざすと、棘が何重にも真紅のステッキに絡み付いた。
そのままステッキが持っていかれそうになるが、真紅はなんとか持ちこたえる。
「…逃げていくつもりですか?ここから。お姉さま」
二人の視線の先にいたのは、予想通り - 雪華綺晶だった。
「あなた方は聞いたはずです。約束の鐘を。それを偽りにするおつもりなの?」
「雪華綺晶…!。」真紅は一度言葉を詰まらせ、それから気を取り直してから答えた。
「約束の鐘なんて、私達はお父様から知らされていない。よりアリスゲームをそれらしく演出する為の、あなたの創り物ではなくて?」
雪華綺晶は可笑しそうに首を傾げて言った。
「"生きることは闘うこと"と、灰色の魔法史みたいに言っといて…アリスゲームをおやめになるの?真紅姉さま」
さらに多くの棘が雪華綺晶の体から伸びてくる。
「くっ」
ステッキが既に絡まれて動かせない真紅は、左手から花弁を放って伸びてくる棘に対抗した。
花弁に包まれた雪華綺晶の棘は、ステッキに絡んだものも含めて、干からびたように細くなり、やがて千切れた。
自由になった真紅が間髪いれず雪華綺晶の前まで飛んでゆきステッキを振りかざす。
その後ろで雛苺も真紅に加勢した。蔓を伸ばし、雪華綺晶を捕らえようとする。
「ふふ」
雪華綺晶はふわりとその場から飛び、バック転しながら後ろの建物の上に飛び乗った。
真紅は雪華綺晶から目を離さないまま雛苺に忠告した。「雛苺、雪華綺晶の棘に触ってはだめよ。幻覚を見せられるわ」
「げんかく…?」雛苺が聞き返し、真紅は苛立ちを覚えながら答えた。「"まぼろし"よ!それも、とっても嫌なまぼろし」
建物の上から、雪華綺晶は二人に声を掛けた。「もしかして、私のことを蜘蛛女とか、白薔薇の女とかって思ってます?」
真紅の口元が一瞬緩んだ。「あら、違ったの?」
「私はローゼンメイデン最後のドールですよ、お姉さま?知っての通り、
モノというものは後に作られれば作られるほど素敵なものになっていくの」
「それはどうかしら」
「そうですとも」
雪華綺晶が言うと、右手を前に伸ばして指先を小刻みに動かしだした。その仕草はまるで操り人形を扱っているそれのようだ。
不意に、真紅は自分の背後に何者かの気配を感じた。いや、後ろだけではない。右からも左からも、上からもする。
焦燥に駆られ、思わず雪華綺晶に背を向け後ろを振り返ってしまった。それと同時に自分達のおかれた状況をたちまちに理解した。
水銀燈の世界に置かれた無数のがらくた人形たちが起き上がり、歩調をあわせながらこちらに進軍してきている。
406Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:35:46 ID:kM1KYV0J
雪華綺晶がこの人形達を操っているに違いない。
人形達のうち数人が木の板をバッド代わりに持って近づいてきたので、真紅は雛苺の手を掴んで宙に飛び上がった。
すると、建物の二階や三階の窓からも人形達が顔を覗かせ、石ころや瓦礫の破片をしきりに投げつけてきた。
空中を浮遊しながら、真紅はそれらをステッキで弾き返した。雛苺の恐怖の叫びが耳をつんざく。
「この数…!」
地面に降り立った彼女は、廃墟の道をぎっしり埋め尽くした人形の軍隊がこちらに走ってくるのを見て毒づいた。
それから、あの生き生きとした動きに違和感を覚える。操られている人形の動きとは思えない。
まさにその時、人形達が会話しているのが真紅の耳に入ってきた。
「足が動かない。右足ががらくただ。部品が足りない」
「私の右足の部品を差し上げる。その代わり、あなたの首を頂戴」
「何をいってるんだお前達。あの健全な人形を見ろ。ローゼンメイデンの真紅と雛苺だってよ。あいつらから部品を奪えばいい!」
「美しい、完璧な人形達なのですね。私にも部品分けてぇ」
がらくた人形たちの会話を聞きながら、二人は戦慄した。
この人形たち、"命を吹きかけられている"。
雪華綺晶はさっきと同じ位置で指先を動かし続けながら、真紅達に言葉を投げかけた。
「私の子(にんぎょう)たちは、"思考"します。その点で、真紅姉さまや水銀燈姉さまの操り人形より遥かに素敵でしょう?」
受け答えしている場合ではなかった。突進してくる人形の大軍に対して、真紅は花弁で迎え撃つ。
花弁を受けた人形達は解体され、崩れ落ちて部品が地面に散らばった。その部品を踏みつけて次の列が押し寄せてくる。
石ころや、なんでも尖ってるものを拾い上げて、しきりに投げつけてくる。
ステッキを振りかざしてそれらを弾き返す。真紅はふと後ろからも人形の大軍がこちらに迫ってきている足音に気付いた。
「真紅!後ろは私に任せてなの!」雛苺が真紅の背後につき、迫り来る人形達に向かって蔓を伸ばした。
蔓に捉われた最前線の人形達はその場で身動きが取れなくなり、全体の動きが詰まった。
「雛苺。任せたのだわ」
二人は背中を合わせて互いの背後を守りながら、押し寄せる人形達に対抗する体勢をとった。
なんとかして雪華綺晶の指の動きを止めなければ。
しかし、そんな余裕は残されていない。
雪華綺晶は中指の第一関節をぎっと上にあげた。
すると人形達の列から一体の人形が飛び出してきた。真紅の頭に飛びつき、その勢いで二人もろとも地面に転倒させる。
真紅の手からステッキがこぼれ落ち、それを奪い取ろうと人形がステッキ手を伸ばす。真紅はとっさに起き上がり、
人形を蹴っ飛ばした。「ホーリエ!」赤色の人工精霊がステッキにもとへ飛びよると、ステッキが独りでに地面から飛び、
真紅の手元に収まる。蹴られた人形は体を震わせながらゆっくりと立ち上がり、細長い瓦礫の破片を手に取った。
「その綺麗な瞳が欲しいんだ」
そういうなり再び真紅に襲い掛かった。剣代わりの破片とステッキがぶつかり合う。
そんな真紅に別の人形達が次から次へと飛び掛り、足、肩、左手にしがみ付いた。
「いっ、いたっ!」
肩に乗った人形が真紅のツインテールの金髪を激しく引っ張っている。「美しい髪。私も欲しい…」
真紅は左手でその人形を鷲づかみにし、思いっきり遠くへ投げ飛ばした。「全く!水銀燈は何を考えてこんな子達を作ったの!?」
「真紅ぅ〜。ヒナもう限界…」
雛苺の蔓で止められる人形の数は既に限界に達していた。大軍が動きを取り戻しつつある。
「応援が必要ね。というより、あの雪華綺晶の手を止められればいいのよ!」
まだまだ飛び掛ってくる人形達をステッキで次々と撃墜しながら真紅が答えた。
「ホーリエ!翠星石に伝えて頂戴!」
真紅は強く念を押すように口調で次の言葉を人工精霊に加えた。「"第七ドールにばれないように"」
人工精霊は一瞬おびえたように震えたのち、廃墟の目立たぬ細い街角の中を進んでいった。
407Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:44:35 ID:kM1KYV0J
38

「おっそいですぅ!」
落ち着かない様子で部屋の中を往復しながら、翠星石は叫んだ。
「ホーリエが、真紅と雛苺がこっちに向かってくるといったのに、なっかなか来ないです!」
「戦いに巻き込まれたのかもしれない」ジュンが言った。
「そんなことくらいとっくのとうに考慮に入れてるですよ!!バカにすんなですチビ人間!」
翠星石がジュンに向き直るなり怒鳴った。「ただ、私達が真紅達を心配してここから動き出したとするですぅ。
そこですれ違いが起こらないかが怖いのです - 結局、下手にここを動かない方がいい。そのもどかしさにイライラしてるんですよ!」
「そ、そうだな」ジュンは翠星石に気圧されながらどうにか答えた。
確かに、"ここを集合地点にする"と、真紅達との取り決めがあった。
心配になったからといってここから動き出せば、結果的にすれ違いが起きて仇となる。
せめて、人工精霊のホーリエが再び何かを伝えてくるのを待ってからの方が -
「ホーリエ!」翠星石がそのタイミングで叫び、ジュンはむせた。
主人がついておらず、人工精霊が単独で飛んできたということはやはり真紅達は戦いに巻き込まれているらしい。
水銀燈か、それとも…。
ホーリエは翠星石に真紅からの伝言を伝えた。

  白薔薇  n-X : 第33628   n-Y : 第38326   n-Z : 第62383 

瞬く間にジュンの顔色が曇った。「なんだそれは?」
翠星石は、このメッセージの意味の持つ意味がまるで国家機密であるかのような顔つきをした。「nのフィールドの…座標です」
「座標?」
「チビ人間には到底理解出来ないでしょうが…」
翠星石は建物の中から身を乗り出し、周囲を見回した。
「よく考えるです。座標の数字は全て3と6と2と8の四つで出来ています。それはある特定の人物のフィールド内でという意味です。
もちろん、今回は水銀燈の奴のフィールドを指してやがるです…そしてこの座標は水銀燈のフィールドの」
翠星石は建物の外に出て、何かを追うように廃墟の中走り出した。「お、おい!」ジュンが慌ててついていく。
「おそこを差しているです!」
翠星石は、右斜め前の高い建物の壁を指差した。
「何もないじゃないか」
「あーもう!人間に説明している場合なんかじゃないのですぅ!時は一刻を争うのですぅ!」
翠星石は如雨露をスィドリームの水で満たし、力いっぱい振ってそれをばら撒いた。
普段より更に強力な図太い世界樹が地面から突き出し、あの壁に向かって一直線にのびていく。
人形の大軍に飲み込まれつつある真紅と雛苺を楽しげに眺めていた雪華綺晶は、突然後ろの壁が穴を開けて崩れだしたので
思わず人形を操る手を止めた。それでも逃げ遅れ、雪華綺晶は崩れ落ちる壁の下敷きとなった。その穴からは翠星石の世界樹の
先端が顔を覗かせ、いまでの伸びつつけている。
真紅達を囲う人形達が突然動きを止め、一人、また一人とバタバタ倒れだした。全てただのがらくたへと戻っていく。
「ふう、翠星石、助かったわ…」
真紅は壁を貫いた世界樹を見上げながら一人呟いた。
ホーリエが先程伝えてきた翠星石の位置は、丁度雪華綺晶が人形を操っていた所の後ろあたりだった。
そこで、ばれないようにホーリエを使って雪華綺晶の位置を翠星石に教え、背後から壁を壊すように仕向けたのだった。
ドールは瓦礫の下敷きになったくらいではジャンクにならないだろう。まして実体がないと言う第七ドールは - それは、
一種の真紅の情けだった。"もう姉妹を失わない"という自分の信念の為の。
408Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:48:59 ID:kM1KYV0J
とにかく、いまは身を隠す僅かな時間が得られた。
「雛苺、来なさい!翠星石と合流するのよ!」
雛苺に呼びかけ、真紅は全速力で走り出した。雛苺が必死についていく。
足元を見ると、水銀燈の黒い羽が幾本も地面に突き刺さっていることに、雛苺は気付いた。彼女の身長からして地面に生える
水銀燈の羽は結構障害物になる。真紅との距離がみるみる内に開いていく。「真紅ぅ。待ってなのぉ」
「早く!何をモタモタしているの!」
遠くから翠星石とジュンの声がした。
「真紅ー!チビ苺ー!こっちです!」
「真紅!雛苺!お前達、無事でよかった」
ジュン!翠星石とずっと一緒にいたのね。一瞬、胸の中にピリと鋭い痛みが走ったような気がしたが、
今はそんなことを気にしている場合ではなかった。「雛苺、急いで!」
振り返ってみると、雛苺の遥か後ろで雪華綺晶が瓦礫の中でもがき、パラパラと破片を動かしているのが遠いながらに見える。
「翠星石!ジュン!隠れて!早く!」
二人は混乱気味に近くの建物の中に入った。真紅も二人を追って同じ入り口から建物の中に入る。
(…雛苺…早く…!)
三人に見守られる中、雛苺はようやくみんなのもとに辿り着くことが出来た。
長い恐怖から開放され、思わずジュンの胸元に飛び込む。
「うわぁっ。」
「ジュン!ジュン!ヒナ怖かったの…本当に、人形達に飲まれそうになったの…」
ジュンは雛苺の頭を不器用に撫でながらなんとかなだめようと言葉を探した。
「えっと…もう大丈夫だよ、真紅に性悪人形もついているから」
「だれが性悪人形ですって!?」
「いたたた…」
「翠星石。ジュン。喧嘩している場合などではないわ」真紅が二人にダメ出しした。「急ぎましょ。ここからもっと離れないと」
409Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 04:57:55 ID:kM1KYV0J
39

壊れた建物の、暗がりの中を真紅達4人は突き進んだ。壊れた木製の椅子や、がらくたの人形達が視界の中を過ぎ去っていく。
ある部屋に入ったところで、真紅は足を止めた。追いついたジュンと翠星石も足を止める。
「ここを拠点にしましょう」
ステッキを地面に突き立て、真紅は言った。「丁度壁穴から見える南の方に、時計の付いた鐘楼が見えるわ。それを目印にして」
雛苺がジュンの胸から飛び降りて、その壁穴から見える鐘楼を確認した。
「はいなのー!」
「余談だけれど、あの鐘楼にあるローマ時計…四時を示すローマ数字の記号が"IIII"になってるわ。
本来、ローマ数字の4はWと表すのが普通。なぜ時計だけあのような4の表し方をするのかは、
色々な説があるけどはっきりとは分かっていないわ」

三人の微妙な視線が真紅に注がれた。

「東の方には」真紅は部屋の中を移動し、別の壁穴から外を慎重に覗き込んだ。「食パンみたいに壁一枚だけの建物があるわね」
「翠星石、このフィールドからの出口をスィドリームの力で作れる?」
「は、はい…スィドリーム」翠星石はそういって、緑色の人工精霊を部屋の中心に放った。
スィドリームは舞うように部屋の中を飛び回ると、中心に灰色の渦のようなものが作られる。これが現実世界への出口だ。
「分かってるわ」
真紅は翠星石の肩に手をおいた。
「あなたはまだ気が進まない。蒼星石が今もどこかで戦っているかもしれないから…
だからこれは、最終手段の逃げ道ということにしましょう?これ以上耐えられないと思ったら、
さっき言った通りの目印を頼りにここへ戻ってきて、現実世界に帰る。いいわね?」
全員がぎこちなく頷いた。
「もっと目印が必要かも」真紅はさらにもう一つの壁穴から外を覗き込んだ。「北には…」
その時、真紅の息が一瞬詰まった。「蒼星石!」
翠星石が飛ぶように真紅の横に移動し、壁穴を覗き込んだ。
「ああ、そんな!!蒼星石!!」
蒼星石は顔を下にして地面に倒れている。そのそばに金色の鋏が落ちていた。
「気を失っているのかも」真紅が言った。「あるいは…」
「いや、そんな、いやですぅ!!!蒼星石ーー!!」翠星石は泣き叫びながら、蒼星石を目掛けて建物の外へと走り出した。
「翠星石、待ちなさい!」
真紅が止めに入ったが、翠星石は聞く耳持たずに廃墟の町並みを進んでいった。
「真紅、一人で行かせていいのかよ!?」後ろからジュンが聞いてきた。
「いいわけないでしょう!?」真紅が答えた。「水銀燈に狙われるかも」
「蒼星石ー!」翠星石は尚も叫びながら蒼星石に近づいていく。
「だめ、目立ち過ぎている。誰かに狙われてしまうわ!」
全員の注意が翠星石に注がれていたまさにその時、雪華綺晶の白い棘がさっき来た道の方向から伸びてきた。
にわかに生存本能が働き、ジュンは身を壁に寄せた。真紅は頭を低くしてかわしている。
ちなみに、雛苺はその身長の低さからかわすまでもないようだった。
雪華綺晶は三人の頭上を飛び過ぎて行くと、空中でUターンしながら地面に降り立った。
「今宵は、長い」
彼女の目前では、スィドリームの開けた夢の扉が今も渦を巻いている。
「中には…可哀想…永遠となるドールも」
そう言うなり、雪華綺晶は夢の扉に右手を突き落とすように入れた。
拒むようにして、夢の扉が一瞬バリっと電流のようなものを出したが、その後はたちまち形を崩しはじめた。
数秒もすると、それは闇に溶け込むようにして完全に消えた。

扉が閉じられた。

絶望感の波が三人に押し寄せる。そして、扉を開けられる力を持つ翠星石もまた自分達の元を離れていってしまっている。
雪華綺晶は三人を見上げ、満足げな笑みを見せた。
「可哀想…可哀想な駒鳥さんたち…だァれが殺した、駒鳥さん…」
その虚ろな金色の瞳に三人が写る。「そォれはわたし…わたしなの…」
410Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/02(月) 05:00:31 ID:kM1KYV0J
その真上では、建物の影に身を潜めた金糸雀が、バイオリンを片手に翠星石を見据えていた。
「ふっふっふ…予想通り。双子の泣き虫翠星石のご登場」
蒼星石が気を失って倒れているのはローザミスティカを奪う大いなるチャンスだったが、
これは更に大きなチャンスへの糸口になると思った。放って置けば、こうして翠星石が隙だらけの状態で躍り出てくる訳だ。
だが、まだだ。これすらも"更なる大きなチャンスへの糸口"に過ぎない。自分の最終目的は水銀燈を仕留めることだった。
今ここで翠星石を襲いに行けば、何処かしらに身を隠した水銀燈に居場所がばれ、攻撃される。
翠星石よりも、蒼星石よりも、水銀燈は強敵だ - だからこそ完璧に隙を突いて倒したい。

本当にそれが理由で今自分は攻撃を控えているのだろうか - 一瞬金糸雀にはそんな考えが頭をよぎった。
薔薇水晶との戦いで、金糸雀は翠星石に守られると同時に、翠星石を守ろうとしていた。
二人は、一緒になって薔薇水晶と戦っていた。そんな仲間意識が、翠星石への攻撃を躊躇させているのだろうか。
しかし、そんな躊躇はいつかは捨てなければアリスが完成しないことを金糸雀は知っていた。
今はとりあえず、水銀燈を狙うことだけを考えていればいい。
すぐにでも攻撃に移れる体制で、金糸雀は揃った双子の庭師を見つめた。
水銀燈が誘惑に負けてこの双子を襲いに行けば、自分は後ろから楽してズルしてローザミスティカを奪うことが出来る。
この私の破壊のシンフォニーでね。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 06:48:18 ID:uXtQW5Yq
キム死ね
412名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 08:37:08 ID:EGiPPXu8
蒼い子はタヌキ寝入りに3000うにゅー
413名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 12:31:23 ID:SKoLixpb
この連載が最後の砦か
414名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 16:25:16 ID:BEvQwpUa
じゃあ俺の低レベルな小説でも投下しようかな
415名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 17:12:29 ID:isgwpH/s
じゃあ俺も俺も
416名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/02(月) 17:32:32 ID:LS9bjZ6X
枯れ木も山の賑わいって言うしなw
417ロックマンJUM:2007/07/02(月) 18:03:19 ID:RKbfx0+K
自分は……ちょっとやりすぎたかも知れんからしばらくROMっとくわ。
>>403-410の続きに期待sage
418名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/03(火) 14:17:15 ID:/rGRHjmC
何か物凄く重い話を思いついたんだけどどうしよう…
蒼星石メイン何だけど…
419名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/03(火) 17:48:23 ID:3RB6qjCv
どうでもいい
420名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/03(火) 21:01:47 ID:XdIn3KF1
>>418
なにも言わずに投下が一応のマナーみたいなもん
自信が無いなら、またいつか自信がついたらおいで
421名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/03(火) 22:47:03 ID:YL4PotJa
      .ィ/~~~' 、
    、_/ /  ̄`ヽ}
    ,》@ i(从_从))
    ||ヽ|| ゚ -゚ノ| || 糞スレ認定なのだわ
    || 〈iミ''介ミi〉||
    ≦ ノ,ノハヽ、≧
    テ ` -v v-' テ
            ぶりっ
       川
       人  
      (;:;:;:;:)
     (;:;:;:u:;)
     (;:u;:;::;:;:;)
422名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/04(水) 01:08:56 ID:UsFib+zA
>>418
イラネ
423415:2007/07/04(水) 01:40:54 ID:zdEbQYKB
桜田ジュンはうんざりしていた。風邪を引いたというのに人形たちが喧しかったからだ。
静かにしてくれ、と言って追い払ったところで、それなりの時間が過ぎていて、もっとうんざりした。
日頃から時間を無駄にしているという自覚は薄々あったが、体調の悪さもあってか余計に思考が後ろ向

きになる。
気が滅入る。まさにその表現が適当であった。だから彼は、モニターの中から兎が現れたことも正直ど

うでも良かった。

「あー…兎、兎ね…羊じゃないのか…なんか手足が見える…」
うわごとのようにつぶやく。実際、うわごとなのだけど。
そのままぐにゃりと人間のような姿に変化し、枕元に立たれた。
「おやおや少年、ずいぶんと弱ってるようですね。何体ものローゼンメイデンに囲まれて疲労困憊です

か。
 まあ無理もないですがね。君が試みた事はいまだかつて無かったことなのですから」
うるさい、とジュンはつぶやいた。だが人形たちと喋っているよりは疲れそうにないので話に付き合う

ことにした。
投げやりといわれればそれまでだ。頭にかかった靄を取り除けるわけでなし、全てがどうでもいい。
「たとえば」
男に問いかける。本当に実現するかどうかはどうでもいい、単なる戯言なんだ、と添えて。
「7体のドール全てと契約する事は可能なんだろうか。なんとか。」
兎男は爆笑していた。なんというか、堪え切るのに失敗して決壊したダムのようだった。
「それを禁止している道理は無いと一番よく知ってるだろうに今更?今更そんなことを?」
くつくつと笑う兎男は何の拍子だか兎顔と人間顔にチェンジする。笑う兎はだかご利益がありそうなイ

メージだ。
「しかし」と、兎男は続ける。
「例えばそれがローゼンにより認められていないとしても、その場でどうするかは君と人形が決めるこ

とですよ。
 仮に7人と契約しても、そこに意味があるかどうかなんてのは本人くらいしか決めることが出来ない


 ちょっとした自己満足で終わるのか、それ以外の何かが存在するのか…あとは神のみぞ知る、ですか

ね」
兎の笑い声に特に嫌悪感は抱かなかった。それが当然の物だとあっさり受け入れていた。
所詮は与太話である。僕は盛大にため息をついて、ゆっくりと全身から力を抜いた。
これは悪い夢だと思って忘れることにした。兎男は笑いながらモニターの中に去っていった。


うとうとしていたら、モニター前に黒い羽が舞っている。ああ、これは、ゆめかうつつかまぼろしか―


424名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/04(水) 11:06:22 ID:xtBKp6AM
あげ
425名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/04(水) 16:13:55 ID:UsFib+zA

                / ̄ ̄\
              /  ヽ_  .\
              ( ●)( ●)  |     ____
              (__人__)      |     /      \
              l` ⌒´    |  / ─    ─  \
             . {         |/  (●)  ( ●)   \
               {       / |      (__人__)      |
          ,-、   ヽ     ノ、\    ` ⌒´     ,/_
         / ノ/ ̄/ ` ー ─ '/><  ` ー─ ' ┌、 ヽ  ヽ,
        /  L_         ̄  /           _l__( { r-、 .ト
           _,,二)     /            〔― ‐} Ll  | l) )
           >_,フ      /               }二 コ\   Li‐'
        __,,,i‐ノ     l              └―イ   ヽ |
                    l                   i   ヽl

             2007年 7月4日 良スレにて
426ロックマンJUM:2007/07/04(水) 23:46:23 ID:yQATLgRn
ROMると言ったがスマン、やっぱり我慢できそうに無い!


ローゼン「……アリスゲームが進んでいないようだ」
ラプラス「それはまあ、あの桜田JUMという少年に夢中のようですからwwwwww
ローゼン「何故だ。なぜあのひきこもり少年があんなにモテる!?」
ラプラス「今の彼は巷で人気のゼロですからwwwwwwてかお前もひきこもりwwwwwwww」
ローゼン「分からん! ドMだのヒッフッハだのおべんとうだのどうりょくろだの言われる
      あのキャラクターがあそこまでもてるなどとあってはならん事だ!」
ラプラス「ワロタwwwwwwそれなんてゼロスレ?wwwwwwww」
ローゼン「大体これでは何の為に、彼のプレイしていたゲームに呪いをかけて
      彼をゼロに変えてしまったのか意味が無い!」
ラプラス「おいwwwwwそんな事してたのかよwwwww最低だなwwwwwww」

ローゼン「ともかくだ! このままでは私のアリスが誕生しない!」
ラプラス「いい年して夢見てんなよwwwwwwwwwww」
ローゼン「アリスアリスアリスアリスアリスアリス………ハッ!! いい事思いついた!!」
ラプラス「うはwwwwwメンヘラキモスwwwwwwwwwww」

           |
       \  __  /
       _ (m) _ピコーン
          |ミ|
        /  `´  \  

        (・∀・)  <アリスを作れないのなら自分がアリスになればいいじゃない!
        と  つ
        /  \
        (_)(_)    

ラプラス「wwwwwwwその発想は無かったwwwwwwwww」
ローゼン「しかしベースが思いつかない……少なくともあのゼロとか言うのを上回っている奴じゃないと……あ!!」

      そ う だ ! 『 オ メ ガ ゼ ロ 』 に な れ ば い い ん だ ! !

ラプラス「ちょwwwwwwそれ最悪の選択肢wwwwwwwwっうぇwwwうぇwwww」


数日後……

             /|,---、/l
             | ヽ▽ / /__
            (|・∀・ <_/<ワレハアリスナリ! ハーッハッハッハ!
            と    つ
            / /\ \
            (__)  (__)

ラプラス「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


俺は逃げん、叩くなら叩くがよい!





427426:2007/07/05(木) 07:23:18 ID:Udejalz4
朝起きて自分のSSを見てみた。
……メンヘラはむしろ俺のほうか……自重し損ないスマソorz
428415:2007/07/05(木) 15:23:34 ID:E4GZvnV0
熱が上がってきたのか、視界がチリチリとスパークしている。無数のエネルギーが浮遊しているのを目

視している。
「……あら、真紅がいないじゃないの」
眼鏡をかけてないので正確に見えないし見る気もしないが、声からして間違いなく水銀灯だろう。
「下にいるんじゃないか…ハッキリ行って今の僕は見てのとおり風邪だから騒がないでくれ」
「はぁ?馬鹿じゃないの?」
アリスゲームだかマリスゲームだかしらないが、あの戦闘を今やられてはたまらない。
もちろん水銀灯がそんな僕の懇願を聞くとは思わなかったが、言うだけ言っておいて机の上の水を取る


時計を見ると、どうやら姉ちゃんが帰ってくるまではまだまだ時間がありそうだ。
こういう辛い時間はいつだって、一分一秒が水銀ように重たい。
「ジャンクね。そうやってめぐみたいに寝てれば良い…その間に真紅たちを壊してあげる。フフフ…」
「そうか…今は3人とも下でくんくんを見てるから全員いるんじゃないか?」
とたんに目の前の彼女が動きを止めた。おい、まさかこいつまで。
「…嘘よ。今日はくんくんは放送されてないもの」
大当たりだった。もうお前ら全員、くんくんメイデンとかに改名しろよ。
「DVDだよ…だから放送日じゃなくても見れるんだ。見逃したやつとか、繰り返しな」
「そ、そんな!何度も見れるだなんて…」
やれやれ、とため息をついてパソコンのスイッチを入れ、起動が終了したら動画を立ち上げた。
DVDから直接吸い出してエンコードしたので画質はそこそこだと自負している。
「ほら、これをこうすれば…こんな感じで好きな回が見れるから。それでも見ててくれ」
「こんなに…ああ……じょ、冗談じゃないわ。私はローゼンメイデンの第一…」
「わかった。じゃあ哀れな僕に情けをかけると思ってどうかくんくんを見て静かにしてくれ」
すっかり真紅や翠星石の処理で手馴れてきてる自分にうんざりした。
何か水銀灯がブツブツ言っているけど細かく聞くつもりはない。
僕にとって今最も必要なのは、穏やかな睡眠と水と解熱剤だ。
時々、僕は自分が本当に遠くまで来てしまったんだと実感する。
とくに人形相手に普通に会話している、そんな時にだ。

――――ところで僕は寝たはずなんだけど、何でnのフィールドにいるんだっけ。
うあ、幽霊が見える。すっげぇ透明。舞い散る雪。雪雪雪。
429415:2007/07/05(木) 15:25:05 ID:E4GZvnV0
>>427
日本のことわざに、沈黙は金、雄弁は銀っていうのがあるんだってさ。
俺たちは…銅?
430426:2007/07/05(木) 17:43:03 ID:Udejalz4
>>429
気になってことわざの意味調べてみた。
……成程、確かにそうかもしれない
431名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/06(金) 17:09:19 ID:MqeYhQ7f
はい、毎度毎度散々叩かれて、もう来ないとか言っていた俺がまた来ましたよ。

光に包まれた空間・・・夢か・・・現実か。区別すらつかない。
私は・・・私は槐。どこだ・・・わからない。なにをしていたのか・・・何だったか・・・そうだアリスゲームだ。私はアリスゲームをしていた。
何かを忘れている・・・
「薔薇水晶!!」槐は飛び起きた。
「薔薇水晶!!薔薇水晶!どこにいるんだ!薔薇水晶!」
ここはドールショップの中。私はショップの寝室のベッドに寝かされていた。
せき止められたダムが決壊したかのように記憶が流れ込んできた。まるで・・・誰かに・・・意図的に戻されているかのように・・・
「薔薇水晶!!」
槐は急いで寝室を飛び出し、家中を探した。

そうだ、私はわが師、「ローゼン」の人形・・・ローゼンメイデンを越えるために・・・

「おい白崎!白崎はどこだ!どこにいるんだ白崎!」返事はない。

あのシリーズを越えるために私は薔薇水晶、わが最高傑作をアリスゲームに介入させたのだ。

槐は一通り家を探したあと、店舗の方を探し始めた。薄暗いドールショップ。
「薔薇水晶!!ここにいたのか!」
彼女はポツンと、人形を作る作業机の上に座らされていた。まるで・・・誰かの手によってそこに置かれたかのように・・・
目に薔薇の眼帯・・・白いドレスに・・・長い髪・・・

そして私のドール、薔薇水晶はやがてローゼンの人形達を蹴散らし・・・ローザミスティカを全て手に入れたのだ。

「薔薇水晶!おい!薔薇水晶!大丈夫か!?薔薇水晶!」槐は彼女の肩を掴んで必死に揺すった。

全てのローザミスティカを手に入れた薔薇水晶は・・・・・・・・・・・・・・・・

「薔薇水晶!」目を覚ました。
「お・・・父さま・・・?」
「あぁ薔薇水晶!私だ。槐だよ」
「お父様!」彼女は槐に抱き付いた。
「よしよし、御免よ薔薇水晶」槐はいたわるように彼女の頭を撫でた。
「私は・・・私は・・・」
「ああ、もういいんだよ。もう・・・君はここにこうして・・・私の前に居てくれる。私は・・・それだけでもう十分だ」
「お父様・・・」
「もういい。これからは二人で暮らそう」
「二人・・・で?」
「そうだ二人だ。もう戦いも何も無い。二人で平和に暮らすんだ。」
槐はそう言うと、売り場の方へ行き、店の入り口のドアの札を「Open」から「Close」へと裏返した。
「ここの時代からはもう離れよう。どんな時代がいい?言ってごらん?薔薇水晶」
槐は、はりきりながら身支度を始めた。売り場のドール達を片付けていく。
「お父様・・・それはできません」
「なんだと?」槐は振り返った。彼女は作業場の入り口のカーテンの前に立っている・・・
眼帯に・・・長い髪・・・白いドレス・・・白?
432名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/06(金) 20:51:20 ID:MqeYhQ7f
続き投下しようと思いましたが、
その前に>>410さんのSSを拝読させていただきました。
・・・・完全に投下する気が失せましたwいやはや恥ずかしいですw
>>410さんの続きに期待
433 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:49:50 ID:j0amzIdy
天蓋から降りる白いレースの下で、柏葉巴のセーラー服は、白絹の波間に乱れていた。
その大きなベッドには、もう一人、オディールとかいう金髪の少女が、一糸まとわぬ姿で眠っていた。
巴は身を捩って寝台から這い出し、これもまた雪のように白い絨毯の上に転げ落ちて、苦悶の声を上げた。
と、ちょうど彼女の目の前、つまりベッド脇に、薔薇の彫金のある革張りの鞄が二つ置かれていた。
白い調度品に統一された寝室で、その焦げ茶色の皮革は異様な存在感を放っていた。
「Vous me semblez vous levez du pied gauche. Venez donc!」
物音に、オディールが上体を起こしていた。巴は彼女の言葉に応じず、険しい顔で訊いた。
「私に何をしたの?」
「アナタの、夢を見せて貰ったわ」
まだどこか夢見心地そうに、緑の瞳をあらぬ方へ向けて、そう答えた。やはり日本語を話せたのだ。
巴の目付きに厳しさが増したが、オディールは構わず、裸身に乳白色のローブをまとい、寝室を出ようとした。
「待って。貴女、何者なの?」
「オディール・フォッセー。ネジを巻いただけの女」
オディールが長い後ろ髪をローブの背中から抜き払うと、深い薔薇の香りが巴の鼻を突いた。
謎めいていて、芝居掛かった自己紹介だった。
「さあ、トモエ、朝食にしましょう。その子たちを起こして頂戴」
オディールは二つの革張りの鞄を、眠そうな目で指して、今度こそ寝室から出て行った。
その子たちとは、もちろん、あの双子の人形たちの事だ。この鞄は人形のベッドでもあるのだろう。
「貴女たち、いつまで寝た振りをしてるの」
巴が不機嫌な声を浴びせると、二つの鞄は揃ってもぞりと開き、隙間から人形たちが顔を覗かせた。
「翠星石たちは朝のまどろみを優雅に楽しんでいただけですぅ」
「意味が分からない」
「人形は、持ち主に起こされるものなんだよ。おはよう、巴」
「持ち主……そうね。おはよう、蒼星石、翠星石」
巴がオディールの気配を追うと、すぐダイニングに行き着いた。食台には空色のテーブルリネンが掛けられ、
その上に苺のジャムを塗ったバゲットと、ほのかにバニラの香るカフェオレが、四セット並んでいた。
まさかオディールは一人暮らしではなかろうが、彼女の家族は既に在宅でないらしかった。
背の高い柱時計は、そのとき9時17分を指していた。
巴は大人しく席に着き、真向かいでバゲットを囓るオディールを観察した。素肌にローブ一枚の少女は、
眠そうな目で巴を見詰め返しつつも、口は朝食を優先していた。
その代わり、同じ食卓を囲む人形たちが、巴に話し掛けた。
「ほら、おチビ。さっさと食いやがれですぅ。朝はしっかり食べないと力が出ないですよ」
「それとも、ご飯とお味噌汁でも期待していたのかい」
人形たちが口を聞くだけでなく、食事まで摂る事に対し、巴は殊更に反応しなかった。
434 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:51:27 ID:j0amzIdy
第5話 語り部 die Erzählerin

黄金の銀杏が輝く窓の景観は、しかし日本のそれとは異なり、煤けた石造りのアパートが立ち並んでいた。
おりしも、10時を知らせる鐘の音が街に響き渡り、巴は仏頂面で窓辺を離れた。
暖炉のある赤い絨毯の居間は、昨夜、巴が最初に訪れた部屋だが、そのときとはやや雰囲気を変えていた。
オディールは光沢のある絹のブラウスに、あの薔薇十字とペリカンが刺繍された黒いネクタイを締め、
象牙色のカーディガンを羽織って安楽椅子に落ち着き、男装の少女人形、蒼星石と何か話し込んでいた。
「C'est le moment. On prend une branche d'Yggdrasil de Japon, car il faut cultiver notre jardin.
Alors je voudrais entrer par ton rêve, Odile」
「Naturellement... Je ferai ce que je peux pour toi et dire que nos jours se terminont vite!」
「Mais j'te dirai jamais adieu. Merci, ma chère.」
所在なげに佇む巴のスカートを、緑のロングドレスの人形、翠星石が引っ張った。
「蒼星石たちは、おチビを国に返してやる相談をしてるです。しゃーねーから翠星石たちも、
お前に付いて行ってやるですよ。まったく、七面倒なコトですぅ」
「本当に、私に付いて来ていいの?」
即座にそんな問いを返され、翠星石はまず目を丸くし、それから気まずそうにそっぽを向いた。
「契約は絶対です。そんな事、オディールだって承知してるです」
その翠星石の声は当然オディールにも聞こえたはずで、彼女は巴を呼んで、一つ要求した。
「トモエ。もう一度、私にその指輪をよく見せて頂戴」
巴は警戒の表情を見せたが、ただ眠そうな目で見詰めてくるオディールに対し、結局、左手を差し出した。
オディールは別に眠いのではなく、ただ単にそういう顔に生まれ付いただけのようだ。
差し出された巴の手を両手で包み、薔薇の意匠のある指輪をしげしげと見詰めた。
「この指輪はきっとお祖母様のだわ。お祖母様と一緒に埋葬されてしまった契約の指輪。
それがきっと、アナタに託されたのだわ」
オディールの口から、彼女と人形たちとを結ぶ接点が明らかにされた。まあ、巴は全く無関心そうだったが。
蒼星石が、あの大鋏を手にしていた。巴の視線の動きよりも速く、人形は得物でオディールの首筋を薙いだ。
巴の手を取っていたオディールの両手から力が抜け、少女の体は安楽椅子の背もたれに崩れた。
「大丈夫だよ、意識の葉を落としただけだから。眠っているだけさ」
一瞬の出来事の後、蒼星石は低い声で巴に告げた。確かめるまでもなく、その黄金の鋏は、
オディールを髪の毛一本たりとも傷付けていなかった。巴がこの技を見るのは二度目だった。
ただ、蒼星石の行動は余りに不意打ち的で、彼女の姉は表情を曇らせた。
「何やってるですか、蒼星石。おチビに薔薇乙女の力を見せてやらねばならんですのに」
「そうだったね。ごめん、翠星石」
互いに目を合わさず会話を交わす姉妹人形を、巴は冷めた目で見下ろしていた。
435 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:53:09 ID:j0amzIdy
翠星石は巴に薔薇乙女の力を見せねばならないと言ったが、そのような決まり事でもあるのだろうか。
双子の姉があの如雨露を出現させ、両手で掲げると、その周囲を緑の人工精霊が飛び回った。
「スィドリーム、私の如雨露を満たしておくれ、甘ぁいお水で満たしておくれ」
例の不思議な呪文によって如雨露に光を満たし、それを眠るオディールの頭上に振りまいた。
如雨露の先から溢れた光のシャワーは、少女に降り掛かる事なく中空に波紋を重ね、垂直に水面を広げた。
こうして現れた空間の歪みには、巴も経験した事のある、一種独特の輝きが満ちていた。
「9秒前の白?」
「これはオディールの夢への扉です。そこいらの入り口とはモノが違うですぅ」
緑の人形は自慢げに胸を張ったが、人間の少女にはその違いが分からなかったようだ。
「要するに、またnのフィールドを通るんでしょう?」
「そう、君の国への近道を選べるからね。そこで僕らは、オディールの夢を辿らせて貰う事にした」
蒼星石は説明しながら、彼女自身を収めるための革張りの鞄を開き、その中に屈んだ。
翠星石も同じように、開いた鞄の中ににちょこんと座った。
するとどういう仕掛けか、二つの鞄はそれぞれ人形を乗せたまま、絨毯から浮かび上がったのだった。
「ちゃんと付いて来るですよ、おチビ」
双子は空飛ぶ鞄に乗って、白い光を漏らす異界への門に飛び込んで行ってしまった。
巴は思案顔のまま、安楽椅子のオディールに一瞥くれてから、後に続いた。
扉の向こうは果たして白い虚空だったが、翠星石が如雨露を振るう事によって、景色らしいものが生じた。
頭上で闇夜が渦巻き、白かった天は細切れになって、星や雲へと姿を変えた。
そんな暗い空に架かった鉛色の虹は、よく見ると、曲がりくねった巨大な老樹だった。
また、地面というには曖昧な白い無限平面上にも、淡い微光を帯びた瑞木が若葉を開かせていた。
無彩色の世界に寂然と佇むその樹下に、人形の姉妹を乗せた鞄はそれぞれ、音もなく降りた。
「まさか、こんな形で、あの子の心の樹に触れる事になるとはね」
蒼星石は感慨深そうに枝振りを見上げ、翠星石はほっそりとした幹を手で撫でた。
「こんな形で良かったです。翠星石は病気の子供なんぞ見たくもねえです」
口の悪い人形は、そこで、はっと周りを見回した。付いて来るよう言ったのに、巴の姿がなかった。
「おチビ、いるなら姿を現しやがれです! 指輪を媒介しないと、お前から力を汲み上げられないです!」
喚き声が響き渡ると、どこからともなく立ち上った霞が凝集して、億劫そうな顔の少女となった。
「今度は何」
「オディールに、日本に住んでた頃の夢を見て貰うです」
「人の心の樹を手入れして、夢を導くのが、僕たち夢の庭師の力なんだ。そして、今は君の力でもある」
しかし、巴は俯いたまま反応せず、姉妹はどうしたものかと顔を見合わせた。
「いいですか。お前はもっと勉強して、翠星石たちのマスターとしての自覚というものを……って、おチビ!?」
翠星石は目を剥いた。あの巴が、突然口元を両手で被い、しゃがみ込んで嗚咽を始めたのだ。
436 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:54:15 ID:j0amzIdy
「どうしたですか? もしかして翠星石、何かお前の気に障るようなこと言ったですか?
そっ、そうです! すっかり言うのを忘れてたですけど、お前の連れだったら心配いらないですよ?
ボケボケメガネも生意気坊主も、この翠星石がちゃぁんと責任を持って元の世界へ帰してやったですぅ!」
そう早口で捲し立てられても、巴は細い肩を震わせ啜り泣くばかりだった。
翠星石も涙目を妹に向けて助けを求めたが、蒼星石はただ頭を振って両手を広げた。
「落ち着きなよ。僕らが巴の樹に負担を掛け過ぎているのかも知れない」
淡白な反応ながら、蒼星石とて巴の異変を気に掛けていない訳ではなかった。
翠星石は一つ唸った後、再びその手の中に如雨露を出現させた。
「この水、お前の樹に還すです。ちょっとは楽になるはずですぅ」
と、金色の容器を傾けようとしたところ、ようやく巴が血の気のない顔を上げ、翠星石の行動を押し止めた。
「ごめんなさい、もう平気」
「平気じゃねーです。お前がへばってたら、近道する意味ないです」
「大丈夫よ、本当に……。ただちょっと、貴女たちの力に途惑っただけなの」
「意外だね。僕らの力が、君程の人間を驚かせてしまうなんて」
蒼星石自身、その疑問が的外れだと分かっていながら、敢えて冗談めかしたのだろう。
先日、共に体験した魔物との戦いに比べれば、巴を驚かせる事など何もなかったはずだ。
「玄夢通感法……夢を操る術は、私が何よりも求めていた力。だけど、私にはもう必要のない力」
姉妹はまた首を傾げ、顔を見合わせた。ただ、巴の言わんとすることが理解できずとも、
少女が漂わせる絶望感は間違いなく伝わっていた。
「あー、話はお前が落ち着いてから、ゆっくり聞いてやるです。だから、もう人の夢の中で泣くなです」
「君に必要とされないのは寂しいけど、僕らは君を必要としているんだ。そのことは忘れないで欲しい」
そう心配する人形たちに対し、巴は小さく頷いて応えた。何とも頼り甲斐のない様子だった。
双子は「とっとと済ませちまうです」「そうだね」と、白い地面に立つ若木に向き直った。
彼女らが「心の樹」と呼んだそれは、オディールの精神が具現化したものなのだろう。
鐘状に葉を垂らす樹形はマロニエを思わせたが、葉の形状は銀杏のような扇形という不思議な存在だった。
その中のある一枚の葉を選び、翠星石と蒼星石は、人工精霊スィドリームとレンピカで照らした。
葉脈に光が流れ、再び眠りの世界に変化が訪れた。夜空を横切る長大な老木が、目に見える早さで、
新たな枝を伸ばし始めた。その枝に光り輝く果実がなり、果実は熟して、世界に夜明けをもたらした。そして──。
「シバサキ、また近所の子供を中に入れたの?」
振り向くと、金髪の幼女が、ガーデンテーブルでデミタスを片手に、眠そうな目で闖入者たちを見ていた。
オディール・フォッセーだった。夢見る少女は、純白のドレスに包まれた幼い日の姿で現れたのだ。
「あら、貴女たち……。さあ、座って。シバサキがおいしいエスプレッソを淹れてくれるわ」
巴と人形たちが立つ場所は、いつの間にか、薄紅の薔薇が咲き乱れるガラス張りの温室となっていた。
花とコーヒーの香気と、セピア色の夕焼けが、生暖かく肌にまとわり付いてきた。
437 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:55:23 ID:j0amzIdy
もちろん巴たちは、オディールに会うために彼女の夢の中に来たのではない。ただ通り過ぎるだけだ。
双子は同席の誘いに応じず、鞄を浮上させてガラスの外を見渡した。温室は大きな洋館の一角であるようだ。
「第573317世界、この夢で正解みたいです。シバサキというのはきっと、オディールの家来の日本人ですぅ」
「いい温室だね」
「私は好きじゃないわ。だって、私を閉じ込めるための鳥かごだもの」
オディールの緑の瞳が、じっと人形たちを見据えていた。蒼星石は無視できず、童女に声を掛けた。
「僕らはもう行くよ。全てが終わったら、また会おう」
「それに、ここからはサン・シュルピスの鐘が聞こえないの」
「そうだね」
「行くですよ、蒼星石。寝言に付き合うなです」
人形の姉妹がその場を離れると、夢見るオディールは何事もなかったかのように、デミタスを口に運んでいた。
巴は開きかけた口を閉ざし、人形たちを追って、温室と隣接した洋館に向かった。
垣根の間を抜けて館内に入ると、大理石張りの暗い廊下が果てしなく、非現実的に伸びていた。
そこで、翠星石が左側に並ぶドアを、蒼星石が右側のを、手前から次々に開け放っていた。
「何をしてるの」
「おチビも手伝うです。これぐらいの家なら、古い鏡の一枚や二枚あるはずです」
「オディールが忘れていなければ、だけどね」
やはり、この屋敷はオディールのイメージによって形成されており、実際のものとは構造も異なるのだろう。
食堂、応接室、書斎、客間、でたらめな順番で現れる部屋を調べていくうちに、翠星石があっと声を上げた。
子供部屋だろうか、フェルト人形に埋もれた小さなベッドの上に、またオディールがいた。
その姿は、元の世界のように巴と同じ年頃で、桜色のパフスリーブワンピースの胸元を赤いリボンで飾っていた。
目当ての鏡はなかったが、双子の人形は、どこからか響くオルゴールの旋律に誘われるように部屋に入った。
「思い出したわ。私は今、夢を見ているのね」
彼女は、童話の動物や老妖精たちが並ぶ窓辺に目をやったまま、身を縮めて膝を抱いた。
「ちょうどよかった。この屋敷に、出口として十分な鏡はないかい」
「ありがとう、トモエ。その子たちを連れて行ってくれて」
「オディール?」
どういう訳か、金髪の少女は蒼星石に目もくれず、傍らにあった赤い鼻の道化師人形を抱き寄せた。
「緑色のは姦しい。青いのはお説教。実に耳障り。不愉快。コリンヌの形見じゃなかったら窓から捨てていたわ。
だけれど、日本から来た貴女に引き取って貰うのなら、きっと彼女も許してくれるのだわ」
「まだ寝言を言ってるですか。行くですよ、蒼星石」
翠星石は最後まで聞かず、妹のケープを引っ張った。蒼星石は視線をのろのろと動かして、肯いた。
突然の告白に動揺を隠せない双子を静観していた巴は、淡々と語るオディールに注意を払っていなかった。
「だから、お礼に一つ教えて上げようかしら。ジュンを殺したのはトモエ、アナタなのよ」
438 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:56:28 ID:j0amzIdy
今、何と言ったのか。巴が振り向くと、はっきりと、夢を見ているはずの少女と目があった。
「覚えていないという顔ね。かわいそうなジュンは、アナタに追い詰められたおかげで死んでしまったの。
アナタが復讐するべき仇はトモエ、アナタ自身よ。罪の忘却は、より大きな罪なのだわ」
これは本当に寝言なのか。いや、そもそも、オディール本人の言葉なのか。巴は疑わしげに眉を顰めた。
「あの子が桜田君の事を知ってるはずないわ。貴女、誰?」
「オディール・フォッセー。アナタの夢を盗み見た女」
金髪の少女は、道化師人形を抱きしめ、恍惚とした緑の瞳で、天井の煌びやかな照明を見上げていた。
オルゴールの奏でるワルツの中、黒髪の少女の童顔は、狂気を孕んだ泥眼の面に変化していった。
「貴女を殺した事は忘れないわ」
ゆっくりとベッドの方へ踏み出した巴に、様子を窺っていた翠星石が鞄から飛び上がった。
「落ち着けです! オディールは誰かに操られてるに決まってるです!」
「誰だろうと関係ない。許さない」
「まあ、恐い。アナタ、根生いの人殺しなのね」
嘲るオディールの前に立ち、巴はおもむろに右手を上げた。が、その手刀を、大鋏が横合いから遮った。
「そう、許しちゃいけない。敵は確実に仕留めるべきだよ、マスター」
「敵……?」
蒼星石は得物をぐるりと回して構え直し、オッドアイの焦点を、賑わしい子供部屋のそこかしこに巡らせた。
巴の人形たちは何かに気付いたようだ。翠星石が素っ頓狂な声を上げた。
「どうなってるですか! ここ、第301991世界ですぅ!」
「どうやら、間違った扉を開いてしまったみたいだね」
「アナタたちを海に堕として溺れさせるなんて、簡単なことなのよ」
ベッドの上にいる何者かは、首を不自然な角度に傾げ、くぐもった笑いを上げた。
それは既にオディールの声色ではなかった。
「でも、それじゃつまんないわ。私が見たいのは、さっきのトモエみたいな顔なのよ。
蒼星石はノリが悪くてちっとも面白くないの。興醒めよ。だからトモエ、次は二人きりで遊びましょ」
言い終えた途端、金の毛髪に被われた頭部が胴体から滑り落ち、ごろりと木の床を転がった。
ベッドに残された少女の体の、首が載っていた部分には、滑らかな空洞がぽっかり暗い口を覗かせていた。
床に転がった首は、よく見れば、のっぺりとしたマヌカン人形の顔をしていた。
「人形、ですぅ」
翠星石が確かめるように呟くと、ようやく巴は構えを解き、オディールだと思われていたそれを調べた。
ワンピースに包まれた体を無造作に引っ張り上げたところ、プラスチックの四肢が服の中から抜け落ち、
フェルト人形たちがひしめくベッドの上に散らばった。薄気味悪い光景だったが、それだけではなかった。
巴は、散乱したいくつかのパーツに、長い金色の糸が絡まっているのを見付けた。毛髪にしては不自然な──。
しかし手を伸ばした途端、それは幻のように空気に溶けて消滅してしまった。
439 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:57:36 ID:j0amzIdy
「どうしたんだい、巴。また顔色が悪いよ」
「そりゃ、いきなりバラバラ死体になったらビビりもするですぅ」
巴が踵を返すと、蒼星石自身、人形のくせに青ざめた顔をしており、翠星石も体を小刻みに震わせていた。
「大丈夫。こういう手合いは、相手にしたら負けよ」
「そうかも知れない、ね。とにかく、帰り道を探そう。僕らは今、半分迷子みたいなものだから」
それが具体的にどのような状況であるかを、蒼星石は語らなかったが、空間の異変は一目瞭然だった。
まず、彼女らが半開きにしたままのドアの外側は、大理石張りの廊下だったはずだが、
いつの間にかただの真っ暗闇しか見えず、フィールドがねじ曲がった事を示していた。
また、童話のキャラクターに飾られた窓の景色は、花香る中庭の日溜まりかと思いきや、
ガラス一枚隔てた壁に描かれた風景画──いや、幼児のクレヨン画と化していた。
結局のところ、出口は一つだった。双子は鞄に乗り込んで、目配せし合い、暗闇の中へと飛んだ。
巴は一度だけ、オディールとは似ても似つかぬマネキンの残骸を顧み、後に続いた。
そこはちょうど、"9秒前の白"を黒に置換したとでもいうべき全面的な暗黒だったが、
巴と人形たちの姿は、いずこからともなく照らされて浮かび上がり、互いを視認する事ができた。
そしてあのウサギ男も、まるで舞台でスポットライトを浴びたように卒然と、彼女らの前方に出現した。
今日は燕尾服でめかし込み、長い両耳の間に紳士帽を乗せ、銀細工のある杖を携えていた。
「ラプラスの魔!」
「どこから湧いて出やがったですか、このウサギ野郎が……、ですぅ!」
「しっ。霊安室ではお静かに。さもないと、この方が目を覚まされてしまいます」
落ち着いた男声が、色めき立つ人形たちをその場に押し止めた。
翠星石が途中で罵声を詰まらせたのは、怪人の背後にある場違いなパイプベッドに気付いたからだろう。
その上には、顔面を白布に隠された灰色の髪の──恐らくは老女が、仰向けに横たわっていた。
「誰」
「初めまして、お嬢さん。私は人呼んで、ラプラスの魔。あるいは渾沌から生まれた不可思議な子、
あるいは太陽と月の子、あるいはメルクリウスの蛇、あるいは脱兎、あるいはプロテウス、あるいは……」
「貴方の事じゃないわ」
正面から見詰めてくる巴に対し、ラプラスの魔なる存在は、尊大な感じに胸を反らして嘯いた。
「はてさて。お嬢様方がこうしてこの方の夢枕に立っておられるのは、ご縁があっての事では」
「何が夢枕です。く、くたばった人間が、夢を見るわけないです」
翠星石が、巴の陰からおどおどと反駁した。髭を扱くウサギ面は、無表情のようでも半笑いのようでもあった。
「夢は現、現は夢。いやはや、是非は道によって賢し。夢のトリビアは、夢の庭師が一番ご存じのはず」
「はぁ? 蒼星石、コイツに何か言ってやるです!」
姉からの指名を受け、蒼い服の人形はやれやれと肩を竦めて、ラプラスの魔に話し掛けた。
「こんな頻繁に君と会うなんて、珍しいね。もしかして、お父様が近くに?」
440 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 21:58:48 ID:j0amzIdy
「イグノラビムス。あの方は、アリスとしかお会いになりません」
「分かってるさ。そして、もう一つ分かってる事がある。アリスはもうじき生まれるんだ」
「お前ら何の話をしてるです?」
「なあに、トリビァルな世間話です。そう、とかくこの世はトリビァル。今、貴女方の近くにいて、
貴女方がお会いになるべき方を、貴女方はお忘れのご様子。これはいけません。実にいけません」
ラプラスの魔は訳の分からないご託を並べながら、くるりと背を向け、杖で足元を小突いた。
肩越しに巴たちを見やるウサギの赤い目は、やはり笑っているようにしか見えなかった。
「世界には無数の穴があり、扉はそれを塞いでいます。目に見えない扉にご注意を。
彼らは狡賢く隠れているから……。それではご機嫌よう、お嬢様方。お帰りはウサギの穴から」
再び、怪人が杖で足元を突くと、巴たちの足元に光の穴が開き、彼女らを重力で吸い込んだ。
もちろん各々、体を浮遊させて抗ったが、そのときにはもう別の世界に落ちていた。いや──。
「元の世界に戻ったですか」
そこは夕日の茜色に染まった病室だった。無機質な壁材と薬品の臭いが、その事を明確に知らしめていた。
パイプベッドには灰色の髪の老女が眠っており、傍らの医療機械が彼女の生命活動を監視していた。
カーテンの降りた窓際には、薄紅の薔薇束を差した花瓶と共に、居眠りする老人がまた一人。
いずれも日本人らしい顔立ちだった。蒼星石は事態を察して、皮肉っぽく笑った。
「なるほど。癪だけど、あのウサギに借りが出来たみたいだ」
巴はリノリウムの上にそっと着地し、再度周囲を睥睨してから、苦々しげな表情で前髪を掻き上げた。
「バッドトリップって、こんな感じかしら」
「まあ、いい旅とは言えなかったね」
「お前ら上手い事言ってないで、とっととずらかるです」
予定外の事態に遭遇したものの、結果的には、巴を帰国させる事に成功したのだ。
ベッドの上で末期を迎えようとしている人物について、彼女らは敢えて触れようとしなかった。
「後は私の足で帰るわ。二人とも鞄に入って」
「ちぃ、いきなりマスター風吹かせやがっ……丁重に扱うですぅ」
巴は重厚な鞄を両手に提げ、病室から出るためにスライド式のドアを、お行儀良く足で開いた。
すると、廊下で立ち話をしていた西日のシルエットが二つ、ぴくりと震えて巴の方を向いた。
中年の女性看護師と、男子高校生のようだった。巴はぺこりと頭を下げて、その場を立ち去ろうとした。
「ちょっ、やあ、巴ちゃん。奇遇だね、こんなところで!」
慌てて声を掛けてきた高校生は、誰あろう山本少年だった。腕はもう癒えたのか、ギプスから解放されていた。
彼の存在は、この病院が巴の家に近いという可能性を示したが、少々気味の悪い偶然だった。
「お怪我、良くなったんですね。何かご用ですか」
「あ、ありがとう。用っていうか、いや、君もジュン君の事を探してるんでしょ。確認したい事があるんだ」
ジュンの名に、少女の足がぴたりと揃った。もっとも、山本と巴とを結ぶ接点はそれ以外になかった。
441 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 22:00:02 ID:j0amzIdy
まだ戸惑い顔の看護師が、山本に「ジュン君の彼女?」と尋ね、「たぶん」という返答を得ていた。
それについて、巴は口を挿まず聞き流し、「何か分かったんですか」と山本の正面に立った。
「いや、分かったというか、草笛みつって女の子の事、何か聞いたことある?」
「知りません」
「だよね、やっぱり。その、つまり、ジュン君が入院したとき、草笛みつって子が付き添ってたみたいで、
俺、その話を聞いたとき、君の事なんじゃないかなって思ったんだけど」
「私、桜田君の彼女じゃありませんから」
巴は淡々と返答したが、二つ目のはやはり不本意だったのか、言い終えた後、山本から目を逸らした。
ちょうどその視線の先に、先程の入院患者のネームプレートが掲示されており、柴崎マツとあった。
シバサキ。その名前に巴が目を見張った事を、山本は見逃さなかった。
「そういえば、君、どうしてまた柴崎さんの病室に? というか、いつの間に?」
「そうそうアナタ、ホント、びっくりしたわよ」
看護師にまで詰め寄られ、巴は小さく溜め息をつき、両手の鞄を軽く持ち上げた。
「友達のお祖母様です。大切にされてたお人形を見せたいって頼まれて。黙って入ってごめんなさい」
「あら、そうだったの。こっちこそ、気付かなくってごめんなさいねえ」
「人形って、ああ、そうだったんだ。あ、いや、引き留めちゃってごめんね」
人形と聞いた途端、急に及び腰になった山本に、巴はそれ以上の興味を示さなかった。
「いえ、別に。失礼します」
「またいらっしゃい、柴崎のお婆ちゃんも喜ぶわ」
看護師は自分の娘ぐらいの中学生を、特に訝しまなかったようだ。山本はただ、「はあ」とだけ繰り返していた。
巴は病院を出て、年寄りたちの並ぶバス停で現在地を確認した。やはり隣街だった。
列の後尾に付き、よれよれになった制服をまさぐったが──結局、鞄を持ち直して、徒歩で帰宅したのだった。
そして、斜陽が街の向こうに消えゆく中、少女は短くも不可思議な旅を終え、立派な門構えの自宅に到着した。
しかし緊張を解くにはまだ早かった。巴は、門前の寄付きに立つ和装の婦人と顔を合わせ、頬を強ばらせた。
「ただいま帰りました、お母様」
「来なさい。お話があります」
巴の母は娘を無感動に迎え、松の前庭を抜けて、武家屋敷の右手にある稽古場へと連れ従えた。
幅五間、奥行き六間、木造瓦葺きのその建造物は、表に看板を掲げれば剣道場そのものである。
摩利支天を奉る神座の前で、親子は向かい合って危座した。
「柏葉の名に泥を塗りましたね」
開口一番、母親は娘を正面から見据え、冷厳な声音で叱責した。巴は床すれすれまで頭を垂れ、弁解した。
「申し訳ありません、電話もできなくて。やましい事は何一つ」
「巴さん、勘違いしてはいけません。あなたが家を外にするくらいで、私は目くじらを立てるつもりはありません。
あなたは柏葉の娘。許されざるべきは、無様にも敵に背を向ける行為です」
442 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 22:01:09 ID:j0amzIdy
柏葉巴の母は、娘に常識やら一般論などを示さなかった。尋常の家庭とは違うのだ。
「それは、いえ、決着が付かなかっただけです。次こそは」
「逃げ帰って来たのですね」
断じられ、巴は鼻頭から汗を滴らせた。開放された戸口を吹き抜ける秋風は、蟋蟀の痩せた声を含ませていた。
巴の母は、床に突かれた娘の手を見下ろし、それから娘の傍らに二つ並べ置かれた鞄を眺めやった。
「感心しました。式も満足に扱えない身で、そのような物の怪と契ったのですか」
「浅はかでした」
雑作もなく見抜かれたが、そもそも巴は人形たちを隠す気などなさそうだった。ちなみに鞄の中身は、
柏葉親子の会話が届いていないのか、静穏を保っていた。
「皮肉を言ったのではありません。いかなる方術を用いようと、結果、敵を滅殺できれば良いのです。
それを浅薄と恥じるのは、増長しているか、志がないからです。だからあなたは業を仕遂げられないのです」
徐々に、俯いた巴の顔から表情が消えていった。彼女には母に報告すべき事があった。
「お母様。私には柏葉の名よりも大事な、戦う理由がありました。でも、彼は、もうこの世にいませんでした」
巴が、桜田ジュンという少年の死について話した事を、母は極めて酷薄に理解した。
「やはりそんな事でしたか。遅かれ早かれ、あの子は定めから逃げ出すと思っていました」
「妖魔に連れ去られたんです」
「ならば、隠り世から奪い返せば良いでしょう。なぜ逃げ帰って来たのです」
だが、もし母の言った通り、ジュンがこの世界を拒絶したのだとしたら、巴の戦いに意味はあるのだろうか。
偽オディールに絡んでいたあの"黄金の糸"は、ジュンと関係しているのか。──巴は首を横に振った。
「逃げ帰ったんじゃありません。彼に会う前に、着替えに戻っただけです」
「そうですか。まあ、良しとしましょう。巴さん、お夕飯の支度をしますから、身を清めていらっしゃい」
母はそう説教を締めて、稽古場を後にした。夜の帳が下りた庭に、虫の声が一層大きく響いていた。
「おチビが根暗な理由が壮絶に分かったですぅ」
「さすが、僕らのマスターのお母様」
鞄から感嘆の声が漏れてきた。やはりこの人形どもは、しっかり聞き耳を立てていたのだ。
翌朝、巴はアイロン掛けした制服を纏い、黒い帆布の防具袋を竹刀袋で担いで家を出た。空はやや曇っていた。
平日であり、同じ制服の生徒たちも登校の途にあったが、彼女にはその流れに逆らって行くべき場所があった。
桜田家である。先日、同家の邸宅からnのフィールドに飛び込んだ際、通学鞄を置いたままにしていたからだ。
「のりの性格なら、巴の消息をお母様に尋ねてそうなのに、お母様はのりの事を何も言ってなかったね。
電話も繋がらないし……、のりの身に、何も起きていなければいいんだけど」
「翠星石はちゃんと送り返したです。後の事は知ったこっちゃねーです」
防具袋に詰め込んだ人形たちの囁きに構わず、巴は住宅街の坂を上って、桜田家に面する通りに出た。
そこで彼女は、切れ長な目をすっと細めた。向かいから歩いて来る、黒衣のシスターと出くわしたのだ。
柿崎もまた巴に気付き、微笑を浮かべた。この日の尼僧は、巴と同じ制服の女生徒を従えていた。
443 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 22:02:14 ID:j0amzIdy
巴と柿崎は、申し合わせたように桜田家の門前で立ち止まり、対峙した。
「おはよう、巴ちゃん。相変わらず元気そうね」
「おかげさまで。貴女たち、桜田君に何か用なの」
それは、柿崎と共に現れた女生徒に対する詰問でもあった。その明るい髪色の少女は、むっと巴に問い返した。
「委員長さんこそ、何日も学校休んで何してたの」
「桑田さんには関係ないわ。早く学校に行ったら」
「何それ、人が心配して上げたのに。……じゃ、めぐさん。ジュン君ちはここだから、私はこれで」
巴やジュンの同級生らしい女生徒は、尼僧に一礼して、巴の来た道を早足で去って行った。
「ありがとう、由奈ちゃん。助かったわー」
尼僧は何の目的があって女生徒に近付いたのか。訊かれるより早く、柿崎の方からぺらぺらと喋り始めた。
「やっぱり噂を当てにしちゃダメね。由奈ちゃん、結局、ジュン君の秘密は何も知らないみたい」
「桜田君と付き合ってるって噂?」
「だってあの子、ジュン君を病院送りにしたとき一緒にいたんだもの。でも、やっぱり巴ちゃんだけが頼りね」
「ふざけないで」
「大まじめよ。山田君から聞いたんだけど、巴ちゃんも、薔薇屋敷の執事さんに目を付けたんでしょ?
ここのご近所だし、せっかくだから一緒に行ってみない? 学校はサボっちゃって」
柿崎が訳の分からない妄想を膨らませ、巴に手を差し伸べてきた。巴は更に細めた目で尼僧を睨んだ。
この狂人の意図はともかく、もうこれ以上、ジュンの手掛かりから逃げ出す事はできなかった。
「妙な真似したら、即、斬るわ」
「上等」
尼僧は幅広の袖を振って身を翻し、鼻歌を歌いながら歩き出した。桜田家の用事はもういいらしかった。
防具袋に潜む蒼星石が「金糸雀のマスターかい」と尋ね、巴は「あの人形は連れてないわ」と答えた。
ただし、柿崎の左手薬指には、まだあの薔薇の指輪が嵌められたままだった。
桜田家から歩いて数分、薔薇屋敷は住宅街を一望できる小高い丘の上に建っていた。
屋敷と呼ばれるだけあって、荘厳な佇まいを持つ大邸宅の来歴を、柿崎が妙に詳しく解説した。
「結菱伯爵邸。通称、薔薇屋敷。ジョサイア・コンドル設計による英国式洋館で、県の重要文化財。
戦前から幽霊屋敷として有名で、GHQに接収されたときも進駐軍の将兵数名が館内で行方不明になり、
サンフランシスコ講和条約を待たずして結菱家に返還されたという、曰く付きの物件よ」
「結菱?」
「そうそう。鉛筆からイージス艦まで造ってる、あの結菱さん」
そんな人物の住居を気軽に訪問できるのか、と巴は尋ねなかった。既に彼女らは木香薔薇のアーチを潜り、
重厚な玄関戸の前に立っていたからである。警備員どころか、住人の気配すらなかった。
「こんにちは。お宅は悪霊に取り憑かれています。今なら無料でお祓いして差し上げますよー?」
柿崎がライオンのノッカーをゴンゴン鳴らしながら家人を呼ぶと、意外とあっさり扉は開かれた。
444 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 22:04:52 ID:j0amzIdy
枢木の軋む音と共に、玄関ホールから夜の冷気が屋外に漏れ出した。唐突に、男の声が響いた。
「素晴らしい。ローゼンメイデンのマスターが二人も訪れるとは。なんと素晴らしい」
奥から車椅子の老人が現れ、客人たちを喝采した。ローゼンメイデン──あの人形たちの事を言っているのか。
しかし巴は、車椅子を押す、禿頭の使用人に目を向けた。柴崎マツの病室にいた老人に間違いなかった。
柿崎が言った"薔薇屋敷の執事さんに目を付けた"とは、つまりそういう事だったのだ。
「初めまして。魔術師、結菱一葉さん。御当主自らお出迎え下さるとは光栄ね」
「街の尼さんではないようだな。バチカンの祓魔師かね」
「十字軍聖歌隊長、桑田由奈よ。ゆーなって呼んでね。こっちは隊員の柏葉巴ちゃん」
柿崎がまた何か戯言を口走っていたが、巴は無視して防具袋を大理石の床に下ろし、その口を開けた。
翠星石と蒼星石は、ようやく窮屈な袋から解放され、ぷはーと深呼吸し、互いの着衣の乱れを直し合った。
そんな双子の人形に、結菱老人は目を細めた。
「JadesternとLapislazulisternだね。若い頃、アントワープの美術館で君たちの色褪せた肖像に見惚れたが、
実際の鮮やかさといったらどうだ。筆舌に尽くしがたい。実に素晴らしい」
結菱は手袋に包んだ手を叩いて喜んだ。この屋敷はよく冷えるらしく、襟巻きや膝掛けも欠かせないようだ。
「おっと、失礼。ご用件はあちらで覗うとしよう。来たまえ」
老執事は、主人の体の一部であるが如く、命じられるまでもなく車椅子を反転させた。
生き人形にも驚いた様子を見せなかったり、魔術師と呼ばれる人物に仕えているだけの事はある。
応接室に通され、アールヌーボー風の優雅なソファに腰を落ち着けた巴は、待ちかねたように口を開いた。
「迷子の男の子を捜しています。桜田ジュン君といいます」
「ああ、ジュン君ねえ」
反応したのは、清潔な白手袋で茶を汲む執事だった。柿崎が「ほらね」と巴に微笑み掛けた。
「知っているのか、柴崎」
「はい、旦那様。ご近所のお子様でございますよ。昔、よくオディール様と遊ばれていた」
柴崎。オディール。最早これらの名前に肝を潰す必要はなかったが、それでも蒼星石は確かめた。
「やっぱり、オディールはここに住んでいたのかい」
「オディールは私の孫娘だよ。君も、あれのご友人かな」
結菱が答え、続けて問うた。見知らぬ家で大人しくしている翠星石と違い、蒼星石はどこか挑発的だった。
「オディールは、僕らの前マスターの孫娘さ」
「ほう、やはりあの女は……」
結菱は考え込むように、両手を組んで口元を隠した。柿崎が巴に首を傾げて見せたが、また無視された。
執事がテーブルに紅茶を並べ終えたのを見計らって、結菱は「オディールを起こしてきなさい」と命じた。
あまりに何気ない口調だったため、人形たちの目を見開かせるのにやや時間を要した。
「何言ってるです! オディールがここにいるはずないです!」
「すまんね、あれは朝が弱くてね。だが、君たちの来訪を、誰よりも待ち望んでいたのだよ」
445 ◆qrN8aillXg :2007/07/06(金) 22:07:00 ID:j0amzIdy
執事が姿を消して間もなく異変は生じた。地鳴りと共に応接室の調度がガタガタと揺れ始めたのだ。
「あら、地震みたいね」
柿崎がのほほんと茶を楽しみ続けるのを横目に、双子は椅子から飛び上がった。
「いいえ、違うですよ!」
「玄関の扉が開いたときに、別の入り口が開いたんだ。またこのやり口かい、雛苺?」
「そうよ。この館の扉が開いたときから、みんなはもう、ヒナのフィールドの中なのよ」
結菱の車椅子の陰から、金髪を大きなピンクのリボンで飾った童女が、ひょこりと姿を現した。
同じくピンク色の二段パフ袖ワンピースに、裾からリネンのドロワーズを覗かせるファンシーなドレス。
柿崎は六体目のローゼンメイデンの出現と、その奇縁に、苦笑いしながらティーカップを傾けた。
「貴女、桜田君がどこにいるか知ってるの?」
巴が竹刀袋を手に席を立った。童女人形は「うゆ?」と小首を傾げ、円らな緑の瞳で巴を見上げた。
「ヒナそんな子知らないの。迷子なら、お巡りさんに聞いたらいいのよ」
「さあ、オディール、楽しいお遊戯の時間だよ」
結菱が左の手袋を外すと、その薬指の指輪が薄桃色の閃光を放った。すると部屋の扉から、あるいは窓から、
どこかで見たような童話のキャラクター人形たちが一斉に突入してきた。
蒼星石は大鋏を、翠星石は如雨露を手に取り、背中合わせに立って、玩具の軍隊に身構えた。
「このチビチビ! ここでアリスゲームをおっ始めるつもりですか!」
「そうよ、七つのローザ・ミスティカが一つになるのよ。みんなで楽しく遊ぶのよ!」
ピンクの人形は結菱の膝の上によじ登り、無邪気な笑い声を上げた。

オディール・フォッセーが意識を取り戻したのは、サン・シュルピス教会の鐘の音のせいだった。
窓の外の銀杏並木は、曇り空にくすんでいた。
安楽椅子から身を起こして居間の掛け時計を見上げると、異な事に、長針が真上を向いていなかった。
(続く)

次回予告:
「私はオディール。全裸でないと眠れない女」
「貴女、本当に本物?」
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」
「意味が分からない」
「次回、金髪家庭教師と剣道少女、過激な個人授業、先生が教えてあ・げ・る」
「教えてほしくない」
「ねえトゥモエ、私たちの会話、ちょっとシュールすぎないかしら」
「いいえ、次回の内容に触れたのは貴女が初めてよ」
第6話 家庭教師 die Gouvernante
446名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/06(金) 23:11:09 ID:+PbVxh5B
>>432
投下しなきゃレベルあがんないぜー?
続きwktk
447415:2007/07/07(土) 00:13:09 ID:Y7B0RSte
「始めましてミーディアム。私は雪華綺晶。」
目の前に現れた幽霊は名前からしてどう考えてもローゼンメイデン一味です。
「本当にありがとうございました…じゃなくて、ここは何処だよ…寝てたはずなんだけど」
「私は誰……じゃなくて、ここはnのフィールド…私の生きる世界…」
いやな予感がする。ということはアリスゲームを仕掛けてくるのが、こういう手合いの通例だ。
「別に私、アリスゲームをするつもりはありませんのよ。」
「じゃあ返してくれ。僕ぁもう風邪で頭が痛くて…・・・あれ?」
痛みがない。いつもの体調にすっかり戻っている。どうしてしまったのだろうか?
不思議そうな顔をしている僕に目の前のキラヤマトさんだか何かが答えを教えてきた。
何でも今の自分は夢の中にいるようなものだから体調の変化は大きなは意味を成さないらしい。
まるでお見通しである。

「ってことは目覚めたら頭痛が戻ってくるのか…まあいいや。用事が無いなら返してくれ。」
「ダメですわ。だって返さなければ真紅たちは動けなくなるんですもの」
「お前、アリスゲームするつもりは無いって言ってたろ」
「だからミーディアムとこうしているのですわ。こうすれば永遠に目覚めないまま…」
「そうか?翠星石とかが探しに来ると思うが…」
「……あ」
うっかりしてた、という顔だ。どこか抜けてるのはローゼンメイデンの仕様なんだろうか?
「というか、お前もアリスを目指してるのか?やっぱり。ミーディアムは?」
兎の与太話と手も足も出ない現状を見れば質問の一つでも投げたくなる。
ついでに、始めて見るローゼンメイデンに興味がわいたのも確かだ。
「あなたは自分のおかれてる立場がわかってるのですか?」
にべもない返事だ。しかし、彼女の目は本気で、なおかつ険しいものだった。
「正直いって実感が無い。僕の体調が最悪だしね…さらに今日はいろいろあって、何が何だか」
「哀れな方ですわね。…当然、私もアリスを目指していますわ。」
「ふぅん…お前も真紅も水銀灯も他のローゼンメイデンも、アリスになってどうするんだろうな?」
「もちろんお父様に愛してもらうのです。完璧な少女となりお父様の下で幸福に過ごす…」
うっとりした顔だ。少々イっちゃってるあたり、他の姉妹よりもヤバいイメージを受ける。
「…で、それから?」
「え?」
「だから、それから。お父様に会いたい気持ちは少し理解できるけど、それからどーすんのさ」
「え…だから…幸せに…」
「…そうだな、そうだよな。悪かったよ」
時々ローゼンのことがよくわからなくなる。次々と娘たちを生み出し争わせる意味は何なのだろう?
別にやることもないので僕は横になって考えた。雪華綺晶は僕のことを、じっと見ている。
ローゼンメイデンたちについて。それが彼女がアクションをとるまでの僕のテーマだ。
だけど結局僕にはわからなかった。まだ中学生で引きこもりの僕には、わからないことが多すぎる。
そしてまた僕は寝ていた。

【END:A】
「――ンくん?ジュンくーん。大丈夫?熱さがった?」
姉ちゃんの声がする。どうやら帰ってきたらしく、僕は本当に寝ていたようだ。
目が覚めたら、少しは頭がスッキリとしていた。あれが夢か現か、それを確かめる術は無い。
「姉ちゃんお帰り…ちょっと楽になった…」
とても嬉しそうな姉は、やれ飲み物だやれ食事だ着替えだと色々言ってきた。
それを適当に受け流して体を起こすと、部屋の中に黒い羽を見つけた。
パソコンはクンクンの再生が終わった状態で放置されている。
「あれは夢じゃないのか…」
トイレに向かう途中で真紅や雛苺、翠星石と出会った。僕はいつもの日常に戻った。
448415:2007/07/07(土) 00:16:23 ID:Y7B0RSte
こう、枯れ木も山の賑わいって事で見逃してください。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/07(土) 00:18:51 ID:Ff/SrGFD
>>448
普通に面白かったぞ
続きに期待
450426:2007/07/07(土) 00:34:28 ID:i4sspB7p
>>415
面白かった……いやはや、目が覚めた。
俺もいつまでもロックマンネタに甘んじている訳にはイカンな。
楽しんでもらえるかどうかは分からんが、気合を入れて書いてみるよ。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/07(土) 17:06:47 ID:FcSuOqj7
今更ですがローゼンメイデンが女子高生だったら
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1183782567/

452名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/07(土) 21:25:03 ID:fFhO2I6n
>>450
ロックマンネタは俺は好きだ
453415:2007/07/07(土) 22:51:20 ID:4bzvBuwS
じゃあ続けてみた。どこまで続くか知らない。以下、続き。
---

空が薄暗い。時計を見ると綺麗に伸びた針が、真っ直ぐに6時を教えてくれた。
人形たちはいまだにカバンという、彼女たちだけの夜の帳の中にいる。
姉ちゃんもそろそろ起きてくるころだろうか?2度寝をする気には、昨日の今日ではならなかった。

テレビではニュースキャスターとアナウンサーが、ニュースと世間の流行を教えてくれる。
僕はこういう時間にコンビニに行くのは危険だと経験則で知っている。朝練だ。
仕方ないので紅茶を淹れることにしたが、は真紅にしごかれてすっかりと手馴れてきたのが悲しい。
ついでに起きてることに決めたのでトーストを焼く。姉ちゃんが起きたら食わせようと思う。

――カタン
「おは……よ、う?」
いいタイミングだと思い音がするので振り向くと、そこには雪華綺晶がいた。
睡眠時間はどうしたんだよ薔薇乙女さん。
正直なところ心臓に悪い。ついでに悪夢が再びとなれば色々とまずい。
僕は必死に考えて、何とか時間を稼ぐことに専念することに決めた。
「おはようございます。」
「無駄に丁寧なのが嫌だな。どうしたんだよ。まだ他の姉妹は寝てるぞ」
「愚問ですわ。だからこそ貴方を連れ去るに決まってるじゃないですか」
「だが断る。紅茶でもどうだ?」
「いりませんわ」
チーン。
「トーストは?今焼けた。」
「…別に、結構です」
微妙にトースターを見た。これはいける。姉ちゃんの手口をそのまま利用させてもらおう。
「ジャム?マーマレード?ハチミツ?マーガリンでも塗るか?」
拒否権なしで話を進める。今は一分一秒でも稼がなければならない。
つーか真紅たち。この姉妹を見習って早く起きてくれ。ついでに下に降りてきてくれ。
「はちみつ。マーガリンも塗ったのを…」
あ、食いついた。丁寧に満遍なく塗って差し出してみる。つーか食えるのかよ、幽霊なのに。
「もぐもぐ」
食ってるし。幽霊の意味ねぇー…だが、これはいい。ついでに自分も腹が減ったので食べる。
既に2枚目はセット済みだ。次のパンが焼きあがるまで3分。この時間が第二ラウンドだ。

さくさくとパンが彼女に食い尽くされ、いらないと言っておきながら紅茶まで飲んだ。
ストレートは気に食わなかったのか渋い顔をしたので、牛乳を注いでミルクティーにしてあげた。
ふふん、お子様め。僕もまだ子供だけど。
「…いま馬鹿にしましたか?」
「まさか。気のせいじゃないかな?」
彼女はジト目でこっちを見て紅茶を飲んでいる。気をつけねば冗談じゃなく、死んでしまう。
話題を必死に探すがうまい話が見つからない。考えろ、考えろ考えろ……うん無理だ。

沈黙が痛く、パンはまだ焼きあがらず、僕は拉致監禁される。もうだめだ。
そう思ったときにドアノブが回った。やった、助かった!
「おはようジュン君…今日は早いんだね……あれ、その子は?」
助からなかった!っていうか姉ちゃんかよ!さらに状況悪化だよ!いやだがしかし時間は稼げた。
「雪華綺晶って言って真紅の姉妹なんだってさ。で、早く目が覚めたら先に朝ごはんを食べてて…」
「あらあらそうなの。早起きさんね〜…」
拝啓お姉さま。貴方の弟は、その早起きさんに永眠させられそうです。

チーン。パンが焼けた。第2ラウンド終了である。
姉ちゃんとの会話で拉致されそうなのをを誤魔化しつつ、何だかんだ言いながら朝食をとった。
これが効いたのか、何だかんだで満足したらしく、雪華綺晶は帰っていった。姉ちゃんすげえ…
「じゃあ行ってくるね。その、ひょっとして…」
「…いってらっしゃい。」
「……うん。いってきます」
454415:2007/07/07(土) 22:52:22 ID:4bzvBuwS
【END:B】
「おはようジュン。私にも紅茶を入れて頂戴。」
「……ああ。」
「ジュンが元気ないのー?」
「しけた面するんじゃねぇです。ちゃっちゃとのりが作った朝ごはんを出すのですぅ。」
「……ハァ」
僕は朝食を3人分用意し、今朝、ありのままに起こった出来事を話した。
なんと一番末っ子の可能性があるらしい。
そのままテレビで時間をつぶしてコンビニに出かける。困ったものだと途方にくれる。
ガラス越しに彼女がいた気がした。笑い声が耳について離れない。
今度は夕飯にでも来い、と言って家路に着いた。

そして僕は再び日常へ帰還した。
455名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/07(土) 23:05:24 ID:Ff/SrGFD
やばいきらきーに萌えた
続きが気になる
456名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 00:26:43 ID:cAsEord+
これは良いきらきー
457415:2007/07/09(月) 23:40:12 ID:YPPriSm4
へいよ、続きでござい。とくに整合性とか考えてないので気にしたら負けさ。
-----

夜12時。我が家の人形たちが眠っている時間。草木が眠るには少し早いが、人間も眠っている。
だがひきこもりである僕は違う。朝早く起きる必要性が無いから、夜に急いで眠る必要も無い。

長いことパソコンを娯楽のために使っていると、ふと遊びつくしてやることのなくなる瞬間がある。
一瞬の虚ろとでも言うべきか。とにかく、ひきこもってから何度目かの唐突な興味の喪失であった。
「はー……」
電源を落としてキッチンへ向かう。ここのところ、すっかりと飲むものまで同じになっていた。
何か変化をつけようと冷蔵庫を漁るが、牛乳と酢とミネラルウォーターが見つかる程度。
ゴソゴソと贈答品が置いてある棚を見ると、封を切っていない箱が見つかった。
缶詰か何かか?と箱を開けるとそこにはカルピスがある。今日の飲み物は、これで決まりだ。
冷凍庫を開いて製氷皿にある氷を幾つかコップに入れ、原液を少し注ぎ水で薄めて掻き混ぜる。

カラン、と小気味良い音を立てて氷が崩れる。テレビでは海外の通信販売を放送している。
「氷が勿体無いが…いい感じにくだらなくなってきたのでそろそろ寝よう。」
自分に言い聞かせるように独り言。そんなとき、天井から何かが落ちてきた。
最初は埃の固まりかと思った。次に羽のような気がして、触れて確かめたらやっぱり羽だった。
「あ、水銀燈だ」
「はぁい、おばかさん」
「おやすみ」
「…このっ」
流し台に向かう4歩前あたりで羽を射掛けられた。これ、痛い上に掃除が大変なんだよな。

刺さったり散らばったりした羽を片付けてながら話を聞いたところ、どうやらくんくん目当てらしい。
2階でパソコンを立ち上げる気にはならなかったので、DVDの劇場版を見せることにした。
終わるころには1時半になるだろう。
寝る予定が完全に狂ったのでカルピスの2杯目をつくり、ついでに水銀燈にも出してみた。
意外と気に入ったようで、すぐに1杯目を飲み干されてしまった。
「これ、悪くないね……あらぁ、コップが空になっちゃったぁ。
 早く満たしてくれないとアリスゲームしたくて思わず真紅たちをジャンクにしちゃうかも…」
「脅しかよ。まぁいいけど。まだあるし」
「あなたに選択肢なんて無いのよ、おばかさぁん」
やっぱ真紅と似てるなぁ、とか思ったけど口に出せば翌朝変死体として発見されそうなので黙っておく。
くんくんは相変わらず段取りよく話を進行させていた。無駄に時代考証とかしっかりしてるな…

水銀燈が4杯目のおかわりを飲み干しそうなころ、くんくんが終わった。
わりと満足そうであるので、とっととお引取り願いたい。つーか帰れ。
「ああステキ…次は何を見ようかしらぁ」
「また今度にしてくれよ。そろそろ寝る時間…ふぁーあ」
「ハッ、貴方の都合なんて知ったこっちゃないわよ」
「お互いにな。次があるなら昼間に来いよ。テレビで見れるぞ、くんくん」
「そうね、考えて……じゃなくて、嫌よ。どうして真紅たちなんかと見なきゃならないの」
「じゃ、お前のミーディアムに見せてもらえばいい」
そういうと、すごくばつの悪そうな顔で、それはちょっと…とか口ごもっていた。
こういう失敗は僕もある。下手に見栄を張ってドツボに嵌っていく、よくある失敗のパターンだ。
「素直になれれば楽なんだけど、そうもいかないんだよな…」
おやすみ、と告げて階段を上がった。羽は飛んでこなかった。

【END:C】
今日は世間では休日らしかった。朝から姉ちゃんとドールズは、それぞれの用事で出かけていった。
入れ替わりで我が家を伺う黄色い人形が近所の住宅の屋根に飛来した。
7体そろった計算になるのだがアリスゲームが始まる気配は無い。
始まらなければいいのに、と僕は思った。それから暇なので、金糸雀を招いて過ごす事にした。
彼女が誘いに乗るかどうかはしらないけれど、窓を開けながら僕は妄想する。
ドールズが全員でくんくんを鑑賞している光景を。そしてローゼンが頭を抱えている光景を。

そして彼女は誘いにのってきた。策士とか言っているが、ひょっとして…
458415:2007/07/09(月) 23:42:43 ID:YPPriSm4
言い忘れてた。>>455-456、ありがとう。やっぱり一言でもレスが付くと嬉しい。
459名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/09(月) 23:46:16 ID:rivfTBbt
>>457
もうこれが本当のローゼンメイデンでいいよ
銀もきらも可愛すぎる

>長いことパソコンを娯楽のために使っていると、ふと遊びつくしてやることのなくなる瞬間がある。
>一瞬の虚ろとでも言うべきか。とにかく、ひきこもってから何度目かの唐突な興味の喪失であった。
ひっきーでなくてもあるから困る
460名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/10(火) 02:42:01 ID:2VUf93qj
>>457
このシリーズ良いわー
461Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/10(火) 22:54:54 ID:cZFterra
>>410の続き

40

ドレスのスカートを両手で掴み上げ、足をすくわれないようにしながら、翠星石は瓦礫だらけの地面を走った。
やがて倒れている蒼星石の元に辿り着くと、膝を突き、彼女を抱え持つ。
「蒼星石!」声を掛ける。「蒼星石!目を開けるです!」
蒼星石の首が僅かに動き、目がゆっくりと開かれた。「…翠星石…」
翠星石の顔がぱっと明るくなった。「蒼星石!」
「僕は…?何があったんだ…?…まだ動けるのか?」
蒼星石は不思議そうに自分の右手の平を見つめた。そこには鋏を力強く握っていたらしい跡が焼印のようについている。
にわかに記憶が戻ってきた。
水銀燈との、熾烈を極めた戦い。彼女を追い詰め、鋏の開閉を争った。そのとき金糸雀の攻撃が横からきて…。
それからは意識が闇に落ちた。

近くの建物の二階で、水銀燈は身を潜め、地面に座って壁穴から双子のやり取りを見守っていた。
まるでスナイパーライフルの弾が外より撃ち込まれたかのような、小さな壁穴だ。
翠星石と蒼星石が揃ったいま、金糸雀の漁夫の利攻撃が再び始まるのではないかと期待を寄せたが、思った通り何も起らない。
悪魔でも自分のご登場を待っている訳だ。負傷した蒼星石以外に、自分だけが金糸雀のやり口に気付いたのだから。
ほんとうにおばかさぁんな第二ドール、、。水銀燈は一旦双子から目を離し、もう一度周囲の建物群に隅々まで目を走らせた。

あの音波攻撃で気を失ってから、どのドールも僕に手をつけなかったというのか?
痛みで著しく動きが制限された首で、蒼星石は不安げに周囲を見渡した。水銀燈までどこかに身を隠したのだろうか。
嫌な予感がする。僕達二人がずっと誰かの視線に晒され続けているような -
蒼星石は右手で翠星石の腕を掴み、体を持ち上げて言った。
「翠星石…僕から…離れて…」
「蒼星石!この期に及んでまだそんなこというのですか!もう…もう戦うのはやめるです!この私が絶対絶対許さんです!」
怒りに満ちた顔で、翠星石は近くに落ちていた蒼星石の鋏を奪い取った。
「この鋏は、人の心の成長を促すためのものなんですよ…!
蒼星石、お前が姉妹を切るためにこの鋏を使うくらいなら、私は姉の庭師として、この鋏を没収してやるです!」
「そうじゃない…!翠星石…そうじゃないんだ」
蒼星石は必死で姉を掴む手に力を込めた。「ここは危ない…僕達を狙ってるドールが…何処かに…!」
「…え!?」翠星石は顔を上げ、周囲の廃墟を見回した。
何の前触れもなく爆音と共に地面が揺れ動き、真紅が拠点にするといったあの建物の中から大量の砂埃が噴き出してきた。
蒼星石と翠星石の体がぐらっと揺らぐ。「きゃっ!何です!?」ピシッという雷鳴を上がり、石造りの壁にヒビが走る。
「真紅、ジュン、雛苺…!」
真紅達が何者かに襲われたに違いない。雪華綺晶?
揺れが治り、しばらくすると突然二度目の爆音が轟いた。
すると今度は真紅の紅い花弁が建物から大量に溢れ出てきた。外に追い出された花弁は、ゆらゆらと宙に舞い上がっていく。

「うっうわァっ!何かしら!?下から…!」
いきなり下から爆発音がして大きく地面が揺らいだとき、金糸雀は危うく窓から外に投げ出されそうになった。
体が前につんのめり、窓の先に上半身が乗り出す。バイオリンを両手に持っていた為、両足でどうにか体にブレーキをかけると、
そそくさと身をよじらせて窓の中に身を引っ込める。
「ふう、落っこちるとこだった。ドール達が下にいるのかしら…」
金糸雀は呟いた。その予測は当たっていた。

「見つけた…!」
長細い建物の端で爆発が起きた時、その真上、三階あたりでバランスを崩した金糸雀のバイオリンが
一瞬建物の外に飛び出したのを水銀燈は見逃さなかった。
しめたとばかりに水銀燈は建物の中を素早く移動し始め、大きな壁穴の前に立った。貼り付けられた木の板を蹴りでカチ割り、外を覗く。
金糸雀がいた建物と今自分のいる建物が繋がっているかを確認する。残念ながら繋がっていないらしい。
ともなれば攻めにいく時どうしても外に出らざるを得ない。つまり姿を見られやすくなる。下手すればその時また何処かに隠れられてしまう。
なに、簡単なことよ。
金糸雀の注意をほんの少しの間逸らさせてからあの建物の中へ押し入ればいい。
水銀燈は一本の羽を人差し指と中指ではさんで持ち、いつでも投げれるように構えた。
462Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/10(火) 23:10:48 ID:cZFterra
砂埃の立ちこめる狭い部屋の中でジュンは激しくむせていた。
「うう…っけほっけほっけほ!」鼻を手で覆い、砂が晴れるのを待つ。
あいつら派手にやりやがって…ローゼンメイデンと契約して以来死を覚悟するまでの恐怖を味わったのはこれが初めてだ。
「真紅、雛苺、どこだ?」
返事は無い。聞こえるのは砂利の転がる音だけだ。
第七ドールの雪華綺晶と真紅の接近戦に巻き添えになったジュンは真紅の花弁に飲み込まれ、部屋の隅にまで体が吹き飛んだ。
それからというものの視界が砂埃に覆わて、何がなんだか分からないうちにみんな何処かへ行ってしまった。
背中と腰が軋むように痛む。全くミーディアムに対してひどい扱いだ。
「いたたたた…くっそー。みんな何処なんだ」
お年寄りのように傷む腰を撫でながら、ジュンは建物の中を歩き出した。
もう帰りたい。そんな考えが心に生まれてきたが、真紅が今も何処かで雪華綺晶と戦っていることを想うと、
自分も何かしなければという考えの方が強くなった。

「水銀燈のやつ、、出てこないのかしらー」
金糸雀はつまらなそうに言った。
足をバタバタさせ、いささか不貞腐れ気味な顔で翠星石と蒼星石の二人を眺める。
あんな目立つし廃墟のど真ん中で、何かを話し続ける二人。蒼星石は横たわったままだ。もしここがより多くの人間達の戦場だとしたら、
あの二人なんか瞬く間にあの世行きだ。薔薇乙女と違って、人間の持つ武器というものは容赦なく、殺しのことしか考えていない。
美醜も何もなく、ボタン一つで命を奪う。一方、私達薔薇乙女は戦えとこそお父様に言われているが、それは何より美しき究極の少女
アリスという目的を持っている。だからこそ - 人間の持つような、ピストルを使って戦う薔薇乙女などいないのだ。
私達はそれぞれ個性のある武器を持って戦う - 何より美く戦うことを。どのドールがより美しく、華麗に戦いをやってまけるかを
お父様に見てもらう。それがアリスゲームなのだ。

突然、前方の建物の何処かで小さな光りの点が輝いたかと思うと、そこから小さな黒い影が何処かへ一直線に飛んでいくのが見えた。
それは翠星石と蒼星石の二人のすぐそばの地面に着弾し、庭師の二人が、特に姉のほうが - 恐ろしげに騒ぎ立てた。
水銀燈の羽だ!
金糸雀の神経が一挙にそこに注がれた。
目の前のチャンスに耐え切れずついに動き出したのかしら?
その割にはおかしい。いくら二人といえども、翠星石と蒼星石なら真っ向から当たりに行けば水銀燈の力でどうとでもなるのではないのか。
特に、あんな隙だらけで、片方は負傷してろくに動けないあの二人など。なにの何故あんな慎重な攻撃をするのか。むしろあれでは
狙われていることに感づかれて逆効果だ。一挙に攻めればいいのに。なぜ?
「しまった…!」
それに気付いた金糸雀はとっさにバイオリンを構え、間に合っていることを祈った。
視線を元に戻すと、黒い羽の持ち主の水銀燈が、その翼をはばたかせてこちらへ猛突進してきている。
あれは自分の注意を逸らす為の工作だ。
曲など演奏している時間はもう残されていない。金糸雀はとにかくただ強力な音を出す為にバイオリンの弓を一回限りで思いっきり弦に擦らせた。
それと同時に水銀燈の羽が金糸雀を目掛けて放たれた。
二つの攻撃が正面衝突すると、金糸雀の音波が勢いで勝った。水銀燈の羽を追い返し、強力な音波は本人の元にまで襲い掛かる。
「チィ…!」
水銀燈は悔しそうな顔をしたのち、やむを得ず上へと飛んでゆき視界から消えた。
「きゃああああ!」
金糸雀は叫び声を上げた。曲としてでなく、ただの音として雑にバイオリンから音波攻撃を出したためコントロールが効かず、
自分にまで音波が襲ってきたからだった。周囲の壁や天井が崩れ落ち、その断片が頭を叩く。砂埃が部屋の中を埋め尽くし始める。
その部屋から脱出し、金糸雀は全速力で建物の奥へと伸びる道を駆け始めた。
水銀燈に位置がばれたらしい。恐らくさっきの爆発の衝撃で身が外にはみ出したせいに違いない。
463Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/10(火) 23:13:34 ID:cZFterra
「南に逃げるつもりか…!」
別の建物の屋上に降り立った水銀燈は、窓越しに見える金糸雀の姿を見ながら殺気だった口調で言った。
その小さい体ながら一生懸命走っており、ある窓から彼女の姿が見えたかと思うと、次はその左の窓に見え、更にその左の窓に姿が見えてくる。
「一つ下の妹…、生意気が過ぎるわ!」
両手を伸ばし、水銀燈は翼を広げ、金糸雀の走る建物に向かって羽を無数に放ち始めた。それまでになく多く、強力な羽の雨を。

さっきまでの静けさが転じて戦場へと早変わりした。
周囲の状況に憂しきものを覚えつつ、翠星石は蒼星石の方を向き直った。
「蒼星石、立つです…何処かに身を隠さないと私達丸腰です」
立ち上がろうとした蒼星石は苦痛に歪む顔を見せた。「足が…足に破片が…」
痛む左足を見ると、脛に一枚の破片が食い込んでいる。
翠星石の表情が固まった。「蒼星石!」
破片を手に取り、蒼星石の足から抜き取ろうとする。「あああああいたいいたいいたいいたいっ!翠星石!」
「ちょっと我慢するです!」
翠星石は言うと、再び破片に手を掛ける。
「や、や、やめて!翠星石!」
蒼星石はすっかり怯え、身をよじらせて必死に姉の手から逃れようとしている。
「全く!」
後ろの方から、水銀燈の羽が激しく飛び散らしている音が聞こえる。雹の雨が石の地面を叩いているかのような羽の激しい着弾音も。
不思議なことにそれは自分達を狙っていないみたいだが、いつ流れ弾が飛んできてもおかしくない。
「こうしちゃおれんです!」
破片を取ることを中止し、翠星石は蒼星石の両肩を掴んで後ろ歩きの状態で彼女を引き摺り始めた。目指すは最寄の建物の中だ。
右手には鋏を持っているため、鋏と親指の間で蒼星石の衣服をつねるようにして引っ張る。
引き摺る跡が地面に残り、まるで巨大なへびが通ったあとの道ような痕跡が形作る。
左足に痛そうに手を添え、姉に肩を引かれながら、蒼星石は自嘲気味に顔に笑みを浮かべた。
鋏を奪われてしまった。それを取り返すことも出来そうにない。
まったく、姉には敵わないよ…。
464Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/10(火) 23:25:43 ID:cZFterra
41

金糸雀は通路を走り続けた。
水銀燈の羽が激しく壁を叩く音を聞こえる。数本の羽が窓や壁穴から中に入り込んできて金糸雀の体をかすめる。
次の窓の前まで差しかかろうとした時、金糸雀はスライディングして走るのをやめ、壁に身を寄せ付けた。
その直後、目前の窓ガラスが割られ、黒い羽が中に入り込んでくる。奥の壁や床にザクザク突き刺さる。
行く先が読まれている。
息を切らしながら、金糸雀は今まで走ってきた道を振り返ってみた。通路に刺さった幾本もの黒い羽が点々と青白く燃えている。
引き返す道はない。
水銀燈との接近戦を覚悟し、バイオリンを構え持ちながら、金糸雀は再び全力で南に伸びる道を走り出した。

黒い羽の機関銃を浴び、ところどころにひび割れの生じた建物を水銀燈は見つめた。
羽は一本残らず青白い炎を上げ、建物全体にその光が散りばめられている。
この位あれば十分だ。ケリをつけてやる。
左手の薬指を見つめる。そこに嵌められた、契約の指輪。これからすることは多少の不安が付きまとう。
水銀燈は左手を握り締め、指輪を胸に当てた。さらに右手がそこに被さる。
そして目を瞑り、ゆっくりと深呼吸した。
「めぐ…力を…私に貸して…」
水銀燈は目を開き、ゆっくりと左腕を前に差し出した。
薬指の指輪が紫色の光をほのかに発し始める。
その先で、壁に突き刺さった羽の一本一本が、指輪の光に共鳴するかのように青白い光を強めている。より輝かしく。より熱く。
その炎の光が薄暗い廃墟を明るく照らした。
水銀燈は腕に渾身の力を込め、覇気迫る声で唱えた。「…メイメイ!」
ミーディアムの助力で増大した己の力を、水銀燈は解き放った。
点々としていた青白い炎が爆発的に広がり、目もくらむ閃光がほとばしる。
深く鈍い衝撃波と共に閃光は建物の中からも放たれ、強烈な光を窓から覗かせた。
押し寄せる熱風にのって塵がこちらまで飛んできて、水銀燈の顔が傷ついた。
光は建物の中で留まることを知らずに膨れ上がり続け、限界まで膨張した閃光は外を求め始める。
そしてついに建物の上半分をバラバラに吹き飛ばした。まるで膨らんだ空気が風船を割るかのように。
大きな破片が上空高く花火のように打ち上げられ、怒涛の地響きがする。
水銀燈は息を奪われ、足をふらつかせながら壁に寄りかかったあと、また外を眺めた。
「きゃああああああああああなのかしらああああああああ!」
三階の窓から躊躇することなく飛び出した金糸雀が、絶叫を上げて尻に炎を付かせながら宙を落下している。
そんな彼女の背後でレンガが青白い閃光に包まれ、砕け散っている。
開放された青白い閃光は激しく波打つ海のように尚も暴れ続け、やがて限界まで広がると、降下し始め下水道に流れ込んでいくようにして消えた。
「はぁ…!派手にやるわね。おかげで危うくバラバラになりかけたのかしら…ってぎゃあああああ!」
金糸雀は尻についた炎が後ろで燃え広がりつつあるのに気付き、慌てて尻と背中をパタパタと払った。
彼女が火消しを終えるとまもなく、水銀燈が正面に降り立った。貫くような視線で金糸雀を見据えている。
金糸雀は立ち上がり、いつでもバイオリンを演奏できる体勢を整えた。
水銀燈の羽が一箇所に集まり、ピンク色の光を発しながら剣を形作ると、彼女の右手に納まった。水銀燈が独自に作り上げた剣だ。
その先端を光せながら、こちらへとにじり寄ってくる。一歩、また一歩と瓦礫を砕く足音を立てて。
465名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/10(火) 23:38:44 ID:jq4j4vMH
>>415
このシリーズなかなか良い!
466名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/10(火) 23:47:39 ID:RlSXUoda
>>415
このシリーズなかなか良い!
467名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/10(火) 23:52:28 ID:8FQINWx7
シリアスなのもなかなかいいな
468名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/11(水) 00:34:48 ID:9Y4WhR5F
安定した作品が増えて嬉しい限りだな
469名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/11(水) 01:56:40 ID:aoUTfa/H
>>415
このシリーズ結構面白いよな
470名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/11(水) 02:50:54 ID:8Z4HaRhw
Rozen Maiden LatztRegieren
(;゚∀゚)=3ムッハー
GJ!!
471名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/11(水) 02:54:17 ID:0RmgDymw
シリアス系大好き!
wktk
472415:2007/07/12(木) 00:20:40 ID:a2CIM5TR
何人見ているのか知らないけど続き?でごぜーやす。今回は金糸雀。引用が祟って無駄に少し長い。
--------
「誰もいないのかしらー?」
「ああ。僕だけだよ」
自称策士はあっさりと僕の家に入ってきた。それでいいのか策士。僕が敵だったらどうする。
「タイミング悪かったな。もう少し早く来てれば一緒に遊びにいけたのに」
「そうなのかしらー…」
ちょっと残念そうだ。この素直さ、どこかのドールに見習わせてやりたい。
その後しばらくは、テレビを見ながら2人でお喋りをしていた。
話題はささやかなことだ。みっちゃんのこと、たまごやきのこと、普段はどう過ごしてるか。
本当にあたりさわりの無いことばかりで印象には残らないが、このまったりとした空気は悪くない。

「そういえばヴァイオリンを弾けるんだっけ?凄いなあ」
CMでバイオリニストが曲を演奏しているのを見たので、何となく褒めてみた。
「そっ、そんなことはないかしら〜」
謙遜はするものの、やはり金糸雀は嬉しそうである。
「いや、素直に凄いと思うよ。一つの道具に習熟するのは大変だし。」
自分にとっての裁縫道具がそうであったように彼女もきっと苦労したのだろう。
ひょっとしたらローザミスティカのお陰で引けるのかもしれないが、もしそうでも彼女の個性だ。
「自分で作った曲とか弾いたりとかするのか?」
「やってみたいけど、上手くいかないかしら…」
音楽ではそうはいかないのかもしれないが、彼女も自分だけの何かが欲しくなるのかもしれない。
「何か弾いてもらっていいか?」
「いいけど…失敗しても笑わないでくれるかしら」
「笑わない。決してだ」
「じゃあ少しだけ聞かせてあげる……24の奇想曲。」
失敗を笑うような真似だけは、僕は生涯しないだろうという確信がある。
彼女の小さい手はとても器用に動き、見事な旋律を僕に聞かせてくれた。
ある程度弾くと、これでいいかしら?と言いたげにこっちを見たので、僕は拍手で答える。
「じっと聞いてたら喉渇いた。紅茶でも淹れようか?カルピスなんてのもあるけど」
473415:2007/07/12(木) 00:24:03 ID:a2CIM5TR
どうも甘いものを好むのがローゼンメイデンのマジョリティーらしい。
あっというまに金糸雀のコップの中身は、彼女自身により飲みつくされていた。
「しっかしあれだよな。金糸雀って、策士を名乗る割にはいつも失敗してるよな。」
「と、突然酷いのかしらー!?」
ガーン、と効果音がつかんばかりの表情。こっちを涙目になりながら睨んでくる。
どこぞの黒羽や幽霊と違って怖く無いのがまた悲哀を感じさせる。
「だってさぁ、ほら、もっとこう…いつぞの水銀燈とかみたいにやってもいいわけじゃん?」
「持ってる能力が違うから同じようにはできないのよ、おばかさぁん」
「水銀燈の真似かそれ。全然似てないしっ!」
彼女も、ダメかしらー、と言って互いに笑った。それから少し真面目に語りだす。
「確かに策を弄してアリスゲームに望むのもいいかしら。でも姉妹と戦いたくないのも本心よ。
 ドイツ語でIn jedes gute Herz ist das edle Gefuehl von der Natur gelegt,
 dass es fuer sich allein nicht gluecklich sein kann,
 dass es sein Glueck in dem Wohl der andern suchen muss. って文句を知ってるかしら?
 日本語に訳せば『すべての人のやさしい心の中に、気高い感情が自然に与えられている。
 それは、自分だけ幸福になることはできない、他の人たちの幸せの中に自分の
 幸福を求めずにはいられない、という感情である』って意味よ。カナも同感かしらー」
「ふ、ふぅん…そっか、そうだよな。なんかアリスっぽいしな。それ」
いきなり流暢にドイツ語を話されて面くらったが、言いたい事は何となく伝わってきた。
笑顔であっさりと言ってのけるあたり、どこか強いんだなと思う。

「そ、それはそうと貴方の腕前も見せて欲しいのかしらー。」
自分でも恥ずかしくなったのか、これが彼女の狙いなのか、そう言ってきた。
「たしかになー。でも今すぐは無理だぞ。音楽と違って時間がかかるし」
「別にいいかしら。みっちゃんが新しい服を欲しそうだから作って欲しいかしらー。」
「え、みっちゃんさんの!?いやダメそれは流石に無理無理無理!」
「ドールに決まってるかしら。どうして顔が赤くなるのかしらー」
「そうか…そうだよな…あ、それなら前回の型紙があるし作れるか。」
ドールは人形ゆえに体型が変わらないので、一度型を取れば使い回しが効く。
今ある型紙は5種類。水銀燈と雪華綺晶の型紙があれば全員分コンプリートできそうだ。
薔薇水晶の型紙はどうなんだろう?っていうか雪華綺晶の採寸は無理だ…幽霊だし。
「じゃあ音楽のお礼になんか作っとくよ。期待するなよ?」
「ふふん、これで新しい服を、楽してズルしていただきかしら。
 みっちゃんお金がないから服を買えなくて落ち込んでたから、一石三鳥かしら!」
金糸雀だけに?と聞いたらそんなつもりは無いらしい。上手い事を言うなと感心して損した。
「また売りに出すつもりなんだろうか…なんで売れるのかよくわかんないけど。」
正直、売れたと聞いて嬉しい反面、恥ずかしくもある。まあ売られるならそれでもいいかと思った。
ん、まさかこれを狙ってたのか?だとしたら、高い一曲だったなあ…策士め。

【END:D】
正午になるころ、彼女は「みっちゃんをそろそろ起こすかしらー」と言って帰っていった。
こんな時間まで寝てるみっちゃんさん…いいのか、社会人。

昼ごろには土産を持った面々が帰宅してきた。カップ麺でも食べようか迷ってたのでありがたい。
静かな家もいいが、にぎやかな家も最近では悪くないと思えてくる。それが人形だってかまわない。
昼食の支度をするのを待ちながら、外を見る。さっきまでの天気とはうってかわって曇り空だ。
「雨がふりそうなのー」
よじのぼってきた雛苺を頭にのせて、僕は「そうだな」と呟いた。真紅と翠星石の視線は忘れよう。
そして、またいつもの賑やかな時が始まる。
474415:2007/07/12(木) 00:37:47 ID:a2CIM5TR
気づいたら全てのドールを制覇しようとしている件。いや、ほんとレスありがとう。
475名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 01:04:37 ID:qQ/Mga82
>>474
いやいやお疲れさんですよ。
JUNが原作に忠実な性格付けになっていて良いですね。
冷めた心の中の突っ込みが面白いです。
476名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 21:52:24 ID:6zGal9JP
>>474
2回目の主役も頼む
ほんとささやかな楽しみになってる
477名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 22:06:35 ID:fgsH0a1k
トロイメントの終わり方ってヒドイですよね。まさかローゼン自身がアリスゲームを簡単に否定してしまうとは。
しかも雛苺と蒼星石はほったらかし。
このままではあまりにドール達が報われない気がしたので、違うストーリーを考えてみましたwwwwwwwwww
以下、エンジュ先生とやわらかばらしーがピカッとなってパッとなった後の話です。
「どうしてお前が愛してやらやらないんだ・・・どうして・・・クソッ・・・僕は・・・僕は何も・・・クソ・・・」
一体何時間そこで泣いていただろう。検討もつかない。
突然むくりと立ち上がった。しかし呆然と立ち尽くす。
彼は真紅・水銀燈・金糸雀・翠星石を回収して回った。目を真っ赤にし、頬には涙の痕がつたっていた。
来た道を帰る。出口は鏡の部屋に繋がっていた。
ドサッ
ジュンはドール達を抱えたまま倒れこんだ。
ドドドドッ
のりが物音を聞き付け、鏡の部屋に飛んできた。
「ジュン君!」
ジュンは首を上げ、のりに言った。「真紅達を部屋まで運んでくれ」

のりは無言で頷くと手際良く部屋へ運んでいった。
真紅、翠星石はカバンへ。水銀燈、金糸雀は地べたに布団を敷いてやり、そこに寝かせた。
ジョンはドール達の前に座り込んだ。
俯いてドール達をただ見つめ続けた。
「僕が殺したんだ」
「えっ?」のりが驚いたように言った。
「僕が真紅を殺した」
「何を言ってるの?」
「僕が殺したんだ!真紅はっ!僕さえ邪魔しなければ!僕が・・・っ僕があの時止めなければ・・・真紅は死ななかったんだ!・・・
…そしたら今頃…真紅はアリスに…あんな偽物に殺されなくて済んだんだ…」
「ジュン君…」のりはジュンの肩に触れた。しかしジュンはそれを振り払うと、言い放った。
「出ていけ!出ていけよ!」
近くにあったごみ箱をのりに投げ付けた。
「キャア!」のりの顔面に命中した。危うくメガネが割れるところだった。
ジュンはのりを追い出した後ドアをドン!と勢いよく閉めた。
「ジュン君…」のりはどうすれば良いか分からず、廊下の部屋の前に立ち尽くした。
「僕が…もっと早く…偽物だと…ローゼンじゃないと気付いていれば…みんな…死ななかったんだ」
うわごとのような言い方でジュンは自分を責め続けた。
「僕が…全部悪いんだ…僕が…」
呪文のようにそれを繰り返した。
やがて彼は眠りについた。引きこもりの自分に身に付いた、現実逃避の方法の一つ。寝れば…何も考えなくて済むのだ。寝れば…

478415:2007/07/12(木) 22:08:30 ID:bUBBZX+u
勢いだけで突っ走っているので、どこにたどり着くかサッパリわかりません。あと今回、オチずに続いてるくさい。
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ビューティフル引きこもりライフ。ちっともビューティフルじゃないし絶賛外出中なんだけど。
事の発端は『うにゅー』と『ですぅ』がお菓子をよこせと言い出したからだ。
適当に冷蔵庫でも漁れと言ったんだが、気に入る食い物が何も無いらしく文句の嵐だ。
そしてやれやれ、と言いたくなる様ないい天気なので外出することに。
感嘆符があってないの原因は『なのだわ』にある。まさに鶴の一声。何なんだろうね、ほんと。
「それで買っちゃう僕も僕か…」
逆らうガッツは無い。が、両手が荷物で塞がっていても、それほど凹んでもいない。
真紅たちが来る前はコンビニ店員相手に声が出なかったが今回は普通に対応できたからだ。

帰り道、いつぞや通りかかった人形屋を見てから帰ろうと迂回すると臨時休業だった。
これでは遠回りの意味が無かったとガッカリする。とたんに両手の荷物も重たくなった。
店の中から何やら視線を感じたような気がしたけど無視する。雪華綺晶だったら厄介だしね。

そして家に帰って3人がアフタヌーンティーを楽しんでいるのいいことに、服を作る作業に入る。
幾つかラフスケッチでデザインをしてから適当にベースを作り、寸法と手間を計算する。
これが意外と楽しいもので、一段落するころにはくんくんが終わり、姉ちゃんが帰ってきていた。
いつもどおりの夕食。普通であること。人並みであること。そう、これだよ。これを求めていたんだ。
穏やかな時間。あとは風呂に入って適当にネットしたり裁縫したりして、寝るだけである。

くいくい。

ゆっくり伸びをして1歩を踏み出す僕。何やら裾を捕まえている気がするので振り返る。
「こん…ばん、は。」
薔薇水晶がいる幻覚が見えたので風呂に歩き出そうとするとやっぱり捕まっている僕。
「話が…」
「………とりあえず、どうやって入った?」
薔薇水晶が指をさした先には半開きの窓。うん、戸締り忘れた僕が甘かったらしい。
「手伝って」
「……なあ、せめて主語をいれてくれ。あと判ったから離して。延びる。」
「こっち」
「無視!?」
そのまま拉致された。基本的人権という概念は人形たちには無視される運命にあるらしい。
もしアリスが生まれたとしても超絶わがままで、ローゼンの前では猫かぶりに違いない。
「ついた」
その辺の女子と何が違うんだろうなあ。全然わかんないなあ。
「聞いてる?」
真紅たちは僕のことを放置してるんじゃないだろうなあ。誰か助けてくれないかなあ。
「……話を聞いてください、にゃ。」
「猫ッ!?」
「気のせい。」
表情に変化が無いのが不気味だ。ナチュラルボーン無面目。薔薇水晶、愛想はどこに捨ててきた。

しばらく案内される間、僕の思考は(a)いかに帰るか。(b)どうすれば薔薇水晶が爆笑するか
の2つで占められていた。メインは前者であり、後者のことを世間では現実逃避という。
出口はあのドールショップだった。そのベッドに横たわっているのは、一人の大柄な男性。
「……で、僕はどうすればいいんだ」
「看病を手伝って。」
「最初に言えよ。っつーか看病って…僕より適任が沢山いるだろ、常識的に考えて。」
姉ちゃんとか。姉ちゃんとか。それから姉ちゃんとか……ああ、巻き込まれなくてよかったかも。
「他に手伝ってくれそうな人を知らない」
「そうか。もちろん、僕もだ」
「寂しい人…」
「じゃ、お大事に」
立ち去ろうとしたら片手で再び裾をつかまれた。もう片方の手には剣が見える。
「いかないで…」
「オーケイ。僕は何をすればいいんだ?」行ったら逝かされそうなことくらい、流石に判る。
479415:2007/07/12(木) 22:11:03 ID:bUBBZX+u
>>475 原作は残念だった…
>>476 なるべくご希望に添えるようにしたいところだが二回目の主役って誰だッ
480477:2007/07/12(木) 22:16:37 ID:fgsH0a1k
>>415あー重なっちゃいましたね・・・自分は待ってるんで先にドゾー
481415:2007/07/12(木) 22:24:04 ID:bUBBZX+u
>>480
いやいや。どうしたもんか悩んでるんでお先にどうぞ。
お気遣いありがとうございます。
それにしてもローゼンは酷い野郎ですね。
482名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 22:49:20 ID:fgsH0a1k
自分も考えながら書いてるんで遅くなると思いますよ・・・
じゃあ>>477の続き


「ママ…」
母親を見上げている。まだ若い。これは確か…小学校低学年の時に家族で行った遊園地。
どうやらこれは子供の時の自分の視点だ。しかし不自然だった。やけに鮮明でリアルなのだ。聞こえる声も実際に耳で聞いているよう。
急にその視点から自分が遠退いた。まるで覗いていた望遠鏡から目を離すように。
今度は…どこだ。天井が見える。どこだ?
ここは…焦点が合わない。誰かの声が聞こえるが、耳の中で反響して聞き取りにくい。急に視界に人の顔が入ってきた。
「おばあちゃん!?」
また場面が変わる。
今度は…市街地。全く見覚えがない。私は人形を片手に親に手を引っ張られ、建物の間を縫うように走り抜ける。どうやらここは日本ではない。
ガガガッ!
音の方を向いた途端!建物の影にカモフラージュされていたナチのタイガーの88mmがこちらを向いていた。
ブワァ!火を噴いた瞬間また急に場面が変わる。まるで走馬灯のようにどんどん色々な場面が表れては消え、移り変わっていく。
最初の二つ以外全く記憶に無いものばかりだった。しかしこれだけは分かった。今より時間を遡っている…
バッ!場面が変わる。もう戦場でも見知らぬ民家でもなかった。
薄暗い部屋。裸電球のデスクライトが乗った作業台。
道具箱を開ける。
するとさまざまな長さ、形状、粗さの棒ヤスリがズラリと並んでいる。
私はそのなかから、目が細かめで、面が軽い楕円形をしている棒ヤスリを一本取り出した。
目詰まりしていないか確かめたあと、その「穴」を軽く削っていく。
0.1ミリくらいだろうか。
削ったあと、球をはめて大きさを確かめる。
まだだ。目では見えないが感覚でわかるのだ。まだ削らなければ。
私は同じ形状で、さらに目の細かいヤスリを手にとり、ひと削りしてみた。削りカスはほとんど出ない。
次は−
急に場面が変わった。というより浮遊していた人格が元に戻った。私はサクラダジュン。
辺りは闇。無重力の中、ぬるま湯に浸かっているような感覚。手足が存在しているのかも分からない。ただ意識だけがそこにはあった。
「どうです?ここでひとつ、猫の手でも借りてみては。」
「誰だ!」
突然前方がスポットライトで照らされたように明るく光った。そして光の中心から砂粒のような光る粒子が吹き出してきた。
その粒子が…人を…形づくってゆく。タキシード…
「ラプラス…?」
「いいえ、違います。初めまして。シュレーディンガーの猫。とでも言っておきましょうか。」
それは礼儀正しくハットを取り、一礼した。
ラプラスのように人間の骨格を持っている。しかし顔は猫だ。
「貴方は大変悩んでおられるようだ。」猫はハットをかぶりなおした。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 23:01:15 ID:fgsH0a1k


「…」
「アリスゲームをご存じかな?」
「うるさい」ジュンはその単語を聞いた途端、反射的に言い放った。
「アリスゲームとは本来、ドール全てが揃って初めて成り立ちます。
全てが揃うこと。それは同時にアリスゲームの始まりを意味します…」
「あぁ、今更そんな事言われなくてもわかってる」今はアリスゲームの話なんかしたくなかった。
「遥か昔、人形師ローゼンは彼女達を完成させました。その後、彼女達にアリスゲームでアリスを誕生させよという
命令を残し、忽然と姿を消してしまいます。ここでローゼンは大きな失態をおかしています。アリスが自分の生前中に誕生しなかった。
そして彼女達は永遠にローゼンの存在を信じ続け、あらゆる時代のあらゆる人間達の元を転々とし、
アリスゲームの始まりを待ちました。そしてやっと今この時代、ドール達は集結し、アリスゲームが始まろうとしている。なぜ今なのか。」
「そんな事僕が知るわけないだろ…」
「昔・・・丁度60年前でしょうか。アリスゲームが成立寸前までいきました。しかし・・・「彼」は直ぐに死んでしまった。時代が悪かった。」
「一体何を言っている・・・もしかしてお前もラプラスみたいに何かローゼンと関わりがあるのか?」
「ええ、とても。同じ次元に居ます。とても、とても近い所に。」猫は両手を広げ、大げさなポーズをとって見せた。
「じゃあ言っておけ。お前のドールはお前の酷い命令でみんな死んだと。」
「ははは!死んだ?何をおかしなことを」猫はいきなり笑いだした。
「何がおかしい」
「人形が死ぬわけないでしょう」
「でも真紅達は実際に死んでしまったじゃないか!お前もあの兎と一緒に見ていたんだろ!?」
「彼女達は迷子になってしまったのです。そもそも彼女達人形の「生」とは、観念なのです。全ては自分が自分であるという意識。
身体はただの器でしかありません。彼女達の意識は器を離れ、どこか遠くに行ってしまった。」
「同じじゃないか。人間の死と。」
「そうです!大正解!すばらしい!」猫は両手をパンパンと叩いて拍手した。
「…」こいつはからかっているのか。
「人間も同じなのです。人間は死を迎えると身体は腐敗し、最後は消えてなくなる。
しかしそれは所詮器でしかない。ドール達と同じ。意識観念に当たる「魂」は永遠に残ります。
ただ人形達と違うところは、一度迷子になってしまった魂は全く別の器を授けられ、再度生を受けることができる。
人間は古来からその事を「輪廻転生」と呼んできました。人間が新しい器を授かった時、同時に記憶も新しくなる。
しかし…前世の記憶を完全に根絶することは不可能なのです。夢の世界には無数の「記憶の穴」が存在します。
しかしそれは扉によって厳重に隠されているのです。
そしてそれらは「世界樹」として、どこかで一つに集約され、人類の記憶として、とても大切に保管される。」
ラプラスもそうだが、相変わらずこいつらの言っていることはよくわからない。というより分かろうとする気にもならない。
「話が反れましたね。本題にいきましょう。私があなたに見せた夢、いかがでしたでしょうか。」
「あの走馬灯のような夢か」
「あれは全てあなたの記憶です。私は扉を順々に開いて見せたまで。最後に見た夢をまだ覚えておられるかな?」
「何かを…作ってた」
「そう何かを。」猫はステッキを振り上げた。
「ではそろそろお見せいたしましょう。これで全てが分かるでしょう」
猫はステッキをニョイ棒のように延ばすと、空間に立て掛けた。そしてステッキの中心に両方の手の平を縦につっこみ、
そこから空間を引き裂いた。
凄まじい勢いでその穴は私を吸い込もうとした。私はされるがままになった。もう・・・なにも怖いものは無くなっていた。悪い意味で。
484名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 23:12:30 ID:fgsH0a1k


ここは…暗い部屋…。
頭から声が響いた。猫の声だ。
「いいですか。これはあなたの記憶です。」
僕の?
自分は薄暗い部屋の椅子に腰掛けている。
ふと後ろを振り返る。
「なっ!!」
そこには水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石が椅子に可愛らしく座らされているではないか。
僕は立ち上がり、左の扉に向かって歩いていった。もちろん自分の意志ではない。その扉を開ける。
作業台が目に飛び込んだ。あの作業台…
机の横には可愛らしい服が飾ってあった。真っ赤なドレス。真紅のドレス。
バッ!
突然意識がさっきの空間に戻る。
「いかがでした?」
「なんなんだ…僕が…僕がローゼンだとでも・・・彼女達を作ったとでも言いたいのか…」
「さすがは察しが早い。」猫はパンと手を叩いた。
「その通り。ジュン。あなたがローゼンだ」猫はステッキで指した。
「僕が…ローゼンだと?」
「そうです」
「そんな…馬鹿な…」
「信じられないという気持ちも分かります。しかしあなたはローゼン。これは紛れも無い事実だ。」
「僕が…ローゼン…真紅達に戦いを命じたのも僕だと言うのか…」
「そうとも言えます。」
「そ・・・そんな・・・」
「しかしあなたはローゼンだ。当然彼女達を呼び戻す事もできます。」
「なに!?本当なのか!?」
「ええ、本当ですとも。あなたはローゼンなのですから。あなたがお望みなら。」
「じっじゃあ今すぐに!」
急に大量の水が流れ込んできた。瞬時に辺りは水で満たされた。しかし不思議な事に息はできる。
僕は水の中でされるがままに揺られ続けた。
「真紅!」
何かが奥底で見えた気がした。真紅なのか?僕はそこに手をつっこんだ。
「真紅!」
「ジュン?ジュンなの?」
真紅だ。間違いない。真紅の声だ。よく見えないがあれは絶対に真紅だ!私は必死に真紅を助けだそうと試みた。
「真紅ー!」
「ジュン!あなたなのね!?ジュン!助けて!ここは暗くて…冷たくて・・・とっても恐いの!助けて!お願い!ジュン!助けて!」
「真紅ー!待ってろ!今助けてやる!」
腕をのばし、探る。なにもわからない。しかし、何故か確信がもてた。俺は真紅を助けることが出来る!
何かが手の甲に当たった!僕はそれを掴み、勢いよく引き出した!
「真紅ー!」
突如、水は瞬時に引いた。静けさだけが残った。
「ジュン!ジュン!」真紅は見たことも無いほどの表情で泣きじゃくりながらジュンの胸に飛び込んだ。
「御免よ・・・真紅・・・御免よ・・・」
485名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 23:29:12 ID:fgsH0a1k

「チビ人間があまりにも頼りなくて愚か者だからこの翠星石が直々にまた降臨してやったですぅ」
「翠星石ー、どうして君は素直になれないんだい?ちゃんとジュン君にお礼を言わな―」
「あーうるせーです蒼星石!余計な事を言うなですー!ポコポコ!!」
いつもの桜田家。
「ジュン」
ソファーで隣に座っていた真紅が言った。
「ありがとう。あなたの声が無ければ私たちは今頃迷子になっていたわ。体もきれいに修理されている。ローザミスティカも元通り。
一体、どんな魔法を使ったのかしら?」
「僕は大した事してないよ。」ジュンは苦笑して誤魔化した。
「・・・俺、ローゼンに会ったんだ。」
「お父さまに?ジュンが?」ドール達はピクリと反応した。
「ああ、彼は言っていたよ。この戦いを通じてやっと、私にとってのアリスが見つかったって。
それはこんなにも私を愛してくれる人形、ローゼンメイデンシリーズだと言う事に気づいたんだって。
やはり彼女達が仲良く集まってこそ、真のアリスだ。最高傑作、ローゼンメイデン。やはり失敗では無かった。だってさ。」
「そう。ジュンありがとう」真紅は心底安心した表情でジュンに言った。
「じゃあじゃあー、雛もアリスなのー!」
真紅の横に座っていた雛苺が両手を挙げて喜びだした。
「チビ苺はアリスはアリスでもチビチビアリスですぅ」
「じゃあ翠星石は腹黒アリスなのー!」
「そーです!って!なーんで翠星石が腹黒なんですか!きー!生意気な糞ガキですぅ!ちび苺!どこからそんな言葉を覚えたですか!」
「翠星石ー!」
「翠星石はそんなそんなはしたない言葉使った覚えは無いですー!」
「やめなよー、翠星石ー!」
「蒼星石はいっつもどっちの味方ですか!」
「あなた達!静かになさい!クンクンが始まるわよ!」
「はーいなのー!」
ジュンは外を眺めた。また、いうもの風景。桜田家の庭。こんなに優しい風景だっただろうか・・・
突然、黒い羽が一つ舞落ちてきた。ジュンは立ち上がり、窓を開け、上を見上げた。
「おまえ、なにしてんだそんなところで」
「なっミーディアム!」
「あー!水銀燈なのー!」
「あら、水銀燈、いらっしゃい。」
「しっ真紅!」水銀燈は何故か焦っている。
「水銀燈、お茶をご馳走するわ。ジュン!紅茶を入れてちょうだい。」
「おっお前がご馳走するんだったらお前が入れろよ!」
「ジュン。言っていることがわからないの?」
「はいはいはいはいわかりましたー真紅様う痛て!」
「べっ別に私はっ!」水銀燈、なんだか変わった気がする。
「たまには姉妹と過ごすのも悪くなくてよ。お姉さま」
「おっお姉・・・っ」
「わーい水銀燈お姉ちゃん水銀燈お姉ちゃん!さーさー早く早く!」
「えっ!ちっちょっとぉ」雛苺は水銀燈の手を引っ張って部屋に入れた。
「なーんか水銀燈と一緒なんていい気分しねーですけどっ!今日は特別に我慢してやるです…」
「そうだ!トモエも呼ぶのー!」「そうね!そうしましょうか、雛ちゃん」とのり。
「あそうだ。」ジュンは思い出したように言った。
「どうしたのジュン」
「いやちょっとね。」ジュンは急いで階段を駆け上っていった。
「お待たせ」
「何ですーちび人間」
「お前らに見せたい物があるんだ。仲良くしてやってくれ」ジュンは後ろに隠れていた薔薇水晶を出した。
「・・・えーー!!!」皆が仰天した。恥ずかしそうに顔を真っ赤にする薔薇水晶。

今後、自分がローゼンだったなんて絶対に言う気は無い。



今まで通りの生活が一番なのだから。
486名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 23:31:59 ID:fgsH0a1k
あー微妙だorz微妙すぎる。
以上で終わりです。
487Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:01:55 ID:Q2LnTXnx
>>464の続き

42

金糸雀の契約したミーディアムである草笛みつは、あちらこちらで響く断続的な爆音や金属の衝撃音を聞いて目を覚ました。
奇妙な光景だった。薄暗い部屋の中に自分がいて、周囲の壁には一部壊れてる所があり、そこから外が見える。
まるで第二次世界大戦真っ只中のヨーロッパの町並みだ。
何より部屋の中の雰囲気を最も奇怪なものに仕立てていたものは、黒い羽だった。カラスのもののような、黒い羽。
それは天井や壁、床など至るところに無数に突き刺さっており、風を受けてそれぞれが微妙になびいている。
突然、背後で何かが雨あられと落ちてくる音がした。軽そうなものから重そうなものまで色々なものが落下してきている。
特に重くて巨大そうなものが地面に激突すると鈍い衝撃音が鳴り響き、部屋の床全体が震撼した。
一体何事かと、みつは振り返った。ぽっかり開いた壁の穴から外を覗いてみる。
まず始めに分かったのは、落下してきているのは上空より降り注ぐ岩や建物の断片だということだった。
それらは地面に当たるとより細かく砕かれ、四方に散っては転がる。
しかし、振ってくるのはそれだけではなかった。みつはそのあまりにも奇妙な光景にしばし釘付けになった。
腕、足、頭…四肢をもぎ取られ、バラバラになった人間の体の一部が降り注ぐ岩と一緒に落下してきている。
いや、人間ではない。よくみると、もぎ取られた腕には球体関節がある…"人形"の部品だ。
上を見上げると、まだまだ大量の人形の部品が灰色の曇り空の下を舞い、ゆっくりとこちらへ降りてきている。

悪夢を見ているに違いない。今日は13日の金曜日なのだから。誰がどう考えたってそういう結論に至る。
とはいえ、何故13日の金曜日が不吉なのか実ははっきりと定まっていない。イエス・キリストか鞭打ちの刑を受けたあと、
ついには磔刑に処された日という俗説が一般に知られているが、その日付が13日とは決まっていない。
決まっているのは金曜日ということだけだ。イタリアでは17日の金曜日が不吉の日にあたっている。
「ここは…nのフィールド?」
"夢"という単語の連想でみつは思い出した。そうだ、ここは現実世界ではない。まだ"そういう世界"が実在していたということを
信じ切ることは難しいが、鏡の中に飲まれたり、この世で一番嫌いな蜘蛛の巣 - それもとびきり巨大なものに捕らわれたり -
といった記憶を辿っていくにつれ、自分はnのフィールドという不思議世界に身をおいているという説が最も有力になってきた。
それはひとえに"夢の世界"だという。真紅ちゃんか…蒼星石ちゃんが言ってたっけ。
夢の中で迷子になったという金糸雀を探すために、蒼星石ちゃんが夢の扉というのをあけて、私はここに…
金糸雀!
瞬く間に金糸雀のことが頭の中を支配した。
「カナ…!カナはどこ…!」
危険を顧みず、みつは建物の外へと躍り出た。
何故自分は一人おいてきぼりにされたのか。蜘蛛の巣に引っかかったとき、恐怖のあまり気を失ったということだけは確信に近い。
「カナ〜!ジュン君!みんなどこ!?」
金糸雀、そして真紅やジュンを探すために、みつはみんなの名前を呼びながら廃墟の町並みを走った。
そこが今まさにアリスゲームという、ローゼンメイデン達の危険な戦場になっているということを知らずに。
488Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:07:58 ID:Q2LnTXnx
43

「おーほっほっほっほっほ!流石は第一ドール。やるわね水銀燈!」
金糸雀はバイオリンを構え、正面に立つ水銀燈と対峙しながら言った。
「でも警告しておくわ。いくら水銀燈といえども正面から私と闘うのは愚かなことなのかしら?」
「見苦しい強がりね」水銀燈は言った。「物陰に隠れて隙を突くことでしか闘えない弱者の喚きにしか聞こえないわ」
金糸雀は鼻で笑った。「卑怯ってことは、強いってことなのよ」
「ふっ!」水銀燈は地面を蹴ると翼を羽ばたかせ、金糸雀を目掛けて飛翔し始めた。その動きに沿って地面に風が沸き起こる。
にやりと金糸雀は笑みを浮かべた。まさに格好の獲物だ。「攻撃のワルツ!」バイオリンが曲を奏でる。
「なに…?」
押し寄せる音波にしばし空中で翼の自由を失い、水銀燈はその場でうつ伏せに落下した。
「ほっほっほっほっほお〜!水銀燈、あなたの知っての通り、私の攻撃手段は音」
金糸雀が言った。「音の持つ恐るべき性質は3つ!」バイオリンの弓を弦に寄せ、強くこする。「クレッシェンド!」
さっきのものより更に強い音波がバイオリンから放たれ、水銀燈に襲い掛かった。
衝撃波の力に水銀燈の体が打ち上げられ、大きな孤を描きながら後ろにひっくり返る。
「ひとーつ!音のスピードは一秒間に340メートル進む!あなたの飛ばす羽なんかでは到底敵わない速さなのかしら!
ちなみに言うと、海の中では更に早い!一秒で1500メートルも進むのよ!その性質を使ってイルカ達は遠距離でも会話できる!」
水銀燈は憎たらしげな顔を上げた。
「ふたーつ!」金糸雀のバイオリンが再び音を鳴らす。「音は見えない!かわせない!」
三度目の音波が瓦礫と泥を舞い上がらせながら水銀燈へ接近していく。
「チィ!」
水銀燈は仰向けになった身を再びうつ伏せに翻し、黒い翼で全身を覆い隠した。
すると、金糸雀は満面の笑みを見せた。
「みーっつ!音は遮断できない!よほど防音のすぐれた壁でない限り、音は隙間を見つけては入り込む!」
そして水銀燈の身を覆っている翼を見やる。「果たして"それ"は私の音を防ぎきれるのかしら?」
音波がついに彼女の元に到達したとき、黒い羽が大量に周囲に飛び散った。
翼を通して音が耳に入ってくる。水銀燈はしかめっ面で両耳を手で塞ぎ、毒づいた。
「こ、こんな…耳障りなバイオリンの演奏が世界にあっていいの…?」
頭がガンガンする。大量の水が入り込んだかのように重い。水銀燈は拳で軽く頭を二回叩き、翼の防御を解いた。
金糸雀の攻撃の前ではこの防御は意味を成さないらしい。
水銀燈が手を地に就いて立ち上がったとき、めまいにも近い感覚が起り、一瞬足元がふらふらと揺らいだ。
「あんのチビィィ!」
水銀燈の怒りもいよいよ頂点に達しかけてきた。
怒りに目をぎらつかせながら正面に向き直ると、金糸雀は渾然と姿を消していた。
「どこいった!?」左右に顔を振って金糸雀を探す。
「ほーほっほっほ!」
その笑い声は上方から聞こえてきた。水銀燈が反射的に顔を上げる。金糸雀は傘を片手に掲げながら、宙を浮いていた。
「正面切って闘うのも良いのだけれど、私はあくまで楽してズルするのがモットー。それじゃあまた合うのかしら、水銀燈!」
風を傘に受け、浮遊しながら金糸雀は言った。どんどん姿が遠のいていく。
「逃がさない!」水銀燈の翼から羽が放たれる。黒い羽は金糸雀の体を通り過ぎ、傘を貫通して穴を無数に開けた。
「げっ!」みるみるうちに高度が落ちていく。必死に足で空中を掻き、金糸雀は近くの建物に奇跡的にしがみつくと、屋上までよじ登った。
すかさず後を追って水銀燈がその建物の上に飛ぶ。すると、建物の奥へと入っていく金糸雀の姿がぎりぎりで彼女の視界に入った。
建物の屋上を走り、水銀燈は金糸雀が入っていったのと同じ入り口から建物の中に入っていった。
水銀燈が自分を追ってきたのを目で確認した金糸雀は、破れた傘を右手に建物の中を走って思考を巡らせた。
こちらにはまだ考えがある。かならずうまくいく。
489Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:14:26 ID:Q2LnTXnx
44

翠星石とはぐれてしまった。雪華綺晶に現実世界への帰り道も絶たれた。
更に悪いことに、気付いたらジュンまでもいない。
「どうすればいいの…!」
真紅は雛苺の手を引きながら、長い通路の中を走った。
ついさきほど、この建物の上の方から大爆発を起こしたような衝撃と音が伝わってきたと同時に、外で凄まじい閃光がほとばしった。
それ以来、天井を通るひびの隙間から断続的に砂が降り注いでくる。
あの青白い閃光に、真紅は見覚えがあった。水銀燈のものに違いない。けれど、今回ほどの大規模な爆発は未だかつてなかった。

アーチ型の入り口を通り、四角い部屋に出たところで、突然道が絶たれた。
別の空間へと続く細長い通路が幾つか先に伸びているが、いずれも入り口に木の板や有刺鉄線が張られ、バリケードを作っている。
真紅は毒づいた。「"ベトコン"が水銀燈のフィールドで特訓している訳でもない!」
「真紅、真紅〜!」雛苺が真紅の腕を引っ張った。「後ろから、白薔薇がくるの!」
雛苺の言葉を聞いた真紅は後ろを振り向くや否や、雛苺の頭を鷲づかみにして地面に押し付け、自分も体を伏せた。
「イたぁっっ!」
泣き目の雛苺が痛みを訴えるなか、二人の頭上を数本の蜘蛛の糸が伸びてゆき、壁や木の板に付着した。
間髪入れずに真紅が身を起こして反撃に出る。右手を出して、さっき通ってきたアーチ型の入り口に向かって花弁を放つ。
丁度その入り口を通ろうと飛んできた雪華綺晶に花弁が着弾し、彼女は空中で一回転しながら地面に体を打ちつけた。
雛苺を背に庇いながら、真紅は雪華綺晶にステッキを向けて歩き寄る。
「実体がないなら痛みも分からないはずね」
雪華綺晶が顔を上げた。「ふふ。痛みが分からない、ですか…」
泥だらけの地面に伏せたのに、顔を含めて体も全く汚れていないことが、彼女がアストラル体であることを物語っていた。
真紅は雪華綺晶の背中にのしかかり、彼女の首を締め上げた。
「なぜ、ローゼンメイデン全員を、水銀燈の世界に連れ込んだの?何が狙いなの?」
首を絞められた雪華綺晶はまるで苦しそうな素振りも見せず、また何も言葉も発さない。
沈黙が流れる。
「なぜ!?」真紅が迫った。「答えなさい!あなた、水銀燈を利用しようとしているでしょう!?」
「可哀想…」雪華綺晶が言い始めた。「可哀想。可哀想な…薔薇水晶」
「薔薇水晶?」予想もしなかったドールの名前が出てきて、真紅は一瞬首を絞める力をゆるめかけた。
「可哀想な…薔薇水晶。真紅にまた首を絞められて、泣いています…真紅が、真紅が!!ああ、体が。薔薇水晶が」
雪華綺晶の体がぶるぶる震え始める。「美しい…?真紅より…?負けない…ああ…お父様。ローゼンメイデンに負けない?」
「あなた…」寒気が背筋に走るのを感じ、真紅は体を震え上がらせた。「あなた…まさか…薔薇水晶を…」
「真紅はどこー!」雪華綺晶は叫んだ。
声に合わせて地割れが起り、部屋の中がガタガタと揺れると、割れた地面の間から巨大なクリスタルの結晶が突き出てきた。
「" Traumend ist gefallen in Regieren ! "」
もう一度雪華綺晶は叫んだ。至る所でひび割れが生じ、天井や壁からも結晶が生えてくる。「夢は支配された!」
一本の結晶の針が真紅をめがけて上から伸びてきたので、彼女はやむを得ず雪華綺晶を手放してその場から退いた。
結晶は雪華綺晶自身にまで届くことなく、その直前で止まった。
「こ、これは?」真紅は驚きに満ちた顔で部屋に現れた結晶群を見渡した。「薔薇水晶の?…いいえ違う…」
何処からともなく結晶が突き出てくる現象は薔薇水晶の能力を思い起こさせるものだったが、
出てきた水晶は薔薇水晶のものとはタイプが違っていた。
それは氷だった。透明で透き通っている。
「氷の結晶だわ…」
その氷の結晶に見とれている側から、雪華綺晶がいきなりこちらへ飛んできた。
真紅は即座に反応した。
流れるような動きで彼女の胸倉を掴み、そのまま雪華綺晶を持ち上げて後ろへと投げ飛ばす。
壁に頭を激突させる雪華綺晶を予想した真紅だったが、いきなり右手首に白い棘が絡まった。
投げ飛ばされがてらに伸ばしてきた雪華綺晶の棘だ。
「あっ!」
棘に引っ張られてつんのめり、前向きに転倒する。
「しまった…!」真紅はとっさに絡まった棘をステッキで断ち切ろうとしたが、遅かった。
ズキンと頭部に痛みがはしり、視界が曇った。
490Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:20:47 ID:Q2LnTXnx
「真紅…真紅…」何処からか声がする。「真紅…"ジャンク"ってなんなの…?」
真紅は後ろを振り向いた。水銀燈が丸裸で立っている。腹部には何も…ない。
「真紅っ」水銀燈が両手を合わせて不安げに真紅を見つめている。
「お父様は私を抱きしめてくれる…?間違いないでしょ…?私に微笑んでくれるって、あなたは言ったでしょう…?」
真紅は振り返ってその水銀燈を無視した。これは雪華綺晶に見せられている幻覚だ。相手にすればする程深みにはまる。
「まって、まって、真紅…」水銀燈が真紅のほうへ手を伸ばす。「いかないで…絶対、お父様は私を見てくれているんでしょう?」
水銀燈が真紅を追おうと身を乗り出すと、上半身だけが前に動き体が真っ二つに割れた。
苦悶の叫びが上がる。
「真紅ー!」両手だけを使って、なんとか体を動かす。「お父様は私を愛してくださっているのではないの!?」
目を瞑って真紅は後ろに駆け出す。水銀燈の体が燃え始める。「あああ!真紅、熱い!助けて!真紅ー!いやぁああぁ!」

突然真紅の意識が現実に戻った。瓦礫に埋もれた地面が目の前に映る。
「はっ!!」
とっさに身を翻して後方の雪華綺晶を見ると、雛苺の蔓が雪華綺晶の全身を拘束し、また真紅の腕に絡まった棘を断ち切っていた。
「雛苺…!」
雪華綺晶は自力で蔓を解こうともがいたが、無理だと悟ったらしい。それから神に助けを乞うようにして天井を見つめ始めた。
首が持ち上がり、ゆらゆらとした白い髪が垂れ下がる。
「 traumend..」彼女は呟いた。「偽りの夢」
幾本もの氷の結晶が雪華綺晶を取り囲むようにして地面から現れ、雛苺の蔓をズタズタに引き裂いた。
体が自由になると目にも留まらぬ速さで片手を水晶に添えて上に飛び乗る。そこから雛苺の元へと飛んでいく。
「雛苺…!」
それを見た真紅はとっさに左手の先で狙いを定め、雛苺と雪華綺晶の間を狙って紅の花弁を放つ。
しかし、途中でいきなり突き出た氷の結晶に遮られた。
襲い掛かってくる雪華綺晶から雛苺は逃げようと試みたが、周りを氷の結晶が囲いうまく身動きがとれない。
僅かな抵抗もむなしく、雛苺は雪華綺晶に首を掴まれ持ち上げられた。
「死に準備は出来ました」
掴んだ雛苺を真紅に見せつけ、雪華綺晶はもう一度言った。「死に準備は出来ました。"You are ready to die.." 」
その声は、まるでエコーがかかっているかのように繰り返し部屋の中に響き渡った。
「 You are ready to die 」
部屋の中の空気が突如冷たくなり、呪いがかかったかのように一瞬のあいだ闇が増した。
「やめなさい!!雪華綺晶!!」遮る氷の水晶の間をかいくぐりながら真紅が叫んだ。
ジューと音を立て、掴まれた雛苺の首の裏筋から煙が立ち昇り始めた。灼熱の痛みが雛苺を貫き、彼女は悲鳴を上げた。
「ああっああああ!」
雪華綺晶の首を掴む手が強まる。
「首がぁ!首が切れちゃあウ!」
「今助けるわ!」真紅は結晶の上によじ登り、結晶から結晶へと渡り歩くようにして一気に雛苺に接近した。
十分な所まで距離を詰め、肘を立てると結晶の上から雪華綺晶に飛び掛る。
肘の先が雪華綺晶の胸元を強打し、壁に叩きつけられながら地面に倒れる。すかさず真紅が彼女の手元から雛苺を抜き取る。
真紅に抱えられた雛苺は赤ん坊も同然の泣き顔で真紅の胸元に顔をうずめた。
「真紅ぅー!うああん」
真紅は一息つき、雛苺を抱き返した。「はぁ、間に合った…」
491Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:22:38 ID:Q2LnTXnx
二人が安心している隙を突き、雪華綺晶は倒れたままの状態で両手から二本の棘を伸ばした。
それは真紅の肩を通り過ぎて後ろに回り、それからくるりと引き返すと、何重にも真紅の首に巻き付いた。
「しまっ…!」慌てて両手で棘を掴み、断ち切ろうと揺れ動かすものの一向に切れそうな気配が無い。
薔薇の棘のトゲが真紅の首にズキズキと痛みを走らせる。
再び幻術に襲われまいと、真紅は上から頭を振り落として雪華綺晶に頭突きを食らわせた。
ゴツン!
ひるんだ隙に右手のステッキでまず左方の棘を切断し、それから左手にステッキを持ち替えて右方の棘も断ち切る。
「おわりよ…!」
真紅はステッキを振り上げ、雪華綺晶に向かって振り落とそうとした。
「いやぁ!やめてぇ!ヒナを傷つけないでー!」
両手を顔にかがけ、恐怖の表情が涙目に訴える。真紅の手が思わず止まった。「…雛…苺…?」
雪華綺晶はにやりと笑い、頭を思いっきり持ち上げて真紅の顔面に頭突きをそっくりそのまま返した。
「いあ!」真紅の体が後ろへ仰け反り返る。
「うっふふふふ、真紅ぅ…」今度は水銀燈の真似をしながら雪華綺晶が立ち上がった。「あなたってほォんとうに…おばかさん♪」
状況を悟った真紅は怒り心頭した。痛む鼻先を押さえ、地面を這ってこぼれ落ちたステッキを拾う。
「薔薇水晶の残骸を、食ったのね!!」地面に伏せたまま振り返り、真紅は叫んだ。「その氷の結晶の技、薔薇水晶のものよ!」
「私と薔薇水晶が似ていることにはねぇ、こわぁぁい秘密があるの。うっふふふ」
雪華綺晶はまだ水銀燈の真似をしている。「聞いたら驚いて腰が抜けちゃうわぁ。性交し過ぎた叔父のようにね」
真紅は歯を噛み締め、泥を握りつぶしながら、ゆっくりと立ち上がった。
まだ首にかかっている薔薇の棘の残骸を乱暴に取り除き、怒りに燃える目で雪華綺晶を見つめる。
「これでけは言っておくわ、雪華綺晶。水銀燈と私の過去について、あなたが首を突っ込むことは許さない」
言われた雪華綺晶は優しげな笑みを真紅に返した。「怒った顔も相変わらずブサイクね」
「い…!」
真紅は目の前のドールを押し倒しそうになったが、どうにか抑えた。
「全く!人を怒らせることにかけては水銀燈かそれ以上ね、あなた!一体何処までドール達のやり取りを
ストーキングしていたというの!?あなたのその能力に憧れて買って出てくる変態男ドモが続出するわよ!?」
そこでようやく雪華綺晶は水銀燈の真似を解いた。「真紅お姉さま。言葉を抑えになって」
「うるさいわね!あなたの方がよっぽど言葉を慎むべきだなのだわ!」
真紅は雪華綺晶と対峙したまま後ろの雛苺に声を掛ける。
「雛苺、あなたはここから逃げなさい!ジュンと合流して、もう一度翠星石を探し出して、
このフィールドから現実世界に戻るのよ!」
雛苺は納得していない様子だった。「でも、でも、真紅をおいて一人で逃げるなんて」
突然、真紅の周辺の地面から氷の結晶が突き出し、彼女を取り囲んだ。
「雛苺!」雪華綺晶の棘が襲い掛かり、真紅はステッキで追い払う。「私たちの目的を忘れたの?戦うことではない -
みんな無事にこのフィールドから現実世界に帰ることよ!私もすぐにあなたを追っていくから!この"問題アリ"の第七ドールが
またしても翠星石の夢の扉を閉じてしまわないように、私が少しの間引きつける。だからあなたはいくの!早く!」
雛苺はなかなかその場から動こうとせず、尚も躊躇を見せた。「早く!」真紅がもう一度言うと、いきなり右手から花弁が出た。
「ひぃっ!」雛苺は飛び上がり、アーチ型の出口を目指した。
後ろで金属っぽい金切り音が鋭く響いてきたが、雛苺は振り返らずに部屋から出た。
492Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:39:46 ID:Q2LnTXnx
45

「私を傷つけるのですか?妹を殺すのですか?」
雪華綺晶が首を傾げて言った。
「その挑発にはのらくてよ、白薔薇。姉妹のローザミスティカを奪うつもりは私にはない」
真紅はステッキを持ち上げ、雪華綺晶に向けた。「ただ、少々妹をしつける必要があるみたいね」
青色の瞳と金色の瞳が互いを見つめ合う。
「まだ分かっていないようですね」驚くべき素早さで棘を鞭の様にしならせ、雪華綺晶はステッキを真紅の手元から払った。
ステッキが何処かへ吹き飛び、一瞬の内に真紅の視界から消える。それから数秒経つと、後ろの方でステッキが地面に落下する音が響いた。
雪華綺晶は一歩一歩真紅ににじり寄り始める。
「あなたは分かっていない…ローゼンメイデン第七ドール、雪華綺晶と対峙しているその意味を」
恐怖に駆られ、思わず真紅の右手の拳が前に伸びた。顔面に届く直前でその右手首が雪華綺晶に掴まれる。
真紅の目が驚きに見開かれた。
「その肉弾戦。あなたの得意な肉弾戦。薔薇乙女として最も誇り高く、淑女たるものがこの戦い様」
雪華綺晶は言った。「それがアリスゲーム。究極の少女を目指し、醜い戦いを繰り広げる。薔薇乙女が湾曲していく…あら不思議」
文字通り掴まれた真紅の手首が溶けて湾曲し始めた。肌色の煙が立ち昇っていく。
「あああっ!」
焼け付く痛みと自分の右手がゼリー状になっていくようなおぞましい感覚に真紅は苦痛の声を上げた。
右手を引っ込めようとしたが、強引に引いたりしたら手首から先が無くなるような気がしてやめた。
残された自由の利く左手を振って雪華綺晶の頬を力の限り殴る。雪華綺晶の首が左向きに捻じ曲がり、顔が真横を向く。
しかし、右手首は掴まれたまま、依然溶かされ続けている。
真紅はうめき声を上げながら雪華綺晶の左肩を掴み、体を前に押し始めた。
力の限り数歩前まで押しやると、やがて雪華綺晶は後ろの壁にドンとぶつかった。
まだだ。まだ右手首は掴まれたままだ。
真紅の中ににわかに恐怖心が湧き出てきた。このままでは右手首から先がなくなってしまう!
自分はかつて水銀燈に右手をもぎ取られたことがある。体の一部がなくなる、あのジャンクになる恐ろしさ!もう二度と味わいたくない。
「手を、手を離して!」真紅は叫び、容赦のない力で雪華綺晶の顔面に再び頭突きをした。
雪華綺晶の頭が壁の中にめり込み、周辺の壁にヒビが入る。
「ようやく…」
まるで苦しそうな表情もせず、虚ろな目をしたまま、雪華綺晶が声を出した。
「ようやく、真紅姉さまの殺意が私に伝わってきました…」
雪華綺晶が微笑み、いま一度目前に立ちはだかってきた時、真紅は半ば絶望を覚えた。
殴っても、頭突きをしても、手応えこそはあるが、雪華綺晶にダメージは全く無い。相手はアストラル体だからなのだろうか…。

このまま右手が溶かされてしまうのではないかと思い詰めた真紅だったが、そこで雪華綺晶は乱暴に手を振って真紅の右手を投げ出した。
「うっ!」真紅はバランスを崩しよろめきながら、開放された右手首を左手で押さえる。
溶かされた部分は泡立ち、ジュワジュワと音を立てているが、さほど重症でもないようだ。
不安を抱きながらも慎重に右手の指先を動かしてみると、思った以上にスムーズに動く。
「なぜ手放したの?」依然右手を押さえながら真紅が問い掛けた。「手加減のつもり?」
「また頭突きをされたくなかったから」雪華綺晶は答え、真紅を取り囲むように部屋の中を移動した。「 Peitsche 」
太い白薔薇の棘が何本か集まって束になり、それが鞭を形作って雪華綺晶の手元に納まった。
「ふふっ」
雪華綺晶は笑った。その威力を見せ付けるように、鞭を振るって近くの氷の水晶を叩く。
ビュっと鋭い音がなり、結晶の先端が砕けた。氷の破片が飛び散り、地面にバラバラと落ちる。
「知ってます?」
雪華綺晶は鞭の先端を持ち直し、ビシっと水平に伸ばして言った。「鞭の先端の速度は音速を超えるそうですよ」
なんてドールなの!これまでのアリスゲームで、真紅は未だかつてこれ程までの恐怖を味わったことはなかった。
戦闘力が違いすぎる。ましてアストラル体でどんな物理攻撃も効かないなんて!

こんなドールを相手に、勝ち目など有り得ない!
493Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:41:13 ID:Q2LnTXnx
限界だ。再び雪華綺晶が鞭を振い始めた瞬間、真紅は全力でその場から逃げ始めていた。
氷の水晶を避けて通り、アーチ型の出口を目指して走る。
雪華綺晶は軽やかな動きで水晶の上に飛び乗った。それから狙いを定めて二本蜘蛛の糸を伸ばす。
真紅の両足に命中した。
糸の強烈な力が真紅の足を後ろに引っ張り、勢いよく前に転ぶ。顎を地面に打ちつけ、真紅の顔が苦痛に歪む。
恐怖の雄叫びを上げ、むなしく地面を両手で引っかきながら、真紅は雪華綺晶のもとへと引き摺り戻された。
「ホーリー・ジーザス。13日の金曜日…」
白い編み上げのロングブーツが真紅の腰を踏みつける。
「そろそろお分かりでしょう?お姉さま」
雪華綺晶の頭上で鞭がぶんぶん回る。
そして振り落とされた。
スパーンと音が鳴り、真紅の背中の服が引き裂かれる。大きな引っ掻き傷のようなものが三本残る。
体がしなり、痛みのあまり限界まで背筋が持ち上がって天を仰ぐ。息がつまり、唸り声も出ない。
それは真紅がこれまで経験した中で最大の痛みだった。すでに涙目だ。
「痛いのですか?苦しいのですか?鞭打ちをされる日がイエス・キリストと重なりましたね…可哀想に。痛そう。可哀想なお姉さま…。」
雪華綺晶は再びぶんぶん白薔薇の鞭を頭上で振り回した。「でも、私の中の薔薇水晶が真紅を苦しめろといって止まらないのです」
両手を握りしめて痛みに耐えながら、真紅は声を絞り出した。「薔薇水晶は、ただ槐の願望に応えようとして、私達と戦った…」
「あっはっはっはっはっはっ!」
その言葉が笑いのつぼに入ったのか、雪華綺晶は今までとは違う、違和感を覚えるほど大きな声を出して笑った。
「和平を望むあまりモノが見えなくなっておりますわ、お姉さま!私が覚まさして差し上げる!」
そして二度目の鞭打ち。
真紅の服の背中の部分には、今やぽっかり穴が開いたようにぼろぼろになっていた。
中の下着まで裂かれ、真紅の背中の肌が露になってくる。
「…っ!…!…」
痛みが限界を超え、両手がぶるぶる震えだしたことに真紅は気付いた。歯軋りが止まらなくなり、口の中でカリカリカリと音を立てる。
少しでも痛みを紛らわそうとスースー激しく空気を出し入れするような荒呼吸をする。両目の目蓋も全開まで上げることが出来ない。
「パッション!ああ。何て可哀想なお姉さま…痛そう。苦しそう…」
雪華綺晶は悲しげに真紅を見つめ、鞭を持つ手を緩めた。
「二回でどうにか薔薇水晶の衝動を抑えることが出来ましたわ」
「私の…」
真紅は静かに口を開いた。体の痛みで口元が痙攣し、なかなかうまく言葉を発することが出来ない。
「私の…!…!…!ローザミスティカを奪うつもりは…!ないの?」
雪華綺晶は笑った。「お姉さま。私にローザミスティカは要らないの。いえ…、
私は、"アリスゲームで勝ってもアリスになれないドール"なんです」
494Rozen Maiden LatztRegieren V:喪失 The lost:2007/07/13(金) 00:42:49 ID:Q2LnTXnx
「ローザミスティカが - 要らない?」
痛みのせいでなかなか頭が回らない。
「じゃあ、何故あなたは約束の鐘なんてものを鳴らしてまで、ドール達を水銀燈のフィールドに集めて、アリスゲームを始めさせたの?」
「ふふ」不穏に笑う雪華綺晶。「ローザミスティカを、水銀燈のお姉さまに贈る為に…。"真紅お姉さま以外の"ローザミスティカを」
「どうして?」水銀燈にローザミスティカを贈る?そんなことしたら - 「どうしてそんな事を?」
雪華綺晶の笑みが大きくなった。
「あら?お姉さまも最近になって存じられたではありませんか…"アリスゲームだけが、アリスになる方法じゃない"」
信じられない関連性に気付き、真紅の目が驚愕に見開かれた。「あなた、知っていたの?いえ、"知っているの"?」
その質問の意味が、いかに真紅にとって重要な意味を持っているかを雪華綺晶は知った。
第五ドールのこの真紅はアリスゲームの道を避け、お父様に告げられた、アリスになる為の別の方法を探している。
その通り…。私は、その方法のことを、生まれた時から知っている…
「その方法は、実はドールによってそれぞれ異なっているんです」雪華綺晶は答えた。「少なくとも私には…水銀燈のお姉さま
を通ることで、至高の少女へとなり得るのです…」
真紅は呆然と雪華綺晶を見つめた。もしかしたらすがるような視線で見ていたかもしれない。
お父様は、第七ドールの雪華綺晶に、アリスゲーム以外の方法について私達より多くのヒントを与えているらしい。
「もう一つ、いいことを教えてあげる。お姉さま」
雪華綺晶はしゃがみ、不様に倒れている真紅の頭を撫で始めた。
「第七ドール、この私さえ生まれてこなければ、アリスゲームが始まることなんてなかった。私が…私が発端なの」
三度目の鞭を頭に喰らったのではないかと、真紅は錯覚した。「な…なんですって…?」
495415:2007/07/13(金) 02:47:52 ID:jtYyDvIb
ヤーハーハー。今夜は大量だね。
いつもの職人さんといい、割り込んじゃって申し訳なかった>>477さんといい。
眼福眼福ゥ!
496名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/13(金) 07:23:09 ID:TQdCcWah
キム死ね
497名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/13(金) 09:01:14 ID:eQTAitJs
GJ最近本当にこれ楽しみだよ。
薔薇水晶の残骸で思い出したけど、金糸雀に片腕ぶっ飛ばれたのが多分残ってるよな。
フィフスエレメントみたいにあそこから蘇ったりしないかなー
498名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/13(金) 12:16:21 ID:qn+rz8hZ
三本立ての豪華なSS投下!!
GJ!GJ!GJ!
499名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/13(金) 18:03:48 ID:qn+rz8hZ
やっと落ち着いて読めた。

>>478
この世界好き。
ジュンの妙な冷静さが堪らない。
>「……話を聞いてください、にゃ。」
で吹いた。
続きを切望

>>477>>482-486
ジュン=ローゼン?という原作での疑問を
アニメの続きで再現してくれたって感じ。

>>487-494
むうう。息を付かせぬ展開。
ドール一人一人がなかなかしぶといというか頑張りますなー。
既にSSの域を超えている。長さがw
500名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/13(金) 23:12:32 ID:vfXx+FK9


 ((;;;;゜;;:::(;;:  ∧__,∧ '';:;;;):;:::))゜))  ::)))
 (((; ;;:: ;:::;;⊂(´・ω・`)  ;:;;;,,))...)))))) ::::)
  ((;;;:;;;:,,,." ヽ旦⊂ ) ;:;;))):...,),)):;:::::))))
   ("((;:;;;  (⌒) |どどどどど・・・・・
         三 `J

         .∧__,,∧   ;。・
       ⊂(´・ω・`)⊃旦
    ☆   ノ   丿 キキーッ
      ヽ .ノ  (⌒) 彡
       と_丿=.⌒

         .∧__,,∧ゼェゼェ
        (´・ω・;)      500ゲト
         ( o旦o )))       SSの「ここがダメ!」とか言っていただけると
         `u―u            うれしいですが・・・
501名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 00:12:46 ID:8Je4UlnA
>>500
わしみたいなSS書けない人間から見れば続けてくれれば充分じゃて
502415:2007/07/14(土) 00:20:38 ID:cJF4/k81
昨日の続き。無駄にシリアスだけど別に意味は無いんだよねコレ。もっと笑えるといいよね。
-------

「あの…じゃあ僕は…」
「君は…アリスゲームをどう考えている」
帰ろうとしたら突然の問いかけ。僕は呆然。病人相手に突っ込みは流石にできない。
「いや、まあ、個人的には無ければいいと思いますが」
「複数のドールと契約しておいて、か」
ばつが悪そうに頭をかいて誤魔化す。何が言いたいのかサッパリわからない。
「7体のドール全てが揃う。それが開始条件。そして条件が満たされた以上、もう始まっている。」
「はぁ…そうでしたか………あれ?」
何かが引っかかった。指を折って計算してみる。黒いのに黄色いのに、翠、蒼、紅…
「薔薇水晶は私の作品だ」
数が合った。だが、そうなると薔薇水晶はどうしてアリスゲームを始めたがるのだろう。
「全ては我が師であったあの男、ローゼンを…」
自分語りモードに突入した槐さんの熱いトークが終わるころには時計の長針が半周していた。

「…つまりだな、薔薇s」
「あの、すいません。ローゼンとの確執や、槐さんが薔薇水晶萌えなのはよくわかったんですが」
「何だい」
「風邪じゃないでしょ。絶対」
「…鋭いな。ばれないと思ったんだが」
バレバレだって。うわ、殴りたい。いかにも意味ありげに臥せってますよ的な笑顔だ。
「帰っていいですか」
「いや、本題に入ろう。端的に言えば、だ。アリスゲームを始める気は無いのか」
「お断りします」
「面倒を先延ばしにしているだけではないのか?」
「いや、そもそも潰し合いを見たくないというか…そういう貴方はどうなんですか」
擬似ローゼンメイデンを作ってまで張り合うほどの相手がいるような人生が僕には想像できない。
だが、そこまでしたからにはローゼンメイデン全てを倒すくらいはやってのけそうだ。
「最初はそうするつもりだったんだ。だが…」
「ですが?」
「君とドール達の話を薔薇水晶から聞いていると、戦ってもしょうがない気がしてきてな」
この作り手にして、かの娘あり。子は親の鏡とはよくいったもんだね。
だけど僕は何も言い返せなかった。ただ一言、お大事にと告げて薔薇水晶に送り返してもらった。
503415:2007/07/14(土) 00:22:17 ID:cJF4/k81
「これ」
別れ際に彼女が手紙を渡してくる。蝋できちんと封がされた、西洋式のものだ。
「お父様が貴方にって」
「…最初からそうすりゃいいのに」
目の前で開けて中を読む。丁寧な文字(しかも難しそうな漢字には振り仮名つき。大きなお世話だ)
の手紙には何かがあれば力になるという類のことと、雪華綺晶に対する考察が書いてある。
それから最後に『しばらく薔薇水晶を頼む』と急いで書き加えたような筆跡で書いてあった。
「意味がわからん、わけわからん。結局僕にどうして欲しいんだ?」
「ごめんなさい」
「何だよ、急に」
「無理やり連れて行った」
「しょうがないだろ。風邪じゃないにしても寝てるような事態なんだから」
「そうじゃない…でも、あなたは、優しい」
「やめてくれよ変な事いうの。しかもお前のこと頼むって書いてあるぞ」
酷いジョークだ。呼びつけておいて語るだけ語って、最後の最後にこれだもんな。
「…よろしく」
「だから、やめろって。早く槐さんのところに帰れよ。他のドールが来たら面倒だぞ」
堪らないのは他のドールとの軋轢とか面倒ごとが増えるとか、そういうことじゃない。
それを受け入れようとしている自分に、だ。これが水銀燈でも雪華綺晶でも同じだろう。
どんどん自分の生きている世界が普通じゃなくなっていくのが自分でもわかってくる。
しがない裁縫と通販好きのオタクで引篭もりだったはずなのに。真っ暗な未来が見えてたはずなのに。

とにかく無理やり薔薇水晶を鏡の中に押し戻すと、ドールズが寝てるのを確認して風呂に入った。
姉ちゃんは自室にいたので僕がいなくなったことも気づいていないようだ。

翌朝にドールショップに行ってみると、しばらくの間休業しますという旨の張り紙がしてあった。
家に帰ると大きい包みが届いて、その中身が薔薇水晶と気づくまで僕は結構な時間を費やした。

【END:E(薔薇水晶ルート)】

「チビ人間、また怪しいブツを買ったのですか?」
「いや、その、なんだ。開けるな。絶対に開けるな。」
「怪しいです。さてはエロエロなものですね?けだものですぅー」
「バラバラなものだと思うよ。うん、薔薇。」
ダンボールを抱えあげて物置へ安置しておく。
「ジュン、どうしてそんなに汗をかいてるのー?」
「そんな包みはどうでもいいから、さっさと紅茶を入れて頂戴」
「わかった!わかったよ!ああもう!先に行っててくれ!」
首をかしげながらキッチンへ行く3人に背を向けてビリビリとダンボールを開ける。
中には見覚えのある鞄と、その中に薔薇水晶が入っていた。
「ワレモノ注意…」
「自分で言うなよ…ついでにナマモノじゃ無いのか、お前」
首根っこをつかんでキッチンまで連れて行く。そのあとのキッチンは地獄だった。
思い出したくも無い。だけど僕はとりあえず日常を取り戻し……た?
504415:2007/07/14(土) 00:26:38 ID:cJF4/k81
とまあ、こんな感じで薔薇水晶の話は以上。解説なんて親切なことは、きっとしない。
毎回のENDは各ルートに分岐してますとかそういうことも言わない。

>>498-499 豪華なのは2つです。俺のは、その、あれだ。刺身のツマと思って。
>>500 批評歓迎?いや、何の作者か知らないので何とも。

あ、俺も批評歓迎。だけど突っ込みどころが多すぎて突っ込めないに1ペリカ。
ところで次に何を書こうかなぁ。無責任なリクエスト受付中。書けるかどうかは知らない。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 00:42:28 ID:fh48FsUi
>>504
あ、500は>>477です。
506名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 03:24:43 ID:dfcAND4Q
そろそろ容量オーベル
507名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 06:22:49 ID:Fx31oIxq
朝から新スレ立てるのに失敗。誰かよろしく。
508名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 06:50:09 ID:2k9CGydY
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1164813753/
何かもうひとつあったけど
509名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 09:22:13 ID:1vw2mjTs
んじゃそっち利用するか
510名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 12:50:48 ID:lMS20/n9
私も立てられませんでした・・・

>>508
そことこことはスレッドの趣旨が違っていて
>508は何でもあり、このスレッドは過度のエログロは禁止になっています
詳しくは両スレッドの>>1を参照してください
511投稿作品まとめ (敬称略):2007/07/14(土) 12:53:09 ID:lMS20/n9
01. 【 漆黒の翼 】 >8-9 (◆LNZbyB1zfI)
02. 【 -- (田舎の男) 】 >14-21 >37-42 >49-50 >53-62
03. 【 Rozen Maiden LatztRegieren 】 >73-77 >130-135 >217-223 >263-271 >308-315 >328-334 >347-354 >374-380
                         >403-410 >461-464 >487-494
04. 【 -- (登校) 】 >104-106
05. 【 -- (ファミレス) 】 >124
06. 【 SUPER SIZE SHINKU 】 >153-162
07. 【 -- (登校拒否) 】 >208-209
08. 【 プライド 】 >231-233
09. 【 アリスゲームにゴリラ参戦!! 】 >276-277
10. 【 -- (ドールズ製作中) 】 >284-285
11. 【 梅岡の奮闘日誌 】 >338
12. 【 -- (水銀燈とめぐ) 】 >340-341 >343
13. 【 人形総進撃 】 >359
14. 【 水銀燈・告白編 】 >362
15. 【 ロックマンJUM 】 >369 >388-389 >399 >426
16. 【 雛苺・彼岸編 】 >401
17. 【 -- (ジュンとドールズ) 】 >423 >428 >453-454 >457 >472-473 >478 >502-503
18. 【 -- (薔薇水晶と雪華綺晶) 】 >431 >447
19. 【 第5話 語り部 die Erzählerin 】 >433-445
20. 【 -- (トロイメントの終わり方) 】 >477 >482-485

計 20 作品 おつかれさまでした
512名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 18:37:45 ID:WQMFh2he
636 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 21:13:44 ID:28s6kpFF
カナリア好きは、「敢えて不人気なデコ出しキャラを好きな自分」が好きなんだろ^^
正直に言えよw

642 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 22:20:16 ID:33NEsrw+
>>636
確かに金糸雀信者ってそういう中二病っぽいイメージがある
513415:2007/07/14(土) 19:54:11 ID:+N5OHbhs
区別のためにタイトルつけたほうがいいのか。
じゃあ自分は「微妙な日常」ってことで。
514名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/14(土) 22:27:12 ID:q1yxvHbt
次スレ立てた。
後よろしく。

【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 6【一般】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1184419565/
515名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/15(日) 01:40:33 ID:pMvTALmu
     .ィ/~~~' 、   ┌- 、,. -┐     _        ___   ┌──┐ 
    、_/ /  ̄`ヽ}   く|_,.ヘ_|〉   ,'´r==ミ、  く/',二二ヽ> i二ニニ二i  , '´ ̄`ヽ   r@ ̄~@,
    ,》@ i(从_从))  ノ イ从|从)、  卯,iリノ)))〉  |l |ノノイハ)) i´ノノノヽ))). i ノ '\@   /ノリliiハilハ
    ||ヽ|| ゚ -゚ノ| ||  |ミ|ミ!゚ ヮ゚ノミ!|  |l〉l.゚ ー゚ノl|l  |l |リ゚ ヮ゚ノl|  Wリ゚ -゚ノリ  ξ ゚ ヮ゚ノξ ノ从゚ - $从
    || 〈iミ''介ミi〉||  `'' ([{.∞}]) '  ''|!/'i)卯iつ  ノl⊂l_介」つ ⊂)_介」つ  kOi∞iミつ  ノ从とi,,ξ,,,iつ
    ≦ ノ,ノハヽ、≧   /__ハ_|     ''y /x lヽ   ≦ノ`ヽノヘ≧   〈__l__〉    (,,( ),,) ノリ从く,,,,ξ,,,,>リ从
    テ ` -tッァ-' テ   `もテ     l†/しソ†|   ミく二二二〉ミ  〈_ハ_〉     じ'ノ'       UU
516名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/15(日) 10:57:13 ID:2AJyf90E
        ┌──┐
         i二ニニ二i  在日死ね
          i´ノノノヽ)))_ _ _
         Wリ|゚ ー゚〔::二二〔()           ...:;:''"´"'''::;:,,, ドガァーーン!!
        /'i)介つ〔三三三:〔[二[二二二[〔()〕″     ,,;;;;´."'''
      と⌒__ ⊂ソ |ミ|| |_|_|  /A     '''''::;;;;::'''"´



         ヽr'._ r`γヽ./.゚;・.,'
         //`Y. ,,‘ .゚;・.,'`ヽ
         i | ノi ノ_';;;∵\@
         ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д;;。;∵ がじらぁぁぁぁぁぁ!
          `ー -(kOi∞iミつ
              (,,( ),,)
               じ'ノ'



            ___
           く/',二二ヽ>
           |l |ノノイハ)) 砕け散れですぅ!
         ⊂|l |リ゚ ヮ゚ノl|         .゚;・.,'`ヽ
          ヽl_介」とソ' \ 从/ _';;;∵\@  グシャッ
            (__二⌒) <   > ,ヾ(i.゚'Д;;。;∵
           (_丿    /VV\    ;:∵;;;,
517名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/15(日) 10:58:28 ID:2AJyf90E
|                , .-=- ,、
|                ヽr'._ rノ.'   ',
|                 //`Y. , '´ ̄`ヽ
|<iヽ             i | 丿. i ノ '\@
|。リノ))            ヽ>,/! ヾ(i.゚ ヮ゚ノ
|々゚ノ) うー…         `ー -(kOi∞iミつ
⊂ノ                (,,( ),,)
|                    じ'ノ'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


                        , .-=- ,、
                        ヽr'._ rノ.'   ',
                         //`Y. , '´ ̄`ヽ
     ,',i><iヽ               i | 丿. i ノ '\@
    /((ノ。リノ)) あ"んま"ー! ;*∵ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д゚ノ がじらぁぁぁぁぁぁ!
   〈《(# 々゚ノ)_ ,、,、,、,、,、,、,、 ,';∴+, `ー -(kOi∞iミつ
   / つ|匚) 巛|}三三三三)》 (,,( ),,)   ;;.゚;・.
   しー‐J             じ'ノ'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



        ,',i><iヽ
       /((ノ。リノ))            グシャッ
     ⊂〈《(# 々゚ノ) あ"う"ー! .゚;・.,'`ヽ
       ヽ とソ  \ 从/ _';;;∵\@
       (__二⌒) <   > ,ヾ(i.゚'Д;;。;∵
       (_丿    /VV\   ;:∵;;;,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
518名無しさん@お腹いっぱい。

     ___    お前みたいなゴミが翠星石の姉のはずないですぅ!
   く/',二二ヽ> 翠星石の姉は水銀燈一人だけですぅ!!
   |l |ノノイハ)) 
   |l |リ゚∀゚ノl|     バリバリバリバリバリ                   ,∵;,'゚; ̄`ヽ
   ノl/l_介」 Lr○ュ"_ l_ ___,.,;:''''""`'';;;...,,            - ̄‐― _,';;ノ '\@
 ト--l∪r=tl[((三三((三((=(;;'',       '',.:;,,,. '" .,.  .,,..; "'`,.,,  ‐―  ,';;,,';.゚'Д゚ノ かしらー!
 ヒ[冊冊冊ツヽ ̄ ̄!! ̄; ̄ll ̄||'':;:,..  ,...;:''"           - ̄‐―   ;;';kOi∞iミつ
   ミく二二二〉ミ                                       (,,( ),,)
                                                 じ'ノ'



         ___ #ミ   まだ生きてるですか?
       く/',二二ヽ>#  さっさと息の根を止めやがれですぅ!
       |l |ノノイハ))  ミ
       |l |リ ゚ヮ゚ノl|   ヾ ヽ ∵:  ガスッ
       ノl_||  ]]つつ++#####.゚;・.,'`ヽ:, ゴスッ
       ≦ノ`ヽノヘ≧    _';;;∵\@v                       (,,( ),,)
       ミく二二二〉ミ   'ヾ(i.゚'Д;;。;∵ か…し…   ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'



         ___    トドメですぅ!!!
       く/',二二ヽ>
       |l |ノノイハ))ミ      ,,-----、 グチャッ!!
       |l |リ ゚ヮ゚ノl| ヾ. ヽ. |;::::  ::::|
       ノl_||  ]]つつ二二二|;::::  ::::|⊃', ',・.,'`
        ≦ノ`ヽノヘ≧ ヽ.∴;;..|;::::  ::::|;* @';;;∵                (,,( ),,)
      .ミく二二二〉ミ `.:,゙;~ヽ.''-----'';。,・';;;         ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'