1 :
ううたん:
暇なんで娘小説でも書こうと思います。
題名は灼熱のアスガンです。アスガニスタンという国を
部隊した戦記物です。
2 :
ううたん:04/09/09 19:49 ID:Bcmrf8zb
この小説では登場人物が現実とはちがうものにする場合があります。
たとえば主人公の藤本やライバルの松浦は男です。もちろん全員を
男にするわけではありませんが。
それではお楽しみください。
パチパチパチパチ・・・(拍手)
4 :
ねぇ、名乗って:04/09/09 20:55 ID:l55d/36z
俺は薄汚い淫売の産んだ私生児で
少年魔法士
なるしまゆり 新書館
続きがどーしても思い出せない
心に祈りを刻む 天は何処に
続きまだ?
てか、始まってないし。立て逃げか?
7 :
名無し募集中。。。:04/09/15 02:40:45 ID:6taa+CQI
アフガンと書き間違えて
恥ずかしくなって逃亡
9 :
ねぇ、名乗って:04/09/19 03:48:56 ID:HcCngIDh
期待してたのに
現地ではそろそろ大統領選挙が始まるんだよな
来年には議会選挙とか
↓続きどぞー
このスレもらっていいですか?
12 :
書いた人:04/09/28 00:15:31 ID:Jw2e3caS
間借りをして小説を書こうと思います。
ちなみに、ハァハァはできませんが。
13 :
書いた人:04/09/28 00:16:22 ID:Jw2e3caS
私がソレに気付いたのは、読んでいた本からふっと目線を上げたときだった。
いつかの臨海道路の防波堤の上で、見つめ合う姿が見えたのだ。
車窓からはあの防波堤は見えない所にあるのに。
外は土砂降りのはずなのに、あの日みたいに蒼い空が後ろに広がっていて。
そして…
14 :
書いた人:04/09/28 00:17:21 ID:Jw2e3caS
「窓の向こうの夏の日」
15 :
書いた人:04/09/28 00:18:16 ID:Jw2e3caS
本は好きですか?
私は好きです。
高校への行き帰りの電車に乗るといつも、私は通学カバンから文庫本を取り出す。
お気に入りの白いしおりは、私をサイアクな現実から引き離してくれる魔法の道具。
私のロッカーに刺のある手紙を入れる奴もいない。
絶えることのない、私を罵倒する噂話も聴こえてこない。
そこにあるのは、私が見たこともない色々な世界。
愛する人の醜貌を見ないために、自分の目を針で潰して。
サナトリウムの傍の雪山で、遭難したとき精神的支柱に目覚めて。
徐々に元の白痴に戻ることに慄然として、それを淡々と受け止めて。
キスの後で、女性を愛していくことができないことを確信して。
「迷羊(ストレイ・シープ)」を呟きながら、それでも、自分が「羊」であることに気付けずに。
私の大嫌いな奴らはそこにはいない。
16 :
書いた人:04/09/28 00:19:18 ID:Jw2e3caS
去年の7月、私にもいっぱしに彼氏ができた。
同じクラスの、背が高めで涼しげな目をした人だった。
今風の細くて華奢な感じなシルエット、スポーツ万能で、頭も良くて、そしてどんなことにも精一杯で。
女子の人気は高かったと思う。
彼が廊下を歩くとき、何人かの女子の目が彼を追っていたことを私は知っている。
それなのに私ときたら、できることといえば勉強くらいで。
周りの「今風」の女子の中では、ホントに浮いていた。
そんな私をぶりっ子呼ばわりする子もいたっけ?
クラスの中で、私はホントに目立たない、暗い感じの女の子だったと思う。
そんな私とそんな彼の組み合わせ。
なるべく隠そうとしてたのに、けして大きくないこの街の中ではすぐに見つかって。
色んなやっかみの声は聞こえてきた。
でも…
楽しかった。
17 :
書いた人:04/09/28 00:20:03 ID:Jw2e3caS
今までのモノクロの世界がフルカラーになって。
きっと、多分…いや絶対、私には彼というピースが絶対に必要だったんだ。
そう思わせてくれるくらい、彼と一緒にいる時間は楽しかった。
高校1年生の夏休みは、毎日が眩しすぎて。
背伸びしたビキニ
駆け抜けた砂浜
手を繋いだ臨海道路
波に消えたハートマーク
私はいつもはしゃいでいた。
彼はいつも笑っていた。
でもそんな日は、突然終わった。
18 :
書いた人:04/09/28 00:21:10 ID:Jw2e3caS
忘れもしない、夏祭りの日。
私の苗字と同じ紺色の浴衣に桜色の帯。
待ち合わせの場所まで、自然と小走りになっていたと思う。
家を出た頃はまだ蒼かった空が、次第に茜色から紫に変わって行く。
多少のエロチシズムを私は弾む胸の中に感じていた。
なのに。
待ち合わせに彼は来なかった。
今まで一度も約束を破ったことのない彼が。
空が紫から灰色になって、黒くなっていくまで私は待った。
そう、幼馴染のまこっちゃんの声が聞こえるまでは。
「……あさ美ちゃんッ!! 早くッ…病院!! 車にはねられたって!!」
19 :
書いた人:04/09/28 00:22:03 ID:Jw2e3caS
彼の白地の浴衣は、染め抜いたみたいにどす黒くなっていた。
顔は真っ青で、涼しげだった目は閉じられていて。
ICUに呼ばれた理由はなんとなく分かっていた。
つまり……生きている彼に会えるのが最後だから。
廊下からは彼のお母さんの泣き声がずっと聴こえていた。
車の前に飛び出した女の子をかばって、彼は死んだ。
涙は出なかった。
突然すぎて、何が起こったのか分からなかった。
触れてみた彼の右手は、私の頭を撫でてくれたあの温かさはなくなっていて。
定期的に聞こえてくる電子音。
酸素を彼の胸に送り込む静かな音。
でも、私の大好きな声は聞こえてこなかった。
「なにしょぼんとした顔してんだよ」
跳ね起きてそう言ってくれると思った。
そう信じて疑わなかった。
でも、言ってくれなかった。
20 :
書いた人:04/09/28 00:22:55 ID:Jw2e3caS
夏休みが終わったあたりから、私の耳にはこんな言葉が入ってきた。
『彼を殺したのは、私だ』
誰かが…彼と私のことをやっかんでいた誰かが、呟いた一言だってことくらいは虚ろな頭でも分かった。
でもその一言は、ビリヤードをするみたいにどんどん広がって。
私と同じ喪失感を誰かが抱いていて、そしてその喪失感をこうやって埋めようとしている。
うらやましかった。
こんなことで、この切なさを、このやりきれなさを埋められるなんて。
21 :
書いた人:04/09/28 00:23:36 ID:Jw2e3caS
『人殺し』
こんな手紙が机に入っていたこともあったっけ。
それでも私は2秒間目を閉じることで、それをやり過ごした。
別に誰かの喪失感を埋めるために、慈悲の心を持っていたわけではない。
ただ、どうでもよかっただけだ。
読書の量が増えたのは、その頃からだった。
休み時間、行き帰りの電車、ベッドの上。
いつでも私は本を読んだ。
本を読んでいる間は、いろいろなことを忘れることができるから。
でも本から目を離したとき、溜息が必ず唇から漏れることも分かっていた。
本から目を上げたとき、私にはただひたすら現実が待っている。
1年間…抜け殻のように私は生きてきた。
22 :
書いた人:04/09/28 00:24:16 ID:Jw2e3caS
―――
私がソレに気付いたのは、電車の中で読んでいた文庫本から目を上げたときだった。
最初は自分がおかしくなったのかと思った。
それでも電車の窓の外に見える光景は、胸を刺すようにはっきりとしていて。
彼と…私が見えた。
いつかの防波堤。
見つめ合ったあの一瞬。
私の目に白いシャツの彼が映っていたように、彼の目にはワンピースの私が映っていた。
あの日のあの防波堤。
あの日のように、彼は横に並ぶ私だけを見ている。
私は微笑んで、彼をじっと見ていて。
あんな日が…あの夏はあったっけ…
一瞬のような、それでいて長かったような。
瞬きをした瞬間、また外は元の土砂降りで。
23 :
書いた人:04/09/28 00:24:51 ID:Jw2e3caS
次の日から、私は窓の外のあの夏の日を探すことが日課になった。
最初のうちは、ちっとも見ることが出来なかった。
それでも、心のどこかに確信めいたものがあったのだ。
また、アレが見える。
また、彼に会える。
2週間ほどそれを続けたある日…もう9月も半ばになっていたけれど。
一種のコツのようなものを掴むことができたのだ。
電車に乗ったら、この1年間ずっとやってたみたいに本を読む。
そして…3つ目の駅を過ぎた頃…何かの気配みたいなものを感じたそのとき、顔を上げるのだ。
そこには確かに、私たちの夏が見える。
24 :
書いた人:04/09/28 00:25:28 ID:Jw2e3caS
向かい合って、笑いながらカキ氷を食べる私たち。
砂浜でふざけながら、それでも一生懸命やった野球。
2人だけでやった花火大会。
記憶の中以上に、私はとっても幸せそうで。
彼は…やっぱり1年前の彼で。
そして気付いた。
私が見ているこの景色は…順番に並んでいることに。
この夏が終わる日が来ることを、私は知っている。
それでも…私はやめられなかった。
休日だろうが、私は電車に乗った。
1日に何度も何度も電車に乗った日だってあった。
そして次第に終わりへと近付く幸せな日々を、ただひたすらに見ていた。
依存と言っても良かった…麻薬みたいに。
25 :
書いた人:04/09/28 00:26:03 ID:Jw2e3caS
覚悟をしていたといえば、ウソになる。
このまま窓の外を見つづければ、いつかはあのシーンになる。
それを覚悟していたわけではない。
ただ、私は彼に会う誘惑に勝てなかった。
いずれ終焉を迎えることを理解しつつも、目を離すことができなかっただけだ。
それは覚悟とは違う。
そして…10月の始め、その日が窓の外に来た。
その日だけ彼は出てこなかった。
紫色の空の下、じっと彼を待つ浴衣姿の私。
あの日…あの日。
26 :
書いた人:04/09/28 00:26:40 ID:Jw2e3caS
ひとりの私って、こんなに悲しそうだったんだ。
いつも横に立っていてくれるのが当たり前みたいになってた。
じっと…時々きょろきょろしながら彼を待つ。
彼が来ることはないのに…私は叫びたかった。
『もう待たないで…彼は来ないの…だから…』
だからって、どうすればいいのか分からない。
何時の間にか、4つ目の駅に着いていた。
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
近くに座っていた上品そうなおばあちゃんが、ハンカチを渡してくれる。
初めて泣いていることに気付いた。
笑いながらごまかして、降りる駅でもないのに私は車両を飛び出した。
27 :
書いた人:04/09/28 00:27:12 ID:Jw2e3caS
明日から…私は何を支えに生きていけばいいんだろう?
28 :
書いた人:04/09/28 00:29:02 ID:Jw2e3caS
次の日、私は学校を休んだ。
別に風邪とかじゃなかったけど、行きたくなかった。
正確に言えば、電車に乗りたくなかった。
お母さんは分かっていたみたいだけど、静かに頷いて許してくれた。
金魚鉢の金魚を眺めても、パンダの縫いぐるみと向き合っても。
ちっとも気が晴れない。
電車にはもう乗りたくなかった。
そして…自分の浅はかさを呪った。
「なくしてしまうときのあの感じ」を嫌ってほど味わったのに。
なのに、彼に続いて、私は窓の外の夏の日まで、無くしてしまったから。
言いようのないやりきれなさで、ひたすらベッドの上で寝返りをうった…
29 :
書いた人:04/09/28 00:30:24 ID:Jw2e3caS
そのとき
窓の外に、あの海が見えた。
30 :
書いた人:04/09/28 00:31:12 ID:Jw2e3caS
いつも彼と歩いた臨海道路の防波堤。
彼だけが佇んでいた。
両手に花束を抱えているけど、浴衣姿なのがおかしい。
風が少しだけ吹いて、その白い浴衣を揺らす。
…あの日の、浴衣?
でもなんとなく違う。
あの日の空は、まるで眩暈がするみたいに青く澄んでいたはずだ。
それなのに窓の外の空は雲がかかっていて、ちょっと寒々しくて。
と、防波堤の端から懸命に駆けてくる私。
あれ?
私の着てる服って…今年買ったやつじゃ…
…
あの服、今私が着てる服!!
跳ね起きて窓に両手を突く。
いつもの景色が広がっていた。
私は、部屋を飛び出した。
31 :
書いた人:04/09/28 00:31:51 ID:Jw2e3caS
全力で走った。
海岸までの下り坂。
場所は…あの臨海道路だ。
酸素が足りなかった。
それでも、私は走りつづけた。
ただ一つ言えること。
あの日私が待ったみたいに、彼を待たせたくはない。
32 :
書いた人:04/09/28 00:32:43 ID:Jw2e3caS
―――
海岸線につくと、防波堤の向こうに佇む人影が見えた。
少しずつ…大きくなるにつれて分かる。
涙が止め処なく出てきた。
それでも、彼の姿をもう逃すまいと、何度も涙を拭った。
私に向かって、手を掲げる姿。
もう逃がさない。
抱きつきたいのをグッと我慢して、膝に両手をついて息を整える。
勿論…視線は上げて、彼の顔から離さない。
33 :
書いた人:04/09/28 00:34:08 ID:Jw2e3caS
唾を飲み込んで、もう一度大きく息を吐く。
にっこりと微笑んで、彼は私の肩に触れた…ような気がした。
私の肩に触れたはずなのに、その手は空気みたいにふわふわしてて。
一言も発せずに、彼は私をずっと見ていた。
ちょっと目を見広げて、そしていつも私を見ていたみたいににっこりと笑う。
「あさ美…」
「…」
「ごめんな」
彼が何を謝っているのかなんて、どうでもよかった。
もう、どこにもいかないで。
たったこれだけの言葉を言いたくて、言いたくて、たまらなくて。
でも…それは無理だってことくらい分かってる。
34 :
書いた人:04/09/28 00:35:08 ID:Jw2e3caS
「ちゃんと、お別れ言いたくて」
「…うん」
「最高の夏を、ありがとう」
そう言って、花束を私に差し出す。
行かないで。
喉の奥にその言葉を押し込めて、私は大きく頷きながら花束を受け取った。
『私の方こそ、ありがとう』そんなかっこいい言葉は当然出てこないんだ。
「さようなら、あさ美に会えて…ホントに良かった」
「うん」
頷きながら自然と足が前に出た。
抱きついたその身体は、やっぱり普通の身体じゃなくて。
ふわふわとした、空気の塊。
「忘れてほしくは無いけどさ…でも、歩き出せよ…無理しない程度でいいから」
「…うん」
涙でぐしゅぐしゅの私の声。
感触はないけど分かる、彼が私の頭をやさしく撫でていてくれるのが。
それでも「諾」の声が出たのに安心したのか、最後ににっこりと微笑む。
そして…まるで波にさらわれたハートマークみたいに、すぅっと彼は消えた。
思わず防波堤にへたり込んだ。
花束から、微かにバラの匂いがした。
35 :
書いた人:04/09/28 00:35:59 ID:Jw2e3caS
―――
「あさ美ちゃん!! あんた…学校サボって何やってんの!?」
「あぁ…まこっちゃんかぁ…」
何時の間にか下校時間になっていたんだろう、私を見上げる幼馴染の顔があった。
相変わらず能天気そうなその顔にも、眉間の辺りにすこしの憂いが含まれていて。
「うん…ちょっと…」
「まぁ…いいけどさぁ。なんでバラの花束抱えてんのよ」
言ったとして、彼女なら信じてくれそうな気がした。
それでも…言う気は無かった。
「取り敢えず、びっくりさせたのと、学校サボった罰ね…あの甘味処で私に奢りなさい!!」
「…うん…いいよ」
36 :
書いた人:04/09/28 00:36:34 ID:Jw2e3caS
無理しないでいいから…歩き出せ…か。
まだ脳の芯がボーっとしている。
まこっちゃんはひたすら私の横で喋りつづける。
そのマシンガンのような言葉が、さっきの私たちを幻に変えていくみたい。
それでも私には感じられるんだ。
目を閉じれば、ほら。
あの夏の日の匂いも、あの蒼い空も、みんなみんな。
幻なんかじゃない。
さよならを告げに来た、彼も。
この手の中の花束も。
みんなみんな、ホントのことで。
そう…そして、この現実も、けして幻ではない。
だからこそ、歩き出せ…か。
37 :
書いた人:04/09/28 00:37:29 ID:Jw2e3caS
「ここねぇ、とっても美味しいんだよ」
磨きぬいたガラスがついたドアに手をかけて、まこっちゃんはニヤッと笑いかける。
私はといえば、まだちょっと夢うつつで。
と、ドアのガラスに映る世界。
防波堤の上、彼が小さく手を振っていた。
さっきの浴衣姿のまま、やさしく目を細めて。
38 :
書いた人:04/09/28 00:39:34 ID:Jw2e3caS
「どうしたの?」
「…ううん、なんでもない」
私は振り返らなかった。
それが彼との約束だから。
「まこっちゃん! あんみつでも何でも、おごってあげる!」
「そうこなくっちゃ!」
ドアを押し開けたとき、ガラスの中で彼が満足げにうなずくのが見えた。
大丈夫…って胸を張って言うにはまだちょっと時間がかかるけど。
でもさ…大丈夫だから。
私はまこっちゃんの手首をぎゅっと握って、笑顔でお店に踏み込んだ。
これが、私があの夏の日を見た最後の日。
そして私が彼を見た最後の日だった。
39 :
書いた人:04/09/28 00:40:47 ID:Jw2e3caS
さようなら、私も言いたい。
最高の夏を…ありがとう。
40 :
書いた人:04/09/28 00:42:08 ID:Jw2e3caS
「窓の向こうの夏の日」
おわり
41 :
書いた人:04/09/28 00:44:22 ID:Jw2e3caS
あとがき
こんこんさん写真集がお手元にあると、1.2倍ほど楽しめるような気がします。
某所でのご要望に応えて書いてみました。
似たような話ばかりというのはご容赦。
ご感想、ご批判などございましたらいただければ幸いです。
では。
42 :
名無し募集中。。。:04/09/28 17:26:03 ID:tmVel3GS
うわあぁぁぁぁぁぁ
よかったっす。
こんこん……
書いた人タン、アンタすげぇよ。
これからは写真集見るたびに泣いてしまいそうだ・・・。
小説の中の描写や表現の仕方とか、ストーリーがすごすぎて
感想書こうにも言葉が出ない。
とりあえず、この作品に出会えたことに感謝。
また読み返しつつ、しばらく余韻に浸ってきます。
44 :
137:04/09/29 02:57:03 ID:woiZ0+x4
書いた人さん乙です!
こんこんには憂いな雰囲気が良く似合う…
でも元気に笑ってる方が もっと良く似合ってますね
そしてまこっちゃんは ノー天気な感じが良く似合ってるw
こんこんの写真集を眺めながらこんこんの小説を読む、というのもなかなか面白かったです
良小説、ありがとうございました!
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
うるせー
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
( ^▽^)<ハッハッハ
ふhyふ
50 :
ねぇ、名乗って:04/10/27 05:01:38 ID:nv2mF8g/
スレタイ見て「なんじゃ?」と思い入ってきたら感動の嵐!
こんなに清らかな気持ちになったのは本当にいつ以来だろう?
書いた人さん、心の底からありがとう。
映画観てるみたいだった。
51 :
書いた人:04/11/03 08:59:31 ID:FUNYGQ8+
…どうしても書いてみたいものが見つかったので、始めます。
やっぱりハァハァはできませんが。
52 :
書いた人:04/11/03 09:00:15 ID:FUNYGQ8+
「以上! ハロプロワイドでしたッ!!」
「…バイバ〜イ」
「はい! カーーーット! チェック入りまーす!」
赤いランプが点いたカメラに向かって3秒くらい手をひらひらさせると、ADさんの威勢のいい声がスタジオに響く。
前髪を左手の二本の指で軽く梳いて、中澤さんが軽く吐息を漏らした。
まだオッケーが出ていないスタジオの空気に、けして相好を崩さない。
ファンデーションと香水が混じった、化粧品特有の甘い匂いが私の鼻腔をうつ。
このコーナーで中澤さんの隣に座るときに必ず嗅ぐ匂い。
今日もこの匂いだ。
…いや、正確には…6回目の今日もこの匂いだってことだ。
この匂いはけして嫌いじゃないのだけれど、無理矢理にでも私に現実を教えてくれる匂い。
「オッケーでーーーす!! お疲れさまでした!!」
モニターチェックをしていたADさんが大きく頭の上で輪を作ったと同時に、スタジオ内の緊張が解けた。
53 :
書いた人:04/11/03 09:00:50 ID:FUNYGQ8+
「お疲れ〜、あんたも慣れてきたなぁ」
ずっと肩に入れていた力を少し緩めて、中澤さんが私に笑いかける。
斜め45度に首を傾けて、フリップで鼻から下を隠して私は照れ笑い。
ふふっと、中澤さんが笑って何かを言いかけたその時、キャルキャルとした声がスタジオに響く。
「紺野さぁ〜ん、中澤さぁ〜ん、お疲れさまでしたぁ〜」
「……まあ、あの子も慣れてきた…っていうか、変わらんなぁ」
「ですね」
「何がですかぁ?」
ほっそい目の中で黒目が揺れながら笑っているように見えた。
……今日も、今回も、亀子は笑っていた。
もう見慣れたこの景色…そう言うとちょっとニュアンスが違うかもしれないけど。
何回も見ている景色。
そして…私が抜け出したいと願っている景色。
また、ここに来てしまった。
54 :
書いた人:04/11/03 09:02:14 ID:FUNYGQ8+
控え室に戻ろうとする私の肩に、グッと鷲づかみされる感覚が走る。
私は予定されているように振り向いて、背後でちょっと憂鬱気味な目をした中澤さんに首を傾げた。
洒落っ気と悪戯心と、ちょっとの期待感を込めて、中澤さんがブレスをするのとほぼ同時に、
私は言葉を紡ぐためのエネルギーを充填する。
どうか、どうか私たちがこのメビウスの環から、抜け出せますように。
「「紺野、最近石川の調子どんな感じや? あと1週間であの娘の引退コンサートでしょ?
昔みたいに変なネガティブにはならんとは思うけど、それでもやっぱり…心配だからさ。
私や明日香やあやっぺみたいに、自分の意思で出て行くわけじゃない……
圭坊だって、最後の一週間、酒ばっか飲んでたしなぁ……」」
中澤さんの眼が段々細く細くなって、そして訝しげに私を見つめる。
私は笑うでもなく、それでも冷たくするでもなく、努めて冷静に中澤さんを見返す。
「紺野…どうなってんの?」
眉間に皺を何本か刻んで、まるで汚物でも見るみたいに私を見下ろす。
私はただ、目を伏せてその視線に耐えるしかない。
そう…ただ願いながら、今分岐したこの未来の先に、
ダルセーニョが付いていないことを祈りながら。
55 :
書いた人:04/11/03 09:03:13 ID:FUNYGQ8+
中澤さんの足音が遠ざかるのを耳で確認してから、顔を上げる。
ある程度の覚悟をしていたとしても、あの厳しい目付きには最後まで耐えられなかった。
しばらくは中澤さんから気持ち悪いとか思われるのかもしれない、それでも…しょうがない。
と、スタジオの出口で扉に背中を預けている矢口さんを視線が捉えた。
「紺野…」
「矢口さん」
矢口さんがスタジオに来るのは4回目の今日から、ずっと続いていたこと。
多分、次に出てくる言葉は、私の予想通りのもの。
矢口さんがその言葉を出しても、この環から逃れられないことはもう4回目で分かってる。それでも矢口さんはここに来た。
私には彼女を責める資格は無い。
いまここに来ても無駄だって分かってるはずじゃないですか、なんて言ってもしょうがない。
だって…矢口さんの気持ちは痛いほど分かるから。
「また来ちゃったなぁ…紺野」
「ですねぇ…6回目…ですよね」
「「ハァ……」」
吐き出した溜息は、スタジオの上の方の冷たい空気に吸い込まれていった。
6回目のこの一週間が、また始まる。
56 :
書いた人:04/11/03 09:04:06 ID:FUNYGQ8+
「永遠から何小節か向こうに」
57 :
書いた人:04/11/03 09:05:11 ID:XGR0/+v+
スタジオを出て白い廊下を歩くと、外から漏れる光が眩しい。
春が来たってことを嫌ってほど主張する、この陽射し。
私の大好きな冬が、もうとっくの昔に飛び去っていったのを思い知らされる。
隣を歩く矢口さんなんか、もうノースリーブだ。
さっきそのことを言ったら、
「紺野、お洒落は薄着からだぜ?」
と、よく分からないご高説を頂いた。
いつもならお前の私服はダサいとか、石川の私服は最早人類の域を越えている、とか言い始めるんだけど、
今日の矢口さんは、ご高説の後、立てた人差し指を唇に当てて、しばらく「うーん」と唸る。
春らしいピンクのリップに彩られた唇が、お餅みたいに弾力よく潰れる。
「うーん、それにさ」
ずっと前を見ていた矢口さんが、初めて私の方を向いた。
「それに…同じ日に同じ服着るのって、芸が無いじゃん?」
「…」
悪戯っぽく笑うその瞳の中で、ちょっぴり冷静な白目が覗いていた。
いつも明るく振舞ってる矢口さんの瞳でさえこんなにさせてしまう現実。
私にはとても耐えられなくて、思わず廊下の遥か向こうに視線を移した。
窓の外で、桜の花が散り始めていた。
58 :
書いた人:04/11/03 09:05:50 ID:XGR0/+v+
楽屋まで、自然とゆっくりになる足取り。
確かに矢口さんは、6度過ごしたこの日を、みんな違う服装で過ごしている。
そしてその理由が、そんな洒落っ気だけじゃないことを、私は知っている。
矢口さんも期待しているんだ。
心のどこかで、この輪廻から抜け出せないかと。
それはどんなところからでもいい、日常の些細な変化がもたらしてくれるかもしれない。
さっき私が中澤さんの口調を真似たのと、そのまま同じ理由。
まあこの人の場合、照れて認めてくれないだろうけどさ。
「紺野…分かってるな」
「ええ…」
楽屋のドアに手を掛けて、矢口さんが寂しげに私を見上げた。
そう、この繰り返しに気付いているのは、私と矢口さんだけ。
他の誰もがこの異様な状況を知らない。
もうデジャヴでは済まされないこの繰り返し。
59 :
書いた人:04/11/03 09:06:40 ID:XGR0/+v+
ドアの向こうでは、吉澤さんとまこっちゃんがサンドイッチを食べている。
亀子とシゲさんはあっち向いてホイをして遊んでいる。
おマメは愛ちゃんと歌の予習。
れいなは藤本さんと焼肉の話をしてるはず。
石川さんは部屋の隅でボーっと、でもニヤニヤしながらみんなを見つめている。
分かってるんだから。
矢口さん、言われなくても大丈夫です。
私はこの先の景色が変わっていることを、少しも期待していませんから。
そろそろ心のバランスが崩れそうになってくる。
だからこそ、下手に期待をするのはやめよう。
みんながこの繰り返しに気付いているとか、全然違う一週間がスタートしてるんじゃないかとか、期待しないでおこう。
期待しちゃえば、それが破れたとき心が耐えられなくなるから。
…4回目の明後日、矢口さんが言った言葉だ。
60 :
書いた人:04/11/03 09:07:44 ID:XGR0/+v+
今日はここまで。
ちゃんと終わらせるように、頑張らないといけませんな。
過去のとかは、気が向いたら紹介。
うわー今度はこう来ましたか
期待してます
62 :
書いた人:04/11/03 23:30:00 ID:Lkn5JddF
扉を開けた先には、予想した通りの風景が広がっていた。
白い部屋の中で、色とりどりの衣装を着たみんながくつろいでいて。
そのくつろぎ方といったら、私が何度も見ているそれ、そのまま。
「おつかれ〜」
「お疲れさまですぅ」
「よっし! 本編の撮影入るぞ!」
「うぃ〜す」
矢口さんの声に口々に返事しながら、それでもやっていたことを止めもしないみんな。
予想通り…ううん、録画していたDVDを何度も見るみたいに、果てしない繰り返し。
矢口さんが唇の端のほうで、軽く溜息を漏らしたのが聞こえる。
63 :
書いた人:04/11/03 23:30:31 ID:Lkn5JddF
私たちがこの1週間を過ごすのは6回目だ。
ホント、最初は何事かと思った。
自分が病気になったんじゃないかと思ったほどだ。
石川さんの卒業コンサート、最後の最後の曲…アンコールが「I wish」で。
最後のユニゾンをみんなで声を合わせていた。
♪ 人生って素晴らしい ほら誰かと 出会ったり恋をしてみたり
Ah 素晴らしい Ah 夢中で 笑ったり泣いたり出来る
みんな泣いていて、石川さんは一番真ん中で、無理矢理笑っていた。
肩を組みながら、お互いの顔を何度も何度も確かめながら。
このみんなが「モーニング娘。」であることは、もう永遠に存在しないから。
♪ 人生って素晴らしい ほらいつもと 同じ道だって なんか見つけよう!
Ah 素晴らしい Ah 誰かと 巡り会う道となれ!
64 :
書いた人:04/11/03 23:31:16 ID:Lkn5JddF
もう涙で歌になっていなかった。
石川さんと過ごしてきた、色んなことが頭の中を駆け巡って。
そのまま終わるはずだったのに、「でも笑顔は…」って石川さんが歌い始めるはずだったのに。
みんなと肩を組んでいた腕を解いて、石川さんは一歩踏み出した。
まるでこれからを象徴しているかのような絵。
フットライトの色が青色に変わる。
スポットライトがみんな消えて、1台のサスペンションライトの青い色だけが石川さんを映し出す。
一連の光の点滅に眼が追いつかなくて、一瞬私は目を閉じた…
次の瞬間
65 :
書いた人:04/11/03 23:31:56 ID:Lkn5JddF
私の目の前には毎朝見ているシーツの青色が広がっていた。
口が石川さんの最後のフレーズを口ずさもうと動いた。
脚がさっきまでのステップを続けようと、一瞬ピクッとしたような気がした。
夢じゃないことくらいいくらなんでも分かる。
携帯の日付は、1週間、時間が戻っていた。
自分の脳味噌を、正直疑った。
仕事に向かった私を待っていたのは、1週間前のハロモニの収録。
誰もが疑問を一つも口にしないで、当たり前のように過ごしていて。
あまりの気味の悪さに、誰かに尋ねることもできなかった。
66 :
書いた人:04/11/03 23:32:29 ID:Lkn5JddF
―――
「矢口さん、どうします?」
「何が?」
収録後のカフェテラス、矢口さんとする作戦会議もこれで3度目。
今回、私はアイスコーヒーとアラビアータを。
矢口さんはキャラメルラテとほうれん草のクリームパスタを。
こんなことで輪廻から抜け出せるとは、正直あんまり考えていない。
この程度のことならいくらでも今までやってるから。
それでも……やらなきゃ落ち着かないって感じ。
「何がって…これからどうしましょうってことですよ」
クルクルとフォークを操っていた手がピタッと止まる。
ガラス張りの右側から差し込むお昼過ぎの光が、矢口さんの髪に輪を作っていた。
「どうしようっつっても…どうしようもないなぁ」
「ぶぅ」
投げっ放しの回答に、ちょっぴりむくれた。
わざとらしく窓の外の桜に目を移して、矢口さんは目を細める。
67 :
書いた人:04/11/03 23:33:13 ID:Lkn5JddF
「なんかさぁ、段々馬鹿馬鹿しくなってきちゃってんだよなぁ」
「何がですか?」
桜の花びらを追っているかのように、矢口さんの黒目は上から下へと忙しなく動く。
思わず私も視線を外に移した。
「足掻いても足掻いても、どうしようもねーじゃん? だったら、任せてみようよ」
「……私たち以外に世界のどこかにいるかもしれない、このことに気付いてる人に、ですか?」
「うーん…どっちかっつーと、流れに任せてみよう、ってところ?」
正直、心のどこかで同じことを思っていたのかもしれない。
その証拠に、矢口さんのそんな言葉を聞いても、散っていく桜から私の視線は動かない。
視界の端に入る矢口さんは、左手で顎を支えたまま、ボーっと外を見遣る。
「それにさ…桜がこんなに何回も見られるなんて、滅多に無いぜ?」
「風流ですね」
私たちは、どこかおかしくなっているかもしれない。
68 :
書いた人:04/11/03 23:33:52 ID:Lkn5JddF
他に私たちと同じように、このことに気付いている人がいる…かもしれない。
最初のうちはそう思っていた。
でもこの1週間が6回目に入った今、自分で言うのもなんだけどありえないような気がする。
私と矢口さんは、この1週間がリプレイされたその日にお互いが気付いた。
ホント、呆気ないほどすぐに。
ハロプロワイドの収録を終えてキョロキョロしている私に、矢口さんが後ろから近付いてきたのだ。
『紺野……お前、もしかして…』
『って…矢口さんも?』
矢口さん曰く『1週間前のお前とは全然違う動きをしてたから、すぐに分かった』そうだ。
私は全然分からなかったんだけどね。
だって、1週間前に他の人たちがしていた1シーン1シーンを覚えてる人なんかいる?
矢口さんがよっぽど鋭かったか……私がにぶにぶなのか、どっちかだ。
69 :
書いた人:04/11/03 23:34:25 ID:Lkn5JddF
しばらく無言のまま、私たちはパスタを口に運ぶ。
アラビアータの酸味が舌の上で躍っている。
1週間の間に他の色んなところへ行って、私たちの仲間を探すことだって考えた。
でもね…このスケジュールの中そんな暇は無い。
「おい…キャラメルラテって甘いなぁ…」
「知らなかったんですか?」
「うん、初めて飲んだから」
顔を顰めながらストローを口から離す矢口さん。
慌ててお冷を口に運ぶ。
記憶ってのはおかしなもので。
今、目の前で話す矢口さんが、ホントの矢口さんのような気すらしてくる。
正直な話、最初のこの1週間はどうだったのかなんて記憶があやふやだ。
間違い探しをするには、そろそろ限界になってきている。
だって…ホントのこの1週間から、もう一月以上経っているから。
矢口さんが私を見つけてくれたみたいに他の人を見つけ出すのは、もう不可能だと思う。
70 :
書いた人:04/11/03 23:35:09 ID:Lkn5JddF
「紺野さぁ…それ、美味いか?」
「アイスコーヒーですか? そりゃ甘くないですからねぇ…ガムシロップ入れましたけど。
キャラメルラテほどじゃないと思いますよ?」
「じゃ、ちょっと交換な」
強引にそして手際よく、私の前には薄茶色の、見るからにカロリー過多を主張する液体が運ばれた。
矢口さんはアイスコーヒーを口に含むと、グッと親指を立てる。
「うん、やっぱ美味いなぁ。無理して口に合わないの頼むもんじゃないな」
「ええ」
「あのさ・・・一応言っておくけど…」
「いいえ、大丈夫です」
私が無理矢理言葉を封じ込めたけど、矢口さんはちょっと儚げにニコッと笑った。
能天気に飲み物の話をしてるんじゃない。
分かってますよ、矢口さん。
ホントはこのスパイラルから抜け出したくてたまらないんですよね?
何度も何度も石川さんの卒業シーンを見続けるの、結構辛いってことくらい、私でも…
私の視線に気付いた矢口さんは、照れ隠しに、一気にアイスコーヒーを飲み干す。
…って、それ、私のですよ!!
確実なことが一つだけ、この繰り返しの中で、私と矢口さんは随分仲が良くなった。
71 :
書いた人:04/11/03 23:37:24 ID:Lkn5JddF
今回はここまで。
明日から出張でパソコンのない環境に行きますので、続きは日曜日頃です。
アメリカ人は選挙の才能が無いと思う。
>>61 見つけるの早すぎません?
また読めるなんて・・・
日曜が待ち遠しい(;´Д`)
>>71 偶然ですw
まぁ、羊も全取得してるんで、それで見つけられた、ってのはありますけど
新作おめ
同じ時間帯を何回も繰り返すっていう設定で
昔日テレの土9でやってた「君といた未来のために」(だったっけ?)
を思い出した
また時間転移ネタキタ!
楽しみが増えました。
76 :
書いた人:04/11/07 17:10:32 ID:mocbMXix
―――
夢を見ていた。
どこかで見たことがあるような、ありふれた景色。
銀色と白色が混ざり合った世界の中で、私は誰かと話をしている。
私たちの声は一切聞こえない。
何か別の、音がずっと聞こえているから。
それにみんな掻き消されているみたい。
私も話をしている相手も他のみんなも、それを全く気にしていないみたいだった。
そして……
77 :
書いた人:04/11/07 17:11:07 ID:mocbMXix
―――
「ッ!?」
「お…やっと起きたか」
お昼ご飯と全く変わっていない風景。
矢口さんが優雅な手付きでコーヒーを啜りながら、私ににっこりと微笑む。
外からの光線は随分橙色が濃い。
私……寝ちゃってたのか。
変な夢…を見ていたような。よく思い出せないけど。
「…すいません。寝ちゃってましたね、私」
「ああ、うん。気にすんな。それより…コーヒーでも頼むか?」
「えっと…ジュースかなんかにします」
「分かった」
振り向いてウエイトレスさんを手招きする矢口さんを見て、慌てて口元を拭った。
よかった…涎とか出てなかったよね。
78 :
書いた人:04/11/07 17:12:06 ID:mocbMXix
「やっぱ…疲れてんだよ」
「そうですかねぇ…」
口ではそう言ったものの、案外的を射ているのかな、と思う。
身体は全然大丈夫なんだけど、精神的にはやっぱり厳しい。
矢口さんと私のこんな会話も、この繰り返しの中で初めて出てきた。
でも…なんとなく分かっている。
今日、どんなにいろんなことをやったとしても、明日目が覚めれば、
今まで5回やってきた2日目とまったく同じ一日がスタートする。
確か…亀子から間違い電話が掛かってくるはずだ。
私たちがどんなに突飛な行動をとっても、あまり未来は変わらないらしい。
だってそうだよ、今まで5回やったこの一週間で、一度でも同じ一週間は存在しなかった。
それなのに絶対に時間は巻き戻しされるし、私たちの足掻きは無駄に終わる。
徒労感っていうのかな? ほぼ諦観にも似た感じだけど。
私の心を右斜め下あたりから、段々に染め始めてきた感触。
その点……
79 :
書いた人:04/11/07 17:12:40 ID:mocbMXix
「あれか? お前もしかして、腹でも減ったのか?
なんなら矢口さんがご馳走でもしてやるぞ。どうせラジオ始まるまでヒマだし」
この人、強いなぁ……
なんでこのエンドレスな世界の中で、矢口さんはこんなにしっかりしてるんだろ。
心から感心しちゃう気持ちと……そして、ちょっとの腹立たしさ。
「いえ……結構です」
「そう? この近くにさ、すっごく美味しい洋食屋さん知ってるんだけどなあ。
スープお代わりできるから、紺野も満足できると思うけど」
「いらないですから…あの、矢口さん!」
「?」
「何で…私たちはこの繰り返しの中にいるんでしょうね?
何で、私と矢口さんだけは、この繰り返しに気づいちゃったんでしょうね?
何で…………」
「…」
「何で、矢口さんは、そんなに落ち着いていられるんでしょうね?」
外からの陽射しが一段と落ちた気がした。
矢口さんが窓の外に顔を逸らす。
そしてその横顔に、自分の愚かさを呪った。
余計なことを口に出して、いつもそれで後悔するって分かってるのに。
80 :
書いた人:04/11/07 17:13:26 ID:mocbMXix
それでも矢口さんは、窓の外をひとしきり眺めると、もう一度私に向き直る。
その顔に、私に対する嫌悪とか、そういった感情は一切なかった。
それどころか、私にオレンジジュースを運んでくれたウエイトレスを一瞥する。
「落ち着いて見えるように、努力してるんだよ。
努力しながら、必死で考えることにしてるよ。
で、ちょっと閃いたんだけどさ。
私たちはこんなことになんの知識も経験もない。
まして、こうなることに身に覚えもないし…だったら…」
矢口さんの言葉が止まると同時に、ストローで液体をかき混ぜていた私の手も止まる。
止まりきれなかった氷が、グラスとぶつかり合って軽く音を立てる。
「だったら、今度は全く同じように一週間をやってみるのも、いいんじゃないかな、って」
「全く同じように…ですか?」
81 :
書いた人:04/11/07 17:15:18 ID:mocbMXix
右手の甲で頬杖をついて、矢口さんはじっと私の目を覗き込んだ。
私はストローを持つ右手を、まだ離せずにいて。
「うん、全く同じように。お前とはホントはこんな話してないから、もう…無理だけどな。
でもさ、極力同じようにやっていってみたら、もしかしたら何か見えてくるかもしれないだろ?」
「私、あんまり覚えてませんよ? 第一回目の1週間がどんな風だったのかなんて」
「そいつは私も同じだけど。だから、無理して変えていこう、とか考えないでさ」
「流れに身を任せる…ってことですか」
お昼ご飯のときに矢口さんが言った言葉の意味が、少しだけ理解できたような気がした。
足掻き続けても何も見えてこないのだったら、今度は足掻くのを止めてみよう。
その時…何かが見えてくるのかもしれないし、もしかしたら無駄に終わるかも。
でもその時は…
「ふふふ」
「何がおかしい? 紺野」
じっと私の目を見て返事を待っていた矢口さんが目を見広げる。
私は自分の思考回路のいい加減さというか、矛盾というか、そんな部分がおかしくて。
「とにかく私はそうしようと思うんだけど、紺野はどう思う?」
「…あ、えっと…すいません、私もそうするしかないような…気がします」
訝しげに眉を寄せたままだけど、矢口さんは大きく頷きかえした。
82 :
書いた人:04/11/07 17:17:47 ID:mocbMXix
オレンジジュースを一気に飲み干すと、まだ頭の中に残っていた眠気が一気に吹っ飛ぶ。
秋よりはゆっくりだけど、でも確実に陽が翳って、室内の照明が眩しい。
時計を見ると、6時をちょっと回ったところだった。
「矢口さん…ラジオまでまだあるんですよね?」
「うん。っつーか、お前とここに6時間近くいたことがびっくりだけどな。
どうしようもない時間の無駄遣いだ」
「意地悪ですねぇ」
椅子を引いて腰を上げた私を、矢口さんが仰ぎ見る。
「帰るか?」
「ええ、ホントは私はここにはいなかったはずですから。
どうせやろうって決めたなら、なるべく早いとこ実践したほうがよさそうですしね」
「分かった…じゃあ、また明日な。
金? いいよ、別に。奢ってやるから」
「ありがとうございます」
83 :
書いた人:04/11/07 17:19:05 ID:mocbMXix
それだけ言って、私はさっさと矢口さんから遠ざかった。
さっき私がなんで笑ったのか、このままここにいたら、読み取られてしまいそうで怖かったのだ。
私たちは、最初の一週間と同じように過ごしてみる。
もしもそれをやってみても、何の成果が得られなかったとしても……
もう一度、やり直せばいいから。
私はもう一度この一週間が繰り返されることを前提にして、モノを考えていた。
早くこの繰り返しから逃れたい自分と、またこの繰り返しがあるからって安心してる自分。
そんな考えが簡単に浮かんできた自分が、可笑しくてたまらなかった。
もう一人の自分に矢口さんが気付いていないように祈りながら、私はカフェテラスから外に出た。
藍色の空にピンクの花びらが舞っていて、切な過ぎるほど綺麗だった。
見上げると、カフェテラスの窓から矢口さんが手を振っていた。
大きくてを振り返すと、矢口さんが真っ赤になって「ばか」って言ったのが分かった。
84 :
書いた人:04/11/07 17:20:12 ID:mocbMXix
―――
紺野の背中が消えるまで、矢口はずっと彼女を目で追っていた。
正確に言えば、紺野の姿が消えた後も、矢口は数秒間、紺野が居た空間を見つめていた。
そして溜息を吐いてテーブルに向き直る。
飲み掛けのコーヒーに手を伸ばしたそのとき、テーブルに置かれたメモ用紙に気付いた。
一瞬だけ目を広げたけれど、それが他人に気付かれない自信はある。
さも当然のように手を伸べて、細い指でメモ用紙を広げていく。
『嘘吐きは地獄に落ちるんですよ?』
矢口は眉一つ動かさずにメモを筒状に丸めると、紺野が残していったお冷に突っ込んだ。
透明なグラスの中で、黒インクが滲んでいくのが見て取れる。
「バカ…地獄に落ちるわけないじゃん」
周囲を見回すでもなく独り言のように呟く。
矢口には分かっていた。
自分が地獄に落ちるわけないって、メモを書いた本人も分かっていることを。
そしてこの呟きをその相手が必ず聞いていることも。
85 :
書いた人:04/11/07 17:24:30 ID:mocbMXix
今日はここまで。
雪が見たいな、と思うこの頃。
次は仕事の様子を見つつ、多分水曜日か木曜日と思われ。
>>72 何故にハァハァなのか
>>73 よっぽどひまうわなにをするやめr
>>74 その時間帯とチャンネルで鼻で笑う自分は相当性格が悪いと思う
>>75 色々と伏線も張りつつ
おかえり
87 :
読んでる人:04/11/08 09:24:47 ID:DGN5Q1zs
こういうネタは やたらと書かれてるけど そういうのは
書きやすいんだろうか 書きにくいんだろうか?
結局カギをにぎるのは♪I WISHなんだろうなと予想してみる
>>1-9のおかげでありえない位の糞スレだと思ったら、何と!
89 :
289:04/11/09 21:40:52 ID:7aWyBpg4
うんこうんこー
91 :
書いた人:04/11/12 00:28:04 ID:qpxoGYcl
―――
「もしもしぃ〜さゆ〜? 起きないとダメだよぉ〜?
今日名古屋まで行くんだからね? ねぇ、起きてんのぉ?」
「おはよ…っていうか、私はシゲさんじゃないんだけど」
「またまたぁ、寝惚けちゃってぇ! 可愛いヤツめ!!」
「うん、いいから亀子がしゃんとしなさい」
例によって例のごとく、亀子からの間違い電話で目が覚めた。
朝6時
毎回早い集合のときはこうやって起こしてもらってるんだろうな、と簡単に想像できる。
まあ…段々こんな寝惚け方でも可愛く思えてきちゃう自分もいたりするんだけど。
カーテン越しだけど、夜が明け始めてるのが分かる。
2日目、まったく変わらない、まったく同じ朝が来た。
92 :
書いた人:04/11/12 00:28:54 ID:qpxoGYcl
―――
窓の外を景色が吹っ飛んでいく。
東京から新幹線に乗るとき、どっちかって言えば、私は南側が好きだ。
東京に住み始めた頃は、富士山見るたびに子どもみたいにはしゃいでたっけ。
まあ、今も子どもなんだけどさ。あの頃は精神的に、子ども子でもしてたっけ。
今は別に富士山が見えなくても何ともないし、時々見える海が楽しみで。
朝から一言も矢口さんとは話をしていない。
もう一月以上前だからあまり覚えてないけど、
この車内で私と矢口さんが口をきくことはなかったはずだ。
いや、よく考えればこの1週間を通して、私たちはあまり話をしていないはず。
モーニング娘。に入ってからずっと、矢口さんとそういう関係だったように。
93 :
書いた人:04/11/12 00:29:39 ID:qpxoGYcl
独特の匂いのするシートに深く腰掛けて、矢のように飛んでいく緑色をぼんやりと眺める。
ここのところずっと耳の辺りでいつもしていた、あの声。
ちょっと向こうで、石川さんや吉澤さんと話している声が聞こえるけど、耳元で聞こえないのがちょっと寂しい。
その感情を紛らわしたくて、マネージャーさんから配られたアイスコーヒーを流し込んだ。
喉を通る感触の後、胸にじわっと染みる。
いつまでも頬の内側に苦味が残っていたので、舌で刮(こそ)いでみる。
ちっとも消えないんだけどさ。
私の横では愛ちゃんが、どうせ遅くまで宝塚のDVDでも見ていたんだろう、
私の方にちょっとだけ顔を傾けて、小さな寝息を立てている。
ぴくぴくと動く瞼、ほんのすこしだけ開かれた唇。
これも当然のように予定されていたこと。
5回目の今日、変化を求める矢口さんに叩き起こされたとき以外は、愛ちゃんは幸せな夢を見ている。
…やっぱり見ている夢は、いつも同じ夢なんだろうか?
94 :
書いた人:04/11/12 00:30:13 ID:qpxoGYcl
誰かと誰かがじゃれあう声。
先輩たちのちょっと落ち着いた声。
そんな喧騒から切り離されて、私はもう一度窓の外を見る。
私は、私と矢口さんは、いや…この世界は一体どうなっていくんだろうか。
もしもこのままずっと繰り返しが続いたとしたら、私たちはどうなるんだろう。
おそらく…どうにもならないんだろう。
私たちが精神を病んでいくだけで。
それだけの話なのかもしれない。
そこまで考えた瞬間、ふと頭に浮かんだ考えに背筋がさあっと凍りついた。
気付いてしまった今、これまで気付かなかったのがかえって不思議。
そう…そうだ。
もしかしたら、ホントはちゃんと時間は進んでるんじゃないだろうか。
時間が進んでは戻ってを繰り返しているんじゃなくて、私と矢口さんが戻っているだけじゃないだろうか。
瞬間、外が真っ暗になった。
トンネルに入ったらしい。
95 :
書いた人:04/11/12 00:31:14 ID:qpxoGYcl
トンネルに入ってすぐ、窓が小さくカタカタと震え始めた。
その窓に薄く映る私の顔は、簡単に見て取れるくらい動揺している。
私と矢口さんを置き去りにして、とっくに遥か彼方に行ってしまったみんな。
一緒に巻き戻しをしていて、みんながそれに気付いていないだけだと思っていたのに。
世界から完全に切り離されたような感覚に寒気がする。
でも…それも所詮は想像の話。
矢口さんが昨日言ってた。
私たちは、こんなことに特に知識があるわけでも、経験があるわけでもない。
ただひたすら、現象に巻き込まれているだけなのだ。
でも…このエンドレスをずっとやっていると、心のどこかにこんな想いが浮かんでくる。
「私も、この繰り返しから逃れるために、何か出来るんじゃないか」って。
病人が病気に詳しくなったような気でいるのと同じことだとは思っている。
苦しみはわかっているけど、解決法なんかちっとも専門外で。
でも…心のどこかにあるのだ。
どうにかできるはずだ、がんばれるはずだ、ってそんな想いが。
丁度その時、新幹線がトンネルを出た。
眩しくて少しだけ、目を細めた。
96 :
書いた人:04/11/12 00:33:46 ID:qpxoGYcl
今日はここまで。短くてごめんなさい。
>>86 ただいま
>>87 予想を裏切るのが楽しくてたまらないのであり
ちなみに書きやすいか、というよりは、好きだからといったほうが的確かも
>>88 ちょっとスレ立て主には悪いと感じていたりもしており
>>89 どうぞ
>>90 自己紹介乙
98 :
書いた人:04/11/13 20:51:53 ID:F9s+ZHkH
―――
鳴り止まない拍手
深々と聴衆に頭を下げる
振り返って、仰ぎ見る
立体映像には完璧な理論と数式
ステージに上がってきた何人かが、私に握手を求めてきた。
あれ? 石川さんじゃないですか?
なんで畏まったスーツなんか着てるんですか?
「…」
「はい?」
「紺野」
「…?」
「紺野! 起きなさい!!」
99 :
書いた人:04/11/13 20:52:42 ID:F9s+ZHkH
―――
「あんたねぇ…何が哀しくて京都に居なくちゃいけないのよ。
つーか、あれ? 私を卒業コンサートに出させないための謀略?」
「すみません…」
京都駅のホーム
ギンッって効果音がピッタリの目付きで、斜め上から石川さんが私を睨みつける。
小さくなって、肩を落とす私…寝過ごすとは思わなかった。
「まあ、ほら…石川もそれくらいにして。
早めにセッティングしといてよかったわ。次ののぞみに乗れば間に合うから」
「マネージャーもねぇ…甘すぎるのよ。
私たちが入った頃にこんなことやったら、中澤さんに殺されてたってば」
「すんません…」
もう一度小さくなっちゃう。
爆睡していた私をたたき起こした石川さんは、そのまま一緒に京都まで来ちゃったわけで。
ホントにホントに申し訳ない。
日頃はうざったいマネージャーも今や最高の緩衝材で、神さまのように思える。
矢口さんの『同じ一週間を過ごす計画』は、いきなり挫折したのだった。
100 :
書いた人:04/11/13 20:53:22 ID:F9s+ZHkH
「でもぉ…石川さんは今日のコンサートの主役なんですから…
私置いて行ってくれてもよかったのに…他の人とか…」
取り敢えず言ってみたら、案の定、睨み返された。
今日の石川さんはブーツの分だけ私よりも背が高いから、怖さが倍増。
まあ、怒声っていってもいつものキャピキャピ声だから、怖さの基準値は低いんだけど。
「あのねぇ…今の娘。の人材考えなさいよ。
矢口さんは他のみんな引っ張ってるんだから無理でしょ?
よっすぃ〜にこういう事頼んでも、最早頼むだけ無駄だし」
「まあ…そうですけどぉ…」
「なんなら美貴ちゃんに頼めばよかった?
知らないよぉ…多分紺野、名古屋着くまでにへろへろになるよ?」
「あぅ…」
想像するだけで背筋が凍る。
凍りつくような瞳、静かな呼吸、ヒクヒクと震える頬。
すべてが怒りを必死に抑えていることのサインだ。
ただなぁ…もっと怖いのは、『サボろっか? コンサート』とか言いそうなところだ。
そういわれたら最後『藤本美貴と紺野あさ美は風邪のため本日欠席いたします』
って看板がコンサート会場に立つんだろう。
そして、私の給料が減るのだ。
101 :
書いた人:04/11/13 20:54:48 ID:F9s+ZHkH
「何? あんた想像してんの?」
「ええ、ちょっと…背中に嫌な汗が…」
「ふふ」
京都に着いてから初めて、石川さんは顔の険(けん)を解くと、優しく笑った。
プラットホームに私たちが乗る電車の到着を告げるアナウンスが流れる。
「次からは気をつけなよ」
「はい」
「私もあと1週間でいなくなるんだし…後輩たちもいるんだから、ね?」
「…はい」
「でも…」
ブレーキ音を響かせながら、電車がホームに流れ込む。
電車が私たちの目の前を過ぎる瞬間、石川さんの髪がふわっと舞った。
『…でも、卒業前に紺野とも色々話したかったから、丁度いいかな?』
前をじっと見つめたままの石川さんの声は、電車の轟音とアナウンスに掻き消された。
炭酸みたいな音を立てて、目の前のドアが開く。
102 :
書いた人:04/11/13 20:55:17 ID:F9s+ZHkH
―――
「変な夢?」
「えぇ…なんか、ここん所よく見るんですよね」
三人掛けの座席の窓際。
窓枠の縁に肘をついた石川さんが、ちょっと訝しげに私を見る。
もうホントのこの日のまま過ごせるわけないので、ちょっと気が抜けてしまった。
石川さんが入った頃のこと、タンポポのこと、最初に私と会ったときのこと、
色んなことを話していて、何時の間にかそんな話題になっていて。
石川さんがちょっと目を細めて、首をかしげる。
なにかその仕草が艶っぽくて、ちょっとドキドキした。
「で、どんな夢なの?」
「いえ、全然バラバラの夢なんですけどねぇ。
名古屋の辺りで見てた夢なんて、石川さんが出てきたんですよ?」
瞬間、石川さんが大爆笑した。
疲れきったサラリーマンで埋まる車内に、暖色系の声が響く。
怪訝な、でも…ちょっと温かい視線を、通路を挟んだ向こうからおじいさんが見せている。
103 :
書いた人:04/11/13 20:56:35 ID:F9s+ZHkH
「で、何? 紺野ちゃんは石川さんの卒業を前に、ちょっぴりセンチメンタルになってるわけ?」
「いやぁ…そーいうわけじゃないですけど、って、落ち込まないでくださいよ」
泣き真似をして掌で顔を覆うけれど、ちらっと横目で私を見る。
…出会ってから覚えた仕草。
こういうときは、続きを話しなさい、ってことだ。
「なんか、夢をあんなに覚えてるのって不思議ですけどね。
何かを私が発表して、で…終わった後すっごい拍手で、石川さんが握手を求めに来るんですよ」
「なぁに、それ? 意味分かんない」
104 :
書いた人:04/11/13 20:59:37 ID:Vou5cDct
さらりと酷いことを言ってのける先輩。
実際問題、自分でもさっぱり分からない夢だから、しょうがないんだけどさ。
『ちょっと疲れてるんですよねぇ。同じ一週間がずっと続いていますから…』
喉まででかかった言葉を、グッと飲み込んだ。
目尻の涙を人差し指ですくいながら、それでも石川さんは楽しそうに笑っていた。
「まあ、あれだよ。別に怖い夢とかじゃなくて良かったじゃん。
気になってどうしようもなかったら、いつでも話しなよ。
話せば楽になることだって、たくさんあるはずでしょ?」
「ありがとうございます」
寝過ごしてよかった……
中澤さん、石川さんはネガティブになんかなってませんよ。
ホントにしっかりしてて、今日も優しい先輩ですから。
105 :
書いた人:04/11/13 21:02:18 ID:Vou5cDct
今日はここまで
H.P.オールスターズの集合写真でダーヤスが見つからないんですが
私の目が悪いせいでしょうか
>>97 書いた直後にネタが始まっちゃったので、書く気をなくしたやつですな。
でもそれ書いてたら、昨日見た日々は書かなかったでしょう、多分。
今日の更新乙
でも ちょっと今日の話は無理が有りすぎるなぁ
こだわっちゃいけないんだろうけど
流石に最近更新早いね。
こんこん押されまくってるからなぁ・・・
書いた人さんも絶好調なんだろうな・・・いいなぁ・・・
記念カキコ
作者さん…ネ申です
更新乙です
ケメ子はいるよー(TT)
続きが早く見たいデーす・・・
111 :
書いた人:04/11/21 11:42:58 ID:7KgevwYz
―――
♪でーもー えがおはー 大切に した〜いぃ
大音量で会場に流れる石川さんの声は、黒板を爪で擦ったときみたいに、みんなの顔を顰めさせた。
右隣で矢口さんが息を整えつつ、ニヤニヤしている。
なんつーか…まあ、相変わらずの光景だった。
私も人のことは言えないんだけどね。
でも…何度も聞いているうちに、石川さんの歌が普通に聞こえてくるから不思議だ。
いや「普通に」って言うよりは、上手くなっているような感覚さえ覚える。
『慣れ』って怖い。
♪ 愛する人のために…
…5日後、私たちは曲の最後まで、行き着くことができるんだろうか?
ヲタさんたちの声援を耳腔に感じながら、ぼんやりとそんなことを考えた。
112 :
書いた人:04/11/21 11:43:50 ID:7KgevwYz
―――
「それじゃ、今日はここまで。あんまり夜遅くまではしゃがないように。
あと紺野、てめーは寝坊すんじゃねーぞ」
「はぁい」
私の気の抜けた返事に、矢口さんは脱力したような溜息を唇の端で漏らした。
でもすぐに気を取り直すと、元の…「リーダーとしての矢口真里」の顔に戻る。
「朝8時、8階のエレベーター前に集合な。
朝飯はホテルのラウンジでとってもいいけど、騒がれないように。
あと、そん時はちゃんとマネージャーに一言入れること」
コンサートと移動の疲れから、矢口さんの注意はみんなの左耳から入って右耳へ抜けていく。
外に泊まるたびに繰り返される注意。
みんな聞き飽きてるだろうけど…私はもっと聞き飽きている。
113 :
書いた人:04/11/21 11:44:50 ID:7KgevwYz
―――
「…うっそ! 名古屋って、名古屋県じゃないんですか?」
「いやいやいや、亀子、あんた間違ってるから」
ベッドに寝そべって携帯をいじりながら、亀子と馬鹿話。
あんた何を考えて今まで生きてきたんだ。
何が楽しいのか分からないけど、亀子はベッドの上でコロコロしながら、私に笑顔を振り撒く。
「ねえ、一応聞くけど…仙台って何県?」
「…仙台県?」
「ハァ…宮城県」
「え? 宮城って、九州ですよね?」
だめだこりゃ、と天国からチョーさんが手を振っているのが見えた、気がした。
間違っているのを指摘されても、唇を尖らせて子犬みたいな目を一瞬するだけで、またすぐに元に戻る。
ジャンルがちょっとずつ変わるけど、ホテルでこんな馬鹿話をするのも、いつも通り。
確か前の一週間のこの日は、「カニカマは蟹か」だったかな。
114 :
書いた人:04/11/21 11:45:32 ID:7KgevwYz
『いいんですよ、東京人だもーん』と、開き直りに近い言葉を発しているのを横目に、
メールのセンター問い合わせ…あれ、メール来てる。
今まで、この場面でメールが来たことはないはずなんだけど。
「あれ? 誰からですか?」
鳴り響く着信音に、亀子が興味津々といった感じで目をキラキラさせる。
その輝きとは反比例して、私のテンションは一気に下がった。
…だって、メール、お父さんからなんだもん。
「んー、お父さんからだ」
「仲良いんですねー」
「すっごく悪いから」
事実、お父さんからメールが来ることなんか滅多に無い。
大体殆ど話もしないし、好きか嫌いかで言えば、嫌いの方だ。
115 :
書いた人:04/11/21 11:46:07 ID:7KgevwYz
とはいえ、もしかしたらお母さんが病気とかそういう知らせかもしれないので、一応内容を読んでみる。
くだらない内容だったら、もう金輪際口なんかきかないから。
『元気ですか? お仕事キツイでしょうがあまり無理しないように』
これだけだった。
いつもだったら「何こんな内容でメールなんか打ってんのよ」って思うんだけど…
でも、どこか嬉しかった。
つまり…今日私が寝過ごしたりとかしたから、一日が微妙に変わって行ったってことかな。
私が寝坊することで、ホントは来るはずのないメールが来て。
たった一日で、そこまで影響が及ぶのにちょっとびっくりする。
116 :
書いた人:04/11/21 11:47:13 ID:7KgevwYz
「…どうしたんですか?」
「ん…いや、ちょっと考えごと」
「なんか深刻なメールだったんですか?」
「そういうわけじゃないけど」
ベッドから起き上がって顔を斜め45度に傾けて、亀子はすこし寂しそうな顔をした。
私もそれにつられて起き上がる。
考えているのは、お父さんからのメールの内容じゃない。
ちょっとずつ、やっぱり変化が生じるこの事実。
一応矢口さんに早く伝えた方がいいかな、って考えていたんだ。
「あのさ、矢口さんの部屋って…812だったっけ?」
「そうですよ…石川さんと相部屋です」
「ちょっと行ってくるね」
部屋を出ようとした私の後ろから、
『京都まで行っちゃったことは、別に矢口さんも怒ってないと思いますよ〜』
と、気の抜けた声が聞こえた。
なんか、この期に及んで後輩に心配されてる自分が可笑しかった。
117 :
書いた人:04/11/21 11:48:33 ID:KbUpGzIe
コンコン…
「いないのかな…?」
ホテルの廊下。
ノックに中から答える声は無かった。
時折別の部屋から妙な雄たけびが聞こえてくるのは、まこっちゃんと吉澤さんだろう。
でもその声も厚い扉で低減されて、廊下は妙に静かだ。
もう一度ノックをしてみる…やっぱり答える声は無い。
…寝ちゃったのかな?
まさか、まだ夜の9時半だ。
加入直後のれいなじゃないんだから、そりゃないだろう。
ノブを静かに回して引くと…あれ、開いてるじゃない。
顔だけ部屋の中に差し入れてみても、誰も中には見えなかった。
整然とした室内。
テーブルの上では矢口さんのだろうか? 開いたままのノートパソコンが鎮座していた。
微かに、パソコンのファンの音が聞こえていた。
118 :
書いた人:04/11/21 11:51:01 ID:KbUpGzIe
今日はここまで
また一つ歳をとりました
>>106 まあ、所詮は小説ですから
>>107 個人的には後ろの方でパートが無いこんこんさんのほうが好きであり
>>108 無駄に長くいろいろ書いているだけです
>>109 いたのか…ちっとも分からんかった
>>110 外人さん?
119 :
書いた人:04/11/21 21:42:33 ID:Ml0hMFu1
120 :
書いた人:04/11/21 21:56:44 ID:Ml0hMFu1
121 :
書いた人:04/11/21 22:03:55 ID:Ml0hMFu1
122 :
書いた人:04/11/21 22:05:41 ID:Ml0hMFu1
あと、娘小説作者養成スレで書いた気がしますが、練習用のものなので割愛
スレを保管してくださっている●氏と、娘小説案内所管理人氏に感謝しつつ
今度はちゃんと完結できるといいですな
∋oノノハヽ
川*’ー’)<更新乙やよ〜こんちゃんも大変やよ
(.| 乙 |)
| 乙 |
124 :
書いた人:04/11/23 17:07:13 ID:AbNyjOtu
「すいませーん…矢口さーん……」
ちょっとだけ声のトーンを落として呼び掛けてみたけれど、返事は無かった。
シャワーの音も聞こえてこないってことは、ユニットバスにいるわけでもないらしい。
「矢口さーん…石川さーん…」
外にでも飲みに行ったのかな?
だとしたら…バッグや携帯が無くなってる筈だけど、ちょっと入り口のここからは見えない。
確かめてみたくて、無意識のうちに身体を部屋の中に滑り込ませた。
カチャリ…と小さな音を立ててドアが閉じられる。
部屋の中に入ったら余計に、パソコンのファンの音が大きく聞こえるような気がする。
125 :
書いた人:04/11/23 17:09:17 ID:AbNyjOtu
特に珍しいことではない。
オートロックじゃないホテルに泊まるようなとき、留守の間に部屋に誰かが入っていることなんかざらだ。
大体は遊びに来たのにいなかったから、待ってたとかそんなのだけど。
一度、冷蔵庫に入れておいたヨーグルトを矢口さんに食べられたこともある。
だから別段の罪悪感は無い。
ただちょっとドキドキするのは、先輩の部屋に居るってことと、
いつものお遊びではない、矢口さんにとっても大切なことを伝えたい、って心があるからだ。
テレビの横の大きな鏡。
鏡の前の台には、二人の化粧道具が整然と並べられていた。
嫌でも目に付くピンク色の石川さんバッグが見えないってことは…外に行ったのかな?
でも矢口さんの携帯とお財布がベッドの枕元にあるってことは、矢口さんは中にいるのか。
…待とうかな。
126 :
書いた人:04/11/23 17:09:55 ID:AbNyjOtu
テレビを点けようにも、これは私と矢口さんだけの秘密だから、いつも通りにするのが憚られた。
大体は何人かで他の部屋に乗り込むから、こうやって手持ち無沙汰になることはないし。
窓際の椅子に腰掛けて、ぼぉーっと矢口さんを待つ。
ノートパソコンは壁紙かな?
矢口さんが大きくこっちに向かってピースをしている写真。
自分のパソコンの壁紙が自分、ってどうかとおもうんだけど…
あまり他人のパソコンを覗くのはどうかと思うんだけど、どうしても視界に入っちゃう。
下の…えっと、確か「ツールバー」だったっけ?
そこには何か使ってる途中だろうか、『P.V.』っていうのが見える。
矢口さん…あんた、どこまで自分好きなんですか。
コンサートの遠征先で、プロモなんか見る必要無いと思うんだけど。
127 :
書いた人:04/11/23 17:11:18 ID:AbNyjOtu
部屋の隅の方、パソコンの画面、鏡、ベッド…
色んなところに視線を移しながら考える。
私が寝坊をしたことが、お父さんにメールを打たせるところまで波及した。
考えられないほど大きな変化だ。
勿論偶然に偶然が重なったとは思うけど。
でも…多分、明日になれば、またこんな変化はまるで無い一日が始まるんだと思う。
だって前回の一週間では、必死に毎日を変えようとしても、私たちは次の日にはいつもの次の日に戻っていた。
日が変わるたびに、変化がリセットされてるような気がする。
今ぼんやりと考えているのは、最後の一日が勝負なんじゃないかな、ってことだ。
最後の一日が勝負だから…
128 :
書いた人:04/11/23 17:13:16 ID:AbNyjOtu
だから、娘。のみんなに全てを打ち明けた方がいいんじゃないかって思っている。
つまり…私と矢口さん二人だけじゃ変化は起こせないけど、
みんなが一気にやれば、そのうちのどれかが、
いや…それらが合わさって、この繰り返しを破るところまでいけるんじゃないだろうか。
多分、話した途端みんなに変態扱いされるだろう。
しかも石川さんの卒業の日に、不謹慎としか思えないし。
でも…可能性の一つとして、私は賭ける価値が無いとはけして思わない。
矢口さんにどこまで話すかは、ちょっとまだ考えてるけど。
お父さんからメールが来た事実を、矢口さんがどこまで真摯に受け入れてくれるかだ。
どうしよっかなぁ…つーか、二人ともどこ行っちゃったんだろう?
携帯で電話したって、この部屋にある矢口さんの電話が鳴るだけだしなぁ。
と、カギがガチャガチャと動かされる音がした。
129 :
書いた人:04/11/23 17:14:37 ID:AbNyjOtu
「あれ…カギ掛けなかったかなぁ…石川ぁ〜」
ゴソゴソと入り口付近で動く音。
まだ私の位置からは姿は見えない。
中にいると思っている石川さんに呼びかけながら、ゆっくりと近付いてくる。
「石川、起きたの……か…?」
「矢口さん、お邪魔してます」
なんだろう、私を見たその瞬間、矢口さんは微妙な顔をした。
自分の表現力を呪うけれど、ホントに「微妙な」顔をしたんだ。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけど。
そう、それは一瞬だけで、矢口さんはいつもの矢口さんにすぐに戻った。
「あ…紺野、お前……どうした?」
「ちょっと…伝えたいことがありまして」
「ああ…そうか…ちょっと待ってろ…」
それだけ言って、矢口さんは私の目の前に鎮座しているノートパソコンに目を落とす。
瞬間、矢口さんの目の色がさあっ、と変わった。
130 :
書いた人:04/11/23 17:16:37 ID:bH1OWwe/
「紺野…もしかして…パソコンいじった?」
「え? え…いいえ、壁紙が見えちゃっただけですけど」
気圧されて、むしろ嘘をつく暇も無くて、そのままホントのことが口から出てきた。
やっぱり、パソコンを覗き見られるのって気分悪いですもんねぇ。
矢口さんはその目付きのまま私の眼を見ていたけれど、すぐに満足げに頷く。
「そうか…うん…ちょっと待ってろ。お茶淹れるから」
さっと身を翻して、矢口さんは備えつけのポットに水を汲みに向かう。
その背中から、パソコンにもう一度パソコンに目を移す。
相変わらず、壁紙では矢口さんが大きくピースをしながらウインクしていた。
「どこ行ってらっしゃったんですか?」
「バーカ、お前が寝坊したの、もう一度マネージャーに謝りに行ってたんだよ」
「あぅ…すいません」
「ま、気にすんな」
振り向いてポットを両手で抱える矢口さんは、やっぱりいつもの矢口さんだった。
131 :
書いた人:04/11/23 17:17:58 ID:bH1OWwe/
―――
「しっかしなぁ…元の一週間のままでって言った傍から、これだもんなぁ」
「ってか、もう覚えてないですからねぇ。精神的にも厳しいですし」
ティーパックだけど淹れてくれた緑茶が胸に染みる。
矢口さんはパソコンをさっさとしまってテーブルの上をどけると、
『てめーは太るから、ちょっとだけにしろよ』と言って、お菓子を出してくれた。
「で…どうしたんだよ」
「ええ…お父さんからメールが来たんですよ」
「お父さんって…札幌の?」
「ええ」
それから私は一気に言い切った。
もしかしたら…娘。いや、ハロプロ全員で最終日に何かをしていけば、
きっとこの繰り返しは終わるんじゃないか。
矢口さんは一々頷きながら、時々目を見広げて、私の話を聞いてくれていた。
132 :
書いた人:04/11/23 17:18:55 ID:bH1OWwe/
「でもさぁ…お前が寝坊して、お前と石川とマネージャーが京都まで行ったのって、
めちゃくちゃ強烈な変化だぞ?」
話を聞き終わると、むしろ冷静にしようと努めているらしく、
右手の人差し指を額に乗せて矢口さんは呟く。
「それよりもっともっと凄い変化が必要なんじゃないのか?
それってかなり危ないと思うんだけどさぁ」
「…?」
『危ない』の意味が捉えにくくて首をかしげる私。
その様子が面白かったのか、矢口さんはちょっと笑いかけると優しく続ける。
「つまりさ…石川の卒業コンサートが台無しになっちまうくらいのものなんじゃないかなぁ。
それでそのまま時間が進んでくれたって、石川の卒業コンサート、もう二度と出来ないんだぜ?」
「…そうですね」
もっともなことだ。
何度もやっているから神経が麻痺してるけど、仮に動き出したそのときのことを考える必要も当然ある。
「考えさせてくれない…?」
40分くらい話して、矢口さんの最後の言葉が結論だったんだろう。
私も…今夜はじっくり考えよう、そう考えながら部屋を後にした。
133 :
書いた人:04/11/23 17:20:30 ID:bH1OWwe/
―――
紺野が出て行ったのを目で確認して、足音が遠ざかるのを鼓膜で感じると、矢口は静かにカギを回した。
ちょっと寒気がするのは、春の夜のせいだけではない。
「石川…まだ帰ってこないのかな?」
独り言をいう気分にも当然なっていた。
考えることがありすぎる中で、
独り言がガス抜きみたいに自分の心の思慮の絡みを解いてくれそうな気がしていたから。
パソコンを出そうと身をかがめたとき、メールの着信音が聞こえる
無遠慮に響くそれにちょっと顔を顰めて、矢口は携帯を取り上げて開いた。
『しっかし、鋭いですねぇ』
本文を一瞥すると、手馴れた操作でそのメッセージを消去する。
鋭いに決まってるじゃない、私の後輩なんだから。
矢口の呟きは、声にはなっていなかった。
134 :
書いた人:04/11/23 17:22:31 ID:bH1OWwe/
今日はここまで
やはりCymbalsはいいですなぁ…何故に解散したのか
と、たまには娘。にまったく関係のないことを言ってみる
>>123 それはそういう柄の服なのだろうか
焦らされる快感
137 :
書いた人:04/11/24 22:45:10 ID:EOUnTHei
―――
「しょうらいのゆめ」 1ねん1くみ こんのあさみ
わたしのしょうらいのゆめは、とってもえらいかがくしゃになることです。
かがくしゃになって、わたしはじかんをとびこえるきかいをつくってみたいです。
なぜわたしがかがくしゃになりたいかというと、
きょねん、わたしがだいすきだった犬のバレンタインがしんでしまったからです。
バレンタインがかかったびょうきは、おいしゃさんがなおすことはできないびょうきでした。
でも、いまのおいしゃさんはむりでも、もっとみらいのおいしゃさんだったら、バレンタインをなおせるかもしれません。
だから、わたしはじかんをとびこえるきかいでみらいへ行って、バレンタインをなおせるおくすりをもらってきます。
それを、きょねんのわたしに、あげたいと思います。
そうすれば、バレンタインは、きっといまも生きてると思うのです。
わたしは、そんなことができるきかいを、きっときっと、つくろうと思います。
―――
138 :
書いた人:04/11/24 22:45:59 ID:EOUnTHei
―――
作文を読んだ私を、同級生たちは笑っていた。
ゆびを指して私を笑うみんな。
それを真っ赤になって怒りながら、制しようと必死の先生。
全てが懐かしい、あの日。
私は嘲笑するクラスメートを見て、何とも思わなかった。
だって…自分の言ってることは、至極真っ当なことだと信じていたから。
それにひとりだけ、両手で頬を包んで、眩しげに私に笑いかけてくれていたから。
139 :
書いた人:04/11/24 22:47:26 ID:EOUnTHei
…夢を見ていた。
途中で気付いた。
しっかし…どういう夢なのよ、これ。
人生で一回もこんな将来の夢、描いたこと無いのに。
こんな発表会だって記憶に無いもの。
この繰り返しの中で、よく見るようになったおかしな夢。
いつも疲れる夢。
いつもは夢から覚めた後、さっさと忘れちゃって、ただ疲れるそれに腹が立つけど。
でも…なにか、こう、今夜の夢は…暖かかった。
夢から覚めても、覚えていたいと思った。
140 :
書いた人:04/11/24 22:48:35 ID:EOUnTHei
―――
「ねぇ、あさ美…大丈夫なの?」
「え? あぁぁ…と、うん、大丈夫」
コンサート前のリハーサル、いつものようにふらふらと踊る私に、愛ちゃんが首を傾げる。
いつものようにふらふらと、なんだけど…確かに今日は、ちょっぴり足元が覚束ない。
そこ、いつものことだとか言わないように。
「はい、それでは次に…MC終わった後の立ち位置、ご確認お願いしまーす」
会場内に響くマイクの声。
ちょっぴり頭にガンガンと響く。
「ほら、あさ美…」
「?」
141 :
書いた人:04/11/24 22:50:01 ID:EOUnTHei
愛ちゃんが差し伸べた手がダブって見えた。
アハハ、ダメだなぁ…私って……
愛ちゃんの顔がおかしな向きになっていく。
ビタン!
って思ったら、ほっぺが思いっきりステージにぶつかった。
みんなの叫び声が響く。
駆け寄ってくる足音が、ダイレクトにステージを通じて頬に伝わる。
いやいや、みんな痛いからさ。
「マネージャーッッ!! 紺野が倒れたッ!!」
「ちょっと…早く!」
矢口さんも石川さんも…相変わらず五月蝿いなぁ。
この五月蝿さのデュエットを聴けるのも、あと少しかぁ。
142 :
書いた人:04/11/24 22:51:44 ID:EOUnTHei
―――
「つーかさぁ…あんたが行く必要あんの?」
「バカだなぁ…」
「馬鹿とか言わないでよ。
確かにあんたよりあたしは馬鹿だから、そー言われると余計に悲しいでしょ!」
「いや、世間的に…全世界的に見れば、全然天才の部類だよ」
「うっさい、それが余計にむかつく。でも…なんで?」
「え? だってさぁ、エジソンだってグラハム・ベルだって…
世界の発明家で、自分の発明を最初に自分で使ったことが無い人なんていないよ?」
「そうだけどさぁ」
「それにさ、私が行った方が、色々と改良点もたくさん見つかっていいかな、って」
「…そっか。そうだよね…あんたが何であれを作ったか、その理由忘れてたわ。
応援するよ。どう? 成功祈願に食事でもしよ?」
「いいねぇ…」
「涎出てる、涎」
―――
143 :
書いた人:04/11/24 22:53:16 ID:EOUnTHei
―――
目が覚めたとき、ホテルのベッドの上に居た。
豆電球だけ点いてるから、ホテルだって事は分かるんだけど、暗くてよく分かんない。
エアコンのせいで空気の冷たさも分からないから、今が何時かも。
えっと…枕元に照明のスイッチが…
パサッ…と音を立てて、おでこから何かが落ちたような気がした。
点いた電気に一瞬目を細める。
ちょっと目やにがついていたので、慌てて指でそれをこすった。
枕の横には、私のおでこから落ちたであろう、濡れタオルが転がっている。
そっか…私、リハーサルで倒れて…
慌てて携帯をとって時間を見た。
22時28分か………私、今日のコンサート休んじゃったんだ。
144 :
書いた人:04/11/24 22:55:42 ID:EOUnTHei
「…んと…あ、紺野…起きたんだね?」
「石川さん!」
声のする方に慌てて顔を向ける。
全然気がつかなかった。
ベッドの横で顔を伏せて、石川さんが眠っていたらしい。
私…もうちょっと注意深く生きようよ。
「看病してあげてたのに寝ちゃった。ごめんねぇ。
過労だってさ。紺野、分かってる? 疲れてんのよ」
「ハァ…そうですか」
疲れてるはずですよ。今まで身体に出てこなかったのが却って不思議ですもん。
心配そうに、でも「過労」って言う原因がちょっと安心できたのか、それでも笑顔を絶やさずに、石川さんはへにゃっと笑った。
コンサートのお化粧がまだ微かに落ちきっていないみたいで、肌の上にキラキラしたのが見える。
なにかこう、その笑顔と相俟って、とても綺麗だった。
145 :
書いた人:04/11/24 22:56:45 ID:EOUnTHei
今日はここまで
色々途中の段階なので、読みにくいとは思われますがご容赦
>>135 どうも
>>136 Mですか?
>>145 お疲れ様でした
作者として尊敬してますよ
むむ!
何だかおぼろげながら筋書きが見えてきた気がする!!
書いた人さんのは、こうやってだんだんとなぞが解けていく様がいいんだよなぁ・・・
とりあえず、乙ですた
ここからさらに2転3転の大どんでん返し希望
そして結局モーニング娘。とWと後浦なつみで紅白出場
更新乙。珍しく高橋を出しましたねw
150 :
書いた人:04/11/26 21:33:10 ID:4C5KnbQj
ちゃぷちゃぷとタオルを洗う音がユニットバスの方から聞こえる。
…いつの間に着替えさせられたんだろう、汗でぐしょぐしょになった浴衣をその隙に着替えた。
大分寝たから気分の方は結構いい。
身体も特に疲れてないし…うん、これなら明日は大丈夫そうだ。
胸の前でグッと拳を握ってみたところで、石川さんが再び現れた。
「紺野、ちゃんとお布団入ってないとダメだよ」
「…ハァ、でも別に風邪ひいてるわけじゃないんですし…
っていうか、何で熱も無いのに濡れタオル?」
「いやぁ、その方が看病っぽくていいじゃん」
能天気に左手で頭の後ろを掻きながら、石川さんは照れ笑い。
そして私の両肩を掴んで、無理矢理ベッドに寝かしつける。
「さ、紺野はもうちょっと寝てなさいって。いいからいいから」
なんというか、今日の石川さんは久々に見る、あの能天気と強引さが同居した感じ。
中澤さんのお隣で弾けまくっていた、あの頃を見る感じ。
151 :
書いた人:04/11/26 21:33:44 ID:4C5KnbQj
ベッドの横に腰掛けて、石川さんは私をニコニコと見下ろす。
そんなに笑われてもなぁ。
「あのぉ、石川さん」
「ん? なによ」
「今日、コンサート休んじゃってごめんなさい」
「なに謝ってんのよ」
ちょっと呆れちゃった、とでも言いたそうに、人差し指で頬をつついてくる。
爪の先っぽが、痛覚と冷覚を同時に刺激する。
「あのさぁ、あと4日あるでしょ?」
「あと4日しかないです」
「4日もあるのよ」
4日どころか、あと1ヶ月…いや1年続くかもしれない。
それでも私は今謝りたかったのだ。
今日の分のコンサートは何回繰り返されたって、やっぱり今日しかないから。
152 :
書いた人:04/11/26 21:34:44 ID:4C5KnbQj
私を突っつくのに飽きたのか、石川さんは立ち上がって窓の方に歩き出した。
寝そべったまま、彼女が向かう方向に頭と目線だけを向ける。
日頃見ないアングルで、ミニスカートから伸びた細い脚が強調される。
「紺野、ちょっと空気澱んでるから、窓開けようか?」
「ええ、お願いします」
「おっけ」
振り向いてウインクをした石川さんが恥ずかしくて、なんとなく目を逸らした。
カーテンを開ける音。
…でも、その後に来るはずの金属が触れ合う音が聞こえてこない。
おかしいなあ…
「紺野、桜が綺麗だよ」
「は?」
石川さんの声に目を向けると、窓ガラス越しに窓の下の方を見下ろす姿。
そっか…このホテル、大きな公園の隣でしたね。
夜桜か…きっと、いや絶対綺麗ですよね。
153 :
書いた人:04/11/26 21:35:38 ID:4C5KnbQj
「やっぱり今日も変な夢見た?」
「って! 話飛びすぎですよ! 桜は?」
「まあ、いいじゃない」
振り向いてにやりと笑うと、ガチャガチャと回転窓をちょっとだけ開ける。
すぐに外の冷たい空気が、生暖かくて澱んだ空気を洗い流していく。
石川さんの髪の先が、さらさらと風の流れに踊っていた。
「変な夢、また見た?
心に溜め込んで疲れの元になっちゃうんだったら、石川さんに話してみなさいって」
なんと言うか、今夜の石川さんは一味違う。
話に脈絡が無かったり、それを強引に進めていくのは相変わらずだけど。
どこか、儚い感じがする。
それが私の精神状態のせいか、春の夜のせいか、その辺はさっぱり分からない。
154 :
書いた人:04/11/26 21:37:40 ID:4C5KnbQj
「夢…ですか。色々見た気がするんですけどねぇ…そんなに全部覚えてないんですよ」
その「儚さ」が染みて、ついつい言葉が先に出た。
その話の相手はベッドに横座りに腰掛けて、私をじっと見下ろす。
「何でしょうねぇ…そう、作文読んでましたよ。
今まで書いたことがない作文を、さも自分のものみたいに読んでましたよ」
「へぇ…どんなのよ?」
「大きくなったら…とかそんなのだった気がしますけど。みんなに笑われて、でも…」
「でも?」
「ひとりだけ、誰だったかなぁ? あれ。
知ってるような知らないような、どっちだったか分かんないですけど。
その人だけは、本気で私の話を聞いてくれてたんですよ」
瞬間、石川さんは頬を膨らまして吹き出した。
でもそれも一瞬、
155 :
書いた人:04/11/26 21:38:37 ID:4C5KnbQj
「ハハハハ…なぁに? それぇ〜」
ただでさえ甲高い声を更に響かせて、笑い声を響かせる。
お布団をボンボンと叩いて、お腹を片手で抱える。
目尻に浮かんだ涙を小指の先で飛ばして石川さんはそれでも笑いつづけた。
むぅ…折角打ち明けたのに、これじゃ心の支えがとれるどころか、却ってストレスになりそうだ。
頬をぷうっと膨らませて石川さんに不機嫌をアピール。
流石に鈍感な彼女も気付いたらしい。
「ああ、ゴメン、紺野…で、どうなのよ? やっぱり嫌な感じなわけ?」
「んーと、今回は別に…っていうか、普段も嫌って感じじゃなくて、
どっちかって言うと身に覚えがなさ過ぎて困っちゃう、ってところですねぇ」
「そんなもんでしょ、夢って」
『もしも明日も調子悪かったら、遠慮なく休むのよ』
そんな言葉を残して、窓を閉めると石川さんは出て行った。
今日は夜まで騒がないように、私だけ一人部屋にされたらしい。
まあ…早く寝るとしますか。
どうせまた、変な夢を見るんだろうけど。
夢を見ることがまるで普通になってきた自分がいた。
156 :
書いた人:04/11/26 21:39:33 ID:4C5KnbQj
―――
「お! 石川、紺野どうだった?」
部屋のドアを後ろ手に閉めた石川を認め、矢口はパソコンのディスプレイから目線を移した。
普段だったら『所詮石川』だから、パソコンから目を離すことなどないのだけれど。
今日は、離す気になったのだ。
一つは、彼女が紺野の部屋から帰ってきているということから。
そしてもう一つ、いつもは部屋に入ってくるなりキャーキャー声をあげる、その声がなかった。
「まあ…そのまんま、過労ですよ。大分元気そうでしたけど。
やっぱり会話の節々で、ちょっと鬱な感じが見え隠れってところですか」
「むぅ」
『むぅ』に色んな想いが込められていることは充分に分かる。
『事務所がこき使いすぎなんだよ』などと、リーダーとして大っぴらに言えない、
その葛藤が『むぅ』には込められている…はず。
そして…もう一つの葛藤も勿論含まれているはず。
いや、含まれていない方がおかしい。
「矢口さん、紺野また夢見たって」
「どんな?」
「将来の夢の作文を読んでる夢…って言ってました」
「それって…そっか…うん、そっか」
まるで頭の中で何度も何度も反芻しているみたいに、矢口は顎に指をかけて数度頷く。
石川はただ憂鬱そうに、その様子を見下ろしていた。
157 :
書いた人:04/11/26 21:40:58 ID:4C5KnbQj
そのまま言葉がなくなったのを契機に、石川はまだ考え込んでいる矢口の後ろに回る。
そして何気にノートパソコンに目を落とした。
「矢口さん、またそれ見てるんですか?」
「ん…あぁ、だってよ…何度でも復習しないとさ」
「忘れることなんかないでしょ」
忘れることなどないはずだ。
そう、絶対に。
矢口がこれを忘れるなんて、ありえない。
何と言うか…心配性とでも言うのだろうか。
石川に言葉には反応せずに、またさっきの思考のスパイラルに戻った矢口に溜息を漏らすと、
石川はもう一度カーテンを開ける。
やっぱり窓の下には、笑ってしまうような綺麗な桜色が広がっていた。
明日のコンサート、紺野も出られるといいな…
そんなことを思った。
まだ矢口は考えつづけている。
ノートパソコンが静かにファンの音を立てていた。
パソコンでは、紺野が昨日ちらりとファイルネームだけを覗いた『P.V.』が起動されていた。
158 :
書いた人:04/11/26 21:44:48 ID:4C5KnbQj
今日はここまで
実にモジ真希さんが可愛かったですな
>>146 毎度思うのだが、早すぎませんか?
>>147 段々、段々です
>>148 松浦、強く生きろよ
>>149 ののさんが卒業して、この役回りがいなくなっちゃった
更新お疲れ様です。
160 :
書いた人:04/11/28 18:11:29 ID:tyZD/JBc
「矢口さん……もう、やめませんか?」
キーボードを土砂降りのときみたいな音を立てて叩いている手が、ピタリと止まる。
背後に立っている石川には、手を止めた矢口の表情はつかめない。
ただパソコンの青白い光に照らされて、その頬の辺りが霞んで見えるだけ。
「もう、あきらめましょうよ」
「それは無理だろ」
言葉を畳み込んで、ようやく戻ってきた返事。
つれない返事だけど、その返事が返ってくることは予想できていた。
むしろ、必然だったかもしれない。
「もちませんよ?」
「ようやくここまで来たんだぜ? あと少し…」
「でも!」
「石川ッ!!」
振り向いた矢口の目を見て、ドキッとする。
161 :
書いた人:04/11/28 18:12:15 ID:tyZD/JBc
キュッと結んだ唇
やや朱に染まった頬
目尻に溜まった涙
強い言葉の割に泣き出しそうなその顔。
二律背反…そんな言葉が石川の脳裏に一瞬だけ浮かんだ。
「なんででしょうね。なんで、私たちはここまで来て迷うんでしょうね」
「それはお前も私も、紺野が好きだからだろ」
簡単な答え。
ただ完璧な答えだった。
反駁の余地などなくて、いや…反論する気持ちなんかそもそもない。
162 :
書いた人:04/11/28 18:13:25 ID:tyZD/JBc
ふぅ、と唇を尖らせて、矢口が胸に溜まったものを息と一緒に吐き出す。
それを見て、石川は微笑んだ。
さっきの自分の提案が却下されたことへの反論はない。
採用されることなどないことは、言う前から分かっていたことだから。
「がんばろうぜ、あと少しだ」
「ですね」
「あと少し、そしたら…私たちは」
「ええ」
ディスプレイに目を落とした矢口に頷いたとき、もう笑顔に戻っていた。
その時は…この輪廻もなくなるだろう、そして永遠から抜け出したとき、
私たちをただひたすらの日常が待っているはずだ。
退屈だけど毎日が楽しかった、懐かしすぎる日常が。
ディスプレイを覗き込むと、矢口は起動していたシステムを頭に戻していた。
寝る前にまた見るのかな?
大きく書かれたタイトルが離れている石川からも見えた。
意味も無く、そのタイトルを呟く。
「Project Valentine…か」
紺野は今夜、どんな夢を見るのかな?
そんなことを石川は考えていた。
163 :
書いた人:04/11/28 18:14:59 ID:tyZD/JBc
―――
何かに吸い込まれる感覚
小さい頃、布団に入ると時々感じた、あの落ちていく感覚に近いかも
暗い
でも…あれ?
なんかずっと上の方に白っぽいモノが見える
光とかじゃないよなぁ…なんていうのかな、放射状の光じゃなくて、
ぼわんとした暖かい光
「理論通りだなぁ」
…誰だよ
「あと…少しで転移が……」
…私の声か
なんだ、この夢
意味分かんないなぁ
164 :
書いた人:04/11/28 18:16:14 ID:tyZD/JBc
こんな、殆ど暗闇みたいなところにいるのに、夢の中の私はとっても強い
最高の確信を胸に秘めているみたいで
手探りでしか進めないようなところなのに、私はまるで楽しむかのように
歩いているような、浮いているような
いや、実際に人生で浮いたことなんかないから知らないけどさ
「…待っててね。バレンタイン…これが成功したら」
だから…バレンタインって…ああ、犬だっけか
いつか…夢で見たっけ
光が大きくなる
暗闇を抜けて、そして周りが真っ白になっていって…自分の手すら光に包まれて見えない
その刹那、
「キャァアアアーーーーーーーーー!!!」
165 :
書いた人:04/11/28 18:17:19 ID:tyZD/JBc
―――
バサッと布団を跳ね除ける。
遮光カーテンの隙間から光が漏れている。
朝…か
なんだ、あのサイアクな夢見は
いつもだったらぼんやりとしか覚えていないのに、今日は完璧に夢を覚えてる。
…なんなんだろう?
そしてもう一つ、いつもは「なに、この夢?」って鼻で笑い飛ばせるのに、
既視感?
あんなことが…ありえないけど、昔あったような。
汗で背中がびしょびしょになっている。
シャワーでも浴びよう、そう思ったとき、
「あさ美ちゃーん!! 『集合時間なのにあの女来ねー!!』って、
矢口さんが怒り狂ってるよぉーー!!」
ドアの外からまこっちゃんの声が聞こえた。
内容とは関係なく、相変わらずのほほんとした口調。
「すぐ行くって言って!!」
そう答えると私はシャワーを諦めて、クローゼットを押し開けた。
166 :
書いた人:04/11/28 18:20:26 ID:tyZD/JBc
今日はここまで
韓国スターがニュースで映る度に、チャンネルを変える私
>>159 ありがとうございます
更新お疲れ様です。
だんだんと核心に迫っていくようで、わくわくしながら読んでいます。
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
>>168 悪気は無いとは思うが、俺たちは読ませてもらってる以上、
少しは言葉は考えた方がいいと思うぞ。
>>110のものです。別に外人さんじゃぁないですよ?
ここはなんか好きです。がんばってください。
173 :
名無し娘。:04/12/05 19:08:54 ID:Yul340Vk
羊に帰って来てたんだ。書いた人さん乙。
書いた人さんなっちの件で落ちこんでんのかな?
176 :
書いた人:04/12/12 01:19:37 ID:Z0rC39xD
―――
うーんと…あとは、確か…サーモンのマリネだったかなぁ?
ケータリングを前に、お皿にお料理をてんこもりにしたうえで、さらに考え込む私。
昼公演を終えたあとのケータリングは、忙しなさで殺伐としてるんだけど、
それでも一瞬だけ、気が抜ける。
私の予想は当たっていた。
つまり…昨日も一昨日も、最初の一週間からはまったく違う1日だったのに。
それなのに、今朝はすべてがリセットされたみたいに、同じ1日が始まっている。
まこっちゃんが私の部屋に呼びにきたっていう変化も、それっきり。
あとはまったく同じ一日。
『まったく同じように、一週間を過ごしてみよう』
矢口さんはこの意見を変えてくれていないみたいだった。
何度か、矢口さんに返事を催促する目線を送ってみたけれど、
気付いていないのか、隣の石川さんと笑ってばかり。
177 :
書いた人:04/12/12 01:20:35 ID:Z0rC39xD
トングでマリネを少しだけ取って、お皿の端のほうに乗せる。
お酢のちょっとつんとした匂いが鼻を刺して、
その匂いが、確かに最初のこの日にマリネをとったことを思い出させてくれる。
みんなで一気に現状を変えてみたら、この輪廻を抜け出せるかもしれない。
でももうひとつ、まったく同じ一週間…いや、同じ一日を過ごせば、この輪廻を抜け出せるかもしれない。
まったく予測がつかないからこそ、どっちも試してみる価値があるような気がする。
今朝まこっちゃんが私の部屋にきた時点で、もう無駄になっているけど、
それでもやっぱり平常を保つべき…って気もするし。
よく分かんないや。
とりあえず、今現状として、私がサーモンマリネを食べたいのはれっきとした事実。
丸テーブルでは、愛ちゃんとまこっちゃんが大きく手招きしていた。
178 :
書いた人:04/12/12 01:21:50 ID:Z0rC39xD
「あさ美ちゃん、もう身体大丈夫なんだねぇ」
「うん、まあ…昨日寝まくったから」
「いきなりほっぺから倒れるから、驚いたよ」
席についた私を出迎えるまこっちゃんは、どこか嬉しそうだ。
私が倒れる瞬間を見届けた張本人、愛ちゃんはやっぱり目の中にどこか憂いを込めていて。
変えようとしないこと。
多分それは、劇的な変化を起こすことより何倍も難しい。
ロボットやコンピューターじゃない限り、すべてを覚えてなんていられないから。
他愛もない会話の中にも、精一杯緊張感を持たなきゃいけない。
そもそもこんな会話、最初のこの日にしてたわけないからなぁ。
基本的に、一週間の一番最初から「普通どおり」を実践しないと、無理なのかもしれない。
179 :
書いた人:04/12/12 01:22:58 ID:Z0rC39xD
「石川さん卒業しちゃうって、実感湧かないなぁ」
フォークに巻きつけたペペロンチーノをお皿において、まこっちゃんが小さく呟く。
後藤さん、保田さん、のんちゃんに加護ちゃん、飯田さん…そして、石川さん。
私たちが見送る4人目の人。
ラストステージを5回やっているけど、唯一感謝していることがある。
それは、石川さんとこんなにも長くいられるってことだ。
まこっちゃんの溜息混じりの言葉は、同時にまこっちゃんの感傷を乗せて、
テーブル上のお皿の群れを通ると私たちの心に届く。
「当たり前なんだよね、石川さんがいるの」
「そうそう、そんな感じ」
まこっちゃんは愛ちゃんに笑って頷いたけれど、唇の端が笑っていなかった。
石川さんがいるのが当たり前のモーニング娘。
でも…石川さんが抜けてしばらくすれば、石川さんがいないの当たり前のモーニング娘。になる。
今までもそうだったように。
180 :
書いた人:04/12/12 01:24:01 ID:Z0rC39xD
考えながら、ぼんやりと二人が盛り上がっているのを眺めていた。
次に私が発する言葉は、二人の非難の眼差しを受ける。
最初の1週間で、なんで私がこの言葉を言ったのかよく分からないけれど。
この場面はよく覚えてるから、再現しようと思えば簡単だ。
私は、次にこう言うはずだ。」
『私たち同期の中で、一番最初に卒業するのは誰だろう?』
自分でも、なんでこんなことを言ったのかわからない。
先輩が一人卒業しようとする今、そんな先走ったことをいう理由がない。
ただ、なぜか、そう言いたかったのだ。
別に答えを期待していたわけではないけど。
「だから…私たちもしっかりしないとダメなんだよねぇ」
「さっすが愛ちゃん、いいこと言うなぁ。ね? あさ美ちゃん?」
まこっちゃんが私に話を振ったこのときが合図。
181 :
書いた人:04/12/12 01:25:12 ID:Z0rC39xD
「あのさ…」
「ん? なに?」
小首を傾げる二人。
仕方ないよね…言わなくちゃいけない。
私たちが、これから先に進むために、試してみる価値はある。
「あのさ…私たちの中で、同期の中で…」
「ぽんちゃん!! ちょっと教えてくれん!?」
…あれ?
なんでだろ?
なんで私の言葉は、遮られたんだろう?
「さゆも絵里も分からんから、教えてくれん?
さっきテレビでやっとったんけどな…」
無反応な私を無視するかのように、暗号? よく分かんないけど、
れいなが英数字の羅列が書かれた紙を突きつけてくる。
182 :
書いた人:04/12/12 01:26:33 ID:Z0rC39xD
やっぱり…一週間最初からやり直さないとダメなんだ。
それじゃ、やっぱり最後の一日に、みんなで思いっきり一日を変えてみる、これしかないよ。
そう考えると、思いのほか切り替えが早かった。
うん、そうだよね。
失敗しても許される。
甘えきった考えだと思うけど、でもしょうがないよね。
こんな異常な状態だからさ。
一生懸命英数字をぺしぺしとペンで示して、れいなが説明をしている。
初めて見る光景…なんだか微笑ましくて。
最後の一日に全てがあるんだったら…今日は楽しく行こうか。
183 :
書いた人:04/12/12 01:28:05 ID:Z0rC39xD
「で…って! ぽんちゃん聞いとる? これができればIQ150なんよ?」
「そんなにIQいらないでしょ?」
「うーん、分かっとらんね? チャレンジすることに意味があるんよ?」
まこっちゃんの突込みを軽くいなして、ぷりぷりとするのがコミカルで。
IQ150って相当だと思うんだけどなぁ…
岡女で1位とか言っても、こういうの関係ないよね。
……あれ?
「ねえ、れいな? 答えってさ…『甘さも苦さも人生には必要』?」
「ん? 答えは分かんないけど。なんでその答えになんの?」
「え? いや…だってさぁ」
自分の目を疑った。
指が、口が、まるで他人のもののように動いている。
一瞬で解いた暗号を、すらすらと噛み砕いていく。
でも心のどこかで、この答えがわかりきっている自分もいる。
なんだろう、私が二人いるみたい。
184 :
書いた人:04/12/12 01:29:51 ID:Z0rC39xD
いつの間にか、私たちのテーブルの周りには人垣ができていた。
みんなが私の指先を覗き込んで、感嘆の声を漏らす。
口を開けっ放しのまこっちゃん。
目を輝かして私を見つめるれいな。
私が注目を浴びるのが気に入らないのか、ぷんぷんと頬を膨らませるシゲさん。
矢口さんは、どこか満足げで。
石川さんは、ニコニコと私を見つめている。
証明を完璧に解いたその瞬間、拍手が自然と湧き起こった。
ちょっと照れくさくて、ちょっと誇らしくて、でもなんだか当たり前で。
そして心の隅で、私が言い掛けた問いの答えが何故か見えた。
…同期の中で一番最初に辞めるのは、自分じゃないだろうか。
185 :
書いた人:04/12/12 01:33:33 ID:Z0rC39xD
186 :
書いた人:04/12/12 09:39:46 ID:4/d9X2HW
>>186 更新お疲れ様です。まあ、気を落とさずに頑張ってください。
(つд`)ヽ(^▽^ )ダイジョウブダカラ
>>186 わざとだろ?
紺野は安倍の卒コンに参加してないし
はじめまして。更新お疲れさまです。
>>186 作者さんの脳内紺野さんが
(自分はラストステージで安倍さんを見送れなかったから)
と敢えてカウントを避けたのでは。
190 :
名無し娘。:04/12/13 04:00:27 ID:/entQwAf
>186
漏れもこんこんはなちラスのステージに居なかったからだとオモタ。
ま、「私たち」と言ってるけどさ。キニシナイキニシナイ
作者さんへ
ィ`
192 :
書いた人:04/12/15 23:18:41 ID:BK0Adg6G
―――
「今日一番びっくりしたのは、あさ美ちゃんがめちゃくちゃ天才だったこと!!
小川麻琴でーす!!」
「…小川、いきなり台本無視すんのはどうにかしてくれ」
ステージの上、スポットライトが暑い。
横でボソッと矢口さんが呟くと、向こう隣の美貴ちゃんもちょっとだけ頷くのが見えた。
『紺野あさ美暗号を瞬時に解答』は、娘。内のトップトピックスとなっていた。
あの後、テレビで確かめたらやっぱり私の答えが大正解で。
そのあともテレビで流れ続ける問題も、殆ど考えることなく、私は答えを口にしていた。
「ホント! 今日だけはぽんちゃんを見直しましたーーー!!」
こら待て、れいな。
今まではどうだったんだ、今までは。
会場内に湧き起こる笑いが、非常に不愉快だ。
…しょうがないと言えば、しょうがないのかな。
193 :
書いた人:04/12/15 23:20:16 ID:BK0Adg6G
笑いに包まれた会場だけど、それでもやっぱり、これは石川さんの卒業コンサート。
終盤になるにつれて、自然と石川さんへの声援が、まるで悲鳴に近い声が大きくなる。
いつも、いつもというのは、この繰り返された一週間の中で、と言う意味も持つんだけど。
いつも石川さんは、コンサートでニコニコしながら躍っている。
私たちと過ごすことができる最後のこの時間を、心から楽しもうとしているみたいに。
事実、最終日のI wishの直前になっても、石川さんは泣かない。
もしかしたら、リバースボタンが押されるあの瞬間から何小節か先では、泣いてるかもしれないけど。
「モーニング娘。の石川がやるのも、あと3日しかありませんッ!!
だから! みなさんご一緒に!! せーーーーのッ!!」
「「「ハッピーーーーーーーッッッ!!!!」」」
『こいつどうしようもねえな』
矢口さんが悪態をついているけれど、その目は温かい。
今日の石川さんは、ホントに楽しそうだ。
3年半一緒にいて感じる、ただの勘なのかもしれないけれど、楽しそう。
194 :
書いた人:04/12/15 23:21:20 ID:BK0Adg6G
それは…そう、私が初めてオソロで『梨華ちゃん』って呼ばされたあの時。
あのときに見せた、妙な照れ笑いに似ている。
収録が終わった後も、石川さんはしばらく私を弄(いじ)り続けた。
『ほら、紺野!! もう一回、梨華ちゃんって言って御覧なさい!』
『え〜〜!! 無理です』
『それじゃ私もあさ美ちゃんって言ってあげるから』
『梨華ちゃん!! 紺ちゃんが困ってるでしょ!!』
『柴ちゃんはほっといて!』
そんな会話をしたこともあったっけ。
あの時の表情を不意に思い出したのは、やっぱりそれだけ心に残る何かがあったんだろう。
何故、それが心に残ることになったのか、その取捨選択の基準はよく分かんない。
私は…石川さんと、その「心に残るシーン」を、いくつ繰り広げることができたのだろう。
スポットライトに目を細めて、蒼いフットライトに浮力を感じて、そんなことを考えた。
195 :
書いた人:04/12/15 23:23:16 ID:BK0Adg6G
―――
「どーせあさ美ちゃんお菓子溜め込んでるんでしょ? ちょっと出してよ」
「あぅ…それは自分用に取っておいたポルテなのに…」
「いや、麻琴、別に私はお菓子とかいいんだけど…」
私の荷物をごそごそと漁るまこっちゃん。
私とまこっちゃんの部屋には、美貴ちゃんが私の回復祝いにきてくれていた。
妙にこういうところは、義理堅いというか優しい。
まあその反面、日頃がアシュラマンの冷血みたいな感じだからなぁ。
「なんにしてもよかったじゃない。変な病気とかじゃなくてさ」
「変な病気って、なんですか?」
「いやぁ、それを私の口から言うのは憚られる」
「?」
子どもの私たちにはよく分からない会話を、美貴ちゃんは一人で推し進める。
ベッドの縁に腰掛けてコロコロと笑いながら、彼女にしては珍しくお菓子をつまむ。
まこっちゃんはその横で、ベッドにべたーっと横になったまま。
196 :
書いた人:04/12/15 23:24:41 ID:BK0Adg6G
「でもさぁ、何にそんな疲れてるのよ?
これと同じくらいのスケジュールだったら、今までだってこなしてるんじゃないの?」
「えっと……」
その先を言うのは躊躇われた。
美貴ちゃんは並んだベッドに座る私をじっと見据えている。
いつもと同じ、落ち着いた感じの目線。
その目線にじっと見られると、なんだか落ち着かない。
ノースリーブの真っ白な腕の先にチョコレートをちょんと摘んで、
それを指先で弄ぶようにしながら、私の返事を待っている。
矢口さんとの約束。
破りたい…けど、破っていいんだろうか。
「もしかしてさ、言いにくいこと?」
少しだけ美貴ちゃんの声が潜んだものになる。
ベッドにうつ伏せになっていたまこっちゃんは、枕を抱きながらテレビの映像をボーっと見ている。
197 :
書いた人:04/12/15 23:26:18 ID:BK0Adg6G
コク…
ゆっくりと、まるでさも当然のように、頭が縦に動いた。
一瞬だけ悲しそうな目付きをして、美貴ちゃんも頷き返す。
そしてすぐに、いつもの意地悪な笑いを唇に浮かべた。
「おい、麻琴! ちょっと藤本さんジュース飲みたいから買ってきて。
バヤリースのオレンジね。バヤ坊が横顔でプリントされてるのじゃないと却下だから」
「いやいや、そんなの売ってないですよぅ…」
「うん、そうか。よろしく頼むから。
で、ついでに紺ちゃんがジャズイン飲みたいって」
「なんですか? それ?」
「ジャワティーに炭酸入ってるやつだよ! 知らないの?
10年位前、北海道で売ってたから、多分ここでも売ってるでしょ? さぁ、行きなさい!!」
あんた…鬼だよ。
ジャズインなんて飲み物、私知らないし。
ってか、バヤリースのあのマーク、バヤ坊って言うんだ…
「えぇ〜、せめてあさ美ちゃんも連れてかせて下さいよ」
「紺ちゃんは病み上がりなの!! さ! 行きなさい!!」
情けない声を出して、まこっちゃんは廊下の外に消えていった。
まこっちゃん、お話終わったら、すぐに電話してあげるからね。
198 :
書いた人:04/12/15 23:28:22 ID:BK0Adg6G
カチャ…とドアが閉まる音、そしてオートロックが掛かる微かな音がした。
チョコレートを包装の上に戻すとすこし崩していた姿勢を正して、美貴ちゃんが大きく息をつく。
この時点で、私は覚悟を決めていた。
矢口さん、これはけして、矢口さんを裏切るわけではないです。
ただ、私も私なりに、何とかしてみたいだけなんです。
心の中で何度も言い訳をする。
美貴ちゃんは何も言ってこない。
私から口を開くのを、ひたすら待っているみたい。
「この1週間が…ずっと繰り返されてるんです」
美貴ちゃんが眉を顰める。
眉間にうっすらと、縦の皺が刻まれた。
エアコンの微かな音、廊下から聞こえる吉澤さんの妙な雄叫び。
そんな音波に身を任せているみたいに、私の言葉を聞いた美貴ちゃんからは呼吸の音しか聞こえてこない。
199 :
書いた人:04/12/15 23:29:35 ID:BK0Adg6G
「…えっと……」
先を続ける自信が一気に萎む。
話したって…信じてくれないよ。
膝の上で握った両手を見つめてしまう。
でも、その瞬間、今まで聞いたことのない口調で美貴ちゃんが言葉を紡ぐ。
「信じるか信じないかは、聞いてから決める。
何も聞いてない今、全部を信じるなんて無責任は言えない。
だから…話して?」
真面目さ、優しさ、一抹の悲しさ、色んなものがその言葉にはブレンドされてる。
とっても美味しいコーヒーみたい。
決めた。
全てを打ち明けよう。
美貴ちゃんに話してどんな結果になっても、後悔はしない。
するはずがない。
私の頭からは、今ごろ半泣きでコンビニを巡っているまこっちゃんの姿は吹っ飛んでいた。
200 :
書いた人:04/12/15 23:34:08 ID:BK0Adg6G
今日はここまで
遥か13年程前、ジャズインが好きだったのですよ
>>187 読み返したときは、大丈夫だと思うんですけどねぇ
>>188 ここでわざとと言い出せるほど、強気ではないのですよ
>>189 好意的な解釈どうもありがとうございます
>>190 何度書いてても、こういう間違いってやっちゃうのです
>>191 とりあえず、生きてます、一応
更新お疲れ様です。
ミキティーかっこええですね。
このあと、どういう展開になるのか。ワクワクドキドキ
美貴様まできましたかー
203 :
書いた人:04/12/19 13:57:49 ID:SjO6tsPL
―――
全てを話し終わるのに、40分近く掛かったと思う。
その間、ずっと美貴ちゃんは黙って私の話を聞いてくれた。
一言も疑問を挟んだりせず、ただひたすら、私の話に頷いてくれた。
終わったとき、喉がカラカラだった。
そして最後、核心に踏み出す。
「…だから、コンサートの最終日…明々後日…私たち全員が歯向かってみたら…
もしかしたら私たちだけじゃ足りないかもしれないですけど…」
「…」
「勿論、ホントは明々後日何をやってるはずなのか、それが分かんないと意味が無いんですけど。
…私も矢口さんも、流石にみんながホントはどんなだったのか、隅から隅まで見てません。
でもでも、このことを聞いた以上は、違うことをやろうと誓った以上は、絶対に同じ一日にならないはずですから」
そう、ある変化が起きれば、それが心の中にだけ起こったものだとしても。
それはビリヤードの玉みたいに変化を連鎖させるはず。
そのためには、みんなの力が必要で…
204 :
書いた人:04/12/19 13:59:37 ID:SjO6tsPL
目の前の彼女は右手で口を覆う。
ノースリーブのニットから伸びた腕の示す角度が、少し色っぽい。
涙袋はやや陰りが強くて、目は天井やら私の顔やら、窓の外の桜吹雪やら、色んなところを行ったり来たり。
……信じろ、って言う方が無理があるもんなぁ。
どうしよう、なんて付け足せばいいんだろう。
逡巡して声を出そうとした瞬間、美貴ちゃんが左手でわしゃわしゃと後ろ髪を掻く。
「あぁぁぁあ、畜生、分けわかんないよ、紺ちゃん」
「あの…ごめんなさい」
「もっとこうさぁ、『最近好きな人ができたんです』みたいな恋愛関係の話とかだと思ったんだけどなぁ。
一週間がリピートされてて、それで今回が六回目? 紺ちゃんと矢口さんだけが気付いてる?」
論点整理を必死にしようとするかのように、美貴ちゃんはぶつぶつと私の話を呟いて繰り返す。
必死に自分に言い聞かせようとするみたい。
もう無理だな。
やっぱり経験してない人に信じてもらおうとしても、無理だよ。
ここで矢口さんを連れてきて証言してもらっても、多分同じことだろう。
今の美貴ちゃんに必要なのは、人が口で言うだけじゃなくて……あ。
そうだよ…何で気付かなかったんだろう。
一つだけ、確実な方法がある。
205 :
書いた人:04/12/19 14:00:43 ID:SjO6tsPL
私の脳味噌が素晴らしい閃きを捕まえた瞬間、美貴ちゃんの頭を掻く手が止まった。
そして俯かせていた頭を上げる。
唇の端がにやっと上がった、いつもの彼女の姿。
この顔つきは、大抵何かの策謀を思いついたときの顔。
いつもは私からは叩いても出てこないような、どうしようもなく意地悪で突拍子も無いことなんだけど。
でも多分、今日は私と同じ結論だと思う。
「紺ちゃんさぁ…話を聞いてから信じるとか言ったくせに、ホント悪いんだけど…」
「はい」
「別に、信じてないわけじゃないよ? でもね、ちょっと美貴の頭脳レベルを通り越しててさ…ただ、証拠を」
「大丈夫です。私も多分、一緒のことを思いついたと……思いますから」
「そっか…よかったぁ」
本来ならば私が安堵の吐息を漏らすはずなのに、美貴ちゃんがその息を漏らした。
プライド? 自分の言葉への責任? そんなものを果たせたことの安心感?
206 :
書いた人:04/12/19 14:01:44 ID:SjO6tsPL
いつまでも年上としての意地を持ったままで、いつも身構えている美貴ちゃんが見せる一瞬の緩み。
そんな滅多に見れないシーンに見惚れる暇も無く、私は心の中で必死に明日起こるはずの何かを思い起こしていた。
私たちの前で起こるはずの、印象的な出来事。
しかも私たち自身には起こらない出来事。
そして…
「言っとくけど、紺ちゃん。美貴がこれを知っちゃったり、紺ちゃんが昨日倒れたり、
その辺のことがあっても変わらないこと選びなさいよ」
「はい、大丈夫です。明日のコンサート、確か…マイクトラブルのせいで、公演のスタートが遅れます」
「ホントだね? もうちょっと無いの? 流石に一つだとただの偶然だと思っちゃうかも」
「えっと…石川さんが場内をシーンとさせて…」
「却下。いつものことじゃん」
「うーんと……それじゃ…れいながはしゃぎすぎて、曲の途中で仰向けにすっ転びますし…
あとはですねぇ、まこっちゃんがお腹壊しちゃってMCの最中に腹痛でうずくまるのを、
無理矢理吉澤さんが、石川さん卒業で悲嘆に暮れる姿に解釈して取り繕って…」
「おっけ」
207 :
書いた人:04/12/19 14:03:16 ID:SjO6tsPL
右手の親指と人差し指で、小さく丸を作って美貴ちゃんが微笑む。
まあ…あとは運任せだろう。
美貴ちゃんが私の話に興味を持ってくれて、そしてちょっとでも可能性があることに感謝しないと。
もしかしたら、明日起こる全てがただの偶然か、私が仕組んだなにかと解釈されちゃうかもしれないけど。
でも…私に目を細めて笑う彼女を見ると、ちょっと期待してしまう。
「どうしよう、矢口さんにはやっぱり言っておいた方がいいかなぁ?」
「んー、まあ、一応信じてるかはともかく美貴には言っちゃったんだから。言っといたら?」
「怒られるかなぁ…」
「まさか」
軽くそう言って、ポンポンと肩を叩いてくる。
後で言ったことが分かって気まずくなるより、今言った方がいいよね、多分。
「うん、今行ってきますよ。多分…大丈夫かな」
「どうする? 美貴もついてこっか?」
「いえいえ、大丈夫ですから」
今日はずっと美貴ちゃんにおんぶに抱っこだから。これくらいは一人でやるよ。
その辺の感謝の言葉は、喉の奥に詰め込んでおいた。
真っ赤になって照れまくる美貴ちゃんを見るのも一興だけど、それはまた、ね。
208 :
書いた人:04/12/19 14:04:40 ID:SjO6tsPL
―――
「そっか…で、藤本信じた?」
「いえ…」
今日も石川さんと相部屋の矢口さんを廊下の影に連れ出して、全てを話す。
矢口さんは怒るでもなく、ただ淡々と話を聞いてくれた。
廊下の光がちょっと暗くて矢口さんの表情が今一見えにくいけど、怒ってはいない。
「まあ、いつまでも二人だけで溜め込んでるのも無理な話だしな。
お前の心の健康考えたら、言って正解だろ」
「ありがとうございます」
そして矢口さんはこんなことまで言ってくれた。
杞憂もいいところ。まったく問題ない。
私を見上げる矢口さんの目は、ホントいつもと変わらない、ちょっと厳しくて凄く優しい。
うん、早く全て伝えよう。気だけが焦る。
「で…明日起こることを…美貴ちゃんに言いました。
これがホントに起きたら、信じてもらえるんじゃないかなぁ…って」
209 :
書いた人:04/12/19 14:05:59 ID:SjO6tsPL
うんうん、と矢口さんは大きく頷き返す。
その動きに合わせて、肩から垂らす長い髪がふさふさと揺れる。
「そうだな…普通は信じてくれないもんなぁ」
「ええ。取り敢えず、マイクトラブルで公演遅れちゃうよってことと…」
「紺野」
言いかけた私を矢口さんが小声で制する。
目線の先には、まるで戦利品を高々と掲げる狩猟民族みたいに、
ビニール袋片手に意気揚揚と廊下を闊歩するまこっちゃんの姿。
取り敢えず…明日を変えないためには、まこっちゃんに知られるわけにはいかない。
まこっちゃんが目ざとく私を見つけて駆け寄ってくる。
急いで小声で矢口さんに呟く。
「あと、れいながステージで転んじゃうこと…」
「あさ美ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
「グハァ…」
抱きついてきたまこっちゃんの圧力で、残りの言葉が私の断末魔として漏れる。
210 :
書いた人:04/12/19 14:06:47 ID:SjO6tsPL
「買ってきたよぉ! いやぁ、探した探した」
「なんだ小川、パシリにでもされてたのか」
「まさにパシリですよ」
矢口さんは私たちに目を細めると、部屋に帰って行く。
どこか満足げなのは、やっぱり味方ができそうなことが分かったからだろう。
私の横ではまこっちゃんがこの1時間の奮闘振りを、延々と喋りつづける。
左手に提げているスーパーの袋…ホントに買ってきたんだ。
「お! 麻琴! ちゃんと買ってきたのか?」
部屋に帰るとさっきまでの優しい顔はどこへやら、悪魔のような美貴ちゃんがニヤニヤとまこっちゃんを眺める。
その声に何が楽しいのか微笑み返すと、袋から二本のペットボトルを取り出した。
211 :
書いた人:04/12/19 14:08:47 ID:SjO6tsPL
瞬間、美貴ちゃんの顔が凍り付く。
「おい、麻琴。バヤ坊がなんでマジックで描いてあるんだ?」
「へ? いえいえ、確かそういう仕様なんです」
「めちゃくちゃ『サンキスト』って横に描いてあるじゃん」
ペットボトルのラベルには明らかに手書きのバヤリースのマスコットが描いてある。
つーか、何で目がパッチリ開いてんのよ。確か目は瞑(つむ)ってたでしょ。
美貴ちゃんも言い出した手前、どこか引けないものがあるらしい。
明らかに怪しい二本目の飲料に話を向ける。
「おい、で、こっちの紅茶は、なんでラベルとか無いんだよ」
「ジャズインなんですけどねぇ、最後の一本をスーパーでおばちゃんと取り合いになりまして、その拍子に」
「ほぉ…あれ、ホントに炭酸入りじゃん」
212 :
書いた人:04/12/19 14:10:27 ID:SjO6tsPL
美貴ちゃんがキャップをひねった瞬間、プシュっと特有の破裂音がした。
なるほど…売ってるもんだなぁ……
よし、美貴ちゃんが飲んだら一口貰おうっと。
いやいや待てよ、確かあれは私用に頼んだんじゃん。
じゃあ遠慮なくもらえるわけだ。
さあ、美貴ちゃん!! ペットボトルをお渡しなさい!!
と、振り返った私の横を、美貴ちゃんが口を手で抑えて駆け抜けていった。
あらら?
洗面所で必死にうがいをする音がする。
そしてケンケンみたいに、笑いをかみ殺すまこっちゃん。
聞くまでも無かった。
次の瞬間には、洗面所から久々の美貴ちゃんの怒声が響いてきたから。
「麻琴ぉ〜!! 午後ティーに重曹入れただけじゃねーか!!」
213 :
書いた人:04/12/19 14:13:31 ID:SjO6tsPL
今日はここまで
MIKI@を聴きながら書きましたが、「満月」が一番好きだったり
>>201 例によって、実物からはかけ離れつつ
>>202 結構好きでして
更新お疲れ様です。
さすがみきてぃ、やっぱりマコっちゃんw
ワクワクドキドキしながら毎回更新を待っています。
更新乙です、毎回楽しみに読んでます
重曹の味を知っているミキティ…
( ^▽^)<全世界の人のために保全
(紺野は水死体、安倍と小川は豚、ごっちんは魚、
飯田さんはロボ、保田さんは妖怪、
松浦・高橋・辻・加護は猿だから対象外)
>>216 さすがにその保全はやりすぎ
やめて欲しい
まあなんというか、自己主張の強いお人だな
煽り自体は問題ないと思うが限度があると思うよ
224 :
書いた人:04/12/26 18:07:44 ID:Vw4JePkQ
―――
すこし暗くした部屋。
スクリーンの前に立つ私に、部屋中のみんなが鷹みたいな目を向ける。
これからスクリーンに映し出す全てを記憶しようとするみたいに。
これから私の口から発する全てを聞き取ろうとするみたいに。
ロの字型の会議室。
暗いからぼんやりとしか見えないけれど、手前から段々奥に行くにしたがって歳が若くなる。
変なグラデーション、ちょっとおかしかった。
一番奥に座っているはずの彼女の姿は私の視力では捕らえられない。
でも知っている。
彼女が絶対に私を見ていてくれることを。
胸の前で手を組んで、心の中で私に声援を送ってくれていることも。
そう…小学1年生のあの日みたいに…
225 :
書いた人:04/12/26 18:08:59 ID:Vw4JePkQ
立体スクリーンを使って、噛み砕くように原理を説明する。
ただ…理論の枠組み自体は30年前に発見されていたものだから、私は別に応用したに過ぎないんだけど。
1時間くらい経って私の喉がカラカラになったころ、不意に声が上がった。
「原理は分かった…実現可能性も。ただ一つ気に掛かる。
時間分岐発生の可能性についてどう考える?」
室長が…つまりこの会議室の一番手前に座っている、私の一番上の上司が、
メガネを拭きながらにやりと笑った。
むかし、先輩に教わったことがある。
室長がこの顔をするときは、室長なりの答えが出ているとき。
「分岐については、私は二つの可能性を考えています。
一つは平行時間として存在することです。
つまり…私たちが時間移動をした瞬間、私たちとは別の未来が発生するのではないかと。
私たちが仮に過去で何かを変えたとしても、それは一つの未来の発生を促しただけです。
私たちの未来も、そちらの世界の未来も…両立しえます」
226 :
書いた人:04/12/26 18:11:05 ID:Vw4JePkQ
予想できていた質問。
だけど矢張り緊張した。微弱鎮静剤のお世話になる必要なんて今まで感じたこと無かったけど。
顔に上る血を抑えきれない。
私の答えに満足げに頷くと、室長はメガネをかけ直す。
細く垂れた目の奥で、鋭いものが光っているように見えた。
「もう一つは?」
「もう一つは分岐は発生しない、ということです」
「?」
「ああ、分岐の話をする前提として、私がパラドクスについてどう考えているかも話します。
過去の事象をを変えれば、当然に因果関係というものが変化します。
法律では条件関係というものがあって「AなければBなし」というらしいですけど。
このAがなくなるのですから、未来のいくつものBが消失すると考えます。
ただし『過去に変化を与えたその行為自体を、つまりAを、否定してしまうような行為』
こういうような行為はできないのではないかと」
「過去に行って、幼少の自分を殺す、が分かりやすいな」
乗ってきた自分がいることに分かった。
室長は気難しいけど、でも頭がいいから。
言葉をキャッチボールできるから当然話も弾んでくる。
227 :
書いた人:04/12/26 18:13:11 ID:Vw4JePkQ
「だからこそ…私個人としては、単体時間論を支持しています」
「おかしくないか? 君の言うようにパラドクスの発生を前提とすれば、
単数時間論で行く方が説明ができないはずだ。複数時間論は何故否定される?」
「複数時間論は、パラドクスを切り抜ける要素にはなります。
ただし時間が無限であるという根拠が存在しません」
「それを言えば、時間が…定常でないにしろ、単体であることも根拠は無いが。
大体君の主張に基づけば、世界には必然とそれ以外が存在すると言う、神学的な話になる。」
「そこは試してみないと分からない、と思います」
痛いところを突かれた、とは特に思わなかった。
だって何のデータも無いものだから、私の言ってることが真実かどうかなんて分からない。
それは室長も同じであって。
「…試してみないと分からない…だから、実験が必要なんです」
「なるほど…科学者としては、当然の欲求だ」
満足げに頷く室長。
恐らく私と同じ結論だったんだろう。
単数時間論を主張しようと、複数時間論を主張しようと、結局はデータが足りない。
そのためには…必要なんだ。
228 :
書いた人:04/12/26 18:15:01 ID:Vw4JePkQ
部屋の電気が点けられる。
眩しくて目を細めていたその時、室長の凛とした声が響いた。
「私個人としては、紺野主査に発表を任せようと思うが…他の意見も聞こうか」
何のことだか分からなかった。
でも部屋に響く拍手で徐々に状況が理解できる。
私は照れくさくて、お辞儀っていうかひたすら目を伏せちゃう。
でも…やっぱり気になって顔を上げる。
そう、彼女の姿を一刻も早く探したくて。
(お・め・で・と・う)
目を細めて、手を口の横に添えて叫ぶような仕草で、口パクで言っているのが分かる。
私は……ニヤニヤと返すしかなかった。
今日は一緒にご飯でも食べに行こうよ、まだお酒飲めないけど、ジュースで乾杯しよう?
229 :
書いた人:04/12/26 18:16:37 ID:Vw4JePkQ
ねえ、梨華ちゃん?
230 :
書いた人:04/12/26 18:18:37 ID:Vw4JePkQ
―――
朝、すこし寒くて目が覚めた。
暖房切れてたのかぁ…枕元のエアコンのダイヤルを捻ると、鈍く温風を送り出す音がする。
隣ではまこっちゃんの寝息が微かに聞こえた。
携帯の時間は、朝6時半。
ちょっと…早いね。
もう一眠りしようと思ったけれど、無理だった。
お布団を頭までかぶって考える。
さっきの夢はなんだったんだろう?
夢のくせに何でデジャヴを感じる?
昔心理学の本を抱えながら、保田さんがデジャヴについて説明してくれたことがある。
『人間の記憶ってさ、ある程度順序付けられてるのよ。
でもね、記憶の中で、時々その順番がごっちゃになっちゃう。
いま入ったばかりの情報なのに、それが昔からあるように感じることがある。
それが、あの変な感じになるのよ。いやぁ、心理学って奥が深いわねえ』
231 :
書いた人:04/12/26 18:20:10 ID:Vw4JePkQ
妙なタイミングでウインクをしながら語るその様子が、今もすぐそこに感じられる。
でもでもでも…そんなんじゃない。
あんなふわふわとした感覚じゃないもん。
確かに…私自身があの状況にいた気する。
今はそんな覚えないんだけど、でも夢を見ていた瞬間は『懐かしいな』って感じたもん。
私はどうなってんだろう?
232 :
書いた人:04/12/26 18:21:33 ID:Vw4JePkQ
北海道出身
1986年生まれ
紺野あさ美
家はお父さんとお母さんと、妹の4人で
食べるの大好きで
運動も結構好きで
勉強も…まあ、人よりはできて
私は…
私は私だよね。
私は……ホントに私?
首をぶんぶんと振って否定する。
違う違う違う。
何を言ってるんだろう、私ってば。
今日は…大切な日なんだから。
美貴ちゃんが私たちを信じてくれるか確かめる、大切な日なんだから。
色んなことに押し潰されそうで、布団の中でどうしようもなく不安になって、
私は枕を抱き締めた。
233 :
書いた人:04/12/26 18:26:38 ID:Vw4JePkQ
今日はここまで。
用事があって東京ステーションギャラリーに行きましたが、いい美術館ですね。
深夜に3話ずつ木更津キャッツアイを再放送する、うちの地方局は最高。
>>214 小説書き始めて2年になってしまいました。どういうことでしょう。
>>215 今の子どもは重曹とか舐めたこと無いんでしょうか。
>>216-223 長くなりそうなので、次のレスでまとめて。
234 :
書いた人:04/12/26 18:36:53 ID:Vw4JePkQ
長々と色々と私なりの考えを書こうとも思いましたが、
冗長に過ぎて嫌だったので、止めました。
取り敢えず互譲の精神を忘れないで下さいな。
角を突き合わせるのが掲示板であるとしても、
色んな人が自由に書き込めるからこそ、互譲も必要と考えるのであり。
取り敢えず、年内はあと1回くらいですな、また次回。
235 :
名無し募集中。。。:04/12/26 18:39:21 ID:vg+OHWZt
更新乙です。
ちなみに紺野の誕生日は1987年ですよ…(ボソッ
236 :
書いた人:04/12/26 18:42:22 ID:Vw4JePkQ
237 :
名無し募集中。。。:04/12/26 18:44:10 ID:vg+OHWZt
238 :
書いた人:04/12/26 18:51:03 ID:Vw4JePkQ
orz
239 :
名無し募集中。。。:04/12/26 18:54:42 ID:vg+OHWZt
ソウキニスンナッテ
俺も他スレにこれ張られてなかったら気付かなかったよ
240 :
762:04/12/26 18:56:56 ID:v3PLR8+H
ごめん だいぶ読んできたんだけど
限界だ ノシ
241 :
ねぇ、名乗って:04/12/26 19:47:40 ID:za4nnibs
おぉ、年内にもう一回読めるとは!プレッシャーにはしたくないんですが、
やっぱ楽しみです。
244 :
名無し募集中。。。:05/01/01 21:55:39 ID:AMLNsfDt
保全
あ
書いた人さん
orz
中?
保全
もうだめかもしれんね
いや気長に待ってます
保全
保全
保全
((((#;`.∀´))));T▽T)=3
↓
( ‘.∀‘)⊃<T▽T>⊂(^.▽^ ) [酒]ヽ(#`.∀´)y-~~
( T.▽T)( ‘.∀‘)( ‘▽‘)( ^.∀^)
ヽ、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,ノ
O
o
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{ ,---ノノノハヽ\
\ ヽヽ ( T▽T) \
Y ̄ ̄⌒⌒⌒⌒ ̄ ̄ ~\
ヽ ※※※※※※※ \
\ ※※※※※※※ \
\ ※※※※※※※ \
\__________ノ
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
なにか不安だな。よくわかんないけど。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全
保全。
282 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:51:51 ID:fp+eciKm
謝罪を込めて。
3日で終わる連載小説。
第1回。
283 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:53:23 ID:fp+eciKm
学校の屋上を走り抜ける風は、下にいるときと比べて随分強く感じた。
暖かな南風にいつもなら少しの楽しさを覚えるのに、
私ときたらその生暖かさが不快にすら感じる。
多分春が来るたびに思い出すだろう。
そしてきっと春が嫌いになるだろう。
でももういいんだ。
私が春を嫌いになることは、ない。
だって私って存在はここで終わるから。
あの日から続く眠れない夜も終わり。
町を歩いていてふと立ち止まって思い出して、涙を止めるのに必死になるのも終わり。
伝えられなかった想いを、喉の奥に秘めておくことも…
「あんた、死ぬ気でしょ?」
振り返った先には屋上の紅い扉を背にして女の子が立っていた。
もう一度強く、風が吹いた。
284 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:54:28 ID:fp+eciKm
「Love Letter」
285 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:55:38 ID:fp+eciKm
隣の席の彼を見ると心が騒ぐようになったのはいつからか、そんなことは覚えていない。
気が付いたときには、その横顔を一日中眺めていた。
最初はただの友達だと思っていたのに、いつの間にか。
「紺野、あいつのこと好きなんじゃないのぉ?」
部活の友達の冗談半分の言葉は私の心をかき乱すには十分だった。
ほわほわした気持ちは確信に変わる。
冗談を言って私の頭を小突く彼に、前みたいに笑うことは不可能で。
真っ赤になったであろう頬に、彼は気付かない。
286 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:57:28 ID:fp+eciKm
何度心の中で「好きだ」って繰り返しただろう。
夏は汗を浮かべながら、夜の校舎でやった肝試し。
私と彼がペアになったのはけして偶然じゃない。
懐中電灯の先に浮かぶ、昇降口に飾られた昔の学生の写真。
「この人…屋上から間違って落ちて死んだらしいよ…」
「ちょっと! ぼそっとそういうこと言わないでよぉ」
「いや、ホントだって。先輩に聞いたし」
ギュッと彼の腕にすがりついた。
ちょっぴり汗が滲んで、それが不思議なほど不快じゃなくて。
ドキドキしていたのは、彼の怪談話のせいだけじゃない。
287 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:58:43 ID:fp+eciKm
冬は雪を一緒に見ながら、いつも一緒に笑いながら。
いや…見ていたのは雪じゃなくて彼の横顔だったっけ。
「寒いの…やだなぁ」
「そうか?」
「だって寒いんだよ?」
「なんか身が引き締まっていいじゃん」
「そう…かな?」
あの日以来、私が冬を好きになったことだって、彼は知らないだろう。
ううん、それ以上に。
いつも私に新しい発見をさせてくれる彼をどんどん好きになっていった。
288 :
書いた人:2005/03/25(金) 20:59:47 ID:fp+eciKm
でも言葉に出すことは憚られた。
今の関係が崩れてしまうのが怖かった。
とても人気のある彼に、こんなにぼやぼやした私だもん。
こうやって一緒に笑って、二人で遊んだり、そんな関係になってることだって奇跡みたいだったから。
次二人になったときこそ告白しよう。
何度そう思ったかな。
でも、無理だった。
二人になったその瞬間、彼はすごく輝いて見えた。
そんな人と一緒にいられることが嬉しくて誇らしくて、そして今を失うのが怖くて。
そしてもう一つ、そんな人に今の私が見合っているのか考えちゃって。
もっと自分を磨いて、もっと自分に自信を持って。
そうじゃないと告白なんて無理だった。
でも…多分永遠に自信なんか持てなかったんだろうけどね。
289 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:00:52 ID:fp+eciKm
協力してくれるみんなは背中を押してくれる。
同じクラスで同じ部活のまこっちゃんは
「あさ美ちゃん、チャンスの神様は待ってくれないよ?
お似合いだと思うんだけどなぁ、二人」
って言ってくれた。
いつだったか、授業中に手紙を回してきたこともあったっけ。
いつものルーズリーフとは違ったちゃんとした封筒に入ってたのがおかしかった。
「今が楽しくてたまらないのは分かるけど、今が踏み出すときだよ」
って言葉。
自分のことじゃないのに自分のことみたいに考えてくれた。
名前書き忘れるほど焦ってたのかな?
字だっていつもと違う変な字になってるし。
嬉しくて、いつかは踏み出さなくちゃいけないって分かってた。
分かってたけど…勇気がなかった。
290 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:05:16 ID:tQRWB4H8
彼に近づく女の子がいるとき、身が張り裂けそうになっただろう。
何度かは相談にも乗ったっけ。
「噂になってるよ、愛ちゃんと」
「そんなはずないのになぁ。ちゃんと俺断ったのに」
「ホントにちゃんと伝えた? 愛ちゃんオッケーだと思ったんじゃないの?」
「…あやふやだったりして」
「ダメだよ、それって向こうを傷つけないつもりかもしれないけど、
ホントは自分がいいかっこしたいだけじゃない。きちっと言うのも優しさだよ」
「そうだなぁ…ちゃんと断るか」
「それがいいよ」
「紺野?」
「?」
「ありがとな」
ホントはずっと彼の近くにいて、彼にどんな噂があるのか知りたかっただけで。
お礼なんかよりも、彼が誰かと恋人になっちゃうのを防げたのが、何よりも嬉しくて。
291 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:05:59 ID:tQRWB4H8
「なんかさぁ、ラブレター貰ったんだけど」
いつか、はにかみながらそう言ってたっけ。
いつもとは違うアプローチに彼は嬉しそうで、それがすごく不安で。
私は彼の協力者って立場を利用して、何とかしてそれを捻りつぶすことに必死。
最悪の人間だったと思う。
でもその話が出たのはそれっきり。
確かめたかったけどどうしようもなかった。
でもいつも通りに彼が私の頭を撫でてくれたとき、もう心配ないんだなって思った。
私の顔、多分すっごく喜んでただろう。
彼がまだ、私の傍にいてくれる。その事実だけで嬉しかったんだ。
高校最初の一年間はあっという間に過ぎていった。
でも
292 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:06:45 ID:tQRWB4H8
いつもは絶対出てくれる電話に出なかった。
メールの返事がいつもよりちょっと遅かった。
やっとのことで、そんなことさえ、ただの偶然だと思えるようになったのに。
私が誘えば彼も笑顔で来てくれて、一緒に遊べるって思ってたのに。
…なのに。
卒業式が終わって、新入生の歓迎企画を部活で会議した後、
呼び止められた言葉に私は言葉を失った。
「紺野、あいつ…いっこ上の石川先輩と付き合ってるらしいよ?」
「…え?」
「いや、本人から聞いたんだけど」
そんなの冗談だよ。
そう言いたかった。
そう言って笑って終わりたかった。
293 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:07:43 ID:tQRWB4H8
本人に確かめたかったけれど、確かめるチャンスもない。
春休みじゃ一緒にいるのを見て、納得することもできない。
漠然とした不安が心を占めて。
眠れなかった。
電話やメールで聞くこともできたと思う。
でも今まではあんなに平気でできたのに、ボタンを押す指は止まる。
もしも出てくれなかったら、きっと石川先輩と一緒にいるんだろう。
そして出てくれたとして、私は何を言うんだろう。
付き合ってるって聞いたって、どう反応する?
今更好きだって言ったって、困らせるだけじゃない。
彼の口からちゃんと聞きたかったよ。
でもさ…もう、私知っちゃったんだ。
294 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:09:00 ID:tQRWB4H8
私はどうしたらいいんだろう。
私はこの気持ちをどうすればいいんだろう。
まこっちゃんにも相談したけど、
「それは…あさ美ちゃん次第だよ」って。
そのとおりだよ。
そのとおりだから分かんないんだよ。
部活をやっていても、街を歩いていても、突然彼の顔が浮かぶ。
石川先輩と腕を組んで、二人で笑って、二人で見つめ合って。
耐えられなかった。
もう…いいや…
295 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:11:59 ID:NsbuY4xL
「あんた、死ぬ気でしょ?」
もう一度その女の子は繰り返した。
ショートの髪はやや茶色がかって。
うちの制服に身を包んで、私にニヤリと笑いかけた。
「え…」
「隠さなくていいよ。春休みにこんな所に一人で来てさ。
お花見にはまだ早いし、何か観測するわけじゃないでしょ? 手ぶらじゃん」
脚を開いて腕を組んで、平たい胸をつっと張って彼女は私を見据える。
ちょっときつい感じの目つき。
どこかで見たことがある…新3年生かな?
「大体あれだよ? 飛び降りなんて、かなり最悪な部類に入る自殺方法だよ?
あんたの可愛い顔も白い肌も、血でぐっちゃぐちゃになって、
トラックにひかれたヒキガエルみたいにアスファルトに飛び散るんだよ?
しかも血とかなかなか取れなくて、みんながあんたの血の染みの上を踏みつけるんだよ?
まるでそこであんたが死んだことなんか忘れちゃったみたいに」
彼女はまるで私のことを空気のように、淡々と語っている。
その調子が淡々としすぎて、却ってさっきまでは全く感じていなかった恐怖感を心の中に流し込む。
296 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:13:34 ID:NsbuY4xL
「あ〜好きな男に彼女ができたんだぁ。
なるほどねぇ。でも死ぬことないって。
ね? と…紺野あさ美さん?」
「何で私の名前…あああ!!」
いつの間にポケットから抜き出したのか、彼女の手には一晩掛けて書いた遺書が握られている。
私が泣きながら書いたものなのに、鼻で笑いながら彼女はそれを読み流す。
「うわぁ『ずっと言えなかったけど、好きでした』だって。
ねえ、こんな遺書で告白されたってさ、相手困るよ?
断ることもできないで、あんたはこれで満足するだろうけど、
向こうはどうしようもないでしょ?」
「ちょっと! 人の勝手に読まないで!」
飛びかかったらひらりとかわされた。
上半身をスウェーした拍子に制服の裾がまくれて白いお腹が見えた。
「言うんだったらちゃんと自分の口で言いなって」
「だって…」
声が詰まる。
頭の中には石川先輩と仲良く肩を並べる彼の姿。
私があの位置にいられると思ってたのに。ずっといられると思ってたのに…
297 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:14:43 ID:NsbuY4xL
「だって…もしも今言ったってッ…言えないもん。
困るだけだもん…だから…私がいなくなっちゃえば、別に無視してくれれば…」
「ああ、もう! 泣くな!」
声が涙でぐずぐずになる。
彼女の少しめんどくさそうな声でさえ、私の感情を追い立てるのには十分。
「じゃあ…何も言わずに…死んだ方がいいの?」
「そもそも死ぬなって言ってるんだけどなぁ」
頭をがしがしと掻いて彼女は横目で空中をにらむ。
298 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:15:54 ID:NsbuY4xL
「私はッ……伝えたいよ。
好きだったって伝えたい。でも…もう無理だから…だから、伝えるには…」
視界が霞む。
そうだよ。
私が今気持ちを伝えれば、彼はきっと困る。
だから私が気持ちを伝えるには、彼が返事をしなくていいようにならなきゃ。
彼女はもう一度後頭部をがしがしと掻くと、ふっと笑った。
「優しいね」
声に出した後、彼女は「うん、優しいな」ともう一度呟いた。
その姿がなんだかおかしくて、泣きながら私は笑った。
でも…その笑いは、彼の横で笑えたときの笑いとは全然違って。
心の隅に何か切ない感じを私はひしひしと感じている。
そんな私を少し悲しげに彼女は見ていた。
「やっぱり…死ぬの?」
「…ずっとこんな気持ちでいるの、耐えられない…」
「相談に乗るよ? いくらでも。私、3−Aの藤本美貴。
美貴ちゃんでもなんでもいいよ」
「私は…今度2年になる、紺野あさ美…です」
「いいよ、タメ語で」
「うん」
299 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:17:31 ID:NsbuY4xL
でも、藤本先輩…いや、美貴ちゃんが親身になって話してくれればくれるほど、
心の中に広がった隙間は却って広がっていくように感じる。
「ホントにもう付き合ってるの?」
「うん、彼から直接聞いた子だっている…私には直に言ってくれないけど」
銀色の柵に二人で腕を乗せて、はるか向こうに見える藍色の海を見ながら
ぽつりぽつりと話し始めた。
美貴ちゃんは、年上の余裕って言うんだろうか、上手に私から言葉を引き出しながら、静かに聞いてくれる。
「せめて…本人から聞きたかった?」
「それも…あるよ。あんなに仲良かったのに、まるでもう他人みたい」
「そっか…」
美貴ちゃんは空をじっと見つめた。
そして一言だけ「決めた」と呟く。
その呟きは私にではなく、彼女自身に向けられたモノだってことはなんとなく分かった。
300 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:18:57 ID:gD1EIzDb
「紺ちゃん、ポケット…手、入れてご覧?」
「?」
言われるままにブレザーのポケットに触れる。
浅いポケットの中では自己主張が強すぎる紙に、すぐ指先が触れた。
…手紙?
「何て書いてある?」
まるで反抗することが許されないみたい。
私の指は封筒を開けると半分に折りたたまれた便箋をすっと開いた。
1枚しかない便箋には、ちょっと神経質そうな細い字が並ぶ。
それを…読み上げたそのとき、私の声に美貴ちゃんの声が重なった。
「「紺ちゃんへ
この手紙は過去に出すことができる手紙です。
時間と場所を指定すれば、そこに手紙が届きます。
これは「紺ちゃんのポケットの中。2005年3月30日14時って書いたんだけどね。
目の前にいる私から貰うこの手紙を上手に使って、そして死のうなんて考えは捨てちゃえ。
ちなみに、手紙に署名することは許されません。それに字も変わっちゃうから。
それだけ注意して、上手く使ってね」」
301 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:20:12 ID:gD1EIzDb
「え…?」
何のマジックだろう。
いつの間に美貴ちゃんは私のポケットにこの手紙をねじ込んだんだろう?
私の心を見透かすかのように美貴ちゃんはにやりと笑う。
「手品なんかじゃないよ。ホントに未来の私から紺ちゃんに出したんだ。
書いたのが私だもん、多分今考えてた言葉通りに未来の私も書いてくれると思ってたからね。
だから、私もちゃんと中身を間違えずに言えたってわけ。
ほら…証拠に最後のこれ見てみ?」
「…あ?」
その部分だけ違う字。
そこには「春を嫌いになんかならないでね」って文字。
さっきまで…この季節を嫌いになるに違いないって考えてた私の心の中。
どうして美貴ちゃんが…?
「この部分、多分紺ちゃんが書いたんだよ。
この封筒使ったから、紺ちゃんの字とはちょっと変わってるけどね」
私を置いてけぼりにして美貴ちゃんは私と同じようにポケットをまさぐった。
指先に白い封筒が挟まれている。
「3回分…あげる。
これを使って彼に想いを伝えたっていい。勿論…紺ちゃんの名前は出せないけどね。
でも、今の彼女と付き合う前の彼に伝えることはできるでしょ?」
ちょっと強めに吹いた風で、美貴ちゃんの指先で封筒が小さく音を立てた。
それを顔の横まで掲げて、ちょっとだけ澄ました顔をする。
私よりもちょっと低い背なのに、美貴ちゃんが何故か大きく見えた。
302 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:21:25 ID:gD1EIzDb
「名前も出さない告白に…意味があるのか、分からないけどね」
考えていたことをそのまま声にされて、下瞼にじわっと涙が浮かぶ。
でも…もう答えはできていた。
今のままでいるよりも前に進める気がするから。
「あるよ、たぶん」
「紺ちゃんはそう思う?」
「たぶん…だって、今の彼には言えないから。
何ヶ月か前の彼になら…」
「それが名前が出ない手紙でも?」
「今なら、例え名前の無いラブレター貰っても、あの人は悩んじゃうよ」
ちょっと下を向いて、屋上の緑色の床面を見つめる。
ラブレター貰ったって、たぶん彼は悩む。
それはどうやってラブレターに応えるかだけでなく、石川先輩に罪悪感さえ覚えるかも知れない。
いや、きっとそうだ。
この1年間ずっと近くにいたんだもん。それくらい分かる。
「彼も優しいんだね」
風が美貴ちゃんの髪を流して、表情を見えにくくする。
でも、美貴ちゃんが微笑んでいることは分かる。
「うん!」
今日初めて。
初めて心の底から清々しい声が出せたような気がした。
303 :
書いた人:2005/03/25(金) 21:21:56 ID:gD1EIzDb
続きはまた明日
更新乙。
わーいお帰り書いた人さん。めっちゃ待ってましたよ。
おぉ!待ったかいがあった。乙です。
更新乙。
おかえり!
307 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:07:14 ID:4haM4GzZ
さて…
夜1時半
とっくに濡れた髪を乾かし終った私は机の前で便箋と睨めっこ。
結局美貴ちゃんは
「落ち着いて後悔のないように書きなよ。じっくりと、ね。
それまでは死ぬのも…取っておけばいいよ」
って言って私の背中を無理無理に押して屋上から追い出した。
なんだか…今考えると美貴ちゃんにはめられた気がしてならない。
大体死のうとしている人間はそのときの季節を嫌いになりそうな感じじゃない。
私が春を嫌いになりそうだったように、冬に自殺した人は冬が嫌いで。
そんなの…別に私じゃなくても書けそうな気もする。
ちっ…美貴ちゃん、さてはプロだな。
308 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:08:11 ID:4haM4GzZ
屋上から飛び降りる以外にも色々考えてはみた。
でも、首吊りは死ねるまでに人に見つかっちゃうかもしれない。
溺死はすっごく死体が醜いっていうし、
リストカットなんて、コンビニであれほどリスカ済のバイトとか見てると、
絶対死ねない方法のような気がしてならない。
焼身自殺とか最悪っぽいしなぁ…やっぱり飛び降りだよね。
今日は…まあしょうがない。
明日死のう。
明日もう一度、屋上へ行こう。
便箋を放棄してさっさとベッドに潜り込む。
309 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:08:58 ID:4haM4GzZ
あいつ…石川先輩が好きなんて話したこと無かった。
そりゃあ石川先輩は美人で有名だから、彼も知らないなんてことはないだろう。
でも、なんで石川先輩だったんだろう?
どっちから告白したかも分からないけど、石川先輩からだとしたら、
そのとき、一瞬でも私のことを思い浮かべてくれたんだろうか。
今までずっと一緒にいて、それでも思いは伝わっていなかったんだろうか。
まだいいよ?
告白して振られました、それだったら。
でも…私には告白の時間さえなかった。
いや、性格には時間はあったのにできなかった。
暗い部屋の中で私の目はパッチリ開いて。
…はめられてみるか。
どうせ気休めにしかならないけど。
310 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:10:08 ID:4haM4GzZ
遺書は美貴ちゃんにとられちゃったもんね。
しょうがない、これに遺書代わりに書こう。
電気を点けて枕もとの眼鏡をかける。
ペンを持ったそのとき、もう迷いは無かった。
だって…遺書だもん。
昨日書いたようなこと、そのまま書けば良いんだよ。
…でも私の話を一応は聞いてくれた美貴ちゃんにも義理立て。
一応、過去の彼に充てて書くとするか。
馬鹿馬鹿しいけどさ。
311 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:12:29 ID:4haM4GzZ
「○○へ
お元気ですか?
ちょっと理由があって私の名前は書けないけど、○○のことをいつも見てます。
いつも勇気がなくて言えないけど、今日は頑張って言おうと思うの。
高校に入って初めてあなたと会って…それからずっと、色んなことを○○とは話してきました。
○○は私が元気がないと励ましてくれたし、いつも笑ってくれたよね。
だから…私はずっと、あなたのことが好きです。
あなたのことが好きで、私はこの気持ちを伝えたかった。
だから今日、手紙を出しました。
でも返事はいらないから。
ただひとつだけ、あなたのことを好きで好きでたまらないってこと、
それだけ覚えていてくれませんか?
私は明日、屋上へ行くつもりです。
最後にこれだけ伝えたかった。
じゃあね。
2005.3.31」
312 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:13:25 ID:4haM4GzZ
名前は…許されなかったよね。
一応その流儀にも則ってみる。
でもアスファルトの死体を見れば、遺書が誰のかくらい分かってくれるでしょ?
封筒に宛名を書く。
時期は…いつでもいいんだけど。
「2004年11月19日、○○の下駄箱の中」これでいいや。
下駄箱だったら気付いてくれるね。
つーか、馬鹿馬鹿しいなぁ。
過去に手紙なんか出せるわけ無いじゃん。
313 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:14:20 ID:4haM4GzZ
封筒に封をしたあと、もう一度ベッドに入る。
…私、馬鹿やってんなぁ…なにやってんだろ
溺れる者は藁をも掴む、だったかな?
こんなことしたって何の意味も無いのに。
好きだって言いたかったけど、遺書で言ったってあんまり意味ないよね?
ましてや過去の彼に言ったって意味なんかなくない?
せめてなぁ…自分自身でちゃんと伝えたかったなぁ…
美貴ちゃんには「口で言わない告白に意味はある」って言ったけど、
私ったら相当のかっこつけだ。
ホントはそれに意味があるかないかなんて、私がちゃんと知ってたのに。
ちょっと意地になってたかな。
314 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:15:10 ID:4haM4GzZ
…口で言う………待てよ。
暗闇の中でパッと目が開いた。
今、口で言うことはできない。
できないけど……言わせることはできるんじゃない?
そうだよ。
さっきまで美貴ちゃんを疑ってたけど、今は違う。
むしろ、そうあってほしいって願望。
どうかこの手紙が、本当に過去への手紙でありますように。
2通目の手紙。
封筒の宛名はもう決まってる。
「2004年9月19日 教室の紺野あさ美の机の中」
頑張れ、私。
いままで色んな人に言われた励ましの言葉をそのまま手紙にぶつける。
今の私は言えないけれど、過去の私に告白させればいいんだ。
勇気を出して。
今のあなたが楽しいことは十分知ってる。
でも…だからこそ、一歩前に踏み出して!!
315 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:16:50 ID:4haM4GzZ
彼に書いた遺書よりはよっぽど書く気力が沸く。
もしもこれを読んで私が告白すれば、もしかしたら、彼がオッケーしてくれたら。
私と彼は恋人同士になれる。
石川先輩が口を差し挟む余地は無い。
そう…過去が変われば未来も変わる。
つまり…今も変わる。
人生でここまで頭を使ったことが無いくらい。
平面幾何もsinもcosもtanも、阿部比羅夫も薄葬令も宗尊親王も
浸透圧もゴルジ体もコルチ器も、こんなことを考えるときよりもよっぽど頭を使って。
頑張って私。
後で後悔をするくらいなら…今、後悔しようよ。
だって、そうじゃないと私…ずっとずっと後悔して、耐えられなくなってる!
手紙を書き終わったとき、カーテンの外が白み始めていた。
ふらふらと立ち上がって、身体をベッドに思いっきり預けた。
美貴ちゃん…私、上手く手紙、使えてる…よね……?
316 :
書いた人:2005/03/27(日) 01:18:08 ID:4haM4GzZ
ちょい短いですが3回で終わらせるとなるとここで切らざるをえず
続きはまた明日
ご自由に結末は予想してください
楽しみなのであえて予想とかせずに頭空っぽで待ってます
元から空っぽとか言わないで('A`)
更新乙ですー
319 :
書いた人:2005/03/27(日) 22:43:09 ID:DBVnboJi
失礼、死ぬほど忙しいので明日書きます
どうなってるんだうちの会社は
更新乙。頑張れ書いた人さん
年度末
322 :
書いた人:2005/03/29(火) 21:35:02 ID:DCluUHsd
すまん
ちゃんと書くのでもうちょっと待ってくださいな
仕事に戻ります
てすと
てすと
325 :
ねぇ、名乗って:2005/03/31(木) 18:01:37 ID:YNF9DpNi
てすと
テスト
保全。
328 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:08:55 ID:KDH28ZDy
―――
「あさ美! 春休みだからっていつまでも寝てんじゃないの!」
「ん…うん」
お母さんの怒声で目が覚める。
随分久しぶり…ずっと眠れなかったもん。
こんな風に怒られて、部活に行って、でもやっぱり彼のことを考えていられて…
つい一週間前までは、そんな日常だったんだ。
懐かしいな。
ベッドで上半身だけを起こして考える。
そしてすぐに、惨めさって言うか寂しさって言うか、微妙な感覚が心に広がる。
もう何日だろ?
こんなに長い間メールも電話もしないのって初めてってくらい。
329 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:10:18 ID:KDH28ZDy
昨日の私どうかしてたな。
あそこでちゃんと飛び降りてれば、もうこんな気持ちになる必要なんてなかったのに。
美貴ちゃんが変な手紙くれるから…
テーブルの上に視線が行く。
あれ?
二通並んでいたはずの封筒。
両方とも、封筒が消えていた。
!!
ベッドから跳ね起きて廊下と階段を駆け下りる。
リビングには一通り家事を終えて、のほほんと紅茶を飲むお母さん。
330 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:11:07 ID:KDH28ZDy
「お母さん! 昨日の夜から私の部屋…入った!?」
「あんたねぇ、いい歳なんだから家の中をどすどす音たてて動くのやめなさい。
しかもそんなパジャマ姿で。挨拶もないし」
私の言うことなんかお構いなしに、ティーカップを操る動作がむかつく。
「あ、えっと…おはよ」
「もう11時だけどね。朝ご飯どうすんの? お昼と一緒にする?」
「いや、えっと…私の部屋には…?」
「入ってないわよ。大体あんた勝手に入ると般若みたいに怒るじゃない」
思わずその場にへたりこんだ。
私は確かにあの手紙を書いた。
ってことは…私が書いたあの手紙は?
美貴ちゃん、ホントのこと言ってたの?
331 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:11:52 ID:KDH28ZDy
―――
「来ると思ったよ。紺ちゃん」
屋上でじっと街の方を見つめながら、振り向きもせずに美貴ちゃんは呟いた。
私は息を弾ませながら、制服のリボンも満足に結んでないまま、
ここまで酷使した肺を整える。
「美貴ちゃんッ! あの手紙…」
「言ったでしょ? 過去に出せる手紙だって。信じてなかったな?」
振り向いた美貴ちゃんの顔は、不思議なほど真っ白でゾクゾクする。
後ろ髪を手で梳いて、美貴ちゃんはニッコリと微笑んだ。
「で、ちゃんと書いたの?」
「え? うん。彼にと…あと、私に…」
「やっぱそう使うか」
私の行動なんて予測済とばかりに美貴ちゃんは平然としていて。
332 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:12:35 ID:KDH28ZDy
「美貴ちゃん、私…本当にありがとう!!」
今美貴ちゃんに確かめて、確信が持てた。
過去の私は絶対に、告白しているはず。
だって…あんなに、今からは想像もつかないくらいに、私たちは一緒にいたから。
だからきっと、告白だって成功している。
美貴ちゃんは楽しそうに右頬を手のひらで押さえて、ちょっと頭を傾ける。
「お礼を言うのは、結果を知ってから」
「うん…でも、やっぱりちょっといきなり彼に聞くのも変だよね…
よっし! まこっちゃんに聞いてみるよ」
「友達?」
「うん」
私の答えに満足げにうなずきながら、美貴ちゃんは目線を外した。
でも…私はちっともそんなことなんか気にならず、アドレス帳を繰っていた。
333 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:16:36 ID:X8LbqumI
ワンコールですぐに聞こえる親友の声。
「あ! あさ美ちゃん?」
「うん、まこっちゃん…元気?」
どこかまこっちゃんの声が急いでいるようにも聞こえる。
電話の向こうからはちょっとがやがやした声。
「あのさ…変なこと聞いて悪いんだけど」
「うん」
「私と○○ってさ、付き合ってるよね?」
「え…?」
一瞬、後ろのざわめきさえも止まったような感覚。
まこっちゃんはその短い音節だけを発して、そして何もしゃべらない。
耳鳴りみたいな音が聞こえた感じもする。
美貴ちゃんは鉄柵に腰掛けて、脚をばたつかせながら私を見下ろしていた。
その動作とは正反対に、ちょっとだけ視線は虚ろで。
334 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:18:00 ID:X8LbqumI
「………あさ美ちゃん…」
さっきまでの気分はどこかに行っちゃって。
私は漸く出てきたまこっちゃんの言葉に、返事をすることすらできなくて。
「…あさ美ちゃん…」
風が強く吹いた気がした。
美貴ちゃんがまるでお母さんみたいに大人びた、笑みを浮かべているように見えた。
「違うよ。石川先輩だよ…付き合ってるのは」
まこっちゃんの声は今まで聞いたどんな声よりも優しくて。
私はそれに耐えられなくて、電話を切った。
335 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:18:43 ID:X8LbqumI
電話を切った後も、ずっと私たちは無言のまま。
美貴ちゃんは鉄柵に腰掛けて、流れる雲をずっと見上げていた。
髪が風に流されて、スカートがひらひらと舞っていて。
私は灰色のコンクリートの上で、ずっと下を向いたまま。
ポツポツと黒い染みができているのが、自分の涙だと分かっていてもどうしようもなく。
私は…ダメだった。
やっぱりダメなんだ。
…ホントに手紙、届いてたのかな?
すっと顔を上げたそのとき、まるで待ち受けていたみたいに美貴ちゃんが口を開いた。
「手紙は、届いたよ」
「…」
「手紙は届いたよ、ちゃんと。2004年9月19日、紺ちゃんの机の中に。
そして、ちゃんと…紺ちゃんはそれ、読んだんだよ」
336 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:19:27 ID:X8LbqumI
「嘘!」
「ホント」
勢いよく鉄柵からコンクリートに降りても、美貴ちゃんの足音なんか聞こえずに。
私は屋上を巻く空気の流れの中で、美貴ちゃんの言葉が信じられなくて。
「ホントだよ。紺ちゃん、思い出してごらん?
確か…手紙を貰ってるはずだよ?」
「…」
「それでも紺ちゃんが告白しなかったのは、紺ちゃんがそれを選んだから。関係が壊れないまま、近くにいられることを」
美貴ちゃんは私をまっすぐに見つめたまま微笑む。
337 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:20:59 ID:X8LbqumI
あのとき…まこっちゃんからかと思ったあの手紙…
そうか…
結局私が意気地がなかったからなんだ…
涙がぼろぼろと零れる。
私はそれを拭きもせずに、自分のバカさ加減に笑った。
おかしかった。
泣いているのに、おもしろくてたまらなかった。
338 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:21:35 ID:X8LbqumI
「紺ちゃん…」
「私って、どうしようもないね」
どうフォローしていいのか分からないみたいな美貴ちゃんを困らせることはない。
どうしようもないもんね。
「結局、私が選んだことだもんね。
変な望みを掛けるからいけなかったんだよね」
「しょうがないよ。普通はあの手紙渡されたら、誰だってそうするって」
でもさ、もう一通の方は届いているはずだよ? 彼の下駄箱に」
「でも…」
でも、どうしようもないよ。
言ったら気持ちが晴れると思っていたけど。そんなことないもん。
彼の口から返事が聞きたかった。
彼の目を見て告白したかった。
昨日の偽善者の私からうって変わって、出てくるのは我が儘な私の心。
339 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:22:14 ID:X8LbqumI
「後悔してる?」
「うん」
昨日までならこんな大きい返事はできなかっただろう。
状況は何も変わってないけど……
なにか
そう、なにか、吹っ切れた感じ。
屋上の景色も、吹いている風も、目の前の美貴ちゃんも。
何も変わっていない。
だけど…ちょっとだけ、心の雲が晴れた感じ。
不思議だった。
「言えないよ、もう。直接には」
「直接言えないで終わる恋愛もあるよ。悲しいけどさ」
いっこ上なのに、それだけの歳の違いなのに、
美貴ちゃんが言うとホントにそんな気がした。
340 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:24:27 ID:XCa9ZtAA
「まだ、死ぬ気?」
「それは…」
ちょっと下から覗き込んで美貴ちゃんが呟く。
私は考えていた。
死のうか死ぬまいかそんなことじゃなくて。
昨日までの憂鬱な私と今の何か色々見えてきてちょっと心の透き間を感じる私、その違いを考えていた。
なんで今こんな気持ちなのか。
つまり…何でダメだったのか。
私は勇気が無くて、それは後悔してもしょうがなくて
だったら…
もちろん、もう時間は戻らないけど。
「美貴ちゃん…」
顔を上げて美貴ちゃんに向き直ったとき、彼女の姿はなかった。
風が柔らかに吹いた音と、後ろでドアが開く音が、同時に鼓膜を打った。
341 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:25:08 ID:XCa9ZtAA
「紺野…」
すこし低めの声が懐かしくて。
この一週間、この声を聞きたくて、でも聞きたくなくて、その二律背反に悩まされてたっけ。
美貴ちゃんに宛てた言葉を喉の奥に飲み込んで、
それをそのまま息だけにして振り向いた。
「やっぱり紺野だったんだ…」
走ってきたんだろう。
息を整えるために胸を上下しながら。
そしてそれでもいつも通り落ち着いているように見せようと、涼しい目だけは変わっていなくて。
あれだけ逢いたくて仕方なかった、彼がいた。
342 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:25:41 ID:XCa9ZtAA
「えっと…なんで?」
せっかくの場面なのに、こんなとんちんかんな受け答えしかできない自分が悩ましい。
それでもいつも通り。
私がどんなに変なことを言っても笑ってフォローしてくれたように。
「ん? これ」
「…あ」
ポケットに手を入れて差し出したそれ。
ちょっと色が落ちて、ちょっと皺が寄ってるけど…それって。
封筒の表書きからは私が書いた文字は消えているけど間違いない。
「手紙…」
「お前が書いたんだろ?」
「うん」
343 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:26:34 ID:XCa9ZtAA
風が止んだ。
空はずっとずっと先まで蒼くて。
私は昨日書いたばかりのそれが目の前にあることに、違和感なんかなくって。
「名前がなかったし字も違ったから、確信がなかったけど。
一度紺野に「ラブレター貰った」ってカマかけてみたけど、全然知らないふりだっしな」
「うん…」
「で、それっきり、ずっと忘れてた」
何も感情が湧いてこない。
目の前の人のことを好きで好きで好きでたまらないはずなのに。
気持ちが伝わって嬉しいとか、今更なんて悔しいとか、
もしかしたら大どんでん返しがあるんじゃないかって期待とか。
そんなの何もなくて。
「でもさ…昨日の夜、携帯に変な電話かかってきてさ。
なんつったかな…藤本とかいう人だったかな?
机の引出しを開けて奥の方にしまってある手紙を百万回読み返せ、って。
それで思い出した。で…明日屋上に行くって書いてあるから…」
「美貴ちゃん…」
「知り合いか?」
「うん……友だち」
344 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:27:31 ID:XCa9ZtAA
「紺野の気持ちは嬉しいよ。だけど、今は…」
ちょっと思いつめたような顔。
真面目なんだもんね、知ってるよ。
これから言おうとすることに、あなたがどれだけのエネルギーを必要としているか。
いつもなら途中で遮って、そんなエネルギー使わせないけど。
「今は…俺」
でもね、今ここで言ってもらわないと、私は……先に進めない。
折角なんだもん。
ホントは過去向かって告白して終わり、それだけのはずなのに。
でも私が書いた余計な言葉と美貴ちゃんのおかしな機転のお陰で、
折角のチャンスなんだもん。
「俺、石川先輩と付き合ってるから。ごめんな」
「うん、知ってる」
自分の返事がこんなにも爽やかなことに、自分自身でビックリしていた。
知ってるよ。
知ってるから、あなたから聞きたかったんだよ。
345 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:28:33 ID:YIRKQmTV
「よかったね」
「…うん」
「なによ! 初めて恋人ができたんでしょ!?
もっと嬉しそうな顔してよ!」
私に小突かれて、彼は初めてニヤニヤと笑った。
自分のこんな行動、無理してるわけでもない。
意外なほど素直に出てきた、私自身。
優しさも大切だけど、ちょっとずつでも進んでいくためには、厳しさも必要なんだよね。
でもその厳しさこそ、ホントの優しさなんだろうね。
彼が屋上を出て行くのを後ろからずっと見送って、そんなことを考えた。
346 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:30:13 ID:YIRKQmTV
―――
「一区切り、かな?」
「どこ行ってたのよ? 美貴ちゃん。
突然消えちゃったからびっくりした」
「流石にあの場にくっついているほど下衆じゃないよ」
背後から呼びかける声に振り向くと、美貴ちゃんは優しく笑っていた。
涙は出てこない。
もうこの一週間で出し尽くしちゃったから。
「美貴ちゃん、ありがとね」
「何が?」
「電話」
「ああ、気にしないで」
「何で彼の番号知ってたのよ?」
「ん? 秘密」
ケラケラと美貴ちゃんは笑う。
私もそれに釣られて笑う。
347 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:31:43 ID:YIRKQmTV
しばらくは休憩。
またもう少しすれば、私は人を好きになるだろう。
それが彼なのか、それとも別の人なのか、それは分からないけれど。
でも、今は美貴ちゃんと笑っておこう。
「紺ちゃん、これ」
「ん?」
美貴ちゃんはひとしきり笑うと、ポケットから封筒を取り出す。
宛名は「紺ちゃんのポケットの中。2005年3月30日14時」。
「紺ちゃんが書く部分、書いてよ。
私が書いたのだけじゃ、昨日の紺ちゃんは信じてくれないから」
「うん!」
灰色の床にかがみこんで続きを書く。
昨日私が読んだとおりの言葉を正確に。
がんばってね、私。
348 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:32:51 ID:YIRKQmTV
「もう死のうなんて思ってないんでしょ?」
「まあ、ね」
私から封筒を受け取ると美貴ちゃんはあさってのほうを見ながら呟いた。
私の返答が、美貴ちゃんの予想を外れることがないってことを知ってるみたいに。
と、携帯のバイブが震える。
メールは…まこっちゃんからだ。
「なんだって?」
「ケーキ食べに行くけど、来ないかって」
「行きなよ。心配してるんだよ、一応。
いきなり私現実が見えてませんみたいなこと言っちゃったんだから、心配するでしょ?」
「美貴ちゃんもどう?」
「遠慮しとく。甘いのあんまし好きじゃないし」
屋上を降りる私を、美貴ちゃんはずっと見ていた。
『新学期始まったらすぐに教室行くから』って言葉に、美貴ちゃんは手だけ振って応えた。
349 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:33:46 ID:YIRKQmTV
……美貴ちゃんに会った、最後のシーンだった。
350 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:34:28 ID:YIRKQmTV
―――
「藤本? そんな奴いないよ」
始業式が終わった後の3−Aの前で、訝しげな視線を浴びる。
私にそれだけ返事をすると、その先輩はすぐに話の輪に戻っていった。
「えっと…」
私の呟きにも彼は耳を貸してくれなくて。
嘘をついているわけじゃない。
美貴ちゃんは…いない。
ホームルームの教室に戻るべきはずの足は、そのまま屋上に向かっていく。
351 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:36:08 ID:uy2GVBYA
足元に三分咲きの桜が広がる。
春休み中よりも風ははるかに暖かくなっている。
朝、彼が石川先輩と歩いているのを見た。
心の中にはそりゃあ、ちょっと切ない気持ちが浮かんだけれど。
でも……逃げ出そうとはしなかったよ。
ちゃんと後ろから「おはよ」って声掛けて、そのまま追い越したよ。
そんなことを伝えようと思ったのに。
美貴ちゃんは屋上にもいない。
なんとなく気付いてたのに寂しい。
352 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:37:26 ID:uy2GVBYA
美貴ちゃんがあんな手紙を持っていて。
それを惜しげもなく渡してくれたとき。
そしてそれがホンモノの手紙だってわかったとき。
あの時から、なんとなく心の隅で気付いていた。
美貴ちゃんは、多分うちの生徒じゃなくて、別の何かだってこと。
尋ねるチャンスが無かったわけじゃない。
最後に話したとき、聞けば教えてくれただろう。
きっと、笑いながら、ちょっと視線を外して空を見つめて。
でも躊躇われた。
それは…たったひとつだけ、美貴ちゃんをどこかで見たことがある気がしていたから。
それが心のどこかに引っ掛かっていた。
うちの生徒じゃない別の何かなら、何故私は美貴ちゃんを知ってるんだろう?
353 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:38:28 ID:uy2GVBYA
「答え出ないよなぁ…」
いつか美貴ちゃんが腰掛けていた鉄柵に両肘を乗せて、
ホームルームで静まり返った校内の空気に耳を澄ませる。
もう…会えないのかな。
…!!
あ…あれ。
慌ててポケットに手を突っ込む。
美貴ちゃんがくれた最後の手紙。
一通は過去の私、一通は過去の彼、最後の一通は使わなかった。
そうか…どうしよっかな…
もうちょっと…取っておこうか。
美貴ちゃんに会えることを期待していたわけではないけれど、
会えたはずの場所にいなかったことに寂しさを抱き締めて、階段を下った。
354 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:39:37 ID:uy2GVBYA
階段を下りて、実験室の前を通って、昇降口を通って、2年棟へ向かう。
伝えたい…
あれほど学んだのに。
伝えたい言葉はいつでも伝えられるわけじゃないから、
だから伝えられるときに、伝えたいって気持ちが湧いたときに伝えるべきだって。
美貴ちゃんにありがとうは言ってるけど。
でもやっぱり、もう一度言いたいよね。
それはただの自己満足だけどさ。
考えながら昇降口の前を通ったとき、ふっと何かに見られてる気がした。
…上?
……写真?
355 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:40:24 ID:uy2GVBYA
―――
『この写真のこの人…屋上から間違って落ちて死んだらしいよ…』
『ちょっと! ぼそっとそういうこと言わないでよぉ』
『いや、ホントだって。先輩に聞いたし』
―――
いつかの肝試し、彼と並んで歩いたとき、そんなこと言ってたっけ…
ちょっとの懐かしさに、昼間見ると全然怖くない写真を見上げる。
卒業式だろうか?
筒を抱えた制服姿の女の子たちが、カメラに向かって微笑んでいる。
そして一番端でちょっと緊張した顔で映ってるショートカット。
あ…
汗が一気に引く。
心臓がドキドキする。
…だから会ったことがあるって分かったんだね、美貴ちゃん…
写真の隅にかかれている日付を必死に覚える。
平成6年3月18日…
ホームルームの教室に、一気に私は走り出した。
356 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:41:36 ID:vm5dLEVQ
− エピローグ
部室に入ってきたまこっちゃんがギャーギャー喚いていたのは、それから4日後のことだ。
喚いているのはいつものことだけど、今日は内容が内容だけに、みんなが彼女を中心に輪を作る。
「ま〜た見間違えたんじゃないの?」
「絶対違うよ! だってこの前まで笑ってなかったのに、今日見たら笑ってたもん!」
「麻琴、今日から狼少女って呼んであげよっか?」
「だったら付いて来てよ! 昇降口!」
ぷりぷり怒ったまこっちゃんが何人かの手を引っ張って出て行く。
私たち残された部員も、金魚のフンみたいにくっ付いて。
357 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:42:25 ID:vm5dLEVQ
「ほら! 笑ってるでしょ!!」
「あ…ホントだ」
昇降口でまこっちゃんはあの写真を、あの彼女を…いや、美貴ちゃんを指差した。
美貴ちゃんは満面の笑みでカメラに向かってピースしてる。
「でもさぁ、前から笑ってなかったっけ?
この人の表情なんか今一覚えてないし」
「絶対笑ってなかったよ! 疑ってるな!?」
「あんたみたいに暇人じゃないのよ…紺野はどう思う?」
「ん・・・私?」
写真をもう一度見上げる。
隣の友達の肩をギュッと抱いて、その指でピースして、
そしてもう片方の手で卒業証書を握り締める美貴ちゃん。
ショートカットも、涼しげな目元も、何もかも変わらずに。
そして、最後にケラケラ笑ったときのあの笑顔も変わらずに。
358 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:43:16 ID:vm5dLEVQ
「笑ってたよ、確か」
「ウソぉ〜!! あさ美ちゃん、絶対笑ってなかったよ!」
顔を真っ赤にして怒るまこっちゃん。
…でもね、多分美貴ちゃんは笑ってたよ。
美貴ちゃんが言ったように、あの手紙が過去を変えるようなものじゃないのなら。
多分、美貴ちゃんはずっと笑ってたはず。
だって…
もう一度写真を見上げた。
美貴ちゃんの制服のポケット、ホントに小さくだけど、白いものが覗いている。
ちゃんと届いたんだね、私の最後の手紙。
359 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:44:13 ID:vm5dLEVQ
「おい!! お前ら! アップ終わったのか!?」
「ヤバッ…先生だ! 早く戻ろ!!」
先生の怒鳴り声を合図にして、一斉にみんなが走り出す。
ほんのワンテンポだけ遅れて私はスタートを切った。
伝わらなくてもいい言葉だけど、美貴ちゃんを前に言いたかったからさ。
「それじゃ、美貴ちゃん、バイバイ。色々ありがとね」
360 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:45:15 ID:vm5dLEVQ
Love Letter
おわり
361 :
書いた人:2005/04/03(日) 21:49:17 ID:9ujwWPI9
あとがきおよび言い訳
更新できないことの言い訳に短編にしたつもりが、またまた滞りました
お前の3日は1週間のことを言うのか、という趣旨の突っ込みはご容赦
とりあえず「永遠から〜」は終わらせるつもりではいます
お詫びがてら書いてみた次第
狼の上田スレの何スレか前に出ていた、
好きな人に彼氏がいたことが発覚した人に捧げます
ご感想などよろしくお願いいたします
書いた人さん乙です。
屋上での彼と紺ちゃんのやり取り、泣けますね。
すばらしい作品乙です。
いいね。ちょっと切ないね。
青春時代を思い出して胸が熱くなった姐さんと同い年のおっさんでした。
書いた人さん乙です。
青春時代の切ない恋心をほんとに思い出させる紺ちゃんと
近くて遠いところから見守ってくれた美貴ちゃんの存在に
胸が熱くなってしまいました。
うれしさと切なさが心から同時にあふれてしまう思いにさせられてしまいました。
とてもすばらしい作品だと思います。
乙。
お気に入りに入れといてよかった。
これからもいっかい読むわ。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
∋oノハヽo∈
( ´D`)
. 〜〜| ̄ ̄ ̄|
◎ ̄ ̄◎ コロコロ
堅守
保全。
保全。
保全。
|*・ヮ.・从
380 :
名無し募集中。。。:2005/05/06(金) 18:59:09 ID:HDa/fDvz BE:204681986-
>>380 おまえw
依頼場所明らかに間違ってるwww
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保。
お前はリンダリンダを聞け
↑
これにえぇこんこんてドブネズミだったの的なレスをした奴は蟯虫レベルのダボハゼ
保全。
保全。
____
/∵∴∵∴\
/∵∴/∴∵\\
/∵∴●∴∴.● |
|∵∵∵/ ●\∵| あべぽ
|∵∵ /三 | 三| |
|∵∵ |\_|_/| |
\∵ | \__ノ .|/
/ \|___/\
保全。
394 :
名無し募集中。。。:2005/06/16(木) 03:16:47 ID:atM8hTDu
州*‘-‘リ
保全。
396 :
名無し募集中。。。:2005/06/22(水) 17:35:42 ID:eHk3szQQ BE:84485164-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
保全。
398 :
名無し募集中。。。:2005/06/27(月) 01:21:42 ID:pMR//rE1 BE:42243326-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
保全。
400
保全。
保全。
保全。
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
再開はあるのかな?
保全。
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
某月某日 インボイスドームにて
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
| お、おい、左のあの女ってあれ・・・
\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄| 柴田じゃんか。テレビ以上に綺麗だなぁ。
デレデレ ザワザワ \____ ______________
∧__∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ノノ ∧_∧
( ・∀・)..( '∀`)| ̄( ・∀・) ( ・ω・)ドキドキ (´ー`)| ̄| ̄| ̄|
○ ○ ( )|二| ∩∩) ○ ○|二|二| (○○) |二|二|二|
XXXXXXXXX||XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX||XXXXXXXXX
XXXXXXXXX||XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX||XXXXXXXXX
XXXXXXXXX||XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX||XXXXXXXXX
某月某日、スカイマークスタジアムにて(※マリスタとかヤフーの場合もあり)
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
| お、おい、左のあの女ってあれ・・・ ワーワー
\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄| タワラじゃんか。これが実物なのか・・・
ドヨドヨ ザワザワ \____ ____________
∧__∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ノノ ∧_∧
( ・д・)..( ・ω・)|( ・д・) ( ・ω・)| ̄| ̄| ∫´ε`∫| ̄| ̄| ̄|
○ ○ ( )|二| ∩∩)○ ○|二|二| (∩∩) |二|二|二|
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XXXXXXXXX||XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX||XXXXXXXXX
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某月某日 インボイスドームにて
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
| お、おい、左のあの女ってあれ・・・
\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄| 柴田じゃんか。テレビ以上に綺麗だなぁ。
デレデレ ザワザワ \____ ______________
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○ ○ ( )|二| ∩∩) ○ ○|二|二| (○○) |二|二|二|
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某月某日、スカイマークスタジアムにて(※マリスタとかヤフーの場合もあり)
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
| お、おい、左のあの女ってあれ・・・ ワーワー
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄| タワラじゃんか。これが実物なのか・・・
ドヨドヨ ザワザワ \____ ____________
∧__∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ノノ ∧_∧
( ・д・)..( ・ω・)|二|( ・д・) ( ・ω・)| ̄| ̄| ∫´ε`∫| ̄| ̄| ̄|
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某月某日 インボイスドームにて
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
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某月某日、スカイマークスタジアムにて(※マリスタとかヤフーの場合もあり)
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ワーワー
| お、おい、左のあの女ってあれ・・・ ワーワー
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄| タワラじゃんか。これが実物なのか・・・
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○ ○ ( )|二| (∩∩)○○|二|二| (∩∩) |二|二|二|
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保全。
保全。
414 :
ねぇ、名乗って:2005/08/14(日) 17:07:24 ID:byW2hlQ60
保全。
保全。
保全。
418 :
名無し募集中。。。:2005/09/09(金) 10:18:50 ID:fjnhQVJV0
再開は・・・
もう無理かな
保全。
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
時間のループからんyけだすために矢口が選んだ道
石川より前に脱退
いつだったかの狼の小説スレで書いた人が謝ってたぞ
なかなか書けなくてごめんって
ということはまだ可能性があるってこと?
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
q
保全。
ん
保全。
保全。
保全。
保全。
438 :
ねぇ、名乗って:2005/12/21(水) 16:06:13 ID:pFeedT18O
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
∋oノノハヽ
. ノリo´ゥ`リ
. こんばん━⊂ k ノつ━ ピンク〜!
(つ ノ
(ノ
,‐' ⌒  ̄⌒⌒ヽ
─=三( ⌒ ; ⌒ ::⌒‐ )
ヽ、_:: ニ___,/
⇒ 小春巡回中!⇒
書いた人は生きてるのかい?
>>232の続きを読みたいんですけど・・・
保全。
待ってるよ書いた人
451 :
ねぇ、名乗って:2006/03/08(水) 18:24:22 ID:T+p8PPiP0
キャワーー
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
458 :
ねぇ、名乗って:2006/04/18(火) 01:44:30 ID:yILNaYoI0
しばのさわ
459 :
ねぇ、名乗って:2006/04/18(火) 20:30:59 ID:ziLGuclu0
保全。
保全。
保全。
保全。
保全。
うーん、書く気ないならせめてあらすじだけでもw
ひょっとしたら違うかもわからんが気になるんで書いとく
ちょっと前に狼にこんこんやめないでみたいな感じのスレがあったんだが
・羊で紺野主役の小説を書いていた
・もう既にハロヲタではなく、もう書くつもりもない
・羊にスレが残ってるが廃棄したい
ってな感じの書き込みがあった
書いた人かとの質問がでたがそれには答えてもらえなかった
確証はないけど、このスレの気がしてしかたがない。
スレタイ忘れた上にログも残してないため曖昧でゴメン。
そっか・・・
で、まだ保全するの?w
7月までは頑張るつもりだったけど
もうだめなんだろうな
我ながらよくやったよ
続き読みたかったな
最後の保全。
468 :
465:2006/05/28(日) 20:39:18 ID:Pk1lk+Uc0
えっと、あくまでこんな書き込みがあったよってだけで、
確証ないから卒業まで待つのもアリだとは思うよ。
書いた人本人が見てるなら何か一言あるかもしれないし。
ただ、疑問なのが、
424の書いた人が謝ってたってのだけど、
これって本人だって名乗ったんだろうか?
この小説スレってのしらないから何ともいえないけど、
もし高橋系の小説だったとしたら・・・・
高橋主役の作家にも書いた人と名乗ってる人がいるらしいよ
同一人物かはしらないけど。
もうすこしだけ頑張ってみようかな
まあ、ここより糞スレwは一杯あるし、
狼住人?さんなら「保全」と書くだけだからいいじゃない。
俺は時間ないし連投規制で1レスが貴重wだから
待機してて保全忘れるから。
でも、週一じゃなくてもスレ数見て圧縮チョイ前でもいいんじゃないかな?
保全。
「涼宮ハルヒ」シリーズ読んでみたらこのスレの小説と微妙に世界観が似てた
時空系SFってのはみんなこんな感じなのかもしれないが…
保全。
俺の好きな小説スレはなぜいつも未完
お、お前が原因かぁ〜〜!
保全。
保全。
保全。
保全。
書いた人さんの『昨日見た日々2』のテキストデータどなたか持ってませんか?
以前PCがクラッシュした時に無くしてしまって…
上の方のリンクは切れてて見られないんです
著作権とかまずかったら諦めます
483 :
ねぇ、名乗って:2006/08/09(水) 01:57:45 ID:NEEih0Sk0
hozenage
484 :
どら:2006/08/25(金) 02:49:12 ID:A6NPr1lu0
出せなかったファンレター書いたのあなたか
狼のどっかのスレで見たよ
泣けたよ〜
というのは嘘
なんで嘘つくの?
今年初の保守
ho
490 :
ねぇ、名乗って:2007/02/22(木) 00:54:56 ID:rBc15lPw0
age
まだまだ〜