まこっちゃんとこんこんの小説スレです。(練習用)
職人、見習いさん大歓迎。雑談OK。マターリしましょう!
3 :
ねぇ、名乗って:04/02/05 20:56 ID:Jk6yGnyf
緑
4 :
Virry・L・O:04/02/05 21:21 ID:431oZgV1
びりじあんですぅ♪
恋でびりいろ(びみょ〜ん)
5 :
名無しさん募集します。:04/02/05 21:29 ID:88mn8nZN
時は満たれり・・・
6 :
ねぇ、名乗って:04/02/05 21:45 ID:fGVxkcWB
だからなんだ
7 :
名無し募集中。。。:04/02/05 21:53 ID:DEvqUGA5
とりあえずスレ立て依頼者本人の意図を聞かないと、わけ分からんな
8 :
ねぇ、名乗って:04/02/05 22:07 ID:IZsmQlJF
依頼したことだし即死は避けよう
9 :
しょうもない依頼人:04/02/05 22:30 ID:88mn8nZN
自分依頼人っす。(5です)スレ立て依頼理由は小説練習所として使って頂けたら良いなぁと思って。 文おかしくてスマソ
10 :
名無し募集中。。。:04/02/05 22:52 ID:rc3NiQ7g
惜しい。
紺野と高橋なら書いてた。
11 :
しょうもない依頼人:04/02/05 23:15 ID:88mn8nZN
>>10 練習所なので愛紺でもいいっすよ。一応基本はこんまこで。
12 :
名無し募集中。。。 :04/02/05 23:45 ID:GoEmjGNx
五期限定?
四期や六期が混じったらダメ?
柴紺とかなら書きたいのだが……
13 :
ねぇ、名乗って:04/02/06 06:06 ID:fGrQ9mia
あげ
14 :
しょうもない依頼人:04/02/06 09:24 ID:18DX+Wtg
>>12 混じる位ならOKです。ただしメインが全く違う人物になっていたら×。(こんこんかまこちゃんが入っていたら良い)
保全
保全しとくよ。
紺野や小川が主演の小説で、良かったのってあるかい?
個人的にCARD GAMEは好きだった。
うpしようかどうか悩み中保全。
19 :
名無し:04/02/08 17:16 ID:Pdxelfi3
>>19 では保全がてらにうpしてみます。(中途半端ですが)
「……ハァ……ハァ……ハァ……」
やっぱり、この人とは何度やっても勝てないや。
まあ、毎日の事ではあるんですけどね…。
あ、申し遅れました。
私は紺野あさ美。
格闘術『天壁拳』を極めるために、日々精進しています。
私の将来の夢は日本一、いや、世界一の格闘家になること。
好きな食べ物はトロとマグロとサーモンのお寿司のサビ抜きとおイモ類…。
あ、そんなことはどうでもよかったですか?
「紺野ぉ〜、いつまで寝てるつもり〜?」
のんびりしたその声に、私ははっと今の状況を思い出す。
そうだった…。
視線を声の方へ向けると、そこには一人の女性があくびを噛み殺しながら退屈そうに立っている。
あ、この人が誰かって?
この人は後藤真希さん。
私の師匠で、『天壁拳』の八代目継承者。
後藤さんを一言で表すと…奥が深い。
とっても、とっても奥が深い。
強さもそうなんですけど、なんと言ってもこの人の心だけは全く読めません。
どこかひとつ次元が違う人、そんな感じ。
私は今、そんな後藤さんと修行をしていて、『天壁拳』を指南してもらっています。
あ、なんで師匠なのに「後藤さん」なんて呼び方をしてるのかって?
後藤さんは「師匠なんて呼び方はこそばいからさ、ごっちんでいいよ。」って言ってくれてるんですけど…。
さすがにそんな呼び方はできないんで、「後藤さん」と呼んでいる次第なんですよ。
「もぉ〜、寝るんだったら今から後藤も寝るよ?」
「後藤さんは私の修行中にも寝てるじゃないですか…。
まだ寝るんですか?」
「あははぁ〜、だってさぁ〜。」
そう言ってはにかむ後藤さん。
皆さんは知らないかも知れないですけど、後藤さんはいつでも寝るんですよね…。
それが修行中であっても。
私と実戦練習をしてる時に寝てた、なんてこともしょっちゅうあるんですよ。
それで私がそのスキに一撃お見舞いしてやろうとするんですけど、必ず全部かわされるんですよね…寝ながら。
これ、ホントですよ?
嘘っぽいですけど。
それぐらい、後藤さんはよくわからない。
本当に奥が深い人です…。
ま、そんな後藤さんだから、私も尊敬しているんですけどね。
「どうする、続きやる?」
「当然です!まだ一撃も入れてませんから。」
負けず嫌いの私は意地になって言う。
「この三年間で後藤に一撃だって入れたことないくせに…。」
うっ、それを言われると…。
確かに、私が後藤さんの指南を受けはじめてからの三年間、一度たりとて後藤さんにまともな一撃を入れたことがありません。
戸惑う私の表情を見て、後藤さんは「あははぁ」といつもの様にあどけなく笑っていました。
ムキになった私は、構わず後藤さんに怒涛の猛攻撃を仕掛けました。
…約一時間後
後藤さんがぐったりとした私を負ぶって帰路についていました。
結局今日も一撃も入れることはできませんでした。
はぁ、やっぱり道のりは長いなぁ〜。
そんなことを思う私の意識は、いつの間にか睡魔に完全にやられてしまっていました。
とりあえずこんな感じ保全。
「おはようございます、後藤さん。」
翌日、私は朝食(といってももうすぐお昼なんですけど)の支度をしながら、寝ぼけまなこを擦る後藤さんに挨拶しました。
「んぁ〜、おはよぉ〜。紺野はいつもながら早いねぇ〜。」
「後藤さん、言っときますけどもうすぐお昼ですよ?」
「え、マジ?」
「はい、マジです。」
あははぁ、と後藤さんはいつもの笑顔でやり過ごした。
私は「はい」と言って、出来上がったばかりの朝食を後藤さんの前に差し出す。
味は…自信がないわけでもないんですけど、正直後藤さんには遠く及ばないですね。
普段は後藤さんが作ってくれるんですけど、後藤さんは朝が弱いんで代わりに私が作ってる、という感じです。
あ、何で師匠の後藤さんが作ってくれるのかって?
後藤さん、あまり師弟だからってそういうのには拘ってないみたいなんですよ。
後藤さんが料理が好きだっていうのもあって、私はそんな後藤さんに甘えさせてもらってるというわけです。
「ん、今日のお味噌汁、いつもよりいい感じじゃん。」
「ホントですか?」
二人してお味噌汁を啜っていた時、後藤さんが何気なく言ってくれたこの一言に、私はつい嬉しくなりました。
しかし。
「ウソ。」
後藤さんが意地悪そうにそう言ったので、私は普通に凹む。
「……はぁ。」
「あははぁ、冗談だって。ホントにおいしいよ、うん。」
私はよくこんな感じで後藤さんにからかわれるんですよね。
後藤さん曰く、私のリアクションが可愛い、ということらしいんですけど…。
毎日のようにやられた方は、たまったもんじゃありません。
私って、そういうキャラなんですかね?
なんだかんだで食事も大方済んで、後藤さんはう〜んと目一杯に背伸びした。
「よっし、今日も頑張っていこぉ〜!」
「あ、はい。」
気合い入れをした後藤さんと共に、私たちは修行場へと出発。
そして徒歩数分でいつもの修行場に到着し、私達はいつものように特訓を開始しました。
とりあえず40いくまではうpしてみます保全
いいYO!いいYO!
なんかモーニングタウンおもいだしたよ
まこも出してね
「……ハァ……フゥ……ハァ……。」
数日後、いつものように私は後藤さんにこてんぱんにやられていました。
はあ、未だに成長してないのかなぁ、私…。
時々こんな自問をしたくなってしまいます。
でも、自分でもわかっていました。
自分で言うのもアレなんですけど、私は徐々にながら確実に成長を遂げていました。
修行後に爆睡さえしてしまわなければ、ほぼ毎日欠かさずにトレーニングをやっていましたし。
でも、それでも後藤さんに絶対に勝てない理由があるんです。
後藤さんは…私と修行する度に成長する。
信じられませんけど…後藤さんは闘うたびに強くなっていくんです。
私との修行ですら、自らを成長させるんです。
正直、私がこの人に敵うようになる日が来るのでしょうか…?
ハァ……。
思わずため息が漏れる。
「紺野ぉ〜、大丈夫〜?」
後藤さんが大の字でぶっ倒れてた私の顔を覗き込んできた。
その表情はとても穏やかな笑顔だった。
内心、ちょっとドキッとする。
実は私、後藤さんのこの表情が大好きなんだよなぁ〜。
そんなおっさんみたいなことを考えていたら、後藤さんが色々と話しかけてきてくれました。
「紺野、あんたは覚えてる?後藤と出会ったときの事…。」
「後藤さんと…ですか?」
私は頭の中にある記憶の引き出しを片っ端から開きまくりました。
こういうことするの、私って人一倍時間がかかるんですよねぇ〜。
あれこれ考えながら、私はなんとなくながら当時の状況を思い出していきました。
>>32 最後までうpしてしまうのはスレ的にまずいですか?(一応練習用ですし。)
>>33 残念ながらこれにはマコは出しません。スマソ
40までもう少し!
個人的には同じく後藤を尊敬しかつこんこんをなめてかかっている
田中の出番は、とか思ってみるけど、気にせず好きに書いてちょ。
いいねぇ
続きよろ
40 :
名無し募集中。。。 :04/02/11 15:13 ID:8iefLGMR
ほぜんしとくね。
初めてきました 完結まで頑張ってね
川o・-・)<結構上手、期待
紺野と後藤の出会い
気になります
早く続きが読みたいな
-----------------------------------------------------------------------------------------
あれはちょうど三年前。
そう、満月の夜。
私はたった一人で街をとぼとぼと歩いていました。
どこを目指すわけでもなく、何かを探すわけでもなく…。
私の意識は、まさに風前の灯という状態で。
風に流されるままに、といった感じで、ただ足だけが勝手に動いているような感覚でした。
その頃の私には友達はもちろん、親や兄弟といった身内も全くいませんでした。
物心がついた頃からそうで、気がつけばずっと一人でした。
だれも当てにできず、誰に頼ることもできず、ずっと一人で生きてきました。
どうやって生きてきたのかなんて覚えてません。
思い出したら、それだけで私がどうにかなってしまうような、そんな気がするから…。
私はその時、男数人に囲まれていて、いわゆる危険な状況でした。
金を出せとかなんとか、そんな事を言われてたような気がします。
私はその時、ただ黙って俯くことしかできませんでした。
そんな時でした。
後藤さんと出会ったのは…。
後藤さんはふっと現れたかと思うと、あっという間にその男達をやっつけてしまいました。
「あんたさ、大丈夫?」
そう言って後藤さんは、あははぁ、とあの笑顔で私に微笑みかけてくれました。
私、そんな気分だったわけじゃないのに、気がつけば何故か笑ってました。
後藤さんの笑顔には、どこかそんな魅力(ちから)があったんです。
「へぇ〜、あんた一人なんだ…。」
「…はい。」
「よかったら、私のとこに来る?」
「…はい。」
「あははぁ、私の名前は後藤真希。あんたは?」
「…紺野…あさ美。」
「紺野…か、よろしくね、紺野。」
「…はい。」
「あははぁ。」
それから後藤さんは私を養ってくれるのと同時に、私に『天壁拳』の指南をしてくれました。
「紺野はさぁ、何か夢とかあんの?」
「…強く…なりたいです、後藤さんみたいに。」
「後藤みたいに?」
「誰にも頼らなくてもいいくらい、誰にも負けないくらい、私、強くなりたいです。」
「あははぁ、じゃあさ、私が教えたげるよ。
私の持ってる全てを、ね。」
---------------------------------------------------------------------------------------
当時の私は自閉症で、まともに口を利くこともできませんでした。
それから三年、後藤さんのおかげで、今では後藤さんとは何でも気兼ねなく話せるようになりました。
後藤さんにつっこみをする私の姿なんて、当時の私には想像もできなかったろうな。
でも、そう言えば後藤さん、何で突然こんなことを聞いたんだろう?
「紺野はさぁ、あの時言ったよね、誰にも頼らなくてもいいくらい、誰にも負けないくらい強くなりたいって。」
「はい。」
「今でもそれは変わらない?」
後藤さんの問いかけに、私は寝転がったままながら力強く答えました。
「当然です!…ただ…。」
「ただ?」
後藤さんはなんだ?という感じで首を傾げている。
「今はそれだけじゃなくて、色んな意味で強くなりたいです。
そして、いつかは世界を周ってみたいんです。
したら、きっと私の知らない色んな未来と出会えると思うから…。」
「…そっか。」
後藤さんはまた、あの笑顔で私に微笑む。
あ〜、やっぱり可愛いなぁ、後藤さん。
「同じだね…。」
「えっ?」
私は思わず声にならない声を上げてしまいました。
一体何が同じなのか、私には全く見当もつきません。
後藤さんは私の顔を覗き込む。
「その眼…あの時とまったく変わってない。」
「眼…ですか?」
「うん、強い意志のこもった綺麗な眼。
紺野のその眼、後藤は大好きだよ。」
そう言うと、後藤さんは肌と肌が触れそうになるんじゃないかというくらいに自分の顔を、寝転がったままの私の顔に近づけてきました。
そんな…こんな間近で見られながら、改まって言われると照れるじゃないですか…。
私の顔は見る見る高潮していきました。
後藤さんの表情は、相変わらずのあの笑顔。
でも…心なしか、さっきとちょっとだけ違う気がする…。
なんと言うか…今の笑顔には、どことなく少し寂しさみたいなものと、腹を括ったみたく何かを決心したような、そんな雰囲気がどことなくありました。
でも待って…この状態、ちょっと危なくありません?
今の状況では、私は全く身動きを取れません。
ここで何か仕掛けられたらどうしよう?
そう思うと、私の体はカチンコチンに硬直して、完全に萎縮しまいました。
でも、予想に反して、後藤さんは何をするでもなく私から離れていきました。
私、一体何を考えてんだか…。
変なことを想像してしまっていた自分に思わず恥ずかしくなりました。
顔を少し赤らめたそんな私に、後藤さんはそっと囁く様に言いました。
「ねぇ、紺野。後藤の特別な物、見せたげる。」
そう言って後藤さんは、私の方を振り返ることなく歩き出しました。
私は慌てて、その後藤さんの背を追いかけます。
後藤さんの向かう先で、私にとって衝撃の事実と、そして信じがたい現実と相対することとなろうとは、この時の私はまったく予想だにしませんでした。
>>37 あと3・4回で完結ですのでそれまでお借りします
>>38 残念ながられいなちゃんも出ません、がそれも面白い設定だなと思ったりして
>>39 そう言ってもらえると嬉しいです
>>40 保全乙です
>>41 はい、頑張りまつ
>>42 こんこんに褒められた…(*´д`)ポワワ
>>43 マターリ主義なんでちょいとペース遅いかも…スマソ
特別な物、特別な物、特別な物、わくわく。
あら、私と一緒のとこ回ってるのね
完璧さん乙
読みやすい文でイイ!
しかし、前回といい今回といい、いいところで止めますねw
続き期待保守
歩き出してしばらくしてから、ふと後藤さんの足が止まる。
私は後藤さんの隣に並ぶようにしてそこに立ちました。
その場所は、少しばかり拓けた原っぱといった感じのところでした。
「紺野、これが何かわかる?」
後藤さんの目線の先、そこには何の変哲もないちゃっと大き目の石が二つおいてありました。
だけど、私はなんとなくですけど、これがそれであることを察していました。
「お墓…ですか?」
「うん。」
「誰のですか?」
野暮なことを聞いてしまった、と私は聞いた後になってから後悔する。
横目で後藤さんの表情を確認する。
後藤さんはまだ、あの笑顔を維持したまま石を見つめている。
すると、後藤さんは躊躇することなくこう答えました。
「お父さんと、お母さん。」
しばらくの沈黙。
私は何も声をかける事ができませんでした。
すると、この空気を察してか、後藤さんの方から話しかけて来てくれました。
「後藤もさ、紺野と一緒で、物心がついた頃から親がいなかったんだ。」
正直、驚きました。
私から聞くなんて事もなかったから、知らなくて当然でしたけど、何故かこの時、私は妙に寂しい気持ちになってしまいました。
「だからさ、親の顔も全然わかんないし、名前すら覚えてないんだ。」
「でも、ご両親はここで亡くなられたんですよね?」
なんでこんなことを聞いちゃうかな…。
この瞬間、私はつくづく無神経な自分に腹を立て、自己嫌悪に陥りました。
それでも、後藤さんは優しく答えてくれました。
いつものあの笑顔で…。
「わかんないんだ。」
最初、私はこの言葉の意味を理解することができませんでした。
後藤さんは続ける。
「親が今、どこにいるのか。
生きてるのか死んでるのか、それすらわかんない。
でもさ、ただここに親がいるって証しが欲しかったの。
それで、このお墓を立てたんだ。」
私はただただ後藤さんを見つめることしかできませんでした。
「紺野と私ってさ、どことなく似てるんだよね。
境遇もそうなんだけど…なんていうかな、紺野とは何かの運命を感じるんだ。」
そう言って後藤さんは私の方を振り返る。
互いに目と目と見つめあう。
後藤さんの目を見ていると、私はこの漆黒の瞳の中に吸い込まれてしまいそうになりました。
後藤さんの目は、底が見えないくらい深く、そしてどこか悲しい目をしていました。
「それで私も8歳の時に師匠…7代目天壁拳継承者に拾ってもらったんだ。
そして私が10になった時かな?
天壁拳の奥義を伝授してもらって、それで私は8代目の継承者になったの。」
10歳で奥義を?
私は、この人はやはり天才なんだ、と改めて思いました。
はっきりいって次元が違います。
しかし、この時私の中でふと一つの疑問が生まれました。
「ところで、その7代目継承者の方は今どうなさってるんですか?」
「…もう、遠くにいっちゃったよ。」
この言葉を聞いて、私はまた後悔する。
さっきからこればっかりだ。
さすがに今回ばかりは、後藤さんの表情も少しばかり暗くなっていました。
わたしは自分の事が嫌になって仕方ありませんでした。
「奥義を習得してすぐに…ね。このことはまた後々話すよ。」
もし私が生きていたら、ね。
後藤さんがこの時こんな事を思っていたなんて、私には当然知る由もありませんでした。
今日はこんな感じで。
今回からは少し個別レスは控えますので悪しからず。
もし新しいのを書く人がいるようでしたら、さっさと完結させてしまいますがどうでしょうか?
61 :
名無し依頼人:04/02/14 16:31 ID:2365wgWX
>>60 そうですね。でも一気にうpするのキツかったらゆっくりで良いので。
>>60 すべてにレスする必要はないと思いますよ。
レスが付かなくても恨んだりはしませんから。少なくとも俺は。
ま、誰か名乗りを上げるまでのんびりやってくださいな。
いかん 今までそれほど気にもしていなかった後藤が
この小説を読んで気になり始めた
「ねぇ、紺野。」
「はい?」
「あんた、強くなったね。」
「どうしたんですか?突然…。」
いつもはここまで真面目に話したりすることなんてないのに…。
今日の後藤さんはどこか様子がおかしい。
「ホントだよ。自分じゃ自覚してないかも知れないけど、世界に出ても十分通用するくらいの力をつけたと思うよ。」
「あ、ありがとうございます…。」
「だからさ、早速だけど、あんたに今から奥義を伝授しようかと思うんだ。」
「ホントですか!?」
「ホント。」
私は…素直に嬉しかった。
やっと後藤さんに認められた。
なんとなく、そんな気分になりました。
しかし、この時の私はまだ気付いていませんでした。
刻々と、二人の永遠の別れの時が近づいているということを…。
奥義習得のために、後藤さんの私への最後の指南がはじまりました。
「それじゃあ、説明するよ。」
「はい。」
「人体にはツボっていうのがいくつもあるっていうのは知ってるね?」
「はい、そこを刺激すると、人体に大きく影響を及ぼすっていうアレですよね?」
「そう、格闘においてもツボっていうのがあって、そこを攻撃すれば大ダメージ、あるいは即死させることができる点がいくつかあるんだ。」
「人体急所とは違うんですか?」
「ま、延長線上って考えたらわかりやすいかな?
ただ、これは人によって場所は様々だから、一様にこことは言えないんだ。」
「で、どうすればいいんですか?」
「自分の目で見極めて突く。それしかないよ。」
「えっ?」
私は戸惑いました。
そんなの、一体どうやって見極めろというのでしょうか?
「これはセンスの問題だからね。
後藤も大体の感覚でやってるから、特にこことかいうのも言えないし。」
私があっけらかんとしていると、後藤さんはひとつだけヒントを出してくれました。
「ま、あえて言うなら…。」
「あえて言うなら?」
後藤さんは、私の目を真っ直ぐ見つめ、しばらく間をおく。
「心、かな?」
「心、ですか…。」
「そう、心。」
後藤さんはまだ私の目を見つめたままだ。
私も後藤さんの底の見えない漆黒の瞳を見つめ返す。
「心でそのツボを見つけるの。
自分の中に強い想いがあれば、きっとそのツボを見つけることができるはずだよ。」
「強い想い…。」
この重い言葉に、私が無言で悩むそぶりを見せていると、後藤さんは微笑みながら言いました。
「それじゃ、今から実戦いくよ。」
「……はい。」
正直不安だったが、迷っていても仕方がない。
案ずるより産むが易し。
これが後藤さんのいつもの指導方法でもあった。
「これが最終試験…ま、卒業試験ってことになるかな。」
「?」
後藤さんのこの言葉に、私はどうしても違和感が拭えませんでした。
そして、の次の言葉で、それが確信へと変わる。
「紺野、後藤は全力であんたを殺しにいくから、あんたは後藤を殺す気で全力でかかってきな。」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!」
意味がわからない、というよりわかりたくなかった。
これを理解した時、それは二人の内のどちらかの死を意味したからだ。
「どういうことなんですか?
ちゃんと説明してください、後藤さん。」
後藤さんはいつになく真剣な表情で口を開いた。
「『天壁拳』の奥義伝授は代々こうやって行われてきた。
師匠か弟子、どちらかの死が『天壁拳』伝授終了の証。
それだけだよ。」
まさかとは思いましたが、その時に私はやっと理解しました。
後藤さんは師匠を…自らの手で殺めたことを…。
「後藤さん、それは絶対間違ってますよ!
なんで私達が殺しあわなきゃいけないんですか!?」
私は心の底から悲痛の叫びを上げました。
それでも、今の後藤さんには届きません。
「この流派は…奥義を伝授してはじめて継承者になれる。
奥義を習得できないような…継承者になれないような中途半端な実力の人間には、この流派は扱わせちゃだめなの。
それだけこの流派は恐ろしいものだから…。
だから先祖代々、こうやってこの流派は守られてきたんだ。」
後藤さんは、いつになく冷たい表情でそう言いました。
私が今まで見てきた後藤さんは、そこにはいませんでした。
「私…そんなの絶対にいやです!!!」
そう言って、私は踵を返して走り出しました。
目からは自然と涙が溢れ出していました。
…いやだ…いやだ…いやだ!!!
しばらく走り続け、ふと足を止め、振り返る。
後藤さんは追っては来ていませんでした。
「今なら、まだ逃げられるのかな?」
そこで私は思う。
一体どこへ?
どこにも帰る場所なんてないのに。
逃げてどうするの?
そうまでしてしたいことなど何もないのに。
「…今逃げたら…後藤さんに失礼だ。」
今まで私を育て、鍛え、そして同じ時を過ごしてくれた後藤さんに、私はこれまで何をしてきただろうか?
まだ、何もできていない。
まだ、何もお返しできちゃいない。
何かしなくちゃ。
逃げようとしたのは、ただ自分の心が弱いからだ。
ここで強くならなきゃ。
何とかしなくちゃ。
頑張れ、紺野あさ美。
そう自分に言い聞かせ、私は元来た道を急いで引き返しました。
今日はここまでです。
月曜からしばらく更新できなくなるので明日中に完結するべきか悩んでます…。
ん〜、どうしよう…。
72 :
名無しさん:04/02/15 13:20 ID:BIZvlZU6
>>71さん乙
早く続きが読みたいけれど、楽しみは後に取っておきたいって気も
ウホ
今日の『知ってる24時』は紺マコラジオドラマ・・・
>>75 メインは矢口と藤本だから、期待しない方がいいと思われ。
(´-`).。oO(続きは週末かな)
私はあの場所へと戻ってきました。
そこには当然のように、後藤さんが待っていました。
あの笑顔で…。
「帰ってきたね。」
「まだ…後藤さんには…なにもお返し…してません…から。」
私は若干乱れた呼吸を整えつつ、一言一言丁寧に答えました。
「ねえ、紺野。」
「はい?」
「ひとつだけ伝えたい事があるんだ。」
「…何ですか?」
後藤さんが瞳を閉じる。
その表情は、胸の奥から慎重に大切な言葉を探し出しているように見えました。
「私があんたに、この流派を教えた理由。」
「…。」
後藤さんは目を開け、空を見上げました。
私もつられて空を見上げる。
満月。
あの時と全く同じ、あの出会った日と同じ満月です。
「私はさ、この流派を教わった時、何も理由なんて持ってなかった。
言ってみればなんとなくっていう中途半端な気持ちで教わってた。」
後藤さんが懐かしそうに過去を語ります。
その表情はやっぱり、どこか悲しそう。
「そして奥義伝授の時が来た。
当時10歳だった私は、いとも簡単に奥義を会得してしまった。」
後藤さんは、こんな思いを…わずか10歳の時に経験したんだよね…。
私の胸はなにかギュッと締め付けられるような感覚に陥った。
「でもね、その時の私、師匠を殺してしまった瞬間、何も感じなかったんだ。
自分でも怖かった。
何でなんだろうって…。
後藤はさ、人を虫けらのように殺すことができてしまった自分が心底嫌だったの。
私は…この流派を受け継ぐべき人間じゃなかったんだって、そう思った。」
「後藤さん…。」
私には何も言えなかった。
「でもね、あんたは違う。
紺野にはしっかりとした心がある。
紺野なら、この流派を…この奥義をしっかり自分のものにできると思った。
だからこそ、あんたにこれを教えたんだ…。」
少しの沈黙の後、後藤さんは大きく息をふぅっと吐き、そして言った。
「そろそろいくよ?」
「…はい。」
「妥協…しないからね?」
「そうでなきゃ、意味ないですから。」
「あははぁ、言ってくれるねぇ。」
いつものあの後藤さんの笑顔だ。
しかし、次の瞬間、その笑顔は影を潜め、それと同時に、私の背筋は一気に凍りつきそうになりました。
…重圧、そして殺気。
私の体は、知らず知らずの内に小刻みに震えていました。
これが、本当の後藤真希。
怖い。
震えが止まらない。
…でも、もう後戻りはできない。
私は大きくひとつ息を吐いて、そしてゆっくりと構えました。
そして、二人の間の時間が少しだけ足踏みをしていました。
そんな中、先に動いたのは後藤さんでした。
攻撃こそしてこないが、圧倒的スピード。
私が普通に闘っても、到底太刀打ちできそうもありません。
ならば…渾身の一撃にかける。
私は右手に力を精一杯込めました。
勝負は一瞬、後藤さんが攻めに転じた瞬間。
私は極限まで意識を高める。
そして…来た!
後藤さんの右正拳。
その時でした。
「見えた!」
そこを撃て、と言わんばかりに体が勝手に動いていました。
流れに身を委ねる様に、私も渾身の力で、この右の拳を振り抜きました。
技と技の交錯。
そして、静寂。
私はその場から動くことができませんでした。
後藤さんもまったく動きません。
「おめでとう、紺野。これであんたは9代目天壁拳継承者だよ。」
後藤さんのこの言葉で、まるで金縛りが解けたかのように私の体は自由になりました。
ゆっくりと後藤さんの方を見てみる。
しかし、その後姿はまったく微動だにすることがありませんでした。
「後藤…さん?」
「それじゃ、紺野。これから…あんたは…じ…ゆ…。」
そう言った直後、後藤はその場に崩れ落ちました。
「ご、後藤さぁぁぁーーーーーん!!!」
私はすぐさま後藤さんのそばに駆け寄りました。
幸い、まだ息はあるみたいでした。
なんとか助けなきゃ!
そう思った私は、後藤さんを担いで、とにかく後藤さんの家に急ぎましだ。
お願いだから、間に合って…。
お待たせしました
お久しぶりの更新です
一応次回でラストの予定です
キモスレキタ━(゚∀゚)━!!
>>78 呼び捨てキタ━(゚∀゚)━!!
>>82 Zです
イイヨイイヨ、ごっこん
乙です!
>>83 乙です
いよいよ次回ラストなのね
後藤は助かるのか!? 急げ紺野!!
後藤さんの家に帰ってすぐ、私はありったけの薬をかき集めました。
どれが利くなんてわからない。
ただ、じっとしていられませんでした。
それに悩んでる暇もありません。
これ、という薬を選び、とりあえず使ってみる。
お願いです、神様…。
私は、横たわる後藤さんの隣で、ただただ祈ることしかできませんでした。
翌朝、いつの間にか眠ってしまったみたい…。
ふと、後藤さんの方を見てみる。
後藤さんは未だ、目を瞑ったまま横たわっていた。
私の目からは涙がこれでもかというほど溢れ出ていた。
「ごと…さん…。」
私は抜け殻になった後藤さんに泣きすがり、そして叫びました。
こんなことをしてもどうにもならない。
そんなことはわかっていました。
でも…。
しかし、この時、私はある重大なことに気がつきました。
「スゥ……スゥ……」
「ね、寝息?」
そして、私は必死になって後藤さんを起こそうとしました。
「後藤さん!後藤さん!」
「んあ〜、紺野か、おはよぉ〜。
今日も早いねぇ〜。」
私は呆れながらも、寝ぼける後藤さんに事の次第を説明しました。
すると…。
「あぁ〜、紺野に攻撃された後ねぇ、なんか無性に眠くなったの。
多分、眠くなるツボでも押されたんだろうねぇ。」
あははぁ、と後藤さんはあどけなく笑っている。
そんなアホな、と私は心の中でつこっみを入れながら呆然としていたら、後藤さんが薬について聞いてきました。
それで私は後藤さんに飲ませた薬を差し出しました。
「アッハッハッハッ!紺野ぉ、あんたやっぱり面白いねぇ〜。」
頭の中が『?』でいっぱいな私。
後藤さんはそんな私をほっといて、一人お腹を抱えて笑いっぱなしでした。
「ははは、これ、ビタミン剤じゃん!
これじゃあ、絶対治んないっしょ、あはっあっはっはっ!」
私はカッとなって、つい大声で怒鳴ってしまいました。
「後藤さんのばかぁ〜!!!もう心配してあげないんだから!!!」
プイッとそっぽを向いた私に、後藤さんは必死に許しを請ってきました。
私がチラッと横目で後藤さんを窺うと、ふと後藤さんと目があう。
すると、何かとても可笑しくって、二人で思わず大声を出して笑ってしまいました。
後藤さんが死なずにすんだのは、後藤さん曰く「あんたが強くそう思っていたから、こういう結果になったんじゃない?」とのこと。
私はどう考えても、後藤さんが化け物だっただけだと思うんだけどなぁ〜。
数日後、私は後藤さんの下を後にし、世界へと旅立ちました。
後藤さんは「気が向いた時に帰ってきなよ。」と、あの笑顔で優しく言ってくれました。
私はいつか世界一の格闘家になることを後藤さんに誓い、そして新たな一本の道を歩き出しました。
世界一になって、私の大好きなあの笑顔と、もう一度再会するために…。 END
これにて完結です
ここまで読んでいただきありがとうございました
個人的な好みで、ごまこんで書いてみましたがどうだったでしょうか?
自分としてはやっぱりオチが浅かったかなぁと…
感想あればよろです
あと、リクがあれば書くかもなんで、よかったらお願いします
乙です
また書いてね!
川o・-・)ノ<オチは別にして全体に上手でした。今後もガンガってください。
オチはごっちん視線で書くと良かったかもー
乙です
こんこんぽくてエエんでないの?>オチ
最後の2行は在っても無くても良かったかもね
乙でした
>「後藤さんのばかぁ〜!!!もう心配してあげないんだから!!!」
想像した(*´Д`)ポワワ
こんこんのことだ 怒った顔も素敵なんだろうな 間違いない
>>92-95 遅くなりましたが、感想ありがとうございます。
なかなか新手さんが現れないみたいなんで、またちょいと新作を考えてみようかなと思う今日この頃。
リクエストしてみようかな
こんこんでエコエコアザラク
劇場版1みたいの
なんちて
99 :
てst「:04/03/06 19:26 ID:8SMt+m2M
てst
100 :
てst「:04/03/06 19:27 ID:Enex7+aD
てst
二人の小説についてだったら、雑談してもOKなのか?
なんか流れ的に今まで遠慮してたんだけど
>101
>>1によると雑談オッケーみたいだよ。
話は変わるがこんまこは地方のホテルで同室になるこ
とが多いみたいだ。
となると高橋新垣が同室か?二人部屋とすると。
そこから何か話が出来そうな気がする。
>>102 同期ごとならそうかも知れんね。
ただ、高橋・新垣で小説は書きにくいな。
相部屋系はかなり多用されているシチュエーションだからなぁ、余計に。
こんまこでもそれのみでは書きにくい。
104 :
てst「:04/03/08 23:23 ID:L4rnvgSg
tes
キカイノココロでも読み返すか…
ほぜん
こんまこ中心で野球モノを書こうと思ってるんですが…チームが決まりません
オールドvsヤングでもいいかなぁ?と考え中…
意見あればよろ
そこで桜/乙女ですよ
後はめぼしいユニット繋がりで
>>110 個人的にはこんまこバッテリーで考えてたんですが…
もし他に意見がなければその方向で検討します
意見サンクスです
112 :
110:04/03/16 20:26 ID:uwukRbe+
スマソ
こんまこバッテリーの予定ならばそちらの方がイイかも
オールドvsヤングで是非。
ヤングチームメンバー
ピッチャー小川
キャッチャー紺野
ファースト道重
セカンド田中
ショート高橋
サード藤本
レフト辻
センター亀井
ライト新垣
オールドチームメンバー
ピッチャー石川
キャッチャー吉澤
ファースト飯田
セカンド加護
ショート矢口
サード安倍
レフト石黒
センター後藤
ライト保田
>>113 藤本と加護は逆の方がよくないですかね?それに
>レフト石黒
これも気になるな…w
とりあえず、これを軸にちょこっといじくる位の感じで構成してみまつ
意見サンクスです
>114
ヤングかどうかは年齢じゃなくて入った期で分けてます。
あとオールドチームは人数が足りなかったので石黒を
入れました。
個人的に入れたかったというのもありまつ。
ステキな作品書いて下さいね。
>>113 ヤング・オールド共にバッテリーが逆のような気がするのだが・・・
>>115 >オールドチームは人数が足りなかったので石黒を入れました。
中澤姉さんじゃあダメなのか?(年の問題でw)
>116
うーん、今見たらそうかな?
紺野は機転が利きそうなのでキャッチャーにしました。
石川さんがピッチャーなのは単なる趣味です。
裕ちゃんは体力的に厳しいでしょう。稲葉さんともども
監督かコーチでもしてもらおうかと思います。
一応保全
がんばって書いてくださいね
ロデム
(´-`).。oO(・・・)
ぬーん
NUcCsmYxodg
KEXY.niwxgA
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bB.oYP0eH/I
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W5bRmG7XdeA
135 :
ねぇ、名乗って :04/05/03 08:09 ID:5y9MIgBo
e
保全。
職人待ち
一番下記念パピコ
てs
てs
tests
「行っちゃいましたね・・・」
「うん、行っちゃったね」
「結構、寂しいかも」
「いたらいたで、迷惑なんだけどね」
「・・・・・・」
「あのー・・・ところでどなたさんですか?」
「・・・ふふふ」
「くくくッ・・・」
「わっはっは」
〆ハハ ノハヽヽ
∬´▽`)< >(・-・o川
五期メンで!
ノ8ノノヽ ブレーメンの音楽隊! ノノノノヽヽ
ノノ・e・)< >(’ー’*川
PM9時───
小川は人の流れに身をまかせて無心で足を動かしているといつの間にか歌舞伎町に来てい
た。半ば放心状態だった小川を、未成年ということもあって、すれ違う人達は怪訝な目で
見た。
やばい、どこだよここ、なんか変なとこに来ちゃった、東京こえー・・・
気がつくと周りを風俗店に囲まれていたので、小川は少し焦った。新宿駅まで引き返そう
と思ったが、我に返った小川を今度は急激な睡魔が襲った。思えばもう40時間近く睡眠
を取っていなかった。まぶたが自然に落ちてきて、頭がひどく重い。今だったら道端でだ
ってのび太君より早く眠れるな、と小川は本気で思った。それくらい眠かった。開けきら
ない視界の中、小川はとりあえず目に付いたホテルにふらふらと入った。カウンターには
少ない髪の毛を無理やり金髪に染めた40歳くらいの男が立っていた。
「いらっしゃいませ・・・って、君、いくつ?一人?」
男は小川を訝しげに見ながらそう聞いた。そのだらしない格好や粗悪な接客態度、そして
ピンクを基調としたホテルの怪しげな内装を見て、ようやく小川はそこがラブホテルだと
気づいた。少し戸惑ったが、眠気が羞恥心をまさった。どこでもいいから早く寝たかった。
「はぁ・・、一人です。16です。だめですか?」
「いやいいんだけどね。仕事?休憩?泊まるの?まあいいや、ここに名前書いて。泊まる
んだったら8000円ね」
差し出された紙に『小川麻琴』と書いた後、トートバッグから財布を取り出した。そして
中を見て固まった。
・・・た、足りない!
元々少なかった手持ちは新幹線代でほとんど消えていた。そこには漱石が一人しかいなか
った。
「あ、あのぉ・・・1000円しかないんですけどぉ・・・」
「・・・・・・」
男はしばらく無表情で小川は見ていたが、やがてニッコリと優しい笑顔を浮かべた。
「え、えへへ・・」
小川も釣られて笑った。すると男は表情を変えず、同じく優しい声で静かに言った。
「出て行け」
その後小川は普通のカプセルホテルも含めて8軒回ったが、その全てから追い返された。
そしていよいよ事のヤバさに気がついた。
やばい!お金ない!これじゃ寝る場所どころか、食事だって・・・
貯金は全て親に任せてあったので、銀行のキャッシュカードは一枚も持っていなかった。
1000円じゃ実家にだって帰れないじゃん・・・いや、たとえお金があったって、家
には帰れないな・・・
そんなことを思いながら、小川は9軒目のホテルに入った。そのホテルは木造式で、縦看
板をいくつも掛けた二つの雑居ビルの間に隠れるようにしてあり、一見すると見逃してし
まいそうなほど狭く小さいものだった。それでも背丈は隣の4階立ての雑居ビルと同じく
らいあり、正面から見ると恐ろしく縦長だった。表に無造作に立て掛けられた看板には、
黒地に白いペンキで『HOTEL ゴロツキ 〜 一泊・4000円』と書かれてあった。
中は外から見るよりもさらに狭く感じ、低い天井に吊るされた電球が、ほとんど装飾のな
されていないフロントを弱々しく照らしていた。
カウンターに誰もいなかったので、小川は「す、すいませーん」と頼りない声を出した。
すると「はーい?」と驚いたような返事が聞こえ、奥の階段からオジサンがドタドタと
降りて来た。
なんだか怪しい感じのホテルだなぁ、ってか本当にホテルなの?・・・ああ、でももう限
界・・・ここがダメなら野宿しよ・・・
新宿駅で見かけた何人かのホームレスに自分が混ざっている画を想像しながら、小川はダ
メ元の交渉を持ち掛けた。
「ああ、いいよ1000円で」
交渉はあっけなく成立した。あまりの即答に小川は面食らってしまい、しばらく次の言葉
が出てこなかった。
「え・・・い、いいんですか?でも表の看板には4000円だって・・・」
「いいよいいよ、どうせ誰も来ないし。うち、ホテルは副業なんだよね。それに部屋がか
なり汚いんだ。客が全然来ないもんだから半年もほったらかしだよ。それでもいいって言
うんなら、どうぞ泊まっていきな。お嬢ちゃんワケありっぽいしな」
オジサンはニヤリと笑ってそう言った。しかしその笑みは全くいやらしくなく、覗かせた
白い歯は小川に好印象を与えた。年は30歳後半くらいだろうか。痩せ型で身長が高く1
80センチくらい。まるでこのホテルみたいな体型だな、と小川は思った。服装はホスト
みたいなのに、綺麗な二重まぶたと5ミリほどにまで刈った坊主が、妙に清潔感を醸し出
していた。
部屋の良し悪しを気にするほど身体も金も余裕はなかった。小川は「ありがとうございま
す、お願いします」と言って金を払った。オジサンは1000円札を受け取るとそのまま
ズボンのポケットに押し込み、小川を二階の部屋に案内した。建物はだいぶ古いものなの
だろう、階段は一段上がる度にギシギシと音を立てた。二階には短い廊下があり、その左
右に一つずつ部屋があった。オジサンは左側の部屋を指差すと、「こっちは俺の部屋だ」
と言って笑った。おそらく、経営者が自分のホテルに泊まるなんておかしいだろ?という
笑いだったのだろうが、小川はよく分からず、適当に笑顔を作ってごまかした。それより
二部屋しかないのかと、そっちの方が笑えた。
「そんでこっちがお嬢ちゃんの部屋だ。自由に使いな。一応シャワーは出ると思うよ」
そう言ってオジサンは階段を引き返そうとしたが、「あ、そうだ」と言って再び小川の方を
振り返った。
「たぶんないと思うけどさ。今晩もし他にも客が来たら、悪いけど相部屋ってことになっち
ゃうよ。うちは部屋が一つしかないからね。そこは勘弁してくれよな。まあ半年も誰も来な
かったんだ、今晩に限って二人もってことはないと思うけどな」
小川が「全然平気ですよ」と笑って言うと、オジサンはまた「まあないと思うけどね」と呟
いて下に降りて行った。
小川は部屋のドアを開け、蛍光灯を点けた。そこは9畳ほどの広さで、ホテルというよりは
一軒家の一室のようだった。入り口から見て左手に窓があった。窓際にはシングルサイズの
ベッド、部屋の中央には木製の丸いテーブルと椅子、入り口の正面の壁際には大きめの白い
ソファ、窓の対面にはクローゼットとユニットバスのドアがあった。思ったほど汚くないな、
と小川は思った。というより、余計な物がほとんどなく、これ以上散らかりようがないとい
った感じだった。汚いのは降り積もった埃くらいで、それも掃除してしまえば大したことで
はなかった。小川はバッグを椅子の上に置き、窓を開けて適当に埃を払った後、クローゼッ
トから綺麗に畳まれたシーツを引っ張り出し、それをベッドに敷いた。それから全身の力を
一気に抜いてベッドに倒れこんだ。「あー、疲れたー」と思わず声が出た。シーツが少しカ
ビ臭かったが、疲労のためかあまり気にならなかった。
もともと汗かきの小川の体は、ずいぶん歩き回ったというせいもあって、ひどくベタついて
いた。汗が服と肌とを不快に貼り付かせていた。幸い眠気もピークを過ぎていたようで、シ
ャワーを浴びる元気はギリギリありそうだった。小川はベッドから重い身体を起こした。窓
からは未だに眠らない歌舞伎町の街が覗けた。各建物はそれぞれ違う色の光を放っていて落
ち着きがなかった。光は小川のいる部屋まで入って来た。天井の蛍光灯はとても小さく、部
屋全体を照らすには不十分なため、街明かりの助けがなければこの部屋はずいぶん薄暗いだ
ろうな、と小川は思った。半日ぶりに電源を入れた携帯の時計は、23時を表示していた。
「あれからもう、8時間経ったのかぁ・・・」
眼下の通りを流れる人込みが、小川を物思いにふけさせた。
───
新潟生まれ新潟育ち。小さい頃からアナウンサーに憧れていた小川は、14歳で地元のテレ
ビ局HTVのアナウンサーに志願し、見事女子アナの職をゲッツした。昔から小川の夢を前
向きに応援していた両親は、学校との両立を条件に女子アナ活動を許してくれた。小川は喜
んだ。
しかしいざアナウンサーになってみると、それはテレビで見ていた華やかなイメージとはず
いぶん違い、苦難の連続だった。「14歳の女子アナ」という触れ込みでアイドル的な人気
は得たものの、回ってくる仕事はバラエティ番組のアシスタントばかり。それも地方ならで
はのうすら寒いやつ。ニュースの原稿を読ませてもらえることはほとんどなかった。たまに
読ませてもらっても、慣れない小川はいつもしくじり、その度に部長の中澤に怒られていた。
「小川、あんたまた噛んだなぁ。ちょっと人気があるからって調子に乗っとんとちゃうか?
ニュースってのはな、いかに短く的確に情報を伝えるかや。バラエティやる時みたいなハン
パな気持ちでやったらアカンのやで」
中澤は30過ぎのやり手女で、その手腕を買われて大阪のテレビ局から引き抜かれたそうだ
った。反論はいくつでも浮かんだが、小川はいつも黙ってそれを聞いた。縦社会では『下っ
端の発言』というものが、その正当性に関わらずただそれだけで聞き入れられないのだと、
少女ながらに理解していたからだった。
何度も辞めようと思ったが、友達や家族の声援が小川を思い直させた。特に祖母が寄せる小
川への期待は、小川を必要以上に励ました。生まれた時からおばあちゃん子だった小川は、
小さい頃、「大きくなったらおばあちゃんのためにニュース読むね」と毎日のように息巻い
ていた。「楽しみだねぇ、麻琴、それまでは頑張って生きとかないとねぇ」孫の活躍を今か
今かと待ち続けるおばあちゃん、小川は中途に辞めるわけにはいかなかった。
そんなある日、小川の元にビッグチャンスが舞い込んできた。
職人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
紺野登場を期待しつつ続きを待ちます
乙
続き待ってるよ。
>>154 職人じゃないしぃー、初めて書いた
もう何書いてるのか自分でも分かんない、難しいのね
まあ誰か来るまでの繋ぎってことで、保全代わりってことで
>>155 乙
局内を歩いていた小川を中澤が呼び止めた。
「実は今度の改変で新しいニュース番組を始めんねんけど、キャスターが一人決まってなく
てな。会議で話し合った結果、あんたが候補に挙がったんや」
「ほ、ほんとですか?!」
小川は目を丸くして聞き返した。レギュラーのキャスターにさえなれれば、あの忌まわしい
バラエティ番組から解放される。これでもう真冬に冷水に入れさせられたり、虫を使った珍
料理を食べさせられたり、いきなり「何か面白いこと言って」という無茶なカンペを突きつ
けられることもなくなる。そして何より、自分に期待してくれている家族や友達への後ろめ
たさもなくなる。小川の顔は自然とにやけた。
「喜ぶのはまだ早いで。うちらはあんたの他に、亀井の起用も検討してんねん。ぶっちゃけ
ると、まあ天秤にかけとるわけやな」
「亀井って・・・亀井ちゃんですか」
亀井絵里は、小川の成功に気を良くした会社が去年採用した二代目少女アナウンサーだった。
14歳であれだけ人気が出たんだ、もっと若い子を入れよう、そうすればもっと人気が出る
はずだ。亀井は入社当時13歳だった。そんな安易な考えが見事に功奏し、亀井は小川の存
在を打ち消すほどの絶大な人気を博した。完全に隅に追いやられた小川だったが、もともと
アイドル的なポジションにはあまり執着心がなかったので、周囲が思うほどの嫉妬は感じて
いなかったし、亀井が推されることにもほとんど意見しなかった。小川の夢はあくまでニュ
ースキャスターだった。しかし、今回ばかりは異論を覚えずにはいられなかった。
だって・・・亀井ちゃんはかわいいけど・・・でも、あの子・・・カミカミじゃん!私以上
に!まともに読めたことないじゃん!どっちか選べって言われたら、そりゃ私っしょ!
「とりあえず明日、二人にはワイドショーで原稿を読んでもらうから。まあ試験やな。でき
の良かった方を採用するっちゅーわけや。ハイこれ原稿」
中澤は一枚の紙を小川に渡し、ほな頑張りいやと言って去って行った。小川はすぐ原稿に目
を通した。そこには「オヤヂのヅラを見分ける5つの方法!」という糞くだらないタイトル
と、数十行の短い文章が書かれてあった。これなら丸暗記できそうだ、と思った。
亀ちゃん、負けないよ!
その数時間後、小川がデスクでぼーっと原稿を眺めていると、亀井がいつもの妙なテンショ
ンでやって来た。
「小川さぁ〜ん、聞きましたぁ〜?」
人懐っこい性格と甘いアニメ声、そして同性の小川でも思わず見入ってしまうほど愛らしい
顔。そりゃ人気も出るわ・・・、小川は亀井を見ていると、思わずため息が出たのだった。
「聞いたよ。明日、お互い頑張ろうね」
「?? 頑張る?何の話ですか?違いますよぉ〜、これです、これ!」
そう言うと亀井は持っていた雑誌を広げ、ページの右上を指差した。
「『HTVアナウンサー人気TOP10』?何これ?」
「なんか街の人達からアンケート取って、アナウンサーの人気度調査ですって!これは先週
の雑誌なんですけど、発表は明日なんですよ!楽しみですねー!」
小川は拍子抜けした。亀井にはキャスターへの執着心が全くないようだった。意気込んで亀
井をライバル視していた自分がアホらしく思えてきた。と同時に、内から新たな闘志が燃え
上がって来るのを感じた。これは尚更、負けるわけにはいかない・・・!
小川は家に帰ると早速家族に報告した。「レギュラー番組を持てるかもしれないの、それも
ニュースキャスターで!」家族は皆喜んだ。父親は「明日はパーティーだな」と、母親に酒
のおつかいを頼んだ。祖母は「お前は自慢の孫だよ、本当だよ、本当だよ」と抱きついてき
た。友達にも電話で片っ端から報告した。みんな自分のことのように喜んでくれた。小川が
本決まりになる前にそうやって皆に報告したのは、自分自身を追い込むためだった。これだ
け大事になれば受からないわけにはいかない。食事を済ませた小川は、自室で大して長くも
ない原稿を繰り返し繰り返し音読した。気がつくと時計の針は朝の4時を回っていた。準備
は万全、本番は午前だ、小川は徹夜で試験に臨んだ。
練習の成果は完璧な形で発揮された。小川は一字一句間違えることなく原稿を読み終えた。
先輩アナに「やるじゃん」と肩を叩かれ、小川は照れと自得で思わずニヤニヤした。モニタ
ーで亀井の本番をチェックしていると、ニヤニヤはさらにそのいやらしさを増した。亀井は
これでもかというくらい噛み倒した。それでも持ち前の天使のようなスマイルでその場を乗
り切った。亀ちゃんはやっぱりキャスターというよりはアイドルだな、と小川は思った。と
同時に勝利を確信した。
昼過ぎ、中澤に呼ばれた小川は、自信に満ちた顔で部長室のドアをノックした。
「失礼します!」
小川は中に入り、不自然なほど丁寧にお辞儀をした後、高鳴る鼓動を抑えながら中澤の座る
デスクの前に立った。中澤はイスに腰掛けて腕を組んだまま何も喋らなかった。長すぎる沈
黙に耐えかねた小川は、遠慮がちに自分から切り出した。
「あの・・・結果の方は・・・」
中澤はそれでも口を開けなかったが、しばらくして引き出しから一冊の雑誌を取り出すと、
それを机の上に放った。中澤が顎で「読め」と命令したので、小川は少しイライラしながら
も雑誌を手に取り、開けられたページを読んだ。
「『HTVアナウンサー人気TOP10結果発表』・・・??ああ、亀井ちゃんが言ってた・・・」
そこには男女混合の人気ランキングが書かれていて、一位は亀井絵里だった。
「あんたの名前、ある?」
初めて口を開いた中澤が、どぎつい口調でそう聞いた。
「ええ〜と・・・いや、ないですね。ははは・・・私の名前はないです」
「そやな、女子アナではお前だけTOP10に入ってない。お前だけ圏外や」
小川は「ははは、いや〜まいったなぁ」と引きつった笑顔を作ったが、内心はかなり腹を立
てていた。そんなことはどうでもいいから早く試験の結果を教えろと、小川の頭の中はその
ことでいっぱいだったのだ。しかし次の瞬間、あらゆる思考が停止し、頭の中が真っ白にな
った。
「新番組には亀井を使う」
「・・・・・・は?」
しばらくの間言葉を失い、やっとの思いでその一文字を喉から捻り出した。
「あんたは不採用や」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ」
小川は狼狽して、なかなか思うように言葉が出てこなかった。それでもその結果にはどうし
たって納得いくはずがなく、どもりながらもわき出る疑問を中澤にぶつけた。
「お、おかしくないですか?ちゃんと見てました?私、だってあんなに・・・」
「ぶっちゃけ歳の若いお前ら使うてんのも、ただの話題作りや。本気でニュース読ませよう
なんて思うとるわけないやろ。ガキが読んだって説得力ないんや。となると人気が全てっち
ゅーことになるんやけど・・・見てみ。亀井は一位で、あんたは圏外。どっち使うかは一目
瞭然やろ〜」
そ、そんな・・・。
中澤の言葉が鋭い矢となって心に刺さるようだった。悔しさと怒りで目頭が熱くなった。泣
くまいと思ったが、喋りだすと涙は自然に溢れてきた。
「そんな・・・だって・・・だってじゃあ試験は何だったんですか・・・私、一生懸命練習
して・・・」
「まあ一応やっとかなアカンやん?ああいうのは。でもほとんど役に立たんかったわ、ゴメ
ンゴメン。あっはっはっは」
中澤の小馬鹿にしたようなその笑い方で、小川はキレた。それまで耐えていた怒りが一気に
言葉となって口から出た。
「なんで・・ちくしょうッ・・!ふざけんな!中澤さん言ったじゃん!バラエティみたいな
浮かれた気持ちでやるなって!いかに短く的確に伝えるかだって!いつも言ってたのにっ・・!
だから昨日だって、私、徹夜で・・・!バカヤロウ!嘘つき!死んじゃえ!私の方が絶対上
手く読めたのに!ちくしょう!ちくしょう!」
中澤は冷ややかな目で小川を見つめ、「呆れた、ヒドイ顔、ホンマに子どもやん」と言った。
小川は一通りぶちまけると、持っていた雑誌を机に叩きつけた。
「こんなものッ・・!もう来ません!もう辞めます!」
そう言って部長室を飛び出した。拭っても拭っても涙は止まらなかった。
がむしゃらに廊下を走っていると亀井に会った。何も知らない亀井は泣きじゃくる小川を見
て心配した。
「小川さん?どうしたんですか?」
罪のなさそうな顔でそう聞く亀井、当たり前だ、実際亀井には何の罪もなかった。だが小川
はその顔に言い知れぬ憤りを覚えた。
「うるさい!黙れ!」
そう言って亀井を突き飛ばし、また走り出した。走りながら小川はとても後悔した。
ああ、私はどこまでカッコ悪いのだろう、亀井ちゃんは何も悪くないのに・・・!私がダメ
なだけなのにッ・・!私はバカだ!アホだ!
自分のデスクを整理してバッグに荷物を詰めた。その間も涙はボロボロと溢れた。局を出て
落ち着ける場所まで走った。すれ違う人達はそのあまりの形相に皆驚いていた。やっと人気
のない路地裏に着いた小川は、また声を張り上げて泣いた。嗚咽は途中からワケの分からな
い叫び声に変わっていた。
廊下で亀井に会った時、小川は彼女の顔に圧倒的な、美のようなものを見た。それは顔が整
っているとか可愛らしいとかそういったものではなく、世界中の幸福を自分の元に引き寄せ
るような、何かそういう力のようなものだった。それは劣等感や疎外感や悔しさをわき上が
らせ、小川の心を一瞬で砕いた。気がつくと小川は亀井を突き飛ばしていたのだった。
ああ、なんてことしちゃったんだろう・・・暴力振るうなんて・・・ごめんね亀井ちゃん、
ごめんね、ごめんね・・・
自分の情けなさを考えると、涙はいくらでも出た。
どれくらい泣いていただろう。
ようやく泣き止んだ小川は、自分の意識をさらおうとする眠気に気がついた。
そういえば私寝てないや・・・起きてるとまた泣いちゃう、早く寝たい・・・
小川はなるべく何も考えないようにしながら電車に乗って家に帰った。
午後三時、いつもならその時間、父親の車はそこにないはずだった。会社まで乗って行くか
らだ。しかし今日は何故か家の車庫に納まっていた。不思議に思った小川は、そっと窓から
家の中を覗いた。キッチンには夢を掴んだ娘を祝おうと、せっせとパーティーの準備をする
父母がいた。祖母もテーブルで何か料理を作っているようだった。きっとカボチャだな、と
小川は思った。小川はかぼちゃが大好きだったのだ。三人はこれでもかというくらい幸せそ
うな笑みを浮かべていた。
小川はまた少し泣いた後、そっと窓から離れ、駅に引き返した。
それからは断片的な記憶があるだけだった。新幹線の切符を買ったのは覚えているが、何故
買ったのかは思い出せなかった。何故東京なのかも、何故新宿駅で降りたのかも、さっぱり
分からなかった。おそらく家出イコール東京という田舎もの丸出しの考えが小川の中にあっ
たのだろう。眠気のせいか移動中は終始意識が朦朧としていた。そのくせ一睡もできなかっ
た。足の赴くままに歩いた末、辿り着いたのが歌舞伎町だったのだ。
───
小川はホテルの窓から、歌舞伎町の街灯を力のない目で眺めていた。気がつくと建物から漏
れる光はだいぶ数が減り、人通りも少なくなっていた。頬に手をやると涙で濡れていた。ま
た泣いていたようだ。ごめんね、おばあちゃん、お母さんお父さん・・・ごめんね、亀井ち
ゃん・・・心配してるかな、ああ、私これからどうしよう、バカなことしちゃったな・・・
色々な想いが混ざり合って、ワケの分からない、今までに抱いたことのない感情を形成して
いた。それは小川の心の奥に重く沈み、決して理解されないが、しかし確実に存在した。
私はだめだぁ・・・シャワー明日にして、もう寝よう・・・寝て全部忘れちゃおう・・・
窓を閉めようと手を伸ばしたその時、部屋のドアがバンッ!という音とともに物凄い勢いで
開け放たれた。
小川は咄嗟に振り返ったために、ベッドに両膝で立ち、両手を窓に伸ばしたまま、顔だけを
ドアに向けるという、ひどく滑稽な格好になってしまった。ドアのところには小川と同じく
らいの年齢の少女が、パンパンに膨らんだショルダーバッグを肩に掛け、何故か偉そうに立
っていた。
「ヒドイ部屋。まったく、犬小屋じゃないんだから」
少女はそう言うとズカズカと部屋に入って来て、バッグをテーブルの上に放り投げた。
「あんたね、私と相部屋するってのは。ふふっ・・おいおい、何て格好してんだよ」
「だ、誰なの?」
小川は慌てて体勢を立て直してからそう聞いた。
少女はやはり偉ぶって、こう名乗った。
「新垣里沙よ!」
「ニイガキ、リサぁ〜????」
TO BE CONTINU!!!
♪ ♪ ♪
「なんで驚くんだよ!」
「なんだよクソ、ふざけんなよ!」
「眉毛ビーム!」 ♪
「私はコネなんかじゃない!」
「でも、じゃあどうすんの?」 ♪
「おおおおお化け・・・」 ♪
ノ8ノノヽ
ノノ・e・)<次回は私!絶対見るのだ! ♪
♪
ラッキーチャチャチャ ちっちゃくって かわいい夢がある(叶えたい!)♪
ラッキーチャチャチャ 女なら 皆が持ってる 大きな夢を♪
♪ ♪
♪
♪
乙です
これが初めての作品ですか ウマイヨウマイヨ
どっぷり引き込まれました
>>165では読んでるコッチまで怒りと悔しさが込み上げてきたよ
負けんなマコっちゃん
そしてガキさんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
5期ヲタの俺には嬉しい展開
IDちぇっく
続き期待保
test
178 :
●:04/06/07 02:33 ID:O8dejP5w
て
「ほ、ほんとですか?!」
「お前だけ圏外や」
「嘘つき!死んじゃえ!」
「小川さん?どうしたんですか?」
「うるさい!黙れ!」
「新垣里沙よ!」
「ニイガキ、リサぁ〜????」
〆ハハ ノハヽヽ
∬´▽`)< >(・-・o川
五期メンで!
ノ8ノノヽ ブレーメンの音楽隊! ノノノノヽヽ
ノノ・e・)< >(’ー’*川
「な、なんだよ。なんで驚くんだよ!」
新垣は少し怯えた口調でそう聞いた。色黒で、痩せてもなければ太ってもいない。髪は黒
いセミロング、前髪が、自慢げに伸びる眉の上で横一直線に揃っている。
「いや別に・・なんとなく・・・ごめん。ここに泊まるの?」
「そうよ!悪い?」
初対面にも関わらず新垣が好戦的な態度を取るので、小川は少し気分が滅入った。苦手な
タイプだな、と思った。なんか中澤さんを思い出しちゃうよ・・・
新垣は椅子に置いてあった小川のバッグをテーブルの上に放ると、そこに座り、荷物を手
際よく整理し始めた。時々その手を止めては、ベッドに座る小川を訝しそうに見た。
「何歳なの」
バッグの中を弄りながら新垣が聞いた。小川は16、と答えた。
「16?なんだよ、年上かよ。まじかよ。私15。でも敬語とか使わないからね!私、そ
ういうの大嫌いなの!」
新垣は小川が年上だと分かっても、偉そうな口調を止めることはなく、逆に余計慣れなれ
しく喋り始めた。
「麻琴って言うんだ、ふ〜ん。じゃあまこっちゃんだね。私のことは里沙ちゃんって呼ん
でいいよ。言っとくけど特別だからね!私のこと、ちゃん付けで呼べるなんて。いい?そ
の辺ありがたく思ってよね!」
何だかおしつけがましい子だな、と小川は思った。新垣は一通り整理を終えると、今度は
体を小川の方に向け、何かを探るようにじっと視線を投げかけた。
「その雰囲気からすると、そっち系の人間じゃないみたいね。そっち系ってのはつまりそ
ういうことね、分かるでしょ?働いてるかどうかってこと。まこっちゃんからはそういう
ニオイがしないね。私、本性とか見抜くの得意なんだから。マジで。東京の子じゃないで
しょ。やっぱね。出身地は・・・そう、北海道だ。ね?そうでしょ?え、違う?なんだよ
クソ、ふざけんなよ!あーあー待って言わないで、後で絶対当てるから。で、こんなとこ
で何してんの?それにその顔、いい年して泣いてたのかよ」
小川はハッとして顔に手をやった。新垣の登場に驚いて涙を拭うのを忘れていた。涙は乾
いて固まっていた。小川は顔を赤らめて、違うのこれはアレなの、とワケの分からないこ
とを言いながら、服の裾で顔を拭いた。
「ぷぷぷ、まこっちゃんってかわいいんだー。何かあったのね。まあそうだろうね、じゃ
なきゃこんなとこいないよね。さっき下でオジサンも言ってた、こんなとこに泊まらせて
くれなんて普通の人間じゃないって。今日は変人に二人も会っちまったって。それにして
も酷い部屋ね。でかいゴキブリホイホイかと思ったよ。まあ嘘だけどね。高貴な私には到
底釣り合わないな。でもこれも自分で選んだ道。後悔はしてないよ」
よく見ると、新垣の身に着けている服やアクセサリーはどれも高級そうで、『高貴な私』
というのはあながち冗談でもないのかな、と小川は思った。ただ無意味に襟の大きいその
シャツや、無意味に丈の短いそのパンツは、ひどく美的センスに欠けるコーディネイトだ
った。どこか良い所のお嬢さんなんだろう、でもそんなお姫様がなんでこんなところに?
小川はとても興味を持ったが、再び眠気が襲ってきたので、詳しく聞こうかどうしようか
迷った。
だが悩む必要は全くなかった。聞かずとも新垣は勝手に喋りだした。
「今、なんで私みたいに貴賓に満ち溢れた乙女がこんな場末のボロホテルに?って思った
でしょ。ふうっ、しょうがないな、めんどくさいけど話してあげる。感謝しろよな!私は
ね・・・」
新垣は目を細めて話し出した。完全に入ってるなぁ、どうしよう、明日にしてもらえない
かなぁ、うざいなぁ・・・正直迷惑だったが、隙間なく喋る新垣のウォール・オブ・ワー
ズの前に、小川はついに観念して聞くことにした。
───
私の家は横浜にあるの。何を隠そう、うちのパパはあの新垣食品の社長なのよ!え?は?
知らない?お前何人だよ。何年生まれの何型だよ。まあいいわ、とにかく超有名な食品会
社なの。パパは商品の小型化をいち早く予見してね、「食品産業でも小型化が流行る!」
って考えたの。そして目を付けたのが「豆」。パパはありとあらゆる豆をパパ流のやり方
で売り出した。そしたらそれが大ヒット!仕舞いにはサプリメントにも手を出したわ。で
も私、そこは突っ込んだの。「パパ、サプリメントは豆じゃないわ」って。そしたらパパ
はね、「いいかい里沙、サプリメントと豆の形をよく見てごらん。どうだい?とても似て
るだろ?そう、サプリメントは豆なんだよ」だって!いやぁ、私「その通りだな」って感
心しちゃったね。
まあそんなこんなでね、この不況下でも常に躍進を続ける新垣食品は、皆の憧れの的
だったわけよ。新入社員の応募は子会社ですらかなり多かったし。でも倍率が凄い高い
からさ、毎年たくさんの人が涙を呑んでたのね。
一方私はというとね、それはそれは大事に育てられたわ。パパは私に何一つ不自由をさせ
なかったし、欲しい物は何でも買ってくれたの。私はわがままの限りを尽くしたね。ママ
は私にバイオリンをやらせたかったらしいんだけど、私がエレクトーンをやりたいって言
ったら、しょうがないわねってすぐ習わせてくれたわ。お嬢はそういう習い事を小さい頃
からやらされるの。一般的なのはピアノね。習い事だけじゃなくて、礼儀作法とか、ね。
そういうのも。でも私はめんどくさがってやらなかったわ。エレクトーンも自分で言い出
したんだけど、ほとんどやらなかったね。だってやらなくてもパパとママは全然怒らない
んだもん。
そしたらばよ、なんか段々周りの友達と話が合わなくなっちゃってさ。もちろん小中とお
嬢様学校だったんだけど、なんか学年上がるごとにみんな私のこと冷たい目で見出したの。
で、ある時ね、中ニの時だったかな、言われたの、クラスの奴にね。「お前むかつくんだ
よ。親が金持ちってだけで偉そうにしてさ。自分には何もないくせに。この寄生虫」って
ね。たぶんお嬢っぽくない私が気に入らなかったんだろうね。
そっからよ、怒涛のイジメが始まったのは。
まあ酷かったね。最初はシカトされるだけだったんだけど、その内えぐいこともされるよ
うになって。靴隠されるオーソドックスなヤツからランチに虫入れられるのまで、幅広く
ね。段々エスカレートしてって、最初は画びょうを入れられていた靴も、卒業する頃には
パイナップルが入ってたわ。一度、油揚げを入れられてたことがあってね、あれには笑っ
たよチクショウ!なかなか味なマネするじゃんって。毎日「今日は何が入ってんだろう」
って靴見るのも楽しみっちゃ楽しみだったけどね、あっはっはっは!まあ私は大人だし?
そんな姑息なマネ、笑って流してたけどね。
で、中学卒業して、高校には行かなかったの。あ?ちげーよバカ!イジメは関係ねーよ!
そんなものに屈する里沙ちゃんじゃねーっつーの!全然関係ないね!高校行かなかったの
はね、「寄生虫」って言われたのがすんごい頭に残ってたからなの。まあ言った奴はバカ
な糞女だったんだけどね。それでも私、ずいぶん考え込んじゃったんだ。確かに稼いでる
のはパパで、私はそのお金で暮らしてるだけなんだって。そうしたら何か急に虚しくなっ
ちゃってさ。だってそうじゃん。気づいたら私には何もなかったんだもん。特技もなけりゃ、
知識もない。こりゃまずいなと思ったね。冗談じゃないって。それからすぐにパパに言っ
てね、働かせてくれって言ったの。自分の力で生きたいのって。
パパは笑って「いいよ、好きな会社を選びなさい」って言ったわ。私の心情なんて丸っき
り分かってなかったでしょうね。でも働けりゃ何だって良かった。私はパパの知り合いが
やってる会社を選んで、そこに就職したの。いや〜、嬉しかったね。私をイジメたアホど
もに言ってやりたかったよ。「寄生虫は貴様らだ。私は私の身体と眉毛で生きてるんだぜ」
ってね。あ、眉毛ってのはね、私、眉毛からビームが出るんだ。ん?何?いや違う違う、
光線、ビームだよビーム、眉毛ビーム。まだ小さい頃に一回出しただけなんだけどね。暇
を見つけては練習してるの。でもこれがなかなか出てくれないのよ。と、まあそれはいい
として。私は社会人になったことで、とてもすがすがしい気持ちになれたの。
ところが、よ。入社したはいいけど、何すればいいのか全然わかんなかったわけ。私は経
理部だったんだけど、ああ、なんで経理部かっていうと、私がパパに経理部がいいって言
ったからなんだけどね。だってなんか響きがかっこいいでしょ?経理だよ?総理みたいじ
ゃん。なんか偉そうじゃん。でも中卒の私には何が何だか分からなくてね、ミスってばっ
かだったの。それでも上司は何も言わなかった。だって私は新垣食品の社長の娘だからね!
言えるわきゃないよね。で、そっからまたイジメが始まったの。直接言えないから間接的
に叱ってやろうってことだったんだろうね。今度は靴じゃなくてパソコンに色々入れられ
たわ。ウイルスとか、変な画像とかね。アナログからデジタルになったわけだ。感心しち
ゃったね!
イジメの原因は私のミスだけじゃなくてね、どうやら私がそこにいること自体が問題だっ
たらしいの。先週のことなんだけどね、私、いよいよ決定的なミスをしちゃったの。まあ
自分では何をしたのか分かんないんだけど。とにかく重大なことだったらしいの。そした
らとうとう同期の男の人がキレてね、私を怒鳴ったの。「ふざけんなよ!ミスばっかしや
がって!何でお前みたいな奴がこの会社にいるんだよ!お前よりはるかに有能なのに、入
社試験に落ちた奴を、俺は腐るほど知ってるぞ!お前は親父が偉いってだけじゃないか!
コネ入社が調子に乗りやがって!このクソガキ!いや、コネガキ!」って。あれはマジで
キレてたね。でも私も黙っちゃいなかったよ。すぐに言い返した。「コネって言うな!私
はコネなんかじゃない!コネって言うな!」ってね。・・・まあコネだったんだけどね。
なんか反論してたら涙が出てきちゃってさ、止まらないの、何でかわかんないけど。わー
わー泣いちゃったよ。中学校でいじめられても、一回も泣かなかったのにね。ホントだっ
つの!イジメごときで泣くか!でもそん時は、たぶん自分でも分かってたのに、他人に痛
いとこを突かれたから、それで泣いちゃったんだと思う。その日で会社は辞めた。それか
らしばらく落ち込んじゃった。やっぱり私一人じゃ何もできないのかなって。自分の無限
の可能性を信じて疑わなかったこの私が、初めて自分の限界を感じたの。でも諦め切れな
かった。親元を離れて自分がどれだけやれるのか、どうしてもまだ試したかったの。それ
にはパパのとこにいちゃダメだって思ったの。どうしても甘えちゃうから。
それで今日の昼、荷物をまとめて家を出たの。「探さないで下さい」ってメモを残してね。
必要最小限の荷物だけ持って。あてのない旅、かっこいいでしょ?そういうの。気がつい
たら歌舞伎町にいたの。なんでかな。こんな下品なとこ、よくわかんないけど。今までの
環境とは真逆のところを、ひょっとしたら無意識のうちに目指してたのかもね。で、適当
な安いホテル探してて、オジサンが1000円でいいって言うから、チェックインしたの。
───
「それがここだったってわけ、分かった?」
新垣は話し終えると、「ふうっ」と満足げに息を吐き出し、椅子にもたれかかった。小川
はほとんど黙ってそれを聞いていた。ツッコミどころか相槌すら満足に打たせてもらえな
かったのだ。
最初は嫌々聞いていた小川も、イジメのくだり辺りからはとても興味深く聞いた。それに
しても、と小川は思った。結構重い話のはずなのに、ずいぶん楽しそうに話すなぁ・・・。
「絶対やってやるんだから!そうね、一ヶ月ね、一ヶ月で何かでかいことやってやる!パ
パやママや、私をバカにしたあいつらを、絶対見返してやるの!いい?!分かった!?」
新垣が興奮して立ち上がったので、小川は「分かった分かった」となだめるように答えた。
新垣は再び椅子に座ると、今度は電池が切れたように黙り込んだ。二人の間に沈黙が流れ
た。色々言いたいことがあるはずなのに、眠気のために頭が回らない。とりあえずシャワー
を浴びようと、小川はベッドを立った。
「ちょ、ちょっと待てよ!散々喋らせといてどこ行く気?!自分のこと話せよ!」
「シャワーだよ。もうずっとお風呂入ってないから。出てきたら話すよ」
そう言ってバッグの中から下着とTシャツとジャージとタオルを取り出し、浴室に入った。
浴槽はしばらく使われてないことが一目で分かるほど汚れていた。小川はシャワーの蛇口
をひねって、置いてあったスポンジで簡単に中を洗い流した。棚にシャンプーーやリンス
が置いてあったので小川はほっとした。しかしどれも容器の先に、固まった液が詰まって
いて、なかなか出てこなかった。
熱湯を浴びながら、小川は新垣の話を思い出していた。
里沙ちゃんも色々大変だったんだろうな、環境が違いすぎてあんま共感できなかったけど・・・
イジメとかって・・・泣かなかったってホントかな、私だったら一日だって耐えられない
だろうな・・・
思考は自分と新垣の比較を経由して、最終的に自分が直面している問題にたどり着いた。
そういえば私・・・お金ないじゃん。明日からどうすんだよ・・・泊まるとこも食べるも
のもないよ・・里沙ちゃんお金持ってるかな、持ってるよね、お嬢様なんだし、ちょっと
分けてもらえないかな・・・
換気扇がないために浴室はサウナのように暑く、小川は体を拭いて服を着るうちにまた汗
をかいた。ユニットバスから出ると、まだ少し濡れた肌を夜の空気が爽快に冷やした。言
いようのない開放感だった。頭の中のモヤモヤが少しすっきりした気がした。
「ああ〜、サッパリしたぁ〜」
自然と声が出た。新垣はベッドに横になっていて、小川が出てくるとガバっと起き上がった。
「オヤジかよ!おせーよ!いいから早く話しな、まこっちゃんからは何かミステリアスな
ニオイがするの!だってさっき泣いてたもんなぁ、楽しみだなぁ」
小川は苦笑した。やっべー、全然スケール小さい話だよ・・・ごめんね・・・。髪を拭き
ながら椅子に座り、「あ、そうだ」と、さっき浴槽で考えていたことを新垣に聞いてみた。
「里沙ちゃんお金持ってる?」
「は?お金?持ってるわけないじゃん!話聞いてた?私は自立して生きてくの!パパのお
金持って来たんじゃ意味ないでしょ?」
新垣は当然のことのようにそう言った。小川は少し呆れた。
「え・・・で、でも、じゃあどうすんの?お金ないと生きてけないよ」
「もーう、いいから、そんなことは!早く何でこんなとこにいるのか教えてよ!」
そんなことって・・・生死に関わる問題を・・・あ、ひょっとして里沙ちゃん、お金隠し
持ってるんだな?だよね、じゃなきゃこんな状況で楽観的になんてなれないもんね・・
小川は新垣の貧窮に怯むことのない態度をそう解釈し、自分のことを話し始めた。
「えーと、じゃあ話すね。あんま大したことじゃないんだけど・・・。何から話せばいい
かな・・・私は新潟のテレビ局で──」
「ぎゃあああああーーーー!!!」
突然新垣が銃で撃たれたかのような悲鳴を上げた。
「な、なんだよ!何のボケだよ、まだ何も話してないよ!」
「う、うううう後ろ・・・おおおおお化け・・・」
新垣は部屋のドアを指差して戦慄いた。振り向いた小川もまた、新垣に負けないくらいの
悲鳴を上げた。
「うぎゃあああああーーーー!!!」
わずかに開いたドアの隙間から、真っ白い肌の少女がぬうっと立っていた。しかしよく見
るとそれは紛れもない人間で、少女は小川の悲鳴を聞くと肩を浮かせて驚いた。
「な、何なんだよ!驚かすなよ!ノックくらいしろよな!」
新垣はお化けじゃないと分かってもまだ興奮している様子だった。少女はそんな新垣の威
圧的な態度にびくびく怯えていた。
「あ・・・ひょっとして、ここに泊まるの?」
小川があやす様にそう聞くと、少女は黙ったまま頭を頷かせた。
「そ、そうなんだ・・・三人目・・・」
「あんた、名前は?」
新垣がそう聞くと少女は初めて口を開き、消え入りそうなほど小さな声で、こう名乗った。
「紺野・・・あさ美・・・」
「「コンノ、アサミぃ〜??????」」
TO BE CONTINU!!!
♪ ♪ ♪
「な、なんで驚くんですか・・・?」
「しかも年の近い女の子が!」
「お前とろいんだよって・・・」 ♪
「す、すげえ!これ自分で買ったの?」
「は?何回言わせるんだよ!」 ♪
「ま、まじかよ!」 ♪
/ハハヽ
川o・-・)<次回は私!絶対見てね! ♪
♪
油絵みたいな波打ち際に 足跡が てんててんててーん♪
渚の「・・・」(かーぎか〜っこ)ぱっと開いたら あっと驚いて♪
♪ ♪
♪
♪
こんこんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
もと(・∀・)なご ◆AFOCCQMiso :04/06/12 01:53 ID:6UOdyCif
つд・;)つ ラリスポ2も買いまつ な、なごなご!
201 :
ねぇ、名乗って:04/06/13 09:02 ID:vB6uHqhT
保守ート
(´-`).。oO(まだかなまだかな)
(・∀・)イイネイイネー!
ヒサブリに羊来たけどいいとこ観付けちった♪
作者さんがんがってね。
ヽ川o・-・)人(´▽`*∬ノシ
(´-`).。oO(作者さんどこ行っちゃったんだろ)
「私のことは里沙ちゃんって呼んでいいよ」
「あれには笑ったよチクショウ!」
「絶対見返してやるんだから!」
「あ〜サッパリした〜」
「ぎゃああああーーー!!!」
「紺野・・・あさ美・・・」
「「コンノ、アサミィ〜??????」」
〆ハハ ノハヽヽ
∬´▽`)< >(・-・o川
五期メンで!
ノ8ノノヽ ブレーメンの音楽隊! ノノノノヽヽ
ノノ・e・)< >(’ー’*川
「な、なんで驚くんですか・・・?」
「いや・・・特に意味はない」
紺野は怯えながらも部屋に入り、背負っていたバックパックをテーブルの上に置いた。大
きなそのバッグには容量いっぱいに物が詰め込まれていた。何が入ってるんだろう、と小
川は思った。ツインテールの黒い髪、大きな目、それに、その弱々しい態度から不健康な
のかとも取れるほど真っ白い肌、華奢な体。服装はずいぶん着込んだ様子のぐったりした
シャツに、色落ちしたジーンズ、そして汚れの目立つボロボロのスニーカーを履いていた。
髪は安物のゴムで止めてあるだけだった。
「な、なんて格好してんだよ。これはまた複雑な事情がありそうだね・・・。いくつ?」
「はい、17です・・・」
「また年上かよ!私15、だけど敬語とか使わないかんね、そこんとこよろしく」
「はい・・・」
「い、いや、なんでアンタが敬語なんだよ!」
「あ、すいません・・・」
「・・・・・・」
怯えているように見えた紺野の挙動は、どうやら元からの性格らしく、彼女の周りだけ時
間がゆっくり流れているように感じられた。そんな紺野ワールドにさすがの新垣も戸惑い、
言葉がないようだった。小川はそれを見てクスクス笑った。
小川は椅子を紺野に譲り、ベッドの上で壁に凭れかかっている新垣の横に座った。
「私は小川麻琴。16だけど同学年だね、今年17だから。私達は別に友達じゃなくて、
たまたま一緒になったってだけね。私が初めにここに来て、そしたらこの子が後から入っ
て来たの。今のあさ美ちゃんみたいに」
「私は新垣里沙。しっかしこんな偶然ってあるんだね。オジサンは半年くらいお客が来て
ないって言ってたよ。それが今夜に限って三人も!しかも年の近い女の子が!」
「はぁ・・・皆さんは、なんでここに?電車がなくなっちゃったとかですか?それとも・・・
観光、とか?」
紺野のその問いかけに新垣はけたけた笑った。
「アフォか!観光でこんなとこ来るかよ!もし来ても、こんなホテルに泊まるかっつの。
実は私はねー・・・」
「あーあー!さ、先にさー、あさ美ちゃんのこと教えてよ。私達はその後に、ってこと
で、ね?」
再び回想モードに突入しようとした新垣を、小川は慌てて止めた。もう一回同じ話され
たら確実に寝る!そう思ったからだ。新垣は話を途中で切られて小川を睨んでいたが、
やがて「それもそうね」と、紺野の話を聞くことに同意した。
「わ、私ですか?あまり面白い話ではないと思うんですけど・・・」
「いいから!ここで会ったのも何かの縁だし。どうせ一夜限りの仲なんだから。隠し事
はないはずでしょ。ほれ、話せ」
「はぁ・・・。」
新垣が促すと、紺野は一度大きなため息をしてから、俯き加減でとつとつと喋りだした。
「私は───」
───
私は・・というか、何から話せばいいんだろ・・・。私は北海道の人間なんです。私の
格好見れば分かると思うんですけど、とても貧乏で・・・。昔は裕福だったんです。お
父さんが会社の社長をやっていて、小さい会社だったけど、それでも結構お金持ちの方
だったと思います。でもバブルが弾けて、その煽りをもろに受けちゃって・・・すごい
大きな借金を抱えちゃったんです。それからはもう、悪くなる一方だったみたいで。私
はまだ小さかったし、よく分からなかったんですけど。っていうのもお父さんとお母さ
んがかなり気を使って、私と妹・・・あ、私には一歳下の妹がいるんですけど、私と妹
には辛い思いをさせないようにって、かなり頑張ってたみたいです。おかげで私も中学
校を出るまでは、他の子達とも遜色なく普通に生活できていました。
でも一昨年高校に上がったくらいから、家計がいよいよやばくなってきて、私も段々と
それを理解し始めました。家の重い空気がばっちり伝わってくるんです。それでも相変
わらずお母さんとお父さんは私には何も言わず、笑っていました。それが逆に痛かった
んです。っていうか・・・どうですか?嫌ですよね?何か隠し事されてるっていうか・・・
子ども扱いっていうか・・・まあ実際子どもなんですけど・・。なんかよく分かんない
気持ちになりました。私も関わってる問題のはずなのに、私の外でそれが進行していく
っていうか、そういうのが凄く嫌で。なんとか私の力で親の負担を減らせないかなって
考えたんです。
それで昨年高校に入った時に、アルバイトを始めました。親に内緒で、もちろん学校に
も。学校はバイトを禁止していたので。レストランの厨房のバイトです。お皿を洗った
り、簡単な盛り付けをしたりとか、そういうやつです。そこの店長と知り合いだったの
で、無理を言って雇って貰ったんです。でも・・・私、昔からそうだったんですけど、
よく友達からトロイとか、見ててイライラするとか・・・もちろん友達はふざけて言っ
てたから、私も笑って聞いていたんですけど・・。でも働きだすとそういうわけにはい
かなくて・・・。すぐ料理長に怒られました。「ちんたらやるな!」って・・。元から
几帳面な性格なので・・・確かにお皿を一枚一枚丁寧に洗ってたりとか、そういうとこ
ろはありましたけど、私自身はだらだらやっているって意識は全然なくて・・・怒られる
のも嫌だったから、頑張ってやっていたんです。それでも何かやる度に怒られて・・・。
まかないを食べてる時に怒られたこともありました。ちんたら食ってるなって。先輩達
は気にするなって言ってくれたんですけど、びんびん伝わって来ました。「お前とろい
んだよ」オーラが・・・。私、そういうところ妙に敏感なんです。友達からは被害妄想
だなんて言われるけど、とてもそうは思えません・・・。みんなの心の声が凄くリアル
に聞こえるんです。その点妹は私よりずっとしっかりしてました。機敏だし、はっきり
喋るし・・・。妹とは仲が良かったですけど、いつも劣等感みたいなものを感じていま
した。・・・何言ってんだろ、私・・・誰にも言わないで下さいね、こんなこと。あ、
そっか・・・言いようがないですよね、あはは・・・。
バイトはすごい辛かったですけど、でも頑張って続けました。学校もあってそんなには
出れなかったので、月に3〜4万程度しか貰えなかったけど、それでも30万ちょっと
貯まりました。50万になったら親に渡そうと思ってました。でも・・・やっちゃった
んです。先週のことです・・・店で一番高価なお皿を、私、割っちゃったんです・・・。
ケースごと・・・何枚入ってたのかは知らないですけど・・・全部でいくらだと思いま
すか?笑っちゃいますよ。40万だって・・・目の前が真っ暗になっちゃって・・・。
料理長にすごい剣幕で怒られて、ほんと、殴られそうな勢いでした。私はもうずっと泣
いていたので、何て怒られたのか覚えてないです。なんか「役立たず」とか、そういう
ことをずっと言われてたような気がします。でも私はそんなことより、自分が許せなく
て・・・なんであそこで割っちゃうかな、って・・・普通に両手で持って運んでただけ
なのに・・・なんで落としちゃうかなぁ・・・妹だったら・・・絶対あんなことは・・・
私がドジだから・・・
───
そこまで話すと、紺野は嗚咽で言葉が出なくなっていた。必死で喋ろうとしているが、
何を言っているのか全く分からない。小川はバッグの中からハンカチを取り出して渡し
た。
「大丈夫?もういいよ、無理して話さなくて・・・」
「ひっく、ひっく・・・ううん・・・大丈夫・・・ひっく、あり・・がとう・・・ちーん!ちーん!」
鼻を噛むのはお約束だ。小川は自分のハンカチが汚れるのを優しく、少し顔を引きつら
せながら見守った。新垣は真剣な面持ちのまま黙っていた。
「うっ・・うっ・・店長は、気にしなくていいよって・・・でも・・・料理長さんがね・・・
親に弁償させるって・・・私それだけは絶対止めて下さいって・・泣いてお願いしたけ
ど・・だめだって・・・だめだって言ったの!私・・じゃあ何のために、働いたのか・・。
お父さんとお母さんのためになればと思って働いたのに・・結局迷惑かけちゃうなんて・・
もうどうしたらいいか分かんなくて・・・貯めたお金置いて家を出てきたの!10万円足
りないけど、私を養うお金が省けるし・・・その方が・・・だって私役立たずだし・・・!」
紺野は話し終えると、わーっと泣き出した。顔はくしゃくしゃだった。それがみすぼら
しい服装と相まって、余計に痛々しかった。小川は胸が痛んだ。それは同情というより
はもっと対等の、共鳴という感じだった。
私が亀井ちゃんから感じたことを、あさ美ちゃんは妹から感じたのかな・・・
「ま、まあ何だ!気持ちは分かるけど、泣くなよ。ほら!泣くなって。わ、私も似たよ
うなもんだし・・」
黙って何かを考えているようだった新垣は、我に返ると慌てて紺野を慰めた。
「はい・・・うっ・・・うっ・・・すいません、何か私だけ・・・何入っちゃってるの
って感じですよね・・・すいません・・・うっ・・・ちょっとパン食べますね、お腹空
いちゃって・・・ううっ・・・」
「は?」
紺野は泣きながらバックパックの中からコンビニのパンを取り出し、もぐもぐと食べ始
めた。小川と新垣は呆れてツッコミを入れるタイミングを失い、心の中で叫ぶにとどま
った。
この状況で食うか?
クリームパンを一つ食べ終える頃には、紺野はすっかり泣き止んでいた。
「あ〜、おいしかったぁ」
「・・・・・・」
呆れながらも小川はほっとした、が、今度は自分が空腹なことに気がついた。
あ〜・・・そういえば、中澤さんに呼ばれる前にお昼ご飯食べたっきりだ・・・腹減った〜
小川が物欲しそうな顔で腹をさすっていると、紺野がそれに気づき、バッグの中から新
しいパンを取り出した。
「良かったら、食べますか?」
「え・・いいの?」
「いいですよ、いっぱいありますから。ほら」
紺野はバッグの中を開けて見せた。そこにはパンやらおにぎりやらお菓子やら・・・
中身の正体はほとんどが食べ物だった。
「す、すげえ!これ自分で買ったの?」
「はい。家に戻らないって決めてから、とりあえず食べ物だけは確保しとこうと思って・・・。
そしたらホテル代がなくなっちゃって。ははは、参りました」
「・・・・・・」
なるほど、どこか抜けてる・・・、小川はそう思ったが、口には出さないでおいた。紺
野はカレーパンを三つ取り出し、小川と新垣に一つずつ渡すと、自分もまた食べ始めた。
小川はビニールを荒く破くと、口を大きく開けてかぶりついた。からっぽの胃はそれを
あっという間に飲み込んだ。105円のカレーパンは、しかし空腹という調味料によっ
て、あーだこーだ・・・ありえないくらい美味かった。
「庶民の味だわ・・・」
新垣は最初、眉をしかめて大袈裟にそう言ったが、食べ終えた頃には笑みがこぼれてい
た。
「ごちそうさまっ!すごいおいしかった、助かったよ、お金なくてどうしようかと思っ
てたんだ」
「え・・、二人とも、お金ないんですか?ひょっとして私以上に貧乏・・・」
紺野がそう言うので、小川は少し困った。紺野の貧しさは不可避なものだが、小川のそ
れは自分の選択次第では訪れることのなかったものだからだ。紺野に悪い気がした。自
分のバカさ加減にまた少し胸が痛み、返答に詰まった。新垣を見ると、彼女もまた同じ
ことを思っているらしかった。ましてや彼女は金持ちの娘でありながら、自ら進んでそ
れを捨てたのだ。天然貧乏少女紺野の前に、小川と新垣はたじろぐしかなかった。
「い、いや・・その・・まあ貧乏っちゃ貧乏なんだけどね。今小銭しかないし・・・。
今って言うか、今後入る予定もないんだけどね・・。ま、まあ里沙ちゃんいい人そうだ
し、ちょっとくらい貸して・・くれるよね?」
「は?何回言わせんだよ?持ってねえっつの。一銭も」
「またまたぁ〜、あのパンパンに膨らんだバッグは何だよ?お札の束が入ってるんでしょ?」
新垣は聞き分けの悪い小川にうんざりした様子で、ショルダーバッグを開けると「これ
で分かった?」と言わんばかりに中を見せた。そこには洋服がびっしり入っていて、札
束どころか財布もなかった。
「言ったでしょ?必要最低限の物しか持って来なかったの。てかちゃんと聞けよマコト」
最も必要なのは着替えじゃなくてお金だ、小川はそう思ったが、口にはしなかった。と
いうか呆れていて声が出なかった。
じゃあこの余裕はどこから来るんだろう・・・あれか・・・今までお金の心配とかした
ことないから、今自分がどんだけヤバイ状況にいるか分かってないんだね・・・
「あのぉ、二人はなんでこんなところに・・?よかったら教えてくれませんか」
「おう、いいよ。ってか私もまだまこっちゃんの話は聞いてないんだ。マコト先に話せ」
き、きたねぇ!ゲタを預けやがった!この流れで私の話・・?うう・・、しょうがない、
多少色付けて話すか・・小川は新垣を恨みながらも、自分の話をした。
話しているうちにまた正体の分からない嫌な感情が沸きあがって来て、小川は憂鬱になっ
た。脚色する余裕はなかった。ただ紺野の話と比較すると、どれだけ自分が打たれ弱いか
に気づいて、少し恥ずかしくなった。「甘いよお前」というツッコミが来るのを恐れた。
しかし二人は黙って真剣にそれを聞き、小川が話し終えた後も、少しも茶化す様なことは
言わなかった。
「ま、まあそんなとこ・・・でもなんか、あさ美ちゃんに悪いな・・・贅沢っていうか・・・」
小川は堪らず自分でそう言った。しかしすぐに後悔した。
「そんなこと・・・ないです・・・。・・・あれ?ちょっと待って、それどういう意味ですか?」
「おい!ホントだよ!どういうことだよ!私も贅沢な悩みだっての?!ふ、ふざけんなよ!」
「ち、違うよ!違うって!ただ・・・その・・・私はだめだなぁって・・・」
新垣が大声で怒鳴ったので、小川は慌てた。ああ何言ってんだろ私・・・ほんとバカだなぁ・・・
そう思ったが、何がいけなかったのか、何がバカなのか、まるで分からなかった。突き詰
めればその正体が分かりそうだったが、硝子のハートが無意識にそれを拒んだ。深意を知
れば知るほど自分が傷つくような気がしたのだ。そしてモヤモヤだけが頭の中に残った。
「それにしても・・・まこっちゃんは有名人なんだ、なんかすごいな、サインくれよ」
「いや、でも全国ネットには出たことないしね・・・」
「でもすごいですね・・・地元じゃ有名人なんですよね・・・いなくなっちゃったらニュ
ースになりますよね」
「いや、辞めちゃったからどうだか・・・」
「親が警察に届けるでしょ、てか電話かかって来ないの?」
「電源切ってる。あさ美ちゃんは何か置手紙したの?」
「はい一応・・・でも心配してるだろうな・・・」
「そっか・・・私もメールしとこ・・・」
盛り上がるはずのない会話はやがて途切れ、みんな黙ってしまった。小川は携帯をセンタ
ーに問い合わせた。七件もメールが入っていた。自然とため息が漏れ、メッセージを開く
ことなくまた電源を切った。
「ま、まあしかし何だ・・・二人ともアレだ、あんまネガチブになんなよ。私だけかよ。
向上心持って家出したのは」
しばらくの沈黙を新垣が破った。重い空気に耐えられず、思わず何かを口にしたという感
じだった。小川はひどく気分が落ち込んで、本日5、6回目の眠気に襲われた。嫌なこと
考えないように体が寝ようとしてるのかな、そう思ったが、精神的な問題以前に40時間
以上寝なければ、それは睡魔もやってくるはずだった。
「じゃあ・・・新垣さんの話聞かせてもらえますか?」
「私ね・・・オッケーオッケー、話すよ。いくらでも。私はね、横浜の───」
導入部分からさっき聞いた話と同じだったので、小川はこれは無理だと思った。
絶対寝る!
「あ、ちょ、ちょっとごめん。私ほんと寝てなくてさ、まじでもう限界だから。悪いけど
先に寝・・・」
小川がそう言いかけた時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。コンコン。三人は反射
的にドアを振り向いた。新垣が「はい?」と答えると、ドアがゆっくり開けられた。
「お邪魔します」
そう言って部屋に入って来たのは、やはり三人と同じくらいの年齢の少女だった。彼女の
登場は、新垣や紺野とは異なり、いたって自然体だった。まるで我が家に帰って来ました
よ、という感じだった。分かってはいたが、小川はわざと驚いた口調で聞いてみた。
「え、え〜と、まさかだけど・・・ここに泊まるの?」
「え、そうやけど?」
少女は当たり前じゃん?といった様子で答えた。
「四人目・・・まじかよ、こりゃもう偶然じゃ済まされないな・・・。で、早速だけど、
お名前は?」
新垣がそう聞くと、少女はこう名乗った。
「高橋、高橋愛」
「タカハ・・・え?ど、どうするの?」
「ああ・・一応やっとくか」
「そ、そうですね・・・」
「せ〜の・・・」
「「「タカハシ、アイぃ〜?????」」」
TO BE CONTINUED!!!
♪ ♪ ♪
「な、何?なんで驚くわけ?」
「ここはそういう集まりなの?」
「ど、どうしたんですか?」 ♪
「まこっちゃんは床で寝ろよ!」
「ゲッヘッヘッヘ、お嬢ちゃん気をつけな」 ♪
「ほんとですか?!」 ♪
〃ノノハヽ
川*’ー’)<ミニモニのブレーメン再放送始まったやよ〜、絶対見るやよ〜 ♪
♪
そんな時の熱い瞳 忘れないで恋して♪
GIVE ME UP!WOWWOWWOW♪
ギミアップ!ウォーオオオ♪ギミア〜ップ!WOWOWOW♪
♪ ♪
♪
♪
・・・長すぎ・・・もっと切った方がいいのね
あとブレーメン見て気づいたけど、CONTINU「ED」だった(ノ∀`)アタター
問題なくスッと読めましたよ
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
なんまら面白いっす。がんがってくらさい。
乙です
この作品、ドラマ化したらウケると思うな。
ほす
「なんでアンタが敬語なんだよ!」
「私役立たずだし・・・!」
「そしたら泊まるお金がなくなっちゃって、あははは」
「マコト先に話せ」
「あさ美ちゃんに悪いな・・・」
「高橋、高橋愛」
「「「タカハシ、アイぃ〜?????」」」
〆ハハ ノハヽヽ
∬´▽`)< >(・-・o川
五期メンで!
ノ8ノノヽ ブレーメンの音楽隊! ノノノノヽヽ
ノノ・e・)< >(’ー’*川
かわいい!小川が見た高橋の第一印象。顔のあらゆるパーツが整っていた。茶髪の
セミロングは微妙にウェーブがかかっていて、それがまたかわいかった。
かわいいというより美人かな・・・ほっそりしてるし・・・オシャレだし・・・
高橋はTシャツにジーンズというシンプルな格好だった。それでも何故か華やかに
見えた。なるほど、と小川は思った。
服装は人を変えるって言うけど、ありゃ嘘だ、人が服装を変えるんだ。
「な、何?なんで驚くわけ?」
「気にするな、何歳?」
新垣がそう聞いた。里沙ちゃん何かやけに歳を気にするな、と小川は思った。高橋
は微妙に訛っていた。しかしそれもまた魅力的だった。
「17だけど」
「ああ、私とあさ美ちゃんと同い年だ、今年17?」
「いや今年18」
「んだよ、また上か。で、高橋さんはどんな不幸自慢してくれるの?」
「不幸自慢?」
高橋は何言ってるの?という顔をすると、てけてけ歩いてソファに座った。
高橋は他の二人とは明らかに放つオーラが違っていた。周りに無関心というか、そ
の素っ気ない態度からは妙な自信が見て取れた。それは新垣の傲慢な態度とは違い・・・
というか、小川は新垣のその乱暴な言動や行動は、全部虚勢だなと薄々感づいてい
た。何かを覆い隠すように無理をしてえばっているような。だが高橋は虚勢を張る
ことなく、ただ普通にしているだけで小川に言い知れぬ威圧感を与えたのだった。
この子にはきっと何をやっても勝てないな、そう思ってまた憂鬱になった。
それともう一つ、新垣や紺野、そして小川とも違う点。
高橋は手ぶらだった。
「不幸自慢って・・、何言ってるかよく分かんないんだけど、ここはそういう集ま
りなの?」
「ちげーよ!どんな集まりだよ!みんな他人。でも16,7の女の子がこんなとこ
に泊まるなんて、おかしいと思わない?私達それぞれワケアリってこと。もちろん
アンタもそうでしょ?それとも風俗街に何か用かしら?」
新垣が挑発的にそう聞いたが、高橋はいたって冷静だった。
「違う違う、ああ、そういうことね。そうそう、ワケアリだよ。言わないけどね」
高橋は嘲るかのように笑ってそう言った。言えるかよバカと、そんな感じだった。
新垣はその答えに不満だったようで、少しイラつきながらも、なんとか聞き出そう
と畳みかけた。
「なんでだよ、言えよ!どうせ今夜だけなんだし。それに興味あるでしょ?私達の
ことも、話してくれたら聞かせてあげる。その訛り、地方の人だね?私達もそう、
みんな東京の子じゃないんだよ」
「あ、そうなんだ。いや、興味ないことはないけど・・・あ、でも無理だわ。言え
ない言えない。まあ言えないこともないんだけど・・。ごめんね。私も聞かないか
ら。それに今夜だけって・・・そうなの?私はしばらく泊まるつもりだけど」
「当たり前でしょ!こんなとこ一日だって───」
新垣はそう言いかけて途中で詰まった。小川もそういえば、と思った。お金がない
以上ここを出て行けない、いや、ここにだって泊まれない。新垣もようやくそれに
気がついたようだった。紺野は高橋が来てからほとんど何も喋っていなかったが、
やはり同じようなことを考えているようだった。いよいよ現実的な問題について考
えなければならなくなった。
しかし小川は眠かった。高橋の登場で一時的に眠気は覚めたものの、睡魔の訪れる
間隔は確実に短くなっていた。さすがにもう限界だった。もろもろの問題は明日考
えよう、そう決心して、小川はベッドに倒れこんだ。
「ど、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
糸の切れた操り人形状態の小川を見て、紺野は心配そうに聞いた。
「ん〜・・・無理、高橋さんの話は聞きたいけど、無理・・・ごめん、マジで寝る・・・」
「おい!寝るのはいいけど、ベッドは私が使うんだから!まこっちゃんは床で寝ろ
よ!」
「・・・・・・」
私が先にベッド使ってたのに・・・そう言おうと思ったが、もはや口論する気力も
なかったので、小川は諦めてベッドを立った。すると高橋が「ここで寝なよ」とソ
ファを空けてくれた。小川は新垣を見ながら「あ・り・が・と・う」と皮肉っぽく
言った。新垣は「ふん!」と漫画みたいに言った。
白いそのソファはわりと大きく、快適とまでは言えないが、膝を少し曲げれば、何
とか安眠できそうだった。小川は仰向けに横になると、携帯の電源を入れた。3時
だった。気がつくと窓の外の明かりはほとんど消え、何軒かのビルの電気が点々と
光っているだけだった。おかげで部屋の蛍光灯は助けを失い、弱々しく四人を照ら
すだけだった。だが小川はいつの間にかそれにも慣れていたようで、特に暗いとは
思わなかった。それから小川は母親にメールを打った。内容には不思議なほど迷わ
ず、数秒で送信までに至った。
『元気だから、心配しないでね。気持ちの整理ができたら帰ります。て言っても何
のことか分かんないよね。ごめんね。いつかきっと話します。いつになるか分から
ないけど・・・。もう連絡はしないね。電池がなくなっちゃってメールは見れない
ので、そっちからも送らないでね。本当にごめん。オヤスミなさい。 麻琴 』
送信が完了すると、小川はまた電源を切り、ソファの下に置いた。
この調子じゃ寝てる間にまた何人か来るかもなぁ・・・あ〜あ・・・
私、これからどうするんだろ・・・なんだか大変な一日だったなぁ・・・
回想とともまぶたが自然と閉じられ、三人の話し声が段々遠くなっていくのが分か
った。どうやら新垣がまだ高橋の事情を聞き出そうと奮闘しているらしかった。高
橋は笑って「なんでそんなに必死なんだよ」と新垣の攻撃をかわしていた。喋らな
くなった小川に気がついて、三人は「寝ちゃった?」と確認するように見た。
「おやすみ、まこっちゃん。起きたらサインくれよな!」
里沙ちゃん・・・ふふ、何だか生意気なガキだけど、面白い子だなぁ・・・おやす
み里沙ちゃん・・・
「おやすみなさい、ま、まこっちゃん。また明日ね・・」
あさ美ちゃんも、なんだかのほほんとしてて、面白いし、癒されるなぁ・・・おや
すみ、ため口でいいよ
「まこっちゃんって言うんだ。おやすみね。明日色々聞かせてよ。私は何も喋らん
けどぉ」
愛ちゃん・・・きゃわいいなぁ、悩みとかなさそうだな、何だかちょっと亀井ちゃ
ん思い出す・・・私が一生かけても手に入れられないような・・・何か・・・はは、
何言ってんだろ、私。おやすみ愛ちゃん、また明日ね・・・
あれ・・・?今、月が、笑った・・・?
窓の外に見える半欠けの月が、笑っているように見えた。
それから小川は、深い深い眠りに落ちた。
乙です
これで役者が出揃いましたね
今後の展開が楽しみ
★ *
+ ☆ ★
☆ * ☆
\ チ ャ ン ネ ル は そ の ま ま ! /
+ \ * / ★
☆ §ノヽ§ノノハヽヽ 〆〃ハ∋8ノハヽ * +
(^e ^ )川’ー’川∬´▽`∬ 川o・-・)
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前半部ちょっと書いてみたんですけど、かなり矢口が
出張っててまこっちゃんたちの出番が少ないんですが
そんなんでもいいでつか・・・?
一週間が経ちました
作者さん、早く続きが読みたいよ
閉じられた目のわずかな隙間を突く、強く眩しい朝日で小川は目を覚ました。10時
の太陽は、窓を挟んでちょうど小川の顔を照らす角度に昇っていた。小川はソフ
ァの上で上半身だけ起こすと、しばらくぼーっとした。すっかり動き出した歌舞伎町
の喧騒は、何故か子守唄のように聞こえて、小川は再び眠りに落ちそうになった。
ようやく頭が回転し出して部屋を見渡すと、三人はまだぐっすり寝ていた。
結局何時まで起きてたんだろ・・・。
新垣がベッドに、紺野と高橋は、どこから持って来たのか、布団を床に敷いてそこ
に寝ていた。小川はみんなを起こさないようにそっと立ち上がり、ユニットバスで
寝起きの用事を色々済ませた。
それからまたソファに座り、三人の寝顔を見ながらこれからのことについて考えた。
とりあえず・・・お金だな。やっぱ。お金なきゃ何もできないし。日雇いのバイト
か何かあればいいけど・・。でも16の家出娘なんかどこも雇ってくれないだろう
なぁ。みんなはどうするんだろ・・・家に帰る気はないんだろうなぁ。そういえば
愛ちゃんの話は結局聞けたのかな。ってか今日どこに泊まるんだよ。ここ・・・
だめだろうなぁ、オジサンいい人そうだったけど・・・。一応聞いてみっか。
小川は忍び足で部屋を出ると、階段を降りた。改めて見ると、やはりホテルはあち
こちが痛んでいて、かなり古いもののように思われた。階段の半ば辺りで、フロン
トから話し声が聞こえてきた。
「どうだろうな。でも最近物騒だし、あいつの店も、フィリピン人の女使ってたところ
は全部潰れたらしいぜ。ゲッへッへッへ」
「物騒とかお前が言うなよな。善意あるおまわりさんのお仕事だよ。まったく、むか
つくなぁ」
見ると、オジサンが、背の低い小太りで頭の禿げ上がった40歳くらいの男と話し
ていた。オジサンは小川に気がつくと、にっこり笑って「おはよう」と言った。
「よく眠れた?びっくりしたろ、あの後三人も来ちゃってさ、窮屈だったんじゃない?」
「あ・・・い、いえ、全然、ありがとうございました。本当に助かりました」
小太りの男は、小川の登場に驚いた様子だった。
「なんだよ、客かよ。珍しいな。しかもこんな若い子。新しい商売でも始める気か
よ、ケンジ」
「よせよ、困ってるみたいだったから泊めてやったんだよ」
「ゲッヘッヘッヘ、お嬢ちゃん気をつけな。こいつに関わると殺されちゃうぞ、バーンってな」
男は手で銃の形を作って、小川を撃つ真似をした。小川はどう反応していいのか分
からず、顔を引きつらせて怯えた。それを見て二人は笑った。
「ゲッヘッヘッヘ、冗談だよ。じゃあなケンジ、例の件、早めに返事くれよ」
そう言って男は出て行った。その汚らしい格好や下品な笑い方で、小川は最初
あまり良い印象を持たなかったが、どうやら悪い人ではなさそうだった。それより・・・
ケンジって言うんだ、このオジサン、まあなんてぴったりな名前なんだこと!意味
不明だが、そんなことを思った。
「悪ぃーな、変な奴で。仕事仲間なんだ。でもあいつ面白いんだぜ?」
ケンジはそう言うと男が開けっ放しにして行ったドアを閉めた。
仕事仲間・・?あ、そうか、ホテルは副業だって言ってたな・・・何してんだろ・・・
さっきお店がどうだこうだって・・・やっぱそっち関係かな・・・ああ、いいや、聞かな
いどこ。イメージ崩れる・・・。
「で、どうしたの?もうチェックアウトかい?」
「あ・・・そ、そうだ。そのことなんですけどぉ・・・」
小川は急にモジモジしだした。人にものを頼む時は、より女の子っぽく、より可愛
く!亀井絵里を見て学んだ大人社会の処世術だ。どうだケンジさん!しかし
ケンジは気味の悪そうな顔をして戸惑っていた。
「ど、どうしたの?何か頼みゴト?」
「・・・・・・はぁ」
やっぱ私はだめだ・・。小川は諦めて普通に頼むことにした。
「いや実は、とある事情で家出をしちゃいまして、今泊まるところがないんですよ。
そればかりか、お金も、その、なくて・・・、それでできれば、お金ができるまで、
しばらく、泊めさせて・・・」
「あははは、いいよいいよ。全然」
「ほ、ほんとですか?!」
ケンジは少しも迷うことなく軽い口調でオッケーした。
「あの、すぐバイトして、お金払いますから!ちゃんと・・・」
「うんうん、いつでもいいよ。どうせ誰も来なくて部屋が泣いてたし、ちょうどいいや、
使ってもらえて。でも仕事とかあてあるの?家出だろ?詮索する気はないけど、
一体どうしたんだい?」
「バイト・・・あてはないですけど・・・家出の理由は・・・」
小川は言葉に詰まった。どう話していいか分からなかったからだ。それに仕事が決
まってないのに泊まらせてくれだなんて、そんな身勝手、さすがに怒るだろうなと
思った。しかしケンジはやはり笑顔で、次の言葉が出ない小川を助けた。
「無理して言わなくていいよ。別に興味ないわけじゃないけど、まあ若いしな、色々
あるんだろうな。心配すんな、警察に届けたりはしないよ。ホテル・ゴロツキはそ
ういうワケアリの人達を応援してるからな、へへへ。仕事はそうか、決まってない
のか。そりゃ困ったな。食べるお金はあるの?」
「は、はい!それは・・・大丈夫です!」
小川は咄嗟に嘘を付いた。もちろんお金はなかった。ないと言えば、おさらく今ま
での感じからしてケンジは食事の世話もしてくれるだろう。でもこれ以上ケンジさ
んに甘えるわけにもいかない、という何とも中途半端な遠慮が頭をよぎったのだ。
あとは見栄もあったかもしれない。・・・あ、いや、九割見栄だ。図々しい奴だと
思われたくなかった。もう十分図々しかったのだが。
「そうか、でもそんなには持ってないだろ?どっちにしても働かなくっちゃなぁ。
う〜ん、風俗で働くわけにもいかないしな、へへへ。オッケ分かった、何か探しと
いてやるよ。どうしても雑用っぽい仕事になっちゃうと思うけど。あんま期待しな
いで待ってて」
「本当にすいません・・何から何まで・・・」
小川は深々と頭を下げてお礼を言った。部屋に戻る時、ケンジに「他の三人も
まだ泊まるの?」と聞かれ、小川は無意識に「はい」と答えた。しかし階段を昇り
ながら、勝手に決め付けちゃって良かったのかな、と少し後悔した。
でも里沙ちゃんやあさ美ちゃんは文無しだし、愛ちゃんもしばらく泊まるって言っ
てたし、いっか。ってことは愛ちゃん、お金持ってるのかな。
そんなことを考えながら部屋のドアを開けると、高橋の姿がなく、ユニットバスか
ら水の流れる音がした。愛ちゃん起きたんだ、シャワーか。ソファに向かう途中に
テーブルに足をぶつけてしまい、その物音で今度は紺野が目を覚ました。
「ん・・・んん・・・あれ・・・?」
「あ、ごめんあさ美ちゃん、起こしちゃった?おはよう」
「あ、まこっちゃん・・・そっか、私・・・おはよー・・・」
寝ぼけて自分がどこにいるのか分からない様子だった。紺野はしばらく目を閉じて
布団に入ったままだったが、やがて「よし」と言うと、起き上がって布団を畳んだ。
「布団、どこにあったの?」
「ああ、昨日まこっちゃん寝てからオジサンが持って来てくれたんだよ。これ干さ
なきゃ、あ、でも里沙ちゃん寝てるから窓開けられない、あとでいっか」
紺野はそう言って畳んだ布団の上にちょこんと座った。
「あれからすぐ寝たの?」
「うん、私はね。里沙ちゃんと愛ちゃんはなんかずっと喋ってたみたい。里沙ちゃ
んが私達のこと、みんな愛ちゃんに喋ったんだよ。なんか自分のことのように話す
から笑っちゃった。でも愛ちゃんは話す気全然ないみたいだったから、結局自分
のことは話さなかったんじゃないかなぁ」
「そっかー。まああんま聞くのも悪いしねぇ。」
小川がそう言ったところで、ちょうど高橋がユニットバスから出てきた。
「あ、おはよ」
高橋はTシャツに短パン姿で、濡れた髪がとても艶やかで綺麗なのに、タオルで
荒っぽく頭を拭く姿は、またワイルドにも見えた。紺野が「じゃあ次私入るね」と言
うと、着替えとタオルを持って浴室に入っていった。
「ドライヤー・・・とかあるわけないね。まこっちゃん髪の毛ぼさぼさだよ」
高橋が笑ってそう言った。小川は手を髪の毛に持って行き、それを確認すると、
「えへへ」と照れ笑いをした。
「しばらくここに泊まるって言ってたけど、お金はあるの?」
「ないよ。一円もない!だからやばいんだよね、オジサンに頼まなきゃ」
「それなら大丈夫。さっき話してきたんだけど、お金はいつでもいいって。何日で
も泊まっていいって」
「まじ?! うわ〜助かるわ〜」
高橋は目を丸くして喜んだ。しかしどうも声に抑揚が感じられず、この子ホントに
喜んでるのか?と小川は思った。ますます高橋に興味を持った。
「その服どうしたの?手ぶらだったじゃん。荷物も持たないで・・・」
「ああ、これは里沙ちゃんの、借りたの。何で手ぶらかっていうと・・・ま、いい
じゃん、私のことは。まこっちゃんの話は聞いちゃったけど、ごめんね、だって里
沙ちゃんが勝手に話すんだもん」
「ああ、いや、それはいいんだけど・・・え、ぶっちゃけどう思った?私のこと・・・
思い通りにならないからって、そこから逃げるなんて、やっぱり子どものわがまま
かな?」
「どうだろうなぁ。まあ私も子どもだし、もう17だけど。よく分かんないけど、
思ったように行動すればいいんじゃないかな。子どもなんだし。・・・あ、ごめん、
やっぱ今のなし。適当なこと言っちゃった。私もよく分かんないや。ごめんね」
高橋は軽い口調でそう言った。小川は「そっか」と言って笑った。全く意味のない
笑いだった。
なんでこんなこと聞いちゃったんだろう・・愛ちゃんが年上だからかな・・ってか
本当にバカか私は。何て言って欲しかったんだよ。
改めて一対一で喋ってみると、高橋は見た目以上に大人で、小川には掴めない
部分がたくさんあった。必要最小限に抑えたようなその発言は、たまに二人の沈黙
の元になったが、高橋は気にしていないようだった。基本的に明るい性格だが、たま
にひどく冷めた顔をすることがあった。私なんかと喋ってもそりゃつまんないよねと、
小川はその表情をそう解釈した。
紺野がシャワーを終えて出てきてから、三人でこれからの生活のことについて話し
た。小川が仕事が見つかるかもしれないと言うと、紺野と高橋は喜んだ。どうやら
紺野もしばらく泊まることにしたようだった。
新垣は12時前になってようやく起きた。昨日以上に不機嫌で、寝起きの悪さを見
せつけた。
「う〜・・・気持ち悪い・・・窓開けるよ・・・あ〜!うるせ〜!やっぱ閉める!」
開けた途端に街のざわめきのボリュームが上がり、新垣は耳障りだったのかまた勢い
よく窓を閉めた。小川は三人で話し合ったことを新垣に聞かせた。
みんな家に帰る気はないこと
オジサンが仕事を探してくれていること
しばらくはタダで泊めさせてもらえること
当面の食事が紺野のパンとおにぎりしかないこと
「あさ美ちゃんが分けてくれるって言ってるけど・・・それも二日分くらいしかないし・・・
どうしようかなって話」
「まあそれまでに仕事見つかるんじゃん?とりあえず二日間は死なないってことでしょ?」
「ま、まあそうだけど・・・里沙ちゃんは楽観的ねぇ」
小川はため息混じりにそう言った。そんなことより、と新垣は言った。
「これ、偶然だと思う?年の近い女の子が、同じ日に家出して、同じ場所に集まっ
て。・・・まあ愛ちゃんは知らないけど・・・。なんか運命感じない?」
「私も家出みたいなもんやけど」
「まあ、確かに、すごいことですよね・・・」
「だから何だって言うの?」
小川がそう聞くと、新垣はにやりと笑った。
そしてベッドの上に立つと、両手をいっぱいに広げて大声で叫んだ。
「私達は運命共同体よ!うちら四人で力を合わせて、何かでっかいことをしよう!
バンド組もうバンド!家出娘。で、ブレーメンの音楽隊よ!」
「「「はあああぁぁぁ〜?????」」」
TO BE CONTINUED!!!
♪ ♪ ♪
「いらっしゃいませ」
「すっげー!私達超金持ちじゃん!」
「いつか東京に住みたいなって思ってたんだ」 ♪
「まじぃ!?」
「里沙・・・ちゃん?」 ♪
「どーすんだよ!バカかお前は!」 ♪
〆ノハハ
∬*´▽`)<愛と麻琴でーす あ〜ん♪
〃ノノハヽ
川*’ー’)<う〜ん♪ 次回も見るやよ〜 ♪
磨くだけ磨いたら 走り出そう二人で♪
汚れたら汚れたで また磨けばいいじゃない♪
♪ ♪
♪
キタキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
作者さん乙です
★ *
+ ☆ ★
☆ 家 出 娘。 で ! ☆
\ ブ レ ー メ ン の 音 楽 隊 !! /
+ \ * / ★
☆ §ノヽ§ノノハヽヽ 〆〃ハ∋8ノハヽ * +
(^e ^ )川’ー’川∬´▽`∬ 川o・-・)
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ってカンジですか♪
age
そろそろかな・・・
家出娘。、おもしろいですね。
続き期待してます。
続き待ってるよ。
川o・o・)<つづけ!
|・(ェ)・`) …
(´-`).。oO(続きは週末かな)
h
ほ
・゚・(つД`)・゚・
待ってます!
作者さんが家出してしまったウワーン!ヽ(`Д´)ノ
ほ
保守
もう だめなのか・・・
完結してほしかったな
_ _
<_l`くr兮 ,─、 流石ゴッグだ
/‐/kニ`Eヲlソイ 更新無くてもなんともないぜ
lニ|ヽ_0_0_@)lニ|
/ニ」 _ //__〈 lニ|
f、、、,!ノ ̄`〉二| ,,|
,〉トトハ、 iニiニlルリ
l_i_i_| |__i_i_|
269 :
名無し募集中。。。:04/08/19 01:30 ID:hbvaU2aI
∋oノノハ
川o;・○・)アアアイクウ、イッチャウウウ・・・
人 ヽヽ
ミ ( ⌒)_))
,,〃"~し'゛_ヾ、
〃(\ |⌒|/\ヾ
( (二二◎二二) )
ゞ ( /| |\丿ノ
ゝ 二.| |二ノ 彡
_/| |\_
 ̄ ̄〜〜〜〜〜〜 ̄ ̄
続き期待保
余所に逝っちゃったのかしら
ほ
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
面白いかも
〆ノハハ
∬ ´▽`)<今日、愛ちゃんのお風呂を覗いた。乳はなんじゃそりゃってくらい
無かったが、尻はまあまあのエロ具合。
私がハーレムをつくった時は第3王妃ぐらいにはしてあげるつもりだ。
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
278 :
ねぇ、名乗って:04/10/19 11:42:27 ID:l6WXFkFs
梨華ちゃん
( ^▽^)<ドザに緑豚よ保全に励め ハッハッハ
保全
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
( ^▽^)<緑豚よ保全に励め ハッハッハ
川o・-・) ∬∬´▽`)
( ^▽^)<おい紺野に小川、暇だから一発やらせろ ハッハッハ
川o・-・)=○)T▽T);∴;;
∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
( ^▽^)<テレビに紺野と小川のそっくりさんが出てると思ったら河豚と豚だった ハッハッハ
川o・-・)=○)T▽T);∴;;
∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
家出娘。の作者さんはもう戻って来ないのだろうか
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
川*’ー’)
( ^▽^)<紺野と小川がチャーミーの口座に100万円ずつ振り込むところを想像しながら保全
川o・-・)=○)T▽T);∴;;
∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
川o・-・)=○)T▽T(○=(´▽`∬∬
川o・-・)<すみません、ドザは深く反省しました、今までの数々のご無礼お許し下さい
∬∬´▽`)<石川様、緑豚をこれからはご自由にお使いください
川o・-・)=○)T▽T);∴;;≡川o・-・)
∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;≡∬∬´▽`)
293 :
名無し募集中。。。:2005/04/20(水) 22:25:17 ID:kfFc66fL BE:21121632-
自然に>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
体が…>∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
ほ
295 :
名無し募集中。。。:2005/04/30(土) 22:39:24 ID:4qHs5k9G BE:168969986-
自然に>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
体が…>∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
296 :
名無し募集中。。。:2005/05/02(月) 17:16:33 ID:5CLUEu3C
| あさ美ちゃん、さすがは |
\ 空手茶帯、かっこいい! /
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノノハヽ
川*’ー’川 バキィィ! | | | |ヽ. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(つ〆ノノヽヽ (・-・o川 < これが空手の回し蹴りだよ!
;;:;∵∬;´▽ (;;)Λ/(つ ⌒つ \__________
ゲホッ⊂ ⊂(⌒ヽ ̄ ̄ ̄⌒`ノ
⊂⊂ノ/V``` ̄ ̄( (
(__)
298 :
名無し募集中。。。:2005/05/16(月) 23:28:51 ID:KqYofnuY BE:21121632-
川o・-・)人(´▽`∬∬
川o・-・)人(´▽`∬∬
300
∬∬´▽`)人(・-・o川
302 :
名無し募集中。。。:2005/06/16(木) 16:59:59 ID:lSpmTfCE BE:140808285-
∬∬#;´▽`))));o・o・)=3
303 :
名無し募集中。。。:2005/06/22(水) 17:06:48 ID:eHk3szQQ BE:285136799-
川o・-・)=○)T▽T);∴;;
;;∴;(T▽T(○=(´▽`∬∬
304 :
名無し募集中。。。:2005/06/25(土) 18:43:51 ID:2zIGmVra BE:42243326-
( ;^▽^)=3<こんこんのおっぱいにまこのふとももはぁはぁ
305 :
名無し募集中。。。:2005/06/28(火) 01:50:35 ID:h+TxfE410 BE:158409959-
川o´▽`) (・-・∬∬
306 :
ねぇ、名乗って:2005/07/02(土) 10:14:13 ID:GGZ+Je7y0
あげ
川o・-・) ∬∬´▽`)<おい石川
( ^▽^)<なんだドザに緑
川o・-・)=○)T▽T);∴;;
∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
308 :
ねぇ、名乗って:2005/07/15(金) 11:47:29 ID:C17/RZz70
__________
/_______/_____|
/__ロ_ロ_ロ____/______|
__|| ノハヽo∈ノハヽ||__ || ||:|
|::|| (・-・o川(’ー’||::| || _||:|
∈ ~|| ⊆⊇⊂ )( ||O || ̄||:|
グシャャャ .|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄゜.| | ──|| ||:|_________________
〆〃ハハ ..||__ F U S O___|_|___」 ||:| |
(;゚.▽.。;∬∬ ||__|二 二 二|__|_||_.__/|________________|
;∵.・';:∴ _□□|二二二|□□|]_|_/⌒、|___:::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ヘ:⊇::::□□|
;:::∴;つ,,,.〔⊆|⊇__[二]___⊆|⊇:_〕_|.∴.|::| ||::||::::| 〔三三三〕|||||.∴.||.∴.|ヘ〜
;⊂(::;:;⊂ゞゝ__ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ ゞゝ∵ノ ̄ ̄ゞゞゝノゞゞゝ .ゞゞゝ∵ノゝ∵ノ
自分で言うのもなんだけどチャーミーはかわいいなはぁはぁ>(*;^▽^)=3[(^▽^;*)]←鏡
自分にハァハァするな!>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
気持ち悪いんだよ!!>∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
((((#;^▽^))));*=^▽^)=3
お前らそこで!>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
何をしている?>∬∬´▽`)=○)=T▽T);∴;;
特に意味なく>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
石川を殴ろう>∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;
川o・-・)人(´▽`∬∬
∬∬´▽`)人(・-・o川
314 :
名無し募集中。。。:2005/09/07(水) 14:47:37 ID:CrOU4rrG0
川o・-・)人(´▽`∬∬
( ^▽^)<おい紺野に小川、暇だから一発ずつやらせろ ハッハッハ
一発ずつ!>川o・-・)=○)T▽T);∴;;
殴らせろ!!>∬∬´▽`)=○)T▽T);∴;;