940 :
たぢから:02/09/11 23:11 ID:dZLRtuFy
「三人とも、改めてよろしくな!」
新たに仲間に加わった平家みちよ。
今回彼女には月光紳士としても、モーニングタイムズ社としても大いに助かった。
「さぁて仕事や仕事! 後藤となっちは圭坊と取材! よっさんは石川達と資料の整理!」
素早く指示を出す編集長・中澤裕子。
「よっすぃー、早く来て! 資料の山が崩れそうなの!」
いつも通り大変な作業をやらされている石川梨華。
「かっごちゃんです!」
「つっじちゃんです!」
仕事そっちのけで遊んでいるバイトの加護亜衣&辻希美。
「なっち! 後藤! 行くよっ!!」
行動力ナンバー1のカメラマン・保田圭。
今日もモーニングタイムズ社は活気に満ち溢れている。
941 :
たぢから:02/09/11 23:13 ID:dZLRtuFy
その頃、ゼティマ市警地下では…
「市井紗耶香、貴方を秘密捜査官として任命する。」
署長の彩より警察手帳を手渡される紗耶香。複雑な気分だ。
これから彼女は表に出ることは一切無く、再び“影”として動くことになる。
この“秘密捜査官”はその名のごとく、ゼティマ市警内でも存在が秘密にされていることなのだ。
そして…
「紗耶香、再就職祝いよ。」
と、明日香が紗耶香に見せたのは…
「これは… シャドウコンパクト!?」
942 :
たぢから:02/09/11 23:15 ID:dZLRtuFy
「そ。“月影”を改良して、隠密行動に適したスーツにしたわ。ま、変身してみな。」
明日香からコンパクトを受け取ると、紗耶香はそれを前に突き出す。
「変身っ!」
すると、紗耶香の全身が黒いスーツに覆われる。
「そうそう、もうアンタは終末の闇・Mr.ムーンシャドウじゃないよ。」
「え?」
「新しい肩書きはね、再生の闇・Mr.ムーンシャドウさ。」
「再生…?」
「そう。地球からは見えることの無い月の影じゃなくて、やがて光を放つ新月を意味する紳士さ。
まあ、新月は英語で“ニュームーン”なんだけど、言いにくいからシャドウのままにしたわ。」
再生の闇…
一度は道を踏み外したものの、心を入れ替え正義の為に戦う彼女に相応しい二つ名ではないだろうか。
943 :
たぢから:02/09/11 23:16 ID:dZLRtuFy
「アンタの任務は2つ。秘密捜査官として人目につかないよう行動すること。
そして、Mr.ムーンシャドウとして月光三紳士を、文字通り“影”からサポートすることよ。」
「真希たちの… サポート…!」
願ってもない任務内容に、紗耶香は驚き、素直に喜んだ。
「あいつらと… 一緒に戦えるのか…」
「まあ、終末の闇・Mr.ムーンシャドウって前科があるから、表立って一緒に行動は出来ないけどね。」
それでも良かった。
なつみと真希と… そしてひとみと共に戦えるのだから。
こうして市井紗耶香は、空白の2年にようやく終止符を打てるようになる。
そして、一生かけて正義に尽くすことを肝に銘じたのであった。
944 :
たぢから:02/09/11 23:18 ID:dZLRtuFy
犯罪都市ゼティマシティ。
今日もどこかで事件がおきている。
そんな闇の街を照らす三つの光…
Mr.ムーンライト、Mr.ハーフムーン、Mr.クレセント…
そして闇に生き、影から光を支える存在…
Mr.ムーンシャドウ…
彼女達の物語は、ようやく始まろうとしていた。
『こちら矢口。海岸通りで暴走族大量発生! 応援頼む!!』
「よぉし… ごっちん! 安倍さん! 行くよっ!!」
「「「変身っ!!」」」
945 :
たぢから:02/09/11 23:21 ID:dZLRtuFy
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…と、月光三紳士プラス1が出揃ったらしいわ。」
「潰し合いにはならなかったのね。残念だわ。」
「望みどおり、私たちが相手をしてやるネ。」
「まあ待て。時はいずれ来る。その時こそ、ゼティマシティは地獄と化す…」
…何かが動き出そうとしていた。
To Be Continued――
【怪傑! Mr.Moonlight】第一部 完
946 :
たぢから:02/09/11 23:27 ID:dZLRtuFy
−“あとがき”っぽいもの1−
…というわけで【怪傑! Mr.Moonlight】第一部・完結でございます。
(〜^◇^;)<“第一部”って… まだ続ける気かよっ!
(0^〜^;)<あの… 主役私でしたよね?
ヽ^∀^ノ<うんにゃ。この私だね。
(●´ー`●)<作者の一推しのなっちだべ。
( ´ Д `)<んぁ。ゴトーだよっ。
配役上は…
主人公(0^〜^)
準主役(●´ー`●)( ´ Д `)
裏主役ヽ^∀^ノ
ですた。
でも、私たぢからの思い入れによって、吉澤の位置が中途半端でしたね。
確かにラブマ三銃士(安倍・後藤・矢口)&市井・福田スキーな男なので、
この5人の出番が、他メンが主役であっても多くなっちゃいます。
ex.
・機動隊長飯田より副長矢口の方が月光三紳士と現場で連絡を取り合ってる
・科学班長福田が医者も兼任している
947 :
AYAYA ◆AYAYA/l6 :02/09/11 23:28 ID:+wqTY1cU
え…1部って
とにかくお疲れさまさま
948 :
たぢから:02/09/11 23:30 ID:dZLRtuFy
−“あとがき”っぽいもの2−
『くノ一娘。物語』に続いて、また中途半端に終わらせてすみません。
いや、本当はこれだけ(市井編)で終わらせるつもりだったんですけど、
書いてる途中で、続編の構想が…
从#~∀~#从<ほう。じゃ、次回はウチ活躍させて。敏腕編集長裕子編っ!!
( `.∀´)<いや。私で。スーパーカメラマン圭編!!
川゜皿 ゜)‖<シュヤク ハ イーダー!
( ` ・ゝ´)<『くノ一娘。物語』で一番出番の無かったこの私で!
(0°−°0)<ここは冷静に考えて、初代娘。の顔であるこの…
@ノハ@
( ‘д‘)<いや、ウチや!
∋oノハヽヽo∈
( ´D`) <ののれす!
\( ^▽^;)/ <は… ハッピィ〜↑!!
川o・-・)<あ、そうそう。辻さん・加護さん・麻琴ちゃんしか名前出なかったですけど…
川 ’ー’川 <“歩けば事件に当たる六人組”に私たちもいますよ。
( ・e・)<ニィ。
…これで新旧全員の顔文字出ましたね。
949 :
たぢから:02/09/11 23:31 ID:dZLRtuFy
お知らせがあります。
私たぢからは、私情でしばらくの間ネットが出来なくなります。
次にココに現れるのは、16日(月)の夜になります。
その間に、3作品の感想・意見・ダメ出し等、何でも書き込んでいただければと思います。
このスレが持つ限り、きちんとレスさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
正式なあとがき(言い訳・今後の妄想etc)はその後で。
最大5ヶ月のお付き合い、どうもありがとうございました。
950 :
たぢから:02/09/11 23:41 ID:dZLRtuFy
>948
∬´◇`;∬ <あ、私がわすれられてる〜…
あ、マジで忘れてた。
ごめん、琴美。
∬ T◇T ∬ <小川真琴ですって…
完結乙です。
「中途で放置」が横行する中、前作・前々作に続き
最後(?)まで書ききったことは素晴らしいです!
では、完結まで待ってた感想を少々。
「スピード感あるなぁ」というか、
「展開早いなぁ」と思ってたのですが、
格闘シーン&セリフ以外の情景・心理模写が
もっとほすぃーかなー、と思いますた。
あんまりやりすぎるのもアレですが…。
個人的には、キャプつばくらい引っ張るのもアリかと。
いや、でも、これがたぢからさんの特徴でもアリ…。
あと第二部(あるのか?)では6人組&ちゃーみーの出番を増(略
952 :
:02/09/13 14:27 ID:i7Iw5GUV
>∬ T◇T∬ <小川真琴ですって…
∬ ´◇`∬.。oO( ∬ `▽´∬ <小川麻琴だ、コノヤロー!!!)
| |/ _t__ \|
| | (( ) ) |
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∬´◇` ∬ ・・・ト、ツッコムゲンキスラナイ、キョウコノゴロ・・・
(∩∩)───────────────
/
/
| |/ _t__ \|
| | (( ) ) |
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∬´◇` ∬ イチニチハンタッテモダレモツッコンデクレナカッタ・・・
(∩∩)───────────────
/
/
953 :
名無し:02/09/14 13:05 ID:M1yJCcuo
作品読ませていただきました。
更新の早さや、勢いの良さ、流れはすごいとおもいます。
ただ昔の熱血漫画並に無理やり押しまくりの展開は微妙です。
後はこれは良いところなのかもしれませんが、戦闘シーンで
入り込むというより眺めるような感じになるのは激しい戦い
であるほど何か足りない気が、続編待ってます。
954 :
:02/09/15 18:08 ID:A7+Qq+HC
hozem
955 :
:02/09/16 12:23 ID:5CJU7DJF
ちと「毎回暴走族が暴れる」ってワンパで安易じゃとか思ったけど、そんだけ。
世界観がマッドマックスか北斗の拳なんだろうか。
と保全カキコ
956 :
たぢから:02/09/16 23:02 ID:mZyp3DAF
お久しぶりです。
それでは個別にレスを…
>951 名無し募集中。。。さん
――格闘シーン&セリフ以外の情景・心理模写
「くノ一娘。」からずっと抱えている課題です。
頭で考えていることを、まだまだうまく文章に出来ません。
語彙力・表現力が乏しいのは最大の弱点だと思います。勉強します。
――キャプつばくらい引っ張るのもアリ
アニメの「キャプテン翼」の異常な引っ張りは覚えています。ジャンプ黄金期世代ですから。
確かに、読者の方をじらすくらい展開を引っ張れたらな、とは常々思ってます。
――あと第二部(あるのか?)では6人組&ちゃーみーの出番を増(略
メイン組の割には結構中途半端にしちゃいましたからね。
みんなそれなりに活躍できるよう、考えます。
957 :
たぢから:02/09/16 23:03 ID:mZyp3DAF
>952 さん
――∬ ´◇`∬.。oO( ∬ `▽´∬ <小川麻琴だ、コノヤロー!!!)
やった! ツッコミレスがあった!!
…というのはウソで、素で間違えました。すんません!!
辞書登録しておいたのですが、一発で“麻琴”と出なかったようです。完全なミスでした。
いや、小川は嫌いじゃないですよ。ただ、もうちょっと前に出て欲しいかも。
>953 名無し さん
――ただ昔の熱血漫画並に無理やり押しまくりの展開は微妙です。
ジャンプ黄金期世代なもんで、「聖○士星矢」や「ドラ○ンボール」が体に染み付いているせいかもしれません。
無理に繋げないと先に進めないのは、まだまだヘタレ作家の動かぬ証拠。それを払拭できるよう、精進します。
――戦闘シーンで入り込むというより眺めるような感じになるのは
これは“頭で戦闘シーンを思い浮かべる”→“そのまま文章にしてみる”というシステムのせいですね。
「聖○士星矢」の同人小説や、最近発売された続編小説なんかも参考にしていますが、うまく書けないです。
私の作品から戦闘シーンを抜いてしまうと骨も皮も残らないので、まだまだ頑張らないといけないです。
――続編待ってます
ありがとうございます。
958 :
たぢから:02/09/16 23:05 ID:mZyp3DAF
>955 さん
――ちと「毎回暴走族が暴れる」ってワンパで安易じゃとか思ったけど
犯罪都市ゼティマの設定を活かしきれなかった証拠ですね。
ひったくり程度の軽犯罪(罪に大小はありませんが…)では月光三紳士の出番がなさそうなので、
警察も手に負えないような大規模な暴動ばかり出してしまいました。
――世界観がマッドマックスか北斗の拳なんだろうか
前者は知りませんし、後者はジャンプ黄金期ながら全然覚えていないので答えようが無いのですが、
「バットマン」とか、日本の特撮ヒーローものとかが基になっています。
皆様、貴重なご意見ご感想ありがとうございました。
959 :
たぢから:02/09/16 23:06 ID:mZyp3DAF
そもそも羊板で小説を書こうと思ったのは、月並みですが娘小説に出会ったからです。
最初読んだのはどれだか覚えていませんが、名作と呼ばれるものは一通り読みました。
あとは小説総合スレなどで過去に遡り、様々な作品に出会いました。
同性愛モノが多いことに多少抵抗を感じつつも、次々とこの世界引き込まれ、
そしていつのまにか、ここで小説を書いてみようかな、と思うようになりました。
かなり前に、私は別の板で別コテハンで、娘とは全く関係のない小説を書いていたのですが、
娘小説と出会ったことで、その頃の熱が再び戻ってきました。
960 :
たぢから:02/09/16 23:08 ID:mZyp3DAF
『くノ一娘。物語』
リレー小説「くノ一物語」シリーズに影響を受け、書きました。
超能力忍法に頼らず、実際にあった忍術を紹介するのを前面に押し出していたはずですが、
結果的に「るろうに○心」の剣術を多用してしまったことは、残念です。
パクリの域を出ていないと言われても仕方ありません。
続編はJHの高速道路工事みたいに部分的には出来ていますが、完成までは…
【IRREGULAR HUNTER NATSUMI】
『くノ一娘。物語』創作中に、ふと思いつきで書いてしまいました。
小説は面白くないですが、元ネタ「ロッ○マンX」は名作アクションゲームです。
【怪傑! Mr.Moonright】
タイトルが誤字だった、このスレ唯一のボツ作。
格闘シーン&セリフ以外の情景・心理模写が弱点なので、途中放棄してしまいました。
【怪傑! Mr.Moonlight】
結局戦いだらけになってしまった、【怪傑! Mr.Moonright】の改訂版。
今、これは続編を書けそうなのですが…
961 :
たぢから:02/09/16 23:10 ID:mZyp3DAF
娘小説ビギナーの分際で、独自スレを立ち上げて5ヶ月…
とりあえずここまでやってこれて良かったと思います。
決して名作には程遠い稚拙なものばかりでしたが、
読者の方々のレスがつき、書いていて非常に楽しかったです。
ひとまず私たぢからは創作活動から離れ、一2ちゃんねらー兼娘ファンに戻ります。
また小説を書くかどうかは分かりませんが、書きたいという気持ちは消えません。
羊でも狩でも飼育でも、書ける場所があれば戻ってこようと思っています。
最後も稚拙な文章になってしまいましたが、これをあとがきとさせていただきます。
いままでどうもありがとうございました。
>たぢからさん
お疲れ様、次回作までゆっくり休んで下さい。
こちらもじっくり待たせてもらいます。
963 :
951:02/09/18 20:19 ID:od4H+JnS
長い間お疲れ様でした。
丁寧なレスありがとうごじゃいます。
語彙力・表現力を鍛えるにはやはり
フツーの小説もたくさん読むとよいですよ!
娘。小説には?な表現が多過ぎですから。
いつになるかわかりませんが、またどこかで
たぢからさんの小説が読めれば幸いです。
>>960 JHワラタ
964 :
あみたん:02/10/01 22:14 ID:41NVJjnW
お疲れ様でした。
test
968 :
na :02/10/05 04:04 ID:ZrA+LTt1
tesr
969 :
:02/10/06 02:02 ID:88Ryxj7T
∧_∧ψ
(≠ゝ゚)|<ロリカリカリカリ
_(ι‡ ⊃___
| ノ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
970 :
:02/10/07 00:32 ID:2pNkDeUX
test
971 :
:02/10/21 22:32 ID:2RYeKrWu
保全
972 :
:02/10/25 21:42 ID:nIWcSGqF
hozen
これは懐かしいですね・・・
あの落書きに読者が居て、きちんとした「作品」にしてくれたことを素直に嬉しく思いました。
有難う。
974 :
__:02/10/30 07:39 ID:Up/FXCZp
>973
このスレのもとネタがあるんですか?
スーパーシンザンで、昨日初めて読んだので何がもとになったのかも
サパーリわかりません。
教えて君で、悪いんですがリンク先が生きてたら教えてもらえないでしょうか?
たぢからさんロッ○マン編はまだ読んでないですがくの一、ムーンライト
楽しめました。
アッシ的には、くの一の第二部が読んでみたいです。
いつか公開されることを願ってます。
975 :
974:02/11/01 17:52 ID:5/499Jgj
976 :
:02/11/04 09:27 ID:p3CwR0ho
≡ノノヾヾヽ.┌ O.─┐
≡(●´ー`).| 保 ..|
≡( 二つ| 全 |
≡ ノ ヽノ |___|
(⌒(⌒)≡ し (_)
977 :
_:02/11/04 17:30 ID:RIKu2w9s
976がsageようとしようが俺はageる。
978 :
:02/11/08 23:53 ID:85J9dZs+
ノノノハヽ
川‘ハ‘)||<謹んで保全させて頂きます。
ノlヽ▼ノlヽ
/lllllヽノlllll]つ
⊂[ノlllll : lllllハ
ノlllllll人lllllllllゝ
| | | ̄
(_);__)
時は戦国時代…
一つの影が、とある森の奥へと向かっていた。
忍び… 男の忍者ようだ。
やがて彼は森の奥にたたずむ小さな小屋の前に辿り着いた。
そしてそこには、一人の隻腕のくノ一が…
「ようやく見つけたぞ。」
しかし、そのくノ一は動じることも無く、彼を横目で睨みつけている。
「アンタは…」
「言うまでも無いだろう?」
「まぁた小室忍軍か…」
くノ一… 鈴木あみは、やれやれといった感じで男と向き合った。
「アンタも、百人力を誇る私の台頭で、用済みとなってたクチか?」
「そうだ。朝組の安倍とやらに敗れ、小室はお前を追放した。
だが、主軸を失ってしまたことで、再びオレを必要とせざるを得なかった。」
「アンタも復帰初任務が私の抹殺ってわけか。あの人も何が怖いんだか。」
「この戦国の世で勝ち残るには、少しでも不安の芽を摘み取らねばならん。それだけのことだ。」
「まあいいわ。アンタなんて片手でも十分よ。早く済ませたいから、さっさとかかってきな!」
あみは不敵な表情を浮かべ、余裕をアピールする。
「フン! そう言ってられるのも今のうちだぞ!!」
男はそう言うと、五人に分かれて素早くあみを囲んだ。
高速の動きによる残像分身だ。その動きは第一級である。
しかし、それでもあみは構え一つとらない。
「どうしたの? 私は隙だらけなのに、かかってこないの?」
さらに挑発するあみ。
「余裕なのも今のうちだ。いくぞっ!!」
「うっ!」
突如凄まじい風圧があみを襲い、彼女は避ける間も無く背後の大木に激しく叩きつけられた。
「他愛もない。」
そんな彼の目の前で、あみは墓場から甦る死霊のように瓦礫の中から姿を現し、
残虐な笑みを浮かべて立ち上がった。
「フフフ… たった一人を相手に大層な大技ね。結構きいたわ…」
そう言い放つとあみは無数の苦無を男に向けて撃ち放つ。
「オレ相手にそんなメジャーな武器は通用しない!」
カンッ! キンッ!
まるで見えない壁があるがごとく、次々と襲い来る苦無が彼の数メートル手前で落とされてゆく。
(一見動いてないように見えるけど、高速で苦無を叩き落しているみたいね。)
「どうやらその顔は、速さでの格の違いを理解したようだな。」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる男。
「思ったより強いね。 私を越える強さを追い求める執念かしら?」
「フッ… 底辺から光を掴むことなど、最近になってどん底を味わったばかりのお前にはまだ真似出来まい。
まあ、その体でオレの攻撃に耐えられるとは、賛辞に値するといっても過言ではなかろう。」
男は、あくまであみを見下した言い方をする。
「まだその光に到達していないのに、そういう余裕めいた言い方は少々不愉快ね。
でも、なんだったら私への最大の賛辞ってヤツをアンタに教えてあげようか?」
左腕で刀を構えながら男に向かってあみが言い放つ。
「恐れ… 怒り… 怨み… それこそがこの“鬼”鈴木あみ対する最高最大の賛辞よ!!」
「とりあえず憶えておこう。だが、その念をオレに抱かせるには、余りにお前は未熟すぎる!!」
分身の統率の取れた動きから放たれた剣技が、尚もあみの全身を切り刻む。
「まだまだぁっ!!」
だがあみは刀を手に、激しい雨のような攻撃の真っ只中を遮二無二突き進んでくる。
「なるほど… 自他共に“鬼”と認めるわけか。自らの命さえ己の勝利のためには顧みないとは…」
狂気のみで動いてるようなあみに対し、男は素直に感心した。
だが、あくまで任務であり戦いの最中。相手を褒めても意味がない。
「見せてもらうぜ。片腕を失った“鬼”がオレを相手に如何なる戦いぶりを見せてくれるかをな!」
冷笑を浮かべる男に向かい、刀を振り続けるあみだが、素早いガードに封じ込められる。
「切れ目を読んでどうにか一矢を報いようとでも言うのか? 常識的にその作戦は間違ってはいないが、
それが出来るのはオレと同じスピードを持つ忍びのみだ。お前の力ではそんな策は通用せんぞ!!」
刹那、あみの眼前から男の姿が忽然と消える。
ズガッ! ドガッ!
彼女はなすすべも無くその場に倒れこんだ。
「…どうしたの? 今のは手を抜いていたね… なぜ殺さない…」
息も絶え絶えに男に問いかけるあみ。
「今のは確実に私を殺すことは出来たはずだ。何しろ心臓も脳もガラ空きだったのだから。
私が命を助けられたからって感謝するような女じゃない事は判りきっていると思ってたけど…」
「オレの悪い癖だ。弱き者を見るとそれが例え元・鬼であれ、つい惜しみを感じてしまう。
本当はもう少し遊びたいところだが… 一応仕事なのでな、そろそろ往生してもらうぞ。」
あみの傍らに歩み寄り、見た目より大きく感じる無骨な拳を彼女に向ける男。
そんな彼に向かい冷笑を浮かべると、あみは恐ろしく冷たい声で静かに言い放った。
「馬鹿ね。戦いを楽しむってことは、完全なる勝利を約束された者だけにしか許されない物なのに。
せっかく私を殺す数少ない機会を得ていたはずなのに、フイにしちゃうなんてさ。」
「言っている意味がよく判らんな。貴様の命など文字通り風前の灯に等しいのに、少しは抗ったらどうだ?
尤も、もはやいくら足掻いても無駄なことではあるがな。」
「ならばはっきり言ってやるよ。アンタじゃ役不足だと言ってるんだ。
この数多くの修羅場を目の当たりにしてきた真の“鬼”の前ではね。
アンタにこの私を倒す資格など、少しもありはしないのさ!!」
そう言って嘲り笑うあみに対し、怪訝な表情を浮かべる男。
「フ… どうやらこの前の敗北にすっかり正気をなくしてしまってるようだな。
まあオレにとっては関係ない。どんな状態であろうとお前を倒し、最強の勲章を得るまでだ!!」
全身の力を漲らせた豪腕を、あみの頭上に向け放とうとしたその瞬間だった。
ズバッ!!
まさに電光石火の抜刀…
左腕から放たれた神速の一撃が、一度に男の胴を真っ二つに切り裂き、
彼は何が起こったのかも判らずただ呆然とした表情のままその場に崩れ落ちた。
「この鈴木あみともあろう者が、ただ負けてばかりいただけと思ったの?
私には究極の“修忍の法”があることを忘れたの? 戦いの中で成長するんだよ!
そして、“敗北”ってのは単に勝負に敗れることを指すわけじゃないんだよ。
つまりアンタのように、戦いに敗れる事で何も得るものを持たない愚者に与えられるものこそが、
真の意味での“敗北”と言う烙印なのさ! 分ったか!?」
「ぐう… そ… そんな馬鹿な… 左腕しか動かぬ貴様にこのオレが…」
己の敗北がよほど信じられないのか、屈辱と怒りに身を震わせ血走った眼であみを凝視する男。
そんな彼を見据え、愉快そうにあみは言い放った。
「そうだ… 恨め… 憎め… そしてあの世に行っても恐怖するんだ!!
この私を… 世界で唯一無二の“鬼”であるこの鈴木あみをねっ!!」
あみは笑っていた。
こらえようの無い興奮が… 歓喜が彼女の中を駆け巡っていく。
かつてあみが住んでいた世界の中では余りに強過ぎた。
強過ぎたが故に自分より強い者達と戦える機会に恵まれなかったのだ。
だが今自分が立っている場所は別だ。目の前にはここには自分より強き者達が存在する。
安倍を… 自分をどん底まで叩き落したくノ一倒すには、ここから這い上がらなくてはならないのだ。
(喰らってやるよ。アンタらだけではない… 私の頭上に存在する全ての者をね!!)
「待ってろぉ… 待ってろよ安倍ぇ! アハハハハハハハハ……!!!」
988 :
たぢから:02/11/10 00:05 ID:x2Hp1EGK
皆様、お久しぶりです。長らくの保全ありがとうございます。
感謝の気持ちとして、現在チンタラ創作中の「くノ一娘。」続編より、
最強くノ一・鈴木あみの番外編をアップしました。
尚、ゲストの男忍者は誰でもいいので、適当に当てはめちゃって下さい。
しばらくこのスレから離れているうちに、現実世界の娘。はどんどん変わってますね。
「ごまっとう」って…
989 :
たぢから: