「え?」
「矢口が好きな人はなっちなの。」
私は少し動けなかった。
どうしよう。まさか私のことだなんて…
「なっち、今付き合ってる人いないんでしょ?好きな人もいないんだよね。」
矢口が私の目から視線を離さずに口を動かし続けた。
「う…うん。」
裕ちゃんの事は誰にも言わずに内緒の事だ。
だから、付き合ってる人も好きな人もいるんだけれど、
隠しておくしかなかった。
「じゃぁ、矢口と付き合ってよ。」
「えっそれとこれとは…。」
「いいのっ!絶対なっちを振り向かせるから!」
裕ちゃん。どうしたらいい?
でも2人で決めた事だもんね。
メンバーには言わないって。
だからって、矢口と形だけでも付き合うなんて裕ちゃんが
聞いたら、きっとすごく悲しむんじゃないかな?
一緒に過ごせない日、裕ちゃんの目は悲しみを持つ。
「だっダメだよ!矢口とは…。」
私は話を進めている矢口を止めた。
裕ちゃんの為に、自分の為に、ここははっきりさせとかなきゃ!
「なっちは矢口の事嫌いなの?」
矢口が悲しそうな目で私をみた。
その顔はまるで裕ちゃんの顔のようで…
私は何も言えず、ただその顔を見つめる事しかできなかった。
「形だけ。雰囲気だけでいいからさ。もちろんなっちに好きな人ができたら
別れるし、矢口も他に好きな人ができたら別れるし。暇な時とか
仕事帰りとか一緒に遊んだりするだけでいいんだ。」
形だけのカップル。
「べ、別に付き合う、なんて言わないでいいじゃん。
一緒に遊んだりするだけでしょ?」
「だって…矢口はなっちが好きなんだもん。そう言いたいよ!」
矢口を見ると、目にうっすら涙が見えた。
こんな調子で喋っているけど、もしかしたらそうとうがんばって
喋っているんじゃないだろうか?
1回裕ちゃんと相談してみよう。
それで、皆に言う事になったら大丈夫だよね?
付き合うなんて形を取っても別れるよね。
私はこの問題にちゃんと目を合わせていなかった。
大丈夫。なんとかなるか。
と、全員の気持ちを中途半端に受け止めようとしていた。
誰もが傷つく道を、私は何も考えないで選んだんだ。
更新乙カレー
マターリでいいよ。自分のペースで・・・・・
保全は任せてw
71 :
読んでる人:02/05/04 09:16 ID:8yLHJHY/
痛めの作品になりそうですね。
>>67 >読んでる人って飼育とかにいる人?
確かに名作集でウロチョロしてるけど、この固ハン使ってる人がもう1人いるっぽいんだよね。
自分は主にヤグ絡みの作品に出没するけど・・・。
で保全
>>70 72
保全サンクス。マターリとやってきます。
チビチビだけど、ごめんね。
>>71 そうだね、痛めかな。
もう1人いるんだ?やぐ絡み…やぐちゅうとか?
も、もしかしたらやはりあの方では…?なんて言ってみたーり。
結局、返事は少し待つようにして私達は明日に備えて眠ることにした。
昨日までこのベッドに残っていた温もりは、今は矢口の温もりに変わる。
私はいつものように並んで眠った。
「時間ないよ!!」
矢口にせかされて用意をする。
「ごっちん待たせたら怒るからさ。」
急いで部屋を出る。
まだ、携帯を私は見なかった。
「なんとか間に合ったねぇ。」
急いできたので少し息切れしている。
「ごっちんどこにいるんだろ?」
あまり人のいない場所で待ち合わせる。
「もしかしたらごっちんも遅れてくるかなぁ。」
ごっちんと私は結構娘。の仕事に遅れがちなのだ。
「でもさ、遊ぶ時はあんまり遅れないよ?時間も早くないしさ。」
そう言ってキョロキョロと周りを見ると、向こうの方から
小走りで近づいてくる女の子の姿があった。
「あっあれじゃない?」
矢口の袖を掴んで指差す。
「ごめーん!!待った?」
少し息切れをしたごっちんが来るのと、私達がごっちんだと確認するのは
ほぼ同時だった。
裏道にあるお洒落な服屋を見て回る。
ギャル服が多いので私は本当に見てるだけだったけど。
たまにある少し大人びた服を見て、
裕ちゃんに合うかなぁ?なんて考えてたりした。
「結構買ったねぇ。」
一休みにカフェに入る。
もう矢口とごっちんの手には紙袋が握られていた。
「109はさすがに今日は混んでそうだしね。」
「でもやっぱ見ておきたいねぇ。」
2人はキャッキャッといいながら話していた。
「まだ10代なんだもんねぇ。」
私がそう言うと、
「年よりくさいよぉ。」
と笑われてしまった。
カラオケに行って、夕飯を食べる。
「もうこんな時間かぁ。」
まだ9時前だったけれど、明日からまた朝が早く仕事のため、
私達はいつもこのぐらいの時間で解散する事にしていた。
「じゃぁ、明日ね。遅刻しないように。」
「なっちにそのまま返すよ、その言葉。」
「気をつけて帰ってね。」
それぞれの家路に別れた。
2人にメールをだそうと思って携帯をだす。
この時だった。
やっと気がついたのは。
不在着信だけ調べて電話をする。
5件とも裕ちゃんからの電話だったから。
呼び出し音だけが聞こえる。
仕事中だよね。
私はメールを出すことにした。
『明日は気をつけて行ってきや。』
『なんで電話でてくれへんの?』
『見たら電話してきて。』
何件も裕ちゃんからのメールが入っている。
昨日の夜からずっと見ていなかったから、心配かけてしまっている。
それに、矢口の事もある。
『ごめんっ!昨日の夜から携帯見てなかったんだ。
これ見たら電話ください。仕事がんばってね。』
そうとだけ、メールを打った。
「…なっち。」
家についた時、不意に物陰から名前を呼ばれた。
「裕ちゃん!!」
まるで隠れるように立っていた裕ちゃんに驚く。
「どうしたの?入ってたらよかったのに!」
あわてて裕ちゃんの所へ行く。
「う、うん。今来た所なんや。」
少し暗い表情の裕ちゃんの手を握って私は部屋に入った。
「ごめん!!昨日見たビデオが面白くて…すっかり携帯を見るの
忘れてたんだ!」
「いや、ええんや。ごめんな。別になんでもないねん。」
やっぱりなんか変な様子の裕ちゃんをソファーに座らせて
私も横に座った。
「昨日な…なんか変な胸騒ぎしたんや。
なっちが離れてしまいそうな…。それで電話したんやけど。
なんもないならええねん。」
昨日。
裕ちゃんは矢口のあの告白の事を…。
私はやっぱり隠す事なんかできなかったから
裕ちゃんに言う事にした。
「実はね、…昨日矢口に告白されたんだ。」