小説『OLやぐたん 其の弐?』

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1L.O.D
ってなわけで、分かりやすく
OLやぐたんの名前を冠しておきました。
2L.O.D:01/12/26 12:42 ID:8ffKt2p+
3L.O.D:01/12/26 12:43 ID:8ffKt2p+
席はいつもの奥座席。
近頃、矢口がらみの娘。の会合は
ここで行われる事が多く
とりあえずは牛タンが出てくる。
「牛ターン、牛タァアアーーン」
えー、、、矢口さん、はしゃいでます。
「矢口さん、顔が怖いですよー」
「カルビクッパ頼んでもいいれすか?」
なんだかんだで楽しそうな雰囲気。
矢口は焼き上がった牛タンにレモンをかけながら
辻を見た。
熱々のカルビクッパに舌鼓を打っている。
「のの、一口ちょーだい?」
「あーん」
「あーん」
近頃、あんだけ頼り無かった石川が
周りを思い遣るだけの余裕が出てきた。
やっぱり後輩が出来るというのは
その姿を自分の過去に重ねて
成長を自覚できる一つの要素として
大事な事なんだと思った。
そう言った意味で
市井にとっての後藤と
後藤にとっての市井の関係は
少しずつずれてしまっていて
後藤がかわいそうだった。
4L.O.D:01/12/26 12:44 ID:8ffKt2p+
「こげちゃいますよ。」
辻が一番大きなのをヒョイと口に入れてしまう。
「あー!」
「怒らないで、矢口さーん。
 まだお肉来ますからーー」
「まったく、、、それより、辻」
「あい?」
口元に御飯粒が一粒ついてる。
まったく真面目な話を切り出そうとしてるのに
この人と来たら
いい具合にはずしてくる。
「あんた、悩みごととかない?」
「・・・・・・」
しばらく、ポーっと考えてる。
いつもの事だ。
加護だと速射砲のごとく
ポンポンポンと話が進むのだが
辻は本来のんびりなのである。
矢口と石川も茶でも飲みながら
待っている。
「あのぉ」
「うん」
「辻、タンポポに入りたいなぁーって」
「はぁっ!?」
目の前にいるのはタンポポの2人ではあるが。
「ミニモニ。は!?」
「ミニモニ。も楽しいんですけどぉ、、、」
長い髪を降ろした辻。
それが彼女にとっても
最も一番、ナチュラルな状態。
不安定な思春期が
キャラとのギャップの差に悲鳴を上げる。
5L.O.D:01/12/26 12:44 ID:8ffKt2p+
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
全員が黙ってしまう。
矢口にも、石川にも身に覚えがある。
普通の人が通る思春期と同じように
悩みは尽きぬもの。
ただし、娘。は変わらないもののようでいて
1ヶ月、いや、へたすれば半日で
求められるものが変わってきてしまう。
この年頃の女の子がその変動についていこうとすれば
無理が生じてしまうのはある種、当たり前で
今、辻はその真只中にいた。
少なからず長い事仕事してる矢口は
そんな時どうすればいいのか分かってる。
やっぱり恋愛が一番、、、といいたいところだが。
「ミニモニ。はさ、、加護と一緒だから出来るんでしょ?」
「矢口さん・・・・・・」
うなづく辻。
「ちょっと働き過ぎだよねー」
「あのですねぇ、、、」
「ん」
「辻もゆっくりしたかっこいい歌、歌ってみたいんです、、、」
辻の肩がしゃくりあげて
また涙が零れだした。
「のの、、、」
石川はそっと肩を抱く。
辻の今の精神状況に足りないのは
絶対的な支え。
そして、そう成り得るのは自分達じゃなくて
あの人。
フと思い出した。
入ったばかりの時
電話で長い時間、先輩メンバーの悪口を言っていた。
感極まって泣いてしまうと
必ず「おーよしよし」とあやすように
声をかけてくれたあの人。
「ちょっとトイレ、、、」
「行ってらっしゃい、、」
6L.O.D:01/12/26 12:54 ID:8ffKt2p+
トイレの個室の中
矢口は携帯を取り出す。
コールすれば、すぐに出てくれた。
「矢口だけど」
『ひさしぶり』
市井の声
「紗耶香、今、空いてるの?」
『まぁ、空いてるといえば』
「じゃーさ、いつもの焼肉屋さん分かるでしょ?」
『あそこかい?』
「今、御飯食べてるからさ」
『来いってか!?』
「っていうか、来て、、、、」
『おろ、どうしたんだ?』
「来てほしいの!」
矢口の剣幕に押されて
了承してしまう市井。
『分かった、、急いで行くから』
電話が切れた携帯を握りしめる。
ミニモニ。リーダーなんて言っておいて
辻の不安を取り除けない自分が少し嫌になる。
(裕ちゃん・・・・・・)
矢口は胸の奥でそっとつぶやいた。
7L.O.D:01/12/26 12:57 ID:8ffKt2p+
ってなわけで、新スレでございます。
ほんとちょっと忙しかったりで
以前のような更新速度は出せませんが
どうぞ、御贔屓に。
8レク:01/12/26 18:49 ID:ALNNL3Da
保全sage
更新頑張ってください。
9名無し娘。:01/12/27 01:08 ID:85I9c1TE
>>L.O.D

(( ´´ Д ``))プルルン
新スレおめ〜。
10ねぇ、名乗って:01/12/27 01:11 ID:pdWPu6i1
新スレおめ
11アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/27 01:18 ID:NJeSPcOM
新スレ保全さげ
12L.O.D:01/12/27 11:52 ID:xH+HHIn0
市井が来たのは、30分も後の事。
座敷の戸がガラリと開き
姿を現した市井を見て
辻はポカンとする。
「のの・・・・・・」
「さやりん・・・・」
「石川、あーんってして」
「あーん」
「どした、のの?」
「さやりんっ!さやりんっ!!」
その感触を確かめるように抱き締める辻
肉の味を確かめるようによく噛む石川
飛びついてきた辻を抱きとめ、強く抱き返す市井
そんな様子は無視で、新しい肉を焼く矢口。
「さやりぃん、、、、」
「げふっ」
見ると、今にも窒息死しそうなくらい
締められてた。
「あーっ!!」
「のの!のの!!」
「・・・・・・」
開放されても、しっかりとつながれた手。
今度はポフンと市井の胸に顔をうずめる。
市井もその頭をきゅっと抱いてやって
耳元でささやくように問う。
「会いたかったよ、、ののは?」
「あいたかった、、、、」
「そか」
「いいねぇ、ラブラブで」
「矢口さん、私達も、、、、」
「きしょっ!なんで石川と、、、、」
「矢口さーん、、、、」
「どうして泣いてるの?」
「怖くて、、、、」
「そうか、矢口に怒られたんだ」
胸の中でふるふると頭を振る辻。
「違うの?」
こくんとうなづく。
そんな仕種一つ一つがかわいらしい。
13L.O.D:01/12/27 11:53 ID:xH+HHIn0
「市井に話してごらん、、、」
「あのねぇ、、、」
か細い声でしぼりだすようにつぶやく。
まるで雨の中にほうり出されたうさぎのような声。
「太っちゃったし、、、、
 歌も上手じゃないし、、、、、
 なんかね、、、、
 つまんないの、、、、、、
 疲れちゃった、、、、、、、」
「そかー、、、疲れちゃったんだ」
「うん、、、、」
まるで、幼い子供が添い寝されて
母親に肩をとんとんと叩かれながら眠るように
市井は辻の背を優しく叩く。
「じゃ、市井がおまじないしてあげる」
「?」
「楽しくなるおまじない」
「ほんと?」
「うん」
辻は顔をあげる。
そっと手を添えて、
軽いキス。
「ん、、、、」
「ふ、、、、、」
「どう?ドキドキしない?」
「するっ」
「ごめんね、市井気付いてあげれなくて。
 のの、、、苦しかったよね」
「ううん、さやりんは悪くないよぉ」
「怖くなくなった?」
「うん」
「じゃ、肉食うか?」
「食べる!」
市井はテーブルの方に視線を戻すと
矢口と石川がいなかった。
「あれ?」
出ていった気配もないし。
覗き込んでみる。
すると、テーブルの向うにいるにはいたのだが
矢口が石川に押し倒されてた。
「紗耶香ぁーーーー!」
「チュ、、、、」
「ののっ!石川を止めろ!」
「あいっ」

  バッ!!

辻は勢い良く踏み切り
重なってるところへフライングボディプレスッ!!
「ごふぅっ!!」
「エヘン!」
「矢口ーー生きてるかぁーーー?」
「もうダメ、、、、」
14L.O.D:01/12/27 11:54 ID:xH+HHIn0
帰りのタクシーの中
辻と市井はずっと手を握っていた。
「明日は、仕事?」
「うん」
「私もレコーディングだな」
「・・・・・・」
俯く辻。
市井は気付き、少し肩を抱き寄せた。
「帰りたくないよぉ」
「ダメだぞ、ちゃんと寝ないと」
「・・・・・・あい」
「今度さ、オフの時に遊ぼうな」
「うん」
タクシーが止まる。
辻の家の前。
「じゃね、のの」
「ばいばい、、、」
辻は、見えなくなるまで手を振っていた。
角を曲がって、市井は帽子をかぶり直し
鞄からMDを取り出す。
フと顔をあげると、窓の外に吉澤が歩いていた。
なにやら疲れた様子
「あのっ!止めてください!!」
「はい」
車はゆっくり沿道につき、止まった。
お金を渡して、走って追い掛ける。
「吉澤っ!」
「あ、、市井さん」
「帰るところ?」
「いや、、、、」
「時間あるなら、お茶してかない?」
「ナンパですか?」
「あははは」
真っ白なロングスカートが
背が高くて大人びて見えてしまう
吉澤の少女性を呼び起こす。
手近なカフェを探し
人目につかない席を見つけ、座る。
ちょっと年上ぶって
アイスコーヒーにした。
15L.O.D:01/12/27 11:55 ID:xH+HHIn0
「市井さん、なにしてたんですか?」
「ののに会ってたんだ」
「あ、そうですか」
「吉澤は?」
「ごっちんのところに行ってました」
「後藤か・・・・・・元気してる?」
「はい・・・・・・」
少しの間の沈黙を破るのは、吉澤
「市井さんはごっちんの事どう思ってるんですか?」
「・・・・・・」
すぐには答えれない。
「私、ごっちんの事が好きなんです」
「・・・・・・」
「だけど、ごっちんは市井さんの事が好きだから」
そう言って、吉澤はカフェオレを飲む。
ストロ−の中をスーッと駆け抜けてく。
それは市井の中での後藤の気持ちに重なっていく。
「嫌いじゃないよ、、後藤は大切だよ。
 でもね、私はののが好きなんだ。
 抱き締めるという行為は出来ても
 その意味は違うんだよ、、、、」
「・・・・・・」
「なんちゅーの、私が言うのもなんなんだけどさぁ
 吉澤、今までその気持ち、後藤に言った事ある?」
「ないです・・・・・・」
「やっぱそれからじゃないか?
 私もさ、ののに告白した時
 すげぇ怖かったよ。
 だってさ、年の差あるしさ
 それまで、あんま話した事なかったしさ」
「・・・・・・」
唇をキュッと結んだ顔は
何かを決心した様子。
りりしくて、それでいてその顔は
恋をする女の子の顔だった。
16L.O.D:01/12/27 11:56 ID:xH+HHIn0
「なぁ、吉澤」
「はい?」
「一つ、頼みごとがあるんだ」
「なんですか?」
「ののの事なんだけど」
「はい」
「なんか調子悪そうにしてたら
 教えてくれないか、、、?」
「分かりました」
「さっきさ、会ってたけど
 仕事のストレスで相当参ってるみたいだから
 私もさ、いっつも側に居てあげたいけど
 こっちも仕事始まっちゃったら
 なかなかさ、目も行き届かないだろうから、、、
 よろしくな」
「はい」
「ごめんな、付き合わせちゃって」
「いえいえ。市井さんのアドバイスもらって
 少し勇気が出ました。」
「この後はどうする?」
「ごっちんの家に行きます・・・・・・」
ストローが氷をかき混ぜる。
「がんばれよ」
「はい」
小さくうなづく吉澤。
頬が紅潮してたのは気のせいだろうか。
なんかそんな純真さがいいなと思う。
2人は店の前で別れ
吉澤は、後藤の家に向かって走り出した。
今まで心の奥深くに閉まっていた思い、
今、解き放つ。
17L.O.D:01/12/27 12:07 ID:xH+HHIn0
というわけで、ひとまず更新終了。
なんか過去スレにHPのアドレス貼られてたんで
誰だか知らないが乗らせていただいて、
こっちでも宣伝しちゃえ

ttp://shibuya.cool.ne.jp/lods/index.html
18トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/28 03:57 ID:lh2PPkTh
しばらく来なかったら鯖変わってて行方不明だわ新スレ立ってるわ(w
つーわけで新スレおめっとさむです。
ののちゃむだけでなくて他メンの話も増えてきたんですな!ヨイヨイ。
しかし相変わらずののには癒されるな…
19アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/28 05:02 ID:fk7kbRax
保全sage
20ぼの:01/12/28 10:36 ID:q/dPsYKS
あう、何と新スレが・・・
遅ればせながら、新スレおめでとうございます。
21ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/28 10:38 ID:q/dPsYKS
メル欄にトリップつけてもうた・・・
鬱氏
22L.O.D:01/12/28 11:02 ID:Jj526+cg
「お邪魔しまっす!」
お店の方から遠慮なく家に上がらせてもらう。
お客さんも吉澤だと気付いたのか気付かないのか
走り抜けていった少女に見とれていた。
2階にかけ昇って
真希の部屋。
思い切ってドアノブを回す。
「ごっちん!」
いなかった。
・・・・・・。
気まずい。
物音に気付いた姉が顔を出す。
「真希なら風呂だよ」
「分かりましたっ!」
吉澤さん、もう告白する事しか頭にありません。
風呂場へ直行!
何度も止まりに来てるから
風呂場の位置も覚えてる。
すりガラスの向こうに見えるのは
スーパーアイドル後藤真希の裸体。
そんな事も構わず
開けていく。
「ごっちぃん!!」
「わ、わっ、わぁあああ!」
反射で投げ付けられた洗面器も見事に避けた。
そこまで来ると、後藤も相手が吉澤と分かり
落ち着きを払う。
「なんだよぉ、忘れ物でもしたの?」
「ちゃんと聞いて!」
「は、はい」
勢いに飲み込まれて
風呂場で正座する。
しかも、裸で。
「私、ごっちんの事好きなの!」
「はぁ?」
「女の子としてかわいいなって思うんだよっ」
「よっすぃ、そのケあったの?」
「ごっちんだって、市井さん好きじゃん!!」
「いちーちゃんは、、、」
押し黙る後藤。
吉澤はある意味言い切ったからか
張ってた意識が緩む。
見れば、裸の後藤真希が
目の前で正座。
胸が膝に置かれた腕で寄せられて
すごい事になっている。
「ブーッ!!」
「よ、よっすぃ!!?」
鼻から大流血しながら
倒れて行く吉澤の身体を抱きとめる後藤。
濡れた髪から落ちた雫が
吉澤の頬を濡らした。
「よっすぃ、、、、」
後藤は自分で気付いていた。
市井への思いはただ
自分の事を忘れられてしまうような気がして
寂しかっただけ。
23L.O.D:01/12/28 11:03 ID:Jj526+cg
目を覚ますと
目の前に後藤の顔がある。
「あ・・・・・・」
「だいじょぶ?」
「ん・・・・・・」
「あんまり身体強くないんだから、よっすぃは」
「うん・・・・・・」
もう一度、軽く目を閉じた。
ダメだ。
顔を見てると
ドキドキしてしまう。
後藤の手が吉澤のおでこに触れて
さらりと髪の毛を撫でる。
「あんね、いちーちゃんはね
 後藤にとっては大切な人なんだけど
 やっぱさ、ののにベタ惚れだから。
 それに、後藤もそろそろ恋愛したいかなーって。」
気配で分かる。
後藤の顔が近付いてくる。
「よっすぃ、、、ほんとはね、好きだったんだよ」
重ねられた唇。
湯上がりの後藤の唇は
少し冷たくなってた。
身体を離して、吉澤はつぶやく。
「ごっちん、身体冷たいよ」
「あー、、」
「私のせいでお風呂、途中になったからだね」
「そんな事っ」
「入ってきなよ、私も帰らなきゃいけないし」
顔を真っ赤にして立ち上がった吉澤の手を掴む後藤。
「どうせなら止まっていきなよ、、、」
「・・・・・・」
「なんか、よっすぃともっと一緒にいたいの」
「甘えん坊」
はにかむような笑みを浮かべる。
吉澤は後藤に覆い被さるように身体を重ね
再びキスをした。
戯れるような感触を楽しんだ後
ゆっくりと舌を絡ませ
2人の夜が始まった。
24L.O.D:01/12/28 11:03 ID:Jj526+cg
とある仕事場。
市井は携帯を見ると
保田から着信があった。
「なんだぁ?」
とりあえず一度かけてみる。
『はいっ』
「圭ちゃーん」
『ちょっと紗耶香、どうにかしてよ!』
「へ?」
かなり怒り心頭の御様子。
どうなされたのか。
『ごっちんとよっすぃがイチャついて
 私、いる場所ないのよ!!』
どうやら、プッチの仕事らしい。
「あー・・・・・・」
その発言から吉澤が告白に成功した事を知る。
「吉澤におめでとうって言っておいて」
『まったくおめでとうじゃないわよっ!!』
「怒るな怒るな、『シワ増えるぞぉー』」
『クレヨンしんちゃんのモノマネなんて
 古いわよ、、、、、』
「うっさぁいっ!」
『あぁ、仕事始まるわ。じゃ』
「はいはい、じゃぁね」
楽屋の様子が思い浮かぶ。
後藤の事だから所構わず
じゃれあうはずだ。
しかも、似た者の吉澤とだから
それはそれは濃厚な状態なのだろう。
圭ちゃん、御愁傷様などと思いながら
市井は雑誌撮影の続きのため
メイクさんに髪を直してもらっていた。
25L.O.D:01/12/28 11:07 ID:Jj526+cg
『御休憩』
新旧プッチモニをめぐる恋のバトルでした(笑)
圭ちゃん、可哀想・・・・・・
しかも、ミス発見『止まる』ってなんやねん。
ののちゃむ、エンディングまでの見通しが立ったので
こっからは、、、、速いですよ。。
26:01/12/28 12:12 ID:HfK50eOP
鬼更新ふたたび(w

「シスコムーンの誰かも持ちネタで、ちゃむと応酬しあった」
なんて様子がラジオから不意に聞こえてきたいつかの深夜

…「しんちゃん」でフラッシュバック、でした。
27L.O.D:01/12/28 15:37 ID:pT+1Y9vH
11月某日
市井紗耶香復活の数日前。
オフが一日だけあった。
その次の日も
仕事は昼からで
どこかに行こうと思えば
行けるかも知れない。
「んなわきゃないよねー」
そこで、市井の頭に思い浮かんだ構想は
辻にオフか確認

オフだったら、温泉予約

2人っきりで温泉
「完璧だね」
まぁ、辻がオフじゃなきゃ無理なのだが。
ひとまず電話
「ののー?」
『あいあい?』
「市井さぁ、今度の水曜休みなんだけど
 ののは空いてる?」
『えっとぉー』
電話も持ったまま、バタバタと歩く音と
口元からクッキーかなんかを噛み砕く音
それに、バカップル後藤、吉澤のいちゃつきや
加護が遊んでる声が聞こえてくる。
いつも通りうるさい楽屋。
ちょっと懐かしく思う。
『4時で終わりれすよ』
「4時!?」
『インタビューだけ』
「おぉーーっ!」
『さやりんはヒマなのれすか?』
「うち、オフッ!」
『おぉーーーっ!』
「ののっ、泊まりで温泉行こう!」
『温泉!?』
「次の日の朝早くに帰ってくれば大丈夫だから」
『行きたい!行きたい!!』
「よっしゃぁー、マネージャーを口説き落とせ!」
『あいっ』
28L.O.D:01/12/28 15:39 ID:pT+1Y9vH
さて、こちら、辻ちゃん。
マネージャーをどうやって説得するか思案中
(ここはやっぱ飴10個れすかね・・・・・・)
無理だと思います・・・・・・。
安倍がそんな辻を見つけて
声をかける。
「どしたの、辻ちゃん?」
「あのぉ、さやりんと温泉に行きたいんれすけどぉ
 どうやってマネージャーさんを落とそうかなぁーって」
「あー、なるほどねぇ。いいじゃん、秘密で」
「えっ!?」
矢口、乱入。
「何言ってんだよ、なっち!」
「ダメかなぁー、マネージャーにも秘密のアバンチュール・・・・
 素敵・・・・・・・・・・・・」
「アバンチュールって最近、聞かねーのれす、、、」
「アバンチュール、それは恋人達にだけ許された
 甘い甘い逃避行・・・・どうも、チャー(略)」
「うっさい、石川」
「あうっ!」
辻はそこから離れて
後藤と吉澤のところへ行く。
「ねぇねぇ」
「なんだい、アハーン」
「あはははは、よっすぃ、セクスィ」
「さやりんと温泉に行くのに
 マネージャーさん説得したいのれす」
「うーん、そうですねぇ」
「長嶋!長嶋だっ!」
吉澤がボケて、後藤が大爆笑。
まるで林家ペー・パー子夫妻みたいな2人にも見切りをつけて
保田と加護のところに行ってみる。
保田は大人だから、なんかいい案あるんじゃないだろうか
29L.O.D:01/12/28 15:39 ID:pT+1Y9vH
「で、マネージャーを説得したいわけね」
「まだなにも言ってないのに、、、」
「こんな楽屋だったら聞こえるわよ!」
「それもそうれすね」
「なぁーおばちゃーん、うちも温泉連れてってやー」
「保田さん、今度は石川、マッサージしてあげますよっ!」
石川、再び登場。
「えー、石川と一緒だとお湯が黒くなるし」
「なりませんよ!!」
「梨華ちゃんの皮膚から黒いのが
 ドローッと出てくるんやろなっ!!」
ふんだり蹴ったりだな、石川。
まぁ、ここでも話はまとまりそうもなかったので
最後の飯田の所に行ってみる。
リーダーになって、交信の回数も減った。
電波送信中でなければいいのだが。
「どうしたの、つーじー?」
物静かな笑顔。
まるで絵画の中に描かれた美女のような姿
(綺麗・・・・・・)
「あのですねぇ、、、さやりんと温泉に行きたいんれすけどぉ」
「いいよね、温泉」
(ビクッ!?)
「こう、雪が降っててさ、、、、」
(話、長くなるんれすか、、、?)
「で、いつなの?」
(あ、短かった)
「今度の水曜日・・・・・・」
「ふーん・・・・・・じゃぁさ
 圭織と行く事にしておこう」
「ほぇ?」
「それだったらきっと許してもらえるから、ね」
辻も満面の笑み。
マネージャーへの話も飯田がしてくれるそうで
辻はお礼にポケットに入ってた飴を1個
飯田に上げた。
おいしそうに食べてくれて
辻も嬉しかった。
30L.O.D:01/12/28 16:30 ID:pT+1Y9vH
「はくしょん!」
同時刻。
矢口真里は湯舟の中にいた。
「うぅー」
半身浴をがんばってみる。
辻、加護が太ってきたので
自分まで太らないようにしないと。
ただでなくても好物の焼肉を食べる事も多く
このままでは確実に太るであろう未来が見えるので
少なからず抵抗はしておこうかなと
思ったのである。
それはさておいて、ここは
矢口の実家ではない。
ガラスの向うに人陰が見えて
服を脱いでいる。
「ちょー、待ってよぉーー!
 なに、なに!一緒に入るの!?」
「なーに、言ってんのさぁー」
などと言いながら入ってきたのは、安倍。
飯田のようなまるで彫刻のような女性の身体ではないにしろ
安倍もそれなりに太って痩せて、女らしい体型になった。
湯舟に顔半分沈めた矢口は自分の身体と比べる。
(これは、、、ただの肉だもんなぁ)
「身体は洗ったんでしょ?」
「うん」
安倍は、まずは、頭を洗い出す。
少し俯いて、あげられた腕の脇から
胸などが露になる。
安倍の裸体は言うなればルノワールの裸婦像のような
暖かみのある母を思わせるような温もりのある身体。
証拠にと言っていいのかどうかは分からないが
「さ、矢口、どけて」
「・・・・・・うん」
31L.O.D:01/12/28 16:31 ID:pT+1Y9vH
湯舟につかる安倍。
「おいで」
「・・・・・・」
いっつもこうだ。
矢口は安倍に後ろから抱きかかえられるような形で
お風呂に入る。
また矢口にとって、それが一番落ち着くし
気持ち良かった。
「ふふー、矢口だぁ」
「なんだよぅ」
「ギュ」
ちょっと強く抱き締められる。
濡れた頬と頬がぶつかる。
「エッチな事しちゃやだよ」
「そうかいそうかい、矢口はそんなにして、、、」
「ダメだってばぁ!」
胸の前にある手を振払っても
無駄な抵抗に過ぎず
さっと脇の下に入った手は
思いっきりこちょばしてくる。
「いやぁああーーーー
 きゃははははははっつ!!」
「えーいいっ」
仲がよろしいようで。
手が止まって
矢口は湯舟の縁に掴まって
呼吸を整える。
「昔ねぇー、紗耶香とこんな風にして遊んだよ、そういえば。」
「紗耶香ねぇー」
安倍の目は天井のライトを見る。
そこへ、かざす手から零れ落ちてく水滴。
過去の思い出もそんな風に
手の中で生まれる記憶の中から
少しずつ零れていき
過去へとなっていくような気がする。
「辻、最近元気だよね」
「うん」
「なんかちょっと嬉しいんだよね」
「自分の事じゃないけど
 紗耶香が自分で選んだ人と
 幸せにしてるのは、嬉しいよね」
「ね」
そう言って、目を合わせると
どちらからともなく
手を伸ばし、近付き
濡れた唇を重ねる。
こんな事をし始めたのも
互いの紗耶香への思いを抑えるために
始めた児戯だったはず・・・・・・
32L.O.D:01/12/28 16:35 ID:pT+1Y9vH
ぐはぁ、あげまちがった・・・・・・
30、31の前に辻、加護の話来るのに・・・・・・
すまん、、、更新しなおし
33L.O.D:01/12/28 16:36 ID:pT+1Y9vH
その日の帰り
辻の家に加護が泊まっていく事になり
2人は途中までタクシーで行って
コンビニでお菓子を買う。
「えっとぉー」
お菓子の棚の間で
ミニモニ。の2トップが
うんこ座りで選びまくる姿は
なかなか壮絶である。
「なぁなぁ、これよくない?」
「おぉー、よさげー」
駄菓子のコーナーであれやこれやと・・・・・・
「うち、アイスも買おうかなー」
「食べたいねぇー」
「買っちゃお」
「買おう、買おう」
ダイエットなど毛頭から頭にないのか
それとも、もう無駄だと分かったのか
暴飲暴食としか考えれない量を
買っている。
買い物カゴ二つ(それぞれ一つ)が満杯になっている。
店員、2人がかりで処理。
加護が支払いしてる間、まだなにか欲しげに
ポッキーの辺りを物色する辻。
もういい加減にしなさい。
2人はその袋を抱えて、帰宅。
鍵を使って、侵入。
もう家族は寝てる時間。
荷物は辻の部屋に置いて
一息つくべく
ジュースを一杯。
「うぁー」
「うまいねぇ」
「お風呂湧いてるかなぁ
 見てくるね。」
34L.O.D:01/12/28 16:37 ID:pT+1Y9vH
加護を残して、辻はいなくなる。
取り残されても
しょっちゅう来てるところなので
どこになにがあるかも分かってるのだが
フと立ち上がって、机の上を見た。
お菓子のかすしかない。
「勉強しーや、、、」
床にばらまかれた教科書。
思わず一つにまとめて
机の上に上げておく。
写真立てが一つ。
市井と撮ったプリクラがいっぱい貼ってあった。
「いいなぁ」
小さな声でつぶやく。
「あいぼん、お風呂行こ」
くったくのない顔でタオル二つ持って
おいでおいでしてる辻。
「2人で入るん?」
「いいじゃん、たまには」
「のの、ちょっと来」
「あい・・・・・・」
加護が妙に真剣な顔してる。
辻は怒られるのかと思って、ビクビク。
「さすがになぁ、もうこの年やん
 2人でとかなぁー、恥ずかしいねん」
「恥ずかしいの?」
「恥ずかしくないの!?」
「・・・・・・」
反対に驚いた顔で加護を見てる辻に
ビビる加護。
「だって、ののには市井さんもおるやん」
「あー」
「市井さんとは別な子に裸見られるんやで」
「えーだってさぁー、あいぼんだよぉ」
「、、、市井さんが別な子とお風呂入ってたらいややろ!」
「ほぇ?」
35L.O.D:01/12/28 16:38 ID:pT+1Y9vH
「おばちゃんと2人っきりでお風呂!」
「い、いやなのれす!」
驚愕の顔でたじろぐ辻。
保田の裸というだけでなんか込み上げてくる。
一緒にお風呂に行った石川にその辺の事を
今度聞いてみようと心に誓うのであった。
「矢口さんとお風呂!」
しばし、辻の妄想タイム。

・・・・・・・・・・・・。

「、、、なんか楽しそうれすね」
「矢口ー、シャンプーキャップかぶらないと
 シャンプー目に入っちゃって
 痛い痛いから、つけよーなー」
「うんー!」
「ありえるな」
「とりあえず、あいぼんの市井さんの物まねが
 意外と上手なのにビックリしたのれす」
「あんな!Gacktさんでまたネタ作ったんや!」
「見たい!!」
「行くでぇー」
あのー説教はどうなったんですか?
その後、2人は爆笑物まね大会に華を咲かせたという。

「はくしょん!」
同時刻。
矢口真里は湯舟の中にいた。
「うぅー」
半身浴をがんばってみる。
辻、加護が太ってきたので
自分まで太らないようにしないと。
ただでなくても好物の焼肉を食べる事も多く
このままでは確実に太るであろう未来が見えるので
少なからず抵抗はしておこうかなと
思ったのである。
それはさておいて、ここは
矢口の実家ではない。
ガラスの向うに人陰が見えて
服を脱いでいる。
36L.O.D:01/12/28 16:39 ID:pT+1Y9vH
「ちょー、待ってよぉーー!
 なに、なに!一緒に入るの!?」
「なーに、言ってんのさぁー」
などと言いながら入ってきたのは、安倍。
飯田のようなまるで彫刻のような女性の身体ではないにしろ
安倍もそれなりに太って痩せて、女らしい体型になった。
湯舟に顔半分沈めた矢口は自分の身体と比べる。
(これは、、、ただの肉だもんなぁ)
「身体は洗ったんでしょ?」
「うん」
安倍は、まずは、頭を洗い出す。
少し俯いて、あげられた腕の脇から
胸などが露になる。
安倍の裸体は言うなればルノワールの裸婦像のような
暖かみのある母を思わせるような温もりのある身体。
証拠にと言っていいのかどうかは分からないが
「さ、矢口、どけて」
「・・・・・・うん」
湯舟につかる安倍。
「おいで」
「・・・・・・」
37L.O.D:01/12/28 16:40 ID:pT+1Y9vH
いっつもこうだ。
矢口は安倍に後ろから抱きかかえられるような形で
お風呂に入る。
また矢口にとって、それが一番落ち着くし
気持ち良かった。
「ふふー、矢口だぁ」
「なんだよぅ」
「ギュ」
ちょっと強く抱き締められる。
濡れた頬と頬がぶつかる。
「エッチな事しちゃやだよ」
「そうかいそうかい、矢口はそんなにして、、、」
「ダメだってばぁ!」
胸の前にある手を振払っても
無駄な抵抗に過ぎず
さっと脇の下に入った手は
思いっきりこちょばしてくる。
「いやぁああーーーー
 きゃははははははっつ!!」
「えーいいっ」
仲がよろしいようで。
手が止まって
矢口は湯舟の縁に掴まって
呼吸を整える。
「昔ねぇー、紗耶香とこんな風にして遊んだよ、そういえば。」
「紗耶香ねぇー」
安倍の目は天井のライトを見る。
そこへ、かざす手から零れ落ちてく水滴。
過去の思い出もそんな風に
手の中で生まれる記憶の中から
少しずつ零れていき
過去へとなっていくような気がする。
「辻、最近元気だよね」
「うん」
「なんかちょっと嬉しいんだよね」
「自分の事じゃないけど
 紗耶香が自分で選んだ人と
 幸せにしてるのは、嬉しいよね」
「ね」
そう言って、目を合わせると
どちらからともなく
手を伸ばし、近付き
濡れた唇を重ねる。
こんな事をし始めたのも
互いの紗耶香への思いを抑えるために
始めた児戯だったはず・・・・・・
38レク:01/12/28 19:05 ID:HGP7aXsK
更新の鬼だ・・・・・・・
しかも高速ペースにもかかわらず面白さキープできるのがすごい・・・・・・・
39アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/28 23:20 ID:QncrWAak
>>38
レクってレイクさん?
保全下げ
40L.O.D:01/12/28 23:56 ID:pT+1Y9vH
サングラスをかけた市井は辺りを見回す。
まだ来てないっぽい。
よくよく思い出せば
実は、2人ともまだ家にも泊まった事がない。
辻が意識してなかったので大丈夫なのかと思うが
市井の方が少しドキドキしていた。
「さーやりん」
目深に帽子をかぶった少女。
サラサラの長い髪が肩口にかかってる。
「おはよ」
「おはよっ」
「もうちょっとで改札だから、急ぐか」
「うん」
あらかじめ買っておいた切符を
辻に渡し、改札をくぐる。
ホームにはまだ列車はないし
あまり人はいない。
「辻、保田さんにカメラ借りてきましたー」
「おぉー、デジカメ、、、、
 おっ!ビデオじゃん!!
 うちも欲しいなぁーー」
「はーい、さやりん」
一通り、使い方を覚えてきたらしく
録画を始める辻。
「お菓子は?」
「買ってないよぉ」
「んじゃ、売店見てこよ」
手をつなぐ。
辻のふにふにした手。
(握力、腕力は強いが)
「お茶にすっかなぁー」
「んーじゃ、コーラ」
「お菓子、どれにする?」
「んとぉー」
たくさん並ぶお菓子。
腕を組んで悩む姿もかわいらしい。
市井はニコニコしながらその様子を眺めてる。
41L.O.D:01/12/28 23:57 ID:pT+1Y9vH
「ポッキーでしょぉ」
「ポッキーか」
「うん、ポッキー」
「あははは」
「はははは」
なんでか分からないけど笑ってしまう。
これが辻希美の魅力。
他人を明るい気持ちにさせてくれる。
辻を好きになった頃の自分は
実はデビューに向けて
曲がうまく作れなくて
思い悩んでた頃だった。
まだ事務所にも話してなくて
1人で悩んでたのだ。
そんな時に娘。のライブに誘われて
見に行って、終わってから
挨拶に行って
後藤の頭を撫でてあげてると
とととっとやってきて、
市井さーんって掴まってきて
ふにゃふにゃって笑ってる辻を見た時
それだけで歌う事って楽しい事なんだって思わされ
その笑顔が頭に焼き付いて離れなくなった。
やってきた列車の中に乗り込み、席を探す。
人の少なそうな所を選んで座る。
「のの、窓側がいい?」
「うん」
お茶やお菓子、ビデオを窓の脇に置いて
発車の時間を待つ。
人はなかなか増えない。
42L.O.D:01/12/28 23:59 ID:pT+1Y9vH
各駅停車のちょっとボロっちい列車。
なんかその雰囲気を
昔おばあちゃんの家に遊びに行くのに
乗っていたのを思い出して
市井はこの列車を選んだ。
アナウンスがあって、ゆっくりと走り出す。
2人はしばらく黙ったまま
窓の外を見てる。
辻が市井を見て
市井がそれに気付いて
辻を見ようとすると
視線を反らして
そんなやりとりがしばらく続いて
思わず市井は辻のほっぺたをつまむ。
「んむっ」
「えいっえいっ!」
「んぅーーー」
「はははっ」
年の差なんて関係なかった。
一緒にいると楽しくて
安心できて
それがよかった。
だけど、その中で
優しく撫でられるとドキドキして
見つめられると頬が赤くなって
自分はこの人が好きなんだと思う瞬間が
これまでデートした間にも
何度かあったりして
どんどん好きになっていた。
見つめ合うのが恥ずかしくて
辻はポッキーを手にする。
43L.O.D:01/12/29 00:00 ID:u2XbIgws
「ポッキー」
「うん」
「さやりん、やってみてー」
「え?」
「録るからー」
「なに、あのポッキーのCMみたいなやつ?」
「そうそう」
「ちょっと待てよぉーーー」
そう言って、思い悩む市井の姿も録画。
大切な旅の思い出。
「よし、行こう!」
「よーい、3、2、1!」
ファインダーから覗く市井の顔は
妙に大人びて見えた。
それは、辻が娘。に入りたての時の
輝いてる市井にそっくりだった。
芸能界に復帰する事になってから
どんどん光り輝くように見える。
やっぱりどこかで芸能界、
みんなに歌を届けるために
歌う事を望んでいたし
大好きだからだろう。
辻はその源が自分であるとは
思いもしないだろうが。
向かい合って、少し澄ました顔の市井。
俯いた表情から顔を上げてきて
両手でそっと持ったポッキーを口元に当てながら
「君と僕の味・・・・・・」
軽く唇でポッキーをはさんで
うっとりと閉じられた目。
そのまま、近付いてくる。
辻はただそれを撮る事しかできない。
「あはは、どうだった?」
「えと、、、あのぉ、、、」
「お?」
「ドキドキした、、、」
顔を真っ赤にして
ドギマギした様子の辻を見て
自分も照れる。
頭の中は辻の事でいっぱいだった。
そんな調子でかっこつけたら
ロマンチスト市井、あんな風になってしまいました。
「ほらっ!のの、コーラでも飲みなよ」
「さやりんもお茶いる?」
「う、うん」
海が見えてくる。
今日の宿は近い。
44L.O.D:01/12/29 00:13 ID:u2XbIgws
『おそらく本日の更新終了』
えー、そんなわけで旅行です。
アルマーニ濱口さんのカキコを見て
We are・・・見直したけど
俺自身、身体震えた(笑)
45レク:01/12/29 01:47 ID:RGfUK5cr
俺がレイクさん・・・・・ありえないっす(w
俺とレイクさんは蟻と神なみにレベル違います。
もちろんレイクさんが神です。
46トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/29 01:47 ID:ZbZ8TFj1
いや〜甘甘ですなぁ(w なにげになちまりも入ってきてるし…
これからの展開が読めないんだが温泉で事件が起こったりするのかな?
47L.O.D:01/12/29 03:24 ID:jYNkT0IU
えーっと、前の作品にあったような悲劇もないまま
甘甘でイベントが続いていきます(笑)
俺の頭の中の青地図ではそぅとぅ甘いです。
48アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/29 07:52 ID:eT0PMZ5p
>>45
あ、そーすか失礼しました、でも蟻だなんて、、、
>>47
甘甘もあっりすわ
で保全下げ
49L.O.D:01/12/29 17:36 ID:KMifnvOL
海沿いの街の
丘と言うか
ちょっとした山の中腹に作られた宿。
木造の建物は古臭さより
厳かさを携えている。
古くは皇族の療養所として
時を経て、同じく木造の離れを数軒増やし
高級宿となったのだが
湯は昔も今も変わらず
湧き溢れていた。
市井は奮発して、離れを借りた。
本棟からも、隣の離れからも遠く
誰の目にも触れず
ゆっくり出来そうだ。
周りはうっそうとした森だが
窓からは海が見えた。
「わぁっ」
「どうよ、のの?」
「すごいっ、すごいっ!」
嬉しそうな辻を見て、よくやったと自分で誉める。
「お風呂もな、ついてるんだ」
檜作りの内湯。
木のほのかな香りが漂う。
もう一枚、戸を開けると
露天風呂。
こちらは岩作りの湯。
窓の横の位置に当たり
ここからも、海が見えるようだ。
しばらく市井は窓の外を見てて
フッと振り返ると
おまんじゅうを頬張る辻がいた。
「のの、、、、」
「ふぁい?」
「おいしい?」
「おいひいふぇふよ」
「とりあえず、それ食べたら
 お風呂入る?」
「うん」
50L.O.D:01/12/29 17:38 ID:KMifnvOL
「じゃ、市井は先に失礼しよっかな」
バスタオルやら浴衣を棚から取り出し
部屋の隅で服を脱ぎ始める。
ほっそりとした身体。
少し女らしさが出てきた。
辻の視線に気付いて
ちょっと赤くなって
市井は言う。
「エッチィ」
バスタオルで前を隠しながら
風呂へ向かう。
「・・・・・・」
もぐもぐと動かす口。
辻の頭の中で加護の言葉を思い出してた。
『だって、ののには市井さんもおるやん』
『あー』
『市井さんとは別な子に裸見られるんやで』
『えーだってさぁー、あいぼんだよぉ』
今、この状況になって初めて気付いたが
加護の言葉はものすごく大事な事だったような気がする。
一緒にお風呂に入るって事がこんなに
ドキドキするものだと思わなかった。
それだけ恥ずかしくて
恋人にしてみれば
大切な行為なんだと思う。
「お茶でも飲もう」
おまんじゅうの甘いあんこが
口の中に残ってて
それを取り除きたかったというよりかは
お茶を飲んで、落ち着きたかった。
頭の奥で散らつく市井の裸。
51L.O.D:01/12/29 17:39 ID:KMifnvOL
「・・・・・・」
両手で湯呑みを持って
少しずつフゥフゥしながら、飲む。
そういえば、2人で寝泊まりするのは
初めてだったような気がする。
しかも、こんな人から分からないような場所。
ある一点に意識が向く。
夜の事。
市井は自分を求めてくるだろうか。
中澤と矢口の壮絶エロトークで
耳年増になっている辻にしてみれば
今夜、そんな事になってしまうとなれば
それはパニックである。
「あ、、、あぅ、、、、」
「つじー?」
「あぃ、、、?」
「お風呂、来いよーー
 気持ちいいぞぉーー」
「・・・・・・」
ズボンを脱ぐ。
溜息を付く。
「やせとけばよかった」
こういうのを俗に後の祭というが
ここまで来ては仕方がない。
潔く脱ぐ。
脱いだものはまとめる。
娘。に入って、服の畳み方を覚えた。
後藤は料理、洗濯、なんでもござれだが
なんといってもあの性格なので
洋服は脱ぎ散らかしである。
こないだも飯田に怒られていた。
大概は吉澤が見つけて
畳んでおいてあげるパターン。
姿とは反面、物事がきちっとしてる。
勢いで全部脱いだ。
さぁ、あとは風呂へ行くだけだ。
ドアノブを掴む。
この向うには彼女がいる。
52L.O.D:01/12/29 17:40 ID:KMifnvOL
ガチャッという音。
そーっと覗いてみると
市井はダラーーーーっとして
湯の感触を味わってた。
「さーやりん?」
「なんかちょっち恥ずかしいな」
「・・・・・・うん」
「よし、市井が身体を洗ってあげよぅ」
辻の手を掴み、引き寄せ
自分は立ち膝で辻を座らせる。
鏡はなくて、シャンプーなどは
市井が持ってきてた。
それを聞くと、こう答える。
「あー、あれはね、持ってかえる」
「へ?」
「旅の思い出」
「あははは」
「なっちとか持ってかえるしょ?」
「うん、すごい」
「圭織が言ってたけど、東京に出てきた時は
 もっともっとかっぺだったらしいからなぁ」
「いも」
「いもっ」
「いもっ娘。」
「明日香もいもって呼んでたなぁ」
そんな話を絶えまなくしながら
市井の指は丁寧に辻の髪を洗う。
濡れた髪の毛が頬についてるのを取ってやる。
まるで本物の美容師さんみたいで気持ちいい。
「流すよ」
「うん」
シャワーから出るお湯は少し温い。
緊張も一緒に流れていった。
身体洗い用のタオルにボディシャンプーをつけて
背中からこすってやる。
顔とかに比べ、肉付きは薄く
それよりかは筋肉質っぽい。
(バレーやってたからかな?)
なんて市井は1人思いながら
次は腕を洗う。
53L.O.D:01/12/29 17:41 ID:KMifnvOL
「はい、腕あげて」
「うん、、、」
恥ずかしそうに腕をあげる辻。
お姉ちゃんとお風呂に入らなくなって、長い事になる。
こうやって身体を洗ってもらうのもひさしぶりだ。
市井の洗い方はまるでこの泡のように
フワッとやわらかい。
あっというまに腕が白い泡に包まれる。
「こっち、、、向く?」
ためらいがちに吐き出された言葉。
「えー」
「市井が後ろからしてもいいんだけど・・・」
なんかそれもエロっぽいなと
2人とも想像中。
しかし、向かいあってするのもそれはそれで・・・・・・
「あーっと、前は自分でするっ」
「そ、そうだな、それがいいや」
「でも、さやりんの背中はののが洗う!」
「お、頼んだ」
辻が急いで身体の前を洗う。
湯舟に戻った市井は
前を洗うかどうかためらった時の
自分の想像をまた思い出していた。

身体が密着した状態の2人
市井がしゃべるごとに辻の耳元に息がかかる。
「ほら、、、足、、開いて」
「や、、、、、」
「洗えないよ」
「恥ずかしい、、、、」
「洗わないと、、、ばい菌入るよ」
仕方無しにおずおずと足を開く辻。

(なーに考えてるんだっ!?)
54L.O.D:01/12/29 17:41 ID:KMifnvOL
「さやりん、来てぇ」
洗い終わったらしき辻がタオル片手に笑ってる。
「ぶっ!」
辻が立ってると、湯舟の中の市井の
目線の高さと同じところに股が・・・・・・
「?」
(薄っ!中2ってあんなに薄かったっけ!?
 後藤が濃かっただけなのか!!?)
1人、動揺する市井の様子がおかしいので
小首をかしげてる辻希美さんの頭の中は
さやりんの背中を流してあげる事しかない。
「ほらぁ、さやりぃん」
「お、おぅ」
震える心を抑え、椅子に座る。
グッと力が入ったのが分かる。
忘れていた。
辻希美の怪力を・・・・・・
「うわぁあっ!」
「あれ?」
「の、、、、のの、、、、、」
たった一擦りで背中を真っ赤にした市井は耐え忍びながら
出せるだけの声でつぶやく。
「優しくでいいから」
「あー、はい、、、」
露天風呂への扉から入る秋晴れの太陽の光が
日没が近付いてきてるのを知らせる。
ゆったりとした時間。
好きな人とこうして戯れる瞬間。
たまらなく幸せに思える。
55L.O.D:01/12/29 17:52 ID:KMifnvOL
甘っ!!なんだ、この甘さはカレーの王子様より甘いぞ!
56 ◆RiKa.Kls :01/12/29 23:11 ID:micFscRl
『OLやぐたんに〜』から一気によませてもらいました。
>L.O.D
あんた最高だよ
57ねぇ、名乗って:01/12/29 23:37 ID:Th3QWevz
>(薄っ!中2ってあんなに薄かったっけ!?
  後藤が濃かっただけなのか!!?)

市井さん、何考えてるんですか?
っていうか、何「した」んですか?ごっちんと(W
58ねぇ、名乗って:01/12/30 00:13 ID:/He4t530
>>57
多分いろいろあったんだろうよ。
59名無し娘.:01/12/30 00:42 ID:UKSEhS8i
>>L.O.D

甘いねぇ、ニヤケちゃったよ(w
60ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/30 01:17 ID:GwmAyA0h
おおう・・・ so sweet!
なんかカノージョと温泉行きたくなってきた・・・
61L.O.D:01/12/30 01:22 ID:Zk0KCf3o
レスありがとうございます。
書き始めてから調べてみたんですが
各駅停車で4時に仕事終わってから行って
日没前に風呂に入れるような温泉で
海が見える場所などありそうもない関東地方(w
箱根は遠いよね?

そんなわけで、趣味は温泉めぐり。L.O.Dでした。
62トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/30 04:14 ID:6QLzszk7
温泉はイイよねぇ〜(w ののちゃむどうなることうやら…

>>61
地元じゃないからよくわからんけど伊豆とかは?
63レク:01/12/30 06:01 ID:Z9ufOhet
甘いよ!
書き方上手すぎっすよ〜!
64コイズミ:01/12/30 07:34 ID:xE46uUdU
ボッキしたっ!!
65裕ちゃん命:01/12/30 21:12 ID:Bb05Stwo
最近、「OLやぐたん・・・」という題名に気になったので読ませていただき、
話のおもしろさに感動して、その後は順番に小説を読んでいます。
最高です!!
66L.O.D:01/12/30 21:51 ID:WyUwPEhm
>>65
題名は客を呼び込むためにひねりましたからねぇ(w
これからも御贔屓に。

本日の更新はもうちょっと後。
67L.O.D:01/12/30 22:07 ID:WyUwPEhm
風呂から上がり、
辻の髪の毛を拭いてあげてると
ちょうどよく食事の時間で
次から次へとおいしそうな料理が
運ばれてくる。
目をキラキラさせてる辻を見て
ほっぺたをつつくと
満面の笑みで市井の方を見た。
「うまそーだろ?」
「うんっ!」
「よし、じゃ、食べるかぁー」
仲居さんが焼き物に火を入れて、去っていく。
「いったらきまぁーーーす!」
「いただきます」
まず、刺身と御飯一杯が消える。
市井はお弼を開け、よそってあげた。
味噌汁は白味噌で具はアサリ。
ほどよい塩加減がまた御飯を進める。
「そんな慌てて食べるなよー」
「らって、おいしぃんらもん」
口の中をいっぱいにして
しゃべる辻。
「あはは」
「おいしい?」
「おいしいっ」
「あぁっ、こぼすなよ」
やっぱりなにか食べてる時の辻は
輝いてるというか
本当にかわいい。
食べるという行為自体が好きなのだろう。
そんな顔をしてくれると
市井も嬉しくて
またどっかうまいところを探したり
しようかなって思ってしまう。
68L.O.D:01/12/30 22:08 ID:WyUwPEhm
食事が終わったら、2人でゆっくり
テレビを見てた。
辻がちょっと甘えてきて
ごろごろと横たわってる市井に
なにかとふっつきたがる。
市井もそんな辻を時折かまってやって
じゃれあってみたり。
仲居さんがやってきて、布団を引けば
そのまま枕投げに発展。
「行くぞー」
「負けないよぉー」
枕を構えて、ニカッと笑う2人。
ピッタリふっついた布団。
よけいな気を利かせてくれたものだ。
すぐに市井の顔面にクリーンヒット。
「ぶはっ!」
「あはははははっ!」
「ののーーーっ」
「キャァアーーー」
二つ枕を持って投げると
辻は器用にキャッチ。
「へへーっ」
「うわっ、お前、、やめろぉーー」
「うりゃぁーーー」
楽しそうな声が響く。
しばらく、そうやってじゃれあってると
汗をかいてきてしまう。
「っはー」
「疲れたー」
「パジャマ着る?」
「うん、着替える」
「その前に一っ風呂あびて
 汗流すってのも良くない!」
指をピッと辻に向けて、決めっ
辻も同じように返して、一言
「いいですねぇー!」
69L.O.D:01/12/30 22:09 ID:WyUwPEhm
さっきのテンションのまま
2人で脱ぐ。
「のの、お前お腹すごいぞー」
「ぷよんぷよんだぁー」
「腹叩くなよぉー」
「あははははっ、ぽぉーん」
「風呂へレッツゴー」
「ゴー」
露天風呂。
内湯からつながるドアを開けると
少し冷たい風が吹いてる。
「?hぅあー」
市井がアイドルらしかぬ声を上げながら、湯につかる。
「行くぞーー!」
「あ、待て、のの!!」
暴走王辻希美にかかれば
こんな露天湯も飛び込みだ。
水しぶきというよりも
巨大な波が市井に襲い掛かった。
「だぁーーーーー!」
頭からビッショリ濡れた市井。
顔についた水を払って
髪の毛をスーッとオールバックにする。
「ん?」
辻が笑いもしないでおとなしいので
底に顔面か、頭でも強打したかと横を見ると
黙ってこっちを見てた。
「どした?」
「んー、、、、」
「頭でも打った?」
「ううん」
辻はちょっとニヤケながら、俯いた。
70L.O.D:01/12/30 22:10 ID:WyUwPEhm
「なんだよぉ」
市井が手を伸ばして、辻の手を握る。
「かっこいいなって思った、、、、」
「へへ、、、」
腰を抱き寄せ、キスをする。
「はぁ、、、」
「んっ、、、」
市井の目の端に海が映る。
月が波間を照らし
幻想的な風景だけど、
目を閉じて
辻との舌の遊びを楽しむ。
ゆっくり、そして、激しく絡み合う。
長い長いキス。
きっと2人が付き合って
今までで一番長くて激しいキス。
「好きだよ、のの」
「私も大好きだよ、、、、」
「呼んでよ」
「?」
「私の事」
「さぁやりんっ」
市井が下になりながら
ギュッと抱き締める。
柔らかな身体。
まだまだ成長途中の女の子の身体。
大好きな人の身体。
髪の毛がお湯についても気にしない。
今はただ抱き締めていたい。
鼓動が混じる。
2人とも速くなってる。
今は自分がどんな身分の人間だろうがよかった。
目の前の人とこうして抱き合えるだけでよかった。
「あったかいね」
辻が耳元でつぶやく。
「うん、、、、、、あれ?」
市井は答えてから異変に気付く。
自分の肩口を湯以外の物が、、、、、、
「あー、鼻血」
ダラァーーーっと両方の鼻から赤い血を垂れ流す辻も
またバカっぽくてかわいいと思いながら
思わず爆笑してしまった。
71L.O.D:01/12/30 22:12 ID:WyUwPEhm
書きながら、息子。が興奮してしまいました、申し訳。
72ねえ、名乗って:01/12/30 22:57 ID:Ef1Oskkx
>>71
前回の更新のほうが俺はやばかった
73ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/31 00:44 ID:jE5KjBpP
漏れ、温泉モードに入ってから元気になりっぱなし。
ロッカーに入って頭突きしながら反省。
74トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/31 01:55 ID:XTny7U+j
>>L.O.D
イイ人だ(w やっぱり書き手からしてそうじゃないとね
明日は見られないのでココにくるのは今年最後だなー

皆さん良いお年をってことで…
75名無し募集中。。。:01/12/31 09:42 ID:0Rqw5YIx
チンコ握ったまま年越すぜ
76:01/12/31 09:44 ID:FRDpdpqj
>>作者
お疲れさま&良質の作品を多数ありがとう。
いつか筆を折るその日まで(勘弁してほしいが)読み続けます。

「♪」というコテハンは羊内に類似品が出現したうえ
混同されたくないような寒い内容のレスが書かれているのを発見したり
ってことで、これにて封。

新年のご多幸をお祈りします>皆様
77L.O.D:01/12/31 10:04 ID:6Rv79dDS
>75
持ったまま越せないかも知れないぜー(ニヤソ)

>♪さん
俺が筆を折る日は娘。が解散する時ですよ。
78L.O.D:01/12/31 10:05 ID:6Rv79dDS
パジャマを着て、鼻にはティッシュをつめた彼女が目の前にいる。
「へへー」
心なしか、鼻にティッシュをつめた姿がお気に入りの様子で
終始、笑ってるのだが
こちらとしては少々笑えない現状である。
(あのまま、いい感じで布団に来たかった・・・・・・)
市井紗耶香は悩む。
これからどうやってムードを作れというのだ。
まるで多くの男性の悩みのようであるが
まさしく今、悩んでいた。
予想外のアクシデント、、、まぁ、鼻血なのだが。
どうも元々鼻の粘膜が強い方ではないらしく
よく鼻血を出すらしい。
思い出せば、初めて会った頃も
たまに出してた気がする。
「さやりーん、止まったぁ?」
「まだじゃねーか?」
「かなぁ?」
といって、ポケーッと上を見る辻の口は半開き。
市井はガックリと肩を落とす。
辻は市井が何を考えてるか分かっていた。
実はしょぼくれてたのだが、空元気を見せた。
まったく、自分のダメさに落ち込まされる。
露天風呂ではすごいドキドキした。
あのままだったら、なんの怖さもなく
出来たかもしれないけど
今は少しだけ怖い。
1人でした事がないわけじゃないし
胸だって揉まれた事あるし
揉んだ事もある。
あいぼんのは大きい。
だけど、それとは別の事で意味が違う。
大好きな人に触られるのだ。
今まで他の人に触られた事のない場所を
市井が指でかき分けるのだ。
顔が上気してくのが分かる。
「のの、、、、?」
79L.O.D:01/12/31 10:05 ID:6Rv79dDS
そんな辻に気付いたのか市井が声をかける。
「あ、、、、」
「どした?」
とことこと横に来て、座ると
ぎゅっと手を握ってきた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言のまま、手をつないでる。
辻が市井の肩に頭を乗せる。
「なんだよぅ」
「ごめんなさい、、、」
「なにが?」
「鼻血出しちゃって、、、、」
「ビックリしたけどな」
「や、、、、」
「ん?」
「だって、、、、、」
「?」
口を真一文字に結ぶ。
次の言葉を待ってる市井。
「さやりん、、、、エッチ、、、」
「!?」
思い掛けない言葉が辻の口から出てきて
市井は驚きのあまり、ビクッと身体が震えた。
そんな事を辻が意識してるとは
これっぽちも思っていなかった。
出来ればいいなとは思ってたが
無理だとも半分ほど考えてた。
辻が鼻血を出したのも天命と
諦めかけてたところの一声だったから
なおの事、市井は度胆を抜かれる。
「なぁ、、、辻は、、その、、、、」
逆に恥ずかしくなってくる。
なぜだろう。
「エッチ、、、、とか、、、」
「?」
「知ってる、、、の?」
80L.O.D:01/12/31 10:06 ID:6Rv79dDS
「なぁに言ってるのさぁー!
 辻だって、それくらいっ。」
「ま、娘。に入ればな」
「そうだよ、中澤さんがよくしたいしたいって言ってるよぅー」
「そだよなぁー、ははははは」
「あははははは」
再び訪れる沈黙。
なかなか気まずい。
市井は息を整える。
踏み出す勇気。
愛してるからこそ
真正面から行きたかった。
「辻は私としたい?」
「・・・・・・」
へらへらしてた辻の顔が締まる。
考える時間。
1秒が10分にも思える瞬間。
市井にしてみれば、賭だった。
「さやりんの事は大好きだけどぉ」
「うん?」
「エッチするの、、、怖い」
心なしか辻の手が強く握られた気がする。
霧が散っていくように心のモヤモヤが
スーッと去っていく。
市井は辻の目を見る。
「んじゃ、しない」
「え?」
81L.O.D:01/12/31 10:07 ID:6Rv79dDS
「だって、のの、怖いんだろ」
「え、だって、さやりんしたいんじゃ?」
「私はいいよ」
「・・・・・・」
「それよりも、辻が怖くなくなる方が大事だもん。
 その時まで取っておくよ」
「さやりん・・・・・・」
「寝よっ?」
「うん」
「血、もう大丈夫だね」
「・・・・・・」
市井の笑顔。
それだけが辻にとって救いだった。
きっとしたいんだと思う。
だけど、あえてなにもしないでくれた
市井の優しさが沁みる。
「一緒の布団で寝たい、、、」
「おーしっ、来い!」
「へへ」
「こないだ裕ちゃんに会ったら
 ののは抱いて寝ると気持ちいいっ
 て言ってたからなぁー」
「だっこ」
自分以外の温もりがある。
胸元に押し当てられた辻の顔。
「あ」
辻が小さく声を出して
市井を見た。
「ん?」
「お休みのキス」
それはちょっと幼稚なフレンチキス。
軽く口付けて、
辻は布団に潜ってしまった。
82L.O.D:01/12/31 16:35 ID:7cswa6O1
市井が目を覚ましたのはまだ夜中の3時で
布団をめくると、辻は気持ちよさそうに寝ていた。
ただ、寝た時と頭の位置が真逆になってるのが
ものすごく気になるが。
「・・・・・・」
ゆっくりと身体を布団から抜き
トイレに入る。
小用を足し、戻るが、また寝る気にはなれず
冷蔵庫からビールを取り出して
小さな灯をつけた。
辻の顔が見える。
壁によしかかりながら
ビールのタブを開け
軽く流し込んだ。
「苦っ」
最初の一口のいつもの感想。
飲んでいれば、慣れてしまう。
正直、したかった。
これが本音だ。
愛し合いたかった。
抱き締め、キスして
名前を呼んで
愛を囁いて
撫でて
触って
確かめたかった。
あの時
大丈夫といって
優しく抱き締めてしまえば
辻と出来ただろうか。
83L.O.D:01/12/31 16:36 ID:7cswa6O1
でも、それはなんか違う気がして
ただのいたずらであり
愛のあるSEXではないような気がする。
「はぁ・・・・・・」
辻を見る。
まったくかわいい寝顔である。
よだれ垂れてる。
柔らかそうな頬。
市井はぐっとビールを飲んで
缶を持ったまま立ち上がり
辻のところへ歩いていく。
「かわいいなぁ、ののは」
独り言。
真横に座り込み
じーっと見てる。
小さな胸
豊かな腰回り。
ちょっと酔ってきたせいか
一瞬、頭がクラッとする。
「市井はしたかったんだぞぅ」
無邪気な寝顔。
なんとなくキスはしづらい。
「・・・・・・」
もう一度、立ち上がり、今度は露天風呂へ。
「ここなら聞こえないよな、、、、」
めんどくさそうに、パジャマの下を脱ぎ捨てる。
湯が並々と注がれてる縁に腰掛け
膝半分湯につかりながら
始める自慰。
「ん、、、、、」
はだけた上着の中の胸。
身体が火照っていて
指で乳首を転がすと
ちょっといい。
ものすごく恥ずかしい事をしてる感じがする。
84L.O.D:01/12/31 16:37 ID:7cswa6O1
「はっ、、、、はぁ、、、、、」
摘んで、引っぱりながら弄る。
あの子がすると、ちょっと力が強いかもしれない。
そんな事を考えながら弄ってしまう。
「ののっ、、、、、、」
手は下に伸びる。
旅行に来る前にちょっと剃った。
昼に見た、辻の薄さを思い出す、、、、
そこに顔を埋める自分、、、
指で開いて
舌でなぞっていく。
小陰唇の中まで丹念に、、、、
少し膨らんだクリを舌先でつつくようにし
辻の反応を見る。
恥ずかしそうにこちらを見てる。
ますます熱くなるクリをいじりながら
指は入り口をかき回す。
妄想が頭の中をグルグル回る。
「ふっ、、、はぁっ、、、、ん、、、あ、、、」
吐息の間隔が短くなり始める。
蜜が溢れ出すのを指でからめ
二本指で弄る。
中に入れ、肉壁をこすりながら
自分の気持ちいいところを強くする。
ピクッと震える太股。
「はぅっ、、、、んぅ、、、、、うあ、、、、」
頭の中は自分とキスする辻を見てる。
唇が触れ、濃厚に絡み合い
口の端から唾液がこぼれるのも無視して
むさぼるようにせめぎあう。
「ふ、、、うぅう、、、、ふあぁ、、、
 あぅっ、、うあぁ、、あああっ」
全ての感覚が静寂に包まれた。
荒い息。
星の光が一層強く感じる。
(のの・・・・・・)
心の中でつぶやく。
愛してるその人の名前。
85L.O.D:01/12/31 16:38 ID:7cswa6O1
翌日の朝早く
東京駅に2人の姿があった。
「一旦、家帰るんでしょ?」
「うん」
「じゃー、ここでお別れだな」
「分かったぁ」
「また、メールする」
「夜にね」
「おぅ」
バッグを抱えて、また改札を戻っていく辻を見送る。
市井は帰ると、仕事の時間までに帰ってこれる保証がないので
朝からやってるファーストフード店でも行くかと思う。
深く深呼吸。
朝の空気の匂いがした。
86L.O.D:01/12/31 17:21 ID:7cswa6O1
時は過ぎて、12月24日。
市井はプレ・ソロデビューのフォークソングアルバムのおかげで
12月は忙殺された。
頭から仕事は入りっぱなし。
一時のオフもなく、全国行脚&お披露目ライブ。
そうやって一月走ってきた市井がひさしぶりに貰ったオフがよりにもよって
こんな日。
(そりゃないよな)
目を覚まして、1発目に思ってしまった。
街はクリスマスイヴと、はしゃいでる事だろう。
携帯を見ると、辻からメールが来てた。
(これから、リハ行ってきます。)
正月ハロプロのリハも大詰め。
夏先生の声を思い出す。
メールには続きがあった。
(夜、遅くなっても会いたいよ、、、)
会いたい・・・・・・
11月に温泉に行ってから
ほとんど顔を合わせていない。
リハが終わるのは一体何時になるだろう。
場合によっては、午前1時過ぎ・・・・・・
とりあえず返信
(会いたいね)
携帯をベッドに置いて
ひとまず顔を洗おう。
そう思って、市井は部屋からいなくなる。
87L.O.D:01/12/31 17:22 ID:7cswa6O1
『ピース!ピース!』
午前11時半。
時は刻一刻と迫ってくる。
なるべく最上級の物を、
見せれる限りの完全なる物を。
ステージと同じ模型を組み立てた練習場で
踊るモーニング娘。
新メンが入って、2度目のライブ。
前に比べれば、そういう部分でのミスはだいぶ減ってきた。
しかし、今回はハロプロのため人数がものすごく多い。
ラストのステージなどは、半歩間違えれば、人とぶつかりかねない。
辻もそんな中で、何度もライブを重ねた強さを見せる。
近くにいた紺野が振りを間違えてるのを
夏先生が怒る前に教えてあげる。
「分かった?」
「、、、はい」
うまい事間違いが直って、自分でも満足。
「はいっ、休憩!」
今日は予定よりも早く進んでいる。
スタッフも気を利かせてくれて
早めに切り上げて
休みを多めに取ってくれたらしい。
「のの、お弁当、どっちが早く取りにいけるか
 競争なっ!」
「負けないれすよ」
加護が肩を叩いてく。
後を追って、ちょっと駆け足になると
足がもつれて転んでしまう。
飯田が驚いて、駆け寄ってくるが
辻は苦笑しながら立ち上がる。
「ダンスしたばっかりだから、
 あんま走ったりしたらダメだからね」
「あいっ!」
加護のところに行って、仲良さそうに手をつないでる。
「紗耶香とはどーなんだろね?」
矢口がその2人の様子を見ながら、つぶやいた。
「仕事で会えてないよねー、、」
安倍の心配そうな声
「最近、全然、紗耶香の話しないね」
戻ってきた飯田が座りながら、言う。
「朝、なんかケーキ焼いたとか言ってたよ、辻」
汗を拭く保田の一言に驚く皆。
昨日のリハの後にスポンジを焼いたというのか?
確かに、後藤に指南して
趣味はケーキ作りと書けるくらい上手くはなったが
愛の為せる技とでもいうのだろうか。
88L.O.D:01/12/31 17:22 ID:7cswa6O1
午後12時半。
市井紗耶香は街にいた。
お昼は、なんとなく蕎麦が食べたくて
こないだスタッフと食べに行って
おいしかった蕎麦屋に行ってみた。
やっぱり今日はサラリーマンこそいたが
自分みたいな客は少なくて
店員さんも驚いて
「1人ですか???」
と聞いてきた。
笑ってしまったが
内心、(悪いかちゅーねん)とつぶやいた。
自他共に認めるロマンチスト市井紗耶香だが
最近、癒しにハマっていて
和が持つ癒しはなかなか好きだ。
実際、蕎麦食いながら、和んでたし。
クリスマスにうまい蕎麦を食うのも
なかなか風流なものである。
そんなわけで、蕎麦を食べた市井は
少し歩いて、デパート街は避けて
馴染みの服屋へ行く。
古着ブームの頃に安倍がよく行ってた場所で
なかなか好みのリメイクがしてあった。
今はシルバーアクセも取り扱ってて
矢口がはしゃいでた。
そこに行けば、なにか辻にプレゼントが買えるかもと思ったのだ。
食べ物の方が素直な笑顔が見れそうだが
せっかくのクリスマス。
仕事が遅くなってるのに
わざわざ会いたいって言ってくれるんだから
それなりの物を上げたかった。
店はいつもの通り、ちょっと暗め。
B-BOYっぽい格好の店長さん。
ガラス棚の中を覗いてると
「彼氏?」
「まぁ」
「いたんだ、、、、」
「なんだよぉ」
「店長、ちょっとショック、、、」
「あはははっ」
「サイズは?」
辻がこないだ市井の指輪は入らないと言っていた。
もう少しで入りそうなんだが入らないのだ。
「これの一回り大きいやつ」
「あー、はいはい」
店長が出してくれたのは
少しゴツめの紋様入りの奴。
男の人がしてるとかっこいいが
辻がしてるのを想像すると
なんか違う。
「もうちょい軽い感じのがいいかな」
「ふーん」
「これなんかいいな」
市井が選んだのは、
三つ編のシルバーのリングに真珠がついてる。
「誕生日、6月なの?」
「うん」
「これでいいの?」
「ラッピングもよろしく」
「箱は?」
「つけて」
「了解っ」
金を払い、店の中の服を見ながら
待っていると、小さな箱を持って、やってきた。
「ありがとうございましたー」
プレゼントは出来た。
89L.O.D:01/12/31 17:23 ID:7cswa6O1
加護が3人祭をやってる横で
保田と『チュッ!』をやってふざけていた。
午前中はピリピリしてたが
午後は比較的ほどよい緊張の中で進む。
「次!」
ディレクターさんの声。
ステージは暗転している設定。
さっと並んで、イントロが流れる。
頭の中では市井の事を考えていた。
クリスマスイヴ
お仕事は遅くまである。
けど、一緒にケーキが食べたい。
「こらっ!辻ぃ!!」
・・・・・・怒られた。

ミニモニ。が終われば
しばらく他のユニットが続いて
辻の出番はない。
タンポポの皆様を廊下で見つけ
抱きついていく。
石川が一番前にいたので
ひとまず石川に飛びついた。
「りっかちゃぁーん」
「ののーっ」
ひしと抱き合い
顔を見ながら、石川が言う。
「来年は痩せようね!」
「オマエモナー」
「?」
後ろで矢口が爆笑してる。
さっき保田がパソコンで見てたホームページに
文字と記号で作ったかわいい絵と
この台詞があったので
なんとなく使ってみたが
矢口はネタ元を知ってるらしい。
「辻ぃー、、、それ、あんま
 よそでやっちゃダメだぞ!
 ハァーー、おかしぃい!」
タンポポの面々と別れ
控え室に戻り
携帯電話を見る。
市井から返事が来てた。
(私、どうすればいい?)
家で待っててもらうのが一番安全ではあるが。
その旨を伝えると、OKとの返事が返ってきた。
これから、何時までかかるか分からないが
辻の元気は補給された。
90L.O.D:01/12/31 17:24 ID:7cswa6O1
市井は帰りの電車の中で
フッと思う。
一昨年のクリスマスイヴはメンバーと一緒に過ごした。
7個のプレゼントを貰った。
去年のクリスマスイヴは家で寝てた。
今年のイヴはどうなるんだろうか。
いつ待てばいいのか分からない。
まるでサンタを待つ子供のような気分。
起きていれば、サンタさんを見れるかもしれない。
そんなドキドキが胸に響いてくる。
好きな人がいるから。
それはクリスマスイヴのための重要なファクター。
100倍楽しむための大切な事。
それだけでも心が浮き立ってきてしまう。
「のの・・・・・」
小さくつぶやいて、顔がニヤけた。
市井の大事な人、辻希美14才。
食べる事が大好きで
食べてる時が幸せで
甘えん坊なんだけど
怪力で。
モーニング娘。なんていうアイドルグループのメンバーである。
斜向えの男子高校生が娘。の話をしている。
この2、3日特番が続いている。
出せば、視聴率が自然に上がるだけの
トップスターになったのである。
そういえば、こないだのフジテレビの特番では
辻が鼻にケーキをつけてたが
あれは食べててついたケーキではなく
先に加護の鼻にいたずらでケーキをつけた辻が
反撃されて、あーなってしまったらしい。
さすが辻加護である。
フと、ポケットの中の箱を
コートの上から押さえた。
2人とも、今日はサンタクロース・・・・・・
91L.O.D:01/12/31 17:46 ID:7cswa6O1
「っごはん、ごっはん!」
「ごはんを食べさせてくらさい!」
もう飯を食う事しか楽しみがないんじゃないかって勢いで
弁当に入ったダンボールに喰らいついていく
辻と加護の2人を見て
スタッフも爆笑する。
互いに違う弁当をゲットしたらしく
仲良く並んで、どんなおかずがじっくり観察し
どれを交換するか話してると
新メンも周りに集まって来て
なお一層にぎやかになり
ますます学校の遠足と化す。
年上メンバーはなんかそんな風景をほのぼのと
眺めてるのも好きになってきた。
「よっすぃー、あーん」
「ごっちんも、あーん」
この2人は負けないぐらい熱々だが。
「さ、やぐっちゃんも」
「しねぇーよっ」
安倍さんは矢口さんに断られた模様。
「私もしないわよ」
「するわけないじゃん」
「え・・・・・・」
残りの2人に言う前から釘を刺されて
1人おとなしく食べる石川。
13人という大所帯も難しいように見えて
きちんと出来ているようである。
それは、リハの様子にも言えて
中澤がいなくなった分
頑張らなきゃという先輩メンバーの意識と
より一層の努力をしなきゃいけない
後輩メンバーの意識が
うまく前に行っていて
それが伝わってきていた。
今回はハロプロなので
もちろん、この人はいるのだが。
「おはようございまーす」
別の仕事を終えてきた中澤裕子、登場。
92L.O.D:01/12/31 17:47 ID:7cswa6O1
「裕ちゃんっ!」
「おはよー」
娘。のメンバーだけに限らず
稲葉や平家には蹴りまで喰らう始末。
来た早々にボロボロになった中澤は
ちゃっかり矢口の隣に座って
ご飯を食べ始めたのだが
キョロキョロとなにかを探していた。
「どうしましたか、中澤さん?」
「辻、どこや?」
「あそこですよー、いやですねー。
 老眼ですかー?」
「おぉ、いたいた。ありがとさん。
 今日も黒いチャーミー。。」
投げキッスでお礼は返して
ススーッと辻の元へ行く。
辻と加護はなにやらふざけあっていて気付かないが
気付いた新メンの動きが止まる。
どうもまだ慣れないらしい。
後ろからむんずと辻のない胸を掴む。
「おわぁああ!」
机を蹴り壊さないかぐらい
身体を跳ね上げ驚いてた。
「あははははは、なにそんなびっくりしてんねん」
「中澤さぁーーん」
ふにゃふにゃーっとした笑顔。
「あ、キスしよかと思たけどやーめた」
「うん、しないでくらさい」
「なぁー、紗耶香の唇やもんなー」
「そうれすよ、中澤さんのようなみそじとは
 キッスできないのれすよ」
「みそじ言うな、みそじぃぃぃぃぃぃ!!」
「キャァーーーーー!!」
加護の手を引っ張って走り回り
中澤はそれを追わない。
「あれー、裕ちゃん、付き合ってあげなよぉー」
矢口が思わず抗議の声。
ひさしぶりに2人を追いかけ回す中澤が見たかったらしい。
「つまんなぁーーい」
「つまんないれすーーーー」
加護が近くにいた松浦に同じように言うようにけしかけてる。
加護の顔と中澤の顔を交互に見てた松浦だが
ここはネタに走るべきかと判断したらしく
「やっぱり年がーっ、、、、、」
などとつぶやいてしまう。
93L.O.D:01/12/31 17:47 ID:7cswa6O1
「松浦、ごるぁああ!!」
「きゃぁーーーごめんなさいごめんなさい!!」
中澤に襲われ、思う存分キスをされ
解放された時にはグッタリしてた。
何か吸ってるのか、あの人は?
「ってそんな話じゃなくて
 辻さん、あなた、最近どうなのよ?」
「なにがですかぁー?」
「エンジョイしてる?」
「e・n・j・o・y?」
「e、、、n、、、って知らんわ!
 矢口、合ってるっけ?」
「あー、ごめん、矢口、ダメ。
 忘れちゃったから」
「よっさぁあああああーーーーーん!」
「はぁああーい?」
ぴたクリの吉澤の叫び並に呼ぶと
ダンディな声を出して、現れる。
「enjoyなん?」
「合ってますよー」
「あ、そうなんか。
 よかったな、合ってるって」
「はいっ」
「で、そんなんとも違うわ。
 紗耶香や、紗耶香」
「あー」
忙しい事は中澤も一緒に仕事してたから分かっている。
娘。が忙しいのも分かっている。
だから、気になるのである。
そんな事で、紗耶香がせっかく好きになった人と
別れてしまうなんて事がないように。
「今日、ケーキ焼いたんですよぉ」
「ふんふん」
「クリームは面倒だから
 チーズケーキにしたんです」
「で?」
「終わってから、さやりんのお家に行くんです」
「なんや、ラブラブなんかい!」
「へい」
「あー、もうムカつくわぁああ!!
 サンタさぁーーーん、男くれぇーーー!
 あ、やっぱ訂正!矢口でもよし」
「でもってなんだよ、裕子!!」
騒がしいクリスマスイヴの夜。
94L.O.D:01/12/31 17:48 ID:7cswa6O1
家で買ったケーキも食べ終わり
HEYHEYHEYも見て
ダラダラとテレビを見て
自分の部屋に戻って
ゲームをしたり
漫画を読んだり
ギターを弾いたり
キーボードをいじったり
だけど、鳴らない携帯電話。
その内、飽きてきて
ベッドに寝転がって
ボーッとしていた。
来れるだろうか。
会えるだろうか。
時計は11時を過ぎていた。
「はぁ・・・・・・」
1人の夜。
なんだか空しい。
隣に辻がいたらいいのに。
肩を寄せあって
おしゃべりできるのに。
そんな事考えても
隣に辻はいなくて
枕を抱き締めた。
なぜか涙が溢れてくる。
こんなに切ない気持ちになるなんて
思わなかった。
会えない事なんてしょっちゅうなのに
なぜだか今夜はこんなに辛い。
「会いたいよぉ」
95L.O.D:01/12/31 17:49 ID:7cswa6O1
結局、辻の仕事が終わったのは午前3時過ぎ。
この後は体力などの関係上
ここまで遅くなる事はないらしいが
最終的な細かいチェックには
余念がない。
帰る支度をするため
控室に戻ってきて
携帯を見ると
市井からのメールはなかった。
「寝ちゃったのかなぁ」
「かけてみなよ」
安倍が一言そう言う。
「出てくれるさ、紗耶香なら」
他の人がメイクを直したりしてる時間を使って
電話をかけてみる。
コール、1。
『はいっ!!』
「さやりん、、、、ごめんなさい」
『終わったの?』
「うん」
『どうする?眠いんじゃないか?』
自分の身体を気づかってくれる市井。
『無理するなよっ』
「うん、、、ちょっと眠い」
『プレゼントはまた今度渡せばいいから』
「ごめんね、、、、、」
『罰として、そこで大きな声で愛してる、さやりんって言って』
「えー」
『言ってよー』
周りを見ればニヤニヤとこっちを見てる。
辻は思いきって叫ぶ。
「さやりん、愛してるぞおおお!」
『うっしゃ』
「ごめんね、ほんとに」
『いいってば。身体壊したらやばいだろ。
 エビ食ってエビになった圭ちゃんみたいになって
 ハロプロ休まなきゃいけないってなったら
 大変だからなぁーーー』
「さやりん、、、、エビにはなってないれすよ」
『あ、そうだっけ』
保田の目が怖い。
「えっと、あの、メリークリスマス」
『メリークリスマス、チュ!!』
電話の向こうから聞こえてきたキスの音。
顔がますます赤くなってしまう。
『おやすみな』
「おやすみなさい」
この後、辻がボコボコにされたのは言うまでもない。
(特に保田辺りに)

帰りのタクシー
後部座席で全てが終わったように
眠りこける少女がいた。
運転手としても困り物である。
オーバーオールで大股開き。
恥も外分もなく寝てる。
クリスマスイヴの夜でさえ
こんなに遅くまで働く14才。
せっかくのクリスマスが台なしになってしまったけど
あの電話1本で少し落ち着いたらしい。
夢の中で辻は、市井とチーズケーキを食べていた・・・・・・
96ねえ、名乗って:01/12/31 18:07 ID:DQEfzsyg
読んでたらレコ大の最初見損ねる所だった。。。あぶねぇ、あぶねぇ
97名無し娘。:01/12/31 18:42 ID:/3cnKiW1
>>L.O.D

いや〜ご馳走様。甘々だったよ。
>>95
>「さやりん、愛してるぞおおお!」
で、「オッシャー、のの良く言ったッ!」ってパソの前でガッツポーズ←キモヲタ(w

 アンタには色々厳しい事を言ったが、アンタは叩かれて伸びるタイプ(飼育外部etc…
みたいだからこれからもマンセーレスはあんまり付け無いが、放置作品が無いってのは凄い
事だ。その点は評価してるぞ。(狛(略 なんか何個放置してるんだ?(w
L.O.Dの妄想に幸多からん事を願いつつ、
>>ALL
良いお年を…。
98L.O.D:01/12/31 20:37 ID:7cswa6O1
本日、午前7時。
「おはようございまーす」
NHKに元気良く聞こえる挨拶の声。
タレントクロークで受付を済ませ
マネージャーに連れられ
地下2階のいつものリハーサル室へ。
年々、アーティストの確保が難しくなってる
紅白は今年、娘。をフルに使いきろうと
様々な場面で企画を用意してる。
紅白用の衣装1着あれば済むものを
その企画のために、3倍もの量の衣装が
ズラァーーーーーッと並ぶ中
メイクさん、スタイリストさん
馴染みの顔。
ここは、戦場。
ここに立てる事はとてもすごい事。
まるでインプリンティングするように
中澤がよく言ってた。
メンバーは安倍以外みんないる。
間もなくして、安倍もやってきて
飯田が声を出す。
「はーい、みんなちゅうもーーーく」
新メンだけじゃなく
全員が何事かと見てる。
「2001年最後の日でーす」
その瞬間、全員がつっこむ。
「リーダー、その話どれくらいかかりますか!?」
99L.O.D:01/12/31 20:38 ID:7cswa6O1
市井は頭をぐしゃぐしゃとかき回しながら起きてくる。
「誕生日、おめでと」
「ありがと」
?氓Q月31日は市井紗耶香の誕生日。
母親と顔を合わせて、笑ってしまう。
18才の朝。
「なんか違うかい?」
「べっつにー」
「そんなもんなんだよ」
「AVでも借りてくるかなー」
「なーに言ってんの」
と、言って、頭を叩かれる。
キシシと笑って
台所を覗くと、お正月の準備を始めてた。
「再来年のお正月は一緒にいれないね、、、」
「かもねぇ」
手を伸ばして、切り立てのサラミをつまむ。
「ちょっとー」
「へへっ」
「そだ、あんた、あの子と会うの?」
「どうだろ」
「紅白終わってからでしょ?」
「うん」
「寒いからあったかい格好してきなさいね」
「うん」
お湯が湧く音。
いつもの朝の光景。
焼き立てのパンの香ばしい匂い。
「ココアがいい?」
「コーヒー」
「背伸びしちゃって」
「ほら、18才だし」
そして、香ってくるコーヒーの香り。
変わる物
変わらない物
たった一晩という短い間だけど
自分という人間が生まれた日。
100L.O.D:01/12/31 20:41 ID:7cswa6O1
お客さんの入っていないステージで
たくさんの子供達とミニモニ。じゃんけんぴょんのリハ。
踊ってる途中で加護に向って笑いかけた。
気付いて、はける時に手を握り合う。
「なぁ、のの」
「ん?」
「市井さんの誕生日でしょ?」
「うん」
「会いに行かへんの?」
「行きたいよぅ」
「紅白終わったらな、
 具合悪い言うて
 早めに抜けだしちゃえ」
「それ、いいねっ」
矢口もやってきて、
ひそひそ話してる2人に混ざる。
「リーダー、あのですねぇ」
こういう時、加護は本当に頼りになる。
「?」
「ののがちょっと具合悪いって」
「おいおいー、大丈夫かー?」
「頑張ります、、、」
一芝居打ってみせる。
「ハロプロまでは持ってくれよー、、」
「まだ大丈夫みたいだから
 マネージャーさんとかには
 言わなくていいれすよ、、、」
「うん、分かったけど無茶すんなよ?
 辛かったら、ちゃんと言うんだぞ?」
「あい」
すっかり信じ切ってる。
市井に会いに行くための最初の一歩。
加護の手を握り直す。
「ありがとね、あいぼん」
「ちょっとな、元気なさそうだったから
 うちからの遅い遅いクリスマスプレゼントな」
照れながら、そう言う加護の頬にキスする。
「じゃ、これがののからのプレゼント」
「ツジちゃーん、カゴちゃーん!
 kissしてるんですかーーー?」
「うっさい、外国人」
「あっちいけなのれす」
「・・・・・・」
怖っ。
101L.O.D:01/12/31 23:25 ID:7cswa6O1
最近、ちょっと待つ人になっている。
18才記念で
詩でも書こうかと思って
パソコンの前に座ってみたのだが
なんとなくそんな事を思う。
言葉を羅列してても
会えないだとか
見えないだとか
届かないだとか
そんな言葉が並ぶ。
不本意である。
毎日、電話してるし
仕事の途中だってスキ見てメールしてる
なのに、出てくるのはこんな言葉ばかり。
不満なんだろうか。
自分に問うてみる。
それでいいのか。
「うっし。」
時計を見る。
3時。
チャレンジ。
携帯を握りしめる。
辻の電話番号。
かけてみる。
出てくれるだろうか。
「頼む」
『はい?』
「石川か?」
『そうです』
「ののは?」
『今、遊びに行っちゃってるんですよぉ』
「今日の紅白の後のスケジュールは?」
『どっかお店に行って、ご飯食べようって』
「何時くらいになりそうだ?」
石川の声が小さくなる。
『市井さん、お誕生日おめでとうございます』
「あ、ありがと」
『御会いになりたいんですよね、、、?』
「そうなんだけどさ」
『石川が連絡しておきます
 どこに行けばいいですか?』
「・・・・・・いつもの場所で待ってるって伝えてくれ」
『はいっ!』
電話が切れる。
心臓がドキドキと速く打ってる。
いてもたってもいれなくて
ネットでテレビ表を見る。
9時を過ぎると、お子様メンバーは出れなくなる。
かといって、外にも出れないので
大概、楽屋で先輩メンバーのショーなんか見る。
その頃になれば、きっと電話できる。
どうにかして今日は一緒にいたい・・・・・・
102L.O.D:01/12/31 23:27 ID:7cswa6O1
辻と加護と吉澤が廊下で遊んでると
えなりかずきが歩いてくる。
「おはようございます」
「あ、おはようございますっ」
「控室を御訪問したいんですが
 よろしいでしょうか?」
「えーっと、ちょっと待ってくださいね?」
吉澤が走って確認しにいく。
残された辻と加護。
えなりを見て、へらへらーっと笑う。
「?」
「あのぉ」
「はい」
「頭触ってみてもいいですか?」
「あっ、はい、いいですよっ」
2人でえなりの頭を撫でて、はしゃぐ。
「いい頭ですねぇ」
「ねぇ」
「そうですか、あははは」
吉澤が控室のドアから顔を出す。
「OKですよ」
えなりが入っていくのと入れ違いで
石川が出てきて
辻と加護をトイレにつれていく。
ここは他のアーティストもいないので
娘。関係者かNHK関係者しか出入りしない。
「あのね、市井さんから電話があったの」
「え?」
「でね、伝言なんだけど
 いつもの場所で待ってるって」
「待ってるって、、、、」
「紅白終わったら、抜け出して
 早く行ってあげてね!」
手をがっしり掴まれて、
目をキラキラさせて
言われるとうなづくしかない。
「大丈夫やで、梨華ちゃんっ」
加護がビシィっとポーズ。
「うちに考えがあんねん」
103L.O.D:01/12/31 23:32 ID:7cswa6O1
耳を貸してもらって、こそこそっと
あの案を教える。
「ナイスッ!」
「あーでも梨華ちゃんはなんもしないでいいれすよ」
「え?」
「うん、演技ヘタやしな」
「そんな事言わないでよー」
「まぁ、うちらでなんとかするので」
そこまで言われては何も言えず
石川は了解した。
「じゃ、私、戻るね」
「うん」
「うちも、、、戻るな」
「うん」
加護は辻を思って
石川と一緒に行く。
誰もいなくなったトイレ。
「ふぅ・・・・・・」
一つ溜息。
会える。
クリスマスの後もずっと会えなかった。
会ったら、何を話そう。
クリスマスの時のケーキは食べちゃった。
会ったら、どうなっちゃうんだろう。
気持ちが高ぶってる。
自分がどうなるか分からない。
会える事が嬉しい。
会えるんだ。
104ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/01 01:06 ID:AhQnpHqn
明けオメsage。
年末まで鬼更新か。おめでてーな。

LODとこのスレの皆さんにとって良い年になりますように。
あ、あとののちゃむの二人にとっても・・・
105L.O.D:02/01/01 03:31 ID:Am4YzJg6
あけおめーーー。
某所で年越しチャットしてますー(現在進行形)
実は全部書き終わってますが
ちょっともう42時間近く起きっぱなしなので
ちゃんとオトせてるのか確認してから
更新したいと思います、はい。
106名無し娘。:02/01/01 03:43 ID:Uq8yK/Gc
>>L.O.D

ドコ?
107名無し娘。:02/01/01 04:11 ID:Uq8yK/Gc
>>L.O.D

ハケーン(w
108L.O.D:02/01/01 04:13 ID:Am4YzJg6
ハケーンサレー(www
109名無し娘。:02/01/01 04:16 ID:Uq8yK/Gc
>>L.O.D

早く書けッ!(w
110L.O.D:02/01/01 22:04 ID:J1XPgz/f
ブラウン管の中の彼女は
しっかりとした目をして
輝いていた。
モーニング娘。の一員として
紅白という舞台に立ち向かう。
「紗耶香、車呼んだからね」
「うん・・・・・・」
Mr.moonlightのイントロが流れて
踊り出す皆。
目は自然に辻を追っている。
映る度にドキッとする。
かわいいあの子。
大変な人を好きになったと思う。
これじゃテレビだけじゃなくて
雑誌を見てて
広告に出てただけでドキドキしてしまう。
「のの・・・・・・」
無事に歌い終えるのを見届けて
横に置いておいたコートを掴んだ。
母親がマフラーを手渡す。
「がんばってね」
「うん。なに、がんばんだか分からないけど」
手を振り、家を出る。
階段を降りて
団地の玄関口。
タクシーが来てる。
「新宿まで」
111L.O.D:02/01/01 22:05 ID:J1XPgz/f
真っ暗な道を走る。
恋に似てるな、なんて思って
鼻歌を歌う。
緊張をほぐすように。
12月31日という日が
特別な意味を持ち出す。
大晦日だったり
誕生日だったり
今までの人生の中で
何度かくぐり抜けてきた
それらのイベントではなく
好きなあの人に
こんな夜に会いに行くという
それが意味のある事
もう我慢は出来ないから。
気持ちに素直になりたいから。
しばらくすると、東京の光が見えてくる。
自分達を祝ってるって考えると
ロマンティックじゃないか。
市井は少し微笑んだ。
112L.O.D:02/01/01 22:07 ID:J1XPgz/f
長い廊下。
辻は少し俯きながら帰ってくる。
他のメンバーも辻が具合悪そうにしてるのを
なんとなく気付いていた。
「辻、、大丈夫か?」
「あい、、、」
矢口が辻を心配そうに覗き込む。
「圭織、辻さー、具合悪いみたいだから
 忘年会出さないで、帰した方がいいよね?」
「そうだね、、ハロプロに影響したら困るもんね」
飯田が立ち止まって
辻の頭を撫でる。
「辻、それでもいい?」
「いいです、、、、」
前の辻だったら無理してでも
ご飯!!と言い出すだろうが
おとなしくしてる。
よほど具合が悪そう。
振り返り、歩き出した飯田。
保田が口元に笑みを浮かべながら
辻を見る。
そのまま、後藤と吉澤と目が合う。
うなづく2人。
控室に行って、出演のある年上メンバーは
着替えを始める。
年下メンバーもめいめい私服に着替える。
辻もゆっくりと着替え
鞄を抱える。
「、、、お疲れさまれした」
ドアノブに手をかけて、頭を下げ
一度、部屋全体を見渡した。
メンバーは皆、がんばれというような
合図を送ってる。
途端に顔が真っ赤になってしまった。
みんな知っていたのだ。
茶番劇に付き合ってくれたのである。
安倍の優しい声
「ほぉーら、行きなさい」
(紗耶香が待ってるから)
声にならない声が
辻の背中を押してくれる。
辻はきちんと気をつけして
頭を下げると
廊下を飛び出す。
タクシーに乗る前に
財布を確認した。
(プレゼントを買いに行こうっ!)
113名無し募集中。。。:02/01/01 23:02 ID:DXNKzY7g
どこでチャットしてたの??
HPには無かったよね??
114旧♪:02/01/02 08:29 ID:EePtVRrD
>作者
あけま(略
「年内完結」を匂わせる不敵なコメントを見て、
「……やりかねない」
と思いきや終わってなかった(w
115L.O.D:02/01/02 13:38 ID:zVk/SdGJ
実は出来たんだけど、やらなかったっす。
じらそうかな、と。(藁)
116旧♪:02/01/02 18:47 ID:EePtVRrD
>>115
じゃあ「喘いどく」(w
117L.O.D:02/01/03 00:00 ID:kbIejhGx
新宿の裏道にある
カフェスタイルの洋食屋さん。
昼は営業しないで
オールナイトでやっている
朝方、歌舞伎町のお姉さん方が
サンドイッチなんかを買いに来る事もある。
位置が分かりづらいために
結構な穴場だ。
狭いビルで3階まであるのだが
市井は3階の窓から
夜の街を眺める。
少し浮かれているようにも見える。
携帯電話を開く。
午後11時。
まだ来ないだろう。
テーブルの上で湯気を立てるコーヒー。
一口飲んで、気持ちを落ち着けた。
あと1時間で自分が生まれた日が終わりを告げ
新たな年が生まれる時を迎える。
そんな瞬間を辻と分かち合いたかった。
一緒にいたかった。
ポケットからそっと取り出す箱。
クリスマスに渡せなかった真珠の指輪。
真っ白な包装に赤いリボンがついている。
テーブルの上に置いて
ちょこんと指でこづいてみる。
意味もない行動。
頭の中は辻の事でいっぱいだった。

そんな時・・・・・・
118L.O.D:02/01/03 00:01 ID:kbIejhGx
「さやりんっ!!」
真っ白なダッフルコートに身を包んだ
辻が立っていた。
「のの・・・・・・」
嬉しそうにへらへら笑いながら
市井の反対に座る。
ただ無言で見つめあってる2人。
「・・・・・・」
「チュ」
三人祭のように唇を突き出してくる。
市井は恥も外分もなく
その唇を奪おうかと思ったが
やめておいた。
「そだ、のの」
「?」
「これ、クリスマスのプレゼント」
スッと辻の方に押してあげる。
箱を手に取って、左手に乗せてみる。
「クッキー?」
「・・・・・・違うよ」
「開けていいの?」
「うん、開けてみ」
辻は無邪気にリボンをほどき、
むしるように包装を破る。
出てきたのは、藍色のケース。
開くと、そこには、真珠の指輪が一つ。
「指輪、、、?」
「そう」
市井は辻の左手を取り、人さし指にはめてあげた。
サイズは悪くない。
指元でキラキラと輝くそれを
窓から差し込む光の中に置くと
より一層光が増すようで
辻はじぃっと見てた。
119L.O.D:02/01/03 00:02 ID:kbIejhGx
「似合うよ」
「ほんと?」
「うん」
「やったぁ、、、なんかお姉さんになった気分」
「ふふ」
「ののもね、プレゼント買ってきたんだぁー」
肩からかけてたバッグから取り出す。
「じゃーんっ!」
.同じくらいの大きさの箱を受け取って、開けてみた。
小さなピンクシルバーのピアスが一対。
市井は今、してる奴をはずして、つけてみる。
淡い光を放ち、桃色に輝くピアス。
「かわいいっ!」
「ほんと?」
「うんうんっ」
辻が手鏡を出してくれる。
両耳のピアスが鏡の中に映った。
「ありがと、のの」
「へ、、、、あ」
はにかむように笑う辻の頬に触れ
そっと寄せ、優しくキスした。
突然の事に辻はキョトンとして
市井を見てる。
反対に市井は笑っていた。
「なんか、食べるか?」
「、、、うん」
「ここ、量多いから、2人で1つにしよっか」
「、、、うん」
「ピザかなぁ、、、」
「・・・・・・」
120L.O.D:02/01/03 00:02 ID:kbIejhGx
「どした?」
「ううん」
俯く辻。
市井もメニューを持ったまま、黙ってしまう。
ポツリと辻がつぶやいた。
「ビックリしたよぅ、、、」
「ごめん、、、、」
「や、、あの、、、、」
言葉に詰まる。
恥ずかしくて、なかなか言えない。
軽く息を吸って、ホッと吐き出した。
「ドキドキした、、、、」
「、、、」
市井は返す言葉もなくて
ただ辻の事を見てた。
緊張した面持ちの辻
きっとなにか言いたい事があるに違いない。
市井はただその言葉を待つ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「もっと、、、して」
意識が吹っ飛んだ。
何も考えれなくなった。
たった一言で。
何がなんだか分からなくなった。
テーブルの上にある空になったコーヒーカップを
意味もなくもて遊んでた指に触って
ゆっくりとからませ、ギュッと握る辻の手。
「さやりんがね、大好きだよ。
 会えなくて寂しかった。
 寝る前とかにね、泣いたりしたんだよ。
 さっき顔見た時にね、
 すごくドキドキしちゃった。
 今だって、のの、ドキドキしてるんだよ」
「・・・・・・」
「キスも嬉しかった。
 頭が痺れた。
 なんかね、気持ち良かったの」
顔を上げた辻の目はうっすらと濡れてて
ほんのり染めた頬が微笑みすらいじらしくする。
辻希美にまた惚れた。
121アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/03 00:53 ID:0EpysZLk
俺もドキドキする〜W
122トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/03 01:39 ID:SmwzOKeB
どわ〜120で思わず目頭が熱くなっちまったよ!
まったく年明け早々に…

あ、遅くなったですがあけおめことよろ>L.O.D&ALL
123名無し娘。:02/01/03 02:51 ID:jBJ8FxQH
>「もっと、、、して」
>意識が吹っ飛んだ。
>何も考えれなくなった。
>たった一言で。

(・∀・)イイ!! スゲーイイ!!
124L.O.D:02/01/03 17:39 ID:gCH5fK93
少し寒いこの夜の道も
2人で手を絡めて歩けば
暖かかった。
午前0時、2分前。
辻が鍵を取り出す。
閑静な住宅街の中の一件。
辻の家。
「お邪魔しまーす、、、」
ゆっくりと2階の辻の部屋へ行く。
散らかった部屋。
コートを脱いで座ると
辻はすぐに甘えてくる。
力強く抱きしめて
頭を撫でたりしてると
顔を上げて、キスを求めてきた。
最初はそっと唇の感触を味わって
やがて舌をねじ込み、絡めあい
粘膜と粘膜が触れあう卑猥な味を
感じあう。
物音のしない部屋では
ピチャピチャという音が
より一層大きく聞こえて
恥ずかしい。
市井がさりげなく胸に触れても
辻は嫌がらない。
服の上から包み込み
軽く掴んだりする。
「のの、、、」
「?」
「いいか?」
「、、、、、うん」
125L.O.D:02/01/03 17:39 ID:gCH5fK93
つぶやいた辻の頬は赤く染まっている。
市井の指が、シャツのボタンを外していく。
露になるブラジャー。
まだスポーツブラみたいなお子様仕様。
思わず『なつかしっ!』とかリアクションしようかと
思ってしまったが、やめておく。
「胸ちっちゃいから、、、」
「大丈夫、市井もちっちゃかったけど
 ちょっと大きくなったからさ。」
「・・・・・・」
ホックをはずして、やわらかそうな身体を撫でる。
下から上へスーッと動かして
ブラの中に手を入れる。
乳首が少し張り出してる。
指でなぞると、辻は眉を八の字に曲げる。
コロコロと転がすように弄ったり
軽く摘んでやると
それがきつくなったり、弛んだりする。
次第に熱を帯びてきて膨らんできた。
「気持ちいい?」
「うん、、、、」
片手でブラを肩へ寄せ、口で遊ぶ。
唇で軽く甘噛みし、舌で撫で回し
チュッと吸ってみたりすると
辻は顔を真っ赤にして甘い吐息を吐く。
その唇をふさいでる間に
ズボンのチャックに手をかけた。
126L.O.D:02/01/03 17:40 ID:gCH5fK93
下着の上から線にそって優しく撫でる。
腕を伸ばして市井の首にしがみついてきて
市井は耳の中まで舌でいじる。
辻の口元から短く切なげな声を漏した。
「濡れてる、、、」
市井の指はショーツをずらして、直に触れていた。
幼いそこは十分に火照り
雫を貯えている。
先の方にある肉芽を探り当て
たくさんの汁を絡めた指でいじってやると
辻の腰は反応し、ピクッと戦慄く。
「ふふ、、、」
いたずらな笑みを浮かべ
人さし指と薬指で肉壁を押し広げながら
時に強く揉んでやると
クチュクチュというような
非日常的な音が
耳から入り、思考を奪う。
辻の目はトロンとして
全ての力を抜き
市井に身体をあずけ
任せていた。
「イッちゃおうか?」
「・・・・・・」
耳元でそっと囁いてあげると
無言でうなづき返した。
市井は膣口を中指でチロチロと攻め立てる。
首に回った辻の腕が一層強く感じる。
身体全体が震えてるのが分かる。
127L.O.D:02/01/03 17:41 ID:gCH5fK93
(すげぇかわいい、、、、)
自分の腕の中で恥ずかしそうにそっぽを向きながらも
自分の指の動きに反応しちゃってる辻を見て
市井は頭の中でつぶやく。
感じてくれてる。
自分の事を感じてる。
また、自分も辻の事を感じてる。
温もり、感触、そこにいる事
そのどれもが埋まらなかった寂しさを満たしていく。
好きな気持ちが溢れても
互いの天秤皿で受け止めている。
すごいバランスが取れてる。
そして、素直に気持ち良かった。
「ふぁっあぅっ!」
「イッちゃう?」
「んぅう、、あぁあっ!!」
荒い息。
ぐったりとよりかかる身体。
指の間から零れていく愛液。
市井は床の上に辻を寝かせて
もう一度優しくキスした。
うっとりと目をつぶり
波のような快感を感じてる辻。
「あ、そうだ、、、、」
しぼりだすように言う。
汁を拭こうとティッシュを探してた市井は振り向く。
「お誕生日おめでと」
「のの、もう年明けだぞ」
「あぁー」
「ハッピーニューイヤー」
「ハッピーニューイヤーっ」
そう言って、2人は恥ずかしげに笑い合った。

満たされた時間。
また明日へ2人で歩いていこう・・・・・・
愛しい貴方の背中へ
小さな声で
つぶやいた。

A Happy New Year!
128L.O.D:02/01/03 17:51 ID:gCH5fK93
『愛しい貴方へ』終了記念カキコ

というわけで、いかがでしたかののちゃむ。
ちゃむ、、、完璧の炉だな。
129ねえ、名乗って:02/01/03 17:53 ID:leyZZOFl
凄くイイ。最後の更新をリアルタイムでみれるなんて・・・
っつか勃った。
130ねぇ、名乗って:02/01/03 18:16 ID:5Y0TlPtT
うまいねぇ、ほんと。
131ねぇ、名乗って:02/01/03 18:17 ID:GaoukUHM
炉梨ちゃむマンセー
L.O.Dマンセー
132ねぇ、名乗って:02/01/03 23:08 ID:J8heKDcQ
最高です。これ以上の小説は読んだ事はありません。
133名無し娘。:02/01/03 23:41 ID:jBJ8FxQH
>>L.O.D

『愛しい貴方へ』( ● ´ ー ` ● )ありがとう。
正直、エロシーンは要らなかったんじゃないかな?
甘々で終了させた方が(・∀・)イイ!!
ずっと甘口で来てラストがエロになると、読んでる方はチョトビクーリ。
アンタが「師匠」って呼んでる某はその辺が秀逸。
コッチがじれったくなる程エロ描写を使わない。
まぁL.O.Dは某じゃないからL.O.D的甘々って事なんだろうな?

『愛しい貴方へ』は『私の場所』に並んだが抜いてはいない。
134L.O.D:02/01/03 23:48 ID:fwV0eoS4
スマン、どうしてもちゃむにののを抱かせてやりたかったんだ(藁)
135名無し娘。:02/01/04 02:45 ID:ybCNlsE8
>>L.O.D

ア ン タ の 愛 だ ね。 ( w
136旧♪:02/01/04 03:09 ID:p3F/Z4td
>作者
脱稿おめ。
時期と設定を生かしきった「作者自身」と
絶妙の仕込みを成功させた「いちーちゃんの御両親」に感謝(w
137トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/04 04:57 ID:FAhi9vms
完結おめでとう>L.O.D
確かに最後のシーンはあまり露骨に描写しないほうが
素直に終われたかなとは思ったけど、ヨカータよ!
138アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/04 05:53 ID:oM9Au65L
LODさん、お疲れっす
次の新作は誰で行きます?
楽しみ
139L.O.D:02/01/04 06:42 ID:j1PJzqp2
>>136
ちゃむは母親だけだった気がするのは漏れだけだろうか、、、

うーん、やっぱエロシーンない方がよかったんかなぁ、、、
ま、いいや。HPに掲載する時はエンディング差し換えるか、、、、

新作はアンリアルで新メン以外全員出てきます。
もう設定から内容の流れまで完璧に出来てるんで
早々にも始めようかなと。
140旧♪:02/01/04 15:13 ID:p3F/Z4td
>作者
愛し合った御両親に感謝、そして
今回の小説において価値のある
レアな誕生日を持つちゃむにも感謝

ってことね。
141名無し娘。:02/01/04 21:17 ID:wRjPpRoc
キターイ
142裕ちゃん命:02/01/04 21:25 ID:0MWONs7M
最高です!
内容の素晴らしさに引き込まれてしまいました。
次回の作品にも期待します。
(エンディングも私は良かったと思います。)
143ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/04 23:44 ID:Es/viPKy
完結おめ>L.O.D

もう新作の構想があるのか・・・
はやっ。
144ねぇ、名乗って:02/01/05 00:18 ID:3mqsB1s7
L.O.DさんのHPのURL教えて下さい。
145ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/05 00:59 ID:rEIqiVDn
>>144

果たして漏れが書いてもいいものなのか?・・・
http://shibuya.cool.ne.jp/lods/
ですな。
146L.O.D:02/01/05 01:19 ID:oSXpXr94
ぼのさん、ありがとうございます(笑)
ってなわけで、新作のネタですが
愛しい貴方へを書いてる途中で
頭から終わりまで全部話が浮かんじゃいまして
とりあえずそれを書きながら
さらに次の話でも考えていこうかな、と思う次第であります。

新作はTMRのアルバム曲『DREAM DRUNKER』をモチーフに
切なめのコメディになる予定です、はい。
147L.O.D:02/01/05 02:19 ID:oSXpXr94
『Night of Tokyo City 』

其の一、田舎者と女子高生

授業がここまで恐ろしくつまらなく感じるのも
もう慣れてきてしまった。
2流と言ってしまえば、それまでのような大学の
文学部に入学して、早五ヶ月。
今となっては、このレポートを出せば卒業出来るような
授業を適当にサボって、どっかに行くような
ズルがしこさも手に入れた。
安倍なつみ、19歳。
北海道から抜け出したいがために
この大学にやってきた。
とりあえず卒業出来ればよかった。
卒業したところでなにがしたいわけでもない。
ただ昔から、大人になりたかった。
そうすれば、なにか自由になれる気がしたのだが
年を重ねるにつれ
何かが激変するわけでもなく
ただ虚無感を感じながらも
若きゆえに感じる拘束感に喘いでいた。
溜息を一つつく。
それが何かを変えるわけでもないが
そんな煮え切らない生活に
アンチテーゼとして行動しておいたのだ。
くだらない毎日。
148L.O.D:02/01/05 02:20 ID:oSXpXr94
「なっち、学食行く?」
「あー、今日はいいや」
当たり障りのない友達。
初めて座った席が近くて
しゃべってただけの事。
「授業終わりなの?」
「うん」
「そっか、じゃねー」
安倍は自分の性格を知っていた。
なにかの拍子に無意識に言葉で人を傷つけてしまう。
それで、何度も喧嘩したし、
いじめられた。
そういうのが嫌で
塞ぎがちになった。
当たり障りのない付き合い
互いを詮索しない、そんな付き合いをしていれば
自然と壁が出来て、安心できた。
誰かを傷つけなくてすむ。
それだけが、安倍を救っていた。
今日も1人で街をぶらつく。
1人は嫌いじゃない。
自由だから。
どんなわがままだって
1人なら大丈夫。
あっちのお店、こっちのお店と
色々見てまわる。
お気に入りの服屋を何件か回ってみて
その角のこないだ見つけたカフェに入る。
サンドイッチがおいしい。
ライ麦のパンに新鮮な野菜やハムが挟まってる。
それを食べながら、フと自分の二の腕を見た。
(やせなきゃなぁ)
さっきの服屋でかわいいキャミソールを見つけたのだが
この二の腕で着るのは勇気がいる。
思っていても、なかなか実行はできない。
昼食を終え、本屋でも覗こうかと歩き出した時、
カフェ前の交差点の向こう側にゲームセンターを見つける。
高校の時、何人かでやってきて
遊んだ記憶がある。
楽しげなその雰囲気に連れられて入ってみた。
入り口には懐かしいUFOキャッチャーやら、プリクラ。
真中のフロアには挌闘系のゲームが並んで
その周りは、俗に言う音ゲーがズラリと囲んでいた。
149L.O.D:02/01/05 02:20 ID:oSXpXr94
店内は少し暗めで、音の洪水みたいになっている。
昼間だから人は少ないが
それでも、常連らしき人が何人もいた。
安倍はダンスダンスレボリューションの前で立ち止まる。
簡単な曲なら前やった事がある。
ちょうどやってる人もいないし
挑戦する事に決定。
ロングスカートの裾をひらりと舞わせ
台の上に乗り、金を入れたところで気付いた。
厚底サンダルは踊りづらい気がする。
「ま、いっか」
靴をポポイッとそこら辺に投げて
プレイを始めたが、これが惨敗。
でも、間違えることも楽しくなってきて
1人、キャァキャァ言いながら遊ぶ。
汗をかいて、後ろにあるベンチで休憩。
自販機で買ったジュースを飲むと
すごくおいしく感じた。
火照った体にはすごくいい。
結局、その後、1000円近く使って踊ってしまった。

安倍はこのゲームセンター『Wings』に通う事となる。

数日後
本日もまた、授業をサボって
お昼ご飯は適当に済まして
やってきた。
自動ドアが開いて
店内に入ろうとすると
いつもより一層うるさい気がした。
「なんだろ、、、、」
思わずその音の方を見てしまった。
ちっちゃい女子高生が
くまのプーさんのUFOキャッチャーで苦戦してる。
「クソォーーーー!」
かわいらしい声だが
高くてキンキン響く。
「もういっちょ、勝負だっ!!」
女の子は勢い良くコインを投入。
150L.O.D:02/01/05 02:21 ID:oSXpXr94
安倍はその子がとれるのか気になって
DDRの方には行かず
後ろでUFOキャッチャーをしながら
チラチラと見ていた。
キャアキャア言いながら
2000円くらいやっただろうか。
諦めたらしくしょぼくれながら
店内の中に消えていく。
安倍は試しにその台をやってみようと
100円入れた。
ボタン1は横移動。
スーっと動いて。
ボタン2は縦移動。
さっき何度も取り損ねてたぬいぐるみの真上に。
アームががっしりと抱え込む。

  ヒョイ。

あっけない幕切れ。
取ってしまった。
安倍は取り出し口に落ちてきたプーさんを拾う。
「・・・・・・」
店の中を見た。
彼女は小さな体をいっぱい動かして
DDRで狂ったごとく踊っていた。
最上級に難しいレベルでやってる。
「すっごぉー」
いつものベンチのところに座って
彼女のプレイを見てる。
まるで流れるような動き。
安倍のモタモタした動きではとてもじゃないが
かなわない。
151L.O.D:02/01/05 02:22 ID:oSXpXr94
踊り終えた女子高生が鞄からお茶を出しながら
やってきて、隣に座った。
安倍が勇気を出して、声をかけようとした瞬間
その子はヅラを脱いでいた。
(ヅラ!!?)
中から出てきたのは、綺麗な金髪。
よく見ると、目も青い。
(なに、この子、外人さんなんだべか!?
 さっき叫んでたのは日本語だったけど。
 もしかして、日本語は出来る外人さん!!?)
「はぁーーー、疲れたぁーーーーー」
周りを気にせず、でっかい声で叫ぶ女子高生。
「あ、、、あの、、、、」
少し怯えた様な安倍が声をかける。
「ん?」
「これ、、さっき欲しそうだったから」
「おわぁ!プーさんだっ!!
 なに!取ったの!?」
「うん」
「何回やっても出来なかったんだよぉーーー!
 矢口、プーさん、超好きなんだっ!!
 あんがとっ!!」
「いやいや、、、DDR、すごいうまいね?」
「まぁねー、学校サボっては遊びに来てるからねーー」
なんか得意そうにしゃべる。
でも、ちょっとかわいくて
安倍は微笑んでた。
「なっち、最近始めたばっかで全然ヘタなんだ」
「だいじょーぶ、この矢口真里様が教えてしんぜよーー」
「ははぁー」
会ったばかりなのに、しゃべってるとなんか楽しい。
2人ともそう感じて、盛り上がっていた。
安倍はかばんを置いて、DDRをやりに行く。
矢口が横に立って、口で次はどう体を向けたらいいか
教えてくれたりする。
この子とは気が合いそうだ。
思わず顔を見合わせて、笑ってしまった。
152L.O.D:02/01/05 02:22 ID:oSXpXr94
夜。
1人の部屋で、テレビを見てる。
若手のお笑い芸人が素人の女の子の部屋を襲撃してる。
部屋の中を漂うバニラの匂い。
最近、ちょっと凝っていて
今日も帰りがけに何個か買ってみた。
湯上がりの部屋にはイイ感じかもしれない。
携帯を手に取った。
女子高生と仲良くなるとは思わなかった。
2人でゲーセンで遊んだ後
カフェに行って、軽い食事をしながら
しゃべってた。
彼女の名前は矢口真里。
18歳、高校三年生。
一つ年下という事になる。
横浜出身で学校はこっちの商業系高校に通っているのだそうだ。
授業をサボっては、渋谷などで遊びまくるらしい。
Wingsにはよく来ていて、何人かの常連とも顔なじみ。
「メールしてみよっ」
なんとなく彼女なら24時間いつ送っても
メールが返ってきそうな気がする。
それぐらい、ちっちゃな体にパワーがあって
元気いっぱいな感じがする。
『まだ起きてるー?』
すぐに返事は返ってきた。
(まだバリバリだよー!今、カラオケだもんね)
『まだ帰ってなかったのかい、この子はー』
(あはははー、なっち、おばさんみたい)
『おばさんって失礼だねー』
(いもだしね)
『もーこの子は。なっちはそろそろ寝るかな』
(年寄りは寝るの早いねー)
『なっちはおばあちゃんじゃないって』
(ま、いいや。おやすみー、チュ)
『おやすみねー』
かわいらしい。
ひさしぶりに会話が楽しかった。
自然と心が浮き足立っていた。
友達が出来る事がこんなに嬉しい事だって忘れてた。
部屋の電気を消して
ベッドに潜り込む。
今日はいい夢が見れる気がする。
153L.O.D:02/01/05 02:30 ID:oSXpXr94
投稿寸前に表題を変えました。
セカンドモーニングの1曲目のあの歌詞の雰囲気が
すごくこの小説に合ってる気がして。。
154ねぇ、名乗って:02/01/05 23:46 ID:yciiMXCf
最高です。
155アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/06 00:44 ID:4W0oUTUH
おお、もう新作が・・・
LODガンバ!!
156トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/06 02:03 ID:GDn3KTM5
素敵なプロローグです…おいらにとって最強の組み合わせ「なちまり」だし…

初対面の人と話してるのに自分のことを「なっち」って言っちゃうなっち萌え(w
157旧♪:02/01/06 10:44 ID:3vXk59t+
>作者
スタンダードメニュー「なちまり」に対して
どんなスパイスを効かせてくれるのか……
他のメンバーの役どころも気になるね……

「なちまり」っぽいけどこの先どうなるか
わからないな、とも思ってみたり。
158ねぇ、名乗って:02/01/06 21:23 ID:fAXDWig0
おぉこんどは なちまり ですか!やたっ!
ぜひハッピーエンドでお願いしたいです。一押しコンビなんで。
期待してます。がんばってください。
159L.O.D:02/01/06 22:35 ID:78h+pd9O
その後も安倍がWingsにいれば
矢口が来るという感じで
2人はよく遊んだ。
あまり他の街に行ったことのなかった
安倍を矢口が連れ回して
東京案内した事もある。
その日も遊んでたら夜6時を過ぎて
矢口がご飯を食べていこうというので
安倍は付き合って、ファミレスに入った。
メニューの向うに見える矢口の顔。
パッと上がったかと思うと
安倍の鼻を突ついた。
「なっち、彼氏とかは?」
「か、彼氏?」
「いないの?いないよなー、毎日
 ゲーセン通ってる子がなぁーーー」
「うるさいなぁ。矢口だって毎日遊んでるじゃん、うちと」
「あぁ、矢口、彼氏あんま欲しくない」
「へ?」
「だってさぁー、うざくない?
 付き合ったら、他の男の子と遊べなくなるんだよ。」
「あぁ、、、」
「そんなんだったら、友達いっぱいほしい。」
そう言って、メニューに目を戻す矢口の顔は
すごく大人びてるように見えて
安倍は黙って、水を流し込んだ。
160L.O.D:02/01/06 22:36 ID:78h+pd9O
今まで何度か付き合った事あったけど
そんな事考えた事もなかった。
東京の人ってみんなそういう事まで考えて
付き合ってるのかなって思った。
店員さんが来て、矢口が頼んでる。
「なっちは?」
「へ、あ、えーっとね、これで」
しばしの沈黙。
「ボーッとしてどうしたのさ?」
「んー、や、さっき矢口が言った事考えてたんだ」
「さっき?」
「うん、彼氏いたら、他の男の子と遊べない、とか。
 なっち、そんな事考えたことなかったから」
「っていうか、普通そうじゃない?」
「なのかなぁ」
手持ち無沙汰にナプキンを折り直してみる。
「彼氏、欲しい?」
「まぁ、そりゃぁ、、、」
「矢口、男友達だけはさ準備出来るから遊んでみる?」
「えー、、、」
ギャル男っぽいのしか目に映らない。
「みんな、いい人だからさぁ」
矢口と仲良くなった事で
毎日の生活が明るくなった。
誰かと知り合う事を拒む理由はない。
「じゃぁ、イケメンよろしくね」
「イケメンね、OK、OK!
 たぶんみんな呼べば、来るけど
 この後、遊びに行っちゃおうか?」
「この後!?」
「どーせ、いつ会っても同じだって!」
なんて言いながら、携帯電話であっちこっちに電話をし始める。
安倍はそんな矢口を見ながら
ちょうどやってきた料理を食べるのであった。
161ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/06 23:29 ID:eG2wSJog
前作が甘々だったから、今回はDARKなENDを
期待しちゃう(w
162トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/07 01:33 ID:DQ0SoJ6/
>新作はTMRのアルバム曲『DREAM DRUNKER』をモチーフに
>切なめのコメディになる予定です、はい。

この曲を知らないから展開が読めないな
コメディということだからあまりダークにはならんと思うけど…
163ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/07 01:40 ID:Mrjcft0J
>>162
そこ見逃してた。スマソ。
恥晒しsage
164L.O.D:02/01/07 01:43 ID:R5E+ebKr
『今日の更新はないけれど』
えーっと、THE FORTHに収録されてるアルバム曲なんですけど
T.M.Rの歌詞は基本的に井上秋緒という方が書いてるんですが
くだらないお遊びからめちゃめちゃ綺麗な歌詞まで書けるんですねぇ。

今回の小説はDREAM DRUNKERの歌詞の世界にマッチしてるので
興味のある方はチェックしてみてください。
ただ、ある意味、俺が何をやりたいのかまでバレるかも(w)
165トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/07 03:26 ID:DQ0SoJ6/
>>164
歌詞チェックしてみたけど正直この小説にどう反映されてるか
よくわかりませんでした…おいらセンスないんだろうか(w
166ねぇ、名乗って:02/01/07 23:05 ID:4j1D1G0i
>>165
奥が深いんだよ・・・多分ね・・・。
167ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/08 00:06 ID:Iqqc9f5O
ワイも歌詞見てみた・・・が、やはりわからん(w

「いまいち波に乗りきれてない人間なら、
勢いだけで行っちまえ!」見たいに見える・・・

俺、所詮低能よのう・・・
168L.O.D:02/01/08 00:38 ID:llT+ofDO
東京の街中を抜けて
車の流れもスイスイとすり抜けてく。
車内は軽快な音楽に満たされてた。
安倍は後部座席に座って
窓の外を眺めてた。
矢口は助手席で
運転手の人に
「シートベルト、ちゃんとしとかなかったら
 真里、ちっちゃいから飛んでいって
 死んじゃうんだぞー」
とか、からかわれてた。
肩を叩かれたので
振り向くと
隣に座ってた人が話したそうに笑ってた。
「なっちは19だっけ?」
「はい」
「じゃぁー、二つ下だ。
 なにやってんの?」
「大学生です」
「あ、そうなんだぁー。
 俺、実は医大生。」
「へっ!?」
「ぷっ」
矢口もこっちの会話を聞いてて
吹き出してた。
どこからどう見ても
医大生には見えない人。
すっごい遊び人っぽい。
「あはははは、見えねぇよな」
運転手の人もつっこむくらい見えない。
「んだよぉ。地元は?」
「北海道です」
「へぇー、いいなぁ、北海道。
 スキーしたいな、冬なんか」
「コケて、足の骨折るんだよ」
「あ、真里、そういう事言うか
 俺はガキの頃は冬ともなれば
 毎日スキーに行くような子供だったんだぞ」
騒がしい雰囲気。
安倍も一緒になって笑う。
楽しかった。
どうも東京に来てから
ふさぎ込みがちだった。
それを自分の中で正当化して
1人は自由なんて思い込んでるだけだったのかもしれない。
169L.O.D:02/01/08 00:39 ID:llT+ofDO
生まれ育った室蘭の海と同じ
匂いと音がしてた。
心が素直になっていく。
寂しい心は隠せない。
車は浜に乗り込んで
止まった。
4人は車から降りて
真っ暗な浜辺を歩いていく。
やっぱり寒くはない。
「真里、放り込んでやるか」
「えーやだよぉ、後が寒いもん」
「まだ時期としては早いわな」
男の子達が目で合図するのを安倍は見てる。
医大生の人が安倍にうなづいてみせて
安倍もそーっと近付いてく。
「いっせーのぉー」
「えっ!!?うわっぁ!マ・・・・・・
 キャァアアアアアアアアア!!」
「でぇええ!!」
波飛沫が高く上がって
白い雫が飛び散って
投げ込まれた矢口を隠す。
「アハハハハハハハハッ!!!」
「油断してやんのーー!」
「まりっぺ、ビチャビチャだよーーー」
「うはぁー、海水飲んじゃったよーー」
「大丈夫か?化粧ハゲてるぞ」
「マジ!?嘘!」
「お前、化粧濃いんだよっ!」
「ヒドッ!ちょーなっちも言ってやってよー」
「まりっぺのは濃いね」
「あーもー、こいつらぁ!後で復讐してやるー!!」
170L.O.D:02/01/08 00:40 ID:llT+ofDO
悔しそうにドタドタと走っていって
化粧道具を取り出していた。
運転手の人が車の後ろからタオルを取り出して
真里にかけてやる。
冷えた体を暖めるため、車のエンジンをかけて
ヒーターを入れてあげてた。
隣に立ってる彼と2人っきりになってる事に気付く。
沈黙が怖くて、話し掛けた。
「海、好きですか?」
「まぁね、サーフィンやってるし」
「出身、海の近くなんです」
「懐かしい?」
「ちょっと」
はにかむように笑ってみせる。
「座らない?」
「あ、はい」
お尻の下の砂の感触が懐かしい。
「彼氏は?」
「いないですよ」
「そうなんだ」
風が少し強く感じた。
こないだ矢口と一緒に行った美容室で
切ってもらった髪の毛がなびく。
「今年、、、こっち来たんだよね?」
「はい」
「緊張してる?」
「え?」
「はははははっ」
「・・・・・・」
「もっとリラックスしていいんだって」
肩を抱く手。
頬に触れる手。
唇と唇が重なった。
視線の奥に映る車。
少しだけ揺れてたのは
自分の心が揺れてたから?
171L.O.D:02/01/08 00:43 ID:llT+ofDO
『更新終了』

ヒントってのもなんだけど、Night of Tokyo Cityの歌詞も
イメージには近いかな?
なんか空虚な都会感っていうか、そんな・・・・・・
172旧♪:02/01/08 02:48 ID:NvG3zG22
電源を切って都合のいい孤独(一茶)

……なんちゃって(w
松浦のアルバムにも一曲あったかな、そういえば
173トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/08 05:37 ID:NCBexK/P
主人公が置かれている環境(というか心境)が
共通してるような気はしますな>この小説とTMR
「都会の生活にむなしさを感じていてその現状を打破したい」
…みたいな感じなのかな?

>>172
それは「私のすごい方法」のことですかな?
174旧♪:02/01/08 10:10 ID:NvG3zG22
「都会とアタシ」の中に「対人関係」も包括されてるっぽいから
「都会とアタシ」のほうが適切かも、という気がしてきた。

>>173
「♪ほんのちょっとサミシイ関係」っていう歌詞だったと思います。
175L.O.D:02/01/08 12:51 ID:X5M0ZV8c
今日も授業を抜け出した。
紫式部の研究しかしてない古文学の教授の授業なんて
受けてられない。
昼飯もそこそこにWingsに行くと
UFOキャッチャーの新作のプーさんのところに
あの時の運転手の人とイチャつく矢口がいた。
「あ、なにさー。2人でー」
「おぅ、なっち」
「サボり?サボっちゃった?」
「不良女子高生に言われたくないですー」
「ははははは」
などと談笑しながら、矢口の手を引っ張って
奥に連れ込む安倍。
「ちょっと!付き合ってるの?」
「うん」
「まりっぺ、彼氏いらないとか言ってたじゃん!」
「あー、やっぱねぇ、彼氏だよ。
 うん、薔薇色の日々って感じぃ?」
「てめぇ、、、、」
「なんだよぅ、なっち、怒るなよぅー」
ふざけあう2人。
彼はその様子を爆笑しながら見てる。
手には取ったらしきプーさんがぶら下がっていて
それを見つけた矢口がとととっと走っていき
嬉しそうに抱きついてた。
でも、なんかそんな矢口が憎めなくて
安倍は思わず苦笑してしまった。
そして、一言、つぶやく
「あぁーあ、彼氏出来ないかなぁー」

其の一、終了。
176L.O.D:02/01/08 13:50 ID:X5M0ZV8c
其の二 OLとアニヲタ

「みっちゃぁーーーーん、プリクラ撮りにいかへーん?」
「あぁ、もう、裕ちゃん、ちょっと酔い過ぎやって!」
「あっ!あんなところにゲーセンが!!」
意外としっかりした足取りで走っていくのは
中澤裕子、職業OL。
それを追うのは同僚の平家みちよ。
仕事帰りに一杯飲んで
気持ち良くなった中澤は時に暴走する。
Wingsに入っていってしまった中澤は
プリクラの機械の前で
財布の中を覗いてた。
「ほんまに撮るん?」
「ええやん、記念、記念」
300円投入。
仲良さげに頬を寄せあう2人。
『これでいいかなぁ〜?』
「あははははははは!!!!!!」
「あかんて、なんでごっつ睨んでる!?」
「もっかいやろ!もっかい!!」
やり直しのボタンを押して
もう一回ポーズ。
今度、画面に映ったのは
なかなかマシな感じである。
化粧も良さげに白く飛んでるし
綺麗に見える。
「ええんちゃう?」
「まぁ、これはええわな」
「んじゃ、OK!」
なにやら、鼻毛とかいたずら書きして、消して
マジメに文字や装飾を入れなおして、完成。
機械の外で出てくるのを待ってる。
「いやぁー、睨んでるのおもろかったなー」
「あれは人に見せられへんな」
出てきたプリクラをそこにあったハサミで二つに分けて
フラリと店内を見て回る。
懐かしのテトリスを見つけ
座る中澤。
「みっちゃん、見ててやー。」
177L.O.D:02/01/08 13:51 ID:X5M0ZV8c
軽快に始まったテトリス。
最初の内は連鎖なんかも狙っちゃって
その昔取った杵柄なんてものを見せちゃったりしてたのだが
次第に戦況はヤバくなるばかり。
うまく切り抜けると
新たな問題発生。
どうにかして、20分近く粘っていたが
上まで到達してしまった。
「うまいなぁ」
「ほら、みっちゃんやってみ」
「うち、こういうのヘタ!だめだからー!」
「そう言わんとー」
平家を座らせて、自分は立ち上がった中澤の目に
ショートカットっぽい髪型をした華奢な少年が映る。
(好みっ!)
中澤の目の色が変わる。
平家の慌てっぷりを見ながら
彼の様子も見てた。
挌闘ゲームで連戦35勝。
今も乱入してきた奴を瞬く間に
ブチのめしてしまったのだが
至って涼しい顔をしていた。
ほっそりとした顎
芯の強そうな目。
まったく持って好みである。
平家にバレないように
そーっと離れて
彼の後ろに立つ。
気付かないのか
黙々とプレイする彼。
「強いんやなー、君」
「・・・・・・」
(反応、薄っ!)
隣の椅子に座って
足を組んでみせる。
ミニスカートから覗く太股。
気付けば、何人かの
野獣どもがその中を覗こうと集まっていた。
彼は興味なさげにゲームを続ける。
178L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「いっつもここにいるん?」
「・・・・・・」
もう完璧に逆ナンパである。

  ガタンッ!

足下にあった鞄を拾い
席を立つ彼。
ゲームの画面にはエンディングロール。
「チェッ」
「なにしてるん、姉さん!」
「もう終わったん?」
平家が耳元で囁く。
(なんやの、この人達?)
周りは男の群れ
「きしょいゲームヲタやろ」
「さっさと退散しときましょ」
平家に腕を掴まれて、逃げ出すようにその場を離れる。
さっきのプリクラを撮ったところを抜け
UFOキャッチャーが並ぶ入り口付近で
運悪くコケた。
しかも、そのまま両手いっぱいにぬいぐるみを抱えた
ちっちゃい女子高生にぶつかってしまった。
「おわぁあー!!」
「まりっぺ!?」
「大丈夫か、裕ちゃん?」
「痛っ、、、、」
「うぅー」
「大丈夫かい?」
なんかちょっと訛ってる女子高生の子の友達の手を借りて
起き上がってから、ヒールが折れてる事に気付く。
179L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「あちゃー」
平家がこれはいけないというような表情だが
中澤はそれよりもすまなそうな顔で
女子高生を見た。
「ごめんなー、、、ちょっと急いでて」
「矢口は大丈夫だけど、お姉さんこそ大丈夫?」
「いや、、、あんま大丈夫でも無さそうやな、、、、」
ちらっとヒールを見る。
「瞬間接着剤で付くべか?」
訛ってる子が鞄から取り出したのは、アロ○アルファ。
「応急処置やな」
「ほんまごめんな、、、、」
店先の段差に座って、瞬間接着剤が乾くのを待つ。
「お姉さん達、OL?」
女子高生がおっきなプーさんのぬいぐるみを抱えながら
聞いてきた。
「そうやで」
「店じゃあんま見ない顔だなーって思った」
「2人とも、常連さんなん?」
「まぁねー」
「ヒマな時はいっつも来てるよね」
中澤は、これ幸いとばかりに
さっきの彼の事を聞いてみる。
「な、挌闘ゲームめっちゃ強い
 ショートカットの子、常連さん?」
「誰だべ?」
「camiじゃない?」
「神?」
「camiってのはあの人のハンドルネーム。
 ゲームクリアした時とかに名前入れれるっしょ?」
「なるほどなぁー」
「camiがどうかしたの?」
「いやぁ、さっき見てて、うまいな思うて」
なんて言ってる間にヒールがくっついたみたいだ。
「大丈夫みたいやし、帰るかな。
 ほんま、ごめんなぁ。
 なんか怪我とかあったら大変やから
 名刺渡しておくわ。」
女子高生に一枚渡す。
彼女はブ厚い手帳にそれを差し込んだ。
「じゃねーー」
いたって元気そうに手を振る彼女。
中澤も手を振り替えした。
人なつっこい子だ。
180トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/09 00:21 ID:Xv7oPjly
さすがL.O.D、ただのなちまりで終わるとは思わなかったけどこう来ましたか
ゲームセンター「Wings」を中心に互いにリンクするオムニバスなんですな?

>>174
それは「オシャレ!」という曲ですな。ポップで明るいメロディの中に
確かに「都会の薄っぺらな人間関係に対する虚しさ」が表現されてるね…
「あだ名しか知らない関係」を「ほんのちょっと寂しい関係」と主人公が感じている

おいらが挙げた「私のすごい方法」はそこからもっと前向きに考え始めた
主人公って感じの曲かな…
181L.O.D:02/01/09 00:31 ID:zsHRzh5N
『古いエアモニ聞きながら』

えぇ、そんな感じで、現代社会の希薄な関係性とかなんだとか
書いていければいいかなーとボーっと思う次第であります(w
182旧♪:02/01/09 01:11 ID:FDmeDbGR
>>180
なるほど。当方まだ曲とタイトルが一致しておらず(w

>>181
エアモニか……ってヲソロは?
183L.O.D:02/01/09 22:49 ID:R+y3snLr
ちょいと本日は休養日・・・・・・

ヲソロ、テキスト化してるサイトないべか、、、
今さら落として全部聴くのも面倒だ(w
184アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/09 23:58 ID:y3R/BNfH
>>183
普段怒涛の更新だから
ユクーリ休んでください
185L.O.D:02/01/10 16:11 ID:vnWnPief
翌日、中澤は仕事を抜け出して
Wingsへとやってきた。
camiに謝りたかった。
普段の中澤なら酔った勢いやしなどと
ごまかすのだが
彼にもう一度会ってみたかった。
言葉を交わしたわけでもない。
視線を交えたわけでもない。
彼は見向きもしなかったのに
彼に会ってみたかった。
自動ドアが開いて
喧騒の音が聞こえてくる。
真夏の温度に比べ
室内はガンガンに効いたクーラー。
グルリと見回すと
自動販売機の横の幾つかあるテーブルで
彼はノートに何かを書いてた。
中澤は知らぬ顔でコーヒーを買って
向いに座った。
「cami君?」
なにやらイラストを書いてた彼の指が止まる。
ゆっくりと持ち上げられる顔。
「なんすか?」
男の子にしては高めのアルトボイス。
「・・・・・・もしかして、女の子」
「昨日も君って呼んでたっすよね?」
「ごめん、てっきり男だと思ってた」
「ま、いいっすけど」
186L.O.D:02/01/10 16:12 ID:vnWnPief
camiは視線をノートに落とす。
一度だけテレビのチャンネルをザッピングしてる時に見た
深夜アニメのキャラクター。
流れるような流線形で描かれる筋肉は
美しかった。
「昨日はごめんね、酔っぱらってて」
「・・・・・・」
「なんかお詫びしたいんだけど?」
「仕事、途中じゃないんすか?」
「そう、、だけど、、、、」
「いいっすねー、この時代に抜け出して
 ゲーセンでナンパ?」
「な・・・・・・」

  コトッ

camiはペンをテーブルに置いた。
書き殴られたような文字で入れられた『cami』の文字。
「あんた、ここに何しに来てんだよ」
ノートをテーブルの脇に添えられた本棚のケースに納め
カバンを手にすると、行ってしまった。
置いてかれた中澤はコーヒーが冷めても
なかなかテーブルから離れる事は出来なかった。
仕事に戻らなきゃと気付いて
席を立った瞬間
聴き覚えのある声が入り口の辺りから聞こえた。
「お姉さぁーーーん」
「あ、昨日の子・・・・・・」
ちっちゃい女子高生が、身体いっぱい手を振ってる。
精一杯笑ってみせても
元気がないのが分かってしまったらしい。
「どうしたの?」
187L.O.D:02/01/10 16:12 ID:vnWnPief
「cami、、さん、、、怒らせちゃった」
「なにしたのさ?」
「いや、昨日のお詫びをしたくて、、、」
「ふーん」
女子高生は中澤の手を握ると
Wingsを出て、向いのマクドナルドに突入。
中澤はあっけに取られて、何も言えない。
奥の席に座って
女子高生は手帳を開く。
「ハンドルネームcami。
 本名 市井紗耶香。
 16才。高校中退。
 入ったんだけど、イジメにあって、
 本人も行く気を失って、やめた。
 趣味はゲームとアニメ。」
「なんでそんな詳しいん?」
「まぁね」
「そいや、あんた名前は?」
「矢口真里。お姉さんは、中澤ー、、裕子だよね?」
「そう」
「ごめんね、あの子、ちょっと変わってるっていうか
 人見知りするんだよね。」
「そうなんか・・・・」
会話が止まる。
矢口が手帳を鞄に戻す音。
わずかな吐息まで聞こえる。
しゃべりだしたのは、中澤
「あの子に、ここに何しに来てんだ言われたわ」
「うーん・・・・・・」
「ただ謝りたかっただけやねんけどなぁ・・・・・・」
「人には色々と都合があるってもんだよ
 それよりさ、矢口にお昼ご飯おごってー」
その言葉の中の一瞬で、
全てを見通せるガラスのような冷たい目から
少し身を乗り出して、愛玩を待つ
まるで子犬のような顔に変わってしまった。
188L.O.D:02/01/10 16:13 ID:vnWnPief
それが、市井の言葉や境遇にかぶさった。
何しに来てるの。
そこは、ゲームセンター。
ゲームをするところ
そして、閉息した空間。
学校にも行かず、何もせず、バイトもせず
ゲームに明け暮れる人達。
こんな時代にとあの子は言った。
感じてる息苦しさ。
彼女はそれをゲームで晴らしてたんだ。
彼女の中でここは大事な場所。
日々、生きていて
嫌な事はここで晴らす
極個人的な行為をする場所。
中澤はそんな場所に踏み込んでしまったのだ。
「お姉さん?」
「ん?」
「泣いてるよ、、、、?」
矢口が純白のハンカチを差し出してくれた。
気付かなかった。
いつの間にか泣いていた。
心が揺さぶられる。
そして、突き刺さる。
あの子の言葉はそんなに重かったのだ。
気付かされた。
自分が引かれたのは、市井自身じゃない。
Wingsというあの場所なんだ。
会社と家を往復する生活。
上司のセクハラ。
お酒でごまかして、吐いて、
吐き出してた鬱憤。
彼氏の一つもいれば、違っただろうに
うまい事行かなくて
すさんだ心が引き付けられてた。
「矢口はなんでいっつもあそこにおるん?」
「なんでだろうね?」
矢口の携帯が鳴る。
「もしもし?あー、なっち?
 うん、近くにいるよー、マック
 あ、見えた見えた。」
こないだも一緒にいた子が走ってくるのが見える。
中澤はバッグを開いて、財布を取り出し、
テーブルに千円置く。
「これでなんか食べ」
「あれ?お姉さんは?」
「仕事戻らなあかんわ」
入れ違いに訛ってる子も来た。
会釈して、店を出ると
タバコに火をつけた。
いつにも増して
うまくないタバコだった。
189L.O.D:02/01/10 16:48 ID:vnWnPief

平家の誘いを断って
またWingsに足を伸ばすと
訛ってる子が踊ってた。
たどたどしくも踊れてはいた。
ゲームが終わったらしく
タオルで汗を拭きながら
降りてきて
中澤を見つけた。
「こんばんはー」
「こんばんは」
「やりません?」
「これを?」
やった事がなかった。
いっつもいっぱい人がいて
それになんか4とか書いてるし
騒がしいし
やっぱ1から練習しないと
そんな人前で踊るなんてなどと考えてたが
訛ってる子は、いーからいーからとか言いながら
背中を押す。
勝手にお金を入れられ
曲の選択も勝手にされた。
「こ、これ踏めばええん?」
「そうそう。画面がスクロールしてくから
 矢印がピッタリ合うように踏めばいいのっ」
どこかで聴いた事があるディスコサウンド。
見よう見まね。
タイミングを合わせて
踏んでみる。
ゲームの中の歓声は少しずつ大きくなってる気がした。
必死だった。
踏む事だけに頭が行っていた。
190L.O.D:02/01/10 16:48 ID:vnWnPief
「わぁーっ!」
訛ってる子が声をあげる。
Bランク。
悪くはないって事か。
「うまいうまい。
 お姉さん、初めてなんでしょ?」
「おぅ」
「これはスジがいいっしょやぁー」
「あー邪魔やっ!持ってて!」
ヒールを預けて、次の曲に挑戦。
これはなかなかハマるかもしれない。
夢中になって、何曲か挑戦したところで
ゲームオーバーになってしまい
中澤はベンチに倒れ込んだ。
「ご苦労様ー」
彼女が買ってきてくれたスポーツ飲料がおいしかった。
「おもろいな、あのゲーム」
「でしょー、なっちもね、最初ヘタだったんだけど
 矢口がね、教えてくれたんだぁー」
「自分、なっちって言うん?」
「うん、安倍なつみ。」
「うちは中澤裕子」
「裕ちゃんて呼んでいい?」
暖かい笑みを浮かべる女の子だ。
暗くてうるさいこの世界に不似合いなぐらい暖かい。
「ええよ」
ゲームのエディット音が聞こえて
中澤は機体を見た。
水色のパーカーにスリムのパンツルック。
華奢な身体がすごく目立った。
「camiさん、、、、」
つぶやいた声が聞こえたのか
彼女は振り向いた。
一瞬、中澤は怖かった。
侮蔑の視線を向けられるのではないかと
怯えてしまった。
安倍が自然と手を握ってくれた。
191L.O.D:02/01/10 16:49 ID:vnWnPief
「なっちの知り合いなの?」
騒音の中でもよく聞こえる声。
「友達、、かな?」
安倍はそう言って、中澤を見る。
「ふーん」
市井は興味なさげにゲームへと戻ってく。
なんともリアクションがしづらかったが
そんな状況をブチ壊したのは矢口だった。
ドタドタと走り込んできて
市井の隣のDDRの機体に飛び乗った。
「一緒にやろっ」
「O.K」
トランス系の打ち込みサウンド。
B.P.M200の世界。
ちゃんとそこにノッて
完璧に踊ってみせる。
まるでプロのダンサーのように息がピッタリあってて
中澤は息を飲んだ。
1曲終わったところで
思わず拍手してた。
「おっ、ありがとぉう」
手を上げて、それに答えてる矢口に対し
市井は少し笑ってた。
2人のプレイは時に機械のごとく
正確に刻まれ、最高得点を叩き出していた。
「いやぁー、すごいねぇ」
やっぱり安倍は訛っていて
抱きついてきた矢口を迎える。
汗を処理して、次のゲームに向かおうとしてた市井に
声をかけようかためらってると
矢口が大きな声でこう言った。
「紗耶香!裕ちゃんがご飯おごるってさ!!」
「はぁ?」
うるさい中でも声が通じたらしく、
市井はしばらく考える様子だったが
手で丸を作る。
やってきた紗耶香の鞄を
矢口が取り上げ
先に歩いてく。
苦笑すると、市井と目があった。
市井も笑ってた。
「そだ、ゴチになります」
「ええねんええねん」
中澤はそう答え、歩き出す。
気持ちがスッキリした。
4人は一緒にWingsを出た。

其の二 終了
192トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/11 02:22 ID:oWtnJtIi
天才ゲーマーいちーちゃんカッケー(w

其の三は誰が主人公かな…
193L.O.D:02/01/12 05:06 ID:Qo8Y58hp
今日1日1行も書けないまま、こんな時間やわ、、、
194アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/12 05:59 ID:f/9RKM6/
>>193
HPかわってたね〜

創作はたいへんだから、ごゆっくり〜
俺の書いた小説は、速攻DAT逝きしちゃったよ(泣)
195旧♪:02/01/13 04:08 ID:OJveggIW
>作者
大丈夫?病気でなければよいが……
それともスランプかな?
スランプがあるのは一流の証拠らしいから(w

たまには自分のために時間を使ってちょうだい。
保全はしとくから(w
196L.O.D:02/01/13 10:47 ID:1hb18Ur3
左目がものもらいになって、焦点合わないから
長時間パソコンに向かうのが辛いのれす・・・・・・
197名無し娘。:02/01/13 16:22 ID:QnzVskX+
>>L.O.D

姐ちゃむ( ● ´ ー ` ● )ありがとう。
198トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/13 22:46 ID:WWUzUZt1
>>196
無理せんとしっかり療養しましょう…読者はいつまでも待ってるからさっ
199ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/13 23:13 ID:vzDiyjAb
>>198

もちろん俺もその一人ですから(w
200L.O.D:02/01/14 01:02 ID:HT8S5YiL
ちょっと隙間仕事の宣伝で申し訳ないが
出入りさせてもらってるこれが5期新メンです。の副管理人と
共同作業というか、俺はHTMLの書き出ししかしてないんですが
ヲタへの質問状という事で、作ってみました。
もしよろしければ、答えてやってください。

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Screen/3853/
201アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/14 02:07 ID:nhm4788q
>>200
答えました、、、が、、、
質問多すぎですw
202アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/15 01:10 ID:wVvwOppL
保全
回答コナンは間違えw
回答ルパンだねw
203L.O.D:02/01/15 23:13 ID:P2h19N6M
其の三 ロック少女2人。

「おぅ、明日香ちゃん」
「ちぃーっす」
煉瓦調の階段を降りていくと、長髪の男がチケットを切ってる。
ニコやかな笑顔を常連のその少女に向けた。
木製の扉を開けるともう人がごった返してて
前には行けない状態。
ライブ開始10分前。
明日香はカウンターに行って
PAを兼任してるマスターに声をかけた。
「こんばんは」
「おぅ。コーラ?」
「あとでいいです」
「楽しんでいってな」
「はい」
ステージ上の照明が落ちて
真っ暗になった。
横幅10メートルもないであろう小さなステージ。
だけど、その上に立つ奴はみんな真剣。
演奏してる人達の緊張感が大好きだった。
そして、それを乗り越えた時の
爆発と爽快感はもっと好きだった。
昔から音楽は大好きだったが
正直、こんなライブハウスに出入りするほどまで
ハマると思わなかった。
今は強く思う。
私もあのステージの上に立ちたい。
204L.O.D:02/01/15 23:14 ID:P2h19N6M
高校の昼休み時間。
校庭の一角の木陰のベンチで
昼食も終え
ヘッドフォンをかけて
眠っていた。
日射しの中は熱くてたまらないが
ここは風が気持ち良いくらいで
昼寝にはちょうどよい。
コロコロとボールが転がってくる音が聞こえて
明日香は顔を上げた。
同じクラスの男子が制服のまま
サッカーをやっていた。
「ごめん、寝てた?」
「いや、、、」
ヘッドフォンをはずしながら、座り直す。
「いっつもかけてるけど、、、、
 なに、聞いてるの?」
「エレカシ」
「、、、、エレファント、、、」
「そう」
「モーニング娘。とか聞かないの?」
「全然」
「ふーん」
彼は物珍しそうな顔をしてる。
明日香は逆に顔色一つ変えない。
「今度、MD貸して?」
「いいよ」
「サンキュ」
なにげないやり取り。
明日香はまたヘッドフォンをかけて横になる。
少しだけ漏れ出す柔らかく暖かいボーカル。
時に激しく、時に切なく吠える。
明日香にとって、その声は
たまらなく心地よかった。
感情的で、歌を歌うなら、こういうボーカルになりたいと思う。
あのステージに立つためには
何をすればいいのだろう。
学ぶ事は嫌いじゃない。
ただ授業中、お菓子を食べたり
携帯電話をいじってる今の授業風景には
かなり飽き飽きしていたが。
205L.O.D:02/01/15 23:15 ID:P2h19N6M
そんなある日
ライブハウスに行くと
時間を間違えたらしく
まだバンドのメンバーぐらいしか
入っていなかった。
マスタ−が明日香を見つけ
豪快に笑いながら近付いてくる。
「今日は一番乗りだったなぁー」
「はい」
「まだ音合わせしてるバンドもあるから
 見てくかい?」
サッと椅子を差し出され
おじぎして、座らせてもらう。
1フレーズだけ弾いて
アンプとギターの調子を見る
ギタリストや、ベーシスト。
なにやら談笑してるドラムとボーカル。
このライブハウスの一番の注目株のバンド。
明日香はチラリとステージの脇を見た。
女の人が1人。
耳や鼻にピアスをつけた金髪の怖そうな人。
確かドラムの人の彼女だ。
バンドが演奏を始めると
客席の方に降りてきて
ジッと見ていた。
一通りの曲をやったところで
その人に話し掛けらて
明日香はビックリしてしまう。
「どう?」
「へ?」
「うちのバンド」
「かっこいいっすよね」
「いっつもいるよね?」
「はい」
「私、彩」
「福田です」
「下の名前は?」
「明日香ですけど、、、」
「うっし、明日香ね。覚えた。」
会話の端々で彼女が浮かべる笑顔は
怖そうな外見とは反対に
なんとも愛らしい女の笑顔だった。
206L.O.D:02/01/15 23:15 ID:P2h19N6M
「衣装をね、私が作ってるんだ」
「へぇーっ」
強い照明の中で光り輝くレザーのジャケット。
「バンド好き?」
「バンドっていうか、音楽が好きで」
「なに、聞くの?」
「エレカシ」
「渋いね」
「そうですかね」
「いい声してるよね」
「はいっ」
耐えない音楽の話題。
あともう少しでこの空間は
たくさんの人で埋め尽され
声を上げ、飛び跳ね
うねりを生む。
その前に穏やかな時間と
優しい歌。
それに楽しい会話。
先生の抑揚のない声と
黒板にチョークが走る音しかしない
あの場所とは違う充実感・・・・・・
40分後、熱気と汗の匂いでクラクラしそうになるぐらい
ライブは盛り上がっていて
明日香は前線から離脱して
カウンターでジュースを飲みながら
ハンドタオルで汗を拭っていると
近付いてくる影。
「明日香ちゃんっ」
「あ、彩さん」
「うちら、抜け出して打ち上げするから、おいで」
「え」
なにか言おうとする前に手首を掴まれて
たったか外に出てきてしまう。
そこで待ってたのは、バンドのメンバー達。
「うーっし!ご飯食いに行くぞーーー!!」
「っていうか、飲む!」
「お、常連さん」
「よろしこ、明日香ちゃん」
「あ、ども、、、、」
「じゃ、行くよー」
夜の街に繰り出してく。
ライブを終えたばかりで
すっごいテンションの高いメンバーに囲まれ
公衆の面前でイチャつく彩とドラマーを見て
明日香はなぜだか可笑しくて、笑っていた。
207L.O.D:02/01/15 23:19 ID:P2h19N6M
ヒサブリ更新。
えぇっと、ドラマーは豚ですか?などのつっこみは禁止です(w)
208レク:02/01/16 00:12 ID:2oTFBDgk
申し訳ないけどダメだし
206の耐えない→絶えない
ではないでしょうか?
209L.O.D:02/01/16 00:15 ID:hMeR3JN8
げふん・・・・・・
210名無し募集中。。。:02/01/16 02:30 ID:d1DIKDzW
これエロないの?
211トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/16 02:44 ID:bNpyF6OF
明日香とあやっぺね、其の三は。
「Wings」にたむろす連中とどうからんでいくのか楽しみだぁね…

>>210
なんでもかんでもエロを求めるもんじゃありません(w
212旧♪:02/01/16 06:14 ID:WaQsLvnL
お、復活おめ>作者。無理せんとマイペースでどうぞ。
設定の妙にヤラレタ感あり、お見事。

……そういや、エロ、ないね(w
213L.O.D:02/01/16 11:30 ID:ag1/eO6G
みんなでご飯を食べて
カラオケに行って・・・・・・
明日香は普段こうしてたくさんの人と遊ぶ事を好まない。
気の合う友達と部屋の中でのんびりしてる方が好きだ。
買い物に行く時は大概、1人。
ライブを見て興奮してたせいか
ちょっとした事がおもしろくて
とにかく笑ってた気がする。
どっか遊ぶところはないかと
ゾロゾロと歩いてると
メンバーがゲームセンターを見つけて
はしゃぎだす。
向かったのは、ギターとかドラムのゲーム。
よ〜し、お兄ちゃんが本物の技を見せちゃうぞーとか言ってる。
(あぁあ、マイスティックとか出しちゃったよ、、、、)
ギタリストと一度視線を合わせ
プレイを始めると、それは見事なプレイぶり
スティックは回すわ
めちゃめちゃ腰を落として、まったく見ないで弾き出すわ
酔っぱらってるにも関わらず
パーフェクトの連発。
どんだけやり込んでるのか分かりはしない。
戻ってきたドラマーさんに彩が怒ってる。
「あんた、なんでそんなうまいの!?」
「まぁなー」
「ったく、しょうもないことに金使ってー」
「彩もやってみれよ」
「私ー?」
とかなんだとか言いながら
サイフを開いて
ドラムの前に座る彩。
スティックは貸してくれなかったらしく
置いてあるやつを使う。
まぁ、それなりに叩けていて次々とクリアしてく。
明日香はフと隣を見た。
214L.O.D:02/01/16 11:31 ID:ag1/eO6G
この機体を囲むギャラリーの中に
意外な人物を見つける。
入学式の時からなんか変わってたあの子。
夏休みが終わってもそのまま来なくて
学校を辞めてしまったって聞いた。
2人とも人見知りする性格からか
あまり周りに馴染まなかったが
何度か話した事があった。
メンバーの後ろを通り
人波をかき分け、辿り着いた。
「市井さんだよね?」
「はぁ」
「私、同じ高校だった福田」
「・・・・・・」
「覚えて、、ないか?」
「同じクラスだっけ、、?」
「うん」
「そっかぁ、、、」
「元気だった?」
「まぁ、そこそこに」
「そか、よかった。じゃ、また」
「んじゃ」
ちょっと悲しい。
覚えてもらってなかった。
ちょっとやせたっぽい。
首をグルグルっと回して
ギター型のコントローラーを構える後ろ姿。
「どした?」
彩に声をかけられる。
「高校一緒の子に会ったんだ」
「ふーん」
それ以上は何も言わないし、聞いてこない。
見えない壁。
入ってはいけない領域。
だれしもそういう物を持っているし
そういう物の存在を知らない者は
嫌わらていく。
息苦しい世界。
明日香はWingsを後にする。
215L.O.D:02/01/16 11:43 ID:ag1/eO6G
河川敷。
日射しが強い。
ヘッドフォンかけっぱなしで
草むらで横になってる。
幼い頃からなにかあるとここにいた。
なぜだろう、落ち着かない。
別にあんな怒られるの
いつもの事だし
なにげない事。
なのに、今日は酷く辛い。
口に出して歌ってみる。
こんな時に限って悲しい歌。
溜息を一つつく。
こんな時はどうすればいいんだろう。
ゴロンと寝返りを打ってみる。
いい考えは浮かばない。

なにげなくあのゲームセンターにも寄ってみた。
慣れない挌闘ゲームをやったり
1人レースゲームをやる。
DDRを見ると
同じように学校をサボったらしき
女子高生がジャージ姿で踊ってた。
テーブルと椅子を見つけ
そこでヘッドフォンをかけたまま
顔を俯せた。
誰も干渉してこない空間。
216L.O.D:02/01/16 11:44 ID:ag1/eO6G
横にあった棚から何かを取り出す音。
チラっと顔を上げてみると
市井だった。
「あ」
「ごめん、、起こした?」
「いや、寝てなかったし」
別なテーブルに座ろうとした市井を呼び止める声。
「こっち、座らない?」
「・・・・・・」
黙って、ノートを開く。
ここにやってきたゲーム好きの人や
常連さんがラクガキして遊んだり
交流するためのノートらしい。
vol.15と書かれていた。
「今日さぁ、数学の菅井がキレてさ
 私まで標的にされたよ」
「あいつ、うるさいもんね」
「みんな寝てて、私当てられてさ
 問題解けたんだよ。
 だから、怒られてても知らないフリして
 窓の外見てたら、怒られた」
「へぇ」
彼女は興味なさげに絵を書き出す。
「ムカついたからサボっちゃった」
「・・・・・・」
ザクザクッと頭や腕のラインを生み出していく。
明日香は立ち上がり、自販機でオレンジジュースを買う。
席に戻ってくると、市井の方から口を開いた。
「いいんじゃない」
「?」
「人生なんて誰のためのもんでもないんだし」
自分の鞄から何色ものペンを取り出して
描いた絵に色をつけてく。
「自分が楽しければいいじゃん」
ラフな絵。
だけど、まるで今にも動きだしそうな絵。
思い出した。
最初に市井に声をかけたのは
彼女がノートに描いた絵を見た時だ。
『うまいね』って言ったら
少しだけ笑ってくれたんだ。
「夜、またおいで」
「夜、、、?」
「もっと楽しいよ」
そう言う市井の顔は笑顔。
あまり遅くまで出歩いた事なんてない。
市井はそんな事も知ってる。
彼女なりの優しさ?
「ね、、、ねぇ、、、」
「ん?」
「夜まで一緒にいちゃダメかな?」
1人で時間をつぶせるほど
明日香は遊びを知らない。
きっと今この目の前にいる市井なら
人生は自分が楽しめればいいと言い切り
学校もやめてしまって
本当に自由の中にいそうな彼女なら
このくだらない憂鬱を吹っ飛ばす方法を
知ってるような気がした。
「いいよ」
市井は手を伸ばす。
明日香はそれを握り返す。
217L.O.D:02/01/16 11:50 ID:ag1/eO6G
それは、お昼休み前の一番ダルい時間の事だった
みんな寝てた。
明日香はノートを取るフリをして
詩を書いていた。
数学の時間。
興味のない公式と
先生が勝手に解いていく問題達が
黒板の上に踊る。
誰もノートに書き写してないのに
「もういいかー」とか言ってる。
さすがに我慢も限界だったのか
先生は問題を3問書いて
まず明日香に当てた。
「これ、答えろ」
「・・・・・・」
イライラしてるのか高圧的な口調。
明日香は抑えて前に出ると
解いてみせる。
「よし、次、後ろ」
男子は立ち上がって
「分かりませーん」
と、大きな声で答える。
「なにが分からないだっ!お前寝てただろ!
 寝てるから分かんねぇんだよ!!
 大体、なんだ、みんなして寝やがって!」
口汚くののしられる。
明日香は窓の外を見てた。
自分は解けたんだから関係ない。
「おい、福田!こっち見ろ!!」
「・・・・・・」
なんだっていうんだ。
「お前も解けたからっていい気になるなよ!
 さっきからこそこそなにやってんだ、あぁ!?」
(いい気になってるのは自分じゃん)
生徒より格上だと思って
上から物を言う先生。
そんな先生を適当にあしらう皆。
くだらない毎日の循環。
「はぁ、、、すいません」
小声でつぶやく。
お腹が痛い。
授業が終わったら、保健室に行って
さっさと帰ろう。
まんまと帰宅許可が降りて
河川敷へと向かう足。
学校に行く意味を考えてみる。
やっぱり意味なんてない。
「なにやってんだろ・・・・・・」
218L.O.D:02/01/16 11:52 ID:ag1/eO6G
エロは、、、、あるかなぁ、、、、
219旧♪:02/01/16 17:23 ID:WaQsLvnL
>作者
エロ、ひつような、ばあいだけで、いいよ……

音ゲーからませてくるとは……「ドラム」「ギター」とくれば「キー(略」
この板自体、音ゲーに関する香りをほとんど感じなかったんでね個人的に。
描写も「にわか」じゃないしね、とか断定できる自分もアレだが(w
220 ◆KOSINeo. :02/01/16 17:49 ID:e6o2YIdf
>作者さん
小説総合スレッドで紹介&更新情報掲載しても良いですか?
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1000493808/
一応、再確認させていただきます。
221L.O.D:02/01/16 20:37 ID:3Gi3pIxI
>>219
今のゲーセンで音ゲーがない所の方がめずらしいじゃないすか(w
実はあんまりゲームセンターとおぼしき場所には出入りしないんですけどね。

>>220
どんどん紹介したってくださいませ。
222トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/17 02:45 ID:iV2CqfOw
>>L.O.D
>>217>>215の前に入るはずだったのでは。それとも意図した構成なのかな?

それはともかく学校のエピソードはいかにも明日香っぽくて良いですな…
223L.O.D:02/01/17 22:55 ID:dgnSJn6n
夜は昼と姿を変える。
それでいて、人は逆に溢れ
怪しい雰囲気を醸し出す。
ネオンが光る。
そんな街角。
Wingsに戻ってきた2人。
明日香は足を止める。
「明日香?」
4時間以上しゃべってて
やっと明日香って呼んでもらうのに成功したわけだが
市井が振り返る。
明日香の目に映るのは
ドラムマニアの前で一心不乱になってる
彩の姿。
「彩さん、なにしてるの・・・・・・?」
ちょうどステージの合間で
こっちを見た彩の額からは汗が流れ
心地よさそうな顔をしてた。
「ハマっちゃってさぁ、結構おもしろいんだよねぇ」
彩の隣に立ってる女の人は市井と知り合いらしく
馴れ馴れしく、頭を撫でてきた。
「彩の知り合いなん?」
「福田です」
市井がつけくわえるように説明する。
明日香はその横顔を見てた。
人見知りの激しい彼女が浮かべた表情は柔らかい。
「明日香。高校の時の友達なんだ」
「そか、よろしゅーな。うち、裕子。
 彩とはここで会って、仲良くなったんや」
おそらく勤めてる風の彼女は
またわしゃわしゃと頭を撫でると
手を振った。
224L.O.D:02/01/17 22:56 ID:dgnSJn6n
市井が店の奥へ行くのについていく。
「あの人、どういう人?」
「OLさんで、彼氏募集中。
 三度の飯よりお酒が大好き。
 で、なんか私、好かれた。」
「紗耶香が?」
「最初、男と間違われててさー」
「ははははっ、胸ないもんね」
「るせーやい」
椅子に座って、しゃべりながら
市井の描く絵を見てる。
すごく楽しい、というわけでもないし
あのライブハウスの興奮もない。
けど、このゆったりとした感じは悪くない。
「さーーーーーやかーーーーーーーー」
「来た来た」
ノートを閉じて、視線を向けた先には
金髪のちっこい女子高生に
ロングスカートの田舎くさい女の子。
「ギュー」
「はいはい、今日はなにで勝負する?」
「やぐたんねぇー」
「なんでそんなお子様っぽいんだよ」
「きゃはははははは」
「・・・・・・」
手をつないで、先に行ってしまうちっこいのと、市井。
明日香は田舎っぽい女の子と見つめ合う。
というか、見つめ合いたくはないのだが
めちゃめちゃ熱い視線が送られてるのは気のせいですか?
「なん、、、、ですか?」
「何歳かなーって?」
「貴方は?」
「なっち?なっちは、19」
(19になって、なっちってどうなんだよ)
「私、16っす」
「高校1年生?」
「はい」
「ふーん」
ニマニマァと笑う。
(なんなんだ、この女)
明日香の顔は引きつっていた・・・・・・

其の三 終わり
225名無し娘。:02/01/18 20:45 ID:OUCbDHYA
保全
226旧♪:02/01/19 22:58 ID:bSaMOiwU
いちーちゃんの口数、増えてきたなぁ
溶けてきたってことか……
227L.O.D:02/01/20 03:17 ID:o5TZlDA7
現在、密かに企画進行中。
・・・・・・小説、1行も書けてませんが(死)
228トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/20 14:45 ID:7Q1DvtGE
いちやぐ、あすなち、イイですな…

>>L.O.D
極秘企画も楽しみですが小説も書いてね(w
229名無しさん:02/01/21 08:17 ID:4hEzLwkU
保全
230L.O.D:02/01/22 00:47 ID:kyeY2+LB
途中まで書いてたものを其の五にしたくて
新たに書き直し中、もうちょっと待ってくらさい(泣)
231アルマーニ濱口 ◆HAMAscXY :02/01/22 02:38 ID:3iL3Bqbf
ホゼ
232レク:02/01/22 23:48 ID:1vRriIQp
保全sage
233L.O.D:02/01/23 00:07 ID:TSinCnsn
其の四 光ない場所

体育の時間
膝上でカットしたジャージ。
矢口真里はなにやら怒鳴ってる教師の話など
まったく聞いてなかった。
「やぐっちゃん、次!」
「へ?」
「ほらっ」
どうやら、跳び箱の順番が来てたらしい。
(だるぅ)
やる気なーく走って飛んで
跳び箱の上に着地。
「お前なぁ」
教師の開口一番。
矢口は反対に言ってやる。
「やる気ないっすから」
「・・・・・・」
呆気にとられて何も言えない。
よくこんな6時間目の体育まで
学校にいたな、と自分で誉めたいぐらいなのだが
時計を見ると、あと一回飛べば
授業は終わる感じだ。
(帰り、マックでも寄ってこうかな・・・・・・)
234L.O.D:02/01/23 00:07 ID:TSinCnsn
くだらない会話を横目にさっさと着替え
担任は体育の後という事もあり
連絡事項だけ述べて
さっさといなくなった。
仲のいい人間は皆、バイトだとかで
付き合いが悪い。
こんな時はあそこに行くのが一番だ。
ゲームセンターWings。
その前に近くのマックに行く。
新人のバイトの子がいて
すごく綺麗だが声が高いし
ぶりっこでムカつく。
店内にいる男子高校生の80%は
この子目当てらしく
それもまたムカつく。
奥には、よく見るベテランの女の人もいるが
この人はどうも取っ付きにくい。
適当に買って、お持ち帰りにする。
Wingsへは歩いて、数秒。
信号を挟んで向かいのカフェもなかなか好きだが
あそこはお金のある時か
中澤がおごってくれる時にご飯を食べに行く。
今日もうるさい店内。
まっすぐ奥の方のテーブルに行くと
案の定、市井と明日香がいた。
235L.O.D:02/01/23 00:08 ID:TSinCnsn
「おはよ」
市井はちらっと視線をこっちに向ける。
「まぁ、もう昼過ぎてんだけどね」
明日香が冷静に突っ込むと
ニヤリと笑って返してた。
「紗耶香、ご飯食べたの?」
「いや」
「ちゃんと食べろよ」
「ゲームしてたらさぁ、あんま減らないし」
「まったく、、、はい、ハンバーガー」
「誰かピクルス食って、、、」
「まりっぺにあげなよ」
「なんでだよぉー、明日香食えよ」
「野菜食わないと大きくならないぞ」
「自分だって小さいじゃん!」
そんなやりとりを続ける。
ハンバーガーとポテトで腹こしらえしたら
テーブルに腕で枕を作り、まずはお昼寝。
「よく寝れるよね」
「うるさくないのかな?」
本当は寝てなくて
目をつぶってるだけなんだけど
なんか落ち着く。
爆音で聞こえる音ゲーの音。
それに混じる挌闘ゲームの音。
UFOキャッチャーのBGM。
こんなにうるさいのに、店が流してる有線。
普通の人が聞けば、雑音なのかも知れないけど
矢口にとってみれば
この音はいつの間にか
すごく落ち着く音になっていた。
複雑に沸き起こる思考が目をつぶる事によって
はっきりと見えるようになる気がする。
236L.O.D:02/01/23 00:09 ID:TSinCnsn
「ねぇねぇ」
男の声。
「ヒマ?」
「あー、ヒマっちゃぁーヒマ」
「一緒にカラオケ行かない?」
ナンパ、日常茶飯事。
「うち、1人だよ」
「OK。これから適当に声かけよっかなーって」
「私も適当かよ!」
「いや、寝顔がかわいかったから」
「キャハハハハハハ、赤くなんなよ!」
矢口は髪をちょこちょこっと直して
立ち上がる。
真っ赤なベースボールキャップに紺のパーカー。
顔は悪く無い。
どうせヒマなんだし、付き合ってやるか。
そんな軽い気持ち。
その程度の付き合い。
それが、日常茶飯事。
市井と明日香はそれを目で追う。
別に気をつけろとかは言わない。
当たり前の事だから。
「あ、あのっ!」
「?」
市井は話しかけられて、顔をあげた。
「camiさんですよね?」
「そうっすけど」
「俺、remです」
「あーっ!!こないだカプコンvsSNKで
 ボコボコにしたでしょ!?」
「そうですー」
「あれは悔しかったなぁ」
明日香は市井の横顔を見ながら思いだしてた。
こないだ中澤の酒に付き合わされた時だ。
ちょうどみんないなくて
彩と3人、居酒屋に連れてかれた。
237L.O.D:02/01/23 00:10 ID:TSinCnsn
「明日香には感謝してるんやで」
「はぁ?」
「紗耶香がなぁ、よう笑うんよ」
「、、、」
「最初、なんか『・・・・・・(市井のまね)』って感じでな」
「それ、裕ちゃんが男の子と間違えてたからでしょー」
「それにしても、ほんま別人か思うぐらい
 冷たい顔してたんやて」
「ふーん」
「やっぱなぁ、好きな人が笑ってるのはええわなぁ」
「、、、まりっぺはどうなのよ」
彩が言うと、笑顔になって即答だった。
「愛してるでぇええ!!」
「立つな立つな!」
「すみません!申し訳ありません!!」
あれは恥ずかしかったが。
夜を迎えれば、街はもっと華やかになる。
人も増える。
このWingsにも人が増える。
なぜみんなここに来るのだろう。
なんのために来るのだろう。
自分の事だけどまったく答えは見つからなくて
明日香は閉口してしまった。
238L.O.D:02/01/23 00:13 ID:TSinCnsn
『ひさしぶり更新』
すみませんねぇ、、、ちょっと色々忙しかったもんで
企画の方も隙間作業なんですが、こっちは集中しないと
書けないからかおろそかになってしまいました。
239旧♪:02/01/23 00:31 ID:MOvTfXSv
しばらく(といっても中5日だけど)読めないと
けっこう新鮮なんだなぁ、なんて思ったり。

逢えない時間がアイを育てるっていうしね(w
240トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/24 00:41 ID:KUqq/JUo
おっとヒサブリの更新ですねん♪
なんか今回の分読んでまたあややの「オシャレ!」をイメージしてしまった…

裏原宿あたりで出会った子と
適当に騒いでBYE-BYE
あだ名しか知らない関係


まあ保全はしときますから更新はマイペースでよろしいかと>L.O.D
241L.O.D:02/01/24 00:48 ID:OMTx8kQU
サンキューです。やっとこさ、お仕事が一段落ですので
ちょこーっとペースアップしておきたいですね。
242レク:02/01/24 22:19 ID:vgcmvfar
無理しないようにです。
243L.O.D:02/01/25 00:14 ID:fvF7gtxe
「矢口、おらんの?」
くわえタバコでやってきた彼女は
ハンドバッグを振り回してる。
学生の頃の様子が思い浮かぶ。
「なんか男の子と遊びに行っちゃったよ」
「なっちも一緒なん?」
「いたところでなにも変わらないと思うんだけど」
「、、、明日香」
「ごっつビックリしたわ」
「ところで、なんで安倍さんはいつも私を見てるんだろ?」
「さぁ」
「好きなんちゃうー?」
などと言いながら、
明日香を抱き締める中澤。
逃れようと暴れる明日香。
我関せずでゲームを始めた紗耶香。
しばらくすると、2人はギャーギャー騒ぎながら
離れていったと思ったら
ガンシューティングゲームを始めてる。
対戦者がいなくて、このままじゃクリアしてしまいそうな感じ。
100円無駄になる。
「ハァ、、、」
突然、躍り出るチャレンジャーの文字。
紗耶香はそっと向かいの台を覗き込む。
「おっす」
彩がいた。
244L.O.D:02/01/25 00:15 ID:fvF7gtxe
「負けないっすよ」
「こっちこそ」
ま、結果は言うまでもない。
彩は缶コーヒー片手にこちら側に回り込んでくる。
「どうした、紗耶香?」
「へ?」
「暗いぞー」
「いやぁ、元々こういう性格だし」
「悩みでもあるのかい?」
悩みが尽きた事なんてない。
だけど、紗耶香はなぜか少し
ニヤリと口元に笑みを浮かべていた。
「さっき彩っぺが乱入してこなかったら
 クリアしちゃって、100円が無駄になっちゃうとこだったんだ。」
「ふーん」
「なんかさ、私の人生ってそんなもんなんかなって思った。」
「どういう事?」
「ダラダラと生かされてる感じ。
 毎日、こんなとこにいても何も言われないし
 いつ帰っても怒らないし、やりたい事もないし」
「じゃぁ、死んでみっか?」
彩の言葉は速球で届いてくる。
「今の自分の生活に満足出来なきゃ、
 外に出てみりゃいいさ。
 道端の石ころがおもしろいと思えるかも知れないじゃん」
「・・・・・・」
「飲む?」
ほんの少し残ってたコーヒー。
受け取り、飲み干す。
「紗耶香、あんたにとってここはなんだい?」
「・・・・休む場所」
「いつまでも休んでるんじゃ、ダメだよ」
手をヒラリヒラリと振り
挑戦中のキーボードマニアに向かう彩の後ろ姿に
紗耶香は問う。
「彩っぺ!」
「ん?」
「彩っぺにとって、ここはなに!?」
「・・・・・ゲームセンター」
思い知らされる。
彼女はちょっと大人だった。
245L.O.D:02/01/25 00:34 ID:fvF7gtxe
中澤が携帯でしきりに誰かを誘ってる。
「なぁー、なっち、飲みにいこーやぁー」
「あの人、酔っぱらってる?」
「いや」
「裕ちゃん寂しーねぇん」
「気持ち悪いから、彩っぺどうにかしてよ」
「やだよー、絶対達悪いもん」
「頼むよ、姐悟ぉー」
市井と明日香が必死に頼むと
しょうがないという顔で動き出した途端
携帯は切れてしまった。
「やりぃー!」
「?」
「なっちが遊んでくれるってー!」
「はいはい、ようござんした。」
大学生呼び出して、一緒に遊ぶOLってどないやねん。
そんな一向のところにフラリと
矢口が帰ってきた。
「矢口っ!!」
「はぁー、、、」
いきなりの大きな溜息。
なにがあったかと心配する。
「どないしたん!?なんか変な事されたんか?」
中澤は目線を矢口のとこまで下げながら話す。
「変っていうか、キスされそうになって
 飲んでもいないのに出来るかっつーの」
「で、どうやって抜け出したの?」
「顔面殴って、逃げてきた」
「・・・・・・」
「あぁーあ、なんか喉乾いちゃった」
「裕ちゃんがおごったるからなぁー」
「マジ?やったぁ」
ほんとになんでもない様子で
歩いていってしまう矢口。
なんていうタフさ。
でも、それぐらいの根性が
この街には合ってるのかもしれない。
だって、この街は眠らない街・・・・・・

其の四 終了
246L.O.D:02/01/25 00:46 ID:fvF7gtxe
其の四 ガングロギャルと天才的美少女

「やった!」
「おぉ!!」
今までクリアした事なかったステージを高得点で
パスして、思わず矢口に抱きつく安倍。
「おー、すごいやん」
見てた中澤や彩も賞賛の拍手を送る。
「見て!福ちゃん!!」
「あぁ、はいはい」
対応に困って苦笑している明日香。
安倍はしっかりと両手を握りしめて、飛び跳ねてる。
「いやぁー、これもね、まりっぺのおか・・・・・・?」
矢口は分かち合った喜びはどこに
入り口の方を凝視してる。
「どしたん、矢口?」
みんなつられて、そっちを見る。
真っ黒な顔に白いアイメイクにリップのガングロギャル。
金髪の髪、アクセサリーをいっぱいつけて
めちゃめちゃ厚底で歩いてる。
「いいなぁ、ガングロ」
「ダメ!」
「あかん!!」
同時に叫んだのは、言うまでもなく安倍と中澤である。
「なんでさぁーー」
「あんな格好、お母さん泣くべさぁ・・・・・・」
「うちのかわいい矢口があんななってもうたら
 裕子生きてけない・・・・・・」
「知るかよ!」
矢口がたったか走っていってしまう。
しょぼんとする2人をあやすのは、彩の役目。
で、矢口の方はというと
247L.O.D:02/01/25 00:47 ID:fvF7gtxe
「はぁーーーい!」
「はぁーーい。」
「ちょーかわいいね、メイク!」
「マジ?あんがと。ちっちゃくて、かわいーね。」
「へへっ、うち、マリね」
「私、マキ」
「マキちゃんかぁー。
 プリクラ交換しないー?」
「いいよいいよー」
女子高生の名刺交換ってな具合で
見事ガングロギャルに接触を計った模様。
その様子を見ながら、福田は市井の隣に座る。
0コンマ数秒の世界で相手の攻撃を避けていく格闘技ゲーム。
「明日香もやってみたら?」
「なにが?」
「ガングロ」
「似合うわけないじゃん」
「ルーズですら履かないもんなぁ」
「そうだよ」
画面にWINNERの文字。

Wingsの近くのクラブの前には
マキのような格好の女の子と
それにピッタリのギャル男や
B-BOYの連中でごった返している。
マキも店前の石段に腰掛け
さっき矢口から貰ったプリクラを貼ったりする。
ミニスカートからは日焼けの太股が伸び
その奥のショーツもまさに見えんかの勢い。
手帳の表紙には、ジャニーズJr.の一番人気の子の写真。
タッキーが息子とまで呼ぶほど可愛がってる子で顔も似ている。
Jr.って年でもないのに、デビューできないで
少年らしさを失ってくるタッキーファンが
その子に移ってたりするから皮肉なもんだ。
248L.O.D:02/01/25 00:47 ID:fvF7gtxe
「遊ぼー?」
軽そうな男達。
「あー、ごめーん。待ち合わせなんだ」
「そっかぁ。よくいるの?」
「うん」
「すげぇかわいいよ」
「あんがと」
去っていく彼等。
メインストリートだからまだいい。
1本奥に入れば、売春なんて当たり前だ。
マキはガングロギャルの格好をしてるものの
身持ちはよくて、あまりあの類いの誘いには乗らない。
遠くから友達が来てるのが見える。
立ち上がり、お尻をほろう。
その足で近くのマックへ。
「いらっしゃいませー」
今日はよりによって怖そうなベテランの人。
なにが怖いって、笑顔が怖い。
無理に作ってる感じの若々しい声もなんかヤダ。
ハンバーガー4つ頼んで夜食は十分。
鞄の中にはピスタチオやら梅こんぶやらも入ってる。
フと店の奥に目をやった。
一角がすごいにぎやかで
その真中に座る子のかざした指は
マキの目に焼き付いた。
スラッと長い指。
顔もまるで人形のように綺麗だった。
その顔でくったくのない笑顔を浮かべてた。
(いいなぁ、美人は)
249L.O.D:02/01/25 00:51 ID:fvF7gtxe
『今夜も更新中。もう終わりだけど』
、、、、ガングロギャルと天才的美少女は其の五やね。
無意識にマックで勢揃いしたプッチモニってすごいなぁ
250トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/25 02:26 ID:1Sryk19x
まだ出演してないのはチビスケ2人だけかな?
あー圭織も出てないか…

これからの展開も結末もどうなるんだか読めないな〜
251名無しさん:02/01/25 18:15 ID:zwP3t2U4
>250石川って出たっけか?
252ねえ、名乗って:02/01/25 19:15 ID:Ngr+4sBM
石川は声の高い店員の事では?
248の最後は飯田?吉澤?
253レク:02/01/25 19:19 ID:9mK7Rtf+
>>248の14行目:ほろう→はらう の間違いでは?
>>245の最終行:其の四→其の三 なのでは?
ダメだしするのも作品に愛があるからこそってことで(w
あと娘。小説保存庫に『We are・・・・・・』と『愛しい貴方へ』が作品として
登録されてました。読み返したら感動しました(涙
更新頑張ってください
254L.O.D:02/01/25 19:37 ID:a4VsF//r
>ほろう→払う
これに関してはね、意図的というか悩んだのですよ。
やっぱりほろうは方言なんだべか?
意味は払うと同じなのね。

あと、233-245までは其の四ですよ。

248の最後はごっちんです、、、
ここまで説明しなきゃいけないって
俺、ちゃんと書けてねぇなぁ、、、、
255レク:02/01/25 22:38 ID:9mK7Rtf+
でもそうすると
246で其の四ってかぶってる気がするのですが・・・
256レク:02/01/25 22:41 ID:9mK7Rtf+
やべぇよく読んでなかった(滝汗
255は気にしないでください(てか無視してください
257名無しさん:02/01/25 23:40 ID:zOKmyf7A
小説保存庫はどこにあるんですか?
258レク:02/01/26 00:52 ID:d/Kq2AO0
259トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/26 04:33 ID:LhBm2cvk
>>254
「ほろう」とも言うと思いますよ
それともL.O.Dと同じ地方人なのだろうか(w
あと>>252が言ってるのは

>スラッと長い指。
>顔もまるで人形のように綺麗だった。
>その顔でくったくのない笑顔を浮かべてた。

この人物の事だと思われ
おいらは>>249を見てよすぃこだと判断しましたが…
260L.O.D:02/01/27 01:17 ID:xZB8rk9z
NHKホールはジャニヲタにとって聖地ともいえる。
週に何度か仕事があるし
ここの玄関は出待ちもしやすい事で有名である。
マキもいつものようにカメラ片手に待っていた。
「まだかなぁ、、、」
頭一つ上から聞こえる少し低い声。
普段なら同じジャニヲタだと思って
見向きもしないんだが、
その時だけは後ろを見た。
あの時、マックにいた美人だ。
「あ」
思わず声をあげてしまう。
「ん?」
恥ずかしくて真っ赤になっても
ガングロメイクじゃ分からない。
マキは少し俯いた。
その瞬間に他のファンの声援が一際大きくなる。
ゾロゾロと出てくるメンバー。
マキも一緒になって騒いでたが
チラチラとさっきの子を見てた。
細長い首を伸ばして人込みの先を覗いてるようだった。
お目当てのものを見たので帰る準備を始めるファン達。
歩いていく方向、乗る列車、降りる駅、向かう場所
なにからなにまで一緒だった。
前を歩く女の子の集団。
一際目立つ彼女はリーダー格というか
常に中心にいた。
261L.O.D:02/01/27 01:18 ID:xZB8rk9z
Wingsの前のマック。
今日の店員は地味で背のちっちゃい女の子。
最近入ったばかりの新米で
その前からこの辺をフラついてるのを見た事がある。
隣を見る。
声の高いブリっこの店員を
彼女は口説いてた。
(あんた、女だろ)
「どう?遊びに行かない?」
「や、困りますー」
「うーん、そっかぁ」
そう言って、まるで物色するように周りを見渡した彼女と
目が合ってしまった。
「1人?」
「・・・・・・うん」
「遊びに行かない?」
「え、だって、お友達、、、」
「あの子達はここでバイバイだし」
「ふーん」
「こないだもこの店にいたよね?」
「・・・・・・」
「私、最近、ここらで遊ぶようになったから
 よく分からないんだよねっ」
お願いって顔の彼女がなんだかかわいく見えた。
悩んだ末、首を縦に振った。
2人で一緒に座る。
262L.O.D:02/01/27 01:19 ID:xZB8rk9z
「私、吉澤ひとみ。某近くの女子高に通ってます」
「あー、あそこかぁ」
「うん」
「うちはねー、マキ。コギャルやってます」
「玄関でもすげぇ目立ってたよ」
「マジ?」
「あんまいないじゃん、ガングロコギャルの出待ちなんて」
話してみると、案外、趣味も合うし
話も合う。
それに話してて、楽しい。
「そろそろ出よっか」
ひとみが小声で言う。
気付けば、もう1時間近くしゃべってる。
周りの客ももう一変してた。
2人はそそくさと店を出る。
「ね、プリクラ撮らない?」
「いいねぇー」
マキの提案に彼女も賛同して
Wingsにやってくる。
「こないだね、ここでちっちゃい金髪の人形みたいな
 女子高生と会ったよ。」
「マジ?かわいかった?」
「この子」
「あーすっげぇー、超かわいいじゃん」
「ねぇ、よっすぃってそのケあるの?」
「毛?」
「レ、、、ズ?」
「あー違う違う。なんかね、別に男とか女とか
 関係なく、よく感動すると声あげちゃうの
 リアクション、デカいんだよねー」
「うん、それはさっきから話してても思ったねー」
「デカいかな?」
「デカいねぇ〜」
「そっかぁ」
そんな事を話しながら、記念の撮影。
置かれたハサミで二つに分ける。
ひとみは早速携帯の裏に張り付ける。
263L.O.D:02/01/27 01:20 ID:xZB8rk9z
「最近、変えたばっかでさ、寂しいんだよね」
「なんか貼っちゃうんだよねー」
「そうそう」
後藤は自分の携帯の裏を見る。
色が薄くなってしまってる。
そこに映ってるみんな、もう全然連絡も取ってない。
なにげなく全部剥がして
ひとみと映した一枚を貼り直した。
「て、携帯番号も聞いてなかったや」
「あ、うん、私のこう」
「OK」
確認のコール。
ワンコールで切れる。
表示される電話番号。
こうやって何人の人間と電話番号を交換しただろう。
「よっすぃって入れておくね」
「じゃ、ごっちんって入れておく」
「うん」
操作を終わって、外に出ようとした時
自然とひとみが手を握ってきた。
そんな事するのもひさしぶりだった。
別に携帯で呼べば、誰か来てくれるけど
1人の方が楽だから。
普段はあまり友達と遊ばない。
遊んでも、2、3人で。
それでも、手つないだりはしない。
「よっすぃ、歩くの速いよ」
「ごめんっ」
驚く表情。
申し訳なさそうな表情。
豊かな表情。
マキは笑いながら、ひとみの歩幅に合わせて歩き出した。
264L.O.D:02/01/27 01:25 ID:xZB8rk9z
『更新終了』
あと3章くらいで終わる予定。
やすいしつじ
あいかお
ラスト・・・・・・
ってな具合にどんどん深みに。
265トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/27 03:44 ID:Sh9GJaSi
>>261最初読んだ時、新米店員がブリッコの店員を
口説いてたのかと思ってしまった(w

>>L.O.D
マックの店員にもちゃんとストーリーがあるわけですな
圭織も出るらしいし楽しみだな♪
266旧♪:02/01/27 04:37 ID:okTGDjea
>>261
自分もカウンターの内側でのやりとりかと思ってしまった……
「そんな店員たち、ステキやん?」(w
267名無しさん?:02/01/27 22:48 ID:nWF9Lkdr
いつ読んでもおもしろい〜。
今回なぜかリンクが青に戻ってて
見つけられなくて焦ってしまいました。

あいかおってのが気になるな〜。
頑張ってください♪
268L.O.D:02/01/27 23:15 ID:q6ssBK+l
日が暮れる。
遊び慣れたこの街の端から端まで
歩いてみせた。
おそらくはどんな街に行っても
あるものなんて同じだろうけど
ここは違う。
眠らないから。
夜が始まる。
夜の顔がある。
今日もクラブの前には
人が集まる。
酔っ払いも出てくる。
「よしこ、門限は?」
「一応、9時までかな」
「そっかぁ」
「ごっちんは?」
「うちは放任だからー」
「へぇ」
「ね、ね、遊びに行かない?」
中年親父。
別に酔ってはいなさそうだが
片手に財布を握ってる。
「2人で8万でどう?」
「ダメー」
「やです」
「分かったよぉ、じゃぁ、10万」
「えぇー」
気ありげな顔をするマキ。
ひとみは心配そうにマキを見る。
援助交際。
「いいだろ、ご飯もおごってあげるからさ」
「うーん」
「なっ」
ひとみの手首を掴む手
「くぅっ!」
顔が歪む。
振払うように親父の手を引き剥がし
横っ面を引っ叩く。
「てめぇ!」
声を荒げる親父。
「よっすぃ!?」
自分のした事に呆然としてる。
親父は今すぐにでも乱暴に触れてきそう。
「ウワァアアアア!!!」
269L.O.D:02/01/27 23:16 ID:q6ssBK+l
ハッとすると、親父は1人身悶えていた。
マキに引っ張られる手。
マキも誰かに引っ張られてる。
親父の後ろでVサインする女の人。
2人はWingsに連れ込まれる。
「あぁーーー、マリちゃんだぁーーー」
マキがこないだプリクラで見せてくれたちっちゃな子。
本当に金髪でなんか人形みたいだ。
「よかったぁ」
「サンキュ、マリちゃーん」
「あいつさぁ、さっきうちにも誘ってきて
 すっごいウザかったから、裕ちゃん呼んだら
 ちょうど2人がさ、あんなだったしょー」
「親父ウゼェー」
などとのたまいながら、タバコに火をつける中澤。
さっき親父の後ろに立ってた人だ。
「ありがとうございました」
ひとみは深々と頭を下げると
くしゃくしゃ頭を撫でられた。
「ええねんええねん。金で女を買う奴なんざ逝ってよし」
「裕ちゃん、なにやったの?」
「あぁ、タバコ、背中に入れてやってん」
「キャハハハハハ、マジ!すっごーい」
「すごいねぇー」
マキと矢口はなにがそんなにおかしいのか爆笑。
中澤は少し微笑みながらひとみを見る。
「吸う?」
「いえ・・・・・・」
「あんた、ごっつ綺麗やなぁ」
「・・・・・・」
「どや、お姉さんと1発」
「1発とかいうなよ!」
矢口に蹴りを入れられて、うっと呻く。
270L.O.D:02/01/27 23:19 ID:q6ssBK+l
「ね、マキちゃん。」
「あー、ごっちんでいい」
矢口が遊んでほしそうに腕をからめると
マキは真顔でそう言った。
「ごっちん?」
「うち、後藤って言うのね。
 だから、普段はごっちんって呼ばれてるから」
「O.Kー、ごっちん、パラパラしない?」
矢口が指差したのは、パラパラパラダイス。
お立ち台状になったセンサータイプのコントローラーに
モニターが何個もついていて
パラパラの教則ビデオが流れてる。
「すごーーーー、パラパラだぁーーーーー」
厚底でパタパタと走ってく。
矢口も一緒にいってしまう。
店の奥から女の子が1人やってくる。
「裕ちゃん、福ちゃんはどこ?」
黒髪のやぼったそうなヘアスタイル。
服装のセンスは悪くないんだが
どこかしら田舎くささを感じる。
「明日香ならもうバイト行ったで」
「嘘!」
「そこのマック」
「なっち、なんも知らないっしょや」
「やーい、遅れてる」
なっちと呼ばれた彼女はマックに向かうべく、走っていく。
「みなさん、お知り合いなんですか?」
「まぁ、ここの常連みたいなもんやしな。
 なんか飲むか?」
「いいです」
271L.O.D:02/01/27 23:24 ID:q6ssBK+l
店の一番奥にある自販機の前のテーブルと椅子。
別なテーブルではショートカットの子が絵を描いてた。
「なんかスポーツやってたん?」
「バレーやってました」
「そかそか。いやぁ、背高いし、綺麗やなぁ」
「そんな事ないですよ」
「まーた、そんな事言っちゃってー」
「いえいえ」
「名前は?」
「吉澤ひとみです」
「ふーん」
中澤の吐き出したタバコの煙は
ゆらりと天井に吸い込まれていく。
「あの・・・・・・」
「ん?」
「あの金髪の子は、、、」
「矢口か?」
「はい」
「かわいいやろぉ」
「かわいいですね」
「なんや、あんたもそっちの口かいな」
「中澤さん、そうなんですか?」
「いやぁ、うちは綺麗なもん、かわいいもんが好きなだけよ」
「やっぱいいですよねっ」
(お前等、なんつー会話してんだよ)
市井は突っ込む気力もなく黙々と絵を描いていた・・・・・・

272L.O.D:02/01/27 23:24 ID:q6ssBK+l
道ばたに座り、大きな木の板を膝に乗せ
手には1本の筆。
大きな目はどこか遠くを見てる。
赤から紫へ、そして紺へと移り変わる空の向こう。
道の向うで男が2人喧嘩している。
周りを取り囲むように
人の壁が出来ているが
誰も止めようとはしない。
細く開けられた道を通る人は
まるでそんな光景は
日常の当たり前のような顔をして
通り過ぎていく。
「・・・・・・」
筆を置く手。
彼女のサラリとしたロングヘアが肩口を撫でる。
「つまんない」
ぽつりとつぶやいて
道具を片付けると
颯爽と人込みの中へと消えていってしまった。
彼女の存在がWingsの面々にとって
一つの問いかけとなる事は
まだ誰も知らない。

其の五 終わり
273L.O.D:02/01/27 23:29 ID:q6ssBK+l
『其の五終了記念』
やーっと、予想していた流れに乗ってきた感じが、、、
274ねえ、名乗って:02/01/27 23:45 ID:Kj0ZNys2
最高!
275レク:02/01/28 02:51 ID:LkUnVcSP
伏線に期待sage(謎
276アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/29 01:42 ID:lQwZiTFg
よかった、このスレまだあったんだ
やっと見つけターヨ

いまから ゆっくり読みます

保全サゲ
277L.O.D:02/01/29 16:15 ID:LU3qED2H
其の六 冴えない大人、冴えない高校生、元気一発中学生。

「いらっしゃいませー!」
繰り返される言葉。
絶えず浮かべる笑顔。
装いの姿。
バイトだから仕方ない。

ロッカールームが唯一の救い。
石川梨華は帰る支度をしていた。
午後10時。
ドアが開いて、もう1人のバイトが入ってくる。
「ごくろうさーん」
「御苦労様です、保田さん」
保田圭は帽子をはずす。
「石川、これからどっか行くの?」
「帰りますよー」
「そっか、送ってく?」
「お願いします」
別に用事もないのでゆったりと着替える。
終えると、店の近くの駐車場に止めてある
保田の車に乗った。
「なんか聴く?」
「私、MDあるからそれかけていいですか?」
「どうぞ」
278L.O.D:02/01/29 16:16 ID:LU3qED2H
石川は自分のウォークマンからMDを取り出して
挿入口に差し込んだ。
この頃、よく街中でも耳にするメロディ。
「モーニング娘。?」
「大好きなんですよぉー」
「どこがいいのよ、、、」
「や、なんか、頑張ってダンスしてるとことか」
そう言う石川の横顔はなんかりりしくて
保田は少し吹き出してしまう。
「なんですかぁー」
「あんなもの、お遊びじゃない」
「保田さんは歌手になりたいんでしたっけ?」
「歌手っていうか、人前で歌えればいいんだけどね」
「なるほど」
オレンジ色の街灯を横目に
2人の間に静かな時が流れる。
信号は赤になって、止まると
しゃべりだしたのは保田の方からだった。
「石川はなんかあるの?」
「なにがですか?」
「夢、、とか?」
「夢ですかぁ」
改めて考えてるような様子。
「職業とか」
「お嫁さん」
「プッ」
「えー、ダメですか?」
「あんた料理ヘタじゃん」
「保田さんには負けませんよ!」
「そうよ、私はほとんど料理しないわよ!」
叫び返したところで2人は笑ってしまった。
なんて低レベルな戦いだったのだろうか。
「このままドライブ行っちゃおうか?」
「いいですねっ」
「あんた、家、大丈夫なの?」
「バイト遅くなったって言えばOKですよ」
「じゃー、海でも見に行くかー」
保田はアクセルを吹かす。
あっという間に加速して
車は走っていった。
279L.O.D:02/01/29 16:17 ID:LU3qED2H
・・・・・・風邪引いた。
部屋が寒い時は石油をケチらないで
ちゃんとつけましょう。
280名無しさん?:02/01/30 01:20 ID:uzD+eFXu
>279 お大事に。しっかり治してくださいね。
281トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/30 12:59 ID:qhHoadA9
やったいいらさんの登場だ♪そろそろ佳境かな…

>>L.O.D
無理せずちゃんと養生しましょうね
厚着して布団3枚重ねて寝ちまいましょう(w
282L.O.D]:02/01/30 22:30 ID:Ryqif+zS
暖かい日射し。
やっぱり窓側の席はこの時期
昼寝にはもってこいである。
一見、廊下側の方がよさそうに見えるが
午後の授業ともなると
窓から差し込む温もりは
睡眠の世界へと
たやすく誘ってくれるものだ。
石川は保田と遅くまで遊んでしまい
少し眠たくて、ウトウトとしていた。
そんな中で昨夜、保田に言われた一言を思い出す
『石川はなんかあるの?、、、、夢、、、とか?』
そんなものない。
やりたい職業なんてない。
毎日、こうして学校に来て
時折ある試験はクリアして
無事に卒業する事しか考えてない。
おそらく、適当に進学するだろう。
結婚も思い付かない。
今、自分が主婦になったら
考えるだけで恐ろしい。
今日も放課後を迎える。
283L.O.D:02/01/30 22:31 ID:Ryqif+zS
テニスコートの横を抜ける。
足を止め、素振りをする同級生の影を見た。
中学の時はテニス一筋だった。
高校に上がっても続ける気だった。
へただったけど楽しかった。
だけど、部活が終わって
受験勉強をして
高校に受かって
いざとなると
面倒になってた。
走り込んだり
素振りをしたり
土まみれ、汗まみれになって
頑張るのがばからしかった。
他にする事なんてないのに
もっと高校生活を楽しもうなんて思ってた。
そこで反発するように始めたバイト。
最初は近所のコンビニ。
時折、中学の友達が来て
テニスは?なんて聞いてくる。
ウザくてやめた。
その後も何度かバイトを変えて
今はマックでバイトしてる。
仕事が楽な事はないが
保田がやさしいのでいい。
こないだ後輩が出来た。
自分よりちょっと小さくてころんとしてる
福田という子で、学年は一緒。
少し先輩だから、いいところ見せようなんてすると
反対にミスして、保田さんに怒られる。
でも、前のところよりは
少し長続きしそうな気がした。
さぁ、今日もバイト。
石川は駅に向かって、歩き出した。
284L.O.D:02/01/30 22:32 ID:Ryqif+zS
「いらっしゃいませー」
ジャージ姿の中学生。
髪を横で二つに束ねてるが
降ろしたら、そうとう長い気がする。
時折、店に来てる子だ。
「えっとぉ」
「・・・・・・」
部活の帰りなのだろうか
静汗剤の香りがする。
「ハンバーガー5個にぃ
 ポテトLのコーラL」
「お召し上がりですか?」
「ぁい」
厨房にオーダーを入れる。
待ってる間もポーッとした顔で立っている。
次々とトレイに乗せられる物の多さに
周りにいた人、店の中に居た人が
注目してた。
(これ、この子1人で食べるの?)
(たぶん、、、そうなんですよね、、、?)
そっと寄ってきた保田がつぶやく。
石川は営業スマイルに戻って
前に立った。
「お待たせしましたぁ」
会計を済ませ、彼女は窓際の席に座ると
あっという間に食い尽くした。
「・・・・・・すごっ」
それが、辻希美との出会いだった。
285旧♪:02/01/31 04:15 ID:vyk26MGP
さすがだ>のの(w
しかもフトコロに優しいカンジが○

質より量なのか>のの(w
286名無しさん?:02/01/31 21:45 ID:jfetRQya
福ちゃんがんばれ
287L.O.D:02/02/01 16:43 ID:XLSarZs0
今日もあの子はそこにいる。
今日はお金がないのか、ハンバーガー3つだけで
やけにゆったり食べてる。
時間も早いし
部活はなかったのだろうか。
「ありがとうございましたぁ!」
口を拭いながら、店から出ていく後ろ姿は
そのままゲームセンターへ向かう。
「あ」
隣でレジをやってた明日香が声をあげる。
「ん?どしたの、明日香ちゃん?」
「あそこ、よく行くんだよね」
「へぇー。ゲームうまいの?」
「や、あんましないんだけどさ」
「そっか」
そう言うと、明日香は直してたメニュー表に目を戻す。
なんか普段はあんまり自分の話をしてくれない明日香だったから
石川は嬉しかった。
「石川、交代だよ」
「あ、はいっ」
レジを保田と交代する時、
ちょうど明日香のところに客が来た。
「福ちゃぁーーーん」
「はいはい、なんにしますか?」
「えっとねー」
「矢口、シェイク!」
「うち、コーヒー。紗耶香は?」
「別にお腹空いてないし」
「あやっぺ、なにするん?」
「あたしもコーヒー」
うるさい客だ・・・・・・

288L.O.D:02/02/01 16:44 ID:XLSarZs0
バイトが終わり帰る準備
ちょうど明日香と一緒になった。
「ご飯食べていかない?」
「あー、どうしよっかな」
「なんか用事あるの?」
「用事ってわけでもないんだけどね」
「無理なら今度でもいいけど」
「や、行くよっ。別にいいし」
「いいの?」
「うん」
ドアのところから保田が顔を出す。
「保田さん、顔だけだと怖いですよ」
「うるさいわね!」
「なんか用ですか?」
「ごめん、ちょっと遅れそうだから先行ってて」
「あ、はーい」
バッグを片手に立ち上がる石川
「じゃ、行こっか」
「うん」
明日香もつられるように立ち上がり、店を後にする。
2人がやってきたのは、すぐ近くのカフェ。
2人ともオレンジジュースを頼んで
一息つく。
「さっき来てたお客さんは友達?」
「うん」
「なんかすごく年上の人とかいたけど、、、」
「あぁ。うん、あのゲーセンで知り合ったんだ」
「ふーん」
その後はたわいもない学校の話とかしてた。
明日香がいたずらっこのような顔をして
恋の話をしてきたりもした。
すごくくだらないけど
なんとなくいい感じ。
289L.O.D:02/02/01 16:44 ID:XLSarZs0
そんな時、電話が鳴って、明日香がバッグから携帯を取り出す。
「ごめんね」
「ううん」
「はい?あぁ、えー、酔っぱらってない?
 絶対酔ってるじゃん。マジだってー」
「・・・・・・」
電話の向こうの人は誰なんだろう。
自分が知らない明日香の世界。
「うん、はいはい。やだよ、やだってー。」
グラスに刺さったストローをクルリと回すと
氷も一緒に回っていく。
「おまたせ、、、、」
明日香が電話してるのに気付き
やってきた保田は声を潜める。
「うん、はいはい、じゃね」
「もう頼んだの?」
「はい、頼みました」
「そっか」
保田が手をあげて、店員を呼ぶ。
「ビール飲みたいな・・・・・・」
「ダメですよ、保田さん、車じゃないですかっ」
「帰ってから飲むの寂しいんだよなぁ」
テーブルを挟んで向うで繰り広げられる
保田と石川の漫才に少しだけ微笑む明日香。
「保田さん、何歳なんですか?」
思い切って質問してみると
意外な答えが返ってくる。
「18」
「えっ」
「嘘よ」
「よかったぁ」
「よかったってなによー」
保田も笑って返してくれた。
場が和んで、遅い夕食を食べながら
3人はバイトの事などを話題に盛り上がる・・・・・・

290L.O.D:02/02/01 16:45 ID:XLSarZs0
食事を終え、2人と別れた明日香は
交差点向こうのWingsへ。
UFOキャッチャーしてた安倍を適当にあしらい
キスしてる中澤と矢口を後目に
市井の隣にでもいようと思ったら
48連勝中でなんかキテた。
「来い!来い!こーーーーーーーーーい!」
「誰かcamiを倒せーーーーー」
別にイベント日でもないのに
大会みたいになってしまってる。
「明日香」
名を呼ばれて振り返ると
彩がいた。
「あやっぺー」
「さっきはごめんねー。みんなで行っちゃって」
「いや、いいよいいよ。売り上げにはなるし」
「そっか」
「明日香だぁーーー」
矢口が抱きついてくる。
背中から腕を回してきて
持ってたプリクラ手帳を見せてくれる。
「今日ねー、すっごいかわいい子来たんだよー」
「へぇ」
「近くの中学生でプリクラすっごい好きなんだってーーー
 いっぱい交換したよーーー」
「あー、この子・・・・・・」
マックに来ては大食いしていくあの子である。
「この子、マック来て、いっつもハンバーガー5個とか食うんだけど」
「えっ!?」
「多くない!?」
「いや、多いでしょー」
「ふーん、そんな風に見えなかったけどなー」
「なになに、裕ちゃんも仲間に入れてー?」
「ほら、この子。マックでハンバーガー5個とか食べるんだってー」
「あー、辻ちゃんやん。なー、この子めっちゃ抱きここちええで」
・・・・・・初対面の子になにしてんのさ。

291L.O.D:02/02/01 16:46 ID:XLSarZs0
バイト先の近くの駅から出た途端
石川はため息をついた。
テストの点数が悪かった。
こんな日はバイトをさぼってどこかに行きたい。
しばらく歩いて、もうマックは目の前。
まだ入るには時間があって、Wingsの入り口の階段に腰掛けた。
「はぁー、、、」
「あのぉー」
「?」
顔をあげると、見なれたジャージ。
あどけない顔に整った目鼻。
大食い少女だ。
「あー、やっぱりそうだぁ」
「いっつも来る子だよね?」
「ぁいっ」
「いっぱい食べるよねー」
「部活した後はぁ、お腹が空いちゃうんですよぉ」
「そっか」
「これからバイトですか?」
「うん」
「辻はこれから練習試合なんですー」
「がんばってね」
「そだ!プリクラ撮りませんか?」
「いいよっ」
292L.O.D:02/02/01 16:47 ID:XLSarZs0
なんでだろう、この子と話してると
すごくリラックスする。
「名前、聞いていい?」
「辻希美ですっ。ののって呼んでくださーい」
「うんっ。私はー」
「石川さんですよねっ?」
「覚えてるの?」
「えへへぇ」
「石川梨華。梨華ちゃんでいいよ」
笑顔がかわいい。
石川も自然と笑顔が出てしまった。
2人でプリクラが出てくるのを待ってると
明日香のともだちの『なっち』が
辻を見つけて、走ってきた
「ののーー」
「安倍さぁーん」
「ギュー」
石川は時計を見た。
遅刻寸前の時間。
「あーっと、ごめん、辻ちゃん、私、バイト行かなきゃ!」
「じゃねー、梨華ちゃん。プリクラ、今度持っていくねー」
手を振って別れ、マックの裏口へと一直線に走っていく。
早番で入れ変わりの保田に出会う。
「お、どうした。嬉しそうな顔して」
「あの大食いの子とな仲良くなったんですよ」
「そう」
「いい子ですよー」
人との出会いなんて些細な事なのに
なんでこんなに嬉しいんだろう。
石川はテストの不安なんてもうどこかに飛んでいた。

293L.O.D:02/02/01 16:48 ID:XLSarZs0
あくる日
「こんにちはぁ」
レジにニコニコしながらやってきた辻。
今日は保田の前に来る。
「いらっしゃいませぇ」
なぜか保田は他の客には見せない優しい笑みを浮かべた。
「怖いですよぉ、保田さぁん」
「分かってるわよ」
「えっと、ハンバーガー6個にシェイクストロベリー」
辻は瞬く間にそれを平らげ、
店を出る時に振り返って
手を振ると、石川や保田が手を振ってくれた。
その足で、Wingsに行く。
部活→マック→Wingsが最近の流れだ。
ここにいけばプリクラを撮ってくれる人がいっぱいいる。
中澤に至ってはおごってくれるし。
だから、遊びに行く。
でも・・・・・・本当は。
辻の目にはある人が映っていた。
「よっすぃ!」
店の入り口から、奥まで聞こえたのではないかと
思うくらいの大きな声。
UFOキャッチャーで安倍に新作プーさんを取ってもらった矢口などが
辻を見た。
手に持っていた鞄を放り投げて
真直ぐにその人の元へと走っていく。
「・・・・・・?」
後藤とつないでた手がはずれる。
後藤は隣に立ってた彼女を見る。
「ののっ!!」
「よっすぃ!ダメだよぉ、いなくなっちゃぁ!」
「・・・・・・」
ワンワン泣きわめく辻。
吉澤はただジッと抱き締め続けてた。
夜がまた来る。
294L.O.D:02/02/01 16:49 ID:XLSarZs0
かすかに赤味を帯びた空が消えて行く。
紫紺の闇に掻き消される。
街にはオレンジ色の光がポツリポツリ。
市井はフと立ち止まった。
そこには、1人、女の人が座ってた。
大事そうに板を抱え、筆を手にしていた。
「絵、描くんですか?」
「うん、、」
「私も描くんすよ」
人工的な灯が彼女の黒髪に映り込む。
この街の中で彼女は異質な何かを発していた。
市井は惹かれた。
「あなた、、、、猫みたい」
「猫?」
「うん、黒猫」
「黒猫かぁ」
「なんか風にまぎれて、消えてしまいそう」
「・・・・・・」
つぶやきながら、彼女は瞬く間に
黒猫を描いてくれた。
しなやかな背中。
まさしく、自らの姿にかぶって見えた。
「なんかいいっすね、この絵」
「ありがと」
「もらって、、、、いいですか?」
「うん、あなたに描いた絵だから」
市井は絵を大事に丸めると
左手にしっかりと持った。
「じゃぁ、、、」
「ねぇ」
「?」
「どこに行けば、会える?」
「え?」
「私、もっと貴方の絵描いてみたいな」
肩にかかるロングヘアから覗いた目は
すごく澄んでいて
市井の心へ入ってきた。
一瞬・・・・・・全ての音が聞こえなくなった。
そんな瞬間だった。

其の六 終了

295L.O.D:02/02/01 17:02 ID:XLSarZs0
『3日ぶり?更新』
書けなかった反動で一気に更新。
296ねぇ、名乗って :02/02/01 23:23 ID:RKVE9UUQ
更新ご苦労様っす

新メン意外だと、あとは加護を残すのみかな
297トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/02 04:01 ID:179kGH5W
神秘的な圭織が素敵…
ののはやっぱりみんなのマスコットか(w
でもよすぃことの関係が気になるやね

>>L.O.D
風邪療養中だったんすか?復活おめ
298旧♪:02/02/03 01:12 ID:q4oPz9cs
風邪から回復したっぽいね>作者
よかったよかった。
ここで無理するといかんのよね(w
299L.O.D:02/02/03 15:30 ID:NxrsPhd+
其の七 暗闇の底から。

「んっ、、、ふ、、、、」
闇の中に浮かぶようにつけられた
ベッドの脇の照明は頼り無く揺れた。
少女の小さな手はギュッと
シーツを握りしめ耐える。
「くっ、、」
「はぁっ、、、んぁっっ、、」
2人の吐息は混じり、重なり
消えていく。

「ほら」
男は残りの半分の金を差し出す。
「あんがと」
ホテル街から少し離れた大きな十字路の手前。
信号が変わり、男は道を行く人に紛れる。
少女は金をサイフに収めた。
これでまた遊べる。
携帯を取り出して、どこかへ電話をかけながら
少女もまた人の波の中へ消えていく。
「・・・・・・」
飯田圭織はその様子をじっと見てた。
2人が行ってたのは援助交際。
男は若い子を抱きたいと思い
少女はお金が欲しかった。
それだけの事。
ボーッとそんな事について考えてると
フラフラと歩く別な少女と目が合った。
髪をかわいらしく結っている。
ワッペンやバッジがいっぱい付いた明るい色の服。
見るからに中学生。
「なに?」
「・・・・・・別に」
少女は視線を人込みの中へと戻した。
携帯が鳴る。
「はぁーい、アイですよぉ。えっとー
 あ、はいはい、分かりましたぁ」
待ち人を見つけたのか
アイと名乗る少女は
タタッと走っていってしまう。
彼女もきっとさっきの子のように、、、、
飯田はそっと筆に手を伸ばした。
絵にしよう。
この悲しみを。
300L.O.D:02/02/03 15:33 ID:NxrsPhd+

Wings。
矢口のキンキン声が響く。
「えぇーー、なんだよぉ、それぇ」
「どないしたん?」
「なっち、彼氏とデートだって!」
「はぁ!?あいつ、彼氏出来たの?」
「ホッ」
1人、安堵の溜息をつく明日香。
そこにいた彩や中澤は信じられないといった表情。
「悪い男に掴まってなければええんやけど、、、」
「裕ちゃん、お母さんみたいだね」
「なんや、年やってか!」
「違うってばぁーー」
いつも通りのWings。
違う。
いるはずの人がいない。
(紗耶香・・・・・・)
近頃、来たり来なかったりする。
運良く顔を合わせた時に
彼女はこう言った。
『なんかね、やる事が見つかったつーか』
明日香は少し俯く。
汚れた床。
なにげない一言だったけど
あの時の紗耶香の笑顔は一回も見た事がなかった。
「私、帰るわ」
「え?」
「どしたん、明日香?」
「宿題もあるし・・・・・・」
「ふーん」
「そっか、じゃなー」
「ばいばーい、明日香」
301L.O.D:02/02/03 15:34 ID:NxrsPhd+
鞄を手にして、Wingsを出た。
夜の風は昼に比べ、少し冷たくなった気がする。
すぐの横断歩道。
ウォークマンを取り出してると
目の前に車が止まった。
「送るわよ」
「あ、保田さん」
「信号変わっちゃうじゃない」
まるで滑り込むように乗ると
車はすぐに発進した。
「浮かない顔ね」
「いやぁ」
「・・・・・・」
保田はそれ以上、何も言わない。
しゃべりたければしゃべりなさいという事か。
保田らしいといえば保田らしい。
「ちょっと自分がなにすればいいのか考えてて」
「そう」
保田は信号待ちの間にMDを変える。
洋楽のR&Bのバラード。
「やらなきゃいけないと思う事はあるの?」
「やらなきゃいけない事・・・・・・」
学校の勉強じゃない
なにを優先しなければいけないのか
「やりたい事は?」
「・・・・・・」
そういえば忘れていたような気がする。
いつの間にか。
「焦っても、何も手に入らないもんよ」
それは、あまりに自然な行為であり
欲求するものではなかった。
忘れてた。
(私は歌いたいんだ・・・・・・)
「保田さん」
「?」
「どっかいいライブやってるとこないですかね?」
「ライブねぇ・・・・」
保田の目が少し優しくなって
微笑んでくれた。
明日香はなんともいえない気持ちが
胸にうずまいて、笑った。

302L.O.D:02/02/03 15:35 ID:NxrsPhd+
「上手だね、、、」
無言でその先にある物をしゃぶる。
幼い口に収まりきれない分も
舌を絡ませていく。
「・・・・・・」
裸の肩口に置かれた手。
静かな部屋に響くクチュグチュという卑猥な音
唾液と先走りが混じる音。
「ふっ、、、はぁ、、、、ほら、こっちにおいで、、」
アイは身体を横にする。
男の手が乳房を包む。
「大きいね」
「へへっ」
開いた口と舌の間に唾液が糸状になって伸び
思わず目を背けた。
乳首に熱いうねりを感じる。
執拗に責めたて、くわえ、はさみ
刺激してくる。
顔が上気してくのが分かる。
別にSEXは嫌いじゃない。
肌と肌が触れて
敏感なところに触れられて
感じてしまうという恥ずかしい行為がいい。
「ちょっと感じてる?」
問いには答えない。
けど、男は嬉しそうに
手を下へと伸ばした・・・・・・

303L.O.D:02/02/03 15:37 ID:NxrsPhd+
『更新終了』
新しい羊の看板、よい。。
304トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/03 16:11 ID:G9cFkKEV
なぜ加護だけこんな扱い(w
まあ展開としては面白いから良いけども

Wingsに集まってる連中もやがてそれぞれ
自分の居場所を見つけて去っていくのかな…
私も17歳で、すげー共感。
自分のやりたい事が見つからない…
苦悩がうまく描かれててイイっすね。
306レク:02/02/03 23:26 ID:mGk+PCKu
やりたいことがないってのは本当に共感できます。
今の俺がそのまんまだから。
やっぱLOD氏の小説はリアリティがあって面白いっす。
307L.O.D:02/02/04 00:02 ID:gp6/xCix

  パタン

手帳を閉じた。
鞄の中に仕舞って
どこに行く宛もないのに
立ち上がった。
(・・・・・・どこで遊ぼ)
後藤は周りを見回す。
同じような格好をした子達。
もっとヤバい格好の子達。
学校にも行ってなさそな子・・・・・・
遊ぶ事しか頭にない子・・・・・・
女をひっかける事しか脳のない子・・・・・・
男といちゃつく事しか考えない子・・・・・・
後藤はプイッと違う方向を見ると歩き出す。
ここには居場所なんてものはない。
そう、ここは誰のものでもない。
誰のものにもならない。
誰1人として、個人ではない。
同じ空間にいても赤の他人。
同じ格好でも、他の人。
交わることなんてない。
会話しても、それはすれ違っただけ。
目を見て話してるフリをして
向こうにいる何かを見てる。
誰1人として向き合おうとなんてしない。
後藤は、一度、立ち止まった。
308L.O.D:02/02/04 00:04 ID:gp6/xCix
しばらく吉澤に会ってない。
あんなに一緒に遊んだのに。
探しても、この街にいなかった。
どっか他のとこへ行ってしまったのだろうか。
自分が嫌いになったのだろうか。
いつもの後藤なら、そんなの気にならなかったのに
なぜだろう。
すごく不安だった。
なのに、携帯電話のアドレス帳を呼び出す事ができない。
一歩だけ踏み締めた瞬間
後藤はあの子を見つけた。
吉澤が来なくなった原因になったかもしれない子。
「待ってよ!」
その場にいた人は皆、何事かと後藤を見た。
厚底でガッポガッポと走ってくる後藤を
ボーッと見てるのは、辻希美。
「なんですかぁ?」
「あんた、よっすぃどうしたの!?」
「・・・・・・別に、どうもしないですけど」
「っていうか、パフェおごってあげるから
 そこで休ませてよ」
「はいぃ、、、」
いつものカフェ。
吉澤ともよく来た。
ここか、マクドナルド。
辻はおいしそうに苺パフェを食べていた。
309L.O.D:02/02/04 00:06 ID:gp6/xCix
「一口ちょうだい」
「はーい」
「んむ」
辻としてはいきなりガン黒ギャルが襲いかかってきたので
何事かと思ったのだが、よく考えれば
姉で慣れてるわけだし
そんなに怖くはなかった。
しかも、一口ちょうだいとか言ってくるし
どうやら怒られることはなさそうだ。
「でー、よっすぃはどうしたの?」
「ののは知らないですよ、、、」
「はぁ?こないだよっすぃに抱きついたのあんたじゃん」
そこで気がついたが、この人、こないだよっすぃと一緒にいた人だ。
「あんた、名前なんて言うの?」
「辻希美です」
「で、辻ちゃんはよっすぃとどういう関係なの?」
「部活の後輩です」
「ふーん」
「?」
「で、よっすぃは?」
「うちの中学校の卒業生でヒマな時は来てくれて
 練習に参加してくれてたんですけどぉ
 突然来なくなっちゃって
 学校とかに聞いたら・・・・・・」
伏し目がちの辻。
手遊びするスプーンがやけにはっきりと見えた気がした。

310L.O.D:02/02/04 00:07 ID:gp6/xCix
後ろ手に渡されるお金。
アイは鏡を取り出して、前髪を整える。
男の姿はもうない。
(・・・精液臭っ)
最後、なにバカな事を考えたのか
顔射された。
金払ってるからって無茶する奴も多い。
そういう時は文句言って
1枚増やさせたりする。
そんな事、別にどうって事なかった。
暗い道を抜けて、メインストリートに出てくる。
「あ」
ホテルに入る前に目があった不思議な女の人はまだいた。
地面に拡げた1枚の紙に書かれる原色の世界。
「あなたは、何歳?」
「14やけど、、、」
見つめられる。
大きくて、綺麗な目。
「なんでそういう事するの?」
アイは引き込まれるように
その絵の前に座った。
「別に」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
311L.O.D:02/02/04 00:08 ID:gp6/xCix
逃げようと思えば、すぐにでも
この場を離れる事なんてたやすい事なのに
なぜか立ち上がる事すら出来なかった。
女の人はゆっくりとなにかの歌を口ずさみ始めた。
よく知らない歌だったけど
心地よくて、もっと聞きたくなる。
絵は少しずつ出来上がっていった。
「あなたにあげる」
「うちに?」
「うん」
彼女は手を伸ばして、絵を受け取った。
けして、うまいわけじゃないけど
学校のプリントみたいに
そこら辺に捨てたりなんてしちゃいけない気がする。
「あ、お名前聞いていいかな?」
「加護、、、亜依」
女の人は、1本筆を取り出して
その絵に名前を加えてくれた。
「私は飯田圭織。よろしくね」
「・・・・・・」
手際良く片付けられる道具。
その様子を眺めていると
「じゃぁね、亜依ちゃん。」
と声をかけられ、ハッとする。
空白の時間。
そこにいたのに、時間の感覚がなかった。
去っていく圭織の顔は大人びた笑みを浮かべていて
加護にはまるで蜃気楼の中へ消えていくように見えた。

312トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/04 03:08 ID:ClJctju2
圭織に触れて、加護はどうなる…?
313名無し募集中。。。:02/02/05 01:52 ID:t+bVAaN3
加護ちゃん……
314L.O.D:02/02/05 18:04 ID:A9XkUQe8
暗闇の中
吉澤は自分の手首を見つめる。
バレーが大好きだった。
高校もスポーツ推薦で入った。
なのに、怪我をして
バレーが出来なくなって
自分の意味がなくなって・・・・・・
学校には行きたくなかった。
特に体育がある日は。
教師の突き刺すような視線。
吐き気がする。
逃げていた。
「・・・・・・」
カーテンを閉め切ったままの部屋。
もう何日もここから出ていない。
あの日、辻を抱き締めた瞬間
保っていた何かさえ失った。
バレーから逃げだして
ただのオンナノコでいた自分を見失った。
当然だ。
そんなもの、装った、偽者でしかないから。
辻の笑顔は化けの皮を剥がしていった。
後藤がうらやましかった。
化粧をして、夜遅くまで遊んで
すごく楽しそうだった。
一緒にいたら、なにか変わるかなと思ってたけど
やっぱりイイ子の自分を裏切れなくて・・・・・・
迷う心を時計の針の音がさらに乱す。
315L.O.D:02/02/05 18:05 ID:A9XkUQe8
チャイムの音が聞こえて
飯田は筆を置いた。
いたるところに観葉植物が置かれた飯田の部屋。
ドアを開けると、市井が立っていた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
リビングのソファに座ると
すぐに紅茶が出てきた。
市井の目には隣の作業部屋が見える。
「新しい絵だね」
「うん、昨日会ったの」
黒めがちの目が幼さを感じさせる女の子。
「援助交際してて、男の人と出てきたの」
「ふーん、、、」
「なんで、そんな事するんだろうって思って」
「あー、私は分かんねぇや」
「紗耶香も分からないか」
「なんだろうね、寂しいのかな?」
「かなぁ?」
飯田の悲しそうな顔。
溢れ出る感情が手に取るように分かる。
益々、引かれていく。
「圭織、私が書いた絵見てくれる?」
「うん」
彼女の一つ一つの表情が
市井の心を動かした。
刺激となって
絵を描かせる。
しばらくWingsにも行かないで
絵を書き続けていた。
なにかにこんなに真剣に取り組むことなんて
ほとんどなかった。
淡い色調と強いタッチで構成された
独特の人物画。
「いいね」
「いい?」
「私の絵とは違うけど、なんかいいね」
「やったぁ!」
誉められる事が嬉しい。
市井は心からの笑みを浮かべた。
316L.O.D:02/02/05 18:06 ID:A9XkUQe8
別にお金を持ってるからって
する事なんてない。
行く場所もない。
ただする事がないから
一緒に寝て、
お金を貰うだけなんだ。
口にだしては言わない。
だって、今だって、アイスがおいしいから。
段差に腰掛けて、アイスを食べる。
人が行き交う。
同じように座って
彼氏や友達を待ってる人がいっぱいいる。
「ねぇ、誰か待ってるの?」
ちょっとかっこいい男の人。
サラリーマン風じゃない。
「ちゃいますよ」
「関西?」
「まぁ」
「遊びに来てるの?」
「ううん」
「そう、俺と遊びに行かない?」
「あー、ごめんなー」
「えー、行こうよ、ヒマしてんでしょ?」
「もう帰るとこやねん」
「そっかぁー、残念」
誰でもいいのか、男は離れたと思ったら
今度は制服姿の子に声をかけている。
くだらない。
加護は立ち上がって
最後の一口を詰め込んだ。
「あのぉー8段アイスくださぁーい」
アイス屋の前には同じくらいの年の子がいた。
隣にはガングロコギャルが立ってる。
今度は別な男が寄ってきた。
「5万円でどう?」
「うち、中学生やで」
「へぇー、なに、もう1枚?」
8段アイスを受け取った女の子と目が合った。
コギャルが早く行こうと手を引っ張っていた。
「ん、ええよ」
こんな行為で心は満たされない。
だけど、やめる理由も見つからない。
317L.O.D:02/02/05 18:07 ID:A9XkUQe8
「矢口、飲みに行くけど、一緒に行くか?」
中澤が彩と肩を組んで聞いてきた。
矢口は首を横に振る。
「そっか」
「じゃ、また明日ね」
「うん」
UFOキャッチャー。
コインを入れる。
音が鳴って、ランプが一個つく。
ボタンを押すと、アームが動き出して
ちょうどよさげなところでストップ。
下へと降りていく。
掴めないぬいぐるみ。
矢口の表情は浮かない。
「つまんない・・・・・・」
『もーまりっぺはヘタなんだから』
矢口に覆い被さるようにして
安倍がやってくれる。
それがいつもの事だったのに
いない。
安倍の温もりがない。
店の奥を見る。
テーブル。
紗耶香がいない。
その隣に明日香もいない。
みんな、いなかった。

其の七 終了。
318L.O.D:02/02/05 18:12 ID:A9XkUQe8
『其の七 終了記念』

飼育ってどうなのよ?(w
319L.O.D:02/02/06 00:07 ID:BXa3gVKy
今から一気に最終章更新するんで
感想はあとからよろしく。
320L.O.D:02/02/06 00:09 ID:BXa3gVKy
終章 風

「お疲れ様でしたー」
石川梨華は、マックの通用口から出てくる。
携帯電話を取り出し、どこかへと電話をかける。
『はーい?』
「保田さーん、迎えに来てくださいよー」
『今、カラオケにいるから、来なさいよ』
「行っていいんですか?」
『明日香もいるわよ』
「いつものとこですよね」
『そう』
すぐ近くの打ち上げやなんやでよく使ういつものカラオケ屋。
行くと、ルームナンバーを教えられる。
部屋は少し薄暗い。
保田が気持ち良さそうにバラードを唄ってた。
「バイトないのに会ってたんだ?」
「まぁね」
明日香の横顔。
含み笑いがにくい。
「なにー?なんかあったの?」
保田に目配せするように見た後
笑いながら、石川の耳元に口を近付けた。
「バンドをね、組むんだ」
「え?保田さんと?」
「よく行くライブハウスでメンバー募集かけてね」
「へぇーっ、おめでとうございますっ!」
石川の他人事にも関わらず嬉しそうな表情を見て
保田も微笑んだ。
「石川、なんか唄いなさいよ」
「え、だめ!私、歌なんてっ!」
「いいっていいって、唄お?」
明日香が勝手にモーニング娘。を入れてしまった。
「笑わないでよー?」
「笑わないわよ」
「笑うけどね」
321L.O.D:02/02/06 00:09 ID:BXa3gVKy
眠る前、石川は明日香と保田の顔を思い出していた。
「いいなぁ・・・・・・」
寝返りを打つ。
すごく輝いていた笑顔。
やるべき事を見つけた人間の顔。
しっかりとした視線。
生き生きとした目。
「はぁ・・・・・・」
自信なさげな溜息はより大きく聞こえる。
思い悩んでみたところで
自分にはそんなものはない。
うっすらと窓からの光の中で
テニスのラケットが見えた。
もう、やりたくないのに。
「・・・・・・」
もう1度寝返りを打って、壁を向いて眠りについた。
322L.O.D:02/02/06 00:10 ID:BXa3gVKy
午前零時。
吉澤は鳴り止まない携帯電話を手にした。
液晶に映るごっちんの文字。
「は、、い?」
『よっすぃ?』
「そうだけど」
『元気?』
電話から聞こえてくる後藤の声は少しハスキーな気がする。
「んー、、、」
『よかったらさ、明日遊ぼうよ』
「え?」
『映画みたいんだけどさ、1人じゃやだから』
「映画?」
『うん、フランスのやつでー』
「ふーん」
『・・・・・・』
「ごっちん?」
『やだ?』
「えっ、や、そんな事ないよ!」
『無理して合わせなくていいからっ』
「違うっ!」
『だって、今、よっすぃ、、、』
「明日、何時?」
『10時半から、、、』
「じゃ、あのカフェで10時に待ち合わせ」
『うん・・・・・・』
電話が切れた。
きっと後藤なりに心配してくれてたんだと思う。
なんかその気持ちが嬉しくて
涙が出てきた。
323L.O.D:02/02/06 00:11 ID:BXa3gVKy
カフェ。
入って、辺りを見回すが
後藤の姿はない。
フッと見ると奥のボックスから手を振る影。
近付いていくと、ハイビスカスの帽子を目深にかぶった
色黒の少女。
健康的な小麦の肌に金髪の髪の毛がかかってる。
「ごっちん?」
特徴的なガングロメイクじゃない後藤を見る事自体はじめてかもしれない。
「座りなよー」
「あ、うん」
吉澤はバッグを脇に置いて、向側に座る。
「分からなかった?」
「全然」
「そっか」
「どうしたの?」
「なんか飽きちゃって」
飽きたなんて、嘘。
吉澤に会えない時間
ずっと考えていたのだ。
色白で綺麗な吉澤と並んで歩くには
自分のあのメイクはおかしい、と
そして、電話をかけるのさえ怖い自分はなぜか
全てはメイクで隠した心だから
吉澤と仲良くなりたかった。
分かりあいたくなった。
一歩、踏み出したかった。
だから、あのメイクはしなかったのだ。
「そろそろ行った方がいいかな?」
「そだね」
映画館へと歩いていく2人。
自然と手をつないでいた。
324L.O.D:02/02/06 00:13 ID:BXa3gVKy
彩はビールを片手に壁によりかかる。
静寂のステージ。
オ−ルスタンディング、客は満員。
ライトが全部消える。
現れたメンバー。
堂々とした調子の明日香。
圭もサックス片手に出てくる。
『どもー、まだ名前ありませーん』
客席がドッと湧く。
かぶさるようにして、ドラムのカウント。
一気に暴れるような演奏が爆発する。
ゴリゴリ唸るベースに
頭をつんざくようなギター。
バンドの演奏力は悪くはない。
「あかん、遅れてもうた」
隣に走ってきたらしい中澤が滑り込んできた。
「大丈夫、まだ始まったばっかだから」
きょとんとした中澤の表情。
「へ?」
「唄い出してもいないよ」
ステージの真中で明日香の息遣いまで聞こえる気がする。
スゥッと一呼吸吸って
マイクスタンドを掴む。
唄い出したその声は力強く
小さな彼女の身体を大きく見せた。
「飲む?」
「当たり前やん」
「そっか」
カウンター席に移る。
ステージからは遠くなるが
段差があるため、見やすくなった。
「かっこいいなぁ、明日香」
「うん、かっこいいね」
「うちも唄おうかな」
「やめときな、3曲唄って
 酸欠でブッ倒れちゃうから」
「まだまだ裕ちゃんだって若いでぇ」
そう言いながら、目を細くする中澤。
愛想のない明日香がバイトを始めて
圭と出会って、ステージに立った。
なんか、自分の娘でもないのに
成長する姿が見えたようで
嬉しかった。
「男いないかなぁー」
「いきなりなに言ってんのさ」
325L.O.D:02/02/06 00:14 ID:BXa3gVKy
道端に座り、飯田は今日もまた
絵を描いていた。
なにげなく手を止めて
手元のバッグから一つの封筒を取り出す。
市井からの手紙。
美術学校に進むために、高校に復学するとの事。
別になにをしてあげたわけでもないが嬉しかった。
「お絵書きしてるんですかぁ?」
うんこ座りで俯いてた飯田の顔を覗いてきたのは、辻希美。
「うん。描いてあげようか?」
「描いてくださーい」
ポカーンと口を開けた顔。
なんとなく愛らしい。
「中学生?」
「はい」
「ジャージだけど、部活は?」
「バレ−部ですよぉ」
「そう」
「お姉さん、笑顔だけど、なんかいい事あったんですかぁ?」
「うん、友達がね、夢を見つけて歩きだしたの
 あなたもいい笑顔だね。」
「ののはですねぇ、大好きだった先輩が練習に来てくれるようになりましたぁ」
「そかぁ、大好きだったんだ」
「はいっ」
子供らしい元気な返事。
「お名前は?」
「辻希美です。ののって呼んでくださーい」
「ののちゃんねー、よし」
飯田は描いた絵を辻に見せる。
オレンジや赤を多用した明るい絵。
「わぁー」
「あげるね」
「くれるんですかぁーー」
「うん」
「ありがとーございますぅ。
 お礼にー・・・・・・」
鞄を漁って、出てきたのはプリクラ手帳。
お悩みの様子で選んだ1枚。
「あげますー」
「ありがとっ」
筆入れにペタッと貼ってみせた。
「どう?」
「かわいいかわいいっ」
「へへっ」
「じゃぁねー、お姉さん」
「うん、じゃぁね」
辻は絵を丸めもせず掴んで歩いていく。
326L.O.D:02/02/06 00:15 ID:BXa3gVKy
今日も8段アイスを食しにお店へGo!
お金を払って、アイスを受け取り
ゆっくり座って食べれる場所はないかと探す。
溶けてしまわないように
食べながら歩いてると、ちょうどよい段差発見。
隣に同じような背格好の女の子。
とりあえず一心不乱にアイスを食べ
その子に話しかけてみた。
「プリクラ撮らない?」
「ん、えぇよ」
「関西の人?」
「奈良やねんけどな」
「鹿って食べるの?」
「そんな食べへんけど、、、」
「そっかぁ」
近くのゲームセンターで適当に空いてる台で
プリクラを取って、出てきたのを2人で分ける。
「はい。」
「あんがと」
辻が手帳に貼ってるのを横目で見てる。
「ののは携帯持ってへんの?」
「えっ!?なんで、ののだって分かったんですか?」
「いや、、、手帳に書いてあったから」
「ののは持ってるけど、あんまりかけないですねぇ」
「番号、、、教えて?」
「いいですよぉ」
不思議な感じだった。
辻の携帯番号を見て
ワンコールする。
「はーい、名前はぁ?」
「加護亜依」
「あ、いっと」
なんでだろう。
辻と話してると落ち着く。
SEXでさえ埋まらない心が満たされてくのを感じる。
「な、ののちゃん、どっか遊びに行かへん?」
「カラオケ行く?」
「うん、カラオケ行こ」
加護は辻の顔を見た。
口元についたコーンの欠片。
手を伸ばして、拭き取ってあげる。
327L.O.D:02/02/06 00:16 ID:BXa3gVKy
「・・・・・・」
矢口はWingsの奥へと足を運び
椅子に座ると、1冊のノートを取り出してみた。
みんながいたずら書きしたノート。
中澤がみんなで行った飲み会の費用を計算してたり
安倍や彩がkissとか書きまくってたり
辻、後藤、吉澤のプリクラが貼ってあったり
明日香が連載してた詩もあった。
市井からの最後のメッセージ。

『みんなに出会えた事で私はここから卒業できるよ。
 学校行っても頑張るし、たまに遊びにくるから
                  サヤカ    』

「みんな、いなくなっちゃったよ」
その後もノートは続いてる。
違う誰かが書き込んでいくから。
「・・・・・・」
いつか処分されてしまうノート。
みんなの思い出が消えてしまう。
店員の目を盗んで、鞄にしまった。
これでいいんだ。
思いでは守られた。
いつかこれを開いたら
この数カ月の事をきっと思い出すだろう。
328L.O.D:02/02/06 00:17 ID:BXa3gVKy
鞄を手にする矢口。
やけに明るい歌なんて口ずさみながら
昼間だってのに電気をつけてるこんな
天井の低いゲームセンターなんて抜け出して
いっぱい人がいるメインストリートへ・・・・・・
「なっち・・・・・・」
「あ、まりっぺー」
UFOキャッチャーの前。
小脇にこの前取れなかったプーさんのぬいぐるみを抱えた安倍が
そこにはいた。
「バッキャロォーー!!」
「わぁ!」
「顔見せないで、なにしてたんだよ!!」
「いやぁ、そりゃもう、毎日のように・・・・・・
 それがさ聞いてよ!あいつったらさぁーー!!」
「のろけ話なんて聞かないもんね!
 矢口をずっと放ってた奴なんてしーーーらないっ!」
「あぁ、、まりっぺ、待ってよ!
 プーさんあげないぞぉーー」
「いいもん、矢口にはしげるがいるもん!」
「しげるって誰だべ!ちょっと、まりっぺーー」

fin
329L.O.D:02/02/06 00:22 ID:BXa3gVKy
『Night of Tokyo City』終了です、はい。
書き始める前にある程度の流れっていうのが頭にあったんですけど
書き始めちゃったら、いやぁ、ブッ飛びました。
ちょっと純粋に楽しいっていう作品ではないんですが(w
なんか感じてもらえたら、これ幸いでございます。
次回作は3月終了に向けて、受験ものでもやるかなぁ。
330名無しさん:02/02/06 00:28 ID:P3YKo0Yb
最後らへんでちょいと感動
まさかしげるがでるなんて思いませんでしたよ(藁
331レク:02/02/06 00:29 ID:YlUZAL4/
感動の終了記念オメ。
それぞれの道を歩んでいく娘。たちが印象的でした。
332いたち野郎:02/02/06 02:59 ID:83+KeT5X
感動しました。
333いたち野郎:02/02/06 03:00 ID:83+KeT5X
すみません!!!sageわすれました!!
本当もうしわけないです!
334旧♪:02/02/06 03:33 ID:u41+NTyv
>作者
お疲れ様&脱稿オメ。

生きてるってなんとかなるけど
生きようとするといろいろあんのね〜

「鹿って食べるの?」<劇藁
335ねぇ、名乗って :02/02/06 04:21 ID:OQfoElf1
読ませていただきました
加護の援交にはちょっとびっくり
336ぼの ◆BONOl.Ok :02/02/06 13:28 ID:oUe+8t5y
久しぶりに来てみた(w

次回作は受験モノですか・・・
おっさんには遠い昔の出来事ですなぁ・・・
337L.O.D:02/02/06 21:53 ID:O5xCy6Ms
新作情報:『TriCK』

初の推理もの。衝撃のラストが浮かんでしまったため受験モノはパス!
明日から更新開始。
338旧♪:02/02/06 22:55 ID:u41+NTyv
>作者
モデル出身ノッポの出番はあるのでしょうか(w

明日から、ってとこが憎いね。
今日なんてあと一時間ちょっとだよ(w
339トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/07 03:34 ID:HC/DFPs5
>>L.O.D
完結おめっとさん。一日見ないうちに怒濤の更新だったようで。
人ってのは、誰かに出会って、お互いに影響しあって生きていくんだよねぇ…
最後に加護が辻と出会って救われたようで安心しました。

新作は推理ものですか!
今からストーリーおよび配役が楽しみだわね。
340アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/07 05:59 ID:ZnKMdiF3
|ノハo∈
|D`)みすてりーらいすっき!
|⊂)
341L.O.D:02/02/07 08:35 ID:vYUyxjBb
『TriCK』

ハロモニの収録が終わり、逸早く戻ってきた矢口真里は
ドアノブを何度回しても開かない事に気付く。
「あれぇ?」
「どした?」
「ドア開かないんだよね」
安倍や保田も試してみるが、開く気配はなし。
ちょうどいいところにこっちに向かってくる吉澤を見つけ
声をかけた。
「よっすぃー!マネージャーさん呼んできてー!」
「あ、はーい」
彼女は踵を返し、戻っていく。
間もなくマネージャーが戻ってきて
持っていたカギで開けてくれた。
「!?」
「わっ!」
「やぐ・・・・・・」
「あれ、、、」
一番最初に入った矢口が急に立ち止まったので
危うくぶつかりそうになって声をあげたが
その尋常じゃない様。
青ざめた顔。
ゆっくりと伸びていく指は
変わり果てた姿になった中澤裕子を指していた。
「ゆ、裕ちゃん?」
床に横たわり、そこら一帯が血の海と化している。
もう息がないのは見るからに分かる。
駆け寄り、揺り動かそうとした安倍を一喝する保田。
「触っちゃダメ!」
泣き崩れた安倍と矢口を抱きかかえた手は
跡がはっきりと残るぐらい強く握りしめられていた。
「警察を、、、呼ぼう」

342L.O.D:02/02/07 08:35 ID:vYUyxjBb
とりあえず年少メンバーには気付かれないように
楽屋を移し、前の楽屋は水漏れで危険のため
なにか必要だったらマネージャーが取ってくると伝えた。
「あれぇ?矢口リーダーは?」
辻と加護が気付いたらしく、キョロキョロと見回すが
その姿はない。
「あぁ、矢口は別な仕事で出てるよ」
「そっかぁ」
また無邪気に遊び始める。
飯田は冷静な表情を変えない。
事実を知ってるのは、年輩メンバー、それに、吉澤と後藤。
ハロプロニュースの収録を残した石川にはまだ言ってなかった。
彼女は1人、鏡に向かいメイクを続けていた。
後藤が飯田に目配せで外に出るよう合図する。
2人は自然に見えるよう時間を置いて楽屋の外に出た。
自販機で紙コップのコーヒーを買う。
「圭織」
小さな声で後藤がつぶやいた。
「ん?」
「辛くなったら、うちに言ってね。
 なっちや、圭ちゃん、やぐっつぁんいないから
 圭織にまかせてるけど。」
「ありがと」
「ほんとに、ちゃんと言ってよ?」
「後藤こそ意地張らないで、言ってね?
 圭織がお姉さんなんだからね」
「うん、分かってる」
小さな気遣い。
もう長い事一緒にいるメンバーだから
互いの事をよく知ってる。
こういう時、思いつめてしまうのは
飯田の癖で、後藤はそれをほぐすために
こうして声をかけたのだ。
そこに、石川が通りかかる。
「ニュース?」
「うんっ」
「頑張って」
「はいっ!今日もチャーミーは頑張りますよー」
バイバイと振られた手が2人には痛々しく感じられた。

343L.O.D:02/02/07 08:36 ID:vYUyxjBb
スタジオについた石川は中澤がまだ来てないと見て
スタッフに訪ねる。
「中澤さん、まだ来てないんですか?」
いつもなら用意された椅子に腰掛けて
スタッフと談笑の一つもしてものなのだが
「あれ?まだ聞いてなかった?」
「え?」
「中澤さん来れなくなっちゃったんで
 台本も変わってるはずだけど」
「あ、そうなんですか?」
「ちょっと余り取ってくるね」
1人座る椅子。
中澤が横にいない。
『石川ー、噛むなよー』
とかなんだとか言ってきて
プレッシャーをかけてくるのに
今日はいない。
「はい、これ新しいやつ」
「あのっ」
「はい?」
「これをやればいいんですよね?」
「まぁ、台本だからね」
「・・・・・・」
今日は中澤のアドリブはないんだ。
台本のままやってれば
噛んだりしなけりゃ
すぐに収録は終わって
今日は早く家に帰れる。
ゆっくりお風呂に入って
帰りに雑誌でも買っていって
それでも読みながら
なんか音楽でも聞こうかな。
そんな事が頭によぎった。
「テスト行きまーーーす!!」
セットの中の椅子に座る石川。
カメラも定位置につく。
照明も悪くない。
「行きます、4、3、2、1、キュッ!」
「キャスター、、、それは、北海道の川で鮭を取る熊!
 グルル、、、ガッ!!ウォオオオオンン!
 どもー、チャーミー石川でっす」
「・・・・・・カット」
「ダメでしたか?」
「いや、台本通りでいいんだよ、別に?」
石川の顔が少し俯く。
「あのですね、やっぱこういう時だからこそ
 中澤さんの教えてくれた事を生かしたいんです
 頑張らせてくださいっ!!」
スタッフ全員に頭を下げた。
誰ともなく拍手が起きる。
ほっと一息、安堵の溜息が出た。
中澤がいないから、手を抜くんじゃなくて
身を引き締めなきゃいけない。
石川はまた一つ再確認した。
344L.O.D:02/02/07 08:37 ID:vYUyxjBb
別室にて密かに行われてた事情聴取は、保田の番。
まずはマネージャーが鍵がかかっていた事
中澤は楽屋が別であった事
メンバー間の関係を事細かに話した後
最初に見た3人の中で唯一しゃべる事ができそうな
保田が呼ばれたのである。
保田は元リーダー中澤が死んだとは思えないぐらい
落ち着きを払っていた。
「先に一つ、いいですか?」
「なんだい?」
「死因は分かりましたか?」
「はっきりとした事はまだ分かっちゃいないが
 おそらくは、頭部を何かで殴られた、、という感じだろう」
「そうですか」
「なにか、心当たりでも?」
「いえ。ただどうして死んだのか知りたかっただけです」
刑事は淡々とそう言った目には
酷く強い感情を隠してる事を垣間見、
少し間を開けてしゃべりだした。
「最初にドアが開かない事に気付いたのは、誰ですか?」
「矢口です」
「保田さんが来たのはいつですか?」
「すぐ側にいましたよ」
「では、3人一緒に帰ってきたんですね?」
「いえ、3人一緒というわけではなくて
 矢口が先を歩いていて、なっちと私が
 その後ろを歩いていました」
「矢口さんはどれくらい先に行ってましたか?」
「・・・・・・」
俯いて、思い出そうとする仕種。
「たぶん、楽屋のドアで5つ分・・・・・・」
「なるほど」
345L.O.D:02/02/07 08:53 ID:vYUyxjBb
もう1人の刑事が保田の言う事をメモしてる。
保田の前に座ってる茶色いスーツ姿の刑事は
足を組み直して、茶を一口飲み込んだ。
「次の質問に移るけど、
 具体的に中澤さんの事をどうこう思ってるメンバーは
 モーニング娘。の中にいたかい?」
「随分、、、直接的に聞きますね」
「捜査は秘密裏に、メンバーの半分以上がまだ真実を知らない。
 その中で犯人に近付かなければいけない。
 得れる情報はどんなものでも欲しいんだよ」
「なるほど・・・・・・」
「で、どうだった?」
「特にはない、、、ですよ」
「そう?」
「きっと」
保田は脳裏で中澤の卒業ライブを思い出していた。
『圭ちゃん』
これまでにないくらい優しい声で名前を呼んでくれた。
花束が持ちづらそうで、抱え直して
しゃべり始める中澤。
その時の涙は嘘じゃない。
溢れ出るものを止める事が出来ず、声をあげて泣き出した。
「・・・・・・今日はもういいよ。疲れてるだろ」
「よろ、、しくお、、、ねがいしま、、す」
「あぁ」
開けたドアの向うにマネージャーを見つけ呼び止める。
「はい」
「現場検証は一通り終わったから
 もう帰していいよ」
「分かりました。ありがとうございました。」
深々と頭を下げるマネージャー。
起こってしまった殺人事件。
長い長い真実への道のりが始まる・・・・・・
346L.O.D:02/02/07 08:57 ID:vYUyxjBb
『更新終了?』
赤川次郎とか胡桃沢耕史なら小学生ぐらいから読んでたが
今まで最大の面白みであるトリックが浮かばなかったため
手をつけた事のなかった推理もの。
自信ねぇ〜(w
347アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/07 23:30 ID:fZz2YXBg

 
              / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∋oノハヽo∈   < 唐突な始まりで、狼の娘殺人事件おもいらしたのれす
   ( ´D`)___ \__________
   (つ/~ ※ ※ \
   /※ ※ ※ ※ \
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
348ぼの ◆BONOl.Ok :02/02/08 01:21 ID:okKXSuGC
そう言えば俺は推理小説ってあまり読んだ事ないから、
この小説で推理モノが好きになるかどうかが決まるな・・・
と、プレッシャーをかけてみる罠(w
349L.O.D:02/02/08 17:03 ID:dOhf1vAV
この部屋がヒンヤリ冷たく感じるのは
ただ気温が低いだけじゃなくて
無機質に白く塗られただけの剥き出しのコンクリートの壁や
張り詰めた空気のせいかも知れない。
目の前の刑事が手にする書類によると
中澤の死因は鈍器のような物で頭部を殴られた事による失血死。
頭蓋骨陥没の損傷具合から言って、一撃だったという。
では、なぜ、部屋は密室だったのか。
マネージャーは警察署に呼ばれていた。
「どなたかに楽屋の鍵をお渡ししましたか?」
「メンバーの何人かに渡してます」
「一番最後に渡したのは、誰ですか?」
「吉澤、、だったと思います」
「なにをしに戻ったのですか?」
「彼女、その、、、月のもので、鎮痛剤を取りに、、、、、」
「すぐに戻ってきました?」
「はい」
「他のメンバーになにか変わった様子とかございませんか?」
「私が知ってる限りでは」
「被害者が死亡した事はいつ御報告なさるんですか?」
「今日、明日中には・・・・・・」
「マスコミにはもう情報が回ってるみたいですね」
「、、、中澤の死体が御実家の方に送られてから
 公式に発表するつもりです」
マネージャーの声はしっかりしているが
重々しく痛々しい。
「我々としては吉澤さんを参考人としてお呼びしたいのですが
 どこかお時間は開いておられますか?」
「あの、、これスケジュールの写しです。
 急な仕事などで移動してる場合は会社の方に
 連絡していただければ、折り返し、、、」
「分かりました」
350L.O.D:02/02/08 17:04 ID:dOhf1vAV
その頃、メンバーは新曲の歌収録のためスタジオにいた。
スタジオの隅でやけにおとなしくしてる吉澤を見て
後藤が近付いていく。
「よっすぃ・・・・・・」
「ごっつぁん、、」
「笑えー」
頬をつまみ、ギューッと横に引っ張る。
「痛いよ」
「そか」
後藤は、適当な椅子を引っ張ってきて
椅子の上に体育座りする。
「でも、笑わなきゃダメだよ」
「分かってる」
視線の先で辻、加護が新メン相手に漫才をしてた。
吉澤はボソッとつぶやく。
「見たくないな」
「なにが?」
「泣く顔」
「そうだね」
「でも、教えなきゃだめなんだよね」
「いつかはね」
2人に沈黙が襲ってくる。
まだまだ幼い2人には
死という事実を受け止めるだけの強さはなくて
表向きの元気がなければ
今にも押しつぶされそうなほど
不安だった。
安倍、矢口は機嫌が悪い風を装い
イヤフォンを耳に腕を組み
ずっと目をつぶっていた。
保田と飯田は気丈に振る舞っているが
何も知らない石川と明るい話をする事で
気をまぎらわせてるようにも見える。
マネージャーの1人がやってきた。
「吉澤、あとで話あるから」
「はい」
恐らくは、雑誌アンケートの回答の不備かなんかだろう。
保田の好きな食べ物にあたりめといたずら書きしたのが
バレたのだろうか・・・・・・
フと視線を上げた。
いつものモーニング娘。がいた。
351L.O.D:02/02/08 17:05 ID:dOhf1vAV
取り調べ室には中澤のマネージャーが呼ばれた。
「まずですね、お聞きしたいんですが」
「はい」
「どうしてモーニング娘。の楽屋にいたんですか?」
「楽屋が別れていましたけども
 それはただの名義上でして
 中澤はほとんど娘。の楽屋におりました。
「では、スタッフも皆、被害者が娘。の楽屋にいることは
 不思議だとは思わなかったわけですね」
「はい。みんな分かってますから」
「あの時、鍵はモーニング娘。のマネージャーさんがお持ちでした。
 被害者はどのようにして、部屋に入ったのでしょう?」
「分かりません」
「一緒にはおられませんでしたよね?」
「えぇ、その後のコーナーで急遽展開が変わるとの事になったので
 プロデューサーの方と会議を開いておりました」
「何分くらいの事ですか?」
「2、30分でしたね」
「では、その間は被害者とは一緒におられなかった、と」
「しばらく、スタジオの隅で辻や加護を相手にしてたのですが
 衣装替えに戻っていました」
「衣装替えという事は、衣装さんやメイクさんも一緒だったはずですよね」
「中澤の楽屋で待ってたのですがいつまで経っても来ないし
 娘。の楽屋は鍵が開いてないという事で
 小用でもたしてるのだと思ってたそうです」
「なるほど」
生真面目そうな男だった。
スーツをビシッと着て
業界人風の匂いはしない。
「被害者とは何年の付き合いです?」
「娘。時代からですから、2年半ぐらいですかね」
「そうですか、たぶんまた後日、お呼びする事となりますが
 御連絡いたしますので」
「はい」
几帳面な性格がよく出る礼。
腰から90度。

352L.O.D:02/02/08 17:05 ID:dOhf1vAV
マネージャーの車に乗せられ
吉澤は神妙な表情を浮かべていた。
車内はFMラジオが流れていて
アップテンポのハードロックがやけにうるさく感じた。
「いつ、言うんですか?」
「そうだな・・・・・・」
「さっき、あいぼんやののが遊んでるの見て
 なんかかわいそうで泣きそうになりました」
「ごめんな。こんな時に仕事なんて」
「いえ」
「とりあえず、警察には覚えてる事は全部言うんだ」
「はい」
窓の外には立ち並ぶビル。
道路の脇の建物が邪魔して
チラつく影。
やけに晴れた日だった。
中澤裕子はもういない。
353L.O.D:02/02/08 17:09 ID:dOhf1vAV
『更新終了』

矢口の写真集がまだ入荷されてねぇよ、ウワァアン!
354レク:02/02/10 02:31 ID:aO3vu/l/
保全sage
355旧♪:02/02/11 00:23 ID:OQ7LId4W
ヤグ写真集に魅了され更新どころじゃない、に1000マードック(w
356トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/11 05:26 ID:7SD57vVW
おおう、新作が始まっているじゃないれすか。
今回は特別誰か一人が主人公ってわけじゃないのかな?
推理モノ読むのはヒサブリなんで期待してますよ♪

チョット気になったのが>>349の「中澤の死体が御実家の方に〜」。
ここは「遺体」の方がいいかと思いましたがもし意図的だったらスンマソン…

やぐ写真集はやっぱりあのテープぐるぐる巻きにつきるかな(w
357L.O.D:02/02/11 13:29 ID:bbTJ8u30
ハッ!HPの方に書いて、こっちに書くの忘れてた!
ちょいと旅行に行ってて、今、帰ってきたのれすよ。

>>349
全然、意図的じゃないっす・・・・・・

今回、他の写真集に比べ、雑誌媒体に強い広告写真家が多い気が。
矢口が御指名したんかなぁ。
358L.O.D:02/02/11 21:26 ID:bbTJ8u30
『TriCK中断のお知らせ&謝罪』
少し見切り発車気味というか
ネタを練り切らないうちに事を押し進めたため
展開に困ってしまい、この度は一度仕切り直すために
筆を置きたいと思います。すみません。

また、近頃、どうも乱発してる感があり
おもしろい物が書けてるのか悩んでおりまして
インターバルを作り、モチベーションあげるために
リクエストものの短編でもやろうかなと思いますので
どうぞ、リクをくださいませ。
359名無し:02/02/11 21:31 ID:FUaYztZX
(゚Д゚)ハァ?
360名無し:02/02/11 21:34 ID:FUaYztZX
小説というものはどんなに軽い気持ちで書き出しても
必ず詰まるのが普通です。
みんな苦しんで書いてるんだからね。
そこをふまえて始めましょう。
361名無し:02/02/11 23:00 ID:I1S5xPGg
なちごまが希望
362レク:02/02/12 00:01 ID:ixpIx+12
頑張って!
ファンはいつまでも待っている(はず?)です。
363トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/12 00:36 ID:6EMO4TA5
ありゃ中断ですか…まあおいらいつまでも待ってますがね♪

じゃあ短編は最近流行のかおごまをリクします
お互いに近づきたいのに近づけないそんな微妙な関係を
364名無し募集中。。。:02/02/12 02:32 ID:FYFiT/Cj
がんがれ!
365名無し募集中。。。:02/02/12 03:10 ID:eUEXkVxv
リクで書くのかよ。
書きたいものがあるから書くんじゃないのか本来。
366アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/12 05:25 ID:YPi/5Ao3
の━━(;´D`; )━━ん!
ショッ、ションナ、、、

リクエスト:5基面4人の物語、、、とか言ってみる、、、
367L.O.D:02/02/12 08:28 ID:mLPMWEO8
ほんと、すいませぬ、、、、
言い訳他はHPにて。

リクは作家によると思いますよ。
俺の場合はリクをネタ元にして、どんな話を書くか考えるのが
いい休養になるんですよ。
368名無し保田:02/02/12 08:53 ID:CjPTtWM4
リクエスト
推理小説。(中澤が殺されて、心の支えだったものを失ったメンバー達
の心の動き、なんかを中心に進めていって欲しい)

などと言ってみるw
369L.O.D:02/02/12 14:28 ID:mLPMWEO8
『年下のあの娘』

白と黒を基調にしたシックな大人な部屋。
ローテーブルの上に乗せられたグラスをつまみ
ゆっくりと回す。
ロゼの淡い香りが鼻孔を伝わり
脳内に刺激となって広がっていく。
口に含めば、芳醇な味わいが楽しめる。
もう1度、グラスをテーブルに戻すと
飯田圭織は塗りかけのマニキュアの続きに入る。
真っ黒な爪。
テレビに出演してる時はなかなか出来ないけど
なぜかこのマニキュアをすると
自分が自分じゃなくなった気がして
お仕事の事も忘れられた。
塗り終わった爪を見て微笑む。
そろそろあの子が来る時間。
370L.O.D:02/02/12 14:29 ID:mLPMWEO8
『圭織』
去年の誕生日の事だった。
仕事が終わったら、圭織となっちの合同誕生日を兼ねて
ご飯を食べに行く予定だったのだが
その前に、楽屋前の廊下で
圭織の右手を掴んだのは、後藤。
『どした?』
『これ・・・・・・』
小さな箱を取り出す。
『プレゼント?』
『うん』
『あとでみんなでくれるんじゃないの?』
後藤はスッと背伸びして
圭織の耳元で囁いた。
『圭織には特別だから』
少し潤んだような瞳。
どこかへと走り去ってしまった。
圭織は手の中の箱を見つめながら
固まってしまったのであった。
それが始まり。
371L.O.D:02/02/12 14:30 ID:mLPMWEO8
チャイムが鳴り、玄関まで出迎えに行くと
サングラスをかけた後藤が立っていた。
「ただいまっ」
「おかえり」
仕事場では見せないような笑顔。
ブーツを脱いだ後藤はただいまのキスをねだるように唇を差し出す。
そっと腰を抱き寄せて、息も止まるくらいのキスをする。
だけど、舌は入れない。
「ぷはぁ」
「ふふっ」
「あ、マニキュア、私があげたのだ」
「似合うでしょー」
「あったりまえだよぉ、後藤が選んだんだもん」
腰に回した手はそのまま、リビングに戻る。
「晩ご飯はなに?」
「グラタン」
「やったぁ」
まるで子供のようにはしゃいでる。
「あと焼くだけだからね」
「うん」
かわいくて、素直な女の子。
それが後藤真希の本当の姿。
372L.O.D:02/02/12 14:33 ID:mLPMWEO8
寝室の雰囲気に合わせてベッドを買ったら
セミダブルのベッドで1人で寝ると
どことなく落ち着かなくて、
圭織は嫌いだったのだが
今は、後藤がいる。
「ねぇ、圭織」
「なぁに?」
「うち、最近、お仕事楽しいよ」
「そう」
つないだ手から温もりが溢れてくる。
そこに後藤真希がいる。
「圭織、辛くない?」
「大丈夫」
「リーダー、大変そうだから」
「まぁねぇ、裕ちゃんがいた時よりは責任あるしね」
布団の中でモゾモゾと動いて
抱きついてきた後藤の身体は柔らかく
不思議な気持ちになる。
「後藤に甘えてもいいんだよ?」
「なーに、言ってんだか」
頬と頬が触れた。
そのまま深い眠りへ落ちてゆく。
373L.O.D:02/02/12 14:34 ID:mLPMWEO8
番組の収録中。
他のゲストのおしゃべりをつまらなそうに聞いてる後藤。
いわゆる一般的な後藤真希である。
隣に座る吉澤は辻、加護となんか悪ふざけしてた。
ボーッと虚空を見つめてる。
なにを考えてるんだろ。
まったく分からない。
(後藤、こっち向けー)
圭織はなんとなく心の中で唱えた。
まるで聞こえたかのように後藤がこっちを見た。
目が合った。
口元に微笑を浮かべて、また他のとこを見てしまう。
飯田圭織しか知らない後藤真希が
なんか一段と愛しく思えて
また惚れてしまう気がした・・・・・・

fin
374名無し募集中。。。:02/02/12 19:23 ID:K//b1FZ2
良いっす・・・。
375名無しさん:02/02/12 22:40 ID:LQa2Un+J
マジでいいっすね
376旧♪:02/02/13 06:46 ID:nMV7YJst
1000マードックは没収されたわけだがw

リクエスト「やぐごま」
新曲の生成過程を背景に、初のセンターに臨む先輩と
センター経験豊富な後輩とのちょっとイイ話w
377トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/14 02:17 ID:agF/xP6z
おおっと早速おいらがリクしたかおごまが!
チョット期待してたのとは違かったけど(w
でも>>373はすごく(・∀・)イイ!!

>>旧♪
>リクエスト「やぐごま」
>新曲の生成過程を背景に、初のセンターに臨む先輩と
>センター経験豊富な後輩とのちょっとイイ話w

これイイね!おいらもこの企画に一票しとくっス
378L.O.D:02/02/14 02:27 ID:CNXdBU97
かおごまー、かおごまーってのだけ考えてたらあーなっちゃって
近付きたいのに近付けないというこの前の段階を書くのを忘れてた(死)
HPに収録する時に足しておこ・・・・・・

やぐごまは、現在、鋭意制作中。
379L.O.D:02/02/14 09:18 ID:z2MgqYHu
『ソコニイルコト』

「いや、あのね・・・・・・」
「うん」
「そのぉ、なんていうんだ」
「おっちゃん、エビ!」
「うんうん」
「後藤はさぁ、、、うーん」
「なぁ、のの、ウニ食うてみーひんか?」
「食べるのれす」
「醤油取って」
「やっぱ、その、ずっとさぁ、、、」
「この塩加減がたまらんなぁ」
「お塩振ってるのれすか?」
「あ、ありがと」
「娘。に入ってきてから、こうね」
「なに言うてんねん、海の味やないか」
「あいぼん、海は飲むと喉乾くのれすよ」
「ふんふん、んぐ」
「まんな、、、、、、」
「この自然なな、塩の味が残ってるわけっちゅー事やっ」
「へぇー、ウニは海の味って事れすね」
「あー、ギョクください」
「ごっちん、、、、聞いてる?」
思わず矢口真里は、隣に座ってる後藤真希の顔を覗き込む。
「聞いてるけどぉ、やぐっつあんはなにが言いたいの?」
厚めの玉子が乗ったおいしそうなギョクを手にしながら
ずばりと言い放ち、口の中に放り込んだ。
「いやぁ、なんか新曲さ、矢口がセンターらしいんだわ」
「ふーん」
後藤はお茶を口にした後、辻の醤油垂れ防止用前掛けを直してやる。
薄い反応にその後の言葉がしばらく出なかった。
「やぐっつぁん、センター初めてだっけ?」
「そうだよぅ」
「ヅケ一つ」
「センターってさぁ、気持ちいい?」
握りたてのヅケを食べながら、後藤は不敵な笑みを浮かべた。
「最高」
矢口にしてみれば、その笑顔は小憎たらしいくらい
輝いていたのであった。
380L.O.D:02/02/14 09:18 ID:z2MgqYHu
「ほんとはね、嘘なんだよ・・・・・・」
後藤は部屋で1人、ポツリとそうつぶやいた。
「センターなんてね、カメラに映ってるだけなんだから」
嫌味なんかじゃない。
デビューシングルLOVEマシーンからセンターに立ち続けてる人間だから言える言葉。
カットは多い。
ただそれだけだ。
後藤はそれを痛感する。
歌えば、それでいいんじゃないんだ。
現に、自分はセンターに立ちながら
周りの人に、自分を理解してもらえてないという状況にあった。
センターが気持ちいいなんて思った事なかった。
逆に矢口がうらやましかった。
LOVEマシーンの最後の決めの台詞。
セクシービーム。
ミニモニ。だってそうだ。
矢口じゃなきゃ出来ない事
いっぱいあった。
今の自分にはそういうものはない。
もし、自分がやめたら、誇れる唄があるだろうか。
私はこれを歌いましたと言えるだろうか。
ない、見つからない。
不安な気持ちは止まらなかった。
「なっつぁんはいいなぁ」
なにげなく伸ばした手は空のふるさとのケースを取った。
後藤の好きな曲。
セールスは悪かったかもしれない。
だけど、きっと、なっちの中でこの曲は深く刻まれてるはずだ。
今まで歌ってきた曲の中で、後藤にとって
それほどの思いを傾けた曲など存在しなかった。
381L.O.D:02/02/14 09:19 ID:z2MgqYHu
「私って、、、、なんなんだろ」
ソロデビューしてる。
たった1人。
センターだ。
目立ってる。
だから、どうしたんだろう。
アイドル?
松浦の方がアイドルだ。
自分じゃソロコンサートは出来ない。
だって、プッチモニでも出来ないんだし
アルバム出してるタンポポですら出来ないんだから。
自分の存在がちっぽけに思えてくる。
歌手になった。
芸能人になった。
テレビに映った。
それがなんだっていうんだ。
後藤真希は後藤真希なのに
こんなにテレビに出てても
誰1人、本当の後藤真希を理解してはくれない。
後藤だってはしゃぐし、騒ぐし、泣くし
怒るし、お腹も空く。
そういう自分がブラウン管の向こうまで伝わってない。
それに比べて、矢口は元気でちょっとうるさい子として
キャラが浸透している。
みんなに理解されてる。
「ごとーは、やぐっつぁんが羨ましいんだぞ、、」
そうつぶやくと、ふてくされたように
布団をかぶって、3秒後には寝てしまった。
382L.O.D:02/02/14 09:20 ID:z2MgqYHu
新曲の唄収録。
たくさんのライトを浴びて踊る娘。
「あっ」
うたいだしのタイミングを間違えた矢口は
すぐに頭を下げる。
「すいませんっ!」

「はぁー、あん時はマジドキドキしちゃったよ」
「センターって緊張しますよね」
「なっちは気持ちいいけどなー」
「いや、あの感じはね、ちょっとやっぱ違うね」
「梨華ちゃんのセンターは別な意味で緊張するけど」
「どういう意味ですか、安倍さんっ」
「キャハハハハハ」
「だってさぁ、いつ音はずすか怖いじゃん」
「ほんと、石川、もうしばらくはセンターいいです・・・・」
「なんだよー、目立ちたくないの?」
「もっと唄がうまくなったらで・・・・」
「何年かかるんだべ?」
「10年くらいかな?」
「娘。なくなっちゃいますよ!」
「いつまで娘。出来るんだろうねー、、っ、熱!」
「や、まりっぺ、くっついてこないで!」
「サウナの中で暴れないでくださいよー」
安倍がふざけて、矢口の身体を石川の方に押すが、、、
「なっち、やめて!!黒いの移る!」
「移りませんっ!」
真剣に怒った石川の顔がおかしくって
2人は爆笑する。
石川もそれにつられて、次第に笑いだしてしまった。
唄の収録はやはり仕事だから緊張感持ってやっているが
センターはそれ以上に緊張する。
楽観主義の吉澤はヘラヘラと努力しながら乗り切ったが
石川はステージの度に『私は出来る』と暗示をかけてたらしい。
まぁ、紅白の大一番で歌わせないという暴挙に出た
事務所も事務所なのだが。
「うあぁ〜、明日も唄収録だよっ」
「大丈夫、やぐっつぁんは出来る子だからねー」
「私も頭撫でてくださーい」
「梨華ちゃんは黒いの移っちゃうから・・・・・・」
383L.O.D:02/02/14 09:32 ID:z2MgqYHu
翌日の楽屋。
後藤がお菓子を食べながら、吉澤とおしゃべりしてると
フラフラッと矢口が入ってきた。
「おはよーございまーす、、、」
「おは、、、やぐっつぁん、大丈夫?」
「あー、眠い・・・・・・」
目の下のくまがひどい。
「ちゃんと寝てる?」
「昨日、眠れなかった・・・・・・」
他のメンバーが心配そうに見てた。
「ちょっと矢口ぃ、倒れるんじゃないわよ?」
保田がまるでクギを刺すように言うと
力無くうなづく。
いつもの矢口らしさはなかった。

しかし、その言葉は守られなかった。

「矢口!?」
唄収録の最中、曲は中盤であとサビを1回歌い
ラスト踊りきれば終わりというところで
矢口は膝から崩れ落ちた。
ちょうど側にいた安倍がとっさに身体を支える。
赤らんだ頬。
ダンスで息があがってるのとは呼吸が違う。
額に当てられた手。
「熱い・・・・・・」
「マネージャー!」
「ごめ、、ん、、、、歌わなきゃ、、、」
「矢口のバカッ!こんなに熱あんじゃん!」
収録は中断され、矢口はひとまずマネージャーが常備してる熱冷ましで
熱を下げ、この唄収録だけは乗り切る事になる。
384L.O.D:02/02/14 09:33 ID:z2MgqYHu

  キィ・・・・・・

他に誰もいない楽屋。
ソファで横になった矢口はドアが開く音が聞こえて
顔を動かした。
「誰?」
開いたものの中に入ってこないもんだから
声をかけてみた。
中を覗き込むその目は後藤だ。
「ごっちん、、、」
「マネにさ、来ちゃダメって言われたんだけど
 みかんあげようと思って・・・・・・」
「あんがと、、」
椅子を引き寄せ、枕元に座る後藤。
「剥いてあげるから」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いやぁ、センター大変だね」
「そう?」
「昨日もなんかちゃんと伝えられてるかなって
 心配になっちゃって寝れなかった。
 それで身体壊しちゃうなんてプロ失格だぁ」
「私、やぐっつぁんがうらやましいよ」
みかんの皮を剥く手が止まってた。
視線を下に落とし、後藤は矢口1人に聞こえるような
小さな声でぽつりぽつりと言う。
「後藤はずっとセンターだったけど、よかった事なんてなかったよ。
 センターになるくらいなら、やぐっつぁんみたく
 本当の自分をみんなに知ってほしいな・・・・・・」
「ごっつぁん・・・・・・」
「元気ないなんてさ、やぐっつぁんらしくないからさ
 早く、、、元気になってね?」
「、、おぅ!」
枕元に置かれたみかん。
後藤がいなくなった部屋でひとかけら
口に運ぶと、甘くて
涙が一粒零れた。
センター
そこにいる事の意味。
なってみて、初めて分かったセンターの重圧。
モーニング娘。になった途端
後藤はずっとあんな所にいたんだ。
そう思うと、なぜか可哀想で涙が出た。
(頑張らなきゃ)

fin
385L.O.D:02/02/14 21:47 ID:i5AVDeW+
『TriCK』

序章

ハロモニの収録が終わり、逸早く戻ってきた矢口真里は
ドアノブを何度回しても開かない事に気付く。
「あれぇ?」
「どした?」
「ドア開かないんだよね」
安倍や保田も試してみるが、開く気配はなし。
ちょうどいいところにこっちに向かってくる吉澤を見つけ
声をかけた。
「よっすぃー!マネージャーさん呼んできてー!」
「あ、はーい」
彼女は踵を返し、戻っていく。
間もなくマネージャーが戻ってきて
持っていたカギで開けてくれた。
「!?」
「わっ!」
「やぐ・・・・・・」
「あれ、、、」
一番最初に入った矢口が急に立ち止まったので
危うくぶつかりそうになって声をあげたが
その尋常じゃない様。
青ざめた顔。
ゆっくりと伸びていく指は
変わり果てた姿になった中澤裕子を指していた。
「ゆ、裕ちゃん?」
床に横たわり、そこら一帯が血の海と化している。
もう息がないのは見るからに分かる。
駆け寄り、揺り動かそうとした安倍を一喝する保田。
「触っちゃダメ!」
泣き崩れた安倍と矢口を抱きかかえた手は
跡がはっきりと残るぐらい強く握りしめられていた。
「警察を、、、呼ぼう」
386L.O.D:02/02/14 21:48 ID:i5AVDeW+
辻と加護が廊下を歩いてた。
「ここかな?」
2人の手には1枚のメモがあった。
マネージャーが手書きで書いてくれた新しい楽屋の場所。
さっきまで使ってた楽屋はスプリンクラーの調子がおかしくて
入り口の辺りが水びたしになってしまったらしく
出入りするのは危険なので
何か用がある時はマネージャーが取りに行くという。
角を曲がると、モーニング娘。の名札を見つけた。
ドアを開ける。
飯田が1人、本を読んでいた。
「飯田さぁ〜ん」
辻が甘えるように走っていって、飛びついた。
飯田は温和な表情でその頭を撫でる。
加護はテーブルの上の小さな籠に入った飴玉を一つ、口にする。
「ぴょーん星人は録り終わったの?」
「まだですよぉ」
「あ、矢口ね、ちょっと別な用事でいないから
 後回しになっちゃうかもしれない」
「分かりましたぁ」
「遊んでおいで」
「はぁ〜い」
元気に答えるその後ろ姿を見て、心が癒された。
飯田は倒れた中澤の姿を見せてはもらえなかった。
それだけが救いだった。
矢口、安倍、保田と共にその場にいたら
今、こうして残りの収録を乗り切る事は出来なかった。
387L.O.D:02/02/14 21:49 ID:i5AVDeW+
あの気丈な矢口がなに一つしゃべれなくなっていた。
今は別な場所を借りて、そこで休ませてもらっている。
安倍もショックだったのであろう。
泣き止まず、矢口の側から離れようとしなかった。
保田は2人に変わって、警察の事情聴取を受けている。
しっかりしなければいけないのは自分だ。
リーダーなんだから、ここで倒れてはいけない。
涙も見せてはいけない。
考えないようにしよう、と誓う。
フと顔を上げると、後藤が立っていた。
「どした?」
「圭織・・・・・・」
「そっか、後藤はもう聞いたんだよね」
俯き気味に近寄ってくると横に座る。
彼女とてまだまだ幼い。
悲しみを隠しきれず
その瞳はどこか切なそうだった。
「ハロプロニュース、、、録り終わったよ」
「石川か・・・・・・」
「ねぇ、圭織」
「ん?」
「辛くなったら、うちに言ってね。
 なっちや、圭ちゃん、やぐっつぁんいないから
 圭織にまかせてるけどさ・・・・・・」
「ありがと」
「ほんとに、ちゃんと言ってよ?」
「後藤こそ意地張らないで、言ってね?
 圭織がお姉さんなんだからね」
「うん、分かってる」
小さな気遣い。
もう長い事一緒にいるメンバーだから互いの事をよく知ってる。
こういう時、思いつめてしまうのは飯田の癖で、
後藤はそれをほぐすためにこうして声をかけたのだ。
「ほんとにありがとね」
「新メンとかには収録の後言うの?」
「たぶんそうだと思う」
「分かった」
立ち上がった後藤が浮かべた笑みは
儚くて、今にも散りそうな桜の花のようであった。
飯田もつられて、微笑む。
今は笑顔もうまく作れない。
388L.O.D:02/02/14 21:50 ID:i5AVDeW+
収録が全て終了し、全員が楽屋に集められた。
しかし、マネージャーの緊迫した表情が私語を許さず
水を打ったように静かだった。
このような空気の張り詰めたミーティングを初めて体験するであろう
5期メンの顔は強張り、怯えを感じさせる。
安倍と矢口も憔悴しきった様子で
部屋の片隅で寄り添うように縮こまっていた。
「あ・・・・・・」
最初の一言を発そうとしたものの言葉に詰まる。
真実を知っている者なら誰もが当たり前だと思うだろう。
こんな事、口に出す事すら嫌だ・・・・・・
「みんな、落ち着いてきいてほしい」
全員がマネージャーを見る。
「中澤さんが、、、、こ、殺されました、、、」
「えっ?」
小さな声を上げたのは、石川。
「殺され、、、、たんですか?」
小川は驚きを隠せず、確認するようにつぶやいた。
「今、警察の方が捜査してますけど
 まだ犯人とかもまったく分かりません」
誰も言葉すら出ない。
辻と加護はポカーンと口を開けて
なにがどうなってるのか理解していない様子である。
「とりあえず、何か警察になにか聞かれたら素直に答える事。
 あと、なにか変わった事があったら、スタッフに必ず
 報告する事、分かった?」
マネージャーの顔が一瞬、翳る。
「これ、、、明日からのスケジュ・・・・・・」
「仕事させる気なの!?」

  ガタンッ!

保田が立ち上がった勢いで椅子が倒れる。
389L.O.D:02/02/14 21:51 ID:i5AVDeW+
「なっちや矢口があんな状況なのよ!
 出来るわけないじゃない!!」
「ごめんなさ・・・・・・」
「ごめんじゃないわよ!!
 ちょっと見せて!!モーたいのロケ!?
 もう終わるんでしょ、あの番組!!
 どうせ前のロケの素材残ってるんだから
 それでいいでしょ!!!」
「圭ちゃ・・・・・・」
なだめようと肩に触れた後藤の手を振払い
保田は飛び出していってしまう。
後藤もそれを追っていってしまった。
「本当にごめん。すごく暫定的なものだから、、、
 変更になったりしたら、電話入れるので
 今日は解散します。お疲れ様でした、、、」
深々と頭を下げるマネージャーはまるでなにかに陳謝してるように見えた。
1人として立ち上がろうとしなかったが
矢口は、まるでその場から逃げ出すように
荷物も持たないで走っていく。
「ごめんね、、、みんな」
安倍も矢口と自分の荷物を抱えると
小さく頭を下げて、楽屋から出ていった。
「飯田さん・・・・・・」
加護のか細い声がかろうじて聞こえる。
「なに、、?」
「カメラ、どこですか・・・・・・」
現実など受け入れる事はできなかった。
頭のどこかでこれは番組の企画なんだって思ってた。
そう考える事しか出来なかった。
つい、2、3時間前は優しく抱き締めてくれたあの手は
もう存在しないなんて思えなかったから・・・・・・

序章 終了
390アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/15 00:05 ID:ffm14jfZ
あ、、、TRICKだ、、、
スランプ脱出?
391368:02/02/15 01:51 ID:RrRbq1mP
おお、ついに俺のリクがw

細部がちょっとずつ変わってるみたいだけど
大筋は変わらないようで、楽しみにしています。
頑張ってください。
392L.O.D:02/02/15 13:38 ID:txhV+bRy
第一章 視線

安倍なつみは目を覚ます。
布団のかかってない肩が少し寒い。
目の前に、矢口の顔があった。
昨日の夜は矢口1人帰すのが不安で
自宅まで送ったのだが
帰り際、袖を引っ張る彼女の姿を見ると
帰れなくて、泊まっていった。
お風呂も2人で入った。
あまり交わす言葉もなくて、布団に入ると
矢口は胸にしがみついて泣き出した。
安倍はそれをそっと抱き締める事しか出来なかった。
その跡が頬に残ってる。
「まりっぺ・・・・・・」
矢口も目を覚ましてしまったらしく
うっすらと目を開ける。
「あ、、、」
「おはよ」
「・・・・・おはよ」
起き上がると、矢口はまだ布団の中で眠たげにしている。
テーブルに置いた携帯電話を手に取り、時間を見た。
午前10時。
ゆっくり眠れた。
そういえばスケジュール表を見てない。
今日の仕事、いや、これからの仕事はどうなるんだろう。
テレビは報道してるんだろうか。
部屋に置かれたテレビが目に入る。
リモコンに手を伸ばそうとした時
矢口の小さな手が必死に掴んできた。
「やだ・・・・・・」
安倍の考えた事が分かったのだろう。
小さく首を振る姿が可哀想で
自らの涙を堪えながら
ギュッと抱き締める。
それしか不安をやわらげる方法が見つからなかった。
393L.O.D:02/02/15 13:39 ID:txhV+bRy
全ての仕事がキャンセルされたものの全員事務所に収集される。
午前中、娘。関連のスタッフ、社長以下幹部による会議が行われ
これからの事は決定されたのである。
事務所の電話が鳴り止む事はなかった。
メールサーバーはパンクした。
そんな中でメンバーは事務所の一角の会議室にいた。
誰もが沈痛な表情を浮かべていた。
ドアが開き、やってきたのはつんくだった。
「今回はみんな突然の事で驚いてるやろし、
 俺も本当にビックリした。
 それにこんな風に別れてしまう事になって
 ショックを受けてるやつもおると思うけど
 どうしてあーなってしまったんか追求せなあかん。
 今後のスケジュール上、あまり警察の方に出向く時間は作られへんから
 今日のうちにそれぞれ個室に入ってもらって
 記憶してる事、思ってる事を言ったり
 質問に答えてもらうから・・・・・・」
黙って、うなづくメンバー。
「じゃぁ、廊下でマネージャー待ってるから行きな」
うながされ、席から立ち上がり
1人、また1人と消えていく。
394L.O.D:02/02/15 13:40 ID:txhV+bRy
「なにか最近、変わった事はありましたか?」
事務所内のアーティストやレコード会社の担当などと会話するための
ブースの中には刑事が2人待っていた。
石川梨華が席について、最初の質問はそれだった。
彼女の口からは躊躇わず、すっと言葉が出てきた。
「あのですね、、よっすぃ、、吉澤さ、、、」
「あぁ、大丈夫ですよ、さすがに分かるんで」
柔和な笑顔に緊張が少しほどける。
「今朝、事務所の前で会ったんですけど
 挨拶もしてくれなくて・・・・・・」
「それは今朝だけですか?」
「いえ、最近、ずっとそうでした。」
「吉澤さんは、被害者の中澤さんに、その・・・・
 特別に感情を抱いてたとかはありますか?」
「は、はい、、、、よっすぃは中澤さんが、、、、」

2000年5月

市井紗耶香卒業コンサートを間近に控えたある日。
練習場の片隅で辻と加護がふざけていた。
音楽が途中で止まる。
ツカツカと近寄ってきた中澤の顔は
明らかに怒っていた。
「いい加減にせぇっ!!!」
空気の振動すら分かりそうなぐらいの大きな声だった。
「お前等、遊び腐って!
 あぁっ!さっき踊れてたんか?
 フリ完璧だったんか!?
 遊んでるヒマあったら練習せぇや!!」
しぶしぶという具合に立ち上がり、
鏡のある空いてるスペースに向かう辻と加護。
「吉澤も石川も全然踊れてへんかったやないかっ!
 一緒に行って、踊れっ!!」
パイプ椅子に座って、飲み物を口にしてた吉澤は
前に立ちはだかるリーダーの姿を一瞥した。
「ひとみちゃん、、、」
完全にとばっちりのような怒声に吉澤の不満が
今にも爆発しそうな感じもあったが
椅子にかけてあったタオルを掴むと
吉澤は早足で去った。
石川も心配そうにそれを追った。
395L.O.D:02/02/15 13:41 ID:txhV+bRy
「なんやねん、あれ」
4人は帰り、ファーストフードに寄って
ハンバーガーを食べながら
不満をダラダラと口にした。
ある意味、日常の出来事と化してしまった反省会。
加護が不満そうに言う。
「まぁ、でも、踊れてなかったから、、、ねっ?」
石川はその場を修めるような事を言うと
向かいに座る吉澤の目が鋭く突き刺さった。
こういう時の吉澤の目は酷く冷たくも見え
逆に燃えてるようにも見える。
「なに、、、?」
「私はずっと嫌いだから、あの人」
吉澤は4人の時は決して中澤の名を呼ぶ事はなかった。
嫌いだった。
中澤の大人という強みが嫌だった。
バレーボールは6人が1つとならなければ完成しない。
強烈なアタッカーなどがいたとしても
他のメンバーがいらない事はありえない。
ただ、中澤は年長者だから引っ張るのではなく
ただ上から見下してるようにしか見えなかった。
その後もずっと、吉澤と中澤が合見える事はなかった。

「嫌いですよ」
別の個室の吉澤ひとみはいともたやすくそう言ってのける。
その顔は無表情だった。
「あなたがやったわけではないんでしょ?」
「当たり前じゃないですか」
「・・・・・・」
完全に刑事を手玉に取るようなしゃべり。
その姿はテレビやラジオでみるアホさ爆発の吉澤ではなかった。
「中澤さんってなんで死んだんですか?」
「頭部を何かで殴られた・・・・・・」
「ふーん」
「なんか心当たりは?」
「別に。毒でも盛られたのかと思った」
淡々と語るその言葉に感情はない。
逆に死んだ事が彼女にとって幸いというような態度にも見えた。
「私以外にも中澤さんが嫌いな人なんていっぱいいるよ、、、きっと」

396L.O.D:02/02/15 13:46 ID:txhV+bRy
昨日、AM11:30
中澤裕子はスタジオの入り口に姿を見せる。
「おはよーございまーす」
スタッフとすれ違った彼女は
モーニング娘。時代と変わらない
きっちりとした挨拶を交わした。
そのまま楽屋に向かう。
娘。の楽屋の隣だ。
一応、荷物は自分の楽屋に置く。
鏡の前にスケジュール表があった。
そこでメイク開始の時間をチェックして
意気揚々と娘。の楽屋へ行く。
「やっほー、裕ちゃんやでぇーー」
保田と紺野、それに新垣がいた。
「おはよ、裕ちゃん」
「おはようございます、よろしくお願いします」
「はいはーい、もう仕事慣れたかー?」
自分の椅子を寄せ、紺野に向かって笑いかけると
紺野は緊張した顔で目をパチクリさせながら答える。
「いえ、まだちょっと・・・・・・」
「そっかぁ、がんばりやー。
 きゃぁーー、新垣、ほんま
 顔小さいなぁーーーー!」
両手で顔を掴まれても笑顔を崩さない。
モーニング娘。が大好きで仕方なかった新垣は
卒業してしまった中澤が自分を覚えてくれるのも嬉しかった。
「なんか紺野ってデビューした頃の圭織みたいやな」
「どういう意味よ、それ?」
「いや、なんかさ、なにやっても一生懸命っていうか
 しゃべるのとかもほんまはゆったりしたペースなのに
 頑張ってしゃべろうとして、やっぱ遅いとか」
「あー、交信キャラっぽいよねぇ」
照れたように俯いてる紺野の頭を撫でる中澤の手。
397L.O.D:02/02/15 13:47 ID:txhV+bRy
「圭ちゃんいじめたらあかんで」
「いじめないわよ、裕ちゃんじゃないもの。」
「いつうちがいじめたっちゅーねん」
「怖かったわよー、最初は」
「あーあれはなぁ、やっぱこう最初は
 みんな入ってきたばっかで分からへんやん。
 特にあんたらなんか初めて入ってきたし
 うちもうまく叱られへんかったんよ」
「保田さんはすごく優しいですよ」
新垣がそう助け舟を出すと
思わず保田も笑ってしまった。
自分がやめてから加入した新メンと交流できるのも
ハロモニがあったからだ。
飯田から時折電話がある。
そんな時もやっぱりそれぞれの事を知ってると
アドバイスも変わったりするものだ。
高橋はあー見えて、負けず嫌いで
ちょっとの無理をしてでも
勝ち負けにこだわるところがあった。
小川は努力の人だし、周りの空気を読むのがうまかった。
自分に振られたときに何をすればいいのか
ちゃんと計算が出来ている事は
これだけの人数になった娘。にとって
大事な事である。
紺野は天然で、デビューしたての頃の飯田に似てた。
運動神経はいいのだが、なぜかダンスがダメで
はしゃぐ時はすごく明るいし
黙ってると不気味ですらある。
純真で真直ぐな心を持っていた。
新垣はプロという存在をしっかり弁えている。
辻、加護の自由奔放さがない分
指導しやすいものの面白みにかける。
飯田としてもそこは気になるらしい。
大好きな娘。の、新メンバー。
これからの娘。を作る大切な人達。
中澤は柔らかな笑みで
保田と会話する2人を見てた。

398L.O.D:02/02/15 13:48 ID:txhV+bRy
新垣は言う。
「すごくやさしかったです。
 収録で一緒の時も声とかかけてくれて」
「そっかぁ・・・・・・。
 昨日、なにか特に変わったこととかあった?」
中空を見つめ、思い出そうとする。
「特には、、ないです」
「誰か知らないスタッフがいたとか、、、」
「あ、、、」
「なにかある?」
「見たことない男の人がいました」
調書を作ってた刑事も新垣を見た。
どんな些細な情報でもよかった。
密室で彼女は死んでいた。
芸能人が密室で殺されたなど
マスコミの格好のネタだ。
なんとしても早急に犯人を逮捕する必要があった。
399L.O.D:02/02/15 13:49 ID:txhV+bRy
一旦、休憩が挟まれ、大会議場では刑事がそれぞれに得た情報の交換をする。
娘。はいつもなら中学生メンバーの華やかなしゃべり声が聞こえたりするのだが
喋る者はいなく、ひっそりとしていた。
吉澤は1人、どこかへと行ってしまう。
「よっすぃ・・・・・・」
石川の目がその背を追う。
まるで加護に寄り添うようにしていた辻が口を開いた。
「よっすぃがやったんじゃないかな・・・・・・」
「辻!」
脊髄反射のごとき速さで叫んだのは、飯田。
「だめだよ、のの・・・・・・」
加護の表情は複雑だ。
どこかで疑っていた。
辻の言いたい事も分かるけど
それは口に出してはいけなかった。
「メンバーを疑うなんて、、、、そんなのダメですよ、、、」
高橋の一言に静かにうなづく辻。
しかし、皆、ある日の事を思い出していたのだった。
400L.O.D:02/02/15 13:50 ID:txhV+bRy
2001年4月。
暖かな日だった。
シャツに上1枚羽織るくらいでも歩けそうなくらい
天気がよくて、外を歩いてた時はすごく気持ち良かったのに
皆が集まった席で中澤は脱退を告げた。
みんな泣いていた。
ただ1人を覗いて。
吉澤ひとみ。
冷めた顔でその様を見ていた。
後藤や石川が啜り泣いているのを見て
困り果てた様子をやっと見せ
その肩を抱く。
「ほな、、行ってくるわ」
「がんばってね」
中澤が口々にはげましの言葉を受け
会見のために部屋を出ていく。
静寂の中で、辻加護のわんわんと泣く声が一層の事
大きく聞こえた。
「はぁーぁ」
吉澤のわざとらしいため息がそれらをかき消す。
「やめちゃうんすねー」
ふてぶてしく椅子に座る。
「残念だぁー」
「吉澤っ、どういう意味よ!」
保田が襟首を掴み、殴りかからんとすると
吉澤はいともたやすくそれを投げ飛ばす。
「そのまんまの意味ですよ。
 もう身体が辛くてやめちゃうんすよ、きっと。
 あとはうちらがウザいとかね?」
口元に浮かべた薄ら笑いがその言葉の怖さを増していた。
401L.O.D:02/02/15 14:14 ID:txhV+bRy
吉澤は蓋の閉まったままの便座の上に腰掛ける。
ポケットからタバコを一本取り出して、火をつけた。
「死んだか」
嫌いだった。
しゃべりたくなかった。
話しかけられる事も
抱きしめられる事も
嫌だったけど
本人の前では普通にしてた。
学校の先生みたいに
露骨に嫌な顔をしてやったら
彼女は一体、自分をどんな風に扱ったんだろう。
よく怒られた。
けど、誉めてもくれた。
あまり嬉しくはなかった。
「中澤、、、裕子、、、、」
モーニング娘。リーダー。
誰よりも娘。を愛してた。
大切にしてた。
歌を愛してた。
自分はただ芸能界にあこがれてた。
別に歌手になりたかったわけではなかった。
バレーをやめて、なにをしていいか分からなくて
半ば冗談で受けたオーディション。
入るまで、仕事がこんなにきついと思わなかった。
特に中澤は厳しかった。
「・・・・・・?」
自分の頬を流れる涙に気付く。
どうして流れてるかは、本人にも分からなかった。

402L.O.D:02/02/15 14:15 ID:txhV+bRy
矢口は自分の鞄を引き寄せた。
LOVEBOATのビニールバックである。
意外と丈夫で、デザインもよいから
好んで使っていた。
口を開け、化粧道具を取り出した。
やっぱり、涙の跡が残っている。
「はぁ・・・・・・」
鏡を見ながらマスカラを直して
化粧道具を仕舞い
袋の中に戻す時に
何かに気付く。
「・・・・・・」
手を袋の中に突っ込んで漁ると
スウェードの箱が出てきた。
「なに、、、これ?」
こんなものを入れておいた覚えはない。
安倍や保田、石川も矢口を見ている。
「どうしたの、矢口?」
「私のバックになんか知らない箱が、、、、」
「ちょっと、危ないんじゃないの?」
「マネージャー呼んできて」
マネージャーはすぐさまかけつけて
矢口から箱を受け取る。
「指輪の箱だよね?」
「ですよね」
「爆発物の可能性もないわけじゃないから
 一旦、預かっていい?」
403L.O.D:02/02/15 14:16 ID:txhV+bRy
「ちょっと待って!!」
呼び止めた矢口の声は震えてた。
その手には一枚の封筒。
『矢口へ』と記されていた。
「裕ちゃんの字だ・・・・・・」
矢口は一心不乱にそれを開けた。
「矢口、お誕生日おめでとう。
 たぶんこの後、お誕生会とかするんやろうけど
 うち大阪で仕事やから出られへんから
 ビックリさせるために入れておくわ・・・・・・」
マネージャーがそれを聞いて、箱を開ける。
ダイヤの指輪だった。
「まりっぺ、、それ、、、、」
マネージャーから箱を返してもらった矢口は
おそるおそる指輪を取り出し中指にハメてみる。
入らない。
「人さし指は?」
入らなかった。
「・・・・・・ここ?」
薬指に入れる前にためらうように
みんなの顔を見て言う。
保田なんか、もうボロボロに泣いていて
「早くしなさいよ」
と言っていた。
「あ・・・・・・」
「ピッタリだ・・・・」
矢口の左手の薬指に輝くダイヤ。
みるみるうちに矢口の顔がクシャクシャになって
泣き声が廊下の外まで聞こえた。
こんなに嬉しいのに、ありがとうも言えない。
そんな悲しみが胸に溢れてきていた。
「?」
小川は気配を感じて、振り向いた。
そこには誰もいなかった。

第一章 終了
404L.O.D:02/02/15 14:23 ID:txhV+bRy
『休憩中』

一気に更新ー。。なんちゅーの、梅雨が去った後みたいな感じ?
405レク:02/02/15 20:17 ID:NZanAxB7
雨降って地固まりましたね。
復活&更新オメデトウです
406旧♪:02/02/16 03:48 ID:AAzFtTCP
>名無して〜る氏
清き一票感謝(w
おかげで書いてもらえたみたいです。

>作者
採用&書き下ろし感謝。
「矢口から見た後藤」の描写が抑え目だったので
再録の機会があればそこにも筆を加えていただきたい
などと、言ってみる。

そして梅雨明けオメ(w
407トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/16 04:55 ID:8ob0Y/gD
やぐごま(・∀・)イイ!!
でもおいらが一票入れるまでもなく書き始めてたようですよ(w
同じテーマでもっと掘り下げた長編も読んでみたいな♪

で、TriCK始まってるし。復活おめっとさん>L.O.D
謎解きメインなのかと思ったら結構人間ドラマですなこりゃ
つーわけで続きに期待…
408L.O.D:02/02/16 16:05 ID:nKCGzlBH
第二章 背中

スタイリストが用意してくれた黒のスーツなどに袖を通し、
娘。のメンバーは告別式の間、ずっと側を離れなかった。
マスコミも大勢来ていて、全国にその様子が放送された。
ひいきの目覚ましテレビなんかは
10分間も特集を組んだりなんかして
死んだという事実をより生々しくしていた。
火葬場へは、母親のたっての願いで付いていく事となり
矢口と、安倍、飯田が行く事になる。
保田も誘ったのだが、首を縦に振ろうとはしなかった。
焼いた後の姿を見たら、自分がどうなるのか分かっていたからだ。
御出棺を見送り、家族、親戚は車に乗り込んだ。
メンバーは事務所の用意した車で行くため
他のメンバーからの最後の言づてを聞いていた。
「じゃ、行くかい」
安倍の言葉はなぜか暖かな雰囲気で涙はなかった。
もう出ないくらい泣いた。
泣きつくした。
最後の別れは笑顔でいたいから。
飯田は石川に袖を引っ張られる。
「なに?」
「矢口さんの事、、、」
「分かってる」
心配そうな顔の石川の頭をポンポンと叩いて
車に乗り込んだ。
他のメンバーに見送られ、車は発車する。

409L.O.D:02/02/16 16:07 ID:nKCGzlBH
一方、東京。
チーフマネージャーは1人、警察署に呼ばれ
説明を受けていた。
中澤裕子の死因は頭部打撲による頭蓋骨陥没、
それに伴う失血死と断定された。
通常の楽屋ではなく、大部屋であったため
指紋などの捜査に時間がかかったのだが
凶器は特定出来ず、なぜ密室だったかも
まだ分からなかった。
あの楽屋にあったもの、娘。の鞄に入ってたものも
詳細に記録が取られており
マネージャーはその一つ一つの写真に目を通した。
「とりあえず現在の段階はここまでです。
 他の方になにか変わった事はございませんか?」
「特には・・・・・・」
「私服の者が必ずついてますので
 なにかあったら、必ず呼んでください」
「はい。ありがとうございました。」
外部の人間、スタッフ、そして、メンバー。
そのいずれも犯人の可能性が残っていた・・・・・・

410L.O.D:02/02/16 16:08 ID:nKCGzlBH
当日 PM3:25
「休憩入りまーす!」
ADの声が響いて、スタッフは次の企画の準備のため
せわしなく動き出す。
「もー、やせなあかんで、その腹」
「えへへ」
大好評企画秘密の穴でまたもや腹を出していった辻に対し
呆れたように中澤は言う。
その後も、辻加護の爆笑話を聞いたりしていたが
頃合を計って、抜け出した。
矢口が2人のとこにやってきて
中澤がどこへ行ったか聞くが
どこかへ行った事しか分からなかった。
どうせトイレだろうと思い、探さなかった。

同じ頃、石川はハロプロニュースのため
楽屋に戻り、衣装を変えていた。
「あーすいません、ちょっとトイレ行っていいですか?」
スカートにブラウスという一応の体裁を整えた状態で
スリッパをパタパタ言わせながら走っていく。
小用を足して、楽屋に戻るところで
ネルシャツを着た細面の男とすれ違う。
本能的に感じた気味悪さから
石川は無言でその横を通り抜けた。
(スタッフであんな人いたかなぁ?)
記憶の中のスタッフを探りながら楽屋に戻り
着付け、メイクを済ませ
スタイリストさんなどと共に
スタジオに向かった。

411L.O.D:02/02/16 16:09 ID:nKCGzlBH
モーニング娘。の面々は翌日の地方での仕事のため
ホテルに宿泊していた。
吉澤と石川は相部屋で、あの日以来2人はなぜか距離を置いていた。
「梨華ちゃん、お風呂入りなよ」
いや、吉澤は普段通りなのだ。
石川が意識していた。
「え、あ、、、うん」
疑いは拭えなかった。
それだけ吉澤は中澤を嫌っていたから。
このままではいけない事も分かってた。
ベッド際に座ってた足が立ち上がったものの
一歩も動かせなかった。
心を決めて、その名を呼んだ。
「よっすぃ」
「なに?」
「中澤さん殺したの、よっすぃじゃないよね?」
「・・・・・・梨華ちゃん、私だと思ったの?」
「いや・・・・・・」
「酷いなぁ、梨華ちゃんまでそんな事考えてたなんて。
 嫌いだったけどさぁ、私、殺したりなんてしないよ」
「そうだよね、、、?」
「あったりまえじゃん。この仕事やめたくないしー」
「そっか、あはははは、、、」
乾いた笑いを浮かべながら、少し小走りに
バスルームに駆け込もうとしたその背中ごしに
吉澤の気配を感じた。
「よっすぃ?」
412L.O.D:02/02/16 16:09 ID:nKCGzlBH
掴まれる肩。
押し倒される。
床に強く打ち付けられ、小さな悲鳴をあげた。
口が塞がれる。
息苦しい。
(やっぱりよっすぃだったんじゃない)
油断した。
このまま殺されるんだ。
意識が少し薄れてきた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
「あ・・・・・・」
唇が濡れてる。
あまりに突然の出来事で混乱してた。
口を塞いでたのは、手なんかじゃなくて、唇だったのだ。
「よっすぃ、、、、?」
下になった石川の頬に落ちてきた涙。
「梨華ちゃんのバカッ!!」
「え、あ、、、、ごめん、、、、、ごめんね、よっすぃ!
 疑う気なんてなかったの!!でも、、でも、、、、」
「刑事さんとかにもすっごく言われて怖かったのに!
 みんなにまでそう思われてたなんて悲しいよ!!」
半狂乱になった吉澤は大泣きしながら、叫ぶように言う。
その姿は弱い女の子そのもので石川の胸を締め付け
石川も一緒になって泣き出してしまった。

翌日の午前5時頃、ホテルから一望できる砂浜で
石川梨華が他殺体で発見される。
413L.O.D:02/02/17 20:46 ID:1jvaqcdg
翌日の午前5時頃、ホテルから一望できる砂浜で
石川梨華が他殺体で発見される。

石川が収容された病院の廊下
飯田に抱かれ、わんわんと大声で泣く辻。
本来あるべきだった仕事には
新メンと安倍、保田だけが向かった。
吉澤は1人、唇を噛み締めながら
座ろうとしない。
「よっすぃがやったんやろ・・・・・・」
加護がポツリと肩を震わせながらつぶやく。
「よっすぃがやったんちゃうんかぁああ!!」
一変し、今度は腹の奥底から叫ぶ。
「・・・・・・」
「なぁ、ほんまのこと言って!
 ウザい奴、みんな殺すつもりなんやろ!!
 そうなんやろ!!?」

  パァアンッ!

叩かれた頬がみるみるうちに赤くなっていく。
「いい加減にしなよっ!」
「ごっち、、、ん」
加護の前に立ちはだかった後藤が
苦々しい表情を浮かべる。
「なんでそんな事言うの!?
 よっすぃは、、、よっすぃは、そんな子じゃないよっ!
 梨華ちゃんを、、、そんな、、事するわけ、、ないじゃん」
膝から崩れ落ちる後藤の身体。
飯田が加護の背に向けて、言う。
「座りな、加護」
「飯田さん・・・・・・」
「吉澤、本当の事はまずマネージャーと警察に言いなさい」
「・・・・・・」
吉澤の目を見て話す飯田が少しだけ微笑んだ。
「信じてるから」
414L.O.D:02/02/17 20:47 ID:1jvaqcdg
地元の警察署の取調室の1つを借りて
吉澤が参考人に呼ばれる。
同室であり、中澤の事件に関しても
日頃の態度から疑いが晴れてはいない。
「今朝4時頃、どうしてましたか?」
「寝てました」
「石川さんが出ていったのは分かりましたか」
「分かりませんでした」
「石川さんの様子がおかしかった事は」
「、、、ないです」
「誰かに呼ばれたりとか」
「聞いてないです」
「誰かと特別トラブルになってたりとか」
「ないです」
「吉澤さん、、、どうなんだい。
 何か心当たりはないかい?」
「ないですよ」
「2人は親友だったそうだね」
「はい」
「悩みとかは聞いてないかい」
「仕事の悩みはよくありました」
415L.O.D:02/02/17 20:48 ID:1jvaqcdg
3週間前
石川と吉澤は仕事が終わって
ファミレスに来ていた。
別々のパフェを前にして話すのは
恋の話ではなくて仕事の話。
「やっぱりね、チャーミーは他の番組では使えないと思うの」
「そりゃぁねぇ」
「かといって、顎キャラも目立たないわけじゃない」
「梨華ちゃんさぁ、黒いけど一応アイドルなんだから
 顎はないと思うよ、顎は・・・・・・」
「いやー、でもねぇ、、、顎はやっぱ猪木さんっていうのが」
「そういえば、小川に取られちゃったね、猪木さん」
「そう!やっと顎を認めたのに、ネタ取られちゃった」
「小川は猪木さんでキャラ立ちするのかなぁ」
「うーん・・・・・・」
「でも、おかしい話だよね」
「なにが?」
「前のモーニング娘。って確かに個性は強かったけど
 そんな猪木さんとかやらなかったじゃん」
「やっぱ、ののとあいぼんかなぁ?」
「あの2人だろうね」
「よっすぃはいいなぁ」
「?」
「振ってもらえるじゃん」
「あんなのどうって事ないよー」
「いいなぁ、私もしゃべれるようにならないかなぁ」
嘆き、パフェの生クリームと溶けたアイスを
スプーンでかき回す石川の唇は
艶かしいくらいグロスで光っていた。
床に押し倒して、キスをしたあの時の
唇によく似てた。

「梨華ちゃぁあああんんっ!!」
スチール製の机に顔を伏せて、
吉澤は泣き出してしまう。
窓から入り込む光は煌々と照っているにも関わらずどこか冷たくて
刑事が吹かすタバコの煙がゆらりと立ち上る。
「吉澤さん、本当はどうなんだ?」
「私じゃないですっ」
「そうか・・・・・・」
沈黙の空気の中に少女の泣き声だけが聞こえた。
416L.O.D:02/02/17 20:50 ID:1jvaqcdg
死因:背部十数ケ所に及ぶ刺傷
犯行に使われた刃物は発見出来ず、
犯人と思われる痕跡はなにもない。
強い風が足跡を消した。
血痕も消した。
何もかもを消し去った。
帰京の列車は誰もしゃべらない。
明日からの仕事は白紙となった。
マネージャーに付き添われ
小用から戻ってきた小川は
前を歩いていた新垣が急に立ち止まったため
ぶつかりそうになる。
耳元に顔を近付け、小声で話した。
「ちょっとぉ、里沙ちゃん」
「まこっちゃん、こっち!」
手を引っ張られ、座席に付く。
少し青ざめた顔の新垣を見て不安になり、
その手をギュッと握り返す。
「ど、どうしたの?」
「斜後ろの人・・・・・・」
顔をそっと出して、後ろを見る。
サラリーマン、家族連れ・・・・・・
「なんかチェックのシャツ着てるの・・・・・・」
いた。
真中で分けた髪の毛。
細面の顔がどことなくカマキリのように見えた。
「あの人がどうしたの?」
「ハロモニの時もいた・・・・・・」
「え?」
「スタジオにいたの」
「本当?」
「うん・・・・・・」
小川は携帯を取り出し、前の席にいるマネージャーに連絡を取る。
マネージャーも男の存在を確認したらしく
隣に座ってたサラリーマン風の私服警官に報告。
別な場所に乗ってる警官にも連絡が行き
男の動きをマークしていた。
列車の中ではなんの動きもなく
無事に東京へ辿り着く。
417L.O.D:02/02/17 20:51 ID:1jvaqcdg
中澤の事件 当日 PM4:05
その日はちょうど生理で
吉澤はずっと具合が悪かった。
昔から生理痛が酷くて
貧血になりやすく
倒れる事もしばしばで
仕事を始めるようになってからは
CDリリースにぶつかるような時は
低容量ピルで時期をずらしたり
痛み止めや鉄分の薬を使っていた。
ハロモニ本編の収録が終わった時点で
立ちくらみを覚え楽屋に薬を取りに行く。
「はぁ・・・・・・」
買っておいたペットボトルの水で
薬を流し込み、
誰も居ない楽屋を見渡す。
すごく広く感じた。
辻加護が走り回り、
安倍と矢口が笑い合い
5期メンは一固まりになってて
保田はメイク中。
石川はそれにへばりついて、おしゃべりし
飯田は雑誌を読んでいて
後藤は寝てる。
そんな絵が一瞬見えて、消えていった。
頭がクラクラしてるのが収まって
立ち上がり、楽屋から出ていく。
その後ろ手はしっかりドアを閉めた。
吉澤が離れていったドアの鍵がゆっくりと回り
ガチャリと閉まった・・・・・・
418ねぇ、名乗って:02/02/18 11:50 ID:igaZERok
>>412の落とし方いいなあ。
この手のミステリ好きなんで期待してます。
419L.O.D:02/02/18 17:31 ID:co4ZkYyf
「ただいま、ごっちん」
誰もいない部屋に声だけが響く。
暗かった部屋が明るくなると
その異常な光景が明らかになる。
壁一面に張られた後藤真希の写真・・・・・・
「はぁ・・・・・・」
手にしていたバッグを投げ出し
ソファに座ると
その上に置いてあった
後藤の写真集を手にする。
「ふふ、、綺麗・・・・・・」
パラパラとめくっていくと
あるページで手を止めた。
沸き上がる衝動を抑えきれず
震える手で写真集を顔に近付けていく。
「あ、、、あぁ・・・・・・」
うっとりと閉じられた瞳。
後藤の豊満な胸が当たってる。
「ごっちぃん・・・・・・」
舌を突き出し、紙の上をなぞる。
唾液がぬらりと光り、濡らしていく。
「あはは、ごっちん、、、こんなに濡らして、、、
 エッチだなぁ・・・・・・」
420L.O.D:02/02/18 17:32 ID:co4ZkYyf
パジャマに着替えた後藤は
ベッドの縁に座った。
「電気消さないでいい?」
「うん・・・・・・消さないで」
先に布団に入ってた吉澤は後藤が見ても
精神的にやつれていたし
どこか怯えていた。
列車の中でもずっと手を握っていた。
「んじゃ、寝るかぁ」
後藤の脚が布団を割って入っていく。
家には後藤が誘った。
加護は辻が連れていった。
「もっと、、近寄って」
「うん・・・・・・」
背中を合わせる。
運動をしてただけあって
吉澤の背中は広く感じる。
「よっすぃ?」
その背中が小刻みに震えてた。
「ごっちん、、、、っく、、、ひっく」
振り向かせ、抱き寄せた白い頬を伝う涙。
「大丈夫、、、後藤は分かってるから」
「私じゃないよ、、、私じゃないっ」
「分かってる、、、、」
421L.O.D:02/02/18 17:33 ID:co4ZkYyf
一体、どのくらいの時間、そうしてただろうか。
泣き疲れて、吉澤は眠ってしまった。
そっと腕を抜いて、ベッドから出る。
ぐちゃぐちゃに置かれた雑誌をどけて
テーブルの前に座ると
隠れて、買ったビールを取り出す。
プルタブを引き起こして
一口、流し込むとなかなか慣れない
ポップの苦味が広がる。
「っはぁ、、、、」
なにげなく目に付いた娘。の写真集を手にする。
普段手元に置いておくだけで
見もしないのだが
無意識にそれに引っ張られたような感覚だった。
開けてみると、ハミルトンアイランドの時の記憶が思い浮かぶ。
4期メンも現メンに馴染んできたところで
後藤としては友達と妹が一気に出来たようなもんで
その頃には純粋に嬉しくて
あの旅もスケジュールはきつかったが楽しかった。
石川はまだ微妙になついていなくて
ごっちんとは呼ぶものの
機嫌の悪い時に呼んでしまった時などは
ごめんなさいと敬語で謝ってた。
後藤はそれがいやで、この旅は特に石川と接触した。
辻や加護は海外旅行が嬉しくて仕方がないらしく
終始上機嫌でベタベタとまとわりついてきた。
側にいなかったのは寝てる時くらいなものだ。
思い出したが、中澤はずっと矢口をくどいてた気がする。
というか、バカップル状態だった。
昼食の時も『ア〜ン』とかやってたし
そういえば、あれ以来、矢口は安倍の家にいるらしい。
「もう、、やだよ」
後藤の中でも確実に傷は深くなっていた。

第二章 終了。
422L.O.D:02/02/18 17:34 ID:co4ZkYyf
『第二章終了記念』

うーん、筆がノってる。
自分でも手応えがあるのが嬉しいのぅ。
423名無し募集中。。。:02/02/18 19:36 ID:XOfD5Xo3
それはよかった、がんがってね。
424L.O.D:02/02/19 02:20 ID:3zfkFRLT
ひさしぶりに導かれし者。とカテキョを
作者サイトで一気に見たがやっぱ筆力が違うね。
なんか切迫したシーンと、泣かせにかかるシーンでは
天才的やもんね。
あのレベルにゃ、そうそう行けねぇーわな。
425旧♪:02/02/20 22:51 ID:y9Vcujhh
後藤だらけの部屋、怖っ……
426アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/20 23:22 ID:ik1ELpxo
後藤だらけの部屋・・・
俺の部屋は坂本竜馬だらけ・・・w
427L.O.D:02/02/21 00:05 ID:fHH9VuVk
第三章 声

気分転換に街に出た。
どうせなら気の合う子と一緒にいたい。
世間的には驚きかも知れないが
安倍はよく相談に乗ってくれる。
まったりしたい時は2人でカフェに行って
1時間以上何もしゃべらないでボーッとする事もあるし
買い物に行ってはワイワイとはしゃぐ事も出来る。
3コール。
『ごっちん?』
「新宿行かない?」
『OK』
「んーじゃ、カラオケで待ってる」
よく行くカラオケ屋で先に入って待っている。
メンバーがみんな使うため
奥のパーティールームは指定室みたいなものだ。
パラパラと本をめくっていると
メールが来た。
高橋からだ。
最近、すごく甘えてくれるようになった。
曲のダンスの途中などでも
笑うと、笑い返してくれたりする。
428L.O.D:02/02/21 00:07 ID:fHH9VuVk
『怖いです・・・』
たった一言だけ。
不安になって、電話をかけた。
「高橋?」
『あ、後藤さん・・・・』
「大丈夫?」
『いえ、すみません。あんなメール送っちゃって
 目が覚めたら、すごく怖くなっちゃって・・・・』
「いいよ、あんな事があったばっかだもん。
 それよりさ、今、新宿のカラオケにいんだけど
 来る?なっちも今から来るんだけどさ」
『いいんですか?』
「おいで、おいで」
『分かりました。準備していきます』
電話が切れると、後藤の顔は少し寂しげだった。
部屋で音楽を聞きながら寝転んでいても
近くの店に買い物に行っても
落ち着かなくて
まるで飛び出すように家を出た。
家族以上に一緒にいるメンバーに会いたくなった。
喧嘩もするし、嫌いな奴もいるけど大事な人達だった。
数分もしないうちに安倍がやってくる。
「ごっちーん」
「なっちーー」
ギュッと抱き合う。
429L.O.D:02/02/21 00:08 ID:fHH9VuVk
「よっすぃは大丈夫かい?」
「うん、落ち着いて、家に帰ったよ。
 やぐっつぁんは?」
「ん、大丈夫」
「よかった」
2人で何曲か歌ったところで高橋もやってくる。
「高橋じゃんかー」
「お邪魔しますっ」
「ほら、入れな」
「はい」
高橋が入れたのはZONEの新曲で
安倍はそれに聞き入っていた。
後藤は次の曲を探す。
何気ない光景。
だけど、彼女達にとっては特別な時間で
唄が好きな女の子に戻れる時間。
高橋が歌い終わったところで
お酒飲んじゃおうかという話になり
3人それぞれに頼む。
30分もすれば酔っぱらった安倍がいた。
430L.O.D:02/02/21 00:09 ID:fHH9VuVk
「たかはしぃ」
「あ、はい」
ちびちびと口にしていた高橋も
特徴的な耳まで赤い。
後藤はけろっとしていた。
「娘。入れてよかったかい?」
「それは、、もうっ」
「そっかぁ、よかったなぁ。
 なっちはそれが嬉しいよ」
今日はからみ酒らしい。
高橋が助けを求めるべく
後藤を見ると
何を求めてるのか分からなかったらしく
数秒、悩んだ後、キスされた。
「いやぁ〜、ごっちんは大胆だねぇ〜」
「んぅ!んぐっ!!」
「・・・・・・」
押し倒して、舌をねじ込む。
しかし、なにかを思い出したようにはね起き
口をぬぐった。
「どうしたの?」
安倍も高橋も驚きの表情で見ている。
431L.O.D:02/02/21 00:10 ID:fHH9VuVk
「や、、なんでもない」
「なんでもないわけないべさ〜」
「そうですよ、言ってくださいよ」
「なんでもないよ〜、ほら、次入れないと」
「ごっちん」
抑揚のない安倍の声が妙に心の内側をえぐる。
リモコンを取ろうと伸ばした手が
ビクッと震え、止まった。
「言いなさい」
「・・・・・・いいの?」
「聞かせてくださいよ」
「梨華ちゃんの事を思い出した、それだけ」
記憶の中のいつか。
同じようにこの部屋で
少し酔って
石川の唇を奪った。
女から見ても、女らしくて
なんかそれが憎くて、キスしてた。
汚してしまいたくて。
その時、石川は強がって逆に舌を入れてきたけど
目には涙を浮かべてた。
帰る時、小さな声でごめんと謝って
握った指は細かった。
「ごめんね・・・・・・」
安倍は後藤の頭を抱き寄せる。
温かな胸。
「そんな事だったなんて、、、」
高橋が手を重ねてくる。
「いや、うん、いいんだ。
 歌おうよ、なんか!」
そう言う後藤の目にはしっかりと
あの日の石川が映っていたのだった・・・・・・

432L.O.D:02/02/21 10:41 ID:m6hY6Qoe
石川の葬儀から数日後
娘。の仕事は再開された。
といっても、雑誌の取材でもテレビ出演でもなく
スタジオでの作業である。
まだ気持ちを切り替えれないメンバーは後回しにされ
時間的な制約もなく
まるで一緒に手探りで動いていた。
中澤と石川をほぼ同時に失った事は
スタッフの気持ちにも後を引いていた。
つんくだけが仕事の事に打ち込んでいたが
それも余計な事を考えないように
むりやりやっているようにも見えた。
辻がブースの中の重圧に耐えかねて泣き出し
コントロールルームに戻ってくる。
いつもならあの緊張感がよりよい自分に向かわせてくれるのに
みんなの気持ちが声に現れていた。
前のつんくなら全員に向かって
活を入れていたが、出来なかった。
「飯でも食うか・・・・・・」
ぽつりとつぶやくように言う。
「おごりですか?」
矢口がみんなの気持ちを盛り上げようと逸早く口を開く。
「13人分おごりかっ!?
 18才以上のメンバーは自分で払えやー」
「矢口真里、14才でぇ〜す」
「いや、その化粧で14才は犯罪やで」
「ちょっと薄くしたんですよー!」
そんなやり取りで少しだけ笑いが起きる。
つんくは矢口と顔を見合わせ笑った。
中澤が死んでしまって辛いのは彼女なのに
メンバーのためにわざわざ明るく振る舞うその器量に
頭が下がる思いである。
数人のスタッフが恒例キムチ鍋の用意をしに買い出しへ行く。
その間はレコーディングもストップし、完全に休憩となる。
みんな、長丁場を乗り切るために様々な物を持ち込んでいて
別部屋にはプレステ2やらX BOXなどのゲームが並んでいる。
スタッフだったりメンバーの私物であった。
こういう一時が先輩メンバーと後輩メンバーの間の溝を
埋めたりして、大切な事だったりするのだが
飯田なんかは負けず嫌いだから
1人キャーキャー言っている。
後藤はその輪に参加せずに辻とお菓子を食べていたのだが
吉澤の姿が見えないことに気付く。
433L.O.D:02/02/21 10:42 ID:m6hY6Qoe
トイレ。
右奥の個室。
便器を抱え込み、頭を突っ込んで
胃の内容物を吐いていた。
ストレスからだろうか。
最近、食べても食べても吐いてしまう。
別に吐きたくないのに
胃液が込み上げてきて吐かざるをえなくなる。
苦しい。
喉にだって悪い。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
一段落したが、まだ胸が気持ち悪い。
ムカムカとするのが残っていた。
床にへたり込み、しばらくボーッとしていると
ドアが開く音がして、隣の個室に誰かが入る。

  ガチャンッ!

閉まる音がやけに大きく聞こえる。
まだ胃に残っていたものが逆流してきた。
水洗のノブに手をかけ、音を消す。
恥ずかしいけど、口に堪えている事も出来ず
また便器を抱えた。

  トンッ

床に軽い振動を感じる。
「?」
顔を半分あげると、そこには誰かが立っていた。
「やっ、、、、ぐぶっつ、、ぼぐぁ、、、、、ぼぐつ!!!」
頭を抑えられて、水の中に顔を沈められる。
息が出来ない。
息が・・・・・・出来ない。
暴れてた身体も突然、動かなくなる。
死んだのを確認すると、侵入者はドアを開ける事なく
また隣の個室へ戻り、トイレから出ていった・・・・・・

434L.O.D:02/02/21 10:43 ID:m6hY6Qoe
鍋の用意が終わり、さぁ食べるかというところで
1人足りない事に気付く。
「なっちは?」
「トイレかな?」
「誰か見てきなさいよ」
『ごっちん・・・・・・』
「私が行くっ!!」
後藤の顔は見るからに青ざめている。
そう、はっきりと聞こえた。
自分の名前を呼ぶ声を。
それは確かに安倍の声だった。
他の者も後藤の勢いに
何も言えず、後藤は飛び出した。
「わ、私も行く!」
矢口もその異変が気になったのか
後藤の後を追った。
「ごっちん?」
「ここだ」
トイレの中に入ると、後藤は右奥の個室を指差す。
戸を叩いても、反応がない。
だが、閉まっている。
「私が見るから」
最悪の事態を想定した。
後藤は矢口を先に制止する。
隣の個室に入ると、便器を利用して
問題の個室を覗いた。
そこには、確かに安倍がいた。
後藤は壁を乗り越えて、個室に入る。
身体に触れる。
もう冷たい。
「やぐっつぁん」
「な、なに」
矢口の声が震えていた。
「警察の人呼んできてよ」
「・・・・・・」
扉は勢い良く開けられる。
2人とも泣いていた。
誰かを呼びに行く事も出来ないくらい
涙が零れて、歩く事もままならない。
その声を聞いて、スタッフや刑事が来たのは
数分後の事であった。

435L.O.D:02/02/21 11:08 ID:m6hY6Qoe
コントロールルームやゲームのある部屋にいた人間には
アリバイが存在する。
その中でトイレに行った者は何人もいた。
紺野もその1人である。
「トイレには加護さんと一緒に行ったんです。
 廊下で安倍さんとすれ違ったんですが笑ってくれました。
 でも、思い出してみると、ずっと具合が悪そうでしたよ。」

保田も同じくトイレに行った。
「あの、刑事さん、その前に吉澤の事なんですけどいいですか?
 あのですね、あの子、相当参ってたみたいで
 私がロビーで飲み物買いに行ったら
 1人でロビーにいたんです。
 声をかけたら、泣き出してしまって・・・・・・」

吉澤が取調室に入る。
「はい、ロビーにいました。みんなでいると、
 梨華ちゃんがいないのが余計に辛くなっちゃうんです。
 休憩に入ってすぐくらいからです。
 保田さんには会いました。
 ちょっとなぐさめてもらって・・・・・・
 30分くらい一緒にいました」

矢口が語る。
「なっちは最近、疲れてたのか具合悪そうでした。
 元々、繊細っていうか、怒られたりすると
 すごく落ち込みやすい性格で
 今回の事はそういう体調にも影響するぐらい
 ショックだったと思うんです。」

安倍の死因は窒息死。
胃の内容物が詰まった事によるものなのか
何者かによって窒息させられたものなのかは
断定するにはいたらなかった。
436L.O.D:02/02/21 12:10 ID:m6hY6Qoe
「あとちょっとだよ」
壁に張られたポスターの1枚に触れた指。
唇をなぞる。
「大好きだよ、ごっちん」
窓から差し込む月の青白い光が
狂気の世界をさらに演出している。
ニタリと笑った顔が不気味に映る。
振り返り、大きなボストンバッグの中身を漁る。
明日からは、北海道に行く。
安倍の葬儀であり
メンバーが全員参加する事は決定的である。
物音一つしない部屋でチャックを閉める音がする。
何をしようか散々迷ったあげく
ソファに寝転がるとコンポの電源を入れた。
聞こえて来るのは当然後藤の歌声
「へへぇっー、ごっちん〜」
1人で薄ら笑いを浮かべる姿は正しく異常である。
437L.O.D:02/02/21 12:11 ID:m6hY6Qoe
北海道に渡り、室蘭の安倍の実家近くであげられた葬儀には
メンバーが全員参加した。
中学、高校の頃の友達なども大勢参列する。
一通りの事が終了して、両親への挨拶を済ませ
明日の朝早く、東京に戻るため
札幌までは戻らなければ行かず
バスを1台借りた。
全員が乗り込んでも、いつもなら矢口の隣の席がポッカリと穴が開いた。
「隣、いい?」
飯田が聞くと、矢口は静かにうなづく。
その後の会話はない。
タンポポで一緒にいることによって
時には意見をぶつけ
時には互いを信頼してきた2人だから
あえて、何も言わない、何もしない。
「矢口、吸う?」
後ろの席に座ってた保田が身を乗り出して
まだ開けたてのタバコの箱を差し出す。
「変えたの?」
「ちょっとね」
その箱には見覚えがある。
安倍が娘。になって初めて買ったタバコと同じ。
その前も吸ってたのかもしれないが
デビューしたての頃は禁煙してたようで
ふるさとの頃だっただろうか
バレないかドキドキしたよーとか言いながら
一本取り出して、中澤のライターで火をつけた姿が
目に焼き付いている。
それに気付いて、矢口は保田の顔を見る。
「吸っときなさい」
「うん」
1本取り、保田に火をつけてもらう。
深く吸い込むと、肺に煙が入っていくのが分かる。
4年間の思い出も胸に渦巻く思いも全部
煙と一緒に吐き出した。
泣かなくて済みそうだ。

438L.O.D:02/02/21 12:25 ID:m6hY6Qoe
暗い部屋。
ゆっくり歩いていく。
真っ白なベッド。
後藤と吉澤の部屋。
2人ともよく寝ている。
後藤は半分口を開けて、ますます魚っぽい。
「ごっちん・・・・・・」
白くて長い首。
指を絡める。
ぐっと力を込めた。
息苦しくなり、眉間に皺を寄せた。
さらに強く締める。
「っく、、、、っは、、、、、、」
カッと目が見開いた。
反射的に顔を背ける。
(寝顔のままでいてくれればよかったのに)
見えていなかった。
後藤の手が腕にかかる。
「!?」
ものすごい力で一気に捻り上げられる。

  ゴキィッ!!

「ギャァアアッ!!」
容赦しない。
完全に関節がはずれ、肘から下がブラリと垂れ下がる。
間髪入れず、シーツごと前蹴りで蹴り飛ばし
自分と犯人の間にスペースを作る。
後藤が叫ぶ!
「なんでなのよ、高橋!!」


第三章 終了
439L.O.D:02/02/21 12:28 ID:m6hY6Qoe
『第三章終了』

次章、最終章。謎が暴かれる。
440名無し募集中。。。:02/02/21 16:50 ID:QBVhawyp
怒られるぞ
441L.O.D:02/02/21 23:58 ID:dE3TzVst
第四章 ホントのコト


石川の事件 前日
「石川さん」
ホテルの廊下の片隅で高橋に呼び止められ、振り向く石川。
「なに?」
「あの、、、話があるんですけど」
「?」
「3時に砂浜で会いませんか」
「そんな、、勝手に出歩くのは、、、」
「誰にも言わないでくださいっ」
石川の疑問の声も聞かないで
高橋は部屋に戻っていく。
(3時って・・・・・・)
中途半端に眠る事も出来ず
石川は起きてる事となる。

一方、高橋は小川に風呂あがりのお茶を薦めていた。
「飲む?」
冷たい日本茶の深い緑が火照った身体に良さそうで
ペットボトルを受け取る。
「あんがと」
「私、もう寝るけどどうする?」
「愛ちゃん、寝ちゃうのー?
 疲れたから寝るかなぁ」
「じゃぁ、そうしよう」

  カラッ

高橋の右手にピルケース。
病院から支給されてる睡眠薬で
それを粉々に砕いて
あのお茶に混ぜた。
これで小川が3時に出ていっても
目を覚ます事はないだろう。
それは、12時を少し過ぎる時だった。
442L.O.D:02/02/21 23:59 ID:dE3TzVst
当日 AM3:04
真っ暗な海を前に、ライトアップされたホテルの灯だけが砂浜を照らしていた。
石川はマネージャーに見つかったりしないように
人目に付かない場所に座っていた。
ザッという砂を踏む音が聞こえ、振り向こうとした瞬間
背中に走る痛烈な痛みにキョトンとする。
冷たい刃は抜かれ、また刺さる。
「あぐっ」
口にタオルを噛まされ、声が出ない。
行為が繰り返される度に意識が薄れていく。
「やったぁ・・・・・・」
高橋はニンマリと笑った。
手についた血はサッと洗い流し
服はまったく同じものに着替え
部屋に戻って、鞄の中に仕舞った。
刃物も同じように小さく畳んで入れておいた。
他の所に捨てたりしたならば
そこから足がつくとも限らないからだ。
「やったぁあ」
声が震えてる。
一歩近付いた。
嫌いなあの人の泣き顔が見れる。
大好きなあの人を手に入れれる。
443L.O.D:02/02/22 00:01 ID:3wAJXBzR
安倍の事件 当日
高橋はゲームしている部屋にいた。
ゲームには参加せず後ろの方で見ていた。
飯田と小川がカーレースゲームに必死になっていて
観ている人間も画面に熱中している。
安倍がフラッと輪から離れる。
高橋はそれを横目に見る。
誰も気にしちゃいない。
数十秒過ぎてから、高橋もいなくなる。
トイレのドア。
開けると、安倍の苦しそうな声が聞こえた。
ゆっくり手袋をハメる。
壁を超える時に指紋を残さないために。
水を流す音が聞こえる。
また吐き始めた。
便器にしがみついて、顔を埋めてる。
チャンスだった。
壁を乗り越え、横に立つ。
完全に気付かれる前に一気に顔を押し込んだ。
苦しそうにもがく身体。
沈黙。
水の中に顔を入れたまま、絶命した。
高橋はその後、何もなかったように
輪の中にまた戻った。
もし、いなかった事に気付いた者がいたとしても
ただトイレに行っていたと思うであろう。

444L.O.D:02/02/22 00:02 ID:3wAJXBzR
取調室。
「安倍なつみさんの頭部から検出されたこの繊維は
 間違いなく貴方の手袋だと認めますね」
手錠をつながれた高橋の前に出される2枚の用紙。
1枚は安倍の頭部に付着していた繊維を解析したもの。
もう1枚は高橋が犯行時にハメていた手袋のもの。
間違いなくデータはそのどちらも同一の物であることを示している。
付着してたのは本当に小さなゴミ屑のようなもので
それだけでは、物的証拠とは言えなかったであろうが
高橋の物である事が分かれば、データは嘘をつかなかった。
「はい」
高橋の目は完全に死んでいる。
しかし、口元の笑みが消える事はなかった。

後藤の事件 当日深夜
ベッドの中の高橋は眠る事が出来ずに
悶々としていた。
頭の中から後藤が離れない。
狂いそうだった。
いや、狂っていた。
そして、彼女の手には後藤の部屋の鍵。
眠る前の時間。
後藤の部屋に遊びに行った。
寝起きの悪いこの2人はいつも鍵を目のつくところに置いておく。
もう鍵を使う事もないだろうと
案の定、テーブルの一番目立つところに置いてあった。
高橋は鍵を摺り替える。
誰も気付いてはいない。
気にもしないだろう。
吉澤をモーニング娘。から排除するためには
決定的な何かが必要だった。

壊れていた。
後藤への愛が吉澤への憎しみに擦り変わっている事に
本人も気付いていなかった。
吉澤への憎しみだけが頭を占領していく。
吉澤を娘。から排除するためには
(あぁ、そうだ)
吉澤の隣に眠るのは、モ−ニング娘。のセンター ゴトウマキ。
ヨシザワヒトミがゴトウマキを殺せば
ムスメ。に居れるわけがない。
そして・・・・・・

445L.O.D:02/02/22 00:03 ID:3wAJXBzR
「はぁ〜い?」
とある日。
後藤真希はドアの魚眼レンズを覗く。
ヘルメットを抱えた市井紗耶香が立っていた。
「ヒマなんだろ?」
「うん・・・・・・」
後藤の表立っての芸能生活は凍結された。
つんくに言われ、スタジオには行っていて
今度、インディーズレーベルだが
CDは出す予定があった。
きっとネットを通じて、うわさは広まって
それなりのセールスが出るだろう。
生活にはゆとりがあった。
市井からヘルメットを受け取って
彼女のベスパの後ろにまたがる。
「どこ行きたい?」
「どこでもいい」
市井はゴーグルを降ろす。
彼女の腰に腕を回すと
ゆっくりと発進する。
都会の喧騒を抜け
海沿いの道路へ入る。
風が肌で分かる。
人は誰もいない砂浜。
バイクは道路脇に止めて
2人はコンクリートの階段を降りていく。
靴の裏で感じる砂の音。
後藤は手に砂を握る。
開くと、風に舞い、消えていった。
446L.O.D:02/02/22 00:04 ID:3wAJXBzR
「・・・・・・」
「・・・・・・」
会話はなく、ただ歩く。
「よっと・・・・・・」
市井がテトラポッドに昇る。
不思議な形をしたその先をポンポンと飛んでいく。
市井に手をさし延べられ
後藤もその上に乗った。
「私ってさぁー」
「あぁ?」
「モーニング娘。にいらなかったのかなぁ?」
「なんでよ?」
「だってさぁー、裕ちゃんがやめたのも
 ぜーーーんぶ私のせいじゃん」
「そんなんじゃないよ。市井がやめたのだって
 後藤が入ってきて、挑戦するって事を
 お前から教えてもらったからだし」
後藤は、海側に並ぶテトラポッドの列に飛び乗った。
「ありがと」
海を背にして、両手を広げる。
「ねぇ、市井ちゃん」
「ん?」
「写真撮って」
市井が肩からかけてるカメラに気付いたらしい。
「お前なぁ、圭ちゃんが後藤はヘン顔しか撮らせてくれないって泣いてたぞ」
「だって、なんか恥ずかしいんだもん」
シャッターを切る音。
仕事場でよく聞いていたのに
なんか新鮮な感じがした。
撮り終わっても、まだ同じポーズで
空を見上げている。
447L.O.D:02/02/22 00:05 ID:3wAJXBzR
「もういいぞ?」
「このままさぁ」
「あぁ」
「海に落ちちゃったら、楽になれるかなぁ?」
「ばーか」
うっとりと目を閉じた後藤。
市井の目には体重が少しずつ後ろにかかってるように見えた。
「!?」

  ダッ!!

「ふっ・・・・・・は・・・・・・」
市井は後藤を強く抱き締めた。
息が上がってた。
腕の中にいる後藤の姿を確認する。
一瞬の恐怖で市井の顔は真っ青になってた。
「ばか言うなよぉ」
「ごめんね・・・・・・」
「死ぬなよっ、死んだら、裕ちゃんにずっと説教されんぞ」
「あーやだかも」
後藤の呑気な顔が不安を取り除いてくれる。
市井にはそれが後藤の痩せ我慢だって分かっているけど
あえて何も言わなかった。
へたり込むようにテトラポッドの間に座る市井。
後藤はコンクリートで固められた防波堤の縁に腰掛けた。
「そういやさ」
「なに?」
「裕ちゃんがあの時、なにしてたか知ってる?」
「ううん」
448L.O.D:02/02/22 00:06 ID:3wAJXBzR
「はっきりとは分からないんだけどさ
 矢口の誕生日プレゼントがバッグに入ってたしょ。
 あれを人知れず入れるために自分で鍵かけたらしいよ」
「用心深いねぇ」
「でも、なんで死んだのか分からないんだって」
「とりあえず成仏してください・・・・・・」
「枕元にだけは出ないでください」
2人で空に向かって、手を合わせる。
「出たら、いちーちゃんトイレに行けなくなります」
「なっ・・・!?」
「へへぇ」
「いや、ごめん、マジで行けないかも・・・・・・」
「いちーちゃん、怖がりだもんねー」
「言ったなぁーーー」
防波堤を走っていく2人・・・・・・
449L.O.D:02/02/22 00:07 ID:3wAJXBzR
中澤の事件 当日 PM3:58
(よーし、誰もおらへんな)
娘。の楽屋へ忍び込む中澤。
テーブルの上には似たようなバックが13個以上並んでいる。
(娘。にいた時なら一緒におったから
 一発で分かったけど、週一しか会わんかったら
 どんなん持ってるかも全然分からへんわ!)
とりあえず手当たり次第に開けてみる。
まず、1個目。
(なんや、重いな・・・・・・)
持ち上げると、やけに重たかった。
その理由は開けたところで分かる。
(カメラ、、、圭坊のやん)

小さな革のナップザック。
矢口が欲しいとか言っていた気がする。
(アフロ犬のキーホルダー、、石川やな)

LOVEBOATの袋。
いかにも矢口らしいが・・・・・・
開けただけでは分からない。
化粧道具を覗いてみる。
マスカラが6本入っていた。
(これは愛しの矢口のやないのーー)
と思った瞬間、ドアの向うに人気を感じる。
袋の中に持っていたプレゼントと手紙を押し込んだ。
(見つかったら、マズい!!)
中澤は一瞬の判断でロッカーの中に隠れる。
といっても、ミニモニ。のようにはいかないので
コートかけに飛び込む。

  ガタァン!!

(痛ぁ・・・・・・肘打ったわぁ)
450L.O.D:02/02/22 00:08 ID:3wAJXBzR
通気用のスリットから見えるのは吉澤の姿。
(あぁー、薬飲みに来たんやろなぁ)
メンバーだった時も具合悪そうにしてるのを見た。
嫌われてるのを知ってたからあまり声をかけなかったが
石川をとっ捕まえて、あんまりひどいようだったら
ちょっと休んでるように言うように言ってみたり
遠回しに気遣ってやったが
嫌われてるから気付いてないであろう。
水を飲んで、椅子で少し休むと部屋を出ていく。
(はぁ・・・・・・ビックリしたぁ
 ちょっと鍵かけとこっと)
ロッカーから出て、ドアノブを見る。
辻、加護がお菓子を食べた手で握ったらしく
砂糖の跡がベッタリついている。
(うげぇ・・・・・・)
ティッシュペーパーを取って、カギをかけて
使った物は丸めて、ゴミ箱へ。
(って、さっき適当に入れたけどそんなんあかんわぁ
 ちゃんと入れ直しておかんとなぁ〜)
無意識だった。
LOVEBOATの袋を開ける。
451L.O.D:02/02/22 00:09 ID:3wAJXBzR
「!?」
そこには、憎き黄色い物体『バナナ』がっ!!
「いやぁーーー!誰やの、バナナなんて持ってきぃっ!!うわぁあ!!」

  ガンッ!!!!

視界が歪む。
(なんやろ・・・・)
痛いとかいう感覚はない。
顔になにかがついた。
手で拭うと真っ赤な血だった。
(なんで転んだんやろ、、バナナだったらいややな
 あー、なんかボーッとしてきたわぁ)
身体が動かない。
別に痛くはなかったんだけど。
(はぁ、、矢口の顔見たいなぁ、このまま寝てたら
 ビックリしてくれるかなぁ・・・・・・
 どうせメイク直しに来るやろし
 このままでいてみるかな・・・・・・)
452L.O.D:02/02/22 00:10 ID:3wAJXBzR
30分前。
「あさ美ちゃぁーーん、バナナ食べてもいいですかぁ?」
「いいよぉー」
辻が紺野のLOVEBOATの袋を覗きながら言う。
メイク中の保田が振り返る。
「あんたバナナ食べた口で裕ちゃんとしゃべったら殺されるわよー」
「おばちゃんこわぁ〜い」
「どこが怖いのよ!!」
「メイク」
確かに保田ケメ子のメイクは怖い。
「こらぁーー!!」
「きゃぁーーー」
机の上に置いたはずのバナナの皮がゆったりと
下に落ちた。
中澤裕子はこのバナナの皮で転んで
頭部を机の角に強打。
外傷自体は大した事がなかったのだが
出血があまりに酷かった。
また、打った事により脳がダメージを受けて
身体を動かす事がままならなくなったのである。
そう、中澤裕子はバナナの皮で死んだのである・・・・・・
うわぁ。
453L.O.D:02/02/22 00:11 ID:3wAJXBzR
『ちょっと石川、お茶煎れなさいよ』
『あー、なっち、コーヒー』
『自分で煎れてくださいよぉ』
『つべこべ言うな!』
ここはどこだろう。
3人は1つのテーブルに座っている。
石川がぶつくさ言いながら立ち上がり
やかんを火にかける。
『スパゲティ食べたいな』
『こないだ美味しい店見つけたんよ、行こか?』
『石川も行きたいです!』
『裕ちゃんおごってよぉー』
『おごってくださいよー』
『しゃぁーないなぁ』
中澤は安倍と石川を右と左に並べ
肩に手をかけ、連れていく。
両脇の2人だけがスゥッと消える。
振り返る中澤。
柔らかな笑みを浮かべている。
『生きなあかんよ、一生懸命』

454L.O.D:02/02/22 00:12 ID:3wAJXBzR
ダンスレッスン場。
プッチモニの面々がフロアの端で座ってた。
保田の呼び掛けでなんとなく身体が鈍っていたから
踊りに来ていた。
まるで確認するように
自分達のユニットの曲やミニモニ。とか
娘。の曲も変わる変わる歌ってしまう。
タオルで頭を拭いていると
3人は同時に顔を見合わせる。
「ねぇ・・・・・・」
「今・・・・さぁ」
「聞こえたよねぇ?」
「きゃぁーーーーーーーーー」
吉澤が叫ぶ。
その顔は嬉しそうだ。
「ちょっとぉ、なんなのよぉ」
保田は怯えてるみたいで
天井なんか見ちゃって。
「見てくれてんだよね、あんがと」
後藤は笑って、手を振る。
きっと側にいるから。

Trick end.
455L.O.D:02/02/22 00:16 ID:3wAJXBzR
『TriCK 終了ーーーーー』
いやぁ、ものすごい速度で終わらせてみました。
実質的な長さはOLやぐたんの半分なので短いんですけどね。
全国の高橋ファソの皆様、ごめんなさい(w

ちょこーっと休憩頂いて、TriCKの間にも書いていた
某人のリメイク作品でも一挙うpしようかなーー。。
456レク:02/02/22 03:25 ID:CvwJ9bQ2
中澤の不運に不謹慎にも大笑いしてしまったよ・・・
甘作家にしては黒いのも書けてると思います
457モーコー2002全肯定:02/02/22 12:30 ID:ugP8pU4b
石川・安倍が殺されるとこの描写とかは良かったけど、
最後があれじゃチョットネ〜
458L.O.D:02/02/22 12:39 ID:48iKWLnJ
リアルサスペンスで正統派やっちゃったら
辻豆さんには勝てませんもの(w)
まぁ、L.O.Dがサスペンス書くとこうなるってな事でね。
459名無し募集中。。。:02/02/22 12:44 ID:C8wB2COm
サウンドノベル職人が小説書くと
かなりあらが目立つというか
セリフの他は説明文というかんじだけど・・
460名無し娘。:02/02/23 02:35 ID:hyOJcTUO
最後が…
461L.O.D:02/02/23 21:56 ID:Oak0yTG+
『銀河鉄道の夜』

学校の授業は4時間目。
夏が終わって、秋が近付いてきたせいか
窓から差し込む光は少し弱まり
風も冷たくなった気がした。
先生がしゃべっている。
黒板には大きな磁石で貼られた星の写真。
星を見るのは好きだった。
仕事で夜遅くなった時なんて
晴れた日は東京から家に帰る間
少しずつ増えていく空の星を数える。
オーストラリアで見た星は
日本と同じ物のはずなのに
空いっぱいに広がっていて
本当に綺麗だったのをよく覚えている。
もし、外国に行くなら
ブラジルで柔術を覚えるか
オーストラリアで星を見ようと思う。
あぁ、ハワイもいいかも知れない。
462L.O.D:02/02/23 21:58 ID:Oak0yTG+
「で、ですね。この河のようなものが何で出来てるかわかりますか?」
先生が問いかけるが、誰も答えようとしない。
ある者はメールをしてるし
ある者は寝てる。
窓際の席に座る吉澤ひとみは、その答えが分かっていたが
あまりの眠さにそれすらもおっくうだった。
最近、仕事が辛すぎる。
ハロプロの夏公演が近付いていて
練習が終わるのが2時、3時なんて日もある。
かといって、明日授業があるからなんて早く帰るわけにもいかない。
ただでさえ、土曜日だけ通えるようにしてもらってるのだから。
石川のように高校へ行かないことも出来たし
安倍、飯田のように通信制にすることも出来た。
普通校に通っていた矢口にはこの両立は辛いと聞かされてたが
せめて、大学とはいかないまでも学校に行ける間は
行っておこうと決心して受けたのである。
「吉澤さん、分かりませんか?」
「分かりません・・・・・・」
本当は知っていたけど、答えるのが恥ずかしかった。
ただでなくても芸能人だって目立ってるのに
なんでわざわざ当てるのだろう。
463L.O.D:02/02/23 21:58 ID:Oak0yTG+
みんな勉強なんてする気ないのに
ここで答えたら、なんか嫌味ったらしく見える。
どうせなら、このまま誰も答えないで
ダラダラとした授業が続いてほしいとまで
思ってしまった。
先生はその後も何人かの人間に当てるも
誰も答えてくれず、諦めたような表情で話し始めた。
「これは、銀河というもので、
 この白い点は1つ1つ星なのです。
 しかも、これは太陽のように自分で光る星であり
 私達が住んでいる地球はもっと小さいものなんですね。」
チャイムが鳴った。
先生はほぅと溜息を1つつく。
時間内に銀河の説明を終える事が出来なかったからであろう。
そんな溜息をつくぐらいなら、当てないで勝手に進めればいい。
中途半端にやる気を出して
理科のおもしろさをみんなに知ってもらおうなんて思うから
授業内に終える事ができないのだ。
464L.O.D:02/02/23 21:59 ID:Oak0yTG+
「はい、終わります」
「起立、礼」
教科書を仕舞う音。
席から立ち上がる音。
カラオケに行くかと誘う声。
まだ寝てる奴。
吉澤は席の横から鞄を取り出して
持ってきたものを全部入れてしまう。
「仕事?」
隣の席の女の子が聞いてくる。
「うん、1時入りだからもう出ないと」
「じゃぁ、先生に言っておいてあげる」
「ありがと」
鞄を手にすると、吉澤は駆け出した。
教室を出る時、数人の子が手を振ってくれて
笑って、振り返した。
465L.O.D:02/02/23 22:00 ID:Oak0yTG+
「1、2、3、4!」
夏まゆみのカウントを数える怒声が響く。
汗が滴る。
必死に踊る。
だけど、笑顔は崩さない。
フォーメーションは右に左に変わっていく。
「あっ!」
なにげない表紙で足がもつれて、思いっきり倒れ込んだ。
「よっすぃ!?」
「大丈夫?」
「っく・・・・・・」
呻き声をあげるのは、倒れた拍子に
押し倒してしまった石川の方だった。
吉澤の腕の下になっている足を抱え込む仕種。
夏先生や他のコーチも駆け寄ってくる。
「石川、大丈夫?」
「捻っちゃったみたいで・・・・・・」
応急処置がほどこされるも、苦しそうな様子は変わらない。
マネージャーや舞台監督が話し合っている。
466L.O.D:02/02/23 22:01 ID:Oak0yTG+
「ごめん、、、」
「大丈夫だよ。そんな顔しないでよ、よっすぃ」
そう言って、石川は手を握ってくれた。
少し嬉しくて、泣きそうだったが
石川が痛みを堪えて笑ってるのを見て
泣き出せなかった。
「とりあえず石川は病院に行ってみてもらうから
 メンバーは練習を続ける事。」
「はいっ」
「ユニットの練習行きまーーーす。7人祭ーー!」
矢口らが汗を拭いて、水分を補給し
フロアに入っていく。
吉澤はすっかり落ち込んだ様子のまま
メンバーが集まってるとこへ行く。
「吉澤」
飯田に声をかけられ、顔を上げた。
「あんたは身体大丈夫?」
「怪我とかはないです」
「いや、さっき倒れたの貧血とかじゃないの?
 お仕事遅いけど、ちゃんと寝れてる?」
中澤がいなくなって、やっとリーダーらしさが出てきた。
すごく細やかな気を使ってくれる。
467L.O.D:02/02/23 22:02 ID:Oak0yTG+
「すいません、今日早かったんで・・・・・・」
「そっか、よっすぃ、学校だもんね」
隣に座ってた安倍が感慨深そうに言う。
「あんまり身体強くないんだから、無茶するんじゃないわよ?
 もし、具合悪いんだったら今のうちに言いなさい」
保田は厳しい口調。
自分も体調を悪くして、ハロプロを休んだ経験があるから
その損失がどれだけあるのか身を持って知っているからだろう。
「辻も加護は大丈夫?」
2人ともどこか眠そうである。
「あんなに遅くまでやって、早起きじゃ疲れも取れないよね。
 マネージャーに行って、学校休ませてもらえばよかったしょや?」
「ほんとだよね」
「次、10人祭!!」
吉澤は手にしていたドリンクを加護に渡して、
フロアへと入っていった。
468L.O.D:02/02/23 22:03 ID:Oak0yTG+
仕事が終わった午前1時。
石川の事もあり、今日は早めに切り上げられた。
軽度の捻挫で済んだらしく、1、2日休めば
痛みはだいぶ引くという。
振り自体はもう覚えているため
そんなに支障が出る事は無さそうだった。
ただ吉澤は帰りのタクシーの中で
様々な事を考えてしまう。
ダンスがうまいわけでもない
歌がうまいわけでもない。
最初の合宿の時、生まれて始めて
『ダンス』と呼べるものを踊った。
カウントの取り方が分からなくて必死だった。
今はプッチモニがあるおかげで
身体を大きく使ってダンスを魅せる
という事を覚えた。
469L.O.D:02/02/23 22:04 ID:Oak0yTG+
歌なんてちょこっとラブを歌い直したものなんて
自分で聞いて倒れるかと思うぐらい
歌えてなかった。
あの時は本当に落ち込んだ。
まだまだ唄えない。
安倍や保田、飯田、矢口・・・・・・
先輩メンバーは唄うという事を
身体で分かっているようだった。
自分はバレーばっかりやってて
プロの歌手として唄うことなんて一回も考えた事がなかったから
呼吸法だとか声の出し方なんて
ましてや、歌で自分を
表現するなんて出来なかった。
時折、仕事中やレコーディング中に
胸が苦しくなる。
自分がここにいていいのかと不安になって
怖くなったりもする。
そんな事を思いながら、窓の外を見てた。
470L.O.D:02/02/23 22:04 ID:Oak0yTG+
都会の曇った空。
星は見えない。
ラジオから流れるブルースがやけに悲しくて
運転手さんに声をかけようとした瞬間
「あれ?」
そこがタクシーではない事に気付く。
古臭い列車の座席が並んでいる。
新幹線のゆったりとした布張りのものではなく
木製の四角くて固い座席だ。
なぜか、それが懐かしく感じた。
ほっぺたをつねると、痛かった。
疲れすぎて、夢でも見てるのだろうと諦めて
どうせなら、この列車の旅を楽しんでみようかと思う。
窓の外を見ると、漆黒の闇に浮かび
キラキラと輝くダイヤモンドの波のような世界の中だった。
471L.O.D:02/02/23 22:07 ID:Oak0yTG+
偉大なる作家 宮沢賢治に捧げます。
472名無し娘。:02/02/25 04:06 ID:2oRTrmiF
>>L.O.D

( O^〜^O)<因果鉄道かよッ!(w
473モーコー2002全肯定:02/02/25 14:54 ID:08oPYFad
今度は純文学路線ですね!?
474トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/26 02:47 ID:dmsGY4FU
のわ〜!いつのまにかTrick完結してるし!そのうえ新作始まってるし!

で、遅レスだけどTrickの感想なんかを。
高橋をもっと掘り下げて欲しかったかな、と思った。
なので高橋が何故殺人者になってしまったのか…等のいきさつを
某カテキョよろしく外伝として書いてくれることを希望しまっす。
あと上のとも絡むんだけど全体的に(特に後半)展開が早かったような。
中澤のは…作者の個性と捉えておきます(w
こーゆー推理モノも面白いんでまた機会があったら挑戦してみてくださいね。

で、新作は宮沢賢治ですか!
吉澤ジョバンニで、カムパネルラは石川いや後藤かな?
とにかくおいらも賢治作品は好きなので期待してるっすよ!
475L.O.D:02/02/26 17:10 ID:mCUF+irb
TriCKについて
1回、無理だな、と思っているだけあってうまく書けなかったかな。

銀河鉄道の夜について
今、色々な作品がある中でこういう感じのないかなと思ったし
リメイクという事もあって、マターリ更新で行こうかな、と。
476L.O.D:02/02/26 18:02 ID:mCUF+irb
「わぁ・・・・・・」
しばらくの間、車両の下を流れていく小さな小さな光の粒に目を奪われ
窓から顔を出し、サラサラと音をたてる様に聞き入っていました。
遠くには時折、赤や橙色をした光が点々と見え
何かの折に、一面、真っ白なこの地面が虹のように色を返る中で
鮮やかに輝いていたのでした。
フッと前の窓が開いたのに、気付き、目をやると
長い茶髪が風に吹かれ、なびいています。
「ごっちん!?」
「んぁ?」
「なんでいるの!?」
加速し始めた列車が切る風のせいで
声が流されてしまい
後藤には聞こえないようで
2人は顔を見合わせ、困り果てた様子だったのですが
窓を閉めて、話せばいいと気付き、笑い合いました。
吉澤が窓を閉めようとすると、もう古くなってしまった
この金属製の窓枠が思うように閉まってくれず
顔を赤くしていると、後藤がやってきて
いとも簡単に閉めてくれたのでした。
477L.O.D:02/02/26 18:03 ID:mCUF+irb
「ありがと」
「隣、いい?」
「うん」
「リハーサル疲れるねぇ」
後藤は突然こんな世界にいる事は造作もないように
ごく普通に話し出し
吉澤も後藤があまりに自然体なので
ここがどこなのだろうという
心の奥底で渦巻いていた問いも忘れました。
「梨華ちゃん、大丈夫かなぁ」
「きっと直るよ」
「そうかなぁ・・・・・・」
「あ、ほら、よっすぃ、見てよ。
 あれ、アンドロメダだよ。」
後藤の手の中には綺麗に磨かれた黒の中に
今、窓から見えるこの光のごとく
小さな白い粒が幾つも混じった黒曜石の星座盤が握られており
それと、空に浮かぶ女性の姿を見比べると、
真っ暗闇に浮かぶ光の粒の中でもはっきりとその姿は見えたのです。
「わぁ・・・・・・」
2人はその後、しばらく言葉を失い
窓の外の世界に見とれていました。
478L.O.D:02/02/26 18:04 ID:mCUF+irb
列車は光の中を駆け抜け、
優雅に走るペガサスさえも抜いていきます。
「2人はどこまで行くの?」
声をかけられ、驚いて顔をあげると
そこには飯田が立っていました。
「いや、、、分からないですけど」
「そっか、圭織、次で降りるんだけど
 次の駅は20分近く停車してるから
 降りてみるといいよ、すごく綺麗だから」
そう言いながら、飯田は鞄の中から二つ
銀紙に包まれたチョコレートを取り出し
2人に差し出しました。
「食べる?」
「ありがとうございます」
口の中に放り込むと、まるで溶けるように広がり
ほのかなカカオの香りが口いっぱいに感じました。
「ねぇ、幸せってなんだと思う?」
「・・・・・・さぁ?」
飯田の目が外を見たのにつられ
2人も外を見ます。
479L.O.D:02/02/26 18:05 ID:mCUF+irb
黄金色にまばゆいまでの光を放つススキが
風に揺られ、まるでペルシャ絨毯のように
波打ってる様が見えました。
「すごくね、曖昧なんだけど
 きっとその人が楽しいとか嬉しいって思えたら
 幸せなんだと思うのね。
 お仕事とかさ、練習辛いけど
 ライブの時、お客さんの顔を見ると
 圭織は幸せだって感じるな」
列車は急に減速し、停まりました。
飯田は立ち上がり、先に座っていた席の上にある
荷物置きから大きなバッグを下ろすと
2人に微笑みかけ、行ってしまいました。
「うちらも降りてみようか」
「うん」
車室から出て、辺りを見回すと
もうそこには飯田の姿はありませんでした。
2人は歩きだし、しばらく来たところで立ち止り
大きく息を吸ってみました。
鼻や口と言わず、様々なところから
冷たい凍りつくような空気を感じます。
でも、それが気持ち良くて
何度も繰り返すと、ぼんやりしてた頭が
すっかり晴れやかになって
目の前に広がる景色がより美しく見えるようになりました。
480L.O.D:02/02/26 18:06 ID:mCUF+irb
「ねぇ、あそこの人、なにやってるんだろ?」
広々とした光の中で1人縮こまり
座っている人を見つけ
後藤が走りだしました。
「待ってよ!」
置いていかれるのは不安で吉澤も一生懸命走りました。
「なにやってるんで、、、梨華ちゃんじゃん」
追い付いた頃には後藤が彼女に話かけており
上げた顔はまさに石川だったのです。
「あ、ごっちーん。よっすぃも来たんだ」
「1人でなにやってんの?」
周りには誰もいません。
石川の手に握られてるのは
まるで子供が使うようなおもちゃのピンクのくまで。
「うんとね、ここに綺麗なピンク色した宝石があるんじゃないかって」
「へぇーー」
「見たいね」
「一回だけ見せてもらったんだけど
 すごく綺麗だったの!」
石川の笑顔はこの地面の光に負けないくらい
キラキラと光っていて、可愛らしく見えます。
481L.O.D:02/02/26 18:08 ID:mCUF+irb
吉澤は、光の中に手を入れ、それをすくいました。
それは、まるで砂のように細かくて
またよく見ると、青や緑など様々な色のものがありました。
「2人はなにをしに来たの?」
「えっと・・・・・・」
「サザンクロスに行く」
吉澤がその答えを探し、迷ってると
後藤はにベもなく答えました。
それを聞いた石川は少し悲しげな顔を浮かべながら
腕にはめた時計を見ました。
「そっか、もうお別れだね。
 ここから走っていけば、まだ列車には間に合うよ」
「じゃ、がんばってね」
「うん、じゃぁね」
後藤に手を引かれ、吉澤が振り向いた時には
そこに石川の姿はなく、その不思議な出来事に首をかしげました。
幾らもしない内に列車の窓の灯が漏れているのが見え
あっという間に橙の駅標まで辿りつきました。
2人が車室に戻り、一息つくと
すぐに汽車は走りだしました。
482トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/27 01:35 ID:GtpKF0aY
うんうん、雰囲気出てますな。
やはり後藤だったか…
483L.O.D:02/02/27 02:01 ID:IY7QiXSO
最初はジョバンニがのので、カムパネルラが圭織とか
色々なパターンを考えたんだけど、よしごまに落ち着いたのでした。
484.:02/03/01 02:56 ID:dUt8ulzS
hozensage
485L.O.D:02/03/01 10:00 ID:daKmrKhB
「あ、あそこ空いてるやーん!な、矢口あそこ座ろ?」
「あぁ、もう、酔ってんじゃんかよー!!
 すみません、相席いいで、、、、あれ?」
「矢口さんっ、中澤さんっ!?」
弁当箱とビールを片手にたずさえた中澤に
その中澤を支えるちっちゃな矢口が現れて
2人は驚きました。
足下のおぼつかない中澤に手を貸してやると
彼女はすぐに新しいビールの缶に手をつけ始めました。
「っかぁーー、うまぁーーーー」
「裕ちゃん、うちにも一口ちょうだい?」
「ん、なんや、ごっちん、飲みたいんか?」
「うん」
「遠慮せんでもええよーーー、飲みっ!
 まだあるからねーだっ!
 どや、弁当買ってきたんやけど吉澤食わんか?」
「いや、、、いいです」
「矢口、食べる?」
「うん、、、食べるけど、もうちょっと静かにしてよっ」
「あぁ〜ん、ごめぇん」
矢口に媚びを売るように、しなを作る中澤でしたが
なんとも言えず見難い様でした。
486L.O.D:02/03/01 10:01 ID:daKmrKhB
「2人はどうして乗ってるの?」
後藤がなにげなく聞くと
中澤はニマニマァと笑って
矢口の事を抱き締めました。
「2人の事を邪魔できないどっか遠くに行くんや」
「・・・・・・うん」
恥ずかしそうにうなづく矢口の様子から
それがまんざら嘘ではない事が
見て取れます。
「もうすぐやな・・・・・・」
さきほどは、白い光の粒が波立つようにも見えたのですが
今はもう真っ白な布がフワフワと漂うなそんな
幻想的な光景が続いていました。
「もう冬の空に入ったから光が強く見えるんやな」
「へぇ」
「ほら、冬、ライブ行った時、ごっつい星綺麗やったやん。
 あれはな、空気が冷たくて、緊張しとるから
 光が屈折せんで、見えるようになってよー見えるようになんねん。」
「おぉ〜、裕ちゃんすごぉい」
「すごいですね」
「はっはっはぁー、うちかてまだまだイケるでぇ」
「なにがイケんだよ!分かんねぇよっ!」
列車は減速し、停まってしまいました。
487L.O.D:02/03/01 10:02 ID:daKmrKhB
「あ、ビール買わないと」
そう言って、中澤が立ち上がった時にはもうそこに姿はなく
ホームにいる売り子のおばちゃんと談笑していました。
吉澤はその不思議な光景に目を奪われてましたが
後藤は矢口に話しかけました。
「ラブラブだねぇ」
「へへっ」
「どこまで行くの?」
「分かんない、きっとどこまでも行くと思う」
「いいなぁ、、、私は1人だから」
「え?よっすぃは一緒じゃないの?」
「どうなんだろ?」
「へ?」
「よっすぃはどこまで行くの?」
吉澤はボーッとしていたのですが
2人が自分を見てるので
慌てて格好をつけて言いました。
「グッドプレイスまで?」
「かっこいいねぇ」
後藤はなぜか感心しているようでしたが
矢口は苦笑いしていました。
488L.O.D:02/03/01 10:03 ID:daKmrKhB
発車のベルの音がしても中澤は
おばちゃんと談笑しています。
「早く乗、、、、」
「いやぁ、おもろい人やった」
さっきまでホームにいたのに、もう
彼女は目の前にいました。
「?」
「んー、あ、仲よさそやな・・・・・・」
中澤が視線を送る先には仲むつまじそうに
並んで歩く双児の兄弟。
矢口に目を向けると、くすぐったそうに笑いながら
おでこをこづいたりしました。
「なんだよぉー」
「ペアルックとかしてみよか?」
「なに、厚底履くの?」
「履かねぇよー、なんであんな凶器はかなあかんねん」
「じゃぁさ、ミニスカ」
「お前、この年でミニスカはないやろぉ」
「うん、犯罪だと思う」
「危ないですよ、中澤さん」
「お前等は一言よけいやっ」
と、笑いながら、またおいしそうにビールを飲みました。
489L.O.D:02/03/01 10:09 ID:daKmrKhB
「あの、、中澤さん」
「なに?」
「幸せってなんですか?」
すると、彼女は考えるまでもなく答えました。
「決まってるがな」
「?」
「矢口が幸せな事さー」
「やだぁ、マジで言ってんのーー?」
言われた矢口は照れてしまい
中澤の肩をポカポカと叩きますが
それすらも嬉しいようで
中澤は止めようともしません。
「いきなり、どないしてん?」
「いえ、、、この列車に乗ってからずっと考えてたんです。
 私達にとって幸せな事ってなんなんだろうって」
「ふーん、そかぁ
 あんま考えたら、ハゲるで」
「・・・・・・」
その時、車室のドアが開き、金色の丸ボタンがいくつもついた
いかにもえらそうな制服なのですが、どうもダボダボしてる
不思議な格好の車掌さんらしき人が入ってきました。
「切符点検するべさーー。出しておいてよーー。」
「・・・・・・安倍さん」
その人はまぎれもなく安倍なつみ。
「あら、みんなしてどこ行くのさー。
 なっちの仕事がない時にしてよーー」
「あぁ、すまんなぁ。
 矢口と愛の逃避行やねん」
「そっかそっか。さ、切符見せて?」
490L.O.D:02/03/01 10:11 ID:daKmrKhB
後藤は造作もない様子でポケットから小さな鼠色のキップを取り出してみせました。
中澤と矢口も同じような切符を見せたのですが
吉澤は困ってしまいました。
ポケットを見ても、そんなような物はどこにも見当たらず
どうやって切り抜けようか一瞬で考えました。
「オーゥ、ソーリー!アイムハリアーップ!
 キプ、カエーマセンデシタ」
「よっすぃ、切符持ってないの?」
「イエェース!イエス!」
「ん、、、」
安倍はおっこちそうな帽子をかぶり直すと
吉澤のポケットから4つ折りになった1枚の紙を
取り出して、拡げてみせました。
「あ、これでいいべさ」
真っ黒な紙にいくつも、十字が重なりあってて
少々、不気味な感じでしたが
安倍はそれを畳んで、吉澤に返した。
「裕ちゃんと矢口は、もうまもなくつくね
 ごっちんは、まだしばらくあるべさ」
「あれ、私は?」
「よっすぃのは、それすっごいよー」
矢口がうらやましそうにつぶやき
代わりに安倍が答えてくれました。
491L.O.D:02/03/01 10:12 ID:daKmrKhB
「それは、どこへでも行ける切符だべ。
 この幻想第四次元世界の
 このどこまでも続く銀河鉄道に
 いつまでも乗っていられる券でしょや」
「・・・・・・」
その刹那、手の中のその紙が熱く燃えたぎるような感じがして
吉澤は胸がギュッとしめつけられました。
その後は、なんだか気恥ずかしくて4人とも会話がないまま
じっと外を見てました。
でも、時折、中澤と矢口は視線を合わせ
小声で何かをつぶやきました。
それを見ていた吉澤は幾度も
今、幸せですか?と聞こうとしたのだが
それはついに喉から出ませんでした。
あぁ、この2人のように寄り添う事も幸せなんだと思いながら
隣に座る後藤を見ました。
無二の親友です。
この人のためなら、どこまでも行けるような気がしました。
などと考えてるうちに、ハッとすると
もう中澤達の姿はなく、食い散らかしたビールと駅弁が残ってました。
「片付けてよねぇー」
「あぁーあ、聞いておけばよかったなぁ」
「なにを?」
「中澤さんに、今、幸せですか?って」
「そだねぇー、後藤も思ってた」
2人はどちらからともなく手を握りあい
窓の外を見るでなく
ずっと恥ずかしげに顔を伏せていました。
492L.O.D:02/03/01 10:15 ID:daKmrKhB
『マターリ更新中』
どもども、今回は急いで更新せずに
ゆっくりとゆとりを持って更新させていただいてます。
まぁ、今朝9時から1時間で今回の更新分書いたんで
毎日やってりゃとっくの間に終わってるんですがね。

この後も銀河鉄道での旅、お付き合い下さいませ。
493.:02/03/03 02:27 ID:GI4MzuCd
sage(セージ)
494トロピカ〜ル名無して〜る:02/03/04 16:00 ID:nXH9XCNi
マターリいいね。内容がマターリだからマターリいきまっしょい…
495旧♪:02/03/05 04:15 ID:qegNevD4
ほんまにマターリしてる……w
496名無し募集中:02/03/06 01:07 ID:8s/U0dLf
期待保全
497.:02/03/07 00:14 ID:ekbgDSdm
のんびりと保全
498 :02/03/07 23:45 ID:tyu1CUJK
ごゆっくりどうぞ
499L.O.D:02/03/08 00:29 ID:GVs7mPWY
ほんまごめんなさいねぇ、まったりさせていただいて、、、
この後のシーンがラストまで一気に続いてるようなもんですから
出来てるとこまでうpるか、完成後にうpるか悩んですんですよねぇ、、、
500 :02/03/08 00:42 ID:1NEn29qO
完成後にうp=怒涛の更新再び
うひょひょーっ
501・・・:02/03/09 00:52 ID:pNmIbRDS
osage
502L.O.D:02/03/09 04:46 ID:liaVmM32
突然、フッと顔を上げると、後藤はつぶやきました。
「なんだろう、この匂い」
「あ、本当だ」
後藤に言われ、吉澤も匂いに気付きました。
甘酸っぱくそれでいて瑞々しい
ただの匂いとは思えないいい匂いでした。
2人は大きく息を吸い、吐き出しました。
「よっすぃ、アーンってして」
真っ赤で、大きな苺。
加護の小さな手が吉澤の口元に伸ばされてました。
まるでいままでそこにいたかのように
向いの席には保田と辻、加護が座っていました。
吉澤は加護の差し出した苺を食べました。
口の中にさっき嗅いだあの匂いより
もっともっと強い苺独特の甘酸っぱさを感じました。
(なんておいしいんだろう、加護、まだ持ってないのかな?)
「そんな顔して、私の食べていいわよ」
保田は優しげに笑い、吉澤にくれました。
「いいなぁ、よっすぃ」
辻は口元をベタベタにしながら、言いました。
503L.O.D:02/03/09 04:47 ID:liaVmM32
「辻、あんたもう全部食べちゃったの?」
「うん、すっごいおいしかった」
「まったく、、、ごっちん、よっすぃからもらって」
「うんっ」
「この辺りの苺はいっぱい光を浴びてるから
 そのままにしてても、良く育つし
 すごいおいしいんだよ」
「ねっ!すごい海っ」
辻が窓の枠にしがみつき、声を上げました。
そこは、先ほどまでいた光の川から
あのサラサラと音を立てていた光が
ずっとずっと、皆の見えない果てまで広がって
まるで海のように見えるのでした。
「綺麗ね・・・・・・」
保田はその風景を見ながら、少し悲しげな顔をしました。
「おばちゃぁーん、泣いちゃダメー」
「泣いたら、顔見れなーい」
「な、泣かないわよっ」
504L.O.D:02/03/09 04:47 ID:liaVmM32
後藤が3人に聞きました。
「どうして来たの?」
「電車に乗ってたらね、脱線したの」
「おばちゃんに送ってもらう途中だったんだけど・・・」
「ま、そういう事よ」
「そっかぁ」
吉澤はその会話が耳を通り抜けても
まるで、なにかアクセサリーがどこに行ったか
探している時のような
本当になにげない会話のような気がしたのです。
「こんなに綺麗なものが見れるなんて幸せね」
「ねー」
(幸せってこういう事なんだね)
5人は言葉も少なに、ただただ列車が行き過ぐ
その風景をボーッと眺めていました。
すると、確かに、心があたたかくなり
なんとも幸せな気分になってきました。
次第に辻と加護は眠ってしまい
それぞれにひじ掛けなどにもたれかかっていました。
いつの間にか、後藤と保田は吉澤が聞いていても
何をしゃべっているのか分からない言葉でしゃべり始め
吉澤もそれを聞き流していました。
505L.O.D:02/03/09 04:48 ID:liaVmM32
(あぁ、私、1人だ)
ある日の事を思い出しました。
それは本当に何気ない事だったのです。
プッチモニに入りたての頃
ダンスレッスンの時だったはずでした。
吉澤は1人、うまく出来なくて
休むヒマも惜しんで踊ってました。
楽しげに談笑する後藤と保田を
鏡ごしに見た時に感じた
1人の世界でした。
それは時に、モ−ニング娘。で仕事をしてる時も感じました。
どこかあの輪の中に自分が参加していないようなイメージを
フッとした一瞬、感じたのです。
隣には石川や後藤もいるし
辻、加護は抱きついてくるし
保田や中澤は気にかけてくれるし
安倍や飯田も優しい視線を投げかけてくれるのです。
なのに、吉澤は1人だと感じました。
506L.O.D:02/03/09 04:49 ID:liaVmM32
(私は今、幸せなんだろうか)
辻と加護も起きだして、4人で話してる姿が
どこかうっすらぼんやりとして
よく見えなくて、吉澤は目をこすりました。
窓の外にはっきりと、弱々しく光り続ける青い炎を見ました。
(なんて、美しいんだろう。
 私の人生はあんなに輝いてるだろうか。)
吉澤はじぃっと炎を見続けました。
時折、端々に見える巨大な森から溢れ出す
強い風に吹かれ、揺らめぐも
またそれが美しく見えました。
(あぁ、、、美しい・・・・・・)
周りに座ってる者など目には入らず
ただその炎を見ていると
どうしてもそれが欲しくなってきました。
(ごっちん、私、行くよ・・・・・・
 私はあの炎が欲しいんだ。 
 あの炎みたいに、輝いてみたいんだよ)
507L.O.D:02/03/09 04:50 ID:liaVmM32
途端に、耳の奥に聞き慣れたメロディを耳にして
吉澤の目は列車の中に引き戻されました。
高々と聞こえるハレルヤの声。
鳴り響くホルンの音。
「もうすぐ着くみたいだね」
「な、のの、なにして遊ぼか?」
「とりあえずお腹空いたんでー」
「苺食べたじゃん」
列車の周りは真っ白なベールで覆われたように
時折、ゆらゆらと影を作りながら
過ぎていきました。
吉澤はそれを見て、どうにも悲しくなり
俯きました。
(なんで、この会話に入れないんだろう。
 寂しい。誰か話しかけてよ。
 ここにいるんだよ。
 なんで、無視するの?)
保田が立ち上がりました。
「なー、ごっちんも一緒に行こ?」
「行こうよ」
「ん、私はもう少し向こうなんだよ」
「えぇー、ごっちんと一緒がいいよ」
「ほら、もう降りるよ」
508sage:02/03/09 04:51 ID:liaVmM32
(私は?私は一緒じゃなくていいの?)
「ねーおばちゃぁん、もうちょい金払って乗っていかへん?」
「私もお別れしたくないよ」
「ダメ、あんた達はここで降りるんだから。
 ほら、最後にキスしてあげて」
(最後の、、、キス?)
吉澤の頬に辻と加護が口付けました。
「あ・・・・・・」
もうそこに3人の姿はありません。
列車はゆっくりと動きだし、
吉澤が思ってるよりいっそ早く
その速度を速めました。
「行っちゃう、3人が行っちゃうっ!」
吉澤は立ち上がり、通路を走りましたが
先に見えてるドアへいつまでも辿りつけず
窓から飛び下りる事も出来ず
仕方なく後藤のいる席に戻ってきました。
509L.O.D:02/03/09 04:53 ID:liaVmM32
彼女は眠ってました。
その首はスラッと長く
また白く艶かしく感じました。
濡れた唇も彼女という存在になり得るくらい
輝いていました。
その寝顔はとても幸せそうでした。
(ごっちん、寝るの好きだもんな幸せなんだろうな。)
吉澤は彼女の向いの席に腰掛け、考えました。
(私の幸せってなんだろう)
朝起きて、ご飯を食べて
学校に行って
仕事場に行って
楽屋に行って
おしゃべりして
歌を唄い、ダンスを踊り
たまにみんなでご飯に行って
家に帰ってきて
お風呂に入って
寝る。
なにげない日々。
自分は何が楽しくて
何が楽しくないんだろうか。
510L.O.D:02/03/09 04:54 ID:liaVmM32
後藤が目の中に映りました。
親友。
こんなに気が合う人はいない。
笑う時も泣く時も喧嘩する時も一緒。
「ごっちん・・・・・・?」
吉澤は後藤の頬を叩きました。
すぐに胸に顔を当て
その心臓が脈を打っていない事に気付きました。
「ごっちん!?」
呼吸もありませんでした。
吉澤はただただ後藤を抱き締め
その名前を呼んで、
泣き叫ぶ事しか出来ませんでした。
次第に全てが闇に包まれて
延々と泣き止んだ頃
後藤の温もりもなくなっていて
ただ1人真っ暗やみに残されて
疲れ、倒れ込み
いつしか眠っていた吉澤が目を開きました。
そして、何もないその世界で
何もない空を見て思ったのです。
(幸せって、誰かと一緒にいれるから幸せなんだ)
511L.O.D:02/03/09 04:55 ID:liaVmM32
ぼやけてた空が急に開け
背中に固いコンクリートの冷たさを感じました。
顔を動かすと、そこにはひっくり返ったタクシーがありました。
「あ、、、、これって」
「おい!女の子が意識戻ったぞ!!」
「救急車まだか!!」
(銀河鉄道の夜だよ、、、、あれ、、、
 あの話ってどんなんだっけ・・・・・・)
吉澤は身体を起こすと、慌てて回りの人が寝かせました。
「う、動かない方がいいよ!」
「はぁ・・・・・・」
心配そうに吉澤を見る恐らくは近所の人。
「あの・・・」
「なに?なにか欲しいかい?」
「銀河鉄道の夜ってどんなお話でしたっけ?」
「宮沢賢治の?」
「はい」
「あれは、、、、」
512L.O.D:02/03/09 04:57 ID:liaVmM32
「あれは、、あれだ。友達と2人で列車に乗ってだ」
「そう、銀河を旅に行くの。」
「でも、それは死ぬ人が乗る列車なんだよな」
「!!?」
吉澤はポケットに入っていた携帯電話を探り当て
ボタンを押すと、幸い壊れてはいなかったようで
ごっちんという文字が液晶に表示されました。
(いやだよ、そんなの・・・・・・
 そう、あの後、目を覚ましたジョバンニが丘を降りると
 カムパネルラが川に落ちて・・・・・・
 ダメだよっ!!ごっちん!!!
 かかって・・・・・・!)
呼び出し音が続く時間がヤケに長く感じる。
『・・・・・・』
「ごっちん!!」
『・・・・・・』
「ごっちん、死んでない!?」
『んぁ?』
「生きてる、、、」
『今ね、夢見たんだよねー、、、』
その声はどうにも寝起きの声。
吉澤は声が詰まり、うまく返事が出来ませんでした。
513L.O.D:02/03/09 05:01 ID:liaVmM32
『メンバーがみんな出てきたんだけどー、、
 なんか列車に乗って、すっごい綺麗なとこ旅してたの。
 だけど、急に悲しくなって、泣いて目覚ましたんだ。
 明日、腫れちゃうかなぁ・・・・・
 そういや、なんかこんなお話なかったっけ?』
「、、、、銀河鉄道の夜だよ」
『あー、うちに本あったなぁ。
 明日持っていくから、よっすぃ読もっか?』
「うん、読もう」
『じゃ、後藤寝るねー。おやすみ』
「おや、、す、、、、」

  ガシャン・・・・・・

吉澤の手から転がり落ちた携帯電話。
「ちょっと!!」
「あっ!」
「スゥ・・・・・・」
小さな寝息。
彼女は穏やかな寝顔で眠ってしまっていました。
一体、、、どんな夢を見るのでしょうか。
514L.O.D:02/03/09 05:09 ID:liaVmM32
『銀河鉄道の夜 終了記念』
はいっ、おはようございまーす、7時起きで用事あるんで
チャット行っても3時に寝ようと思い、落ちたのにも関わらず
筆がノッてしまって、2時間で6ページ書いて更新してみました。

宮沢賢治の銀河鉄道の夜です。
はっきり言って、シーンの大半は原作のまんまです。
現代的、娘。的に置き換えたりしてますけどね。
元々、よっすぃの苦悩みたいなのを前に一回やってるんですが
浮き彫りにしてみたくて、それがこの作品と結びついたんで
実験的にやってみました。
もしよければ、御感想をください。
515 :02/03/09 13:38 ID:T5PJkM97
ををををををーっ
終了記念ですかっ
・・・
これから読ませていただきます。
516トロピカ〜ル名無して〜る:02/03/10 13:24 ID:jeziAAW9
完結おめっとさん。
銀河鉄道の夜と娘。が上手く融合してて良かったんじゃないかと。
事故現場で銀河鉄道の夜のことを訊く吉澤と素直に答える近所の人にワロタ
つーかまともな感想書けなくてスンマソン(w

おいらは原作知ってるから原作を思い出して比較しながら読んだんだけども、
ぜひ原作全く知らないで読んだひとの感想訊いてみたいね。
517 :02/03/10 14:46 ID:4yYcdcI/
原作知らない人、いるかな。

・・・うーん

いるかも・・・
518L.O.D:02/03/10 15:14 ID:P3xuUFkW
<原作知らない
ちゃんと読んだ事ない人ってきっといると思うなぁ、、、
読んでも、教科書で読んだとか。
書くにあたって、ネットで原文探したわぁ(w
519名無しさん:02/03/11 01:20 ID:rAvm5a2U
俺、原作をまったく読んだことないけど、
これ読んでなんかちょっとじ〜んと来た。
後、意味不明な場面が度々あるが、それがこの作品(原作)の良さなの?
クソレススマソ
520.:02/03/11 06:17 ID:7YmYQtkg
>>519
まあ、昔のファンタジー小説ですから。
521L.O.D:02/03/11 09:33 ID:thfSh0Zk
辻褄合わせでもなんでもなく、原作もあんな感じですね。
原作の評価として、星座の独自の解釈というのがあるんですけど
今回はほとんど使ってません。
522旧♪:02/03/11 10:42 ID:c33cnWeF
夜空がまだ星空と呼ばれていて、
人々がそこに想いを映せ得た時代であろうからこそ
生まれた作品なのね……。

そんな自分は原作未読組。
523名無し。:02/03/12 03:21 ID:NgJ0AMVz
感動しました。。
原作読んだことないのですが、ちゃんと娘。の
キャラが上手に活かされてて良かったです^^
新作期待してます。。。
524L.O.D:02/03/13 02:45 ID:aTAaUv/4
愛しい貴方へ、Night of Tokyo City、銀河鉄道の夜をHPに収録しました。
愛しい貴方へはここで公開したのとは別にラストを書き直してみたので
興味のある方は、御覧に。

http://shibuya.cool.ne.jp/lods/index.html
525sage:02/03/15 02:00 ID:XmdyadeE
sage
526ねぇ、名乗って:02/03/16 03:31 ID:Bm1Pe7yo
休養もするわな保全
527旧♪:02/03/16 18:43 ID:nW8kFR2T
新作、期待保全
528名無し募集中。。。:02/03/17 08:36 ID:xKzlU0aq
マターリ待とう……
529 :02/03/18 18:29 ID:jK9hG5uV
 
530sage:02/03/19 22:18 ID:BSnNcTnu
sage
531L.O.D:02/03/20 01:26 ID:g8mYZ5rw
大スランプ〜(笑)
次の作品は、ここで短編を書く前に別スレになってしまう模様。
というか、あえて、別スレで立たせて欲しいという希望。
ここでは、過去の作品の感想でもヒソーリと語ってください。
いつか暇見て、残りのレスを消費します。
532sage:02/03/21 00:55 ID:tSuVVPFJ
sage
533sage:02/03/22 14:34 ID:vXYC+zVV
sage
534名無し募集中:02/03/23 21:05 ID:H7G3KNSa
保の字
535名無しさん:02/03/24 23:12 ID:zcCLdksJ
保全
536sage:02/03/26 04:37 ID:SUbPO7Gu
sage
537sage:02/03/27 05:31 ID:y+VRWwY8
sage
538sage:02/03/27 13:20 ID:ZqpzdzWQ
sage
539sage:02/03/27 17:26 ID:Gy+TdBFr
( `.∀´)<保全よ!
540アルマーニ濱口:02/03/28 02:56 ID:xIai0VWI
このスレはもう使わないのかな?
一応ホゼ
541age:02/03/28 11:29 ID:o3YVPPnz
ageといいつつsage
542sage:02/03/30 08:20 ID:pnjcKmCg
sage
543hage:02/04/02 22:45 ID:W560RMfh
hage
544L.O.D:02/04/03 01:46 ID:Kmn2jiX5
一週間以内に別スレで復活予告。
545  :02/04/03 12:34 ID:KJdjKblC
>>544
L.O.Dよ!どこだ!!どこにいる!!!
546アルマーニ濱口:02/04/03 12:47 ID:BN8CvnWi
>>544
祝!復活!!!
547L.O.D:02/04/04 18:08 ID:nWvF/OAV
548名無し募集中。。。