___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板60
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1282734142/ ローカルルールの説明、およびテンプレは
>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。
(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(
>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4) 一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara ■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
| | [][] PAUSE | . |
∧_∧ | | | . |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | | | . |
| |,, ( つ◇ | | | . |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
テンプレ1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
テンプレ2
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
└───────────────
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
テンプレ3
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < みんなで
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ワイワイ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 見るからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < この体勢は
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 無理があるからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ
テンプレ4
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
>>1乙です。
前スレに投下した物の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
殿様は後半まで出番がなく、仙石が大変気の毒な目に合ってます。
暴力とレイープ描写あり。
えらい長いので、四回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
そろそろ陽も落ちようかという夕暮れ時、九慈真之介は、歩く坂の途中に小さな地蔵堂を見た。
近付くと小綺麗な身なりのふたりの少女がしゃがみ込んで、熱心に手を合わせていた。
真之介の目は、小ぶりな地蔵の前に置かれた供え物にくぎづけになった。
昨夜から水しか口にしていない身には、その白い二つの握り飯はたまらなく眩しく美味そうに見えた。
喉から手が出るほど欲しかったが、いたいけな娘達を押しのけて拝借するのは、さすがの図々しい真之介にもいささかためらわれた。
すると視線に気付いたのか、少女達が後ろを振り向いた。
どちらも十くらいの年頃で、なかなか可憐な顔立ちをしていた。
真之介は慌てて、ごまかすように咳ばらいをした。
「う、こほん。嬢ちゃん達、もう日が暮れるぞ。お祈りは感心だが、そろそろ帰らんと、おっかさんが心配するぞ」
言い終わると同時に、盛大に腹の虫が鳴き声を上げた。
見上げる少女達はぽかんとし、それから顔を見合わせてくすくすと笑い出した。
真っ赤になった真之介はいたたまれず、早足でその場から逃げ出した。
しばらくしたら引き返して、少女達が去ってからあの握り飯をいただこうかと思案しながら歩いていると、背後から駆け寄る小さな足音に気付いた。
振り向くと先ほどの娘達が立っており、ひとりは竹の皮の包みを捧げ持っていた。
「あのねお侍さん、お地蔵様がね、もうわしはお腹いっぱいだから、このおむすびはあのお侍さんに食べてもらってくれって、そう言ったの」
娘は笑って握り飯の包みを差し出した。
真之介は胸が熱くなったが、何食わぬ顔をして受け取った。
「そうかぁ、お地蔵様から頼まれたんじゃ、しかたない。こいつはおじさんが、片付けてやるとしよう」
娘達は花が咲いたように笑い、真之介も笑い返した。
「じゃあね、おじさん」
「あたし達、帰るからね」
「おう、気をつけてな」
娘達は手を振り、地蔵堂から宿場へと連なる道を下って行った。
手を繋いで坂を降りて行くふたりの後ろ姿を見送って、真之介は道端の大きな石の上に腰を下ろして包みを開けた。
少女達の心遣いに感謝し早速握り飯を頬張った。二つ目を半分まで腹に納めた時、下り坂の向こう辺りから、きゃあっというような声がかすかに聞こえた気がした。
胸騒ぎを感じて、握り飯を持ったまま坂道を駆け下りた。
「助けて!誰か、助けてぇっ」
「離してよ、離してったらっ」
声の方角を見下ろすと街道を外れた林の中に、泣き叫ぶ少女達を引きずって行こうとする男達の姿が見えた。
「……かどわかしかっ」
真之介は愛刀に左手をかけ、猪の如く猛然と走った。
男は三人。いかにもごろつきの、腰帯に長脇差をぶち込んだふたりがそれぞれ少女達の腕を掴み、浪人姿のひとりが辺りを警戒していた。
真之介は狙いを定め、持っていた握り飯を手前の男の後頭部に投げ付けた。
命中して怯み振り返ったところに刀を抜き放ち、逆袈裟に斬り上げた。男はもんどりうって倒れ、少女はその手から離れた。
「ぎゃあっ!」
「な、なんだ貴様はっ」
泡を食った浪人が駆け付ける前に、すかさずもうひとりの少女を捕らえた男に駆け寄り剣を振るった。
長脇差を抜く暇も少女を盾にする間もなく、男は真之介の刃に腕を切り裂かれ、ひいっと情けない声を上げてその場に腰を落とした。
「お前達、早く行け!振り返らずに走れっ!」
真之介は浪人と睨み合いながら、少女達に怒鳴った。
地面にへたり込んでいたふたりは我に返り、手を取り合って駆け出した。
逃げ去る姿を横目で確かめ、真之介は安堵して目の前の浪人に集中した。刀を向け合って見据えると、大した腕では無いとすぐに見て取れた。
「おい、おめえ、死ぬぞ。やめとけ」
「う、うるさい!死ぬのは貴様のほうだっ」
「そうかい。それじゃまあ、しかたねえな」
刀を肩に担いで不敵に笑い、じりじりと間合いを詰めると、焦った浪人が刀を振り上げ斬りつけてきた。
気合い一閃、真之介の刀が鋭く唸りを上げ、浪人の胴を薙ぎ払った。あまりの早業に浪人は悲鳴も上げず、どうと倒れ伏した。
ふうっと息をつき袴で血を拭うと、真之介は抜き身を下げたまま、腕を抑えて腰を抜かした男に近付いた。
震える男の鼻に刀を突き付け、低い声で脅しをかけた。
「おい、てめえらあの娘達を掠って、岡場所にでも売っ払うつもりだったのか。ふてえ野郎だ、叩き斬ってやる!」
「ひ、ひええっ!」
「……だが、腰抜かしてる野郎を斬っても、おもしろくねえ。立て!代官所に突き出してやる。かどわかしは大罪だ。どっちみち、死罪だがな」
青ざめた男は立とうとしたが、真之介に怯えて脚に力が入らないらしく、なかなか立ち上がることが出来ない。
「……さっさとしろ、この野郎!」
いらついた真之介はまた怒鳴り、刀を喉に押し当てた。
すると背後から、尋常でない気配を感じた。当てた刀を離さず男の後ろに回り、気配の方に目を向けた。
「そこまでだ。そいつを、返してもらおう」
気配の主は、真之介と同じか少し若い年頃で背が高く、袴を身につけた浪人姿の男だった。
無表情で抑揚なく語りかけ、腰の刀は鞘に納めたままだが、全身から並々ならぬ殺気を感じた。
先ほど斬ったのとは違いこいつは出来る、と睨み付ける真之介に、浪人はふいににやりと笑い身体を横にずらした。
すると後ろにはもうひとり大柄なやくざ風の男がおり、両の腕には逃げた筈の少女達が羽交い締めにされて捕われていた。
しまった、と真之介は舌打ちし、浪人に条件を持ち掛けた。
「よかろう、その子らを離せ。こいつと交換だ」
「いや、交換はしない。返さんなら、娘を殺すまでだ」
「……なにぃ?そしたら、こいつを斬るぜ!それでもいいのかっ」
「どじを踏んだそいつの自業自得だからな、俺達は構わん。だが、お前はどうだ。そのチンピラと、この愛らしい娘ふたりの命、冥土の道連れにしても構わんのかな」
「……!」
「刀を捨てろ」
浪人は刀の切っ先が届く距離まで近付き、真之介に決断を迫った。
断ればこの男は迷いもなく娘達を殺すだろうと、静かな口調の中に冷酷さを感じ取った真之介は、素直に刀から手を放した。
がしゃりと地面に落ちたそれを座り込んでいた男が拾い、真之介に突き付け立ち上がった。
「こ、このさんぴん、ぶっ殺してやる!」
「待て、殺すな。こいつは、俺の獲物だ」
浪人が更に真之介に近付き、いきり立つ男を止めた。
少女達を捕らえた男もそちらに歩こうとしたその時、真之介に握り飯を渡した娘が、男の腕に思いきり噛み付いた。
「うわあっ!」
慌てた男が娘の頭を抑えると、もうひとりの娘が腕から離れた。
「逃げて、おたみちゃん!早くっ」
男の顔を引っかき殴り暴れながら、噛み付いた娘は必死に叫んだ。おたみと呼ばれた少女は泣きそうな顔をしたが、なおも逃げろと告げられて、一目散に林の向こうに走り出した。
「くっそう、あのガキ!」
「あの娘はもういい、ほうっておけ」
娘を取り押さえた男が追おうとするのを、浪人が制した。
刀を当てられた上に、後ろを向いていても浪人には隙がなく、真之介は身動きが出来ないでいた。ひとりだけでも逃げてくれたことに、少しだけ救われた思いだった。
「先生よ、早いとここいつを殺してずらからねえと、まずいんじゃねえかい」
怪我をした男が息を荒げて質すと、浪人は首を横に振った。
「いや、駄目だ。こいつは殺さん。俺が連れていく」
あくまで譲らない浪人を真之介が訝しく思っていると、娘を捕らえた男が苦々しげに吐き捨てた。
「まぁた、旦那の悪い病気かい。全く、付き合い切れねえぜ」
「付き合えとは言わんが、邪魔は許さん。さもなきゃ、手を引くぞ」
怪我をした男はため息をついて、諦めて喚いた。
「わかった、わかったよ。その代わり、先生が運んでおくんなせえよ。そいつは娘で手いっぱいだし、おらぁこの通り、この野郎のおかげで手負いだからよ」
「任せておけ。では行くとするか」
頷くと浪人は真之介の背後に回り、ひらめかせた手刀で後頭部に鋭い一撃を叩き込んだ。途端に真之介はその場に崩れ落ちた。
おじさん、おじさんと泣き叫ぶ娘の声が耳に響き、やがて意識は闇に包まれた。
左の頬に衝撃と痛みを感じて目が覚めた。
せわしく瞬きをして顔を振った真之介は、後ろ手に縛られて板張りの床に転がされていることに気が付いた。
袴を剥がされ着流しの格好になっているのを不思議に思っていると、耳障りな男達の声が部屋に響いた。
「起きやがったな、この野郎」
「おめえにぶった斬られて殺された仲間と、この傷の怨み、晴らさせてもらうぜ」
真之介を見下ろして、ふたりの男がにやにやと笑っていた。
熊のようにがっしりした大柄な奴は娘に噛み付かれていた男、狐のように顔が細く小柄な奴は慎之介に腕を斬られた男で、捲った袖の下には包帯を巻かれた腕があった。
暗い室内には祭壇らしきものがあり、二本の蝋燭がじりじりと燃えて弱く照らしている。
仰向けに転がって周りを見渡した真之介は、どうやら古い荒れ寺に連れ込まれたようだと見当を付けた。
ふと、この男達に捕まった娘のことを思い出した。
「聞いてんのか、てめえ!」
熊男が喚いて、横腹を蹴り付けた。痛みに顔を歪めながらも、真之介は問うた。
「お、おい、あの子はどうしたっ」
「……安心しろ、ここにいる」
答えたのは、円い柱にもたれかかり、刀を抱えて座っているあの浪人だった。そのかたわらには両腕両足を縛られた娘がうずくまり、震えながらこちらを見ていた。
ほっと息をついた真之介を見て、浪人は言葉を続けた。
「心配せんでも、この娘は大事な金づるだ。傷付けはせんよ」
「……本当だなっ」
「本当だ。だがお前は、そうもいかん。俺としては不本意だが、そいつらの気が治まらんと言うのでな。少し、痛い目を見てもらう」
「なぁにが不本意だい。こいつは元気過ぎるから、いたぶって力を落としてやれって言ったなあ、旦那だろうが」
「まあ、言われなくってもこちとら、もちろんそのつもりだけどよ。先生のお楽しみは、その後ですぜ」
熊男が呆れたように呟き、下卑た笑いを浮かべた狐男が真之介の襟を掴んで引き上げるのをちらりと見やり、浪人は目をつぶった。
「ほどほどにして、やり過ぎるなよ。顔にはあまり、傷を付けるな」
「へいへい、わかってますって」
「さんぴん、思い知れ!」
狐男が真之介の顎下に拳を叩き込んだ。
どうと床に倒れ込んだ背中を、熊男が思いきり踏みつけた。
「……っ!」
真之介は歯を食いしばり、声を堪えた。痛め付けられる様を見て、娘が泣き声を上げた。
「やめてえ!おじちゃんを、いじめないでっ」
ふたりの男は高笑いし、ますます真之介を殴っては蹴りつけた。真之介は無理に笑顔を作り、優しい娘に向かって叫んだ。
「だ、大丈夫だ嬢ちゃん!おじさんが必ず、こいつらをやっつけて、おっかさんの元へ、か、帰してやるからなっ」
「けっ、ほざくな!この野郎っ」
「やれるもんなら、やってみやがれ!ひゃははっ」
更に激しさを増した私刑の恐ろしい光景に娘は耐え切れず、涙を流したまま意識を失った。
浪人は眠ったかのように、じっと動かなかった。
気の済んだらしいふたりの男は真之介から離れると、隣の部屋にいると浪人に告げて出て行った。
全身から力が抜け、横たわって荒く息をつく真之介の目に、刀を手にして立ち上がりこちらに近付く浪人の姿が映った。
浪人は真之介の横に膝をつくと、やけに優しげな口調で語りかけた。
「だいぶ、やられたな」
「……ふん、さぞかし、おもしろかったろうな。それで最後の仕上げに、てめえが俺を、ばっさりやるって寸法か」
「いずれはそうなる。だが、今はまだそうはせん」
「なんだと?なぜだ」
「お前が、気に入ったからさ」
浪人はややかがんで、真之介に顔を近付けた。
間近で見る浪人は弓形の眉と切れ長の目、高い鼻梁に彫りの深い顔立ちをしていた。
伸ばした月代ごと纏めた髪を髷にし、額に垂れた乱れ髪が秀麗な顔に映え、艶を放っていた。
こいつは黙っていても女にもてるだろうなと、真之介は自分の置かれた立場も忘れてぼうっと考えた。
だが浪人を包む冷たい空気は他人を寄せ付けないところがあり、温かさと優しさを着物代わりに纏ったような兵四郎とは正反対だな、とも思った。
なぜ今兵四郎のことなどを考えるのかと、心中で自分に驚いている真之介の頬に、ひやりとした掌が当てられた。
次の瞬間、唇を塞がれた。目を剥いた真之介は、浪人に口を吸われていることを悟り、愕然とした。
必死で顔を振り口を閉じようとしたが、浪人の手が顎と首を強く抑え込み拒むのを許さない。舌を深く入れられて口内を貪られ、真之介の頭は怒りと混乱でいっぱいになった。
浪人がやっと唇を離した一瞬の隙に、残る力を振り絞り頭突きを喰らわせてやった。
「……っ!」
「ざ、ざまみろ!ふざけ、やがって」
はあはあと息を乱し悪態をつく真之介を、額を押さえながら浪人は見やった。
「まだ、元気があり余ってるようだな」
呟いて不気味に笑うと脇差を抜き放ち、真之介の左肩にいきなり突き立てた。
「……うあぁっ!」
「急所は外した、死ぬことはない」
たまらず悲鳴を上げた身体から脇差を引き抜き、真之介の着物の裾で血をぬぐって鞘に納めた。
新たな痛みに心臓はどくどくと早鐘を打ち、脂汗が全身から吹き出した。
「これでじっくり、かわいがってやれる」
「はあっ、な、何を……てめえ、何のつもりだっ」
「お前を、抱くのよ」
「……!たわけたこと、抜かすなっ」
意外な言葉にうろたえる真之介を見下ろして、浪人は懐に手を入れた。取り出した手には小さな紙包みがあり、何かの薬が入っているようだった。
「こいつは、通和散だ。お前も知ってるだろう」
「……て、てめえ、まさか、本気か」
浪人はまた笑い、真之介の着物に手をかけた。真之介は焦り身をよじったが、打撲のせいで全身がきしみ、肩の痛みもあって弱々しい抗いにしかならなかった。
裾を割って下帯を外し脚を開かせると、浪人は器用に片手で包みを開け、中の丸薬を口に含んで噛み砕いた。右の掌に吐き出された液体は、トロロアオイの根で作った丸薬が唾液と混ざり潤滑剤となったものだ。
浪人は液体を指に塗り込めた。そしてぬるつく中指の先を、裾を捲ってあらわにした真之介の後ろに押し当てた。
「……や、やめろ、馬鹿野郎っ」
「震えているのか。大丈夫だ、俺はこう見えて、なかなか上手いぞ」
笑うと、ぐっと指を押し入れた。真之介の身体は竦み逃げを打ったが力が入らず、のけ反るだけに留まった。
「う、くっ……!」
「ほう、こりゃあ……意外だな」
探るような指のうごめきに声を殺して耐える真之介に、浪人は嘲笑うように囁いた。
「お前、男の味を知っているな。それも昔じゃない、先頃抱かれた身体だ」
「……!」
真っ赤になり顔を逸らした真之介に、浪人は淫猥な視線を注いだ。
「お前の念友は、上手いのか?お前のような男が脚を開くほど、強くていい男か」
こんな奴に何も答えたくはない、答えるものかと、真之介は唇を噛んでぎゅっと目をつぶった。
「まあ、いい。俺がそいつの味など、忘れさせてやるさ」
浪人は指を増やし、くちゅくちゅと音をさせて真之介を指で犯した。
嫌でたまらないのに、擦られた刺激に身体は鮮やかに反応を示し、中心は蜜をこぼしてそそり立っていた。
浪人は真之介自身をも揉みしだき、指をまた増やした。必死で腰をよじると、鳩尾に容赦なく拳を叩き込まれた。ぐったりとした真之介の身体を返し、腰を高く上げさせて、浪人は下げた袴から自身を取り出した。
わななく秘所に切っ先をあてがうと、掌に残った液体を幹に擦り付けてから一気に差し込んだ。
ずるり、と入り込んだもののおぞましさに、真之介は血が滲む程に唇を噛み締めて耐えた。
全てを納めると、休む間もなく浪人は動き出した。
「……っ、う、ぐっ……!」
「いいぞ、いい具合だ。そういえば、お前の名を聞いてなかったな」
「うる、せえっ……!ふ、うぅ……っ」
「そうか、残念だ」
浪人の性技は確かに巧みで、的確に感じるところを突かれた。
耐え切れずかすれた声を漏らす真之介は、犯されながらも沸き上がる快感に溺れまいと、必死で理性を保とうとした。
浪人は笑いながら動きを早めては緩やかにして、締め付けの心地よさを楽しんでいた。
気が狂いそうな思いで、真之介は床に頬を強く押し付けた。
暗い室内には獣じみた荒い呼吸とかすかな喘ぎが満ち、片隅には気を失った哀れな娘が、顔に涙の痕を残して横たわっていた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回に続きます。
楽しみに待ってました!
今回もいいいーーーです
続きもあるのですよね?はあはあ
うおお初めて立ち会った!!GJGJ!!!
続きも楽しみに待っております!
植え付け 偽装師/ポイントマン
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「久し振りだなぁ」
鼓舞と斉藤に連れられて、調合師と共にイー蒸すはやってきた。何年も会っていなかった男は以前
に比べて歳をとり、少し太ったように思う。モンバサで何をしていたのかは知らないし知りたくも
ないが、それでもその狡猾さは昔と変わらない。むしろ磨きがかかっているようだ。
実にあっさりと物事を分析して、粗を突く。実に合理的で、納得させられる。昔と、ちっとも変わ
らない。
「で。相変わらずそんなもんばっかり食ってんのか、お前は」
倉庫で作戦を練るばっかりなのに飽きて、散歩がてらに少し歩いた所にあるカフェに入った。薄曇
りでそよそよと風が気持ち良かったからテラスで食事をすることにした。サラダと、甘いケーキに
コーヒー。エネルギーは十分だ。思考で酷使した脳には、単純な糖類で栄養を補給するのが手っ取
り早いリフレッシュになる。あとは野菜でミネラルの補給。
サラダを半分程片付けたところで目の前の空いた席に、断りもなく男が腰を下ろした。間違いない
。顔を上げると案の定イー蒸すがニヤニヤと笑顔を浮かべながら座っている。
倉庫にはいなかった筈なのに、後でもつけてきたのか。それにしたらタイミングがおかしい。
「何の用だ」
「用も何も、散歩してたらお前がいたからな。相変わらず粗末なモン食いやがって。蟻あどねはど
うした?」
「鼓舞と設計を」
「へえ」
新しい客に気付いたウェイトレスがやってきてイー蒸すに注文をきく。やけにキザったらしいオー
ダーっぷりに、彼女は曖昧で妖艶な笑みを浮かべてバックヤードに戻っていった。本当に昔と変わ
らないな、と残りのサラダをざっくりまとめてフォークにさして口に詰め込む。オリーブが旨い。
視線を通りに向けた。裏通りだからだろう人通りはまばらだが、大学が近いからか若者が多いよう
だった。蟻あどねと同じ年頃――彼女の想像力は、素晴らしい。あの若さで、斬新で、複雑で、緻
密な設計を簡単にやってのける。正にジーニアス。
「で、どうだ。上手くいきそうか?ポイントマン」
訊かれて視線を戻すと、相変わらずニヤニヤした笑顔が張りついていて気持ち悪い。そんな事を訊
くためにわざわざ来たのか?
「成功させるためにチームを組んだんだ。そうだろう?」
「――お前は、昔からツメが甘いからなぁ」
言い放った瞬間の笑みはこれでもかという程に酷薄で、つい頭に血が上る。表情を見られたくなく
て再度通りに顔を向けた。分かったような言い方をするなと言ってやりたかったが、上手く言葉が
出てこない。
「拗ねるなよ、ダーリン」
「うるさい黙れ」
「だから拗ねるなって。可愛いから」
「――死ねよ」
意を決して正面から言うと、一瞬目を見開いてからイー蒸すは吹き出した。
「何がおかしい」
「お前、少しは成長したのな。良かった良かった」
取り敢えず、馬鹿にされている事だけはよく分かった。席を立とうとした所で、さっきのウェイト
レスがコーヒーを手にやってきた所為で出鼻を挫かれ、浮かせていた腰を椅子に戻してしまう。タ
イミングが悪い。
「まあ、これ飲み終わるまで待ってろ」
「何で」
「――2時間で終わらせてやるから」
な?と言うその目が、明確に欲を孕んでいて唖然としてしまう。なんだこいつは、それが目的なの
か。思い当たった瞬間に過去の記憶がずるずると立て続けに引き摺りだされて、ぞくりと胃の奥が
重たくなる。
「俺はっ、もう……お前と、そういうことをするつもりはない」
「そういう、って?どんな?」
イー蒸すは欲を色濃く映した目を細めて、笑顔を作った。
――はめられた。
気付いて、腹立ちまぎれに盛大な舌打ちをするとまたイームスは声を立てて笑う。
最悪だ。何でまた一緒に仕事をしなきゃならないんだ。でも、この男もチームには必要な人間だ。
インセプションを、成功させる為に。
「俺は戻る」
コーヒーを飲みながら、器用に道行く女に手を振る男を置いて立ち上がる。ちっともリフレッシュ
にならなかった。本当に、最悪だ。
「そんなに急ぐなよ」
「お前はそれを飲むんだろう?」
左手に持たれたままのカップを指差すと、イー蒸すはちらりとそれを見てからソーサーに戻して立
ち上がった。
「旨いコーヒーもいいけど、お前の方が旨いだろ?――子猫ちゃん」
さっきまで女に振っていた手でジャケットを掴んでいた拳を取り上げて、ゆっくりと唇を寄せてき
た。こんな往来で何をするんだ、と思いながらも一瞬固まってしまい、振りほどいた頃には周囲の
視線が痛いほど突き刺さっていた。
「ふざけるのも大概にしろ!」
座席とウェイトレスにぶつかりそうになりながらカフェを飛び出した。早足で遠ざかりながら指先
の濡れた感覚を振り解くように、何度もスラックスに擦り付ける。それでも、押し付けられた厚い
唇とか、少し伸びた髭とか、そんな感覚は消えることなくますます思考を侵食していく。
同時進行で、どくどくと脈拍を上げていく心臓といい、全くどうかしている。
どうかしている!
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
投下途中で間違いに気付きました。すみません。
こんな麻は違うと思うんだけどね。可愛いのもいいじゃないの!
25 :
希望1:2010/10/17(日) 11:03:15 ID:9Y+ZjkYWO
タイトルがぱっとしないけど前スレ
>>311-314のその後。
『彼』と『俺』が入れ替わってます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
彼の柔らかい髪が、秋風に揺れている。
足音に気付いて振り返った彼の細い目が、大きく見開かれたのを見て、思わず笑ってしまった。
「そんなに驚かなくてもいいだろ」
「…こんなところに来るなんて、思ってなかったから」
口を尖らせて、ぷいっとそっぽを向くそのしぐさは、若い頃と変わらない。
俺の前では、いくつになっても子供のような人だ。
26 :
希望2:2010/10/17(日) 11:04:14 ID:9Y+ZjkYWO
「ただいま」
「おかえりなさい」
傍に寄ると、手を差し出された。
出発前にも繋いだ、左手。
その手を取っていいのか迷っていると、彼が小首を傾げた。
「もう痛くないから大丈夫だぞ?」
「いや、そういうことじゃなくて…」
「そういうことじゃなくて?」
きょとんとした表情。
分かっていないはずはない。
俺が試されているんだ。
と、次の瞬間。
「じゃあ、こういうことか」
あの時のような、満面の笑みを浮かべて、彼は抱きついてきた。
「……」
「なんだよ、まだ不満?」
「不満はないけど…約束が…」
27 :
希望3:2010/10/17(日) 11:05:05 ID:9Y+ZjkYWO
出発前に交わした約束。
『絶対に勝つ』
その約束は、数年前と同じように、あと一歩というところで俺の手をすり抜けていった。
「約束守れなくて、ごめん」
あんなに期待させるようなことを言っておいたのに、守れなかった自分の不甲斐なさに悔しさが募る。
「……お前さ、俺が何て言ったか覚えてないだろ」
「覚えてるよ。『期待していいんだろうな』『絶対勝てるから』って」
「違う。その後だ」
射抜かれるような彼の視線。
記憶をたぐるが、どうしてもその後の言葉が出てこない。
「『無事に帰ってこい』って、言っただろ?」
28 :
希望4:2010/10/17(日) 11:05:59 ID:9Y+ZjkYWO
噛みしめるような、重みのある言葉。
その言葉に、はっと気付いた。
この世界にいる限り、勝つことは常に求められる。
しかし、それ以上に大切なこと。
「負けたら悔しいよ。負けた時の慰めなんて要らない。でもな、お前も相棒も無事に帰ってこられたんだ、これからの可能性はゼロじゃない」
「それは…」
「あの時のこと……俺は一生忘れられない。忘れようがないんだ」
29 :
希望5:2010/10/17(日) 11:10:40 ID:9Y+ZjkYWO
遠くの空を見つめる彼の目が、少し潤んでいるように見える。
それはこの世界にいる者の宿命ではあるが、あの時の彼の場合、宿命と呼ぶには有り余るほどの残酷な現実が待っていた。
「…気休め言うつもりはないけどさ、お前はお前の全力で戦ったんだろ?」
「も、勿論!」
「じゃあいいだろ」
再び差し出される左手。
彼の顔も、優しい表情に戻っていた。
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
いつものような笑顔の彼と、がっちり握手を交わす。
その力強い手に、俺は更なる飛躍を誓った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
前作への感想、ありがとうございました。
『彼』の『あの時』の話は実はよく知らなかったり、
こんな甘い世界でもないのは百も承知ですが、
かわいらしくて仕方ないこのコンビが早く復活するよう希望を込めて書いてみました。
前スレまだ書けるんだけどな。
>>30 スレの最大容量が500kbで前スレは多分495とかそこらだったよ
どれだけ短くてもネタ投稿なら2は使ってしまうから
多分もう限界だよ
感想とかの短いものなら少し書き込めるから
前スレの感想とかがあるなら
作品と感想一緒のスレだと見やすいし
レスしてきたら?
感想あると書き手さんも喜ぶと思うし
有効活用だよ
>>25 あの続きを読むことができて、姐さんの書く2人をまた見ることができて、凄く嬉しい!
「彼」さんが復帰して、俺さんと共に、更に東を盛り上げていくのを早くみたいな。そしてこの2人ならまたいつか同.着してくれると信じてる
そして「俺」さん今日はおめでとう…!
>>24 inセプ待ってましたGJ!仏朝は安らぐわ〜
ツンツン朝にちょっかいかけたくなるんですね、わかります
>>29 GJです!続きが読めて嬉しいです!
彼の復帰本当に心待ちにしてます。
俺さんは本当におめでとう!
これもまた何よりの嬉しい報告になったに違いない。
>>25 おおお続きキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! ありがたやありがたや〜
今日(もう昨日か)現地で勝利の瞬間をこの目で見届けてきた者としては感慨深いものが…(つД`)
本来ならあの子のパートナーとして同じ舞台に立ててたはずなのにね…
『俺』さんオメ!そして『彼』さんは一刻も早く復帰して、また同じ舞台で戦う姿を見たいです
>>19の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。全四回投下のうち二回目。
殿様は後半まで出番がなく、仙石が大変気の毒な目に合ってます。レイープ描写あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
思う様貪った最奥に欲を放った浪人は、身体を離し着衣を整えた。
ほぼ同時に達した真之介が床に吐き出した欲は、彼の着物の裾で乱暴に拭き取った。
そして息も絶え絶えな真之介を抱き起こし、最前まで自分がもたれていた柱に、縄で上体を括り付けた。
俯く顔を顎に手を添えて上向かせ、口端を染めた紅色をねろりと舐め上げた。
真之介は眉根を寄せて嫌悪を示したが、もはや逃れようとする気力も残ってはいなかった。
浪人は含み笑うとなおもぴちゃぴちゃと音を立て、唇や頬、首筋を舐めてなぶった。
その間真之介は目を閉じず、浪人を真っ向から見据えていた。
浪人も見返して楽しげに笑い、ますます熱い舌を這わせた。
からりと、障子が開けられた。
舌を離した浪人が振り返ると、仲間のふたりがこちらを眺めて意味ありげににやついていた。
「へへ、旦那、ずいぶんお楽しみのようで……」
「先生、そいつえらく具合がよさそうだったじゃねえですかい」
「ふん、確かに具合はいい。それが、どうした」
落ち着くまでは出歩くなと言われてるから俺達は女も買いに行けない、娘はまだ子供だし大事な品だ、
酒を呑んで憂さを晴らすしかないのに、浪人のみが極楽を味わってるのがどうもおもしろくない……。
などと代わる代わる愚痴をこぼしたふたりは、どかどかと部屋に入り込み、浪人と真之介の前に立った。
「貴様ら、男に興味はなかった筈だろう」
「まあねえ、今まで旦那が取っ捕まえた奴らときちゃあみんな……」
「おうよ、威勢がよかった奴も突っ込まれたら最後、ぎゃあぎゃあとみっともなく喚きやがって……俺達ゃそいつを聞いて、大笑いさ」
「ところがそいつぁ、腹が据わってんのか諦めがいいのか、始めにちっと騒いだだけで、後は全くおとなしいもんだ」
「先生が捕まえた奴らは大概男おぼこだったが、そいつは見かけに寄らねえ陰間野郎で、男を知ってるらしいじゃねえか」
「なんでも陰間の穴ってなぁ狭くって、女のより締まりがいいと聞くぜ」
「しかも泣き喚く面倒がねえとなりゃあ……おこぼれに預かりたくもなりまさあねえ」
身の毛がよだつような男達の会話を、真之介は無表情で聞いていた。
顔色を伺うように自分を見ながら、真之介にちらちらと目をやるふたりに、やがて浪人は頷いた。
「そうか。こいつに突っ込みたいなら、好きにするがいい」
「い、いいんですかい、旦那」
「ただし、一度っきりだ。俺の獲物に、何度も手を付けることは許さん」
「へへっ、一度で十分ですともさ。とりあえずの女代わりなんだからよう」
「よかろう。ただし俺は、ここにいるぞ。貴様らが無茶をして壊さんよう、あちらで見ているからな」
浪人はすっくと立ち上がり、ふたりを見下ろして冷ややかに告げた。
「ようがす、構いませんとも」
「おい、てめえ喜びな。俺達も、かわいがってやるからよ」
男達が投げ出されていた真之介の脚を掴んで開こうとした時、甲高い声がした。
「……だめっ!あんた達、またおじちゃんを、いじめる気ね!そんなこと、許さないからっ」
ふと目覚めた娘の目に入ったのは、かたわらの柱に縛られうなだれた『おじさん』の前に、あの恐ろしいふたりがいるところだった。
またこのおじさんを、叩いたり蹴ったりしていじめるつもりなんだと思い込み、声を振り絞り気丈に叫んだ。
思わぬ邪魔が入り、男達はいまいましげに舌打ちをした。
「うるせえぞ、この糞ガキっ」
「どうする、また気絶させちまうか」
「構うな、小娘は俺が見ておく」
「やだあっ、離して!おじちゃん、おじちゃあんっ」
なおも叫ぶ娘を手荒く引きずり、浪人は離れた壁際に腰を下ろした。
真之介はゆっくりと顔を上げ、浪人に怯える娘に優しく語りかけた。
「嬢ちゃん、お前、なんて名前だ」
「……さよ、小夜っていうのよ、おじちゃん」
「お小夜ちゃんか。いいかお小夜ちゃん、おじさんは、すごーく頑丈な身体の持ち主なんだ。ちょっとやそっと殴られたって、どうってこたない。心配するな」
「……そうなの?本当に、大丈夫なの」
「大丈夫だとも。さっきも言ったろ。絶対にお小夜ちゃんを、こいつらから助け出してやるからな」
「おきゃあがれ、この野郎!」
憤った熊が、真之介の横っ面を思いきり平手ではたいた。お小夜はきゃあっと悲鳴を上げ、また涙を流した。
頬を赤く腫らした真之介は殴った熊には目もくれず、胡座をかいた浪人を見やりまた口を開いた。
「おい、おめえに、頼みがあるんだが」
浪人はぴくりと片眉を上げ、おもしろそうに笑った。
「なんだ、言ってみろ」
「この子の耳を、塞いでやっててくれんか。俺がいたぶられるのを見ない為には目を閉じりゃすむが、縛られてちゃ耳は塞げねえからな」
真之介を気遣ういじらしいお小夜に、おぞましい光景も声も物音も、何一つ感じさせたくはなかった。
気の毒なこの娘をこれ以上怯えさせぬこと、それが自分に今出来る、唯一の施しだった。
「恐ろしさのあまり、万一この子の気がおかしくなりゃあ、てめえらの商いに障るぜ。そうじゃねえか?」
まっすぐ見つめる真之介に、浪人は頷いた。
「よかろう。おい、そこの手ぬぐいをこちらに寄越せ」
袴と共に床に落ちていた真之介の手ぬぐいを狐が拾って渡すと、浪人はそれをぴりりと引き裂き、細い布を二切れ作った。
それを丸めて娘の片耳に詰めるのを見ながら、真之介はまた話しかけた。
「いいかお小夜ちゃん、目をつぶって、何か好きな唄でも歌ってるんだ。何も怖いことはない、楽しいことを、考えるんだ」
「おじちゃん……」
両の耳を布が塞ぐと、真之介の声は聞こえなくなった。
浪人は娘の身体を、真之介のいる方とは逆に向けさせた。
お小夜は赤く腫らした目を閉じ、お地蔵様に助けを祈った。そして小さな声で、死んだ母親がよく歌ってくれた子守唄を歌い出した。
浪人が娘の耳を塞ぐまでおとなしく見ていた男達は、改めて真之介に向き直った。
大きく開かせた脚の間に胡座をかいて身体を割り込ませた狐が、まず真之介を犯した。
遠慮も気遣いもなく奥まで一気に貫かれ、真之介は刺激にのけ反って耐えた。
思い掛けぬ狭さと熱さに狐は興奮し、乱雑に突き入れて快楽を貪った。たちまち呆気なく達し、早さを嘲笑う熊に催促されて身体を離した。
熊がでかい図体に見合ったものを侵入させると、真之介は痛みに襲われた。
顔を逸らして目を閉じ、痛みを堪えて声を殺した。熊は歓声を上げながら、好き勝手に腰を引いては荒々しく突いた。
後ろにぴりぴりとした痛みを感じ、どうやら少し裂けたようだと真之介は思った。
しかし泣き言一つ漏らさず、歯を食いしばって責め苦が終わるのをひたすら待った。
どうせ逆らったってまた殴られ、結局は突っ込まれる。体力を少しでも残しておく為に、真之介は甘んじて凌辱を受けた。
狐は下品に笑いながら、苦しむ真之介と、着物の裾に隠れて再び屹立した彼の中心を、楽しげに見比べていた。
様子を眺めていた浪人が、ついっと立ち上がった。
刀を持ち足音も立てず歩み寄ると、抜き差しを繰り返す熊には目もくれず、真之介の横に膝をついた。
俯く前髪をぎりっと掴むと、無理矢理に顔を自分の方に向けさせた。真之介は浪人を見上げ、ぎらぎらと光る目で臆せず睨み付けた。
「……なんて目をしやがる。いくら痛め付けて、辱められ汚されようが、こいつの目は輝きを失っておらん。むしろますます、輝きを宿している」
浪人は誰にともなく呟くと顔を傾け、犯され続けている真之介の口を吸った。
やはり目を開けたままで、真之介は絡み付く舌の動きに耐えた。
目の前の淫らな光景にまたも高ぶった狐は、見つめながら自ら手淫に耽った。
熊が唸りを上げて達するまで浪人は口内をなぶった。満足した熊が萎えた肉塊を抜き去ると、その刺激で真之介はやっと達し、着物を汚した。
「さんぴん、その旦那はな、気に入った強い奴にぶち込んでさんざん味わってから、じっくりとなぶり殺すのが大好きなのよ」
「先生に比べりゃあ、俺達のいたぶりなんぞ、生優しいもんだぜ。まあせいぜい、うんとかわいがってもらいな」
捨て台詞を吐いて笑った男達が部屋を出ると、真之介は息を弾ませながら、弱々しい声で浪人に問うた。
「……お小夜は、どうしてる」
「ん?ああ、眠っちまったようだな」
向こうに見える小さな身体は静かに波を打ち、確かに眠ったようだった。
「そ、うか……そんなら、いい」
「お前、どこまでこの娘を気遣うんだ。それどころじゃなかろうに」
心底安堵した様子の真之介に、浪人は呆れた。
「俺の読みが浅かったせいで、その子は、捕まっちまった。どうあっても、逃がしてやる」
「俺達を、ぶっ殺してか」
「もちろんだ。よっく覚えてやがれ、この外道がっ」
不敵に微笑む真之介を見て、浪人は実に愉快そうに笑い声を上げた。
「全くたまらんな。楽しい奴だ、お前は。いいさ、楽しみにしておこう……その目の輝きを、俺がずたずたに引き裂いてやる時をな」
耳元に触れる程に唇を寄せ囁くと、浪人は立ち上がり、真之介を置いて出て行った。
取り残された真之介を、急激に猛烈な眠気が襲った。がくりと頭を垂らし目を閉じた脳裏に、兵四郎の笑顔がよぎった。
やがて真之介は娘と同じように、深い眠りに落ちた。
障子から射し込む光の眩しさに、真之介は目を覚ました。
殴られいたぶられた疲労から寝過ごしたようで、とっくに朝は過ぎて昼間の明るさになっていた。
そうなると、閉じ込められている仏堂の様子がよくわかった。
荒れ果てて障子は破れ、祭壇を始めあちこちに蜘蛛の巣が張り、床は埃をかぶっていた。
うぅん、とうなされる声を耳にした真之介は、離れた場所に眠る娘が弱ってはいないかと心配になった。
呼びかけようとして耳が塞がれたままだと気付き、重い脚を持ち上げて、どんどんと床を踵で打ち鳴らした。
振動に起こされた娘は真之介に気付き、頭をぶんぶんと振って耳の布を落とした。
「起きたか、お小夜ちゃん。寒くないか?風邪ひいたりしてないか」
「平気よ、おじちゃん。あたし寒いのには強いんだから。おじちゃんこそ、大丈夫なの?」
「うん。この通り、ぴんぴんしてるぞ」
肩の傷はまだじくじくと痛み、殴られた身体は鈍痛と熱を発して怠かったが、真之介は努めて笑顔を作り虚勢を張った。
「よかったぁ。ねえ、ここどこだかわかる?」
「んー、わからんなあ。どっかの寺には違いねえが」
荒れ寺は、お小夜にも馴染みのない場所のようだった。
話しながら真之介は、隣にいるだろう浪人の気配をまざまざと感じ取っていた。
真之介は柱に巻き付けられ、お小夜は腕と脚を固く縛られ、逃げ出すことは容易ではなかった。
辺りは静まり返っていて、山の中だろうと思われた。
助けが来る望みも万に一つだろうが、真之介には少しばかり希望があった。
兵四郎達とは、あの坂の下の宿場で落ち合う予定だった。
逃げたおたみが無事宿場までたどり着き、騒ぎが広まったなら、兵四郎が近くにいればその耳に入る筈だ。
お小夜達は身なりからすると、そこそこ裕福な商家の娘であるに違いない。
男達の口ぶりからすると、奴らはしばらくこの寺に留まるつもりらしい。大掛かりな捜索が行われたなら、なんとか探し当ててもらえるかもしれないと、真之介は考えた。
ふと顔を上げると、お小夜が髪に挿した簪が目に入った。
少女には大人っぽすぎるような見事な銀細工の品で、そぐわなさが気になった真之介はお小夜に尋ねた。
「お小夜ちゃん、ずいぶんと大人びた簪をしているが、そいつには何かいわくがあるのかい」
「これ?おっかさんの、形見なの」
「……そうか、おっかさんは亡くなったのか」
「うん。でも新しいおっかさんがいるわ。妹もおとっつぁんもいるし、ちっとも寂しかないわ」
例え自分はどうなろうと、この娘だけは親元に返してやらねばならない。健気に笑うお小夜を見て、真之介は改めて心に誓った。
「起きてるな、飯だ」
襖が開かれ、竹皮の包みと竹筒を持った浪人が姿を見せた。
娘の前に座り、上体を起こさせて包みを開き、口元に大きな握り飯を差し出した。
お小夜は顔をしかめて逸らし、真之介を見やった。
「お小夜ちゃん、食うんだ。腹が減っては、戦が出来んぞ」
真之介の言葉にお小夜は、握り飯をじっと見つめてからかぶりついた。竹筒から水も与えてやりながら、浪人は真之介に告げた。
「娘が済んだら、お前にも食わせてやる。飯も水も、日に一度しかやらんがな。死なせん為と、小用の手間を省く為だ」
「そりゃありがたいが、まだ俺を生かしておく気なのか。今のうちに殺した方が、後々身の為かもしれんぞ」
「まだだ。もう少し俺が、楽しんでからだ」
凄みと艶を混ぜた視線を浴びせられ、この変態野郎がっ、と真之介は心中で悪態をついた。
浪人はお小夜の足の縄を解くと、隣を覗いて狐に声をかけた。
「娘を小用に連れて行け。逃がしたら許さんぞ」
不安そうな顔で引かれていく娘を、真之介は笑顔で見送った。浪人は真之介にも握り飯を与えた。
「お前は食ったら、その竹筒でしろ。そのまま捨てる」
「ほおお。至れり尽くせりで、けっこうなこった」
「お前は俺の、大事なおもちゃだ。下の世話くらい、どうということはない」
皮肉に涼しい顔をして答えた浪人をいまいましく思いつつ、真之介は握り飯を平らげた。
障子を開けて竹筒を投げ捨てると、浪人は真之介の前に座り直した。
自分が刺した肩の傷を撫でると、真之介に尋ねた。
「まだ、痛むか」
「ああ、ちょっとはな」
そうか、と呟くと、いきなり傷にぎりっと爪を立てた。
「ぐっ……ああぁっ!」
「……いい顔だ」
「ふうっ、て、てめえ、何しやがる!」
「悪いな。痛みや恥辱に耐えるお前の顔に、俺はたまらなくそそられるのだ」
「こ、このっ、気違い野郎がっ!」
「その気違いに、お前はまた抱かれるのさ」
浅くはない刺し傷に刺激を与えられ、真之介は痛みに目に涙を浮かべて浪人をなじった。
浪人は笑うと真之介の首筋に顔を埋め、唇で強く吸い上げた。
強引に開かせた脚を胡座の膝に抱え、右手は剥き出しの中心と後ろの口をねっとりと撫で上げた。
傷をえぐられて腹を立てた真之介は、我慢を忘れて浪人を怒鳴りつけた。
「い、いい加減にしろこの、畜生が!やめ、やめろっ」
「と言われても、他にすることもないのでな。せいぜい、お前も楽しめ」
「く、くそっ、ぶ、ぶっ殺してやる……あ、うあっ!」
昨夜の残滓が中を潤しており、真之介はいともたやすく浪人に貫かれた。
ぐぷぐぷと湿った音を立てる秘所を、笑いながら浪人は犯した。
突き上げながら乳首や真之介自身をいじり、快楽と屈辱に悶える様を愛でて更に感じ入っているようだった。
この場にお小夜がいないことだけが、真之介にとって唯一の救いだった。
好き放題に真之介を弄び満足すると、浪人は部屋を出て行った。
浪人の命令で、ことが済むまで遠ざけられていたらしいお小夜は、仏堂に帰ると真之介の横に座り込んだ。
「おじちゃんの側にいさせて。それくらいいいでしょ、あんたに、あたしの簪あげたんだから」
きんきんとまくし立てられた狐は、勝手にしろと苦々しげに吐き捨て、お小夜の脚をまた縛った。
狐が隣の部屋に引っ込むと、銀の簪がなくなった頭を見やりながら、真之介は尋ねた。
「あいつにおっかさんの形見、取られちまったのか」
「そうなの。ほんっと、意地汚いわよねえ。掠った娘の上前をはねるなんて」
お小夜は小声で毒づき、こんな状況でも口の減らないたくましさに、真之介は笑った。
お小夜は身体をずらすと柱に自分も縋り、真之介のぴたりと寄り添った。
「おじちゃん、おむすび食べたらまた、眠くなっちゃった。こうして寝てもいい?」
襖が開け放たれた隣室を伺いながら、甘えた声で真之介にねだった。
隣では暇を持て余した狐と熊が、酒を呑んだ茶碗でサイコロ博打に興じ、浪人は腕を枕に横になり目を閉じていた。
「いいとも、ゆっくり眠るといいさ」
答えた真之介の縛られた手に、お小夜が後ろ手に持った物を押し付けてきた。
心中で驚き視線だけで娘を見やると、黙ったままじっと見返してきた。それからふあぁ、とあくびをして、真之介にもたれかかった。
「おやすみ、おじちゃん」
「ああ、おやすみ、お小夜ちゃん」
手渡された物をぎゅっと握りしめた真之介は、この娘はたいした女傑だと感心した。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回に続きます。
>>43 あああ!わっふるわっふる!
どんな状況に陥っても仙石は仙石らしくって男前で萌える
でも早く助けに来て殿様ー とたこw
こんな時間に!
楽しく読んだよー萌える!
仙石らしさといい展開といい
なんだからこんな話しがテレビ放映にあった気がしてきたw
>>36 GJ!エロいだけじゃなく、ストーリー展開もおもしろいです。
なんか、センゴクやトノサマがというより、
作者自身がやさしい人なんじゃないかという気がします。
悪人も憎めない感じだし、個人的には、痛そうな描写があまりないのが嬉しい。
続き楽しみにしてます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )某スタイリッシュ戦国ゲェムの紫×緑でつ。多分10分割ギリギリ。
昨日の雨が嘘みたいに秋麗らかな昼下がり。
無造作に目の前に出されたのは菊の花。
そして次の瞬間にはぴしゃりと言い切られた。
「飲め。」
何をいきなり言い出すのか。俺には全くわからない。
お宝目当てに他所の国で暴れて、結局帰ってきたのは一週間前。
今回の遠征は予想外の嵐に遭ったこともあり、こっちの完敗。それでも即行でケツ捲って逃げたこともあり、
国の取った取られたもなく、うやむやの内に事は済んだ。ただしツケとして俺はそれなりに
大きな怪我をした。今すぐ命かどうこうという代物ではないが、やはり痛いものは痛い。
それに無理して後遺症なんて話になれば、それこそ厄介だ。
俺は大人しく包帯でぐるぐる巻きにされ、布団に潜り込んでいた。
そんなある日の朝一に、お客がやってきた。
48 :
紫緑2:2010/10/18(月) 17:38:55 ID:rfQz9ia3O
「……貴様、何をしておる。」
海を挟んだ、中国の雄。深草色の衣を纏った男は、渋いくて渋くて仕方無いというような顔をしていた。
元々そう表情が変わらない奴が、こんな顔をするなんて珍しい。
「何だよ、何かマズイもんでも喰ったか?」
「質問に答えよ。」
偉く機嫌が悪いそいつは敷居を跨ぐことなく、縁側に立ったままだ。おれば頭をボリボリ掻いてみる。
「んだよ、寝てるだけだろ。いいじゃねえか。」
俺がひらひらと手を振ると、渋い顔へ更に皺を寄せる。その眉間を見たら、栗の渋皮を思い出した。
そして一通り俺を眺めると、すたすたとどこかに行ってしまった。
「何なんだよ、一体…」
訳もわからず布団に潜り込んだまま、ブツブツと文句をいう。
俺は何も悪くないはず。何もしない内にアイツが勝手に臍曲げて行っちまったんだ。
ん?そういや何でアイツは四国になんかいるんだ?手紙も使者も来てないはず。
49 :
紫緑3:2010/10/18(月) 17:40:42 ID:rfQz9ia3O
アイツらしくはない。
そんなことを考えていたら、二刻なんてあっという間に過ぎた。
小鳥の囀りが聞こえるなか、また静かな足音が聞こえてきた。
足音の主はやっぱりアイツで、そしていきなり出されたのだ。菊の花を。
「飲めって…何だよコレ。」
「黙れ。賊ごときが我に口答えするな。」
あんまりにも不条理な命令に、思わず眉をしかめる。いつも無礼千万な男だと
知ってたし、そんなとこも可愛いなんて思っていたが、ここまで不可解な要求を突きつけて
くるなんて流石に一言二言言いたくなる。
「いやいや、訳わかんねえよ。こりゃ花だぞ。飲めとか何の冗談だよ。
理由を言えよ、理由を。」
「うるさい。いいから飲め。貴様ごとき間抜けが故を知る必要はない。」
「ひでぇ言い種だな、おい。こちとら手負いなんだ。労れよ。」
50 :
紫緑4:2010/10/18(月) 17:41:44 ID:rfQz9ia3O
その一言がよくなかったらしい。俺はいきなり菊を投げつけられた。
花は雨に降られていたせいか、花弁は露をたっぷり含ませていたらしい。
べしゃっという音とともに俺の額に叩き付けられると、頭に巻かれた包帯を濡らした。
「死に損ないが。」
散々暴言を吐いて、深草の男は帰っていった。
何でこんな目に遭わなくてはならないのか。
俺にはちっともわからない。仕方無いので投げ付けられた菊を、枕元の水桶にさしてやる。
別に熱はないが、「何となくそれっぽいじゃないっすか。」と子分が置いていったやつだ。
いきなり訳のわからない男に手折られて、いい加減な理由で置かれた水桶に活けられるなんて
この花も俺と同じく、熟運がないと、俺はちょっぴり同情した。
その後来た野郎共に聞くと、勝手にやって来て、勝手に不機嫌になった男は、
これまた勝手に海の向こうに帰ったらしい。
まあ礼儀を尽くせなんていう気は更々ないが、せめて帰るときくらい何か言っても
罰は当たらないんじゃないか。一応それなりに深い仲なんだし、と付け加えながら俺は
頭の包帯を巻き直しつつ考えた。
51 :
紫緑5:2010/10/18(月) 17:42:46 ID:rfQz9ia3O
結局アレはなんだったのか。一人で考えても埒があかなかったので野郎共にも聞いてみた。
勿論具体的に話せばアイツの逆鱗に触れるのは目に見えているから、然り気無く暈して話してみたが、
野郎共の話は論点すらあっちこっちに飛んでいき、埒があくどころか更なる迷路に迷った。
三人よれば文殊の知恵というが、アレは嘘だったか。それともアイツの言うように俺達は
救いようのない馬鹿なのか。そこまで考えると少しへこんだ。
もう考えるのはやめよう。今日は考え過ぎて頭が痛い。俺は布団を頭から被った。
52 :
紫緑6:2010/10/18(月) 17:43:58 ID:rfQz9ia3O
あれから半月。
傷は随分良くなったが、床についていると周りが政務を殆どこなしてくれることに気付いた俺は、
まだ傷が痛むと積極的に病床に臥せっていた。そのせいか、家臣の一人が慰めにと琵琶法師を呼び寄せた。
何でも京のさる高貴な家の出の人物らしい。正直興味はあまりないが、暇なのは事実なので
その法師の語りを聞くことにした。
琵琶法師はなるほど確かに上品な雰囲気で、閉じられた瞼に傷がある以外、端正な顔立ちをしていた。
高貴な家の出というのは本当かもしれない。曲目は何だかわからなかったが、この法師の琵琶なら
命を持った物の怪になって、羅城門を彷徨いていてもおかしくないと思った。
まあ、羅城門なんて見たことないんだが。
弾き語りが終わり、法師と話す席が設けられた。といっても適当に世間話するだけだ。
しかも俺は布団に入ったままで、非常に砕けた場だった。いくらか話をした後、法師に目の傷について
聞いたら京も諍が絶えませんのでとだけ言って微笑んでいた。
ただそれだけだったが、俺はこの法師はそれなりに色々あった人間なのだと感じた。
53 :
紫緑7:2010/10/18(月) 17:45:11 ID:rfQz9ia3O
そうこうしている内にふと、俺はこの前のことを思い出した。菊の花の件だ。
どうも野郎共と俺では知恵が足りないらしい。ならば他力本願で文殊の教えを修める人間に
知恵を借りるが吉だ。
例によって子細は暈して話をした。こういう諸国を回る人間相手だと、いつ誰にどんな話をされるか
わかったもんじゃない。
万が一俺が相談なんてしたとアイツの耳に入れば、もう二度と顔すら会わせてもらえないだろう。
それは絶対だめだ。俺の心が折れちまう。
細心の注意を払い、どういうことかと法師に尋ねてみた。すると法師はきょとんとした後、
クスクス笑いだした。
「その方は、風流というか、素直でないというか…」
やはり意味がわからない。
「笑うなよ。こっちは真剣に悩んでるんだ。」
「これは失礼いたしました。しかしそう怒られますな。彼の御人は彼の御人なりに、
貴方様を御気遣いなされたのでしょうから。」
法師は微笑んだまま、淀みなく話してくれた。俺はそれを口を開けたまま、ただただ聞いていた。
一通り話を終えると、法師はきれいに剃り上げた頭を下げる。
「夜も随分と更けてございます。その御方の御心遣い、努々無下になさいますな。どうぞ御自愛
召さますよう。」
54 :
紫緑8:2010/10/18(月) 17:46:35 ID:rfQz9ia3O
それだけ言うと、法師は上臈に添われて客間へと下がって行った。
一人残された俺は灯明の火を暫く眺めていたが、さっき聞かされた話を思い出すと、
早速火を落として布団に潜り込んだ。
また雨が降った。
怪我はほぼ治り、錨槍もいつも通り振るえるようになった。
俺は雨が止むのを待って、庭先に出てみた。
そこにはいくつか花が咲いていて、やっぱり菊の花も咲いていた。
飲めと差し出されたものと少し形が違う気もしたが、菊は菊なんだからいいだろう。
俺はその内一本をぽきりと折った。が、折れはしたが茎は繋がったまま。折り取ることができない。
何とかしようと難儀しながら、アイツもこんな風に骨を折ってあの菊を摘んだのかと思うと
自然と胸が温かくなった。
手こずりながらも漸く手に収まった一輪の菊。あの時みたいに、花弁が露で濡れている。
俺は徐にそれに口を近付けた。
55 :
紫緑9:2010/10/18(月) 17:47:27 ID:rfQz9ia3O
――菊の露は、不老長寿の妙薬にございます。
法師の言葉を思い出しながら、俺は露を啜った。
――歌など嗜まれる方なのでしょう。
冷たい露が唇を濡らす。
――貴方様の御怪我を御覧になって、いてもたってもいられなかったのでございましょう。
露は甘くも辛くもなく、妙薬にしては味気なかった。
そうなると何となく口寂しくなり、今度は花弁を一枚唇で千切り、そのままもぐもぐと食べてみた。
今度は苦い。ということは良薬なのかもしれない。自分でも馬鹿みたいだと思いながら、
俺は菊の花弁を噛み続けた。
(アイツ、渋い顔してたなあ。)
あれ以来使者も文も届かない。こっちからも出しそびれたまま、今に至る。
アイツはまだ眉間に渋皮を貼り付けたままなんだろうか。
(一応、心配してくれたんだよな。)
56 :
紫緑10:2010/10/18(月) 17:53:09 ID:rfQz9ia3O
回りくどくて、一方的で、恐ろしいほど理不尽な心配の仕方だと苦笑した。
けどあの不器用で、臆病で、素直じゃない男が見せてくれた精一杯の気持ちなんだと思ったら、
苦笑もただのでれでれした笑顔に変わっていった。
「…会いてぇなあ。」
会って抱き締めたい。多分怒鳴られるけど。
それで出来たら口付けたい。多分殴られるけど。
それからありがとうって言いたい。多分顔を真っ赤にするだろうけど。
「……会いに行くか。」
もう味なんてしなくなった菊の花弁を飲み込むと、俺は文を書くため部屋に戻った。
使いを立てないとアイツがまた怒るから、適当でも知らせをやらないとならない。
内容なんて会いに行くの一言でいい。
差し当たっての懸案事項はどんな土産でご機嫌をとるかだ。
「どうすっかなぁ〜。」
空高い秋晴れの日。俺は空を仰ぎながらひとりごちた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
驍宗×泰麒、続きです。
注意)微グロ・驍宗様鬼畜注意。捏造次王注意。
……エロが書けない。ガクリ。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
あさましい夢に囚われていた。
夢を見ることなどほとんどなかった自分が、その夢を見るようになったのは十年程前からだった。
いつも夢は、あの大乱の中での麒麟との再会から始まる。
『……遅くなってしまい、申し訳ありません』
そう言って目前に叩頭した少年の服は、返り血と少年自身の血で斑に赤黒く染まっていた。
血と汗に濡れた鋼色の髪に、その少年が己の麒麟だと知る。
『蒿里……』
万感の思いを込めて己が麒麟に与えた名を呼ぶと、少年は顔を上げる。
あの再会の日、呼びかけに応じて上げた少年の顔は、白い頬を涙に濡らしてはいたが、
それでも再会の歓喜に笑っていた。
だが、目の前で顔を上げた少年の顔には、深い悲嘆と絶望が浮かぶばかり。
何より、白い肌を侵す、青痣のような無数の斑。――失道の病の症状。
(何故だ!何故、蒿里が失道の病にかかる!?)
言葉もない己を見上げて、少年は喘ぐように言葉を継ぐ。
『驍宗様、どうかこれ以上はお許しを。戴の民を皆殺しにするおつもりですか?』
見回せば、阿撰の牢にいたはずの自分は、いつの間にか白圭宮の玉座に座っていた。
玉座の階下には獣に食い荒らされたような無残な死体がいくつも転がっている。
見知った官の死体だ。麒麟が浴びた血は、この官達のものだったのだ。
『そのつもりだが』
冷酷な声が、勝手に喉を突いて出る。自分のものでは無い言葉に、なぜか奇妙な高揚感があった。
『蒿里、お前はどちらに賭ける?お前が死ぬのと、傲濫が民を殺し尽くすのと、どちらが早いか?』
自分のものとも思えぬ哄笑が、二人きりの正殿に響き渡った。
「……驍宗様、驍宗様!どうなさったのですか!?」
揺り動かす力に、驍宗ははっと飛び起きた。
心配そうに見つめる麒麟の顔が目の前にあった。
「……蒿里」
白い頬に手を伸ばす。その頬にシミ一つないのを確認して、ようやく息を吐く。
泰麒が気遣わしげに背中を撫でながら言った。
「酷く魘されておいででした。大丈夫ですか?」
「……何、少し夢見が悪かっただけだ」
言って驍宗は立ち上がる。乱れた衣服を手早く改め、臥室を出ようとする。
「驍宗様?」
慌てて後に従おうとした麒麟を、驍宗は制す。
「まだ時間がある、お前は寝ていなさい」
室内はもう暗くはないが、明るさから言って、まだ朝儀の時間までは随分間があった。
釈然としない表情ながら、大人しく指示に従う麒麟に、驍宗は言った。
「蒿里、私は何か言ったか?」
「いえ、何も……」
漆黒の瞳を見返したが、心配そうな色を湛えているばかりで、嘘を言っている様子はない。
そうか、とだけ言って視線をそらし、そのまま驍宗は麒麟の私室を後にした。
その日以来、驍宗は時折、似たような悪夢に魘されるようになった。
魘されて何か口走り、それを泰麒に聞かれるのが恐ろしく、身体を重ねても朝まで
共に過ごすことは絶えた。泰麒は物言いたげな顔をしたが、何も言わなかった。
主がゆっくり休める方が良いと考えたのかもしれない。
そうして、その夢は驍宗を人知れず悩ませ続けた。
内容は都度異なったが、どれも麒麟に恐ろしい命令を下して哂う、病んだ自分の夢。
それが、何年後、何十年後の自分の姿でないと断言できないことが、驍宗には恐ろしかった。
『驍宗様は、お腹が空いていらっしゃるから』
それははるか昔、臥信に「腹を空かせた虎のようだ」と評されたことに由来する蒿里の口癖だった。
幼い頃には花を、あるいは菓子を手に休息を勧めに来ては、戯れのように口ずさんでいた
その言葉が、性的な匂いを帯びるようになったのはいつからだろう。
再会から半年後のその夜、蒿里の臥室を訪れたのは、見舞いの為。
前日まで蒿里は多忙な主に代わり、雁から輸入した麦を各州の義倉に配分する輸送隊の護衛に
飛び回っていたのだが、任が終わって帰ってくるなり、そのまま寝込んでしまった。
黄医は穢瘁の病だと診断した。
『蒿里、なぜもっと早くに戻って来なかった?』
臥室の中、身を起した蒿里の枕辺に座って問いかけると、申し訳ありません、と病人は頭を下げる。
かつてなら、頬を撫でて病を労わったに違いないが、還ってきた麒麟は華奢な美しい少年の姿で
成獣になっていた。どこか影のある色気があって、手を伸ばすことは躊躇われた。
それでただ、言葉をかけた。
『無理をして何かあったらどうする。義倉も使令も大事だが、少しは自重せよ』
今回の任に就くこと麒麟が固執した理由が、未だ出没する妖魔の脅威と、使令の少なさだった。
当時は氾王に鴻溶鏡を借り、二つに裂いた傲濫の一方を王の、もう一方を麒麟の守護としていた。
傲濫は裂いても十分に強かったが、数の少なさは補いきれぬ。
妖魔から輸送隊を護る護衛ができ、使令も確保できる。一石二鳥の任だと熱弁する蒿里に折れて
任せたが、三か月ぶりに見る麒麟の顔はすっかり窶れ果てていて、やはり許可するべきでは
無かったと思わずにはいられなかった。
蒿里はもう一度陳謝してから、言葉を継ぐ。
『でも、後悔はしていません。一人の犠牲もなく義倉を満杯にできましたし、
使令も増やすことができました。これで、傲濫も1つに戻してやれます』
そう凛として言う麒麟に、頼りない幼子の面影は薄い。
成長を頼もしく思う一方で、驍宗はもどかしさを感じずにはいられなかった。
『……蒿里。重ねて言うが、無理はするな。お前は私の側にいるだけで、十分役目を
果たしているのだから。――それとも、そんなに私の側にいるのは嫌か?』
麒麟は驚いたように主の顔を見上げた。
『嫌だなんて!そんなことありません』
『ではなぜ、こうも宮を空ける?玉座を取り戻すまでについては、私の力が及ばぬばかりに、
お前には酷い苦労を強いたが、もう宰輔の務めに専念してもよかろう』
麒麟は俯き、絞り出すような声で言った。
『僕だって、本当は驍宗様のお側にいたいです。この三月、毎日白圭宮に
帰りたくて帰りたくて仕方ありませんでした。――でも』
麒麟の言いたいことは分かっているつもりだった。記憶を失っていた長い時間。
その間の犠牲に麒麟は深い罪悪感を抱いている。
だから、皆まで言わさず、有無を言わさぬ口調で命じた。
『であれば、当分宮を、――いや、黄医の許しが出るまでは正寝を出ることも許さぬ。
私の護衛を除く使令全部も、だ。――よいな』
臥室の布団を睨んで言うと、諾、と聞きなれぬ声で返答があった。
『驍宗様』
不満げな声に、低く囁いた。
『お前まで性急になってどうする。時間はある。急くな』
『僕は……』
言いかけて顔を伏せ、沈黙した麒麟に溜息をつく。逡巡した揚句に言ってみた。
『再会してからもう随分経つのに、お前は一度も虎に餌をくれぬな。昔は食事を一緒にしたい、
茶を飲もうと良く私の部屋を訪れ誘ってくれたものなのに』
それは本音だった。王の私室と麒麟の私室はかつてと同じく、共に正寝の中。
目と鼻の先というのに、麒麟が王の私室を訪問することは絶えていた。
――まるで主の気の迷いを見透かしたように。
愚痴のような主の言葉に、蒿里が顔を上げた。目には涙が浮かんでいた。
『……驍宗様だって、一度も僕に触れては下さらないではありませんか』
言ってから、恥じ入ったように再び俯く。
予想外の言葉に絶句した己に対し、麒麟は首を振って独り言のように言葉を継いだ。
『分かってるんです。僕の被害妄想だってことは。僕はもう子供じゃないんだから、
当たり前なんだってことも。でも、僕には……驍宗様も僕に怒っておられるように思えて。
七年も無駄にしておいて、今再び驍宗様にお仕えできるのに、これ以上何を求めるのかと。
だから、そんな自分が嫌で……』
――手を伸ばしたら、きっと、そのまま手折ってしまう。
分かっていたからこそ、今まで手を伸ばすのを躊躇っていたというのに、言葉より先に、
手を伸ばしてしまったのは、結局のところ、単に私がどうしようもなく飢えていたからだ。
あの時、蒿里が求めていたのは、肉体関係ではなかった。
そんなことは分かり切っていたのに、私は気づかぬふりをして、蒿里の身体を求めたのだ。
あの日以来、蒿里を抱くようになった。
最初は苦痛の悲鳴を上げていた麒麟も、すぐに快楽を覚え、己が求めるように艶やかに
喘ぐように変わっていった。そうして、いつの日からか、あの言葉と共に、自分から身体を差し出す
ようになった。強張っていた主従の関係も穏やかになっていった。
だが最近、ふとした瞬間に、別の感情が湧いてくるのだ。
麒麟の蒿里が、王である自分を愛するのは当然。王が求めれば拒めるはずもない。
なら、どこまで主に対する愛情を捨てずにいられるか、試してみたいと。
私はとっくに、治世には飽いている。
飽いた虎は、蒿里にもっと甘美な、恐ろしい餌を望むようになっていた。
(――寒い。)
吹き込んできた凍てつく冷気に、泰麒は目を覚ます。
幸せで温かな夢を見た気がするが、内容は思い出せなかった。
(きっと、驍宗様の夢なのに)
夢の残滓を求めて、傍らの暖かな羽毛に頬を埋め、身体を寄せた――温かい。
あまりの心地よさに再び眠ってしまい衝動に駆られたが、意を決して身体を起こす。
巨きな鳥の翼に積もった雪が、顔を出した動きに合わせて、音を立てて落ちた。
周囲を見渡せば、一面の銀世界が眩しい。
頭上の野木も雪が深く積もり、まるで白い葉を茂らせたよう。
――本格的な冬が来てしまった。
「泰麒、眠れたか?」
傲濫の声がした。
「うん。おかげですごく温かかった。ありがとう。――さ、行こう」
冢宰と六官長宛にごく短い手紙を書き残し、宮を飛び出した。
それ以来、ひとつひとつ里を街を駆け回る日々が続いている。
麒麟が宿を取ろうものなら大騒ぎになるのは分かり切っていたので、こうやって野木の下で
獣の姿のまま、傲濫に寄り添って夜を過ごす。
正真正銘の野良麒麟だなと思うと、ちょっと可笑しい。
瑞州、委州、承州を虱潰しに巡り、文州に入った頃には、国土は白一色。
二百年程前から文州の特産となった陶磁器を焼く窯の煙を頼りに、街や里を訪ね回って。
――そして、とうとう見つけた。
陶磁器を焼く窯の細い煙を見つけ、なんとなく惹かれて訪れた名も知らぬ里、そこに王はいた。
せっせと轆轤で器を作る男を上空から遠く見止めた瞬間、分かってしまったのだ。
この人だ、と。
厚い褞袍を着、頭と顔に布を巻いているので、顔も年格好も定かでない。
そのまま男の元に舞い降りようとしたが、ふと我に返り泰麒は踵を返す。
丸ひと月以上、獣の姿のまま放浪していた。
おかげで鬣も五色の毛並みもすっかり泥と砂埃に汚れ、元の美しさは見る影もない。
――王に迎えに行くのに、さすがにこの汚さは失礼すぎる。
適当な廃坑で湧水を探して沐浴し、身体を清めてから、汕子に預けていた衣服を纏い、里に向った。
里に入る前に使令から降り、さくさく雪を踏んでその場所を訪なうと、その者は先刻と変わらず
黙々と轆轤に向っていた。他の者は屋内で作業しているのだろう。周囲にはだれもいない。
そもそも、この寒さの中、外で作業している方がおかしいのだが、何故かその者の周囲だけ、
春の暖かい空気が漂っているような印象があって、あまり不自然さを感じなかった。
これが、新しい王の王気なのかと思うと、知らず涙が零れた。
――驍宗様とは、全然違う気配。なのに、どうしようもなく慕わしい。
近づく足音にその者が顔を上げた。
「どなたですか?」
30歳になるかならないか。布から覗く髪は灰色と赤茶色が混じる。
落ち着いた優しい声の男だった。
「お邪魔してすみません。旅の者です。あの、どうしてこんなところで作業されているんです?」
青年は笑う。
「あっちは大勢が回してるから煩くて。集中できないから」
傍まで寄ると、青年は訊く。
「こんな時期に旅の方がなんでまた?ここの陶器はそんな有名じゃないのに」
笑った青年の目が、先刻から一度も開かれていないことに、泰麒はようやく気付いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えました。すいません。
64 :
1/2:2010/10/19(火) 00:33:08 ID:3qG3mdHF0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )急に男前受けが書きたくなったので
「待てよ!」
駆け出そうとする幼なじみの腕を掴む。
「痛いって」
「返事、聞かせろよ。コータ、お前が最初に言い出したんだぞ」
そうだ。俺はずっとこの馬鹿面が好きで好きでどうしようもなかったのに、しかたなく自分の気持ちを押し殺していたのだ。親友だから。男同士だから。
それなのにこの馬鹿は酔っぱらったあげくに自分なんかピエロで俺の引き立て役で一生恋人なんかできない、責任を取れ、と迫って来たのだ。
「酔ってて覚えてねえんならもう一回言ってやる。俺もお前が好きだ。お前の恋人になってやる。」
馬鹿は今まで見た事が無いくらい顔を赤くしている。
「お、お前……俺もって何…ばっかじゃねーの、いつもそんな強引なのかよ」
「知らん。告白なんて生まれて初めてだ」
「うわー王子様は流石ですネー」
「茶化すな!」
腕を握る手に力が入るが、気遣ってやる余裕が無い。こいつはすぐに自分を卑屈な笑いで誤摩化そうとする。だが今回だけは逃がす訳には行かない。
「なに、お前マジ腕痛いって…なんで、そんな必死なの」
「必死にもなるだろ、何年越しの片思いだと思ってるんだ」
馬鹿の顔が歪む。あ、泣く。
「だって…そんなん信じられる訳ねぇし、俺なんかが何でお前みてーのに…」
「俺の好きな奴を『なんか』って言うな」
65 :
2/2:2010/10/19(火) 00:34:01 ID:3qG3mdHF0
本格的に泣き出した奴を抱き寄せる。泣いたこいつを慰めるのはいつも俺だ。
そーすけ、と俺の名前を呼ぶくぐもった声と肩に滲む熱い涙に少し余裕を取り戻し、こいつ専用の優しい声で言う。
「お前の心配事を全部無くしてやるよ」
「な、何言って、」
「俺はお前の駄目な所を全部知ってるから幻滅なんかするはずない。お前がずっと好きだったから他の人と付き合った事はない。全部噂だ。」
ずる、と籠った音がする。こいつ、鼻水拭きやがった。
「お前が痛いの嫌いだってのも知ってるから突っ込むのはお前でいい」
は、どうしようもなく間抜けな面で俺を見る。しょうがねえな、と苦笑しながら汗やら涙やらで張り付いた前髪を梳いてやる。
「え、何、なんかそんな具体的な、話に、なんでなってんの」
「は?お前俺の事好きだろ」
「え、うん、好きだけど」
言った。言わせてやった。心の中で高らかに腕を上げる。馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、こいつこんな阿呆で生きていけるのだろうか。まあいい、俺が守ってやれば。
「え、あ、ちょ、そーすけ、今の無し!無し!」
「いいぜ、何回でも言えよ」
口を金魚みたいにぱくぱくさせているのがどうにも間抜けで、可愛いので、キスをした。
「ば、馬鹿ソー!」
「愛してるぜ、コータ!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )こりゃ襲われ攻めだな
>>64 襲われ攻めって言葉がしっくりきすぎるw
押し倒されてアワアワしてるコータの姿が見える気がする
GJ!何かほっこりしました
>>43の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。全四回投下のうち三回目。暴力描写あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
暗くなった仏堂で、お小夜は真之介の膝に頭を乗せてすやすやと眠っていた。真之介もうつらうつらとしていたが、鋭く向けられた殺気を感じて、かっと目を開いた。
夜目をこらすと、闇の中に浪人がうっそりと立っていた。
どすどすと足音がして、お小夜も目を覚ました。熊と狐が提灯を手に部屋に入ってくると、浪人は目で合図し祭壇の蝋燭に火を移させた。
ぼうっと薄明るくなった室内を見渡し、真之介は浪人に問うた。
「こんな夜中にどうした。ひょっとして、寺篭もりはもう終わりか」
「察しがいいな。事情が変わって、出立せねばならなくなった」
「そうか。そうすると、俺はいよいよ邪魔になるな」
「その通りだ。俺としてはもう少し、お前をかわいがってやりたかったのだがな。残念だよ」
浪人の言葉に、後ろの男達がげらげらと笑った。
凍るような冷たい笑みを浮かべた浪人が刀をずらりと抜くと、お小夜がやめて、やめてと泣き叫んだ。
狐に命じ娘を退かせると、睨み付ける真之介に近寄り喉元に刃を突き付けた。
「今からお前を斬り刻んで、楽しんでから殺してやる。恐ろしくはないか。命乞いはせんのか」
「けっ、命乞いしたって、どうせ斬り刻むんだろうが。無駄なこった」
「いい覚悟だ。ますます気に入った」
浪人は刀を振りかぶると、流れるような早さで振り下ろした。
真之介を鋭い痛みが襲い、同時に柱に縛り付けていた縄が切れて解けた。
前かがみになった真之介は、縄と一緒に斬られた着物の下から覗く腹に、一筋の赤い線が走っているのを認めた。
深くはないその傷を、浪人はわざと付けたのだ。こうやってじわじわとなぶり殺すつもりなのだと悟り、真之介は顔を上げ再び浪人を睨んだ。
「先生、いいんですかい、縄を切っちまって」
「縛られたのをただ斬り殺すのでは、つまらんからな。せいぜい悪あがきをしてもらおう」
「そいつぁいいや。おいおめえ、芋虫みてえに転がって逃げやがれ、はははっ」
熊は笑い、後ろ手に縛られた真之介の身体を蹴り付けて、横倒しにさせた。狐もお小夜を押さえながら、逃げろ逃げろと囃し立てた。
浪人が突き下ろした刀から、真之介は身をよじって逃れた。次の瞬間左の二の腕を切り裂かれ、真之介の顔は苦痛に歪んだ。
愉快そうに刀を振る浪人から必死に逃げ回りながら、真之介は機会を伺っていた。
ごろごろと転がり狐の近くまで来た真之介に、浪人が刀を振り上げ歩み寄ろうとした。
すると戒められていた筈の右手が伸び、浪人に向けて何かが放たれた。
咄嗟に刀で払い落としたそれは、小さな陶器のかけらだった。
狐と熊が浪人に気をとられた隙に、真之介は自由になった手でお小夜の足首を掴み、力の限り引っ張った。
「てめえっ、この野郎!」
上体を起こしてお小夜を背中に庇うと、娘を奪われて怒った狐が、長脇差を抜き放ち襲いかかってきた。
すかさず落ちていた柱の縄を拾い、狐の目を狙って投げ付けた。
「うわっ!」
怯んで動きを止めた狐に足払いをかけると、つんのめり上体をかがめた。真之介は刀を持った手首を掴み、思いきり頬に拳を入れた。
長脇差を奪うと浪人達に突き付け動きを見据えながら、ぶっ倒れた狐の懐を左手でさぐった。
「こいつはあの子のだ。返してもらうぜ」
取り出した銀の簪をとりあえず自分の髪に射すと、後ろのお小夜がありがとうおじちゃん、と嬉しそうに叫んだ。
「か、返しやがれ!」
「お小夜、目をつぶってろ!」
欲と怒りに我を忘れて飛び掛かる狐の胸を、突き出した刀で貫いた。
ぐぎゃっ、というような声を上げて、狐は絶命した。刃を抜くと身体はどうっと倒れ、真之介は残った男達にまた身構えた。
一連の出来事を顔色も変えず見ていた浪人に、右手に縄を巻き付けたままの真之介は笑いながら告げた。
「おめえが柱の縄を切ってくれて、助かったよ。手の縄がもうちょっとで切れるってとこで、うたた寝しちまってな。転がりながらなんとか切ったが、冷や汗もんだったぜ」
厠の床が腐って使えない為、連れ出されたお小夜は中庭の草むらで小用をしろと言い付けられた。
用を足しながら辺りの様子を窺っていると、草陰に落ちている何かの破片が目に入った。
括った縄の端を握った狐が自分も用を足しているのを確かめて、お小夜は尻餅をついたふりをして破片を拾った。
真之介は不自由な手を使い時間をかけて、なんとか縄を切ることが出来たのだった。
「縛られて手が痺れてたが、こいつを斬ったらあったまったぜ。次は、おめえらの番だ」
「調子に乗るんじゃねえ、この陰間野郎がっ!」
喚いて熊が切り掛かった。
「俺は陰間じゃ、ねえんだよっ!」
真之介は座ったままで刀を持ち上げ、頭上に振り下ろされた刃をがっきと受け止めた。
力任せに跳ね退けると、のけ反った熊の腹を斬り裂いた。
熊が倒れると同時に、真之介の持つ刀が真ん中からぽきりと折れた。
「くそっ!なまくらが」
毒づいて熊の取り落とした長脇差を目で探すと、真之介から離れた襖際の床に転がっていた。
目の前には浪人が立っていて、刀を取る隙などとても与えてくれそうになかった。
仕方なく折れた刀を構え、浪人を睨み据えた。
「なかなかやるな。本当にお前って奴は、俺を楽しませてくれるよ」
「抜かせ!言った通りになったろうが。てめえも、ぶった斬ってやるっ」
「どうかな。手は動くようだが、脚に力が入らんのだろう。娘を庇って、その折れた刀でどこまでやれるか、見ものだな」
にやりと笑うと、浪人は前に踏み出した。
すると急に襖が開け放たれ、ぼんっという音の後からもくもくと煙が舞い込んだ。
煙の方に一瞬視線をやった浪人を、左右の方角から勢いよく飛んできた物が襲った。
素早く刀でたたき落とすと一つは石、一つは小柄だった。
浪人の早業と、障子を突き破った見覚えのある小柄に目を見張る真之介を、耳慣れた呼び名で呼ぶ声があった。
「仙石!受け取れっ」
障子ががらっと開き、そこから自分に向かって放り投げられた物を、真之介はがっしりと掴んだ。
手に馴染んだそれは、男達に掠われてから所在が定かでなかった、真之介の愛刀だった。
「ありがたい!俺の同田貫!」
即座に抜き放ち障子に目を戻すと、外に流れゆく煙の中に、やけに懐かしく思える男の姿があった。
「おっせえぞ、殿様」
「すまんな仙石。いろいろ段取りを付けていたんだ」抜き身を下げて入って来た八坂兵四郎は、浪人をじろりと見やり真之介に詫びた。
「やっぱりしぶといね〜、馬鹿は死なない。よっ、さすが大馬鹿仙石!」
石を手の中でぽんぽんと弾ませながら、愛用の槍を手にした鍔黒陣内も、続いて襖から現れた。
刃を突き付けられながらも浪人はふたりを交互に眺め、不敵な笑みを浮かべていた。
「うるせえぞ、このたこ!」
「あっ、そんなこと言うの?陣ちゃんの煙玉で、助かったくせにっ」
「わかったわかった。殿様、段取りたあ、なんのことだ」
「今にこの寺に、お客さんが来るのさ」
「殿様、どうやらおいでなすったようだよ」
陣内の言葉の後に、どかどかと荒々しい足音が押し寄せた。
障子や襖を蹴倒して現れたのは、喧嘩支度に身を包んだやくざ者達だった。
夜空を覆った雲が動き、月明かりの中に、中庭に並ぶ男達と後ろに控えた親分らしき壮年の男、そのかたわらにいる頭巾を被った女の姿が浮かび上がった。
「やはり来たな、佐平次親分。そして、近江屋のお内儀」
「なにぃ、近江屋の!?するとお小夜の、二番目のおっかさんか」
お小夜の身元を本人から聞いていた真之介は驚き、陣内が彼に向かってまくし立てた。
「そのおっかさんが、義理の娘を掠うように仕向けたんだよっ」
「なぁにぃ!?本当か、殿様」
「本当だ。俺が仕掛けた呼び出しに乗ってきたのが、何よりの証だ」
兵四郎は宿場の入り口で、倒れていたおたみを救った。おたみは宿場一の旅籠、田丸屋の末娘で、掠われた米問屋、近江屋の長女のお小夜とは家ぐるみの付き合いがあり、大の仲良しだった。
愛娘が掠われたと聞き、嘆いた近江屋は宿場の人々に頼み込んで捜索を頼んだ。
それを率いたのが近江屋と懇意な、土地の親分でありながらお上から十手を預かる、二足のわらじの佐平次だった。
おたみ達を助けた浪人が真之介らしいと知り、兵四郎も捜索隊に加わった。
現場の林に真之介の死体は見当たらず、彼の数少ない持ち物である愛用の刀と、薄汚れた笠が打ち捨てられていた。その状況から、おそらく一緒に連れ去られたのだと兵四郎は見当をつけた。
生死が気遣われたが、夜になりひとまず捜索から帰った。すると訪れた近江屋で女中として働いているお恵に出会い、気になる話を耳にした。
近江屋の女房は若く美しい後妻で、亭主との間に三つになる娘がいるが、腹違いのお小夜のことも分け隔てなくかわいがっていた。
その優しい後妻がお小夜かどわかしの報告を聞いた際、かすかに笑っていたのを見たというのだ。
お恵は自信がないと言ったが、目がよく聡い彼女の観察眼を兵四郎は信じた。
支援
翌朝田丸屋を訪れて、おたみから掠われかけた時の様子を細かく聞いた。すると人掠いはまずお小夜の名前を呼び、確かめてきたという。そして逃げたおたみには、目もくれなかったらしい。
更に田丸屋の主人からは、お小夜の母親である前妻を亡くして塞いでいた近江屋に後妻を紹介したのが佐平次であり、後妻と佐平次は郷里が同じであるらしいと聞いた。
遅れて宿場に着いた陣内に、兵四郎はふたりの郷里の村での調査を頼み、自分は佐平次一家の家を見張った。
すると若い三下が、風呂敷包みと酒瓶を手にして出てきた。
後をつけると山の中にある古い荒れ寺に入り、やがて手ぶらで出てきた。中を窺ったが静まり返っていて様子がわからない。
近江屋に戻った兵四郎は、店の者に荒れ寺のことを訊いた。そこは悪い霊が出る噂があり、土地の者は滅多に近寄らないところで、捜索が始まると佐平次が子分に命じて真っ先に探させたが、無人だったとのことだった。
程なく陣内が戻り、後妻と佐平次が実は親子だと判明した。
このかどわかしが、お小夜を狙ったふたりの企みではないかと兵四郎は推察したが、確たる証拠がない。
それでお恵を使い、後妻に手紙を渡させた。お小夜かどわかしについてのお前の秘密をばらされたくなければ、今夜山の荒れ寺に来いという内容の物で、これは兵四郎の賭けだった。
やましいところがなければ、秘密をばらすと書かれた手紙など気にせぬし、素直に亭主に相談しただろう。
だが後妻は知らせた相手は亭主ではなく、捜索に出ていた佐平次だった。
早めの夕刻に捜索隊は宿場に戻り、そこに佐平次達が見当たらない訳を、兵四郎は探しに出ていた近江屋の手代を捕まえて尋ねた。
代官所から火急の呼び出しがあり、佐平次が子分をほとんど引き連れて行ったので、捜索は早めの切り上げになったのだと手代は告げた。
「知らせを受けてお前達は代官所に行ったと見せ掛け、人掠い達も使った林からの裏道を歩きここに来た。出立を早めろとこの浪人達に告げ、そして様子を窺っていたんだな」
「俺と殿様が姿を現したもんで、一気に片付けようってんでしょ。ところがどっこい、そうは問屋が……」
卸さないのよねっと笑い廊下に出た陣内は、仕掛け槍を振るってかちゃりかちゃりと両の穂先を飛び出させ、中腰に構えてやくざ達に向き直った。
「見つかる筈もない娘を幾日か探させて、ほとぼりが冷めてから人掠いどもを逃がす算段だったのだ、そうだろう」
「お小夜ちゃんが消えて実の孫娘が跡取りになれば、近江屋の身代を好きに出来ると思ったんだろ。全く、やることが汚い!陣ちゃん、許さないよっ」
代わる代わる兵四郎と陣内が真相を語ると、真之介は唸り声を上げた。
「くそっ、そういうからくりだったのか!仮にも娘だぞ、なんてえ母親だっ」
喚いてからはっとなり、後ろを振り向くと、お小夜は青ざめた顔をして震えていた。
真之介は刀で手足の縄を切り、頭から抜いた簪を娘の髪に戻してやった。
お小夜は真之介に縋り付き、しくしくと泣き出した。
「ふんっ、だから掠うなんて手間ぁかけずに、娘を殺しちまやよかったんだ。おめえがしぶったせいで、このざまだ」
佐平次が毒づくと、女は不気味に笑った。
「仕方ないだろ、おとっつぁん。私としちゃ殺してもかまやしなかったけど、何せお千代が、あの娘に懐いてるもんだから……姉の死体を見せて、悲しい思いをさせたかなかったのさ」
優しい継母の仮面を捨てた女は、とてつもなく醜く見えた。
新しい母がいてくれるから寂しくないと笑ったお小夜の顔が頭に浮かび、慎之介の胸にはむらむらと怒りが込み上げた。
「てめえら、ただじゃおかねえ!ふざけやがって、まとめて片付けてやる!」
「けっ、くたばり損ないが、しゃらくせえ!たかが相手は三匹だ、やっちまえ!」
佐平次の怒号に、子分達が一斉に長脇差を引き抜いた。
駆け寄った数人を陣内の槍が素早く突いて仕留め、仏堂に踏み込んだやくざを兵四郎が気合いと共に斬り下げた。
その隙にすうっと動いた浪人が隣室に身を引くのを、真之介は見咎めた。
「てめえ、逃げるのか!」
「逃げはせん。邪魔が入ったから、片付くまで高みの見物をさせてもらうのさ。お前は死ぬなよ、斬り刻むのはこの俺だ」
「やっかましい!逃げやがったら、ただじゃおかんぞ」
浪人は笑って姿を消した。
「仙石、だいぶ痛め付けられたようだが、大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ。手負いだろうが、こんな三下どもに遅れは取らん。娘のことは、任せておけ」
やくざ達を牽制する兵四郎に笑って請け合うと、真之介は近付いた男の足を薙ぎ払った。
頷いた兵四郎は、次々と躍りかかるやくざを難無く斬り伏せた。
侍とはいえ、たかが三人に手下達が翻弄される様を見て、佐平次は大いに焦った。
「せ、先生!隠れてねえで、手を貸しておくんなさいよ」
「断る。俺が請け負ったのはあくまで、娘のかどわかしだ。そして俺が斬りたいのは、その仙石とやらひとりきり。他に無駄な力は使わん」
どこかから聞こえる浪人の声ににべもなく断られ、佐平次はぎりぎりと歯を噛み締めた。
「ちっ、畜生め!てめえら、何をぐずぐずしてやがる、さっさとぶっ殺せ!」
やくざ達は応っと威勢よく答えたものの、いかんせん腕が違い過ぎた。
次々と数を減らす子分達に、色を失った女はその場から逃げようとした。気付いた陣内が腕を掴み止めようとすると、佐平次が娘を助けようと斬りかかってきた。
咄嗟に避けると、運悪く刀は女を背中から斬り裂いた。ひいっと悲鳴を上げ、女は倒れ動かなくなった。
娘を手に掛けた佐平次は混乱し、やみくもに刀を振り回した。
「陣内、そいつは殺すな!」
兵四郎の叫びにあいよっ、と返し、刃をかわした陣内は佐平次の後頭部に槍の柄を叩き込んだ。
親分がやられると、残った子分達に動揺が走った。主だった格上の者はほとんど斬られ、戦意を無くしているのがありありとわかった。
「佐平次は生き証人として、代官所に突き出す。そうしたらお前達もお咎めは免れんぞ。かどわかしに関わった者には、厳罰が与えられる。今のうちに逃げれば、なんとかなるかもな」
兵四郎は子分達を見渡して言葉を続けた。
「それとも、俺の刀の露と消えるか。ちょうどここは寺だ、墓を作るのには都合がいい」
脅す兵四郎に子分達は青い顔を見交わし、刀を捨ててわらわらと逃げ散った。
陣内は縄を取り出すと、気絶した佐平次をしっかりと縛り上げた。そして、中庭の向こうに声をかけた。
「旦那、もう出て来て下さってけっこうですよ」
木陰から姿を現したのは、近江屋の主人だった。後ろには、手代とお恵が付き添っていた。
「おとっつぁん!」
父の姿を見つけたお小夜が、真之介の後ろから飛び出した。
「お小夜、お小夜!よくまあ、無事で……」
「おじちゃんが、あたしを守ってくれたのよ」
「そうか、そうか……私に見る目がなかったばっかりに、辛い目に合わせてしまったな。どうか、許しておくれ」
地面に転がった物言わぬ女を見つめ、親子は涙を浮かべてひしと抱き合った。
「守ったなんざとんでもない、俺があの子に守られていたんだ。あの子がいなきゃ、とっくに死んでた」
眩しげに親子を眺める真之介に、兵四郎はそうか、と頷いた。
ふいに、ふたりは同じ方向に目をやった。暗がりからのっそりと、あの浪人が姿を見せた。
真之介が生きているのを認めると満足そうに笑った。
「さすがだな。さすが、俺の見込んだ男だ」
「うるっせえ!残ったのは、おめえだけだ。殿様、手を出すなよ。こいつだけは俺が、なんとしてもぶった斬る」
「仙石、しかし」
「大丈夫だ。だがもし俺がやられたら……後は、頼むぜ」
「……わかった。気をつけろ」
傷だらけの真之介を気遣う兵四郎と、兵四郎を信頼しきっている真之介を見やって、得心したように浪人は頷いた。
「そうか、こいつがお前の……」
「黙れ!さっさと、かかって来いっ」
真之介は胡座をかいたまま、愛刀を構えた。浪人は刀を抜き、中段に構えてじりじりと歩を進めた。
兵四郎は黙って見守りつつ、右手の指をそっと懐に忍ばせた。
外からは陣内とお恵、近江屋親子達が、固唾を飲んで成り行きを見ていた。
「刻んでなぶるのはどうやら、無理そうだな。ならばその首を斬り落とし、滴る血を残らず飲み干してやろう。そうすればお前は俺の一部となり、永遠に、俺のものとなる」
「……つくづく悪趣味な野郎だな、てめえはっ」
想像して気色悪さに舌を出した真之介は、とんでもない奴に見込まれたと我が身の運の無さを呪った。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
殿様サイドの話も書いていたのですが、それを加えるととんでもない長さになるので、読みづらいだろなあとは思いつつ、纏めさせていただきました。
それでも長くてすみません、次で終わります。
あと寝ぼけててナンバリング間違えました、ごめんなさい。
反応下さった皆様、ありがとうございます。本当に励みになります。
参匹燃えるー!
普通にドラマのノベライズ読んでるみたいに自然すぎる
ほんとにこんな回があったような気がしてくるよ、ありがとう!
続きをよい子で待ってるんだぜ
でもそろそろハゲ散らかした頭部が寒い季節ですw
>>67 >仕掛け槍を振るってかちゃりかちゃりと両の穂先を飛び出させ、中腰に構えてやくざ達に向き直った。
いやもう、ほんとに目に浮かびますw
全シリーズを通しで登場したのはこの人だけなんですよね。
前回のお話の時も、エンディングテーマが聞こえてきそうだな〜と思ったのだけど、
今回も、ファイトシーンのBGMが聞こえてくるようでした。
サロメかよ!
>美形クールな浪人
>>75の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。この回でおしまいです。
連投になりすみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
にやにやと浪人は笑って歩み寄り、腰を落として刀を振りかぶった。もう一歩を踏み出して真之介に斬りかかろうとしたその時、何かに足を取られて身体を傾けた。
真之介はその隙を見逃さず、傾いてなお繰り出された刃を必死に潜り、渾身の力を込めて刀を突き出した。
ぐっさりと腹を刺し貫かれ、浪人は目を見開いた。真之介が顔を上げると、腕を下げ膝をついた浪人と抱き合うような形になった。
「ふふ、や、やられたな……いいさ、お前を待っているぞ……じ、地獄でな」
耳元に囁くと血を吐き、絶命した。
「……ふん、地獄で会ってもまた、ぶった斬ってやるぜ」
真之介はしかめっ面で吐き捨てると、倒れた浪人の身体から刀を抜いた。
目の前の床には、一枚の懐紙が落ちていた。拾い上げて刀の血糊を拭くと、懐紙を差し出して兵四郎を見上げた。
「殿様、手は出すなと言ったじゃねえか」
「ん?俺は知らんぞ。懐から勝手に懐紙が落ちて、そいつがそれを、勝手に踏んだのだ」
うそぶく兵四郎に苦笑すると、ふいに真之介は懐紙と刀を取り落とし、その場に仰向けに倒れた。
「仙石!しっかりせんか」
慌てて抱き起こした身体は、高熱を帯びていた。張り詰めていた緊張が解けた真之介は、ぐったりとした身体を兵四郎に預けた。
ふと下肢を見やると、着物の裾から覗く内股にこびりついた、欲望の痕跡に気付いた。
手首の縄と赤い縄目の痕も痛々しく、彼に異様な執着を見せた浪人に何をされたのか察した兵四郎は言葉が出ず、痛ましげに腕の中の真之介を見つめた。
「そ、そんなに見るなよ、殿様……照れるじゃ、ねえか」
「真之介……」
息を荒げつつも冗談を飛ばしにやりと笑うと、真之介は意識を失った。
兵四郎は転がっていた刀を鞘に納め、部屋の片隅に放られていた袴と共にひっ掴み、正体を無くした真之介を背負って立ち上がった。
庭に下りると、心配したお恵が声をかけた。
「殿様!仙石さん、大丈夫?」
「とりあえず医者に連れて行く。お恵は手代さんと、お小夜ちゃんをうちまで送り届けろ」
兵四郎は陣内に向き直り、さらに告げた。
「陣内、お前は近江屋さんと佐平次を連れて、代官所に駆け込め。ことの次第を洗いざらい話すんだ」
「わかったよ、任しといて殿様!仙石を頼んだよ」
陣内は縛った佐平次を立たせ、真剣な顔で頷いた。
「ねえっ、おじさん!仙石のおじちゃん、死なないわよね?大丈夫よね?」
不安そうに背中の真之介を見つめるお小夜に、兵四郎は笑った。
「死なないとも。死なせるものか」
頷くとしっかりと真之介を支えて、力強い足取りで走り出した。
山を駆け降りた兵四郎は、医者の家の戸を激しく叩いた。
そこは兵四郎が倒れていたおたみを担ぎ込んだ所で、出迎えた医者は顔見知りの仲だった。
夜中の急患を医者は快く引き受け、兵四郎と共に真之介を治療し介抱した。
肩の傷は少し深いが命に別状はなく、他の傷も大したことはない、打撲と疲労による熱は薬で下がるだろうと医者は見立てた。
この御仁の身体は馬のように頑健だ、心配はいらないと付け加えて笑った。
下肢の容態について兵四郎が尋ねると、わずかな裂傷があり腫れてはいるが、こちらも薬を塗れば問題はない、と告げた。
兵四郎は安堵し、布団に横たわり熱にうなされる真之介を見つめた。
近江屋の一室に身体を移された真之介は、実に二日の間眠り続けた。
医者は通って容態を確かめ、兵四郎は指示通りに薬湯を与え薬を塗ってやり、かいがいしく看病した。
主人の厚意でお恵が手伝いに寄越されたが、身体を拭いたりなどの面倒は兵四郎が見た。
真之介が眠っている間に陣内が代官所から戻り、代官は近江屋の訴えを聞き入れ、迅速に調べを進めていると報告をしてきた。
全てが明白になり、かどわかしを指図したとして、佐平次には後日、重追放の裁きが下った。
重追放は追放刑の中で最も重く、家屋敷を没収され、罪を犯した土地、住まいする国、そして江戸十里四方に住むことを禁じられるというものだった。
自業自得とはいえ娘を亡くし、一家を解散に追いやられた上に、見知らぬ土地にほとんど裸で追いやられるのだ。すっかり気力を失い急に年老いてしまった男には、苛酷な厳罰といえた。
お小夜は父親やおたみなどと共に、時にはひとりで、何度も真之介の見舞いに訪れた。真之介が目覚めたことを知らせると、知らせたお恵の先を走って駆け付けた。
「真之介さん。おじちゃんの名前って、仙石じゃなくって、九慈真之介さんっていうのね。八坂のおじさんに聞いたわ」
「そうだよ、仙石はあだ名だ。なかなか、いい名前だろ」
「ええ、とっても素敵。ねえ真之介さん、早くよくなってね」
「ああ。お小夜ちゃんはもう、その……大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫よ。ふたり目のおっかさんまであんなことになって残念だけど、あたしがくよくよしてちゃあ、おとっつぁんが心配するもの。妹の面倒も、しっかり見てかなきゃならないしね」
だから大丈夫よ、と笑うお小夜の髪には、あの簪が光っていた。真之介は手を伸ばして、娘の頭を優しく撫でた。
布団の横に座る兵四郎は娘の気丈さに感心し、その光景に穏やかに見入っていた。
お恵に連れられてお小夜が去ると、部屋にはふたりきりになった。しばらくの沈黙の後、真之介が兵四郎を見やり口を開いた。
「殿様ぁ……腹減った」
「そうだろうな。お恵も、お前が目覚めたら腹が減ったと言う筈だから、おかゆを作ると言っていた。じき持って来るだろう」」
「おかゆかあ……白い握り飯が食いてえなあ。ここの米はえらく美味いんだぜ、殿様」
「うん、俺も食った。確かに美味いが、急に食っては身体に障る。我慢しろ、仙石」
わかったよ、と呟くと、真之介は目を逸らし、天井を見つめた。
「殿様、俺、あいつらに……」
「いいんだ、仙石。言う必要はない」
ぽつりと漏らした言葉を兵四郎は優しく止めた。
「でも言っとかなきゃ、なんかこう、もやもやするだろ?俺も、仲間うちじゃただひとり知ってる、おぬしも。なぁに、生娘じゃねえんだ。手ごめにされたくらい、どうってこたあない」
幸い子供も出来ねえしな、と自嘲気味に笑う真之介に、兵四郎はかける言葉が見つからなかった。
「だが、さすがになかなかきつかったなあ。あいつら、笑いながら乱暴に突っ込んだんだ。男の俺があんなに辛いんだ、女はさぞかしもっと、辛いんだろうな」
「仙石……」
「まあもともと娘を品物扱いするような連中だ、ひどくて当然かもな。万に一つも助からねえと思ってたから、殿様とたこが来てくれた時は、ほっとした。仲間ってのは、ありがたいもんだなあ」
兵四郎が言葉を返さないのに気付き、真之介は再び彼の顔に目を戻した。
「どした、殿様。しぶい顔して」
「仙石、俺はお前になんと言っていいかわからん。いや、何も言う資格はないのかもしれん」
「あ?どういうことだ」
「俺も、あいつらと大して変わらんからだ。嫌がるお前を、無理に抱いたのだからな」
「……違う!あれ、いや、違わないか?いやいや、違う……ような、気がする」
「仙石、どっちなんだ」
首を傾げる真之介に、兵四郎は思わず苦笑した。
「うー……だから、あいつらと殿様は、とにかく違うんだ」
「そうか?どこがだ」
「どこって……殿様は、殿様だからさ」
「すまん、仙石。よくわからんのだが」
「わからんなら、仕方ないさ。正直、俺にだってわからん。考えてもわからんことが、世の中にはある。まっ、そういうことだ」
なぜか偉そうに語る真之介を見ているうち、兵四郎は胸に暖かいものが広がっていくのを感じた。
兵四郎は違う、兵四郎だから違うという真之介の言葉を、頭の中で繰り返した。
「仙石、俺もだ」
「俺もって、何がだ」
「俺はお前だから、抱いたのだ。お前でなくては、抱く気になどなれなかった」
「殿様?どうしたんだ、急に」
少し思い詰めたような兵四郎の様子に、真之介は眉を寄せた。
「お前は俺が背中を預けられ、背中を支えてやりたいと思う数少ない本物の男で、かけがえのない友だ」
「殿様……」
「だがそれだけではない、お前に対するまた別の想いが、俺の中には確かにあるのだ」
目をまっすぐに見つめて話す兵四郎から、真之介は逃れられずにいた。兵四郎は、真之介の少しこけてしまった頬に手を添えて、顔を寄せた。
「真之介。俺は、お前を……」
「言うな、殿様。その先は、言わんでくれ」
真之介は添えられた手に手を重ね、静かに遮った。兵四郎は訝り尋ねた。
「真之介、なぜだ。なぜ、言わせてくれない」
「それを言われたら俺は、おぬしに寄っかかっちまうような気がするからだ。おぬしが言ったように、俺もおぬしを頼りにしてる。背中を合わせて戦い、時には競い合える友だと思ってる。そしてやっぱり、それとはまた、多分、別として……大切だと思ってる」
「真之介……」
「だが、だからこそ、甘ったるい関わりにはなりたくはないんだ。おぬしを実は大した男だと、思っているからこそだ……殿様、俺の言ってること、わかるか」
「うん。わからんような、わかるような気はする」
どっちなんだ、と今度は真之介が苦笑した。
「仙石、お前がそう言うなら、俺はもう言わん。ただ、俺がそう思っているということは、胸の隅にでもしまっておいてくれ」
「そりゃあまあ、構わんが……俺のどこが、そんなにいいんだ」
「そりゃあお前、いつも腹を減らして、でっかい夢を見て、いつまでも歩くのを止めない、いい男だからさ」
「おい、褒めたって何も出んぞ」
「ふふ、弱ってるお前から、何も取ろうとは思わんよ……ただ」
「ただ……なんだ?」
見上げる真之介に顔を近付けると、そっと唇を塞いだ。真之介は少し身じろいだが、拒みはせず受け入れた。
触れるだけの口づけを解くと、真之介はやや顔を赤らめた。
「……やっぱりこういうことをするんだな、おぬしは」
「すまんな、俺はやっぱりお前が欲しい。それも俺の、正直な気持ちだ」
静かに笑う兵四郎に、思わず真之介も笑い返した。
「ふん、俺は素直にやるなどとは、絶対に言わんぞ。そんなことを言えば、すぐ調子に乗るからな、この馬鹿殿様は」
「それは確かだ。ただし言われなくても、調子には乗るがな」
この野郎、と真之介は軽く殴る真似をした。拳を受け止め、兵四郎は今度は声を上げて笑った。
「……なあ殿様。ああは言ったが、ちょっとな、頼みがある」
「うん?なんだ、仙石」
「こんなこたぁ、金輪際頼まん。一度っきりだ、ほんとだぞ」
「ふふ、なんだもったいぶって。いいから、言ってみろ」
「あのな……」
真之介が小声で告げた頼みに兵四郎は目を丸くしたが、すぐに笑って頷いた。
おかゆを盆に乗せたお恵は、陣内を伴って真之介のいる座敷を訪れた。障子を開けると、お恵があらっ、陣内がまあ、と声を上げ、ふたりは目の前の光景に呆気に取られた。
布団の上に座った兵四郎の胡座に頭を乗せ、真之介は穏やかに眠りこけていた。兵四郎は唇に指を当て、しいっ、と合図をした。
ふたりは頷いて静かに障子を閉め、部屋に入り布団の横に座った。
「やぁだ、仙石さんったら、子供みたい。捕まって、心細かったのかしらねえ」」
「みたいじゃなくて、子供だよ。世話が焼ける、でっかいガキ大将よ、こいつは」
お恵がくすくすと笑って布団をかけ直し、陣内は悪態をつきながらも笑顔で真之介を眺めた。
「陣内、いささか脚が疲れた。代わってくれんか、お恵ちゃんでも構わん」
「えーっ、やだよ。仙石、寝相悪いもん。扱えるの、殿様くらいだよ」
「あたしもいやー。着物をよだれだらけにされそうなんだもん。殿様、がんばってね」
からかわれて兵四郎はため息をついたが、口元には自然と笑みが浮かんでいた。
大事を取って一月ほど養生し、真之介はすっかり回復した。出立前の数日は旅に向けて身体を戻すため、兵四郎を相手に鍛練に精を出した。
旅立ちの日、一同は宿場外れの地蔵堂に立ち寄り、揃ってお参りをした。
近江屋主人とお小夜、田丸屋夫妻とおたみが、兵四郎達を見送りに来ていた。
手を合わせたお小夜は立ち上がると、陣内を見上げて笑った。
「あたしね、捕まってる時にずっと、お地蔵様に助けてって祈ってたの。だから陣内さん達が来てくれた時、お地蔵様が人の姿になって、仲間を連れて助けに来てくれたんだと思ったわ」
「あら、そうなの?陣ちゃん、そんなにありがたい顔してるかしら」
確かにお堂の中の小さな地蔵は、陣内によく似た顔立ちをしていた。
少女から憧憬の目で見られ、陣内はまんざらでもない顔をした。
「おいおいお小夜ちゃん、ずっと一緒にいたおじさんより、このたこ地蔵がいいってのかい。妬けるなあ」
冗談混じりに真之介が拗ねてみせると、お小夜は真顔になった。
「ううん。もちろん、おじ……真之介さんがいっとう好きよ。真之介さんがあたしの、お婿さんになってくれたらいいのに……」
「こ、これ、お小夜!お武家様になんということを」
焦った父親にたしなめられ、お小夜は顔を赤くして俯いた。真之介は笑って腰をかがめ、小さな肩を両手で抱いた。
「お小夜ちゃん、気持ちは嬉しいが、俺は行かなきゃならん。なぁに、今にきっとまた現れるさ。俺みたいな、いい男がさ。何しろお小夜ちゃんは、飛びっ切りのいい女だからな」
覗き込んでにっかり笑うと、お小夜は顔を上げて笑い返した。真之介は髪の簪をちょい、とつつき赤い頬っぺたを撫で、おとっつぁんと妹を大事にするんだぞと告げて身体を離した。
一行の姿が見えなくなるまで、お小夜は手を降り続けていた。真之介も時折振り返っては、大きく手を振った。
「仙石ぅ、米屋の婿も、悪くなかったんじゃないの」
「そうだなあ。とりあえず、食いっぱぐれる心配はなくなるだろうし……惜しいことしたかな?」
「かもね。扱う米が千石でも、それもまた千石だしね」
「ああっ、そうか!……たこ、お前頭いいな」
「なに、今頃わかったの?しょうがないねえ、馬鹿だもんね、お前」
なんだとこのたこ、うるさいよ馬鹿の馬面、などと喚き合うふたりのやり取りを耳にして、兵四郎とお恵は笑った。
やがて道が三つに分かれる辻に出た。
「殿様、どっち行く」
「うん、こっちかな」
「じゃあ、陣ちゃんはあっちに行くよ」
「あたしも、あっちに行こうっと」
「となると、俺はそっちか……」
「仙石、一緒に来ても構わんのだぞ」
兵四郎が誘うと、真之介は笑って首を振った。
「いや、そっちに行く。殿様、また会おう」
「ああ。またな、仙石」
視線を交わした後、懐手の真之介が肩を揺らして歩き出すと、お恵と陣内も兵四郎に手を振り、別方向に歩き出した。
兵四郎は笑顔で見送ると、抜けるような青空を眺めながら、軽い足取りで歩を進めた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
じゃじゃ馬がほぼ馴らされてしまった(´∀`)
なので次作があれば、別タイトルになると思います。
長々とお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
>>78 良いものを読ませていただきました!GJ!
>>78 お疲れ様、ありがとう!
いい大人の男二人が可愛すぎてのたうちまわったよ!
馴らされてしまったじゃじゃ馬も、束縛しないで自由にさせる乗り手も、懐が広くって男前だなぁ
辻であっさり別れてしまっても、いつの間にか一つのところに集まってしまう安心感がいいんだよね
負担にならない程度に次作待ってるよ!
>78
お疲れさまです!
実は元ネタ見たことない人間なんですが、読み出したら止まらん止まらんw
で、ずっと読ませて頂いてました!
ぐいぐい引き込まれてどんどん次が気になる感じで…
良いものをありがとう、面白かった〜!
今年のバイク乗り、ヒーロー受けネタ。
モブ×ヒーロー? なので苦手な方はご注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
STEP1
「え? ……あ、ごめんなさい俺そういうのナシですから……いや、ダメですってほんと、
お金払うとかダメですから、いやほんと、そういう問題じゃなくてですね、俺ダメで、
……ジャパニーズボーイとかだからほんと……ダメですってば。大声出しますよ!」
STEP2
「あー、俺そういうのお断りしてるんで……へ? いや、いやいやいや恋人とか、いや嫌いとか
そういうことじゃなくて、愛してるとか言われても、あの、ええと、あの俺旅行者なんで、
来週には出発……え、え? いやあの一週間でもいいからって、ええー!?」
STEP3
「そ、そりゃあ確かに屋根とご飯は嬉しいですけど! ……でも良くないですよ、そういうの。
だってこう、なんていうか、言っちゃえば愛人じゃないですか……いや一時の恋とか言い方
変えてもダメですから。だからロマンがどうとかそういう問題じゃなくてですね、……ああもう!」
STEP4
「……ほんとですね? 本当にただの好意ってことで受け取りますよ? 俺偏見とかないから
ほんとに信じてますよ? 裏切られたら本気で傷つきますよ? ……ほんとにお家借りるだけ
ですからね。お金払うからどうこうとか絶対ナシですよ。絶対ですよ。……絶対ですよ!」
STEP5
「ちょっ……!! ちょ、ちょっと! 契約違反ですよ! こういうのダメだって言ったじゃない
ですか! いやダメです、愛しててもダメ……な、なんにもしないから、このまま、って……。
……明日になったら出て行きますからね。これ以上は、絶対、ナシですよ」
STEP6
「あッ、ちょ、ちょっ、うわ、待っ、待って、いえあの、き、嫌いじゃないですけど、それとこれ
とは別っていうか、な、慣れてるだろって、あの、確かに俺経験ないわけじゃないですけど……!
…………、じゃあ、ちゃんとゴムとかしてくださいよ。絶対ですよ。……見てますからね!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すみません。SS初心者です。無駄に話が長いのにエロ少ないです。
最初、マス×盾だったのに、クル×盾になってしまいました。
書けないのに、ツンデレ好きでした。
ナツ×盾もちょびっと。ナツは、報われずにかわいそうなことになってます。
将来、盾×鑑識もありかというテイストで、カチョに悪魔のシッポがはえてます。
捏造てんこもりで、カチョに娘がいる設定です。
カチョもあすたんもいない四ハンに残された盾がかわいそうで、クルに支えて欲しくてこうなりました。
Part.1〜4まであります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
見神との面会を終え、東京拘置所を出て電車に乗り込むと、次の駅から高校生が大勢乗り込んで来た。
ああ、もうそんな時刻か、と盾はぼんやり思った。
署に帰り着く頃には、すっかり暗くなっているだろう。
また久流須に怒られるな〜と、小さいため息が出た。
見神に面会に行くと言っても言わなくても、久流須の眉間にしわが寄る。
いつからだろう、久流須に苦虫を噛み潰したような顔で見られるようになったのは。
美弥木の事件の前にコンビを組んだ時は、久しぶりだなと笑顔を向けられた。
所轄署から自分の配下に配属された時は、おまえが上司かよーと憎まれ口を叩いたが、
やっぱり笑っていた。それなのに・・・。
警察学校時代、同じ班になった美弥木と佐衛子と盾の三人は、なぜか馬が合った。
お互いの長所短所がうまくかみ合い、得るところが多かったし楽しかった。
班長の盾の冷静な洞察力、副長の美弥木の大胆な行動力、班の紅一点の佐衛子の確実な調査力。
三人は、同期の中でも目立った存在だった。
そして久流須。隣の班の副長である久流須は久流須で、その長身と身体能力の高さで目立っていた。
爽やかな笑顔って、ああいうのを言うんだろうな、というのが盾の第一印象だった。
いつからだろう、ちょっとしたはずみに久流須に目が行くようになったのは。
久流須を見ていると、遠い記憶の彼方の霞んだ誰かが思い起こされるのだが、
どうしても思い出すことが出来ない。それがもどかしくて仕方なかった。
目の前で両親を殺害されたショックは、多岐にわたって長い間盾を苦しめた。
事件前の楽しかった頃の記憶にまで容赦なく亀裂が入り、いくつもいくつも零れ落ち、失われてしまったのだ。
忘れたい記憶が消えずに、失いたくない記憶が消えた。思い出せない思い出の存在が、盾をまた苦しめた。
だから、そういう自分を心配そうに見ている美弥木に気が付くことが出来なかったのだ。
警察学校時代、久流須と美弥木は格闘技で競い合っていた。
二人より体格も持久力も劣る盾は、唯一射撃の腕がかろうじて上なくらいで、他はお話にならない。
二人は同期の中でよくトップ争いをしていた。
傍から見ても、いいライバルだった。
子供のようにああだこうだと言い合いながら道場で稽古する二人を見ているのが、
盾は好きだった。
佐衛子の時とはまた違った、男三人の気安い関係も、盾には心地よかった。
結局その時、両親の死後環境が激変した盾は、経験できなかった普通の少年時代をやり直していたのかもしれない。
そのせいで、少し子供じみていたのだろうか。
「おまえ、こんなものが好きなのかよ!」
と久流須が呆れたことがあった。
警察学校の寮で、こっそり酒宴を開いた時のことだ。
少人数でいくつかのグループになって、すこしずつ酒や肴を買い込んで来る作戦だったのだが、
ある買出し部隊に盾がいちごミルクを頼んだのだ。
「だって、酒弱いし・・・。」
「せめてウーロン茶とかにしろよ、宴会でいちごミルクなんか頼むんじゃねえ!」
「前、ウーロン茶頼んだら焼酎割りが来ちゃって、それ飲んでぶっ倒れたんだよな。」
と笑いながら、美弥木がフォローにならないフォローをする。
「いちごミルクなら、酒で割られることもないかと思って・・・。」
久流須はぱかっと開いた口が戻らない。
「俺が鍛えてやる!だいたい美弥木は盾を甘やかし過ぎなんだよ!」
美弥木に甘やかされ、久流須に怒られる。
でも最後は三人一緒になって笑い転げた。
楽しかったな。
昔から久流須は口が悪いけど、世話焼きだったな。
盾は見るともなしに車内を眺めていた。
ある駅に停車した時、背の高い小学生の男の子が走り込んできた。
少し遅れて、背の低い男の子も車内に飛び込んで来た。
二人とも笑いながら、じゃれあった。
それを見て、盾の脳裏にカチリと当てはまるものがあった。
卒業まで1ヶ月くらいになった時、最初の経緯は忘れたが、柔道がからっきしダメな盾を
美弥木と久流須の二人が特訓する、というはめになった。
射撃は大丈夫だし、剣道もなんとかなっているが、柔道はお粗末だったのだ。
「えー、無理だよー、無理ー!」
「「現場に出た時どうするんだよ!!」」
と二人に怒られ、左右を挟まれ道場に引きずられて行った。
何日かさんざんしごかれ、かろうじて二人から許しを得るレベルまで行った日のことだ。
その日は週末だったので、元々それぞれの自分の家に帰るつもりで外泊許可は取ってあった。
三人で飲もうぜ、という話になり、一人暮らしの盾のアパートに行くことになった。
警察学校を卒業するまで、外で飲酒するのは厳禁なのだ。
「「盾、金出せよ!」」
「・・・ハイ、ハイ・・・」
なんで二人ともこんなに息ぴったりなんだ。
上機嫌な二人の間で、よれよれの盾はシャワーを浴びた。
立っているのがしんどくなって、早々に切り上げた。
「お先に〜。」
「逃げんなよ。」
「わかってますって。」
声を掛けて来た久流須に、盾はヒラヒラと手を振って答えた。
その背中が消えると、久流須がポツンとつぶやいたのを美弥木は聞き逃さなかった。
「あいつ、白いな・・・。」
「・・・それに細いし。」
「え?」
「なんでもない。さっさとあがろうぜ、カズが逃げないうちにさ。」
「あ、ああ。」
その晩、うっかり酒を口にした盾はぶっ倒れ、二人に介抱されたあげく、
関係を持ってしまったのだった。
「初めて男を抱いた夜に、3Pとはな。」
戻ってこない盾の机を眺めながら、久流須はそんなことを思い返していた。
美弥木の声が蘇る。
「指、入れて。」「そこが前立腺。」
「根元まで入れていいから。」
盾のすすり泣く声・・・。
馬鹿だなあ、何考えてんだよ、俺。職場で。それも警察だぞ。
盾に欲情しているのを美弥木に見抜かれて、初めてそんな自分に気が付いた。そして、美弥木もそうだと。
動揺したまま、初めて盾の部屋に行った。
盾の部屋はこざっぱりと片付いていたが、ところどころに本が積み上げられていて、
うっかり崩してしまいそうになった。
「ごめん、脇にどけといて。」
「あ、ああ。」
なんだか、部屋のサイズと盾の体格にしては、ベッドが大きいような気がするのは、
今の俺が意識過剰なせいだろうか・・・。
「あー、やっぱり、美弥木の言ったとおり。氷買って来て正解。氷、すっからかんだわ。」
キッチンで酒の用意をしている盾が、冷蔵庫の中を見てそう二人に言ってきた。
「そうだろー。」
と美弥木はにやにやしている。
部屋の勝手を知っている美弥木に、ちょっとムカつく。
「美弥木、おまえ盾んち来た事あったの?」
「うん、4回目くらいかな。俺んちちょっと遠いから、帰るの億劫になってさ、泊めて貰った。」
「へー、そうなんだ。」
「何、久流須もお泊りしたかったの?」
「べ、別に!ガキじゃあるまいし!」
「何の話?」と、キッチンから戻った盾が話に加わろうとしたが、
「何でもない!!」と久流須は大きな声を出して阻んだ。
「???」
美弥木は声を押し殺して笑っている。
その後、盾はもっぱら美弥木と久流須の酒の肴にされていたのだが、
自分の部屋に二人が揃っているのが嬉しかったのか、酒も飲まずにはしゃいでいた。
それで間違ってしまったのかもしれない。
口を付けたのは久流須のグラスで、美弥木が濃い目に作ってやった水割りだった。
こてんと盾は気絶してしまった。
二人はあわてて、盾を介抱した。
酔いもすっ飛んでしまった。
美弥木が手馴れたふうに盾をベッドに寝かしつけるのを見て、久流須は腹が立った。
腹の立った自分に戸惑って、また動揺した。突っ立ったままの久流須に、美弥木が声を掛けた。
「水持ってくるから、見てて。」
「あ、ああ。」
キッチンに美弥木が行ってしまうと、どうしていいかわからなくなった久流須は、
とにかく落ち着こうと思って、ついベッドに腰を掛けた。
盾は、久流須のもやもやした気持ちも知らずに、すやすやと眠っている。
髪が短いせいか、実際の年齢より子供っぽく見えた。
最初盾を見た時、その華奢な体形に現場の刑事は無理だろ、と思った。
次にその学科の優秀さと射撃の腕に舌を巻いた。そして、柔道や逮捕術での危なっかしさについ手を貸したくなった。
要するに、どんどん惹かれていったわけだ。
「・・・睫毛、長げえな。」
思わず、手が伸びた。
そっと髪をなでると、盾が目を開けた。
「あ、大丈夫か?」
「・・・」
盾の反応はない。
「盾?」
「朝になるとさ、覚えていないんだよ。」
傍らに、水と氷を入れたコップを持った美弥木が戻って来ていた。
「盾、夜うなされるんだ。」
「・・・なんで?」
「10歳の時、目の前で両親を殺された。そのせいだろう。」
「え!」
「抱いてやると、うなされない。」
「お、おまえ!!」
「久流須、男の抱き方教えてやろうか?」
「な、なに言ってるんだよ!!」
「・・・その気にならないなら、帰るか?終電過ぎちゃってるけどな。」
「・・・おまえは、・・・もう抱いたのか、盾のこと。」
「ああ、カズは覚えちゃいないがな。」
さらりと美弥木は言ってのけた。
久流須は美弥木をにらみつけたが、立ち上げることが出来なかった。
久流須の手に、盾の手が重ねられたからだ。
久流須は、その手を引っこめることが出来なかった。
その夜、盾は久流須と美弥木の腕の中で、信じられないくらい鮮やかな花を咲かせた。
久流須と盾の関係は、それっきりだった。
盾は覚えていなかったし、腰のだるさは柔道の特訓のせいだと思ったようだった。
喉まで嗄れている理由はわからなかったようだが。
二人して、さんざん泣かせたからな。
三人とも今までどおりだった。
警察学校を卒業して、三人と佐衛子は皆ばらばらの署に配属された。
配属先に行く前、美弥木と少し話した。
久流須はずっと気になっていたことがあった。
盾は男を受け入れるのに慣れているようだった。
久流須をしきりに欲しがったが、同じくらい久流須を気持ちよくしようとした。
深く愛し合ってセックスしていたのでなければ、ああはならないだろう。
美弥木が盾を好きなのは明らかだった。
二人は好き合っているのじゃないのか?だったら何故、その盾を他の男に抱かせた?
「おまえが、その、盾の最初の・・・か?」
美弥木には久流須の聞きたいことが伝わったようだった。
「違うよ。俺とそうなる前から、ああだった。
長いこと関係を持っている人がいるみたいだ。その人には、素面で抱かれてるんだろう。
俺が遊びに行った時、電話が来たことがあって、その相手がそうかなと思った。」
久流須は言葉が出なかった。
「盾さ、久流須のことよく見ていたんだよ。」
「え?」
「気が付いてなかったろ?盾もさ、意識してないみたいだったけどな。」
「おまえは盾を見ていたから気が付いたってのか?」
「うん。」
美弥木は、盾の“情人”から盾を奪い取りたかったのだろうか?
その一方で、盾の思いを叶えてやりたかったのか?
去っていく美弥木の背に、久流須は怒鳴った。
「おまえはやっぱり盾に甘過ぎるんだよ!」
美弥木はただ笑い声を上げた。
その後は、警察の公報で互いの消息を知るくらいだった。
盾は成績優秀で何度も表彰されたので、久流須も様子を知りやすかった。
盾が捜査一課に抜擢された後、見神の名前を聞いた。
県警本部のお偉いさんが、盾の後見人だと。
久流須がキャリア嫌いになったのは、それが発端だったかもしれない。
盾と美弥木が同じ所属になったのを知ったのも、公報からだった。
盾・美弥木コンビが成績優秀だという噂が、その後聞こえて来た。
美弥木は盾の恋人になれたのだろうか?
盾のことを忘れて、その時付き合っていた彼女と結婚しようかと思った。
プロポーズはどうしようかなんて考えている時、美弥木と久しぶりに会った。
お互い事件を追っている身だったので、慌しい再会だった。
「俺がいない時、盾が酒呑まされそうになっていたら、久流須、頼むな。」
「はあ?なんだよそれ?相変わらず甘やかしてんだな!」
久流須は、去っていく美弥木の背に怒鳴った。
美弥木は、笑いながらヒラヒラと手を振って行ってしまった。
それが最後だった。
盾は知らない。
「頼むな。」
その一言のために、久流須ががむしゃらに頑張って捜査一課に来たことを。
彼女は構ってくれなくなった久流須に愛想を尽かして、去って行った。
それなのに、久流須が捜査一課に配属されて久しぶりに会った盾は、すっかり心を閉ざしていた。
慈愛に満ちた優しい微笑みで拒絶されるのは、堪えた。
そして、追い討ちを掛けられた。
盾と見神がそういう関係だと、はっきり知ることになったのだ。
二年前、盾の部下になって間もない頃、事件が起きて朝早く盾を迎えに行った。
その時、マンションの入り口で長身の初老の男とすれ違った。
なんとなく気になった。
マンションの住人が、朝の散歩に行くという態ではない気がした。
事件がひと段落した頃、もしかしたらと思って名鑑を捲って見た。
それで、見神だとわかった。
そうか、あの男が見神か。
久流須が県警本部に配属されて来た頃には、既に見神は退職していたので、直接の面識はなかった。
見神が盾のところから“朝帰り”したのだと思った。
実は、“制裁”の際に怪我を負った盾を心配して、引渡しの後に様子を見に来ただけだったのだが、
盾が警察学校に入る前から今まで、二人はずっと続いていると思った。
俺たちと寝たのだって、覚えてない。
俺の出る幕なんかないだろ、美弥木。
久流須は、盾に笑顔を見せなくなった。
「おにいちゃん」
そう呼んでいた。
なのに、顔と名前が思い出せない。
その子は、本当の兄ではない。
父親同士が親友で、長いこと家族ぐるみの付き合いのあった家の子だ。
お互いひとりっ子だったので、1つ上のその子は盾を弟のように可愛がり、盾もまたその子を兄と慕った。
同じ学年の子と比べると小柄だった盾と、自分の学年では一番背の高かった
その子とでは、実年齢以上の差があるように見えた。
盾は、よくその子に世話を焼いてもらっていた。
二つの家族で行った、海水浴にキャンプ。花火もドライブもスキーも。
はじけるような笑顔があった日々・・・。
ああ、そうか。
俺は久流須に「おにいちゃん」の面影を重ねていたのか。
十何年も経って、ようやく腑に落ちた。
盾が10歳の時、突然別れが来た。
「おにいちゃん」の一家が失踪してしまったのだ。
借金の連帯保証人である盾の父親に何の相談もなく、一家は夜逃げしてしまった。
そして、盾家の地獄が始まった。
事件後、最初見神は盾を引き取ろうとしたが、家庭を失っていた見神は養い親には不適格だった。
陰惨な経験をし、心に深い傷を負った盾は周囲と壁を作り、「むずかしい子」になっていた。
養子縁組の話も何回か出たが、結局一つも実を結ばなかった。
自分の罪に押しつぶされそうになっていた時、
通っていた中学の教師に性的関係を強要される事件が起きた。
他人をいたぶるのが好きなやつは、傷を負った人間を嗅ぎ分ける。
盾は十分成績優秀だったが、周囲と打ち解けられないところがあった。
その教師は、内申書の心証と引き換えに盾に関係を迫ってきた。
養護施設の生徒が、高校進学するために奨学金を必要とするのを利用しようとした。
かろうじて逃げ出したのに、養護施設近くまで追いかけてきて、盾を自分の車に押し込もうとした。
止めてくれたのが、見神だった。
養護施設の子にはかばってくれるやつはいない、と思っていた教師は、
警察手帳を突きつけられてあわを食って逃げて行った。
盾は、自分が震えているのが、怒りのためなのか怖れのためなのか、わからなかった。
見神が現れるのがもう少し遅かったら、自分はあの男を殴っていたかもしれない。
握り締めたままの両手の拳を、見神の大きな掌が包み込む。
「よく我慢したな。」
見神には、盾が暴力の衝動と戦っていたのがわかっていたのだ。
名駄偽の血のにおいと、肉を裂き骨に当たる包丁の感覚が蘇って、吐きそうだ。
見神が、盾の肩を引き寄せた。
盾は見神の胸に顔を埋めて、少し泣いた。
守ってくれる親のいない寂しさと惨めさ、理不尽な世間に太刀打ちできない自分の弱さが、
どうしようもなく涙となってこぼれた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回に続きます。
すみません、浄化ー話でございました。あ〜、どきどきします・・・。
>>57 この主従はやっぱり萌える!!
前スレから楽しませてもらってます
>>1 >長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
別に推奨であって義務ではないんじゃね。
完全オリジナルファンタジー。元ネタなし
親友同士・寄生生物・洗脳・介護・監禁・拘束・無理矢理?
構想30分ですが、ちょこっとだけ続きます。
どう見ても山なし・意味なし・オチなしの為の設定ですが、今回エロはありません。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| カマキリから生えてるハリガネムシを見て思いつくとか…。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| でも触手モノじゃないんだ、済まない。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ザケンナ ショクシュ ミセロ
| | | | ピッ (´∀`;)(・∀・ )(゚Д゚#)
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ある夜、俺は何かの気配を感じて目を覚ました。
半分寝ぼけたまま視線を巡らせると、隣のベッドで寝てるはずの親友が外へ向かおうとしているのが見えた。
それだけなら、何も問題ねぇ。トイレに起きたんだろう、で済ませられる話だ。
――だけど、俺は気付いちまった。
親友・レンの瞳が、いつもの銀色ではなく、アクアマリンの光を宿している事に。
身体中の血の気がさっと引いて、一気に目が覚めた。
慌てて飛び起き、レンの肩を強く揺さぶる。――畜生、こんな事があって堪るかよ!!
「レン!!おい、しっかりしろ!!」
「……ライ、ゼ?如何したんだ?何を…?」
驚いたように俺を見上げるその瞳からは、既にアクアマリンの光は消えちまってる。
…だけど。
言葉を交わすのももどかしくて、俺はレンの服の裾を掴んで、無理矢理引っ張り上げた。
「ばっ、馬鹿!!いきなり何するんだ!」
「何するんだじゃねぇよ…レンお前、『蟲』に寄生されてるじゃねぇか!何で黙ってたッ!!」
色の白いレンの下腹には、くっきりと紺色の紋様が浮かび上がっていた。
――この世界には、蟲と呼ばれる生き物が居る。
蟲は、うねうねしたミミズのでっかいのみたいな気色悪りぃ生き物だ。普通サイズでも3mくらいある。
目も耳もねぇ、知性があるとは到底思えねぇ外見だ。
どうやってか知らねぇが人間に寄生し、十分に成長したら腹を食い破って出て来る。
当然、腹を食い破られた人間は死んじまう。
寄生されると下腹に紋様が出て来て、それの濃さで蟲の成長度合いが判るらしい。
この紋様は、寄生度合いを示す一種のバロメーターだ。
寄生を防ぐ手段はねぇ。
「綺麗な水ばかり飲んでると寄生される」とか「見た目がいい奴は寄生されやすい」とか色々聞くが、どれも噂の域を出ねぇ。
体感として判るのは、「一度寄生された奴は、また寄生やすい」って事くらいだ。
ん?一度寄生されたら死ぬんじゃって?
いや、死なずに済む方法はある。
腹の中から出て来させねぇか、腹の中から出て来る前に蟲を殺しちまえばいい。
蟲が腹の中から出て来るには、ある条件を満たす必要がある。
一つは、十分に成長する事。もう一つは、水辺に行く事。
…そう。連中が腹を食い破って出て来るのは、水辺と決まってる。
蟲は水の中の生き物だ。陸に引っ張り上げてやると、干からびてすぐに死ぬ。
水場以外で出て来るのは、自殺行為だと知ってるんだろう。
「なら、水辺に近づかなきゃいい」と思いがちだが…此処が奴等のすげぇ所だ。
蟲は、ある程度成長すると、腹の中から宿主を操れるようになる。
操って、水のある所に行きたくって堪らなくさせるって話だ。
実際、これを我慢しようとして狂い死んだ人を知ってる。若くて綺麗な未亡人だった。
相当な覚悟で挑んだらしいけど…。まあ、それだけ強力なんだろうな。
だけど、腹の中で蟲が死ぬまで耐え切れれば助かるって話だ。
助かる方法は、もう一つある。ってか、こっちの方が手っ取り早ぇ。
腹の中に居る蟲を殺せば、水辺に行きたい衝動も消える。当然、食い破られもしねぇ。
今の所、虫を殺せると判ってるのは『精液』だけだ。他のモンじゃ駄目らしい。
要するに、後ろを一発ヤられちまえば助かるってわけだ。女でも、男でも。
――だけどそれには、一つ問題があった。
「………嫌だ。」
「レン、お前…ワガママ言ってる場合じゃねぇって事くらい解かってるだろ?」
「それでも嫌だ。…如何して俺が、女の様な真似をされなけらばならない。」
「このままだと死ぬんだぞ?!お前、それでもいいのかッ!」
「死ぬ気は無い。蟲が死ぬまで耐え切れば済むだけの話だ。」
ふいっと視線を逸らしたレンの横顔を眺めつつ、俺は深い溜息を吐いた。
命懸かってんのにゴネるか?普通。
――いや、予想通りっちゃ予想通りだけどさ。
銀の髪、銀の目。いくら日に当たっても焼けねぇ肌、華奢な体躯に整った顔。
やれ「男にしておくのは勿体ない」だの「そこらの女より綺麗」だの言われ続けたせいで、
レンは、『女っぽく見える自分』に深いコンプレックスを持つようになっちまった。
その結果『男らしくある事』に拘ってるし、かなりの努力も積んでたりする。
こんなに細っこいのに力は相当なモンだし、喧嘩もめっぽう強い。
身長も体格も俺の方が恵まれてるが、ぶっちゃけレンに勝てるとは思えねぇ。
…俺だって、そこまで弱くねぇとは思うんだけど。まあ、程度の問題だと思う事にした。
でないと、自分が惨め過ぎる。
とにかく、(外見はどうあれ)レンはものすごく男らしい。それから頑固だ。
一度言い出したら聞かねぇってのは、親友兼家族であるこの俺が一番よく知ってる。
現に、紋様がここまで濃くなる間、黙って一人で耐えてたんだ。
俺が反対しようがどうしようが、考え直したりはまずしねぇ。
誰かに頼んで無理矢理ヤってもらおうかとも思ったが、レンの強さを考えると簡単にはいかねぇだろう。
…ってか、そんな事してレンの恨み買ったら俺が死ぬ。
色々考えたが、俺も腹をくくる事にした。
「…しゃーねぇ。そこまで言うんだったら協力してやるよ。」
「流石ライゼだ。話が早くて助かる。」
溜息混じりにそう言うと、レンはにっと笑って応えた。
…見慣れてるはずのその顔が、なぜか胸をぎゅっと締め付けて来るような気がして。
「死ぬんじゃねぇぞ」って言ったら、「ああ」という短い返事と、予想してたより真剣な眼差しが返って来た。
その日から、俺達と蟲との闘いが始まった。
レンの目に現れたアクアマリンの光。…それは、蟲がレンを操れだしたって事を意味してた。
要するに、水場さえあればいつ蟲に食い破られてもおかしくねぇって事だ。
…気付けてよかったな。マジでギリギリのタイミングだったけど。
だから、俺が最初にしたのは、レンの周囲から徹底的に水を遠ざける事だった。
と言っても、完全にじゃない。そんな事をしたら、蟲が死ぬ前に脱水症状起こしてレンが死ぬ。
蟲はでかい。その身体が完全に浸かるくらいの水がない場所では、出て来ねぇって聞いた。
だから、コップはセーフ。手桶もセーフ。
タライはセーフかアウトか悩んだけど、万が一アウトだったらシャレにならねぇから片付けた。
部屋には内側からだけど錠を掛けて、鍵は俺が持ってる。
どこに隠し持ってるか、レンにも知られないようにした。もちろん、同意の上で。
特に何事もなく、丸一日が過ぎた。
今は、沐浴が出来なくなっちまったレンの身体を拭いてやってる所だ。
手桶に湯を張り、タオルを固く絞る。
もう長い事一緒に暮らしてるし、下着姿で居るのを見ても今更何も感じねぇ。
だけど、こんな事をしてやるのは流石に初めてだったから、ガラにもなく緊張した。
タオル越しに触れた白い肌からは、薄い筋肉と骨の感触が伝わってくる。
――元から細っこい奴だけど…少し痩せたんじゃねぇか?
「…こうしていると、何だか重病人にでもなった気分だな。」
「ちょっと気ぃ抜いたら死ぬんだぞ?十分重病人じゃねぇか。」
「違いない。」
くつくつと笑うレンを見てると、コイツの体内に蟲が居るなんて悪い夢なんじゃねぇかって気になってくる。
こんな細っこい身体の中に、あんなにでかい蟲が入ってるなんて思えねぇ。
…例え、よく見ると下腹が少し膨らんでるようにも見えるとしても。
だけど…紋様は、最初に見た時より確実に濃くなってやがる。
思わず睨みつけちまいつつも、身体を拭いてやってたら…突然、変化が起きた。
濃紺色だったはずの紋様が、淡いアクアマリンの光を放ち始める。
ぼんやり光ったかと思うと、
反射的に見上げると、レンの瞳にも同じ光が宿っていた。
――まずい。
そう思った次の瞬間、俺はレンに思いっきり突き飛ばされた。
だけど、床に転がりながら感じたのは違和感。
――俺、今…思いっきり突き飛ばされた、よな?
思考を巡らせている間に、レンは扉に辿り着き、力尽くで錠を開けようとし始めた。
そんなんで開くわけねぇはずだけど、万が一って事もある。
慌てて立ち上がると、レンの肩を掴んで床に引き倒した。
柔らかく癖のない銀髪が、床に散らばる。
すぐさま馬乗りになって、細い手首を掴んで床に押し付けた。
アクアマリンの光を宿したまま、抵抗の素振りを見せるレン。
――ああ、やっぱりそうだ。コイツ…。
「ライゼ…?俺は一体…。」
戸惑いを含んだ声で我に返ると、銀色の目が俺を見上げてた。
さっきまで感じていた、手首を押し返そうとする力も今はねぇ。
取りあえず、正気には戻ったらしい。予断は許されねぇ状態だけど。
「…蟲に操られてた。覚えてねぇのか?」
「いや、朧気には。外に出る事しか考えられなくなって…。そうか、あれが……。」
呟き、眉間に皺を寄せる。
辛そうにも見えるし、何か思案してるようにも見える顔。
…言いてぇ事は色々あったが、俺はレンの次の言葉を待った。
「…ライゼ、頼みがある。」
「何だ?言えよ。」
「俺を縛り付けてくれないか?自力では、絶対解けない様に。」
「なっ…?!」
「頼む。…意思が勝てなくなり始めた以上、そうするしか無い。」
「レン……。」
「今回は運良く取り押さえて貰えたが…。お前と俺の腕力を考えると、こんな幸運はいつまでも続かない。」
「…それなんだけどさ、レン。」
レンの視線を避けるようにして、俺はさっき立てた仮説を口にした。
親友を縛り上げるなんてしたくねぇ。その一心で。
――だけど、それは間違いだった。
「お前……力、弱くなってねぇか?」
レンの瞳が見開かれ、表情が歪む。
それを見て、ようやく俺は、レンのプライドを傷つける発言をしちまった事に気付いた。
当然だ。
レンは『男らしくある事』…ひいては、『強くある事』に相当執着してる。
俺より弱いなんてのは、レンの中での絶対許せない事のTOP5入り確実な話だ。
…例え、その原因が何だったとしても。
「ッ、いいから縛れ!!」
部屋中に、レンの怒声が響き渡る。
やっちまった。…完全に意地になってやがる。
「俺は弱くなってなんかいない!!お前なんて簡単に振り解けるんだ、ライゼ!縛れと言っているのが解からないのか?!」
今は操られてねぇはずなのに、組み敷いた身体は、さっきよりも激しいんじゃねぇかってくらい抵抗し始めた。
それでも俺を振り解けねぇって事実に激昂して、動きも声もどんどん大きくなっていく。
このまま続けさせたら、レンの身体が持たねぇ。
…力が弱くなってんのだって、ここまで耐え続けた事で体力を失った結果だろう。
あんなモンが身体の中に居て、平気で居られるわけがねぇんだ。
肉体的にも精神的にも、レンは少しずつ追い詰められてる。
なるべく、表に出さねぇようにしてるみてぇだけど…それが分からねぇほど、俺たちの付き合いは短くねぇ。
俺の親とレンの親が流行り病で死んじまってから、ずっと二人で肩寄せ合って生きてきたんだ。
こんな事で死なせて堪るかよッ!!
「分かった、縛る!!縛ってやるから、大人しくしやがれ!」
そう言った瞬間、レンの身体からずるりと力が抜けた。
…ったく、やっぱり無理してやがったな。
レンの上から退いて身体を助け起こしてやると、「済まない」と小さく謝られた。
それは、俺が今まで聞いた事ねぇくらい弱々しい声だった。
C円
レンをベッドに横たえ、両腕を上げさせる。
そのままじゃ太すぎるので、タオルを縦に裂き、両手首を拘束していく。
…強く締めすぎねぇように。レンの細い指が、結び目に届いてしまわねぇように。
縛りつけた手首を、別のタオルでベッドの柵に固定する。
後から思えば、縛る前に服を着せてやった方がよかった気がするけど…正直、この時はそんな余裕なかった。
「こんな感じでいいか?」
「……。」
しばらく引っ張ったり動かしたりしてみた後、解けない事に満足したのか、レンは頷いた。
「そっか。なら寝ちまえ。」
他にする事もねぇだろうしと思って言った一言は、次の瞬間否定された。
「…駄目だ。」
「なんでだよ?」
「蟲が五月蝿い。気を抜くと、乗っ取られそうだ。」
思わず息を呑む。それって、つまり…。
「ずっと、頭の中で『声』がするんだ。…お前に気付かれた時は、その声を無視して無理矢理寝ようとしていた。」
――あの時から…いや、ああなる前から今まで寝てないって事じゃねぇか!!
「だけどお前、それじゃ…!」
「蟲が死ぬまで、眠る訳にはいかないな。」
蟲の寿命なんて詳しく知らねぇが、今日明日の話じゃねぇのは確かだ。
それまで寝ないで耐え続けるなんて、どう考えても無理だ。本気で狂い死んじまう。
「…なあ、もうやめようぜ。今からでも誰かに」
「ふざけるな!!死ぬ気は無いが、あんな事をされるなら死んだ方がマシだ。」
俺の言葉は、即座に否定された。
レン自身、無謀だって事には気付いてるんだろう。ただ、折れる気は全くねぇってだけで。
折れるくらいなら、死んだ方がマシだって思ってやがるに違いねぇ。
俺は、レンを死なせたくねぇ。それだけなのに。
――どうしろって言うんだよ。
身体は蟲に寄生されて、心は追い詰められて。
服もほとんど着てねぇまま、両腕を縛り上げられて。
それでも、レンは俺を睨むのをやめねぇ。…真っ直ぐな銀の眼差し。
強い意志を宿したそれに耐えられそうになくて、思わず視線を逸らせた。
…訪れる、気まずい沈黙。
重苦しいそれを破ったのは、レンの方だった。
「ライゼ、もし俺が……。」
柔らかい調子に変わった声に、顔を上げた。
さっきとは違って、銀の瞳は穏やかな光を湛えてる。
「もし俺が、蟲に負けてしまったら…その時は」
いや、穏やかになったんじゃねぇ。これは――。
「……俺を殺せ。食い破、られる…前に、な。」
――今にも消えそうなんだ。
「頼ん、だ…ぞ。ライ………ゼ」
「ッ、レン!!しっかりしやがれ、縁起でもねぇ事言うな!」
肩を引っ掴んで、滅茶苦茶に揺さぶる。
畜生!どうしてコイツは、ロクでもねぇ頼み事ばっかしやがるんだッ!!
いくらなんでも、そんなの聞けるわけねぇだろ!?ちったぁ考えろ!
情けない声で名前を呼び続ける俺を見上げて、レンが小さく微笑んだのが分かった。
その唇が、形だけで謝罪の言葉を紡ぐ。
――目を見開いて固まった俺は、とんでもなく間の抜けた顔をしてたに違いねぇ。
ゆっくりと、瞼が閉じられてく。
レンの身体から力が抜け、首がかくんと落ちるのを、俺は絶望的な気持ちで見つめていた。
支援
支援ありがとうございます。
でも、さるさん引っ掛かってしまった。ごめん。
次回から9回以内で収まるように組み立てるよ。
少しでも、姐さん達の燃料になりますように。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| とりあえず前半終了。後半はほぼエロオンリー。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 勢いで始めたら、思わぬ長さになった。今は反省している。
| | | | \
| | [][] PAUSE. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ケイカクセイノ ナイ ヤツダ
| | | | ピッ (´∀`;)(・∀・ )(゚Д゚#)
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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浄化ー、捏造話、Part.2です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中学を卒業すると、盾は養護施設を出た。
見神が保証人になって、アパートを借りてやった。
奨学金が貰えたが、見神からの援助もあった。
高校入学前にいろいろ必要なものを揃えてやろうと思って、
見神は引越しの翌日も盾の部屋に行った。
冷蔵庫と洗濯機、テレビなどは前日に見神が手配していた物が届いていたが、
盾は、少しの衣類と何冊かの本の最小限の物しか持っていなかった。
これはいかん。
いまどきの子供が当然のように持っているものが、何もないではないか。
欲しい服なんてないです、困惑した声を出す盾を無理矢理連れ出してみたものの、
見神自身どんな店に連れていったらいいものかわからなかった。
結局、伊図津に同じ年頃の娘がいるのを思い出して電話して、
彼の娘から教えてもらった店に行った。
その店で適当に選んで買おうとしていた時、伊図津がその子を連れて現れた。
圧倒されて手も足も出ない状態の盾に、あれこれと試着させたのは
こんど高二になる伊図津の長女だ。
「あー、かわいい!」
「こっちはカッコイイ!!」
「両方だな。」
盾の買い物が済むと、見神は喜んで彼女に好きなものをおごってやった。
後で長女は伊図津に言ったという。
「彼、もうすこし背伸びたら、すごくモテるようになるね。」
「そういうもんかー?」
伊図津は、見神が後見している少年の容貌を思い返した。
中背ですらりとした体つきに、色白で肌理が細かく、さらさらの黒髪と長い睫毛に翳のある表情。
大きな黒い瞳が、女の子みたいだった。
十年後、自分の部下になるとはまったく予想出来なかった。
一旦アパートに帰って洋服を片付け、次は食料を買って戻った。
見神は普段、外食だ。
二人とも長い間、家族の食卓と呼ぶものから遠ざかっていた。
久しぶりに食事を作った。
男二人で作った夕食は、ちょっと見た目は良くなかったが、十分旨かった。
流しに並んで洗い物を片付ける。
「結構疲れたな。」
「お茶淹れますね。」
「ん、すまんな。」
向かい合って食後のお茶を啜りながら、帰るのが億劫になっている自分に見神は気づく。
このまま、この部屋に居たい。
妻子の事件後、見神の自宅はからっぽだ。
本当はこの部屋より殺風景な生活をしている。
俺のようになるな。
俺と違って盾はこれからだ。
そう思って、自分を奮い立たせる。
「さて、帰るか。」
「え?」
「戸締りはちゃんとしろよ。火の用心もな。」
と見神は立ち上がり、玄関に向かおうとした。
「見神さん!」
盾に呼び止められて振り向くと、その胸に盾が飛び込んできた。
震えている。
「うん?どうした、一人で寂しくなったか?」
盾は弱弱しくかぶりをふるだけだ。
そっと抱きしめてやって、盾が落ち着くのを待った。
震えが収まってきた頃、盾はうつむいたまま
「抱いてください。」
とやっと口に出した。
「俺、本当に見神さんに感謝しています。
生意気なこと言ったこともあったのに、ずっと気にかけてもらって・・・。
こうするしか、俺、見神さんに返せるものがない・・・。」
そう言った盾を、見神は笑って制止した。
「おまえは、警察官の俺を犯罪者にする気か?」
「え?」
「加奈河県には青少年保護育成条例というものがあってだな、
要するに、大人は結婚するつもりがなかったら18歳未満とセックスしちゃいかんのだ。」
「そんな法律があるんですか?」
「おお、本当だ。男同士で結婚はないからな。
まあ、おまえが高校を卒業しても気持ちが変わらなかったら、
そうだな、その時は考えてやらないでもないが、今はダメだ。」
「・・・そうですか。」
気落ちした盾の耳に、そっと見神が囁く。
「その時は、後ろはヴァージンがいいな。」
その言わんとするところの意味を知り、盾は赤くなった。
見神がエロおやじだったから、そう言ったわけではない。
自傷行為に走るかもしれない盾を、なんとか牽制したかったのだ。
周囲となじまなかった盾には、エロ話で盛り上がるような
同年代の友達がいなかったので、そちらの知識や経験には疎いままでいた。
だが、例の件で、一気に男同士でもセックスが出来ることまで知った。
高校進学と引越しでばたばたしていたのも、もう終った。
高校生で一人暮らしとなれば、今までより世間の恐ろしさを知るだろうし、誘惑もあるだろう。
ぱっと見た目は地味だが、盾には何か人を惹きつけるものがある。
それに聡い子だ。
盾の両親を殺した名駄偽が、盾を一緒に殺さずにいた理由にたどり着くのも時間の問題だ、と見神は考えたのだ。
容赦ない取立てに、盾の父親が疲労困憊したころを見計らって、
名駄偽は、借金の返済の猶予と引き換えに、利子代わりに息子を差し出せと言って来た。
父親はその意味を知り、真っ青になって拒否した。
取立てに来た名駄偽が、舐めるような目つきで息子を見ていたのを思い出し、心底ゾッとした。
この日本ですら、毎年何百人という子供が行方不明になっている。
家族まるごと失踪したもの、一家離散してしまったもの、
そして、人身売買されたと思しきもの・・・。
闇に消えた子供は、二度と日の目を見ない。
盾の両親殺害で逮捕されるまで、名駄偽に殺された人間は何十人といた。
だいたいが、保険金を掛けられて自殺を強要された。
見せしめのために殺されたと疑わしい人達も何人かいたが、
そういう場合、遺体はまったく発見されなかった。
保険金を巻上げられたうえに、売り飛ばされたと思しき子供達もかなりいる。
名駄偽は、自分の組織のそれ専門の人間に引き渡しているだけのようだったが、
引き渡す前に、自分の好みの子は味見しているという、イヤな噂もあった。
消えた子供達の一切の消息が知れない。
名駄偽とその組織の隠蔽は巧妙で、結局起訴出来たのは盾の両親殺害の件だけだった。
盾の両親は、盾を連れて逃げようとして殺された。
自分が犠牲になっていれば両親が死ななくて済んだと思ったら、自分で自分を壊しかねない。
見神が刑事になることを勧めてから、盾は自分と同じように犯罪被害にあって
苦しんでいる人のために何かしたい、と考え始めていた。
その盾を、暗闇に戻したくなかった。
三年の間に、好きな女の子でも出来れば考えも違ってくるだろうと思ったのだ。
その後、そんな約束をしたことはすっかりなかったように、二人とも触れなかった。
盾は最初、高校を卒業したら警官になるつもりでいた。
見神はそれを聞いて、成績優秀なのだから、もっと上を目指せと言った。
盾も見神のアドバイスを受け入れ、進学する道を選んだ。
高校の三年間は、勉強と周囲との壁を崩すのに費やされた。
大学に入学する少し前、三年前の約束どおり、盾は見神に抱かれた。
見神に言われたとおりでいた。
関係を持つ前、見神はまた盾に約束させた。
大学に行ったら、女の子とも付き合うこと。
警察官になるのだから、自分との関係は大学を卒業するまでの期間限定だということ。
それでもよかった。
見神の体の下で、その体温と重さを受けながら抱きしめられていると、
冷え切った心と体の隅々に温かい血が通うのが感じられ、ただただ安心出来た。
「犯罪は、大体、色と金絡みだ。恋愛もしたことのない人間に、事件の裏なんてわからんぞ。
無理して付き合う必要もないが、何事も経験だ。他人の恋愛もよーく観察しておけ。」
なるほど。
ほどなく、付き合って欲しいと言う子が現れた。
好きでもきらいでもなかったのでやんわりと断ったが、
恋人がいないのならあきらめられない、と食い下がられた。
見神のことを言うわけにもいかず、試しでもいいのなら、
という条件を彼女が受け入れたので付き合ってみた。
見神が自分にしてくれたことを応用してやると、盾クンって上手ねと言われた。
そんなものかな。
見神はもっと自分をよがらせるのに。
自分が抱くのも悪くないが、抱かれると気絶するまでの快感を味わえる。
ただ、そうなるのは見神以外ではイヤだった。
心の中で他人に対して身構えているところがあって、女の子が自分に身を任せてくるのはともかく、
自分が身を任せられるのは見神のように心を許した男でなければいやなのだ。
名駄偽に対する恐怖心と、中学のあの教師に対する嫌悪感が残っていたのかもしれない。
男に抱かれている男は他の男も惹きつけるのか、何人かに声を掛けられた。
そちらは、好きな人がいるから、とみんな断った。
のちの話になるが、心を許して関係した女性は、佐衛子だけだったかもしれない。
女の子の方は、何人か付き合っては別れているうちに、後腐れなく付き合える子と
そうでない子の区別もつくようになった。
少しずつ友人も出来て来た。
アルバイトもいろいろな職種を試した。
学生生活の内でも外でも人間観察をした。
笑顔も少しずつだが増えた。
凍っていた時間が、少し溶け出してきたのかもしれない。
その熱を与えてくれたのは、見神だ。盾はそう思っている。
見神が転勤の合間に会いに来てくれると、朝まで離れなかった。
見神がしてくれたことを、他の女の子にしてやったりする盾だが、
逆に女の子にしてもらったことを見神にもしてきたりするので、見神は苦笑した。
相変わらず本ばかりの盾の部屋だったが、高校生時代と比べると、ジャンルもかなり拡がっている。
一人暮らしを始めた頃は、白いシャツとジーンズの他は、黒い制服しかなかった
盾のワードローブにも、今はいくつもの色彩がある。
アルバイトで料理の腕も上げ、見神の好みに叶う和食を食べさせてくれる。
最初思ったのとは違った関係になったが、見神は盾の成長が純粋に嬉しかった。
盾の大学卒業で、その関係にはピリオドを打った。
これからは、同じ警察の先輩と後輩だ。いや大先輩だ。
見神は警視監として、加奈河県警に戻って来たのだ。
いつか見神の助けになるような刑事になる。
盾にはそういう目標があった。
キャリアになることも出来たと思うが、盾はノンキャリアとして
現場に立つ道を選んで、警察学校に進んだ。
新しいスタートは順調だった。
同じ班になった美弥木と佐衛子とは、我ながら驚くほどのスピードで親しくなった。
美弥木は、奈津記の名のとおりにまっすぐで明るい男だった。
盾とはいろいろな面で正反対だったが、逆にそれが心地よかった。
佐衛子は、盾のいままでにはいなかったタイプだ。
華奢な外見とは正反対にさばさばとして、警察学校の規定で髪を短くしているせいか、
へたをすると男の盾より男らしかったりした。
それと、佐衛子も肉親との縁が薄いらしい。
大学入学の前後に両親と死別して、兄弟もいない。
佐衛子には、両親が殺されたことが素直に口に出せた。
久流須とは班が別だったが、美弥木といい競い合いをするようになったせいで、
盾も次第に親しくなった。
どうしてだか、盾には久流須の笑顔がまぶし過ぎた。
どうしてだろう・・・。
両親を殺害された後、盾はよくうなされた。
繰り返し繰り返し、あの日の出来事が鮮明に蘇る。
成長と共に次第に収まってきてはいるのだが、雨の夜がダメなのだ・・・。
見神に抱かれていると安心するのか、雨の夜でもうなされなかった。
女の子の部屋に泊まった時は、ダメだった。
それで盾の方から頼んで別れた子もいる。
警察学校では全寮生活をしなければならないので、少し心配していた。
小さくて大して壁も厚くないが、一応個室だったので、ほっとした。
入学当初は忙しさにまぎれていたのだろう、しばらくはうなされることもなかった。
このまま、卒業までなんとか・・・。
自分は一生こうなのだろうか?
この痛みと苦しみは、もう盾の人生そのものだ。
逃れようとは思わない。
だが、ふつうの人と変わらないように友と語り、笑う自分も自分だ。
見神は明るくなったと安心しているが、心の中の闇は依然として存在している。
陰と陽の二面性を持っているようで、我ながら自分が恐ろしかった。
俺はものすごいうそつきだ。
だから、美弥木や久流須に憧れるのかもしれない。
外泊が許される時期になると、盾も許可を取って自分のアパートに戻った。
警察学校を卒業し配属されたら警察の独身寮に入るだろうから、そうしたらこの部屋ともお別れだ。
窓を全開にして部屋の空気を入れ替え、大きく体を伸ばした。
次に外泊許可を取って戻る時、美弥木と駅まで一緒になった。
いろいろ話しているうちに、飯食って行こうと美弥木が言い出した。
「ええ、いいの〜?家で用意して待ってるだろ?」
「近所で不幸があってお通夜に行くから、適当に済ませて来てって、おふくろから電話があってさ。」
「そうなんだ。じゃあ、なんにする?」
話が弾んで、結局盾の部屋に美弥木を泊めることになった。
入学してからうなされていなかったし、昨夜見た週末の天気予報も曇りと言っていたし、
と盾は自分の不安を押し込んだ。
その夜は楽しい夜だった。美弥木は話上手で、盾をまったく飽きさせなかった。
美弥木の年の離れた妹の話も、女の姉妹に縁のない盾には楽しかった。
二人が眠ったのは、だいぶ遅くなってからだった。
残念なことに予報ははずれ、やがて降り出した雨が次第に雨音を大きくしていった。
盾は美弥木に揺す振られて、ガタガタ震えながら目を覚ました。
「盾、大丈夫か?」
「美弥木・・・。」
「すごくうなされてたぞ、おまえ。」
「ん、ごめん、ここんとこ大丈夫だったんだけど・・・。」
「よくあることなのか?」
「前は・・・。」
「すごい汗だぞ、熱があるんじゃないのか?」
「大丈夫・・・。」
盾はベッドに起き上がったが、まだ半分自失しているようだった。
美弥木がタオルを取ってきて、顔の汗をぬぐってくれた。
パジャマの前を開き、首すじから胸へとタオルを当てる。
白い肌が大きく上下している。
「雨・・・。」
美弥木は、自分の方がドキドキしていると思った。
さきほどの盾の苦悶の表情が浮かぶ。
きつく目を瞑り、汗を浮かべ首を左右に振る盾の白い顔は、なんというか、色っぽかった・・・。
「盾、パジャマ替える、か、、」
盾は暗い目をしていた。こんな盾は初めて見た。
壮絶で、美しい目だ。
きれいな顔をしているな、とは思っていた。
だが、こんなに美しいとはわからなかった。
盾が、その目を美弥木に向ける。
一瞬、美弥木は体を引きかけた。
盾が自分から離れた美弥木の手を引き寄せる。
盾が唇を寄せてくると、美弥木は自分から盾をベッドに押し倒していった。
翌朝、目が覚めると、体の奥の違和感で美弥木との行為を思い出した。
まだ十分な準備が出来ていないのに、入れられてしまった。
美弥木のことは好きだ。でも友情だと思っていた。
体の関係を結ぶつもりはなかったのに、すがってしまった。
こうなったことで、美弥木は自分から離れていくかもしれない。
隣で眠る美弥木が目を覚ますのが、盾には怖かった。
ともかくシャワーでも浴びようとベッドから降りかけると、背後から美弥木に抱きしめられた。
「好きだ。」
「美弥木・・・。」
「おまえは?」
「・・・うん、俺も・・・。」
うそではない。だが、なんだろう、この落ち着かない感じは。
そのまま、ベッドに引き戻された。
寮内で行為に及ぶわけにはいかないので、外泊許可が取れた休日に朝まで絡み合った。
美弥木は男同士でするのは初めてだったが、すぐに慣れて盾を失神するまで追い詰めるようになった。
元々を開発していた見神のおかげで、盾が感じやすい体になっていたのもあるが。
「盾、おまえ・・・。」
美弥木が動くのを止めた。
気を失う寸前まで行っていた盾は、しばらく状況を理解することが出来なかった。
「え?」
美弥木は呆然と盾の顔を見下ろしている。
盾はまさか!と思った。
動揺が顔に出たのだろう、美弥木が顔をそむけた。
「・・・久流須に、抱かれたいか?」
顔を背けたまま、美弥木は搾り出すように言った。
「美弥木、俺・・・。」
美弥木は、盾の体から離れた。
盾自身、久流須の名を呼ぶまで、自覚はなかったのだ。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン! 次回に続きます。
>>115 続きをーーーーっ!早く続きをーーーっ!
1のときから全裸で待ってます。
盾さん、魔性だ。
>>115 姐さん
だめだよ動悸が止まらないよ…!!!
盾さんが無自覚魔性すぐるハァハァ
自分来盾本命なので前のめり正座で
続きお待ちしてます。
前スレ316の続きです。携帯からなので、改行がおかしいかもしれませんがご容赦を。
銀河天使2の三侯/爵で摂/政受け3P。誘い受け、獣姦(蛇)要素・エロあり。
捏造設定満載につき注意。
細く長い舌が、薄闇の中でちろちろと揺れる。
いつしか鎌首をもたげていた白蛇の後頭部に、皺の刻まれた指がそっと触れた。
「……気になるか? あの男が」
体温の存在しない身体を優しく撫でながら、ベネディクタインは愛蛇に問う。色眼鏡の
奥の瞳を細め、慈しむように白い皮膚をなぜる様は、さながら初孫を愛でる翁のようだ。
対する蛇もまた、肌をくすぐる指に甘えるかのように身をすり寄せ、円らな瞳で彼を見上げる。
表情など存在するはずもないその双眸にねだるような色を感じ取って、老侯は唇を笑みの
形に歪めた。
「全く……仕方のない子だ」
肩を竦め、ベネディクタインは白蛇へと掌を差し出す。言葉では不承不承を装いながらも、
その声色はどこまでも優しく、相手の我儘を積極的に叶えてやろうとする意思が感じられた。
まるで女性をエスコートするかのように差し伸べられたその手に、蛇は躊躇うことなくよじ登り、
腕を伝って彼の首元まで這い上がった。
こちらの頬に額をすり付けてくる、愛しい生き物に微笑みかけて、ベネディクタインは腰を
浮かせる。
床板の軋む音に気が付いたか、カルバドゥスがそこで不意に視線を寄越した。自分達の
元へ歩み寄ってくる男の姿を認め、彼はくっと唇の端を吊り上げる。
「おや……これはこれは侯爵殿。何か御用ですかな? もしや、貴殿もこの戯れに参加なさる
おつもりで?」
先刻の意趣返しとばかりに、嘲るような口調で問いかけてくるカルバドゥス。暗に、
ベネディクタインの年齢とそれに伴う肉体の衰えを揶揄していることは、その表情から見ても
明らかだった。だが、ベネディクタインはその安い挑発をあっさりと聞き流し、それどころか、
微笑すら浮かべてカルバドゥスを見下ろしてくる。
「将軍殿、摂政殿のお体をこちらに向けては頂けぬか? ……面白い、余興をお見せしよう」
「余興?」
「ああ。そうそう滅多には見ることの叶わぬ、世にも珍しい見世物だ……貴公も必ずや、
お気に召すことと思うが?」
てっきり腹を立てるものと思っていた相手の反応に困惑と不満を覚え、カルバドゥスは
かすかに眉根を寄せる。そんな彼の顔を見下ろしたベネディクタインは、珍しく、愉快そうに
微笑んでみせた。
束の間頬に触れた冷たい感触に、ジュニエヴルの意識が覚醒する。どうやら、少しの間
気を失っていたらしい。
背中に感じる厚い胸板と、未だに体内で存在を主張する熱から、今の自分の状態を
おぼろげながらに察する。いわゆる、背面座位をさせられているようだ。
体の奥を貫いている杭は相変わらずの逞しさを誇っており、全く大した絶倫だと背後の
男の体力に思いを馳せる。苦笑か嘲弄か、知らず口の端を持ち上げたジュニエヴルの肌に、
また、冷感が触れた。
滑りを帯びたそれは人の手ではあり得ず、濡らした布地とも違う。先程とは違い、今度は
執拗に頬を撫でてくる得体の知れない存在に、ぼんやりとしていた思考が少しずつ冴え始めた。
「な、に……これ……」
行為を始めて以来酷使し通しだった喉は、既に掠れ果てて久しい。それでもなんとか声を
絞り出し、自身を抱きかかえる男に説明を要求する。
しかし問いに答えたのは、想定していたのとは全く異なる人物だった。
「さて……なんだと思われますかな?」
聞いたこともないような朗らかな声音で囁いて、ベネディクタインが耳元で笑う。その声色と、
予想もしていなかった距離の近さに驚いて、ジュニエヴルは顔を上げた。
どうしてここにいるのかと、恐らく目の前にいるはずのベネディクタインに尋ねかけようとした
刹那、頬に触れていた何かがするりと首筋を滑り降りてきた。
「やっ、ぁん……」
冷えた感触は火照った肌には心地良く、敏感な体を悦ばせる。自然と漏れた声に応えるかの
ように、冷感をもたらす何かはジュニエヴルの体に纏い付き、皮膚の上を這いずり出した。
四肢のあちこちに縦横に絡み付く、ぬるりとした縄のような、それ。すぐ側で聞こえる嗄れた
笑い声から、その正体を直感的に悟り、ジュニエヴルは思わず呟く。
「これっ……ひょっ、として……ぁ、んっ」
「如何にも……蛇に抱かれるのは初めてですかな? 摂政殿」
胸を這い上がって来た蛇の腹が花芽をこすり、ジュニエヴルは不意打ちの快感に身を捩る。
反射的に仰け反ったジュニエヴルの頤を掴み、ベネディクタインは鷹揚に頷いた。
「そういえば、先程の質問にまだお答えしておりませんでしたな……我輩が女を囲っている
という噂、確かに事実に相違ありませぬ……ただし」
青年の頬を指先で撫で、彼はそこで言葉を切る。そしてたっぷりと勿体を付けてから、
稚気の混じった明るい声で言葉の先を述べた。
「実際に女を抱いておるのは、我輩ではなくこの子なのですがな……」
主の言葉を証明するかのように、蛇はその身を蠢かせ、ジュニエヴルの身体を全身でもって
愛撫していく。息継ぎと喘ぎに開きっ放しの口唇から唾液が零れ、顎を掴む老侯の指にまで
垂れ落ちた。
「ぁ、ぁんっ……ふ、ぅ……っ」
胸の頂きを押し潰すように刺激されて、背筋がぞくぞくと震える。人の肌とは明らかに違う、
滑りを帯びた冷たい感触が施してくれる愛撫は、思いの外丁寧で巧みなものだった。
限界が近付いていた体に、再び火を付けるには十分過ぎる程に。
犯され蹂躙され、泥のように重い四肢を投げ出し、それでもまだ与えられ続ける快楽に
息も絶え絶えになりながら――しかし、ジュニエヴルは。
目隠しをされた顔が、口元だけで微笑む。ぞっとする程、凄艶に。
「フフッ……ね、もっとして……? 蛇くん……」
甘く囁かれた言葉の意味を理解してか、否か。白蛇は細い舌を差し出し、弧を描く唇を
ちろと舐め上げる。
それを合図としたかのように、身体に纏わり付く蛇の動きが苛烈さを増した。汗に濡れた
肌の上を自在に滑り、鋭敏な箇所を狙って責め立てていく。
「ふあっ、ぁ、く……! ぁ、ぁんっ……いいっ……それ、気持ちいい……! あっははッ……
キミ、上手いよ……すっご、く……!」
喘ぎ交じりに告げられる卑猥な言葉に、血色を透かした双眸は輝きを増す。可愛い愛蛇が
いつになく喜んでいることを察したベネディクタインは、くっと口角を吊り上げると、ジュニエヴルの
目の覆いを取り去った。
「ありがと……ベネディクタイン」
しばらくぶりに取り戻した視界に見慣れた老人の顔を捉え、ジュニエヴルは艶然と微笑む。
しかし、突然のベネディクタインの行動に、カルバドゥスはにわかに気色ばんだ。
「侯爵殿……! 勝手な真似は謹んで頂きたい! これはワシとジュニエヴル殿との間での
取り決めであってだな……!」
「カルバドゥス」
語気荒くまくし立てる言葉は、己の名を呼ぶ艶やかな声に容易く抑え込まれてしまう。
カルバドゥスは口を噤み、肩越しにこちらを仰ぐジュニエヴルを見つめ返す。至近から覗き込んだ
瞳が、妖しく輝いた。
「言ったじゃない……楽しもうよ……皆で、ね?」
幼子を窘めるように告げると、ジュニエヴルはおもむろに腰を揺らめかせ、咥え込んだ
カルバドゥス自身を刺激してきた。ぎゅっと強い力で締め付けられ擦られて、思わず呻き声が漏れる。
「ぐ……!」
ただでさえ、先刻からずっと動かずに堪えていたのだ。待ち望んでいた快感を受け、肉棒は
更に硬く太く膨張していく。
知らず奥歯を噛み締めながら、カルバドゥスは再びジュニエヴルを見た。艶っぽく
潤み切った瞳で、真っ直ぐにこちらを射抜いてくる青年の顔を。その眼差しは、つい先程の
弱弱しさなど幻であるかのように、強い。
これが本当に、先刻まで泣き喘いでいた男の目なのだろうか?
困惑を禁じ得ないカルバドゥスの顔を見つめながら、ジュニエヴルは笑い、そして言う。
掠れ切った声で、肩で息を吐きながら、歌うように。
「ふふふ……ほら、動いていいよ? まだし足りないでしょ……? ちゃぁんと、最後まで
付き合ってあげる……もちろん、キミにもね」
言葉の最後は、首元を這いずる白蛇を見下ろしながら呟かれた。賢い蛇はジュニエヴルの
言に答えるかように、鎌首をもたげて青年を仰ぎ見る。そしてそのまま、主であるベネディクタイン
にも視線を向けた。
赤々と輝く眼が伝える声なき声を聞き、狡猾で知られた老人はただ優しく微笑む。
「くっくっく……我輩とも一緒に遊びたいか? 本当にお前は、甘えたがりでいかんな」
「キミが甘やかすからなんじゃないの? 人間不信の侯爵殿も、中々どうして、飼い蛇には
甘いと見える……ホント、珍しいもの見ちゃったなぁ」
普段の言動からはとても想像できない甘い態度をからかい、ジュニエヴルはくすくすと
肩を揺らした。
揶揄されたことが不愉快だったのか――あるいは、愛蛇との語らいに水を差されたのが
気に入らなかったのか――ベネディクタインはたちまち表情を険しくし、ジュニエヴルを睨む。
「口を挟まないで頂きたいですな、摂政殿。これは、我輩とこの子の問題……貴殿には
関係のないことだ」
「別にそんなつもりじゃないよ、ただ微笑ましいなと思っただけ……で、どうするの? 可愛い
蛇くんのお願い、優しい優しい侯爵様は聞いて下さるのかな?」
にやにやと笑いながら、ジュニエヴルは挑むような目でベネディクタインを見据えた。一緒に
なってこちらを見つめてくる蛇の頭を軽く撫で、老人はその指でジュニエヴルの唇を撫でる。
私怨
そして、静かに口の端を持ち上げた。
「そんなもの……貴様に言われるまでもないわ、若造が」
笑みと共に吐き捨て、ベネディクタインはジュニエヴルの口内に節くれだった指を突き入れる。
唾液をかき混ぜるように口腔を犯してやれば、青年は喉の奥からくぐもった声を漏らした。
「しゃぶれ」
こちらから言うよりも早く、ジュニエヴルは口腔を蠢く指に積極的に舌を絡ませ、吸い付いてくる。
色眼鏡越しにベネディクタインの目を見つめて、青年は愉快そうに瞳を細めた。その意味する
ところを察して、老人もまた笑みを深くする。
「ふん……淫乱が」
楽しげに呟き、ベネディクタインは二本目の指を口内に差し入れた。主の心情を察してか、
ジュニエヴルに纏い付く蛇の動きもどこかはしゃいでいるように見える。
「何を呆けておるのだ、将軍よ……貴公も楽しむがいい。この男を自由にできる機会など、
もう二度とないやも知れぬぞ」
一人動きあぐねていたカルバドゥスを見咎めて、ベネディクタインは気さくに語りかける。その
言葉に常のような皮肉は込められていなかったが、自分が気後れしていたことを見透かされた
ような気がして、カルバドゥスの頭にかっと血が上った。
「わ、分かっておる! 今! 今、そうしようと思っておったところだ!」
言い訳の常套句を喚き、カルバドゥスは力任せにジュニエヴルの体を突き上げる。痩せた体が、
しなやかに仰け反った。
「……そうでなくてはな」
声にならない嬌声を指に絡む舌の震えから感じ取り、ベネディクタインが口元を歪める。
そして出し抜けに、口腔を探る指を二本から三本に増やした。空いた片手は胸元に伸び、
蛇と一緒になって肌の上を這う。
逞しい怒張と、二つの手と、滑った皮膚に、身体の至るところを犯されながらジュニエヴルは――
ただどこまでも艶やかに、笑ってみせたのだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
支援ありがとうございました。
言い損ねましたがこれでおしまいです。スペースどうもありがとうございました。
ああ楽しかった! 三侯大好きだ!
驍宗×泰麒、続きです。
注意)ちょっと傲濫×泰麒あり。捏造次王出てきます。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
永和百二十三年九月、上、蓬山に赴き許されて位を退く。上、蓬山に崩じ、諱して献王と曰う。
泰王たること三五〇年、托飛山桑陵に葬る。
同十一月、戴主泰王昌郁立つ。泰王昌郁、姓は周、名を英、字は昌郁、文州陶源の人なり。
泰麒と盟約し、神籍に入りて泰王を号す。天命を受けて玉座に前み、元を本初と改め、周王朝を開けり。
「――主上、お茶にしませんか?」
王が轆轤を止めて立ちあがるのを待って声をかけると、王は笑って振り向いた。
「ああ、ありがとう。――良いんだよ、途中で声をかけてくれて」
「嫌です。せっかくの器がまた台無しになってしまいます」
火鉢の湯を取り、水を足して手水の用意をしながら、泰麒は澄まして答える。
後宮の一室だった。といっても、二人の他に並んでいるのは焼かれる前の器と土ばかり。
床は土間、轆轤の他は火鉢に木製の卓と椅子があるだけの粗末な部屋で、
華やかな装飾は何もない。即位式で廉王廉麟に引き合わせたのが良かったのか悪かったのか、
漣のように後宮中が菜園と化したりはしていないが、後宮の建物の一つが王の工房に改装され、
すぐ隣の建物が王と麒麟の居室となっていた。
乍王朝時代には閉鎖されていた後宮の一部が開かれた一方で、正寝と仁重殿は閉鎖された。
主従揃って後宮に移ったことで、朝廷内には良くない噂も流れたが、実際には、政務の合間にこうして
器を作っているか、決済すべき書を二人で処理しているかのどちらか、というのが真実だった。
王が器を造形り、麒麟が彩色をし、出来た器は人を介して密かに陶器市に出す。
そこでどのような評価を受けたかに一喜一憂し、思考錯誤するのは楽しく、政務の合間を縫って
主従が工房で過ごすようになって、もう十年が過ぎていた。
当初こそ盲目の王が立つなど前代未聞、武断の王に慣れた朝は混乱したが、元々国が荒れること
なく王の交代が行われたこともあり、今では雲の上も下も、穏やかな時間が流れていた。
――そう、穏やか過ぎる時間が。
臥室に下がった泰麒は溜息をついた。
独り寝の広い衾褥の中では、否が応でも驍宗のことを思い出さずにはいられない。
昌郁は良い王だ。今は官の信頼も得ている。工房に籠る時間は長いが、安定した国で王がすべきことは
それほど多くなく、政務を疎かにしているわけでもない。
台輔として接する時には自分を頼ってくれるし、そうでないときは、自分を弟のように可愛がってくれる。
字は下されていないが、それは単に台輔という呼び方が馴染んでいるだけのこと。
器を一緒に作るのも楽しい――何の問題もないのに。
(……寂しい)
昌郁は臥室を訪れたりはしない。そういう関係ではない。
一度だけ、あまりの寂しさに王の臥室を訪れたことがあるが、熟睡している主の姿を見て、
結局そのまま帰ってしまった。あの時、自分は一体、何を期待していたのだろう。
(僕は、主上に抱かれたいのだろうか?)
自分に問うてみても、答えは見つからなかった。
寂しいのは確かだが、身体の関係が持ちたいのかどうかは分からない。
仮に身体の関係を持ってしまったら、蒿里という名以外には本当に何一つ、驍宗に遺せなく
なってしまう。それはそれで、驍宗の気持ちを裏切るようで、耐えがたいことに違いない。
(……時々、一緒に眠ってくれるだけで良いのだけど)
今夜のように、時々、どうしようもなく寂しくなることがあるのだ。
麒麟には意思など無いという。ただの天意の器だと。だが、新王を迎えて消え去るかと思っていた
驍宗の記憶は消えなかった。身体と心に刻まれた記憶が、寂しさとなって安眠を阻害する。
抱擁してもらいたい、そう願う相手が昌郁なのか、驍宗なのかはもう自分でも分からない。だが、
その衝動の根元にあるものは、驍宗と過ごした長い時間にあることは間違いなかった。
だが、そのことを昌郁に知られるのは怖かった。
自分が前王と身体の関係があったことは、当然王の耳に入っているはずで、登極後すぐに正寝を
閉鎖したのは、前王と自分の関係に嫌悪を抱かれたせいではないかとも思う。
本当の理由を怖くて聞けないまま、十年が過ぎてしまった。
もし、嫌悪を抱かせてしまったのなら、思い出させるようなことはしたくない。
「汕子。……ごめん。また、手を握ってくれる?」
普通の人間の何倍もの時を生きているのに、精神年齢は遠い昔から変わらぬ自分が情けないが、
他にどうして良いか分からなかった。
うとうとと眠っていて、懐かしい夢を見た。否、違う。これはただの記憶。
――鮮やかな色。懐かしい文字。
『へえ、これが蓬莱の書ねぇ。綺麗なもんだ』
持ってきた本に載った器の写真を眺めながら、琅燦は感嘆したように言う。
文州の土で磁器は焼けぬかと琅燦の元を訪れたのは治世百年を過ぎた夏のこと。
蓬莱から持ち帰った陶磁器の本を並べて、あれやこれやと話していると、この件につき
事前に了承を得ていた驍宗が様子を見にやってきた。
琅燦が繊細な絵の描かれた器の写真を示して、驍宗に言う。
『主上、土はなんとかなりそうだけど、文州、いや戴にこんなもんが焼ける陶工はいないよ。
どいつもこいつも気が短いんだから』
『構わぬ。最初は冬官府で作ればよい』
『うちで?』
『どうせ太平の世になって、冬器が余って官も暇であろう。やりがいのある仕事ではないか』
『暇人呼ばわりは聞き捨てならないけど。まあ良いでしょう。うちの官は勉強不足な奴が多いから、
良い機会だ。――それで、どんな器を作れば良いですか?』
『私は器の善し悪しは分からん。冬官で判断せよ。この件は大司空に一任する。
年明けまでに状況を報告せよ』
ごく短いやりとりで命じて去って行った王を見送って、琅燦は呆れたように言った。
『主上は陶工にはなれないね。気が短すぎる。そんなに早く職人が育つもんかい』
『驍宗様はそこまで要求されてはいないと思いますが』
『いいや、ああ言われたら、器の一つも見せないわけにはいかないだろうさ』
やれやれと楽しそうに笑ってから、琅燦が訊いてきた。
『主上が決めてくれないなら仕方ない。台輔はどんな器が良いかい?』
訊かれて、参考になりそうな写真を示した。
『戴の冬は寒くて白と黒ばかりだから、緑とか黄色とか赤とか、温かい色で、
花とか植物の絵柄が華やかなのが良いんじゃないかなとは思うけど』
『なるほどね』
『でも、僕はこれがいいな』
黒と白と赤で抽象画のようなものが描かれた器。一見ただの文様のようだが、
良く見れば描かれているのは黒毛に赤目のウサギである。硬質なようで良く見ると親しみやすい絵柄。
驍宗様みたいでしょ、と言うと、琅燦は声を上げて笑った。
十二月になって、冬官府の朝議の折に琅燦が驍宗に奏上と共に提示して見せたのは、まさにその器と、
鮮やかな緑の描かれた器だった。驍宗はその場では特に何も感想は言わず、引き続き精励せよと
言っただけであったが、その夜、臥室に呼ばれた際に問われた。
『あれを選んだのは蒿里であろう?琅燦のやつ、笑いを噛み殺しておったぞ。私はウサギか?』
『ええ。とても優しい方ですから。――でも、ごめんなさい。不敬でした』
ウサギは自分だ。王がいないと生きていけない、臆病で寂しがり屋な獣。
衾褥の上に座ったままでいると、驍宗が手招く。招きに応じてその胸に抱かれると、
頭の上から声が降ってきた。
『蒿里。私はそんなに優しくは無いぞ。現にこうして麒麟を巣穴に引きこんで喰ってしまうのだからな』
『喰われたがっているのは僕の方ですから、お優しいんです』
そう言って誘うように抱きつけば、くるりと身を翻した主の下に組み敷かれ、甘く喉を噛まれた。
『……撤回します。驍宗様はやっぱり虎です。優しい虎です』
くすくす笑って言うと、驍宗は喉から口を放し、代わりに笑う口元に軽い接吻をくれた。
『分かればいい』
そうしてまた、熱い幸せに満ちた夜が始まるのだ。
最初は怖かった。
自分の身体の隅々までも見られる羞恥と、身体を繋げる痛みにはなかなか慣れられなかった。
だが、慣れてしまえばその全てが主を感じさせてくれるもので、主を喜ばす何もかもが嬉しい。
こんなに淫乱な麒麟は他にいないに違いないと思いながら、与えられる快楽に酔う。
慈悲の獣なんてのは嘘だ。驍宗に抱かれている時は、他州が復興する中、荒廃に取り残されている
文州のことなど、一片たりとも脳裏には残ってはいなかったのだから。
『驍宗様…――あぁッ!』
快楽に真っ白になった意識の中、最奥に放たれた熱の感触を感じて、思わず笑みが零れる。
穢れに他ならないものを体内に受け入れて、喜びを感じている自分はもう麒麟ではないのかもしれない。
乱れた息のまま、主の胸にすがりついて、抱き返してくれる腕の中で溜息と共に囁く。
『……すきです』
驍宗の答えはいつも無かった。でも、抱き返してくれる温もりだけで十分だった。
この人になら殺されても良い。どんな最期でも受け入れよう。
でもできるなら、なるべく長く、この人と、幸せな国を生きていきたい。
そんなことを願いながら、主の腕の中で幸せな眠りについた。
――あの頃は、まさか生きて驍宗と分かれるなど、思いもしなかった。
文州に広めた陶磁器の職人の一人が、自分の新しい王になるなどとは。
――ああ、まだ夢を見ている。
そう思ったのは、驍宗の顔が目の前にあったからだ。
古い幸福な夢はもう覚めてしまったとばかり思っていたのに。
『……驍宗様』
声に出してその名を呼ぶだけで、胸が熱くなるのが分かった。
いつの夢だろうとぼんやり考えていると、驍宗の手が頬に触れた。
懐かしい、温かい大きな手が頬を撫でる感触が嬉しくて、うっとりと眼を閉じた。
『蒿里』
呼ばう声に、ぞくりと身体が戦慄く。眼を開けば、驍宗の顔が目の前にあった。
深紅の瞳。血の赤は恐ろしいが、この赤は大好きだった。
夢の中なら何も畏れることはない。強請るように泰麒は自分から口づけた。
『んッ……』
すぐに応えるように熱い舌が口腔に忍び入ってくるのを、舌を絡めて出迎える。
制限された呼吸に、記憶を取り戻した身体が一気に熱を帯びていく。
口腔を犯されながら、泰麒は圧し掛かってくる男の身体に腕を回し、抱きしめた。
(――ああ、なんて懐かしい。)
驍宗の手が器用に片手で寝間着の帯を解いて、絹の下の白い身体へと触れる。
横腹から腰へ、腰から尻へとゆっくり焦らす様に、あるいは慰める様に滑った後、泰麒の雄に触れた。
『はぁッ……驍宗、様……』
この十年、誰にも触れられたことのない敏感な場所を弄られて、身体が戦慄く。
夢にしてはリアルすぎる。
生々しい快楽に、ようやく何かがおかしいと思った。
微かな香と体臭の混じった慕わしい匂いの代わりに、獣の匂いを感じて、
違和感は一気に確信に変わった。――違う。驍宗様じゃない。この気配は――
完全に意識が覚醒した。泰麒は未だ自分の唇を啄んでいる男の肩を掴んで引き離した。
「傲濫!何するんだ!」
「……怒ったか」
するりと赤い犬の姿に戻って離れた傲濫が、いつもの声で問う。
素っ気ない口調だが、少しバツが悪そうな顔をしているので、溜息をついて語調を緩めた。
「怒ってはない、けど。なんでこんなことを」
「驍宗の名前を寝言で呼んでいた。驍宗が恋しいのだろうと思って、つい」
慰めようとしてくれたのだということは理解できた。
だが、それで納得できる程度の悪戯ではない。
「……僕が気づかなかったら最後までするつもりだったの?」
「泰麒が求めれば」
呆れて怒る気もしないとはこのことだ、と泰麒は思った。
寝言を理由に襲われたのではたまらない。
「こういうのは、求めるとは言わないよ」
乱れた衣服を直しながら言うと、傲濫は頭を垂れた。
「……申し訳ない」
「もう良いよ。でも、二度とこんなことはしないで」
頭を撫でてやると、傲濫はそのまま沈むようにして姿を消した。
使令を見送ってから、泰麒はもう一度溜息をつく。
――あの声、あの瞳、あの身体。
気配こそ違うが、あまりにも似ていた。
恐ろしいような、眩しいような。あの、熱い炎のような王気を思い出してしまう。
おかげで、驍宗に抱かれていた頃の記憶がまざまざと蘇ってしまい、身体の熱が引かない。
まだ夜は明けていなかったが、とても眠れる気がしなかった。
仕方なく、器の図案でも考えようと臥室を出た。
泰麒が硯に向って墨を摺り始めた頃。別の臥室では。
「……そう、台輔に気づかれましたか」
「御意。二度とするなと言われた」
不満がありありと滲んだ声に、思わず笑みが零れた。
「俺が命じたこととは、気づかなかったのですね?」
確認すると、傲濫を是と答えた。――台輔も迂闊だと思う。
いくら傲濫が規格外の使令だといっても、使令が麒麟を襲うなど、通常ならありえないのに。
「ならいいです。傲濫には、すまないことをしましたね」
「……構わないが、台輔は主上に臥室を訪れてほしいと思っているのでは?
なぜ御自らお訪ねにならないのか?」
「恩人から恋人は奪えないでしょう?……もう良いです。下がってください」
獣の気配が去って行くのを確認してから、昌郁は物思いにふける。
――傲濫ではだめだったか。
麒麟が驍宗を忘れられないでいるのは知っていた。
だが、だからといって自分が手を出したいとは、昌郁には思えない。
ずっと貧しい土地だったという文州は、乍王朝時代に工芸の盛んな豊かな街へと大きく変貌した。
自分が陶工として生きてこれたのも前王と泰麒のお陰だ。その恩を王になることで返せるというなら、
悪くないと思う。そういう思いで天命を受け入れた。
あの麒麟は前王のものだ。
だから少なくとも今は、驍宗からも泰麒からも、何も奪いたいとは思えなかった。
どうせいつか、少なくともあの麒麟の命は、自分が奪うに違いないのだから。
――昌郁も泰麒も知る由もない。
結局、生涯三度王に仕えた戴国の黒麒が、波乱の生涯を終えるのは、まだ遥か先のこと。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
中途半端だけど、力尽きたのでここで終わりです。
読んで下さった方、ありがとうございました。……新刊出ないかなぁ。
浄化ー、捏造話、Part.3です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
久流須がトイレに立った時、美弥木が盾の耳元に口を近づけて、そっと囁いた。
「酒飲んで、ぶっ倒れてしまえよ。久流須に介抱させてやる。」
「な、なに言ってるんだ、美弥木・・・。」
盾は青ざめた。
「久流須も、おまえのこと意識してる。」
「ダメだよ。俺、久流須とは出来ない。」
「そんなに好きか?」
「わからないよ。ふたりとも好きだ。ごめん、友達でいればよかったのに、俺・・・。」
「卒業したら、もうこんな機会ないぞ。」
「美弥木・・・。」
盾は、顔をそむけた。かみ締めた唇が赤い。
どうしてだろう、こんなに好きなのにいじめたくなる。
久流須に先んじたと思った。もう盾は俺のものだと。
でも違うんだな。俺の腕の中で久流須の名を呼んだ。
これで終わりにして、友人の関係に戻ればいい・・・。
俺と盾と久流須の三人で、秘密を持って、知らない振りをして。
あおった水割りの大半は、こぼしてしまった。
酒に弱いといっても、これで気絶するほどではない。
久流須がその気にならなければ、それまでの話だ。
もう眠ってしまえばいい、と思った。
久流須に相手にされない自分を見て、美弥木の憂さも少しは晴れるかもしれない。
それなのに、久流須にそっと触れられた時、喜びが細波のように全身を駆け巡った。
その手に、手を重ねてしまった。
これは罰なのだ。
美弥木との最中に、久流須の名を呼んだ罪に対する罰・・・。
久流須に抱かれて歓喜に震える自分を、美弥木に見られた。
そして、美弥木に抱かれる自分を、久流須に見られた。
最初で最後。久流須に抱かれることはもうないのだ。
体はよがって泣くのに、心は悲しみの涙を流していた。
翌朝、覚えていないふりをした。
俺はうそつきだ。
久流須はどことなく、ほっとしているように見えた。
盾が署に戻ると、久流須は出先から直帰になっていたので、顔を合わせることはなかった。
少し寂しいがほっとしたのも事実だった。
その夜は、休業中の見神のバーで、盾・駆動・伊図津の三人で今後の協議を行った。
駆動は、現在の暗ダー具ランド5のメンバーと思しき人物を何人かピックアップしていた。
美弥木のCD−Rは、5年前の情報だ。
情報は新しくなければ意味がない。
それに、“カゲの警察”という噂が本当なら、私セツ刑務所はその一部でしかないのではないか?
盾は自分の懸念を二人に話した。
わからないことが多すぎる。
私セツ刑務所に連れていく手段がない現在は、制裁の対象となった人物を監視しているしかない。
もし尻尾を出せば、今度は法の裁きを受けさせるまで引きずり出せばいい。
盾は、見神からいずれあちらから伊図津に接触してくるだろう、と言われたことを話した。
「いろいろ嗅ぎまわられている気がするよ。」
と、伊図津は笑った。
その時、盾の携帯が鳴った。
久流須からだ。
「はい、盾。」
「今どこだ。」
「あー、家に帰る途中だけど。事件?」
「いや、話があるんだ。これからお前んち行っていいか?近くまで来てる。」
「え?明日じゃダメなの?」
「今日、話したい。」
久流須の強い押しに、盾は承知せざるを得なかった。
盾は一応、班長なのだ。
班員からの相談を受けるのも、仕事のうちだ。
もっとも、盾班では久流須が率先してやってくれていたが。
久流須の話は、“紙隠し”に対する疑念かもしれない。
久流須と完璧に対立することになるのだろうか。
「じゃあ、30分後。家で。」
「わかった。」
電話を切ると、駆動が口を尖らせて盾に詰め寄った。
「えー、今晩こそ俺、盾さんちに泊めてもらおうと思ってたのに!」
手術後、無理をしたせいで回復が遅れたが、駆動の傷も大分癒えた。
駆動としては、そろそろ盾と、もっと深い関係に入りたいと思っていたのだ。
盾としては、それはまずいと思っているのだが、説得するのは難しそうだった。
年下から甘えられるのは、あまり経験がない。が、悪くはない。
駆動はもう盾の大事な仲間だ。突き放せないし、どうしたものか。
「また今度ね。」
にっこり笑って、盾は駆動と伊図津を送り出した。
「伊図津さん、あいつになんか言いました?」
伊図津を車で送る途中、駆動は伊図津に尋ねた。
伊図津は先ほどから、なにやら機嫌よさそうだ。
「ん〜、あいつって誰かな〜?」
「また、とぼけちゃって。久流須さん。」
「あー、久流須ね。なんか、眉間にしわ寄せてたから、
もっと気楽に行けとは言ったがね、それだけ。
あいつ、わかりやすいからねぇ。
かわいいあのコをいじめていいのは俺だけって。うふふ。」
なんか楽しそうだな、このおっさん。
「このタイミングで来るかな、もう。」
と、駆動はぼやいた。
三年前、盾は、警察を辞めた見神が開いたバーの近くのマンションに引っ越した。
“制裁者”を引き継いだので、見神からいろいろなサポートを受けるために、
近くに住んでいた方がなにかと便利だったのだ。
銃のメンテナンスと保管も、見神がしていた。
万が一にも、現職警察官の自宅から銃が発見されるのはまずいからだ。
(今、銃や見神が調べさせた“紙隠し”の対象者や駆動の身上調査などの資料は、
捜査が入る前に盾が別の場所に移してある。)
医者にかかるほどではないが、何度か怪我をして、見神に手当てしてもらったこともある。
“紙隠し”のことで入院沙汰になったのは、火宇賀・吉済兄弟の時だけだ。
見神のバーを閉めて家に戻ると、ほぼ約束どおりの時間にチャイムが鳴らされた。
どきんと心拍が跳ね上がる。
「ばかだな、今さら。」
出迎えると、久流須が盾の胸元にビールの入ったコンビニの袋を押し付けて来た。
「みやげ。」
「あ、サンキュー、って、飲むのは久流須でしょ。」
「おまえも少しは飲めよ。」
「そっちはつまみ?」
久流須がもう一つビニール袋を提げているのを見て、盾が手を伸ばすと、
久流須は、「これは違う。」と盾から遠ざけた。
「? ま、あがって。」
「ああ」
何度か、久流須が玄関先まで来たことはあった。
事件発生の知らせを受けて盾を迎えに来てくれたり、上司に酒を強要されてつぶれたのを送ってもらったり。
いつも玄関先止まり。
この家の中に上がるのは、初めてじゃないか?
簡素な室内だ。
思いがけないところに本が積み上げられているのは、変わらない。
それ以外は片付いている。
今度のうちはソファがある。そこに座るよう、久流須をうながす。
久流須が来る前にソファから降ろしたのか、脇に本の山があった。
盾が上着を預かってくれたので、久流須はネクタイの結び目を少し緩めた。
持ってきたビールのプルトップを引くと一気に飲んだ。
上着を掛けて戻って来た盾が、久流須の隣に座って話を促す。
「で、話ってなに?」
隙を与えるな。一気に攻めてしまえ。こいつはとぼけるのがうまいんだ。
「盾。おまえ、本当は覚えてるよな、俺と美弥木と三人で寝たの。」
「え、それって・・・。」
いきなり直球で来られて、盾は体勢が整えられない。
久流須は何が言いたいんだ?
「俺んちで飲んだときのこと?警察学校卒業する前の?」
と聞いて、様子を伺う。
「そうだ。」
「飲んでつぶれちゃったから、よく覚えてないなぁ・・・。何かあったっけ?」
と、とぼけようとしたが、言ってるそばからうまくいかない気がした。
「じゃあ、こうすれば思い出すか?」
「え」
いきなり、久流須に押し倒された。
懐かしい体の重みに圧倒され、驚いている間に唇を奪われる。
押しのけようとしたが、全然ダメだ。
柔道の特訓を受けた時、寝技に持ち込まれると手も足も出なかったのが、思い出された。
久流須の良いように口内を蹂躙されて息が上がる。
酸素不足と好きな相手にキスされていることで、頭がぽうっとしてくる。
頭の片隅でダメだと声がするのだが、盾も舌を絡めてしまいそうになる。
空白期間を埋めようとするかのような、長いキスだった。
ようやく久流須が唇を離すと、盾は荒い息を付いた。
「どうして・・・?」
「課長が送別会の時、おまえが以前、張り込み中に話した昔話のことを話してくれた。
警察学校が終る頃、自分の部屋で友人たちと飲んでいたら、床に積み上げていた本が
ドミノみたいに次から次に倒れて部屋中に広がったって話。
それって、お前が酒を飲んでつぶれた後の話じゃないか。
終って、俺がふらふらしてぶつかって。
朝には俺と美弥木が積み上げなおしていただろ。
本当は覚えているってわかった。どうして、うそついた。」
課長がまだ係長で、一緒に捜査していた頃、つい話してしまったことが、今頃・・・。
あの時は、我ながらこんなに本があったのかとおかしくて、記憶に残っていたのだ。
いや、本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
つらかったけど一方で幸せだったあの夜の事を、ほんのちょっとだけ。
盾は久流須の体の下で、身をよじって顔をそむけた。
もう隠せない。
「・・・あれは罰だったんだ・・・。」
「なんだそれ?罰って、なんの?」
「・・・俺、奈津記との最中におまえのこと、呼んだ・・・。」
久流須が息を飲むのがわかった。盾は震えていた。
「二人とも大事な友達なのに、俺・・・。」
「盾、顔みせてくれよ。」
盾はいやいやをして、顔を隠した。
「カズ」久しぶりに聞く久流須の優しい声。
盾のほほを久流須の手のひらが包み込んで、そっと向きを変えさせた。
盾の黒い双眸は、零れ落ちそうな涙で潤んでいる。
胸が熱くて苦しい。
「久流須?」久流須の方が先に涙を流した。
「好きだ。ずっと前から。もう俺から離れるな。」
胸がつぶれそうだ。
返事が出来なかった。
久流須の隣に居られる資格なんかないのに。
盾の涙が流れ落ちた。
久流須の涙が歓喜の涙なら、盾の涙は苦悩の涙だった。
なに泣いてんだ、俺たち。
二人とも35のヤローだぞ。
傍から見たら、さぞ滑稽だろうな。
盾はまだ泣いていたが、久流須の方は先に進みたくなっていた。
長年好きだった相手と両思いだとわかったうえに、その相手を組み敷いているのだ。
体に反応するなという方が無理だ。
久流須にどう言えばいいのだろう。
“制裁者”であることは言えない。自分だけの問題じゃない。
伊図津と駆動も巻き込んでいる。
久流須は、美弥木兄妹や佐衛子のように受け入れられない側の人間だろう。
だったら、美弥木や佐衛子のようになってしまわないか?
暗ダー具ランド5の真意はまだ不明なのだ。
見神は自分の独断だと言ったが、本当だろうか?
こうなってもなお、あの人は“紙隠し”を守るためならうそも付くだろう。
それに、伊図津が嗅ぎまわられている気がすると言っていたが、
盾も駆動も暗ダー具ランド5の監視下にあると思っていいだろう。
駆動が退院した後、盾の部屋を調べて盗聴器が仕掛けられていないのは確認した。
チェックの仕方を教えられ、その手順を守って気を付けている。
自分に関わると久流須も危険ではないか?
「カズ、もう泣くな。」
久流須の指が、盾のほほをぬぐう。
「ん。久流須、起きるから離して。」
「ダメだ。」
「え?」
「とりあえず、やることやっちまおう。」
「は?」
「用意して来た。」
と、傍らに放っておいたビニール袋を引き寄せた。
ええ〜っ、それって、そういうことだったのか!
抵抗するといっても、久流須にはかなわないし、殴ることも出来ない。久流須なのだ。
簡単に上半身を脱がせられてしまう。
13年ぶりか。
8月に入ってから急に痩せたと思ったが、やはりそうだった。
春先に中年太り〜と言ってからかってやった頃とは大違いだ。
そして、久しぶりに見る盾の体には、あちこちに以前にはなかった傷跡があった。
比較的新しいのは、左腕の・・・。
「これ、銃創か?!」
痛々しい傷口がふたつ。射入口と射出口か?
おまけに、射入口らしい方は傷口がふさがらない時に、何かでさらに潰したような・・・。
久流須が驚いている隙に盾は逃れようとしたが、すぐに我に帰った久流須に抱きしめられる。
「久流須、俺は。」
「いい。何も聞かない。」
「久流須?」
「聞いてもおまえ、教えてくれないだろ?
俺は、ずっとおまえを見てきた。
俺にはわからないことだらけだよ、おまえは。
だけど、俺の知っているおまえは、人を殺すような人間じゃない。
それだけは俺でもわかる。
だから、信じる。おまえを信じる。
もう、俺から逃げるな。」
突き放しても突き放しても、久流須は盾のそばを離れない。
もう逃れることが出来なかった。
馬鹿。おまえには離れていて欲しかったのに。
自分に向けられたものでなくても、おまえが笑っていてくれたら、それでよかったのに。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次で終わります。
需要があってよかった・・・。ありがとうございます。
>>142 姐さんの盾さんって、いじめたい、というかそれ以上に蹂躙したくなる
メチャメチャに壊したくなる人だなあ。
んでもって、それでも尚且つきれい、というか余計にきれいです。
悲しみが似合う人。
続き、わくわくして待ってます。
>>142 続き待ってました。
クル盾が理想過ぎてびっくりしましたwww
クルがんばれ!!全力で応援してるYO!!!
152 :
唇:2010/10/23(土) 13:03:50 ID:SzsQD9WSO
中の人(NS)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
周囲の皮膚とは異なり、薄く血の色が透けて見えるそこは感覚も鋭く、
艶めかしい行為を連想させる部分。
そ こ に 、
触 れ ら れ た ら 。
チラリと隣を盗み見れば、白い指が目に入る。
その指先ほどの小さな接触でも、伝わってしまわないだろうか。
冗談めかして告げた「好き」という言葉の後ろに、無理やり理性で
押さえ込んでいる欲望が。
しかし、これは仕事だ。
覚悟を決めて、しかし口元は引き締めて。
果たして、業務を遂行せんがため伸ばされた彼の指はひんやりと
心地よく。しかし、彼もまた…。
「触れられている」というより「当たっている」やな、これは。
彼の中にも、「まだ伝えてはイケナイ何か」が潜んでいるのかも
知れない。
彼自身は、それを意識してはいないのかもしれないが。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| シンプソンズでボブ→バート←ネルソン
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ながいよおおおああああああおおPPP
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「バート」
名前を呼ばれた少年は、びくりと身体を跳ねさせた。
「いつ必ず、お前を迎えに行く」
そう言うと犯罪者は、にやりと笑みを作った。
警察官たちが犯罪者を追い立てていく。少年は、バートシンプソンはガクリと地面に膝をついた。
気遣う家族の声も聞こえなかった。ただ、一つの事実だけが頭を駆け巡っていた。
ボブは、オレを愛している。
ある日晴れた日のことだった。バートやミスハウス、ネルソンとマーティンは
いつものように校庭のジャングルジムでとりとめもない話しをしていた。
「俺はシェリーの方が可愛いと思うな」
「テリーもなかなかいいよ」
「なにいってんだどっちも同じ顔じゃんか」
バートはつまらなさそうに言いながら、鉄の棒に足をかけて逆さまにぶら下がった
「女の味を想像していいのはティーンエイジャーから!って親父が言ってたぜ」
「そりゃあお前のダサい親父はそういうだろうよ」
「うるさいネルソン!」
やれやれまた始まった。ミルハウスとマーティンは顔を見合わせた。
最近バートがよくネルソンに刃向う。昔はいじめっこと虐められっ子としての立場が
はっきりしていたのに。いったいどういう心境の変化だろうか。
バートとネルソンの口げんかはさらに続いていた。二人は顔を見合わせると、ため息をついて
ジャングルジムから降りた。そして校舎へ戻っていってしまった。
「……行った?」
「行ったみたいだな」
バートは腹筋に力を入れて元の体制に戻ると、ジャングルジムの一番上の棒に腰を下ろした。
「それで、話って何だよ」ネルソンは近くにより、小声で彼に問うた。
「実は、あいつのことなんだ」
バートはうつむいた。ネルソンははっとした、だがすぐにいつもの表情に戻った。
「去年の四月に、アイツが俺を誘拐したの覚えてるだろ」
「ああ、そんなこともあったな」
「今日、手紙が来た」
バートはそういうと、ポケットからくしゃくしゃになった封筒を取り出した。ネルソンはそれを受け取ると
読み始めた。
「親父やおふくろには言ってない。あの時みたいに心配かけたくないし、でも」
怖いんだ。バートは自分をかき抱いた。ネルソンは手紙を元通りに封筒にしまうと、遠い目のままバートの肩に手を置いた。
近日中にお前を迎えに行く。
Sideshow bob.
「俺だってそのことに幻想を抱いているわけじゃないよ。ただボブが俺を殺すプロセスの一環として、俺とファックしたがってるってだけさ」
バートはそういうとため息をついた。ネルソンは難しい顔で、隣を歩くバートを見た。はじめはバートが一緒に帰ってほしいと言いだしたのだ。
バートはこういう話をして自分を悲劇の主人公にしたいわけではない。
周りが何と言おうと、一番脅えているのは本人だ。ネルソンはそれを理解していた。
ふいにネルソンは、何も心配事がないかのように愚痴を話すバートの手を握りたい思った。そして手を伸ばした。あと三センチ。
ふと、強い風が彼らの真正面からやってきた。それらが通り過ぎた時、ネルソンは目をあけて隣のバートに話しかけた
「なに悲観的になってるんだよ。そいつは刑務所にいるんだろ――。」
だが、隣いたはずのバートはいなくなっていた。ネルソンは立ち止まった。自分の進行方向からやってくる、強い殺気。彼はゆっくりと首を元の位置に戻して、前にいる男を見据えた。
「サイドショーボブ……」
「離せ、離せよっ、助けてネルソンっ……」
「私の名前を知っているのか」
目の前の男は、バートを拘束しているその男は、冷酷な笑みを見せていた。
「バートを離せ! サイドショーボブ!」
「おやおや、私の名前を知っている子供が他にもいたとは」
「この町でアンタを知らない奴なんかいないぜ」
「それは光栄だ。だが残念なことに」
男はうっそりと笑った。
「君はこの世からお別れする時間だ、名も知らぬ友よ」
さらばだ。
ジャケットの胸に手を入れて、黒い手榴弾を取り出す
ボブは歯でストッパーを外すと、ネルソンに向かってげた。
「ネルソン!!」
バートは叫んでもがいた、だが首を絞められる。閃光が走る。バートは
自分の意識が遠のくのを感じた。
「本当にありがとうね」
マージが涙をぬぐいながら言った。まるで、もうバートは生きていないみたいな言い方だった。
ボブが手榴弾を投げたとき、ネルソンは俊敏に歩道の隣の芝生に転がり、すぐに伏せた。
だがそれは思いのほか火力が強く、ネルソンは爆風にあおられてしまった。それでもけがは少々の火傷と擦り傷で済んだ。
騒ぎを聞きつけてやってきた大人はみな奇跡だと言った。
彼自身は、それどころではなかったようだが。
結局あいかわらずの住民たちの質問攻めと、イカレた警察の長い事情聴取が終わり、念のため一日入院しろと言われた病院のベッドで、
ネルソン・マンツは自分を責めていた。
どうしてあのとき、もっとはやくバートの腕をとらなかったんだ。
「ねえ、お兄ちゃん何か言ってた?」
ベッドのわきで、リサ・シンプソンが疲れ果てた声で聞いた。
「お兄ちゃん、学校では怖いなんてそぶりしてなかったでしょ」
だけどね、家ではいつも脅えてたのよ。
「あなたにだけ、不安だって話したのね」
ネルソンは自分の心がほとんど悲鳴を上げているのに気付いた。
二人は、いや、誰も俺を責めてはいない。でもこの心の痛みはなんだ。
散々悪さはしたが、罪悪感など沸いたこともなかったのに。
ネルソンはバートの無邪気な笑顔を思い出した。許せない。あの男を許すわけにはいかない。
オレが助けに行かなくては。
リサとマージが去り、病院も消灯をした夜、ネルソンはランドリーから服を盗み出して着ると、夜の病院からさっと抜け出した。
やみくもに街を歩く。危ない場所ならすべて自分の庭だ。だがそのどこを回っても、子供の影すらなかった。
ネルソンは最後に、バートが連れ去られた、何の変哲もない住宅地の歩道に一人でたった。
ふいに、車のライトが背後を照らして、長い影を作った。こんな時間に何故出歩いているのだと責められるだろうか。
それとも誘拐でもされるのか。こんな貧乏人の家から身代金などでない。
案の定車は止まった。ネルソンは腹立ち紛れにそいつの顔を殴ってやろうと振り向いた。だがその拳はすぐに下ろされた。
何故なら自分を照らしていたその車が、ベンツだったからだ。
この町でこんな車を所有できるの人物はそういうない。ネルソンは運転席から降りてきた男を睨んだ。
「ウェイロン・スミサーズ」
「君は、ネルソン・マンツだね。乗りなさい。話がある」
スミサーズは助手席のドアを開けた。ネルソンは動かなかった。スミサーズはため息をついた
「バート・シンプソンのことを知りたいんだろう」
ネルソンの指が、ピクリと動いた。
「ここで立ち話するには、問題のある話でね」
その男の顔は真剣だった。普段バーンズに媚び諂っている顔からは想像もできない。
ネルソンは少し考えて、すばやく助手席に座った。
車はハイウェイを走っていた。
「さて、君にはどこまで話したかな」
「アンタの親玉が金持ちの社交界とやらで、ふざけた『催し』に遭遇したって話だ」
「そう、そうだったね」スミサーズは何故かギアを2速に動かした。車が低く唸る。
「私たちはこの田舎町から、いつものようにこのハイウェイを抜けて街まで行ったんだよ。
だけどどうも手違いがあったようで、私達はパーティーに遅刻していったわけだ」
スミサーズはギアをDに戻すと、退避所に車を止めた。
「私も社長も、普通のパーティーを予想していた。だがそれは違った。そのホテルで行われていたのは、もっと違った趣向の、いわゆる秘密クラブだった」
「どうせマクベインの映画みたいなもんだろ」
「……君は、古代ギリシア人が少年を愛好していたのを知っているか」
ずっとうつむいていたネルソンが顔を上げた
「それらの雰囲気を知りたいならプラトンの対話篇を読むのが手っ取り早い。そのパーティーの主催者とその取り巻きははかのイデア論を今でも支持している、一種のオカルトティズム的――。」
「要するになんだよ、端的に言えよ!」
ネルソンが鋭く言うと、スミサーズは咳払いをして、すまないと言った。
「その集団は、少年とレイプすることを狩りと称していた」
秘書は馬鹿にしたような口調で言った。
「そいつらがバートをさらったって?」
「いや、さらったのはサイドショーボブだ」
「どういうことだ……」ネルソンはそこまで言って、はっとした
「私もかつては、自分の愛する人がひどく傷付いた末に、自分だけを見るようになればと、そんな妄想をしたことがある」
ネルソンの顔が蒼白になった。スミサーズはギアをDに入れた。そして注意深く本線へ出ていく。
「結局社長はばかばかしいと言って参加しなかったし、招待者とも縁を切ったが、そのクラブが未だに続いていないとも限らない。
それに、私も彼らにお返しをしなくてはいけない」
それが存在している限り、社長はいつまでも後ろ指を指されるだろうからね。
スミサーズは優しげな口調とは裏腹に、恐ろしい表情をしていた。
バートはもう一度意識が浮上するのを感じた。
だが目をあけても、世界は暗いままだった。それどころか体中が動かない。
拘束されているのか、がむしゃらに身体を動かしてもびくともしない。バートは恐怖に震えた。が、すぐに声がした。
「目覚めたか」
この声は。バートは乾いた口を開いた。唇に痛みが走る、切れたらしい。
「いったいオレになにをしたんだ!」
「ああ、せっかくの化粧が取れてしまった」
バートは、指が自分の唇に触れるのを感じた。そして突然なにかが自分の唇に押し付けられた
「っ……!?」
混乱して思わず口を開くと、口腔内に生温かいものが侵入してきた。そこでバートはやっと自分のされていることを理解した。
貪るようなキスだった。口内に侵入した舌は歯列をなぞり、バートの舌を誘い出し、絡める。いつの間にか抱きしめられていて、
離れようともがくとボブは頭の後ろに手をやって、もっと強く押し付けた。そしていつのまにか、目隠しがとられた。酸欠で苦しい、だが息をすることを許されない。
突然、舌が抜かれ、顔が離れた。
バートは涙目になりながら目をあけ、ボブの狂気すら感じる、甘い甘い笑みを見た。
「なに……す……」
ボブはさらに顔を近づけると、顔をそらそうとするバートを押さえて、切れた口びるを舐めた。
「私の愛しいバート。今日のお前はいつにもまして美しい」
相言うと男は立ち上がり、バートの前から離れた。
そこにあったのは鏡だった。大きな鏡には、自分が映っていた。バートは自分の姿を見て絶句した。
「美しいだろう、最高級のドレスを用意した。気にいってくれたかな?」
ボブがうっとりと言った。その鏡には、椅子に縛り付けられた人形、いや、人間が映っていた。しかし普段の姿ではない。
黒いゴス調のドレスが着せられていいる。いつもオールバックにしている金色の髪は下ろされ、そして顔には化粧が施され、まるでよくできた蝋人形の少女のようだ。
「私を個人的に応援してくれている方の好意だ。お前を高く買ってくださっている」
「どうかしてる……」
「こらこら、泣くんじゃない」ボブは突然バートのあごをつかんだ。足、腹部、腕、首を拘束されているために無理な体勢になる
「せっかくのメイクがとれるだろう?」
そう言いながら、ボブは白い口紅を取り出して少年の唇に塗った。色が消える。本物の人形のように。
「泣くもんか」バートは虚勢を張った。だが声が震えていた「おまえなんかのために、泣くもんか!」
「それでこそ私の宿敵だ。だがその虚勢もいつまで続くかな」
ボブは含みのある笑みをつくった
「暇を持て余した金持ち連中は、私のように優しくないぞ?」
バートは背筋が寒くなるのを感じた。
「さてご来場者の皆さま……ヒッヒッヒ……本日のメインディッシュの用意ができたようです」
仮面をつけた猫背の司会者が不気味な声で笑う。その声に、数十人いるであろう、仮面の下に汚れた欲望を秘めた参加者たちは色めきたった。
「それではご覧ください。我がエペーボス研究会が自信を持ってお贈りする今月の獲物……幻の黒鳥です!」
舞台上段がライトアップされる。羽根で黒鳥を模し飾られた椅子に縛り付けられ、口輪を噛まされた少年の姿が現れた。参加者のいるホールから歓声が上がる
「素晴らしいではないですか、今宵の趣向は。これぞまさに芸術。ですがあいにく本日のプロデューサーは恥ずかしがり屋のようです」
会場からどっと笑いが起きた。その時、椅子に縛り付けられたバートは、会場奥の壁にもたれかかる、仮面の男を確かに見た。
「さあ、我らが富の恵みに感謝しましょう。黒鳥を放せ。狩りを始めよう!」
司会者が言う。しかし、誰も出てこない。
「どうした、早くしないか!」
興奮した男はマイクから離れ、自分でバートの拘束を解こうとした。熱気と熱い息がかかる。バートは目を閉じた。もうだめだ――!
「おっさん、汚ねえ手で触るんじゃねえよ」
ガツンと、大きな音。そして何かが倒れる音がした。バートはおそるおそる目をあけた。
そこには、舞台下段に落ちた司会者。そして隣には
「待たせたな、バート」
ネルソンはバートに笑いかけた
数十分前。
スミサーズは車をホテル近くの目立たない有料駐車場に止めた。
そしてすぐに、駅近くの大きなホテルに向かう。受付はスミサーズが偽名であしらった。架空の名前であろうそれを名乗り、その会場の場所を聞く。二人はすぐにエレベーターに乗った。
目的の回に着いた。見ると長い廊下にふたつの扉が左右に一つずつあった。そのうちの左側の扉にはスーツを着た大男が見張りに立っている。
二人は奥にある右側の扉に行くふりをして、ネルソンは支持されたとおりに、男のいる床付近に偶然を装ってジュースを床にこぼした。
「おい!」
「おっと、すまない」ジュースは絨毯を汚した。
「貴様らなにを」
「あとで係を呼ぶとしよう。うちの坊ちゃんがどうも失礼をした。ところで君」
スミサーズは慣れた様子で男に話しかけた
「エペーボス研究会はこの先かね」
「だったらなんだ」
スミサーズはメガネをクイとあげた。
「私の上司がこの研究会に特別顧問として招待されているんだが、あいにく出席できなくなった。代わりに私が出席しろとのお達しだ。」
「その子供はなんだ」
男はネルソンを見下ろした。スミサーズはこともなげに言った
「この子供は見かけには寄らないが天才ピアニストでね。会合後の趣向に呼ばれているのだよ。わかったらさっさとその扉を開けたまえ」
男は二人を見た。一見仕立てのいいのような男。それに手をひかれている、どう見ても一般人で、しかも悪ガキに見える小学生。
「わかった」
二人の表情がゆるんだ
「招待状を見せてもらおうか」
ネルソンは焦ってスミサーズを見た。だが彼は涼しい顔でこう言った
「招待状か? ああ、確かポケットに……おっと」
彼ががスーツの胸ポケットに手を入れると、封筒がはらりと宙を舞った、スミサーズが身をかがめてキャッチしようとするが
丁度ネルソンがジュースで汚した辺りに落ちそうになる、男は思わず身体をかがめた、
その時だった、スミサーズは低い体勢から一期に身体を伸ばしかがんでいた男に顎に頭突きをかました。
ネルソンが驚く間もなく、顎に強烈な一撃をくらった男はすぐにノックアウトされた。スミサーズは倒れる男の身体が音をたてないように、男を支えた。
「素人を雇うとは、秘書の風上にも置けないな」
スミサーズは何事もなかったかのように言うと
「さあ、この男を隠すのを手伝ってくれ」と言い、男の脇を掴んで地面を引きずり始めた。
男をトイレにある掃除用具入れに縛って隠すと、スミサーズは慎重に元の廊下に戻り、扉の前に歩みを進めた
「マンツ君、ここから先は、私も君を守れる自信がない。それでもいいかね」
「オレはとっくに覚悟はできてる。それとネルソンでいい」
スミサーズはふっと笑った
「では行こうか」
彼は扉をほんの数センチ開けた。扉は防音だったのか、小さな話声が時折聞こえてきた。そっと隙間から様子をうかがうと、
扉の向こうの部屋はまずラウンジになっているらしい。だがそこには誰もいない。
扉の中に入ると、豪華で広いラウンジが広がっていた。まず無造作に置かれたホワイトボードが目に入る。
『会議は左の部屋で行っておりますが、部外者の立ち入りは禁止しております。
緊急のご用件の方は下記の番号までお電話ください。秘書につながります。XX-XXX-XXX』
ネルソンはホワイトボードを胡散臭げに見上げていたが、すぐにスミサーズに目を移した
なんと彼は左の部屋に通じる扉を思い切り開けはなっているではないか。
「ちょっとおっさん、なにしてんだよ……!」
スミサーズは部屋に入っていってしまった。ネルソンはあわてて追いかける、そして部屋をおそるおそるうかがった。
案の定、そこにはなにかがいた。話声も聞こえていた。だが
「人形……?」
163 :
辺愛狂の宴:2010/10/23(土) 19:48:50 ID:XAblx1wuO
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
浄化ー、捏造話、Part.4 ラストです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ローションで濡らした指をいきなり深く入れたせいで、盾が呻いた。
久流須の指がちょっと引っ込む。
「つ、、、カンベンして、久しぶりだから。」
「ごめん、って、どのくらいしてなかったんだ?」
「・・・三年かな・・・、はぁ。」
「えっ!」
「?」
「おまえ、見神さんと、その、ずっと関係あったんじゃない・・・のか?」
「見神さんとは、、、大学の4年間限定だったんだ。その後、2回あったけど、それっきりだから。」
久流須には言わないが、その2回とは、十年前に見神の妻子の事件が時効を迎えた後と、
三年前の名駄偽を“制裁”した後の事だ。
「そうなのか・・・。」
あの“朝帰り”は、俺の勘違いか。
見神とそういう関係にあったのは事実だが、思っていたよりずっと過去の事だったのだ。
性急に体を繋ぎたくて早ってしまったが、じっくり行こう。
攻め方を変える。
中途半端に浅く入れていた指を抜き、舌を這わせる。
盾の体が大きく竦んだ。
「く、久流須こそ、」
「ん?」
「誰かと、その・・・。」
前はこんなことしなかった。
「男はおまえだけだよ。」
そう告げると、もっと舌を伸ばした。
窄まりを濡らすだけではなく、周りにも唇を押し当てる。
「あ、ああっ!」
シーツの上で、盾の黒髪が揺れた。
時間をかけて十分濡らしてから、再び指を入れた。
今度はいやがらなかった。
「狭いな。」
盾は目を瞑っていたが、久流須がにやっとしたのが気配でわかった。
ローションを足されて、指を増やされる。
水音が上がって、盾の体が何度も震えた。
盾は身をよじって枕を掴むと、そこに顔を埋めた。
声が聞きたくて枕をはずさせようとしたが、
「だめっ、大きな声、出るっ」と抵抗された。
すごく感じているのがわかって、嬉しくなる。
何度か絶頂を迎えて盾がくったりすると、背後から横抱きにして右足を持ち上げた。
「ん、んっ」
久流須を受け入れると、盾は自分から左足を久流須の左足に絡めて来た。
後ろから耳元に名前を囁かれ、久流須を振り返る。
見詰め合いながら久流須が動き始めると、盾の表情が一層艶めいていく。
ああ、なんてきれいなんだろう。
ぞくぞくする。
久流須の髪が乱れて、前髪が額にかかっている。
久流須の髪がこうなっているのって、好きだな。
ふたたび久流須に抱かれるなんて、思ってもみなかった。
“制裁者”になってからはなおさらだった。
それがこんなに、自分を満たしてくれる。
最初の時と違って、盾は心身ともに歓喜の涙を流して果てた。
二人でシャワーを浴びてベッドに戻ると、盾は久流須にもたれて話し出した。
「今日ようやく思い出したんだけど。」
「うん?」
「むかーし、おにいちゃんって呼んでる子がいた。一つ上で、父の友人の子供。」
「それで?」
「すごく仲良かった。でも顔も名前も思い出せない。」
「なにかあった?」
「おにいちゃんのお父さんは、父に借金を押し付けて消えた人なんだ。」
「・・・そうか。」
総ての発端だ。
「警察学校の時、久流須を見て、なんかおにいちゃんのこと思い出しかけてたみたいだ。
きっと、おにいちゃんも背が高くて笑顔がさわやかだったんだろうね。
でも、思い出せないのがもどかしくて・・・。
で、久流須のこと見ているうちに、久流須のことが好きになった。」
久流須はそっと盾を抱きしめた。
「俺、わからないんだ。」
「なにが?」
「おにいちゃんちが無事に逃げ延びたかどうか、わからない。
逃げ延びて、俺のうちのこと忘れて幸せにやっていたら許せないと思う。
けれど、逆におにいちゃんちの方も全員殺されているかもしれない。
どちらでいて欲しいのか、わからない。」
事件から25年。盾の苦しみはまだ続いている。
「調べなかったのか?」
「調書はあるらしいけど、怖くて見れないんだ。」
「そっか・・・。まだ見る時期ではないってこと、じゃないのか?」
「時期ではない・・・。」
それは、父の友人を許せるようになったら、ということだろうか。
「そういう時になったら、見れるさ。あと、、、3時間は眠れるぞ。寝ろよ。」
「・・・うん。」
一つ吐き出した分、気持ちが楽になったのだろうか。
盾はすんなりと眠った。
久流須は、盾のぬくもりにとろとろとしながら、盾の抱える闇の大きさを思った。
それをずっと支えてきたのが見神なのだ。
見神が逮捕され、盾も美弥木あす可も事件関係者ということで、見神の捜査から四班ははずされた。
親友と元恋人を殺されたのに、盾は怒っているように見えなかった。
それに久流須は、いらつかされた。
殺した人間と殺された人間が、みな盾と関係していたことを知っているからなおさらだった。
おまえはそんなに見神が大事なのか!と。
嫉妬と怒りが入り混じったものが胸に湧き、盾に対する思いが消えていないことを自覚させた。
そんな時、苦しむ久流須に伊図津が言った。
「盾なぁ、見神の妻子が殺された事件のこと、俺が話すまでずっと知らなかったんだよ。」
「それって・・・。」
「見神は盾に教えなかった。
盾と傷舐め合って擬似親子やってりゃ、ああはならなかったかもしれん。
だが、見神はそうしなかった。
自分のせいで二人が殺されたのを、どうしても忘れることが出来なかったんだろ。
あいつ、ずっと自分のことを責めていた。」
それがどうして、奈津記や佐衛子を殺すことになるんだ。
盾、おまえはこの出口の見えない迷路の、どこに立っているんだ?
「幸せになる方を選べばいいのに、馬鹿だ。」
吐き捨てるように久流須は言った。
「理性で割り切れないもんだな。で、おまえはいいの?」
唐突に、自分に話が向けられて戸惑う。
「はい?なにがですか?」
「このままだと、盾、駆動にとられちゃうよ〜。駆動、頑張ってるからなぁ。」
「な、なに言ってるんすか、課長!」
「あれ、勘違いしたかなオレ、あはは。」
そして、「昔張り込み中に盾がした話」を話してくれたのだ。
「なんか楽しそうにねぇ。その時の友人て、おまえと奈津記だろ?」
その話を聞いたとき、伊図津は盾が二人のどちらかに特別な感情を持っているのがピンときた。
自分の感情を読ませない盾にしては、珍しいことだった。
普通の人にならともかく、刑事に話したりして迂闊じゃないか。
奈津記が自分の部下に配属されて来た時、二人のうちの一人だなと気づいたが、
盾はその時付き合っていた佐衛子とそのままだった。
所轄と合同捜査していた時はそれどころでなかったが、久流須が配属されて来て、そうではないかと思い始めた。
お互い一歩引いていたが、後ろの席にいると見えてくるものがあった。
まあ、あの話を聞いていなければ、わからなかったろうな。
「・・・はい。」久流須はようやく返事をした。
覚えていないふり、だったんだ。
「頼むな。」
奈津記の声が蘇る。
ここが岐路だ。
伊図津と見神にもあったかもしれない。二人は違った道を行き、見神はああなった。
おまえは?おまえと盾はどうするんだ?と、伊図津に問われている気がした。
どの道を選んでも後悔するかもしれない。
でも、盾と一緒にいることを選ばなかったら、一番後悔するだろう。
こいつは俺が守る、と改めて決心して久流須も眠りについた。
翌朝、盾は自分の席で、いつもより濃くて甘いコーヒーを飲んでいた。
久流須は夜が明けると、着替えてから出勤すると言って帰っていった。
二度寝したら寝過ごすと思ったので、いつもより早く出勤することにした。
捜査一課は、まだまばらにしか人がいない。
そこに笑顔の駆動が顔を出した。
「たーてさん!おはよー。」
「おはよう、駆動君。朝から機嫌がいいね。」
「盾さんはお肌のツヤがいいねー。」
「う!」
あやうく、コーヒーを噴きかける。
「いいこと、いっぱいした?」
輝くような笑顔でなんてこと言うの。
「・・・駆動君。」
「こんど俺も混ぜてよ。」
「な!な、なに言ってるの!!」
「混ざってもいいが、俺の邪魔はするなよ。」
と、唐突に出勤してきたばかりの久流須が加わる。
「く、久流須?!」
長身にダークスーツを着こなした久流須は、いつもより男っぷりが上がって見えた。
「へー、話わかるじゃん、どうしたの?」
「俺もお前も、見神さんの代わりには力不足ってことさ、今はな。
一人でダメでも、二人ならなんとかなるだろ。」
悔しいが、駆動が盾やあす可を守ろうとして刺されたのは認めてやる。
「つまり、盾さん第一ってこと、、、か。」
「そういうことだ。」
と言いながら、二人はバチバチ火花を飛び散らせている。
「ふーん。盾さんが俺を抱いて、あんたが盾さんを抱くのだったら、邪魔にはなんないよね?」
「そうだな。」
声は小さくしているが、とても署内で話すような話ではない。
「俺を無視して話を進めないで・・・。」
盾は青くなって頭を抱えた。
他の署員たちが出勤してきたので、話はそこまでになった。
が、このままで終るとは思えなかった。
「盾さん、またね。」
と、駆動はにっこり笑って鑑識倉庫に戻って行った。
駆動君、君の笑顔が怖いよ。
どうしたんだろう、一晩で二人ともパワーアップしたみたいだ。
横目で久流須を伺うと、もう仕事を始めている。
コーヒーを飲みながらメールチェックしている横顔が、いつもより何割か増しに
カッコよく見える。
困ったな、顔がゆるんでしまう。
つと、久流須が立ち上がって盾のそばに来る。
「これ、決裁してくれ。」
「あ、はーい。」
書類を手渡す際に、耳元でささやかれた。
「おまえの顔がゆるいのはいつもだが、」
いつも、気持ち悪いんだよって言われてる。
「かわいいからやめろ。」
自分の席に戻るとき、久流須は盾にだけ見えるように笑顔を向けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
長々とお目汚しして、失礼しました。
ご感想くださった方々、ありがとうございました。
最後の言葉を久流須に言わせたくて、書いたんだなーと思います。
頑張ってエロ増量してみましたが、自分にはこれで精一杯でした。すみません。
>>164 リアルタイムで遭遇キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
スレ開いたら
>>164だったんでF5連打しまくったw
長編乙でした。盾さんの美しさにpart1から大変萌えさせていただきました。
>>164 ありがとー、ありがとー。ただただありがとーです!
盾さん、もう幸せになって。
盾さんの周りにはこんなにあなたを愛してる人がいっぱいいるんだから。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
>>153〜
>>163の続きですよっ
長い机に椅子が並び、そこに一人一人人が座っている、ように見える。だがそれはすべて、よくできた蝋人形だった。そして話声も止まった。 スミサーズがスイッチを切ったのだ。
「ここまでこだわる意味がわからないね、私は」
そういうと今度は本棚を調べ始める
「私は実際の人間の大人が好きなんだ」
「よぼよぼの爺さんとか?」
「君はまだ若いからわからないだろうがね」
たった一度の選択で人生が変わることもあるんだよ。スミサーズの声は無表情だった。
ネルソンはふーんとつぶやいた。あの社長にそこまでの価値があるのか。
「これだな」スミサーズは本を一つ手に取った。すりきれた表紙には、かろうじてギリシアの哲学者の名前がわかる
「その中にボタンが隠れてるとか?」
「実はその通りなんだ」
お約束だな。スミサーズは自嘲しながら本を開いた。中にはボタンがあった。
それを押すと、本棚の後ろでガコンと音がした。
彼は本を机に放る。そのまま本棚を押すと、回転扉のように壁の向こうの景色が見えた。
「うちの社長の別荘の仕掛けと同じだ。業者が同じなんだろうな。今度改装しよう……さあ、手伝ってくれ」
ネルソンとスミサーズは共に本棚を押した。重い扉が開くように、向こう側への豪華な通路が現れた。
「誰も来ないところを見ると、この先は本当に人に見られたくないようだな」
さて、なにがあるのやら。
通路を進むと、扉が二つ現れた。そのうちの一つは開いていた。慎重に覗き込むと、どうも舞台裏らしい。ネルソンは閉っている扉に向かい、耳を当てた
「なんか、パーティーみたいな音が聞こえる」
「それはそうだろう。この先が会場なのだから」
「そこに、バートもいるのか?」
「たぶん、ね。でもそっちじゃない」
スミサーズは開け放たれた扉を示した
「どうやら、舞台裏のようだよ」
その部屋は暗かった。だが遠くに光が見えていた。どうやら舞台装置は上手にあるらしい。
どうやらここは舞台セットなどの倉庫のようだ。人もいない。スミサーズとネルソンは注意深く先へ進んだ。
「この設備はいったいなんなんだ?」
「ここはね、富裕層社交界の秘密パーティーに使われる会場だよ。これでも小規模な方だ。
社長もよくこのような場所に招待されることがある。私にすればどれも悪趣味だがね」
スミサーズは立ち止まって、床に置かれた、人も入れそうな大きな鉄の檻を見た
「少年、いや少女でも、やつらにとってはどうでもいいのだろう。ただ、狩りと称して子供を蹂躙できれば。
いままで何人の子供が奴らの餌食になり、殺されたのか」
呟く声に、ネルソンは背筋が寒くなるのを感じた。スプリングフィールドでは麻薬はあれどまだ人身売買は見たことがなかった。
世界に確実に蔓延する悪、その餌食に、愛する人が――。
愛する人?
ネルソンは思わず立ち止った。スミサーズが振り向く
「どうした?」
「俺、なんでここまで来たんだろう、俺、バートのこと好きなのかな」
ネルソンは俯きながら言った。スミサーズは少し驚いて、だがすぎに笑った。
「君はバートのことをどう思ってるんだい?」
「大切な、友達だと思ってた。少なくとも今までは」
「でも、君はここまでやってきた」
「うん」
「なら、もう答えは出てるはずだ」
ネルソンは顔を上げた。スミサーズはメガネをとった
「君と君が愛する人を大切にね」
じゃあ私は上手側を制圧してくるから。そう言うとスミサーズは近くにあった扉へと消えていった。
「な、なんなんだ貴様らは!」
司会者が這いつくばったまま叫ぶ。ネルソンはバートの口輪を取った
「見ればわかるだろ? 正義の味方さ」
「ネルソン、来てくれたの」
バートがネルソンを見た。ネルソンはバートに笑いかけた
「今拘束を解いてやる、ちょっと待ってろ」
「そうはさせるかっ」
司会者は無理やり立ち上がり、懐から銃を取りだし、ネルソンたちに向けた
「ヒヒヒ、子供一人になにができる」
「あいにくだがな」
別の声と一発の銃声が響いた。弾丸は司会者の腕にあたり、男は銃を取り落とした
「ひとりじゃないぞ」
上手からスミサーズが出てきた。銃を構えている。暴れたのか、髪は乱れていた。
「警察を呼んだ。もうじきここにも到着するだろう」
そう言い放つと、参加者たちはパニックになり、脱出用の扉から一斉に逃げ出し始めた。司会者の男もそれに加わって逃げていく。
「逃がしていいのか?」
「ああ、もうこのホテルは包囲されている。さあ、バートの拘束を解いてあげなさい」
ネルソンは頷いてバートを解放した。長時間同じ体制で、しかも慣れない服装にふらつくバートを、彼は優しく支えた。
「ありがとう、二人とも。ほんとにありがとう……!」
「無事でよかった」
ネルソンはバートを抱きしめた。抱きしめるときにバートの化粧をされた顔が見えたが、ネルソンは素顔の方がずっと好きだと思った。
「感動の再会のところをすまないが、まだ終わっていないようだ」
スミサーズの声が椅子だけがまばらに残る部屋に響いた。バートが銃口の先を見て震えた。
一人の男が、会場奥の壁にもたれかかって立っていた。
「ウェイロン・スミサーズ。バーンズを暗殺しろとの名を受けたが失敗し、組織を裏切った男」
ネルソンは思わず隣の男を見た。スミサーズは無表情だった
「刑務所で元組織の人間だと言う奴に聞いたよ。まさかここで出会うとはな」
ボブは芝居ががった仕草で仮面をはずした
「忠誠を誓った相手を殺し、今は老人の下の世話をしているそうじゃないか」
以前の君はもっと非情な男だったそうだがね。ボブはニヤリと嗤った。
スミサーズは銃を構えたまま舞台下に降りた。ネルソンとバートも続く
「私はあの方に救われた。そして今は己の正義に従って動いている。それだけだ」
無駄話は終わりだ。スミサーズは銃口をボブの額に向けた。
「組織とか厨二丸出しじゃねえかよ」
「それは言っちゃだめ!」
「そこ、うるさい!」
そのときだった、ふらりとボブが動いた
そのまま前に踏み出し、一気にスミサーズとの距離を詰め左手のナイフを突き出す、スミサーズはそれをギリギリでかわした。
そして銃口をもう一度向けるが、そのわずかな隙にボブはスミサーズの鳩尾に拳を入れた――。
「っ――!?」
スミサーズをは思わず膝をついて這いつくばった、そして激しくせき込む。
「スミサーズさん!」
バートが叫ぶ、だがボブはにやりと笑うと、立ちあがろうとするスミサーズに近づき、その頭に思い切り蹴りを入れた。
ふっとばされたスミサーズは、ついに沈黙した。ボブはけだるげに手首を降ると鼻で笑った
「あっけない終わり方だなスミサーズ? 老人の介護で腕が鈍ったか?」
スミサーズは答えない。気を失っているらしい。
「さて、君は誰だったかな」
ボブがスミサーズの手から離れた拳銃を拾った
「確か前にも出会っていたな?」
ネルソンはバートを自分の後ろにかばった。そして耳打ちをする
「バート、舞台袖に隠れろ」
「お前はどうするんだよ」
「俺は足止めをする。警察が来るまで見つかるなよ、さあ、行け!」
バートはふらつきながら舞台に向けて駆けだした。ボブが追おうとするが、少年が立ち塞がった
「俺を忘れてもらっちゃ困るな」
「友情か。だが愚かだ。私を邪魔することは死を意味する!」
ボブが地を蹴った。ネルソンは転がっていた椅子を持ち上げてナイフを受け止めた。そして椅子を振り回して防御をする。
だがボブの繰り出すナイフが頬をかすった。ネルソンはどんどん舞台際に追い詰められていく
「はっはっは、どうした? 威勢の割にはボロボロじゃないか」
ボブは余裕の表情で踊るようにナイフを繰り出している。
遊ばれてる、いったいどうすれば、ネルソンは舞台に上り逃げ、舞台袖を見た、そこにはバートがいた
「なにしてるんだ、逃げろ……!!」
ネルソンが見せた隙に、椅子を掴まれた。ボブは片手で椅子の足をつかんでいる。その顔には壮絶な笑みが浮かんでいた
「遊びは終わりだ。私はこれからバートを殺す」
その声はほとんど狂気に満ちていた
「君があの子を守ろうとしたその勇気は褒めてやろう。だが、邪魔だ」
ボブは椅子を奪うと後ろに放り投げた。そしてナイフを振りかざした。遠くでガタンという音が聞こえる。ネルソンは死を覚悟した
「――ネルソン、避けろ!!」
声がした。ネルソンはほとんど条件反射的にあとずさる、ボブがいぶかしげに舞台袖を見る、そしてう上を見た――。
ドガッ!!
ネルソンは顔をかばっていた腕を解いた。舞台の上に、ライト部分が粉々になった照明と、倒れているボブが見えた。
「クリーンヒットしたぜ、死んでないといいけど」
舞台上手を見ると、バートが歩いてくるところだった。
「舞台照明をいじる装置があったから、上に登ってストッパーを外して、それから落としたんだ。おまえが上手側によってくれてよかった。背中に当たったみたいだけど、相当の衝撃だと思うよ」
「助かったぜ、ありがとよ」
「礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ。おかげで死なずに済んだ」
二人は拳どうしをくっつけた。
「……ぐ」
>>176は15です
ボブがうめいていた。ネルソンは素早く転がっていた銃を拾って構える
ボブはかすれた声で言った。だが動けないようだ
「私は……どうも、爪が、甘い……よう、だ」
ボブは低く笑った。バートがネルソンの背中にしがみついた
「フ……名を聞こうか」
「ミルハウス・バン・ホーテン」
「ネルソン!」
「冗談だ。俺はネルソン・マンツ。覚えとけ」
ボブはうっすらと目をあけた
「……バート、そこにいるのか」
「死に際の犯罪者ってよくしゃべるよな」
バートが軽口をたたくと、ボブは乾いた声で笑った。そして真剣な声で一言愛の言葉を紡いだ。
「おまえを愛しているよ」
ネルソンはバートを見た。バートは泣きそうな顔をした、だが首を振った。
「悪いけど、オレがあんたになびかないのは、他の奴が好きだからでも、犯罪者が嫌いだからでもない」
バートはカチューシャを外して、ボブに投げた。
「アンタを好きになれないからだ」
ボブは何も言わなかった。
そのとき、舞台袖から何人もの足音と声が聞こえてきた。
「やっと警察が来たようだな」
「スミサーズさん!」
左を見ると、スミサーズが立っていた。鳩尾を押さえて、辛そうに歩いている
「君たちが無事でよかった」
「スミサーズさんも大丈夫?」
「私はちょっと油断しただけさ。……バート君、もういいのかい?」
「うん、いいよ」
バートは気を失ったボブを見ながら言った
「これで、全部おしまい。」
警察が舞台になだれ込んできた。この事件のすべてが終わった。
数日後
病院からも退院し、事情聴取のために日に何度も呼ばれることもなくなった頃。
バートとネルソンは学校に帰った。スキナー校長の方針で、バートたちの事件の話が表に出ることはなかった。テレビでもそれどころではなく、政治家や有名人たちが次々と児童買春などの容疑で逮捕されているというニュースの報道で忙しかった。
「それにしてもさあ」
いつものようにバートやネルソン、ミルハウスにマーティンでジャングルジムで取り留めもない話しをしていると、ミルハウスがつぶやいた
「バートもネルソンも変わったよな」
名指しされた二人は顔を見合わせた
「人はいつか変わるものだから」
な。
笑う二人に、ミルハウスとマーティンは頭にはてなマークを浮かばせた。
冷たい廊下に、三人分の無機質な足音が響く。
サイドショーセシルは独房のベッドに深く腰掛けたまま、声を発した
「兄さん、また戻ってきたの」
一つの足音がとまった。それにつられてふたつの足音も止まる。
「もういい加減諦めたら」
一人が低い声で笑った。背筋が寒くなるような声だった。
「何度でもやるさ」
私の愛はここにあるのだから
足音が再会した。その音は奥へ奥へと進んでいき、そして消えた。
終
終わりです。ここまで読んでくれてありがとう!
次書くとしたらきっとボブは幸せしますお……
180 :
辺愛狂の宴終:2010/10/24(日) 10:27:20 ID:oPgXOJP+0
忘れてた
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 今度こそ終わり!
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
某最終幻想オンラインなスレの134さんに触発されて書いてみました。
主要キャラは捏造(原作にはいません)&ダーク・病み・グロ・死にネタ祭りなので苦手な方はお気をつけくださいです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
血が騒ぐという言葉は、あまりにも的確すぎた。
体は知っている、その先には抗いようのない快楽があることを。
心は理解している、それが忌避しなければならないものであることを。
錆鉄と脂の匂い、言葉になど表現しようもないほど甘美なそれに、その身の血はざわめき、歓喜する。
わずかな青色をおびた銀の刃に纏わりついた肉片を振り払う。
振り落とされた肉片にも、わずかに飛沫を散らす血にも見向きもせず。
まだだ、もっと、もっと、もっと、もっとだ、血はそうざわめいた。
「ファルシャード?」
自分を呼ぶ声に、急激に意識は悪夢の底から引き摺り上げられた。
脂汗は額だけではなかった。
衣服が随分と汗を吸っていて、ひどく不快だった。
いつの間にか眠っていたらしい。
眠りを求める間隔は少しずつ、しかし確実に短くなっていた。
この体も眠りを欲するのだ、などと、忘れかけていたことを思い出した。
この期に及んで、この体はずいぶんと人間らしくなっているのだから、とんだ皮肉だと思う。
「ファルシャード、大丈夫?」
大丈夫でないことなど分かっているけれど、と、その瞳は暗に告げていた。
このところ任務のあとは、いつもこうだ。
鉄錆と脂の匂いに血は煽られ、この精神を責めたてる。
それに抗いきれなくなることが、日を追うごとに多くなっていく。
任務の標的となるものの大半は、殺してもさして問題もない(寧ろそれを前提として、不滅隊には命令が下るといってもいい)。
けれど、ここ一月ほどの己の行動は常軌を逸している。
不滅隊には得てして、刃を振るうとなると理性の箍が外れたようになる者はたしかに多い。
けれど自分がそうであったかというと、それは否であり、そうなってしまったということは、明確な『兆候』なのだ。
自分を覗き込む相棒であり親友―――ベフルーズがどれだけ心配しようとも、(歩みを遅らせることはできるだろうが)もう止めることはできないのだ。
ただただ確実に訪れるその時を、ささやかな抵抗を試み―――
…中にはそれすらせずに受け入れる者もいるが、結局は完全な人でなしの化け物になるのを待つだけだった。
遅かれ早かれ、その身はいつか取り込んだ魔に蝕まれて、心か姿かたちか、あるいはそのどちらもが人ではなくなってしまう。
漠然とは分かっていたことであり、そうなった同士に引導を渡したことも幾度となくあるけれど、
それが己の身に現実として突きつけられるのは、蝕まれ疲弊した心には余計にくるものがある。
「まだ、大丈夫だ。」
ファルシャードはにやりと笑ってみせたが、それでも『まだ』なのだ。
いつかは大丈夫でなどなくなることは、ベフルーズも知っている。
その時はせめてこの手で、などと辛気臭い事を言うのはあまり好きではないが、無言のうちに、互いにそう思っていた。
にやりと笑うファルシャードとは対照的に、ベフルーズは瞳を曇らせて俯いた。
青魔道士ファルシャード、青魔道士ベフルーズ。
親も家もない街角の孤児だった、名前のない二人の渾名のようなものだったけれど、青魔道士になってもその名を捨てることはなかった。
同じ『幸運』の意味の名を持つ二人は、容貌もよく似ていた。
ベフルーズのほうが僅かに小柄。
陽にあたった時、髪が上等の金糸のような輝きを帯びるファルシャード。
「明日は早いから、もう少し休んでおくといいよ。」
「…ああ。」
非常呼集があったら起こすね、そう言うベフルーズの声を背に、ファルシャードは毛布を被ると、程なくして規則正しい寝息をたてはじめた。
彼の眠りを妨げないようにと、ベフルーズは灯りを点けずに、文机に投げ出してあった本を手に取った。
明かりがなくとも物が見え、休まずとも不要な食事を摂らずとも済むこの体は便利だとは思うけれど、そうなってしまってから暫くは、はやり辛いものがあった。
無理をすれば身体は疲れる。
疲れた身体は眠りを欲する。
そして空腹を感じる。
すべて普通の人間であればあたりまえのことで、青魔道士となってからは久しくご無沙汰であったそんな生理現象も、
忌まわしい兆候とともに戻ってくることがある、というのは初めて知った。
青魔道士にとって眠りへの欲求は、身体よりも精神の疲弊によって齎される。
兆候によって引き起こされる睡眠も、つまりはそういう事だ。
ふと、味覚を慰める以上の意味での、普通の人間の普通の食事というものを何年摂っていないだろうと、ベフルーズは思った。
自分にも、いつか彼のように兆候が訪れ、いずれ変容し、おそらく最後は同士の手で葬られるのだ。
それが彼に訪れるほうが少し早かっただけ、ただそれだけなのだ。
けれど、そう簡単に割り切ることなどできようもない。
何よりも堪えるのは、そのとき傍らには、彼がいないということ。
きっと、ただ自分が人ではない何かに成り果てることよりも、その事のほうがよほどつらく感じてしまう。
本の中身が頭に入らないのは、暗闇の所為ではなかった。
寝具としての役割を殆どまっとうできない、真鍮製のベッドに身体を横たえ、瞼を落として、眠りの真似事をする。
瞼の裏には、爛々とぎらつく瞳で返り血を浴びる親友の姿が焼きついていた。
今日の任務は、任務とは名ばかりのものだった。
へディバ島の魔物の掃討作戦。
元々僻地であり、この地が皇国に与える脅威はさして大きくはないのだが、この作戦はは定期的に行われている。
理由は至極単純明快。
不滅隊、つまり青魔道士達の、人目を憚る必要のない『餌場』の提供。
存分に獲物を狩り、血を浴び、喰らえ、つまりそういうことだ。
本来青魔道士の獲物は、魔物であれば、個人の嗜好を除いては対象を選ばない。
最悪の場合は魔物である必要すらない―――
…つまりは人間でも構わないのだが、そこに行き着いてしまう事自体が禁忌であり選択のしようもないとはいえ、
元々皇国の民からは畏怖と忌避の目でみられる国の暗部が、さらにその暗部までをも、安易に人目に晒すことは決して得策ではない。
そこで青魔道士達の飢えをしのがせる為に目をつけられたのが、このアラパゴ諸島の片隅の小島だった。
小隊長の号令と同時に、蒼黒の装束の魔道士達は獲物を求めて、各々足早に妖霧の中へと消えていった。
二人も例外ではなく、しかし互いに離れることのないよう暗黙のうちに島内探索をともにする。
獲物とて馬鹿ではない、ましてこの島に生息するのは、格段に知能と魔力が高いとされる、インプとソウルフレアだ。
掃討作戦が所詮形だけの任務とはいえ、掃討すべき対象であることもまた事実。
定期的な掃討作戦が行われていながら、一向にその生息数を減らさないことがその証左だ。
ファルシャードはといえば、その足取りも態度も、このところと比べれば随分と安定しているように見えた。
そう見えてしまったことも、事を悪い方向へと向けてしまうことになる。
食事をするにも気分がのらないと言って、ただ淡々と額面どおりの掃討任務だけをこなす。
湾刀を振るい、ザッハークの印を結び、返り血を拭うこともなくただ黙々と獲物を狩り続ける。
あまりの何事もなさに、ベフルーズでさえ気付くことに遅れてしまった。
少しずつ、彼の歩みが速まり、浮き足立っていることに。
口元を覆ったこの装束では、彼の口の端が笑みをつくっていることにも、気付けなかった。
ふいにファルシャードの腰のキリジが引き抜かれたのは、鬱蒼とした獣道がくねりだす手前。
獲物に気付いたのか、引き抜くが早いかその足は一気に低木の茂みの奥へと消える。
その方角から、場違いな人間の声が聞こえたような気がした。
ベフルーズは慌てて追いかける。
嫌な予感がする。
気のせいであってくれ。
頼むから、そうであって。
ざわめきの源は木のそよぎか、不安に駆られる心か、騒ぎを感じ取った内に飼う魔の所為か。
木立を抜けた先で見たのは、苛烈に湾刀を振るう友の姿。
その対峙した獲物は――――――人間だった。
赤く染まったサーコートの腹部を押さえ、辛うじてファルシャードの剣戟を盾で防ぐのは、中の国から来たことは想像に易い、山猫の傭兵。
ふいの闖入者にパニックを起こす白魔道士の少女と、華美なシャイル装束をやはり血で染めあげられた吟遊詩人のミスラ、それを抱きかかえる緋い羽根帽子のエルヴァーン。
苛烈な剣戟でがら空きの背後を取ろうとしたのは、漆黒の東方装束の男と盗賊風の短剣使い。
すべて織り込み済みとばかり、ファルシャードは振り向きざまにザッハークの印を組む。
山猫の傭兵――中の国の冒険者達は、こちらの事情など知るよしもなく、不運にも掃討作戦の場に居合わせてしまった。
考えるより早く、ベフルーズは抜きはなったキリジを友に向け、疾走した。
一瞬こちらを向いた瞳は、血と狂気に飢えた光を帯びている。
にげろ、はやく、冒険者にむけてケフィエのヴェール越しにそう叫ぶ。
なんなの、これは、とか、不滅隊が、とか、どうしてこんなところで、とか、喚く声。
とにかく冷静であろうとする赤魔道士のエルヴァーンが、錯乱する白魔道士の少女に何かを促した。
少女の唇が、恐怖に途切れながらもなにかの詠唱を紡ぐのが剣戟の隙間から聞こえた。
白魔法には疎いので何の詠唱かまでは分からないが、仲間の態度からそれが脱出手段の類であることは想像がついた。
はやく唱えきれ、心の中でベフルーズは舌を打つ。
途切れ途切れの詠唱が完了し、転移の魔法は一瞬のうちに発動した。
冒険者達は淡い光の中に消え、ナイト目掛けて斬り結ばれるはずだったキリジは虚空を掻いた。
「なにやってんだ馬鹿!」
そう怒鳴るベフルーズへと、今度はキリジの切っ先が向けられる。
まずは動きを封じなければ。
ベフルーズの手がザッハークの印を結ぼうと、ファルシャードの眼前へと向けられる。
しかし青魔法はあっさりと中断させられた。
ベフルーズの手から湾刀が零れ落ちる。
ファルシャードの湾刀が口元を覆うヴェールを切り裂く。
返し刃がひたりと首筋で止められた。
がくりと足の力が抜け、膝が地におちる。
「お前、なにしてるのかわかって」
それでもどうにか制止しようと、睨みつけ見上げたファルシャードの瞳は、血と狂気に爛々と輝いている。
ベフルーズの喉がごくり鳴った。
色々と、覚悟しなくてはならないと、状況は否応なくそう告げている。
ふいにファルシャードが膝をおり、友と同じ高さまで視線を落とす。
「じゃあ、お前が」
ファルシャードは哂った。
狂気、血の匂い、嵐の前の静けさ。
「お前が、どうにかしてくれよ。」
熱っぽさを帯びた声は狂気を隠そうともしない。
そう言うが早いか、ファルシャードは眼前の友の、蒼黒の戦衣を引き裂いた。
自分のかわりに、文字通り絹を引き裂くその音が悲鳴のかわりとなった。
身体を地に押さえつけられた頭に、箍のはずれた友の笑う声が響く。
何が起きているのか、何をされているのかは至ってシンプルだった。
つまり、暴力と同義の性行為。
けれど、犯され揺さぶられる身体と、悲鳴とも呻きともつかない声をあげる己の割に、意識はそれを随分と他人事のように見ていたと思う。
自分を犯すファルシャードがどんな顔をしていたのかも、五感が得る情報はいくつもあった筈なのに、それらの殆どをどうでもいい、と認識して切り捨てている自分。
抵抗すらも、どうでもいいとばかりに切り捨てていた。
ただただ、されるがままに犯される。
暴力の矛先にされた体が悲鳴をあげるのとは裏腹に、ひどく醒めた自我はあるひとつの可能性を考えていた。
これはファルシャード自身にすらもう御することのできないところまできている魔を、外側から御する手段になり得るかもしれない、と。
決して思考だけが冴えていたわけでもない、ぼんやりとした考えだったけれど、これで彼の正気を繋ぎ止めることが出来るなら一考の余地はある。
身体の奥に熱いものが注ぎ込まれ、程なく荒い息だけをのこしてファルシャードは動きを止めた。
ああ、終わったんだなと、それすらもどうでもいいように、投げ遣りに認識する。
緩慢に、ずるりと性器を引き抜いたファルシャードは、友を組み敷いたまま動こうともしない。
ベフルーズも、身じろぎひとつも、ぼんやりと何をみているのか判らない瞳も動かすことはなく、組み敷かれたまま。
時がとまったような空間が、ゆっくりと、再び動きはじめた。
焦点の定まらないベフルーズの顔に、通り雨のように振った、あたたかい何か。
涙。
焦点を失った瞳は、くしゃくしゃと顔を歪ませた涙の主を視界の中心にみとめる。
認識したのは正気を取り戻した友の顔。
涙と嗚咽を垂れ流す友の唇が、何事かを発するようにかすかに動いた。
「……め…」
崩れるように、ベフルーズの胸に蹲る彼。
ベフルーズ、ごめん。
彼の言葉が、何度も、何度も、何度も、何度も、繰り返される、泣きながら、壊れた蓄音機のように。
散々に暴れた魔は、満足しきったようになりを潜めていた。
気付くとその手は、彼の金糸のような髪にそっと触れていた。
何かを言おうと思った訳ではないけれど、彼の暴力も陵辱も意に介してなどいない言葉が、口をつく。
「よかった。」
よかった、元にもどってくれて。
よかった、人まで手にかけてしまうことがなくて。
目尻を細めようとしたけれど、唇に笑みをうかべようとしたけれど、どうにもぎこちない気がする。
果たして、上手く笑えているだろうか。
これだけで済んだ。
この身体ひとつで、これだけで済むなら、いくらだって差し出すから。
だから、いいんだ。
強張る体を動かして、子供をあやすようにファルシャードの背に腕をまわす。
これだけで、少しでも彼の正気を繋ぎ止めることができたのだ。
ねえ、泣かないで。
俺はファルシャードが戻ってこない方がずっと辛いんだから。
温度も表情もない声色だったけれど、ベフルーズの唇は淡々と、そう言葉を紡ぎ続ける。
それからというもの、ファルシャードを度々煽る魔のかたちは、すこしだけ様子を変えた。
見境なく獲物を求め、追い回し、切り刻む真似をしなくなったのだ。
もっと正確に言うならば、彼らは暴力と陵辱というかたちでの衝動の発散をいたく気に入った、という事だ。
そして、表向き身体の主であるファルシャードの側には、それを黙って受け入れる同族がいる。
普通の人間よりはずっと強く、回復力も生命力もある同族。
任務のあと――つまり、ほぼ毎日のように行われる暴力と陵辱を、ベフルーズは何も言わずに受け入れた。
最初はただ乱暴で一方的だっただけの行為が、日増しに暴力と狂気を増していこうとも、何も言わなかった。
それどころか、それでいいんだと、正気に返っては泣き詫びる友を抱きしめるのだ。
ただ、そんな日々の中で、ベフルーズは少しずつ、感情と表情を、そぎ落とされるように、少しずつ、少しずつ、失っていった。
首に巻きつくように浮かぶ鬱血の跡。
食い千切らんばかりに残された、項の歯型。
瞳以外のほぼ全身を覆うメガス装束と、文字通り人間離れした回復能力の所為で、それらが露見することは無い、露見させるつもりもない。
尤も、同族である同士達には、暴力も陵辱も全て見抜かれているかもしれなかったけれど、止められることがないのならそれでいい。
彼らだって、内側から己を蝕む魔に抗しきる手段などないのだから、知っていたところで何もできようはずもない。
これを止められることも、止める事も望んでなどいなかった。
この身体を供しているうちは、彼に踏みとどめることのできない、最後の一線を超えさせずにいられる。
彼を失わずに済む。
物心ついてからの人生をずっと共にしてきた、己の半身のような存在を、引き留めていられる。
魔物と成り果てた彼を見ずに済む。
内から蝕む狂気に振り回され、疲れきって眠るファルシャードの横で、のろのろと身体を起こす。
簡素な真鍮細工の施された窓枠の向こうの月は、細く鋭く、闇曜日のそれの色。
いくら人間よりは脆くない体といっても、手酷い暴力と陵辱に晒され続けていれば疲弊は隠せない。
やっと動かせるようになった身体を引き摺り、浴室に向かう。
身体に残る痣が、以前よりも消えにくくなった。
内に飼う魔物の力だって無限ではない。
求められる『食事』の、回数も量もずっと増えた。
だから、任務の合間にワジャームの奥地に向かい、プークやコリブリやペプレドを食い荒らす回数が増えた。
あまりに血を含みすぎた装束を、いくつも処分した。
使い途のない俸給だけは手元にいくらでもあったから、黄金貨と素材を押し付け、白門の仕立屋に替えの装束をいくつも注文した。
力のない瞳で、ファルシャードの背に刻まれた双頭の蛇を見つめる。
それは自分にも、他の青魔道士にもおなじように在る、逃れられない宿命と同義のものだった。
ベフルーズは気付いていない。
彼の背を見やる己の瞳には、自己犠牲とも諦観とも違う別の色が宿っていることを。
その正体が、狂気や愉悦の類であるということにも、気付いてはいない。
いとおしげにファルシャードの双頭蛇にふれる唇の端が、そんなものを含んで吊り上っていることも。
押し付けられる衝動と狂気が日常と成り果てた頃。
切っ掛けがなんだったのかは、わからない。
けれど、その時は訪れた。
牢獄に収監したはずの海猫党員が逃亡を図り、捜索命令が下された。
捜査網は海猫党の根城とされる暗礁域を含んだアラパゴ全域にまで及び、捜索部隊には二人の姿もあった。
ほぼ常時、曇天と濃霧に覆われたアラパゴの土地を忌む人間は多い。
ある種の瘴気に覆われているといっても過言ではないその土地は、青魔道士の中でも好まざる者は多かった。
―――中には安住の地とすら言う程に好む青魔道士も居るのだが。
抗う者にも、受け入れた者にも、―――抗っているつもりの者にも、その瘴気は麻薬のような毒性があった。
少しだけ、嫌な予感がした。
けれどその理由はわからない。
いつも以上に濃い妖霧の所為だったのかもしれないし、ファルシャードが佩いたキリジが、いつもの白銀色の官給品ではなかった事かもしれない。
あるいは、今日身に着けた装束が仕立屋から届けられたばかりの新品であったことかもしれない。
理由らしい理由など幾らでもあるようにも、まったく無いようにも感じられた。
浄化ー話、おまけです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「なあ、今晩、泊まっても・・・」
「ダメ。」
「ダメって・・・」
「明日から出張でしょ。」
「あ、そうだった。じゃあ、帰ったら・・・」
「イヤ。」
「イヤって・・・、もしかして、怒ってる?」
「うん。」
「うんって・・・」
「だって、勝手に、あんな相談して。」
「だって、あいつのこと可愛がってるだろ。」
「それとこれは別。」
「一ヶ月だぞ。」
「したいだけ?」
「おまえがいいんだよ。」
「俺も。」
「ごめん。」
「出張から帰ってきたら、ね。」
「お客さん、着きましたよ。」
「悪いけど、ちょっと待っててくれる?俺戻ってくるから。」
「いいですけど、メーター上げてますよ?」
「うん、構わないよ。それからこれ。悪いね、変なの聞かせて。」
「あ、すんません。まあ、私もこの商売長いんで、たまに、ね。」
「そうなんだ、あるんだ。たまに。歩けるか?まったく、飲めないヤツに飲ませやがって。」
「さーて、何分で戻ってくるか、賭けに乗るヤツいるかな?」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
支援いる?
いつもどおりの筈のファルシャードの足取りが、あの日のように見えた。
逃亡者の捜索中、彼らを敵と見做した暗礁域の住人、つまりはラミアや不死者達に襲いかかられ、淡々と彼らを狩る姿が魔を煽ったのかもしれない。
衝動的にラミアを駆逐した廃船の隅で、強引に手を引いたファルシャードが、正しくは彼の中の魔が、何を欲していたのかはもう想像するまでもない。
舐りつくすようなくちづけを交わしながら、腐食しかけた甲板に背を押し付けられた。
ふと、暴力と区別のつかぬ行為を強いられる日々のなかで、そんな扇情的なことなど初めて行われたことに気付く。
そこから先はいつもどおり。
暴力とともに犯される、ただそれだけ、の、筈だった。
綻んだままで張り詰めていた糸が、前触れもなく、ぷつりと千切れるように、その時は訪れた。
起きた事を理解しきれないファルシャードは目を見開いた。
ごぼごぼと、彼の喉に何かが溢れかえる音。
その音に混じって、ベフルーズの名を呼ぶ彼の、口の端から溢れていたのは、血液とそれを多分に含んだ唾液の泡。
その胸には、己の半身とも言える相手だった、繰り返し呼ぶその名の主の、白銀に煌くキリジ。
ファルシャードは何かを言おうと、唇を動かす。
けれど、ごぼごぼと血を吐くばかりで言葉にはならない。
キリジを突き立て、柄を握り締めたまま、ベフルーズはじっと彼を見つめていた。
ファルシャードの眼が光と焦点を失い、その身体がゆっくりと崩れおちるのを、じっと見つめていた。
「…………ふ、……ふふ」
ふふふ、ふふふふふふふ、ふふ、ふはは、はははははは、あははははははは
胃の腑の引き攣りをそのまま声にしたような、不安定な、怖気を呼ぶ笑い声が周囲に響く。
何とひきかえにしても失いたくないと、そう思っていた人の血を浴びて。
半生をともにした同士の血を浴びて、ベフルーズは笑っていた。
その声は、蝕まれた精神を魔に明け渡した者の声。
虚ろに眼をひらいたまま動かない友の傍らで、ひたすらに笑う青魔道士。
肩をふるわせ、いまだに零れる笑い声を隠しもしないまま、穏やかすぎる微笑をたたえた彼は、もう動くことのない友に囁いた。
「……綺麗な剣だね、ファルシャード。」
瞳にうつるのは、彼の腰に佩かれたままの湾刀。
官給品のキリジではない、鮮やかに染め上げたようなコバルトブルーの刀身を持つ、アダマンチウム製のキリジ。
別に、その剣に何かを感じたわけでもない。
魅入られたとか、羨んだとか、そんな単純なものでもない。
ただ、視界に映ったその冴える蒼を、綺麗だと、そう感じたからそう言っただけ。
彼の、彼としての記憶は、そこで途絶える。
『報告書:
逃亡した海猫党員の捜索は打ち切られ、現地の隊は即時、ソウルフレアの幼体となった青魔道士の処理へと行動を移行。
対象、不滅隊士ベフルーズの変容現場と思われる場所には同隊士ファルシャードの遺骸があり、
隊士ベフルーズの手によるものと思しき殺害の形跡を確認。
隊士ファルシャードの所有していた武器は幼体に強奪された模様。
(直後の第一発見者の証言により、同一品と思われるアダマンチウム製キリジの所持を確認。)
不滅隊士ファルシャードを殺害した経緯については不明。
変容をきたした隊士ベフルーズへの処置の失敗という可能性が濃厚。
幼体は変容最初期段階の為、形状は人型を維持。
遺骸は皇国軍の研究所へと収容。
遺骸は青魔道士の変容と、その対処に関する研究用としての供与を承諾。
検死した錬金術師の証言によると、身体には完治しきれていない痣、絞首による鬱血痕等無数の傷を確認とのこと。』
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
う 連投寄生とプチ延長してしまった お目汚し失礼しました(;´д⊂)
>>195 191です。
間に入ってしましまして、申し訳ありませんでした。
もう一回確認すればよかった・・・。
難局シェフ。半生注意です。新やんと仁志村。前回のその後。新やんが発熱しました。
ドクタ.ー×仁志村はデフォですが、エロはほぼありません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
診療室の小さな窓から仁志村は外を見ていた。
目を凝らさないと、窓と言うより白い紙が張り付いているようにしか見えない。
凄まじい地吹雪のせいで、すぐ傍に設置してあるはずの燃料入りドラム缶すら認識できない。
方向感覚だけでなく、簡単に命をも奪い去る白い闇―ホワイトアウトの只中にいる現実感は暖かい室内ではやや鈍い。
とは言え、今期最大級のブリザードは確実に小さなドーム藤基地を脅かしていた。
外出が禁止され、一日中身動きが取れなかった鬱憤を晴らす為、今夜は“おいでませA級ブリザード”と銘打った宴会を開催した。
仁志村が用意した中華は、あっという間に隊員の腹へ消えて行った。エビチリに至っては料理人の口に入らないスピードで。
いつになく仁志村の酒も進んだ。その後、ドクタ.ーに誘われるまま医療棟にあるこの診療室でたっぷりと喘がされて今に至る。
酒精と、情事の余韻で頭が働かない。
仁志村は眉を寄せて、たった今ドクタ.ーから聞いたばかりの話を整理しようと試みる。
定期血液検査で異常が見つかった隊員がいた。ドクタ.ーの診立てでは感染症の可能性が高いという。
ここは陸の孤島。そして基地にいる8人以外の生物は皆無であり、ウイルスは存在しない―。
胸のボタンを留め終えた仁志村は、診察用の椅子に腰を降ろしてドクタ.ーを見た。
「ウイルスなの?」
「ウイルス感染症の症状に似ているって言ったの」
ドクタ.ーがビールのタブを引き上げながら、BARコーナーからちらりと仁志村に視線を送る。
「それは、ウイルスじゃないってこと?」
「ここは難局だからね」
仁志村は混乱する。よくわからない。
「炎症反応が諸々高くてねぇ。熱も下がらないし」
仁志村は宴会であまり食事に手をつけていなかった人物の顔を思い浮かべる。
―新やん。
確かに、いつもより元気がなかった。
「新やん、あんまり食べてなかったね」
次の瞬間、仁志村は霞がかった頭が一気に覚醒するような恐ろしいことに思い至った。
目を見開く仁志村の視線を、ドクタ.ーが無表情に受け止める。
感染症、炎症反応、そして発熱。―まさか。
「・・・食中毒?」
だとしたら、仁志村の責任は重い。胃の辺りがずきりと痛む。
仁志村は必死に新やんだけが口にした食べ物の記憶を辿った。
「新やんだけが食べたものって・・・ないよね」
新やんは夜中に盗み食いするようなタイプではない。
「実は俺もちょっと疑ってみたんだけどね。下痢や嘔吐の症状もないし、食中毒の可能性は低いと思う」
「本当に?」
「違うだろうなぁ」
ドクタ.ーはグラスに注いだビールに口をつける。
「とにかく、原因がはっきりしない。抗生物質も消炎剤も効果なし。この前の傷も関係なさそうだしね」
ただ、とドクタ.ーは言葉を継いだ。
「これが体内の病変から来るものだとしたら、ここでの対応は厳しくなるなぁ」
医者らしく淡々としたドクタ.ーの言葉は仁志村を酷く憂鬱にした。
難局へ派遣される隊員はある承諾書にサインをしている。
言うまでもなく、この僻地では受ける事ができる医療行為に制限がある。
特に南半球に於いて冬期にあたる現在は、砕氷船も停泊しておらず、諸外国の航空機も要請出来ない為、緊急搬送は絶対的に不可能だと
言う。
つまり、どんな状況が起こっても救援は期待できない。それは見殺しにされる事と同義だ。
「とりあえず、庄和と局地研にサンプルデータを送ったから連絡待ちね」
難局で最も医療設備が整っている庄和基地はここから1,000キロ離れている。順調に行っても雪上車で20日間は掛かる。
もし今夜、新やんの容態が急変したら?
仁志村はぞっとした。
「そういえば、仁志村君喉が腫れてた気がする」
「えっ」
いつの間にか目の前にいたドクタ.ーの指が、驚いて顔を上げた仁志村の喉のリンパ腺を探る。
「舌見せて」
言われるまま思い切り出した舌を、身を屈めたドクタ.ーがべろりと舐めた。
「んあっ」
驚いた仁志村が椅子から落ちかける。ビールの苦味が舌を刺激した。
にやにやしているドクタ.ーに仁志村は言葉を失う。
「びっくりした?」
「はあ?!」
ドクタ.ーは皺の寄った仁志村の眉間を指でぐい、と押した。
「キミの喉は冗談。新やんの件はあんまり心配しないように。精神的なものかもしれないしね。ほらあの子、彼女に捨てられちゃったしさ」
**
居ても立ってもいられず、仁志村は厨房へ立ち寄った後、新やんの部屋へ向かった。
控えめにノックをしてみたが、応えはない。少し躊躇ってから静かに扉を開いて声を掛ける。
「新やん、入るよ」
スタンドの淡い光の中、掛け布団がもぞもぞと動いた。
持参したトレイを机に置いて、ベッド脇のパイプ椅子に座る。
「調子どう?」
「うーん・・・なんか暑いすね」
寝ていたせいか熱の為か、嗄れた声。
新やんは億劫そうにこちら側に寝返りを打った。薄暗い中でも明らかに顔の赤さが見て取れる。
「スポーツドリンク持って来たよ、あとおかゆも」
おかゆは、居間で雑魚寝をしていたはずの凡に奪われかけたが、なんとか死守してきた。
仁志村は新やんの額に手を当てる。熱い。
「冷たくて気持ちいー」
氷を取ってきた為に冷えている仁志村の手に、新やんの手が重なる。
その燃えるような熱さは、仁志村の胸を急激に冷え込ませた。
「気持ち悪くない?」
「ちゅうとかしてもらったら治るかもしれないです」
「なに言ってんの」
「はは・・・」
腕を突いて身を起こした新やんは、仁志村が差し出したスポーツドリンクを喉を鳴らせて飲み干した。
「おかゆは?」
「うーん、今はいいです」
「・・・そう」
顔を顰めながら再びベッドに沈みこむ。
「ああ、もう」
仰向けになった新やんは、額に自分の腕を載せ潤んだ目を彷徨わせた。
「なんか、嫌な夢ばっかり見るんです」
「どんな?」
「目が覚めたら、藤基地に俺ひとりしかいなかった、とか」
それは恐い。
「日本に帰ったら、みんな俺のこと忘れてた、とか」
それも恐い。
「インマルサットの志水さんにまで、他に好きな人ができたって言われたり」
会ってもいないのにね、と新やんは自嘲気味に嗤う。
仁志村は笑えなかった。
楽しいこともあるけれど、思っていた以上にここでの生活は過酷だ。
待っている人がいたって寂しいのに。手の届かないところで、誰かを失うのは想像するだけでも胸が苦しくなる。
「仁志村さんもさみしくなったりする?」
「するよ」
「奥さんのこととか?」
「そうだね」
「俺は寂しくなる対象が消滅しちゃって、どこに切なさを発信すればいいのか分からなくなりました」
「うん。でもみんな寂しいよ、きっと」
「だからイチャイチャしちゃうんですかね」
「・・・」
「仁志村さん?」
「何か食べたいものある?」
「うーん、仁志村さん。・・・っていうのはコテコテですよね」
苦笑した新やんを仁志村は真顔で見つめ返した。
もし、新やんの症状が精神的な不調に端を発するものだとしたら。
誰かの体温で救われることもある。それは仁志村が一番よく知っている。
とろんとしていた新やんの目がみるみる大きくなって、仁志村は我に返った。
「あれ、もしかしてOKですか」
「あ、ごめん聞いてなかった」
「ひでぇ」
新やんが笑いながら枕に顔を埋めた。
仁志村は不穏な考えを慌てて頭から追い払う。自分から何をどう言うつもりだったのか。
「で、なんだっけ?」
「えーと、ハンバーガーが食いたいです。渋谷で食べられるような」
「渋谷?どこだって食べられるじゃない」
「いや、絶っ対、渋谷風のやつで」
「渋谷風・・・・」
ご馳走系のハンバーガーと言う意味だろうか。
仁志村はメニューを思い描く。
とびきりの和牛で極粗引きの分厚いパテをこんがり焼いて。
甘いローストオニオンは外せないし、プチトマトだけでは物足りないから、うまみたっぷりのドライトマトも入れて。
ピクルスは保管庫で見た記憶がある。ブリザードが収まったら凡と取りに行こう。
ちょうど食べる頃に蕩けるように、ぶつ切りにしたマンベールもごろごろ挟んで。
バンズには全粒粉を混ぜよう。香ばしく、美味しくなるように。
よく分からない“渋谷風”についてはこの際雰囲気で押し切ることにする。
「オシャレな感じ、ってことでいいのかな」
「はい。渋谷風の」
「渋谷風ね。了解」
新やんがあくびをする。目の淵に薄く涙が滲んだ。
「仁志村さん、もう一つお願いしても良いですか」
「特別に許可します」
「あの、手、繋いでも良いですか」
仁志村は目の前に差し出された手と新やんの顔を交互に見た。
新やんがむくれた顔をする。
「あ、仁志村さん今子供っぽいって思ったでしょ」
「思ってないよ」
仁志村は小さく微笑って、新やんの手に自分のそれを重ねた。すぐ指の間に長い指が入りこんで、ぎゅっと握り締める。
新やんの顔の前へ引き寄せられた指先に熱い息が触れた。
子供のような無防備な表情。ニ三度瞬いた目蓋が、安心したようにゆっくりと閉じられてゆく。
程無く寝息を立て始めた新やんの髪に仁志村は触れた。
太陽の沈まない白んだ夜が更けてゆく。
新やんが、せめて孤独ではない夢をみられますように。
仁志村はそっと祈った。
**
「仁志村君、仁志村君」
遠くで名前を呼ばれている。
身体が揺れたと思ったら、引き起こされた。間近に迫るドクタ.ーの顔に仁志村は驚く。掴まれた腕が痛い。
「仁志村君、なにやってんの」
仁志村はぼんやり部屋に視線を巡らせた。見覚えのあるポスター。ベッドには新やん。
どうやらあのまま眠ってしまったらしい。時計の針はすでに明け方に近い時間を指している。
「えーと・・・」
「感染症かもしれないって言ったでしょ。こんな密閉された場所にいつからいたの?ほら、手消毒して。すぐうがいもしなさい」
新やんに聞こえないように、仁志村の耳元で鋭く囁く。あまり見る事のない真剣な表情のドクタ.ーに仁志村は戸惑った。
新やんは眠ったまま、ゆったりとした呼吸を繰り返している。
ドクタ.ーは机の上のトレイを押しやって、注射器が載ったステンレスのバットを置いた。
新やんの額に当てた手を、そのまま首筋に潜り込ませる。
「あ、熱下がってる」
「ほんと?」
ドクタ.ーの手に新やんは身じろいだが、目を覚ます気配はない。
「仁志村君、なんかした?」
「いや、べつになにも」
「ほんとに?」
「渋谷風の約束はしたけど」
「なにそれ?」
**
診療室の窓ガラス越しに、雪に埋もれた資材を掘り起こしている隊員の姿が見える。
仁志村も昼食が終わり次第、貴重な食材が詰まった段ボール箱の発掘作業に入らねばならない。
窓の外は明るく、青く、そして白い。ブリザードは夜のうちにどこかへ去って行った。
庄和基地からの指示でいくつかの追加検査をする事になったものの、新やんの血液はほぼ正常値に戻っていた。
検査を終えたドクタ.ーは、人体って不思議だよね、と飄々とした笑みを見せた。
「すげーいい夢みました」
新やんは昨日の不調が嘘のように、満面の笑みで診察用の円椅子に座っている。
「へえ、どんな?」
「俺、殺人鬼になってました」
ドクタ.ーと仁志村は同時にぽかんと口を開けた。
「・・・それ、いい夢?」
ドクタ.ーが乾いた笑い声を立てる。
「ちょっとちょっと、まさか俺のこと殺しちゃったりしてないよね?」
「もちろんやっちゃいましたよ」
新やんの言葉にドクタ.ーの表情が半笑いのまま凍りつく。
「どのあたりがいい夢だったの?」
恐る恐る仁志村が問う。
「それはもう、仁志村さんを思う存分好き勝手に。まず、藤基地を孤立させる為に通信の凡さんを・・」
仁志村は続きを促した事を激しく後悔した。
にやにやしながら新やんの殺人譚を聞いていたドクタ.ーはさらりと診断を下した。
「・・・それはあれだな、まぎれもなく欲求不満。しょうがないから仁志村君を処方しておこうか」
「は?!」
「やった!」
「ほら仁志村君、若さ持て余してる新やんをよろしくね」
「・・・」
仁志村の冷たい視線にドクタ.ーがうふふと笑う。
「いや、ほら、純愛めいちゃって別れが辛くなっちゃうのもなんだからさ」
「・・・大体、メンタルヘルス管理はドクタ.ーの仕事でしょ」
眉を上げて、ドクタ.ーは新やんを見る。
「新やん、俺でいいの」
「いや、できれば仁志村さんが。だってそれ、俺がやられちゃうってことすよね」
「ん?まぁそうなるだろうね」
「いやぁ、それは・・」
仁志村はため息をついた。
「仁志村さーん、この前のリベンジさせてください」
新やんの言葉にドクタ.ーが反応する。
「あれ、なにもしてないって言ってなかったけ、仁志村君?」
「してないってば」
仁志村は時計を見ていた。
もうすぐバンズの二次発酵が終わる。戻らなくては。
唐突に立ち上がった仁志村を二人は見上げた。
「仁志村君どうしたの?」
「過発酵しちゃうから」
仁志村はそれだけ言って、ドアへ向かう。
「カハッコーってなんすか」
「さぁ・・・なんか光っちゃうんじゃないの」
「ああ、発光!・・・って何が?」
「さぁ?」
仁志村は戸口で振り返ると、新やんを呼んだ。
「今日は手伝ってくれるんでしょ?早くしないと渋谷風が元渋谷風になっちゃうよ」
「え、それは困ります」
慌てて付いてきた新やんが仁志村に並ぶ。通路が狭い為に距離が近い。
「仁志村さん、あの事、ドクタ.ー知らないんだ?」
新やんが声を潜める。
「なんでドクタ.ーに言う必要があるの」
「ふーん」
「なに」
「それってつまり、二人だけの秘密ってことですよね?」
「・・・」
「また口止め料徴収しようかなぁ、ぐあっ」
仁志村が新やんの鼻を抓む。
「生意気な事言わない。・・・続き考えてたけど、どうしようかなぁ」
「え」
新やんが立ち止まる。仁志村は構わず先を行く。
「え、それホントに?また嘘ですか?ちょっと、仁志村さん!」
走リ出した新やんは突然止まった仁志村に追突しそうになった。
「仁志村さ、」
新やんの言葉が途切れる。振り向いた仁志村は、新やんの肩口に両腕を伸ばして抱き寄せた。
「・・・あの、仁志村さん?」
「熱下がってよかった」
「・・・はい」
新やんの腕がそっと仁志村の背中へ回る。
「心配した?」
「当たり前でしょ」
「俺の部屋にはもう来てくれないって思ってました」
「だって弱そうだったし」
「もう復活しちゃいましたよ?」
隙間無く合わさった胸に互いの声が低く響く。新やんの腕に力がこもった。
仁志村も負けじと腕に力を込めた後、すり抜けるようにすばやく新やんから離れた。
「はい、続き終了です」
「・・・ひどい、仁志村さん」
「ほら、生地がダメになるから急いで!」
笑いながら食堂棟へ消える仁志村を、新やんは不貞腐れた顔で追いかけた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
貴重なスペースありがとうございました。
>>205 リアタイ遭遇!姐さんの難局話はほのぼのするしリアルだしで最高です
新やんとシェフの会話とても可愛いです
>>197 新やん純粋で可愛すぎる…
そしてニツムラ君は相変わらず良いオカンだw
GJです!
>>205 ついさっき元ネタのDVD観たところだったのでめちゃくちゃびっくりしました!
(もちろん、姐さんのSSがきっかけですw)
仁志村さんがとても綺麗でふたりがムラムラしちゃうのも納得です。
今後の新やんとの進展に期待してます!
801SSなんてさ、一部の神作品を除いてまあ似たり寄ったりな内容だったりするわけなんですけども
しかしほぼ同じ内容のSS、例えば攻→受←当て馬群の可愛い受マンセーSSでも
自カプだと「受の色気ハンパねえからそうなるわw」とか思って萌えたりするのに
801的に興味のない場合だと「え?あの人がこう見えてるの?マジで?」と驚いたりして
自分が普段いかに彼らを色眼鏡で観ているかという事を振り返ったりする事になりそろそろ寝よう
すいません誤爆…
211 :
勇者の意識:2010/10/25(月) 00:55:22 ID:3/xmlyzD0
某スレ541にて、レスしてくださったスライムRPGの3作目のオリキャラ設定を
お借りして書いてみました。
ご自身のイメージと違ってたら、ごめんなさい。
おまけに、今回は、ちゃんとしたBLにすらなって無い!ので、ご容赦ください。
次はちゃんとBLなSSを投下するようにします……
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「っ、あぁああぁ!!!」
少年は、声を上げながら、目の前の魔物達への群れへと切り込んでいった。
だって……こんなの! 見過ごせる訳が無いじゃないか! 例え相手の方が強くて、まるで相手になら
ないとしても、こんなのは絶対に見過ごせない!
そんな強い想いを胸にしながら、彼は手元の剣に全身全霊の力を込めると、勢い良く相手に斬りか
かってゆく。
だが、彼が今、相対している魔物は、彼自身の力量と比べれば、相当に強い。
彼がそんな風に渾身の力を込めて斬りかかったところで、相手に対して、全く刃が立つ筈も無かった。
彼の剣は、目の前の魔物をほんの少しかすめたたけで、いとも容易くかわされていた。
……あなたのお父様はね、それはとても勇敢な勇者だったんだから。
相手がどんなに強い敵だったとしても勇敢に立ち向かっていったわ……
少年は、自分の母が父の話をする時にいつも誇らしげに語っていた、その言葉をふいに思い出した。
そうなのだ。自分は、高名あの勇者の息子なのだ。
だからこそ、こんなところで、こんな奴等に負ける訳になど、絶対にいかない!
その思いを新たににすると、少年は目の前に立ちふさがり、圧倒的な強さを誇っているかのような魔
物へと再び斬りかかっていく。
「あー、やっぱり、逃げるっていう選択肢は無いわけね」
先程より、少年が再び魔物へと斬りかかっていく様子を間近に見ていた、その連れ添いの青年は、
自らの額に手をあてると、天を仰ぐようにして、小さな声でそう言いながら、ため息をついた。
まあ、コイツの性格を考えたら、逃げるなんてことする筈も無いし。
そんなことは、解りきっていたのだけれども。
彼は、そう思いながら、すぐに少年をサポートできるように、体勢を整える。
恐らく今、自分に出来ることは、少年の体力回復へのサポートに努めることだろう。
自分を含めて、今、不運にも、この場に一緒に同行している奴等のメンツを考えればそんなところだ。
本来なら、今、自分と一緒に同行している僧侶殿の回復魔道も頼りにさせてもらいたいところだが、
彼には、今、その槍術で、魔物へと直接攻撃を仕掛けてもらわないと、埒があかない。
おまけに……彼の隣に横たわる小さな魔法使いの少年に至っては、この強大な敵に遭遇した瞬間
に、気を失ってしまっている。
それについては、魔法使いの少年の普段からの心根の優しさと繊細な性格を考えれば、無理の無い
事だとは思う。
問題は、先程、偶然にも遭遇したこの強敵に対して、無謀にも切り込んでいった、血気盛んな、うちの
小さな勇者様にあるのだ。
商人を生業としているその連れ添いの青年は、かつて大盗賊団に憧れていた故に、それなりの修練
を積んでいるしなやかな身のこなしで、勇者の少年の傍へと移動しながら、回復薬の瓶を手にした。
恐らく、魔物からの攻撃をもう一度、まともに受けたら、彼の体力はもう、持たない。
全く、これ……使う度にどんだけの出費になると思ってるんだよ!!
彼は、そう思いながら、回復薬を勇者の少年へと与えるタイミングを計る。
もちろん、彼自身も魔物からの攻撃を受けつつではあったが、その影響力が最大限に及ばないように
しながらである。
彼がタイミングを計っていた、その短い間にも、魔物達からの猛攻は止まない。
特に最初の獲物を勇者の少年へと定めた所為か、魔物達の彼への攻撃は、徐々に熾烈を極めてい
く。
「いっ……痛ぅっ、う……ああっ!! なんでアンタがここに来たんだ! いいから下がってろよ!」
魔物達からの攻撃を除けることだけで、精一杯だった為に、商人の青年が魔物の猛攻を掻い潜っ
て、自らの傍に来ていたことに、今になって、ようやく気付いた勇者の少年は、青年に向かって、そう
言い放った。
「馬鹿言ってんじゃないよ!
俺がサポートに入らなかったら、お前、自分の命だって危ない状況だろう!」
商人の青年が自らのことを想って言ってくれたその言葉を勇者の少年は、その場で素直に受け止め
る事は出来なかった。
自分の所為で、この青年さえも一緒に窮地に追いやるようなことはしたく無かったのだ。
それに、彼には、気を失ったままの魔法使いの少年だけでも護ってほしいと思っていたからだ。
「うるさいよ! 魔物は俺が引きつけるから、アンタは、彼を護れ!!」
勇者の少年は、商人の青年に対して、言い捨てるようにそう言うと、自らの剣を必死に振りかざし、魔
物達の攻撃を除けながら、折角、青年が危険を掻い潜って、近くにまで来ていたというにもかかわら
ず、逆に少しずつ、二人の間の距離を空けていく。
そのために、勇者の少年は仲間から再び少しずつ離れていくような形になり、たった一人で、無数の
魔物達に取り囲まれるような状況になりつつあった。
「全く、こんな状況で、なんで闘いを挑むんだよ!
僧侶殿! 頼む! 奴等への直接攻撃を最優先にしてくれ!
俺が、しっかりとアイツのサポートにまわれるように、フォローを頼む!」
「言われなくともそうするさ!」
僧侶の青年は、そう言うと、素早い身のこなしで、自らが手にしている鉄槍を携えたまま、勇者の少
年の元へと、小さな魔物の群れをなぎ倒しながら駆けていく。
「っ、あ!!」
「勇者殿! 一度、下がりなさい!
奴等に本気で闘いを挑むのは、君がしっかりと体力を回復にしてからにしてくれ!」
ほんのわずかの間に魔物からの一斉攻撃を何度となく受けて、あちこちに切り傷を作りながら、再び
小さな悲鳴をあげた勇者の少年に対し、僧侶の青年は、そう強く声をかけた。
それから、強大な魔物に伴するように群れている小さな魔物共をもう一度、なぎ倒すように、手元の
槍を一気に振るう。
「ありがとう……でも、俺は、勇者である俺の名にかけて、ここで引き下がる訳にはいかないんだ!」
勇者の少年は、自分の頬にはしった傷から流れていた血を拭い、ほんの少しだけ、微笑むような表情
を見せながらそう言うと、その魔物の群れの首領であろう、一際大きな体躯の魔物へと向かって、再
び駈け出し、てゆき、一気に剣を振るう。
それとほぼ同時に、勇者の少年の繰り出した剣に追走するかのように、僧侶の青年が繰り出してい
た鉄槍が、大きな魔物の額を捉えた。
そして、その次の瞬間、鉄槍が大きな音をたてて魔物を貫くと同時に、魔物が断末魔の叫び声を上
げながら、崩れ落ちるように消えてゆく。
それにあわせて、群れを成していた、小さな魔物達もその場から瞬時に消えていった。
「……ほらね……俺にだって……コイツらを倒せたじゃないか……」
勇者の少年は、魔物達が消えてゆく突然の有様を目の前で見つめながら、その場に崩れ落ちるよう
に自らの両膝を地面へとついた。
それから、彼は、そのまま張りつめていた意識を急に手放すようにして、その場へと倒れ込んだ。
「おい!」
「勇者殿!」
商人の青年と僧侶の青年の二人がそれぞれに駆けつけながら、勇者の少年に呼びかけたにもかか
わらず、その呼びかけにも、全く応じること無く、勇者の少年は、その場で、完全に意識を失っていた。
「勇者殿の無鉄砲のお陰で偶然にも、魔物の急所を捉えて一撃で仕留めたから良かったものの……
これから先が思いやられるな……」
「ああ……」
青年二人は、その場で意識を失ったままの勇者の少年を見つめながら、それでも、当分こいつを放っ
ておけそうには無いなという表情で溜息をついた。
それから、互いが同じ表情をしていたことに気が付くと、今までの双方の苦労をねぎらうように、少々
複雑な表情で自然と笑みを交わしていた。
そして、二人の青年は、それぞれに、この仲間もとい、メンツとの旅は、まだ当分の間、続くことになり
そうだな……などと思いながら、魔物も去り、ただ、ただ蒼く晴れわたっている空と、この先の旅路のへ
と続く路の行方を仰くようにして見ていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
貴重なスペースありがとうございました。
舞.台「晩you記」より非当番×佐治(非当番→佐治?)
等位の舞が綺麗だったので、老欄族では舞を教えるんじゃないかという妄想。
短い上にエロ無しで拙い文です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
一度だけ、佐治の舞を見たことがある。月の綺麗な夜だった。
いつものように二人きりで晩酌をしていた際の事、その日の佐治は珍しく酔っていて、気分を良くしたのだろうか、
普段は身の上の話を一切しないあいつが、人殺し以外の特技を教えてくれた。
老欄族では、見目麗しい者にのみ舞を教えるという。
冗談半分で佐治の舞がみてみたいと言った。
それは佐治に向けた言葉ではなく、行き場を必要としない独り言のつもりだったのだが、
佐治は普段通りの笑みで頷き、見せてあげようかと立ち上がった。
その刹那、先程までの締まりのない笑みは消え、そこにあったのは匂い立つような色香を孕んだ微笑。
俺は佐治が普段決して見せる事のないその表情に胸が高鳴るのを感じた。
聴き馴染みのない異国の歌を口ずさみながら、それに合わせて舞う佐治。
海風に煽られてたなびく漆黒の長髪が月明かりを受けて輝いている。
今まで見たどの踊り女より美しく、そして激しく、時に切ない舞は、俺の心を捕らえて離さなかった。
瞬きをする事さえ惜しまれるような美しさに息を飲む。
何処か別の世界に連れて行かれたような錯覚に陥り、目眩がした。
「んー、この先はもう覚えていないなあ…って、君、大丈夫?」
佐治が舞を中断してもなお、俺の意識は別世界にあった。
佐治に頬を叩かれ(しかも結構強い力で)、辛うじて己を取り戻す。
「見惚れるでしょ、僕の舞。これで男を惑わして、その隙に殺すんだ。」
そう言われて、今度こそ夢から覚めたような気がした。
そうか、これも殺しの技なのか。
確かにあの舞を見ている最中、心と身体が乖離したような感覚に襲われた。
その隙をつかれたら、抵抗らしい抵抗は出来ないだろうと思う。
寧ろ心此処に非ずといった状態のまま、夢心地の中で三途の川を渡ってしまいそうだ。
「あ、そうだ、良いこと教えてあげるよ。僕の舞を見た者は、世界中で君一人だけなんだ。光栄でしょ?」
「え?」
「僕の舞を見た者達は、今のところ全員冥府送りにしてるからね。」
「…」
聞いて、唖然としている俺の何が面白かったのか、腹を抱えて大笑いしている佐治。
こら、人を指差すんじゃない。
「あー、君は本当に面白いねえ。」
「…からかっているのか。」
「あはは、うーん、今宵は月が綺麗だ。僕の舞を見ても明日を迎えられる幸運な君に、もう一つ僕の特技を教えてあげるよ。」
言うが早いか佐治は俺の顔を突然引き寄せて、唇を重ね合わせた。
しかし唇はすぐに離され、眼前にあったのは、勝ち誇ったような満面の笑みを浮かべた佐治。
驚きのあまり硬直している俺に気を良くしたのか、佐治はくつくつと笑いながら、俺の耳元に囁き、その場を立ち去った。
『今度君にも教えてあげるよ、房術ってやつをさ。勿論、実践でね。』
房術を教える…。
酒に思考回路を侵されていた為か、将又、先程の接吻に動揺していた為か、幾度反芻しても、咀嚼する事のできないその言葉。
しかし自室に戻り、冷えた寝台に横たわった途端、突然酔いが冷めて、思考が正常に働き始めた。
房術を教えてもらうという事は、佐治とそういう行為に及ぶという事じゃないか!
それを理解してしまったら、ああ悲しきかな、男の性。
脳裏に浮かぶのは佐治の霰もない姿。
親友相手に何て下卑た妄想をしているんだけしからんと己を叱責しようとも、佐治の舞の美しさと唇の柔らかさとが忘れられず、ただでさえ短い夜を悶々としながらやり過ごし、結局寝つく事ができなかった。
「いや、でもあのときの佐治の舞は本当に美しくてな、雲一つない夜空に煌々と輝く月でさえも引き立て役でしかなかったよ。」
「あーそうなんですかー…。」
「ああ。あ、そうそう、その後日談で、房術の話なんだがな、初めてのときは佐治が…」
「(酒飲むといつも佐治さんとの惚気話し出すんだから、この人は…。助けて六ちゃん…。)」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
文を書く事に慣れていない&初投稿なので、読み辛い箇所が多々あると思いますが、
目を瞑って頂けると幸いですw
お目汚し失礼致しました。
ここまで読んで下さって有難う御座います!
ある意味すげーな。
盾さんと仁志村さんと佐治、基本的には顔おんなじなんだよw
だのに全然受ける印象が違う。
COD:MW2よりダブル大尉とジャンプ力皆無の軍曹の小話お送りします
まさかの洋ゲーで失礼
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
有り得ないものを見た。
収容者627と対面したマクタビッシュ大尉の表情は、強いて言うならばそんな風だった。
ここまで驚いている様をローチは今まで見たことがない。
リオデジャネイロでローチが九死に一生を得た時も、声こそは若干動揺していた風に思えたが、ここまで素には戻っていなかっただろう。
だからこ彼は驚いていた。
マクタビッシュ大尉をここまで驚かせた囚人番号627と呼ばれる男に。
「こちらシックスフォー、ブラボーシックスを回収した。繰り返す―――」
殴られた左頬が痛い。
未だにジンジンと痛みを訴える頬を、ローチはグローブをはめたままの手で擦った。
だがしかし、グローブを嵌めたままの手で触れた箇所は想像以上に刺激に敏感になっていて、触れるなり痛みを訴えてきた。幸いにも呻くことはしなかったが。
何とはなしに外を見る。
つい数分前まで自分達がいた建物が、黒い煙に包まれ崩れ落ちていた。
――あれじゃあ、歴史もへったくれもあったもんじゃないな。
追い討ちをかけるようにことごとく破壊されていく様を見ているのは、あまり気持ちの良いものではなかった。
ヘリに引き上げられてから、機内に通信以外の言葉はほとんど飛び交っていない。
最初こそ、マクタビッシュ大尉と、彼の向かいに座った収容者627――大尉は彼をプライスと呼び、プライスは大尉をソープと呼んでいた――がここ数年の内に起こった事や、現状についていくつか話しこんでいたが、それも今はない。
ちら、とローチは横に座るプライスを見た。
濃い青のニット帽に同じ色のジャケットを羽織った姿は、端から見ればどこにでもいそうな中年にも思える。
だが彼の窶れた顔や、それでも射抜かんばかりに強い視線――銃口と同時に直に向けられたから特に記憶に残っている――からは壮絶な虜囚生活を送ってきたであろう事がまざまざと感じ取れた。
一体どういう事情であんな場所に収監されていたのか。
疑問と、それと同じくらい興味は尽きなかった。
察するに、というよりは間違いなく、大尉とプライスは旧知の間柄なのだろう。
あんな所に収監されていたくらいだ。SAS時代の上司あたりなのかもしれない。…だとすると、5年前のテロ未遂事件に関係があるのだろうか。
プライスの動きは全てにおいて小慣れていた。
壁を破って突入した時だってそうだ。
突入し、銃を構えたローチが見たのは、自力で外した枷の鎖をロシア兵に巻き付けるプライスの勇姿とも言えよう姿だった。
一体誰がそんな状況を想像できただろうか。マクタビッシュ大尉やゴーストに比べると、まだひよっこと言っても過言ではないローチが、呆然としなかったのが奇跡とも言えた。
そして、兵を逆に盾にしたプライスが行った行動は…皆まで言う必要はないだろう。
あの時の衝撃を思い出し、ローチは顔を顰めた。と、同時に痛みが走った。
ひきつった頬が痛い。とにかく痛い。
間違いなく腫れるな、と確信した。
「どうかしたか?」
いつの間にか露骨に見ていたのか、プライスがこちらを見た。
その表情からは不快さなどは窺えなかったが、それでも観察するように見られるのはどうしたって気持ちの良いものではないだろう。
いいえ、とローチは曖昧な返事をすると慌てて顔を背けた。
が、今度は逆にプライスの観察するような目線が突き刺さる。
無視しようかと考えたが、それにしては露骨すぎる視線に居た堪れなくなりローチはプライスを見た。
「俺に何か…?」
「…いや、その顔――」
「ああ、それか」
二人のぎこちないやり取りに、見かねたのかマクタビッシュ大尉が入り込んでくる。
ローチをーーというよりは、彼の頬を見たまま。
「腫れるだろうな」
「でしょうね」
文字通り他人事のように言われる。
殴られた本人がよく分かっている分、いざ明言されるとどこか溜息も吐きたくなった。
「悪かったな」
プライスが言う。
「敵か味方か分からん状況だったからな。手加減無しで本気で殴った」
「本気で…」
プライスの言葉に何か思い出すことがあるのか、マクタビッシュ大尉が呟くと同時に僅かに頬を引き吊らせた。
何を思い返しているのか気にはなったが、それ以上に自分自身の体が心配でならない。
――骨がやられてなければいいが・・・。
口には出さずにローチは内心ぼやく。
冷気を多分に含んだ風が、頬をかすめる。
気持ち程度でも良い、痛みを遠退かせてほしいと思いながら、ローチは今度こそ盛大に溜息を吐いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
突っ込みどころ満載ですがご容赦下さい
まだまだ書きたい話あるけど軍関係の知識がほとんどないのが辛い
浄化ー。あす可+駆動、4班の面々。おまけから出来てしまいました。
エロなし。ちょっと中の人ネタあり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
夏の終わりにここを去った。今は秋も終りかけている。
あれほど暑い夏は113年はなかったという。
そのせいか、それほど時間が経ったわけではないのに、ずいぶんと久しぶりな気がした。
東京より風を感じる。海からの風。ちょっと肌寒いが、心地よかった。
「盾は今、検察に行っている。しばらく戻らないと思うが・・・。」
「あ、近くまで来たので寄っただけですから。用とかあるわけじゃないので。」
「そうか?」
久流須から盾がいないと聞いて、肩から力が抜けた。その方がいい、と思う自分が情けなかった。
皆さんでどうぞ、と持参したお菓子を差し出す。
加奈河の他の署だったが、捜査資料を返還するのに使いに出され、
今日は直帰していいと言われていた。
あす可の希望通りに加奈河県警本部に配属した結果、起こってしまったことの余りの事に
急いで警察庁に戻されたが、下っ端のそのまた下っ端で、言われた事以外は一切させてもらえない。
二言目には、「勝手な事はするな!」だ。
厳しく縛られ、盾の優しくも厳しい目で見守られながら自主性を尊重というか放任されていたのとは、
大違いだった。
来年の異動時期になったら、遠くに転属されてしまうかもしれない。
今は我慢する所だと自分を戒めるのだが、元来の性格から爆発寸前だ。
「むかつくー!」と叫んで酒でも飲んでしまいたいところだが、
今それをやったら遅刻では済みそうもない。
「それが、近頃久流須さんが“ウザい”って言わなくなって。」と、驫木が声を潜める。
「そうそう、なんか物足りないんだよな。」と彫っ田も同調して、あす可にこっそり言った。
「そんな、ありえない。」三人は真面目な顔して額をつき合わせ、それからぷぷっと噴出した。
久流須の周辺が低温になったのが感じられ、笑いをこらえるのが苦しい。
そろそろ退散しないと。「じゃ、失礼します。」と4班の面々に一礼して部屋を出ようとした。
「美弥木、駆動ならいるぞ。」駆動に会わずに帰ろうとしたのを見透かされたらしい。
久流須にそう声をかけられて、あす可は観念して頭を下げた。
「あす可ちゃん!!」駆動は満面の笑顔で迎えてくれた。
「ちゅーしてくれる気になった?」
「なりません。」とぴしゃりと言った後、あす可も微笑みかえした。
「元気そうですね。傷は痛みませんか?」
「相変わらずだねー。うん、大丈夫。あ、そうだ、お菓子あるから食べて!」
「え、いいですよー。」
「疲れている時には、甘いものね。」
ここでも見透かされているな、と思った。
居た期間は短くても、ここはあす可の“古巣”という感じがして、嬉しさと寂しさが同時に押し寄せた。
「てか、なんで笹だんご?」
「盾さんの二井潟みやげ。出張行ってたんだよ。」
ビーカーに緑茶の緑が映えるが、持つには少々熱い。
笹だんごは冷凍してあって、駆動がレンジでチンしてくれた。
ここのレンジは試料を加工したりするためにあるようだが、すっかり駆動の食べ物あたために使用されている。
「冷凍してもチンすればおいしいけど、さめると固くなるからね。」
よもぎの香りが濃厚に鼻腔にくる。
「二井潟に出張?」あつあつのあんこをほおばりながら、訊ねた。
「うん。エイPECあったでしょ。」
エイPECの警備になんであの、いかにも格闘出来ませんって感じの盾さんが?
駆動には、あす可の疑問が手に取るようにわかったらしい。
笑いながら、「中国語出来るから呼ばれたんだって。」と教えてくれた。
「えーと、北京語に上海語に広東語にあとなんだっけ、四種類くらい出来るんだって。」
「え、すごい!」
「第二外国語に選択していて、留学生やバイト先の中国人に教えてもらったそうだけど、すごいよね。
前に加奈河県警に居た人が今二井潟県警の警備のお偉いさんで、頼まれたんだってさ。
エイPEC対策課同士は協力しているらしいけど、盾さんは特別に。」
盾を見神の事件から遠ざけたい思惑もあったと思うが、あちらからの要望ということになっている。
「でも、二井潟なら中国語の通訳の人は結構いるんじゃないですか?」
「いま日本と中国って、ぴりぴりしてるじゃない?
それで、ひとりでも多く警察官で中国語のわかる人間が欲しかったみたいだよ。」
「あー、なるほど。」
「人に言っちゃだめだよ。盾さんが中国語出来るのはうちの隠し玉なんだからね。
あす可ちゃんがここに居た頃は、中国人絡みの事件がなかったから知らなかっただろうけど、
盾さんは中国人の被疑者の取調べや参考人の事情聴取の通訳をする訳じゃない。」
「マジックミラーの後ろから見ているんですね。」
「そう。」
と、駆動はニヤリとする。エンジンかかってきたじゃない、あす可ちゃん。
語学力に盾の洞察力が加わって、見えてくるものがあるのだ。
見神が逮捕された後、両親に詳しい説明が出来ないのが、あす可にはもどかしかった。
犯人はわかったが、見神は肝心の奈津木殺害の動機については供述していない。
“紙隠し”につながる一切は表に出ていないし、あす可も、くれぐれも自重するように、と言われた。
そして、奈津木の事件を調べていた元同僚がそれが原因で殺されたのは、両親にショックを与えていた。
それで様子を見に実家に戻った時のことだ。
「もしかしたら、と思って。」
と、母が数冊のポケットアルバムを出して来た。
それは、兄奈津木の葬儀の時の写真だった。
「業者さんが撮ってくれたんだけど、ろくに見てなかったわね。」
「どうして、今頃?」
「佐衛子さんて方、奈津木の同僚だったっていうから、お参りに来てくれていたかも。」
「そっか・・・。」
二人で探すと、佐衛子に盾に伊図津や久流須も来ていてくれた。
さすがに見神は写っていなかったので、あす可はほっとした。
母も、この中に見神がいたら傷つくだろう。
佐衛子を示すと、母は静かに泣き出した。
警察関係の香典は、捜査一課一同とか同期一同とかになっていたのでいままで気に留めていなかったが、
あす可が一杯一杯で覚えていなかっただけで、配属された日が初対面ではなかったのだ。
写真の中の5年前の盾は、同じような黒いネクタイとスーツの人達の中では華奢で目立った。
当たり前だけど、なで肩は変わらない。
盾さん、盾さん、盾さん。
大好き。
恋でも兄さんの代わりでもないけれど、大好き。
もっと側に居たかった。
側に居て、一緒に仕事したかった。
もっともっと、いろんなこと教えてもらいたかった。
母の肩を抱きながら、あす可は必死になって涙をこらえた。
いつまでも頼ってちゃだめ。
自分には自分の、貫きたい正義がある。
「あたしも、中国語習ってみようかな。」
「あー、それいいかも。事件を起こすだけじゃなく、巻き込まれる人も多いし、きっと役に立つと思うよ。」
「そうですね。」
外国人犯罪は、全国的に増えている。
言葉の壁に加えて、犯人引渡し協定を結んでいない国が多いのも頭の痛い問題だし、予算も足りない。
盾の背中は、今でもあす可にいろんなことを教えてくれる。
あす可は笑顔を駆動に向け、力強く言った。
「じゃあ、駆動さん、また。」
「うん。またね、あす可ちゃん。」
「で、久流須さんが、あす可ちゃんにオレんとこ寄るよう言ってくれたわけ?」
「なんだかいまひとつ元気ないように見えたし、俺らよりおまえと仲良かったろ?」
「他意はなかった?」
「おまえと美弥木がくっつけばいい、とか?」
「うん、そういうの。」
「まあ、思わないでもないが、美弥木は相手にしないだろ?」
「結果、あす可ちゃんは元気になって帰っていったし、オレ、盾さんのこと諦めてないからいいけどね。」
「ちゅーしては?」
「あれは挨拶。」
「ほー。」
あす可が帰った後、捜査一課の廊下で、久流須と駆動の冷たい会話がかわされたという。
盾は自分の席で腕組みし、机の上のあす可の手土産のお菓子を長いこと見ていた。
庶務の女の子が、お茶淹れましょうか?と気を利かしてくれたが、明日食べるからと断った。
甘いもの好きでも、さっと口にしてしまうことは出来なかった。
珍しく捜査一課に残っている人間が少ない日だったが、明日からはそうもいかないだろう。
二井潟のエイPECが終って、余湖浜のエイPECもまもなく開催される。盾は連続だ。
今だけ、と思って、取り留めのないことを考える。
久流須は盾に、両親の事件の調書のことをそういう時期になったら見れるだろう、と言ったが、
あす可も時期がくるまで、もう盾には会ってくれないのだろうか。
亡くなった親友の妹。負い目はいっぱいある。兄の代わりにはなれなかった。
刑事として、あす可にどれほどのことを教えてやれただろうか。
中途半端な時期に警察庁に戻され、居場所がないはめになっていないだろうか。
「駆動のところに寄って、少し元気出たみたいだぞ。」
と教えてもらったが、今の盾には、あす可の強い正義感を信じてやることしか出来ない。
「久流須ー、お願いがあるんだけど。」
「なんだ。」
「いちごミルク飲みたい。」
「それは俺に作れってことだよな。」
「だめ?」
「とちおとめ、とよのか、あまおう、・・・なにがいいんだ?」
いちごの品種、調べていてくれたのか。盾の口元が微かにほころんだ。
「いちごは、その時期手に入る新鮮なものなら、なんでもいいんだ。」
「そうなのか?」
「そのかわり、牛乳は低温殺菌がいいな。」
「低温殺菌。」
そっちがポイントだったのか。
「買い物して帰るか。」
「うん。」
大丈夫。あす可を信じよう。彼女を信じることが、彼女の力になるように、と盾は願った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
盾・あす可・駆動のトリオが大好きでした。
もし続編があっても、このトリオの復活は難しいですよね・・・。
>>227 まさかここでこのゲームの話を読めるとは…!
ありがとう!
自分もちょっと頑張ってみるよ
>>230 その後キテター!!
クルと鑑識の盾さん取り合い
火花バチバチが大好きすぎだー
明日科ちゃんもかわええ!
和みました。ありがとー
盾さんのクルへの甘えっぷりがたまらん。
ごちでした!
NSKDくんとSKIさん ナマ注意
浄化が好きすぎて抜け出せなくて日曜美を見たらナマ妄想に至ってしまいました。
やまもおちもいみもNeee!な自己満足投下ですみません。
NSKD目線。口調が駆動っぽいのは浄化仕様ってことでひとつ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
浄化というドラマでSKIさんと共演することになった。
一緒に仕事をするようになって、いろんなインタビューとかでそういった話は聞いていたけれど
SKIさんの台本の読みこみ方とか演技への半端ないこだわりを実際目の当たりにして驚いた。
この人は本当に役柄研究に余念がない。
自身の役だけでなく周りの役柄のことにも想像を広げて研究している。
素直にすごいと思った。
そしてSKIさんの出演作・・映画やドラマ、DVD化されている舞台とかをアレコレ見始め、撮影が
中盤にさしかかる頃には一通り見終わり、俺はすっかりSKIさんファンになってしまった。
インタビューで「好きです」とか言っちゃうくらい。あ、ちょっと話ずれた。
数ある出演作の中で役柄研究に余念のないSKIさんはどう研究をしたんだろう?と興味を持った
作品がひとつあった。
日曜美という舞台。
SKIさんはゲイの青年を演じている。まず一般的な成人男子には縁のない世界にいる人間。
人前で叫ぶのは勇気が要りそうな結構キワドイ台詞とかもあって驚いた。
自分がこの役を演じるとしたら・・とか勝手に想像を巡らせてみたが。
俺がANさんに台詞で「チューして♪」とか言っちゃうのとはワケが違う・・と思うし。
どう作りこむんだろう。すごく気になる。
とはいえ、ゲイの役ってどうやって研究したんスか?なんてさすがに正面きって聞けないし。
そんな悶々とした疑問を抱えながら撮影は進んでいった。
そしてある日、抱えた疑問を解決するチャンスは突然訪れた。
出演者やスタッフの親睦会という名の飲み会で泥酔したSKIさんはキス魔になってしまった。
酔ったSKIさんについても噂では聞いていたけど・・すごいね。
男女構わずちゅーを迫る迫る。それは楽しそうに。
酔うとどんどん楽しくなっちゃうって話はホントらしい。
楽しい時間はあっという間に過ぎ。気がつくと俺がSKIさんを送ることにされていた。
酔っ払いに関わりたくないのは人の常か。なかば押しつけられるようにSKIさんとセットにされて
店を放り出される。
でも俺はこれ幸いとSKIさんと一緒に帰ることにした。
これは疑問を解決するチャンスだ。
が、しかし。
送ろうにも完全に酔ってて埒があかない。帰宅するための行き先すら聞き出せない。
仕方がないので俺の家で少し酔いを醒ましてもらおうとSKIさんを連れ帰ることに決定した。
***
SKIさんをリビングのソファに休ませて、その横に腰掛ける。
酒の席って流れで、ここしばらく胸につかえていた疑問を解決するチャンスだと思ったのに。
酔っぱらうのまである意味完璧っていうのも勘弁してほしい。
どうしたものかと思案しているとSKIさんが目を覚ました。まだ焦点が合ってない。
とりあえず声をかける。
「SKIさん大丈夫?ここ俺んち、送ろうと思ったんスけど行き先聞こうにも聞けない状態で」
「あー・・」
ぼんやりとした表情で、でもSKIさんは状況を把握したらしく俺に謝罪する。
「迷惑かけちゃったみたいだね・・NSKDくん、ホントごめん」
そのままクッションに突っ伏したSKIさん。
「いっすよ、もう時間も時間だし俺は全然大丈夫なんで。あ、水持ってきます?」
くぐもった返事が返ってくる。
「うん・・お願いします」
ミネラルウォーターのボトルを持って戻るとSKIさんは部屋にあるDVDに気づいたみたいで
手に取って懐かしそうに眺めていた。
「うわー懐かしいなぁ、日曜美まである。NSKDくん見てくれたんだ」
「うん、なんかSKIさんの役作りってスゴイなーって思って・・いろいろ見ました」
ずっと聞こうと思っていた例の質問をSKIさんに投げかける。
「そういえばこれってどうやって役作りしたんすか?すげー難しいと思うんですけど」
一瞬キョトンとされるが、直ぐに言葉が返ってくる。
「ゲイの役?どうなんだろうねぇ」
SKIさんは手にしている日曜美のDVDを見つめながら続ける。
「気持ちは作れても思うように動きが伴わないっていうか・・うん難しいよね」
「男同士で自然に触れ合うっていうのがさ、特に」
言われて、あるシーンを思い出す。
「あ、もしかして髪を切るシーンのとこ?」
「うん 副音声でも言われてるでしょ。あれ、だいぶ苦労したんだよ」
「へー・・SKIさんが苦戦するところってなんか想像つかね」
SKIさんを見つめながらちょっと意地悪に呟いた。
「今日とか男女問わずチュー迫ってたのに」
「お酒入ってる時は違うでしょぉ。もー」
「俺、SKIさんとチューしても多分平気っすよ」
「えーNSKDくん、なんか話変わって・・ない?」
不意に空気が、変わる。
「変わってますね・・俺もまだ酔っ払いかも」
そして唐突にSKIさんの唇を塞ぐ。不思議と抵抗はされなかった。
アルコール臭いキスをしながらふと思った。
あ、なんかゲイの人の気持ち、少しだけわかった・・かも。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ドラマアカデミー賞、受賞おめでとう。ジョンの発売が楽しみです。
>>238 生キタ♪
ほんと、どこまでゲイの世界について研究したのか問い詰めたくなるよね。
時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
>>84の話のその後です。
前回書けなかった殿仙エロを張り切ったら、内容ほぼエロで、しかもえらい長さになってしまいました。三回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
道外れの青々とした竹やぶの中に、その井戸はひっそりとあった。
かたわらに土地神を祀ってあるらしい小さな祠があるのを見つけ、八坂兵四郎は柏手を鳴らした。それから井戸に下ろした桶で水を汲み、渇いた喉を潤した。
「ほう、こりゃあえらく甘露な味わいの水だ。祠まであるし、大切にされている名水なのかもしれんなあ」
ふくよかな甘味に感じ入りひとりごちると、兵四郎は再び道に戻り歩き始めた。
のどかな田園の中を歩いていると、急激に眠気に襲われた。まだ夕刻には時間があり、太陽は柔らかな光を地に注いでいた。
はて昼飯を食い過ぎたかなと兵四郎は不思議に思い、自分の頬をはたいてみたが、瞼は重くなる一方だった。
耐え切れず近くにあった水車小屋に入り込み、腰から刀を取って、腕を枕に寝転がった。
「いかんなあ、疲れてるのかなあ。それにしても、ふわぁ、ああ、眠い……」
むにゃむにゃとあくび混じりに呟くと、誘われるままに目を閉じた。
肩を優しく揺らされて目を開けた。すると寝そべった横に膝をつく、よく知った男の姿があった。
色褪せた黒い着物と袴を身に纏い、伸ばした髪を後ろで高く結い上げた、ぎょろりと光る目が印象的な面長の男。
それは間違いなく旅仲間の浪人、九慈真之介だった。
「仙石、お前か。こんな所で会うとはな」
起き上がり胡座をかいて声をかけると、真之介は何も答えず、ただ兵四郎の顔を見て笑った。それを見返した兵四郎は、ふと違和感を覚えた。
顔と姿形は間違いなく真之介だが、どこか雰囲気が違った。いつものように軽口を叩かず、やけに艶を含んだ眼差しで兵四郎を見つめていた。
目元と唇にはほんのりと朱が指し、そこから色香が漂っているように感じられ、思わず兵四郎はしばし見とれた。
愛刀をかたわらに置いた真之介は見つめる兵四郎ににじり寄り、胸の上に手を添えて微笑んだ。
「仙石?どうした……」
やはり何も言わないので、訝しく思い尋ねる口を、顔を傾けた真之介は自分の唇で塞いだ。
普段の彼からは考えられない行動に兵四郎は仰天したが、ついばむような心地よい口づけを、目を閉じて受け入れた。
唇を舌でくすぐられ口を開くと、すかさず中に滑り込ませてきた。くちゅくちゅと大胆に絡められ、兵四郎はやはり驚きつつも貪る甘い舌に応えた。
真之介は舌なめずりをして離れると、今度は兵四郎の首筋に唇を這わせた。自分が彼に施すような愛撫を逆に与えられて、兵四郎はますます困惑した。
とりあえず話をするために身体を離そうと、真之介の肩に手をかけようとした。しかし、まるで金縛りにかかったかのように手が動かない。
その間に真之介の唇は下に降りていき、袷を開いて兵四郎の胸や腹を優しく吸った。
「おい、おい仙石、ちょっと待て。お前何か、おかしくはないか……こら、待てと言うのに」
これではまるでいつもとあべこべだと、兵四郎は慌てた。しかし口は動いても、いかんせん身体が動かない。含み笑った真之介は悪戯な動きをやめず、更に淫らな行為に及んだ。
着流しの裾を割り下帯を下げられ、自身を取り出し手に握られて、兵四郎はいよいよ焦った。
「せ、仙石……真之介!どうしたんだ。お前がこんなこと、するなんて……っ!」
戸惑う叫びも意に介さず、頭を下げた真之介は手の中の兵四郎を口に含んだ。いよいよおかしい、こんな筈はないと思いながらも、濡れた口内にすっぽりと包まれるたまらぬ快楽に、兵四郎自身はあっという間に勃ち上がった。
真之介は唇と舌と喉を使い、反り返り猛るものを丁寧に舐めてしゃぶり、飲み込まんばかりに深くくわえ込んだ。頬をすぼめ頭を動かして刺激を与えながら、真之介は袴の上から自分自身にも手を伸ばし慰めているようだ。
口で兵四郎に、手で自分に愛撫を丹念に与える真之介を、極上の快感に朦朧となりながら兵四郎は眺めた。
やがて真之介の頭がせわしく動いて追い上げにかかり、兵四郎はまた慌てて咎めた。
「し、真之介っ、待たんか。そんなにしては、出ちまうぞ……おい、しんの、すけ……ん、うぅっ!」
呻くと同時に、兵四郎は真之介の口内で弾けた。
喉奥にたたき付けられた熱いほとばしりを、真之介は音を立てて美味そうに飲み込んだ。
はあはあと息を荒げる兵四郎から身を離して立ち上がると、真之介は着衣を脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になった。
その褐色のしなやかな肢体はほの赤く染まり、中心は天を仰いでいた。
目を丸くする兵四郎の真正面にまた座り、半開きの唇を吸った。そして萎えたものに再び手を伸ばして扱き上げた。
達したばかりだというのに、みるみるうちにそれは隆々と頭をもたげた。
満足そうに笑う真之介は、兵四郎の上に跨がり膝をつき、熱い高ぶりを自ら秘所にあてがった。
「い、いかん!それは、駄目だろう、真之介!」
ろくに馴らしもしていないのに、怪我をするのではと兵四郎は狼狽した。
しかし後ろの口は驚くほどたやすく杭を飲み込み、ずっぷりと奥深くに収めてしまった。
真之介は絶え入るような高い声を上げ、きゅうきゅうと中のものを締め付けた。
「ああ、し、真之介……すごいぞ、なんて、熱さだ」
たまらず囁くと真之介は妖艶に笑い、腰を上下に動かし始めた。両肩に手を置き熱心に腰を振る真之介を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
身体の上で乱れる彼を抱きしめたいと誰にともなく願うと、動かなかった腕がふいに上がった。
これ幸いと、兵四郎は真之介を力強く抱きすくめた。下から腰を打ち付けると火照る身体はびくびくと跳ね、切なく甘いあえぎを零した。
引き合うようにまた唇を重ねたふたりは、呼吸を合わせた動きで強い快楽を貪った。
「真之介、真之介……今日のお前は、大胆すぎる……だが、そんなお前もまた、たまらなくかわいいな」
耳朶をしゃぶりながら囁いてやると、真之介は兵四郎の首に回した腕に力を込めた。
兵四郎も真之介の腰を強く抱き、更に深くその身体を貫き突き上げた。
真之介の鳴き声は止まらず、湿った摩擦音とともにふたりのいる空間を満たした。
「んっ……真之介、真之介……」
「殿様、おい、殿様……」
「なんだ真之介、水臭いぞ。こんな時は、兵四郎と呼んでくれ……」
「こんな時たあ、どんな時だ。おいこら、殿様!」
起きろ!と怒鳴る声と同時に、額に強い衝撃を感じた。驚いて目を開けると眼前に、右手を挙げてしゃがんだ真之介の姿があった。
「し、真之介!?」
「……おい殿様、名前呼ぶの、やめろ」
照れたような怒ったような口調と仏頂面は、まさに見慣れたいつもの真之介だった。
叩かれて痛む額を撫でながら、兵四郎はようやく夢を見ていたのだと気が付いた。
それにしてもなんと淫らな夢だったのかと、内心でいささか恥じ入っていると、真之介がまた口を開いた。
「もうすぐ日が暮れるし、金がねえから飯も宿も諦めてここに落ち着こうと思ったら、早々と殿様が寝てやがるからびっくりしたぞ。ちょっとうなされてたから起こしたんだが、殿様、何の夢見てたんだ」
「いやあ、それがなあ……」
正直に話したら、こいつは間違いなく俺をぶん殴るだろうなあ、などとと思案していると、真之介はふいに顔を赤らめて兵四郎から逸らした。
「殿様……さてはろくでもねえ夢、見てたな」
「ん?なんでわかったんだ、仙石」
「ふん、やっぱりか。なんでって、そこ。自分でも見りゃあわかるさ」
真之介が指差す先を見つめると、着物の下から猛々しく盛り上がった股間が目に入った。
「ああー、なるほどなあ!」
「なるほどなあじゃねえだろ。全く、寝てても助平だな、殿様は」
「助平はひどいな、夢は仕方なかろう。好きで見るわけじゃないんだ。まあ、なかなかいい夢だったがな」
「……おい、話さなくっていいぞ」
「どんな夢かって、お前が訊いてきたんじゃないか、仙石。夢でもさっきと同じように、まずお前が俺を起こしてだなあ……」
「あーっ!うるさい、黙れ!そんな話、俺は聞きたかないっ」
喚いて背中を向けた真之介を、兵四郎は楽しげに見つめた。夢の中の色香溢れる彼もなかなかよかったが、耳まで真っ赤に染めて兵四郎の戯言に怒る現実の真之介は、いつも通りでやはり愛らしかった。
もっとからかってやりたくなり、近寄った兵四郎は慎之介を後ろから抱きしめた。手から刀を奪ってかたわらに置き、右の手首を取って腰に腕をしっかりと回した。
うろたえ振り返ろうとしたうなじに唇を落とすと、真之介はびくんと身体を揺らし動きを止めた。
「と、殿様……何してる!」
「何って、仙石……わからんか?」
うなじをねぶりつつ、兵四郎が腰に押し付けてきたものの固さを感じ、真之介は更に赤くなった。
「ばっ、馬鹿野郎!日も暮れねえうちから、何考えてんだっ」
「夜になればいいのか?仙石」
「……そんなこと、言ってねえ!いいからとにかく、離せ殿様」
「いや、離さん。こうしてお前に触れるのも、久しぶりだからな」
「……!」
きっぱりと言い切り髪に顔を埋めた兵四郎を、真之介は振りほどけないでいた。久しぶりに感じた兵四郎の体温は、身体に染み入るように暖かく、心地がよかった。
兵四郎は左手を手首から離し、抗いを止めた真之介の袷に差し入れた。胸をじかに撫でられ、真之介は少しのけ反った。
乳首を摘んでいじりながら、右手を袴の隙間から突っ込んで前に触れた。
「あ……っ!と、殿様、ま、待てっ」
「すまんな、待てん。あんな夢を見た後に、すぐ側にお前がいて、しかも俺はもう準備万端だ。これで待てという方が、無理だ」
「そ!そんなの、お、俺に関係、ねえだろうがっ」
「いや、ある。他ならぬお前が夢に現れて、俺をこんな風にしたのだからな」
「か、勝手なこと、抜かすな!俺のせいだとでも、言うつもりかっ」
「そうは言わんが……もったいないとは思わんか?」
「思わん!全っ然、思わん!」
「そうか?おかしいなあ。お前のものは、もうこんなに熱くなっているのに」
のらくらと口説きながら、兵四郎は真之介の身体を優しくじっくりと撫で続けた。左手は胸や腹を這い回り、右手は真之介自身を握り込んで擦り上た。下帯を引き下げてじかに触れ、先走りの露も手に取りしつこくこね回した。
真之介の身体は段々と前に傾き、あえかな鳴き声を絶えず漏らした。
「あ……はぁ、との、さまっ……いやだ、いや……あぁっ……」
「ああ、その声だ。恥ずかしそうに感じる声が、まさにお前だ。全く、たまらない……」
「な、何言って、殿様!あ、あっ、うあ、は……んんっ」
「もっと感じて、もっと鳴いてくれ。真之介……」
「う、んあっ……ああっ!だめ、駄目だ、とのさ……はぁっ」
快楽から逃れようと前に進んだ身体を、俯せに倒させてから仰向けに返した。
一旦手を離すと、袴の紐を解き一気に引き下ろした。下肢を晒され慌てる真之介を押さえ、帯を解いて着物の前を全てはだけ、下帯も剥いで取り去った。
「ばっ、馬鹿!風邪ひくだろうがっ」
「大丈夫だ。すぐに、暖かくなるさ」
「ふざけんなっ……ん、ん!ふうっ」
真っ赤になって喚く裸の真之介の両手を掴み、唇を塞いだ。夢で彼にされたように激しく貪ると、眉根を寄せて苦しそうにしながらも、舌を絡めて受け入れた。
混ざった唾液が滴るまで味わってから唇を離し、喉元を甘噛みするように口づけた。
唇でなぞり舌で舐め上げ、徐々に顔を下肢へと下ろした。
中心の繁みからそそり立って、可憐に震えているものにたどり着くと、真之介は全身を波打たせた。
兵四郎はやはり夢と同じように、深く口内にそれを迎え入れた。ねぶりくすぐって軽く歯を立てると、真之介は頭を振って悲鳴を上げた。
「と、とのさ……!あうっ、ひ、やめ……あっ、ふぁっ、あ!」
「いいや、やめない。お前のを飲み干すまで、今日はここを離さん」
「なんっ……!ばか、馬鹿っ、なに、言ってやがる……あぁ!いや、だ、あっ、や、だ、殿様ぁっ……」
両手を掴んだまま、のしかかった身体で脚を押さえ、兵四郎は口淫を施し続けた。涙を浮かべてあえぐ真之介は逃げを打とうとするものの、痺れるような快感に捕われて、身体は容易には動かなかった。
「あ……あっ!駄目だっ、殿様っ……もう、ほんとに、駄目っ……は、離し、ひ、ああっ」
「……真之介、構わんから出せ。出せば、もうしゃぶるのはおしまいにしてやる」
「あ、あっ、馬鹿!ば……かっ……ふぅあっ、あ、あーっ……」
とうとう耐え切れず、腰を浮かせた真之介は、兵四郎の口に愛液を放ち注ぎ込んだ。ごくりと喉を鳴らし、宣言通りに兵四郎は全てを飲み下した。
射精の衝撃と、吐き出したものを飲まれてしまったことへの羞恥にわななく身体を兵四郎は抱き起こし、腕に絡まっていた着物を剥ぎ取った。床に広げると真之介を俯せにし、上体を着物の上に寝かせた。
かたわらに積まれた藁を掴んで腹の下に厚めに敷くと、床に膝を着かせて腰を高く上げさせた。
兵四郎は、眼下に晒された真之介の秘所をまじまじと見つめた。絡み付く視線を感じて、真之介は我に返り非難する声を上げた。
「お、おいっ殿様!どこ見てんだっ、馬鹿!」
「真之介……もうここは、痛みはしないか?」
いたわるような優しい声音に、真之介は罵倒する言葉を飲み込んだ。
二月ほど前、かどわかし騒動に巻き込まれた真之介は、人掠い達に乱暴され犯された。危うく殺されるところを、兵四郎と仲間の鍔黒陣内に救出された。
兵四郎は医者の指示に従って看病し、真之介を完治させた。
その時、下肢も幾分か傷を負った。それをただひとり知る兵四郎は、真之介を欲しながらも容態を気にかけているのだ。
返事をしない真之介に、兵四郎は更に告げた。
「真之介、見られているからって、今更恥ずかしがることはない。お前の身体の隅々まで、俺は面倒を見たんだからな」
「ばっ……!いや、まあ、そりゃあ、あの時のこたあ、ありがたいと思っちゃいるが」
うろたえながらも改めて礼を言ってきた真之介に、兵四郎は笑った。
「いや、恩を着せるつもりはないんだ。また怪我をさせたくはないのでな、大丈夫なのかをちゃんと、確かめたいんだ」
ほとんど強引に身体を開かせておきながら、兵四郎は本気で真之介を心配していた。真之介は呆れて、少し身体から力が抜けた。
全くよくわからん男だ、だがどれもこの男の本心なんだと心中で呟いていると、しつこくまた兵四郎が訊いてきた。
「なあ、どうなんだ、真之介。ちゃんと治ったのか」
「……大丈夫だ。もう、痛みはない」
ため息混じりに返答すると、そうか、と安堵して頷いた。続いて発せられた言葉を聞いて、真之介の頭にまた血が上った。
「じゃあ、入れてみてもいいか?」
「……てめえっ、調子に乗んな!」
「そう怒るなよ。念のために訊いたんじゃないか」
「知らんっ!自分で確かめろ!」
売り言葉に買い言葉で思わず怒鳴ると、兵四郎は神妙な声で返事をしてきた。
「そうだな、わかった。確かめてみよう」
「お、おい、殿様……?あ、あっ!?な、なに……」
ぬるり、と何かが後ろの口を撫でた。指ではない湿った感触は周りをねっとりと這い、襞の一つ一つを丁寧になぞった。
舐められている、と悟った真之介は、あまりの恥ずかしさに、前に這って逃れようともがいた。
「ふあっ、あ、や、やだ……っ!離せ、馬鹿、殿様!そ、そんなとこ、舐め、るな……っ、うんっ」
「真之介……お前が確かめろと言ったんじゃないか。恥ずかしがらなくてもいい。最も、その恥じらって悶える様が、俺をまた熱くさせるのだがな」
「かっ……勝手なことばっか、言いやがってっ!あっ、やだ、いやだったら……あふっ、う、うーっ」
吐息を吹きかけながら欲望を語ると、兵四郎は尖らせた舌先を秘所にねじ込んだ。
勝手な言い草に真之介はまた怒ったが、脚をがっしりと押さえられ、前に回された手で自身もなぶられて、逃げたくても身体に力が入らなかった。
ぴちゃぴちゃと音を立てて、兵四郎はしつこく後ろを舐めては吸った。唾液が溢れ濡れそぼったそこは、更なる刺激を求めてわなないているように見えた。
真之介は甘い鳴き声の合間に、いやだ、やめろと消え入りそうな声で抗いを示した。
だが生き物のようにうごめく舌に秘所を思う様蹂躙されて、いつしか言葉は止まり、どうしても漏れるよがり声を必死で抑えようとしていた。
ふいに、ぐしゅっというような音が聞こえ、舌を離した兵四郎は顔を上げた。裸の背中越しに真之介を見やると、握った両手を横に置き顔を着物に埋め、頭はわずかに上下し揺れていた。
また鼻を啜るような音とかすかな呻きを耳にし、気になった兵四郎は腕を伸ばして、真之介の身体を返し仰向けにさせた。
「し、真之介……どうした。なぜ、泣いてる」
「……う、うるせえ!見んなっ……う、うぐっ」
腕で顔を庇う真之介は、赤い目からぽろぽろと涙を流し、鼻も赤くして泣きじゃくっていた。幾度か情を交わしたが、こんなに派手に泣かれたことはそうなかったので、兵四郎は大いに慌てた。
とりあえず真之介の側に寄って抱き起こし、震える身体を優しく撫でてあやした。
「おおよしよし、泣くな泣くな。一体どうしたんだ、真之介」
「……く、悔しくて、情けねえからだよっ」
「だから、何がだ。何がそんなに悔しくて、情けないんだ」
「てめえに、いいように遊ばれてるからだよ!俺をからかってなぶって、た、楽しんでるだろ、殿様っ」
「な、何を言うんだ。そんなことはない」
「いいや、絶対そうだ!俺が泡食って、女みたいな声出すのを見て、嘲笑ってやがるんだ、そうだろ!」
涙が止まらない真之介は片手で顔を覆い、振り絞るような声で叫んだ。思ってもみないことを決めつけられ、兵四郎は動揺した。これはどうあっても説得せねばなるまいと思い直し、抱えた腕に力を込めて、拗ねる真之介の手を取り顔から外させた。
「いいか、聞け、真之介」
「……やだっ、聞きたくねえ」
ふて腐れた口調に困ったように笑うと、兵四郎は真之介の額に横から口づけた。ぴくりと揺れた身体は、拒みはしなかった。
「聞くんだ。俺は、お前のことを見て嘲笑ったりなぞしてはおらん。そりゃまあ、確かに楽しいとは思ってはいるが、それは」
「ほらっ、やっぱり」
「聞けというのに。それは、お前があまりにもかわいく、色っぽいからだ。俺に触れられて乱れるお前を見て、たまらなくかわいい、愛しいと思いこそすれ、馬鹿にしたり嘲ったりする気持ちなぞ微塵もない。なぜなら、俺はお前を心底欲しいからだ」
腕の中の真之介は憎まれ口をやめ、俯いておとなしく聞いていた。兵四郎は言葉を続けた。
「俺はお前を縛る気持ちはない。お前は、自由にどこまでも駆けていく、若い野性の駿馬のような奴で、縛り付けるなどは到底無理だ。
だが、だからこそ、こんな時は……ふたりでいるこの時だけは、お前を俺のものにしたい。全てを暴いて晒して、惜しみなくかわいがってやりたい。例えそれでお前が泣こうとも、俺はそうしてやりたい」
「……やっぱり、勝手だ」
「そうだ、勝手だ。だが本当だから、仕方がない。お前は俺に、肝心なことを言わせてくれなかったからな。その代わりをと考えれば、俺はこうするより他はない」
夕暮れのほの暗さの中、兵四郎は真之介を見下ろして静かに想いを語り、穏やかに笑った。迷いのない目と口調に真之介は返す言葉が見つからず、眩しい笑顔をしばし見つめた。
あの時、傷を負って床に伏した真之介に、兵四郎は想いを告げようとした。だが真之介はそれを止めた。もうそれを聞かなくても兵四郎の心根はじゅうぶん伝わったし、対する自分の気持ちも正直に打ち明けた。
だから、聞かなくていいと思った。それ以上に、聞くのが怖かった。
兵四郎は優しく、あまねく弱い者を慈しみ手を差し延べる、菩薩のような男だ。半面、弱者を虐げ我欲を貪り悪事を成す者どもには、情け容赦ない閻魔のごとく怒りの鉄槌を下す。
真之介は、兵四郎が女に追っかけられるのは何度か見たことがあるが、彼が本気で誰かに惚れたところは、ついぞ見たことがなかった。
海のように広く深い兵四郎の情愛が、一心に誰かに向けられたならどうなるのか。それが自分に対して向けられたら。
脚を捕られて深海の底深くに引きずられ、沈められて動けなくなるように……兵四郎に溺れて、身動きが取れなくなるのではないか。
真之介は、兵四郎の熱情に飲み込まれるのを恐れた。だから、肝心な言葉を言わせなかった。それで、兵四郎から逃げられたつもりになっていた。
だがこうして熱く強い腕に抱かれると逃げることは叶わず、一心に真之介を求める彼の真摯さに翻弄され、結局は兵四郎に溺れてしまっている。
全ては自分が招いたことなのかと、真之介は長くため息を吐いた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
気の利いたタイトルがなかなか思い付かず、大御所マソザイコソビのお名前から拝借しますた。
次回に続きます。
>>242 三引き、大好きなのでうれしいです。
今も素敵ですが、あのころの千石中の人の、飼いならされない野生の色気は
ハンパなかったですね〜。
>>181 青魔小説おいしくいただきました。
この萌えだけで、ヴァナやっていけそうです。姐さんありがとう・・・!
では、いつもどおりROM専に戻ります。
254 :
風と木の名無しさん:2010/10/27(水) 18:02:38 ID:Pn0KEIR5O
>>242 イトコイ師匠のSSかと思ってビビりました。
GJ!
甘々な江別手稲を目指してみました。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
最近、嫌な夢をよく見るようになった。
俺が東京に仕事に行って、東京にいる江別に会いに行く。
でも、どこにも江別はいなくて、俺は延々探し続ける。
そんな夢。
夢はまるでループするようにいつもそこで終わっていて、夢の中の俺が江別に会えたかどうかは定かじゃない。
「おい、なした?」
「・・・あ、あぁ」
「何か考え事か?」
そんな夢を見るようになってから、俺は札幌ではできるだけ江別と一緒にいるようにした。
今も俺の家に招いて、二人で過ごしているところだ。
「なぁ、江別。隣に座ってもいいか?」
「いいけど・・・」
テーブルを挟んで向かい合わせの今の状態から、江別の横に移動する。
ぴったりくっついて、江別にもたれるようにすると、江別はびっくりしたような顔をした後、くっくっくと喉をならして笑った。
「なしたの、繁ちゃん。今日はえらい俺に懐くけど」
「・・・何か、お前の側にいたくて」
「俺はいつも繁ちゃんの側にいますよ?」
わざとらしい敬語にバカにされているとわかっていても、バカみたいな行動は止められない。
ずっと江別を側に感じていたいんだ。
できれば、このままこいつの隣から離れたくないくらい。
「盛も言ってたけどさ」
「へ?」
「あんたみたいな可愛い大人はいないよ。本当に」
「は・・・・?」
「甘えたくなったら素直に甘えていいよ。繁ちゃん」
しっかりと俺の顔を見てそんな事を言うもんだから、俺はもう、どうしたらいいかわかんなくなって・・・・。
「お?」
俺はしがみつくように江別に抱きついた。
江別が、俺の側から離れていかないように。ずっと俺の側にいてくれるように。
「・・・・やっぱ何かあったろ。話してみ」
「う・・・・」
「言えないこと?」
「いや・・・そうじゃねぇけど・・・」
いい年してこんな事言うのは、恥ずかしいというか、何というか・・・。
「・・・笑わないか?」
「保証はできない」
「何だよ、それ・・・」
「まぁまぁ。いいから話してよ、繁ちゃん」
そういって俺の頭を撫でた。
なんだか、もの凄く幼く扱われてないか、俺?・・・・まぁ、こういう事されるのは、嫌じゃないけども・・・。
「夢を、みたんだよ」
「夢?」
「お前に会えなくなる夢」
俺は最近見る夢の事を包み隠さず江別に話した。すると、江別はニコニコと笑いながら俺を包み込んだ。
「それで寂しくなったか。よしよし」
そして俺の頭をポンポンと叩く。やっぱり、何かおかしいよな?これ・・・。
「なぁ、なんでそんなに俺の事子供扱いするんだよ」
「え?そうかな?」
「だってお前、今まで俺にそんな事しなかったじゃねぇかよ」
「なーんか、繁がすっごい可愛くてさ」
何でお前はそういう事を普通に言うかな・・・。
「俺がいないと、会えないと、寂しくて。俺の側にずっといたいから、こんなにずっと一緒にいるんでしょ?」
「・・・知ってたのかよ」
「あれ?図星だったんだ」
「・・・・・・そうだよ」
熱い。もの凄く体中が熱い。火が出てんじゃねぇかってくらいに。
バレたら恥ずかしい事だってわかってるのに、どうして俺はこうなんだろう。
「まー、随分と真っ赤になっちゃって」
「お前のせいだよ!」
「怒らないでよ」
そういって、江別は俺の首筋に口づけをした。
「今ここに俺の物って印つけたから」
「・・・・・・」
「繁もつけていいよ?ここに」
「・・・・・・お前さぁ、恥ずかしくない訳・・・?」
「全然」
江別は歯の浮くような台詞をさらっと言うと俺を抱いたまま、床に転がった。
「大丈夫。絶対に繁の側離れたりしないから」
突然、真剣な顔で俺の目をしっかりと見てそんな事言うもんだから、俺の心臓はもうどうにかなりそうなくらいに脈打った。
何だよ・・・・。
かっこいいじゃねぇかよ。
「だから、心配しなくていいよ」
「江別・・・」
「俺、今日ここに泊まろうかな」
「え?」
「仕事で会えなくても平気なように、1日かけて俺のらぶぱわーを注入してやるから」
「ら・・・」
また歯の浮くような言葉に俺が絶句していると、江別は俺のおでこに軽くキスした。
「お前可愛すぎ。今からしてもいい?」
「は?まだお昼だぞ!?」
「らぶぱわー注入してやる」
そういうと江別は俺をお姫様抱っこしたような状態でベッドに向かった。
お昼だけど・・・・まぁ、いいか。
「こんな時間からやるんだから・・・・」
「だから、何?」
「・・・・・気持ちよくなかったら、承知しねぇぞ」
「もちろん。誠心誠意こめて、気持ちよくさせてあげるよ」
そういって、江別は俺の体にキスを落とした。
「愛してるよ。繁」
・・・俺も、愛してるよ。
江別。
おわり
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お粗末さまでした。
260 :
ステキな日:2010/10/28(木) 21:22:31 ID:pqBi6ECK0
プロ/レス、去年運命の死闘を繰り広げた2人です。
胃党→←火災←穀天使?で穀天使さん独白
メモ並の短さです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
あの時オレはすぐ近くで見てたよ。
お前の闘志に燃えてた瞳をよ。
んなの当たり前じゃねえか
6年だ、6年。
あいつらは面白いほど運命に狂わされて、
忘れられないのは終わった後の胃党龍自の笑顔と
そいつの言葉さ。
プロポーズまがいのこと言いやがって
それを聞いたお前といったら
満足そうに目を細めてよぉ。
まあ当たり前なのかな
6年だ、6年。
お前は面白いほどアイツに運命を狂わされて、さ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ヤマナシオチナシイミナシ需要もなし
3人の関係性も伏せ方をわからないが燃えたんだ。
このジャンルは自家発電が主流ですかorz
今日の放送で萌え滾って書いたものです。
タイムリーな内にあげたいと急いで書いたので推敲は一回しかしていません。
誤字脱字など読みづらいところあれば申し訳ないです。
金矢木反の駅伝×長男です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
滝沢薫はいわゆる同性愛者である。物心ついた時から女性に興味を持てなくて、
思春期には自分の嗜好が世間一般とは違うということに気がついた。そのことで
思い悩み、荒れてしまった時期もあったけれど、しかし二十歳を過ぎたいまでは
達観したというか、もはや諦めの境地である。自分は男が好きだ。好きなものは
好きなのだからしようがない。開き直ってしまえば生きていくのも随分楽になっ
た。……それに、いまは恋愛云々よりも駅伝である。自分の唯一の武器である駅
伝で、早く本調子を取り戻すのが何よりの優先事項……そんなことを考えながら
日々を送っていた滝沢に、しかし青天の霹靂が起きたのだった。
「――あかりの兄の、欽也です」
腫れぼったい瞼も、小動物のような口も、触り心地の良さそうな体も、何もか
もが好みだった。滝沢は一目で彼に恋に落ちた。心臓は早鐘を打ちならし、カア
ッと頭に血が昇っていった。周囲にバレるのではないかと平静を装うのに必死で
いたら、何やら実はあかりと大家が孫と祖母という関係で、欽也とあかりが血の
繋がりのない兄妹……、などと次々に衝撃の事実が発覚し、その場の空気が気ま
ずくなったばかりか欽也も困っていたので、つい「もう終わりや」と一喝してし
まった。
――その日は自室に戻っても、筋トレに励んでも、目を閉じても、ずっと欽也
のことが頭から離れなかった。
* * *
恋に落ちたと言っても特に行動を起こせるわけでもない。欽也はいつ帰るのだ
ろうかとソワソワしながらも、かといって声をかけることも出来ないし、きっと
いつも通り何事もなくこの恋は終わっていくのだろうと諦めるべく尽力していた
のに、しかしなんと欽也が自分のことを知っていた。
「――もしかして箱根駅伝の滝沢選手?」
向こうも驚いていたが、驚いたのはこちらも然りだ。どうしてそれを、と思っ
ていたら「十人抜きの滝沢」だとか、「あの心臓破りでの坂の追い上げはすごか
ったあ」だとか、コアな情報を捲くし立てられて、しかも顔を真っ赤にしながら
「俺、滝沢くんのぶちファンで、サ、サイン! あっ、書くもんあったかのう…
…?!」などと慌ててカバンを探り出したから、もう「勘弁してくれ」としか言
いようがなかった。
「えっ、あ、サインはまずかったやろうか」
「ちゃうわ、そうやなくて」
その場にいた田中荘の住人も、欽也の剣幕に圧倒されてポカンとしている。よ
うやく冬美が口を開いたと思ったら、「駅伝君ってそんなすごい選手やったん?」
とまた余計なことを言うものだから「そりゃあもう!」と再び欽也に火がついて
しまった。
「――ああ、分かった、分かったから」
このままだと面倒なことになりそうだったから、滝沢は欽也の手首を掴み、仕
方なく自分の部屋へと連れて行くことにした。するとあかりが「ほいじゃあ欽兄
は、今日は滝沢さんの部屋に泊まったら?」などと言い出した。滝沢は勿論、冗
談言うなやとお断りを入れようとしたが、しかしそれより早く「ええっ!」とあ
まりに欽也が嬉しそうな顔を見せたから、出かけていた言葉は行き先を失ってし
まった。
欽也が「ええんやろか?」と、期待に満ちた目でこちらを見る。惚れた相手に
そんな顔をされてしまえば。もう「……勝手にせえや」としか言うことが出来な
かった。
ちゃっかり銭湯まで一緒に行くことになって、嬉しいやら居た堪れないやら、
頭がオーバーヒートを起こしそうだった。
恥ずかしさのあまり、欽也の裸は殆ど見ることが出来なかった。欽也は「やっ
ぱりアスリートの体は違うなあ」と言いながら無邪気に滝沢の体を触ってこよう
とするものだから、滝沢はつい「なにすんねん」と突っぱねてしまった。
夜は夜で欽也はやたらスキンシップしてこようとした。ドアの向こうで田中荘
の住人が立ち聞きしているのは分かっていたからどれだけ求められても素っ気無
く返すことしか出来ない。「ふくらはぎ触ってもええ?」と聞かれても、ドキリ
とはしたもののあからさまに拒絶することしか出来なかった。ただ、他愛のない
会話でもこうしてやり取り出来るのは嬉しかった。アスリートは体が資本だけれ
ど、今日はいっそ寝ずに朝まで喋っていてもいいかもしれない、そんな気分にさ
えなってしまった。
「昨日はありがとうな」
と、欽也が突然神妙な顔で礼を言い出した。
「昨日?」
「あかりがほんまの父親のこと聞かれたとき、止めてくれたじゃろ」
ああいうとき家族だとかえってうまくやれんだろ、と欽也は言った。
「……」
滝沢の胸に奇妙な気持ちが込み上げた。好みなのは見た目だけだとばかり思っ
ていたけれど……欽也のこういう素直で朴訥としたところも好きかもしれない。
駅伝がうまく行かなくて、長いこと荒みそして乾ききっていた心に、スッと潤
いが与えられたような気分だった。
それからあかりのことや尾道の両親の話になって――欽也はよっぽど家族が好
きなのだろう――、次から次ととめどなく家族の話が飛び出し、気が付けばもう
遅い時間となっていた。
「あ、すまん、つい話に夢中になってしもて。もうこんな時間や、滝沢君、朝早
いんやろ?」
欽也が時計を見てワタワタと慌てている。
「や、いつも寝るのこれぐらいなんで大丈夫です」
欽也は滝沢に、いまの選手生活の状況を殆ど聞いてこなかった。それはわざと
なのか天然なのかは分からなかったけれど、触れられたくない部分をそっとして
おいてもらえたのはとにかく嬉しかった。
(やばい……)
――むっちゃ好きや。滝沢はもう後戻り出来ないほど欽也のことを好きになっ
てしまったと自覚した。自分の部屋に、しかも目と鼻の先に、愛しい人がいる。
再び心臓は早鐘を打ち出し、なんだか頭もポーッとのぼせてきた。
「そろそろ寝ようか」
欽也がキョロキョロと辺りを見渡す。なんやろ、と思って「どないしたんです
か」と尋ねてみると、欽也はポリポリと頬を掻きながら「や、布団……」と気ま
ずそうに呟いた。
「あっ……」
いまのいままで気付かなかった。
「大家さんの部屋から持ってこれへんですか?」
「や、もうこんな時間やし……」
寝とるやろ、と欽也は言う。滝沢は「ほな」と思い、ドアを開けた。
「きゃあっ」
聞き耳を立てていた冬美が体勢を崩して床に四つん這いになっていた。他の住
人はいない。さすがに二十三時も回ったし、脱落したのだろう。寧ろいままで残
っていた冬美に「よく粘ったな」と感心した。
「……あんたんとこ、布団余ってへんか?」
「余ってへん、余ってへんわ」 ぶるぶると凄まじい勢いで首を振りながら、冬
美は逃げるように自室へと帰っていった。滝沢はその後姿を見ながらやれやれと
肩を落とす。
「どうしよか」
背後から欽也に声をかけられて、滝沢は「俺が床で寝るんで、ベッドつこうて
下さい」と答えた。
「えっ、無理じゃろそんなの、天下の滝沢選手にそんなことさせられんよ」
「でも狭いベッドで一緒に寝るわけにはいかんでしょ」
欽也は目をまん丸にして絶句した。「ほらな」と滝沢は肩をすくめる。
「幸いタオルケットは余ってるし」
と、襖を開ける。
「今日は寒くもないし、床でも全然……」
言い終えぬ内、突然腕をグッと掴まれた。
「俺は一緒でもええよ」
振り返ると、そこには何故か頬を染めた欽也の姿があって、滝沢は「……嘘や
ろ」と硬直したのだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ご覧頂きありがとうございました。
一応ここで終わりなのですが、もし続きが書けたら投下したいです!
269 :
261:2010/10/28(木) 22:11:15 ID:DbxLHxnd0
あああ……まさかの伏字を忘れた……
ごめん……ROMに戻りますorz
>>269 ドンマイ!wそしてGJ!
長男受け読みたかったのでタイムリーな投下ありがとう!
>>261 萌えたぎりました
続きがあれば是非読みたいです
>>255 ちょうど昨晩のCSの某食べまくり番組を見た後に発見して滾った。
タイムリー♪手稲かわいいよ手稲。
時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
>>251の続きで、エロ中心。
全三回投下の二回目です。今回からトリップ付けます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
涙は治まったが、目を逸らして口をきかない真之介の様子に、まだ怒っているのだと兵四郎は考えた。
「真之介、お前を抱くのをやめるつもりはないが、不快にさせたのなら謝る。すまん、許してくれ」
頭を抱き込んでぎゅうっと抱きしめると、真之介は兵四郎の背中に腕を回して着物を握り、今度は短いため息をついた。
「……俺をおもちゃにしてるんじゃなけりゃ、もういい。だが、う、後ろを舐めるのは、もう無しだぞ」
「わかった。残念だが、今回はそうしよう」
「こ、今回も次回もねえ!ずっと無しだ、無しっ!」
真之介のその言葉を聞いた兵四郎は、真顔で問いかけた。
「真之介……次回とか、ずっと、ということは、俺にまた、抱かれてもいいということか?」
「な……っ!ち、違う!こっ、言葉の、あやだっ」
言葉尻を取られて慌てふためく真之介を、兵四郎は満面の笑みでまた抱きしめた。
「そうかあー!いや、照れるな照れるな。よーしよし、わかった。次の時まで俺を忘れられんように、たっぷりかわいがって、気持ち良くさせてやるからな」
「ちっ、ち、違ーう!てめえに都合よく、解釈するんじゃねえっ……う、ん、んーっ!」
勢いづいた兵四郎は真之介を抱えたまま押し倒し、喚く口を吸って塞いだ。真之介は下から身体を押したが、熱い舌に口内を掻き回され舐め尽くされて、思うように力が入らなかった。
兵四郎は甘く口づけながら、懐からいつも情事の際に使っている軟膏を取り出した。器用に片手で蓋を開け、中の薬を右手の指に塗りたくった。
「ふうっ、ん、む……う!うんっ……ん、んんんっ!」
唇を貪られている間に、それは後ろにぐぐっと入り込んできた。真之介は閉じていた目を見開き、侵入した指のうごめきにびくびくと震えた。
兵四郎は息苦しさにあえぐ口を解放してやると、真之介を気遣って声をかけた。
「真之介、痛くはないか。久々に触れたが、また狭くなってはいるな」
「うぁ……んっ、は、うっ、う、うるせ……っ!」
口が自由になると、あえぎながらもまた悪態をついた。痛そうな感じはないことに兵四郎は安堵し、慎重に中を擦って、いじる指を増やした。
「……あぁっ、ひ、あ、やめ……と、のさま!あふ、あっ」
「ふむ、二本目も大丈夫そうだな。軟膏のおかげで滑りがいい。真之介、気持ちいいか?」
「はあっ、う、ば、馬鹿っ……くす、りは、も、もっと、ましなことに、使えっ」
「そうは言っても、こいつは陣内の奴が売ってる、たこの吸い出しだからなあ。本来の使い方では大して効かん。だがお前に使うのには、ちょうどいいんだ」
「な、ば、馬鹿やろっ……!た、たこが聞いたら、泣くぞっ」
「ふふ、あいつには言わんさ。少なくなってきたから、今度たこに会ったら新しいのを巻き上げてやろう。またどうせたっぷり、使うしな」
「し、知る……かっ!あ、はぁう、あ、んあっ……」
軽口とともに兵四郎はまた指を増やし、ずくずくと音を立てて、真之介の秘所を三本のぬめる指でいじった。
少しも痛みはなく、意識がけぶるような快楽を休みなく与えられ、真之介は床に敷かれた自分の着物を掴み、身をよじって鳴いた。
そろそろいいかと兵四郎は指を引き抜き、真之介の腰の下に藁をまた集めて、脚を大きく開かせた。膝立ちになり、着物の裾を帯に挟んでからげ、いきり立つ熱い自身を下帯から取り出した。
しっかりと軟膏を塗りたくった、高ぶったものの先を入り口にあてがって擦り付けてやると、真之介はのけ反って息を飲んだ。
「真之介、入れるぞ。力を抜け」
優しく告げると、引き締まった尻を手で割って口を広げ、じわじわと中に突き入れた。
「う、う……あっ、い、あぁ……はぁ、あっ!」
「大丈夫、大丈夫だ、真之介。痛くないように、そうっとやるからな」
「あぁっ、あ、との、さま……は、入って……あっ」
焦らず腰を進める兵四郎は緩やかに侵入を果たし、やがて秘所をいっぱいに満たした。
「うん、もう入った。熱くて心地がいいな。本当にお前のここは、具合がよくてたまらんよ」
「はぁ……う、んっ、との、さ……ま、殿様ぁ……っ」
「真之介、兵四郎と呼べ。頼むから、そう呼んでくれ」
「あ、へいし、兵四郎……あぁ、ふぅうっ」
素直に呼ばれて嬉しく思い、兵四郎は中が自分のものに馴染むのを待った。中を埋め尽くした大きな塊に身体を慣らそうと、真之介は呼吸を落ち着かせて、なだらかに胸を上下させていた。
ふと外から、ひそやかな話し声が聞こえてきた。
「……大丈夫だよ。今の時分ここにゃ、誰もいやしねえ。おら達が使うにはもってこいだ」
「あんた、でも、ほんとに大丈夫かしらねえ」
「大丈夫だったら。うちじゃ隣で寝てるおっかあや子供らが気になって、満足に声も出せねえと言ってたのは、おめえじゃねえか」
「そりゃそうだけど……でも、そういや祝言の前には、ここをよく使ったもんだったわねえ、あんた」
「そうさ、だからここでまた……ん?だ、誰だ、そこにいんのはっ」
近在に住む百姓の夫婦連れらしき若い男女が、話しながら扉を開けて入ってきた。
奥まった場所にいる兵四郎は、咄嗟に敷いていた着物を掴んだ。緊張に強張った真之介の身体と、結合した部分が隠れるように、ばさりと上に広げてかけた。
「すまんな、旅の者だが、ちょっとここを借りておる。ご覧の通り、取り込み中だ。悪いが、他を当たってくれんか」
悪びれた様子もなくにこやかに告げた兵四郎に、夫婦はぽかんと口を開けた。
やがて我に返り、いえいえお侍様とんだご無礼を、どうぞ気になさらずごゆっくり、とかなんとか口々に言いながら、慌てて戸をぴしゃりと閉めた。
ふたりが去って行く足音にほっと息をつくと、兵四郎はかけた着物をめくった。
顔を出した真之介はわなわなと震え、兵四郎を睨み付けてきた。
「なんだ、真之介。何を怒ってる」
「なんだじゃねえっ!み、み……見られ、たんだぞっ」
「大丈夫だ。薄暗いし、お前の脚しか彼らには見られておらん。一瞬のことだし、きっと女と見間違えた筈だ」
「馬鹿っ、幾らなんでも、女と男の脚を、見間違えやしねえだろうが!日も暮れんうちから男同士で乳繰り合ってる、おかしな奴らだと、ぜ、絶対、思われたぞっ」
「まあ、思われたところでいいじゃないか。事実なんだし」
「よかぁないっ、全然、よかない!」
ひとり憤慨する真之介を宥めつつ、兵四郎は気兼ねなく睦み合う場所を求めてやって来た夫婦に、悪いことをしたなあとぼんやり思っていた。
ふと、貫いた真之介の身体が、いい頃合いになっているのに気付いた。
「おいっ、聞いてんのか殿様!大体、おぬしは……」
「兵四郎、だ。真之介、動かすぞ」
「……あ!ま、待てっ、との、殿様……うあっ、んっ、ひぃっ……!」
よく動く口を黙らせるために、兵四郎は腰を引いて奥まで突いた。あくまで急がず、緩やかに抜き差しを何度か繰り返した。真之介は喚くのをやめ、目を閉じて甘やかな声を出し始めた。
「あっ、んっ、くうっ、と、とのさ、まぁ……はあっ」
「真之介、兵四郎と呼べ。今だけは、兵四郎と」
「はんっ、あぁ、へ、兵四郎っ……へい、しろっ、ふうっ、ん」
開かせた脚を抱えて腰を打ち込むと、真之介は首をゆるゆると振って、名前を呼び切なく鳴いた。
しどけない様を見下ろしていると、真四郎は彼を抱きしめたくてたまらなくなった。あえぐ真之介に覆い被さり、脚から離した手を腰に回した。
「すまん、真之介。少し、びっくりするかもしれんぞ」
「あ、あ……へ、兵四郎……なに、をっ」
虚ろな声で怪訝に問う身体を、両腕に力を込めてゆっくりと持ち上げた。
真之介は胡座をかいた兵四郎の上に、繋がったまま乗せられた。ちょうど、夢と同じ形になった。
「……う、あ!ああーっ……ば、ば、かっ……!あふっ、こ、こんな、こん……あぁあっ!」
「ふうっ、深いな。真之介、お前の奥がよくわかる。中はますます俺に絡み付いて、くわえて離さないな。ああ、なんて気持ちがいい……」
「うぁっ、やだ、やだっ……言うな、馬鹿っ!」
「ふふ、本当のことなのにな。だがわかった、もう言わん。言わない代わりに……」
ずんっと下から突かれ、真之介はぐっと身体を反らした。落ちそうになるのをしっかりと支え、小刻みに腰を動かすと肩にしがみつき、涙ながらに嬌声を上げた。
「あ……あっ、へい、しろ……兵四郎っ、兵四郎……ふぁ、うんっ」
「真之介、自分でも動けるか?そうすればきっと、もっとよくなるぞ」
「ん、ん……わ、かった……あぅ、は、あ、あっ」
真之介は震える膝に力を入れて、自らも腰を振り出した。繋がった部分はぐちゅぐちゅと音を立て、兵四郎の先走りは中を潤して滑りの助けになった。
真之介も先端からつるつると蜜を零したが、ふいに兵四郎に声をかけてきた。
「との……へ、兵四郎、着物……脱げっ、汚れ、る……」
確かに、押し付けられた真之介自身から溢れた蜜が、腹の辺りに小さな染みを作っていた。真之介は手を肩に置いたまま腕を伸ばして、身体を少し兵四郎から離した。
「……ああ、なぁに、気にするな。俺の着物の心配をしてくれるのか。真之介、お前優しいな」
「ふ、ふん、おぬしは飯より、着る物に気を遣う、しゃ、洒落者だからな。だが、それ、だけじゃ、ねえ……っ」
「うん?どういうことだ」
「ふ、不公平だってんだよ!俺ひとり、素っ裸じゃねえか……!い、いっつも、そうだ、あ、あぁっ!」
かねてからの不満をぶちまけた真之介は、ふいに強く腰を打ち付けられて悲鳴を上げた。
優しく突き上げながら、兵四郎は真之介をからかって笑った。
「そうか、真之介。お前そんなに、俺の裸が見たいのか」
「そ、そんなんじゃ、ねえっ!誰が、男の裸なんぞ、見たいもんかっ」
「俺は見たいぞ。肌もあらわなお前を見てると、えらく興奮するからな」
「う、うる、せえっ!つ、つべこべ言わず、脱ぎやがれ……っ!」
脱がずともことは果たせるので、なんとなく今まで着たままでいたのだが、そんなに真之介が欲するならと、動きを止めた兵四郎は自分の帯に手をかけた。
左腕を真之介の腰に回し支えたまま、器用に右手のみでするすると解いた。着物をばさっと脱ぎ捨てると、下に着ていた襦袢の紐を外し、それも脱いだ。
半端に引っ掛かっていた下帯をも取り去ると、兵四郎は真之介と同じ姿になった。
均整の取れたその裸身は、薄闇の中でまばゆい光を放っているように見え、真之介は思わず目を細めた。
「真之介、脱いだぞ。これでいいか」
兵四郎は屈託なく微笑むと、剥き出しの両腕を回して真之介を抱き寄せた。裸の肌と肌が触れて、真之介の胸はひどく高鳴った。
今まで兵四郎の裸を見たことはあるのだが、その時と今とでは、状況も心情もえらく違っていた。
南国育ちらしく浅黒い真之介の肌とは対象的に、旅をしていても不思議と日に焼けない兵四郎の肌は白い。鍛えられた筋肉が全身に張り詰めているが、白く滑らかそうな肌に覆われ、それは柔らかに見えた。
こうして抱かれているとやはり、見て思った通りだったと真之介は感じた。ぴたりと合わせた肌は、すべらかで実に心地がよかった。
ただでさえ兵四郎に抱きしめられるのは快感であるが、温かな血の流れと脈打つ鼓動が伝わって、更に快いものとなった。
黙ったまま真之介は兵四郎の肩に顔を埋め、ほうっと甘い吐息を漏らした。おとなしく抱かれる真之介の背中を愛しげに撫でると、兵四郎は再び動き出した。
目の前の胸に流れる汗を舐め取り、つんと立った二つの紅い飾りを交互にねぶった。軽く歯を立てて舌先でちろちろとくすぐると、真之介は秘所に力を込め、ますますきつく締め付けた。
悦びをまた突き上げることで示し、更に甘く乳首に噛み付くと、真之介は腰を揺らしてひっきりなしに高い声を上げた。
「あうっ、ん、や……だっ!兵四郎、かっ、噛む、な……」
「そうは言ってもなあ、お前のここはかわいくて、おまけにやたらと美味いんだ。もうちょっとばかり、好きにさせてくれ」
「うあっ、ああ……ば、かっ……ひぁっ、あ、くうっ」
弱々しく罵倒する声とは裏腹に、真之介は胸をなぶる兵四郎の頭をぎゅっと抱きしめた。兵四郎はほくそ笑み、ちゅうちゅうと乳首に吸い付きながら、熱い秘所をまた深くえぐった。
兵四郎の念入りな愛撫と激しく優しい抜き差しに、真之介は夢中になった。
身体に回された逞しい腕は父を思わせ、触れる肌はきめ細やかで温かく、まるで母のように真之介を包んだ。
抱かれているとなぜか、また泣きたいような気持ちになった。拗ねて悔し涙を流した最前とは違い、例えようもない幸福感と充足感が真之介を満たしていた。
「はぁうっ、あっ、あふ、へいし……ろうっ、んあっ、あぁ、あ……」
「真之介、真之介……夢の中のお前より、やはりこうして、恥じらいながらも悶えて乱れる本物のお前が……たまらなく、かわいい……」
「う、あっ、ん、んんっ、へ、兵四郎……っ、そ、こ……、あぁ、はぁ、うっ」
「ここか?ここがいいんだな。ほら、どうだ。気持ちいいか、真之介」
「あ……あっ!あぅ、よ、よか……よかぁっ、も、もっと、もっと……ひぃ、あ、あっ」
思わずお国言葉が出た真之介の感じるところを、真四郎は笑って何度も甘く責めた。小刻みに与えられる刺激に真之介は頭を振って感じ入り、追い詰められて限界が近付いた。
「ああっ、へい、しろ……っ、もう、も、だ、め……駄目だっ!ふぁっ、うぅ、んっ」
「いいぞ、真之介。俺ももう、そろそろだ。一緒に極楽に、行こうじゃないか」
「くぅあっ、あ、はっ、へいし、ろ……あぁっ、あ!……は、ああぁーっ……」
「真之介……っ、くぅ、う……っ!」
身体をぐんとしならせて、真之介は兵四郎の腹に白い欲を放った。きつく締め付けられた兵四郎は腰を掴んで、奥深くに熱いほとばしりを叩き付けた。
中をいっぱいに満たされ、真之介はあまりの法悦にがくがくと震えた。崩れ落ちそうになった身体を抱きしめ、兵四郎は荒く息をつく唇を吸った。
真之介は虚ろな目を薄く開けて、口内を丁寧に貪る兵四郎を見た。口づけられたままかすかに笑い、真之介は意識を手放した。
くたりと身体を預けた真之介を、兵四郎は藁を敷いた床にそっと横たえさせた。笑っているように見える顔にかかった髪をどけ、手ぬぐいを使って額や首に浮かんだ汗を拭き取った。
ぴたぴたと軽く頬をはたくと、真之介はわずかに目を開けた。
「真之介、大丈夫か」
「との、さま……ね、むい……」
「そうか。構わん、そのまま寝ろ」
微笑む兵四郎にかすかに頷くと、真之介はすぐに寝息を零し始めた。
兵四郎は自分の汗と、腹に放たれた真之介の愛液も軽くぬぐって、名残惜しげに中から萎えたものを引き抜いた。
真之介の上に着物をかけてやり、自らは襦袢を纏うと、すっかり夜になった外に出て、すぐ側にある川の水で手ぬぐいを洗い絞った。懐に差し入れて腹を拭くと、また手ぬぐいを洗って絞り、中に戻った。
眠る真之介の身体を、兵四郎は丹念に清めて後始末をした。
始末を終えると着物を着せてやり、自分も着衣を整え、彼のかたわらに藁を敷いて寝転がった。すうすうと寝息を立てる横顔を眺めていると、この上もない安らぎを感じた。
淫らな夢は、より鮮やかな正夢となった。愛しい本物の真之介の頬を撫で、兵四郎は笑顔を浮かべて目を閉じた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回で終わります。
もう仲学.生→莫迦リ.ズム(←元相方)な話。
ドッ霧王.座と雨話の元コ.ンビ鯨.人を見て書きたくなりました。
ちょっとした捏造が多々あります。
コンビ時代の莫迦リ/ズムの知識薄いです。
過去に棚にもうバ.カSS書いていらした姐さんの設定(ちゅんじろう関係)を一つだけ借りています。
いろいろ拙くてすいません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
またもう仲と共演することになった。レッ/ドカー/ペットではなく。ちょっとした特番で。
数組の芸人が合同の楽屋を使っているのだが、何故か楽屋でもう仲は俺に色々と話してくる。
人見知りだから苦痛でしょうがない。
雑誌を見ながら適当に相槌を打っていたが、雑誌のグラビアをきっかけに話の方向を誤った。
いつの間にかエロ話になっている。
もう中はまだ童貞だという。それに俺は驚きはしないがほんの少しだけ興味を持つ。
「もういっそ、30才までは、えっちはしないことにしてるんですよぉ」
「……本当かよ」
「ホントですよー」
目の前の図体のでかいやつはいつもの調子で、そう答えた。
しかしその割にはエロ話や下ネタは大好きだという。
どういうことだ。健全な男ならちょっとそれは不思議だ。
それともネット上でネタとして「30まで童貞だと魔法使いになれる」というのがあるが、それを鵜呑みにしているとか。
おいおい、いくらなんでもそんな馬鹿な。
「風俗とかも無いのか」
「ふーぞくも、キャバクラも、まだまだなんですよぉ」
指でバツを作りながらもう中は言う。
「素人童貞ならまだしもなぁ。よくそれで平気だな。じゃあAVとか見てどうにかしてんだ」
「いやぁ、観るんですけどー、えっちなビデオやDVDは何だか、観ちゃいけないって思っちゃうんですよぉねー」
「……はぁ」
俺は再び雑誌に目を戻す。我に返ると、俺はいったい何をしているんだろうと思う。
「莫迦リズ.ムさんはぁ」
もう仲は笑顔のまま言う。
「彼女さんとか、いらっしゃるんですかぁ」
「……いない、今は」
「そーなんですか。ご結婚とか、されないんですかぁ?」
「結婚は今は別にいいわ、面倒だし」
「あら、トツギ一ノしないんですねー」
「…俺嫁ぐ側じゃないからなぁ」
余計なお世話だよ。
ふと楽屋の他の人たちを見ると、俺たちのツーショットが珍しいのか、チラチラと見られている。
…そういえば、なんで俺だけ絡まれてるんだ。他の人のとこに行けばいいのに。
「ちょっと飲み物買ってくるわ」
俺は席を立ち、楽屋の外へと避難した。
「いってらっしゃぁい」というもう仲の声が扉で途中で遮られた。
おかしい。
もう仲が俺と絡みたがる理由がわからない。
今まで俺は人に懐かれるタイプの人間じゃなかった筈だ。
なぜ急に、もう仲に絡まれているんだろうか。
自販機でコーヒーを選ぶ。
そして楽屋に帰る途中、ふと、元相方の顔が思い浮かぶ。
……そうか。別に完全になかったわけじゃないな。
懐かれるというよりは尽くされるという感じだったが。
あいつは本当にいいヤツだった。
ネタ以外の事はほとんどすべてと言っていいほど、俺を助けてくれていた。
方向音痴な俺の為に仕事場までの道を調べてくれたりしていたな。
確かにあいつはいいヤツだった。
けど、いいヤツであるが故に、色々悩んでしまったのだろう。
変なファンに付きまとわれていたらしいし。
別れた時は自分の事で頭いっぱいで、別に憂いや悲しみは無かった。
今だって、すっぱり諦めはついている。
あいつは今きっと幸せなのだから。
しかし、ちょっと前に雨トー/クで見た縞田修平の表情を思い出したりする。
なんだか胸がチクチクしたりする。
元相方にとても会いたがっていた時の、キャラに合わないあの表情。
別れた相方をそんなに未練がましく思うものなのかと、ある意味で衝撃を受けた。
別に男女の仲でもあるまい、男と男だ。
居なくなったってそこまで想うものか?
元相方は、俺がノリで言った「マネージャーになるか」という誘いに食いついていた。
あの時は俺がヒいて実現しなかったけど、俺までノッてたらどうなっていたんだろうか。
あいつもそのまま首を縦に振って、結局一緒にいたのだろうか。
いや、それは流石にないか。
あいつは未練がましく俺のことを想うのだろうか。
どちらかといえば、あいつはドライじゃない方だったけど。
夢に出てきたりするのだろうか、俺が。
いや、それは流石に気持ち悪いな。
……何を考えているんだ、俺は。
俺が楽屋に戻ると、もう仲はでかい図体を丸くして、床に置いた段ボールの絵の修正をしていた。
すげえコンパクトだな、折り畳むと。
段ボールじゃなくて、もう仲が。
俺はそれを尻目に静かに座る。もう仲に気付かれないように。
周りの他のコンビ芸人たちはネタの打ち合わせを始めている。
「まーるかいてちょん、まーるかいてちょん」
もう仲は鼻歌まじりに小さく歌う。一体何を書いているというのだろう。
端から見たら遊んでいるように見えるかも知れない。
しかし、彼にとっては仕事なのだ、「楽しい」という感情は。
彼は「楽しい」を皆にばらまくために今日もせっせと絵を描いている。
コンビ芸人ばかりの楽屋で、その姿は浮いているけど。
もう仲は、一人でも寂しくないのだろうか。
人に人一倍気を使い、人を人一倍楽しくさせようとするもう仲。
彼の背中はコンパクトで頼りなげだ。
しかし、寂しさは微塵も感じない。
…俺の背中は、どうなんだろうか。
ふと、いつかもう仲にもらった角隠しつきの「ちゅん次郎」を思い出す。
(寂しい時も、このちゅん次郎くんが、莫迦リズ.ムさんを見守ってくれますよぉ)
……まさか、俺は、寂しく見えるのか。
いまさら、もう仲の思惑に気づく。
俺は……心配されたのか?
「あ、莫迦リ.ズムさん、お帰りなさーい」
振り向いたもう仲が、俺を見て満面の笑みを見せる。
(お前のことは、俺が一番わかってる)
元相方の笑顔が浮かんで消えた。
俺のことなんてわからなくていいのに。好かなくていいのに。近づかなくていいのに。あいつも、こいつも。どうして、笑顔を向けるんだろう。俺は、返さないのに。
「莫迦リズ.ムさんは笑顔が素敵ですからぁ、もっと笑ったほうが、良いと思いますよぉ?」
「えっ」
もう仲は俺にちゅん太郎を向けて、いつもの笑みで言う。
「莫迦リズ.ムさんの笑顔は、ほんわかぁ、って感じがするじゃないですかぁ。みんな、莫迦リズ.ムさんの笑顔を、もっと見たいと思いますよぉ? 莫迦リズ.ムさんの真顔や、泣き顔も、素敵ですけどー……。ボクは、莫迦リズ.ムさんの笑顔、好きですよぉ」
……ああ、へえ、そうなんだ。ふーん。そんな良いもんか? 俺の笑顔。
もしかして……あいつもなるべく沢山見たかったのかな。俺の笑顔。
ぎこちなく笑った俺の目に、涙が滲む。
あーあ。バッカだなぁ俺。
いまさら後悔してやんの。
もう少しだけ、あいつに笑いかけてやれば良かったなぁ。
ありがとう、って…………言えば良かったなぁ。
「ためになったねぇ〜」
俺がおどけて言うと、もう仲は「あらっ!」と嬉しそうに跳び跳ねた。
俺はその挙動がツボったフリをして、気づかれぬよう涙を拭った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えましたすいません。毒舌先生も含めてみんな仲良くなれば良いと思う。
>>287 gjgj!空気読んでるんだか読めてないんだかわからないもう仲と
莫迦リズムにきゅんときた。
この二人可愛くて大好き。
>>283 d
何か、ほんわかして優しい気持ちになれた気がするよ。
>>280 さらに続きがあるなんて幸せ…
楽しみにしております。
>>280 まさか参匹で801が読めるとは感激です
続きを全裸待機で激しくお待ちしてます
頑張ってください
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| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 退カヌ媚ビヌ省ミヌ
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
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タイトル通りです。「包茎に萌えるスレ」を読んでいたら一本書きたくなりました。長兄×末弟です。
包茎という超絶マイナー嗜好とこんな超絶マイナーカプが組み合わさってカオスになりました。
あと、滅茶苦茶痛い描写があるので注意してください。
ケンシロウは包茎である。以前からその事を不満に思っていた。
そこでケンシロウはトキはズル剥けだったのを思い出し、トキの部屋を訪ねた。
「兄さん…どうやったらズル剥けになれるんだ」
「ケンシロウ…もしや」
「ああ」
「ケンシロウ、すまないが、私は子供の頃からズル剥けだったので、お前の力になってやれない。
しかしラオウは自力で真性を克服し、ズル剥けになったというので、会って話を聞くがいい」
医者の卵なら包茎の脱し方ぐらい教えてくれよ、とケンシロウは思わないでもなかったが、仕方ないのでラオウに話を聞くことにした。
大体ラオウは滅多に自分から口を利かない割に自己中で横暴で、弟たち(特に自分)にしょっちゅう八つ当たりばかりしているのだ。
トキはラオウの八つ当たりが比較的少ないので羨ましい。トキが教えてくれるならトキの方がよかったのである。
しかしラオウの所へ行った。
「ラオウ、今すぐ包茎をズル剥けにする方法を教えろ」
ラオウは、いきなり何を言い出すんだこの弟は、と思った。
ケンシロウは滅多に自分から口を利かない割にいざ口を開いたら碌な事は言わない。
無愛想だし、自分よりトキの方に懐いている。そのくせしてしょっちゅう自分と行動が搗ち合うのだから、生意気である。
大体ケンシロウが赤ん坊の頃は自分が襁褓を換えたりなんなりをやらされたのに、全くそれを恩に着るところが無い。
ケンシロウはそんな事を知らないのだから当然と言えば当然であるが、ラオウはそうは思わなかった。
赤ん坊の頃は可愛かったのに、口を利くようになってから可愛くなくなった。
「…うぬは包茎か?」
「そんなことは貴様の知った事ではない、教えろ」
「…剥いたまま一日過ごせばよかろう」
「そんなことはできん」
「風呂場で剥け」
「やり方を教えろ」
そこで風呂場である。
この家の風呂は多少広いとはいえ、全裸の男二人が仁王立ちしているのは何か凄く嫌な物がある。
「それで?」
「剥け」
「嫌だ」
「剥けと言っておろうが!」
本当は、湯船の中でちょっとずつ伸ばしていってそして優しく剥くのが手順というものであるが、
自分から教えを乞うてきたくせに非協力的な弟の態度が腹立たしかったので、何の準備もなく、いきなり剥いてやった。
ケンシロウは、なんてラオウは乱暴なのだとその瞬間思った。
「うぐわあああああああああああああああーーーー!!!!!!!」
風呂場なので弟の絶叫が反響して五月蠅い、とラオウは思った。
他の兄弟が来たら面倒だな、と一瞬思ったが、来ないだろう、と一瞬で二人の事は頭から消え去った。
実際他の二人はケンシロウが絶叫を上げているぐらいでは来ない。
半径50mが荒野になってラオウとケンシロウの戦いに決着がついた後などでないと絶対来ない。
冷たいと思われるかもしれないが、昔からそうだったので、ケンシロウも特に二人が冷たいとも思わなかった。
無理やり剥かれたので出血した。ケンシロウはそのまま股間を押さえて蹲りたかったがラオウに股間を掴まれているのでそれができない。
抗議する気も失せる。もう意識が飛びそうだった。
「……」
ラオウは、洗った方がいいだろう、と思って石鹸を手につけて、ケンシロウの浮りに触った。
「ふああああ!!」
痛い。しかし触られた瞬間に達してしまったので、痛いだけではなかったのだろう。
ほとんどケンシロウ自身には痛いとしか感じられなかったが。射精したのでさっきの出血が少し増えた気がする。
剥いて最初の射精は、どうせなら自分の手でしたかった。なぜ俺はラオウの手で達せられているのだろう。
陽物が血塗れで、とても痛い。
大体昔からラオウは横暴で本当に…。
ラオウはケンシロウのそういう反応を見て、面白いと思ったのでもっと触ってやった。
普段無愛想な弟が悶絶しているのは楽しい。
稽古中に殴ってもほとんど無表情だし、笑顔なんてトキと会話している時たまに見せる程度である。
そういうケンシロウが嫌いだったので、今の状況が楽しかった。
俺を敬愛しないならば死ぬべきなのだ。
ラオウもケンシロウも互いに深刻な思い違いをしていた。自分は相手の事を嫌いだと思ってた。
それはある側面で事実である。
しかし、それは相手が自分に対して都礼ないから嫌いなのであって、なぜそれで自分が相手の事を嫌いになるのか、
それをもっと深く考えれば事実に気づけるはずだが、あいにくラオウにもケンシロウにも内省という言葉はなかった。
ケンシロウが死にそうな顔で喘いでいるのが楽しい。多分石鹸が傷に染みて痛いのだろうが、それならもっと塗りつけてやるまで。
その後6回ぐらい達せられて、ようやく兄が手を放したのでケンシロウはそのままその場に膝をついて座りこんだ。
いつもいつもなんと酷い兄なのだろう。確かに、血が繋がってないからトキの様に可愛く思えはしないだろうが、
トキ並みにとは言わないが、もう少し愛情をかけてくれてもいいのではないだろうか。ラオウを見上げると満足げな顔をしていた。
人をこんなに苦しませておいて何が楽しいのだ。全くこの男は本当にカサンドラ伝説だ。
ケンシロウはラオウにも同じ気分を味わわせたくなった。兄弟の手で達せられる恥辱というものを教えてやろうと思った。このクソ長兄が。
そこでケンシロウは目の前で退屈そうにぶらぶらしている陽物を思いっきり掴んだ。
どうせ仕返しをするならば、金的をした方が遙かによかったのではないか、後で思い返すとそうなのだが、
この時のケンシロウにはあいにくそういう考えが思い浮かばなかった。ケンシロウはラオウと同程度に愚かである。
ラオウはケンシロウがいきなり陽物に掴みかかってきても特に驚かなかった。ああ、また訳のわからない事を始めたな、と思った。
強く握ってみたが相手が特に何の反応も返さないので、モヒカンの頭を握りつぶすぐらいの力で握りこんでみると、ようやく何がしかの反応が返ってきた。
そこで右手を結んだり開いたりして、左手は掌で先端を思いっきり擦ってやる。自分は浮りを触られただけで達したのに、なぜ達しないのか、理不尽である。
これが包茎とズル剥けの違いかとケンシロウは非常に悔しい思いをさせられた。
それでももっと頑張っていると大分達しそうな感じになっていったので、もう少しだと頑張る。そして。
「うわっ、わぷっ、ゲホッ」
避ける、という事が頭になかったのでもろに大量の液体を頭から被ってしまった。
ケンシロウは、子供の頃に田圃で滑って転んで泥を頭から被った事を思い出した。大体あんな感じだろう。
ただ、今は粘度は高いし独特の臭気はするはで今の状況の方が悪いと言える。
大体何故一回の射精でこんな大量の液体が出るのだ。人体の構造的におかしいのではないだろうか。
もしかするとラオウは人間ではなくてエロゲ星から来たエロゲ星人なのではないだろうか。
ほとんど目も開けていられないような状態で、手探りでシャワーヘッドを探す。ラオウは何をしているのだろう。
多分ただ突っ立っているだけなのだろう。
そう思っていると、ラオウがしゃがんだ気配がして、「ケンシロウ」と声を掛けられた。
べちゃ、という音がしたから液体の海ができているタイルの床に膝をついたのだろう。
「拳王は決して膝など地に着かぬ!」と言っているラオウが膝を着くなど、と思っていると顔の両脇に手を掛けられたのがわかった。
何、と思う間もなく口づけされたのが分かった。
「ん」
いきなり舌を入れられて息苦しい。
口の中をべろべろ舐めまわされて、変な気分になる。そのまま1分ぐらいそうされていた。ようやく解放されて息をつく。
「早く目を開けぬか」
「…目に入る」
ケンシロウがそう返すと、いきなり右の目元をべろっとなめられた。その後左の目元もべろっとなめられた。
しかし液を舌で拭われたと言ってもそれはそれで唾液でべたついているので、目を開けにくい。
目を開けないでいるとまた口づけされて、されるがままにしていると、そのまま犯されそうになったので、それは岩山両斬破で阻止した。
「岩山両斬破ァ!」
「ぐはあ!」
多分ラオウの事なので、この程度で真っ二つになってはいないだろう。
実際生きているらしい事はラオウが呻いていることからわかったので、
その間に手探りで盥と手桶を取って、盥に湯船からお湯を汲んで、顔をとりあえず洗った。
なんとか目を開けられるようになった。
「ケンシロウ…貴様…ここはどう考えても激流に身を任せ同化すべき状況だろうが!」
…なぜ俺が怒られられなければならないのか。それが問題である。
ケンシロウは極めて不機嫌に答えた。
「…陽物のみならず、尻まで血塗れにされるのは御免だ」
「血塗れになるとは限らんぞ」
「いや、なる」
「訓練すれば西瓜だって入るらしいではないか」
「俺は訓練されてるわけじゃない」
「よかろう、痛みが性的快感に変わる秘孔を突いてやるわ!大人しくこの世紀末覇者に従うがよい」
「世紀末救世主の名にかけて、断る。…それに、我らに相応しい場所というものがあるだろう」
「…部屋ではできぬ」
「何故だ」
「こんな事で寝台を粗大ゴミに出したくはないわ」
確かに現在ラオウの出した液で風呂場の床に海ができているような状況では、
寝台が速効粗大ゴミになることは間違いなかった。
「…全部俺の中に出せばいいだろう」
そんな事をすればケンシロウが腹を下すことは間違いなしである。
そこでラオウは「俺にはそんな下世話な趣味はない」と反論したが、
ケンシロウは「いや、俺は構わん」と返答した。
「まあ確かにできれば腹は下したくないが…その方が手間が省ける」「できぬ」「構わん」「できぬ」
「…そもそも、この家でしたくはない」
「何?」
なんとなくケンシロウの言うこともわからないではなかった。
家族として過ごした空間でそういうことはしたくないという事なのだろうが、
「俺は構わぬ」
「あんたの意見は聞いていない」
ラオウにはケンシロウを力づくで従わせる選択肢もあったが、風呂場を破壊してしまう事は確実だったので、珍しくラオウにしては譲歩した。
別に風呂場を破壊すること自体はラオウには全く躊躇はないが、誰か来たら面倒だ。
その誰かと戦っている間にケンシロウが逃走したら面倒だ。
それならケンシロウを殺せばいい。
いや、ケンシロウを殺す前に一度ぐらいは契りを交わしておきたい。
ならばここで殺す事はできん。
「ならば今すぐ連れ込み宿へ行くのみ!」
「…そういう問題ではない」
「いい加減にせぬか!」
「後でトキやジャギと顔を合わせたくない」
「ぬう?」
「…合わせたくない」
「……」
確かに、その事に関してラオウも言われてみれば多少の罪悪感が湧かないでも無かった。
ならばここで手詰まりである。
それならもうケンシロウと会話をしたってしょうがない(むしろこれ以上の会話は気分がよくない)ので
ラオウはケンシロウを放置してさっさと風呂場から出ようとした。ケンシロウは微かに呟いた。
「…この家を出て、二人きりでどこかで暮らすと言うのならば、いい」
「……」
ラオウは気が変わったのでケンシロウを手伝ってやった。
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| | | | ピッ (*´ω`*)
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| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
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すまない。
まだふたなりの方が需要があったかもしれない。
投下した後で気づいたので
浮り→カリ
搗ち合う→かちあう
都礼ない→つれない
>>292 萌えると言うか噴くと言うか、何だろうはじめてのこの気持ち。
凄く面白かったです!
さらに補足
襁褓→むつき(オムツの事)
連れ込み宿→ラブホの事
あくまで補足なんで訂正ではないです。
もしかして気が向いたら自サイトなりなんなりで再録するかもしれない。
それを見かけても生温かく見守ってほしい。
自サイト持ってないけど。
>301
トンクス。
>>292 姐さん天才!!!
GJGJGJ
GJすぐるとしか言いようがない
面白かったです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )オリジナル設定にお気をつけて!
アメリカのチャイナタウンのペットショップから、日本にいついて数年。
そしてレオンがアメリカから伯爵を追ってきて一年。
最近では、住む所も見つかり、仕事もついでに見つかったので、伯爵の所に来ないでいる。
『仕事が忙しい』
それが彼の言い分だったのだが。
「…?…!」
かさ、と、手には白い封筒が握られている。中に入っていた便箋を取り出すと、伯爵の顔色が変わった。
「伯爵どうしたの?」
アライグマのポンちゃんが、くいくい、と伯爵の服のすそを引っ張る。
ポストに入っていたのは、英字の封書だった。
ここから結構遠い所に位置するレオンからの手紙は、伯爵の心を密かに躍らせた。
『二十六日から二十九日まで休みが取れた。それくらいに新宿に行く。新中華街のお前の店に行く』
たったこれだけしか書いていなかったが、ふ、と、伯爵は表情をほころばせた。
「そろそろ、刑事さんが来ますよ。明後日ですね」
にっこり笑うと、伯爵はここのところしていなかった掃除を始める。それにならって、ペットショップの動物たちも走り回る。
伯爵は塵取りと箒を持って、マスクをして。
これだけ見るとチャイナタウンのペットショップの店員には見えない。
がたん、がちゃん!
動物たちも手伝ってくれるのは嬉しいが、七割は邪魔をしてくれるのが悩みの種だ。
今もつぼを転がして欠けさせている。
蛇たちが、つぼにまきついてなおそうとしているのだが、当然直るわけがない。
ポンちゃんはたらいに水を張って、取り替えたばかりのソファのシートを洗っている。
「ああもう、皆さんじっとしててください!」
「伯爵、閉店の札だしとくぞ?」
テッちゃんが札を持ち、扉を開けたところで、太子と鉢合せした。
ネオチャイナタウンのオーナー、劉武飛だ。
最近は昔のレオンのごとく、ペットショップに入り浸っている。
「おや、太子…すみませんが今は掃除中なので出て行ってくださいまし」
ぐいぐいと背中を押すと、太子を外へと追いやる。
「な、なんだなんだ。ははん、さては『女』でも出来たな」
にやりと笑うと、扉の前で立ち止まる。
伯爵はむっとして、首を振る。正確には『男』なわけで。
その眼鏡に鉄拳を入れてやろうと思ったが、掃除は山積みだ。
さっさと太子を追い出すと、やや乱暴に扉を閉めた。
追い出された太子はというと、つまらなそうに、お付の陳を連れてネオチャイナタウンを歩き出した。
「さ、て」
だいぶ片付いた。絨毯も埃一つ落ちていない。
なんだかんだ言って、レオンの来訪を心待ちにしていた。いつもポーカーフェイスな伯爵が、めずらしくニコニコしている。
「刑事さんはオレンジ・ペコはおすきでした?どうでしょうね、とりあえずクッキーでも焼いておきましょうか」
うきうき。隠し切れない喜び。そうして待ちに待った三日目が来た。
「…」
「伯爵?」
太子が、ソファで眠っている伯爵を見つける。
お付の陳がいないときにやってきたので、なんとなくその顔に存分に魅入ることが出来た。
柔らかそうな唇から、息が漏れる。スースーと気持ちよさそうに寝ているのだ。
「…伯…」
その唇に指が触れたとき、急にがたんと音がして、はっとしてそちらを見た。入り口だ。
「ウース!ディー!来てやったぞー」
勢いよくドアを蹴り飛ばした先には、ソファにて、伯爵が転がっていた。
しかもその唇には例の男が触れている。単細胞なレオンは一瞬止まると、大声でまくし立てた。
「あにやってんだよ!てめーがここのビルのオーナーって奴だな!ディーの所によく出入りしてるのは知ってるぜ!」
「いや、別に何もしていないが」
すました顔で、伯爵から離れる。
だがレオンの怒り…というよりは嫉妬はおさまらない。
乱暴に太子の背をぐいぐいと突き飛ばしながら出口へ導く。
「でてけでてけ!」
「…ん」
その物音と声で、伯爵が覚醒した。
もそりと起き上がると、扉がしまった所だということに気づいた。ぼんやりとした視線の先には、レオンがいつもの格好で立っている。
「刑事さん…」
「もう刑事じゃねーけどな。大体なんで俺が来るのに寝てんだよ、そんなに嫌か?」
くい、と、あごを持ち上げて、問う。
軽い格好のレオンといつもきっかりスーツを着込んでいる太子とは、そういう面では正反対であったが、性格は意外と似ている。
レオンも太子も、まっすぐな所があるが、レオンのほうが少々うるさい。
そしてしつこい。
それでも伯爵がレオンを選んだのには、その頑固さに惹かれたからだろう。
「…ずっと、待ってましたよ…」
「え」
少し体を更に起こして、レオンの首に抱きついた。
寝ぼけているのだろうか、いつもの伯爵にはありえない色気があった。
「…」
「おい。ディー?」
すうすうと寝息を立てて、そのまま寝てしまった。
動かないディーを見て、店内が異様に前に来た時より整頓され、机には菓子が置かれているのに気づいた。
「ずっと…待ってました…会いたかったです…」
寝言のような真の言葉。
いや、きっと寝言なのだろうが、このまま放っておくには行かない。
「レオンー」
アライグマのポンちゃんが、レオンの足にしがみついた。
今のレオンには、店内の動物たちがきちんと人間に見えていた。必然的にポンちゃんも、可愛らしいふりふりの洋服をきた女の子に見えるわけだ。
「お、ポン太。ディーが何かおかしいけど、何かあったのか?」
「ずっとレオンを待っていて、待ち疲れたの。寝かせてあげたら?」
ふふん、と、ポンちゃんがレオンに提案をする。
と入っても、この前のような、迷路を行って無事に帰れるとは限らない。と、考えて困っていると、ポンちゃんが案内するという。
ポンちゃんはこのペットショップの一員、伯爵の部屋をもちろん知っていた。
さて、奥の扉を開けると、例のごとく無茶苦茶な迷路と無数の扉が広がっていた。
(よくこいつらは迷わないよな…)
眠っている伯爵を姫抱きにすると、ポンちゃんに案内される。どこをどういったかすでに覚えていない。
ひときわ豪華な扉の前に立つと、ポンちゃんは扉を開けようと、背伸びをする。が、届かない。
「おう。ポン太わりぃな、後は俺がやるから戻っててくれ」
「じゃあねーレオン。戻るときは伯爵かと、そこらにいる子たちにはなしかけてもらえれば大丈夫よ」
ベッドに、伯爵を寝かせる。
やわらかいベッドの上で、眠っていた伯爵は三十分ほどして完全に目を覚ました。
がばりと起き上がると、辺りを見回す。
隣の椅子の上に、肘をついてこちらを見ているレオンに気がついて、ほっと胸をなでおろす。
「帰らなかったんですね」
「眠っているお前をほうっといて帰るのもな。それに俺のこと待ってて待ち疲れて寝たって?」
けらけら笑いながら、タバコを取り出してライターで火をつけようとするのを、伯爵がタバコを取り上げて吸うのを阻止した。
「何すんだよ。!」
軽い口付けが、レオンの唇に落とされた。
「…」
恥ずかしそうにそっぽを向いた伯爵を、がばちょと襲う。
もう一度ベッドに押し倒された伯爵は正直あせったが、それもそのはず、二ヶ月はいたしていないのだ、風俗も行ってなければ今ので火が付くのは当たり前かともおもった。
「ディー」
熱っぽい視線で見つめられ、荒々しく口付けられる。したが、歯列をなぞって、唾液が混ざり合う。情熱的な口付けだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )まだ続くけどいったん区切ります。近いうちに再開します
しまった、新と入れるのをつい忘れた…
>>292 GJ
新しい趣味に目覚めさせてくれてありがとう
ただその顔文字は流行らない
>>292 笑いすぎて涙出たwwwwwwww
GJGJ
>297の6行目(7行目?)
×怒られられ
○怒られ
312 :
1/2:2010/10/30(土) 20:09:28 ID:xvZROKb1O
オリジナル
冬の日
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
薄い雲が僅かに光を滲ませる冬。
日差しの穏やかさとは程遠い、足元から深々と刺すように冷え込みが這い上がる昼過ぎ。
頭上では強い風が渦巻き、時折悲鳴を上げている。
カンカンカンカン……
踏切のバーが下がる音。
しばらく遅れて、都会ではもう見ない四角いフォルムの電車が目の前を通り過ぎる。
更に数秒後には強い突風。
駆けてゆく空気に引っ張られて俯いた首筋。
そこへ冷たい風が入り込み、思わず身体がビクリと震える。
背後から押し殺した笑い声。
ふぅとこれ見よがしに溜め息をついて、自分より少し高い位置にある相手の目を見据える。
「寒いんだから仕方ないでしょう」
返事はない。
それでも震える空気や伝わる雰囲気から、笑いが治まっていない事が伺い知れる。
鞄で軽く横腹辺りを小突いて、上がってゆく途中の踏切のバーを潜るように早足で進む。
駆け足で追ってくる足音。
313 :
2/2:2010/10/30(土) 20:10:48 ID:xvZROKb1O
ムキになって歩調を早め、距離を広げて先を急ぐ。
これからの行き先なぞ知っている癖に、それでも追ってくる様子に、今度はこちらが笑いをこらえる。
信号で止まっている時に、こっそりと絡められた指先。
珍しく控え目な様子。
仕方なしに手は振り払わずそのまま。
チラと見えた横顔は、いつになく緊張しているのか表情は硬く。
少し吹き出してから、手を握る。
そんな冬の日。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ。
>>292 笑える上にラストでほんわかするとは思いませんでしたGJ!
ゴツい漢2人でかわいいすぐるw
ヴぁんぷ!最新刊から鏡の人→自称探偵です
奴ら描写が少ないのでほぼ捏造
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
船の中はそこそこ混んでいた。
人ごみは好きだ。混沌とした人々の心の声に耳を傾け、それらがひとつになって
ハーモニーを作り上げるのには恍惚とした気持ちにすらなる。しかし今は…
「うー…う、うー(気持ち悪いー…すっごく気持ち悪いー)」
隣でひたすら吐き気に耐えている男が気にかかって他に気持ちを向けることができない。
「…君、なんで一緒に来たのさ?僕を『組織』の招集に誘いに来たんじゃなかったの?」
「うぅ…(きもちわるい…)」
ため息をひとつついて心を読むのも話しかけるのもあきらめる。
流水に弱い体質のくせに、なんで船に乗ろうとするのさ、君は。
「………」
「ちょ、何?」
突然こちらに寄りかかってきたことに驚いて声をあげる。
「……(…うー?)」
どうやら半分眠りかけているみたいだ。
そういえば、乗船してすぐに真っ青な顔してるからって乗客のおばあさんに
酔い止めの薬を貰って飲んでたっけ…
…自分が人間の天敵であるって自覚、あるのかな君は…
もちろん、そのおばあさんの心を読んで悪意がないことは確認したけどね。
それに人間の薬がここまで効いちゃうってのもどうなんだろう。
そのままずるずると床に落ちそうになるのを肩をつかんで止める。
…しょうがないなぁ…
座っていた場所を少し横にずれると僕の膝の上に頭を置いてやった。
後から「大の男が人前で!膝枕とか!恥ずかしい!恥ずかしいぃ!」って
怒るかもしれないけど、まぁそのときはそのときで恥ずかしがってる思考を
堪能させて貰おう。うん、ちょっと楽しみになってきたぞ。
「…う…(…なに…?)」
あ、起きちゃった。
「(いや、ほらさ。流水に弱いわけでしょ、君。僕の膝ごしだと海まで
ワンクッションできてちょっとは受けるダメージ少なくなるかなー、って)」
「んー…(…?…そう…なのか…な…)」
…納得した。前から思ってたけど、君は自称名探偵のわりに…いや、まぁいいや。
「島に着くまでこのまま寝てなよ」
苦笑しながら、膝の上に乗っている髪に触れる。
結構柔らかい。
「…ん…(…そうする…)」
手触りが思いのほか心地よくてそのまま指で梳くようにしてみる。
「…(……きもちいい……)」
………。
思わず手を止めてしまうと、それが不満なのか少し身じろぎされた。
「……んぅ(…もっと)」
ちょ、どんな殺し文句だよそれ!
「きもちいい、もっと」ってまるでねだってるみたいじゃないか!
ああ、いや撫でられることをねだってはいるのか…
っていうか、だいたい君はいつも無防備すぎるよ!
僕に対してだって、心を読めることも性格が悪いことも全部知ってるくせに
なんだって警戒心もなくノコノコと会いにくるのさ!?
正直、ドゥーの奴が相手でもその無防備さであっさり騙されて酷い目にあったり
するんじゃないかと思うと気も抜けないよ!
幹部になったときカルジミールを脅して配下を少なくして自由に動けるように
しといて本当によかった……
………。
ああ、なんか動揺してしまった。いや、今のは表情には出ていない、はずだ。
そっと周りの思考を読んでみる。
うん大丈夫、ワトソン君はなんか窓にへばりついて肉のこと考えてるし
周りの人間たちからも気分の悪そうな彼を心配する気持ちと男同士で膝枕って…
という若干引き気味の思考しか伝わってこない。
よし。
こんなこと考えてるなんて誰かに知られたら恥ずかしくって軽く死ねるよ、僕。
そうして船は滞りなく島へ進んでいったわけだが、宇宙の彼方で
テレパス能力を持った某ブラックホール氏が
「…暇だから話相手になって貰おうと思ったのだが…
うっかり混乱している最中の思考を読んでしまった等と言ったら
ややこしいことになりそうだ。このことは私の最期が来るまで心に秘めておこう」
などとつぶやいたのは他の誰にもあずかり知らぬことだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
※生注意
※ベリショのおじさま俳優Ca/ts m/e×蛇事務所暴風雨の四男
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
酔った振りで誘いをかけたのは丹乃宮の方だった。
愛だの恋だのといった甘い感情なのかと問われれば肯定するのは憚られるが、
アルコールのにおいが残る口付けも触れられた部分の熱も
脳の作用というよりは、体の方が覚えている。
「よそよそしくない?」
たまたまテレビ局の自販機前で見かけた鷹嘴を視線で呼び止め、
ひとけのない通路の突き当たりまで誘い込んだ丹乃宮がまず掛けた言葉はそれだった。
ミネラルウォーターを片手に「そうかな」と曖昧に応じた鷹嘴の視線は不自然に揺らぎ
天井から壁を撫でた後、丹乃宮のことをスルーして扉に落ち着いた。
一歩だけ右に動いてわざと扉と鷹嘴の間に割り込むと、あからさまに慌てた鷹嘴が目を逸らす。
丹乃宮は腕を組んだポーズのまま表情だけをふっと緩め、改めて友人を正面から見つめた。
「やんなきゃよかったとか、思ってんの? 活未は」
わざと軽い言い方を丹乃宮が選ぶのは、
たちの悪いジョークにしても構わないのだと鷹嘴に示してあげたかったのが半分で
残りの半分は自分へのダメージを軽減させるためだった。
鷹嘴にとっては、ひょっとして同衾するのも大したことじゃないのかも知れない。
たとえそれが男相手であっても、だ。
とにかく自分の感情一つで彼を悩ませるのは違うんじゃないかと、丹乃宮は思う。
後悔なんて、と鷹嘴は丹乃宮のマイナスベクトルをもった予想に反して首を横に振ったきり、黙り込んでしまう。
平素とは異なる気まずい沈黙を破ったのは丹乃宮だった。
「言えよ。言われなきゃ解んねーもん、俺」
母音をわざと伸ばすような、丹乃宮に特有のふざけた口調だった。
真剣なまなざしと軽い声音の微妙な乖離が、不機嫌さを告げている。
こうなれば頑固な性格を知っているから、僅かに躊躇いをみせながら鷹嘴も口を開いた。
「……後悔してるのかって、丹乃、きいたろ。させてるのかと思ったのは俺のほうだ」
困ったような目尻、優しい口もと、温度の高い指、短く切った爪。
鷹嘴の好きな部分をなんとなく目で追いかけながら、丹乃宮は数日前のことを思い出す。
嘘つきな性格は自覚していた。
だからこそ出来うる限りの真摯さで鷹嘴に体を預けた、つもりだった。
好きだと告げた。欲しいのだと伝えた。後悔しないために。
それでももう一度、改めて言葉にしなければいけないと丹乃宮は思う。
「言ったろ。好きだ、すごく。活未のことが好きだ。
あんたは俺の全てじゃないけど、煩わしいものと要らないもの全部捨ててったら
心臓の真ん中に活未が残ってる」
――少なくとも、今はね。
丹乃宮が冗談めかしてそう付け足すと、鷹嘴は漸く微笑に似た表情を唇の端に浮かべる。
「俺は後悔してないし、これからもしない。あんたが好きで、セックスしたいと思った。
恥ずかしいし痛いし面倒だけどそういう諸々と天秤にかけても、活未に触れる方を俺は」
選びたかったんだ、と続けるつもりが途中で抱きしめられ、丹乃宮は言葉の代わりに小さな笑い声をこぼした。
鷹嘴の首にぶら下がるみたいに両手を回して、ぐっと引き寄せる。
尊敬も信頼も全部通り越した、幼いほど純粋な愛おしさに満たされている。
舌を絡めると、歯磨き粉の人工的なミントの涼やかさが丹乃宮の口内にふわりと広がってすぐに消えた。
(口付けてもレモンの味なんかしないって、そりゃそうか)
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
某スレの者です。スペースお借りします…
オリジナルで、苦労人な隠密×ビッチな主君の幼馴染。
※一応、暴力・流血描写注意です
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「いや、つい流されて」
何故、と聞かれたから正直に理由を答えたら、次の瞬間ファルマに殴り飛ばされていた。
ベッドの端に腰掛けていたのが、二転三転して壁際で無様に転がされてしまっている。
腕利きの隠密の拳を受けたにしては、そのまま昏倒せずに済んだところを見ると多少は手加減してくれたらしいが、
それでも口の中が切れたらしく、つんと鼻につく鉄の匂いが脳内を汚染する。
けたたましい音。
よみがえる映像。
フラッシュバック。
しかしそれでも冷静でいられるようになったのは年の功か、と思えば顔に浮かぶのは苦笑いだった。
血を拭うふりをしてそれを隠し、気を取り直して見ると、ファルマは母親に手を挙げられた少女のような顔でこちらを見下ろしている。
一瞬、自分が悪いことをしたような気持ちにさせられたが、ふと我に返って考えてみれば殴られたオレが謝るのはおかしな話だ。
口元へやっていた手には想像していたよりも多い量の赤がこびり付いている。
平静になるに従ってじくじくと痛みが押し寄せてくた。
歯が折れなかったのは不幸中の幸いだが、それを差し引いても最低だった。
ただでさえ腰やらケツやらが痛かったのに、元々自分はそれほど痛みに強い方ではないから、ともすれば泣いてしまうかもしれない。
しかしいっそ泣いてしまえばファルマも少しくらい反省するだろうか。
そんなことを考えているのがバレたのかどうかは知らないが、ファルマは怒りを隠そうともしない獰猛な顔で、オレにしてみれば不条理な言葉を並び立てる。
「安売りしてんじゃねぇよ」
「売った覚えはないが…」
「屁理屈こねるな。同じ事だろ、欲しがられたからって簡単にヤらせやがって・・・」
「まぁ、初めてでもないし、惜しむほど大層なもんでもないからな」
「そんなこと言うな!」
こういう時、ファルマはオレのことが好きなんだろうなどと都合の良い考えばかりが沸いてきて、ぶつけられる不条理を跳ね返す隙をついつい見過ごしてしまう。
ファルマの言葉は小さな子供の言い分と同等だ。
言っても仕方ないことをごねるのに、どことなくかわいげがあって憎めない。
「事実だろう?どれだけの人間がオレを、」
「そんなことを言うな・・・っ」
ひどく傷つけられたような顔をしているファルマに途方に暮れる。
何か言おうものなら泣き出しそうだ。
本当に泣きたいのはオレの方なのに。
オレだって、別に望んで男とヤるわけじゃない。
「くっくく・・・」
「何がおかしいんだよ・・・?」
「オレを殴って気が済んだか、ファルマ。気が済んだなら、出てけ。
お前の言うとおりオレは男相手に身体を安売りする最低野郎だ、そんな野郎に構ってないで、どことなりとも行っちまえ。
別に付いてきてくれなんて頼んだ覚えはないし、こんな風に殴られるんだったら居ない方がずっとマシだ」
「ばっ・・・オレはただ・・・!」
「ただ、何だ」
憤怒、困惑、悔恨、悲哀、懇願、ファルマの瞳には実に色々な色が浮かぶ。
それは見ていて飽きなかったが、見ていて辛い事もあった。
以前は。
ファルマは二、三、何かを言いかけて、口をつぐむ。
そうして、最後に出て来たのは確かにオレが望んだ言葉に違いなかった。
「・・・・・・悪かった」
「分かればいい」
これで元通り。
主君と従者。友人同士。幼馴染み。
また明日から顔を付き合わせていける。
それは、確かにオレの望み。
2人にとっての最良。
この関係が続くなら、きっと最期の時まで一緒にいられる。
「オレも悪かったよ。出来るだけ、気をつける」
「・・・ああ」
多分、ファルマは気付いている。
薄っぺらな笑顔、言葉だけの謝罪に。
また、オレが繰り返すことに。
気付いていて、口を閉ざす。
上出来だ、と褒めてやりたいが、ここで褒めれば彼の努力が台無しだ。
あたかも何も無かったかのように、お互いやり過ごす。
ファルマが出て行った後になって、笑いがこみ上げる自分を最低だと罵って、腫れて痛みを訴える頬にそっと触れる。
一途なファルマ。
オレが最期まで一緒にいてほしいと思っている事に、お前はきっと気付いていて、その願いを叶えてくれる。
だけど知ってるか?
お前が今すぐオレから離れていってくれたって、全然構わないって事。
真面目で、優しいお前が、最低なオレに慣れてしまう前に、オレがまともだった頃の記憶と共に、オレを見限ってほしいって思っている事。
卑怯なオレは、決して口には出さないけれど。
「上出来、か・・・」
上出来なのは、彼か、己か。
分からないまま、きっと最期まで一緒にいる。
それが幸か不幸かも分からない。
一つだけ確かなことは。
ファルマと最期まで一緒にいる、その事を思うと、胸が暖かくなる事だけ。
彼はどう思っているのかは知らないけれど、どう思っていようが構わない。
この暖かささえあれば。
今は、それだけでいい。
そう思って、目を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
闇金ウシジマくんで滑皮×社長。大人向けでソフトなSM表現と暴力描写、お道具使用などが苦手な方は読まない方が良いと思います。時間的な設定は単行本1巻の前
のイメージです。長いので全部で分けて間を少し開けて投下します。前スレでレス頂いた方々、ありがとうござました。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
まだまだビルの谷間に日が沈みきらない午後5時。丑嶋はその日の業務を早めに切り上げ、ある名の通ったホテルの一室のベッドの上にいた。
室内は快適な温度で、ベッドは柔らかさと弾力のある質の良いつくりだ。快適そのものだが、丑嶋の額には少しだけ汗が噴き出ている。別に熱などがある訳ではないが、
ある意味体は熱くなっている。
「・・・くそっ」
丑嶋は居心地の悪さに体を揺り動かそうとした。だが、自由が利かない。何故ならば、今、丑嶋は上品な雰囲気の部屋に相応しくない恰好で体の動きを奪われているか
らだ。視界は黒い革製の拘束具によって遮られていて、体は縄で緊縛されているのだ。
上半身は鎖骨の下の辺りに1本、胸と腹の間に1本渡されていて、その縄は胸と腕を拘束していて、結び目は背中にある。がっちりと固められているので、只でさえ筋
肉でふっくら隆起している胸は普段よりも卑猥に前方へせりだしている。
下半身も上半身同様しっかりと拘束されている。両足共にふくらはぎ太ももの裏が接着するように縄で巻かれ、更に股を開いた状態で固定されている。これでは股を閉
じることも出来ないので、部屋の空調から流れてくる空気に陰毛が揺れる。
屈辱的な格好を強要されているにも拘らず、丑嶋は暴れたり逃げようとはしない。部屋に着いて、すぐ目隠しをされ、体の自由を奪われたが、抵抗出来ない理由がある
のだ。
昨日、経営する会社の資金を借りている女性に呼び出された。正直あまり顔を見たくない相手だが、服従せざるを得ない相手だ。その女性から、今日ホテルに行き、誰
かも分らぬ男の相手をするように指示されたのだ。
部屋に入った時、最初にいたのは黒服の男達3人だった。内心、仕事の後で3人も相手にするのは気だるいと思った。男達は筋者の独特の威圧感があり、拘束された時
点で気だるさは頂点に達した。気分ではないのに、男達は恐らくあの女性と金銭的に繋がりがあるだろうから、少しは雰囲気を出してやらねばならない。今までもこのよ
うな状況を迫られたことは度々あったので、今回も従順にされるがままに人形のようになるしかなかった。
ところが、男達は丑嶋に目隠しを施し、黙々と丑嶋の体を拘束すると部屋から出て行った。
どうやら相手は別にいるようだ。複数の男の相手をする体力の心配はなくなり、少しだけ気が楽になった。
けれども、これだけ丁重に拘束してセックスをいたそうとするような奴なので、どうせろくでもない目に会うのは間違いないのだ。
「くそっ、早く来いよ・・・。さっさと帰りてェんだよ」
屈辱的な状況は諦めるしかないが、感情の揺らめきを止めるのは中々難しく、どうしても眉間に憤怒の証しの皺が寄ってしまう。目隠しで覆われているので傍眼には見
えないので、もし相手をする男が現れても不快にさせる心配もない。
しかし、それだけでは足りない。どうしても怒りを抑えられず、自然と歯を噛みしめ、ギリリ、と不快な音がした。何もかもが気に喰わない。この状況も、嫌だと断れ
ない立場の自分も。歯ぎしりの音は止まらず、噛みしめ過ぎた奥歯が痛くなってくる。その時、音と被さるタイミングで部屋の出入り口が開き、人が入ってきた。
足音と気配から察するに入ってきたのは一人。だが、相手が入ってきた途端、空気が変わった気がした。丑嶋からは誰かは分からないが、それなりの人物には違いない。
丑嶋が歯ぎしりを止めて目隠しされた顔を上げ、様子を必死で探っていると、目の前の人物が小さな声を出して笑った。
「ふふん・・・。なかなかどうして好い眺めだな」
声に聞き覚えはない。だが、わざわざあの女金主を辿って来たのだから声は知らなくても、顔は知っている男かも知れないと丑嶋は考えた。
「さあ・・・」
男は楽しそうな声色で言った。
実は、丑嶋の予想は当たっているのだ。目の前で楽しそうに鼻歌でも歌いそうなご機嫌の男は丑嶋の面識のある男、滑皮秀信。現在は若琥会若琥一家二代目猪背組の幹
部候補生。そして、丑嶋とは互いに遺恨を抱く間柄だ。
滑皮も丑嶋も人を平気で傷つけ、自分の為には人の命さえも奪いかねない残酷性とある種のカリスマ性を持っている。性根は似ている。水と油ではなく、火のついた油
と火のついた油。交わらないのではなく、交われば何かしらの惨状が起こりそうだ。
組の幹部候補生と零細貸金業の社長では立場が違い過ぎるが、滑皮は昔から丑嶋が妙に気になっていた。あくまで気になっているだけで、気に入っているのではない。
だから、組を介して付き合いのある女金主から丑嶋のことを聞き、こうして呼び出させたのだ。
ご丁寧に目隠しをさせたのは、過去にこれからすることと同じようなことをされた丑嶋を怯えさせないようなどという優しさではない。自由と視覚を奪われ、逃げ出す
ことも出来ない丑嶋と違い、自分は何でも好きに振る舞えるという優越感に浸る為だ。それに、人間は自由と視覚を奪われると不安になるものだ。あの丑嶋が不快を露わ
にし、恐れ慄くのを楽しみたいのだ。
滑皮は縄で縛られたせいで前にせり出し、赤くなり始めている胸に手を当てた。処女の少女の膨らみ程度だが、張りつめた肉は硬い。目隠しをされているので丑嶋はど
こを触られるかは分かっていない。てっきり一瞬でも動揺して震えるかと期待したが、全く微動だにしない。
「まあ良い」
言いながら滑皮は硬く引き締まった肉玩具を弄び始めた。
胸板を撫でるながら徐々に丘の頂点である乳首に指を近づけていく。だがすぐには触れず、乳輪の色づきに沿って指で円を描く。見る見るうちに頂点の乳首はぷっくり
と期待を露わにして起ち上がった。滑皮がかつて味わった時もそうだったが、随分と性感の良い体だ。
しかし、あの時の記憶を引っ張り出してみると、あの時は指の先で弾くのがやっとの大きさの筈だった。いま目の前にあるのは記憶の物よりも明らかに肥大している。
醜いほど大きくはない。むしろ丹念に愛撫してやりたくなる。誰がやったのかは分からないが、あの時からゲイの男好きする体だった。よくここまで10年もしないのにい
やらしく育ったものだ。
少しの憧憬と欲を含み、滑皮の指が性感の塊に育った乳首を摘まみ、力を込めてグリグリと転がし始める。丑嶋の体が少し動いた。もしここに第三者がいたとしても、
見かけでは分からないだろう。だが、触れている滑皮には十分に伝わった。少し楽しくなり、親指と人さし指の間で乳首を強く挟み、容赦なく引っ張った。
「・・・っ!」
小さく息を吸う丑嶋。眼隠しに隠れているが、眉間に皺が寄っているのは明白だ。
目とは違い拘束されていない口から許しを乞う言葉は出ない。丑嶋は呻きともつかない息を吐き、ただされるがままに耐えている。
これでこそ丑嶋だ。こんな序の口で音を上げられてしまっては面白くない。滑皮は乳首を責めるまま、無口な丑嶋の唇にキスをし、口内の奥まで舌先を押しこんでやっ
た。
「んううっ」
逃げる丑嶋の舌を吸いだし、勢いよく自分の口内へ引き入れる。引き込まれてもまだ暴れる舌の根を千切れそうなほど歯で押さえつけ、湧き出た唾液を送ってやると、
丑嶋は呻きながら嚥下する。惨めだが、屈辱を受け入れるしかない。
無理やり唾液を飲ませている間も、勿論乳首を虐める事は怠らない。片方だけでは飽き足らず、まだ触れていなかった方の胸にも手を伸ばす。こちらは乳首に爪を立て
何度も指を押し付けてやる。乳首はすぐに痛々しく立ちあがった。
喉が渇く位に唾液を丑嶋に飲ませ、満足した滑皮はやがて口を離した。乳首はいたぶるままだが、顔を離して見てみると丑嶋の体はやはり素晴らしい物があった。190
センチを超えるしなやかな体には余分な肉が殆どなく、戦闘用に鍛え上げられた体だ。
大きく開かれた股の間の性器は少しだけ反応しているが、まだ固くはなっていない。サイズは人並み。色は綺麗な色だとは言えないが、くすんだ色さえも色っぽく見え
るから不思議だ。
乳首は大きくなっているが、性器は経験を重ねたところで大きくはならない。記憶にある丑嶋のかつての性器はこれより少し小さいが、倍になってはいない。だが、触
れば大きく淫らになる筈だ。滑皮は想像して興奮すると、自然と両方の乳首を摘まむ手に力を込めてしまった。
「ん、んっ」
丑嶋が痛みに声を出す。性器は乳首への強烈な刺激を受け、すぐに角度を変えて頭をもたげてきた。
痛みに反応をする丑嶋を面白く思い、滑皮は乳首から両手を離すと性器を掴んだ。左手では睾丸を揉む。右手では竿を急激に扱き上げる。
「ううっ」
掌の中の性器はすぐに静脈を浮き上がらせ、太く硬くそそり起っていく。同じ男として気持ち良くする手段を知っている滑皮が激しくねちっこく愛撫を進めて行くと、
傘を開いた亀頭の先端からヌルヌルしたカウパーが湧きでてきた。声も段々険しさがなくなり、甘えを帯びた艶っぽい声になってきた。
「チンポ気持よくなってきたのか?」
滑皮は丑嶋の耳元に唇を寄せ、耳の穴に舌をねじ込みながら囁いた。
「んっ、よくなんて・・・なってねェ」
従順な丑嶋だったが、いたぶられて嫌になってきたのか今日初めて言葉らしい言葉を喋った。しかも、反抗的な言葉で。従順な丑嶋にやりがいを削がれていた滑皮の背
筋を甘美な悪寒が駆け抜けた。
目隠しをしていて見えなくとも、自分の体がどのように反応しているかは分かっているに違いない。それでも認めない。そのプライドこそ滑皮が欲していた物だ。そし
て、叩きつぶしてやりたい物だ。
そうこなくては虐めがいがない、と滑皮は声を出さずに笑うと、性器から手を外し、ベッドサイドのテーブルの引き出しに近づいた。
引出しを開けると、中には先に来た男達が用意してくれた物が数点入っている。その中から短いパイプのような物を取った。左右の端には互いの端をつなげる金属が付い
ている。これはシリコン製のコックリングで、性器を縛って射精出来ないようにし、いたぶる為の道具だ。その他数点を手に持ち、すぐにベッドに戻った。
ベッドの上に持ってきた物数点を置くと、丑嶋がピクリと肩を震わせた。折角性器を離して貰えたのに、この男はまだ自分を辱めるのか、と警戒しているのだろう。僅
かに怯えた丑嶋を愛らしく思い、滑皮は自分の性器がズボンの中で成長するのを感じた。だが、まだ自分の性器の出番には早い。これから丑嶋を辱めなければいけないの
だ。
滑皮は丑嶋の性器に再び手をかけ、コックリングを掛けようとした。だが、微かに聞こえる金属音に嫌な予感でもしたのか、丑嶋は器用に脚を動かし、滑皮の手から逃
げようと後ずさりをした。
まさかこの状態で少しでも逃げようとするとは思わなかった。滑皮はあっけにとられた。そんなに嫌か。そんなに屈辱か。だが、そういう態度に出られるほど燃えてし
まうのだ。丑嶋の腕を掴むと、がっちり拘束された体は容易く捕まえれた。
「逃げれる訳ねェだろうが!オラ、大人しくしとけ」
もがく体を他愛もなく抱きしめ、勃起した性器にリングを絡める。金具を止めると、只でさえ膨らんでいた性器は根元で搾りあげられて胸同様に先程より大きく見える。
「んんっ、んっ」
大事な部分を縛られ、丑嶋はモヤモヤとした倦怠感に襲われた。性器の根元が急激に痛くなっていく。反対に血がせき止められた根元より上は熱くなる。見えなくても
縛られたことが分かった
また熱の原因は縛られているだけではない。結び目の金具は性器の裏筋のちょうど上の辺にあり、金具が性感の高い裏筋を絶え間なく押しているのだ。残酷な事に射精
を禁じるコックリングの筈が更なる射精感を呼び込むことになっている。それでも竿の根元の肉に食い込むリングは無情にも射精する事を許してはくれない。丑嶋にとっ
ては地獄の責め具で、滑皮にとっては便利な調教道具だ。
丑嶋はどうしようもない熱の逃がし場所に困り、歯をくいしばって耐えるしかなかった。そんなことしてもどうにかなるものではないが、せめて屈する態度は見せては
いけない。このまま耐えていれば、相手が飽き手しまうかもしれなと淡い期待を抱く。ただひたすら下半身の快楽に意識を囚われないように別の事を考えようとする。
ところが丑嶋の努力をよそに滑皮が縛られた性器に指を絡めてきた。
「クソッ!おっ、おお・・・」
何を言っても滑皮が聞いてくれることはない。そればかりか、丑嶋が嫌がれば嫌がるほど手の動きの激しさは増してくる。先端の尿道口は親指で撫でまわされ、竿は小
刻みに擦られる。とどめに裏筋は留め具で押されている。感じるなと言う方が無理だ。全身が性器になったように敏感に快楽を捕らえ、カッカと火照ってしようが無い。
竿は今にも爆発しそうに膨れ、早く射精したいと訴えてきた。
「イキたいか?」
滑皮が意地悪く聞いてくる。そんなこと言わなくたって分かっているくせに憎たらしい。丑嶋はまだ相手が滑皮だと分かっていない。もし知っていたら、まずこのホテ
ルに来ることを拒んでいるだろうし。
丑嶋は全身を強張らせ、せめて相手のやることには屈しないと誓おうとした。だが滑皮のテクニックは凄まじく、丑嶋はついに認めてしまおうと思った。死にたいほど
惨めだが、不思議と悪魔に屈する気分が倒錯的な気分にし、自分自身が戸惑ってしまう。
「ん・・・、あぁああ」
自由に動かせる数少ない部分である首を振って不快を訴えるが、滑皮は丑嶋の様に興奮して首根っこを掴み、自分の方に引き寄せる。すっかり大きくなってテントを張っ
た股間を解放してやるべくジッパーを下げ、下着の中から鷲掴みにして引きだした。
根元に生える陰毛は黒々としていて、足と股の間の関節までびっしりと茂っている。まるで海藻のようだ。陰茎は長大で特に竿の部分は芋虫のようでグロテスクでさえ
ある。我ながら立派で、丑嶋に見せてやれないのが残念だ。
充血しきった物を触ると、それだけで少し痛みを感じるほど大きくなっている。すぐにぶち込んでもいいが、まずは熱い吐息を吐き続けているせいでうっすら湿ってい
る唇に慰めてもらいたい。逃げれないように掴んだ丑嶋の顔に性器をべったりとくっつけた。
「しゃぶれ。ちゃんと、な。どうせ本当はこれが大好きなんだろうが」
「く・・・っ!」
逆らえない立場である丑嶋は最初は全てを受け入れるつもりだったが、いざこんなに乱暴に扱われると、相手がだれか分からなくても逆らいたくなってしまう。しかも
視覚を奪われているので嗅覚が敏感になっている為、滑皮の股間全体から放たれている強烈なホルモン臭が不快で堪らない。丑嶋は首の筋を違えそうなほど顔を背けてし
まった。
「気持ちわりぃ・・・」
強烈な臭いに苦味が広がり、耐えきれない吐き気が込み上げてくる。自然と相手に対して失礼な言葉が零れ出てしまった。
「んだと、テメェ!これからテメェの汚ねェケツに突っ込んでやるんだ。ちゃんとしゃぶって濡らせ」
いきなり滑皮は激昂して丑嶋を怒鳴りつける。それでも丑嶋は要求には応じない。
「舐めてんのか?ババアに言われるがままに来て、簡単に股開きやがるくせに変なプライド持ちやがって・・・。コラ!」
怒鳴りつけても効果が無いと分かるやいなや、滑皮は急に無表情で横をむいてしまった丑嶋の横っ面を思いっきり張った。拘束された丑嶋の体は衝撃で転んだ。股を開
いたまま仰向けに倒れたので、余計無様に見える。ギシギシと縛っている縄の結び目が軋む音がした。
「オラァ、さっさと美味そうにしゃぶれよ」
音は凄いが、平手うちは左程痛くない。丑嶋はまだ無表情のまま横をむいたままで頬の微かな痛みに耐えた。
するとさらに反対側の頬に平手打ちが飛んできた。今度は先程よりも重く、痛い。拘束されている手足は反面言えば揺るがないが、自由な首はガクンと揺れ、頭を軽く
ベッドに打ちつけた。流石に横を向いていられない。
「どうだ?素直にしてりゃ可愛がってやるよ。俺はお前のこと、案外気に入ってるんだぜ」
滑皮は優しい声を出しながら丑嶋の腹の上に乗った。この位置だと、ちょうど勃起した性器の先端が丑嶋の顔の前に来るのだ。最初に張った頬は若干力を抑えたせいで
左程赤くなっていない。対して次に張った頬の方は完全に本気でやったので、手の跡が赤く残っている。触れてみると火照っていて少しだけ熱い。急激に滑皮の中のサディ
ズムの虫が喚きだした。
「ホラ、口開けろ。淫売が」
わざと丑嶋を挑発するような言葉を真正面から投げかけると、丑嶋は一層固く口を噤んだ。滑皮は丑嶋から見えないのを好いことに下卑た笑顔を浮かべ、丑嶋の顔の前か
ら性器を遠ざけた。
屈辱どころか吐き気を催す臭いが遠のき、丑嶋の眉間の皺が緩んだ。
「誰が許すかよ」
滑皮は丑嶋の安堵した様子がさも気に食わない、さも怒っています、といったキツイ声で静かに言い放つ。
丑嶋の眉間にまた皺が寄りかけたが、その前に握りしめられた滑皮の拳が顔面に向かって襲いかかってきた。
「グッ!」
丑嶋は短い悲鳴を上げ、ままならない体を折り曲げて滑皮の猛攻から守ろうとする。だが滑皮は腹の上に体重を掛けて座っているので体はまったく動かせない。
「オラッ!」
滑皮の攻撃には一切容赦がない。握った拳の先端で殴るのではなく、指の付け根の骨の部分で殴るのでダメージも大きい。殴る方の体力もいるので、いかに効率よくダメー
ジを与えられるか考えられた攻撃だ。
「フン・・・。少しは応えたか?」
両頬を行儀よく同じ数叩くなんて生易しさはなく、気の済むまで殴ってやった。本当は頬骨が折れる位に殴ってやってもよかったのだが、そんなにやっていては自分の体
力が失われてしまう。程良く体も温まり、気持ち良く丑嶋を傷つけ、滑皮はやっと攻撃を止めた。
][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
続きは後日。貴重なスペースお借りしました。ありがとうございます。
それではお目汚し失礼致しました。
>>315 可愛いなあ可愛いなあGJです!
黙っててくれる某ブラックホール氏マジ紳士。
しかしカルジミール……w
338 :
風と木の名無しさん:2010/10/31(日) 23:22:47 ID:6HbWvubLO
>>319 前作も今作も物っ凄くツボでした
二人とも可愛すぎて胸熱…!!
>>327 なんてこった…!
まさか社長でSMが読めるとは!しかも滑×丑だなんて嬉しすぎます!
相変わらず読み応えあって続きが楽しみです。有難うございました!
もう一枚頂きます。
ピクシブって、お絵かき掲示板的な機能付きのブログかと思ったんだけど、
アップロードしか出来ないの…?
何か、それはそれで楽しいんだけど、
思ってたのと違う…困惑…
オリジナルで、人間×人狼の話です。知人さんが見たという夢が元ネタ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
人里に面した森の中、その深くのけもの道に、ひとりの少年が立っていた。子供の柔らかさよりは骨っぽさの方が幾分目につく少年は、背を伸ばして声をあげた。
「だいちゃん、遊びにきたよ」
一見、誰もいない木立に向かってかけられた声。しかし、反応は確かにあった。がさがさと葉が擦れ、忙しい足音が聴こえてきたかと思うと、少年の細い身体に誰かが抱きついた。
「らんちゃん、会いたかった!」
言葉通りに嬉しそうな、弾んだ声。その持ち主は、らんちゃん、と呼ばれた少年と同年程度の少年だった。ただその頭には、犬科を思わせるけものの耳が生え、腰からは同様の尻尾が覗く。
「相変わらずストレートだね、だいちゃんは」
「すとれーと、ってなに?」
「素直ってことだよ」
直情的な相手に、少年は苦笑混じりに、しかし柔らかく微笑んだ。らんちゃん―もとい嵐は、森近くの村に住む人間だった。対して、だいちゃんこと大は、この森に住むけもの人―人間曰くの「異形の者」だった。
本当は互いの住処の掟で、人間とけもの人が会うなどご法度だ。しかし、ふたりはそんなことを大して気にもせず、よく山で遊んでいた。
人見知りで村に友だちの少ない嵐にとって、いつでも笑顔で接してくれる大は、かけがえのない存在だった。幼いときから森の深くで慎ましく暮らしてきた大にとっても、嵐は人間で唯一の友だちだった。
ふたりは性格こそ月と太陽のように違ったが、それ故にか不思議とかみ合い、人目を避けて仲を深めた。年を重ねるにつれその縁は強固になり、お互い無意識に恋に似た思いを抱いていた。
だが、ふたりが十代の半ばも過ぎたある年、嵐の住む村が大飢饉にみまわれた。
主食である小麦からなにまでの作物が不作となり、雨も降らない。人々は飢えに喘ぎ、苦しみ、いつしか「神の怒りだ」と騒ぎ立てた。
食糧の奪い合いすら勃発する中、村長は村人たちを我が元に集め、高らかに言い放った。
「森に住む異形の者を生贄として神に捧げれば、その怒りを鎮められるとの伝承がある」
統率者である村長の言葉に、藁にもすがりたい思いの村人たちは賛同し、異形どもを狩って神に捧げようと息巻いた。
その熱狂の中で、嵐は元来白い肌をさらに青白くさせていた。頭に浮かぶのは、けものの耳や尻尾を揺らして笑いかける大の姿だ。
明朝に大人たちが生贄狩りを行う、と聴かされた嵐は、その夜の内に森へと走った。
いままでで一番急いでいつもの場所へ辿りつき、息をきらす喉を張り上げ、「だいちゃん!」と呼んだ。夜中に、それもただならぬ様子で来訪した嵐に、現れた大は「どうしたの?」と心配そうに訊ねた。
「だいちゃん、逃げよう」
事情を説明した嵐は、大の手をとってその目を見つめた。成長し、嵐よりも背丈の伸びた大は、耳と尻尾をうつむかせ困ったように嵐を見る。だが、「俺の家に隠れればいい」と説得する彼に、やがて大はこくりと頷いた。
それを確認した嵐は、大の手をしっかりと握り、急いで山を降りた。
かくして、ふたりの同居生活が始まった。
嵐の家は村のはずれにあり、彼自身近所との付き合いは薄い。灯台もと暗しというのか、村人たちは大の存在に気付かなかった。しかし、村を覆う飢饉は深刻だった。
ひとりが食べるものすら難しい最中、嵐は小さなパンを半分割し、大と分け合った。
そうやってどうにか日々をしのいでいったが、元々細く色も白い嵐が痩せていく姿に、大の胸は痛まずにはいられなかった。
あるとき、いつものようにパンの片割れを差し出された大は、「俺、今日はお腹空いてないから。らんちゃんが食べていいよ」と言い、そのパンを返そうとした。
しかし、自分と同様に痩せていく大が、それでも笑って嘘をつく様に、嵐のひとつの思いは強まるばかりだった。
(だいちゃんを、ころしたくない)
事実、森に住んでいたけもの人の何人かは、既に生贄として手にかけられていた。生贄を捧げる程に救われると信じている村人たちを見て、嵐は反吐が出そうだった。
殺させやしない。俺が、守るんだ。そんな思いを噛みしめながら、ひもじい生活を送る日々が続いた。
そして翌年、村の飢饉はどうにか終結した。作物もある程度は取れるようになり、村人たちは安堵の息をついた。それは嵐も同様だった。
しかし、彼はあることに気付いてしまった。
大のことだ。飢饉が終わり危険は去ったのだから、けもの人である彼を山に返さねばならない。
それは当然のことであったし、嵐も彼を連れ出した当初はそのつもりだった。
だが、それが出来ない。嵐にとって、大のいる生活はかけがえがなく、大のいない生活など、もはや考えられなくなっていた。
だから、嵐は嘘をついた。
「らんちゃん、外はどうなってるかなあ」
「…まだ、危ないよ。ここにいなきゃだめだ」
「…そっか」
そう返すと、大の表情が悲しげに翳る。
それに胸が痛むのを誤魔化すように、嵐は大に口付けた。そのまま床に押し倒して、抵抗のない身体をまさぐる。
居住を共にして以来、ふたりはこうしてセックスもするようになった。元より種族も性別も超えた慕情であったため、それは当たり前のように生活にまぎれた。
らんちゃん、らんちゃん、と濡れた声で呼ばれる度、嵐の胸はいとおしさと罪悪感でないまぜになる。それを消す潰すように、嵐はまた大を掻き抱くのだ。
そうやって、延長された同居生活が続く最中だった。
ある日、嵐が外出している間。いつも通り残された大は、珍しく村のはずれを通った村人の声を、その会話を聴いてしまった。
「今年の麦は、豊作だねえ」
その嬉しそうな言葉を聴いて、大は初めて、とうに飢饉が終わっていることを知った。それは同時に、ずっと信じていた嵐の嘘を知ることだった。
ぼう然とする大の元に、嵐が帰ってくる。荷物を降ろすその背中に、大は声をかけた。
「らんちゃん」
「なに?」
「外は、どうなってるの?」
問いかけた言葉に、嵐の動きが止まる。
少し間が空いてから、その答えが返された。
「…まだ危ないよ」
いつも通りの返事。いつも通りの、嘘。
それを聴いた大は、
「…そっか」
と、いつも通りに頷き、微笑んだ。
森に住むけもの人であった彼は、故郷よりも、嵐という孤独な青年を選んだ。
ねえ、らんちゃん。あなたが望むなら、俺はずっと馬鹿な飼い犬でいいよ。だって、そうしたらひとりじゃないでしょう?
そう微笑む大を囲う小屋の外には、彼の知り得ぬ豊かな秋が広がっていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
元は生物パラレルとしてのネタだったんですが、そのまんまな感じに名前を変えきました。元が分かる人がいたら神。
しかし自分は人狼ものが好き過ぎる…。
失礼いたしました。
長編やシリーズ物やる人が多いけど
なんでトリップつけてない人が多いの?
酉は強制じゃないですよー
強制じゃなくても推奨されてる理由はちゃんとあるわけで
>>348 アテクシの作品をまとめてあぼんしたい者などいないはず!って事なんじゃないすか
アテクシがまとめてあぼんしたいから酉つけて!というのも相当だぞw
>>352 でも最初のほうで見切った長編連載なんか
何回来てても絶対見ないですませるわけじゃん?
読者を選ぶ特殊な設定って様々あるでしょ
それは作品としての出来不出来とは関係ないんだから
まあつけた方が親切だと思う
そんなに読み飛ばしたいならまとめサイトだけ見てればいいじゃん。
わざわざここきて不快な思いしなくても。
不快だから飛ばしてるわけじゃなくて
興味がないから飛ばしてるだけなんだけど
雑誌の連載と同じ感覚
なら尚更タイトル見れば飛ばせるまとめサイトの方が便利じゃないか。
>>357 なんでそんなにトリ付けたくないの?
トリ付けてくれた方が便利だな、って話なのに
嫌なら見るな、まとめ行け!ってちょっと横暴でない?
>>358 やだよ、鶏なんかつけたくない
そっちでよけてくれ
359さんはシリーズ物の書き手さんなのかな?
>>358 むしろなんでトリがあろうとなかろうと、興味の無いものを黙って読み飛ばす事が
出来ないのかが不思議なんだが。数回スクロールするだけなのに。
便利って、そんなに読み飛ばすのに自分が一手間かけさせられるのが許せないの?
相手にはトリつける一手間を求めるくせに。
トリNGにするのもシリーズ名NGにするのも手間一緒のような気がする
>>362 それが不思議なんだよね
タイトルをNGにすればそれで済むのに、何でトリを要求するんだろう
PCだと数回スクロールでも携帯だとすんごい面倒なんだろうか?
PCならタブキーでスクロールバーの面倒さが減る(気がする)。
携帯は、見てる変換サイトとかにもよるだろうけど、長文レスは省略の設定にしときゃ
いくぶんか楽だろうと思う。読みたいのを読むのにゃちと面倒かもしらんけど。
最近の機種だと、上下キー押しっぱで一気スクロールできる。すっとぶので行き過ぎやすいが。
iMonaなら右キーでレス送りできて便利。
てか、携帯だとNGできなくない?少なくとも、自分はできるとこ知らない。
あと、PCの専ブラには、ここから何レスあぼーん、とかできるのもあるんじゃないかな。
タイトルさえついてればイチイチ鳥なんていらんと思うけど
鳥つけずに投下した人は、もし他の個人サイトで「この小説は自分のです」って
騙られてても、本人証明はできんだろうな。
うんうんどうせいつも容量オーバーの方でスレ落ちするからたまには好きなだけ議論ネタやっていいよ
流れと違うけど…
>>273 貴方様のおかげで昔見た参匹が色鮮やかに思い出しました
仙石がこんな萌えキャラになるなんて素晴らしい!
続き楽しみにしてます
ところであと80kb程このスレ残っているけど議論で埋めきれるものかしら?
レスでいえば多分100以上入ると思うけどな
>>366 >鳥つけずに投下した人は、もし他の個人サイトで「この小説は自分のです」って
>騙られてても、本人証明はできんだろうな。
他のスレで、保管庫のSSをコピペして、発表されたのより数スレ後投下している
のを見たことあるんですが、鳥さん付けていたらそれは回避出来るのでしょうか?
自分、タイトル自体が長かったので付けなかったんですけど、
みなさん、長編ってお嫌いなのですか?
携帯の方はw2chおすすめ
あぼーん機能有、抽出機能有。
>>369 最後の一行が唐突でよくわからないのですが
長編が好きな方も嫌いな方も千差万別ではないでしょうか?
千差万別だけれど
長編が続きすぎると叩かれる傾向にあるみたいね
議論は避難所でやってください
作品投下を邪魔しているのはあなた達です
長編の好き嫌いより、内容の好き嫌いでしょ
空気読まずに投下。幽鬼「と」カワラザキです。じいさまと孫として。
厳密には801じゃないかもしれないけど投下させて下さい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
秋も深まってきたある日の夜半過ぎ。
カワラザキは、階下で物音がしたのに気が付いて目を覚ました。
いつもならば気付くかどうかも分からないほどの小さな音だった。
まさか、こんな所――BF団本拠地の一角にある
十傑集の私邸――に忍び込む輩もおるまいよと思いながら彼が階段を下りる。
室内履きの足音を控えめに響かせながら音がした方へ向かうと、
廊下の途中にある厨房のドアからひっそりと光が漏れているのに気が付いた。
その廊下の突き当たりは嵌め殺しの大窓で、
わずかな光を反射してこちらの様子を映しているのが半分と
その向こうの裏庭の木立を透しているのが半分だった。
見ようによっては蠢く黒い塊にも思えるそれは、
子供が泣き出すには十分だったかもしれないとカワラザキは昔を思い出す。
そのドアの中にいるであろうもう一人の住人を驚かせないように、
彼はそっとノブに手をかけた。
少し力を込めると、きぃ、と時代錯誤な音がして古い蝶番が鳴いた。
「……じいさま…………」
果たして、彼はそこに立っていた。
カワラザキと同じく寝間着姿の彼は、少し乱れた横髪を肩へと無造作に垂らしている。
鬱蒼としたその立ち姿は枯れ柳のように弱々しく、まるで生気というものが感じられない。
振り向くまなこもどことなく力ない様子である。
傍らの天板の上には水に濡れたグラスがひとつ置かれていた。
「すまない……起こしてしまったか」
「いや、いいんじゃよ」
幽鬼は、気配でカワラザキが起き出して来たことを察知していたのか
さほど驚いた様子は見せなかった。
「それより、こんな時間にどうしたんじゃ?」
心配になって降りてきたと言えば、
幽鬼に余計な気を遣わせるだけになることを分かっているためカワラザキは疑問だけを口にした。
幽鬼は、わずかに逡巡するように瞳を揺らめかせたが
ほどなく、傍らのグラスへ向けるようにして視線を伏せた。
幾つかの水滴をまとった細身のグラスの中には少しだけ水が残っている。
「――喉が、渇いて。水を飲んでいただけだ」
白い照明の冴え冴えとした光の中で、そう言う顔は向こう側が透けて見えそうなほど青白かった。
グラスの横へ付いた彼の手が小刻みに震えていた。
その手へ向けてカワラザキが自分の手を伸ばすと、幽鬼はびくりと小さく身をすくませたが
カワラザキはそれに構わずに、骨ばった細い指先を上から覆うようにして握りこんだ。
「こんなに冷えて……」
温かく柔らかいカワラザキの手と比べて、幽鬼の指は石のようだった。
とても血液が通っているとは思えないような温度と質感を持ったその手を
カワラザキは両手に握って優しく擦ってやる。
丁寧で情感のこもったその仕草は、手の中のものに命を吹き込もうとしているようにも思われた。
「じいさま?」
芯まで冷えた指先は手に握るくらいでは一向に温まらない。
よくよく見れば、戸惑ったふうの彼の生え際や首筋も汗でうっすらと濡れているのが分かる。
夏もとうに終わった夜中の空気は既に冷たく、傍目に分かるほどの汗も単なる寝汗とは思われない。
このままでは体が冷えていくばかりだろうと考えたカワラザキは
あえてそのことには触れずに、幽鬼の手をいったん離すと
自分の着ていたガウンを脱いで目の前の薄い肩へかけようとした。
「これも着ておきなさい」
「いや、大丈夫だ。寒くないから……」
「いいから、着なさい」
本来なら、年齢的に自分よりも温かくしているべきのカワラザキから
上着を受け取るという事に幽鬼は躊躇したが、
あくまで優しいけれども有無を言わせないその口調に仕方なくガウンを受け取ると
厚手のそれへ遠慮がちに袖を通した。寝巻着一枚でベッドから起き出して来た身体には
彼の体温が移ったガウンが、ほんのりと、とても温かく感じられる。
そこで初めて、幽鬼は自分の身体が思うより冷えていたことに気が付いたのである。
「……ありがとう」
ひかえめな礼の言葉に、カワラザキは満足そうな笑みで応えた。
それを見て幽鬼もようやく、はにかんだ、ほんの少しだけの笑顔を
そっと浮かべることが出来たのだった。
「さ、もう戻ろうか」
・・・・・・
連れ立って、暗い廊下を歩く。古い木の階段が軽くきしむ。
二人とも無言だった。
住みなれた家の中で、明かりをつけていなくとも
自室に戻るくらいのことは二人にとって難しくない。
「幽鬼」
暗闇の中で、少し枯れたテノールが幽鬼の耳を焦がした。
「まだ、夢を見るのか?」
月明かりすらない廊下で相手の表情は全く読み取れない。
それでも幽鬼の息がひそかに震えたのをカワラザキは感じ取った。
精神を直接傷つける、剥き出しの悪意に晒されたまま幼少期を過ごした幽鬼は
ここへ来てからも頻繁にひどい夢にうなされていた。
夜中に起き出してはひきつけを起こしたように激しく泣きじゃくり、
時には体が食事を受け付けないことすらあった。
それをなだめ、抱きしめて繰り返し繰り返し寝かしつけたのはカワラザキだった。
こどもはまず自分が愛されないと、他人を愛すことを覚えることはできない。
今やそのこどもはすっかり背も伸びて、線の細さだけは相変わらずだが、それでも立派になった。
昔はやすやすと抱き上げることが出来たその身体も、
もう自分の腕の中にはおさまりきらないだろうとカワラザキは思う。
そして、もう随分前から夜中に泣きながら起きてくる事はなくなったけれども、
果たしてもうあの夢は見ないで済んでいるのだろうか。
もしかするとただ一人でひっそりと耐えているのではないか。
気にはなっていたが今まで訊けなかった事を彼はとうとう尋ねた。
幽鬼の息は、否定も肯定も出来ずにただ戸惑ってひそめられている。
これがもし、例えば翌朝に面と向かって尋ねたのだったら
幽鬼は即座に否定する事が出来ただろう。
彼はカワラザキに負担をかけること、心配をかけることを
己の身の安寧を遠ざけてまで嫌う。
ただやはり、久しぶりに見てしまった夢で飛び起きなければならないほどの思いをしたことと、
その直後にカワラザキの顔を見て手に触れてしまったこと。それが鎧を脆くしていた。
何しろ幽鬼にとってカワラザキは、存在そのものが「安心」と同義であるのだから。
「おいで」
言われて、逆らう事すら考えられずに幽鬼が導かれたのはその先の自室だった。
廊下とは違い窓から差し込む月明かりで視界には苦労しない。
ぼんやりと光るような白いシーツの寝台へ幽鬼はカワラザキに促されるまま横になった。
抜け出てからしばらく経った寝具の中は既に冷え切っている。
その細い身体の上へ、ここに連れてきた張本人が柔らかい仕草で上掛けをかぶせた。
肩や首の辺りは特に念入りに、隙間のないようにしっかりとかけてやっている。
「さ、寝なさい。もう心配しなくていい」
言いながら、カーテン越しに差し込む月明かりに浮かんだその白い額をそっとなぜた。
幽鬼は、少しだけ何か――そんな事をしてもらうほど子供じゃないとか、
そこにいると爺様の方が冷えてよくないとか、そういったこと――を言いたそうに顎を上げたが、
結局は何も言わずに大人しく瞼を落とした。
額に柔らかく触れる手のひらの温かさにはそうさせられる習慣と記憶があった。
まだ幽鬼の背丈が今の半分ほどしかなかった頃、
こうして獏を呼ぶまじないを唱えるのが日課だった事を二人ともが思い出していた。
悪い夢は獏に食べて貰おうなと、
背中をさすりながら言い聞かせてやれば少しは気が楽になるようで
次第にしゃくりあげる声も寝息に変わっていった。
その涙の跡をつけた寝顔をカワラザキは良く覚えている。
懐かしい記憶の中の顔と今目の前にある顔とを重ね合わせながら髪を梳いていると、
幽鬼の瞼が何かを思い出したようにすっと開いた。
「……おやすみ」
少しはにかんだ様子で呟かれたその言葉は、
幼い幽鬼がようやく眠る事を怖がらなくなった時に覚えた言葉だった。
「ああ、おやすみ」
今度こそ眠るために目を瞑る幽鬼にカワラザキは目を細めて答え、
もう一度その頬をそっと撫でた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
那/智さんありがとうございました。ゆっくり休んでください。
(´;ω;`)
いいもん読めた
ありがとう
乙です
那智さん…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| エルシャダイ、イールシでやらかした
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ゲーム発売前につき完全捏造だが大丈夫か?
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ダイジョウブダ、ソレイゼンノモンダイダ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
思わぬところで狼狽されて、こちらの方が驚いた。
「何、を、」
「え」
これからまさに、彼を抱こうというときだ。
ともに寝台の上である。イーノックは半裸だし、どういう技術で織られているのか、向こうが透けて見えるほど薄いルシフェルお気に入りの服も、今は、ほとんど脱げてしまって、むしろ厄介になっている。
蒼白い肌にはもう何回も唇や舌を這わせたし、熱を帯び始めている下肢にも遠慮なく手を伸ばしたし、それらの総てをルシフェルは笑いながら受け止めていた、のに。
キスをした。それだけのことだ。
それだけのことが、ルシフェルを、たいそう驚かせたらしい。
「いけなかったか」
もしや、ルシフェルにとっては、禁忌だったのか。情交には問題がなくとも、唇を重ねることには何か、まずいことでもあったのか。
咄嗟に迷い、迷った末に、ルシフェルの薄い唇を、親指の腹で拭ってみる。それにも、ぴくりと敏感な、いっそ怯えるような反応を見せて、ルシフェルは息を呑む。
「ルシフェル?」
相手を気遣いながら、滑稽なほど冷静に、イーノックは、止まれるか、と、自分自身に問いかける。
肉欲にはもう火が点いている。消すのは、正直なところ、つらい。しかし、目の前の捻くれ者で、お喋りで、美しい存在を、自分の欲で振り回し、苦しめることはしたくない。
(よし)
止まれるだろう。嫌だ、やめろと言われたら、すぐにでも離れよう。
しかし、いつまでも悩ましい顔をしているルシフェルが、ようやく唇に乗せたのは、そういう類いのことではなかった。
「何故……」
「ん?」
「何故、キスをした?」
いかにも訝しげに尋ねられ、あらゆる意味で面食らう。
「何故って……抱くから」
「私を抱くのに、キスが必要か?」
「そう言われると」
必要ではないだろう。男同士の情交に結果を求める気はないが、目的が快楽を追うことにあっても、キスの齎すそれは僅かだ。高みを見たいなら、もっと強烈な愛撫を施せばいい。けれど。
「折角だから、貴方を愛したい。……そう思ったから、キスをした」
告げたのは、正直というより愚直で、恥ずかしいような意図だったのだが、奇妙なことに、目に見えて、ルシフェルは全身を震わせた。
「……、っ」
詰まらせた息を飲み込み損ねて、くん、と蒼褪めた喉が鳴る。続いて、短く吐かれた呼気は、は、と小さな音を伴い、……そして、はじめて見ることに、紅い両眼が、濡れて光った。
「ルシフェル?」
ただならぬものを感じて、被さっていた身を起こす。
「おい、大丈夫か?」
誰かを呼ぶにはあまりにあまりな状況だが、具合を悪くしたのなら、助けを呼ばなくてはなるまい。
少しでも場を繕えるよう、かろうじて引っかかっていたルシフェルの服を直しかけると、しかし、ルシフェル自身の指が、戦慄きながら、それを拒んだ。まだ強張りの残る表情、声が、それでも、薄く笑う。
「……大丈夫だ。問題ない」
そう言う彼の様子は確かに、先ほどよりは落ち着いているようだったから、イーノックは手を止めて、じっと、整った顔を見つめる。
「はは。いつもとは、逆だな……」
「いつも?」
「ああ、お前には、もう少し先の、……いや。今は、どうでもいいさ」
もうすっかり震えの止まった腕が首筋に廻される。それに引かれるまま倒れ込み、再び彼に被さった。
触れていいものか戸惑う自分を促すように、背を撫でられる。今は穏やかに繰り返される呼吸を右耳に聞きながら、肩の辺りを軽く食むと、ごく小さな乱れが返った。
しかし、それは、先刻のような困惑に満ちたものではなく、純粋に体の悦びを訴えるものだったから、イーノックは頭と体を、さっさと切り替えることにする。
「ただ、少し……」
「ん?」
「いや、いい。……続けよう」
溜め息交じりの声はどことなく、哀しんでいるように聞こえたが、密着した身が離れないよう、強く引かれた状態では、呟いたルシフェルの表情を窺うことは叶わなかった。
それは勿論、ルシフェル自身が、そうあることを望んだのだから、イーノックはもう何も言わずに、彼を愛することに没頭した。
____________
| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オンリー乙!
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
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>>386 GJGJ!
愛され慣れてない大天使マジ大天使
オンリー行けなかった悲しみが癒されましたありがとう
185:風と木の名無しさん 2010/11/03(水) 17:41:41 ID:3q2EVohZO[sage]
棚
エルシャダイうぜえええええええええええええええ
発売前なのに投下するとか何考えてんだよ
ちったあ自重覚えろ馬鹿!!!!!!!!!!
>>386 ルシフェルかわいいよルシフェル
イールシ大好きです。またお願いします!
>>242、273
規制でなかなか書き込めなかったので亀だけど、萌えたー!
前回は殿×仙エロがなくて(あそこで手を出す殿様じゃないとはわかってても)ちょーっと寂しかったので
エロがっつりは大変美味しゅうございます。仙石のエロかわいさに磨きがかかってて……馬なのにw
殿様の同じ言葉を二回繰り返す台詞回しは好きなので、所々に出てくるのがまたツボだったり
次回も楽しみに待ってます
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )※ED後、後藤と幻雄と鬼切が組んでます。
「きゃははははは!」
「お前が成人なんて早いんだよ!」
「死んじゃえバーカ!!」
痛いよぉ…痛いよぉ…せっかくお母さんが買ってくれたお着物が汚れちゃう…。
青い着物を着た少女が、髪の毛を掴まれ蹴られている。
何度も何度も、住宅街から少しはなれたこの夜の公園で蹴られて殴られて。
苛めている三人のうち二人は女の子だった。
なきながら殴られ蹴られ、苛められているうち、もう何時間そうしていただろうか。
ついには動かなくなり、ごろんと桜の木下に転がった。
「あ…ちょっとやばいんじゃない?ねえ、萌?茂?」
顔色を悪くさせて今更ながら、その子に触れた。その子は、鼻から血を流して倒れ、そして最後に、彼女の腕を引っ掻いて事切れた。
「やだ、ねえ真紀子、こいつ埋めちゃおう…」
萌と呼ばれる着物姿の女が言った。
ちょうど木に立てかけられてあった、スコップを持って穴を掘って。
許さない許さない許さない
そして何度も繰り返す、成人の儀式。
八年後
その公園には鬼がいるという。
供養されない死体は八年経つと、鬼になるという。
「美咲、早く帰ってきなさいよー!」
「うん、分かってるよ」
美咲は呼ばれた女の子は、明日成人式だった。
公園のベンチに座って、夜空を見上げる。足をぶらぶらと揺らしながら、息を付いた。
「明日で成人式かー…」
明日で成人式なの。
「え?」
誰かが何処からか、自分の言葉をなぞった気がして、美咲は耳をすました。
成人式なんだあ。
それは自分が座っているベンチの背後から聞こえた気がした。
と、凄まじいまでの負のエネルギーを感じて、そろりと後ろを向いた。
そこにいたのは…
泣いている、女物の着物を着た鬼、だった。
「ねえ鬼切丸、幻雄」
後藤が一枚の写真を手に、二人に話しかけた。
鬼切丸は、刀を手に、ソファに座っていた。一匹狼だった鬼切丸も、三人での生活によく慣れてきたものだ。
その横で、幻雄が鬼切丸の髪に口付けしている。嫌なことにこれがいつもの光景なのだから仕方がない。
「こらそこの変態二人」
「?」
「なんだよ、後藤。また鬼がらみか」
鬼の事件を追いすぎるあまり、鬼切丸に刀によって刻印を刻まれた女、後藤。
裏僧伽となってしまった、一体何百年生きているかわからない、鬼を封じたまがだまが食料の幻雄。今は右手がないが、だいぶ左手での調伏になれてきた。
そして、純潔の鬼、鬼切丸の少年。外見は普通の人間と変わらない。
「変態っていわれて反応するのもどうかと思うわよ、あんたたち。そう、A市で鬼がらみと見られる事件。見て、この子の傷跡」
写真には女性の足と見られる部分が写っていた。そこには、二本、深い傷が入っていた。痛々しいまでの傷跡である。
それが、鬼によるものだと、三人は一瞬で判断が付いた。
「A市なんて隣じゃねーか」
ひょいと写真をつまみ上げ、その写真を覗く。少年も、その写真を覗くと、すぐにピンときたようだった。
「鬼による爪あとか…」
少年がつぶやいた。
じっと写真を見つめながら、一方で抱き付かれたり何なり甘やかされたりと、幻雄の好き放題にさせている。
「そうなの。鬼がいた、鬼が出たって泣いていたらしいわ」
「後藤、鬼切。俺は腹が減ってるからこの鬼食ってもいいか?」
「かまやしないわ」
「最近の鬼がらみの事件、てめぇに最後は預けてばかりじゃねぇか」
少年がすねた口調で言う。
どうせ鬼を狩るなら、とどめも刺したい鬼心。
「仕方ないだろ、鬼が最高の飯なんだから」
その一方で、A市。
萌、真紀子、茂の三人は、同窓会に出席していた。
あの公園から少しはなれたところに位置する居酒屋である。
何かも、あの罪の一夜さえ忘れて、楽しそうに喋っていた。
「そういえばさー」
誰かが話を振った。
「ん?」
「あの子、何ていったっけ。ほら、成人式の日にいなくなった子。あの子どうしたんだろうね?」
途端、三人の顔色が変わった。
あの成人式の日、三人で殺して埋めてしまったあの子。名前は…
柚子。
「そうそう、噂といえばさー、あの近くの公園、最近鬼が出るらしいよ」
柚子を殺したあの公園だ!!
ふと、柚子に死に際に引っかかれたところがうずく。
「やめてよ!!気味悪い話!!」
真紀子がヒステリックにわめく。
「そうだよ、こんな所にも来てない人の話やめようよぉ…」
萌もビクビクとした態度になって、その話をそらすように促す。
「それならさ、こんな話は?怖い話には正義のお話ー」
「正義?」
茂がビールを飲み干す。
あの一夜のことを急激に思い出した。そして身震いした。
あの日以外にも、いつも三人は柚子を苛めては楽しんでいた。それも小学校のころから。だから、久しぶりに再会した時の挨拶は、蹴りだった。
柚子は常に三人の視線から逃れるようにしていたが、成人式の日、まさか公園にいた柚子を見つけてこんなことになるとは思ってもいなかった。
だが八年。
八年もあれば、時効だ。それに、死体はまだ見つけられていない。
「そうそう、歯には歯を、鬼には鬼を。鬼を切る鬼がいるんだって。名前は…なんだったかなあ。確か刀の名前なんだよね」
その言葉の直後、ドン!と思いっきり机を叩く音が響き、同時にその振動で、コップや瓶がわずかに鳴く。
その突然の、それも怒りをあらわにした音に、一同は凍りついた。
机を叩いたのは、真紀子だった。
そう、いつも茂とともに率先して柚子を苛めていた。
「やめようっつってんでしょ!!どうせ作り話よ、鬼のことも、刀の話も!!もう、こんな飲み会嫌、萌、帰ろ!!」
「ま、真紀子…待ってよ!」
萌もコートとかばんを慌ててとると、すぐに真紀子の後をついていった。茂は、なんだか嫌な予感がして、こっそりと居酒屋を抜け出す。
確か真紀子と萌の帰り道には必ず、あの公園を通るはず…。
「この公園に鬼が出る?全く、嘘はやめてほしいわ、確かにそんな事件あったけど、変質者を間違えただけでしょ!」
ややアルコールが回っている。
ふらりとしながら、萌が体を支えて、真紀子と萌は公園へ入っていった。
酔い覚ましをしなければ。
柚子を埋めてしまった、その桜の木の前にあるベンチに座る。
なんとなく気持ち悪いが、このベンチに不思議と誘われた。
冷たい風が心地いい。頭にまで血が上っていたので、酔い覚ましにちょうどいい。上を向いて、ふ、と、目を閉じたときだった。
「ひ…」
萌が、ベンチから離れた。
そしてあとずさって、何か恐ろしいものでも見たかのように…いや、見てしまったのだろう。恐怖の表情をしていた。
「?どうしたの、萌」
ねえ、振袖綺麗?
「!」
私成人してないの、成人式を迎えた日に死んじゃったの。
声を機械で巻いたみたいに、ゆっくりとした声が響いた。
ねぇ、ねぇ、萌ちゃん、真紀子ちゃん…お着物がね、泥で汚されちゃったの…。
「な、何この声…」
「真紀子、後ろ!!」
もえががたがたと震えて座りこんでいる。
そこに、茂が通りかかった。
真紀子の背後には、振袖をきた巨大な影が、二本の角を持った影が、まさに彼女を襲うところだった。
茂が腕を引っ張っていなければ、確実にその首は。
萌と真紀子の腕を引っ張って、茂は公園から離れる。
「何、何、なんなのあれ!?」
「早く、早く逃げようよ!!」
しかし三人が公園から離れると、影はすっと消えた。
そして誰もいなくなった公園を見下ろす影が二つ。公園の隣にある公民館の屋根の上からだった。
「よう、鬼切、見たか、あの三人が狙いのようだな」
「…振袖を着た鬼、か…」
屋根まで届く桜の木の枝をぽきりと折る。
今は全く葉も花も実もないが、そこから聞こえるのは確かに誰かの泣き声だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )毎度お世話になってます!続く。
半ナマ注意
映画A組、顔×根具です
|>PLAY ピッ ◇⊂ (・∀・ )
ジサクジエンガオオクリシマース
たった三節の素敵な言葉がある。
下腹に溜まったどろどろの欲望を、体外に吐き出す際に叫ぶならこの言葉こそが相応しい。
「ぁ…あっ……は…」
一回、二回、連続して放出する。尾を引く快感。
縋り付くように伸ばされた手に指を絡ませ、荒い息をつきながら、俺の下で脱力しているBAを見下ろす。
射精の余韻が残っているのか、未だ喘ぎ混じりの吐息を洩らす彼に、つい目を奪われた。
「…フェ…イ、ス」
BAが潤んだ瞳を此方に向け、彼の唇が俺の名前を形作る。
途端に込み上げてきた愛しさをぶつけるように、俺はBAに口付けた。
我ながら、随分と余裕を無くしているもんだと思う。
それだけ俺にとって彼は、BAだけは特別なのだ。
何度抱いても、口付けても、この征服欲と独占欲が満たされる事はない。
「…う…んぅ……っ」
合わさった唇の隙間から、鼻にかかった切ない声が洩れる。
空いた左手で脇腹から胸元へ逆立てるように撫でてやると、息を詰めて身体を震わせる。
そんな彼の反応一つ一つに、柄にもなくときめいてしまう自分がいる。
この甘い時間を一秒でも長く味わっていたい──
しかしそんな俺の思いを余所に、程なくBAは右手で俺の顔を押し退けるようにしてキスを解いてしまった。
「…どうした?」
内心の動揺を悟られないよう、努めて穏やかな声音で尋ねる。しかし。
「女じゃないんだ、そんなにサービスする必要ねぇよ」
出した後はスッキリしたもんなんだからと、一人言のように呟く彼に、甘い恋人気分は見事に吹き飛んでしまった。
そう、彼と俺は恋人でも何でもなく、セックスを済ませたら後腐れなくただの仲間に戻る、そんな関係だ。
一度だけの筈がだらだらと今まで続いてしまっているのは、他でもないこの俺が、彼との関係を断ち切る事が出来ずにいるせいで。
「風呂に行きてぇ」
BAの右肘が俺の身体を押し返そうと突っ張った。
それを上から抑え込む。
「…俺がしたいんだよ、させてくれ」
抱き締める事で抵抗を封じ囁くと、BAは眉を潜めて視線を逸らした。
流石に罪悪感で胸がちくりと痛むが、
「気になるなら目を閉じてろ」
こんな嫌味な言い方しか出来ない自分が腹立たしい。
だが俺にも意地がある。
言われるままに目を伏せる、彼の耳朶に軽く口付けた。
そのまま首筋に沿って舌を這わせると、熱っぽい吐息が洩れる。
見事な筋肉が乗った腹や胸板を掠めるように撫でてやれば、喉を逸らして喘ぐ彼に思わず笑みがこぼれた。
何処にどう触れれば火が付くのか、どう弄れば声を上げずにいられなくなるか。
この身体の事なら彼本人以上に知り尽くしている。
BAが拒まないのをいい事に、彼の身体を完全に陥落させる。
──俺は馬鹿だ。
誰より彼を必要としている癖に、冗談めかしてでさえBAに本当の気持ちを伝えられないでいる。
俺はただ、彼に拒絶されるのが怖くて仕方ないんだ。
ぐつぐつと煮え切らない関係でもいい。
いつか彼に終わりを告げられるかもしれない、その時が何より怖い。
「…好きだよ、ボ.ス.コ」
俺がこの言葉を口に出来たのは40分後。
彼が気絶するように眠りに落ちた後だった。
□STOP ピッ ◇⊂ (・∀・ )
イジョウ ジサクジエンデシタ-
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| エルシャダイ、今度はルシイールシ(?)
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ゲーム発売前につき(ry
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ オリジナルトノサガワカラン
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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彼は「天使に最も近い人間」だという触れ込みだった。
「俺が?」
というのに、その本人は、くだんの評判を聞かせたところで、まったく理解できないとばかり、首を傾げるだけである。
「……自分では、とても思えないんだが」
「だろうな。私も思わない」
イーノックは人間だ。呆れるくらいに人間だから、自分のような生まれついての天使に気に入られたりする。
くつくつと笑い声を立てると、何が可笑しいのか不思議なのだろう、やはり僅かに首を傾げて、こちらを真っ直ぐに見つめてくる。その眼差しを軽くいなすと、ルシフェルは一つ欠伸をし、整えられた芝の上に、ごろりと仰向けに転がった。
エルダー評議会は、天界の中枢にあるから、いつも忙しい。
だが、そんなことは、ルシフェル「様」には、あまり関係のないことだ。神の創りたもうた容姿の影響力は抜群で、ちらりと覗かせたが最後、評議会の面々は、皆、いかに書類に溺れていようと、背筋を伸ばして頭(こうべ)を垂れる。
邪魔かと訊けば、いいえと答える。借りるぞと言えば、どうぞと差し出す。
だからルシフェルは、ちょくちょくこうして、イーノックを連れ出している。
はじめのうちこそ頑なに遠慮していたイーノックも、最近は諦めを知ったのか、おとなしく攫われるようになった。もとより遠慮の口実は「働いている同僚たちに悪い」の一点張りだったのだから、その同僚から行けと言われては、むしろ行かざるを得ないのだ。
彼にしてみれば釈然としない事態であったろう。
とはいえ、そこは、高い順応性を持つ人間のことである。
「ほら」
と右腕を差し出してやると、ほんの一瞬、逡巡するが、すぐ頷いて仰向けになり、素直に頭を預けてくる。
明けの明星の腕を枕に寝る人間の姿など、アークエンジェルたちが見たら卒倒しそうな光景だが、というか実際に卒倒させたことも何度かあるのだが(あのときは、ほんと、参ったよ)、これが何故だか心地が好くて、二人揃ってやめられない。
イーノックはともかくとして、枕になる側のルシフェルまでも、眠りが穏やかになるというのは、まったくもって、不思議な話だ。
「まずいな……」
「ん?」
「貴方とこうしていると、眠くなる」
「眠ればいいだろう」
そもそも二人で昼寝を楽しむつもりで庭まで来たのである。
「大体、働きすぎなんだ、お前は。人間が天使と同量の仕事をこなせると思うのか」
「ああ」
「即答か」
「やってやれないことはない」
「それは私が、……まあいい」
これまで彼の失態を幾つ帳消しにしてやったやら、思うと少々気が遠くなるが、そこは、口を噤んでおく。
「人間は……」
やはり眠いらしい。幾分ぼやけた声をして、イーノックは、目をしばたたく。
「天使に劣る生き物だ。それは確かだと思う」
「どうかな」
「だが、人間には、伸びしろがある。……悩んで、足掻いて、省みて、……昨日の失敗を明日の成功に、親の才を子の能へ、……繋いで、積み重ねていけば、」
「超えられるか?」
「ああ」
天使を。
神を。
ほんの少しだけ挑発的な笑みの色合いは似せたまま、彼とはまるで異なる思いを、ルシフェルは胸の中に持つ。
イーノックもいつかは対峙することになる目論見だ。神に忠実な人間は、同じと信じて疑わなかった天使の裏切りに、この先、まみえる。
既に何度も未来を見ているルシフェルは、鮮明に覚えている。あの目。あの声。あの形相。
「ルシフェル……」
「ん?」
それでも、今は、……「今の彼」には、まだ「無い」話だ。
眠りに落ちる直前の、子供のような顔をしながら、何とか最後に訴えようと頑張っている声を拾う。
「貴方も、寝てくれ……」
「そのつもりだが?」
随分いじらしいことを言う。
「私の体が心配なのか?」
「貴方も、一緒に、……寝て、いれば……」
「ああ」
「アークエンジェルたちも、俺を、……下手には、起こせない、からな……」
「………」
そしてすとんと眠りに落ちた男の顔を睨めつける。
「……いい度胸だ」
頭の下から腕を引き抜いてやろうかと思うが、生じた奇妙な可笑しさと、ほかの何かに止められる。嘆息に似た息を吐き、一瞬の笑みを閃かせると、ルシフェルは、自身も目を閉じて、そのまま眠りが来るのを待った。
それは、神がノアの洪水を計画する、少し以前の光景。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 神は言っている……「リア充タヒね」と……
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
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死ネタ、ごくわずかですがスカ(小)あり
受けの苗字読みにくいかもですが「みくりや」くんです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
御厨栄は監禁されている。
時間の感覚もなくなるほど長い間、御厨栄は監禁されている。
どうして監禁されているか、それは栄には分からない。栄を監禁している相手、大蓮南が
何も語らないからだ。
大蓮は何も語らない。
こんなにも――正確な時間は分からないが、こんなにも長い間同じ空間にいるのに、栄は
大蓮のことを何も知らない。
例えば彼が昼間何をしているのかや、これまでどう生きてきたのかは一切知らない。
しかし栄にはそんなことは最早どうでもよいことだった。
栄は大蓮がどれだけ自分を愛しているか、身をもって知っている。ひどく柔和な笑みを浮
かべながら栄をいたぶる姿や、ひどく優しい声で消えてしまいたいほど恥ずかしいことを強
要すること。すっかり性器に作り変えられてしまった栄の後孔へと強引に押し入ってくる逞
しい陰茎や分厚いけれども繊細に栄の肌を這う舌。栄が思っていることを全て見透かしてし
まう少し色の淡い目。栄の全てを管理し、支配し、包み込んでくれる手。いつかその日が来
れば栄を手ずから縊り殺してあげると言ってくれた――その深い愛情を知っている。
首に嵌められたチョーカーに触れながら栄は思う。
大蓮が「栄の白い肌には黒が似合うね」とつけてくれたチョーカー。重みを感じない、で
も強固な鎖を通され、栄の身動きを制限するチョーカーは、栄の全てを愛してくれる大蓮そ
のものだ。
栄は幸せだった。
「じゃあ行って来るね、栄」
大蓮がいつものように軽いキスをして部屋を出る。少し前まではキスの後に何か命令をさ
れるのが常だったが、いつからかその習慣はなくなってしまった。命令は栄にとって恥ずか
しくてつらいものばかりだったが、それがなくなった今は大蓮が帰るまでの間をどう過ごす
かに苦心していた。
栄の自由はチョーカーに繋がった鎖が許す範囲――この部屋の中だけ。その中にも、ダブ
ルベッドと栄を責め立てる道具がたっぷり詰まったサイドテーブルくらいしかなく、大抵は
大蓮のことを考えて過ごしている。
その日も栄は大蓮のことを考え、過ごしていた。
大蓮との記憶は恥ずかしく、つらく、でも優しく、光に満ち、思い出すたびに体が芯から
温かくなる。温かいを通り越して熱くなってしまってベッドや床を汚してしまうこともしば
しばだった。
その日は、そのはしたない染みを理由に大蓮が施すおしおきを考えてますます高ぶってし
まい、大蓮がいつも戻ってくる時間になったときには栄の体はすっかり出来上がってしまっ
ていた。
しかし、そんな日に限って大蓮の帰宅は遅かった。高ぶった体をどろどろになったシーツ
の上で持て余しながら栄は待ったが大蓮はなかなか帰ってこない。
こんなことは今までもあった。大蓮は部屋の外のことを話さない。仕事の都合だろう、数
日家を空けることもあったが、事前に栄がそれを知らされることはなく、飢えと渇きに苦し
む羽目になることもあった。
それでも栄は待った。待って、待って、もしかしたら今日は大蓮は帰ってこないかもしれ
ないと思い至った頃には、大蓮によって開発され、性感を高められた体はもう限界に近かっ
た。
こんなときはどうすればよいか、分かっていても栄は躊躇ってしまう。恥ずかしい、とい
うのもあったが、これだけどろどろにしていれば栄が多少おいたをしたところで恥ずかしさ
はそう変わらない。それよりも、もしかしたらもうすぐ大蓮が帰ってくるかもしれないのに
、大蓮以外のものでこの熱を鎮めてしまうのがもったいないという気持ちが栄を躊躇させる。
しかし、既に体はもうぎりぎりのところまで来ていた。張り詰めた下半身を庇いながらベ
ッドの上を這いずり、栄はサイドテーブルに手を伸ばす。
上の引き出しから潤滑剤を、下の引き出しからは細身のバイブレーターを。その毒々しい
色をしたバイブを目にし、栄は自分の口内に自然と唾液が溜まるのを感じた。
下の引き出しにしまわれた淫具たちはそのひとつひとつに体がかあっと燃え上がるほどの
淫らな思い出が刻まれている。その中でも、このバイブは細身ながらその無遠慮な振動と回
転で栄を快感へ突き落とし、泣きじゃくらせ、それを見て大いに喜んだ大蓮が栄への責めに
好んで使ったものだ。
栄は唾液を飲み込み、らせん状の溝がついた淫具に潤滑剤を垂らす。そして、潤滑剤を馴
染ませるのもそこそこに、うつ伏せになって高く挙げた尻のその奥、これからの刺激に期待
していやらしくひくつく後孔へと淫具を押し当てた。
「あ……あぁ、っ……」
潤いの足りない後孔が軋み、異物を拒む。しかしその抵抗は一瞬で、挿入に慣らされた体
はずるりとバイブを咥え込んでしまう。
それだけで軽く達した栄だったが、快感は一向に収まらない。大蓮の陰茎が与えてくれる
熱や充溢感に慣れた後孔にとって、細身の冷たいバイブはもどかしさを与えるのみで、栄は
はしたなく腰をくねらせてしまう。
栄は震える手で下部のスイッチを入れた。ぶう…ん、と虫の羽音のようなモーター音が無
音の部屋に響く。徐々にスイッチをスライドさせていくと、バイブの振動と回転が強くなる。
そのうちにくねるバイブが栄の前立腺を捉えた。
「ひぅっ!」
栄が快感に背を反らす。すっかり硬くなり、濡れそぼつ陰茎から精液を迸らせて、栄はシ
ーツに沈む。それでも体内で暴れるバイブに前立腺を揉まれ、栄はさらに身悶えた。
「もぅ……ぅ、やっ、やあ……っ」
射精したばかりの陰茎が体とシーツとの間でもみくちゃになる。初めはそのたまらない刺
激から逃れるように腰を動かしていた栄だったが、次第に自ら先端に滲み出た透明な液をな
すりつけるように意図を持って揺らめかせ始めた。
「あぁ…っ……あっ! あぅ……う……んっ、うぅ」
言葉を忘れてしまったかのように、栄の口からは意味を成さない声と荒い息だけが発せられる。
すっかり薄く少なくなった精液を撒き散らし、幾度も意識を飛ばし。果ては精液でないも
のをしょろしょろと漏らし、筋肉が弛緩した拍子にバイブが抜け落ちるまで、栄の体は快楽
を追い求め続いた。
栄が自分を取り戻したときには既に空は明るくなっていた。
やはり大蓮は戻って来なかったという落胆が胸に広がる。
昨日の痕跡が色濃く残ったベッドを綺麗にする気力も起こらず、栄は再び目覚めたときに
は大蓮の姿があるように願いながら目を閉じた。
視界を閉ざすと外の音がかすかに聞こえてくる。車の走る音。子供のはしゃぐ声。この非
日常な空間にも音は忍び込み、日常を持ち込んでくる。
遠くで聞こえるサイレンの音がやけに澄んで聞こえた。
浅い眠りを繰り返す。何度目を覚ましても大蓮は帰ってこなかった。時間の感覚が希薄な
栄にも、大蓮の不在がいつもより長いことが渇きの度合いでわかる。
身を起こそうとしたが、腕にも腹にも力が入らない。栄は起き上がるのを諦め、ぼんやり
と部屋のドアを見た。
大蓮が出て行ったときからそのまま姿で外界と部屋とを切り離すドア。ごく普通の、薄い
ドアに隔てられたこの空間は、確かに檻だった。しかし、これまで誰も教えてくれなかった
全ての感情を教えてくれた、巣でもあった。
チョーカーに繋がった鎖を震える手で撫でる。太く、堅く、強く、でも重さはなく――温かな、鎖。
妄想の鎖を撫でながら、栄は再び目を閉じる。
大蓮が戻ってきたときに、お帰りなさいのキスをしてあげられないかもしれない、そのこ
とが気掛かりだったが、全てを飲み込むかのような強い眠気には逆らえなかった。
それからほどなく、事故で急死した大蓮の部屋を訪れた遺品整理業者により、ベッドに横
たわった遺体が発見された。
衣服こそ身につけていなかったものの、外傷などはなく、そのただ眠っているかのような
穏やかな表情と死因から事件性はないと判断された。
遺体の身元は杳として知れず、大蓮とともに葬られることとなった。
その部屋で何が起こったのか、全ては閉ざされる。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
いろいろ「ん?」な部分もありますが801はファンタジーってことでひとつ
ドラマ「慰留3」カテ医×メガネ→天才です。
夜の屋上その後の妄想が止まらず勢いで書いた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「大丈夫か」
声をかけられてずいぶん長い間うずくまっていたことに気づく。
「だ、いじょうぶです」
大丈夫ではない。正直気まずいし恥ずかしい。
さっきまで敵対視していた男にやさしくされ、その上泣きじゃくるなんて。
しかも声は上ずっている。
目じりを乱暴に拭い、立ち上がりもう一度、
「大丈夫です」はっきりした声で言う。
しかし、声はよかったのだが、表情はまだ作れてなかったようだ。
僕の顔を見た黒樹は、なんとも言えない顔をして、
「ここ、どうしたんだ」
指先をそっと僕の左こめかみに当てた。
「あ」
そういえば殴られた場所が青痣になっていたんだった。
「目も赤いぞ」
「それは、今…泣いたせいです」
口に出すとまた先ほどまでの気持ちが蘇る。
色んなことへの理不尽さや、将来への不安、そして嫉妬心。
(浅田さん…)
ずっと浅田さんのことが好きだった。
今までずいぶん振り回されたけど、
その外科医としての技術や内に秘めた想いを尊敬し、敬愛していた。
しかしいくら彼を想っても、彼の一番近くにいたいと願っても、
それが叶わない夢だと思い知らされた。
彼にとってみんながチームであり、特別で、平等だ。それ以上も以下も無い。
僕は彼にとって仲間だが、決して仲間以上にはなれない。
彼の一番には到底なれない。
そして最近は浅田さんへの気持ちが強い嫉妬心へ変わっていた。
いくら手を伸ばしても届かない距離を遅れて歩くことに、もう限界だった。
「…っ」
堪えきれず、また涙が溢れ出す。
そっと触れられていた黒樹の指が、涙を拭うよう右手で頬を覆う。
その手のやさしさに思わず瞳を閉じ、すがるよう無意識に頬擦りをする。
温もりが欲しかった。掌だけでも今の僕には救いだった。
冷たいと勝手に思っていた黒樹の手がこれほど暖かだったとは。
右の頬も暖かい。どうやら両手で顔を覆われているようだ。
…ん?覆われ…?
困惑し目を開くより先に、さらに触感が追加された。
唇に。
驚いて目を見開く。黒樹の顔が視界一杯に広がっている。
「すまない。嫌だったか?」
「…」
浅田さんの顔が頭に過った。
彼をまだ愛しいと思う。けれど、もう彼を追うことに疲れた。
黒樹は僕の欲しい言葉をくれる。欲しい温もりをくれる。
頬を包む手が優しく伊重院の顔を揺すり、意識が黒樹に向き直す。
この手を振り払うことができない。
どうしようもなく黒樹に縋りたくなる。
弱り切った精神状態で、この甘い誘惑を拒絶することができない。
「…」
言葉は出なかった。代わりに瞼をゆっくりと閉じた。
浅田への気持ちを忘れるために。
もう一度黒樹に口付けられる。
二度、三度。浅く、深く。
「…ふっ……っ」
すがるように黒樹の背中に手を伸ばすと、優しく包むように抱き返される。
これが欲しかったんだ。僕のことを理解し、慰め、励まし、称賛の言葉をくれ、そして…
(本当に?)
伊重院の頭の隅で何かが違うと警鐘が鳴る。
(あさだ、さん)
しかしそれも黒樹の舌の感触に絡めとられていく。
涙に濡れた伊重院には、黒樹の真意は見えない。
けれど今の伊重院にとって、この温もりだけが唯一の救いだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
メガネのヒロインっぷりにびっくりした。
最後の天才とすれ違うシーンで雄叫び上げたのは私だけではないはず。
「浅田さん」呼びて。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )後二回ほどで終わるはずです
がちがちがち。
萌は恐怖に震えがとまらなかった。
あの影が出てきたのは、柚子をうめた場所、そしてあの着物も当時の柚子のもの!
「ありゃあ…鬼だ…」
一人暮らしの茂の家に、萌と真紀子が上がりこんでいた。
二人を落ち着かせるために、ココアをいれる。
そういう茂も、目の当たりにした異常な光景に、冷や汗がだらだらと出ていた。
柚子が鬼になって帰ってきた。
そういえば飲み会で鬼に対抗する刀の名前はなんと言ったか?
確か…そうだ、聞く前にその場を逃げ出したのだ。
「ねえ、柚子は絶対私たちを殺そうとしているよ…、あの時のことを復讐しようと思っているんだよ…」
萌が震えながら、ココアを飲む。
「あの公園に近づかなければいいんだよ、あの公園近辺には一切行かないから!」
そう宣言して、真紀子は帰っていった。萌も続く。
次の日の真夜中二時のことだった。
ふらふらと歩いていき、気が付けば真紀子はあの公園にいた。
そう、気が付いたらいたのだ。
そして目の前にはあのベンチと桜の木がある。
「え…何、これ…」
気が付いたときにはすでに遅かった。
ベンチの向こうから、青い薄汚れた着物の柚子が立っていた。
そして見る見る変わっていく容姿。
それはまるで鬼――。
「いやっ、いやああああああ!」
爪が振り下ろされる。ざく、と肉を切る音がして、真紀子の首は飛んだ。
真っ赤な血を散らしながら、恐怖で凍りついた表情をそのままで。
「あーあ、ついにやっちまったか」
「どうする」
「もちろん、今夜、鬼狩りだ。その分お前を抱けないのは残念だがな」
「とりあえず死ね」
公民館の屋根の上でひっそりと、警察と記者、もちろん後藤もいる、そんなニュースになっている所を見ていた。
後藤はいつものようにずけずけと被害者の親と、目撃者がいないか聞いているが、警察官に追い出されている。
「あー、腹減ったな、鬼切、食わせろよ。いい加減俺に食われちまえよ」
「幻雄に負ける気なんざしないな。そんなことより…あの鬼だな」
哀れな鬼。昨日の桜の木からすべてを知ってしまった。
ずっと泣いている哀れな鬼。
鬼というより、子供だ。まるで。
そして殺した張本人たちは、すべてを忘れて生活していた。
なんと人間は残酷で、なんと人間は憎しみに生きる者。
殺された真紀子は、自分の罪さえ忘れた罰だったのだろうか。
ならば次に狙うのは、あの二人のうちどちらか。
少年は、とんとん、と軽やかな身のこなしで屋根伝いに走っていくと、三人で暮らしている、後藤のマンションに入っていった。
そしてソファに座って、考える。鬼切丸と名づけられた刀を握り締め、本当に斬っていいのかと、少しは戸惑った。
なぜか。顔にこそあらわさないが、彼が、三人で暮らすうち、一人のときでは味わえない楽しさを覚えたからだ。
それまでは、どんな鬼も斬ってきた。
だが後藤や幻雄を見ていると、簡単に塵に帰していいものかとおもう。それぞれに人生があったはずだ。
とはいえ、鬼は鬼、純潔の鬼は鬼を斬るほか救えない。
この、鬼切丸で――。
「やっぱり帰ってきてたか」
「幻雄」
キィと、リビングのドアが開く音がして、そちらに意識を向けた。
「後藤は夜まで帰れねぇってよ」
「…そうか」
と、幻雄が、少年のあごを救って口付けた。
「!」
口付けは濃厚で、舌が絡み合い、それがビクビクと肩を揺らすほど、上手かった。
すっかり力の抜けた少年に覆いかぶさり、幻雄は囁く。
「いいか?」
とはいっても少年は素直ではないので、毎回首を縦には振らなかった。
けれど、身体とその蕩けた目つきが言っている。
抱け、と。
少年の、いつもの冬服の学生服のボタンをはずしていく。幻雄は性格は荒々しいが、こういうときは人が変わったように優しい。
首に口付ける。そこには花が咲いたような跡が付いた。
する、と、シャツの下に手を滑らせる。
「っ」
乳首をくりくりといじったとき、ひくひくと体が震えた。
「やめ」
「やめねぇ」
今度はズボンを下ろす。自分の指をたっぷりと唾液でぬらし、後孔に滑らせた。
「あ」
ひくん、と、体がはねる。何度も交わったことのある体は、そこに触れられるだけで快楽の予感を感じていた。
指がずぶずぶとはいってきて、中をいじり倒す。
前立腺をこすると、びくんと彼の体がひときわはねた。
純潔の鬼も体の構造は人間と同じのようだ。ただし、人間の武器では彼は殺せない、ということがあるだけで。
何分も中をいじり、立ち上がったそれを舐めてやると、少年は幻雄の肩に手を添えて、いやいやと首を振った。
何度もされているが、なれない。それに、この快楽も堕落していくようで、嫌だった。
「挿れていいか?」
「くっ…好きに、しろっ…」
頬を紅潮させながら、それだけ言うと、大きく息を吐く。幻雄の背中に腕を回すと、ぎゅっとそのパーカーを掴んだ。
「素直じゃねぇなあ」
よっと片手で足を上げると、ゆっくりと挿れていく。
「あ、あっ」
更に強い力で、幻雄にしがみつく。漏れる声は濡れていて、とても色気がある。
一体何年生きたかわからないその体は、最初に抱いたときは本当に少年そのものだった。
その上、合意の上ではなかったから、彼の暴れっぷりは凄まじく、出血が激しかった。
中で出したら、それが毒になることも忘れて、中で出して苦しむ彼の姿を見たとき、ちくりと胸が痛んだっけ。
それが今ではこんなに従順だが。
「幻…雄…ッ」
ぐっと根元まで入れ込むと、しがみつく少年をソファに寝かせて、激しく突いた。
液体の音がして、少年は乱された学生服に吐精した。
黒い学生服に、白い精液がよく生えて、思わずごくりと喉を鳴らす。
ぺろ、と、少年の頬をなめる。その間にも腰は出し入れを繰り返している。
「や、あ、あ、…!」
「やべ、もう我慢できねぇ。…中だし出来ないのって不便だな」
「うあっ、…一度斬ってやろうか…!」
「そんだけ軽口がいえるなら問題ないな」
幻雄がずるりと引き抜くと、少年は二度目の吐精をした。快楽に蕩けた瞳が愛らしいと、思ってしまうのは重症だろうか?
少年の腹に吐精をすると、少年はそれも掬い取ってまじまじと眺めた。
「こんなに…。…、離れろ、服に掛かっただろ…」
「はいよ」
そばにあるティッシュをとると、学生服を綺麗に拭いてやった。
おいで、おいでよ…一人は寂しいよ…。真紀子ちゃんはもうこっちにきたから、次は萌ちゃんだねぇ…。
夜中になり、ブルーシートで覆われた公園に、ふらふらと萌がやってきた。
人の気配はなく、萌は裸足であった。
部屋を出た記憶がない。いつの間にかここに立っていることに、彼女は気づいて悲鳴をあげた。
「…?…!やだ、ここって…真紀子の…」
違うよ、柚子のだよ…。
「誰!?柚子!?柚子なの!?」
大量の血の跡が萌を恐怖に駆り立てた。その血はもちろん真紀子のものだった。
ベンチのそばまで行くと、きょろきょろと辺りを見回している萌の背後に、影がゆらりと揺れた。
そして鋭い爪が、勢いよく彼女の首を狙って振り下ろされる。
「おーっと、させるかよ!」
その声と同時に、ギン、と、銃身が爪をはじいた。
「ナウマンサマンダバサラダンカン!!」
かつて右手で使っていた銃を、器用に左手で扱っている。けれど時々銃がぶれるようで、符入りの弾は鬼となった柚子のぎりぎり頭の横を通り抜けた。
「ちっ」
「幻雄、鬼切丸、この子は保護しておくわよ!」
後藤が、萌を公園の外へ連れ出すと、鬼はそれを追う様に、腕を延ばす。そのときに見えた振袖は、柚子と真紀子の血と泥で真っ黒に汚れていた。
八年前、殺される前だったならば綺麗な青色をしていたであろう振袖。
しかしその腕を衣類ごとぶった切ったのは、屋根から降りてきた鬼切丸の刃だった。
「幻雄、仕上げはお前に任せた」
「おうよ!」
痛い、痛い、痛い!!
びちびちと血を撒き散らしながら、腕はベンチに転がった。
その腕に鬼切丸をつきたてると、ふっとそれは煙になって消える。
「っし、ナウマクサマンダバサラダンカン!」
その弾は勢いよく柚子の胸を貫いた。
ぱっと、突然そこから桜の花が散った。
「こんな時期に…桜…?」
勾玉に秘められたはずの柚子が、生前の姿で、しかし腕と着物は汚れたままで、ゆらりとそこに現れた。
「痛かったの…やめて欲しかったの…私の死体はこの下に眠っているの…」
それだけ言うと、すうっと勾玉に吸い込まれていった。涙を流した彼女は、鬼とは似てもに付かぬ…ただの哀れな人間だった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!殺すつもりじゃなかったの!」
萌は素足のまま、公園の外にいた。
取り乱した様子で、後藤の腕の中、泣きじゃくる。
「何があってこんなことになったの…?話して?」
後藤が優しく語り掛けると、萌は涙で目を真っ赤にしながら、経緯を離した。
昔から彼女を、真紀子と茂とともに苛めていたこと。それが自分にとっては楽しかったこと。そして八年前も同じことをしたが、打ち所が悪かったのか、殺してしまい、この桜の木の下に埋めた。
「八年経つと供養されない人間の死体は鬼になる」
幻雄がぼそりとつぶやいた。
「なんだ、自業自得じゃねぇか。罪は消えないよ、それを背負って生きていくんだな」
翌日、萌えの証言により、桜の木下が掘り起こされた。
だいぶ奥深くまで埋まっていた死体は、すっかり白骨化し、振袖も斬られていた。鬼になって斬られた腕は、なくなっていた。
だがこの事件の真相を知るものは、萌と、鬼切丸と幻雄、後藤の四名しかしらない。
「なあ、鬼切、たまにはデートしようぜ」
「斬られたいのか」
「…あんたたち、家でいちゃつくのはいいけどここは私の家よ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )以上で終わりです。思ったより短かった…。
>>400 A組ごちそうさまでした!
なんかまた、ふつふつと滾って来た。。。
>>407 GJ!ほのぼの萌えた
前作といいあなたの公式セリフの使い方好きだw
425 :
別苦ss:2010/11/10(水) 00:50:53 ID:ZZV8j9qb0
バンド漫画別苦より、血場→→→←台羅くん。
原作意識だけど半生でも楽しめなくはない?かな?
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ピッ、と嫌な感触が唇の上を走った。
手の甲で拭うと、案の定鮮やかな赤い筋。
「ってェ――‥」
ん?と、俺の二歩先を歩いていた台羅くんが振り返る。
ニット帽から覗いた両の耳と、ネックウォーマーに半分埋もれた鼻が赤い。
目も心なしか潤んで見えて、痛みも忘れてやっぱ可愛いなぁ、とか考えた。
「どうした、血場」
「いや、ちょっと唇切れちゃって」
「…」
? どうしたんだろ。
神妙な顔して突っ込んでいたポケットの中の手をごそごそし出す台羅くん。
「ほら」
なにやら差し出された手には、似つかわしくない小さなピンク色のスティック。
「それ塗っとけ。‥嫌じゃなければ」
言い捨ててまたすたすたと歩き出す。
426 :
別苦ss:2010/11/10(水) 00:52:50 ID:ZZV8j9qb0
ちょ、待ったこれリップクリームってやつだよな?
淡いピンクのそのボディには『恋するピーチ』の6文字。
キャップを開けた瞬間ふわっと漂う芳香。
・・・なんで台羅くんがこれをセレクトしたのかすごく気になるよ!
殆どむしゃぶりつくくらいの勢いで塗ったあと、はっと気付いた。間接キスじゃねえかこれ。
いやいつもポカリとかボルヴィックだとかでやってるけどさ、なんかそれとは違う。すっげえ特別な気がする。
やばい。テンションあがった。
「台羅くん、ありがと」
「あー。」
「いい匂いだね、コレ」
余韻に浸りたくてそう言ったら、台羅くんは思わぬ爆弾を投下してきた。
「気に入ったんならやるよ。」
・・今なんて?
「やっすい時に買い溜めしたから家にめっちゃあんだよ。そろそろ俺、ピーチ飽きたし」
…飽きたから人にあげるなんて、あんまりだよ台羅くん。
けど嬉しい。メッチャ嬉しい。家宝になるなこれ。
「い、いいの?」
「いいっつってんだろ、」
あ、でも、
「最後にもう一回だけ付けさせろ」
台羅くんの小造りな唇に、さっきまで俺の唇が触れてたスティックが触れて、俺はもうワケわかんねぇくらいドキドキした。
凜とした冬の空気に、甘いピーチの香りがはじけた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
闇金ウシジマくんで滑皮×社長。大人向けでソフトなSM表現と暴力描写、お道具使用などが苦手な方は読まない方が良いと思います。時間的な設定は単行本1巻の前
のイメージです。
>>336からの続きになります。以前にレス頂いた方、ありがとうございました。それでは、スペースお借りします。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
次々と放たれる拳の強打から解放された丑嶋の顔は痛々しく歪んでしまった。鼻からは血が流れている。眼隠しの上からも容赦なく鉄槌を喰らわされた為、右まぶたは
目隠しの黒い皮越しでも分かるほど腫れあがっている。仮に今目隠しを外しても、右目はこぶ状に腫れたまぶたのせいでろくに見えないに違いない。上唇も腫れあがって
いて、そのせいで呻き声も不明瞭だ。血も出ているが、もはやその血が切れた上唇から流れた物か口の中から漏れたものかも分からない。
滑皮は丑嶋の顔を見てうれしそうに舌舐めずりした。腫れた顔を美しいと感じるような美意識は持ち合わせていない。だが、自分の手によって丑嶋の顔が彩られたとな
ると話は別だ。加虐心は爆発し、強烈な性欲へと変わっていく。
この男のプライドを地の底に叩きつけるにはどうしたらいいだろうか。見かけこそ痛々しく歪んだが、恐らく心は屈していない筈だ。何しろこれだけ殴られても、最初
に小さく息を吸い込む様な声を上げただけで、あとは一切悲鳴らしい悲鳴は上げなかった。眼隠し越しにも伝わる気迫を漲らせ、恐らくどれだけ首が揺れようが視線だけ
は滑皮から外さなかっただろう。
滑皮は少し考えながら、何となく手を丑嶋の脇腹の上で遊ばせた。
「ん・・・」
殴られても少し背中を丸めただけだったのに、脇腹を撫でると大きく身をすくめた。体が強張ったので、また殴られるのではないかと勘違いをして身を硬くしたのかと
思われたが、触れた部分から凄い勢いで鳥肌がたっていくのでそうでもないようだ。
今度は脇腹から胸の方に向かって手を動かすと、先ほど同様に身をすくめた。手が辿り着いた先の胸の上の乳首は触らずとも見て分かるほど硬くなっていた。顔から下
は殴られていないというのもあるだろうが、丑嶋の体は予想外に性感には弱いようだ。
暴力に屈しないならば、それはそれで啼かせ方がある。身体を開かせ、女のように強請らせれば良い。憎くい相手に射精の許しを請い、憎くい相手を自ら求めさせる。
それこそ丑嶋にとっての最大の屈辱になるだろう。
滑皮の手はそっと裸の体の上を滑り、徐々に股間へと迫っていく。
「う・・・、あっ」
巧みな指づかいで開かれて無防備に晒された内股のへんを撫でまわされ、コックリングに挟まれたままだった性器が震えた。あれだけ殴られても血を止められているの
で萎えていない。だがやはり生気は感じられない。
滑皮はいよいよ指を性器に絡めた。触ってみると驚いた。本来なら勃起している性器は熱くなるものだ。リングを掛ける前は勿論手の中にある丑嶋の性器だって熱かっ
た。
ところが、丑嶋の性器は通常の人肌程度の体温しかないようだ。興奮して熱くなっている滑皮の手には余計冷たく感じる。やはり、リングによって血流を遮断されてい
るせいだろうか。
もしこのまま縛ったままだったらどうなるだろうか。恐らく血流の遮断された肉体は性器と言うのは関係なく壊死するだろう。
「随分冷たくなってるな。このままなら腐って使い物にならなくなるな」
楽しそうに物騒な事を言うと、丑嶋の頭がグラリと揺れて滑皮の方に向いた。眼が見えていないので表情が正確に読み取れはしないが、明らかに動揺しているようだ。
もし滑皮の言うように壊死してしまえば、切り取らざるを得ない。流石に丑嶋でも男性のシンボルを無くすのは嫌なようだ。今でこそ少し血流が止まっているだけだが、
本格的に細胞が死滅していくのはきっと痛みも酷いに違いない。それに男性器として射精するという役目だけでなく、ヘタをすれば排泄器官としても機能しなくなる。
丑嶋の唇がパクパクと何事かの言葉を発しようとしている。だが声は出ていない。
滑皮は丑嶋の様子に満足した。あれだけ殴ってもほとんど動揺を見せなかった男がこれだけうろたえているのだ。これを見ものと言わず何と言おう。
楽しくて笑いだしてしまいそうになりながらも我慢し、滑皮は更に指を動かし始めた。縛られて血流が止まっていても性感はある。今度は両手で弄ってやる。右手は竿
を扱き、左手は左右の睾丸の縫い目から会陰の間を強く押しながら撫でる。
「うああっ、止めろ、止めろ・・・」
あちことが腫れあがった顔を歪ませながら丑嶋がついに拒絶の言葉を吐いた。頭ではこんなことには負けないと思っているが、口からは弱々しい言葉が出てしまう。
拒絶の言葉を吐くと言う事は、滑皮のすることで動揺している証拠だ。何も言わず受け流していればよかったが、もうこれ以上屈辱と射精感を我慢する辛さ、何より性
器を失うかもしれない恐怖に晒されたくない。ましてや丑嶋の眼には何も見えていない。悔しいが、滑皮の言葉を信用するしか現状を把握する手立てはないのだ。そして、
現状を打破するには滑皮にすがるしかないのだ。
「ふふん、少しは素直になれそうか?ん?」
滑皮はコックリングではせき止め切れないカウパーで少し濡れた指を舐め、丑嶋の苦悶の表情を見つめた。見ているだけで絶頂をもたらしそうな光景だ。このまま苛め
てやろうか。本当に壊死するまで性器を縛っておいても面白いかもしれない。使い物にならなくなってしまえば、切り取ってしまえば良い。本当に自分の女のように扱っ
てやるのも悪くないだろう。
けれど、流石にそうはいかない。そんなことをしては丑嶋の人生は崩壊させてしまう。別にそれ自体は滑皮には関係ないことなのでどうでもいいが、会社も崩壊するの
で金を吸い取っている女金主の財布を奪う事になってしまう。組のつてで丑嶋を借りる事は出来ても、自分の趣味趣向で金主に入る筈の金を止めてもいいような立場に滑
皮は到達していない。
これだけ脅していれば後も楽だ。滑皮は放ったらかしにしていた自分の性器の根元を掴み、丑嶋の口の前に突き出した。
「うっ」
覚えのある匂いを放つ物を突き出され、丑嶋は口を噤んだ。滑皮が何故今になって丑嶋の顔の前に性器を寄せてきたかは分かる。先程は拒んだが、再度フェラチオを要
求されているということだ。また拒められればいいが、先程とは事情が違う。丑嶋はうっすらと唇を開けた。
しかし、滑皮は自ら動こうとしない。もう口は開いているのだから歯列を割って無理矢理にでも突っ込めばいいのだが、あえてそうしない。その代りに非情な言葉を投
げかける。
「さあ、どうすればいいと思うか言ってみろ」
非情な言葉を浴びせられ、丑嶋の中に怒りが急激に込み上げてきた。だが、拒んでもなにも良いことはない。今はただ性器の戒めを解かれ、相手を満足させ、ここから
出ることしか望んではいけない。
屈辱に額に青筋が浮かぶほどだが、丑嶋は小さく開いた口を躊躇いがちに動かす。
「・・・・・・・・・舐め・・・ます」
如何にも不満たらたらです、といった声色だが、丑嶋は怒りを抑えながら言葉を搾りだした。
「あ?舐めます、だと?舐めさせて下さい、だろうが」
滑皮は根元を握り、丑嶋の顔を自分の性器で叩いた。痛みは全くない。むしろ充血した部分を刺激している相手の方が辛い筈だ。だが汚らわしい性器で頬を打たれる痛
みは皮膚の神経を通って脳みそを直撃する。脳みそが過熱すると顔の傷も疼いてくる。痛みは怒りで乱れた心をクリアにしてくれ、冷たく冷え切った怒りが湧きあがって
きた。
今ここで暴れて大声を出しても仕方がないではないか。相手だって満足すれば気が済む筈だ。丑嶋は務めて怒りを押し殺してかさついた唇を舐めた。唇は血の味がした。
「・・・舐めさせて下さい」
丑嶋が腫れあがった唇を間抜けに開けると、滑皮は我慢できない含み笑いを出しせせら笑う。丑嶋が本当は舐めたいなどと微塵も思っていないところがまた良い。それ
を強要し、あまつさえ自分から強請らせる。楽しくて楽しくて仕方がない。
「よし、舐めさせてやる。縛られたままで、俺を口でいかせたらテメェのも解いてやるぞ」
上機嫌な滑皮は丑嶋の唇のすぐ前に亀頭を近づけた。丑嶋は仰向けに転がされたまま首を伸ばし、先端にしゃぶりついた。
「むぐ・・・、むぅうっ」
生臭い塩味が口の中に広がった。匂いも一気にきつくなった。吐き気で胃が痛くなるが、それでも耐えて吐き出すこともなく、口内の粘膜で性器を咥えるしかない自分
が情けなくなってきた。
「ううっ、うげっ、ううーっ」
何とか吐き気を抑え、丑嶋は咥えこんだ性器の竿を軸に首を振り始めた。縛られたまま、しかも仰向けで寝たまま。やり易いわけがない。それでも頑張って滑皮を五分
でいかせなければならないのだ。支えがなくて痛む首を感じつつ、夢中で先端を舐めながら竿をしゃぶりあげる。
「うっ、うっ、うっ」
やがて滑皮の竿はグンと膨らみ、丑嶋の腫れた頬の肉を持ち上げるまでに成長した。
「ふぅっ、はっ」
口一杯に性器を頬張っているので呼吸が苦しい。丑嶋は性器と口の間の僅かな隙間から空気を取り込むのだが、そうするとどうしても鼻にかかった艶っぽい声が出てし
まう。まるでフェラチオを楽しんでいるような声が情けなく、その声を誤魔化す様に顔を滑皮の股間に寄せた。
「ぐっ、む・・・」
「美味そうにしゃぶるな。やれば出来るじゃねェか」
滑皮は嬉しそうに丑嶋の頬を撫でてやった。青白いとも言える頬は今や紅潮して火照っている。頬の肉は性器を深く咥えると膨らみ、引き抜くと窄む。口内まで傷つい
ているのか、はたまた丑嶋も興奮しているのかは判断は出来ないが、敏感な部分を入れるにしては熱すぎる。全ての要因が滑皮を煽り、丑嶋に比べると見劣りするものの
、それなりに逞しい太ももがピクリピクリと揺れる。
「うむっ、ぷはぁっ」
酸欠になりそうな苦しさに丑嶋はついに頭を揺すって性器を吐きだした。太い物が抜けた口の端からは粘液と血液が混じり合った物が垂れてきた。
哀れな姿に滑皮の加虐心はますます増幅した。
「何止めてんだ、コラァ・・・。いかせねェとチンポの外してやらねェって言っただろうが」
脅されても丑嶋は濡れた唇を戦慄かせるだけだ。無理もない。何しろ両手両足を縛られた不自由な状態での奉仕などしたことがないのだから。まるで滑皮の性欲処理機
のように弄ばれ、只でさえ高いプライドを根こそぎ破壊し尽くされるような屈辱に脳を蝕まれていく。
それでも何とか頑張ろうと口を開け、眼隠しで見えないにも関わらず、勘を頼りに滑皮の股間に再び近づく。たまたま運が良かったのか悪かったのか、丑嶋の鼻先に滑
皮の性器が来た。
「うっ」
唾液とカウパーと泌尿器の役割も持つ性器独特のアンモニア臭がし、丑嶋は開いていた口を固く閉じた。改めてしゃぶろうにも、強すぎる雄の匂いに躊躇してしまうの
はいたしかたが無かった。
「オラ、咥えろって。出来ねェなら手伝ってやるよ」
丑嶋が躊躇して形の良い唇を怒りで戦慄かせるほど滑皮の気持ちは猛り狂う。滑皮は丑嶋の頭を掴むと、唇めがけて性器を突きたてた。
「うぐぐっ、むぐっ」
容赦なく性器をぶち込み、力任せに頭を前後に揺すってやる。最初は丑嶋に屈辱を与える為に強制的に咥えさせたのだが、ぷっくり艶やかな唇の間を血管が浮いたグロ
テスクな性器が行き来するのが見ごたえがあり、濃密な唾液に濡れた口内の粘膜が柔らかく、かつぴったりと吸い付くように絡みついて来るのが気持ちよく、止められな
いほど夢中になってしまう。
リズムもタイミングも無茶苦茶に顔を動かせ、咥えさせる時はより深く深くを目指す。長大な竿は立派すぎて根元まではねじ込めないが、それでもしっとりとした丑嶋
の口内の粘膜で擦られると声が漏れるような快楽がくる。
「いいぞ!もっとだ、もっと口をすぼめて吸うんだ。うっ、はぁっ、あ、出るぞ!うおおっ、おっ!」
仰向けに寝かせられた丑嶋の頭は滑皮が激しく振るのでベッドにガンガンと打ちつけられている。もしこれが大げさな程フカフカなマットレスが敷かれたベッドでなけ
れば、怪我をしていたに違いない。
「んんんっ!んっ!」
一際丑嶋の頭をベッドに強く打ち付け、滑皮が喉の奥で苦い粘液を炸裂させた。
「ふううううっ、出た・・・」
放尿した時のように腰をブルリと震わせ、滑皮は性器をゆっくりと引き抜いた。時々歯が当たって痛かった。
「うっ、うっ、う・・・っ」
やっと終わった、と丑嶋は体の力を抜き、空気を求めて口を開いた。
「うぐっ?!」
ところが喉に張り付いた大量の白濁はまるでゼリーのように粘っこく、気管を塞いでいる。呼吸をしようにも喉にある精液を呑み込まないと出来ない。苦しい、苦しい
と丑嶋は縛られた体を揺り動かす。だがそんなことで喉の奥に張り付いている精液がなくなるわけでもない。
「むぅ・・・、ぐっ」
ホテルの一室で縛られて、誰だか分らぬ男の精液で窒息なんて死に方は嫌だ。嫌悪感以外の何もないが、死ぬよりはマシと覚悟を決め、丑嶋は口内に大量に溜まった唾
液と一緒に喉に張り付いた精液を飲みほした。濃い精液はアク抜きしていない野菜の汁のようで飲み込みずらい。それに粘度が高いので、飲み込んでも食道のどこを通っ
ているのかが分かった。
「うげっ、げぇっ」
全てを飲み込むと、やっと息が出来た。同時に吐き気が込み上げ、空ゲップが出た。口からは濃い精液の匂いがまだ漂っていて、飲みこんで口の中に無くなっても、体
の中に入ってしまったんだという事実は覆せない。屈辱感と敗北感に打ちのめされ、丑嶋は眼隠しの下の眼をギュッと閉じた。腫れあがった瞼が目隠しの皮と擦れて痛かっ
た。
「よし、偉いぞ。飲んだじゃねェか」
苦しそうに喘ぐ丑嶋と違い、取り敢えずの性欲を満たした滑皮は落ち着きを取り戻した。
「じゃあ、約束通り取ってやるか」
滑皮は広げられた丑嶋の股間に手を伸ばす。さて外してやろうとコックリングに触ろうとしたが、気紛れを起して性器の上の陰毛の茂みに指を埋めた。それなりに黒々
としているが、太くもなく、縮れも激しくない。どこか上品な印象を受ける。
「ふぅん・・・」
艶やかで触り心地の良い茂みを撫で、滑皮は溜息を洩らした。
念入りに撫でると、近い皮膚を引っ張られるせいか、縛られた哀れな陰茎がヒクヒク震える。滑皮はその反応が気に入り、何度も茂みを撫でる。手を肌に沿って上下に
動かす。毛の流れに沿って手を動かすとツルリと滑る。反対に毛の流れに逆らって手を動かすと皮膚と毛が擦れ合う音がする。
「変なところ触るなっ。もう・・・、下の外せよ!」
丑嶋は恥辱に身悶えしながら言葉を搾りだした。茂みを撫でられる快楽に改めて股間周辺のむず痒さを感じた。
相手をいかせることに集中して忘れていたが、性器の感覚が先程から殆どない。このままでは、滑皮が言っていたように使い物にならなくなると言う事も起こり得る。
流石の丑嶋にも緊張感が生まれた。
「おう。じゃあ取ってやるか」
滑皮は丑嶋の性器に指を絡めた。性器はすっかり冷たくなって、心なしか青くなっている。だが相変わらず血管は浮き出ていて、はち切れんばかりに猛々しく勃起して
いる。コックリングを外せばすぐに射精しそうだ。血流も戻り、色だって綺麗な色になるだろう。
しかし、何か物足りない。どうせここまで追い詰めたのだから、更に丑嶋の体を辱めたい。滑皮の欲望は止まるところを知らない。何か楽しいことはないか、と茂みを
撫でながら物想いに耽る。
「・・・よし」
滑皮の顔が不気味な笑顔に豹変する。
まずは茂みに潜り込ませた指に陰毛を纏わり付かせて絡めとる。少し引っ張っても陰毛が指の谷間からすり抜けていかないように掴んでやる。
「外すぞ」
滑皮は笑顔を顔に浮かべたままで、ついに丑嶋の性器を刺激しつつも拘束しているコックリングの留め金に手を掛ける。
留め金のストッパーを外そうとすると、丑嶋がホッと安心したような溜息を洩らした。その瞬間を逃さずに陰毛を絡めたまま手を力強く引く。同時にストッパーを外し、
コックリングを外した。
「・・・っ?!」
強い力で引かれた陰毛は皮膚から無理やり引き抜かれた。敏感な肌ゆえに大量の陰毛を抜かれると激痛がはしった。体が痛みでビクリと大きく震える。だが、痛みを耐
える暇もなく、コックリングが外されたことで強烈な射精感も襲いかかる。
「んんっ!んっ!」
痛みは何よりの大きな刺激となり、やがてせき止められない射精の快楽と混じり合う。体は暴れているように痙攣し、ベッドは悲鳴を上げる。その瞬間、丑嶋は確かに
陰毛を引き抜かれる痛みという刺激で射精した。どす黒い汚らわしい屈辱と痛み、それに限界まで止めていた快楽が交差するなかで味わう射精は、丑嶋が今まで感じたこ
とのない恐怖に似た絶頂だった。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
題名上の3/9が2回ありますが間違えました。二つ目の3/9は正確には4/9です。
あと2回で終わります。それでは続きは間を開けてまた今度の機会に・・・。
491KB
>>425 原作も映画も知らないけど、ほのぼの萌えた!
冬ならではのネタ、かわいいです。
>>427 社長でSMプレイとか(801攻的に)男の夢すぎる!心底滑皮さんになりたいですw
続きを首を長くしてココティンフルオッキでお待ちしております!
>>425 きれいなお兄さんの何気ない行動に翻弄される血場が愛しいです
血場は手を出したくても出せなくてぐるぐるしてそうですね
この2人大好きです
>>413-415 亀だが乙です!
15分延長してこれらの場面を追加したらどうだろう富士テレ美よw
次スレ立ててくる
駄目だった。誰かよろしく
___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
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| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
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(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板61
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1287207773/ ローカルルールの説明、およびテンプレは
>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
443 :
風と木の名無しさん:2010/11/12(金) 14:34:28 ID:X/HZkw5M0
シロートが弾みでごめんなさい、
どなたかテンプレ続きお願いできませんか
もうしませんので許してくださいごめんなさい
百年ロムってきますうわあああん
>>442,444
乙です
テンプレ残り1枚貼ってきたんで安心しる >444
>>443 こういうのは初めてか まあ尻の力を抜けよ乙
445さんありがとうございました
皆さんもありがとうございました
はー久々にどきどきした
>>443乙です
>>427以前に滑丑読みたいとレスした者です
社長にこんなけしからん辱しめをするなんて
滑皮さんドSです!
これからも社長受を書いて下さい
ありがとうございました
>>443さんとテンプレ貼り姐さん乙でした
埋めついでに遅レススマソ
>>261 萌えたよ〜GJ!
ROMに戻るなんて言わないで、続きあれば待ってます!
あまりにもしょうもない作品なため残り4KBをお借りしてでこっそり投下します。
●もしも何処喪のCMをキムと空沢でやったら●
僕の事を木村宅屋という人がいますが、とんでもない。携帯です、彼の。
「ぴぴぴぴっぴぴぴぴっ」
いつもなんですけど、起きないんですよねー彼。
「ぐー」
「ぴぴぴぴっぴぴぴぴっ」
何度も何度もピーピー言ってるのに、起きない。
「ぐー」
もう息が続かねーよ。ったく、しょうがねぇなぁ。
「ぴぴぴぴっ……フッ」
「ぅわっ!」
「いってきまー…」
「今日雨降るから傘持ってって。」
「降水確率80%かー」
「はいストップ―」
「うわ、なんだよおい、このバス乗らないと…」
「今日この先交通規制で大渋滞してんの。地下鉄で行こう」
「まじかよ。あぶねぇ」
「ぶーんぶーん」
「はい空沢です。」
「…彼氏?」
「は?ちげーよ」
「ほんとにぃ?」
「ていうか無いだろこの展開。」
一人と、ヒトツ 何処喪
…お粗末さまでした。色々ありがとうございます。
♪ ♪
ヘ⌒ フヘ⌒ フヘ⌒ フヘ⌒ フヘ⌒ フヘ⌒ フ ♪
( ・ω・) ・ω・) ・ω・) ・ω・) ・ω・) ・ω・)
(っ )っ )っ )っ )っ )っ )っ
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土土土土||___(´∀`,,)⌒''っ 土||:::::|
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 ̄|il|l ̄( ̄ ̄ ̄ ̄|llii| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|ill| ̄´
==|lii|==,r'⌒∧∧=|lill|==========|lil|,w,vw,,_,w,vv,,,v,,,,_,,,v_,ww,,v,,_,,v,,
:,;(:;.:)ιへ(;゚Д゚)っ;:).,.,;:.,vv;:v;:,.,('::;:).,.,.;,;y,:w;.,;:.,;y.;,.vvw,;.,;v,.,;.,,.,;.,;,.:;
:;,::wv::v:wv::;,ヽ)::.,:.:;,;,;:,.:ww;,.:;,.;.,yw:;.:;,.vw;:,v,,;;:.,vw;.;,.;.,;.,;v:.,;:.,;:.,;.,;.,:;,
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○○・ω・´) (`・ω・´)∩ ∩(`・ω・´) ''─--‐| (`・ω・´)∩
ヽヽ` ヽ'´) ⊂ r ' '-、 つ ⊂ /
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