( ^ω^)が神をぶっ飛ばすようです

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1 ◆EYa/H5FhY2
我 の 拳 は 神 の 息 吹 !!

" 堕 ち た る 種 子 " を 開 花 さ せ、

秘 め た る 力 つ む ぎ 出 す !!
                            __
                      λ     ̄\_`"〜、、      以前までのまとめ(7xさん)
                     从ノi         )__  `"〜、、   ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/boon_god_slayer.html
                   (,,,,,,,ノ          )__    `"〜、、
                          __  (\  ⌒`)_   `"〜、     从
                          ヽ__\ \\ __ )      )    (ノ
                           __\\_| |\ //      )
                       从   \ ̄ > ´ ヽ|/)      イ 从
                    )\ノ  ヾ  _\(_ (⌒_/)  /  /   人,,从
               、---------------(iiゝ二> `⌒ / ^)   / ノ    ノ )ν
                `"〜、、           _/   <  ^)   /       / (、 
                 (   `)        (  y(、 L/ フ /   (     ( ヽ \
                  )    ⌒)//⌒)  __> /.ヽ-、\_ フ/         ) ヽ(
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄/(ノ   ノ⌒  ̄ . ̄`ヽ(___/    (___)  ̄  ̄  ̄ ̄ /(ノ    ) ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             /(ノ  ノ⌒   三三三三三三三三三三三三      /(ノ    ノ⌒
             ν⌒   三三三三三三三三三三三三三三    /(ノ   ノ⌒
                 三三三三三三三三三三三三三三三   ノ  ノ⌒
               三三三三三三三三三三三三三三三     ν⌒
                 三三三三三三三三三三三三三三三

 世 界 に 3 月 が や っ て く る
2 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:30:56.48 ID:KgM3BvdQ0
「…………」

深く、深く。
ただずっと、俺は漂っていた。
この仄暗い世界で、何をするでもなく、抵抗するでもなく。
ただ体は形を持たなかった。
さながら魂という奴だろうか。
ともかく、意志だけの存在は、ただずっとこの中で漂い続けていた。

「じゃ、先に行かせてもらうぜ」

時折、俺を使う時があった。
いや、正確には俺達を、だろう。
けれども別の何かが邪魔をしては彼を傷つけ、そして俺を押さえつけ。
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:30:59.28 ID:wRTBbg9/O
支援
4 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:33:03.62 ID:KgM3BvdQ0
「約束……」

ふと奴の顔がよぎる。
最後にあいつとかわした約束を、俺は忘れたりはしない。
分かっている。
今、行こう。
彼は今絶体絶命の危機。
俺を押さえつける柵は少し前に解き放たれた。

少しずつ、自分の形を思い出していく。
皆と共にいた俺の姿を思い描いていく。
記憶の欠片を紡ぎ合わせていく。
声を取り戻す。
その手に剣を掴む。

「さあ――」

目を開く。
まるで俺を包み込むようにして、世界が解き放たれた。
体は宙に浮いていた。
下を見下ろす。
彼と、見おぼえのある奴がいた。
傍には女性がいて、必死でもがいている。
5 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:37:43.90 ID:KgM3BvdQ0
自分の身体を見る。
どこかまだ不安定だった。
暮れなずむ、この夕日に染まる空に溶け込むように、俺は透明だった。
ふと思う。
まだ何か足りないのだろうか。
そう考えいたり、俺は漸く腰に携える剣に気づいた。

ああ、そうか。そうだな。
俺の存在はお前無くしてはあり得ないのだから。
柄に手を伸ばし、一気に引きぬく。
シャリン、と美しい旋律が響いて、その瞬間、俺はこの世界に形をもった。

「――今、約束を果たすぜ」

パキパキと音が断続的に続く。
俺を構成する音だろう。
けれど俺は完全を成すことを待たない。
それは約束のため。あいつとかわした約束のため。

(;;;・∀・)「ひろゆき」

俺は今、世界に立った。
 
act2; The proof of the Sword Oath
 
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:39:07.31 ID:8BcjxhThO
超久しぶりっすね
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:39:37.29 ID:QKIZaPpyO
待ってたぜ!
しえん
8 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:40:36.73 ID:KgM3BvdQ0
(  ゚¥゚)「――――」

現れたそいつは、ただ断ち切った。
その手に持つ、輝く剣で黒の質量を断ち切った。

ξ;゚::::゚)ξ「――――」

ただ、突然に空から落ちてきたそいつは。
彼を、ひろゆきの子を苦しめるそれを切り。
まるで守護するように、偽モナーの前に立ちはだかる。

女王の眼に、それは美しく見えた。
光輝く黄金の鞘が、まるで生命の息吹のように光を放ち。
手に構える剣はまるで水面の如く澄んでいた。
そんな彼を、女王は一目見て理解した。
彼は、騎士なのだ、と。
彼を、ブーンを守る騎士なのだろう、と。

(  ゚¥゚)「……参りましたねえ」

偽モナーが、ようやく口を開いた。

(  ゚¥゚)「まるで漫画や小説のような展開じゃあないですか」

(  ゚¥゚)「そう、思いませんか?」
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:43:27.65 ID:+IAPGlSnO
初遭遇wktk支援!
10 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:44:29.00 ID:KgM3BvdQ0
やれやれ、と首を振り、その彼に問いかける。

(  ゚¥゚)「黒マララー」

(;;;・∀・)「…………」

浅黒い肌をした、鎧に身を包んだ男だった。
その澄んだ瞳はまるで全てを見通しているようで。
身に纏う金銀細工で加工された鎧からは気品が漂う。
腰と背に一本ずつ剣を携え。
そしてその手に剣を。

(;;;・∀・)「久し振りの外で、よもや手前の面を拝むとは思わなんだよ」

ふいに彼―黒マララー ―が後ろに視線を向ける。
そこには地に伏せるブーンの姿があった。

(  ω )「…………」

(;;;・∀・)「……まあ、手前ほどでもなきゃここまで追い込むのは無理だわな」
11 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:47:37.65 ID:KgM3BvdQ0
どうやらこの男と偽モナーはお互いをよく知っているようである。
黒マララーと呼ばれた男は、その眉間に皺をよせ偽モナーを睨みつける。
どこかその眼には怒りの色が含まれていた。

(  ゚¥゚)「…………」

(;;;・∀・)「…………」

しばし睨みあう。
しかし睨みあっているだけではない。
お互い、機をうかがっているのだ。
先手、後手、どのように動くか。相手の行動を予測など。
様々な思考が頭の中で起きては、また新たなものがそれに加算されていく。
両者とも、ただならぬ雰囲気である。

ξ;゚::::゚)ξ(…………)

そしてツンは、この目の前にする二人は戦いのプロなのだと実感する。
一体、どちらが先に動くのだろうか。
そして、どちらがそれをいなし、避け、反撃するのだろうか。
自分の置かれている状況すら忘れて、純粋にツンはそう思った。
まるで見世物でも見ているかのようにドキドキと胸が鳴る。
興奮だ。
あのブーンを一瞬で戦闘不能にした偽モナーの実力のほどを知れる。
そして突然現れた得体も知れぬこの男も、また尋常な人間ではないと肌で感じていた。
どっちが。

ξ゚::::゚)ξ(どっちが強いのかしら……)
12 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:52:00.38 ID:KgM3BvdQ0
と、そこまで考えてハッとする。
何を馬鹿な事を。
今はそんな状況ではないと言うのに。

(  ゚¥゚)「…………」

( -¥-)「……よしましょう」

そしてあまりにも意外な言葉が、意外な人物の口から出た。
対峙していた黒モララーまでも、その目を点にしてたじろいでいる。

(;;;・∀・)「ま、こっちとしてはそうしてもらえると有難いけどな」

(  ゚¥゚)「よくもまあ言えますね。私が勝てるわけもない勝負をするとでも?」

(;;;・∀・)「しないだろうな。こっちとしては時間の無駄と面倒事が消えて何よりだ」

黒マララーは相手に敵意がなくなったのを知ると、その剣を隣にいる
ツンに向けて振るう。
ザン、と気味の良い音がし、ツンを縛る黒の質量はあっさりと断ち切られた。

ξ;゚听)ξ「っぷはぁ!」

自由になった身で体を適当に動かす。
ツンは支障がないと分かるとすっくと立ち上がり、視線を偽モナーへ向ける。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:53:32.83 ID:a0R4ZDjN0
支援
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:55:06.82 ID:KT7MCNLcO
支援
15 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:55:19.74 ID:KgM3BvdQ0
ξ゚听)ξ「……そっちが引くってんなら、今回は見逃してあげるわよ。
      いい?決して戦力が足りないとかそんなんじゃないんだからね」

ツン、強がるのもいいが自分は頑張りました、といいたげな発言は止めておくことだ。
まるで歯が立たなかった分、惨めなだけである。

(  ゚¥゚)「ま、次にもしもあった時は……」

すっと偽モナーが背を向ける。

(  ゚¥゚)「――しかし」

彼を覆うように現れた黒の何かが、完全に彼を覆う寸前。

(  ゚¥゚)「これは重大なミスを犯してしまったものだ。黒マララー、君がまだ存在しているということは、
      ブーンはまだ生きているのでしょう?」

(;;;・∀・)「ああ」

(  ゚¥゚)「これは困った。ああ、後が怖いですね」

(;;;・∀・)「偽モナー」

偽モナーが完全に消える寸前。
黒マララーが彼に問いかける。
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:56:01.88 ID:a0R4ZDjN0
支援
17 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 19:58:29.87 ID:KgM3BvdQ0
(;;;・∀・)「こいつを殺そうとしたのは、お前の意思か?それとも、神の意思か?」

黒マララーがブーンを指さして問う。
しかし偽モナーは。黒に飲み込まれる寸前、その目を細めて、こうつぶやいた。

( -¥-)「……さあ?」

それを最後に、黒が完全に消滅する。
それと同時に偽モナーも姿を消してしまった。
戦闘が終わりを―始まっていたのだろうか?―告げ、先までの景色へと戻る。
さあ、と夕凪が水面に波紋を起こし、静けさが訪れた。

ξ;゚听)ξ「あ、あのぉ」

それが数秒続き、立ちすくむツンはようやっと恐る恐る、黒マララーに話しかける。
隣に立つ黒マララーは、一度ため息をつくと面倒臭そうにつぶやいた。

(;;;-∀-)「とりあえず、こいつを運ぼう」
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 19:59:54.09 ID:a0R4ZDjN0
支援
19 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:01:16.84 ID:KgM3BvdQ0
 

 
夜。フォックス大聖堂内スター本堂。
ステンドグラスが、まるで透き通るように月明かりにより色を床に射す。
安らかな空気が流れていた。
さながら、安堵できる空間というべきだろうか。
誰もいない本堂を一人、彼は歩く。
なかなかに古い作りだからか、床が歩くたびにギシギシと鳴り響く。
匂いがする。日に照らされ続けた木々の香りだ。
そうか、落ち着くのはこれのせいだからか、と彼はようやく合点した。
しかしまあ。
彼は祭壇に上りつめてステンドグラス越しに夜空を仰ぐ。
久々のこっちは、大して変わりがないように見えて、しっかりと変わるものは変わっていた。

(;;;・∀・)「そう思わないか?三月、クー、モナー」

音もしないが、それでも彼には堂内に彼らがいると理解できていた。
視線を上から下へと戻す。
すると、そこには彼にとっては懐かしの面々がいた。
20 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:03:49.48 ID:KgM3BvdQ0
(メ._,)「時代と。いや、時と共に人も、世界も移ろいゆくものだ」

相変わらず、その身には闇夜とも思わせるロングコートに、鋭い赤目が黒マララーを見つめた。
唯一新鮮味を感じることと言ったら、その右目に走る刀傷だろうか。

( ´∀`)「その点、君は何も変わらずだモナね。黒マララー」

そしてこちらも変わらず、草臥れた感じの中年オヤジが立っている。

(;;;・∀・)「お前らがいえた口かよ?」

( ´∀`)「モナモナ。確かにモナ」

やっぱり、変わっていないな。と黒マララーは思い、くすりと笑う。

川 ゙ -゙)「ああ。結局あの時に全て変わり終えていたんだ。あの事件の日に、世界の何もかもがな」

(;;;・∀・)「……クー」

三月ウサギに抱きかかえられ、懐かしい声が届く。
そこには見るも無残な少女の姿があった。
最後に覚えているのは、確かにそうなった瞬間だ。
しかし、彼らの体をもってしても、失ったものというのは取り戻せないのか。
何とも難儀な人種だ。
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:04:57.22 ID:a0R4ZDjN0
支援
22 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:06:22.31 ID:KgM3BvdQ0
川 ゙ー゙)「何、そう悲観な声で名を呼ぶな。これでも生きていけるものだ」

と、クーがニッコリと頬を釣り上げて笑う。
それを見て、黒マララーは余計な心配だったかとため息をついた。

(メ._,)「さて、感動の再会も、もういいとしよう」

なんとなく、全員が納得した空気になったとき、三月ウサギが場を仕切った。

(;;;・∀・)「……そうだな」

一度、黒マララーが深呼吸する。
きっと、これから先のことを考えてのことだ。
どうせ質問攻めにでもあうのだろう。
生憎、この男は物事を考えたり、考えて発言するといったことが苦手である。
まあ、そのことは追々分かるだろう。

(メ._,)「黒マララー。何故今まで姿を現さなかった」

最初の質問からこれか。
まあ、構わないだろう。

(;;;・∀・)「簡単に説明すると、出てこれなかった。やっぱ二つも能力があるとお互い鬩ぎ合って微妙になっちまうんだよ」
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:06:45.84 ID:a0R4ZDjN0
支援
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:08:57.81 ID:QKIZaPpyO
試演
25 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:09:11.95 ID:KgM3BvdQ0
(メ._,)「というと?」

(;;;・∀・)「ほら。あいつには剣を召喚する能力なんかないだろ。あるのは浸透化だけだ。
      なのになぜかあいつは剣の所有者は召喚せず、剣だけを召喚できていた。
      そこんとこはよくわからんが、用は元々あった能力に邪魔されて出れなかったってことだろう」

その返答に、三月ウサギは納得したような、しかしまだ聞きたいことがあると言った顔をする。
しかし黒マララーの面倒くさそうな顔を見て、そうか、とだけ言った。

( ´∀`)「んじゃモナからも。何故君『一人』だけモナ?」

その質問に黒マララーが苦い表情をする。

(;;-∀-)「あー。たぶん体力がないからだろ。薄々感じてたが、あいつ最近異能者に何かされたんじゃないか?
      大方負けたんだろうが、その時に敵の能力で体力の大幅な量をとられたっつーか消されたっつーか?」

( ´∀`)「モナ。つい少し前に。その点については三月が」

(メ._,)「うむ。削除の能力を持つ異能者に『浸透化』の能力と体力の半分以上を削除されている」

(;;;・∀・)「やっぱな。通りで俺が今いるのもそのお陰だ。募るところ、あいつには今俺達の能力オンリーだってことだろ?
      ……まあ、俺達というか、俺なんだが」

ああ、そういえば、と黒マララーが手をポンと叩いた。
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:10:18.94 ID:a0R4ZDjN0
支援
27 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:12:44.74 ID:KgM3BvdQ0
(;;;・∀・)「……その時に―ブーンの前能力と体力を消されたとき―ネーノを殺したのは誰だ?」

川 ゙ -゙)「……そうか、あいつ、殺されてしまったんだな」

(;;;・∀・)「ああ。三月、誰か分かるか?」

(メ._,)「……ロマネスクだ。覚えているか?」

その名前を聞き、黒マララーが少し驚く。

(;;・∀・)「神の子が?どういうことだ。何であいつが……」

(メ._,)「詳しいことは追々話そう。とにかく、あいつは神側に変わりはない」

(;;-∀-)「くそっ。まったく、たった十年でわけのわからんことになりやがって」

川 ゙ -゙)「兎に角だ。体力の関係上、お前一人しか召喚できないんだな?」

(;;;・∀・)「現段階はな。まあ、他の奴らを出せるだけの体力があるかは謎だがな」

( ´∀`)「モナモナ。こっちは頼りにしてるモナよ、『円卓の騎士』さん」
28 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:15:14.27 ID:KgM3BvdQ0
そう言われると、黒マララーはどこかむず痒くなった。
円卓の騎士。そう呼ばれるのも久々だ。

(;;;-∀-)「はっ、まかしとけよ。話はもういいか?」

(メ._,)「ああ。一応必要最低限の事は理解した。お前も久しぶりのこっちで疲れてるだろう、もういいぞ」

(;;;・∀・)「はいよ。んじゃ、お先に失礼」

ばっと腰かけていた祭壇を飛び降りると、彼らを横切って扉を開け放つ。
そういや、ここは本堂だったんだな。
何とも似つかわしくない場所だ、と黒マララーは思う。

(;;;・∀・)「神、か」

しかし、神とは死なない存在だと思っていたが。
そう、扉の上に打ち付けられた神の像を見て思った。
29 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:18:57.68 ID:KgM3BvdQ0
 

 
今より、少し前。
少しといっても、人によりけりだ。
歳老いた人間から見れば、それはほんの少しに感じるだろうし、その年の近くに生まれた人は昔というだろう。
今より、数えて二十年前。
世界に存在する全生物の頭の中に、何かが起きた。
それは、聖書などに言われるお告げと言おうか。
ともかく、何かが頭の中に流れ込んできたのだ。
 
『神が舞い降りた』と。
 
それを、誰もが信じて疑わなかった。
それを事実だと認めるしかないからだ。
何故と思うだろう。
しかし、仕方がないことなのだ。
何故なら同時刻、全人類、全生物界同時に起きたことなのだから。
だから彼ら―世界―は認めた。
神がこの世に、現世に現れたと。
30 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:20:33.40 ID:KgM3BvdQ0
それと同時に、三人に一人の割合で、とある力が備わった。
ある者は火を。ある者は水を。またある者は風を操ることができるようになった。
中には物を移動させたり、瞬間移動といったことができるようになる者も出てきた。
そんな人々を、彼ら―世界―は異能者と呼んだ。
そして、神に選ばれた者だとも。

しかし異能者以外にも、全人類に変化が起きていた。
できるのだ。
全て、一人で。
何故かは知らない。
しかし、これもまた全員当然だと思った。
事実になってしまったのだから、仕方がなかった。
それまでできなかった料理も、何故か一流レストランほどの代物を。
手を傷だらけにさせていたはずの裁縫すら数分と立たずにできる。
ともかく、人類は全知とはいかなくも、全能となった。
ある程度の事―いや、むしろ大概である―が一人でできるようになっていたのだ。

そうすると、そのうち誰もがこう思いだした。
 
『他人と干渉しなくてもよいのでは』
 
そう考える人間は、増えていった。
恋愛感情や性的欲求は別としてだが、しかしそれすらも少しして薄れていった。
31 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:21:53.27 ID:KgM3BvdQ0
そのうち人類の数が減っていった。
四十六億人が四十五億人に。その次の年は一億減り、その次の年にはまた一億減り。
流石に目を瞑ることはできなかったのか、誰もが生物の全滅を危惧して子孫を残す事に努めた。
しかし。
神が現れて二十年の年月がたった今。
世界全人口、凡そ三十億人。
何故かはわからない。だが、誰もが原因を理解している。
 
『今までは誰かといなければ何かをすることは不完全だった。しかし、今は一人で全てできる。
 だから他人と干渉する必要も、関心といったものを得る必要はない』
 
結局、人類は大衆を捨てて個人を取ることに決めたのである。
まあ、そう思わず、できる限り人間らしい生き方をしようとする者も多い。
が、結局はそう言った人間は非難を受け、そのうち姿を消していった。
 
『神は素晴らしい。人間を、生物をここまで進化させた神は偉大だ。
 神は我らが父だ。神を崇めよう。感謝や祈りをこめて』
 
そしてたどり着いた答え。いや、最早神が現れてからその答えは変わることはない。
それこそが『神最高主義』。
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:22:11.19 ID:cIlwXxr60
これ好きだ
支援
33 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:25:01.40 ID:KgM3BvdQ0
( ^ω^)「はーあぁ……」

ブーンは一人、深いため息をついた。
彼が今体を預けているのは一か月前から失礼させてもらっている病院のベッドである。

結局、ブーンは生きていた。
彼自身、目覚めた瞬間はまさしく生きた心地などしもしなかったのだが。
ベッドで夕日を肌に感じていると、彼はまだ、自分は死んでいないのだと実感した。

目覚めてから今に至るまで、あの後のことは何も覚えていない。
ただ当事者たるツンに話を聞こうにも彼女の姿は見えなかった。
生きている、ということは、つまり奴―偽モナー ―を退けたということだろう。
もしくは――殺したか。
が、それは考えにくい。
あの時、確かにブーンは自身では歯が立たず、戦闘不能まで追いやられているのをしかと覚えていたし、
ツンなどは能力を封じられていた。
なら、あの状況からどうやったらこうなるのだろう。
そう考えて、浮かんだのが第三者。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:25:12.45 ID:a0R4ZDjN0
支援
35 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:27:29.99 ID:KgM3BvdQ0
( ^ω^)(一体誰が……)

よほどの実力者なのだろう。
何せあの偽モナーを相手にできるというのだから。
世界管理委員会の誰かだろうか?
だとしても何故顔をみせに来ないのだろう。
VIPPERSの誰かだろうか?
それも考えにくい。失礼だがあの中でそれほどの実力の持ち主がいるとは思いにくい。
一瞬、ドクオの顔が頭を過るが、ブーンを助けるような奴だとは思えなかった。

( ^ω^)「おっ、どーぞ」

コンコン、とノックの音が響き、彼は思考を中断する。
こんな夜更けに誰だろうか、と思いながらも、どうせ知った顔だろうと思った。
願わくば、ツンに来てもらいたかったのだが――

(;;;・∀・)「よお」

現れたソイツを、ブーンは、知らなかった。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:27:49.73 ID:a0R4ZDjN0
支援
37 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:31:00.61 ID:krSCVWU30
( ^ω^)「……?失礼ですけど部屋間違えてませんかお?」

浅黒い肌に、くりっとした幼さが残る黒眼。
その見た目から、この月明かりのみが照らす病室では姿がとらえにくかった。

ブーンのその発言に、男―黒マララー ―は大げさに肩を落とすしぐさをした。
頭の中がクエスチョンで埋まり切るブーンには、理解しがたかった。

(;;;・∀・)「そうだな。お前とちゃんと顔を合わせるのは、初めて……いや、二度目だしな」

カツカツと、足音がだんだんとブーンのベッドに近づいてくる。
ブーンは訳が分からぬも、身がまえた。

( ^ω^)「誰だお、あんた。神機関の刺客かお?」

ついに二人の距離がbよりも狭まったとき、ブーンはそう言う。
一瞬、男の表情に悲しみの色が見えたが、気にしないことにした。

(;;;・∀・)「ブーン。ひろゆきの子よ」

そしてその口上は、突然始まった。
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:32:21.53 ID:a0R4ZDjN0
支援
39 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:34:06.70 ID:L0z6lw2b0
(;;;・∀・)「俺の名は黒マララー。かつてひろゆきに仕えし『円卓の騎士』が一人」

発言に戸惑う。
何と言った、コイツは。
ひろゆきに、父に仕えていた?
いや、嘘だ。彼の記憶にコイツの姿はない。
クー達からもこんな奴がいたという話は聞いたことがない。
それに、『円卓の騎士』だって?
待て、それならば尚更だ。
ブーンはこいつを、知らない。
VIPPERSに、こんな奴はいなかった。

( ^ω^)「訳が分からん。知った情報でいい加減なことを抜かすなお」

ブーンは目の前にいる男をまったく信用していなかった。
その言ってることも尚更、父の名を使った男に軽蔑すら抱いていた。
よくもまあぬけぬけと。彼が覚えていないということは嘘に決まっている。
そうブーンは思っていた。

(;;;・∀・)「……信用していないな、お前」

( ^ω^)「勿論。お前なんか見たことすらねーお」
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:34:53.31 ID:a0R4ZDjN0
支援
41 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:36:35.85 ID:L0z6lw2b0
( ^ω^)「勿論。お前なんか見たことすらねーお」

一瞬、黒マララーが覚えていないのか、と残念そうな顔をしたが、ブーンは釣られることはなかった。
ただ、芸の細かい奴だな程度にしか感想を抱かない。

(;;;-∀-)「――仕方ねえ」

ついに、ブーンは目の前の男が襲ってくるものだと勘違いした。
というのも、男は背に携える剣を引き抜いたのだから。
慌ててブーンはベッドの上に立ち上がり、能力を発動―体力がよほど無いのか、剣の召喚数三本―する。
ジャキ、とお互い剣先を相手に向けたままの状態で制止する。

(;^ω^)「ほら見ろお!やっぱ襲う気まんまんじゃねーかお!」

激昂してブーンが叫び散らす。
当然だ、あれだけ自分は仲間ですよと言っていたようなもんにもかかわらず、相手に剣を向けるなど。

(;;;・∀・)「ちげーよ」

しかし、黒マララーは、静かに、落ち着いてそう言い返す。
何だ、とブーンは疑問を抱く。
この妙な自信と、真剣なまなざしは。
何を訴えていると言うのだ。
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:37:07.98 ID:a0R4ZDjN0
支援
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:37:19.06 ID:iPBivtArO
あ、こっちね
スレタイでコール!と間違えるんだよな
支援
44 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:39:28.17 ID:L0z6lw2b0
ブーンは戸惑う。
が、少し、その剣に妙な違和感のようなものを感じる。
何故だろうか。

懐かしい気が、した。

( ゚ω゚)「――!?」

そして、『ソレ』に、気づいたのだ。

(;;;・∀・)「……この剣の名は、エクスカリヴァー」

まるで硝子細工のように透き通るその剣。
月光を帯びて、少し白味がかかっている。
丁度、剣の中心に、文字が走っていた。
持ち主が彫ったのだろうか。
それとも、元々彫ってあったのだろうか。

(;;;・∀・)「かつて、管理王ひろゆきが使用していた剣だ」

『管理王 ひろゆき』

見慣れぬ表記で、そう、剣の腹辺りに彫りこまれていた。
しかしブーンは知っていた。
この筆跡―字体―は、あの人しかかけないと。
父しか、書けないと。
45 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:40:47.82 ID:L0z6lw2b0
 
『ん?これ?ああ、大分昔の字体なんです。たぶん俺くらいしか書けないです』
 
(;゚ω゚)「おま、おま、え、は」

だが。
だが、ブーンは知らない。
この眼の前にする男の名も、正体も。

(;;;-∀-)「ならば、改めて名乗らせてもらおうか」

すっと、ベッドの上で立ち尽くすブーンを前に、方膝をつき、頭を下げる。

(;;;・∀・)「俺の名は黒マララー。かつてひろゆきを守護せし『円卓の騎士』が一人。
      彼との約束を果たすため、今、貴様の前に現れた」

すっ、と顔を上げ。

(;;;・∀・)「問おう。貴様が俺のマスターだな?」
 
 
act2; end
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:40:54.78 ID:a0R4ZDjN0
支援
47 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:41:56.67 ID:L0z6lw2b0
本日は此処まで。支援並びに見てくれた人ありがとう
予想よりもだいぶ遅くなった。三月中盤にやろうと思ってたのにもう終わる・・・

質問とかあったらどーぞ
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:42:29.90 ID:a0R4ZDjN0
乙!終わりか?
49 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:43:16.44 ID:L0z6lw2b0
>>48
今日は此処まで
多大な支援に感謝します
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:44:00.04 ID:a0R4ZDjN0
円卓の騎士ってことは12人いるの?
51 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:44:35.61 ID:L0z6lw2b0
>>50
それは秘密

円卓の騎士って実は数が正確なものじゃないらしい
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:45:59.57 ID:a0R4ZDjN0
円卓の騎士と言えばサー・ランスロットだよね。
彼に準じたキャラって出る予定あるかな?
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:46:58.28 ID:IxliZEL3O
体力って肉体的な体力のこと?
54 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:48:23.08 ID:L0z6lw2b0
>>52
どうだろう。実は思いつきでしかキャラだしてなかったり・・・
考えておきますです

>>53
そう。単純な肉体的な体力
今のブーンなら長距離走るのも辛いだろうと思う
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:49:06.28 ID:NBAkJthxO
乙です!
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:49:35.93 ID:a0R4ZDjN0
能力を奪われて体力も…
ってことは能力失効⇒廃人ってことかな?
57 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:50:02.91 ID:L0z6lw2b0
>>56
展開バレになるので禁則事項です
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:51:51.51 ID:QKIZaPpyO
乙です!
次回はいつ頃になりそう?
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:52:16.25 ID:a0R4ZDjN0
思いつく質問はこのあたりかな。
次はいつぐらいを予定してる?
60 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:53:33.01 ID:L0z6lw2b0
>>58-59
うーん、仕事の都合とかもあるけど、できたら来週か再来週かな
自分自身ようやく書きたいとこまで来たからね
しかし社会人でブーン系書いてる人はすごいなと改めて実感させられました
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:54:55.27 ID:a0R4ZDjN0
お疲れ様、読者としては速い方が嬉しいけど
無理しないで自分のペースで進めてください。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 20:56:28.23 ID:QKIZaPpyO
来週か、再来週か了解!
ってか本当に乙です。

作者はセイバー好きですか?
63 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 20:57:58.22 ID:L0z6lw2b0
>>61-62
ありがとう。活力にシフトチェンジしますです

セイバー大好き、といいたいけどアニメしか見た事無い・・・
原作に手を出そうかとも考えたけど金も時間も無かったwww
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 21:00:46.91 ID:QKIZaPpyO
俺は凛派です
時間があったら是非プレイをオススメしとくよ
65 ◆EYa/H5FhY2 :2009/03/28(土) 21:01:49.97 ID:L0z6lw2b0
>>64
ツンデレよりもクーが好きなのだよ俺は

それじゃ、そろそろお暇させていただくです
次回また会おう

                そ し て 3 月 が 終 わ る

                        (\
                       __\\   <ヽ、
                      (__\| | __ \ \ 、
                       __\ | |/  /  |  ヽ、
                       \ (メ._ )/   /   |
                  /フ     \> ノ´<_   /    \、
                  / :|    /cヘ_ノつ フ\_/   \  、>
                / :l\/  (二ゝ二ノ   ノ     \`\
               /  イ      〉  ノ、  /       | ⌒
             /    |      .(  v  ) /        /
            /     /     /^〉 ハ /    /l⌒)/
          /    /⌒ /⌒)/ _/ / ∠____/⌒
         ∠__/⌒)/      (__」 (__)
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 21:06:17.16 ID:a0R4ZDjN0
盛大に乙!!
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/28(土) 21:22:09.06 ID:QKIZaPpyO
乙!次回作期待してます
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
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