1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
没スレより
2 :
ジェラートin抹茶ん ◆GREENTEAnQ :2009/03/12(木) 20:55:12.73 ID:vkM1NX2ZP
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 20:58:08.20 ID:ctFcJim+0
没スレを公開しあうスレより
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 21:08:52.99 ID:z2K+SiakO
ならオイラも一つ……
( ^ω^)風呂屋VIPのようです
古い時間が止まったような町で銭湯を始めたブーンとツン
八百屋のドクオやカフェの店長ショボン、美容師のクーなど常連に支えられ少しずつ町に溶け込む楽しくも暖かい物語
以上の設定をベースに短編を一つ、投下いたします。
短い間ですがよろしくお願いいたします。
ID:z2K+SiakO に感謝!
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 20:59:20.11 ID:ctFcJim+0
手には、蛇の目を
腹には、腹巻を
足には、下駄を
そんな、古臭いものが似つかわしいこの町で、僕たちはお風呂屋さんを営むことになりました。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:01:34.34 ID:ctFcJim+0
( ^ω^)
僕ですか? 僕はブーン。
一年ちょっと前に亡くなった父の遺志を継ぎ、風呂屋VIPを経営することになりました。
お風呂掃除の腕では、右に出るものは無いと自負しています。
ξ゚ー゚)ξ
彼女はツン。僕の妻です。
高度経済成長なんて知らないよ、といった風情の町並みには少し似つかわしくないほど、洗練された美しい女性です。
そう褒めると照れ隠しに蹴ってきますが、本当は心優しい子です。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:04:07.75 ID:3cmSA+w/O
しえ
これはそんな僕たちと、この町の人々との、とりとめのないお話。
あ、そろそろ暖簾を出す時間のようですね。冷やしたアレを用意しないと。
( ^ω^)風呂屋VIPのようです
start
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:06:12.63 ID:NW8lk599O
しえん
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:07:41.70 ID:ctFcJim+0
///
( ^ω^)
僕は以前、商社系の仕事をしていました。
こう見えても体力はある方と自負してましたし、人付き合いも得意でしたから仕事も順調にこなしてきました。
そうして数年勤めるうちに、僕は会社にとって重要な案件を頼まれるほどになりました。
それらも首尾よく成功に収め少しずつ昇格していき、上司に頼られ、後輩に慕われるようになりました。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:07:48.47 ID:p7uG8wbXO
しえーん
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:08:10.08 ID:3cmSA+w/O
支援
ああ、たのしみだ
しえん
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:09:18.55 ID:ctFcJim+0
入社後すぐに結婚したツンを、少しでも楽させてあげようと僕は必死でした。自分の体調を省みることもせず。
連日、日付が変わる頃に帰宅し、すぐ就寝。朝方に彼女と少しだけ話して出社する日々が続きました。
ときおりふらつく僕を見て、彼女はいたくその体調を心配してくれましたが、平気だと言って満足な休養すら取りませんでした。
彼女の懸念は、やがて的中しました。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:11:21.98 ID:ctFcJim+0
///
その日は唐突に訪れました。
父の一周忌に向かう最中、僕は倒れたんです。
雪交じりの寒い冬のことでした。
目が覚めたのは病院。目覚めたときの天井の白さはひどく冷たく、心を刺しました。
そしてそこで受けた検査で、僕は僕の想像以上に体を酷使していたことに気が付きました。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:11:49.64 ID:p7uG8wbXO
しえんしえん
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:12:17.46 ID:3cmSA+w/O
しぇん
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:13:09.85 ID:ctFcJim+0
(`・ω・´)
医者の方は僕を強く叱責しました。
「あなたはこんな美しい方を未亡人にするつもりなのか」と。
僕は自らを強く恥じ、そして省みました。
どれだけツンに辛い思いをさせていたのかと考えると、胸が締め付けられるほどでした。
ξ゚ -゚)ξ
目を泣き腫らしたツンが、話があると言います。
ただならぬ雰囲気を悟った僕は、真剣に彼女と話し合いました。
話し終えた後の彼女の表情を、僕は忘れることが出来ません。
水溜りに映る夕日のように、暖かかったことを、はっきりと覚えています。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:15:19.22 ID:ctFcJim+0
///
( ^ω^)
まぁ、なんと懐かしい風景でしょうか。昭和から時間が止まったかのような町並み。
僕が上京してから、ここの雰囲気はいささかたりとも変わっていません。
雨と土の匂いに包まれた空間で。
水溜りに映る七月の夕空を、僕たちはいつまでも見ていました。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:18:24.16 ID:ctFcJim+0
ふと、耳に届く乾いた木の音。視線を上げるとそこには
( ФωФ)
カランコロン
絵に描いたような昭和風のおじさん。
腹部には腹巻。ちなみに今は夏です。さようなら。
久しぶりなので驚きましたが、この町はこういった格好が普通です。
さらに足音は続きます。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:20:23.89 ID:kyjG0zwJO
支援
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:20:30.16 ID:3cmSA+w/O
しえ
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:20:41.71 ID:ctFcJim+0
( ´∀`)
ザッザッザ
ちょっと待ってください。軍服? の方が居ます。
時代が逆行していませんか?
( ´∀`) よおブーン君、久しぶり
近所のおじさんでした、ごめんなさい。
……こうした人々に触れ、僕は無くしてしまった何かを再び、取り戻していきました。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:22:34.71 ID:M3JxitMkO
つC
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:23:21.96 ID:ctFcJim+0
///
風呂屋VIPの近くには、とても大きな広場があります。
そしてその広場の中央には、もうその成長を止めた、引退した樹が生えています。
僕が子どもの頃は、それはそれは生命感に溢れた、立派な樹でした。
ブランコ作って、登って、落ちて、泣いて、泣き止んで。
それが僕らのスタンダードでした。
時代とは、流れていくものなのでしょう。
昔は昨日より、遠くなるのです。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:23:22.44 ID:kyjG0zwJO
しえしえ
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:25:26.54 ID:p7uG8wbXO
爪切りつつしえん
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:25:45.92 ID:ctFcJim+0
///
懐かしい夢を見ました。
( ^ω^)
幼い僕が、一生懸命お風呂の掃除をしている夢を。
寒い冬なのでしょう、震えながらも一心不乱にブラシをかけています。
それが終わってからはご褒美のコーヒー牛乳。
腰に手を当てるお馴染みのスタイルで、一息にそれをあおります。
それから父の声が聞こえました。そこで僕の意識は途切れました。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:27:30.09 ID:ctFcJim+0
///
僕に体力や社交性があるのは、小さい頃から大きな風呂の掃除や店番をしていたからでしょう。
そうした経験に加え、父親の知り合いの方々の力も借り、一ヶ月の準備期間を経て風呂屋VIP新装開店と相成りました。
記念すべきその日。僕らは涙を隠さずには居られませんでした。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:29:31.23 ID:ctFcJim+0
∬
▲
■ ←まごうことなき風呂屋VIP
チィーン
……もともと地元でただ一つの銭湯だったこと、亡き父親の人徳が優れていたこと、見目麗しいツンが店番をしていたこと。
その他様々な理由が重なり僕たちの銭湯は大繁盛、猫の手を借りたいほどの盛況振りを見せるようになりました。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:31:21.70 ID:ctFcJim+0
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)ノパ听) ニャー
店先にはリアルに猫が集まっています。残念ながらその手は借りれません。
(,,゚Д゚)つ¥
虫を捕まえてくるのは止めてください。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:31:35.44 ID:p7uG8wbXO
しえん
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:34:32.35 ID:ctFcJim+0
///
商店街の中には、店主が僕たちのように代替わりしている店もありました。
ドクオ、ショボンという僕の同級生が商店街で暮らしています。
彼らもまた、引退した親に替わり店を継いだのです。
……なるほど、一見何も変わっていないように見えるこの商店街も、注視してみれば新しい店を見受けることが出来ます。
床屋、和菓子屋がこの町のスタンダードでしたが、若い世代のニーズに応え美容院、ケーキ屋さんなんかが新たに出店していました。
この商店街は、今、変革の時分にあるのかもしれませんね。
僕はそのことを嬉しく、そして少し寂しくも感じました。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:34:36.55 ID:KyKUzczU0
こういう雰囲気好き
しえん
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:37:03.42 ID:ctFcJim+0
///
多忙な時間帯を少し過ぎた頃、のっしのっしと暖簾をくぐる影あり。
('A`)(´・ω・`)
彼らです。大方、仕事が終わったので連れ立ってきたのでしょう。
('A`) 我らがマドンナ
(´・ω・`) ツンちゃんを出したまえ
彼女なら女湯のほうです。お縄が欲しければ行けばいいです。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:38:36.92 ID:p7uG8wbXO
しえーん
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:39:41.88 ID:kyjG0zwJO
猫かわいいなおい
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:39:57.30 ID:ctFcJim+0
と、このようにふざけた彼らですが、この商店街の将来について語るときは、とても真剣な顔付きになります。
今日も風呂場にて、若者をこの辺りに呼ぶ方法についての会議をしていました。
僕も客が引き、暇だったのでその真剣な会議に真摯な態度で加わりました。全裸で。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:41:18.84 ID:W+Y7QuACO
支援
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:41:41.77 ID:3cmSA+w/O
支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:42:38.40 ID:ctFcJim+0
*イメージ図
ω ω ω
モロチーン
やはり、ライブイベントなどを積極的にやるべきではないだろうか
それは妙案だお。しかしながら、この界隈で大音量を出せば死人が出るお
うーむ、思案するところだよね
余談ですがその後、折衷案ということで演歌ロックイベントが開催されました。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:44:59.38 ID:p7uG8wbXO
( ^ω^ω^ω^)
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:45:00.05 ID:ctFcJim+0
///
( ^ω^)
この銭湯には、たくさんの人が訪れます。
('A`)(´・ω・`)
いつもの彼ら。
( ・∀・)( ^Д^) コンドハキノボリダ
学校帰りの小学生達。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:45:01.94 ID:W+Y7QuACO
支援
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:46:32.45 ID:kyjG0zwJO
支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:47:54.69 ID:ctFcJim+0
川 ゚ -゚) ζ(゚ー゚*ζ
うら若き乙女達。
ハハ ロ -ロ)ハ
この町には珍しい、異国の方。
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)ノパ听)
猫。
( ´∀`)
軍人の方。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:49:46.52 ID:ctFcJim+0
それらの人々のために、僕らは今日もこの店を開くのです。
コーヒー牛乳を飲んでから。
( ^ω^)風呂屋VIPのようです
end
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:51:16.14 ID:M3JxitMkO
乙カレー!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:51:49.40 ID:3cmSA+w/O
乙!
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:52:04.10 ID:p7uG8wbXO
乙
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:52:39.85 ID:W+Y7QuACO
乙
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:53:08.41 ID:ctFcJim+0
原案者のID:z2K+SiakO氏、素敵なアイデアありがとうございました。
ブーンが昔、銭湯があった町に住んでいた。ということにしたため、
「少しずつ支えられながら」 という設定には添えられませんでした。申し訳ないです。
暖かいご支援、本当にありがとうございました。
ご批評、ご質問などあればよろしくお願いいたします。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:53:43.79 ID:9D9KXR7V0
乙!
これって続くの?
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:54:17.87 ID:ctFcJim+0
>>630 誤爆はありましたが、その他滞りなく投下完了しました。
代理、ありがとうございました。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 21:56:20.86 ID:ctFcJim+0
申し訳ない、またもや誤爆です(<○><○>)
>>53 もう一つの展開、すなわちブーンの地元ではないところで
銭湯を始める、と言う展開も既に書き始めたところですので、
自サイトなどで発表、という形になると思います。
そちらはやや、長くなりそうです。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 22:00:47.17 ID:p7uG8wbXO
別展開あるのかー
待つぞー
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 22:02:17.31 ID:hpObxlaUO
乙カレー
短編だから仕方ないけど、もうちょっと続いてくれたら嬉しかったな
サイトの別編に期待
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 22:04:32.68 ID:ctFcJim+0
>>55 >>56 まとめ事情さんに最近、更新記事に掲載していただけるようになりました。
事情さんの記事にて、恐らく自サイトでの更新が確認できると思います。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/12(木) 22:11:04.58 ID:zn73zICpO
乙
もうちょっと読みたいと思ったら別編あるのか
抜かり無いな
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
>>58 力不足がたたって、原案から離れた物語となってしまったので、
もう少し忠実に書いてみようと考えています。
ありがとうございました。