1 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :
(;^ω^)「あー……あっついお……」
ブーンは扇風機の前であうあうと唸っていた。
ただ今は8月27日午後1時、天気は快晴、茹だるような暑さだ。
(;^ω^)「大体、何で東北でこんなに暑くなるんだお」
ブーンはクーラーが付いていない自分の部屋を呪った。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:14:46.94 ID:swUIWDqA0
2get
3 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:16:52.08 ID:jYGhlNo/0
木造二階建て、築年数は30年を優に超えている。
お世辞にも綺麗とはいえない外観を持つ家の2階部分南西角部屋が
ブーンの自室だ。
爛々と降り注ぐ日差しは、不動産屋が“南西角部屋! 日当たり良好!”と
猛々しいフォントで文字を躍り狂わすぐらい強い。
なんせ室温はすでに35度。それでも別に今夏最高気温を樹立しているわけでもない。
更にいっせいに鳴き出す蝉と、無意味に鳴り響く風鈴の音がより暑苦しさを演出する。
頭や顔から噴き出す汗が頬をつたわり、首筋をつたわり、Tシャツに染み込む。じっとりとした
感触がなんとも気持ち悪い。
ブーンはTシャツの襟をパタパタと煽ぎ、中に涼しい風を取り込もうとしていたが、
やがてそれも諦め、日の当たりすぎで変色した畳の上に寝転んだ。
昼寝をして暑さをやり過ごそうという算段だが、じりじりと焼け付く日差しに照らされ、
不貞寝することもままならない。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:18:14.21 ID:3Wo5OrlIO
支援するよー
5 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:18:23.25 ID:jYGhlNo/0
(#^ω^)「あーっ! こんな部屋にいつまでもいられないお!」
おもむろに起き出し、ポケットから携帯電話を取り出した。
かける相手は高校で出会った親友のショボンである。
1コール、2コール、そして3コール目でショボンは電話に出た。
( ^ω^)「意外に電話に出るのが早いお、暇人め」
ブーンは親友に対する気安さから冗談を言った。
(´・ω・`)『暇なわけ無いよ。机に携帯が置いてあって、僕が机に座っていればすぐに出られるさ』
( ^ω^)「机? 珍しいお。プラモデルでも作ってるのかお?」
(´・ω・`)『そんなわけ無いだろ』
ショボンは少し呆れたように続けた。
(´・ω・`)『勉強してんだよ。ブーン、何の用?』
( ^ω^)「いや、あんまり暑いからお。プールでも行こうかと思って」
(´・ω・`)『余裕だな、受験生』
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:19:48.44 ID:vkZ+bb/G0
おもしろそ
7 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:19:49.53 ID:jYGhlNo/0
ブーンはぎくっとした。
そう、確かにブーンは来年の春に高校を卒業する受験生なのだ。
すると自然に同級生であるショボンも受験生なのである。
高校3年生、これからの人生を左右するかもしれない大切な時期だ。
そんな重要な時期、いわゆる追い込みと呼ばれる夏休みにきっちりと勉学に励む友人ショボン。
かたや呑気にプールに行こうと提案するブーン。
そんな自分に対する親友からの皮肉にブーンはばつが悪くなった。
(;^ω^)「僕だって家にクーラーさえあれば、勉強ぐらいするお」
まるで暑さのせいで勉強に身が入らないという言い草だ。
(´・ω・`)『じゃあ、僕の家で一緒に勉強するかい? クーラー効いてるし、飲み物ぐらい出すよ』
(;^ω^)「いや……」
ブーンはちらりと自分の勉強机に目をやった。
机の上で開かれたままの参考書は、まだ前半部分で筆が止められていた。
8 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:21:30.30 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「やめとくお」
(´・ω・`)『まぁ、ブーンだって馬鹿じゃないから、高望みしなければどこかしらの学校には入れるさ。
欲深い僕は身の丈に合わない学校に入学するために、貪欲に勉強するよ』
(;^ω^)「わかったお」
ブーンは力なく返事した。
(´・ω・`)『悪いね。そんなわけでプールはまた今度にしてよ』
じゃあ、と言うとブーンは電源ボタンを押し、再び畳の上に寝転がった。
用を終えた携帯電話を手元から放り出し、天井に視線を配らせる。
意味もなくシミなどを眺め、
( ^ω^)「受験かお」
そう一人ごちた。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:22:57.25 ID:swUIWDqA0
面白そう支援
10 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:23:08.12 ID:jYGhlNo/0
内藤ホライゾン、通称ブーン、高校3年生、18歳。
体型やや肥満、中背、両親と姉との四人家族。東北の中のド田舎暮らし。中流家庭で生まれ育つが、
父親の異常なまでの暑さ好きにより自宅にエアコンなし(冬は石油ストーブを用いる)。ただ今親友に
プールへの誘いを断られ暇を持て余していた。が、勉強をする気はなし。
みなが予備校に自宅学習にと勉学で大忙しなのに、ブーンはやる気が起きなかった。
――勉強よりも大切なものが、ある。
学校の成績では測れないものが、ある。
毎日を勉強に費やし、いい成績をおさめ、いい大学に入り、いい会社に入り、人より多いサラリーをもらう。
それが何だというのだろう?
例えそんな他人から見れば順風満帆な人生を歩めたとしても、その一生には決定的に足りないものがある。
18歳という青春真っ只中の思い出である。
この高校最後の夏はもう二度と来ないのだ。
後になって悔やんでも遅い。
11 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:25:08.51 ID:jYGhlNo/0
人生において一番寂しいのは思い出迷子になることだ。日々を、大人になってからの日々を、
取り返すことの出来ない青春の呪縛に囚われて過ごすことだ。
そんなのはごめんだ。
だから自分は今の一瞬を輝かせる。
もしも自分がこの先の人生でうまくいかず、震える夜を過ごすことになっても、
なあに、そんな時は思い出が暖めてくれるのさ。
などと思っているわけではなく、単純に面倒くさいから勉強に手が付かないだけだった。
その証拠に、机に向かい参考書を開いてみたものの5分もすると飽きてくる。集中力が続かない。
集中力がなくなってくると、今度は別のものに心を拿捕される。
あれーなんか窓が汚れてるなー、で始まり。部屋の汚れは心の汚れ、整理整頓しないと頭の回転が悪くなる!
掃除から始めよう! となり。最終的には押入れの中から引っ張り出してきた写真に目を奪われる。
気が付くと夜になっている。もう遅くなっちゃったから明日から頑張ればいいかー、で就寝。多少の差異は
あるものの毎日その繰り返し。そして今となっては無勉強でいける学校に行けばいいか、という結論に落ち着いた。
決定的な負け犬……っ! 負け犬的思考……っ!
父親がスーツを着た白髪頭のおっさんだったら「Fuck you」と呟いてから切々と世の無常を説きだすところだろう。
12 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:26:32.86 ID:jYGhlNo/0
とにもかくにもそんな感じで、ブーンは学生の本分、最終目標を忘却の彼方に
光の速さで置き去りにしていた。
もはやブーンのやる気のなさは目を覆う程だった。
いつからこうなってしまったのかはわからない。気付いたら何もかもが面倒くさく
なってしまっていたのだ。ブーンはよく言えば潔く、悪く言えば無気力で、諦めやすかった。
どうせ自分には限界があって、その限界もある程度把握してしまっている。
ならばその線引きに沿って人生を、日々を終えていけばいいのだ。
ブーンはそう思っていた。
そんなブーンだから、暑い暑いとわめきながらも、天井のシミを眺めているうちに睡魔に襲われ、
そして負けてしまうのに時間はかからなかった。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:27:15.18 ID:QjZDSLs0O
鳥……五目……誰だ?
その名前は自分で付けたのか?wwww
14 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:28:25.66 ID:jYGhlNo/0
少し寝ていたようだ。
時間にすると2、30分だろうか。窓の外に目をやると、
相変わらず燦々と太陽が輝いているし蝉もひどくうるさい。
むくりと起き上がり、自分が横たわっていた部分を見てみると人型のシミが出来ていた。
寝汗がひどい。
本当にクーラーが必要だな、下手したら死人が出るぞ。そう思った。
寝起きのせいかひどく喉が渇く。クーラーも欲しいが冷蔵庫も欲しい。
そうしたらわざわざ1階まで飲み物を取りにいかなくていい。
しかし現実としてブーンの部屋に冷蔵庫は無い。しぶしぶ寝起きの体を起こし、
台所に向かうため自分の部屋を後にした。
台所に着いてみると、冷蔵庫の前には先客がいた。
姉のしぃだ。
しぃはなにやらごそごそと冷蔵庫……の上の冷凍庫を漁っていた。
15 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:29:55.48 ID:jYGhlNo/0
(*゚ー゚)「んー、ないなぁ」
( ^ω^)「何やってんだお」
不審な実の姉に声をかける。
(*゚ー゚)「いやね、アイスを探してんだけどさぁ、見当たらないんだよ」
( ^ω^)「じゃあ無いんだお。僕は麦茶を飲みたいからどいてくれお」
無いことに納得がいっていないのか、しぃはがさごそやり続けている。そんなしぃを手でどかす。
冷蔵庫の扉を開き、キンキンに冷えた麦茶を取り出した。
なみなみとコップに注がれた琥珀色の液体に注視する。
やっぱり夏は麦茶ですな! しぃが未だに胡乱な目つきで冷凍庫内をかき回しているが、
そんなの知ったことではない。
腰に手を当て、一気に飲み干す。乾いた喉に心地よい冷たさが染み渡る。
うまい!
テレレッテレー。という効果音が聞こえてきそうな程うまい。
うん、満足した。部屋に戻ってまた惰眠を貪るか。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:31:07.33 ID:6/X0JQc3O
涙の人か
17 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:31:26.83 ID:jYGhlNo/0
そう思いキッチンのシンクに空になったコップを置き自室に帰ろうとする。
横目でちらりとしぃを見ると、ついに諦めたのか、冷凍庫の扉を閉め不満そうな顔をしていた。
アイスがないという事実を理解するためにこんなに時間を必要とするなんて。のろまめ。
だがそんな感想をブーンは口には出さない。
賢者は多くを語らず去るのみ。
しかし、自室に戻ろうとするブーンにしぃが話しかけてくる。
(*゚ー゚)「ブーン。アイス、食べた?」
なんという言いがかりだろう。最早どうあってもアイスがあったという事を譲らないらしい。
(;^ω^)「食べてないお」
(*゚ー゚)「嘘だぁ、私が買っておいたアイス食べたでしょ」
ブーンはやれやれと言った感じで、子供に諭すように優しく言った。
( ^ω^)「あのね、僕は自分の部屋で寝てたんだお。寝ながらアイスを食べるなんて超人技、僕には無理だお」
18 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:32:47.98 ID:jYGhlNo/0
(*゚ー゚)「だって、無いんだもん」
(;^ω^)「じゃあしぃの勘違いか、僕以外の誰かが食べたんだお」
(*゚ー゚)「今日お父さんもお母さんもいないじゃん。ブーン以外食べる人いないもん」
どんな理屈だ。なんで自分の勘違いという発想に行き着かないのか。
(;^ω^)「じゃあきっとアイスは実家に帰ったんだお。僕、寝るからさよならだお」
相手にするのもばかばかしいので、ここら辺で切り上げるのが上策だろう。
失礼、という感じで手刀を切りその場を後にしようとすると、
しぃがちょっと待ったと言わんばかりに声をかけてきた。
(*゚ー゚)「じゃあ買ってきてよ」
意味が、わから、ない。
なぜ自分がしぃのアイスを買ってこなきゃならないのか。ブーンは素直にそう思った。だから即答した。
(;^ω^)「やだお」
(*゚ー゚)「買ってきてよ」
(;^ω^)「やだってばお」
19 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:34:28.38 ID:jYGhlNo/0
(*゚ー゚)「なんでよ」
(;^ω^)「自分で行けばいいお?」
(*゚ー゚)「だって面倒くさいんだもん」
この言い草には驚いた。ブーンは苦虫を噛み潰したような顔で抗議の声をあげた。
(;^ω^)「僕だって面倒くさいお」
(*゚ー゚)「それにブーン、暇でしょ?」
天下の受験生を捕まえて暇そうとは恐れ入る。暇だけど。しかしブーンは理不尽には負けない。
(;^ω^)「しぃだって暇だお」
(*゚ー゚)「大学生はレポートとかで休み中も忙しいの」
ああ言えばこう言うしぃ。最早なにを言っても聞き入れてくれないのだろうか。
(*゚ー゚)「私あれね、ガリガなんとか君のソーダ味。ブーンも好きなの買って来ていいよ」
そう言ってしぃは五百円玉を強引に手渡してくる。
完璧に理屈が通じていないし、本気でブーンにアイスを買いに行かせるようだった。
ブーンとしては他人のアイスなど関与したくないし、炎天下の中アイスを買いに行くのも億劫だったが、
これ以上理屈の通じない姉と無限に議論をしているほうが疲れると判断した。
20 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:36:30.17 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「……わかったお」
ブーンは力なく返事をすると、しぃの差し出した五百円玉を受け取った。
(*゚ー゚)「のろのろしてると溶けちゃうから、なるべく早く帰ってきてね」
いってらっしゃい、と送り出すしぃに背を向けて、ブーンは玄関へと歩き出した。
アイスが溶ける前にブーンが溶けそうだった。
ブーンは玄関を出た瞬間、強烈な熱気に当てられ、怯んだ。
暑さに加えて不快指数も高い。
辺りを見回すと、一面に田んぼが広がっている。そう、ブーンの実家、
内藤家は頭に超が付く田舎に住んでいるのだ。
最寄駅までバスで一時間、バスは一時間に一本。周りには民家など存在しない。
唯一いたお隣さんも3年前に引っ越してしまった。遠くに見えるのはバス停だ。
バス停までは徒歩で20分はかかる。もちろんコンビニなんて便利なものも近くには無い。
一番近所の商店までも、自転車を20分は漕ぎ続けなければならない。
その割にインターネット環境はいいし、携帯電話の電波もばっちり3本立つ。むしろそれが逆に腹立たしい。
携帯なんてどうでもいい……いや、よくはないがそれより先に整備しておくものがあるだろう。
すなわちライフラインの確保だ。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:36:50.64 ID:4UIDBDxgO
wktk
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:36:53.03 ID:6/X0JQc3O
支援
23 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:37:58.13 ID:jYGhlNo/0
この炎天下の中、自転車で20分かけてブーンはアイスを買いに行くのだ。
それはとても虚しい事のように思えた。
しぃが行けばいいのにと真に思う。車があるくせに。
高校だってクソ遠い距離を自転車でひいひい言いながら通っているのだ。
せめて夏休みくらいはその呪縛から開放されたい。
それも遊びに行くのならまだ我慢できたが、アイス!
アイスですって奥さん! 僅かの涼を得るために甚大な熱にうなされるとは、これいかに!
ブーンは心の中の奥さんに愚痴を言ったが、そんなことをしても詮無きことなので、
おとなしく自転車が置いてある車庫にトボトボと向かった。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:39:31.78 ID:6/X0JQc3O
紫煙
25 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:39:40.22 ID:jYGhlNo/0
車庫には自分の愛車、流星号がちゃんと鎮座していた。
どんな雨の夜も、真冬の朝も、そんな苦難の道のりをこの名車と一緒に乗り越えてきたのだ。
型こそ新しくはないが、乗りやすさは抜群。
そして何より乗り手の心の機微をわかっているかのような“魂”がこの名車にはある気がする。
しっかりと手に馴染むグリップ、がっちりと田舎のあぜ道に噛み合うタイヤ、
そして唸る様なエグゾーストノート(エンジンないけど)。
そのボディから繰り出される走りは見るものを圧倒し、鮮明に記憶に焼き付ける。
俺はこいつに乗れればご機嫌だぜ! ヒャッハー! 世紀末バンザイ!
という感じでは別段なく、ブーンは普通に自分の自転車にまたがる。
ブーンの向かう先は、きく屋というブーンの家から一番近くにある商店だ。
駄菓子屋と個人商店の中間のような店で、ブーンを始めしぃも小さい頃からよく利用していた。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:41:11.36 ID:4UIDBDxgO
支援
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:41:10.98 ID:uu8sQBMAO
支援
28 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:41:16.40 ID:jYGhlNo/0
店主のばあさんは、ブーンが小さい頃からばあさんで、10年以上たった今でもばあさんという、
荒木飛呂彦のように年を取らないばあさんである。
ブーンが活発だった子供の頃に仲間と万引きばかりしてよく困らせていたものだ。
今はさすがに万引きをしていないが、よく普通に店に行けるものである。ブーンはなかなか面の皮が厚いようだ。
ブーンが流星号のペダルをこぐ。予想していたとはいえやはり暑い。
風がいくらかの清涼感を与えてはくれているものの、
それ以上の暑さが上空とブーン自身の体の内から沸きあがってきて、
まだいくばくも進んでいないのにシャツはブーンの汗で変色している。
早くも後悔していた。真夏に自転車なんぞ乗るものではない、と。
ましてやこんなクソ田舎では日差しを避ける遮蔽物などなく、照りつける日差しをダイレクトに受けてしまう。
そんな炎天下の中を突き進むにはとにかく急がず怠けず、常に一定の速度でこぎ続けるのがコツである。
後は地球のマナでも感じ取っていれば、いつの間にか目的地に着いているものなのだ。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:41:45.86 ID:6/X0JQc3O
支援
支援
31 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:43:00.18 ID:jYGhlNo/0
ブーンが自転車をこぐ機械になってしばらくして、だんだんと目的地であるきく屋が見えてきた。
きく屋の周囲もやはり田舎だったが、それでもブーンの家よりは断然ましだった。
なにしろ、まだ見渡せる範囲に民家がある。
きく屋の前には数人の子供たちがいた。自分たちがそうであったように、
近所の子供たちが集まって遊んでいる。溜まり場というやつだ。
唯一自分たちと違う点は、子供たちが持っているものが、
メンコや銀玉鉄砲ではなく携帯ゲーム機という点だった。
多少の差異はあれど遊ぶ道具が違うだけで、いつの時代も子供たちは商店に集うものだ。
子供たちが互いに通信対戦をしたり個々でゲームをしている中、一際大きなお友達が見えた。
徐々にその群れの中に近付いてみると、その大きなお友達が良く知った顔であることに気付く。
(#´∀`)「おい、おっさん、大人気ないぞ! 子供相手にハメ技使うな!」
('A`)「ふひひひ! サーセン、真剣勝負なもので」
ブーンの幼馴染の一人、不細工フェイスを持つ鬱田ドクオだった。
32 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:45:28.09 ID:jYGhlNo/0
(#´∀`)「大体、何で大人が小学生に混じって遊んでんだよ! 卑怯だろ!」
('A`)「はぁ? 何で卑怯なんだよ? 別に腕力を使うわけでもないし。
大人と子供の差なんかないだろ? それとも財力の差か?
課金制でもあるまいし、それこそ関係ないね」
ブーンの昔からの親友であり、悪友であるドクオは小学生相手になにやら勝ち誇っていた。
確かにドクオの言うとおりゲームでは大人と子供に差がでにくい。
とはいえ、その姿はかなりみっともなく、ブーンの胸中に空虚な悲しさを覚えさせた。
なんだか見てはいけないものを見たような、あたかもパンダやコアラなど愛嬌のある動物の野生を、
えぐい部分を見てしまったかのような気分になる。
(#´∀`)「大人は大人同士で遊べよ! 子供の輪に加わるな!」
(#'A`)「あぁ!? 負けたからって何ですかその言い草は!?
じゃあお前、大人に混じってネトゲするなよ!? 大人に混じってニコ動見て『鳥肌注意』とか言うなよ!?」
(;´∀`)「はぁ!? お前ニコ厨かよ! 死ね気持ち悪い! こっち来んな!」
ドクオは子供と見るに耐えない言い争いをしている。
ある意味その情熱が羨ましいとブーンは感じた。
33 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:46:57.84 ID:jYGhlNo/0
('A`)「ニコ厨じゃないですー! お前らみたいなニコ厨を馬鹿にするために
ニコ動を見てるだけであって決して本気でニ……コ、動……」
なんという事でしょう。ドクオがブーンに気が付いてしまいました。
こうなっては誤魔化せないので、先手を打ってブーンはドクオに話しかけた。
(;^ω^)「や、やぁドクオ。今日も暑いお」
('A`)「ブーン……」
(;^ω^)「僕なんかこの暑い中、自転車で20分もかけてここに来ちゃったお。暇って嫌だお」
('A`)「ブーン……見ないで……」
(;^ω^)「ド、ドクオ」
('A`)「見ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!!」
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:47:16.97 ID:6/X0JQc3O
支援
35 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:48:15.67 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「ちょっとは落ち着いたかお?」
ブーンがドクオに冷たいコーラを差し出してやる。
キンキンに冷えたそれは手に触れただけで心地よく、ドクオの悲しみを少しやわらげさせた。
('A`)「いや、申し訳ない。変なとこ見せちまった」
(;^ω^)「べ、別にいいお。気にしないお」
('A`)「たまたまここに来たらあいつらがいてさ、そんで俺もたまたまゲーム機持ってたから、
たまたま対戦しようって話になったからさ。ほ、本当にたまたまなんだからね!!」
(;^ω^)「わ、わかったお」
ドクオは何も聞いていないのに勝手にベラベラと言い訳をし始めた。
しかし、言い訳をされればされるほど何だか救われない気持ちになっていく。
('A`)「まぁ、あれだ。さっきのことは忘れてくれ」
(;^ω^)「うん、早く忘れられるように努めるお」
ブーンとしても友人のプライベートな部分を見てしまいなんだか据わりが悪くなってしまったので、
早く忘れてしまって今まで通り接していきたい。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:49:01.45 ID:3L5gKzoeO
37 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:50:24.60 ID:jYGhlNo/0
('A`)「しかしあれだな、せっかくの夏休みなのにやることがなくて嫌んなっちゃうぜ」
( ^ω^)「そうだおね。さっきショボンをプールに誘ったけど勉強で忙しいらしくて断られちゃったお。
で、仕方ないからアイスを買いに来たんだお」
ブーンはまいったぜ、と肩をすくめた。
(;'A`)「え? っていうか、何で俺を誘わないの?」
あ、しまった。ドクオはそういうことを気にしてしまう面倒くさいタイプの人間だということを失念していた。
(;^ω^)「あ、いや、ほら。ドクオは何だか急がしそうだし……」
“誘うの忘れてました”“存在を忘れてました”とはさすがに言えずに、
ブーンは無難な返事でお茶を濁した。
('A`)「……忙しくないから、今度から俺も誘ってくれよな」
ドクオが忙しくないのはたった今しがた思い知ったところだ。
38 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:52:03.55 ID:jYGhlNo/0
('A`)「ところでブーンは何しに来たんだ?」
せっかくのコーラが温くなってしまうといけない。
ドクオがコーラのプルタブを開けながら尋ねてくる。
( ^ω^)「僕はアイスを買いに来たんだお」
('A`)「うぇー。おまえんちからここまで結構距離あるだろう。アイスを買いにだけ来るとか……」
(;^ω^)「僕も本当は来たくなかったんだけど、しぃに無理矢理行かされたんだお」
('A`)「内藤君、これでしぃさんにハーゲンでも買っていって差し上げなさい」
唐突に500円玉を渡してくるドクオ。
(;^ω^)「え、いいお。いらないお。それにしぃに買っていくのはハーゲンじゃないお」
('A`)「じゃあレディボーデンでもエスキモーでも好きなものを買っていくがいい。
さ、受け取りたまえ」
そう言ってブーンの右手にぐいぐいねじ込んでくる。お前は田舎のばあさんか。
やめろよー、とか言いながらもブーンはしっかりと受け取った。
資本主義の日本社会において資産が増えることはやぶさかではない。
もちろんアイスなど買わずに自分のポケットに入れておくつもりだ。
39 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:53:34.70 ID:jYGhlNo/0
('A`)「後さ、おまえ明日暇か?」
( ^ω^)「お? 僕はいつでも暇だお」
('A`)「じゃあ海行こうぜ、海」
( ^ω^)「おっおっ。いいおね」
本当は今日行こうと思っていたプールが中止となっていたブーンにとって、
その提案は決して悪くはないものだった。
('A`)「やっぱさ、高校最後の夏だろ? ……彼女が欲しいなんて贅沢は言わないけど、
海ぐらい行っておきたいしな」
( ^ω^)「同感だお」
('A`)「そ、それでさ、俺はジョルジュとショボンを誘っておくから、
その、おまえはし、し、……きゃ、な、何でもないんだから!」
( ^ω^)「うん、何でもない。わかったお」
('A`)「……あー、とにかくじゃあ夜にでも電話するわ」
( ^ω^)「わかったお。じゃあ僕はアイスを買って帰るお」
そうしてブーンはドクオに別れを告げる。今はドクオよりもアイスのほうが優先すべき事柄なのだ。
酔っ払いのようにふらふらと自転車をこぐドクオを見送ると、ブーンは目的を遂行すべくきく屋に入店する。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:55:10.51 ID:6/X0JQc3O
紫煙
支援
42 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:55:40.21 ID:jYGhlNo/0
相変わらず店内は薄暗い。外の日差しが強いせいもあって、ギャップで目が見えなくなる。
なんとか目を凝らすと、最早点いていてもその意義が見出せない蛍光灯にちかちかと照らされて
きく屋のばあさんが奥で鎮座しているのが確認できた。
( ^ω^)「ばあさん、ガリガなんとか君っていうアイスが欲しいお」
<丶`∀´>「あー? あんだって? ぶっ殺すよクソガキ」
(;^ω^)「そうじゃなくて、アイスが欲しいんだお!」
<丶`∀´> 「お望みなら今すぐぶっ殺してやるよクソガキ!」
ダメだこいつ……早く何とかしないと……。
どうやらばあさんは今ヘブン状態にあるらしい。ヘブン状態となったばあさんには話が全く通じない。
それどころかやけに好戦的で、ブーンは一度ヘブン状態のばあさんに腹を立てて口答えをした事があったが、
入れ歯を飛ばすという攻撃にでられたためそれ以来腫れ物を扱うかのように慎重に相手をしていた。
こんな状態のばあさんと話していても仕方ないので、勝手にアイスが入っているケース内を漁る。
あった。ガリガなんとか君のソーダ味だ。同時にブーンは自分用にアイスボックスを選び手に取る。
43 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:57:19.86 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「じゃあ、ここにお金を置いていくお。じゃあね、ばいばいだお」
<丶`∀´> 「待ちなクソガキ! 金を置いていきな!」
商品の代金は置いたのに。
よもやそれ以上の金をとられてはたまらないとブーンは足早に店を出た。
しかし外に出られても安心は出来ない。なにしろ飛行入れ歯という飛び道具を持つばあさんなのだ。
もし飛行入れ歯を行使されたら成す術は、ない。
品物を手に入れたら一目散に帰路に着くのが得策だ。
(;^ω^)「ただいまおー」
きく屋が見えなくなるまでダッシュで自転車をこいだので
行きの道より大分時間を短縮して家に戻ることが出来た。
しかし、その代償としてブーンは強い疲労感と熱中症に見舞われることとなった。
(;^ω^)「お?」
玄関を開けてもしぃは出て来ない。それどころかいる気配すらない。
せっかくブーンがアイスを買ってきたというのに。
44 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 22:59:18.97 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「いないのかお? まったく」
食べる者がいなくてはアイスが溶けてしまう。
それを防ぐため、ブーンは台所へと歩を進める。
台所にもしぃはいなかった。人に買い物を頼んだくせに自分はいなくなるとはどういう了見だ。
ブーンは憤慨しながら冷凍庫の扉を開けようとする。
その時。
「おかえりー」
後ろから響く若い女性の声。
しぃではない。しぃよりも少し高く、そして透き通るような声だ。
誰だ?
まず考えられるのはブーンのファンが勝手に自宅に押しかけてしまったという線。
しかしブーンに押しかけてきてくれるようなファンがいたなどと終ぞ聞いたことがない。違う。
次に思い浮かんだのは『組織』がブーンの特殊能力に気付き、
その特殊能力を奪うために送り込んだ刺客に背後を奪われたという線。
しかし、ブーンには特殊能力なんてないし、『組織』などというものも知らない。これも違う。
一気に有力な2つの仮説が破綻してしまった。
いっそ後ろを振り返って確認してみるか。ブーンがそう覚悟して後ろを振り返ると――。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 22:59:20.19 ID:6/X0JQc3O
紫炎
46 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:00:47.54 ID:jYGhlNo/0
驚いた。
そこには、少女が、それもとびきりの美少女が麦茶を片手に立っていた。
まるで宝石のようにきらめく瞳は大きく、絹のように艶やかな髪は長く、
左右の頭頂部でまとめられている。
少し低めの鼻はしかし精緻な印象を持ち、
薔薇の蕾を思わせる唇は聞くもの全てを幸福へと導く福音を放つように感じられた。
ふれれば壊れてしまいそうなほど柔らかできめ細かい頬と、
全体に背が低く痩せすぎであどけない雰囲気を持つ少女――。というか。
(;^ω^)「ツン?」
ξ゚听)ξ「よっ」
麦茶を片手に立っていたのは、3年前に引っ越したお隣さん、
そこの一人娘、同い年で幼馴染のツンだった。
いきなりの幼馴染の登場にブーンは狼狽する。狼狽しすぎてかえって冷静に質問してしまう。
47 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:02:28.61 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「何でツンが僕の家にいるお?」
ξ゚听)ξ「いやー、今夏休みでしょ? だから里帰りに来たのよ」
(;^ω^)「里帰りって、ツンの家はもう誰も住んでいないお? 一人で来たのかお?」
ξ゚听)ξ「うん、一人で」
(*゚―゚)「えっへっへ。ブーン、驚いた?」
その時、いないと思っていたしぃが台所の勝手口から入ってきた。
(;^ω^)「しぃ、いたのかお。アイス買ってきたのにいなくなっちゃったのかと思ったお」
(*゚―゚)「いやー、私が部屋でのんびりしてたらさ、なんかツンちゃんが来て『里帰りに来た』って言ったから
『あららいらっしゃい、ゆっくりしていってね』『うん、しぃちゃん久しぶり』
『ツンちゃんちょっと見ない間に大きくなったね。お姉さんみたいだよ。相変わらずちびっ子だけど』
『ありがと。っていうかちびっ子って言うなよ』『まぁ』」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお!」
唐突に一人芝居を始めたしぃをとめる。
放っておけばいつまで続くかわからないし、余計に話の流れが理解できなくなる恐れあり、と判断したのだ。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:04:01.04 ID:3L5gKzoeO
支援
49 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:04:04.61 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「えっと、つまり、ツンは一人で里帰りに来ていて、今はうちで麦茶を飲んでる」
ξ゚听)ξ「しぃちゃんがブーンを驚かそうって言ったから、あたし一人で待ってたのよ」
(*゚―゚)「だから私は裏口で待機してました」
なるほど、驚いた。というか普通は驚くだろう。
それならそれで連絡なり何なりをしてくればいいのに。
それにしても今のしぃの一人芝居を見ていると、
しぃはいきなりツンが来訪したことにさほど驚いていないようだった。どれだけ神経が太いんだ。
(;^ω^)「一人で来たって、泊まる所はどうするんだお? ツンの家はもう鍵がかかっちゃってるお」
ξ゚听)ξ「ここに泊めてもらうのよ」
当然でしょ? といった面持ちでツンが答える。
(;^ω^)「いや、うちにはもう空き部屋はないんだけどお」
(*゚―゚)「ブーンの部屋に泊めてあげてよ」
しぃの爆弾発言。いくらなんでもそれはまずいだろう。幼馴染とはいえ思春期の男女。
一つの部屋で睡眠を共にしたら……しかも布団は一つしかない。まさか、一緒に寝るのか?
いやいや、それこそない話だろう。同衾はまずい。
50 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:06:01.83 ID:jYGhlNo/0
なにせ、ブーンはツンが好きだったのだ。
小さい頃こそ兄弟同然に暮らしてきたが、物心がついてくると自然と異性として意識し始める。
こんな事を口に出すのは気恥ずかしいが、ツンはかなり可愛い容姿をしている。
少し上がり気味の大きい瞳も魅力的だし、本人が劣等感を抱いている小柄な体格も可愛らしい。
そんなツンと一緒の布団に入ったら、正気を保てる自信はない。
(;^ω^)「いや、それはまずいお」
ξ゚听)ξ「何で?」
(;^ω^)「何でって……わかるお? さすがに一緒に寝るのはまずいお。常識で考えて」
ツンはそこで、はぁ?、と訝しげな顔をする。
ξ゚听)ξ「一緒に寝るわけないでしょ?」
(;^ω^)「え、でも僕の部屋で寝るんだお? 布団は一つしかないし」
ξ゚听)ξ「ブーンはリビングで寝るの」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:06:08.70 ID:6/X0JQc3O
詩園
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:06:11.48 ID:swUIWDqA0
盛り上がってきた支援
53 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:07:50.77 ID:jYGhlNo/0
なんという横暴。まぁ、百歩譲ってそうすることはいい。
ツンの家にはもう入れないし、ブーンの家には空いている部屋はない。
それならばブーンは部屋を提供し、自分がリビングで寝ることも、そこまでやぶさかではない。
しかし、それを本人の意思確認もせずに決めるとは。
これを横暴といわずに何をそう呼ぶのか。だからブーンは抗議の声をあげる。
(;^ω^)「何で僕がリビングで寝なきゃいけないんだお。だったらしぃの部屋に泊まればいいお」
ξ゚听)ξ「だってしぃちゃんの部屋、テレビとか漫画とかないんだもん」
そんなくだらない理由で自分は部屋を奪われるのかと思うとげんなりした。
(*゚―゚)「まぁいいじゃん、ブーン。寝るときだけ部屋を貸してあげなよ」
法治国家らしく民主的に過半数を超えたので
――ということで結局女どもの提案通りになってしまった。
占有権を侵害された時点でちっとも民主的じゃない、とブーンは思ったが。
54 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:09:05.21 ID:jYGhlNo/0
話が一応の一段落を見せ、現在ツンとしぃはごろごろとリビングに寝そべっている。
築年数が30年以上経っている内藤家の中でひときわ綺麗な部屋だ。
“居間と風呂は家の顔”と言い出したブーンの父が、4年前に200万円をかけてリフォームしたのだ。
新しいフローリングと壁紙は他の部屋と違いすぎて、なんだかちぐはぐ感を演出して少し笑える。
そのリビングでツンとしぃはごろごろ――、ごろごろとアイスを食べていた。
先ほどブーンが汗まみれになって買ってきた、あのアイスである。
お客様だから、という理由でブーンのアイスボックスはツンに取られてしまった。
それならばしぃのガリガなんとか君を与えればいいのに、と思うのだが、
どうも出資者の権利とか言うやつでそうもいかないらしい。
まぁ、ブーンもドクオから500円を巻き上げたのでそこまで不満はない。
( ^ω^)「おいしいかお?」
本来ならブーンの口中にあるはずのアイスボックスを食べているツンに尋ねる。
ξ゚听)ξ「うん、おいしいお。ありがとね。何か凄いタイミングよかったわ」
( ^ω^)「僕にもくれお」
ξ゚听)ξ「やだ」
(;^ω^)「なんでだお。アイスボックスなんだから一粒ぐらいくれてもいいお」
55 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:10:53.54 ID:jYGhlNo/0
ξ゚听)ξ「氷食べながら砂糖舐めればいいじゃない」
何てこと言うんだ。昭和の子供か。そんなのちっともアイスボックスじゃない。
ブーンは恨めしそうにツンを睨む。
ξ;゚听)ξ「わ、わかったわよ。あげるからそんな目で見ないでよ」
半眼で見てくるブーンに根負けしたのか、しぶしぶツンも了承した。
ξ゚听)ξ「じゃあ投げるからちゃんとキャッチしてね。口で」
そう言うが早いが、ツンはブーンの顔面めがけて氷塊を一つ投げた。結構な勢いで。
(;^ω^)「うぉぉぉあお!?」
唐突に眼前に迫り来る氷に驚きながらもブーンは口を開けて迎え撃つ。しかし。
バチーン。
氷塊は奮闘虚しくブーンの口に入ることはなかった。というか目に当たった。
56 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:13:46.51 ID:jYGhlNo/0
(;^ω^)「うぅ、なんてことするお……」
ξ゚听)ξ「あははは、ごめんごめん。ほら、今度はちゃんとあげるから」
そう言って今度は優しくアイスボックスを手渡してきた。
しぃはなんだか笑っている。
先ほどブーンに氷が当たったのがそんなに面白かったのだろうか。
女を集めて姦しい、とはよく言ったものである。2人いるだけでもうるさい。
『ツンちゃん、さっきのブーンの顔見た?』『見た見た、鯉みたいな顔してたね』
『それで氷がバチン、って当たってさ、いとをかしだよ』ときゃっきゃうふふ、と笑っている。
そんな二人を、主にツンを、ブーンはアイスボックスをボリボリと咀嚼しながら見つめ、ふと思った。
――こいつ、変わったよなぁ……。
57 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:15:27.70 ID:jYGhlNo/0
ツンが引っ越す前の3年前から、ということではない。
それよりもっと前、ブーンたちがまだ小さい頃、大体小学校5、6年生ぐらいだったろうか。
その時期から、ツンの性格は変わった。
ツンはもともと大人しく引っ込み思案で、よく同級生にからかわれていた。
もっと有体に言ってしまうと、いじめられていた。
大人しくて何も言えないというのは、いじめっ子にとっての、言ってしまえば体のいい遊び相手だ。
ツンはよく髪を引っ張られたり、靴を隠されたりしていた。
ひどい時には机をめちゃくちゃにされたり、一人だけ給食がないなんて事もあった。
そしてその度、うずくまって泣いていたことをブーンは覚えている。
その頃にはブーンはツンのことを好きだったので、よく面倒を見ていた。
泣いているツンを励まし、慰め、時にはブーンがいじめっ子に仕返しをしたこともある。
しかし常にブーンがそばについているわけにもいかず、
ブーンの目の届かないところでツンはやはりいじめられていた。
ブーンはツンにも仕返しをするように示唆したが、
生来の優しさゆえなのか、臆病さゆえなのか、ツンがいじめっ子達に反抗する事はなかった。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:18:58.00 ID:swUIWDqA0
いじめダメ支援
59 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:19:12.49 ID:jYGhlNo/0
そんなツンだったから他にかばってくれる友達もおらず、
一緒に遊んでくれる友人もいなかった。
だから、ツンは以前から仲の良かったブーンにべったりとくっついて歩いていた。
特に自分から提案や発言はせず、まさに“くっついている”という表現が的確だった。
ブーンと一緒にいるということは自然、ドクオ達とも一緒にいることになる。
ドクオ達は特にツンを拒否するでもなく、一緒にいることに異を唱えることもしなかった。
ブーンはツンに、ドクオ達なら仲良くできるから、と歩み寄ることを進めたが、
それでもブーンの陰に隠れてモジモジとしていた。
ブーンはそんなツンを心配したが、
ツンが自分のそばにいることが同時に嬉しくもあり、誇らしかった。
好きな女の子が自分を頼ってくれる、自分しか頼る者がいないということに、満足感と優越感を感じていた。
いじめてはいなかったが、ドクオはツンをよくからかっていた。
いや、もしかしたらツンにとってそれは“いじめ”だったのかもしれない。
60 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:20:32.17 ID:jYGhlNo/0
しかしドクオにとってはそうではない。
ブーンから見てもそれは他の生徒から受けていた行為とは明らかに違っていた。
ドクオのそれは、他生徒のようにツンを困らせてやろうとか、
学校に来なくさせるためのものではなく、いわば友達同士のふざけかた。
いわゆる“いじる”という感覚だった。
本気でツンに嫌がらせをしてやろうというわけではなく、
ツンにちょっかいを出すことで自分と周囲を笑わせる。そのぐらいのからかい方だったはずだ。
しかしツンにはそれがわからなかった。
なぜ、ドクオが皆の前で自分を小馬鹿にするような言動を行っているのか理解できなかった。
無理もない。
実際にツンは学校でいじめられていたし、その都度泣いていた。
泣いて、泣いて、悲しくて、唯一自分に普通に接してくれる安息の場所であったはずのブーンたちの傍、
その安息の場所でも自分にひどい言葉を投げかけてくる人物が居る。そのことをツンは悲しんだ。
61 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:22:40.39 ID:jYGhlNo/0
もちろん、ドクオもツンのことは友人として認めていたし、友人として好きだった。
しかし幼いツンにはドクオの言動が、愛情から来ている言葉だとはわからなかったし、
空気が読めないドクオもツンが嫌がっていることに気付かなかった。
ツンがドクオの言葉に心を痛める度、ブーンはドクオにやめるように言った。
しかし空気? なにそれ? おいしいの? という感じのドクオには暖簾に腕押し、糠に釘だった。
そんなドクオとツンの関係が変わったのは小学校5、6年生のとき。
やはりツンの性格が変わり始めた頃だった。
その日もドクオはツンをからかっていた。
ツンが悲しんでることを知っている周囲はもはやドクオのいじり方に一片の面白味も感じず、
またツンの表情が翳ってしまうことを嘆いた。
しかし、その日は違った。
ツンはいつものように俯いたりせず、むしろ強い決意と意思を目に宿し、
ドクオを、ドクオの左頬を、思い切り叩いた。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:23:51.68 ID:6/X0JQc3O
紫煙
63 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:24:25.35 ID:jYGhlNo/0
パァン、という乾いた音が周囲に鳴り響く。
みな何が起こったのか理解できなかった。時が止まったかのようだった。
頬を叩かれたドクオも、
今までずっと言われるがままだったツンが自分を叩くなんて信じられないという表情だ。
ツンが顔を上気させ、肩を震わせ、目を吊り上げ、
この世にある“怒る”という感情を表す比喩を全て体現したかのような形相で、ドクオに怒声を浴びせた。
ξ#゚−゚)ξ「いい加減にしろーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ツンはそう声を荒げると肩を上下させ、少し潤んだ両眼でドクオを睨みつけた。
(;^ω^)「ツン……」
('A`)「いい……」
(;^ω^)「は?」
('A`)「あ、いや……」
今、コイツ何て言ったんだ? ブーンはドクオから出た咄嗟の言葉に、変態としての片鱗を感じた。
64 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:26:10.50 ID:jYGhlNo/0
それからはドクオがツンをからかうことは無くなり、ツンはどんどん明るくなっていった。
ツンは自分をいじめていた者全員に反発していき、やがてツンをいじめるものは居なくなった。
ツンは良く言えば活発に、悪く言えばそれまでより少し粗雑になっていった。
つまり今に近い性格に変わっていった。
変化したのはツンの性格と境遇だけではなかった。ブーン達との関係も変わった。
“ブーン達に付いて来たツン”から“ブーン達を連れ回すツン”に変貌していった。
それからはすっかりブーン達の指揮をツンがとり、ブーン達も基本的にはそれに従った。
ドクオは逆にツンにやりこめられるようになり、むしろそれが楽しそうにも見えた。
その関係はブーン達が中学校に上がり、ツンが引っ越してしまう時期まで続いた。
65 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:27:41.57 ID:jYGhlNo/0
あぁ、そうか――。
当時を明確に思い出したブーンは理解した。
ツンの性格が変わったのはドクオを叩いてからだ。
そこからツンは変わっていったのだ、と。
ではドクオを叩いた理由は? 我慢の限界だったから? 何かきっかけがあって?
それにも理由があった気がするが、ブーンはそこまで思い出すことが出来ない。
ブーンはしぃと楽しげに笑っているツンを一瞥した。
屈託のない笑顔を見せるツン。
ツンは3年振りに再開した今でも、やはりツンだった。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:28:47.06 ID:6/X0JQc3O
支援
67 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:29:39.47 ID:jYGhlNo/0
二人がわいわい談笑しているのを白痴のように聞いていると、
いつの間にか時計の針は進み夜の帳が下りてきていた。
窓の外に目をやると、まだ陽はあるものの薄暗い。
蝉の声がどこか物悲しく聞こえた。
ガチャリ、と玄関から音が聞こえた。父か、母か、またはその両方が帰ってきたのだろう。
J( ‘-`)し「ただいまー」
どうやら帰ってきたのは母のようだ。
ξ゚听)ξ「あ、おばさん帰ってきた。しぃちゃん、お出迎え行こうよ」
(*゚―゚)「うん、行こう行こう」
そして二人で母を迎えに行ってしまった。
ブーンは一人ぽつねんとリビングに佇む。なんだか取り残されたようで寂しい。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:30:09.59 ID:N+IKJJiFO
×再開
支援
69 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:31:06.85 ID:jYGhlNo/0
J( ‘-`)し「あら、ツンちゃん! 来てたの!?」
ξ゚听)ξ「おばさん今晩は、お久しぶり」
J( ‘-`)し「久しぶりねぇ、元気にしてた?」
ξ゚听)ξ「まぁね。おばさんも元気そうだね」
(*゚ー゚)「ツンちゃん、私たちに会いに里帰りしてくれたみたいよ」
J( ‘-`)し「あら、本当? 嬉しいわ。しばらくこっちにいるんでしょ?」
ξ゚听)ξ「うん。ブーンの部屋貸してもらうことになったよ。泊めてもらうから宜しくね」
J( ‘-`)し「あらー、子供が一人帰ってきたみたいで楽しいわねぇ」
玄関では3人が仲良く話しているようだ。そんなところで話すんならリビングに来ればいいのに。
少し寂しさを感じているブーンは『ブーンだってお出迎えなら負けないもん☆』といった感じで玄関に向かった。
70 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:33:11.67 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「かーちゃん、おかえりだお」
J( ‘-`)し「あぁブーンただいま。ツンちゃんが来ることなんで黙ってたのよ?」
( ^ω^)「僕だって今日知ったんだお。っていうか僕が家に帰ってきたらツンがいたんだお」
J( ‘-`)し「そうなの? お母さん帰ってきたらツンちゃんがいたからびっくりしちゃった」
ξ゚听)ξ「サプライズだよおばさん」
じゃあ急いでご飯作るわね。といってブーンの母親はキッチンに向かっていった。
少し待っていると、いい匂いが漂い夕食の完成を知らせた。
今日のメニューは鯖の塩焼きと筑前煮という純和風の料理だった。
ツンは昔からブーンの母の料理をおいしいと言っていたので、久しぶりに振舞われた手料理に目が輝く。
J( ‘-`)し「ツンちゃんが来るって知ってたらもっといいもの作ったんだけど」
ξ゚听)ξ「おばさん気を遣わないでよ。あたし、おばさんの料理なら何でも好きだよ」
4人が食卓を囲み食事につこうとした時、再びインターホンが鳴った。
71 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:34:32.00 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「きっと父ちゃんだお」
そう言ってブーンは玄関に父親を迎えに行った。
玄関には予想通り父親が立っていた。
手には寿司折の紐が握られている。いつの時代の父親像だ。
( ´_ゝ`)「うーぃ、帰ったぞー。水ー!」
水を催促してきたが別に父親は酒を飲んでいない。
たまにこうして酔っ払いの振りをして帰ってくるのだ。
このテンプレ通りとも言える酔っ払いの姿は父親にとって昔からの憧れの対象だったらしい。
酔っ払う必要を感じさせないほど沸いた頭だと思った。
ちなみにいつかは新橋で飲み潰れながら部長の悪口を言ってみたいらしい。
( ^ω^)「父ちゃんおかえりだお」
( ´_ゝ`)「おー? 愛しの我が息子か。おら、寿司あるぞ、寿司。寿司食いねぇ」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:35:10.04 ID:N+IKJJiFO
そのカーチャンはちょっと怖いwww
73 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:36:20.55 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「もう夕食出来てるから早くくるお」
( ´_ゝ`)「うん、じゃあ今行きますよ」
そして酔っ払いの振りをやめ、いきなり素に戻った。本当になんなんだろうかこの男は。
父がリビングに足を入れ、自分の家族と一緒に食事をとっているツンに目を向けた。
そしてワナワナと震えだし、寿司折を指先からぽとりと落とした。
ξ゚听)ξ「おかえり、おじさん」
( ´_ゝ`)「マ……マイドウター、ツン……!」
言うが早いが父親はツンに近寄り抱きしめた。
(*´_ゝ`)「よくぞ……よくぞ帰ってきた……!!」
ξ゚听)ξ「うん、ただいまおじさん」
父は昔からツンを溺愛していた。傍目で見ても実子であるブーンやしぃよりも可愛がっていた。
本当に愛しているんじゃないか? と疑いたくなるほどの寵愛を与えていた。
74 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:37:58.16 ID:jYGhlNo/0
(*´_ゝ`)「ツンちゃん、会いたかった。寿司を食べなさい」
セリフの前後の文脈がつながっていない。なぜ今寿司を勧めたのだろうか。
ξ゚听)ξ「今おばさんの料理食べてるからそんなには食べれないよ。
折角だからみんなで食べようよ」
( ´_ゝ`)「私はツンちゃんだけに食べてもらいたいのに……」
ツンは別段迷惑そうでもなく父親と会話している。
なぜこんな変態と言葉のキャッチボールが出来るのだろう、とブーンは思った。
( ´_ゝ`)「ツンちゃんはこっちに戻って来たのかい?」
父がスーツを脱ぎながらそう尋ねる。
ξ゚听)ξ「ううん。里帰りってやつ? しばらくこっちにいるつもりだけど」
( ´_ゝ`)「そうかそうか。ツンちゃんがよければうちにずーーっと住んだっていいのに。なぁ? 母さん」
J( ‘-`)し「本当にねぇ。ツンちゃんがうちに住んで学校もこっちに通えばいいのに」
ξ゚听)ξ「……そうね」
なんだろう? 今、一瞬ツンが寂しそうな目をした気がする。ブーンはそんなツンの表情を見逃さなかった。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:38:01.56 ID:6/X0JQc3O
支援
76 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:40:08.09 ID:jYGhlNo/0
( ´_ゝ`)「しかし、ツンちゃんは可愛くなった。いや、可愛いのは昔からだから、綺麗になったと言うべきか。
可愛さと綺麗さを兼ね備えた最強のべっぴんさんになった。なぁ、そう思うだろう? 母さん」
J( ‘-`)し「そうねぇ。ツンちゃんは食べちゃいたいぐらい可愛いわ」
( ´_ゝ`)「ははは。食べちゃいたいぐらいか。うん、そうだな。的確な表現だ」
そんな二人の会話をツンは照れる風でもなく聞いていた。
さすがにずっと可愛いと言われ続けていたら慣れるというものかもしれない。
その会話にしぃも参加する。
(*゚―゚)「ねぇねぇ、お父さん私は? 可愛くなった?」
( ´_ゝ`)「食事中は黙っていなさい」
(*゚―゚)「…………」
しぃはそう無下に扱われ、ロボットのような無機質な表情で寡黙に鯖を口に運んだ。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/06(金) 23:41:48.31 ID:swUIWDqA0
支援
78 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:47:29.79 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「母ちゃん、おかわりだお」
ブーンは誰よりも早く白米を一膳平らげ、二膳目を母親に催促していた。
J( ‘-`)し「はいはい、ブーンは本当に良く食べるわねぇ」
母親がブーンの茶碗を受け取り、席を立った。
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン。あんた前より太ったんじゃない?」
ピキッ。
そうツンが指摘すると、ブーンの動きが止まった。
( ^ω^)「……何言ってるかわからないお」
ξ゚听)ξ「太ったよ、ブーン。昔からちょっとポッチャリだったけど、
今はもうポッチャリじゃすまない体型になってきたんじゃない? ご飯の食べすぎだよ」
( ^ω^)「……そんなことないお」
ξ゚听)ξ「太ったお」
79 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:51:33.48 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「太ってないお。ツンは自分が痩せてるから周りが太って見えるだけだお。
っていうか口癖を真似するなお」
ξ゚听)ξ「デブ」
(#´_ゝ`)「そうだぞこのデブ!」
なぜか父親も非難してきた。昨日まではそんなこと一言も言わなかったのに。
お前はアレか、ツンのイエスマンか。
(*゚ー゚)「でも確かにツンちゃんがこっちにいた頃よりは太ったかもね」
(;^ω^)「しぃまでそんなこと言うのかお」
( ´_ゝ`)「痩せろ痩せろデブ。お前のふくよかなご尊顔を拝見してると飯がまずくならぁ!」
(#^ω^)「わかったお。もう食べないお」
ブーンは機嫌が悪くなり、二杯目のご飯に手もつけずに席を立った。
しかし誰も引きとめる者はいなかった。本当は謝罪と共に引き止めて欲しかったブーンだが、
もう後には引けずおとなしく二階にある自室に戻ることにした。部屋に入り、ドアを閉める。
少し間が空くと下から楽しそうに談笑しているのが聞こえる。
( ^ω;)「ちくしょうだお」
悲しみの中でブーンは一人呟いた。
80 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:54:10.16 ID:jYGhlNo/0
ξ*゚听)ξ「あー、食べた。私はお腹いっぱい」
そう言ってツンが満足そうに部屋に入ってきた。
ξ゚听)ξ「やっぱりおばさん料理上手だね。いつもより多く食べちゃった」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「おじさんも相変わらず変だし。まぁ変わってなくて安心したわ」
( ^ω;)「………………」
ξ゚听)ξ「おい」
ブーンはうつ伏せになったまま、死体のように微動だにしなかった。
ξ゚听)ξ「話しかけてるでしょ? シカトしないでよ」
( ;ω^)「………………………」
ξ゚听)ξ「あたしは前より太ったねって言っただけでしょ? それぐらいでいじけないでよ」
( ^ω^)「……僕はツンのせいでお腹いっぱい食べれなかったお」
ξ゚听)ξ「あら、よかったじゃない。丁度いいダイエットになって」
東北で糞暑いつったら山形だな
82 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:56:18.77 ID:jYGhlNo/0
( ^ω^)「……不幸だお。食事は僕の楽しみなのに」
ξ゚听)ξ「不幸ダイエットって言うのもあるらしいわよ。
不幸になってげっそり痩せちゃえばいいじゃない。この際」
( ^ω^)「……父ちゃんも調子にのって罵倒してきたお」
ξ゚听)ξ「おじさんはあたしが可愛くて仕方ないみたいだからね」
( ^ω;)「…………」
ξ゚听)ξ「いい加減に機嫌直しなよ。結果的にはダイエットするきっかけが出来てよかったじゃない。
ブーンは今日から生まれ変わるのよ。げっそりブーンに」
( ;ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「…………」
ツンは無言でブーンの尻を叩いた。
それはまるでゼリーのようにプルプル震えて、
いかにブーンの尻が柔らかで、そして肉付きがいいかを物語っていた。
ξ゚听)ξ「ま、いいわ。いじけ虫に用はないし」
83 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/06(金) 23:58:26.27 ID:jYGhlNo/0
そう言いながら床にごろりと寝転がると、
ツンはそこら辺に乱雑に積まれていた漫画から一冊を選び、黙々と読み出した。
ブーンは相変わらず死体のままで、ツンは別段そんなブーンを気にかけた様子もなかった。
本当はツンにしつこいぐらいに構って欲しかったのだが、作戦失敗のようだ。
最初はいじけた振りをしていたが、横になっているうちに段々と睡魔がブーンを襲ってきた。
眠りに付くまでにあと少しというときにブーンの携帯電話がけたたましく鳴り響いた。
( ^ω^)「……はい」
('A`)『お、早いな』
ドクオだった。
( ^ω^)「……何の用だお? 僕は今まさに夢の中へ
……夢の中へ行ってみたいと思いませんかうふっふ……」
('A`)『? 何言ってるんだ? 寝ぼけてるのか?』
( ^ω^)「寝ぼけてないお。一体何の電話だお。今日のことなら誰にも言わないから安心するお」
('A`)『いや、今日のことじゃねぇよ。もうそれは忘れてくれよ。そうじゃなくて、明日の事だよ。海に行くだろ?』
84 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:03:55.83 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「行くお。勉強するわけでもないし」
ブーンはそう言うとゆっくり体を起こした。
('A`)『じゃあ、明日10時頃に迎えに行くからよ』
( ^ω^)「ちょっと待って欲しいお」
そう言ってブーンは携帯電話のマイクを指で押さえ、ツンの方に姿勢を向ける。
( ^ω^)「ツン、明日ドクオが海行こうって行ってるけど、行くお?」
ξ゚听)ξ「んー? ドクオ? 久しぶりじゃない。行く行く! ちなみに誰が来るの?」
ツンは漫画から目を離しブーンに視線を向けた。
( ^ω^)「誰が来るお?」
ブーンは携帯電話を顔に当て、ドクオに尋ねた。
(‘A`)『まだ誰も誘ってないけど、ショボンとジョルジュを誘おうと思ってる。
ジョルジュは小学校メンバーだし、ショボンとは今日プールに行くつもりだったんだろ?』
( ^ω^)「ジョルジュと……ショボンっていう僕らの高校の友達だってお」
またツンに話しかける。同時通訳をしているようで疲れる。
ツンは少し思案顔をして、
85 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:05:38.87 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「いいわ。久しぶりにあいつらの顔見たいしね」
そう答える。
ブーンは少し頷き、受話器の向こうのドクオに話しかける。
( ^ω^)「今ツンもこっちにいるんだけど、一緒に行っていいお?」
('A`)『ツン? ツンがいるのか!? ハハハ、おいツン、久しぶりじゃねぇか! 元気してたか!?』
(;^ω^)「僕はツンじゃないお」
(;'A`)『あ、あぁそうか、悪ぃ。いやーまさかツンが帰ってきてるとはな。いつからこっちにいるんだ?』
( ^ω^)「今日だお。ドクオとバイバイして帰ったらツンがうちにいたんだお」
('A`)『そ、そうか。相変わらずアバンギャルドな奴だな』
( ^ω^)「僕もびっくりしたお」
('A`)『ひひひ。じゃあブーンちゃん、嬉しいんじゃないの? 大好きなツンちゃんが帰ってきてさ』
ブーンがツンの事を好きだという事を知っているドクオが下品な笑い声を上げる。
(;^ω^)「バ、バーロー!」
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:06:21.06 ID:rBN1dME30
支援
87 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:07:06.70 ID:rIWq8gs60
慌ててツンの方へ振り向く。今のドクオの発言がツンに聞かれていたら困る。
幸いにもツンは何も聞いていなそうだった。突然自分の方に振り返ったブーンをきょとん、と見ている。
(;^ω^)「今ツンが隣にいるんだお! 聞かれたらどうするんだお!」
ブーンは小声で怒鳴る、という器用な技を繰り出した。
('A`)『そうなのか? あ、もしかしてツン今日はお前んちに泊まるのか? ヒューヒューだな、おい。ヒューヒュー!』
(;^ω^)「うるさいお」
なんて面倒くさい奴なんだろう。ブーンは深く嘆息した。
('A`)『じゃあ俺は今からショボンとジョルジュを誘うよ。明日10時に車で迎えに行くから家の前で待っててくれ』
( ^ω^)「了解だお」
(//A/)『それと……。し、し、しぃさんも誘って……きゃ、な、何でもないんだからね!』
( ^ω^)「なんでもない、わかったお」
('A`)『しぃさんも誘っておいてくれ』
88 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:09:25.15 ID:rIWq8gs60
ドクオは昔からしぃが好きだったようだ。それこそ小学校の頃から。その年数実に10年間。
もはや一途を通り越して粘着ストーカー野郎に思えてくる。ブーンも人の事は言えないが。
ドクオは雨の夜も冬の朝も、しぃに彼氏が出来たときもしぃを愛し続けた。
そんなドクオが高校最後の夏の思い出にしぃと海に行きたいというのも無理はないだろう。
(;^ω^)「一応誘ってみるお。でもダメでも拗ねたり落ち込んだりしないで欲しいお」
('A`)『努力はしてみる』
( ^ω^)「うん。じゃあ、また明日だお」
('A`)『おう、じゃあな』
そう言って電源ボタンを押すと、ブーンは携帯電話を手元に置き、ツンに話しかけた。
( ^ω^)「明日の10時にうちに迎えに来るらしいお」
ξ゚听)ξ「ふうん。自転車で行くの?」
ちなみにブーンの家から海までは自転車だと2時間ほどかかる。
誰が真夏に2時間も自転車に乗って海に行くものか。
しかもツンの自転車はないので当然ブーンの後ろに乗ることになる。ツンは本気で聞いているのだろうか?
89 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:11:35.52 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「ドクオが車で迎えに来てくれるらしいお」
ブーンのその返答に、ツンは嫌そうに眉間にしわを寄せた。
ξ゚听)ξ「何、あいつ免許なんか持ってるの? 生意気な」
( ^ω^)「ドクオは親の仕事の手伝いで使うから必要なんだお」
ドクオの実家は配達業を営んでいる。
その家業の手伝いのため、ドクオは18歳になるとすぐに車の免許を取らされた。
進路も実家の会社に入社するので、ブーンと同じく受験勉強は一切していない。
とは言っても、ドクオは社会人になるから受験勉強をしなくていいのであって、
あくまで進学するつもりのブーンとはその意味合いが違っていた。
ξ゚听)ξ「あんたは免許ないの? ドクオの家よりこっちの方がド田舎なんだから、
むしろあんたの方が免許必要な気がするんだけど」
( ^ω^)「僕には流星号(自転車)があるから車なんて必要ないお。ツンこそ免許ないお?」
ξ゚听)ξ「あたしの方はバスも電車もたくさんあるから必要ないのよ。
むしろ渋滞が多いから車なんてあっても邪魔なだけよ」
( ^ω^)「そういうもんかお。さすが大宮は都会おね」
90 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:13:51.24 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「……」
ツンは押し黙ってこっちを睨んでいる。何か気に障ることを言っただろうか?
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚听)ξ「なんでもないお」
なんだよ。
意味も分からず睨まれたままでいるのも気分が悪いので、ブーンは話題を変える。
( ^ω^)「明日はショボンって言う僕らの高校の友達が来るから仲良くしてやって欲しいお。いい奴だお」
ξ゚听)ξ「ふーん。ちなみにその人かっこいい?」
ツンに好意を抱いているブーンにとってはなんとも残酷な質問だった。
ショボンは少なくともブーンよりはかっこいい。いかにもピザを食べそうなブーンと違って、
ショボンは知的な顔をしている。ツンの好みはわからないが、事実は事実なのでツンにそのまま伝える。
(;^ω^)「僕よりは、かっこいいお。知的な顔をしてるし」
ξ゚听)ξ「ふーん」
反応は、それだけ。どうやら反射的に聞いただけで、さして興味はなかったようだ。ブーンはほっ、と胸を撫で下ろす。
91 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:18:21.68 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「そういえばツン、水着は持ってるかお?」
ブーンが至極当然な、しかし重要な事を尋ねた。
ξ゚听)ξ「あー、持って来てないわね。こっちで海に行くなんて思ってなかったし。
しぃちゃんに借りてくるわ」
そういうとツンは手にしていた漫画をほっぽり投げてしぃの部屋へ向かおうとした。
( ^ω^)「あ、ちょっと待って欲しいお」
ξ゚听)ξ「何? あんたもしぃちゃんに水着借りたいの?」
(;^ω^)「そんなわけないお。ドクオにしぃも誘うように言われたお。
だから水着を借りに行くついでにしぃも誘ってきて欲しいお」
そこまで聞き終えたツンは、悲しそうな、そして憂いを湛えたような顔をした。
ξ゚听)ξ「そう……」
( ^ω^)「ツン……?」
なんだろう。このツンの悲しそうな表情は?
ドクオがしぃに好意を抱いているなんてみんな知っているはずだ。まさか……ツンがドクオの事を好き、とか?
92 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:21:26.30 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「相変わらず、叶わぬ恋をしているのね……。
最初は笑えたけど、ここまで一途だと……逆に可哀相だわ」
(;^ω^)「ツン……そんなこと言わないで応援してやるお」
ξ゚听)ξ「まぁ、あの神がアスペクト比を間違えたとしか思えないドクオにもいいところはあるから、
協力してやるのもいいかもね」
なんてことを言うんだ。ブーンは恐怖に慄いた。
ξ゚听)ξ「しぃちゃん、部屋に入るよ」
ツンはしぃの部屋のドアをノックすると、返事を待った。
(*゚ー゚)「はーい、開いてるよ」
ツンがドアを開けしぃの部屋に入ると、しぃが何やらTVを見ながら変な踊りを踊っていた。
TV画面の真ん中には独特な体操をしている黒人が映っており、
その周りには同じ動きをした外国人女性がたくさんいる。間違いない、アレだ。
わかってはいるがツンは念のためしぃに聞いてみる。
ξ;゚听)ξ「……何してんの?」
(;*゚―゚)「んー、ビリーズ、ブート、キャンプ」
テラ支援
94 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:23:51.54 ID:rIWq8gs60
激しい運動をしているため、しぃが息切れしながら返事をする。
ビリーズ・ブートキャンプ。ツンの住んでいるところでは2年ほど前に流行ったシェイプアップのDVDである。
それを未だに現役バリバリで視聴しているとは……恐るべしは田舎の情報伝達の遅さである。
とある地域ではミサンガがまだ流行っているというが、
そういった波紋の広がりの遅延こそが地域格差の一端なのではないかとツンは痛感した。
ビリー「ワンモアセッ!」
(;*゚ー゚)「ワンモアセッ!!」
ツンはTVの電源を切った。
(;*゚ー゚)「あー、ツンちゃん何するのよ」
ξ゚听)ξ「しぃちゃん、明日、暇?」
しぃの不平は一切無視でツンは尋ねた。
(*゚ー゚)「んー? 暇だけど。何で?
ブーンとどっか遊びに行くなら私も付き合うよ。お邪魔じゃないなら」
ξ゚听)ξ「良かった。明日ブーンとドクオとかと海に行くことになったんだけど、
しぃちゃんも行こうよ。女の子一人じゃ寂しいし」
95 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:25:36.31 ID:rIWq8gs60
(*゚ー゚)「いいよ。行こう行こう。ふふふ……水着か。
ビリーで鍛えたこの肉体を披露するときが早々にやってきたわい」
ξ゚听)ξ「それでね、あたし水着持って来てないから貸して欲しいんだ」
(*゚ー゚)「うーん、それはいいけど」
そう言ってしぃはツンの体をまじまじと見た。ツンはかなり背が小さい。
大体150pあるかないかくらいだ。対してしぃは身長162p。
その差は実に10p以上はあろうかと言うほどだ。つまり水着のサイズが合わないのである。
しぃが言いにくそうに、
(;*゚ー゚)「多分、中学生の時の水着になっちゃうかも」
そう告げた。
ツンも自分の身長が平均のそれをかなり下回っているのを知っているので、
しょうがないといった顔つきだった。
ξ゚听)ξ「まぁ、あたしとしぃちゃんじゃ身長差があるから仕方ないよ」
自分がチビだということは明言しなかった。
(*゚ー゚)「じゃあちょっと待っててね。えーと、どこにしまったかな」
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:28:33.31 ID:U3TEvOQOO
支援団体
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:29:15.38 ID:rBN1dME30
支援
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:30:54.66 ID:n3sOnXzwO
wktk支援
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:36:31.17 ID:+Hr5+FmFO
支援
100 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:38:13.74 ID:rIWq8gs60
しぃが箪笥や押入れの中をごそごそとやり始めた。そして5分ほど経って、
(*゚ー゚)「あった、あったよ。ほれ」
しぃが自分の手の中にあった水着を押し付けてきた。
ツンはそれを広げて見てみる。
上下に分かれたホルターネックビキニ、2段のフリルが付いたスカートを上に履くようだ。
色は薄いピンクでなかなか可愛い。
(*゚ー゚)「サイズ合わないかも知れないから、着てみなよ」
そうしぃに促され、ツンは薄いブランケットを羽織り即席の暗幕にし、ごそごそ着替えた。
待つこと数分。
ξ゚听)ξ「じゃーん」
どうやら着替え終わったようだ。ツンはかなりスレンダーな体型をしているので、
何を着てもある程度似合うのだがこの水着は格別に似合っていた。
ビキニなのにいやらしく見えず、薄いピンク色はツンの白い肌にとても映えている。
2段のフリルスカートは本来清楚さを演出すべきだが、
足の付け根を隠すことによりただビキニを着るよりも色気を醸し出し、しかし上品さと愛らしさがあった。
だが。
101 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:40:10.71 ID:rIWq8gs60
(;*゚ー゚)「うーん……」
しぃが声を唸らせた。
(;*゚―゚)「やっぱりちょっと余ってるね……」
ξ゚听)ξ「……」
胸元に注目してみると、少しだけ水着と胸部の間に隙間があった。つまり、胸が足りていなかった。
しぃはそれほど胸が大きいわけではない。およそ日本人女性の平均値程度である。
しかもツンが着ているのはしぃが中学生のときに着ていた水着なのだ。
(;*゚ー゚)「どうしようか」
ξ゚听)ξ「……」
(;*゚ー゚)「ま、まぁパットがあるから大丈夫だよ!」
ξ゚听)ξ「しぃちゃん……」
(;*゚ー゚)「ん?」
ξ゚听)ξ「あたし……胸小さいよね? やっぱり……」
(;*゚ー゚)「う……」
予想していた質問なのにしぃは言葉に詰まってしまう。
なんと答えたらいいものか。下手なことを言うとツンの背後にある影が更に濃くなってしまう。
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:40:44.98 ID:U/hpzdyJO
悲しいかな。しぃはCカップ。ツンはAカップだったのである。
つまり、胸がスッカスカだったのだ!
103 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:41:35.35 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「中学生のときのしぃちゃんより胸が小さいなんて予想外だよ……」
余程ショックだったのだろう。ツンはまるで幽鬼の如くゆらめきながら、蚊の鳴くような声で呟いた。
(;*゚ー゚)「ツ、ツンちゃんはまだ成長期なんだよ! これからこれから!」
しぃが必死でフォローする。が。
ξ゚听)ξ「………」
ツンは生気の抜けた目でしぃを一瞥し、
ξ゚听)ξ「水着、ありがと……。明日10時にドクオが来るみたいだから……」
それだけ告げると覚束ない足取りでしぃの部屋を出て行ってしまった。
(*゚ー゚)「あちゃー……。パンドラの箱を開けてしまったか。フッフフ……手負いの狼、か……。
次にまみえるときは一層手強くなっているに相違ない」
しぃは自分しかいなくなった部屋でそう一人ごちると、ビリーの続きを始めた。
104 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:43:12.35 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「お、おかえりだお」
ツンがブーンの部屋に戻ると、ブーンは一人でゲームをしていた。
(;^ω^)「な、なんかツン、影を背負ってるお。どうしたお?」
自分の部屋を出てからいくばくも時間が経っていないのに、
どんよりとした空気を身にまとっているツンを見て、ブーンは訝しげに尋ねた。
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン」
(;^ω^)「な、なんだお?」
ξ゚听)ξ「あんた、明日海行くの楽しみ?」
( ^ω^)「ツンは楽しみじゃないお?」
ξ゚听)ξ「そうじゃないけど……。あんたはどうなのかと思って」
( ^ω^)「僕は楽しみだお」
ブーンは手に持っていたコントローラーを置き、ツンのいる方へ体の向きを変えた。
( ^ω^)「ドクオ達と海に行くだけでも楽しいのに、今回はツンもいるんだお。
楽しくないわけがないお。まぁ僕は太ってるから水着姿を見られるのは恥ずかしいけど」
ブーンのその言葉に、ツンは二つの意味で嬉しくなった。つまり体型にコンプレックスがあるのが自分だけじゃない、
ということ。そして、ブーンは自分といるのが楽しいのだということに。
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:45:09.11 ID:U3TEvOQOO
支援す
106 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:45:14.91 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「お? ツン、何かニヤニヤして気持ち悪いお」
どうやら喜びが顔に出てしまっていたようだ。不覚。
ツンは照れ隠しでブーンの額にデコピンをした。
ξ゚听)ξ「気持ち悪いのはあんたでしょ。本当にちょっとは痩せなよ、ブーン」
( ^ω^)「おっおっお。今日からダイエットだお」
デコピンをされはしたが、ツンの機嫌が直ってよかった。
それに今のデコピンにはなんだか優しさがあった気がする。
そんなことを考えているとブーンもなんだか嬉しくなってきた。
ξ゚听)ξ「じゃああたし、お風呂借りてくるね」
おもむろにツンが口を開いた。まだ誰も風呂には入っておらずツンが一番風呂となるが、
そこは勝手知ったる内藤家。遠慮などしようはずもない。
( ^ω^)「ごゆっくりだお」
ξ゚听)ξ「覗くなよ」
ツンが意地悪そうな笑みでブーンに言う。
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:52:52.78 ID:U/hpzdyJO
支援です
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:52:54.01 ID:n7FXWfdh0
このツンは幼馴染全開でいいな
支援
109 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:53:23.06 ID:rIWq8gs60
(;^ω^)「覗くわけないお。そういう事は僕よりも父ちゃんに言えお」
ξ;゚听)ξ「……あり得そうだからやめて」
父なら覗くというよりも平然と一緒に入ってきそうだが。
ツンは軽快な足取りで浴槽へ向かった。
バタン。
扉が閉まり、ツンがこの部屋から姿を消した。
( ^ω^)「……さて、と」
ツンが階段を下りる音を確認し、ブーンの目が妖しく光る。
( ^ω^)「ガオレンズトゥーガを手に入れるために頑張るかお」
そう言ってゲーム画面に目を戻した。
ξ*゚听)ξ「いいお湯だったー。ご馳走様」
ゲームに熱中しているとツンが浴湯から戻ってきた。
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 00:54:36.28 ID:rBN1dME30
支援せざるをえない
111 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 00:55:26.08 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「お帰りだお」
コントローラーを握りながらそう答え、ブーンはツンに目を向けた。
(;^ω^)「お」
思わず声が漏れてしまった。
ツンは湯上りのせいか頬が紅潮していた。
そのため普段とは違う健康的な色気とでもいうべきものが漂っていた。
まだ濡れたままの髪を真っ直ぐに下ろし、首からはタオルを下げている。
寝巻きとしてしぃに借りたのだろうか、Tシャツにハーフパンツというラフな出立ちでいる。
3年間会っていなかったとはいえ外見的には何も変わっていない、
何度も見慣れたはずのツンに見惚れてしまうなんて……くやしい……でも、感じちゃう……!!
ξ*゚听)ξ「『お』って何よ。あたしのすっぴんが面白いってか」
なにを勘違いしたのか、ツンはじっとりとした目でブーンを睨め付ける。
そもそもツンは化粧自体が濃くはないので、すっぴんでもそれほど変わらない。
より子供のような顔立ちになるだけだ。
(;^ω^)「お、そんなこと言ってないお。ふ、服をしぃに借りたんだおね」
ブーンはそう誤魔化した。
112 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:01:40.05 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「まぁね。よく考えてみたらあたし何も持ってきてなかったの。
だから着替えとか必要なものはしぃちゃんに借りるしかないわけ」
つまらなそうに言うツンの言葉に、ブーンは違和感を感じた。
着替えも持ってこないほど急にこっちに戻ってきたのだろうか? だとしたらその理由は?
――わ、わかった。俺達はとんでもない思い違いをしていたようだ。これを見てみろ。
まず“ツン”をローマ字で表記する。すると“tsun”になる。これを逆にし“nust”。日本語に直し“ヌスト”。
今年は2009年だから2009を末尾に加える。すると“ヌスト2009”になる。
ヌストという日本語は存在しないのでもう一度ローマ字に直す。
そして最後に“2009”これはノイズと考えられるので削除し残りの文字を取り出す。するとできあがる言葉は“nust”。
これをグーグルで検索に掛けてみる。そして一番上にあるサイトを開くと……。盗撮系のエロサイト……!!
つまり、ツンは盗撮されて逃げてきたんだよ!!
(;^ω^)「な、なんだってーーーーーっ!?」
ξ゚听)ξ「?」
(;^ω^)「それは本当なのかキバヤシ!?」
ξ゚听)ξ「? とりあえず、えい」
ツンがわりと強いデコピンをブーンの額に見舞った。ブーンは額を押さえ悶絶している。
ξ゚听)ξ「落ち着いた?」
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:03:33.06 ID:U3TEvOQOO
支援
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:04:12.78 ID:rBN1dME30
しえんだ
115 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:04:16.03 ID:rIWq8gs60
そうツンが尋ねた。
(;^ω^)「お、お、落ち着いたお。ちょっと考え事をしてただけだお」
ξ゚听)ξ「あんたは考え事をするとブツブツ一人言を言うのか?」
(;^ω^)「悩んだときは心の中のキバヤシに相談すると名案が浮かぶんだお」
ツンは何だそれ、と言うと床に腰を下ろし扇風機にあたった。
目を閉じて気持ちよさそうにしている。長い髪がぱたぱたとなびいていた。
ξ゚听)ξ「あんたはお風呂はいんないの?」
( ^ω^)「僕はゲームやってるからまだはいんないお」
時計を見ると時刻は午後9時。
本当ならば既に入浴を済ませていてもいい頃だったが、中途半端にゲームを中断すると気持ちが悪い。
まだしばらく時間がかかるだろうが、当初の目的を終えてから湯船につかることをブーンは決心した。
ξ゚听)ξ「ねぇ」
TV画面に集中しているブーンにツンが話しかけた。
( ^ω^)「なんだお?」
視線は画面に留めたままブーンが返事をする。
116 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:06:17.43 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「つまんない」
( ^ω^)「そんなこと言われても、こんな田舎じゃ遊びに行くところなんてないお」
ξ゚听)ξ「だって、つまんないんだもん。
せっかく帰郷したんだからボーっとしてるだけじゃつまんないわよ」
本来ならブーンがもてなさなければならないのかもしれないが、
なにしろ急な来客だ。準備も計画もしていない。
( ^ω^)「じゃあツンも一緒にゲームやるかお?」
苦し紛れにそう聞いたブーンに、
ξ゚听)ξ「面白いじゃない。あんたはゲームでもあたしに勝てないことを証明してあげる」
ツンは意外にも乗り気のようだった。
ブーンはそれまでプレイしていたデータを保存した。
本当はキリのいいところまで進めておきたかったのだが、ツンに退屈されていると心苦しい。
適当に満足してもらって、それからゆっくり自分の作業を始めるほうが都合がいいとブーンは判断した。
( ^ω^)「じゃあ何をやるかお?」
ブーンはツンに尋ねた。ツンが選んだのは、SFC桃太郎電鉄3だった。
(;^ω^)「結構古臭いものを選ぶおね。カートリッジのゲームなんか久しぶりにやるお。まぁとにかくやるお」
117 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:09:31.95 ID:rIWq8gs60
カートリッジをゲーム機にセットし、電源を入れる。
カチッという懐かしい音が響きTV画面にハドソンのロゴマークが表示された。
( ^ω^)「とりあえず年設定は15年ぐらいでいいお?」
ξ゚听)ξ「99年」
(;^ω^)「は?」
ξ゚听)ξ「99年でやるって言ったのよ。ほら、とっとと始める!」
こいつ……只者じゃあない……。
99年なんかに設定したらそれこそ何時間かかるかわかったもんじゃあない。
いや、ゲーム速度を最速にして、CPUを無しにすればあるいは……。
最悪、途中でゲームを中断すればそれで良いか。ブーンはそう展開をよんだ。
( ^ω^)「OK! やろう! 『99年』で!」
ξ゚听)ξ「good!」
ブーンは年数を99年にセットし、ツンに尋ねた。
( ^ω^)「CPUは無しでいいおね?」
ξ゚听)ξ「閻魔」
(;^ω^)「なっ!?」
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:11:14.56 ID:rBN1dME30
支援
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:11:31.01 ID:g8nXiFg5O
しぇぇん
120 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:12:12.64 ID:rIWq8gs60
正気か!? CPUを入れてプレイするというのか!? それも赤鬼ではなく『閻魔』!
それでは場が荒れて長丁場になってしまう!
ξ゚听)ξ「聞こえなかったの? 『閻魔』よ」
(;^ω^)「ツ、ツン……それはいくらなんでも無茶だと……」
ゴゴゴ ゴゴ
ブーンの言葉はそこで途切れた。ツンがコントローラーをひったくり、勝手にカーソルを閻魔に合わせ始めたからだ。
ゴゴ ゴゴゴ
(;^ω^)「コイツッッ! 止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――ッ! スイッチを押させるなァァァァ―――――ッ!!」
ゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ξ゚听)ξ「いいやッ! 限界だッ! 押すねッ!!」
ポチッ。
(;^ω^)「あぁ……」
ブーンの嘆願虚しく、ツンは決定ボタンを押してしまった。これで超速プレイは不可能となってしまった。
ξ゚听)ξ「えへへ。押しちゃったー」
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:13:54.76 ID:g8nXiFg5O
ブーンが襲ってしまうフラグか
122 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:15:12.44 ID:rIWq8gs60
(;^ω^)「ツン……なんて事をしてくれたんだお。これで1時間や2時間で終わることはなくなってしまったお」
ブーンは不満を露にする。
ξ゚听)ξ「まぁいいじゃない、暇よりは。飽きたらそこでセーブしてやめればいいのよ」
(;^ω^)「そ、そうおね」
ツンの提案にブーンは不承不承頷いた。
しかし、ツンの言葉が実現されることはなくきっちりとゲームをし続け、時間だけが無常に過ぎていったのだった。
部屋に入ってくる太陽の光でブーンは目を覚ました。
体が痛い。背中にいつもと違う、布団ではない感触を感じる。
それはとても硬く、全く体の疲れがとれそうにもなかった。それは床だった。
(;^ω^)「お? お?」
123 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:18:12.10 ID:rIWq8gs60
ブーンは自分がなぜ床で寝ていたのかを思い出そうとした。そうだ、確かツンと桃鉄をしていて、
プレイ年数を99年間に設定していたものだから全然終わらなくて……。
飽きたら途中でやめるつもりだったけどつい熱中してしまって、
せっかく買った桃太郎ランドをキングボンビーに壊されて……。
それで……、それでどうしたんだっけ?
そこまでは記憶にある。が、そこから先は思い出せなかった。
かすかに覚えていること……キングボンビー……残虐プレイの閻魔……ツンの怒った顔……それだけだった。
TV画面に目を向ける。画面には何も映っておらず真っ暗な画面が映し出されているだけだった。
ゲーム画面がついていないということは、プレイ途中で寝てしまったというわけではなさそうだ。
しっかりとスイッチも切れている。
ブーンは自分の左頬が痛むことに気付いた。なぜ? 昨日の記憶を探ってみるが頬に痛みなんかなかった。
いや、記憶では昨日に限らず頬を痛めるようなことなどなかった。
(;^ω^)「? ?」
ブーンはわけがわからなかった。ふと横を見てみる。
そこには、あどけない顔で寝息を立てているツンがいた。
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:19:23.62 ID:g8nXiFg5O
試演
125 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:21:22.03 ID:rIWq8gs60
(;^ω^)「おわっ!?」
ブーンが叫び声を上げた瞬間、ツンの大きな目が開いた。
いつも通りの勝気な目ではなく、とろんと眠そうな目だった。
ツンは辺りをキョロキョロと見回している。まだ寝ぼけているようだ。そして寝ぼけ眼のまま、口を開いた。
ξ゚听)ξ「なんであんたがここにいるの?」
目覚めの挨拶が“おはよう”ではないことなど、ブーンはここ何年間か味わっていなかった。
(;^ω^)「え? いや……」
ξ゚听)ξ「寝るときはリビングに行ってって言ったよね?」
(;^ω^)「あぅ、あぅ」
そんな事を言われても困る。なにせなぜ自分がここで、
しかも床で寝ていたのかなんてブーン本人にもわからないのだから。
しかし、うまく言葉に出来ない。そしてそれを声に出せたとしてもツンは同じ行動をとるだろう。つまり、
ξ゚听)ξ「ペナルティ!」
ツンは寝起きとは思えない元気さでブーンの額にデコピンをした。
その痛みのおかげで、ブーンの頭にかかっていた靄が晴れた。
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:23:55.72 ID:WvjrBdbbO
支援
気になって寝れない
127 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:24:37.53 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「わかった!」
ξ゚听)ξ「何がわかったのよ? まさかデコピンされる喜びがわかったなんて言うんじゃないでしょうね?」
( ^ω^)「わかったお!」
ξ゚听)ξ「だから、なにがわかったのよ?」
(#^ω^)「だから、わかったんだお! なんで僕がここで、床で寝ていたのかを思い出したんだお!」
そう、ブーンは今のツンの一撃で、自分がツンにデコピンをされる根源となった同衾の理由を思い出したのだ。
(#^ω^)「僕たちが桃鉄やってて、夜中の3時過ぎぐらいだったかお?
眠たくてはっきりとは覚えていないけど、ツンが僕を殴ったお!
確かせっかく買った桃太郎ランドをキングボンビーに壊されたとかそんな理由で!」
ξ;゚听)ξ「え? そ、そうなの?」
思わぬブーンの言葉にツンはたじろいだ。
(♯^ω^)「そうだお! 僕もツンも半分寝てるような状態でゲームしてたから詳細は覚えてないかもしれないけど、
確かに殴られたお! ツンがこう、『うわー! キングボンビー!』とか言って、
コントローラーをほっぽり投げたらその手がほっぺたに当たったお! 眠気も相まってそれで気絶したお!」
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:26:17.98 ID:g8nXiFg5O
気絶かいWWW
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:26:39.19 ID:rBN1dME30
支援
130 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:28:14.84 ID:rIWq8gs60
ブーンは珍しく激昂した。
不慮の事故とはいえで殴られ気絶した上に、ツンが原因である同衾を責められてたまったものではなかったのだ。
ξ;゚听)ξ「えっと、その……」
ツンも口籠もる。
(#^ω^)「謝って欲しいお。僕がリビングで寝れなかったのは僕のせいじゃなかったお。ほっぺただって痛いお」
ブーンの左頬は、若干だが赤く腫れていた。
ブーンに予想以外の傷を負わせてしまったことに、ツンは多少の負い目を感じた。
ξ;゚听)ξ「えっと……その、ごめんねっ!」
謝るのが苦手なツンは少し照れ臭いのかそっぽを向き、しかしそれでも素直に謝った。
普段では見られない従順なツンを見て、ブーンは少し加虐的な衝動に駆られた。
平たく言えば、ツンをいじめてみたくなった。
( ^ω^)「いやだお」
ξ;゚听)ξ「な、なんでよ! ちゃんと謝ったじゃない!」
( ^ω^)「そんな謝罪じゃ許さないお。僕はね、ツン。ほっぺたを傷めたんだお?
不慮の事故とはいえ、事実は事実だお。その上、ここで気絶していることも責められたお」
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:30:48.01 ID:WvjrBdbbO
ツン……デレ??
132 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:30:53.56 ID:rIWq8gs60
いつもとは違い、ブーンはツンに対して強気だった。
本当なら故意でやった事ではないのでそこまで責められるものではないかもしれないが、
先ほどのデコピンもあったため、ツンはブーンに許しを請うた。
ξ;゚听)ξ「じゃ、じゃあ、どうすれば許してくれるのよ」
ツンなりに下手に出てみる。
( ^ω^)「もう無闇に僕を責めるのはやめるんだお?」
ξ;゚听)ξ「わ、わかったわ」
( ^ω^)「あとアイスも奢るんだお。昨日食べられちゃったし」
ブーンは調子に乗ってここぞとばかりに要求をしだした。
ξ#゚听)ξ「ぐっ……わ、わかったわよ」
その返事を聞いてブーンは満足そうに頷いた。
相手の弱きを見つけたらすかさずそこをつき自分の要求を通す。交渉術の基本だ。
133 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:35:09.70 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「じゃあ許してくれるよね?」
( ^ω^)「だが断る」
ξ#゚听)ξ「なっ――――!」
ツンは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)のブーンを除かなければならぬと決意した。
ツンには政治がわからぬ。ツンは、街の女子高生である。ホラを吹き、友人と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
邪悪……吐き気をもよおす邪悪とはッ! なにも知らぬ無知なるものを利用する事だッ!
( ^ω^)「おっおっおっ。このセリフ一回言ってみたかったんだおぉっ!?」
ブーンが最後まで言い終えるか言い終えないかの瞬間、ツンのデコピン5連発がブーンの額に炸裂した。
(;^ω^)「な、何するお、ツン!」
ξ#゚听)ξ「……なによ、今の態度。人がせっかく非を認めているのに……」
今のはネタです。
ブーンがそう言おうとしたときには既にツンは間合いを詰め、筆舌に尽くしがたいデコピンラッシュを繰り出していた。
ツンやめて! ブーンのライフは0よ! といった所でしぃが部屋に入ってきた。
思えばいつだって救世主はしぃだった。ありがとう、しぃ。そして早くこの暴君を止めてくれ。
何時までやる予定っすか?
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:36:43.71 ID:g8nXiFg5O
試演
136 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:37:37.48 ID:rIWq8gs60
(*゚ー゚)「あんたたち、何してんの?」
見ればわかるだろ。殺戮が繰り広げられてるんだ。止めてくれ。
ブーンは状況を把握していないのかやたら平静なしぃに嘆願するかのような視線を向けた。
ξ゚听)ξ「今邪悪の殲滅を行ってるからちょっと待ってて、しぃちゃん」
喋りながらもツンは手を緩めない。
(*゚ー゚)「殲滅も良いけどね、ドックンもう来てるよ?」
ξ゚听)ξ「え?」
そこでツンは時計に目をやった。時刻はすでに10時20分。
約束の時間を過ぎていた。ちなみにドックンとはドクオの事だ。
ξ;゚听)ξ「うわわわわ! 過ぎてる!?」
(*゚ー゚)「私は時間通りに下にいたんだけどね。あんまり来ないから呼びに来たんだよ」
ξ;゚听)ξ「ブーン! ブーン! 約束の時間過ぎちゃってるわよ! 遊んでないで早く行くわよ!」
(::::)ω^)「僕は遊んでるわけじゃ……」
そう抗議したがツンは準備に忙しいらしく、聞いていない。
男のブーンは海水パンツとタオルを持っていけばいいぐらいだが、女の子のツンには色々あるのだろう。
それにしてもこんな顔面創痍、床上睡眠による全身疲労で海にいくことになるとは……。ブーンは人知れず嘆息した。
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:38:36.98 ID:U3TEvOQOO
走れメロスとジョジョwwwwww
138 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:40:46.69 ID:rIWq8gs60
(*゚ー゚)「じゃあ私、下いってるから、なるべく早く来てね」
そう言い残すとしぃは階下に消えていった。
( ^ω^)「ツン、まだかお?」
ξ;゚听)ξ「もうちょっと、待って!」
何にそんなに時間がかかるのだろう? ちらとツンを見てみると、
ブーンの部屋の押入れからシャチの浮具を引っ張り出そうとしていた。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと、ツン、何してるお?」
ξ;゚听)ξ「見ればわかるでしょ? このシャチ夫を出そうとしてるのよ!
あとこれだけなんだけど、奥にしまってあって中々引っ張り出せないのよ!」
(;^ω^)「シャチなんかどうでもいいから早く行くお!」
コイツ、何考えてるんだ!? ブーンは飽きれながらツンの腕を掴み、階下へと引っ張った。
ξ;゚听)ξ「シャチ夫ォォォォォォオオオ!!」
(;^ω^)「ドクオたちが待ってるんだお!」
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:42:16.48 ID:qKJuR378O
支援
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:43:03.69 ID:WvjrBdbbO
シャチ夫ーーー!!!!
141 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:43:08.66 ID:rIWq8gs60
(;^ω^)「お、お待たせだお」
外に出てみると、ドクオが玄関の前で待っていてくれた。
('A`)「おぉ、遅かったな」
(;^ω^)「ツンが支度に手間取ってたんだお」
ξ゚听)ξ「シャチ夫……」
それにしてもツンはなぜこうもシャチに執着しているのだろうか。
最早単なる浮具と人間との関係を超越して恋人同士にでもなっているとしか思えない。
('A`)「ツン、久しぶりだな。色々話したいけどちょっと遅くなったからあっちで話そうぜ。車に乗ってくれ」
そうドクオが促してきた。
促した先にあったのは……タイヤに土がつき、ところどころペンキがはげている古臭い軽トラだった。
ξ;゚听)ξ「え……あれに乗ってくの?」
('A`)「そうだ」
(;^ω^)「軽トラって2人乗りじゃ……」
田んぼ道のど真ん中に駐車してある軽トラを見てみる。
それはどんなに注意して見てみても軽トラ以外の何物でもなく、
二人しか乗れないその車内の助手席にはしぃが座っていた。
142 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:46:27.18 ID:rIWq8gs60
視線を変えて荷台を見てみると、ジョルジュとショボンが乗っている。
なるほど……コイツ、そういう事か。
しぃと二人きりのドライブにしたくて軽トラを選んだということか。なかなかの策士である。
そんなブーンとツンの視線に気付いたドクオは居心地の悪そうな表情をした。
(;'A`)「な、なんだよ」
ξ゚听)ξ「別に。ただ意外とこすい事考えるんだなぁと思って」
ツンが冷めた目で答える。
(;'A`)「ち、違うぞ! 別に『おまえらを荷台に乗せておけば車内は俺としぃさん二人きりだうっしっし』
とか思って軽トラにしたわけじゃないぞ!
たまたまうちのステップワゴンが故障中でこれしかなかっただけなんだからね!」
ツンは『うわぁ……コイツ語るに落ちてるよ……』という哀れみの目をドクオに向けた。
_
( ゚∀゚)「おっす、ツン、ブーン。ずいぶん遅かったな。おまえらを待ってたせいでケツが痛くなっちまったよ」
ジョルジュが荷台から話し掛けてきた。
ジョルジュ長岡。ブーンたちの幼なじみの一人だ。顔面が地獄の黙示録のドクオと違い、
なかなか端正な顔立ちをしている。
性格はあっさりとしていて、かつてドクオがツンをからかっていたときにブーンと一緒にとめていた中々の人格者だった。昔は。
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:46:36.58 ID:XvyFleB90
しえん
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:47:39.08 ID:rBN1dME30
シャチ夫支援
145 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:47:45.30 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「ジョルジュ、待たせてごめんだお」
ξ゚听)ξ「ジョルジュ、久しぶり。元気にしてた?」
ブーンとツンはそれぞれジョルジュに遅れたことへの謝罪と再会の挨拶をした。
_
( ゚∀゚)「おぉ、元気だぜ! ついこの前まで元気じゃなかったが最近は調子いいぜ!」
ジョルジュが言葉通り勢いよく答える。
( ^ω^)「ツン、ジョルジュは夏になると、ほら」
ξ゚听)ξ「あぁ、例のあれね……」
ブーンの言葉にツンが苦々しく返事をした。
_
( ゚∀゚)「例のあれってなんだよ」
( ^ω^)「なんでもないお。それでツン、あっちが高校の友達のショボンだお」
初対面である二人のためにそれぞれ紹介をしてやる。
ξ゚听)ξ「よろしく」
>>134とりあえずもう少しで今日の分は終わります。
承知
期待してる
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 01:51:20.41 ID:U3TEvOQOO
終わりまで支援
148 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:51:54.24 ID:rIWq8gs60
( ^ω^)「ショボン、僕らの幼馴染のツン」
(´・ω・`)「あぁ、よろしく」
なんだかそっけないが、まぁ始めはこんなものだろう。
('A`)「おい、昼過ぎちゃうからもう出るぞ。話の続きは荷台でやってくれ」
イリーガルフェイスのドクオに促され、2人は荷台によじ登った。
ドクオはそれを満足そうに見届けると運転席に座り、キーをひねった。
ブルルル、と言う乾いた音が辺りに鳴り響き、軽トラは力強く前進する。
荷台に吹き付ける風が気持ちいい。燦々と降り注ぐ日差しと相まってとても爽やかだった。
頭上にはどこまでも透き通った青空。なるほど、たまにはこうして荷台に座ってみるのも悪くないかもしれない。
しかし、
(;^ω^)「これって道交法違反じゃないのかお?」
ブーンは誰にも聞こえないぐらいの大きさで、そう呟いた。
_
( ゚∀゚)「しっかし変わらねぇな、ツン。安心したぜ」
走りだしてから10分程、ようやく尻の痛みにも慣れてきた頃にジョルジュがツンに話し掛けた。
149 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:54:16.46 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「それは性格的な意味で? 身長的な意味で?」
_
(;゚∀゚)「おぉ、なんかおっかねぇ顔してるな。もちろん性格的な意味でだけどよ」
( ^ω^)「ツンは自分がチビな事を気にしてるお」
ξ#゚听)ξ「チビって言うなって言ってるでしょ!」
ツンがブーンの額にデコピンする。もうやだこの子。ちょっとデコピンしすぎ!
ブーンは今日だけで、およそ平常時の2年分はデコピンをされていた。
_
( ゚∀゚)「まぁ、身長も変わってないけどよ。そうじゃなくて顔も雰囲気も変わってねぇしさ。安心したぜ」
( ^ω^)「腕力は変わったお。3年前の1.7倍は痛いお」
ブーンはデコピンをされた仕返しに軽い皮肉を言ったつもりだったが、ツンに「そうですか」と軽く流されてしまった。
_
(:゚∀゚)「反対にブーンは数日見ない間に変わったな。最後に会った時に比べて、額が真っ赤だぜ」
(::::)ω^)「数日どころか、昨日の昼と比べても赤くなってきてるお」
ジョルジュはツンを見ると、納得したように頷いた。
_
( ゚∀゚)「まぁでもこうしてみんなで海に行くなんて久しぶりだしな、楽しく行こうぜ」
( ^ω^)「本当は昨日ショボンとプールに行こうと思ってたんだけどお」
ブーンはちら、とショボンに視線を投げかける。
150 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 01:57:04.26 ID:rIWq8gs60
(´・ω・`)「悪かったよ。でも受験生として勉強するのは当然だと思うな」
(;^ω^)「おぅ、痛烈な皮肉だお」
_
( ゚∀゚)「結局俺らの中で真面目に勉強してるのはショボンだけなんだよな」
(;´・ω・`)「みんな真面目にやろうよ」
ショボンが優等生振りを発揮するがブーンたちにはどこ吹く風。
( ^ω^)「まぁ、ショボンも来たからにはせっかくの海を楽しむお」
(´・ω・`)「そうだね」
あっさりと丸め込まれた。
_
( ゚∀゚)「でもツン、海に行くなんて久しぶりだろ? なんたって埼玉には海ないからな」
( ^ω^)「おっおっおっ。その代わり大宮は都会だお」
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:01:56.15 ID:rBN1dME30
支援
152 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 02:02:25.16 ID:rIWq8gs60
ξ゚听)ξ「あのさぁ……」
ツンが重々しく口を開く。
ξ゚听)ξ「何であたしの引越し先が埼玉って事になってるわけ? 埼玉じゃないんだけど」
(;^ω^)「え……じゃあどこなんだお?」
ξ゚听)ξ「神奈川の横浜よ。少し南に下れば海もあるし」
(;^ω^)「な、なんだってーーーー!!」
どうやらブーンたちは勘違いをしていたようだ。
そんな勘違いをよそに軽トラは軽快な音を立てて海へと走り続ける。
空はどこまでも青かった。
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:04:31.15 ID:poSzsOn50
wwwww
154 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 02:05:37.79 ID:rIWq8gs60
以上で『( ^ω^)はふるさとのようです』本日の投下分は終わりです。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
また、支援をしてくださった方にも感謝いたします。
また明日同じような時間に続きを投下します。
スレが残っていたらこのスレに、
落ちていたら新たにスレ立てをしますので。
どうか最後までお付き合いいただけますよう、お願いいたします。
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:07:10.68 ID:poSzsOn50
otu
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:07:41.73 ID:rBN1dME30
>>154 おつおつ
面白かったです
つづきまってます
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:08:49.16 ID:U3TEvOQOO
>>1乙
保守して待ってるよ
涙のようです書いてた人だよね?
おつ
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:11:00.19 ID:vxLeI/IOO
乙。
期待支援
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:12:07.45 ID:+Hr5+FmFO
おつ
乙
久々にwktkできるブーン系だ
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:48:29.18 ID:vxLeI/IOO
☆
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:51:06.68 ID:aOTI/nKeO
乙。面白かったぜ
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 02:55:51.74 ID:U3TEvOQOO
保守
いまさらだが俺のIDすげぇw
>>1乙
これはいちおつじゃなくてポニーテールなんたらかんたら
明日も期待してる
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 03:26:24.49 ID:U3TEvOQOO
保守す
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 03:34:50.17 ID:g8nXiFg5O
保守
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 03:53:09.59 ID:FVyzJxkk0
干す
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
ほし