ノパ听)川 ゚ -゚)夢でまた会えたら、のようです
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
多種多様な色とりどりの花の咲き乱れる綺麗な庭。
その中の一輪を手折り、大事そうに両手で持つ。
煉瓦の敷き詰められた道をゆっくり歩いて行くと見えてくる玄関。
その大きな扉を開けると、視界の先には広いホールが広がる。
その中心に立つ真っ白な螺旋階段に向かってゆっくりと歩く。
そこにはいじけた様子の少女が俯いて座っていた。
「これ、あげる。」
螺旋階段に腰掛ける少女に先ほどの花を笑顔で手渡す。
少女はそれを見ると忽ち笑顔になった。
「ありがとう!」
立ち上がり、こちらに向かって笑いかける。
長い赤い髪が揺れ少女の顔が見える。
どこか見覚えのある顔。
そこに立っているのは・・・自分?
ノパ听)川 ゚ -゚)夢でまた会えたら、のようです
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:26:58.44 ID:K4gRmXzrP
第一話「夢の中の自分」
3 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 13:36:57.07 ID:K4gRmXzrP
Σノパ听)「・・・!」ガバッ
夢?
夢にしては嫌にリアル。
間違いなくそれは自分だった。
じゃあ、夢の中の自分は誰?
ノパ听)「・・・まぁ考えても仕方ないな。」
顔を洗い、鏡を見つめる。
普段見る夢程度なら、いつも顔を拭いた後には頭の隅にも残っていない。
だが、今回は違う。
全てが心のどこかに引っかかって流れてくれない。
着替えを始めた彼女の中に浮かぶ新たな疑問。
あの家はどこだ?
どこか見覚えのある、懐かしい風景。
しかし頑張って思い出そうとしても、霞がかかった様にしか出てこない。
食パンを齧りながら深く考えてみる。
やはり、何一つ思い当たる事はない。
ノパ听)「・・・」
なんだったんだろう?
疑問だけが広がる。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:37:56.70 ID:7awUUfYc0
支援
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:38:04.76 ID:rP0FX5QzO
少し忙しいから後で読む支援
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:39:39.59 ID:/gy3Lna4O
lw´‐ _‐ノv「ん?」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:43:07.45 ID:ZxR5ljmmO
期待できそう支援
8 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 13:46:44.11 ID:K4gRmXzrP
学校についてもその疑問は消えなかった。
自然と心に浮かんだ"懐かしい"という感情。
それすら自分の中に新た疑問を生む。
物心ついたころには孤児院に居た彼女にとって「家」という存在自体が謎なのだ。
中学卒業と共にその孤児院を去り、バイトをしながら高校に通う自分。
思い出と言われて浮かぶものといえば孤児院の「お母さん」と傍にいた「家族」。
それしかなかった。
ξ゚听)ξ「あら、今日は珍しく静かなのねヒート。」
外を眺めていたら話しかけてきた巻き髪の少女。
彼女の名前はツン。高校からの友達だった。
ノパ听)「静かな時くらいあるわい。」
悪態をついてみたものの、自分の異変は自分が一番良くわかっている。
"夢"が頭から離れないせいで騒ぐ気にもなれなかった。
"見覚えのある"風景。
しかし"思い出せない"風景。
もどかしい時間が過ぎていく。
疑問を解決しようと思えば思うほど謎は増えていく。
ノパ听)「・・・」
窓の外には"見覚えのある"街が広がっていた。
9 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 13:56:10.94 ID:K4gRmXzrP
lw´‐ _‐ノv「そうだぞヒート。お前が騒がなくては授業が普通に始まってしまうではないか。」
ξ;゚听)ξ「それは寧ろありがたいわよ・・・」
後ろから現れた黒髪の少女はシュール。
彼女もまた高校からの友達である。
ノパ听)「うーん・・・それはそれで困るな」
ξ;゚听)ξ「何のために学校に来てるのよあんた達・・・」
lw´‐ _‐ノvノパ听)「「遊ぶためだ」」
ξ゚听)ξ「・・・」
呆れ顔のツンを横目に二人で握手をしながら、シューがいつもの会話を始める。
考えても無駄だし楽しもう。
元々考えるのは苦手だ。
いつものように過ごしていたらそのうち何か思い出すだろう。
その時にはその程度にしか考えていなかった。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 13:59:08.05 ID:B95Eeu9DO
支援
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 14:01:23.55 ID:1THSXx8I0
支援
支援だ
13 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 14:08:42.11 ID:K4gRmXzrP
lw´‐ _‐ノv「それでだ、そのうどん屋は何を出したと思う?」
ノパ听)「なにが出てきたんだよ」
lw´‐ _‐ノv「良く聞いてくれた!うどん屋は天麩羅蕎麦を出し腐りやがったんだ。どう思う?」
ξ;゚听)ξ「どうって・・・それくrノパ听)「ありえねえ!」
lw´‐ _‐ノv「だろう?うどん屋なのだからうどん以外は出さないのが筋だろう!?」
ξ゚听)ξ「・・・」
鐘が鳴り、先生が入ってきて授業が始まろうとも終わらない会話。
_
(#゚∀゚)「話を聞け!」
飛んでくるチョークが目に入る。
横に座っていたシューが手を伸ばし、飛んできたチョークを人差し指と中指で挟み取る。
lw´‐ _‐ノv「甘い」
そう呟くと同時に撓った手首を反し、チョークは元通って来た軌跡をなぞりながら速度を増す。
_
(#゚∀゚)「教師暦25年!!この腕振りのジョルジュをなめるなぁッ!」
華麗に身をかわした長岡先生の顔を掠め、チョークは轟音と共に黒板に突き刺さる。
"いつもの"朝のやり取りの中、やはり頭の中を支配していたのは夢の事だった。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 14:11:49.67 ID:k1nzVKlQ0
支援
15 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 14:16:46.94 ID:K4gRmXzrP
_
(#゚∀゚)「そ こ ォ !」
気がついたときにはおでことチョークがキスをしていた。
ノパ听)「あ」
と言った時には弾き飛ばされる体。
重力との別れを惜しみながら、背中は椅子から離れる。
lw´‐ _‐ノv「気を抜くな。そんな調子では生き残れぬぞ。」
背中に柔らかいものが当たる。
ノパ听)「す、すまねえ」
_
(#゚∀゚)「チィ!命拾いしやがったか!」
教師とは思えない声を上げる長岡。
重力との再会を果たした脚が、再び地面に着く。
おでこに残る鈍痛は、夢の事など全てどうでも良くさせてくれた。
ノパ听)「シュー・・・」
lw´‐ _‐ノv「ほれ」
手渡される5本のチョーク。
朝の戦いは始まったばかりである。
16 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 14:30:48.52 ID:K4gRmXzrP
ノハ#゚听)「うらぁ!」
掛け声と共に天井すれすれまで跳躍する。
握られた事により、小石大の大きさに砕けたチョークを手に揃える。
跳躍の頂に辿り着いたとき、揃えたチョークを渾身のデコピンで弾き飛ばした。
フッという風を切る音と共に放たれる欠片。
風圧でカーテンが揺れる。
欠片が長岡の額を捉える。
_
(#゚∀゚)「舐 め る な と 言 っ た 筈 だ 」
声が聞こえたと思うと壇上から長岡の姿が消えた。
lw´‐ _‐ノv「残像か」
シューがそういうと同時に頭頂部に鈍い痛みが走る。
lw´‐ _‐ノvノパ听)「イテッ」
後ろを振り返るとそこには出席簿と教科書を縦に握る鬼神が立っていた。
_
(#゚∀゚)「廊下に立っていろ!!」
首根っこを掴まれ、二人は廊下に立たされる。
lw´‐ _‐ノv「くそう、コレで35戦34敗0勝1引き分けか・・・。」
朝の戦いは扉が閉まる音で幕引きとなった。
17 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 14:41:40.59 ID:K4gRmXzrP
lw´‐ _‐ノv「しかし珍しいな、お前が気を抜くとは。炊飯器でも空を飛んでいたのか?」
ノハ;゚听)「それはお前の願望だろうが。ちょっと考え事しててなー」
真剣な眼差しで見つめてくるシュー。
きっと彼女は炊き立てのご飯が詰まった炊飯器が空を飛んでいる事を本気で願っているのだろう。
鈍い痛みの残る頭を摩りながら、再び頭をよぎった夢の事を考えてみる。
ノパ听)「なぁシュー。」
lw´‐ _‐ノv「何だ。米俵でも落ちているのか?」
ノハ;゚听)「んなわけあるかぁ!」
言いかけた事を飲み込む。
間違いなく相談しても無駄だ。
そう確信した。
授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
ノパ听)「中に戻るぞー」
lw´‐ _‐ノv「うむ、そうするとしよう。」
痺れる足を引きずりながら中に戻る。
ツンのため息で迎えられ、椅子に腰掛ける。
なんら変わらぬ、”いつもの”日常。
ヒートの疑問だけを残し、日常は日常のまま過ぎていった。
18 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 14:43:52.85 ID:K4gRmXzrP
ご飯食べてきますー
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 14:56:40.50 ID:En/OXxrn0
保守
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 15:28:04.70 ID:C4Ujb0rtO
保守!
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 15:36:38.46 ID:En/OXxrn0
ほしゅ
22 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:08:27.37 ID:K4gRmXzrP
後片付けとかなんやしてて遅くなりましたorz
今からまた書き始めます。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 16:18:14.66 ID:JJewEGg8O
( ^ω^)支援しますお
24 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:25:42.07 ID:K4gRmXzrP
何もわからないまま時は過ぎる。
心の霞も晴れぬまま、昼休みとなった。
周りではやはり日常が日常のまま、見覚えのある光景を映している。
何一つ変わりはしない。
突如として現れた非日常。
それが夢と言う形をしていた所為なのか、疑問と有耶無耶ばかりが増えていく。
lw´‐ _‐ノv「スキあり」
ノパ听)「あ。」
気付いた時には先ほどまであった筈のオカズたちは姿を消し、がらんとした空間が広がっていた。
lw´‐ _‐ノv「うむ、やはりお前の飯は旨いな。」
もう一度弁当箱に目をやると、そこにはもう何も入っていなかった。
ノパ听)「・・・」
ξ;--)ξ「これ・・あげる・・・。」
見かねたツンが焼き蕎麦パンを差し出す。
唯でさえ手強いこの悩みに空腹が加わる事を回避した彼女は急いでそれを頬張る。
結果、むせた。
ノハ;゚听)「グホッ・・・ゲホッゲホッ・・・」
ξ;--)ξ「・・・」
25 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:35:14.68 ID:K4gRmXzrP
またしても見かねたツンが無言で紙パックの紅茶を差し出した。
ノハ;゚听)「・・・はぁはぁ・・・助かった・・・」
ξ;゚听)ξ「急ぎすぎよ。」
lw´‐ _‐ノv「小麦などを食べるからそういうことになるのだ。」
ξ゚听)ξ「それは違う。うん、違うと思う。」
ノパ听)「さすがにそれには同意できない。」
lw´‐ _‐ノv「・・・グスン」
嘘泣きするシューを横目に、箸をつけることなく空になった弁当箱をしまう。
鞄の底から視線を上げ、机の上に広がる光景を眺める。
やはりそこにあったのは日常である。
ノパ听)「・・・」
ξ゚听)ξ「シュー、口の横ご飯粒ついてるわよ。」
Σlw´‐ _‐ノv「ぬっ」
言われた場所を摘み、ご飯粒を手に取るシュー。
それを口に運び、恍惚とした表情を浮かべる。
やはり何の変化も無い日常であった。
26 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:44:44.95 ID:K4gRmXzrP
家路に着き、だらだらと歩く。
見慣れたものが次々と目に映る。
人の少ない商店街、車の多い国道、コンビニに溜まる不良。
住宅街に入ってもそれは変わらない。
通りなれた道、良く吠える犬、猫の集まる公園。
どこを見ても日常しか無い。
家に着いても同じ。
古びたアパートの階段を上がり、自分の家の扉を開ける。
狭い玄関、そこに置いてある小さな時計、小さなソファーとテーブルの置かれたリビング。
何一つ非日常は存在しない。
ノパ听)「・・・唯の夢だったんだ。きっと。」
そう自分に言い聞かせる。
制服を脱ぎ、鏡の前に立つ。
そこに居たのは自分。
夢の中の自分が見ていた自分の成長した姿に違いなかった。
何故、自分は自分を見ていたのか?
自分を見ていたと言う事は自分は誰なのだろうか?
あの場所はどこなのか?
何故懐かしいと感じたのか?
考えを消そうとすればするほど答えの無い疑問は膨らむ。
自分を捨てたモノとの思い出。
それがそこに詰まっている気がした。
27 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:57:18.14 ID:K4gRmXzrP
その日から一週間が経った。
夢の事を考えるのも、もうやめていた。
_
(#゚∀゚)「ウラァ!」
飛んでくるチョークをシューと投げ返しながら、二人で話を続ける。
lw´‐ _‐ノv「今日は勝てるだろうか」
ノパ听)「勝てるか勝てないかじゃなくて勝つんだよ!」
lw´‐ _‐ノv「それもそうだ。」
_
(#゚∀゚)「この弾幕の中、おしゃべりとはいい度胸じゃねえか!!」
チョークの量が増える。
その刹那シューの目が光った。
片手でその軽い体を机の上に押し上げ、黒い髪がひらりと靡く。
飛んできたチョークを両の手を使い、全てを指で挟みとった。
lw´‐ _‐ノv「さらば」
交差させた腕を元に戻し、その勢いで全てのチョークは長岡に突き刺さる。
lw´‐ _‐ノv「さらば」
この前の教訓を活かしたシューが後ろを振り返り、そこに居ないはずの長岡にチョークを投げつける。
この日初めて勝利した二人は、停学一週間の副賞をいただき学校を後にした。
28 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 16:59:27.80 ID:K4gRmXzrP
おおう・・・台詞ミス・・・orz
2個目の「さらば」を「ちぇっくめいと」に脳内変換よろしくお願いしますorz
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 17:00:00.06 ID:En/OXxrn0
支援
しえん
31 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 17:09:50.05 ID:K4gRmXzrP
lw´‐ _‐ノv「36戦34敗1勝1引き分け。この1勝はでかいな。」
ヒートの家で弁当を食べながらシューが呟く。
ノパ听)「ああ。これまでの経験を活かした1勝だからな。先に繋がる1勝だぜ。」
弁当を取られぬようにしながら返事をした。
ノパ听)「またご飯粒着いてるぞ」
lw´‐ _‐ノv「なに!?まだまだだな私も。」
そういうとご飯粒を摘み口に運ぶ。
やはりここにあったのも日常である。
日常でも問題ない。
変化が無くたって幸せではないか。
そう思える午後だった。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 17:13:33.51 ID:En/OXxrn0
支援
33 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 17:20:09.50 ID:K4gRmXzrP
その日の夜、再び夢を見た。
目の前に広がるのは小さな公園。
公園の真ん中には花壇があり、その中心に大きな木が聳えている。
そこで夢の中の自分はやはり"自分"と遊んでいた。
ブランコに乗り、靴を飛ばす。
横の少女も同じように靴を飛ばす。
「あーあ、またヒートちゃんのかちだね」
夢の中の自分が自分の名を呼ぶ。
「・・・ちゃんもおしかったよ!」
自分が夢の中の自分の名前を呼ぶ。
何故かそこだけきちんと聞き取れなかった。
けんけんで靴を取りに行く自分。
ブランコに乗る夢の中の自分に靴を手渡すと、公園の中心にある木まで走っていく。
そこまでゆっくりと歩いていく夢の中の自分。
木の下まで辿り着くと自分が手を差し出した。
「もしはなればなれになっても、またいつかここであおうね。やくそくだよ!」
「うん!」
約束の場所での幼き誓い。
夢の中で自分と小指を結ぶと、そこで夢は途切れた。
34 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 17:28:23.46 ID:K4gRmXzrP
目覚めた後、確信する。
「夢の中の自分」は自分ではない。
そこにいた自分こそが自分だ。
そして自分は夢で見た場所を知っている。
どこかはわからないが、確かに"懐かしい"感覚が残っている。
しかし、思い出せる限界は孤児院の「お母さん」にランドセルを買ってもらって喜ぶ自分。
聞き取れなかった夢の中の自分の名前。
思い出すどころか、顔すら思い出せない。
ふと思う。
自分の「名前」は誰が付けてくれたのだ?
夢を見る限りでは孤児院の「お母さん」ではない。
では誰だ?
顔も見た事の無い両親?
だとすれば・・・
だとすれば何故その名前を孤児院の「お母さん」が知っている?
何か名前を書いたものがあったなら手元に残っているはずだ。
しかしそんなものは一つも無い。
疑問は解決せず、深みを増していくのであった。
ブーン系に来たのか
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 17:45:13.95 ID:MWRdDoCYO
支援
おおっと保守
38 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 18:18:01.20 ID:K4gRmXzrP
洗い物して米炊いて来ました
米は偉大です
パンのほうが好きです
39 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 18:34:45.75 ID:K4gRmXzrP
――
広い家の真ん中の螺旋階段に腰掛け、いじけている自分。
理由はわからないが、赤い髪を垂らし俯いている。
指をいじり、交差させ、それを解いてはまた交差させる。
深く溜息をついたとき、不意に大きな木のドアが開き、誰かが入ってくる。
何の期待もせず、俯いている自分に足音が近付いてきた。
「これ、あげる。」
少女は聞き覚えのある声で自分に一輪の花を手渡した。
鼻の中に甘い香りが広がる。
それを見ると自分は何故か笑顔になった。
「ありがとう!」
花を受け取りお礼を言う。
立ち上がり、相手に微笑みかける。
そこに立っていたのは黒い髪を靡かせる笑顔の少女。
どこか見覚えのある顔。
自分の前で笑っていたのは間違いなく自分だった。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 18:45:17.22 ID:2Ma5FkMTO
支援
41 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 18:47:47.95 ID:K4gRmXzrP
川 ゚ -゚)「・・・。」
奇妙な夢を見た。
どこか懐かしく、見覚えのある大きな家。
しかし思い出せない風景。
何故か見覚えのある赤い髪。
誰かもわからない夢の中の自分。
そして、夢の中の自分の前に立つ自分・・・。
( ・∀・)「クー、起きたのかい?」
思考は父の声でストップする。
川 ゚ -゚)「ご飯もう作っちゃった?」
( ・∀・)「ああ、いつも作ってもらってばっかりじゃ悪いからね。冷めるから早く食べにおいで。」
川 ゚ -゚)「ありがとう父さん。」
父が戸を閉めるのを確認すると服を着替える。
着替えながら鏡を見てみる。
やはり、夢で見た自分は間違いなく自分だ。
川 ゚ -゚)「夢・・・じゃないのかな?」
腑に落ちぬ思いと共に、自分の部屋を後にした。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 18:54:08.55 ID:2Ma5FkMTO
よく見たらバーボンの人か 支援
43 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 18:59:27.57 ID:K4gRmXzrP
リビングに着くと、テーブルの上には久しぶりに父の作ってくれた朝食があった。
父の顔を見ると父は笑顔で椅子を引いてくれた。
( ・∀・)「クーの料理には負けるけど、我ながら自信作だ。」
川 ゚ -゚)「ふふっ、いただきます。」
朝食を食べながら続きを考える。
まず夢で見た家。
あの家の構造には見覚えがあった。
広い玄関に大きな木の扉。
そして、家の中心にある白い螺旋階段。
そして夢の中の自分が好きな花。
手で持ってきたとすればその家の庭に生えているのだろう。
しかし、今の家はマンションなので庭があると言う事はまずない。
そして、夢の中の自分。
赤い髪、白い手、明るい声。
全てに見覚えがあった。
しかしその姿はおろか名前すら思い出せない。
川 ゚ -゚)「・・・。」
朧げな記憶が霞んだまま浮かんでは消えていく。
食べ終わっても、霧のかかった記憶の輪郭を掴む事はできなかった。
44 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 19:06:47.17 ID:K4gRmXzrP
>>42 おお、あの作品を読んでくれていた人が居たとは・・・・
( ・∀・)「美味しくなかったのかい?」
黙って考え事をしていた所為か、いつの間にか暗い顔をしていたのだろう。
テーブルの向こう側で父が不安そうに自分の顔を見ていた。
川 ゚ -゚)「いやいや、凄く美味しかったよ。ちょっと考え事をしていただけさ。」
笑顔でそう父に伝えると「よかった。」と言って笑った。
食べた食器をキッチンに運び、手早く洗う。
それを終えると学校の準備を始めた。
( ・∀・)「それじゃあ行ってくるよ。クーも気をつけて行きなさいよ。」
川 ゚ -゚)「ありがとう父さん。父さんも気をつけてね。」
そう言って父を見送ると、自分の準備の続きを始める。
学校に行けば忘れれるだろう。
その時はその程度にしか考えていなかった。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 19:13:57.75 ID:MWRdDoCYO
紫煙
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 19:14:08.21 ID:aj806QB1O
うおっバーボンの人か!
あれ滅茶苦茶良かったよ!
今回もwktkしてますwww
47 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 19:31:45.21 ID:K4gRmXzrP
>>46 ありがたきお言葉。励みになりまする。
物心着いたころには家には父しか居なかった。
何の幸せもなく、不自由のない生活。
家に帰っても誰も居ないのが当たり前だったので、寂しさを感じる事すらなかった。
父が帰ってくるまで猫と遊んだり、本を読んだりして時間を潰す。
帰ってくれば料理の手伝いをし、二人で食卓を囲む。
それがおかしい事に気付いたのは小学校の頃だった。
作文でお母さんとお父さんのことを書いてきなさいという宿題を出された時、初めて母と言うものの存在を知った。
しかし、不思議と母に会いたいという感情が芽生える事はなく、父のことだけを書いて宿題を終えた。
小学校高学年になると調理実習で基礎を覚え、父の帰りを待ちながら料理を始めた。
最初は良く失敗したが中学に上がるころにはそれも無くなり、料理にも慣れた。
父の喜ぶ顔が見れる。それだけで十分だった。
昔の事などどうでも良かった。
川 ゚ -゚)「でも・・・」
でも今回だけは違う。
自分の過去が気になって仕方が無かった。
霞のかかる記憶の向こう側。
そこに何があるのか知りたい。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 19:32:10.95 ID:MWRdDoCYO
保守
……バーボンハウス読みにいてくる……ノシ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 19:48:46.33 ID:/nA+A+FtO
今ちょうどバーボン全部読んできたところだよー支援
51 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 19:58:25.40 ID:K4gRmXzrP
電話かかってきてましたorz
学校が始まり、授業が始まっても頭から夢の事が抜けることは無かった。
普段なら隣のクラスで毎朝のように始まる戦争の音も気にせず、授業に集中できている。
しかし、今日は違った。
(,,゚Д゚)「じゃあクール!ここの答えはなんだ!」
どこかに飛び去っていた意識が返ってくる。
顔を上げるとそこには自分に向かって指をさす先生。
状況を理解するまでおよそ30秒。
黒板の指定された問題を読み、その問題に見覚えが無い事に絶望する。
川 ゚ -゚)「・・・わかりません」
(,,゚Д゚)「秀才のお前が珍しいな。」
席に座りなおすと教室からどよめきが聞こえる。
从 ゚∀从「珍しいなクー。好きな男でも出来たか?」
川 ゚ -゚)「殴られたいのかそうかそうか」
从 ゚∀从「OK落ち着け」
話しかけてきた悪友ハインを軽くあしらい、わからなかった問題を教科書で確認する。
しかし、問題が頭に入るよりも先にまた先ほどの疑問が頭を覆った。
52 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:05:12.47 ID:K4gRmXzrP
結局その日はぼろぼろ。
当てられた問題には一つも答えられなかった。
後にその日は学校で「魔のスランプ」として語り継がれるのだが、本人はそんな事を知る由も無い。
从 ゚∀从「しっかし面白いな。お前がここまで酷い日なんてそうないぜ?」
川 ゚ -゚)「私だって人間だ。できない事くらいあるさ。」
昼食を取りながら悪友と話をする。
男勝りで自由人。
真逆の性格の彼女達だが、仲は良かった。
从 ゚∀从「まぁ好きな男が出来んたならあきrプギュ」
ハインが冗談を言い終わるよりも速くクーの裏拳がハインの鼻を仕留める。
川 ゚ -゚)「ごめん。」
从 ゚∀从「・・・絶対謝る気ないだろ。」
川 ゚ -゚)「勿論だ。」
そんな冗談を交えながら平和な昼休みが過ぎる。
何も変わらない。
普段どおりの"日常"が時を刻んでいった。
53 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:15:57.28 ID:K4gRmXzrP
家に着き、白紙のノートとハインのノートを並べて写す。
屈辱的だったが、まぁ仕方ない。
川 ゚ -゚)「・・・。」
午後の授業のノートに血の痕があったが、気にせず写す。
何もしてない。きっと何もしてない。
そんな事を考えながらノートを写し終え、今度はそれの復習をする。
しかし、いざ集中しようとすると浮かび上がるのは今朝の夢。
夢の中で見た自分。
紛れも無い自分。
では夢の中の自分は誰なのだ?
一つ覚えているのは赤い髪。
川 ゚ -゚)「手掛かりはそれだけ・・・か。」
集中できないので勉強を諦め、晩御飯を作り始めても疑問は膨らみ続ける。
川 ゚ -゚)「あ。」
気がついたときには鍋の中にあった煮物達は炭になっていた。
深く溜息をつき、軽快な音楽で炊き上がりを告げる炊飯器を覗く。
中にあったのはお粥だった。
今晩は雑炊にしようそうしよう。
そう自分に言い聞かせ、久しぶりの失敗に頭を抱えた。
54 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:25:33.72 ID:K4gRmXzrP
次の日、いつもの通学路を歩く。
視界に入るのは"日常の"風景たち。
歩きなれた道。
青々と茂る街路樹。
少し揺れる歩道橋。
それら全てがなんら変わり映えの無い"日常"。
しかし夢の中は違っていた。
自分が自分を見ていると言う奇妙な光景。
夢の中の自分が誰かすらわからない。
増える謎。膨らむ疑問。
公式も解法も無い、ただ霞を掴むよな推理。
川 ゚ -゚)「昔の記憶・・・?」
欲しいと願った事も無いそれが、今更ながらになって浮かび上がる。
非日常の中にあった確かな過去。
朧に包まれたその全てを手に入れたいと願う心。
曖昧な記憶を恨めしいと思いながら自分はまた日常に身をうずめていく。
そんな矛盾を抱えながら彼女は歩き続けた。
雰囲気の出し方が巧いなー
56 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:32:09.45 ID:K4gRmXzrP
学校に着き、授業が始まる。
今日は隣のクラスで戦争がない日なので静かに授業を受けれる。
とりあえずは昨日の名誉挽回だな。
そう言わんばかりにクーは"日常"の風景を取り戻してみせる。
从 ゚∀从「お、今日は何時も通りだな。」
席に着くと旧友が話しかけてくる。
川 ゚ -゚)「だらけてばかりもいられないのでな。」
从 ゚∀从「振られたからってそんなに落ち込むなって。」
川 ゚ -゚)「・・・余程死にたいらしいな」
从;゚∀从「冗談だよ」
"何時も通り"旧友を軽くあしらう。
日常とはなんなのだ?
考えても答えの出ない謎。
そんな事を考えている間も、"日常"が時間を支配して行く。
川 ゚ -゚)「・・・。」
思い出したくても思い出す事のできない過去。
そこに何があるのか、どんな事があったのか。霞の向こうに唯手を伸ばす。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 20:34:16.05 ID:En/OXxrn0
支援
58 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:36:31.54 ID:K4gRmXzrP
そんな事を考えているうちに日常は過ぎていく。
土日になれば父と話をしながら一日を過ごす。
土曜日は自分が、日曜日は父が料理を振舞った。
( ・∀・)「久しぶりの休みだからね。こうでもしないと腕がなまっちゃうよ。」
笑いながらキッチンに立つ父を見ながら私は笑った。
テレビをつけ、二人でニュースを見ながら食卓を囲み、話をする。
面白い話題があれば二人で笑い、悲しい話題があればそれについて話し合う。
どこにでもある、唯幸せな家族。
日常が愛おしい。
自然と笑っている自分に、そう再認識させられるのだった。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 20:45:33.16 ID:pP73Vc0IO
試演
ところで、
>>1のバーボンのタイトルはなんだい?
60 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:49:59.15 ID:K4gRmXzrP
折角夢の事も忘れかけていたその夜、また夢を見る。
夢の中で自分と遊ぶ夢の中の自分。
そこは小さな公園の中。
公園の中心には大きな木が聳え立っている。
ブランコに乗り、靴を飛ばす自分。
それを見た夢の中の自分もまた、靴を飛ばす。
「あーあ、また・・・ちゃんの勝ちだね。」
自分が夢の中の自分の名を呼ぶ。
しかし、きちんと聞き取れない。
「くーちゃんも惜しかったよ!」
夢の中の自分が自分の名前を呼ぶ。
けんけんで靴を取りに行く夢の中の自分。
ブランコで待つ自分にそれを手渡し、大きな木まで走る。
自分はゆっくりと歩いてきた。
夢の中の自分が待つ木まで辿り着くと、夢の中の自分が手を差し伸べる。
「もしはなればなれになっても、またいつかここであおうね。やくそくだよ!」
「うん!」
約束の場所での幼き誓い。
夢の中で自分と小指を結ぶと、そこで夢は終わった。
61 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 20:56:40.69 ID:K4gRmXzrP
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 21:04:09.49 ID:En/OXxrn0
乙乙
これからまとめて読んでくる
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 21:08:17.63 ID:pP73Vc0IO
64 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 21:12:38.41 ID:K4gRmXzrP
第二話「夢の狭間で」
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 21:15:40.38 ID:En/OXxrn0
あれ第二話始まった?
66 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 21:17:42.04 ID:K4gRmXzrP
>>62 ありがとうございます(´ノω・。)
>>63 駄文でございますが・・・
>>65 ぬ、明日にした方がよろしいでしょうか
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 21:25:31.13 ID:En/OXxrn0
いや全力で支援させていただく
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 21:35:29.48 ID:En/OXxrn0
保守
69 :
◆F8OObq8gz. :2009/03/03(火) 21:45:53.19 ID:K4gRmXzrP
>>67 ついでだからご飯食べさせてもらいました。
再び日常から非日常に突き落とされる朝。
川 ゚ -゚)ノパ听)「「・・・」」
大きな家。
夢の中の自分。
そして約束の場所。
全く違う場所で、全く同じ夢を見た二人。
お互いがお互いのことを知る由も無く、唯同じ疑問だけを共有する。
幼き日の約束。
お互いが真逆の立場の夢。
心に浮かぶのは小さな疑問。
「夢の中の自分は一体誰なのか」
「自分達の過去には一体何があるのか」
唯それだけがわからぬまま、"日常"に身を落とす。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
お帰り支援