コーデックスの基準は、政府広報オンラインでも引用されているように、一般食品も、乳幼児用食品も同一値で、1000ベクレル/kgである。
この数値を決定したときに、ある仮定が存在しているのだが、政府広報オンラインでは説明されていない。
それは、摂取する食品のうち、10%が汚染されているという仮定である。
現在の日本の基準は、すでに述べたように、食料自給率が39%しかないこの国なのに、50%の食品が汚染されていると仮定されている。
コープふくしまのデータを真実と考え、それに大きすぎる安全係数を考えた場合でも、今ならば、20%が汚染されているという程度と
仮定することが現実的ではないだろうか。現状は最低でも2.5倍程度厳しすぎるということである。
厳しすぎる基準を用いると、高く付くのが普通である。この高く付くことが、日常的な費用が多少増大することだけであれば、
余り、気にすることではないかもしれない。もっと重大なことがある。それは、福島の農業の復興が遅れることである。
これは、福島県で農業を営む人にとって重要なだけではない。
東北というこれからの日本の農業の中心地の一部である福島を失うことは、世界の農産物が高騰したというニュースに一喜一憂をする原因にもなって、
多くの日本人にとって、精神的に高く付く可能性がある。
安心を単純に得ることを求めると高く付くが、不安になりそうな「嫌な状況」を避ける対策を練ることは、将来にとって良い投資である。
そのために、できるだけ早く、食品の放射線安全基準値は下げるべきである。
最後に、ワシントン・ポストの8月15日の記事と読者のコメントをご紹介しよう。福島での内部被曝が、
チェルノブイリの場合よりも相当に低かったという東京大学の坪倉正治氏の論文が、
Journal of American Medical Associationに掲載されたと言う記事である。
この記事に対する読者のコメントが掲載されている。それが面白い。
Now the truth is out and people will call it "government propaganda."これを訳せば、
「真実が分かった。しかし、人々は、政府のプロパガンダだと言うだろう」。
何が真実か分からなくなった人々は、大変に気の毒な存在ではあるが、その人々の安心への要求を無条件に受け入れてしまうと、
一般の国民にとって、単に、金銭的にではなく、精神的な安定度などについても、「高く付く」ことになるだろう。
東京大学名誉教授 安井至
http://www.yasuienv.net/ShokuCent.htm